武装魔術戦記 (GST)
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平和な日常は1秒ももたない

話の流れが人によっては非常にゆったりと感じる方もいるかもしれません。
感じられた方はごめんなさい。今回はホントにゆったりしすぎました。


西暦、XX16年。地球は宇宙からの使者によって攻撃を受けていた。

 

何故地球を襲うのか。

 

資源が豊富だからか?

 

住みやすい環境だからか?

 

破滅主義者に狙われたのか?

 

その理由は今だ解明されていない。

 

だが、地球滅亡の危機であることに変わりは無い。

 

この状況下で人類が取った選択肢とは――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和な日常は1秒ももたない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の道路。

 

日光に加え、日差しを浴びて熱を帯びたコンクリートから発せられる熱を受け、歩いているだけで汗をかく、そんな日。

 

「あっちぃ~。どうにかなんねえかな、この暑さ」

 

特に暑さに強いわけでもない俺は、汗をだらだら流しながらだらだらと学校への道を歩いていた。

 

ふと、空を見上げる。

 

「……ホント、日本は平和だよなぁ」

 

ニュースを見れば、世界中が宇宙人から攻撃を受けてるってのに。

 

この日本は一度だって襲撃を受けたことは無い。

 

「興味が無いのかな?この国の二次文化とか国土とかに」

 

もっとも、それを宇宙人が知ってるかどうかは別問題だけどさ。

 

「ってこんなことしてる場合じゃなかったな……急がないと」

 

俺は滴る汗をコンクリに垂らしながら学校へ向かって走った。

 

 

 

 

昔みたいに学業を学ぶのではなく、戦い方を学ぶのが今の学校だ。

 

何故戦いを学ぶのか。

 

理由は勿論、現在の地球に襲い掛かる脅威を払う為だ。

 

そして生徒らは、魔法や銃、剣などの兵器など、自分に合った戦い方を学ぶのだ。

 

大体の人間は兵器か魔法のどちらかに偏るものだが、中には極めて稀に、両方の素質を兼ね揃えた人間がいる。

 

彼らが所属するクラスこそ、『SSクラス』。

 

厳しい授業に定評のあるクラスだ。

 

また、その才をよく思っていない生徒から妬まれるなど、才能を持って生まれてしまったが為に酷い扱いを受けてしまうこともある。

 

しかし当人達には、それが定めだと受け入れるしかなかった。

 

今更、変えることはできないのだから。

 

 

 

 

ウィーン。

 

『SSクラス』のドアが開くと同時に、俺は教室にダイブする。

 

「ッッセエエエエエエエエエエエエエエエエッッッフ!!!!」

 

しかし、勢いがつきすぎた。

 

俺はその勢いを殺しきれず、机に激突する。

 

「ぐふぉっ!?」

 

俺は頭を抱えて転げまわる。

 

が、腹の辺りに違和感を感じると同時に動きが止まる。

 

「心配しなくてもまだ二十分以上時間はあるわよ。ったく……」

 

見上げると、その足を先には同じ『SSクラス』の生徒の顔があった。

 

「なあ、十姫(とき)……」

 

俺はその生徒、風音(かざね)十姫の名を呼んだ。

 

「何よ?」

 

十姫の特徴的な長い髪が揺れる。

 

俺はその先の言葉を繋ぐ。

 

「パンツ、結構カワイイ奴穿いてるんだなお前」

 

「!!」

 

十姫はその言葉を聞くと同時に俺から離れる。

 

顔を真っ赤に染め、むちゃくちゃに怒鳴り散らす。

 

「どどどどどどどこ見てんのよ!ここここここ、この変態はッッッ!!」

 

俺はゆっくり身体を起こしながら、反論する。

 

「そりゃあお前、あの位置からじゃ意識しなくても見えるって」

 

「断罪ね。断罪だわ。断罪するしかない」

 

そう言いきると、十姫は魔方陣を展開した。

 

俺は両手を前に突き出し、ブンブンと振る。

 

「いやいや!それはやりすぎだぜ!?おい!?」

 

しかし、十姫は問答無用で魔法を繰り出す。

 

「変態は、死n――――」

 

 

「止めろよ、風音」

 

魔法が放たれる直前、男子生徒が止めに入った。

 

「邪魔しないでよ!槙(まき)!」

 

筋肉質なこの男こそ、我らがクラス会長である槙誠一郎(せいいちろう)だ。

 

その強い…強すぎる眼力はほぼ全ての人類を畏怖させるのではないかと思わせる。

 

ぶっちゃけクラス会長に選ばれたのもその眼力があってこそだ。

 

そして今も、その眼力で十姫を圧倒していた。

 

「うっ………し、仕方ないわね!処刑はまた今度ね!」

 

いつの間に断罪から処刑になったんですか十姫さん。

 

そのうち死刑になりそうだな……。

 

「助かったぜ、せっさん」

 

俺は誠一郎のことを誠意をこめて「せっさん」と呼んでいる。

 

周りからは「馬鹿にしている」と評されているが、本人はまんざらでもないらしい。

 

「ああ。それにしても今日は集まりが悪いな。もうあと十分しかないぞ」

 

このクラスでは原則として遅刻や欠席は認められない。

 

軍からすれば貴重な戦力だからな……。

 

「って言ってもあと二人でしょ。そもそもそんなに人多くないんだし」

 

そう。

 

『SSクラス』には生徒が5人しかいない。

 

この人数こそ、俺達の特別さを物語っていた。

 

正直、そんなに特別な感じは無いんだけど。

 

そうこうしているうちに、最後の二人が教室に入ってくる。

 

「おくれましたーすんませーん」

 

「遅れちゃいました……ごめんなさいです」

 

吉良(きら)麻衣子(まいこ)と由芽乃(ゆめの)奈々(なな)。

 

二人は対照的な空気を見事な割合で調和させた謎の空間と共に俺達のほうに寄ってくる。

 

「吉良、由芽乃。お前達遅すぎだ。今度から気をつけろよ」

 

せっさんはその眼力で二人を威圧する。

 

「ひぅ……ごめんなさい」

 

奈々はおびえて固まってしまったが、麻衣子はその態度を崩さない。

 

「はいはい、次から気をつけますよっと」

 

そう言いながら、十姫の隣に座った。

 

「おはよう、麻衣子。朝から元気いいわね」

 

「お前は朝からローテンションすぎると思うけどなぁ。あたしみたいに朝から腹いっぱい食ってこりゃいいのに」

 

「でも、太らないんだよね……麻衣子ちゃん」

 

女子三人で会話を始めてしまった。

 

仕方が無いので俺はせっさんとお話を……。

 

「全員揃ったから、訓練所に行くぞ。ちゃんと着替えてくるように」

 

それだけ言い残して、せっさんは更衣室へと去ってしまった。

 

ちなみに、更衣室は全員に個室が渡されており、しかも狭くて二人も入らない。

 

つまり、ぼっち。

 

「……そうですか」

 

俺は一人惨めに、更衣室で着替えを始めた。

 

……ちょっと制服が濡れちまったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

俺達は『SSクラス』専用の訓練所に集合していた。

 

それぞれが専用の戦闘服に着替えていた。

 

「今日はまず最初に小テストを行う!出席番号順に並べ!」

 

教官はキビキビとした態度でそう告げた。

 

「朝から小テストなんて……今日は悪日ね」

 

朝に弱い十姫はそう言いながら肩を落とす。

 

しかし、逆に朝に強い麻衣子は張り切っていた。

 

「っしゃあ!ハイスコア更新のチャンス!」

 

いつもの小テストの内容は簡単だ。

 

教官と生徒にライフポイントが設定され、そのライフがなくなる前に削った教官のライフによって評価が決まる。

 

ちなみに『SSクラス』の目標ポイントは教官のライフの60%だ。

 

「よし、最初は風音!早く準備しろ!」

 

こうして、風音から始まった小テストだが。

 

結果だけ報告するとこうなる。

 

あ、評価は良い順にSS、S、A、B、Cだ。

 

十姫C

 

麻衣子A

 

せっさんS

 

奈々A

 

俺B

 

ちなみに、B以下は目標に届かなかったって意味。

 

「休憩を挟んだら、今日は自分の欠点を克服できるように各自練習しろ!以上!」

 

そういい残して、教官はどこかへ去ってしまった。

 

俺はその場に座り込む。

 

「はぁ。疲れた……」

 

カバンからスポーツドリンクを取り出し、喉に流し込む。

 

すると、横に麻衣子が座る。

 

「へへっ、それ少し貰うぜ」

 

俺からドリンクを強奪した麻衣子は、残りを全て自らの体内に吸収してしまった。

 

「おい!俺の命の水をどうしてくれるんだ!!」

 

「まぁまぁ。また買えば良いじゃんか」

 

ニカッと笑う麻衣子だったが、今の俺にはその笑顔が憎らしい。

 

「授業中だ。買いに行くなよ」

 

買いに行く前に、せっさんから釘を刺される。

 

仕方が無いから、少しでも体力を回復しようと横になる。

 

「ああ……床冷たい……」

 

俺が床の冷たさに心を奪われていると、頭にコツン、と何かが当たる感覚がした。

 

「あ、ごめんね……」

 

どうやら奈々の足のつま先に当たったらしい。

 

俺は寝たまま、首だけ奈々のほうに向く。

 

「いいっていいって。つか俺のせいだし」

 

ふと思った。

 

奈々の戦闘服がスパッツじゃなかったら俺、また死ぬ目にあってたかもな。

 

「そういや、奈々の武装って結構珍しいよな」

 

「え?そ、そうかな……」

 

少し照れたように頬を赤く染める奈々。

 

その光景を見て、十姫はぼそっと呟いた。

 

「授業中にナンパ?」

 

「するかっ!!」

 

「だが、確かに由芽乃の武装は色々と特殊だな」

 

せっさんは俺と十姫の言いあいを無視して奈々に話しかけていた。

 

「そ、そう……?」

 

「いいよなぁ。あたしは単純なのしか扱えなくて困ってるってのに」

 

「吉良。お前は単純なものさえ扱えて無いだろうに」

 

雑談で盛り上がる三人に対し、俺と十姫は不毛な争いを続けていた。

 

「お前なんか、Cランクだったくせに!」

 

「私のCランクはSSランクと同義なのよ!敗因は朝ごはんを食べなかったことだし!」

 

言ってる意味が分からん!

 

俺と十姫の言い合いは更に加速していく。

 

「小さい女だな!そのひらべったい胸に比例してるのか!?」

 

「あんたこそむきになって情けない男ね!彼女の一人だっていたことないんでしょ!?」

 

『なぁんだとぉ(ですってぇ!?』

 

口げんかは泥沼だった。

 

さすがに見かねたようにせっさんが声をかけようとしたその直前。

 

 

 

ビー!ビー!ビー!

 

聞きなれない警告音が校内全体に響き渡った。

 

次いで、状況を説明するアナウンスが放送される。

 

『敵性勢力確認!生徒は至急シェルターへ避難してください!生徒はシェルターへ避難してください!』

 

敵性勢力。

 

生徒達にとってもその言葉だけで説明は十分すぎた。

 

勿論、俺達にもだ。

 

せっさんは即座に指示を出す。

 

「言い争いはやめろ!落ち着いて、シェルターに逃げるんだ!」

 

その一言と眼力は嫌でも人を動かす。

 

俺と十姫は気がついたらせっさんらと一緒に避難していた。

 

落ち着いていられるのは、せっさんがいるからだ。

 

「くそっ!何だって今更日本に来たんだよあいつらは!」

 

麻衣子は舌打ちする。

 

麻衣子の後ろから奈々が声をかける。

 

「分からないよ……テレビじゃ、無差別に攻撃してるらしいし……」

 

元から消極的で声が小さい上に、走りながらで息も乱れていて奈々の言葉はすごく聞き取りづらかった。

 

しかし、せっさんは話をしている二人を叱りつける。

 

「無駄な体力を使うな!逃げることに専念しろ!」

 

せっさんの意識が僅かに麻衣子たちのほうに向く。

 

その時だった。

 

 

どぉぉ―――――――――――――――――――――――――――ん!!

 

 

爆音と強い衝撃が俺達を襲ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が移動していたのは緊急避難用通路で、他所より頑丈に作られている通路だった。

 

しかし、宇宙人にはそれすら通用せず、問答無用で大穴をあけて姿をあらわにする。

 

「う……わ…!」

 

宇宙人はおよそ侵略者とは予想がつかないほど、身近に感じられるような気がした。

 

まるで、きぐるみを来た人間のようだったからだ。

 

しかし、目の前の奴は間違いなく世界中に攻撃を仕掛けている侵略者で。

 

奴から発せられる殺気と異臭は普段の生活で感じられるものとはまるで別次元のもので。

 

今奴が構えているブツはやばいものだと肌で感じていた。

 

まるで身動きができない。

 

恐怖が体を蝕んでいるからだと思った。

 

「動けっ!動かせっ!」

 

せっさんの声が、僅かに俺の耳に届く。

 

とっさに身体を右へ動かす。

 

動くと同時に左肩に痛みを感じたが、俺は慣性の赴くままにばたりと転がった。

 

「ち、ちょっと!大丈夫!?」

 

十姫がかけよろうとする。

 

しかし、せっさんがそれを目で止める。

 

「そいつはもうダメだ」

 

そう言い聞かせているようだった。

 

……おい、ちょっと待てよ。

 

少し左肩かすっただけで見殺しかよ?せっさん。

 

赤い液体が少し流れてるだけだぜ?

 

ちょっと手を貸してくれるだけでいいんだ。ちょっとだけ。

 

しかし、せっさんは無慈悲にも手負いの俺に背を向けて走り去ろうとする。

 

麻衣子と、奈々と、十姫を連れて。

 

そして、振り返ると目の前にはあの侵略者が立っていた。

 

謎の液体を、口らしき箇所から垂らしながら、徐々に近づいてくる。

 

「………冗談じゃ、ねぇよ」

 

ぼそっと呟く。

 

「ふざけんじゃ、ねぇよ……」

 

力の入らない左腕に代わり、右腕に力がこもる。

 

「んなところで、死んでるわけにはいかねぇんだよぉぉぉ!!!」

 

懇親の力で、化け物を殴りつける。

 

しかし、構えもなく、痛みで憔悴して、重心もまったく動いていない一撃が通じるわけがなかった。

 

粘液のようなものに触れたその拳は、激しい痛みに襲われ、すぐに出した手を引っ込める。

 

「ちく……しょう…!」

 

焼けたように痛い腕をかばいながら、涙目で侵略者をにらみつける。

 

「ちく…………しょう…………!!」

 

声も震える。

 

察していた。もう間もなく、俺は殺されると。

 

それでも、覚悟は決められなかった。

 

「ちく………………しょう……!」

 

侵略者が腕を振りかぶったその時。

 

「ぅおおおおおおっっっっらっっっっっっっっっっしゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

聞き覚えのある甲高い掛け声と共に、一人の少女が現れた。

 

その少女は相当の助走をしたであろう勢いと共に繰り出した蹴りを、侵略者にめがけてぶつけていた。

 

おそらく少女の出せる最高の威力の蹴りを受けた侵略者はその場に倒れこむ。

 

「麻衣………子?」

 

俺はかすかな声で、その少女の名を呼んだ。

 

「男が泣くもんじゃないぞ!ほら、立てるか!?」

 

麻衣子は俺に手を差し伸べていた。

 

俺はその差し伸べられた手を掴んだ。

 

立ち上がるとき、ふと侵略者を蹴った足を見る。

 

靴は溶け、露出している指からは赤い液体がにじみ、爪までも溶けている。

 

「な、何見てるんだよ!ほら、走るぞ!」

 

誤魔化そうとするその瞳には涙が浮かんでいる。

 

そうとう痛かったはずなのに。

 

どうして麻衣子はこんなにも平然としていられるんだ…?

 

まだ立てない侵略者を前に、俺と麻衣子は全速力でその場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊急避難用シェルター内で。

 

俺と麻衣子は奈々から手当てを受けていた。

 

回復魔法が一番得意なのは奈々だからだ。

 

「まったく、無茶をしおって……」

 

せっさん…いや誠一郎は麻衣子を睨みつける。

 

「いいじゃんか、結局無事だったんだからさ」

 

そう言う麻衣子の足には包帯。

 

回復魔法だけでは間に合わず、応急手当として処置を施されたのだ。

 

俺はというと、左腕に支えをつけられ、右腕には包帯。

 

ダメージとしては俺のほうがよっぽど大きかったらしい。

 

「ほ、ホントだよ……それに、ほら。結構逃げれた人たちもいるみたいだよ」

 

周囲を見渡すと、俺みたいに怪我をしている人から無傷で逃げられた人もいた。

 

「ホント、私達って運がいいみたいね。こうして全員生き残れたんだから」

 

言っていることは良いことだが、十姫は誠一郎を睨みつけていた。

 

誠一郎はこの空気で、とんでもないことを言ってのけた。

 

「教本にもあっただろう。『たとえ友でも、生き残る為なら切り捨てろ。自己防衛が最優先だ』と」

 

どんっ!

 

上体だけ起こしていた誠一郎を、十姫は押し倒す。

 

「ふざけないでよッッ!!」

 

十姫は目を見開き、誠一郎の胸ぐらを掴む。

 

「あんた……あんたっ!仲間を何だと思ってっ……!」

 

これほどまでに怒りをあらわにした十姫を、俺は見たことがなかった。

 

周りの人々も、注目を十姫に移す。

 

が、誠一郎は冷静だ。

 

掴まれている腕の手首を返し、そのまま背負い投げで十姫を叩きつける。

 

「がふっ……!」

 

受け身をとれなかった十姫は胸を掴んでもがく。

 

「はっ……はっ……はっ……はっ……」

 

大きく息をする十姫を前に、誠一郎は立っていた。

 

そして、口を開く。

 

「十姫は錯乱したか……仕方ない。吉良、由芽乃。ついて来い。お前達しかいないんだ」

 

そう言い、治癒が完了した麻衣子と奈々を連れてどこかへ去ろうとする誠一郎。

 

俺はそいつに向かって、一つ質問を投げかけた。

 

「どこに行くんだ?」

 

誠一郎はまるで汚物を見るかのような目で俺を見下し、吐き出すように行き場所を告げた。

 

「馬鹿のいない、安全地帯だよ」

 

誠一郎は麻衣子と奈々も一緒に消えた。

 

誠一郎の姿が見えなくなったのを確認すると、俺は十姫に駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

 

そう聞くと、十姫は顔を歪めて答えた。

 

「あんた……よりは、ね」

 

大きく息をしながらでも、その表情には少しの安堵が見て取れた。

 

十姫が横たわるその隣に座り込み、膝を差し出す。

 

「床じゃ痛いだろ。これ、使えよ」

 

十姫は横目で俺を見ると、頭を俺のほうに向ける。

 

「ん」

 

持ち上げろ、と言う意味だと察し、頭を持ち上げると、それを膝の上に落とす。

 

落とすと言っても、ゆっくりだけど。

 

「もうちょっと丁寧に扱いなさい。状況が状況でも、女の子の頭よ?」

 

「不器用な俺にはこれが限界だ」

 

十姫は体勢を変え、俺を正面に捉えるように横になった。

 

「ねぇ、これから私達どうなるのかしら」

 

「そうだな……いきなり実戦に放り出されるかもな」

 

いつでも戦う覚悟はできている。

 

そう思っていたころの自分は遠い彼方へと行ってしまった。

 

今の俺を支配しているのは、侵略者に怯える自分という恐怖する感情だ。

 

その怖ろしい姿。

 

異臭。

 

溶解性の粘液。

 

かすっただけでその機能を停止させてしまう武器。

 

畏怖の感情を抱かせるには十分な素材が揃っていた。

 

「駄目だな、俺」

 

そんな自分が情けなかった。

 

できることなら、今すぐ逃げたい。

 

けど、恐怖と同時に持ち合わせている正義感がそれを阻害している。

 

だから、動けない。

 

何もできない。

 

先に進まない。

 

「そんなこと、無いわよ」

 

いつの間にか身体を起こしていた十姫が俺を見据えてそう言った。

 

「え?」

 

俺は予想外の言葉に、思わず声が漏れた。

 

「あんたが駄目なんて……そんなこと、あるわけない」

 

十姫は穏やかな表情で、その先の言葉を繋ぐ。

 

「最初はこれでいいと思うわ。誰だって怖い。私だって」

 

俺は十姫を見た。

 

十姫を見て、その次の言葉を待った。

 

「でも、それを最後まで引きずったら駄目。どこかで、変わらなきゃいけないのよ。でも、今はその時じゃない」

 

最後に、十姫はニコリと笑った。

 

「らしくなかったわね。でも、これで少しは気が晴れた?」

 

「………ああ」

 

まだ、侵略者への恐怖は消えたわけじゃない。

 

でも、さっきより気分は確かに晴れた。

 

十姫のおかげで。

 

「助けられちゃったな、お前に」

 

「膝枕の謝礼と思いなさい。借りっぱなしは嫌なのよ」

 

シェルターの中で、危機的状況だというのに。

 

俺と十姫は互いに笑みをその顔に浮かべていた。

 

その間に割り込んでくる、聞き覚えのある声。

 

「お前ら!無事だったか!」

 

教官だった。

 

俺は立ち上がり、習ったとおり報告をする。

 

「二人無事で、あと三人はどっかいきました」

 

「そんな報告の仕方を教えた覚えは無いぞ!!」

 

怒鳴りつけるものの、殴りはしなかった。

 

「槙、吉良、由芽乃は行方不明か。仕方ない、一応お前達二人には渡しておこう」

 

そう言って教官は担いでいる荷を降ろした。

 

中には多数の武器。

 

多分、俺達を探してた理由はこれだろうな……。

 

教官はその中から狙撃銃を取り出すと十姫に手渡す。

 

「ご所望の狙撃銃だ。反動が大きいから取り扱いは気をつけるように」

 

長身の銃。

 

十姫の戦い方に合った武器だった。

 

「これって、私達にも戦えって事かしら?」

 

武器を受け取った十姫は怪訝そうに尋ねる。

 

教官は厳しいまなざしと共に、こう告げた。

 

「このために、貴様らに戦い方を教えていたんだ」

 

直接的には答えになっていないが、間接的に戦え、と言っているのが俺にも分かる。

 

教官は狙撃銃のほかに拳銃、サバイバルナイフを渡した。

 

そして、俺の前にも武器が差し出される。

 

「可変式で近、遠距離対応の銃剣だ。重いから武器に振り回されんようにな」

 

俺が貰った武器はこれだけだった。

 

大型マシンガンと大剣を兼ね揃えた武器。

 

確かに言うだけあってかなり重い。

 

「お……重いですね」

 

「俺からできる餞別はそれだけだ!後は己の鍛え上げた精神と肉体で生き延びろ!」

 

俺の言葉無視ですか。そうですか。

 

「教官はどこへ行くのよ?」

 

十姫は狙撃銃のスコープを覗きながら問う。

 

教官は荷物を担ぎなおし、俺たちに背を向けて告げた。

 

「どこかに行ってしまった馬鹿な生徒共の説教だ」

 

教官は歩き出した。

 

誠一郎に武器を渡し、激励する為に。

 

「教官!」

 

俺はある一言を教官に告げるために、その歩みを止めさせる。

 

「今まで――――――――――――――――――――――――――――――――!」

 

その先の言葉は繋げることができなかった。

 

 

 

俺と教官の間に瓦礫が降ってきたからだ。

 

 

 

 

「ちょっ!?」

 

十姫は反応できず、その場に立ち尽くす。

 

俺はとっさに、教官へと手を伸ばした。

 

まだだ。まだ待ってくれ。

 

俺はまだ、教官に何もしてやれてない!

 

せめて、言葉だけでも繋げたい。

 

しかし、俺が口を動かす前に教官は俺の前から消えた。

 

瓦礫の向こう側へと、去ってしまった。

 

「教官!」

 

叫んだが、声が返ってこない。

 

代わりにとんできたのは十姫の声だった。

 

「上!あいつがいるわ!」

 

その声に従って上を見ると、そこにはあいつがいた。

 

異臭と共に、侵略者が上からふってくる。

 

どうやって嗅ぎつけたのかは分からないが、そいつは今間違いなく俺の視線の先にいた。

 

怖い。

 

化け物じみたその姿が、とてつもなく怖い。

 

「逃げるわよ!どうしようもないわ!」

 

そう言って十姫は非常用扉を開けようとした。

 

が、それはもう一匹の侵略者によって阻まれる。

 

「きゃっ!?」

 

その扉が壊され、もう一匹の侵略者が姿を現す。

 

武器も、臭いも、姿も、全て同じの侵略者が。

 

俺と十姫を挟むようにしてそいつらは立っていた。

 

退路は断たれた。

 

この窮地を脱する方法は一つしか思い浮かばなかった。

 

「十姫……怖いか?」

 

俺はその手の武器を構える。

 

すると十姫もその手の武器を構えた。

 

「やるしかない……わね」

 

そして、互いの魔方陣を展開する。

 

戦闘態勢、だった。

 

「一匹ずつやるわよ。私達じゃそれでも勝てるか分からないけど」

 

俺は必死に恐怖を抑えつける。

 

それでも、心音はすさまじい速度でドクンドクンと耳に響く。

 

死ぬかもしれない。

 

でも、それでもやるしかない。

 

「ああ、分かった」

 

俺は振り返って十姫と正対している侵略者に飛び込んだ。




SF要素・・・どこだ?
ああ、可変式の武器か。あれはSF臭がするね、うん。
ホント、ごめんなさい。

普通な流れにしようと思ったらバトル前で九千文字越えてたので、いい引きで終わられてしまいました【笑】

次回のバトルからはSF要素をふんだんに盛り込んでいく予定ですのでご安心を!
いや、SFよりも魔法要素のほうが多くなるかもしれない…
欲張って二つも取り入れるんじゃなかったね!反省してるよ!
うん、二話目から本気出す。

でわ読者の皆様!
次回の武装魔術戦記でまた会いましょう!


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トランスフォーゼ

バトルシーンktkr

そして新キャラ登場

物語はいよいよ動き出す・・・か?


「はあああああっっ!」

 

俺はその武器を剣モードにし、侵略者に向かって振り下ろす。

 

が、挙動が大げさすぎたせいか、その一撃は空を切るだけに終わった。

 

そして、目の前には侵略者。

 

「危ないっ!」

 

危機を感じたその瞬間に、十姫の一撃が侵略者の腹に当たる。

 

「っ!?」

 

侵略者はのけぞり、距離が開ける。

 

「っっ!」

 

俺はその隙に立ち上がり、再び剣を構える。

 

「これで……!」

 

構えた剣を今度は横薙ぎに振り回したが、それも避けられる。

 

更に後ろからのもう一匹の侵略者の攻撃が始まる。

 

手に持った武器を乱射していた。

 

「くっ……」

 

その武器に翻弄されている俺の後ろで十姫が魔法壁を張った。

 

攻撃はそれに阻まれるが、すぐに壁は破壊されてしまった。

 

「きゃあっ!」

 

尻餅をつく十姫に、隙ありといわんばかりに侵略者がその武器を振るう。

 

俺は十姫がしたのと同じように魔法壁を作った。

 

どうせそんなにもたないんだろっ!

 

武器を片手に、十姫をもう片手に背負う。

 

「ちょっ!ちょっと!」

 

背負ったまま、非常用扉の前に居座っている侵略者に向かって突っ込む。

 

「銃モードで…!」

 

俺はそいつにマシンガンを乱れ撃った。

 

これにはさすがの侵略者もその場を離れざるをえなかったのか、非常用扉への道が開く。

 

「後ろっ!」

 

十姫が叫ぶと同時に、今度は俺も反応できた。

 

十姫を背負ったまま右に飛んだ。

 

今度は、どこにもかすっていなかった。

 

二匹の侵略者から距離を取れたところで十姫を下ろす。

 

「あの非常用扉は一直線よ。後ろから撃たれてお終いになるわ」

 

十姫は狙撃銃に弾を装填する。

 

「1発ごとにリロードがいるのか?」

 

「だからひるんだんでしょ、さっきの奴」

 

そんなに高火力の奴撃ち込んでよろけるだけかよ。

 

俺が額に手をやると、十姫は自身の周辺に魔方陣をいくつも展開し始めた。

 

「ちょっと時間が必要ね。あいつらと距離をとるわ」

 

俺は首を立てに振り、大型マシンガンから発射される弾丸を二箇所にばら撒く。

 

侵略者へのせめてもの牽制だ。

 

「…………よし、ターゲットを二つ『ロックオン』」

 

十姫が照準をつけたことを確認すると、俺は武装を引っ込め、弾を補充する。

 

十姫は空いている手のひらを動かし、術を宣言する。

 

 

「我流陰陽術壱式、『葬連砲火《そうれんほうか》』ッ!」

 

 

宣言と同時に、周囲に浮遊している魔方陣から一斉に魔法弾が飛び出す。

 

魔法弾の種類は様々で、速度が速いが一直線に飛んで行くもの、動きは鈍いがロックオンしたものを自動追尾するものなど、色々なものが周囲を飛び交う。

 

それらは幾重にも混ざって幻想のようにも見える。

 

「っ!」

 

侵略者は魔法弾に被弾しつつも、攻撃の手を緩め回避に専念する。

 

が、被弾している分ぎこちが悪くなる。

 

俺は再びマシンガンモードで侵略者に弾丸を放った。

 

十姫も狙撃銃の照準を合わせ、痛烈な一撃をその武器から侵略者に向けて発射する。

 

「!」

 

これほどの攻撃なら、いくら何でも倒せるだろ……。

 

この油断が、俺と十姫に危機の訪れを告げた。

 

俺が弾丸を撃ち尽くしリロードしているその隙を狙われた。

 

侵略者が魔法弾の隙間を掻い潜って突っ込んできたのだ。

 

「やばっ………」

 

侵略者の爪らしき鋭利なものが伸びる。

 

殺される。

 

そう覚悟して目を閉じた。

 

しかし、先に反応したのは痛覚ではなく聴覚だった。

 

「あうっ………!」

 

聞き覚えのある声。

 

それと引き換えに、俺に痛みは訪れなかった。

 

嫌な予感がして目を開けると、そこには俺の予想した、最悪の状況が視界一杯に広がった。

 

「だ……だいじょう…ぶ………?」

 

そう精一杯に言う口元から溢れ出す赤い液体。

 

それは、俺がついほんのさっきまで方から流していたものと同じものだ。

 

忌み嫌われるそれは、目の前の少女の腹部からも流れている。それもかなり多めに。

 

「え……は…………?」

 

俺はその光景を否定した。

 

認めたくなかった。

 

それを見るくらいなら、俺がその目に遭ってもよかったのに。

 

「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

俺は叫びながら、大剣モードでその忌まわしきものと侵略者を繋いでいるものを斬り落とす。

 

「――――――――――――――――っ!」

 

その接続部から気味の悪い液体が飛び出し顔にかかるが、そんなことは気にしていられなかった。

 

「てめぇぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」

 

俺は侵略者の腹に剣を突き刺す。

 

「ッッッ!?」

 

しかし、それだけでは侵略者の動きは止まらない。

 

侵略者が俺を掴もうとするが、その手が届く前に剣を持ったまま横に回転する。

 

剣が抜けると同時に、腹を切り抜ける。

 

これにはさすがに効いたのか、侵略者の手が空振りする。

 

その隙に、俺は銃口を侵略者の顔らしい部分に当てる。

 

「これでぇぇぇ、くたばれえええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

俺は引き金を引き、至近距離で銃弾を叩き込む。

 

痙攣しているように動いていた侵略者だったが、そうもしないうちに動きが完全に停止する。

 

俺はすぐさま十姫を担いで、すぐ近くの瓦礫に隠れる。

 

この間にもう一匹の侵略者に攻撃されなかったのはまさに奇跡だ。

 

「おい、十姫!しっかりしろ!」

 

言いながらできそこないの治癒魔法を使う。

 

十姫は荒い息遣いで、貫かれている穴からは液体が流れ続けている。

 

応急処置だけでいつまで持つか分からない。

 

「あ………あんた、さ」

 

「黙ってろ!集中できない!」

 

傷は一向に回復しない。

 

むしろ状況は悪くなる一方に思えた。

 

十姫は苦しそうに口を動かし、言葉を発する。

 

「や……やれば、できる……じゃない」

 

「もういい!黙って俺に治癒させてくれ!」

 

額から汗を流しながら、習った治癒魔法を一生懸命に奮う。

 

しかし、成果はまるで出ていなかった。

 

「お……お願いが…あるんだけど………」

 

俺は十姫の言葉を無視した。

 

痛々しくて、苦しくて、泣きそうになるから、聞けなかった。

 

「も……もし、私が、た……助かって…さ」

 

がふっ。

 

十姫は口からも液体を吐き出した。

 

俺の顔とか服とかにそれは散らばるが、それらは既に違う液体でびしょ濡れだった。

 

「ここを……切り抜けたら……その時は………」

 

「分かったよ!」

 

俺はその言葉を遮った。

 

「その時は、お前の言うこと何でも聞いてやる!だから生きろ!絶対に生きろ!!」

 

その言葉が通じたのか、はたまた何か違う力が作用したのかは分からない。

 

けれど、十姫の身体から流れ出す大切な液体の流出は止まった。

 

「それじゃ………頑張って、ね」

 

そう言うと、十姫は静かに目を閉じた。

 

「ッ!?」

 

俺は急いで息の確認をする。

 

「……すぅ……すぅ」

 

定期的に行われる呼吸。

 

とりあえずは大丈夫らしい。

 

「とはいえ、ゆっくりもしてられないよな」

 

俺は残った戦力を確認する。

 

マガジン残りなし。

 

可変武器内の残弾数ゼロ。

 

「……初実戦、か」

 

俺はとある覚悟をして、十姫の頬に優しく触れる。

 

「じゃ、また後でな」

 

俺は瓦礫の山から飛び出る。

 

瞬間に、侵略者からの攻撃が始まる。

 

狙われてたってことか。

 

俺は転がりながらその攻撃を避け、武器を持つ右手に魔力を集中させる。

 

「頼むぜ、俺の創造力!」

 

 

「『トランスフォーゼ』ッ!」

 

 

十姫の得意魔法が『我流陰陽術』なら、俺は『変化魔術』が得意だ。

 

右手に触れているものを、形状が類似したものに変化させる魔法。

 

俺はその手にある武器の一部を、記憶の中にある似た形状の武器へと変化させた。

 

「覚悟はできてる……行くぜぇぇっ!」

 

武器を銃モードにし、引き金を引きながら侵略者に向かって突っ込んだ。

 

銃口から放たれるのはビーム。

 

俺は大型マシンガンからビームマシンガンへと、武器を変化させた。

 

実弾とビームの違いは歴然としている。

 

まず、ビーム兵器を使うにはそれに伴う魔力が必要になる。

 

己の魔力をビームに変換して、それを放つのだから。

 

より多くの魔力をビームに変換すれば、相応の威力、弾数が望めるがその分、負担が大きい。

 

ただし、これは兵器型の才能を持つ者だけでなく魔法型の才能を持つ者にも扱えるということで魔法を扱う者でも使ってる奴は居る。

 

実弾ならば己の負担がなく、常に安定した弾幕を形成できる分、マガジンを常備する必要があり、なおかつ威力もビームほどのものは望めない。

 

どちらを選ぶかは人それぞれだが、SSクラスの俺たちはその二つを選択できる。

 

ビームマシンガンを受けながらも、侵略者はその武器を撃ってくる。

 

むやみやたらに撃つ俺とは違って正確な狙いをつけている分、あいつの命中率は高い。

 

頬、横腹、腕、足。

 

さまざまな個所に攻撃がかすり、そこから大切な赤い液体が漏れだす。

 

と同時に、激しい痛みが全身を襲う。

 

「っけど!」

 

俺は涙を溜めながらも侵略者に向かう足を止めなかった。

 

ただ、右へ左へと軌道を変えながらマシンガンを連射し、侵略者に飛び込む。

 

「ッ!」

 

その瞬間を、侵略者に捉えられた。

 

俺の腹に向けて、敵の攻撃が撃ちこまれた。

 

「ぐっ……!」

 

瞬時に魔法壁を形成するが、中途半端な出来のせいで一撃でそれは壊される。

 

侵略者は、すぐに次弾を撃ちこもうとしていた。

 

「させるかああああああああああああああああああああ!!」

 

幸いにして、俺は剣の届く範囲まで奴に接近できていた。

 

武器を剣モードにし、その刃を侵略者の持つ武器を斬りつけ、スクラップにする。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

そのまま剣を奴の腹に突き刺そうとしたその時。

 

侵略者の腕から、爪のようなものが急に伸びた。

 

「何ッ!?」

 

その伸びた爪は俺の右太ももを貫く。

 

加えて体中を包んでいる、溶解性の体液が貫いた太ももの周りを溶かす。

 

「ううああああああああああぅぅぅ………」

 

勢いは殺され、その場に留まってしまう。

 

痛い。怖い。逃げたい。

 

戦意を失いつつあった。

 

やっぱ、俺には無理なのか……?

 

そんな思いが脳裏によぎる。

 

目の前に迫る、侵略者。

 

その頭から滴るのは体液ではなかった。

 

ついさっき俺が見た、気味の悪い液体。

 

数秒遅れで、侵略者がもがきはじめる。

 

「――――――――――――――――――――――――!」

 

言葉にならない悲鳴を上げながら、その頭を抱える。

 

俺は急いで後ろを振り返る。

 

そこには、腹を抱えながら狙撃銃を構えている少女がいた。

 

ついさっき目を閉じたはずの少女が。

 

「十姫ッ!?」

 

少女の名を呼ぶが、その少女はうんともすんとも言わない。

 

それだけの気力も無いのだと思った。

 

「無茶しやがって……!」

 

俺は無理やり奴の爪を引き抜き、肩から斜めに剣を振り下ろした。

 

奴には切り傷が残ったが、まだ倒れていなかった。

 

「まだまだあああああ!!!」

 

左から右へ一閃。

 

切り上げるようにして横腹から肩へ。

 

振り上げた剣を頭から股まで振り下ろし。

 

これだけ斬りつけ、ようやく侵略者の動きが鈍る。

 

「とどめだッ!」

 

右から左へ横薙ぎに振ったその剣は、侵略者の爪によって阻まれた。

 

直感で察した。

 

これで押し負けたら、死ぬ。

 

両足に力を込め、踏ん張りを入れる。

 

が、ここでさっきの太ももが更に痛み出す。

 

「ぐっ……うううっっ!!」

 

このままでは押し負ける。

 

そう思った俺はとある手段に出た。

 

「『トランスフォーゼ』ッッ!」

 

俺は再び銃の部分を変化させた。

 

ビームマシンガンから、ビームミサイルに。

 

「いっけええええッ!!」

 

つばぜり合いをしながら、銃モードに切り替えミサイルを放った。

 

一度は奴を通り抜けていったミサイルだが、その軌道を変えて奴の背中に直撃する。

 

「ッッ!?」

 

まさかの不意討ちに力が抜ける侵略者に対し、俺は剣を切り抜けるようにして腹から背中までを両断する。

 

侵略者が真っ二つになり、俺はその場に立ち尽くす。

 

今の俺を立たせているのは気力以外の何物でもない。

 

こいつらを倒す以外にもう一つ、やらなきゃならないことがある。

 

武器を松葉杖のように使い、倒れこんでいる少女の元へ寄った。

 

「十姫……大丈夫か?」

 

目を瞑っている少女に向けて、そんな言葉を投げかける。

 

もうしかしたら、もう声に反応することもできないのかもしれない。

 

そう思って、ガクガクの体にその華奢なからだを乗せる。

 

「っ………重いよ、お前」

 

果たして、十姫が重いのか俺の力が足りないのか。

 

それはそれすらも思考できないくらいに意識が混濁していた。

 

目的地は一つ。

 

俺はそこに向かって吸い寄せられるようにひらすた歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ここは天国?

 

うっすらとした意識の中、私はふとそう感じた。

 

まだ腹に残る激しい痛み。

 

それが私の体の自由を奪う。

 

いや、体温もか。

 

それでも、ここを地獄だとは感じなかった。

 

死にかけの状態でも、伝わる誰かの温度。

 

それはとてもとても幸せな温度で。

 

ほのかに薫る優しさは私を溶かしてしまいそうで。

 

目の前に霞んで見えるその横顔には、必死そうな中に少し、彼の面影があって。

 

たとえ体が動かなくても。

 

眠るようにして、私が私でなくなったとしても。

 

このひと時は、絶対に忘れない。

 

私は、誰かを不幸にしてしまうかもしれない。

 

私のせいで、誰かを誰かでいられなくなってしまうかもしれない。

 

でもね、大丈夫だから。

 

私はね、絶対に、この温度を忘れない。

 

だから私の温度も、忘れないように覚えててね。

 

けど、自分は自分でいて。

 

………やっぱりわがままだね、私って。

 

勝手に押し付けるだけ押し付けるなんて、さ。

 

ホントは私からも何かしてあげたいんだけど……ごめん、ちょっと時間がないみたい。

 

私にも予定があるから……さ。

 

その前に、ちょっとだけ眠っておきたいんだ。

 

それくらい、いいでしょ?

 

あ……そういえば、何かお願い、聞いてくれるんだったよね。

 

食べきれないほどのイチゴショートケーキとかもいいんだけど……。

 

やっぱり、目が覚めたら……お目覚めのキス、が欲しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……目を覚ませよ…なあ!!」

 

校内の保健室。

 

俺はそこで本格的な手当てをしていた。

 

本格的と言っても、資材が限られている以上、大病院のような手術はできないが。

 

少なくとも、傷の手当と輸血は大方終わった。

 

ちゃんと定期的な呼吸もしている。

 

体温も正常だ。

 

それでも、十姫は目を覚まさなかった。

 

疲れて寝ているだけなんだろうが、それでも目を開けないのは不安だった。

 

「俺を不安にさせるなよ……知ってのとおり、俺ってなかり小心者なんだぜ?」

 

死んだと思うじゃないか。怖がらせないでくれよ。

 

自分の手当なぞ、している暇はない。

 

ただ延々と、その目が開くのを待っていた。

 

周囲の通路には侵入者用のセンサーを設置したから、誰が来てもすぐに分かる。

 

今は心置きなくして、十姫のことを診ていられる。

 

「何でも言うこと聞いてやるって言っただろ?ほら、何が欲しいんだ?」

 

俺は瞳に水分をためながら、十姫に尋ねた。

 

情けなく、震えるような声で。

 

「パフェか?ケーキか?……あんまり高いものは買ってやれないけど、安いのなら買ってやるよ……だからッ」

 

溜まっていた水分が、十姫の頬にたれ始める。

 

限界だった。

 

「目を覚ませよ!俺を一人にするなよ!!勝手に死ぬなよ!!!俺と………俺とッ…………」

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

鳴り響く甲高い音に、その先の言葉は、先送りされることになった。

 

設置したセンサーが反応したらしい。

 

「ッ………!」

 

俺は自分に痛み止めの薬を打ち込む。

 

弱い麻酔のようなもので、痛覚を一定時間鈍らせることができる。

 

太ももを貫かれたものの、その機能はまだ死んでいない。

 

痛みさえなければ、まだ戦える体だった。

 

ただし、その疲労は確実に蓄積している。

 

さっきまでの動きはできないだろう。

 

「それでも………」

 

立てかけてある武器を手に取り、保健室の扉を開く。

 

「やらなきゃならないだろうが………」

 

反応したセンサーは保健室から見て北側の通路。

 

俺は銃を構えてゆっくり近づいていく。

 

いつでも撃てるように、引き金にかける指にも力を込める。

 

そのせいもあってか、すぐさま次の行動に移すことができた。

 

一瞬、曲がり角の先に影が見えた。

 

「そこかッッ!」

 

俺はビームマシンガンをその陰に向かって撃った。

 

が、そこから発せられた声は化け物ののものではなかった。

 

「なんや!?そこに誰かいるんか!?」

 

人間の声に驚いて、俺は引き金から指を離す。

 

関西弁?

 

曲がり角から姿を現したのは、化け物ではなく少女だった。

 

麻衣子と同じくらいの短い髪に、前髪をヘアピンで止めた、おしゃれに少し気を遣ってるように思わせる風貌。

 

年は………同じくらいか?

 

そして両手には武器。

 

多分、ビームランチャーとサブマシンガンだと思う。

 

「そこの君ー!」

 

警戒心も何もなく、少女は俺に駆け寄る。

 

「君以外に生存者いる?ウチは歩倉未亜(ほくらみあ)、君らを保護しに来たんよ!」

 

未亜と名乗った少女はこの場にふさわしくない輝かんばかりの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんや無茶するなぁ君ら」

 

「………すいません」

 

未亜はこれまでの十姫と俺の経緯を聞いて呆れていた。

 

「でも、あいつらとまともに戦ってよー生きてられたなぁ。感心するわ」

 

最後に包帯を巻いて、自分の処置は終わった。

 

ふと横目で、ベッドに横たわっている十姫を見る。

 

………まだ目覚めないか。

 

その視線に気が付いたのか、未亜は俺を安心させるように話しかける。

 

「大丈夫やって。息はあるし傷も手当されとるやんか。欲を言えば、治癒魔法とかあれば完璧なんやけどなぁ」

 

治癒魔法は緊急時の応急手当のほか、こういう場合の傷の治りをよくする効果もある。

 

残念ながら、未亜も俺も治癒魔法は上手く扱えない。

 

俺が使えるのは変化魔法と攻撃・防御魔法くらいだからな……。

 

こういうのが得意なのは奈々だけど………。

 

「どうします?しばらくここで救援を待ちますか?」

 

俺はとりあえず、今後のことを聞いた。

 

「私以外にもここに来てる人たちいるし、それもええんやけど……」

 

未亜はそう言いながら保健室の扉を開けた。

 

「ウチが君らを守りながら外に出るっていうのもあるよ?」

 

ニコっと笑う未亜。

 

だが、俺は首を振った。

 

「ダメですよ!あいつらと戦ったことあるんですか!?」

 

戦ったからこそ分かる恐怖。

 

それを知らない人に、それを感じさせるのは自分が許せなかった。

 

「何ゆーてるん?」

 

しかし、未亜は退かなかった。

 

「困った人を助けられへんで、この力を何に使うんやって話や」

 

未亜も俺たちと同じく、兵器と魔法の才に恵まれた人間だった。

 

多分俺たちと同じ目にあったんだろう。だから、今度はその力を役立てたいと思っているのかもしれない。

 

「でも………」

 

それでも戦わせたくなかった俺はもう一度説得を試みる。

 

が、その先の言葉は口に出なかった。

 

「君は優しいなぁ」

 

未亜が、途切れさせてしまったからだ。

 

「でもな、何でもかんでも一人で抱えてたらそれこそまいるよ」

 

未亜は十姫を見ながら話を続ける。

 

「それでも無茶を続けてたら、あの子も次は助からないかもしれんし」

 

未亜は次に、俺を見据えた。

 

あいつみたいに怖い顔じゃなく、優しく。

 

「あんたと、あの子とウチと。三人で生きて帰ろう?大丈夫やって、怪物はウチが何とかしたる」

 

その言葉に、嘘偽りはないように感じた。

 

むしろ、安堵さえ覚えた。

 

俺は寝ている十姫を担ぎ、立ち上がる。

 

「それじゃ、お願いします。未亜さん」

 

「まかせとき!ほな、行くよ!」

 

こうして、学校の脱出劇の幕が上がった。




お待たせしました第二話!

バトルシーンの描写はいかがだったでしょうか?

分からないとこは妄想で補完してください(笑)

あと新キャラの方言ですが・・・

私自身がそっちの出身じゃないのでよくわからないままにやっちゃいました。

「こんなの言わねえよ!」

とお怒りの方は是非連絡ください。直します。

さてさて、今回初めて出てきたビーム武器。

主人公の能力を生かすにはこんな感じでいいかな~と思って作りました。

魔法サイドも使える武器という名目ですが、兵器サイドも使えるという聞いた限りでは汎用性の高い武器。

まあ、デメリットはありますが・・・ビームってロマンだよね。

あとロマンと言えば・・・?(ここ伏線予定)

つもる話もありますが、今回はこのあたりで。

謝辞。(前回長すぎたので今回から簡略化・・・早いって?)

今回も私の小説を手に取っていただき、まことにありがとうございます。

初見の方はいかがだったでしょうか?好みであれば、是非今後ともよろしくお願いします。

何よりも読んでいただけることだけが私の励みになっております。ほかには・・・ゲームとかうすいほn(ry

次回もどれほどの時がたってから投稿するか分かりませんが、気長に待ってくださるとうれしいです。

それでは次回、またお会いしましょう。

さよなら~!


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禍断と雅

遅れましてどうもすみません

その分だけちょいと長めのお話になってます。

ま、まぁ今回もバトルパートほとんどないんですけどね……。


「大丈夫か?幾久世(いくせ)君」

 

「今のところは……なんとか」

 

保健室から出て数分。

 

出口を探して走り回っている俺と未亜さんはこれまでで3度の侵略者との戦闘を経た。

 

俺は十姫を抱えているから戦えず、下がって見ていただけだけど、本当に未亜さんは強かった。

 

攻撃も防御も回避も、俺たちの比じゃない。

 

常に一方的な戦いだった。

 

そしてこれまでの戦闘を見てきて分かったことがいくつかある。

 

まず、敵のタイプが3種類あるということ。

 

ひとつは一撃の威力が高いビーム武装を装備した、いわゆる『バスタータイプ』。

 

俺と十姫が初めて戦った相手だ。

 

そしてビーム剣を装備した『ソードタイプ』。

 

最後は強力な盾を構えた『シールドタイプ』だ。

 

ほかにもあるかも分からないが、判明してるのはこれだけだ。

 

他に、彼らの体に内蔵された脅威もいくつか判明した。

 

まず、最も恐れるべき『溶解性の体液』、次に『伸縮自在の爪』。

 

これがある以上、不用意に接近戦はできない。

 

そして、『自爆機能』。

 

これは不発に終わったが、未亜さん曰く「自爆する」とのこと。

 

爆発範囲は分からないが、これも相当の脅威だ。

 

今のところでわかってるのはこれだけ。

 

対策は、どのタイプを相手にしても接近戦を挑んではいけないということだけだ。

 

「てか、大丈夫か?痛み止めだけでキツない?」

 

これだけ過酷な状況下でも、未亜さんは俺と十姫の心配をしてくれていた。

 

本当に、この人に会えてよかった………。

 

「強力なやつなので、まだ大丈夫です。それより、マシンガンの弾数、大丈夫ですか?」

 

そう聞くと、未亜さんはマガジンを探す。

 

「およ、マガジンきれとる。気づかんうちに結構ばらまいとったみたいやな」

 

「この先に武器の格納庫があるんですよ。ちょっと補給していきましょう」

 

俺はそういうと、格納庫を目線で示す。

 

未亜は首を縦に振り、二人で、いや三人で格納庫に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おほー、こりゃまたすごい倉庫やねぇ」

 

所狭しと並べられている武器の数々。

 

それらのうちいくつかは無くなっている。おそらく、教師の何人かが持ち去ったのだろう。

 

「自分も何か武器探しとき?あれじゃ重すぎるで」

 

教官のくれた可変武器。

 

あれは十姫を抱きかかえる際に保健室においてきた。

 

さすがに重すぎる。

 

「ごめんな、教官………あんたのくれた武器、捨てちまった」

 

そう呟きながら、十姫を下ろす。

 

「それじゃ、ウチはマガジン探してくるわ。幾久世君も何か探したほうがええよ?」

 

言い残して、未亜さんはどこかへ行ってしまった。

 

……武器、か。

 

「もう、そういう時なんだよな」

 

関係ないなんて、言っていられない。

 

戦わなきゃならない。

 

「俺も、武器を探そうかな」

 

重い腰を上げて、俺は武器庫の中へとその身を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん?

 

なんだか、すごく嫌なにおいがする……。

 

気が付いたのは、その異臭のせいだった。

 

ふわふわしていたさっきまでの感覚はなく、急に自らにのしかかる重力に思わず倒れそうになる。

 

「………私、死んでないんだ……」

 

そう確信した理由は、自分の身にまかれている包帯を見たからだ。

 

けれど、痛みはない。

 

重い体を少し動かしながら、周りを見渡す。

 

ここって武器庫?なんでこんなところに……?

 

意識が戻ってから数分。

 

ようやく自分の置かれている状況を再認識した。

 

「ッ…………琥御(こおん)は?」

 

周りに人気はない。

 

もしかすると………。

 

「いや、それはないわ。ありえない、あっていいはずがない」

 

自分の中の最悪の予想を掻き消し、立ち上がる。

 

「きっと、ここのどこかにいるはずよ。そうに違いないわ」

 

体の重みはどこへ行ったのか、私は素早く武器庫の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……ないなぁ」

 

私は数多くの武器の中から、目的のものを探し出すために躍起になっていた。

 

それは武器じゃなくて、もっと別の、重要物品。

 

「隊長はここにあるってゆーとったんやけどなぁ」

 

がさごそ。

 

武器と武器の間を縫うようにして探す。

 

けど、やっぱり見つからない。

 

「てゆーか、武器庫広すぎるやろ!絶対見つからんわ!」

 

脳裏に浮かぶのは、いつも腹の立つ隊長の顔。

 

今回も、一番面倒な仕事を押し付けてきた張本人。

 

「今度会ったら顔面殴ったるわ、アイツ」

 

憤りを感じながら武器庫の中をくまなく歩き回る。

 

ショットガンコーナー(看板が立ってる)の前を通り過ぎると、目の前に少女の姿を見かけた。

 

「あれ、あの子は幾久世君の……目、覚ましたんやな」

 

見ている限り、きょろきょろをあたりを見渡しているように思えた。

 

そして、その少女の視線と私の視線が交じり合う。

 

「すいませーん!」

 

その少女が駆け寄ってくる。

 

私はとっさに仕事の表情から、プライベートの表情に切り替える。

 

「体起こして大丈夫?自分、相当ダメージあるみたいやけど」

 

走るのはおろか立ってるのさえもやっとのように見える。

 

息も切れ切れ、汗で制服はぐちゃぐちゃ。

 

ろくに動けへんだろうに……何でここの生徒は皆無茶したがるの?

 

「そ、そんなことはいいから…。それより、男の人、見なかった?」

 

少女はその言葉を伝えるだけでも必死になってるようだった。

 

多分幾久世君のことだろうなぁ、これ。

 

私はちょっと考えてから、質問に答えた。

 

「見んかったけど……自分すごい顔だよ?ちょっとここで休んでったほうがええと思うよ?」

 

私はそう提案するけど、少女は首を横に振った。

 

「私のことは、お構いな………く……」

 

フラッ

 

少女の体がふらつく。

 

私はあわててその体を支え、表情をのぞき見る。

 

少なくとも、大丈夫そうには見えない。

 

「ちょっとここで寝てて。今お医者さん呼んでくるから」

 

私はその少女を横にすると、すぐさま医者を呼びに行った。

 

死ぬ前に見つけられるかどうかは、分からんけどな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いた時は、喜びと悲しみの感情が一気に押し寄せてきた。

 

十姫が目を覚ました、という喜び。

 

そして、また倒れたという悲しみ。

 

複雑な気持ちだったけど、やることはどっちみち一つだった。

 

………十姫ッ!

 

二回も死なせるかッッ!!

 

現場にたどり着いた時には、俺は医療道具を瞬く間に広げていた。

 

保健室から持ってきた緊急用の医療道具。

 

そして武器庫においてある使い捨ての痛み止めや傷薬。

 

それらを駆使し、精一杯の処置を施す。

 

気がついたら、武器庫に入ってから数十分が経過していた。

 

「大丈夫なんか?」

 

未亜さんが不安そうに声をかける。

 

俺は額の汗をぬぐい、それに答える。

 

「大丈夫のはずです。すぐに目を覚ますと思うんですけど……」

 

俺は十姫の顔に視線を移す。

 

大丈夫…だよな?

 

「うちはここにいても何もできなさそうやし……あっち行ってるな」

 

そう告げると、未亜さんはどこかへ行ってしまった。

 

俺は散らかっている医療道具をそこらへんに投げる。

 

一度使ったものは衛生面からも使えないからな……。

 

バッグの中に残ったものは、残り少ない医療道具だけ。

 

母さんが買ってくれた、ちょっと高級なバッグも、今ではほこりや真っ赤な汁にまみれ面影がない。

 

これが………戦いか。

 

そう思いつつ、振り返り十姫の容態を見ようとした。

 

が、そこに十姫はいなかった。

 

「え………?」

 

体中から嫌な汗が噴き出すのが分かる。

 

そこに、トントンと肩をたたく感触。

 

「未亜さん!十姫が………」

 

俺は半ば涙目で首をひねる。

 

 

 

ぷにっ

 

 

 

頬に、指が突き刺さる。

 

子供がよくやる、あのいたずらだ。

 

そして、その指の先には少女がいた。

 

「私が、どうかした?」

 

風音十姫、という名の少女が。

 

俺の間の前にいた。

 

その姿、声。

 

どこからどう見ても、聞いても。

 

俺の知ってる、十姫だった。

 

「あ………え…?」

 

俺は事態が呑み込めなかった。

 

いや、十姫はここに寝ているはずで、ここにいるのは十姫で…?

 

「あーあ、泣いちゃって。せっかくの顔、台無しだよ?」

 

そう言いながら、十姫は目尻の液体を指で拭う。

 

「と……十姫、さん………ですか?」

 

俺は言葉を失い、とっさにそう尋ねる。

 

「なんで他人行儀?」

 

十姫は他人じゃいやだ、言わんばかりにちょっといらついた声色でそう告げる。

 

「十姫………十姫ィ!」

 

何かが吹っ切れたように、十姫に密着し、腕を背中の後ろにまわす。

 

「良かった……お前が無事で…」

 

再び、目から涙がこぼれる。その液体が、顔を濡らす。

 

「もう……大げさなんだから…」

 

そう言う十姫の声も、震えているのが分かった。

 

十姫は俺の首の後ろに腕をまわし、耳元でささやいた。

 

「ありがとう……琥御」

 

わずかな間、俺と十姫はお互いに抱きしめあっていた。

 

 

 

俺は十姫は気を失ってから今までのことをすべて話した。

 

「なるほど……じゃあ、さっき会った女の人は未亜って言うのね」

 

「戦うにしても逃げるにしても、まずは装備を整えなきゃならない。十姫、無理するなよ?」

 

俺は十姫がまだ全快ではないと思っていた。

 

あれだけの重傷を、応急処置だけでやっとこさ動けるようになった程度。

 

早くここから脱出して、ちゃんとした設備で処置しないことには安心はできない。

 

「大丈夫よ。私の本領は、前線じゃないもの」

 

そう言いながら、十姫は立ち上がる。

 

「ライフルの反動くらいでぶっ倒れるほど、デリケートな体じゃないわ。そこんとこは安心して」

 

俺は十姫の肩を担ぐ。

 

「でも、患者だからな」

 

そう言いながら、十姫に笑顔を見せる。

 

「あら、気が利くじゃないの、お医者さん」

 

ここの武器の置き場所は大体把握している。くまなく歩き回ったおかげだ。

 

俺は十姫を連れてスナイパーライフルのコーナーにやってきた。

 

「私はここで武器を選んでいるから、琥御も選んできたら?」

 

そう言うと十姫は武器の選定に取り掛かった。

 

俺はその場を後にして、自分の武器探しをすることにした。

 

「って言っても、何にすればいいんだろうなぁ…」

 

何せ、自分の能力と特性からして、何を選べばいいのかが全く分からない。

 

十姫は自分が支援向きだと分かっているから選びやすいものの、俺はそういったものが分からない。

 

未亜さんのように、経験を積めば自分に合った武器が分かるんだろうけど、その経験すらない。

 

自分の能力でほとんどの武器に切り替えられる以上は、何でもいい気もするけど……。

 

「無難にサブマシンガンとか、アサルトライフルとかにすればいいのか……?」

 

悩む。

 

が、その悩む先に答えがあった。

 

「あ…」

 

そこには壁に紛れるようにして、扉があった。

 

見つけられたのは偶然だ。

 

もし俺が武器に目を奪われていたのなら、これを見つけることはできなかっただろう。

 

「もしかして、隠し部屋って奴か…?」

 

俺はその扉に手を触れる。

 

すると、その扉は急に緑色の光を発し始めた。

 

あまりの強い光に、俺は思わず目を閉じる。

 

「ぐっ……」

 

その光は十姫と未亜を呼ぶ手間を省く手伝いをした。

 

目を開けた時には、すでに十姫と未亜がそこにいた。

 

「なに、今の光?」

 

「分からない……急に扉が光って、目を閉じてたから……」

 

目の前に開けている扉の先には、細い通路があった。

 

「しかし、面白いギミックやなぁ」

 

未亜は感心するように腕組みをした。

 

俺はただ、目の前の通路を見つめていた。

 

何となく、導かれているような気がした。

 

何にとは説明できないけど。

 

俺は誰より先に、その通路の先に向けて歩みを進めた。

 

続くようにして十姫、未亜も通路に足を踏み入れる。

 

そう長くない通路の先にあったのは部屋だった。

 

が、そこにはパソコンだけで他には何もない。

 

しかしそのパソコンも、デスクトップとキーボードだけで、本体が見つからない。

 

もしかしたら埋まっているのかもしれない。

 

そして画面には一文、

 

『本人確認用のコードを入力してください』

 

と表示されていた。

 

「本人確認用……って出席番号とか?」

 

十姫の言うとおりに出席番号を入力する。

 

ブーッ!

 

『認証コードが違います』

 

違ったようだ。

 

とそこで、未亜が案を出す。

 

「本人確認用ってことは…生年月日とかじゃない?」

 

俺は自分の生年月日を入力する。

 

ブーッ!

 

これも違った。

 

「他にコードになりうるものなんて……」

 

考えた結果、とある一つの結論にたどり着く。

 

「出席番号と生年月日を続けて入力してみよう」

 

ズルーッ!

 

二人がずっこける。

 

「あ、あんたねぇ……そんな単純な…」

 

ピーッ!

 

通りました。

 

「えー……」

 

我ながら引く。

 

確かに、出席番号だけじゃほかのクラスメイトにばれるし、生年月日はかぶってる奴もいるから妥当かもしれないけど……。

 

「た、単純やね……ウチてっきり自分らが決めたパスワードかなんかかと思ったよ」

 

俺もそう思ったけど、そんなの決めた覚えないからなぁ……。

 

そして次の画面に表示されたのは、見覚えのある銃剣だった。

 

「これって……俺の武器…?」

 

そこには自分の、教官にもらった武器が表示されていた。

 

画面端にはそのスペックも細々と記されている。

 

「まさか、生徒の武器のデータが入ってるの?このパソコン」

 

十姫はそう結論付けた。

 

しかし、未亜はそれに納得しなかった。

 

「でも、このnewって表示は何や?データが入ってるだけならこんなのは出てこんはずや」

 

そう言われて、画面右上のnewという文字に気づく。

 

「マウスがないな……まさか」

 

newという文字に触れる。

 

といっても、液晶画面を通して、だけど。

 

画面が切り替わる。

 

タッチパネルかよ………。

 

そして画面に大きく表示されている文字。

 

『新たな二つのモードを得ました』

 

『重量・中  ミドルレンジ  サブマシンガン』

 

『重量・軽  クロスレンジ  ダガー』

 

 

……何となく、意味は分かる。

 

ようするに、これだけのモードに変えられるってわけだろ?

 

………今のおれにとっちゃもう、意味なんかないけど。

 

「このダガーってやつにしておけば、ここまで持ってこれたかもね……」

 

未亜は少し残念そうにそう告げる。

 

「でも、newってどういうこと?新しく、これだけの型になれるってこと?」

 

十姫が核心を突く。

 

そうだ、問題はそれだ。

 

何で最初からこれだけの型になれるようにしなかったんだ?

 

newってことは、新しくなれるってことだ。

 

どうして、このタイミングで型が増えたんだ……?

 

適当に画面を切り替える。

 

そこに、武装説明という欄を見つけた。

 

「ここに、書いてありそうやね」

 

俺はそこに触れ、画面を切り替える。

 

・正式名称 幾久世琥御専用試作型可変武装

・ニックネーム 不定

 

どうやら、あの武器は俺専用らしい。

 

使用用途や使い方のセオリーなどの項目をすっとばして、長々と書いてある文章の中に、気になる項目を見つけた。

 

・試作型自己学習・強化装置『ELSAシステム』

 

「エルザ……システム?」

 

その項目を読んでみることにする。

 

 これはまだ試作段階であり、必ずしもその通りになるわけではないことを念頭を置いておくこと。

 ELSAとはExperiential Learning and Strengthening Adaptationの略称であり、つまり経験学習並びに適応強化システムのことだ。

ようは戦いの経験を積み、それに適した自己強化を施すシステムというわけだ。

どのような強化がされるかは武器、使い手、戦い方、そして敵によって大きく変わる。

 くどいようだが、このシステムは試作型であり、即座に対応することはできない。

いくつもの戦闘を重ねるか、または時間が必要だ。一戦闘中に強化されるだろう、という甘い考えは捨てること。

 最後に、絶対的勝利が約束できる代物など、ありはしない。

生き残るためには、ELSAだけに頼るようなマネはしないことだ。

 

「エルザ…これのおかげで、モードが増えたってわけね」

 

これで納得がいった。

 

戦いを重ねれば重ねるほどに、この武器は強くなる。

 

見た限りでは、一度強化された部分は弱化されることはないのだろう。

 

「ずいぶんと便利な代物やねぇ。ウチもこんなん欲しいわ」

 

「それだけに、捨ててきたってのはもったいない気がしますけどね」

 

俺は他に何かないかと画面を切り替える。

 

・呼び出し機能

 

ガタタッ

 

3人が慌ただしく、その項目を凝視する。

 

 もし何らかの理由で武装を手元から失ったとしても、それを容易に回収する手段を用意した。

 その武器のニックネームを念じることで、その武器を回収することができる。

 もし無くすような阿呆のための救済処置だ。できれば、使ってほしくはない。

 

何か………申し訳ないです、このページ作った人。

 

だが、十姫があることを指摘する。

 

「でも、ニックネームとか決まってなかったわよね?」

 

「…ニックネームってどうやって決めるんや?自分で勝手に定義すればええんか?」

 

俺はタッチパネルを色々といじり、何かないかと検索する。

 

「あ……これじゃないですか?」

 

それっぽい画面に切り替わる。

 

「適当に決めちゃいますね」

 

俺は適当に、思いついた名前を入力する。

 

禍々しい敵を討つ武器。

 

禍断(まがたち)。

 

決定と同時に、その名前を念じる。

 

 

「来い……禍断ッ!」

 

 

ヒュン

 

手元に重みを感じる。

 

どうやら、本当に呼び出せたらしい。

 

「……意外とすごいテクノロジー使われてるのね、これ」

 

十姫が感心したように、禍断を見つめる。

 

俺は手元の禍断をダガーに変形させる。

 

物量も変わっているんだから、これはほとんど魔法のレベルだと思うけど。

 

まあ、俺専用ってことで、俺の得意魔法に合わせてくれてるんだろう。

 

持ち歩きやすくなったところで、懐にそれをしまう。

 

「十姫も、色々確認したほうがいいんじゃないか?呼び出しも兼ねて」

 

そう言って、俺は武器庫へと戻る。

 

バッグの中に、それぞれの武器に対応したマガジンを詰め込まなきゃな…。

 

未亜がいるからって、いつまでも頼っていられない。

 

俺も………戦わなくちゃ。

 

決意を新たに、俺は禍断を見つめた。

 

ふと隣を見ると、十姫も自分の武器を呼び出したようだった。

 

「来なさい、雅ッ!」

 

どうやら雅(みやび)という名前にしたらしい。

 

似合わない名前だな、というコメントを喉元から体内へ押し返す。

 

「で?そいつも何かしらの強化を受けてるのか?」

 

十姫は手元の狙撃銃を眺めながら口を開く。

 

「弾速が上がって、ズレも若干修正されてるみたいね。それに、幾分か軽くなってる」

 

どうやら、ちゃんとエルザは機能してるみたいだ。

 

自分の武器が見つかって、安全も少し確保されたからだろうか。

 

俺はつい、あくびをしてしまう。

 

「ん、眠いんか?」

 

それを察してくれた未亜が俺に話しかける。

 

「え………」

 

確かに、今日の出来事からすれば、疲れるのも当然だ。

 

しかし、今休むわけには…。

 

「風音ちゃんも幾久世君も、少し寝といたほうがええで?まだろくに訓練もされてないのに」

 

そういいながら、未亜は壁に寄り掛かって座る。

 

「戦ったりしたら、疲れたやろ?」

 

「でも………」

 

俺が反論しようとしたところを、十姫に阻まれる。

 

「それじゃ、少し休憩させてもらうとしましょ?ってわけで、見張りお願いね~」

 

十姫はそれだけ言い残し、部屋の隅にもたれかかって瞳を閉じた。

 

未亜は俺のほうをじっと見る。

 

どうやら、俺にも寝ろ、と言っているほうに感じる。

 

「それじゃ、お言葉に甘えて……」

 

俺は十姫とは対角線になる隅で、丸くなる。

 

自分でも思っていた以上に、すぐにまどろみの中へ落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて………」

 

邪魔な二人はどかした。

 

日常から逸脱したことをすれば、その日はよく眠れる。

 

学生で言うなら、文化祭とか体育祭とか、ね。

 

私は目の前のディスプレイから伸びているケーブルを伝い、それが床を通っていることを確認すると、

 

「んと……これやな」

 

対装甲用のカッターで床を切り、自分が通れるくらいの穴をあける。

 

「結構深い……な」

 

ケーブルの終着点に向かって、私は飛び降りた。

 

『滞空魔法』

 

私は自分に滞空の魔法をかけ、ふわふわとゆっくり下りていく。

 

「ま、ここまで案内してくれたんや…幾久世には感謝やな」

 

ただ気になるのは風音、というあの女の子。

 

疲れているとはいえ、あんなにあっさりと寝てくれるなんて……。

 

もしかしたら、私の考えに…。

 

「な、わけないか。そんなに頭のキレるような人物には見えんかったし」

 

そうこう考えているうちに、着地する。

 

「すごい部屋につながってるもんやな……」

 

辺りを見渡すと、一面パソコンだらけ。

 

その一台一台から、上へケーブルが伸びている。

 

が、そんなものには目もくれず、私は目的のパソコンを探し出す。

 

自分の伝ってきたケーブルの繋がっている先には、他とはデザインが異なるパソコン本体。

 

「やっと見つけた……」

 

私は懐からメモリを取り出し、本体に取り付ける。

 

10…20……30…。

 

40秒を少し過ぎたころ、メモリのランプが光った。

 

「データ収集完了っと…さて」

 

あとはトンズラするだけ………。

 

 

 

「どこにいくつもりかしら?」

 

 

 

のはずが、呼び止められてしまった。

 

「……狸寝入りってわけ?汚いやつやな」

 

「あたし達をただの案内人にしたあんたよりはマシよ」

 

風音十姫。

 

やっぱりというべきか、幾久世よりも頭がキレるらしい。

 

それに、彼女が使っているのは私のようなゆっくり着地する魔法じゃない。

 

完全に、『滞空』している。その手の魔法にも精通してるらしい。

 

「で、ウチをどうする?ここで殺し合いでもするんか?」

 

エルザとか言うシステムが機能しているといっても、所詮使い手は雑魚。

 

私の敵じゃない。

 

「そんなのじゃないわ。ただ……」

 

「ただ、なんや?ああ、あれか。せめて外まで護衛してくれってことか?」

 

相手の話を聞かない。

 

そんなくだらないことで、時間を浪費している場合じゃない。

 

「悪いけど、ウチはそんなに………」

 

とっさにサブマシンガンを取り出して風音を狙撃する。

 

 

 

「親切じゃないのよッッ!」

 

 

 

風音はその乱射を避け、狙撃銃を構える。

 

「話を聞きなさいよ、この馬鹿ッ!」

 

狙撃兵は、前線に出るべきじゃない。

 

それくらいの常識も分かってない素人に…。

 

「私が負けるかぁああ!」

 

魔法弾を風音めがけて撃つ。

 

「このっ、面倒なやつね!」

 

風音は左手の拳銃でそれらを迎撃する。

 

なるほど、それくらいのことはできるのね。

 

――――――――でもっ!

 

「これは読めないでしょッ!?」

 

風音が迎撃した魔法弾。

 

それらは全部――――――――。

 

 

 

「ちょっ!?何よこれ!?」

 

 

 

――――――――分裂する。

 

撃った時の数倍の量の魔法弾が、風音を襲った。

 

「きゃああああああああああああああ!?」

 

爆音と共に、もくもくと立ち上る黒煙。

 

着弾。

 

「あれくらえば、手負いの人間が生きてられるわけないな」

 

私は確信して、この部屋の扉に魔法弾を撃ち込む。

 

鍵を壊して扉を開け、この場を去った。

 

気がかりなのは、死体が落ちてこなかったことぐらいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けほっけほっ………え?」

 

死んだ、と思った。

 

あれだけの魔法弾を受けて、死なないわけがないと思った。

 

でも、生きている。

 

それどころか、ダメージの一つもない。

 

「これって………」

 

自分の周りにバリヤーが張られていることにようやく気付く。

 

「だ………だいじょう、ぶ?」

 

下から声がする。

 

聞き覚えのある、同じクラスのとある生徒の声が。

 

「え、ちょっと………あんた……」

 

 

 

「十姫ちゃん、だよね?よかったぁ、知ってる人で」

 

 

 

由芽乃奈々。

 

あたし達の仲間だ。




はい、はい、はい、はい。

どうもお久しぶり、GSTです。

逃げてませんよ?ほら、実際に投稿してるじゃないですか。

リアルが忙しいのでほとんどかけませんでした……。

某動画サイトで動画配信したり(宣伝乙)仕事忙しかったり……。

で、言い訳はこのくらいにして・・・

まあ、ヒロインがこんなに早く死ぬわけにもいかず、あくまで王道を突っ走るつもりなのでそこんとこ宜しく、です。

え?ここで鬱展開希望だった?

申し訳ないですねぇ、私鬱展開書くのダメなんですよぉ(フラグ)。

一応脳内プロットはあるので、かけることはかけるんですが…。

今分子世界に出張してたりイッシュ地方に旅に出てたりと最近忙しいので、また結構間を開けることになりそうですね…。

それでも待っていてくれるという奇特な方は、また次回までお楽しみに!

それともう一つ。

お気に入り登録、ならびに評価、ありがとうございます!

まさかこんな作品でお気に入りされる日が来るとは…!

次回もがんばりますので、よかったら時々、のぞいてみてね☆(更新されてるかもよ・・?)


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