これははたして鎮守府か? (バリカツオ)
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登場人物一覧

※28話(秋祭り最終夜)時点までの登場人物の設定です。
加筆しましたらこちらに書いていきます

※2017年1月12日 山風追加
※2017年2月 2日 明石、長門、ほっぽちゃん追加 提督、古鷹、加古に加筆
※2017年3月12日 伊58、ル級、リ級追加 提督、加古、明石に加筆
※2017年5月11日 皐月、阿武隈、電(深打)、叢雲追加 望月に加筆


駿河諸島鎮守府

 

島内で地下資源が発掘されたため急遽作られた鎮守府

駿河諸島の位置は八丈島から西に150キロいったところにある2つの島からなる新諸島群

深海棲艦の出撃した同時期に海底火山の隆起によってできた諸島である

艦娘の対抗策が出来てからは海域の奪還の際発見、すでに火山は死火山となっており噴火の恐れはなく安全と判断した大本営は補給時の経由地として指定

当初は警備府の予定で整備を始めたが地下資源の発見により先述の通り鎮守府へ昇格、日本への物資輸送はもちろんショートランドやトラック等各泊地への輸送拠点へになっている。

また、鎮守府がある島と反対の島には宿泊施設が整備され、ほぼリゾート地としての機能がメインとなっている

 

駿河諸島鎮守府のメンバー

 

耳本中佐(みみもと)

 

駿河諸島鎮守府の提督

基本的に温厚で怒ることはない

手遅れのワーカーホリック

重度の虫嫌いで蝶を見るだけでもそそくさと離れていくレベル

出世欲はなくただいつかはのんびり暮らせればいいなのお気楽系

根は苦労人気質だが、はっちゃける時は周りを思いっきり巻き込んでいく

酒癖等はなく、ほどほどに強いぐらい(ただしビールをジョッキ2杯飲ませればダウンさせることは可能)

最近ウイスキーにトラウマを植え付けられた

 

何やら過去に抱えているものがあるようだが・・・?

趣味は料理、釣り、読書、旅行、昼寝、将棋

 

名前の由来は作者の名前をアナグラム等で変えたものです・・・。

 

 

吹雪

 

駿河諸島鎮守府の秘書艦

性格はほかの吹雪よりは少し大人びておしとやかだが根っこは元気いっぱいで明るい

提督と同じワーカーホリック

暇さえあれば仕事を作り出すためほかのみんなが秘書艦の目付を作ろうとしているらしい。

こちらも重度の虫嫌いでほとんど提督と似ている。

射撃の腕がすごいらしい

 

提督のことは好いている

 

 

川内

 

駿河諸島鎮守府の資源部担当兼諜報員

性格は明るく元気、実は朝はちょっとテンションが低め

夜戦好きだが唯一、書類夜戦だけは拒否をする

諜報員として提督の監察業務の手助けをする

生産部の仕事は基本的にそこまでないため大体吹雪か時雨の手伝いに出ている

20時になるとどこかしらで夜戦の要求をするらしい

 

提督のことは好きだが口には出さない

 

 

龍驤

 

駿河諸島鎮守府の警邏部担当→基地航空隊専任

性格は冷静沈着だが明るくないわけではない

普段は警邏として艦載機を飛ばして島の近海の哨戒と自身が歩き回り島内のもめ事を収めて回っている

酒は好きだが種類を知らないため飲みたいときは提督を探している

提督の考えていることは大体読める

 

提督のことは好きだが提督の一番好きな人に気付いているため二番目を狙い中

 

 

時雨

 

駿河諸島鎮守府の補給部担当

性格はおしとやかだが提督と吹雪のワーホリを止めるときだけはアクティブになる

実は何気に提督と吹雪を除くと一番仕事量が多い

ブラックから救い出してくれた提督に感謝をしているがまだ自身の中では過去との決別はできていない(最近ちょっと前進を見せた)

予知能力を持っているが制御できない

 

 

提督のことは大好きであり提督の一番にも気づいている。ちゃっかり二番目狙いをしていたりする

 

 

加古

 

駿河諸島鎮守府の総務担当兼医師

性格はマイペース

総務と言ってはいるが雑用係

大半は古鷹か時雨のところで手伝いをしている。

医師免許も持っており、健康診断や治療も行う。

昼寝好きであり常にポイントを探していたりする(最近目を付けたのは提督の私室)

鎮守府三大人枕というランクがあり、古鷹の腕枕、山風の抱き枕、提督の尻枕この三つがとてもいい睡眠ができるらしい。

酒を一晩中飲む時があり、捕まったら朝まで付き合わされる。

 

提督のことは好きで一緒に過ごせるだけで満足

 

 

古鷹

 

駿河諸島鎮守府の生産部担当

性格は一見おしとやかだが実際はかなりしたたか

生産部も忙しいところだが若干ムラがあるため加古の手伝いで何とか回っている

提督と吹雪の目付役であり二人の最大の弱点(一番嫌いな虫)を知っている

転属前はショートランドにいたらしい

大本営では提督によってたかって揉みくちゃにしたほかの提督を全員海に叩き込んだため駿河の鷹と呼ばれ恐れられているが、実は強さの序列は3番目だったりする

酒癖はランダムで出るため、周りがなるべく飲ませないようにしている。

 

提督のことは当然好き。だけどほかのみんなに相談できず、もやもやとする日々らしい

 

 

榛名

 

駿河諸島鎮守府の宿泊施設支配人

性格は本当におしとやか(本当に)

宿泊施設の管理を行っているため普段は鎮守府のある島の隣の島にいる

最近ホテル風の建物と別に旅館ができたため人手が足りなくなりがち

転属前は柏崎のところにいた

現在も艤装の演算機能は回復せず柏崎と明石が頑張って解析をしている

 

提督のことは好きではあるがどちらかというと敬愛に近いもの

 

 

深雪

 

元大本営教艦

現在は補給部の手伝いから異動し、警邏部担当

教艦時代は飴と鞭の使い方がうまく、大本営でも人気の教艦だった。

性格は元気を通り越して活発 明朗快活の言葉がぴったり

教艦仕事以外をしたいと考えた時、提督の顔が浮かんだため様子をうかがいに大将のところへ行って現在に至る

 

提督のことは大好きだが教艦時代の訓練時は甘やかしたことはない

 

 

望月

 

元大本営教艦

現在は補給部手伝いから異動し、大本営との調整役である部署に異動した

教艦時代は鬼教官

のんびりとした口調とは裏腹にとんでもない訓練内容や罵声が飛んでくる

性格はダウナーでめんどくさがりでド変態(提督関連のことは除く)

大本営を出るときに深雪ともども何度も引き留められたが二人で

「「愛に生きます」」

と一言いい残したため上層部では伝説となっている

酒が飲めない

 

提督のことは性的に愛しています(もちろん体だけではない)

 

 

山風

 

駿河諸島鎮守府の秘書見習い→駿河諸島鎮守府農園部担当

海でさまよいたどり着いたのが駿河諸島鎮守府

艦歴の関係上寂しがり屋で甘えんぼ

提督か吹雪、時雨の誰かがいないと寝れない

提督と吹雪の残業ストッパー

 

提督のことは嫌いじゃない(※ちょっと好き=嫌いじゃない=大好き)

 

 

伊58(ゴーヤ)

 

大本営所属→駿河諸島鎮守府所属

東部オリョール海資源プラントの警備隊長

大本営所属時には潜水艦の特性をいかした任務のため、非番の日が同僚と被ることがない

さらにはめったなことがない限り会うことがまずない。

現在ではちゃんと交代要員が用意され、時々ではあるが一緒にご飯とかを食べたりなどしている。

性格が寂しがり屋なことも手伝い、駿河諸島鎮守府所属となった今では週一回の報告と非番の日にはみんなに甘えたり、話に鎮守府に来るのをとても楽しみにしている。

 

提督のことは大好きだが、恋愛感情かどうかはまだ未確定

 

皐月

 

大本営教艦→駿河諸島鎮守府商業部担当

望月と同期であり、望月からは皐月姉ぇと呼ばれている

実力は望月より上である

望月たちの後釜で教艦役についたが半年で退任した

 

提督のことは嫁にしたいと発言している

 

阿武隈

 

骨田中将麾下→駿河諸島鎮守府

生粋のブラック鎮守府出身

戦力、遠征要員としての両面での運用をされたせいで精神の奥の方にガタが来ている

結果、カスダメでも被弾すると恐怖症で動けなくなる弱点がある

現在は駿河諸島鎮守府付近の潮流の流れを朝夕に計測して発表し、遭難等を防ぐ役職にいる

 

提督のことはぼんやりとだが好きだなぁと思い始めている

 

 

鳳翔

 

駿河諸島鎮守府の居酒屋の女将

主に夕食を担当

ケッコン済みで内地に海軍に勤めている夫がいる

鎮守府全員の味の好みを知っているので夕食はいつも大人気

 

提督のことは夫と同じくらい信頼している

 

間宮

 

駿河諸島鎮守府の甘味処店主

主に昼食の担当

ケッコン済みでこちらも内地に夫がいる

提督に新作の菓子を味見してもらっている

 

提督はとても良い仕事仲間と思っている

 

 

大本営

 

横須賀に置かれている

全国の鎮守府を総括するための組織

一応陸軍も存在するが発言権はほとんどなく海軍の意見が通る

仲は悪いことは悪いが海軍のほうが強すぎて陸軍は何も言えないため比較的平和?

内部では

戦線の現状維持で艦娘を一人の人間としてみるハト派

戦線の拡大を推進し、艦娘を兵器としてみるタカ派

この2つの勢力が固まりつつある

しかし、現在までは作戦立案等の機能はしているため問題は起きてはいない

 

大本営のメンバー

 

桐月大将(きりづき)

 

大本営上層部に所属 ハト派

これでも有能らしいが現在に至るまでポンコツなところしか書かれていない

文月Lover

3時のおやつをいつも食べさせあっておりそれを目撃した人はとりあえず殴りたくなる

砂安中将とは盟友であり仇敵である(嫁について)

名前の由来は7月の別名(とうげつ)から

提督の何があったかを知っている人

~の会を公認している主犯格の一人

 

 

砂安中将(すなやす)

 

大本営上層部に所属 ハト派

作戦指揮より諜報のほうが得意だが基本何でもこなせる人

雷Loevr

3時はおやつではなく昼寝を一時間

雷の膝枕でする

ちなみに提督は桐月、砂安の順番で3時ごろに訪ねてしまったため二人に対しては辛辣の接する(まじめな話の時以外)

名前の由来は音読みにしていただくと赤くてロリコンでマザコンでシスコンの三冠王のあの方になる

 

 

夏木大佐(なつき)

 

大本営広報部部長 ハト派

(残念な)美女であり上層部のおっさん(タカ派)から口説かれまくっている

仕事ぶりは超有能

艦娘を国民に広く公表し好意的に受け止めさせることに成功

女性提督の中では一番の注目で近々上層部入りのうわさもある

五月雨Lover(白露型は愛でるものと思っている)

ケッコンしてからは一緒に寝ているらしい

提督と深打少将の幼馴染

それぞれみっちゃん、ふうちゃんとプライベートでは呼ぶ

提督に起きたことを知っている一人

名前の由来は6月の季語

 

 

深打少将(ふかうち)

大本営作戦指揮部部長 ハト派

作戦指揮に置いての状況判断においては右に出るものはおそらくいないといわれている

様々な作戦を成功させ、鎮守府勤務時代は大破者、中破者ゼロで作戦を終えたこともある伝説もち

電とは初々しい日々を送っているらしい

提督と夏木の幼馴染

提督に起きたことを知っている一人

名前の由来は・・・・思いつかなかったので深雪との衝突事故についてから・・・

 

須下少将(すげ)

 

大本営上層部所属 タカ派

鎮守府勤務の時に目覚ましい戦果をあげ、それを手土産に上層部入りをした

ただし、報告書は大半が偽造であり、あっているのは戦果のみ

被害報告は過少で、轟沈した艦娘は数えきれない

様々な悪事に手を染めている典型的な裏切者

現在提督が裏で手を回している最中

艦娘のことを使い捨ての道具としか見ていない

実は一話のみの登場予定だったため今まで登場している提督の中で一番名付け方が投げやり

名前を反対にすれば由来がわかるかと・・・

 

 

ほかの鎮守府にいる艦娘や提督

 

初霜

 

房総鎮守府所属

実は提督と吹雪が着任して最初に補給に来た艦隊の代表だった。

吹雪とは仲がとてもよく休日に遊ぶ仲

今後しっかりと登場させる予定

 

 

電(大湊)

 

大湊警備府所属

他の電よりも心優しい性格

よく気が回り、どじっこではない

提督のことを心配しており自身の提督に負担軽減を掛け合っている

今後大きめの時やちょっとしたことで登場させる予定

 

 

青葉

 

内浦鎮守府所属(福井)

比較的新しい鎮守府であり、自身も着任から一年たっていない新人

好奇心旺盛かつジャーナリズムに命を懸けているが、ちゃんと自身の立場をわきまえている

しかし、なかなか記事が思うように書けず悩みに悩んでいた時に魔がさした

現在は駿河諸島鎮守府の専任記者として青葉新聞の地位を確立した

今後も日常話で登場予定

 

 

海野大佐

 

内浦鎮守府提督

最初は従軍記者を務めていたが、艦娘に興味がわき提督になった

青葉とは似たもの夫婦と呼ばれているがケッコンはしていない

名前の由来は重巡洋艦青葉に乗り組んだ従軍記者の方からとりました

登場予定は今のところなし・・・

 

 

柏崎大佐(かしわざき)

 

呉第二鎮守府提督

提督の同期

筋肉質な体だが実はやっていることの大半はシステム関連の作業

筋トレが趣味

明石との重婚に頭を抱え、悩みに悩みぬき決意した

性格は冷めて見えるが根っこは熱いため火をつけるとひどい目にあうことも・・・

名前の由来は2chのやらない夫をモチーフにしたクトゥルフTRPGの登場人物柏崎やらない夫より

 

 

彩雲(あやくも)大佐

 

佐世保第二鎮守府提督

提督の同期

完璧超人だが性格に難あり(具体的にはドM)

現在の登場人物の中では一番の重婚者

しかも大半が性格が強めの子か超きつい子

しっかりと信頼を得ており、作戦成功率は他の鎮守府を圧倒している

名前の由来は初期艦を叢雲の予定だったため雲の名前から

 

 

明石

 

呉第二鎮守府所属

柏崎大佐のケッコン艦の一人

一言でいうなら何でも屋

隠し扉や執務室の出入りの履歴など様々な改修を行っている。

マッドなことも大好き(ただし本人が一番得意な分野は艤装のシステム)

柏崎に惚れたが奥手でなかなか言い出せなかったが漣に発破をかけられ積極的にアプローチしたとのこと。

週一ペースくらいで駿河諸島に来ている。

 

 

長門

 

リンガ泊地所属

武人とはこの人のことを言う

裏表のない性格でとても熱い

前世で活躍できなかったことを悔やみ、少し生き急いでいる面が強かった。

駿河諸島鎮守府の悪評を信じ込んでいた一人

調査したが人づてに聞いたことであり、発信源は特定できなかった。

現在吹雪の下で修業中

弟子入りを他の長門に自慢するとなぜかカメラを渡され写真を頼まれたらしい。

 

電(深打麾下)

 

深打少将の初期艦

性格は若干すれており、気の置けない仲間には素の状態で接する

といっても根底には平和を望んでいる節があり、平和になったら深打とどう毎日を過ごしたいかを考えることがあるという

吹雪は遠い姉ではあるが、お互い姉妹としては見ていないでいい同期と思っている

 

叢雲

 

彩雲大佐の初期艦

まんまツンデレ

きついことを言うが、実際はただの照れ屋でふとした時に本音がポロリと漏れる

重婚については寛容

毎回重婚のたびに相談されるが、中心にいるのが自分ならよしと割り切っている

普段は呼ばないが、ふとした時に吹雪のことを姉さんと呼ぶことがある

 

 

深海棲艦側(艦娘派)

 

北方棲姫

通称ほっぽちゃん

電(大湊)に懐いている。

深海側ではあるがもともと嫌戦派の色が強かったため、電とのんびりとなるべく戦わない日々を過ごすことを選択。

現在は襲撃にあったため大湊へと避難中

西の方に姉と慕う深海棲艦がいるらしい。

 

 

 

ル級

 

駿河諸島鎮守府農園部手伝い兼捕虜

秋の中規模作戦時に鎮守府近海を通過しようとしたため、艦隊を自身とリ級以外を撃沈され捕縛。

もともと戦闘は好きではなく、どこか人の来ないようなところでひっそり生きていけたらなぁと思っていた。

北方棲姫にそのことを見抜かれ、プライベート関連では信頼できる仲間として認めてもらい直属隊に所属していた。

戦闘時はしっかりとしているが、それ以外ではめんどくさがり

最近のマイブームは日曜大工

 

提督に関しては自身の願いをかなえてもらい感謝している

 

リ級

 

駿河諸島鎮守府農園部手伝い兼捕虜

ル級の艦隊の副官を務めていた。

ル級と同じく嫌戦志向が強く、ル級とどこかでひっそりと暮らせたらと思っていた。

公私ともにしっかりとしており、戦闘以外ではだらしないル級に手を焼いている。

趣味を現在模索中

 

提督にはル級と同じく自身の願いをかなえてもらい感謝している

 



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駿河諸島鎮守府の一日 その1

駿河諸島鎮守府
此処での日常(基本ギャグかほのぼの)を書いていきたいなと思っています
もしよければお付き合い願いたいと思います。

この話を含めて3回くらいは設定の説明を織り交ぜた形になると思いますがご了承ください。


マルフタマルマル

草木も眠る丑三つ時

お布団ではみなさんどんな夢を見ていますか?

え?俺?

ある鎮守府の提督ですよ

ちょっと優雅にワイン片手に「司令官早くサインください」・・・吹雪ちゃんもう少しま「てません」はい

 

ここは駿河諸島鎮守府

 

島内で地下資源が発掘されたため急遽作られた鎮守府。

現在は補給基地の業務がメインというかそれしかしてない。

さて駿河諸島の位置は八丈島から西に150キロいったところにある新諸島群だ。

深海棲艦が出現したと同時期に海底火山の隆起によってできた諸島である。

艦娘という対抗策が出来て海域の奪還の際発見。すでに火山は死火山となっており噴火の恐れはなく安全と判断した大本営は補給時の経由地として指定、整備されたが資源の発見により先述の通り鎮守府へ昇格、日本への物資輸送はもちろんショートランドやトラック等各泊地への輸送拠点へになっている。

ここまでこの鎮守府のあらましを書いたわけだが現場はどうなのかというと

 

 

ドがつくくらいのブラックである

 

 

噂の捨て艦や夜伽の強要などの人格や倫理観を疑うような事件は起きていない。

ブラックなのは労働時間なのである。

現在、鎮守府は主要な県の港には大小含めて全て置かれている。そこに補給するのはどこかというとうちである。

だか他にも補給基地があると思ったあなた正解だ。

しかしうちは補給基地以外に生産プラントがある。

 

ということは他の補給基地に補給するのはどこか? うちである。

さらには大量の資材が必要な場合他の補給基地では準備できない場合があるその場合どこにいくか? ・・・もうお判りでしょうからお察しください

この全ての事務処理をうちで行うため終業時間は・・・

「昨日はマルサンに上がれたけどこりゃマルゴー行くな。」

「近々大規模作戦があるとかで・・・この書類に印ください。」

「ん・・・はい。」

「ありがとうございます。あとヒトマルに工場と採掘場の視察とヒトゴーに大量の燃料の融資入ってますけど大丈夫ですか?」

「まじで?」

「まじです。予定表にありますよ。」

カレンダーにはびっちり黒字やら赤字で訂正が入っていて分かりづらいが燃料融資の件は前倒しで矢印が引っ張ってあった。f**k you

「書類5枚追加でーす。」

「あははよろこんでー。」

目が座ってます吹雪さん・・・しかもそれ笑ってないです。

居酒屋みたいなノリしてすんませんした。

 

 

 

起床ラッパ

 

軍隊では5時、マルゴーマルマルに鳴らされる。

もちろんうちでも鳴らされる。

だが俺と吹雪には違う意味になる。

「終わったー。」

「お疲れ様です司令官・・・シャワーと仮眠取ってきます。」

「おー・・・・後でな。」

吹雪はぐでんとしながら執務室から隣の秘書艦室へと引き上げていく。

自分は机につっぷしながら片手を上げそのまま仮眠へと旅立つ。

 

「お・・・れ・・・お・て・・かん」

「ん・・・・・・しぐれか」

「良かった昨日も徹夜かい?」

「・・・・いや5時には切り上げられた。」

欠伸をしながら答えると結局徹夜じゃないかと苦笑いしながら突っ込まれる。

時間を見ればマルハチサンマル

時雨にシャワーを浴びてくると言い自室で身だしなみを整え戻ると鎮守府の各リーダーが集まり談笑していた。

「皆んな早いなぁ。せっかくだしちゃっちゃと朝礼やっちゃうか。」

うちの鎮守府は大きく4つの部署に分かれている。(さらにそこから細かく分かれるけど今回は割愛)

資源部、補給部、警邏部、生産部

資源部は川内、補給部は時雨、警邏部は龍驤、生産部は古鷹をそれぞれを長としている。

視察の件と来客の件を伝え、他の連絡はないかの確認を済ませ解散となった。

「あっせや提督。聞き忘れとったんやけど今日の来客はあれはいるん?」

「えーと・・・いらないかな?まぁ吹雪ちゃんいるし何とかなるら。」

「了解や。なんかあったら内線でよんでな~」

ゆるく敬礼して退出していった

「さて始める前に・・・。」

吹雪を見れば冷蔵庫開けており2つの缶飲料を出す

「朝はモンエナでいきましょう。」

「かんぱーい。」

・・・エナジードリンクの補給から始まる。

 




いかがでしたでしょうか?
拙い文だったと思いますがご意見やご要望、ご感想等ございましたらぜひお寄せください。


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駿河諸島鎮守府の一日 その2

「視察ったって資料見て終わりなんだけどね。」

「そうなんだよね~。」

川内に渡してもらった資料を見ながら特に異常がないことを確認すると書類に判を押しサインをする。

 

採掘場は妖精さんや機械が行っているため見ることはできない。

正確には、見るためには採掘をすべて止めなければならなくなり、後々大変なため点検時の報告書だけをもらっている。

 

「ほんじゃあこれで終わりだけどほかに何か要望とかある?」

「夜戦したいな!」

「OKだ。夜になったらたっぷり書類と夜戦させてやるぞ。」

「あっそれ以外で。」

真顔で断られた。

一度やってもらったがマルサンマルマルには死んだ目でヤセンコワイとつぶやきだした。

「まじめな話、人員増員かな・・・・主に秘書艦の」

「大本営に上申しているが芳しくないな。」

「そっかー・・・このままだと提督になんか遭ったとき機能停止になりかねないんだけどね。」

「上もしょせん輜重部隊って甘く見てるからね・・・過去の繰り返しだよ。」

 

輜重部隊

 

戦争の際には花形とは言えないが最重要の部隊である。

艦娘の元の軍艦が活躍した第二次世界大戦時に各国は優先的に輜重部隊を強化した。

もちろん日本も行ってはいたがどうにも軽視する傾向が残った。

 

「輜重輸卒が兵隊ならば 蝶々トンボも鳥のうち 焼いた魚が泳ぎだし 絵に描くダルマにゃ手足出て 電信柱に花が咲く」

 

こんな侮蔑の狂歌まで作られる始末だったそうだ。

 

 

「何とかして効率化を図るしかないな・・・。」

「それにも労力使うんでしょ?・・・ほどほどにしてね。」

 

 

心配してくれたことに礼を告げ次の工場でも古鷹から資料確認しサインした。

 

 

「じゃあ何か要望はある?」

「そうですね・・・秘書艦の増員は・・・」

「川内にも言われたよ。」

 

苦笑しながら芳しくないことを告げると少し不機嫌になった。

 

「提督さんの体調も心配してほしいものです。結局提督さんが効率化しようとしてさらに負担がかかることになるのに!」

先読みされて少しドキッとしたが心配してくれたことに内心感謝し、いい部下を持ったものだとしみじみ思った。

「心配してくれてありがとう。まぁ何かあったら困るのは大本営だしそんときゃそんときだ。」

「無理しないようにしてくださいね。」

 

 

やたらと心配され執務室に戻るとヒトフタサンマルすでにお昼時だが昼なんてとっている暇はないただひたすら書類チェックだ。

 

 

「司令官!お昼と午前の追加持ってきましたよ!」

ヒトサンマルマル多少の書類のめどがついたところで吹雪がお昼を持ってくる。

今日はサンドイッチか。

皿に乗ってるサンドイッチ全部重ねても届かない書類の山はいらないんだけどな・・・

 

え?セット?ばら売りなし?

 

 

片手間でチェックとサインしながらサンドイッチをほおばるそしてレッドブルでのどを潤す。

・・・おかしくないかって?

いいかいモンエナとレッドブルは別飲料だから大丈夫!

(※成分は近いのでマネしないでください)

 

「司令官・・・さすがにやめたほうが・・・・」

「・・・吹雪ちゃんはなに飲んでるの?」

「RAIZINですよ?」

「それもレッドブルと一緒よ」

「・・・別飲料だから大丈夫です」

(※成分は近いのでマネしなry)

 

 

 

ヒトゴーマルマル 応接室

 

 

「・・・なるほどでは領海内での深海棲艦の反応による緊急哨戒で全部隊が抜錨。それに伴い備蓄燃料の減少。ましてや大規模作戦前なので取り急ぎ補充したいと」

「そうなのです。せめて8割までは戻さないとならないので何とかお願いできませんか?」

「大本営からの証明証と報告書に差異はありませんので大丈夫ですよ。不足分を出しましょう。ただ今すぐではなく明朝出港となりますが大丈夫ですか?」

「ありがとうなのです。それについては大丈夫なのです。」

相手の電は胸をなでおろし緊張が解けたのか表情が柔らかくなった。

「では宿泊場を用意いたしますので少しお待ちいただいてもいいですか?ほかの方々はロビーで待機していますか?」

「問題ないのです。はいそうなのです。」

「わかりました。それでは準備ができたらロビーを通って案内をさせていただきます」

 

そう会話をしながら吹雪に目配せをし連絡に向かわせた。

 

「あの・・・」

「?どうかしましたか?」

「だいぶお疲れのようですが・・・大丈夫なのですか?」

「あー・・・どうしてもうちが補給の拠点なんで書類が多くて・・・」

「そうなのですか・・・大本営には?」

「上申してますが芳しくないですね・・・まぁ何とかなりますよ。すみません気を使わせてしまって。」

苦笑しながら相手に気を使わせてしまったことを申し訳なく思い謝罪を口にすると相手は焦りながら

「とんでもないのです。それに本土の鎮守府界隈では有名ですよ。駿河鎮守府は大本営と肩を並べる忙しさだと」

「あはは・・・実際人が割けないので下手をすると大本営よりひどいのかもしれません。」

「何かあったらうちに連絡をください。力になれるのでしたら協力は惜しみません」

「電さん。用意ができましたよ。」

「その言葉をいただけてうれしいです。それではまた明朝お会いしましょう。」

 

 

 

ヒトロクマルマル  書類整理

 

ヒトナナマルマル  書類整理

 

ヒトハチマルマル  書類整理

 

ヒトキュウマルマル 書類整理&夕食(シャークをお供に・・・)

 

フタマルマルマル  書類整理(川内さん突入)

 

フタヒトマルマル  書類整理(川内さん脱走を試みる(失敗))

 

フタフタマルマル  書類整理(川内さん脱走をする(満面の笑みの吹雪に捕まる)) 

 

フタサンマルマル  書類整理(川内さん脱走成功)

 

マルマルマルマル  書類整理(吹雪さん先日からの疲れで退場)

 

マルイチマルマル  書類整理(提督の口から奇声が出始める)

 

マルフタマルマル  書類整理(モンエナとレッドブル補給)

 

 

 

 

・・・・・・以下1話とおおむね同じ・・・・・




とりあえず繁忙期の一日は終了です。

エナジードリンク2本くらいじゃ死にはしませんが体にはよくなさそうなので皆さんも多用はやめましょう by提督


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駿河諸島鎮守府の閑散期 その1

本土は紅葉が見ごろの今日この頃、大規模作戦も終了しほっと一息つき、どこの鎮守府も平常運転に戻るころ

 

「やった・・・!やったぞ吹雪!」

「本当に夢じゃないんですよね!」

二人は目を輝かせ抱き合った

「「てっぺん超えずに仕事が終わった!!」」

 

・・・なんもいえねぇ

 

思わず某スイマーのまねをするピンク髪の艦娘の言葉を川内はつぶやいた

 

 

「なにする?なにする?」

「なにしましょうか!」

「じゃあ祝杯を挙げるぞ!」

「私食堂からとってきます!」

 

考えるの下手なのか・・・

しかしこんな生き生きとしている(なお目は当然死んでいる)二人を見たのは・・・・・・・・・

 

 

あれ?

 

 

大規模作戦の期間が3週間くらいで前後2週は準備やら始末で忙しかったから・・・

・・・・・考えるのをやめよう

 

「司令官!これしかなかったんですけどいいですか?!」

「なんでもいいぞ!川内も飲め!なに泣いているんだ!よーしカンパーイ!」

「ああちょっとね・・・ってこれウイスキーじゃん!こんなの飲んだら・・・」

「「スヤァ」」

きれいに飲み干して立ったまま寝ていた

 

それもそうだ睡眠時間が2~3時間の日々が一定以上続いたうえ、エナジードリンクがぶ飲み、すきっ腹ならいくら酒が強い人でもすぐにべろべろだろう。

 

「・・・龍驤なら起きてるよね・・・・・」

 

フタサンサンマル

二人は幸せそうに立ったまま夢の世界に旅立った

 

 

「・・・書類は!?」

飛び起き執務室に急ぐと吹雪もあわててやってきた

「司令官!書類はどうしました?!」

「わからん!昨日の記憶があいまいで・・・」

 

執務室に入ると一人龍驤が書類を運び出していた

「龍驤!書類の進捗は!?」

「なんや起きたんか。安心しぃや。昨日全部君たちが終わらせとるから・・・まずは二人とも着替えてこんか。」

見れば吹雪はどう見ても寝巻のかわいらしいラフな格好で自分はスウェットだった。時計は7時を指しており始業までには時間がだいぶあった

 

 

 

 

「そうかーなんというかあの時はもうすぐ終わるっていることで頭がいっぱいいっぱいで。」

「そうかそうか・・・さすがに直近のこと考えれば川内の気持ちもわかるな。」

「すみません龍驤さん・・・・夕食あたりから記憶がなくて。」

食堂で遅めに朝食をとりながら昨日の様子を聞いていた。

食堂担当の鳳翔さんには、まるで幽霊を見たがごとく驚かれ少し傷ついた。

 

「まぁ夕食を取りに来たあたりで吹雪はまだいけるってうわごといっとったしなぁ・・・」

「ひぇ・・・・・・」

「心配で執務室に顔出したら提督はうめき声をあげながら半笑いで仕事しとるし」

「うわぁ・・・・・」

 

二人でばつが悪そうな顔をするしかなかった。

「今日は資源調達に来る艦隊は2艦隊、融資の予定はなし、出立が4艦隊くらいや。びっくりするほどの閑古鳥やな」

「はぁ・・・毎日これぐらいならなぁ・・・・・・」

「ほんとですね・・・・・」

「・・・・・後ろになんか青い線が見えるくらい落ち込むのやめーや」

 

「まぁそんなわけで提督に提案なんやけど出立の見送りしたら宿泊棟のほうを視察しといてくれんか?」

 

 

宿泊棟

 

 

補給や遠征の艦隊が一時的に宿泊する施設であり、中はぶっちゃけリゾートホテルである。

駿河諸島の位置が大体年間通して温暖な気候なため遠征という名のバカンスに来る艦隊も少なくない。

さらにややこしいことにこの宿泊棟、実は半民営である。持ち主?俺です・・・。

はっきり言うとこの諸島全部俺の私有地(現在は国に借用という形態)です。

大本営から赴任するとき危険手当の要望をすると。

 

「じゃあその諸島をあげるよ♡」

 

なんてふざけた真似をしたせいで俺のものになりました。

安く済ませようという魂胆に腹が立ったから、念書を書かせまくって強制執行権の放棄や非課税措置やらむちゃくちゃな条件を付けまくったのにあっさりと飲んでくれた。

 

尤も資源があることが発覚した時には真っ青な顔で担当者が来たけどね。ざまぁ見ろってんだ。

おかげでプラントや宿泊棟の建設費は折半で運営は俺が行うことになった。

折半の資金はどうしたかって?資源の一定量の供給で決着がついた。一定量を超えると大本営から決まったレートで支払われる。(だがこれのせいで仕事が増えているという皮肉)

 

宿泊棟は遠征艦隊や補給艦隊以外にも、視察団(という名のバカンス)にも使われる。

又、自己負担すれば滞在日数を伸ばすことも可能だ。

 

 

おいでませ駿河諸島鎮守府(お仕事はできるだけ持ってこないでね♡)

 

 

「最後に視察したのいつだっけ?」

吹雪に聞くと手帳をすでにめくっていてだんだんと険しい顔になっていく。

「3か月くらい前ですね。」

「あっちゃー・・・・要望書たまってるな。」

「まぁゆっくり2日かければできるやろ。」

「ヒトゴー上がりがある程度約束されるって素晴らしぃー」

「ほんとですねぇ。」

(うちらは実質半日なんて口が裂けても言えへんな)

 

 

 

 

 

鎮守府がある島の隣の島に宿泊棟があり、移動には地下鉄か遊覧船になる。

遊覧船でのんびり行くのもいいが、今回は地下鉄でいくことにした。

「ほいで来たわけだが・・・」

「久しぶりですけどやっぱりなれないですね・・・」

ホテルに入ると、広いホールは大理石の床に高い天井、深紅のカーペットが敷かれ、待合のソファーはくつろげるよう落ち着いた色合いだが決して安っぽく感じさせないものだった。

一流ホテル並みの内装に毎回気が引ける。

 

設計者?

ヨウセイサンデス…

めっちゃノリノリで作ってたがどこの鎮守府でもそんなんかなぁ?

 

 

「すみません支配人はいますか?」

受付に聞くと、怪訝そうな顔をされた

「いらっしゃいますがどちら様でしょうか?」

「此処の鎮守府のものです。」

「!失礼いたしました!すぐに呼んでまいります。」

覚えられてないって・・・なんだかなぁ

「来ないからですよ・・・」

「でもここに頻繁に視察に来ても仕事サボってそうじゃない?」

 

そんな会話をしているうちに受付が戻ってきて、応接室に案内される。

開ければそこには、黒髪に巫女に近い服を着た艦娘が座っていた。

「榛名君悪かったね。突然呼び出しちゃって。」

「いえいえ。そろそろ視察に来る頃と思ってましたので準備は万全です。ところで・・・」

 

おしとやかに封筒を出すと微妙な表情をした。

「お体のほうは大丈夫でしょうか?」

「あー前にあったのって・・・」

「ひと月ほど前の月締めの書類を出しに行ったときに・・・その・・・・・吹雪さんと一緒に・・・・・」

「うん大体わかった。ぶつぶつつぶやくかうめき声ってわかった」

「すみません・・・」

情けなさに苦笑いしながら二人で軽い謝罪をして、要望書を見ると数枚しかなかった。

 

「こんだけ?」

あまりの肩透かしに目が点になった

「実はある程度選定をさせていただきまして見せられそうな要望書がそれくらいしか・・・」

「ちょっと見せられそうにないほうを見せて。」

 

見ればコ○ドームよこせだデ○ヘルはないのかとかの完全な下案件だった。

 

「特定できたら憲兵送ってやりてぇ」

「本当ですよ。一体ここをどこと勘違いしているのやら・・・。」

榛名は疲れの表情を見せた。

 

「マッサージのサービスがほしい、酒の種類をもう少し増やしてほしい、娯楽関連がほしい・・・いろいろ出てくるもんだね。でもこれくらいなら大丈夫かな。」

「こういう要望でしたら助かるんですけどね・・・」

「司令官これが最後です。」

「サンキュー吹雪ちゃん・・・・・これは!」

 

最後の要望書は自分が考えていたことにピッタリ沿っていたため即決した。

 

 

「別棟をつくろう!」

「「はい?!」」



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駿河諸島鎮守府の閑散期 その2

「というわけで別棟を」

「「どういうわけでですか?!」」

 

要望書には和室がほしいとの記載があった。

常々、大浴場や露天風呂などの温泉施設や中庭の日本庭園などに憧れてはいたものの、切っ掛けや機会に恵まれず(あんな仕事漬けじゃね・・・)手を出すことがなかったが今回の要望書で踏ん切りがついた。

 

「それにしたって・・・・榛名さん内部留保ってどれぐらいありますか?」

「え?あっ!とっとってきます!」

「さすが吹雪ちゃん」

「もう慣れました・・・こうなったら司令官は止めても絶対やりますもん」

 

遠い目をしてため息をついた吹雪にそんなことないと言いたかったが、ふと思い出してみると、このホテルを作った時も途中からノリノリで妖精さんに提案していた気がした。

というかしてた。(コノダイリセキノユカトカヨクネ?!デアカイカーペットニ・・・ ソレサイヨウナノデス!)

 

 

「持ってきました。」

反論をあきらめ、資料を開き主要な項目だけ確認すると、予算は十分に確保できることが分かった。

「よし 妖精さーん!誰かいます?」

「ヨンダデスカ?」

大き目に声を出しながら首を振ると、天井から一回転して着地どや顔でグリコポーズを決めた、手のひらくらいの大きさの小人がいた。

「実はカクカクシカジカシカクイムーヴってわけなんだけど簡単な工期や予算の見積もりできる?」

「タノシソウデス!スグトリカカルデス。」

いつの間にか4~5人が集まって会議をしていた。

不思議なもので、妖精さんは面白そうなこととお菓子には目がない。(どっかで聞いたことがある?キノセイダヨー)

「ダイタイ3、4ニチカカルデス。ズメントミツモリショハアシタモッテイクデス」

ありがとうとお礼を告げポケットから飴を人数分取り出し渡す。

妖精さんに頼みごとをしたら甘味を与える。

鎮守府共通の鉄則だ。(たぶん)

「アリガトウデス!」

ニコニコと足取り軽く部屋を出て行った。

 

 

 

「それでは提督、またお願いします。」

「榛名君も頑張ってね。それじゃ」

敬礼に答礼をしたのち、フェリー乗り場へと向かう。

地下鉄じゃないのかって?

働きたくないでござる。

「そんなことしてると書類が束じゃなくて山になりますよ。」

「まぁまぁ・・・ちょっとぐらいね。吹雪ちゃんもこっち来てるじゃない。飲み物でも買ってゆっくり帰ろうよ。」

「・・・今回だけです。」

そういいつつも、顔がほころんでいるあたりがなんともまぁ。

 

 

 

 

「・・・・・」

「・・・・・」

地下鉄なら5、6分の道のりだがフェリーに乗ると15分から潮流によっては30分かかるときがある。展望デッキの席に腰を掛け、俺は紅茶、吹雪はジュースを飲みながら、のんびりとしたひと時を過ごす。

先ほどまで、吹雪とは間宮の甘味についてや、最近あった出来事など、他愛もない会話をしていたが、ふとあることが気にかかってしまい少し生返事に近くなりかけた。

すると吹雪のほうも会話を振ってこなくなり沈黙が流れる。

ひょっとして機嫌を損ねたかと思ったがどうやら違う様子だ。

先ほどから指がせわしなく動いてる。

これはまさか・・・

 

 

「「なぁ吹雪ちゃん/あの司令官」」

 

 

タイミングがぴったりだった。

本来なら譲ろうとするが思い切ってそのまま言った。

 

 

 

 

 

 

 

「「何もしないのがもったいなく感じる(んです)」」

どうやら鎮守府にしつけられてしまったみたいだ。




初イベントでE1突破!乙作戦でなかなか使わされたせいでおそらく次からは丙一択になりそう・・・。
ご意見ご感想等お待ちしております。


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駿河諸島鎮守府の閑散期 その3

執務室に戻ると時雨がソファーに座っていた。

「提督。今日の書類だよ。」

いつもなら抱えて持たなければならないくらいの量だが、今日はほんの数枚だった。

「ありゃ?こんな少ないのか?」

「実は今日来るはずだった2つの艦隊のうち1つがキャンセルになってね。補給部も暇だからこっちで処理できる書類は全部処理させてもらったよ。」

「そいつは助かった!ありがとうな時雨。この枚数ならすぐ終わるよ。」

吹雪にお茶を淹れるように言おうとしたらすでになく、給湯室に行ったようだ。

 

 

「おっしできた。」

「お疲れ様です。司令官!」

「お疲れ様。提督。」

特に添削等もいらず、読んでサインするだけの書類だったのであっという間に終わった。

「これで今日は終わりだね。」

時間を見ればヒトゴーサンマルいくらなんでも終わるには早すぎる。

「そういうわけにもいかんさ。吹雪ちゃん書類でやらなきゃいけないのってある?」

「えっと・・・ちょっと待ってくださいね。」

吹雪が手帳を取り出し自身の机に向かう。

 

「58日後の艦隊大演習の補給関連の書類がありますね!」

「よし!じゃあ早速「君には失望したよ」・・・・時雨さん?」

「提督、吹雪。君達には失望したよ。」

机の前では有無を言わさぬオーラをまとった時雨がいた。

「いや・・・でもなぁ・・・終わるにはまだ早ぃ「今日は終了だよ」・・・ブッキー」

「時雨ちゃん流石にもう終わるのは「今日は終了」」

「今日は営業終了いいね?」

「「アッハイ」」

余りの勢いに思わず二人で返事してしまい。そのまま執務室を追い出された。

 

「・・・・どうするよ?」

「・・・・・・どうしましょう?」

趣味がないというわけではない。しかし、この中途半端な時間でできる時間つぶしの術は思いつかないのだ。

夕食まではまだ時間がある。

「久しぶりに間宮でも行こうか・・・・」

「そうですね・・・・」

 

「いらっしゃいませ・・・!」

「此処でも驚かれるか。」

「すみません!久しぶりにお見かけしたなぁと思いまして・・・」

「すまんすまん。鳳翔さんにも驚かれたからつい口に出ちゃったんだ。」

店内は誰もいない。あと一時間ほどしたら間宮は夕食で抜けてしまうため閉店するのだ。

メニューを開けば最中や羊羹の和菓子やケーキ、シュークリームなどの洋菓子もある。あべかわなんてのも書いてあり、思わず懐かしくなった。

「司令官はどうしますか?」

「ん?そうだなぁ。」

しかし、あべかわは今度にしてメニューを見る

「パフェにしようかな。」

「・・・夕食前に大丈夫です?」

「・・・・・まぁいけるら。」

吹雪はアイスを注文し、間宮に伝えるとものの5分もしないうちに来た。

「はや!」

「仕込んであった最後のなんですよ。あとこれはおまけです。」

別で、注文していないあべかわを持ってきた。

「いいのか?」

「ええ。この1か月前後お疲れさまでした。ちょっとしたお祝いです。」

いたずらっぽく微笑みながら。厨房へと戻っていった。

久しぶりの甘味・・・

思えばここ最近のおやつはエナジードリンクだった気がする。

・・・・・やめようあの地獄は・・・・・・目の前のひと時の天国を味わうのだ。

 

「間宮さんまだ大丈夫?って提督じゃん珍しい!」

「お仕事はもう終わりですか?」

パフェを半分くらい食べたところで古鷹と加古が入ってきた。

「ああ。時雨が書類をあらかた片付けてくれたおかげでな。」

「そういえば今日は一つキャンセルの連絡が入ってましたね。」

そういいながら俺たちの座っているテーブルに着く。

「提督大丈夫か?見ない間に結構やつれた感あるよ。」

吹雪の隣に座った加古は少し心配そうに顔を覗き込まれた。

「本当ですよ!今日いらしたときに久しぶりなこともありますけどやつれた感じにもびっくりしたんですよ。」

いつの間にか間宮がおり手痛いことを言われた。注文を聞き、再度厨房へと戻っていった。

「まっまあこれからしばらくは暇だしね・・・。無茶はしないよ。」

「とかいって1か月以上先の仕事しようとしてたんじゃない?」

「「ビクッ」」

「もー加古ったらまさか提督がそこまで自分を追い込むはずがないでしょう?・・・吹雪ちゃんやってないよね?」

「え?!あーえーそのー・・・」

とっさに俺に目を向ける

やばい

古鷹のほうを向けない。加古のほうに助け舟を求めると目をそらされた。

 

あっこれあかんやつ

「て・い・と・く?」

「アッハイナンデショウフルタカサン」

「まさか本当にやろうとして時雨ちゃんに執務室追い出されたとかじゃないですよね?」

「そそそそそのようなここことがござござございませんよ」

古鷹は怒らせると説教が長い。

なんとしてでもそれだけは避けねばならないが、吹雪は沈黙、加古はわれ関せずというか下手すると加勢の可能性あり、ならばこれは最後の希望は間宮さんが注文したものを持ってくることだ!

「提督さん?こっちを見て言ってください?」

ダメか!

 

そうと思ったが視界の端に間宮の姿が見える。

おお!女神よ!

そう内心ガッツポーズをしたが、どうやら様子が変だ。

こっちに来るわけではなく何か手をプラプラさせている。

加古が席を立った。

これはまさか・・・・

 

(これ注文の品よ。)

(ありがとうね気を使ってくれて。)

(いいのよ。たまには自分のことに気付いてもらわなきゃ。)

 

 

 

 

 

神は死んだ

 

 

 

 

 

 

 

「古鷹ーそろそろやめときな。」

「加古からも何かないの?本当にもう!」

「提督も吹雪も、自分の体調にさえ気を付けてくれればいいからさ。」

結局、閉店10分前まで説教が続き、ようやく加古から救いの手が差し伸べられた。

「んー・・・とりあえず自分の体だけは気を付けてくださいね!」

「「はい・・・」」

「それにさ。次こういうことがあったら強制的に隣の島で休暇を取ってもらえばいいんだよ。」

おいこら待て。今さらっととんでもないことが聞こえたぞ。

「その手がありましたか!では提督に吹雪ちゃんそれでいいですね?」

「「そっそれは流石にまz」」

「い・い・で・す・ね?」

「「アッハイ」」

俺と吹雪は赤べこのように縦に首を振った。




なんでか知らないけどデータが吹っ飛び急遽書き直しました(笑)
ちなみにあと1話で閑散期シリーズは終わりの予定です。(日常の倍って…)


E-2突破!・・・・丙ですけどね。
弾薬が2万前後しか備蓄してないのに8000吹っ飛んで禿げそう・・・。


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駿河諸島鎮守府の閑散期 その4

今回のはお話しメシ(酒)テロです。


久しぶりに温かくおいしい夕食を食べ、風呂にもつかり自室に戻ると20時になっていた。

どうせならもう少し羽を伸ばすか。

そう思い自室を出てあるところへと向かう。

 

 

甘味処間宮の隣には、もう一つ建物がある。

鳳翔さんがやっている小料理屋だ。

軍艦だったころの記憶で料理がうまい艦娘というのは何人かいる。

鳳翔さんもその一人であり、かつそれで店をやりたいという本人の希望があったため許可をした。

仕事が少なければいつも来るのだがここ1か月前後はとんでもない忙しさだったためこれなかった。

 

 

「いらっしゃいませ・・・提督さん!今朝はすみませんでした。」

「ああ。別に気にしてないよ」

「鳳翔さんえらい顔やったもんなぁ。提督のこけた顔見て驚いたんやろ?」

店に入るとカウンターには先客がいた。

「龍驤もいたのか。」

「なんや?おっちゃ悪いんか?」

「んなわけないだろう。駄弁り相手が確保できて安心したとこだ。」

龍驤の隣に腰を掛ける。俺は一人で酒が飲めないタイプだ。

一人酒をやると大抵2、3杯でやめてしまう。

「朝は本当に驚きましたよ?ちゃんと食べてました?」

「あーそのことはもう勘弁してくれ・・・」

「古鷹にでも見つかったんか?」

「・・・・・察しろ」

若干ぶっきらぼうに言うと、おーこわと茶化しながら詮索はやめてくれた。

 

「ところで提督。以前のものでいいですか?」

「そうだな。そうしてくれる?ビンは4号でいいや」

「なんや?えらい豪華なもんでも出てくるんか?」

「そういうわけじゃないが。まぁ日本酒は豪華かな?」

「提督さんお待たせいたしました。」

持ってきたのは、きゅうりとたくあんの漬物の盛り合わせと枝豆の小鉢だった。

枝豆は飲む前に食べておくと胃を保護してくれて酔いにくくなる効果があるから、俺はいつも飲む前に食べるようにしている。(漬物はただ単に好きなだけ。たくあんおいしいです。)

 

「こうやって気を使うのに何であの時は、ウィスキーを一気なんてしたんやろなぁ?」

「どーもわからん。たぶん深夜テンションだろ。あの時は2徹してたし。」

「川内とうち二人で運ぶの大変やったわ」

「おごってやるから許してくれ・・・。」

「サンキューやで!でもこんなことはなるべく無いようにしてな?」

念押しされわかったよと返事をする。

 

「それにしても今日はついてるな。提督チョイスの日本酒が飲めるなんて。」

「そうなのか?」

「鳳翔さんとこにおいてある日本酒は種類が多すぎてどれがうまいのかわからへんのよ。提督の日本酒のチョイスに間違いはないって噂やで。」

実は鳳翔さんのところには、日本酒は全国の有名どころは全部置いてある。(マイナーは自分が気に入ったやつのみ)

「そんな噂があるのか?確かに好きだけどさ。」

そんな噂がついているとはつゆほどにも思わなかった。

「やっせーん!」

話を続けようとしたらいつものこの時間になると来る乱入者が突入してきた。

「おう!じゃあこの書類を。」

「夜戦ばっかりじゃ疲れちゃうもんね!」

「うそだよ。」

「あの川内から夜戦を断らせるのは世界広しといえどもうちの提督くらいやな。」

「褒められてるのか?」

正直けなされたとしか思えないが・・・まぁ置いといて

「川内も昨日は世話になったし、出してやるから付き合ってくれ。」

「ほんとに!」

「しかも提督チョイスの日本酒やで!」

「やったー!」

うきうきとした顔で俺の隣に座る。

鳳翔さんに頼み一升瓶に注文を変更した。

 

「押しかけようとしたら電気がついてないからこっちにいると踏んで正解だったね。」

「時々夜戦って言って突っ込んでくるがよく来るな?こっちに来てもほぼ確実に書類との夜戦しかないのにな。」

「もー!察してよ!」

「?」

むくれているが心当たりがない。

「提督と吹雪が心配なんだって!どうせ今日早上がりしてるのは時雨が半ば強制的に追い出したからでしょ?」

「今日は港のほうから来とったからなぁ。大方、船の上で二人して仕事のことでも浮かんで先の書類を片付けようとして時雨と古鷹に絞められたんやろ?」

・・・・・・盗聴器や発信機でも俺についているのか?

「図星でしょ?みんな長い付き合いなんだから顔にそっくりそのまま書いてあるよ。」

「さらにさっきの沈黙は盗聴器や発信機でもついてないか一瞬考えたやろ?」

「お前らみんなエスパーか!!」

「「わかりやすすぎ(や)るんだもん」」

・・・・・・そんなでてるかな?

意味はないが顔を撫でてみるがわかるはずもない。

 

その後は他愛もない会話に切り替えた。

絞られたことなんて思い出したくもない・・・。

「お待たせいたしました。」

出てきたのは、揚げだし豆腐としめさば、そして酒は磯自慢だった。

磯自慢はフルーティーで飲みやすく、初めて飲む人にもお勧めできる日本酒だ。

そして、俺が特に好きなのが揚げだし豆腐だ。

だしを吸った豆腐が実においしい。

さらに、残っただしと大根おろしでいっぱい飲むのは最高級のうまさだ。

すいすいと酒が進む。

「なんや提督の杯あいとるやん!川内ついだれや」

「やっせーん☆」

なんだその掛け声

・・・・・まぁ楽しいからいいか




メシテロになっているか怪しい・・・w
さて、今回で閑散期のシリーズは終了です。
次はまたちょっとだけ忙しい日常に戻っていきます。


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駿河諸島鎮守府の裏仕事

ついに7話にしてようやく提督の名字と階級が判明!
(おそいよ・・・)


「はい!こちら駿河諸島鎮守府です!ああ!えっはい・・・はい・・・少々お待ちください。司令官お電話です。」

艦隊大演習の書類から目をあげると、吹雪が隣の机で顔を顰めていた。

「緊急の融資だそうです。それも今日中に会談したいとのことです。」

「えー?今日って会談3件入ってないっけ?」

カレンダーには3件事前に予約が入っていた。

「どこの鎮守府?」

「房総鎮守府なんです。」

「・・・・電話変わるよ」

 

『もしもし?駿河諸島鎮守府の耳本です。』

『房総鎮守府の初霜です。融資の件なんですが・・・』

『・・・どれぐらい必要ですか?』

『燃料、弾薬4万と鋼材が10万です。』

『大本営からの許可証はありますか?』

『ええ・・・お願いできますか?』

『それは会談の時にしましょう。16時にお越しください。では』

 

通話を終了すると吹雪は不思議そうな顔をしていた。

「会談するんですか?」

「今回は別件かもしれない。」

顔を引き締め返答をすると吹雪は事情を察したらしく、鎮守府のある記録を取りにいった。

 

「ふむ・・・やっぱり入れ替わっているか。」

俺は鎮守府の人事記録を吹雪から受け取り、閲覧していた。

「初霜ちゃんどうしちゃったのでしょうか・・・」

実は房総鎮守府はうちの鎮守府と結構深い交流があり、提督も気のいいお爺さんだった。

しかし、ここ最近の忙しさで人事の変更を見ておらず今頃になって確認をしたというわけだ。

結論を言うとおじいさんの提督は退役してしまったらしく、代わりに若狭鎮守府から中堅の提督を異動したらしい。

 

初霜は、房総鎮守府の遠征のとりまとめ役であり秘書艦でもあったため、吹雪とはよく話をしたり、休日(うちにもちゃんとあるからな?)を合わせてほしいといった要望ももらったことがあるほどだった。

そんな彼女が内に電話をよこすときにガチガチの敬語を使うはずがない。いつもなら吹雪と多少話をしてから電話を替わるのに、それすらもない。

何よりも、過去の台帳を見ても鋼材の不足が突出して多かった時というのはある事やっていた鎮守府しかない。

絶対に何かある。そういった確信を持った俺は電話を取ってある予約を取り付けた。

 

 

 

「失礼します。」

「どうぞ。」

特にややこしい話もなくすんなりと会談を終わらせ、執務室で待っているとノックとともに久しぶりに聞く声がする。

扉の先には久しぶりに見る初霜の姿があった。若干やつれた雰囲気がある。

「ひさしぶりだね~。吹雪ちゃんにはあった?」

「いえ・・・その・・・」

「・・・まぁそういうプライベートは置いといて書類の確認をさせてもらえるかな?」

そういって書類を受け取ると確認を始めた。

対面してもなお日常会話を避けるということは嫌な予感が強くなる。

 

「確認しました。明日の明朝出発でもいいですか?」

「いえ!その・・・無茶なことは承知ですが今すぐに出発できませんか?」

「さすがにそれは・・・初霜ちゃんの頼みだし急ぐけど夜間出発でいいかい?」

わざと夜間を強調すると顔に明るみを帯びた。

「承知しました。本当にありがとうございました!」

退出した後に書類の中からある封筒を開く。

「かわいそうになぁ・・・。」

「初霜ちゃんどうでしたか?」

入れ替わりに吹雪が入ってきて心配そうに尋ねる。

「大丈夫・・・とはまだ言い難いかな」

吹雪に封筒の中身の便せんを見せる。

「なんですか?この手紙は?」

「初霜の決死の告発状だ。房総鎮守府は人身売買を行っているというね。口で言わなかったところを見るとおそらく盗聴器かなにかもつけられていたのだろう。」

中の手紙は衝撃的なものだった。

建造した艦娘を即解体し人に戻し、裏で流すというものだった。

艦娘は誰もがかなりの美少女だ。こういうことはするのは当然軍規で禁止されているのだが、裏に強いコネさえあればなんとでもなる。

 

そこでうちの鎮守府だ。

ほかの提督には知らされてないが、秘書艦や主要な艦娘には知らされている提督の不正を告発する場所。

それをうちでは兼ねている。

そのうえ俺は監察官としても大本営には登録されている。

監察官といっても、出向いて鎮守府のチェックは忙しくてできないため、補給に来た艦娘の状態から探るだけなのだが。

ここまで聞くとなんでそんな重要な役職を占めているかという疑問がわく。

 

 

答えは至極単純に、一人で力を持っていて圧力に絶対屈しないから。

軍の階級ならば一介の中佐風情だが、俺は資源会社の社長ということにもなっている。

もしこちらの機嫌を損ねたり、危害を加えて補給停止させられたらどうなるか。

そういった思惑でだれも手が出せないのだ。

俺個人がすでに大本営の勢力の一角であり、また俺の性分であまり派閥に興味がなく(ぼっちいうな)属してなかったら大本営から任せられた(押し付けられたともいう)。

 

 

 

「そんな!じゃあ初霜ちゃんは!」

「大丈夫大丈夫。うちの夜大好きな子が何とかしに行ってくれるって。」

先ほどの電話は川内にかけており、輸送船に紛れて諜報活動に向かった。

待ちに待った夜戦だぞと伝えたら『やったぁ!書類以外の夜戦は久しぶりだ!』

そんなに頻繁にあっても困るんですけどねぇ・・・・

 

 

2日後

 

 

「提督、報告書だよ。」

結果は真っ黒。

人身売買だけでなく夜伽の強制など、ブラック鎮守府の典型例だった。

おまけに、バックについていたのは大本営の中将。

挙国一致を!なんて会議ではお題目のように叫んでいる強硬派だ。

お前が一番してねぇだろと突っ込みたくなったがぐっとこらえて大本営に電話をかけ、軍法会議の準備を進める。

 

 

 

この一件で中将は階級剥奪のうえ日本国外への追放、房総鎮守府の提督は終身刑が決まった。

 

 

 

 

「え?房総鎮守府の提督やってみないかって?しかもこっちと兼任?するかバカヤロー!」

ちなみに2日ほど貫徹するぐらい書類が増えました。




うちの場合はブラック鎮守府にかかわる時は、こういった感じです。
現地などを見ることは基本無く、艦娘の状態をみて川内を派遣→調査その結果次第で決まります。

次はまた平和?な話に戻します。

E-3丙突破!
山風が攻略時に出たときはひっくり返りました(笑)
ああいった子はぜひとも出したいですねぇ・・・・。


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駿河諸島鎮守府の旅館 その1

「テイトクサンテイトクサン」

今日も今日とて書類整理をしていると、袖をかすかに引っ張られる感覚があった。

見ると妖精さんが一生懸命そでを引っ張っている。

「おやおつかれさん。なんか報告かい?」

ほっこりしながら声をかけると姿勢を正し敬礼をした。

「ゴチュウモンノタテモノガデキタノデス!」

そろそろできるころ合いだと思ったが今日だったとは。

書類の残量を見ると今日処理しなければならないのは回ってきそうにない。今やっているのも月締めの決算書をやりやすくするためのものだ。

「そっか~相変わらず早いね。」

そっと頭を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細めた。

「報酬については工廠に運ばせるよ。輸送船が入ってくるのがちょうど明日だからみんなに伝えてくれる?」

「リョウカイデス。サッソクシサツイクデス!」

「そうだな。ちょっと待ってくれ吹雪を呼ぶから。」

内線で吹雪に駅で落ち合うことを伝え妖精さんと一緒に向かった。

 

 

 

「コッチナノデス!」

駅から出て5、6分でホテルに着くがそこから妖精さんに、右に行くように指示された。

以前来たときは、閑散期に当たったため土産物屋や食事処などはガラガラだったが、今日はそこそこの賑わいを見せている。

「ツギヲヒダリデス!」

曲がると派手な飾りはないが、玄関口は広く、3階建てで大正時代を思わせる外観となっていた。

奥には従業員らし着物を着た一人が、こちらに気付いて深々と礼をしている。

「・・・・すごいですね・・・・・・」

「こっちもホテルと一緒で飲まれちゃうよ・・・・・」

「提督お疲れ様です。」

従業員と思ったのは榛名だった。

なんでも着物も妖精さんが用意してくれたものらしい。

「和服の着付けまで妖精さんがやってくれたんですよ。」

「そっか。それにしても上品な着物だね。よく似合ってるよ。」

「ありがとうございます!」

「早く行きましょう司令官。」

吹雪がせかしたわけは、妖精さんはもうどんどんと進もうと中に入ってしまっている。

「ちょ!まって!」

 

「ここが宴会場で同じ大規模のものが5つあります。小さい宴会場は・・・」

旅館の中を榛名に案内してもらいながら、妖精さんに手直しがいる場所があれば伝えていく。

といっても物品の入れ替えくらいだから特に重要なことはなくあっという間に3階についた。

 

「ここには特別室が5つと提督さんのお部屋があります。」

「あれ?そんなの設計図にあったっけ?」

「イツモオカシヤオモシロイコトヲテイキョウシテクレルオレイデス!」

なんとうれしいことか。

案内された部屋は二つあり、一つが広さが10畳ほどで広すぎず狭すぎずのちょうどいいサイズだった。

装飾は他の客室と明確に差があり、気合を入れて作ってくれたのをひしひしと感じる。

窓からの景色はオーシャンビュー・・・あんまりここじゃ珍しくないかもしれないがいつもと違った方向だと変わるものだ。妖精さん曰くぎりぎり八丈島の小島が見えるはずといっていた。

もう一部屋は6畳ほどで窓の景色は森林だった。

うっそうと暗いわけではなく海側と比べると若干薄暗く昼寝をするにはもってこいの部屋だった。

しかも、露天風呂までついていた。そこまで広くはないが足を延ばしても2人くらいは入れそうだ。

「ここはいつも開けておきますのでお疲れになったときにどうぞ。」

妖精さんや榛名の厚意を無駄にしないためにも、気分転換にたまに来るとしよう。

 

「さて、次は提督肝いりで作ったお風呂なんですが・・・・多すぎません?」

「サスガノワタシタチデモビックリシタデス」

風呂は全部で4つ。一つは地下にある総ヒノキ張りで一番広く作られている。

2つ目は一階にある内湯が総ヒノキ張りで露天が岩風呂として森林に面しているため鳥のさえずりを聞きながら入ることができる。

3つ目は2つ目の隣にある個室の風呂。

それぞれ露天と内湯が選べるようになっている。

そして俺が一番口を出したのがこれから行く4階にある風呂だ。

「内風呂はヒノキばかりじゃ飽きるから石造りにしてある。そして露天は!」

扉をあけ放つと一面の海というわけではなく港やさっき通ってきた道を一望でき鎮守府側の島まで見える。

反対は、この島ができたときの火山が見える。今は死火山となっているため上ることもできるが山道はまだ整備していない。

「あれ?」

整備事業も始めなきゃなと考え始めたところで湯気でよく見えなかったが、人影が見えた。

そういえば榛名が見学している人もいるといっていたが脱衣所には誰かが入っている雰囲気はなかった。

「ていt」

ぴしゃ!

「・・・・・」

「司令官?どうかしましたか?」

「・・・・・・・・・ここの設計妖精は?」

「ワタシデス!」

「提督さん急に閉めてどうしたの?」ガラッ

 

「なんで混浴になってるんだ!!!」

古鷹が入ってくると同時に妖精さんに対して怒った。

幸い巻いていてくれて助かったが一瞬女風呂に来てしまったのではないかと焦った。

細かい実況?するわけないだろ!

「ダイジョウブデス!ジカンデクギッテアル。ダイジョウブ!」

「古鷹どうしたんだい?」ガラッ

「そおぃ!!!!」

よりによって俺に気付いてなかった時雨は古鷹に隠れて見えなかったがおそらくタオルを巻いてなかった。

慌てて廊下まで出ると龍驤がびっくりした顔をしていた。

「なんや!?提督はんか。なんかえらい顔色しとるけど大丈夫か?」

「はぁーはぁ・・はぁーー・・・・。ちょっと・・・想定外のことがあってな?」

「混浴のこと視察の時に聞いとらんかったんか?」

「オモシロソウナノデイイマセンデシタ!」

「このやろう!」

もういろいろとつかれたため外のソファーで待っていると古鷹と時雨が加わったメンバーで来た。

 

「提督?さっきはごめんね?」

「提督さん大丈夫ですか?」

心配そうに顔を覗き込んでくるが先ほどのことを思い出しそうになり目を若干そらして大丈夫と答えた。

「見苦しいもの見せちゃったかな?」

「時雨隠さずに遭遇しちゃったんか?」

「うん。まぁ提督なら大丈夫かなって。」

勘弁してほしい。いやそのね?違うんですよ?彼女らは女性だ。それなりに膨らみというものも出ているのであって。私は男であって。男には反応したりするものがありましてね?

「というか俺の性別わかってる?」

「「「「「男?」」」」」

「君らは?」

「「「「「艦娘?」」」」」

「いやいやいや!女性でしょ!」

「でも提督ならそんな邪な目で見ないでしょ?」

「そりゃそうだけどさぁ!俺だってねぇ!・・・・はぁもういいや」

どっと疲れが押し寄せたのか戻って仕事をする気力も失せてしまった。

「司令官?肩を貸しましょうか?」

吹雪の申し出に甘え、そのまま部屋に泊まることにした。

 

 

 

「そういや吹雪ちゃん」

「なんでしょうか?司令官?」

部屋にテーブルを出したのち休んでいると吹雪がお茶を淹れてくれた。

淹れ方は俺好みのを出してくれて、リラックスできるが・・・。

「いろいろやってくれるのはうれしいけど自分の部屋に行かなくていいの?」

「いやですね司令官。ここに泊まるんですよ。」

「Pardon?」

思わず英国で生まれた子みたいになった。

「ですから私は今日、司令官の部屋に泊まります。」

「oh・・・じゃなくて!」

 

どうしてこうなった




E-4輸送でまさかのお祈りをすることになるとは・・・。
支援艦隊のコストが重すぎて辛い・・・。
E-4のゲージ削りが怖くてできない(笑)


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駿河諸島鎮守府の旅館 その2

誤字の指摘ありがとうございました!
早速適応させていただきました。


今は頭を休めたいため策はあとで考えることとして・・・

「あっ・・・忘れてた。妖精さーん」

「ナンデスカ?」

「1週間おやつ抜きね。」

この言葉を告げた瞬間、この世の終わりみたいな顔をしていた。

「ナンデデス!?ナンデ!?」

「いや混浴作った罰だよ!いくら何でもやりすぎだ!」

「オネガイデス!ナンデモシマスカラ!」

「ん?今何でもすr「ショルイシゴトイガイ」・・・・チッ」

「司令官もその辺で・・・。」

「・・・三日に減刑してやろう」

「カンシャノキワミ・・・」(オニ!アクマ!チヒロ!)

若干不服そうだが納得し哀愁漂う背中を見せながら廊下へと消えていった。

しっかりお灸は据えておかないとまたやられかねん。

そんなこんなで畳に寝っ転がっていると急に眠気が差してきた。

いくらエナジードリンクでごまかしていても、リラックスしているときに日ごろの疲れはどうしても出てきてしまうものだ。

時刻はヒトゴーマルマル、食事まで若干の余裕がある。

仕事のことを口に出したら最後、どうなるかわからない。(主に時雨や古鷹に聞かれたら・・・・というか吹雪以外の誰に聞かれても密告されそうな気がする)

「お疲れですか?司令官?」

「なんだかな・・・ちょっと寝るよ・・・」

「はい!おやすみなさい。」

部屋の隅にゴロンと横向きになるとイグサの香りがさらに強くなり、眠気が強くなり目を閉じた。

 

 

どれくらいたっただろうか

うっすらと目を開けると、部屋は少し薄暗くなっており、隣の部屋は西日がうっすらと差している。

もう夕方か。

湯呑は片づけられており、視界には吹雪がいない。

少し出ているのかと解釈し、海のほうを見てもう少しまどろもうと寝返りしようとした時、ふと気が付いた。

柔らかい

そもそも腕枕で寝たはずなのになぜか両手がつかえる。

仰向けになると予想は当たった

「司令官起きましたか?」

「ああ・・・え?・・・・ああ?」

本を読んでいたらしく、俺が寝返りをうった時に本をどかすと吹雪の顔がドアップで映る。

寝起きだからか頭の回転が追い付かず、考えようとしたときに部屋の壁かけ時計がヒトロクマルマルを告げる鐘を鳴らした。

「司令官食事の時間ですし食堂に行きましょう?」

「へ?ああそうだそうだ!行かなきゃ!」

というかまだ打開策考えてなかった!

少し寝すぎたと先ほどの疑問は暁の水平線に放り投げ、向かう間必死に考えた。

若干お互いの顔が赤いのは夕焼けのせいだと自分に言い聞かせながら。

 

いい案も思いつかず、食堂についてまず目にしたのは

「・・・マグロ?」

「この間の緊急融資のお礼だそうです。この時期は大湊のマグロが季節なんですよ。」

間宮さんが腕をたくし上げ。マグロ包丁を研いでいる。

三陸鎮守府の電ちゃんか。遠征で来るたびに何かしらのものを持ってきてくれているが・・・。

今度この旅館のフリーパスでも進呈しようかな。

「って間宮さんマグロの解体できるんですか?!」

よくよく考えたら女性にできるものなのか?

「あら?給糧艦よ!できて当然です。ささ、席についてください。解体ショーを始めますよ。」

これ以上ない説得力のある言葉を言われ、向かうと丸テーブルに先ほどのメンバーが座っていた。

ちなみにだが鎮守府を空けるわけにはいかないので川内、加古は残ったらしい。

「さてそれでは始めますね!まずは・・・・」

圧巻の包丁さばきでマグロをばらしていく。(当然解説付き)

 

 

筆舌に尽くしがたいので割愛・・・(そこ!手抜きとか言わない!)

 

 

「あぁ食べた・・・」

「結構量ありましたね」

和懐石(+マグロの刺身)を食べ部屋でお茶をしばきながらまったりとする。

休みにここに来るのはいいかもしれない。久しぶりに昼寝もできたし・・・・。

さっきのことは忘れろー忘れろー・・・よし!のんびりしているとやっぱり思い出すな!

「温泉はいるか~」

「そうですね~」

腰を上げ浴衣を取り出し、室内の風呂へと向かう。

 

「ふぅー!」

風呂にゆっくりつかると日頃の疲れも取れるというがまさしくその通りだ。

毎日書類を見ている関係か、肩が最近重い。

深めにつかりのんびりと空を見上げれば満点の星空が見える。この辺りは街灯も少ないため、よく見える。

今日は海も凪いでおり、はるか彼方に灯台の光だろうか?水平線のぎりぎりのところにちかちかとした明かりが見える。おそらく妖精さんが言っていた八丈島の灯台の一つだろう。

「静かだなぁ・・・」

「ほんとですね・・・」

吸い込まれそうな真っ黒い海だが不思議と恐怖は感じない。

灯台の明かりもそうだが星々の明かりが海と合わさって自分が夜空にいるような感覚を思わせる。

と、そんな感傷的になっているときに違和感を感じた。

「・・・・」

「・・・・」

「・・・吹雪ちゃん?」

「どうかしましたか?」

「どうしてここにいるのかね?」

「入るかって誘ったのは司令官じゃないですか」

「ちがうよ!?どう考えても一緒に入ろうなんて言ってないよね?!」

一体全体うちの者たちはどうなっているのだろうか・・・。

なるべく視線をそらすようにしてお風呂をしのぎ(背中は押し切られて流された)布団を敷いて寝た。

昼寝をしていても疲れが取れたわけではないのですぐに眠気が来る。

日ごろの疲れから、吹雪は隣の布団で寝息を立てていた。

 

「なんか大事なこと忘れてるような・・・?」

考えようとしたが眠気に勝てずそのまま眠り始めてしまった。

 

 

吹雪にいかにして個室に移ってもらうかを考えていたことを思い出したのは、朝目が覚め、吹雪の幸せそうな寝顔を見たときであった。




E-4・・・もう二度と行きたくない・・・・。弾薬がとろけた!
E-5はギミック二つもあるらしいしもうつらひ・・・。


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駿河諸島鎮守府と大本営

今回はやたら目ったら長く日常話でありません。


大本営

 

軍の総括本部であるが今はもっぱら海軍の統括組織である。

月に一度ある大本営会議には基本出席しなければならないのだが特例で出なくてもいい鎮守府も存在する。

当然うちも指定を受けてはいるのだが、今回はそれを抜きにしてなるべくであれば参加してほしいとの要請を受け吹雪と加古の3人で大本営にいた。

できればこんな権力争いの場所に来たくはないのだが、どうやらうちに関係がある事が一部の議題にあるらしい。

吹雪はこういった会議には必ず連れて行っているため場慣れしているが、加古は珍しく目を見張らせあたりを警戒している雰囲気だ。

そうしてもらわなければ困るなぜならば・・・

 

「これはこれは耳本殿。おめずらしいことで・・・」

「なに!耳本中佐が見えているのか?!ご挨拶をせねば!」

「駿河殿!先日の臨時融資の件についてお礼を言いたく・・・・」

「耳本中佐!臨時融資の件でお話ししたいので昼食でも・・・」

 

こうなる

ちなみに駿河殿は俺の鎮守府が駿河諸島だかららしい。

おっさん爺さんに囲まれてもみくちゃにされるのが嫌だから、緊急の用がない限りは絶対来ないのだ。

 

 

 

「帰りてぇ・・・・」

「司令官・・・気持ちはわかりますがこらえてください。」

「提督もってもてじゃん」

「加古、お前は今日一日御用聞きな」

加古は悪かったと泣きつくがさすがに許さない。

いちいち献上品やら会食の誘いなどを受けたくないのだ。

加古は俺の態度が変わらないのに気付きあきらめて扉口で対応を始めた。

「まぁ大本営に同行するメンバーは一回は経験するんだけどな」

吹雪はもちろん川内、龍驤、古鷹、時雨、榛名全員この洗礼を経験済みだ。

ちなみに一番うまかったのは川内で、一触即発まで険悪に持って行ったのは、意外や意外古鷹だったりする。

え?意外じゃない?最近俺もそう思う・・・。

 

「提督~来客だよ~」

「って全部断れって言ったじゃん!」

「いやでもさぁ大湊の電だよ?」

加古が通した相手は以前うちの鎮守府に会談しに来た際、俺を気遣ってくれた艦娘だ。

「そっか。悪い悪い通して大丈夫だよ。」

 

「お久しぶりなのです。」

「久しぶりだね。この間はマグロありがとうね。」

「いえいえ。・・・よかったのです。」

「何がですか?」

「以前お会いした時よりもだいぶ顔色がいいので。」

「あーそれはその・・・。最近は大規模作戦がないおかげでそこそこの仕事量に落ち着いているんだ。」

「そうですか!それはよかったのです。」

「心配してくれてありがとうね。これ気持ちだけど。」

そういって旅館のフリーパスを渡す。

「これは駿河旅館のフリーパス!こんな高価なもの受け取れません!」

「えっそうなの?」

「司令官・・・。料金表の書類ちゃんと見ました?」

「えー・・・。まだかも。今日の決裁書類に混ざってるかも」

バッグをあさりレンガブロックぐらいの厚さの書類の束から探し出す。

「あった!どれどれ・・・。1泊最低で3万って・・・。」

最高額は見なかったことにした。最低ランク一か月ちょいが飛ぶってどんだけの部屋だよ・・・・。

あっ加古さん後生ですから古鷹さんに仕事持ち込んだなんて言わないで!

「でもそれを言ったらマグロだってかなりするんじゃない?」

スマホで電話をするのをやめてくれた加古が、ふと思い当たったように言った。

「それは・・・・」

「まぁうちにいつでも遊びに来てって意味合いだしね?仲のいい友達とでも気が向いたら来てよ。」

「そういうことでしたら・・・・すみませんこんなに高価なものをいただいてしまって・・・。」

「いーのいーの。何かあったら相談して?うちも何か困ったことあったら相談するからさ。」

 

電が出て行ったあとすぐに会議が始まるとの放送が入り、会場へと移動した。

大きなホールには大量の傍聴席がありすでに大半の提督は着席をしていた。

隅っこの人がいなさそうなところへと移動しようとすると係員に最前列のほうへと案内された。

最前列は発言者のみが座ることになっているため、何かしらの発言の機会があるということだ。

 

「それでは開会いたします!」

 

うちの鎮守府には関係のないことが多く、あってもそれは書類だけが回ってくるような案件であり、特に発言することもなく最後の議題になった。

ステージの壇上に上がったのは俺と同じかそれより下の若い提督だった。

肩章を見るに少将。

俺ぐらいの年であればエリート街道を歩いている人間であるというのが分かる。

 

「わたくし須下が提案いたしますのは先日の房総鎮守府での一件の判決の見直しです」

 

どうやらエリート様はろくでなしのようだ。

「罷免する際に証拠となったのは、艦娘が撮った写真や証言のみであり、証拠としての信憑性は薄いと思われます。さらに、先日罷免された二人は、国家への功労が多く罷免は妥当ではないと考えます。それに伴い、今回立件に至った証拠提示を行った駿河諸島鎮守府の耳本中佐の考えをお聞きしたい。」

・・・なるほどそういうことで大本営に呼ばれたわけか。

まったく胸糞の悪くなる要件だ。

会場では少将への肯定のヤジがちらほら飛んでいる。

壇上に進み出てマイクの前で一例をし発言をする。

「駿河諸島鎮守府の耳本です。わたくしがお答えする前に須下少将にお聞きしたいことがございます。なぜ艦娘が撮った写真や証言の信憑性が薄いのでしょうか?」

「鎮守府という閉鎖空間において提督以外すべて艦娘が大半であるためです。証拠というのは第三者であるものが集めてこそ信憑性があるということです。」

「では我々は第三者でないとお考えですか?」

「艦娘が撮った写真ですから信憑性は薄いと何度も申し上げています。監察官や他の提督、憲兵が撮った写真でないと証拠としては足りえないと思います。艦娘同士が共謀している可能性がありますから。」

「なるほど。では艦娘同士が共謀してなぜ困るのですか?」

「国家に対する反逆でしょう?今回の件も艦娘が謀ったとしか思えません。兵器ですし一回解体してリセットしたほうがよろしいでしょう。」

勝手にべらべらと先のことまで述べている。

自分の言うことは正しく、自分のいうことは皆縦にうなづく。

典型的な勘違い野郎だ。

軽蔑した目線を向けながら反論する。こういう輩は徹底的につぶすのが一番いい。

「左様ですか。ではお聞きしますが少将殿にとって艦娘とはいったいどのような存在ですか?」

「兵器以外の何物でもないでしょう?おぞましいことこの上ない存在ですよ。」

「・・・・私は彼女たちは特殊な兵器を使用できる唯一の人間と考えております。ただの兵器に感情がありますか?銃が笑いますか?刀が怒りますか?誰かを思いやったり心配したりしますか?」

「それは・・・」

少将は次の句が出ない。

「私としては少将のほうが人間ではないと思います。喜怒哀楽がある艦娘を平気で解体しろなどという様はもう人を殺すことに対して抵抗を持たない無差別殺人者と同じ存在としか思えません!少将こそ国家に対して反逆の意思があるとみられてもおかしくない。国家のために尽くしてくれる艦娘に対しそのような感情を抱いているあなたは反逆者も同然です!」

「心外だ!どういう神経をしているんだ!」

「では先ほどの質問に対して答えられますか?」

「・・・・・」

必死の形相で考えているようだが出てこない様子だ。

「証言どうこうから脱線は致しましたが、先日罷免された二人の見直しはなしということでよろしいですね?」

少将は何も答えない。

あれほどざわついていてヤジが時たま飛んできていた会場も水を打ったかのように静かだ。

壇上から降り席に着くと吹雪がそっと手を握ってきた。

「ありがとうございます。」

一言そういった。

 

「提督もあんなに声張り上げるんだ~」

「やめてくれ・・・心臓が破裂しそうなくらい緊張してたんだぞ」

「うっそだー」

加古は信じられないといった顔をしていた。

実のところあんな大勢の前で発言をすることは大の苦手だ。

今回はあまりにもむかっ腹に来たため、緊張よりも怒りが来てたためあんな啖呵が切れたのだが・・・

「おい」

呼び止められ後ろを向けば先ほどのエリート様がいた

「貴様にとって所属している艦娘とは何だ?」

「家族みたいな存在だ。」

即答すると鬼の首でも取ったかのように喜々として声を張り上げた。

「はっ!家族?貴様は鎮守府でままごとでもやっているのか?公私混同甚だしい!貴様は家族を戦場に喜んで送り出すのか?貴様こそ人間じゃないだろう!」

ここまで来てやるのが揚げ足取りとはつくづく救いようのない人間だ。

「ようなものといったのが聞こえませんでしたかな?少将殿?私は家族を戦場に送り出すことはできません。しかし、寝食をともにし、互いに困ったことや心配事を相談をする。一見すると戦友のようですがまた違う。」

戦友では互いに考えていることまでは即座には見抜き正しい対処はできないだろう。

それを言うのは野暮だったたあえて言わなかった。

奴は反論できず唇をかみしめていた。

「それでは時間ですので。」

 

 

 

「まったくえらい会議だった・・・」

飛行機の中で頭を抱える

「「家族みたいな存在だ」」キリッ

「やめろぉ!ちょっとこっぱずかしいんだ!」

加古と吹雪が茶化してくるが、いじられるのも悪くはない。

「ところで提督?大本営から仕事の書類新しく受け取ってなんかいないよね?」

「・・・・・まっさかー(棒)」

実はこっそり受け取ってカバンの中に忍ばせている。

仕方ないでしょ!あの下種に対して資源の供給止めなきゃだし。

何より最初に持ってきた書類は大半が大本営に送る書類だからすり替えても問題ない。

「ふーん。ところでこの書類束だけど朝見た時と違うんだけど?」

いつの間にか書類束をひらひらさせている。

カバンを確認すると空っぽになっていた。

「きっ気のせいじゃないかなー?」

ごまかそうと視線で吹雪に助け舟を求めた。

「・・・」フルフル

打つ手なし。

吹雪があきらめましょうという視線を向ける。

まだだ!まだあきらめんよ!

「あっ古鷹?」

「大本営から受け取りました!」

白旗をあげ降参した。

結局3週間後の書類のため加古が吹雪に毎日規定量の書類を渡すことになった。

 

「こういうところの勘は鈍くなってほしいなぁ・・・」




日常話のほうが書きやすかったです(白目)
納得していないところがちらほらあったりなかったり・・・。
次は日常話の予定です。


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駿河諸島鎮守府の抱き枕

大本営で中規模作戦の計画があるとの書類を受け取った。

最先行の情報だ。

なぜそんな情報がうちに来るかというと資源関係だけではない理由がある。

「じゃあ吹雪ちゃん行ってらっしゃい!」

「はい!行ってきます!」

大演習の時期である。

 

本来は、週に最低10回ほど演習を行うことが各鎮守府に義務付けられている。

だがうちは毎日が事務処理で忙しい。

そのため作戦前にまとめて行うことで、クリアをしているという状態なのだ。

作戦前の中だるみの時期は補給関連の仕事が減って、多少人が抜けてもなんとか回せるためだ。

今回は吹雪、川内、古鷹、榛名の4人が2日でたまった演習の半分をこなす。

その後入れ替わりで時雨、加古、龍驤が残りをこなすことになった。

しかし、いくら少ないとはいえここは日本一忙しいと言われている鎮守府。ということは・・・。

 

「次!生産部の書類!」

「はい・・・提督そろそろ休まなきゃ体が・・・。」

「休みたいけど流石に無理・・・。時雨は先に休んでて。」

なるべく期限の長い書類は後回しにしているが、補給に来た艦隊の書類で手いっぱいだ。

普段は補給部で処理される書類が時雨が秘書代行を行っているために、半分近くが回ってくるのだ。

時雨も秘書艦代行を何度も務めたことがあるが、直近の忙しさが尋常なものではない。

普段この時期に来る艦隊数と今年では明らかな差がある。

なんでも沖ノ鳥島方面に鎮守府ほどではないが、監視府を置くことになったのだ。それには、資源の輸送を行わなければならないため、普段の時期よりも寄港してくる艦隊が多いのだ。

完成すれば確かにうちの負担は減るのだが・・・かなしいかな。

縦割り行政の弊害でうちが演習に出ることを知らずに発注してしまったらしい。

おかげでうちは俺含めてみんなパンダ目赤疲労状態。

 

「僕はだいじょb・・・とと・・・」

「言わんこっちゃない。大丈夫。あと少しで終わるから。部屋に戻ってとはいえないけどソファーに横になるさ・・・。」

ふらついた時雨をソファーまで連れていき寝かせる。

「・・・一時間だけ寝させてもらうよ。起こしてね。」

時刻は現在マルサンマルマル。

時計を見たのち時雨を見るとすでに寝息を立てている。

この様子なら始業までは起きないだろう。そっと撫でてやり、書類整理に戻る。

 

「司令官生きとるか~・・・」

「なんとかな~・・・」

マルハチマルマル龍驤が入ってきた。

「今日出港の艦隊の書類できとるか?」

「ああ。これだ。」

「こんなん一人で持てるかいな!どんだけ出港予定がおるんや!」

書類束は30センチくらいあり一人ではつらかった。

「沖ノ島方面が18艦隊、本土に16艦隊、東南方面に4艦隊・・・。」

直前まで時雨が個別にファイル分けしてくれたためわかりやすくまとまっている。

「時雨の疲労度やばいやん・・・。」

ソファーで寝ている時雨の顔を覗き込んだ龍驤が真顔で告げた。

「そういう龍驤もだ。仮眠はとったか?」

「1時間4回はとれたけどそういう司令官はとれたんか?」

「・・・計3時間くらいかな?」

「嘘やな。まだとっとらんのやろ?とりあえず今日の朝あげなきゃならんのは終わったんやろ?」

「だがこれからの分がまた・・・。」

「提督。あとは僕が引き継ぐから寝てよ。」

時雨がソファーからむくりと起き上がりタオルケットをたたみ始めた。

「・・・わかったヒトフタには戻るからそれまで頼む。」

執務室を出て部屋の前まではほんの少しだが、一気に疲れが来たのだろうか。

部屋前でドアノブに手を伸ばすと同時に瞼が下りてしまった。

 

 

 

 

 

「おーい提督ー?」

ゆすっては見るが起きる気配はない。

「しかたないな・・・よっと!」

俗にいうお姫様抱っこで提督を抱えると、部屋のドアを開ける。

部屋は簡素かつ物が少ない。

提督をベットに寝かせ近くに椅子に腰を掛ける。

『あ、龍驤?あたしだよ~。提督部屋の前で力尽きてたから寝かしといたよ~。』

『やっぱり限界やったか。3徹してる顔しとったからな。』

『あたしはいつまでいればいい?』

『そのまま提督が起きるまでそこに居ってや。まだ仮眠とっとらんやろうしそこでとっとき。今日来る艦隊のはこっちで処理しきれそうやから。』

『サンキュー。それじゃまたね~。』

スマホを置いて、さて寝る場所をと思ったが予備の布団もなさげだ。

「ここでいっか・・・」

 

 

 

「やっば!寝すぎた!時間は?!」

時刻はヒトゴーマルマル

約束の時間から三時間が経過していた。

スマホの着信履歴は・・・ない?

というかよくよく考えたらここは鎮守府内だから起こしに来るはず。

スマホで執務室に電話を掛けるとすぐに出た。

『はい。こちら駿河諸島鎮守府です。』

『時雨か?すまん今起きたんだけど執務はどうなっている?』

『提督起きたんだね。書類仕事はあとチェックと捺印だけだよ。』

『そっか。すぐに行くよ。』

『夜まで休んでいなよ。ちょうど一段落したところだから龍驤も仮眠を取りに行ったところだよ。』

『そういうわk『休んでてね?』はい』

電話越しのはずなのに背筋がぞくっとした・・・。

しかし、どうしようか。スマホを机の上に置こうと横を見ると不自然なふくらみがある。

はていったい何だろうとめくると

「・・・・・・加古?」

ゆるみ切った顔で寝ている加古の姿が・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・なんで?」

思い出そうとすると不意に旅館でのことを思い出す。

あの時は寝たら吹雪が・・・・膝枕?

「なーにゆでだこみたいになっとるんや?」

「どおおおおお!」

思わず奇声を上げ、声のしたほうを向く。

寝間着姿の龍驤だった。

「おきたかいな?ほなもう少し時間あるからねよか。」

何かが口の中から半分飛び出している気がする。

「ほれ。はよ。」

我に帰ると加古とは反対側に龍驤が寝っ転がり敷布団をたたいている。

「いやいやいやいやいやいやいや。なんで?!なんで添い寝?つーかなんで加古もここで寝てんの?!」

「君が部屋の前で寝潰れとったから加古が寝かしてくれたんや。うちも眠いからさっさと横になり!」

腕を引っ張られ倒れるとそのまま龍驤にがっちり固められてしまった。

自分の部屋で寝なさいと言おうとしたがすでに寝息を立ててしまっていた。

「・・・・ていとく?」

よかった加古が起きた。

これで何とかなりそうだ。

「・・・・・・・あと二時間行けるね」

あくびをしてそのまま反対側もがっちり固められてしまった

「ええ・・・・」

打開策を探したが思いつかず途方に暮れた。

時雨に見つかったら何と言われるか・・・

考える時間がもったいない。

あきらめて寝てやろう。

つかめっちゃいいにh

俺は変態じゃないぞ!いいか!変態じゃないからな!

目をつぶり一心不乱に眠くなれと自己暗示をかけ続けた。

幸い疲れは取れきっていないため、早々に夢の世界へと旅立った。

 

 

 

「交代の時間だよ。」

ゆすり起こされ時間を見れば、ヒトキュウマルマル。

仮眠をとるのだろうか。時雨も寝巻だった。

すでに龍驤と加古は起き上がって引き継ぎの書類に目を通していた。

「長く寝ちゃって悪いね。じゃあ行きますか。」

「提督はここで書類を片付けてね。」

10センチほどの書類束と判子を渡された。

「それじゃあ僕は寝るからね。」

布団に潜り込むと寝始めた。

「ってここ俺の部屋!自分の部屋に行きなさいよ!」

「加古と龍驤だけなのかい?」

「それは・・・・・・・・もういいや」

「ありがと」

ふふっと笑って俺の足を抱き枕のようにした。

「・・・・仕事できなくね?」

「はいよ提督」

加古が病院で食べるときに使うようなテーブルを持ってきた。

「・・・・準備やけにいいね?」

「じゃごゆっくり~」

「ほなまた明日~」

あっさりと逃げられ本日2回目の途方に暮れた。




膝枕書いたんだし添い寝も書かなきゃね☆
癒しがほしいあなたに提督抱き枕!


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駿河諸島鎮守府への転属艦 その1

小鳥のさえずりと自然の一部を切り取って、大きすぎず小さすぎずにまとめた庭。

池の音は心を洗うかのような心地よい音、水面は澄み切った青空を映している。

縁側で庭園を眺めながら本日の間食である金つばを一口食べ、時雨が淹れてくれたほうじ茶を飲む。

「・・・いつの間にこんなの作ったんだろ。」

毎度おなじみの駿河諸島。

宿泊棟がある島にはこの間建設した別棟とはさらに別の離れができていた。

そういえば離れもあるといいよね、なんて言った記憶が・・・。地獄耳にもほどがあるぞ。

縁側で時雨、俺、吹雪の順でならんで3時のおやつ。

この間の寝潰れたのが漏れたらしく古鷹と時雨に危うく強制休暇のところを、ヒトヨンからヒトロクまでは3時の休憩の時間を取ることで許していただいた。

(加古と龍驤に問い詰めるとどちらも密告していたという。)

「だけどこの間の演習って無理していく必要あったの?」

「ああ・・・。みんなカンストしているけど出なきゃならんのは経験値配りが大きいかな?」

「私たちと戦うと強くなれるってみんな息巻いてましたね・・・。」

特に空母の方がとつぶやいた吹雪の目はどこかの航空戦艦の目みたいに空を見上げた。

「とかいって対空射撃で成績一番だよね?」

時雨の一言でふと成績表を思い出す。

空母数隻を立ちんぼ状態にした記録がちらほらあったような・・・・。

ご愁傷様です。(主にボーキ面)

「そういう時雨ちゃんだって旗艦の大和さんや長門さんを夜戦でぼっこぼこにしてたって聞きましたよ。」

魚雷ガン積みで夜戦でとんでもないダメージ記録もあったな・・・。

「でも経験値配りならもうちょっと手を抜けばよかったかな?」

「うーんそうだね。ちょっと勝ちがあるからね。」

あの編成で勝率4割って相当やばいからな?

ふつうこっちが3隻か4隻だったら相手はほぼ勝てるからな?

「意見書にかかれないといいなぁ・・・。」

ぬるめになったほうじ茶を啜る。

「おーいみっちゃんいる?」

ブッ!ゲホゴボ

「あれ?深雪ちゃん?なんでここに?」

「書類なら執務室に置いておいてよ。今は休憩中だよ?」

「そうとげとげしないでくれよ。うちの司令官から本人の直接渡せって言われてる書類だよ。つかみっちゃん大丈夫?」

「げっほ!みっちゃんはやめんか!」

軽く拳骨をし封筒を受け取った。

最高機密の赤い判が表と裏に打ってあるところを見ると、かなりの重要事項らしい。

 

ここで紹介だが深雪は大本営の所属である。

大本営所属とはほかの鎮守府にいる艦娘とはちょっと違いうちみたいに書類仕事や新米提督の教導などを行っている。

深雪は俺が新米のころについた教艦の一人だ。

「いいじゃんかよ~みっちゃん。」

ため息をつき封筒を開ける。

中には転属書が入っていた。

「やっと増員が認められたか!」

「「ほんとうですか!/かい!」」

「ああ!吹雪朱肉ある?」

「はい!司令官!」

どこからともなく朱肉を取り出し俺は判子と万年筆を取り出す。

時雨に思いっきり睨まれたがそんなこと気にしない。

いつ何時仕事をやるかわからないから常備は基本だ。

だから今度は身体検査も古鷹と相談しないとなんて言わないで。

「まぁ置いといて誰が転属何なの?」

「えっと・・・深雪か!なんだかお前を思い出すけどこの際誰でも大丈夫だ!」

「いやあたしだよ?」

「そうかそうかおm・・・えっ?」

「あたしが転属するんだよ?」

いつの間にか吹雪の隣に腰を掛け茶菓子をほおばりながらあっけらかんと告げた。

見れば転属前の所属には大本営と書いてあった。

「深雪これ間違ってね?」

「ほかの鎮守府にも深雪はいるけど大本営はあたしだけだよ?」

「・・・」

胸ポケットからスマホを取り出し電話を掛ける

相手は3コール目で出た

 

『はいもしm』

『おうコラくそ大将!茶の飲みすぎで脳みそに茶柱でも生えたか?なんだよこの転属辞令?』

『あのわしたいsy』

『んなの知ったことか!どうせ執務室で文月とケーキの食べさせあいでもしてんだろ!』

『今日はどら焼きだ!』

『どっちだっていいよ!さっさと答えろ!』

『ほんとはな?別の娘が行く予定だったんだけど深雪にお前の勤務報告書と転属辞令を見られちゃってさ』

『今度から大本営に送る資源へらそっかな』

『まってまって!深雪も本当に心配してるんだって!ね?珍しく直談判だったからさ』

『・・・わかりましたよ。明日返信の書類行きますんで。じゃあ』

 

なぜあきらめたか。

深雪が途中から頼むといった視線を送ってきたからだ。

からかいもあるだろうが大半は心配だろう。

知り合いの艦娘には俺の勤務実態表を見せないように念押ししている。

こうして心配されるのが目に見えているからだ。

「はぁ・・・よろしくな。深雪。」

「ありがとな!みっちゃん!」

「司令官か提督にしてくれんか?」

「じゃあみっちゃん司令」

「却下だ!」

その後、業務時は司令官でそれ以外はみっちゃん呼びが決まった。

押し切られたんや・・・。

 

「で?深雪にはどこに行ってもらおうかな。」

「人が足りてないところは・・・補給部か宿泊棟ですね。」

「警備部あるんだろ?あたしはそっちがいいな!」

「警備部は龍驤一人で何とかなってるんだ。艦載機でパトロールしてもらってるかな。」

まぁ大本営もうちと変わらない事務処理だし補給部へと行ってもらった。

 

 

 

「あっ!いい忘れてたけどもっちーには説明なしで来たからね」

「はいはい・・・はい?」

さらっととんでもない爆弾が落とされた。

「そんじゃよろしく~」

「待て!それってあいつも来る可能性が高いってことじゃねぇか!」

「まぁそうなるな」

とこぞの瑞雲教の司祭の言葉などいらん!

あいつはあいつで面倒なことになりかねん!というか100%やばい。

そんな時、胸ポケットでスマホが鳴った。

文月大将とディスプレイには表示されていた。

 

 

 

『はい。耳本です。』

『さっきの話だけどいい忘れて事が一つあったんだ。』

『・・・まさか彼女まで来るんじゃないですよね?』

『・・・てへぺろ☆』

『その喧嘩買いましょうか?頭を愛と勇気だけが友達のヒーローのごとく交換しましょうか?』

『わしに対してのあたりひどくない?!』

『そりゃ最初の着任辞令受け取りに行った日に執務室で文月とおやつの食べさせあい見せられたらそうなるにきまってるじゃないですか。』

『だってかわいいんだもん!』

『大の大人がもんなんてつかわないでください死んでください。』

『ひっど!こうなれば文月ちゃんのかわいさをたpp』

ブツッ

 

 

 

「着拒っと」

「どうしたんですか?司令官?」

「とりあえず行こうか。もう疲れた・・・。」

休憩を早々に切り上げ執務室へと深雪を連れて戻る。




というわけで深雪追加です!
もっちーは大体想像つくとは思いますが次の話で登場予定です。

初イベ完走!
着任ひと月半の提督がやる内容じゃないですよねこれ?
掘りなんて絶対無理・・・。
資源が枯渇して何度胃が痛くなったことか・・・。
山風、ポーラ、親潮来てくれてありがとう!!
朝風?知らない子ですね・・・


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駿河諸島鎮守府への転属艦 その2

「ちょっと待て」

執務室のちょっと手前にある自室で立ち止まる。

何か嫌な予感がするのだ。

自室を開けると、いつもと変わらぬ殺風景な部屋。

特に物は置いてない上、ここで過ごすことが少ないため増えることも少ない。

一瞬気のせいかと思ったが、思い過すには看過できないことが一つだけあった。

ベットの盛り上がり。

これは予想が当たったな。

正直当たってほしくなかったがこうなっては仕方ない。ため息をつきベットに近寄ると、布団をめくった。

「何してんだ望月。」

「んあ?なんだー?みっちゃん?」

「さも俺がお前の部屋に来たようにふるまうな!俺の布団で何してた!」

深雪も厄介だが望月のほうが厄介その理由は

「オ○ニー」

変態ということだ。

 

 

 

「なんだよぉ。ちょっと冗談言っただけじゃんか。」

「洒落になんねぇわ!つか女の子がそういうこと言うんじゃありません!」

「もお・・・。ちょっと匂い嗅ぎにベットに潜っただけなのにさぁ」

「それも問題だよ!」

執務室で望月を正座させ叱る。

なんだろう胃が痛い気がする。

最近胃にダイレクトアタックしてくる問題ばっかりで、胃に穴が開いているんじゃないかと錯覚するくらいだ。

「それでさ!司令官のあの真っ赤な慌てようったら」

「ちょっと待て。深雪お前今何の話を吹雪ちゃんと時雨に話してる?」

執務室のソファーでは深雪と吹雪、時雨が談笑に花を咲かせていたが、気になる会話が偶然耳に飛び込み会話に割り込む。

「ん?もっちーが司令官の部屋でまっぱで待ち伏せしてた話」

「やめろおおおおおお!」

深雪が厄介というのは、新米時代の恥ずかしい話をたくさん知っているためこのようにぺらぺらと話されるのは困るのである。(誰だって自分の恥ずかしい話はされたくはないだろ?)

「司令官またやろうかぁ?」

「二度とやるな!」

 

 

 

「ああ・・・・。空はあんなに青いのに・・・・・。」

「現実逃避しないでください司令官。」

仕事でも飲んだことのない胃薬を初めて飲んだ。

望月が来たことで私物管理をしっかりしないと・・・・。(どうでもいい私物を何度もあいつに持ち去られたからな。)

今は時雨と一緒に補給部へと向かってもらった。

「ところで司令官はその・・・。」

給湯室から戻ってきた吹雪が少し赤い顔をしてもじもじとしていた。

ものすごい嫌な予感がする。なんだろう。

「こういう方が好みなんですか?」

女の子が持つには似合わない、俗にいうエロ本(OP集)を持っていた。

「もちづきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 

 

「お!ついに炸裂したなぁ。」

「なにかしたのかい?」

「吹雪にな、本土で買ってきたエロ本渡してみっちゃんの部屋にあったって言っといた。」

「前の時はおしり特集のおいてたな。あん時は同期におしり星人なんてからかわれてたな。」

深雪が苦笑いしながら思い出す。

「その時の赤面写真あるよぉ。」

「そいつは初耳だな。」

「そうだろみy・・・みっちゃん?」

錆びついたドアノブを回すように望月が振り返った。

「よう。もっちー?」

望月と深雪の襟をつかんだ。

「時雨。あとで連れてくから先に行っといて。」

返事を聞かずに、近くの応接室に入った。

 

 

 

「まったくお前は・・・・・。」

「ゆるしてよぉ・・・。」

「というかなんであたしまで?!」

正座をさせ、写真を破り捨てる。

「・・・で?何かあったのか?」

「・・・・・・大本営の新規人事。」

深雪がぽつりと話し始めた。

「新しくひとり幹部会にある中将が加入するんだぁ。」

「まさか!」

「須下少将改め須下中将。」

大本営での会議であそこまでメンツをつぶされた奴が日も浅いうちの昇進は妙だ。

深雪と望月の顔からは先程まであった表情は消え、強張っていた。

「しばらくは大本営の動きに注意したほうがいいと思ってあたしたちは来たんだ。」

「大将も目は光らせるとは言っていたけどねぇ~・・・。」

「そうか。二人ともありがとう。いい部下に教艦、友人に恵まれたものだ。」

「「鈍感もあいかわらずだなぁ」」

「?」

「で?あたしたちも聞きたいんだけど」

深雪と望月の顔が強張った顔から一転、急に笑顔に変わった。

「大本営で見たみっちゃんの」

経験則上これは逃げなければやばい。

そう警鐘を鳴らしドアに視線をやるとドアノブがない。

ない?

目の前の二人の手にあった。

「「勤務実態表はどういうことかなぁ?」」

 

 

 

こっぴどく叱られ久々の新米時代に戻った気分になりながら。

執務室へと戻った。

吹雪はいないところを見ると、どうやらすれ違ってしまったようだ。

椅子に腰を掛けると狙ったかのようなタイミングで電話が鳴った。

『はい。駿河諸島鎮守府です。』

『わしじゃ。今日はすまんかったな。』

『いえ・・・。もう大将とあの二人に振り回されるのは慣れました。』

『そうか。砂安中将から回ってきた情報だから信頼できる。』

砂安中将

大本営の幹部会の一人で桐月大将(今の電話の相手)とは肝胆相照らす仲といってもおかしくないくらい親密だ。

それと同時に・・・

『情報はいいんだがあいつの雷の魅力を語るの何とかやめてほしんだがなぁ。文月ちゃんのほうがよっぽど天使なのになぜわからん。』

これである。

初めて砂安中将にあったときは、執務室で

「文月ちゃんこそ天使である!異論は認めん!!」

「雷は私の母になってくれる女性だ!母とはすなわち天使!!よって雷は天使である!!!」

一度退出をし部屋の名前を確認したくらいだ。

 

『あーはいそうですね(棒)』

今度ブーメランでも送りつけてやろうか。

『ところで君も吹雪とお風呂に入ったり、時雨と添い寝していたそうじゃないか?』

『そうd・・・・は?』

『おや?違ったかの?』

『え?いやなんで知って?え?え?』

『青葉新聞の三面に書いてあったぞ?今度大本営駆逐嫁の会に招待しようか?』

『いや結構です!というか急にやることできたんですけど!!』

『ああ待て。最後に一つ。』

『なんですか?!早くしてください!』

『あの一式はどうするつもりじゃ?』

『・・・・・』

『もちろん君のような奴なら人数分取りそろえる。』

『私は私の主義がありますゆえ。』

『そうか。まあいつでも待っておるわい。おっとそろそろ文月が起きだすころあいじゃ。じゃあの。』

受話器を置き背もたれに体を預ける。

視線は机の引き出しに目をやるが開けるつもりはない。

 

 

 

体を起こし再度受話器を取って時雨に電話を掛ける。

「時雨か?今すぐ直近で来た青葉の鎮守府を教えてくれ。とんでもない情報が漏れた!!」

当面は情報のもみ消しを図ることになりそうだ。




先日の作者とある友人の会話

「最近艦これ始めたって?」
「そうそう!いやーもっと早く始めればよかったよ!」
「そうかそうか!ところで誰が好きだ?どうせ一人じゃないんだろう?」
「一人だけは無理だよね~」
「じゃあ戦艦は?」
「榛名かな?金剛もいいけどやっぱり最初に来てくれたし。」
「王道だな。空母は?」
「龍驤かグラーフだな!」
「すげー極端www重巡は?」
「古鷹、加古、プリンツ、最上」
「ちょっと多くね?まぁわかるけどさ。軽巡!」
「川内さん!でも阿武隈とか北上さんも捨てがたくなってきた。球磨、多摩もあざといんだけどやっぱりかわいいんだよね・・・。」
「最後は駆逐!」
「まず吹雪型は・・・」
「えっ?」
「えっ?」


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駿河諸島鎮守府の取材 その1

どもぉ!青葉です!

今回は駿河諸島鎮守府にお呼ばれされてきました!

国内でも有数の旅館と名高いここの旅館の1泊2日の無料券をいただけるなんてついてますねぇ。

この間の此処の記事の原稿料は相当でしたし、また新しいネタがあるといいな!

 

 

そう思っていた時が私にもありました。

目の前にはにこにこと愛想のよさそうな此処の司令官と、その両脇を艦娘が固めている。

一見するととても歓迎されているのに思えるが・・・

 

目が全く笑っていない!

何か失礼なことをしただろうかと必死に記憶をさらってみたが、思い当たることはなかった。

「さてさて駿河諸島鎮守府にようこそ青葉君。私がここの司令耳本だ。こっちは総秘書艦の吹雪でこっちが補給部長の時雨だ。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく。」

それぞれ紹介をされ挨拶を2人に返す。

こんな形で圧迫面接みたいなを受けることなんて・・・・。

待てよ

はたと青葉は気づいた。

「今回お話をしたい件なんだがね。」

私はこの三人の写真を撮って・・・

「これはうちの許可を取ったかね?」

無許可で掲載した。

威圧するかのようにテーブルにたたきつけられた新聞の三面記事。

取材をしていないためほとんど妄想で書いた文面。

見れば3人とも笑みは崩していない。

いわゆるアルカイックスマイルで、こめかみには青筋が浮かんでいる。

落ち着くのだ青葉

そう。言い訳を何とか考えるのだ。

「言い訳なんてした日にゃあ兵糧攻めにしてやるからな?」

・・・そういえばここは日本の心臓ともいわれる補給拠点。

うちの司令官にくれぐれも機嫌を損ねないように言われていました。

 

 

 

詰んだ。

 

 

 

将棋に例えるなら全部駒を取られた状態。

敗軍の将ができること

それは

 

「すみませんでした!!!」

 

無様に、なりふり構わず命乞いをし、わずかな望みを託すことしかできなかった。

 

 

 

 

「で?なんでまたこんなことを?」

ひたすらに土下座を繰り返す青葉に土下座をやめさせ、ため息をつき再度説明を求める。

「その・・・。私たちは各鎮守府の取材をして記事にしたり、特集を組んだりしているのですがこちらの鎮守府だけ取材の許可が下りないので・・・・。」

取材許可願いなんて書類がだいぶ前にあったのを思い出す。

あの時は取材を受けるような余裕がないくらいの繁忙期だったため、すべて不許可にしていた。

「私はまだ配属されて間もないので採用されそうな記事が書けなくて・・・」

「で、うちの記事を出せば採用はほぼ確実。ちょうどいいところに盗撮ではあるがネタも転がっていたと。」

「はい・・・。」

ため息をつきながら立ち上がり机へと向かいあるところへと電話を掛ける。

 

『はい!青葉新聞です!』

『駿河諸島鎮守府の耳本だけど局長いる?』

『あ!私です!記事について何かありましたか?』

『どうもこうも取材許可を出してないんだ。』

『やっぱりそうでしたか~。大丈夫ですよ。まだ試し刷りを大本営の一部に渡しただけですから。あの子にはきっちりとお灸をすえますので・・・』

『ああいや今ここにいる。実は・・・』

この先は声を潜め周りに聞こえないようにする。

青葉の顔色はすでに青を通り越して真っ白になっている。

それもそうだ。自身の趣味としてだが記者の道が絶たれる話を目の前でされているのだ。

それだけならましかもしれない。

下手をすれば解体処分なんてこともありうるのだ。

もっと言えば自身を好いてくれている司令官に責任の一端が行くかもしれないのだ。

 

司令官に及ぶ被害だけは避けねば

 

受話器を置き、再びソファーに腰を掛ける。

「というわけでだ。青葉君」

「ひゃい!・・・あの!お願いします!」

「あーうんそれについてだけどさ」

「司令官に責任はないんです!どうか青葉の身一つで!」

「え?ちょっと?」

「解体していただいても結構ですから!司令官にだけは!!」

「ちょっとちょっと!」

「後生ですから!!!あの人にだけは何もしないでください!!!!」

「話を聞かんか!!!!!」ゴン

 

 

 

「というわけであの記事を差し替えるからそのための記事を書きなさいな。あの写真だってこっちに落ち度がないかといったらないと言い切れないからね。」

「・・・・・へ?」

何とかなだめすかし(チョップを頭に見舞い)、落ち着いたところでことの顛末を話した。

お灸をすえるつもりでわざと小出しにしていたが、どうやら緊張のあまりとんでもない方向へと思考が飛んでしまったようだ。

「いいん・・・ですか?」

「さっきも言ったとおりだ。あの出来事は消せるものではないけど、流石に新聞に載せられるのは許可できない。だったら代替の案を出してやるのがこちらの最大の譲歩だ。」

「あ、ありがとうございます!」

「それからもう一つ。趣味に熱心なのはいいが今回みたいのだけはやめなさい。一時はいいかもしれないが君の周りの人に迷惑や心配をかけてはいけないよ。」

特にといったのち小指を立てた。

「はい!」

ってちがいますよ!と赤い顔をして否定した。

 

明日の取材開始時刻を話し合い、まとまったところで青葉を旅館への案内を吹雪と時雨に頼み、俺は再び机の上の電話を取る。

 

『はい、こちら内浦鎮守府の海野ですが?』

『もしもし。駿河諸島鎮守府の耳本ですが』ガタン

『失礼しました!なにかありましたでしょうか!』

先ほどまでの少し緩めの声が一転。はきはきとした返事に代わる。

相手のほうが階級が上なのに敬語を使われることはもうすでに慣れっこなので気にせず話を進める。

『実はそちらの所属艦娘、青葉についてお話が』

『うちの秘書艦が何か粗相を?!それとも盗撮でもしましたか?!』

流石はというかなんというか読めてはいるみたいだ。

『ええまぁそうですね。それについてお話が』

『大変申し訳ございません!!どうか平にご容赦ください!!!』

『いえそのですね』

『青葉の粗相は監督者である私の責任です!!どうか彼女の処罰を軽くはしてやってくださいませんか?!私の首でも構いません!ですから彼女だけは何とかしてやってはくださいませんか?!!』

『ですからこちらでもう話がまとまってまして!』

『なんと!今すぐ向かいますので何とか執行だけはお待ちください!!!』キヌガサ!スグニスルガショトウニイクゾ!!

『話を聞け!!!!!!!』

 

夫婦とはこうまで似るものなのだろうか・・・?



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駿河諸島鎮守府の取材 その2

マルキュウマルマル 執務室

「青葉取材しまーす!」

「はいはい。よろしくね。」

席に座り書類一束を自身の前に持ってくる。

「おお!さすが噂通りの書類の多さ!これを一日で裁くんですよね?」

三十センチくらいの書類の束を中身が分からないように写真に収めていた。

「それは今日の午前分だから12時までには終わらせるよ~」

「えっ?」

「えっ?」

「これって半日分ですか?」

「そうだよ。今日は多くもなく少なくもなくだね。」

うちの何日分だろうなんて思わずぼやいてしまう。

「うちはこれがメイン業務だからできることだよ。ほかの鎮守府なら出撃や哨戒があるからね。」

「そういえば哨戒任務はやらないんですか?」

 

哨戒任務は鎮守府で一番行われることの多い任務の一つだ。

この辺りはある程度の制海権を確保しているため、最前線でもない限り深海側の侵攻の迎撃なんてことはそうそうない。

「この辺りは八丈島や本土方面の哨戒域に入ってるから業務移管しちゃってるんだ。繁忙期はとてもじゃないけど事務処理でそれどころじゃなくなるからね。」

繁忙期はそれこそ午前の決裁書類が机いっぱいにくる。

それを知っているからこそ大本営は移管を申し出てくれたのだ。

「なるほど~・・・ってもう半分終わったんですか?!」

先ほど手に取っていた書類束の半分はすでに処理し、決済済みの箱の中だ。

「そりゃあ毎日のようにやっているからね。全部見ずに要点だけ見ておけばいいから慣れれば楽だよ。」

青葉と会話をしながら手を動かす。

忙しいときは電話と報告を聞きながら整理も同時並行しなければならないことが多々あるため、これくらいはお茶の子さいさいだ。

「はぁ・・・何かコツとかありますか?うちの司令官にぜひ教えてあげたいです。」

「こっちに来る書類は9割が同じ書式だからね~。残念だけど参考にはならないと思うな・・・よし!終わりっと。吹雪ちゃんよろしくね~。ところでなんか飲む?」

次の束を自身の前に据えてから冷蔵庫へと向かう。

「あっお気遣いなく。・・・えっ?」

「そう?喉乾いたら言ってね。」

 

青葉は見てしまった。

司令官が開けた冷蔵庫の中身がすべてエナジードリンク(しかもぎっしり)だったことに。

しかもレッドブルを一気飲みしたのちモンスターを持って戻ってきた。

「あの・・・」

「ん?どうかした?」

プシッと缶を開けてちびちび飲みながら仕事を再度始めた。

「さっきレッドブル飲んでませんでした?」

「飲んだよ?」

「今飲んでいるのって・・・」

「モンスターだよ?」

「・・・・何でもないです。」

吹雪の首が左右に振っていた。

しかし、彼女の手にはモンスターが握られており青葉は取材したことに少し後悔し始めた。

 

順調に作業も進み、ヒトフタマルマル。

少し前に終わらせ、談笑していたがお昼のサイレンに三人は気づいた。

「もうお昼か。青葉くんはどうする?」

「司令官はどうされるんですか?」

「こっちで食べながら仕事。」

「・・・・・休憩ですよね?」

「まぁ・・・間食休憩が2時間あるから大丈夫!その時は本当に仕事しないからさ!」

「じゃあちょっとほかの人の取材がてらお昼に行ってきます。2時くらいには戻りますので。」

 

 

食堂で日替わりランチを注文し、受け取るとあたりを見回した。

本当は鳳翔さんや間宮さんにも取材したいが今回はあきらめた。

様々な鎮守府の艦娘がいるが先日に会った一人を見つけ声をかけた。

「こんにちは!隣いいですか?」

「どうぞ。青葉さん。」

先日の圧迫面接?の一人、時雨だった。

「なんや?こないだいってたパパラッチかいな?」

「ねむー・・・」

前には龍驤と加古がそれぞれお昼を食べていた。

というか加古に至っては半分寝ながら食べている。

器用すぎる光景を写真に収める。

「パパラッチって・・・やったことは否定できませんけど・・・。」

「もうやらないでね?」

次はないからと絶対零度の視線に寒気が走る。(何かカチャッという金属音が聞こえた気がするが気のせいと信じたい)

「はい!」

 

 

食事を食べ終えたところで取材を始めた。

「それじゃあここの鎮守府について思っていることを時雨さんからお願いします。」

「僕からかい?何物にも代えがたい場所かな。ありきたりだけど。」

「ほっほーん?」

「龍驤さん?なにかあるのかい?」

明らかにそれ以外にもあるだろうと茶々をいれたが最後まではいわなかった。

「って次はうちかいな。せやなぁ・・・うちはここに骨をうずめる気でいるで!重いかもしれへんがここまで気の合う面子なんてそうそう揃わんからなぁ。」

手を頭の後ろで組み椅子に体を預けながら言った。

「・・・zzz」

「なるほどなるほど・・・あの?加古さん?」

「んあー寝てないよぉ・・・起きてる起きてる・・・ここは気楽に寝れていいところだよぉ・・・・・・・・zzz」

のそっと起き上がって答えてくれた思ったが、そのまま背もたれに体を預け再び旅立ってしまった。

「えー・・・」

「ごめんね。お昼時は大体こうなんだ。この後の質問はちょっとあきらめてほしいかな。」

「そうそう。誰かしらが見とらんとホンマに危なくてな。」

「はぁ・・・まあどこもそうなんですね・・・。」

気を取り直してほかの質問を多々ぶつけていった。

時間はあっという間で最後の質問をした。

「じゃあ最後に司令官さんに対して一言お願いします。」

「「「休め」」」

「・・・まったくもって私もそう思います。というか加古さん寝てませんでした?」

「ところで今更だけど提督はどうしたの?」

「仕事をやるとのことで吹雪さんと執務室にいますよ。」

「・・・僕ちょっと用事ができたから失礼するね。」

にっこりと笑っているがその目は笑っていない。

圧迫面接で見たときの顔だ!

龍驤さんによると提督、吹雪と艦娘の間で仕事量で毎回もめるのだという。

他の鎮守府なら提督側は仕事を少しでも減らそうとするが(それが普通)ここはオーバーワークのレベルまで引き受けようとするので、艦娘がストッパーになっているのだとか。

なお吹雪さんはブースターなのであてにならないとのこと。(見事に染まってもうたんや・・・)



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駿河諸島鎮守府の取材 その3

「さてさて・・・おっ?第二艦娘発見!すみませーん!」

どこぞのテレビ番組よろしく声をかけに行く。

「ん~なんだい?青葉か~」

「今この鎮守府の取材をしていまして、もしよければ望月さんにも取材させていただきたいなと思いまして!・・・ところで何をやっているんです?」

見ればドアに耳をくっつけて何かをしている様子だ。

「何ってピッキングだよ~」

「あーなるほど!鍵をなくしてしまったんですね?」

「ちがうちがう。ここ司令官の部屋だからさぁ。」

「・・・鍵を失くした司令官のために作業しているんですね!」

うすうすわかってはいたがわずかな可能性にかけた。

「んなわけないじゃん。パンツ(使用済み)パクろうとしたんだけど鍵かけられちゃってさ。よっしあとはチェーンロックを外しってっと」

「アウトォォォォ!ちょ!いくらなんでもダメですって!」

「え~。青葉だって盗撮したっしょ?」

「うっ!そっそれは・・・。」

痛いところを突かれ次の句が告げなかった。

「こーら!もっちー。やめてやんな。」

振り返れば深雪がおり望月の首根っこをつかんでいた。

「深雪~かたいこと言わないでよぉ~・・・」

そう言いつつもちゃんと鍵を再び閉めなおしていた。

「んで?青葉はもっちーの手伝いか?」

「ちがいますって!」

共犯になりそうなので慌てて事情を説明した。

「冗談だよ。さっきの叫び声で飛んできたんだ。でだ!あたしらこれからお昼だから手短なら答えてあげられるよ。」

取材だろ?と言ってくれた深雪さんに後光が差している気がした。

「え~めんど~。」

「ありがとうございます!それではですねこの鎮守府について思っていることから聞いているんですけど。」

「鎮守府についてねぇ・・・あたしら来て浅いからなぁ・・・。」

「まぁでもさぁ~あたしらが関わった生徒がここまで立派になって、艦娘にも慕われる存在になってくれたのはうれしいよね~。」

「まぁな!あたしも同じ意見だな!」

「なるほど!ところでお二人ってひょっとして大本営の元教艦じゃないですか・・・?」

「お!よくわかったな?」

「有名ですよ!お二方が抜けたせいで大本営が大混乱している事が今回の記事になっているくらいですよ!」

「「マジかー」」

その後あれこれとこちらが聞かれ逆に取材するどころじゃなくなってしまいました。

 

「これだけは!司令官さんに言いたいことを一言で!」

「「休みをとれ(とってよ~)」」

「皆さん考えがシンクロしてるんですかね?」

「いや~ここのみんな多分思っていることだよ」

 

 

 

因みに別れる寸前に司令官さんの盗撮写真を望月さんにせびられた。

「ないの!?」

「ないですよ!ネガは向こうで始末してもらいました。」

「そんなぁ・・・ちょっとこれ積むから撮ってくれないかなぁ」

親指と人差し指で円を作るが断りました。

何億もらってもあの人を敵に回すのは割に合わなさすぎますしね・・・。

 

 

 

 

二人と別れた時点でヒトサンゴーマル

間食休憩の時間に近いため指定された場所へと向かう。

 

鎮守府のある島から宿泊施設のある島へと戻ってきました。

ホテルの裏庭は西洋風の庭園となっておりティーパーティを行うにはもってこいの会場だ。

「あら?提督のおっしゃっていた取材の青葉さんですか?」

「あっはい!いつもお世話になっています!榛名さん!」

まだ司令官は来ておらず榛名さんがせっせと準備をしていた。

「どうぞ先に座っててください。もう少ししたら来ると思いますので。」

「ありがとうございます!ところで取材のほうは・・・」

「ええ。今ちょうど終わったところですのでいいですよ!」

 

 

 

そんなに時間がなさそうと思い、短い質問から始めたが一向に来る気配がなく、残り2つとなってしまった。

「えっとそれでは最後に2ついっぺんに行きますけどこの鎮守府について思っていることと司令官さんに対して言いたい事をお願いできますか?」

「鎮守府については私はここは楽園と思っています。私たちは戦うことが普通はメインですが、誰かを思いやる事を身につけられたのはここだからこそと思っています。」

うなずきながらメモを書き進めていく。

「提督さんについては・・・もっとお休みしてほしいなと思います。」

「みなさんおっしゃってます。部外者の私ですら思いますもん。」

ちょうど終わったところで榛名さんの持っているスマホが鳴った。

ちょっと失礼しますといい電話を取ると司令官さんのようだ。

一言二言はなし、お待ちしておりますと言って電話を切った。

「司令官さんですか?」

「ええ。ちょっとごたごたがあったから今から向かうとのことです。」

ごたごたって・・・ひょっとして時雨さんだろうなぁ。

ちょっと悪いことをしたかと思ったがオーバーワークするほうが悪いと自身を納得させた。

 

 

 

「いやぁすまんすまん!」

現れた提督は若干顔が引きつっており、こっぴどく言われたのだろうと言わずともわかる表情だった。

「すみません。提督と吹雪さん、時雨さんとで仕事の話が盛り上がってしまいまして。」

後ろから古鷹さんがとてもいい笑顔で現れた。

何について盛り上がったのかは皆さんお察しの事案だろう。

「古鷹さん!?」

 

 

 

駿河諸島鎮守府の鷹は凶暴で手が付けられない。

大本営で起きた鷹事件というのがある。

鷹が誰を指すかはもうお判りだろうが、天使のような笑顔でやることは悪魔の所業という語り草になっている。

 

 

 

「駿河の鷹ってもしかして・・・」

「青葉さん?」

いつの間にか後ろに回られ肩をつかまれた。

「今回はそれについての取材はお断りです。いいね?」

「アッハイ」

「それではお茶会を始めましょうか。」

なにもみなかったという顔で榛名さんが声をかけ、お茶会が始まった。

 

 

 

「じゃあついでで取材させてもらいますね!」

今日のお茶菓子はアップルパイ。

みんな八分の一ずつ・・・?

「司令官さん・・・四分の一はちょっと・・・」

「ああ!そうだよね?大丈夫大丈夫!」

いくら男性でも四分の一はちょっとね・・・

「あとでおかわりするからさ」

「ちょっと読めてましたけど!そっちじゃないです!多すぎないかって話ですよ!というかおかわりって多すぎですよ!」

「そう?」

そんな会話をしている間にすでに半分がなくなっている。

「もういいや・・・じゃあ古鷹さんにお聞きしたいんですけど・・・」

「あれ?これ俺聞いても大丈夫?」

「大丈夫ですよ。主に最後のは聞いていてくださいね?」

「?わかった?」

一体何だろうという顔をしているが耳をかっぽじってよく聞いてほしいものです。

・・・馬の耳に何とやらでしょうが。

 

 

特に滞りなく進行していった。(司令官さんがアップルパイ一枚分食べてたこと以外は)

「・・・じゃあ最後にこの鎮守府について思っていることと司令官さんに一言をお願いします」

「ここの鎮守府はとてもいいところです。仕事は大変ですけど提督さんをはじめ皆さん本当にいい人なので助かっています。一言については・・・」

ニッコリ笑いながら司令官さんのほうを向き

「もっと休んでくださいね?」

「アッハイ」

「ちなみに今まで取材した全員一言は休めですからね?」

「・・・善処します。」

「まだ足りませんか?」

「あっ・・・」

「少しこちらでお話ししましょうね?」

「おっといけない!もう休憩の時間は終了だ!」

時刻はヒトゴーゴーゴー

間食休憩は二時間といっていたのでもう終わりなのだろう。

「一時間業務延長しているのでもう一時間休憩も延長ですよ?」

ひょいと俵担ぎで司令官さんを担ぐと榛名さんに応接室をお借りしますと一言言って中に消えていった。

 

・・・合掌




遅くはなりましたがお気に入り100件突破いたしました!
皆様に読んでいただけて本当にうれしい限りです!
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。


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駿河諸島鎮守府の取材 その4

しばらく執務室には近づかないことにして艦娘を探す。

だが見つからない。

正確には取材をしていない人がということだ。

あと取材をしていないのは川内さんと吹雪さん。(鳳翔さんは居酒屋のほうで聞くことにしているため除外)

吹雪さんは最初司令官さんに質問の内容を聞かれたくなかったためあえて聞かなかったが、取材を進めるうちに一言を聞いてほしくなってしまったのだ。

「失敗したなぁ・・・」

「何がや?」

「あっ!龍驤さん!」

夕日が差し込む廊下をとぼとぼ歩いていると反対側から歩いてきた龍驤に話しかけられる。

「実は吹雪さんと川内さんが見つからなくて・・・。龍驤さんはどうかしたんですか?」

「うちは警邏部やからな。見回りや。吹雪は・・・うん。時雨がな?」

「あっ。」

「大体わかったやろ?たぶん晩方には解放されると思うでその時さがしたほうがええよ。ところで提督知らん?」

それじゃあ先に居酒屋に行ったほうがいいかな。

「ああ司令官さんなら・・・。」

「その様子だとなんか余計な事口走って古鷹にこれやな。」

首根っこをつかむしぐさをする。

「ご明察です。よくわかりましたね。」

「提督のことなら何でもわかるで!たぶんみんなお見通しやで。」

「なんというかもはやエスパーの域ですよ・・・。」

「提督にも言われたわ。それじゃあうちはこの辺で・・・。あっ言い忘れとった!」

すれ違ってすこし歩いたところで龍驤が振り向き少し大きめの声で呼びかける。

「川内なら居酒屋に居れば顔出すから大丈夫やで!」

 

 

「そんなわけでやって来ました。けどまだ暖簾が出てないですね。」

結局時間つぶしのついでにあちこちを歩き回って写真に収めてきましたがのんびりと過ごすにはいいところですね。

今度はあの人と・・・。

「あの?」

「おひゃあ!」

目の前には着物を着た女性が一人。

鳳翔さんが暖簾を持って苦笑をしていた。

「青葉さんですね?準備ができましたのでどうぞ中へ。」

 

 

 

 

 

 

「ご注文はどうされますか?」

「じゃあウーロンハイと枝豆でお願いします。」

「かしこまりました。」

「あの・・・」

「取材ですよね?ちょっと待ってくださいね。」

ほほえみながら厨房へといったかと思うと5分もしないうちにお盆に注文したものを乗せてやってきた。

「ご注文のお品です。」

「あっ・・・どうも・・・・。」

出鼻をくじかれたからか、どうにもうまくいかない。

相手のペースになってしまっていて切り出しづらくなってしまった。

緊張をほぐすために枝豆を口に含みウーロンハイを一口。

「ふふ」

「どうかしましたか?」

「いえ。青葉さんってもっとがつがつ質問に来るかと思ったら借りてきた猫みたいにおとなしいので。」

「あー・・・ちょっと雰囲気にのまれたといいますか・・・。」

「ここの鎮守府はどうでしたか?」

逆にこちらに質問を振られるが相手の助け舟だと気づくと心底ありがたいと思った。

「本当にいいところですねここは。所属している皆さん笑顔で生き生きとしてますし、司令官さんは艦娘を、艦娘は司令官さんを互いに思いやっている。ほかの鎮守府もそうですけどここは特に強いですね。うちも参考にしたいくらいです。」

「提督さんはやりたいことをかなえられる範囲の限界までやってくれます。ここのお店だってそうです。ただ・・・ちょっと無茶しすぎているところが玉に傷ですね。」

「皆さんそう言ってますよ・・・。でもここまで素晴らしい環境を築いたのは流石としか言えません。機会があればまた来たいものです。」

「じゃあさっきの顔はあなたの司令官を思ってってところですね。」

「あはは・・・。さすがは居酒屋のおかみさん!大正解です。」

緊張がほぐれたのか半分自棄になりつつあるのか・・・。

おかげで話しやすくなり次々と質問をしていった。

 

 

 

「いやー助かりました!」

「いいえ。どういたしまして。」

柔らかなほほえみを浮かべるとちらりと壁の時計を見た。

「そろそろ来ますね。」

「?誰がですか?」

「やっせーん!」

時刻はフタマルマルマル

そう!あのや川内すき・・・おっと夜戦大好きなあの人だ。

「川内さん!やっと見つけた!」

「あれ?私を探してたの?」

「取材したかったんですけどなかなか見つからなくて困ってたところを、龍驤さんにここにいればと聞いてここで待ってたんです。」

「そっかそっか!ごめんね~。今日はちょっと仕事が忙しくてさ。」

「川内さん苦しいです・・・」

後ろからはおあつらえ向きに吹雪さんが首根っこをつかまれていた。

「おっとっと!ごめんね。とりあえず飲みながらでいい?」

すでにテーブルにはビールと梅酒が用意され、カウンター席から4人席へと物が移動していた。

なるほど。鳳翔さんはこれを気にしていたわけですね。

 

 

 

「「「かんぱーい」」」

私もビールに変更して改めて飲み始めた。

「それで?取材ってどんなこと聞いているの?」

「それじゃあ早速ですね・・・」

 

 

 

「あとは・・・」

先ほどはすぐにできなかったので、今回はいつもの調子の矢継ぎ早に質問をしたため私は一杯目のビールがあと少しなのに対して川内さんは焼酎2杯目、吹雪さんは相変わらず梅酒で3杯目に入っていた。

「最後にこの鎮守府について思っていることと司令官さんに一言でおしまいです!」

「おっ。やっと終わりだね!」

「なんだかあっという間な気もしますけどね。」

「じゃあ私から行かせてもらうね!この鎮守府については書類夜戦さえなければ文句なしなんだけどね~」

「書類夜戦?」

「司令官が毎晩毎晩夜戦の要求してくる時に使う最終兵器です。」

「司令官と一緒に居れるのはうれしいけどさ・・・。いくら何でも3~4時までは私でも辛いものがあるよ?」

「3~4時って・・・というか司令官さんと吹雪さんっていつもそんな時間まで仕事しているんですか?」

「まさか!違いますよ!」

吹雪が苦笑いで手を横に振った。

「ですよねぇ!そんな生活してたらいつ倒れてもおかしくないですよ。」

 

「年間で合計四か月くらいですよ。」

 

「知ってました!もうこの展開お約束ですからねぇ!!頭のねじ吹っ飛んでるんですかあなた方は?!」

わかるといった具合で川内が頷いている。

「一言は一月ぐらい休まない?でお願いね。」

「そんなぁ!そんなに休めないです!」

「実際有給とかどうなっているんでしょうね?」

おそらくとんでもないことになっています。というかここの司令官さん休み返上で働いているから余計にひどいことになってる。まちがいない。

 

「で。私ですね。」

話を戻したのは吹雪さんでした。

「私はここの初期艦ですので他の鎮守府の様子はわかりませんけど、ここに着任したのが司令官で本当によかったと思っています。」

「ふんふん。」

「司令官さんはもっと体を大切にしてほしいなと・・・。」

「ブーメランって知ってる?」

「え?」

川内さんが笑顔でぽんぽんと肩をたたくが吹雪さんは小首をかしげている。

「今月のお前が言うな大賞決定ですね。」

「どっどういうことですか?!」

「そうそう!聞いてよ!この間なんてさ吹雪と司令官がてっぺん回んなかったからってさ!」

「あー!!その話はやめてください!鳳翔さん!あれください!火いらずの!」

非常に興味のある話をお預けされましたが、川内さんが引き下がってしまったのでしぶしぶあきらめました。

「ところであれって何ですか?」

疑問符が浮かんだところに川内さんがそっと声を潜ませて教えてくれた。

「実はうちの提督は日本酒好きなんだよ。ここにストックがあるんだけど銘柄を知っている人は提督含めて2人しかいないんだ。」

「それが吹雪さんというわけですね?」

「そうそう。実は吹雪と提督の飲み方って全く一緒なわけよ。ビールがダメなところまで一緒。」

「なんか意外です。日本酒好きなのにビールが苦手とか不思議なものですね。」

「ちなみにコーヒーも苦手」

・・・完璧な子供舌なのではないだろうか。

「何を楽しげに話しているんですか?」

カウンターから戻ってきた吹雪さんは不思議そうな顔をしていた。

「いえいえ!ところで何を頼んだんですか?」

「青葉さんにちょっとゆかりのあるものです。今回はそれで許してください・・・。」

「お待たせしました。」

出てきたのは火いら寿という福井県の酒造が作っている日本酒だ。

「私の名前の由来ですか。」

京都と福井の県境にある青葉山から私の艦名はとられている。

「ええ。どうぞ。」

お猪口にそれぞれ交代で注いでいき、再度乾杯をする。

口当たりはよく最初はさわやかな味が広がるが後味がしっかりとしている。

「いい日本酒ですね。とてもおいしくて飲みすぎちゃいそうです。今度帰ったら司令官と探しに行きます。」

「ぜひどうぞ。」

思わずすいすいと3杯目まで来てしまったが、あまり飲みすぎると明日帰るのに差し支える。そう思い一言断ってから離席しようと、立ち上がろうと思ったら何かに腕をつかまれた。

見ると川内さんが私の腕をつかんでいた。

「すみません川内さん。明日があるので・・・」

「青葉・・・一つだけ言い忘れてたんだけどさ。」

なんだろう。

頭の中で警鐘ががんがんとなっている。

「明日なんだけど提督と吹雪を無理にでも休ませようってことになっているんだ。」

「そっそうなんですか?いいことじゃないですか。ではこれで・・・」

「もうちょっとだけ聞いて?それで明日無理にでもかつ、簡単に休ませる方法が一つだけあるんだ。」

「まさか・・・。」

「今頃食堂で古鷹と龍驤、時雨が酒盛りをやっている頃合いだよ。」

「吹雪さんを酔いつぶせと?」

うん!

いい笑顔でうなづいた。

「・・・ちなみに吹雪さんのお酒への強さは?」

ちらりと見たところ顔は大分赤くなっている。

これなら0時には潰れてくれるだろうか?

「あの赤さのまま5時くらいまではたぶん続くよ。しかもしっかりチェイサーしていくからね。」

私はニッコリ笑って立ち上がり

「青葉!じっとしてられないな!」

「さあ!私たちと夜戦しよう!」

「?」

 

 

離脱失敗

 

 

 

結局私の鎮守府に帰り着いたのは翌日の20時でした。




取材編はこれにて終了です!
青葉たちにはいつかまた登場していただく予定です。
さてさて次はどうしよう・・・。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 前準備

そろそろクリスマスというのに秋祭り編・・・。
こうやって現実の時間と乖離していくのかぁ・・・。


天高く馬肥ゆる秋

いくら温かいと言われている駿河諸島といえども少し肌寒くなり始めた。

そろそろ白い夏の軍服とお別れをして少し厚めの紺の軍服に変えなきゃかな。

そんなことを思いながらいつもの仕事をしていると電話が鳴った。

 

『はい。駿河諸島鎮守府です。』

『大本営広報部の夏木です。』

夏木大佐は大本営に努めている女性の中で一番の出世頭である。

広報担当なのは、おっさんが広報担当より女性がやったほうが受けがいいだろうということなのだろうが、実際この人事は大当たり。

様々な企画や宣伝を打ち出し国民に艦娘という存在を肯定的にとらえさせたのだ。

因みに俺の同期だったりする。

 

『いったいどのようなご用件でしょうか?夏木大佐?』

『・・・実は本土では各鎮守府が秋祭りを行い大成功を収めました。』

 

秋祭り

年に四回ほど鎮守府が一般公開される。春は花見、夏は夏祭り、秋は秋祭り、冬は地方によるが何かしらの開放が行われる。

夏と秋はどうしてもかぶってしまうが・・・

『さすがの手腕ですね。それで何か資材でも足りなくなりましたか?』

『駿河諸島鎮守府でも秋祭りの開催をお願いしたいのです。』

『・・・・・・・え?』

『だから』

『いや聞こえましたよ?でもうちでやっても誰も来ないですよね?島民って言ってもうちの者たちしかいませんし。』

『今回は一般開放ではなく、内部の開放のみです。』

全容が大体予想で来たぞ

おそらく今回のは内部のガス抜きの一環だろう。

秋祭りといっても1週間もやるわけにはいかない。

せいぜい2日か3日がいいところだ。

それでは鎮守府の艦娘たちはどうだろうか?

祭りを目の前でやってはいるが当然最低限の任務も行わなければならない。

艦娘とて年ごろの女の子

遊びたいという気持ちが芽生えてもおかしくはない。

規模が小規模くらいならぎりぎり回せただろうが、大規模のところは絶対に無理だ。

ならば内部のみでの開催を行い発散してもらおうというわけなのだ。

駿河諸島なら島民もおらず一般に知られることもないし、遠征名目で楽しめるので一石二鳥なのだろう。

『・・・・あいにくですがうちも業務で手いっぱいでして難しいかと。』

悪いようだが当たり前だ

ホストになるということは当然物資的なものや事務的な処理がわんさか来る。

そんな面倒ごとは大っ嫌いだ。(え?俺なら喜びそう?んなわけないだろ?)

『大丈夫です。そちらに対して増える業務は書類10枚程です。しかも全部サインのみです。』

『はぁ?それはいくらねーら?だって秋祭りだら?あっ』

『やっと普通の喋りになったわね。そのままでお願い。』

余りにもおかしい条件を告げられ思わず素が出る。

『はぁ・・・。それにしたって屋台やらそれに関する調達とかはどうするんだ?』

『それは各鎮守府の艦娘たちがやるわ。ご当地色を出した屋台って魅力的じゃない?』

『そういうことね。ってことはうちは受け入れに関する書類ぐらいだし、準備はそっちが勝手にやるからこちらは何もせんでええって事かい。』

『そういうこと。ちなみに時雨ちゃんと古鷹ちゃんには許可をもらってあるからね。』

『ちょっ・・・。まさかお前もみたんか?』

『見させてもらいましたよ?一番忙しい時で週100時間超えてるって何よ?あんた死ぬ気なの?』

『・・・・今は週60時間です』

『週40時間て知ってる?馬鹿なの?死ぬの?そういうわけで祭りの開催期間は10日間。その間は業務を大幅に減らせるようにしたから午後の4時間だけ業務をしてちょうだい。』

『え?!そんなに?!』

『あと9日目には同期会を開くわよ!』

『まじかー・・・』

『ってか最初なんであんなに他人行儀なわけ?!ひどいじゃない!』

『いやだってそっちのほうが階級上じゃん?』

『そんなの関係ないわよ!それを言ったら同期全員上よ。』

『よろしくお願いします夏木大佐。』

『はったおすわよ?と・こ・ろ・で・?』

あ。

このねっとりとした言い方の時はたいていろくなことがない。

『あんたついに吹雪ちゃんと一線超えたの?でもこっちの時雨ちゃんとの添い寝の記事が本命なの?』

『そっちの新聞は没のほうだろ!なんでお前がもっとんだ!』

『あら?そんなのロリコン大将(桐月大将)からパクったにきまってるじゃない。で?どうなの?なんなら駆逐艦の会にくる?』

『お断りします。大将にも誘われたんだけどどんな会なん?』

『ひたすら自分の嫁(駆逐限定)のかわいさをアピールする会』

『憲兵さんを呼ばなきゃ・・・』

『あら?憲兵隊長も朝潮で参加してるわよ?』

『誰だよそんな会合作ったやつ!』

『はい!わたしでーす♡』

『Fucking Jesus!』

『それとも白露の会のほうが良かった?』

『お前の嫁って?』

『五月雨』

『そーだよね!知ってたよ!選ぶときに上官脅してたもんな!五月雨ちゃん以外の初期艦は認めないって!』

『いやーマジで天使っすわー。聞く?五月雨ちゃんの今日の素晴らしいところ。月刊で配送もするわよ?』

『結構です。お前さんと話しているとどんどん気疲れしてくる・・・。』

『あざーす!』

『褒めてねぇ!どうせお前が作ったんだろ?その会も。』

『ちがうよー。別の人。』

『大本営にはいったい何人の変態がいるんだろうか。』

『変態じゃないよ!仮に変態だとしても、変態という名の紳士淑女だよ!』

『ははは○ろしてぇ。』

『というわけでよろしくね!同期会で詳しい話聞くから!みんなにも事前に伝えておくね!』

『え!ちょっと待て!おい!』

無慈悲にも聞こえてくるのはツーという電子音だけだった。




後半会話文のみになってしまいましたが許してください!なんry
想定だと10~11話を予定中です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第一夜

いつも山のように書類が乗っている机は何もなく、決済箱すら何も入っていない。

「ほんとになんも無いんかー・・・」

「ないですねー・・・」

ソファーで向かい合って魂の抜けたような顔をしている。

結局大本営から来た書類というのは5枚だけ。

さらには閑散期よりも人が減った。

これはおそらく大規模の鎮守府はもれなく全部参加するために遠征等は控え、なるべく資材管理をうまくやりくりしているためであろう。

一気に仕事が減ったため備蓄?していた仕事も片づけてしまい、吹雪と二人で仕事探しに出たのだ。

予想される部屋数の増設や、祭りを行うために山の整備を行ったりする関連の仕事ができていたので、いつものペースでやろうとしたところどこから漏れたのやら。

俺は古鷹、吹雪は時雨にひっ捕らえられついに旅館にぶち込まれた。

代わる代わるの艦娘に仕事量の統制をされながら1週間ほど過ごし、今日ようやく執務室へと戻ってきたのだ。

「うわー・・・マジで机の上に書類がない!」

「着任した時以来ですね!」

「だなぁ!閑散期でも絶対20枚はあるからな。」

しかし、このタイミングで戻されても困りものだ。

書類はないし、仕事はない。

「部屋に戻るか。」

「そうですね。」

「ちょっとまった~。」

ちょっと間の抜けた掛け声とともに入ってきたのはものぐさ変態こと望月だった。

「せっかく祭りやってるのに行かないってどうなのさ!」

「「あ」」

「というわけでみっちゃん。今日はあたしたちと行こうぜ!」

後ろからひょっこり出てきたのは深雪だった。

よく見れば二人とも浴衣を着ていた。

望月は紺地にウサギと赤いまりの模様があしらわれたものを

深雪は薄い水色の生地に紫陽花の模様があしらわれているものを着ていた。

「吹雪ちゃんは鳳翔さんが呼んでたよ~。浴衣を見繕ってくれると思うからさ~」

「本当ですか!?司令官行ってきます!」

聞くや否や飛び出して行ってしまった。

こうしてみるとやっぱり年ごろなんだなぁとしみじみ思う。

「鳳翔さんが見繕ったのか。二人ともにあっているな。」

「「みっちゃんが服装をほめた!?」」

「どういうことだこら?」

 

 

 

 

隣の島へと行くと様々な屋台や出店が並んでいる。

人の量は程よく、歩きづらくない程度の込み具合だ。

「うわ~。だる~・・・・。」

「第一声がそれってどうなんだよ・・・。」

気合いれて浴衣を着ているっていうのに、見るからにダルそうな顔をしている。

「みっちゃん!焼きそばかって来たぜ!」

いつの間にか深雪が抜けだして買いにいってた。

「あーリンゴ飴だ~。ちょっと行ってくる~。」

「え!ちょっお前ら?!」

「おっかき氷か!みっちゃん!もっかい行ってくるぜ!」

こいつらが自由人だってことをすっかり忘れていた。

 

 

 

あちこち勝手に買い出しに行かれ、振り回されること2時間。

休憩所のテーブルの上には数々のお祭りの定番である食べ物がずらりと並んでいた。

そして俺の右足に望月、左に深雪が腰を掛けていた。

「なんで俺の足の上に座るんだ・・・。」

「いーじゃんいーじゃん。」

「ところでみっちゃんのフランクフルトも食べてい~い?」

「やめさい」

望月の頭にチョップを落とした。

「ところでなんで裏に回ってたんだ?」

「あれ?みっちゃんみてたのかい?」

そう。

彼女たちは店の裏手で店員と話しながら買っていた。

「ここじゃあちょっとねぇ・・・。」

「みっちゃんあそこに行こう?」

望月が差した方向はお祭りの列からは少し離れた休憩所だ。

人は寄り付かず狭いため誰もいなかった。

 

 

 

 

「ほんとは報告書を書いて後日提出する予定だったんだけどさ。」

「ちょうどいいから司令官にはここで伝えちゃうからね~」

人目を気にしたのはこういうことか

いくら俺が私服でここの司令官と分からなくしても、誰に会話を聞かれているか分かったもんじゃない。

「あたしたちが屋台の裏に行ったのは情報収集の一環さ。」

「情報収集?なんでまた?」

「それはあたしらが大本営を離れたから間接的にやらなきゃならなくなったからね~。直近で大本営に関することって言ったら司令官にも心当たりがあるよね~?」

「須下中将か・・・。」

「そ!で、聞いてみたら相当これは根深そうだよ。」

簡潔にいうと

須下中将には裏でつながっている人物がいる。

その人物は西の隣国関係の可能性が高い。

「国際問題かよ・・・・。もうこれはどうしようもなぁ・・・。うちで手に負える案件じゃなくなっているような。」

しかめっ面をするがさらに深雪が報告を続ける。

「まだあるんだよ・・・。」

艦娘の裏ルートの元締め

米国への資材密輸

ロシアからの工作員流入の手引き

「これはあいつ個人がやってたことか?」

「たぶん。経歴から察するにつながっている人物に出会う前にやってたことだよぉ。」

須下の元所属は幌筵泊地

なるほど、それならば納得だ。

あそこならどちらにも行きやすいっちゃ行きやすい。

補給管轄もうちとは別のところを経由するためいまいちわからなかったのだ。

「あとは物証か・・・。幌筵泊地はあいつの息がかかったやつがいるしなぁ・・・・。補給基地のほうも人事に口を出してないからいまいち知らん奴だったし。」

リンゴ飴を銜えながら考えるが今のところ特にいい案は思いつかない。

「まぁそういうことだ!あたしらに任せておきなって!」

「まだ来てない鎮守府もいるからねぇ。」

ひょいと俺が銜えていたリンゴ飴を取り上げ望月が食い始めた。

考えるのだ

そのまま口を狙われなくてよかったと考えるのだ。

 

 

 

 

 

「ほかにも大本営で怪しい密会とかが頻繁に行われているみたいでね。」

「もうそれ俺らの管轄の域超えてない?」

「そうなんだけどさぁ~。白系の提督がやっているから気になってさ。」

リンゴ飴を食べ終わった望月が俺のまたぐらへと座る。

いい加減ずるいと言って深雪は俺の後ろへと回り顎を頭にのっけぐりぐりする。

地味に痛いが望月をはじめからのけてなかった自身の責任だ。

「で?なんていう会なんだ?」

「駆逐艦の会」

どこかで聞いたことのある単語が出てきた。

「ほかにも市立朝潮小学校とか大天使の会、クマ会、ポイポイ教、フラットこそ正義、陽炎の会ect」

「みっちゃんしらない?」

「大本営ェ・・・・」

ズイっと顔を寄せてきた望月を引き離しながら悪態をつく。

「司令官は知らないか?こういうことだと夏木とかのほうが詳しいかな?吹雪の会なんてのもあったからちょっと気になってるんだけど。」

「・・・やめとけ。」

「えー・・・。とりあえずやばい会ではないんだよな?」

・・・ひじょーにびみょーなラインだが・・・

「まぁたぶん?大丈夫?・・・・だよ?」(たぶんおそらくきっと?)




第一夜は深雪&望月コンビに行っていただきました。
ちなみに作者はリンゴ飴にやたらと夢を見ていたり(つい最近まで見たことも食べたこともなかったため)
次はちょっとしっとりとした雰囲気に…なっているといいなぁ(願望)
大丈夫がセリフの子が第二夜のお相手です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第二夜

今回はしっとり(風味)の過去話を少しだけ・・・。



「本日は榛名がお相手いたします。」

最低限の仕事(間食休憩はもちろんあります)を済ませさっさと自室に引っ込もうとすると部屋の前にはこれまたきれいな浴衣を着た榛名が陣取っていた。

青地に白梅は目立ちすぎず地味すぎず

なんともチョイスがうまいなと思った。

「ひょっとしてこれから毎日誰かしらいんのか?」

「おそらくいると思いますよ。さぁ行きましょう!」

 

 

昨日来たばっかりだが今日はまた違った様相を見せていた。

今日は神輿が出ているのだ。

こちらのほうには山がある。

ちょうどいいので山頂に神社を造営した。(祭りといえば神社だ。大本営から補助金まで下りたからおそらく立ててほしかったのだろう)

小さなものだがちゃんと神主さん(兼任のため本来は本土にいる)もいるちゃんとした神社だ。

昨日と人の量は変わってはいないが、道の真ん中を神輿が通るため、少々通りにくい。

「提督。」

榛名が手を差し出してきた。

黙って手を取り人込みをかき分け、神輿を横目に見ながら進む。

みこしに乗ってはしゃいでいるのは涼風と谷風だろうか。

法被を着た吹雪型の姿もちらほら見える。

 

 

 

人込みを抜け神社の参道へと来た。

いずれ待っていれば神輿はここへ来る。

が思ったほどまだ人がいないところを見ると先に参拝をしてしまったほうが楽そうだ。

鳥居の前で一例

手水で清め、拝殿に一礼し、賽銭を投げ込み鈴を鳴らす。

二礼二拍手一礼

一般的な参拝を済ませ再び神輿を見るのに一番よさげなポイントを探す。

「提督。あそこはどうでしょう?」

参道の曲がり角に設置してあるベンチ。

そこならちょうど道に面しているため座りながら見れるだろう。

そのとき、ちらりと視界の端にあるものが映った。

「榛名は席とっといてくれ。ちょっと買い物に行ってくる。」

「はい!お待ちしております。」

 

 

 

 

「お待たせ~。人があんまいないからすぐ買えたよ。」

「ありがとうございます!・・・?提督これは?」

綿あめ、焼きそば、たこ焼き

お祭りの定番品だが榛名が疑問に思ったのはそれではない。

アメリカンドックに見えるがソースがぬってあり、魚肉ソーセージや青のり、紅ショウガが表面についている

「これはどんどん焼きと言ってな。俺も実際に見るのは初めてなんだが母親が話していたのを思い出して買ったんだ。」

山形の内陸部の定番らしいが実際に見たのは初めてだ。

味はシンプルにおいしい。

この一言に尽きるだろう。

「ん!おいしいです。提督ありがとうございます。」

「お礼はいいよ。こっちこそいつもホテルのほうありがとうな。」

「いいえ。・・・前線に出れませんし、ここで新しく見つけたこともあります。」

 

 

榛名は戦闘ができない。

正確にはできるのだが、一回の戦闘で疲労困憊してしまうのだ。

通常艦娘は兵器の部分である艤装に砲撃時の演算を任せている。

だが連戦が続くと艤装内の演算機能の効率が落ちてくる。(そこにつながっているオレンジや赤のランプが点灯することを赤疲労やオレンジ疲労と呼ぶ)

そこで自身が多少の肩代わりをすることにより、効率の低下を防ぐのだ。

当然オレンジや赤の状態では肩代わりするタスクが増えるため命中率や回避率に影響してくる。

榛名の場合艤装内の演算機能が原因は不明だがある時を境に使えなくなっている。

そのためすべてを自身で行わなければならないのだが当然膨大な演算を行うと頭がショートしてしまう。

それでも経験や感覚で何とか1戦だけはできるのだがそれ以上は絶対にできない。

しかも回復までに丸1日を要してしまう。

これでは前線にいることは不可能だ。

幸運にも榛名の前提督は俺の知り合いだった。

本来であれば解体するべきところを何とか食い止めたが残念なことに榛名はそこの鎮守府を離れることになった。

 

 

 

「前の提督さんには感謝してます。必死になって私を解体せずに済む方法を見つけてくれたんですから。おかげ様で新しい考え方や素敵な仲間に出会えたんですもの。」

遠い目をして微笑んだ。

「それにこんなに素敵な人と出会うきっかけをくれたのです。これ以上の感謝はありません。逆にこんなに幸せになってしまっていいのでしょうか。」

腕に組みつき幸せそうな顔をした。

「あついねぇ!お二人さん!!」

どぎまぎしていると大声で茶化され、前を向くといつの間にか神輿は目の前へときており声の主は神輿の上で両手の扇子を振っていた。

「よっしゃ!二人の恋路を祈っていっちょやりますか!」

そおーれわっしょいわっしょいといった掛け声とともに神輿を持ち上げては左右に揺らし鈴を鳴らす。

ゴールを前にして盛り上がりは最高潮になる。

「じゃあなぁ!お二人さん!今度は前夜祭でうちの提督と会おうぜ!」

嵐のように過ぎ去り、人も移動していったところで我に返る

「いきましょうか!」

「ああ。」

帰り道にしだれかかる榛名を鎮守府までエスコートし、別れた。

 

「幸せもんは俺のほうだなぁ・・・。」

しばらく気持ちを落ち着けるため部屋には戻らず、普段はあまり吸わないたばこを取り出し火をつけ、紫煙とともに吐き出した。




しっとりになっているのかこれはw?
次のお相手は慌てないでがボイスにある艦娘です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第三夜

金剛さんのクリスマスボイスが想像通り過ぎて爆笑していた作者です。
榛名の第二夜の書き直しを検討中だったり・・・。(見切り発車でやったことを後悔中)
しかも今回も若干湿っぽい・・・。ぐぬぬ・・・。


「失礼します。」

午後の間食休憩ののち吹雪が戻ってこないなぁと思っていたら入ってきた人物を見て察した。

黒地に白い線が入り、紅白の椿があしらわれた浴衣を着た女性

「このまま祭りに行こうというわけか古鷹?」

「はい!どうですか?」

「月並みだが似合っているよ。それにしても椿ね・・・。」

「ありがとうございます。さぁ行きましょうか?」

「え?まだ勤務時間・・・」

「その書類に判を押したら今日の分は終わりだってことは知っていますよ?明日の分に手を付けないでくださいね?」

ばれたか

そっと次の仕事を取り出そうとしたのをもとの位置に戻し、かたづけを始めた。

 

 

 

「んで?どっか行きたいところはあるん?」

今日は神輿が出てないらしく初日と人の量は同じくらいだ。

「神楽でも見ますか?神社のほうでやっているみたいですよ?」

「神楽か~。そういえばこれもちゃんとした巫女さん呼んでいるらしいし・・・。」

大本営は娯楽に関しての財布のひもが緩い気が・・・

今更か。あいつらみたいなのがトップじゃ

 

「おおう!こりゃぁ・・・」

「どうしましょうか・・・」

書類には今日の客室は満室だという報告があったが、それにしては歩いている人が少ないと思った。

原因はこの神楽だということだった。

神社へと昇る階段には黒山?の人だかり・・・(ちょっとカラフルだけど)

かすかに聞こえる笛や太鼓の音しか聞こえない。

「あきらめて屋台でも回ります?」

「いや。ちっとこっち来てくれんか?」

「はい?」

こんなこともあろうかとなんてどこぞの宇宙戦艦の技師長みたいなことだがあるものを作っていた。

 

祭りの列を離れ初日に密談をした休憩所を過ぎさらに奥に行くと鳥居が見えてきた。

実は参道は2つあり、神社の裏表に作ったのだ。

ここは裏側で、しかも祭りの列からはそこそこ離れている。

だが俺は正直ここはできれば使いたくはなかった。

「あの・・・。私は平気ですが提督は大丈夫なんですかここ?」

「だっ大丈夫(たぶん)」

皆さんはここで俺が暗いところが怖いだとかお化けが怖いと思っているだろうがそういうわけではない。

「あの・・・」

「どっどうした?古鷹。」

「私が先に行きましょうか?」

「・・・・・・・・お願いします。」

目いっぱい悩み、いろいろなものを天秤にかけた結果、男として情けないが背に腹は代えられない。

 

 

 

「大丈夫ですか?提督?」

「大丈夫だよ・・・。今のとこ奴らは見てないから。」

「慌てないで大丈夫ですから。」

苦笑しながらこちらを向いている姿はうちに着任したときを思い出す。

 

 

 

「失礼します!古鷹!入ります!」

 

駿河諸島鎮守府への異動を命ずる

異動先を提督から告げられた時はびっくりした。

「すまんな。」

口ひげを蓄え恰幅のいい男が本当にすまなそうな顔をした。

「そんな!どうして!」

「正直に言わせてもらうと古鷹、君の居場所はここではない。」

葉巻を取り出し、火をつけた。

「それは私が弱いからですか?」

古鷹は火力こそ周りに比べるとあったが回避力や防御力が絶望的に低かった。

加えてここは最前線

通常哨戒や海域の奪還作戦の上に敵からの迎撃と戦闘任務が9割を占めるこことは真逆の存在だった。

そこに回避力や防御力が劣る艦娘が生き残ることは想像に難くないだろう。

「君は確かに周りとの協調性等については問題ない、むしろここにいてほしいと思っている。」

「それなら!」

「だからこそだ。」

煙を吐き出し背もたれに体を預ける。

「君はもっと強くなれる。だがそれはここではない。」

立ち上げると頭を撫でた

「異動先には加古もいる。何よりあそこの提督にはびっくりするぞ?期待していってくれ。」

「・・・・・わかりました。」

 

「・・・・あれ?」

返事がない。

もう一度ノックをしたがやはり返事はない。

ただどったんばったんとひっきりなしに物音と叫び声が聞こえる。

「失礼しまーす?」

そっと扉を開けると執務机にはだれもおらず隣の少し小さな机にも誰もいない。

「?」

「君!」

呼ばれたほうを向くと背は高めだがそれ以外は普通の提督の格好をした男が駆逐艦と抱き合って隅っこへと寄っていた。

「助けてくれ!奴がでたんだ!!」

「こっち来ちゃだめです!」

見れば隅っこによっている二人の前には黒光りするGがいた。

 

 

 

「ひえ!」

「大丈夫ですよ。ほら蜘蛛はよけましたから。」

「毎回すまん・・・。どうにも虫だけは好きになれなくてな・・・。」

「いいえ。・・・あっ!」

「やっと着いたか・・・。」

ちょうど横からの視点だが神楽が見える位置に出れた。

幸運にも本殿が近いからか人があまりいないようだ。

「きれいですねぇ。」

「そうだな~。」

幻想的な舞を見ていると時間を忘れてしまいそうだ。

「あれ?月並みでも言ってくれないんですか?」

「・・・それは好きな人に言ってもらいなさい。」

「ふーん。あっ蝉」

「!!!!!」

慌てて古鷹にしがみつく

「冗談ですよ。」

「・・・心臓に悪いんだけど?」

「お仕置きです。」

「・・・・・。」

あなたのおっしゃっていた通りの提督さんでした。感謝します。

 

 

 

 

 

 

その後・・・・・

「おいいいいいいい!だれだああああああああああああああ!こんなことした奴は!!!!」

「司令官何とかしてくださいいいいいいい!」

「むりだぁあああああああああ!古鷹ぁああああああ!」

執務室の前に時折虫かごが置かれるようになったらしい(虫満載)




古鷹さんは大天使だけどちょっとS気があると嬉しかったり(作者の趣味)

次はスペシャルのセリフがある子です!


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第四夜

「・・・・・・」

「zzz」

毎度のことながら気持ちよさそうに寝ている。

おそらく今日のお供は加古なのだろう。

だが浴衣を着ていないところを見るとどこかで着替えに行くのだろう。

今日の執務は終わったがあと一時間勤務時間がある。

都合よく加古もぐっすり寝ているため、明日の分にちっとばかし手を付けてもばれはしないだろう。

そう思い明日の分と書かれたファイルに手を伸ばした。ガシッ

「提督ぅ?加古スペシャルくらいたいの?」

「今寝てたやん・・・」

「終わったなら行こうか~。」

無慈悲にも執務室を引きずり出され鍵を閉められた。

「じゃあ着替えてくるから地下鉄前で待ち合わせね~」

鍵をくるくると回しながら行ってしまった。

 

 

 

「おまたせ~」

「おう。撫子とはまた・・・似合っているけどさぁ。」

白地に淡い水色で描かれた撫子

「悪い?」

「うんにゃ。そういう意味じゃないんだけどね。」

 

 

「んできたわけだけどどっか行きたいところは?」

「今日ってご当地限定のが一番多く出てる日じゃなかった?」

見回してみると確かに物珍しい屋台が多く並んでいる。

「じゃあ行ってみようか。」

「よっしゃぁ!」

 

 

 

 

「加古よ。」

「なんだい提督。」

「なんでまたここを選んだ?」

「ちょっと贅沢なもの食べたいなぁって思って入ったんだけどさ。あたしも予想外だったんだよ。」

ご説明させてもらうと屋台の中にカニ汁と書いてあったのだ。

カニといえば北海道。

紋別鎮守府が提供しているらしいが・・・・。

「カニ一匹マジで入ってるって・・・。」

「一つにしてよかったよ。」

文字通りカニ汁だがプラスチックのお椀に丸々一匹分(カニ味噌付き)入っているとは予想だにしなかった事態であった。

「・・・」パキッ

「・・・」パキッ

「・・・あっ!」

「・・・」モグモグ

「くっそ!」カリカリズズ

「・・・」パキッ

「・・・」パキッ

「・・・」モグモグ

「あっ!まただ・・・」カリカリ

「提督へたくそだね~」パキ

「もうヤダ・・・はよくって次行こう。」

地味なためカット(メメタァ)

 

 

 

 

「黒こんにゃく」

「玉こんにゃく」

「・・・・」

「・・・・」

「「酒のつまみじゃね?」」

なんというかご当地物はどうしてこう酒のつまみになりそうなものになるのだろうか。

というかこんにゃくって群馬が名産だったような・・・。

出しているのはそれぞれ八戸と酒田。

おもっくそ東北である。

隣の秋田鎮守府はオランダ焼きとババヘラアイスと比較的有名かつお祭りに似合いそうなものを出しているというのに。

「あっこれおいしい。提督あー。」

「あー」

ババヘラアイスを食べっこしながら次の中部エリアへと向かう。

 

 

 

 

「これは!」

目の前には白色の饅頭。

表裏にはきつね色の焼き目がついてあんこという焼き印がついている。

「提督好きでしょ?あたしが買ってきたよ。」

かぶりつくとピリ辛の酸っぱい味が広がる

 

 

ピリ辛の酸っぱい?

 

 

「野沢菜のお焼きじゃんこれ!?」

「あははは!引っかかった!屋台に知り合いいたから焼き印すり替えてもらったんだ~」

「ごるぁ!俺の久しぶりのあんこへの期待を返せ!」(←ここ4日くらいあんこ系食べてない)

「おいしくないの?」

「うまいけどさぁ・・・なんというか舌があんこの準備してたからちょっとね・・・。」

「わかる。」

「知っててやりやがったなぁ!」

「まぁ、なんてーの?これぞのざ罠!・・・悪かったって!あだだだだだ!」

食べ物に関するお仕置きを軽く決めておいた。

 

 

 

 

「提督。もう無理・・・。」

「やっぱ多すぎんだろ・・・。」

なんとか中部エリアまで来たがまぁ日本全国に鎮守府があるわけで全部は食べきれない。

「ボーナスは難しいか~。」

「え?なにそれ?」

「なんだか各地方の屋台を回ると豪華賞品が当たる福引ができるみたいだよ?」

ほらと渡された抽選権は6枚

地方全部回るとプラス10枚されるらしい。

「無理無理・・・。関西と中国、四国、九州、沖縄あと5つのエリア行くのは絶対無理。大型の子を引っ張ってこないと。」

やけに大型の子たちを連れていたり大所帯がいたりしたのはこのためか

 

福引所は長蛇の列ができている。

だが回数ごとに列が分けられているため10回以下の列は進みが早い。

景品一覧表がでかでかと張り出されていた。

 

 

 

特等 駿河諸島鎮守府最高級旅館宿泊券ペア一週間分(休暇券付)  10本

一等 全資材1年分(大型鎮守府基準)&嗜好品1年分       50本

二等 お好きな自動車                     100本

三等 どこでも旅行券(日本国内のみ)             500本

四等 無期限1日有給休暇券(7枚つづり)          1000本

五等 明石工房の無料クーポン(5枚つづり)         5000本

六等 全鎮守府共通食事券5千円分             10000本

七等 間宮&伊良湖券(5枚つづり)

八等 伊良湖券(3枚つづり)

 

 

 

「うちら上から三ついらなくね?」

「四等を6つ出せばいいんだよ~。ほい提督とあたしで半分こ」

福引券を握らされ列へと並ぶ。

それに予算どうやってつけたんだろ・・・。

 

「あら。やっほー。」

「やっほーじゃねえよ。お前これどっから予算つけたんだよ?」

ガラガラの前には俺の同期、夏木がおり、受付をしていた。

「そんなの駆逐の会ネットワークにかかれば朝飯前よ。」

「なにそれ怖い」(逆らわんとこ・・・)

「さぁさ引いた引いた!五月雨ちゃんと早くお祭り回りたいんだから!」

「へいへい・・・。」

 

ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ

 

「おっと!最後は四等だね!あとは七等だね。おめでとうございまーす!」

「げげ!おい。今すぐ八等と代えてくれん?」

「だーめ。ちょうどいいから休めってことでしょ?」

「いいから!てか最近めっちゃ休んでいるからもういいんだよ。あーもう後ろの人にでも交換して・・・」ガシ

なんかこんなやりとりちょっと前にあった気がする。

しかもその時よりも力強い握り。

本能が言う

後ろを見るなと

「提督ぅ?行こうか?」

「アッハイ」

 

「まったく!次あんなことしたら本当に加古スペシャルかますよ?」

「はい。でもこれはさすがになぁ・・・。」

「じゃああたしがいい使い道を教えたげる。」

そういうと俺が持っている券とは別の種類のを取り出した。

「ちょっとついてたよ。ガラガラの担当が初霜だったからかな。」

見れば三等の旅行券だった。

「これで今度あたしと旅行に行こう。それでチャラ!」

「・・・俺と?古鷹じゃなくて?」

「提督がいいの~。いいよね?」

「あ、うん・・・。」

「じゃあ鎮守府までおねがーい。もう眠いんだぁ・・・。」

後ろに回られおんぶを強要される。

「おーい!寝るな!・・・ダメか。」

すでに寝落ちしている。こうなったらもう朝まで起きないので、おぶって帰路に就くことになった。

 

 

p.s間宮券はみんなで分けました。




皆さん滅入り苦しみます~

艦これあるからいいもん・・・。
吹雪ちゃんが楽しそうだからいいもん・・・。

次は雨が大好きなあの子です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第五夜

「やぁ提督」

「おお時雨か。どうした?」

「今日は僕がお供だよ。吹雪は昨日10分残業していたから今日一日休みだよ。」

・・・なんてこった

あれほど残るなといったのに・・・。

大方ちょっとだけと思ってやったのがばれたのだろう

しかしまずいことになった

「ところで提督はずいぶん早いね?いつからいたんだい?」

「つい30分ほど前かな?中途半端に時間があって暇だからねぇ」

実のところ嘘で9時にはここにいたためすでに4時間いる。

先ほどまで、ばれないように新しくいろいろな上申書とその資料を集めていたのだ。

ここは仕事を作ろうと思えばいくらでもある。せっかくの仕事を見つけられてたまるか!(でもなんで面倒ごとを増やしているんだろうか俺は・・・)

「そうなの?じゃあ30分早めに終わらないとね。」

よっし!セーフ!

「はぁ・・・仕方ないな。」

「ところでさ提督?」

「なんだ?」

目を合わせないようにさっさとサインをしなければならない書類に目を通す。

こういう時は目を合わせたら最後ばれると相場が決まっているんだ。

「これって知っているかい?」

「これってどれ?」

時雨が執務室のドアに近づきある一か所をたたいた。

するとどうだろう

カシャっという音がして扉にモニターが現れた。

そこには数字の羅列がたくさんあった。

よく見るとところどころにアルファベットが表示されている。

「なんだそれ!?」

「これはここの扉の開閉記録だよ。防犯のためにつけたんだ。ここには機密書類が満載だからね。」

書類の中に防犯設備に関する経費の記載があったことを思い出す。

「あー。そういえばあったなぁ。まぁこんなところ好き好んではいるやつなんぞいな・・・・い・・・・・・・?」

あれ?開閉記録?

「さて提督?」

俺は9時に此処のカギを開けた

「僕が開ける前の記録がさ」

それ以来さっきま出ていない

「9時なんだけどこれはどういうこと?」

 

 

 

「さっさっきまで吹雪ちゃんがここにいてさ!昨日の忘れ物を探していたみたいだよ?」

ふっ!大方みんなアルファベットで察した方もいるだろうが誰のカギが開けたかも記録済みなんだろう!

だが俺は幸い昨日加古に鍵を持ってかれてそのままにしていた。

だから今日は吹雪ちゃんに鍵を借りたのだ!

つまり記録に残っているのは吹雪ちゃんなのだ!

「ん?本当だ。吹雪のカギの記録だね。」

すまん吹雪ちゃん今度好きなものをあげるから・・・

「ごめんよ?提督。いくらなんでも疑いすぎたね。」

しょんぼりと一瞬犬耳に見間違う髪が垂れる

 

どうしよう・・・。

 

ばれなくてよかったけどものっそい罪悪感

「あーいやおれが悪いんだよ。普段の行いがものを言っているんだから。」

「ごめんね?」

あまりにもしょんぼりとされてしまうのは申し訳なく思い立ち上がり頭を撫でてやる

「心配かけている俺が悪いんだからさ。気にせんくてもええって。」

「提督・・・。」

視線が合った・・・と思ったら時雨が視線をそらした

不思議に思いその目線をたどると先ほどまで隠れてやっていた書類が目に移った。

「提督。あれは何だい?」

「えっ?あっ?あれっ?あれは明後日の・・・」

「明後日の書類は青いファイルだけど?まとめたファイルの中に赤色のはなかったはずだけど?」

「・・・えっと」

「提督?」

 

房総鎮守府のほうからあるセリフが聞こえた気がする(ほんと詰めが甘いのね)

 

「・・・転進します!私に続かないでください!」(裏声)

「残念だったね!」

すでに捕まった愛しの秘書艦のセリフを真似てみたが当然腕をつかまれた。

 

 

 

(書類は)ボッシュートになります

 

 

 

「・・・」

「・・・」

はい。耳本です。

時雨さんが完全に拗ねてしまわれ、機嫌を直せないままお祭りに来てしまいました。

淡いピンクの生地に水色の朝顔。

普段は大人っぽい印象のものが多いためこれはこれで新鮮だったりする。

「ほーら時雨?綿あめだぞ~」

「・・・」ツーン

ですよねぇ・・・

つーかよくよく考えればこんなの甘いもの好きの俺でも振り向かんぞ・・・

ご機嫌取りをできずにどうしようかそんなことを考えているときだった。

「提督は僕たちのことは嫌い?」

「・・・・え?」

考えもしない言葉が飛んできた

「どうなの?」

「真面目に・・・だよね?嫌いなやつを置いておくとでも?」

「そうじゃないんだ。何度も言っているけど僕は提督が心配でしょうがない。確かにここだと作戦の立案や指揮がほぼないから書類仕事だけなんだけどさ。いくらなんでも倒れる寸前までやるのはどうかと思うんだ。」

「・・・・」

「どこかのドラマみたいに私と仕事どっちが大事なの?なんてことは言わないけどさ・・・。あんな地獄は僕はもう嫌だよ。提督だって似た状況を味わってほしくない。」

 

 

 

時雨はうちのメンバーの訳あり艦の中では、唯一のブラック鎮守府出身だ。

 

 

 

「提督にもし何かあったら今度こそ僕は」

「時雨。その先はだめだ。」

言葉を遮りそっと祭りの列から外れ砂浜へと移動し、ベンチに腰を掛けた。

「・・・・・夢か?」

「久しぶりに見たよ。もう処刑されていないっていうのに僕の記憶からは消えてくれないんだ。」

「・・・」

「改めて聞くけどどうなの?」

「お前らが好きだからやるんだよ。俺は」

有事の際戦場に出るのは艦娘。

ここだって例外とは言っているが戦争に例外はない。

しかも俺はほぼ文官に近いため作戦の立案すら微妙なラインだ。

自分の大好きな連中の命を他人の作戦に預けなきゃならない日がいつか来るかもしれないと思うと気が気でない。

「俺にしてやれることはこれくらいだから・・・そう思っているから。」

「それで倒れたらどうするのさ。」

「何とかなるら」

「真面目に!」

言いかけた時雨の口を指でふさいだ

「本当に死にそうなときは殴ってでも止めてくれるだろ?」

「・・・・・・」

時雨はそうだけどさぁといったっきり頭を抱えてしまった。

「人間案外死にゃあしないよ。というかお前たちが死なせてくれんだろ?」

「わかったよ。仕方ないなぁ。」

顔をあげた時雨の顔は苦笑していた。

 

「でも次倒れたりしたらまた旅館にぶち込むけどね。」

「・・・・・善処します。」

「まったく・・・。それともう一つ、おそらくだけど駆逐艦の誰かが復活するかも。」

時雨にはちょっと変わった力がある。

予知夢をみたり、勘がものすごく優れているのだ。

かつての鎮守府で虐げられていた艦娘たちを助けようと苦悩していた時に気付いたらしい。

今は当時と違い必死さがないため予知夢は時折しかみない。

しかも予知夢を見てしまうとおまけで当時の記憶まで思い返してしまうためである。

 

「駆逐艦で一人誰にも知られずに沈んでいった子。その子が浮き上がってくる夢だった。」

「なるほど。あいつに伝えておこう。ほかに何か見たか?」

「潜水艦が見えたよ。しかも日本近海ぽい雰囲気だった。」

「珍しいな。ひょっとするとお前さんに縁のある艦かもしれんな。」

「前に江風たちの時もそこそこ鮮明な夢を見たからね。姉妹艦かもしれない。」

 

そういって立ち上がった。

「さっ!屋台にいこう?福引は今日もやっているんでしょ?」

機嫌を直してくれたため再び屋台巡りへと繰り出した。

 

 

 

なおその後、休暇券を狙って特等を引いてしまって困るのは別のお話し




時雨のブラックの過去話はまた別の機会に・・・。

次はいろいろと艦種詐欺?をしている子です。(もう選択肢ほとんどないからわかりやすいけど・・・)


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第六夜

秋祭りが始まって6日目の朝

午前様の生活サイクルからまだ若干抜けきらない今日この頃

「司令官ちょっとおきーや」

「んー?いまなんじよ?」

眠い目をこすりながら開けると目の前に書類を突き出された

「7時ちょいすぎや。急ぎで書いてもらいたい書類があるんやけどお願いできない?」

「んー。・・・・サラサラポンん~。」

サインだけの書類のため目を通し異常がないことを確認すると捺印をして書類を返す。そして再び布団へと潜り込む。

「あんがとさん!それじゃあ9時に執務室でな!」

 

 

「珍しい事もあるもんだよなぁ」

「ほんとですね~。」

時刻はマルハチサンマル

朝食を食べにくると吹雪もいたため一緒に食べている。

その時に今朝のことを思い出し話題にしている。

「ところで吹雪ちゃん・・・。昨日は・・・。」

「モウシマセン」

目のハイライトが消えたところを見ると大体察せる。

「・・・・そろそろ行こうか。」

食器をかたずけ執務室へと向かう

執務室の前には先ほど部屋にいた龍驤がたっていた。

「龍驤じゃないか。また急ぎがあったか?」

「おお司令官にブッキー。そうやないんや。今度は連絡や。」

「連絡ですか?」

「そうや。今日はもう執務終わっとるから吹雪は自由、司令官はうちとちょっち来てや。」

「「え?」」

いくら毎日仕事が減っていたとはいえ一日一枚くらいはある。

昨日の日報の受け取りサインこれだけは絶対あるはずだが

「朝最後の一枚やったやん。」

「・・・・・・・あ」

うっすらとだが日報と書いてあった記憶を探し出した。

「実は本土でシステムトラブルがあったらしいで。それで今日来るはずの書類が全部受信できないんや。」

現状書類の輸送には四通りの方法がある。

陸路、海路、空路と電子上でのやり取りだ。

ここは島だから当然陸路は無理、空路も滑走路を建設していないため無理。

ということは海路か電子上だが電子上で送られてくるのは事後報告等の優先度も低ければ重要度も低い書類だ。

以前は電子上で重要書類が送られていたが、傍受されていることが発覚する大事件が発生したおかげで現在は人と人との手渡しのみに限定されたのだ。

「それって明日山のように来るってことじゃねぇか・・・」

「そうですよね・・・」

「大丈夫や。責任はあちらさんやし極力減らしてもらうように言っといたで~。そんじゃブッキーは休んどいてぇな。いくで、司令官」

「はいな。そんじゃ吹雪ちゃんまた明日~」

「はい!司令官!」

 

 

 

「なにこれ」(艦これ!)

目の前には屋台があった。

お好み焼きと書かれている暖簾と調理台には半分が鉄板半分がたこ焼き器が設置してある。

「粉もの屋や」

「誰がやるの?」

「うちらや」

「何で?」

「ほかの鎮守府だって出しとるのにうちらが出さんわけにもいかんやろ?」

「まぁ・・・・そうだな。」

「それに司令官も毎夜屋台巡りはそろそろ飽きてくるころやろと思うたしな。ええやろ?」

確かに5日目でほとんどの食べ物屋の屋台は巡り終えてしまった。

「楽しそうだしいっか。でも定番のお好み焼きとたこ焼きってのが芸がないような気もするなぁ。」

「何を言っとんのや司令官。うちがそんなつまらんことをするわけないやろ?」

そういってクーラーボックスを取り出した。

開けると一面ピンク色の小エビが入っていた。

「おま!これサクラエビじゃん!しかも生!」

「前に司令官から聞いた業者に頼んで仕入れてもらったんや!15kあるから大丈夫やで!」

「これならご当地名乗れるし大丈夫だな!今日は静岡側で出ているのは焼津と清水だからかぶりの心配もないし、問題があるとすれば・・・。」

「値段やな。」

サクラエビは静岡でしか水揚げされていないため一キロ当たり結構するのだ。

(安くても地元で1キロ5,000円くらい)

「大丈夫や!キロ3,000まで抑えたし、お好み焼き一枚250円、エビ焼6個(たこ焼き風)で200で行けるやろ!」

「よっしゃ!じゃあ下ごしらえしますか!」

 

 

「よっと!」ジュー

「うまいやん!お好み焼きは大丈夫そうやな。じゃあエビ焼のほうをやってみてや!」

「ふっふっふ!一人暮らし中は料理を多少やっていたからな!これくらい簡単簡単!」ヒョイヒョイヒョイ

「おお!・・・ってエビ焼のほうひっくり返せてないやん。」

「よ!・・・ほ!・・・いけっての!・・・・・・・いってくださぁい!」

「・・・・司令官にはお好み焼きと途中の下ごしらえの追加頼むわ。エビ焼はうちがやる。」

「・・・・・・ちくしょう・・・。」

 

 

「そいや!」

日が傾きオレンジ色に染まり始めるころ、隣の島に屋台を移した。

場所は神社の前の展望台(榛名と神輿を見たところ)の一角に構えた。

旗を立て、まずは一枚客寄せ用に焼こうとしたとき、龍驤が戻ってきた。

「いや~!遅くなってゴメンな!」

「浴衣は燕か。しかもしっかり腕まくり済みかよ。」

「こういう時にしか着られへんでな!どや?きれいやろ?」

記事は紺のため、どちらかというとおとなしい印象を受ける。

「なんというか落ち着いた色合いだからか女将さんみたいな感じだな。」

「ふふーん。ほめ言葉として受け取っとくで~。さって!客寄せ用のを焼こうや!」

 

 

 

ちょうど一枚焼き終わるころに初めてのお客が来た。

こういう時たいてい知り合いが知り合いが最初にくるものだがその通りであった。

「司令官!あたしこれ食べたい!」

「おお!もちろんだ!」

・・・正直言って何でこの人がここにいるか小一時間ほど問いただしたい。

そんな声が聞こえてきた。

「おや?耳本くんじゃないか。君の屋台かね?」

「耳本さん!お久しぶりです。いつも司令官がお世話になっています。」

中年後半の白髪交じりの頭にちょっとがたいのいいおじさんと、月の髪飾りをつけた茶髪でポニーテールの女の子

はたから見れば、爺孫に見えるが、桐月大将と文月のペアだった。

「・・・大将。仕事は?」

「そんなもの今日はシステムトラブルでないわい。」

「・・・・・・うちの分が結構たまってませんでしたっけ?」

「・・・・・砂安君がやっているさ!」

「私がどうかしましたか?」

もう一人聞き覚えのある声がした。

見れば壮年期でこちらは筋肉質ムキムキの男とセーラー服を着た茶髪にピンクの髪飾りをつけた女の子

「・・・なんで大将がここにいるんですか?」

「あっ!耳本中佐じゃない!いつもお世話になっています!」

もう知らぬ存ぜぬをしていたかったが店先でこうされては手遅れだった。

「それはこっちのセリフだ!」

「私は今日は有給です!大将にも書類が行ったでしょう!」

「あっ!・・・・じゃあ大本営の仕事は?」

「積み重なっているでしょうな。・・・明日も有給延長でいいですか?」

「・・・・」ニコッ

「・・・・」ニコッ

二人はそのまま秘書艦に待っているように言って、神社の外れへと歩いて行った。

 

「で?なにする?」テメェ!フザケンジャネェ!コチトライカヅチチャントヤスミアワセルタメニチャントチョウセイシテタンダゾ

「じゃあ~お好み焼き2枚とエビ焼き1パックくださ~い。」ショウガナイジャン!アソビタカッタンダモン!フミヅキチャンニユカタキセテアゲタカッタンダモン!

「あいよ~。雷は?」オレダッテイカヅチニユカタキセテノンビリアルクヨテイガパァジャボケェ!イカヅチチャンノユカタデノネリアルキシタイカラアシタモヨコセヤ!

「あたしはエビ焼2パックでお願いするわ!」ハァ!?フミヅキタンノユカタノホウガキレイダシ!シゴトハオマエガヤレヤ!コンドベツノヒニバイノユウキュウキカンヤルカラ!

「かしこまり!じゃあできるまでうるさいから二人止めてくれない?」イマジャナイトダメニキマッテンオワカッテンダロ!オロズゾコラァ!

「「わかってわぁ!/わかったわ!」」ジョウトウダ!キサマゴトキニコノワタシヲヤレルカァ!

 

 

 

これでもくらえ~!/ってー!

「「ぬわー!!」」

 

 

 

「大将が700円、中将が400円です」

「はい。」

「すまなかったな。」

傷だらけの二人が料金を支払うと同じ方向へと歩いて行った。

おそらく今日一日はここにいるのだろう。

「・・・・なんや嵐のように過ぎ去ったな。」

「・・・・だな。」

その後徐々に人が来始めた。

文月や雷が親しい人たちに情報を流してくれたらしく、ひっきりなしにお客が訪れたのだ。

 

 

 

 

 

「おつかれちゃ~ん!」

「いや~!司令官こそお疲れさんや!うちは腕がしびれてもう動かせへん!」

「俺は手首が・・・。片づけるのだるいなぁ。」

祭りは続いているがすでに具材はないため出店の後ろの椅子に腰を掛ける。

龍驤は席を外したらしくいなかったので煙草をポッケからだし火をつける。

こうやって派手に体を動かしたのはいつ以来だろうか。

思考を巡らせながら紫煙を吐き出す。

「なーにすっとるんや?」

「うお!!」

首筋にひんやりとした感触と耳元でボソッとささやかれ、飛び上がった。

「・・・びっくりしたぁ」

「ほい!ラムネ買うてきたで。匂いからしてアークやな?」

「吸うか?」

「ラムネと交換やね。」

龍驤にライターを渡し、俺はラムネを開けた。

「あー。しみるわー・・・。」

「今日は楽しかった?」

「ああ。高校の時以来かもしれん。文化祭で焼きそばをひたすら焼きまくってたの思い出した。」

「それでお好み焼きはうまかったんやな。エビ焼は・・・まぁうん。」

「たこ焼き関係はやったことなかったんだ・・・。でも楽しかったな~!たまにはいいかもしれんね。」

煙草の火を消し、ラムネで口直しをする。

そして、楽しかったことの後始末を始めた。

「これが一番俺は嫌いなんだけどな。」

「そんな司令官に朗報や。」

「?」

「今朝のサクラエビ実は一キロだけ残してあるんよ。」

「もしかして?」

「鳳翔さんとこにおいてあるんや!片づけたら」

口の前でクイッと仕草をする。

俄然やる気がアップし高速で片づけに入る。

 

 

 

 

 

なお帰ったと思われた大将と中将が鳳翔さんのところで飲んでべろべろになっていたのを二人は知る由もなかった。




この後酔っ払いに絡まれて飲むどころじゃなくなった二人でした。

次は・・・誰が来るかお楽しみに!(実質2択ですねw)
ある種祭りの時間にぴったりな方が次の方です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第七夜

たまにはお仕事をということで久しぶりのお仕事回です。


時刻はマルナナマルマル

机の上には大量の書類の山

ここ1、2週間お目にかかっていない惨状に執務室はなっていた。

「やいやいやい・・・こいつはひどいな。」

「さぁ司令官やりましょう!」

心なしか二人とも生き生きとしている。

提督は困ったような声色だが顔は輝いている。

吹雪に至っては俗にいうシイタケ目だ。

普段だったらハイライトが消えているはずが今この時今まで見たことのないような輝きを見せている。

 

「システムトラブルにしちゃ書類多すぎないか?」アコレフブキチャンノサインネ

「何でも大将が逃げたせいで昨日の分と今日の分こっちに来たらしいですよ」リョウカイシマシタ。アトコノショルイシリョウテンプサレテナインデスケドソチラニアリマスカ?

「あー。それでか。しかも大将まだうちでつぶれてるしな。」ホイヨ!コレトコレチェックオワッタカラウエニマイガリュウジョウシタガフルタカデオネガイ

「昨日鳳翔さんのところで宴会したって言ってましたね。」リョウカイデス。コノタバハゼンブサイントナツインデOKデス。

「なんでも聞いてみたら俺たちの書類の負担1/4が大将と中将に行ってたみたいでな。普段の仕事量でもそこそこあるのにさらに押し付けられて嫌気がさしたって言ってた。」アンガトサン。コレチェックシタラアサイチデクルセンダイニマワシテ。

「わからないでもないですね・・・。」リョウカイデス・・・。アッシレイカンココナツインガカスレテマス

「しかもその件で二人に土下座しまくられてさ。額から血がにじむまでやられたよ。」オットイケナイ!ヒサシブリデチョットニブッタカナ?アトコレカコニダイリデタノンドイテ。

「お疲れさまでした・・・。」リョウカイデス!コレデキンキュウノハシュウリョウデスネ

「今頃客室で大騒ぎしてるかもな。今日の出勤すっぽかしてんだから。」チョットスピードオトスカ

この会話をしながら緊急性の高い書類を分別し決済までに実に1時間

書類束にして厚さ50cmの書類束が決裁済みの箱へと収まった。

「よーし!パパどんどんやっちゃうぞ!」

「ママもやっちゃうよ!」

笑いながら久しぶりに高速で手を動かしながら何気ない会話をしていく

 

 

 

「提督ー!ってもう執務始めちゃってるの?規定時間を守らなきゃ・・・。」

マルキュウマルマル

川内が書類束をもって入ってきた

「そんなこと流暢に言ってる間のない書類がわんさかあったからしょうがないでしょ?決済箱にあるやつ全部終わってるで持ってってね。」

「うはぁ・・・。久しぶりに見たね。遅くても午後から監視要員兼手伝いで来るからね~。」

決済済みの書類を両手で抱え退出していった。

 

「・・・いったな?」

「・・・いきましたね?」

書類の量はガンガン減らし、現在特急で上げなければいけないものはすでに終わらせた(先ほど仕上げ切ったものとは別のもの)

「さて!吹雪ちゃん!」

「はい!司令官!」

「このままのペースだと昼前には終わってしまう。そうだね。」

「はい。」

「だが俺たちは今絶好調すぎてスピードを落とすことができない。ならばどうすればいい?」

「新しく仕事を作ることだと思います!」

「その通りだ!そこでだ!直近で新しく2つの案件があるんだ。」

 

一つは港の新設

 

現在の港の容量は繁忙期にギリギリ対応ができる状況だ。

ギリギリはよくないということで新しくもう一つ作ってしまえば、現状を上回っても対応ができるうえ、逼迫しなくなることで余裕をもって裁くことができる。

(事務処理の負担は増えていく一方だが)

 

だがこの書類は実は残念ながら一昨日に時雨によってボッシュートされてしまった。

 

もう一つは滑走路の新設

 

以前も言ったように書類の伝達は船団を通してこちらに配送される。

例外として緊急の書類は軍用機を通して迅速に配達される。

しかしここでも問題が一つ

ここには滑走路やヘリポートがない

そのため八丈島に一回移送を行いそこから高速艦で配達が行われる。

これではあまりにも遅い

そこでせっかくだし自前のを持ってしまえばいいという案があった。

さらには民間機に何かあった時の緊急着陸場所にもなるし、軍用機ならここを経由していくこともできる、また現状正規空母がいないうちの艦隊には緊急時の防衛作戦の幅も広がる。

 

「というわけで滑走路の建設資料作成を行おうと思うのだがどうかな?」

「賛成です!やりましょう!さあ今すぐ!」

喜々としてやっているが皆さん間違えてはいけない

これは正真正銘遊びではない業務なのだ。

「提督?これ最後の追加だけど・・・・何してるの?」

早速取り掛かろうとし始めた時、書類束を持ってきた哀れなる犠牲者が一人。

 

「・・・」チラッ

「・・・」チラッ

目くばせをして吹雪に指示をする

「いや何でもないよ?」

「・・・すごい怪しいんだけど。その書類は何?」

特に止めることもせず書類を見せに行かせる。

「これって新しい仕事だよね?これはまたあし・・・え?」

川内は違和感に気付いた。

提督も吹雪もそうだよといって何事もなかったかのように普通の席について仕事を始めたのである。

「全くもう!古鷹に連絡・・・・あれ?」

普段持ち歩いているはずのスマホがないのである。

どこかに置き忘れただろうかと記憶を探るが、ずっと持ち歩いていた記憶しかない。

首をひねったとき視界の端に見覚えのある端末・・・スマホがあった。

あった場所は吹雪の机。

吹雪は川内を見るとにっこり笑った。

 

 

「・・・ちょっと出てくるね。」

いやな汗が噴き出したが、まさかと一蹴し提督に背を向け扉を開けようとするが当然あかない

何かの異常かと思いこの前時雨がつけた扉の画面を開くと、提督権限によるロック中と表示された。

 

 

 

「「川内/川内さん」」

川内は身に覚えがある

この感覚はあの夜戦、そう3時4時まで残業した時と同じ空気

さび付いたドアノブを回すようにして後ろを向くと提督と吹雪がとてもいい笑顔で

「「(書類)夜戦しようぜ(ましょう)」」

 

 

 

「・・・」

夜戦(昼間というツッコミは受け付けません)とは何か

自分のアイデンティティーである。

その自分が夜戦を相手から持ち掛けられて断るということができるだろうか

いや、できない

 

 

 

「やったぁー!!待ちに待った夜戦だー!!」ガクガクガク

かなしいかな

かろうじて声は震えずに出せたが下半身はマナーモードのごとく震えている。

体は覚えているのだ。

「そうかそうか武者震いするほどうれしいか!」

「それじゃあ川内さん早速ですけどこの資料を・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ヒトナナマルマル

最後の書類を決裁箱に入れた。

業務終了である。

「久しぶりに働いた感じするな!」

「はい!ちょっと肩が凝りましたけど楽しかったですね!」

ちょっとした柔軟をしながらキラキラと各自の机で輝いている二人だが

少し離れた机では

「・・・・・・・・・・・・」

真っ白かつ頭には赤いムンクの叫びのマークが見える川内が机に突っ伏したまま動かなくなっていた。

「はいるで~。うわぁ・・・」

「おう!今日の分終わったから龍驤持ってってくれる?川内がちょっと疲れちゃったみたいでさ。」

「うわぁ・・・」

もはやちょっとどころじゃないがと突っ込みたいのを抑えながら、龍驤は川内の近くにより

「成仏してや・・・」

「まだ・・・・・・生きてる・・・・・」

反論はしたものの動けず龍驤に肩を借りて退出していった。

 

 

 

「提督!明日は私の夜戦に付き合ってもらうからね!」

多少元気を取り戻した川内はそう言い残した。




今年最後の投稿となりました。
本当は今年中には秋祭り編を終わらせて次の話に行きたかったのですが間に合いませんでした・・・。
来年もどうぞよろしくお願いします!!

次は引き続き川内さんのお話です。


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第八夜

皆様新年あけましておめでとうございます!

本年もこれははたして鎮守府か?をよろしくお願いいたします!


そんなわけで毎度おなじみの祭り屋台の列

まだどんな食べ物には飽きていないかなと俺は考えた。

龍驤の時以外は全員俺と半分こして食べているため、屋台は違えど大体同じものを食べているのだ。

確かに味は違うが所詮は同じ料理。

すでに大半は食傷気味となっていた。

「提督お待たせ!今日は私の夜戦をしてもらうからね!」

「悪かったって・・・。古鷹に言わないでくれよ?」

「私を楽しませてくれたら許してあげる。」

龍驤は今度飲むことで買収済み

全力で楽しませることに徹する以外道は残されていない。

(失敗したら吹雪ちゃんに恨まれかねんし)

 

「ところでどう?この牡丹の浴衣?似合ってる?」

「ああ。川内もかわいいんだからあとはその夜戦癖さえ何とかすれば・・・。」

「それは無理。」

「ですよねー。」

そんなこんなでいい感じの人混みを歩きどこの屋台に行くかと思うと俺は考えていたことと違った。

「金魚すくい?」

「そう!提督そろそろ屋台のもの全部食べたでしょ?だから今回はちょっとしたゲームっぽいもののほうがいいかなって思ってさ。」

なるほど。

お祭りの出店といえばよくよく考えれば食べ物以外もある。

「提督は得意?」

「まぁ見てなって。」

不敵に笑い、料金を支払うとポイを受け取った。

ポイを水に浸してはだし、浸してはだし金魚を隅に追い詰める

「よっと!」

そしてきれいに

「・・・・穴が開いたね」

「・・・・・・ちゃうねん」

なぜ関西弁なのかは置いておいて黙って店主に次のポイの料金を差し出す

正直に言うとこういうものは苦手だが、できないと何か悔しい。

あと少しだったのだ。

あと1、2回やればすくえるだろう。

 

 

 

 

 

「・・・・5回やって全部失敗した人はあんちゃんが初めてだ。」

憐みの表情で店主は俺の顔を見ている。

「それじゃあ私が教えてあげるよ!」

 

 

川内曰くポイは水につけたらそのままにしておけば強度が落ちずに済む。

そして肝心なのはすくうときに斜めにすること

水平だと水の抵抗で紙が弱ってしまう。

そして何よりも金魚が暴れず素直にすくえる。

 

 

「だからって全部すくいきっちゃう事はないでしょ。」

「2匹あればいいから断ったじゃない。」

半分をすくったあたりから店主の顔色が刻一刻と変化を始め、最後には真っ青になっていた。

返却を申し出た時は頭を懇切丁寧に下げられ、周りからはやーさんを見るような視線をされた。

 

 

 

その後もほかの屋台をやったが恥ずかしいことに散々な結果だった。

輪投げでは狙った方向に飛ばず、10回チャレンジで1回も成功しなかった。

ヨーヨー釣りでは一つだけをひっかけたつもりが3つも引っかかっており、こよりがちぎれ失敗。

なんとこれが3回連続。

隣では器用に川内が10個近くをつっていた(これでもセーブしたらしい)

それぞれの店主に

「あんた逆に器用だね。」

一言一句違わずに言われた。

 

 

「じゃあ次は射的!これなら大丈夫でしょ?」

射的か!これなら軍学校でも射撃訓練はしたし、多少はましだろう。

「たのもー!」(←やけくそ)

「あっ!すいません。それ明後日からなんですよ。」

ガーンだな。出鼻(じゃないけど)をくじかれた。

「でも射的だと提督にはかなわなかったかも。」

「?なんでだ?」

「だって提督、吹雪の腕を育てたでしょ?」

確かに吹雪の射撃を最初は面倒を見ていたがそんなにずば抜けていただろうか。

「自覚がないんだから~。ほら!そろそろ時間だから帰ろう?今日は楽しかったから古鷹には言わないでおいてあげる。」

「本当にこんなんで楽しかったか?!」

「もちろん!提督がここまでいろいろへたっぴなのは初めて知ったし、負けず嫌いで何度も挑戦するところは面白かったよ。」

 

 

・・・ちくしょう。

なんだか見世物にされた気がするが古鷹に報告が行かなければそれだけで御の字だ。

ふとくじ引きのお店が目に入った。

いろいろなものがあったがあるものに目が留まる。

牡丹や芍薬、百合など様々な花があしらわれているのに決して下品ではない髪飾り。

「川内!ちょっとくじ引きやってみていいか?」

「ん~?・・・いいよ!あたしもほしいものができた!」

 

 

 

「で?なにが当たったの?」

「これだ。川内は?」

少し不満げに見せる

「あっ・・・。私はこれ。」

「えっ・・・・・・。」

俺があてたのはマホガニーの万年筆。

シンプルだが使いやすそうなものだ。

一方川内があてたのは俺が狙った髪飾り

「「そっちか~・・・。」」

声がはもり、顔を見合わせた。

どうやら川内も万年筆を狙ったらしい。

「なんだかこういうのってあるんだね。」

「だな。せっかくだし交換するか?」

「いいね。来年こそは当てて送ってあげるからその時までとっておこう!」

 

 

 

結局交換をし、執務机の一番下の引き出しに小さな箱を押しのけ髪飾りをしまいカギをかけた。



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駿河諸島鎮守府の秋祭り 第九夜

本土でのシステムトラブルはいまだ復旧のめどが立っていないらしく、平常より少し少ないくらいの仕事量を今日はこなす。

夏木から電話があり、本土の連中は護衛艦で向かうから船上でパーティーということになった。

夏木はすでにこちらにいるため、港で待ち合わせることになった。

秘書艦もつれていくから祭りにでもと誘われ吹雪に聞くと

「楽しそうですね!みんな元気かな?」

と喜んでいたのでOKを出し、電話を切った。

執務は他の鎮守府の終業と同じくらいに終わらせ、吹雪に待ち合わせ場所を伝え、別れた。

 

 

 

 

 

「やっほー。みっちゃん。」

「おう。福引の時以来だな。」

港に行くとすでに夏木がおり、手を振っていた。

その時、かすかだが汽笛の音がした。

「来たみたいだな。」

妖精さんがわらわらと管制室から出てきて接岸準備を行い始めた。

おそらく今回は佐世保にいる彩雲(あやくも)が出したのだろう。

佐世保らから瀬戸内海へと行き、呉を経由して大本営、その後伊豆諸島沿いにこちらへと向かったのだろう。

 

 

 

 

 

「みっちゃんおひさ~。」

接岸が終わり、最初に降りてきたのは先ほどちらっとだが名前を出した彩雲(あやくも)だ。

背丈は俺と同じくらいで、そこそこ・・・かなりのイケメンだ。

彩雲(あやくも)の所属は佐世保第二鎮守府で大佐。

横須賀、呉、舞鶴、佐世保は規模が大きすぎるため、第二、第三の予備機能を備えた鎮守府がある。

エリート街道をまっしぐらで、イケメン、そこそこ高身長

当然性格も明るく気さく

見合いの中に放り込んだらすぐにバーゲンセールのごとく取り合い必死だろう。

だが悲しいかな。

天は人に二物を与えず

とはいったものだ

「おう・・・。叢雲君も久しぶりだな・・・。」

叢雲がリード持っておりつながっている先が彩雲の首へと結ばれていた。

「久しぶりね。耳元中佐。」

「・・・吹雪ちゃんは地下鉄駅前にいるからいっといで。」

「わかったわ。それじゃあ耳元中佐に迷惑をかけるんじゃないわよ。」

リードをこともあろうに俺に持たせて待ち合わせ場所へと向かった。

「えー!みっちゃんさじ加減できる?これとかこれとか」(モザイク品の山)

「・・・ちょっと頭冷やしてこいや」ドゴ

リードを離し、ドロップキックで海へと突き落とす

大体わかるだろうが彼はMだ。

ここまで残念なMというのは小説や漫画ではよくある話だが現実に見た時にはびっくりしたものだ。

あっこういうのもいいかもとかそんな声を聴かないようにすると人影が見えた。

「みっちゃん久しぶりだろ。」

「みっちゃんおひさ~。」

船のタラップから何の音だろうと覗き込んだのだろうが音の発信源を見て察したようだ。

柏崎大佐、呉第二鎮守府所属

「久しぶりだね。システムトラブルは大丈夫?」

「いやー。ちょっとやばいだろ。」

「ほんとに最悪です。せっかくのご主人様とのお祭りデートがパーになっちゃいました。」

そういう二人には目にうっすらとだがクマが見える。

呉は技術関連の処理が多めであり、明石工房は柏崎の管轄である。

さらにシステム関連もやっているため、明石の処理やらシステムの復旧やらでそれどころではなくなってしまったのだろう。

久しぶりの友人に情けない恰好は見せられない

そんな努力だろうか。

コンシーラーやファンデーションでごまかしているのがわかる。

「あいつが満足して上がってくるまで結構時間あるから船で寝たほうがいいんじゃないか?」

「そういうわけにもいかないだろ。常識的に考えて・・・。お前だって普段はこんなんだろ?」

「まぁ・・・。それはその・・・。」

漣を送り出したのち、提案したが断られた。

それどころか痛いところを突かれ二の句が継げずあきらめた。

「それよりあいつも待っているから船内に行くだろ。夏木の奴も行っちまってるだろ。」

あたりを見回せばだれもおらず、いたのはそこそこ身長のあるひょろながとガタイがいい面長の男だけだった(海には窒息プレイ中のイケメンドM)

「はや!」

「いくだろ」

柏崎に案内され船内を歩き、パーティー会場へとつくと、少し小柄な男が夏木と話し込んでいた。

大本営作戦指揮部のトップであり当然俺の同期の深打少将だ。

「あっ耳本君久しぶり~。」

夏木との会話を切りこちらを向いて手を振る。

「おう。深打も久しぶり。電はもう向かったのか?」

断っておくが大湊の電とは違う。

「うん。今頃吹雪ちゃんたちと合流しているころじゃないかな?」

「私たちも始めましょ。海でプレイ中の奴を引き上げないと。」

だなと言って柏崎がどこから取り出したのか碇を担いで甲板へと向かった。

 

「では!久しぶりの再会を祝して!」

「「「「「かんぱーい」」」」」

体に碇を巻き付けたまま彩雲(あやくも)が乾杯の音頭をとる。

柏崎曰く

「察しろだろ」

「アッハイ」

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに全員そろって会うのはいつ以来だろうか。

「ところで深雪教艦と望月教艦がどこかの鎮守府に転勤したのよね。」

「え?」

「みっちゃん知らないのか?常識的に考えて知っているものだと」

「てっきり知っているものだと思ったんだけどね。みっちゃんあの二人のお気に入りだから。」

口々に言われ一瞬戸惑ったが納得した。

転勤の情報は艦娘によって重要度が左右される。

大本営の教艦ともなれば行き先を誰にも言えないだろう。

「耳本君のところに案外いるかもね。」

そういったとき周りはナイナイといった感じで首を振った。

「それはないだろ。いたら今頃使用済みの食器を狙っているだろ。」

ちらりと食器を受け取りに来た人を見ると望月ではなかった。

変装しようにも取りに来たのは高身長の男性。

二人か三人がかりなら変装できるだろうが同士を集めなければならない。

「深雪教艦は悪乗りしなければ基本いい人だし、望月教艦もターゲットにならなければ基本無害だしね。」

・・・・うちにいるんだよねぇ。

「いっそ嫁にでも貰ったら?」

「それは・・・・」

彩雲(あやくも)の提案に一瞬言いよどんだ

「・・・そういえば柏崎君、明石君ともケッコンしたんだよね~?」

幸い深打が助け舟を出してくれて何とかなった。

「ああ。常識的に考えて重婚をするつもりはなかったが・・・明石に迫られだろ?それでな・・・漣にも明石にも悪いと思っているだろ。」

「えー?ちゃんと責任取るって宣言したんでしょ?気に病むよりしっかりと二人を見てらほうがいいと思うけど。」

彩雲(あやくも)が柏崎に言った。

彩雲(あやくも)は叢雲、曙、満潮、霞、天龍、摩耶

柏崎は漣、明石

夏木は五月雨で深打はまだだったはず

二人とも大本営勤務のため詳細は伏せられているのだろう。

「・・・・夕張が最近な?」

「「「「あっ」」」」

これ芋づる方式に増えていくパターンや

解決策はないため話題を変えた。

 

 

 

宴もたけなわ

もとっくに過ぎ床には酒瓶があちこちに転がっている

それと同時に人も転がっている

つい先ほどまで夏木は五月雨と涼風、白露型についてのかわいさを彩雲に語り、彩雲(あやくも)はツンデレSの良さについてを語り返していた。

柏崎は最初こそ静観していたが、だんだんとウイスキーが回ってきたのか自身の嫁艦についての良さを語りに首を突っ込み、そのまま寝つぶれるまで話していた。

深打は酒に弱いため早々に寝つぶれていた。

一人お猪口に残った日本酒をあおると甲板へと向かった。

 

甲板に出ると酒で火照った体には心地の良い風と祭りばやしが聞こえる。

最近やたら吸うようになってきたたばこを取り出し火をつける。

携帯灰皿に一本目を落とし、二本目を咥えたところで火が差し出された。

見れば先ほどまで寝つぶれていたはずの深打だった。

「となりいい?」

「酔いは大丈夫か?」

「うん。耳本君に教えてもらったチェイサーをやっていたからだいぶ楽だよ。」

顔色も悪くなく、吐く気配がないことに安心した。

「今度さ。」

「うん?」

「電とケッコンするんだ。」

「それはめでたいじゃないか。なんでさっき言わなかったんだ?」

「みっちゃんはまだあの事気にしているの?」

「・・・・・・・」

「あれは大本営が悪いし、みっちゃんに責任はない。」

「それでも俺はだめだ。」

「ここの子たちはみんな待っているよ?」

「それでもだ。・・・お前やっぱり来る時のんだろ?」

見れば顔が白くなって息が浅くなっている。

おそらくチェイサーの水と間違えて柏崎のウオッカでもあおったのだろう。(柏崎はなぜか度の強い酒が好みのようだ)

「・・・・ぎもぢわ」

「まてまてまて!海だ海!」

 

魚に餌やり中・・・

 

「全く・・・こういうのは今日はないと思ったんだけどな。」

「ごめん・・・。」

「で?式上げるのか?」

「うん。日取りとかはまだだけど。」

「みっちゃーん。ふうちゃーん!」

ぬらりと扉の陰から出てきたのは美女(酒瓶担いだ)・・・もとい夏木だった。

「なぁおい。この展開って。」

「なっちゃん顔が白いねー。」

「みつけ・・・・うぐ・・・・ぎm」

「知ってた。」

そういって海に顔を向けさせ餌やりを行う。

いつもと同じ終わり方で解散と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがみっちゃんの使った食器一式だね?ありがとう。これは取っといてね。」

「ありがとうございました!」

望月を甘く見てはいけない




改めまして新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
早くこのシリーズ終わらせねば・・・。
そして終わった後で登場人物をまとめなくては・・・。


最終夜は・・・誰かもうお分かりですよね?


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駿河諸島鎮守府の秋祭り 最終夜

健康的な生活サイクルすぎて退屈してきた

 

休みとはいえど午後は少しの仕事をしなければならない。

午後までの微妙な暇つぶしの趣味といえばと考えたが現在5連敗中だ。

ふと、自室のキッチンが目に入り菓子作りでもしようかと考えた。

しかし、あいにく間宮さんは休暇を出していたことを思い出した。

彼女はケッコンしているので夫に会いに内地へと戻っているのだろう(海軍関係者のため時折こちらに来る。)外泊許可書にサインしたのを思い出した。

材料が手に入らないのなら鳳翔さんのところへ材料の調達にでも行こうか。

しかし、彼女も今日から1週間の休暇で本土へと戻っていることを思い出した。

(鳳翔さんもケッコン済み)

先日旦那さんとお祭りへと繰り出してそのまま今日の朝に本土へと戻ったのだろう。

これにより料理の線は完全に消えた。

冷蔵庫にはエナジードリンクしかない。

窓をよじ登って仕事をすることを考えたが、ばれた時が危険すぎるためこれも却下

 

 

 

うんうんとうなりながら考えているとピピっという電子音が部屋に響いた。

音のしたほうを向くと時計が鳴っていた。

「え?もうこんな時間?行かないと!」

結局今日も考えるだけで終わってしまった。

 

 

「俺の午前中がこんな過ごし方ってどう思う?」

「最近私も同じです。」

「だよなぁ・・・。」

しっかりと手を動かしながら吹雪と駄弁る。

「つぶれてよかったと思うけどさぁ。」

「これはこれで何かもったいないなと思っちゃうんですよね。」

「そうそう。結局堂々巡りで答えなんて出ないんだけどね。はい終わり!それにしてもシステムトラブル早く直らないかな。」

柏崎曰く特急で直しているらしいが結構メチャメチャになっており、直すことよりも新システムへの移行を考えているらしい。

昨日仮復旧したため仕事が今日だけは最近と同じ量なのだ。

(書類は海上輸送のため一日遅れる)

「お疲れさまでした。あと司令官こちらをどうぞ。」

「なに?これ?」

オレンジ色の包みを開くと中からは黒色の浴衣が出てきた。

「今日は私が司令官のお供です!せっかくですから司令官も浴衣を着ましょうよ!」

「いいけど俺着方知らんぞ?」

「私が手伝います!」

執務室を出て鍵をし、着替え部屋へと向かった。

 

着付け方を教えてもらう前に吹雪が桜の散るピンクの浴衣を着ようとしたのだが俺の目の前でしようとしたときにはさすがに止めた。

先に吹雪が着替え入れ替わりに俺が部屋に入り、口頭で教えてもらいながら着替えた。

 

 

 

 

 

下駄の音を響かせながら何度目になるだろうか

屋台の列はやっている人は変わってはいるがメニューは変わり映えしない。

だが隣の吹雪はキラキラさせている。

「司令官!昨日あの屋台なかったんですよ!行きましょう!」

はしゃいでいる吹雪を見て以前にも思ったがやっぱり年ごろだなと思う。

 

 

 

「司令官これなんです?」

屋台を回っているときに懐かしいものを見た

「これはさくら棒と言ってな。ピンク色の甘い麩菓子だ。」

子どもなんかはよくこれを買ってもらうのだが難点というか楽しみという特徴がある。

でかいのだ。

短くて50㎝、長いと1mのもあるらしい。

きれいに持って帰るのは至難の業でよくチャンバラをして楽しんだ後割れた麩菓子を食べる子もいたりする。

幸い一番小さいサイズが売っていたため一本を分けながら食べることにした。

懐かしい甘い味を楽しんでいるとチャンバラをして遊んでいる駆逐艦がいた。

折れたら二刀流だ!とか言いながら遊んでいるのを見るとほほえましい気持ちになってくる。

 

 

 

 

そのまま食べ物の区画は終わり、ちょっと苦い思いをしたゲームの区画へとくる。

ゲームのは極力参加しないように努めた。

・・・・情けない姿見せたくないし

そうやってゲームを避けているとやはりというか口等には出さないが不満げな態度がなんとなくだが伝わってくる。

何かないかと考えた時、射的を思い出した。

ちょうど今日からだったはず

「吹雪ちゃん。射的やらない?」

「いいですね!やりましょう!」

少し曇っていた顔が再び輝き、胸をなでおろす。

 

射的はそこそこにぎわっており、店主が忙しそうに商品の補充をしていた。

挑戦者の大半が艦娘のため、料金は高く設定し、少し補強してあると注意書きがしてあった。

プロが相手じゃ確かに厳しいものがある。

店主も始める前にどのような補強がされているのかを説明しているところを見るに、誠実な人のようだ。

「司令官!」

吹雪を見ると少し微笑んでいるが何かを企んでいるといった雰囲気だった。

「せっかくですし罰ゲームをつけましょう?」

敗者は勝者の言うことを一度だけ聞くといったありがちな話だった。

店主に頼み景品の数を19個にしてもらい玉は10発もらった。

艦娘でも補強されているのにはかなわないのか10発撃って3~4個が平均だという

 

「私が全部取っちゃうんだから!」

先行の吹雪の一発目は景品の上の隅に充てて転がり落とした。

「やるねぇ。それ。」

俺はピラミッド状に積み上げられている景品のど真ん中に充てて崩した

その後、一発もミスることなく最後の一つの先後はじゃんけんで決めることにした。

 

 

 

 

「で。俺が先行ね。」

最後のは猫のぬいぐるみ

かわいいのだがどことなくいやな感じというか・・・

とにもかくにも上の重心の高いところを狙って落とせば楽勝

そう思っていたのが間違いだろう

 

慢心!だめ!絶対!

微妙にかすめぬいぐるみを揺らしたが結局落ちなかった。

「やったぁ!」

 

よくある話、負けてしまった。

 

 

「ぐぬぬ・・・。」

「司令官!私やりました!」

吹雪が勝ってよかったという反面、あんな凡ミスをした自分に少し腹が立つ。

「それじゃあお願いですけど・・・」

どんなお願いだろうか

考えてみるが見当もつかない

・・・仕事時間の調整(割り増し)だったらどうしよう

勝利のポイントとなった猫のぬいぐるみを両手で持ちながらこちらを向く

(あ、かわいい)

 

「私の質問に一つだけ答えていただけますか?」

「質問?」

なんだよかった

胸をなでおろした

割とマジで仕事関連(減らす以外)だったら古鷹や時雨を説得する無理ゲーをしないとならないからな

「よーし!なんでも答えてやるぞ!機密だって吹雪ちゃんだったらバンバンいったげるよ!」

「本当ですか!じゃあ・・・」

「うんうん。」

「司令官の好きな人って誰ですか?」

「それh・・・あ?」

 

 

気の抜けた声が出る

いやまてまて

こういう危機は昨日あったからふつうはしばらく来ないんじゃないのか?

だがしかし待ってほしい

吹雪ちゃんは「好き」といったのだ

「Like」か「Love」を指定していない

それならば答えようも

「その・・・慕っているという意味で・・・」

 

 

ガッデム

 

 

おいおいおいおい

どうする?どうするのよおれ?!

ポケットから選択肢のカードが出てくるはずもなく本当に詰まってしまった。

 

「えーあーあーあーどっどうしてまた?」

テンパって質問に質問で返した

だがこれで相手の様子を見ることができる

「昨日漣ちゃんが・・・」

『ご主人様ったら明石とケッコンの答えを出すのに1か月もかかったんですよ!今までと変わらず愛してくれればいいし、すぐに相談してくれればよかったのにですよ!』

「って言ってて・・・そういえば司令官は誰が好きなのかなぁと思いまして。」

 

 

 

柏崎今度会ったらすりつぶす ジゴウジトクダロJK

 

「あの・・・。今すぐでもなくていいのでいつか教えていただけるといいなって」

 

渡りに船

この一言だろうが果たして乗っていいのだろうか

 

乗ろう

罪悪感はあるがそれはずっとしてきたことじゃないか

「すまんなぁ・・・。せめてほかに何かないか?」

「じゃあ最初の頃よくしていた朝の見回りをしませんか?」

朝の見回りとは言っているが、早い話散歩だ。

着任初期は今ほど忙しさがカンストしていなかったためのんびりとパトロールがてら歩いていた。

砂浜に行くと何かしらの物が流れ着いているのを眺めるのが楽しみの一つだった。

「いいな。忙しくないときにたまにはするか!」

「はい!」

 

危機は去った(先送りにしただけ)

 

 

 

 

チッ

「おう夏木。」

「あっあらみっちゃんどうしたの?奇遇ねぇ?吹雪ちゃんはどうしたの?」

「吹雪ちゃんは今お面選んでいるから席をはずしとるよ。・・・漣をけしかけたろ?」

柏崎がけしかけるようなことを言うはずがない

おそらくほかの子に相談してみたら?

そんな感じの軽いけしかけだろう

「いつまで悩んでいるの?」

顔が変わったところを見ると冗談ではないことがわかる

「・・・・・さぁ」

「大本営の鷹を見つけるまでする気なの?」

「司令官!私これにしました!」

「はいよー!今行く!・・・鷹を狩っても俺がしたことは消えないよ。」

「あ!夏木さん!お久しぶりです!」

こちらにすでにきており会話を聞かれていないかヒヤッとしたがどうやら思い過ごしで済んだようだ。

「あら!吹雪ちゃん久しぶりね。また一層かわいくなって・・・うふふ」

きつねのお面を斜めがけした吹雪に近寄りほっぺをムニムニする。

「ひゃめれくだひゃい~。」

「うりうりうり~。五月雨ちゃんよりももちほっぺじゃない!これは発見だわ!」

「やめい!」

手を叩き落とすとあらやきもち~?なんてあやしげな視線を向けてくる

「あ!司令官!司令官に似合うと思って私お面を買ってきました!」

 

 

 

 

「・・・・」コーホー

「・・・・」プルプル

「I'm your admiral.」

「NOooooooooooo!」

「あはははははは!それはずるい!マジでずるいわ!」

 

※この後かえってほかのみんなにも見せたら予想外に受けました。




というわけで今回をもちまして秋祭り編は終了となります。
ほんとは去年に終わらせたかったんですけどね・・・。
浴衣に意味があるって知ってました?
いろいろな資料調べやらで時間をとられまくってましたwww
もう少し秋の回をやってから(こうしてずれていく)時間の修正を入れていきたいと思います。

今朝の出来事

月のEOリセットされたし2-5で勲章もらっとこ。
そういえば改二にしてから加古使ってないな・・・。
よし!今回は加古を旗艦で行こう!

加古だけ中破でこれた!ボスマス到着!

やいやいタ級とル級のこっちゃったけど大破はいないし夜戦で行けるよな
加古の連撃でタ級撃破やったぜ!
ル級のカットイン
加古撃沈


撃沈!?
「司令官信じてたのに・・・」
え?!え?!
中破で撃沈ってないんじゃないの!?
というか旗艦の撃沈もないんじゃないの?!
とりあえず運営に電話!連絡!


ここで飛び上がって目が覚めました・・・。
艦これ開いて加古の無事を確認するとマジで脱力しました・・・

時計を見たらちょうどバイトへ行く時間・・・。
加古が起こしてくれたんだろうけど・・・・もうちょっと優しく起こして・・・。
朝から精神がごっそり削られた作者でした。


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駿河諸島鎮守府の非常業務 その1

秋祭り後は怒涛の忙しさが襲ってきた

北方ではサンマ漁の支援で南方方面からの北方方面に向かう船団の一時補給や立ちよりを裁いた。

それと同時に小規模作戦が大本営で立案された。

この間新たに設置した沖ノ鳥島監視府からさらに監視府を南へと移動し、沖ノ鳥島を警備府へ昇格しようという案だ。

幸か不幸か輸送のみのため全鎮守府が参加するわけではない

そのためほかの鎮守府はいつも通りか少し少なめだ。

問題は沖ノ鳥島への物資輸送の船団がいつぞやのようにひっきりなしに来るのだ。

こんな時に限って港の建設の着工書類を許可してしまい、鎮守府は大忙し・・・いやいつも通りの様相を呈していた。

 

「あー!眠い!」

「大丈夫ですか?司令官。」

生活サイクルが完全に普通の人と同じになってしまったため徹夜が体に堪えるようになったのだ。

仕方なくレッドブルとモンスターの二缶を一気飲みし、再び書類へと向かう。

時刻はマルサンマルマル

吹雪もあくびを噛み殺しながらレッドブルを飲む

「こりゃ朝の散歩は無理かもなぁ」

「ですね・・・。気分転換に今行きます?」

「そうだな。そこそこの寒さだろうし目が覚めるかもな。」

 

 

外は肌寒く風が少し出ていた

鎮守府を出て港回りを歩く

コンクリートで固められた地面を規則正しく建てられた街灯が照らしている。

こんな真夜中に人が歩いているわけもなく、聞こえてくるのは風と波の音だけだ。

「人によっちゃちっと不気味かもな」

「川内さん呼んできたら喜びますかね?」

「・・・どうだろ?」

後生ですからあの夜戦は勘弁してください

最初の書類夜戦の後川内が言った一言だ。

歩みを進め砂浜へとたどり着く。

風があるせいか波も少し強めだ。

砂浜は流木が多く流れ着いており歩きにくかった。

そんなおり不思議なものを目にした

「なんだあれ?」

「どうしました?」

見つけたのは足跡だった。

波が出ているため足跡は長くは残らない。

ということは少し前までここに誰かいたことを示す。

現状問題はなさげに見える。

だが足跡の向きが問題なのだ。

「かかとが海を向いていますね?」

「ああ。ふつう俺たちみたいに見に来た連中の足跡が海に向くのはつま先。だから誰かが上陸したということだが・・・」

「なんでまた砂浜に・・・。」

あたりを見回したが街灯はないため暗い。

茂みに潜んでいるかの確認をしたかったが吹雪に止められた。

「しかたない。」

スマホを取り出しアプリを起動する。

柏崎が作ってくれた艦載機と直接連絡を取るアプリだ。

艦娘ほどではないが、簡単な指示も出せる優れものだ。

龍驤が発艦させている夜間偵察機の報告を見たが敵影見えずの報告しかなかった。

「しょんないで戻るか。明日の朝ちょっと早めにみんなに集まってもらおう。」

「そうしましょう。連絡は入れておきますので司令官は先に休んでください。」

「頼んだ。」

浜辺に背を向け鎮守府へと一直線に戻る

 

自室を開けて布団に潜り込もうとしてやめた

今寝るとおそらく起きれない

時刻はマルヨンニーゴー

最近のサイクルから一度寝たら4時間は起きないだろう

「よっと!」

押し入れから予備の布団を出し、両手に抱え隣の執務室へと運ぶ

これなら遅刻はないだろうと安心をし寝ようと再度潜り込もうとしたとき、思い出した。

「望月にまたパンツとられると困るから鍵を閉めないと!」

自室の前へと戻りしまった扉に鍵をかける。

「これで良しっと・・・早く寝ないと・・・」

 

 

これが昨日の話

なんだか体が重いことに気付き目を開けると右に時雨が左に深雪、そして上には加古が乗っていた。

そしてドアップに移っていたのはしっかりと目を開けている望月の顔だった

「・・・・何してる?」

「目覚めのキスをでもとおもって~」

「せいっ!」

体勢を変え掌底を望月にプレゼントする

「いった!ちぃ!」

体勢を変えた際に時計を見るとちょうど始めようと思った時間だった。

みんな部屋に集まっているがそれぞれソファーやいすなど思い思いのところで舟をこいでいる。

「早く起きろー!特に加古!早く!」

 

 

「そんなわけだ。」

「ほっほーん・・・。昨日の夜間偵察隊の写真上がっとるけど確かにだれか映っとるわ。」

龍驤が写真の入った封筒を渡してきた。

一応夜間も偵察機とレーダーで見張っているが夜間時には敵か味方かぐらいしかわからない。

一見よさげに見えるが敵の艦種がわからないため情報不足になりがちだ。

偵察機を飛ばして肉眼での確認が必要となる。

「これは・・・小さいな。」

「そうだね。これなら吹雪や時雨より小さいかな?」

夜に慣れている川内に写真を回すと推定の身長を出してくれた

この鎮守府で一番小さい時雨よりもう少し低くした艦娘

データーベース上で検索にかけると雪風が表示されたが、各鎮守府の渡航歴を見ても誰もこのあたりの海域には近づいていない。

念のため敵艦のデータにも載っておらずほとほと困ってしまった。

「とにかく大本営に報告書と連絡だな。足跡だけだと報告書で済んだんだが・・・。」

解散し、時刻はマルハチゴーマル

特急でシャワーを浴びれば間に合う

吹雪に自室に戻ると告げ部屋の風呂へと飛び込む

 

「はぁ・・・早く作戦終わらんかな・・・。おーい。」

さっとシャンプーと体を流し、風呂から出ると布団がこんもりと盛り上がっている

「望月ー・・・。鍵をしなかった俺が悪いけどさぁ・・・。」

「ばれちゃったか~・・・ん?みっちゃん?」

後ろからカメラを持った望月が出てきた

「え?おま・・・そっち・・・え?」

「え?誰か布団にいるの?」

とりあえずいろいろと突っ込みたいことがあるがとにもかくにも最大の問題である不自然に盛り上がった布団を処理することにした。

「望月・・・」

「あいよ。」

望月が近づき布団をまくりに近づく

盛り上がっている塊は不自然に震えている

「それっ!」

まくるとそこには




ようやく秋イベまで到達・・・
秋イベ編はどれぐらいになるかちょっと想定してないので何とも言えませんw

登場人物をまとめました!
もしよければ見てください!


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駿河諸島鎮守府の非常業務 その2

先日の出来事(加古の悪夢を見た日の続き)

なんでまたあんな夢を・・・
劇場版見てないからかな・・・?
加古は加っ古いいって噂だし行きたいなぁ・・・

上司「今日は俺いないから今ある仕事かたずけたら帰っていいよ」
マジか!急いでかたずけて見に行こう!
せっかくだから立川で見たいな!
立川からでも多少運賃かかるけど帰れるし!

~仕事終了~

よっしゃぁ!立川に行くために中央快速へGO!

そういえば映画なんて何年ぶりだろ?
上映時間少し過ぎてからだと最悪だな・・・。ちょっと調べよう

上映時間16:15~ 以上

?!←現在時刻18:04

上映時間16:15~ 以上

・・・←現在地吉祥寺通過中

まて・・・落ち着け・・・
もう一つ最寄りにも映画館があるじゃないか
立川で見れないのは残念だがそっちに行こう

上映時間 まだやってねーよバーカ

・・・orn

結局倍以上の運賃を払って何もせずにただただ遠回りして帰りました。
皆さんはちゃんと時間を調べましょうね!

それでは本編へどうぞー。


「司令官緊急通信です!」

望月が布団をまくろうとしたとき吹雪がノックをして飛び込んできた。

急なことに俺と望月は顔を見合わせた。

 

 

 

とりあえず逃げられないように廊下側にはバリケードを設け、隣の執務室に行き無線をとる。

『こちら駿河諸島鎮守府司令官の耳本です。』

『江ノ島鎮守府第一輸送部隊副隊長朝潮です!大至急ですがそちらのドックを貸していただけませんか!?』

『何があったんです?』

『沖ノ鳥島から南方15海里地点にて潜水艦含む敵の大艦隊を確認!交戦しましたが当方被害が甚大!旗艦阿武隈大破、その他3艦が大破!撤退戦に移行しています!』

『なに!報告了解!すぐに準備を行う!』

通信を切ると電話のほうが鳴る

『大本営の砂安だ!耳元中佐報告は聞いたか?!』

『はい!しかしなんでまた潜水艦相手に対潜装備を持たせなかったんですか?』

江ノ島の艦隊は今朝出発した際持って行ったのは主砲と魚雷、レーダーのどれかしかなかった。

『作戦立案時に使った資料が古かったんだ!今周辺の鎮守府から救援の艦隊を向かわせている』

『承知しました!それと軽空母でいいのでどこかの艦隊に編入して索敵を行っていただけますか?』

『了解した。受け入れの方頼んだぞ!』

電話を切ると今度は無線機と電話が同時に鳴った。

片方の応対を望月に任せた

吹雪も無線機の対応で手いっぱいで人手が足りない

通信の内容によるとどうやら沖ノ鳥島から出た艦隊の大半が壊滅的な打撃を受けているようだった。

出ていた艦隊は哨戒部隊含め10を超える。

館内放送のスイッチを入れ非常事態宣言を全島に発令。

補給に立ち寄った艦隊は全員武装状態で隣の島に待機、迎撃時はこちらの指揮に従ってもらうことは事前に了承を得ている。

そしてうちの艦娘を全員執務室に集め、今後の指示、対応を伝えることにした。

 

 

 

 

 

「川内は執務室で無線番、古鷹と加古は海岸で来た艦隊の応対、龍驤は飛行場の管制室に向かってくれ。空母から発艦した艦載機が大破して着艦できないからこっちに来るらしい!」

「「「「了解!」」」」

「時雨、望月は補給関連と戦況の聞き取りを、深雪はドックで修繕を手伝ってやってくれ!」

「「「了解!」」」

指示を飛ばすとそれぞれ言われたところに散っていく。

「一体全体こんな作戦を立てたのは誰だ!全く!」

「本当だよ。これだと小規模じゃすまないね。」

電話や無線をとる合間思わずいらだちがこぼれる

川内もいらだちが積もった顔をする

再度電話が鳴り少しきつめにとる

『はい!駿河諸島鎮守府!』

『わしだ。今回はすまない!』

『謝罪とかは後です。どんな要件ですか?』

『ああ。君が言ったように偵察機を飛ばしたところ小笠原諸島より東北東30海里地点で敵の本隊およびその前衛艦隊と思われる船団を発見した。だが・・・』

『なんです?』

『・・・いや何でもない。ファックスで送ったから確認してくれ。それではな』

コピー機にはすでに敵の数が書かれた紙が印刷済みだった

 

 

 

 

戦艦   1隻

空母   5隻

軽空   2隻

重巡   3隻

軽巡   7隻

駆逐  18隻

潜水艦  5隻

うち敵本隊は空母を旗艦とする機動部隊

空母2隻、戦艦1隻、軽巡1隻、駆逐2隻

 

 

 

 

妙だ

進路上、本土へと向かっているのは確実だが、本土をたたきに来ているのしては若干戦力不足だ。

「空襲か!」

そういった瞬間サイレンが響き渡る

『敵艦載機が本島に接近中!数およそ120機やで!』

管制塔から放送が入り、急いで対空砲火の指示を飛ばす

 

が、杞憂に終わった

『敵艦載機が進路を北西へ取り始めたで!おそらく関東備蓄基地へ向かっとる!』

本土にはそれぞれ地区ごとに非常用の資源を内陸に備蓄してある

どうやら敵はそちらを目標にしているみたいだ。

一応警戒は解かないことにし、改めて海図に駒を並べながら状況の整理を行う。

「やっぱりおかしい。」

「何がですか?」

無線や電話が落ち着き、川内に任せた吹雪が海図を覗き込む。

「空襲が狙いにしても敵の空母の数が少し少ないんだ。」

戦力は多いように見えるが実際は6隻くらいの艦隊を組んでいる集合体

しかも姫と呼ばれる敵の上位種を含んでいない

怪しいことこの上ないのだが確証がない

 

 

 

仕方なくクールダウンのため小休止にお茶でも飲もうと思ったら、吹雪がちょうどお茶菓子等を入れたお盆を持ってきた。

緑茶をすすり菓子本から小分けにされたせんべいとを取り出す。

軽くたたいて、割ってから袋を開き一口食べる。

「ふー・・・・どうしたもんかね。」

補給関連の書類はしばらく裁かなくてよくはなったものの代わりに後でどっさりと臨時のドック使用や寄港に関する書類が来るだろう。

 

 

考えただけで頭が痛い

 

 

執務机の隣に左隣に設置してある海図を横目にため息をつく

「あれ?もう食っちまったか?」

さっきまで小分けにして食べていたせんべいがなかった。仕方ないと思い次の袋を先ほどと同様にしていた時、横の扉が開いていることに気付いた。

「やっば!」

川内のほうを見ると今は席をはずしていた。

「あれ?あそこに扉ってありましたっけ?」

「よかった・・・・。ふっふっふ!吹雪ちゃんに特別に教えてあげるけどね・・・。あそこは俺の自室とつながっているんだ。」

この間の福引で手に入れた明石無料券の一枚をあそこに使った。

なにせ正面口が見張られているからね

自室からなら入室履歴も残んないし、廊下に出て見つかることもない。

おまけに光学迷彩で扉が開いてない限りは見つからない仕様になっている。

「こんなの吹雪ちゃん以外に見られたら大変なことだよ・・・。」

そっと閉めると再び壁に擬態してわからなくなった

「おお!時々使わせてもらっていいですか?」

「いいけどちゃんと俺を通してね?」

こういうのは男心をくすぐるからちょっと好きだったりする

(某宇宙戦艦にある艦長席が自室とつながっているのとかもひそかにあこがれだったり)

「・・・?せんべいは?」

椅子に座りさっき割って開けたせんべいがないことに気付く。

手つかずのはずだが包装のビニールごみすらない。

パリっと食べる音がし、吹雪を見たが当然食べておらず不思議そうな顔をしていた

カサッとビニール袋の音が再度する。

椅子の下からだ

 

恐る恐るそーっと覗き込むとそこには

緑がかった水色の髪にセーラー服を着て机の下の空間で丸まっている艦娘がいた。

その艦娘はさっき俺が割ったせんべいをぽりぽりとなるべく音をたてないように食べていた。

「・・・何か、用?」

「え?あ・・・・・・・無いです。」

反射的に返事をして頭をあげた

「え?誰かいたんですか?」

いろいろ予想外なことに頭が真っ白になった

取り合えず指で下を指さす

怪訝そうな顔をして下を覗き込んだ吹雪が俺と同じ顔をした

 

 

 

 

「えーと・・・君は誰?」

少しして頭の整理が追いつき話しかける。

「・・・あたしは山風」

机の下から出てきてくれて、今はソファーに座らせている

 

山風

おそらく以前時雨が言っていた復活した子はこの子だろう。

 

それにしてもどこから入ってきたのだろうか・・・。

詳しく聞きたいが今は電話番の川内がいないため電話をとらなくてはならない

意識を通信機器に向けつつどうしようか考える

大本営に報告しなければならないが、そうすると山風はしばらく調査のため軟禁に近い状態になる。

だが山風の性格からしてあまりその方法は得策でないことがわかる。

ちらりと見ると吹雪の横でよりかかって寝ていた。

吹雪も起こさないように気を付けていて目が合うとそっと口に指をあてた。

いつからいたのかはわからないがとりあえず起こさないようにそっと立ち上がり海図を見る。

電話が鳴りビクッとして山風が起きた

『こちら執務室。』

電話は内線でディスプレイには補給部と表示されていた

『時雨だよ。提督、さっき到着した艦隊の補給とドックの書類ができたよ。』

『ああ、ありがとう。実は今な山風がいるんだ。』

『それは本当かい!?今から行ってもいい?』

『ああ。ついでにその書類も持ってきてくれ。』

『わかった。それじゃあまた後で。』

電話を置き山風に時雨が来ることを伝えると、わずかだが顔が明るくなった。

思わず笑みがこぼれたが、問題は何一つ解決をしていない。

 

 

 

「これをどうしっかね・・・。」

海図の前で再度頭を抱える。

「提督・・・。」

制服を引っ張られ見ると山風と吹雪がそばに来ていた

「あたし、気が付いたら、このあたり、にいたの・・・。」

指をさしたのは房総沖

駆逐艦山風が沈没したあたりといわれているところだ

「そこからね、このあたりに何かものすごくね、みたことのない艦がいたの。」

すーと指を滑らせ指したのは敵の本隊とされるところから北に少し行ったところだった。

「・・・・そうか!!山風ありがとう!」

頭をわしゃわしゃと撫で電話をとる

『はい。桐月だが。』

『大将!偵察機はどこから発着させましたか!?』

『なんじゃ急に・・・。横須賀鎮守府からじゃがどうかしたのか?』

『その偵察機はすぐに引き返しましたか?』

『当り前じゃ!ずっといたら見つかってしまうじゃろが。』

『ではもう一度発艦させてください!本隊とされる船団が確認されたところから北へ10海里ほどのあたりを探してください!おそらく本体とされる船団は前衛部隊です!』

 

偵察機の進路上、斜め上か真正面に艦隊を見る。

そしていち早く情報を持ち帰るため確認後は写真だけ取ってすぐに引き返す。

そうなるとある程度離れたところにいる本隊は発見されない。

たまたまなのか意図してやったのか・・・

意図してやったとしたら作戦が駄々もれか予測されていることになる。

 

『なんじゃと!わかった!今すぐ確認する!』

おそらくこれで発見されるだろう。

やれやれと思ったとき、ふと昨日のことが思い出された。

そうか。昨日の浜辺の足跡は山風のか。

この性格だ。とっさに隠れてしまい俺についてきたというわけだな。

 

「山風昨日浜辺にいたろ?」

「うん・・・この島に着いて防波堤から上陸して行ったよ。」

「そっかそっか。で俺たちが来て驚いて茂みに隠れ、その後をついてきたと」

こくりとうなずいた

「ほかの小さい子も見たけどすばしっこく逃げられちゃって道を聞けなかったから・・・」

とりあえず昨日の疑問が払しょくされ晴れ晴れとした

山風はうちで引き取れるかわからないが夏木を通せば大丈夫だろう

 

 

 

・・・・・・血涙を流しそうだけど。




新春掛け軸ゲットしました!
ほっぽちゃんに殴られて撤退するよりその手前での撤退が多くて多くて・・・。
バケツががががが・・・・
でも・・・後悔はしていない!

冬イベまでに回復間に合うかな・・・


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駿河諸島鎮守府の非常業務 その3

『耳本中佐!お手柄だ!君の言った通り北東に敵の本隊および新型艦を発見できた。』

『それはよかったです。ところで空襲は大丈夫でしたか?』

『ああ・・・。民間人に被害はなかった。』

『・・・資源用意しときます。』

『・・・・余計な仕事を増やしてすまない。それではな。』

 

砂安中将からお礼の電話だったが、仕事が増えたことも確定した。

とりあえず今日裁く予定だった仕事+αは片づけた。

ソファーでは時雨が山風を寝かしつけており、とても微笑ましい。

それを横目に吹雪に頼み、書類を新しく書き始めた。

どうせ来ることが確定しているのだ。

先ほどの資源補充の許可書等を事前に準備しておく。

これが終わったら今日放出した分の資源の増産の見積もりを出さねばならない。

明日でもいいのだが今やっておけば明日の負担が減る

「だからそんな顔しないでくれ・・・・時雨」

「・・・うん。」

じとっと全然不満ありますといった視線を向けていた時雨に言った。

 

そうこれは仕方のないこと

嫌々やっているんだ。

え?ちょっとうれしそう?まっさか!

 

・・・え?ほんとに?

 

自分はワーホリではないはず・・・そう思っているが違ったのだろうか。

「でも終わるまでは手伝うよ。」

「いや大丈夫だよ。時雨も疲れているだろ?」

今朝みんなが集まった時言わなかったが全員クマができていた。

俺自身でも裁ききれない書類がこぼれたまっていくため、他の皆もあまり寝れてないようだ。

俺と吹雪は貫徹はなれているが、川内以外は慣れていない。

おそらく仕事量や疲労度からみるに2徹はしている。

さすがに今日はさせるわけにはいかない

「でも提督ここ一週間の睡眠時間10時間ないよね?」

「残念13時間寝ました~」

「ほら。今朝寝るまでは碌に寝てないじゃない。」

完全に墓穴を掘った

「・・・あーあー聞こえない」

「子供みたいなこと言ってないで早く片付けよう?」

吹雪から書類を受け取り、山風を起こさないように始めていた。

吹雪は今日はあきらめましょう。といった視線だ。

口パクで「あの手がありますし」と言っていた。

 

 

 

 

時刻はフタサンマルマル

時雨に交渉を行い何とかさらにちょっと余分に仕事を片付け自室へと戻る。

バリケードはすでになく、当然布団のふくらみはない。

「さてっと・・・。こういう時の秘密の扉♪」

執務室にとんぼ返りしようとしたところ、何かに引っ張られた。

「え?なに?」

「提督・・・。」

仕事が終わる少し前に時雨とともに部屋に行ったはずの山風がいた。

寝間着を着ており、枕を持っていた。

「提督と、一緒に、寝たい。」

どうやら昨日俺が普段使っている布団で寝たせいか、落ち着くらしい。

「・・・・時雨ェ」

絶対あいつこっちに誘導しただろ・・・

「時雨姉ぇが、提督と寝ると、安心して寝れる、って言ったから・・・だめ?」

「・・・仕方ないな。ちょっとシャワー浴びてくるから待っててな。」

寝かしつけてから仕事にかかろう。

 

 

 

 

 

「そう思っていた時期が俺にもありました。」

一緒の布団に入り山風は10分ほどで眠りについた。

最初は服の裾をつかまれてしまい焦ったが最悪脱いで抜け出せばよい

そう考えていたのが甘かった

抜け出す前に頭を撫でた

これが失敗だった

 

 

なんとそのまま手をつかまれてしまったのだ!

 

 

幸い寝るのには不便ではない左手(山風は左側)をつかまれたが

抜け出すのに腕を引っこ抜くわけにもいかないし、振りほどいたら起きてしまう。

うんうんと小さく聞こえないように考えていると小さくノックの音がした。

「しれいかーん?いけそうですかー?」

そっと着替え等を持って吹雪が入室してきた

「御覧の通りだ・・・」

「あー・・・これは無理ですね・・・。」

「まだだ。利き手は動く。ここで仕事をやろう。」

吹雪に執務室から持ってきてもらえばいい。

そう食い下がったが、ここで急に重さを感じた。

見ると左腕を握っていた手がほどけている

 

 

 

だが、山風にいつぞやのようにがっちりと抱き枕のようにされてしまったのである。

ちょっとでも動くと顔をゆがめて小さく唸り声がする。

おそらく無理に動けば起きるだろう。

「・・・司令官。あきらめましょうか。」

「・・・・・・明日だな」

「じゃあついでで私もご一緒してますね」

「え?ちょっ・・・まっ!」

吹雪も山風も体は大きくないため収まることには収まるが

「じゃあおやすみなさい司令官。」

「あ、うん、お休み・・・。」

ついこの間からちょいちょい潜り込みをされているため、すでに半分あきらめてはいるが果たしてこれはどうなのだろうか・・・?

 

 

 

 

 

 

・・・・望月よりましか

 

 

極論だがそう思うことで自身を無理やり納得させた。

 

 

 

 

 

 

敵本隊概要

 

水母   1隻

戦艦   6隻

空母   7隻

重巡   9隻

軽巡   6隻

駆逐  18隻

潜水艦  4隻

※敵本隊は連合艦隊の編成

※敵本隊の南南西の小隊旗艦は戦艦棲姫

※敵本隊旗艦は新種艦により水母水姫(シャングリラ)と呼称を決定

 

朝一で送られてきた続報である。

こちらとしては戦闘はないものとしているが、残党がこちらに来る可能性を否定できないのが厄介だ。

先日最初に発見した前衛船団はすでに壊滅させた。

こちらからもまだ滑走路は一本しか使用はできなかったが、基地航空隊として龍驤と鳳翔それぞれに指揮を執ってもらい派遣した。

おそらく昼頃から残党狩りと本隊への攻撃が始まるだろう。

前線指揮所も八丈島と房総鎮守府2か所に決まったため、ようやくうちは見かけだけは落ち着きを取り戻した。

見かけ「だけ」はだ

 

 

結局、消費した分の資材計算や取り戻す時間、これから来ると想定される遠征部隊の見積もり、一時貸与した装備品の修理費や期間などなど・・・。

うちの鎮守府の中はハチの巣を2つ、3つを同時に突っついた騒ぎだった。

執務室にはいらなくなったメモ用紙やミスプリ、用済みの書類が床に散らばり、おまけに使い捨てのごとく100円ボールペンがあっちこっちに散らばっている。

 

俺は今回の大本営に対する請求書の計算にさっきからかかりっきりだ。

試算を出すのに電卓を使おうとするが吹雪が使っており、そろばんは時雨が使っている。

仕方なくスマホの電卓機能を使おうと起動させると充電切れ

舌打ちをしてソファーに放りなげると吹雪から何かパスが来た。

受け取ると吹雪のスマホで、電卓が表示されている

「あんがとさん!」

「いいえ!」

 

 

 

ちなみに山風はいきなり事務処理を任せるわけにいかないので、床に落ちた雑紙をまとめてもらっている。

ボールペンも集めてはもらっているが、あまりの忙しさで計算が終わり一枚描きあがるたびに机の上から零れ落ちている。

ちょっと泣きそうな顔をしているが、書類を書いている片手間に撫でてやると頑張ると言ってくれ、何とか回っている。

シュレッダーもフル回転しているが5台中1台が紙詰まり、1台が満杯

だがそれを処理する時間すらない。

分類に間違いがあってもいけないので、山風にはそちらに専念してもらっている。

そんなことを言っていたらピーという音とともにシュレッダーがまた一つ使用不能に

 

 

 

 

「山風!」

「なに?」

あわあわとして困っている山風を呼び寄せた

「もう環境に配慮だのどうこう言ってられない!文字が書いてあるやつはこん中に全部ぶち込んじゃえ!」

最終兵器として出した手段。

それは

「暖炉?」

ほとんど飾りだが一応機能はする

煙突内部に換気扇を仕込んであるため、部屋になるべくすすや煙を残さないようにしている。

 

 

 

換気のため窓を開け放しながら仕事をこなしていく

後のすす処理とかどうしようかと一瞬浮かんだが背に腹は代えられない

あきらめよう

再び思考を仕事に戻したとき電話が鳴った

吹雪は手を離せそうにないし、俺も手を電卓から離せない。

山風を応対させるわけにもいかないため(一応うちにいないことになっているため)受話器だけ取ってもらい耳に当ててもらった。




艦これのアップデート来ましたね・・・。
これ冬イベで使いますよって雰囲気プンプン漂わせてるじゃないですかヤダー。

もしくは高速艦の優遇が続いたから低速艦に対しての救済措置か
どっちにしろ缶一個しかないからどうしようもないんですがね・・・。


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駿河諸島鎮守府の非常業務 その4

『はい。駿河諸島鎮守府!』

『忙しいとこごめん。深打です。』

『・・・電話切っちゃダメ?』

『だめ。』

『こんな時に電話かかってくるって大体想像がつくんだけど?』

『敵本隊を先ほど壊滅させたという連絡があった。』

『無視かよ。』

『だが敵残存艦隊は南南東と南西南へと2手に分かれ撤退したのだが』

『あっ・・・』(察し)

『南西南方向へ逃げた艦隊がおそらくそちらへと向かうので』

『迎撃しろって?』

『・・・うん。』

『・・・・・・・・・・・指揮系統はどっちが持つ?あと、接近予測の艦数は?』

『指揮系統はそっちに任せるよ。接近予測はもう送った。』

『はぁ・・・指揮は吹雪に任せるけどいいな?』

吹雪を手招きし、紙に戦闘準備、連れていく艦は任せると書いて渡した。

うなづいて呼び出しのために内線をとった。

『君がとらないのかい?』

『俺が下手なの知ってるだろ?』

『・・・うそつき。』

『どっちだか。わざと分断してこっちに向かうようにけしかけたんじゃないだろうな?』

『それは・・・』

『まぁいい。今度来たときは電君にも合わせてくれや。じゃあな。』

 

 

何やらまだいってはいたが山風に受話器を置かせた。

「よかったの?」

「いいんだよ。さっ!これで終わりっと!」

書類を決裁済みに叩き込み、背伸びをしながら敵艦隊の情報をコピー機に取りに行く

 

 

 

 

敵残存一個小隊

 

戦艦 1隻

重巡 1隻

駆逐 4隻

迎撃推定域到達時刻 15:00

 

 

 

「司令官!準備できました!」

2枚の紙を下すと吹雪、川内、古鷹

この三人がいた。

「ご苦労。秘書艦吹雪!」

「はい!」

「ただいまより、駿河諸島鎮守府第一迎撃艦隊及び鎮守府軍事指揮権を敵艦隊撃滅まで貴艦に預ける。」

「謹んでお受けします!」

「私は作戦遂行まで補佐として回る!以上だ!」

 

 

形式だが一応やらねばならないためやり終えると

 

 

「・・・似合わんね」

「似合いませんね」

敬礼を終え手を下すと事情の知らない山風以外はみんな苦笑いをしていた。

 

 

 

 

「吹雪司令代見つけたでぇ!」

龍驤が執務室に航空写真を持ってきた。

「ここや!」

昨日散々考えていた海図の一点を指さした

そこは、予想到達点より少しこちらよりだった。

不気味に感じたが原因はすぐにわかった

「あっ!暖炉の煙!」

 

 

暖炉で燃やしたのは薪ではなく紙

すすを大量に含んだ煙が高々と上がったおかげで相手さんの目印になってしまったのだろう

索敵の時間が省かれたおかげで少し速くなっているのだ。

「どうします?」

「まぁなんとかなるら~。吹雪ちゃんにお任せするよ。」

「了解です。じゃあサクッとやってきますね。行きましょう!川内さん、古鷹さん!」

「ブッキー夜戦は~?」

「帰ったらたっぷりありますよ?」

「・・・それ以外でお願いします。」

きれいな土下座を決めたが、古鷹に起こされる

「さぁさぁ行きましょう?急がないとこっちにちょっと近い点で交戦になっちゃいますよ。」

「あーちょい待ち!吹雪ちゃんこれ。」

出撃していく吹雪達を呼び止め先ほどの編成表などを渡した。

「・・・了解しました!では!行ってまいります!」

 

 

 

 

「チィ!イマイマシイカンムスドモメ!」

「ルキュウサマ!マモナクテキハクチノゲイゲキタイガクルトオモワレマス!」

「フン!シテ、カンタイノナイヨウハ?」

「ジュウジュンイチ、ケイジュンイチ、クチクイチ、キカンハクチクトオモワレマス!」

「ウフフ。ドウヤラテキノカンタイハゼンブアッチニイッタヨウネ。ミセシメニ、ナマゴロシデジブンタチノハクチガキエテイクサマヲミテモラオウジャナイ。ツイデニアソコニユウグンノハンノウモアルワ。タスケダシテサシアゲマショウ。」

「イイアンデスネ」

「ソロソロワタシノシャテイニハイルワ。」

主砲準備を始めた時、先行していた駆逐が突如2隻爆発を起こし、海の中へと消えた。

「ナニ!?センスイカン?」

「イエ!オソラクテキカンタイガエンポウデハナッタギョライカト!」

「ツイテナイワネ!テイジニモッテイクワ!マダカズハカッテイル!」

進路を左に切ったところル級の右に強い衝撃が走る

見ればまたしても魚雷

先頭にいたはずの駆逐がいなくなっている

「チィ!ドンダケアイテハツイテイルノヨ!コウナッタラカタサデオシテヤルワ!」

「テキカンタイミユ!クチク、ケイジュン、ジュウジュンノジュンノタンジュウジンデキマス。」

「ケチラシテクレルワ!シュホウ!ウテ!・・・・ハ?」ドゴン

 

 

 

自分の身に何が起きたのかわからなかった

自慢の主砲は粉砕されており、すでに機能していない

重巡の弾が当たってしまったのか

本当に厄日並みについていない

 

内心舌打ちをし、旗艦の駆逐艦を狙って再度照準を合わせる

が、先に駆逐艦に撃たれた

見る限り撃った瞬間にぶれているように見える

そんなもの蚊に刺された程度だと振り払えるはずだった

 

 

 

砲塔に命中後暴発

一番装甲が厚く、駆逐の主砲じゃ貫けないはず

改造された主砲か?

それにしたっておかしすぎる。たった一回の砲撃では戦艦である自分の装甲は貫けないのに。

とにかく反撃の手段がなくなった

助けを求めようとリ級を探すがどこにもいない

再度前を向いたとき、爆音と共に目の前は真っ暗になった

 

 

 

 

 

戦闘報告書

 

駆逐イ級 2隻 撃沈

駆逐ハ級 2隻 撃沈

重巡リ級 1隻 撃破

戦艦ル級 1隻 撃破

 

シャングリラ船団南西南残存艦隊撃破

 

被害

 

なし

 

消費弾薬及び燃料は次ページに記載

 

 

 

 

 

「はいお疲れさま~。」

「演習以外の実践は久しぶりでしたからちょっと緊張しました。」

時刻はフタフタマルマル

それぞれの部署の仕事の今日のめどがついたため、帰って行った。

吹雪からの報告書は戦闘報告書にサインをして決済箱に、消費資源についての計算を始める。

「意外に消費資源少ないね?」

「最初の牽制魚雷で1隻だけ落とすつもりだったんですけど読みがドンピシャで3隻も落としちゃったんです。」

「あー。それであとは淡々と・・・。」

苦笑が返ってきたということはその通りなのだろう

 

「ちょっと怪しい動きしやがったからふうの奴に吹っ掛けてやろ」

「深打さん泣いちゃいますよ?」

「いいのいいの。1.2倍+特急料金請求してやる。」

ひっくり返るぞあいつ

ちょっと悪い顔をしながら電卓をたたき始めた時、右側でドアの開く音がした。

 

はて?そこは隠し扉のはず

 

見ると寝間着の山風がいた

「提督・・・。」

 

まさか・・・

 

「そろそろ、寝よ?」

 

これから毎日来るのか?!




初めての戦闘回・・・・相手の描写でほとんどごまかしてますけど許してくださいなんでも島風。
ちなみに次の戦闘回はいつ出るのか全く予定を立てていません。
最近やっと他作者様の小説を見る余裕ができるようになって来たり・・・。


タービン&缶の改修コスト高すぎぃ!
零水偵の更新だけで今いっぱいいっぱいなのにネジ5本とかぶっ飛びすぎでしょ・・・。
睦月ちゃんの家具を買って並べていたら山風ちゃんが寒いとのことでしたのでうちは机だけこたつになりましたw

あと吹雪ちゃんの限定グラもっとこい


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駿河諸島鎮守府の密約と会議

「やっほー。来たよー。」

「急に悪いな」

 

鎮守府内第一滑走路

 

飛行機から降りてきた夏木に俺は軽く返事する

「あれ?形式のやつはやめたの?」

「また言われると思ってな。壁をいまさら作る必要もないだろ。」

「あらそう?じゃあみっちゃん!話ってなあに?」

「急にぶりっ子になるな!執務室で話す。」

 

 

 

「お疲れ様です!司令官。夏木さん。」

「やっほー吹雪ちゃん。」スッ

「わっわたしお茶入れてきます!」スッ

夏木が吹雪に近づくと吹雪はお茶を入れに給湯室へとそそくさと行った。

「・・・」

「・・・・まぁなんだ。ドンマイ?」

「ほっぺムニムニしようとしたのばれたかぁ」

「目つきと目線でバレバレだったんじゃないか?」

しゅんとしてソファーに腰を掛ける

「しかたないわ。で?本当に何かしら?」

「これを見てくれ。」

先日うちで保護した山風のデータを見せる

「これは!ねぇ!本当なの!?」

「ああ。間違いない。本土の方では発見されていないか?」

「報告はないわ。目撃報告はあるけどね。なるほど、次の子の発見までのこの子の隠匿ね?」

「ああ。できないか?」

「この子の性格を見るに、このまま報告するのは非常に得策でないことはわかるわ。」

 

艦娘は新しく発見されると第一号は海軍技術研究室に送られる。

艤装の検査をおこない、建造が可能かのチェックが入るのだが、これが時間がかかる。

山風みたいな寂しがり屋なタイプで、提督に懐いて離れたくない場合は、提督も一緒にいることができる。

しかし、俺みたいなタイプは別だ。

うちの鎮守府が長期間開けると絶対に面倒ごとが頻発する。

方や、艦娘のほうは人体的な不安定さだけで済む。

かなしいかな。

艦娘を思いやるようになってきたといっても、こういう選択肢の場合は優先されるのは研究の方だ。

 

 

 

「できるっちゃできるわ。でも条件があるわ。」

「・・・どんな条件だ?」

真面目な顔に思わずこちらも顔が引きしまる。

「山風ちゃんとお風呂に入らせて。」

「知ってた。」

大体察しがついてはいたがガクッと来てしまう。

「いいでしょ!どうせあなたが引き止めるってことはべたべたに懐いているんでしょう!ねぇ!」

「わかったわかった!本人がいいと言ったらでいいか?」

「いいわ!」

「まぁどっちにしろ今は無理だ。」

「何でよ!」

「会議をやると言って俺と吹雪ちゃん以外は今日は会議室にいる。」

「あらそうなの・・・。」

残念というと、ものすごいスピードで吹雪に近づきほっぺを触り始めた。

「!しれいはん!たふけえくだはい!」

「すまん・・・。無理だ。会議が終わるまで我慢してくれ。」

「そんなぁ!」

 

 

 

駿河諸島鎮守府宿泊棟第二会議室

「全員いるね?」

中では、丸テーブルに8人席についている

「榛名さんは宿台帳の整理で今回は欠席とのことです。」

「しかたないなぁ。この間の作戦はえらいことになっとたし。」

上座に座っている時雨が立ち上がり、前のホワイトボードにある書類を張り付ける。

「手元の書類2ページ目を見てくれる?」

そこには数字の羅列がびっしりと書いてあり1~3、時々0が記載されている

「今月の提督の推定睡眠時間と自由時間、就業時間の比率をタイムカードから算出したやつだけど」

「やっぱりあの作戦が響いたね・・・。私もなるべく夜に押しかけているけど厳しいところがあるね。」

「あたしもなるべく行ってはいるけどね~・・・。ちょっとあれを拝借しないと動いちゃくれないね。」

 

川内と望月がそれぞれ自分なりの方法を言う。

あれとは何か・・・一言私物とだけ言っておく

 

「次のページが吹雪のタイムカードだよ。」

おおむね同じではあるが多少提督よりかは少ない

「わが姉妹艦ながらこれはひどいねぇ・・・。」

「吹雪ちゃんもまたワーカーホリックじみてますからね。」

 

深雪はしかめっ面、古鷹は苦笑していた。

 

「ちょっと待って。この日のタイムカード!」

会議をやると大半寝ているがこの会議だけは目を覚ましている加古が立ち上がる。

「この日の付け方違うよ!」

 

指したのはこの日は21:00退勤と記載されている日だった。

周りが25:00や27:00などの中、際立って少ない日だ。

「この日はあたしが夜の見回りだったんだけど1時ごろ電気がついていた!」

「あっそう言えば私も!」

 

 

 

どんどんと修正がなされ、結局ひと月で15時間ほどの残業隠しが見つかった。

このワーホリ提督なら少なめだと思いがちだが、毎日残業を行っているような人がこの時間を捻出すると自由時間はほとんどなく、睡眠時間すら削れているのだ。

「そろそろほんとに軟禁する?」

「まぁちょっと待ち時雨。」

不穏な発言をした時雨を龍驤が止める

「この間の秋祭り期間中なんやけどな?司令官やることなくて暇そぉにしとったんや。いかんせん半ドンの日だと時間をうまくつぶせないらしくてな。むしろ軟禁とかするとものすごいストレスかもしれないんや。」

「それもそうだね。」

「あっそうそう!あたしこの間の祭りで旅行券手に入れてるから連れ出そうと思えばできるよ!」

おおーという声が会議室に響き渡る

「でもそれは加古が使いたいなって思ったときに使った方がいいんじゃない?」

古鷹が言うとそれもそうかと納得し、ひっこめる。

 

 

「いっそもっちーに執務室でいたしてもらうとか?」

「あたしはいいけどさすがに嫌われそう。」

今更じゃないかといった顔をみんなでするが、口には出さない。

「とにかく、提督の残業癖に関してなんだけど特効が見つかったんだ。次のページを見てくれる?」

次のページにはここ一週間の勤務実態表が乗っていた

「なんやこれ!」

「これほんとにみっちゃんのかよ!?」

「ええ・・・?!」

八時から九時には絶対上がっている。

吹雪も同様であり、それが一週間も続いているのだ。

誰もが驚愕し、原因は何だろうか、ひょっとしてついに体調を崩したとか?

そんな深刻な予想が飛び交う中、時雨が続けた。

「その立役者が山風だよ。」

時雨がこの空間に戸惑い気味だった山風の名前を口に出すとみんな視線を向けた。

「山風は艦の時の体験上、寂しがり屋な性格なんだ。だから今は提督と一緒に寝ている。」

「なるほどなぁ。で、起こせないから司令官の勤務時間が減ってたっちゅう訳や。」

「今までうちにはいないタイプでしたからね。」

「あたし、何か、まずかった・・・?」

注目されなれてないのか、いつもよりしどろもどろになって心配そうな顔で辺りを見る。

「ああごめんね。山風はむしろとってもいいことをしてくれたんだよ?」

「そうなの?よかった。」

時雨がフォローすると、山風は安心した。

「でも、山風がみっちゃんとでしか寝れないというのはまずくないか?」

深雪が新しい問題を出す

「おいおいだけど僕と提督、吹雪の交代制にしようと思っているよ。」

「なるほど。そうすれば提督の残業時間の調節ができるから私も押し掛ける頻度が減るね。」

「そういうこと。じゃあ次の会議の議題は提督と吹雪の全休日に絶対仕事をさせない方法を考えようか。」

 

書類をまとめ、解散となった。




登場人物に山風を加筆しました。


昔やらかした失敗

第十一駆逐隊出撃せよ!でオリョールヘ出撃!
S勝利で成功したのに達成がつかない!なんで?
吹雪だろ、白雪だろ、初雪だろ、深雪だろ・・・。
え?深雪じゃなくて叢雲?あっ・・・
そうだ深雪は・・・(;ω;)

深雪ちゃんにも何か任務上げたげてよ運営さん・・・。


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駿河諸島鎮守府の新弟子?

「え?リンガ泊地からの再度の融資会談?」

吹雪からの報告を聞いた提督は思わずオウム返しをしてしまった。

「はい。なんでも納得できないとのことで・・・。」

「ええ?あそこの提督が直々に来て納得してったよね?」

融資報告書の控え台帳を開き、再度確認するがどう見ても本人のサインがされていた。

「燃料5千に鋼材7千、弾薬6千にボーキ3千だよ?これで少ないっていうのか?」

あそこの提督とは面識はなかったが、熱烈なアタックで仕方なく融資したのだ。

ふつうは演習や練習での資材融資は認めていない。

一番悪用されるからだ。

演習や練習なんて書類上での処理をして自身の懐へナイナイ

これが横行するからである

「なんでも代理の艦娘が来るようです。」

「えー・・・?どうなってるんだ?」

 

 

「リンガ泊地の長門だ。よろしく頼む。」

「駿河諸島鎮守府司令官耳本です。」

連れはなく、割かし友好的に接してくる。

握手を交わし席に着くと相手から切り出した。

「早速なのだが前回の融資を増やしていただきたい。」

「大本営の許可か特別な理由はありますか?」

「特別な理由がある。」

そういって一枚の書類を差し出した。

内容は依然記載された内容と全く同じものだった。

「・・・すみませんがこれでは融資はできません。」

「なぜだ?艦隊強化のための資材なら出して当たり前だろう?」

「できないものはできません。大変申し訳ないのですが別の理由か大本営の許可を・・・」

「またそれか!艦隊強化のための資材が足りないのだ!貴様はわが艦隊の強化がそんなに疑わしいのか!」

先ほどまでの普通の空気が一転、険悪なものへと変わる。

そして冒頭へと続く

 

 

「どうやら噂通りのところらしいな!」

「噂?」

「現在供給されている資源の大半はここで作られている。貴様らはそれを独占している。だから外国へ法外な値段で横流しして私腹を肥やしているというな!」

「私どもはそんなことはしていません。」

「じゃあなぜ出せない!」

興奮して机を思い切りたたきつけて叫ぶ

ちらりと吹雪を見たが動く気配はない

これが古鷹だったと思うとぞっとする

「答えろ!」

「落ち着いてください長門さん。」

吹雪が長門を制止する

「司令官。ちょっと手荒いですけどあの方法にしましょう。」

ため息をつき、吹雪の提案にうなづく

「長門さん。ちょっとしたゲームをしましょう。」

「ゲーム?」

「はい。長門さんと私で単艦の演習をしましょう。あとはわかりますね?」

長門は瞬きを何度かしたのち、ふき出した。

「貴様とか?笑わせてくれる!いいだろう。だが本当に一人でいいのか?」

「ええ。大丈夫です。」

 

 

 

「準備OKやでー。」

鎮守府南東の少し離れた沖合の演習場

黒潮の影響を受けないこの場所は台風や嵐でも来ない限りは凪いでいる

「すまんな龍驤。」

「ええってええって。それにしても相手さんかわいそうに。」

龍驤が南無三を手を合わせている

俺たちは護衛艦に乗っての観戦となる

長門が艦載機を放ったのだろう

吹雪がいる方へ向かって飛んでいくのがかすかに見える

 

 

吹雪の真横で水しぶきが2つ上がる

さすがは長門型。

かすり傷ではあるがわずかながらの傷の判定をつける

「そろそろですね。あたってください!」バシュ

長門のいる方角より少し東寄りに演習用魚雷を撃つ

砲弾や魚雷にはペイントが入っており、当たった瞬間は爆音と光だけがする。

 

またペイントは、同じところにあたったり、弾着時のスピードで色が変わる。

これで小破、中破、大破の区別をつける。

 

艦載機が自身の上を通過したときスピードをほんの少し上げる

おそらくこの瞬間に主砲を発射させるのだろう

見立て通り今度は、後ろで水しぶきが上がる

「見込みはありますが・・・・まだまだです。」

視認できるようになったとき、長門が急に進路を右に切った

実はスタートの合図とともに長門へ牽制用の魚雷を撃っておいたのだ

警戒をしっかりしていたのだろう

西に切ると黒潮の流れで計算が少し変わるから選択しない

思った通りのドンピシャで長門は右側へとかじを切った

その瞬間水しぶきが4つ

今日は調子がいいみたいだ。

全魚雷着弾

長門の右半身はオレンジ一色で中破判定だ。

右側の二門は使い物にはならないだろう

主砲を構え照準を合わせる

するとこちらをぎっと睨むと、まだ使える左側の砲門を向ける。

「第二主砲!一斉射!てぇー!」

そういった瞬間、主砲のほうが爆ぜ、真っ赤に染まった

大破判定

全主砲使用不可

さすがに歩みが止まり、長門に焦りの顔が見える。

「まだやりますか?」

「・・・・・」

呼びかけると黙って両手をあげて、降参の意を示す

 

 

 

 

「なぜだ・・・。」

港へとつき体に着いたペイント弾を落とすために二人は宿泊棟の風呂へといた。

「私は強くなりたいだけなのに・・・。」

「何を焦ってらっしゃるんですか?」

吹雪が問う

「私は・・・日本のために力になりたかった・・・。だが前世ではそれは叶わなかった。」

「・・・・・」

「ほかの戦艦はみな、作戦に連れていかれ本懐を遂げたもの、遂げられずとも一翼を担えたもの、基本はこの二手に分かれる。しかし私や陸奥はどうだ?」

「・・・・・・・・・・」

「連合艦隊旗艦は確かに名誉あることだった。しかし、戦では何もすることができなかった。いつしか陸奥は去り、私は一人残された・・・・。」

「・・・・・先日の作戦ですか?」

シャングリラを追っていった結果、B環礁いわゆるビキニ環礁へとたどり着いた。

「私はまだ着任してそんなたってないから練度が足りなくてな。・・・くやしかった。うちの提督は何度も頭を下げていたよ。お前を参加させてやりたいのはやまやまだがとな。」

自嘲気味の笑いをして上を向いた。

目には光るものがあったが吹雪は見ないふりをし手続けた。

「今回の融資の件ですが本来、演習や練習での資源融資は禁止されているんです。」

「・・・・なに?」

長門は目を見開き、表情が硬くなった。

「演習や練習は書類上一番偽造が行いやすいのです。練習なんかは特にです。」

「だが貴様らは融資を・・・」

「長門さんの司令官さんの熱意ですよ。」

 

『何とかお願いできませんか?』

『そうは言われても・・・。』

『どうしても長門を強くしてやりたいんです!特に今回あいつの未練を断ち切ってやる最大のチャンスだったんですがあいにく・・・練度が足りず、またしても彼女だけ見送ることになりました・・・。』

『今回はB環礁でしたね・・・。』

『今回は叶わずとも!いつか彼女が後悔をすることがないように!私は最大限のことをしてやりたいのです!だからどうか!』

『・・・・・・はい』サラサラサラポン

『これは!』

『ちゃんと使い切ってくださいね?今回だけですよ?』

『ありがとうございます!!』

 

 

 

 

「そんな・・・・・・。」

「大方、少なすぎる!私が交渉してくる!と言って出てきたのでしょう?」

「私は・・・。」

「ちゃんと謝りましょう?」

「すまない・・・。貴方たちにもひどい言葉を浴びせてすまない・・・。」

吹雪はいいえと一言いい風呂場を後にした。

長門の性格上、一人のほうがいいだろう。

 

 

 

 

「大変申し訳ない!」

「大丈夫だよ。気にしないで。」

執務室で書類をこなす提督に長門は深々と頭を下げる

「わかってほしいのは資源は有限なんだ。資源の割り振りを極力平等にやっているつもりだ。」

「・・・」

「だが。やる気がある子は別だ。多方面に支障が出ない範囲内であれば要望に応えてあげるつもりだ。」

「耳本提督・・・。」

「帰ったらちゃんと謝るんだよ?」

「はい!」

きちっとした敬礼をすると提督はうなづいた

「ところで一つ質問が」

「?何かあった?」

「吹雪殿の砲撃でなぜ私の艤装が大破したのだ?駆逐艦の兵装では装甲を大破まで持ち込むことは基本的にできないはずだが・・・。風呂場でじっくり見たのだが特にこれと言って変わった点は見受けられないのだが。」

吹雪をなめるような視線で見ている。居心地がものすごく悪そうなので助け舟を出した。

「ちょっと細工がしてあるんだ。吹雪ちゃん。兵装を長門に貸してやって。」

はいと言って長門に普段使っている12.7㎝連装砲を渡す

「・・・・・ひょっとして一斉射しかできないのか?」

あれやこれや見立て不可解そうに言った。

「正解だよ。正確にはコンマ五秒差で斉射されるようになっている。」

「ほかにも速射性をあげたりしているんですけどそっちの方は普通の改修でもできるんです。」

「・・・すまない。わかってもなぜ大破したかまではちょっと・・・。」

「吹雪ちゃんは最初交互の斉射ができなかったんだ。」

 

 

 

全部の兵装に言えることだが、連装砲は一斉射をすることは少ない。

片門ずつ撃ち、砲身の冷却や内部のライフル構造の摩耗を防ぐためにある。

一斉射をする癖は艤装と艦娘自身の訓練で治るのだが、吹雪はなかなか治らなかった。

そこで、長所に変えるある方法を思いついた。

 

「計算は大変になるけど初発と2発を同じ弾道に乗せることにしたんだ。」

 

つまり、1発目が当たった直後、2発目が全く同じところに命中する

金属は熱に弱い

そのため、1発目が命中して間もなく2発目が命中した場合、1発目の着弾した時の熱とその歪みでほぼ確実に破れる。

 

血のにじむような努力の積み重ねによる賜物だった。

 

「あの時は司令官と空き時間にやってましたね~。」

「そうそう。あと数ミリずれた時は発狂したな~。」

「なるほどそれで・・・。」

「結果的に戦力は増したけど連装砲の寿命は短くて・・・。」

懐かしい思い出や失敗を思い出すと笑みがこぼれてくる。

長門は一人小刻みに揺れていた

 

「吹雪殿!いや!師匠!どうかその技を教えてください!」

「ええ!?頭をあげてください!長門さん!」

長門はその場に跪き、額を土に擦りつけた

「あらー・・・。話したの失敗だったかなこれ?」

「司令官助けてください!」

「吹雪ちゃんごめん頑張って~。」

ちゃっかり仕事関連の道具と書類をもって隠し扉で自身の部屋へと退避すると鍵を閉めた。

「しれいかーん!!!!」

「師匠!おまちください!!どうかご教授を!!!」




なおうちの鎮守府では長門に敵をとらせてやれませんでした・・・。
だって着任してくれないんですもん・・・。
E-5で10%で出てくるって言ったのに・・・。
書けば出るで今日のデイリーで出てこないかなw


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駿河諸島鎮守府の探索 その1

伏線回収・・・。
気付いた方はいたかな?


「耳本さん!お久しぶりなのです!」

「おや?大湊の電君じゃないか。大本営の時以来だね。」

今日も今日とて書類に追われているが2時間の間食休憩はきっちりとる(取らされる)。

秋の作戦も終了し、事後処理に追われている最中であるため人手が足りなく、目付け役はいないし、吹雪は提督と交代で休むことになっていた。

話し相手もいないため宿泊棟の旅館の一室で読書に耽っていた。

 

「今回はサンマを持ってきたのです!」

北方の海域の鎮守府は作戦と並行でサンマ漁支援も行っていたのだがそのおすそ分けだろう。

鳳翔の方に持って行ってくれたらしく、こちらにはあいさつがてらといったところだろう。

「いつもありがとうね。何かお返しをあげたいところだけど・・・立て込んでいてね。」

「大丈夫なのです!今回はこれを使わせていただいたのです。」

いつぞや渡したパスを見せられ納得した。

榛名に言って夕食を豪華にしてもらうかと考えを巡らせる。

 

「何もないけどお茶でも飲んでいくかい?」

「いいのですか?」

「話し相手がいなくて退屈していたところだ。」

読みかけの本にしおりを挟み、お茶を入れなおしに立ち上がる。

 

 

 

 

「おいしいのです!」

「もっとおあがりなさいな。」

今日はオーソドックスな間宮の羊羹

各場所で違ったりするらしいが、うちは塩羊羹だ。

 

茶菓子の談義や鎮守府の日常など様々なことを話していると少し曇り気味な顔をして、電が話題を変えた

 

「ところで話は変わるんですが・・・耳本さんはこの子を最近見かけませんでしたか?」

そういってある写真を見せる

「・・・いや~。見てないな。この子がどうかしたのかい?」

写真に写っていたのは深海棲艦の北方棲姫

他の深海棲艦とはまた少し違い、人型にしては著しく小さく、背丈は雪風や山風の胸くらいしかない。

強さは当然姫と呼ばれるだけあって段違いだからなめてかかると大抵痛い目を見る。

深海棲艦は敵

当り前のことだがその写真にはその常識を覆すようなものが写っていた。

 

 

笑顔の北方棲姫と電が並んで移っていた。

 

 

 

残念そうに胸ポケットにしまうと、顔を引き締めた。

「・・・ここの鎮守府だけの話にしていただけますか?」

「?」

「この子は私の鎮守府と友好的にしているのです。」

「・・・・・詳しく教えてもらえるかい?」

 

曰く

たまたまの偶然だが北方棲姫がけがをして大湊付近まで流されたことがあったらしい。

その際、電が隠れて手当てを行った結果、話をすることができた。

その後、話や交流を進めていくうちに、北方海域においては大湊に関してのみ、先制攻撃を行わなければ攻撃をしない協定を結んでいる。

 

 

 

「・・・大本営に報告なんてできないな。」

特にタカ派の耳に入ったら大変だ。

今でこそ世論はハト派に近いが、深海棲艦は殲滅すべき敵というのが常識だ。

タカ派にとっては世論を味方につけるチャンスでもあり、捕獲すれば実験材料としても利用ができる。

 

 

 

「・・・この子に何かあったのか?」

「実は、今回のサンマのおすそわけができたのも、この子のおかげなんです。ほっぽちゃん・・・あっ」

「いいよ。言いやすいように言ってくれるかい?」

「はい。ほっぽちゃんが漁場を教えてくれたり、護衛についてくれたりしたおかげで私たちは大漁だったのです。だけど・・・」

「だけど?」

「ここ最近ほっぽちゃんを見かけていないのです。今回のお礼にと、おうちのある島に行ってみたのですがこちらもいなくて・・・。」

心配そうな顔で今にも泣きそうな雰囲気だ。

「そうか・・・。住処を変えた・・・のなら仲が良ければ連絡は絶対するよな・・・。」

「・・・はい。海域のどこにもいなくて・・・」

「さてさてどうしたもの・・・・!ちょっと来てくれるかい?」

 

 

 

 

 

執務室へと戻ると、吹雪が忙しそうに仕事をしていた。

「お疲れ様です!司令官!久しぶりだね。電ちゃん。」

「お久しぶりなのです。吹雪さん。」

「ところで司令官。まだ休憩時間ありますけど・・・どうかしました?」

見つかったら大変なことになりますよと言われたが、今回はちゃんと免罪符がある。

「ちょっとな。川内の監視報告書ってどこだっけ?」

「それなら左側の棚にありますよ。」

「ありがとさん。あと応接室にいるから緊急時は内線で頼むよ」

「了解です!」

 

 

 

分厚いファイルをめくっていき、目当てのページを見つけだす。

「これだ。この日に気になる艦隊が動いているんだ。」

報告書には『幌筵泊地にて護衛艦が艦娘の警護の下出港、ある島に上陸、探索を行ったがめぼしい成果を得られず中断。即時撤退した』

そう記載されている。

「ここって!」

「ビンゴか。」

「はい!ここの島がほっぽちゃんのおうちのある島です。」

「さらに気になることがあってな。」

事前に持ってきていたノートパソコンを起動させ、ファイルに挟まっていたUSBメモリーをセットし、アプリを開く。

 

 

 

 

表示されたのは、太平洋の半分の地図

つまり、日本と東南アジア、アラスカがほんの少し表示された地図だ。

「これは船団の航路データでな。おかしな動きをしているんだ。」

スタートを押すとゆっくりと点滅する黄色い点が表示され、幌筵泊地から先ほどの島へと向かっていく。

「ここからがおかしな点だ。」

黄色い点が南西に進路を取り始めたのだ

「ふつう何もなければ西に進路をとって戻るのに、なぜか気になっていたんだ。しかもだ」

そのままずーっと真っすぐかなり早めのスピードで千葉沖を通過し、伊豆諸島の手前で停止した。

「このあと、八丈島のあたりでしばらくうろうろしたのち、銚子で補給して戻っていったんだ。」

「まさか・・・」

顔面蒼白で電が震えていた。

これだけを見ると最悪のケースも考えてしまうだろう。

 

だが

 

「おそらくだがほっぽちゃんは生きているぞ?」

「え?」

安心させるために、推論だが予測を話す。

 

第一に撃沈の確認をするにしてはうろうろしていた時間が長すぎること

第二に捕獲していたのならタカ派に目立った動きがあること

そして極めつけは翌日、翌々日と伊豆諸島付近を探索する艦隊がいたことだ

 

「じゃあ!」

「まだこのあたりの海域にいるかもしれん。」

ノックの音がしたので資料をたたむと、どうぞと言った。

「提督・・・あっ。」

湧きあがったところに冷や水を浴びたような感覚が襲う

山風が入ってきてしまったのだ

彼女はまだ目撃報告のみの艦娘

自身のうかつさを呪うほかない

「どちら様なのです?」

「あっ・・・その・・・・えっと・・・・・。」

 

山風は助けを求める視線をこちらに向ける

とっさにどうごまかすか考えたが、よくよく考えてみれば話して問題はおそらくない。

むしろ電のほうがよっぽど危険なことを話しているのだ。

それに信頼している相手に隠し事はフェアじゃない。

 

「・・・ああ。紹介するよ。白露型駆逐艦8番艦の山風だ。」

「提督・・・・!?」

「山風大丈夫だよ。彼女は信頼できる子だから。」

 

 

詳しい説明をすると電は納得してくれた。

 

 

「私は大湊鎮守府の電です。よろしくお願いします。」

「よろしく、お願いします・・・・。」

礼をしたとき先ほどの写真が胸ポケットから山風の前に落ちる

「これは、なに・・・?」

「ああそれはな・・・」

 

 

さらに先ほどまでしていた話をすると山風はとんでもないことを言った。

 

 

「あたし、この子を浜辺で、見たよ?」

「「え?」」




改二情報来ましたね~。
ザラとおそらく荒潮らしいですけど・・・。
ザラはいないので関係なし・・・(のん兵衛の妹さんならいるんですが・・・)

荒潮はステータスでいつレベル上げするか決めますかね・・・。
図面使わないと助かるんですがね。(70以上でもつらいですけど)


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駿河諸島鎮守府の探索 その2

「不安だなぁ・・・」

「何がなのです?」

「何がだ?」

「君らだよ・・・」

山風の証言曰く海から砂浜へと上がってくる姿を見たらしい

艦娘と思い近づいたがびっくりしたようで鎮守府の方に走って行ってしまったらしい。

鎮守府裏は手つかずであり、設置されたばかりのころ見てそれっきりだ。

念のため護衛をと思いだれか手の空いているものを探したが山風は仕事途中、吹雪は俺の代役で外せず、ほかの部署もほぼフル稼働で空いている子は一人しかいなかった。

その空いている子が・・・

 

「深雪とはなぁ・・・」

「「?」」

大体わかると思うから説明を省かせていただこう

「二人とも気をつけろよ?」

「「あいよ!/はいなのです!」」

主に身内に・・・

 

 

 

 

 

 

草はぼうぼう木はあちこちに伸び放題

ここに生えている木は、果樹や木の実をつけるものばかりだ。

視察に来た当初は整備することしか考えてなかったので、ちょっとした発見だ。

これらの木々は鳥が食べて、糞をしていった後に生えたのだろう。

その後、実がなるようになり、その実が落ちたり鳥に食べられたりでサイクルが始まり増えていったのだろうが、手つかずのためかなり乱雑になっている。

幸いにも木はまだ樹齢が若いおかげでそんなにうっそうとしてはいないが、雑草がものすごい。

具体的な高さは俺の胸元ぐらい、深雪や電は生首が移動しているように見えるぐらいだ。

リュックにナイフか何かでも詰めてくればよかったかなと少し後悔した。

足元に何があるかも確かめられない怖さがあるがそれよりも心配なのが

 

「なのです!」

「いってぇ!」

「あっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「だっ大丈夫!気にすんなって!足元見えないから仕方ない仕方ない!」

このやり取り実に5回目である

そろそろお互いに黄色いマークがつくんじゃないかとひやひやしている。

 

 

 

 

「ふにゃぁ!」

「いっつ!」

「おわぁ!」

今度は玉突き事故

やっと雑草地帯から抜け出して反対側の浜辺へと出るところのあたりで1列に並んで倒れた。

やっぱり順番を変えるべきだったか・・・

そんなことを思い顔をあげると白い砂浜に真っ黒な場所があるのが見えた

 

 

 

 

 

「さすがに冷たいか」

「焚火の跡か・・・。」

電は辺りを見回りに行っている。

ほっぽちゃんの手がかりかもしれないといったときからそわそわして落ち着かない。

「みっちゃん。これなんだろ?」

焚火後から離れ、波打ち際を見ていた深雪が持ってきたのは両手で持てるサイズの鉄片らしきものだった。

「見たところ元は丸いもののようだな。」

鉄片は曲線を描いており、推定から50cm~1mくらいと推測できる。

「ひょっとするとほっぽちゃんの要塞じゃない?」

「・・・ありうるな。」

北方棲姫は陸上型の深海棲艦だ。

海を渡るのには何かしらの道具を必要とする。

行動の推測からしてこれに乗って逃げてきたのだろう。

「耳本さん!深雪さん!」

電が慌てて戻ってきた何か見つけたのかと思ったがどうやら違いそうだ。

「スコールが来そうなのです!」

西の方がどんよりと曇っているのがわかる

しかし、そのさらに奥は晴れているところを見ると通り雨なのはわかる。

時間にして長くても2~3時間といったところだろう

「どっか雨宿りできるところあったっけみっちゃん?」

「たしか鉱山の開発関連で掘った坑道が二本あるぞ。雨宿りくらいできるら。こっちだ。」

おそらく途中で降られるがびしょぬれにはならないだろう。

 

 

 

 

 

びしょぬれは避けられたがやはり濡れて坑道に入ることになった。

入口は一つで中で二股に分かれている。

途中で水が湧き出たため、掘削ルートを変更したのだ。

「雨宿りついでにあたしと電はこっちを見てくるよ。」

「了解。ちっとばっか濡れたから焚火でも起こしとくわ。」

「では、入ってきますなのです!」

入口から少し行ったところに腰を下ろすとライターとたばこを探した。

煙草はいい火種になる・・・とおもったらまさかの空っぽだった。

あまり吸わないからチェックを怠っていた。

仕方なくメモ用紙や廃棄する予定の書類などをかき集め火をつける。

煙いが仕方ない(煙草でつけても煙いけど)

他に何か燃やすものでもと、辺りを見回すが当然あるはずがない

ポケットをあさって出てくるものはお菓子ぐらい

まぁ長くてもそんなにはいないし大丈夫

そう思ったがぺた・・・っと

 

音がすることに気づいた

ぺた・・・・ぺた・・・・

動物にしては足音が変だ

ということは・・・

ほっぽちゃんなら万事解決!となるがそれにしては嫌に勿体付けたかのような歩き方だ。

そもそもこの島にいる動物は鳥ぐらいなものだ

ほっぽちゃんであることを祈っていたらそぐそこまで足音は来ていた

 

 

焚火のうっすらとした明かりから背丈が低いことを確認し安心した。

お目当てのほっぽちゃんだろう。

しかし、見つかったのはいいが電が戻るまでどうしよう。

ほっぽちゃんが知っているのはこの場では電しかいない。

「・・・・カッカエレ」

「あー・・・どうしよう・・・。」

薄暗がりで見えづらいが何か細長いものをこちらに向けている

艤装がないところを見ると故障かあるいは逃げている途中で破壊されたかのどちらかだ

(おそらく後者だろう)

それで仕方なく何か別のものを持っているのだろう

殴りかかられたらさすがに死んでしまうので両手をあげた

戦闘の意思がないことがこれで通じればいいのだが

 

「・・・・・。」

「・・・・・。」

 

なんてこったにらみ合い状態になった

何かいい方法はないだろうか考えていると、奥の薄暗がりにミカンの皮らしきものが目に入った。

ここに来る途中に木々の中にミカンが生えていたのを思い出す。

とすれば

 

 

 

「・・・」スッ

「!」

思った通り飴の包みを見て反応した。

「・・・」スッスッ

「!!」

あからさまにこちらへの注意力がそれた

「・・・」ポイ

「・・・」

目の前に投げてやるとそれと俺を交互に見ている。

吹雪ちゃんとかならもっといい案教えてくれただろうけど、俺はわからないのでちょっと動物・・・かなり動物扱いだが許してほしい

 

「食べていいよ。」

「!?」

そういうとビクッと肩を震わせ棒を片手で握りにじり寄ってきた。

そして飴を拾うと即座に先ほどの位置に戻った。

ある程度の警戒心は解けているところを見ると、急に殴り掛かってくる危険性は去ったようだ。

さすがに飴一つじゃかわいそうだからとチョコや小さいせんべいなどありったけのをさっきの場所に放ってやり

「自由に食べて」

電と深雪が戻ってくるのを待ちながら燃やすものを探す。

 

 

 

 

帰ってこない!

そして燃やすものが見つからない!

外は結構降っている

 

腕時計を確認するとヒトナナマルマル

雨が降り出して1時間といったところか

そんなに深かっただろうかと頭の記憶を探ったが、ひょっとすると今の坑道のルートの一つがこちら側に少し貫通していたかも

 

そうなると厄介だ。

厄介と行っても戻ってくるのが遅くなるだけ

それだけならいいのだが・・・

 

「ただ転んで気絶してたりしてな・・・」

なんにせよ困ったことに燃やすものがないということだ

外に取りに行ったところで濡れてしまうし、濡れて手に入れた木だって焚火がくすぶる原因にしかならない。

かくなる上はこの季節外れの白い第二種軍服を火種に

「アノ・・・コレ・・・」

そんなことを考えていたらいつの間にかほっぽちゃんが近くに寄ってきていた

手に持っているのは焚火にちょうどいい小枝の束

「いいのかい?」

コクリとうなづき、差し出してきた。

「オカシノオレイ。」

「ありがとう。」

頭をなでてやるとむずがゆそうだが少し笑った。

 

 

 

 

 

「もどったぜぃ・・・・・ほっぽちゃんそこだったのか・・・」

「おお、お疲れ・・・衝突してたか・・・。」

30分程で戻ってきた2人の姿は泥だらけなうえ、電に至っては目を回している。

深雪も電を下すと、いっつつと行って頭をさすった。

聞けば、暗がりで先行していた深雪に、躓いた電が衝突。

油断していた深雪が耐え切れず地面にごっつんこした事に驚いて、電が慌てふためいて壁に頭をぶつけ、そのまま夢の世界へと行ってしまったらしい。

 

 

「おーいて・・・。電気絶しちゃってるけどどうする?」

「あー・・・。ほっぽちゃん?」

「ナニ?」

電のことを心配そうに見ているほっぽちゃんに話しかける

「俺たちそこの建物に住んでるんだけどうちっちくる?」

「・・・・・ウン。」

素直で助かった

これでヤダと言われたら電が起きるのを待つしかない。

それを待っていたら、鎮守府に連絡を入れなくてはいけない

誰に電話してもみんなで迎えに来そうなのでこの手段はできれば取りたくない。

ほっぽちゃんが大勢の人たちと会うのに慣れているかわからないからだ。

パニクって暴れでもしたら鎮圧か放置の二択しかないのだ。

しかし、これでもまだ問題はある

 

「さて後はどうやって部屋に運ぶかだな」

最大の難関はここである

宿泊棟があるのは隣の島

ほっぽちゃんをそのまま連れていくとこれもまたパニックになりかねない。

「それなら私にいい考えがあるぜ!」

 

 

 

 

「・・・」

「・・・」

そこには深雪が電を背負い、提督は先ほどと同じ格好をしていた。

しいて言うなら先ほどはスリムだったリュックがパンパンに膨らんでいるということだろう

「・・・ほっぽちゃん我慢できる?」

「ナントカ」

「・・・よし!」

「・・・あんま良しじゃないと思うんだけど・・・・・これ以外今のとこねぇしさっさと行くか・・・。」

かくして何とか大問題になる前に収束したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ほっぽちゃんから話を聞くと予想していたが新情報が手に入った。

 

幌筵鎮守府から出ていたのは須下中将本人であったこと

襲撃を行い、その際艤装は半壊したこと

ひきつれた艦娘の目が生気を帯びていなかったこと

艦娘は護衛艦からはそんなに離れてまでは追ってこなかったことがわかった

 

とりあえず艤装を直す手段を探さなければならないのだが、このまま家に帰すのは危険すぎるし、大湊へ向かうのも危険が生じる。

かといってうちのような出入りが激しい場所で預かるのも危険だ。

となるとあいつのところか。

電話を掛けると数コールで出た

「柏崎か?この前の話だが」




資源の備蓄とレベリングの両立ががが・・・。
蒼龍、飛龍、比叡、霧島が一週間以内に改二に届きそう・・・。
弾薬が・・・(鉄は腐るほどあるから問題なし)


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駿河諸島鎮守府の工廠

カーンカーンカーン

 

 

雲一つない寒空に響き渡る金属音

艦隊のアイドルが裸足で逃げ出しそうな音だが、決して解体しているわけではない

「これでいいですか?」

「おおサンキュー!これで便利になるわ。」

彼女は明石

わが鎮守府に明石が来た・・・というわけではなく柏崎の嫁さんだ。

では今していたことは何かというと、工廠の拡充だ。

 

 

うちは開発、入渠の2種類しかなく、建造は艦娘を無理に増やす必要性がないため未設置。

改修工廠は明石がいないためこれも未設置だったが、新しく改修工廠を追加した。

なぜまた明石が未着任なのに設置したのかというと、呉の明石工房出張所を設置するためだ。

昔から呉の海軍工廠は日本でトップレベル、世界でも2大兵器工場の一角を担うほどの隆盛を極めた。

戦後は民間に払い下げられたが、現在は復活しており、日本一の工廠である。

その呉鎮守府のブレーンであり、柏崎の嫁さんの明石には様々な依頼が舞い込む。

実験兵器や兵装、時たまよくわからない物など、様々なものを作ってたりする。

普通の明石ではできないことも呉の明石ではできる。

しかし、依頼をするには直接交渉が基本だ。

深海側に情報が漏れるのはまずい

そうなると南方や北方の鎮守府や警備府はわざわざ呉に遠征部隊の派遣を行わざる得ない。

遠征部隊の派遣ということは資源管理にも問題が出てくる。

そこでうちの登場だ。

遠征ついでに出張所で依頼を済ませればほんの少しの負担でできる。

これについて賛成だったのだが・・・秋の作戦が中規模に拡大してしまったがためにここまで伸びたのだ。

滑走路や港湾施設の拡充も進んできたので晴れてこの件にも着手できたのだ。

 

 

 

「いやー!ありがたいです!これでさらに仕事がこなせます!」

めでたく出張所の開設が終了し、現在は執務室。

歓談をしているように見えるが、いつもの作業を止めるわけにいかないので、いつも通り手は高速で動いている。

「そいつはよかった。ほんとならもっと早くしたかったんだがな。」

「仕方ないですよ。ところでお仕事中に別のお仕事の話しても大丈夫ですか?」

「ん~?ややこしい?」

「いえ。ちょっとした相談ですかね?」

「じゃあ大丈夫よ。何かあったん?」

明石は執務机の横に海図を広げた。

見たところ、東部オリョール海、バシー島沖、キス島沖の三枚の地図だ。

それぞれには緑で何か所か丸がついている。

「この地図の丸で囲んだところに大きな資源反応があることがわかったんです。」

オリョール海では原油、バシー島ではボーキ、キス島では鉄といった項目だ。

運用コストが安い潜水艦で周回を行うことで、資源の増加につながるという。

「だけど今のところ海底に直接潜って採取しているのが現状でして、効率が悪いんです。」

「それだから海上基地を建設して採掘場を整備したいと?」

「そうです!」

またしても仕事が増えそうな案件だ。

しかし、面白そうだ。

採掘に関するノウハウを持った妖精はうちにしかいない。

その妖精さんは滑走路建設以来、仕事がないため暇を持て余している。

ぴったりの暇つぶしじゃないか。

(ぶっちゃけ暇つぶしを考えるのもこっちとしては一苦労だったりする。)

「了解だ。ぜひ交渉のテーブルに着こう。」

「ほんとですか!?」

「ああ。うちの妖精さんは暇だと何をするかわからんからな。」

「ありがとうございます!」

「じゃあそちらのお願いを聞いたわけだけども・・・こちらもお願いをしてもいいかい?」

 

 

 

こっちの本題へと入る。

「なんでしょう!」

「実はある子の艤装を直してほしいんだけどね。頼めるかな?」

「おまかせください!どの子ですか?」

「吹雪ちゃん!入っていいよ!」

入口から吹雪、電と続いて入ってきたのは

「ほっ北方棲姫!!!?」

「彼女の艤装を直してほしいんだ。」

最初は旅館に入ってすぐにバケツでの修復を試みたが、残念ながら肉体の方の修復は行われたものの、艤装に関しては修復されなかった。

 

彼女がなぜここにいるのかということなどの事情を話すと、何とか落ち着いてくれた。

 

「・・・・はぁ・・・。いろいろぶっ飛んでますね。」

「俺も聞いたときはぶっ飛びすぎてると思ったよ。」

「これタカ派に漏れたらまずくないですか?」

「だから柏崎にも言ってない。」

決して信用していないわけではないが、あちらの環境もわからず情報を持たせることはできない。

信用することとすべての情報を共有することは必ずしも結びつくとは限らないのだ。

「提督にもですか。・・・そうですよね言えませんよね。」

「だからここだけにしてほしいんだけどできるかい?」

「わかりました!大丈夫です!」

思いのほか素直すぎてびっくりした。

ふつうここは「いやしかし」や「でも・・・」の一言から始まると思った。

そのために交渉材料とかもそろえたりしていたのだが・・・

「おっおう・・・。それは・・・助かる。」

「一度いじってみたかったんですよ!深海棲艦の艤装を!」

 

 

あっ・・・これ科学者や探究者によくあるマッドサイドの顔や!

ほっぽちゃんめっちゃおびえちゃってるし・・・・。

「・・・・・コワイ」

「大丈夫なのです!・・・・・・・・多分。」

ほらぁ・・・電君もドン引きしてるよ。

「司令官大丈夫なんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・多分?」

依頼をした俺でも正直言って引く。

 

 

 

カーンカーンカーン

 

 

 

「できました!出張所第一号の案件無事終了です!」

その日のうちに片付いたらしく、執務室にほっぽちゃんと明石が戻ってきた。

「興味深いこともわかりましたよ!」

「・・・デンチャン・・・ネムイ」

「私たちはこれで失礼しますなのです!」

イナズマたちは先に旅館へと退散していった。

「艤装の中身が艦娘と酷似してました。コア部分・・・いわゆる霊的なところをつかさどる部分ですね。そこが残っていましたので何とか元に戻すことができました。」

「ほーん・・・。理系の頭じゃないから詳しく説明をと言いたいけど・・・できる?。」

「すみませんうまく説明できそうにないです・・・。」

「だよね・・・。」

「今度わかりやすい本を送っておきます。」

簡単な改造だと、登録者に対して砲撃ができないように設定したらしい。

例として大湊の人たちやここのメンバー、呉のメンツもちゃっかり登録したらしい。

これはほっぽちゃんの了承をとったとのこと。

その他図面等を書き起こし、新しい装備開発や運用法の糧にするとのこと。

「その図面はここの金庫にしっかりしまってくれよ?」

「もちろんです!後は・・・。」

ドサッと机の上に置いた書類束

上には戦闘履歴と書かれている。

「目に生気がなかったという点においての報告書です。読んでおいていただけると助かります。」

 

戦闘履歴からは、艦娘側の攻撃は特段特殊ではなかったこと。

深海側との仲間と通信ができなかったことがわかった。

また、逃げる際に何故かいつものスピードより少し遅くなっていたため、振り切るのが遅れ、結果被弾。

駿河諸島近くの海に不時着したとの情報だった。

 

 

「今日はありがとさん。」

書類束を閉じてソファーで吹雪が入れたお茶を飲んでいる明石に言った。

「いえいえ!ところで執務室のいじりたいところなんかあります?」

「明石君もたいがい仕事人間だね。」

「耳本さんにだけは言われたくないです。」

「じゃああの入り口のデータ改ざんの方法とか・・・」

「私はまだ海の底に行きたくないです!」

顔色が変わり、手をぶんぶんとふる。

「あっじゃあこんなのどうですか?」

 

 

「それくらいなら大丈夫です!」

「よく思いついたな!」

「いやぁ・・・司令官よく話してたじゃないですか。」

「じゃあ夜に改造しておきますね!」

「「お願いします。」」




育てたい娘が多すぎで大渋滞中・・・。
演習回数増えないかな・・・


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駿河諸島鎮守府の戦い

「だるーい」

ぼそっとつぶやきながら書類を裁く。

朝みっちゃんの部屋に潜り込んで堪能したが、やる気は出ない。

毎日毎日おんなじ書類ばっかり来る。「っと。」

そんなふうに思って裁いていたら司令官のサインが必要な書類が紛れ込んでいた。

その裏には吹雪のサインがいるやつのおまけつき。

「しぐれぇーこれ司令官と吹雪のとこのやつだよ」

 

 

 

・・・

 

 

 

「しぐれぇー!」

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

疑問に思い振り向くと誰もいなかった。

机の上には山積みになった書類しかない。

奥の面談室が騒がしいところを見るとそこにいるらしい。

手が離せないなら仕方ない。

一言「書類届けに行ってくる」と紙に走り書きをし、机の上に置いた。

ついでだし、尻もみしてみっちゃんと戯れてこようか。

 

 

 

 

 

「司令官、吹雪~いる~?」

返事もないうちに扉を開けるとそこは

 

 

 

氷の世界でした。

 

 

 

一言氷の世界といっても本物の氷があるわけではない。

部屋の空気が氷点下並みなのだ。

断っておくが温度でもないことを付け加えておく。

普段なら、「なんだ~」とか返してくるはずなのにだまーって手元の書類を真顔で処理している。

吹雪もだまーって仕事中。

いつもなら談笑とかしながらしているはずなのにそれもない。

明らかに異様な空間と化している。

 

 

 

「しっ司令官?」

「ん?ああ?どうした?」

「あの・・・これ・・・」

「ああ。はい。」サラサラ

あっという間に目を通してサインをして渡してくれた。

「ありがとう。」

「ん。」

 

「あのさ・・・吹雪?」

「なに?」

「これを・・・」

「ああはい。どうぞ。」サラサラ

「どっどうも・・・」

「いいえ。」

 

 

 

 

 

 

 

なんなんだ!?なんなんだというのだ?!

頭の中で疑問符しか浮かばない。

みっちゃんは朝あったときはあんなに機嫌は悪くなかった。

吹雪も朝の朝礼の時には機嫌は悪くなかった。

司令官もだけど吹雪の「なに?」の時の視線もやばい!

凍り付くような、射殺す目線向けられるってどういうこと?!

補給部の部屋に戻ると相変わらず奥の部屋にいるみたいだ。

「ちょっと時雨!」

「ああ!望月!聞いてくれるかい!?」

奥には困った顔をした時雨と古鷹、加古がいた。

「それよりもこっちの方が重要だよ!執務室の空気が最悪なんだけど知ってる?!」

「あー。もう行ったのか。」

加古が苦々しい顔をした。

「僕たちもちょっと前に行ったんだけど・・・あまりの空気の悪さに驚いたところなんだ。」

「吹雪ちゃんもあそこまで機嫌が悪いのは初めて見たよ・・・。」

時雨と古鷹は頭を抱えこんでいる。

 

 

 

 

 

「状況を整理しよう。」

部屋のホワイトボードに時間を書き込む

「まず9:00この時間にいつもの朝礼があって僕と古鷹、加古と望月そして山風が執務室に集まった。ほかのメンツはほっぽちゃんの護衛で大湊に行っているから除外として、この時点で二人の機嫌は悪くなかった。」

「そのあと私が昨日の夜間見回りの日報を届けに行ったのが9:30よ。この時は二人とも談笑しながら仕事をしていたわ。」

「それから40分くらいしてあたしが昼寝をしに執務室に入ったんだけど、ひっきりなしに電話がかかってくるから退散したんだ。その時は別段普通だったよ。」

「そして僕が行ったのが11:00。お昼を今日は一緒に食べないかって誘いに行ったんだけどとてもそんなことを切り出せる空気じゃなくて・・・」

「でお昼をまたいであたしがさっき行った時間が14:00・・・てか休憩時間だけど・・・・・。」

「無理だね・・・。」

「山風に資源部を見に行かせて良かったというべきかな・・・。どちらにせよ早く解決しないとやばいよ。」

今の情報をまとめると機嫌が悪くなった原因があるとすれば電話である。

今日の書類にそんなに胸糞が悪くなったり、議論をしたりするようなものはなく、いつも通りのルーチンワークだ。

ひっきりなしの電話ということは内線ではない。

パソコンを操作し、通話履歴を印刷する。

 

 

「で、直近で電話が来たところは」

 

 

 

 

 

大本営 夏木大佐 10:01

大本営 夏木大佐 10:05

大本営 砂安中将 10:07 吹雪→提督

房総鎮守府    10:11 提督→吹雪

内浦鎮守府    10:13

大本営 夏木大佐 10:21 加古退出

大本営 夏木大佐 10:27

大本営 桐月大将 10:32

大本営 夏木大佐 10:34

 

 

 

 

「「「「おおい!」」」」

「夏木の野郎どんだけかけてんだ!」

「このどれかに辺りがあるんだよね・・・。」

「とりあえず大本営が一番楽だしそっちから行こう。」

「じゃああたしが最初に夏木にあたってみるわ。」

 

 

『はい!こちら大本営広報局です!』

『あー。五月雨?望月だけど夏木いる?』

『あっ!望月さんお久しぶりです!すみません、今しがた外出してしまいまして・・・。』

『あーそっか。』

『そろそろこっちで行われる大演習のことですか?』

『え?あーえーっとね?実は』

 

 

 

事情説明中

 

 

 

 

『なるほど・・・。それは尋常じゃないですね・・・。こちらが何度も電話をかけていたのは消費資源やそれに附随する回復期間、景品などの打ち合わせでしたよ。』

『そかそか。じゃあ多分違うかな?ごめんね。』

『いいえ~。また近くまで来たら寄ってください!それでは・・・』

 

 

受話器を置き首を振る。

 

 

ちなみに今はかわるがわるで仕事をやることで処理ペースは落としていないが、質は落ちている。

受付で仕分けるべきはずの執務室あての書類が、いつもより多く紛れ込んでいる。

いつもなら喜んで向かうのだがこんな状況下ではとてもじゃないが行きたくない。

「で・・・。この書類誰が届ける?」

「望月・・・今日は提督のパンツ取りに行かなくていいのかい?」

「ちょ!」

「ああ!じゃあ望月ちゃんが適任ね!」

「そうだな!」

万事休す

いくら司令官のどんな姿が好きでも嫌われたくはない。

ましてや此処まで無関心な姿を見たくはない。

「ところで時雨今日の間食当番だったね?早くいかないとだし、そのついででいいよね?」

「え?!僕かい?!えっと加古!今日はお昼寝してないよね?」

「え!古鷹!生産部の書類あったんじゃない?それ届けるついでにさ!」

「そっそう言えば望月ちゃん提督に今日渡すものがあるって言ってたじゃない?!」

書類の束が4人の間でクルクル回る。

みんな冷や汗をかいている。

此処の古参である川内か龍驤にでも聞けばわかるかもしれないが、二人は外出中。

最古参は元凶と化してしまっているため無意味。

5分ほど回し続けたのち、ある結論を出した。

 

赤信号みんなで渡れば怖くない

 

標語もどきだが、もうこうなれば自棄だ

執務室前でこっそりと開け、覗き込む。

二人はソファーに座っており、うつむいているが相変わらず無言で表情は硬く、目線は絶対零度の視線だった。

休憩しているのをよかったと喜ぶべきか、改善していないことに嘆くべきか。

ふと司令官がこちらを向いた。

明らかにばっちり目が合った。

なにも反応することなく再び目線を下に落とし、口元に手を当てた。

 

 

 

「むりだって!」

「望月ちゃんならいけるって!」

「絶対無理!目が合ったのになんも反応がないってなにさ!あたしほんとになんか逆鱗に触れることした!!?」

「「「心当たりだらけでしょ?/だよね?/だろ?」」」

「・・・・うん。」

尻もみに布団への潜り込み、パンツ等の私物の奪取etc.

あっヤベえ心当たりしかない。

「吹雪は!?吹雪の説明がつかないじゃんか!」

「あー・・・望月のセクハラにいらいらした提督が思わず当たったとかは?」

「あり得るね。」

「あり得るわ。」

「あり得ないよ!」

加古の推測にみんな同意し始めた。

「そもそも!時雨や古鷹が休ませようとしすぎなんじゃないの!それがストレスとかは!?」

「「え?!」」

「ないとは言い切れないねぇ。ちょっと言いすぎな気もするし。」

「そっそれを言ったら加古だって・・・」

これは結局先ほどの押し付け合いの再現だ。

「あーはいはい!さっきと同じだからとりあえずあちこちに電話かけてみよう?それで該当しそうな案件がない時また考えよう!」

電話を取り、残っている人たちへと掛ける。

マザコン(ちゅうじょう)

 

 

「ああそっか~・・・。姉さんと一生やってろボケが!!」

受話器を思いっきりたたきつけたのち、頭を抱える。

結論から言うと全滅だった。

 

 

 

 

内浦鎮守府は以前の青葉で取材の申し込み関連と日常会話除外

房総鎮守府は初霜で個人的な話だそうだが、終始和やかで終わったと言っていたところのため除外

砂安中将は大演習に際して前夜祭の出欠確認と日常会話(雷のことではない)これも除外

最後の桐月大将

ろくでもない案件で、なんでも鎮守府対抗将棋大会に出ない?といったお誘い。しかもその後文月との日常を話されそうになり、慌てて切った

当然除外

 

 

「どうしましょう・・・。」

「最後の桐月大将が原因だったりしない?文月のことを延々と・・・」

「それはないっしょ。だって司令官なら・・・」

 

 

『あーはいそうですね茶柱茶柱(たいしょう)。マザコンとでも話してろ。』

 

 

「で切って終わりっしょ?」

とりあえず今日の業務は終了。

日報を書いて終わりだが・・・

「死なばもろとも。もうみんなで突撃だぁ!」

「「「うん!」」」

 

 

 

でやってきました3時間ぶりの執務室前

じゃんけんで負けた加古がそっと見に行った。

 

 

「・・・・」フルフルフル

 

 

明らかに尋常じゃない真っ青な顔をして首を振った

「どうなの?加古?」

「見ればわかる。」

そういって震えて動かなくなった。

「・・・・時雨ちゃん望月ちゃん」

「・・・・・」ブンブン

「・・・・・」ブンブン

高速で首を横に振る

 

駄目

 

首根っこをつかまれそっと隙間から3人で覗く。(覗かさせられた)

 

 

 

 

中は一触即発の最悪な状況だ。

 

 

 

 

司令官は頭をひっきりなしに掻きながら顔が真っ赤になっている。

吹雪は顔は真っ赤だが目元が明らかに殺意を持った目をしていた。

二人とも先ほどのソファーから動かず下を向いていた。

 

 

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・これは夢なんだ。あたしは今きっと布団の中に・・・。」

現実ですあきらめてください

その時パチンと執務室の中から音がした。

司令官が吹雪にでも吹雪が司令官にでもどちらが手を出してはまずい。

四人は顔を見合わせうなづいた。

暴力沙汰となってはまずい。腹は決まった。

 

 

 

 

「「「「司令官!/提督!、吹雪!/吹雪ちゃん!」」」」

 

 

「え?!なに?!」

「なんですか!?」

 

 

扉を蹴飛ばし思い切り開ける

二人はさっきまでまとっていた殺気はなく、普通に応対した。

心なしか少し疲れた顔をしていたが、それ以外はいたって普通。

さっきまで部屋で冷戦をやっていたとは思えない。

「え・・・。二人とも喧嘩してたんじゃ?」

「「喧嘩?してないけど・・」」

二人は目をぱちぱちさせ顔を見合わせて首をひねった。

「でもさっきまで対応がそっけなかったり、会話しなかったり・・・」

「「・・・・?ああ!」」

二人が指をさしたのは先ほどまで手前の一人掛けのソファーで見えなかった机の上

その上には

 

 

「「「「将棋・・・?」」」」

「いやー白熱してね。大将が久しぶりに出ないかって聞いてくれてさ!それでリハビリがてらやってたんだよ。」

「やっぱり司令官強いです・・・。勝ったと思ったのに・・・・。」

「この竜で桂馬をすっぱ抜けたから何とか逃げ出せたんだわ~・・・。危なかったぁ・・・。あとさ・・・」

感想戦が始まってしまい話は聞けなかった。

 

 

 

後で聞いてみると、将棋を指しているときは集中力を考えることに全振りしているため自分がどんな動きをしているかわからないことが多いとのこと。

最初は口頭将棋と言って盤を出していなかったが、限界が近づいたため仕方なく休憩時間に盤を出してそのままずっとやっていたそうな。

あたしが見たのは盤に移る最後の一番ややこしい時に行ったおかげで、本人たちにその気がなくても睨んでいるようにしか見えなかったとのこと。

 

 

 

「後でみっちゃんにたっぷりとせびってやる。」

とりあえず桐月大将あての請求書にゼロを一つ増やして決済した。マザコン(ちゅうじょう)




暁と響の改二イベントまでに間に合うかなぁ・・・。
霧島、比叡、蒼龍、飛龍が一気に改二になって弾薬がごっそり・・・。
まぁ燃料よりか多いですけどね・・・。


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駿河諸島鎮守府の夜戦?

※日常回です


しとしとと暗雲を見つめる。

今日は小雨が降っており補給部隊もいくつか翌日にずれた。

海は荒れてはいないのだがこんな日はいくら艦娘でも寒さは耐えられない。

明日の仕事を思うとちょっと気が重くなるが仕方ない。

本土だと広範囲で雪が降っているそうだ。

 

雪か

 

子供のころは静岡にいたおかげで全然なじみがなかった。

大雪とかの映像を見てはテレビの中だけのことと思っていたな。

今まで生きてきて地元で雪を見たのは、片手で数えるくらいだ。

 

 

 

 

「さてさて。今日はもう引き上げましょうかね。」

吹雪は少し前に帰してしまったため、一人最後の片付けをしていた。

あとちょっと仕事が残っているのだが、これ以上残業すると・・・大体察していただけるだろう。

廊下に出ればかなり冷えており、思わず身震いした。

部屋が隣でよかったっちゃよかったが、結局今の今まで部屋にいなかったから室温は廊下と変わらないだろう。

キンキンに冷えたドアノブを回し、部屋の電気をつけると暖房にスイッチを入れる。

するとあることに気付いた。

 

 

「げっ!?」

 

 

決していつもの変態がいるとか、Gが出たとかではない。

布団が濡れているのだ。

ひょっとしてホラー?と思った方は申し訳ない。

原因は単純明快

雨漏りだ。

 

「この間の明石の改装だよなぁ・・・。」

上には木の色が丸く変色し、真ん中からはピチョンピチョンと水がしたたり落ちている。

これは困った。

布団は一組しか置いていない。

旅館で一泊することも考えたが、時刻はフタフタマルマル

地下鉄は二十四時間だが、この雨の中外出するのはめんどくさい。

それに榛名に一言は断りたいがこの時間だと起きているかどうか。

他の艦娘に予備の布団を借りるというのも手だが、いかんせん時間が微妙なラインだ。

いっそマルマルマルマルを回ってしまえばあきらめもつくのだが、この時間だと起きている子もいれば寝ている子もいる。

 

クリスマスイブの前日になんか演習を催しやがったせいで、最近また寝不足になっているのだ。(翌日にデートできて一石二鳥だしわしって頭よくね?とほざきやがったから望月の一ケタ増えた領収書の訂正をやめてきた。)

睡眠時間は4~5時間なだけましだが、今日は少し早く上がれたのだから布団で寝たい。

 

山風は今日は時雨の部屋だ。

つい最近当番で寝るようになってくれたため、助かった。(なんだか手のひらで踊らされている気がするのだが気のせいだろうか?)

吹雪は今日まで俺とほぼ同じ日程だったから行くのは避けたい。

古鷹、深雪は早寝だからボツ。

加古は・・・夜通しちゃんぽんをする日があると聞いたのだが、本当だろうか・・・。これもボツ。

龍驤は安牌かな?

望月はド危険牌だな。今日は潜り込んだ形跡がないうえ、ちょっとあれなのを見たくはない。(こないだ行ったら部屋の前に俺のパンツが何故か落ちてたし)

川内は・・・今日は任務だっけ?

初歩的なことを忘れるなんて、最近疲れているのかもしれない。

とにかく寝入ってしまう前に布団を借りねばならない。

 

 

「あらー・・・。やらかしたねこれ。」

龍驤の部屋の前まで来たが、扉の隅にある小さいガラスのぽっちは暗い。

つまり部屋の電気が消えているということだ。

というか今朝、自分が明日朝一で龍驤に本土への日帰り出張を言い渡したことを思い出した。

残った手札は2枚。

酒を飲んで寝不足か貞操を守って寝不足か

「どっちもやだなぁ・・・・。」

「な~にが~?」

「いや選択肢がさ・・・望月さん?」

「だからなに~?」

「尻もむのやめてくれませんかね?」

「前のh「やめい!」」

女の子としてあるまじきことを言いそうになったのでストップを入れる。

「ところでみっちゃんはどうしたの?夜這い?」

「お前なぁ・・・」

頭痛がするが、こらえて事情を説明する。

「あ~なるほどねぇ。悪いんだけどごめん貸せないんだ。」

「あらら。予備の布団おいてなかったっけ?」

「いやその・・・ね?昨日アレが盛り上がっちゃってそのままでさ~。」

珍しく赤くなりながらもじもじしている。

「アレ?・・・・あっ。もういいぞ。すまなかった。」

「今日雨だったから干せなくてね~。ごめんね~。」

「ってどこ行くんだ?部屋はこっちじゃないっけ?」

「ああ。加古の部屋で今日飲むことにしてるんだ。そいじゃね~。」

正解だった。

行ってたら確実に寝不足コースだった。

しかし、おかげで手札はなくなってしまった。

 

 

 

 

 

「しょんないからなんか飲んで無理やり寝るか。」

食堂へ行き、何かないかと探す。

行く途中部屋を見ては行ったが、みんな電気が消えているところを見ると今日は早寝みたいだ。

「げっ・・・これあんときのウイスキー・・・。」

酒の入っている戸棚を開けると、いつぞや疲労困憊したときに吹雪と一緒に一気に飲んだウイスキーが出てきた。

あれ以来洋酒系はちょっと避けるようにしている。

「やめやめ。えっと・・・ビールは嫌だし焼酎は好きじゃない・・・梅酒でいいや。」

いいお酒はみんなで飲みたいから結局手前のパックの酒をとり、執務室へ戻る。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・さっむ!」

執務室を開けた時間は1時間ほどだろうか

暖房も切っていたためそこそこ冷えている。

部屋の温度は一桁前半

相当強い寒波だろう。

ケトルのスイッチを入れお湯を沸かす。

お湯割りなら比較的早く寝つけるはずだ。

お湯が沸くのを待つ間、外を見ると雪まではいかないもののみぞれが降っていた。

ここでも雪を見ることがあるかもしれない。

ちょっと楽しみだな。

雪ねぇ・・・。

そんなふうに椅子に座って考えていたらカチッと音がし、お湯が沸いた。

 

 

 

 

 

「提督?まだ仕事してんの?」

お湯割りを入れ、一口付けたところで入ってきたのは川内だった。

「ありゃ?今日は任務入れてなかったか。」

「もー。今日は中止って言ってたじゃない。」

思い出した

今日は雪が降るから交通機関もマヒするし諜報は無しでって言ったな。

「わりーっけね。ちょっと酔ってたみたい。」

「珍しいね執務室でお酒なんて。」

隣に腰を掛けた。

梅酒のお湯割りを作ってやり、渡してやる。

「ほい。」

「ありがとー。」

「いやな。部屋が・・・」

 

事情を説明し、今日はここで寝るつもりだというと

 

「ええ!今日は冷えるよ!そうだ!私の部屋に来なよ!」

「でも酒入れちゃったし・・・」

「いーのいーのさ!行こ!」

畳みかけられ部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁ入って!」

「おっおう・・・。」

部屋はきれいにされており、ちゃんと生活感はある。(自分の部屋とは大違いだ)

「なぁに提督?艦娘の部屋はいるの初めてなの?」

「・・・長時間はないな。」

「え!吹雪の部屋もまだなの?」

「・・・・・・・・というか女性の部屋自体・・・。」

「・・・へぇ~?」

あれなんだかこの目を見た気が・・・。

というか後ろにいつ回ったんですか ガチャン

「あの・・・。布団を借りに来ただけ・・・・。」

「逃がさないわよ。さぁ!私と夜戦しよ!」

 

 

 

 

 

 

「まぁ知ってた。」

「なにがぁ?」

お約束というかスマブラでした。

「というか提督へった~」

「な!こっこれは酒に酔ってるからであってだな!」

「あたしだってお酒入ってるもーん。」

「ぐぬぬ・・・。」

5戦全敗

もともと格闘ゲーム系は得意ではないがやはり悔しい。

 

 

 

時刻はマルマルサンマル

そろそろ寝なければ

「じゃあ布団借りてく・・・じゃダメか・・・。」

「そうやすやすと返すとでも?」

「わかったよ泊まってくから。」

こうなったらしょうがない。

あきらめ布団を敷いた。

「こっちこないの?」

いたずらっぽい笑みを浮かべて川内は自身の布団をまくる。

「男に対してそんなことするなっての。」

デコピンしてさっさと引いた布団に潜り込む。

「ケチー。ほかの子たちとは寝たんでしょ?」

「押し切られたんだっての。・・・まてまて。こっちに来るな。」

「じゃあ私も押し切ろうかと・・・。」

「だーめーだーってーのー!」

布団をまくられはいられそうになったため必死の防衛を行う。

 

 

 

30分の格闘に勝利はしたが拗ねられてしまったうえ、翌朝部屋から出たら青葉とばったり会ってしまった。

新聞に書くなと念押ししたが、ネタ帳にメモられたのは痛いなぁ・・・。




なんだか予告を見る限りひょっとして荒潮の改二が速そう??^^;
そうなると次の改二も早く来る可能性が・・・?


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駿河諸島鎮守府の年末

※ただただ甘く作りました
※落ちほぼないです


大本営大将室

 

「ありがとう。これでやっとうちは仕事納めだよ。」

「そうですか。おめでとうございます。」

文月が入れたお茶を飲みながら提督は答える。

まさに年の瀬の今、自身の鎮守府の給料概算要求書を提出に来ていた。

ボーナスや給料は明日手渡しできるだろう。

「おかげさまでこちらは資源の再計算ですがね。」

「・・・・すまんって。」

「まだクリスマスの資源配布の帳尻合わせが終わってないんですけどねぇ?」

「すんませんした!」

普段威厳たっぷりな大将が全く頭の上がらない人は二人しかいない。

文月と自分である。

先の一言を言った瞬間、ジャンピング土下座をかまし、額を床に擦り付ける。

「・・・・焼き土下座って大将知ってます?」

「わし死んじゃう!死ぬなら文ちゃんの膝がまだいい!」

「・・・・・・」

「すみませんでした!!!余計なことを口走りました!」

何を申し付けられたかというと、正月に向けて新しいお年玉任務をやるから資源の調達よろしくということ。

こちらとしてはある程度想定はしていたが結構な資源量なので、ほかの子たちを年末年始休ませる計算だとなかなかきわどい。

吹雪をこっちに入室させてなくて正解だった。

「今度吹雪ちゃんとペア将棋大会に招待するからそれでどうか!賞品超豪華だよ!共通の趣味だよ!」

「将棋って・・・」

「じゃっじゃあ・・・えっと・・・」

「別にいやって言ってません。約束ですよ。」

「やったぞい!」

「じゃあ私は行きますね。文月お茶おいしかったよ。」

「お粗末様です~。」

「あ!ちょっと待った!こないだの請求書なんか一桁多かったんだけど・・・。」

「察しろ。それでは。」 アッハイ・・・ハンブンチカクジバラニナルンダケド・・・

 

 

 

 

大将室を出て、控室へと戻ると吹雪と五月雨が話し込んでいた。

「それでね・・・。あっ!司令官!お疲れ様です!」

「耳本さんお疲れ様です。」

「吹雪ちゃんお待たせ。五月雨ちゃんは久しぶりだね。」

この間の秋祭りの時は会う機会がなく、山風の件で来てもらったときもいなかった。

「はい!耳本さんもお元気そうで何よりです。」

「さえぎって悪かったが何の話をしていたんだ?」

「ああ。それは」

「しっ司令官!早く帰らないと年末までに書類が・・・。」

「っとそうだな。五月雨ちゃん悪りけぇがまた今度だな。」

「はい!じゃあ吹雪ちゃん、耳本さん!またいずれ。よいお年を!」

「「よいお年を。」」

 

 

 

 

外に出ると曇天の空が広がり、風も冷たい。

コートのボタンをしっかり閉め、飛行場へと向かう。

「寒いですね。」

「だなぁ。隅っこにこないだの雪が残っとるし。」

歩く場所には残ってないが茂みを見ると白いのが見えている。

「うちでも降りますかね?」

「どうだろ?八丈島では降ったことあるらしいし、降るんじゃない?」

コートのポケットからスマホを出し、今から帰ると時雨に連絡する。

「へぇー!雪合戦してみたいですね!」

「やってみたいよな!雪にあんまり縁のない俺にとっちゃ結構な夢だわ。・・・と・・・マジか~。」

「どうしたんです?」

「これ見てご。」

そういってスマホの画面を見せる。

画面には写真が写っており、そこには荒れた天気が映し出されていた。

『夕方過ぎには抜けるから最終便しか飛ばないと思うよ。』

軍の飛行場へ電話で確認すると、やはり最終便まで欠航になっていた。

船は八丈島へと退避し、波が収まるか飛行機の代替輸送が復活するまでとなっていた。

「ええ・・・。どうしましょう。」

「・・・どっかぶらついて戻ってくるか。出発時間はフタヒトマルマル」

「あと・・・」

「六時間近くだな。」

時刻はヒトゴーマルゴー

 

 

 

 

 

 

「どこもいっぱいだなこりゃ・・・。」

「年末ですもん。仕方ないです。」

どこへ行っても大きな店もスーパーも人がごった返している。

すいているのは遊興施設くらいか

「どっか行きたいとこある?」

「じゃあ・・・ショッピングにいきたいです!」

「ん、了解。組んでくか。」

「!はい!」

腕組をしてはぐれないように人混みを行く。

 

 

「意外とすいてるもんだな。」

人々の大半は地下の食品売り場へと流れ込んでおり、上に行くとある程度人が分散しているみたいだ。

「ほいで。どこに行くんだ?」

「此処なら時間も潰せていいかなぁと思ったんです。」

なるほどな。

外は寒いからなおのことちょうどいい

 

 

 

 

 

何だかんだあっちを見たりこっちを見たりすると時間がつぶれていた。

吹雪は買うものがあるとのことで今は別行動。

買いたいものがあるのだが結局決まらずぶらぶらと悩みながら歩いていた。

テナントを素通りしながら歩いていると、あるものに目が留まった。

「・・・・・・・これか」

 

 

 

 

「司令官!お待たせしました!」

「おう。何買ったんだ?」

「ないしょです!」

いたずらっぽく赤みを帯びた頬で微笑んだ。

「?そうそう。食べてくるって連絡入れたで外食して帰ろう。」

「ほんとですか!どこに行くんです?」

「ないしょだ。」

返してやるとむっとした顔をした。

 

「ここって!」

来たのはちょっとこじゃれたフランス料理店

「吹雪ちゃんが着任したときに来た店だ。」

「なつかしいですね!」

「ナイフとフォークの使い方は大丈夫かなぁ?」

「大丈夫ですったら!もう!」

クリスマスを過ぎているからか人はまばらであるが、むしろ人がいるだけこの時期はましだろう。

なるべく人のいない端っこの席にしてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ!おなかいっぱいです!」

「そいつは何よりだ。」

後はデザートの注文をすれば持ってきてもらえるのだが、その前にと鞄をそっと開けようとする。

「あの・・・。しれ・・・耳本さん。」

静かな店内で軍属と知られたくないため、言い換えた様子だ。

鞄から手を引っ込め、吹雪に向く

「これ。私からのかなり遅いですけど・・・誕生日のプレゼントです。」

目の前に出されたのは先ほどのところで買ったものだった。

「・・・あらら。なんてこった。」

受け取ると少し重い。なんだろうか。

「え?!何かまずかったですか?!」

吹雪が不安そうな顔をして慌て始める。

「いやー。こっちも用意してたんだわ。」

先ほど伸ばした手を再度伸ばし小さな青い小箱を取り出す。

「えっ?!」

「ひと月以上遅れちゃったけど誕生日おめでとう吹雪。」

「あっありがとうございます!・・・開けても?」

「どうぞ。」

開けるとそこには

 

 

 

 

 

 

雪の結晶をかたどった小さなピンブローチがあった。

「これは・・・。」ガッシャーン

「七宝焼きだよ。あんまり金銀煌びやかなものより、上品な方がいいかなって。・・・なんかものすごい音したな?」

ちらっと後ろを見ると、どうやら2つほど後ろのお客さんがこけたようだ。

カップルらしく、女の人は恥ずかしそうに顔を隠している。

「・・・あっありがとうございます!」

「いいえ。こちらこそありがとう。」

「早速つけてもいいですか?」

うなづくと早速つけた。

小さなアクセントでちょうどいい。

「似合ってるよ。」

「うふふ。ありがとうございます。でもまたもらってしまってもいいのですか?」

「水色の髪ゴム。時々つけているの知ってるよ。」

「気付いてましたか。あの時もここでしたね。」

照れくさそうにお互い笑う。

 

 

 

 

 

その後、デザートに舌鼓を打ったのち、飛行場へと向かった。

冷え込むためお互いくっつきながらの帰路となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベタ甘で終わるとでも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁやってまいりました!みっちゃんの尾行するわよ!ふぅちゃん!」

「ええ・・・。なんでまた・・・?。」

「実は五月雨ちゃんがね?吹雪ちゃんから誕生日のプレゼントのアドバイス聞かれたらしいの!」

「へぇ・・・。詳しく。」

さっきまで嫌々の顔はどこへやら

明らかに興味津々といった顔だ。

「みっちゃんの誕生日は10月。だけどこのころは大規模作戦等でめちゃくちゃ忙しかったからここまでひっぱっちゃった色を付けたいって。」

「ほうほう。」

「で。今日は諸島は荒天の予報だからね?」

「デートに行くから尾行しようと。」

「興味あるでしょ?」

「あるよぉ~。」

 

 

「腕組んでる~!」

「珍しいこともあるものね!これは今日はすごい戦果あるかもしれないわ!」パシャ

 

 

「ちらっと見て少し話してはすぐに移動するね・・・。」

「何を買うのかしら・・・。あっ!別れたわ!」

「みっちゃんは特に目的なさそうだよに歩いてるね。」

「吹雪ちゃんは・・・いた!」

「食器の方に迷いなく行ったね。」

「よっし行くわよ!」

 

「あ!」

「「あ!」」

なんということだろう。

尾行時にあってはならない相手との遭遇

これをやらかしてしまったのだ。

「夏木さんに深打さん!こんにちわ。」

「ふっ吹雪ちゃんこんにちわ~」(どっどうするの!?)

「こんにちわ。」(どもっちゃだめよ!ふうちゃん!私に任せなさい!)

「偶然ですね!何か買い物ですか?」

「ええ。この間五月雨ちゃんが食器を割っちゃってね。」

食器コーナーにいたことと五月雨ちゃんのドジ癖をうまく利用した。

五月雨ちゃんごめん・・・。

「ああ!聞きました。お気に入りのを割っちゃったとか・・・。」

「そう!それでその代わりのものをと思ってね?」

「そうでしたか!深打さんは?」

「ぼっぼk」「ああ!ふうちゃんは私の男除け。頼み込んでついてきてもらったの!ところで吹雪ちゃんは?」

「私は・・・その・・・。」

手元には何か箱を持っている。

残念ながら中身はわからない。

「ああ!ごめんなさい。みっちゃんへのあれね?」

「はっはい。」

「これはいけないわ!デートの邪魔をしちゃいけないし、私たちは退散するわね!」

「でっデート!?いやいやいやそんなそんな!」

真っ赤になっているすきに退散をした。

 

「あぶなかったぁ~。」

「ふぅちゃんどもっちゃだめじゃない!」

「いやだって~。あ!みっちゃん。」

「見つかるとやばい!って何か見ているわね。」

「なんだろ?なに?」クイクイ

「みっちゃんがいるのって!あそこって!」

 

ジュエリーショップ

 

「「!!!」」

「これってひょっとして?!」

「ひょっとするかも?!」

 

 

その後尾行は細心の注意を払い、ばれないようにしたためばれずにフランス料理店へと舞台は移った

 

 

「きたわよ・・・・。」

『あの・・・。しれ・・・耳本さん。』

「盛り上がってきたわよ・・・。」

「みっちゃん・・・やっと・・・。」

『ひと月以上遅れちゃったけど誕生日おめでとう吹雪。』

「来たわよ!」

「・・・」

二人はこっそりと吹雪の手元を見る。

開けるとそこには・・・

雪のピンブローチが見えた

「「指輪じゃないんかい!」」

ドリフ並みの滑り方をしてしまい、一番身を乗り出していた夏木はそのまま倒れこんでしまった。

「やっば!」

「お客様!?大丈夫ですか?!」

「だっ大丈夫です!大丈夫です!」

大慌てで手のひらで顔を覆い、指の隙間から覗いた。

幸い吹雪はブローチにくぎ付け、提督はこちらを見たが気づかなかった。

 

 

「はぁ・・・・。」

「そんな気はしていたけどね・・・・。」

「そんなに甘くないかぁ・・・。」

「ところで今日半日つぶれちゃったから仕事が31日までずれ込むかもしれないんだけど・・・。」

「・・・・。広報部が年末年始忙しくないとでも思って?」

「あっ・・・!」

急いで財布を出し、伝票の上にお金を置こうとする。

テーブルの上にはその伝票がなかった

「みっちゃんみたいに頑張りましょ~・・・。」

「電・・・・助けて~・・・・。」




自分の誕生日に合わせちゃいました。
ほんとに自分を楽にすると楽で楽でw
ちなみに10月12日だったりします。
吹雪ちゃんの誕生日は11月15日です(進水日)

艦娘 誕生日 一覧 で検索すると一覧表が見れますよ!
ひょっとすると嫁艦と何かつながりがあるかも?
作者はなんと吹雪とは一日違い!古鷹と叢雲はおんなじ日にマークがついていました!
何のマークかって?


サボ島沖海戦


後は察してください・・・
つながりが全くないよりかましだけどさ・・・・。なんだかなぁ・・・。


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駿河諸島鎮守府の酒癖

今日も今日とて残業(勝手に)

いや違うんですよ

ちょーっとだけ面倒な書類がありましてね?

今日はなんと古鷹は年始の古巣へ里帰り

時雨は山風を連れて同期の白露型の皆に会いに泊りがけで外している。

一番監視の目が薄い日

 

 

そして目の前にはちょうどいい感じの残留業務

 

 

いつやるか?

 

 

すでにだいぶ旬を過ぎた言葉なのでこの先は割愛させてもらう。

そんなわけでやり始めたのだが、これが思いのほか早く片付いた。

 

「あれ?これこんなもんか。」

よくよく見ると添付資料を用意しなくてよいと書いてあったのを見落としていたようだ。

時刻はフタヒトマルマル

切り上げてもいいのだがせっかく興が乗ってきたところ

これで切り上げるのはちょっともったいない。

頭の中で考えを巡らせる

港湾関係や滑走路は終了したし、年始のお年玉任務の処理もある程度終わっている。

 

 

「じゃあこの間のあのあたりの開発書類でも作るか。」

あのあたりとはほっぽちゃん捜索の時の草原地帯のことだ。

せっかく果樹が生えているのだから、いっそ果樹園にでもしてしまおうかと。

旅館やホテルで出してもいいだろうし、緊急時の食料にもできる。

 

方針が決定したところで、棚から新品の書類を取り出そうとしたとき、スマホが鳴った。

ディスプレイには古鷹と表示されている。

 

『はい。耳本ですけど?』

『あっ!提督ですか?夜分にすみません。』

『いいや。大丈夫だよ。何かあったのかい?』

『いえ・・・。提督また残業してませんよね?』

書類を数えていた手を止めた

『・・・うんにゃしとらんよ?どうしてまた?』

『いえ。ちょっと気になったものですから。明日の昼ごろ帰りますのでそれでは。』

『はいな。気をつけてな~。』

 

 

 

一瞬心臓が止まるかと思った。

こういう時は大体乗り込んでくる予兆だったりするのだが、明日帰ってくるといった。

そうなると直近の残業の予定を古鷹の見回りの時は外すようにすり合わせて・・・。

「って古鷹今日見回りじゃん。まぁだれか代理頼んでるだろうし、いっかぁ。それよりお仕事お仕事。」

席に戻り、万年筆をとったところでスマホが鳴った

「また?吹雪ちゃんか・・・」

『もしもし?吹雪ちゃん?』

『司令官!すぐにg・・・あいえ!その・・・。』

『ん?どうした?怖い夢でも見たんか?』

何やら慌てている様子なので少し茶化してみる

『いえ・・・。今どちらにいますか?』

『ん~。執務室。今日のあの書類すぐ終わっちゃってさ、せっかくだから果樹園でも作っとこうかなぁって思ってさ。』

『そっそうなんですか・・・・・・・。あの・・・今から行ってもいいですか?』

『いいよ~。いつもの入り口から入っといで~。そんじゃ後でね。』

なんだかしどろもどろだったけど・・・まぁこちらに来るということだから待っていよう。

 

 

 

字を書く音だけがする室内にノックの音が響いた。

「入っといで~。」

いつもの隠し扉の開く音がした。

「いやちょうどよかった。今年の本土からの補給船団っていつ来るんだっけ?」

「7日ですよ。提督。」

「7日か・・・。果樹の注文ってさすが・・・あれ?」

吹雪ちゃんって提督呼びだっけ?

てかさっき聞いたような気がする声のような

「提督。ちょっとお話が。」

優しい声だが明らかに怒気が混ざっている。

この声は吹雪ちゃんの前に話したある方の声だ。

目の前の書類を見ている目をほんのすこーしずつ横にずらしていく。

ローファーが見え少しずつあげるとそこには

「何をしていらっしゃるんですか?」

「・・・・ちょっとかたずけを・・・」

アルカイックスマイルをした古鷹さんがいらっしゃいました

 

 

 

 

 

 

「それで残業をしていらしたと。」

「ハイ」

「あの隠し扉については吹雪ちゃんに聞かせていただきました。」

「あれは非常口・・・」

圧力に屈しないぞ。

屈したら最後あそこは使えなくなってしまう。

「提督?」

「残業時の抜け道です!」

古鷹さんの激おこに屈しない人っているのかな?

「・・・ちゃんと無理しすぎない程度でしたら今回は見なかったことにします。」

「ほんとに!?」

困り気味の顔だがうなづいた。

「ただし、ちゃんと自己管理してくださいね。」

「ぜんs・・・はい・・・」

ここで善処だなんて言ったら最後、隠し扉はもう永久に使えないだろう。

私だって学習しているぞ

「本当は提督さんを驚かせようと思ったんですけど・・・。」

執務室に明かりがついていたのを見られたか・・・。

次からは誰もいなくても黒カーテンをするようにしなければ。

「何か変なこと考えてません?」

「うんにゃ?」

「そうですか?・・・まぁいいです。話は変わりますが、前の提督から提督への預かりものです。」

「こりゃあ・・・。いいもんだけーが・・・。」

目の前に置かれたのは高級なスコッチウィスキー

いいものなのだが苦々しい思い出だ。

「せっかくですし飲みませんか?」

「え?いまから?」

「ええ。もうお仕事はないですよね?」

「まぁ・・・。ほんとに?」

「何かまずいことでもありましたか?」

「いや・・・。」

「たまには私も提督さんと飲みたいんです!加古に止められちゃいますし・・・何でだろ?」

なぜこんなにも聞くのか

酒好きの加古がなぜ止めるのか

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは簡単

とんでもなく酒癖が悪いのだ

 

以前青葉が取材に来た時なんかは大変だった。

最初こそほかのメンツに交じってちびちびと飲み、酔いを抑えてはくれるのだがそのタガが外れたら・・・・。

 

「ていとくさんもういっぱいどうぞ~」

「ああ・・・。ありがと。」

こうなる。

フニャフニャとした可愛い笑みを浮かべている。

ロックでいただいているが、少しでも減るとすぐに注いで来る。

自分の飲むペースをひっかきまわされるのだ。

「せっかくですしいっきしましょ!いっき!」

「え?!」

「はいいっき!いっき!」

ニコニコ笑いながら手をたたいている。

天使のようでやっていることは悪魔だ。

「・・・ぐっ!」

ウィスキーの一気はつらい

思わずうめき声が出てくる トポトポ

「ちょい!さっき飲んだばっかじゃん!」

古鷹があっという間に次のを注ぐ。

「そうでしたっけ?」

そういいながら瓶をもって煽る。

「おおい!!」

「?」

「小首かしげてもダメ!グラスに注ぎなさいってば!」

何とか瓶を引き離し、ため息をつく。

この間の時は頭から掛けられて大変だった。

毛根から酒を飲むなんて芸当できないからな?

 

「ていとくにつぎたいです。」

遠ざけておいたため、俺のグラスはいつの間にか空っぽになっていた。

正直もういらないが断ることもできないため瓶を先に渡した。

次にグラスをもって振り返ったとき、衝撃がはしった。

何事かと思ったら見慣れた天井が見える。

ソファーにごろ寝するくらい酔ってたか?

そう思っていると、古鷹が覗き込んできた。

おそらくだが古鷹に押されたのだろう。

「ていとくさん?もうねちゃうんですか?」

これは切り上げるチャンスかもしれない。

そうだ寝たふりをしてしまおう

「のみましょうよ~。」

目をつぶってやり過ごそうとしたのが失敗だった。

古鷹はむくれた顔で酒瓶を提督の口に押し付ける。

これは困った

口を開ければウィスキーがなくなるまで飲まされるだろう。

若干こぼれて冷たいが我慢を・・・・

「・・・えい!」スブ

「うひゃあ!」ガボ

わき腹を急襲された

どうにもこれには弱く、口を開けてしまい酒瓶が突っ込まれた。

それと同時に意識が薄れていった

 

 

 

 

 

 

「しっ司令官!」

「げ!古鷹・・・・。」

翌朝早く心配して見に来た吹雪と、昨日の一件を聞いてついてきた加古曰く

提督は口から酒瓶をはやして全身ウイスキーにまみれ、古鷹は提督の上で提督の口に酒瓶を突っ込んだまま寝ていたらしい。

一週間ほどウイスキーのにおいがとれなかった上、ウイスキーを見るだけで膝が少し笑うようになった。

古鷹の酒癖はランダムで今回は相手に飲ませたがるタイプだった。

加古曰く

絡み酒、笑い上戸、泣き上戸、キス魔、脱ぎ魔、ect...

たちの悪いものから害のないものまでのどれかが出てくるらしい。

外で飲むときは自制しているのか絶対に出ないのだが、仲のいいメンツの時はこうなるという。

 

 

 

 

ちなみにだが古鷹は何があったのかを一切合切覚えていない。




劇場版見てきました!
戦闘シーンよかったですねぇ!
内容は途中までよかったんですけど・・・
後半が詰めすぎぃ!
そんな感じで2回見てじっくり考えて納得した感じに・・・
とりあえず睦月ちゃんと如月ちゃん育てます・・・。


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駿河諸島鎮守府の枕

古鷹型重巡の2番艦加古でーす・・・。

今日はなかなか冷えるので提督の布団に潜り込みいわゆる同衾したいと思いまーす。

「・・・・・。・・・・・。」

何か話している?

「てーとく?いっしょにね・・・て・・・・?」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

 

 

バタン

 

 

 

あ・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「あたしは提督の布団に潜り込もうと思ったら

提督が布団の上でひたすら土下座をしていた」

な・・・何を言っているのか わからねーと思うが 

あたしも何をしているのかわからなかった・・・

目がどうにかなりそうだった・・・見間違えたとか目の錯覚だとか

そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

 

 

「・・・」ガチャ

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめ・・・ん・・な・・・・・・zzz」

突っ伏したまま動かなくなった。

「ええ・・・?」

 

「ってことがこないだあったんだけどさぁ。」

「何それ怖い。」

 

執務室での休憩の雑談

 

「そりゃあたしのセリフだよ!提督何かしたの?」

「いやぁ・・・。全然さっぱり・・・。」

首をひねるが思い当たることは一つもない

「この間なんてベットの上に布団ごといないからどうしたのかともったらさ。」

「うん?」

「ベットの下にいたんだけど・・・。」

「うっそだぁ!」

「はいこれ。」

スマホの写真には確かに自分が背を向けてベットの下にいた。

まじかぁ・・・。

「そんなに寝相悪かったかなぁ・・・?」

「少なくとも人がいるときはないねぇ。」

蹴っ飛ばされたりってことはなかったしと、付け加えながらせんべいを食べ始めた。

「寝起きがあんまりよくないってのは自覚してるんだけど。」

「たとえばー?」

「睡眠時間が足りない状態で起きると目が片方しかあかなくてさ。朝ご飯食べに行ったあと夏だと床で寝ちゃわない?」

「あー。あるねぇ。」

加古が同意する。

あのひんやり感がいいのだ。

ひんやりした感じがなくなるまで周囲をゴロゴロとし続けるのだ。

「冬だと布団に行っちゃいけないと思って必死にあらがった結果、日の当たっている床のところで寝てたり・・・。」

「あるねぇ!ちなみに洗濯物乾かす部屋。あそこ辺りはフローリングだからこの時期ぴったりだよ。」

「まじか。それ聞くと絶対行っちゃうな。」

お茶を啜って思い浮かべる。

「でも提督って朝は眠そうにする割に昼寝はしないよね。」

「あんまりね。赴任したてのころ一回寝不足でしたんだけどさ。」

「うん。」

「起きたら夜の9時。あの時は焦った。」

 

吹雪曰く

気持ちよさそうに寝ていて起こすときの罪悪感に耐え切れそうになかったとのこと

現在その吹雪は長門の修行を見るため隣の島にいる。

 

「あるあるだねぇ。」

「それ以来なるべくしないようにしているんだ。」

この間した時もちょっとあれなことが後々あったし・・・

 

 

 

 

 

「あー・・・。腰が痛い・・・。」

背伸びをするとパキパキと音が鳴る。

凝っている関節を伸ばすときは、ある種の至福でもあったりする。

最近柏崎の奴が開発した防諜プログラムのおかげで、手渡しの書類が減り、代わりにパソコンでの処理が増えた。

結果、パソコンに向かう時間が多くなり、肩や腰が余計に凝るようになった。

目も若干見えづらくなった気がする。眼精疲労だろうか。

「お疲れのようだねぇ。」

「パソコンって楽だけど前のめりになっちゃうからねぇ。ちょっと横になるわ。」

そういってソファーに寝っ転がるがどうも狭く感じる。

凝っていないときならこれもまたいいのだが、思いっきり伸ばしたいときには違和感でしかない。

「うーん。んー・・・。ん?」

「・・・提督~。うるさいよ?」

「いやすまん。どうもしっくりくる体制にならなくて・・・。床に寝るわけにはいかんしなぁ。」

執務室は土足だ。

服が汚れてしまうし何より汚い。

「ん?じゃああたしの仕事部屋来る?」

「え?加古のところも土足だろ?」

「まぁまぁちょっと来て。」

 

 

 

 

 

 

「おお!」

総務部の部屋は執務室と同じ階にある。

補給部と警邏部は一階、生産部と資源部は二階だ。

応接室やらその他倉庫などをあてがって、残った部屋がここだ。

16畳ほどの広さの一角が畳コーナーとなっていた。

「明石の工房券使ったんだ~。」

先に畳に寝っ転がるとおいでおいでをした。

「ほんじゃ失礼して。」

やっぱり布団とかの柔らかさとは違ったほど良い硬さ

旅館の方に自室があるとはいえいちいち行くのがめんどくさい。

「あー・・・・。」

最初仰向けになっていたが、体勢を変えうつぶせになるとしっくり来た。

「執務室に置きたいなぁ・・・。」

「え~。たまにはこっちにサボりに来なよ~。」

「駄目だっての。吹雪ちゃんや皆に負担かかるでしょ?」

「執務室に置いたら外部から来た人に目立たない?」

執務室は洋風の基調だ。

外部の人をもてなすこともある以上、不釣り合いな畳の配置は難しい。

「・・・置くのはあきらめるけどこっちに来るのはたまにしとくよ。」

「ぶー。」 ドサッ

ふてくされたのか尻に衝撃が走る。

頭を乗せたようだ。

「・・・提督。」

「なんだ?」

「提督の尻枕いい・・・。」

「はぁ?」

聞き間違えたかと思い首をひねって後ろを向くと恍惚とした表情の加古がいた。

「これは古鷹の腕枕と山風の抱き枕に匹敵するよ!うちの鎮守府の至宝だよ!」

「古鷹はともかく山風とも寝たことあんのかよ・・・。」

「昼寝の時にちょうど訪ねてきたからそのまま。・・・いい?古鷹はあの重装備を扱う際についた筋肉の硬さがちょうどいいんだよ。で、山風はすっぽり収まって硬くなく柔らかい。そして提督のはその二人の間なんだよ~!」

 

いつぞや帰ってこなかった時があったが原因お前か

つか人の尻を勝手に至宝にせんといてくれ。

そんなキラキラした顔して解説もやめてくれ・・・。

 

「ちょうどいい硬さなんだよ~。提督これから2日いや3日に1回でもいいから尻枕しに来て・・・。」

「みっちゃんの尻枕と聞いて!」ガタン

おい望月お前何で天井から出てきた?

手つきがいやらしいし・・・

おい!加古!起きろ!頼むからねいるな!

深雪!深雪はどこだ!?

あっ・・・今日は大本営に行ってたんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

何か気力とかそういったものがごっそり減りました。




ちょっと前に広島へ旅行に行ってきました~。
(実は前回の投稿したときが旅行中でしたw)
以前大和ミュージアムに一回行けたんですけど連れがあっという間に見てせかしてきたので見れなかったところが・・・^^;
これで心残りは今のところないです!(潜水調査で新発見がないかぎり)
江田島に行ったり宮島行ったり、呉行ったり。
自衛隊の基地の中は10~20日前からの予約制でしたので見れませんでした^^;
(江田島の学校は当日でも見れました)

設定集に追加しました!
追加 明石、長門、ほっぽちゃん
加筆 提督、加古、古鷹


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駿河諸島鎮守府の始まり

「加古ー。いるかー?」

「加古さん・・・どこ?」

現在俺がいるところは果樹園兼菜園予定地

山風を連れて加古を探している。

以前来たときは草ぼうぼうで歩けなかったが、今は草刈りをしてちゃんと歩けるようになっている。

「かーこーさーんーやーい!」

「かーこーさーん・・・。はぁ・・・。」

昼寝をしに行くと総務部の扉にかかっていたので現在捜索真っ最中。

妖精さんは分担してあちこちを見て回っている。

「カコサンミツケタデス!」

ある一本の木から妖精さんが下りてきた。

どうやらこの上で昼寝をしているようだ。

「悪いけーが起こしてくれんか?」

「ワカッタデス!」

するすると木の上に登っていったと思うとしばらくして

「うわわわわ!?」 ドサッ

 

加古が降ってきました。

 

 

 

 

 

「妖精さんもっと優しく起こしてあげてよ・・・。」

「イッコウニオキナカッタノデツイ・・・。」

「まぁしょんない。今日はお菓子持ってないから間宮さんで食べといで。設計図の報酬も含めてるから。次の打ち合わせは一週間後でお願いね。」

「カタジケナイノデス!」

「いって・・・。妖精さんの野郎・・・。」

妖精さんはあっという間に引き上げてしまった。

「すまんな。あそこまで乱暴に起こすとは思わんで。」

「だいじょうぶ・・・?」

「大丈夫大丈夫。心配ご無用ってね!」

山風の頭をわしゃわしゃと撫でて立ち上がる。

「で?提督何かあったの?」

「ああ。ここを今度農園兼果樹園にするんだけどさ、何かいい肥料とかしらない?」

「・・・あたしが持ってる知識じゃわからないよ。」

加古は医師免許と調剤士の資格持ちだ。

こんな離島で俺やほかの提督が病気やけがをした際にはどうするとなったとき、いなかったら困るので人員増強もかねて配属された。

「駄目かぁ・・・。」

「石灰くらいだったら今度の調達の時に注文しといたげるけどそれじゃダメ?」

「それでいいかな?多分・・・。」

ぶっちゃけ妖精さんがほとんどやるんだけど

肥料の調達なんてどうしたらいいかわからないしせめて理系の人に聞けばわかるかと思い聞きに来た。

「了解。ところでこの木って切っちゃう?」

加古がさっきまで昼寝をしていた木

図面を開いて確認すると畑にギリギリ入りそうだ。

「気に入ったのか?」

「うん。この島の中で一番大きいしねぇ。ちょうどいい感じなんだけど・・・。」

「じゃあ残すか。せっかく生えている木をあんまり切りすぎるのもどうかと思うし。妖精さんに発注しとくわ。」

「ありがと。じゃあ寝るわ~。」

またよじ登って行ってしまった。

 

 

 

 

「提督・・・なにするの?」

「ああ。これから何の木が生えているかの確認と、用地の大まかな線引きかな。」

あっという間に登って行ってしまった加古を横目に作業を始める。

生えている木を確認していくと様々なものがある

レモン、ビワ、イチジク、ミカン、スモモ、ポンカン・・・ect

実がなっていれば即判別がつくし、なってなくても葉っぱがついていれば何とかなる。

ない場合はさらにその枯葉を探す。

そして植物図鑑と照らし合わせていく。

山風はとちらりと見たが、図鑑の中を必死に探し、照らし合わせている。

ペースはだいぶ遅そうだが仕方ないだろう。

ゆっくりだができているようだし心配はなさそうだ。

頭の中でどんな感じに作っていくかを考えながら探索に戻る。

 

 

「つかれた・・・。」

「お疲れさん。」

加古が上で昼寝をしている木の下で一休み。

水筒から暖かいほうじ茶を入れて出してあげる。

「ありがと。」

山風はそれを受け取ると飲み始めた。

提督も自身のを注ぎそっと飲む。

木の上からは規則正しい寝息が聞こえてくる。

「平和だなぁ・・・。」

「うん・・・。」

ここにテラスとか作るのもいいかもしれない。

と言ってもここはあまり外から来た人は来れないのだが・・・。

「提督・・・聞きたいこと・・・あるんだけど。」

「ん?何だい?」

「こっち。」

 

 

 

 

 

 

 

 

案内され、たどり着いたのは鎮守府からはそこそこ離れたところにある小さい建物。

港があるが小さく、久しく使われていないことがよくわかる。

「おお!まだ残ってたんだ。」

「この建物って何?」

「これは旧鎮守府だよ。」

山風は頭の上に?マークを浮かべた。

「あたしたちがいるところは?」

「あそこは3代目の鎮守府。2代目は一部が内装として残っているよ。」

元は警備府か監視府として小規模の拠点の予定だったため、こじんまりとした建物だった。

資源が産出することが発覚したのはここにきて少ししてからだった。

しかし、産出したのは島の中心部付近

隅っこにある此処からは遠い場所だった。

人員が増えたことと不便さなどの理由からここの放棄が決まり、新しく今の場所に鎮守府が移動した。

 

 

 

 

「なつかしいな。最初は吹雪ちゃんと2人でここからスタートしたんだよ。」

鍵は閉まっておらず、あっさりとあいた。

中が埃っぽくないところを見ると、妖精さんが掃除をしているようだ。

入ってすぐの部屋がそこそこの広さだったので執務室にしていた。

奥に続く扉が一つあり、その先には小さい個人部屋が4部屋とトイレ、風呂がある。

 

 

現在執務室には備え付けの机が一つ残るのみで、壁には取り外せない黒板と小さい釘が4つ刺さった謎の板があるのみだった。

「吹雪お姉ちゃんと?」

「そう。最初は資源の生産関連に予算使わざる得なかったからね。スタートはここなんだ。」

「これはなに?」

山風が指をさしたのは黒板の横にある謎の板だった。

釘のうち真ん中二つは少しさびていて、あとの二つはくすんだ色をしている。

「ああそれは・・・・。まだあるかな。」

備え付けの机へと向かい引き出しを開ける。

中には木札が4つ入っていた。

その4つを持ち、かけていく。

「簡易出勤簿。仕事を始めたら裏返すの。」

川内、耳本、吹雪、龍"驤"

赤字の札を裏返すと黒字に代わる。

「へぇ~・・・。」

「てっきり取り壊されたもんだと思ってたからなぁ。忙しいこともあったから見に来なかったんだけど・・・。そっかまだ残ってたんだ。」

最初の一年目はものすごく濃密だった。

安定していないこともあり、吹雪と二人で残業の日々だった。

2年目に入ると川内が来て、少し負担は減った。

秋ごろには龍驤が来て、運営は安定したが少し手狭になってきた。

3年目に入る手前に加古が着任することがわかったため、せっかくだから場所も移して建てることになった。

 

そしてここは鎮守府としての役割を終えた。

 

「あの・・・。あたし・・・ここ使ってもいい?」

いずれ新しく農園関連の部署を作る。

山風にはそこの所属とする。

設計図で新しい管理棟を出していたが、もし使ってもらえるなら・・・。

「そんなに広くないけどいいのかい?」

「うん。あたし・・・ここがいい。」

「・・・うれしいこといってくれるじゃないの。よっしゃ!じゃあ農園の部署ができたら山風ここがお前の城だ。」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

フタマルマルマル

執務室に戻るとかたずけを始めている吹雪がいた。

「吹雪ちゃん。これ覚えてる?」

先ほど見つけた名札を見せる。

「うわぁ!これ最初の鎮守府で使ってたやつですね!」

「ああ。まだ残ってたんだよ。」

「司令官報告書やで~・・・。おや?ずいぶん懐かしいものやな!」

「提督!夜戦しよ!」

続々とちょうどよく当時のメンバーが集まってきた。

龍驤だけはまだ建物が残っていることに気が付いていたが、状態を確かめたことはなかったとのこと。

「これを見ると司令官がうちの字を書くのに苦労してたの思い出すわぁ。」

「そうそう!驤の文字が書けなくて不機嫌になって、かけたと思ったら今度はつぶれてさ!」

「結局龍驤さんが書いたんでしたね。」

「・・・・すまんって。」

 

 

 

その日執務室では懐かしい話で盛り上がったとのこと。




広島旅行の際、江田島に古鷹記念公園ってのがあると聞き
古鷹好きなら行くしかない!
何か記念碑とかあるかもしれない!
そう思って術科学校見学後にいきましたが・・・・。
マジの登山
しかも天気は雨
地図に道は表示されてるも明らかに道がない!


それでも何とか本当の山道までたどり着きましたが結局収穫無しで撤収しました・・・。
江田島八幡の古鷹神社(古鷹の艦内神社)にお参りして撤収しました。

古鷹さんや私何か怒らせることしたっけ・・・?


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駿河諸島鎮守府の取り調べ

「みっちゃん。ひまー。」

「じゃあお前が運転するか?」

「それはパスで。」

ガタゴトと護送車を俺は運転している。

隣の深雪はすることがなく、俺も構っていないため暇そうにスマホをいじっている。

向かっている先は大本営

・・・から少し行ったところにある無機質なコンクリ製の建物

 

 

 

「耳本さんに深雪ちゃんお疲れさま~。」

車をバックで入れ、建物の中に入ると文月が出迎えてくれた。

「文月~。大将とはどうなのさ?」

「うふふ。秘密~。」

いかにもほほえましそうな会話を目の前で繰り広げているが、実は今回は艤装を展開している。

「望月ちゃんは元気~?」

「おう!元気だぜ!」

「セクハラをどうにか文月から言ってもらえんかな?」

「それは~・・・。無理かな~。」

やんわりとほほ笑んでごまかされた。

文月に案内された部屋には大将がソファーに腰を掛けていた。

「文月お疲れさま。耳本君に深雪ちゃんも遠路はるばるご苦労だったね。」

「いえ・・・。ところで大将。今回の件、本当に同席されるのですか?」

「もちろんだとも。しっかりこの目で見たいのでな。」

今日行うと事はある者達の取り調べ。

深雪に事前に報告書をもっていってもらって、長い間検討されていたことが今回実現した。

 

 

取調室

 

 

外観同様ただその一言しか書かれていない無機質なプレートの鉄扉を開けるとそこには

 

「キサマラ・・・!」

「・・・・メンドイ。」

重巡リ級と戦艦ル級が後ろ手で縛られ座らされていた。

 

先日のシャングリラ殲滅作戦の残党だったこの二人は、うちの方へと進軍してきたため迎撃。

取り巻きの艦は撃沈したが、この2人は喋れるということが偵察で分かったため捕縛し、情報を引き出すことにした。

 

「とその前に深雪。あれお願いね。」

「はいよ!」

深雪は二つの黒いチョーカーを出すと二人の首つけた

「!ナニヲする!」

「リ級あなた声が・・・。」

「ル級様も。」

明石工房謹製の深海翻訳機

正確には翻訳ではなく聞き取りやすくしているだけなのだが、便宜上翻訳機とした。

ほっぽちゃんにも支給している

 

「さて聞き取りやすくなったところで質問だ。きm「北方海域」・・・え?」

「私たちの所属は北方海域。北方棲姫直属6番隊の隊長だったわ。」

「ル級様!!」

「こっちのリ級は私の部隊の副官。」

「え?ああ・・・。え?」

「私たちが本隊と別行動したのは西方へと逃れるため。増援要請も兼ねた任務だったわ。最もあなたたちに迎撃されて失敗したけどね。」

あっけらかんと情報をぺらぺらとしゃべった。

「ええ・・・。どうしよ。」

「・・・わしもどうリアクションしたらいいのやら・・・。」

思わず大将の顔を見たが大将自身もどうしたらいいのかわからず呆けていた。

「あら?ずいぶんあっさり信じているわね?」

「いやだって・・・。」

隣のリ級が大口を開けたまま青い顔で固まっているのだ。

それに気が付いたル級が顔の前でおーいと言いながら手のひらを振る。

「何で全部言っちゃうんですか!?」

気を取り戻したリ級が詰め寄る。

びっくりしたようにル級が飛び跳ねた。

「これじゃ私たち完全に用なしですし!万に一つ釈放されたって帰れないですし!どうするんですかこのタコ!」

「タコはひどくない!?」

「タコじゃなきゃなんなんです?!ブタですか?ナスですか?!」

「ちょ!怒るわよ!」

何やら漫才が始まりそうだったので咳払いをすると、静かになった。

「あなたのことは北方棲姫様より聞いたことがあるわ。」

「ほっぽちゃんから?」

「ええ。友人の電が時折駿河諸島の提督の話をしていたと言っていたわ。」

「もしかしてそれを知っていたので?」

「知っていたから話したんじゃない。外の会話から自分がいる場所がわかったからね。」

鎮守府の地下に一応牢屋が設けてある。

使ったことは数回だが、深海棲艦を入れたのは初めてだった。

 

「防音処理しとけばよかったかなぁ・・・。」

「とりあえず私が言えるのはこれくらいよ。直属ったって6番目で優先順位は低いし、なにより私たちは特例で配置されたようなものだからね。」

「!!!」ガッ!

「リ級痛いって!」

「なんでもっと情報持っているフリしないんですか!」

「いやよ!めんどくさいじゃない!艤装取り上げられてる時点でほとんど詰んでるし、下手にのらりくらりして拷問なんていやよ!」

「話しちゃったら私ら完全に実験体か始末されちゃうじゃないですか!やっぱタコじゃないですか!」

「タコタコタコタコうるさいわよ!上司を能無し扱いってどうなの!?」

「事実を言ったまでです!!」

完全に喧嘩を始めてしまった。

もうどうしたらいいのかわからない。

完全にこちらの予想に斜め上・・・斜め上?斜め下だろうか?

とにかくとんでもないところにワープしてしまった

取りあえず

「・・・深雪スペシャルかましたれ。」

「わかったぜ。」

 

 

 

ゴキャ!メキャ!!ベキベキベキ!!!

 

 

 

「「すいませんでした。」」 チーン

うなだれる二人を前にため息をつく

「大将。ある程度情報は聞けたので後は今後の話になってしまいますがよろしいでしょうか?」

「ああ。なんというか・・・・・・うむ。わしも頭を冷やしてくる・・・。」

文月行くよと言って頭を抱えながら退出していった。

「はぁ・・・。」

「あの・・・・。」

「どうした?」

リ級がおずおずと話しかけてきた。

「私たちはいったい・・・。」

「・・・・・・まぁ実験体かな。」

「!・・・そう・・・ですか。」

「陸上で畑でもしてもらいながら。」

「え?」

しょんぼりとした感じだったリ級が再度顔をあげた。

「うちっちとこで監察付きだが陸で暮らしてもらう。もちろんさっき言ったように畑仕事でもしてもらいながら。」

「それって・・・・。」

「戦わなくてもいいのかしら?」

「そうなるな。」

ル級は無表情だったが隣のリ級は少し安堵した顔をした。

「・・・ひょっとして。」

「私たち二人は正直言って戦闘は嫌いよ。」

「深海棲艦にもそう思うやつがいるとは・・・。」

深海棲艦のランク的にル級やリ級などは会話可能だが交渉等はできない上、非常に好戦的で嫌戦の者はいないとされていた。

「ここからは私の推論よ。」

 

ル級曰く

深海棲艦は憎悪の象徴

艦娘は希望の象徴

だが、深海棲艦の中にも希望があるし、艦娘の中にも憎悪がある。

そして、その比率が個々によって異なるということだ。

ル級やリ級、ほっぽちゃんはその比率がトントンに近いらしい。

 

「正直言って私はどっか誰も来ないようなところで小人数で気ままに暮らしたいと思ってるわ。北方棲姫様も近しい考えだったの。だから特別に直属部隊にいたわ。」

「西方の勢力も似たような考えを持つ嫌戦派です。北方棲姫様曰く西方の勢力は当分動くことはないとのことで私たちを逃がすため、西方への進撃を命じたんです。」

 

大将を帰してしまったのは失敗かもしれない(余計な仕事が増えた。)

結局調書をまとめて提出、ル級とリ級を再度護送車に乗せて鎮守府へと戻ったのは夜がだいぶ更けたころだった。

 

 

「みっちゃん。」

「深雪か。」

執務室は暗く、半月の明かりで相手の顔が若干見えるくらいだ。

「まだここにいたんだ。前いいか?」

うなずくと向かいのソファーに腰を掛けた。

「昼間のことまだ気にしているのか?」

「・・・まぁ。」

「西方作戦での教官のことは仕方なかった。」

「・・・」

「何があったのかは知らないけどタカ派が絡んでるってのはわかった。」

うつむいて何も言わずにいると目の前に少し赤みがかった深雪の顔が入ってきた。

「ほら。しっかりする!明日に響くよ?」

ほほをぺとぺちたたかれると不思議とおかしくて笑いが出た。

「よしよし。笑った笑った!じゃあ飲もうか。」

「なんで!?」

ついさっきまでの空気が逃げてしまった

しかも目の前に取り出している酒はウィスキー

ウィスキーは蒸留酒のため腐りにくいことから遠洋航海の際には重宝される

そしてそれを好む艦娘も多いという

「俺それだけは無理ですから!それだけは勘弁してください!」

「ええー!・・・教艦の言うことは?」

「ぜっt・・・明日に差し支えるってさっき言ったじゃないですか!」

「じゃあハイボールで。」

「それもウィスキーじゃないですか!」

じりじりと壁際に追い詰められていく

せめてもの救いは隠し扉があること

隠し扉を知っているものが増えてしまうが背に腹は代えられぬ

「逃げるが勝ちだおらぁ!」

 

「え?!誰?みっちゃん?」

「は?」

隠し扉をくぐり部屋に入ると誰かベットに寝ていた

「おま・・・。人のベットで・・・。」

「・・・てへぺろ?」

幸いこれからしようとしていたところらしく見ずには済んだ。

「へ~こんなことろに隠し扉なんてあったんだ。」

「!望月後は任せた!」

「え?みっちゃん?どうしたの急に?」

慌てて部屋を出て、近くにあった花瓶をドアノブにたたきつける。

 

「なんだったんだろ?」

「あれ?もっちーじゃん。みっちゃんは?」

隠し扉を潜り抜けて提督を探すが見当たらない

「今そこから・・・ガチャン・・・出てったけど。」

「・・・・壊されちゃったな。なぁもっちー?」ガチャガチャ

望月がさした扉はドアノブが回らずあかなくなっていた。

「ん~。どうした?」

「せっかくだから飲もうか。」

「お断りします(゜ω゜)」

「まぁまぁそういわず」

「あたし飲めないからさ~。」

「まぁまぁそういわず」

「・・・ちょっと飲んだ?」

「うん。」

「・・・」

「・・・」

そっとそばの壁をたたいてみるが隠し扉なんて都合のよいものはない

深雪の背にはこの部屋唯一の脱出口

窓に近いのは深雪

つまり

 

 

 

 

「・・・・覚えてろ耳本ぉ!!!」




イベントは新規艦は松風と潜水艦みたいですね
潜水艦は助かるんですけどドロップぽいのが難点ですかね
山風みたいに攻略中に来ればいいんですけど・・・
水無月と磯風、卯月もドロップしないかなぁ・・・


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駿河諸島鎮守府の決起 その1

いつもの書類を書きながら片手で頭を支える

「大丈夫ですか?司令官?」ケホッ

「いやー。ちょっと眠くてね?吹雪ちゃんこそ咳してるみたいだけど大丈夫?」

「大丈夫ですよ。お昼に食べた魚の骨、あれがどうものどに引っかかっているっぽくて・・・。」

苦笑して返した

「加古のとこで取ってもらったら?」

「大丈夫ですよ。それに今は作戦も近いですから今抜けて司令官だけに負担をかけるわけにもいきません!」

「そう?無理しないでね。」

お互いに書類に向き合う

いつまでたっても減りそうにない書類を前に頭がくらくらする。

比喩表現ではなく本当にしてきた

(・・・やっぱまずいかな?)

眠いだなんて全くのウソ

先ほどからどうも距離感がつかめず書類を取り間違えたりしているのだ。

頭がぼーっとする

どうやらそこそこ熱があるようだ。

 

(休めるいい口実なんだがそうもいかないよなぁ・・・)

 

普段休みたーい!なんて思ってたりするがいざこうなると休みたくないという意地が芽生える。

ちらりと隣の吹雪を見るとまた少しせき込んでいる。

おそらく先ほどの魚の件は嘘だろう

顔もいつもと違い赤く熱っぽそうだし間違いない。

幸い俺は仕事がギリギリ出来ているし、帰しても問題ないだろう。

「・・・吹雪ちゃん。」

「はい。なんでしょうか?」

「風邪ひいているでしょ?」

「・・・・司令官が風邪をひいているのでは?」

「いやいや。俺は元気よ?どう見たって吹雪ちゃんの顔赤いよ?」

「司令官こそ。」

「だーめ。とにかく今日は休みなさい。」

「いーえ。司令官こそ今日はお休みになってください。」

互いに一歩も譲らず作業を進めていく

が、ミスがひどくなり手前の資料をとったつもりが奥の資料をとってたり、字がゆがんだりし始めた。

吹雪は間違いこそしていないものの、作業スピードが目に見えて落ちていた。

「しかたないか・・・。今日は残業なしで定時にしよう。」

「・・・・そうですね。それまでにはこれらを終わらせないと。」

すでに窓口は閉めてあるため、追加の書類は来ない。

食欲もないし終わったらこのまま寝よう

そう思い作業を進める

 

 

10分くらいたっただろうかいや30分だろうか

時計を見ると1時間経っている。

時間感覚までマヒしてきたようだ

ふと隣から聞こえてくるはずのペンの音かキーボードをたたく音が聞こえない

見てみれば吹雪が机に突っ伏していた

「吹雪ちゃん?!」

思わず椅子から立ち上がり、抱き起こして額に手を当てる。

しかし、自身も熱が多少あり判断できないことに気付き、とりあえずソファーに寝かせようと抱き上げた。

フラフラとしながらソファーに寝かせ、隠し扉から自室の毛布をとってくる。

 

「・・・!」

平衡感覚がだんだんとつかめなくなり、吹雪に布団を掛けたところでぺたんとへたり込んでしまった。

立ち上がろうにも手に力が入らず、ズルズルと床に倒れこむと意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると木の天井に大きく丸いしみが見えた。

この間の雨漏りの跡ということは自分の部屋らしい。

辺りを見回すと窓はすでに明るい事と点滴が見えた。

点滴はご丁寧に利き腕の右腕に刺さっていた。

起き上がると部屋にはだれもおらず、静まり返っていた。

「!やば!」

慌ててベットから降り、点滴のスタンドを引いて隠し扉へと向かう

昨日サインしていないものの中に明日に本土への定期回送する輸送船の書類があったことを思い出した。

近々の作戦で重要なものの一つだ。

「・・・ですよね。」ガチャガチャ

当然カギはかかっており、ドアノブが回る気配はない

仕方なく通常の入口へと向かう

そっと開けてみると幸い誰もいなかった。

室内を見渡し、時計を見るとマルロクヒトサン

おおよそ12時間近く寝ていたことがわかる

机の引き出しからスペアキーを取り出し、執務室へ入る。

部屋の書類はそのままになっていた。

急いで決済すればまだ間に合う

そう思い踏み出そうとしたとき、腕をつかまれた。

「「何をしているの/んだい?提督?」」

振り返ればうちの白露型2人

山風と時雨が穏やかな笑みをしていた

 

 

 

 

「ほんとにもう!びっくりしたんだからね!!」

隣の島の旅館 提督の間

川内がむっとした顔で怒っていた

「いつもの夜戦(警告)をしに行ったら二人して高熱、しかも提督に至っては何も掛けけずに倒れているんだもん!!」

「めんもくない・・・。」

「すみません・・・。」

吹雪はだいぶ良くなったのか椅子に座って、提督は布団から起きた状態で説教を受けていた

「提督が・・・死んじゃうかと思った・・・。」

山風は先ほどから抱き着いたままむくれていた。

「すまんって。そんなに寝ていたか?」

「まさか丸一日寝たままとは思わなかったからね。」

時雨から衝撃的なことを告げられた。

はいおかゆと言って渡されたが思考停止してそれどころじゃなかった。

「・・・・え?」

「ずっとうなされたまま・・・起きなかったんだよ?」

「じゃあ輸送船団は?!」

「提督?」

底冷えするような声は先ほどおかゆを渡してくれた時雨でもなく、ポコポコと目の前で怒っている川内でもなく、先ほどから抱き着いている山風から発せられたものと気づいた。

「どうして倒れたのかわかる?」

「あー・・・えっと。」

 

 

半泣きの状態山風から当たり散らすような説教中

 

 

「山風もその辺にしておこう?」

おとなしい子ほど爆発のエネルギーがすごいというがよもやここまでとは

「ってかその・・・古鷹さんとかは?」

「それも含めて説明するよ。」

 

 

 

 

 

俺たちが倒れた後

鎮守府の総指揮権は吹雪も倒れてしまったため第二順位の川内がとることになった

取りあえず遠征隊の決済ができないため鎮守府は臨時停止。

そして龍驤を全権とし、護衛に古鷹、深雪、望月を大本営に派遣

現在3~5日程度の鎮守府全面休業と負担軽減の確約の協議中とのこと

大本営では緊急会議が開かれることとなり、間もなく始まる。

 

「ちなみに今は臨時停止を全鎮守府に通達しているからうちにはだれも来ないよ。」

「そっか。でも早めに再開をしなきゃ・・・」

「提督。そういうのは治ってからだよ?」

困ったように眉を下げられてしまい、何も言えなくなってしまった。

「吹雪お姉ちゃん。行こう?」

「え・・・でも。」

「調子がちょっといいだけでまだ寝てなきゃ・・・。」

吹雪は迷っていたが先ほどの剣幕が頭をよぎったのだろう

ひと声かけると退出していった。

「何度も言うのはあれだと思うから言わないけどさ。こういうのはこれっきりにしてよ。」

「・・・・。」

「会議の内容次第なら僕らは行動を起こすからね。」

「え?」

「3度も4度も経験するだなんて僕はごめんだからね。」

そう言い放って部屋を後にした。

 

「川内!いったい何を指示したんだ?!」

「・・・もし全面停止、負担軽減が受け入れられなかった場合は今後一切の資源供給のストップ。それとともに駿河諸島付近への接近を禁止。場合によっては同士討ちも許可しているよ。」

「それって!」

「大本営と一戦交える覚悟だよ。」




メンテナンス始まりましたね!
運営のアイコンも松風の画像の一部がちらちらと・・・
燃料、弾薬7万5千、鉄19万、ボーキ6万5千、バケツ650!
・・・レベリングと並行してたから仕方ないね。
潜水艦がドロップだからしおいちゃんもドロップするはず!
最後のしばふ艦をなんとしてでもゲットしたい!!
(あわよくば磯風や卯月ちゃんやプリンツもほしかったり・・・)


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駿河諸島鎮守府の決起 その2

「駿河諸島鎮守府の全面停止ぃ?いったいどんなことで呼び出されたかと思いきやそんな下らんことか。」

「全くですな。軍人が熱ごときで休むとはばかばかしいにもほどがある。」

「須下はどうした?あいつはまだ来とらんのか?」

大本営第2会議室

コの字型に組まれた白い席には幾人もの幹部たちが勢ぞろいしている。

少し離れたところに龍驤、古鷹が並んで座り後ろには深雪と望月が立って待機していた。

みな一様に雑談はしていたが、その中の一席だけあいていた。

「須下中将は現在北方海域調査のために来れないとのことです。」

「なんだ。じゃあしょうがないな。結論から言えば却下。以上だな。」

でっぷりと肥えたブタのような男とその隣に座るひょろ長い男

階級肩章はそれぞれ大将と中将だ。

 

「いやちょっと待ってくれ。さすがにそれはまずかろう。」

桐月大将が待ったをかけた

「その通りだ。奴の勤務実態表から見ても最近までかなりの無茶を我々がさせてしまっている。作戦の規模を中規模から比較的小規模にランクダウンすれば本土の備蓄を使うことなく問題なく遂行できるだろう。」

砂安中将が具体的な提案をする。

「それはどうでしょうな。自己管理で無理なら無理と言えばいいものをできないようなやつにかまっているひまなどないのだがね?」

正論ではあるが、今まで増員の要望を却下し続けてきた大本営の責任は棚上げした発言だ。

「それに簡単にランクダウンと言ってはくれますがね。たかが中佐一人と一隻のために変更されるようではおかしいではないか?どうなんです?深打代理?」

「確かに困りますけど・・・」

深打は困った顔をしていた。

本来なら自身の上司が来るはずだったが急なことであったためこれない。

しかし作戦部の者がいないわけにはいかないということで階級が一番高いものが代理として出席していた。

 

 

 

一方離れた席で耳をふさぎたくなるような提督への罵詈雑言に古鷹は無表情だった

だが小刻みに震えながら、落ち着くために水を飲んだグラスを握りしめていた。

それを龍驤が目で牽制をしていた

(まだあかん。もう少し待て。)

(・・・そろそろ限界なんですけど。)

(ま~落ち着きなって。どっかでああいうやつはぼろ出すからさぁ。)

(その時にスペシャルフルコースをお見舞いしてやろうぜ。)

 

 

 

 

「そうだろう?いい加減あんな自己管理もできないようなやつなぞ予備役なり最前線なりに送って。もっと優秀な人物を置くべきじゃないか?」

「全くです。作戦課程の落ちこぼれなやつよりもっと優秀なやつはいるでしょう。」

「そもそもなぜあんな・・・誰だったか?まぁいい中佐ごときにあの島を全部くれてやったのだ。あそこは国が直轄してしかるべきだろう。」

「いっそ中佐には永遠のお休みでも差し上げますかな?作戦の足を引っ張った無能ということで処刑してしまった方が手っ取り早い。」

そうだそうだという声が左側に座っている声が上がる。

「それは妙案だ。半官半民のめんどくさい統治機構ではなく国有地にしてしまえばこんなことも起こらなくて済むしな。」

どうやら左側に座っているのがタカ派

右側に座っているのがハト派らしい

正面にいるのは来ているカーキ色の軍服からして陸軍の大将と憲兵隊長の2名

 

陸軍の大将はおろおろするばかりであてになりそうにない

憲兵隊長と桐月大将、砂安中将が中心となって反論しているが旗色はよくない

以前世論はハト派寄りと言ったが幹部もハト派寄りとは限らない

タカ派の方が若干2~3人多いのだ

このまま決議を行った場合、否決は確実だろう。

困ったことに提督自身にも非があるため、ハト派ももろ手を挙げて賛成はしてくれないのだ。

それをいいことにタカ派の提督に対する罵詈雑言はどんどんと勢いを増した。

古鷹のコップを握る力は強くなり、龍驤の眉間のしわはより深く、後ろの二人は目をつぶってこの中で冷静さを思わせていたが殺気が飛び始めていた。

 

「ついでだから深海側の間諜にして処刑してやれ!」

 

「!」バリン

ついにコップが割れた。

誰の言葉かわからないがタカ派のヤジで限界を迎えた

一瞬静まり返ったがすぐにまた騒がしい空間へと逆戻り。

どうやら否決の意見が通りそうだ。

「幹部会の意見としては否決ということかいな?」

見かねたのか限界だったのか・・・

どすの利いた声で龍驤が会議の結論を急かした。

「否決もくそもないだろう。こんな問題はなから存在しなかった。後任の指令の準備をしておくから貴様らはとっとと帰れ。永遠の休暇をやると中佐に伝えておけ。」

手のひらをひらひらとし、追っ払う仕草をした

「そうかい。じゃあ残念やけど・・・うちらはこれから全鎮守府及び大本営への資源の供給はやめさせてもらうわ。うちらの島の近海の航行も禁止や。許可もなしに近寄ったら・・・わかるな?」

言い放った瞬間水を打ったような静けさとなった。

「はぁ!?いったいどんな権限が貴様ごときにあるというのだ!」

「うちはこの会議の全権だし、うちの司令官代理が決めたことや。」

「ふん!艦娘ごとき提督の代理が務まるか!貴様らはただの駒なんだから意思など聞く必要もないわ!」

激昂し、荒々しく立ち上がると龍驤に近づき殴り飛ばした。

「いったいなぁ~。でも・・・先に殴ったな?」

「何を・・・」ボグ

「暴徒の鎮圧をいたします。龍驤さん許可を」

「良いで古鷹。思いっきりやったれ。」

龍驤が不敵に笑いながら親指を下に向ける

うつぶせに固定し、腕を背中に回すと肩の方へ思いっきり上へと上げ、反撃ができないようにする。

肩が外れそうな痛みに地面をたたきながら喚く

「何をするのかね!」バッ

「おっと!」

ブタの隣にいたひょろ長がブタを解放させようと腰につけている銃を抜こうとしたが、なぜか抜けなかった。

「君も暴徒か~。しょうがないねぇ。取り押さえさせてもらうよっと。」

「深雪様の鎮圧術をくらえ!」

抜けなかったのは望月が銃床の部分を抑えていたのだ。

深雪と望月がひょろ長の腕を片方ずつつかむと床へたたきつけ取り押さえた。

「憲兵隊長!こんな時に何をぼさっとしとるか!」

ブタが痛みのあまり悲鳴を上げながら喚きたてる。

「ああ!失礼。」

目の前の突発的な出来事にあっけにとられていた憲兵隊長が立ち上がり、実行犯の下へと近づき、手錠を取り出すと掛けた。

 

 

 

 

ブタとヒョロに

 

「!なぜ私にかける!!」

古鷹からようやく解放された腕についている手錠に驚きさらに喚く。

「大本営新軍規第5条 艦娘は軍人とほぼ同等の権利を有する。お忘れですか?」

「そんなのわしには関係ない!大将だぞ!"ほぼ"のところに性のところは明記されていても制裁についてなんて明記されとらんだろう!」

「龍驤さんは提督の代理人。解釈上は提督と同じです。そもそも先に挑発したのはあなた、手を出したのもあなた。艦娘は暴徒鎮圧のためのやむ負えない武力行使。杉蓋大将、骨田中将、あなた方を暴行の現行犯で逮捕させていただきます。」

「くそがぁ!」

「ちくしょうどもめ!」

 

 

 

 

「うんわかった。提督に伝えとくよ。」

 

駿河諸島鎮守府執務室

 

入口には臨時休業の看板がかかっており、いつもここにいるはずの主は今は隣の島にいる。

川内は受話器を置くと椅子に深く腰を掛ける。

椅子の主の残り香がわずかにすると笑みがこぼれた。

ファイルから外出許可願と外泊許可願を3枚づつ取り出すと、サインをして決済済みに放り込む。

外からチャイムの音が鳴り、お昼を告げる

 

「今日は時雨に譲ってあげますか。」

椅子を窓に向け、隣の島を見やった。

そして椅子から立ち上がり、日めくりカレンダーの方を2枚つかみ破り捨て、日付を22から24に変えて退出した。




イベントのE-1でいまだに掘り作業中の作者です。
一発目にいきなり鹿島さんお迎えできて大興奮でしたがその後50連敗ぐらいして心が折れかけました。(秋イベの時もE-1で浦波引いた後同じ現象に陥りましたw)
幸いユーちゃん拾えて少し癒されました。
その後谷風(何故か2回も引く)、浦風(もう持ってる)、浜風は来るのに磯風が来ない・・・。
現在も丙堀敢行中です・・・。(乙か甲攻略予定)

というかE-3の分解彩雲がボスマスに行けないか輸送失敗すると消えるのがバグなのか仕様なのかわからない事態に震えていたり・・・。
運営の発表とネットの情報待ちですね・・・。


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駿河諸島鎮守府の決起 その3

「あー・・・暇だな。」

解熱剤が効いているため頭痛はしない。

時計をちらりと見るとヒトヒトゴーマル

もうすぐ昼食だ。

食べに出てもいいが別に食欲があるわけでもない。

本は持ってきていないし、寝るのは朝のあの時から寝ていたため眠気はない。

仕方なくスマホを少しいじりながら考えていると、遠くでチャイムが鳴った。

「こんな時に仕事したら今度こそやばいしなぁ。」

隣の島の鎮守府を見てつぶやく

でも島の開発計画くらいなら・・・

引き出しから紙を出し、思いついている限りのことを書き留め始めた。

 

宿泊棟隣接牧場 観光と糧食調達

温泉街の再整備と新店の設置 観光と退役艦娘の雇用創出

農園の規模 宿泊棟のある島に果樹園を一部設置 観光と糧食調達

 

軽く書きだしていると、机の上に置いたスマホが鳴った。

川内からのメールで内容は休業案が通ったとのこと。

取りあえずほっと胸をなでおろした。

文面の最初に残念ながらとついていたがそれは見なかったことにした。

負担軽減策については、後日必ず提案するとのことだそうだ。

深雪、望月は大本営所属の時の同僚と話したいとのことで一泊

龍驤も同期に会いに行くということで一泊

古鷹は話すこと話したから今度は俺とお話ししたいと言って今日の晩に戻ってくると書かれていた。

 

膝が震えてきた

 

「あーとーはっと・・・・・・!」

「提督?」

「おひゃぁぁぁあ!」

後ろから急に話しかけられ、スマホを落としそうになる。

落とさず済んだが、声の主からは怪しまれた。

「どうしたの?・・・あ。また仕事しようとしてたの?」

「ちちちちがうよー。そんなことするわけないじゃないの時雨君・・・多分。」

「どれどれ・・・。ねぇ提督。僕ちょっと疑問があるんだけどさ。」

紙を見てやっぱりといった顔をしたが、怒ることはしなかった。

「ん?なに?」

「これって鎮守府のやることかな?」

「・・・・・・気にしなくていいんじゃない?」

そう思ったこともあったが、正直言って開発するのが楽しかったから半分ノリでやってた。

ぶっちゃけそのせいで仕事がわずかばかり(そこそこ)増えてたりするのだが

「まぁそれは置いておいて、お昼作ったから持ってきたよ。」

部屋のこたつにはうどんが2つ置かれていた。

 

 

 

 

「ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。」

器を洗おうと立とうとしたが時雨に休んでてと言われ、再び暇な時間となる。

ちなみに梅おろしうどんで胃にやさしく作ってくれてあった。

ちらりとスマホを見て、先ほどの件をどう時雨に伝えようか迷う。

会議の結果とかは正直どうでもいいのだ。

それより厄介というかなんというか・・・。

「提督?」

「ん?」

いつの間にか戻ってきた時雨に顔を覗き込まれていた。

「さっきから表情がその・・・二転三転しているんだけど・・・。」

「ああ。いやその・・・。」

「ひょっとして会議決裂したの?」

「ちがうちがう!まって!休業案通ったから!」

それじゃあ艤装をとってこなきゃと立ち上がろうとしてたので慌てて引き留める。

 

 

 

 

「そっか。よかったというべきなのか残念と思うべきなのかわからないけど・・・。」

「間違いなく良かったというべきです。」

こんな時に内戦なんておっぱじめようものなら日本が滅びかねない。

「じゃあ提督は何でそんなに浮かばれない顔をしているんだい?」

「・・・・・・時雨はさ。」

「うん?」

「前の提督のことはどう思っている?」

「・・・・・・それは今聞きたい?」

表情がこわばった

思い出したくもない記憶だろう。

頷くとしばらく考えたのち口を開いた

「もうどうでもいい存在だよ。思い出しはするけどね。」

珍しく目をそらし、下を向いた。

 

 

時雨の前の提督はすでに処刑されこの世にはいない

 

 

罪状は艦娘の売買

他にも運営状況は大破での進軍、轟沈が後を絶たない状態であった。

だが不審な点がいくつかある。

こういった鎮守府はたいてい艦娘への給料の支払いが法外なレベルで低かったり、性奴隷みたいな尊厳を踏みにじったことしているものだがここはそれをしていなかった。

しかも人身売買であったかくなっているはずの懐は空っぽもいいところだった。

借金やギャンブルなどを疑ったがそういった形跡はなし

 

捜査が強制的に打ち切られたなど、不審な点が多かった

 

結果軍法裁判の一審で銃殺刑となった

しかし、上告もせず受け入れた。

 

なぜこんなことをいまさら掘り返すのかというと須下中将のパイプを探っていた川内からの報告書でこの事件の根底がひっくり返るような事実が出てきたのだ。

 

「そうか。・・・今更かもしれないが前の提督の再審があるかもしれない。」

「・・・・そう。」

「杉蓋と骨田」

「・・・!。その人たちがどうかしたの?」

「骨田か。」

二人の名前を言った際、骨田の時明らかに顔が変わった。

「俺のことぼろくそに言った後龍驤に手を出して逮捕。後日軍法裁判になるとさ。」

「へぇ・・・。そうなんだ。」

「・・・その二人から提督が脅されていた証拠が見つかった。」

タカ派の調査を行っていた際、二人の手記から一人の提督を脅し艦娘の売買や戦果の横取りを行っていたことが発覚した。

 

脅しの種は一時期大本営に出向したケッコンした艦娘の身柄

出向から戻った後は艦娘の売買の件で脅されていた。

 

また、今までわからなかった艦娘の売買代金も二人へと流れており、しまいには提督の鎮守府の予算までもを横領

その穴埋めをするために提督は自身の給料を全額あてて何とか回していた。

 

「おそらく名誉回復がなされるだろう。」

「・・・・。知ってたんだ。」

「え?」

「全部知ってたんだ。知ってて・・・助けられなかった。」

 

前の提督が逮捕される3日前

いつものごとく大破進撃を命じられある子が沈んだ

その子は提督が赴任したての頃に着任した子で、提督とケッコンもしていた。

その子は僕たちと違って裏で提督への不満を言うことがなかった。

ケッコンして寵愛されているから僕たちと違うんだ

そう思っていたがあっけなく進撃し沈んだ。

報告時も提督は表情一つ変えずそうかと、一言だけでおしまいだった

あまりのそっけなさに怒りが湧いた僕はその晩、提督へ抗議の意味合いも込めて指令室へと行ったんだ。

すると扉の向こうからすすり泣きが聞こえた。

聞き耳を立てると沈んだその子の名前を呼びながら泣いていたのだ。

さらには、その前に沈んでいった子たちの名前を一人ずつ言ってひたすら謝っていた。

俺が骨田に逆らえないばっかりに

むせび泣きながらそうこぼしていた。

 

「・・・大破進撃は戦果の獲得のため無理やり出されていたそうだ。」

「うん。一回その子に聞いてみたけど昔はそんなことはなかったって言ってた。」

そばに来ると時雨は顔を提督の胸に押し付けた

「艦の時も・・・艦娘になってからも・・・僕は何一つ守れなかった。」

「・・・」

「あの時・・・・・ああすればよかったんじゃないかって・・・思うことばかり。」

「・・・・・・」

「提督と吹雪が倒れた時も、もう少し顔をよく見ていればよかった。咳に注意しておけばよかった。終業時に執務室に顔を出せばよかったって・・・。」

徐々に胸が熱くなる。

「また僕は見ているだけだった・・・。」

時雨は震えてシャツを握りしめる。

「足らればの話だ。俺も吹雪も体調を顧みなかったことは悪かったな・・・。」

そっと背中をなでてやると呼吸が落ち着き始めた。

「実は前の提督の再審請求について考えていてな。お前に言おうかどうしようか迷っていてな。」

「・・・ひょっとして。」

顔をあげると悲壮な顔をしていたので慌てて続ける。

「お前のせいじゃない。俺がお前に切り出せなかったのが悪いんだ。」

スマホを操作し、パソコンへのリモートアクセスを行う。

「これが再審請求書だ。後日俺が治ったら書面にしたためる。」

軍法会議の再審請求は被告が死亡している場合は関係者のみに限られる。

たとえ実行犯であったとしても上司からの圧力、脅迫で行っていた場合は情状酌量の余地がある。

本来の判決は減給と2~3階級の降格処分が妥当だろう。

銃殺刑を実行してしまっているため、元の階級への復級と遺族への補償が行われるだろう。

 

「それとな・・・。こんなものも見つかったんだ。」

時雨を離し、入口へと向かった。

扉を開けると、分厚い封筒が一つ置いてあった。

中には日記帳が一冊と小さな封筒が出てきた。

「これは?」

「提督の手記と・・・書置きだな。」

手記の中身はなぜ脅されることになったのかという経緯と後悔の日々が綴られたもの

そして送金口座などの証拠品

書置きにはこれを見つけた人へあてて書かれていた。

 

 

 

 

この手記はなんとしてでも骨田達に見つかるわけにはいかない

どうか見つけた人はこれを世に公開し奴らを地獄へと叩き落してほしい

そして、もし余力があったら時雨に最後までひどい提督を装えなくて済まないと伝えてほしい。

あの子には僚艦や随伴艦を見捨てるように指示をしたことがあった。

その上先ほどおそらくだが、毎夜の懺悔を見られてしまった。

時雨は優しい子だ。

このままだと怒りの矛先をどこに向けていいかわからなくなってしまうだろう。

 

我妻も含めてこのことを知った者を骨田は遅かれ早かれ絶対始末するだろう。

それだったら最後にせめて・・・。せめて愛する妻と沈めさせられた子たちの敵をとりたい。

どうか力を貸してください。

 

 

 

「・・・ばれてたんだ。」

「案外ちゃんと見ているってことだ。」

苦笑して涙を拭いた。

「さて!なかなか言えなかったつっかえもとれたし。風呂入ってくるよ。」

丸一日以上体を洗っていないし、ついでだから着替えも済ませてしまおう。

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

こたつから出て脱衣所に行く

タオルがあるのを確認し、服を脱ぐ。

「・・・なんかむなしくなるな。」

自身の腹をみてまだ20後半に行ってないのに寸胴腹が気になってきた。

出ていないが引っ込んでもいない

ちょっとつまめる当たり、昔より太ってきているのだろう。

 

 

 

「はぁ~・・・・」

湯船につかりながら首を回すとゴキゴキといかにも凝ってますという音がした。

 

「・・・・こないよね?」 ザバァ

以前ここの風呂を使ったときしれっと吹雪が一緒に入ってきたのを思い出した。

足早に一旦上がると入口の鍵を閉めた。

・・・ないと言い切れないのが悲しいかな。

 

「これで安心っと。」

「なにがだい?」

「誰も入って・・・来てる?」

後ろを向くと今回はちゃんとタオルを巻いた時雨さん

入口を見るが中から明らかに閉まっている。

ではこの時雨さんはどこから入ってきたのかな?

「露天風呂の方も個別出入り口があるんだね。」

ファッキン!

妖精さんからもっとよく話を聞いておけばよかった

 

「声に出てた?」

「なんとなくそう思っているのかなぁって思って。」

「そうかそうか。じゃあ時雨君はこちらからお帰り。」

「どうしてだい?吹雪とも入ったんでしょ?」

「・・・あれは不可抗力というか俺の注意力散漫だったのが原因です。」

「じゃあ一緒に入ってくれたら古鷹の説教の弁明をしてあげるけどどうだい?」

 

古鷹の説教が短くなる?

 

時雨からの口添えがあれば確実に短くなる

しかも条件は風呂に入るだけ

 

「って危ない危ない。ほら帰った帰った。」

こんな取引乗るわけがないだろ

むすっとした顔の時雨を追い出し、再度湯船につかる。

休まるような休まらないような・・・。




ほんとは1月24日を目指して書いていたんですけどね・・・遅筆ですいません(時雨さんの戦没日)

E-2乙で攻略してから資源回復を行っている作者です
E-1丙で精神をごっそりと削られながらも無事しおい、ユー、ニム、磯風、瑞穂、水無月、浜風、谷風、鹿島の持っていないメンツ全員を掘り終えました・・・。
最後まで出なかったのが磯風で・・・
磯風掘ってたら2人目のしおいちゃんと鹿島さんがでたり、半ばあきらめていたニムが先に出てくるし、谷風は5人浜風は6人浦風4人、嫁は3人、瑞穂は5人・・・・ect
燃料が1万吹っ飛び、68の五十鈴が79まで上がるという・・・ほかのみんなも10前後レベルが上がりました(※丙です)
E-2で堀の予定でしたが・・・
ちょっと気力が折れているので先に乙で割ってE-3攻略後のしました・・・。
おのれヲ級改め・・・!


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駿河諸島鎮守府のお見舞い その1

「お邪魔しまーす!」

「はいどうぞ。」

今日は見舞いと取材を兼ねて青葉が訪ねてきた。

「あ。こちらお見舞いの品です。」

「ごめんね。気を使わせちゃって。」

「いえいえ。いつもお世話になっていますから!それで調子の方はいかがでしょうか?」

こたつに入るようすすめ、お茶を入れに台所に行く。

どうやらお見舞い品はプリンのようなので冷蔵庫にしまい、お茶とミカンかごを持って戻る。

「俺も吹雪もだいぶ良くなったんだけどね・・・。あと4日ここで安静だって。」

「そうですか。・・・ちなみに最後にお休みになったのって・・・?」

「正月の2、3日かな。」

「・・・ですよね。」

それはそうもなりますと言いながらと呆れた顔をされた。

 

「とりあえずクーデターが起きなかっただけましと思うことにしたよ・・・。」

「でも川内さんちゃんと根回してましたから成功はしたと思いますよ。」

「え?そこまでしてたの?」

「私の場合指示があったら国内に向けて大本営(タカ派)の伏せている失態や悪評をメディアに流すように指示されてましたよ?」

後はと続けて、電やほっぽちゃんがいる大湊や長門のいるリンガ、初霜の房総、ほかにも俺の同期がいるところなど様々な鎮守府や警備府のリストを見せられた。

「これって・・・。」

「クーデター参加予定だった一覧表です。」

これが起きたらひとたまりもなかっただろう。

「・・・・・背筋が寒くなってきた。」

「司令官さんも気を付けてくださいね?」

「ワカリマシタ」

 

 

 

 

 

「うちの戦力?」

「はい!誰が強いんですか?」

改めて取材へと移った。

「え~。うちの子っち戦闘関係は結構癖あるからなぁ・・・。」

「そうなんですか?」

「うん。比べるのは難しいなぁ。」

「とりあえず吹雪さんは殿堂入りですよね?」

「よく知ってるね?演習やったことあった?」

そういった瞬間目のハイライトが消えうなずいた

「艦載機は7割叩き落されて、戦艦の装甲を貫き大破させ、その砲撃を全部交わして、夜戦で私がボコられました。」

単艦だったのに・・・。

ほんとに駆逐艦の名のとおりでした。

お茶を飲もうと湯呑を持つが、いまだにトラウマなのか手が震えている。

 

「そうさねぇ・・・。単純にタイマン勝負だと・・・。」

 

川内≧古鷹=加古>深雪≧望月=榛名(艤装が動けば)>時雨>龍驤>>山風

※吹雪は除外

 

「こんな感じ?」

「山風さんはまだ加入したばかりだから低いのはわかりますけど、龍驤さんは低すぎないですか?」

「いやー・・・。このメンツで上にいるのは相当厳しいよ?」

回避されまくって龍驤の攻撃が当たらず致命傷を与えられない。

しかも夜戦ができないとくるとこの順位になってしまう。

「でも一撃あたった場合は装甲が一番硬い榛名でも耐えられないしね。」

「はー・・・。6隻編成で演習挑まれたら絶対勝てないじゃないですか・・・。」

がっくりと肩を落とした

 

 

 

 

 

「じゃあ次は怖さ!これについてお願いします。」

「それはマジで怒らせたときので?」

「はい!古鷹さんと時雨さんが一位で同着ですよね?」

「うんにゃ。昨日しこたま怒られたけど違う。」

「え?じゃあ吹雪さんですか?」

「それも違う」

かぶりを振って否定する。

青葉は首をかしげる。

「こんな感じ」

加古≧深雪≧龍驤>望月>古鷹=(山風?)>時雨=川内>吹雪>榛名

 

「加古さんが一番?」

「言葉には尽くせません・・・。」

「深雪さんは・・・なんとなくわかりますけど新米教育の時のですか?」

「正解。マジで初歩的なミスをしたときにどんじかられてえらい目にあった・・・。」

遠い目をしながら外を眺める。

 

「でも加古さんが怒っているところがちょっと想像できないですね。」

「そりゃあそうだもん。俺だって一回しか見たことないし。」

「沸点が高いんですかね?」

「逆にマジで怒らせたらびっくりするわ。」

「で?なにしたんです?」

青葉がボイスレコーダーまで取り出してスイッチを入れる。

こうなったら最後絶対言うまで梃子でも動いてくれないからあきらめて話すしかない。

 

 

 

 

加古が来て半年したころ

今からだと大体2年前くらいかな

当時所属していたのは吹雪、川内、龍驤そして加古の5人

娯楽関係はホテルのみではあったが、その宿泊記録の管理、遠征隊を裁き、近海の哨戒といったことを5人で行うのはいっぱいいっぱいだった。

そこにおりしも悪く大規模作戦

当然人員は足りず、調達は作戦中に着き不可。

決済の遅延は命取り

 

幸いにもそんなに問題のない書類の遅延で済んだ。

大本営も実情がわかっているのかあれやこれやとはいってこなかった。

作戦終了後もしばらく後処理が続くのだが、そんな時寝不足から足をもつらせて階段から落ちた。

 

「・・・?」ガバ

「司令官!よかった!」

「吹雪ちゃん?」

「加古さん!司令官が起きました!」

起きれば自身の部屋にいた。

頭には包帯がまかれていたが、痛くはない。

代わりに左腕の方が少し痛く、めくってみると額の形にあざがついていた。

「提督~?大丈夫かい?」

「おう!だい・・・じょ・・・・・・ぶ。」

ひょうひょうとした声がしたので慌ててまくった腕を戻し向き直る。

そこのはいつも眠そうに目を半開きにしているはずが、目をしっかり開け無表情の加古がいた。

「そうかい。・・・腕があざになっていたみたいだけど見せてくんない?」

「こっこれくらい大丈夫だよ。」

「いいから。」

「でm「はやく。」・・・はい。」

おずおずと見せると険しい顔をした。

「これはしばらく執務やらない方がいいねぇ。」

そういってスマホを操作し電話をかける

「ええ・・・。はい・・・。そうです。腕と頭をけがしまして・・・。」

「じゃあそんなわけでもろもろの事情から始末書とかは無しでいいですね?」

「はい?原因作ったのどっちだよ?増員の要請下げたのどっちだよ?あ”?!」

眠そうな顔している普段の加古はどこへやら

目の前で青い稲妻が走っている

「・・・わかったね?ええ。それじゃあ1週間経過観察ってことでいいね?はい。それじゃ。」

「あの・・・。どちらにお電話を?」

「ん~桐月大将んとこ。提督も右腕けがしちゃって大変だね。」

「え・・・。左・・・。」

「右」

「いや・・・ひd「利き腕けがしちゃって大変だよね?」・・・・はい。」

利き腕と言い換えた時に顔をずいっとよせ有無を言わせないといった雰囲気だった。

「頭の方も打ってるみたいだし一週間休みってことでよろしくね~。」

「いやいやいや!この時期にそんなに休めないよ!あs「提督。あたしは気が長くないんだけど?」・・・・・・でも」

「・・・」バゴン

「!」ビク

横のテーブルの天板が真っ二つに割れた

「でも?」

「なんでもないです!」

「そう?ならしっかり寝てねぇ~。寝れなかったらあたしと一緒に寝ようか~?」

「いえ・・・。遠慮しときます。」

「残念だね~。」

後で変わりの机持ってくるよと言って退出していった。

 

 

 

 

「ってことがあったのよ。」

「・・・失礼ですが司令官はそれ以来怒らせたことは?」

「怒りそうな雰囲気を察知して先に折れる」

この手に限る

だってあの目は実際やばい

Yes以外言ったらどうなるかわかっているよねって目線だもの

後々古鷹が転属してああ姉妹だなぁってわかったけどさ

「ちなみに今回の件については・・・。」

「ちゃんと休むからで納得していただきました・・・。」

切れそうな顔だったがぎりぎり耐えてくれたようだ。

「というか加古さんって何者・・・?」

「医師免許持ってるよ。あと調剤士の資格も。」

「・・・・・・あんまり診断は受けたくないですね。」

「腕はしっかりしてるよ?診察中や調剤中には寝たりしないからさ」

そのほかは寝るけど

 

 

 

 

 

 

「ラストは秘書艦としての優秀さです!」

「これは入った順だね。」

「いやいやいや。それじゃ記事にならないんですけど。」

「えー・・・。」

そうは言われてもここは経験の長さが物語るところが大きい。

もちろんその人の器量もあるが、そんなもの誤差に程度にしかならない

ひと月も秘書艦として働けば誰でもできる

「慣れざる得ないってことでは?」

「・・・まぁね。でも秘書艦やったことあるのは吹雪以外だと川内と龍驤の3人だけだね。」

「そうなんですか?てっきり全員やったことがあるものだと」

「加古が来たあたりでみんな固定の持ち場になっていったかな。そっちのが把握しやすいし。」

吹雪は秘書兼補給部、川内は生産部と資源部、龍驤は警邏部と補給部手伝い、加古は今も昔も総務部。

総務の役目は結構変わってたりするがずっとやっていることは大本営への提出書類の最終検閲ぐらいだ。

 

少し冷めたお茶を一気に飲み、新しく入れる。

青葉のも空っぽだったからついでに注いで渡す。

「でもやっぱり経験がものをいうからこんな感じかな」

 

吹雪≧川内≧龍驤>>その他

 

「ほうほう・・・。やっぱり吹雪さんですか。」

「まぁそりゃあ付き合いも長いしねぇ。最初こそ今の古鷹ポジだったけど・・・。」

「またまた御冗談を!」

「毎日毎日最高速で残業をやっても片付かない書類を一回経験してごらん?仕事が少なめの時は少しでも先取りするようになるから。」

「完全に調教の粋じゃないですか!」

 

 

 

 

 

「取材ありがとうございました!」

資料を机に軽くたたき整える。

「いいえ。またいつでも来てちょうだいな。」

「ありがとうございます!ところでこのミカンすごくおいしかったですけど、どこのですか?」

「ああこれ?うちの島で取れたやつ。」

「え?」

 

以前ほっぽちゃんが食べていたものである。

今の季節はこれくらいしかおいしく食べられるものがなかった。

しかし、気に入ったらしく大湊へと向かう際一緒に持って行ったくらいだ。

実際食べてみると酸味と甘みがちょうどよく、商品として売っても問題なさそうだった。

とれた量もここでの消費を上回ったため、近々本土の卸売場にも卸す予定だ。

「せっかくだから内浦へ送ろうか?」

「いやでも・・・。」

「いいのいいの。海野大佐や衣笠君とも食べて頂戴な。困ったら押し付けられたとでも言えばいいからさ。」

剥いたミカンを一口で口に入れる。

行儀が悪いがこの食べ方が好きだったりする。

「すみませんいただいてしまって・・・。ところで一つ疑問が湧いたんですけど。」

「なんだい?」

次のミカンを剥きながら質問に相槌を打つ

「ここってもはや補給基地の範疇超えてません?」

「最近俺も開発してて思ったけど、海上封鎖受けた時に食糧生産しておけば何とかなるでしょ?」

食料の定期便が来なかったらやばいしさ

「せっかく土地は腐るほど余ってるから有効活用しなきゃ。」

妖精さんも定期的に働かせてあげないと暴走しちゃうし

「はぁ。ともかく今回みたいに倒れないようにしてくださいよ?うちの司令官も心配してましたから。」

ややあきれ顔でスマホを出した。

どうやら何か連絡が来たのだろう

「・・・?」

「なんかあったのかい?」

怪訝そうな顔をして画面を見つめていたのでミカンをほおばりながら問う。

「いえ・・・。加古さんから司令官さんを逃がさないでっていう連絡が・・・。」

「え?俺なんかした?」

「さぁ・・・?何かしたのでは?」

 

仕事は休みでやってない

営業日にやっていないとかで文句を言われるのならわかるが・・・

書類の提出忘れ?

書類の修正?

「ん?修正?!」

「わかりましたか?」

「やっば!三が日の無断出勤の勤務表修正してなかった!」

倒れたせいで毎月末に提出するのを偽造し損ねたのだ

最終検閲の際に見つかってしまった以外ないだろう。

「・・・やっぱり正月も出てましたか。」

「逃げなきゃ!」

慌てて窓に近寄り、隠しロープを取り出そうとすると古鷹が下でスタンバイしているのが見えてしまった。

廊下からはコツコツとゆっくりとだが怒気を含んだ足音がこちらに向かっているのが聞こえる。

畳を持ち上げ下への隠し穴を覗き込むと下には山風がスタンバイ

掛け軸をめくり隣の部屋へと抜ける隠し穴の先には時雨

バッチリと目が合って部屋へととんぼ返り

「・・・」パシャッ

戻った先でシャッターを切られた

その隣には、先ほどの足音の主である加古が仁王立ちし、いつぞやのご尊顔をしていた。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

黙って両手をあげ正座へと移行する

「・・・総務室ね?」

「・・・はい。」

 

後で分かったことだが青葉がシャッターを切ったのは抜け道の捜索も兼ねていたらしい。

後できっちりと3か所の抜け道をふさがれた。




E-3何とか乙で完走・・・
資材が・・・またしても・・・燃料と弾薬が3万吹っ飛ばされました・・・。
しかもヒトミちゃん迎えてないし・・・
藤波とヒトミ堀りが待っていると思うと・・・

新入り駆逐の改までもっていくのがつらいなぁ・・・
予定だけで12隻って・・・


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駿河諸島鎮守府のお見舞い その2

小難しい話だらけです・・・


鎮守府応接室

 

5日間の休みを終え、記念すべき一発目の仕事は・・・

「すまなかったね。体調はどうだね?」

「ええ。もうばっちりです!」

大本営から桐月大将が視察もかねて鎮守府の業務負荷の改善案を持ってきた。

「それはよかった!・・・本当に・・・。」

「あの・・・?」

ものすごく安堵した雰囲気を醸し出していた

「君が階段から落ちた時のことを思い出してね?」

「あっ・・・」

マジ切れ加古さんの会話の相手が大将だったことを思い出した。

ため息をつき、鞄からは駿河諸島鎮守府改善草案と表紙に書かれた冊子を2部取り出す。

 

 

 

 

「さっそくだが大本営が配布している資源についてなんだが」

大本営は一定以下の資源しかない鎮守府には毎月資源を配布している。

 

だが、現在の方式としては大本営に資源備蓄量を報告

規定値未満の場合は配給許可書が配送される

そしてその配給許可書をもとにうちが支給を行うという手順だった。

 

「全国を各ブロックをさらに細分化してそこから配給を行うことにした。」

 

今までは日本国内にある鎮守府が一斉にこちらに来ていたがそれが一気に解消されるのだ。(日本領以外のところは一回別のところを挟んで支給している)

 

「じゃあうちはそのブロックへの支給で済むんですね?」

「そうじゃな。もともと秋の時の本土空襲の際に持ち上がっていた案だったんだが、前倒しすることにした。」

 

秋にあった作戦時の空襲では、日本国内の備蓄資源がやられた。

その際補填のためこっちに臨時で発注されたのだが早急の案件となり、こちらの事務的処理がパンク寸前にまで陥った。

だが、各ブロックごとに先に本土に配送しておけば空襲を受けても柔軟に対応ができる。

臨時で使った分を事前通告してもらえればこちらもそれに合わせて生産量を期日までに調節でき、パンク寸前に陥る可能性が低くなる。

 

「異議はありません。」

「これは任務達成時の資源配布も同じ方式になる。余剰が出た場合は報告書でそっちに通達するから調整した数字を提示してくれ。」

 

つらつらと書かれているのを目で流しながら追っていく。

「現状推定で三分の一の業務は解消されるはずだが・・・遠征隊の業務については残念だがいじれそうになかったから保留の方針で行こうと思っとる。」

 

遠征隊については終わってもいないのに資源を渡すわけにはいかない。

遠征時には輸送してもらう資源を受け渡すのはここで行っている。

中には持ち帰るものもあるため、大本営や本土の拠点で処理を行うと2度手間3度手間になってくる可能性が高い。

 

「だがこれでもぬるいと言われたら困るのでな。ここへの新規転属艦を検討している。」

「え?できるんですか?」

「タカ派の勢いが少し弱まってくれたおかげでな。一人だけなら転属させられそうだ。」

と言っても訳アリだがな

後に続いた言葉で大体どこから転属なのかがわかった。

 

「最後に冬の作戦だが・・・」

「・・・すみません。作戦を縮小させてしまったみたいで・・・。」

「いや。もともと予定していた拡張作戦はウルシー方面への進出でな。これに手を出すと現状戦線が広がりすぎて維持が難しいといった懸念があったんだ。」

灰皿を手繰り寄せると煙草に火をつけゆっくりと息を吐いた。

「比較的小規模じゃが小笠原諸島も含まれているからどうしても協力をお願いしたいんじゃ。」

「内容によりますね。」

以前みたいにうちが発着点になったりすると今度こそパンクする可能性が高い。

「基地航空隊の中継点。今回はこれだけ務めてもらえれば大丈夫だ。」

「それだけでいいのですか?」

「今回も新規物資輸送がある。その生産に集中してもらおうということでな。」

草案書には基地航空隊は八丈島鎮守府と分散して行うと書かれているため負担はだいぶ楽だ。

 

 

 

「改善策の提案は以上じゃが・・・。何か意見はあるかの?」

「十分です!おかげさまでだいぶ仕事量の軽減ができます!」

「それならよかった。」

「それでついでと言っては何ですが・・・。」

持ってきたカバンから先ほどと似たような厚さの冊子を2部取り出す。

表紙には駿河諸島新開発計画書と書かれていた。

 

 

 

「・・・。ええ・・・。」

「どうでしょうか?」

大将は一通り読んだのち口にくわえていたタバコを灰皿に置く

表情はいかにも微妙そうな顔をしていた

「どうって・・・。すごく魅力的だとは思うよ?うん。」

「?」

「でもこれ実際やったらさっきの軽減策の効果が半減してるんじゃが・・。」

「・・・何とかなりますよ!」

そういうとガクッと頭を垂れた

「今までかなり無理をさせたのが祟ったのかのう・・・。」

君の艦娘に文句を言われるのはわしなんじゃがと言って新しくタバコを咥えた。

「それで?動くのか?」

今までの苦労人の会話が一転

大将の抑揚のない声が不気味さを物語る

「・・・なんのことですか?」

「食料生産の理由はここの海域封鎖を受けた時の対してのものだ。全然不自然じゃあない。じゃが裏を返せば大本営としてはここの鎮守府をコントロールする数少ない一つの術を失うことでもある。」

「・・・・。」

「国民の英雄たる鷹を落とすいいきっかけを見つけたのか?」

「・・・・・・こちらをご覧ください。持ち帰ることはできませんので注意してください。」

先日の時雨の前の提督の手記と証拠をまとめた書類を渡す。

表情を変えず一枚一枚丁寧に見ていく

見終わると咥えていたたばこの灰が膝に落ちた

「なるほど。良い手がかりだ。これが芋づるでうまくひっぱれれば確実に仕留められるだろう。」

だがと咥えていたたばこ灰皿に置き、落ちた灰を手で掬い上げた。

「確実に切られるじゃろうな。」

「爪を隠すだけあって悪知恵は働きますからね。でも・・・牽制にはなります。」

「・・・わかった。この案件は通しておこう。」

証拠の書類を返し、計画書を鞄へと仕舞った。

「あいつの敵をとるのか?」

「・・・・・・私的な、いえ醜い逆恨みです。」

「いいや。義はこちらにある。あいつは今も苦しんでいるんじゃ。」

「私のせいです。」

大将の顔を見ないように背を向けると小さくため息が聞こえた

「うちのところに来ないのか?」

「・・・行きません。」

小さくまだとつけるとそうかねと返事があった。

「軍令部長は手ごわいぞ。気を付けてな。」

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

「おかえりなさい司令官!・・・何かありましたか?」

「ん?うんにゃ。なんもないけーが?」

そうですかと吹雪が返事をしてお茶を入れに秘書席を立った。

久しぶりの執務机に座り、タバコを取り出す。

これから新しく仕事の割り振りを行わなければならない

早く決めて明日の鎮守府の再開に備えないと大将や皆のせっかくの気遣いが無駄になってしまう。

 

「・・・司令官。桐月大将が来ていたんですか?」

「おや?よくわかったね?」

戻ってきた吹雪がお茶を机に置きながら言った。

「司令官がタバコを吸っているので。」

「タバコ?」

「よく大将や同期の方々と会った後とかは必ず吸っていますよ?」

5年も一緒にいれば癖も筒抜けらしい。

「それも何か機嫌がよくない時は特に。」

「・・・よく見てらっしゃる。」

苦笑してタバコを灰皿に押し付けもみ消す。

「せっかく一新するんですからリラックスして考えましょう?」

「そうだな。ちょいとややこしいことも出てきそうだし、何か甘いもの食べながらゆっくりまったりと決めますか。」

「じゃあせっかくですし何か作りましょうか?」

「じゃあ吹雪のどら焼き食べたいな。作れる?」

「はい!お任せください!」

執務室を出ていく吹雪の後ろ姿をみるとあることに気付いた

後ろに縛ってある髪の毛がピコピコ動いて見えた

こういったときは吹雪の機嫌がいい時だ。

いつまでも先ほどのことを考えていてもしょうがない

今はどら焼きを待ちながら目の前の問題をかたずけることにしよう。

入れてもらったお茶を一口飲み、大将からもらった草案書を開いた。




E-2で藤波堀をしていた時

7回目くらいでC敗北を食らって心が折れ、小休止をする
       ↓
第三第四を東急に出して小説を打つことに
       ↓
ふと気になり画面を見るとなんと決戦と前衛支援に出していることが発覚(10分経過)
       ↓
持ったいないので慌ててE-2出撃
       ↓
恒例のA勝利(雷巡や阿武隈を主力をE-3に使ったためSがうまくとれない)
       ↓
お疲れ!夕雲型駆逐艦十一番艦、藤波よ。(ファッ!?)

間違えて出し良かったです・・・(支援は決戦、前衛含めて全部の合計ダメージ7)
さぁ後はヒトミちゃんだ!(白目)

藤波掘る前に3-5と4-5もついでだからやっちゃえ!
で4-5のラスダンで沼って3万くらい資源持ってかれました(白目)
ヒトミちゃん掘れるかな・・・?


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駿河諸島鎮守府のバレンタインデー

 

バレンタインデー

 

日本では女性が男性にチョコを贈る日として一般的だ。

艦娘とて女性

やはり意中の人に贈るだろう

しかし今は戦争中

業務に精を出さなければならない・・・

「はずなんだけどね・・・。」

 

本日来る遠征隊は泊まりなしの短時間が5組

それも朝一で全隊来てしまい、すでに帰投済みである。

もちろん通常の書類整理があるためうちは稼働しているが書類整理はすでに終わりかけている。

 

 

時刻はヒトサンヨンゴー

 

 

間もなく間食休憩だがそのまま切り上げられてしまいそうだ。

やることはなかったかと考えるが、軽減策のおかげでやることが少ない。

毎年この時期は作戦が行われているためてんてこ舞いなことが多いが、小規模ということで緊急の資源調達がいる鎮守府が少ない。

年度末の決算に向けての書類は出来上がりつつあり、2月のあがりを待っている状態だ。

しいて言うならオリョール海を中心とした石油や鉄などの資源プラントの整備の仕事はあるが、視察後に書かなければならないため今日やることはできない。

そんなことを考えながら作業をやっているとついに最後の書類が終わってしまった。

 

「吹雪ちゃんなんかやること残ってる?」

「いえ。私もこの書類が終わったら最後です。」

「こっちも終わっちゃった・・・。」

決済済みの中に投函し、背もたれに深く腰掛ける。

「失礼するよ。」

「失礼します・・・。」

ノックをして時雨と山風が二人して入ってきた。

執務中に二人が顔を合わせることはまれだ。

山風は秘書艦見習いから補給部に移動して現在は新設の農園部に移動している。

「提督。今日の書類を受け取りに来たんだけどもう終わっているかい?」

「ああ。ほい。これそっちの書類だよ。」

決済済みのまとめたファイルから補給部へのファイルを取り出し渡した。

「提督・・・。これお願いします。」

山風が渡してきたのは農園の見積もり書と工期の関係の書類だった。

「ほいさ。っとこれは外部の書類とのすり合わせしなきゃだから後日ね。」

未決の中に放り込んだとき部屋の時計が鳴った

2時間の間食休憩だ。(軽減策で不要じゃないかと思ったが、みんなが反対したためのこった。)

「吹雪、今日はちょっと行きたいところがあるんだけど提督を借りていいかい?」

「提督もいい・・・?」

「私はいいですよ。」

「俺も構わんが本土の方か?」

「いいや。行くのは農園の方だよ。」

 

 

 

 

 

 

農園予定地に行くとすでにある程度の整備が始まっていた。

以前草ぼうぼうだったところは全て刈られており、あちこち無造作に生えていた果樹も移動していた。

土は耕され、畝が半分ほどできていた。

「こっち・・・。」

山風を先頭についていくと、以前加古が昼寝をしていた木に着いた。

木陰の下にはダークブラウンの4人掛けのテーブルが2つ設置されていた。

「ル級がつくったんだよ。」

時雨が先に腰を掛け、持っていた籠から包みを取り出した。

「今日はバレンタインデーだからね。僕と山風二人で作ったチョコがお茶菓子だよ。」

「食べてね。」

包みから出てきたのは一口サイズのナッツのチョコレート

「そっかそっか。ありがとうな二人とも。早速だがいただいていいかい?」

「「どうぞ。」」

ナッツが程よく砕かれており、口にはチョコの甘さが広がる。

甘党の俺にはたまらないおいしさだ。

「はい。どうぞ。」

「緑茶?」

 

時雨から出されたのは緑茶。

てっきり紅茶でも出してくるものだと思ったため驚いた

「緑茶の方がチョコに合うってこの前聞いたの・・・。」

飲んでみると少し渋めに入れられており、口の中のチョコの甘さをリセットしてくれた。

「確かに合うね!こりゃ食べ過ぎそうだな。」

2つ3つと口に入れておいしいというと二人は安心したように笑った。

「お熱いわね~。」

後ろから声がして振り向くと鍬を担いだル級がいた。

「口から砂糖が出そうです。」

リ級はスコップやら鎌やらの入ったバケツを片手ににやにやしていた。

「二人ともお疲れさん。このテーブルありがとうね。」

「別に大したことじゃないわ。あいにく料理に関しては疎いから私たちから提督

へのバレンタインの代わりよ。ちょうどチョコの色だしね。」

ル級は空いている席に、リ級はテーブルの下に備え付けられた椅子を取り出して掛けた。

 

 

 

のんびりと少し肌寒いが外でのお茶会を楽しんでいるとポンと頭に何かが乗るような感触がした。

「提督~。ここにいたんだ。」

上を向くと加古の顔があった。

「あたしも用意したからさ。手作りじゃないけど許してな。ほれ。」

頭に乗っけられていたのはラッピングされたチョコの包みだった。

「おお。サンキューな!」

「ほいじゃあたしは昼寝するからね~。」

手をあげて返事をすると木へと歩いて行った。

が途中で歩みをやめてこちらを向くと何かを放り投げた。

「後これもあげる。」

「!おっと!」

落とさないようにギリギリキャッチするのを見届けると、木の上に登って行った。

渡されたのは小さな小瓶で中には緑色の液体が入っていた。

「青汁・・・?」

「あ!司令官おったで!」

小瓶を怪しげに見ていると、聞きなれた声がした。

何かと顔を向けると龍驤がいた。

話を聞くとみんなバレンタインでお茶に誘おうと執務室へ行ったらしい。

執務室では吹雪がのんびりしていたので事情を聴き、あちこちを探し回ったらしい。

 

 

その後龍驤に場所を教えてもらったみんながわらわらとやってきた。

 

初めに龍驤は生チョコ

毎年気合を入れて作ってくれるだけあってとてもおいしい。

 

古鷹はウイスキーボンボン

酒好きな俺だからと用意してくれたんだろうけど・・・

表情に出してはいけないし苦手だともいえないので笑顔で受け取る。

本人も覚えていないから仕方ないんだ・・・。そう・・・。

 

川内は手作りのトリュフチョコ

提督の一番好きなチョコだよっといった瞬間、龍驤以外の皆(加古まで)反応した。

ちなみに一番はトリュフ、二番目は生チョコが好きだ。

 

極めつけのラスト

榛名はチョコケーキ

間宮さんと鳳翔さんの合作らしい(二人はお店や下準備でこれないとのこと)

 

これだけのチョコをいっぺんに食べるわけにいかないため、榛名のチョコケーキと時雨、山風のナッツチョコ以外は一口を食べてあとは後日いただくことにした。

 

 

 

「お!いたいた!みっちゃーん!」

「!」

今日この日

最も警戒しなければならないやつが来た

「・・・望月か・・・・。」

「提督?」

みな不思議そうな顔をしていた

普段だったら別に警戒することはない

いやまぁ私物とか盗まれているけど

望月にはある前科がある

 

あれはまだ新米だったころ

「あー・・・疲れた・・・。」

バレンタインの日とて日曜でもない限り訓練や講義がある

当然今日は平日

講義が終わり、部屋に戻った時間はヒトキュウマルマル

「さっさと風呂入って早く寝よ・・・」ガチャ

「ハッピーバレンタイン♡みっちゃん♡」

風呂場にはチョコ風呂につかって悩ましげなポーズをとる望月がいた。

 

 

ちなみにこっちに赴任してからはチョコが毎年贈られてきていたが、すべて等身大チョコ(ポーズは毎年違った)

ぶっ飛び加減が毎年すごいことになる

今年はいったいどんなぶっ飛びを・・・

 

「・・・?あれ?」

「みっちゃんどうしたの?」

おそるおそる見ると目の前には普通のラッピングされたチョコレートがあった。

クリアなケースに入っているため、中身がわかるが、いたって普通のチョコ。

「・・・え?普通の?」

「うん?」

「え?等身大とかあそこの型チョコとかじゃない普通の?」

「今年は変えてみたんだよ~。」

 

 

よかった・・・

毎年みんなに見られないようにひっそりと誰にも言えず処理をしてきたが、これからは普通に食べられる

 

一つ食べると心なしか甘く、体がほてってきた

ほてってきた・・・?

「・・・日でも出てきたか?」

上を見たが日が照っているわけでもない

首を傾げた時に原因がわかった

「もっちづっきさーん!」

「なーあーにー?」

チョコケーキをほおばりながら満面の笑みでこちらを向いた

「お前何盛りやがった?」

「ピンクのお薬かな?」

テヘペロと普通なら可愛いが、今の提督にとっては邪悪な笑みにしか映らなかった

「何の疑いもなく食べるみっちゃんが悪い。」

そう胸を張ってくるあたりに青筋が浮かんでくるが浮かべると別のまで浮きそうだ

「さぁて一足早いけどホワイトデーもらっちゃおうかなぁ~。」

じりじりと寄ってくる

今の状態ではとてもじゃないが逃げ切れそうにない

若干前かがみでどうしようか必死に考えていた時、加古がしきりにジェスチャーをしていることに気が付いた。

「・・・・何かを飲む仕草?」

そういえばさっき緑の液体が入った小瓶を受け取ったことを思い出す

躊躇しているひまはない

加古を信じて飲んでみることにした。

「・・・・・・にっが・・・。」

この舌ベロに異様なくらいまとわりつく苦み

まるで苦手なコーヒーを飲んだ時のような感覚だった。

「ふっふっふ・・・さぁいくよぉ~!」

「やば!」

慌てて前かがみで逃げようとするとあることに気が付いた

「つっかまえた!さぁ~てあんなことやこんなこと・・・あれ?」

抱き着いてきた望月をかわした

「解毒剤だったの~・・・。」

目線がまたぐらに言っていることは気にしないことにした。

望月が加古をちらりと見ると両手をあげるジェスチャーをしていた。

それと同時に一部を除いて望月を捕まえにかかった。

 

「まったく・・・。今年こそはと思ったんだけどなぁ・・・。」

しょんぼりしてチョコを仕舞う。

媚薬入りとは言え望月からのチョコであることに変わりはない。

どこかでひっそり誰もいないときに食べることにした。

 

 

結局一服盛った望月はみんなに畑に首から下を埋められ、ひと晩反省させられることになった。(一部は本気で肥料にしかけたが)

 

「ただいまー。」

「おかえりなさい!司令官。」

「おかえりだぜ!みっちゃん。」

執務室には吹雪と深雪がのんびりとくつろいでいた。

「もっちーのチョコはかわせたかい?」

「おま・・・止めてくれよ・・・。」

「その様子だと見事に食らったようだね。」

ソファーに持たれながら大笑いしていた。

「誰もいないときに食べにゃならんくなっちゃったし・・・これならまだ等身大の方がましだよ・・・。」

「お疲れさん!」

カラカラ笑いながらお茶を入れた。

「司令官。今年は深雪ちゃんと一緒に作りました。よろしければどうぞ。」

「召し上がれだぜ。」

 

出てきたのはオレンジピールチョコ

 

今日はさんざんチョコを食べたがこっちはだいぶ趣向の違ったチョコだ。

基本皆には甘党と知られているので、みんなミルク系のを作ったり買ってきてくれる。

だが、吹雪はそれを見越して毎年ビター系を作っておいてくれるのだ。

「毎年ありがとうな吹雪ちゃん。深雪もありがと。」

「いいえ。」

「おう!」

ほろ苦さがちょうどよく、甘いのに飽きが来ていた今にはぴったりだった。

「成長したなぁ・・・。・・・そういえば昔、着任したてのころ吹雪がな?」

「しっ司令官!それはだめですぅ!」

「おやおや?失敗談かい?」

興味津々に乗ってきた深雪を慌てふためいて止めようとする吹雪。

 

 

いつもと違うのんびりとした平和?なバレンタインデーでした




皆様冬イベお疲れさまでした
成果のほどはいかがでしたでしょうか?
作者は最終的に
E-1でニム、ユーちゃん、しおい、水無月、鹿島、磯風、浜風、谷風、瑞穂
E-2で藤波、時津風
E-3で山雲、朝雲
の着任に成功、難易度は甲乙乙で終了しました!
・・・え?ヒトミちゃん?
知らない子ですね(血涙)
十中八九藤波で運を使い果たしました・・・w
さて・・・資源回復に努めねば・・・

それと拙作がついに50話突破&お気に入り500を突破いたしました。
まことにありがたく、お気に入りに登録していただいた方、読んでいただいた方、評価してくださった方、感想をお寄せいただいた方々には頭が上がりません。
これからも楽しんでいただけますと幸いです!


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駿河諸島鎮守府とオリョクル

360度見渡す限り海のオーシャンビュー

 

 

 

 

決して遭難したわけではない

 

 

 

ここは東部オリョール海の中心地点

海底資源採掘プラントと休憩所が併設された海上拠点の一つだ。

 

以前、この海域は海底油田があることが少し前に分かった。

しかし、プラントがないため潜水艦以外の艦で来ると採取が大変なうえ、少量の量しか持って帰れない。

潜水艦の子たちで来れば、出撃分の燃料を黒字にすることができるがいかんせん負担がものすごい。

 

そこで呉第二鎮守府と大本営、うちと共同で開発を行うことになった。

年明けには開業していたのだがいかんせんちょっと立て込んでいて今日までこれなかった。

「耳本提督でちね?」

二式大艇からおり、桟橋を歩いていると前からスクール水着を着た艦娘が声をかけてきた。

「大本営直属東部オリョール海警備隊の伊58でち。ゴーヤって呼んでもいいよ!」

ある程度制海権を確保しているとはいえ敵が此処を襲わないとも限らない

 

プラントを守るために大本営が警備隊を常駐させる旨を言っていたことを思い出す。

「よろしくゴーヤ。」

「私は川内だよ!よろしくね!」

今更だが川内が同行している。

管轄としては資源部の監督となるためである。

 

「ってお前いつものあいさつどうした?」

「いつものって?」

「一緒に夜戦しよ!って毎回いうのに」

「いやー・・・。ゴーヤは潜水艦じゃん?」

「え?・・・ああ。」

「あの・・・もういいでちか?」

ゴーヤが困った顔をしていたので慌てて向き直った

「ああすまない。案内を頼んでもいいかい?」

「もちろんでち!さぁこっちでち!」

ゴーヤの後についていき案内を受ける

 

 

 

「ここが最後の場所でち」

石油の採掘状況や海域の監視レーダー、緊急時のドックに仮眠室などなど

そして最後の場所というのがここ食堂である。

開放的な広い場所には清潔感のある白いテーブル

外の景色は一面のオーシャンビュー

・・・・と言っても艦娘にとっては珍しくもなんともないのだが窓がないよりかはあったほうがいいと思い、こういった設計にした。

 

現在時刻はヒトサンマルマル

昼時を過ぎたせいか人は少ないがまだまだお昼を食べている人はいる。

ここにいる艦娘の大半は潜水艦の子たちだ。

やはり低コストでこの海域を回れるのが大きいのだろう。

さらに、ここでは石油が受け取れる。

ちなみに通ってきたルートにより、受け取れる量や物が違う。

だが、なによりも大きいのが石油は高確率で黒字にできるというのが大きいのだろう。

ところどころ顔に疲れが浮かんでいる子がちらほらいる。

「ついでだからお昼にするか?」

「賛成!」

「じゃあゴーヤはこれで」

「あり?一緒に食べないの?」

「え?いいんでちか?」

目を輝かせていた。

「もちろん。出してあげるから好きなものを頼みなさいな。」

「やったでち!」

 

 

 

各々好きなものを注文し、食べているとちらちらとこちらを見る潜水艦の子たちがいる。

何やらひそひそと話しているのだが何か失礼なことをしたのだろうか

「提督?どうしたでちか?」

「さっきから辺りを見回しているけど・・・?」

川内とゴーヤに不思議がられ我に戻る

「ああいやなんでもないよ。」

「そう?」

「ところで気になったんだけどゴーヤは何でいそいそと戻ろうとしたんだい?」

間宮アイスを食べて幸せそうにしているゴーヤに尋ねると、ちょっと寂しそうな顔をして答えた。

「実はまだ警備隊の増援が来ていないから二人交代制なのでち。そのおかげで案内が終わったらすぐに持ち場に戻らなきゃいけなかったのでち。」

「なるほどねー・・・。」

「ってことはいつも食べるのは一人だったわけか。」

メモ帳を取り出して、早急な警備隊の増援と書き込む

「今日は提督や川内と食事ができて楽しかったでち!」

満足そうに笑っていた。

「そっか。じゃあ大本営に早急に増援を頼んでおくよ。」

「本当でちか!」

「ああ。他に何か要望とかあるかい?」

ゴーヤは考え込んだが特に思いつかなかったらしく首を振った

「今のところないでちね。仮眠室や入浴施設もあるし、娯楽関連を入れたらここから出たくなくなる奴が出てきそうでちね。」

「それはあり得そうだね。」

「了解だ。貴重な意見ありがとさん!」

「あっ!後これを渡すようにこっちに来るとき大本営から渡されたでち。」

案内しているときに持っていたファイルから封筒を取り出す。

封筒には封がしてあり、機密書類と書かれていた。

 

「・・・うぇい?!」

開けてみると転属打診書と書かれており、ゴーヤの名前が記載されていた。

備考に本人と話し合い、ゴーヤに意見を尊重する旨が描かれていた。

「どうしたの?提督?」

川内が不思議そうな顔をしており、ゴーヤもまた同じような表情だった。

「あー・・・。なんと言えばいいんだろ?これ?」

説明をするとゴーヤはうれしそうな顔をして

「ぜひお願いしたいでち!」

といった。

しかし、ゴーヤはここが勤務地であるため、所属だけうちになるといった形である。

と言っても定期報告を受けるため週に1回は鎮守府に来るとちょっと変則的な勤務形態となる。

「とするともう一室用意しておかないと。」

「え?大本営からの転属艦ってゴーヤじゃないの?」

川内が首をかしげ聞いてきた。

「ああ。事前にもらった情報だと川内と同じ軽巡とのことだ。それにゴーヤの普段の勤務地はここだからうちで書類仕事というわけにもいかんからね。それよりも部屋をもう一個準備しないと・・・。」

「改めてよろしくでち!耳本提督!」

「ああ。よろしくなゴーヤ。」 ガタン

改めてあいさつを交わすと、あちこちで立ちあがる音がした

見回すと潜水艦娘に囲まれていることに気付いた

「え?なにこれ?!」

「え?!」

ざわざわと取り囲んでいる潜水艦娘の中から一人ピンク色の髪の毛をした子が進み出る。

「失礼ですが・・・駿河諸島鎮守府の耳本中佐でしょうか?」

「あっああ。そうですけど・・・。」

身の危険を感じながらおどおどとして答えた

答えた瞬間とみな一様に跪きこう叫んだ

 

 

 

 

 

「メシアが降臨なされた!!!!」

 

「はっ!?」

「ありがたやありがたや・・・」

ある者はこちらを向いて手をすり合わせながら拝んだり、またある者はケチャの真似事みたいなことしたり、はたまたある者は涙を流しながら跪いたりなど

もはやよくわからない異様な空間になっていた。

 

「え?どういうこと?!」

「提督は知らないだろうけどこの施設ができてから潜水艦の間では提督の印象が最高なんでちよ?」

 

聞くところによると燃料やボーキサイト、鉄などを稼ぐためここ以外のほかの海域も含め、潜水艦は引っ張りだこ。

しかし、艦娘とはいえ何度も出撃するうえ海底に潜って資源採取はつらいものがある。

しかも、食事は任務中のため海上でレーションを急いで詰め込むこととなる。

それが毎日休みの日以外続くのである。

 

それらがこの施設ができたおかげですべて改善された。

海底に潜って敵を警戒しながら資源採取をしなくてよく、お腹がすけばここで温かくおいしい食事ができる。

時間によっては仮眠室で仮眠も可能

 

この施設(天国)の建設を行った呉第二鎮守府の明石と駿河諸島鎮守府の耳本中佐は潜水艦娘にとってはまさしく神様仏様と同じくらいの存在となったという。

 

「サインください!」

「はっちゃんにもお願いします!」

「わかった!わかったから!したげるから!」

もみくっちゃにされながらなんとか鎮めようとするがどうにも止まらない。

「あーあー・・・。なんか大本営行った時とおんなじことになっているね・・・。」

「大本営でもでちか?」

「まぁね。しばらくしてから助けてあげますか。」

「・・・そうでちね。」

今割って入ると自分の身が危ない

そう考えた二人はもう少し落ち着くまで席に座って待つことにした。




そんなわけでゴーヤが加入です。
うちの最初の潜水艦ですね
冬イベのE-3輸送では運の高さからラストシューターに抜擢
今やレベル98という2位タイ(19が同率)
今は弾薬の節約でサブの子がメイン張ってますw

最近・・・というか数日前にツイッターを(今更)始めましたが・・・
早速よくわからないw
あわあわしながらやっていますw


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駿河諸島鎮守府の酒宴

「お!司令官やん。」ガラガラ

久しぶりに鳳翔さんのところで飲んでいると、入ってきたのは龍驤だった。

「おお今回も龍驤か。」

ちょうどタバコを吸おうと咥えかけたところだったのでちょっとこもった声になった。

「ビール頼もう思うたけど司令官におすすめもらおうかな?」

猫なで声を出され苦笑した。

「全く・・・。鳳翔さん。今日は熱燗の奴で。」

「はい。承知しました。」

鳳翔さんが微笑んで奥に引っ込むのを見届けてタバコを灰皿から拾って吸う。

「今日の銘柄は何なん?」

「ん~・・・。一番お前たちがよく知っているのかも。」

「ほぉ・・・?ってそうやなくてこっちやこっち。」

龍驤はタバコを吸う仕草をする

「ああそっち?今日のはアークロイヤル。」

「皮肉やな・・・。火ぃ貰うで。」

ケースからタバコを取り出し咥えると、吸っているタバコの先に自身のタバコを当てて吸った。

「・・・ありがとさん。」

「・・・ライター貸したのに。」

若干呆然としつつライターを出した。

「わかっとらんねぇ・・・。まぁいいか。」

龍驤は少し大げさにかぶりを振ってタバコを灰皿に置いた。

「というかお前の銘柄さ・・・。」

「アメスピやけど?」

「人の事言えないじゃんか。」

ちょっとツボに入ってケラケラ笑うとせやなと龍驤も笑った。

 

 

 

 

「今日は誰かと飲む予定じゃなかったんか?」

「うんにゃ。今日は任務入れちゃったから来ないよ。吹雪もリンガに招待されてるから来ないし・・・加古は寝てた。」

「ほうほう・・・。うちの以外の酒飲みは全滅っちゅうわけか。」

そういう事と返事をしてタバコを深く吸う

「なんやえらい疲れてるな?」

「ああ・・・・。夏木がな?」

「もうわかった。花見と見た。」

苦笑いをして水を飲んだ

「正解・・・。もうめっちゃ張り切ってんだけど・・・。」

「でも今回もあっちが主導やろ?うちらとしちゃ関係ないんとちゃう?」

「それがなぁ・・・そうでもないんだ。」

 

前回の秋祭りの終了後、簡単な決算を出した。

土地の使用料や出店の出店料、そこから神主さんや巫女さんを呼んだ経費やこっちも地の準備の経費の計算を行った。

赤字だったのかというと全く持って違う。

それどころか大黒字だった。

 

「ああ。それで臨時ボーナスが出たんやな?」

「そう。せっかくだから予算に組み込んじゃうのは悪いかと思ってね。」

「でもそれならなおさら渋る理由がわからへんな。」

「問題は鎮守府としてみればってことよ。」

「?どういうことや?」

龍驤は訳が分からないといった顔で提督を見る

「うちは民間の側面もあるのはわかるよな?」

「せやな。・・・あ。」

「わかったか?」

 

 

 

 

軍としての機能は辺りの哨戒や補給量の決定などである。

そして民間としての機能はそれ以外の面ということになる。

端的に言うとホテルと旅館がパンクしたのだ。

人員の臨時増員をと思ったが、雇っているのは全員退役した軍の関係者か艦娘のみだ。

人員の確保はできるものの、その期間だけ人員がほしいので人が集まらない。

かといってそのまま雇ったままだと人員過剰になってしまう。

じゃあ大本営から派遣してもらって臨時で働いてもらうといった手があるが、そこは軍とてお役所。

民間に対してそういった支援はできないという制約がある。

なんとも難しい問題だ。

 

 

 

 

「ほんで頭を抱えてるっちゅうわけか。」

「そーいうこと。」

次のタバコに火をつけ吸い始める。

「2日、3日の連荘なら我慢してって言えるけどさすがに2週間はなぁ・・・。」

「あらあら。大丈夫ですか?」

鳳翔さんが大きな徳利に2つお猪口を持って戻ってきた。

今日のおつまみはおでん

がんもが実においしい

「ま、とりあえず乾杯すっか。」

「せやな。かんぱーい。」

龍驤と乾杯して、酒に口をつける。

香りは吟醸の繊細な香りそのものだが、口に含むと芳醇な味わいがする。

「これどっかで飲んだことあるなぁ?」

うまいなぁといった後龍驤がふとなんだろうと考え始めた。

「蔵香りって商標だけどわかるかな?」

ちょっと意地悪くヒントを出してみる。

「え~・・・。駄目やわからへん!降参!」

「正解は千福だよ。」

「千福!?」

龍驤が目を見開いて驚いた。

千福はかつて海軍御用達の日本酒の一つである

もう一つは賀茂鶴といい、二つとも呉の酒造だ。

「柏崎に頼んで送ってもらったんだ。懐かしいんじゃないかと思ってな。」

「せやなぁ・・・。船だったころ下士官の皆がのんどったわ。」

昔を思い出してしみじみとうなづいている。

ちなみに千福が下士官用、賀茂鶴が士官用だったらしい。

「酒保の方で買うてきたり、銀蝿してくるやつおったなぁ・・・」

そういったとき、ふと何かを思いついたのか酒保と再度ぽつりとつぶやいた。

「なぁ司令官。うちのところの土産物の店って何件あったっけ?」

「え?・・・2件かな?」

それぞれ食品系、雑貨系に分かれている。

2件しかないとは言ったが2つとも店舗はでかく、まるで複数件あるように見える。

「そこの人員ってそこそこおるよな?」

「まさかと思うが店を閉めさせて回せって?」

「駄目かいな?」

「いや・・・確かに店の売り上げなんかは度外視でやってるけどいくらなんでもそれは駄目だろ。」

ため息をついて再度酒をあおる。

「せやからこうするんや。」

 

 

龍驤曰く

まず店を花見期間中閉店する。

代わりに、店先に屋台を出店させる。

屋台の売り物を卸すのは店側が行うことでその期間の売り上げ減少を防ぐ

そして、屋台側のメリットとしてその場所の出店料を極力抑える。

 

 

「これで誰も損しないやろ?」

「・・・屋台を使う手があったか・・・。」

何はともあれこれで人員不足は解決した。

「どや!褒めて褒めて~!」

「えらいえらい。お礼に何でもしてやるよ。」

安堵した顔で、微笑み頭をぐりぐり撫でまわしてやる

「・・・なんでも?」

龍驤はお猪口を置くとずいっと顔を近くに寄せた。

「おっおお・・・。」

「・・・・ほな。」

そう一言つぶやくと

「今日はとことん付き合ってもらうで!司令官の独り占めや。」

「へ?」

「あらあら。」

鳳翔は意味深に笑うと料理を作りに奥に行ってしまった。




呉の方だと海軍に縁が深いので結構コラボしたものがあるらしいです。
普通に売っているものだと江田島の方に古鷹といった銘柄がマジであってラベルが艦これの古鷹のだったりしますw

ツイッターの方のアドレスをいまさらですけどここと自己紹介に後で乗っけときます。
よかったら見てくださいね(ろくなこと言ってませんけど)
http://twitter.com/@baricatsuo_cat


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駿河諸島鎮守府と胎動

「それでは。」

豪奢なつくりの応接室を出て隣の部屋へと入る。

 

「どうじゃったかの?」

「・・・いい子ではありますね。」

控室には大将が座って待っていた。

今日は大本営に新しく4月付で着任予定の艦娘との事前の面会をしに来たのだ。

「そうか。だいぶ容体は安定したんじゃがのう。」

「心は折れていない。ですがやはり・・・傷は大きそうですね。」

 

先日逮捕され、現在軍法裁判にかけられている骨田中将

その麾下にいた艦娘たちはそれぞれ別の鎮守府に転属、もしくは希望退役していった。

転属を望んだ艦娘の中で一人だけ引き取り先のいない艦娘が一人いた。

遠征も戦闘もこなせる子でほかの鎮守府では引っ張りだこ

そんな子が残る

つまりは訳ありにしても相当な子と言うことだ

 

 

 

 

「酷使されすぎて艤装を装備できても戦闘時に碌に動けず。その戦闘時も被弾しただけ(カスダメ)でトラウマが呼び起こされ行動不能に陥る・・・。遠征に出そうにも緊急時の戦闘ができなければ意味がないため不可能。」

保護された後の戦闘力テスト等の報告書を見る限り、普通の鎮守府への転属は無理そうだ。

「なんとか頼めんかの?」

紙面を見ながら面談したときの様子を思い浮かべる

「まだあの子は働きたい様子でしたし、うちで引き受けましょう。しばらくは療養に近い形ですが、まぁ気長にやっていきますよ。」

「・・・すまんの。」

「いいえ。」

もともとは自分のせいですからという言葉を飲み込み、資料を仕舞う。

「あ。あとカルテももらえますか?加古に渡して置きたいんですが・・・。」

「それなら今は深打君が預かっておるよ。」

安心したようにソファーにどっかりと腰を掛けなおした。

「わかりました。それでは・・・次は花見の頃ですかね?」

「そうじゃな。文月と行かせてもらうよ。」

「・・・今度は仕事ほっぽらかしてこないでくださいね?」

「うっ!・・・わかっておる。」

前科があるだけにくぎを刺すと、大将はバツが悪そうな顔をしていた。

「それでは失礼します。」

「ああ。気を付けてな。」

片手をあげてドアが閉まるのを見届けるとつぶやいた。

「間接的だがあの子を救ったんじゃよ。耳本君。」

 

 

 

 

 

さてさて

大将との話も終わったし、深打のところへ行って早く帰らねば。

今日はお供を連れてきてはいない。

川内は出張、龍驤は基地航空隊の関係で八丈島で会議

他の皆も軽減策に伴う業務の見直しの関係で手が離せない。

唯一連れてこれそうだったのは吹雪だが、提督代行ができる人が鎮守府にいないとなると、有事の際混乱しかねない。

よって今回は一人で大本営に出向いたわけだが・・・

 

「誰もいなくて助かった・・・。」

 

今は作戦期間中の関係で他の鎮守府の提督はあまり大本営にはいない。

いつもなら誰かしら歩いているものだが、人っ子一人いない。

実に素晴らしい!

機嫌よくちょっと鼻歌交じりに歩いていたのがまずかった。

曲がり角を曲がろうとした時、誰かが一心不乱に走ってくるのが見えた。

注意力がそれていたため、気付いた時にはぶつかっていた。

 

「痛ってててて・・・。」

「っつ・・・。すみません大丈夫ですか?」

「そっちこそ大丈夫かい?ゴメンね!ボク急いでいるから!」

慌てて謝罪をして手を貸し、起こすと相手も謝罪をして再び走って行ってしまった。

「・・・おや?」

作戦室に向かおうと再び歩みを始めようとした時、足元に何かが落ちているのに気が付いた。

「あちゃあ・・・ベタにも落として行っちゃったか。」

拾い上げてみると金の三日月のペンダントだ。

望月と同じ睦月型の子が身に着けているものだ。

「って指紋ついちゃった。」

金属製のペンダントは拾ったときに触った自身の指紋がついていた。

ポケットからハンカチを取り出し、拭き取る。

「あっちか・・・。」

 

 

 

 

「~・・・あるからして。」

基地航空隊滑走路

そこには10名ほどの新米提督が教官と先輩の提督から基地航空隊に関する講義を受けていた。

作戦期間中は先輩の提督の指揮を間近で見て経験則を身に着ける。

新米としての期間は1年。

おおむね4回の作戦を見ることができ、おそらく彼らは見る立場としては最後の作戦だ。

さきほどぶつかった子は新米提督の後ろで腕組みをしてみていた。

「・・・?」

遠巻きに見ているとこちらに気が付いたのか講義を行っている提督と教官に目くばせをし、こちらに駆け寄ってきた。

「さっきはごめんね。講義の時間が迫ってたから余裕がなかったんだ。何か用かい?」

「いいえ。こっちこそ悪かったね。これを届けに来たんだ。」

さきほど拾ったペンダントをハンカチを広げて差し出すと慌てた表情で左胸を触った。

「ありがとう!助かったよ!」

どうやら気が付いていなかったらしく、ハンカチごと受け取るととてもうれしそうにしていた。

「どういたしまして。後これはさっきぶつかったお詫び。」

そういって深打の土産に持ってきたミカンを一つ取り出して渡す。

「いいのかい?」

「どうぞ。それじゃあ俺はこれで・・・」

「あっ!まっ」

「おーい。移動するぞ?」

教官に声を掛けられてしまい、簡単に事情を説明して再び振り向いたときには、すでに建物の中に入ってしまっていた。

 

 

 

 

「失礼しま~す。」ガチャ

「あ。耳本さん。」

「電君か。久しぶりだね。」

ノックをして入ると部屋には電しかいなかった。

「お久しぶりなのです。今お茶を入れますね。」

「ああ。お構いなく。深打は?」

「司令官さんなら今は基地航空隊のガレージで作戦会議中です。」

「あら・・・。近くまで行ってたんか。」

ソファーを進められたため腰を掛けると、お茶を目の前に置かれた。

「近くまで・・・?」

「ああいやね?さっきさ・・・。」

さきほどの話をすると、目の前に座っていた電が茶化すような目線を送ってきた

「・・・たらしじゃないですか。」

「人聞きの悪いこと言ってくれるね・・・。」

「ところで身の方は固めないのですか?」

ぼそっと言ったのち、俺にとっては耳の痛いことを言われた。

「・・・俺は実家に来ているわけじゃないんだけど?」

「ヘタレな司令官さんだって私に告白したんですよ?」

「相変わらずちょいスレなところは変わらんね。」

大湊の電と違い、深打のところの電は若干口が悪い。

と言っても長年の付き合いというのもあるため、ほかの子よりちょっと砕けたといった感じだ。

「吹雪ちゃんがかわいそうなのです。」

「あーカルテの方って電君わかる?」

聞かなかったことにして話を続けると深打の机だろうか

整理されている机の一角からファイルを持ってきた。

「これなのです。」

「ありがとうね。後これは頼まれてたうちで取れたミカン。」

カルテを仕舞い、代わりに先ほどのミカンを袋ごと取り出す。

「ありがとうなのです!司令官さんも喜ぶのです。」

「そんなに好評になるとは思わんかったけーがね。」

市場に卸した際、初値こそ並みのちょい下だったが、今やかなりの値段になっている。

出だしは普通の売れ行きだったのだが、口コミか何かで広まったおかげで、今やなかなか手に入らない代物と化していた。

大本営にも多少は卸しているが、それでもあっという間に売り切れるという。

「この時期にはぴったりの逸品ですからね。司令官さんと楽しませてもらうのです!」

顔がほころんでいるところを見て話題をそらせたかなとほっとした。

 

 

 

 

が、そんなに現実は甘くはなく

その後話題を戻されてしまい、深打少将が戻ってくるまで誰と身を固めるだのの話を必死にかわす羽目になった。




新しく登場した艦娘が二人
はてさて誰でしょうか(大体わかるかと思いますが・・・)

次の改二が来ましたね・・・
鈴谷と熊野・・・
絶対設計図必要だよなぁと鈴谷は60、熊野に至っては22という全然育っていない有様
大慌てで演習編成を変更したうえ、設計図の在庫関連で大潮の改装がうちでは見送りになりました・・・
設計図要求の艦を連続で追加されるとこっちも頭を抱えちゃいます・・・


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駿河諸島鎮守府の究明

「これではどうでしょう?」

「・・・・・すみません。やっぱり動きません。」

 

呉第二鎮守府工廠駿河諸島出張所

 

榛名の艤装解析と究明のため隔月で明石が調整を行っているのだが、結果は芳しくない。

「ん~・・・。わからないですねぇ・・・。」

以前にも言ったが、砲撃戦というものはものすごい膨大な演算処理を行う。

そのため、艤装の中にある情報処理部分が大半の処理を行う。

そして、どこに撃ちたいかやタイミングなどの大まかなところを艦娘の方で処理を行う。

「演算機能に問題はないんですがねぇ・・・。」

艤装にたくさんのコードがつながったモニターを見ながら明石が頭を抱える。

「伝達がうまくいっていないのか、あるいはもっと別のところか・・・」

コードをはずしながらぶつぶつと可能性のありそうなところ上げて調べていく。

隔月とはいえ、ちゃんと一個一個の可能性をつぶしてきた。

艤装の錆がないか、どこかで断線していないか、エネルギー伝達がおかしいのか

以上の問題は全て見つからなかった。

そして今回は本命中の本命である情報処理部分に手を出したのだが・・・

 

「明石ー?どうだった?」

「耳本提督!すみません・・・。今回も無理そうです・・・。」

椅子から飛び上がるように立ち上がった。

「そっか。まぁ気長にやってくしかねーら。榛名もお疲れさん。」

「すみません提督・・・。」

「しょんないじゃん。さ、そろそろ間食休憩だから甘いもんでも食べて気を紛らわそう。」

甘味処で買ってきたクッキーをもって農業区画へと向かう。

ル級作のテーブルが思いのほかしっくり来たので、時間があまりない時はこのあたりでぼんやりとしていることが多い。

 

 

 

 

テーブルのある場所にたどり着き、木を見上げる。

加古もいたら誘おうと思ったが、どうやら今日は別の昼寝ポイントにいるみたいだ。

畑の奥の方ではリ級だろうか、鍬をふるっているのが小さく見える。

そしてどこかでトンカントンカンとハンマーを打つ音がする。

おそらくル級がまた何か日曜大工感覚で何かを作り始めているのだろう。

声を掛けようと思ったが熱中しているところを邪魔するのも悪いと思い、あえて声を掛けず席に座った。

 

「それにしてもここはほんとに変わってますよね。」

榛名が農園部室で入れてきた紅茶を飲みながら、ぽつりとつぶやいた。

「まぁね。」

「そうですね。」

全く持って反論ができない

提督も榛名も苦笑をして同意した。

「深海棲艦が畑を耕したり日曜大工してたりなんて・・・。どこを探しても絶対見つかりませんよ。」

「逆に見つけたらびっくりするわ。」

お茶請けのクッキーを口に放り込む

「ま、それは置いときまして。検査の結果です。」

数枚の紙にはびっちりと数値やグラフが書き込まれている。

普段書類を見慣れている自分でも面食らう細かさだ。

「それは鎮守府に保存しておいてください。結果の方なんですけれどもやっぱり異常は認められませんでした。」

「そうか・・・。」

「これ以上の検査となるとここやうちでは厳しいところが出てきます・・・。」

「というと?」

明石は目をつぶり苦々しい顔をしながら続けた。

「残る可能性は艤装のコア部分か榛名さん自身の精神面に問題があるかの二択です。」

「艤装のコア部分か・・・。そりゃあちっとばっか難儀なところだな。」

 

艤装のコア部分は艦娘の心の一部である。

心の一部を見るだけでも今までの検査の数倍は危険度が跳ね上がる。

ましてや異常が認められた場合、その部分をどうやって治すか延々と議論が続くだろう。

わずかな失敗で艦娘の性格が変わってしまうことがある。

性格が変わったのならまだいい方だ

廃人になってしまった例もいくつか存在する。

 

 

 

コアの部分を開けて見ることができるのは、大本営や呉、佐世保などの拠点鎮守府の工廠のみで検査等が許可されている。

そして、検査をするだけでも何十の許可を得なければならない。

異常が認められ治療となったら言わずもがなだ

 

 

 

 

「ん・・・榛名はどう思う?」

「え?私ですか?」

榛名は提督の空になったカップに注いでいた

「榛名は現状のままでもいいような気がします。・・・コアの部分はデリケートで失敗すると取り返しがつかないと聞きますし・・・。」

「ということだ。それに、何か代替え案があるんだろ?」

「さすがは耳本提督!実はですね・・・」

 

新しく発明するための予算

呉第二鎮守府は国内でも有数の工廠とその技術者でもある明石がいる。

呉第二鎮守府で行われているのは発明関連がメインである。

他にも、日用品やらそれこそ様々な分野に突出した明石がいて、各場所で活動をしているのだが、それについては置いておこう。

発明と言っても様々なものがあるが、ここにいる明石が得意としていることは艤装のシステム関連である。

しかし、大本営からの予算割り振りでかなりの予算をもらっていても足りない。

ならば他の拠点から受注を行い、その稼ぎや報酬をあてがえばよい。

・・・といってもその辺の並大抵の鎮守府ではそんなことができない。

どこも予算がカツカツだからだ。

せいぜい、鎮守府内に便利機能の追加や装備の改修が月に一件できるかのレベルだ。

それではうちはどうなのかというと

半官半民で独自に稼ぎ出す手段があるこの鎮守府がカツカツなわけがない。

潤沢な資金をもとに榛名の補助艤装を開発すれば、再び海に出れるかもしれない。

 

「そんなわけで予算の方を今回もすこーしだけでもいただけると・・・」

「それについては後日、見積書とか送ってくれる?」

「わっかりました!」

遠回しなOKの意思にニコニコ顔でサムズアップしたのを見て、微笑みながら紅茶を飲む。

「お礼と言っては何ですけれども耳本提督の耳に入れておきたいことがあります。」

「ん?なんだい?」

さっきのニコニコ顔を消し、少し辺りを警戒しながら声を気持ち抑え目で続けた。

「実はさきほどのコアの検査についてなんですけど、上層部で重要拠点外でも検査や治療等を行えるようにしようとしている動きがあるらしいんですよ。」

「なに?」

ただでさえ最高レベルの機器や技術者をそろえても失敗する可能性が多少あることを、設備や人材が劣った他のところでやるとどうなるかは想像に難くない。

「本当ならかなりまずい事態ですので気を付けてください。特に榛名さんみたいなタイプは危険かもしれないです。」

「それは・・・実験台としてってことでしょうか。」

「そこまでは何とも。でも榛名さんも補助艤装ができるまでは警戒はしておいてください。」

ただでさえうちは出入りが多いうえ、榛名がいるところは隣の島。

何かあったときに迅速な対応が難しい可能性がある。

「わかりました。」

「ありがとうな。ちょっと川内に探りを入れさせてみるか・・・。」

川内には苦労を掛けるなぁとぼやくと明石が言いづらそうに話を続けてきた。

「あともう一ついいですか?」

「まだなんかきな臭い事でも?」

「いえ・・・。さっき回りを見た時に見えたんですけど・・・。あそこの畑で犬○家の一族をやっているのは誰ですか?」

明石が指をさした方には足とその隣には何か棒状の突起物が並んでいる光景だった。

「俺の部屋にカメラを仕込んだ奴がいてな?」

「あっもうわかりました。」

「塩ビ管で空気穴はあるから大丈夫だよ。」

「・・・カメラの購入記録見ます?確かうちで開発したの買ってましたよ?10台位。」

「・・・・・・5台まではみつけたんだけど。」

明石は何かを察した顔をした

「見積書と購入控えを一緒に送ります。いろいろな種類を買ってましたので。」

「・・・たのんだ。」




鈴谷と熊野の改二実装に伴って5‐3を押し通って5‐4で卯月堀兼レベリングをしていた作者です
おかげさまで65の鈴谷がめでたく76まで急成長
50くらいのキソーも65になって無事雷巡に改装
30ぐらいの熊野も50までレベルアップいたしました
そして120あったバケツが8に無事暴落いたしました
卯月掘れたおかげで任務がはかどるはかどるw
・・・長距離毎日グールグル
卯月が出ない呪詛でつぶやきが埋め尽くされておりました・・・

鈴谷の改装レベルが気になる・・・
80以下であってくれないかなぁ・・・(90位まで一応上げますけど)


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駿河諸島鎮守府と姉妹

「はぁ・・・これで全部だな?」

「ぶー・・・。」

「ぶーじゃない!全く・・・。」

 

 

鎮守府執務室

 

 

提督の部屋に望月が仕掛けた残り5台の隠しカメラが並べられていた。

「いったいどこからこんなカメラを買う金なんて調達してくるのやら・・・。」

「いやー。ここ給料良いじゃん?」

「・・・減給か。」

「勘弁してください。」

間延びした口調がなくなり、びしっときれいな土下座をかます。

「今回だけだからな。頼むから盗撮関連は勘弁してくれよ?」

軽くため息をつき、スケキヨの刑以上の罰は免除した。

「りょーかーい。」

「それにしてもそんなに支給してたっけか?」

うーんと頭の中で考えてみた。

 

給料形態としては基本給は艦種が大型化するほど増えていく。

つまり駆逐艦は最低給にあたる。

だが、そこに上乗せとして任務参加率、役職、勤続年数などのもろもろが鎮守府ごとの裁量で上乗せされている。

他の鎮守府だと駆逐艦が戦艦や空母よりも高所得だったりすることも多々あるらしい。

 

 

 

「こっちに転属してから約倍くらいになったよ~。」

「え?!教艦ってそんなにもらえないの?!」

大本営所属と言えば超高給取りのイメージがあったので、うちの方が給料がいいとは思ってもいなかった。

「いやいや・・・。ここが異常なだけだよ?みっちゃん何かにつけて全員役付きにしちゃってるし、あたしらは書類が9割任務なわけだから自動的に乗っけてもらえるし。」

「うちは人手が少ないからな。その分仕事大変だし、休みもとりづらいから代替としての措置だけどね。」

そういえばみんな何だかんだ一定期間を過ぎたら何かしらの役職に就けていた。

「深雪と二人でびっくりしたよ。時雨に聞いて納得したけどさ。他の転属艦もびっくりするんじゃない?」

「どうだろね。」

次の転属の子なんかは特にひっくり返るかもなぁ

なんてことをおもっていると電話がかかってきた。

一応休憩時間なんだけどな

そうは思っても緊急の連絡だった時が怖いため、電話をとる。

 

『はい。駿河諸島鎮守府の耳本です。』

『おおちょうどよかった!桐月じゃが。今から大本営に来れるかの?』

『?いったいどうしてまた?』

『休憩中に本当にすまん!じゃけど頼めんかの?』

『ええ・・・?いつぞやの時みたいにくだらない用事じゃないですよね?』

『いつぞやのって・・・。そんなことあったかの?』

はてと本当に覚えていないようなのでとげとげしく返す

『砂安中将に自慢する文月の写真を選んでくれって夜の九時に大本営に呼び出されたことは忘れませんよ?』

『くだらない事じゃないわい!あれだってn』

『それじゃあまた今度』

耳から受話器を離しそのまま電話を切ろうとすると大声で叫ぶ声が聞こえた

『まてまてまてまて!断じて違う!保証するわい!違ったら木の下に埋めてくれても構わんから!』

『わかりました。望月とスコップ持っていきますね。』

『・・・どうしてこうなったんじゃろ?』

『胸に手を当ててみればわかりますよね?それでは。』

 

 

 

 

「というわけなんで事後承諾で悪いんだが一緒に来てくれんか?」

「いいよ~!ふっふ~ん。みっちゃんとお出かけお出かけ。」

こうやってちゃんと普通にしていればいいのに

などとひそかに思っている提督の事などつゆ知らず。

自室に着替えに行ってしまった。

 

 

「失礼します。」

ここ最近よく来る大将室に入るといつものようにのんびりと大将が執務机に向かっており、雰囲気からしてそこまでの深刻さを感じなかった。

「すまんの急に呼び出してしもうて。」

「いいえ。あ、こちらチャーター機の請求書です。」

椅子から立ち上がり、手前のソファーへと誘導される。

「おおわか・・・ってこれわしの個人名で出してあるやつじゃないか!?」

「がんばってください。」

「・・・・え?まじ?」

受け取った大将の顔が徐々に青くなっていく。

「うそですよ。ちょっとした仕返しです。」

そういって懐から大本営名義で発行してもらった領収書を渡す。

「肝が冷えたわい・・・。ま、掛けなさい。」

「お茶もどうぞ~。」

「ありがとう。」

「文姉さんさんきゅ~。」

望月はお茶を受け取ると啜り始め、文月はニコニコとほほ笑んで大将の横に座った。

「元気そうで安心したよ~。耳本さんに迷惑かけてない?」

「・・・あー。」

「・・・」チラッ

「?どうしたの?」

「大丈夫だよ。ちゃんとうちの戦力としてガンガン働いているよ。」

うそは言っていないが・・・

こういうところが甘いんだろうなぁ

そんなことを思っていると目の前に白い封筒が置かれた

「これは?」

「特別機密書類じゃ。鎮守府に帰ったら開けてくれるかの。」

「・・・・・・・」

じっと大将の顔を見ると文月が入れてくれたお茶を目をつぶっておいしそうに啜っている。

「?どうかしたかの?」

「・・・・えい。」ペリ

「あっ!」

封筒を裏返し、蠟で封印された封筒を開けた。

大将の顔は先ほどまでのにこやかさから一転、いたずらがばれたような子供の顔になった。

「・・・・やっぱりまたこれですか。」

封筒から出てきたのは数枚の上質な紙

表記されているのは辞令で、そこには4月1日付で大佐への昇進と書かれていた。

しかも、印鑑が黒いところを見るとどうやら写しであり、これをもし見ずに帰ったら自動的に決まっていただろう。

「お断りします。」

「・・・柏崎君と彩雲君は少将への昇進OKじゃったよ?」

「よそはよそ、うちはうちです。」

「ぐぬぬ・・・。そこをなんとか・・・ね?」

「・・・・・じゃあ条件付きでもよければいいですよ。」

「ほんとうかの!で、いったいどんな条件じゃ?!」

「私の階級を向こう5年引き上げ無しならいいですよ。」

「・・・・・・。」

がっくりとした様子で頭を垂れた

 

 

 

 

骨田や杉蓋の逮捕により、ハト派の勢いが強まった今

新しく上層部会にハト派のメンバーを加えてさらに確固たるものにしたいのだろう。

補給基地として国内の提督への圧力がかけられる数少ない提督である俺がハト派に入れば確実に大きな力を持つ。

上層部会は将官のみで構成されている。

俺が大佐になったところで何も変わらないだろうと思った方は大間違いだ。

絶対一か月後には少将への昇進通知が来るにきまっている。というか絶対用意している。

 

それは裏を返せば軍政に参加しろという返しでもある。

日本の資源に関する案件はうちがすべてを握っているといっても過言ではない。

そんな奴が軍政に参加したらどうなるか

あからさまに面倒ごとしか生まない

だったら今の佐官でとどめてもらった方がよっぽどましだ。

 

 

「くそぉ・・・。」

「一つアドバイスしますと、大将。心を読まれないように目をつぶる癖。直されたほうがいいですよ。」

「・・・直さないとならんのう。」

「それじゃ、用件も済んだようですし・・・」

「あ!いやいや!まだもう一つあるんじゃ!」

慌てて引き留められ、浮かせた腰を再度卸す。

望月は提督によっかさってスマホをいじっている状態だ。

「ほかに何かありましたっけ?」

「聞きにくいことを聞くんじゃが・・・」

「?」

 

 

 

「お前さん。どっかでナンパせんかったか?」

 

 

 

「・・・・・は?」

ついにこの爺ぼけたか?

そんな言葉が出かけたが飲み込んだ

「なにそれkwsk!??」

望月がスマホを放り投げて大将の襟首をつかんだ

そしてはよ!言わん!かい!と普段の口調が吹っ飛び大将の両肩をつかんで揺さぶりまくっていた。

その隣では文月がのほほんとお茶を啜って今日は元気だねぇ~と言っていた。

「やめ・・・しぬ・・・もち・・・すとっ」

「はいはい。落ち着け。ナンパなんてしてないからなー。」

望月を大将から引きはがし、落ち着けた。

 

 

 

「助かった・・・。なんか見えちゃいけない川が見えたわい・・・・・・・。」

「で?一体全体なんでまたナンパなんて?」

襟元を整え、少し冷めたお茶を一気飲みし、ゴホンと咳払いをして声を整えて話し始めた。

「いやな?望月と深雪が転属したのちに代役に据えた教艦がおるんじゃが、そいつが転属したいと申し出ておってな?どこに行きたいのか聞いたんじゃが、ミカン持ってた人としか言わなくてな。」

「・・・あ。」

「みっちゃん!心当たりあるの!?」

望月は首が引きちぎれんばかりの速度で振り向くと肩をつかんできた。

大将みたく揺さぶらては敵わないので、落ち着けと再度言ってソファーに座らせる。

「たしかに、ある子にミカンあげましたね。」

「やはりか。正直言ってまたしても教艦の交代は避けたい・・・というか後任人事をまたやらなきゃならないと思うと・・・。」

大将の顔が薄ら笑いをしているがその顔色は優れない。

それもそうだろう。

教艦を務める艦娘は一定以上のベテランかつケッコンしていないことが条件だ。

大本営所属は栄誉あることなのだが、当然制約等も多くし、なによりも住み慣れた鎮守府を離れなくてはならないというのが嫌がられる主な原因だ。

条件の合う子はいても了承を取り付けるのは大変なことなのだ。

「やっとやっとで見つけた子なんじゃ・・・どうかここに残るように説得してくれんか?」

「大変なのは知ってますし、いいですよ。なるべく努力はします。」

「そうか!じゃあ今から呼ぶから待っててくれ。」

 

 

 

・・・努力はします(むりなときはむりです)

 

 

「大丈夫だよみっちゃん。何が何でも断らせるからね!」

「・・・おう。」

フンスフンスと気合たっぷりに追い返す気満々である

これでも教艦を務めた望月だ。

そんじょそこらの子には負けない実力がある。

「ところでどんなこなわけ?その泥棒猫は?」 コツコツコツ

「ん?あー・・・駆逐艦だったよ?」 コツコツコツ

「駆逐艦?あたしの力なら余裕だね。」 コンコンコンコン

「お?来たみたいじゃの?どうぞ。」

 

 

 

 

「皐月だよ!大将、いったいなんの・・・。あ!」

「やっぱりか。」

「・・・・・・・・え?」

それぞれ、皐月はうれしそうな顔をし、提督は合点がいったという顔を

そして望月は先ほどまでの余裕な顔は吹っ飛び、絶望の顔をしていた。

「大将!見つけてくれたんだね?!改めて皐月だよ!よろしくな!」

「あの時は名前も言ってなかったな。耳本だ。よろしく。」

「じゃあ大将!早速手続きを・・・。」

「あー・・・そのことなんじゃがなぁ」

「ひょっとしてだめって言わないよね?前のもっちーと深雪が自己都合で転属したんでしょ?僕だけダメってこと?」

大将はこちらに視線を向けた

 

助けて?

 

自分では無理だと判断し、先ほどまで息巻いていた望月を見る

「皐月姉ぇ・・・まじかー・・・・・・。」

 

 

あ、これ多分駄目なやつだわ

艦娘にも同期がおり、その姉妹艦などは本当の姉妹関係みたいなつながりを持っている。

望月のこの怯えようからしてその力関係は大体お察しだろう

 

 

「あれ?もっちーじゃん!?ひょっとしてもっちーが転属したのって・・・」

「・・・・・・・・皐月姉ぇ?ひょっとして?」

「うん!僕はこの人を嫁にもらうって決めたんだ!」

「嫁に取る?!・・・・さすがの皐月姉ぇでも・・・・・それは譲らない!」

「へぇ僕とやる気なの?かわいいね!」

 

嵐が過ぎ去ったように二人は表へと出て行った

 

 

 

「みっ耳本君・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・無理です。」

何が無理なのかは大体わかったのだろう

現実逃避からか文月の膝の上に頭をのせて、額に手を当てていた。

普段ならシバキ回すが、心中を察して見逃すことにした

そして、この後の処理をどうしようか考えなければならないことに頭が痛くなってきた




やっと長門が出てきました・・・
もう他の戦艦70~90代だよ・・・

メンテに入りましたね。
はてさて鈴谷の改二は来るのかw?
来たら運営を尊敬しますw(予想では春イベ直前くらいかなと見ます。)
でも一番気になるのは次の軽巡と戦艦の予告なんですよね・・・
戦艦は大方長門型で想像つくんですけど
軽巡がなんとも・・・
個人的には声の追加があった由良さんあたりかなぁと
次点で5水戦があと一隻でそろう名取とみてますけど・・・
どっちもレベル一桁・・・・(やばい)


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駿河諸島鎮守府の小競り合い

「やほー!みっちゃん!鉄頂戴!」

「カエレ!」

手近にあった文鎮をひっつかむとドアを壊れんばかりに開けた人物にブン投げた。

「ゴブゥ」

見事腹の真ん中に命中し、その場に倒れこんだ。

「悪くないけどちょっと文鎮はひどいや・・・。」

「うるせえ。ノックもなしに突撃してくる方が悪い。」

執務机から離れ、文鎮を拾いに行く

「あ。ゼロいる?」

どこから取り出したのか零戦の模型を目の前に出してきたのでそのまま拳骨をお見舞いした。

そのやり取りを見ていた吹雪は苦笑しながら執務机の中から応接室のカギを取り出した。

 

 

 

 

「ほいで?何の資源が足らんの?」

「鉄が10万だね。ボーキももし頼めるなら5万ほしいかな?」

大本営の許可印が押された申請書には鉄10万の補充許可しか記載されてなかった。

「2万5千」

書類を見た後、数字を提示する。

「4万」

「・・・3万」

ちらりと彩雲の顔を見てみると少し顔がゆがんでいる。

おそらく次に提示する数字を考えているのだろう。

「3万8千」

「それじゃ鉄10万だな。」

「ちょ!まっ!」

「3万とおまけで2千くっつけてやる。それで我慢しなさいな。」

「ちぇー・・・。」

「相変わらず司令官はえげつない揺さぶり方やねぇ。」

龍驤が提督の隣で笑っていた。

 

監視カメラで執務室に飛び込んだ奴の画像を見て慌ててきたのだ。

たまたま目を離していたタイミングだったため、誰が飛び込んだのかわからなかったのだ。

飛び込んだ人物が彩雲とわかると焦って損をしたと言っていた。

 

 

「3万7千なら3万5千を提示してやったんだがな?」

「ちょっとでも多めにってちらついたのが失敗だったなぁ。」

彩雲は照れくさそうに頭の後ろに手をやった

「そういえば嫁さん誰もつれてきてないのか?」

スマホで時雨に支給資源の指示を送り、不思議に思ったことを聞いた。

「ああ。ちょっと忙しくてね・・・。今回の作戦は大変だったよ。」

 

 

今回の作戦の第一段階では、舞鶴、若狭、七尾方面への海上資源輸送だったのだが、なんと下関海峡に機雷が発見されたのだ。

安全のため、艦隊は大回りルートに限定されたうえ、九州、四国、中国の鎮守府は機雷の除去作業に追われた。

彩雲のところなんかは悲惨だったらしい。

除去作業の統括役の仕事を回されたせいで、連日下関方面での作業となったらしい。

当然出撃した際の燃料、弾薬が支給される。

だが、修理の際の資源は各鎮守府の調達に任されてしまった。

聞くところによると、出撃の際の資源は仕方ないが途中でけがをするのはそちらの怠慢ではないか?

腹立たしいことこの上ないが、上層部の決定であったため仕方なく飲んだとのこと。

案の定連日修理に追われた結果、鉄資源が枯渇しかけていた

 

「ま、何はともあれお疲れさん。」

「みっちゃーん!俺を癒して!」

「ええい!うざったい!離れろ!そういうのは嫁に頼め!」

「提督。支給資源の用意ができ・・・。」

準備し終わって報告に来た時雨が固まった

それもそうだ

自身の提督がよその提督に抱き着かれているのを目の当たりにしてしまった

 

 

「君には失望したよ」

 

 

「これも・・・・・・・また・・・・・いいかも・・・」

「・・・・謝罪の念が湧いた俺の気持ちを返せ」

龍驤は昔頻繁に会っていたため、いつもの事と流していた。

だが、時雨は違う。

鎮守府建屋が今の農園部室の頃は彩雲もまだ忙しくなく、叢雲を連れ立って遊びに来ていたのだ。

2~3か月に一回は同期みんなで集まったりもした

鎮守府建屋が現在の場所に移ると、それぞれの事情が変わって忙しくなった。

前回の秋祭りの時が2~3年ぶりの全員集合だったりする。

話は戻ってそんなじゃれ合いを知らない時雨からしてみたら彩雲の扱いはどうなるか

 

ダッシュで近寄ると腹パンで殴り飛ばしたのだった。

彩雲はそのまま机の上のお茶をかぶって、2,3メートルくらい吹っ飛んだ。

流石に大丈夫か?と思い近寄った時に発した一言がこれである。

 

 

 

「いやー愛されてるね!」

「・・・」ジト

「こら。こいつはいつもこんな感じだから大丈夫だよ。」

彩雲は地べたで正座させられており、時雨は警戒感丸出しの顔をしながら提督にひっついていた。

「まったく。ほれ、俺の印鑑押しといたでこれを窓口にもってけばいつでも受け取れるよ。」

許可書やもろもろを閉じこんだファイルを渡した。

「あと時雨・・・そろそろ離れてくんない?動きづらいんだけーが。」

「・・・」

すっかり威嚇状態に入ってしまったのか聞く耳を持たない。

「龍驤・・・。何とかして・・・。」

「えー・・・司令官の言うこと聞かんならうちが言うても聞かんとおもうで?」

とは言いつつも引き離しにかかった

 

 

 

 

その時龍驤はあることに気が付く

提督の頬が若干赤くぎこちないことに

いったい何が原因なのか

腕にひっついている時雨

当然腕を抱き寄せた形になる

ということは必然的に胸にあたっているということだ

時雨の胸はここに所属している駆逐艦の中でもなかなかの物だ

というか上位に入る

自身の胸と比べれば結果は言わずもがなだ

こちらをじっと見て固まっているのに気が付いた時雨

表情こそ変えないが先ほどより強く腕に胸をひっ付けた

 

 

 

 

「うがぁぁ!!!」

「うお?!」

時雨の襟首をひっつかみ、無理やり引き離した

「痛いじゃないか・・・。」

「じゃかましいわ!その喧嘩買ったろうやないか!」

襟首をつかんだまま二人とも部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

「え?何があったの?」

「やれやれ・・・。鈍いねぇ。」

彩雲はかぶりを振って立ち上がった。

「?」

「それじゃ僕はこれで。ボーキのおまけありがとうな。」

「ああ!ちょっと待て。」

時雨が持ってきたファイルの中から一つを抜くと渡した。

 

「昇進おめでとうさん。ちょっとしたプレゼントだ。」

「こいつは・・・。ありがとう。大事に使わせてもらうよ。」

中には旅館の二人部屋無期限無料パスとボーキの追加支給1万8千の許可書だった。

「SMプレイにつかうなよ?」

「それもいいねぇ。」

「そんなことしてたら採掘場にたたきむからな?」

「冗談だよ。・・・それもいいかも。」

「おい。」

「ほんとに冗談だよ!・・・お礼と言っちゃなんだけどこれを。」

渡されたのは書類束

表紙には何も書かれていないので、一枚目を斜め読みしてみる。

「・・・・・・・!これって。」

「最近西方海域が騒がしくなってきた上、国内の将官が襲われる事件。きな臭さ満点だ。」

渡された書類束には、こちらには回ってきていない情報だった。

西方海域への出撃数の増加はここ数週間で倍に増えている事

将官襲撃に関しては、幸い今のところ軽傷で済んでいるとのことが書かれていた。

報道管制もされているということは何か裏がありそうだ。

「気を付けてな。」

「ああ。みっちゃんこそ。」

 

彩雲が応接室を出ていくときに扉を開けると廊下では時雨と龍驤がまだ喧嘩をしていた。

正確には時雨が煽っている感じがするのだがいったいどうしたのだろうか

取りあえず止めるため、自分も部屋を出ることにした。




ついに陸攻が開発落ち!
イベントで陸攻特効って書かれていても悔しい思いをすることがこれでなくなるはず!(現在一機のみ)

そして気になるのが二式水戦熟練・・・
これ鈴谷か熊野持ってきそうだなぁ・・・
次のメンテで改二くるといいな(80以上で来ることないでしょと慢心中)


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駿河諸島鎮守府のひな祭り

今更ひな祭りネタをやってますが許して下さいなんでも島風


寒さもある程度引いてきたある朝

業務負荷がある程度減って部屋で過ごす時間が増えてきたが、相変わらず部屋に置いてある物は少ない。

寒さも引けてきたしそろそろ釣り道具でも実家から取り寄せようか。

はたまた、将棋盤でもいいな。

こんなことを考える余裕が寝起きにある時点で大分楽になった。

時刻はマルナナサンマル

ベットから起き上がり、眠気を払おうと顔を洗いに行く。

ここで眠気に負けたらおそらく10時までは起きれないだろう。

寝癖を梳かし・・・と思ったが爆発してしまっており、手に負えそうもないためそのままシャワーを浴びることにした。

 

「あー・・・サッパリした。」

シャワーと髭剃りなどの身だしなみを整え終わり、クローゼットを開ける。

「・・・・は?」

 

中に入っていたのは紺色の着物だった。

 

「・・・んん?どいうこと?」

昨日までは海軍の軍服が入っていたはず

それが今日は羽織袴の着物になっている何でいったいどんな天変地異があったのだろうか

仕方なく、クローゼットを閉めて私服が入っているはずのタンスを開ける。

「・・・・ない。」

昨日まであったはずの私服はすべてなくなっていた。

寝間着やジャージすら残っていない。

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

「司令官!いますか?」

「吹雪か?今開ける。」

部屋の扉を開けるとそこには着物を着た吹雪がいた。

「司令官?!その恰好は!」

提督ももちろん先ほど部屋に唯一あった羽織袴の着物を着ていた。

「なんかもう犯人見えてきたぞ・・・。」

「だれですか!いったいこんないたずらをしたのは!私のところも私服や制服が一切なくて・・・。仕方なくこの着物を着てきたんですけど・・・・・・・。」

数枚を羽織っているところを見るとすべてを着てきたわけではなさそうだ。

「あの・・・提督。」

後ろから話しかけられ、振り向くと山風とその後ろに時雨がいた。

こちらも着物を着ているが、また違ったもの・・・

はっきり言わせてもらうと3人官女の格好していた。

「時雨。青葉はいるか?」

「うん。昨日こっちに来ているよ。今日も滞在しているはずだよ。」

予想通りだ

今日は3月3日のひな祭り。

 

 

「あ!司令官さん!どうですか?着物の着心地は?」

「青葉ぁ・・・。」

「え?!なんでそんな怖い顔しているんですか?!」

取りあえず探そうと歩き出したら、階段で青葉に会った。

少しピリピリして話しかけると、何故怒っているのかわからないといった表情だった。

「こういうことは話を通せって・・・」

「え?望月さんから話行ってないんですか?」

「え?」

「え?」

 

 

 

聞くところによると、予想通り新聞の記事で各鎮守府のリアルひな壇の写真を載せようといったことになり、うちの担当は内浦の青葉が・・・というか担当できるのが一人しかいないため即決で決まった。

しかし、どう持ち掛けたらいいかわからず、考えていたところを望月に話しかけられ任せたということだった。

「でこうなったと。」

確かにあいつなら鍵のピッキングができるだろうから納得がいく。

そして、黙っていたのもなんとなくだが察しが付く。

「今度は釣り餌にでもしてやろうか・・・・・・。」

「へ?」

「いや何でもない。まさか一日これを着てろってことはないんだろ?」

「まさか!お仕事もあるでしょうし、一枚だけ写真を撮ったら脱いでいただいて構いませんよ。それよりも受けていただけますか?」

「こうなったらもうやるしかないだろ・・・。で、誰がどの役に?」

「こちらに書かれています!」

 

 

 

お内裏様 耳本

お雛様  吹雪

三人官女 山風、川内、時雨

五人囃子 龍驤、望月、榛名、深雪、58

随臣   古鷹、加古

 

 

 

 

「はぁ・・・。58も巻き添え食ったか・・・。」

「そうでもないですよ。大本営支給の服がある子が何人かいますし。」

「何それ怖い。ってかあいつらは何やってるんだ・・・。」

頭に、夏木と桐月大将の笑顔が浮かんだ。

写真には上から、大和型、川内型、潜水艦5人、一航戦の二人といった並びだった。

「それプラス山風さんに三人官女の季節限定制服が支給されてますよ。」

なんかもう頭痛い・・・。

「もういいからさっさと写真撮って望月を釣り餌にして終わりにしたい・・・・。」

 

 

 

「一枚だけ」

確かにそう約束した。

隣の島に特別に用意されたひな壇には、すべての飾りつけを終えてあとは人形役が座るだけの状態になっていた。

艦娘とて娘なのだからお雛様にあこがれるものなのだろう。

写真を撮り終えた後、ふとお雛様側にいた山風がぽつりと

「吹雪姉ぇはいいな・・・。あたしも・・・着たかったな。」

これを聞いた吹雪がこっそりと提督に持ちかけた

「司令官。お雛様役を変わった写真とってもいいですか?」

本人が着たいと言っているし、それならばまぁいいかということで了承した。

実際山風は飛び上がるほど喜んでいた。

よかったよかったと提督も時雨もうなづいていた。

 

「提督。ありがとうね。」

「いやいや。やっぱり女の子だし着たいんだろう。」

「そうだね・・・・。」

「・・・時雨も着るか?」

「いいのかい?」

ちょっとうらやましそうな視線を向けていたのがありありと伝わってきた。

もう一枚くらいなら

 

大体の皆さんは予想ができたのだろう。

一枚だけ

その約束だったのが2つ例外ができた。

此処の艦娘は誰しも思いの強さは違えど提督に心を寄せている。

皆、お雛様をやってみたい

山風の時はみんなも賛同し、協力してくれた。

だが、時雨も撮っていいとなった時状況が変わった。

撮り終えた後で、龍驤が川内が古鷹が榛名が・・・・

うちも!私も!

皆かわるがわる写真を撮りたがってしまったのだ。

 

結局、全員がお雛様になった写真を撮ることになったのだが、問題が一つ。

お内裏様役の交代ができないことだった。

 

目当ては提督なわけだから、交代は許されない。

しかも、お雛様役は十二単のため、着付けに時間がかかる。

それをあまり動かず、じっと待たなくてはならないのだ。

もうやめようというのは気が引ける。

あんなに楽しそうな顔をしている子たちを見ると我慢しなければ

 

撮影を始めたのはマルキュウマルマル

終わったのはヒトゴーマルマル

 

最後の58の写真を撮り終え、立とうとしたら・・・・

「あれ?」

尻の感覚がなく、立てなかった。

 

 

 

「すみません・・・司令官。」

「いいんだ。吹雪ちゃん・・・。みんなが満足してくれたんなら。」

執務室のソファーにうつぶせになりながら返事をする。

急ぎの書類だけサインをし、残りは明日に回すことにした。

尻の感覚がないってこんな感じなんだ・・・

取りあえず望月はちょっと出張に行ってもらった

 

・・・どこへって?

ちょっと海の(底)まで




三越コラボ
深雪がまさか日本酒のラベルになるとは・・・!
絶対買わねば!
しばふ艦で固められているということは最後に吹雪ちゃんが・・・?
でも深雪がラベルになっただけでもう大満足だったりしますw
バレンタインボイス・・・唯一省かれたからなぁ(;´・ω・)
吹雪型に限定グラ来ないかな・・・

そして・・・勲章が・・・勲章が足りぬ・・・!
先日溶鉱炉回しましたら・・・
5時間→陸奥
5時間→陸奥
5時間→ビスマルク

ファ!?(゚д゚)
これに伴いまたしてもほかの設計図要求の子たちがさらに遅れることに・・・
というか瑞鶴も来ちゃったからどんどんやばいことに・・・


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駿河諸島鎮守府のホワイトデー

※レシピが7~8割です
実際作者が作っているレシピなので参考程度にはなるかもしれないです


「よしやけたっと・・・。」

オーブンを開けてそうつぶやく

明日はホワイトデー

先月貰ったチョコレートのお返しだがここ数年はクッキーを作って渡している。

「いやー・・・いくら作るのが好きでもさすがに疲れた・・・・・・・」

 

1人10枚渡す計算で作ったら120枚+せっかくだからゴーヤにもと思いもう10枚と深海棲艦の二人に10枚ずつ

そして失敗したとき(割れてしまったり等)の予備で20枚

 

計170枚焼くことになったのだ

 

どこかでばあさんがクリックするだけで焼いてくれるのがあったのような・・・?

そんなことはさておき、やれやれと肩をたたきながら先に粗熱が完全に取れたクッキーを詰めていく。

ピンクのビニール包装紙に詰めると誰に渡すか目印を書いていく

望月は月、古鷹は鳥、時雨はしずく、山風・・・山風?・・・うきわかな?

マークで表わせればいいが川内や加古はマークが思いつかなかったため

漢字で夜と酒にしてしまった(実際間違いじゃないし)

 

 

後は最後に焼いたクッキーが冷めれば終了だ。

その間に調理器具を洗っていく

料理を作るのは好きなのだがこの洗い物がなんとも好きじゃなかったり・・・

料理は洗い物まで含めて料理なのだ

たまにならいいものだが毎日はちょっと気が重くなる。

鼻歌交じりに洗い終わり、残った材料を冷蔵庫にしまう。

そんな時、ふとあることを思い出した

「・・・今年もやるかなぁ」

 

冷蔵庫からクリームチーズを一パックと卵2つ、無塩バター、生クリームを一緒に取り出した。

さきほど仕舞った薄力粉と砂糖を戸棚から取り出す

島で取れたレモンを一つ出し、既製品の固焼きビスケットを用意して準備は完了だ。

 

まず既製品のビスケットを12枚~15枚ほどビニール袋かジップロックに入れて粉々にする。

この際、薄いものを使うと穴が開いてビスケットが飛び散る可能性があるから注意だ。

 

ある程度の塊を残して砕き終わったら、バターを30グラム加えてなじませる

常温に戻すか、レンジで10秒ほど温めると簡単に混ぜられるのでおすすめだ

 

なじませたら、クッキングシートを張った18㎝ケーキ型の底に敷き詰め、底が隠れるように平らに整地し、冷蔵庫で冷やしておく。

 

材料の軽量に入る前にオーブンを190度に設定して温めておく

レモン1個分を絞り、レモン汁にしておく

生クリーム150mlに卵2個

砂糖は60g・・・だが50gに減らして作ることにした

甘さ控えめというやつだ

代わりにレモン汁を多めにしているためレモンの風味が強いものに仕上がる

薄力粉25gで材料の準備は完了だ

ワンポイントで時間があれば砂糖と薄力粉は篩いにかけておいた方がいい

そちらの方が空気を含んで滑らかな舌触りになりやすい

 

ここからはものすごく早く感じると思う

室温に戻したクリームチーズ200gと砂糖を泡だて器で混ぜ合わせる

この作業が一番力を使うので男性には向いている仕事だ。

目安は滑らか・・・というよりかドロドロになるくらいまで混ぜる

その後は卵、生クリーム、薄力粉、レモン汁の順番で混ぜ合わせる

生クリーム入れてからは混ぜすぎないように注意することと薄力粉はできればふるいにかけながら入れると仕上がりがよくなる。

 

混ぜ終えたら先ほどまで冷やしておいたケーキ型を取り出し、流し込み180度で35分焼く。

オーブンに入れる前にアルミホイルでケーキ型と同じサイズの覆いを作っておくと便利かもしれない。

表面の焼き色を固定したいときにアルミの覆いをするとその色で固定できるから覚えておくとちょっと便利だったりする

 

「あー・・・疲れた。」

2回目の洗い物が終わるころにはクッキーも冷めており、最後のラッピングを終わらせた。

 

 

 

 

「はーいお返しだよ~。」

翌日

それぞれの部署に出向いて昨日焼いたクッキーを配っていく

それぞれうれしそうな顔をしてくれると

ああやっぱ作ってよかったなぁと実感がわく。

山風なんかは泣き始めてしまい大変だったが・・・

ゆっくりと回っていき、最後に榛名に届けるとすでに3時になっていた。

地下鉄で鎮守府に戻り、執務室に入ると

「お、きたで!」

「提督~?今年もあるんでしょ?」

龍驤と川内が吹雪と一緒に紅茶を飲んでいた

さきほど渡したクッキーを食べてないところを見ると予想は当たったようだ。

 

昨日作ったレモンチーズケーキを冷蔵庫から取り出す

まだ鎮守府が小さかった頃、趣味で作ったチーズケーキを吹雪が気に入ったらしくホワイトデーのお返しは何がいいか聞いた際、リクエストされたのだ。

それから鎮守府現在の場所に移るまでは毎年チーズケーキを作って一緒に食べていた

今は人数が多いため、3ホール、4ホールも作ると俺が疲れ切ってしまうため、クッキーにしている(そうはいっても疲れるが)

だが、事情を知っているやつはこうして毎年俺なら作っていると見越してくるのだ

・・・作る俺も俺だけど

「4等分でいいか?」

「いいや!6等分だね!」

給湯室で切り分けようと包丁にお湯を掛けると聞いたことのある声がした。

「え?」

執務室に戻ってみるとちゃっかり深雪と望月が座っていた。

「・・・どっから?」

「あっから。」

天井を指さす

二人の真上の天井の色がうっすら違うことに今更気が付いた

明石に改築してもらったとき、このあたりだけは空洞にしていたことを思い出した。

「な?あたしの予想通りだっただろ~?」

「さすがもっちー。でも天井の件で怒られるのはあたしは嫌だからね?」

「・・・だめ?」

望月が得意げに胸を張ったが深雪の一言でちょっとしょんぼりした。

「なんやー・・・ついに3人の秘密が漏れてしまったなぁ・・・」

「良いじゃないですか龍驤さん。多分、司令官がお菓子作りが好きなこと新米時代の時から知っていたんでしょうし。」

「そうだろうね。ま、食べれれば私はそれで十分だよ。」

3人だけの秘密がばれたことにちょっと寂しさを感じながらも新しく加わった仲間を加えて再び雑談を始めた。

にぎやかになった執務室を後にし、苦笑しながらケーキを6等分しに給湯室へと戻った。




というわけでホワイトデー(二週間遅れ)です(白目)

日本酒で深雪の書き下ろしキター(゚д゚)
ほんとに一報見た時(゚д゚)こんな感じでしたw
最終日は吹雪の発表で舞い上がってましたね
いやぁ・・・墨絵っていいですね!
絶対買わなくては・・・!

そんな喜びを閣下の動画で作ったりしてたらこっちが描きあがるのが遅れるし(白目)
動画作るの楽しいけどね・・・

そして春はおそらく大規模で確定・・・やだなぁ(;´・ω・)
絶対丙に落ちるところあるんだろうなぁ・・・
しかも鈴谷の改装が一気に不気味になってきた辺りがもう・・・
コンバート改装使いづらいから勘弁してほしいんですけどね


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駿河諸島鎮守府の混乱

「それじゃあ散会で。」

週一で行うようになった朝礼を終え、椅子に腰かける

時刻はマルハチゴーゴー

吹雪は川内と古鷹のところに書類を取りに出た。

自身も仕事をしようとペンと書類をつかんだとき、電話が鳴った。

 

『はい。駿河諸島鎮守府の耳本です。』

『わしじゃよ。』

『・・・チッ』

『舌打ちはやめてくれんかのう・・・。ふざけたのは悪かったから・・・。』

思わず出てきたほんし・・・本音を隠し切れなかったため、しょんぼりとした声が返ってくる

『それで?どんな面倒ごとですか?』

『いやいや。今日はそうではなくてだな。吹雪君か深雪はそこにおるか?』

『あーすみません。今二人とも席をはずしてまして・・・何なら呼び戻しましょうか?』

深雪は今は警邏の手伝いをしているため、内線が使えない。

吹雪ならどちらか二人に内線を飛ばせば行けるだろう。

『そこまで重要な話じゃないから大丈夫じゃよ。お前さんが伝えておいてくれればそれで十分じゃし。』

『わかりました。それで、いったい何の用事ですか?』

『お前さんは民間との商品コラボは知っとるかの?』

『ええ。夏木が進めている艦娘の宣伝活動の一環ですよね?』

『そうじゃ。それでな?お前さんところの吹雪君と深雪がラベルになった日本酒が売り出されることになったんじゃ。』

『それは本当ですか?!』

 

 

 

艦娘の宣伝活動は夏木が今の地位を確立する原動力となった

歌に始まり、民間企業では牛丼屋やデパート、最近なら服屋など様々なジャンル、業種に持ち掛けていた。

艦娘は誰も見目麗しいものばかり

企画はおおむね成功、大成功ばかりだ。

当然だが、コラボするにあたってはモデルが存在する

鎮守府ごとに所属している艦娘はよくよく見ると同じ艦娘であっても、顔つきが違ったり、身長なども違ったりする。(性格や考え方も当然違う)

そのため、コラボ企画の際には大本営が選定をし、提督や司令官を介さず艦娘に直接かつ秘密裏に計画が進められる。

そして、売り出しの数日前に提督や司令官にお披露目となるのだ。

もちろんこのことは手放しで喜べる案件である。

駿河諸島鎮守府では初、しかも深雪に至っては深雪自体が初めてのコラボ

こんなに喜ばしいことはない

 

 

 

『本当じゃよ。二人とも快諾してくれてな。今日はそのことを公表しても大丈夫という連絡をしようと思って電話したんじゃ。』

『そうですか!それで?発売日はいつなんですか?』

うちの鎮守府の子の商品

ましてや初だなんて手に入れないと

『えーと・・・あ、すまんもう売りに出てたわ。』

『・・・・・・・・・は?』

電話をつないだまま、ノートパソコンでデパートのオンラインショップにアクセスする。

本来、仕事用のパソコンでこういったサイトを見るのは褒められたことではないのだが、急ぎの事なので仕方ない。

オンラインショップでは吹雪、深雪、敷波、蒼龍と赤城のラベルの日本酒が並んでいたがどれも売り切れていた。

『いやすまん。手違いで書類がどうもまちがっていたy』

『・・・・・・・・。』

『え?なんて?』

『今すぐお伺いします。』

ワンオクターブ低い声で一言いうと受話器をたたきつけた

そして、引き出しを開けると9㎜拳銃やグロック、Ⅿ1911等が入っている中から一つをひっつかんだ。

「司令官。ただいま戻りました!」

カードリッジを装弾し、ホルスターに入れたところで吹雪が戻ってきた。

「ああ。吹雪ちゃん?ちょっと俺大本営に急な用事出来たから今日は急ぎの書類だけやってくれる?」

鍵のついた引き出しから、書類の決裁に必要な代理のハンコを渡すと足早に執務室を出た。

「あ!はい。護衛は・・・あれ?行っちゃった・・・。」

吹雪はいつもと違う提督の様子に疑問を抱いたものの、あっという間に去ってしまったため、仕方なく執務を始めた。

 

 

 

「・・・どうしよう・・・・。」

一方その頃大本営

ツーツーと無機質な電子音が聞こえる受話器を持ったまま部屋の主である桐月は固まっていた

書類には1週間前の発行日が記載されていた

1週間もこの書類はどこに行っていたのか?

 

答えは簡単

 

ちょっと仕事をお休み(サボった)した結果、こうなった

一言でいうなら自業自得だ

放心しているひまはないと気づいたのは電話が切れてから15分もしてからだった

 

 

 

「とにかく!助けを!」

受話器を置き、信頼できる自身の腹心の砂安中将に内線で電話を掛ける

 

『はい。砂安です。』

『砂安君!助けてくれ!!』

『ちょっと大将!どうしたんですか?!』

いつもと違う様子に砂安はびっくりした声で対応した

『実は・・・かくかくしかじかでな・・・?』

 

 

『無理です。あきらめてください。』

『そこを何とか!な?』

『どんなものを積まれても無理です!それに、自業自得じゃないですか。私を巻き込まないでください!!』

そういって電話は切れてしまった。

 

 

 

 

『深打君!耳本君が!!耳本君が!!!』

『大将!どうしたんですか?』

『実は・・・』

 

カクカクシカジカ

 

『大将・・・。すみませんがそれは無理です・・・。』

『なんとか耳本君の怒りを治めるだけでも出来のか?!』

『・・・大将は拳銃の見分けはつきますか?』

『ああ。つくがそれで治まるのかね?!』

『もし、9㎜拳銃を持っていたら素直に謝り倒してください。嘘や誤魔化しを一切せずにですよ?』

『わかった!』

『で、グロック18を持っていたら・・・』

『持っていたら?』

 

 

 

 

『・・・おとなしく撃たれてください。』

 

 

 

 

『それ死ぬよね?わし死ぬよね?!』

『大丈夫です!おそらくゴム弾かスポンジ弾の物ですから!』

『そうでなくてもめっちゃ痛いじゃないか!助かってないじゃないか!』

『もうその銃持って来ているってことは許す気0ですからね?!とにかく!9㎜拳銃持っている事を祈ってください!あと、多分ですけどもうすぐきますよ!』

『え?もうか!?電話切って30分くらいしか経ってないだけど?』

『おそらくですけどみっちゃんは怒り心頭なんで、基地航空隊の彩雲使ってきますよ?彩雲ならもう到着しておかしくないですし。あ、みっちゃん。』

ブツっといった音がし、電話は切れた。

 

 

それと同時にいやに周りが静かなのに気が付いた

廊下の大理石を革靴で歩く音が聞こえる

 

コツコツコツコツ

「・・・・・・」

コツコツコツコツ・・・

「・・・・・・あ。」

コンコンコンコン

「・・・・・・・・・どうぞ。」

「失礼します。」

 

 

 

 

「それで?なぜ連絡が遅れたんですか?」

にこにこと愛想のいい笑みを浮かべている提督

その反対側に座っているのは真っ青な顔をして縮こまり、冷や汗をだらだらと流している大将

どこかで見た構図だが、決定的に違うものが一つ

提督はこぶしを握り締めており、その色は力が入りすぎて白くなっていた。

「あの・・・ですね。その・・・。」

「私も忙しいんです。早くしてくださいね?」

「はい・・・。その・・・。」

「早く。」

「サボって書類の日付を見間違えました!!」

そう叫ぶと同時に土下座をかました。

銃の種類は見ていないがもう9㎜を持っていることにかけるしかない

「すみませんでした!!!」

「大将・・・。頭をあげてください。」

先ほどまでの声色よりかは和らいだ印象を受ける

恐る恐る顔をあげると

 

 

 

 

 

 

「それで許されるとでも?」

目の前にはグロック18が握られていた

 

 

 

「ひっ!悪かった!!本当に申し訳ない!!」

「ああ。大丈夫ですよ。中身はスポンジ弾ですから。」

「お願いだから!再販をお願いしてみるから!!」

 

その一言にピクッと反応した

人気商品などは再販されることが多く、実際服屋とのコラボでは再販を決定したばかりだ。

大将の権限であればこういったことはできるはず

 

「大将。売り切れた日本酒の販売ってどうなっているか知っていますか?」

「え・・・?いや・・・知らないが・・・?」

「日本酒って言うのは酒造さんが作った分しかないんです。しかも、仕込みを行う季節によっても銘柄が違います。つまり・・・」

「・・・再販は・・・。」

「難しいです。これが私の怒っている主な理由の一つです。」

迷いなく引き金を引いた

もちろん、大将に当てないように撃った

隣に飾ってある花瓶にあたると、衝撃で机から落ち、割れた。

「・・・すまん!なんとかして手に入れるから!だから!」

「うちの子たちの初めてを・・・!よくも!」

「耳本君?!落ち着け!なんかものすごい勘違いされそうなんじゃが!?」

「いっつもサボっているくそ大将が!今日という今日は許さんぞ!!」

引き金を引いたまま、乱射を始めた

大将はソファーの陰に急いで隠れた

ソファーを貫通することはないが、中身が飛び出ているのだろう

スポンジが自身の下に落ちてきた

何とかしなければと思ったとき、廊下が騒がしいのに気が付いた

「みっちゃん!落ち着いて!」バン

夏木と深打が大将室に入ると大急ぎで取り押さえた

 

 

~10分後~

 

 

「すまん。どうも頭に血が上っていた・・・」

すでに拳銃は手放して頭を抱えていた。

やれやれといった表情で二人は提督の対面に座っていた

「大将が悪いがみっちゃんもやりすぎ。・・・9割大将だけどね。」

現在大将は隣の部屋で文月にこってり絞られている

「ああ・・・。それにしてもどうすればいいんだ・・・。俺も注意を払っておけばよかった・・・・・・・。」

「その事なんだけどね?」

夏木が机の下から、段ボールを取り出した

「?」

「吹雪と深雪のラベルの日本酒よ。こっちでは今日から販売予定だったの。3本ずつなら確保できたわ。」

「いいのか?」

「ええ。大将に代金は請求しておくから持って行って。」

「ありがとう!恩に着る!」

 

 

その後、大将は物品の破損など巨額の請求に涙を流すことになるがそれはまた別のお話し。




というわけで今回は日本酒コラボの話でした
再販検討と言ってますけど日本酒の再販って結構難しいですけどねぇ・・・?
あり得るならまた買いたいもんです(吹雪のは2本、それ以外は1本づつ確保済み)


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駿河諸島鎮守府の新人

「「失礼します!」」

ノックと共に入ってきた二人の艦娘

今日は机の上には書類の山ではなく、数枚の書類のみだった。

両サイドには吹雪と川内が控えて立っている。

 

 

 

「睦月型駆逐艦5番艦の皐月だよ!よろしくな!司令官!」

敬礼と共にキラキラ(ねっとり)した目をこちらに向ける

・・・どうも望月と対面しているような感じで少し身の危険を感じるのは気のせいだろうか?

そしてその隣にいるもう一人の艦娘

金髪で水色の瞳、背の高さは川内と同じくらい

そして、ちょっとおどおどしているがちょっと深めに息を吸い、皐月に続く

 

 

 

 

「長良型軽巡の阿武隈です!よろしくお願いします!」

骨田中将の麾下におり、戦闘、遠征の両方の取りまとめ役をかつて行っていた。

幸い忙しさのおかげか夜伽等の性暴力は受けていないため、男性恐怖症にはなっていない。

しかし、連日連夜戦闘と遠征を往復していたせいで被弾時には恐怖症で動けなくなる障害を抱えている。

 

「うん。俺はここの提督の耳本だ。こっちは秘書官の吹雪でこっちが採掘部の川内だ。」

それぞれ名前を呼ばれると礼をした。

「川内は俺と吹雪がいなかった場合、代わりに指揮を執ることになっている。細かい自己紹介は後で個々に行ってくれ。」

そう言って、川内に合図をする

川内はうなづいて持ち場に戻っていった。

 

 

 

 

「さて、二人にはまず書類を書いてもらわないとな。」

机の上に置いてあった書類を持ってソファーに腰を掛ける。

二人にも座るようにすすめ、書類を見やすいように机の上に置く。

書いてあることは基本的なことで、機密を漏らすなだとかといったごくごく普通の誓約書だ。

その他の転属の手続きは事前に通知があったため、すでに終わっている。

(望月、深雪、58は当然例外だ。)

 

「はい!終わったよ!」

「終わりました。」

書類を受け取り、サインを確認して決済済みの箱に入れる。

「OK。それじゃあ二人の配属場所なんだけど・・・」

書類の中から、一枚づつ内容の違った書類を手渡す

「通例なら秘書官補佐か補給部手伝いとして1か月位を目途に配属して、それから異動になるんだけど二人は最初から担当についてもらうからよろしくね。」

「了解だよ!司令官!」

「えっ・・・私に務まるでしょうか・・・?」

皐月は元気よく、阿武隈は不安そうに問う。

「大丈夫だよ。むしろ阿武隈じゃないと務まらない仕事だからさ。阿武隈はちょっと待ってて頂戴な。」

そういって先に皐月に話を振る。

「最初に皐月なんだけど、隣の島で旅館やホテルがあるのは知っているよな?」

「うん!何度か姉妹できたことあるよ!」

「そいつはあんがとさん。で、今回その土産物屋の区画を拡大して常設屋台や小規模な食事処、商店等の設置することにしたんだ。」

吹雪が持ってきた図面を机の上に広げる

 

 

 

地下鉄の駅と港からまっすぐ進むとホテルがあり、その通り沿いに土産物屋等の商店街がある。

途中左手に曲がるとしばらく空き地の区画があり、20~30mほど進んで曲がった先が旅館だ。

ここの通り沿いを整備しようという計画だ。

ちなみに突き当りを進んだ先が牧場予定地となってはいるが、山風の農園部がどれだけ機能するかによって計画の進み具合が変わる。

出店を行うのは各鎮守府の入札制となっている。

当初は希望者のみと思ったのだが、想像以上の応募の多さで仕方なく入札制へと切り替えた

 

いかんせんそこでの売り上げは派遣した艦娘への特別手当の支払いを条件に、申告無しで予算に組み込めるためである。

純利益が10万でも100万でも増えればそれだけ鎮守府の改築、もしくは機能改善などに当て艦娘の職場環境改善にもつながる。(資源等はさすがに厳しいだろうが)

また、こちらとしてもテナント料の定期収入が入ることで空き区画の有効活用

もう一つは、現在食べ物屋がないため、ホテルや旅館では昼食分も用意している。

もし、不要となればそれだけ人手を浮かせることができ、従業員の休憩時間の増加

や受け入れ人数も増加させることができる。

こういった事業は誰も経験したことがないため、現状誰を当てようか悩んでいた。

阿武隈の転属時に当てることを考えたが、あまり向いていなさそうな形だったのでひっそりと悩んでいたが皐月の追加転属で風向きが変わった(新しく教艦探しを行う羽目になった大将には悪いが)

望月の直の姉であるということは歴戦の猛者ということにあたる

望月は言わないが少なくとも相当な古株であるということは深雪から聞いたことがある。

それだったら愛想よし、人生経験豊富この2本柱を持っている皐月が適任だ。

 

 

 

 

「そういうわけなんだけどお願いできるかな?」

「もっちろん!僕に任せてよ!」

胸にこぶしを軽く当てて自信のほどを見せてくれた。

そして、手をするりと提督の手に寄せて

「僕が活躍するところしっかり見せてあげる。」

 

おおう・・・

なんというかイケメンオーラというか手練れの雰囲気というか・・・

榛名とも打ち合わせと顔合わせを行うため、吹雪と共に退出していったが依然として飲まれたままだった。

 

 

 

 

「あのー・・・・?」

阿武隈が言いづらそうに声を掛けてきた。

「ごめんごめん・・・。なんというか・・・濃いなぁって・・・・・・ね?」

望月と面倒ごとにならなきゃいいがと思いながら遠い目をする

「さて!もう後は野となれ山となれだ。」

膝を叩いて奮い立たせる

 

「阿武隈は遠征や哨戒、迎撃に防衛戦でいろんな海域に行ったことがあるんだってね?」

「はい。北から南、西方東方に中部すべての海域に行ったことがあります。」

ただ・・・と続ける顔色は良くない

戦闘ができないことを気にしているのだろう

「大丈夫。君にやってもらうことはそういった方面ではないからね。」

先ほどとは別の地図を出す

皐月に見せたのは隣の島の地図で、阿武隈に見せているのは鎮守府がある島と旅館のある島、そしてその周辺の様子が描かれた海図だった。

「ここの島の潮流の計測係と船団誘導をやってほしいんだ。」

 

 

駿河諸島は黒潮の海流が直接当たることがある

その際、気が付かないうちに流されてしまい、ここにたどり着けなくなって遭難する事故が月に一回はでる。

この海域にも暗礁が存在するため、輸送船が座礁することだってある。

こういった事故を防ぐため、気象庁や海軍がちゃんと潮流計測を行って出している

だが、厄介なことに駿河諸島にぶつかって不規則な変化を起こすことが多々ある。

こういった事故を防ぐためには、艦娘がその海域を航行して直接計測を行うのが確実である。

今までは人手不足でできなかったが、あらゆる海域に行ったことのある阿武隈なら適任だ。

 

 

 

「でももし、敵が出てきたら・・・。」

「それについては心配しなくてもいいよ。龍驤の基地航空隊が上空から見張りをしているからまず、敵との遭遇はない。」

それにと続けた

「もし、敵が出てきたら真っ先に帰っておいで。」

「え!!それじゃあ敵前逃亡じゃ・・・。」

阿武隈が焦った顔をする

海図の上に置かれた手は震えているところを見ると闘志は燃え尽きてはいないが、体が言うことを聞かないのだろう。

「敵前逃亡じゃないよ。通報、報告のための帰還だ。」

だからさと続ける

「今は無理して戦うことはないんだ。ゆっくりでいい。焦れば焦るほど逆に遅くなっちゃうよ?」

阿武隈の震える手をそっと握ってあげると震えが少しおさまった気がした

「・・・わかりました。阿武隈!頑張ってやらせていただきます!」

凛々しく、死線の場慣れを感じさせる風格

恐怖症がなかったら引く手あまただっただろう

「よろしく頼むぞ。」

頭を撫でようとして、慌ててひっこめた。

阿武隈は確かあまり髪を触られるのが好きじゃなかった事を思い出した

「ふふっ・・・よろしくお願いしますね。提督。」

伸ばし掛けた手を取って握手をした。

「ああ。よろしく頼むよ。」

 

「・・・でここからがちょっと問題なんだけどね?」

手を離し、後苦々しい顔をした。

「実は阿武隈君の部屋なんだけど・・・」

「?」

「ないんです・・・。」

「え!?」

もともと用意していた部屋は先ににゴーヤの転属で、埋まってしまった。

最後に残っていた部屋は皐月が追加転属により埋まった

「ええ・・・。私はどうすればいいですか・・・・?」

「それなら問題ない。俺の部屋を使ってくれ。」

「え?!そそそそれって!」

「ああ。数日間だが我慢してくれないか?」

「いえ!あの・・・阿武隈的には・・・その・・・・・・OK・・・・・・なんですけど・・・。」

顔を赤らめながらもじもじした様子でこちらを見ていた。

「すまんなぁ・・・。実はこの隣の部屋なんだ。」

「そっそうなんですか・・・。じゃっじゃあその・・・。」

「あと3日もすればここに併設の新艦娘寮ができるから頼むな?」

「はい!ががが頑張ります!!」

「?ああ。」

 

 

 

 

提督は言葉足らずなのを知らなかった

阿武隈は同室で提督と3日を過ごすと思い込んでいた

しかし、提督は執務室の隣の部屋なのと自分が使っている部屋を一時的とはいえ使わせてしまうことへの謝罪であって、同室で過ごすことは考えてはいなかったのだ。

その夜、阿武隈は緊張からひと晩ずっと提督が来るのを待ち続け、提督は隣の島の旅館でのんきに寝ていた

翌朝、目の下にクマを作った阿武隈を見て、齟齬があったことが発覚した




さてさて・・・鈴谷がひたすらコンバートじゃないこととlv85で足りることを祈っている作者です(欲を言えば設計図もなしだともっと嬉しかったり)

1/1瑞雲
てっきり4月馬鹿だと思ったら本気だったのが一番の衝撃でしたw
三越コラボの瑞雲押しと1/1瑞雲、そして航巡の改二・・・
戦艦の改二はどうも伊勢日向が濃厚っぽいですねぇ・・・
日向さんだけ何故か来るのが遅くてうちではLv41で止まってます・・・

あと今更ですけど皐月とジュウコンしました(゚∀゚)
まったく、駆逐艦は最高だぜ!(初のジュウコン艦です)


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駿河諸島鎮守府の攻防

曇天の夜空に靄

そして潮と硝煙の香り

近くでは火災を起こした戦艦

あれは扶桑だろうか山城だろうか

乗員はあわただしく船内を駆け回る

海面にはほかの駆逐艦の船員が油にまみれながら浮いている

 

 

 

 

 

ああ

今日はスリガオの夢か

 

 

 

 

レーダーをひたすら必死に避けてまわって

 

 

ふと気が付き周りを見回すと敵のレーダーはとんでいない

そして味方もいない

 

 

 

 

この後残ったみんなと合流してあれか・・・

 

そう覚悟を決めたところで、幸いにも場面が移り変わった

予知夢を見るときは悪夢のような場面を改装してから見る。

今回は比較的精神を削られなかったのにほっとした

移り変わった先はどこかの海上

ふと横を見ると敵の艦攻が真横まで接近しており、ちょうど魚雷を投下したところがスローモーションで見えた

 

 

当然回避が間に合わず、視界が暗転する

 

 

 

 

 

再び視界が戻った時は、浮輪に乗せられていた。

前方で曳航しているのは吹雪で自分たちを中心に輪陣形

満身創痍だが、どうやら何とか生きている

会話はよく聞こえないが、笑いながら話しているところを見ると戦闘は勝利したのだろう

 

 

鎮守府の港に着くと、提督がこちらに駆け寄ってくる

顔面は真っ青だったが、僕の顔を見ると表情が幾分か和らいだ様子だ

後ろからは白い髪の・・・誰だろうか

顔が遠目でぼやけてよく見えない

そんなことを思っていると妖精さんたちによって艤装がパージされ、多少動きやすくなる

提督が自身の軍服を貸してくれる

目をそらしているあたり、服がかなり破れてしまっているのだろう

予知夢でもこんなことが起きるなら黙っていようかなぁ・・・

 

そう思いながら、入渠場へと向かって歩き出したとき

『危ない!!』

提督が急に大きな声をあげながら飛びついてきた

暖かい感触が広がるが、同時に少しべたつきを感じる

提督を起こそうと、手を見た時

 

 

べったりと赤いものが

 

 

「!?」ガバッ

「・・・zzz。」

 

暗い室内

隣では山風が気持ちよさそうな顔をして寝ている

 

「夢・・・?」

 

予知夢だったのだろうか

はたまたただの悪夢だったのだろうか

 

いつもならスリガオ海峡の悪夢は全滅を知るところまで見る

それが中途半端だったことはほかの悪夢含めて今まで一度もない

今までに見た夢の中で一番恐ろしく、中途半端だった

手は小刻みに震え、息はまだ整わない

 

「提督は・・・?」

 

 

 

 

 

静まり返った廊下をそっと歩く

背中には山風を背負い、寒くないように掛布団を掛けている

置いていくのははばかられたため、いっそ二人して押しかけてしまおう

そう思い立ち増設され、長くなった提督の私室までの道のり

山風の寝息で、何とか震える体を抑えてたどり着いた。

たどり着くまでは張りつめていた神経が和らぎ、ノックをしようと手を伸ばす

すると、部屋の中から声がしている

現在、時刻はマルサンマルマル

廊下にまで漏れる声で騒いだりするだろうか

 

・・・・・・・いやこの声は・・・

 

「だーかーらー!!今日はあたしが隠れるの~。姉貴には譲らないよ!」

「なら奪うまでだよ!さぁ尋常に勝負しよう!」

「いやだよ!姉貴に勝負事して勝てる確率低すぎんだもん!」

「じゃあおとなしく譲ってよね!」

「そうはいかないっての!ていうか、ここで騒いだらみっちゃんに嫌われるよ!」

 

・・・いろいろと突っ込みたいことはあるのだがここはもう見なかったことにしたい

少し開けた扉を、そっと閉めた

ドアノブのところが少し油臭かったところを見るといつもの入り方だろう

ため息をつき部屋に戻ろうとした時、違和感を感じた

 

「提督がいなかったような・・・・?」

「うん・・・いなかった。」

「あ。ごめん起きちゃった?」

ぽつりとつぶやくと、背負っていた山風が反応した。

おそらく、先ほどの言い合いで目が覚めてしまったのだろう

 

「執務室行ってみようか?」

「うん・・・。」

隣の部屋をノックをする。

反応はない

不審に思い、横の壁をたたく

すると30センチ四方の正方形が一回転し、パネルが出てきた。

操作をして、入退室履歴をあさると提督はまだ退出していない

しかも、執務室には明かりがついている表示がされていた

「おかしいね?」

「うん・・・。」

これは久しぶりの違法残業の案件だろうか

古鷹に明日報告しようか

そんなことを考えて部屋のカギを解除しようとすると、バタバタと中から音がして扉が開いた

「すまんすまん!どうした?」

慌てた表情の提督が執務室から出てきた

「提督・・・ちょっと夢見が・・・ね?」

「ああ・・・・。そうか。こっちにおいで」

安心感からか言葉がしどろもどろになってしまった

提督は察してくれたのか執務室に招き入れる

 

 

 

 

執務室の中は書類が散乱・・・していなかった

机の上に書類は数枚あるが、処理をしていた気配はない

「いやぁ・・・寝落ちしちゃってたみたいでね?」

隣接された給湯室に引っ込むと、レンジの動作音がして戻ってきた

 

「ふーん・・・」

「・・・・・・」

「いやほんとよ?ほんと。」

時雨と山風は怪しいといった表情を向ける

あわてて否定したところがもっと怪しい

ここは問いただすべきだろうか

切り出そうとした時、チン!という軽快な音がした

「ちょっと待ってな。」

ふたたび、給湯室に引っ込む

少しして、マグカップを3つもって戻ってきた

「ほい。ココア。」

「ありがとう。」

「・・・ありがと。」

受け取って息を掛け覚ましながら一口付ける

紅茶やコーヒーだとカフェインが入っている

細やかな提督の気遣いだろう

 

「・・・うわぁ。どうしっかね・・・。」

提督は直通の扉(元隠し扉)から、そっと自室の様子を見てぽつりとつぶやいた

先ほどよりもヒートアップしているようだ

会話の内容がわかるくらいに声が大きくなっている

「かれこれ4時間くらいあれやっていたような・・・」

「鎮圧しようか?」

時雨と山風が銃を撃つ動作や持つ動作をした

拳銃を寄越せということだろう

「いやいや・・・。艤装つけてない時それやったら下手すると死んじゃうからね?・・・俺にいい考えがある。」

「・・・・・・・・フラグ?」

「山風!それは言わんといて!」

 

提督が苦笑いしながら執務机に近寄る

隅っこのところを開けると天板の一部にボタンがいくつかとパネルがある

そのうちの一つを押して、パネルを操作して閉めた

「さてさて。あとは見てればわかるよ。」

そっと隠し扉から隣の様子を3人で伺う

 

 

「もー!!いいかげんに・・・あれ?あんなとこに下着なんて落ちてた?」

「え!やっりー!ゲット!」

皐月が首を傾げた瞬間、望月が飛びついた

「あ!ずるい!」

「早い者勝ちだよ~!ひゃっはー!」

どこかの軽空母か世紀末か

そんな声を出しながら戦利品を皐月に奪われないようにする

しかし、同じ体格ぐらいのため、キャットファイトにもつれ込んだ

「はなしてよ!」

「あたしが先に取ったんだ~!」

「僕が先に見つけたんじゃないか!」

「とったもの勝ちにきまってるじゃん」

皐月が上になったり、望月が上になったり

下着(実は未使用)が嫌な音を立てはじめたその時

 

 

 

バガン!

 

 

 

 

「「・・・え?」」

 

 

 

 

下着・・・もといパンツを引っ張り合っていた時、床が二つに割れ二人共奈落に落ちていった

 

「「え?」」

時雨と山風も先ほど落ちていった二人と同じ反応をする

「こんなこともあろうかと安定の明石工房に発注しといた。」

真顔でサムズアップし、部屋に入る

「・・・・・・・」

「時雨姉ぇ・・・ねよ?」

「・・・・・・・・・・・・・そうだね。」

あの二人なら大丈夫か

先ほどまでの焦燥感は明々後日の方向へと飛んで行ってしまった

心配することをやめ、提督のベットに潜り込んだ

 

 

 

 

 

翌朝

 

朝の潮流検査に出た阿武隈が

おり付きの筏の中で二人してパンツを握りしめながら体育座りして漂流している様を見て悲鳴を上げたのは言うまでもない




鈴谷の改装がががが(;´Д`)
設計図計2枚要求なんて想定外ですわ・・・
しかもおそらく2隻持ち推奨・・・
そして熊野もほぼ同じ改装とみて間違いない

あ、これあかんやつや

設計図を売れとは言わないから
程よい難易度の勲章貰えるEO海域が欲しい・・・
設計図調達を上回るペースで設計図要求艦を増やすのだけは勘弁してほしいなぁ・・・


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駿河諸島鎮守府の代理 その1

「それじゃあ頼んだよ。」

「はい!提督も吹雪ちゃんも楽しんできてくださいね!」

「何かあったらいつでも電話くださいね?」

そういいながら提督と吹雪は本土に向かう飛行機へと搭乗していった

 

 

 

 

話は昨日までさかのぼる

 

 

 

 

「はい。駿河諸島鎮守府・・・ああ・・・・・・・はい?明日ですか?・・・・・ええ。いやでも・・・」

定期報告書を届けに入室した古鷹を出迎えたのは、少し困ったような顔で電話をしている提督だった。

二人の判子が必要なため、古鷹は先に吹雪にチェックをお願いする

「・・・はい!大丈夫です!」

書類を受け取り、速読で読むと判をついた

「いやまぁ・・・そうっちゃそうですけど・・・・ええ?」

「提督どうしたんでしょうか?」

「最初の'ああ'の具合からして大将だと思いますけどね。」

「大将ということは物資の増産とかかな?」

そうなってくると古鷹の部署は一番忙しくなる

念のため、ポケットからスマホを取り出す

「多分違うと思いますよ。増産の場合は司令官はスマホで最初の指令飛ばしますし。」

「うーん・・・わかりました。ちょっと吹雪ちゃんや他の皆と相談します。はい。それでは失礼します。はい。」

難しい顔をして提督は受話器を置いた

椅子に深く腰を掛けると大きくため息をついた

「提督?何かありましたか?」

「古鷹か・・・。吹雪ちゃんも聞いてくれる?」

 

提督曰く

以前大将が持ちかけたペア将棋の大会が明日開催されるとのこと

せっかくだから吹雪も誘ってきたらどうだろうかという打診だった

本土から遠征の艦隊や融資の予定を鑑みて決めてくれたらしい

 

 

 

「せっかくの大将の気遣いでもありますし参加してはどうですか?」

「あー・・・古鷹さん・・・それがですねぇ・・・。」

事情を聴いた吹雪が微妙そうな顔をする

「川内は任務で島を離れている。龍驤は昨日から4日間有給・・・つまり提督代理をできる人がいないわけよ。」

「そうですね・・・。司令官と誰かほかの方で行ってきてはいかがですか?」

「うーん。そこまでして行きたくは・・・・・・ねぇ?」

仕方ない、断ろう

そういって先ほど置いた受話器を持ち上げようとした時

「私じゃダメでしょうか?」

古鷹が進み出た

 

 

 

提督代理を務められる人が増えれば、提督や吹雪ちゃんの休みの取得向上につながる

そう考えた古鷹は立候補したのだ

かつては加古がその対象だったのだが、なぁなぁになってしまった結果今の今まで、流れてしまったとのこと

 

もちろん提督も吹雪も反対した

もっと手順を踏んだ上で、何かあった際のバックアップなどをしてからと考えていた

 

しかし、そこは古鷹

去年の有給所得率&休日出勤率を引き合いに出すと二人は沈黙し、首を縦に振らざるを得なくなった

 

 

 

「一応今日は融資会談もないし、遠征隊も花見が近いせいか少ないから仕事もあまりないとは思うけど処理しきれなかったら残してくれていいからね?」

搭乗した飛行機から心配になったのだろう

吹雪が後ろについて乗った後、顔を出して言った

「大丈夫ですから!心配しないでください!」

よく見ると吹雪も心配そうに戻ってこちらを見ていた

「もう!出しちゃってください!」

係員に苦笑いされながら二人は機内へと押し込まれた

まもなく、機体は滑走路へと侵入して離陸していった

 

 

 

「失礼しまーす・・・あれ?古鷹さん?」

「あ、阿武隈ちゃんお疲れ様。今日の報告書?」

「はい。あのぅ・・・提督は?」

報告書を未決済のボックスに入れると部屋を見渡した

「今日は臨時で吹雪ちゃんと休暇に入ったよ?」

「それはまた急ですね・・・。じゃあ川内さんや龍驤さんが代理ですか?」

「二人とも出張と有給でいないから私がやることになったの。」

「そうなんですか。もしよければ手伝いましょうか?私は夕方の潮流検査までは特に忙しくないので。」

「本当に?!助かります!」

以前の提督が処理していた量よりは少ないが書類の山があった

マニュアルと照らし合わせながらやっているため、スピードもなかなか上がらない

時雨や山風等ほかの人に応援を頼もうかと考えたが、見事に空振り

補給部は年度の変わり目で台帳の書き換え作業がピークに達しており、手が空いている人はみなそちらへと行ってしまっていた。

一番頼りになる加古は、提督の健康診断の資料を午後から本土の軍病院へと持っていくため頼れなかった

「やっぱりもうちょっと大将に詰め寄ったほうが・・・」

「古鷹さん?どうしましたか?」

「ああいえ!じゃあこれくらいをお願いできますか?」

試しに、本一冊程度の書類を渡した

「書類仕事もやったことがあるのでまだまだいけますよ!」

「え・・・?」

そういって、国語辞典くらいの厚さの書類を持って吹雪の席に座った

 

 

 

 

 

「すみません・・・・・・・。」

「大丈夫ですよ!ちゃんと最初の分まではやってくれたので助かりました!」

吹雪の机で阿武隈は突っ伏していた

横には先ほど持って行った書類の半分が残っていた

 

現在時刻はヒトサンマルマル

 

「うちの書類をやったことがないのにここまで裁けるなんてすごいですよ?」

「でもできなかったことに変わりないです・・・・・。」

自慢の前髪も心なしかしょんぼりとしてしまっている

「いいえ!阿武隈さんがいなかったらここまで処理できませんでした!本当にありがとうございます!」

「そっそうですか・・・?・・・・・・えへへ」

再度褒められると、照れくさそうに阿武隈は顔をあげて笑った

毎日毎日ひたすら仕事をこなしていたせいか、褒められなれていないようだ。

「力になれたのならよかったです。」

阿武隈は背もたれによっかさった

「それにしても古鷹さんもすごいですけど提督さんもすごいですね・・・こんな量を毎日裁くとは・・・」

「実はなんですけどね?」

 

古鷹は今までの提督の経緯を説明した

 

「・・・なるほど」

「阿武隈さんももしよければ提督のことを・・・」

「わかりました。なるべく注視しておきます。」

固い握手を交わすと、二人は昼食を食べに食堂へと向かった

 

 

 

 

提督労働監視艦の3強が誕生した瞬間でもある

 




今回のはちょっと連番ものです
と言ってもあと1話か2話程度で今回は導入編に近いんで内容が若干薄め・・・
古鷹と阿武隈一回絡ませてみたかったんや・・・

イベントは中規模!
やや大き目ってぜったいWゲージ複数用意してる感じじゃないですかヤダー!
といっても実際うちの一番の問題は札だったリします
勲章を最大数(甲種勲章以外)でに入れるには乙以上が必須ですからそこがなんとも悩ましい・・・
あと護衛空母が来るらしいですね
個人的予測だと大鷹かな?
報酬で基地航空隊の飛燕が配布されるかも?


鈴谷可愛い!
けどかなり凶悪な改二だった・・・
設計図2枚とか誰が予想して誰得だよ・・・(-"-)


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駿河諸島鎮守府の代理 その2

「「ご馳走様でした~」」

昼のピークを過ぎた食堂で昼食を取り終えた二人は伸びをしながら歓談へと移る

最近の事や昔の事

軽い話から少し重めの話まで

そんな話をしている二人の後ろに一人近づいていく人がいた

 

「話の最中に済まない。」

「?ああ!長門さんでしたか。どうかなさいましたか?」

吹雪に弟子入りをしている長門だった

長門は辺りを見回すと古鷹に聞いた

「師匠を知らないか?執務室の方へ行ったんだが昼食で外しているという看板があったのでこっちに来たのだが・・・」

「ああ実は・・・」

 

 

 

 

説明中

 

 

 

 

「そうか・・・それは残念だな・・・。」

「すみません。」

「いやこちらこそ済まないな。一応今日は予定がなかったから来たまでだ。」

古鷹が謝罪をすると長門は少し慌てて弁明をした

「師匠とて休息は必須だ。もちろん耳本提督もだ。」

そうは言ったものの、しょげた雰囲気で顔をあげる

すると、視線が古鷹から少しそれ阿武隈を見た

「・・・?」

「あのぅ・・・?何か私の顔についています?」

 

長門は少し考え込みながら阿武隈の顔をじっと見つめた

阿武隈は何か失礼なことでもしたのだろうかと考えを巡らせながら聞く

 

「いや・・・・・・・・もし違ったら申し訳ないのだが骨田元中将麾下の阿武隈か?」

「!」

阿武隈は目を見開いた

かつての上司の名前をここで再び聞くとは思わなかったのだろう

「・・・・・・はいそうですけど・・・?」

少し不審そうな顔をして答える

「やはりか!」

長門は顔をほころばせ阿武隈の手を取った

「司令官は能無しだが麾下にいる阿武隈は戦闘、遠征、提督代理すべてにおいて優秀と聞いてきてな。お会いできて光栄だ!」

阿武隈はぽかんとした顔をして手を握られていた

「古鷹、もしや阿武隈はここに?」

「ええ。一日付で此処の所属になってますよ。」

「なんという行幸だ!時間があれば手合わせ願いたいが・・・」

「あの・・・そのぅ・・・」

とんとんと話が進んでいく様に阿武隈はついていけずあわあわとしていた

しかし、手合わせをという単語が出てきたとき、思わず声が出た

「・・・長門さん。阿武隈さんは実は転属して間もないので演習等はちょっと控えていただけると助かります。」

「む!それもそうだったな。つい興奮してしまってな・・・。申し訳ない。」

ぺこりと頭を下げた

「いっいいえ!頭をあげてください。」

「手合わせは難しくとも実戦の相談に乗ってもらえるだけでも助かるのだが駄目だろうか?」

 

 

おそらく長門は旗艦についての相談をしたいのだろう

吹雪は戦闘時の立ち振る舞いや予測などの実戦内での指導を行っている

しかし、戦闘が始まる前の戦略、進撃の際の立ち振る舞いに関してはサッパリとはいかないものの教えられないと言って断っていた

その点阿武隈は水雷戦隊ではあるが旗艦を長く勤めていた

連合艦隊編成の際も第二艦隊旗艦が多く、その経験を長門は買っているのだろう

 

長門は普段は気づかいや人の機微を察することができる

しかし、過去に駿河諸島鎮守府に喧嘩を売った時や現在みたいに興奮している状態だと視野が狭くなり、普段の振る舞いができなくなってしまう。

 

(大丈夫ですか?)

(・・・はい。)

余り顔色がよくない阿武隈を気遣って古鷹がそっと長門に聞こえないように耳打ちをする

戦闘に関してのトラウマが消えているわけではないので手合わせに関しては助け舟を出した

 

(あたしが話したくないところは聞いてこないでしょうし、何よりも・・・)

(?)

(ここまで頼ってくれることってあまりなかったので少しうれしかったりして・・・)

再び、照れくさそうな顔をした

小声での会話を打ち切り、阿武隈が長門に向き合った

「いいですよ。」

「ありがたい!感謝する。」

長門は阿武隈に改めて握手を求めた

阿武隈もそれに応じた

 

 

 

 

 

「っともう一つ用事があったんだった!!」

興奮冷めやらぬまましゃべったせいか若干大声で話を続けようとした

想定外の大声で話していたことに気が付き、恥ずかしそうに少し深呼吸をして気持ちを落ち着かせる

そして、えーとと言いつつポケットから手帳を取り出した

そこから一枚のメモ用紙を取り出す

 

「古鷹。ここの鎮守府は写真の撮影は許可されているか?」

「場所によります。たとえば採掘場や生産施設などは写真撮影は禁止です。」

「ああ、そっちではなく艦娘の方だ。」

リストには

吹雪、深雪、皐月、望月、時雨、山風(龍驤でも可)

と書かれていた

 

「それでしたら各個人に許可を取ってもらえれば大丈夫です。でも今鎮守府にいて手が空いていそうな子は・・・多分深雪ちゃんくらいかも?」

「そうか・・・。いや以前長門型の集まりがあった時に師匠のことを話したんだ。そしたら一部の者達から写真をせがまれてな。」

「・・・・・・ちょっと誰が誰の注文か見せてもらえますか?」

「いいぞ。」

メモ用紙に鎮守府名が記載されていく

古鷹はスマホを起動させ、あるリストと照合させていく

「・・・ありがとうございます。ちょっとこのリストの写真を撮らせてもらってもいいですか?」

「ああ、構わないぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

数日後

長門型の一斉ガサ入れがあり、数名が営倉送りになったとか




鋼材カンストしてバルジ作ってたけど装備枠を圧迫することに気が付いて仕方なくあふれっぱなしにしている作者です

ひたすら育成に走っていますがそろそろボーキを備蓄始めないとちょっとやばい状態に(;´・ω・)
流石に7万で挑むのは怖くて・・・

北方方面らしいですけど噂では欧州MAPもあり得るとか・・・
北方方面だと薄雲が主戦場だったから来るといいなぁ~なんて

ところで4周年の記念日に改二艦きますかね
毎年実装しているみたいですけど今年は一週間きっても何もないってことはなさそうな気もしますけど・・・


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駿河諸島鎮守府の代理 その3

「おわったぁ・・・」

「お疲れ様。」

阿武隈が自分で取った最後の書類を自身の右側に置いた

時刻はヒトフタゴーマル

間食休憩に入っていたが時間をずらすことにし、中途半端な量を片付けた

一方古鷹は今日の書類は終わっているので、阿武隈のために間食を間宮さんのところに取りに行き、その後は自身の部署の仕事をしていた。

 

今日のお茶菓子は定番中の定番の羊羹

ソファーの前の長テーブルにおいて、お茶を入れに行く

 

 

 

「いつもこんな量を処理しているなんてほんとにびっくりしました。」

「そうなんです!体調悪くても無理しすぎるからこの間みたいなことになったり・・・・・・。」

「前の提督さんとは全然違って毎回びっくりすることばっかりです。」

少し苦笑というのだろうか

憂いのある表情を阿武隈は浮かべた

「いくら作戦指揮や哨戒任務の指揮をとらないとはいえこの業務量はちょっと・・・。」

「・・・・・・提督がいつの間にか仕事を引っ張ってくるんです。」

「・・・・・・ちょっとガサ入れしてみません?」

思わず同意をしそうになったがさすがにこらえた

倒れてからは無理は控えてくれている

それに信頼して任せてくれている提督不在の状態でのガサ入れはしたくなかった

 

 

 

 

「何か無理が発覚したらガサ入れしますけどね。」

「そうしましょう!」

お茶を一口飲んでぽつりと言うと阿武隈も強く同意した

 

「古鷹さん。一つ聞きたいんですけどいいですか?」

「ん?いいですよ。仕事でわからないことでもありました?」

「いえ・・・・・・古鷹さんってどうしてここにいるんですか?」

「え?」

「あ!悪い意味じゃなくてですね!」

はたから聞いたら物凄く聞こえが悪かっただろう

阿武隈も急いで続ける

「なんといえばいいんでしょうか・・・・・・古鷹さんってかなり腕が立つのに何で前線に行かないのかなぁって思ったんです。」

「ん~・・・どういったらいいのかな。」

少し困ったような顔をした

阿武隈は無理しないでいいですよといった表情をしていた。

しかし、目は違った

どうしても聞きたい

古鷹はそう感じ取った

「提督やみんなは知っているんだけどね。私が前線にいたころの戦闘のスタイルは今と結構違うの。」

湯呑をおいて恥ずかしそうな顔をし、いつもの口調を少し崩して続ける

「とにかく敵を倒す、味方をかばう。これしか頭になかったの。」

「?それは普通じゃないんですか?」

「違うよ。」

かぶりを振った

「何か一つ、できて二つ。これしかできない人は戦場で確実に命を落とす。」

さらりと言ったがその一言で部屋の温度が下がった

「倒すことにかまけて回避ができない。私はこれが致命的な弱点だったの。」

簡単に言ってしまえばトリガーハッピー

指示伝達がうまくいかない艦娘はその子自身どころか艦隊をも危険にさらす場合もある。

「場合によっては旗艦やほかの子を無意識的にかばっちゃう癖もあったから前の提督さんをよく困らせたの。」

情けないよねといった表情だった

おそらく前世からくる癖なのだろう

「ここに転属が決まる直前にはこんなことを言われたの。」

 

 

君の戦果は信用はするが信頼はしない

 

 

「それって・・・・・・。」

「結局言われたその時は真意がわからなかったけどね。」

「今はどうなんですか?」

「ここに着任したら今までと180度丸々違った。だからこそ気が付いたこともあるし、新しくできるようになったこと、提督に直接教わったこと、いろいろあるの。」

執務机を見るといとおしそうに目をつぶって間を入れた

「この間、久しぶりに前の提督さんに会いに行ったら戻ってこないかって言われたの。」

「え!」

「私はここがいいですって言ったらそうだろうなって返してきてね?」

「・・・・・・」

「何を焦っているのかは聞かないけど、ゆっくり自分のペースを崩さないこと。これが一番よ。」

「いつか・・・・・・私も前のように戦えるかしら・・・。」

阿武隈の目には戦果を再び上げたい

もっと認めてもらいたい

そういった表情が映し出されていた

「それはわからないけど・・・・・・焦りは禁物。時が来るまで待つことが重要だと思うわ。」

阿武隈はドキッとした

「この話はおしまい!お手伝いのお礼に今日はおごるから鳳翔さんのところに行きましょう。」

「そんな!悪いです!」

「ほかにも話したいこととかあるでしょう?」

提督のこととか

そう小声で言うと少し迷ったが

「行きます!」

そう答えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしょーい!」

「司令官大丈夫ですか?クシュン!」

「あーあー。二人とも・・・はい。これ。」

 

フタヒトマルマル

鎮守府基地航空隊

 

高さ50cmくらいの箱を担いだ提督、紙袋を持った吹雪、そして白衣を着てアタッシュケースを持った加古が機体から降りてきた

「悪いな。」

「この時期はつらいからねぇ。今はヒノキだからたちが悪いし。」

「ありがとうございます。」

提督と吹雪は加古から薬を手渡された

花粉症の薬である

駿河諸島なら関係ないが、本土ではそうはいかない

くしゃみに鼻水、目のかゆみ

二人は勝って帰ってきたはずなのにまるで負けた様相だ

「鳳翔さんのとこで水もらって飲んでいくか・・・・・・。」

「そうですね。」

 

 

 

 

居酒屋鳳翔では哀れにも古鷹の酒癖に巻き込まれた阿武隈がいた

(鳳翔さんはちゃっかり退避していた)




というわけで古鷹と阿武隈のちょっとしたお話しは終了です
次は花見・・・八重桜は咲いているからセーフ!

そろそろ日本酒が届くから楽しみだな~・・・


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駿河諸島鎮守府の花見 準備編

「まじっすかい・・・」

鎮守府の主である耳本は頭を抱えた

原因は机の上にあるたった一枚の書類

 

 

「天候不順による花見開催場所の変更」

 

 

今年は本土のほうでは風雨が強く、花見をすることが難しい目算が出ていた

東日本及び中部地区ではできる確率は20%にも満たないという試算が計上された

じゃあ今年は仕方なくあきらめましょう

 

 

 

 

そのようなことは許されないのだ

 

 

 

 

艦娘は深海棲艦への唯一の対抗手段

その間娘たちの士気を支えるために定期的な息抜きを行っている

納得はしてくれるだろうが士気の低下は避けられない

よって東日本本土の天候に左右されない伊豆諸島、駿河諸島、西日本方面で大型鎮守府の花見を捌くことになった

大型鎮守府は艦娘の数が多いため人のやりくりができる

そのため、季節もののイベントは各自での開催予定だった

しかし、今年の花見は無理だった

 

晴れの日がとびとび

しかも間には台風のような天候になる雨の日

これではいくらシフトが組めても花見は無理だ

 

というわけで駿河諸島鎮守府は中小規模の鎮守府の花見団体+大型鎮守府の花見団体をも受け入れなくてはならなくなった

 

幸いにも、試算では部屋数や人出はパンクせずに済みそうだ

だが、事前に組んでいた日程や区割りは再考しなければならない

 

 

 

「・・・てかどこの鎮守府だ・・・?」

横須賀に大湊・・・名古屋静岡三重・・・銚子、大洗、いわき・・・

どこもかしこも伊豆諸島や西日本方面が書かれていた

「あっれー・・・?うちが書いてないぞ?」

一人提督室でつぶやく

吹雪は長門の修行のために休暇中だ

「あった!・・・・・・。」

一番最後のところにようやく駿河諸島鎮守府と書かれていたのを見つけ、どこの団体が来るのかを確認した

「・・・・・・」スッ

提督は机の上にある受話器を取ると電話を掛けた

 

『はい。もしもし。こちら・・・』

『うちくんな。』

 

そう一言だけ言って電話を切った

するとすぐに電話がかかってきたので再び受話器を取る

『ちょっと!ひどくない!?』

『ひどくないですよ。ひどいのは職権乱用した大将でしょう。』

『なんのことかな?』

あからさまにとぼけた声

いつものロリコン大将である

『いやいや・・・ちゃんと理由があるからね?』

『ほう?』

『中小の鎮守府の提督との交流も目的としていてな?ほれ、視察となると大掛かりとなってしまうし、会食となると時間がない。』

『ほうほう。』

『じゃからこそ、ちょっとした雑談といった形でだな・・・』

『本音は?』

『嫁の写真交換大会があるんじゃ!』

『大本営ご一行は八甲田山っと・・・』

『桜じゃなくてあの世の花をまだ見とうはない!』

こんなところで言ったって明後日に迫っている花見を今更これ以上は変更できない

『この前の配分変更(軽減策)でわしの胃がもう痛くて痛くて・・・・・・。肌もガサガサじゃし。』

『今までのツケでしょう。あとただれろ。』

『ひどい!』

 

結局言い合い(ストレス発散)は10分ほどで終わり、受話器を置いた

 

「さて・・・妖精さんのシフトはっと・・・・・・。」

今回は妖精さんたちも一日だけだが一斉休みとなる。

花見期間は1週間(花がそれくらいしか持たないため)

妖精さんたちにも休みは当然ある

前回の秋祭りの時だって存在した

しかし、作戦が近かったこともあり一斉の休みではなかった

そのため、妖精さんたちは事前に陳情書として一斉休みのお願いが来たのだ

計算した結果、その日から増産ピッチを少し上げ、備蓄量を増やしたうえで臨めば期間中の一日だけならば問題ないという目算が出た

ちょっとお釣りも出そうなので、もう一日休みを各自輪番でとれるようしたところ・・・

一斉休みの前後の日の休暇券が裏で取引されているとかなんとか

 

「ん・・・・・・OKっと。」

机の隅の山になった書類束の上に乗っける

すでに40cmにはなろうかというこの書類束はマニュアルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精さんたちの一日休みの許可書類を出したとき、時雨がポツリとつぶやいたのだ

 

「僕たちも一斉休みとってみたいよね・・・。」

 

それをつぶやいた後、ちょっと言いたげにこちらを見ていた

輪番で休むことはあれど一斉休みというものはない

吹雪も「そうだね~」と苦笑していた

しかし決済が誰もできないというのはまずい

かといってここで「じゃあ俺が残るからみんなは休みでいいよ」

こんなことを言った日には血の雨が降りかねない(大本営に)

 

そもそも一斉休みなのに俺が残るという時点でダメなのだが

 

「いくらなんでも誰かしらはいないt・・・ん?」

時雨の左腕に握られているスマホが偶然目に留まった

どうやら誰かと通話中の状態のままである

「ん?どうかしたかい?」

時雨が不思議そうな顔をしてこちらに近づいてきた

それと同時に、画面に誰と通話中の状態かが見えた

 

 

古鷹さん

 

 

「よし!すぐに検討しよう!」

 

即断即決

後ろへと全力疾走

君子危うきに近寄らず

 

 

 

 

 

 

といった経緯で一日代理の提督を立てることになった

大本営組は頼れない、柏崎は技術畑なので却下

残った彩雲にお願いしたところ、快諾してくれた

「みっちゃんもたまにはみんなと遊んでおいでよ!」

ありがたい申し出だった

念のためにめっちゃ大変なことの旨を伝えたが

「僕をなめちゃいけないよ!」

その一言でなんというか説得力が増したというか・・・

 

事情も知らず丸投げというわけにもいかないので何かあった時のマニュアルを作成したものがこの40cmの書類タワーである

当日は妖精さんのシフトも通常と異なるため、最終確認をしたシフト表を置いて完成したのだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・はぁ。」

皐月にねっとりと絡まれて執務室に戻ってきたのはフタフタマルマル

花見の区割りや日程変更の後詰を行ったのだが、6時間も拘束されるとは思わなかった。

 

望月はダイレクトなセクハラだが、皐月は何というか遠回しなセクハラがおおい。

だが、両者に共通していることは仕事はしっかりとやる

仕事の話となれば、おちゃらけているときでもエロムードの雰囲気でもきっちり切り替える。

実際、花見の区割り変更や警備関連の見直し、運搬等の話は早くに終わった

そこからは引き留めに引き留められ、ねっとりとしたボディータッチを躱しに躱し、ようやく帰ってきたのだ。

 

机の上には出るときにはなかった書類

達筆なところを見ると川内の報告書だろう

ちらりと表紙を見たが、精神が疲弊しているときに見たことを後悔した

 

 

 

 

「花見を狙った艦娘のテロ、反乱に関する事案」

 

 

 

 

艦娘とていい子ばかりとはいかない

中には司令官や提督に操られている

艦娘は本来いい子ばかりだ

 

そんな幻想はない

 

ここに捕虜として所属しているル級やリ級

この二人やほっぽちゃんがいい例だろう

深海棲艦を生物とした場合正常なのは人類や艦娘に憎悪を持ち攻撃することだ

しかし、上記3人は違う

憎悪や恨みは多少あれど、人並みであり攻撃に関しては殴られてから応戦か指示があった時しかしなかった。

 

いわゆる人類サイドに近い深海棲艦だ

 

深海棲艦にそういった存在がいるということは当然艦娘にも存在する

ごくごく小規模だが、川内から上がってくる報告書みたいに人類や艦娘に対して危害を加える者たちがいる

このような者たちは少数である

大多数は悪い意味で人間の闇に染まる

ブラック鎮守府の摘発

これがいまだに出る理由は艦娘側の隠蔽工作が関わっている

提督と艦娘が手を組んで資金流量や人命軽視の作戦が決行された場合、摘発が難しい。

発覚するのは、何らかの理由で艦娘側がいなくなった時である。

私利私欲に走って手を染めた艦娘は監視施設や刑務所的な場所に送られ、処罰される

ここの部分があいまいなのは自身が関わっていない暗部

軍の中でも超上級のシークレットとして扱われており、関連資料は閲覧することや口にすることもできない。

 

「あの二人の出番かな。」

一筆の書類を書くと、決済済みの箱に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おそらくここで提督は時雨さんのスマホに気づくはずです。」

「うんうん」

「わざと画面が見えるように気が付かない体で近づいてください。そうすれば提督は必ず検討しようというはずです!」

「さすが阿武隈ちゃんです!早速明日決行しましょう!」

一斉休暇は3人の戦略的勝利だった




やっとこさ花見編へと突入です・・・(ソメイヨシノ散っちゃってるけど)
話数は4~5話前後を想定しています!

それにしても一向に春イベの情報が来ない・・・
4/27日のファミ通に合わせているのかもという説が有力らしいですけどどんなもんでしょうかね?
ツイッターでごちゃごちゃ予想話しているのが一番楽しかったりしてw
(始まって地獄を見るパターン)


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駿河諸島鎮守府の花見 その2

駿河諸島 旅館 裏手

裏手は山に隣接しており、植樹こそ行われたもののそれ以上の手は加わっていない

あくまで旅館の敷地の方はということであり、少し行くと開発が行われた神社の参道になる

 

神社の方では他の鎮守府の一団が花を肴に・・・というより花につけて酔いつぶれたり、ワイワイと騒いでいる。

そこから少し離れ、がやがやとした声が聞こえるものの程よいにぎやかさに聞こえるくらいのところに駿河諸島の一団は花見の席を構えていた

 

 

 

 

かんぱーい!

 

 

 

 

それぞれ、おのおの好きな酒や飲み物を手に取り乾杯をした

色とりどりのおつまみや弁当は間宮さんと鳳翔さんお手製のものだ

晴れてよかっただ一斉休みがとれてよかっただ他愛もない話を話しながら時は経っていく

 

 

 

宴もたけなわ

 

 

 

席を立って回ろうとした

どこから行こうかとあたりを見回すと山風、58、阿武隈の3人が話していた

一見何の共通点もなさそうだが、ひとつだけある

3人ともここの催し物への参加は初めてなのだ

 

 

「飲んでいるかい?」

「あ!てーとく!」

「はい。料理もとってもおいしくてこんな時間を過ごしたのは初めてです。」

「ん・・・。」

ゴーヤと阿武隈はビール

山風はサワーだろうか

声をかけるとゴーヤと阿武隈が振り向き、山風は少し隅から移動した

気を使ってくれたのに答えないのも悪いため、山風のいたあたりに移動し座る。

座るとゴーヤが

「おもてなしするでち!」

そういってコップを持ってきてビールを注いでくれた

「・・・・・・ありがとうな!」

「どういたしまして!」

苦笑して頭を撫でてやる

 

 

 

 

 

どうしよう

 

 

 

 

ビール嫌いなんだよなぁ

 

 

 

 

考えてみるとここのメンツとは飲むことがなかった

特に58はオリョール海の出張所が勤務地だ

提督の好みを知らないのも無理はない

かといって注いでくれたのを無碍にするのも悪い

しかたなく、コップを手に取り煽る

 

(まっずぅい・・・・・・)

舌に残らないように必死で喉の奥へと送り込む

だが、のどにダイレクトアタックしてくる炭酸があまり好きではない

結果送り込めなかったビールが舌に残り、苦みを感じる

半分くらいを開けたところで、一回間を開ける

舌には苦々しい味が残り、思わず表情が崩れそうになるのを必死でこらえる

「うっうまいな!」

思わずどもったが、何とか表情は耐えた

「ゴーヤが入れたからでち!」

「ああ。ありがとうな。」

笑いかけてやると満足そうな笑みを返してくれた

 

(あれ・・・?提督・・・ビール嫌いだったはず・・・?)

この中では一番付き合いが長い山風は一人疑問に思っていた

引っ込み思案なたちのため、表だって言わないが提督の顔を注視する

 

「もう一杯いかがでち!」

「!あたしが!」

「へ?」

「あたしも・・・・・・注ぎたい。」

 

山風は見逃さなかった

もう一杯とゴーヤが言った瞬間、提督の顔が一瞬真顔になったのを

「一人一杯ってことにことにしましょう?提督だってこれからみんなのところを回るんだし。」

阿武隈も気が付いたのだろう

山風に乗って助け舟を出す

「そうでちね。てーとく!今度二人で飲む時までとっとくでち!」

(二人とも・・・ありがとう)

ゴーヤには申し訳ないが心の中で二人に感謝した

 

 

 

 

「山風はタイミングが悪くてなぁ。終わった直後に来たから秋祭りに参加できなかったんだよな」

「どんな感じだったんですか?」

口直しに山風に注いでもらったサワーをちびちびと飲みながら歓談に入った

ゴーヤは山風と話していた

どうやらお互いの部署の話みたいだ

ゴーヤは四六時中海に囲まれた環境

山風は四六時中畑に囲まれた環境

互いに違う環境だからこそ気が付かないことがあったり、気になることもあるのだろう

「どんなってなぁ。今回と似た感じよ。違うところは神社が中心地だったから神輿が出たり、巫女さんが神楽を待ったりしてたなぁ。あの時は一日一人と屋台回ったり、神輿を見たりして楽しんだよ。」

「んん~!ずるいです!」

阿武隈がほっぺたを膨らませる

少しほほが赤みを帯びているところを見るとほろ酔いで本音が出やすくなっているのだろう

「次はいつあるんですか?!」

食らいつくように聞いてきた

「ええ?いやー決めるのは大将や夏木達だかんねぇ・・・」

「夏か秋に期待してます!」

阿武隈は内心、大将に対する交渉の戦略を頭の隅に描き始めた

そして、古鷹や時雨と相談するために提督のそばを立った

 

 

 

 

「提督・・・はい。」

阿武隈が席を立った直後、山風が戻ってきた

ゴーヤは皐月に会いに行ったようだ。

大本営では顔を合わせる程度だったらしいが、話はあまりしたことないとのこと

「これは大根の漬物?」

「うん・・・。作ってみた。」

匂いからして甘酢漬け

好物の一つだ

「ありがとうな。好きなの知ってたっけ?」

「吹雪姉ぇに聞いた・・・。」

「ん。うまい。」

酸味が強めなのは吹雪の助言だろう

思わず素直な感想でそっけないが本心から出た言葉である

「本当・・・・・・!」

一瞬そっけない返事をしてしまったことに焦ったが、山風の反応からみて気づいてくれたようだ。

「でも大根ってまだ種まいたばかりじゃなかったか?」

先週くらいから種まきや苗を植える作業が始まっていたはず

もう取れるなんてことは・・・

「妖精さんがね・・・実験で去年から作っていたのをもらったの。」

言われてみれば、土地の活用を検討したのは去年から

作物を育てるのにいい土かを知りたかったため、妖精さんたちに指令を出したことをすっかり忘れていた

「食堂にもあるから・・・食べてね。」

そういって離れていった

ほかの子たちにも勧めに行ったのだろう

「・・・・・・純粋でいいなぁ!」

こそこそと後ろから忍び寄ってくる二人に対して聞こえるように少し大きめの声でつぶやいた




ビールのうまさがいまだにわからぬ(´・ω・`)
山風のはボイスで大根の漬物があったから入れてみました

次は誰が来るのやら(ヒント:金髪と茶髪の変態二人組)

イベントの第五艦隊・・・
多摩、ぼの、ぬいぬいが20で横並び
・・・何とかなるさ!(゚∀゚;)


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駿河諸島鎮守府の花見 その3

そんなわけで後ろにいた二人に向き直る

「そりゃあ山風はね~」

「僕たちも純粋だよ!」

「欲望にな。」

2人して腰を低く落として手をワキワキさせる

・・・欲望に純粋以外の何物でもない

 

「ほらほらみっちゃん注いであげるよ~?」

「まて。その瓶はなんだ!」

仕方なく、二人に挟まれる形で腰を再度下した。

望月が取り出したのは透明な瓶

ラベルには角ばった文字が見える

中身は透明だがこれはどう見ても・・・・・・

「命の水らしいよ~」

「ヴォッカじゃねぇか!そんなの飲めるわけないだろ!」

ヴォッカということはキリル文字だろう

飲まされないように注意しながら度数をこっそりと探す

自分が酔いにくいのは胃がそこまで大きくないため、一気に摂取できるアルコールの量が少ないからだ。

どんなに高くても30度を超える酒を飲むことなんてまずない(ウィスキーは嫌いだから飲まない)

だからこそ、自分のペースが守られて長時間飲むことができるのだ

それを最低でも60度近い酒を注がれたら最後

数杯飲んだらべろべろになってしまうだろう

 

酔う分には問題ない

しかし、サイドを固めている2人が問題なのだ

この2人に介抱を任せたらいったいどうなることやら・・・・・・

天地がひっくり返っても無事では済まない

「お前酒飲めないだろ!一緒に飲める物なら飲むから!」

ちょっと意外だが望月は酒は飲めない

「この間深雪からのスケープゴートにしたの覚えてるからね?」

「ぐっ・・・・・!」

痛いところを突かれた

そうやって望月とやり取りをしていると反対の方から引っ張られる感覚に気づく

「司令官!僕は~!」

皐月の方を見るとどうやらこっちは飲んでいるらしく顔が・・・

「赤すぎないか・・・?」

頭をヘッドバンギングしていた

「皐月姉ぇも強いわけじゃないからね。すり替えておいたのさ!」

どこぞのクモ野郎のセリフをドヤ顔で言う。

「司令官!僕も注いであげるよ~!」

すっくと立ちあがり、こちらもドヤ顔で胸を張る

「あっああ・・・。じゃあお願いしようかな?」

幸いにも持っているのは梅酒の瓶だった

しかし、かなり酔いが回っているのだろう

胸を張りすぎてのけぞりすぎたのかふらついていて見ているだけでこっちが疲れる状態だった

「よし!それじゃあ・・・・・・」

「まてまてまてまて!!!なぜ下を脱ごうとする!!!」

梅酒の瓶を一回置き、スカートを脱ごうとホックに手をかけていた

「え~わかめ酒?」

「皐月姉ぇ生えてないっしょ?無理じゃね?」

「ん~じゃあ・・・・・・」

「やめぇい!マジでやめろ!」

見た目がこの中でも一番の年下のはずなのに言っていることは超が付くレベルのド下ネタ

先ほどまでのまったりとした気分は吹っ飛んでしまい、あまり酒を飲んでいないのに頭痛がする

「お願いだからせめて桜を楽しんでくれんかな・・・」

「じゃああたしたちの花見でも・・・」

「まだいうか!」

 

 

 

「んぅ・・・・・・」

荒ぶる二人を何とか落ち着かせ、まともなもの(先ほどの梅酒)を注いでもらった。

何とか普通の話題をと思っていると皐月がよっかさってきた

見ればしっかりとした寝息を立てている

どうやら酒が完全に回ってしまったみたいだ

「あーあー。皐月姉ぇ脱落~。」

望月はしてやったりの顔をしていた

普段負けているだけあって自分が優位に立ったのがうれしかったのだろう

ぽろっと本音が出ていた

「まったく・・・・・・。よっと。」

提督はペットボトルとタオルで簡易の枕を作ってやると皐月を寝かせ、上に自身の上着をかけてやった

「・・・・・・。」

「ん?どうした?」

手際よく処置をし、戻ると望月がむくれた顔をしていた

「負けた。」

「え?」

「こうなったらあたしも・・・・・・!」

そういって先ほど見せびらかしたヴォッカの瓶を開けて飲もうとした

「おいばか!シャレにならんからやめい!」

慌てて奪い取って近くのクーラーボックスに放り込む

「むー・・・。」

「わかったわかった・・・・・・。今度大本営行った帰りにどっかよるか?」

「・・・ラb」

「ピンクのホテルとか言ったらこの話はなしな?」

予防線を張るととチッと軽い舌打ちが聞こえた

「ん~じゃあどっか決めとくよ~。」

すぐには思いつかなかったのだろう

近々大本営に行くとしたら花見が終わり、春の作戦終了後となるだろう

予防線は張ったから大丈夫なはず

・・・はず

うん多分恐らくきっと

 

 

とか言っていると皐月が注いでくれた梅酒が飲み終わっているのに気が付いた

「おっと空っぽだね~。」

すかさず望月が注いでくれた

「あんがとさん。」

早速口をつけようとしたとき、違和感に気づいた

不自然な甘い香りがするのだ

「・・・・・・。」

「どうした~?」

ちらりと望月を見ると不思議そうな顔をしている

「・・・・・・盛ったろ?」

しばらくこちらと目を合わせていたが、少しの間をおいて目をそらした

「確保!」

突然提督の後ろから大声がした

憲兵と書かれた腕章を付けた男が二人、望月を取り押さえた

そして、あっという間に連れ去っていった

 

「危なかったね提督。」

「やりすぎじゃあないか?」

「たまにはいいとおもうよ?別の桜だけど花見は継続できるし。」

「花見って・・・そっちの桜は誰も見たくないと思うがなぁ。」

とりあえず憲兵に連行された望月に合掌し、後ろを振り向いた

 

 

 

一方そのころ

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・なぁにこれぇ?」

「・・・・・・私が聞きたいわよ。」

今日一日鎮守府の提督代理として来た彩雲と叢雲

二人の目の前には提督謹製マニュアルの山

これでもかと面食らってしまうような

というより、二人とも白目をむいていた

「みっちゃんこんなことしてたんだ・・・・・・」

「私も吹雪がこんなことしてたなんて夢にも思わなかったわ・・・・・・。姉さん大丈夫かしら・・・。」

とにもかくにも仕事に取り掛かった2人

終わった後の二人曰く

「「マニュアルは見やすかったし、わかりやすかった。ただ、業務量が多すぎて使いにくい。」」

 

ドMすらをも白目をむかせる駿河諸島鎮守府のマニュアルとしてひそかに有名になったとかならなかったとか




少々遅れました(´・ω・`)
いかんせんイベントにかかりっきりになってまして・・・
現在E-3の堀にめどをつけて攻略に取り掛かる寸前です
国後と神威はお迎えしたのですがどういうわけだか占守だけ出てこないので攻略中かE-4言って掘ることにします・・・
E-1では無事前回お迎えできなかったヒトミちゃんも迎え、春雨もゲット!

・・・というかここまで甲クリアできているという不思議な状況
ひょっとして甲勲章も夢ではない・・・?(慢心)

それと軽巡の改二は由良さんが濃厚みたいですね
おおよそ当たっていたはものの・・・まぁその・・・育ってないです・・・


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駿河諸島鎮守府の花見 その4

※あとがきを少し修正しました
※今回から感想への返信は気づき次第させていただきます


振り向いた先には時雨がいた

一緒に飲もうよといって誘われ、時雨の後をついていく

 

望月は1~2時間程度で帰ってくるらしい

ちょっとした口頭注意とのことだ

 

 

「あ、提督!お疲れ様です!」

赤い顔をした古鷹がこちらを向く

ぎょっとして身構えようとするがニコニコと古鷹は笑っていた

「・・・笑い上戸引いたのね。」

時雨が安心してと言ってつづけた

「うん。それも控えめのだからただニコニコしているだけだよ。」

「というかいつもの目付け役の加古は?」

 

古鷹がお酒を入れるときは加古が必ずそばにいる(酒癖の対処のため)

 

「ちょっと阿武隈と一緒に用事ができたから席をはずしているよ。代わりに僕が目付け役さ。はいどうぞ。」

そういって酒を進められる

ありがとうと言って受け取り、腰を下ろす

「これもね。」

先ほどの漬物を置かれる

どうやら山風もこちらを回ったみたいだ

「もう食べたと思うけど自慢の妹の手作りだからついね・・・。」

軽く微笑んで進められた

おいしいし、断る理由もないため口に運ぶ

 

それを見た古鷹がこちらによって来た

「提督!これもおいしいですよ!」

間宮さんのお弁当からタケノコの煮物だろうか

古鷹が箸でつまんでこちらに差し出してきた

「おおありがとさん。」

「・・・・・・」

取り皿を向けるとむすっとした顔をされた

「え・・・もしかして・・・」

「・・・」ニッコリ

お察しの通りあーんしろということだ

なんとも気恥ずかしいが、せめてもの救いはうちの者しかいないことだ

変にどぎまぎしてしまうとどんどんと恥ずかしくなってしまうものだ

こういう時は・・・

「ん・・・。あ、これうまいね。」

 

腹を決めて素直に応じるということだ。

 

「・・・・・・!提督!これもおいしいよ!」

それを見ていたのか今度は時雨がから揚げを差し出してきた

「おっおう・・・。」

勢いよく来たため若干引き気味になってしまった。

ちゃっかり取り皿は隅によっけられてしまったため、気恥ずかしいが応じた

すると背筋が少し寒くなった。

 

いやな予感がする・・・

 

「提督!」

「みっちゃん!」

声に振り向くと深雪と榛名がそれぞれ別のものを箸でつまんでいた

「ちょっちょ!待って!待ってく・・・」モゴォ

話すときに口を開けたのが運の尽き

そのまま突っ込まれた

みな若干酔っているせいか歯止めがかからず、時雨や古鷹まで参戦してぼこぼこと競うように口に入れられていく。

「~~~~~!~~~~!」バンバン

必死で床をたたいたところでようやく我に帰ってくれた

 

 

 

 

「・・・詰めすぎだよ。」

どこぞの赤い空母みたいな食い方ができるはずもなく、かといって出すわけにもいかないため時間をかけてゆっくりと何とかして食べきった

「すみません・・・。」

「ごめんて。」

榛名はしょんぼりと、深雪は苦笑して顔の前に手を合わせた

ちなみに時雨は電話で席をはずし、古鷹は夢の国へと提督の足を枕に旅立っていた

「お詫びにこちらを用意してきました。口直しにどうぞ食べてください。」

「おっと・・・・・・。桜餅ね。」

ほのかな桜の風味と少しの塩気が甘みを引き立てている

まだまだ料理がある中デザートを食べてしまったが、時間を置けば大丈夫だろう。

「おいしいよ。ホテルか旅館で出すつもりかい?」

「よかったです!旅館の方限定で花見期間中に出すつもりです。」

ホテルの方は桜の風味を混ぜ込んだムースケーキとのこと

・・・食べてみたいな

 

「おっ!いいねぇ!それじゃあ深雪様がみっちゃんのためにお酒を入れてきてあげるよ!」

そういってどこかに行ってしまった

 

 

 

「おっまたせー!」

深雪の手には淡い緑色の液体・・・

「深雪ちゃん・・・それ・・・・・・なんですか?」

榛名がいぶかしげに尋ねる

「まぁまぁ飲んでみればわかるって!」

「おおう・・・。」

とりあえずにおいをかいでみるとほのかにアルコールと青臭いようなものの香りがする

どうやら焼酎と何かを割ってあるようだ

「・・・・・・ん?ああ。お茶割りね。」

恐る恐る飲んでみると、程よい苦みとさわやかなお茶の風味が口に広がった

「みっちゃんの地元でも飲むでしょ?」

「ああ。よく知ってたな。」

「ふふーん。深雪様は何でも知っているんだぜ!」

アルコール入りだが、ちょっとしたお茶会みたいになった

 

「!」ガバッ

「あ、起きた」

深雪と榛名達で話していると古鷹が起きた

そんなに時間がたっていないが、赤みが少し引いている

「あれ?提督?すみません!」

「べつにいいよ。」

枕にして寝ていたのに気づいたのか、慌てて飛び起きる。

「本当にすみません!・・・ひょっとして私お酒の癖が・・・・・・?」

考え込み始めた

酒癖悪いよとも言えずどう取り繕おうか

考えていると、スマホが鳴った

画面にはリ級という表示

 

 

「はい。もしもし?」

『あ、提督。例のやつら捕まえました。』

「おおそうか。ありがとさん。鎮守府の地下のところにいてもらうようにして。」

『了解です。』

「あ!移送が終わったら今日はもう終わりでいいよ。」

『ほんとですか!じゃあそちらの花見に参加しても・・・?』

「うん。いいよ。ちょっと料理とか減っちゃってるけどそこは我慢してね?」

『はい!それではまたあとで!』

 

 

「報告書が役に立ったみたいだね?」

通話を終えるとそばには川内がいた

「いつもお疲れ様。助かったよ。」

「いいのいいの。さ、次は私たちと飲もう?」




もう山桜すらも咲いてねぇのに花見編進行中です

イベントの進捗はいかがでしょうか?
作者はE-4までまさかの甲で突破しており甲勲章も夢ではないところまで来ている状態です
新規艦もガングート以外はすべてお迎えし、あとはE-5のローマ、リットリオ堀をどうしようか悩んでいる最中です

改二の戦艦は長門でしたか
当初の予想通りだったんですけど・・・
問題が軽巡の改二は由良さんだけじゃなく複数と聞いてかなり焦っている状態です
個人的には

本命 夕張
対抗 名取、多摩
大穴 球磨

このあたりですかね?
天龍達も見てみたいけど雰囲気的に今回はなさそうかなぁと
・・・最大の問題がレベルじゃなくて設計図なんですけどね?


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駿河諸島鎮守府の花見 その5

今までのどんちゃん騒ぎのせいで目もくれる暇もなかったが、若木の桜は満開に咲き誇っている。

ある程度育った桜の木を植樹したのだが、今のところ枯れたり、元気がないものはいない。

といってもまだまだ若い木ばかりなので、満開になっても寂しいところが出てしまう

それを防ぐために、影響しない範囲で多くの木を植えた

お蔭で木の高さこそないものの、一面見渡す限りの桜で覆い尽くされており、筆舌に尽くしがたい

ぼやーっとみていると、川内がいないことに気がついた

どこかで追い抜いてしまったかと思ったが違う

後ろには先ほどのメンツがワイワイと飲んでいた

「提督。こっちこっち。」

右手の方に川内が急に現れた

「わりーっけね。ちょっと見失ったわ。」

見失わないよう川内についていく

そこで、見失ったわけがわかった

桜の木の植え方がこのあたりだけ少し違ったのだ

獣道みたいに人一人が通れるくらいの隙間を縫っていく

そこを抜けると広めの空間・・・といっても先ほどの花見会場よりかははるかに狭いが開けたところであそこの会場では見なかったメンツが飲んでいた

「お!司令官連れてこれたんやな。」

「司令官こちらにどうぞ!」

「・・・zzz。」

若干一名桜の木の幹を枕にぐっすり眠っている者がいる

 

「あっちはどうやった?」

「ん~・・・。まぁそこそこのカオスというか・・・ね?」

主に望月や皐月のあれとか古鷹のあれとか口に詰め込まれまくったこととか

話し出すときりがない

酒の肴にはいいだろう

話すと案の定そこにいるメンツは大笑いしていた

「また盛られそうになったんか。」

「あの時は不自然な甘い香りがしたから気が付いただけでなかったら気づかなかったよ・・・・・・。」

「あー。それあたしがつけるようにしたんだ。」

いつの間に起きたのか加古が提督の後ろから出てきて重箱の中のつまみを探していた

「前に作った後医務室に来た子が誤飲しちゃってさぁ。それ以来媚薬関連は甘い香りをつけるようにしたんだよねぇ。」

「・・・・・・媚薬そのものを撤去するという選択肢は?」

「なんとなくもったいないから?」

「・・・さいですか。」

おおもう・・・

またあれに気をつけなきゃならんのかと思い、静かにうなだれる

「って古鷹の目付けはいいのか?」

ちゃっかり隣で再び酒盛りを始めた加古に言う

「笑い上戸の軽いの引いたんなら大丈夫だよ。」

のんびりと時雨に任せときゃ大丈夫と言って手酌で煽った

「まぁまぁ。お疲れさんってことや。」

「司令官は何を飲まれますか?」

龍驤は肩をバシバシたたきながら慰め、吹雪は気を使ってか酒を進めてきた。

「日本酒で・・・。」

「はい。どうぞ。」

クーラーボックスから一升瓶を出し、お猪口に注いでくれた

「ありがとね吹雪ちゃん。」

「・・・あら?」

「おっと・・・これは。」

受け取った時、ちょうど桜の花びらがひらりとお猪口の中に入った。

「なんとまぁ。」

「きれいですね。」

2人で顔を見合わせて微笑み提督は煽った。

「おーおーいい飲みっぷりやね。」

次はうちがと龍驤が次の酒をと進めてきた

時間は穏やかに過ぎていく

向こうの方で少し騒がしくなった

どうやらル級とリ級が合流したのだろう

あとで顔出さないとなぁ

 

 

 

 

 

「やぁやぁ。飲んでいるかい?」

「え?大将?」

漫然とそんなことを考えているとあまり聞きたくもない声に振り向くと大将がいた

幻聴と最初は思ったが本当にいた

何やら顔色が悪く汗をかいている

「どうしてここに・・・。それより体調が悪そうですけど大丈夫ですか?」

「ああいや。問題ない。」

汗をぬぐい、呼吸を整えた

「・・・・・・失礼ですがお仕事の方は?」

「大丈夫だ。ちゃんと終わらせてあるわい。」

「それならよかったです。」

「わしらは明日からじゃからのう。前日入りというやつじゃ。ちょっといいかの?」

親指を後ろに向けながらつづけた

「あ、はい。鎮守府の方ですか?」

「うんにゃ。榛名君にいって旅館の一室を用意してもらったんじゃ。ちょっとこれもしながら話をしとうての。」

お猪口のしぐさをした

「あー・・・・・・私はいいですけど・・・・・・。」

ちらっと後ろを見る

吹雪以外のメンツは不満ありありの目をこちらに向けてた

特に川内が顕著だった

「大丈夫じゃよ。じゃあ行こうかの。」

「いやいやいや」ピロン

「あ、提督。大丈夫だよ!行ってらっしゃい!」

先ほどまでふくれっ面だったはずの川内がニコニコとしていた

手にスマホを持っているところからすると、何かいい知らせがあったのだろうか

龍驤や加古は驚いた顔をしている

が、すぐに川内が近づき少し話すと不満そうな顔は消えた

「ほれいくぞ?」

「え?あ?はっはあ・・・・・・。」

 

 

 

「まぁいっぱい・・・。」

「あっすみません。」

旅館の一室

縁側にはこちらも一面の桜の木

きれいに咲き誇っており、実に見事だ

「今度の作戦についての話がしたくての。」

「そうでしたか。でもそれなら後日でもよかったのでは?」

「それがそうもいかなくてな?あの中将がらみなんじゃよ。」

 

 

あの

ほっぽちゃんを追い回し、現在も北方方面に入りびたりの須下のことだろう

 

 

「何かあったので?」

「うむ。春の作戦が北方に決まってな。今回は駿河の出番はほとんどなさそうなんじゃが・・・。」

「あいつが動いていると?」

「そうなんじゃよ。しかも部長までもが動いている。近々ある軍法裁判のことでなんじゃろうが・・・。」

北方方面の監視を強化したいが、軍令部長の動向も気になる

諜報に特異な砂安中将とて両面の展開はできても少し薄まった収穫しかできないだろう

「それで川内を動かしてほしいと?」

「そうじゃな。北方方面をお願いしたい。」

軍令部長の方は君が許さんじゃろ?

そういったことを言われると提督の顔が少し曇る

「そういうことじゃ。よろしく頼んだよ。」

「はい。承知しました。」

静かに礼をした

そして、会場に戻ろうと立ち上がる。

 

 

「おいおい。もう行くのかい?」

「ル級とリ級と話をしていませんので・・・。」

「まぁまぁそういわずにもうちっと話さんか?」

肩をつかまれ、すっと着席させられる

「いやしかし・・・・・・。」

「付き合ってくれなきゃこれから毎日一日一回文月についての電話をするがいいかね?」

「わかりました。」

電話線を切りたいが、緊急の連絡があった時に困るので切るわけにもいかない

ぶん殴りたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢しグラスを持つ。

「ただし、ちょっと酔い冷ましに水をしばらく飲みますよ。」

「ああ。それなら大丈夫じゃよ。ほれ。」

いつの間に持っていたのかクーラーボックスから瓶を取り出し、注いだ。

 

 

 

「~~でな?・・・・・・で・・・だっだんじゃが。」

「ええ・・・・・・。はい・・・・・・。」

水を飲んでいるはずなのだが、ボケーっとして来た。

どうやらここに来るまでに飲みすぎたのだろう

眠気こそないものの、酔いが回ってきているのがわかる

「おーい!大丈夫かの?」

「!はい!えっとなんでしたっけ~?」

「おいおい。これについての話じゃないか。」

小指をひらひらさせる

「ゴーヤと阿武隈と皐月の分送っといたんじゃけどもう届いているんじゃろ?」

「ああ・・・・・・。引き出しにしまってありますよ。」

グラスの中を一気にからにする

「全く・・・。あの3人でもなければ君の意中の子はいったいどこにおるんじゃろうな。」

「そんなの。うちにいますよ~だ。」

「なに?」

大将はその一言を聞くと提督に向き直った

提督は見たこともないくらい真っ赤になっており、若干頭をふらふらさせている

「なぜそれを早く言わん!」

「だって~私にケッコンする資格なんてないからですよ~。」

提督は机に顎を乗せた

「教官の子と教官を西方であんな目に合わせた自分にそんな資格・・・」

「あれは軍令部長とわしの責任じゃないか。君に責任なんて・・・!」

「だから私のわがままで身勝手なところなんです。みんなの好意だって知っていて。それをしらないふりして。」

机の上にある瓶の中身をグラスに注いで再び煽る

「まったく・・・それで?渡す渡さないは置いておいてだ。誰が意中の子なんじゃ?」

「え~・・・。それ・・・は・・・・・・・zzz。」

「え?なんじゃって!?」

「zzz」

何か言おうとしたのだろう

しかし、提督の瞼は降りてしまった

 

 

 

「あー・・・さすがに飲ませすぎたかのぅ・・・・・・」

提督が先ほどまで飲んでいた液体の瓶をそっとこちらに持ってくる。

提督は酔いが回って気が付いていなかったが、これは望月が持っていたヴォッカの瓶だった。

最初に飲ませたのは薄めたもので、徐々に濃いものに変更していった

「・・・・・・阿武隈君にどうやって言えばいいのやら」

なぜ提督をここまで酔わせたのか

ここの所属している子たちは提督に好意を示しても照れこそするものの、誰が好きだという浮いた話をしない

だからこそ気になったのだ

提督の意中の子はいるのか

そしてそれは誰なのか

 

 

 

それを聞き出すのに使われたのが大将というわけだ

阿武隈と酔う前の古鷹の交渉術(?)によって大将は快諾(?)した

 

 

 

「・・・耳本君をこのまま阿武隈君だけに引き渡せば許してもらえるかもしれんの。」

さらっと保身に走るために提督を早々に売ることにした

 

後日、意中の子がいるとしかわからなかったことを伝えたが、無事許してもらえたらしい




というわけで花見編(やっと)終了です
次はイベントがらみの話で本編を進めてきたいなぁと思います

E-5の丙堀が辛くて辛くて・・・
一本目のゲージを何度破壊したことか・・・
楽なんですけど資材がそこそこいるんです
結果リットリオだけでも迎えられたので手打ちにすることにしました・・・
最近ツイッターで別の作者さんをこっちサイドに引き込もうとしているのが原因だったり・・・?お許しください!時雨の画像をささげればよろしいのですか!?(免罪)

ところでしばふ村の新しい子
wikiで性能を見ていろいろとビックリしました
ゲットしてから速攻で演習メンバー入りさせましたけど・・・
恐ろしい子です・・・




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駿河諸島鎮守府の協定

「第32回定例会を始めます。」

駿河諸島鎮守府宿泊棟第二会議室

いつも和やかな雰囲気からはじまるはずの定例会だが、今回はみな一様にピリピリしている

理由は簡単

今回は議題が原因なのだ

号令をかけた古鷹が続ける

「先日の花見で大将を通じて行った提督の意中・・・つまりは好きな子がいるのかいないのかについての調査結果が出ています。手元の資料をご覧ください。」

 

 

資料には大将が提督へ聞くべきことが箇条書きで書かれていた

 

・好きな子はいるのか

・その子は鎮守府にいるのか

・複数いる場合序列も聞くこと

☆一番の子は誰なのか

 

 

最後のところだけは星印となっていた

当たり前だが一番重要なところなのだ

「結果は次のページの通りです。」

 

・好きな子はいる

・この鎮守府に所属している

・わからず

・わからず(ヒントは聞き出せた)

 

「おいおい・・・。こりゃあちっとあんまりやないか?」

龍驤が声を上げる

「そうだね。せっかく提督と一緒の時間を削って得られた結果にしてはちょっと少なすぎるよね?」

川内も同調する

「ちょっと大将にプレゼント用意しないとかな?」

加古がタブレットを取り出し薬の在庫を調べ始める

「落ち着きましょうよ!ね?ヒントは聞き出せたってありますしそれを聞きましょう?!」

吹雪が慌てて3人をなだめる

吹雪以外の3人は先日の花見で提督といられる時間を削ったメンツだ。

他のメンツも不満そうな顔はしているが、実害はなかったので声には出さなかった。

 

 

 

しかし、3人は違う。

秘書艦である吹雪を除いてここ最近は忙しく、間食の持ち回りも他の人に代わってもらっていたのだ。

特に川内は潜入や諜報の関係で会う機会すら少なかったのだ。

龍驤や加古が迎え役を譲ったのもそういった背景があったからだ。

そういったことすべてをぐっと我慢できたのは阿武隈からの誘いだった

 

大将を通じて提督の本心を聞き出します

 

「吹雪が言うなら・・・。」

3人は不満そうだが聞く姿勢にはなった

「ありがとうございます・・・。えー・・・大将曰くとぎれとぎれでこう言っていたとのことです。」

 

ずっと前から

 

「「「!!!」」」ガタッ

「推測ではあるんですけどぉ・・・。」

数人が立ち上がったが阿武隈は話を続けながら前のホワイトボードに名前を書いていく

 

吹雪

川内

龍驤

加古

古鷹

時雨

榛名

望月、深雪

山風

58

皐月、阿武隈

 

「これは着任順です。例外はありますけどずっと前からという単語から推測したうえで消すと・・・」

阿武隈が書いた名前を消していき、残ったのは

 

吹雪

川内

龍驤

加古

望月、深雪

 

「おそらくはこの中ではないかなぁと。」

理由としては前からという場合はここ最近の者以外が対象となる

だが、ずっとという単語で一変した

提督がずっと前というときは大体鎮守府が設置されて日が浅い時の話をするときだ。

 

早い話、今山風が使っている旧鎮守府建屋が鎮守府と名乗っていたころの話だ

 

そんな前から所属しているのは3人

1人がぎりぎり対象ということだ。

そして、提督が着任する以前に教艦を務めていた2人の計6人

「あ~・・・・・・せやろなぁ。」

対象となっているはずの龍驤は微妙そうな顔をした

「?ずいぶん歯切れが悪そうですね?」

古鷹が不思議そうに龍驤を見る

「そのヒントやったら多分うちは違うなぁ・・・。」

少ししょげた雰囲気でホワイトボードに近づくと自身の名前を消した

「あたしも多分違うねぇ~。」

加古が龍驤に消しといてと頼んだ。

うすうす感づいていたのか加古はダメージを受けている雰囲気はない

 

 

残る候補は4人

 

 

「というか3人ともずいぶん気をしっかり持っとるやん。」

「そうだねぇ。あそこで4人が気を張っているのはわかるけどね。」

 

吹雪、川内、望月、深雪

 

この4人はお互いの顔を見ながら気を張っている。

他の者たちはがっくりと意気消沈している

 

「実はもう一つ情報なんですけどぉ・・・」

 

 

提督はおそらく自分たちの好意に気づいている

 

 

『!!!』

うなだれていたり、しょげていた全員が顔をバッと上げた

「ちょいまちぃや!つうことは・・・・・・!」

「まだまだ僕たちの逆転の目は消えていないってことだよ。」

「「「「え?」」」」

それを聞いた一歩リードしているかもしれない4人も我に返った

 

「・・・あっ。そういえばうち司令官にちょっと書類が・・・。」

「そういえばあたしは健康診断の書類が」

「私も」

「あたし・・・も」

一斉に冊子や荷物をまとめて退室しようと各々動き始める

しかし、古鷹がそれを制止した

「まってください!今みんなで押しかけたら提督に迷惑が掛かります!」

制止の声に皆我に返ったのか片づけをやめ、席に再度つく

ヒントを聞いた時の対象外の人たちは落胆の色を隠せなかったのだ

3人もそれがわかるゆえに武力行使だけはしたくなかった

 

「僕からの提案だけど3つ約束をしないかい?」

 

・普段通りの生活をおくり業務に支障を出さない

・誰かを蹴落とそうとしない

・だれが選ばれても恨んだりしない

 

誰も反対の声がなかったところを見るに納得したのだろう

どれかを破った時点で鎮守府運営に支障が絶対出るし、なにより提督がこのことを知った場合自分の責任だと攻めてしまう可能性がある。

 

3人はほっとした顔をして解散をしようとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとまった。」

丸く収まってやっと解散と思ったその矢先、川内が待ったをかけた

「大将はどうしたの?」

どうしたのというのは諜報に関して中途半端な成果を持ち帰ってきたことに対してのことだろう

大将にとってはとばっちりもいいところだが、普段から提督に頼りっぱなしなところがあるので頼み事を断りづらい

 

けっして古鷹が後ろで仁王立ちしていたのにおびえていたとかそんなわけではない

 

ちょっと肩こりを直すために肩を回していただけだ

 

 

「えっとぉ・・・中途半端ではあるけどちゃんと持ち帰ってきてくれたので今回は不問という事に・・・」

「へぇ・・・ところでさ?提督は結局花見が終わっても帰ってこなかったけど、どこにいたの?」

阿武隈の目が泳ぐ

それもそのはずだ阿武隈達も報告を聞いた時はボイコットを考えたくらいだ

しかし大将には切り札があった

 

 

「耳本くんの介抱を頼んでもいいかのう?」

 

 

意訳するとこれで許してくれというわけだ。

阿武隈、時雨、古鷹は速攻で実益の方を取った

 

「なぁ時雨?ずいぶん顔色わるぅなっとるなぁ?」

「そっそうかい?」

龍驤もそっぽを向いた時雨の顔を覗き込んだ

「古鷹ぁ?話してくれるよね?」

「・・・っ!」

ニコニコと古鷹に詰め寄るが腕には怒筋が浮かんでいる

 

 

 

 

この日から一か月間3人の間食当番の大半を川内と龍驤、加古に交代させられたとか

 

 

 

オマケ

吹雪(第32回っていったいいつからこんな会議してたんだろう?)

※普段の議題はいかにして提督と吹雪の残業時間を減らすかの会議のため呼ばれない




昨日やっとE5クリアしました!
初めての甲クリア&甲勲章
始めて1年未満でとれるとは思ってもみませんでした
これでやっと落ち着ける・・・

わけもなく堀が残っていたりします・・・
E1 朝霜、高波
E2 朝風
E4 秋月
E5 ローマ、嵐、萩風、秋津洲

E5が辛いなぁ(´・ω・`)


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駿河諸島鎮守府の本心

一方そのころ

「お疲れ様です。提督さん。」

提督は鎮守府の地下に来ていた

「様子はどうだい?」

「今のところ落ち着いています。今はル級様が中で見張りをしています。」

「そうか。それじゃ引き続き警戒を頼むよ。」

「了解です!」

鉄扉を開けるとそこではル級が椅子に座って本を読んでいた

「ああ。提督さん。お疲れ様。」

鉄格子を挟んで反対側には真ん中で目をつぶり、じっと動かないものが一人

「ここにきて暴れたりわめいたりといったことはなかったわ。」

「そうかい。このまま護衛も頼んでもいいかい?」

「いいわよ。」

「おーい。話をいいかい?」

口の横に手を当て呼びかける

片目だけを開け、こちらを見た

 

 

 

「何か用か?」

 

 

 

「駆逐艦若葉だな?」

「そうだ。」

そう答えると再び目をつぶってしまった

もともと、若葉という艦娘はしゃべることが少ない

必要最低限の会話で済ませる傾向がある

 

 

 

 

「ル級敵意等は?」

「全くないといっていいわ。ちょっと不気味だけど。」

 

なぜテロを起こすような艦娘が確保できたか

それはル級やリ級などの深海棲艦だけがわかる負の感情の探知能力だ

もともと姫級に従っている以外の深海棲艦は特に連携をしていない

だが、艦娘が近づくと近くにいる深海棲艦と一時的に連携をする

その際近くの仲間を探知するために指標にするのが深海棲艦特有の強い負の感情だ

個体差はあれど深海棲艦に分類される者たちは負の感情が感情の中で一番高い

だが、探知できるのは深海棲艦だけではない

たとえるなら目の前にいる若葉のような者たちの負の感情が強い艦娘や人間も探知ができる

今回はその能力を転用した形だ

 

「ほうかね。じゃあ鍵貸して。」

「?いいけど何するの?」

提督は牢屋のカギを受け取ると、鉄格子の扉を開けて入ろうとした

「ちょいちょいちょいちょい!提督なにしているの!」

「え?何って入って話をしようかと。」

あっけらかんというとル級は額に手を当てた

「あのねぇ。私は敵意はないといったけど相手の実力はわからないのよ?」

「ん~・・・まぁ何とかなるら。」

普段振り回されっぱなしな提督だが、実は鎮守府でも有数の楽天家でもある

「何とかって・・・はぁ・・・。」

私はまだ死にたくないわとつぶやきながら先に牢屋に入る

「私が前の方で控える。それが妥協点よ。」

「はいな。あんがとさん。」

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

牢屋に入って提督は腰を下ろした。

ル級は提督と若葉の間のところに腰を下ろし、警戒する。

しかし、若葉は気にも留めずに目をつぶって瞑想らしきものを続けている

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・なんだ。」

提督は徐々に近づいていき、若葉との距離が目と鼻の先ぐらいまでになった。

さすがに違和感を感じたのだろう

先に折れたのは若葉だった

「いんや。なんでまた花見会場で暴れようと思ったのかなぁって。」

「顔を近づけてわかることなのか?」

「そんなわけないさ。」

再び元の位置に戻った提督は笑いながら言った。

「先に口を開かせたかったからああしたんだ。ほいでだ。なんでまたあんなことを?」

そういわれると若葉はため息をついた

「・・・・・・ぬるま湯につかっている者たちを見るのが嫌なんだ。」

「ぬるま湯?」

 

 

 

 

若葉曰く

現在、深海棲艦との戦線は膠着状態

西はインド洋、東は太平洋の半分

ここまでしか行けていない

若葉としてはもっと早く、迅速に戦線を押し広げるべきだと考えている

そうすれば、この戦争の終結にもつながるしそうすれば他の艦娘もブラックに振り回させることもなく幸せに暮らせるはずだ

そう考えた若葉は鎮守府から脱走し、似たような志をもった仲間とともに艦娘たちに行動をしていたという

今回、花見を狙った理由としては他の艦娘に呼びかけることもそうだが大本営上層部ハト派の暗殺も目的にあった

一向に戦線を押し上げない者たちの排除が目的でもあったのだ

 

 

 

 

「なるほどね。」

「そういう貴様もハト派ではないが考えは近いだろう。いったい貴様はいつ戦争を終わらせる気なのだ!」

鼻息荒く若葉は言い放った

提督は深呼吸をした

ここまでまっすぐであり、純真だとは思わなかった

報告書から上がってきた若葉が所属していた組織はタカ派サイドとはかかわりがなかったが、タカ派に迎合しようとする動きがある。

今のところ純粋な艦娘だけの組織であることがうかがえた。

 

 

 

「そうだなぁ。まず戦争は終わらせようと思えば終わらせられるかな?」

「ならなぜ!」

「若葉君はどうやって終わらせるかわかるかい?」

「?どういうことだ?」

 

ここ駿河諸島に埋蔵されている推定資源だが、とんでもない量であり、戦争の継続が数百年単位でできることがわかった。

しかも、海底の調査域を広げればさらに埋蔵量が増える可能性がある。

この資源を使い、艦娘を急造させ、圧倒的な物量作戦を行えば、たしかに7つの海すべての開放は可能だろう

 

しかし、この作戦には大きな犠牲が出る

現状、連合艦隊システムで連携できるのは12人までであり、それ以上を派遣しようとすると無線が混乱し、通信ができなくなる

戦場においての意思伝達ができないという事は致命的だ

指示が出せないため、ただただ倒れるものを見捨て前に進軍あるのみとなってしまう

これでは犠牲が大きすぎるうえ、艦娘のPTSDもひどいことになりかねない

 

 

 

「こんな形での帰結になる。」

「それは・・・・・・。」

若葉の目が泳いだ

ここにきて現実を知ったのだろう

犠牲を最小限に迅速に戦争を帰結させる

それができたらだれも苦労しない

犠牲を最小限にすれば時間はかかる

迅速にすれば犠牲が増える

両方ともできるという都合のいい話はあり得ない

 

 

 

 

「君だから言うが私は戦争の帰結は考えていない。」

「はっ・・・?」

「えっ・・・?」

その場が凍り付いた

ル級も寝耳に水だといった顔をした

 

 

 

 

仮に戦争が人類の勝利で、深海棲艦を駆逐できたとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではそのあとはどうなる?

 

艦娘は解体されて幸せな日々を送る?

ケッコンを結婚にかえて新しい日々を送る?

海上警備で引き続き海の安全を守る?

 

 

 

答えはおそらくではあるが高確率でかなわないだろう

 

艦娘の技術というのは日本で確立され、現在持っているのはドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアだ。

この7か国が技術を独占しているが、これが火種にならないわけがない。

とくに、最大保有国である日本に外交攻勢は続くだろう。

下手をすれば新たな戦争にもなりかねない。

仮に戦争にならなかったとしても、日本に任させるのは世界の警察的な役割だろう。

深海棲艦が現れる前に役割を果たしていたアメリカはダメージが大きいうえ、確立できた艦娘は2隻

これでは務めることなど到底無理だ。

しかも、日本にはウィークポイントである先の大戦がある。

ここを重点的に攻められた場合首を縦に振らざる負えない。

 

「まさか・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

現状、深海棲艦との戦いの後は人類同士の争いへの強制参加が待っている

 

 

 

 

 

 

「敵を倒して平穏な日々を。そう思うのはいいことだと思うし当然だと思う。だからこそ私・・・俺はこの戦争を終わらせることを今は考えてはいない。」

 

深海棲艦がいる状態である現在のこの世界は、一枚岩とはいいがたいが団結はしている。

皆目の前の敵を倒そうと必死なわけだ

 

「そんな・・・・・・。それでは・・・・・・。」

「だからこそハト派は戦争の帰結の前にどうにかして艦娘に対するさらなる具体的な法整備を進める方針らしいけどな。」

「・・・・・・タカ派は?」

「戦争を終わらせて、日本が戦争前のアメリカのポジションにつく。これを考えている。」

それを聞いた若葉はがっくりとうなだれた

自身が信じ、つかみ取ろうとした未来がほぼあり得ないことがわかった

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。」

牢屋を出てるとル級が話しかけてきた

「あんなこと言うなんて思わなかったわ。」

まだ信じられないといった表情だった

「・・・俺だってみんなを自由にしてやりたいし、平和な海で共に過ごしたい。お前さんやリ級だってここにいるとはいえ戦争なんてしていたくはないだろう。」

「まぁそうだけど・・・。哀れなものね・・・。私たちに勝ってもまだ戦わさせられる可能性があるっていうのは・・・・・・。」

「だからこそ大将が動いている。軍令部長ともめているがな。」

芳しくないが期待はそれ以外ない

そういいながら地上への階段を昇り始める

「ふーん・・・・・・。ね?ところでさ?共に過ごしたい人って誰なの?」

その言葉を聞いた瞬間ずりっと階段を踏み外しそうになった

「なっなんでそんな話になる!」

「えー。だって共に過ごしたいなんて思い人がいる証じゃない!」

「・・・・・・ノーコメントで。」

体勢を立て直し、再び地上への階段を上る

「つれないの。」

「この間の大将との花見の席で口走った可能性があるから余計言えんわ。」

 

 

その大将の密告で現在会議が行われているとも知らずに提督は執務室へと戻って仕事を始めた




ちょっと暗く重い話になりました
イベントお疲れ様でした~
作者は今回は大満足の結果でした
甲種勲章に新規実装艦コンプ
ヒトミ、天城、リットリオ、初風、春風、神風ect・・・
え?ローマ?
・・・うちの道はローマには通じてませんでした(血涙)

そしてなんといっても長門改二
設計図の兼ね合いから少し保留状態ですがなかなか面白そうな感じで・・・
・・・設計図足りません


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駿河諸島鎮守府の出張所

「てーとくまだでちか?」

 

東部オリョール海 中央監視所 執務室出張所

 

週に一度ゴーヤが報告書を届けに来るのだが、今日は違う

月に一度だが、支給弾薬の補充に提督が乗った船団が訪れる

オリョール海でとれるものは原油のみだ

3か所のプラントのどこかに寄れば燃料を大本営もちで支給している

しかし、航路によっては他の艦隊が仕留め損ねた手負いの艦隊と遭遇する場所がある

ほぼ確実に無傷で殲滅、通過をするのだが問題がある

弾薬の消費だ

燃料は予定航路上のため、そんなに食わないが弾薬は違う

相手をしとめるのには弾薬の消費は避けられない

 

そこで、残存艦隊をしとめた艦隊には弾薬を支給することにした

もちろん、そこの戦闘で消費した分+αを支給する(別の場所の戦闘は含まない)

施設稼働直後はどれぐらいの艦隊が通過するのかわからなかったため、過剰すぎるくらいに運び込んだ。

その結果ようやく月の消費量が大体わかったため、今回から一定の量の補充になったのだ(近々作戦もあるため、少し多めではあるが)

 

「まだだって。今日はこっちに泊りがけだからお前さんもゆっくりしてろ。」

執務室と仰々しく言っているが、実際は事務机が一つと秘書官用の学校机が一つ。

そして隅っこに2畳ほどの畳コーナーと宿直室さながらの部屋だ。

ゴーヤは今日は警備の仕事ではなく、秘書艦を務めてもらっている。

といってもこちらでの仕事というのは宿泊棟や旅館の仕事と似た形だ。

要望書や提案書、陳情書などの此処の施設を利用する艦娘たちからの意見を集約し、

施設の改善や増設の検討をしている

 

施設が稼働し始めてから日が浅いうえ、計画から建設、稼働までの日数が短かったこともあり、需要に関しての調査が不十分だったのだ。

これに関しては大本営も稼働を最優先で進めた責任がある。

それだけここの資源は魅力的だったのだろう。

ゆくゆくはここを東南アジア方面の補給拠点にする計画もあるがそれについては議論や対立が続いているとのこと。

そういった経緯から、増設に関しては大本営の許可は特にいらず、予算に関しても特に制約がないという緩いものとなっていた。

 

 

 

さて、こういった仕事に秘書艦がいるかというといらないのだ。

意見書は提督が読まねばならない

そしてそれに対して実現が可能か、あるいは代替品で済ますのか、不可能なのか。

これを判断するには、提督がここの稼働状況の過去の報告書を見て判断しなければならない。

手伝うことが現状はないのだ

正確には提督の身辺警護をしているのだが、ぶっちゃけ居ればいいため仕事とは言えない。

 

ゴーヤは暇そうに机に突っ伏す

提督にじゃれつけばそれだけ遅れる

せっかくのチャンスなのになぁ

ゴーヤはむくれた

しかし、むくれたところで何が変わるわけでもない

そんな時だ

畳が敷かれた一角に、提督のボストンバックが目に入った

せっかくなら着替えなどをセットして提督にアピールをしよう

そう思い立つと、ボストンバックを開けた

「・・・?」

中には着替え等は入っていたが、書類束も山のように入っていた

めくってみると、企画書や予算、採掘場の稼働状況などの書類だった

「あっ!」

「んー?どうした?」

「あっ!えっと!なんでもないでち!」

提督がこっちを向きかけたので慌てて見なかったことにした

「ちょっとでてくるね!」

「はいな~。」

 

 

 

「もしもし?時雨でちか?・・・・」

 

 

 

 

 

 

「ん~・・・おわった~。」

しばらくして、ぎしっと事務椅子の背もたれによっかさる

「お疲れ様でち!さぁご飯に行こうよ!」

畳コーナーで寝っ転がっていたゴーヤがガバッと起き上がるとすぐにそばまで来た

「はいはい。終わったらまた仕事だけどな。」

「えー。まだあるの?」

「やらなきゃいけないからなー。」

 

 

「あれ?!ない!」

ご飯から戻ってきた提督はボストンバックを開けるとそう叫んだ。

「てーとく。どうしたんでち?」

「いや・・・。書類を中に入れていたはずなんだけどなぁ・・・・・・。」

「なかったよ?」

「あれぇ・・・・・・。まずいなぁ・・・・・・。」

あれは黙って持ってきたし・・・

そういった言葉がゴーヤには聞こえたが、聞こえないふりをした

「じゃあお風呂に行こうよ!こっちも温泉引いてくれたんでしょ!」

「・・・混浴じゃないよね?」

「?何言っているでちか?」

「え?」

「別に決まっているでち。」

だよね

ほっと胸をなでおろし、執務室を出た

 

男湯も存在はするが、ここを訪れる男性は少ない。

そのため、なるべくならと女湯を広めにとってある。

男湯は女湯の3分の1程度しかない。

とはいっても、一人で入るには広い

お風呂の前でゴーヤと別れ、湯船につかる。

鎮守府の温泉と違い、ナトリウムが強めの塩っけが強い温泉だ。

露天風呂案もやっぱり出てきてはいたが、こちらは追々の検討となるだろう。

 

「あー・・・・・・。やっぱり温泉は引いてよかったな。」

ゴーヤに聞いた所好評らしく、もう少し広めでもいいかもと言われた

改修の検討に挙げておこう

「・・・・・・。」

ふと、提督は立ち上がると壁をたたき始めた。

だいたい、温泉に入るとろくな目というかラッキーというか・・・

なぜか混浴状態になることがあった

旅館の温泉しかり、自室の温泉しかり・・・。

 

2度あることは3度ある

 

3度目の正直なのか・・・

 

「ええい!わすれろ!」

思わず思い出してしまい、壁に頭を打ち付けた

「だっ大丈夫でち?」

「ああ・・・。いや・・・忘れてくれ・・・・・・。」

ゴーヤの心配そうな声に答えを返し、湯船に再びつかる。

「・・・・・・?」

「てーとく?のぼせた?」

「・・・・・・え?なんでいるの?」

目の前には先ほど入り口で別れたはずのゴーヤが横にいた

当然生まれたままの姿のため、慌ててそっぽを向く。

「実はここを見てほしいの!」

そういってゴーヤは隣の女湯と男湯を隔てている壁に近づき、下を指さした

ゴーヤを一旦上がらせ、潜ってみると下にはアーチ状の穴が開いており、行き来ができるようになっていた

「・・・・・・なぁにこれぇ?」

「女湯が狭いって妖精さんに言ったら対処してくれたでち!」

「・・・・・・まじかー。」

 

 

 

 

妖精さんたちの減俸が決まった瞬間であった

 

 

 

 

 

 

「これって今すぐやらなきゃいけない仕事?」

『これはー・・・・・・ちがうね。この仕事はまだ先のやつだよ。もう一つのはの僕も知らないやつだ。』

「ということは・・・・・・。」

『隠れ残業だね。ゴーヤ。今すぐそれをこっちに送ってくれる?吹雪に聞かなくちゃ。』

「了解でち!」

後日、妖精さんたちの減俸と同時に提督と吹雪のがさ入れもあったのは言うまでもない

 




海底からゴーヤと思われる潜水艦が見つかったのでせっかくなので・・・
ついでにうちのゴーヤもケッコンまじかなので今回の主役に(直立ネタは思いつきませんでしたので割愛)

引き揚げになるといいなぁと思いつつでも漁礁になっているならそのままでもいいかなぁといった不思議な思いです
引き揚げるにしても保存の計画が決まってから引き揚げにしてほしいと思ってます
菊月の方は今日展示してたみたいですね・・・
行きたかった・・・(´・ω・`)


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駿河諸島鎮守府と報道

羽田空港 ロビー

 

大本営に決算の書類と簡単な株主総会(一応採掘関連は民間であるため行われる)の打ち合わせのために提督と宿泊棟責任者の榛名はいた

本来であれば鎮守府から軍基地内の滑走路へと行き、そこから直接大本営に向かう。

だが、タイミングが悪く今日は滑走路の整備点検で着陸不可だった。

そのため、一度八丈島に飛んでから民間機で羽田へと飛んだ。

もちろん迎えはないため、公共交通機関を使う。

「すみません!」

タクシーでも拾おうと、外に出ようとしたときある女性に呼び止められた。

「耳本中佐ですか?」

「ええ・・・。失礼ですがあなたは?」

人の覚えは悪くないはずだが、話しかけてきた女性と会った記憶はない

 

「こちらこそ失礼しました。私はこういうものでして・・・・・・。」

すっと名刺を差し出される

「・・・なるほど新聞社の方でしたか。」

○○新聞社

国内でも有数の新聞社であり、俗にいう大手紙といわれるところだ。

「・・・・・・大変申し訳ございません。取材に関しては大本営からの許可がないとできない状態でして」

「そこを何とかお願いできませんか?」

申し訳なさそうな顔をして断るが、記者の方も食い下がる。

大本営からの許可がないとできないというのは本当だ。

だが、今すぐ電話をして許可を願い出れば許可は下りる。

それをしたくない理由が2つある

 

1つは自身が持つ影響力だ

派閥に属してないうえ、日本でも最重要の補給拠点の司令官の言葉が軽いはずがない

慎重に言葉を選ばなければならない

しかし、それが決して面倒というわけではない

 

 

マスコミが真実のまま伝えることはほぼない

 

 

これが最大の原因だ

インタビューを受けたとして使われるのはごく一部

それも、曲解されたり誤解を受けそうなところを切り取る

悪い言い方だが、マスコミというのはその道のプロ集団だ

いくら現状艦娘に対して世論は好意的といっても夏木達を主体とした広報部の血のにじむような努力の結果だ

国営放送でも、戦果の報道や艦娘のドラマ、企画した番組に出ることが時々ではあるが出演する

だが、民間の放送局や新聞社の場合スポンサーや株主などのバックについている人たちの影響をがっつりと受ける

 

すべての報道関係がそうだとは言わないが、艦娘関係の記事やニュースではどちらかというと批判的や軽視、時には全くのでまかせの情報が流れてたりする

かといって国営放送が信じられるかというとそういうわけではないのだが・・・

民間のニュースはイエロージャーナリズムの色が濃いワイドショーと化している

 

 

 

どんな言葉を切り取り、曲解、揚げ足取りされ、夏木達の努力を壊してしまうのかわからない

 

 

 

定例会見などなら、時間をかけて誤解を生まない対策ができる。

しかし、こういった直接取材はそういったことができない観点から受けないのが通例だ。

もちろん、大本営が規制しているというイメージを持たせないため、許可の申し出があれば許可を出すという形態はとっている。

 

 

 

 

 

2つ目は榛名の様子だ

申し訳なさそうな顔を浮かべているが、どこか悲しそうな・・・

少なくとも好意的ではない感情が出ている

ホテルや旅館の管理を任されている榛名が、人に対してこのような反応をするのは初めてだ。

 

「匿名にもいたしますので!」

「ですから大本営の方に・・・」

何度言っても食い下がってくる

周りの人たちもなんだなんだとこちらをちらちら見始めた

「それでは大本営の方に掛け合っていただけませんか?お願いします!」

「・・・っ!」

これを言われてしまうと電話をかけるしかなくなる

重々しくスマホをとりだし、大本営に電話をかけようとロックを解除する

 

 

 

「耳本さん!」

聞きなれた声がした方をむく

「お迎えに上がりました!大将から早急にと言われましたので!」

内浦鎮守府の青葉だった

渡りに船

「すみません。こういった事情ですので今回はご容赦ください。行きましょう青葉君。」

 

 

 

 

「はぁ・・・助かった・・・・・・。」

車内でスーツのネクタイを取る。

民間の交通機関を使う際は軍服の着用はしない。

以前はしていたのが、戦争の近況を聞きたいものや先ほどみたいなインタビューなどで囲まれてしまい、対応に追われた事例が過去にあった。

そのため大本営の近く以外は、軍人とわからない格好で外に出ることが現在は推奨されている。

「間に合ってよかったです。基地の工事の時は時々、ああいった輩が空港を張っているのが常ですから・・・。」

「榛名の様子もおかしかったから助かったよ。」

「え・・・。気づいていたんですか?」

榛名はびっくりした顔をした。

おそらく本人は隠しきれていると思っていたのだろう。

「あんまり民間の報道関係や取材の類は好きではなくって・・・」

「そうか・・・・・・。これからはあまり受けないようにしておくよ。」

 

時の話題

 

ある映像資料のタイトルが頭をよぎった。

そういえば青葉もその一人だったと思いだす。

本人たちにとっていい話題ではないので言わずに頭の隅に再度戻す。

 

 

 

「それにしても大将にお礼言わなきゃな。」

上着だけ軍服に着替え、ゆったりとくつろいでいた。

「あっいえ。実は大将ではなくってですね・・・」

「耳本様到着しました。」

運転手がこちらを向いた

窓の外を見れば、いつの間にか大本営の門の前まで来ていた。

ちなみに将官ならば建物の前まで行ってもらえる。

「ああ。ありがとうございました。お礼言いたいからあとでそっちに行くよ。それじゃあ行くぞ。」

「はい!青葉さん。ありがとうございました。」

「わかりました。それじゃあ待っています。」

 

 

 

青葉新聞 大本営本局

青葉新聞は各鎮守府にいる青葉が情報を持ち寄って書かれる全国版と各鎮守府の青葉個人が発行する地方版が存在する

全国版の場合は週刊での発行となる

軍内部のみでの流通のため、割と俗っぽいことから作戦の遂行状況など様々なことが載っている

・・・以前騒ぎになったのは俗っぽいことが書いてある紙面だ

 

「粗茶ですがどうぞ。」

会議が終わった後、本局に来た提督と榛名は応接室に通された。

青葉曰く

「迎えに行くように頼まれた人がぜひ会いたいとのことでしたので。」

ここまでの歓待を受けることは想定していなかった

青葉はお茶を出すと退出していった

一体誰だろうか

ひょっとして・・・

そう思ったとき、ノックの音がして入ってきた。

 

 

 

「お久しぶりですね。耳本さん。」

「やっぱり君だったか!青ちゃん。」

(青ちゃん!?)

榛名は戦慄した

鎮守府であだ名がついた子は一人もいない

長い付き合いの吹雪、川内

教艦としての付き合いがある望月、深雪

上記の4人ですらあだ名呼びではない

「あの・・・・・・提督・・・・・・その方は・・・・・・・・・・?」

あまりのショックを隠し切れずとぎれとぎれに声を絞り出した

 

ずっと前から

 

以前の会議で出てきたあの単語が頭の中で反響する

 

「ああ。彼女はね・・・・・・」

青葉はいらずらに笑うと提督にバッと飛びついた

 

 

 

 

 

「耳本さんの彼女です!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「おい!・・・榛名?」

提督は苦笑いして小突いた

それと同時に榛名の様子がまたしてもおかしいことに気が付いた

「・・・・・・キュウ。」ガックン

「おい!榛名?!」

「榛名さん?!」

 

 

 

「つまりお二人はそういった関係ではないと?」

「ちょっとした冗談のつもりだったんです・・・。大変申し訳ありません。」

深々と頭を下げる

なんとか提督が抱き起し、ソファーに寝かせると10分ほどで目が覚めた

目が覚めると青葉は慌てて近寄り、先の謝罪をした

「でもそういった関係でないとするとどうしてそんなに親しげなんですか?」

あだ名呼びなんてよほど仲が良くない限りあり得ないはず

そういう続きの言葉は飲み込み、青葉に問う

「ああ、それは耳本さんが募集の際の説明を私が担当したんですよ。」

 

提督は随時募集がかかっている

全国に港は何か所もある上、艦娘の索敵範囲は以前のような護衛艦のようにはいかない

小さなところから大きなところ

時には湖や山みたいなところにも警備府や出張所として構えているとこさえある

(湖は時たま出るらしいが山に関しては全く不明だ)

志願者も多いが、ある程度の素質で振り分けされている

妖精さんが見えるか見えないか

これで半数が落ちるらしい

妖精さんが見えなければ仕事にならない

そこからさらに試験を行うため、入ってくる提督候補は少ない

 

 

 

「その時にたまたま話が弾んでね。俺があっちに着任するまではよく話したり、遊んだりしたんだよ。最近は編集長になったとか聞いたけど?」

「そうなんですよ!それでここの本局を空けることがちょっと増えちゃって・・・いつ以来でしょうかね?」

「えー・・・3年ぶりくらい?古鷹を引き取りに来た時だったから。」

向かい合って話している様子から見て親友という位置づけだろうか

榛名は怪しまれない程度に観察する

「そうだ!耳本さんもだめですよ!最近では隙あらば話を聞こうとあっちこっちで見張っているんですからね!」

「ほんとに助かったよ・・・。あのままだとインビューに応じざる得なかったから・・・・・・。」

苦笑いしながらお礼を言う

「それと本命は決まりましたか?」

「ノーコメントです。」

意地の悪い笑みで青葉が聞くと、提督は目をつぶって微笑しながら答えた

「今度内浦の子を侵入させましょうかね・・・・・・。」

「あの子は引き受けないと思うけど?」

でしょうねと肩をすくめ、別の話題に入った

 

 

 

 

 

 

 

「編集長?」

「どうしたの?」

「耳本さんとの久しぶりの再会はいかがでしたか?」

青葉はちょっと茶化した感じで言ってみる

「そうだね・・・・・・。楽しかったかな?」

ちょっと憂いのある表情で答えた

「?ひょっとして編集長も耳本さん狙いですか?」

「・・・・・・。」

「えっ・・・・・・?まさか?!」

冗談のつもりだったその質問に対する反応は、編集長は回転いすをくるりと回転させて視線をそらしたものだった




ちょっとある動画の影響を受けましてきつめで一方的なの表現かもしれないです。

やっとこさ資源の回復もめどが付きそろそろ次のイベントに向けての育成艦を絞り始めている今日この頃
うちは対潜駆逐の幅がひどかったのとサブの雷巡育成をメインにしていく方針です(´・ω・`)
堀の時対潜要因がかっつかつでしたので・・・
そして次の改二は熊野が濃厚・・・
2隻持ち推奨ですし設計図3枚とかもう・・・_(:3 」∠ )_
追いつけるペース超えてるじゃないですかヤダー_(:3 」∠ )_


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駿河諸島鎮守府の後手

「・・・・・・。」

鎮守府執務室

提督は珍しく部屋でタバコを吸っていた

吹雪は提督の名代として房総鎮守府へと出向いている

 

 

 

軍資金横領、機密情報漏えい、軍規違反の杉蓋、骨田に死刑判決下る

刑は即日執行!軍令部長の謝罪会見の模様!

軍令部長の決断!前例なしの即日執行!

志垣軍令部長の聖断!軍内部の膿みを排除する

 

 

 

机の上の新聞の一面にでかでかと書かれていた

報道番組、週刊誌までもがこの話題一色となっていた

 

志垣軍令部長

桐月大将と同期

中将時代にインド洋(カレー洋)解放作戦にてインド洋北部の制海権確保、ドイツをはじめとするヨーロッパ各国との連絡手段の確保に成功した功績で大将に昇進

国民からは英雄とたたえられた

大将に昇進後、すぐに軍令部長に就任

見た目もいいため、国民にはとても人気がある

 

 

 

 

しかし、タカ派の筆頭格でもあり海軍内では裏で横領や他国への技術流出、艦娘の売買の仲介役を担っているなど黒いうわさが絶えない

これが表ざたにならないのは報道関係の手綱を握っているのが原因だ

 

 

 

「くっそ・・・・・・。」

提督は机をたたく

 

 

 

 

志垣軍令部長と杉蓋、骨田の両名は裏で通じていた可能性が高かった

それを証拠に、杉蓋か骨田のどちらかが出張で東北、北海道方面に出向いているときに同じく別件で視察という形で同じ方面に必ず出向いていた

他にもタカ派で黒いうわさがある人物とも行動を共にするなどの怪しい面があった

こんなことが今まで表ざたにならないはずがない

情報統制ができる強権を持った人物は海軍内には一人しかいない

そのためにも取り調べを入念に行い、余罪や協力者について吐かせる必要があった

 

 

が、結果はこの有様

控訴も認めず即日即断即執行

口封じのためだろう

調書を大将に頼んで入手したが、罪状について聞くと間違いありませんと2人ともあっさり認め、自供したことになっている

普通なら事細かに書かれるはずの調書は明らかに偽造してますといったものだった

 

 

 

だが、それを指摘するものは誰もいない

軍のトップの人物に歯向かうには旗色は悪い

国民は英雄のいう事は鵜呑みにしている

メディアも英雄のいう事にイエスと言えば利益を享受できる

誰もが疑わず、疑問の思っても自分の気のせいかと流す

結果として国民に今のところ不利益はない

今のところ’は’だ

 

確実にいつかはほころびが出る上、タイミングが悪ければこの日本どころか人類の危機になりかねない

そう思うが何よりも気になっていることは

 

 

「・・・時雨にどう説明しようか」

ある種の危機的状況だが、提督はそれよりも心配したのは時雨だった

うすうす感づいてはいるだろうがいつかは話さねばならない

その時のために言葉を選んでおこう

そう思い、大将から来た報告書を机の下から二段目の引き出しにしまいカギをかけた

机の上にはさらに川内から上がってきた報告書

 

北方方面での闇取引らしき活動が活発化してきている

 

現在の主戦場は南方を過ぎ、中部海域・・・いわゆる太平洋のど真ん中あたりだ

それぞれ、各地域でも小さな戦闘はあれど定期掃海で何とかなる程度だ

その中でも戦闘が少ないのは北方方面だ

こちらは、現在北方棲姫(ほっぽちゃん)が不在のため、活動が著しく落ちている

それを狙ったかのように、他国の不審船の流入率が上がっているのだ。

また、それに伴ってタカ派の東北方面の出張や配置換えが頻発している

もともと、タカ派の地盤ではあるが、ここ最近の動きは異常だ

8割がたの鎮守府や警備府などの拠点の提督が変更されている

今回の作戦が北方方面とはいえ4月を過ぎてもまだ配置換えがあるのはおかしい

 

川内からの報告書からはそう読み取れた

引き続き監視を続けるという言葉で締めくくられていた

 

のだが、最後の一枚に

カレー洋海域解放作戦についての資料を集めおよび情報収集の許可をお願いしたいと書かれていた

 

 

 

インド洋解放作戦

 

軍の暗号ではカレー洋解放作戦と命名されている

暗号といってもまんまなのだが

 

カレー洋一帯の制海権を取り戻し、ヨーロッパとの人員の行き来が再びできるようにするために立案された作戦だ

作戦は4段階でジャワ島を制圧、その後インド洋全体の簡単な掃海、それと同時にセイロン島に作られた敵の航空基地の空爆を行い、最後のマダガスカル島の確保でインド洋の制海権ある程度を確保するというものだった

作戦は最初は大成功だった

マダガスカル島を確保し、ドイツを通じてヨーロッパ各国の状況を知ることもできた

 

 

 

マダガスカル島制圧直後、セイロン島に姫級の個体が発生

港湾機能を併せ持つことから港湾棲姫と命名

再度制海権を脅かされる恐れがあったため、夜間に進軍し、朝方の先制攻撃で叩くことを上層部会で決定

まだ当時はケッコン艦が少なかったため、全国から高練度の艦娘を臨時招集し、戦艦4隻空母2隻の超重量編成が決定した

 

 

 

 

結果は事実上の大敗北

艦隊は大ダメージを受け一人が犠牲になった

事態を重く見た上層部は国民にまだ知らせていないマダガスカル島制圧の報を知らせ、索敵不足等を指摘される前にセイロン島の状況を報じた

そして、現状叩く必要なしと判断

戦線を張ったと伝え、セイロンの悲劇については完全に伏せた

完全に情報封鎖を行ったため、軍の内部でも知る人は少ない

 

 

 

「・・・」

改めて調べれば何か出てくるかもしれない

しかし、提督は許可印ではなく不許可の印を取り出した

 

「・・・・・・すまん。」

誰に向けて言ったのか

提督は不許可の理由を記載し、不許可の印を押した

そして、山のように吸い殻が盛られた灰皿に銜えていたタバコを押し付けゴミ箱に捨てた




暗い話が続きましたが次は明るいはず・・・(多分)

熊野改二・・・うちは当分見送りです☆
大鷹改二の方を優先したいので・・・
というか長門も改二にしてあげたいけどこっちは設計図足りないし(´・ω・`)
設計図艦が多すぎて毎日白目をむいている有様です

ちなみに瑞雲祭りの初日のチケットが当たったんで行ってきますw
ほんとに当たるとは思わなかった・・・


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駿河諸島鎮守府の秘書艦の女子会

一方そのころ

 

吹雪は提督の名代・・・・・・という名の初霜とのお茶会を楽しんでいた

「こうやってゆっくりお茶を飲むのも久しぶりだねぇ。」

「そうですね。」

ホテルの裏庭や旅館の庭ほどではないがそれなりに手入れの行き届いた和風の裏庭で2人仲良くお茶を楽しんでいた

「ところで耳本さんとはどうなんですか?」

「えっ?!ええと・・・。」

先ほどまでの他愛もない会話を打ち切って初霜が踏み込んできた

吹雪はごまかしてお茶をすすった

「全く・・・また踏み込まなかったんですね?」

「うう・・・・・・はい・・・・・・。」

 

いわゆる女子会・・・という名の吹雪の恋愛相談会だったりする

 

 

「言ったじゃないのですか。望月さんや皐月さんはガンガン行っているし、ほかの皆さんも隙あらば耳本さんとの時間を作ろうと躍起になっているんですよね?」

事実、執務室に非番の子が訪ねてきてお手伝いをすることが始まった

 

曰くやることがないし、出かけたくもないから

 

そういって居座る

提督もそういう事ならと手伝ってもらっている(本人たちは無償でいいといっているがこっそり有償にしてある)

 

他にも飲める子は飲みに誘ったり、お昼に一緒に食べに執務室に来たり・・・

 

「しかもこの間なんて大将が中途半端ではあるものの・・・・・・好意に気が付いている可能性が高い。これはいいかえればひっくり返る可能性があるという事ですよね?」

「・・・・・・。」

吹雪は黙り込んだ

「はぁ・・・。どうしてこうもっと前に・・・・・・。青葉さんとのことも話していてくれればもっと強く言ったのに。」

 

この間の出張の後、鎮守府に返ってきてすぐに榛名主宰で吹雪参加の会議が開かれた

未確定ではあるが、提督に対する恋愛感情の線は薄め

会議の結論はそうなった

 

しかし、吹雪だけは違った

 

青葉と提督が遊んでいるころ

たまたま一緒に遊んだことがあったのだ

 

 

 

 

当時は提督は見習いであり、教艦として深雪と望月が受け持っていた

術科学校では常に講義や生活に至るまで指導などで見てきていた

 

しかし、プライベート関連は別だ

 

唯一の楽しみといっても過言ではない外出許可

これは理由こそ書かされるがどこへ行くや何のための外出かはぼんやりとしたもので構わない

下手をすれば買い物や遊ぶだけでも許可が下りる(普段から態度と成績がいいものに限られるが)

青葉は提督の非番に合わせて遊んでいた

といってもボーリングやカラオケ、提督の趣味の釣りなど旅行等には出かけず近場で遊ぶものだった

青葉と吹雪は艦時代に因縁・・・というよりも縁があってよく話していた(もちろん恨みなんてものはない)

ある時たまたま非番が重なったため、青葉が口利きをしてくれて連れ出してもらえたのだ

吹雪も当時は訓練生であった

提督の見習い生と違い、艦娘の訓練生はいつ、どこでなんのためにそこに行くのかを書かなければならない

さらには単独行動は禁止で複数人で出かけることが条件だった

しかも、外出許可は下りても宿泊許可はあまり下りない

 

これには理由があって、国の最重要機密である艦娘が誘拐や何かの拍子に事件になってしまった場合のことを想定している

勿論これはみんなに理由を説明しており、納得はしてくれている

訓練生を抜け、ちゃんと鎮守府配属になれば緩和される

 

 

 

一緒に遊んだ時間はとても楽しかった

そしてその時の青葉の顔を吹雪は見ていた

 

どう見ても恋をしている顔

 

「途中から青葉さん忙しくなって会っているところ見たことないから忘れてたんですよぉ・・・」

とてもじゃないがこんなことを言った日には鎮守府が機能しなくなる

血涙を流す者、ひきこもる者、既成事実確保に動く者・・・

大体誰がどんな行動をとるかは容易に想像がつく

 

本当にそうだろうか?

下手をすれば全員既成事実確保に動く可能性も・・・

 

吹雪はその場は飲み込んだ

折しも出張(休み)があったため、こうして初霜に相談に来ていた

余談だが、吹雪の洋菓子関連(チョコ)は初霜に教わった

 

「青葉さんに取られちゃいますよ。」

「それはいや・・・あっとえっと・・・うん・・・・・・。」

「はぁ・・・・・・。」

「だって・・・積極的に行けって言ってもどうやったらいいのかわからないから・・・」

 

朝から晩までほぼ毎日一緒に執務室

お茶等を出すタイミングや調子、疲れ具合で濃さや別の物を用意する

どの書類がほしいかやデータがほしいかも電話で話している声を端々にひろうだけでだいたいわかる

今日は何が食べたそうかや体調、機嫌の良し悪し

 

(はっきり言ってもうツーカーの中なのよねぇ・・・)

初霜は心の中で思った

あれこれそれで通じる仲

夫婦といっても過言ではない

だがしかし

夫婦のような仲といっても夫婦(ケッコン)になっているわけではない

もし提督が恋愛感情ではなく上司と部下の関係だと思っていたら

これは一気にほかの子たちに溝を空けられる展開となる

 

「それでもまた一緒に朝の散歩の約束を取り付けたんだよ!」

唯一といっていい吹雪の踏み込みだった

秋祭りの際は持ち回りだったし、年末は提督に半ばエスコートしてもらったようなものだ

「・・・・・・もう一歩頑張りましょうか・・・。」

少しため息をつきながら冷めたお茶をすすった

吹雪に無理をさせない程度に提督にアピールをする手段を考えながら

 

 

 

 

「内浦さん!これはちょっと・・・・!」(同じ者同士の場合所属鎮守府で呼び合う)

所変わって大本営

青葉新聞本局内では二人でファッションショーが開かれていた

「編集長!いいですか?いくら仲が良かったといっても今はライバルがウンといます!」

今度はオーソドックスにメイド服でもと小声で言いながらあーでもないこーでもないという

「熱烈なアタックをする望月さんや皐月さん、腹心である川内さん、耳本さんの相談事などをよく聞いている龍驤さん!」

他にも、大胆にも同衾回数がある加古、山風に3人で力を合わせてにアタックしている古鷹、時雨、阿武隈の3羽ガラスect

「そして何よりも!耳本さんの初期艦でもある吹雪さん!いくら編集長がデートまで行っていたとしても!現状では旧友の一人の可能性が高いです!」

がーっと言い切ると一呼吸おいて続けた

「だからこそ!あちらにはいない新しいアタックにしましょう!」

「だからって・・・・・・これはちょっと・・・。」

ちなみに今の格好は猫耳をつけた状態

「私の仕入れた情報によりますと猫耳メイドが男性ウケにいいという情報があります!」

一つ断っておくが内浦の青葉はまったくもって真剣である

「他にも童貞を殺す服に例のヒモ、セーター等々各種を取り揃えてきました!」

「えっ?!その費用やチョイスはいったいどこから・・・」

「大将に交渉しました!さぁ!時間が惜しいです!こうしている間にもアドバンテージは広がってしまいます!さぁさぁ!」

 

 

 

 

 

「え?大将が急にいなくなった?・・・どうせまたエスケープじゃないですかね?今のとこホテルや旅館にはいませんし見つけたら連絡します。ええ。それじゃ。」




瑞雲祭り行ってきました~
なんというか・・・すごく瑞雲でした(特に瑞雲囲んで艦娘音頭)
寝坊したせいで瑞雲法被が買えなかったのが一番悔しい・・・

声優イベントも非常に眼福ならぬ聞福でした
若葉の生声が聴けたのが何よりでしたね(夕立はなぜか乱発されてましたw)

そして・・・
夕張改二決定!

とツイッターの方ですが先走ってすみませんでした・・・・
会場内でも大盛り上がりだったのがしばらくしてちょっと苦笑いになってました

由良さんに多分近々っぽいですね~
それよりも睦月型の改二のほうがかなり気になる・・・
個人的には
本命を文月
対抗で菊月、卯月
大穴で望月
と考えてます
夏の実装だからひょっとすると睦月型最後の子がイベントで合流すれば望月にも可能性がある・・・?
なんにせよ楽しい一日でしたw
どっかですれ違っていた人もいるかも?


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駿河諸島鎮守府と改二 その1

「師匠!手合わせを頼む!」

執務室の扉をぶっ飛ばさん勢いで開けて入ってきたのは長門だった

・・・というより上の蝶番が壊れて扉が傾いている

「おおう・・・。長門君ドア・・・。」

「む!すまない!どうしても力加減が・・・。」

少しびっくりし、指で示すと長門は振り向き確認すると謝罪した

そしてあとで自身に請求してくれと言った

 

「ところで師匠は?!」

「あと一時間くらいすると出張先から帰ってくるよ。」

時刻はヒトサンマルマル

昨日房総鎮守府に出張した吹雪が連絡したのはヒトヨンマルマル

 

まだ間食休憩ではないが、そのまま入ってしまおう

・・・こっそり昼食抜いてたのは内緒だ

吹雪ちゃんがいれば食べたけど一人だしね

 

 

 

「それにしても立派になったねぇ~。」

艤装はつけていないが服はかなり変化していた

露出が減り、外套を羽織って威風堂々とした雰囲気に変化していた

いわゆる改二改装だ

 

補足だが、この鎮守府に所属している艦で改二にできる子は全員改装済みだ

 

「ああ!改装が決まってからは師匠もけいこをつけてくれる量を増やしてくれたし、提督も資材や貴重な設計図をためておいてくれたからな!すぐに改装に入れたんだ。」

鼻息荒く自慢げに話した

「しかし、どうも力加減の誤りが多くな・・・。先ほどみたいなことになってしまうことが時々・・・。」

駆逐艦や軽巡ではあまり聞かないが、重巡以上になるとあるあるらしい

なんでも軽くたたいたつもりが、壁をぶち抜いたり、机をたたき割ったり、工廠をふっ飛ばしたり・・・

改装のために鉄を供給した翌日に今度は工廠修理のための鉄の供給願いが来るとは思わなかった

「そりゃあまぁしょんないら。はい。お茶どうぞ。」

さして実害はないため、さらっと流し自身で入れたお茶を出す

割らないようにねといたずらっぽく言うとばつが悪そうに受け取った

「ありがとう。・・・ところで・・・・・・だ。耳本提督にお話というか・・・その・・・ほっ報告というか・・・。」

先ほどまで自信満々に胸を張っていたのが、急にもじもじと背中を丸め、前かがみになった。

「ん?何かあったのかい?」

「・・・・・・。」

覚悟を決めたように再び胸を張り、深呼吸をした

「こちらを・・・提督からいただいたのだ。」

左手を差し出した

薬指には銀色に輝く指輪

 

ケッコン(カッコカリ)指輪だ

 

「おお!おめでとう!そっかーケッコンしたんだねぇ!」

お祝いの言葉を率直にいうと照れくさそうに顔を赤らめて手を後頭部にやった

「着任時にケッコンしていなかったから不思議に思っていたんだが・・・どうやらずっと待っていてくれたらしいんだ。」

「ほほう・・・。今度会ったら盛大にからかう理由ができた。」

提督は意地悪いにやけ顔をした

「あまりからからかいすぎないでくれよ?・・・・・・それとついてはなんだが・・・ぜひ提督と師匠にケッコン式の方に来ていただけると嬉しいのだが・・・・・・無理だろうか?」

 

事情を知っているのだろう

ためらいがちではあるが真剣なまなざしで頼んできた

それまでの明るい空気は一転して重いものとなった

顎に手を当て鼻でため息をついた

「私をより強く、そして提督と私を結び付けてくれたのは師匠と耳本提督あなたなんだ。どうか頼めないだろうか?」

「・・・・・・すまない。吹雪ちゃんだけなら参加させてやれるんだがな。私の参加は難しいんだ。」

 

 

 

参加できない理由としては派閥に属していないのが大きい

大本営を二分しているタカ派とハト派

諸提督はこのどちらかの派閥にほぼ必ず属している

提督が所属していないのは例外の一つだ

 

タカ派とハト派はずっといがみ合っている

そのため、派閥を超えての交流がないに等しい

両派閥の冠婚葬祭や催事、下手をすれば情報共有に至るまで交流がないことがある

 

現在ハト派との交流が多いといっても一応は無所属の状態だ

よほどの軍規違反等のことがない限りタカ派にもハト派にも平等に資材を供給している自分達がどちらかにつくわけにはいかない

もし、ここで参加してしまうとハト派ではないという主張がただでさえ苦しいのが決定的になってしまう

結果としてハト派がタカ派に譲歩をしなければならない可能性がある

可能性として高いのは補給系の鎮守府か基地の新設や資源輸入ルートの新設を迫られた上、タカ派の直轄に置く

こうなるとタカ派は独自の作戦遂行能力を持ってしまい、厄介なことになりかねない

 

以上の裏事情もあって提督は派閥には属していない

ハト派はそんなことはさせないからおいでと言ってくれているのだが・・・

 

 

 

「そうか・・・・・・。いや!無理を言ってしまって済まない。」

長門は残念そうに少しうなだれた

その様子に提督は背もたれに背を預け上を向いて言った

「・・・視察ならできるけどねぇ?」

「・・・視察?あっ!」

「おって視察の日を伝えよう。」

何が言いたいのか気づいた長門はありがとうと優しい顔でほほ笑んだ

提督も少し笑って時計に目をやった

「そろそろ吹雪ちゃんが帰ってくるころだから準備しといで。俺はちょっとやること出来たから。」

そういうと長門は再び頭を深々と下げお礼を言うと退出していった

 

 

「・・・ふぅ。バランスとらんといけんくなっちゃった・・・・・・。」

長門達がいるリンガ泊地への視察をすると決めた一方でタカ派の系列の視察も検討しなければならない

一方だけ行くわけにもいかないのである

しかし、下手なところに行くと地味な嫌がらせだったり、面倒ごとがある可能性がある

「大将にどこに行った方がいいか聞いてみるか・・・。ついでに望月もつれてこないだの約束もこなしとこう・・・・・・。」

 

内線で望月に数日後に大本営に行くことを連絡した

 

 

 

 

「ふっふー。おでかけおでかけー。」

「そんなに喜ぶなんて思わんかったわ。」

「みっちゃんとだからだよ~。ほら勝負下g・・・」

「やめぃ!」

スカートをひっつかんでめくろうとしたのでその手を抑えた

「さすがに憲兵に声かけられるわ!!」

いくら緩い憲兵とはいえ、大本営の廊下でスカートまくる艦娘を看過するほどまでは緩んでない

 

・・・といっても声をかけるだけにとどめるあたり緩々なのだろうが

「で?どこ行くかは決めてんの?」

「ん~と・・・それは後で。」

聞こうとしたが、大将室に着く直前だった

どこかに行くといっても泊りがけはできないし、軽く飯を食べて買い物くらいだろうが

「全く・・・?面談中?」

珍しく面談中という札が、大将室の前にはかかっていた

事前にアポを取ってあるし、文月に行く前に念のために予定を確認してきたがそんな予定はなかった

いぶかしげに扉の前に立つが、物音は聞こえない

扉に耳をつけて聞き耳を立てても何も・・・いや・・・

すすり泣きのような声がした

「ええ・・・?」

「なんかすすり泣きみたいなの聞こえたけど~・・・間違いじゃないよねぇ?」

「ああ・・・俺も聞こえた。」

2人聞こえたという事は幻聴ではないのは確かだ

意を決して提督はノックをする

するとはぁ~いどうぞ~という返事

この声からして文月だろう

しかし、大将が返事をしないのは少し妙だ

 

「失礼しm・・・・・・。」

提督は固まった

「ん~司令官?どうs・・・・・・。」

 

大将 \(゚∀゚) アーアーアーーアアアアアーアー

中将 orz ナンデヤァーー!!

文月 ('▽';)

 

「「・・・・・・・。」」パタン

 

 

 

 

 

「「えっ?」」




一応その1としてありますが次で終わります

えー・・・しっかり書かなかった自分が悪いのでここでしっかりと訂正しておきます
夕張改二は誤報です
実は鈴谷、熊野の声優さんが思いっきり台本を読み間違えておりまして由良改二のところを夕張改二と言ってしまったのです
発表当時あーやっぱり軽巡のもう一人は夕張かぁと思いツイッターに投稿してしまいました・・・
そのことについて書いたつもりだったのですが・・・
どういうわけか2~3文書き忘れている状態で投稿してました
申し訳ありません

というわけで由良改二は果たしてどうなることやら・・・
個人的には
新しい艦載機持参(もしくは紫雲)、艦載機内蔵、水戦搭載可能、弾着観測射撃(カットイン)
のどれかが来そうな気がしてます
どれが来ても来なくてもやるとは思いますけどね・・・


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駿河諸島鎮守府と改二 その2

「「えっ?」」

 

思わずエンガチョしたくなり、二人とも勢いのままに扉を閉めた

そして、顔を見合わせた

 

再度大将室のドアを開けて、中の様子をうかがう

 

「「・・・・・・。」」パタン

 

中の様子を説明すると

 

大将の顔は満足に満ち、目をつぶってどこぞの拳王みたいに右腕を天に向かって突き上

げている

しかも片足は机の上、もう片方は椅子の上とバランスを崩したらけがしそうだ

・・・そして妙に壮大な音楽がどこからともなく流れている

 

中将は床に・・・倒れ伏していた

すすり泣きをしながら

先ほど聞こえたすすり泣きはこれだろう

時々

「なんでや・・・なんであの変態に先を越されにゃならんのだ・・・」

と口汚く罵っていた

しかも、中将の周りに水たまりができている

 

その様子を文月は苦笑いで何とも言えない顔をしている

 

 

 

 

「なぁにこれぇ?」

「みっちゃんあたしが聞きたい。」

再びドアを閉めた後、望月と提督はもうどうしたらいいのかわからなくなっていた

ふと、廊下の先を見ると誰かが途中に看板を置くとそそくさと退散していく姿が見えた

反対側にもいつの間にか看板が置いてあることに気づいた

 

 

『大将ご乱心につき近寄るべからず』

 

 

「・・・・・・。」

「ダメだこりゃ。」

この看板見た感じ即席ではない

という事は前例があったという事だ

おお・・・もう・・・

頭が痛い

額に手をやりながら扉の前に戻る

そして、あきらめたように再びノックをしようとすると

「ちょっとまって!耳本中佐!」

聞き覚えのある声の主が呼び止めた

「おや。雷か・・・どうかしたのかい?」

「ええ。文月に言われてきたのだけれど・・・中で何か?」

「あー・・・うー・・・。・・・えっとね?」

 

カクカクシカジカシカクイムーヴ

 

簡単に説明すると雷は苦笑した

「時々あるわ。ちょっと待ってて。話ができるようにしてくるわね!」

そういって入っていった

 

 

 

 

「大丈夫よ!」

10分くらいして、中から声がしたので扉を開けてみる

・・・信用していないわけではないのだが恐る恐る

 

「おお!先ほどはちょっと見苦しいところを見せたようですまなかったのう!!」

「・・・うう。雷ちゃーん・・・。」

扉の向こうでは、ソファーの上で上機嫌に座っている大将と部屋の隅っこでいつの間にか敷いた畳の上で雷の膝に泣きついている中将がいた

・・・あまり好転していない気はするが大将と話ができるようになっただけましと思うようにしよう

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでリンガに行くにあたってタカ派の方も視察をお願いしたいのですが。」

「なるほど・・・。うーん・・・・・・。」

大将は顎に手をやり、ちらっと中将を見た

中将はいまだに落ち込んでおり、復活の兆しは見えない

雷も大将の視線に気づいて苦笑し、首を振りながら指でバッテンを作った

こういった方面の話は中将が詳しい

しかし、残念・・・情けないことにその中将はとても使い物にならない

「あー・・・そのー・・・な?」

「もういいですわかりましたんで。」

ハイライトが消えうせた目で淡々と返答する

「ここでははっきり言えないが東北、北海道方面に行ってもらう可能性が高いことは承知しておいてくれ。」

 

 

 

最近異動が活発になっている地区でもあるため、視察を行う予定だったようだ

候補として告げられたのは、仙台第三、函館第二、釜石の3つらしい

どの候補も重要な場所であり、リンガと規模のつり合いは若干取れないが申し分はない

一番大きいとしたら函館第二だろう

そして、タカ派の中でもそこまで活発ではない部類だ

 

タカ派といえど何も不正ばかりたくらむものばかりではない

ただ単純に、海域奪還を優先的に行うべきだという意見を持っている者もいる

ハト派の慎重すぎる姿勢には同意できないからという理由でタカ派に属す

タカ派の中でも穏健の色が強い系統の特徴でもある

 

逆にハト派の中にも不正をたくらむものがいるがそっちに関しては詳しいことは中将で止まっているとのこと

裏付けや証拠集めが終わってないのだろう

 

 

 

 

「承知しました。・・・ところで。」

「あ?わかる?いやー参ったのぉ!」

話を持っていくまでもなくあちらから振って来た

見るからに顔がにやけており、聞いて聞いてオーラがにじみ出ている

「うっぜぇ。」(何かいいことでも?)

「司令官。逆だよー。逆。」

つい本音が出てしまったが、大将はそれを気にする様子がない

 

 

 

 

「睦月型の改二ですか!」

「そうなんじゃよ!ついさっき妖精さんから電話があってのぉ!!本当に長かった・・・!」

そういって文月を抱き寄せ、頭を撫でまわす

「あのねぇ大将ぉ~・・・。まd」

「ついに砂安君に追いつき追い越せるのだよ!!」

提督はなぜ中将がメンタルブレイクしているのかようやく理由がわかった

ちなみに追いつきは雷には秋に大本営指定の浴衣が支給された事だろう

その期間は大本営から支給された衣装を身にまとうことになっている

しかし、文月には現状それがない

そのため、おそらくだが支給当時大将を散々煽ったのだろう(NDK?NDK?みたいな感じで)

そして、今その仕返しをしている最中なのだ

 

 

 

 

「改二は妖精さんが突然話を持ってきますからねぇ・・・。文月、おめでとう。」

「あのぉ~・・・。それなんだけどねぇ?」

提督は文月に祝いの言葉を言うと言いづらそうに衝撃の一言を言った

 

 

 

 

「妖精さん曰く睦月型の改二としか言ってないんだよぉ。」

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・え?」

少しの沈黙ののち、思わず聞き返した

「だからぁ!睦月型の改二としか告げられてないの!」

「ふふん!そうはいっても実装夏といわれとる!夏といえば7月!7月といえば文月!決まったも同然じゃな!」

文月の言葉を流し、大将はどや顔でソファーにふんぞり返っている

「へぇ~・・・じゃあ望月にも可能性があるってことですね。」

提督はちらりと望月を見た

「へっ?!いやまぁ・・・・・・ないわけではないけどさぁー・・・。」

姉の文月の方を望月は思わず見ると、文月も困ったように苦笑した

「改二が来ている皐月と一緒に暴れまわったのは文月じゃからのう。彼女に決まっているわい。」

「でも確約はもらってないんですよね?」

 

「何が言いたい?」

「いえ。あくまで事実を述べたまでですよ?」

 

大将は先ほどまでの笑みを消し、鋭い目つきで提督をにらんだ

提督はというと目を細めてにこにこと笑っている

 

「ちょっと外に行こうかの?」

「そうですね。」

すっと立ち上がると文月と望月を置いて足早に外に出る

 

 

 

 

 

ツギハフミヅキチャンデキマリッテイッタダロウガァ

マダキマッテナイデスゥ!ウチノモチヅキニクルカモシレナイジャナイデスカ!

ストーカーノキョウカハダレモシマセンー

マイニチマイニチストーカサレテルワケジャアリマセンー!フダンハチャントシゴトデキルイイコナンデスゥ!

ソンナノフミヅキチャンダッテソウダワイ!

モチヅキダッテソウデス!

 

 

 

 

 

 

どこかの格闘家のテーマ曲がどこからともなく聞こえてきそうな・・・

望月と文月はもうあきらめてお茶をすすり始めた

「でもよかったねぇ。」

「ん?何がー?」

「耳本さん。ちゃんと意識してくれてるみたいで。」

「ブッ!」

文月がニコニコと望月に爆弾を放り投げた

それに対して望月はすすりかけのお茶が変なところに入ってしまいしばらくむせる羽目になった

 

 

 

その後服がズタボロになった提督と腰が・・・腰が・・・とうわごとのように呟きながら同じくズタボロになった大将が戻ってきた

大将はふらふらとしていたが、提督曰く仕事はできる程度のエビぞりをかけたと言っていた

さらに服の弁償代金をちゃっかり大将の個人あてに送っているあたり提督の方が一枚上手みたいだ

 

 

 

 

 

 

「それで?どこに行くんだ?」

打ち合わせを終わらせ、先ほどまでの軍装ではなくラフな格好に着替えた望月と提督

大本営から少し離れたレストランで食事を済ませ、食後のコーヒー(提督は紅茶)を飲んでいた

「ふふふ・・・。お楽しみだよ。」

「?」

少しぞくっとはしたが、ピンクいホテルや大人のおもちゃ屋ではなさそうな雰囲気である(そういうときは大体にやけているのではなく、至極まじめそうな顔になっている)

 

 

 

「ここでーす。」

「・・・おう。」

ついたのはアニ○イト

買いたいゲームやグッズやCDでもあったのか?

そうは思ったがそっちは完全に望月の趣味でもある

ぐちぐち言うのは自分の性分ではない

これならば早く終わって帰れそうだな・・・

 

 

 

 

 

そう思った自分を張り倒したくなった

 

 

 

 

 

店内に入った望月が向かったのはゲームでも漫画でもCDコーナーでもなかった

 

コスプレのコーナーだった

 

そして、今現在あらゆるものを望月自身の体に当ててはこれはどうだ、それともこっち?という事やっている

 

女性とのデートでよくあるシチュエーションだろう

女性が服をとっかえひっかえしてこれは似合うか?こっちの方がいいか。

たいていこういう時男性は何でもかわいいよなんて言ってしまい女性の機嫌を損ねる

テンプレの一幕ではある

 

それが今現在目の前でごく自然に繰り広げられている

 

・・・服がコスプレ関連なことを除いては

 

 

「どれがみっちゃんはいいの?!」

「・・・・・・一つ聞きたいがそれを聞いてどうするんだ?」

「もっちろんそれを着て夜戦を・・・」

「はい!てっしゅー!」

ナースやらメイド服、ミニスカポリスだなんて定番者から今はやりのアニメやゲームのもの

終いには艦娘の衣装まで売っていた(もちろん模造品です)

 

 

 

さっきの寒気はこれだったのかと理解した提督は大急ぎで店を出ると、ちょっとして望月が店から出てきた

「もうちょっと選んでくれたっていいじゃーん・・・。」

「却下。まったく・・・頭の中で下着売り場にでも連れてかれるかなと一瞬思ったが・・・」

「ああ!」パチン

「行かないからな!!」

その手があったかと指を鳴らし、こちらを向いたが速攻でくぎを刺した

「ちぇー・・・。」

むくれた様子で少し引いたところからついてくる

 

 

 

「・・・?」

「ん?どーしたのみっちゃん?」

そのまま地下道に入り、駅に向かっている途中ふとある物が目に留まった

駅地下の店には様々な店があったが、たまたま店先に飾られた上着がたくさんかけられたラックに目を奪われ、近寄った。

 

季節は5月の終わりごろ

 

セール品の中にまぎれていた紺色のパーカーを手に取った

 

「?」

望月を手招きし、首を傾げた状態でそばまで来させると背中に当て、肩幅を見る

あっていることを確認し、そのままレジに持っていく

 

「え?みっちゃん?」ガサッ

さっさと会計すると頭の上に、はてなマークがいっぱい乗った状態の望月へと渡す

「さっさと出ちゃったお詫び。改装がくるようにっていう願掛けだ。」

先ほど買ったパーカーは、ほかの睦月型の改二改装の服装に似ていた

来るといいなと頭を撫で、再び駅へと向かう

一瞬呆けた様子の望月はすぐに我に返り、提督の後を追った

 

 

 

 

余談ではあるが、帰ったのち望月はこのパーカーを出しては着ずに抱きしめているのを彼女の昔からの同僚が目撃している




というわけで久しぶりに少し早めの更新でしたがこちらのお話はこれで終了です
分割する必要なかったかもと今更思ってます・・・

ほんとは望月も演習入りさせてあげたいけど枠がいっぱいいっぱいで・・・
育ててあげられないからせめてこっちで・・・という事で珍しく変態成分抑え目乙女成分マシマシ・・・になってるかわかりませんがやるだけやってみました

ついに由良さん改二実装!
80で慢心中ですが・・・
大丈夫よね(´・ω・`)
これで85だったら笑えないですけど・・・
設計図使うんだから75で十分なはず・・・うん・・・


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駿河諸島鎮守府の隠し部屋 その1

ある朝

デスクの上にある未決済の箱には山盛りの書類束

といっても作戦期間中のため、ここに来る艦隊は少な目ではある

補給部の仕事はこの期間は、多少少なめになる

今回は北方のため、輸送作戦でも事前に運び出しが終わっている

 

 

 

時雨は3分の1ほどの書類束を箱からつかみ、目を通していく

いつもと変わらぬほかの鎮守府の輸送任務等の結果と報酬の数字の羅列

異常がないことを確認すると補給部の枠に印を押し、決済済みの箱にさっと入れる

ルーチンワークで、退屈ではあるがこの期間だけは少し違うことがある

 

 

「おっと・・・。」

 

 

先ほどの報告書と違い、ホッチキスで止められた書類束

表紙には農園部必要経費四半期臨時概算要求書とある

作戦期間中にこういった書類が回ってくるのだ

堅苦しく書いてあるが早い話が追加購入のお願いだ

年次の概算要求書は提督だけで決済を行う

 

しかし、追加に関しては全部署の同意を得てからと決まっている

無駄がないかどうかのチェック機能だ

ここ最近は新設の部署が増えたため、ますます増えている

補給部は年次の概算で何とかなるが、新設の部署の場合は上回ってしまうことが多い

多少多めに見積もって入るのだろうが、それでも慣れてなかったり、想定外の出費が出るため必ずといっていいくらい足りなくなる

 

特に、農園部は計画が拡大傾向にある

 

最初は農園のみと思ったのだが、牧場などの併設まで検討に入ってしまったため、予算の計画が相当狂ったのだろう

冊子をめくっていくと今回は牧場関連の物はなかったが、新規の肥料に苗、苗木、そしてスプリンクラーなどの機器の購入などの必要な理由が書かれていた

目を通して特に変なところも見受けられないため、印を押そうと最初のページに戻った

 

そして、そこで違和感に気づいた

 

提督の印がすでに押されているのである

この書類は比較的急ぎではないのと、重要書類に指定していないため誰からでも回していいのだ

だからといって提督の印が押してあること自体は不自然ではない

農園部は鎮守府から少し離れている

おそらくはいつもの休憩場所に行った際、受け取ったのだろう

時雨が感じた違和感は書類の作成日時だ

 

デスクの上の電話を取り、内線で農園部に掛ける

 

 

 

「はい。農園部です。」

「時雨だけどリ級かい?山風に代わってもらえる?」

「あ、わかりました。ちょっと待ってくださいね。」

すぐにクラシックの音楽が流れる

1、2分ほどして音楽が切れ

 

「もしもし・・・?時雨姉ぇどうしたの?」

「山風かい?ちょっと気になることがあったんだけど・・・農園部の臨時概算要求書って提督に渡した?」

「うん。いつもの休憩してるところにいたから帰るときに渡したよ?」

「それって昨日だよね?」

 

時雨が感じた違和感はこれだった

普通、提督に回った書類は時期にもよるが急ぎではない場合2~3日

早くても1日は留め置かれるはずだ

 

提督の仕事がたまたま空いていた

 

これもない話ではないが、今の時期は作戦期間中

補給部の仕事は少なくても、提督の方には作戦終了後の融資の電話がひっきりなしのはず

それに伴って生産部、資源部の決裁書類は倍増しているはずだ

さらには温泉街の店舗再配置の件もあったはず

とてもじゃないが昨日渡して今日もうこっちに来ていることなんてありえないのだ

 

「うん。そうだけど・・・。何かあったの?」

「実は・・・」

時雨は自分が感じた違和感を伝える

「そういえばあたしも提出した報告書がここ最近帰ってくるのが早い気がする・・・。」

「そっか・・・。今日ちょっと探ってみる?」

確か今日は自分と寝る日だったはず

山風に提案してみる

「うん。」

電話を切ると、時雨は農園部の書類に判を押し決済済みに入れた

そして、日付のおかしな書類がないかを一通り見てから仕事を再開した

 

 

 

 

 

マルヒトマルマル

執務室の前には時雨と山風がいた

2人はうなずくとカギをそっと開け飛び込んだ

 

 

 

しかし、部屋の中は暗く誰もいなかった

ひょっとすると感づかれて、急いで隠れたのかもしれない

電気をつけ探し回る

 

が、クローゼットの中や執務机の下

果てはソファーの下まで覗き込んだがいなかった

 

「あれ・・・?やっぱり違ったのかな?」

時雨は首を傾げ、扉の開閉履歴を見始めた

「おーいまだ起きてんのかぁ?黙っててやるからいっし・・・ってあら?」

扉をいじっている隣の扉から加古が寝間着姿で入って来た

「あれ?提督は?」

室内の二人を交互に見ながら不思議そうな顔をしている

「えっとね・・・。」

時雨の手が離せないため、代わりに山風が説明する

 

 

 

「ははーん・・・。提督も考えたねぇ。」

「?どういう事・・・?」

加古は顎に手をやりながら、提督の椅子に腰を下ろした

「多分、人によって送る書類を分けてんだ。」

 

古参の部類に入る川内、龍驤、加古

そこに勘のいい古鷹、時雨を足したメンツには決済が済んでいてもわざと送らず、留め置き、それ以外の部署にはすぐに出しているのだろう

 

「うーん・・・・・・。21時退室かぁ。」

「なぁ時雨。提督から来てた書類の中にあったのでおかしいのは山風のやつ一枚だけだったろ?」

「そうだね。それ以外は特に変な日付はなかったんだけどよくわかったね?」

「そりゃあね。あたしだって代理の仕事を少しの期間だったけど仕込まれたからわかるんだよ。山風の書類の次に来てたのって採掘量予定表だった気がするんだよねぇ。」

加古がそういうと時雨はびっくりしたようにその通りだよといっていた

「仕分けるときに順番があってね。うっかり提督も吹雪も見逃しちゃったんだろうねぇ。しかもこの机の上にいつもあるはずの仕事の残りもないから黒は確定だねぇ。」

確かに執務机の上には何も書類がなく、吹雪の机もきれいさっぱり何もない

 

 

 

加古はそういいながら隠し扉(元)に近づきノブを回す

当然、ガチャガチャとカギがかかって回らない

「うーん。これさえ何とかなればなぁ。」

いっそぶち破っちゃおうかと小声で恐ろしいことを言った

 

「こんな手もあるよ。」

 

流石にぶち破るのはまずいと思ったのだろう

時雨がすっとポケットからハンカチを取り出すとくしゃくしゃに丸めて地面に落とした

「あ・・・。提督のパンツ落としちゃった。」

 

 

 

「・・・・・・あれ?」

「「?」」

1分ほどの沈黙を破ったのは時雨自身だった

「望月が来ると思ったんだけど・・・。」

「ああ、望月なら艤装の定期検査で大本営に行ってたはずだよー。」

加古が提督の椅子に座りながら膝の上に山風を乗せてくるくる回っていた

「本当かい!?・・・どうしよう。当てが外れちゃった・・・。」

「しょうがないからやっぱぶち破るしか・・・。」

「君たちどうしたんだい?」

加古が扉を破ろうと構えたところで、懐中電灯を持った皐月がいぶかしげな表情をして入って来た

時刻はマルヒトゴーマル

入室してからすでに小一時間が立とうとしていた

 

 

 

「なるほどね。言われてみれば僕のところの書類は帰ってくるの早いね。」

 

加古にした説明を再度皐月に説明すると納得してくれた

皐月は着任して日が浅いため、書類の決裁の通常のペースを知らないそのため、ばれなかったのだろう

ましてや、皐月の部署は温泉街の再配置で忙しいところ

日付の違和感を抱く暇なんてない

 

「そういう事ならまっかせてよ!」

胸を張って、ポケットから何かを取り出した

皐月は今日の見回りのため、マスターキーでも持っているものだとその場のみんなが思った

廊下側の出入り口に着くと皐月はごそごそと何かをやっていた

「え?マスターキーじゃないの?」

「ここは司令官の自室だからそういうのはないよ。だから・・・。」

 

 

先ほど取り出したものとは、2つのヘアピン

1つを少し突っ込み曲げ、反対にして鍵穴に入れる

奥まで入り、回そうとすると引っかかることを確認するともう1つは先端の方だけを曲げた

そして、先端の曲がった方をちょちょいとすると

 

 

「ほら!空いたよ!」

「「「・・・・・・。」」」

 

のちに聞いた所、望月のピッキングは皐月から教えてもらったものという事を3人は知る・・・というより知るまでもなく気付いた




構想がまとまって打ち出してみたら想定外に長くなったので2つに分けることにしました(´・ω・`)
次の話も8割方できてますので早めの更新になる予定です


由良改二はおおむね想像した通りの改装でしたね
・・・甲標的はちょっと想定外でしたが阿武隈の代わりも務められるのでイベント参加はほぼ確実ですね! 火力低いのが気にはなりますけど・・・
うちの由良さんは・・・改造後、阿武隈の代わりに北方で輸送してます
ニコニコの方では閣これ祭に参加してます
名義は同じですのでもしよければ見てくださると幸いです
・・・ツイッターよりひどい事話してますけどね


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駿河諸島鎮守府の隠し部屋 その2

「んー・・・。やっぱりもぬけの殻だねぇ。」

相も変わらない殺風景な部屋

おいてあるのは机とベット、備え付けのクローゼット

しかも、前に入った時よりも狭くなっている

 

 

建築当初は10畳あった提督の私室も執務室の拡張などでじりじりと狭くなっていた

阿武隈が泊まった時は6畳

今は給湯室を拡張したおかげで4畳あるかどうか

本人は気にしていないが、いくらなんでも仮にも鎮守府の主の私室がこれではあんまりだろう

 

 

検討しなきゃなぁと、その場の4人は同じことを考えながら壁や床をたたき始めた

もうお察しであろうが、隠し部屋があるとみんな踏んできている

「うーん・・・。お?ここか?」

加古は床をどんどんと叩いた

叩いたところはほかの場所と違い、軽い音がする

「あ、そこは落とし穴だよ。」

前に落ちたからと皐月(E提督のパンツ)がさらっと洗濯籠をあさりながら言う

「うぇぇ!それをはやく言ってよぉ!」

加古がびっくりした様子で慌てて飛びのく

うっかり踏み抜いて奈落へなど誰も落ちたくはない

「・・・・・・あ。」

「何か見つけたのかい?」

山風が何かを思い出したように小さく声を上げると隠し扉の方へと小走りに向かった

その時雨は、皐月からパンツを取り返し、リネン袋に放り込むと固くひもを縛っていた

 

 

 

 

「あった・・・!」

山風は執務室に戻ってくると、執務机の隅っこに目を凝らして探した。

そして、隅っこの天板を開けた

そこには、4つのボタンとテンキーパネルがあった

「山風これは・・・?」

「なんかの操作盤みたいだけど。」

加古と皐月が不思議そうに見ている

「ああ!あの時のだね!」

事情を知っている時雨が加古と皐月に説明をする

以前、皐月と望月が提督の私室で喧嘩(パンツの取り合い)をしていた時に、使ったことを山風は覚えていたのだ

 

 

 

(たしかあの時は・・・3のボタンと・・・1115っと?)

そう押すとパネルに----分

と表示された

とりあえず1と押して確定ボタンを押すと分の表示が消えた

「出来たかい?」

「1分待って・・・。」

 

少しの経つとバガン!という大きな音が隣の部屋からした

「そうそう!こんな感じで開いたんだよ!」

皐月が大声で騒いだ

開いたことを確認した山風は1と書かれたボタンを押し、パスワードと時間を入力すると

「「「「!」」」」

すっと両開きの正面口の隣に隠し扉が現れた

時雨が近づき、試しに開けてみる

空けるといつもの廊下であり、何の変哲もない扉だったようだ

その後、開閉記録を見てみるがカウントされていないことがわかった

「とりあえずこれで提督の侵入経路は分かったね。」

時雨が新しい隠し扉を閉めた

ちなみに、2のボタンは隠し扉を再び隠すものだったので省略

 

「次がおそらく提督のところに通じているんだろうねぇ。」

加古は少しあくびをしながら椅子でちょっとうとうととし始めた

もう時刻は丑三つ時眠いはずだ

「時雨姉押すよ?」

「・・・・・・。」

時雨は何かを考えている素振りだった

山風の呼びかけにわかったと返事をすると皐月に近づき耳打ちをした

「ん・・・?・・・・・・了解だよ!」

皐月は耳打ちを聞き終えると、笑顔でうなずき了承した。

そして、廊下へと出て行った

 

 

 

 

 

 

 

「くぁ・・・・・・。」

提督はあくびをした

机の上に置かれた書類束

臨時概算要求書と書かれたものや融資願いの山、牧場の採算の取れる割合に生産見積もりなど様々な書類があった

一方で、出窓には決済済みの書類束が付箋でいつ、どこの部署へと回すか事細かに仕分けされた状態だった

ある書類を書き終えると万年筆を置き、背伸びをする

集中が途切れた時、ふわっと紅茶の香りがした

「一息入れましょうか?」

「そうだねぇ。」

先ほど書き終えたのは他の鎮守府の資源融資に対する答申書

朱肉をつけ、判をついて決済済みに仕分けた

そして、椅子を反転させ、机に背を向けた

吹雪が、カップに注がれた紅茶を渡してきたのでお礼を言って受け取る

いいえと言うと吹雪も自分の席について飲み始めた

 

「それにしてもここを作って大成功だったな。」

「そうですね。今のところ作ってから誰もばれてませんし。」

「ここ一週間連続で使っても誰も怪しまないからなぁ。しいて言うなら自室のベットが雨漏りで一回おかしくなったくらいだし。」

紅茶を飲みながら思い出す

あの時はちょっとえらい目にあったが・・・

「いっそ来週もやっちゃいますか?」

吹雪が少し悪そうな顔をして言った

「いいかもねぇ~・・・。来週あたりで作戦落ち着くしそれまで先の仕事をやっちゃおうか。」

あっという間に飲み干すと、ごちそうさまといって横の机の吹雪にお礼を言う

椅子を回転させ、再び書類の山が築かれている机に向かった

「さって!あと2時間くらいがんb・・・・・・。」

「どうかしたんですか?しr・・・・・・。」

「・・・・・・。」ハーイ

 

 

 

 

 

「うぉ!」

山風がパスワードを入力し終えると、ガコンという音がした

そして、加古が据わった椅子がせり上がりを始め、行先の天井が開いていく

「そっか!屋根裏か!」

加古が、天井の先に消えるとすぐに椅子が下りてきた

加古は乗っていないところを見ると、どうやら空間があるみたいだ

「僕らも行こう!」

「うん。」

山風は再び、パネルを押し始めた

 

 

「あらぁ・・・やばいよ吹雪ちゃん。ちょっと徹夜が過ぎたみたいだねぇ・・・・・・。笑っている加古が見えるようになったよ。」

「司令官もですか?どうやら私も・・・・・・。」

椅子を再び、吹雪の方に向けて目頭を押さえてうーんと唸る。

同様に、吹雪も同じ動作をした

「さぁこれで大丈夫!」

目頭のマッサージを終え、再び前を向く

「・・・・・・。」ハーイ

「・・・・・・。」ハーイ

「・・・・・・。」ハーイ

「・・・・・・。ハーイ?」

どこぞの住宅メーカーみたいに3人とも手を挙げて微笑んでいた

そして先頭にいる加古がそのまま手を振り下げる

 

 

 

「「「確保ぉ!」」」

 

 

 

3人が提督と吹雪をとっ捕まえるためにダッシュを始めた

勿論提督と吹雪も即座に反応し、走り始めた

「吹雪ちゃんあっちのボタンは押せる?!」

「大丈夫です!提督は?!」

「たぶん行ける!」

並んで走りながら、2人は両サイドの柱を拳骨で思いっきりたたいた

同時に、赤いパトランプが回り始め壁が下りてきた

「これは?!」

「提督め!あたしたちをかく乱するつもりだな!」

壁が下りてきたといっても閉じ込めるためのものではなく、視界を遮り迷路のようにするためのものだ

「あっ・・・!あそこ!あっ見えなくなっちゃった・・・。」

しかも、煙幕まで出てきてこれでは追いつけそうにない

「くそぅ!どこだ!」

 

 

 

「はぁはぁ・・・・・・あー・・・・・・。」

「大丈夫ですか?司令官?」

提督の息切れを吹雪は、背中をさすりながら小声で耳打ちした

「あー・・・・・・。うん。大丈夫。」

深呼吸をして、息を整えると立ち上がった。

「さてと、あとはっと・・・・・・。」

壁を横にスライドさせるとたくさんのボタンとパネルが出てきた

提督は手際よく押していき、再び閉めた

ちなみにこのギミックはすべて明石謹製

(注文したらノリノリでやってくれた)

「よし!さぁ逃げるか!」

「でも提督。執務机のボタン・・・ばれちゃいましたよね?」

「大丈夫!今天板をあかないように操作して、自動的に塗装を塗り直して継ぎ目もわからなくしたからね!」

そういって提督は地面を思いっきり踏み抜いた

すると、床板・・・天板が簡単に外れた

「あとは鎮守府を脱出するだけだ!」

煙幕がはれはじめ、降りていた壁も上がり始めた

「行きましょう!司令官!」

2人は下へと飛び降りた

そこは何と提督の私室

 

2人はベットの上に綺麗に着地

 

 

 

 

 

することなく何かに引っかかって宙ぶらりんになった

「「えっ?」」

2人は何が起きたのか一瞬わからなかった

よく見ると自分たちは網のようなものに引っかかっていることがわかった

「やぁ!時雨の言ったとおりだ!」

皐月がニコニコと近づいてきた

「時雨が『前に提督が部屋の雨漏りを直したことがあるらしいからひょっとするとここに逃げてくるかもしれない。だから皐月はここに残って網を張っておいてほしい』って言われたんだよ!」

「提督、吹雪。」

2人は引きつった顔で上を見ると時雨を始め、山風と加古まで覗き込んでいた

「残念だったね。」

 

 

 

ちなみに、執務机の上には大本営より臨時の呼び出しがあったため出張する

そう書かれた偽装の書類がどこからか出現しており、もし逃げきられてしまったら隠しボタン含め、気のせいですっとぼけて逃げられていた

そう加古は語る・・・・・・




相当前から振りまいておいた隠し部屋の伏線全回収でした~

今月手に入る設計図をうんうん唸りながら現在考え中です
リットリオにしようか長門にしようか、はたまた鳥海にしようか利根にしようか・・・

いかんせん2枚あっても鶴姉妹用なんで使えそうにないのがね・・・
結局レベルだけ上げてイベントの時に考えるスタンスで保留してますが

運営も焼け石に何とやらですが勲章はくれましたし・・・(´・ω・`)
夏イベで大鷹みたいな実装の仕方がなければいいですがねぇ・・・
いやめっちゃ活躍してますけどね大鷹改二
頭が痛いのは5月の報酬でサラ改二の足音も近そうだという事ががが・・・

そんなこと考えながら備蓄に励むは毎日ですはい
燃料、弾薬があと1,2週もすればカンストするからそのあとは・・・
ボーキの備蓄と引き続きバケツ回収に励みます(´・ω・`)


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駿河諸島鎮守府の改装

「はい。それじゃあ第一回鎮守府改装会議を始めます。」

いつもの会議室で開かれた初めての議題

議長を務めるのは川内

副議長の席には龍驤

この2人が駿河諸島鎮守府の臨時ではあるがナンバー1、2だ

提督と吹雪は?

そう思った方は大体お察しいただけるだろう

 

 

 

 

実はこの会議場にいない艦娘が一人

そう加古である

提督は加古と秋祭りの約束で旅行へと行っている

それとともに、吹雪には表向きは佐世保第二鎮守府に出張という事になった

 

 

 

真意は叢雲に

「姉の吹雪を見張っとけ」

という事である

 

 

 

 

以前、2人同時に倒れた時は旅館に収容した

しかし、その部屋には脱出口がいくつかあった

勿論ふさいだわけだが、ひょっとするとまだあるかもしれない

脱出口を作った明石に聞いても守秘義務と言われてしまい、聞き出せない以上、旅館への収容をあきらめた

そこに現れたのは佐世保第二鎮守府の吹雪の妹、叢雲である

これ幸いと、何も告げず叢雲に輸送船満載の資源と事情を書いた手紙を持った吹雪を預け、佐世保にとんぼ返りさせた

 

 

 

 

その2人のいないうちにやりたい事

それは鎮守府建屋の改装だ

3代目の建屋にぼろが来ている・・・

というわけではなく、純粋に部署が増えて必要な部屋数が逼迫し始めたのが一つ目の理由

もう一つは提督の部屋の狭さ先日乗り込んだ4人が改めて見て気づいた

鎮守府の主の部屋が4畳ぎりぎりない

これはゆゆしき事態だ

自分たちの住んでいる寮は建て替えを行い、一人暮らしには広すぎる気もする2DK

8畳の和室、洋室の2部屋だ

提督曰く、のちに人が増えた時に建て替えを行わなくてもいいようにという事らしい

部下である自分たちより狭い部屋で寝泊まりしているというのは、心苦しいものがある。

そもそも対外的にもどうなんだという話だ。

 

 

 

 

「妖精さんに相談したところ現状、これ以上の増築は得策ではないという話が出ています。」

初代の建屋は現在山風達の農園部が使用中

2代目は3代目の建屋の1階と2階の一部になっている。

「さらに上に伸ばすと、強度の面と防衛上の面から危険と判断したっちゅう訳や。」

川内の説明に、龍驤が補足をする

防衛上の面というのは、ここの状況を考えれば察しが付くと思う

 

絶海に浮かぶ2つの孤島

そこに遠目から見て、明らかに人工物とわかる物があればそれが目標になってしまう

ゆえに、ホテルなどの高めの建物も山の高さと同じくらいにし、上の階層は迷彩柄を施している

提督の執務室だって入るのだ

それだけは避けたい

 

「妖精さんからの提案は、現在の鎮守府建屋をすこし曳家して艦娘寮と接続、跡地に2階建ての新築の建屋を作るのが一番いいと言われました。」

 

「何か反対意見がある物は挙手をお願いします。」

 

川内が一通りの説明を終え、いったん質疑応答に移ったが特になかった

 

「それじゃあ、新築という事でここからは設計に関する部屋割りの話に入ります。」

そういうと、妖精さんがどこからともなくわらわらと現れ、方眼紙に間取りを引いていく

現在の鎮守府自体はそこそこの大きさであるため、そちらの方も使用すればかなりの広さになる

会議に参加したものがそれぞれ要望を述べていく

 

割り振りとしては、現在の建屋には補給部、生産部、採掘部、医務室4つが入ることになった

先ほど述べた3つの部署は、どうしても処理する仕事量の関係から広めの部屋がほしい

医務室に関しては設備を拡充させ、手術を行うことができるレベルまで上げた関係上、どうしても広い空間が必要になったためである

他の部署については、新建屋の1階に均等に割り振り、残りを会議室と応接室へと変えた

 

 

 

 

ここまでは何の異論もなくとんとん拍子に決まった

 

「最後は・・・提督の部屋だけど。」

妖精さんが出してきた間取りは一般的な2LDK

自分たちの部屋より少し広いくらいだ

この会議については提督にはまだ話していない

設計図と企画書に全員のサインをしてから渡すつもりだ

早い話、押し通すというわけだ

 

 

 

 

「は~い。一つ部屋を追加しない?」

望月が手を上げて言った

「え~・・・。これ以上広くせんでもええんやない?あんま広いと司令官ももてあましそうやし。」

「そうだね。」

龍驤が望月に対してやんわりと反対し、川内もそれに同意する

「現状で、寝室とプライベートルームで十分だと思うんだけどなんでまたもう一部屋?」

 

川内が提案した望月に問う

 

「あたしの部屋に。」

「却下。ほかに意見はある?」

「ちょっと~!真面目に聞いてよ!」

望月が自信満々に胸を張ってこたえると、川内はさらっと流した

抗議に対しても、誰一人として耳を傾けようとしなかった

が、この一言で180度変わる

「誰か毎日一人提督の部屋に泊まり込めばこういったことが減るでしょ~!」

『!!!』

その場にいた全員が望月の方を向く

たしかに、一つ部屋を増設すれば夜間に提督がこっそり抜け出してという事が無くなる

余分に一部屋付けた理由はゲストルームといえば納得してくれるだろう

そして何よりも

 

 

提督とプライベートな時間を増やすことができる

 

 

「やっぱり必要だね。」

「せやな。」

その場の全員が綺麗な手のひら返しをし、妖精さんに一部屋追加するように指示を出す

「じゃあ、広さはこれくらいで~・・・」

「ん?ちょっと待てよ。なんでもっちーが決めてるの?」

いそいそと妖精さんの下で指示を出し始めた望月に深雪が待ったをかける

「え?そりゃ~ここがあたしの部屋になるんだし。」

「ちょ!異議あり!なんでもっちーだけなんだよ!それだったらあたしだって!」

妖精さんがちょうど図面を書き終えたところで、深雪が部屋を書き足すように指示を出した

 

「え!ずるい!私も!」

「はぁ!うちもや!」

「あたしだって!」

「僕も!」

「ゴーヤも!」

深雪がさらに一部屋追加したのを見て、みんな一斉に図面によると妖精さんに指示を出し始めた

先ほどまでの順調さはどこへやら

我先にと妖精さんに要望を出していく

妖精さんは、必死に対応していく

次々に部屋が追加されては書き直し、また追加されては書き直し・・・

 

「モウムリデス・・・」

そういいのこして、目を回して倒れた時にようやく気が付いた

 

 

 

リビング

キッチン

ダイニング

和室1部屋

洋室14部屋

 

 

15LDKというわけのわからないことになっていた

しかも、想定をはるかに超えてしまっているため、新しい建屋の半分くらいが設計図面に追加されている

 

 

一旦会議を中止し、妖精さんを休ませたのち再開した

その結果として、望月が提案したときの状態に狭めの予備の部屋を追加した案が採用(4LDK)

 

 

 

提督の部屋への宿直番は当番制で、見回り番とは別の当番になった

幸い、4部屋目は余ったところを活用したため、当初の予定のスペースに収まった

妖精さんがやれやれといった表情で図面の原本を持って退出していった

そして入れ替わりに、明石が不思議そうな顔で妖精さんを見ながら入って来た

「何かあったんですか?」

「あーまぁちょっとね・・・」

気まずそうに川内は顔を背けた

明石は、周りを見たが誰もが目をそらしてしまったため、ちょっと怖くなった

 

「なるほど。わかりました。機器に関しては改良したものがありますのでそちらでもいいですか?」

「おねがいね。」

明石が呼ばれたのは以前の防犯システム(入退室履歴等)を新たに設置するためだ

「それzy・・・ちょっとすみません。電話に出てきますね。」ブーブー

これが機器の一覧表です

そういって機器の冊子を置くと、退出していった

 

 

 

妖精さんが残していってくれた図面に、機器の説明を見ながら設置していく

執務室前の廊下に執務室の扉、新しく設けられた秘書艦室にも取り付けて・・・

執務室の室内以外は、漏れが無いようにみんなでホワイトボードに図面を貼って意見を出し合っていく

 

意見が出尽くしたのは明石が出て行って30分ほど経ってからだった

「おそいですね・・・。」

出口の近くにいた古鷹がそっと扉の方を見やる

「ちょっとm」

「いやー!すみません!ちょっと長電話になっちゃいまして!レイアウトの方は決まりましたか?!」

古鷹が立ち上がろうとしたとき、明石が慌てた様子で入って来た

額には汗が浮かんでいるところを見ると何かまずいことでもあったのだろうか

「こちらですね!わかりました!コピーはとってありますか?」

「あ、うん・・・。」

「じゃあこれをもとに準備しておきますね!ちょっと緊急の用事が入っちゃものですから失礼します!」

ささっと図面を丸めるとそそくさと退出していった

嵐のように去っていった明石を全員ねぎらう暇もなくぽかんとしていた

 




ここからはタイトルは違いますが時系列が同じ3つの視点があるお話となります
今回は鎮守府ですが、吹雪編、提督編が続きますのでよろしくお願いします

夏イベの規模が発表されましたが大規模ですか・・・
まぁもうわかり切ってたことなんで特に驚きもないですが(´・ω・`)
資源集めに奔走したおかげで燃料と弾薬は使い切った状態からカンスト付近まで持ってこれたのであとはボーキをどれだけ集められるかにかかっている状態ですはい

それと7月9日に瑞雲ハイランドに再吶喊が決定
・・・・・・望月のが出るからいけないんや・・・
法被も変えればいいなぁなんて思いながら行ってきます・・・


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駿河諸島鎮守府と姉妹 その2

「馬鹿じゃないの?」

「あはは・・・。」

 

 

 

佐世保第二鎮守府 秘書艦室

 

 

 

鎮守府から出張という名目の追い出しを食らった吹雪は、辛辣な叢雲の一言に苦笑いをしてこめかみを掻いた

作戦がもうすぐ終わるため、使った分の資源回復のために遠征に出たのだ

だが、ついた先で備蓄予定数を上回る資源とついでに姉を押し付けられ何が何だかわからぬうちに追い返された

とりあえず自身の提督に報告をし、吹雪が持っていた手紙を見て頭を抱えた

そして、純粋に出てきた言葉が最初の言葉である

 

 

「もおおお・・・どうしてあんたって・・・あー・・・。」

机に突っ伏すとため息をついた

「ごめんね。叢雲ちゃん。」

申し訳なさそうに吹雪は謝る

「はぁ・・・・・・私はまだもう少し仕事あるからここにいなさい。」

深いため息をつくと、書類を見始めた

吹雪は手紙を見る前に出されたお茶を一口含んだ

上品な甘さと渋みが口に広がる

気を使ってくれたのか上等な物のようだ

 

ちらっと横目で見ると叢雲は集中しており、こちらに気を向けてないことがわかる

ここにいなさいと言われたが、なにもしゃべらずじっとしているのは性に合わない

かといって話しかけて邪魔をするのは気が引ける

どうしたものかと思い、あたりを見回すとある物が目に入った

隣の執務室へ通じる扉のところに未決済(期限長め)と書かれた書類束があった

そっとソファーから立ち上がり、近づく

つかんで、ぺらぺらと捲っていく

出撃報告書や建造報告書などの自分たちのところにはない書類もあれば、遠征報告書、任務報告書などの自分たちが担当している書類があった

そして、じっと見ると遠征報告書や任務報告書はすでに記入が必要なところは終わっており、最後の秘書艦のミスがないかのチェックと確認印が押されるのを待っている状態だった

そっと後ろを見ると叢雲は、先ほどと変わらず作業をしている

 

 

 

 

 

 

「ん!終わったわ・・・」

「お疲れ様。はいお茶ここに置くね。」

持っていた書類を決済済みの箱に入れ、伸びをした

吹雪はニコニコして、お茶を机の上に置いた

「あら、ありがとう。・・・ってこれ吹雪にやらせることじゃないんだけど。」

「ごめんね。じっとしているのが性に合わなくて・・・。」

お茶を飲みながらジト目で吹雪を見ると目線を合わせないように先ほど出された湯飲みにお茶を入れる

 

「全くもう・・・。ところでさっきそっちに行ってたけど何してたのよ?」

「えっ?!ええと・・・。」

お茶を飲もうとした吹雪はビクッとして言葉を濁す

何も言わなかったから見てないと思ったのだ

「・・・ちょっと。何してたのよ?」

「えっとね?怒らない?」

「ケースバイケースね。」

むすっとした顔をして吹雪を見る

気まずそうに吹雪は書類束を出す

「・・・・・・まさか?」

叢雲は書類束をひっつかんで捲っていく

下の支給側と書かれた枠に駿河諸島鎮守府の印鑑が押されていた

さらには、ご丁寧に書き間違いのところは二重線が引っ張って訂正されていた

 

つまりは、チェックが終わっているため確認印のところと訂正印を押すだけでよくなっていた

 

「・・・・・・ん。」

「えっ?」

叢雲は見ている間は肩を震わせていたが、見終えると肩を落とした

そして、吹雪の方に手を出した

吹雪は訳が分からず聞き返した

「印鑑とペンをよこしなさい。」

ワンオクターブ低い声で言った

「えっ?叢雲ちゃんでもそれは・・・。」

「没収よ!あんたここにきてまで仕事道具持ってると思わなかったわ!!!」

そういって奪い取ると、机の鍵付きの引き出しに入れて鍵を閉めた

「もう!いい?あんたは今日明日は休みなの!!」

「でもちょっと暇だなぁ・・・って。」

「今もう私も暇になったから行くわよ!」

吹雪の腕をひっつかむと秘書艦室を出た

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「ごめんね?」

「・・・・・・。」

不満たっぷりのむくれ顔で目の前に座る叢雲に吹雪はどうにかご機嫌を取ろうとしていた

すべての艦娘の癒しの場所間宮

時刻はちょうどヒトサンマルマル

メニューを確認すると、定番の物以外にもカステラなどの此処でしか食べられないものもあったりする

ちらっと見ると機嫌が少し直したのか、叢雲もメニューを見ている

が、目がちらちらと規則的に左右に動いている

場所から予測するに、クリームぜんざいかパフェで迷っていそうだ

「決めたわ。吹雪は?」

「ん?決まったよ。」

「じゃあ呼ぶわね。すいませーん!」

「はいはい!ご注文をどうぞ!」

手の空いていた伊良湖が伝票をもってこちらにやって来た

「クリームぜんざいをお願いします。」

「はい。クリームぜんざいを一つ。」

「あ、私はパフェを一つお願いします。」

「え?」

「パフェを一つですね?かしこまりました!」

パタパタと小走りで厨房の方に引っ込んでいった

「・・・・・・。」

「私も食べたかったから半分こしよう?」

「しっ仕方ないわね!」

ほほを赤く染めてそっぽを向いた

 

 

 

 

「それで?本当に大丈夫なの?」

「この前からそればっかり・・・。」

器をもらい、半分ずつ食べていると叢雲が聞いてきた

「だってつい数か月前に倒れたのよ?ふぉれはのひむひゃしひふぁ。」

若干キラキラさせながらパフェを食べている

「大丈夫だよ~・・・。」(多分)

「吹雪が倒れたらこっちまでやばくなるんだからね!ほんとにもう!」

「・・・ひょっとして代理頼んだ時きつかった?」

「そっそんなこと・・・・・・。」

否定しようとしたが、そのあとにないの言葉が続かなかった

「あちゃあ・・・ごめんね?大変だったでしょ?」

次からはあんまり頼まない方が

そうぽろっと言いかけた時、叢雲がずいっと顔を近づけた

「どうしてそうなるの!」

「ええ?!なんかまずいこと言った?!」

「確かに大変だったけど!姉さんもたまには休んでよ!!あたしやうちの人に頼んだっていいから!また倒れるわよ?!」

吹雪はびっくりした顔をしていた

同時に、店内がシーンと静まり返っていることに叢雲は気が付いた

「・・・ちょっちょっと外すわ!!」

気まずそうに席を慌てて立って行った

「あっ・・・行っちゃった・・・。」

吹雪は呼び止めようとしたが言葉が出る前に行ってしまった

ふぅと軽いため息をつくと小さくありがとうねと聞こえないだろうがお礼を言った

そして、伊良湖を呼び紅茶とコーヒーを叢雲が戻ってきたら持ってきてもらうように頼んだ

そのついでで会計をした

店内は徐々ににぎやかさをまた取り戻し始めた

少しすれば戻ってくるだろう

そう思い何気なくスマホを取り出した

「・・・・・・?」

急に何か慌てた様子でロックを解除すると電話をかけ始めた

『あ?もしもし?吹雪ですけど・・・・・・。』

 

 

 

 

 

 

後日

佐世保第二鎮守府の青葉が新聞で叢雲のツンデレ特集が組まれた

見出しは

「ツンデレ秘書艦の弱点は姉?!」

「提督にすら見せない一面!」

 

 

叢雲が青葉を追い回すのはまた別のお話し

 

ちなみに新聞は飛ぶように売れた




吹雪型は姉妹という感じがないけど姉をしている吹雪と妹してる叢雲が書きたかったのです(´・ω・`)

睦月型の情報がちょこっと出ましたね
三日月が実質脱落しちゃいましたね
前線で奮闘を続けたという事で菊月の線もかなり薄くなってきたなぁと・・・




瑞雲ハイランドに再吶喊してきました
前回は買えなかった念願の瑞雲法被を入手!
着心地は・・・うん(´・ω・`)
他にも奇跡のラスイチSIMカードを入手できるなどほくほくでした(使い道は知らん)

昼には海自カレーか陸自カレーが食べられるという事で突撃したんですけど陸自カレーしか残ってなかった・・・
でも護衛艦伊勢のカレーがまさかのイカ墨カレーというちょっと勇気のいるものでしたw
陸自カレーはケチャップがかかっている甘めのカレーでした(長門さんもニッコリ)
念願のもっちーのクリアファイルも入手!

スペシャルステージは立ち見に並んでいた人と偶然話し込みそのまま一緒に話しながら時間をつぶしつつステージを一緒に見てましたw
ちゃっかりサークル名刺ももらってきました

・・・なんか最初の瑞雲祭りより楽しめた気がする(´・ω・`)
でももうこれで行くことはない!
・・・嫁艦の商品や声優さん来なければ


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駿河諸島鎮守府の小旅行

駿河諸島鎮守府滑走路

時刻はマルヨンマルマル

 

朝ぼらけの中、2人の人影があった

提督と加古である

2人共ラフな格好で、軍の関係者だと悟られないようにしていた

「それで?どこに行くんだ?」

提督は加古に尋ねる

行先は加古に決めてもらうように言っておいたのだ

「ふっふーん!ないしょだよ。っときたね!」

運ばれて来たのは彩雲

以前にもちょくちょく本土に行くとき使っていたものだ

 

 

 

余談ではあるが、なぜジェット機を使わないのかと思う方もいるだろう

答えは簡単で、用地確保の関係と深海棲艦の関係だ

プロペラ機とジェット機では着陸時に必要な距離が段違いだ

その関係で、各基地の用地確保を減らすためにプロペラ機が採用されている

それだけなら現代機を使えばいい話なのだが、そこで立ちふさがるのが深海棲艦である

いまだに原因は不明ではあるが、現代兵器は役に立たない

だが、大戦期の武器は通用することから設計図や保存機などをかき集めて再び製造している

といっても民間向けには下せないため民間機が飛ぶ場合は軍に連絡、護衛機を飛ばしてもらうことになっている

 

 

 

妖精さんがすでに乗っており、こちらに向かってグッドサインを出している

普段は小さい妖精さんも大きくなっている

・・・こっちもどんな原理かはいまだに不明だ

 

操縦席から妖精さん、加古、提督の順に乗り込んだ

あっという間に離陸し、ぐんぐん上昇していく

それと同時に寒さの度合いも上がっていく

乗る前に来た飛行服と着用したマフラーに顔をうずめてふと、周りを見てびっくりした

 

あたり一面を護衛機が埋め尽くしていたからだ

 

少し過剰じゃないかと思ったとき、違和感に気が付いた

どうやら向かっている方向は北を向いているみたいだ

東に行くにも、西に行くにも撃墜や不時着時のリスクを避けるため一回東へと進路を取るそこから伊豆諸島を北へ向かう

今回はそのまままっすぐ突っ切っている

しかも、スピードを落とす気配がない

これはそんなに遠くないところを目指しているのだろう

ここまであれこれ考えたが、行き先は決まっているのだ

あきらめたように座席にもたれかかり、目をつぶろうとしたとき機体が大きく旋回を始めていた

すでに、本土が眼下にあり着陸態勢に入っていることがわかった

「は?もう?」

思わず声が出てしまい、腕時計を見る

出発してから20分程度

提督は少し嫌な予感がした

 

 

 

 

 

「いやーついたね~!」

「・・・おう。」

ここはどこかというと静浜基地

聞きなれない人も多いだろう

深海棲艦との戦争が始まる前までは航空自衛隊の初等教育訓練基地だからだ

しかし、基地の歴史はちゃんとあり人によっては聞いたことがある部隊がある

 

日本海軍藤枝基地所属芙蓉部隊

 

夜間空襲を主戦術とした部隊の発祥の地がこの静浜基地の前身である

 

といっても途中から岩川基地に異動になってしまいあまり知られてはいない

芙蓉とは富士山をさし、基地から今もだが、きれいに見えたためその名がつけられたという

 

 

 

 

さて、ここで提督が微妙そうな顔をしている理由

それは・・・

 

「ここ俺の実家の近所なんだけど?」

「うん。知ってる。」

「やっぱりか!!」

にんまりと笑った顔をした加古を小突く

「ここまでは決めたけどあとは提督にお任せするよ~。」

「はぁ!?まじで?こっからなんも決めとらんの?!」

あっさりあっけらかんに言われ困ってしまった

 

幸いにも土日ではないため、ホテルとかは何とかなるだろう

車とかも、基地の人に言えば一般車を貸してもらえるだろう

問題は行き先だ

まさかこのまま実家に行くわけにもいかない

時刻はマルナナマルマル

 

「・・・・・・!わかった決めた。」

提督は何かを思いついたように顔を上げると基地の人に車を出してもらうように頼んだ

「お~?どこ行くのさ?」

「カツオでも食べに行くぞ。」

 

基地を出て、道路を北に向かう

その途中で国道に出る

そこを左折しようとしたとき、加古がびっくりしていた

 

「え?漁港行くんじゃないの?」

「そうだけど?」

「じゃあ右じゃないのか?」

 

 

そう、静浜基地があるのはカツオやマグロの水揚げで有名な焼津市

焼津港があるのはここから東側に当たるため、右折しなければならなはず

加古はそれを疑問に思ったのだろう

「そうだな。だけど今回はこっちだ。」

国道を西に走り始めた

まだ朝早い時間のため、車も少なく渋滞が起きていないためすいすい進む

「今回向かうのは御前崎港だ。」

「御前崎港?」

「そ、カツオの水揚げで有名な焼津港だけど実はその多くが冷凍物なんだ。今回はせっかくだから生の方を食べいくぞ。」

遠洋漁業の拠点港であるため、冷凍物が上がることが多い

もちろん生も上がることには上がるが、少な目である

理由は漁場の関係である

カツオの近海での水揚げは現在の時期は鹿児島から遠州灘まで

そのため、ここから漁場に一番近いのが御前崎港となる

「へぇ~。でも生のカツオだと高知のほうが・・・。」

「それは言っちゃいけないお約束。」

 

 

 

 

 

「おお~。」

国道をずっとまっすぐ進み、着いたのは食事処と魚市場が合体した施設

観光バスが多く停車しており、一般客は若干少ないようだ

途中休み休み来たため、時刻はヒトマルマルマル

平日ながらそこそこの賑わいを見せている

建物の中に入ると威勢のいい店主の声や客の声が聞こえる

ショーケースにはカツオ以外にも様々な魚が並べられていたり、乾物やパックで切り身にしたものなどがあちこちの店でたくさん並んでいる

「すごいなていt・・・みっちゃん!」

加古は思わず言いかけたのに気が付いて、ごまかす

「何か土産に買ってくか?」

「だね~・・・。お!これとかつまみに・・・。」

早速乾物に食いつき目星をつけていく様子に苦笑した

 

 

 

 

一時間ほど見て回り、買い物を終えた後は隣のフードコートで・・・

そう思ったがかなりいっぱいになっており、店の方は行列ができていた

「あっちゃあ・・・」

「これは無理だねぇ~・・・」

生シラスありますや本日水揚げの生のカツオ入荷など貼られているのをちらっと加古は見ていた

「・・・しょんないでこっちの弁当屋にするか。」

提督は向かい側の海鮮弁当屋を見た

こちらもシラスこそないが、新鮮な生のカツオを使っている

「次に行くとこで食べればちょうどいいかもな。」

「え?どこに行くきなのさ?」

 

加古が好きそうなところだ

 

そういうと、カツオとマグロの海鮮丼を買うと車に戻り出発した

先ほどの道を途中まで戻り、大きな鳥居の交差点で左折

さらに少し込み入ったところを行き、駐車場に車を止めた

 

 

「どこ?ここ?」

加古はきょろきょろしていた

「こっちこっち。」

提督についていくとそこには湖・・・ではなくそこそこの広さの池が広がっていた

池の奥は森林に囲まれており、なんとも神秘的な雰囲気だ

木陰のテーブル付きベンチに先ほど買った海鮮丼弁当を置く

「鎮守府のとことはまた違った静かさだねぇ~・・・・・・。」

「だろ?休みの日だと子供連れがたくさんいるんだけどな。」

「あ、これうっま!」

加古は早速カツオの海鮮丼を開けて食べている

提督はくすくすと笑いながら自身のも開けて食べはじめた

 

半分ほど食べたくらいだろうか

「みっちゃんそっちのもくれよ~。あたしのもあげるからさ。」

「はいはい。」

「こっちもうまいねぇ・・・なんかこれ飲みたくなってきた。」

クイっとお猪口を飲む動作をする

「ちょっ!このタイミングで言うなよ・・・。ホテル行く途中で買っていくか。」

「やっりー!ごちそうさん!」

「はや!」

 

 

 

弁当を食べ終えると一旦車にゴミを置きに行った

戻る途中である物を加古が近くの商店で見つけた

秋祭りにもあったさくら棒だ

「相変わらず長いねぇ~・・・。」

しみじみと店先に置いてあるさくら棒を持った

「デザート代わりに食うか。」

 

 

1m近いピンク色の棒を持って再び池の岸に戻る

途中で、神社にも参拝をしておいた

二人は隣の摂社の護国神社を参拝してから、隣の主祭の池宮神社に参拝した

先ほど座ったところは日の当たるようになっていたため、移動して木陰に移る

視点が変わり、今度は二人で池を一望できる状態だ

5月の後半のため、日差しは強くなりつつある

日向にいれば熱く軽く汗ばむだろうが、木陰にいると少し離れた海からの潮風が心地よい

ふと、水音がしたのに気が付いた

池にいる鯉がこちらによって来たのだ

提督は先ほど買ったさくら棒を半分に割り、片方を加古に渡すと池に近寄る

そして、少しちぎって水面に落とすと、鯉たちはぱちゃぱちゃと争うように食べ始めた

「ほれほれ~。」

加古も提督に乗ってやり始めた

「昔ここに来たころよくやったんだよなぁ。みんなくれるから人影を見ると寄ってくるんだ。さ、そろそろやめるか。」

ある程度餌をやったところでベンチに戻り、食べた

 

 

 

「静かだねぇ~・・・。」

聞こえてくるのは海からの風が木々を揺らす音と池の鯉たちがたまに跳ねる水音のみ

トスっと肩に重さを感じる

横を見れば加古がすでに夢の中に旅立っていた

それを見た提督も笑いかけ、くぁとあくびをすると腰掛に持たれて寝始めた

 

 

 

 

「んっ・・・。」

先に起きたのは提督だった

加古は肩からももの方に移動しており、だらしない顔で寝っ転がっている

全くと小さく苦笑しながらつぶやき、揺り起こそうとしたときだった

「・・・・・・?」

ふと時計を見る

時刻はヒトゴーヒトゴー

提督は顎に手をやった

何か妙な違和感を感じたのだ

加古を起こさないように少し体をよじり、スマホを取り出す

そして、あるところに電話をかけると4~5コール目くらいで出てきた

 

 

 

『はいもしもし!』

「あ?明石かい?」

『耳本提督ですか?どうかされましたか?』

「いやなんとなくいやな予感というかなんというか・・・。今どこにいる?」

『今ですか?呉の方にいますけど・・・。』

 

・・・それにしては静かすぎる

 

「そう?それにしちゃいつも聞こえる機械の音とかしないけど?」

『・・・あー。今点検してまして・・・。それよりも加古さんと今日はデートなんですよね?いいんですか?』

「ああ・・・。今ちょうどねt・・・おいちょっと待て。どうしてそれを知っている?」

 

案の定だ

揺さぶりをかけてみると相手がぼろをあっさり出した

 

『え?てっ提督から伺い・・・』

「嘘だな。柏崎のやつにも言ってないし、そもそも今日の休暇に関してはうちの鎮守府内の者しか知らないはずだ。うちに来て何をしている?」

『ぐ・・・。わかりました・・・。』

 

畳みかけるように質問攻めをする

明石はあっさりと折れた

ここでしらばっくれても、どうせ鎮守府でいずれは合うし話してしまった方が得策と考えたのだろう

 

「なるほどな・・・。よし!あk」ピリリリリ

『あっちょっとすみません。予備の携帯の方にも電話・・・げっ。』

 

今までの経緯を聞いて話を続けようとしたとき、電子音が電話の向こうからした

 

「なんかあったのか?」

『吹雪さんから電話が・・・・・・。ちょっと出ますね。』

『はいもしもし明石です・・・。はい・・・。はい・・・。なんでそろいもそろって・・・ああいえこっちの話です。』

 

しばらく話したのち、再び明石が電話口に戻って来た

 

「吹雪ちゃんはなんだって?」

『・・・耳本提督と同じですよ。いやな予感がしたから電話しましたって・・・どんだけシンクロしてるんですかあなたたちは・・・・・・。』

 

深いため息が聞こえた

 

「えー・・・。で、設計図をこっちに。」

 

ちょっと笑みが出たが、会話の途中だったことを思い出し、切れた会話を続ける

 

『だめです。皆さんから固く止められてるんですから!』

「そっか~・・・。今度新しい機械を入れようかなぁって思ってたんだけど・・・。」

『え?!そr・・・いやダメです!』

「え~・・・。改修資材生産施設なんだけどなぁ?」

『詳しく。』

 

 

改修資材

一般的にネジと言われているが、あくまでそれは識別章にネジが使われているだけである

実物はネジのラベルが張られた箱である

この中には工具やら部品やらが詰まっているのだが、使えるのは工作艦の明石のみとなかなか使い道が限られたものだ

しかし、この改修資材を使って艦娘の装備品を改修した場合その武装を強化することができる

さらに、改修を重ねていけば初期の能力の倍の能力まで引き上げることができる夢のようなアイテムだ

 

ところが、これには難点がある

現在生産しているのは横須賀の大本営直轄工場のみ

しかも、大半は研究所へと送られまだ改修方法がわかっていない装備品の研究に回される

その関係上、一般の提督に回る量は少なく、少し難しめな任務がこなせる提督に少量が定期的に支給されるものとなっている

 

当然明石のところも例外ではない

 

工廠がほかの鎮守府より大きいとはいえ、カウントとしては普通の鎮守府と何ら変わりない

工廠などの技術作業がメインの呉第二ではほんの少しの支給しかされない

柏崎の提督としては戦闘がメインではないから別に気にしてはいない

 

が、明石は違う

工廠に携わる者としての、研究心は人並み・・・それ以上かもしれない

そんな彼女を阻むのが、研究時に使う改修資材の不足だ

これがなければ、研究もくそもない

 

「最近本土も時折とはいえ空襲を受けるだろ?それで、ほかのところでも生産を開始して横須賀が生産できなくてもほかのところが生産していれば供給できるし、いい加減供給量を上げたいって話が上がっててな?うちが手を上げようか迷っているんだけど・・・。」

『・・・・・・いくつ支給していただけますか?』

 

しばらくの沈黙ののち、覚悟を決めたのか話をつづけた

 

「日間10個、月極めで300個でどうだ?」

『!?乗った!』

 

間髪入れず、即答だった

 

「成立だな。じゃあ設計図よろしくね~。あと吹雪ちゃんと話して'変更点'あるかもだからそれも対応してくれる?」

『えっ・・・それは・・・。』

「開発資材も同数つけちゃおうかなぁ~?」

『何なりとお申し付けください!』

「ありがとさーん。それじゃあね~。」

 

買収が終了したところで、電話を切った

明石は盛り上がっていたが、こちらは比較的静かに話していたため加古はいまだにスヤスヤと寝ている

 

時刻はもうヒトゴーヨンゴー

 

そろそろ行かなければ酒屋も閉まってしまう

「おーい起きろー。」

「ん~・・・うーん・・・。あー・・・・・・寝ちゃった?」

「おお寝てた寝てた。気持ちよかったら?」

むくりと起き上がり、背伸びをした

「そうだね~。また来たいねぇ。」

提督とさ!そうニカッとわらった

「機会があったらだな~。」

「ふっふ~ん!まだまだ券はあるもんね~!」

「おいおい・・・俺があんまり抜けるのほかのやつに負担掛けることになるから勘弁してくれよ?」

「うぐっ・・・。こうなったら負担を減らしてまた来れるように。」

「ほれ!ちゃっちゃと乗った乗った。酒屋がしまっちゃうぞ!初亀買ってやるから。」

「やりい!」

会話もそこそこに、車に乗り込んでホテルへと向かった

 

 

 

 

こののち、夜通し飲んで結局もう一日泊まらなくちゃならなくなったのはまた別のお話し




注釈もりもりのせいでめちゃくちゃ長くなっちゃいました・・・(´・ω・`)
というわけでこちらのお話に関してはここで終わりとなります

ローソン突撃してまいりましたが・・・
アクキー少な!マグカップねぇし!ゼリーとおにぎりは?
そんな状態でした・・・(´・ω・`)
でも古鷹さんと綾波、敷波確保できたからそれだけでかなりの収穫です。はい。
ツイッターの方では全然手に入れなれなかったり、逆に余裕で全部手に入ったりと様々みたいですが・・・


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駿河諸島鎮守府の隠蔽

「ありゃ?これは間違いかな?」

いつもの書類の決裁を行っているとある数枚の冊子に目が止まった

今は6月

北方方面の作戦も無事終了し、戦後処理もある程度終わったところ

一束が分厚いレンガのような書類冊子からチョコレートの厚さくらいまで減り、書類の山も威圧感をそこまで放たなくなってきたころだ

 

 

 

「夏季観艦式のおしらせ」

 

 

 

観艦式

海軍の艦艇による海上パレードで、特に君主・大元帥・大統領・総理大臣など 、その国における最高権威者や最高軍事司令官が親閲するものである

 

といっても現在の観艦式はどちらかというと広報活動の一環で、親閲するのは国民が主体となっている

もちろん先述の最高権威者達が親閲することもあるが、こちらは臨時で開催されるものが多い

深海棲艦が現れる前までは3年に1度行っていたが、現在は毎年の定期開催となった

深海棲艦が現れてからの観艦式は護衛艦ではなく艦娘が主体となった

艦娘の行進に始まり、プログラムで毎年違った鎮守府の艦娘が妙技を披露したり、演習を行ったりと様々な催しを行う

 

 

 

「この冊子ですか?」

吹雪が書類束を持ってくる

たしかに、夏季観艦式と書いてあるが内容は全然違った

少し厚めの冊子に書かれているのは観艦式を開催するにあたっての消費資源の推定量や南方からくる艦隊の臨時宿泊所としての要望書だった

これは毎年来ている物だったので、すぐに決済して明日本土に送る予定だった

「うん。・・・・・・あれ?じゃあこれはいったいなんだ?」

間違いかな

そう思って捲った

 

夏季観艦式参加要請願い 駿河諸島鎮守府筆頭秘書艦 吹雪殿

 

「「・・・。」」

「「え?!」」

二人は、書面を見ると顔を見合わせた

具体的な内容を見てみると、先ほど言った観艦式の中のプログラムの一つに出演してほしいとのことだった

おそらくは、大将あたりが誰を出そうか思案した結果、吹雪を推薦(犠牲)したのだろう

 

「ええ・・・・・・。これだとうちの鎮守府はあと11人は連れてかなきゃだしなぁ。」

そう、ネックになっているのが観艦式に派遣する部隊の人数

鎮守府の規模が大規模になればなるほど参加させる部隊数も増える

一般的に横須賀を除いた4大鎮守府は12隻の連合艦隊を2つ

運用できる艦隊全部を派遣する

それ以外の4大鎮守府を補佐する呉、横須賀、佐世保、舞鶴の第二以降の鎮守府や県庁所在地などの主要鎮守府は連合艦隊を1つ

それ以外の鎮守府は6隻の艦隊を1つ

 

こういった格式がある

 

駿河諸島はどこに当たるかというと主要鎮守府

よって12隻の連合艦隊を組むのだが

 

 

 

「無理だよなぁ・・・・・・。」

「無理ですねぇ・・・・・・。」

 

 

 

組めないことはない

しかし、組んで派遣してしまうと、とてもじゃないが鎮守府は機能停止してしまう

当然提督だって現地に行かなければならない

見たところ発行機関の管轄は桐月大将を通しておらず、大本営の上層部会からの物

「ちょっと電話をかけて・・・」ジリリリ

そんなことを話していると、どうもあちらさんから電話だ

 

 

 

 

「はい。駿河諸島鎮守府。」

『おお耳本君か?そっちに大本営上層部会からの書類が一部いっとらんか?』

「夏季観艦式の事でしょうか?」

『そうじゃそうじゃ。それなんだがの、わしを通しておらんやつじゃから普通の書面が行ってしまったんじゃ。』

 

すまんという詫びの一言があった

 

「そうなんですか 。それで、訂正の個所はいったいどこですか?」

 

先ほど机の上に投げた書類をめくる

 

『今日の朝一の便に積んであるからどこかしらから届くじゃろ。』コンコン

「承知しました。それでは・・・・・・。」ア、シグレチャン?アリガトウネ

 

ちらりと見ると時雨が吹雪に何か書類を渡していた

どうやら先ほど話していた書類が届いたらしい

 

『ああ、まて。もう一つ話があってな。』

「はい?」

『花見の客人だ。』

「・・・というと?」

『まだ処罰も何も下してないじゃろう?それについていい加減報告書を出さねばらならくてなぁ・・・・・・。』

 

ボソッと電話口からめんどいのうと声が聞こえた

 

「わかりました。明日までには結論を出します。」

『了解じゃ。じゃあの。』

 

 

 

電話を置くと吹雪が観艦式の追加の書類みたいですといって渡してきた

 

「ははぁ・・・。そういう事ね。」

書面には駿河諸島鎮守府は特例として6隻編成のみの艦隊派遣で構わないという旨が書いてあった

「どうされますか?」

「ここまで言われちゃしょんないわ・・・。行くしかないっしょ。」

困ったような声色だが、表情は少し嬉しそうだった

自身の部下が栄誉を受けるのは悪い気はしない

「わかりました!編成とかは・・・。」

「それは後日だね。いくらなんでも8月の予定のやつを今練ってもねぇ・・・。」

「それもそうですね。」

若干ほほを赤らめ、照れていた

「それよりも吹雪ちゃんは正装と艦隊旗艦徽章忘れないようにね?」

「あっ!はい!」

元気をいい返事をして秘書艦の机に戻っていくとき、ふとあることが頭に浮かんだ

「・・・今徽章もってるの誰だっけ?」

「・・・誰でしたっけ?最後に旗艦を務めたの?」

当然ながらうちの鎮守府は出撃なんてものは去年の秋の戦後処理にしたぐらいなもので、基本演習の時の旗艦がつけていくぐらいしか使用用途がない

 

 

 

「えっと・・・・・・確か春の作戦前演習で・・・阿武隈と皐月が交互に努めたんだっけ・・・?」

「いえ・・・。たしか臨時で深雪ちゃんが行ったこともあったような?」

「・・・。」

「・・・。」

「後で確認しといてね?」

「わかりました。」

早急に必要なものではないため、後回しにすることにして一旦席を立つ

もう一つの用事を済ませるためだ

「若葉さんのところですか?」

「こっちはいい加減後回しにできんからね~。」

後を頼んだよ

 

そう言って執務室を出た

 

 

 

駿河諸島鎮守府 農園

 

夏野菜の苗が育ち始め、麦わら帽をかぶったル級とリ級が雑草がないかを見て回ったり、肥料やったりと忙しそうに作業をしている

奥の方には、田んぼになっており、青々とした緑のじゅうたんが広がっている

横にはビニールハウスの反射光がまぶしい

その景色が一望でき、いつも提督の定位置となっているベンチに腰掛けている人影があった

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

 

 

提督は横に腰を下ろした

だからといって話しかけるわけでもなく、じーっとル級やリ級の作業を眺めていた

五分ほどしてだろうか

二人がこちらに気が付いたのか手を振った

微笑んで手を振り返す

 

 

 

「耳本提督よ・・・。」

「ん~どした?」

先に開いたのは若葉だった

ポケットから煙草を取り出した

ビニールを取っ払い、開けて銜えると火をつけた

甘いバニラに香りがふわっとあたりに広がる

 

「私はどうしたらいいんだ・・・?」

「さぁ?」

 

重い口を頑張って開いた若葉に対してそっけない返事をする

何かしらの答えが返ってくると期待していたのだろう

びっくりしたような顔をこちらに向ける

「さぁって・・・・・・。」

「だってなぁ・・・。そもそもどうして欲しいんだ?」

 

若葉は押し黙る

多少酷な質問だろう

信じてきたものはすべてが虚飾

唾棄してきたものがすべて真実とは言わないが、自身の理想としたことに近い

あっけなくひっくり返された若葉はもはやどうしたらいいのかわからなくなっていた

「・・・・・・。」

「じゃあ聞き方を変えよう。まずは、死にたいか死にたくないか。」

「?!」

先ほどまでののどかだが、重い空気が一転

殺伐とした質問に若葉は驚いた

「生きる気がないものに情状酌量の余地もくそもない。どっちだ?」

 

テロ行為を行った艦娘は重罰に処される

当然最高刑は死刑もある

 

「・・・・・・私は。」

そういうとまた詰まってしまった

めんどくさいように感じるが、当たり前である

ぼやっとした質問から今度は生きるか死ぬかのとんでもない二択を突き付けられているのだ

「正しいと思ったことが実は正しいと思えなくなって・・・・・・正しくないと思っていたことが正しいと思えるようになって来た・・・・・・。ここの鎮守府の様子で考えはより強くなった。」

 

 

そう言って畑の方をまっすぐ見た

若葉みたいな主義を持っていた人からしてみたらこの光景はすべてをひっくり返してそのまま抑え込んでしまうような光景だろう

・・・普通の人でもひっくり返りそうだが

 

 

 

 

「・・・・・・。未来を見たいか?」

「未来?」

 

若葉の頭から湯気が出そうになっていたのが一転

はてなマークが浮かんでいる

 

「そ、この戦争が終わってのんびりとこうしてあいつらみたいに暮らしてみたいかってこと。」

「出来るのか?」

「ん~・・・・・・。わからんね。」

その一言でまたしても若葉はぽっかりと口を開けてこちらを見た

「わからないって。」

「そういわれてもなぁ~・・・・・・。そればっかはちょっと確実な保証は無理だからね。ひょっとしたら敵対してくる深海棲艦をすべて駆逐できるかもしれないし、あるいは和平して丸く大団円かもしれない。はたまた負けるかもしれない。」

「負けるって・・・。」

「こればっかりはね?もちろん負けるつもりはないさ。」

とはいえ、選択肢としてないわけじゃない

あくまで可能性の話である

 

携帯灰皿を取り出すと、灰を落とし込んだ

「他にもこれが延々と続く可能性だってある。さて?若葉はそれでも未来を見たいか?」

「・・・・・・。そんな形で言われたら見たいとしか言えないだろう?」

「だろうなぁ。」

少し笑って、吸い殻を灰皿に入れて揉んだ

「ま、そういう事なら。うちの鎮守府の所属になってもらわんとね。」

提督は懐から、所属に関する数枚の書類とペン、手帳をひょいひょいと取り出した

「いったいどこから・・・・・・。」

「内緒。あと、この手帳は返しとくからね。」

 

捕縛した際、若葉は様々な携行銃器や武器等、スマホ等を持っていた

当然そちらに関しては鎮守府の武器庫へとないないするしかなかったし、スマホは情報を漏らされる原因になりかねない

そのため、返却できそうな持ち物が手帳一冊だけだった

 

「そうか。ありがたい。」

若葉はお礼を言って受け取った

「部屋の準備とかの関係もあるからもう2~3日は農園部の部屋で我慢してくれ。」

「了解した。」

「あとこれ。おんなじやつじゃなくてわりーけーが。」

 

提督は先ほどまで吸っていた煙草の箱と銀のライターを渡した

 

「持ち物の中にあったけどいかんせんあれ(まやく)やらこれ(ばくやく)やらの疑惑でな。悪いが検査して捨てさせてもらったんだ。」

「そうか。」

それじゃあといって提督は立ち去った

 

 

 

 

 

「駿河諸島鎮守府所属耳本中佐・・・・・・か・・・・・・。」

若葉は先ほどもらった煙草に一本火をつけると、ゆっくりと吸った

片手には、先ほど返却された手帳

それを開いて、あるページを出した

 

インド洋解放作戦で空母轟沈に関係している可能性あり

その空母は耳本中佐の担当教官と契りを結んだ艦だった

 

前後の戦闘記録に修正が入った違和感あり

折があれば暗殺も視野にいれるべし

つかみどころのない性格で狂骨、野心家

 

「・・・・・・。」

若葉はペンで3行目には横線を引っ張って観察するべしと書き換え、最後の5文字は吸っていた煙草を口から外して5文字を消すようにもみ消した

そして、数字の羅列が書かれたページをじっと見つめた

ページを一度持ったが、かぶりを振って手帳を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日の花見の襲撃未遂事件の首謀者は実行に移せなかったことを悔やみ先日未明

牢屋から脱走し自決

遺体は丁重にこちらで葬ることとした

第一発見者である若葉は偶然にも(・・・・)無所属であったため、情報統制もかねて駿河諸島鎮守府預かりとする




しばらく触れてなかった若葉編です(=゚ω゚)ノ

今日の朝の最新で文月改二が実質確定しましたね
順当な結果という感じですね・・・
個人的にはちょっと・・・うんまぁ仕方ないですね!
とりあえず設計図がいらないことを祈りながらLv80でうちは待機中です


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駿河諸島鎮守府の家具

若葉との話から数日後

晴れて部屋が用意でき、若葉も書類が出来たとのことで呼び出してすり合わせを行っていた

 

 

 

「・・・ラストのこれもOKっと!はい。お疲れ様でした。」

「ああ。お疲れ様だ。」

 

提督は確認した書類をまとめると、封筒に入れた

立ち上がって決済済みの中に放り込むと、机の上から鍵を持って戻った

 

「はい。これが新しい部屋の鍵だよ。」

「助かる。・・・・・・。」

 

若葉は鍵をじっと見つめた

その表情は何となく釈然としないといったものだ

 

「・・・なぁ提督。一ついいか?」

「お?何だ?」

 

そんな若葉の表情を読み取って、そのまま待っていた提督が返事を返した

 

「所属するのが決まったところでこんなことを言うもなんだが・・・・・・。本当にいいのか?」

「というと?」

「・・・未遂とはいえあんなことしでかしているのに咎もなく、しかも味方かどうか確定していないものを迎えていいのかと言っている。」

 

若葉は表情を崩さず、まっすぐに提督の目を見た

その顔は、いつもと変わらないポーカーフェイスのようにも見える

しかし、ちらりと前髪に隠れて見え辛いが汗が見えた

 

「んー・・・。」

 

顎に手をやり、少し考えたのち吹雪のいる方を向いた

吹雪は、目が合うと一枚の書類を渡してきた

提督はありがとうと言って受け取った

そしてそのまま若葉に見せる

 

「これは?」

「花見の事件の報告書のコピーだよ。ほんとは見せるのはまずいけど・・・。」

「・・・!これって!」

 

書いてある顛末を見て驚いた

 

「そういう事でうちにしか所属できないようにしてあるからね。それとだ。」

 

提督はとんとんと人差し指でおでこをたたいた

若葉は疑問に思いながら額に手をやる

そして、提督が言わんとすることがわかったのかため息をついた

 

「ちなみに一応罰はあるからね?」

「そっそうか・・・。いったいどのような・・・・・・。」

 

緊張の面持ちに代わる

やはり怖いのだろう

死刑を宣告されてもおかしくはない

 

「一週間みっちり残業上限無視で働いてもらおうかなぁって思ってるよ。」

「・・・・・・は?」

 

 

空気が凍り付いた

 

 

凍り付いたというよりも間の抜けた空気になったというのが正しいだろう

 

「あとその間給料は半額でやってもらうからね?」

「・・・・・・え?それだけか?一か月とかじゃなく?え?給料あり?え?え?」

 

クールな若葉らしさはどこへやら

若葉はここに来てからというものの、クールな雰囲気をどこかに落としてきているふるまいしかしていない

 

「いや~・・・一か月もやったら多分やばいことになると思うよ・・・?」

「それでも軽すぎないか?!別に罰を受けたいわけじゃないがこれはいくら何でも!」

 

若葉はソファーが倒れんばかりの勢いで立ち上がった

提督はどうどうとなだめ、座らせた

 

「まぁとりあえず軽いと思ったら言ってくれ?な?」

「あっああ・・・。」

 

釈然としない雰囲気で再度座る

 

「それで、どこに配属になるんだ?補給部か生産部か?」

 

以前の返却された手帳を見ながら言う

ここの鎮守府の情報が書いてあるのだろう

他の鎮守府よりややこしい

 

「ああ、生産部に行ってもらおうかなぁって思ってるよ。近々ちょっと忙しくなるからね。」

「了解した。」

 

手帳を閉じ、うなづく

 

「・・・・・・一つ聞いてもいいか?」

「ん?何だ?」

 

手帳を懐に戻し、マニュアルを見ていた若葉に問いかける

 

「各地でだが、将官が襲われる事件がここ数か月で起きているんだ。幸い軽傷者しか出ていないと聞いているんだが何かしらないか?疑っているようで申し訳ないんだが・・・。」

「ふむ。」

 

マニュアルを読む手を一旦止め、再び手帳を取り出した

そして、提督に紙をもらい書き写した

 

「残念だが私の元居たグループや近しいものにはいないが・・・情報だけなら回ってきている。写しで悪いが私が知っているのはこれくらいだ。」

 

提督はお礼を言い受け取った

 

『提督?いらっしゃいますか?』コンコン

「大丈夫だよ~!入っといで。」

「失礼します。」

 

入って来たのは古鷹だった

手には大きな模造紙らしきものと小脇に分厚い冊子を抱えていた

 

「どうしたの?何か提案?」

「それじゃあ私はこれで・・・。」

 

若葉は邪魔になるといけないと思ったのだろう

マニュアルを持って、退出しようとした

 

「あ、待って!若葉ちゃん!若葉ちゃんにも関係あることだから。」

「?」

 

再び、元の場所に戻ると古鷹は吹雪に向かい合うように長机の前に立った

そして手に持っていた物を広げた

「・・・これは。」

「この鎮守府の改装案です。いろいろ手狭になって来たのでこの間提督と吹雪ちゃんが出かけている間に制作しました!」

 

古鷹の広げた一枚目の図面には二階建ての建屋が書かれており、執務室や提督の私室が今よりさらに大きめにとられていた

もう一枚の図面はこの三階建ての建屋の再設計されたものだった

 

「そういえば確かに今の建屋でも手狭になってはきたねぇ・・・。」

 

現在の三階建ての建屋自体も狭くはない

現在多くを占めているのは応接室だ

一見すると無駄なように思えるが、ここでは事情が違う

ここの鎮守府以外の者たちも使うのだ

例えば、ほかの鎮守府の提督や艦娘同士が来て会談になる場合も使用される

そのおかげで、毎日のように使用されている

隣のホテルの方にもあるのも合わせれば部屋数はもっとあるのだが、それを使用してもかなり逼迫している

また、設計時はもう三部屋あったのだが、書類の保存の関係で途中で改装し書庫になってしまっている部屋もある

 

「それに!提督の私室はいくらなんでも狭すぎます!」

「あー・・・。まぁ・・・ねぇ?」

「そんなに狭いのか?」

「「せまいです!(ですね・・・。)」」

 

古鷹と吹雪が口調こそ違うもの声をはもらせた

 

「これですよ!若葉ちゃん!」

 

そう言って(元)隠し扉を開けた

 

「・・・・・・これは・・・・・・たしかに・・・狭すぎるな・・・。」

 

若葉も唖然とした

 

「というわけで!新しくすることを大将にも許可を取り付けてあります。」

「おっおう・・・。手際いいね?・・・ところで俺の部屋広すぎない?三部屋も要らんと思うけど・・・。」

 

図面を見て私室の所を指さす

 

「あ、一部屋は宿直室です。」

 

 

 

 

「「え?宿直室?」」

今度は提督と吹雪が声をはもらせた

 

「はい!提督がちゃんと就寝しているかみんなで見張ることにしました!」

「いやいやいや!ちゃんと寝るから!」

「そういって何回夜に仕事してました?」

 

それを聞いた瞬間、すっと提督は目を逸らす

古鷹は吹雪の方に視線を移すと吹雪も目線を逸らした

 

「ですから希望者を募って交代で番をさせていただきます。」

 

そう言って鎮守府建屋建て替えの決裁書を渡してきた

よく見ると、吹雪と提督以外の印はすべてそろっていた

 

「あとは提督と吹雪ちゃんの印鑑だけですのでお願いしますね。」

 

有無を言わさないオーラを提督と吹雪に向ける

 

「はっはーい・・・。それじゃあ明日にでも・・・。」

「 い ま 印鑑をくださいね?」

「えっいやその。」

「 な に か ? 」

「「アッハイ。」」

 

圧力に負け、おかしいところがないかの確認だけをして印鑑を押し、書類を古鷹に渡した

 

「ありがとうございました。それで一つだけ実はまだ設計が終わってないところがありまして・・・。」

 

模造紙を裏返した

すると、一つの部屋の図面になっていた

 

「提督の執務室に関しては提督ご自身が決めた方がいいかなぁと思いまして・・・。」

古鷹は抱えていた冊子を横に置く

 

 

「執務室設置可能家具一覧表 全国明石協会最新版」

 

 

「へぇ~・・・。こんなのあるんだ。」

「私も初めてみました。」

 

吹雪と提督は不思議そうな顔をしている

 

「なんだ?二人は知らないのか?」

 

若葉は驚いた顔をした

かつては普通の鎮守府にいたから見たことがあるのだろう

 

「ちらっと聞いたことはあるんだけどね。へぇ~・・・色々なものがあるもんだ・・・・・・。」

 

分厚い冊子をぺらぺらと捲っていく

机にもさまざまのものがあり、一般的な机から高級感あふれるマホガニー製の机

艦娘がプロデュースしたものなど様々

窓枠に壁かけのインテリア、壁紙に絨毯を上げればきりがない

 

「へぇ~カウンターバーって・・・おもっくそ酒飲む気満々じゃないの。・・・んん?」

 

提督はあるページで止まった

 

「なに?これ?」

 

それは豪奢なシステムキッチンだった

他の三人は何を提督が不思議思っているのがわからなかったがページを見て納得した

 

 

 

「なんでシステムキッチンが机の一覧にあるの」

 

 

 

料理好きな提督の皆さん!お待たせいたしました!

本格的なシステムキッチンです!

調理器具一式はもちろん様々な珍しい器具も取り揃えました!

元となりましたとある泊地の提督の物には劣りますがハイクラスで最高の使い心地です!

 

「ええ・・・。」

「これは確かブルネイの提督じゃなかったか?」

若葉が顎に手を当て、思い出したように言う

「ああ。確か通称ブルネイのセガールだっけ?料理がプロ級で提督自身もかなりの武人ってことからそんなあだ名があるとか。」

「でも、あちらの場合は補給の管轄が微妙に違ったから直接会ったことはないですよね。」

「だねぇ。しかもあちらさんの提督噂によると相当な益荒男ぶりらしいし・・・。」

 

なんでも一週間のうち六日はベットで戯れていたらしい

それも一回だけじゃなくって最高で10回いたしたとかはたまた12回だ27回だなんて情報が青葉新聞で見たことがある(もちろんゴシップ系)

 

「そっそうですか・・・。」

 

微妙な空気になったの感じ取ったのか若葉が口を開いた

 

「しかし、料理は絶品らしいからな。噂では豪快な人らしいからあってみると楽しいかもしれないぞ。」

「ま、頭の隅っこに置いときますか。」

 

そして、次のページに移った時もっと驚いた

 

 

 

「風呂?」

「風呂ですね。」

「風呂だな。」

「どう見ても風呂です・・・。」

4人全員が写真を見て固まった

そこには、両面開きで机の区分に岩風呂とヒノキ造りの風呂が並んでいた

 

 

提督さん!お疲れではありませんか?

そんなあなたにおすすめなのがこの商品!

執務の合間にちょっと私室に戻って至福のひと時

はたまた、私室に戻るのがめんどくさい方は執務室にも設置可能

ボタン一つで普通の机とお風呂がコンバート可能!

お気に入りの艦娘とのひと時はいかがですか?(別途水着も販売中)

元大本営勤務の明石一押しの一品です!

 

 

「これはひどい。」

 

真顔で提督は冊子を閉じた

 

「元大本営の明石さんって確か転属しましたよね?」

「だなぁ。少し前に転属した時は明石以外にも大淀や間宮、伊良湖の運営補助役全員がまとめてどっかに転属したせいで担当の将官が別だったのにもかかわらず巻き込まれてえらい目に遭ったってぼやいてたなぁ(文月に膝枕されながら)」

 

 

あの時はさすがの大将の目にもクマができてた事を思い出す

 

 

「あ、それなら聞いたことあります!青葉に聞いたんですけどそれから少ししてケッコン関係の書類が回線がパンクしそうなペースで来たとか・・・。」

「ああ!それでも大将引っ張りまわされたって言ってたわ!しかも砂安中将まで巻き添えで数日間残業の毎日だったって言ってたねぇ。」

 

少しざまぁと思ったのはここだけの話

 

「結果として今は新しい所属艦が着任のたびに結んでいるらしいです。」

「何それ怖い。」

 

ブルネイのセガールさんより益荒男じゃないか

その場にいる全員が思った

そして、提督は二人がそれぞれ大将と中将の地位にあることを思い出し頭が痛くなった

 

(ひょっとして大本営以外の鎮守府や泊地の中将や大将は益荒男じゃないと務まらないのか?)

ひそかにそう思った

 

 

 

「という変な商品の発祥にはやばい鎮守府の噂しか無いじゃんか・・・。何なの?このカタログは・・・。いろんな意味でやばい鎮守府の総括みたいなものじゃん・・・。」

 

 

 

二つとも益荒男ぶりの噂しか出てこない

というより、後者の鎮守府に至っては裏で提督はロリペドだゲーハーでなどと心無い噂等もあるので信憑性は低め・・・

と思ったが、昔はメイド服が正装で今はまた別のきわどい服が正装になっている

そんな青葉からの情報もあるらしいので、もはやどれが本当なのかわからない

 

 

 

「もういつものレイアウトでいいよ・・・。そのうちもっとひどいものが出てきそうだし・・・。」

 

そう言って古鷹に冊子を返した

 

「そっそうですか・・・。わかりました。後日、大まかな工期や日程などの書類を持ってきますね。それでは失礼します。あ、若葉ちゃんは私と来てくれる?これからの話があるから・・・。」

「了解した。それじゃあ提督。失礼する。」

 

二人は退出していった

 

 

 

 

 

途中でカタログを閉じた提督は知らない

駿河諸島鎮守府発祥の商品がいくつかあることなど

 

 

 

 

隠し扉

 

あの部屋にこっそり出入りしたいなぁ・・・

そう思ったことはありませんか?

そんな提督さんor艦娘さんにおすすめの一品!

この商品は提督の残業が日本で一番多い鎮守府で発案されました!

ステルス性は一級品です

ただし!悪用は厳禁です!




若葉についてちょっと残ったのがあったのでそれ+ツイッターでよく絡ませていただいてる方々の小説の提督さんをちらっと紹介・・・

片方はzero-45様が連載されてます「大本営第二特務課の日常」
もう片方は昔このハーメルンで連載されてましたが、現在は別の小説投稿サイト「暁」にて連載を続けているごません様の「提督はBarにいる。」
上記二作品の作者様より許可をいただき、提督さんをお借りしました

(本編では怒られそうな紹介の仕方だけど許していただけると信じてます(;'∀'))

二作品ともとても面白い作品ですのでぜひぜひ見に行っていただけると幸いです

私から端的に申し上げますと二作品とも飯テロ作に近いです!(片方はいろんな意味で)


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駿河諸島鎮守府のヘッドハント その1

「ご苦労様じゃったのう。」

 

大本営大将室

 

大将は分厚い書類束を机の上で揃えると、提督にねぎらいの言葉をかけた

 

「いえいえ。今回はいろいろな変更点がありましたから。」

 

 

 

今日は、前々から準備してきた株主総会が行われた

駿河諸島の宿泊棟、資源採掘及び精製、生産関係は半官半民の経営である

そのため、株主総会が行われる

が、あくまでも形式上であり軍上層部の者たちはだいたい名代を立てて終わりである

質問も、例年なら何もなく、ただただ事業の報告をして経営陣の再任(提督以外は他の省庁からの天下り)についての是非を問う

そして、来年度や中長期目標などの発表をして一連の流れは終わりだ

 

 

 

しかし、今回は少し違った

もともと提督の個人所有の土地になっている駿河諸島から資源が出たため、急遽設立された会社だが、提督自身の個人財産は土地と資源のみ

 

肝心の初期投資ができなかった

 

妖精さんの助力をもってしても、最低限の整備関係で数千万は発生する

それを解消するために、大本営と提督の間である契約をした

株式のうち3:7の割合で提督と大本営が保有をする(提督は3割の出資も難しいため、役員報酬から天引きしていく)

そして、徐々に金銭の余裕ができたら最終的に7:3の割合に持っていくという契約だ

結果として今年ついに、提督側の保有が5割を超えることになった

その関係で、約款を少しいじることになった

それに伴って、監視を強化する名目で今回から上層部以外のものも傍聴及び質問ができるようになった

これにより、今回はいつもの説明事項だけでなく様々な質問を浴びることになった

当然のことながら、天下りの官僚たちは質問に対して答えることができないため、すべて提督が答えることになる

 

 

 

「特に今回真ん前に陣取って聞いてきた黒髪に電探を模した髪留めつけてた子。あの子はすごかったですねぇ・・・。」

提督は苦笑いした

「まさか1時間以上延びるとは思わんかったわい。」

文月の入れてくれたコーヒーを飲みながらぼやいた

「で、だ。これについてなんじゃが・・・。」

 

 

先ほどまとめた書類の中から一部をつかむとローテーブルの上にバサッと置いた

 

 

「改修資材生産工場設置願い 駿河諸島鎮守府」

 

 

「何か不備がありましたか?」

「いや・・・不備はないがな・・・。」

 

そういうと、大将は自分の机の上に置いてあるノートパソコンを開いた

何やら2~3分ほどいじると、それをもって再びソファーに腰を掛けた

提督に見えるように画面を向け、少し見なさいと言った

 

 

画面には折れ線グラフが表示されていた

縦軸は100を真ん中として200を上限

横軸は10月、11月と振られている

どうやら毎月のある統計みたいだ

 

10月は120、11月は80、12月130、1月150、2月だけ40と乱高下に推移していた

しかし、3月に75となってからはまた右肩上がりに転じ最後の5月は195にまで登っていた

 

 

「?何ですかこれは?」

「何ですか?じゃと・・・?」

 

大将はローテーブルをバンと叩くと

 

「貴様の時間外労働の統計じゃ!バカモン!」

「ああ!なるほど~・・・。」

 

みれば、風邪で倒れた2月や秋祭りのあった11月は減少している

 

「なるほどじゃないわい!こっちがいくら業務負荷を改善しても次から次へと仕事を作りおってからに!作るのは構わんがこっちに増員願いを多少は打診せんか!」

 

ローテーブルをバンバンと叩く。

 

「ええ・・・・・・。しかし・・・前に打診したときは無理だって・・・。」

 

困惑した顔を提督がすると大将は気まずそうな顔をする

 

「・・・その時はタカ派の勢いが強くてなぁ。じゃが今は拮抗してるから多少の融通は利かせられるんじゃ!まったく!」

 

はぁとため息をついて少し冷めたコーヒーを口に入れる

 

「大体、聞きたいんじゃが・・・・・・なぜ会計部を持っとらんのじゃ?」

「・・・あっ。」

「やっぱりわすれとったんじゃなぁ!!」

 

提督はすっかり忘れてたという表情をし、それに対して大将も声を張り上げる

 

「大方会計処理で増えているんじゃろ?!そうじゃろ?!」

 

 

 

駿河諸島鎮守府での会計処理は提督と吹雪が行っている

これにはちゃんとした理由があり、最初は設置する必要はなかったのだ

金銭のやり取りがあったのは補給部と途中から出来た宿泊施設からだけだったので、業務のほんのごく一部に過ぎなかった

設立時は、補給、生産、採掘、宿泊施設開業準備と担当者の方が不足していた

提督としては、会計処理よりも通常業務の担当者の方が不足していたので、人員をそちらに優先的に回し始めた

 

人員が足りてくると、今度は業務拡大の方にばかり目が行った

 

 

結果として、宿泊施設が拡大し始め、皐月に担当させ始めた商店関係とゴーヤが担当し

ているオリョール海の海の家(仮称)では決して少額ではない金額が上がってくる

さらには、山風が担当している農園部では国内の一部に果物を卸し始めた

その金額も少ないわけがない

それどころか、これから畑や田んぼの収穫されたものも消費できそうになければ本土に卸す予定がある

 

規模が拡大してくにつれまとめる報告書も最初は月次だったが今では週次になっている

そして、自身が処理している4割近くが会計関係になっている

 

 

 

 

「・・・・・・はい。」

「全く・・・。本来なら却下・・・と言いたいところなんじゃがそうも言ってられんことがあっての。」

パソコンをいじり、別の画面を出した

そこには改修資材生産工場立候補地一覧表と書かれたリストには実に50か所もの鎮守府や警備府、泊地が記載されていた

しかし、その大半は赤色のマークがついており、時々黄色が混ざる程度

青色は片手で数える位しかなかった

「赤はどうやっても難しいところ、黄色は問題点を改善して初めて検討に上がるレベルじゃ。」

深いため息をついてぱたりと閉じる

リストの中にはタカ派、ハト派関係なく印が付いていた

 

再びパソコンを戻すと、今度は書類束と印鑑をもって戻って来た

「じゃからこれがわしの妥協案じゃ。」

 

書類束には第二次軽減策要綱と書かれていた

 

中を見ると、短時間遠征処理を拠点鎮守府に業務を移譲するというものだった

つまりは近海警備や対潜哨戒、防空演習などの物を、以前設定したブロックごとに処理を行うという事になる

これらは短時間で終わる分報酬も少ないが、回数がこなせることから毎日の膨大な艦隊が寄港する

量にして2~3割は占めている

 

「これなら確かに相当減りますね・・・。」

「・・・・・・拡大はいいがちゃんと人員増やしてからにしてくれんかの?」

「・・・・・・善処します。」

 

たっぷりと考えてそう言うと大将は再び頭を抱えた

善処しますとは・・・つまりはそういう事である

 

鎮守府の規模拡大は、利便性が増すことから決して悪い話ではない

が、当然のことながら提督と吹雪の業務量が増えていく一方なので圧力がかかる(主に古鷹と時雨)

 

「わしは言ったからな・・・。で、最後の書類を見てくれるか?」

 

そこには、転属届があった

 

「そしてこのわしの認証印貸すから今日今すぐ大本営にいる誰でもいいからヘッドハンティングしてきなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

「って言われたんだけどさ・・・・・・。誰かいい人知らない?」

「知らん。」

 

 

大本営 甘味処

 

 

冷たく突き放した返事をしたのは今日の護衛でもある深雪だった

 

 

補足だが、大本営には2種類の艦娘がいる

1つは大本営に直接所属している艦娘

大本営にもいくつかの部署が存在し、そこの事務処理は艦娘と妖精さん、が担当している

また、大本営直属の将官に所属している場合もこちらに含まれる

 

以前の阿武隈や深打の電、夏木の五月雨が麾下のケース

深雪や望月、皐月が部署に所属してたケースだ

 

 

もう1つはというと、無所属のグループだ

大本営で建造された子や鎮守府が解体され、一時的に身を寄せている者、次の鎮守府へ移動を待つ者など理由は様々だがとにかく所属していない子たちもいる

といっても、便宜上大本営に所属していることになる

これを見分けるには艦娘自身が持っている身分証に、○○課か△△部所属、もしくは~~麾下と書かれているかいないかだ

 

 

因みに無所属の子の大半は駆逐艦である

駆逐艦だけかというとそうではなく、戦艦や空母、重巡などもいる

しかし、どこも重量級は人手不足の中では即戦力となるためすぐに声がかかり、めったにいない

その点、駆逐艦はどこもそれなりにそろっているせいかそこそこの子たちが待機状態になっている

 

「ええ・・・。前いたときによさげな子知らない?」

「いるっちゃいるけどなぁ・・・。そいつは多分引き抜けないと思うし、ほかのやつもみんな重要なところか、転属しててここにはいないぜ。」

 

深雪はそういうとパフェを食べるのに戻った

 

「そっか・・・。そうだよなぁ・・・。うちの会計を新人に押し付けるわけにもいかないしなぁ・・・。あっ砂安中将!」

「ん・・・・・。耳本君に深雪か。今日はご苦労だったな。」

「いえいえ。想定してたことですから。」

「そうか・・・・・・。ところで・・・その・・・・・・いや何でもない。」

 

砂安はちらりとテーブルの上を見て何か言いたげな顔をしたが、ふいっと目を逸らして、空いている椅子を持ってきて座った

机の上にあるのは2つのパフェ

片方は普通、片方は特盛という大きさだ

しかも、深雪が食べているのは普通で提督の方が特盛だ

さらに言うなら深雪はまだ半分残っているのに対し、提督のはそこの方に少し残っているだけ・・・

がっつく様は異様な光景だっただろう

 

「?」

 

提督は首をかしげているが、深雪は察したらしく何とも言えない顔で砂安を見た

 

「そういえば中将・・・。誰かここにいる子で会計関係に強い子知りませんか?」

「ん?どうした藪から棒に?」

「実は・・・」

 

(カクカクシカジカマルマルウマウマ)

 

「なるほど。だが、すまんな。あいにく思い当たる子はいないな。」

「そうですか・・・・・・。」

 

中将もだめかぁとぽつりと言うと、ふぅーっと深いため息をついた

 

「耳本中佐ですか?」

 

どうしようか再び思案しようとした時、今日はよく聞いた声で名前を呼ばれ振り向く

 

「すみません。突然お声をかけてしまって!」

「ああ。いえ。君は・・・・・・。」




ちょっと設定のおさらいに近くなってますが・・・(;´Д`)
次回には新しい子を出す予定ですはい(ご予想して楽しみにしていただければと・・・)

文月改二
なんとなく予想してましたけど・・・
等身伸びた!(´゚д゚`)
自分は思わず声が出ましたw
といっても望月のクリアファイルで望月の等身も伸びてたのでこれはひょっとして・・・と予想してました

何より笑ったのがアップデート時のおしらせの文月改二のところではいつもなら
○○改二
△△改二はよ
◇◇マダ~?
のはずが一同そろって

世に文月のあらんことを

で埋め尽くされていたことでしたフミィ

それではみなさん
世に文月のあらんことを


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駿河諸島鎮守府のヘッドハント その2

そこには陽炎型のかっちりとした制服に白手袋、黒髪には13号電探を模したヘアピンをつけた子が立っていた

 

 

 

 

「親潮君・・・だったかな?」

「はい!あの。今お時間よろしいですか?」

 

そう言って親潮はメモ帳を取り出した

今回質問攻めにあったといったが、そのうち一番前の席を取り一番質問を投げかけた子だった

そのため、提督は覚えていたのだ

 

 

 

「実はまだお話ししたいことやお聞きしたいことが・・・・・・。」

「ああ、大丈夫だよ。・・・・・・。」

 

そういって二人は話し始めた

それを見ていた深雪は何も言わなかったが、面白くなさそうな顔をした

最初は割って入ろうと思っていたのだろう

しかし、小難しく込み入った話についていけず、あきらめて手元のコーヒーをすすった

砂安は話し始めたのを見て、席を立ち何かを注文すると戻って来た

戻ってくると深雪は完全に手持ち無沙汰な様子でちらちらと提督の方を見ながらあきらめたようにため息をついた

そして、砂安の方に話を振る

 

「中将は何を食べに来たんだ?」

「ん?ああ、雷にプリンでもと思ってな。」

「ほほぉう・・・。何かやらかしたと見た!」

 

深雪はいいネタを見つけたといたずらっぽい笑みを浮かべた

 

「あー・・・そうだな・・・・・・。」

「ずいぶん歯切れが悪いけどまずいことだったかい?」

 

深雪が問うと砂安はバツが悪そうにほほを軽く掻いた

 

「睦月型改二が誰になったかは知っているか?」

「いいや。みっちゃんからも望月からも聞いてないけど?」

「文月で決定だそうだ。・・・それでな?NDK?NDK?をやられてな・・・。」

 

深雪はその光景を思い浮かべた

そして次に起こるであろう惨状と割って入る二人の姿が思い浮かんだ

 

「ああ・・・。もうなんとなくわかったぜ。それで物で釣ろうってわけだな?」

「恥ずかしい話だがな・・・。ただあのバカ大将深打や夏木の前でもやりやがってな。」

 

わしよりひどくはないがどや顔で自慢してて・・・そう続けた

それに対し深雪は表情を曇らせた

 

「え?夏木の前でもやったのか?」

 

なぜ二人の表情が曇ったのか

それは夏木の麾下にある五月雨に関係している

改二には大なり小なり艤装の内部をいじる必要がある

そのため、全員一度定期健診の際艤装内部のチェックをする

 

 

 

しかし、五月雨の艤装にある問題が見つかった

問題といっても現状運用するにあたっては問題は特になかったのだ

問題は改装をする余裕がないという事だった

改装すると艤装内部の機器が増える

五月雨にはそれを入れる余裕が艤装内にあまりなかったのだ

これはすべての五月雨型に共通しており、妖精さんは頭を抱えた

結果として、艤装を新規開発するか追加の機器が小型化できるかのどちらかをクリアしないと改二は夢のまた夢となっている

 

早い話しばらくは無理という事だ

これを聞いた時、提督や深打が夏木のやけ酒に付き合って大変だったとこぼしていたのを深雪は聞いたことがあった

 

 

「そいつは・・・。」

「目が明らかに据わっててな・・・。ちょっと怖かった・・・。」

 

その顔を思い出したのか、ぶるっとがたいのいい体を震わせた

 

 

 

 

「こんなところかな?」

「ありがとうございます!耳本中佐!」

「いいえ。どういたしまして。」

 

そんなことを話していたらどうやら終わったらしい

深雪は残ったコーヒーを飲むと席を立つ準備を始めた

砂安も立ち上がり、椅子をもとの場所へと返しに行った

 

「・・・そうだ!親潮君ちょっといいかい?」

「何でしょうか?」

 

帰ろうとしていた親潮を提督は呼び止めた

 

「親潮君うちに来ない?」

「「はぁ?!」」

「えっ?!本当ですか?!」

 

提督がこの一言を言うと反応は真っ向から違うものだった

親潮は顔を輝かせ、走り寄って来た

が、それを後ろで見ていた二人は首がねじ切れんばかりの勢いで提督の方を見た

 

「おいおいおいおい・・・・・・。ちょっともが!」

「どうかしたのか?」

「いやいやいや何でもない。」

 

口を出そうとした深雪を砂安は制止した

そして、とりあえず何でもないといい深雪に小声で話しかける

 

(深雪ちょっとここは言わずにおいておこう。)

(えっ?なんでだ?あいつは・・・。)

(この間宮券2枚あげるからさ。頼んだぞ。)

そう言って深雪の後ろで見えないようにチケットを握らせた

 

「そういえばプリンの準備がもうできているだろうからな。わしはこれで失礼する。気をつけてな耳本君、深雪。」

 

声の調子を整えると、カウンターで商品を受け取りそそくさと退出しようとした

 

「わっ!あぶn・・・・・・中将!すみません!」

「っと!どうしt・・・おお~。みっちゃんと深雪ちゃん、それに親潮ちゃんだ。元気にしてた?」

 

出入り口で、砂安は深打と夏木にぶつかりそうになった

一瞬びっくりした顔をしたが怪しげに微笑むと両手を広げ、二人に話しかけた

 

「ちょっと二人とも済まないが来てくれないか?急ぎの用事なんだ。」

「えっ?はっはい!」

「承知しました。それじゃあまたね~。」

 

砂安は二人の両肩をつかんで一緒に出て行ってしまった

 

「何だったんだ・・・?」

「さっさぁ・・・。っとそれよりも耳本中佐・・・・・・。お誘いは大変ありがたいんですが・・・・・・・。」

 

嵐のように過ぎ去った3人に、提督はあっけにとられた

一方、親潮は先ほどのキラキラとした顔が一転

曇らせて言いづらそうにつづけた

 

「実は許可が下りないかもしれないんです・・・・・・。」

 

親潮はまだ実装や発見されてから時間がそんなに立っていない

通常海域での発見もいまだに報告されていない

提督はなるほどと思った

確かに、まだ貴重な駆逐艦の異動を許可するのはあまりないだろう

 

「ああ、それなら大丈夫。一人だけの条件で大将の認証印預かってるからさ。」

 

そういって、書類と印鑑を見せる

すると、再び明るい顔に戻り目をキラキラさせた

 

「本当ですか?!それではぜひお願いします。」

 

親潮は書類を受け取ると、先ほどメモをしていたボールペンですらすらと書き始めた

 

 

 

 

「あっあー・・・・・・。知らないっと。」

深雪は二人に聞こえないようにぼそっとつぶやき、砂安にもらった間宮券を財布にこっそりとしまった

 

 

その後、書類の間違いがないことを確認し封筒へとしまった

預かった許可印も押し、割印で封をすると今後の説明をした

大きな荷物等は後日船便で持ってきてくれるため、簡単な手荷物をもって一時間後に飛行場に集合という事になった

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

気まずい

そういった雰囲気が二人の間に流れていた

いつもなら深雪が雑談を振ってにぎやかに行くのだが、今日はだんまりとしている

 

(会話ぶった切って親潮と話したの怒ってるのかなぁ・・・。)

ちらりと横目で見ると真顔でこちらに気づいてない様子だ

 

(やばいなぁ・・・。あの顔は怒ってるか考え事してるかの2択だからなぁ・・・。)

特に深雪に関係するようなことは今までになかった

が、怒らせるようなことはしている

 

提督は考えた

何か物で・・・・・・はこれから親潮が合流するから無理

後日外出・・・・・・は最近外出し過ぎてる(提督基準)から無理

休暇など・・・・・・は普通に取らせてるから意味がない

 

(もうなるようになれ・・・。)

 

「深雪・・・・・・。」

「・・・ん?どうした?司令官。」

 

いたって普通の返事だが、一瞬間があった

やはり機嫌がよくなさそうだ

 

「その、ごめんな?」

 

そう言って頭を撫でる

 

「えっ!?」

 

深雪はびっくりした顔をする

 

「さっき会話ぶった切っちゃってさ。」

「えっ?ああ!え?あ、そっち?そっちかぁ!」

 

深雪はわたわたと慌てていたが、すぐに平静さを取り戻した

 

「?何かまずいことでも・・・。」

「ああー・・・。いや!みっちゃんは気にしなくていいぜ!それじゃあ今度久しぶりに飲もうぜ!それでチャラにしてやるから!」

「おっおう・・・?」

 

(怒ってなかった・・・?)

代償の飲み会痛いが、機嫌が何はともあれ戻ってよかった

そう思う事にした

因みに深雪の場合は酒をガンガンに勧めてくるタイプだ

そのため、ペースを崩しやすいのでなるべくなら避けているのだ

・・・この間望月を贄にしてえらい目に遭ったが

 

 

「失礼します。」

「おお!その様子じゃと決まったのじゃな?」

 

大将はほっとした顔をした

文月を膝にのせて

 

「・・・・・・こちらに置きますね。」

 

目いっぱい軽蔑した視線を送ると、執務机の前にあるいつものローテーブルに置く

その隣に、一緒に許可印も置いた

 

「いやー。見つかってよかったのう!これでしばらくは安心できる!!」

文月を降ろすと、書類を受け取りに来た

提督も、直接渡すため再度封筒を取ろうとした時だった

 

「大将!すみませんが明日から作戦日まで休暇をいただきたく思いまして!!」

 

ものすごい勢いで扉があくと、先ほど別れた砂安が現れた

 

「おっおお・・・。わかった・・・・・・。後で・・・。」

「今お願いします!どうしても急いでおりまして!!」

 

深々と頭を下げられては大将もダメと言えなかった

 

「仕方ないのぉ・・・。」

「大将すみません!作戦日まで休暇を!」

「すみません!私も!」

 

仕方なしに、書類のチェックをしようと執務机に戻った時、深打と夏木まで大将室に入飛び込んできた

 

「あの・・・。申し訳ないのですが待ち合わせの時間がありますので・・・・・・。」

「・・・・・・そうじゃな。その書類は人事の方にもう回しておいてくれるかの?わしがチェックするまでもないと思うし・・・。」

眉間を少し揉むと頼んだといって書類整理に戻った

 

 

 

 

 

「あっ!司令!」

「すまんすまん!ちょっとトラブってな!」

 

そう言って親潮が先に乗っている二式大艇に乗り込む

それと同時に、離陸体制に入ったのでベルトを締める

 

安定したところで、親潮が提督の隣に座っている人物を見て驚いた顔をした

「・・・・・・深雪さん!お久しぶりです!」

「・・・おう。さっきもいたけどな。」

 

深雪は渋い顔をして答える

 

「すみません!ちょっと周りが見えなくなってまして・・・。」

「あー・・・。そんなことだろうと思ったよ・・・・・・。」

「あれ?二人とも知り合い?」

 

提督は驚いた顔をする

確か深雪曰く、知り合いは大本営の役付きか転属してたはず・・・

 

「じつは中将に止められてたんだがこいつは・・・」

 

 

 

 

 

 

「失礼します!!!大将!あなたいったい何をやっているのですか?!」

「んぁ?なんじゃ騒々しい・・・。」

 

文月の膝の上で昼寝をしていた大将を起こしたのは会計部のネームプレートを付けた中尉の男だった

せっかくの至福のひと時を邪魔され、不機嫌そうに大将は体を起こす

 

「それどころじゃないですよ!!!これはいったいどういう事ですか?!」

 

男はある一枚の書類を大将の前に突きつける

書類にはすべての印が押され、人事部の認証済みの判が押されていた

 

「あー・・・・・・。あー!!!!!!」

 

大将は大声で叫びをあげた

 

 

 

 

 

 

 

「こいつ大本営の会計部部長だぜ?」




ついに夏イベが始まりますね!
個人的には最新の情報で狭霧が来るというのでモチベがうなぎのぼりです
といってもすぐに攻略せずに2,3日待ちますが・・・(´・ω・`)
コミケにも突撃をかまさないとならないですし・・・

ここまでためにためた資材を使い尽くす気で堀作業に没頭することにもなりそうですし更新頻度は若干下がる可能性がありますがご了承ください(ちょっと前から下がってますが)

皆様の健闘を祈ります


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駿河諸島鎮守府の疑問

「はぁ・・・・・・。」

 

提督は執務室の椅子で頭を抱えていた

原因は大本営から帰還する機内での深雪の一言だった

 

大本営の会計部と言っても様々な業務がある

各鎮守府の予算の処理と大本営内の予算処理という大きく分けるとこの二つだ

しかし、ここからさらにさまざまな分岐がある

 

予算の処理といっても、給料などの支払いを処理するところもあれば、備品などの予算の処理を行うところもある

他にも、各鎮守府などの臨時予算をつけるところや大本営からの任務に対しての報奨金の支給を行うところなどあげたらきりがない

 

その結果として似通った業務を行っている場所もあったりする

が、鎮守府や警備府などの量が膨大過ぎて少しでも似たような業務をまとめると慣れるまでそこの部署の効率が落ちるのだ

また、会計関連はミスが許されず銀行みたいにたった一円の間違いでもすべての修正が終わるまでは業務を終えることができない

 

以上の観点から非効率で人件費はかかる物の、会計部の括りの中でいくつもの部署を作り処理してきた

問題ではあるのだが、とりあえず目先の処理が現在は優先されるため、組織のスリム化は当分先の話になるだろう

 

親潮は会計部の中の総まとめ役

いわゆる各部署から上がってくるすべての合算を行う部署のトップであり、会計部のナンバー2に当たる

普段、提督がお世話になっている部署はまた違うところであり、会計部の代表を務めている子とは顔見知りではあったが、ナンバー2の親潮とは間接的なかかわりしかなかった

そのため、大本営の要の一つを引っこ抜く事が起きてしまったのだ

 

 

「やっぱり親潮には悪いけど・・・・・・。」

 

一人呟きながら電話に手を伸ばす

 

『あのお調子者にはしばらくお灸が必要だ。』

 

砂安の言葉がよみがえる

 

提督が、鎮守府に着いたとき砂安、深打、夏木の3名が滑走路にまで出迎えに来たのだ

3人は示しを合わせて、大将室に突撃してきたのは書類を見させないためで、有給申請をしたのは親潮が抜けたことによる肩代わりの仕事や選定に巻き込まれないためであった

 

『たまには大将にもお灸が必要だよ。』

『五月雨ちゃんの改二が難しいのにあの野郎。』(地獄に落ちろくそ野郎。)

 

深打と夏木の言葉も頭の中で浮かぶ

・・・若干一名裏も表もやさぐれていたが、中将の情報で五月雨の艤装関係で何か進展があったとのこと

これを聞いた夏木は先ほどまで大荒れだった機嫌が直ったらしい

 

「やっぱりこっちで連絡を・・・・・・。」

 

スマホを取り出し、電源をつける

余りの怖さにここについてから一時間くらい電源を入れてなかった

しばらく起動画面が表示され、ホーム画面が見えた瞬間

 

スマホが狂ったのかと見間違うほど震えた

着信、メールを合わせると100件をゆうに超えている

というより今現在もメールが来ており、定期的にスマホのバイブ音がする

とりあえず、メールをさかのぼり最後のまともな文章を読む

見てみるとこれから夏のボーナスや作戦関連の決裁などの仕事に親潮の力は不可欠

よってもう1月だけでもいいから待ってくれないだろうかと言った旨の文章だった

 

提督はだよなぁとつぶやきながらスクロールさせながらスマホを取り、大将に電話をしようとした

 

 

が、最後の方に

 

『後生だからお願いだ!文月が改二になったお祝いで2人で旅行をしたいんじゃ!頼む!』

 

「・・・・・・。」

 

提督は思い出していた

NDKをかまされたのは何も砂安や深打だけではない

提督とて例外ではなかった

特に提督は望月に来る!そういって大将と意地の張り合いをしてたがために砂安よりもさらに煽る言葉を浴びせられた

 

提督はスマホをしまい、パソコンのメールの返信画面を出すと一言

 

『頑張ってください。』

 

その一言だけ返信した

そして、そのNDKの惨状があるL○NEにはプギャーの腹立つ顔文字の写真を大将に送ると電源を落とした

 

 

 

余談だが、このほぼ同時刻

大将室からはどこぞの閣下のような畜生め!という叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼する。」

 

提督が調子に乗った罰だと思いながら仕事に戻ろうとした時、書類束を片手に若葉が入って来た

 

「これで一週間分のタスクは終了だ・・・・・・。」

 

見れば若葉のほほは若干こけ、目の下にはクマができている

前かがみで、膝が小刻みに揺れているところを見ると眠気もピークを迎えている様子だ

ちらりと時計を見るとすでにヒトキュウマルマル

本来ならば若葉に科してある業務時間はあと5時間あるのだが、すでに限界のようだ

 

「お疲れさん。どうだ?もう少し延長するか?」

「えっ延長か・・・それもわr」

「ええ・・・・・・。」

 

冗談のつもりで言ったが若葉は気が途切れたのか膝をついてこうべを垂れてしまった

そっと近寄るとくうくうと寝息を立てていることがわかった

 

 

 

 

「はっ!!」ガバッ

「おお。大丈夫か?」

時刻はマルヒトマルマル

本来ならば提督が残っていると注意されるような時間だが、こんなこともあろうかと若葉のことを説明して、ちゃんと許可をもらっていた

 

 

※普通はこんな許可はいりません

 

 

 

 

「すまない。どうやら少し寝てしまったようだ。あと5時間と完遂できなかった懲罰分で・・・。」

「ん?もう大丈夫よ?さっきもらった分で仕事は終わってるし、そもそも通常の就業時間過ぎてたからもう終わりでいいよ?」

 

本当は少し修正しなければならないところがあったのだが、すでに提督が手を入れて回してしまっていた

 

「一週間やったがまだ続けるかい?」

 

少し意地悪な質問をしてみる

 

「いや・・・・・・。うん・・・・・・それも悪くない。」

「・・・・・・え?本気?」

 

少し顔を崩しているが、どうにも本気にしか見えなかった

不安を覚えた提督は怖くなって聞き返した

 

「冗談だ。さすがの私でも辛い。」

 

そういって提督が掛けたタオルケットをたたみ始めた

 

「明日・・・というより今日から2日休んだ後は通常の勤務形態でいいからな。後、銀行の処理が間に合わないからここに1週間分の給料入れといたよ。月末までの生活費にしてくれ。」

 

少し厚めの封筒を若葉に差し出す

 

「・・・・・・。多すぎないか?」

「勤務時間がほぼ24時間に近ければそりゃあそうなるさ。仕事効率とかは落ちてるだろうけどあくまで罰だからな。」

「そうか。なら有り難く受け取らせてもらう。」

 

そういって自身の上着の中にしまい込んだ

 

「・・・・・・。提督。少し話・・・というより質問に答えてくれないだろうか?」

 

そのまま退出すると思ったのだが、若葉は振り返って提督に言った

 

「答えられる範囲ならいいけど・・・・・・今日はもう寝た方がいいんじゃないか?」

「なに。少し寝させてもらったから大丈夫だ。それよりも・・・・・・提督。あなたはいったい何者なんだ?」

「・・・?何者って・・・何が?」

 

若葉の質問の意味が分からず聞き返した

 

「提督は普通科の出身になっているが、同期は特別科の出身だ。これはなぜだ?」

 

 

普通科と特別科というのは海軍の学校での振り分けである

 

普通科は適正関係なく試験に通りさえすれば入れ、卒業後は小さな警備府や監視府に配属となり、どんなに出世しても小さな鎮守府の提督が限界だ

 

特別科というのは妖精さんとの親和性、艦隊の指揮能力、艦娘からの初対面での好感度などが一部秀でていたりする者たち

いわゆる提督の適性が高い者が振り分けられる

こちらは卒業後は小さいながらも鎮守府や大本営に配属となり、出世すれば大将や中将、または重要な幹部ポストに就くことになる

 

「それは・・・・・・。」

「提督。私はあなたを信頼に値するべき人間だと思っている。」

 

若葉はまっすぐな瞳で提督を見た

 

「提督にとらえられてからこの鎮守府の様子や所属するメンバーをみて私の価値観はすべてひっくり返されたといっても過言ではない。休みは不定期ではあるが人並みに貰え、給料も適正な支払いが行われている。労働時間だって多少他の鎮守府より多いとはいえ、過度な労働時間ではない。」

 

小声で提督と吹雪は労働時間を守っていないがと言った

 

「所属している者たちへの福利厚生関係もちゃんとしている。だからこそ気になっているんだ。あなたへの噂が。」

 

そういって若葉はいつもの手帳を取り出して、一ページを破いた

以前、提督に関する情報をまとめたページだった

それを机に叩きつけるようにして見せる

提督はそれをじっと見つめた

 

「特別科から普通科に移動になることはまずない。・・・あるとしたらそれは組織関係に対する不都合なことがあった場合だろう。」

 

提督は静かに若葉の目を見た

 

「空母瑞鶴。カレー洋解放作戦時に轟沈。大沢大将麾下であり、当時は新人の教官も務めていた人だ。」

「・・・・・・。」

「提督。聞かせてはいただけないだろうか?ひょっとしてあなたは・・・・・・。」

「すまんが、それについては答えられない。」

 

提督は若葉の推論を聞く前にさえぎった

 

「・・・そうか。」

「・・・・・・すまん。」

「いや・・・・・・。話してくれなくともあなたが信頼できる人柄であることは確かだ。・・・・・・もし。だがもし話してくれたら・・・・・・。全力で力になろう。」

「・・・・・・ありがとな。」

 

提督は寂しげに笑って小声で言った

 

 

 

「さっ!俺は明日があるからねるぞ。」

「む。提督、もう一つ話したいことがあるのだが。」

 

若葉は時計をちらりと見て、少し早口に言った

 

「お?なんだ?さすがにさっきみたいなことに・・・。」

「いやそういうわけではないから安心してくれ。」

 

そういうとジャケットを脱ぎ、ネクタイを外した。

そしてワイシャツを・・・

 

「って何してんの?!」

「何って・・・・・・。一晩を共する準備だが・・・・・・。」

 

さらりととんでもない発言を若葉はした

 

「いやいやいやいや。どうしてそうなるのさ。どこがどうなってそうなるのさ?」

 

思わず某瑞雲キチの姉のセリフになる

 

「艦娘との同意があれば一晩を共することができると聞いたのだが・・・?」

「俺の同意ぃ!俺の意見はどこに行ったのさ!・・・・・・。まてよ?ひょっとして山風みたいなことか?」

 

ここまで恥じらいもなく言っているという事はそちらの可能性もある

なにより、まさか出会って間もない提督に体を許すなんてことをするはずが

 

「いやこっちだが。」

「そのサインはやめなさい!女子がしちゃいけません!!」

 

握りこぶしに親指を入れるサインを慌ててやめさせた

 

「というかどうしてそうなるのよ?まだ若葉と出会って浅いのにさ?」

「それは・・・・・・。何といえばいいのだろうな?うーん・・・・・・。」

 

若葉も首を傾げわからないといった雰囲気だった

 

「とにかくそれくらい信頼を寄せているという事と思ってもらえると・・・。」

「なるほどね。気持ちだけで大丈夫だからね~。」

 

提督は早口で断りを入れ、服を着るように促す

その最中、目と耳を全力で2つの入り口に向ける

 

 

「夜伽の!!」

「時間と!!」

「「聞いて!!!!」」

 

2つの扉が同時に開いた

 

開いたというよりも吹き飛んだのだが

 

元凶は金髪ツインテと茶髪ダル眼鏡姉妹だ

皐月はローション、望月は近藤さん(穴あき)を手に持っている

 

「・・・・・・畜生め!」

 

結局朝まで3人から夜戦を躱さなくてはならなくなった提督であった




ちょっと遅れました(;´・ω・)
主にツイッター方向で発狂していましたが、もろもろイベントの進行関係で失敗してましてこちらに手がなかなか回りませんでした・・・

五月雨に関しては声優さんが復帰なさったという事で前の話からねじ込んでいました
初期艦に改二はよ(真顔)

若葉の分類は変態姉妹に追加となりましたw
某所でキャラ設定をどうしようかとつぶやいたら変態属性を切望している西の方がいらっしゃいましたので・・・

どうしてうちのやどかり艦はこうなるんだ?(すっとぼけ)

自分の方はE-3まではとりあえず甲でE-4はめんどくさいのと報酬の関係から乙に・・・
そしてE-5で甲に挑んでいる真っ最中です
E-5以降はもう乙でいいかな・・・
特にE-7は丙も視野に入ってる有様ですはい
堀が多すぎるんです・・・

因みに新艦の堀は
狭霧 1回目
天霧 30回前後
松輪 2回目
というわけのわからない強運で掘れてます

・・・そのせいかわかりませんが海風掘りにE-2Qを100週前後したり(しかも中断)
E-3輸送攻略だけで燃、弾合計5万+バケツ150近くを溶かしたりするあほなことをやらかしてました(白目)


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駿河諸島鎮守府と足音

「正座。」

「「「はい・・・。」」」

 

執務室にて提督と吹雪、親潮が3人正座していた

その前には般若の顔をした時雨、仁王立ちした古鷹、眉間をもんでいる阿武隈の姿があった

時刻はマルキュウマルマル

 

 

「で?またやったの?」

 

時雨がドスのきいた声で3人に質問する

 

「いやほんとちょっと!」

「そうです!ほんとに少し残ってただけですから・・・。」

 

提督と吹雪が釈明の声を上げる

しかし、その顔は明らかに徹夜しましたと顔のやつれ具合が物語っている

 

「君たちの少しは徹夜なのかい?」

 

ぴしゃりと時雨がいうと、二人は何も言えず俯いた

 

「親潮も今日で3徹目だよね?」

 

先ほどまでのきつい声を幾分か和らげ、親潮に話しかける

 

「えっと・・・はい・・・。」

 

しょぼんとした様子でうなづく

 

「まだ説明してなかったけどうちは3徹目は提督の許可がないと禁止なんだ。」

「えっ!そうなんですか?」

 

提督がこんな振る舞いをしていて意外にも思われるかもしれないが、これには理由がちゃんとある

いくらここが補給専門といっても鎮守府であることに変わりはない

そのため、深海棲艦が哨戒線を潜り抜け付近に出没した際は、こちらが迎撃して処理をしなければならない

その時にあまりに疲弊した者を出撃させるのは本人だけでなく、艦隊や鎮守府をも危険に晒す

なるべくであれば外すのだが、場合によっては人員不足でメンバーに入れなくてはならない可能性もある

今日だって川内は大本営で調べもの、龍驤は八丈島へ航空隊の指導、山風は本土に用具の買い付けに出ている

このように、必ずしも全員が常時鎮守府にいるわけではない

予定が重なってしまうと6人ぎりぎりの時だってある

そうなるといやでも疲弊した者を組み込んで迎撃しなければならない

 

と、ここまでつらつらと説明しているが提督と吹雪は一切守らなかったため今では別の誰かに許可をもらってからになっている

 

 

 

「というわけで、親潮は今日は休み明日から1週間は定時で上がってね?」

「はっはい!」

「うん。じゃあ戻ってよし。」

 

少しおびえた雰囲気でうなづくと足早に退出していった

 

 

こののち、ワーホリ枠が1人増えたと3人の頭を悩ませることになるのだがそれはまだ先のことである

 

 

「提督と吹雪は・・・。わかってるよね?」

「「アッハイ。」」

 

今日はとりあえず休め

処罰に関しては後日だ

そういう目をしていた

 

「あ、そういえば今日は観艦式の時にこっちに一時的にくる子が挨拶に来るんだった。」

「・・・・・・じゃあその仕事したらちゃんと寝てよ?僕と阿武隈は今日は仕事があるから古鷹を監視に着けるね。」

「提督。よろしくお願いしますね?」

 

にっこりと笑っているがこちらも目が笑っていない

あ、お願いしますと提督は目を逸らしながら声が徐々に小さくなった

 

 

 

 

2人が出て行ったあと、古鷹が質問した

 

「ところでどうしてまた観艦式の時だけくる子がいるんですか?」

「ああ、こんなお達しが来てね?」

 

そういって質問をした古鷹に書類を渡す

見ると、観艦式の案内で下の方に『参加する艦隊はある程度しっかりとした艦隊を組んでくること』というのが明記されていた

意訳すればおそらくはその鎮守府の一級の戦力を組み込んで来いという事なのだろう

そうなれば鎮守府唯一の航空戦力たる龍驤は外せない

しかし、ここに所属している子たちで空母は派遣されている鳳翔さんを除くと龍驤のみ

そうなると、観艦式の間は基地航空隊関係や偵察機での哨戒任務ができなくなってしまう

それを防ぐために、大本営に一時的な派遣要請を行った

 

「そういう事だったんですね。という事はわたしも?」

「いや・・・予定しているメンバーを連れて行くとここの代理を務められる子がなぁ・・・。多分代理を古鷹にお願いすることになると思うんだがいいか?」

 

吹雪はもちろん、戦闘経験の豊富さから川内もメンバーに入る

そして、最初は代理を頼もうと思った龍驤だがこちらもつれていくとなると残るのはこの間やったばかりだが、古鷹しか代理ができない

 

「はい!大丈夫です!私にお任せください。」

「ごめんな?連れてってやれなくて。」

「そんなことないです!提督からの任務。しっかり頑張ります!」

「まぁまだ決まったわけじゃないがその時は頼むぞ。」ジリリリ

 

そんな会話をしていると机の上の電話が鳴った

 

「おっと、あちらさんは到着したかな?はい。駿河諸島鎮守府・・・ああ文月か。一体・・・・・・は?!それは・・・本当か?!」

 

提督の声に緊張が走る

 

「それで今は・・・・・・。そうか。わかった今から向かう。それじゃあ病院で!」

 

受話器を荒々しく置くと、慌てて隣の自室へと飛び込んだ

10分くらいして、出てきた提督の姿は髪が濡れているところを見るとシャワーを浴びた様子だった

 

「提督?何かあったんですか?!」

「桐月大将が襲撃されたそうだ!今海軍病院にいるらしい。すまないが吹雪を連れて行くから代理を頼んだ!」

「はっはい!」

 

そういって、再び自室に戻ると数分後にはあわただしく出てて行った

 

 

 

 

 

 

「失礼します!」コンコン

 

提督は落ち着いた雰囲気を装っているが、病室を歩く足は足早になっている

 

「耳本中佐、秘書艦吹雪、川内参りました。」

 

提督と吹雪、川内は礼をした

 

「心配をかけてすまなかったのう・・・。」

 

大将は本当に申し訳なさそうにした

見ると、利き手と片足にギプスをつけていた

聞くところによると、どうやら銃撃を受けたらしい

 

「文月がとっさに見たのじゃが・・・髪の色が白だったとしかわからんくてなぁ。」

「そうですか・・・・・・。とりあえず命に別条がなくて本当によかったです・・・・・・。」

「それとなんじゃが・・・この件は内密に頼む。」

 

大将はちらりと扉の方に目をやり、小声で言う

 

「!・・・何かあったんですか?」

「少し前から将官に対する謎の襲撃が合ったじゃろ?恐らくはこれもその一つじゃ。」

 

若葉からの情報で、将官襲撃犯の特徴は白髪という事しかわかっていない

 

「観艦式が迫っている中、公表するのはまずいという事ですか?」

「その通りじゃな。本来であれば中止にすべきなんじゃが・・・・・・な?」

 

おそらくはそのあとのことは察してくれという事だろう

杉蓋、骨田の一件で信頼を失っている今、さらにマイナスイメージをつけたくないという事だろう

 

「それでは観閲者に危険が・・・。」

「だが、これは決定事項でな・・・・・・。わかってくれ。」

 

提督は深いため息をつくとわかりましたと返事をした

 

「ところでその・・・。会計部の後任とかは・・・・・・。」

「その辺のわしの仕事は代理を立てることにした。」

「失礼するぞ。」

 

会話に割って入って来たのは、中肉中背の中年の男・・・だが随分やつれた印象を受けた

 

「大沢・・・元帥・・・・・・。」

「おお!大沢元帥!このような頼み事をして済まないのぉ。」

「気にしなくて大丈夫だ・・・。どうせ予備役の身だからな。」

 

そういって提督達とはベットを挟んで椅子に腰を掛けた

 

「・・・・・・。元帥・・・その・・・・・・。」

(・・・・・・?)

(・・・・・・)

 

提督は普段と違い明らかに動揺している雰囲気だった

吹雪は違和感を感じ取り提督を見やった

そして、川内は黙って静観していた

 

「耳本。執務もあるだろう。今日は戻りなさい。私は桐月と話がある。」

「・・・・・・。はい。戻るぞ吹雪ちゃん、川内。」

 

提督はそっと立ち上がると一礼して退出していった

 

「えっ?!」

「・・・了解。ほら吹雪、行くよ。」

「あっはい!失礼します!」

 

 

 

「・・・・・・。あいつはまだ引きずっているのか。」

「わしらの責任じゃな。」

 

3人が退出していったのを見届けると大沢が口を開く

それに大将が諫めるように・・・・・・そして悲し気に言った

 

「あいつは作戦立案や指揮に関しては最高級の才能を持っているが・・・・・・な。」

「・・・・・・面倒を見ていた時の情ですかな?」

「あいつは悪くない・・・。当時の艦隊のメンバーだって口をそろえて言っていたさ。」

 

深いため息をつくとこの話はやめようと大沢は言った

 

「それにしても二人連れてくるとはのう・・・・・・。どっちに本気を渡すとおもいますかな?」

 

大将はニヤリと笑って左手の薬指を曲げた

 

「・・・・・・一目ぼれした方で行こうじゃないか。」

「なるほど。ではわしはその反対で。」

 

笑い声が病室に響いた

その声にまぎれるかのように静かに扉が開いた

 

「っと・・・おでましですな。」

「あいつも踏ん切りがつけばこうならないのにな。」

「・・・・・・。カレー洋解放作戦について情報をいただけますか?」

 

川内が頭を下げた




いつも閲覧ありがとうございます
作者から読者の皆様にご報告と言いますかご挨拶がありますのでお暇でしたら活動報告の方をご閲覧ください

そして更新速度が落ちてしまって誠に申し訳ありませんでした
・・・堀がですね?いろいろ悲惨なことになりまして
幸いにも新艦は全員ゲット
持っていなかった海外艦はある程度着任させることができましたが・・・

プリンツ堀が失敗しました・・・

堀総数283回
使った資源は燃料、弾薬各約20万、ボーキ3万、バケツ約250

ここまでやっても出なかったのであきらめました・・・
前回の幸運と差っ引いても割に合わない・・・(白目)

因みにE-7は丙で楽々ストレートで粉砕しました♡
自分はこれにて夏イベはほぼ終了です!
皆様のご健闘お祈りします!


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駿河諸島鎮守府と観艦式の準備

机の上にある海図に置かれた青い6つの駒

その4方を取り囲むように4つ~6つの赤い駒があった

 

『貴様!これはどうすればいいのだ!!』

『やめないか!』

 

鬼のような形相で掴みかかってくるのは軍令部長

その部長の肩を掴み、止めているのは大将だった

 

『こちら・・・意見具申します・・・わたしが』

 

 

 

「!」ガバッ

 

勢いよく提督は起き上がった

タオルケット一枚だけだったが、じっとりと湿っている

寝間着もひどく濡れており、寝汗がひどかったことを物語る

 

「・・・・・・シャワー浴びないとな。」

 

改築を重ね、手狭になった部屋に少し安心し風呂場へと向かった

 

 

 

「司令官。おはようございます!」

「おはよう吹雪ちゃん。」

「・・・・・・・?」

「?どうした?」

「あっいえ・・・。」

 

吹雪は何か言いたげだったが、提督が話しかけると何でもないですと言って席を立った

 

「ところで今日は面会希望を申し出てる人がいると古鷹さんから報告があります。」

 

吹雪が机の上にお茶を置きながら話す

 

「・・・あっ!昨日挨拶に来る予定だった子だ。」

 

提督は内線で、古鷹に執務室に直接来てもらうよう連絡をした

ほどなくして、扉がノックされた

 

「大本営直属翔鶴型航空母艦1番艦、翔鶴です。よろしくお願いいたします!」

「・・・・・・駿河諸島鎮守府司令官の耳本だ。」

「秘書艦の吹雪です!よろしくお願いします。」

 

軽く握手をすると座るように勧める

吹雪は新しくお茶を入れに再度給湯室へと行った

 

「先日は申し訳なかった。緊急の所用ができてしまったので。」

「いいえ。お気になさらないでください。むしろ噂に名高い旅館に泊まらせていただけるとは思ってなかったのでありがたかったです。」

「こちらの責任で足を止めさせてしまったんですから・・・・・・そうさせていただくのが道理というものです。」

 

吹雪がお茶を翔鶴に出すと、机から1つのファイルを持ってきた

 

「さて、こちらが当鎮守府近海の海図になります。古鷹からは島内の地図を受け取っていますか?」

「はい。先日の間に歩いて回らさせていただきましたので大丈夫です。」

「それなら島内は説明不要ですね。」

 

そういって提督は諸島近海の説明を始めた

たった3日間だけの留守を預けるのだが、その3日間だって警戒を緩める道理にはならない

いつも通り・・・むしろいつも以上に厳戒な警備を行った方がいいのだ

最近では先の大戦みたく、通信が傍受されているといないとかいう噂もあるが信憑性は不明だ

とは言え、可能性があるなら警戒するに越したことはない

哨戒機での哨戒活動は広い範囲をカバーでき、場合によっては先制攻撃も期待できる

提督が、大本営に3日間だけの派遣要請を行ったのにはそういった背景がある

 

「以上が簡単なこの付近の説明だ。具体的に聞きたかったら阿武隈に聞いてほしい。」

「ありがとうございます。あと、こちらの基地航空隊の方とお話ししたいんですけど今いらっしゃいますか?」

「今日の午後に八丈島から帰ってくるのでそれまでお待ちいただけますか?」

「承知しました。それと、耳本提督へ大本営から書類の預かりものが・・・。」

 

そういって翔鶴はファイルから蝋で封された封筒を提督に渡す

お礼を言って受け取り、開封する

 

「・・・・・・。もう?」

 

観艦式参加人員確認書が封筒の中から出てきた

見れば期限は今日までとなっており、時間がなかった

 

「その・・・大本営よりその書類についての返答を受け取って戻ってくるように言われておりまして・・・・・・。」

「ええ・・・・・・。今日までに間に合うかな・・・?」

「あ、そちらにつきましては面談が今日になったという事で明日までで大丈夫とのことです。」

 

どちらにしろあまり時間がない

机の上からメモを取り出し、ササッと名前を書いていく

それを吹雪に渡し、呼び出すように頼む

 

「翔鶴君。すまないがこれからちょっとこの書類についての会議をやりたいので席のほうを・・・」

「承知しました。それではまたあとでお伺いいたしますね。」

「龍驤が戻ってきたら直接そちらに向かうように伝えるので旅館の方で待機をお願いします。」

「それでは失礼しました。」

 

 

 

 

それから少しして、執務室には

皐月、望月、深雪、時雨、山風の5名が集まった

 

「急に呼び出して何かあったのかい?」

「あっひょっとして・・・これ?くれるの?」

 

そういって望月が左手薬指を指した

 

「違う違う。どうしてそっち方面に結論をかっ飛ばすかな?・・・皐月と山風も違うからね?」

 

それぞれ期待のまなざしをこちらに向けてきたが、否定すると少し残念そうな顔をした

 

 

「今日集まってもらったのは観艦式のことについてなんだ。」

「ああ・・・。となると・・・あと二人必要ってことだな?」

 

深雪が少し考えて指を折って言った

 

「そうそう。メンバーが吹雪、川内、龍驤、加古までは決まったのだがあと二人をどうしようかと思ってね。」

 

 

因みに選出外となっている親潮、若葉は二人共まだ所属して間もない理由から

阿武隈は戦闘関係のトラウマが消えているか怪しいのと前回古鷹の補佐をやったことから留守組にした

古鷹は提督代理を務めるために、榛名は艤装が依然として動かないため留守組

 

ゴーヤは当日は観艦式の会場の警備(会場)で呼ばれていたので参加はできない

 

ル級とリ級?・・・・・・流石に見世物になりかねないので留守番だ

 

 

「それで行きたい人はいる?・・・ってそうだよなぁ。」

 

そういった瞬間全員がバッと手を挙げる

 

「・・・山風行くかい?」

「・・・時雨姉ぇこそ?」

 

白露型の二人は譲り合いが始まった

どちらも平行線をたどりそうで埒があきそうにない

そう思って視線を隣にやると

 

「ねぇ?もっちー?君は司令官にこの間連れて行ってもらったよねぇ?」

「・・・ぐっ!」

「深雪もだよ?何か約束を取り付けたんじゃないのかい?」

「・・・ちっ。」

 

皐月が粘着質な声で恨めしそうに望月と深雪の顔を後ろからするりとなでる

二人共否定できないためだんまりを決め込む

 

「僕はまだ司令官と一度も出かけてないんだ?どうすればいいのかわかるよねぇ・・・?」

 

二人共目を合わせないように視線を床に向けている

山風と時雨はほほえましい譲り合いなのに対してこちらは今にも呪われそうなドロドロとした空気が漂っている

 

(こっちで指名した方がよかったかなぁ?)

 

内心失敗したと思いつつどう収束するかを考えた

 

「失礼するわ。」コンコン

 

そんなことを考えているとル級が入って来た

 

「おや?珍しいね。何かあったのかい?」

「いえ・・・。ちょっとよからぬ空気を感じてきたのだけれど・・・・・・。」

「・・・あれかな?」

 

深雪と望月が滝のような汗を流しながら皐月に必死で目を合わせないように絡まれてる地獄絵図を指さす

 

「・・・なにこれ?」

「これに引き寄せられたと思ったんだけど・・・。」

「違うわよ。どうやら違ったようだし戻るわね。」

 

ル級はくるりと背を向けて退出しようとした

が、何かを思い出したようにこちらを向く

 

「そういえばアレの調達はできそうかしら?」

「アレ?アレって・・・・・・。」

「あら?まだ書類を見てないのかしら。軽トラの調達よ。」

「ちょっとまってな・・・。」

 

机の上の未決済書類を探す

すると、農園部の追加要望書が出てきた

捲っていくと確かに軽トラ、もしくは運搬関係の小型の自動車の希望が書かれていた

使用目的は農具の運搬、及び薬剤散布の機械を乗せるためとある

AT、MT問わず至急とあった

 

「とりあえず秋までには返事の方がほしいわね。検討よろしくお願いするわ。私はこれから薬剤を撒いてくるわ。」

「了解・・・。ん?薬剤?」

 

提督は何か思いついた雰囲気だった

 

「ル級・・・。散布機っていくつある?」

「え?・・・予備を含めると6つかしら。それがどうかしたの?」

「よし!ちょっと手伝ってくれ!吹雪ちゃんこの5人を農園の方に行くように言っておいてくれる?」

「わかりました!司令官。」

 

 

 

 

「というわけで!リアルス○ラトゥーン大会in駿河諸島~!」

「・・・どうしてこうなったのかしら?」

「まぁまぁ・・・私たちの仕事が減ったからいいじゃないですか・・・。」

 

ル級は苦々しく頭を抱え、それをリ級がそばで苦笑いしながら諫める

 

「薬剤散布面積1位と2位が観艦式に参加できるという事で!レディー・・・GO!」




というわけでスプ○トゥーンの方ですがこちらは全カットで行きますw
アレの様子を文に起こす自信がありませんゆえ申し訳ありません

お気に入り1,000人達成記念のご挨拶については活動報告の方をご覧くださいませ

イベントの方につきましては自分はもう完全に備蓄モードに切り替えました(プリンツ・・・)

皆様の満足のいく結果が出ることをお祈りしております


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駿河諸島鎮守府と観艦式 その1

勇ましい軍歌

展示品を囲む人々

飛び交う声

 

横須賀鎮守府 観艦式会場

 

その様子を提督と吹雪達は建物の中から見ていた

提督は普段の略式の格好ではない

靴は白い革靴

普段は略している肩章、短刀、軍帽をかぶり、白手袋をはめていた

 

一方の艦娘側も服装は普段と変わりないが、軍帽をかぶっていた

また、後ろの艤装には各艦の認識旗と各鎮守府の旗印を掲揚していた

 

「はぁ・・・やっぱり勝ち取ってよかったぁ・・・・・・。」

 

うっとりとした顔をしているのは金髪ツインテールをした艦娘

そう、皐月である

 

「山風には悪いことしたかなぁ・・・・・・。」

 

答えるかのようにつぶやいたのは時雨

 

結局、この二人が壮絶(?)な争いを制し観艦式のメンバーとしてここに来ていた

二人はまだ旗の掲揚が終わってないらしく、妖精さんと相談しながらつけていた

 

その時、ノックの音が部屋に響く

 

「げっ・・・誰だろ?」

 

提督は苦々しい顔をする

それもそうだ

こういった機会は特に社交界的な意味合いを持つ

下手をすれば民間で、海軍につてのある者が訪ねてくる可能性だってある

一人や二人ならいいが、以前みたいにもみくちゃにされては敵わない

ただでさえ、将官が狙われる事件が起きている

 

「そういう顔はお客さんの前ではせぇへんようにな。」

「・・・・・・善処します。」

「・・・・・・。」スヤァ

「ええ加減起きんかい。」

 

提督と龍驤が話している真横で提督の方によっかさってスヤスヤと眠っている加古を龍驤はペシンと叩いた

 

「いてっ・・・・・・。」

 

むくりと起き上がると頭をぼりぼりと掻いた

が、時計をちらりと見てまだなのを確認すると夢の中に戻っていった

一連の動作を見て龍驤はダメだこりゃと言ってあきらめた

 

「・・・・・・・。」

「川内?」

「!」

 

何やら考え事をしている川内に声をかけるとビクッと肩を震わせた

 

「すまないが応対を頼めるかい?」

「あっ!了解!」

 

慌てて川内は立ち上がりドアへと駆け寄る

 

コンコン

 

「はい!遅れてすみません!」

 

再度ノックの音に川内が声を少し張って返事をする

 

「ただいま戻りました。」

 

どうやら吹雪だったみたいだ

吹雪はこのあとある海上行進の後のプログラムの一つを務めることになっている

その打ち合わせで席をはずしていたのだ

 

「ども!耳本さん!」

「おや、青ちゃんか。」

 

吹雪の後ろには青葉新聞社の青葉編集長がいた

 

「内浦の子は今回は観艦式に参加しないそうなので私が代わりに来たんです!」

「そっかそっか。そういえば今回は名前無かったねぇ。」

 

参加基地一覧表を頭の中で思い浮かべてた

 

「それにしても・・・。」

 

青葉は次の句を告げることはなかったがニコニコととてもいい笑顔をしていた

それに対して提督は頭の上に?マークを浮かべた

何も言わずにただニコニコと微笑みながら見つめられて、提督も合わせて笑いはするものの内心ではどうしたのと思っていた

そんな時間がたっぷり10秒過ぎたころだった

 

「ちょっと・・・。」トス

「ん?ああ!皐月さん!お久しぶりです。今日はいったいどのようなご用向きで?」

「ご用向きって・・・僕の司令官に用があって来たんだろ?」

「ああ!そうでs・・・僕の?まさか・・・!」

「そ、この春から僕はこっちに転属したんだ。」

 

その言葉に顔色こそ変えなかったが手に持っていたペンがミシリと悲鳴を上げる

 

「あ!そういえば青葉さんは取材いいんですか?」

 

あわや勃発かと思われたその時、吹雪が青葉に本来の目的を言う

 

「おっと!いけないいけない・・・・・・。」

 

慌てた様子で手帳を開いた

 

「観艦式の行進まで30分ほどありますのでぜひお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご来場の皆様にお知らせいたします。まもなく艦娘達の海上行進が行われます。チケットをお持ちでない方はスクリーンをご用意しております。正面口にお越しください。』

 

軍楽隊の行進曲『軍艦』が流れ始めると再び放送が始まった

 

『まずは東京湾、相模湾など首都近海を防衛する横須賀鎮守府の艦隊です!水上打撃連合艦隊、機動連合艦隊、輸送連合艦隊の順で行進してきます!』

 

その後、艦隊が通過する間に陣形や参加している艦の紹介等が行われた

そして、4大鎮守府の残り3つが行進、さらに地方の拠点基地と紹介が進んだ

 

『さぁ!続きましては駿河諸島鎮守府の艦隊です!駆逐艦吹雪を先頭に軽巡川内、重巡加古、軽空母龍驤、駆逐艦時雨、同じく駆逐艦皐月の順の行進です!駆逐艦吹雪の先頭の護衛艦に乗艦しているのは駿河諸島鎮守府司令官耳本中佐です!』

 

 

 

と言った放送が終わるとちょうど最初の観閲艦に到達した

きちっとしたリハーサルのおかげだろう

そう言った言葉は飲み込み敬礼をする

1人1人の顔がぼんやりとだが見える距離を通過していく

ある人は手を振り、またある人は敬礼を返している、はたまたある人はニコニコと微笑みながら楽しそうに見ている

共通しているのはどの人も楽しんでみていることだ

提督は自然と微笑みを返していた

それは、後続の吹雪達も同じだった

 

 

 

 

『駿河諸島鎮守府では日本の石油、鉄鋼などの資源輸送の経由地となっており、我々の今日の生活の下支えを担っている鎮守府です。本来であれば通常業務に差支えが出るため例年参加を見送っておりました。しかし、今回記念すべきこの式のため参列してくれました!また、旗艦である駆逐艦吹雪はこののちのパフォーマンスにも出演予定です!ぜひご覧ください!』

 

 

 

 

観閲艦をすべて通過すると、提督の乗った護衛艦は桟橋へ

吹雪達はずらりと並んだ艦隊たちの列へと並んでいった

 

 

提督たちは正面口の掲揚台の集合していた

掲揚台の横にはステージが設けられており、そこには大本営の上層部のメンバーと来賓のリボンのついた人たちが着席していた

やがて行進が終わると、最後の基地の提督がこちらに戻ったのを確認したのち再び放送が再開された

 

『国旗掲揚並びに国歌斉唱。』

 

再び楽団が演奏をはじめ、君が代とともに掲揚されていく

 

 

『軍令部長志垣より皆様へご挨拶。』

 

先ほどの厳かな雰囲気は消え、再び喧騒が会場に戻って来た

挨拶を聞く人もいれば展示品や建物見学へ行く人などでばらけて行った

 

ステージの演台に登壇した志垣軍令部長は国旗、来賓、上層部へと礼をし、挨拶を読み始めた

背が高く細身で容姿は渋い筋の通った顔

なまじ、顔がいいため国民からの覚えもいい

ぼんやりと聞いていると、ある違和感を覚えた

来賓の紹介で各放送局、新聞、雑誌などのトップがいたのだ

普通は名代だけのはず

今回の観艦式は記念会でも特別な理由もない

 

そんなことを頭の中で考えていると拍手が巻き起こる

どうやら挨拶は終わったみたいであり、提督もとりあえず拍手をする

 

 

 

 

 

 

 

 

重い足取りで控室に戻ると吹雪以外のメンツがそろっていた

 

「お疲れ様。はいタオル。」

「おお。ありがとう。」

 

いくら涼しめの夏服を着ていたとしても外は8月の夏の盛り

暑さで、帽子の中は蒸れていた

 

「吹雪のが始まるよ~。」

 

見れば設置されたテレビで中継をやっている真っ最中だった

 

 

『さぁそれでは次のパフォーマンスに移りましょう!駿河諸島鎮守府所属の駆逐艦吹雪です!』

 

海上には訓練で使われる人型の的がいくつか設置されていた

 

『彼女の得意なことは射撃です!おっとそれもただの射撃ではありません!艦娘で射撃が苦手という子はほぼいませんからね?』

 

画面の隅っこのワイプに写されている会場から笑い声が混ざる

 

『彼女の場合は精密射撃。それも前に超が付くレベルです!吹雪さん?まず的に一回打ってもらっていいですか?』

 

アナウンスに吹雪はコクリとうなずくといつも使っている10cm高角砲を撃つ

何事もなく頭の真ん中に着弾し、オレンジ色に染まる

 

『はい。今彼女が発射したのは普段演習に使われているペイント弾です!こちらは発射速度や着弾地点などで色が変わります。ためにしもう一度当てた場合はどうなるかをお見せいたしましょう。吹雪さーん!』

 

その声に反応して再び吹雪が真ん中に命中させる

すると今度は赤色へと変色する

 

『ありがとうございます!このように赤色に変色します。赤色は大破の判定で戦闘不能をあらわします。補足ですがオレンジ色が中破で今回は出ませんでしたが黄色が小破になります。これらは午後に行われる演習大会の際にも使います。観戦の際の目安として覚えていただければより一層楽しめるとおもますよ!』

 

演習ね・・・

うちには関係のないことだと提督は聞き流す

 

『さて、当然ですがこれで終わりではございません!先ほどのは重巡洋艦の装甲を模した的でしたが・・・今度はこちらです!』

 

どこからともなくスタッフの腕章をした艦娘達が的を交換する

先ほどの的より一回り大きいもの

 

『こちらは戦艦級を想定したものです!会場でご覧の皆様にわかりやすく見本をご用意いたしました。』

 

言い忘れていたが、会場の大勢は先ほどのスクリーンが設置されたところで観覧している

一部は護衛艦上から見ているのだろうが、中継ではどこから見ているのかわからない

 

『さて、こちらは駆逐艦の主砲ではダメージが通りません。通らなかった場合は緑色になってしまいますが・・・。吹雪さん用意ができ次第どうぞ。』

 

吹雪は深めに息を吸うと高角砲を斉射した

またしても頭の真ん中

それも今度は一発で赤色に染まった

それを見て会場は歓声に包まれる

 

『はい!彼女にかかればこの通りです!おそらくわからなかった方も多いと思いますので解説させていただきます。カメラさん!的を目いっぱいに写してください!』

 

スクリーンに映し出されていたのは的の頭部分

その色は的の真ん中の部分は赤く、そこを中心に赤からオレンジ、オレンジから黄色、黄色から緑と綺麗に変色していた

 

『実は彼女は今の一瞬のうちに二発この的に打ち込んでいるんです!先ほど試しで撃ってもらった的がこちらに届きましたので比較するとわかると思いますが・・・。』

 

ステージにカメラが向けられると先ほどまで海の上にあった的があった

こちらは赤色のみで、色のコントラストがない

 

『このように貫通し、重大な損害が出たと判断された場合は赤色に変色します。重巡と戦艦では装甲が違うためこのように違いが出ます。吹雪さん!』

 

事前の打ち合わせだろう

今度は体の中心に一発だけ撃つ

すると今度は黄色に染まった

そして、もう一発を的の隅っこに当てると緑色に染まった

 

『試しで撃っていただきましたが、このように装甲がはるかに硬い場合は頭部や心臓に当たるところを撃たない限りは有効な色に変化しません。それでも一発のみなら小破判定が限界です・・・・・・が。』

 

アナウンスの声が終わると同時に吹雪は体の中心に撃ち込む

すると頭部と同じコントラストに変色した

これには会場も大きな歓声と拍手に包まれた

 

『これを彼女は一瞬のうちに行えるのです!・・・・・・さてそれでは準備体操も終わりましたので参りましょう!』

 

どよどよと会場が騒がしくなった

 

『これから吹雪さんにはこの戦艦級の的を6つすべて大破判定まで持ち込んでいただきます!しかも、今度はランダムに移動するという条件付きです!』

 

スタッフが下の自走装置をいじっている様子が映し出された

まもなく、吹雪の周りを6隻の的が不規則に動き回り始めた

 

『さぁそれでは参りましょう!制限時間は5分!レディー・・・GO!』

 

 

 

 

 

 

 

結果は成功

1分の余裕を残し、すべての的にヘッドショットを一発で決めた

会場は歓喜の渦に包まれ、万雷の拍手が巻き起こった

 

提督は満足げに微笑んで画面の吹雪にお疲れ様とつぶやいた

 

「初めて見たけどすごいねぇ・・・。艦娘の教艦も十分務まるレベルだよ・・・・・・。」

 

皐月が舌を巻いていた

 

「吹雪は提督からコツを教わってるからね!私もやってるけどなかなか難しいもんだよねぇ・・・・・・。」

 

川内がため息交じりに言った

 

「それよりも迎えに行った方がいいんじゃない?鎮守府からの引き抜きとかの声かけられそうだし・・・。」

 

時雨に言われ、それもそうだと思い帽子を深くかぶり出口へと向かった

すると聞き覚えのあるいやな声とノックがした

 

「耳本中佐はいらっしゃいますか?」




さてさてついにイベントも残り一日・・・
皆様はいかがでしたでしょうか?
自分は新艦は漏れなく着任し、欧州艦もある程度着任させられました(プリンツ?リべ?ザラ?・・・知らんな)
そしてイベント明けには昨年秋イベで血反吐を吐きながら入手したサラトガ改二(多分)の実装を楽しみに待っています

皆様の堀、もしくは攻略が上手くいくことを心よりお祈り申し上げます


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駿河諸島鎮守府と観艦式 その2

「失礼いたします!耳本中佐を連れてまいりました。」

 

第一軍令部長室

ひときわ豪奢な作りの扉を開けたのは須下少将

中は普段行く大将室の倍以上あり、部屋には様々な調度品がある

・・・が少々置きすぎで下品な印象を覚える

 

 

奥の机では部屋の主がニコニコと微笑んで手招きをしていた

 

 

「おお。ご苦労様だったね須下君。さ、耳本君こっちに来たまえ。」

 

須下少将の後ろについていきながら軍令部長の前に行く

机の前で目礼をした

 

「何か私に御用でしょうか?」

「ちょっと頼みたいことがあってな?今日の午後の演習に出てはもらえないだろうか?」

 

 

 

プログラムを提督に渡す

見れば、第二戦目のところに赤丸がご丁寧につけてあった

 

 

 

「なぜまた私に?ほかに優秀な者がいるでしょう?」

 

そういうと眉を一瞬ひそめたが、すぐに笑顔に戻った

 

「いやぁ・・・。水雷戦隊が主体の者たちがいなくてねぇ?限りなく近い編成は君しか頼めないんだがダメかい?」

 

見れば水雷戦隊vs打撃部隊を書いてあった

恐らくは打撃部隊の強さを引き立てるために負けろという事だろう

提督は何となくその意図が見えた

そして、ある提案をした

 

「それならば軍令部長直々にやられてはいかがでしょうか?観閲者である国民にも喜ばれるかと・・・。あの夜間航空戦法を編み出した軍令部長の采配を見たいと思う方もいらっしゃることでしょう。」

 

それを言った瞬間、軍令部長の温和そうな顔が崩れた

唇をかみしめ、敵意のある目を提督に向ける

そして、軽くチッと舌打ちをした

 

「あいにく今日は面会があってだな。難しいんだ。頼まれてくれないか?」

「では吹雪に・・・・・・。」

「なるほど?そうやって艦娘に任せるのかね?」

 

その言葉を聞くとカチンときたのだろう

少し眉を上げた

 

「そういうわけではありませんが・・・。」

「じゃあ君が指揮を執りなさい。これは命令だ。」

「・・・・・・普通科の私でよければ。」

「・・・!・・・・・・。」

 

最後の会話で、部屋の空気は劣悪なものとなった

提督は再び目礼をすると静かに退出していった

 

 

 

 

 

「くそ!あいつめ・・・!」

 

 

 

 

退出したのを見届けると同時に、机の上にあるペンをたたきつけた

須下は困惑した顔で志垣をなだめる

 

「おっ落ち着いてください!お怒りはごもっともです。私めが必ずやあいつを演習でたたきのめしてごらんに入れます!」

「・・・・・・。編成は?」

「ご安心ください。大和姉妹に2航戦組、北上と大井の火力重視編成です。」

「・・・そうか。」

 

革張りの椅子にゆっくりともたれかかる

 

「そもそも普通科のやつなぞに負けません!会議の時の雪辱を果たして見せます。」

「・・・・・・。くれぐれも侮るなよ?」

「はっ!それでは私も失礼します!」

 

礼をして須下も退出する

 

 

 

「・・・・・・まぁいいさ。ようやく抱き込みが終わったんだ・・・。大沢元帥の残した最後のあいつを片づければ・・・・・・憂いはない。」

 

ふんと鼻を鳴らし、引き出しを開けた

『西方再打通!欧州救援作戦概要』

 

「欧州のやつらもちょうどいいタイミングで助けを求めてきたものだ。」

 

一枚の紙をそこから取り出し、志垣も退出した

 

 

 

 

 

『第一回戦の空母機動部隊vs水上打撃部隊の演習はいかがでしたでしょうか?私としては・・・』

 

 

 

 

「こんな感じで行こうと思うが異議はあるか?」

 

第9埠頭

ここに鎮守府のメンバーが集まって作戦会議をしていた

 

「特にないけど・・・。」

「・・・司令官って指揮取れるの?」

 

時雨と皐月が不思議そうな顔をした

それもそうだ

演習の時も提督はついていくことなく、指揮を古参のメンバーにゆだねている

 

「・・・真似事みたいなものだ。あんまり得意じゃない。」

「「「「・・・・・・。」」」」

「さぁ行きなさいな。軍令部長には引き立て役と言われたがそんな風になってやるつもりなんてないから安心してくれ。吹雪。頼んだぞ。」

「はい!司令官!」

 

敬礼を交わし、吹雪達はゴーグルをつけて抜錨していった

 

 

 

『さてさて準備が整ったようですので次の演習は・・・打撃部隊vs水雷戦隊です!こちらは戦艦2隻、空母2隻、雷巡2隻の攻撃力に優れた艦隊です!指揮を執りますは若手の注目株であり、次期軍令部長にも近いと噂のある須下少将です!』

 

「ねぇ?次の相手って誰なの?」

「さぁ?事前のプログラムだと何も書かれてないんだよね?」

 

放送を聞きながら準備をしている影が4つ

オレンジの着物と緑色の着物を着た二人組が首をかしげる

二航戦の二人だ

 

「まぁ~このメンツで相手が水雷戦隊なら誰でも勝てるっしょ。ねぇ大井っち?」

「はい!北上さん!」

 

仲睦まじげに艤装のチェックを行いながら二人の方を向く

 

『相対するは先ほど素晴らしい技術を披露してくれた駆逐艦吹雪の所属する駿河諸島鎮守府の艦隊です!』

 

「「「「はぁっ?!」」」」

「すみません!おくれま・・・あのぉ・・・?」

「・・・・・・何かあったのか?」

「「「「静かに!!」」」」

 

大きな艤装をつけた戦艦の二人組

大和と武蔵が埠頭にたどり着くと、そこには先ほどまでのんびりとした雰囲気で艤装のチェックを行っていた4人が耳に手を当てて一言一句逃さないように放送を聞いていた

 

『・・・というわけで今回は特例として水雷戦隊とありますが軽空母龍驤が組み込まれています。ご了承下さい。』

 

「うぁ・・・どうしよう・・・・・・。」

「これ私たち完全に終わったよぉ・・・。どうしよう飛龍・・・・・・。」

「いったいどうしたというんだ?」

「ああ・・・ええと実は・・・。」

 

途方に暮れている4人に武蔵が不思議そうに話しかける

それを飛龍がかみ砕いて武蔵と大和に説明をする

 

「ふむ・・・。私はまだ誰ともやったことはないな・・・。大和はどうだ?」

「私もありませんね・・・。用心していきましょう。」

「だな。過信をせず、慎重に行こう。みんなもそうしょげてばかりでは仕方ないだろう!それでは勝つ可能性がなくなってしまうではないか!大本営麾下の実力を見せてやろうじゃないか!」

 

武蔵が4人に喝を入れると表情がいくらかは和らいだ

 

 

 

 

 

『どうやら各艦隊所定の位置に到着したようです。・・・それでは!戦闘開始!!』

 

 

「はい。はい・・・。わかりました。飛龍さん。彩雲を飛ばしてください。蒼龍さんは直掩機を上げておいてください。」

「はい!」

「了解!」

 

飛龍は大和の指示に従い早速彩雲を、蒼龍は艦戦を発艦させた

その情報が逐一無線で飛ばされてくる

また、蒼龍の艦戦も警戒を怠らない

 

「!敵艦隊発見!ここから約4キロのところを9時から8時の方向に高速で移動中!」

「了解です!艦隊、これより反転して同航戦に持ち込みます!速度が違いますので丁字不利にならないように気を付けましょう!北上さんと大井さんは甲標的で先制雷撃準備を!」

「「了解!(です)」」

 

『おおっと!先に艦隊を発見したのはどうやら打撃部隊の方だ!駿河諸島艦隊は・・・どうやら之字運動を始めた模様です!雷巡の先制攻撃に備えているようですね!』

 

「そろそろ甲標的をしゅt・・・え?!」

「どうした?」

「敵の魚雷が右舷より接近中!!至急面舵を!丁字不利になりますが魚雷通過までの辛抱です!」

 

武蔵がうなずき後方に伝達を行う

伝達が済み次第進路を変更した

やがて、最後尾の北上から魚雷通過確認の知らせがあった

 

「危ないところだt・・・」ドォン!

「どうしましたか!!」

「すみません・・・。被雷しました・・・・・・!」

 

魚雷を避けてやれやれと思ったその矢先、爆発音がした

後ろを見ると大井がペイントで真っ赤に染まっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『重雷装艦大井戦闘不能!駿河諸島の艦隊はラッキーですね!』

 

会場ではざわざわと声が上がっている

その様子を深打はスクリーンで見ていた

相変わらずえげつないことをするなぁと思っているとある声が聞こえた

 

「あれがまぐれと本当に思っているのか・・・?」

(おや?)

「そうじゃないの?」

「あれは相手の心理を見透かしたうえでの二重の雷撃だ。」

 

そう言って地図を片手に相手に説明を始めた

 

 

 

まず之字運動を始めた時点でおそらく相手の偵察機を見つけたんだろう

それで大井、北上の先制雷撃に備えてると思わせる

さらには浅めの進度で魚雷を撃ち、相手に見つけやすくしておく

ここでどっちに進路を取るかだが・・・どっちに取る?

 

ええ?・・・うーん。やっぱり面舵かな?火力もあるし、少しの間の丁字不利なら目をつぶれるし・・・。取り舵にしちゃうと遠ざかっていくし、後ろから被弾すると舵やスクリューがやられて動けなくなる可能性があるからなぁ

 

回避運動後は魚雷の航跡からは目が逸れて、丁字不利を気にするあまり敵艦隊の方に注意が向く

これが罠だ

相手の艦隊は交わされるのは織り込み済みで之字運動の反転したときに魚雷をもう一回打つ

するとどうだ?海面に向ける注意は低いから接近に気が付かずに・・・

 

おお!すごいねぇ!

 

全くだ。

この私もあのような戦略を立てる指揮官の元に行きたいものだ

 

一連の会話を聞き終えると深打はくすっと笑った

(みっちゃんもこっち方面でモテるねぇ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!まだ一隻です!飛龍さんは艦攻、艦爆隊を順次発艦させてください!その後艦戦隊を発艦させて入れ替わりの直掩をお願いします!」

「了解しました!」

「蒼龍さんは艦攻、艦爆隊が発艦させたら現在の直掩機を護衛につけて攻撃を開始してください!」

「了解です!」

 

大和は艦隊を鼓舞するように呼び掛ける

相手は軽空母一隻・・・

水雷戦隊がメインの艦隊にとって防空のみに回すはずがない

須下少将もそれを見越し、艦戦隊を3つとした

 

「えっ?!うそ!」

「・・・どうしました?」

 

飛龍が声を上げた

大和は恐ろしい報告を聞きたくないと思いつつ、報告するように促す

 

「・・・敵艦隊の艦載機隊がいません。直掩機がいないんです。」

「上空や離れたところや低空には?」

「いません。見たところまだ発艦していません!・・・ただ。」

「じゃあ至急攻撃を開始してください!発艦がまだ終わってないのでしょう!」

「・・・はい。」

 

大和の焦った表情に飛龍は顔を曇らせた

しかし、指示通り突入を指示した

 

 

 

そして悲劇は起こった

 

 

 

艦隊の対空砲火はすさまじく、吹雪を筆頭に皐月、川内たちの対空砲火に艦攻、艦爆隊は散っていった

最大の戦力である加古や龍驤を狙うが、この二人の対空砲火もすさまじかった

飛龍が懸念していたのはこのことだった

以前吹雪と対峙した際、吹雪の対空砲火で蒼龍の航空隊は全滅、唯一帰って来た飛龍もわずか2機という悲惨な結果だったのだ

幸いにも単艦だったため勝利はできたが、内容としては負け戦も同然だった

 

「戦果報告・・・蒼龍所属の友永隊・・・戦果無し、江草隊は時雨に軽微な損傷。」

「・・・飛龍所属の友永隊、皐月に軽微な損傷、江草隊は戦果無し。」

「そんな!」

「被害報告。航空母艦蒼龍所属の友永隊全滅。江草隊は帰還4機。攻撃可能なのは2機です。」

「航空母艦飛龍所属の友永隊5機帰還、江草隊は2機帰還しました。攻撃可能機は友永2機、江草2機です。」

 

それを聞くと大和は絶望的な顔になった

武蔵も目を丸くし、信じられないといった表情をした

しかし、待てど暮らせど戻ってくる気配はない

 

「力及ばずすみません。砲撃戦に備えます。」

「了解しました・・・。」

 

さらに悪い報告が続く

 

「・・・ごめん。大和。あたしの甲標的も多分沈められた。今通信が切れた。」

「・・・・・・!」

「まだだ!敵艦隊上空の制空権はとってはいる!我々の弾着観測射撃をもってすれば・・・!」

 

おもわず二の句が継げず、黙ってしまった大和に代わり、武蔵が鼓舞した

が、艦隊全体の注意が大和に逸れたのがまずかった

 

「敵機来襲!!」

「!」

「しまった!」

 

先ほど帰ってきた部隊は全員補給中

直掩部隊も入れ替わりで半分が補給に入っている

相手はこの防御が薄くなる一瞬を待っていたのだ

 

「総員!輪陣形を取ってください!対空砲火はじめ!」

「ぐっ!なんでまた甲板に被弾なのよっ!」

「この程度ならかすり傷よっ!まだ行けるわ!」

 

直掩部隊が半数だったこともあり、被害はより一層酷くなった

体勢を立て直し、何とか艦戦を発艦させる準備ができたころには引き揚げてしまった

 

 

 

 

 

「ひっ被害・・・報告を・・・・・・。」

「航空母艦蒼龍中破・・・。攻撃部隊の発着艦不能。」

「航空母艦飛龍小破。まだ行けます!」

「重雷装艦北上無傷だよ~。」

「戦艦武蔵損傷軽微だ。」

 

大和は平静さを保とうとしたが、無理だった

無線で指揮官である須下に連絡を取るが沈黙しか返ってこない

 

「まだ私たち二人がいる!相手の最大の戦力である重巡は弾着不可!こちらは可能だ!相手の射程外からの砲撃を敢行すれば・・・。」

「はい!観測機発艦!」

 

唯一残った飛龍の艦載機を護衛につけ、向かわせる

距離にして約3キロ

そろそろ相手重巡の最大射程だ

しかしこれで大丈夫・・・

そう思ったのがさらに悲劇を生んだ

 

 

 

 

 

「くっ!どういうことだ!まるで当たらんぞ!!!」

 

弾着観測の通り斉射しても、相手艦隊は全くスピードを落とさない

むしろ正確にごくわずかな移動しかせずかわしていく

 

「そろそろ重巡の有効射程2キロ圏内・・・・・・。こうなったら接近して直接浴びせましょう!」

「・・・果たしてうまくいくかねぇ?」

 

 

 

 

しびれを切らした武蔵と大和の会話を聞いていた北上はぼそりとつぶやく

ちらりと周りを見るとすでに蒼龍は大破判定で戦線離脱寸前

飛龍も中破判定が下りるぎりぎりのところで踏ん張っているが、あと一発貰えば中破で艦載機の発艦が不可になるだろう

そう考えている北上も夾叉をもらっており、小破判定を下されている

有効射程外からの砲撃・・・・・・さらには雨あられの砲撃の嵐だというのに何という精度だろう

 

 

 

 

「全艦!とつny・・・あああああ!」

「やまt・・・ぐあっ!」

 

 

 

 

突入準備の号令をかけようとした時、大和と武蔵に砲撃が当たった

普通なら相手艦隊の火力を見ても危険視するようなところはほとんどない

 

しかし、例外がある

二人の直撃した場所は頭部だ

幸い赤く染まってないが、オレンジ色になっている

・・・つまり

 

『大和、武蔵中破!電探及び測距儀使用不可!』

 

艦隊に動揺が広がる

あの大和、武蔵の装甲を破った?

動揺を見越してだろう

脚を思わず止めてしまった蒼龍、飛龍にも直撃

蒼龍は戦線離脱判定、飛龍も当たりどころが悪く大破判定となった

 

 

その後、魚雷を放つも当たらず昼の戦闘は終了となった




戦闘描写はやっぱり苦手だなぁと思いつつ書いております(;´Д`)

イベントお疲れ様でした
自分は最後にE-2で炎の吶喊かまして海風と大淀を終了3時間前にゲットしてきました
・・・実はこの日は免許の更新で9時30分(終了が11時30分)がタイムリミットだったのですが
大淀さんは9時27分のほんとに最後の最後で来てくださいました・・・


サラトガ改二はやはりというか2隻持ちできるとすごい便利だなぁという性能ですねぇ
とりあえず改じゃないと任務関係の改修ができないのでおいおい2隻目を狙っていかなければなぁと・・・(現在黒トカ改二です・・・)
というかその前に大鳳、大和、武蔵の建造に取り掛かれという話なんですが・・・(;´Д`)

明日は自分は観艦式に行ってまいります
なぜかどちらか一方が当たればいいなぁと思って昼夜両方申し込んだら両方とも当選してきたという・・・(;´Д`)


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駿河諸島鎮守府と観艦式 その3

『えっと・・・さっさて!これから夜戦へと突入します!』

 

解説の放送の声が震える

それもそうだ

想定外のことが起こっているからだ

台本には打撃部隊のすごさと水雷戦隊の夜の強みをしか書いてないのだろう

 

『改めてルールの説明ですが、旗艦が大破、戦線離脱判定で落とした方の勝利。双方の旗艦が落とされた場合は引き分け。双方落ちなかった場合は残存艦と損傷の具合での判定となります。』

 

 

 

 

 

 

「川内さん。ここからは指揮の方をお願いします!」

「わかったよ!さぁ夜戦の時間だよ!」

 

場所は戻って演習会場

損傷の確認をし、吹雪から川内の指揮へと移る

と言っても旗艦は吹雪のままだが

 

 

 

 

川内の掛け声とともに、ゴーグルが暗くなる

これは夜の状況を再現するためのものだ

実際の海戦では夜まで戦闘が続いたり、とどめを刺しきれず夜を待って追撃することなどはあるがこれは公開演習

本物の夜を待つわけにはいかない

そこで、太陽光のみをカットするゴーグルが開発された

太陽光のみのカットなので、照明弾や探照灯の光は見えるようになっている優れものだ

 

 

 

 

「加古は探照灯と夜間偵察機を、時雨は照明弾をの準備を!」

「「了解!」」

 

 

 

ほどなくして、加古から発艦していった夜間偵察機より艦隊発見の報が届く

後半は距離を離すように心がけたため、7キロ近くまで離れていた

大和を先頭に武蔵、北上、飛龍と続く単縦陣だ

妖精曰く通信機を使っているところを見ないとのこと

恐らくは現場のみの判断だろう

引き分けに持ち込むのが精いっぱいだろうが最後まであきらめない姿勢は称賛に値する

 

 

 

『・・・なるほどね。提督はどうする?』

『そうだね・・・。陣形を乱したいところだから遠距離の雷撃で一発当てるか、かすめたいところだけど・・・・・・。最低限陣形をみだすか、注意をそちらに向けるだけでもいい。』

『そのあと吶喊してもいい?!』

 

川内が少し興奮気味に言う

 

『・・・・・・まぁいいだろう。ほかに意見具申があるか聞いてくれ。』

 

少しの沈黙の後ため息をつきながら許可を出した

 

『あ、うちもいい?』

 

通信を割り込むようにして入って来たのは龍驤だった

 

『ん?いいぞ。受け入れるかは別だけど。』

『ひどいこと言うなぁ。うちもあれをやってみたいんやけどダメ?』

『・・・あれとは?』

 

少し冗談を交えた会話をしていたが、あれと言った瞬間空気が変わった

 

『あれ言うたらあれしかないやろ?司令官の戦法。』

『・・・俺のではないぞ。』

『まぁそういう事にしとたるわ。』

 

提督はしばらく沈黙した

考えているのだろうが、断る文句か実践できるか果たしてどちらなのか

 

『そもそもあれは危険が伴うから許可をしたくは・・・。』

『そこを何とか!な!』

『大破するかもしれないんだぞ?』

『そんなのわからんやん!』

 

目いっぱいのため息が通信機から聞こえる

 

『・・・・・・最速で1機何秒で発艦できる?』

『1.5秒あれば1機はいけるで?』

『わかった。4機だけ許可するよ・・・。』

『!ありがとうね!』

『無茶だけはするなよ?』

『了解やで!』

 

結局提督が折れ、許可を出した

 

 

 

 

 

 

「まもなく敵の後方2キロ。全艦の最大射程に入るよ!」

「よし・・・。全体単縦陣から複縦陣に移行!私の後ろに皐月、加古の順で。吹雪の後ろには時雨、龍驤の並びで行くよ!あと吹雪と時雨は魚雷全部発射して!」

 

了解の声とともに陣形変更をしながら、吹雪と時雨は魚雷を発射した

1900、1850・・・と加古が相手艦隊までの距離を読み上げる

 

 

 

そして

 

 

 

「1600・・・・・・1500。」

「行くよ!皐月!加古!最大船速で一気に抜けるよ!」

「「おう!/うん!」」

「夜はいいよねぇ・・・!夜はさ!」

 

川内を先頭に加古、皐月が続く

それと同時に時雨が、照明弾を相手艦隊に打ち上げた

照明弾に気が付いた相手達の顔は蒼白だった

吹雪と時雨の魚雷回避中で手が回らない

 

「しまった!大和ぉ!」

 

武蔵が見たのは魚雷をすでに放り、こちらに向かって砲撃を始めている川内たちだった

電探、測距儀が使えず見張り員のみの警戒となっていたため、先手を許してしまったのだ

武蔵は慌てて近くにいた旗艦の大和を魚雷からかばう

が、3人分の魚雷をまともに片舷に食らったため、あっという間にオレンジから赤に変色

戦線離脱判定が下された

 

 

 

「うわぁ・・・だーめだこりゃ。」

 

 

 

さらには砲撃は残った北上と戦線離脱一歩手前の飛龍に向いた

あいにく飛龍には当たらなかったが、皐月の10cm高角砲が北上の魚雷発射管にあたり、誘爆判定

そのまま戦線離脱判定が出された

 

川内たちの艦隊はそのままトップスピードを維持したまま駆け抜けていったが最後尾の加古が、探照灯を旗艦の大和に向けて照射を始めた

大和は一矢報いようと必死に撃つが回避されて当たらない

 

 

そして

再度照明弾が上がる

しかし、上がったのは大和達相手艦隊の上ではなく吹雪たちの艦隊だった

 

「艦載機のみんなぁ!もうひと仕事や!」

 

照明弾はすぐに消えた

普通なら20~30秒くらいついているはずなのだが、先ほどの照明弾は時間にして6秒ほどだった

そして、再び艦隊の周りは加古の探照灯の光だけになる

相手の間違いと思い、加古へと照準を合わせた

 

「!・・・?」ヴゥゥン

 

不審な音を察知した大和が、加古への砲撃を一度やめ、振り返った

 

 

 

 

「そんな!」

 

 

 

 

目の前には艦攻2機が海面すれすれにいた

そして、頭上には艦爆2機が急降下の体制を取っている

 

「貰ったで!」

 

 

 

 

 

 

轟音があたりに轟く

同時に戦線離脱の放送が流れてきた

 

「うっし!時雨。艦載機しまうから照明弾頼むわ。」

「うっうん!」

「・・・・・・!まって時雨ちゃ・・・!」

「え?」

 

吹雪がいぶかしげに見ていたが、あることに気が付いた

そして、慌てて時雨を制止しようとした

が、すでに遅く時雨は龍驤の艦載機着艦のために照明弾を打ち上げたところだった

 

 

 

「全主砲!薙ぎ払え!」

「お願い!当たってください!」

 

 

 

刹那

龍驤と時雨、吹雪に砲弾が飛んでいく

 

 

 

 

 

「あっかーん!」

「この僕がここまでやられるなんて・・・!」

「被害報告をお願いします!」

 

吹雪は砲撃で自身と龍驤と時雨に飛んできた弾道を逸らし、かわした

急いで状況確認のため、時雨と龍驤に話しかけた

 

「うちは中破や・・・。艦載機の収容は可能な状態やけど再発艦はもう無理や・・・。」

「僕も・・・。油断しちゃった。多分飛龍にかばわれたね。吹雪が逸らしてくれなかったら僕たち二人とも直撃で大破してたよ。」

 

 

 

 

そう

唯一残っていた飛龍が大和をかばったのだ

 

夜間空襲を通常の空母が行う場合は発着艦時と攻撃時に明かりの確保がいる

恐らく飛龍はそこを狙ったのだろう

自分は明かりがないうえに、発着艦は不能

だが、相手はそれを敢行した

しかも、自分の存在には薄らいでいる

見事にスキを突かれた形となった

 

幸い、照明弾が消え再び暗闇に包まれていた

大和の主砲は3基とも測距儀こそ使用停止なものの健在

折りの悪いことに艦載機たちの燃料をそんなに積まなかったため、川内たちの艦隊が折り返し戻ってくるのを待つ余裕もない

 

 

 

「・・・。時雨ちゃん照明弾はあと何発?」

「あと1回分のみだね・・・。」

 

ここにきてさらに難しい判断を迫られた

 

 

大和の頭上に打てば艦載機の着艦は不可能になる

自分たちの頭上に打てば自分たちが打たれる

このまま待てば艦載機の子たちを見殺しにすることになる

 

 

 

吹雪は考えた

そして、覚悟を決めたのか深呼吸をした

 

 

 

 

「時雨ちゃん。照明弾を上に撃って。」

「でもそれじゃあ!」

「私が何とかする。」

 

そういうと先ほど大和がいた方角に砲を向ける

何をするのかわかった時雨は龍驤の方を向いた

龍驤はすでに着艦準備が完了しており、ニカッと笑った

 

 

「わかった・・・!行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがは見事な采配だったね。」

「・・・お褒めの言葉をいただけて光栄です。」

「大和の斉射を吹雪君の主砲で弾道を逸らしつつ大和の正確な位置の把握、そのまま早打ちで大和にヘッドショット決めてゲームセット。さらには龍驤君の迅速な収容後の回避運動。どれをとっても君の艦隊は素晴らしいの一言だ。」

 

大本営 第一軍令部長室

 

提督が一歩前におり、その後ろに吹雪達6人が並んでいた

提督と軍令部長は向き合っており、軍令部長の後ろでは今にも飛びかからんばかりの憎しみの目線を送る須下がいた

 

「いや実に惜しい才能だ。そう思うな?須下君。」

「・・・はい。」

 

軍令部長に促されると少し抵抗はしたものの返事をした

 

「そこでだ。耳本中佐。君には夏の大規模作戦の一端を担ってもらおうと思ってな。」

「・・・・・・いつものように物資の準備ではなく?」

「そうだ。なぁにちょっとそこまでくらいの場所だ。」

 

提督は訝しんだ

それもそうだろう

信頼のおけない上官からのお願いほど怪しいものはない

 

「実は欧州の方面では大変なことになっていてね。須下君。」

 

須下がヨーロッパの地図を広げる

そこにはあちらこちらに赤いバツが方々に書き込まれていた

 

「この通りバツのあたりが姫級や鬼級が確認された海域・・・。すでに欧州の力では対処が不可能なレベルまで陥った。」

「つまり我々にヨーロッパまで出向けという事ですか?」

「まぁそう焦るな。君たちが長期不在となったらとてもじゃないが日本が干上がる。」

 

そう言って、ヨーロッパの地図を下げた

すると、下からもう一枚の地図が出てきた

 

「君に行ってもらうのはここだ。」

 

 

 

 

軍令部長が指をさしたのはスリランカ島

 

提督は固まった

地図はインド洋

提督はスリランカ島の一点を見つめて動かなかった

 

「実はここから敵の艦隊が西の方に行き来をしておってな。ここを叩いておけば強力な大艦隊に遭遇する確率が低くなる。その撃破任務をやってもらいたいのだ。」

 

いつの間にか軍令部長は提督のそばまで来ていた

 

「おk・・・。」

(ここでの君の戦果を話してもいいのだが?)

「・・・・・・。」

 

提督は黙ってしまった

 

「引き受けてくれるな?」

「・・・・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くあれほど侮るなと言っただろう。」

「大変申し訳ありません・・・・・・。しかし・・・あのような采配を振るえるものがなぜ・・・?」

「それは君に知ることではない。」

 

ふんと一蹴した

 

「それよりも。例の件進んでいるだろうな?」

「抜かりなく・・・。」

「ならばいい。もう賽は投げたのだ。」

 

志垣はニヤッと笑い須下を退出させた




というわけで観艦式編はこれで終わりです
ちょっと戦闘描写に挑戦してみたわけですが・・・
因みに夜間空襲戦はもともと考えていたものですがまさか実際に登場するとは思ってなかったところがありますのでちょっと違うところもありますがご了承ください

そしてやっぱり納得いかないところがちらほらとあったり
イメージはブラウザ版とアーケードを足して2で割ったみたいな感じで書いておりました

そしてそろそろ一回日常話を挟みたい_("_´ω`)_


観艦式行ってまいりました!
昼夜ともに見れてちょっとした違いが楽しかったです(主に夜のみんなのひねくれようw)
それにしても秋イベで涼月の実装・・・
涼月は艦のエピソードてんこ盛りですからどんな子になることやら・・・

セリフが『涼月です。皆さんをいつまでもお護りできるよう、頑張ります。』
でいいつまでも・・・ね
とちょっとぐっと来たのは私だけでないはず


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駿河諸島鎮守府の小休止

時刻はヒトハチマルマル

太陽はすでに西の空に沈み、空は深い藍色をたたえている

執務室を開けると、すでに明かりは消えており外と同じく暗い

提督が机の方に寄ると一枚のメモが置いてあった

 

 

 

 

提督へ

観艦式お疲れ様でした!

留守中の業務は、滞りなく終わらせてありますのでご安心ください

くれぐれも前倒しでお仕事をなさらないようにしてくださいね

確認作業も明日行ってください

 

古鷹

 

 

 

 

読み終えた提督は思わず苦笑がこぼれた

 

「まぁちょっとやることがあるんだけれどもね。」

 

そう呟いて内線をかけ始めた

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ。耳本提督。」

「ただいま。留守中に問題とかはなかった?」

「いえ特にはありませんでした。」

 

執務室に入って来たのは翔鶴だった

座るように勧め、提督は資料をもって翔鶴の向かい側に座った

 

「それはよかった。実は翔鶴君は明日には大本営に戻る予定だったね?」

「はい。その予定ですが・・・。」

「その件なんだけどもう少しこちら側にいてもらえないかな?」

 

それを聞くと特段驚く様子もなかった

 

「夏の大規模作戦ですか?」

「あれ?知ってたかな?・・・実はうちも出撃することになってね。追々正式な作戦会議をするんだけど、端的に行ってしまえば正規空母がほしい作戦でね。翔鶴君が了承してくれれば一時的に戦力として出撃させてもいいという許可ももらってあるんだ。」

「そういう事でしたら私は構いません。」

 

翔鶴は毅然とした態度で答えた

 

「・・・ところで耳本提督お聞きしたいことがありまして・・・・・・。」

 

そして、少し間を開けると聞きにくそうな顔をしていた

 

「ん?どうぞ。答えられる範囲なら大丈夫だけど。」

「では・・・。提督はカレー洋解放作戦についてご存知ですか?」

「・・・・・・まぁ知ってはいるよ。私がまだ見習い提督として海軍の学校にいたころだったけど。」

 

提督は立ち上がって窓辺に行った

 

「私が知っているのは過去の戦闘記録と同じ事しか知らないがそれがどうかしたのかね?」

「・・・・・・そうですか。わかりました。」

「・・・少し私も質問いいかな?」

 

提督は振り返ると退出しようとした翔鶴を呼び止める

 

「君はもしかしてz・・・」

「てーとく!お迎えに来たでち!!」

 

提督の会話に大声で割り込んできたのは酒瓶担いだゴーヤだった

若干ほほが赤らんでいるところを見るとのすでに出来上がってるらしい

ゴーヤは観艦式会場の沿岸警備に出向いていたのだが、その後別ルートで先に鎮守府に直接戻っていた

うちが作戦に参画することが決定したため、人員が少しでも必要な関係上しばらくはこちらでの勤務となるためである

 

「ごっゴーヤ?!迎えってなんのだ?!」

「宴会場でち!早くいこーよ!」

 

そういってぐいぐいと袖を引っ張っている

 

「ああもうわかったわかった!すまん翔鶴君。さっきのは忘れてくれ。戻って部屋で休んでて頂戴。」

「はい。承知しました。」

 

あっけにとられてる翔鶴を帰るように促した

 

 

 

 

 

ゴーヤの後をついていくと、行きついた先は居酒屋鳳翔だった

中に入ると鳳翔さんがお疲れ様ですと微笑んで奥の方に手を向けた

 

「連れて来たでち!」

 

ふすまを開けると広めの部屋にいたのは親潮、若葉、深雪、望月、山風、榛名、古鷹、阿武隈がいた

共通点はここに残った・・・いわゆる留守番組だ

ちょうど目があった望月は、幸いにもジュースを持っていたので酔っ払いの相手をしなくて済みそうだと一安心した

・・・すでに迎えに来たものが酔っ払いなのだが

 

「やれやれ。いったい何の宴会かいな?」

「提督・・・。」

「ん?古鷹か・・・おつk・・・・・・。」

 

どっこいしょと腰を掛けると近くにいた古鷹が近寄って来た

提督代理を務めてもらったのだからねぎらいの言葉でも・・・

そう思い古鷹の顔を見て絶句した

ほほが赤らんでいる

 

「ていとくー。」

 

そう言いながらこちらにダイブしてきた

見たところキス魔を引いてはいなさそうだ

しかし、酔っ払いの付き合いは確定した

 

「・・・誰だ?飲ませたのは?」

「「「「「「「・・・・・・・。」」」」」」」

 

見事に全員が目を逸らした

こんなことをしても誰も得をしないだろうに・・・

そう思い古鷹を引き離しにかかる

 

「ていとくー・・・。わたしたちにもあのすがたみせてー。」

「あの姿?」

「これだよこーれ。」

 

そう言って望月がスマホを持ってきた

そこには観艦式の待合室の写真がうつっており、送り主は皐月となっていた

 

 

 

それは遡ること一時間ほど前

観艦式から提督たちお出かけ組が返ってくるという事で留守番組はお疲れ様会を兼ねて酒宴を開くことにした

酒に弱い望月とご存知の通り酒癖が悪いことで有名な古鷹はソフトドリンクで、あとはみんなお酒を飲んでいた

その時ふと望月と深雪の会話が火種となった

 

「そういえばみっちゃんの制服みたのって卒業式以来かな?」

「ああ、だな。久しぶりに生で見たかったぜぇ・・・。」

 

深雪が残念そうにお猪口をあおった

まぁ呪い殺されたくはないけどなと笑った

 

「え?制服?」

「うん。ほら。」

 

食いついたのは古鷹だった

望月が古鷹に見せた

皐月のどや顔がうっすらと後ろから見えそうなくらいの文章に添付された画像を

 

「・・・私この姿の提督見たことないです。」

「・・・・・・私もです。」

 

榛名も後ろから見るとしょんぼりした顔をした

他のみんなに見せてみると口々に初めて見たという者ばかり

それもそうだろう

普段提督がしている格好は略式の物

一応制服でもいいのだが、いかんせん堅苦しすぎるので通常時もするものはまずいない

だからこういった特別な時しか見れない一種のレアものでもある

 

そして、見た事が無い者の中でもとりわけショックが大きかったのは古鷹と榛名だった

彼女たちはこの中では1,2の古株

ショックが大きいのも当然だ

 

「・・・!ねぇ?古鷹?みっちゃんのこの姿を生で見て見たくない?」

 

何かを思いついた望月が古鷹に話した

 

(おいおいおい!まさか酒を飲ませる気じゃないだろうな?)

 

望月の行動が読めた深雪はこっそりと耳打ちする

 

「・・・見たいです。」

(そのつもりだよ。考えてごらん?提督にお願いが効きそうな性格になれば成功してみんなハッピー。失敗したら提督にお任せすればこちらは被害なし。ね?)

 

深雪は少し迷ったが、それもそうかと考え望月を止めずに古鷹に酒を飲ませた

 

 

 

 

 

 

そして今に至る

 

「え?なにこれ?」

「だからー。この時の制服が見たいって言ってるの。」

「ええ・・・・・・。あれ堅苦しいからあんまり・・・。」

「やだー!みたいですー!!」

 

古鷹は提督の肩を掴むと泣き気味で少し強めに揺さぶった

 

「だー!わかったわかった!着替えてくるから離してくれ!」

 

どうやら今日の古鷹の酒癖は駄々っ子のようだ

提督はあきらめて古鷹を引き離し、着替えに行った

 

 

 

 

 

 

「はい着替えてきましたよーって・・・ル級とリ級まで追加されてるよ。」

「ああ、提督・・・随分男前ね。」

「かっこいいです!」

 

きっちりと着込んで戻ってくるとル級とリ級が追加されていた

 

「そんなににあってるか?これ?」

「あれよ・・・。馬子にも衣裳だったかしら?」

「ル級様それ確かバカにした意味だったような・・・?」

 

少しひどいことを言われたがまぁ的を射ている・・・

そう思いつつ腰を掛けると古鷹がご機嫌で飛びついてきた

・・・もう幼児退行を半分しているんじゃないかと思いつつ無理に引き離すのをやめ自由にさせることにした

 

 

 

 

 

 

「で?二人はどうしてまた急に来たんだ?」

 

ちょっとした撮影会を終え、提督はル級とリ級に話しかけた

 

「ああ。そうだったわ。提督・・・最近この付近で深海棲艦がうろついているかもしれないわ。」

「というと?」

 

ル級曰く

ここ数日気配がずっとしており、それについての報告書を提出したとのことだった

しかし、先ほど特に強い反応があったため直接耳に入れた方がいいとリ級と相談して探し回った末にここに着いたという

 

「あ!それならひょっとしてあれかなぁ?」

「あれって?」

「実は戻って来た時に空母ヲ級っぽい影を見つけたんでち。慌てて潜航したんだけど特に艦載機を放つわけでもなくただぼーっと突っ立ってたんでち。」

「ええ・・・・・・。見張りの哨戒網はいったいどうしてたんだ・・・?」

「とりあえず魚雷撃って追っ払ったでち!」

 

 

えらいえらいと撫でてやり、とりあえず作戦に支障がなければ・・・と内心不安を残すことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが古鷹は酔っぱらった後の記憶があいまいになるため望月が報酬として写真を保存して送ってくれたのだが、あまりにもべたべたにくっついている物が何枚もあったため真っ赤になってしまったとか

 

そしてその記憶がないことをたいそう悔しがったとか




ちょっとした閑話としてのお話でした
次回からは夏イベの方に入っていきます

秋刀魚祭りで海防艦ドロップ?らしき情報が流れてきましたね
うちは海防艦は4隻とも居るのでそこまで血眼にはならないかなぁと思ってます
(というか春イベの時になぜか択捉がしれっと分身している不思議)
持ってきてくれるのは95式より2式の方がいいなぁと思う今日この頃です(´・ω・`)


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駿河諸島鎮守府の異変 その1

「酸素魚雷発射!」

 

吹雪の号令とともに、古鷹、川内、時雨が魚雷を発射する

そして、20、30秒ほどすると遠くで水柱が上がる

すかさず龍驤が、確認のために偵察機を発艦させる

 

「PT子鬼群殲滅や。しばらくは安全やな。」

 

 

 

 

 

 

 

欧州への派遣艦隊は、リンガへと一回集合し、その後西方へと進む

しかし、リンガ泊地沖にて潜水艦隊を発見

恐らくは通報がなされ、この先々で強力な艦隊があちらこちらで先回りされているのが予見させた

観艦式が終わるまでにはリンガ泊地沖の潜水艦の掃討はあらかた完了し、カレー洋、ステビア海、紅海のスエズを経由し、地中海へと向かう

 

すでにスエズ運河は深海側の手に落ちていることはわかっているため、ほかに警戒をするべきところの一つにリランカ島があった

 

以前の作戦が中途半端に終わっていることが今回の作戦に響いていた

敵の主力連合艦隊がリランカ島へ向けて出港していることが発覚した

幸いにもまだコモリン岬(インド最南端)を越してはいないが、リランカ島に入られては欧州への派遣艦隊が被害を受ける可能性が飛躍的に高くなる

そのためにもこの連合艦隊を叩くことが決定した

 

が、提督に与えられた任務はこの艦隊を叩くことではない

偵察機からもたらされたのはリランカ島の情報もあった

以前作戦を行ったときはいなかった飛行場姫が出現していたのだ

爆撃機に艦隊が襲われては元も子もない

一応、天候や上空の状態から避けるルートは存在するがそのルートは潜水艦がいる可能性が高い海域の通過となる

よって、以前の作戦の完遂もかねてリランカ島への別働の先遣隊を派遣することが決定したのだ

そして、その任務が提督に課されたというのが今回の作戦だ

 

 

 

 

 

 

「おっ!敵の艦隊をを1時の方向に発見やで!吹雪。」

「編成はどのような感じですか?」

「えっとな・・・。重巡1、軽巡2、駆逐3やな。艦載機でパーッとやろうか?」

 

龍驤は甲板を広げ、発艦させたそうにしていた

それを聞いたのか通信が入る

 

『もう少し我慢してくれ。見たところツ級がいるからここも魚雷で処理をしよう。』

「了解や。リランカ島に着いたら派手にやったるで!」

『期待してるよ。』

「司令官!魚雷の発射準備完了しました!」

『了解。照準があったら順次攻撃してかまわないよ。』

 

再び吹雪は号令をかける

 

「いやぁー・・・吹雪がいるとほんとにうちら空母はひまやなぁ?」

「そっそうですね・・・。」

 

龍驤が退屈そうにあくびをして翔鶴に話しかける

それに翔鶴はあっけにとられていたのか、うわの空で遠くの水柱を見ながら返事をした

 

「それにしてもリンガの長門に挨拶してこなくてよかったん?」

「リンガ泊地の担当は紅海方面ですし、忙しいでしょうから仕方ないですよ。」

「そうそう。それにまだ提督の視察の日取りも決まってないから仕方ないよ。」

『鎮守府建屋の建て替えが近々あるから行く日がいつになることやら・・・申し訳ないよ・・・。』

「今日は加古の医療機器の搬入でしたっけ?」

『そそ・・・。ちょうど業務も縮小してるから昨日曳家もやったし、内部の改装も半分は終わったし・・・。あとは鎮守府自体を建てれば完了だわ。』

 

 

川内と古鷹も会話に加わり、のんびりとした雰囲気で進んでいく

 

 

 

 

 

 

しばらくして偵察機を発艦させるポイントに到達し、龍驤が再度甲板を広げる

 

「さぁてお仕事お仕事っとぉ!」

 

龍驤が放った彩雲からは港湾夏姫、飛行場姫、砲台子鬼2、輸送ワ級2の報告がもたらされた

 

『港湾夏姫・・・?』

「せやね。港湾夏姫。なんか問題でもあるん?」

『・・・いや。何でもない。事前の作戦通り半分の魚雷を発射。その後は川内は弾着で砲台子鬼、古鷹は三式弾を装填して飛行場姫を、時雨、龍驤、翔鶴は港湾設備及び中核の港湾夏姫を叩け。吹雪は旗艦として対空に専念。各員の無事を祈る。』

「「「「「「了解!」」」」」」

 

「・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督!夜戦は?!やーせーんー!!」

『いやぁ・・・。まさかこんなにストレートで終わるとは思わなかったからなぁ・・・。』

 

川内からの抗議の通信が入った

それもそうだろう

魚雷はワ級をとらえあっという間に海の底へ

飛行場姫と港湾夏姫が飛ばした航空機は飛ばす前に滑走路を破壊した

実は偵察のポイントを一段階早くしていた関係で相手は気づかず、制空権争いはこちら側の一方的なワンサイドゲームとなったのだ

制空権を失った港湾や飛行場はもはやただの的でしかない

 

そして、夜戦を視野に入れて期待してた川内は猛抗議をしているというわけだ

 

 

 

 

 

『いやまさかここまでうまくいくとは思わんくて・・・。なんか埋め合わせするから勘弁して頂戴な・・・。』

「むー・・・・・・。」センダイチョイトエエカ?

 

戦闘が少ないうえ、演習でも夜戦をすることが少ないうちの数少ない夜戦のチャンスがつぶれたのだ

むくれるのもわかるため、ある程度の要求は目をつぶろうそう内心思った

 

「チョイとええか?」

『ん?龍驤か。なんかあった?』

「ちょっと気になることあってな?通信をうちとだけにしてもええ?」

『ん。了解。ちょっとみんな龍驤と単独通信するぞ。』

 

断りを入れ、通信機のスイッチを切り替える

 

「ありがとさん。で、や。このリランカ島何かちょっとおかしいで。」

『・・・。おかしいとは?』

「妙にうっそうとしてるというかなぁ・・・。何か隠してる・・・カムフラージュされた感じがあちらこちらにあるんや。」

『なるほど?ということは・・・・・・。』

「少しの間うちが残って調査してみたいんや。ダメか?」

 

提督は返事に悩んだ

これを上申したところで、早急な調査が行われるとは限らない

ましてや大規模作戦中だ

恐らくは作戦終了後になるだろう

リランカ島周辺は海軍の手が現状ぎりぎり伸びる限界点

これを機に調査をしておきたいところだ

が、独断の行動になり後でいちゃもんをつけられる可能性がぐんと上がる

 

しかし、提督を一番悩ませていた理由は何よりも

 

『1人でやるのか?』

「一応制圧済みやし、深海棲艦独特の悪意の気配はないからなぁ。」

『・・・1人くらい誰か護衛でも。』

 

提督は心配そうな声を出した

制海権を完全に握ってない場所での単独行動をさせたくはない

 

「あーいらんいらん!つけるったって誰をつける気や?」

『時雨あたりが適任かなぁって。』

「せや!その時雨なんやけどなんや・・・寝つきが悪かったみたいでな?ちょい寝不足やったで?」

『あらま・・・!通信の時は気づかなかったなぁ・・・。ええ・・・。じゃあ。』

「せやからうち1人でやる言うとるんやって。1人の方が何かと小回りも効くしな。」

 

提督は別の候補や手立てを考えようとした時、もっともなことを言われてしまった

確かに、1人の方がいい場合もある

そのうえ、調査を複数人で行った場合、固まった時に上空からの偵察で見つかる恐れもある

 

『いやでも・・・・・・。』

「じゃあ何かあった時のためにリンガの提督にでも頼んでおいてくれへんか?せっかくの調査のチャンス・・・・・・大本営は恐らくやけど見逃すと思うで?」

 

それを言われしばらく悩んだが、結局了承した

 

『いいか?絶対無理はするんじゃないぞ?護身の拳銃は持ったな?糧食は吹雪ちゃんから受け取るんだぞ?』

「はいはい。おかんかいな・・・。ん?なんや?・・・・・・。なるほどな。ちょいと翔鶴に代わるで。」

『はいな。』

 

何かを話しているようだが、小さくて聞こえなかった

 

「耳本提督。少しよろしいでしょうか?」

『何か要望でもあるのかい?』

「いえ。先ほどの会話の様子から龍驤さんがここから別行動になるのでしょうか?」

『そうだねぇ。』

 

具体的なことをは伏せ、やんわりとした言葉で濁した

翔鶴もそうですかと返事をしただけなので、察してくれたのだろう

 

「実は先ほどリンガ泊地の方に基地航空隊の掩護機を回していただけるか打診をして了解を得たのです。ですのでこれから掩護機が到着次第帰路につきます。」

『そっかそっか。了解です。こちらからもリンガ泊地の方に通信を・・・。』

「!いえ!リンガ泊地の司令官が前線指揮のために泊地を出発すると申しておりましたので・・・。」

『あ、そうか・・・。うちが攻略完了したから本隊も出発したのか・・・。了解したよ。吹雪ちゃんにちゃんと話を通してね。』

「了解です。では失礼します。」

 

 

 

「吹雪さん。」

「あ、翔鶴さん。何かありましたか?」

「実は・・・。」

 

翔鶴は吹雪に事情を告げた

 

「本当ですか!長門さんが便宜を図ってくれたのかな・・・?とにかく了解しました!」

 

 

 

少しして、東の空に遠く黒い点がいくつか見えた

 

「あ、あれ・・・ですかね?」

「多分そうでしょう。さぁ吹雪さん。行きましょうか。」

「え?でもまだ通信できる範囲じゃ・・・。」

 

吹雪としては通信し、どのような航路を通るかを確認したいのだろう

 

「それは海上でもできますし、提督さんもお待ちでしょうから急ぎましょう?」

「えっあー・・・。はい・・・。」

 

翔鶴に押し切られる形で急ぎ、号令をかけて出港した

 

「ほな!気ぃ付けてなぁ!」

「龍驤さんも何かあったらすぐに連絡くださいねぇ!」

 

吹雪を中心として、先頭を古鷹、左を時雨、右を川内、後ろに翔鶴という輪陣形で龍驤をリランカ島に残し、出発した

 

 

 

 

 

「えっ?!」

 

異変に気が付いたのは出港して1時間した時だった

そろそろ合流できると思ったとき、航空隊の様子が変なことに先頭の古鷹が気が付いた

 

「あれ・・・は・・・・・・友軍機じゃない!!」

「えっ?!」

 

吹雪はレーダーで確認する

映っていたのは深海棲艦の機体およそ200

 

「そんな!リンガからの基地航空隊じゃないのかい?!」

「翔鶴さん!至急直掩機を・・・翔鶴さん?!!」

「あっ!はい!了解しました!」

 

翔鶴の進言で、基地航空隊が間もなく到着するので直掩機も不要と言われ発艦指示を取り下げたことを吹雪は悔やんだ

翔鶴もショックを受けているのか反応が鈍い

 

「とにかく対空戦闘準備を!古鷹さんは三式弾の再装填、時雨ちゃんはWGを全部発射しちゃって!」

「「了解!」」

 

 

 

 

まもなく空襲戦が始まった

敵は爆撃機に艦攻、艦爆と様々な種類が織り交ざった編隊だった

爆撃、魚雷、爆撃の嵐

それでも一番致命的になる魚雷を持った攻撃機だけは何とかはじいていた

 

 

 

 

「吹雪!一回提督に!報告できる?!」

「無理です!すみません!対空砲火に手いっぱい!です!」

 

それぞれの被害報告を聞きながら対空砲火しながら返事をした

かろうじて全員至近弾で凌いでいた

しかし、このままではジリ貧もいいところ

レーダーには入れ替わりの編隊が映っていた

 

 

 

 

「とにかくリンガからの応援を待ちましょう!」

「了解だよ!ってうわ!翔鶴さん!艦攻を何で発艦させてるの?!」

「えっ!あ!すみません!一応この子も対空戦ができるのでつい・・・。」

 

 

 

 

時雨の近くに落ちたのは翔鶴から発艦した艦載機の落とした陸上攻撃用の爆弾だった

その後も、翔鶴から発艦した艦攻が捨てた爆弾が味方に振り続けた

翔鶴曰く緊急の発艦だったため降ろすのを忘れていたと言った

降ろす手順を行えば発艦作業に遅れが出るし、発艦直後に投下するとバランスを崩してしまうとのことだった

 

 

 

 

 

 

 

ちらりと吹雪は対空砲火の合間に懐中時計を見た

対空戦闘を始めてから早15分

基地航空隊が一向に来る気配がない

周りを見渡せばすでに川内と古鷹は小破レベル

時雨に至っては中破寸前だった

 

「時雨ちゃん大丈夫!?」

 

様子がおかしいことに気が付いた吹雪が時雨を鼓舞した

 

「ごめんね。ちょっと疲れが来てるみたいで・・・!くっ!」

 

対空砲火の正確さが若干欠いている

吹雪もそれをフォローするように担当する空域を多くとるようにした

 

しかし、それは同時に吹雪の処理能力の限界を超え始めた

同時並行で僚艦への指示及び損害状況の把握、対空砲火、無線の確認、魚雷と空爆の回避・・・・・・

 

 

 

 

 

「っ・・・!」(こんな時に眠気が・・・!)

 

時雨がふらついた時だった

力なく高角砲を構えた時、左の視界の端にある物が映った

見れば敵の艦攻が真横まで接近しており、ちょうど魚雷を投下したところがスローモーションで見えた

 

「っ!残念だったね!」

 

船速を一気に最大まで入れ何とか回避を行った

そして、魚雷が自身の後ろを過ぎていくのを確認すると安堵した

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!まずい!」

 

安堵したのもつかの間

時雨はあることを忘れていた

 

「吹雪!危ない!!」

「えっ!?」




ここから少しだけスピードアップして夏イベを駆け抜けていきます(=゚ω゚)ノ

秋刀魚イベントで海防艦ドロップかぁ・・・
別にそこまで血眼になって狙う必要ないなぁ

そう思ってましたが海防艦を使った新しい近代化改修が来るという事でちょっと・・・かなり気になってる今日この頃です
対潜値上昇ならうれしいなぁ・・・


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駿河諸島鎮守府の異変 その2

提督は頭を抱えていた

目の前にいる人物に対してだ

 

「・・・・・・どうしてこうなった。」

 

思わず提督の口からこぼれたのは弱弱しい一言だった

 

「その・・・なんかすまない。」

「ああいや・・・。うん・・・・・・。ちょっと・・・ちょっと待って頂戴な。」

 

申し訳なさそうにする相手に提督は片手で、こめかみを抑えながら片手で待ったをかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいるのはほかでもない深海棲艦だ

 

それも戦艦ル級でも重巡リ級でもない

 

空母ヲ級だ

 

 

吹雪との帰還の行程に関する通信を終えた時だった

近海の哨戒に出ていたゴーヤが報告のために執務室へとやって来た

 

「てーとく!阿武隈のかわりの潮流の調査と哨戒終わりました!」

「ん・・・。おお、お疲れ様。何か哨戒の時に異常はあったかい?」

 

ぼんやりと考え事をしながらいつもの決裁をいったん止め、ゴーヤからの報告書に目を通す

 

 

「特にはなかったでち。ただ、提督に会いたいという子がいたから連れてきたでち。」

「そうかそうか。じゃあさっそく呼んできて頂戴な。」

「了解でち!はいっていいでちよ!」

 

頭をなでてやると嬉しそうにした

そして、ドアの向こうにいる人物に話しかけた

 

「失礼する。」

 

 

 

ヲ級が入って来た時、最初は提督も慌てた

しかし、武装をして居ないことに気づいた

 

ゴーヤを発見した時、装備していたのは偵察機のみ

しかも、ゴーヤを見つけると真っ先に両手を上げて降参の姿勢だったという

さらには拿捕されて、陸上に上がった直後すぐに頭部の艤装をはずし通信などを行っていないことをアピールする徹底ぶり

 

流石のゴーヤも一人で判断しかね、加古に相談

加古が最初の尋問を行ったわけだが、ヲ級はすべての質問に淡々と答えた

そして、目的に関して問うと親書を渡しに来たという

 

 

 

差出人は港湾棲姫

今まさしく出撃しているリランカ島を占拠していたはずの深海棲艦からのものだった

 

 

 

ル級やリ級の前例もある

加古は嫌戦派かどうかの確認をすると、返事は

 

「あいつらみたいだが・・・・・・そうだな。私はその部類に入るな。」

 

念のためにもゴーヤの監視付きという事で提督への謁見を加古が許可をしたという事だ

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、今リランカ島を不法に占拠している港湾夏姫を追っ払ってほしい。そして、できれば私、もしくは自分が信頼できる艦娘を一人派遣してほしいと・・・・・・。そういうわけだな。」

 

落ち着いてきたのか、やっと深いため息と共に親書の内容の確認をする

 

「そうだ。時々こういった勢力が出張ってきては追っ払っているのだが・・・・・・。今回は失敗してしまってな。」

 

提督は迷った

今は作戦の遂行中

いくら嫌戦派とは言え作戦の全容を話すわけにはいかない

上手くぼかして伝えるべきか・・・・・・はてさてどうしたものか

そう悩んでいるとき、ヲ級が先に口を開いた

 

「その・・・。どうも作戦の展開中に来てしまったみたいですまない。この通り、通信機器の類はないし、作戦期間中は身柄の拘束をしてもらってもかまわない。この通りここに来るまでに艦隊の移動とかも少しとは言え見てしまっているのだ・・・・・・。」

「!」

 

これは揺さぶりだろうか・・・

はたまた・・・

そうヲ級の顔を見ると嘘を言っている雰囲気ではない

信頼してもよさそうだ

 

「・・・・・・。実のところ言うとうちの艦隊はちょうどそのリランカ島をたった今攻め落としたところでな?目的の半分は達成してしまっているんだ。」

「なんと!それは本当か?!」

 

思わずヲ級が立ち上がった

 

「早速姫様に・・・ってしまった忘れてた・・・。」

 

喜びの表情を出したのち、頭に思わず手をやったところを見るといつもの癖が出てしまったらしい

 

「とりあえず一回頭の艤装をつけて報告はしてきていいよ。」

 

思わずそのしぐさに笑いを抑えながら落ち着くように勧めた

うちにいるル級やリ級みたいに人間臭いと思った

 

「ああその・・・。実はここに来る途中に疑われてはいけないと思ってな・・・。通信部を壊してきているんだ。」

「・・・・・・。本当に徹底しているんだね。」

 

なんとも義理堅いなぁと思いつつこれからどうしようかと考えた時、通信機の方からピーピーと着信が入っていることを告げる音が鳴った

 

「ちょっと失礼・・・。はい、耳本です。・・・ああ!これはこれは・・・・・・。え・・・?なんですって・・・?え?!じゃあ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通信機は?!」

「ダメです!先ほどの空襲で破損してます!」

「こっちもか・・・!」

 

川内と古鷹が、爆音の中大声で確認をする

川内は舌打ちをしながら妖精に通信機の修理を急ぐように言った

 

現在は空襲の波が引いており、深海棲艦機からの爆撃はさほどひどくはない

 

「川内さんすみません・・・。」

「悪いのは僕だ・・・。吹雪に負担をかけて、魚雷が行った報告も忘れた・・・。」

「今はそういうのはいいから。翔鶴さんの通信機もダメ?」

「すみません。私もちょっと・・・・・。」

「くっ・・・・・・・。」

 

 

 

 

吹雪は魚雷を真横からまともに食らって大破していた

大破すると、艤装は1~2時間は障壁を展開し続ける

しかし、その時間を超えると障壁は失われ、浮上航行最優先となる

 

障壁とは艦娘が受けるダメージを軽減し、大半を服へと受け流すシステムのことだ

また、艤装装着状態ではどのような怪我も服へと流れるが艤装をすべて取り外してしまうと普通の人と変わりなくなってしまう

 

つまりは障壁がない状態だと服へと流れるダメージはすべて肉体へと流れ・・・・・・

 

 

 

 

(被弾してからすでに1時間半が経過している・・・。障壁はいつ切れてもおかしくない・・・・・・。)

 

吹雪の頭にはある考えがよぎっていた

幸い今は空襲が酷くはない、自分以外はまだギリギリ小破止まり

全速力で抜ければ、リンガ泊地の防空圏まで大破まではせずに逃げ切れるだろう

 

 

 

 

 

 

 

「陣形を変更します。先頭を川内さん、続いて翔鶴さん、時雨ちゃん、古鷹さん、私の単縦陣で行きましょう。」

「吹雪?!」

「囮になるつもり?!」

「だったら僕が!」

 

口々に反対の声が上がる

それもそうだろう

 

「落ち着いてください。今はとにかく逃げ切ることを考えた方が得策です。このままでは全員がいずれは大破。撃沈されてしまいます。」

「だったら吹雪ちゃんが先頭に・・・。」

「大破している私の全速ではリンガ泊地の防空圏に到達する前に完全に補足されます。」

 

古鷹の反論に淡々と吹雪は答える

 

「だったら僕が囮に・・・!」

「この中で一番誰が沈みやすいか・・・時雨ちゃんならわかるでしょ?」

 

それを言うと時雨は何も言えなくなってしまった

 

「早く陣形の変更をしましょう。旗艦の指示でしょう?」

 

翔鶴の一言を聞いた瞬間3人は驚いた

そして、怒りのこもった目でにらむ

 

「空襲が近づいているんです。あと10分で先ほどと同規模の空襲が始まります。」

 

それを聞いた吹雪は3人に真剣なまなざしを向けた

 

「現状今は一人でも多く生きて帰ることが重要なんです。わかってください。」

 

そう言いながら胸元につけた旗艦のバッチを外した

そして、陣形変更をしようとする川内に話しかけた

 

「川内さん。これを。」

「・・・。一つだけ聞くよ?吹雪は最初から囮になるつもり?」

「・・・・・・。いいえ?ぎりぎりまであがくつもりです。」

 

それを聞くと川内は笑って旗艦のバッジを受け取った

 

 

 

 

そして、そのまま吹雪の胸元につけ返した

 

「川内さん!」

「最初から囮になるつもりがないなら受け取れないよ。さ!逃げよ!」

 

川内は戦闘に行くために船速を上げて行ってしまった

吹雪はため息をついた

しかし、それはうれしくもあった

囮になるといっていたらそんなことは認めないといって結局受け取らなかっただろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱり・・・。出力が上がらない。)

 

 

あがくとは言ったものの、実際にはこの有様だった

 

徐々にではあるが、引き離されていく

しかし、誰も後ろを振り向かない

これは吹雪からの指示だった

自分が遅れていることに気が付くと無意識に船足を緩めてしまうだろうという考えだった

 

 

 

吹雪と最後尾の古鷹の間が、一艦隊分の距離になったころだった

 

ついに耳に深海棲艦機の音が聞こえるようになった

之字運動を近距離無線で指示し、吹雪は対空砲火のために振り向いた

最接近していた編隊は蜘蛛の子を散らすようにいなくなった

が、次の編隊はすぐそこ

必死の形相で対空砲火を続ける

 

 

 

しかし、多勢に無勢

先ほどまでいた翔鶴の直掩機も引き上げた

 

徐々に、戦闘空域と吹雪の距離は縮まっていく

そして、ついに吹雪の直上まで戦闘空域が到達した

 

 

 

(・・・!)

 

 

 

それと同時だった

 

 

 

大破から2時間10分

通常よりはるかに長く持ってくれていたついに障壁が切れた

 

同時に、今度は後ろから艦攻が横並びで10機投下の体勢に入っている

これでは左右どちらに避けても魚雷が当たる

 

 

 

 

 

(司令官・・・・・・。すみません。おやすみなさい・・・・・・。)




早めの更新が続いております(=゚ω゚)ノ
次のお話も早めの更新ができるとは思いますので・・・

先日四式ソナーに修正が入ると聞き、対潜値が強化されるものだと思い込みまいあがってましたが・・・

「装甲+1」

・・・orz

一番いらないものが・・・
せめて回避か索敵だったらまだしも・・・とガックリしておりました
海外ソナーを秋イベの報酬でもらえると嬉しいなぁと・・・
+15じゃなくても+13でもありがたい・・・


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駿河諸島鎮守府の異変 その3

「師匠!」

 

 

 

 

 

聞きなれた声と同時に、吹雪に接近していた艦攻10機すべてが吹き飛んだ

 

それと同時に、吹雪自身の体が宙に浮くのがわかった

 

 

 

 

「師匠!ああ!申し訳ありません!こちらの不手際で・・・!」

「長門さん・・・!」

 

 

衝撃に備え、防御姿勢を取っていた吹雪は聞きなれた声に顔を上げる

そこにいたのは吹雪を抱きかかえる長門の姿だった

 

 

『吹雪ちゃん!長門君!吹雪ちゃんは無事?!』

「はい!耳本提督。大破してはいますが無事です!」

『よ・・・よかったぁ・・・・・・。吹雪ちゃんに代わってくれるかい・・・?』

「はい!承知しました!」

 

何が起こっているのかわからない吹雪をよそに、長門と提督は通信をつづけた

上空を見れば、敵の編隊は散り散りになっておりドックファイトをしていた

基地航空隊がどうやら到着したみたいだ

吹雪が上を見ている間に、長門が無線機をはずすと吹雪に渡した

 

 

 

「あの・・・。代わりました・・・・・・。」

『吹雪ちゃん!よかった・・・・・・。本当によかった・・・・・・。』

 

 

 

通信機から漏れてきたのは普段の飄々とした雰囲気ではなく、本当に緊迫した様子の声だった

 

「何で長門さんがここに・・・?」

『ああ・・・。30分くらい前にリンガ泊地の提督から通信があって、リランカ島の攻略作戦成功のお祝いだったんだ。その時に、今から出発するっていう話だったんだ。』

「えっ・・・?でも翔鶴さんの話だと・・・。」

『そう。何が行き違ったのかわからないけど基地航空隊の掩護も出してないって話だったから大急ぎで出してもらったんだ・・・。長門君なんて41cm砲と三式弾、あとは全部タービンと高圧缶をひっつかんで単艦抜錨してくれたんだ。』

「ええ?!」

 

見れば、普段積んでいるはずの41cm3連装砲が少ない

 

「危ないじゃないですか?!これじゃ戦艦にあった時に・・・!」

「すみません!でも心配で心配で!」

 

思わず吹雪が大声を出すと、長門は申し訳なさそうに謝った

しかし、謝罪の言葉を述べる長門の目の端に光が見えた時、自分がそれをとがめる資格がないことを改めて思い出した

 

「・・・でも、ありがとうございます。」

「さぁ・・・。帰りましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪は長門にかかえられたままリンガ泊地へと入港した

 

「「「吹雪(ちゃん)!!!」」」

 

港に着くと先に着いていた川内、時雨、古鷹に降ろされた瞬間一斉に抱き着かれた

川内と時雨は中破していたが、古鷹、翔鶴は小破以上のダメージを受けずに済んだようだ

 

「よかった・・・・・・。本当によかった・・・・・・。」

「全くもう!心配させて!」

「・・・・・・。」

「すみません。心配をかけてしまって。」

 

3人とも涙を流して喜んだ

時雨に至っては何も言えず、ずっと吹雪の服を握りしめていた

吹雪は照れくさそうに謝罪の言葉を口にした

 

 

 

 

10分ほどして、何とか落ち着きを取り戻したところで無線が入った

 

『3人とも・・・帰着の方法を考えてくれないかな・・・・・?』

 

申し訳なさそうな声のトーンで、感動しているところ悪いんだけどと言った

 

「司令官!すみません!」

「帰着って言っても当初の予定通り二式大艇で行くんじゃないの?」

 

駿河諸島からリンガまでは直線距離で約5000㎞

艦娘達の船足ではとてもじゃないが時間がかかりすぎる

そのため、今回のような遠距離には二式大艇や一式陸攻などで移動する

 

『それが、今回は将官が多く移動する関係で時刻表がすごいシビアなんだ。』

 

それを聞いた吹雪が懐中時計を取り出して時間を見る

・・・が、ガラスは割れており、針も止まっている

川内に時間を聞き、納得した

 

作戦完遂から時間が立ちすぎてしまい、当初乗る予定だった便がすでに出てしまっていたのだ

 

『リンガ泊地の提督にドックを貸してもらえないかの打診も行ったんだが・・・。前線の関係上使うのは厳しいらしくてなぁ・・・・・・。』

 

当然のことながら、前線になればドックはフル回転となる

ドックも常に入れる状態ではなくなるため、優先順位が設けられる

そうなれば必然的に、帰るだけの吹雪達は一番低いものとなってしまう

さらに、ここに滞在するというのもできない

前線に出撃する艦娘や将校がこれからどんどんと来るため滞在する場所がない

 

 

 

「駿河諸島への直行便がなければ経由はどうでしょうか?」

 

古鷹が提案をするが提督の返事は芳しくない

 

『それが、本土からうちを経由して南方に行くやつらが多くてな・・・・・・。輸送船団の発着場になってるんだ。恐らく大本営からうちへの航空便は満杯だ。』

「・・・!八丈島は?八丈島ならすくないでしょ?」

 

時雨が思いついたように言う

輸送船団が寄るのは駿河諸島で、八丈島には寄らないので空きがあると考えたのだ

 

 

『確かに八丈島ならいけるかもしれない・・・。だが、吹雪は大破してるし、八丈島は今提督が不在だからドックも借りれないぞ?』

「僕が曳航していくよ!」

 

真っ先に手を挙げたのは時雨だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」ウロウロ

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」ソワソワ

「・・・・・・落ち着きなって。」

 

時刻はマルハチマルマル

提督と加古は鎮守府正面の埠頭で帰りを待っていた

 

 

 

 

が、提督はせわしなく埠頭にあるビットの間をせわしなく行き来したり、止まったと思えばソワソワとして落ち着かない

普段の飄々さはどこにもない

加古も心配で落ち着かないが提督の様子を見るとそれどころではない

いまだに青い顔をしている提督に加古は心配になっていた

そして、余りの落ち着かなさに加古が、我慢できずに袖口を引っ張って無理やり止めた

 

「あたしも心配だけどさぁ・・・。落ち着こうよ・・・・・・。」

 

そうこうしていると、鎮守府の方からぞろぞろと出てきた

 

「・・・いくらなんでも5時から待ってるとは思わなかったけどね。」

「・・・・・・。」(ほんとは4時から居たけどね・・・・・・。)

 

 

実のことを言えばさらに悪態をつかれかねないため、心の中でつぶやいた

下手をすれば他の人からも怒られかねない

 

 

 

「あっ!あれじゃないですか?!」

 

目を凝らしていた榛名が声を上げる

一つの黒い点が水平線上に見えた

やがて、三つに増え、輪陣形であることがわかった

 

 

 

 

川内、古鷹、翔鶴が先に上陸し、提督に敬礼した

周りの者たちは拍手を送っている

 

「ご苦労様。翔鶴君と古鷹は先に入渠してきて。川内は吹雪の引き上げ手伝ってもらえる?・・・それと翔鶴君にはあとで少し聞きたいがあるからそのつもりで。」

「「はい!」」

「・・・・・・。はい。」

 

 

 

そう言って、提督は艤装を外して妖精さんに預けた川内を連れて、引き揚げ現場に近寄った

 

 

 

 

「司令官・・・。」

「吹雪。お疲れ様。」

「はい!司令官!」

 

敬礼を交わし、提督はようやく安堵の表情を浮かべた

そのさなか、妖精さんたちがやっとやっとで艤装をパージすると、疲労からか吹雪は前のめりになり提督に倒れこむ

 

「おっとっと・・・・・・。」

「すっすみません!」

 

提督が吹雪を支えた時、あることに気が付き目が泳いだ

そして、自身の上着をかけた

顔が赤くなっているところを見ればお察しだろう

それを見た妖精さんがいたずらっぽく笑い、時雨の艤装を強めに外した

が、時雨はふらつかなかった

 

「時雨もお疲れ様。その・・・。川内もだが・・・な?ちょっと今物がないんで・・・・・・。」

 

しどろもどろになりながら、入渠場へ行くように勧める

3人は顔を見合わせクスリと笑った

そして、吹雪に肩を貸しながら川内と時雨が吹雪を挟んで入渠場へとゆっくり向かい始めた

 

 

 

「・・・・・・。」スッ

 

 

提督がその様子を見て安心し、鎮守府に戻ろうと振り向いた時だった

 

 

 

 

 

「!危ない!!!」

「「「えっ?」」」

 

破裂音が港にこだました




ハイペース更新中です
まだまだ続きます(´・ω・`)



海防艦の改修が・・・!
まさか4n艦救済策になるとは思わなかったです・・・!

第一目標が複数の海防艦確保にシフトしました
これで気兼ねなく吹雪をラスダンに連れて行けるようになる・・・・・・!
とりあえず組み合わせ次第みたいなのでそれの情報待ちです


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駿河諸島鎮守府の裏切りと連行 その1

提督の叫び声に吹雪が振り向いた時、右ほほを熱いものが通り過ぎた

見れば翔鶴が拳銃を構え、引きつったような笑みをこちらに浮かべていた

そして、提督はこちらに背を向けて倒れこんでいた

 

 

「しれい・・・・・・かん・・・?」

 

 

周りの者たちはみな何が起こっているのかわからなかった

誰もが頭が真っ白になっており、どうしたらいいのかがわからなくなっていた

その沈黙を破ったのは翔鶴だった

 

「あはは・・・・・・ははは!やったわ!瑞鶴!やったわ!」

「きさまぁ!」

 

「司令官!」

 

翔鶴の高笑いと普段の優しい古鷹が激高した声でみんなが我に返り司令官に駆け寄る

翔鶴は特に抵抗する様子もなくすぐに古鷹に取り押さえられた

が、提督の方は先ほどからピクリとも動く様子がない

 

 

「司令官!司令官!!」

 

 

提督に真っ先に着いたのは吹雪だった

必死で揺さぶりながら声をかけるが返事はない

 

「吹雪!どいて!」

 

加古が半狂乱になっている吹雪を制し、提督を診始めた

 

(出血はそこそこで赤黒い・・・。被弾部は腹部と・・・・・・!)

 

慌てて加古が提督の背中を見る

 

「ストレッチャー持ってきて!すぐに手術だ!」

「はい!もってきたよぉ!」

「そぉら!急げ急げ!」

 

深雪と望月がすでに持ってきており、提督は運ばれていった

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

手術中の赤色灯が点灯し始めてからすでにどれぐらいが経過したかわからない

吹雪と川内、時雨はずっと待っていた

吹雪と時雨はソファーに座ってこうべを垂れ、川内は立ったまま扉を見つめていた

他の者たちが心配して一度休むように勧めたが、誰も反応しなかった

 

「!」

「「!」」

 

赤色灯が消灯し、扉を開けて加古が出てきた

 

「「「加古!(さん!)」」」

「・・・ちょっと着替えてくる。執務室に集合かけるから先に行って・・・・・・。」

 

 

 

3人が執務室に行くと執務室には犯人の翔鶴含め主要なメンバー全員が集まっていた

翔鶴は後ろ手に縛られ、正座をさせられていた

 

「さて・・・・・・。提督なんだけど何とか一命はとりとめたよ。」

 

その一言に執務室の空気は少し和らいだ

 

「幸いにも傷ついたのは静脈で、一発は貫通、もう一発は肝臓付近で止まっていたけど奇跡的に大きな傷はつけてなかったから銃弾を取り出して縫合したよ。」

 

その言葉を聞くと3人は糸が切れたかのように崩れた

 

「数日は感染症とかを気にしなきゃならないけどそれさえ過ぎれば大丈夫。」

「・・・・・・チッ!」

「後は・・・。そいつの動機について聞かないとね。」

 

翔鶴の舌打ちに全員が手を握りしめたり、睨んだりした

 

「人の妹を死に追いやっておいて・・・。」

「どういうこと・・・?」

 

山風が強めの口調で問いただす

 

「誰も知らないなら教えてあげるわ!あの男が私の妹の瑞鶴と大沢元帥を叩き落としたことをね!」

 

語気荒く語り始めた

 

 

 

 

 

 

 

カレー洋解放作戦

大本営が公式に出している戦果報告書は実は裏があり、あることを隠蔽していた

それは、見習い提督が参加している事だった

 

特別科の中でも作戦立案や指揮に秀でたものを作戦指揮の場所に同行させ場の空気に触れてもらおうという機会を設けてあった

 

当然全員が全員呼ばれるわけではなく、その年の上位の者たちしか許されない

耳本、深打、夏木がこの時は同行が許可されていた

 

作戦は志垣中将、桐月中将の主導の元、恙無く進行した

夜間空襲戦法など当時最高と名高い作戦立案と指揮を行い無傷で港湾棲姫へと向かった

 

が、港湾棲姫に大打撃を与えたその復路

偵察機が輸送船団を発見する

これを撃滅するべきかどうかで、耳本が強硬に叩くことを主張

志垣、桐月両名は反対したが、耳本は止まらなかった

勝手に打電を行い、空母2隻を輸送船団へと差し向け、艦隊を分断した

その結果、艦隊の直掩機がいなくなったところを襲撃されてしまい艦隊は全滅の危機に瀕した

やむ負えず、唯一無傷だった瑞鶴が囮を引き受け艦隊は撤退

 

作戦を乱した耳本の処罰などに追われ、瑞鶴の捜索隊が組まれることはなく行方不明を事実上撃沈という判断になった

また、将来性を重んじこの事実は隠蔽され耳本は特別科から普通科へと転出という処罰が下される

 

教官を務めていた大沢大将は教育関係の責任を裏で問われ、元帥に昇格という形で隠居させられることになり、ケッコンしていた瑞鶴と海軍の地位をすべて失うことになった

さらには、もう一人のケッコン艦とも別れることになった

 

 

 

 

 

 

 

「これがあの男の真実よ。自分の名前を残したいがために・・・目先の欲に突っ走った結果が瑞鶴の戦死よ・・・・・・。あんな男ああなって当然よ!」

 

翔鶴の目は血走り、精神的に不安定なのがわかる

 

「だから・・・あの男には同じ苦しみを味わってほしかった!瑞鶴と私、そして大沢提督との3人の平和な時間を奪った苦しみを・・・!」

「・・・途中から変だったのは私たちの誰かを沈めるためだったのね?」

 

川内が静かに言った

 

「ええそうよ!リンガニ応援を要請したトいってウそをつイたのも!直掩機の中に艦攻を混ぜて爆弾を投下したのモ!・・・ソして深海棲艦機をこチらに向カワセタノも。」

 

翔鶴は立ち上がった

が、その姿は空母翔鶴ではなかった

 

 

 

 

「アノオトコニフクシュウスルコトヲカンガエテイタライツノマニカコノスガタニナレルヨウニナッテイタワ。」

 

「!」

 

 

 

 

その場にいた全員が思わず距離を取る

翔鶴の姿は変わっていた

 

血走った眼は赤く光り、肌は白く変色していた

来ている物も黒色に変化したその姿はまるで空母水鬼のようだった

 

だが、暴れるわけではなく言葉をつづけた

 

「シトメソコナッタイマ・・・ワタシニノコサレタノハシンカイセイカンキヲヨビヨセルコトクライ・・・。」

「・・・・・・!鳳翔さんに基地航空隊の管制を!損傷がまだ治ってないもの以外は全員対空兵装!榛名はホテル側の避難誘導を!」

「アハハハハ!マニアイマスカネ?」

 

意図に気づいた川内が大急ぎで指示を出す

内線で連絡に行く者や艤装を取りに行く者と慌てて散っていった

 

「・・・・・司令官!」

 

吹雪は執務室を飛び出し、司令官が寝ている病室へと向かった

動けない提督を避難させるためだ

 

 

 

 

「司令・・・か・・・ん?」

 

扉を開けるとそこには誰もいなかった

おそらく提督が寝ていたであろうベットにはだれも居なかった

が、ベットを触ると温いことから先ほどまではここにいたことがわかる

トイレかと思い行ってみるが、誰もいない

そもそも、手術をしたばかりで歩き回れるはずがないのだ

 

「ドコニイッタカキニナルノ?」

「!司令官をどうしたんですか!!」

 

きょろきょろと探し回る吹雪に後ろ手に縛られた翔鶴が現れた

それに対し、食って掛かるように言うと不敵に笑った

西日が翔鶴の顔に影を落とし、より一層不気味に映った

 

「アノオトコハグンレイブニレンコウサレタノデショウ。コンカイノサクセンノシッパイヲトワレテネ。」

「失敗?!どういうことですか!」

「ワレワレノコウリャクブタイガテッシュウスルサイ、アノヒトノシジデモウヒトツベツノクウバクブタイヲサシムケタノヨ。クウバクハセイコウ。」

「それって・・・・・・!」

「サクセンノコンカンニヒビキハシナイケド、グンポウカイギニカケルニハジュウブンナケンギ。サッキハナシタゼンカヲフクメテアシタニハジュウサツデショウネ。」

 

それを聞いた吹雪は銃殺とつぶやくと膝から崩れ落ちた

その様子を見て翔鶴はさらに嬉しそうに笑った

 

「アハハ!イイワァ!ソノカオ!アトハアナタタチガイキノコレバジュウブン。ワタシハシヲマツノミヨ。・・・シガキニシタガッテヨカッタワ。」

 

高笑いしながら吹雪に背を向けて病室を出て行った

それと同時に地鳴りがする

甲高い音からするに空爆が始まったのだろう

 

 

「司令官・・・・・・。」

 

 

吹雪はふらふらと立ち上がり、提督が寝ていたであろうベットに体を横たえた

 

 

もうどうでもいい

司令官は助からない

 

 

 

そういう気持ちがわいていた

同時に、体が鉛のように重くなる

思えばまだ入渠していなかった

 

そんなことを思い出しても入渠場に行く気はしなかった

爆音と振動がベットを揺らす

火災報知機の音が遠くで鳴り、焦げ臭いにおいがほのかにし始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・?」

 

 

気だるげに吹雪はスカートのポケットをあさる

スマホが振動していたのだ

画面を見ると龍驤さんと表示されていた

 

「・・・はい。吹雪です。」

『やっとでた!心配したで!今どこや!』

「今は病室です・・・。」

『状況は川内から聞いとる。・・・で?何があったんや?』

「・・・・・・実は・・・。」

 

吹雪はポツリポツリと話し始めた

しかし、提督が連行されたあたりから堰を切ったように話し、感情が抑えられなくなっていた

龍驤は静かに相槌を打っていた

 

「龍驤さん・・・わたし・・・・・・どうしたら・・・。」

『吹雪はどうしたいんや?』

 

 

 

どうしたい・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言で頭が働き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・助けたい。」

『・・・。』

「私はまだ司令官と一緒に居たい!」

『うちもや。』

「司令官を連れ戻したい!銃殺になんかさせたくない!!司令官があんなことをするはずがない!!!」

 

みんなそうおもっとる

そう龍驤から返事が帰ってきて吹雪はベットから起き上がった

 

「・・・でもどうすれば・・・・・・。」

『心配せぇへんでもええ。・・・うちはな?切り札を手に入れてきたんや。』

「切り・・・札?」

『せや。すべてをひっくり返す切り札をな。あと1時間ほどでそっちに着く。それまでに着陸か着水できるようにしといてくれへんか?』

「・・・・・・わかりました!」

『どうやら復活したようやな。ほな、任せたで!』

「はい!」

 

 

 

吹雪は、病室を出て執務室へと走り出した

ところどころ爆弾の直撃で損傷を受けたり、火の手が上がったりしている場所があったが、今はそちらに目をくれず走った

途中であった若葉に消火作業を頼んだりするなど、消火に関しては指示を出しながら向かう

 

 

 

 

「あっ!吹雪!」

「ル級さんにリ級さん!・・・と?」

 

階段を登ろうとした時、ル級とリ級、ヲ級に会った

先ほどまで出撃していた吹雪はヲ級とは初対面だ

ヲ級は自己紹介をしようとしたが、ル級が先に口を開いた

 

 

「後で説明するわ!それよりも私たちも何か手伝えることはない?!」

「艤装はないけど・・・何かお手伝い位はしたいの!」

「私も微力ながら助力したいと思ってこっちに来たのだが・・・。」

「じゃあ一回執務室まで一緒に来てもらえませんか?!時間がないんです!」

 

いうと同時に階段を駆け上がる

 

「川内さん!」

「吹雪!さっきの話聞いたよ!」

 

どうやら、さっきの電話はみんなの通信機の方に流れていたようだった

気恥ずかしさが顔を熱くしたが、振り払って会話を続ける

 

「じゃあ川内さんはこの3人を艤装保管庫へ連れて行ってあげてください!」

「艤装保管庫?でも深海棲艦用の艤装はないけど・・・。」

「臨時で艦娘用のを使ってもらうんです!今はとにかく対空射撃に関する艦が1人でも多くいた方がいいんです!」

「私も!やります!」

 

 

駆け込むように入って来たのは榛名だった

避難誘導を終え、戻って来たのだろう

 

「艤装の演算はできなくても砲台としてならできます!」

 

確かに発射角度の計算などをやらなければ体への負担なしで射撃ができる

命中精度は落ちるが、ないよりはましだ

 

「でもそれだと・・・・・・。」

 

当然海の上ではないため回避運動は思うようにいかないだろう

海に出た場合は、当然航路の計算やスピードの演算に体に負担がかかってしまう

 

「いいんです。私は・・・提督さんを連れ戻してくれると信じています!・・・・・・あの絶望的な状態ではないんです。」

「・・・・・・わかりました。榛名さんの艤装も保管庫にありますから川内さんと一緒に行ってください。」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

退出していくのを見送ると、無線機をつけ、全員に呼びかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん。ご心配をおかけしました。只今から私、吹雪が指揮をとらさせていただきます。」

「龍驤さんから連絡があった通り、あと1時間以内に敵の攻撃をやませなければなりません。」

「ですが、それを乗り越えれば・・・司令官を助けることができます・・・!」

 

 

「各員の奮闘を期待します!司令官を取り戻し・・・・・・勝利を刻みましょう!」




目まぐるしく状況がどんどん動いてますがもう少し続きます(´・ω・`)



皆さんのサンマ漁の進捗はいかがでしょうか?
作者はさっさと30匹集めて備蓄に戻っている状態です
海防艦改修が非常に魅力的ではあるんですが・・・
いかんせん絶対成功がないうえ、掘り辛いという最悪の組み合わせにより見合わせ状態です(ノД`)
ほんとは改修施してあげたいんだけどね・・・?


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駿河諸島鎮守府の裏切りと連行 その2

目を覚ますと暗く、無地の天井が目に移った

左右を見渡すと、同じく白く無地の壁とリノリウム張りの床が見えた

 

 

俺は死んだのか

 

 

そう思い、起き上がろうとするとガチャリという金属音とともに体が動かなかった

同時に、腹部と背中に痛みが走る

 

どうやら死んではいないらしい

 

顎を引き、何が引っかかったのかを見て自分の状況がわかった

自分はベットの上に寝転がされ、拘束具がつけられていた

そして、手錠らしきものがかけられているのもわかる

顎を戻し、今度は上を見上げる

 

見えたのは鉄格子だった

 

確認すると同時に、鉄格子のある方向が明るくなる

コツコツコツと靴の音を響かせ誰かがこちらに近づいてくるのがわかる

 

 

 

「確認して来い。」

「・・・・・・。」ガチャ

 

 

 

頭の上で、聞きなれた声と鉄扉があく音がした

こちらを覗き込んだのは黒いフードをかぶった人

提督はそれを見てここがどこだか察した

 

黒フードは手際よく拘束具をはずすと提督の背中をそっと支え、ゆっくりと起こした

途中、傷の痛みで小さく声を上げるといったん止めるなど丁寧だった

そして、起こし終えると毛布のようなものを掛けて退出していった

何やら肩のあたりが重いが、確認できなかった

案の定手錠がはめられていて、手を上げることができなかった

 

「私が呼ぶまで別室で待機していろ。あとカメラとマイクは切っておけ。」

 

その声がすると、足音が再び遠ざかっていく

 

「さて、お加減はいかがかね?」

「・・・志垣軍令部長。」

「おっと・・・もう階級なんぞ付けなくていいぞ?君の軍籍は抹消されたも同然だからな。」

 

愉悦に浸った顔で提督を見下ろす

そして、一度廊下に出て椅子を持ってくると腰を掛けた

 

「長年の懸念だった君の処刑さえ終われば懸念事項はほとんどなくなった。せいせいするよ全く。」

「・・・あの時殴り飛ばしてでもやめさせれば良かった!」

「ふん!貴様のような天賦の才を持っていながらなぜ私に従わない・・・。そんなにあの駒が沈んだのが悔しいのか?」

 

提督は思わず立ち上がろうとしたが、傷の痛みでベットに座り込んでしまった

その姿を見て嘲笑した

 

「駒に裏切られた気持ちはどうかね?かつての教官の妻と言う駒にやられた気分は?貴様が救おうとしたものに寝首を搔かれる気分は?」

 

そう言ったあとでぼそりとあ、もう今は深海棲艦(ゴミ)だったなとつぶやいた

提督は痛みをこらえながらにらみつけた

 

「あいつは実にいい働きをしてくれたよ。隠蔽されたのが一つだけだと信じてやまないのだし。手加減をして襲撃事件が無差別のようにうまく調整してくれたしな。」

「・・・・・・。やはり大将も。」

「桐月は深海棲艦(ゴミ)を送り込むのに邪魔だったのでね。少し病院に入ってもらったのだよ。」

 

 

 

本当はあっちに行ってもらった方がよかったのだがねと言った

 

 

 

「あの子は翔鶴だ。あの時確信を得られなかったが・・・!」

「全く君も大本営の連中も国民も・・・・・・。なぜそんなに駒に肩入れをするのか訳が分からない。あれは兵器であって人じゃあない。」

「兵器が感情を持たないでしょう・・・。刀も銃も笑ったり怒ったりしない・・・!艦娘は傷つけば痛いと声を上げる・・・。失えば悲しいと感じるし、戦場は怖いと感じる・・・・・・。」

「全く妖精の連中もなんでまた駒に感情を持たせたのやら・・・。」

 

 

 

ため息をついて続ける

 

 

 

「駒のことはこの際は置いておこう。君は明日、軍法会議の予定だ。」

「やっぱりここは海軍病院ですね・・・?」

「そうだ。君の長年の功績(妨害)特別室(精神病棟)だがね?」

 

やっぱりなと提督は納得した

 

「君が私の地盤が突き崩すのが先か、私が情報を掌握するのが先か一時はひやひやしたものだ。」

「・・・・・・。なるほど。報道各社へのスポンサーですか。」

「その通りだ。これで多少のことは握りつぶせる。奴らもこれには弱いからな。」

 

親指と人差し指でわっかを作りひらひらする

それが何を指すかは誰でもわかるだろう

 

「君がもっと詳しく調べさせていたらひょっとしたら何か物的証拠が出たかもしれんのになぁ?」

「・・・・・・。」

「よくできたシナリオだろう?私は英雄で君はその邪魔者。」

 

懐から取り出したのは戦果報告書

 

カレー洋解放作戦の戦果報告書は2つある

表向きに発表できないことが多すぎたため、戦史の保管のために別で作成されたものだ

 

「当時のメンバーは退役済みな上、国外へと送り出しているからな。これは君でも完全に居場所を突き止めることはできなかったはずだ。」

「・・・・・・。」

深海棲艦(ゴミ)に指示を出して攻略本隊を叩かせる。そしてその責任はすべて君に行く。戦果詐称でね。」

「そして鎮守府を接収ですか。」

 

 

 

実のところを言うと駿河諸島の天然資源の採掘がおこなわれている事については民間や諸外国への発表は行っていない

知っているのも、各司令官と秘書艦ぐらいなもので、他の者たちの大半はただの資源の経由地か保養地としか思ってない

なぜ伏せているのかは、いくつか理由がある

大きな理由としては、天然資源が日本で採掘されたとなると国際的にも国内的にも情勢がややこしさを極めるためだ

国際的には今はつながりが薄いが、戦いが終わった後は確実に火種になる

国内的にも民間に今出張られるのは困るといった事情がある

また、日本の場合は資源があれば自活力をある程度まで戻せるため世論が内向きに傾く可能性がある

それでは、諸外国への示しがつかなくなる

 

 

その面倒ごと解決するには軍内部、政府内で止めておくのが一番というわけだ

ちょっとした裏事情で、実は海外艦は鎮守府の方の出入りができないようになっている(宿泊施設は利用可能ではある)

 

 

「君なんかにはもったいないことだ。もっと懐を温めると思ったのだがね?」

 

そのセリフからして、翔鶴を動かして会計関係や裏帳簿がないか探したみたいだ

あいにくうちはやっておらず、かといって偽造しようにもいくつもの判や直筆サインの項目があるためできなかったのだろう

資源採掘だけではなく、あそこは艦娘達の数少ない保養地にもなっている

実権を握られたら最後、将官のみのものとなるだろう

 

「志垣ぐn・・・あんたは・・・!どこまで欲を・・・・・・!」

「欲?人には誰だって欲があるだろう?」

「あんたはもはや悪魔のレベルだ!軍人失格だ!」

「何とでもいいたまえ。どうせ君は明日には銃殺だ。裁判官だって買収済みだ。せいぜい震えているがいい!」

 

高笑いしながら出て行った

 

「今頃深海棲艦(ゴミ)が最後にお前の鎮守府を爆撃しているころだ。あいつはいい駒だったよ。どっちにしろ妹と同じところへ行けるのだから本望だろう。」

 

声だけが廊下からこだまし、廊下の奥にあるらしい扉がバタンとしまった

 

 

 

少しして、先ほどの黒フードの・・・おそらくは艦娘だろう

戻ってきて、毛布を取った

そして、提督を再び優しく寝かせた

再び、拘束具をつけて退出をして・・・・・・行かなかった

 

「・・・・・・?」

 

提督はもうどうにもならないと思い寝ておこうと思った

しかし、黒フードは拘束具をつけ終えても退出する気配がない

 

「・・・・・・。」ソッ

 

そっとしゃがみ、提督の傷のあたりを2、3度さすった

 

「あの・・・・・・?」

「・・・・・・。」

 

一体何を・・・そう言う前に立ち上がると退出していった

10分ほどするとまた暗がりに戻る

 

「・・・・・・吹雪ちゃんや川内、時雨は大丈夫だったのかな・・・?単身で探索している龍驤も・・・・・・。処置して・・・れたかこ・・・みんな・・・・・・。」

 

ぽつりぽつりと言うと眠気が襲ってきた

体力の消耗や麻酔が完全に切れていないせいだろう

ゆっくりとゆっくり瞼を下ろした




次こそ決着に持っていける・・・はずです(多分)

 
さてさて最新の情報で西村艦隊の駆逐の一人に改二実装という事ですが・・・
満潮 30 山雲 35 朝雲 35

・・・(;´Д`)
まさかあの大漁旗が改二のフラグとは思わなかったです・・・
十中八九満潮なんだろうなぁと踏んで急遽育成リストに入れましたが改二実装までに間に合うかどうか(白目)

そもそも設計図艦なのかどうかも気になるところですはい・・・


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駿河諸島鎮守府と帰還

ゆさゆさと揺さぶられ、目を開けると昨日寝た時と同じ無地の天井・・・ではなく、誰かがこちらを心配そうに見下ろしていた

 

 

 

「・・・・・・?」

「覚めましたか?」

 

 

 

目をこすりながら起きようとして、腹筋に力を入れたとたん痛みが走る

 

 

「ああ!ダメダメ!私が支えるからゆっくり起き上がってちょうだい。」

 

 

見れば、すでに拘束具は外されていた

介助を受け、やっとやっとの事で起き上がると手錠を外された

思わぬことで目をぱちぱちさせて目の前の艦娘をみた・・・

 

薄い紫色の髪に緑の瞳にセーラー服

 

「それじゃあ今からあなたを私、衣笠さんが玄関先まで連行します。何かあった時の非常階段はここを出て左側よ。」

「はい・・・・・・?」

 

 

 

不思議な説明をするものだと思いゆっくりと立ち上がる

力をうまく入れられないせいか、歩くのもやっとやっとで鉄格子をくぐり抜けて廊下に出る

見渡すと廊下の両端には鉄の扉がある

衣笠が出てくるのを待ち、彼女の先導で右の鉄扉を抜けた

そして、ホールでエレベーターを待っている間ずっとこちらをちらちらと小刻みに振り返っていた

 

 

 

 

ピーンという音がして、無人のエレベーターが到着する

 

が、衣笠は乗ろうとしなかった

提督は疑問に思いつつ、上に行くものだと思い、ちらりと上の行き先を見る

しかし、どう見ても行先は下であった

エレベーターは何もなかったかのように閉まり、下へと向かった

 

 

 

 

「あの・・・・・・。」

「逃げないの?」

 

提督が話しかけると、ぼそりと言った

 

「え?」

「わざわざ逃げ道を言ったのに。行ってもいいのよ?」

 

 

衣笠はこちらを振り返らず言った

 

 

「・・・・・・。逃げらんないねぇ。」

「どうして?」

 

提督は顎に手を当てて少し考えた後返事をした

 

「逃げたら君はどうするつもりだったの?」

「・・・・・・。」

「あんな外道に青ちゃんの妹をやらせるもんか。」

 

その一言で衣笠が振り返ろうとしたが、思いとどまった

以前、青葉から聞いたことがあったのだ

自分の妹は海軍病院の方にいると

 

 

 

 

 

「昨日来たのは青ちゃんだろ?」

「・・・・・・ええ。」

「やっぱりね。さすがにどうしようもないから最後に顔を見に来たのかなぁって思ってさ。」

「本当にいいの?」

 

確認の言葉に無言で答える

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶん遅いじゃないか!・・・おい!手錠も外れてるぞ!」

「すみません。どうもけがの調子が悪かったので彼女に無理を言って外して肩を貸してもらったんです。」

 

玄関ロビーでは屈強な憲兵が二人待ち構えていた

手前にいた1人が衣笠に食って掛かろうとしたのを先手を打った

 

「・・・そうか。では行くぞ。」

 

両脇をがっちり固められ、護送車に乗り込む

乗り込む瞬間、横目で衣笠を見ると悲しそうな顔をしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後で・・・・・・。行くから・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

護送車はそこそこのスピードで走っていく

備え付けられた硬い椅子が振動を体に直接伝えるため、傷の痛みがじくじくと痛んだ

しかし、誰に言っても仕方ないため黙っていたがどうやら顔に出ていたらしい

憲兵がこちらをちらちらとうかがっていた

 

 

 

「・・・・・・。痛みますか?」

「・・・・・・お恥ずかしいことですが。」

 

 

 

憲兵は無線機らしきものを取り出し、何かを話し始めた

何を話しているのだろうかと思うと車のスピードが少し落ちた

止まる気配がないことから憲兵がどうやら指示を出してスピードを落としてくれたようだ

 

「お手数をおかけしてすみません。」

「・・・・・・。もう少しいい車で護送したかったのですが申し訳ありません。」

 

病院のところでの態度は一転

恭しく答えたことに提督は驚いていた

憲兵は目を合わせず床を見ながらつづけた

 

 

「今回の件は何かの間違いであると信じたいのですが・・・。」

「・・・・・・。それ以上踏み込んではいけません。」

 

 

 

以前手がけた仕事の中に、陸軍から直接の要請書があったことを思い出した

鉄や原油などの物資を積んだ輸送船が艦娘の護衛なしに行けるのは日本近海のみだ

そして、陸軍と海軍は水と油のような関係である

このことから物資の輸送を海軍に頼むにしても極力は力を借りたくない

そういった経緯から生まれた艦娘もいるのだが、それはまた別の話

艦娘ができる前は陸でも文字通りの水際迎撃作戦を行っていた時期もある

しかし、艦娘の登場から事態は一転、予算の大半が海軍に回されることになった

 

端的に言えば陸軍の再建が当時ほとんどされていなかったのだ

雀の涙ほどの予算で行ってきていたが限界を感じたのだろう

武装を作るための鉄、及び訓練に使う弾薬や原油の定期的で安定した値段での供給をうちに願い出てきたのだ

その際には、陸軍の当時の大将が頭を下げに来たため、驚いて対応した記憶がある

 

その大将曰く

 

「ここは海軍の資本が入っているとはいえ資源関係は君個人の会社だろう?ならば海軍に頭を下げたことにはならない!(はず)」

 

すさまじい解釈に思わず苦笑いしてしまったが、大将の顔を立てて「それもそうですね」と相槌を返しておいた

 

 

このことから陸軍とのコネクションは海軍の中でも一番といっても過言ではないくらいだ

 

 

 

 

 

「しかし・・・。」

 

何か言いたげな表情だったが、黙って首を振ると憲兵は押し黙った

その表情は悔しそうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車はゆっくりと裁判所の中に入っていく

裁判所の前では記者がちらほらいるが、護送車に寄ってくる様子はない

どうやら、完全非公開で結果のみを報道する予定のようだ

裏側の方に回り、降りると憲兵たちが再び両脇についた

普通なら控室に通されるが、控室の前を通り過ぎた

そして、法廷の入り口の扉までくると憲兵は「我々はここまでです。」

そう言って扉の両隣に立った

 

 

 

 

 

扉をくぐると一段高いところにいる裁判長らしき男に証言台に行くように言われる

誰もいない弁護側のテーブルを回り、証言台につく

左の検察側には志垣がいて沈痛な面持ちをしている

裁判長とその両脇にいる裁判官の三人は現役の将校であり、タカ派だ

つまりは、その中には法務官はいない

 

 

 

「・・・それでは開廷いたします。志垣軍令部長。罪状認否の方を・・・。」

「はい。被告人は・・・」

 

つらつらと罪状が述べられていく

戦果詐称、敵前逃亡、国家反逆罪、軍用物損壊罪とありもしない事から過去のカレー洋解放作戦の時の責任までもが追加されていた

 

「被告人。間違いないですか?」

「いいえ。私はやっておりません。」

 

きっぱりと答える

その後は普通の裁判の流れ・・・・・・

と言うよりも弁護側がいないため、ただただでっち上げの証拠を出されては否定するだけの状態であった

 

志垣は志垣で君のためを思ってとか認めれば多少減刑がとか見え見えの嘘をついていた

そんな茶番が2時間もかけて行われた

 

 

「今回は作戦中という事もあり、早急な判断が望まれるため今回の公判で結審します。・・・主文!被告人を・・・・・・。」

 

 

 

提督はあきらめた表情をし、志垣はほくそ笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとまちぃや!!」

 

扉が壊れんばかりの勢いで開いた

そこにいたのは・・・

 

「・・・!吹雪ちゃんに龍驤・・・・・・。」

 

吹雪はどこか緊張した顔、龍驤は笑ってはいるが青筋を立てていた

 

「なっ!何をしている!憲兵たちはどうした!」

「ああ?憲兵さんか?おらんかったなぁ吹雪?」

「はい。」

 

よく見ると扉の横から小さく握りこぶしが出てきた

そして、親指を立てるとすぐに引っ込んだ

 

「弁護人もおらんと裁判だなんて笑わせてくれるなぁ?!うちらが弁護を務めるからもう一度やり直さんかい!」

「しっしかし・・・・・・。」

「まぁまぁ。一応彼らの言い分もあるし、弁護側の証拠提出や立証を行ってもらおうじゃないか。」

 

 

 

志垣は龍驤たちが突入してきたときこそ驚いた顔をしていたものの、余裕たっぷりの表情で裁判長を制する

 

一方の提督は何が起きているのかが全く分からなかった

なんでここにいるのか、鎮守府の方は大丈夫だったのかなど聞きたいことが山ほどあった

しかし、それを聞く前に裁判長が弁護側の立証をお願いしますと言って裁判が再び始まった

 

「まず過去のカレー洋解放作戦の戦果報告書なんやけどな?これが大きく違うんや。」

 

そういって龍驤は裁判長達に冊子を配る

 

 

 

カレー洋解放作戦(真実)

 

この作戦の立案、指揮を執ったのは耳本訓練生であった

耳本訓練生は作戦立案、指揮に飛びぬけた才能があったため、見学だけでなく実際の指揮を特別に取らせることにした

そして、結果は大成功

夜間空襲戦法を筆頭に様々な新しい戦術を多用し、実用化への道を開いた

結果としてリランカ島の敵基地に甚大なるダメージを与えた

 

 

そして、その復路で事件が起きた

 

 

復路で、偵察機が輸送船団を発見したという報告があった

これに対し、耳本訓練生は囮の可能性を指摘

損害を受けている艦娘がいることから、座標を確認して偵察隊の燃料の限界までの偵察のみとし、撤退を指示した

しかし、当時中将であった志垣が猛烈に反対した

 

「発見した敵艦隊をみすみす逃すとは貴様は提督になるつもりの男か!」

 

そう主張し、指揮権を無理やり剥奪

艦隊に勝手に指示を出した結果空母瑞鶴を除いて全員が大破

その瑞鶴も中破状態であり、推進器に異常をきたしていた

 

志垣は瑞鶴1人を残し撤退する囮作戦を指示

瑞鶴を除く誰もが反対したが、聞き入れず指示を出したのち指揮権を放棄

耳本訓練生に返上した

 

 

 

そして、打ちひしがれている耳本訓練生と快方に回った桐月中将の隙を突き、勝手に上層部への報告を行った

 

 

 

 

「・・・・・・ばっばかばかしい!なんで私が悪いことになっているのだ?そもそもこの報告書のどこに証拠があるというのかね?!」

「弁護人。何かありますか?」

 

 

 

 

裁判長がやる気なさそうに龍驤に振る

現状証拠がない以上、どんなに志垣が動揺しようとも戯言でしかない

 

 

 

 

「あるで。公にされているのと大本営の奥の奥に保管されていた報告書。この二つには絶対ついているはずのものがないんや。・・・当時の通信記録が。」

「それが証拠か?だったら君が提出した報告書だって通信記録がないじゃないか!」

 

志垣は鼻をふんと鳴らし、笑った

 

 

「せやな。・・・・・・というわけでや。川内連れてきてや。」

 

龍驤の呼びかけに扉をくぐって来たのは二人

先導しているのは川内で、その後ろから出てきた人物をみて提督と志垣は目を見開いたまま動けなくなっていた

川内が先に提督に近寄り、弁護側の被告人席に座らせた

そして、もう一人の人物とすれ違った時に後で詳しく話すからと言った

 

 

 

 

 

 

緑色の髪のツインテール、白と赤の弓道着に金色の瞳

 

 

 

 

 

 

「翔鶴型2番艦 瑞鶴です。」

「・・・・・・。ばっばかな・・・。偽物じゃないのか?!」

 

ようやく口を開いた志垣は震えた指で瑞鶴を指した

 

「あのねぇ・・・。まぁいいわ。そんなに気になるなら艤装の登録番号を見る?」

 

はいといって飛行甲板を手から外し、裏返した

そこに刻まれていたのは確かに撃沈登録されている瑞鶴の物だった

 

「それと・・・。よくもまぁここまで耳本君を悪者に仕立て上げたわねぇ!証拠はこれよ!」

 

バンと大きな音を立てておいたのはICレコーダー

ボタンを押すと流れてきたのは語るまでもない

作戦時の通信の会話すべてだった

 

瑞鶴は途中でレコーダーを止めた

 

「今は持ち運びしやすいようにICレコーダーにダビングしたけど艤装の方にだって残ってるわ。なんなら声紋検査だってしてもいいわ。」

 

しなくてもわかるでしょうけどと小さくつぶやいた

それを聞いて真っ白になりかけている志垣だった

それでもなお、あきらめなかった

 

 

「・・・・・・。そうだとしてもだ・・・。そうだとしても!カレー洋解放作戦での罪がなかったとしても!!今回の欧州作戦の失敗はどう説明するのだ!まさかこれもわしのせいだという気かね?!」

 

 

「それについては私が弁護しましょう。」

 

 

声がした方をむく

先ほどまで誰もいなかった傍聴席に二人腰かけていた

 

「青ちゃん・・・・・・!衣笠君・・・?」

 

座っていたのは青葉と今朝会った衣笠だった

青葉は何かを小脇に抱え、衣笠は何かを持っていた

青葉と衣笠はすっと立ち上がると柵を飛び越えて証言台に向かった

瑞鶴は弁護人の席に戻っていき、青葉が証言台に立った

 

「被告人が無罪という証拠はこちらです。」

 

青葉が小脇に抱えていたのはノートパソコンだった

操作をして、終わると席に取り付けられた画面をご覧くださいと言った

 

 

 

そこに映し出されていたのは・・・

 

 

 

『さて、お加減はいかがかね?』

『・・・志垣軍令部長。』

『おっと・・・もう階級なんぞ付けなくていいぞ?・・・・』

 

 

 

 

 

昨日の提督と志垣の会話だった

最初は志垣の体だけだったが、映像が進むと志垣の顔が見えるようになった

映っている角度から提督は気が付いた

昨日黒フードをかぶった青葉がかけた毛布

肩の違和感

すべてが合致した瞬間だった

 

 

 

 

「・・・・・・!・・・・・・!」

「裁判長。こちらの映像が被告人が無罪と言う証拠です。」

「あっああ・・・・・・。席に戻ってください。」チラッ

 

 

 

裁判長はどうするんだという顔で志垣を見る

当の本人は気がふれたようにこれは合成だ!偽物だ!と叫んでいる

 

 

 

「ええ・・・と・・・判決だが・・・・・・。」

「銃殺だ!こんな奴らもろとも銃殺だ!裁判長!こいつらは銃殺だ!」

「因みにですがこの裁判は現在配信中ですよ。」

 

 

「「「「「は・・・・・・?」」」」」」

 

その場にいた提督も含めて5人はまた固まった

 

「軍管轄の全鎮守府に流しています。これが何を意味するか分かりますね?」

 

衣笠が持っていたのは小型のカメラだった

そして、これが意味をするのは先ほどのような判決が下せないという事にある

 

 

「カメラ・・・!裁判所での撮影は禁止されているのだぞ!貴様・・・法廷秩序違反で・・・・・・。」

「どうぞご自由に。ですが先に逮捕されるべきものがいますね?」

 

青葉が毅然と言い終える前に、大勢の者たちがぞろぞろと入室してきた

憲兵隊である

 

「志垣軍令部長。あなたを国家反逆罪及び外患誘致罪で拘束させていただきます。」

「はっはなせぇ!貴様ぁ!この私を誰だと!」

 

 

どたばたと暴れるが、憲兵たちにあっさりと取り押さえられた

 

 

「憲兵隊も全員銃殺だ!!銃殺!全員銃sモガー!!!」

「舌をかみ切られては大変だ。布で覆いなさい!」

 

 

先ほど身を案じていた憲兵が提督と目線を合わせると、会釈をし志垣を連行していった

 

「しゅっ主文!被告人を無罪とする!」

 

志垣が連行されていくのを見て、裁判長と裁判官は判決を言うと慌てて出て行った

 

 

 

しかし、その先では当然憲兵隊が待ち構えており拘束された

収賄罪の疑いでの連行だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官。」

「・・・・・・吹雪ちゃん。」

 

ぼんやりとしている提督に吹雪は手を差し出した

先ほどまでは死を覚悟していたのがウソのようだ

目の前に再び会うことはないと思っていた姿にこれは夢ではないかと思い始める

 

 

「帰りましょう!」

 

 

元気のいい聞きなれた吹雪の声に提督はじっと手を見た

そして、恐る恐る手を取った

手の温かさが、今起きていることが夢でないことの何よりもの証明だった

 

 

 

 

「ああ・・・・・・。帰ろうか。鎮守府に。」




この日この時間にこの場面を投稿したかったのです・・・(´・ω・`)
吹雪の戦没日(11日)だったのと自分の誕生日(12日)なのとで・・・

間に合ってよかった・・・
そして100話にも到達・・・!
ありがとうございました!
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします!


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駿河諸島鎮守府と答え

志垣軍令部長の逮捕は後に海軍最大級の組織ぐるみの隠蔽、マスコミとの癒着による汚職事件として海軍省、大本営を大きく変革させることとなった

また、政財界をも巻き込む壮大な疑獄事件へと発展していくことになる

 

 

 

疑いが晴れ、鎮守府に戻ってきた提督は鎮守府に着くと床に伏してしまった

傷口は開いてはいなかったが、そこそこの量の出血をしていた

そのうえ、点滴を途中でやめてしまったのでけがからくる発熱が提督に襲い掛かり、復調までに相応の時間を取られた

 

結局、体が安定しある程度までの食事が摂れるようになる頃には、夏の大規模作戦は終了した

欧州各国との再打通作戦は無事成功をおさめ、欧州各国の救援に成功した

 

 

 

「うわぁ・・・。こりゃあひどい。」

 

思わず漏れてきた声に書類を持った吹雪は苦笑する

提督が見ていたのは空襲を受けた鎮守府全体の被害報告書だ

あの事件からひと月がたち、提督も執務に本格的な復帰の見通しが立ってきたころだった

といっても病室に入っている間仕事をしなかったわけではなく、多少の決裁が必要なものについては決裁をしていた

古鷹や時雨は顔をしかめたが、提督の判断が必要な書類に関しては仕方なく仕事をすることを認めていた

そして、いよいよ復帰目前で体力も戻ってきていると判断したときに一番苦労しそうな案件の処理に移った

 

 

鎮守府建屋      60%損壊

港湾施設(鎮守府側) 45%損壊(応急修理の場所多数)

  〃  (宿泊棟側) 15%損壊

滑走路        80%損壊(稼働可能滑走路1本)

工廠施設       69%損壊(一部艤装が完全損壊、修理ドックは1つが損壊)

弾薬生産ライン    20%損壊

製鉄ライン      35%損壊

鎮守府-宿泊棟連絡船  連絡船沈没

護衛艦        大破着底

 

etc・・・

 

軽く書かれた損害だけでも相当なものだった

因みに10%以下の損壊は書いていないだけで当然のことながらほかの場所も大なり小なり損害を受けている

特にひどいのは滑走路であり、稼働可能な滑走路は1本

それも、ただ土を固めただけの状態の臨時の滑走路だ

 

「まず鎮守府建屋は・・・うーん・・・・・・。建物自体がほぼ半壊だからねぇ・・・・・・。」

 

幸いにも病院の施設は損傷をそんなに受けずに済み、簡単な修復で済んだ。

しかし、本来新しい建屋を立てたのち補給部などにあてがうつもりだった部分は焼けてしまったり、穴だらけだったりと補修では済まない致命的なダメージがあちらこちらにあることが添付されている資料に書かれていた

 

「角の柱に亀裂も入ってる状態ですからね・・・。いっそ解体しちゃって2つとも建て直しの方が・・・・・・。」

「だねぇ。こりゃあどーしようもないわ。いつものように「なんとかなるら」って言ってる状態を超しとるわ。」

「でも前の建屋の図面って・・・・・・。」

「ないねぇ。運が悪いことに倉庫から火をだしてるから・・・・・・。とりあえず新しい建屋にそれぞれの新しい部署の部屋が小さくとも一つはあるから、大急ぎで着工してもらってそれからの話だね。」

 

早急に延期されていた新鎮守府建屋の着工に入るように書類に書いて承認印を押した

その後も、復旧の優先順位を決めたり、予算の大まかな振り分けを行った

当然のことながら復旧にかかる予算はすべて大本営もちだ

この空襲だって謀略がなければあり得なかった

八丈島の提督が不在だったのも空襲をさせるためだったからであったことが分かったからだ

 

「工廠施設は明石が来てからにしないと無理だなぁ。機械を再度入れなきゃならないものもあるし、拡張したいのかどうなのかも聞かなきゃな。こっちの護衛艦はどっかで発注しないと無理だし。」

 

提督は万年筆の後ろでぽりぽりと頭を掻いた

 

「でもま、これは急ぎじゃないし先延ばしにしましょ。そんなところに人員割く余裕ないし。」

 

年度内に発注予定と書いて締めくくった

 

「お邪魔するで!」

「耳本君久しぶり。」

「失礼する。」

 

病室に入って来たのは龍驤、瑞鶴、ヲ級だった

瑞鶴は見舞いの花束を持っており、吹雪が立ち上がって花瓶を持ってきた

 

 

 

 

吹雪が花瓶に挿している間に、どうなったのかの近況の話になった

裁判所でのやり取りの後、大沢元帥を訪ねた

元帥は最初見た時のセリフが

 

『いかんなぁ・・・。もうお迎えが来ちまったかぁ・・・・・・。』

 

なんて言葉を天を仰ぎながらつぶやいたとか

とりあえず爆撃をかまして幽霊じゃないことを証明すると、大泣きで抱き着いたとかで再度爆撃を敢行したらしい

今は元帥とともに半分隠居して時々大本営に出頭するときについていく

それぐらいののんびりとした暮らしを送っているらしい

 

「俺だってあの時はいったい何が起きているのかわからんかったよ。」

「心配をかけてごめんなさい。主機がやられてて外洋まで航行できなかったの。」

 

 

 

 

 

 

囮となった後、瑞鶴はひたすら避けていたが至近弾が片足の推進装置に致命的なダメージを与えた

それでも何とか逃げ回っているうちにいつの間にかリランカ島へと戻ってきていた

そして、陸へ上がると同時に力尽き意識を失った

 

 

目が覚めると、気を失ったときは砂浜だったのに木造の小屋の中にあるベットに寝かされていた

包帯で巻かれ、ちゃんと処置がされている

しばらく呆けていると、小屋の主・・・もといリランカ島を占有している主が入ってきた

 

 

港湾棲姫である

 

 

姫や鬼級ならば、さぞや威厳のある風格だろう

そう思い浮かべるものも多いが、この港湾棲姫が入って来た時は・・・

 

『ア・・・アノ・・・ダイジョウブデスカ?』

 

部屋の扉をちょこっと開けてこちらをうかがっている

何とも小動物的な対応だった

 

 

 

 

警戒を解き、一対一で話をしてみれば何のことはない

なぜ襲うのかの問いについては、こちらが攻撃しながら進軍してきたから対応しただけの事であり、攻撃さえ加えてこなければこちらも何もするつもりはなかったという

だから、瑞鶴も助けたという事だ

そして、別に捕虜を取るつもりもないから帰りたいときに帰っていいという

 

これは早急に大本営に伝えなくては

戦いを好まない深海棲艦もいるというのがわかれば戦争の終結も早まる

そう思い、外された艤装を見た

が、修理できそうにないと匙を投げた

 

動力のタービン周りは焼き付いる上、足元の推進部はスクリューがなくなっていた

他にも片方の舵は吹き飛んでいたり、ボイラーの一部には穴が開いていたりと、とても海を航行できるものではなかった

応急修理の度合いを超えており、曳航してもらうほかない大破状態である

 

ならばと、持っていた艦載機を飛ばして連絡を取ろうとした

しかし、烈風や天山の航続距離は近くのリンガ泊地まで約2500kmも飛べない

増槽があれば天山なら届くが、積んできてないうえぎりぎりのため深海棲艦機に見つかって追いかけまわされたら途中で落ちてアウトだ

 

無線で救難信号も考えたが、艤装がここまでダメージを受けていて無線部分が無傷なわけがない

そう思って開けてみれば、案の定だった

記録関係のところは生きてはいたが、送受信部は全滅で使えない

 

あきらめて捜索隊がこちらに派遣されるのを待つことにしたというのが事の顛末だった

 

 

「だけど待てど暮らせど一向に来ないし、船団も通らないからどうしようか湾ちゃんと頭を抱えていたのよ。」

 

リランカ島の奪回を失敗した時点で欧州への定期便は大きく南回りとなった

また、瑞鶴の艤装の一部

特に今回の裁判の決定づけとなった通信機部分が発見されると志垣としてはまずいため、捜索部隊や再攻略部隊の結成は極力避けられた

 

「そしてちょうど先日私がこちらに派遣されたというわけだ。」

 

瑞鶴が両手を上げて首をひねるとヲ級が補足をした

 

「なるほど。しかし、もっと早く来れば・・・あー・・・いや。よくよく考えりゃぁ無理か。」

「私らもいたぶられる趣味はないからな。そんな折、北方棲姫様からの連絡でこの鎮守府を知ったんだ。」

「ほっぽちゃんから?」

 

意外な人物の名前に少し驚いた

西に知り合いがいるとは言っていたが、もしや・・・と考えを巡らせる

 

「知っているも何も港湾棲姫様とは実の姉妹のような関係だ。めったに合う事が出来ないがな。」

「ああ・・・。なるほどね。で、本来の居場所から大湊に移ったからその連絡の時に知ったと。」

「そうだ。折を見て行ってみるのもいいかもしれないと思ったのだが、いかんせんこんな試みは初めてでな。いろいろと準備をしていた時に起こった事があの親書に書いた有様だ。」

 

ヲ級はため息をついて情けないことだとつぶやいた

最初は助けを求める際、瑞鶴もつれて行こうと思った

しかし、隠密行動をとるのに曳航しながらだとヲ級が危険とみて、最終的に誰か1人を駿河諸島側からの派遣を取り付けることになった

 

「で、そっからはうちやな。」

 

港湾夏姫を追っ払った後、探索に移った龍驤は奥の探索に移った

そして見つけたのが小さな小屋だった

窓から偵察をしたが、人影を見つけることがかなわなかった

扉を開け、ワンテンポおいてから拳銃を構え突入するとそこには・・・

 

「瑞鶴と港湾棲姫がぽかんとした顔でこっちをみとったんや・・・。一体目の前で何が起こっとるのかわからんかったわ・・・・・・。」

「で、湾ちゃんが説明して港湾夏姫がいなくなったことが分かったのと、龍驤さんがここの所属ってわかったから私も帰ってこれたというわけ。」

「はぁ~・・・・・・。」

 

納得がいき、ペットにばふっと寝転がった

 

「なんかもういろいろ・・・言いたいことあったけどねぇ・・・・・・。」

 

深く息を吐いてむくりと再度起き上がった

 

「無事でよかった。これの一言に尽きるわ。」

「ありがと。耳本君があんなことになってるとは夢にも思わなかったけどね。」

「せめて一矢報いようと思っていろいろ情報を集めてたんだけどねぇ・・・・・・。」

 

結局あの時まで決定的なものが残せなかったからずるずると長引いちゃった

苦笑いをした

 

 

 

 

 

 

 

「それで翔鶴姉ぇのことなんだけど・・・・・・。」

「ああ・・・。うん・・・。そうねぇ。」

 

翔鶴の身柄はうちの鎮守府の預かりとなっている

やむにやまれない背景がある事にはあるが、何らかの処罰は避けられない状態だ

提督の殺人未遂の隠蔽は何とか可能だが、それ以外の背信行為への追及はどうあっても避けられない

が、これは前例がないことでもあるので裁判所としての判断も非常に難しいところである

 

「何にせよ。あと1~2年はとてもじゃないけど着手できないだろうねぇ。あっちにかかりきりになるし。」

「そっか・・・・・・。」

「まぁもうちょっとだけ・・・。もうちょっとだけまっててちょうだな。どっかで裁判になるまでは一緒に暮らせるように大将と相談してみるからさ。」

「何から何までありがとね。」

「なぁに。こっちもお世話になった身と救われた身でもあるからこんなの何とでもないさ。」

 

腕の見せ所さと点滴が刺さっているところを叩かないように二の腕を叩いた

 

「じゃあ翔鶴姉ぇとあってくるね。」

 

そういって立ち上がった

 

「ああ。旅館の離れにいるからな。今度は元帥とも会わせてあげるといい。」

「そうね。提督さんも半隠居させられた後は離れ離れになってたみたいだし、話してみるわ。」

 

それじゃあねといって後ろ手に手を振って出て行こうと扉の前に来た時に、そうだったと言って戻ってきた

 

「なんかあったかいな?」

「これよ!これ!」

 

瑞鶴がポケットから出したのは小さな鍵

 

「なんやこれ?」

「これは・・・確か司令官の机の引き出しの鍵ですね。」

「あらま。そういやあの時着てたズボンのポッケに入れっぱだったわ。拉致られた時に着替えさせられてたからか。」

 

ありがとさんと言って受け取った

瑞鶴はじっと怪しげな瞳を少ししてそっと耳打ちをした

 

 

 

 

「そろそろ結論出しなよ。」

 

 

 

 

「!?」

「私の枷はなくなったからいい加減腹くくりなよ。それじゃあね~。」

 

 

小さく提督にしか聞こえないように前半は言って、これ見よがしに左手を大きく振って出て行った

 

指に光る物を見せながら




というわけでそろそろ・・・ね?(´・ω・`)

なんでかわからないけど満潮改二が発表されてから4日後にはLv30の満潮がLv80に到達していた不思議・・・(´・ω・`)
燃料、弾薬がカンスト迎えたから3-2-1を解禁したらあっという間でした・・・
秋刀魚漁もあと少し
皆様が30匹到達
もしくは目標の達成ができることをお祈りしてます(=゚ω゚)ノ


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駿河諸島鎮守府の後始末と一歩 その1

「こちらが修繕、修復の目録になります。」

「ご苦労だったのう。・・・ひぇ。おっそろしい金額になったもんじゃ。」

 

 

 

大本営 大将室

 

 

 

目の前の大将は、冊子の最後のページをチラッと捲り、数字を確認すると目をつぶって天井を見上げた

冊子の厚さは10cmくらい

意外とそこまで厚くないと思った方は、目録と言うのを失念しているはずだ

そこに書いてあるのはあくまでどれが破損していて修理が必要なのか、あるいは新規の購入になるのか

それだけが書かれている

 

細かい理由や何が原因でどのような状況なのかという具体的なことが記載された書類はまた別にある

おまけで冊子には金額の見積もりを乗せており、大将はそれを見て小さな悲鳴を上げている

 

 

 

「まぁこの処理にあたるのは会計関係じゃしな。うん・・・。後で戻ってくるし・・・・・・。」

 

いやじゃなぁと言いながらソファーの後ろにある自分の執務机に座ったまま少し乱暴におく

代わりに、机の上にあった煙草を手繰り寄せた

煙草に火をつけ、紫煙をゆっくりと吐き出すとよし!と自身を鼓舞するように声を上げる

 

 

 

 

「とりあえず面倒くさい机の上のことはあとで行くぞ。人員補充に関することから聞こうかの。」

「ええ。事前に申し上げた通り、人員の補充をお願いしたいのです。」

 

そういって、一枚の書類をファイルから取り出す

 

「最優先艦種が空母系と防空駆逐。その他人員を4~6名か・・・・・・。理由は?」

「まず空母系なんですが、現状うちにいる空母は龍驤のみです。前回の空襲の際、基地航空隊を指揮する龍驤が鎮守府にいなかったので鳳翔さんにお願いをしました。しかし・・・・・・。」

「大変だったと。」

「はい。」

 

 

鳳翔は前線を離れてからそこそこの時が経っている

勿論、訓練も欠かさず行ってはいるがあくまで行っていたのは普通の海上での発着艦訓練

基地航空隊の指揮はやった事が無かった

やったことないなりに頑張ってやってはくれたが、今後のことを考えると龍驤が不在の際にも対応ができるようにしたい

 

しかし、鳳翔はあくまでもうちの炊事を主な任務としている

その合間を縫って通常の訓練に基地航空隊の指揮の訓練までは組み込めない

そういった関係から増員は必要なことだった

 

 

「なるほど・・・・・・。となると欲しいのは2隻かの?」

「ええ。24時間体制にしなければならないですし、3人いれば休みの調整等もスムーズですので。」

「あいわかった。空母関係に関してはわしが選定を行おう。幸いにも人員はたくさんおるからなぁ。」

 

そういって文月に目配せをした

 

「・・・え?そんなにいましたっけ?前に親潮連れて行った時も空母系の子は見なかったような・・・・・・。」

「それはな?おお、ありがとうな文月ちゃん。」

 

ニコニコと文月が持ってきたのは段ボールの箱だった

机の横の床において開くとびっしり黒い背表紙が並んでいた

 

「何ですかこれ・・・。」

「これは転属希望の一覧表じゃよ。」

「これが噂の・・・・・・こんなにあるんですね。」

 

初めてみたと、しげしげと冊子を見る

転属には様々な理由がある

提督と仲良くなる子もいれば、あくまで上司と部下のままの関係を望んだりと様々だ

気の合うもの同士もいれば、犬猿の仲で業務に支障が出る場合もある

上記の理由以外にもあったりするが、理由を問わず艦娘側から転属を大本営に申し出ることができる

その申し出が必ず認められるわけではないし、転属させなければ支障が出る場合は最優先で処理される

 

実は一番多いのは艦娘側のなんとなくと言った理由のないものだったりする

上司と部下の関係で、ある程度の規模の鎮守府にいると新天地で新しくやりたいという者がそこそこいたりする

または、気の合う提督探し・・・悪くいってしまうと婿探しと言う場合は理由が書かれていない場合がある

(ぶっちゃけ婿探しが実は全体の約20%を占めるという眉唾もののデータがある)

 

因みにこの台帳を閲覧できるのは、大将クラスでないと常時の閲覧は不可能だ

 

 

 

 

 

「これとこれじゃな。」

 

大将がとったのはその中でも厚い二つの冊子だった

 

「これが君のところに転属の願いを出している子たちだ。」

「へぇ~これがうt・・・えっ?」

 

提督が最初に手に取っていた冊子を段ボール箱に戻し、大将から冊子を受け取って捲り始めた

その時に言われたことを聞き流そうとして、とんでもないことを言われた

 

「え?これ全部・・・・・・?」

 

自慢ではないが自分の鎮守府は不人気だと思っていた

花形の戦闘は皆無で、もっぱら事務作業

残業多めでしかも勤務地は離島と敬遠されるだろうなと言う要素しかない

 

「わしもびっくりしたんじゃが、観艦式での指揮を見て一気に来たんじゃ。」

 

中々やるじゃないかと茶化すように言った

ざっと見たところ、一冊当たり50人分くらいの情報がある

 

それが二つ分

 

気の遠くなりそうな作業になりそうだ

中には、その艦娘の履歴書や過去2年分の訓練状況、賞罰、特記事項に訓練生時代の素行、成績などその子のすべての情報が書かれている

それを約100人分

目を通して数人を選ばなければならない仕事である

 

 

 

 

 

「あー・・・ほんとですね。うちへの転属理由が戦闘関連が多い・・・・・・。」

 

ぺらぺらと捲っていくとその艦娘の直筆の転属理由書も添付されている

 

あなたのもとで是非戦いたい!や運命の人を見つけた!

 

など少し勘違いしているんじゃないか・・・?

というようなものが多数あった

(勿論、面談をするまでもなく今回は残念ながらという返事を送る予定だ)

 

 

 

「まぁそういった子はそっちで事前に面談をするなり好きにして構わんからの。」

「・・・・・・他人事ですねぇ。」

「他人事だもーん。」

 

 

 

思わず冊子を投げつけたくなったが、ぐっとこらえて文月にコピーしてもらうように頼んだ

流石に持ち出し禁止の機密情報だ

ここで100人分の情報に目を通していたらいつ帰れるかわかったもんじゃない

 

 

 

「全く・・・・・・。ところで防空駆逐艦なんですが・・・。」

「そうじゃったなぁ・・・・・・。うー・・・・・・。」

 

大将は腕組みをして苦々しい顔をした

 

「これについてはちょっと時間をもらえんか?流石に二つ返事で用意できる子たちではないからなぁ・・・・・・。」

「ですよねぇ。あくまでいたらいいなぁ程度ですので無理のない程度にお願いします。」

「わかったわい。・・・・・・でーだ。あー・・・うん。」

 

大将の歯切れが悪くなる

提督も何となく察してはいた

ローテーブルの上に3つの細長い茶封筒

提督が入室した時からある

 

「これなんじゃがな?」

「・・・・・・。」

 

恐らくは右から順に大佐、少将、中将への任命状だろう

どれも今日付けの

 

「お断りします・・・・・・といいたいんですけどね?」

「それは勘弁してくれんかのう・・・。」

「なんでまたこのタイミングなんですか?」

 

 

 

大将は昇進についての理由を上げ始めた

 

まず、過去の作戦の不当評価の是正

カレー洋解放作戦での功績がまるまる提督の物だとわかったためである

勲章ものの働きであり、さらには普通科への理不尽な降格への補てんというわけだ

 

そして、駿河諸島鎮守府自体のランク付けの見直し

もともと、鎮守府とわかりやすく言ってはいるが実際本当の鎮守府と言うのは少ない

正式名称を直すと鎮守府ではないところがたくさんあったりする

監視府、警備府、鎮守府と3つのランク

さらに細かく分かれているのだが、ここでは説明は省く

 

そして、駿河諸島の成り立ちはと言うともとは監視府だ

志垣元軍令部長に半ば島流しで任命されたが、以前も言ったように地下資源の発見により、重要拠点である鎮守府へと昇格している

が、あくまでそれは表向きの扱いであり実際の登記には監視府というちぐはぐな状態で今日まで放置されてきた

放置された理由はほかでもない元軍令部長の指示だった

 

しかし、その軍令部長がいなくなった今、国内の最重要と言っても過言ではないこの鎮守府がちぐはぐなままでは困るというわけだ

鎮守府にするならば最低でも大佐、一般的には中将が担うはずなのだ

それが中佐のままではいくらなんでもという事である

 

「そして、3つ目。君を駿河諸島と八丈島の2つの拠点をまとめてもらおうという案が出とるんじゃ。」

「無理です。」

「お願いじゃからもう少し話を聞いとくれ・・・・・・。」

「いや・・・今は親潮のおかげで仕事量が減っていて、八丈島の業務量が少ないとはいえですよ?2つ兼任はさすがに無理です。」

 

きっぱりと言い放つ

 

「それはわしでもわかるわい。だからこそもう少し話を聞いてくれ。瑞鶴と翔鶴の問題でもあるんじゃ。」

「・・・・・・!」

 

翔鶴の話が出ると提督は反応した

翔鶴は現在、多少は回復したとはいえ精神的にはまだまだ参っている

 

あっちこっちで将官をケガさせたり、大将に刃を向けたり、友軍を裏切ったり・・・はては無実の提督を一時は重体にまでした

 

その行為すべてが間違いであったという事がわかった今、彼女はその罪の重さでつぶれかけていた

一時は提督自身が面談を行い、

「気にしていない。君は悪くない。」

そういって少しでも和らげようとも考えた

 

しかし、それをしたとして想定されるのが良くて半狂乱の土下座、悪くてその場での自傷行為・・・最悪の事態自害も・・・

 

そんなことが容易に想像できる

回復を早めるためには、一刻も早く駿河諸島から離れて静養した方がいいのだ

 

 

そんな翔鶴を阻むのが、仮にも犯罪者と言う枷だ

 

 

いくら同情されるとはいえ、国を裏切った背信行為についての罪は消えない

裁判が始まるまでの温情措置として留置場ではなく、駿河諸島預かりになっているのだ

 

 

 

「実は、瑞鶴の艤装なんじゃがコアの部分と艤装の接続面がどうも経年劣化でおかしくなっていることが分かったんじゃ。」

「そこは修理ができないところなんじゃ・・・。」

 

以前にもいったように、コアの部分はデリケートで余り弄るのはよくないこととされている

ちゃんと整備されている艤装ならまだ踏み切れるが、瑞鶴の艤装は大破状態で長期間の放置

前例もなく、それだけリスクが跳ね上がっている

 

「そうじゃ。さすがに5年半もの間大破状態での放置はまずかったようでな。コアの部分を弄らないと無理なんじゃと。幸いにも現在それ以外の部分は修理しているから何もしなければ問題はないんじゃ。・・・じゃが、海に出るにはコアの部分に手を入れねばならん・・・・・・あとはわかるな?」

「なるほど。それで瑞鶴を半分引退させて、八丈島の提督代理に据えようというわけですか。」

 

 

そういうと、その通りと大将は頷いた

大本営としては、このまま瑞鶴の腕を手放すのは非常にもったいない

5年半前とは言え、最強の一角を担った艦娘

海に出れないというのなら、かつての経験を活かして提督代理としてなら勤まるかもしれないというわけだ

自分は名を貸すだけであり、実務を行うのは瑞鶴

自分へのデメリットと言えば、重大な事故があった時の尻拭いと月一回程度のペラペラの書類が数枚追加されるくらいだろう

 

 

 

そして、メリットはほかにもある

仮に瑞鶴が、自身の代わりとして八丈島へ着任した場合だ

八丈島は駿河諸島鎮守府の管轄となる

という事は、そこに翔鶴を移動させても問題がない状態になる

そうなれば後は、大沢元帥をオブサーバー、観察者として来てもらえれば3人が昔のように暮らすことができる

3人で一緒にいた方がはるかに回復は早いだろう

 

 

 

 

 

「しかしそれには将官にならなければならない・・・・・・。」

「・・・そうなんじゃよ。」

 

当然、鎮守府と監視府の両方のトップを兼任している者は何人かいる

しかし、当然のことながらその者たちは将官・・・つまりは少将や中将、大将などである

 

提督は軽いため息をついて、机の上の封筒を見つめる

しかし、あまり時間を置かず頷いて顔を上げた

 

 

 

「・・・・・・わかりました。じゃあこちらをいただきましょう。来年付で。」




想像以上に長くなってきていたのでここで分割です(´・ω・`)
次の話は多分早めだとは思います・・・(多分)

改二の子は満潮改二で間違いなさそうですね
そして、一番不気味なのが決戦ボイス・・・
これはレイテのスリガオが単体で来るのか・・・?

そう半分決めつけて朝雲、山雲の育成に大騒ぎな毎日です(´・ω・`)
今月の設計図もうちの鎮守府で最長のお預けを食らっていた山城さん(Lv97)に使用がほぼ内定している状態です
(満潮改二が設計図必須だったら11月の設計図を回す予定・・・)

そして何よりも・・・


雑誌で秋イベは比較的小規模って言ってたけど小規模じゃなくて中規模じゃね・・・・・・?(;´Д`)


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駿河諸島鎮守府の後始末と一歩 その2

提督が手を伸ばしたのは一番右封筒

開けて見て見れば大佐への昇進と書かれていた

 

 

「しかし、それでは・・・・・・。」

「大将。私の言いたいことがわかりますね?」

 

提督がじっと大将の目を見る

それに対して、察したのだろう

一粒の汗がほほをつたった

 

「・・・・・・。はぁ・・・。頭が痛いわい・・・。何とか上をやり込めればいいんじゃろ・・・・・・。」

「私は佐官で十分です。将官は・・・まだ無理です。」

 

お誘いはありがたいですけどねと申し訳なさそうに笑った

灰皿の上に置かれたたばこが燃え尽きているを見ると、新しく取り出して火をつけた

一息吸って、再び灰皿に置くとハンカチで額とほほを拭いた

その顔は苦々しいを通り越して、あきらめの境地に達していた

 

「しかし、来年付って・・・・・・。」

「・・・今日付けにすると今日発行した書類全部だめになりますよ?」

「あっ・・・・・・。」

 

各鎮守府は大規模作戦終了後のためこぞって遠征に出している

そのため、書類の量が多いのだ

今回の騒動をおさめる忙しさが、大将の判断力を奪っているのだろう

 

「わかったわかった!何とかするわい!・・・ああもうどうしてこうなるんじゃ。」

 

やけっぱちになりながら頭を掻きむしった

内心申し訳ないと思いつつ、表情に出さずに席を立った

 

「じゃあお願いします。」

「何を言っとる。まだまだ話はあるんじゃよ?」

「えっ?・・・まだありましたっけ?」

 

提督は身に覚えがなく、怪訝な顔をして首をひねりながら座った

 

「その前に文月ちゃん。これを会計部に持って行ってくれるかの?あとこれで好きなものを食べてきなさい。」

「は~い。」

 

ニコニコと微笑みながら文月は出て行った

大将も同じくニコニコと笑っていたが、扉が閉まると表情が消えた

 

「他でもないこれのことじゃ。」

「・・・・・・それは。」

 

大将が指を指したのは左手薬指の指輪

大将がつけているのは文月とのものだ

そして、それを指された提督はバツが悪そうな顔をした

 

 

 

 

 

 

 

 

「今までは瑞鶴の件があったからこそ強くは言えんかったがな?その前提がなくなったからこそ言わせてもらうぞ。」

「・・・・・・。」

「勿論、お前さんが言いたいことはわかる。いくら瑞鶴が生きていたといえ、殺しかけたのに間違いはない。だから資格はない。そう言いたいんじゃろ?」

「・・・・・・。」

「じゃがな?元をただせば・・・だ。あの時、お前さんに指揮権を預けると言ったのはわしらだという事を忘れとらんか?」

「それは・・・・・・。」

 

提督は目が泳いだ

 

「正直に言おう、わしはお前さんが大なり小なり失敗するとおもっとった。それを理由に作戦指揮部に進む道を絶とうとしたんじゃ。」

「えっ・・・・・・?」

 

大将の意外な言葉に提督は驚きを隠せなかった

 

「お前さんはな・・・・・・。海軍の中でも一番心優しいと言っても過言ではないかもしれないんじゃ。」

 

大将は煙草を再び、くわえて息を吸った

紫煙を吐き出し、話を続ける

 

「その優しさは作戦の立案、指揮を行うにあたって最大の障害でもあるんじゃよ・・・・・・。」

「私は優しくなんて・・・・・・。」

「ならば聞こう。君は瑞鶴の囮作戦しか方法がないとわかった時、少し迷ったじゃろう?」

「・・・・・・っ!」

 

それを言われ、ぐっと口を開きかけたが何も言わずにうなだれた

 

「最終的にお前さんは選択を間違えないとは思っていた。じゃが、作戦指揮を行うにあたってわずかな指示の遅れが全滅の可能性をはらむ中で・・・・・・無情な指示をすぐに出すことが君にはできないとみていたんじゃ。」

「・・・・・・。」

「作戦の指揮、立案には情もいる。・・・じゃが情を入れすぎるとそれですべてが台無しになってしまう事もあるんじゃよ・・・・・・。それは艦娘だろうと人であろうと変わらない。」

「・・・・・・。」

 

大将は立ち上がると部屋の隅からある物を持ってきた

将棋の駒一式だった

 

「作戦指揮を行うときは、人間だろうが艦娘だろうが駒としてみなければならない。歩を守るために王を危険にすることは敗北へまっしぐらだ。そして全員が王だったら何もできない。」

 

将棋をよくやるお前さんならわかるじゃろう

そういって駒を出して、指をさす

 

「お前さんは瑞鶴が撃沈された時のことをずっと自分のせいだと抱え込んでいたのう?わしらが任せたうえ、あいつが暴走したのだからお前さんが気に病む事は一切ないのに。」

「最悪私が志垣を殴ってでもいれば・・・・・・。」

「そんなことしたらお前さんの首が物理的に飛ぶわい。」

 

大将はシュッと首を切るしぐさをした

 

「軍人にやさしさは重りとなる・・・。わしもそう思っておったんじゃが・・・駿河諸島へ行ったお前さんの働きを見て変わったなぁ・・・・・・。」

 

大将は厳しい顔を少し崩した

 

「え?」

「艦娘の様子をつぶさに見てはあの子の様子がおかしい、あそこは何か違法なことしているんじゃないか?この施設はこうすればもっと休める・・・誰かを思いやって周りを見る、意見を出す。君が本当に相手を思っている証拠じゃよ。」

「・・・・・・。」

「お前さんが動いたおかげで助かった子がいる、もっと動けるようになった子もいる。休めなかった子が休めるようなった子も・・・・・・。なぜ失いかけたことばかりを見るんじゃ?」

「それを忘れたら・・・・・・。」

「忘れると見続けることは別物じゃ。」

 

大将は再び目線を逸らそうとした提督の顔をがっと掴むと目を合わせた

 

「何よりもあの子たちが可哀想じゃぁないか・・・・・・。みんなの気持ちに気づいているのに背を向け続けるのは・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「お前さんの中で答えは出ているんじゃろう?それがたとえ一人を選ぶことになったとしても・・・・・・仲たがいをするような奴らか?」

「いえ!そんなことは・・・・・・あっ。」

 

提督は即座に否定の言葉を上げた瞬間、口をふさいだ

1人がすでに心の中で決まっているという事を肯定したも同然だからだ

以前は酒に酔っていて漏れたことだったが、素面で口に出したのは初めてだった

 

「認めたなぁ・・・。それでいいんじゃよそれで。」

 

提督はうつむいて再び座った

 

「思いを伝えた後のことなんてなーんとでもなるじゃろう。普段のお前さんらしくもなくずっと頭の中で堂々巡りをしとるからじゃ。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。ま、ここまでにしておこうかの。じゃが、結論は早くに出してやるといい。」

 

膝を叩いて、立ち上がると提督の前に青色の箱を置いた

 

「・・・は?」

「いやな?お前さんは多分あっとるじゃろうが、衣笠という海軍病院勤めの子なんじゃが、加古から医療面の人員補充の要請があったから今日一緒に連れて行ってもらおうと・・・・・・。」

「それはわかりました。・・・でこれは?」

「そういうわけじゃ。それじゃあの。」

 

ほら行った行ったと手を払うしぐさをされてしまった

これ以上長居するとさらにぼろが出かねないので荷物をまとめて退出した

 

去り際に

 

「大将。ありがとうございます。」

 

そう言って扉を閉めた

 

 

 

「・・・・・・。ばれとったか。」

 

そう言って大将は腰の方に手をやり、後ろから白い封筒を取り出した

 

「あいつにここは似合わんからの・・・・・・。」

 

封筒の中身は辞令だった

 

書いてある内容は・・・

 

耳本中佐を中将へと任命する

また、任地を大本営作戦指揮部へと変更、及び同部部長とする

 

他が茶封筒なのに対し、白い封筒からして察しが付くだろう

 

 

 

「さって・・・・・・。なんて言い訳をしようか考えんと・・・・・・。」

 

辞令を暖炉に放り込むと、火をつけて机へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出て衣笠が待機しているだろうロビーへ向かう途中、文月とばったり会った

手には間宮の包みが見える

 

「あ、耳本さんもうかえるの~?」

「ああ、まだまだ忙しいからねぇ。」

「そっか~。じゃあ皐月ちゃんと望月ちゃんによろしくねぇ~。」

「ああ、伝えとくよ。」

 

そう言ってすれ違った

 

「・・・。望月ちゃんも皐月ちゃんもいい子だから選んでほしいなぁって。」

「!」

「でも、決まっているならしょうがないよね。」

 

すれ違いざま小さな声でそういった

驚いて振り向くと文月は歩みを止めて表情がこちらから見えない程度に顔を向けてつづけた

 

「そろそろ耳本さんは自分を優先しても文月はいいとおもうよ~。」

 

 

 

そう言い残し正面に顔を向けて走り去っていった




実は焦らしがもう少し続きます(;´Д`)
そしてさらっと衣笠さんが加入しましたですはい

本当はメンテ突入と同時に投稿したかったのですがちょっと遅れてこんな時間に投稿になりました
まさかの秋イベが前編で冬イベが後編と言う予想外のイベ状況に作者は頭を抱えている有様です・・・(;´Д`)
いくら着任から一年目でハイスピードとはいえ育成しきれていない子があちらこちらにいる状態・・・
急ピッチでレベリングの最中です

と言うかよくよく考えたら艦これ一期としては冬イベがラストですしレイテ持ってきても全然不思議じゃなかったなぁと今更納得してます・・・

因みに個人的予想はレイテの時系列無視の2分割じゃないかなぁとか思ってたり・・・

秋イベが
前段 エンガノ岬海戦
後段 スリガオ海峡戦(もしE4まであるなら志摩艦隊合流のIF海戦)

冬イベが
前段 16戦隊の輸送、シブヤン海海戦
後段 サマール海戦からのIFの最終決戦

なんて予想をしていたり・・・
今日のメンテで決戦前夜ボイスがどの子に来るかで予想ができそうですね
割と前段ラストにエンガノが結構あり得そうだなぁって思ってます
涼月の実装が決まってはいるもののレイテ沖海戦時に涼月はドック入りしているため一切の参加をしていないんですね
それを考えると姉妹艦である秋月、初月の二人が戦没しているエンガノの報酬(もしくは掘り)じゃないかと・・・

こんだけ予想してもおもっくそはずれてる可能性が高いですので話半分に見ていただければ幸いですw


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駿河諸島鎮守府と増強と二歩

復旧工事の発注がほとんど終わり、あとは終わるのを待つのみとなった

しかし、唯一手つかずの場所があった

 

 

工廠である

 

 

ここは呉第二鎮守府の明石が週に何度か来ては、工事や改修の受注などを行う作業場として開設されている

が、現在は空襲によりかなりの数の工作機械に損傷が出ている

それを提督と、一緒にメモを片手にチェックして回っていた

 

「あっちゃー・・・この機械もダメっぽいですねぇ。」

「修理も無理そう?」

「ですねぇ。できないことはないですけど、日数と工賃を考えたら買い換えた方が安く早いです。」

「もういっそこの機械全部換装しちゃった方がええと思うんだけーが・・・。」

 

提督はため息をついてチェックシートを見る

大半が、修理や買い替えなどに丸が付いており、以前の見立てよりもひどいことが分かった

 

「そうですねぇ・・・。あっ!でも私が持ち込んだ機械だけはそのままにしておいてくださいね!」

「ああ。了解。」

 

 

 

 

 

結局、機械群の大半は換装となった

さらに、どうせいろいろと交換するならあれもこれもと追加していった

その結果、新しく工廠をもう一棟増設した方がいいという事になった

またこれにより、艦娘の装備類で作れないものがここでは何もないという事になった

 

「やったぁ!・・・もうここに住みたいなぁ。」

「おいおい。そんなことしたら柏崎に泣かれるぞ?」

「やだなー。冗談ですよ冗談。」

 

提督と明石は一通りの見回りが終わり、工廠の受付に戻って休んでいた

 

「もはやここ一か所で作れないものが無くなりますからね。16インチ砲だろうが6連装酸素魚雷だろうがFumoレーダーだろうが何でも作れますよ!」

「おっおう・・・。」

 

余りの気迫に少し引き気味になる

新しく追加する機械類で一般の鎮守府では開発不可能なものまで制作可能となっていた

もはやここまでくると一つの工業地帯分の工業力になっているだろう

 

「ところで耳本さん・・・。ドックって作らないんですか?」

「え?ドックって・・・そこにあるじゃないか。」

 

提督は首をかしげながら艦娘が入る入渠場(温泉)の方を指さす

 

「あ、いえそっちの艦娘用じゃなくてですね・・・。輸送船や護衛艦などの実艦のドックですよ。」

「ああそっちか。確かに作ってないねぇ。」

 

基本的に護衛艦などの点検やオーバーホールは本土で行う事になっている

他にも、輸送船もここでやるのは応急修理のみだ

本土が近いこともあるため、いらないだろうと思い、今まで作ってはいなかった

 

「そもそも、うちに工作関係の子が常駐してないからねぇ。」

「なるほど!でしたらこの子なんていかがでしょうか!」

 

そう言って差し出してきたのは一枚の紙

見れば先日からずっと見てきた履歴書だった

 

「軽巡夕張・・・?あれ?この子って柏崎とケッコンしてるんじゃないの?」

「え?やだなぁ!耳本さんったら!」

「え?でも前聞いた時は・・・なんか怪しげな目でって・・・・・・。」

「それは勘違いですよ。その・・・ね?私と提督の・・・ね?」

「あっ・・・。」

 

そういえば柏崎は明石とのジュウコンの時に少し手間取った経緯があった

恐らくはその時の様子を純粋に怪しんでいたのだろう

 

「じゃああいつのこれは増えてないわけか。」

「いえ。こないだ4人目の子とケッコンしましたよ?」

「あらっ?」

 

カクッと肩透かしを食らったようにつんのめる

 

「で、本題に戻りますけど!この子もなかなかの才能があるんです!艦艇設計もできるのでおススメですよ!」

「いやいやうれしいんだけどさ!・・・うちに送り出しちゃっていいの?履歴書寄越したってことはそういう事として受け取るけど・・・。」

 

そう言いながら履歴書を見る

艦艇設計から開発、機械修理などどの工作関係の項目も明石から高評価のお墨付きだ

 

「いやまぁそのぅ・・・。」

「・・・何か問題あり?」

「ちょーっと探求心が強い子だなぁって・・・。」

 

いやな予感がすごいする・・・

 

「こちらを見ていただければ・・・。」

 

そういって明石は艤装からある物を取り出した

パッと見、25㎜3連装機銃の集中配備に見えた

が、そこについていたのは

 

「ボフォース40mm四連装機関砲じゃねぇか・・・?これ?」

「その通りです・・・。」

 

 

本来25㎜3連装機銃が付いている銃座には40mm四連装機関砲が据え付けられていた

 

 

 

ボフォース 40mm機関砲

1930年代初頭にスウェーデンのボフォース社が開発した対空機関砲である

戦間期に各国に輸出され、当時の主要国ではライセンス生産が行われたほどだった

日本の実用化は終戦間際だったためあまり実用化はされなかった

艦娘の艤装の一部としてアイオワが持っているが、誰にでも付け替えることができる

 

「これ・・・。絶対装備無理だろ?」

「・・・・・・。」

 

 

 

なぜ無理なのか

それはこの数字を見ていただければ納得していただけるだろう

 

25㎜3連装機銃   1.8トン

40mm四連装機関砲  11トン

おまけ

長10センチ砲     20トン

 

「つまりこれって単純に長10センチ砲の1.5倍近い重さってことだろ!こんなの補強増設に積んだらひっくり返るぞ!」

「・・・・・・。吹雪さんなら使えるかなぁと。」

「おばかっちょ!吹雪ちゃんでもひっくり返るよ!」

「とにかく!時々こんな魔改造やらかしますけどいい子ですから!」

 

面倒な子を押し付けられた感が物凄いが、受け入れを前向きに検討するという事で取り合ず履歴書を受け取った

 

 

 

「ん?あれ?」

「どうかした?」

 

明石が、ファイルのあるページをみて声を上げた

提督は夕張の履歴書を読むのを一旦やめた

 

 

「いえ・・・。耳本さん。予備の艤装保管庫の使いました?」

「いやぁ?使ってな・・・あ、使ったかな?多分ここが空襲受けた時に・・・。何かまずいことでもあった?」

「いえ。あそこの艤装は調整されていないんで使い辛かっただろうなぁともいまして。特にこれですのでねぇ・・・。」

 

そう言って明石はファイルのある場所を指さした

 

「ああ・・・。確かにこれは調整全くしてないからねぇ・・・。ま、文句言ってこなかったし大丈夫じゃない?あのこっちゃ今回みたいな事が無い限り使わないし。」

「そうですか?でもとりあえず調整だけはしておきたいんであの子たちに後で聞いてもいいですか?」

「大丈夫だよ~。」

「じゃああとはこれをもってっと・・・。」

 

どうやらまとめ終わったらしく、かばんにファイルを詰め始めた

 

「後は発注した機器が搬入されたらまた来ます。・・・夕張さんと一緒に。」

「了解。・・・夕張はこっちに着任がほぼ確定なのね・・・。」

 

まぁええけどさと提督は頭を掻いた

 

「それにしたって夕張がこっちに来るってことはあれか?月一くらいまでこっちに来る頻度下げるのか?」

「ええ。・・・私も提督と過ごす時間が欲しくてですね・・・。」

「おっとこれは失礼・・・。」

 

照れる明石に少し意地の悪い顔で口元を覆うしぐさで茶化す

 

「もう!・・・あっ思い出した。これ提督から耳本さんへの預かりものです。」

 

渡されたのは封筒だった

何かあったかなぁと思いつつ開けると折りたたまれた1枚の紙が入っていた

 

 

 

『さっさと決めろよJK』

 

 

 

 

「・・・。ちょっと待ってね。」

 

内容を見て即座にぐしゃりと握りつぶす

そして、近くにあった紙に

 

 

 

『ヤることヤりましたか?DT』

 

 

 

と書きなぐり明石に渡した

 

「これを柏崎のやつに渡しといてくれ。」

「えっ?あっ!はい!」

 

意地の悪い返しに怒るだろうなぁと思いつつも明石に渡した

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわー。」ガラガラ

「あら!提督さんお久しぶりですね。」

「ようやく落ち着いたんで・・・。あ、いつものお願いします。」

 

そう言ってカウンターに腰を掛ける

鳳翔さんのお店に来るのも随分久しぶりになる

ここ数か月は作戦やら怪我やらで来る暇もなかった

 

「最後に来たのは・・・7月だったかしら?」

「そうですね・・・。もう10月ですから3か月丸々ですね。」

 

いつもの冷酒とお新香を出しながらお疲れ様ですと言った

提督はお礼を言って、一口飲んだ

 

「そうそう。こちら今回の臨時手当と休暇の申請書です。」

「あら。ありがとうございます。あの人と相談しなくちゃですね。」

 

鳳翔は嬉しそうに提督から封筒を受け取った

 

「特に期限を設けていないのでいつでも大丈夫ですよ。」

「決まりましたらすぐに連絡しますね。」

 

上機嫌で封筒を奥に置きに行った

 

 

 

 

「・・・。ところで・・・どうなさるおつもりなんですか?」

「・・・・・・鳳翔さんもですか。」

 

提督は深いため息をついた

 

「それはその・・・。同期の恋路も気になりますから・・・。」

 

同期とは龍驤のことだろう

 

「勿論提督のも含めてです。」

「・・・・・・。」

 

残った酒を一気に煽ると代金をカウンターに置いた

 

「ごちそうさまでした。」

「・・・。ありがとうございました。」

 

鳳翔は微笑んで提督を送り出した

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

提督は鎮守府の建屋を見上げていた

あちらこちらに空襲の爪跡が残されている

先日、ようやくとりあえずの補強作業が終了し、荷物の運び出しが行われている

と言っても現在は夜のため誰もいない

中に入るとギシッという音が響く

 

 

 

執務室へと入るとそこはある程度原形をとどめている物の、あちらこちらにヒビや補強された板が露出していた

提督は椅子にどっかりと体を投げ出して座る

 

「・・・・・・。」

 

椅子に座ったまま天井を見上げるとそこも補強の板が目に入る

くるりと椅子を回し、机に向き直ると一番下の鍵のかかった引き出しに鍵を差し込む

開ければ出てくるのは青い箱が15個

少し崩れてはいる物の綺麗に並んでいた

提督はその箱を1つ追加すると閉めようとした

 

しかし、閉めかけた時ぴたりと止めた

そして、再び開けると腕を引き出しの奥に突っ込んだ

何かをつかむと机の上に置き、引き出しは再び鍵を閉めた

机の上にあったのは先ほどの青い箱だが少し色あせた印象を受けるものだった

提督はそれをじっと見つめると深いため息をついた

 

「提督~?入っていい?」コンコン

「いいぞ~。何かあった?」

「お邪魔しまーす。いや仕事でもしてるのかと思ってさ。」

 

入って来たのは川内だった

 

「あれ?それって・・・・・・。」

「ん。ああ・・・・・・。」

 

提督はあいまいな返事をしながらさっとポケットにしまった

 

「ふふ。迷ってるの?」

「・・・・・・。」

「提督の好きなようにすればいいと私は思うよ。誰かに渡すのもよし、渡さないのもよし。」

 

私にくれてもいいよと冗談めかして笑いかけてきた

 

「とりあえずまた無茶してないならいいや。それじゃあね。」

「・・・・・・川内。」

「ん?なぁに?」

 

提督は川内を呼び止めた




衣笠さんに続いてさらりとメロンちゃんも合流(予定)ですはい(´・ω・`)

秋イベ、冬イベがレイテで確定しましたね
と言うかモロバレでしたが・・・
作者は西村艦隊と志摩艦隊のレベリング作業でてんてこ舞い状態ですはい(白目)
とりあえず70あれば甲まで対応できるという目安で必死にやってます
・・・山雲47、曙52、不知火25

イベに間に合うけど大和武蔵を建造したい・・・
あっちこっちやることづくめで白目向きっぱなしですはい


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駿河諸島鎮守府の過去と未来と三歩

鎮守府にいたのは最初は2人

 

 

 

 

 

1年目を迎えた時に3人

 

 

 

 

 

2年目には4人、5人と増え続け、今や着任予定も含めて17人

 

 

 

 

うち、好意を抱いてくれているのは外部を含め16人

 

 

 

1人の子に目を引かれて飛び込んだこの世界

我ながらほかの人より動機がいささか不純と言えるかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官?大丈夫ですか?」

「ああ、ちょっとぼーっとしてた・・・・・・。さ、これも片づけなきゃな。」

 

 

 

吹雪の声で我に返った提督は書類の決裁に戻る

ガタガタになっている執務室で2人は仕事をしていた

空襲直後は倒壊の危険もあった鎮守府建屋だが、今は暫定的な補強工事がされている

明後日には鎮守府の新しい建物に移れるようになるため、荷物のまとめ作業と日常業務の決裁を同時進行でやっていた

 

今はサンマ漁支援のため、艦隊は全体的に北方よりに出撃が増えている

その報酬としての弾薬、鋼材、ネジの発注が増えていた

さらには、遠征も作戦発動時ほどまではいかないものの、通常時より多めに寄港している

 

「今度新しく着任する人たちは新しい執務室でお迎えすることになるんですよね?」

「そうだね。4代目の建物になるとは夢にも思わなかったけど。」

「ところで結局この建物はどうするんですか?あっちこっちがボロボロですけど・・・・・・。」

 

吹雪は荷造りを一度やめて、部屋の修繕した場所を見る

執務室はだいぶダメージを受けているように思えるが、実は被害はこれでも少ない方である

 

「妖精さんが調べた結果再利用できる部屋がここと補給部が使ってた部屋位だからねぇ・・・・・・。取り壊しちゃってもよかったんだけど、なんだかんだ2代目と3代目の執務室だからね。残すことにしたよ。」

 

妖精さん曰く、2つとも執務室であることを考慮してほかの部屋より頑丈に設計していたことが功を奏したようだ

因みに、反対側の医務室として使っている部分は切り離して医療棟として完全に独立させることになった

 

 

「そうなんですか!ここも思い出がいろいろありますからね・・・・・・。」

「そうだねぇ・・・・・・。初代のはすっかり忘れてたけど。」

「あはは・・・・・・。今と一緒で急に決まりましたからね・・・・・・。無いものだと思ってました。」

 

お互い苦笑いをすると各自の作業に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・。やっと終わった。日付跨がなくて助かった・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

いつもの仕事を終わらせ伸びをしながら腕時計を見る

時刻はフタフタマルマル

 

しれっと残業をしているわけだが、今は禁止している場合ではない

建物の引っ越しに、復旧作業、果ては先ほど言った秋刀魚漁支援と残業しなければとてもじゃないが仕事が片付かない

 

「吹雪ちゃん終わった~?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・?」

 

いつもなら「はい!」と元気のいい返事を返してくれるのだが、何も返事がない

伸びをやめ、ソファーを見るとうつむいた吹雪がいた

 

「・・・・・・。寝てるのか・・・・・・。」

 

そばまでくると規則正しい寝息が聞こえた

よほど疲れていたのか、深い眠りについているようだ

 

「ここんとこ冷え込んでるしタオルケットでも持ってくるかねぇ。」

 

そう思ったが、隣の私室は爆弾が直撃してて立ち入り禁止の状態であったことを思い出した

私室と言っても4畳半もないうえ、碌に私物を置いていないので精神的なダメージは少ない

 

「・・・・・・や。」

「え?」

「嫌・・・・・・!」

「!」

 

とりあえずどこかから掛けるを持ってこようと、部屋を出ようとしていた提督が振り向くと吹雪は苦しそうに呻きながら顔をゆがめていた

目からはほほを伝って涙がこぼれていた

それを見た提督は一瞬慌てかけたが、あることに気が付きすっと冷静になった

 

 

 

 

 

22:13

10月11日

 

 

 

 

 

 

無機質な数字の羅列をスマホは画面に映し出す

艦娘は戦没日前後や当日には、多少精神や体の不調が確実に生じる

症状が軽い者もいれば、重い者もいる

吹雪は今まで仕事中は目立った不調を訴えたことはなかったため、今まで知らなかったがどうやら夜間に出ていたらしい

 

提督は吹雪の隣に座るとそっと肩を抱き寄せた

ぶつぶつと嫌だ、沈みたくないとつぶやき続ける吹雪の手をぎゅっと握った

 

 

「大丈夫・・・・・・。大丈夫・・・・・・。」

 

 

そういうと、頭を撫で始めた

 

「しれ・・・・・・い・・・・・・かん。」

 

効果があったのかわからないが、とぎれとぎれに司令官と言いながら苦しそうにゆがめていた顔が和らいだ

やがて、元の規則正しい寝息に戻っていった

 

「・・・・・・。」

 

 

提督はそっと起こさないように吹雪を横にして立ち上がると、自身の上着をかけた

 

 

 

「・・・・・・んっ。」

「・・・・・・。」ヤバッ

 

提督は吹雪に背を向けながら息を止めた

細心の注意を払ったが、どうやら起こしてしまったようだ

 

「・・・・・・!しれいかん!」

「え?うぉ!」

 

吹雪が急に大声を上げたと思ったら、背中に飛びついてきた

予想だにしない行動に、提督は不意打ちを食らった形となった

結果として顔面をしたたかに床にぶつけた

 

「あっ!すっすみません!!」

「あつつ・・・・・・。一回どいて・・・・・・?」

 

このままじゃ起き上がれないからと言うと、再び「すみません!」と土下座せんばかりの勢いで謝りながら飛びのいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません!司令官・・・・・・。」

「気にしなくて大丈夫だよ。」

 

提督と吹雪は外へと出ていた

少し苦笑いをしている提督を先頭に、ションボリとした吹雪があとに続く

一回気持ちを落ち着かせるために、提督が散歩に誘ったのだ

 

「夢見が悪かったみたいだから仕方ないさ。」

「・・・・・・うなされてましたか?」

「うん。結構。」

「そうですか・・・・・・。いつもは青葉さんから様子を見てきてっていうところで起きるんですが・・・・・・。今年はその先まで・・・・・・。」

 

でもと吹雪が続ける

 

「砲弾が当たりそうな時に場面が変わって司令官が目の前にいたんです。」

「ほう?俺が?」

 

少しわざとらしいが、知らないそぶりで返す

 

「はい!こんな風に散歩をしている感じでした。」

 

吹雪がそばに来たが、すぐに歩みを止める

 

「・・・・・・でも。途中で提督がどんどんと先に行っちゃって・・・・・・最後はこの前のあの時みたいに・・・・・・。」

「・・・・・・それで寝ぼけまなこで飛びついたと。」

「・・・・・・本当に怖かったんですから。」

 

提督が振り返ると吹雪は少し声を震わせながら右ほほの傷痕を撫でた

あの時、提督の体を貫通した銃弾は地面で跳弾し、吹雪の右のほほ骨のあたりをかすめていた

 

「その傷・・・・・本当に消さなくてよかったの?」

 

艦娘の傷は通常の人間よりも治る速度が速い

また、傷痕だって消すこともできた

 

「これは・・・・・・。」

 

提督は吹雪の前に来ると顔に手を添え、傷痕を親指でなぞった

それに対して吹雪は少しってこう答えた

 

「私が守れなかった戒めと司令官が守ってくれた証しとして残そうと思ったんです。」

「守ってくれた証し・・・・・・かぁ。俺にとっちゃ守れなかった証しに近いけどねぇ・・・・・・。」

 

提督は寂しそうな顔をした

 

「そんなことないですよ。」

 

吹雪は自身のほほを撫でる提督の手を取ると、優しく包んだ

 

「提督が居なければ私は頭、川内さんは胸に銃弾が間違いなく当たってました。」

「・・・・・・。」

「私たちを守ってくれたんですよ。」

 

吹雪はうつむいた提督の顔を覗き込み笑いかけた

 

「だから・・・・・・気にするのはやめましょう?司令官が守れなかったものはないんですから。」

「・・・・・・ああ。」

 

提督はそうだなと続け、笑った

前を見れば小さな建物が見えてきた

 

「あっ!ここって・・・・・・。」

「昔の鎮守府・・・・・・。いや監視府として建てられたころのやつだよ。」

 

建物が残っていることを以前に伝えたが、吹雪と一緒に来たのは今日が始めてだ

 

「ここは被害がなかったんですね・・・・・・。」

「だな。あの頃のままだよ。」

「あの頃・・・・・・。」

 

 

 

 

「吹雪ちゃんがアワアワしていることが多かったころ」

「司令官がまだ仕事慣れて無くてミスが多かったころ」

 

 

 

 

最後が綺麗にハモり、お互いに今度は大笑いした

 

 

さっきみたいに毎日ミスしてはああしてたのにねぇと提督が

それを言うなら提督だって!と吹雪が言い返した

 

 

 

ひとしきりに笑い、落ち着くと港の方に行ってみる

中型の貨物船が1隻停泊させるのがやっとの小さな港だ

今は停泊している船はなく、穏やかな波の音だけが辺りにこだましている

 

「あの日は月がまだ小さくて真っ暗だったなぁ・・・・・・。スコールでほとんど見えなかったですが。」

「そっか。」

「今日は月がちゃんと出てて・・・・・・夜戦には向かないですね。」

 

 

 

 

うちの川内さんはあんまり言いませんけどと付け加えた

誰の責任かは・・・・・・言わずもがなここにいる自分たちだが

 

 

 

 

「月が・・・・・・。」

「そんなこと言っちゃうと本気にしちゃいますよ?」

 

 

 

 

提督が言いかけて途中でやめたのを吹雪は微笑んで返した

提督はそれを見てポケットからスマホを取り出して画面をちらりと見るとすぐしまった

そして、軽く息を吸い何かを決心したように吹雪の方に向き直る

 

 

「そうだなぁ。じゃあ・・・・・・。まどろっこしいことなしに・・・・・・誕生日のプレゼントでもいただこうかな。」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督はポケットからある物を取り出した

あの少し色褪せた青い箱

提督は吹雪の方に見せてゆっくりと開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きです。結婚してください。」

 

 

 

 

「・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱の中には月明りで鈍く、それでいて鮮やかに輝いている指輪が入っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・!?わっわたしで・・・・・・私で・・・・・・いいん・・・・・・ですか・・・・・・?」

 

吹雪はあっけにとられてしばらく呆けていたが、状況が認識できるようになるとのどの奥から絞り出すようにして声を出した

 

 

 

「吹雪ちゃ・・・・・・私は吹雪、あなたが好きです。・・・・・・あなたじゃないと駄目です!」

 

 

 

 

 

提督はいつもの呼び方をやめ、真剣なまなざしでゆっくりとした口調で続けた

しかし、緊張していたのだろう

最後の方は早口気味ではあるが、言い切った

 

 

 

 

 

 

「あの、あのぉ・・・・・・ええっと・・・・・・私も・・・・・・!」

 

 

 

 

 

吹雪は困ったように徐々に顔を赤くし始めた

返事をしよう

答えを返そう

頭の中では様々な気持ちが渦巻いていて、なかなか言葉が拾えない

 

 

 

 

 

 

「わたっ私も、司令官のこと・・・・・・大す・・・・・・い、いえっしんら・・・・・・・・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とぎれとぎれながら声を絞り出していたが、一呼吸おいて気が付いたのか一旦口を閉ざす

そして深呼吸をすると、提督と一緒のように一気に早口で言い切った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も司令官のことが大好きです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0:00

10月12日




今日が吹雪ちゃんとケッコンして一年目のケッコン記念日ですはい(´・ω・`)
作中の提督さんの誕生日と作者の誕生日は一緒の設定です


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駿河諸島鎮守府の序列と四歩

吹雪と別れ、執務室を片づけに一度戻る

机の上の書類を片づけ、飲み物を飲んだコップなどは給湯室で洗う

 

それらを終えて部屋を出ようとした時、あることを思い出す

 

 

 

机そばまで来てしゃがむと、下の段のカギを開ける

中からはこの前みた青い箱の山

ケッコン指輪だ

 

提督は部屋の隅に置かれた段ボールの中から片手で持てる位のサイズを持ってくると、一つ一つ丁寧に入れて行く

 

 

これはあの時、これはあの子が来たとき

 

 

そんなことを思いながら箱詰めしていくが、詰めていくたびに、どんどんと手の速度が遅くなっていく

そして、色がこの中ではかなり褪せている3つの箱が残った

 

「・・・・・・。」

 

とりあえず同じくらい褪せている2つの箱を取り出し、机の上に置いた

じっと見つめ、かぶりを振った

最後に残ったのは先ほどのよりさらに褪せている

が、吹雪に渡したものよりは褪せていない

 

 

 

「・・・・・・川内。」

 

 

 

提督はゆっくりと掴むと箱を見つめ、ぽつりとつぶやいた

 

 

「なぁに?提督。」

 

「・・・・・・。」

 

 

そんな川内の返事をする姿が声とともに脳裏にうかぶ

じっと箱を見つめた

が、振り切ったように軽く息を吐くと箱に入れようと立ち上がった

 

「おっとっと!随分と積極的だね・・・。」

「・・・・・・へ?」

 

 

 

立ち上がった先には茶褐色の瞳がドアップでぼんやりと映った

 

 

提督は理解が追い付かず、口から間抜けた声が漏れる

 

 

 

 

少しの間硬直し、よろよろと後ろに後ずさるとそのまま椅子にすとんと座った

 

 

先ほどの返事は自身の脳裏に浮かんだ声ではなく、本当に自分に向けて返された返事という事を理解した

返事を返した川内は机の上に腰を下ろし、腰をひねってこちらを向き、ニコニコと笑っている

 

 

 

 

 

「えっ!えっ!?」

「それにしてもやっと答えだしたんだよね?おめでとう。」

 

 

 

提督は予想外のことに言葉が出なくなっており、言葉が上手く出てこない

その様子を見て川内は困ったように笑った

 

 

「さっき提督が執務室に入るの見えたからさ?気になったんだ。」

 

 

机の上に置かれた指輪の箱を指先でいじりながら話す

 

 

「そっか・・・・・・。」

 

 

提督は何とか落ち着きを取り戻し、相槌を打つが何を言ったらいいのかわからず会話がそこで途切れてしまった

 

しばらくの沈黙ののち、川内が切り出す

 

 

 

「提督はさ。瑞鶴のことずっと気にしてたんだよね?」

「・・・・・・ああ。」

「実はあの事件が起こる前に大将と元帥から聞いたんだ。」

「それで少し様子が変だったのか。」

 

観艦式の時や普段の時にどこかうわの空だったりしたことがあったことを思い出す

 

「最初に聞かされたのは大本営の裏の戦果報告書の内容。」

「信じた?」

 

川内は微笑んで首を振った

 

「まさか。長い付き合いだもの。気にしてたのは何が提督が嫌がっているのか。そうしないと助け舟が出せないもの。」

 

それを聞いた提督はそっかと力なく同じ返事をする

川内はそれをとがめることなく続けた

 

「そんなはずはない。・・・・・・そう言ったら本当のことを話してくれたよ。」

「そっか。」

「で、提督を助けに行く前にみんなに聞いたんだ。あの話についてどう思ったか。」

「ちょっと怖いな。」

 

 

 

「誰も信じなかったよ。最近着任したばっかの親潮や若葉すら。」

 

提督はほんとかいなと少し笑って下を向いた

 

 

「みーんな。何かの間違いだ、何か事情があった、提督の本心ではない。このどれかを口々に言ってたよ。」

 

提督の笑いを理解しているのだろう

エイッと言いながら提督の顎を持ち上げた

 

 

 

「だからさ。一歩前に進んでくれたのなら・・・・・・もう一歩前に進まない?」

 

 

一度提督の顔から手を離し、ギシっという音を立てて机から降りる

そして、床板をゆっくりときしませながら提督の横に立つ

 

「吹雪と同じ所・・・・・・とまでは言わないからさ。駄目かな?」

 

今度は肘掛けに置かれた提督の手に自身の手を重ねる

その手を提督はじっと見つめた

 

 

 

 

『やっぱり何でもない。ごめんね、呼び止めて。』

『・・・・・了解。早めに寝てね?』

 

 

 

「・・・・・・この前。」

「ん?」

「この前俺が呼び止めた時に・・・・・・何でもないって言ったとき・・・・・・あの間は。」

「あー・・・・・・。そうねぇ。・・・・・・うーん。」

 

川内は気まずそうに後ろの頭をぽりぽりと照れくさそうに掻いた

 

「一瞬欲が出ちゃったんだ。」

「欲?」

「そ、ここでもしかして積極的に行けば私がもらえるんじゃないかって。」

 

提督が持っていた指輪の箱を手に取った

そしてそれを見つめながら寂しそうな顔をした

 

「うぬぼれだけどあの時提督は私か吹雪で迷っていた。このまま流せば吹雪に行くのは明らか。でも・・・・・・ここでもし積極的にアプローチをすれば逆転の目があるって思っちゃったの。」

「・・・・・・じゃあなんで・・・・・・・・・・・・。」

「もう!そこまで言わせるの?」

 

川内は少し不機嫌そうに口をとがらせる

 

「提督自身が流されずに答えを出して欲しかったの!・・・・・・私が言い寄るより・・・・・・提督の意思で選んでほしいって気持ちが勝ったからあの時はあのまま引いたの。」

「・・・・・・。」

「あ、でも読みが外れてしばらくうじうじしてたらアプローチするつもりだったけどね?」

 

 

 

内心そうならなくてよかったと提督は心の中で汗を流した

 

 

 

「本当ならこのまま祝福する側に回りたかったんだけどね・・・・・・。もうぶっちゃけちゃうとやっぱり駄目だった!」

 

川内は少しほほを赤らめてつづける

 

「次点でもいい。だから私と・・・・・・ムグッ」

「それ以上は待った!」

 

提督は川内の口を手でふさいだ

川内は驚いた顔をする

 

「それを川内から言わせるわけにいかない。・・・・・・吹雪いるよね?」

 

提督は真剣なまなざしで川内をしっかりとみる

そして、正面の扉に少し声を張る

 

「・・・・・・気づいてました?」

 

吹雪が苦笑いしながら入ってきた

提督は何年の付き合いだと思ってるんだと返すと吹雪はそうですよねと返した

 

「司令官の決定に私は口出しはしません。事情は分かっていますから。・・・・・・ただ。」

 

吹雪は微笑んですっぱりと言う

が、そのあと少し言いにくそうに小さくつづけた

 

「その・・・・・・こんなことを言うのはあれなんですが・・・・・・その。」

「・・・・・・吹雪。」

 

提督は椅子から立ち上がり、吹雪のそばまで行く

そして、少しかがむと唇をそのまま合わせた

 

 

 

 

 

「提督もやるねぇ。」

 

川内がからからと笑うとやっぱり敵わないわけだと言った

 

「こっこれでいい?」

「えっ!あっ!!はっ!!!はい!!!!」

 

吹雪は今で見たどんな色よりも真っ赤な色をしていた

対する提督も、告白した時よりも顔を赤くしていた

 

 

「じゃあ改めて・・・・・・。」

 

軽い咳ばらいをし、指輪の入った箱を川内に差し出した

 

「ジュウコンな上こんな風に優柔不断なところがありますがケッコンしてください。」

「そういうところが好きなの。こちらこそよろしくね。」

 

夜戦も待ってるよ

笑いながら箱を受け取った

提督は考えとくと言って笑い返す

 

 

 

 

 

「さてっと・・・・・・。」

「「?」」

 

川内は大事そうに指輪の入った箱をしまうと、窓辺に歩いていった

そして、がらりと窓を開ける

 

「もう入ってきてもいいって伝えて。」

「!」

 

窓の外にいたのはカ号観測機だった

人がのれるように大型化されていない艤装に搭載されているものだ

 

妖精さんはにっこりと笑って勢いの良い敬礼し、闇の中に消えて行った

 

「え・・・ここでカ号が運用できる子って・・・。」

 

思い当たるのは一人しかいない

 

「邪魔するでー。」

「はやっ!」

 

カ号が消えて30秒もしないうちに飛ばしていた張本人が出てくる

 

「そら下で待機しとったしなぁ。」

 

吹雪に結婚おめでとさんと言うと提督のそばまでやってくる

 

「ジュウコンOKならうちも・・・ええよな?」

「えっ?!いや・・・その・・・龍驤?」

「え え ん よ な ?」

「アッハイ」

 

ニコニコと威圧感ある笑顔を龍驤に向けられた

押し切られた形で提督は机の上に置いてあった片方を渡す

 

「結局一番にも二番にもなれんかったけど・・・。まぁええか!ところで司令官・・・覚悟した方がええで?」

「えっ?何が・・・?」

 

 

 

 

 

「ジュウコン」

「OKと」

「ききまして!」

 

提督が言い終わるや否や

それぞれ順番に旧隠し扉、天井、机の下から

一体どうやって体をおさめていたのだろうか

鎮守府にいる全員が一斉に飛び出してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、提督は鎮守府にいる全員とケッコンし、鎮守府の恋模様については多少の序列が付いたもののひとまず一段落となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、全員吹雪への告白から、先ほどのキスまでしっかりとみており、それを告げられた提督は恥ずかしさに2~3日ひきこもったとか




と言うわけで今度こそケッコン関係のお話は一段落ですはい(=゚ω゚)ノ
1人取り残されている子が実はいるんですがその子は追々チラッとですが描写を入れる予定です



無事、栗田艦隊以外の参加した子たちをある程度のとこまでの引き上げが終わりましたはい
第3艦隊での編成や特別に7隻編成できるようにするなどかなり運営もこだわっているみたいですし情報に注視していきましょう(=゚ω゚)ノ


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駿河諸島鎮守府の裏交渉と五歩

大本営 とある部屋

 

室内は広くもなく、狭くもない

1人で生活する分には何の支障もない部屋だ

といっても生活をするわけではなくここは仕事部屋である

6畳ほどの広さには鎮守府で使っている物より2回りほど小さい机

左側は、資料などが詰まった棚がびっしりと並んでいる

右側は、窓があるため、棚はなく代わりに小さな学校机があった

 

提督は、かばんを置くと部屋を出て鍵を閉めた

 

 

 

 

 

 

 

「どうかね?新しい部屋は?」

「何と言いますか・・・最初の頃を思い出しました。」

 

先ほどとは違い、広々とした部屋

いつもの大将室だ

 

「さて、君のもろもろのことについての結果だが、結果だけ言えば全部承認を得た。」

「ありがとうございます。」

「じゃが・・・。先にも伝えたが条件が付いた事もわかっとるな?」

「心得ております。」

 

提督が将官への昇進を蹴ったのが第一の難問だ

普通は昇進に関してはよほどの事が無い限り蹴ることができない

ましてや将官ともなれば軍政、国内政治のどちらかにはかかわることになる

または、海外の鎮守府へと出向になっていれば現地の政治的なかかわりがある

こういった観点から将官になれるものには厳しい裏の選別を乗り越えたごく一握りであり、それを断るのは逆に無責任という事になる

 

仰々しく書いているが、少将クラスならば実はさほど問題はない

少将であれば国内政治にかかわることはまずなく、軍政が主な役割である

また、将官でも一番下のため決定権を持たない

 

提督が推薦されていたのが中将だったため、厄介なことになった

中将となれば、大半の会議への招集や軍の重要なポストに就くことが通例である

もっとも、提督はそれが好きではないうえ、そういったことは苦手で自分には向いていないという事を理解しているため断った

 

 

 

 

 

「先に連絡したのは2週に1日、または月に2日はここ大本営内で業務を行う事。これが条件じゃな。」

 

大将は首を縦に振らせるのが大変じゃったとどんよりしている

簡単に言ってしまえば駿河諸島鎮守府の支部の設置である

 

呉や佐世保、舞鶴に大湊の主要鎮守府などの支部はおかれているが、それ以外は海外の泊地や基地しかない

つまりは、国内の主要鎮守府に準ずる扱いに上がったと言っても過言ではない

 

 

 

鎮守府としての格が上がったのがいいことばかりではない

月に2日の大本営への定期的な出頭は警戒されている表れでもある

何か理由をつけて出頭を見送ると何かしらのアクションがあるとみて間違いない

また、提督が他にも大将を通じて秘密裏に動いていたあることも起因している

 

「後はこれについて・・・じゃな。」

 

大将がジュラルミンケースを机の上に置く

提督に見えるように向きを整え、開く

 

中入っていたのは山吹色の・・・

 

とかではなく50枚ほどの紙束だった

 

一体何かと言うと、駿河諸島鎮守府の民間の部分

株を発行して、提督と大本営でそれぞれ保有している株券だ

そして、目の前にあるのは大本営が保有している残りのすべてにあたる

 

 

 

「良く受け入れましたね・・・。」

「まぁこいつにも条件が付くからのう・・・・・・。」

 

 

 

 

なぜ大本営の保有している株券がここにあるのかと言うと、先の空襲の被害補填の一環である

試算を出していった結果、設備補修だけでも相当膨れ上がっており、このまますべての補填を行うと財務省からの予算を大きくオーバーしてしまい、場合によっては海軍の今年度の予算どころか来年度まで響く可能性が出てきた

軍政にも支障が出かねないため、駿河諸島側からも貯めていた内部留保や債券で賄う事で合意した

 

その結果として、何とか支障のない予算で抑えることができたが、急務でないところの補填を見送ったところがある

その中には護衛艦も含まれていた

護衛艦の艦種は乙型だったとはいえ、約200億はするものだ

今回の補填で、一番の割合を占めていたのもこれである

代わりに、実艦の建造ドックの建設費を大本営が負担、そこで駿河諸島鎮守府自前で建造することで手打ちにしている

 

 

 

これらもろもろの妥協の代償として大本営が持っている株券すべてを提督側に無償譲渡と言う形で折り合いをつけたのだ

 

 

単純な損得勘定から見れば提督側が大損と考えてもいい

 

しかし、日本で唯一の豊富な資源地帯を抑えている会社で、年間の配当や今後の成長などを考えれば損なのはどちら側なのかは一目瞭然だ

 

とはいえ、大本営も二つ返事の了承はできなかった

 

大将が歯切れの悪い雰囲気でケースの横に書類を置いた

 

「・・・・・・なるほど。確かにとんでもない条件ですねぇ。」

 

提督も書類に目を通すと顔をしかめた

 

 

 

 

『大深度の非常連絡線建設計画への参画』

 

各鎮守府にはシェルターがあり、具体的な深さは明言されていないがある場所は数百メートルもの地下にあるともいわれる

その中でもとりわけ重要な横須賀(大本営)、呉、佐世保、舞鶴の4大鎮守府は地下の連絡線が設けられている

緊急時に物資輸送や司令部や大本営の移転などで準備されているものである

提督は見たことはないが、計画書の内容からして、線路と道路が1本づつが通っているようだ

この計画書を見る限り、駿河諸島と大本営を結ぶ地下連絡線を建設しようというもので、しかもその費用を全部こちらが持つという条件だ

 

この事業がとんでもない理由の一つは、駿河諸島事態が孤島であることだ

本州と駿河諸島の前には水深1000mは優に超える深い海が広がっている

水深の浅い小笠原諸島を経由するルートがあるが、こちらも問題がある

距離が増えることと、もう一つある

 

 

海底図の作成が行われていないのだ

 

 

深海棲艦が現れてからというものの、護衛艦などの大型船舶の出番はへった

艦娘が誕生してからは輸送船くらいが現在も活動している

その輸送船が気にしなければならないのは岩礁や潮の流れであり、これは阿武隈にやってもらっているが浅いところや島の周辺だけで、海底などの詳しい調査は行っていない

調査船などの特殊船舶は戦争初期に海の底

新規建造は当時は護衛艦、今は輸送船がメインでありいまだに新造されていないのだ

 

つまりは、八丈島と駿河諸島の間の海の深さは不明なのだ

海底の隆起して繋がっているのかもしれないし、あるいは独立しているのかもしれない

この調査には時間と費用が莫大なものになることが予想にたやすい

 

 

「これはちょっと持ち帰らせてもらいますね・・・。」

「そうしてくれ。こうでもしないと軍のメンツが立たなくてなぁ・・・」

 

すまんのうと言ってため息をつく

 

大本営の思惑としては、巨額の調査費用及び建設費を賄うために再び株を発行

その引き取りを大本営が行う事で完全な独立を避けたいという事だろう

 

 

 

 

「いつぞや小笠原諸島の採掘権の申請とか来てたから多少は楽かもしれんがのう・・・。」

「妖精さん曰く、ひょっとしたら出るかもしれないと言ってましたから・・・。海底図とか作成してるといいですが・・・・・・。」

 

希望的観測を願いながら提督は書類をしまう

 

「それで今日明日とここで仕事をするわけじゃな。」

「ええ。一応来月からですが、来月の1日に鎮守府の落成式を行いますので・・・。」

「そうかね・・・。何はともあれ、復興はそこで一段落かのう。」

「はい。・・・まぁ厄介ごとが舞い込んできてますが。」

 

そう言いながらファイルをじっと見る

大将はわしの立場も考えとくれとしょんぼりしていた

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうと・・・。おめでとうじゃな?」

「ありがとうございます。」

 

大将の言葉に提督は深々と頭を下げる

 

「まさか全員とのジュウコンまで決断するとは思わなかったがの・・・。」

「えーとそれは・・・まぁその・・・。色々ありまして・・・・・・。」

 

提督の目があっちこっちに泳ぐ

 

「まぁそうじゃろうな・・・。あと数日遅かったら・・・。いや・・・何でもない。」

「え?」

 

提督が大将を見ると今度は大将が目を逸らしてる

どういうことですかと提督が聞くと大将は歯切れが悪そうに

 

「いやなに・・・少し・・・やばい質問が・・・・・・。」

「え?なんです?怖いんですけど・・・。」

「既成事実・・・。」

「あ、何も聞こえませんでした!はい!」

 

 

明らかに聞いたら背筋が寒くなるような単語を提督は聞かなかったことにした

 

 

「そうじゃな。質問の話題じゃないものにしよう。で、届けが11日に吹雪で12日がほかの子たちになっておるが・・・なんでまた揃えんかったんじゃ?」

 

大将は不思議そうな顔をする

 

「いやその・・・。吹雪があの日を少しでも楽に迎えられるようにしたかったんです。それと・・・まぁはい。」

「ほほう?正妻と側室の差かのう。」

 

意地悪そうにニヤニヤしながらタバコを吸う

久しぶりにうまい味がするわと茶化す

 

「式とかはどうするつもりなんじゃ?」

「ちょっとしばらくは無理そうですね。戦況が落ち着いたらってところでしょうか。」

 

秋の作戦もありますしと言うと、大将はそうかと残念そうにきゅっと顔を引き締める

その様子からして、今回の作戦も忙しそうな雰囲気が伝わってくる

 

「ま、作戦に関しては追々連絡が行くと思うからの。」

「承知しました。ではそろそろ・・・。」

「ああそうじゃ・・・。忘れ物が一つあったから机の引き出しに入れておいたでの。」

「?はぁ・・・?」

 

何が何だかわからないという顔をして提督は部屋を退出した

 

長いを廊下を歩き先ほどかばんを置いた部屋まで戻ってきた

大本営の中でも端っこの部屋

そこが支部として割り当てられた部屋だ

明らかに建物の売店や出入り口等から一番遠く、歓迎されていないことがわかる

 

相当嫌われたものだと思いながらノブを回して扉を開ける

 

 

「って出るときに鍵を・・・開いてる?」

「おかえりなさいです!耳本さん!」

「青ちゃん?いったいどうしてここに?」

 

扉の先には青葉が小さな机についていた

提督が驚きながら話しかけると笑顔でこちらを向いた

 

「耳本さんがこちらで仕事を行うという事を聞いてきたんです!」

 

提督のそばまで来て、詰め寄るように鼻息荒くしている様子に提督は少し違和感を覚えた

取材をしているとき等はあの様子に近いが、自分と話すときにはこういった様子ではない

もう少し落ち着いた雰囲気だ

 

「そっそっか・・・。」

「はい!」

 

違和感を抱きながら席につき、引き出しを開ける

そして、大慌てで閉めた

 

 

なぜか

 

 

この最近の間に散々なほど見た青い箱

ケッコン指輪の箱だ

 

「え?!なんで?」

「・・・・・・。」

 

思わず大声を出してしまったが、青葉がいたことを思い出し慌てて取り繕おうと青葉の方を向く

が、先ほどの勢いは消えており赤い顔になっていた

 

「その・・・皆さんももらったと聞きまして・・・・・・。私だって指揮下には入ってないですけど・・・・・・。いただければなって・・・・・・。」

 

思えば、青葉だけは着任していない

青葉が、編集長と言う立場にあるためこちらへの勧誘がし辛かったためである

 

青葉の様子は恥ずかしそうに顔を赤らめている

 

提督はもう一度引き出しを開ける

先ほどは気が付かなかったがメモ用紙が置いてあることに気が付いた

 

『大本営直属の子だけどその辺は何とかするから by桐月』

 

 

「あのクソ大将!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて自分の麾下以外の艦娘とケッコンした提督として少し話題になった




と言うわけで最後に青葉でした(´・ω・`)
ケッコン関係のお話はこれでひとまず本当に一段落となりますはい

次回からは新しく着任する子が登場し始めますのでよろしくお願いいたします

また、作者からお知らせがございますのでお暇でしたら活動報告の方をご閲覧いただければ幸いです


さて、いよいよ明日にイベントが迫っております
うちの鎮守府では大和武蔵を狙って大型を10回ほど回して大爆死しました(白目)
資源的には回した当時カンスト寸前で、現在は各種25万以上で全く問題ないのですが・・・

開発資材が100を割り込んでいるという有様(ノД`)

緊急の改修ができないのが若干怖いなぁと思いながらのイベント突入です


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駿河諸島鎮守府の変革 その1

「これでよしっと・・・。」

 

提督が小さくつぶやきながら額縁を持った

額縁には写真が入っており、映っているのは提督と吹雪達所属している者たち全員だ

壁に打たれた画鋲にひっかけると、傾きを整える

新しく掛けた額縁の隣には今より映っている人数が少なく、背景もまた違う写真が飾ってある

さらにその隣にはさらに人数が少ない写真、そして末端には提督と吹雪だけが映っている写真が飾ってある

それぞれ背景にはその時の鎮守府の建屋が映っている

最初の写真を除き、背景には真新しい鎮守府の建屋が映っていた

 

 

 

提督は少し離れ、ゆっくりと写真を眺め、うんうんと頷いた

 

「失礼します司令官。本日付けで着任の子が来ました。」

 

ちょっとした感傷に浸っていると吹雪が扉を開けて伝達をする

時計を見て、もうこんな時間かとつぶやくと吹雪の方を向いた

 

「了解。こっちに通してもらっていい?」

「では呼んできますね!」

 

 

 

 

 

「軽巡夕張!到着しました!耳本提督、吹雪ちゃんよろしくお願いします!」

「ようこそ。当鎮守府へ。」

「よろしくお願いします。夕張さん。」

 

提督は夕張に敬礼を返し、握手をする

続いて、吹雪を紹介しこちらも握手を交わす

夕張は事前に明石を通じて転属と着任関係の書類を書いてもらっているため、複雑な手続きはなく、工廠関係や機器類の業務の引継ぎはこちらに着任する前に終わっているという

予定しているのは鎮守府の簡単な案内と引き継がれた業務の中で今後の方針について話すくらいだ

 

「新しく鎮守府を建て直したと聞いてましたけどこれはすごいですね!」

 

口頭ではあるが、簡単に鎮守府がどのような感じになっているのかを説明すると、夕張は目をキラキラさせている

普通であればそれは素直な感嘆の声だと思うが、いかんせん目の前にいるのはあの魔改造の珍兵器を作った人物である

 

「今回は結構時間がかかった方だから割と手間の多いものがあったのかなぁとは思っているけどね。」

「明石さんから具体的な目録をもらっているんですけど・・・・・・これは確かに時間かかる物ばっかりですからね。」

 

夕張は荷物の中から冊子を取り出した

表紙には『駿河諸島鎮守府機械目録』と書かれている

 

夕張曰く、地下階に関することが時間をどうしても取ってしまうという事だ

妖精さんの不思議な技術をもってしても時間の短縮に限界はあるという事らしい

しかし、それでも十分早い仕事ではある

 

「それに酸素発生装置に非常電源のガス、石炭、石油各種の発電機に潮力発電機、水耕栽培施設、脱塩装置に放射能除去装置・・・・・・。」

「ん?!ちょっとまった!」

「え?何かありましたか?」

 

地下階に関することを夕張がつらつらと話しているのを提督が最初こそうんうんと頷いていた

しかし、後半の目録の読み上げで提督は待ったをかけた

 

「え?酸素発生装置に水耕栽培施設・・・?ごめんそれは発注も許可もした記憶がないんだけど・・・・・・?」

 

たしかに、休んでいた分を取り戻すためにあわただしく仕事をしたが、適当に書類に判を押してはいない

記憶をさらってみるがそのような物品は外注も妖精さんへ注文したという書類はなかった

吹雪に確認するが吹雪も記憶にないという

 

 

「え?でもちゃんと書いてありますよ?地下に大規模シェルターを建設って・・・・・・。」

「「大規模シェルター?!隠し部屋じゃなくて?!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターを降りるとだだっ広い空間が広がっていた

サッカーコート1面分くらいは優にあり、話し声や足音がこだまする

 

「ここは非常時に1000人が1人4畳半くらいの広さで寝泊りができるようになっているようです。」

 

夕張がエレベーターの横の壁のスイッチを押すと地面から壁がせりあがってきた

壁は3mほどの天井まで達し、止まった

一辺にはドアがあり、開けるとそこは個室となっていた

防音性もそこそこあり、避難施設としては申し分ない

 

また、エレベーターから向かって左側の扉の先には個室が50室あり、その個室には風呂とトイレも併設されているという事だ

反対側の右側の扉の先には、食堂や風呂、トイレなどがある

他にも、別の階にはドックや工廠施設、農園や養殖施設なども併設されている

早い話がここの鎮守府がそのまま地下にもう一つある状態だ

 

「・・・あの・・・・・・お二方とも聞いてますか?」

 

夕張が仕様説明書から目を離し、話を中断した

 

「・・・ああうん・・・・・・。ええ・・・?」

「えっと・・・はい。」

 

提督と吹雪はただただ頭が回らず生返事だった

これだけの地下シェルターの建造費はいったいどこから来ているのだろうか

今まで来ていた書類の中に不自然なものはなかったはず

ではこれだけの物はどうやって作った?

 

「ヨバレタキガシタノデス」

 

一番最下層の生命維持装置関係がある場所を見ていると、天井から妖精さんがくるりと回りながら降りてきて体操選手並みの着地を決めた

 

「妖精さん・・・・・・この建造費用はいったい・・・・・・?」

「シュミデツクッテタモノデス。シュミデツクッタカラアンマリカカッタノハヒトデダケナノデス。」

 

こっちで具体的な話をするですと言われついていく

通されたのは会議室であり、プロジェクターが起動していた

 

 

 

 

 

妖精さん曰く、この地下空間はもともとボーリング調査で見つかったものであり、推測ではあるがマグマだまりだったのではないかという事だ

しかし、一回の噴火で地下から上がったマグマの大半を噴出してしまった

わずかに残ったマグマも、急激に冷えて固まってしまい、栓をしてしまい塞いでしまった

 

このままにしておくと、場合によっては地盤沈下の危険もあるため早急に手を打たなければならない

しかし、そのまま埋めてしまうのももったいない

幸いにも、マグマが上がってくる可能性はないため安心して活用ができる

 

妖精さんたちの会議の結果、普段よくしてくれている提督のためにギミック満載のシェルターを作ろうと言う結論に至った

 

 

「そういう事ね・・・・・・。いろいろ気を回してくれてありがとうね。」

 

そう言ってなでてやるとニコニコと誇らしげな笑顔を返す

今回の鎮守府の建屋新築に合わせて急ピッチで終わらせたらしい

提督は続けてこれからはちゃんと言ってね?と諭した

 

「さて、そういう事なら全部見て回ったし・・・そろそろ行きますか。」

 

内心では頭を抱えている

 

この件についての報告書を書かなければならない

ここまでの規模になると、政府や一部の国民の避難所としての使用ができるためである

また、最前線の指揮所としても使えるだろう

それはここがさらに戦略的な価値をさらに高めたということだ

 

妖精さん謹製の地下シェルターと言うのは高い信頼性を誇るが、妖精さんは気まぐれでもあるためなかなか頼んでも作ってくれないことが多い

気まぐれな気質のせいで長時間の作業が向かないというのが理由でもある

 

 

「チョットマツノデス。マダミテナイトコロガアルノデス。」

「え?でもさっきの機械室で最後だったんじゃ・・・?」

 

妖精さんに言われるがまま、再びエレベーターに乗る

階層のボタンを見てみるが、一番下は先ほどの機械室と書かれたボタンだ

妖精さんはパネルには目もくれず、ボタンの下にある鍵穴がついているところを開ける

中には最下層と書かれたボタンがあった

 

 

 

 

30秒ほどしてチーンと言う音ととも扉が開く

先ほどの広いホールみたいなところだが、少し違う

奥の方はトンネルみたいになっており、そこから2本線路が伸びてきている

線路が引かれているところは1.5mほど掘り下げられており、まるで地下鉄の駅みたいになっていた

 

エレベーターの到着と同時にガタンガタンと言う音がトンネルの奥からする

トンネルから電気機関車が出てきて、右側の線路に入線し停車した

妖精さんが走り寄って運転席にいる妖精さんと話し始めた

2,3会話すると、運転席の妖精さんが運転台の無線で何かを話し始めた

5分ほどして、反対側の線に客車を付けた列車が入線してくる

 

「ヨウコソスルガショトウカイテイタンコウニ!」




大変遅れました(;´Д`)

いかんせんイベントのかかりっきりでしたはい・・・
現在E3甲をクリアしてE4やるのがめんどくさ!ってなっているところです(白目)
とりあえずE3でまだあっていない秋月掘りながらどうやって行こうか決める予定です

幸いにも堀は雲龍堀が50週前後とちょっと手間取ったくらいで済み、新艦の子たちは攻略中、葛城は5週目と資源にダメージをそんなに追わずに済みました
新艦堀が攻略中で終わったことを某大坂の提督さんに報告したところ血涙を流しておられましたはい


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駿河諸島鎮守府の変革 その2

「やったぜ!」

「服を着なさい。」

 

扉が壊れんばかりの勢いで執務室に入って来たのはスッケスケのネグリジェを着た望月だった

時間はフタフタマルマル

こんな時間に呼び出しをかけた自分が悪かったのだろうかと少し悩んでしまった

とりあえず、頭にチョップを浴びせて着替えに戻らせた

 

 

 

 

 

 

「んで?どうしたのさ?」

「これを見てほしい。」

 

制服に着替えて戻ってきた望月の前に、ある物を2つ置く

 

「これは随分と上質な石炭だねぇ。無煙炭と・・・・・・瀝青炭か。」

 

瀝青炭とは石炭の一種である

石炭にもいくつか種類があり、その種類によって用途が変わる

無煙炭は石炭の中でも炭化が進んだものであり、エネルギー効率が一番いいものである

昔は軍艦の燃料などに使用されていたが、今現在で石炭焚きの軍艦はないと言っていいだろう

一般の人が目にできるのは、蒸気機関車の燃料としてくらいだ

 

対して、瀝青炭

これは石炭の中でも最も価値があると言っても過言ではない

もともと石炭から石油へのエネルギー転換の理由はエネルギー効率と価格の面である

今現在も石炭は安価ではあるが、環境汚染とその対策、エネルギー効率などを考えると石油に一歩劣っている存在だ

 

本来であれば無煙炭の方が価値があったのだが、今現在は瀝青炭の方が価値がある

製鉄に欠かせないコークスとしての利用だ

発熱のエネルギーだけなら他の燃料でもいいのだが、コークスでなければならない理由がある

ここでは鉄の原料である鉄鉱石を産出しているが、精錬しなければ意味をなさない

コークスには酸化した鉄の酸素を吸着する還元剤の効果があるのだ

 

今までは本土からコークスを貨物船に積んで、帰りは鉄鉱石を積んで本土へと戻っていた

これによって、国内の製鉄産業を守りながら、石炭の採掘事業も助けるとてもいバランスを保ってきた

 

「なるほどね。それであたしに相談と言うわけね。」

 

望月には大本営との調整役をになっている

 

普通に考えれば国益にも非常に良いことである

かつてのエネルギー転換の過程で、国内の炭鉱は次々と閉山した

深海棲艦との戦争が勃発したときに稼働していたのは釧路の炭鉱だけで、非常に国内の燃料事情が大変な時期があった

今現在はシーレーンも確保されているため、差し迫っての問題はない

が、万が一以前のようにシーレーンが封鎖された時のことを考えると手を打つに越したことはない

しかし、炭鉱という物は閉山を解除してすぐに採掘ができるわけではない

粉じん爆発やガス中毒などの危険を取り除く環境の再整備に非常に時間がかかるのだ

 

「予定では来月の出張勤務の際に報告しようかなと思ってるんだけど。」

「・・・・・・は?ちょっと待った。」

 

望月が驚いた顔をした

 

「今報告するって?」

「そうだけど?」

「絶対やめといた方がいいね。」

「・・・・・・。」

 

望月が言いたいことはわかる

今この鎮守府の扱いは非常に難しいところにある

所属している艦娘が少ないとは言っても、経済基盤に関しては小さな先進国並みの水準になっていると言っても過言ではない

もし、うちが資源供給をしなくなったらどうなるだろうか

南方の資源地帯からも輸送はできるが、船足の遅いタンカー船や貨物船では時間がかかる

何よりも、一隻か二隻はカ級に襲われ沈んでしまう事が少なくない

そんな中、艦娘のパトロールが頻繁に行われていて、伊豆諸島の島々をに沿ったルートをたどる船団はかなり安全である

それに頼りっきりなのが今の日本の資源状況だ

 

それでも、軍もそれはよくないと思ったのだろう

鉄の生産を行うために重要なコークスは本土からの輸送を行う事で軽くではあるが縛っていた

 

ところが、海底炭鉱が稼働し始めた今その縛りもなくなり、完全に駿河諸島の工業関係はすべて自前で動かせるようになった

 

「今の政情を考えれば伏せるのが妥当だと思うよ。バカ正直に報告するとどうなるかわからないわけじゃないよね?」

「でもそうもいかないんだよねぇ・・・・・・。」

 

そう言って提督は望月に大深度の連絡線についての書類を渡す

黙って受け取ると目を通していく

速読で読み終わると、ローテーブルの上に軽く投げてため息をついた

 

「・・・・・・。そう言う事だとしても伏せるのがあたしは正解だと思うんだけど?」

「どっちゃにしろ次回の時までにこの建設についての返事をしなきゃだし、見積もりもだしてもらったんだけど・・・・・・。」

 

一見すると炭鉱の問題と連絡線の問題は関係ないように思える

しかし、この問題は根っこでつながっているのだ

妖精さんたちがあちこち資源を求めて掘りまくった結果、八丈島と駿河諸島の境に石炭の層があることが分かった

そこからさらに掘り進めて言った結果、最北端の一番本土に近い場所は大島まで到達していた

それもそこまで掘られているのは大きな坑道であり、地下鉄と地下道への転用が割と早い段階から可能であることが妖精さんから告げられた

つまりは、コークスなどの資源で縛ることができなくなったばかりか、建設費を負担させて縛ることも出来なくなったのである

大島の少し先まで掘れていることを考えると横須賀の大本営までは約50㎞程度

普通の業者に頼めば、地下鉄は1kmあたり100億程度だが、妖精さんの技術や労働力だと10分の1程度まで抑えられる

つまりは残りの作業で約500億、それに坑道内を地下鉄に作り替える作業で約250億程度を言う試算が出た

先ほども言った通り、駿河諸島鎮守府の財政は小国並みの経済基盤がある

750億程度などは何とか出来てしまう範疇だ

 

「一応ある程度の株券を発行するつもりだけど向こう側の予測を大幅に下回る額になるだろうしね。資金調達が少ない理由になっている海底炭鉱を伏せたままの説明がどうやってもできないからかな。」

「・・・・・・。じゃあ回答を保留して・・・・・・。」

「なぁ望月。」

「ん?」

「今までの意見はどの立場の望月の意見だ?」

 

そういうと、望月は固まった

ゆっくりと視線をテーブルの上に落とした

 

「・・・・・・。みっちゃんの教艦として・・・かなぁ?」

「そっか。じゃあさらに踏み込んで・・・・・・。自分を教え子としてみているか、提督、司令官としてみているか。」

「・・・・・・・・・・・・。その質問はもうわかっているっしょ。」

 

望月は苦笑いをした

 

「もう1つの方の立場の意見は?」

「・・・・・・。報告について賛成だよ。司令官。」

 

望月は再び書類に目を落とし、話を続ける

 

「この微妙な立ち位置で一番マシなのは馬鹿正直になること。下手に伏せて無理難題を毎回吹っ掛けられる可能性やひどい場合には反逆の疑いありとみて司令官が連行される可能性もある以上、素直に報告が一番の安パイと思う。」

「同感だ。・・・・・・。教え子としての意見を最初に言った理由は?」

「嫌だねぇ・・・・・・。こんな報告をした後、みっちゃんがどうみられるか想像できるでしょ?」

 

見方によっては、権力や富におぼれている人間にしか見えないだろう

自分の裁量1つで日本の命運が決められると言っても過言ではないのだ

他人からどのような評価を受けようが気にしなければいい

しかし、

 

日本を悪から開放する!

 

そんな義憤に駆られた輩が出てきてもおかしくはない

文句や意見、罵声等の口だけならよい

可能性として一番ありうるのは・・・・・・

 

「あの時に見たいにか?」

「・・・・・・あの時冷静にストレッチャーを持ってこれたのは当たりどころから助かる見込みがあると推測できたからだよ。あんなこともう御免なんだけどねぇ?」

 

 

そういって左手をゆっくりと撫でながら提督の顔を見つめる

 

 

「俺の戦場ともいうべき場所はあそこだから・・・・・・。君たち艦娘を万全の態勢で送りだして出来る限り全員帰ってこれるようにする。それが俺の仕事だよ。文句を言われようが罵られようが・・・たとえ刺されようがそれは変わらないし譲れない。」

 

最も、身内だけに気を払えばいいというわけではない

今まで持ちつ持たれつの微妙なバランスを保ってきた財界にも注意をしなければならない

 

「青葉にはしっかりとみっちゃんの護衛をしろって言っとかないとだなぁ。」

 

めんどーと言いながら望月はため息をついた

同時に、懐からUSBメモリを取り出した

 

「ちょーっとパソコン借りるよ。」

 

しばらくノートパソコンを操作して、提督の方に画面を見せる

 

 

 

『台湾沖航空戦 戦果報告書』

 

 

「なんだこれ?」

「砂安のおっちゃんから流してもらった情報。まぁみて見なぁ・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「めちゃくちゃだな。」

「でしょ?」

 

報告書を見終えた提督は即座に切り捨てた

望月もそれに同調する

 

報告書には

 

姫、鬼級含む空母19隻撃沈

 

戦艦棲姫、ル級等4隻撃沈

 

巡洋艦7隻撃沈

 

その他14隻撃沈

 

と記載されていた

もともと、主要なメンツは欧州方面へと派遣されているなか、台湾沖のあたりで散発的ではあるが深海棲艦の活発化が確認された

各鎮守府の主力が出払っているため、大本営の基地航空隊が漸減、あわよくば壊滅させようという事だった

この時期、提督は療養中でありこのことを知らなかった

 

「こんな大戦果があったら多少なりとも前線に変化があるはずだけど全くないし誤報もいいところだな。」

 

潜水艦の発見報告が下がったという記録もない

 

「あたしもそう思って大将にそれとなーく偵察艦隊を何回か派遣した方がいいって進言しておいたよ。」

 

そうかと返事をして、資料を再度見る

画面には深海棲艦の発見場所と撃沈箇所が表記されている

 

「・・・・・・。誤報のレベルがひどいと少しまずいかもな。」

「それについては追々報告が来ると思うよ~。それとこれ。ほんとは明日持ってくるつもりだったけど。」

 

渡されたのは書類3枚

うち2枚は最近見慣れたものだ

 

「深雪からの履歴書付きの上申書・・・ね。」

 

履歴書の2人はうちに転属願を出している子であり、今度面談の検討をしている子たちだった

上申書にはこの2人を鎮守府に引っ張ってほしいという旨のことが書いてあった

 

「深雪の教え子みたいでね。すごい筋がいいらしいよ?」

「ほぉ・・・。転属願来てたし、上申書を送るくらいなら期待してもよさげかな?」

 

それにしても陽炎型と夕雲型か・・・

ここに、秋月型の転属も要求しているのも相まって上層部にさらににらまれそうだ

提督はそう思いながらも、採用の方針で未決済の箱にポンと入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、明日もあるから解散で・・・。」

「え?」

 

執務室を出て、自室の前で別れようとすると明らかに不満があるという声色になった

 

「今日やる予定だった工廠の引継ぎ確認が炭鉱の視察で終わっちゃったから明日も早いんだよ・・・・・・。」

「じゃあよく寝られるように運動・・・・・・。」

「お休み。」

 

提督は優しく突き飛ばすと自室の鍵を閉めた

 

 

 

 

「え!ちょっ!今日あたしが泊まり番なんだけど!え!みっちゃん?みっちゃーん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜の見回り番の阿武隈が見つけた時、望月は廊下の扉の前で体育座りしていたという




大変遅くなりました・・・(;´Д`)
色々と私生活の方でごたごたがありまして時間が取れない&イベント完走が一時怪しくなったなどで執筆時間がほんとに取れなくなってました

そのかいもありまして
無事西村艦隊withイヨ(山雲は支援旗艦)で乙攻略をし、乙乙甲乙でイベント完走となりました!
タイムリミットが迫る中での闇城さんのラスダン攻略失敗が心臓に悪かったです・・・
まいごさん?・・・いましたっけ?(ストレートクリア)

堀の方も秋月堀に色々ありましたが成功しまして、イベントで堀残しも何もなく終えることができました(*´ω`)
・・・ただ秋月堀でなぜか照月さんが分身の術(3人)を会得してどうしようかと手に余っているうれしい悲鳴(予備の育成は当分先だなぁ・・・)


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駿河諸島鎮守府の変革 その3

「さぁやってまいりました!夕張ショッピング!本日ご紹介いたしますはこちら!」

 

『ボフォース40mm四連装機関砲集中配備』

 

「いやそれはもういいから!」

 

九州発祥の某テレビショッピング番組の如く例の物を紹介した

提督が慌てて止める横で吹雪は苦笑いをし、制止された夕張は渋々説明をやめた

 

「扱えそうなの吹雪ちゃんくらいしかいないんですもん!」

「人の嫁さん実験台にすな!」

 

軽いチョップを夕張の頭に見舞う

 

「・・・・・・吹雪自身はどうなの?」

 

夕張は懲りずに吹雪に直接聞く

 

「えっ!私ですか?」

 

振られた吹雪は驚いた反応をする

少し考えると提督の方に向き直った

 

「装備してみてもいいですか?」

「え?しかし・・・・・・。」

「あの件。流れる見込みが高いんですよね?」

 

提督はそれを言われると黙った

大本営に要請していた防空駆逐艦の着任

石炭事業の交渉カードとして、着任要請を取り下げる方針でいた

鎮守府の戦力増強案を削れば多少なりとも大本営からのにらみが薄くなること狙ってのことだ

 

もしこれを装備できれば、防空駆逐艦の穴を多少なりとも補う事が出来る

 

「夕張。」

「はっはい!」

「うちの演習場でもデータはとれるか?」

 

それを言うと夕張は顔を輝かせて勿論ですと即答した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

夕張は深々と頭を下げる

それに対し、吹雪ちゃんが申し出てくれたからだと提督は少しぶっきらぼうにいう

 

実験はまさかの成功だった

吹雪曰く、33ノットでスピードは頭打ちだが撃墜能力は秋月型をはるかに上回った

また、回避能力も少し下がっているため使いどころを慎重にしなければならない事

さらには疲労度の蓄積も早く、実験後吹雪はそのまま非番にした

 

「それにしても読み通りです!やっぱり吹雪型じゃないとこういう関係は無理そうですね。」

「?吹雪型じゃないと無理?」

「ええ。」

 

元々吹雪型は実験艦夕張のデータや手法を駆逐艦に昇華させたものである

しかし、その実態は攻撃力の増大の代わりにトップヘビーかつ耐久性に難があるものとなってしまった

それを解消するべく、補強工事を行った結果38ノットの俊足が35ノットまで速度が低下してしまっている

 

艦娘になった今でも吹雪型には改にすると無印の時には島風に次ぐ38ノットが35ノットまでスピードが落ち込むという報告がある

 

 

 

が、改二改装でそれが変わる

改二改装された吹雪の最高スピードが再び38ノットに戻ったという事だ

これは、少し遅れて実装された叢雲においても同じ報告が上がっている

また、吹雪も叢雲も改二改装後は体がやや成長したというデータもある

 

ここから導き出されたのは、IF改装によるものだと結論付けた

 

もし、当時はまだ未熟だった電気溶接が成熟していたら

もし、設計時点あるいは改装で艦の全長、もしくは制限がもう少し緩かったら

 

たらればの話ではあるが、これは吹雪型に限らずすべての艦娘の改二改装はたらればの話を前提としていることが多い

 

そして、そこに目を付けたのが夕張だった

魔改造アメ機銃(bf4連装機銃)は途方もなく重く駆逐艦に装備させたらバランスを崩しやすくなり使い物にならない

しかし、対空能力は間違いなく突出したものになる

 

吹雪型はもともと補強改修をせずに、スピードと回避を多少犠牲にすれば行けるのではないだろうか

吹雪型改二はほかの駆逐艦よりも余裕があるのではないだろうか

 

推測ではあるが、その考えがあったからこその提案だったと夕張は説明した

 

 

「嫁さんを実験体になんて本当は勘弁だけどな。」

 

防空駆逐艦の穴を埋めれそうになったことは喜ばしいが手放しに喜べず微妙な顔をした

 

「他にもいろいろな物がありますよ!!」

 

そう言って、工廠にある試製の目録と簡単なスペックの書かれた紙を数枚渡してきた

 

改良型タービンと新型高温高圧缶を組み合わせた物

駆逐艦に積めるように改良した46cm単装砲

7連装酸素魚雷

30cm連装砲(重巡用)

 

 

様々な武装がある

とは言ってもこれらは一癖も二癖もある物であり、同時に積み込めるわけがない

特に単装砲に至ってはどうやっても扱える見込みがない

他にも、タービンと高圧缶セットは吹雪であれば島風を超える最速50ノット以上出せる代物ではあるが、詰める武装が多少減るという弱点を持ち合わせている

とはいう物の、現在の組み合わせよりも改良されており、武装が2つまでなら装備可能なことを考えるとこれについては使い道がありそうだ

 

夕張曰く、まだ図面で止まっているの段階のも多くあるらしい

提督は制作には許可を取ってからという事を念押しした

勝手に作られて艤装の中に組み込まれてはたまらないからだ

 

 

 

 

 

「で、明石から聞いていると思うけど榛名の艤装については・・・・・・。」

「ええ。伺っています。まだ、ここに集計されている過去のデータを見て見ない事には何とも言えないというのが正直なところですね。」

「そっか。」

 

提督が少しションボリとした様子を察したのだろう

夕張は話をつづけた

 

「とりあえずなんですけど昨日提督が炭鉱の視察に行っている間に所属艦全員の艤装をくまなく見させていただきました。」

 

そう言いながら、机の上にあるパソコンを操作した

少しして、提督の方に画面を向けるとそこには

 

「なんだこれ?」

 

画面に映っているのは白黒の画面で、座標軸の真ん中には黒い球体があった

端には様々なツールボックスのアイコンが映っているが、それにはちゃんと色がついている

 

「これは榛名さんの艤装コアの部分の音波映像です。」

 

画面に映る黒い球体を夕張は指す

 

以前説明した通り艦娘の艤装コアの部分はデリケートな部分である

開閉検査の認可がここには下りていないため、エコー機器でなんとなくの中の状態を知ることができる

 

因みにタカ派主導の計画の一つであった艤装コアの開閉検査権限の拡大も、現在の混乱で立ち消えとなっている

 

榛名の場合は球体であるが、これは艦娘によってかなり違うとのこと

四角い子もいれば不定形の子、星形や翼の形をしている子もいたなどの報告もある

 

「見たところやはりここにも異常はないのですけど・・・開けて見ればまた違った結果になるかもしれないですね。」

 

ポインターでくるくると球体の周りを回す

 

「そしてですね・・・。今回!私が発明した新エコー機器でなんと!色付きにすることができたんです!」

「おお・・・・・・。ってことはさらに詳しく異常があるかないかが見ることができるんだな?」

「それだけじゃないんです!なんと3Dプリンターで実物そっくりの物が再現できるようにしてあるんです!」

「・・・・・・そういう事やっていれば頭にマッドなんてあだ名がつかないんだけどなぁ。」

「いいですか?マッドは勲章です。」

「アッハイ。」

 

夕張が自慢げに胸を張ると提督はそれ以上何も言わなかった

 

「で、実はもう完成しているんですけど・・・・・・。提督はコアの色についてご存知ですか?」

「色か?えーっと・・・・・・。確か麾下に着いた提督のイメージに近い色に染まるんだったかな?」

 

艤装コアの開閉検査は例が多くはないが、すべての記録において艦娘のコアの色は違う

正確には、麾下についている提督ごとに色が違った

ある者は赤色、ある者は青色、またある者は金色なんてものもいた

しかし、同じ麾下の者でも色を精密に分けると微妙に色が異なっていたり、ほかの色とマダラに混ざり合っているなど興味深いものだった

 

単純かもしれないが、熱血溢れる提督の元ならば赤に近く、冷静沈着な提督の元であれば青に近い

おおよそそんな結論が出ている

 

逆に、建造やドロップしたての艦娘はどうだったのだろうか

 

これは、想像に難くなく白色であった

ところが、よくよくこちらも精密に検査するとわずかではあるが、何かしらの色が混ざっていることが分かった

つまり、これが艦娘が持ってした気質であり、これによって提督と性格が合うか合わないかがわかるという発見もあった

 

が、当然いちいち検査するには時間もなければ、リスクも付きまとう以上転属を繰り返して性格の合う提督のところに転属するのを待つしかないという事になっている

 

 

 

「はい!その通りです。で、耳本提督のは数少ない色なんですよ!」

 

夕張はニコニコとしながら一度奥に引っ込むと、ガラガラとした音とともに戻ってきた

ガラガラと言う音は台車の音であり、その上には丸く膨らんだ白い布が掛けられていた

一体何色だろうか・・・

提督も少し期待をしている中、布をめくる

 

 

 

 

 

布が取り払われ出てきたのは拳より一回り大きい黒の球だった

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

「こちらが耳本提督の色です!」

「あの・・・夕張さんや・・・・・・エコーの画像と全く変わっとらんのだけども?」

「いえ?榛名さん含めて皆さんこの色の系統ですよ?」

「ええ・・・・・・。」

 

提督は困惑した

これがあなたの色です!

そう言って見せられたのが真っ黒だったら誰もがこんな反応を示すだろう

 

「あ、大丈夫ですよ!コアの色が黒っていうのは悪いことじゃないんですから!」

「そうなのか?」

 

夕張はショックを隠せない提督の反応に慌てて弁解をする

 

「実はこれをこうして・・・ちょっと見てみてください。」

「?」

 

夕張はペンライトを出すと、球に上から光を当てた

提督は夕張に促されるまま少しかがんで横から球をみる

 

「透けてる・・・・・・?」

「そうなんです!これが悪いことではない証拠なんです!」

 

提督が球を覗き込むとぼんやりと向こう側が見えた

どうやら、黒色の場合は2通りのケースがあるらしい

1つは光を当てても透過せず、ただ真っ黒く淀んで見えるもの

もう1つはこのように光を当てると向こう側が透けて見えるくらい透き通ったもの

 

前者は、人間不信や廃人と化してしまった艦娘に現れる症状である

後者は、提督と艦娘の相性が抜群であり、意気投合している場合に染まる色らしい

 

提督は後者の方だった

 

 

 

「黒というのはほかの色に染まらない色という側面を持っています。艦娘のコアがこの色に到達するというのは本当の信頼関係が結べているという証拠です。」

「へぇ~・・・・・・。」

「ただ・・・・・・問題点もあったりします。」

 

夕張は少し眉をひそめてつづけた

 

「信頼を寄せている提督に何かあった場合、その色が濁ってしまう可能性が非常に高いという事です。」

「それって・・・・・・。」

「良くて廃人、事と次第によっては反乱という子も・・・・・・。」

「・・・・・・なるほど。」

 

その先はあえて聞かないことにした

 

因みに、わざわざコアの部分を複製したのはこれを榛名の補助艤装のコアに据えるためとのことだ

呉の明石とここにいる夕張が研究や試作の結果、複製でもコアがあった方が安定するのではないかと言う案が出ていたのだとか

 

 

 

 

 

「あ、そうそうあとこれも追加しておいてくれる?」

 

話が終わり、工廠を出る際夕張にある書類を渡す

深雪から直談判が来ていた2人の履歴書だ

 

「あ、了解しました!艤装が届きましたらこっちでメンテは行って構いませんか?」

「お願いしてもいい?最近あっちの雲行きが怪しくてさ・・・・・・。」

「ああ・・・・・・。」

 

提督が上を指さすと夕張は察してくれたようだ

 

「ほいじゃ・・・・・・。」

「あ、はい!おつかれs・・・・・・あっ!すみません!待ってください!」

「え?なんかあった?」

「こちらの子なんですが・・・・・・。」

 

夕張は夕雲型の1人の履歴書を見せる

 

「近々改二改装が来るって話ですよ?」

「・・・・・・それは大本営に通告は?」

「いえ?まだ各拠点鎮守府の工廠担当者で止まっていますけど。」

「わかった・・・・・・。その子だけは1週間以内に着任させるようにするから夕張は準備をお願い。川内?」

「はーい?」

 

提督が川内を呼ぶと天井から降りてきた

その様子を見ても夕張は動じなかった

 

「工廠担当者にしばらく公表を伸ばすように根回しを頼める?」

 

了解と言うと、天井に再び戻っていった

 

「それにしてもよく驚かなかったね?」

「え?ああ!明石さんによく言われてたんですよ。ここに来たら突拍子もないことが起こるからって。」

 

深海棲艦が陸上で軽トラ運転してるを見た時に比べたらこんなの屁でもないですと言われ、提督は苦笑した

 

「それにしても・・・・・・。提督はこちらがある子の方が好きなんですか?」

「はぁ?」

 

夕張が自身の胸を指すと提督は間抜けな声を出した

 

「いえ。今回渡された履歴書の二人はなかなかの持ち主ですので・・・・・・。」

 

陽炎型のこの子も浜風さんには劣りますがなかなかの持ち主ですものとつづけた

 

「いやどうしてそうなるのよ・・・・・・。」

「あ、でも吹雪とか阿武隈の例外もあるのよねぇ。」

「おーい?」

「でも駆逐や潜水艦以外の子はそこそこの胸あるし・・・・・・。あ、でも白露型の二人は駆逐の例外だし・・・・・・。あ、龍驤さんは特に・・・・・・。」

 

どうやら自分の世界に引きこもってしまったようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが駆逐と一部の子たちはやたら豆乳を飲んだり、マッサージをしたりしている姿がよく見られるようになったとか(ごく一部3名は夜戦(意味深)を申し込みに行って叩き出された)

 

さらにはある子は姉妹がいる佐世保に話を聞きに行ったという話もあったとか




大変遅れました・・・(;´Д`)
本当はもう少し多く更新したいのですが私生活の方が忙しくて中々更新ができずにいます
年が明ければ安定する・・・と思いたいですね
変革に関しては終了で次からは一回日常話を挟んでイベントに行きたいなぁと思ってます
あとできれば年内にもう一回更新できれば・・・!

さて、次に着任予定の2人ですが予想を楽しみにしていただけると嬉しいです
といっても1人は確定してますけどね(´・ω・`)
うちは改装設計図が足りなくて来月に持ち越しです(白目)

それと武蔵建造率アップしてたので大型回して無事武蔵を着任させることができました!
5回回しましたけどね(白目)
他の人は1発や多くても2~3回で来てるのにぃ・・・


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駿河諸島鎮守府とマッサージ

「・・・・・・。あ、飲み終わったか。」

 

提督はそうつぶやくと手に持っていた缶を机の上に置く

定番のモンスターだ

机の上に同じ空き缶がもう2,3本乗っているが、そばのごみ箱には山のように積みあがっている

時刻はヒトマルマルマル

当然のことながら徹夜だ

 

 

 

普段であれば古鷹や時雨に言われるが、のっぴきならない状態であることを伝え、しばらく残業が許可されている

 

 

 

 

 

石炭採掘を行う代わりとして大本営側に対する譲歩案を考えていた

当初、大本営側に要請していたのは正規空母1、軽空母1、防空駆逐1、駆逐2だった

しかし、石炭が採掘できるようになった今、駿河諸島鎮守府は本土からの補給がなくても自立できるまでになっている

そのような中での戦力強化は下手をすれば独立の準備、つまりは日本国に対する敵対行為ともとられかねない

そこで、人手が足りないが工夫をすれば何とかできる物から譲歩案を考えた

 

正規空母と軽空母これは、龍驤の基地航空隊業務の負担軽減のために要請しているものだ

これを、軽空母1人の着任に変更する

代わりに、八丈島にいる瑞鶴と基地航空隊の業務を12時間交代で行う

八丈島に置かれている拠点のランクは監視府のレベルだが、あくまで駿河諸島鎮守府の指揮下にある

滑走路を増設し、八丈島にいる空母系の子たちと連携、軽空母の子が着任すれば、龍驤の勤務時間は6時間まで減らすことができる

 

また、夕張が開発した例のブツで対空系も一応ではあるが補えることが分かったため、防空駆逐の着任も取り下げる

 

着任関係は何を取り下げるか決めるのはそう時間がかからなかった

 

とはいっても、夕張から着任予定の1人に改二改装が内々で決定していることを聞いてなかったらこの子も取り下げなければならなかっただろう

 

しかし、ただ戦力の増強を抑えるだけでは引っ込まない

今まで石炭を仕入れていたところが困ってしまうからだ

 

そこで、石炭の消費先として横須賀に大規模な火力発電所施設を建設する

その建設費の9割をこちら側の持ち出しにし、運営を大本営側に任せることを提案する予定だ

 

大本営側に出す譲歩案は以上だ

譲歩案はすぐに決まった

 

 

 

問題なのはここからだ

 

 

古今東西交渉の際の言い方や書類の文言で意味としては、同じことを言っているはずなのに伝わり方が180度変わってしまうことがあるのは必定だ

 

また、あえて小難しい文言を組み込みわかりづらく、あらゆる受け取り方ができるようにするなどの工夫をしなければならない場合もある

今回は、後者のほうに気を付けなければならない

 

 

 

そのようなことをしなければならない理由

 

石炭以外にも地下資源が発見されているからである

 

 

 

それも特大級にマズイものだ

ウランだとか天然ガスなどの兵器やエネルギー資源ではない

古代からずっと争いの種になってきたものである

 

考えてみれば駿河諸島や伊豆諸島は富士火山帯に含まれ、海底には多くの熱水鉱床が存在することを失念していた

 

 

こればっかりは、馬鹿正直に報告することはできない

影響が日本だけにとどまらず、世界にまで及ぶためだ

しかし、妖精さんは採掘を始めてしまっているため止めることはできない

 

 

 

 

 

「次のやつ・・・・・・あれ?切れてら・・・・・・。」

 

給湯室の冷蔵庫の中にはエナジードリンクは入っておらず、飲み物は麦茶や水しか入っていない

吹雪は龍驤とともに瑞鶴たちがいる八丈島に行っている

 

「しょんないで散歩ついでに下の自販機にでも行くか・・・・・・。」

 

頭を掻きながら執務室を出る

扉の横にあるホワイトボードに外出中と書いて施錠する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧建屋と新建屋の間に設けられた中庭に自販機が設置されている

自販機に210円を入れ、ボタンを押すと、青と銀色の缶がガコンという音ともに出てきた

近くのベンチに腰掛けながら缶を開けて、ちびちびと飲む

 

 

 

 

「あっいたいた!おーい提督!おーーい!」

 

 

 

飲むのをいったんやめて右側を向くと、遠くに衣笠の姿がぼんやりと見えた

手を振り返し、レッドブルを一気に飲み干した

 

「執務室にいなかったから探し回ったのよ?」

「え?スマホに連絡くれりゃよかったんじゃ・・・・・。」

「執務室の中から着信音がしたのよねぇ?」

 

少しジト目で返された

ポッケをとっさにたたくが、何も入っていない

 

「ちょっと寝ぼけてたみたいだわ。」

「まぁそれは置いておいて、提督何か忘れてない?」

「んん・・・?なんかあったっけ?」

 

提督は首の後ろに手をやり、ながらひねる

 

「加古から呼び出されてなぁい?」

「あっ!!」

 

提督は思い出した

術後の経過観察の診断をしたいから来てほしいと言われていたことに

 

「やっば・・・。加古は・・・・・・?」

「今日は学会のほうに行ってていないわ。で、経過の診断の説明を私が頼まれたの。」

 

ついてきてといわれ、医療棟へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも加古が座っている椅子に、衣笠が腰をかける

机の上に、何枚かの書類があり、きちんと説明用、渡す用と分けられている

 

「で、加古の診断だけど・・・もう大丈夫みたい。」

「そうかね。感染症とかいろいろ脅かされたからね。」

 

規則正しい生活を!と珍しく厳しい口調で注意されたのを思い出す

普段昼寝に明け暮れるやつに言われても説得力がないと思ったのは内緒だ

 

「で、これを言ってほしいって言われたの。」

 

そう言って説明用と書かれたファイルから紙を取り出す

 

 

 

 

『糖分摂取を控えろ!!!』

 

 

 

 

「・・・・・・。そんな糖分とってるか?」

 

甘いもの好きの自覚はあるが、毎日毎日お菓子を食っているわけではない

ほかにも、酒を毎晩飲むわけでもないし、過食の傾向もない

少し運動不足かも知れないが、それ以外に思い当たることがない

 

「さっき飲んでたじゃないの・・・・・・。」

「・・・レッドブル?」

「エナジードリンクの飲みすぎなのよ!!」

 

確かに、今は頻度こそ減ったものの1回の徹夜で1本、そのまま仕事をするためさらに2~3本は飲む

これが2徹、3徹を続くともっと飲むことになる

 

「血糖値が健康と境界のぎりぎりのラインになっちゃってるのよ!」

「うぇ・・・まじか。」

「せめて飲むなら・・・そうねぇ・・・・・・。コーヒーとかは?カフェインが高めだから大量に飲まなくて済むんだけど?」

「コーヒーねぇ・・・・・・。砂糖とか入れちゃダメ?」

「・・・どれくらい入れるかによるわね。」

 

そういうと、席を立って隣の部屋へと消えた

戻ってきた衣笠の両手にはコーヒーの入ったカップが握られていた

机の上に置くと、再び隣の部屋から砂糖とクリープをもって戻ってきた

 

「これで試しに作って飲んでみて。」

 

提督は苦々しい顔をして砂糖を1杯、2杯、3杯と入れ、クリープを2回いれたのち一口飲む

 

「・・・・・・。」

 

提督は再び砂糖の入った瓶を取り、4杯、5杯と入れて飲んだ

そして、これでいけるとどや顔をした

 

 

 

「意味ないじゃないの!!」

「あ、ダメ?」

 

3杯目は顔が引きつり、4杯目は思わずえっ?という声が漏れた

5杯目に突入した時は黙って頭を抱えていた

 

「もうこれ砂糖湯じゃない!」

「いやぁ・・・コーヒーって飲んだあと、舌べらに残る苦いのが苦手なんだよねぇ。」

 

提督は5杯も入れてなお苦さを気にしている雰囲気だ

 

「これじゃエナジードリンク飲んでるのと変わらないじゃないの・・・・・・。」

 

呆れたように頬杖を突く

そして、低い声でえー・・・とうなりながら何かを考え始めた

 

「いやまぁ・・・・・・飲みすぎに気を付けるでさ。ちょっと急ぎの仕事あるから失礼するね。」

 

提督は立ち上がると、肩をぐるぐるとまわしながら出ていこうとした

 

「!それよ!」

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの医療棟ではなく、執務室に戻ってきた

提督はベットにうつぶせになっていた

ソファーやローテーブルなどは妖精さんの不思議な力でどこかへと収容され、代わりに病院などに置いてあるビニール生地のベットが一つあった

そして、そばには白衣を着た衣笠が立っていた

 

「そもそも眠気覚ましを飲むのが悪いのよ!マッサージをすれば眠気以外にも疲れもとれるはずよ!」

「え・・・?それって俺大丈夫なのか・・・?」

「・・・ちょーっと痛いかもしれないわね。」

「まって!ちょっとまって!最初の間怖いんだけど?!」

 

衣笠は抵抗されないうちに足をつかむと、ツボを押し始めた

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「え?ガサさん・・・・・・押してる?」

「押してるわよ?結構きつーく。」

「・・・・・・痛くも痒くもない・・・。」

「うそ!」

 

衣笠は驚いて、今度は肩のほうをマッサージする

少しお仕置きの意味も含めて痛めに施術をしているはずだが、それが効果がないということは相当凝っている状態だ

衣笠は半分意地になってきつめに押すが、提督は時々あー・・・と気持ちよさそうな声を出すだけだった

 

「痛いと・・・・・・聞いて・・・・・・。」ゼーハー

 

扉が重々しく開き、若葉が息を切らしながら入ってきた

何やら、「くる・・・しい・・・が・・・・・・悪くない・・・・・・。」

と言っているのでスルーした

聞けば、川内から特急の書類を預かり鎮守府内を探し回っていたようだ

川内はまだ根回しが終わっていないらしく、そのまま出て行ったそうだ

若葉にお礼を言って、ベットに寝ころばしてやる

そして、執務机に座り書類を読む

 

 

 

 

 

「はぁ・・・・・・。」ホントニヤッテイイノ?

「・・・・・・!」イッ・・・!ダガワルクナイ!

「!」ナンカノッテキタ!ホラホラー!

 

若葉が声をあげながら悪くない!と叫んでいる中、提督はぼそりとつぶやいた

 

 

 

「助かった・・・・・・。」

 

 

 

書類には

 

『台湾沖航空戦の戦果誤認と輸送船団被害、及び捷一号作戦発動の報告』




新年あけましておめでとうございます!
少し遅れましたが今年もよろしくお願いします!

と、新年一発目でいかがわしいタイトルですが健全な内容でしたはい(え?若葉?)
そして本編ではこれからようやく秋イベに入っていきますのでよろしくお願いします
がたが来ていたノーパソを買い替え調子も上々!
12月のような更新率にならないよう気を付けていきます!


無事長波様を改二にしてやれやれと思ったら新春任務の最後がまさかの5‐5・・・
初めて行ってまいりました・・・

でもぶっちゃけると4‐5のほうが難しいというのが作者の所感でした
資源消費を度外視すればそう難しくはないと思いますはい
それをかたずけたら今度は駆逐、軽巡、戦艦に改二・・・
設計図足りんわボケー!!と荒れ狂っておりましたはい
幸いにもレイテ参加艦の大半のレベリングが終わり、70以上にはもっていっているのでイベントは安心できそうかなぁという次第です

駆逐は絵師のイチソさんのツイートから村雨、軽巡は能代が改二かなぁという予想です
設計図足りないヨ・・・


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駿河諸島鎮守府の協定

大本営 大将執務室

 

部屋の主である桐月は無表情で目の前の書類を見ていた

正確には、無表情を装っているだけであり顔色が優れないのが分かる

 

対面には腰を掛け、腕組みをしながら下を向いた提督がいる

横には、ジュラルミンケースを携えている

 

 

大将が書類を読み終えると、深いため息をついた

気分を落ち着かせようとしたのだろう

タバコを取り出そうとして落とした

提督はそれを見て、すみませんとつぶやいた

 

「・・・・・・なるほど。相分かった。これは確かに受け取っておく。」

 

そういって、今度は大将が別の書類を提督に渡す

 

「多分もう耳に入っているじゃろうが、先日ブルネイやトラックなど各泊地から出港した船団が深海棲艦によって襲われた。同時に、大本営主導で行われた台湾沖航空戦が戦果誤認をしていたことが発覚した。」

 

そう言いながら、東南アジア方面の地図をテーブルに広げた

 

「ブルネイから出港の第一船団の構成はタンカー船、貨物船が各25隻。護衛していた艦娘は4つの艦隊からなる24人。台湾沖で艦隊に襲われタンカー、貨物船は2隻を残して撃沈。艦隊も撤退する際、殿を務めた艦娘が複数消息不明となっとる。」

 

大将が地図を指をさしながら説明する

 

おりしも、月に一度組まれる大船団が襲われた形だ

予定では高雄、那覇と経由して鹿児島港で西日本各港へと輸送する予定だった

また、同規模の船団がもう2つ出港が予定されていた

しかし、護衛を行っていた艦娘の伝令により第三船団は出港中止、第二船団は10隻ほどが撃沈、15隻が何かしらの損傷こそしたもののブルネイ泊地へと逃げ延びた

 

また、トラック泊地から駿河諸島へと向かっていた船団も被害を受けた

こちらは、輸送の復路で荷物こそ少ないが隻数は先ほどの船団と同規模だった

理由は、トラックへと一度輸送し、そこからパラオ、ショートランド、ブインにラバウルの泊地へと分かれていくためだ

その船団が、再びトラックへと集合し駿河諸島へと向かっていたところを襲われた

こちらは沿岸部を通らず、ほぼ直線で向かう

そのため、護衛の艦娘の艦隊も多く、艦隊としては10艦隊60人もの護衛があった

しかし、船団の7割が撃沈残った3割も大破や中破などで帰還し、すぐに航行できる状態ではなかった

同じく艦娘も殿を務めた複数人が消息不明となった

 

それから数時間後、台湾沖航空戦で撃沈確認されていたはずの姫級や戦艦級、空母級などを偵察艦隊が発見

多少のダメージを負わせたものの、敵戦力がほぼ健在であり航空隊の誤報であったことが発覚した

 

 

 

 

 

 

 

結果、現状日本が所有する大型の貨物、タンカー船の4割が被害を受けたことになる

 

 

 

 

 

 

 

本土への輸送予定の貨物については問題ない

輸送予定の燃料や資源関連はこちらが補填分を空いている貨物、タンカー船を使ってピストン輸送で本土に運び、陸路で運搬すればいいからだ

 

 

 

が、その輸送を行う船はそうもいかない

安全面での整備や点検のローテーションを考えるといずれ支障が出てくる

ほかにも、人的被害が1000人を超える見込みが出ており次回の輸送作戦が経験者が不足する見込みだ

 

 

 

 

なにより最大の問題は深海棲艦の侵攻がフィリピンに集中されていることが頭を悩ませることになっている

日本は、先の大戦みたく本土の拠点と南方の拠点が分断されかけている

 

本土への資源に関しては先述の通り問題ない

しかし、今度は逆に南方方面の資源輸送が問題になってくる

船団を組もうにも圧倒的に不足しているうえ、臨時で船を回送しようにも航路が不安定で不可能

艦娘たちの輸送量では数十倍の往復が必要であり、それだけ時間も艦隊の危険度も増す

 

この状況を打破するには南方の各泊地に資源があるうちに本土と南方方面からの挟撃するしかない

また、それに伴って不足した貨物、タンカー船を国内の全造船所をフルに使い輸送艦隊の再建を目指すためしばらく各資源や電力不足も懸念される

 

こちらとしては願ってもないチャンスだった

戦力増強をするのは襲撃に備えるためといえるうえ、むしろ石炭の供給も浮いた分をほかの場所へとまわしたい

なにより、ここまで魅力的な提案に少しは怪しまれるだろうが、事態は急を要す

承認される可能性が高い絶好のタイミングだった

 

 

 

大将は簡単な説明を終えると提督の提出した報告書を軽くたたき

 

 

「・・・・・・。で、気になるのはここなんじゃが。」

 

書類のあるページを出した

そして、地図の上に重ね、ある行をなぞる

 

 

『石炭以外にもその他希少資源の鉱物が石炭に比べ少量ながら産出されたことが確認された。採算が取れるラインに乗っているため今後石炭の採掘作業に並行して行っていく予定である。』

 

 

「これはどういうことかの?」

「そのままの意味です。希少資源が石炭に比べて微量ですが産出が確認できました。」

 

提督は予想していた質問にあえて余分そうな言葉を付け加えた

 

「・・・・・・文月。」

「はぁい。」

 

大将は少し間を置き文月に指示を出した。

文月はカーテンを閉め、部屋に鍵をかける

 

「まぁなんじゃ。これからものすごく忙しくなるからの・・・。しばらくゆっくりしていくといい。」トントン

 

大将はそう言いながら近くにあったメモ用紙にあることを書いて、テーブルを指で軽くたたいた

 

『ここからは筆談でいくぞ。』

 

提督はうなずくと、他愛もない会話を始め、手元で言葉を書いていく

 

『で?実際のところ何が出たんじゃ?』

『銀にレアメタルなどがトン当たり100g程度産出し、双方とも一応採算が取れるラインです。』

『それだけか?』

『・・・・・・。こちらも産出しました。』

 

提督は、ジュラルミンケースの中から小箱を取り出し、大将の前に置く

大将が渋い顔をしながら開ける

そこには、金色に輝く硬貨が入っていた

表には富士と2つの島、駿河諸島を模した図柄が刻印されており、裏面には錨のマークが入っていた

ケースには、999.9と純金を表す純度が書かれている

 

それを見た大将は天を仰いだ

 

しばらく会話を続けながらも、その姿は変わらなかったが落ち着いたのだろう

10分ほどしてようやく書き始めた

 

『トン当たりの産出は?』

『トン当たりこちらの重さ1オンス硬貨が32枚強・・・。それもおそらくこの鉱脈はまだ末端と思われます。』

 

それを見た大将は気丈にも会話を続けたが、よろよろと立ち上がり壁に頭を打ち付けるとしばらくそのままだった

 

 

 

金というのは知っての通り希少性から通貨や装飾品として使われてきた

しかし、経済の規模が大きくなり、金を通貨として使用するには使い勝手が悪くなってしまった

そのため、現在では投資や安全資産、装飾品として、あるいは一部は工業製品としての利用価値の側面が強い

 

 

もともと金の価格というものは存在する量が劇的に変化しないことからその価値が保たれてきた

しかし、駿河諸島から伊豆諸島にかけて存在する金の埋蔵量はその価値を激変させる可能性を秘めている可能性が非常に高い

幸いにも、大量に採掘して市場に流通させなければ直接的な変動は防げる

あくまで直接的であり、もし推定とはいえ埋蔵量の情報が漏れた場合のことは言わずもがなである

 

 

 

どうにか気を持ち直した大将が再び提督の前に座ると筆談を再開した

 

『して?要求は?』

『上層部に駿河諸島、伊豆諸島の地下資源採掘権をお願いしたいのです。』

『・・・・・つまり今現在の石油、鉄、ボーキサイトの制限を撤廃しろということか。』

『はい。』

 

大将はしばらく考えたのち、了解したと返答した

すると、先ほどまで大将の横の秘書艦の机にいた文月がすすっとこちらによってきて紙を置いた

 

『耳本さん。金の加工ってできる人いますか?』

『残念だけどいないです。』

『そっか~残念・・・・・・。』

 

提督は不思議そうな顔をした

すると大将が少し気恥しそうな顔をした

 

『実はずっと前からペアのものを探していてな。わしらがケッコンして50年の節目じゃからの。』

『そうでしたか。地金ならいくらでも提供できるんですけどね・・・・・・。』

 

気にするなというと今まで会話に使った紙をまとめると火のついた暖炉へと放りこんだ

そして、会話を世間話から着任を取り下げた娘の話になった

 

 

 

「新規着任の最新鋭の防空駆逐艦を何とか用意したんじゃがそういうことなら仕方ないの・・・・・。」

「どこか別のところで活躍させてやってください。」

「・・・・・・まぁトラックにでも送ってやるとするかの。そっちに着任予定で縁も深いあやつに途中まで護衛を頼むとしよう。」

 

この件がかたづいたらの話じゃがなと付け加えた

 

「ところで・・・追加なんじゃがこれを榛名君に渡してはもらえんかの?」

「何ですこれ?」

 

普通サイズの茶封筒をテーブルに置いて、すっとこちらに回す

 

「まぁ・・・予約表ってとこじゃな。」

「拝見しても?」

「構わんよ。」

 

封筒を開けてみると、確かに予約表だった

予約されている部屋は離れの一軒であり、そこは電波状況があまりよくなくかなり価格を抑えて提供されている部屋だった

緊急時に連絡がつかない可能性があるというのは提督や艦娘として致命的なため、そこの棟はあまり埋まることがない部屋であり予約は不要といいってもいいくらいだ

 

「って何ですこの期間?!」

 

提督は宿泊日数に驚いた

12月11日から12月26日という2週間丸々借り切るうえ、宿泊人数が1人とどう見ても怪しい予約表だった

 

「大将1人・・・なわけないですよね?」

「あたりまえじゃ!どうせ行くんだったら文月ちゃんと2人の予約にするわい!」

「ええ・・・?それじゃあ・・・・・・!」

 

提督はあることに気が付いた

特記事項に、停電時の電力供給についての質問があったり、食事は部屋食かつ外に置いてくれればいいという要望があった

そして、何よりもクリスマスの前後でも人が増えるような特記事項がないこととネット環境が良くないことからある可能性が浮上した

 

「・・・・・・まさか秋雲じゃないですよね?」

「お、正解じゃな!」

「やっぱり・・・・・・。」

 

印刷所の締め切りが大体25日であり、停電を気にするのはデーターが飛ぶことを恐れるため

食事が部屋食かつ外においてくれればいいというのは、邪魔をしないでほしいという意思表示

 

なにより、ネット環境が良くないというのは

 

「缶詰めになるためですね?」

「大正解じゃ!」

 

それを聞いた提督はやっぱりと苦い顔をした

うちは冬の期間はどちらかというと閑散期に当たる

夏であれば海水浴という目的の客が多いが、冬になると海水浴をする人はいない

また、温泉も冬はせっかくだから雪国に行く人が圧倒的だ

逆に、雪国の基地の団体が来るが、それも大抵1泊くらいで帰ってしまうことが多い

要するに部屋が駄々あまりしてることが多い

 

「まぁお取りしておきますけど・・・・・・。珍しいですね。」

 

そういうと大将はこっそり耳打ちした

 

「実は今年のイベントはエスケープが無理そうでの・・・秋雲に頼んだら代わりの条件がこれだったんじゃ。」

「今年のイベントは・・・ってまさか!去年の最後3日間にやたらめったら仕事が回ってきたのって?!」

「あっ・・・・・・。大丈夫じゃ!今年はないからの!」

 

大将は明らかにしまったという顔をし、とっさに取り繕う

 

「今年はじゃなくて毎年なしにしてくださいよ!」

「お願いじゃぁ・・・!あのサークルさんの文月の会場限定配布品がどうしても欲しいんじゃぁ・・・・・・!」

「ええい泣きつかないでくださいよ!!」

 

とっさに文月に助けを求めようとしたが、いつの間にか部屋にはいなかった

 

「おねがいじゃぁ!秋雲に吹雪のグッズも頼むからぁ!」

「だー!鬱陶しい!わかりましたよ!受けますから離れてください!!」

「約束じゃぞ!」

 

それを聞いた大将はあっさり離れた

提督はやれやれと服装を整え、ジュラルミンケースに荷物を詰めた

 

「それじゃあ今日はそろそろ失礼します。」

「うむ。ご苦労だったのう。」

「あ、あとあれ忘れないでくださいよ?」

 

ドアを開けて出ようとしたとき、提督が思い出したように振り返って言った

 

「む?何をじゃ?」

「秋雲に頼むの。それじゃあ失礼します。」

 

大将はしばらくして誰もいない部屋で返事をした

 

「・・・・・・あいつもそういうのほしいのか。」




ようやく秋イベの話にこぎつけてまいりました(少し話題が年末に近いものも混ざってますが)
次回から秋イベ・・・はそこまで中心に入っていかずにさらりと流す予定だったりします(;´∀`)

天龍、龍田のレベリングを急ピッチでやっています(;´・ω・)
というかどっちなのか特定できないのがつらい・・・


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駿河諸島鎮守府の作戦支援 その1

「ではそういうことで・・・・・・。」

 

解散の掛け声とともに両開きの大きな扉があき、ぞろぞろと人が出てくる

人によってはこれからどうだという声やあそこへ行こう

そういった会話をしながらだらだらと帰る人ごみの中、足早に間をすり抜け一直線に向かう

 

「はぁ・・・・・・。ただいま。」

「おかえりなさぁ~い!」

 

ため息とともに、帽子を外し革張りの椅子に腰を掛ける

 

「会議はどうだったの?」

「あいつの要望は全部通したわい。」

 

大本営大将室

 

先日、提督から受け取った報告書を、大将は今日の臨時会議で提出した

台湾沖航空戦の戦果誤報の対応で忙しい上層部会は、提督の考えた通り、異議や詳しく突っ込んだ質問が出ることなく可決された

もっとも、金のトン数当たりの含有量を問われていないため、問題の先送りではある

 

「お疲れ様ぁ・・・・・・。」

 

文月はいたわるようにやさしい言葉で大将を慰めつつ、お茶を机の上に置く

 

「ありがとうよ・・・・・・。それにしても胸糞が悪いわ・・・・・・。」

 

お茶を一口すすると少し粗目に置く

 

 

もともと台湾沖航空戦は弱体化したタカ派がハト派に妥協して持ち掛けた作戦だった

 

タカ派の中には艦娘不要論を唱えるグループも存在し、作戦の発案者でもあった

本来タカ派の主流の考えは戦線の拡大であり、そのために艦隊の行き届きづらくなるところをどうカバーするかが問題であった

また、ハト派としても艦娘の負担軽減と戦線維持の方法を模索している最中であった

 

結果としては、利害が一致しており、すんなりと実行へは移せた

 

 

 

が、作戦は失敗

それどころか、本土を危険にさらすことになってしまった

批判や責任の追及はタカ派に行くと思われた

 

ところが、そうはならない

タカ派は、先だっての不祥事からとても作戦を主導できないとみて作戦の立案をタカ派、主導をハト派と分けてしまった

 

 

 

何が起こるかは想像にたやすい

責任の押し付け合いが勃発したのだ

 

タカ派としては、作戦はよかったのにハト派がめちゃくちゃにしたという主張を展開

それに対してハト派は、根本である作戦が悪く、責任はタカ派にあると主張

 

 

 

会議は踊る、されど進まず

 

 

 

言いえて妙だ

かの、ウィーン会議に状況は似ている

各陣営は言いたい放題言い、結局時間になればこうして解散して各々遊びに繰り出す

今決めるべきことは責任の所在ではなく、分断されそうな状況を打破するためにするべきことだ

幸いにも、駿河諸島の案件が打破する一つの足掛かりになっていたことが救いだ

 

「しかたないのう・・・・・・。砂安中将に根回しを頼むように連絡を。」

「了解~!」

「あとでわしに矛先が向くじゃろうが・・・。まぁ仕方ないことじゃ・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

「第一から第五滑走路はトラック方面から各方面に散っていく部隊、第六から第八はトラック止まりで第九が八丈島との連絡線にして頂戴!」

「トラック方面から来る連中はどうするんや?」

「八丈島経由で本土かうちに来てもらう。緊急のもの以外はそこで止めちゃって!」

「了解やで!」

 

龍驤は敬礼をするとすぐに出て行った

入れ替わりに深雪が入ってきた

 

「司令官!指示通りこっちに向かってくる船団は全部八丈島方面に誘導しといたぜ!」

「ありがと。そのまま八丈島の基地に検査のほうをお願いして!で、こっちでは積み込みだけの状態にするから!」

「了解!」

 

深雪が出ていくと今度は古鷹からの電話が鳴る

 

『提督!日間の目標増産ペースが少し追い付かないんですが備蓄分を開放してもよろしいでしょうか?』

「それで今は何とか対処して!予想なら備蓄の20%開放で済むはずだからそれを超えたらまた連絡して!」

『了解しました!ご無理はなさいませんように・・・。』

「失礼します!追加の決済をお願いします!」

 

電話を置くと、親潮が山のような書類を置く

そして、小走りに退出していった

 

「会議は踊ってるだろうにな。」

「大将さんもいつもこうして頼りがいのあるところを見せてくれればいいんですけどね。」

 

追加の書類を裁きながら吹雪と会話をする

そのすべての書類に、大将の判が押してある

陸戦、陸攻や局戦などの機体を南方方面への回送や西日本方面へ物資輸送などの仕事が一気に来た

そして、二、三日中に駿河諸島を経由してトラック方面へと向かう複数の大艦隊が寄港するという連絡もあった

 

本土で行われている会議は踊っている

このような決定ができるはずがない

 

 

ではなぜこのような指示が回ってきたのか

 

 

大将が独断で決定したのだろう

おそらく今頃は砂安中将あたりが各方面に根回しに動いているはずだ

会議が踊ってさえいなければ、上層部の指示のもと順序立てて比較的ゆっくりと動いたはずだ

しかし、大将の独断で現在は動いている

そのため、とりあえず解決しなければならないことや捷一号作戦の下準備を進められるだけ進め、引っ込みがつかないところまでもっていく荒療治をとった

そのしわ寄せが駿河諸島に集中している

 

基地航空隊の本土から南方方面への回送や輸送作戦の失敗した分を補うための輸送船団がひっきりなしにやってくる

過密になりすぎると事故の危険性が高まるため、一方通行の流れを作った

 

 

本土から駿河諸島や南方へと向かう航空隊は駿河諸島へ

駿河諸島や本土へ向かう航空隊は一度八丈島を経由する

 

輸送船団は本土から駿河諸島へ向かう船団を一度八丈島へと回送してから駿河諸島へとくるという方式にした

 

 

 

事故の可能性が軽減できたとはいえ人手がとても足りない

基地航空隊は龍驤だけでなく、鳳翔さんと捕虜(仮)になっているヲ級を動員してギリギリさばいている

採掘、生産は古鷹だけでなく、加古や衣笠、ル級にリ級、補給関係は望月、ゴーヤ、夕張、宿泊関係は山風、間宮さん達がそれぞれの部署を閉めて補助に入っている

深雪、皐月、阿武隈の3人は島の警邏や近海に出て船舶の誘導無線を担当している

 

捕虜(仮)まで使って何とか回ってはいるが、それはあくまでも八丈島へと仕事を多少回してこの状態である

それを見越してか、大将が輸送船団に着任予定の子を随伴させてくれたらしい

本来であれば、予定の3人全員を送りたかったらしいが、軽空母の子は臨時の船団護衛

もう1人もこの騒ぎで大本営へ移動ができないということだ

 

 

 

自分への利害しか考えない者が多い上層部会がまとまってくれればいいのだが、そんなのはあり得るはずがない

 

 

いや

 

 

利害を考えるのならまだいいが、先のことを考えてない者が多すぎる

 

ここで早急に手を打たなければ最悪、戦線の後退や本土への被害が及ぶ

それをわかっているのかわかっていないのかはわからない

しかし、最優先に頭に浮かんでいるのが自身の立場だから建設的な話にならない

 

 

 

 

「あとで砂安中将や深打に連絡しておかないとな・・・・・・。」

「司令官いるかい?」

 

ぽつりとつぶやくと皐月がゆっくりと入ってきた

 

「ん?どうした?」

 

よく見ると皐月の黄色いネクタイに赤い点がついていることに気が付いた

そういえば今日のお昼のメニューの一つにオムライスだった事とふと思い出す

時間もヒトヨンヒトマルと昼休みも忘れ、間食休憩に割り込んでいることに気が付いた

しかし、とても丸々は休めそうにない

 

「吹雪ちゃん。20分ほど一息を入れようか?」

「はい!ちょっと私は外で休んできますね。」

「はいな~。」

 

吹雪が出ていくと、提督は伸びをして皐月に何か飲む?と聞いた

 

「あっ!僕今日は間食係じゃないよ?」

「あれ?そだっけ?」

 

その言葉に、給湯室への歩みを止める

皐月は、その場で臨時の報告書と言って書類を渡した

提督は、ざっと斜め読みをして深いため息をついた

簡単に言うとお客様(ネズミ)が潜り込んでいたため、とっ捕まえたということだった

しかも、今回は艦娘ではなく人間だったうえ、雇い主は

 

 

「ハト派の派閥からの派遣ね・・・・・・。」

「もう聞き出すことは聞き出して憲兵隊に引き渡し済みだよ。」

 

このタイミングでハト派から探りが入るとなると先の報告書が発端だろう

もともとハト派は劣勢だったからこそ一枚岩に見えたが、優勢に転じればこの様だ

 

「抜き出していたのは連絡線関係か・・・。・・・・・・ん?」

「どうかしたかい?」

 

提督は皐月のネクタイをじっと見る

 

 

あれってもしかして・・・

 

 

提督の視線に気が付いたのだろう

ネクタイを見て「あっやば」と言う

 

「え?今やばって・・・・・・。」

「あっこれは・・・・・・ケチャップだよ?」

「ケチャップ()・・・・・・?」

「お昼のやつだよ!」

 

提督は少し渋い顔をした

川内に諜報を頼んでいる身としては身勝手だが、皐月に人間の相手をさせてしまったことを申し訳なく思った

 

「何はともあれご苦労様。引き続き頼んだよ。」

「まっかせてよ!」

 

頭をなでてやるとニコニコと微笑んで、飛びついてきた

教艦を務める艦娘はある程度の戦闘能力のほかに白兵戦をこなすことができるように訓練されている

ゆるダルな望月でも白兵戦時には自分が勝つのは難しい

ましてやその望月を手玉に取る皐月にはかなうはずもない

 

 

 

「ほれ!まだ仕事やらにゃんだから離れて。」ガチャガチャ

 

引っ付いている皐月を引きはがそうとすると、何やらしゃがんでいることに気が付いた

よく見るとベルトを引っ張って外していた

 

「うぉい!おばかっちょ!何してんの?!」

「ネズミ捕りしたし司令官に上陸しようとおもったのさ!」

「さわやかな顔して言ってること最低だぞ?!」

 

結局、ズボンは引きちぎられてしまい、パンツ一丁で吹雪が戻ってくるまで格闘していたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちぇっ!あとちょっとだったのになぁ・・・・・・。」

 

皐月はしょんぼりとしながら自室に入る

ネクタイをとると、ジッと赤いシミを見る

きれいな赤い色で、油がにじんでいる

 

「ケチャップのシミ取れるといいなぁ・・・・・・。」

 

ため息をつきながら洗濯かごに放り込み、箪笥から新しいネクタイを取り出す

さっと結ぶと、背中から白鞘の刀を取り出す

鞘から抜き、目を細めて眺める

 

「あっ。」

 

見れば、先のほうに赤黒い色が少しついている

まずいなぁといいながら、道具を取りだしに押し入れへと向かう

 

「司令官に心配かけちゃったかなぁ。」

 

道具の箱を見つけ出し、手入れを始める

傷がないことを確認しながら、打ち粉をふる

刀身の油をぬぐい、刃文を確認すると再び、油を塗る

 

「これで良し!柄のほうは後でになっちゃうな・・・・・・。」

 

パチンと音を立ててしまう

 

「今はネズミ捕りで頑張らないとね!司令官に仇名す者はちゃんとやらないとね!」

 

キリっと顔を引き締め警邏に戻っていく

その頭の中ではもう数匹捕まえれば上陸(意味深)させてくれるかなぁという煩悩が渦巻いていたりする




レイテへと突入!
といっても今回も後方メイン(と政争)ですが・・・

※前回大将と文月の結婚年数が10年となってましたが、正しくは50年でした大変申し訳ございません

結局改二は村雨と龍田が同日に来るというものでしたね
自分は天龍ちゃんをメンテ前日に75にしてやれやれと思いツイッターを見て

龍田やん・・・

と軽く絶望しておりました
結局リランカを突貫で回し、何とか一日遅れで改装までこぎつけました(白目)
あとは大和さん出れば完璧なのに・・・(ダイヤモンド4姉妹が良く出ますはい)


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駿河諸島鎮守府の作戦支援 その2

「提督?いったい何の用だい?」

「忙しい時に悪いね。まぁそこに座って。」

 

わかったというと、時雨は不思議そうな顔をして執務机の前に置かれてるソファーに腰を掛ける

提督は作業を一度やめ、時雨のそばに行き、二つ折りの紙を一枚渡す

そして、再び机に戻ると作業に戻った

時雨は、手元の紙と提督を交互に見ながら不思議そうな顔をする

 

「提督。こういうのはほかの書類と一緒に・・・。」

「まぁ開けてご?」

 

時雨が首をひねりながら開ける

するとそこには

 

 

 

『駿河諸島鎮守府所属 駆逐艦 時雨 を 佐世保第二鎮守府 への異動を命ず』

 

 

 

「提督、一体どういうことだい?」

「どうも何もそのままのことだけど?」

 

時雨は鋭い視線を提督に向ける

提督は顔を合わせず書類をさばいている

 

「僕が・・・・・・どうしてだい?」

「・・・・・・。」

「答えてくれないのかい・・・・・・?」

「・・・・・・。」

 

話しかけてもこちらを見ようともしない

その様子に時雨は提督が考えを変える様子がないことに気が付いた

時雨は力なく立ち上がると、とぼとぼ扉に向かって歩き出す

 

 

 

 

 

 

 

また僕は捨てられるのか

 

 

 

 

 

 

 

そう思いながらドアノブに手をかける

それと同時に提督が口を開いた

 

「・・・・・・。時雨。書類をちゃんと見たのか?」

「え?」

 

時雨はその言葉に、改めて書類を見る

 

 

 

 

『指令』

 

 

 

 

「え?!あっあれ?これって?」

「最近余裕がなさそうだったんでわざと紛らわしい文書にしたんだ。許してちょうだいな。」

 

提督は、書類をいったん置き時雨に顔を向ける

背伸びをしながら立ち上がると、書類束をつかんでソファーに腰を掛けながら、座るように勧める

 

 

「おーい。」

 

 

あまりの急展開についていけなくなり、固まって動かない時雨の前で手をひらひらとするが、反応はない

 

 

 

 

 

スリガオ海峡海戦

 

レイテ沖海戦の中の一つであり、山城を旗艦とし、扶桑、最上、満潮、朝雲、山雲

そして、時雨の計7隻で構成された西村艦隊が、レイテ湾を目指す途中にあるスリガオ海峡で起きた海戦である

 

とはいっても、海戦とは名ばかりだった

 

西村艦隊側はT字不利なうえ、戦力差は実に10倍近く

一方的に砲火、雷撃を浴びせられ、各個撃破、落後していった

命からがら戦闘域から離脱できたのは最上と時雨だけで、その最上も大破状態のところを、志摩艦隊旗艦の那智と衝突し被害が拡大

夜明けとともに開始された空襲がとどめとなり、艦を放棄し戦没となった

 

西村艦隊で唯一生き残ったのは時雨だけだった

 

 

話を現在に戻そう

 

時雨は過去のトラウマを寝ている間に想起することがある

それを対価に、未来予知をぼんやりとではあるができる

今までも、誰が新しく戦列に復活するかや、作戦のターニングポイントとなる点など、重要な情報をもたらしてくれた

 

 

 

 

しかし、それは同時に時雨に負担をかけていることになる

見たくないトラウマをほじくり返されてうれしいものはいない

 

 

 

 

そんな中、改善の傾向があった

先だってのタカ派2名の事件

あれ以来、前の鎮守府の悪夢を見ることはなくなったという

 

 

 

もしだ

 

 

 

時雨のもう一つの大きなトラウマであるスリガオの悪夢を晴らせたらどうなるだろうか

 

推測では予知の能力が失われるだろう

だが、時雨の負担が減ることと天秤にかけるまでもない

 

 

 

 

佐世保第二鎮守府にいる彩雲からある連絡があった

 

 

『君のところの時雨をこちらに出向させてほしい。』

 

 

捷一号作戦は順調に進行していた

幸いにもルソン島にある飛行場は被害が少なく、陸戦や陸攻、対潜哨戒機などの回送は成功

東側にいた敵空母打撃部隊を壊滅させ、フィリピン北部の安全はひとまず確保、レイテ島へ向かえないようになった

 

問題となったのが肝心のレイテ島だ

作戦としては、北側からと南側からの挟撃戦にする予定だ

史実のレイテ沖海戦から艦隊名をとり、北側の艦隊を栗田艦隊

南側の艦隊で先行して突入する部隊を西村艦隊

後に続く艦隊を志摩艦隊と呼称することになった

 

しかし、見立てでは北側ルートの艦隊は配置されている敵の艦隊の情報から激戦が予想される

その場合、西村艦隊、志摩艦隊は栗田艦隊を待つことなく突入と決めていた

おそらくは、敵艦隊も栗田艦隊側に戦力を割くことになる

そうすれば、多少南側に配置される戦力が減り、作戦の成功率が上がることになるため北側の艦隊の戦いも無駄にはならない

 

また、重要になってくるのが史実艦の存在だ

深海棲艦の侵攻は先の大戦の海戦をなぞっていることが多い

そのため、その作戦に参加したことがある艦娘は潜在的な記憶がアシストされ、性能が上昇することが多い

去年の秋が特に顕著であり、ビキニ環礁に縁の深い酒匂、プリンツ、長門は性能が大幅に上昇していた

また、新たに戦列に加わったサラトガもその海域では性能の上昇が確認されていた

 

 

 

『お前さんとこにも時雨がいるだろ?どうしてまた?』

『実は・・・まだ欧州にいてね・・・・・・。』

『あらぁ・・・・・・。殿部隊に配置してたんか。』

 

夏に欧州へと派遣した艦隊は無事、欧州方面の戦線を立て直し、再び押し上げた

しかし、その戦線の補助をしている艦隊を一気に引き上げるわけにもいかない

あくまでも戦線を以前の状態に戻しただけであるからだ

 

かといって、このまま駐留を続ければ手薄な状態が続き、戦線の後退につながりかねない

 

そこで、妥協案として半分は引き上げ、残り半分が残って各国海軍の補助を行うことになった

その後は、段階的に撤退していく形でまとまっている

 

その駐留艦隊の中に、彩雲のところの時雨がいたのだ

 

急に呼び戻そうにも、時間がかかりすぎるし、向こうで抜けた穴を埋めるすべもない

そこで、白羽の矢が立ったのがうちの時雨だった

 

 

 

「なるほどね。でも補給部の仕事はどうするんだい?さすがに人手が・・・・・・。」

「それなら心配ない。山風が代理として付くし、今日は新しく着任する子がいるから代わりに阿武隈も補助につけよう。更に川内も一度戻ってきて補給部の補助に入ってくれるんだ。」

「心配いらないってわけだね?」

 

時雨は少し考えるそぶりを見せた

確かに、ここ最近見る夢はスリガオの悪夢がセットになった予知夢が連続している

提督のカマかけにあっさり引っかかったのもそのせいだ

 

スリガオ海峡の悪夢を晴らせるのだとしたらこれ以上のチャンスはない

幸いにも、あちらの西村艦隊のメンバーで顔見知りや同期がいるので、寂しい思いもすることはないだろう

 

 

 

しかし、それは予知夢の能力を失う可能性をはらんでいる

提督やほかの人たちにも頼りにされている能力を手放すというのはなかなか決断しづらいものがある

 

時雨は提督の顔を見る

 

 

 

 

「わかったよ。」

 

時雨は微笑んで頷いた

提督が自分を思っての事

どうして断ることができようか

 

 

「司令官。入るぜー!」

「それじゃあ僕は行くね。」

「おう。ちゃんとまた帰ってくるんだよ?」

 

 

外からノックの音がする

その声を聴いて、時雨が立ち上がった

提督の声にうんと笑って返した

 

 

「おっと!時雨が先だったか。頑張って来いよ!」

 

時雨が扉を開けると、目の前には深雪がいた

一瞬驚いた顔をしたが、屈託のない笑顔で肩を叩いた

その笑顔にありがとうと返すと時雨は出て行った

 

 

 

 

「ついに時雨は出向か・・・。どれぐらい行くんだ?」

 

先ほどまで時雨が座っていたところに深雪がどっかりと腰を掛ける

 

「2~3週間くらいかな?姫級を打ち取れれば早まるかもしれんけど・・・・・・。」

「その間は特に忙しいってわけか。やだねぇ・・・。茶でも入れてこよーっと。」

 

 

深雪は苦々しい顔をしてボリボリと頭を掻いて給湯室へと向かった

深雪は龍驤がやっていた警邏部を引き継いで、代表として頑張っている

給湯室から戻って来た手には、お盆があり、提督の前にお茶を置いた

礼を言って、お茶をすすりながらリラックスする

 

 

 

 

 

「ところで何か用があったんじゃないのか?」

「ん?ああ!新しく1人着任したからその連絡に来たんだった!」

「ああ。了解・・・・・・ってまだついとらんの?」

 

ついているのなら連れてきているはずなのに、一緒にいない

 

「いや。先に工廠で改装受けてもらってるよ。もうすぐ終わるから呼びに来たんだ。」

 

ちらっと見ると時間はヒトマルサンマル

到着予定時刻がマルキュウマルマルだったはずなので、もう終わっていてもおかしくない

 

「そうだったそうだった!今頃工廠で待ちぼうけ食わさせちゃったな。」

「まぁあいつなら大丈夫さ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕張ー?いるかー?」

「はーい!奥に来てください!」

 

アルミのドアを開け、声を張って呼びかけると奥のほうから声が返ってくる

コンクリート打ちっぱなしの床を歩いていき、声のするほうに行くと夕張ともう一人いた

 

ウェーブの黒髪に、ピンクのメッシュ、白色のリボンを付け、胸には夕雲型の証の水色のリボン

 

 

「改夕雲型駆逐艦の長波サマさ!よろしくな提督!」

「おう!おわったか!」

 

深雪が提督の後ろからすすっとでる

深雪を見た長波は一瞬びくっとして教艦と言って苦笑いした

 

「まっさかねぇ・・・。長波にすら改二を追い抜かれるとは思わなかったぜ。」

「あっあのですね!教艦!提督のほうに挨拶を・・・・・・。」

「おいおいおい。これからは同僚だってのに教艦だなんて水臭いぜ?」

 

見た限り、長波は深雪に苦手意識・・・というよりまだ生徒だったころの癖が抜けていないようだ

書類では、訓練を卒業したのはつい2年ほど前

1年ほど舞鶴に転出したのち、大本営の麾下で船団護衛に勤めていたようだ

転属希望を出していたのは、少しは戦闘もしたいということだった

何とか抑え、提督の前に長波が立つ

 

「ほうほう・・・間近で見たのは初めてだけど・・・・・・。」

 

しげしげと提督の顔を見る

 

「いい面構えじゃないの!これなら教か・・・いや深雪・・・さんが気にいるのもわかるねぇ。」

 

教艦と言いかけて言い換えたのは、後ろで深雪が悪い笑顔を浮かべたのに気が付いたからである

かといって、呼び捨てにチャレンジしては見たものの、結局さん付けになってしまった

それを聞いていた深雪はうーんといった後、まぁいいかと見逃した

 

 

 

「さっそくで悪いんだけーがこれ書きながら聞いてもらえるかい?」

「んん?了解。」

 

いつもの着任に関する書類を書き始めた

 

「で、さっそく質問なんだけど事務仕事は得意?」

「いやぁ。あたしはそっちに関しては不得手の方かな。」

「なるほどねぇ・・・。まぁここにいれば多少はできるようになるから。」

「うぇ・・・。まぁしょうがないか。」

「でもメインとなる仕事は要望どおり戦闘ありのところだからね。目安として週に一度くらいは海に出てもらうことになるかな。」

「おっ!いいねぇ!ドラム缶積んでの輸送任務に飽きてたところなんだ。っとほい!これでいいかい?」

 

長波はニヒヒと笑った

 

 

 

 

「だけどあれだな。深雪さんの机に飾られていた写真に写っている人と、この間観艦式で見かけた提督が同じなのはびっくりしたよ。」

「写真?」

「げっ!長波!」

 

書類のチェックをしながら、相槌を返す

 

「ああ。望月教艦と一緒に写った写真。肩章からして少佐の時のやつだと思うんだけど。」

 

記憶をさらってみると、思い当たるのが一つあった

あの問題があった後、とりあえず普通科に転出してすぐ卒業となった

任地(島流し)が決まるまでのひと月は大本営付きとなったのだ

そして、ここに着任が決まった時、出発前に写真を撮ったのだ

写真の中では深雪も望月も笑顔だが、いざ出発の時になるとすごく心配されたのが頭に残っている

 

「レポートとかの提出に行くといっつも見かけるから覚えちまったんだ。ある時なんてな?その写真の額を持ち上げて珍しくため息なんk・・・・・・。」

「おらぁ!」ゴシャ

「いった!」

 

少し意地の悪い顔で語り始めたとき、深雪が顔を赤くして頭をげんこつでぶん殴った

痛みから前かがみになりかけたところに、関節技を決める

 

「があああ!」

 

深雪はゆでだこのように真っ赤になっており、力いっぱいかけているため、長波は苦悶の表情で苦しんでいる

 

「えっえっと・・・・・・。」

 

提督は困惑していたが、とりあえず声を振り絞り

 

 

「それ以上いけない。」




時雨さんが出向して長波様着任回でした
次のイベが始まるまでには秋イベのことが終わる・・・はず?

最近燃料弾薬がカンスト寸前まで来たら、大型で大和狙いをまわすと鉄がゴリゴリ減るということに気が付きました
気が付いたら鉄だけ25万近くまで減っていてちょっと焦った作者です
武蔵改二!演習の旗艦に据えて頑張ってレベリングした結果、改二のレベルは何とかなりそうです!


・・・まぁ設計図2枚って言われたら困るんですけどね


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駿河諸島鎮守府の作戦支援 その3

前回のあらすじ
時雨の出向と長波サマ着任、深雪様の照れ隠死


長波の第二段階目改装で必要とする特殊資材についての報告書

 

1、艤装に既存データ以上の改装を行うため改装設計図を必要とする

2、12.7㎝連装砲の最終系となるD型を製造するにあたり駆逐艦を含めた戦闘データである戦闘詳報を必要とする

 

 

 

戦闘詳報とは、提督たちに上がってくる戦闘報告書のことではない

報告書に書かれているのは、あくまでも戦闘の経過と戦果についてである

詳報は、そこに艤装の稼働率や砲撃、雷撃の諸元、双方の具体的な損害などの技術的なデータが入ったもののことをさす

報告書だけでも一級の軍機であり厳重に鎮守内で保管されている

詳報に至っては、各整備室や工廠から直接大本営に送られ、管理されている

 

今回、改装で必要ということだったがどうやって調達したのか

 

 

 

それは、ちょうど前線から下がって、大本営に向かう艦隊の艤装から失敬したのだ

 

 

本来であれば、軍機漏洩で懲戒処分ものであるが、改二改装や新武装の研究、開発という大義名分のもと夕張と妖精さんがやり込めたらしい

 

 

 

「というか相談してくれませんかねぇ?大将に言うの俺なんだけど?メロンさん?」

 

じとっとした目線を目の前の夕張に送る

 

「いやその・・・どうしても急ぎだったから・・・ね?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・すみません。」

「よろしい。」

 

無言の圧力に夕張は居たたまれなくなって頭を下げる

 

とはいえ、各場所の妖精に根回しをしてうちが一番最初に試験改装するようにした関係上、仕方のないことではある

 

「んで。ずいぶんとまぁぶっ飛んだ性能だねぇ・・・。長波に限ってのことだけど。」

 

提督は12.7㎝連装砲D型の資料を上に持ってくる

 

「長波のほかにも、陽炎型の親潮でもパラメーターの上昇が確認されています。おそらくは夕雲型でも上昇が確認できるかと思います。」

「ほう・・・。ということは・・・・・・。」

「お察しの通り・・・量産性が非常に悪いです。」

「こちらが改修工廠でD型砲を作る際の必要物品です。」

 

そういって渡されたリストを見る

 

「・・・。これはえげつないねぇ・・・・・・。」

 

戦闘詳報が必須な他、新型砲熕兵装資材まで使う必要がある

また、強化に関してもD型には及ばないが、量産性が低めのC型砲を多く使う

 

特に厄介となるのが戦闘詳報についてだ

幸いにも、今回は原本データを入手できたためしばらくはこれを使いまわせる

 

しかし、もって一か月というところだろう

 

ずっと使いまわせないのは、妖精さんの存在がある

というのも、妖精さん達が一番嫌うのがルーチンワークだ

建造や開発などで、狙ったものが出せない原因の一つでもある

一度建造や開発ができたのに、もう一度やると同じものができることが少ない

 

原因は妖精さん達の飽きっぽいところだ

楽しいことに率先してやってくれるが、一度つまらないと判断すると途中で放り投げてしまう

対処法としては、一度建造や開発した詳細なデータは破棄

改修などに使うデータも最初から組みなおしたり、最新のものに交換するなどの必要がある

 

 

 

戦闘詳報の安定した入手手段はここでは難しい

当たり前だが、ここで戦闘は少ない

はぐれた駆逐級、時々軽巡級が迷い込んでくるくらいで、とても質のいいデータにはならない

お世辞にも使えるデータとはいいがたい

 

 

 

「戦闘詳報が使いまわせる今のうちに集中的に量産の態勢に入ることを具申します。」

「うん。お願いするよ。使えなくなったらいつでも相談してね。」

「わかりました!じゃあさっそく作業に入りますね!」

 

夕張が嬉々とした顔で退出していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし?』

「大将ですか?耳本です。」

『おお。何かあったかの?』

 

提督は長波改二についての事情を伝えた

 

『なるほどのう。戦闘詳報については何とかなるわい。』

「どうするんですか?」

『なぁに。柏崎に伝えて一回情報を引き出したら壊れるように設定すればいいじゃろ。そうすれば漏洩も使いまわしすぎの心配もない。』

 

コストが割高になる、手間がかかるなどのマイナス点があるが、漏洩や妖精さん達が放り投げて、低品質の武装が生産されるリスクを考えればトレードオフで収まる範疇だろう

 

『それと、そっちにはトラック泊地から移送されてくる戦闘詳報の保管を頼む。』

「うちでいいんですか?」

『トラックは大きすぎるからのう。今後需要が見込まれるものはそっちが保管するほうが都合がいいんじゃ。』

 

提督は電話を肩で挟むと、ノートパソコンを手繰り寄せた

保管場所として最も楽なのは地下階だ

しかし、すでに地下5階までランク分けされているが帳簿などの保管庫になっている

となれば増設しかない

 

「盗難防止にうちを使うのは勘弁してもらえませんかね・・・・・・。」

『仕方ないじゃろうて。あそこは前線に近いのに大規模な拠点なんじゃから。いつ何時漏洩があるのかわからん。』

 

最前線はクェゼリン環礁になっているが、南方方面の東側を取り仕切っているのはトラック泊地だ

そのトラック泊地も、何かと空襲の被害や近海で海戦がおこなわれたりと落ち着かない

どさくさに紛れて盗まれたりしたら大変なことになるのは想像に難くない

 

「・・・・・・。妖精さんに増設の打診をしておきます。」

『助かるわい。それと、例の作戦。そろそろ終わりそうじゃから受け入れの準備を頼むぞ?』

 

例の件とは海上護衛のことだ

本土-駿河諸島間の臨時輸送作戦では、護衛船団が組まれている

本土から一度八丈島へと向かい、その後駿河諸島へと入港

積み荷を積んだら本土へと向かうルートには、護衛空母と海防艦が護衛の任務についている

海防艦では力不足ではないかと思う人もいるだろう

しかし、本土に近い関係から哨戒艦隊や哨戒機によって発見され対処されるためまずいない

 

 

水上型は

 

 

 

先述の通り、駿河諸島にくるのはせいぜいはぐれた駆逐級、ごくまれに軽巡級が出てくるのみ

 

 

 

では海の中にいる深海棲艦

つまり潜水艦はどうかというと、結構な数がいることが分かっている

今までも、本土と駿河諸島間の航路で出現し、輸送艦隊を襲われたことが何度もある

 

通常の航路より安全とはいえ、潜水艦に関してはどこも同じではあるが安全の確約はできない

そこで、少しでも安全性を確保し、輸送艦の喪失を防ごうと、いつもより多く護衛を付けることになった

 

ところが、困ったことに護衛につける艦娘が足りない

正確には、対潜に特化した駆逐艦、軽巡達である

先ほど言った通り、これ以上の輸送船を失うわけにはいかない

対潜に特化した駆逐艦や軽巡は南方方面の船団護衛についてしまっている

本土に残っている子たちの練度では、潜水艦の先制攻撃を許す恐れが高い

 

 

 

 

そこで海防艦の出番だ

 

海防艦は攻撃力はあまりないし、防御力に至っては全くない

それどころか低速艦で、一見するといいところはない

 

 

が、対潜能力に関しては駆逐艦や軽巡を凌ぐ

運用コストは駆逐艦より安く、南方の激戦地には出撃していないため人数の確保も容易

これほどまでにぴったりな子たちはいないということで、採用された

 

そして、駿河諸島鎮守府に着任予定の一人が海防艦の子たちを率いて、船団護衛の指揮を執っている

 

 

 

「やっとですか!これで龍驤に少しは休みを取らせられる・・・・・・。」

『もう一人のあいつに関してはすまんがもう少し時間がかかるんじゃ。許してくれ。』

 

大将曰く、どうやら栗田艦隊のほうに組み込まれており、大本営に戻ってくるのはだいぶ先になりそうな見立てらしい

 

とはいえ、現状駿河諸島鎮守府の航空隊をまわしているのは基本的には龍驤1人

今は鳳翔さんにも手伝ってもらってはいるが、航空隊部門は圧倒的に人不足だ

こんなことなら多少無理してでももう一人の正規空母の着任予定を取り下げなければよかったかもしれないと後悔していたりする

 

『彼女の改装は最終段階までこちらで行っているから安心して運用していいぞい。』

「ありがとうございます。」

 

提督はお礼を言うと、そろそろ時間ですのでと言って切ろうとした

 

『ああ、あともう一つ。・・・・・・家一軒分の土地はあるかの?』

「ありますけど・・・・・・それが何か?」

『ん。了解じゃ。それじゃあの。』

 

提督は、ツーツーという音が聞こえたのを確認すると、受話器を置いた

島内の地図を見て、候補地に丸を付けながらため息をついた

 

おそらく、今回の独断行動の責をとった際の準備だろう

 

 

 

タカ派はあの事件以降瓦解が始まっている

その反面、腐った膿を出し、再編の動きが始まっている

 

それに対して、ハト派は多数派に転じたことで動きが怪しくなった

以前にもまして、ハト派内の争いが激しさを増し始めたのだ

タカ派とハト派という派閥はあるが、その中でもより考えが近い者たちが集まって会派を双方形成している

 

 

どこの会派が探りを入れ始めたのか

 

 

それが重要である

 

桐月大将のグループにはある特徴がある

かつて鎮守府や基地等に着任し、指揮を執ったことのある将校の大半が属している

また、艦娘を嫁に迎えているのが多いことも特徴の一つだ

 

では、桐月派が主流なのかというとそういうわけではない

いわゆる、制服組という前線に出ず任官時からずっと大本営にいる者たちは、また別の会派をいくつか形成している

また、上層部へと上り詰められる者の中で、制服組と現場のたたき上げのどちらが多いかは言わずもがなである

 

また、厄介なことにハト派が掲げているのはあくまでも戦線に拡大の是非でしばらくは現状維持というもの

 

桐月派が尽力している艦娘の人権に関しては、また別の話になる

もちろん、タカ派の中でも艦娘の人権に関して賛成派もいるが、大半は無関心や反対派が多い

それどころか、過激な部類では不要論を唱える会派もいる

 

 

今大将が抜ければ、艦娘の人権についての話はしばらく後退するだろう

 

 

 

「・・・・・・。」

 

作戦終了後に開かれる会議で、大将の進退が決まるだろう

仮に無事成功した場合での予想は、これまでの功績に加え、率先して働きかけ作戦を成功に導いたとして元帥への昇格審査がおこなわれるだろう

 

 

一見すれば元帥への昇格はよさげに見える

 

 

しかし、元帥というのは名誉職であり、昇格後は相談役として一歩引いたところからしかものを言えなくなってしまう

 

根回しをしようにもタカ派を切り崩すのは不可能に近い

また、ハト派内でも人権論に反対派は居るため、審議にかけられたら防ぎようがない

 

 

 

「若葉。」

「呼んだか?」

 

にょきっと机の下から出てきた

 

「・・・・・・ええ?そっから?」

「川内が上からなら分けたほうがいいと思ったんだが。」

 

下から這い出てくると、ぱんぱんとスカートについたごみを払う

 

若葉は、川内と一緒に長波改二についての根回しに動いていた

しかし、時雨が抜けた穴を川内が埋めることになり、一緒に戻ってきた

 

「ここの派閥の調査を頼めるか?」

 

渡したのは人権について反対の立場をとっていて、ハト派最大の派閥の資料だ

 

「ふむ。了解した。」

 

パラパラとめくり、内容をざっくりと把握したようだ

小脇に抱えるとまた机の下にもぐり始めた

 

「普通の入り口から出なさい!」




またしても軍政回(;´∀`)
不穏な空気がさらに色濃くなり始めましたはい

ローソンコラボに三越コラボはいかがでしたでしょうか?
作者は無事タぺ、クリアファイル、ゼリーと目を付けていたものはすべて入手できました
(三越はスルー)
一方メンテで実装された4航戦任務に白目をむきながらクリアしました
イベントあるからね!武蔵改二で設計図2枚確保したいしね!
そういいながらEOを5-5まで割っちゃったんです・・・
こうならないように気を付けましょう!(特に3-5以降のEO)


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駿河諸島鎮守府の作戦支援 その4

前回のあらすじ
大将昇格の危機、若葉の秘密の道


どこまでも広がる黒い空

あたりを見回すと、島らしきものが左右にある

 

(・・・・・・どこだ?ここ?)

 

提督はきょろきょろとあたりを見回した

そして、足元を見る

 

(なんだこれ?!)

 

見れば、足元は赤黒い色で、波立っていた

 

深海棲艦の鬼級や姫級

更にその中でも特に力を持ったものは、海面に影響を与え赤く変色する

現在時刻はおそらくだが、夜

そのせいで、赤黒い海面になっているのだろう

 

しかし、提督が驚いているのはそこではない

 

 

 

なぜ自分が海の上にいるか

 

 

 

試しにしゃがんで海面を触ろうとしたとき、正面から砲撃の音が響いてきた

 

(!)

 

恐る恐る足を踏み出すと、まるで地面があるかのように歩けた

地面から視線を前に移すと、明かりが見える

提督は、明かりに向かって走り出した

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・!」

「・・・・・・!?」

「・・・・・・。」

 

たどり着いた先では、今まさに深海棲艦と戦っている艦娘たちがいた

目を凝らせば7人が単縦陣を組んでいる

その中の末席に見覚えのある子が1人

 

(時雨・・・・・・。)

 

時雨が真剣な面持ちで魚雷を構え、

敵艦隊はすでに全滅寸前であり、残っているのは新発見の姫級が二人

 

「・・・・・・・。」

 

静かに好機をうかがっている様子だ

 

そばに行ってやりたいが、自分がいま置かれている状況がいまいち読めないため遠目から見守ることしかできない

 

「!」

 

時雨が動き始めた

狙いは埋護姫だ

ちょうど山城に向かって照準を合わせるために視線が外れたわずかなスキを見逃さなかった

 

「通してもらう!!」

 

魚雷を放つと同時に、埋護姫に肉迫する

時雨の声に気が付き振り向いたときには、すでに回避不可能なところまで魚雷が接近していた

 

 

「残念だったね。」

 

 

魚雷が当たると同時に、砲撃を加えた

 

 

 

「キッ・・・・・・キカ・・・・・・ナイ!」

 

 

 

水しぶきがはれると、そこには片膝をついた埋護姫がいた

撃沈にはわずかに及ばなかったものの、相手は交戦能力を失っているのが一目でわかる

 

「時雨!前を見なさい!!」

「えっ?」

(!)

 

少し息を切らし、埋護姫を見下ろしていた時雨は山城の声で顔を上げる

海峡夜棲姫が悲しそうに顔をゆがませると、砲撃を放った

 

 

 

暁の空に時雨の体が舞う

 

 

提督は走り始め、時雨が落ちてくる場所に立つ

触れられるかわからなかったが、とりあえず手を広げて待ってみる

時雨が腕に落ちてくると、ずしんとした重みが伝わる

が、すぐにその重さを感じなくなった

しかし、一度重さでバランスを崩したため提督はそのまま一緒に倒れこむことになった

 

「提督・・・・・・。みんな・・・・・・。僕やったよ。」

「ああ。お疲れ様。怪我を治して無事に帰ってきてちょうだいな。」

 

起き上がると、時雨を支えながら声をかけた

その声が聞こえたのかわからないが時雨は微笑むと目をつぶった

一瞬ドキッとしたが、気を失っただけのようだ

 

 

 

「真っ二つになりたいのぉ!!!!」

 

 

 

海峡夜棲姫が更に悲しそうな顔をしてわめきたてる

それに対し、山城が離れている提督にまで聞こえるほどの歯ぎしりをする

 

「時雨・・・・・・。よくやったわ。あとは私たちに任せなさい!」

 

キィィという音が聞こえ始めた

いつの間にか、空は漆黒の色から赤と水色の暁の空へと変化していた

基地航空隊の支援が来たのだ

爆撃を雨あられのように浴びせ、海峡夜棲姫は息も絶え絶えだった

 

 

 

 

「じゃまだぁ!どけぇぇぇ!」

 

 

 

試製41㎝三連装の轟音が響き渡る

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・っ!」

「んあっ!」

 

がばっと体を提督は起こす

目の前には書類が鎮座している

きょろきょろとあたりを見回すといつもの執務室だ

時刻はマルゴーサンマル

隣の机では、吹雪がきょろきょろと不思議そうな寝ぼけ顔で見回してる

 

「・・・・・・夢?」

 

夢にしてはずいぶんリアルすぎであるし、腕には時雨を受け止めた時の重さや感触が残っている

 

「ふぶ・・・・・・。」ジリリリン!ジリリ

 

電話がけたたましくなる

 

「はい。駿河諸島鎮守府・・・・・・。ああ彩雲か。」

『朝早くにごめんね!今ちょうど海峡夜棲姫を撃沈したって艦隊から連絡が入ったんだ!』

「・・・そっか。」

『?どうかしたのかい?』

「ああいや。ちょっと不思議なことがあってね。で、時雨はドックかい?」

 

提督は少し笑うと、彩雲に聞いてみる

 

『そうそう!最後に埋護姫を撃退してくれたMVPだよ!・・・ってよく知ってるね?』

「ん?まぁその辺はまたおいおい・・・ね?」

『それで実はまだ問題があって・・・・・・。』

「?」

『その埋護姫が逃げ延びて艦隊を形成したみたいなんだ。』

「・・・・・・!長期化しそうか?」

 

もし長期化すると、南方の泊地の体力がさらに削られることになる

 

『いや。多分だがそこまで長引くことはないと思う。』

「そうか・・・・・・。じゃあ時雨も?」

『それについては大丈夫!うちの時雨が昨日リンガ泊地に到着したと連絡があったからね!こっからはうちの時雨の出番さ。』

 

電話口からは張り切った声が聞こえる

その後、時雨がいつ頃戻ってくるのかを確認すると一つだけ伝言を頼んだ

 

 

「お疲れ様。怪我を治して無事に帰ってきてちょうだいな。」

 

 

 

 

「時雨ちゃん。いつ頃戻ってくるんですか?」

 

電話を置くと吹雪がどことなく心配そうに聞いてきた

 

「今はブルネイのほうに寄港しているらしい。艤装の修理、点検が終わってから戻るみたいだから3日後とのことだ。」

「そうですか!間宮さんや鳳翔さんに言っておいしいものをたくさん作ってもらいましょう!」

「そうだな。・・・っと!そうだ。ちょうどいいタイミングに着任の子がいるしな。準備しないと。」

「あ、じゃあその時は榛名さん呼んできますか?」

「ん。お願い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「航空母艦大鷹です。戦力としてお役に立てるよう、努めます。」

「ここの責任者の耳本だ。こっちは秘書艦の吹雪。そして宿泊棟の総支配人の榛名だ。」

 

 

 

 

自己紹介もそこそこに、本題に入る

大鷹は、龍驤と榛名の補佐がメインとなる

基地航空隊の交代要員として龍驤を補佐し、その業務がない時は、榛名の補佐として宿泊棟に行く形になる

予定では、大鷹は基地航空隊の補佐のみだったが、八丈島にいる瑞鶴が哨戒や管制業務を半々で受け持ってくれるという申し出があった

これにより、龍驤の負担がへり、補佐は少しだけでよくなった

代わりに、当初はホテルだけだったのに、今は旅館が併設されたため業務量がひっ迫寸前になっている宿泊棟への補佐を担当させることにした

もともと大鷹は、客船になる予定だった船

当然、一級のマナーや料理の腕などを身に着けている

それをぜひとも役立ててもらおうということだ

 

 

「それじゃあ後はよろしくね。」

「はい!榛名にお任せください!」

「よろしくね~。」

 

「あっ!そうでした。提督少しご質問が・・・・・・。」

 

榛名に連れられて出ていこうとした大鷹が提督の元に戻ってくる

 

「ん?なんかあった?」

「あの・・・お耳のほうを・・・・・・。」

「?」

 

言われた通り耳を傾ける

 

「あの・・・・・・お床の準備はどうなさいますか?」

「・・・・・・ん?」

 

大鷹の耳打ちに、一瞬固まった提督は一度背筋を伸ばした

そして聞き返す

 

「すまない。お床とは寝床のことだな?」

「あっはい。大将に夜の方をする気配がないからということで・・・・・・。」

 

提督はふぅー・・・・・・とゆっくり息を吐きだした

そして電話をとる

 

「あ?もしもし青葉?今大丈夫?悪いんだけど大将を一発ぶん殴ってきてくれない?艤装装着で。」

「あの・・・・・・それをこちらにいらっしゃる望月さんと皐月さんにせかされたと・・・・・・。」

「あ?もしもし?長波?今すぐ望月と皐月を執務室に縄で縛って連れてきて?え?無理?頑張って艤装使っていいから。」




吹雪ちゃんとお床につk・・・大変失礼いたしました



大変遅くなりました(;´・ω・)
早く仕上げようと思ってましたがイベントが始まってしまいここまで遅くなってしまいました

冬イベ開幕!
とか言ってたらE1~E3がめちゃくちゃ楽ちんなんで肩透かしを食らった気分になってます
E4でのジャービス、大東堀も無事終了し、本攻略に乗り出そうかなぁという次第です
E7のアイオワ堀があるのがなんとも;つД`)
早く終わってほしいぃ・・・

ちなみに武蔵さんの改装は設計図1枚の不足で済んでましたのでE1クリアしてさっさと改装しました(;´∀`)
5スロつおい・・・!


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駿河諸島鎮守府の視察 その1

前回のあらすじ
時雨のスリガオ海峡夜戦と大鷹着任、大将のとばっちり?


円形のテーブルには豪華な食事に珍しい外国の酒類

隣には紺色のドレスを着た吹雪が座っており、他の席にはリンガ付近の基地の提督と秘書艦が提督は礼服、秘書艦は普段着ている制服ではなく、吹雪みたいにドレスやワンピースなどを着て席についている

会場は広く、料理に見合う豪奢なつくりとなっている

 

一段高く上がった演台には、美しく純白のドレスを着た黒髪の女性と、タキシードを着た40代ほどの小太りの男性が並んで座っており、仲睦まじく微笑んでいた

 

 

 

以前約束していた視察(兼披露宴)がようやく実現したのである

結婚式のほうは済ませているため、かなり遅れた披露宴になってしまったが、このご時世ではよくあることだ

隣に座っている吹雪は終始キラキラとした目で壇上の女性、長門を見ていた

 

 

 

 

 

 

目の前に用意された料理を食べている途中、両名がテーブルに挨拶に来た

 

 

 

「耳本提督、師匠・・・・・・今日は来てくれて本当にありがとう。」

「ご無理を言ってしまって申し訳ない。なんとお礼をもうしあげたらいいか・・・・・・。」

 

二人は深々と頭を下げ、ぜひ楽しんでいってくださいと笑顔で言った

 

 

 

(耳本提督。)

(何でしょうか?)

 

長門の結婚相手の岩阪少将は去り際に、そっと耳打ちをした

 

(今晩お付き合い願えませんか?)

 

岩阪は指で円を作り、口元につけた

 

(かまいませんが長門くんのことはいいのですか?)

(大丈夫です。彼女は吹雪さんのことをうちの子たちに紹介したいみたいですから。)

(そういうことでしたらぜひ。)

 

ありがとうございますといい、再びあいさつ回りに戻っていった

 

「司令官。今日の夜なんですが・・・・・・。」

「リンガ泊地の子たちと食事会だろう?」

 

先ほど話しているとき、吹雪は長門と話しているのが見えた

 

「もしかして先ほど話されていたのは・・・・・・。」

「そ、行ってきなさいな。交流を広げておくのは大事だよ。」

「はい!わかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワインでいいですか?」

「あ、これはすみません。」

 

先ほどの会場から一転

8畳ほどの洋室にはワインセラーやウィスキーのボトルが並べられた棚などがあり、調度品のバランスなどに気を使っている事が分かる

おそらくは、ここの泊地で最上級の応接室だろう

 

軍服に着替えた岩阪が、ワインセラーから白ワインを一本持って戻ってきた

 

 

 

「ウィスキーはお嫌いと聞きましたので。」

「お気遣いありがとうございます。」

 

提督はグラスにワインを注いでもらい、提督は岩阪のグラスに注ぎ返した

 

「では乾杯。」

「乾杯。」

 

チンッと音を鳴らして一口

口に含むと甘く深い味わいが口に広がった

ボトルには、フランスの貴重なワインであることが一目でわかる

 

「あいにくこちらでは日本酒は貴重でしてご用意ができませんでした。」

 

日本の拠点基地の最西端に当たるリンガでは、レイテ沖海戦の影響が一番強かった

資源などはブルネイやオーストラリアなどから手配し、事なきは得ている

 

問題は嗜好品関係だ

 

船足の遅い輸送船で現在の南シナ海を通過するのは自殺行為にも等しい

そのため、国産の食料品や酒、たばこなどはここ1か月半ほど途絶えている

代わりに、欧州方面と貿易で栄えているリンガ泊地が、欧州から足りない物品を輸入して、南方方面の各地に供給している状態だった

とはいえ、長期化すると艦娘たちの士気に影響を及ぼしてくる

 

 

「何から何まで申し訳ありません。なるべく早く輸送船団を復活できるように手配します。」

「ぜひともお願いしたいです。そろそろ緑茶が恋しくなってきてましてね。」

 

 

 

 

 

レイテ沖海戦は無事南方方面の制海権を奪回し、大勝利に終わった・・・・・・

 

 

 

わけではない

正確には、深海棲艦たちをマリアナ諸島付近まで後退させたに過ぎない

もちろん、南シナ海は深海棲艦の残党が跋扈している

欧州方面にも勢力を割いている現在ではマリアナまで後退させ、南シナ海の残党狩りをするのが精いっぱいという、あえて言うなら辛勝に近い

 

欧州方面からの撤退は順調ではあるものの、完全に撤退するのは年明けの1月中旬から2月の中旬とみている

 

深海側の動きにもよるが、今までの深海棲艦の再建速度から見て、おそらくは2月ごろに南方方面の雌雄を決することになりそうな見立てだ

 

 

 

 

「それで・・・・・・。こちらに私を呼び出したというのは一体何用で・・・・・・?」

 

岩阪はワインを置くと顔を引き締めた

 

「改めてお礼を申し上げたかったのです。」

 

頭をしっかりと下げるとつづけた

 

「資源を融通していただいたことから、長門の不満を正面から受け止め、諭してくれた事。そして今回のご厚意で披露宴に参列いただいたことなどお礼を尽くしても尽くしきれません。」

「融通したのは岩阪提督の熱意があったからこそです。それに、長門くんの不満は痛いほどわかります。過去に後悔を残してくるのはつらい事ですから・・・・・・。」

 

 

解決したとはいえ、まだどこかで心の引っ掛かりを残してる瑞鶴と翔鶴の件を思い出す

 

 

「それに。たまたま(・・・・)視察に訪れたらこのようなおめでたいことがありましたので参加したまでです。」

「・・・・・・。そうでしたね。」

 

あははと軽い笑いをすると岩阪はワインを飲んだ

 

「少し話がそれますが大本営の近況を聞きまして。桐月大将が大変なことになりそうだと聞きました。」

「ご存知でしたか。」

「南方方面の大半はハト派の桐月派に考えが近いです。しかし、決定権のない自分たちでは・・・・・・。」

 

大本営の上層部会については以前も言ったとおりである

 

「もし、桐月大将が元帥に推挙されるとしたら我々は大変遺憾に思います。」

「・・・・・・我々とはどの範囲でしょうか?」

「リンガはもちろんブルネイ、タウイタウイ、パラオなどの東側の主要拠点は保証しましょう。」

 

南方方面の東側で発言権が強いのは貿易で栄えているリンガか油田などの資源が豊富なブルネイである

特に、貿易で栄えているリンガは噂によれば大本営と同規模の財政基盤があるともいわれている

 

「もちろん西側でも同調するものは多いです。」

「・・・・・・。」

「耳本提督。現在の大本営をどうみますか?」

「・・・・・・・・・・・・。」

「派閥争いが激化して前線の事情は考えないこの現状では・・・・・・・。」

「いつか手痛いしっぺ返しが来る・・・・・・。」

「それが現在なのか戦後なのかはわかりません。しかし、このレイテ以上の危機があるのは間違いないでしょう。」

 

提督はテーブルにあるつまみのドライフルーツを一口かじる

岩阪はじっと提督の言葉を待つ

しばらくの沈黙の後、提督は軍服から封筒を取り出した

そして、岩阪に渡す

 

「私が駿河諸島へと戻ったら開けてください。」

「・・・・・・。了解です。」

 

岩阪は大事そうに懐にしまった

 

「それともう一つ。耳本提督のところには海外艦は着任していますか?」

「いえ。していませんが・・・・・・。」

「そうでしたか。近々、欧米諸国から接触があるやもしれません。今回の件で怪しむ動きがあるみたいですから。」

「・・・・・・。」

 

怪しむ原因は日本国内の動きだった

本来、南方方面と日本本土が分断されて困窮するのはどちら側か

 

本土側なのである

 

日本本土には、自国の消費量分の油田もなければガス田もない

これでは艦娘の艤装が動かせるはずがないのだ

南方から資源輸送ができないとなれば、必然的にロシアかアメリカのルートからの輸入となる

しかし、駿河諸島があるため、わざわざ厳しい交換条件や法外な高レートで輸入しなくてもよかったため、頼ることがなかった

 

このことを他国は怪しんだのだろう

駿河諸島は建前上は、資源輸送の中継基地

そして、以前の日本にはなかった島である

何かあると他国が探りを入れるのは必然だろう

 

「イギリス、フランスの特使がそれぞれ私のところへ来て、提督へと取り次いでもらえないかという話が来ました。」

 

そういいながらファイルを取り出して渡した

開ければここ最近いやというほど見た履歴書があった

 

イギリスからは駆逐、空母、戦艦

フランスからは水母、戦艦

 

以上の艦種が派遣の用意があると来ている

 

「ドイツの方は接触はなかったのですか?」

 

深海棲艦との戦争が始まってから一番交流があったのはドイツだ

そのドイツが接触してこないことに違和感を覚える

 

 

「・・・・・・。実はドイツとは少しありまして。」

 

 

当時はまだ艦娘に関する技術は日本だけ

深海棲艦に対抗できる唯一の技術を各国は欲しがった

日本としても、技術を広め各国で対処してもらうほうが負担が減るメリットがあったため、技術供与は二つ返事で了承した

各国の技術者が派遣されてきた中でいち早く自国に合った形で昇華し、ものにしたのがドイツである

現在では、欧州艦の大半はドイツ流の建造手法が使われている

 

Z1通称レーベレヒト・マースがドイツ海軍工廠で誕生

ドイツ海軍は艦隊運営のノウハウを学ばせるため日本へと派遣した

そこで、ドイツの技術者とともに建造の研究を行いZ3(マックス・シュルツ)とビスマルクの建造に成功した

その後、プリンツ・オイゲン、U-511、グラーフ・ツェッペリンなど続けて建造されて行った

 

 

 

が、依然としてレーベ、マックス、ビスマルク以外の3人はドイツ海軍工廠では建造ができなかった

そこで、日本で建造された3人を一度ドイツへ送り、建造技術を伝承

伝承された手法で新たに建造された3人を、日本に送るという計画が立てられた

 

 

「問題があったのはドイツで建造された3人がこちらへ来るときでした。」

 

当初は日本の艦隊が護衛につくことになっていたのだが、ドイツ側が固辞したのだ

 

曰く、これも訓練の内

 

単艦でレーベが日本に来れたことから過信したのだろう

譲歩として大本営付きのレーベ、マックス、ビスマルクがスエズから護衛についた

建造されたばかりで、訓練も何も積んでない艦娘を含んだ艦隊の船足は遅く、陣形を整えることにばかり気をとられた

そして、敵偵察機に発見された

 

 

 

 

 

「空爆を受けた結果、生き残ったのは回避性能が高かったレーベとマックス、浮上航行から潜水して爆撃を免れたU-511でした。」

「・・・・・・なるほど。この件は公にはできませんね。」

 

 

事実、提督はこの一件を知らなかった

ドイツの圧力があったのだろう

それ以来、ドイツが日本に艦娘を派遣する際は極力陸路となっているらしい

 

 

「くれぐれもこの件については内密に・・・・・・。」

「承知しました。・・・・・・それでは話してくれたお礼にこちらももう一つ。」

「何でしょうか?」

「先日、ロシア海軍の艦娘を一名新たにうちに派遣したいという話がありました。」

 

それを聞いた岩阪は固まった

 

「それは大本営を・・・・・・?」

「通しておりません。ロシア海軍元帥より直々の親書が届きました。」

「・・・・・・どうなさるおつもりですか?」

 

提督はため息を一つついた

ロシアとしてはレイテ沖海戦の勃発で日本から天然資源の発注が絶対増えるという見込みだったのだろう

その原因を探るために、息のかかったものを派遣する

 

「とりあえず保留中です。大本営に通すよう要請することも考えましたが・・・タカ派の一部がロシア系とつながっていることを考えると・・・・・・。」

「どんな手を使ってでも来るでしょうね・・・・・・・。ではイギリスとフランスの件については。」

「今回は見送りをお願いします。誰が来るかわかりませんが最低でもそれなりの手練れとみて間違いないですしから慎重にならねばなりません。」

 

 

 

その後は明るい話にシフトし、終始和やかに話が弾んだ

 

 

「おっと!もうこんな時間に・・・・・・。すみませんこんなお時間まで付き合わせてしまいまして・・・・・・。」

「いえいえ。実りあるお話ができてよかったです。」

 

すでに時刻はフタサンマルマル

明日は自分は帰るだけだが、岩阪には仕事がある

そんな話をしていると扉の外から失礼しますという声がした

 

「提督?まもなく食事会が終了しますのでそろそろ耳本提督を・・・・・・。」

「ああ、わかった。すぐ・・・・・・?え?」

「・・・・・・え?」

 

扉を開けたのは大淀だった

そう大淀だったのだが・・・・・・

 

 

 

「「バニー・・・・・?」」

 

 

 

驚いていたのは耳本だけではない

岩阪もである

 

(え?岩阪提督のご趣味ではないのですか・・・?)

(違いますよ!確かに長門のなヴヴン"!!とにかく知りません!)

 

岩阪の反応に提督は驚いた

岩阪はぶんぶんと音がするくらい首を振った

 

「あの・・・・・・。そんなにじろじろと見られると恥ずかしいのですが・・・・・・。」

「あっあー・・・・・・すいません。」

 

提督は目線をそらす

 

「あー・・・・・・ヴン大淀くん?その恰好は一体どうしたのかね?」

 

岩阪が不審そうな目で見ると大淀が恥ずかしそうに話す

 

「その・・・・・・冬の決戦に向けて戦意高揚のための制服と聞いたのですが。」

「なにそれ?!どこ情報ですか?!」

「え?提督も知らないんですか!」

「知らないですよ!耳本提督の反応を見ればわかるでしょう?!」

 

 

結局どこから伝わってきたのかわからないが、きちんとバニー服は大本営名義で送られていた

不思議なことに、大本営も把握しておらずこの件は迷宮入りとなった




バニ淀がなぜかわからないけど流行っていたので・・・w


皆様イベントの進捗はいかがでしょうか?
作者は甲甲乙乙乙丙丁で無事完走いたしました(;´∀`)
最後は丙でも行けたんですがナイオワを解消したかったため丁に落として堀をしました
そのかいもあってアイオワを無事ゲットし、他の新規艦堀も無事終了したため、今までにないスピードで冬イベは終了となりました(秋津洲堀とか残ってるけど)

・・・まぁE7の資源消費が重すぎて泣きそうになりましたが(白目)
1週ボーキが700~900ぶっ飛ぶとかくるってやがる・・・(震)
噂によるとアイオワはもう一隻出るみたいなんで出るなら掘りたいなぁと思いつつも堀の資源の重さを考えると震えが・・・


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駿河諸島鎮守府と亡失? その1

前回のあらすじ

長門の結婚式と怪しげな機運とバニ淀


「駆逐艦時雨。佐世保第二鎮守府より帰投しました。現時をもって駿河諸島鎮守府に復帰します。」

「お疲れ様。よく無事で帰ってきてくれたね。」

 

穏やかな顔で敬礼をする時雨に微笑んで答礼する

手のひらで、ソファーに座るように進める

 

「今日、明日は休みでいいからゆっくりして頂戴な。」

「えっ?仕事のほうは大丈夫なのかい?」

「今のとこはな。明後日ぐらいにおおよその概算が出てくるからそこからが本番だね。」

「それまではゆっくりしていてくださいね。」

 

吹雪がお茶を時雨の前に置くと、提督の隣に座った

提督は眉間に少ししわを寄せながら歯切れ悪く話をつづけた

 

「それで・・・・・・。その後はどうなんだ?」

「今のところ何も見てないよ。」

 

その後とは例の夢のことである

もともとは、時雨自身が嫌なことやトラウマになっていることを想起してしまうことを代償に、未来の情報を見ることができる不思議な能力だ

しかし、以前の事件で時雨のトラウマの一部が軽減された結果、悪夢の内容が史実のスリガオ海峡夜戦のものがメインとなり、前任地の悪夢を見ることは大幅に減った

 

そして、今現在時雨はスリガオ海峡夜戦で突破できなかったあの悪夢を討ち果たした

 

ここから想定されることはただ一つ

その能力が失われた可能性が高いことだ

 

支払う代償がなければ当然見返りもない

悪夢を見るだけとは言うが、時雨の悪夢はけた外れにきついものだ

精神の摩耗がひどく、一番きつい時は一日休みにしなければならない時もある

 

「そっか。まぁこの先見ないほうがいいからな。」

「でも・・・・・・。よかったの?結構重要な情報だったと思うんだけど。」

「重要っちゃ重要だが、優先順位を付ければそれより重要なものがあるからな。」

 

そういって時雨の頭をなでる

 

「時雨が穏やかに夜を過ごせるほうが重要さ。そのためにも大将が精いっぱい引き付けてお前を佐世保に行かせてくれたんだ。」

「・・・・・・。大将にお礼を言っておかなきゃね。」

「そうだな。」

 

予想では、大本営から妨害が入るものと思われた

未来のことが分かる貴重な人員を普通は見逃すはずがない

しかし、大将の独断での初期対応がちょうどこの頃発覚し、時雨の臨時出向は何事もなく受理された

 

「それじゃあまた何か見たら報告してくれよ?」

「うん。それじゃあちょっと用事があるから失礼するね。」

 

山風のことかと聞くと、まぁそうだね。とあいまいな返事をした

 

「あ、それと・・・・・・。」

 

 

みんなで受け止めてくれてありがとう。提督には今度はちゃんとしたのをお願いしたいな?

 

 

 

「「!」」

「何かあったら呼んでね。」

 

 

提督と吹雪が呆気に取られている間に、パタンと扉がゆっくりしまった

 

「・・・・・・あれは夢じゃなかったのか?」

「司令官もあのスリガオのところにいたんですか?」

 

 

 

「も」といったところを見ると、どうやら吹雪もあの不思議な夢を見ていたようだ

 

 

 

いや時雨の言い方からして、ひょっとするとここに所属している全員が・・・・・・

そういいながら手を見つめながら、あの時の重さを思い出す

 

 

「とりあえず片付けましょうか・・・・・・。」

 

吹雪は、時雨の飲み残しと提督の湯のみをお盆に乗せはじめた

 

「ところでこれでほぼひと段落とみていいんでしたっけ?」

「いや。あとこれだけが残ってる。」

 

机の上から、ここ数か月見ない日がなかったといっても過言ではない書類を持ってくる

 

「人員補充で異動してくる最後の一人が近々くるんだ。」

 

この子が来れば、現在警邏部に手伝いとして出している皐月を元の部署に戻してあげられる

 

多少の戦後処理のあとは平常通り・・・・・・

 

 

 

そうつぶやいたとき、内線電話が鳴った

 

「はい執務室耳本です。」

『お疲れ様です。大鷹ですが、少し気になったことがありましたのでお電話をさせていただきました。』

「何かあったのかい?」

『救難信号を受信したのですが・・・・・・。』

 

 

聞けば、ここから西に45キロ地点かららしい

西からということは、時雨が通ってきた航路

しかも、救難信号を出しているのは輸送船団で、船足の早い時雨はすれ違っているはず

更に不可解なことがある

その一方を受けて、先に偵察機を飛ばしてみたところ、その海域には何もないのだ

輸送船が沈没したのならば、油膜なり木材なりの何かしらが浮かんでいるはず

もっとわからないのは、ここ数日は駿河諸島の西側から寄港、あるいは付近を通過する船団の届けはない

 

大鷹に少し待つように伝え、電話を置く

 

「・・・・・・。どういうことだ?」

 

頬杖をついて考えを巡らせる

可能性として一番高いのは、着任予定の子がここに来るついでに臨時で編成された輸送船団だ

佐世保の工廠で新しく進水した輸送船をこちらにまわして、南方方面に回送するというのはない話ではない

また、うちに着任する予定だった新鋭防空駆逐艦は、予定を変更してトラック泊地への仮の着任が決まっていたはず

一緒に行動してくる可能性はあるし、新鋭艦の回送ということもあってこちらに通知がないのもわかる

 

 

 

じゃあなぜ時雨はすれ違ったはずの船団について一言も言わなかった?

輸送船団は沈んでないとしたらどこに行った?

 

 

 

吹雪に意見を求めようと顔を上げた時、再び内線が鳴る

 

「すまんがもう少し待ってもらえないか?」

『え?何がだ?』

 

 

大鷹と思い込んで取った電話の声の主は長波だった

 

 

「ああ、すまん。さっき大鷹と話しててな。それで?何かあったのかい?」

『んああ!そうだそうだ。いや今な、大破した磯風が入港してきて、輸送船団が襲われたって言われたんだけど来てもらえるか?』

「!・・・・・・わかったすぐ行く!」

 

電話を荒々しく置くと、吹雪に留守番を頼み駆け出した

 

 

 

 

 

「陽炎型駆逐艦磯風だ。司令。着任早々大変申し訳ない。」

 

駆けつけると、磯風は深々と頭を下げて謝罪された

どうやら、高速修復材を使ったようで大破状態から回復していた

ここで事情を聴こうと思ったが、誰が聞いているかわからない

長波には、警邏に戻ってもらい磯風は執務室へと来てもらうことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

磯風からの情報を整理すると、船団といっても一緒にいたのはうちに着任するための磯風とトラック泊地へと仮の着任をする新鋭防空駆逐艦の涼月、そして牽引していた古い木造の漁船が一隻だけだったらしい

なぜ漁船がいたのかというと、うちが欲しがったので用意したとのこと

漁船が欲しいという要請を出した記憶はないし、所属している子たちから上申書が上がってきた事もない

 

そして、磯風たちは佐世保鎮守府から時雨より2時間ほど早く出発している

その途中、深海棲艦に襲われ漁船は牽引ロープが切れて行方不明

しばらくその場所で回避運動に努めた後、涼月と二手に別れた地点が救難信号を発信した地点だという

 

 

 

「そうか・・・・・・。道中で時雨には会わなかったかい?」

「いや?特に誰とも会わなかったが・・・・・・?」

 

どう考えてもおかしい

いくら漁船を2隻で牽引していたとしても、スピードは多少落ちる

それなら、時雨が追い付くはずだ

また、同じ航路を通る時雨が会敵しないのもおかしい

襲撃してきたのは軽巡3、駆逐3の水雷戦隊

とても敵が索敵漏れするとは思えない編成だ

それとも時雨の艦としての幸運で回避できたのか

 

 

 

 

ぶっ飛んだ事案に提督の頭は混乱していた

 

訳が分からない

 

提督は目頭を押さえてうつむいた

吹雪がそっと近寄ってきて大丈夫ですか?と声をかけてくる

 

「失礼します!提督さん!」

 

いつも上品で静かなしゃべり方をする大鷹が珍しく声を荒上げて入ってきた

磯風に気づいた様子はなく、そのまま机の横まで走ってきた

 

「水上機部隊が海上で輸送船団の遺留物と思われるものを発見しました!」

 

大鷹がジップロックを机の上に置く

ジップロックに入っていたのは細長い黒い帯

片方には金色の錨のマークが入っており、もう片方には漢字の切れ端が入っていた

漢字を推測するに、隊という文字とみられる

隊と書かれたほうは、焦げ付いた跡があり戦闘の後を物語る

 

「それは!涼月の鉢巻きだ!」

「・・・・・・。」

 

提督は、腑に落ちないという顔をしていた

襲われたのは今から2時間半ほど前

その間に、うちの哨戒機ともあとから追いついてきた時雨ともすれ違わず沈むだろうか

しかし、目の前の遺留品はどう見ても涼月の亡失の証拠である

 

 

 

ふらふらと磯風はソファーから立ち上がると、ジップロックに入った鉢巻きを見つめ、膝から崩れ落ちた

 

 

 

結局、提督は磯風の証言をもとに整合性が取れるように補正を入れながら報告書をまとめた

このままだと、磯風に責任が行き過ぎるためだ

そして、防空駆逐艦涼月は亡失したものとみなすことを大本営に報告することになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか成功したようじゃな・・・・・・。」

 

涼月亡失認定の報告書を手に持ちながら深いため息をついた

 

「工作も大変じゃわい。」

「大将!失礼します。」

 

どうぞというと、入ってきたのは厳しい面持ちの砂安中将だった

 

「大将・・・・・・。例の審議が始まりました。」

「そうかい。2月まで長引くといいんじゃが・・・・・・。」

 

心配そうに見つめる文月を大将はやさしく頭をなでた




前回の視察編は話数をまたいでの続きとなりますのでご了承ください

ついに・・・!
ついに吹雪ちゃんの4nを脱出し、耐久37にすることに成功しました!
E1で海防艦&まるゆを掘り続けようやく成功しました・・・( ;∀;)
結局8セット食べさせてようやくです(白目)
1期終わるまでに達成できてほんとによかった・・・( ;∀;)


堀残した秋津洲も掘ってしまおうかとE2にいそいそと出かけたわけですが・・・
S安定無理だこれ!となりまして早々にあきらめて撤退しました
支援入れたけど第二が残る可能性高いの・・・


磯風と浜風に改乙実装のアナウンスが来ましたね
2人とも70以上ではあるので改乙なら行けるはず・・・・・・多分(;´∀`)


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駿河諸島鎮守府と亡失? その2

前回のあらすじ

時雨の帰還と磯風の着任
涼月の亡失?


涼月は駿河諸島西方45キロ地点にて、輸送船団を守るため殿を務め亡失したものとみなす

 

亡失した涼月は新たに建造された者をトラック泊地へと派遣する

ついては、トラックへの航路を駿河諸島経由ではなく南方の諸泊地を経由する

 

また、当時僚艦だった磯風は索敵を怠ったものとして減給10分の1を3か月間とする

 

 

「以上が大本営からの回答だ。」

 

 

提督が目の前にいる磯風に告げた

提督の表情は不服そうなのに対し、磯風は納得した表情だった

 

これでは磯風に責任を押し付けているようなものだ

 

「そういう顔をするな司令。誰かが責任をとらねばなるまい。」

「わかっちゃいるけーがね?うん・・・・・・。」

 

それでも表情はやはり納得いかないという顔だった

不備があるのは軍の哨戒網や航路の選定だからだ

 

「いつまでもこの問題を引きずっては涼月にも悪い。こうなってしまった以上、私は全身全霊で任務をこなすのが最大の供養だろう。」

 

 

涼月が行方知れずになってから1週間が経過していた

各泊地や基地は落ち着きを取り戻し、駿河諸島も日常へと戻り始めていた

 

提督もこれ以上この話題について掘り下げるのはやめた

もし、処罰が解体処分などだったら食ってかかるところだが、この処罰を見る限り形式的なものに近いことが分かる

とはいえ不満であることに変わりはないのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ改めて、君が担当する業務の説明なんだけど・・・・・・。」

「けど?」

 

提督は言いにくそうに磯風を見る

それに対して磯風は首を傾げた

 

「ちょっと問題があってね。」

 

具体的に言うと、輸送船の座礁事故が発生していた

座礁自体はそれほどきつくもなく、沈没や重油の流出が起こったなどの重大な事故ではない

 

 

問題なのは外国船籍ということ

 

 

折の悪いことにロシア船籍というおまけつき

ここら辺の不規則な海流の流れが分からず、夜間に座礁してしまったようだ

明け方までに抜け出そうとしていたらしいが、日が昇ってしまったため、あきらめて救援要請を出してきたのだ

 

 

しかし、なぜロシア船籍の船がこの海域を航行していたのか

 

 

もしかすると何か偵察のために来ていたのかもしれない

その危険を考えて、阿武隈以外にも白兵戦が行える深雪、長波の護衛を付け、偵察機をローテーションで飛ばし、戻ってきていたゴーヤには海中からの護衛を頼みこむ万全の態勢で向かった

そして、通常の巡回は皐月と川内が代行している

 

 

 

 

早い話、警邏関係の仕事を教えられる人も手が空いていて普通に鎮守府を案内できる人もいないのだ

 

 

 

「そんなわけで今日は俺が島内の案内をするよ。」

「それはありがたいが仕事はいいのか?」

 

磯風はちらりと机の上にある二つのタワーを見やる

 

「ああ、急ぎのは片付けてあるからね。それじゃ吹雪ちゃん行ってくるね。」

「はい!わかりました!」

 

 

隣の机で鼻歌交じりに書類を片づける吹雪に声をかけるとニコッと笑った

 

 

余談だが、最近はやっているアニメの主題歌らしい

まるで本人が歌っているかのようで、時々夕張が聞きたいと頼み込むらしい

ここ最近よく聞くため、提督自身もいつの間にか口ずさんでいることが多い

 

 

 

 

 

 

磯風を連れて鎮守府内を案内して回るが、拡張に次ぐ拡張ですべての紹介を一日でするのは至難の業だ

そこで、主要なところだけに限定し案内する

10時に執務室を出たが、最後の案内場所である農園にたどり着くころにはすでに暗くなり始めた17時の終業時間だった

 

 

 

 

「最後にここが農園だけど・・・・・・。」

「あら。提督?何か用かしら?」

 

17時の終業時間に合わせて作業を切り上げてきたのだろう

道具の入った青いバケツ片手にル級がビニールハウスから出てきた

 

「・・・・・・。まさかこんなに間近で見ることになるとは。」

「その子は新人さんかしら?」

 

磯風は表情こそ変えないものの、動揺しているのが声の様子から分かった

ル級は磯風を一瞥した

 

「磯風だ。よろしく頼む。」

「ル級よ。普段はここで農作業しているからよろしく頼むわ。たまに蠅がわくこともあるからその時はよろしく。」

「この間は赤い蠅だったかな?」

「いいえ。赤と青だったわね。深雪が見事なジャーマンを決めてくれたわ。」

「さすがは深雪教官だな。」

 

磯風が納得したように小さく頷く

 

「ところで提督。最近この子以外に新しい子を入れたのかしら?」

「長波のことか?」

「いいえ。違うわ。」

 

ル級は首を振る

 

「最近ふらっと現れては作業を手伝ってくれるのよ。最初はほかのところの子かと思ったのだけれど、一週間連続で来てくれるのよ。」

「・・・・・・ほう。」

 

提督は少し目をそらして考える

ル級はさらに続ける

 

「手際がものすごくよくてね。最近リ級が別のことを始めちゃって大変になってきたところなのよ。」

「そういえば最近鉱床の妖精さんと話してるらしいね。」

「そうなのよ。・・・・・・まぁ好きなことを見つけたのならそれはいい事だけれども。」

 

 

ル級はどことなく寂しそうな顔をしている

が、慌ててそれは置いといてと話を戻した

 

 

「特にかぼちゃの手入れとかはすごいのよ。即戦力として申し分ないわ。」

「・・・・・・。うーん。」

「かぼちゃ・・・・・・。」

 

提督と磯風は何か引っかかるという顔をした

 

「?」

 

その反応に、ル級が不思議そうな顔で二人の顔を交互に見る

 

「ル級・・・・・・。まさかとは思うがその子は銀髪で・・・・・・。」

「鉢巻きをしていなかったか?黒い鉢巻き。」

 

提督と磯風の話を聞いてル級は驚いた

 

「そうそう!何よ!まだ紹介していなかったのね?今日は時雨と来たからてっきり私は鎮守府の新人さんかと・・・・・・。ってあれ・・・・・・?」

 

 

腕組みをして、目をつぶって頷いた

再び顔を上げると提督と磯風が遠くで走っているのが見えた

 

 

 

「えー・・・・・・。まぁいいわ。お風呂入ってリ級とビールで晩酌しましょ。」

 

 

 

 

 

 

「しぐれぇええええ!」

「どっどうしたんだい!?」

 

艦娘寮の時雨の部屋の扉を力任せに開く

あまりの勢いに、いつも冷静な時雨も動揺していた

 

「涼月!ここにいるんだろ!出てこい!」

 

同じく、冷静沈着な磯風も声を荒上げて声を張り上げた

 

 

 

 

「あっあの・・・・・・。何か・・・・・・御用でしょうか・・・・・・。」

 

観念したのか、おずおずと奥の部屋から銀色の髪に黒い鉢巻きをした子が出てきた

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。」

 

テーブルの上にパサっと紙を放る

2人の剣幕におびえながら、涼月が差し出してきた大将からの手紙だ

封蝋が2重にされていることから、よほどのことだろうと覚悟をして開けた

 

 

 

 

 

ここにいる涼月はトラック泊地に仮着任予定で、一週間ほど前に磯風とともに輸送船団を組んでここへ向かっていて、先ほど亡失認定された涼月本人である

 

 

ではなぜ亡失認定された涼月がここにいるのか

 

 

 

結論から言ってしまえば、大将の計画だった

 

 

 

もともと自衛力を高めるために要請していた人員補充が、炭鉱の発見によって満足にできなかったことが今回の発端だった

正規空母は無理でも、せめて防空駆逐艦を1人くらいは着任させておきたい

 

しかし、普通に着任させてはどうやっても角が立つ

そうこうしているうちに、自身の昇進(左遷)の話が出てきてしまった

そこで、逆にこの状況を利用してしまえと考えた

 

 

 

涼月には事前に話を通しておき、磯風とともに小さい無人の輸送船団を組む

そして、大湊で保護されているほっぽちゃんに配下の深海棲艦で水雷戦隊を組んでもらい、駿河諸島の哨戒網の外で沈まない程度に襲ってもらう

磯風と別れ、少ししたら鉢巻きを落としておき、後発の話を通してある時雨と合流する

そして、ばれないように時雨が戻るついでに輸送していた嗜好品が詰まったドラム缶の中の一つに潜んで駿河諸島へと向かう

時雨が駿河諸島についたのを見計らって、水雷戦隊が磯風を開放する

 

 

 

これで涼月はあたかも撃沈されたことになる

後は、大本営で亡失認定と登録抹消された後に、現れれば必然的に邂逅したという処理で済ませられる

邂逅した艦は、原則その鎮守府が保有することが定められており、提督の不正行為や汚職でもない限りは大本営側が異動させることはできない

 

普段であればとんでもない綱渡りの作戦だが、現在の状況であればもし発覚しても大将は現場を離れてしまっているため知らぬ存ぜぬを通しても不利益が少ない

 

時雨が復帰早々に用事があるからというのは、涼月を自室でかくまうためのものであり、運んできた古い漁船を島の開拓されていないところに係留するためだったらしい

 

 

 

「磯風、涼月すまない。」

 

提督は深々と頭を下げた

 

「なぜ司令が謝る必要があるんだ?」

「本来であれば涼月は、こんな芝居を打たなくてもよかったんだがうちの事情で磯風にも悲しい思いをさせてしまった。」

「軍内部の政争に巻き込んでしまったということか?」

「そうだ。」

 

磯風は軽く息を吐いて、提督に近づいた

 

「それは仕方のない事だろう。中央の連中(頭でっかち)というのはそういうものだ。」

「だが、その一端を俺が持っていることに変わりはない。」

 

ふふっと笑う声がして提督は思わず顔を上げた

みれば、磯風が微笑んでいた

 

「噂通りの方だな。深雪教官がほれ込んだのもわかる。」

「そうですね。ここなら私も安心して勤められそうです。」

 

涼月が同調する

 

「そうだな・・・・・・。深雪教官には及ばないが警邏として、司令の護衛として全力を尽くすつもりだ。それを見ていてほしい。」

「涼月も、艦隊の皆さん。もちろん提督もお護り致します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時雨もすまなかったな。」

 

とりあえず涼月を寮の空いている部屋に案内し、時雨の部屋の前に戻ってくると提督は頭を下げた

時刻はフタフタマルマル

時雨の部屋の電気が廊下にこぼれている

 

 

 

「気にしないでいいよ?こういうのは仕方ない事じゃないか。」

「一番危険かつ汚れ役を担ってくれてありがとうな。」

 

そっと頭をなでる

時雨はにこっと笑い心地よさそうにした

 

「ありがとう。いい夢が今日は見れそうだよ。・・・・・・おやすみ。提督。」

「ああ。また明日。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やーっとついたけどさぁ・・・・・・。もうやってないよねぇ?」

 

港に降り立った一人の艦娘がボリボリと頭を掻く

本土と比べれば南方であるとはいえ、季節はすでに冬

海風は冷たく吹き荒れているため、ぶるりと体を震わせた

 

「さっむぅ・・・・・・。大将が旅館の一室をとってくれてあるっていうし早く入ろ・・・・・・。挨拶はまた明日でもいいしね~。」

 

足早に旅館のほうへと歩みを進める

 

「早く原稿仕上げてここで遊びたいなぁ。」




そんなわけで磯風と涼月が着任です(=゚ω゚)ノ

遅れましたが、皆さん冬イベお疲れ様でした
満足が行く結果なった方も、ならなかった方も次回のイベントに向けて頑張っていきましょう!

うちは最終的にE1で延々とまるゆ堀に徹してました
吹雪ちゃんの運カンストを目指して・・・!(あと45)

磯風改乙、浜風改乙を無事改装してやれやれと思ったら今度は朝潮型改二と立て続けでびっくりしてます(白目)
朝潮型は霰が濃厚となっているのでレベルを調べてみると

Lv31

あのですね・・・それ以外の朝潮型は全員70は行っているんです
この間サンタグラ来たからないかなー・・・なんて高を括ってたらこのざまです
そして畳みかけるように来る次のアプデ日が4月6日・・・

リランカへとつげきぃ(震)


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駿河諸島鎮守府と同人活動 その1

前回のあらすじ

涼月生存&着任
オータムクラウド先生到着


「はい。それでは失礼いたします。」

 

ガチャンと受話器を置くと、再び書類に向かう

再び電話が鳴るが、今度は隣の机の吹雪が電話をとる

輸送船団の寄港のピークは過ぎ、補給部関係の忙しさはいつも通りの水準まで戻ってきた

代わりに、年末年始に向けての仕事が増えてきたところだ

 

「あれ?」

「どうかしました?」

 

提督は思わず時計を二度見して、声が漏れた

 

「いや。親潮が年末調整の書類や4半期の帳簿を13時に持ってくるっていったんだけど・・・・・・。」

「もう14時になりますね・・・・・・。」

 

時計はヒトサンゴーゴー

きっちりしている親潮が1時間近くも連絡なしに遅れるとは考えづらい

 

「ちょっと探してくるで留守をお願いね。」

「はい!行ってらっしゃいませ。・・・・・・はい!駿河諸島鎮守府です!」

 

執務室を出ると、寒さに体を震わせる

いくら本州より南寄りとはいえ、今の季節は冬

寒いことには変わりない

強い寒波が来れば雪だって降る

早く会計部の部屋に行って来ようと走り出した時

執務室から、電話に出ていたはずの吹雪が慌てて出てきて、提督を引き留めた

 

「司令官!大将からお電話です。」

「大将から?」

 

 

 

 

 

 

「はい耳本です。」

『すまんの。どうも呼び戻してしまったようじゃが。』

「いえ。ちょうど席を立ったばかりでしたので。それで何かありましたか?」

『いや。前に秋雲がそっちの離れを借りたいといったのを覚えておるかの?』

 

提督はええ覚えていますといったあと、はたと思案した

そして、机の上の卓上カレンダーを見る

予定が書きこまれすぎて見えづらくなっているが、確かに秋雲が来る日にメモが残っていた

 

「そういえば言ってましたね・・・・・・。もう一週間過ぎてますけど。」

『やっぱりあいつ連絡を忘れおったな!』

 

どうやら秋雲は挨拶を忘れて、そのまま原稿に取り掛かってしまったらしい

念のため本人がいるかどうかを後で確認してきてほしいと大将に頼まれた

どうやら、ここにいる間は少しだけ事務仕事があるらしい

 

 

 

 

 

 

 

「親潮ー?おやしおー?」

 

会計部の扉をノックするが、誰も出てくる気配はない

妖精さんの一人くらいいるはず

そう思い、扉を開けるとあわただしく妖精さんが動き回っている

ちょうど近くを通りがかった妖精さんを呼び止める

 

「ちょっといい?」

「ナンデス?」

「親潮はいないの?」

「オヤシオサンナラヨウジガアルトイッテハルナサンノトコロニイッタデス。」

 

そういうと、急いで仕事に戻っていった

会計部は補給部と並んで忙しい部署

これ以上話しかけて仕事の邪魔をするのは悪いと思い撤収することにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再開発中の温泉街を抜け、ホテルを横目にしばらく行くと旅館がある

いつぞや来た時に、ホテルの従業員から浴びせられた視線を思い出し、事前に連絡することにした

すると、こちらも用事で席を外しているということだった

行き先を聞いてもどこかわからなかったため、仕方なく旅館にいるはずの秋雲の件をかたずけることにした

 

「あら?提督どうかなさいましたか?」

 

着物を着た大鷹が入り口で出迎えてくれた

 

「いや一番奥の離れに用事があってね。誰か入ってるよね?」

「さぁ・・・・・・?榛名さんでしたらご存知だと思いますが・・・・・・。あ、でもちょうど榛名さんと親潮さんが離れのほうに行くと・・・・・・。」

「あらら?」

 

探し回った結果、最初からここに来ればよかったという事実に肩を落とす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木の葉は全て落ち、水面は風で少しだけ波立っている

春や夏、秋に比べると寂寥を感じるがそれもまた一興

 

ここ最近また仕事に忙殺されているな

年末には吹雪と2人でどこかに行ければいいな

そんなことを思いながら歩いていると、離れが見えてきた

 

妖精さんご自慢の技術で作られた離れは、外観は少し大きめの古い茅葺の庵だ

しかし、その中は1LDと広めで冷暖房完備、風呂トイレ完備と籠るには絶好の場所である

 

 

 

「・・・・・・。なんか騒がしいけど。」

 

先ほどまでの穏やかな気持ちが吹き飛ぶように聞き覚えのない声とシャッター音が聞こえる

玄関から入り、廊下を歩いて部屋の障子の前に立つ

念のため呼びかけたり、たたいてみるが返事はなく相変わらず騒がしい

提督は仕方なく開けることにした

 

「おーい。さっきから返事・・・・・・が?」

「「てっていとく/しっしれい・・・・・・!」」

「お邪魔しました!」

 

勢いよく障子をピシャッと閉めた

 

部屋の中では親潮が榛名に覆いかぶさっていた

それだけならまだよかった

 

 

 

 

まさか生まれたままの姿になっているとは思わなかった

 

 

 

 

とりあえずどうしようかと障子の前で目頭を押さえる

 

「「待ってください!」」

「え?」

 

とりあえず恥ずかしいところだけ隠して出てきたのだろう

下着姿で飛び出してきた

 

が、それは提督が扉の前にいないと思っているのが前提

障子の前でどうしようか思案していた提督に突っ込むことになってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し首をもたげながら、ズキズキと熱を持つ後頭部を気にする

徐々に目を開けると、目の前には親潮が自身の体に覆いかぶさっていた

そして、その上には榛名がのっかっているが、ギリギリのところで親潮はサンドイッチになっていない

 

なぜか

 

それは、提督の両手が柔らかい感触に包まれていることが起因している

それに気が付いたのは目を開け、親潮が無事であることを確認した時だった

 

肩でも腹でもなく、女性特有かつここにいる中で一番豊満な双丘に両手を当てて榛名を支えていた

 

「なんだなんだぁ?・・・・・・!」

 

手をどかそうにも、急にどかせば親潮に負担がかかる

 

というより、これ以上親潮にも密着されるといろいろとマズイ

そう思い、どうしようか回らない頭を必死に回そうとして空回りしているときだった

 

「なっ長・・・・・・波?」

 

まずい

これは非常にまずい

この状況をどう解釈しても今から1対2でおっぱじめようとしている姿にしか見えない

長波はおそらくパトロールに来ていたのだろう

これが、深雪や望月、皐月当たりだったら誤解を解くのは楽だっただろう

 

・・・望月や皐月はもう少し面倒なことになっていただろうが

 

「こここここれはちちがってだだだだ!」

「ああ・・・・・・。わかってるさ。」

 

真顔で長波がこちらに近づいてきた

提督はどう誤解を解こうか、そしてどうやって榛名を起こして親潮をはがそうか焦りばかりが出てしまい首をあちらこちらに回すことしかできない

運の悪いことに、榛名も親潮も顔を赤らめて頭の処理ができてないことが一目でわかる

これでは誤解を解くのに協力してもらうのはしばらくかかりそうだ

 

 

 

「くぉら秋雲!!お前のせいだろ!!」

 

スパーンともう片方の障子を開け放つと、デジカメを持った秋雲がやばっという声を出した

 

 

 

 

 

 

 

 

「すんませんでした・・・・・・。」

 

頭にきれいな雪だるまのコブを2つ作った秋雲が提督と榛名の前で土下座をしていた

後ろには呆れた顔をした長波と少し顔を赤らめ気まずそうな顔をした親潮が、仁王立ちで立っている

 

「えっと俺は大丈夫だけど・・・・・・。まぁその・・・・・・もう少し大声で呼びかければよかったね・・・・・・。」

 

早い話、秋雲の薄い本のための資料のためだった

たまたま、秋雲がこちらに来ている間にこなす予定だった仕事を親潮と食事の確認に来た榛名が一緒に尋ねたことが始まりだった

姉妹である秋雲の頼みを親潮は断れずしぶしぶ了承し、榛名にも一緒に頭を下げて頼んだ

 

「その・・・・・・・。榛名は大丈夫・・・・・・です。」

 

更にほほを赤らめた榛名は、恥ずかしいのか顔を覆ってしまった

 

「とりあえず俺は勘違いされなくてよかったというのがね?」

 

チラッと長波を見る

その視線に気づいたのか、長波は苦笑いをした

 

「いや~・・・・・・。提督がこういうことする人じゃないってのは長い間いるわけじゃないあたしでもわかり切っているというかぁ・・・・・・ねぇ?」

「つまりこういうことには割とヘタレ(奥手)ってこと?」

 

秋雲が生き生きと頭を上げた

それに対して、秋雲の言葉はグサッという漫画のような効果音が提督に突き刺さる

 

「ばっか!せっかくあたしがぼかしたのに!」

「だってケッコンしてまだヤッてない提督って結構貴重よ?今作はその路線もありか!」

 

長波がはたいても、秋雲は生き生きとしている

 

「秋雲!いい加減にしなさい!司令!どうか聞き流していただけると・・・・・・。」

「うん・・・。大丈夫。気にしてないから・・・・・・。」

 

精一杯笑ったつもりだったが引きつった笑みしかできなかった

長波の気を使った小声や親潮の気遣いが逆に痛かった

 

 

 

 

「とりあえず、こっちにいる間は出撃任務は基本なしでこっちに提出予定の書類をこなしてくれればいいからね。」

「りょうか~い。」

 

原稿に向かっている秋雲は、こちらを向かずに返事をする

部屋に残っているのは親潮だけで、榛名と長波は仕事に戻っていった

 

「で、一応原稿終わったら連絡が欲しいって大将が言ってたからそこもちゃんとしてね?」

「ん?原稿なら終わってるよ?」

「「え?」」

「じゃあさっき撮った写真は・・・・・・?」

 

親潮が小刻みに震えながら聞く

 

「いやぁ~・・・筆が進みそうだったから2冊目の原稿に入っちゃってさぁ。その資料だよん。」

「・・・・・・!」

 

提督は思わず後ずさりした

それに気が付いたのだろう

秋雲はさびた蛇口のようにゆっくりと振り返る

 

「あきぐも・・・・・・?」

「あはは。えーと・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

秋雲の頭から13号電探が生えることになった




遅くなりました(;´∀`)

霰改二の次は陽炎改二がほぼ内定ということで恒例の焦ってレベリング・・・
せずとも70に到達していたのでのんびり改造の最高レベル88を目安にのんびりとレベリングしています
やっとこさ焦ってレベリングしなくて済むなぁとちょっと感動してたりします


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駿河諸島鎮守府と同人活動 その2

前回のあらすじ

オータムクラウド先生来襲
提督ラッキースケベの代償に精神を滅多打ち

※今回結構下品です


「ふーん・・・。」

「お願いできませんか?」

 

目の下に隈を作り、目をシパシパさせながら手に持った書類を机の上に音を立てておく

 

特殊鎮守府車両の整備許可願い

 

特殊鎮守府とは、一言で言ってしまえば移動鎮守府である

まだ、深海棲艦への対抗方法が艦娘と分かったばかりのころに設立された鎮守府だ

海軍の歴史の中では四大鎮守府の次に古い鎮守府に当たる

 

業務内容は、日本の沿岸に出没した深海棲艦への迎撃である

最初のころは、今みたいに警備府、監視府が全国津々浦々にまでなく現場に急行するまでに時間がかかった

そこで、常に沿岸の鉄路を巡回させ迅速に対処できるようにしたのが移動鎮守府だった

 

黎明期には、そこそこ活躍したものの各地の基地が整備された今では、大本営直轄の鉄道部に格下げさせられて人員も削減されていた

 

「それってここじゃないとできないことなの?」

 

書類を持ってきた夕張に率直な疑問をぶつける

 

「あの機関車はただのSL・・・ただの蒸気機関車ではないんです。」

「というと?」

「あれは、艦娘の艤装技術を一部流用して作られた機関車なんです。」

「・・・・・・。なるほど、つまりそろそろ整備をしないとまずい時に来ているけど迂闊なところで整備はできないというわけか。」

 

頷きながら許可の判を押す

 

「ありがとうございます!」

「いいっていいって。後輩の車両でもあるからな。」

「提督の後輩ですか?」

「そ。さぁ行った行った。ちょっとここ数日やけに書類が立て込んで忙しいんだ。」

 

目元を抑えながら、執務机に提督は戻っていく

時刻はマルマルサンマル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駿河諸島鎮守府 旅館一室

 

「席に着いたね・・・・・・。」

 

ノートパソコンに映し出されているのは、四分割された提督の執務室

モンスター片手に書類と奮闘する提督の姿が映っていた

 

 

 

『・・・・・・ん?』

「「来た!」」

 

 

 

パソコンの前にいるのは秋雲

そして、望月と皐月が片手で秋雲の頭を踏み台にした

 

 

 

 

 

「なんだこれ?」

 

書類の山から見覚えのない3冊の冊子が出てきた

表裏何も書かれておらず、見た目はとても薄い

試しにめくってみると・・・

 

「望月・・・?ってこれ漫画かよ・・・・・・。」

 

おそらくは秋雲から回ってくる書類に紛れてきたのだろうと察する

 

「ほー・・・こういうかんz・・・!」

 

ぺらぺらとめくって流し読みしていた提督だったが、あるシーンになったとたん冊子を閉じた

思わず天を仰ぎ見る

 

「ひょっとして全部そうか?!」

 

それぞれ、めくってみれば書かれていたのは皐月と若葉

少しほほを赤らめて、全く・・・と言いながら苦々しい顔をした

3つの冊子をまとめると、机の隅っこに置くと、上に「秋雲の私物」と書いた紙を置いた

 

 

 

 

 

 

「「あれぇ・・・?」」

「・・・・・・。」

 

皐月と望月は声をそろえて残念そうな声を出し、若葉は何も言わないが少し落ち込んだ雰囲気を醸し出していた

 

「やっぱ純愛ものじゃなくて乱交もののほうがいいっていったじゃん!」

「わかってないなぁ~。それじゃあみっちゃんろくに見もせずに閉じちゃうでしょ?」

 

経験則がある望月が窘めると皐月はまぁそうだねといった

 

「しかしだ。確かに提督は反応はしていたぞ?」

「つまり裸で迫ってみればいいんだね!」

 

3人は部屋の隅でどうアプローチしようか算段を立て始めた

 

 

 

 

 

「・・・・・・。なんかすごい濃ゆいねぇ。」

「まぁなんだかんだ好かれてはいるからね。」

 

秋雲が少し引き気味で言うと、深雪が秋雲の隣に来て笑った

 

「でもおかげさまで3冊目も行けそうな感じだかんね。」

 

にやりと後ろを見やる

そこには、吹雪以外の鎮守府にいて提督と契りを交わしているメンバーがいた

そう

ここ数日提督が忙しいのは、普段仕事量を調整している古鷹と時雨の協力があったからだ

秋雲曰く、今回書きたいのは純愛系

そこで登場させたい男のイメージは性に関して奥手・・・

いわゆる童貞の系統にしたいという設定があった

 

ちょうど、数日前に親潮、榛名が提督とぶつかったとき、提督が榛名の豊満な胸に手をついて支えてしまったことがあった

その時、握りしめるわけでもどかすわけでもなく手のひらを広げて握りしめないようにだけしていた提督を見て秋雲は気が付いた

 

「これは使える!」

 

更に幸運が続く

提督はまだ誰とも大人の一夜を共にしていないという事実

吹雪に自ら告白したとはいえ、ひょっとするとLoveではなくLikeのほうだったのではないか・・・・・・にわかに心配になり始めたのだ

これならば資料集めという不純な動機で、協力者など望めないはずが一転

 

提督の好みがわかるかもしれない、提督の普段見られない反応が見られるかもしれない

 

甘言に押しつぶされるものが続出したというわけだ

また、冷静に対処されては困るため仕事で疲れた状態ならば判断力が鈍り、ひょっとすると致してくれるかもしれない

そんな甘言を付けたら、あっさり落ちた調整役達だった

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

提督は目の前の冊子を見つめていた

今度の冊子は5冊

少し考えたが、見続けても仕方ないと手に取った

 

「・・・・・・今度は深雪かい。」

 

もう観念したのかぺらぺらと見始めた

そして、成人向けになるシーンの直前にパタンと音を立てて閉める

 

「龍驤に阿武隈・・・おいおい山風まであるんかい・・・・・・。」

 

全年齢に見せられるところまで見ると、閉じてしまい再び秋雲返却ゾーンへと置いた

残った一冊は本当の資料であり、なんだ・・・と言いながら処理を始めた

 

 

 

「ええ・・・!終わりかよ!」

「終わりだねぇ。」

 

深雪が音を立てて机をたたく

しかし、非情かな

提督は何食わぬ顔で執務に戻っている

 

「うぅ・・・・・・。」

「最初の望月たちのほうが反応あったんやないか?」

「・・・・・・・。」

 

ひょうひょうとした龍驤ですら少しうろたえていた

阿武隈と山風の落胆ぶりに、さすがの秋雲も罪悪感が芽生えた

とはいっても、秋雲にもどうすることもできない

 

「しかたないなぁ・・・。」

 

秋雲はノートパソコンを一度手繰り寄せ、カチカチと何かを始めた

よしという声とともに、目の前に出てきたのは・・・・・・

 

「「「「!!!」」」」

 

四分割のうち一つだけ視点が移り変わっている

 

 

 

「その視点のカメラはこの若葉が設置した。」

 

キリっとした顔で若葉が手を挙げた

どこに設置されているのかといえば、男性は性的な興奮を覚えた場合ある場所が反応を示す

つまりは、切り替わった視線というのは机の中側から見た視点

股間が見えるようになっているわけだ

 

 

 

「って・・・結局見たところピクリとも動いとらんやんけ・・・。」

 

カクッと龍驤が頭を垂れた

 

 

 

 

「・・・!」

 

またしても冊子

提督はそっと開けてみる

 

「っとこれは皐月からの再開発の資料か。」

 

肩透かしを食らった感じで、安心した顔をする

その後も、冊子が来るたびに構えるがどれも本物の資料だった

 

 

「もう終わりなんか?」

「まさか。」

 

龍驤が不思議そうに聞くと、秋雲は意地の悪そうな笑みを浮かべた

 

「ここからは内容が変わってくるのさ。主にここが素晴らしい人たちだからね。」

「それはうちに喧嘩売っとるんか?」

 

秋雲がさすさすと胸をさすると、龍驤が笑顔で青筋を浮かべた

 

「そろそろ警戒心がなくなってきてるころだから・・・・・・。来たっ!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

 

 

 

流れ作業で開いた冊子

そこにはすっぽんぽんで平均より大きい双丘をあらわにし、男の象徴を例のところに突っ込んで乱れている様子の川内が書かれていた

 

 

 

 

 

「うわわわ・・・。改めてこんなの見ると恥ずかしいねぇ。」

 

川内が少し照れ臭そうにほほを掻いて画面を見る

 

 

 

「・・・・・・っ。」

 

提督はゆっくりと閉じた

そして、深呼吸を始めた

吸って、吐いて、吸って、吐いて

 

 

 

 

「うっはー顔真っ赤になってるよ。」

 

くすくすと加古が笑っている

 

(ん?おやおや?)

 

皆騒いでいて気が付かないが、秋雲は若葉カメラにかすかだが動きがあることに気が付いた

 

 

 

 

「んんんんんん!!!」

 

一方執務室は大変な騒ぎになっていた

ここから冊子が連続していることに気が付いた提督が机に頭を打ち付け始めた

やがて落ち着いたのか、そのまま頭をゆっくりともたげ冊子を手元に持ってくる

 

「・・・・・・。そうだ。さっきは油断したけど考えてもみれば大体最初のページは普通だったじゃないか!」

 

そう

先ほどの冊子はうっかり真ん中のところから開いていた

 

「そうと分かれば楽r・・・。」

 

「かかった!」

 

 

 

そう秋雲が声を上げた

画面の提督は目をかっぴらいて動かない

 

 

こちらもまた見事な豊満な胸を見開きいっぱいにさらけだして両腕を広げている榛名がいた

 

 

 

 

 

「えっ・・・。2ページ目開いたよね・・・?まさか・・・・・・。」

 

提督はそっと閉じて、次の冊子を開ける

古鷹、加古、時雨に衣笠・・・全員がものの見事にポーズこそ違えど致しているところ

もしくは、致す寸前だったのだ

 

 

これが秋雲が言っていた内容が違うということだ

 

 

おそらく、回数を重ねると学習して一ページだけ見て終わりにしてしまうだろうという見立てだ

それでは、本来の趣旨である反応が見れなくて収穫がない

 

ならば、どこを見ても男の性を駆り立てるページにしてしまえばよい

その考えは見事的中し、提督にクリティカルヒットをたたき出した

 

 

 

「・・・っ!だぁもう!こんなんじゃ集中してできん!もう冊子関係は明日に回す!」

 

半分キレ気味に同人誌を返却ゾーンへと乱雑に置き、未決済のところから適当な量の冊子をつかみ取る

 

 

 

「あっ!」

「親潮のは特別サービスにしておいたよ。」

 

 

 

「まっtあああああ!!」

 

奇声を上げた提督

適当につかみ取った書類束の上には親潮の同人誌が乗っていた

 

それも、今までのものと違い表紙付きで悩まし気な表情でこちらにお尻を向けているものだった

 

 

「秋雲・・・!」

 

 

顔を真っ赤にして髪留めを秋雲に突き刺そうとするが、カメラの映像が気になってそちらをチラチラ見ている・・・

 

どころかがっつり見ている

 

 

 

 

「今日は一体何なんだ・・・?」

 

肩で息をしながら提督は書類を捌くことを再開した

しかし、今までと違い秋雲への返却ゾーンにチラチラと視線がいっている

誰もいないのに咳ばらいを先ほどから連発し、そわそわと落ち着かない

 

 

 

「これよこれよ!この反応を待っていたのよ!」

 

秋雲はスケッチブックにペンを走らせる

周りも、もしかするとという期待をもって見つめる

 

大変見苦しいが、机の中の映像も男として正常な反応を示してしまっている状態が流れている

 

 

 

 

 

「・・・っ!!」

 

書類をいつもの2倍時間をかけて何とか終え、次の束をそう思った時だった

またもや冊子

しかも表紙ありだ

 

 

これまたすっぽんぽん・・・

 

というわけではない

トロンとした表情に赤く火照ったほほ

乱れたセーラー服

 

これだけなら全く!といいながら返却ゾーンへ直行だ

何が提督を迷わせているか

 

 

 

表紙が吹雪だからだ

 

 

 

 

「あー・・・やっぱり吹雪か・・・。」

 

周りの空気はがっかりに変わった

が、秋雲は一人違った目で画面を見ていた

 

提督の目の色が変わった

 

先ほどまでは戸惑いが目に映っていた

しかし、今の目の色は明らかに違う

我慢が抑えられなくなっている目だ

 

 

先ほどまで乱れていた呼吸は、逆に静かになった

ゆっくりと手を伸ばし、冊子をつかむと手元に持ってくる

まじまじと表紙を見ながら、そっとページをめくろうと手を伸ばす

部屋の中では、様子が変わったことに気が付いた皆が見入っていた

数人は、目を覆っていたがその覆いは隙間だらけで意味をなしていない

音は、秋雲が手元を見ずに動かしているスケッチブックとペンの音だけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」スッ

「しれいかーん・・・・・・。」

「!!!!!!」ガン

 

ノックなしに扉を開けて入ってきたのは吹雪だった

寝間着に、寝ぼけまなこ

提督は瞬時に手に持っていた冊子を机の下に隠す

 

「な・・・ん”!なんかあった?」

 

声の上ずりを一度の咳払いで戻し、吹雪に問いかける

 

「いまなんかものすごいおとしませんでしたか・・・?」

「ああ!突然開いたからびっくりして机に足がね!」

「あ、すみません・・・。」

 

ようやく目が覚めてきたのか、目を瞬かせる

 

「それよりこんな時間にどうしたの?」

 

時刻はマルサンサンマル

 

「ちょっと目が覚めた時に、思い出したんです。」

 

隣の秘書艦用机に近寄ると、書類束を取り出した

そして、正面に回り決済済みのところに置く

 

「ほんとは仕事が終わったときに置いていこうとして忘れちゃったんです。」

 

見れば、朝一番に回さないといけないものだった

 

「そっかそっか。気を付けてね。」

「司令官もそろそろ寝たほうがいいですよ?」

「うん!もう少ししたら片付けするから!!」

「?それじゃあおやすみなさい。」

 

無意識に声が大きめになっている

訝し気な吹雪の表情に引きつった笑いで見送る

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・。」

「司令官?」

「ななななに?」

 

びくっとして、思わず隠してた冊子を取り落とす

幸いにも、音は声でまぎれ聞こえなかったようだ

 

「ひょっとして調子とか・・・。」

「大丈夫!大丈夫!ほんとに大丈夫だから!」

「そっそれならいいんですけど・・・・・・。おやすみなさい。」

 

あまりの必死さに、吹雪も引き下がった

 

扉に思わずもたれかかり、吹雪の足音が徐々に消えていくのが聞こえると、肺の底から息を吐く

そして、ふらふらと机に戻り椅子に腰かけようとする

落した吹雪の同人誌を拾おうとしゃがみこんだ時だった

 

 

 

『・・・・・・ん?』

「やっば!」

『なんだこれ?』

 

秋雲と提督の目が合った

正確にはカメラ越しで、提督側からはわからない

にゅっと手が伸び、四分割のうちの一角が揺れだす

 

「・・・・・・!」

 

何かに気が付いた提督は、スマホで電話をかける

 

『もしもし?夕張か?すまんもう寝てたよな・・・・・・。最近小型カメラの注文ってなかったか?え?秋雲から?そうかわかった。わりーっけね起こしちゃって。じゃ。』

 

 

 

 

「やっば!・・・ってえ?」

 

誰かに意見を求めようと、後ろを見れば先ほどまで見入っていた者たちは誰一人いない

ただそこに一枚の紙切れが残されているのみだった

 

 

 

 

 

がんばれ

 

 

 

 

 

「・・・・・・やっべー。詰んだねこれ・・・・・・。」ドンドンアキグモ∼?

 

 

 

 

 

最終的に謝罪と交渉の末、あるものと引き換えに何とか許してもらった

 

 

 

三冊目がぎりぎりだったものの、なんとか脱稿

冬の祭典での売れ行きは「男性の心理、行動描写がリアル!」と好評

 

 

 

 

のちにプレミアがつくほどになったとか




秋雲編はこれにて終了です
ちょっと・・・いやかなり下品になっちゃったかもです(;´∀`)


更新遅れまして申し訳ございません
多忙のなか動画作成のほうに時間を割きまして更新が遅れました


いやぁ陽炎改二のグラもなかなかいいですねぇ
幸いにもうちでは霞改二乙を基準にして88まで上げてありましたので滞りなく改装できました
多分流れからすると不知火改二も決まっているんだろうなぁと思いつつ・・・
3人目の改装は誰だろうかとちょっと怖くなってたりします
順当に行けば黒潮なんですが・・・
谷風もありそうだなぁと・・・

なお、5周年任務で鎮守府海域と南西諸島の出撃数ひっくるめて51回ほど出撃しました

なにこれ?(キレ気味)

閣これ祭参加してます(こちらもちょっと下品だったり・・・)


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駿河諸島鎮守府と陸軍

前回のあらすじ

オータムクラウド先生大暴れ


駿河諸島鎮守府最下層 横須賀連絡線一番ホーム

 

提督と吹雪が先頭に並び、その後ろには長波と磯風が待機している

 

 

しばらくすると、かすかに汽笛の音がトンネルの向こうから聞こえた

暗いトンネルの向こうからは、ガッシュガッシュという蒸気の音と小さい明かりが見えた

やがて、音と明かりが大きくなり姿が見え始めた

 

目いっぱいに大きなボイラーにはC62 51というナンバープレートが付いていた

白い煙と蒸気を吐き出しながらゆっくりとホームへと滑り込んだ

 

ホームの高さより高く、ちらりと顔をのぞかせた大きな動輪がブォーという音を立てて動きを止める

それと同時に、ため息をつくように蒸気を吐き出した

 

 

 

 

「あけましておめでとうであります提督殿。」

 

 

微笑を浮かべた色白に黒い制服を着た艦娘が蒸気をかき分けたかのように歩いてきた

提督のそばまでくると、利き手に持っていたアタッシュケースを一度置き脇を閉めて敬礼をした

 

 

「あけましておめでとうあきつ丸君。長旅ご苦労様だったね。」

 

 

提督と吹雪も脇を広げて答礼をした

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや。将校殿から列車でここまで行けると聞いたときは驚いたものであります。」

「ちょうど整備のためにこちらに出発予定だったからね。」

「横須賀から東海道線、伊東線となかなかいい旅が満喫できたであります。」

 

地下区間は暇でありましたがとつぶやき吹雪に出されたお茶をすすった

 

 

 

「とと、のんびりとしている場合じゃなかったでありますな。」

 

あきつ丸は、アタッシュケースから分厚い紙束を取り出した

 

「こちらが来期の戦力拡充計画に基づいた資源要望書であります。」

「毎年わざわざ手持ちで持ってきてもらってすまないね。」

 

そういいながらぺらぺらと速読する

内容といってもかさ増しされたものだ

例えば、戦車一両に対してどのような運用をするのかや、なぜそれが必要なのか、調達の値段は適正なのかという分析をしなければならない

 

 

一両づつだ

 

 

こんな七面倒くさいことになった原因は、以前も言ったように深海棲艦の侵攻が始まった時にさかのぼる

 

有効な手段を持たなかった世界はあっという間に危機に瀕した

イージス艦などはすぐに海に消え、陸上部隊までもが出撃し土となっていった

 

 

そんな中、戦後直後から進められていた艦娘の基礎が秘密裏で成熟を迎えようとしていた

 

 

当時まだ少将だった大沢が提唱した水上歩兵部隊による海域の奪回作戦

研究最初期に建造された吹雪、叢雲、漣、電、五月雨の5名が、日本近海の深海棲艦を掃討

その有用性を実証した

 

 

そんなデータがあれば当然予算組も変わる

 

シーレーンの確保のために水上歩兵部隊量産に予算の大半を振り分けられる

この過程で、国民に親しみやすくということで現在の艦娘という呼称に変更された

 

そして、シーレーンの確保が確実になって陸軍の再建が始まった

 

が、戦線が拡大していくため、軍全体に振り分けられる9割以上を海軍に持ってかれる始末

仕方のないこととはいえ、陸軍の再建など夢のまた夢

 

 

陸軍の将来を憂いた陸軍大将の古市は、シーレーンが安定し、かつ資源が湧き出る駿河諸島に自ら出向いた

窮状を訴え、提督に頭を下げて資源を融通してもらったことにより、ようやく本格的な陸軍の再建が始まった

 

 

 

古今東西、陸と海の上層部の間柄は悪いとされている

その中でも歴史上おそらく一番仲が悪かったのは日本の旧陸海軍だろう

武器のライセンスから弾薬の規格、果ては海は信用できないと陸が作った艦艇など上げたらきりがない

あきつ丸もその対立で生まれた一人ではあるが、今は置いておくとする

 

そんな仲の悪い組織だが、なんとその風潮が現在も脈々と受け継がれてしまっていた

 

その集大成ともいえるのがこの資源要望書だ

わざわざ見せしめのように一両ずつ理由を書かせるうえ、同じ理由でも書こうものなら即却下など嫌がらせの極みだ

 

 

 

「提督殿のおかげでようやく戦車は150両、その他戦闘車が50台まで再建できたであります。」

「そうか・・・・・・。」

 

そして、今期の増備は戦車と装甲車がそれぞれ50両と25両

あくまで、陸軍に今出番が少ないとはいえ心配な数字だ

 

「・・・・・・!あきつ丸君今回君はどれくらいの権限を古市大将から預かってきた?」

「権限でありますか・・・・・・?大将印を渡されていますのである程度の決定権でしたら・・・・・・。」

「そうかそうか。」

 

提督はソファーから立ち上がると、執務机に座った

何やらパソコンでカチャカチャとうち、プリンターに近寄る

 

 

 

「これにサインしてくれるかい?」

「これは・・・・・・?」

 

プリンターから持ってきた書類には、補修及び改修時部品の備蓄願いと書かれていた

 

戦車や装甲車、その他兵装の迅速な修理が行えるように現在の台数分の全部品を作ってストックしておくというものだ

 

ということは、有事の際には組み立てれば倍の数の車両が用意できる

今期の注文と併せれば、戦車400両、その他戦闘車は150両まで増える

これなら一気に深海棲艦侵攻前の自衛隊と名目上ではあるが同規模に並ぶことになる

 

 

 

「いいのでありますか?!」

「大丈夫大丈夫。上層部のやつらも自分で要求しておいて書類を読むのが面倒になってるからね。詮索もする気力がないさ。この要望書は一回で済むと思うよ。」

「・・・・・・言っては何ですが滑稽でありますな。」

「俺もそう思う。」

 

ちゃっかり保管方法についても、記載しないことによって組み立てても問題ないようにしておいた

 

 

 

 

 

あきつ丸から代筆のサインと印をもらい、書類を預かった

明日の朝一で大本営に回せるだろう

 

「話は変わりますが、その滑稽な奴らの企みの件についてであります。」

 

企みというのは、次の陸海合同戦略会議のことだ

ここで、桐月大将の元帥昇進の可否が審議される

 

「陸軍としては、反対するものであります。」

「そうか・・・・・・。」

「まだまだ桐月殿には海軍の舵取りの一人としていただきたいのであります。」

 

元帥昇進には、権限が強い海軍でも単体では押し通せない

陸軍側も賛成しなければ元帥へは昇進できない

このあきつ丸の言葉は、提督にとって朗報だった

 

 

 

 

そう、朗報だったはずなのだ

 

 

 

 

「・・・・・・あきつ丸君。君はどこまで古市大将から聞いているかね?」

 

険しい顔をした提督があきつ丸を見る

その表情に、あきつ丸は顔を曇らせた

 

「どこまでとは・・・・・・?」

「・・・・・・。近々両軍一致という項目が外れる可能性が分かったんだ。」

「なっ・・・・・・!それでは完全に我々陸軍は海軍のいいなりということでありますか?!」

 

声を荒げたあきつ丸に提督はゆっくりと息を吐いた

 

「虫のいい話ではあるが・・・・・・。陸軍には引き延ばしをお願いしたいんだ。」

「・・・・・・引き延ばしでありますか?」

「そう。上層部の連中も陸軍に一定の配慮をしている大将が上層部から離れるのは、反発されるのはわかり切っている。だから・・・・・・時間がかかっても海軍だけで成立させられる形に変更してくるはずだ。」

 

 

 

 

現行では、この会議で両軍一致が得られなかった場合、その案は廃案となっていた

それを、ある程度熟慮したうえで提出側の組織の8割が賛成すれば成立ということに国会で規定を変更するというものだった

国会までもっていかれては、陸軍にはどうすることもできない

議員たちは自身の票のために人気のある方を持つ

この間の事件で海軍の評判が悪いとはいえ、どちらの主張が通るかは結果を見るまでもない

 

 

 

陸海軍合同戦略会議が開催されるのは毎月15日

大規模作戦が勃発するXデーは2月中

 

いくら海軍でも、陸軍に事前通告なしに改正することはない

おそらく、15日の会議までには元帥昇進の案が新制度の対象になるようにするはずだ

 

 

 

 

再審議に取り掛かるまでの期間がどれくらいに設定されるかが重要だ

海軍側では、2~3週間を見ている

それを、1か月までどうにか引き延ばしてほしい

 

仮に、再審議中に大規模作戦が勃発してしまえば、議案は期限切れを迎え廃案となる

 

 

 

「しかし、それではまた落ち着いたときに議案が提出されてしまうのでは・・・・・・。」

「今上層部は大将を追い出すのに躍起になっている。反撃の材料収集のチャンスだ。」

「伸るか反るかでありますな。」

 

あきつ丸ははぁとため息をついた

しばらく沈黙が続く

 

 

 

「承知したであります。」

 

 

 

その一言に提督はあきつ丸の顔を見る

グッと口を真一文字にし、頷いた

 

「・・・・・・!ありがとう。」

「お礼を言うのはこちらの方であります。ここまで尽くしてくれた提督の頼みを断るなど名が廃るであります。」

「いやいや。この間の騒ぎの時も古市大将が配慮してくれただろう?」

「あの二人はいかがでしたか?」

「とても助かったって伝えてもらえるかな?」

 

あきつ丸はもちろんでありますと頷いた

 

 

 

一時間ほど歓談するとあきつ丸は時計を見やった

 

 

 

 

「っと。それとこちらを預かってきたであります。」

 

今度ははがきを一枚スッと差し出す

 

「・・・・・・げ。」

「どうかしました?」

 

隣に座っていた吹雪が、はがきをのぞき込む

朱色の枠のはがき

年賀状である

 

 

差出は両親から

新年のあいさつに添えられている内容は大体想像つくだろう

 

 

「帰らないのでありますか?」

「・・・・・・この戦況じゃちょっとなぁ。」

「まぁ仕方ないでありますね。ただ子の相手を見たいのは親の本心だとは思うのであります。」

「・・・・・・ゼンショシマス。」

「あ、遅れて申し訳ない。吹雪殿、ケッコンおめでとうであります。」

 

硬い表情を崩し、にこっと笑った

 

「ありがとうございます。」

 

吹雪もにっこりと微笑み返す

 

 

 

 

「ではそろそろお暇するであります。最後に・・・・・・。」

 

そういって、再度アタッシュケースを開けた

中から瓶を取り出すと、ごとりと音を立てて机の上に二つ置く

 

 

一つは真紅の色の液体

 

そしてもう一つは不気味なくらい明るい赤色の液体が入っていた

 

 

あまりの気味の悪さに、提督の顔が一瞬曇る

すぐに立て直し、触ってもいいかと聞くと、あきつ丸は黙って頷いた

 

赤色の瓶をとり、傾けたり、明かりに透かして見る

見たところ粘性はなく、普通の水

明かりはうっすらと通すことが分かった

しかし、透かして見ればそれは悪く見えた

鮮血の色を思わせてしまい、あまり気持ちの良いものではなかった

 

「これは、レイテ島に派遣された我々陸軍の部隊が持ち帰ったものであります。」

「・・・・・・なるほど。」

 

深海棲艦が海域を占領すると、海面は赤く染まる

何度か調べようとしたが、成分が濃いと思われる場所では悠長に採取の機会はほぼない

また、不思議なことに深海棲艦を追い払ったり撃沈すると霧散して消えてしまうのだ

サンプルの数は少なく、大本営の中でも特級の極秘にされている

 

 

 

今回の作戦でも、陸軍は飛行場整備のために各地へと派遣されていた

普段であれば、戦線から遠いところにいるのだが、今回はレイテ島で海上封鎖された時もあったため戦場が近かったのだ

長時間滞在していた陸軍は海軍がなかなか手に入れることのできなかったサンプルを大量に仕入れられたのだ

 

 

「この真紅の色をしたのが作戦海域で採取された海水で、明るい赤・・・鮮血のような色をした液体が濃縮した海水であります。」

 

あきつ丸は嫌な顔をして続ける

 

「正直自分はこの鮮血色の液体は見ていて不気味なのであります・・・・・・。」

 

本能的な警告だろうか

左側にいる吹雪がそっと自分に近寄ってきた

チラッと見ると、目は鮮血色の液体にくぎ付けだが、提督の腕を手繰り寄せている

 

不意に、鮮血色の液体が入った瓶が視界から消える

あきつ丸が瓶に布をかけたのだ

 

「詳しい分析結果はこっちの封筒に入っているであります。加古殿に・・・。」

「了解した。」

 

 

 

 

「それでは失礼するであります。」

「数日滞在するのかい?」

「ええ。本土への輸送船団の護衛として今度は海路で帰るであります。」

 

 

今から陸軍への物資の書類を処理すると、出発はおそらく3日後になるだろう

 

 

「のんびりと休んでリフレッシュしてから帰るであります。仕事を増やしている側が言うことではありませんが提督殿も休養は大事でありますよ。ミスの元であります。」

「耳が痛いな。」

 

苦笑いであきつ丸を見送った

 

 

 

 

「申し訳ないのであります!こっちを渡すのも忘れていたであります!」

「おっと?」

 

どうやらあきつ丸も人のことを言えたたちではなかったようだ




大変遅れました(;´∀`)
いろいろと多忙の関係で・・・


春のミニイベ(大本営発表)が始まりましたね!
ただいま白目向きながら食材を必死でかき集めております
休日のボーナスで何とかお茶は集まったものの・・・梅と海苔ぃ・・・

あと、福江も無事?・・・無事?着任させることができました!(※使用バケツ量620前後)

最近艦これでは踏んだり蹴ったりですが私は元気です(白目)


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駿河諸島鎮守府の視察 その2

※前回のあらすじ あきつ丸とお話


規則正しく聞こえるカント音に、ゆっくりと揺れる部屋

窓の外には、寒々とした昼下がりの海岸線が広がっている

 

現在地は東海道線の湯河原を通過したあたりだ

 

 

 

 

なぜ、こんなところにいるのかというとあきつ丸から受け取った封筒が理由だった

 

 

 

 

 

仙台第一鎮守府への臨時視察を命ずる

 

 

                           

                            桐月

 

 

 

あまりに簡便すぎて一瞬偽造されたものかと思った

しかし、隅に拇印の割り印があり偽造されたものではないことが分かる

もう一枚の紙には、移動鎮守府に乗って現地入りするように書かれており、その紙が乗車許可証でもあった

 

 

 

 

「ジョウシャケンヲハイケンスルデス!」

「ん。はいどうぞ。」

 

紺色のダブルボタンの上着を着て、帽子をかぶった妖精さんが机の上にぴょんと乗ってきた

提督は、笑みをこぼしながら先ほどの言った乗車証明書を見せる

 

ちなみにであるが、この検札はお遊びである

乗車証明はすでに、ここの提督に見せてあるためだ

が、そのまま無視を決め込むのも心苦しいし、車内でやるのはいつもの仕事だ

何よりも、仕事で疲れているところに無邪気な妖精さんの姿にほっこりする

 

 

アリガトデスといって、帽子を軽く取った

 

 

「ツギノテイシャエキハウエノデス。テイシャジカンハサンジュップントニジュウゴビョウ!」

 

 

 

「細かいですね。」

 

隣に座っている古鷹がくすくすと笑った

 

「さ、あとちょっとだし仕事を片付けよう?」

 

反対に座っている時雨が珍しく仕事をせかす

 

 

 

 

今回の出張には、古鷹と時雨が随伴として同行してもらった

視察の理由として、南東北の備蓄状況に関する視察ということになった

そうなると、必然的に補給部と生産部の責任者を連れて行くのが手っ取り早い

 

が、少し不安なところもある

大将から最初に言われていた仙台第三、函館第二、釜石の責任者はどれもタカ派の中では日和見な部類だった

しかし、今向かっている仙台第一は東北では大湊に次ぐ規模の基地

さらに、仙台第一の提督はタカ派の再編組筆頭・・・になる予定だった人だ

 

だったというのは、タカ派が再編時に誰を担ぐかで一時争いが起きかけた

その際、仙台第一の提督が自ら譲ったため目立った混乱が起きずに再編が終了した

 

 

 

戦線拡大には賛成派ということしかわからないうえ、タカ派でも裏方にいたことから素性がいまいちわかっていない

有力なタカ派の将校で残ったのは須下とかの提督の二人・・・

 

 

 

「・・・・・・。」

「どうかしました?提督?」

「・・・・・・いや?」

 

提督は立ち上がると、窓の外を見た

普通の客車と違い、窓ガラスは内側からは普通に見えるが、外側からは中の様子がうかがえないようになっている

車内もくつろげるようになっており、隣の車両には個室の寝台車が併結されている

他にも、ドックに簡易工廠、食堂車に艦娘寮と、この列車自体が鎮守府そのもの

 

提督たちがいる客車は、通常の客車ではなく応接室みたいなつくりになっている

後ろには、個室寝台車があり、この列車に乗っている間はそこで寝泊まりする

 

 

 

相も変わらず寒々とした冬の海岸線を見つめる

もうすぐ、鉄路は少し内陸側に入るためこの景色ともお別れだ

 

「・・・・・・提督どうしたんでしょうか?」

「僕にもちょっと・・・・・・。昔実家に帰る時によく使ってた路線ってことは聞いたことあるんだけど・・・・・・。」

 

古鷹と時雨は顔を見合わせてぼそぼそと相談する

感慨にふけっているのだろうかと思ったがどうもそういう雰囲気ではない

何やらそわそわとしながら遠くを見つめて、時折口元に手をやってはため息をついている

 

 

 

「「あっ!大丈夫ですか/かい?!」」

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します!月山入ります!」

 

はきはきとした声とともに、背の小さい男が入ってきた

 

「先輩!少しお話が・・・って大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫・・・。少し酔っただけだから・・・・・・。」

 

 

古鷹の膝枕の上で少し青い顔をした提督が手をひらひらさせる

揺れる車内で細かい文字をずっと見続けたため、酔いが回ったのだ

 

 

「どうしても在来線では線形が悪くて揺れが大きいですからね。何か飲み物でも持ってこさせましょうか?」

「ああほんとに大丈夫。さっき時雨が持ってきてくれたから。」

 

起き上がって1人掛けのソファーに移動する

月山も反対側のソファーに座る

 

 

「提督。先輩って?」

「ああ、彼は俺の1年後輩にあたるんだ。」

「月山です!よろしくお願いします!」

「後輩・・・?」

 

時雨は月山の階級章を見た

細い黒い線には桜が3つ

 

「まぁ俺は干されてたし、月山は俺と同じ科の上の方にいたからな。抜かされるのも当然さ。というか普通に俺のほうが階級下なんだから先輩よびじゃなくてもいいんだけど。」

「先輩は先輩ですから!それよりも、機関車のメンテナンスありがとうございました。おかげさまでかなり調子がよくなりました。これからもお願いしますね。」

「気にしなくていいよ。うちの工廠担当もメンテナンスができて喜んでたからさ。」

 

 

ちなみにこの列車は、あきつ丸が言っていたように東海道線から伊東線を経由してきている

炭鉱で、掘りすすめられていた区間は大島まで

ここから大本営の直下まではまだ開通していない

しかし、大島から西に20キロほど行けば伊豆半島にぶち当たる

本来であれば、地下区間は20キロでも年単位の工事だが、妖精さんの技術で何倍もの速さで整備することができた

ちなみに、大本営までの地下区間の開通は年度末までに、全通は6月ころという試算が出ている

 

 

 

「それよりも、お伝えしておかなければならないことが!綾波!」

「失礼します。」

 

のんびりとした声で月山の秘書艦綾波が入って来て、提督に紙を渡す

びっしりと細かい字・・・が書いてあるわけではなく、見たところ簡単な行程表のようだ

 

「本来であれば上野から常磐線経由で行く予定だったんですが、ちょうどいま貨物列車が何便か連続で発着の予定があって線路の空きがない状態です。」

「つまり、東北本線で仙台に向かうってことで?」

「そうです。ですが、そうなると通勤時間を考慮しなくてはなりませんので、上野でしばらく停車して、帰宅時間が終わったころ合いを見計らって出発となります。」

 

何がいいたいかというと、到着予定時間が大幅にずれ込む見込みだということだ

 

「もちろん急ぎでしたら、貨物列車よりこちらを優先することが可能ですが・・・。」

「いやぁそこまでしなくていいよ。今回は抜き打ちに近いから先方にまだ連絡は行ってないはずだし。」

 

 

 

 

とはいえ、連絡は迅速に入れなければならない

急ぎ、大将にスマホで連絡を取り、視察が明日になることを伝えた

 

 

 

 

「これで良しっと。」

「視察期間は2日間でしたよね?」

「そうだね。帰りは横須賀まで頼むよ。」

「了解しました。発車時刻にはお遅れなきよう・・・。」

 

綾波に目をやると、頷いて退出していった

それを見て、提督も軽く頷いた

 

「ちょっと月山と話したいことがあるから2人とも席外してもらえる?」

「体調の方は大丈夫ですか?」

 

古鷹が顔を少し覗き込んだ

 

「さっきよりだいぶ良くなってるから大丈夫。何かあったら最悪月山がいるからね。」

「じゃあ月山さん。何かあったら呼んでくださいね。」

 

 

 

 

「ずいぶんといい雰囲気ですねぇ?」

「ずけずけといってくれるな?」

「失礼しました。」

 

いたずらっぽい笑みを返してきた

 

「さて、本題の頼まれ物ですが・・・書類じゃ酔ってしまいますし、口頭でもいいでしょうか?」

「ん。了解。」

 

頼まれ物というのは、仙台第一の提督の情報だ

以前に川内達に頼んでいた情報収集の中に彼の名前は入れなかった

当時は有力な地位にいなかったからだ

時間か人手があれば収集できただろうが、万年人不足かつ時間もない

有力な地位にいる人物に絞って収集していたことがあだになったのだ

また、タカ派の再編でも須下が摘発を逃れたためどうにか追加の証拠を探すのに躍起になっていたせいでそちらに手が回らなかった

 

「あくまで地元での噂ですので何とも言えませんが・・・・・・。」

 

・艦娘との仲は良好

・港には定期的に視察に来ており、港湾関係者との仲も良好

・怪しげな船の寄港や黒いうわさも皆無

 

「何よりも気になったのが、同伴していた艦娘に指輪が付いている子が何人かいるということですね。」

「ん?妙だな・・・・・・彼は人権制定には参加してなかったはず・・・・・・。」

「そこです。じっくり話し合ってみる価値はあると思います。」

「・・・古鷹を連れてきたのは失敗だったかなぁ。」

 

提督は大本営でプッツンした古鷹を思い出す

相手方の口が悪くなければいいのだが・・・・・・

 

 

「まぁ何とかなるらぁ・・・・・・。」

 

ボソッとつぶやいた

 

「とりあえずありがとさん。上野で少し下車して飲むかい?」

「すみません。それはちょっと・・・・・・。」

「あら・・・・・・。まぁ何か理由があるなら・・・・・・。」

「そういうわけじゃなくてですね。今日上野では抗議集会が・・・・・・。」

 

提督はそれを聞くと、ため息をついてまたかとこぼした

 

 

 

未目麗しい艦娘とて、万民に受け入れられているわけではない

もちろん、多数の支持は得ている

が、100%ではないということだ

人が多く集まる大都市圏では毎日どこかしらでデモ活動が行われている

そんなところに、艦娘や軍人が行けばどうなるか想像にたやすい

しかも今日一緒にいるのは古鷹という爆弾

古鷹や時雨は何とかいなせるだろう

が、自身に危害が加えられようものなら・・・・・・?

とても想像したくない

 

「こうなると人間という存在に嫌気がさしてくるな・・・・・・。」

 

はぁと息を深く吐き出しながら舌打ちをする

外を見る数少ない機会を邪魔された腹立たしさが声に出た

 

「・・・・・・。今度また用事があったらよらせてもらいます。うちの綾波も吹雪さんに会いたいでしょうし。」

「確か同期だっけか?初期艦に選ばれたから吹雪のほうが先に着任になったけど。」

 

 

「シツレイスルデス!」カラカラ

 

部屋のドアが開いて、先ほどの妖精さんが入ってきた

 

「テイシャジカンノヘンコウヲオシラセスルデス!ウエノノテイシャジカンハナナジカントニジュップンヨンジュウニビョウデス!マモナクウエノニテイシャシマス!」

 

そういって小走りに退出していった

気が付けば、夕焼けに染まる都心が窓から見えた

 

「外食はできませんが、代わりにうちの食事で我慢願います。最も、外の店に引けを取るつもりはありません。」

 

そういいながら月山は立ち上がった

 

「ああ、楽しみにしてるよ。何か手伝えることがあったら言ってくれな?」

「お気遣い感謝します。でも先輩は今回はゲストですからゆっくりしててくださいね。」

 

お願いですからね!と気迫のある念押しに思わず




次回は仙台の提督と邂逅!



皆様の食材集めはいかがでしょうか?
自分的にはかなり精神的に摩耗したイベントだったなと早くも振り返ってます
何とか鳳翔さんのディナー券追加2枚分迄集めきり、今はのんびり資源回復に努めている日々です

ちなみにとあるつてでよみずいランドを閣下動画作成者の方々と共に回ることができました(*´ω`*)(チケットは当たらなかったけど)

伊勢改二、黒潮改二はそれぞれ99と80まで上がっているので絶賛お慢心中ですw

最後に皆様に食材が落ちることを・・・(今更だけど食材入った木箱が海に落ちてる時点でびっしょびしょな気がする)


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駿河諸島鎮守府の視察 その3

※前回のあらすじ 銀〇鉄道999


仙台ー仙台ー

 

 

あらかじめ録音された放送がホームに降り立つと同時に流れてきた

暖かった車内とは真逆の突き刺すような寒さが顔を襲う

ブルリと体を少し震わせ、蛍光灯の明かりで寒々しいホームを見回す

反対側のホームにも人はおらず、さらにその先のホームに1人2人始発電車を待つ人が思い思いのことをしている

普段の制服ではなく、自分たちと同じ第二種軍装に外套を着た古鷹と時雨が下りたのを確認すると階段へと向かう

 

「先輩。」

「ん?」

「お遅れなきよう・・・お願いしますね?」

 

無言で軽く手のひらを上げ、歩き出す

古鷹と時雨も軽く会釈してそのあとについていく

 

下り階段に差し掛かると、一番下のところで一人

メガネをかけ、エメラルド色の帽子をかぶった女性が敬礼した

 

 

 

 

 

 

仙台港

 

正式名称は仙台塩釜港

東北最大ともいえる民間港であり、東北方面では大湊とほぼ同等の基地が配置されている

 

仙台塩釜港は仙台・塩釜・松島・石巻の4つの港区で構成されており、それぞれに独立した基地がおかれている

それぞれに塩釜、松島、石巻には仙台第三、第四、第五の名前がついている

しかし、実際はそれぞれの港区の名前を関した通称がよくつかわれる

 

唯一数字が飛んでいる仙台第二はすべての基地の補助のための小型基地であり、野蒜におかれている

 

 

 

今回の視察先の仙台第一は仙台塩釜港仙台港区

地元の人たちから新港や仙台港と呼ばれているところだ

 

 

 

黒塗りの威圧感ある車から降りると、先ほど出迎え、ともに乗っていた艦娘が鎮守府を背に敬礼した

 

 

「耳本中佐。改めましてようこそ仙台第一鎮守府へ。私は筆頭秘書艦の鳥海です。」

「こちらこそ出迎えありがとうございます。こちらは当鎮守府の補給部責任者時雨と生産部責任者古鷹です。」

 

後ろに控えていた時雨と古鷹がそれぞれ敬礼する

 

 

 

「せっかくご足労頂いて申し訳ありませんが、些か急な訪問のご連絡でしたので当鎮守府責任者の九山の都合がつくのが午後からになってしまいます。」

 

 

申し訳ありませんと深々と例をされた

些か急な訪問というところの語気が少し強かったのは、当てつけだろう

 

 

「いえ。唐突な視察打診をしてしまいこちらこそ申し訳ありません。」

「午後の会談時間までは、私鳥海が鎮守府をご案内させていただきますのでよろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

鎮守府のあちこちを回りながら鳥海から説明を受ける

ゆく先々で艦娘と会うが、どの子もピシッと無表情の敬礼をする

話しかけようにも、常時出撃関係の呼び出し放送が流れておりとても話しかける状況ではなかった

どの子も目に回りにはクマを作り、口を真一文字に結んでいる

その中に、ちらほらと普通の様子の子も混じっていた

みれば、手に指輪を付けている

 

 

 

そんな時、話を聞くチャンスが巡ってきた

放送で誰にも呼ばれていない子が敬礼していた

今までは、放送で名前が呼ばれていた子ばかりで呼び止められなかった

 

「・・・・・・?」

 

提督はここの鎮守府に来てから違和感ばかりを感じていた

そして、その子の顔を見た時更に強まった

 

「あの・・・・・・?」

「はい。なんでしょう?」

 

無機質な声が返ってくる

 

『第三艦隊第二小隊旗艦飛龍!演習場に集合せよ!』

 

「すみません。呼び出しがありましたので・・・・・・。」

「あ、すみません。」

 

 

結局最後まで話せずじまいでここの主である九山との会談の時間になった

 

 

「そろそろ提督のとの面会時間ですので参りましょうか。」

「わかりました。ところで質問が一つあるのですがいいですか?」

「何でしょうか?」

「提督とのご関係は?」

 

 

鳥海も指輪を付けている1人だった

 

 

「・・・・・・。それはいったいどのような理由があっての質問でしょうか?」

「あくまで気になっただけですので。」

「部下と上司それ以上でもそれ以下でもありません。こちらも信頼の証としていただきました。」

 

スパっと言い切り、ご案内しますと顔をそらされた

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして。私が九山です。」

「急な視察の許可ありがとうございます。駿河諸島鎮守府の耳本です。」

 

中肉中背だがのごく普通の体形・・・・・・ではあるが、スキンヘッドで愛想笑いもせず無表情でこちらをじっと見ている

威圧感を振りまいており、口数少なく挨拶を終えた

 

 

 

簡単な視察報告をし、何か要望があるか聞くが別にないとそっけなく返される

 

 

 

「それでは私から一つだけ。そろそろ茶番はやめていただきたいのですが?」

「茶番?」

 

九山の眉が吊り上がる

 

「艦娘はみな疲れた様相、ごく一握りの指輪持ちは疲労の色なしの差別。意志を出すことを禁じられたかのような機械的な応対・・・・・・と上辺だけなら運営に異常をきたしているようにうかがえる。」

 

 

 

近隣の人たちとの関係が友好的なのも俗にいうブラック鎮守府に見られる特徴だ

 

 

 

「少し質問がおかしいがうちはその俗にいうブラックではないと?」

「ですね。決め手になったのはいくつかありますが、ここに来るときの鳥海君の返事でほぼ確信しました。」

 

鳥海は表情を変えずに九山のそばに控えている

 

「上司と部下それ以上でもなければそれ以下でもない。この場ではそうでしょうね。しかし・・・・・・。」

 

 

なぜ指輪をはめているのが左手薬指なのか

 

 

そういうと九山は少しばかにしたような笑いをこぼした

 

「それが彼女の意思という証拠にはならんだろう?私が指示した可能性は捨てきれないが?」

「視察中、何人か指輪を持っている子たちがいました。その子たちは左手薬指の子もいれば別の指につけている子。右手もいましたし、ペンダントにしている子・・・・・・それぞれ思い思いの場所につけているように感じます。」

「・・・・・・。」

「着用指示をするならば一つの場所に固定が筋でしょう。そして指輪の状態。大なり小なり傷はあれど光沢に鈍りは見受けられない。無理やり押し付けられたものをわざわざ手入れするなんてありえません。」

 

提督はさらに続けた

 

「確信を得たのはある一人の子でした。」

「・・・・・・飛龍か。」

 

その言葉を聞くと提督の口元が少し緩んだ

 

「なれていなかったんでしょうね。目元に隈を書くことなんて。」

 

先ほど提督が声をかけた理由は目元の隈がおかしかったからだ

右側の隈が焦ったか何かしてうまくかけなかったのだろう

もみあげのところまで隈と同じ色の線がビッとついていた

さらに、そこで会う艦娘の違和感にも気が付いた

 

 

目の隈の色が全員同じ色だということに

 

 

「素晴らしい洞察力だ。監察官をやっているだけある。」

「・・・・・・。なぜですか?」

 

提督は先ほど緩めた口を閉めなおす

 

「確かに君は有能だ。艦娘の対する姿勢も共感できるところが多い。」

 

ふぅと息を軽く吐き出す

 

 

「しかし、私はなれ合うつもりはない。」

「っ!」

 

 

声を出そうとした提督に手で静止した

 

「私の戦略的な構想はタカ派に近いものがある。だがそれだけが理由じゃない。」

 

提督はちらりと古鷹たちを見る

今のところは抑えていることを確認すると九山に視線を戻す

 

「確かに、艦娘に人権をという気持ちはわかる。いまだに外出の制限が付いているこの子たちに休みの日くらいは町で自由にしててほしい。」

 

九山は鳥海を見た

 

「外はきれいごとばかりじゃない。戦後を見据えるなら確かに今制定しておかないと後々厄介なのもわかっている。・・・・・・だがな。」

 

九山は提督に向き直る

 

「貴様とハト派は何をやっているんだ?タカ派が瓦解したと思ったらハト派が同じ椅子に座ろうとしている有様。派閥内での地位争い、遅々として進まぬ議論に果ては黒い金の動きまで・・・・・・結局貴様もそこらの愚図と変わらないではないか。」

「だからあえて過剰な労働をさせてるように見せ、ここは異常があると報告すれば私の信用が失墜、失脚するのを狙ったんですね?」

「愚図という膿は出さねばならないからな。」

 

 

さっと古鷹の前に手を出した

顔を見なくても今古鷹がどんな顔をしているのか簡単に想像ができる

 

「なるほど。それでどこにも迎合せずタカ派というくくりの末席にいるというわけですね。」

「威勢だけはいいな?」

 

 

後ろから古鷹をなだめる時雨の小声がする

 

 

「古鷹。あれを。」

「えっ!あっ!はい。」

 

怒気を含んだ声を戻し、提督にアタッシュケースを渡す

中の書類を一度だし、底を出す

そこには、鍵穴が一つあった

 

 

 

「こちらをご覧ください。」

 

提督は九山に書類を一枚だけ渡す

 

「・・・・・・!」

 

最初は黙って見始めたが、途中から九山の目の色が変わった

食い入るように一字一字を見る

九山が読み終わるのを見計らって今度は束を横に置く

 

 

 

 

沈黙が部屋を包み込む

先ほどまであんなに興奮していた古鷹も落ち着き、聞こえるのは部屋にいる者たちの息遣いと書類束をめくる音だけ

 

 

 

「・・・・・・。」

 

九山は書類束を抱えると、机のそばにあるシュレッダーに書類をかけ始めた

そして、すべて処理し終えると暖炉へと向かい、中にあるものすべてを火にくべた

 

 

 

 

「聞かせてほしい。なぜそこまで体を張る。」

「彼女らは家族のようなものであり誠実にありたいから・・・・・・それではだめですか?」

 

暖炉で燃えていく書類くずを見ながら九山は提督に問い、その背中を見ながら提督は答えた

 

「・・・・・・。きつい言い方をしよう。それが世間一般で化け物だとしても?」

「世間は世間、自分は自分です。それに・・・・・・。」

「それに?」

「化け物は我々人類と艦娘どちらなのでしょうかね。」

 

それを聞いた九山は少しの沈黙の後、確かになとこぼした

 

「さすがは提督適性で特甲をたたき出しただけはある。」

 

 

 

特甲

 

提督適性で甲の上位として備考欄に書かれる

この適性を持つものはごく一握りであり、特徴として艦娘に好かれやすく、気まぐれな妖精さんにリクエストを出しても了承してもらえるのが特徴である

具体的には、土木工事や採掘作業、通常艦(イージス艦や輸送艦)などの建造作業など普通ではやってもらえない作業を指示が妖精さんにできる

 

このクラスの提督は当然出世・・・することはほぼない

なぜならば、特甲の適性があるものは上層部と反目する傾向が高い

 

 

 

先ほどの小馬鹿にしたような笑みではなく、相手に敬意を持った微笑みと変わっていた

 

「もし君が書類の通りに動くのであれば不干渉を約束しよう。たとえ大本営からの要請があったとしても。」

「そのようなリスクを負っても大丈夫なんですか?」

「それだけの覚悟が見れたからさ。これくらい安いものさ。」

 

いつの間にか圧力は消え、執務室は穏やかな空気に変わっていた

 

「だが、あくまで不干渉だ。手を貸すようなことはできない。君は信用できてもハト派全体はまだまだ信用できないからな。」

「私を信用していただけるという言葉が聞けて十分です。」

 

 

九山は鳥海に耳をトントンとたたくジェスチャーをした

鳥海は頷き、執務机に近づいた

 

「今盗聴器の妨害電波を出させてもらった。」

「・・・・・・そういうことですか。」

 

 

 

端的に言ってしまえば、九山はタカ派でも持て余し気味な人材ということだ

須下からしてみれば次点の存在であり、厄介なことこの上ない

材料集めのために、周りの鎮守府や基地は監視役ということだろう

 

「あまり長くは出していられないから手短に言わせてもらおう。ここ最近近海ではロシア関係の船がたびたび目撃されている。」

「・・・・・・。私の視察も漏れている可能性があると。」

「ロシアはタカ派と蜜月状態だ。邪魔な存在である君の排除に乗り出さないとも限らない。」

「おあつらえ向きに、今は第二次レイテ沖に備えて航空機、輸送船は大本営に許可を得ないとなりませんからね。」

 

おそらく列車に乗ってしまえば何とかなる

相手もそれを計算に入れて行動してくるだろう

 

「そこでだ鳥海。任せたぞ。」

「はい。提督!」




最近厄年ってあるんじゃないかって本気で思い始めている作者です(;´・ω・)
ごたごたが多すぎて全く更新できなくてすみません

次は多分早い・・・はず?


さて、前回からいろいろとアプデを繰り返しているわけですが今日のアプデで白露改二実装とのことですね
うちは81で慢心中です(本当は80だったけど1を警戒して81にしました)
天龍改二が来てもいいようにぬかりなくこちらも80にしておきました(*´ω`*)

そして設計図不足が深刻なうちは伊勢改二で計画が狂いサブの鈴谷航改二がお流れになってます(白目)
でも伊勢改二が強すぎてこれは仕方ないなと踏ん切りもつきましたw
扶桑型に謎の対潜値の上方修正が来ましたがこれが地味に使える( ゚Д゚)
潜水艦を水爆でT不利以外はほぼ確実に落せるようになってるのは大きい・・・!


あと、氷上の観艦式ですがどうせ当たらんやろと思って3つ全部に応募して2つあたり両日参加が決まりました(*'ω'*)
ツイッターの方で付き合いのある方たちと楽しんでまいります!


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駿河諸島鎮守府の視察 その4

前回のあらすじ 九山提督と密約


来るときと同じ黒塗りの車に乗り、鎮守府を後にする

高速道路の下をくぐり、国道へと入ると空気が変わった

 

「来ましたね。」

「言った通りになったなぁ・・・・・・。」

 

来る時と違うのは、鳥海が運転手で助手席には隈のメイクに失敗した飛龍が乗っているということだ

そして、後ろには同じく威圧感を放ちスモークミラーで車内の様子がうかがえない特別車が後ろや追い越し車線に入ってくる

 

「それじゃあ行きますね!」

 

一気にアクセルを踏むとブオンとエンジンが呻きだす

チラッと後部座席からスピードメーターを見ると180の限界に届かんばかりの勢いで針が右へと向かっていた

最初は引き離したかに思えたが、すぐにスピードを上げて追いついてきた

幸いにも夜間のため、少なめの一般車を縫うように追い抜き一路仙台駅へと急ぐ

 

が、当然ただ黙って追いかけてきてはくれない

チュインという音が後ろからし始めた

 

「相手も必死だな!」

「RPGも通さない防弾ガラスですから大丈夫です!それより列車の発車時刻は何時ですか!!」

「午前0時ちょうどだ!あと20分ある!」

「このまま一直線に行ければいいんですが・・・・・・!」

 

銃弾が地面や周りのガードレールなどあちこちに当たっては火花が散る

飛龍が窓から応戦のために拳銃を発砲しているがどうやら当たっていない雰囲気だ

 

「古鷹!ちょっとごめん!」

「えっ!はい!」

 

窓を開け、腰につけていた拳銃を取り古鷹に覆いかぶさるようにして後続車へと狙いを定める

狙いを運転席ではなく、タイヤに定めて引き金を引く

 

が、当たってもパンクする様子はない

 

「チッ。やっぱり防弾タイヤか!仕方ない!」

 

そういって、今度はヘッドライトに狙いを定める

4、5発当てると、貫通したらしくライトが消える

 

「時雨もちょっとすまん!」

「うっうん!」

 

同様に反対側のライトも打ち抜き、光を奪う

 

「これで多少手が緩めばいいが・・・・・・。飛龍君もできる?」

「当ててはいますが・・・・・・!なんで抜けないの!」

 

弾を補充しながら飛龍に呼びかける

 

「ライトのカバーも防弾使用だ!そういう時は同じところに銃弾を・・・・・・!こうだ!」

「・・・・・・提督も無茶いいますね。」

「僕もそう思う・・・・・・。」

 

古鷹と時雨が苦笑いで顔を見合わせ、飛龍は半泣きだった

 

「少しルートを変えます!いったん応戦をやめてください!」

 

そういって鳥海は左にハンドルを切る

どうやらバイパスに乗り換えるらしい

相手の方は予想外だったのだろう

3~4台はそのまま直進していった

しかし、まだまだ山ほど後ろについている

 

「っ!耳本さん!すみませんが列車の責任者の方に連絡が取れますか?!」

「月山にかい?取ってみる!」

 

スマホを取り出し、履歴から月山を呼び出す

幸い、2~3コール目には出てくれた

 

「変わってもらえますか!飛龍さんはスマホを持ってください!」

「はっはい!」

 

どんな会話をするのだろうと聞き耳を立てようとしたが、銃弾の音が一気にうるさくなったため聞こえなかった

片側3車線になり、真後ろや横につく車が増えたのだ

 

 

 

「あれ!発車まで時間が!」

「大丈夫です!話は付けてあります!」

 

飛龍がスマホをこちらへと投げて渡すと同時に鳥海が言う

今度は右にハンドルを切り、一気に加速する

時刻はフタサンゴーハチ

軍の列車とはいえ、緊急性がなければ発車時刻を遅らせることはできない

何より、今ここで変更すると後続のダイヤが大幅に乱れ次回からの列車の受け入れが厳しくなる

 

 

0時を回り、5分ほどしたとき鳥海が口を開いた

 

「皆さん・・・・・・。ジェットコースターは平気ですか?」

「・・・・・・え?」

 

予想していなかった質問を聞き、思わず聞き返してしまった

 

「あんまり得意じゃないですが・・・・・・なんでまた?」

「僕は平気だけど。」

 

古鷹と時雨も不思議そうな顔をしている

 

「少し・・・・・・揺れますよ!!」

 

左に急ハンドルを切り、目の前の陸橋に差し掛かると今までにないエンジンのうなりが聞こえた

よく見ればまだ開通していない陸橋だ

提督は鳥海の意図に気づいた

 

「古鷹!時雨!頭下げろ!」

「えっ!はい!」

「わかった!」

 

 

 

 

 

歩道に乗り上げ、設置予定のガードレールを過ぎればその下は・・・・・・線路だった

 

 

 

 

ガシャンという大きな音と揺れが車内を襲った

幸いにも横転せず着地で来たらしく、再び走り出した

ひびの入ったリアガラスからは戸惑った追手たちがこちらを恨めしそうに見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とかなったか?」

「いいえ。列車に乗るまでは油断できません!」

 

ガタガタと揺れる車内で舌をかまないように気を付けながら話す

線路は車が走るように設計されていないから仕方ない

 

「見えました!」

 

遠くで光が見えた

徐々にその光は近づき、誰かが手を振っているのに気が付いた

 

 

「せんぱーい!はやくはやく!!」

「私が先に手伝いとして乗り移ります!提督はそのあとで来てください!」

 

飛龍が、窓から天井へと行き、列車の展望デッキに飛び移った

提督は頷き、窓から身を乗り出す

2人がかりのおかげでスムーズに終わり、続けて時雨も乗り移る

荷物も移動し、最後に古鷹を

そう思った時だった

先ほど散々聞いた銃弾の音がした

 

「あいつらだ!いったいどこから!」

「・・・・・・!踏切か!」

 

最初に曲がったとき3~4台振り切った追手がいた

おそらく陸橋で振り切った追手から連絡が回ったのだろう

 

「これでは古鷹が移れない!」

 

荷物など後回しにしておけばよかったと後悔するが、後の祭り

どうするか考えを巡らせる

 

「もうすぐ橋に差し掛かりますから後ろについてください!!」

 

月山が手を振って鳥海に指示を出す

銃弾は列車のシールドではじかれているため安全ではある

が、車から乗り移る際のわずかな間にハチの巣にされかねない

おりしも、簡易艤装はこちら側にあるため今の古鷹は普通の人間に近く撃たれたらひとたまりもない

 

 

 

「・・・・・・古鷹。行けるか?」

「!」コクリ

 

提督は少しのジェスチャーを交えながら古鷹に聞く

伝わったのか古鷹は頷くと鳥海に指示を伝え始めた

 

鳥海はこちらに顔を向けると小さく頷いた

と同時に反対側の線路へとハンドルを切った

それに気が付いたのか追手側の銃撃がぴたりとやんだ

今度は追いつくためにスピードアップするためだろう

車のライトがどんどん近づく

橋までのこり100mを切った時

 

 

 

「今だ!」

 

 

 

車が、再び急ハンドルでこちら側に戻ってくる

追手は驚いたのか加速をやめ、射撃の準備を始めるがもう遅い

乗り移ってた時の位置で古鷹はジャンプした

提督は身を乗り出して古鷹の腰に手をまわし、こちら側に引き寄せる

 

 

 

 

「やった!」

 

 

 

 

賭けは成功した

鳥海の車もそのまま後ろにつけ、追手との間に割って入る形になっている

 

「綾波!15号車の切り離し準備!」

『了解です!』

 

月山はインカムで運転室にいる綾波に連絡する

 

「時雨さん、古鷹さん!お力をお貸し願いますか?!」

「うん!いいよ!」

「大丈夫です!」

 

返事を聞くと月山は炭水車まで来てくださいと走り始めた

 

 

 

 

車内を走り抜けると、炭水車には本来ついていない扉があった

開けると、どこかで見たようなメーターや波形機などが壁にびっしりついていた

 

「ここに簡易艤装をセットしてもらえますか?」

 

月山が指さすところに簡易艤装をセットした

すると、がくんというと音とともにスピードが上がっていくのを感じる

 

 

もともと、外見はただの蒸気機関車だが中身はほぼ全くの別物である

移動鎮守府という旧来の目的は広い範囲をカバーすること

それには、いついかなる時でも発車できなければ困る

そのため、電力不使用かつ比較的手に入りやすい石炭を主燃料とした蒸気機関車が選定された

また、蒸気機関車だけでは力不足である時は艦娘の艤装を接続することでパワーアップすることができるように設計されいる

 

ちなみに、トンネルなどの狭い空間ですすにまみれることを防ぎたいときは艤装の方で運行している

 

「私の艤装も使ってください!」

「飛龍君いいのかい?」

「どうぞ遠慮なく!」

 

飛龍の艤装もセットすると、列車はさらにスピードを上げた

 

「もうすぐ橋を抜けるぞ!」

「・・・・・・!」

 

提督は双眼鏡で後方の鳥海の車が離れていくのを見ると叫んだ

 

「綾波君!いまだ!!」

「はい!」

 

ガクンという先ほどよりも強い揺れが列車に走る

そして、かすかにガシャンという衝突音や悲鳴が聞こえたが警笛の音とスピードを上げたドラフト音にかき消された




これにて仙台視察編は終了です(*'ω'*)
次回からはいい加減レイテ後編・・・だと思います(白目)
表立って参戦ではなく今回も独自の視点からのお送りとなります

さて、鎮守府氷祭りですがとてもすごかったです!!(語彙力)
なんというか・・・すごかったです!(語彙ry)
いろいろ言いたいことがあるのですがまとめられませんww
それくらいすごかったですw(語ry)

強いて言うのであれば艦これアーケードの世界を壊さずそっくりそのまま目の前に持ってきた感じです!

あと無良提督がマジでかっこよかったです(理想の提督像的存在)

これっきりなのがもったいないといっても過言ではないですね・・・
とりあえず行けなかった人のためにもDVD発売はよ!(もう一度見たい)


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駿河諸島鎮守府の清閑 その1

前回のあらすじ 古鷹(時雨)と逃避行


『ロシアの野望!?武器密輸団逮捕!』

『武器密輸組織一斉摘発!』

『ロシア政府のスパイ?それともテロ組織?』

 

 

いつものように書類を捌きながら提督は各社の紙面の流し見る

どれも、あの夜のことを知っている者から見たら重要なところが引っこ抜かれた記事だった

仙台から這う這うの体で戻ってから3日

切り離した月山の私室の15両目の新造を終え、今朝見送った

ついでにいろいろな機能を夕張が付け加えたそうだが、その処理やら三が日があけていつもより少し多めに来た艦隊の処理などで追われていた

 

 

カーチェイスの事はどの紙面にも書いていない

唯一、地方紙の隅っこに小さく鉄道の事故で朝の始発に少し遅れが生じたニュースだけが名残を残している

 

 

 

無事何事もなく(・・・・・)帰庁したことを九山少将に伝えるとそれは良かったという返事が返ってきた

聞くところによると、鳥海もあの後無事に戻れたようだ

 

 

そして

 

 

「失礼します!二航戦飛龍参りました!」

 

成り行きでともに来てしまった飛龍だ

処遇を聞くと、うちに置いてやってくれとのこと

 

ただし、簡易艤装以外についてはあちらにある

出撃などをするにはこちらで艤装を用意する必要がある

あちらから送られてくるのを待つというのもありだが、あのことがあった以上送ってもらうというのは危険だ

 

「それじゃ吹雪ちゃんちょっと開けるから何かあったら連絡頂戴ね。」

「はい!お任せください!」

 

 

 

 

執務室を出て、向かったのは工廠の隣にある倉庫群

その中のひときわ頑丈そうに作られた倉庫を開けた

 

 

突然だが、解体された艦娘というのはどうなるかご存じだろうか

解体といっても通常の鎮守府で行う解体は艦娘と艤装のつながりを断つ儀式のみだ

元艦娘となった場合軍籍を離脱するか、しないか選べるが今回はその話は置いておこう

解体され、持ち主を失った艤装は一度大本営に送られる

そこから、各拠点鎮守府へ送られ一定期間予備戦力として保管される

もちろんそれを上回ってしまうと本解体、つまり資源に戻すことになる

 

 

また、同一の艦娘が鎮守府に来たケースだ

 

といっても、そのようなケースは存在しない

建造、あるいは海域で初めて邂逅、あるいは鎮守府にその艤装を扱う艦娘がいない場合に限り艦娘が艤装を伴って現れる

もしその艦娘がいる場合は、艤装のみが建造、邂逅するようになっている

妖精さんに聞いてみても答えてくれないため、そこはいまだに解明されていない

 

 

話を戻そう

駿河諸島鎮守府も拠点鎮守府の一つだ

つまり、各艦の艤装が勢ぞろいしている

吹雪型、白露型、陽炎型などの駆逐艦の艤装からガングート、サラトガ、ザラなどの海外艦の艤装まで全種類が保管されている

 

 

「飛龍。君の練度はいくつだっけ?」

「80です!」

「80か・・・・・・そうなると改二の方の艤装だね。ついてきて。」

 

中には所狭しとあらゆる艤装が並んでいる

入り口から駆逐艦、軽巡、重巡と続き最後の戦艦のゾーンを抜けると、目の前には鉄扉が現れた

先ほどあけた鍵とは別の鍵をさしてあけ、中に進む

ここには、海外艦の艤装及び改二等の希少な艤装が収められている

 

「えっと飛龍改二、飛龍改二、飛龍改二・・・・・・あったあった。」

 

少しほこり被った状態であった

 

「なんか・・・・・・すごく多いですね?」

 

飛龍改二の艤装は4つ収められていた

対して、他の艤装は1つ、多くても2つしかない

 

「なんでか知らないけど飛龍のは多いんだよねぇ・・・・・・。隣の蒼龍なんて見てごらんよ。」

「え?・・・・・・うわぁ。」

 

4つどころか10個近く収納されているのを見て飛龍は思わず声を上げる

 

「毎月のように空きはあるか空きはあるかって聞かれてほんと困っちゃうよ。」

「なんかすごく微妙な気持ちね・・・・・・。」

 

再び倉庫に鍵をかけ、夕張が常駐している工廠へと顔を出す

 

解体された艤装は、拠点鎮守府にいる特殊な妖精さんでなければ有効化ができない

たまに、誤解体といって解体する予定ではない子の書類に解体の判を押してしまうことがある

すぐに代わりの艤装が手に入る子ならともかく、そうはいかない子も少なくない

諦めが悪い人は、たまに艤装を背負えるか試すものがいる

 

 

 

当然艦娘の力を失っているのだからぺしゃんこ・・・・・・にはならない

 

 

普通に動作するのだ

それをいい事に、過去に艤装が背負えるなら何とかなるだろうと出撃させたことがあるものがいる

 

 

 

結果、その子は帰ってこなかった

 

 

 

艦娘を保護する障壁が作動しなかったのだ

 

このことを教訓に、誤解体された場合はその鎮守府が着任希望をしている限り艤装が再入手されるまで内勤をすることになっている

 

 

 

「はい!有効化完了しました!」

「カンリョーデス!」

 

作業自体はごく短時間で終わるが、妖精さん曰く「ソンジョソコラノヨウセイニデキルワケナイデス」とのドヤ顔で返された

 

建造したてや、邂逅したばかりの新品は誰でもできるが、解体を挟んでしまうと事情が変わるらしい

簡単な調整をするため、飛龍を奥の小演習場へと案内する

 

 

 

「提督。少しお時間ありますか?」

 

飛龍を見送ると、夕張がカルテをもってこちらに来た

 

「ん?なんかあった?」

「榛名さんの艤装についてお伺いしたいんですが・・・・・・ここの予備艤装って試されました?」

「そりゃあ最初の方に試したな。・・・・・・うんともすんとも言わんかったけどね。」

 

あの時はまだデータを取ってなかった時期だから書類がないかもと提督は言い、ですよねぇと夕張が相槌を打つ

 

もちろんだが、艤装の不具合の可能性も疑い予備艤装の交換を何度も行ったが結果は変わらなかった

 

「じゃあやっぱり身体的な問題かなぁ・・・・・・。加古さんにちょっと検査依頼出しておこっと。あと、ここ半年以内で奥の予備艤装触りました?」

「いや?そんな記お・・・・・・あ、いや誰か触ったかもしれん。」

「誰ですか!少し前に点検した時調整がずいぶん偏ってたんですよ!!気づかなかったら起動したとき暴走しかない設定だったんですからね!」

「空襲騒ぎやら何やらですっかり飛んじゃってたわ・・・・・・。」

 

ついこないだの事なのにもうずいぶん前の事のように感じる

着任当初ののんびりとした時間が懐かしい

提督は遠い目をしていた

 

 

 

「最後に・・・・・・今度古鷹さんの艤装をちょこっとだけいじらせてほしいなぁって・・・・・・。」

 

先ほどの真面目な顔から少し崩した顔になった

大体こういうときは決まって碌な事・・・もとい面倒ごとを持ち掛けるときの顔だ

 

「今度は一体どんな改装する気だ。」

「古鷹さんの火力不足を補うための逸品です!」

 

ガラガラと白い布がかぶせられた台車が提督の目の前で止まる

夕張は嬉々としてその白い布を取り払った

 

 

 

「こいつは・・・・・・。」

「28㎝3連装砲です。」

 

28㎝3連装砲

 

ドイッチュランド級重巡洋艦(竣工時は装甲艦)の主砲である

当時の重巡を上回る攻撃力のために製造された主砲だ

戦艦より早く、重巡より強く

そのような設計構想の一端を担った主砲だ

 

 

 

「明石さんに手に入れてもらいました!」

「おいおい・・・これ古鷹積めるのか・・・?」

「それを実験したいんです!」

 

46㎝単装砲とか言い出さないだけましかもしれないが返答に迷っていた

と、ピーピーと無線の着信音が突然鳴り響いた

 

「ちょっとすいません。はい!こちら夕張!」

『夕張さんですか?涼月です。0番埠頭につきますのでお願いします。』

「はいはい!今行くねー!あ、ついでだし提督もちょっと来て!」

「おっおい!」

 

無線機を切ると、夕張は外へ駆け出して行ってしまった

提督はしょうがないなとつぶやくと、奥の小演習場に届くように声をかける

 

「ひりゅー!すまんがきゅーよーができたー!りゅーじょーをむかえによこすからくるまでここにいてくれー!」

「りょうかいでーす!!」

「全く・・・!」

 

外へ出れば、夕張がこっちこっちと軽トラから身を乗り出して手招きしていた

 

 

 

0番埠頭とは現在の農園部になっている旧鎮守府にあった埠頭だ

現在の鎮守府から離れているのと、大型貨物船が一隻はいるかどうかの大きさ

使用頻度を鑑みて、今の番号を変えるより0番を追加したほうが早いという判断をくだした

今は、農産物関係を2~3週に一度本土へ輸送するために中型の貨物船が入港するだけだ

 

 

 

0番埠頭につくと、夕張はさっさと降りて荷台の工具箱をあさり始めた

提督も車から降りると、ポンポンポンというどこか懐かしい音とともに一隻の見慣れぬ小さな船が入港してくるのが目に入った

 

 

「ゆーばりさーん!てーとくー!!」

 

 

涼月がこちらに向かって手を振っている

 

 

 

 

 

 

 

「話していた囮の漁船ってこれか!」

 

涼月が着任するときに使われて撃沈されたと報告した漁船は涼月の手によってひそかに島の未開発地域の沿岸部に隠されていた

着任処理も終わり、涼月の持ち場(農園部)に決まったところでようやく回航したということだ

 

「せっかくですし漁に出ようかなぁと。」

「で、エンジンとか船体の近代化改修を行おうって話になったんです。」

 

陸に引き上げられた船を見上げる

漁船としては大きめで重量的には10tといったところだろうか

あくまで遠洋漁船ではないため操舵室と簡易的な休憩所があり、船底には水槽があるくらいだ

船体にはフジツボがあちらこちらについており、底の塗装もはげかけている場所が見受けられる

 

「あー・・・・・・やっぱりエンジンにガタが来てますね。」

「時々怪しい音がしてましたがやはりですか。」

「いっそこのエンジンも換装しちゃいましょう。後船体も5メートルほど伸ばして小型クレーン設置・・・・・・。」

 

つなぎの胸ポケットからメモ用紙を取り出すとガリガリと音を立てる勢いで書き出していく

簡単な設計図と見積もりを取っているみたいだ

 

「はい!提督!」

「ん?・・・・・・おいおいなんじゃこりゃ。」

 

渡されたメモ用紙を見て提督は面食らった

 

「これじゃ新造したほうが安いんじゃないか?」

「とはいえ国内に発注します?造船所はいっぱいだと思いますが・・・・・・。」

「最悪うちで作るのは無理かい?」

「できないことはないですがいつになるかわかりません。造船ドックは輸送船の注文でいっぱいですし。」

「簡易建造ドックを作るというのはどうだ?」

 

国内の造船所は軒並み輸送船建造で大忙し

小型専門の造船所は、過去の深海棲艦のせいで船舶を発注する人が減った影響か国内に数件残っているかいないかレベル

どうせならば小型造船業に参入するのも手と考えた

 

「それもありだとは思うんですが・・・・・・今インフラ関係の妖精さんは再開発に出ているのでは?」

「あっ。」

 

皐月が警邏部兼任から外れたため、ようやくホテル、旅館街の再開発事業に着手したのだ

計画当初より寄港数は減ったものの、各基地、鎮守府から物を持ち寄り市場を開く計画は採算が取れるとして踏み切った

将来的に艦娘が退役しても社会へなじめるようにするための訓練も兼ねている

 

「改修であればそこまでしっかりとしたドックは不要なんです。」

「そういうことなら仕方ないな。だが、採算や改修費の方はどうなっているんだ?」

「それは問題ありません!」

 

はきはきとした声が後ろから帰ってきた

振り向けば、親潮が突然すみませんと会釈した

 

「涼月さんから頂いた計画書では、定置網設置と週に1度流し網漁、別日に2度釣り竿での通常の漁法を計画しているそうです。現在うちのおおよその消費量を賄え、かつ長期保存食を年間12tほどを無理なく生産できる見込みです。」

「なるほど。それなら妖精さんの人員を割いても釣り合いが取れそうだ。」

 

本土と隔絶する可能性がある諸島では自給率を上げるのは必定

魚貝類の自給率以外がほぼ100%の今更に推進して悪いことはない

 

「本来であれば今日の午後に司令に書類が上がる予定だったんですがたまたまそのお話をされていたので。」

 

親潮の手には農園部の書類がある

 

「明後日には改修が終わりますんで4日後くらいには報告書が上がると思います!」

「了解。じゃあ俺は戻るね。親潮も乗ってくか?」

「お願いしてもいいですか?」

 

 

夕張達と別れ、乗ってきた軽トラに乗って親潮とともに庁舎の方に向かう

 

 

 

「司令。運転中申し訳ないんですが皐月さんの方についてお話を。」

「市場のやつね。あれは工期が珍しく長いから結構かかるのよ。」

 

提督はギアを4速に入れると返事をした

 

出店要望が多かったため、各都道府県ごとに分けることになった

さらに、厨房が各店舗に設置することになったのだ

 

これは、飲食店をやりたいというのが全地区から上がったからだ

これが曲者で、一度はバックヤードに厨房を作ってそこで調理したものを店舗で提供というものを計画した

が、人がごった返している中料理をこぼさず運べるか、という問題がでてくる

他にも、食材の管理や各店舗に派遣される艦娘が入れ代わり立ち代わりするためルールのすり合わせに時間がかかるというデメリットもあった

 

出店希望側も、多少の負担がかかっていいから独立した厨房を持ちたいということで、工期と費用が掛かるが独立設計になった経緯がある

 

それに伴って、各出店地区が自分たちが使いやすいようにするために設計しているため設計図が上がってくるのが非常に遅い

 

いくら資材と素早くできる人員がいるとはいえ設計図がこなければ話にならない

 

 

「皐月さんも頭を抱えているようで・・・・・・。」

「こればっかはしょんないわ。ある程度の店舗工事代も持つって言ってるし、結果的にこっちの持ち出しが減ったからねぇ。」

「経理としてはありがたい事なんですが。」

「まぁそういっても仕方ないさ。こういう関係のは焦らず待つことが大事。っと少し飛ばし気味にきたからもうついちゃったな。」

 

減速とともにギアを落とし、工廠前に停車する

 

 

 

「近々小型造船の事業計画立てるかもしれないからそん時はよろしく頼むよ。」

「了解です!」

 

そんな会話をして、親潮と別れた

先ほど言っていた漁船の書類を持ってくるといっていた

時刻はヒトヨンサンマル

すでにお昼を過ぎて、間食休憩の時間である

 

「げっ閉まってるし・・・・・・。」

 

執務室の扉はガチャガチャと開く気配がない

中に向かって吹雪ちゃんと叫ぶが、返事はなく静まり返っている

誰かに休憩で連れ出されたのだろうか

 

「仕方ない部屋で待つか・・・・・・。」

 

そうボヤいて、隣の私室の扉に手をかけてノブをまわす

が、こちらもガチャガチャ音を立てた

 

「へ?なんで?」

「しれい!大変です!!」

 

慌てた様子で親潮が走ってくる

手には、何やら紙を持っていた

 

 

 

 

 

『3日間の休養を命ずる 古鷹、時雨、阿武隈』




いい加減レイテは入れよと思われそうですが嵐の前の日常編です(´・ω・`)
3話くらいを予定してます

ラバウルの方でDBの方のトラブルがありましたが皆さまは大丈夫でしたか?
外部からの襲撃なのか運営のミスか発表されていませんが1日の巻き戻しで済んでよかったとショートにいますがほっとしています
もし外部の襲撃であれば明日のアプデも怖いところ・・・
何事もなく終わることを祈っております

夏イベの断片的な情報が発表されましたね!
また欧州・・・
ランカー装備から実装艦はネルソン級のどちらかとフッドで後段モチーフはライン演習→ビスマルク追撃戦が濃厚と出てますがどうなることやら・・・

というより前段の情報が欲しぃ・・・


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駿河諸島鎮守府の清閑 その2

※前回のあらすじ 締め出された


「ううん・・・・・・。」

 

提督の目の前の甘そうなパフェとは正反対の苦い顔をした親潮がうなり声をあげる

それを横目に提督は苦笑いをしてパフェを食べ始めた

 

 

 

張り紙を見た後、廊下にいた白衣姿の加古を捕まえて話を聞けばあっけらかんと答えた

 

「3人とも休暇取ってないでしょ?だからあの3人にいっといた。」

 

吹雪は何か用事ができたって言って本土へ行っちゃったからね

2人もよい休暇を~

 

 

のんびりとした声色で工廠の方へと歩いて行ってしまった

 

 

 

かくして急に舞い込んできた休日だが、こうしてよこされると困ってしまうものである

本土に行ってもいいが1人で何をするか詰まる

親潮連れてどこかに行くかも考えたが、突然のこと過ぎてどこに行ったらいいものか

 

とりあえず間宮に入って今後のことを考えることにしたわけだが

 

 

 

 

「とりあえず食べるさ。おいしくなくなっちゃうよ?」

「すみません・・・・・・。でもどうすれば・・・・・・。」

 

しょんぼりとしてスプーンを手に取る

 

「まぁわかるけどねぇ。俺も吹雪ちゃんもしょっちゅうこうなるし。」

「そうなんですか?」

「突然休み押し付けられるからどうしようかいつもここで考えるんだ。」

 

 

突然押し付けられるのが嫌なら、自分たちで自主的に休め

そういわれたら何も言えない

 

「今まではどうしていたんです?」

「俺はいつもここでのんびり寝たりして過ごすかなぁ。下手に外に出て戻ってこれないとまずいし、実家に帰るといろいろうるさいし。」

「うるさい・・・・・・とは?」

 

提督は気まずそうにほほを掻く

 

「別に親子仲が悪いんじゃなくてさ。もう帰るのかい?仮病使ってもうちょっといなさいよ!って言われたりね。今は特に・・・別件がね。」

 

歯切れ悪くいったところを聞きたそうだったが、聞かれる前に話を続ける

 

「吹雪ちゃんは知り合いのところや妹さんのところに顔出しに行ったり、自分と同じくここで過ごしてることが多いかな。」

「でも突然訪ねてしまっていいのですか?」

「大丈夫大丈夫。海軍のデータベースに行けばその子が休みかどうかわかるから。親潮も誰か調べる?」

 

そういって、ポケットからスマホを取り出そうとした

そして、はたと気が付いた

 

スマホがないのである

執務室に置きっぱなしになってしまったのだろう

 

「?どうかなさいましたか?」

「いや・・・・・・ところで親潮は誰か調べたい人はいるのかい?」

「陽炎姉さんや不知火姉さん、黒潮さんですかね。それぞれ違う場所にいますが・・・・・・。」

「了解。じゃあちゃっちゃとこれ食べていこっか。」

 

 

 

「望月いるか?」

「んあー?みっちゃんどったの?」

 

渉外のプレートがかかった部屋を開けると、望月がだらしなくソファーの上で寝っ転がっていた

 

「おいおい。もっとしっかりしろや・・・・・・。」

「今は休憩中だもんねー。それともこっちでも・・・・・・。」

 

そういいながらスカートに手を伸ばすがやめなさいと言って軽く頭をはたく

 

「ちぇー。で?ほんとにどうしたの?」

「ちっとパソコン借りるな。」

 

その一言を聞くと今まで見たこともないスピードで起き上がり、パソコンの前に座った

あまりの豹変ぶりに提督と親潮は顔を見合わせた

 

「どっどうしたんだ?」

「え?いやぁ。ちょっとね。セキュリティを強めにしてあるから司令官でもあんまり触ってほしくないなって。」

「そっか。そういうことならしょんないわなぁ。」

 

提督と親潮はパソコンの画面側に回った

 

「で、何を調べるのさ。」

「全艦娘の予定表を出してもらえるかい?」

「え?それなら執務室・・・・・・ああ。そういえば古鷹や時雨がいってたなぁ。りょーかい。ついでだから外泊許可のも出すね。」

 

ささっと打ち込んで画面に出す

 

「えっと陽炎姉さんは・・・・・・。あっ長距離の遠征。」

 

提督は親潮に席を譲らせ、望月を部屋の隅に連れてきた

 

 

 

「部屋まで閉め出されたんだけどなんとかならん?」

「えー・・・。大方執務室の抜け道がありそうだから封鎖されたんじゃない?どっちにしろ3人とも用事でここにもういないしねぇ。」

「スマホが閉じ込め食らってるから結構困るんだよ。何か連絡あったらまずいし・・・。」

「それはなんとかなるっしょー。緊急のはこっちにもくるし呼びいくからさぁ。」

 

「司令!望月さん!ありがとうございました!」

 

 

どうやら親潮は調べ終わったらしく、こちらに顔を向けていた

 

「了解。空いてそうな人見つかった?」

「はいっ!黒潮さんが明日休みで外泊届けも出していないので少し連絡を取ってみます!」

 

それではと言って退出していった

 

 

「じゃああたしの部屋で寝泊まりするかい?」

「さぁ!俺も旅館に行かないとな!それじゃ!」

 

提督は脱兎のごとく部屋を後にした

後ろからまてー!という声と足音が5分くらいしたのは聞かなかったことにした

 

 

 

 

榛名に話をと思ったが、忙しいらしく話は難しいといわれてしまった

大鷹が何とかつかまり、少しだけ話ができた

どうやら、遠征隊の宿泊は落ち着いたが今度は正月休みの振り替えを貰ってきている人が多くホテルも旅館も満室とのこと

手が足りないため、提督専用室は開けてあることを言うと大鷹も足早に仕事に戻っていってしまった

 

「明日はどうするかなぁ・・・・・・。」

 

炬燵に電源を入れ、部屋に寝転がる

眠気はあまりなく、時折転がりながら考える

と、視界の端にあるものが映り込む

実家から送ってもらった荷物たちだ

 

何かあるかな

 

そう思って手を伸ばす

が、炬燵から出なくては届きそうにない

あとでいいやと再び潜り込むとなかったはずの眠気が増してきた

 

 

 

 

「司令。突然すみません。開けていただいてもよろしいでしょうか?」

「・・・・・・ん?」

 

まどろみから目を覚まし、とっさに時計を見る

ヒトハチサンマル

夕食の時間の頃合いだ

 

「ちょっとまってね。今行くよ。」

 

扉を開ければ、声の主の親潮が気まずそうに立っていた

 

「どったの?まぁとりあえず中に入るさ。」

「すみません。失礼します・・・・・・。」

 

 

 

「ははぁつまり俺とおんなじってわけかぁ・・・・・・。」

 

親潮を反対側に座らせ、お茶を出して話を聞く

黒潮は、明日の休暇は何をしようか考えておらず2つ返事で会うことを了承してくれたらしい

問題は、会計部の部屋が閉め出された時、部屋の中に自室のカギを置いており自室からも締め出されたことだ

 

スマホで古鷹、時雨、阿武隈に連絡を取り、阿武隈がカギを持っていることが分かったが、単冠湾の方へといってしまっており、すぐに戻れないとのこと

電話口で、向こう側の阿武隈の様子が分かるほど謝罪された

 

艦娘寮の他の部屋のマスターキーは執務室

仕方なく、ホテルや旅館の空き部屋をと思ったが満員御礼

 

「そこで申し訳ないのですが明日までこちらに泊めていただくのは・・・・・・。」

「いいよ。親潮がいいなら別にかまわんけーが。」

「ありがとうございます!」

 

 

その後夕食を済ませ、部屋に戻ってくると先に風呂に入ると親潮に断って露天風呂に向かう

 

 

寒さに体を震わせながら源泉の近くへと近寄る

明日は暖気が流れ込むから暖かいと聞いてはいるが、まだ南の方にあるのだろう

 

「失礼します・・・・・・。」

「そんな気はしてた。って大丈夫かいな・・・・・・。」

 

生真面目な親潮の事だ

お背中をお流ししますと言って入ってくる可能性が十分想像できた

そう言い聞かせ、横を向くと湯に入ったばかりなのにすでに真っ赤になった親潮がいた

 

「だっ大丈夫です!!お気になさらず!!」

 

若干声が上ずっているのを聞いて提督は吹き出した

 

「いやぁ・・・・・・吹雪ちゃんと会った時のことを思い出すなぁ。」

「え?吹雪さんですか?」

 

緊張が少しはほぐれたらしく、どもりが消えた

 

「初期艦として着任したばかりのころは親潮みたいな感じだったのよ。」

 

今のように、自然体ではなく緊張からくる力みも入ってたけどね

そう付け加えた

 

何もなく、あるのは小屋一軒

風呂はドラム缶風呂だし、部屋の仕切りはなくて2人布団を並べて寝た

午前に少しだけの書類を精査して午後は食料調達の釣りや探索

そんな生活が吹雪を自然体にして行った

 

「もちろん親潮は親潮だからね。」

 

親潮の顔が少し曇りかけたのを見てフォローを入れる

 

「無理をせんでも自分らしくいればいいのよ。無理をしないようにね。」

 

立ち上がって洗い場へと行く

頭を洗っていると、後ろに気配がした

 

シャンプーを流すと、そっと背中をこする感触が伝わる

 

「私が・・・あたしがしたいだけですので気にしないでください。」

「ほんとにそれでええのかい?」

「あら。司令が好きなようにしろといったのでしたまでです。」

 

提督はそうかとだけ返事した

それ以外無粋だろう

そう思い飲み込んだ

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻ってヒトハチマルマル

 

吹雪は佐世保第二鎮守府に来ていた

正門前では、姉妹である叢雲が立って待っていた

 

「こんばんは叢雲ちゃん。」

「悪いわね。突然呼び出したりなんかしちゃって。」

「ちょうど急な休みをもらって私も困ってたから気にしないで。」

「・・・・・・あんたまさか。」

 

吹雪はやばいと感じとり、叢雲に中に入ろうと進めた

叢雲ももういいわと半分呆れた返事を返した

 

 

 

「それで?相談ってなぁに?」

「そのことなんだけどね。少しだけ待ってもらえる?」

 

秘書艦室に入ると、吹雪は荷物を降ろしソファーに腰を掛けた

叢雲は、自身の机の上の電話を取り誰かを呼び出し始めた

 

「?」

 

頭に疑問符を浮かべる吹雪を他所に、手短に会話を終えるとお茶とお茶菓子を用意して戻ってきた

お盆には、お茶が3つ

吹雪、叢雲自身そして叢雲の隣にお茶を置くと叢雲もソファーに腰かけた

 

「ごめんなさいね。今日相談があるのは私じゃないの。」

 

口を開くと同時にノックの音が聞こえる

それにどうぞと返事を返した

 

「失礼します。霞ただいま参りました!」

「お疲れ様。こっちに来なさい。」

 

全員が席に着いたのを皮切りに叢雲が話し始めた

 

「今回あなたを呼び出したのは霞が相談したいことがあるからなの。」

「霞さんが?」

 

叢雲に促され霞が口を開く

 

「突然お呼び立てしてしまい申し訳ありません。実は・・・・・・。」

「あ、ごめんなさい。その前に・・・・・・。霞さんの普段の話し方で大丈夫ですよ。」

「それはありがたいわ。単刀直入に言わせてもらうとあってほしい子がいるのよ。」

「あってほしい子?」

「ええ。長門を徒弟に持ち演習では武蔵を打ち負かしたある駆逐艦に会いたいってやつがいるの。」

「それって・・・・・・。」

 

自分のことを言われているのが吹雪には分かった

叢雲が続きを話し始めた

 

「まだその子はレベルが低くてね。教練途中なのだけど・・・・・・。」

「どこで嗅ぎつけたのかうちの秘書艦がその駆逐艦と同期の姉妹の事を知って私に間接的に頼んできたってわけ。」

 

おそらく、まだ教練の途中の子は秘書艦と話す機会や接点が少なく頼みづらかった

そこで、練度が高く付き合いがあり彩雲とケッコンしている霞に頼み込んだのだろう

それを察した吹雪は笑いを少しこぼした

 

「なっ何笑ってんのよ!」

「ううん。叢雲ちゃんと少し似てるなぁって。」

「へ?あたし?」

 

振られると思ってなかった叢雲はきょとんとした顔をした

 

「うん。普段ツンツンしてるけどほんt」

「あーあー!!!それで?!受けるの受けないの?!!」

 

叢雲は気恥ずかしくなったのだろう

大声で吹雪の声をかき消し、話を戻した

 

「うん。いいよ。明日一日だけでもいいのなら見てみるね。」

「ありがとうございます!」

 

霞は立ち上がり深々と頭を下げた

 

「それじゃ。今日は叢雲ちゃんの部屋に泊まろうかなぁ?」

「なんでよ!ちゃんと部屋取っといてあるのに!」

「たまにはいいじゃない。それともいや?」

「いっいやじゃ・・・・・・ないけどぉ・・・・・・。」

 

そのやり取りを見ていた霞は叢雲が形無しになるされるのを見てこういったとか

 

 

 

 

「あそこまで叢雲を形無しにするのは本気の司令官以来だわ。」




驚異の54時間メンテ!
皆様は禁断症状は出ていませんでしょうか?

作者はすでに出ています(白目)
フブキチャンドコ・・・

本来であればメンテの初日か中日に投稿予定でしたがここまでずれ込んでしまいました・・・
メンテ終了まであと6時間ほど・・・
その間の暇つぶしにでもなれば幸いです


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駿河諸島鎮守府の清閑 その3

※前回のあらすじ 提督は親潮とイイ感じと戦艦駆逐登場?


「ほっ!」

 

提督は軽く振りかぶった

 

掛け声の少しの間の後に、ポチャンという音と水しぶきが少し離れた薄暗い海面で上がる

シュルシュルシュルという音が収まるとベイルを畳んだ

ハンドルを少し回し、竿を軽くしならせるとスタンドに置いた

 

もう一つは振りかぶらず、そっと振って水面に落とす

 

 

一通り終えると、簡易椅子に腰を掛けた

 

 

予報通り、寒さが和らいでいるため外にいても幾分か過ごしやすい気温だ

しかし、海風は季節柄強く提督はブルりと体を震わせ身を縮こまらせる

 

海に背を向け、手で風よけを作りやっとやっとで火をつけたタバコだが風の強さで少し苦くなり顔をしかめた

 

2、3口吸って携帯灰皿に落とし消す

 

 

辺りに人気はないが、向かいの市場からは賑やかそうな声や音が聞こえる

その様子をボヤっと見ながらつぶやいた

 

 

「誰もいないから出ておいで。」

「・・・・・・ばっばれちゃった。」

 

 

海面の一部がグニャグニャと不自然に揺れ、人型に変わった

そして、一瞬まばゆい光を放った

 

 

 

「ほい、お茶。」

「ありがとうございます・・・・・・。」

 

近くに転がっていたビールケースに腰かけているのはリ級だった

提督は水筒から温かいお茶を入れて渡し、提督はおにぎりを食べ始めた

 

「おにぎりもあるから自由に食べて頂戴な。」

「・・・・・・聞かないんですか?」

「まぁ気にはなるけど逃げ出す感じじゃないしねぇ。」

 

 

 

ここはもちろん駿河諸島ではない

御前崎港の一角だ

 

休日をどうしようか考えた結果、たまたま旅館の自室で目に入った釣り竿と今日の気候で決めた

親潮と一緒に朝早く零水偵で駿河諸島を出発

提督は御前崎港、親潮は焼津港で降りて焼津駅から電車に乗る事になった

 

リ級は、夕張から借りた艦娘専用特別ギリースーツを着て提督の乗った水偵の後をついてきたのだとか

 

 

 

「提督は釣り好きなの?」

「ん?んー・・・・・・。」

 

唸りながら仕掛けをあげ、餌を付けなおすと再び放り込んだ

 

「昔、家族でよくこういう港で朝から釣りをしてたんだよ。」

「家族で?」

「そう。多分父親が趣味でやっていたのを体験でやらせたかったんだろうね。それからよくいってたのさ。」

 

もう一本の竿は上げ下げすると再び置いた

 

「楽しかったの?」

「うーん。釣り自体が好きというよりかは土日の家族団欒って感じかな?」

「?」

 

 

海を見ながらご飯を食べて、小腹がすいたらお菓子やジュースを飲む

しかし子供は飽きやすいもの

魚がかからなければ30分もしないうちに今度は散歩に行こうとせがんで他の人の釣果を見たり、他の家族連れがいればその子たちと遊んだり・・・

 

昼になれば魚の食いが悪くなるため家に戻る

2~3時間昼寝をして、母親は釣った魚の調理

自分はというと父親と一緒に釣り道具の手入れの手伝い

 

 

 

「楽しそうだね・・・・・・。」

「楽しかったさ。今はもうできないけどね。」

 

それを言うと、リ級は悪いことをしたという表情を浮かべる

 

「ああ!違う違う!母親が仕事始めたり、父親の配置転換で家族の休みが合わなくなったからできないってだけよ?」

 

慌てた様子の提督から聞いたリ級は、ほっとした顔をした

 

「そもそも、今年の年賀状で顔出せなんて書いてるくらいだからな?」

「そうなんですか?」

 

こうやって散発的にしか休みないから無理だけどね

釣り針に餌を付けなおし、再度水面に放る

 

「今はどちらかというと釣る楽しみというよりは海を眺めてぼーっとするほうが好きになったけどね。」

「・・・・・・それって楽しいんですか?」

「楽しいというより心が休まるのさ。」

 

ふーんと相槌を打つと海を眺め始めた

 

 

 

「私ね・・・・・・ル級様・・・ううんお姉さまがすごくうらやましいの。」

 

リ級がぽつり、しゃべり始めた

 

「やりたいことがあってそれがかなっている今お姉さまは幸せそう・・・・・・だけど私には・・・・・・。」

 

しょぼんとした顔でうつむいた

長い人生・・・・・・艦生?

どちらでもいいが、こういうことはのんびりと見つけるものだ

しかし、周りが見つけて謳歌していると不安になってくるものだ

 

果たして自分は見つけられるのだろうかと

 

「じゃあ何かにチャレンジしてみたらどうだ?」

「?」

「何事もこういうのは見つかるまで探し続けるのが大事さ。探さなきゃ見つからないものだしね。」

 

竿を手繰り寄せ、少しリールを巻くと提督の表情が変わった

少しリールを巻いては、竿を軽く引く

そんな動作を少し繰り返し・・・・・・

 

「ヒット!」

 

竿をぐんとしならせ、リールを巻く

竿を持ち上げるたび、海に引き込まれそうなほどしなりながら竿の先がビクビクと振動する

 

2,3分して、水面に白い影がひらひらと舞うのが見えた

 

「リ級、網で掬って!」

「えっ!あっ!はっはい!」

 

水面に浮かんできた魚を掬い、地面に置く

平たく右に目が寄った魚、30㎝もあるカレイだ

 

「生きがいいな!どれ・・・・・・。」

 

提督は、道具箱からナイフを取り出すと、エラに差し込み切断した

 

「こうしないとまずくなっちゃうからな。」

「へぇー・・・・・・。」

 

 

水の入ったバケツにカレイを放り込んだ

 

 

「あら?ずいぶん珍しい顔がいるわね?」

 

 

カツカツとヒールの音を高らかに響かせこちらに歩み寄ってくる艦娘が1人

黄色のリボンにピンクのロング、そこはかとなく大正の雰囲気をまとった子

 

「駿河諸島の司令官がなんでまた?」

「神風君か・・・・・・。」

 

不思議そうな顔で提督とリ級を交互に見る

少し上を見上げほほに人差し指を当てた

 

「大方強制休暇でも取らされたってところかしら?」

「正解。神風君はどうしてまた?」

「散歩。配置換えがあるから地理を再確認したいと思って。」

「配置換え?神風君が?」

 

彼女は御前崎基地内でそこそこの古株だったはず

ケッコンこそしていないが、御前崎の司令が配置換えを考えるとは思えない

 

「私も少し自由になりたかったのよ。ひょっとしたら出会えるかもしれないじゃない?」

 

ふっと笑みをこぼしてウインクした

予定では新年度より基地管轄内の御前崎灯台管理の秘書艦として異動するとか

 

「新人さんを案内するためにはしっかり把握しておかないとね。」

「神風君がいれば大丈夫だな。」

「あら?お世辞でもうれしいわ。そろそろ行かないとだから失礼するわね。」

 

去り際に、小声で

 

「その子のことは黙っておいてあげるわ。あなたも気を付けなさいね。」

 

耳打ちした後、リ級のあたまを軽くなでると立ち去って行った

 

 

 

「こっこわかった・・・・・・!」

「最初は殺気をガンガンに飛ばしてきたねぇ。ま、帰ったら鳳翔さんにでもさばいてもらって一杯やろう。」

「だ・・・・・・あれ?」

 

リ級は何かを言いかけ、はたと止まる

 

「どうした!っと。」

「私今何を?」

 

首をひねっているリ級に、提督はとりあえず帰ったら鳳翔さんところで一杯やろうといい、それに頷いた

 

「でも釣りは・・・・・・もうこりごり・・・・・・かも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「訓練艦清霜!入ります!」

 

緊張の面持ちの清霜が執務室に入ってくる

期待と興奮、緊張

すべての感情があふれだしているのが吹雪から見てわかった

 

今日の訓練は吹雪が担当することを叢雲が伝えるとこらえきれず、そばにいた霞に

 

「霞ちゃんありがとー!!」

「ああもう!人前でやめなさいったら!吹雪に失礼でしょ!っていうか吹雪と叢雲に言いなさいな!」

 

そんな様子を吹雪は微笑ましそうな顔で叢雲ちゃんみたいだねと言い、半分呆れ顔の叢雲が「私あんなんじゃないわよ?」と返した

 

 

 

 

「んで?どうなのよ?」

「うん。優秀だね。」

 

タブレットを見ながら吹雪は答える

沖合での砲撃訓練が映し出されており、ふんふんと頷いた

 

「これなら私が指導しなくてもいい気がするけど・・・・・・。」

「あの子はあんたの砲術を身に着けたいのよ。戦艦の装甲をも貫く砲術を。」

 

 

だよねぇと難しそうな顔で答えた

長門にも教えては見たが、100%にすることはできなかった

最も、長門が普段扱うのは大型口径

多少ズレたとしても大勢に影響は出ない

 

 

が、小型口径ではそうもいかない

もともと着弾時の熱を利用し、すぐに次弾を着弾させることで装甲を打ち抜くのが吹雪の持ち味だ

 

 

 

 

 

「どうですか?!吹雪さん!」

「うん!清霜ちゃんは優秀だね。これなら実戦に出ても活躍できると思うよ?」

「本当?!戦艦みたいに打ち合える?」

「うーん・・・。」

 

吹雪は苦笑いをし、清霜は不安そうな顔をした

 

「吹雪さんみたいな砲撃を私もしたいんです!」

「そうだなぁ・・・・・・。それはちょっと難しいかな?」

「そんな!」

 

清霜が悲痛な叫びをあげる

いったいどんな練習をすれば

そう言いかけた時、吹雪は清霜の口に人差し指を当てた

 

「だけど戦艦みたいな活躍はできるよ。」

 

そういうと、叢雲にあることを耳打ちした

叢雲は首をかしげながらも了解したわと言って無線で連絡をした

吹雪は、海面に降りると清霜の手を取った

 

「さ!行こう!」

「はい!」

 

 

 

 

「ここってさっきのところですよね・・・・・・?」

 

離れたところに演習用の的がいくつも浮かんでいる

霞が少し背伸びして何か手を施しているようにも見える

 

「清霜ちゃんちょっと貸してね。・・・・・・かすみちゃんはなれてー!」

 

清霜の持っていたD型砲を借りると、霞に呼びかける

霞は片手だけ上げると的から離れていった

 

吹雪は照準を合わせ、引き金を引いた

 

 

 

もちろん命中・・・・・・したがそれは中心からは大きく外れていた

 

「・・・・・・よし。」

「よしって・・・・・・吹雪さん外れてますよ?」

「ん?これでいいの。かすみちゃーん!」

 

吹雪の呼びかけに、的の確認をしていた霞がこちらに来た

 

 

 

 

「やっぱり実力は本物ね。」

「?」

 

開口一番霞の言葉を聞いて清霜は訳が分からないという顔だった

 

「吹雪からの指示で的にこれを貼っていたの。」

 

取り出したのはどこでも売っているシール

大きさは1㎝あるかどうか

 

「ひょっとして?!」

「きれいに貼ったところのど真ん中を打ち抜いたわ。」

「・・・・・・でもこれが何の意味を?」

「今回霞ちゃんにシールを貼ってもらったのは的の上の方。敵だったらどこの部分かわかる?」

「えっと・・・・・・頭?」

 

吹雪は頷いた

 

「敵の頭部には電探機能が備わってる。その視野を奪うの。」

「でもそれじゃあ吹雪さんみたいに・・・・・・。」

「今すぐには無理だけど、これができるようにならないことには私みたいにできないよ?」

「やります!」

 

 

キラキラした目で練習を始めた

 

 

「これでほんとにいいのかしら?」

「心配なの?」

「ちっちがうわよ!ええと・・・・・・!」

「ふふっ。・・・・・・今すぐは無理でもいつかきっと実を結ぶはずです。司令官は信じて待ってくれましたから。」

 

柔らかい笑みを霞に向けるとばつが悪そうに霞は返した

 

「じゃあ私が待ってるわ・・・・・・。感謝するわね。」

「素直になったほうがいいと思うけどねー。」

 

霞が聞こえないくらいの小さな声でボソッとつぶやいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あきつ丸!彼に電話はつながったかね?」

「それが・・・・・・。全く音沙汰無しで。いっそ駿河諸島に直接電話を・・・・・・。」

「それはならん!今彼とのつながりが分かっては彼に負担をかけてしまう!」

「しかし!それではこれはいったいどうすれば・・・・・・。」

 

古市とあきつ丸が顔を突き合わせていると電話が鳴った

 

 

 

『臨時陸海合同戦略会議が間もなく始まります。古市殿そろそろお席に・・・・・・。』

『わかってる!今から行くから!』

 

 

 

半ばたたきつけるように受話器を置いた

 

 

 

「こうなったら仕方ない・・・・・・。あきつ丸。すぐに支度して駿河諸島へ向かってくれ。」

「了解であります!」

 

 

大慌てで出て行ったあきつ丸と反対の会議室へと古市は向かう




北海道方面と関西方面の方は被害は大丈夫でしたでしょうか?
ツイッターなどで流れてくる情報を見て今年は災害が本当に多い年だと改めて実感している作者です


さて艦これの方では海域リセットがされました
作者は少しでも勲章が欲しかったがために8月中に再攻略を完了させ、ついでにこれはランカーも行けるんじゃないか・・・?
なんて色を出して7-1を延々と周回しておりました
(ぶっちゃけてしまいますとそのせいで遅れが・・・・・・)

全体的に羅針盤より固定ルートのほうが増やされ1期よりボス到達率や攻略しやすくなったと実感しております
その反面変動制の経験値になったが故レベリングポイントが軒並み低効率になっておりその子ポイントが残念だなぁとも思っていたりします

そして今日からイベントですが本編はようやくレイテ後編へ(まだ序章)突入!(おっそーい)


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駿河諸島鎮守府の清閑 その4

※前回のあらすじ それぞれの休日と動乱の足音


「あら?こんな時間に珍しいわね。」

「お届けに上がりましたよーっと・・・。」

 

少し顔を赤くした提督がリ級を背負いながら部屋の中に入る

出迎えたのはル級

どうやらこちらも晩酌をしていたらしく空のジョッキと半分ほどビールが残っているジョッキ、おそらくサワーが入った白いグラスが1つずつテーブルの上にあった

 

奥の個室にリ級を寝かせ、戻ってくるとニコニコと笑ったル級が言った

 

「ちょっと付き合ってちょうだい?」

「・・・・・・ヲ級は?」

「部長を寝かせに行ったわ。あの子はそこまで強くなさそうね。」

 

 

しょうがないなと言い、水道で水を一杯飲むと席に着いた

 

「ビールでいいかしら?」

「ああいや。山風の残りをもらうよ。ビールは苦手でねぇ・・・・・・。」

「あらもったいない。」

 

飲み干してすぐにル級が口を開く

 

「で?楽しかったかしら?」

「最初はびっくりしたけどね。やっぱりお前さんか。」

 

ギシッという音を立てて椅子で船をこぎ始めた

 

「迷っているけど私には相談しそうになかったの。こんなの初めてよ。」

「よく迷ってるってわかったね?」

「それは長い付き合いだからよ。深海側になる前から・・・・・・ね。」

 

ビールをグッと煽るとふぅと一息ついた

 

「・・・・・・ひょっとして。」

「ええ。あの子は覚えてなさそうだけどね。」

 

まぁそれはもうどうでもいい事だけどねと言われ、提督は続きの言葉をつぐんだ

 

「私は楽しみを見つけられたからいいわ。潮風と硝煙の香りの毎日ではなく、潮風と土の香りに囲まれた毎日・・・・・・。けどね。」

 

いつの間にか注いだジョッキを再び空にした

 

「私はあなたになら命じられても悪くないと同時に思っているわ。再び硝煙の香り渦巻く海へ行けと。」

「・・・・・・。」

「そしてあの子はまだ気づいていないけど私以上にそのことを思っているわ。」

 

 

提督はちらりと奥のリ級が寝ている部屋を見やる

 

 

「過去の人たちもいい人だったわ。腹芸もあったけど大切にしてくれた。けれど・・・・・・あなたはそれを上回った。」

 

ジョッキを少し粗目に置き微笑んだ

 

「人類を守るためなんて御大層な文句で戦うより、ありふれた私たちの日常を守るための戦いも悪くないわね。畑を守るついでで人類を守る・・・・・・なんてね。」

 

室内の隅っこに置かれた深海用の艤装を目をやりながら言った

 

 

 

すでに、ル級たちの艤装の解析が終わり正式に返却された

本人たちに反抗の意思がないため、リミッターは提督が操作することになった

常時リミッターを作動状態にすると性能が大幅に低下するためである

艦娘用の艤装も操作可能であったため、そちらも試してみたが、やはり深海側の艤装と比べると出力が若干下がる

時間をかければ同等のものに改造できるが、工廠担当の夕張の体は1つ

とてもそこまで手が回りそうにない(本人は悔しそうな顔をしていたが)

 

 

 

「少し飲みすぎたようね。」

 

 

 

ル級は流しのほうへ行ってしまった

提督は深く息を吸い、ゆっくりと息を吐いた

 

ル級に自分の水を持ってきてもらうように頼もうと声を上げようとしたとき、けたたましくドアをノックする音が室内に響き渡った

 

 

「耳本殿!自分であります!あきつ丸であります!至急開けていただきたい!」

 

あきつ丸と分かったが、その声色は切迫していた

ただ事ではない様子で、呆気に取られていたがすぐに我に返り返事をする

 

 

 

「はいはい!今開けるから!」

 

 

 

少しふらつきながら急いで扉を開ける

雨も降っていないのにびしょ濡れのあきつ丸が室内へと転がり込んできた

 

 

 

 

 

 

 

ロシア軍関係者とみられる一団に対する処遇は海軍側の強い要望で強制送還とロシア政府への抗議で決着した

 

同時に、近日行う予定だった会議をそのままを行うことになった

 

そして海軍提案の臨時人事案は陸軍側の反対があり否決

同時にその直前に可決された軍法改定によってこの人事案に新法が適用され海軍内で審議入りと思われる

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの和やかなほろ酔い気分はすでに吹き飛んでいた

提督は片肘をついて額に手をやり、ル級は静かに目をつぶってあきつ丸の報告をじっと聞いていた

幸い、古市大将の機転によって予定されていた新法に制限を加えることができた

審議終了の最短期間は1か月という制限のほかに、深海棲艦の動向によっては片方の軍が審議の一時停止する権利を有するという条件だった

 

これは、陸軍が海軍に権力争いにばかり呆けているんじゃないぞと釘刺しの意味合いだったのと、海軍側がロシア関係者の処分等などを早急に進めた代わりの譲歩だった

 

 

しかし、再可決されるまであと1か月

想定していた時期よりも1週間早まったことが提督の悩みだった

 

 

「まさか両面待ちしてたとは・・・・・・。」

 

 

海軍には現在親露派が上層部に多い

あの襲撃も、ロシアとしては日本の自立へと舵を切り出している自分はあまり好ましい存在ではない

襲撃に成功すれば自分が消える、この作戦に失敗したとしても多少時間はかかるが後ろ盾を取り払い力を削ぎ、やがては・・・・・・

 

両者の利害が一致していた

 

「わざわざありがとうね。とりあえずお風呂に行っておいで。」

「お心遣い感謝いたします。少し借りるであります。」

 

あきつ丸が奥の風呂に消えていった

わざわざ偽装航路を設定したうえ、スコールとともに近づき、夜になるを待ってから来たのでびしょ濡れだったのだ

 

 

「それで?手はあるの?」

「・・・・・・ない・・・・・・な。」

 

後継となる砂安中将ではまだ役として力不足であるし、何よりも一番重要な派閥の継承作業がこれからというところだ

少数派で結束力が強いとしても離反や他派閥への影響力が下がるのは必至だ

今から急いだとしても、中途半端に終わってしまい逆に力を弱めてしまう可能性もある

 

 

 

第二次レイテ沖の開戦の条件となるのは、前線での深海棲艦の動きに異常が見られた時だ

多少早めるように働きかけることはできるが、それでも深海側の動き次第

こちらの準備が万全にできた状態で挑むとなると欧州方面からの完全撤収が完了する2月後半から3月頭と推測され、この線は完全に消えている

 

 

 

万策尽きた

 

 

 

この言葉が頭に浮かぶ

 

 

 

「まだあるわよ?」

「・・・・・・却下だ。」

「あら?現状この手しかなくて?」

 

 

ル級の言いたいことを提督は察していた

一番簡単な解決方法

 

 

囮だ

 

 

提督はどこに深海棲艦が現れたら陸軍が審議停止を申し入れられ、海軍も頷かざる得ないのはわかっている

 

 

 

 

本土への資源輸送の途中に深海棲艦が現れたらどうなるだろう

最近は近海の制海権確保がほぼ100%のため近海の輸送に同行する陸軍将校も多い

 

1回や2回ならまだしも何度もその状況を見ればどうだろうか

ただでさえ少なくなっている輸送船が脅かされる現状で

 

 

 

しかし、当然リスクもある

もしバレれば当然自分は銃殺、他の子たちも解体処分は免れないだろう

ル級たちは処分対象となる

 

 

何よりも、作戦から帰ってこない・・・・・・つまりは撃沈のリスクがとてつもなく高い

 

 

「・・・・・・。」

 

 

どう計算しても深海側の動き次第

深海側が2月に入ってすぐ大規模な動きがあるという超がつく最良の結果のみだ

想定では五分五分の賭けだったのが今ではお話にならないレベルの大穴に賭ける状態

 

 

 

賭けという名の自殺行為だ

 

 

 

悪いことに北方、西方の協力がうまく得られてない南西方面の深海側は立ち上がりが想定より遅れているという予想だった

計算では中旬に準備完了という想定だ

 

 

 

 

「提督・・・・・・。」

 

か細い声に振り替える

先ほど寝かせたリ級が壁際からのぞき込んでいた

壁際から一歩出ると提督の顔をじっと見る

 

 

1分、2分、3分

ル級とリ級はじっと表情を変えず引き締めた表情で

対して提督は何か言いかけてはまた口を結ぶというのを繰り返し、やがて頭を垂れ始めた

 

 

 

瓶の汗は乾き、テーブルの染みが乾き始めた時だった

椅子に荒く腰を掛け、瓶ごと煽り一気に流し込むと咽った

 

小さな声で借りてすまんと瓶をやさしく置くと少し赤らんだ顔を上げた

深呼吸を1度、2度、3度

 

立ち上がって深々と頭を下げた

 

 

 

「時間を稼ぐ囮になってくれ・・・・・・!頼む!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん・・・・・・。面白いことになりそうだね。」

 

 

あはっ

 

 

小さな声でつぶやくと窓から離れ、潮風吹く闇の中に溶けて行った




リアルが忙しくなかなか更新がままならず申し訳ありません(´・ω・`)
次回よりレイテ沖海戦にようやく突入していきます


さて、本日のメンテでサンマ漁が終了しましたが皆さまはいかがでしたでしょうか
作者は早々に30匹をほぼ6-5でかき集め、初秋イベの回復に努めておりました

初秋イベのほうではE3までは甲で一気に行けたものの
ゴトランド堀や初月、プリンツ堀などあとの堀が詰まっていたことや、8月には二期移行のどさくさでランカーをやっていたことなどで集中力が切れてしまい後段は丙で流しました(白目)

次回の更新は・・・早目だと思います・・・?(多分)


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駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 序章

※前回のあらすじ 酒と決断


「これはどういうことですかな?」

「どうとは・・・・・・。」

「何かねその気の無い返事は!」

 

4人、5人で向かい合って座っている男たち

濃紺の軍服を着た男たちはただひたすら困り果てた顔

対するカーキの軍服たちは怒り心頭で濃紺側をにらみつけている

 

 

 

 

 

陸軍が発令した陸海緊急戦略会議

議題はここ10日間の輸送、哨戒結果についてだ

 

10日で実に300を優に超える船団が日本近海を移動し、その大半の船団に陸軍が同行した

来たる第二次レイテ沖海戦で、南西方面の基地航空隊整備や上陸作戦のためだ

船での移動の頻度が少ないため慣らしのために同行した

 

そこで目にしたのは9割を超える深海棲艦との遭遇率だ

ほぼ戦闘にはならなかったものの、深海棲艦が日本近海をかなりの数が闊歩しているという状態だ

 

 

 

「先の失敗で輸送船がひっ迫しているというのに何かねその危機感は?!」

 

古市大将が顔を真っ赤にして机をたたきながらまくしたてる

中央で相対しているのは須下中将

春にも大将への昇進が決まっている青年だが、ガンガンに言われ頭に来たのだろう

机をたたき返し、言い放った

 

 

 

「それくらい私どもも持っています!大体、あなた方はこういった平時でも会敵するというのを知らなさすぎる!これはいたって普通の遭遇率です!」

「ほう・・・・・・ほうほうほう?」

 

古市大将はわざとらしく納得したようにとぼけ顔で頷く

そして、がらりと顔を変えた

 

「ふざけるな!過去の報告書からここ3年で会敵率が9割もあった時なんてないわ!!」

「ですからそれは現場で判dっ!」

 

思わず須下は口をふさいだ

その瞬間を古市は見逃さなかった

 

「まさか小僧・・・・・・現場の判断で戦闘がなければ会敵なしとしているんじゃあるいな?」

「そんなわけないでしょう?!われわれにやましいところなんて一切ありません!」

 

その声を聞くと、荒げていた声を落ち着けはっきりと言い放った

 

「ならば哨戒を増やせ!警戒を充実しろ!毎晩のように料亭で人事の議論なんかしているんじゃない!」

「それとこれとは」

「大ありじゃ!その場に基地や鎮守府の長を集めているのにどうしてそんなことが言える!」

 

言い訳がましい発言に再び声を荒上げた

それ以上の反論ができず、須下は唇をかみしめた

古市は一つ空いた席に一瞥をくれ、声のトーンを落とした

 

「とにかく、今は海軍さんでやっている人事案の議論。これは一度差し止めて、落ち着いたことが分かったら再開していただこうか?」

「だからそれとこれとは関係ないでしょう!」

「わかった。よーくわかった。」

 

葉巻を口にくわえ、ぷかっとやる

物音一つ立てず、ピリピリとした雰囲気は収まる気配がない

 

「それじゃあわし等はレイテ方面への展開を拒否させてもらう。」

「なっ!それは困る!」

「困る?だったらシーレーンの防衛に全力を注がんかい!」

 

古市は須下の胸ぐらをつかむとつづけた

 

「いいか?海の上で輸送船に乗った将兵に何ができる?何もできんわい!先の大戦で制海権がない状態で輸送船に詰め込まれ突っ込まされた先人はどうなった?!大半が敵と戦うどころかただ行く途中で海の藻屑となる犬死をさせられたんじゃ!先に送り込んだ者たちも後を追う羽目になった!貴様らの組織が嘘で塗り固めた報告をもとに建てた作戦でな!」

 

言い終えると須下を突き飛ばす

椅子と一緒に転げて、半分呆けている

 

「陸軍が悪いところがなかったかと言えばそうは言えない。しかし、現状を鑑みれば海軍さんにゃ最低限わしらを極力安全に目的地まで運ぶという使命はあるだろう?違うかね?」

 

須下は半分自棄になったのか舌打ちをした

 

「わかりましたよ!3、4日待ってください!」

 

行くぞと周りの人を連れ足音荒く退席していった

 

 

 

「3、4日・・・・・・もう少し引っ張れればいいんだが・・・・・・。」

 

ざわざわと解散している人をよそに、ぽつりとつぶやいた

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪・・・・・・。提督休ませたほうがいいんじゃない?」

「何度も進めたんですが・・・・・・。」

 

川内の耳打ちに吹雪は心配そうに見ながら言った

 

 

ほほがこけ、目にはクマができ、ため息をつきながら書類を捌いていた

べつに仕事のしすぎなわけではない

 

原因は一つ

極秘裏で発令されているあの作戦だ

 

提督が戦闘に参加した数は両手で足りるほどだ

そのどれもが支援作戦や打ち漏らした敵の掃討など作戦に参加した者たちの危険が少ないものだった

 

 

采配、知識共に海軍内では指折りと言われている

 

 

 

が、それは今の提督には枷になっている

 

 

 

作戦指示をした後は後方でただ祈るしかないというもどかしさ

それを十二分に味わうことになったのだ

 

思いつき取り除けるだけの危険は取り払った

万が一のためにゴーヤという護衛もつけた

 

 

それでもまだまだリスクのほうが大きい

 

 

「ヤッホー司令官!書類持ってきたよー。」

 

どんよりとした雰囲気と正反対の黄色の髪に底抜けに明るい声の皐月がニコニコとして入ってきた

 

「おお。お疲れさん。そこに置いておいて・・・・・・。」

 

力なく未決済の箱を指さした

そして、書類をうつろな目で見る作業に戻った

それを見た皐月はムッとした顔をした

ずかずかと歩み寄るが、提督はぼんやりと書類を捌いており気が付いていない

左側から回り込むがまだ気づく様子はない

 

「うりゃぁ!」

「ほぁあああああああああああああ!」

 

皐月は、両手の人差し指を立てると提督の両わき腹を軽く突いた

奇声を上げて立ち上がった

 

「司令官がそんなんでどうすんのさ。その書類ちゃんと見て元気出してね。」

 

言い終えると呆然とした3人を置いてさっさと行ってしまった

 

 

 

 

 

「ねぇ加古。提督の事なんだけど・・・・・・。」

「わぁってるよ。あの雰囲気だと胃潰瘍ができてそうだから1週間くらい休養を・・・・・・。」

「そいつは無理な話さ。」

 

突然の声に驚いた加古と古鷹はぱちぱちと目を見合わせ、声のする方を見る

医務室の隅のカーテンがかかったベット

シャーっと開けたのは望月だった

大きなあくびをして休憩ももう終わりかぁとつぶやく

望月の言葉にムカッとしたのだろう

 

 

「医者の立場として提督に治療の必要があるんだけど?」

「でもすぐには死なないでしょ?」

「そういう問題じゃ・・・・・・!」

 

望月は普段のボヤっとした雰囲気から一転

いくつもの死線を潜り抜けてきた目に変わる

 

「じゃあ軍務に当たる立場として言わせてもらうよ。今は作戦中だ。司令官のあいつが現場を離れるわけにはいかない。・・・・・・今は休ませちゃぁいけない時期なのさ。」

 

万が一死人が出てあいつが一生後悔することになってもいいならなと言われ、加古は反論できなかった

 

あの一件が思い起こされる

 

 

 

軽くため息をつき、古鷹に軽く首を振って衣笠に電話をかけ始めた

 

 

「今は休ませられない。けどそんときゃあたしらが全力で支えればいい。司令官には・・・・・・あの子にはそう教えたからね。」

 

古鷹にふふっと笑って終わったら、いつものように頼むよと言って去ろうとした

 

「ああそうそう。みっちゃんの肩の荷が下りそうな報告書を皐月姉ぇに渡しておいたから多少はよくなるとは思うよ。」

 

ドアのところでそういうと、ほいじゃねといって本当に行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

提督は外をじっと見る

近くの街灯に照らされた暗く灰色の海

ひゅうひゅうと寒そうな風が窓から聞こえるたびに、顔を少しゆがませる

時々、壁掛け時計を見やるが一向に進む気配はない

 

 

遠くでチカっと何かが瞬いた

顔を一瞬緩め、目を凝らす

3~4回規則的な瞬きを見てガクっと頭を垂れ、大きなため息をついて椅子に重々しく腰を下ろした

時計をにらみつけては、時々振り返り海を見る

 

そんなことを繰り返していると部屋の静寂を引き裂くように備え付けの電話がけたたましく鳴り響いた

一瞬びくっと体を震わせ、その電話に飛びついた

 

「もしもし?!」

「てっ提督ですか?阿武隈です!」

 

あまりにも食い気味だったのだろう

電話の主の阿武隈が一瞬どもった

 

 

どうやら出撃していた囮艦隊は、スコールに紛れて戻ろうとしたらしい

しかし、艤装のちょっとしたトラブルが発生したため大事を取って航行速度を落とした

そのため、到着が1時間から2時間ほど遅れるので先に休んでいて欲しいという事が阿武隈から伝えられた

 

 

 

 

 

まんじりともせず、天井を寝転がりながら見る

窓から差し込むわずかな街灯の光が天井の木目をぼんやりと照らしている

眠気があるかないかで言えばある

しかし、眠ろうと目をつぶると浮かぶのはあの3人の事ばかり

ちらりと机のスマホを見やるが、メールが届く気配はない

 

廊下をコツコツコツと警邏の誰かが歩く音がする

無機質な音が徐々に大きくなる

 

 

 

「?」

 

コツンと一番大きくなったところで、音が止まった

不思議に思っていると、3回ノックの音が響いた

 

 

「はい?」

「お邪魔するぜ!」

 

開けて入ってきたのは深雪だった

 

「突然どうした?何かあったのか?」

「うんにゃ?なんもないぜ?」

 

電気を付けて扉を閉めた際に、警邏の腕章が付いていない事に気が付いた

思えば、今日の夜間警邏は磯風だった

 

「あたしが警邏じゃないってすぐに判断ができないくらい弱ってるねぇ。」

 

困ったような

呆れたような

 

そんな笑いを浮かべて目の前に立った

すぅと息を吸い込んだ

 

「耳本起立!」

「はい!」

 

びくっと体を震わせ、ベットから転げ落ちるように立ち上がるとピシッと敬礼した

 

「って・・・・・・条件反射で・・・・・・。」

「その反応ができるならまだいけるね。」

 

提督がへにゃっと緊張を解くとコロコロと深雪が笑った

 

 

「いいかい?今は司令官がしっかりするときなんだ。司令官がうつうつとしてるとその雰囲気が全体に蔓延して悪い流れを引き寄せちまう。わかるだろう?」

「・・・・・・。」

「こういう事がありそうだったから大将も元帥も、あたしやもっちーもあそこ(作戦参謀)にはやりたくなかったんだ。」

 

深雪はぐりぐりと提督の頭を撫でまわす

 

「結果論だけど行かなくなってほっとした。・・・・・・でも何のめぐりあわせかこうやって秘密裏とはいえ危険な作戦をとることになった。」

 

ぐしゃぐしゃになった提督の顔を両手でぱちんと痛くない程度にたたいて固定し、顔をぐいと近づけた

 

「あたしが付いてる。もっちーも、吹雪もみんなそばにいる!みんなで支えている。それでも不安か?」

 

2,3度瞬きし、くすっと笑った

 

「大丈夫そうだな!よっしじゃあ寝るぞ?最近ゆっくりと寝てないだろ?」

「そうだな。今日はぐっすり寝れそうだ。あの子たちを送り出す頻度も減ることだし・・・・・・。」

「ちょうどル級たちも戻ったみたいだぜ。」

 

机の上にあるスマホが付いており、遠目に阿武隈と見えた

提督は安心した表情を浮かべ、おやすみといってベットに戻る

 

 

 

 

「ところで。添い寝をすると安眠効果が上がるという話があるのは知ってる?」

「え?」

 

振り向いたときには、深雪の格好は寝間着だった

 

「カモーン吹雪!」

「しっ失礼します!」

 

同じく寝間着姿の吹雪が枕を2つ持って入ってきた

 

「まぁ・・・・・・うん・・・・・・。いいか。」

 

半分あきらめたように苦笑をし、3人でベットに入った

 

 

 

 

 

報告書

 

例の鎮守府は政治的利用価値が高く、トップには聡明な提督がいる模様

戦後アメリカとの間に起きる競争には日本海軍組織より彼らとのコネクションを作ることこそが重要と考える

そのためにも、件の会談を日程調整し来月中に行うことが彼らにとって助けになると思われる

また、近々接触、交渉を行うことを検討されたし

詳細は添付ファイルを参照すること

 

「これで良しっと。」

 

にぃっと微笑みながらパソコンをたたき終えた

 

「楽しみだなぁ。・・・・・・っとと。」

「誰かいるのか?」

 

懐中電灯をあちこちにあてながら入ってきたのは磯風だった

 

「気のせいか・・・・・・?川内さんから1,2か月ほど前からスパイが忍び込んでいる恐れがあると聞いているが・・・・・・。まさか・・・・・・な?」

 

一通り見て回り、異常が見受けられないのを確認して出て行った

 

 

 

 

 

 

後日、輸送船団を兼ねた警戒部隊が配置されたことにより囮艦隊の出撃頻度は緩やかに減少していった

審議の中断期間は6日

想定よりは稼げたが、この足りない一日に泣くことになるかどうか

じりじりと減る日々に、提督は顔や態度に出さないようにした

 

 

そして節分もバレンタインもそっちのけでカレンダーに印を付けながら待つ日々

 

タイムリミットの16日が迫っていた




ついにレイテ沖海戦突入!(もうすぐ冬イベとか言わない!)

今日は吹雪ちゃんの進水日!
明日はこの小説を投稿し始めて2周年!(よく続いてるなぁと自分で思ってます)
そしてアーケード版の方でちまちまとやっていたレベリングが終わり、本日無事アーケードの吹雪ともケッコンをすることができました(*´ω`*)
いやぁ改めて動くケッコンのシーンを見るとすごいです・・・!
(実はアーケードが壊滅的に苦手で2-1以降行けず演習のみで上げた人)

さて、近況の方ですが明日おそらく巻雲改二!
練度は80まで上げてあるから大丈夫(なはず)
ながもんタッチ(仮)や日向改二はまだ来ない雰囲気ですが楽しみなことが目白押しですねぇ・・・

ちなみに艦これJAZZは昼の部に見事当選しました(*´ω`*)
最近リアル関連での当落関連は上々ですねぇ・・・!(あとアーケード2周年の記念缶バッチも当選していたという不思議)


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駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 幕開け

※前回のあらすじ 時間稼ぎ成功と弱気、そして・・・?


2月14日 バレンタイン

 

海外では男女問わず親しい人や恋人などに贈り物をする日

日本では女性が男性にチョコレートを贈る習慣がある

 

毎年、駿河諸島でもささやか(?)な形でやっているが、今年は違った

卓上カレンダーには、ずっとバッテンが付けられていた

 

そして、壁のル級お手製鳩時計がなくと同時に、14日にバッテンがつけられた

 

提督は静かにサインペンを置くと大きなため息をついた

 

 

 

ル級とリ級、ヲ級までが命を削ってまで引き延ばしてくれたタイムリミットまであと2日

正確には16日の12時に始まる会議で決がとられるので1日半

 

 

ギリギリまで待っては見たがこうなっては仕方がない

おそらく向こう側も砂安中将への移行を半分は終わらせている頃合いだろう

 

だが圧倒的に時間が足りない

それなのに、打開策はすでに出し切っている

 

 

 

・・・・・・寝よう

提督はそう頭で考えた

ひどい顔を見せてまたいたずらに皆を心配させてはいけない

 

 

 

 

軽く片づけを終え、部屋を出よう扉に手をかけた時、ベルの音が鳴った

 

 

 

 

 

 

一瞬何が起こったのかわからなかった

机の上の電話が、けたたましく鳴っているのに気づくと同時に走り出していた

 

 

「もしもし?!」

『てっ・・・・・・提督ですか?飛龍です。』

「・・・・・・何かあったのか?」

 

提督の食い気味の声に驚いたのだろう

内線だったことに気が付き、露骨に声のトーンと肩を落としながら内容を聞く

 

『それが、ブルネイ泊地より入電がありまして連絡部隊の受け入れの要請が・・・・・・。』

「それは本当か?!」

 

 

 

 

間に合った

 

 

 

 

提督は安堵した

 

が、ある違和感を感じる

 

 

「ってなんでうちを経由するんだ?メーデー時や給油関係ならまだしも・・・・・・。」

 

おそらく陸攻や二式大艇を使うはずだが、航続距離を鑑みても関東近郊の飛行場に届くはずだ

 

『それがどうも向こうの飛行場の枠がないそうで・・・・・・。』

 

電話を肩に挟み、机の上に置いてある15日付で処理をする書類をあさると、原因が出てきた

本土の陸上戦闘機部隊を15日からブルネイ、タウイタウイ、パラオ等に回送するという通達だった

本来の日程であれば、大将の案件が片付いて終わっている手はずだ

空域のダイヤグラムというのは非常に緻密であり、一度決定したことを変更するのはよほど切迫しない限り難しい

そのため、大将の案件が片付いてからという目算が狂い、忙しい時に回送することになっても変更が効かないわけだ

 

 

最も、それは現状ではこちらの足枷にもなっている

 

 

情報漏れを防ぐ観点から、2月に入ってからは無電は封鎖されている

最速で大本営に伝達するには着陸可能で一番近いうちで一度降りて、そこから海路で行くしかないということである

 

「分かった。許可する旨を伝えてくれ。ああそれと、出発時刻と到着予想は来ているか?」

『明朝マルロクマルマルに出発して、ヒトハチマルマルに到着予定だそうです。』

「・・・・・・。分かった。ありがとう。」

 

そっと受話器を置くと、冷たくなった椅子に腰を掛けなおした

 

 

多めに見積もって到着時刻は20時

事情を説明して出発できる時間は22時くらい・・・

そこから吹雪に任せて飛ばしてもらって横須賀着が翌1時過ぎ

 

間に合うが完全な滑り込みだ

深夜番の将校だけでは判断できないため夜が明けてから対応策が決まることになるだろう

 

ブルネイ泊地からの報告とレイテの疑似再現であればパラワン水道関係

おそらくブルネイ、リンガ、タウイタウイの3泊地の勢力で対潜哨戒くらいであれば初動の対応できると判断される可能性が高い

シブヤン海、エンガノ岬沖、レイテ湾の3か所も動きがあるだろうが今回の報告に入っているかは不明だ

 

もう一手ほしい

 

 

今のままでは、作戦本部設立に割いて足りない人員を、本州の飛行場に配置された将校を呼び戻すことで決議を有効化できてしまうだろう

数時間の時間稼ぎでは意味がない

 

 

 

「・・・・・・。」

 

天井を見上げるのをやめ、自室につながる扉を見やる

じっと目を離さずに、机の一番下の引き出しを開けた

最初に手に触れたベレッタを取りだす

一つ上の引き出しからマガジンを取り出し、込めると扉に向けた

 

 

 

カチッカチッカチッカチ

 

時計の針の音がいつもより遅く聞こえた気がした

長い時間がたったように思えるし、そうでもないのかもしれない

 

気のせいかと銃を降ろそうと考え始めた時、ゆっくりと扉が開いていく

 

吹雪より少し背が高く茶色い髪のツインテール

空色のポンチョにロシア帽をかぶった子が腕組みをして不敵に笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪ちゃん!気を付けてね!」

 

つらそうに顔を引き締め、吹雪の両手をしっかりと握る

 

「はい!頑張ります!」

 

それに答えるかのように吹雪はぎゅっと笑顔で握り返す

会話もそこそこに厚着をした吹雪が水面を滑っていき、鉛色の海へと消えていった

私のほうが早いのにと先ほどまでむくれていた連絡部隊隊長の島風が、はっやーい!と興奮しており、そばにいた夕張に秘密を聞いていた

推定で45ノットから50ノット

近海かつ、上空の哨戒機をまわしているとはいえ単艦で吹雪を送り出したことに後ろめたさがあった

とはいえ、船団を組んでいてはその平均値に合わせられてしまう

今は一分一秒が惜しい

 

質問攻めに、夕張が困った顔で提督に助けを求めていたが、話せる範囲のことは話していいよと耳打ちをしそそくさと執務室へと退散した

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ同志。おかえりなさい。」

「よくまぁのんびりとしていられるな・・・・・・。」

 

相手はリラックスした様子で執務室のソファーに腰かけて優雅に紅茶を飲んでいた

外套とマフラーを外しハンガーポールに掛け、反対のソファーに座った

カップとソーサーを机の上に隅に置き、真っ黒なアタッシュケースから数枚の書類を取り出すと、提督に見やすいように渡す

 

 

 

「なるほどなるほど。・・・・・・で?タシュケント君。君の権限はどこまでなのかな?」

 

名前を呼ばれると、少し考えこむようにして君付けはいらないんだけどなぁと呟く

 

「まぁいいや。全権をもらっているから信用してもらっていいよ。」

「・・・・・・。」

 

書類の内容は、ロシア政府から技術提供の依頼だった

妖精さんを使った油田、ガス田や炭鉱などの技術を輸出してほしいという依頼だった

代わりに、このタシュケントを駿河諸島鎮守府への転属扱いとし、自由に使っていいということ

そして、産出資源の利益1割を受け取る権利だった

 

ロシアは資源大国だ

ガス田、油田、炭田など主要なエネルギー資源が山のようにある

深海棲艦が現れるまでは資源価格で国庫が左右される傾向があった

 

しかし、深海棲艦が現れてからは一転した

油田地帯の中東は欧州と寸断され、欧州では資源不足が深刻化した

というのも、北海油田の施設が深海棲艦によって破壊されてしまったのが大きい

他に欧州の鉄道がつながっている範囲で石油を産出しているのはロシア以外ではルーマニアだけだが

残念なことに産出量が少なく、国内分を賄うのでさえ不可能

 

よって、欧州各国は一時ロシアに全エネルギーを依存していたという時期がある

最近になって艦娘たちの海上護衛船団を組み、ある程度の量は中東やアメリカから輸送できるようになったので今は独占は解消されている

が、こちらのように欧州勢の新艦娘開拓は進んでおらず人手は足りていないのが実情だ

遠征失敗もたびたび起こる関係上、艦娘の技術を持たない国は依然としてロシアに依存している

 

 

 

今まで諸外国には、妖精さんは決まった仕事しかできないと説明してきた

うちのように、技術を転用して仕事をしてくれる妖精さんは少ないのだが、いないわけではない

 

もし、妖精さんを使用できればコストダウンができると考えたのだろう

北海方面の制海権が奪還されつつある今、北海油田が再稼働し、せっかく拡大したシェアを削られないための策だろう

 

 

 

 

「しかし、それをこちらに持ち込まれても困る。大本営を通してもらわないと。」

「ふふっ。わかっているんでしょ?」

「・・・・・・。」

 

ジロリとタシュケントの顔を黙って見る

相変わらずニコニコとした顔を崩さない

 

しかし、しばらくして少しむくれた顔になった

 

「もう!仕方ないなぁ・・・・・・。この協定はあたしと君の間で結びたいんだ。これでいいでしょ?」

「・・・・・・なるほど。」

 

 

 

提督が一番欲しかった言葉だ

訳すればロシアとうちの間の協定になるし、それを相手から切り出し言わせた

提督が一番欲しかった最後のピースがそろった形になった

 

「いいだろう。ただし、妖精さん関係の技術は最低でも数年以上をかけての輸出になるがいいかな?」

「うん。それくらいなら大丈夫さ。」

 

タシュケントに出された書類に目を通していく

一番上には、ロシア大統領のサインが入った特命全権大使の委任状があった

 

 

 

 

 

タシュケントが書類をまとめ封筒に入れて封蝋をした

 

「・・・・・・そういえばタシュケント君はいつからここに潜り込んでたんだ?」

「君はいらないよ?同志提督。12月からかな?」

「なるほど、あのロシア船の事故の時か。」

「そうそう。でももぐりこんだはいいものの警備が厳重すぎてねぇ・・・・・・。核心をつかむものは何一つ入手できなかったよ。」

 

参った参ったといいながらけらけらと笑っていた

川内がここ2,3か月ピリピリさせていた原因が分かったとともに、やっと少しは気を抜けるのだろうなと心の中でお疲れ様とつぶやく

盗まれなかったとはいえ、姿を一切つかませなかったのには感服する

 

 

 

「ああそうそう。同志が喜びそうな情報があるんだ。」

 

ポケットから一枚の紙切れをよこしたと同時にノックが響く

 

「司令。タシュケントを迎えに来た。案内担当の磯風だ。よろしく。」

「タシュケントだよ。よろしくね。」

 

内線で磯風に見回りついでの案内を頼んでおいた

それじゃあまた明日ねと言って磯風と出て行った

パタパタと足音が遠ざかったのを確認して紙の内容を確認した

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だって?!ロシアとアメリカが臨時首脳会談?!」

「どうしましょう・・・・・・。」

 

須下が忌々しそうに舌打ちをしながら手元の紙をぐしゃぐしゃになるほど握りしめる

 

「よりによってこのタイミングでベーリング海なんぞに赴かねばならん!」

 

会談が行われるのはロシアとアメリカの国境付近にあるリトルダイオミード島

どちらか片方が会いに行くというのは今のご時世不公平である

日本も欧州もアメリカ側が長距離の区間を制空権が怪しいところを飛ばねばならない観点から無しになった

もっぱら会談が行われるのは大体リトルダイオミード島だった

会談中は哨戒部隊として実務的にも儀礼的にも格のある艦隊を派遣しなければならない

米露両国からの要請もあるため断ることは不可能だ

 

「航空隊の回送がもう少しずれていれば何も問題なかったのだが・・・・・・!」

 

航空隊の回送の関係で明日の最後の決議にはギリギリの人員しか用意していない

それなのに無情にも会談は明日からスタートする

とにかく急ぎ艦隊を送り、下見と偵察を行わなければならない

 

 

「いえ!まだです!」

 

 

報告に来た側近が詰め寄る

 

「会議を18時に変更しましょう。航空隊回送が終わった本州の人員を呼び戻せばギリギリ有効人数が足りるはずです!」

「・・・・・・よし!やってm」

「失礼します!ブルネイ泊地より急報!」

 

須下は電話を持ったまま固まった

 

まさか・・・・・・駿河の・・・・・・

 

目を見開いて息を切らせた様子で飛び込んできた吹雪を見ながら言葉を絞り出す

 

 

 

 

 

 

「パラワン水道付近にて敵潜水艦の目撃多数!また、シブヤン海、エンガノ岬沖、レイテ湾などでも深海棲艦が集結の傾向あり!至急戦闘態勢及び作戦本部を発足されたし!」




19冬イベの終了と同時に18冬イベの話題をしている今日この頃(´ω`;)

次回も新艦の登場がある・・・かもしれない?(あと更新をもう少し早くしたい)


というわけでお久しぶりです
丸っと2か月以上空いてしまいましたw
年末から年始にかけて忙しく、なかなか更新できませんでした(;´・ω・)
年末には閣下動画勢の方でコミケついでのオフ会でとても楽しい時間を過ごしておりました(*´ω`*)
さて、本日冬イベの方は終了ですが皆さまはどうでしたでしょうか?
作者は17春以来のオール甲をラスダン一発で達成し、堀の方でもジョンストンが削り一発、早波が堀10回程度で来るなど新春のJAZZイベントで引いた吹雪のおみくじのご利益があったなぁとしみじみ思っております


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駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 前編

前回のあらすじ 時間稼ぎ滑り込みで成功と北の国との密約?


「また派遣するのかい?!」

 

時雨が机を力強くたたいた

あまりの強さに机の置物が少し浮きあがった

 

「まぁ落ち着いて。話は最後まで聞きなさいな。」

 

サインをし終えた書類を決済済みの山に乗せる

それを見て、親潮が引き取って出て行った

 

手近の封筒を手繰り寄せ、折りたたまれた海図を出す

 

 

「今連合艦隊は大まかに3手に分かれて活動している」

 

 

 

主力である連合艦隊はブルネイ泊地を出向してパラワン島を右手に進みながら周辺海域の制海、制空権を取りに行っている

取れた場合、ノースイースト島やナンシャン島に臨時泊地を設置し、そこを拠点に再度東進

レイテ湾を目指すことになっている

 

連合艦隊の別動隊である西村艦隊は同じくブルネイ泊地を出向するとパラワン島を左手に見ながら東進

姫級の存在がいなくなったとはいえ、うじゃうじゃいる戦艦群の撃滅、再突破に向かう

 

そして、過去には翼を持たぬ囮部隊と言われた機動部隊

この艦隊がエンガノ岬で敵機動部隊を引き寄せながら、叩きのめす

 

「で?僕はまた西村艦隊としてかい?」

「いや、これはあくまで現在の進捗だ。」

 

提督はペンである島に丸をする

 

連合艦隊がシブヤン海周辺の制海権を確保したら予定ではレイテ湾に突入する

 

「西村艦隊がボホール海の制海権を確保すると、このカガヤン・スル島が拠点になる。ここから友軍としてレイテ湾に向かってほしいんだ。」

「・・・・・・その間の僕の業務は?」

「八丈島の瑞鶴さんに応援を頼んであるから大丈夫。」

「分かったよ。なるべく重要な仕事は終わらせておく。」

 

やれやれといった雰囲気で足早に扉に向かって振り向いた

 

「もしかしてだけど他にも要請来てる子いないよね?」

「・・・・・・。磯風と長波だな。」

「どうするの?」

「彼女たちはまだ事務関係に深く携わってないから何とかなるさ・・・・・・多分。」

 

少し考えた顔をしたが、無駄だとわかったのだろう

無茶はしちゃだめだよと言って出て行った

 

 

 

「悪い!みっちゃん!やっぱ駄目だったわ!」

 

 

 

入れ替わりに入ってきた深雪が苦々しい顔をしていた

深雪には応援として過去の卒業生の中からこれそうな人を探してもらっていた

 

悲しいかな

予想通りといえばその通りだ

 

「みっちゃん・・・・・・。川内さん戻せない?」

「こればっかりはなぁ・・・・・・。」

 

元帥昇格が一時凍結の扱いとなり、一息付けたものの結局この海戦が終わり次第審議が再開されるという運びだ

それを阻害するためには中核にいる須下中将を落とすことが重要となる

幸いにも、過去の余罪からして軍から追放は間違いないと思われる

 

現在念を入れるため、川内が潜り込み確実な裏を取りに行っている

 

 

「仕方ないからあきつ丸に頼んで陸軍の憲兵隊をまわしてもらってパトロールを任せよう。」

「重要区画はどうするのさ?」

「そこは・・・・・・やっぱり一人は割くか・・・・・・。」

 

パトロールの人員を事務方に回せる反面、機密の宝庫であるここに別の組織の人間を入れるという前例を作ることになるのでできればやりたくなかった手ではある

が、タシュケントという前例がある以上警備をおろそかにするわけにはいかない

 

「なんか呼ばれた気がしたから来たよ?」

「おう呼んでないぞ。」

 

後ろからと突然ひょっこり飛び出してきたタシュケントの頭を冊子でペシンとたたく。

 

「んじゃああきつ丸に連絡とってくるわー。」

 

 

 

 

 

 

「んで?いつまでいるのよ。」

「いちゃダメなのかい?」

 

 

コテンと小首をかしげるあざとい動作に軽いため息をつくと、ニヤリと笑った

 

 

「これもダメかぁ。」

「ほんとになんなのさ?」

「いやぁ祖国から提督のことを篭絡しないと帰れないからねぇ。その努力。」

「ワーメッチャカワイイワーホレチャッター」

「いくらなんでもそれは無理があるなぁ。」

「何か腹に一物抱えてるやつはこうするに限る。」

 

舌打ちをしながら煙草をくわえた

それをじっとタシュケントは見つめる

 

「・・・・・・。」

「さ、他に何かなければ補給部の手伝い・・・・・・。」

「同士はなんで人権にこだわるんだい?」

「ふぉい?」

 

予想してなかった言葉に思わず変な声が出た

 

「自由という権利と義務の裏には何が付いているのか知っているかい?」

 

いつもの何か腹に抱えている雰囲気は感じられない

 

「自分で決めていく意志がなければならない。」

「へぇ・・・・・・自己責任というと思ったけど?」

 

自己責任も確かに当てはまるとはおもう

が、必ずしもそれが当てはまるとは限らない

明らかに自分の責任で招いた状態ではない状態で究極の2択をしなければならない時もあるだろう

 

 

 

それは果たして自己責任といえるのだろうか

 

 

 

そんなケースは一生に1度くらいはある

 

 

「まぁいいや。どちらにしろ聞きたかったことに答えてもらってないし。」

 

つけたばかりの煙草をもみ消し、タシュケントに向き直る

 

「人権という自由を艦娘全員が欲しがってると同士は思っているのかい?」

「いや?思ってないが?」

「え?」

 

即答されたことにタシュケントはポカンとした

 

「え?欲しがっていると思ったいるからやっているんじゃないのかい?」

「んなわけないだろう。艦娘だって個人個人で性格違うんだし感じ方もその娘それぞれだ。」

「じゃあなんでそんなに人権にこだわるんだい?」

「その前に一つ。タシュケント、君はこの戦争が終わったらどうしたい?」

「え?」

 

 

しばらくうんうんとうなり始めた

 

 

「まぁそうなるよな。俺はこういう反応もありだと思うぞ。」

「どういうことだい?」

「つまりさ。とりあえず軍に残ってしばらく考えたいという子もいるだろうし、これをやりたい!って子もいるだろう、軍を抜けたくない!それぞれの考えがあるわけだ。」

「なるほど。つまり選択肢を追加したいということでいいんだね?だけどそんなに犠牲を払ってまでやることかい?自己満足といえるのじゃないのかい?」

 

頷きながら続けた

 

「そうだね、自己満足であり私欲だ。俺たちが安全に暮らすための。」

 

その言葉にまたしても解せないという顔をした

今まで見たことのあるタシュケントの表情はいかにも取り繕ったような表情だった

が、今見せている顔はまさしく自然なありのままの反応だった

 

 

 

「ははっ。なんだそんな顔できるのか。」

「むっ?それはどういうことだい?」

 

少しむっとした顔をする

 

「そのままさ。その顔を見せてくれたお礼に教えよう。この戦争が終わった後、勢力図がどうなるか。」

 

 

 

これだけ各地に鎮守府や泊地、基地を抱えているにもかかわらず日本の懐が破綻しないのはなぜなのか

 

貿易とは1人でやるものではなく、相手がいてこそだ

 

深海棲艦が現れて以来シーレーンが一度めちゃくちゃになった

そのシーレーンを取り戻したのは誰か

アジアと欧州をつなぐ陸路ルートがあり、自力がある程度あったロシアという例外以外は押しなべて少なくない被害を負った

 

日本が艦娘という光明を示した際、各国はそろって称賛した

とりあえずアジア、オセアニア方面の制海権が復帰してきたところで各国は一物を抱え始めた

 

 

 

自分のところに欲しいと

 

 

 

そして、日本もある意味窮地に陥っていた

船団保護のために各地に泊地や基地を設置したはいいものの維持費は日本の国家予算の8割に到達しようとしていた

もちろん初期の投資費用も絡んだのだが、大多数はさも当然というように土地代や建材費を割増しで要求した

心理としてはわからないでもない

国が疲弊しているところに外貨が転がり込んでくるチャンスを見逃せるはずがない

 

 

 

一方、これから起こることを察していたドイツ、イタリアは関税の優遇や土地、建材の無償提供を行った

 

 

ある日、日本は艦娘技術輸出をドイツ、イタリアだけに持ち掛けた

 

 

 

当然持ち掛けられなかった大多数の先進国は日本を非難した

が、この時は日本も引かなかった

国連の議場で一言、大将がこういった

 

 

 

「ただ乗りする乞食の国にやる技術はない。」

 

 

 

最初こそ対日感情が悪化したものの、徐々に各国は自分の立場に気づいた

仮に、このタイミングで日本が艦娘による船団護衛をやめたらどうなるだろう

 

 

困るのは自分側だけであるということに

 

 

東南アジア各国はかつて日本がアメリカにやっていた駐留経費負担などの予算をすぐに付けた

その後、それに倣い何かしらの優遇や経費負担などの配慮を行った

 

 

 

 

今や日本はかつてアメリカがいた場所に立ちつつある

しかも、向かい合っているのは同じ相手のロシア

幸いにも、「今は」深海棲艦という人類共通の敵で視線は逸れている

 

 

 

もし、艦娘が人と同じ扱いだった場合どうなるだろうか

民衆とは総じて無知であり、踊らされることが多い

その反面、数という大きな力を持っている

 

 

 

 

「・・・・・・なるほどね。つまり、お互い外に目を向ける暇をなくせば同士の勝ちなわけだ。」

「そーいうこと。かつてあったブレーキ(資源輸入)はうちが取っ払っちゃってるわけだしね。」

 

「ただいま戻りました!今お茶を入れてきますね!」

 

吹雪が書類束をもって帰ってきたのを見て、提督はわずかに頬を緩ませた

 

「お疲れさん。手伝うよ。タシュケントもお茶でいいかい?」

 

 

タシュケントがお願いするよというのを聞いて、吹雪と給湯室に消えていった

 

 

 

(さて・・・・・・。とりあえず最低限の言質はとれたかな。)

 

タシュケントはそっと息を吐く

 

(あとはいかにしてこっち側にひきこむか。そろそろあっち側も動く頃だし早くしないと・・・・・・。)

「ほいよ。まーた何か考えてるな?」

 

ぼんやりとテーブルを見つめるタシュケントの前に湯飲みが現れた

 

 

 

提督はソファーではなく机に戻り、再び書類整理に戻った

吹雪も隣の机につくと、判を突き始める

 

「・・・・・・。ちょっといいかい?」

「んー?なんだい?」

「2人ってケッコンしてるんだよね?」

「そうだな。ほかにも川内とか龍驤とかともしているが・・・・・・。」

 

お茶をすすりながら書類に目を通す

 

「ってことはやることやってるわけなんだ。」

「「っ!」」

 

提督は思わず口を押えると窓のほうを向いてむせ、吹雪は判を突こうとしたときに体勢を崩した

 

(・・・・・・おや?)

「すまん!変なところに入った!」

 

ゴホゴホと咳き込みながら給湯室へと駆け込んでいった

チラリと吹雪を見ると、何事もなかったかのように仕事に戻っている

 

が、線が入った頬がわずかに赤らんでいるのが分かった

 

 

 

 

(これはまだチャンスはあるかな・・・・・・?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ・・・・・・どこ・・・・・・?」

 

顔面蒼白になりながら声の主は水面にへたり込む

海図をぐるぐると回し、時には天を見上げて位置を確認する

 

が、わかったようなわからないような

日は暮れかけているとはいえ、まだ星は見えない

島々は見えるが彼女の目的地である日本ではない雰囲気だ

艦載機を飛ばす燃料も惜しくなりつつあった

到着予定をすでに2日も過ぎており、遭難信号を出そうか

そんなことをぼんやりと考え始めていた

しかし、そんな恥ずかしいことをできるわけがない

硫黄島付近まで護衛してもらい、ここからは一人で大丈夫と見栄を張ったのだ

 

目の前が少しゆがむ

 

 

 

「?」

 

彼女は水色の目を見開き、拭う

水平線上に2つ点が移動しているのが見えたのだ

おあつらえ向きに、こちらへと向かっている

 

彼女は顔を輝かせた

妖精さんに頼み、近距離の無電を飛ばしてもらう

そして、双眼鏡と一つの本を取り出した

 

『Kanmusu Identification Table』(艦娘識別表)

 

 

「えっと・・・・・・先頭の金髪の子は巡洋艦?・・・・・・あぶぅ・・・くま?」

 

漢字のほうを見たが、首を傾げローマ字を読む

もう一度視線を戻すと裸眼でも相手の動きが分かるようになってきた

向こう側も手を振っているのが見え、大きく振り返す

先ほどの蒼白さは消え、喜色に変わる

 

 

 

そして阿武隈の後ろの人物を見て、再度蒼白に変わり視野が暗転した

 

 

 

 

 

 

 

「忙しいところすまないな。」

「いいえ。ちょうど出張のついででしたし・・・・・・。大発等の使い方を長門さんに聞かれるとは思ってませんでしたが・・・・・・。」

「うちの大発とかが使える子は遠征で忙しくてな。できれば本番前に使えるようにしておきたかったんだ。」

「まぁわからなくなったらいつでも聞いてください。私は融通利きやすいほうなので・・・・・・・。」

 

 

そう話すと会話が途切れる

 

 

聞こえてくるのは風と波を切る音だけ

そんな静寂を破るかのように、唐突に長門が切り出した

 

「うちに来る気はないか?」

「えっ?」

 

驚いた顔をして阿武隈が振り向く

 

「いやな。君のもとにいた子たちが最近ようやく心を開くようになってな。君のことを心配しているんだ。」

「そっか・・・・・・。そうですよね。」

 

前に向き直ると阿武隈は無表情で目を細める

 

 

 

「長門さんはあたしの返事。わかりますよね?」

「もちろんだとも。あくまで万分の一で聞いた。」

「桁が足りません。あの子たちには遠征のついで出会いに来るように伝えてください。」

「承知した。」

 

ふっと長門は笑うとふふふっと阿武隈も笑った

 

「ん?何?阿武隈!ちょっと待ってくれるか?」

「どうかしましたか?」

 

阿武隈が速度を落とすと、長門が横に並ぶ

 

「今しがた、アメリカ籍の艦娘から無電が入ってな。日本へ行く途中で航路を見失ったそうだ。」

「アメリカ籍・・・・・・?なんでまたこんなところに・・・・・・。」

 

ここがどこかといえばリンガ泊地の沖合

阿武隈が駿河諸島へ帰るために長門は護衛を兼ねて見送りに来ていたのだ

 

「とりあえず長門さんは水戦と偵察機持ってましたよね?それの準備をしておいてください。」

「心得た!」

 

阿武隈も甲標的を射出する準備をしながら無電の方向へと向かう

 

ほんの少しすると、発信主が見つかった

太い金髪のツインテールが目についた

うれしそうな顔でこちらへ手を振っている

先行していた阿武隈が敵ではないと甲標的を引っ込めて長門に伝え、再び彼女を見る

 

「ええ?!ちょっ!だいじょーぶですかー?!」

 

先ほどまでニコニコとしていた顔が恐怖のあまりひきつった顔に変貌していた

 

スローモーションで倒れていく彼女を阿武隈がギリギリ抱き留めた

 

「む!ちょうど来たようだが・・・・・・連れて帰るか?」

 

水しぶきを上げて、着水している二式大艇がこちらにゆっくりと向かってきていた

 

「はい。途中まで行先は同じようですし私が連れて行きます!えっと・・・・・・。」

 

妖精さんに名前を尋ねた

おそらくこのことをリンガの提督に伝えねばならない長門に名前を伝える

 

 

 

「ガンビア・ベイさんはうちでいったん預かります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

そっと口元を隠していたマフラーを下げ、大きな息を吐きだす

春に近づきつつあるとはいえ、夜はまだ寒く息が煙のようになる

その白い息をぼんやりと川内は見つめた

懐からメモ帳と赤ペンを取り出すと、キュッという気持ちのいい音とともにバツ印を刻んだ

一度閉じ、ぺらぺらとめくるがページの右側にはバツ印がきれいに並んでいる

そして、先ほど刻んだバツ印が最後に出てきてページが終わった

 

「・・・・・・・やばいよ、提督。」

 

独り言ちて、足早に音を立てずに消え去った

 

 

 

 

『報告書』

 

須下中将自身に不正の痕跡が認められず

計画の練り直しを急がれたし




お久しぶりです!
私生活がいろいろ忙しい(?)ところもあり、なかなか進みませんが頑張って更新していきます
さて、皆様の春イベはいかがでしたでしょうか?
久しぶりの中規模でのオール甲達成を果たし、新艦とも全員会えゆっくり(?)出来そうな作者です(ただフレッチャーの泥ポイントをE4ボスだけにしたのは絶対許さんぞ☆)

あとズイパラはいろいろ楽しかったれす(^p^)
さて…次はサーカスを楽しみに・・・

そしてとりあえず次の更新を早めにできるように・・・・・・ガンバリマス

(あと第4回閣これ祭にも動画をまた出す予定なのでその時はよろしくお願いします)


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駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 中編

前回のあらすじ

大忙しとエゴとピンチの足音


名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

なま・・・・・・これは書き損じあり

名前を書いて捺印

名前を書いて捺印

 

 

 

期限に追われながら仕事をするのは久しぶりだ

あの頃は悲鳴を上げる暇すら惜しいくらいだった

久しぶりにこの状況になっているが、以前とは比べ物にならないくらい手が進む

そして、それを打ち消すかのように以前とは比べ物にならないレベルの書類が舞い込んでいる

 

あちこちからカラの輸送船が来ては積み込んで南西方面に向かう

そして、南西からは怪我人が回されてくる

怪我人と言っても艤装ではなく、体を怪我した者たちや病気の者たちが回されてくる

一応、四鎮守府や大きい都市の基地であれば併設の病院があるためそのどこかに搬送される

が、これは本人の希望で変えられる

必然的に人の出入りが激しく逐次情報が集まるここを希望する人が圧倒的だった

 

 

それ以外にも設備環境がいいという理由があるのだが・・・・・・

 

 

 

幸い、病床の拡張も行ったばかりであり問題がないと言えばない

しかし、ここである問題にぶち当たった

 

 

 

警邏部の仕事が急増したのだ

今までは呼ばれて日に1件2件だったのが今では2桁を超えるようになってきた

いったい何が原因なのかというとこの怪我をした艦娘たちが問題を持ち込んだのだ

今までは大規模作戦の場合の怪我人は生命の危険が迫ったものだけが引き受けられてきた

そもそも、主戦場から遠く離れたここよりも最寄りの泊地に運ばれるのでそのような事は数例しかなかったのだが

 

怪我をした艦娘たちは暇を持て余す

本土に近いためネットやテレビなども見れるが、それでは収まらないモノがある

戦場で中途半端に火をつけられて引っ込められたものが多いこの場所で流行るものと言えば・・・

 

古来より飲む打つ買うの三拍子なんていうのがある

 

飲むのは簡単だし、同じ性の者でも買うの欲は晴らせることはできる

 

問題になったのは打つの部分

 

 

サマをやったやらないの問題や、のめりこみ過ぎて有り金以上をスって払えない

 

この2つが突出して多く、そしてそれが喧嘩を生み出していた

ならば禁止にすればいいと主張する人もいるだろう

 

だが、そんなきれいごとが通用するはずがない

人は禁止されればされるほど逆にやりたくなるのだ

ましてや、強制的にいなければならない艦娘なら余計にだ

 

今までこの問題がなかったのは提督の方針が影響していた

提督は、艦娘が羽を伸ばせる場所を作りたいという気持ちでここを開発をしてきた

その為、純粋な保養所としての側面が大きかった

もちろん、簡単な賭け事が行われていただろうが短期滞在だからその場限りだったし賭けるものや額もかわいいもので済んでいた

 

折りしも今はタイミングとしては最悪だった

タシュケントという外国の艦娘が常駐するようになった

そして、あくまで推測だがこの先海外の艦娘が常駐するようになるだろう

 

そんな中で防諜も担っている警邏部が別件で忙しいのはこの上なく不味い

 

今はあきつ丸と八丈島の応援があって何とかなっているが、いつまでもというわけにもいかない

怪我人の受け入れの中には長期療養患者も含まれる

中には定着する者たちがいるだろう

 

 

ため息をついて内線をかける

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなぁ・・・・・・。うちにそれができる知り合いはちょっといないなぁ」

「・・・・・・いることはいるけど。うーん」

 

龍驤はお手上げといった表情で両手を軽く上げた

そして、皐月は今まで見たことのないくらい渋い顔をした

 

「いるのかい?」

「公表はされてないけどはみ出し者ってどこの世界にもいるもんなんだ。そして、徒党をすでに組んでいる。そして、タイミングが今はものすごくいい」

 

 

 

どうやら3つの大きな組織のトップが隠棲場所を探しているとか

3人とも知り合いで、話がつけられるのだがどうやら人となりを気にしているらしい

そもそも裏世界の人となりを気にしてもしょうがないと思うのだがというと首を振った

 

 

「1人は超過激なんだけど来てほしい?」

「ぜひともそれ以外の方にしてください」

 

そんなこと言われたら即答せざる得ない

 

「だけどなぁ・・・・・・。うーん」

 

 

 

皐月がここまで迷うのは初めて見た

即断即決するタイプが迷うというのはいったいどういうことなのだろう

 

「とりあえず話をしてみるよ。すぐに連絡が取れるか怪しいし」

 

そう言って皐月がスマホを片手に退室していった

 

「それじゃあうちも戻るな。3人ともあんまり無茶するとこれするで?」

「あっああ!わかった!わかったから・・・・・・」

 

電話のジェスチャーで吹雪、親潮の血の気が少し引く

提督も焦って返事がどもる

 

「まぁええわ。見た感じそこまで無茶しとらんようやしな!ほななー」

 

高笑いしながら出て行ったのを見て親潮と吹雪、提督は互いに目線を交錯させる

 

 

「・・・・・・てっきりばれたのかと思いました」

「あれは気づいてないね。間違いない」

 

親潮が大きなため息をつき、吹雪はほっとしながらも不思議そうな顔をした

そして、提督の顔をじっと見始めた

 

「一応3徹目だったのは黙っておこうな?」

 

鏡で自分の顔を見るが、特にいつもと変わらない顔色だった

吹雪と親潮の目が自分と同じく若干疲れた目をしていることぐらいだろうか

今まで2徹程すると提督には隈ができていた

忙しくて提督の行動が全員で把握できない時などは、これを目安にしていたようだ

 

 

 

「軽巡阿武隈リンガ泊地より帰投いたしました!」

「ご苦労様。戻ってきて悪いんだけど明日から通常業務に戻ってもらっていいかい?」

「はい!OKです!」

 

本当は1日休みを上げたいが、そうも言ってられない状況だ

 

「ところで提督。少し会わせたい人がいるんですけどぉ・・・・・・」

「会わせたい人?誰だい?」

 

もらった報告書から顔を上げる

阿武隈が部屋の外に声をかけると失礼しますと言って金髪で張りつめた顔のツインテールの娘が入ってきた

 

「アメリカ太平洋艦隊艦娘部隊所属Gambier Bayです!あの!耳本提督でお間違いないでしょうか!」

「そうだが・・・・・・。一体何用でこちらに?」

「アメリカ太平洋艦隊長官より親書をお預かりしてまいりました!どうぞ!」

 

震える手から手紙を受け取り、お礼を言うと少し緊張が解けた様子だ

ソファーに座るように促し、阿武隈は下がらせた

 

 

 

 

 

(なるほどね。そういうことか)

 

色々なつじつまが合い、思わず頷きながら手紙を見ていた

タシュケントが先に情報収集にために入り込んだというのを米露首脳会談の時に匂わせ、その情報のごく一部を記録が残らない歓談の場で話したのだろう

こちらの情報を集めていたアメリカのことだ、自身も踏み込まねばならないと決心したのだろう

情報収集役である着任艦の先触れ役としてガンビア・ベイを送り込んで来た

しかし、気になる点がある

書かれた日付が随分と前なのだ

 

 

「あのぉ・・・・・・。それなんですが・・・・・・」

 

言いにくそうに顔を下の方に向けた

 

「実は位置が途中からわからなくなって彷徨っていたんです・・・・・・」

「ええ・・・・・・」

 

思わず呆れた声が漏れてしまった

それに反応して顔を真っ赤にしながら身振り手振りで英語交じりの言い訳を早口で話し始めた

途中から何を言っているのかわからなくなっている様子だ

 

「や!えっと!あの!」

「あははは!わかったわかった!確かに受け取りました」

「あっアリガトウゴザイマス・・・・・・」

 

我に返って、小さくなった

 

「ただ・・・・・・ちょっとこれに関してなんだけど難しいかもねぇ」

「えっ?!」

 

そういってあるところを指さすと彼女は顔を青くする

正規空母サラトガ着任に関してのところだ

 

「なっ何か問題があるんですか?!」

「いやねぇ・・・・・・。確かにここ最近サラトガが来ているんだけど・・・・・・。八丈島に着任しちゃってるんだ」

 

そう

少し前にアメリカ太平洋艦隊所属を名乗る正規空母が来ていた

しかし、先触れも何もない状態だったため照会に手間取った

本人は駿河諸島着任を希望していたが、秘密の宝庫かつ火薬庫みたいなところにはるばるアメリカから来た特級の戦力たる正規空母を着任させるわけにはいかなかった

そこで、妥協案として一番近い八丈島に着任が決まったのがつい数日前の事

 

彼女が迷っている間に、状況がだいぶ変化してしまったのだ

 

それを伝えると、青を通り越して白い顔になった

見ていられなくなり、そっと電話を机から持ってきて渡す

半泣きで受け取り、震える指で押した

 

 

 

コロコロ変わる顔を見ながらお茶をすする

泣き顔が消え、真面目な顔になったの見るに本題に入ったのだろう

そっと廃棄用紙とペンをそばに置き、阿武隈からの報告書を見ることにした

 

 

「・・・・・・Have a nice day」

「終わったかい?」

「はい。Admiral」

 

提督に向き直り敬礼をすると

 

「改めまして本日より貴艦隊に所属させていただきますGambier Bayです!」

「了解した。貴艦を歓迎する」

「へ?あのぉ・・・・・・驚かないんですか?」

「まぁそうなるだろうなとは思ってたからねぇ。ま、とりあえず君には基地航空隊の管理をお願いするよ。詳しいことは龍驤に聞いてほしい。基地航空部隊はこの建物を出て・・・・・・あ、いや自分が案内しよう」

 

報告書や今までの経歴などを思い出し、訂正する

 

「え?そこまでしていただかなくても・・・・・・」

「いやいやいや!せっかくだから案内ついでにね?もしくは吹雪ちゃんか親潮の方がいいかい?」

「でもお忙しそうな気が・・・・・・」

 

 

「もしもし!龍驤?大至急来てくれ!訳は後で話す!」

 

 

今度何か埋め合わせをするから渋い顔をしてきた龍驤に耳打ちをし、送り出した

出て行ったのを確認すると、再び電話をかける

 

 

 

「もしもし?若葉か?ちょっと急ぎでイギリス大使館の方を探ってくれるか?頼む」

 

アメリカが巻き込むとしたら一番つながりの強いところを抱き込むはず

想像しただけでも大きなため息が出る

 

 

 

 

 

 

 

書類の山が減り、今日中に目を通さなければならないものは消化した

さすがに今日徹夜すると明日何を言われるかわからない

親潮を帰るように促すと、素直に退出していった

お茶を入れに行った吹雪を待つが、なかなか戻ってこない

 

「お待たせしました!お茶葉が切れてて・・・・・・」

「わざわざ食堂まで取りに行ってたのかい。お疲れさん」

 

お礼を言ってソファーにどかっと座り込んだ

大きく息を吐いて目を閉じる

と、隣に重みを感じる

目を開けると、隣に吹雪が座ってこちらにしなだれかかっていた

 

「どうした?よっかさって」

「いえ・・・・・・少しこうしていたくって」

「そうか」

 

沈黙が流れる

ふと脳裏にいつぞやのタシュケントの言葉が浮かんだ

ちらりと吹雪の方を見ると、目が合いお互いに目をそらす

 

そっと後ろから手をまわし、肩に手をやると吹雪はさらにこちらによって来た

肩からおさげ、後頭部に手を移動させた

片手をそっとほほにやると、吹雪は目をつぶった

そっと顔を近づける

吹雪の香りに心拍数が増す

一度しているとはいえ、勢いに任せていたところもあったのだろう

 

1秒1秒がとても遅く感じる

吹雪のほほがだんだんと赤くなる

 

 

腹を決め、再び顔を近づけた

 

 

 

 

 

「提督!ちょっとごめ・・・・・・あ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

机の非常口から川内が飛び出してきた

そして、提督と吹雪の様子を見て固まった

提督はあまりの気まずさに顔をそらし、吹雪はゆでだこのような赤さにまでなった

 

「でもごめん!それどころじゃないんだ!」

 

そういうと、冊子を提督に押し付けた

 

「え・・・・・・?なに!」

 

渋々報告書を流し読みすると、気まずさとか恥ずかしさはどこかに吹き飛んでしまった

 

 

 

「すぐに大将に連絡を!いそげ!!」

 

 

 

 

 

 

 

八丈島基地

 

 

サラトガはロビーでコーヒーを飲みながら提督を待っていた

これから駿河諸島鎮守府へ人員の引き渡しなどの会議を行う

それに随行させてもらうためだ

 

 

「Hello?SisterSara」

「あら?あなたが・・・・・・。貴国も本気のようね?」

 

名前を呼ばれ、顔を上げると金髪の淑女が反対側に腰を下ろした

 

「フフフ。どうかしらね?」

「とぼけちゃって。あなたが来た時点でどれだけ首を突っ込む気なのかお見通しよ」

 

お互いに余裕のある笑みを浮かべている

 

 

「先手はいただくわね」

「さてそれはどうかしら・・・・・・こっちもカードが返ってきたからね」

 

その言葉に、淑女がまさかとつぶやく

 

「・・・・・・それh」

「サラー?準備終わったー?そろそろいくわよー?」

 

会話を遮るように瑞鶴の声が飛んできた

 

「はーい!ただいま参ります!」

 

マグカップを置くと、声がした方に歩き出した

 

 

 

 

「それじゃあ、あちらで会いましょう。Old Lady」




さぁ夏イベおわってもう秋イベですね!(白目)
なかなか筆が進まず申し訳ないです・・・

本日は吹雪ちゃんの誕生日ということで頑張って書き上げさせていただきました!
(ほんとは着任記念日やケッコン記念日を目指してたのは内緒)

さぁサンマ漁皆さんいかがでしたでしょうか?
当鎮守府は・・・まぁ割とあっさり終わってのんびり余った資源で周回してましたw
鰯の怒涛の追い上げで秋刀魚18匹集め終わったとき鰯が49匹ととんでもない接戦でした・・・
来る秋イベはどうも大規模の予想が出てるとかで・・・
皆さん頑張ってまいりましょう!


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駿河諸島鎮守府とレイテ沖海戦 後編

前回のあらすじ いつもの風景とべーイや思惑と発覚

※初めてかもしれないけどR-15くらいあるかも


「司令官はおるか!!おるな!」

 

龍驤が扉を吹き飛ばしてはいってきた

入って来るや否やそのまま提督の腕をひっつかむと走り出した

 

「ちょいちょいちょい!!一体どうした!」

「どうしたもこうしたもあらへんわ!事情は付いたら話すから今は黙ってついてきてぇや!」

「あーわかったから!引っ張るな!服が伸びる!!つーか転げるわ!!!」

 

腕を離してもらい、肩を回してから渋々龍驤の後を駆け足でついていった

 

 

 

ついた先は基地航空隊の滑走路

なのだが、夜中だというのに戦闘機や爆撃機が次々と着陸してきており、物々しい空気が漂っている

工程表では夜間着陸はここまでなかったはず

何よりも、いつも笑顔な妖精さんたちの表情がこわばっているのが拍車をかけていた

 

 

 

管制塔の中の室内は想像を絶していた

飛龍、大鷹どころか今は店で忙しいはずの鳳翔や入ったばかりのガンビア・ベイまでもが決しては広くない室内でバタバタと動き回っていた

 

 

 

「なんじゃこりゃぁ!」

「なんだもあらへんわ!みんな陸との通信が付かなくて臨時の退避を行ってるんや!」

「陸と連絡が付かない?そんな馬鹿な・・・・・・昼の時点では」

 

そういいながらポケットのスマホを操作し、大本営につなぐ

が、聞こえてくるのは無機質で間延びした音だけだった

 

 

「・・・・・・!」

 

横須賀鎮守府、陸軍省、海軍省と順番にかけていくが、聞こえるのは同じ音ばかり

 

どうすればいいんだ

何が起きているんだ

 

そんな言葉が頭の中を駆け回る

が、時間は待ってくれなかった

視界の端に突如赤い光が上がった

 

緊急信号である

それも一つや二つではない

赤い信号弾が空を埋め尽くし、不気味に赤黒く空を染めている

 

 

「吹雪!試験信号を大本営、横須賀、小田原、下田、清水、焼津、御前崎、八丈島、浜松、名古屋、舞鶴、呉に送れ!」

「飛龍は阿武隈を起こしてここに連れてきてくれ!状況説明は任せた!」

「大鷹は川内と一緒に宿泊の艦娘を至急起こせ!非常事態宣言を出す!」

「ガンビア・ベイ!君はこの近隣に無線で輸送船は行動禁止、護衛艦は対潜警戒せよと平文でいいから周囲に流せ!」

「鳳翔!すまないが空いてる滑走路から護衛の戦闘機を念のために出してくれ!船団に何かあっては困る!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

「司令官!試験信号の反応が返ってきました!帰ってきたのは御前崎、浜松、名古屋、舞鶴、呉です!八丈島はノイズが多くしっかりとした聞き取りができません。」

「わかった。ありがとう」

 

地図を見ながら思案する

連絡が付かないのはここから東方面

試しに、八丈島から少し南に行った青ヶ島の通信基地に連絡を取ってみるとあっさりと連絡が付いた

これにより鎮守府から北東一体が通信不能となっているのが分かった

 

「阿武隈ただいま参りました!」

「起こしてすまん。今宿泊組の臨時部隊を編制中だ。その指揮を執ってもらいたい」

「了解です!」

 

現在付近の輸送船団は西日本方面への回航船団が4つ、東日本方面が2つ

フィリピン方面へ出立予定が21つ、南方方面が15つ、こちらへ入港予定が9つ

そして、停泊中が5つ

 

「まず連絡が付いた西日本方面はこのまま浜松基地の指示のもとそれぞれのもとに回航が決まった。東日本方面と比較的規模が小さい入港予定3つは御前崎へ、南方方面は父島、母島、硫黄島の各基地への分散して退避を要請した」

「ということは残り27船団を・・・・・・」

「とりあえず受け入れる。ドックを開放してでも入れるぞ。今夕張が停泊中の船を詰めてドックの中にある護衛艦を進水させているはずだ」

 

進水式はまだ先だったが、こうなっては仕方がない

もし何か異常が見つかれば艦の放棄も視野に入れている

 

「了解です!一水戦旗艦は伊達じゃないというところをお見せします!」

 

不安そうな顔を一瞬見せたが、覚悟を決めてくれたようだ

 

「頼む」

 

状況ははっきり言って芳しくない

沖堤防を活用したとしても5つほどの船団は溢れるだろう

フィリピンへの輸送船団は現地到着までは大本営との定期交信で偽装航路を毎回設定しながら向かう

半数はすでに指示は受けているが、受けていてもその先が分からないもしくは中途半端に受け取っていて確認が済んでないなどの理由で引き返してきた船団だ

島と島の間のところに停泊してもらうしかないが、下手をすると座礁してしまう可能性もはらんでいる

できればやりたくない

かといってとりあえず中途半端な指示や作戦が伝わっているかわからない現地司令部に交信を取りながら従えとも言えず、退避を了承せざる得なかった

さらに本来ならば先ほどの指示は暗号文で出さねばならなかったが、電波状況が悪く途切れ途切れの状態では混乱を招きかねない

平文で指示を出した以上傍受されているのを前提に動かねばならないし、沖での停泊などもってのほかだ

そしてすでに湾内には、最初の船団が入港を始めている

 

伝達も考えれば猶予は長くはない

 

 

 

「お困りのようね」

「瑞鶴?!来てたのか!」

 

艦娘の装いではなく、しっかりとした提督の装いだったがどこかすす汚れているように見える

後ろに控えているサラトガも服の裾があちこち破け、埃っぽい印象を受ける

 

「敵と会敵したのか?すぐにドックの手配を」

「必要ないわ。今は人員が足りないんでしょ?うちの子たちも使ってちょうだい」

「すまんが助かる」

 

吹雪に目配せをして電話をさせ、親潮がサラトガを連れて行った

 

 

「これが報告書よ。おそらく敵の増援だったんでしょうけど」

「了解した。読んでる間に吹雪からこちらの現状を聞いてくれ」

 

 

八丈島、駿河諸島の中間付近で北北東方面へ進撃中の空母4隻を含む連合艦隊を発見

薄暮時の発見だったため、夜戦まで行い全艦撃沈に成功した

 

 

 

「・・・・・・にわかに信じがたい報告だな」

「ええ。私も耳を疑ったわ。今の現状も含めて」

 

闇夜で電探が使えない状態とはいえ敵機動部隊をここまで見過ごしていたのは危ないところだった

 

「うん?待てよ?瑞鶴そっちの港に船団5つを受けれる余裕はあるか?」

「もちろんよ。うちはまだ無制限封鎖を発動していないから問題ないわ」

「助かる!そっちの第二艦隊の子たちにはバケツの使用許可書を発行するからすぐに向かってくれ!」

 

 

 

 

とりあえずの危機は去った

そして次の問題は大本営との連絡手段だ

いくら何でも未だに気が付いていないということはあり得ない

うまく事が運んでいるならばあと1時間もすれば大本営が陸路でこちらと通信が取れる基地に到達するだろう

 

しかし、伏魔殿ともいわれる大本営

とても一枚岩になるとは思い難い

最悪かつ一番ありうる状態は会議が踊ってしまっているケース

孤立している状況の打破ではなく、責任追及と押し付け合いに邁進している可能性だ

こちらから連絡を取ろうにも、恐らくは無制限封鎖無警告攻撃が許可されていて危険度が高い

大将がうまく音頭を取れればいいが、大将は別の場所で幽閉されているだろう

中将では影響力がまだまだ弱く、音頭を期待するのは難しい

 

大きなため息をつくと、目の前の電話が鳴った

淡い期待で視線を向けるが、内線を示すランプが無情にもついていた

 

 

 

「もしもし?」

『司令官か?悪いけどちょっちこっちにまた来てもらえるか?』

「どこかからか通信が来たのか?」

 

再度少し期待する

 

『フィリピン方面からの通信なんや・・・・・・悪いけど。』

 

声色なのか長い付き合いなのか

察したように連絡先を告げられた

 

 

 

 

 

管制塔につくと、書類を渡された

 

一通り目を通すと、エンガノ岬沖での敵機動部隊の誘引に成功さらに一部部隊を打撃を与える大戦果を挙げたうえで前線基地の拡張に成功

満を持して主力艦隊がサマール沖へと突撃し敵を撃滅しながら進撃

レイテ湾へも突入を決行、首魁である護衛棲水姫の部隊を発見

敵艦隊はスリガオ方面やエンガノ岬方面に分散、誘引されており五分の戦いに持ち込め、前衛艦隊を殲滅し本隊に痛打を与えるまで追い込んだ

 

そして、報告書はそこで終わっていた

龍驤に続きを出すように目配せすると非常に渋い顔をして短い文が書かれた紙をよこした

 

 

「敵の首魁を討ち取るため西村艦隊との夜間再突撃の指示を請う連合艦隊副艦長門・・・・・・は?」

 

突拍子もないことに間抜けな声が漏れ出る

 

「その長門はうちらが知っとる長門や」

 

やれやれと首を振りながらソファーに身を投げ出して寝っ転がった

 

「こっから大本営を通じて西村艦隊を中心とする支援艦隊と連絡を取る予定やったけどそれが無理になったからうちらが音頭をとれっちゅうこっちゃ」

「・・・・・・長門はうちっちの立場をわかっていっとるんかいな」

 

反対側のソファーに腰を掛けて海溝のようなため息をついた

 

寝っ転がったままポケットから煙草を取り出して吸い始めると、机の上を滑らせながら箱を此方によこした

胸ポケットを触ると、おいてきたことを思い出した

龍驤がこちらに火のついた方を向けたので、煙草を取り出して火をもらった

 

「わかっとると思うで?わかっててこれをよこしたんや。向こうの武蔵を黙らせたうえでな。ベイ!」

「はっはい!どうぞ・・・・・・」

「・・・・・・なるほどな」

 

ガンビア・ベイからもらった書類を見て納得した

支援艦隊の編成表だったが、そこに書かれていたのは

 

時雨(駿河諸島鎮守府所属)

 

「こいつはしょんないわ」

 

火をつけたばかりの煙草を一気に吸うと口いっぱいに苦みが広がり、のどを焼くような苦しさが襲った

大きく紫煙を吐くと濛々とした煙が目の前を覆う

 

 

 

もし、一時的とはいえこのタイミングで指揮を執ることになればフィリピン南部の作戦の大筋も決めることになる

それは大本営の面子を丸々潰して、手柄だけかっさらう形になる

ただでさえ睨まれてるうちには野心がありますと宣言するようなものだ

 

だから提督のスタンスであれば引き受けることはない

佐世保(彩雲)(柏崎)に回して中央への足掛かりにでもしてもらおうと考えていた

 

その引継ぎまでの時間で犠牲になるのは本隊を待つ支援艦隊だ

 

 

 

 

 

あの子に繰り返させるものか

 

 

 

 

 

「連合艦隊旗艦と支援艦隊旗艦につなげ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし?山城かい?

・・・・・・ほらね?やっぱり受けたでしょ?

え?

・・・・・・ふふふ

心配無用さ

僕の・・・・・・僕らの提督だよ?

彼の指示なら負けないさ

 

そうだねぇ・・・・・・彼女の言葉を借りるけど

 

 

今度は

 

 

 

 

 

 

絶対、大丈夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に入ると、ちょうど吹雪が隣接の秘書艦室の方から出てきた

 

「あっ!お疲れ様です。今お茶を入れてきますね!」

 

うんと言って椅子に思いっきりもたれかかり、頭を上に向けた

 

「親潮さんは仮眠のために秘書艦室へ案内しておきました」

 

お茶を机の上に置きながら言った

隣の机に戻ろうとした吹雪の手をつかんだ

不思議そうな顔でこちらを振り返ったので、膝の上を軽くたたく

少し顔を赤らめると、膝の上にゆっくりと腰を掛ける

やわらかく、軽く温かい重みが膝に伝わってきた

手を伸ばしてこちらに抱き寄せた

抵抗せずに、ゆっくりゆっくりともたれかかってきた

背がくっつき、心音が感じられるようになると頭を戻し、ひじ掛けに頬杖をついて静かになった海を見る

 

 

 

「5年たつんだよなぁはぇえもんだ」

「最初はこういうことになるとは思わなかったですけどね」

「全くだわ」

 

肺が空っぽになるくらいため息をつく

息を吸うと、吹雪の香りが鼻をくすぐった

 

「なぁ吹雪ちゃん」

「なんですか?」

 

さっきまでは早鐘のようだった心臓もゆっくり刻み始めた

 

「俺は抱え込む覚悟を決めたよ」

「・・・・・・」

「下で誰かが動いてくれるのを見るのはもうできそうにない」

「・・・・・・」

「ついてきてくれるかい?」

 

もぞもぞと動く気配がした

顔を向けようとしたが、勇気がなくそのまま海を見ているふりを続けた

窓ガラスには吹雪が耳打ちしようとしているのがうっすらと映っている

 

 

 

 

 

「嫌だといったらどうします?」

 

 

 

 

 

少し予想してなかった答えに思わず振り向くと、当然吹雪の顔が目の前にあった

 

 

が、表情を確認する間もなく吹雪の緑色の瞳しか見えなくなった

 

 

同時に口に柔らかい感触が伝わってくる

 

 

 

何かが弾ける音がした

 

 

 

右手を後頭部にやると、離れようとした吹雪を抱きよせ再び重ねる

 

貪るように吹雪の中に入れながら強く抱きしめた

 

舌を奥の方に入れかき回し、唾液と理性をかき混ぜる

 

時折チュッチュパという水音混じりのリップの音が欲を掻き立て、音のたびに自身がゆっくりと起き上がっていった

 

 

 

息を整えるために一度離れる

上気したほほとうるんだ緑の瞳、口からはだらしなくあでやかな舌がのぞいて端から筋が垂れている

 

掻き立てられていた欲がたまりにたまり鎌首を持ち上げようとしたところで、キィと小さい音がどこからか聞こえた

 

かき混ざりドロドロに溶けていた理性が急速に固まった

 

固まった理性が持ち上がった鎌首と自分自身を押さえつけていると、吹雪が抱き着いてきた

吹雪が息を整えるたびに女性の豊かなふくらみが体にあたり、そのたびに欲を殴りつけて抑え込む

 

 

 

「剣さんだからこそ・・・・・・ここまでついてきたんです。たとえサボ島の先だって一緒なら・・・・・・行ってあげますよ」

 

 

ゆっくりと離れると微笑んだ吹雪の顔があった

 

 

どこかまだ迷いがあったのだろう

吹雪が膝から降りると、立ち上がって両手でほほを叩いた

仁王立ちし笑って声を出す

 

「大本営の顔面に挑戦状をぶん投げた!こっから忙しいぞ!」

「はい!」

 

 

 

元気な返事に提督は満足そうに頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あわわわ・・・・・・!吹雪さんも司令も大胆な・・・・・・!まさかバレて・・・・・・ないわよね?)




毎度おなじみお久しぶりでございます(;´∀`)
これにてレイテ沖海戦編は終了・・・ではなくもう少しだけ続くんじゃ・・・
あとしれっと提督の下の名前発表があったり

最後の投稿からすでに秋(?)イベ、春のミニイベも終わり落ち着いてきたころじゃないかなぁと
秋イベでは思い出せば南方作戦だと聞いてじゃあ後段はセイロン沖やな!と早合点して結果ソロモンの史実艦を結構使っちゃうという大失態(何とかなりました)

そして何かとうちにとっては不吉な『ミニ』イベではながもんタッチがまぁ出ない出ないで最終的に資源が燃料弾薬がラスダンだけで15万吹き飛ぶという凄惨な出来事が・・・(ちゃんと甲とりました)

まぁそんな些細な事よりも3月も終わるというのに・・・


なんで吹雪ちゃんの三越グラないねん!!
なんでなん?!と心穏やかではございません

それはそうと読者の皆様はコロナの方は大丈夫でしょうか?
志村さんの事は本当に残念なことだったと作者も思っています
偉大なスターが見送りも家族に看取られることもなくというのは寂しくも怖いなと・・・
手洗いうがい、体調管理と不要不急の外出は控えましょう


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