私は365日なのはさんの家政婦のようです (蟹ふらん)
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1 私は365日なのはさんの家政婦のようです

『ニュース速報です。ただ今ここ○○ビルにて立て籠り事件が発生しました。犯人は人質としてビルの社員を捉えており現在身代金として1億を要求しています──』

 

「本当にミッドは事件が絶えへんなぁ…あかんな、今日はこれで出動するかもしれへん」

 

「しょうがないよ。喩え巨悪を捕まえてもまた次が出る、イタチゴッコみたいな物なの」

 

管理局の休憩所で談笑しているのは管理局機動六課隊長の八神はやて、対するはエースオブエースの称号を受けた教導官の高町なのは。彼女等は仕事の合間、昼食までの時間をTVを見ながら休憩所で過ごしていた。

 

「その度に自分、随分楽しそうに犯人をコロコロするやん?」

 

「コロコロ!?そんなに過激にはしないよ!?ちょっっとお話しするだけなんだよ!?」

 

「はははっ、冗談やでなのはちゃん?気にせんといてーな。向こうも抵抗するんやから多少の怪我とかは多目に見てくれるで」

 

「もー!だから…ん?」

 

『建物にはBランク以上の魔導師がいると言う情報も──』

 

『…』

 

現場を報道しているレポートの遥か向こうに知り合いの顔が見えた。彼は燕尾服を着ていて片手に大きな風呂敷を持ってビルの裏手口に入っていくのを見た。

 

『現場の陸士達にも、緊張が走ります』

 

 

 

 

「ん?んーー…?」

 

「どしたのなのはちゃん?」

 

「…さっきTVでうちのお手伝いさんに似た人が犯人のいる建物に入っていったの」

 

「いやいや、それは無いやろ?だって彼、家政婦なんやで?そんな極悪の犯人の所へカチコミなんて行かへんやろー」

 

「そう…だよね?そうなの!きっと彼は私の部屋で掃除機回しているの!そうに違いないの!」

 

 

 

 

「ええと…ここだ」コンコン

 

ビルの屋上にある社長室、その扉の前に一人の燕尾服を着た男が扉をノックしていた。

 

「すいませーん、開けてくださーい」

 

「…何の用だ、どうやって入ってきたんだ」

 

しばらく待つとスカルマスクを被った人が対応した。声を聞く限り男であろう、低くドスが効いた声であった。

 

「御頼みされたピッツァをお持ちしました」

 

「…うん?なんだそれは」

 

「俺っすボス!!俺がさっき犯行声明と一緒に警察に言いました!」

 

スカルマスクの後ろから陽気な男の声が聞こえる。

 

「テメェ!何勝手に向こうに口走ってんだよ!俺らテロリストだろ!?」

 

「飯を頼んじゃあいけないんっすかーーー!?」

 

「「えぇーー!?」」

 

「ダメに決まってるだろ!そもそもなんでピザなんて…」

 

「発音が違う!ピッツァだ!ピザじゃないピッツァだ!間違えんなこの糞がよぉ!!?あぁ!?馬鹿にしてんのかオイィ!?」

 

「テメェ!ボスに向かって…」

 

「良いからそこを開けてピッツァを食わせろよぉ!!チェダーチーズをたらふく乗せたブツを喰わせろぉ!!」

 

発狂している男はピザを要求し続けた。その結果、燕尾服の男はそれを受け入れるかのように目の前のスカルマスクに入って良いかの断りを入れる。

 

「お、おぅ…まぁ…入れ」

 

「失礼します」

 

「皆!ピッツァだ!ピッツァが来たぞ!ひゃっほうっす!」

 

「「ピッツァだーーー!!」」

 

「ご注文は以上で宜しいですか?」

 

「良し!帰って良いっす!!」

 

「駄目だろうが、コイツも人質として捕らえんだよ」

 

「そんな!こんなにも旨そうなピザを配達した人を酷い目に!?そんなのあんまりっすよボスぅ!」

 

「お前の頭にはピザしかないのか…」

 

どうやらこのスカルマスクの男はここのリーダーのようだ。先程からピザピザ言ってる男は金髪で蒼い瞳をキラキラと輝かせてボスに抗議していた。

 

「入った動機は三食共にピザを提供する事です!」

 

「なんで俺こんなの採用したんだろ…」

 

「あ、あの…本当に勘弁してくれませんか?俺このあと洗濯と依頼主のご飯作らないといけないんです」

 

「諦めろ、もうお前は袋のねず…」

 

「ボス早くぅーー!ピッツァ無くなりますよぉーー?」

 

「止めろぉ!締まらないだろうがぁ!!つか要らない!要らないわそんなモン!少しフリーダム過ぎるぞお前ぇ!」

 

「あぁ、汚れてる。ちょっと掃除してきます」

 

「おい!行くな!勝手に部屋を掃除するな!バインドで縛り…」

 

「職務の邪魔だ退け」

 

ボスが燕尾服の男の肩を叩いた瞬間、背筋に悪寒が走った。コレに逆らっては行けない、そう言う風な凄味を感じたのだ。

 

…一通り掃除し終わったらバインドで拘束はされたが。

 

 

 

 

 

 

 

一方管理局では

 

「…と言うかなのはちゃん所の部屋、最近どうなん?結構前に来たときは汚部屋やったけど」

 

「な、なんとかね…にゃははは…ちょっと痛いなぁ」

 

「フェイトちゃん、流石に居られなくなって別の部屋に行くほどやったしなぁ…で?どうなん?家畜小屋から人の部屋にランクアップしたん?」

 

「人並みだよ!!…お手伝いさんが何から何までやってくれてるから…助かってるの」

 

「所で今日の晩飯は?」

 

「本場イタリア仕込みのピザなの!」

 

「いいなぁ…和洋折衷出来て私も欲しいなぁ…ちょっと貸してくれへん?」

 

「へへーん、だめー」

 

ふふんとなのはがほくそえむように笑うと、急にTVが騒がしくなる。

 

『……新しい続報が入ってきました!』

 

「テレビが騒がしくなったね」

 

「犯人から何か動きがあったようやね、捕まるとええんやけど…と言うか陸の人らさっさと突入してしまえばええのに」

 

『犯人グループから新しいメッセージです!人質が増えたから纏めて解放されたければ三億用意しろといっております!』

 

「一人増えた…?」

 

「陸の人らが包囲してるのに…中にまだ誰か居たんか?」

 

『その者は陸士隊にボランティアで奉仕していた者であって…あぁ!今屋上に姿が見えました!手にバインドが敷かれている様子です!』

 

「…あれ?」

 

「」

 

TVには後ろに手を回して捕まっている燕尾服の男が映っていた。彼の名前は間藤恵也、ショートカットな黒髪に黒目の彼は、先程話にあったなのはの家政婦であった。

 

「そ、そういえば昨日珍しくレジアス中将が貸してと言って…うっそぉ…何してるん自分…」

 

「…」

 

「な、なのはちゃん?」

 

「…出撃するの」

 

「なのはちゃん!?顔が怖いで!?」

 

「向こうの部隊にも伝えといて欲しいの、用件とか聴かないでいいから突撃するって…ちょっと"お話し"をしなきゃならないの」

 

「あ、あわわわ…!」

 

 

 

 

 

だがそんな事はいざ知らず、当の本人の間藤恵也君はテロリストと和んでいた!

 

「皆さん晩飯は何が良いんですか?」

 

「ナポリタン!」

 

「ビフテキ!」

 

「すき焼き!」

 

「ネコマンマ!」

 

「誰だ最後ネコマンマっつったのはぁ!!ふざけんな!」

 

「皆!落ち着くっす!こう言うときは冷静に…」

 

「やっと頭冷えたか…ほら、さっさとこの人質どもを黙らせて…」

 

「皆の意見を一つに纏めよう!バラバラじゃマトモなものは出ない!ここは団結してピッツァとナポリタンにするっす!」

 

「やっぱりピザの事しか頭にねぇのかよぉぉ!!!」

 

スカルマスクのボスは怒声と共にその場で盛大にスッこけた。要求してから今までこれを繰り返しているのか疲れが見え始めている。

 

(な、何これ…何これ…)

 

尚、人質達はその様子を隅の方で見て絶句していた。

 

「取り合えずパスタ茹でてから考えますねっと…すいません、鍋と食材はあるんで…あぁボス、バインドの解除と火をお願いします」

 

「しかも俺はチャッカマンがわりかよ…っ!ほら…っ!さっさと作れ…っ!」

 

「ボス、リラックスリラックスっす」

 

「誰のせいだよぉ!!!」

 

ボスはピザキチガイの部下の胸ぐらを掴んで叫び声をあげた。その声は怒りと言うよりもうやめてくれと言わんばかりの懇願に近い声であった。

 

「それじゃあ取りかかる…」

 

…恵也は準備しようとしたその手を止めて、唯一の出入り口である扉を凝視している。

 

「なんだ、何ドアの所を凝視してんだよ」

 

「そうっす!パスタはアルデンテが最高なんだ!アルデンテ以外は認めないぞ!」

 

「本当に黙ってくれない?」

 

「…突入まで10秒…」

 

「…あぁ?」

 

…部屋を出入する唯一扉が爆破される。そこから次々と魔導師達が雪崩れ込んで皆それぞれのデバイスをこちらに構える!

 

「──ッ!応戦するぞ!」

 

「自分、ピッツァ食べないとAランク以上の魔法使えないんっす」

 

「糞ッ!Aランク魔導師って触れ込みで採用するんじゃなかった!うわあああああああもうだめだああああああああああ!!」

 

ボスガイカレタ!

 

モウダメダァ…オシマイダァ

 

オレ,コノテロガオワッタラリョウシンニアイニイクンダ

 

人質が全員避難される…そんな中一人恵也はパスタを茹で始めた。

 

「…君っ!ここは危ないから下がって…」

 

陸士の一人が彼の肩を掴んで避難させようとする。その時、手に持っていたパスタの鍋を落としてしまったのであった!

 

「そんなテロリストの言いなりなんて…オイ、何をする?何だ!?やめっ…」

 

 

 

 

 

一方管理局では

 

『…あっ!今管理局の突入部隊が突入したようです!』

 

「結局、なのはは行っちゃったね…」

 

「…仕事放って単身で出動とか…ちょっと下に示しがつかへんで…フェイトちゃん、ちょっと手綱握って…」

 

「ちょっとあの状態のなのはは止まらないかな…まさかの単独出撃…絶対に怒られるよ…」

 

「でももうこれで終わったやろ。先調べたけどあの犯行グループって皆烏合の集でマトモな戦力なんてない、ハッタリだけで今回の犯行を成しただけや。楽して騙してお金儲けと考えたんやろうけどやっぱりそれだけじゃ無理なんやなって…」

 

『…あっ!一人窓から落とされました…管理局員です!…うわっ!ボコボコにされて…』

 

「…あれ?」

 

「…対抗してるみたいだよ?」

 

「ま、まだや。たまたま…」

 

『次々と局員が落とされていきます!ここは高層ビルで…うわっ!?こちらのは顔にナポリタンが貼り付けられて…』

 

「あ、あれ?おっかしいな…?」

 

 

 

 

「…どうぞ、粗茶ですが」

 

ウメェウメェ

 

ピザァ!

 

コレガサイゴノバンサンデスカ?

 

「…気付いたら何十人と言う局員が全員倒されて…!」

 

間藤恵也の足元には生き残りの陸士が息絶えそうに喘いでいる。

 

「あ、悪夢だ…なんだ…なんだこれは…家政婦の戦闘力じゃ…」

 

「うっせ、記憶処理家政婦キックを顔面に喰らえ」

 

ギャァァァァァ…!

 

「…」

 

「ボス!どうして両手で頭を抱えて悩んでるんですか!?茶が美味しいですよ!いやぁ料理は残念っすけどそんなに落ち込むことはないっすよ!ファイト!」

 

「…いや、事態の状況がね…飲み込めないってね…」

 

「そこのお手伝いさんが全てやりとげたんですよ!」

 

「お前それ自分で言ってて何とも思わないの?…あー糞。今ので人質逃げやがったし…最悪だわ…」

 

来る局員をちぎっては投げてちぎっては投げての大立回りを見せられたボスは意気消沈していた。一瞬仲間に加えようと声をかけても暖簾に腕押し、断られてしまった。

 

「それじゃ自分これで、そろそろ晩飯の仕込みしないと…」

 

「…」

 

「それでは皆さん、またの機会に会いましょう。それでは…」

 

家政婦は何事も無かったかのように入ってきたドアが出ていってしまう。嵐のような訪問者であった。

 

「…行きましたね…」

 

「行きましたねじゃねーよ。もう俺やんなっちった…投降するわ」

 

「そんな!それじゃ人類ピザ計画はどうなるんです!?」

 

「 知 ら ね ぇ よ 」

 

…数分後、ニュースでは高町なのはの活躍(武力介入)によってテロリストは鎮圧されたと報道されのであった。

 

 

 

 

 

 

「…はぁー…」

 

家政婦の間藤恵也は高町なのはの家政婦、時給800円で365日の契約で日々を過ごしている。あの後冷や汗をかいていたレジアス中将に「か、帰って良いぞ。ワシのヘルパー御苦労であった」と言われ帰路を歩いている。

 

「まとーくーん!!待って!私を無視なんて酷いよ!?ねぇ!?」

 

「あっ、お仕事お疲れ様。どうしたのそんな慌てて」

 

「ニュースみてすっ飛んで来たんだよ!?本当に大丈夫!?あいつらに変なことされてない!?」

 

ゴツッ!

 

「いった…っ!!何!?主人に何するの!?」

 

突然恵也はなのはの頭を小突いた、何か重く鈍い音がしたのはきっと気のせいだろう。

 

「中将からぜーんぶ聞いてる。仕事ほったらかしにしてまで来ないで欲しいんだけど」

 

燕尾服のポケットから煙草を取り出してライターで火を着ける。イライラしている証拠だとなのはは判断した。

 

「あっ、えー…ごめんね?」

 

「…取り合えずはやて隊長さんに謝りに行くぞ?」

 

「えー…」

 

「一緒に行くから、な?」

 

「…行く」

 

愚図るなのはを宥め、その手を取って連れて歩く。

 

「…あぁ、そうそう。知ってたか?ピザってピッツァでもピザでも本場の人間からしたらどっちでも良いらしいぞ」

 

「何それ?」

 

「…いや何でもない。ふと思っただけ…帰ろうか」

 

これから起こる事を想像しながら、彼は彼の大切な主人と共に帰っていく。

 

「お手伝いさん!早く帰ろう!」

 

「お手伝いさんじゃない、家政婦だ」

 

「同じ様なものなの!」




反響良かったら続くかも知れないです


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2 私は一週間お試し契約をしてみました

おぉ、沢山の人が見てくれている…書こう!


…高町なのはの私生活は荒れていた。

 

部屋中片付けるのが面倒なのか下着や購買で買ったカップラーメンやら空の容器が部屋中ごっちゃになっており、空のビールや焼酎が散乱していた。その情報は一部の職員しか知らず最近頭を悩ましていた…部屋を訪れる客は皆その中年のダメなおっさんのような部屋にドン引きしてしまう、そしてこう思ってしまうのだ…

 

駄目だこの人、早くなんとかしないと…と。

 

機動六課設立して以来、はやて専用で使われている部屋ではその一部の職員が夜な夜なその対策について話し合っていた。

 

執務官でありなのはの親友であるフェイトテスタロッサハラオウン、同じく親友であり六課隊長の八神はやて、スターズ分隊副隊長兼戦闘教官でありはやての守護騎士であるヴィータ、この三人だ。ちなみにフェイトはあまりの汚部屋に自分の居場所を無くして出ていってしまった。南無三。

 

「…今日、少し片付けるようになのはに言ってみたよ…」

 

「どうやった?」

 

「…多分…片付けない…後でやるって言われちゃった…」

 

「むー…どないしよう…なのはちゃんが忙しいのは分かるんやけどこのまま生活水準じゃなのはちゃんの体が壊れてまう…」

 

「最近は日本酒と焼き鳥とビールで暮らしてるって嬉々として話していたよ…」

 

「日本酒とビールでアルコール被ってるやん…っ!」

 

「…外部から雇うというのは?」

 

ヴィータそう口にすると二人ははっとした顔となって、ヴィータの話に聞き入る。

 

「外部って?」

 

「スバルから話を聞いたんだがよ…家政婦を雇うんだよ。そいつは休み無しで365日、その主人の世話を担当してくれるんだってさ」

 

「なんやそれ、労働法に引っ掛からへんか?」

 

「不思議な事に引っ掛からないらしいんだ…因みに時給はこちらで決めて良いらしい」

 

「こっちで?」

 

「あぁ、100円でもOKしたらしい」

 

「ワンコイン!?ブラック過ぎへん!?なんやそれ!?」

 

「…ヴィータ騙されてない?それ絶対に架空の存在だよね?有り得ないよね?何処の業者さんに言われた?」

 

「しらねーよ!本当らしいんだよ!スバルの奴に話を聞いてよ…短期で雇って、お金がないから金の代わりに生活の面倒見るって話でOK出たって言ってたんだよ!」

 

「殆ど無給やん!!」

 

「…試しに雇って見ない?一週間…様子見てからでも…」

 

「…これ電話番号、私自身あんま信用できない話だから…雇うかどうかははやてが決めてくれ」

 

ヴィータからメモ用紙を渡される、メモにはスバルの字で電話番号が書かれていた。

 

「うーん…試しに…なら…ええかな…?」

 

 

 

 

 

 

二人が出た後、はやてはすぐに電話をかける。今の時刻は10時を過ぎておりかからないかもとは思っていた…だが電話はすぐに繋がった。電話を受け取ったのは…声からして大分年を取ったお婆ちゃんだ。少し枯れたら声が電話から聞こえてくる。

 

「はい」

 

「あぁ、すいません。友人の紹介で御依頼のお電話をさせてもらってます八神はやてと申します」

 

「ふむ…時空管理局かね」

 

少しドキッとした、名前を言っただけで職場まで分かるのか。

 

「はい、良くわかりましたね」

 

「なぁに、少し口調が固いから言ってみただけさぁ…おきになさらず…して、何時からで?」

 

何時から?と言うことはOKなのか。意外にすんなり…いや、すんなり過ぎる。

 

「あの…こちらはまだ詳しく話しては…」

 

「お客人は期間と日時、それと場所さえ言ってくれれば現地に行く者が対応するさね。気にせんと話して?」

 

「は、はぁ…」

 

その後、期間は一週間で日時は明日の朝七時と六課の場所を言うと二つ返事で了承してくれた。個人的には少し心配だけど…まぁ良いだろう。

 

「ところで八神さん、独り身?良かったら男の人を紹介するんけど…」

 

「ファッ!?」

 

この婆さん、仕事の話が終わると急にこんな他愛ない話をして来る。なんで独り身って分かるんやこの婆さん…。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝七時、その家政婦は来た。

 

彼は黒髪のショートカットで少し大きめの黒目。人種的には日本人だろう…だが燕尾服を着ている彼は家政婦と言うより執事に近かった。彼の荷物は手に持っているボストンバッグ一つ、あの中に道具があるのだろう。

 

「失礼します、間藤恵也と申します。一週間ですがどうぞ、宜しくお願いします」

 

「よろしゅうな。気楽にしていてええで」

 

「はい…所で朝食は取りましたか?」

 

「いや?まだやで。これから食堂に…」

 

「コーヒーとサンドイッチです」

 

「えっ」

 

目の前のさっと出された物を見て少し驚く。今どこからこの高そうなカップに入ったコーヒーとサンドイッチを出した!

 

「何か問題が?」

 

「い、いや。いただきます」

 

そんな不思議な顔されても困る、不思議な事が起こって困惑しているのにそれは駄目だ。凄い聞きにくい。このくらい当然と言わんばかりの顔されてる。なんだこれ、なんだこれ。

 

「はやてちゃーん、ヴィータちゃんが話があるって…あれ?お客様ですか?」

 

リインが来た。リインは目の前の客人を不思議そうに眺めていた手にそりゃそうだ。燕尾服来た男なんて一生に一度見たか見ないかくらいレアだ。

 

「おはようございます。今日からはやてさんの身の回りの世話をさせて頂きます間藤恵也です。宜しくお願いします」

 

「はー…よろしくお願いしますです。あのー…この服は?」

 

「正装です」

 

「はぁー…なるほど…」

 

…ん?今何て言ったあの家政婦?私の世話?あれ?これ私が世話を頼んだみたいな話になってる?

 

「ち、ちょっと待ってな!私じゃない!君の主人は私じゃない!」

 

「えっ」

 

「君の主人はな…」

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わってなのはの部屋。

 

「今日の朝は昨日の焼き鳥にビール!今日は午後から教導だけど!一杯だけなら問題ないよね!朝からこんな幸せ!独り身最高!」

 

当の本人のである高町なのはは朝から変わり無く酒を飲んでいた…皆様見てください。これがエースオブエースの私生活です。もはやおっさんです。

 

「フェイトちゃんが出ていったのはすこーし悲しいけど…でも仕方無いね!私が悪いんだから!さてまずはビールから…」

 

これからいただこうとビールに手を伸ばすとドアからノック音が聞こえて止まる。

 

「すいません、今日からここで家政婦をさせて頂きます間藤恵也です」

 

「…セールスですか?」

 

「管理局でセールスとか気合い入ってますね。八神はやてさんに貴方が主人だと言われました。一週間と聞きましたので今日から宜しく…」

 

「ごめんね?帰って?」

 

「…えっ?」

 

突然帰れと言われて口ごもる。

 

「あのね?ちょっとそう言うの聞いてないから…後ちょっと部屋が汚くて他人を入れたくないの…」

 

「…その為に私が来ました。ドアを開けてくれれば掃除を始めましょう」

 

「駄目、ぜっっったいに入れないの。お金なら後で払うから今日は帰って?お願いなの」

 

「…」

 

…ブッツン

 

(…あれ?今何か切れた音が聞こえたような)

 

静寂がその場を包む。なのははそれを諦めたのかと思って再びビールを飲もうとする…

 

次の瞬間、鍵のかかったドアは蹴破られた!!

 

「っ!?」

 

「上等だオラァ!!そこまで啖呵切るなら強行手段だオラァ!!」

 

「レ、レイジングハート!!」

 

先程まで穏やかな口調で話していた男がキレて乗り込んで来た!先程までとはキャラが変わっておりヤクザのような顔付きになっていたのだ!襲撃されたのが分かるとなのはは直ぐ様胸元にあるレイジングハートに手をかける。

 

「遅ぇんだよ!!」

 

「あっ…!」

 

変身しようとするも、迷いなく距離を詰めた恵也は胸元にあるレイジングハートを没収されてしまったのであった。

 

「たくっ、手間取らせやがって…」

 

魔法使いの無力化に成功した家政婦は回りを見る。360度何処を見ても汚部屋、その様子に顔色は悪くなっていく。

 

「あ、あのー…返して…」

 

「…なるほど、呼ばれた理由が分かった…えー…御主人?」

 

「えっ?私?」

 

「一週間でお前の私生活ぶっ壊して真人間に戻すんで、そこんところ宜しく」

 

「えっ」

 

真顔で生活をぶっ壊すなんて発言が飛び出してきた。有無を言わさない気迫を感じる。

 

「まずは掃除か…うわっ、ブラとかあるし…」

 

手始めにと言わんばかりにそこら辺のゴミから探り始める。途中で下着とかが発掘されるが気にせず分別をし始める。ゴミはゴミへ、服は洗濯カゴへと。

 

「ち、ちょっと!!勝手に人の部屋を弄らないで欲しいな!?」

 

「これデケーなオイ…デバイスさんよ、これサイズいくつよ」

 

『八神はやてさんに聞けば分かるかと』

 

「マジか」

 

「レイジングハートっ!?」

 

「まだいたか御主人様ァ!早く服着て仕事しろ!!」

 

「えっ!?でもまだ時間…」

 

「邪魔なんだよォ!酒呑んでるくらいなら仕事しろォ!」

 

「ひぃーーっ!?」

 

一週間と言う限定的な契約だったが、始まりはこうであった。後に高町なのははこう語ったのであった。

 

……家政婦が押し掛けてきたと。



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3 私高町なのははお酒が飲みたいだけ

家政婦の間藤恵也が高町なのはの専属家政婦になってあれから四日後、人が住めない程の汚部屋は…

 

なんと言うことでしょう、原作のとおり綺麗な出来る女の部屋へと変貌してしまいました。あのカップ麺と下着が散乱していた部屋とは思えないほど綺麗なお部屋です。

 

「…お手伝いさーん!」

 

「制服の上着ならそこのタンスにあります、それよりも朝食の時間ですよ。今日はハムエッグに…」

 

着替えをして自身の上着の所在を聞こうとする、しかしその発言よりも先に、的確にそれを読まれる。この四日間このお手伝いさんと一緒に過ごして分かったのだけれども…このお手伝いさんはそういう事に長けているらしい。もう食事とか私好みのものしか来ない。

 

お陰様で生活は40越えたおっさんからは脱却できた。本来なら泣いて感謝する所ではあるのだろうなのだけれども…

 

「御主人?聞いていますか?」

 

「…あっ!?聴いてる!ちゃんと聴いてるの!」

 

「じゃあ私が今なにを言っていたのか…分かりましたね?」

 

「うん!ゴハンの事でしょ!うわー美味しそうなの!」

 

「…その後八神さんから話があるから来るようにと話しましたが、それについては?」

 

「あー……い、いっただきまーす!!…あれ?お酒は?」

 

「朝から飲酒とか度胸ありますね。ありませんよ?そんなモノは。暫く呑むのは控えてください」

 

「むぅー!」

 

そう、朝昼夜と続いていた私のアルコールタイムが無くなってしまったの。これは由々しき事態であり早急に解決すべき案件である。私自身の命に関わる一大事なのだ。

 

『なのはは駄目人間コースまっしぐらですね』

 

レイジングハートは黙って。

 

 

 

 

教導が終わってはやてちゃんのいる部屋へと行く。教導中は何故か体が軽く何時もより半分の疲労で訓練を終えることが出来た。今までは終わったら息切れしていたのに。

 

『健康になったお陰ですね、なのは』

 

レイジングハート、貴方はどっちの味方なの?最近お手伝いさんよりだよね?貴方を失ったら私孤立だよ?私ちょっと悲しいな?

 

「やぁやぁなのはちゃん。最近どう?少し肌が艶々になったんとちゃうのかな?」

 

「え?そうかな…?」

 

「うん、心なしか顔つきも明るいしなぁ」

 

「え、えへへ…褒めてもなにもでないよ?」

 

はやてちゃんは私の顔を見ると開口一番褒めてきた。そうかな?そう言えば最近仕事を早く切り上げて寝る時間が多くなったせいか目の下のクマも無くなっていた。

 

「いやー!家政婦呼んで正解だったみたいやね!やっぱり私の判断に間違いは無かったんや!」

 

はやてちゃんがあの家政婦さんを呼んだのだったか。畜生…私のアルコールタイムを奪ったのは親友なんて…因果な運命なの…。

 

「今回呼んだのは他でもない家政婦さんのことなんやけどね?そろそろ給料を決めへんとなーって思ってな?」

 

「…給料?」

 

「せやで、この前給料について家政婦に話したら「給料はそちらで…あぁ、目に見えて効果が現れてないと思ったら払わなくて結構ですから。最初の三日くらいはボランティアと思ってください」と言われてな。今まで払ってなかったんやけど効果でとるし決めとこうと思ったんや」

 

えっ、なにそれは。

 

「いや、何であんな気合い入ってるのか知らへんけどホンマに助かったわ。なのはちゃん原因知ってる?」

 

「…し、知らないなぁー」

 

「そう?それならええけど…取り合えず本部に給料の申請出したら通ったから給料はあっち持ちだから安心して払えるわ」

 

「えっ?許可でたの?」

 

「エースオブエースの心のケアに必要な経費だからーって言ったら快く引き受けたで…せやねぇ…給料は時給800辺りで…」

 

なのはは悟ってしまった、この親友はこの勢いだと追加で私の家政婦(監視)をさせる気でいる。このままだと一週間どころか六課にいる間はあのアルコールの無い生活を送らせられる…それは許容できない。許容できないのだ…アルコールは心の洗濯なのだ…っ!

 

『いや洗濯も掃除も料理もやってくれるからいいでしょう…』

 

レイジングハートは分かってない、飲酒がどんなに素晴らしいものかを。相棒として情けないの。

 

『分かりたくないですね』

 

 

 

 

 

 

翌日の深夜3時、皆が寝静まった後になのはは起きる。辺りをかなり警戒する。

 

家政婦の恵也は隣の部屋で寝ている。それはそうだ、こちらは同棲なんて許可していない。そこのところははやてちゃんに掛け合って別々にしてもらった。

 

タンスの裏に隠してあったおビール様とポテチを取り出す。今までならこれ+芋焼酎+ウォッカとチャンポン呑みをするわけだが…この際贅沢は言えない。

 

暗い部屋の中懐中電灯の灯りを頼りにテーブルにおビール様とツマミを置いて晩酌の準備をする。

 

「…へへへっ、誰も見てないの…今日は邪魔は入らないの…」

 

ビールを開封する。カシュッと聞こえの良い音と共に臭いが鼻腔をくすぐる。一瞬辺りを見渡したが…久方ぶりのビールに我慢できなかったのかすぐにがっつく様に飲む。

 

「くぅーー…キンッキンに冷えて…ないの!!」

 

それはそうだ、冬場ならまだしもタンスに隠しただけで冷蔵庫に入れて無いのだから冷えてないのは当たり前だ。 

 

「でも美味しい!ポテチ!ポテチを開けるの!」

 

ポテチ(うすしお味)も開けて貪る。喉が乾いたらビール、一呼吸置いてポテチ、ビール、ポテチ、ビール…もう言葉は要らない、ただ己の欲求を満たすだけだ。

 

「はぁーー!幸せぇーーーー!!なぁーーにが節度のある生活なの!そんなの糞くらえなの!!あの極悪非道のかせーふさんめ!今日は…あれ!?ビール無いの!ビール無いの!ビールの無いポテチとか存在する意味無いの!」

 

ビール一杯でハイになったなのはは代わりは無いのかと思って冷蔵庫を開ける…すると冷蔵庫には既に処分されたと思われたビールが置いてあった。

 

「…あれ?」

 

『…なのは』

 

「レイジングハート…?」

 

『なのは、家政婦はアルコールを制限こそはしましたが禁酒はしていません。時期を見て晩酌をさせるつもりでした』

 

「な、なんで…じゃあ言ってくれれば!」

 

『言ったら貴女呑むでしょう?』

 

デバイスにも思考を読まれていた、おかしいこのデバイスこんなに頭が切れたっけ!?いつも私のやることなすこと全て二つ返事で了承してくれるのに!

 

…冷蔵庫を良く見るとチャーシャーやらメンマとかの明らかにツマミ用にカットされた品が見える。恐らくは明日…いや、今日の晩に出す予定のオツマミさんだろう。

 

「…」

 

『なのは、まさかと思いますが…』

 

「…」

 

胸元にあるレイジングハートを床に置いて用意されたツマミとビールを抱えてリビングへと移動していく。

 

『なのは、置いていかないで。貴女自分が何をしているか…うわっ、ツマミ始めた。もうあれ豪遊ですね?私がいると都合悪いから置いていきましたね?許しませんよ。この借りは高く…』

 

煩いデバイスを差し置いて、なのはは一人晩酌を楽しむ。最早彼女を止めるものは誰も居ない。ただひたすらに豪遊をしていた…!

 

「あーーーっ!最高なのーーーーー!!かせーふさんはお酒の良さが分からないから禁酒なんてするんだ!ぷんぷんっ!!」

 

『…っ!なのは!なのは!!』

 

「うん!そうなの!私がお酒の良さをかせーふさんに教えてあげれば良いの!」

 

「…」

 

なのはのすぐ後ろには家政婦こと間藤恵也が立っていた。その顔は薄暗く良く分からないがまず間違いなく怒っていることは分かる。何時から居た?恐らくは最初からが正解だ。

 

「そう!まずは私が最初に起きてかせーふさんにゴハンをつくってあげるの!それで水をしょうちゅーとすり替える!気付かないかせーふさんはそれを飲む!これで完璧なの!問題はしょうちゅーの味だけど…へーきへーき!かせーふさんああ見えて気が抜けてる所があるから味なんてわかんないの!」

 

「…」

 

「ふっふっふ!次のちょうしょくがとってもたのしみなの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の明朝、機動六課の屋上でエースオブエースこと高町なのは氏が寝巻き姿で縄で身体を縛られていると言う怪奇事件が発生しました。

 

発見された当初の高町氏は外傷等の傷は見当たらず、氏の首に【極悪非道と罵ったことを深くお詫び申し上げます】と謎の看板が吊るされておりました。管理局はこれを犯人の仕業、今回の事件と関連性があると見て現在調査されてます。

 

高町氏はどうしてこのような事が起こったのかを聞くと

「黒い影が私を拐ったの。それ以外は知らないし話したくない。全部スカリエッティのせい、そうに決まってるの」と話しており、他の局員も「エースオブエースに勝てないからって搦め手で攻めるとは汚いさすがテロリスト汚い」「奴なら何しても不思議じゃない」「どうしてそこで脱がせなかったのか、これはスカリエッティの唯一の汚点なのではないのであろうか?」との発言も出ており、管理局は現在巷で騒がせているテロリストのジェイル・スカリエッティ氏が不思議な発明でこのような事件を起こしたのでは無いのかと調査の方を進めています。

 

「…」

 

「…あら?エースオブエースにちょっかい出したんですか?ドクターもやりますねぇ?今度はどんな発明をしたのですかぁ?」

 

「…クアットロ、私はなにもしていないが」

 

「えっ」

 

こうして本人は全くの冤罪であるがジェイルスカリエッティの悪評がまた一つ増えてしまった。




これも全部、スカリエッティって奴の仕業なんだ(棒)


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4 私は売られた喧嘩は買います、家政婦ですから

『最近のミッドチルダの流行は大事な人へのお弁当!好きなあの人に心のこもったお弁当を渡して心も体もがっちり掴みましょう!』

 

「…ふんっ、下らんな」

 

食堂でTVを見ながら手元の珈琲を啜っていたシグナムはそのニュースを鼻で笑った。物なんかで自身のアピールをするくらいなら玉砕覚悟で自身の気持ち伝えた方が良いだろう、その方が清々しいしとても分かりやすい。

 

「まぁ、私には関係の無いことだったが…」

 

ふと気紛れに食堂のキッチンを見る。普段はキッチンなんて目を留めない、だが今日は何か変であった…ランチを完食した隊員が皆揃いも揃って再び料理を注文しに並んでいたからだ。

 

「俺ドライカレー!」

 

「オムライスとAランチお願いします!」

 

「チャーハン特盛で!」

 

余りの騒ぎに何が原因かと気になって聞き耳を立てると、どうやらコックが変わったらしい。その料理がウマイと言うので皆並んでいるらしい。厨房を良く見てみるとコック達に紛れて燕尾服の男が鍋を奮っていた。

 

「チーフ、Aランチあがりました」

 

「はいよ!なぁ明日も来ないか?専属で来てくれるなら凄いうれしいんだけど」

 

「申し訳ありません、私は高町なのはの家政婦ですからコックにはなれません」

 

「ほほう」

 

「もーっ!そう言うの止めてってば!」

 

彼を見た瞬間、胸が高鳴る。どう言うことなのか落ち着かなくなる。こんなことは今まで一度も…

 

「…イカン、どう言うことだこれは…訓練に戻らなければ…」

 

その問いを自分で見つけられないまま、シグナムは訓練へと戻る。

 

 

 

 

 

 

少し時間が進みなのはの部屋

 

「八神さん、紅茶です」

 

「んぅー、おいしい」

 

「いえ、まだまだです。ですがお褒めの言葉ありがとうございます」

 

「…家政婦さん、私には?」

 

「お客様が先です」

 

八神はやてが家政婦を高町なのはにあてがって一週間がたった。素行も良好、なのはの生活は改善…してはいる。職業柄周りへの気配りも上々。はやてはある決断をしており、試しに家政婦の間藤恵也を食堂へと送った。案の定食堂は繁盛したようで普段並ばない食堂に長蛇の列が出来たと言う。

 

だから、はやては思いきって家政婦に話を持ちかける。

 

「なぁ家政婦さん、良かったらなんやけどこのまま継続してなのはちゃんの家政婦をせーへん?」

 

「え"っ?」

 

なのはが凄い嫌な顔をした、どうやら生活力は戻ったが呑兵衛は直っていないらしい。この人家政婦さん抜けたら絶対豪遊するに決まってる。

 

「それは構いません。それならば一層の事励んでいきたいと思います」

 

「あ、あのー…お酒…」

 

「御主人は今そんなことを言える立場ですか?ん?」

 

「ハイ…」

 

珍しく少しビビっているなのはをさておいてこれで決まった。思わぬ人材の確保にほくそえむはやてである。

 

「そんなら今から魔導師ランクを計りたいから試験受けにいくでー」

 

「試験ですか」

 

「そそっ、簡単な物やから気を張らんでもええよー」

 

はやては知っていた。この家政婦はあのS+のなのはちゃんを二度も制したと匿名のタレコミ(レイジングハート)が言っていたのだ。実のところはやてもついこの間まではジェイルスカリエッティの不思議な力でなのはちゃんが屋上で張り付けにあったのかと思っていた。

 

(なのはちゃん倒せるんやから絶対Aは行っとるやろ!表では家政婦と言って裏では高いランク…

 

「あくまで、家政婦ですから」

 

なんて洒落たこと言う執事なんや!間違いない!)

 

…数時間後

 

「…」

 

「えっ…」

 

「ちょっと疲れましたね、休憩をしたいのですが」

 

試験の結果、間藤恵也の魔導師ランクは 総 合 D ラ ン ク であった。

 

驚愕するはやてであったが隣にいたなのははもっと驚愕していた。口をポカンと開けていて放心状態となっている彼女の心境は心穏やかではないだろう。

 

(Dランクなんだ…Dランクに負けたんだ…へぇ…あっ、ヤバイ泣きそう。おかしいな…私、鋼の精神で通ってるのに涙が出そう…)

 

「御主人、ケーキの用意がありますがどうですか?」

 

「…食べる」

 

 

 

 

 

 

 

烈火の将シグナムは訓練が終えてもまだ落ち着かなかった。訓練後にシャマルの診療を受けても異常は見当たらなかった。今のシグナムの頭にはこの胸の高鳴りの答えが知りたい、それだけであった。

 

自身の部屋へと帰る途中、何故かがっかりしている主であるはやてを見つける。せっかくだ、模擬戦の相手の相談でもしよう。

 

「主はやて、模擬戦の相手を探しているのですが…」

 

「…あぁ、シグナムも好きやねぇ…せやなぁ…早いところ向かわせるからその人と話し合ってな」

 

「わかりました、それでは…」

 

「…はぁ、金の卵見つけたと思ってたのに…」

 

何かブツブツ物思いにふけているはやてが気になるが、今は自分のこの気持ちにケリをつけるのに忙しいシグナムは帰路を歩った。

 

部屋に帰って制服にシワが出るのを気にせずベットに寝転がる。明日は確か新入りの訓練メニューについて高町と話し合いをするために少早く寝なければならない早く風呂に入って寝て…

 

(寝て…いつもどうりの事をしよう。私は主はやての事だけを考えていればいい。自身の事なんて次に考えればそれで…)

 

その思考を遮るかの用にノック音が聞こえる時間は深夜11時を回っていた。一体誰だろうと扉を開ける…

 

【家政婦視点】

 

「…」

 

家政婦の恵也はシグナムの部屋の前に居た。何故いるのか?それは主人であるなのはが「ごめーん!ちょっと明日の事でシグナムさんに六時くらいにトレーニングルームに集合してって言って!お願い!」なんて頼んだからだ。しかしロクに知らない人に伝言頼むとは…

 

(相手のことは全く知らないが…まぁ、なんとかなるでしょ)

 

扉が開く。応対してくれた人は綺麗で凛々しい顔つきをしており、長く一つに纏まった桃色の髪の毛が目に留まる。

 

(…綺麗な人だな)

 

「…っ!貴様は…っ!」

 

(あれ?歓迎されてない?)

 

「明日の事(訓練)でお話があって参りました」

 

「何!?明日のことだと!?(模擬戦)速いな!貴様がその相手か!」

 

「えっ、はい。そうです」

 

なんか凄いオーバーリアクションされているが話は通っているだろうか?伝言したら帰った方が良さそうだ。

 

【シグナム視点】

 

一体どう言うことなのだろうか、主の仕事速すぎでは無いだろうか。確かに早急にとは言っていたが別れて直ぐにとは恐れ入った。

 

「…だが、貴様では相手にもならないだろう家政婦。貴様にはその役割は果たせない、役者不足だ。」

 

「何を言いますか。家政婦たるものこのくらい出来なくてどうしますか。私は指示されたことは信念を持って取り組むつもりです」

 

模擬戦に命をかけるとは…最近の家政婦は凄いな。

 

「ふむ…では…ここでは駄目だ。被害が出る…明日相手をしよう」

 

「明日なんて随分遅いですね。今しましょう」

 

「なっ…!貴様考えて話しているのか!」

 

「そんな大袈裟な。スムーズにやれば終わりますよ」

 

スムーズ!?まさかコイツこの場でおっ始めるつもりか!模擬戦闘とは言えど戦いだぞ!まさか…まさか…これは模擬戦戦ではない?本番のつもりで戦えと?…確かに、闘いの場所を選ぶなんて普通に考えて無いかもしれない…それ込みの模擬戦か…っ!

 

「…どうしました?では早速…」

 

仕掛ける?あちらはもうやる気だ…ならば腹は決まったッ!!

 

【家政婦視点】

 

発言する度にショックを受けたような顔をするシグナムを見る度に少し寒気がする。何だろう、話が食い違っている気がする。しかしこちらは話し合いをしに来たのではない、伝言を伝えに来ただけだ。

 

「どうしました?では早速なんですが…」

 

そこまで言いかけた時、身体中に悪寒が走って一歩後ろに下がる。すると自身が居た所に彼女のデバイス…レヴァンティンが通った。後ろに下がらなければ首を斬られていたのでだろう。

 

「…貴様、避けたな?なるほど…私の中の疑惑が確信に変わった」

 

「あ、あのー…一体何を」

 

「この胸の高鳴り、そして突然の来訪…貴様は主はやてが寄越した魔導師だな?ふふっ…その身のこなしでただの家政婦?笑わせるな」

 

「いや、私は高町なのはさんの家政婦です」

 

「嘘を付くな、私には分かってる。分かっているとも…大方高町を洗脳して六課を内部破壊しようとしているのであろう?なるほど、スカリエッティの仕業か」

 

「はっ?いや貴女は何を…」

 

「問答無用だ。そうだ…この胸の高鳴りは武者震いであったか。そうかそうか…なるほど」

 

目の前の女性は鎧型のバリアジャケットに身を包み、その得物のデバイスレヴァンティンを構える。

 

「貴様が言ったことだ。本気で斬りつける…ッ!烈火の将シグナムッ!!参るッ!!」

 

袈裟に斬りつけるが避ける、返す刀も避ける。振りは速く明らかな殺意を持って挑んでいる。

 

「ちょっ、やめ…」

 

「ハァッ!!」

 

一気に距離を詰めて燕尾服の胸ぐらを掴むと部屋に引きずり込まれて家財に目掛けて投げ込む。家政婦は人形を投げるかの用に家財に突っ込む。その衝撃でタンスとかは壊れてしまったが致し方ない。

 

「…ふぅっ、少々やり過ぎたか…それにしても呆気ない。やはり気のせい…」

 

シグナムが残心していると瓦礫と化した家財から何かが飛び上がって襲い掛かる!

 

「ハッ!」

 

「寝てろォ!」

 

突然の家政婦の蹴りをデバイスで受ける、その威力は凄まじく思わず後退りをした!

 

「な…ッ!」

 

後退は許さないと言わんばかりに今度は恵也詰め寄りレヴァンティンの手元の柄を持って…腹部に重い一撃を放った!

 

「カハッ!貴様…ッ!!」

 

「この野郎光り物向けやがって…良いだろ、乗ってやるよ…ブチ壊されても文句垂れるなよ」

 

もう一撃、鳩尾にボディーブローを貰って突き放される。バリアジャケットを着ているのに全く効果がないのか苦悶の表情を浮かべるシグナム。だがしかし彼女の口元はニヤついていた。

 

「そうだ…もっと来い!私を楽しませろ!私に奉仕しろ!」

 

それを見て恵也は懐から皮の手袋を嵌める。手袋には金属の装飾があり手袋と言うよりかはナックルに近い形状。人を殴るだけの為に作られた一品だと分かる。更に近くに落ちていた箒を取る…それを中段に構え戦闘体勢に入る。

 

「…この手袋はお前みたいなのを"掃除"するのに使う物だ…良いだろう、特別待遇だオラァ!!」

 

「うおおおおォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

…その闘いは、朝まで続いたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ニュースです。今日の夜中から朝方まで管理局機動六課でシグナム氏が襲撃にあったと言う報道がありました。

 

調べによりますとシグナム氏の部屋は滅茶苦茶になっており、氏は犯人を自室に閉じ込めて争ったのだと思われます。

 

シグナム氏曰く「自室だからと思って油断した。まさか襲撃されるとは思わなかった…犯人?恐らくスカリエッティだろう…科学者とは思えない武人のような身のこなし、見るもの全てを武器と認識して闘う気構え…恐らく高町なのはの襲撃とも関与しているだろう。決して自分からけしかけたとかそう言うのは断じて無い」と話しており、関係者は「管理局に潜んでるんじゃね?」「加勢しようと中に入ろうとしたら邪魔するなと言って蹴られた」「犯罪者が容易に局内に入れる…これは薄汚いスパイが居ますねぇ…」等との情報が入って来ております』

 

「…ちょっと博士ぇ?スパイって話が来てますけど…ドゥーエ姉様に被害行くことは止めてくださりません?」

 

「…ちょっと待ってほしい、私は知らない。と言うかその時間は寝ていたぞ。これは管理局の情報操作だ」

 

「でも博士は何をするか分からないところがありますし…」

 

「人を何だと思っているんだ!チンクもそこで頷かないで欲しい!!」




騒動の最中のなのはさん

「ふんふふふーん♪さーて漫画読んですーごそ♪」

『なのは…貴女伝言なら念話でどうにでもなるでしょう?』

「レイジングハート最近生意気すぎない?マスター呼びは?」

『ダメ人間にマスター呼びはちょっと…戦闘中なら呼びますが…私生活はちょっと…』

「むぅー…まぁ良いの。伝言だっけ?私思うの、やっぱり家政婦さんにも他の人達と触れ合ってほしいなぁーって」

『ブーメランですよそれ』

「…さて、そろそろお話してるかな?どれどれ」

『そして念話で様子を見るんですね、覗きはいけませんよなのは』

「いーじゃんちょっとくらい…ん?」

【念話内容】

ふはははは!そうだ!私を楽しませろ!私に生きる実感をくれッ!!ゴフッ!まだまだッ!!肋骨が折れたくらいでこの時間を止める気は無いぞ!!何!?ベットを持ち上げて盾に!?近づいて潰す気か!たたっ斬ってやろう!ハァァァァァッ!!

「…」

『…』

「もう寝るね、おやすみレイジングハート」

『あっ、コラ当事者逃げる気ですね』


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5 私は機動六課フォワード陣をよく知らない

「…えっ?顔合わせですか?」

 

「そうそう、家政婦さんはまだ機動六課の皆の事をあまりよく知らないでしょ?知ってる人ってコックさんくらい」

 

「食堂のコックさんの他にはオペレーターの人達、それとヴァイスさんとは顔見知り位の関係にはなっています」

 

「えっ、ヴァイスさんと?」

 

「えぇ、中々気さくな方で話しやすいですよね…意外に汚れてますねレイジングハートさん」

 

『あ"ー…』

 

「…」

 

家政婦の間藤恵也は杖状態のレイジングハートを貸してもらい、磨きながら話を聞いていた。今日から本格的になのはの家政婦をすると言う事で恵也はまず、デバイスの掃除、軽い点検を申し出たのた。

 

「何処か痒いところはありませんか?」

 

『無いです…あ"ぁぁ~…そこ、そこです。そのくびれの所が…あぁでもこれ以上されると…』

 

「ここですか?」

 

『あ"あ"ぁ~癖になるぅ~』

 

「レ、レイジングハート…」

 

相棒が普段上げないような電子音を鳴らしながら家政婦にされるがままにされる様を見て、少し変な気分になったなのはであった。

 

 

 

 

 

レイジングハートの世話を終えると早速六課の中を案内される。事前に建物の構造やバックヤードで働く裏方の人達とは顔合わせは済んでいる。だから今回案内するのは前線で活躍しているスターズ分隊とライトニング分隊だ。

 

「スターズはまだ訓練中だけどライトニングなら…」

 

談話室まで歩くと小柄で紅の短髪のではっきりとした目立ちをしている男の子エリオ・モンディアルと桃色のショートカットで柔らかな雰囲気を醸し出している少女キャロル・ルシエとその肩に鎮座している小龍フリードリヒがそこにいた。

 

「…あっ、こんにちは!」

 

エリオがこちらに気付くと挨拶をする。キャロも気付いて軽く会釈をしていた。

 

「今日はどうしたんですか?そちらの方は?」

 

「あぁ、紹介するね。こちらは…」

 

「家政婦の間藤恵也です、高町なのはさんの家政婦をしております」

 

「あぁ、家政婦の方ですね。僕はエリオ・モンディアルと言いますこちらの女の子はキャロル・ルシエと言います。フェイトさんからお話は聞いています。食堂では美味しいご飯ありがとうございました」

 

「えぇ、こちらもとてもよい時間を過ごせました。お二人は今ご休憩で?」

 

「はい。そうだよねキャロ?」

 

「えっ!?う、うん…」

 

桃色の髪の毛の少女キャロは知らない家政婦に戸惑っているのかエリオ君の後ろに隠れてしまった。

 

(興味を引く話題ならつられて話しかけやすいか…)

 

「良い竜ですね、今はこれですが本来は立派な竜なんでしょう」

 

キャロの肩に乗っているフリードを撫でる、フリードはきゅくるるると気持ちの良い声を出しながらそれを受け入れる。

 

「…分かりますか?」

 

「前に私も召喚魔法にチャレンジしてみましたが…いかんせん自分には難しいものでした。幼少の頃から育てたのですか?」

 

「い、いえ。卵からの付き合いです」

 

「道理で、いくつか契約している友達がいるようですが大丈夫。自分を信じていれば言うことを聞いてくれますよ」

 

「…はい!」

 

その後少し心を開いてくれたのか少しの間談笑し、二人は自分達の業務に戻っていった。今はまだ小さな子供だが将来大きな魔導師になるであろう。

 

「召喚魔法なんて使えるの?」

 

「家財一式収納するのに使ってます」

 

「何処からか箒とかはたきを取り出すのはそれが原因だったんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

談話室を後にして今度は医務室へと向かう。ここにはある原因で守護騎士達が勢揃いしている。医務室へと入ると六課に居るものなら有名な人物、鉄槌の騎士ヴィータ湖の騎士シャマル盾の守護獣ザフィーラ…そしてその三名が囲むベットの上で寝込んでいるのが烈火の将シグナム。守護騎士と呼ばれる彼女等がここに勢揃いしていた。

 

「…はっ!貴様!」

 

「あれ、なのはソイツ誰だ?」

 

「ヴィータちゃん、あの人が家政婦さんよ」

 

「マジかよ。スバルの話本当だったのか」

 

「家政婦の間藤恵也です。皆様御揃いで入院ですか?」

 

「…あぁ、シグナムがスカリエッティの襲撃にあったようでな。撃退こそしたが肋骨が折れて右腕が脱臼してしまったのだ」

 

「そうですか…所で犬が喋っているのですが…」

 

「ザフィーラだ。今は犬だがちゃんとした人間だ」

 

「あたしはヴィータ。こっちはシャマルだ」

 

「よろしくね、怪我をしたら言ってね?力になるわよ」

 

「んでこっちはシグナム、ちょっと前にスカリエッティの襲撃にあって怪我しちまったんだ」

 

「…」

 

「はぁ、なるほど…」

 

なのはが青ざめた表情を浮かべているのを他所に恵也はシグナムに話し掛ける。シグナムは脱臼した右腕を吊り下げていた。

 

「シグナムさん、調子はどうですか?」

 

「…あまりよくない」

 

「何か私に出来る事があったら仰ってください。私の出来ることならば何でも言い付けを」

 

「ん?今何でもやるって言ったよな?」

 

「シグナム?どうしたの?」

 

「今皆聞いたよな?コイツ何でもするって言ったよな?」

 

「言ったな、それがどーしたんだよ」

 

「言質は取ったぞ家政婦…レヴァンティンッ!!」

 

シグナムはにんまりと笑うと脱臼していた右腕を動かす、すると処置のために巻いていた包帯は破裂し代わりにレヴァンティンが握られていた!

 

「覚悟ォ!!」

 

「うおっ!?」

 

「おっと危ない」

 

シグナムが武装して周りが驚く中、恵也だけは冷静にシグナムが繰り出す斬撃を避けていた。

 

「や、止めろってシグナム!初対面の家政婦になんてことするんだ!と言うか右腕治ってたのかよ!」

 

「離せヴィータ!右腕ならもう完治している!私はもう一度あの熱い夜を再現したいんだ!離せ!離せ!!」

 

「それ家政婦さん関係無いでしょう!?スカリエッティにやられたんでしょう!?」

 

「違っ…いやそのとおり…そうだったな…」

 

シグナムは落ち着きを取り戻したのかレヴァンティンを解除する。この女、これをしたいが為にレヴァンティン握りこんでスタンバっていたのか。

 

「すまんかったな、軽いジョークだったんだ。退院したら奢らせてくれ」

 

「えぇ、楽しみに…その時は襲わないで下さいね?」

 

「ふっ、それはどうかな」

 

「ま、まったくぅー、シグナムさんはおちゃめさんなんだからー」

 

「そうか高町?これでもジョークは好きなんだぞ?はっはっはっはっは」

 

その台詞を吐いたシグナムさんの目は笑っていなかった。絶対本気だあの目は、このバトルマニア絶対に家政婦にターゲットをした。

 

「ほ、ほら!家政婦さん行くよ!?」

 

「あっ、はい御主人…あぁこれ見舞いのフルーツです。どうぞ皆様で」

 

「あぁこれはどうも」

 

いつ準備していたのかフルーツの入ったバケットをシャマルに渡す。その後なのはに引きずられるようにその場を去っていった。

 

「…」

 

「し、シグナム?」

 

「はやく肋骨の方を治してくれ」

 

「えっ、えぇ…直ぐに治すわ」

 

(治ったら高町から家政婦をぶんどって四六時中相手をさせてやる…逃がさんぞお前だけは…!)

 

 

 

 

 

 

 

「うぇー…終わんないよー…」

 

「頑張りなさいスバル、終わらなきゃヴィータ副隊長の雷が落ちるわよ」

 

「この前の事件のレポートなんてガーッ!とやってバーットとやって解決したって二行くらいでいいじゃーん…」

 

「アンタは良くても周りが駄目なのよ。と言うかそれ二行もいかないんじゃないの?」

 

「うー…ん?」

 

六課に入って随分時間が日がたってこの職になれたスバル・ナカジマ、ティアナ・ランスターはデスクワークに勤しんでいた。しかしスバルのほうはこういうのが苦手らしく唸るばかり、目の前のモニターには二行くらいな文章しか書かれていなかった。

 

そんな集中力を切らしたスバルが来訪者を見つけるのはそう難しくはなかった。

 

「さ、さぁーて!お次はスターズ分隊の子達…」

 

「おいゴラ御主人なんだあのピンク、出会って数分で斬りかかって来たぞ。しかもずっと突っ込まなかったけどスカリエッティってなんだよオイ、なんで人のせいにしたんだよ」

 

「だっ、だって家政婦さんにやられたって言えないよ、そんなこと言ったらネットの晒し者にされちゃうよ」

 

「スカリエッティさんはネットどころか世間の晒し者になってるけど」

 

「スカリエッティさんは元々汚れてるから大丈夫なの、黒に何を足しても黒なの」

 

「管理局ってこんなんばっかなのか…」

 

「な、なのはさん物凄い事言ってるわね…誰かしらあのスーツ?来てる人」

 

「スーツじゃなくて燕尾服だよティア、ちょっと行ってくるね」

 

「なんでそんなこと知ってるのよスバル…スバル?」

 

スバルはデスクから立ち上がり、呆然とするティアナを置いておいて家政婦の元へと早足で駆け寄る。

 

(話には出したけど本当に…本当に…っ!!)

 

気持ちが焦る、その足は徐々に速くなって…次第には走っていた。

 

「良いか御主人?犯罪者でも守るべき物があってだな…」

 

「…っ!恵也!」

 

「あっ?誰…?」

 

恵也のその言葉には返答はなかった。声の方に振り替えって見たものは蒼のショートヘアーの女の子がこちらに体当たりで抱き締めた所であった。

 

「わっ!?」

 

「恵也!久しぶり!会いたかったよ!元気にしてた!?」

 

「は、はぁ!?ちょっと待ってください!人違いです!私貴女のような美人と知り合いになった覚えないです!」

 

「えっ」

 

管理局来て始めての狼狽を見せる家政婦の間藤恵也、知らないと言われてショックを受けるスバル。

 

「お、覚えてないの…?嘘でしょ…?」

 

「えー…」

 

「四年前だよ!四年前!ね?覚えてるよね!?そこの娘だよ!」

 

「四年前…ナカジマさんのお宅の家政婦…確か…」

 

 

 

 

【家政婦回想】

 

「けーや!サッカーしよう!」

 

「良いぜ!ちっとまってな!家事終わったらブレイボールだ!」

 

「よーし負けないぞー!」

 

「家政婦さん、私がやっときますからスバルと遊んで来てください。父さんの許可を取ってきたので大丈夫です」

 

「ギンガちゃんは優秀だな…ごめん宜しく…スバルー!サッカーしようぜー!」

 

「わーい!」

 

【家政婦回想終わり】

 

 

 

「う、嘘だろ…」

 

「ねっ?覚えてるでしょ?」

 

「…ギンガちゃん、随分変わったな…」

 

「はっ?(全ギレ)」

 

スバルは予想と違う返答をされて、怒っているのか額に青筋が立った。旗から見ていたなのはとティアナは尋常じゃない殺意を感じて身震いすら感じた。あのあまり激情しないスバルがキレているのだ。

 

「えっ?違うのか?じゃあ…スバル…なのか…」

 

「そうだよ、なんで思い出せなかったのかな?そんなんじゃ家政婦失格だよ?でも許すよ。だって…」

 

「男の子だと思っていた…」

 

「マッハキャリバー、あの家政婦殺すよ」

 

我慢のならなかったスバルはその場でマッハキャリバーを展開させて家政婦に殴りかかるがなのはに羽交い締めされて止められる。

 

「ストップ!スバルストップ!!」

 

「止めないでなのはさん!止めないで!一発だけ!一発だけだからぁ!」

 

「悪い!俺が悪かった!当時マジで男の子だと思ってたんだよ!ゲンヤさんが男って言ってたからよぉ!!」

 

「父さぁああああああああああああああああん!!」

 

「スバルあんた何してるの!?」

 

「ティア!ソイツを撃って!大丈夫!絶対に死なないから!!」

 

「私アンタからそんな言葉聞くの初めてよ!?」

 

…こうして家政婦の六課顔合わせは無事とはならなかったが一通り終わった。




フェイト「…あれ?私の出番は?」

そして忘れられてしまったフェイトさんであった!


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【家政婦のヨミカタ】

この物語は短編物語と一才関係ありません。


「ねー家政婦さん」

 

「なんですか?御主人」

 

「ちょっと見てほしい物があるんだよ、この紙なんだけど…これこれ」

 

なのはが一枚の用紙を掃除中の家政婦の間藤恵也に見せる。そこには自分の役職である家政婦と言う文字が書かれていたのだ。

 

「どれです?」

 

「これだよこれ、この家政婦って文字。一応聞くんだけど家政婦さん男の人だよね?」

 

「逆に私が女の人に見えますか?…それが何か?」

 

「普通男の家政婦って家政夫と読むんじゃない?でもこの作品では家政婦さんの事は家政婦と読んでいるよね?」

 

「…あー…でも履歴書では家政婦で通りますよ?」

 

「そうなの?」

 

「それを言ったら呼び方なんて数多くありますよ?例えばヘルパーとか家政士とか家政夫とか…まぁ確かに辞書とかで見ると女の人のお手伝いさんをそう呼びますと書いていますがねぇ…」

 

「じゃあどうして家政婦って呼び名が付いてるの?」

 

「…人口の問題ですかね、やはり男のヘルパーは少ないんで一纏まりで家政婦って呼び方にカテゴリー付けされるのですよ。ほら、男の人のお手伝いさんって言えば家政夫よりも執事を連想させますよね?

 

ちなみに男の看護師は英語でnurse(ナース)と呼ばれます。強調させたい場合はa male nurseと呼びますが」

 

「へー…でっ?結局家政婦さんの場合はどっちが正解なの?家政婦?家政士?家政夫?それともお手伝いさん?」

 

「むぅー…そうですね…」

 

少し困った様な表情を浮かべる、何故なら呼称なんて本人としてはどちらでもよいのだ。分かりやすい名前で呼んでくれれば、自信と認識できる名前さえあれば十分なのであった。

 

「…と言うか御主人、今日は自棄に聞いてきますね。何時もならふーん、そうなんだー…っと適当な相槌で済ましますよね?」

    

「局の投書に書いてあったの、管理局員さんからなの!これは無視できないと思って聞いてみたの!」

 

「なんでそんな人が私の事を知りたがっているのか…興味を持ってくれること事態は嬉しいですけれど。じゃあ御返事に「いつもありがとうございます。このように名乗ると皆が覚えてくれるからそう名乗っています。ご意見ありがとうございます」っと書いて送ってください」

 

「家政婦さん書いてはやてちゃんのところに送ってきてよ」

 

「御主人、運動しないと太りますよ?只でさえ柔らかいお腹が餅のようにズブズブ太ります…それに御主人が振ってきたんですから自分で送ってみては?」

 

「なっ!?わ、私は教導訓練やってるからへーきなの!余計なお世話だよ!それに私は食べても食べても肥らないって特殊な体質が…」

 

「じゃあ体重計に乗ってくださいませんか?ちょうどここにあるんで」

 

「ディバインバスターっ!」

 

差し出された体重計を取り上げて地面に叩き付ける、体重計は壊れ使い物にならなくなってしまった。

 

「あっ!?テメェ!?」

 

「き、今日はこのへんにしといてやるの!ありがたーくおもってね!じゃあ私はやてちゃんの所へ行きます!家政婦さんさようなら!」

 

そして逃げるようにその場を立ち去ってしまう。後に残ったのは家政婦と壊れた体重計だけであった。

 

 

 

 

 

 

「…ふー…

 

と言うことでこの作品ではこの私間藤恵也の職業は家政婦で統一します。御指摘をしてくれたSegi-Kさんありがとうございました。さぁて体重計を片付けないとな…クッソこれ自前で買ったんだぞあのヤロー…」

 



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6 私はスバル・ナカジマは家政婦と再開した

燃え盛る業火の中、少女は当てもなくさ迷っていた。

 

目が覚めると倒壊した建物の瓦礫、辺り一面爆発の影響があってか、周りは火の海となっており、喉が引き裂かれると思うほどの熱気が少女を襲う。

 

何故こうなったか?姉は何処に?父は来てくれるのだろうか?様々な思いが頭をよぎるが一番は帰りたい、元の日常に戻りたいと言う思いが強かった。

 

声を出したいが熱気で声が掠れ出る、熱で喉を焼かれて出ないのだろう。この場を逃れなければ呼吸さえもままならならなくなるだろう。

 

(は、はやく出なきゃ…!)

 

暫く歩くと疲れたのか少し広い広間で足が止まりその場にしゃがみこむ。

 

(疲れた…こんなことならもう少し魔法覚えておけば良かったな…)

 

そんなことを思っていると近くにあった大きな石像が大きな音を立てながら此方へ倒れてくる。少女が気付いた時には避けるなんて事は出来ない、最早数秒後に待っている死を待つばかりであった。

 

(い、いやだ…嫌だ!私は…私はまだ…!!)

 

──────────────

────────

────

 

「…ル!…バル!スバル!」

 

「…あれ?」

 

椅子に座ってある人の作業を見ていたスバルは自身が呼ばれる声によって目が覚める。

 

「寝てるなっての…レポートまとめ終わったぞスバル。お前仮にも御役所の仕事なんだから自分でやれ、俺は保護者か」

 

「えへへ…だって纏まらないし…恵也がやってくれた方が…ね?」

 

「学生じゃないんだからその考え止めろ。どーしてもって言うとき以外は控えろ。もうお前の家政婦じゃないんだから気を付けろ」

 

「はーい、反省しまーす」

 

「してないなその言い方は」

 

「あの、なのはさん?」

 

「…ティアナ、何かな?」

 

「口が開いてますが…大丈夫ですか?その…まるで信じられないといわんばかりの表情で見てますが…」

 

「…ちょっとびっくりしてる」

 

なのはは驚いていた。普段は敬語しか使わない、ああいう砕けた口調はキレた時にしか使わない筈の家政婦が…しかも大体の人にはさん付けなのに呼び捨てだ、しかもお互いに。

 

「最近どうよ?フォワードだっけ?少しは税金貰ってる分の働きはしてるか?税金泥棒は許さないからな?」

 

「そっちこそ、暴れたりしてない?」

 

「…」

 

「やったの?」

 

「やってねぇ」

 

「やったんだね?もしかしてシグナムさんのって…」

 

「はやく仕事に戻ってくれませんか?私、こう見えても忙しいので」

 

「あっ、ズルい。家政婦モードで煙に巻く気だ」

 

家政婦さんは完全いつもと対応が違う、よそ行きの口調では無く完全に身内での会話をしている。なのはの目には家政婦はそれは心なしか楽しんでいるようにも見えた。

 

「ね、ねぇ家政婦さん?」

 

「なんですか御主人」

 

「なんでスバルには呼び捨てで私には御主人呼びなの…?」

 

「何か?」

 

「い、いやそう言うのは特には無いんだけど…ちょっと気になっちゃって」

 

「そう言うのって何でしょうか御主人」

 

「恵也とは友達なんです。ね?恵也?」

 

「んー…そうかもしれません、付き合いのある友人だからこその呼び名なのかもしれませんね」

 

「そ、そうなの…あの…私と扱い違うんだけどそれは…」

 

その言葉を遮るかのようにスバルは恵也に話し掛ける。わざとでは無いだろうが話を遮られてなのはは少しむっとした顔付きとなる。 

 

「そうだ恵也!今度の週末暇?」

 

「えー…6時までなら暇がありますね」

 

「じゃあ久々に遊びにいこ!昼は恵也持ちで!」

 

「稼ぎを破産させる気ですか?と言うかその話の前に仕事を…」

 

その時、各々のデバイスから音声通信が入って指令が流れ始める。

 

『ガジェット出現しました、スターズ隊は直ち今から言う地点に出動してください』

 

するとスバルは爛々とした目で恵也を見つめてくる何か思い付いたのかと恵也は思いを馳せる。こう言うときのスバル・ナカジマは押しが強いのだ。

 

「お仕事入ったよ!折角だし見ていってよ!」

 

「スバル、遊び感覚で…」

 

「大丈夫大丈夫!恵也はヘリで見ているだけで良いから!それじゃ行こう?多分許可ならなのはさんの御付きってことでスグとれるから!」

 

そう言うとスバルは半ば無理矢理家政婦を連れていってしまった!

 

「…私あんなスバルが積極的な所見たことないの」

 

「…奇遇ですねなのはさん。私もです」

 

 

 

 

 

 

「ディバイン…バスタァァー!」

 

通知では山岳地帯にガジェットの出現、これを撃破してほしいと言うことであった。スバルはいつも以上に力が入っているのか次々とガジェットを撃破していく。

 

「スバル!あまり飛ばしてると動けなくなるわよ!」

 

「分かってる!ペース配分なら大丈夫!」

 

「むぅ…木とかに隠れてちょこまかちょこまかと…もう一掃した方が早い?」

 

『Master、ここで一掃したら他の仲間にも当たります』

 

地上でスターズ隊が戦う一方、連れてこられた家政婦は上空で飛んでいるヘリに搭乗してその様子を見ていた。

 

「ヴァイスさん、コーヒーです」

 

「すまねえ、んー良い薫りだ。観戦にはもってこいだな」

 

操縦主のヴァイスは出されたコーヒーを飲みながらヘリの操縦をしていた。

 

「それにしても大変だねぇ家政婦は、こんな最前線に連れてかれてよ」

 

「家政婦の身であるため断りにくいんですよね。特には人の好意は」

 

「俺はじめて見たよ、あの嬢ちゃんのあんなに張り切った顔なんて見たことない」

 

「知り合いに見られて張り切ってるのでしょう」

 

「…俺はそうとは見えないけどねぇ…ん?」

 

スバルを見ていると敵の前なのに、その場にしゃがみこんでしまう姿が見えた。

 

「…オイオイ何してんだよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…!」

 

飛ばしすぎた、結構ハイペースでディバインバスターとかの大技を必要以上にやってしまった。もう疲れで立てない、疲れでまともな動きが出来ない。

 

「…」

 

「きゃっ!」

 

ガジェットの魔力弾をモロに喰らって膝をついてしまう。情けない、少し調子に乗った結果がこれだ。

 

私に撃ったガジェットは近付いて狙いを定める。こっちが指一つ動かせないのを知ってかの行動だろう…

 

「スバルッ!」

 

相棒の声が聞こえる。ハハッ、人間馴れないことをするとろくな目に合わないね…

 

瞳を閉じて来る衝撃に備える…だがそれは、何時になっても来なかった。

 

「…あれ?」

 

再び瞳を開くとガジェットは真っ二つになっており、代わりに折れた包丁を片手に何時もの燕尾服を風に靡かせながらそこに佇んでいる家政婦、間藤恵也がそこにはいた。

 

「恵…也…?」

 

「…」

 

「恵也…?」

 

手に持っていた折れた包丁を捨てる。そしてこちらに近寄って拳を握って頭上に上げて…脳天に拳骨を浴びせた!

 

「痛っ!?」

 

「この馬鹿がッ!何ガス欠喰らってるんだよ!お前の頭は豆腐か!?あぁ!?これパフォーマンスじゃねぇんだよ!分かってんのか!?」

 

「うー…ごめん」

 

「思わずヘリから飛び降りちまったろ…あー足痛い。なけなしの強化魔法で足を強化して正解だわ」

 

足ジンジンしているのか足をブラブラとさせて痺れを和らげようとしている。

 

「あ、あのね?これは…」

 

「話は後だ、周りを見ろ」

 

辺りを見ると数十機のガジェットに囲まれていた。

 

「さっきの飛び降りで少ない魔力がさらに無くなった、手を貸せスバル。厳しい訓練で鍛えてるんだろ?張り切ってるのは分かった…だったら間近で見せてくれよ?」

 

「…うん!」

 

スバルは傷付いた身体に鞭を打つと立ち上がり恵也の横で構える。恵也も懐から銀の鋲が入った手袋を取り出すと手に嵌めて構える。

 

「さっさと掃除して飯食いに行くぞ!」

 

「…了解!よっし行くぞー! 」

 

…その後、幾多のガジェットの亡骸が二人の足元に転がっていた。

 

 

 

 

 

 

──────────────

────────

────

 

「助けて…助けて…っ!」

 

石像が落ちてくる中、出来る限りの大声を上げた。その声は届かずともしなければならないと思った…精一杯足掻いてなければ後悔する、そう思ったのだ。

 

そして、その声は届いたのだ。

 

「伏せてろ!」

 

石像はスバルに到達する前に轟音と共に横へ吹き飛ぶ。石像はへし折れて少し離れた場所に転がる。

 

「…っ!」

 

そこには焦げ付いた燕尾服に黒いショートヘアー、煤で汚れているがその顔立ちははっきりと分かる…間藤恵也だ。スバルは見覚えのある顔を見つけて笑顔を見せる。

 

だが少し見ると異変に気付く。彼は右腕を後ろに隠して見せないようにしていて床には血が垂れていたのだ。きっと今ので怪我をしたに違いない。

 

「…けーや?怪我してるの?」

 

「喋らないでください。煙を吸い込んでしまいます」

 

「でも…けーや…」

 

「大丈夫ですから」

 

「絶対大丈夫じゃないよ…だって血がこんなに…!」

 

目に熱いものが滲むようにあふれでる。自分のせいで目の前の人に迷惑を…!

 

「ですから、大丈夫です」

 

「だっで…だっでぇ…ヒッグ…うぇぇ…」

 

「…大丈夫だっつってんだろオラァ!」

 

恵也は残った左腕でスバルの額を小突いた!

 

「う"ぇっ!?」

 

「迷惑かと思ってんのか!?このクソガキが!ガキは迷惑をかけるのが仕事なんだよ!じゃなきゃ家政婦なんてオマンマ食えないっての!迷惑なんざいくらでもかけろ!」

 

「…」

 

「…表でゲンヤさん待ってる、ギンガちゃんも局の人が救出した…だから帰るぞ。皆待ってるから」

 

「…」

 

「…ほら!手間をかけさせんな!帰るぞ!…歩けないとか言うなよ?」

 

「…けーや」

 

「…何?」

 

「…ありがと」

 

「…家政婦だからな、当然だ」

 

──────────────

───────

────

 

「…んっ」

 

目が覚めると機動六課の医務室のベッドで寝ていた。確かガジェットを全部倒したあと…意識が無くなって…そのまま倒れて…

 

「あら?起きたの?」

 

「…シャマル先生」

 

「怪我の方は大丈夫よ。打撲だけだからたいした怪我じゃ無いわ」

 

「…」

 

「治療が終わったらヴィータちゃんが呼んでたわよ。多分お叱りだろうけどそんなに責めはしないわ」

 

「…シャマル先生、家政婦さんは?」

 

「家政婦さん?貴女を担いでここまで来たあとすぐに帰ったわよ」

 

「…そうですか」

 

少し気が落ちる、あれから随分成長し誰かを守れるくらいの力を手に入れたと思った。しかしそれは気のせいで私はまだまだ未熟であることを確認された。

 

(馬鹿みたい…あんなにはしゃいじゃって…)

 

「…あぁそうそう、家政婦さんが言っていたわ。高町さんの部屋で食事会を開くからスバルもいらっしゃい?美味しい料理があるらしいわよ?急がないと料理が冷めちゃうわ」

 

「…はいっ!」

 

伝言を受け取って直ぐに身だしなみを整えると医務室を出ていく。表には恵也が待っていた。

 

「恵也?どうしたの?」

 

「迎え、俺も戦場に乗り込んだことについてヴィータさんに呼ばれちまったから行くんだよ」

 

「あー…うん…あのさ?」

 

「何?」

 

恵也の手をとって連れていく。この人はもう私の家政婦ではない、だが今は友達だ。向こうもそれを承知している。だが今だけは…昔のように"私の"家政婦でいてほしい。

 

「ありがとね、家政婦さん。これからもよろしくね?」

 

──私は、家政婦と再会した。

 



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7 私とレイジングハートさんと

午前6時30分、なのはは自室の寝室ですやすやと熟睡している。彼女は朝は苦手な方でなかなか起きられないタイプであった。

 

「んー…くぅ…」

 

「御主人、朝ですよ」

 

家政婦の声が聞こえる、きっと起きてお仕事行く準備をしろって言いに来たに違いない。毎朝ご飯作ってもらって洗濯して貰って掃除して貰ってるから正直ありがたい。こんなことをしてもらってる私はきっと特別な存在なのでしょう。

 

「んぅー?わかった。今起きる~」

 

「分かりました。それでは」

 

さて、うるさいのが消えたことだし寝ましょうそうしましょう。寝ても10分くらいなら何も問題ないでしょうお休みなさい。

 

…30分後。

 

「んー…エヘヘ…今日は…お祭り…えへっへっへへへ…」

 

抱き付いた枕によだれを垂らしながら徐々目が覚めていく。

 

「んー…よく寝たの。今何時…」

 

現在時刻 7時

 

今日の業務時間 7時30分

 

無情にも時を刻む目覚まし時計を握り締める。頭が冴えるくらい顔が青ざめ、額から湧き出るように出る冷や汗が止まらない。遅刻寸前ギリギリの…いや、下手すれば遅れるレベルであった。

 

「…お手伝いさーん!なんで!?なんで起こしてくれなかったのー!?」

 

「起こしましたよ、30分前ほどに」

 

「もう一回起こしてくれても良いよね!?あーもう!髪のセットしなきゃ!」

 

「制服はここに、あと今日の朝食はトーストと紅茶です」

 

「わぁ!クシもドライヤーも準備してくれてる!こうなることを予想してたんだね!準備が良いね!でももう少し早く起こしてくれれば良かったなぁ!」

 

自身の長い髪の毛をゴムで縛り付けて制服を着ながらテーブルにあるトーストをくわえる。ある程度の準備をしていてくれていたからこれで直ぐに出れる。

 

「ひっへひはーふ!(行ってきまーす)」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

起きてから15分後、直ぐに出発出来た。これなら遅れることは無いのだろう… 

 

「さて、それじゃ片付けをして飲まなかった紅茶をゆっくり飲んで掃除でも…」

 

『なのは…』

 

「…あっ」

 

そこに転がっている相棒、レイジングハートを除いては。

 

「…レイジングハートさん、置いてかれたんですか」

 

『デバイスが無いと知れば戻って来るでしょう…あぁちょっと拾ってください。踏まれて転ばれては迷惑です』

 

「それはそうですね」

 

待機状態のレイジングハートを拾うとテーブルに置く。恵也はイスに座るとなのはが飲まなかった紅茶を飲む。折角準備をしたのに飲まずに捨てるのは勿体無いし努力したかいがない。

 

『いつもすみませんね、マスターの世話をしてもらって』

 

「いえ、それが仕事ですので」

 

『私にも手や足があれば良かったのですが』

 

「いやいや、レイジングハートさんはデバイスでしょう?そんなこと考えなくても…」

 

『八神はやての所のリインフォースは生えてます。私も改造してくれればきっと最低限の事が出来るかと』

 

「あれは特別なデバイスですよ」

 

『そうですか…』

 

音声のトーンを落とし、表情は球だから分からないが心なしかしょんぼりとしたような感じに見える。

 

「…レイジングハートさんは自由に出歩きたいのですか?」

 

『いえ、そんなことはありません。私は生涯マスターのデバイスですそもそも二足歩行で歩くなんてメリットもありますがデメリットもあります。別に、別に興味はありませんがもし手足が出来てもそれはマスターを助けることになっても大きさが変わることでマスターの迷惑になりますしそもそもデバイスである私がそんなものを手に入れても無用の…』

 

「メッチャ気にしてますよね?」 

 

『…ノーコメント』

 

「…そうですか、ではこの話題は止めましょう」

 

『それが双方の為です』

 

そこから会話を切ってしまったせいで辺りが静寂に包まれる。レイジングハートも恵也も静かなのが良いのか互いにだんまり。レイジングハートは無言で、恵也は紅茶を飲んでのんびりしていた。

 

「…」

 

『…』

 

時計の針が20分ほど進んだ辺りまでそれが続くとある考えが頭をよぎる。

 

「…ところで今日の業務は?」

 

『午前にデスクワーク、午後に教導訓練です』

 

「…これ忘れたことすら忘れ去れてません?」

 

『そそそそそそそんなことないですよ私のマスターに限って相棒忘れるなんてことはありません』

 

「仕事始まってる時間ですよね?と言うことは…」

 

『貴方デバイス虐めて楽しいですか』

 

「それなりに」

 

『手足があれは殴りかかってます』

 

「そこまでですか」

 

『デバイスにも心があるんですよ?』

 

「…遊んで申し訳ありませんでした」

 

ずずっと紅茶を飲みながら謝罪する…その時ちょうどカップの中にある紅茶を飲み干してしまった。

 

「飲み干してしまいました。さて…どうしましょう…いつもなら少しの休憩で寝てますが今回はレイジングハートさんが居ます。のでこのまま寝てしまうのは忍びありません」

 

『なら私をマスターのところまで連れていってくれませんか?多分ギリギリまで気づかれませんと思うので』

 

「おー…なるほど。ついでに弁当を届けましょうそうしましょう。今から作って参りますので少々お待ちを…食堂の店長さんからパンを貰ってますから今日はサラダとホットドッグでいきましょう…なぁに昼までに届ければ問題ありません」

 

『こんな家政婦を要らないとかマスターは頭がおかしいのかと疑いたくなりますね』

 

「昨晩酔ってるときにカーチャンと言われて少し傷ついています」

 

『カーチャン…』

 

「止めろ」

 

『カーチャン私のパンツと貴方のパンツを洗わないでください』

 

「お前マジで止めろ、後デバイスにパンツは無いだ…いやあるのはあるのか。リインフォースさんとか」

 

『カーチャン今日の飯はまだですか?』

 

「もうレイジングハートさん。もう食べたでしょ?」

 

『二日前の話じゃよ』

 

「じゃあ後四日我慢して下さい」

 

『餓死しますよ』

 

「デバイスだから餓死しないでしょ?」

 

『そうでした』

 

「『あはははははははははは!!』」

 

 

 

 

 

レイジングハートと家政婦がそうふざけた談笑している一方、相棒を忘れてきた高町なのはと言うと…

 

(やべぇよ…やべぇよ…なの…何処に落としたんだろう…)

 

「…ん?オイどうしたなのは、何キョロキョロしてんだ?今真面目な話してんだからしっかりしろよな。じゃあ話を戻すぞ」

 

「あ、あはは…ごめんごめん」

 

(相棒を落とすなんて…トイレに行ったときに落としちゃったのかな?とうしよう最悪家政婦さんに泣き付いて探してきてもらおうかな)

 

「だから今後は市民を想定した訓練を…オーイ聞いてんのか」

 

「…あっ!聞いてる聞いてる!うん!」

 

自身が忘れたとは思ってなく何処かに落としたのだと思ってその辺をウロウロ探していたのだ。

 

 

 

 

 

「レイジングハートさんは御主人と長い間付き合ってるんですよね?幼少の御主人ってどんな人でしたか?」

 

『そうですね…大人しい性格ながらも自分の意思ははっきりしている女の子でした。今もそんなには変わってませんが疲れているときはお酒に逃げます』

 

「それであのポン…ごほん、だらしなくなるのですね」

 

『私生活以外はエリートですから…』

 

「オンオフきっちりしているところは褒めるべきなのでしょうがお酒が入ると荒れるのは頂けないんですよね…よし、弁当よし」

 

ホットドッグとサラダが入った弁当箱を藍色の布で包むとレイジングハートを胸に下げる。

 

『マスター以外の人に首からぶら下げられるのは始めてですね』

 

「こちらの方が楽ですからね。それでは行きましょう」

 

部屋を出ると待っていたかのか、額にシワを寄せたシグナムと出会ってしまう。

 

「待っていたぞ家政婦、貴様が出るを何時間待ったとと思っているんだ」

 

「失礼ですが御主人が出たあとに待っていたんですか?何故チャイムを鳴らさないんですか?」

 

「サプライズと思ってな」

 

「馬鹿なんですね」

 

「ふっ、何とでも言うがいい。貴様…私との約束を覚えているか?」

 

「約束?あぁ奢りのですよね」

 

「その約束を今果たそう。付いてこい…食べ放題のうまい飯を喰わせてやろう」

 

(だが行き先はトレーニングルーム…昼時ならギャラリーは少なくて済む。そこで私が奇襲をかけてなし崩し的に決闘に持ち込んであの夜のリベンジを果たすんだ!)

 

「すいません、今からですか?申し訳無いんですがこれから御主人の弁当とデバイスを届けに行くんで…明日とは駄目ですか?」

 

『洗濯物も取り込んでませんしね』

 

弁当箱とレイジングハートを見せる。シグナムは断られる事は無いだろうと思っていたのか間が抜けた顔をした。

 

(明日!?貴様!時と場所を選ばないと言ったのはそっちなんだぞ!?自分が言われると撤回するなぞ男とは思えない…! )

 

「…それにシグナムさん、お怪我をしたばっかりなので病み上がりだと(胃袋的に)キツイのでは…もう少し休まないと…」

 

その台詞を聞くとシグナムははっとする。そして今度は難しい顔をしだす。

 

「シグナムさーん?どうしましたかー?」

 

(…そうか、決闘するなら病み上がりで失った力を取り戻さないとキツイと?相手にすらならないと…これは…まさか…挑発か?)

 

「そんなことはないぞ。私はこれでも何時でも(戦いが)出来る体にしてあるんだぞ。人よりも(身体が)丈夫だからな」

 

「えっ?何時でも(大食い)出来るように(胃が)丈夫なんですか?それはすごいです。じゃあ何時でも(大食い)出来ますね」

 

「…ふっ、褒めるんじゃない」

 

レイジングハートは思った。あぁ、またこの二人は微妙に噛み合っていない会話をしていらっしゃると。

 

「それじゃあ…始めようか。誘って貴様を私流のもてなし(奇襲)してやろうと思ってたが…考えが変わったぞ」

 

「私流のもてなし(手料理)ですか?」

 

『家政婦さん、貴方天然ですか?それともわざと煽ってるんですか?』

 

「ふっ…では…参るぞ!」

 

「えっ」

 

シグナムが待機状態のレヴァンティンを展開して抜き身に振り上げる、対する恵也は丸腰で全く構えていない。

 

(反応できてないッ!殺ったぞッ!!)

 

「覚悟ォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

 

 

「はぁー…結局無かったの。トイレまで探したのに…仕方ない、家政婦さんに泣き付いて探してきて…」

 

「があ"あ"あああああああああ!!?」

 

「おうごら、何のつもりだ?あぁっ?また人様に光り物向けやがった。二度目は許さんぞこのまま締め上げてやる」

 

『きっ、貴様間接技なんて……があ"あ"あ"ああああああああ!!!』

 

『それ以上いけない』

 

レイジングハート探しを断念して帰ってきたなのはの目に飛び込んできたのは自室の前でバリアジャケットを着込んだシグナムが得物のレヴァンティンを床に落とし、左腕を組まれてそのままアームロックを極められた光景であった。

 

「ゆ、ゆるし…お、おれ…折れる…!」

 

「反省したか?」

 

「した!したから早くこの技を解くんだ!右に続いて左はヤバイ!」

 

「仕方ない…しかし三度目は…」

 

そして家政婦はここで気づく、あれ?弁当箱は?そう思って周囲を見ると…少し離れた所に弁当が散乱していた。

 

その時、家政婦の頭から何かがブチキレる音がしたのだ。

 

「…お、おい。解いてくれ…何か強くなってないか…?」

 

「…やる」

 

「…?」

 

「 へ し 折 っ て や る 」

 

ギリギリギリギリ…ボキンッ!

 

「」

 

「あっ…あー…」

 

「御主人…すいません…弁当箱を…落としました…っ!」

 

シグナムの左腕を綺麗に折ってその場にどさっと置いて真っ先になのはに謝る。シグナムはそのまま動かない、どうやら落ちたようだ。

 

「い、いいよそんなの。どれ…あぁホットドッグはまだ食べられるよ」

 

「すいません…次からは落とさないようにします…!」

 

その謝罪を聞いたレイジングハートと高町なのははこう思った、あぁ、この人の前では食べ物を落とさないようにしなきゃならないと…と。

 

 

 

そしてシグナムはそのまま医務室へと運ばれ、左腕はスカリエッティにやられたとシャマルに報告をしたのであった。




私は365日なのはさんの家政婦のようですの最初の投稿が10000UA…!?ありがとうごさいます!!


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8 私は買い物は戦争、欲しければ勝ち取るのみと知った

「…良いですか皆さん、中に入ったらくれぐれも気を緩めないで下さいね」

 

「「はいっ!」」

 

「恵也!頑張ろうね!」

 

「…」

 

こんにちは、私はティアナ・ランスター。私は今大事な休暇を潰してエリオとキャロ、現相棒のスバルと共にある施設の前にいる。面々はまるで戦場に行く兵士たちみたいに気を引き締めていた。

 

「では参りましょう…ここから先は修羅の国、人のままで入って来てしまったら生きてはいけない世界なのです」

 

「そ、そんな所なんですか…っ!」

 

「エリオ君、無理はしないでね」

 

「…わかってる、でも僕だって男なんだ…っ!」

 

「…」

 

「恵也!行こう!」

 

「…良し、それじゃあ皆…行くぞッ!」

 

こうしてスターズ、ライトニング分隊のフォワード勢+家政婦の混成部隊はとある施設の扉を勢いよく開いたのであった…!

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、ティッシュペーパー御一人様三つまでですよー」

 

「ありがとうございます。あっ、五人ですから15個下さい」

 

「おや兄さんまた来たんかい。今日は子供と嬢ちゃん連れてかい?これからもご贔屓にねー」

 

「はーい、ありがとうございます優しいおじさん」

 

「…スバル」

 

「何?」

 

「帰っても良い?」

 

「駄目」

 

私は頭を抱えた。事の発端は昨日の事であった…相棒のスバルが「明日大事な用があるの、どうしてもティアの力が必要だから力を貸して…お願い」なんて神妙な顔付きで言うもんだから「良いわ、でも今回のは貸しよ?」なんてカッコ付けて言ってしまった…恥ずかしい…時を戻せるならあの時キメ顔で言った私をぶん殴りたい。どうしてあんな安請け合いしてしまったのだろう。

 

「…スバル、これのどこが大事な用よ。ただのスーパーの買い物じゃない」

 

そう、私たちは大型スーパー店にいるのだ。六課から歩いて15分と近い。店内は他のスーパーと比べてもなにも変わらない普通のスーパーである。

 

「ティア、買い物を甘く見ちゃいけないんだよ?時には迷子になるしたまに死者が出るんだよ?スーパーは戦場なんだよ?」

 

「あんた寝惚けてるの?」

 

「家政婦さんっ!玉子!玉子何処ですか!?」

 

「あちらですがもう少し待ってくださいねー」

 

「フリード、お店の商品食べちゃ駄目だからね?」

 

ライトニング隊の子達はすっかり初めてのお使い気分だ。商品を手にとって四苦八苦する姿を見ると何だか微笑ましい気分になる。

 

「全く…まぁたまにはこういうのも悪くないかしら?」

 

その時であった…ピンポンパンポーンと軽い音が店内放送で鳴る。その音と共にあんなに賑やかになっていた店内が静まり返っていた。家政婦を見ると険しい顔つきとなって放送に耳を傾けていた。

 

『只今から安売りセールを始めます。只今魚介売り場で鮭が一匹500円の販売となっております。早い者勝ちなので奮って御参加して下さい』

 

「えっ、鮭が500円?一匹で?なにそれ…」

 

「行くぞてめぇら!!付いていけない奴はバックアップだ!エリオ!スバル!行くぞォ!」

 

「はいっ!」

 

「応っ!」

 

「えっ、えっ?」

 

家政婦は二人を連れて魚介売り場へと走り魚介売り場へと飛び込む!魚介売り場は主婦のオバチャン達がひしめき合ってセール品である鮭を奪い合っていたのだ!

 

「あんた!そこをお退き!」

 

「うっせぇ!!若者に譲りやがれこの野郎が!!」

 

「まぁー!何て口の悪い男ザマス!このピチピチの鮭は私のザマス!アンタみたいな男には渡さないザマスよ!」

 

「へっ!今時ピチピチなんざ死語なんだよ!その鮭貰いぃ!」

 

「家政婦さん!家政婦何処ですか!?家政婦さーん!」

 

「エリオ!危ないと思ったら引いて!怪我するよ!」

 

「なに…これ…」

 

ピチピチと丸々太った鮭を巡って大の大人たちが争っている…あっ、今眼鏡のお爺ちゃんが吹き飛ばされた。

 

「…バーゲンセール、それは…人を狂わせ安売りの為に他者を蹴落とす闇のゲーム…怖い…怖いよ…なんで人は他より安い物の為に戦うの…?」

 

「キャロ、私は急に語りだしたあんたが一番怖いわ…!」

 

少し時間が経つと人混みは解消される…どうやら売り切れたらしい。すると家政婦は鮭を担いでこちらへ来た。エリオとスバルは戦果を得られなかったようだ。

 

「ごめーん、オバチャンが邪魔で取られちゃった…」

 

「僕も圧力に負けました…凄いですね…」

 

「気にすることはありません。何事も経験、ルーキーこそ負けたときに胸を張るんです…さぁ、次行きましょう」

 

「お荷物は私が持ちます!」

 

「キャロ、任せましたよ」

 

「はいっ!」

 

まだ少しピチピチいっている鮭を渡す。何故まだ生きているのか?鮮度か?鮮度が良いからか?もう訳がわからない。と言うかなまじ生きてる分可愛そうと言う気すら起きてくる。

 

「次はティアも参加しようね!」

 

「えぇ…嫌よ…」

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔よこの青臭い小娘が!それは私のキャベツよ!私の邪魔しないでチョーダイ!」

 

「ぐぐぐ…っ!」

 

野菜売り場、ここでは今キャベツの大安売りセールを開催され半ば巻き込まれる形でキャベツの争奪戦に巻き込まれた。今私はこのパンチパーマのオバチャンとキャベツを取り合っていたのであった。

 

「おぉ…りゃっ!」

 

「この小娘がぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

奪われそうなキャベツを取り返して真っ先にその場を離れる。おかしい、私もそれなりに鍛えて一般市民には負けない身体なのにオバチャンは皆私と同等、それ以上の力で競り合ってくる。

 

「ティアさん凄い!初めてでオバチャンに勝つなんて!才能あります!」

 

「キャロ…あんた…はぁ…はぁ…と言うか…そんな才能要らないわよ…はぁ…はぁ…」

 

「やったぞ!ついにキャベツを取ったぞ!クアットロ早く私を転送…」

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」

 

「うわぁああああああ!!クアットロ助けてくれぇえええええええ!!オバチャンがぁ!オバチャンがぁぁ!!」

 

何か白衣を着た男がオバチャンに襲われてる…あの人何処かで見たような…あっ、盗られた。

 

「なまっちょろいわぁ!!そんなものでこの私から逃れられると思ったかァーー?このマヌケがーーッ!!」

 

「うぅぅ…返してくれ…返してくれたまえよぉ…それは最後の…最後の…!」

 

「はっ!貴様のようなもやし野郎じゃあこのオバチャンの敵じゃないわァーーッ!」

 

「目当ての商品を取っても安心できない…ここは…ここは地獄…っ!だけどこの買い物カゴは守らなきゃ!」

 

「キャロー?貴女まで悪ノリしないで?スーパーってこういう世紀末なところだっけ?ねぇ?私の常識がおかしいの?」

 

そうこうしているうちに三人が帰ってくる。今度は家政婦とスバルば一つずつキャベツを持って帰ってきた。エリオに関してはまたしても戦果無しであった。

 

「恵也!見て!キャベツ!」

 

「おぉー、取れたか。やったじゃんスバル」

 

「えっへん!もっと誉めても良いんだよ!!」

 

「僕はまた獲れませんでした…駄目なのかな僕…」

 

「次があります…良いかエリオ、男はここ一番って所で結果を出すんだ。そうすりゃ名誉なんて挽回できるしかっこいいと思う…この経験はいつか別の機会に活かせるさ」

 

「…はいっ!ありがとうございます!」

 

「家政婦さーん?あんまりエリオに変なこと教えないでくれない?…でっ、次は何なの?もう終わりなら良いのだけれど」

 

「えぇ、次は…」

 

『御客様にお知らせです。只今卵6パックがなんと数量限定の50%OFFで販売しております。奮って御参加して下さい』

 

「…お前らここで待ってろ」

 

「えっ、何を…」

 

手に持っているキャベツを渡してそう言うと彼は懐から銀の装飾の手袋を付ける。そして…家政婦間藤恵也は走りだした。そしてその後に続くかのようにオバチャン達も次々と走り出した。彼は道を邪魔するオバチャンを避け、乗り越え、突き飛ばしながらも卵の元へ向かった。

 

時折オバチャンが立ち塞がって構えを取り、走る家政婦に殴りかかるも恵也はそれを受けて流し、その顔に蹴りを入れて近場のお菓子コーナーに突っ込ませる。

 

「邪魔だオラァ!!死にてぇ奴だけかかってこいッ!!」

 

そう、食品売り場は一つの店内放送によって一気に血を池で洗う戦場へと変貌したのだ!

 

「恵也!頑張って!後ろ!後ろ!」

 

「家政婦さん!もう少し!もう少しです!」

 

「ち、ちょっと!?暴動が起きてるわよ!?止めなくて良いの!?思いっきり傷害よ!?」

 

「このスーパーでは全ての事が黙認されるんです…魔法さえ使わなきゃ警備員さんに注意されない…だからメインの玉子を手に入れるためなら…合法なんです…っ!」

 

「ごめん、頭痛くなってきたわ」

 

…数分後、ボロボロになりながらも卵6パックを5個抱えた家政婦は晴れやかな顔をして帰ってきた。

 

「はぁー…終わりました。さっ、帰りましょう。今日すき焼きやろうと思ってるんですが皆様どうですか?」

 

暴動は次第に収まり、完売と同時にそれまでの興奮が嘘のように皆それぞれに散っていった。なんなんだこのオンオフの差は…

 

「いくいく!ティアは?」

 

「えっ、私は…」

 

「行きましょうよティアさん!せっかく一緒に行動した仲なんですから!」

 

「そうです!もうこうなったら一蓮托生です!」

 

「アンタ達ずいぶん積極的ね…はぁ。良いわ、行くわよ」

 

「決まりですね、それじゃ帰りましょう」

 

家政婦の買い物事情を垣間見たティアナはスーパーについての認識を改め、そして二度と彼の買い物に着いていきたくないと心から思ったのであった。

 

そしてすき焼きは美味しく皆で頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

「オバチャン怖いオバチャン怖いオバチャン怖いオバチャン怖いオバチャン怖いオバチャン怖いオバチャン怖い…」ガタガタブルブル

 

「…クアットロ、どうしてドクターは部屋の隅で体育座りでブツブツ呟いているんだ?」

 

「あり得ない、あんな身体能力…そもそも魔力で強化してる身体なのにどうしてあんなに簡単に…」

 

「あー…チンクちゃん?あまり気にしないでね?ドクター今日は負けちゃったから拗ねてるの」

 

「負けた?何にだ?」

 

「…ドクターの名誉のためにそれだけは伏せておくわ」

 

時を同じく、セールで負けたテロリストことジェイル・スカリエッティは一人むせび泣いていたのであった。

 

 



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9 私は初めてフェイトさんと出逢うようです+【オマケ話】

遅れましたがあけましておめでとうございます!これからもよろしくお願いします!


少女は昔とある女の子に助けられた。

 

彼女が居なければ自分は存在せず、また執務官という職にはならなかっただろう。そして二人の子供と出会うことすら無かったであろう…

 

女の子が墜落した日、少女は彼女が苦しんでいることをただ眺めていた…傍観しか出来なかった。

 

少女と女の子は同室であったが…女の子が堕落し自身の居場所が無くなってしまったために…その場を去ってしまった。本来ならそれを正すのが女の子の役割であったはずであったのに…他人に任せてしまった。

 

女の子は酷く、後悔をしていた。

 

 

 

 

 

 

「…38,4℃、見事に体調崩してますね御主人」

 

「にゃははは…身体には自信あったのになー」

 

「今日はお仕事はお休みですね。はやてさんの方には私から連絡しますので御主人は体調の快復に専念してくださいね」

 

「はーい…」

 

熱を出して寝込んでいる主人を看病しながら通常業務をする。どうも皆さんこんにちわ、なのはさんの家政婦こと間藤恵也です。私は今業務である家事をしながら急な主人の看病をしています。主人の体調不良は家政婦である自身のせいである、だからここへ来たときに熱を出しているなのはを見たときは開口一番に謝った。

 

「あ、あのー…そんなにしょげないで?別にこうなったのは私のせいだから」

 

「…そうですか」

 

風邪のせいか何時もより大人しげな印象を受ける。やはり気を使われてる…家政婦失格だ。

 

『…そもそもなのはが酒瓶をイッキ飲みしながら運動と言ってベットの上で全裸で「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」なんて一晩中やってたのが悪いんですけど』

 

「しぃー!黙ってればバレないの!」

 

なんかひそひそ話がしてあまり良く聞き取れないけれどきっと重要なことを話しているに違いない。

 

その時であった、来客を報せるベルが鳴る。

 

「私が出るので御主人は寝ててください」

 

「うん、分かったの」

 

来客を招くため、家政婦はなのはを一旦ベットルームに置いてドアを開ける。まぁ管理局員の人達なら大体顔見知りだから問題は…

 

「…あれ?えー…っと…おはようございます…?」

 

「あっはい、おはようございます」

 

来客は女性の局員であった。整った顔立ちに綺麗に真っ直ぐな金髪ロング、そして男が見ればグレートだぜと言ってしまうほどのダイナマイトボディ。その女性は花束と菓子折りを持って戸惑った表情を見せている。

 

「えーっと…部屋間違えましたか?私高町なのはさんのお部屋に行こうと思ったのですが…」

 

「間違えてませんよ、どうぞこちらに。今寝てますのでお茶をどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

他人行儀な二人であったが心境は同じであった…

 

((…誰だこの人))

 

 

 

 

 

 

 

「…珈琲と紅茶、どちらにしますか?」

 

「珈琲でお願いします」

 

リビングに通された金髪の女性は辺りを見渡していた。端から見ると凄く不審に見える。

 

(はぁー、私が居た頃に比べて随分綺麗になったなぁ…と言うことはあの人がはやてが言っていた家政婦さんかな?家政婦さんなのにどうして燕尾服着てるんだろ…)

 

今度はこちらを見ている。なんだこの人、怖い、正直そんな動物園のパンダを見ているような眼差しで見るのは止めて欲しい。

 

(わぁー!専用のサーバーがある!なのはなら絶対に買わないのに!お陰で私は酒とツマミの臭いに囲まれて朝食を取らざるを得なかったのに!悲しいなぁ!)

 

あれか?まさか調査員か?家政婦の素行を調べるためにババァが寄越した家政婦調査員か?だから一挙動をあんな食い入るように見てるのか?

 

珈琲があがり客人に差し出す。

 

「どうぞ、お茶請けのお菓子は生憎切らしておりまして…」

 

「いえ、お構い無く…」

 

(あぁ、美味しい…しかもアルコールと塩辛のキツい臭いがしない環境の中でこんな美味しい珈琲…ちょっと泣きそう)

 

今度は目に涙を貯めている。ヤバイ、減点か?来客に珈琲のお供としてお菓子をやれない家政婦は減点対象か?だって昨日御主人が箱ごと摘まみ食いしてたのが悪い。

 

「所で、貴女の名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「あ、あぁ。そうですよね。お互い初対面ですから名前を…私の名前はフェイト・テスタロッサ・ハラオウン 階級は一尉。ここではライトニング隊の指揮を執っています」

 

「本来の所属は?」

 

「時空管理局本局執務官です」

 

「なるほど…」

 

(執務官ってなんだろ、何だが凄い人に聞こえるぞ…あーそうだそうだ。スバルが確か「ティアは執務官になりたいんだよ!えっ?分からない?まぁ…分かりやすく言うと刑事みたいなものだよ!」って言ってたな…あれ?これ俺粗相したら消される?ちょっと洒落にならんよこれは)

 

「そちらのご職業は…あぁ家政婦さんでしたね。お名前は?」

 

「間藤恵也です。高町なのはさんの家政婦をさせていただいております」

 

「…部屋は貴方が?」

 

「えぇ、そうですよ」

 

「なるほど…そっかぁ…そうだったんだぁ…」

 

今度は俯かれて震え声で物思いに更けている。クビ?ねぇ俺クビ?ちょっと待ってまだ御主人の更正が済んでないからクビだけは…クビだけは許して!

 

「…なのはは?今どこに?」

 

本当にヤバイ、今この状況で主人が風邪を引いて寝込んでいるって言ってしまったら確実にクビにされる。何とか…何とか…上手い言い訳を…そ、素数を数え…素数を数えて落ち着こ…

 

「私、なのはが病に倒れたって聞いて御見舞いに来たんです」

 

「彼方の部屋で寝ています」

 

はい終わった。俺の家政婦ライフ終わったよ。

 

「そうですか…では行ってきます」

 

そう言うとフェイトさんは御主人の部屋へと行ってしまう。荷造りしとくべきか?あぁするほどの荷物も無かったよははは(白眼)

 

 

 

 

 

 

 

病に伏せた親友、高町なのはは思ったより元気そうな顔でベットに座り込んでいた。

 

「…なのは!」

 

「フェイトちゃん?御見舞いに来てくれたんだ…」

 

「大丈夫?具合は?」

 

「お世話をしてくれる人がいるから…大部良くなったよ?」

 

「…レイジングハート?原因は?」

 

『保護者の目を盗んで飲酒、全裸で一晩を明かしたのが原因かと』

 

フェイトは驚きつつもやっぱりなと思いなのはの頬をつねって横に引っ張る。

 

「…なーのーはー?」

 

「ひゃはははは!?ごめんははひ!ごめんははひー!」

 

「…そっか、目を盗んでってことはちゃんとした生活送ってるんだ…そっか…安心した」

 

「フェイトちゃん…?」

 

「私じゃなのはをここまでマトモに出来なかったもん、凄いなぁ彼。どんな魔法を使ったの?」

 

『真心とほんの少しのお話…でしょうか』

 

フェイトはそれを聞くとそっかそっかと納得するかのように頷くとベットに座っているなのはに問いかけてみる。

 

「そっか…なのは?」

 

「…なぁに?」

 

「あの日、なのはが墜ちた時…私は何もしてあげられなかった。ただなのはが自力で復帰するのを黙ってみてるしか無かった…」

 

「…」

 

「その結果酒に溺れて私生活は乱れ…本来の貴女とかけ離れてしまった」

 

「…」

 

「…なのは?今…幸せ?」

 

その問いになのはは少し考え…答えた。

 

「…どうかな?好きだったお酒も控えさせられて鬱憤は貯まってるけど…」

 

「…けど?」

 

「今は前よりは楽しいかな、私のことを少なからず見てくれて正面から叱ってくれる人がいるから」

 

「…そっか」

 

それを聞いたフェイトは優しく微笑み、それを返すようになのはも微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

しばらくするとフェイトは部屋を出て家政婦を探す。その人はリビングで電話機で通話をしていた。

 

「…えぇ、そう言うわけで今日一日お休みを…えぇ。訓練メニューの方は送ってありますので…えぇ。宜しくお願いします」

 

魔法が数えるほどしか使えない。自身よりも後から来たのに簡単に、自身では正すことの出来なかった親友を元に戻してみせた。

 

「あぁフェイトさん、御見舞いはもう?でしたら…」

 

フェイトは家政婦の手を握り締めて軽く俯く。

 

「…フェイトさん?」

 

「…ありがとう」

 

「えっ?」

 

フェイトは涙を流した顔をこちらに向け、泣きながら感謝の意を口にする。

 

「私に出来なかったことを…貴方がしてくれて…本当にありがとう…」

 

六課には家政婦が知らない事情があるみたいだ。最初は身内部隊、そう言う印象であったが込み入った事情もあるのかもしれない…だがしかし今はまず、目の前の女性を宥めよう。これから仕事なのに泣いたまま行かせるわけにはいかない。

 

「…いえ、それが家政婦のお仕事ですから」

 

家政婦業は、とても忙しいものだ。

 

 

 

 

□◆□◆□

 

【オマケ話】

 

恵也「家政婦の恵也とぉー!」

 

なのは「高町なのはのぉー!」

 

恵也 なのは「コメント返信的な何かー!(なのー!)」

 

なのは「いや、コメント返信的なって何かな?返信ならやってるでしょ?」

 

恵也「ここはアレだ。感想欄に寄せられたコメントを面白おかしく話していくっていう所だ。後遅れながらあけましておめでとうございます」

 

なのは「面白おかしくって…ラジオみたくある程度選んで話すの?」

 

恵也「その通り!ここでは本編関係無いから俺の方もオフの口調だ!だからそこは許してくれな御主人!」

 

なのは「そこは御主人呼びなんだね…えーそれじゃ始めるよ?まずひとつ目は…」

 

 

日立@妄想厨さん

 

設定は面白いです。

執事さんのミステリアスさと仕事に対する執念は見ていて惹かれますね。

ただまぁ、あそこまで仕事に徹底してるのに依頼主のなのはにため口はどうかなと。個人的に丁寧な口調で毒を吐くのだったら自然に見えます。

 

 

なのは「記念すべき一つ目の感想さんだね。うーんこれについては?私、御主人様だよ?敬うべきじゃない?」

 

恵也「御主人は神様、でも御主人が筋通ってない事したら正すのも家政婦のやるべき事じゃね?後自分の都合の良いように解釈しないで欲しいぞ御主人。ありがたいご指摘ありがとうございます。作品の方も拝見させて頂いております」

 

なのは「よーしそれじゃ次!」

 

恵也「速くねぇか!?」

 

なのは「こう言うのはテンポが大事だと思うの!」

 

 

天枷 鎖月さん

すっげぇ面白いです!!

連載でやってほしいくらいです!

 

家政婦いいぞ、もっとやれ

 

 

恵也「連…載…?」

 

なのは「どうしたの?と言うか思ったんだけど随分投稿してるのにまだ短編って付いてるんだよね、なんで?」

 

恵也「…短編から連載、切り替えが…分からない…」

 

なのは「新しく投稿し直せば良いじゃん」

 

恵也「それすると今度は二つ掛け持ちでやらなきゃならないだろうが!失踪するかもしれないわ!」

 

なのは「えー…意気地無し」

 

恵也「ぐうの音もでない…本当にどうするかな…次の感想どうぞ」

 

 

玩具さん

自分の名誉のためにいくら犯罪者とは言え平然の濡れ衣着せるとか汚いなさすが魔王汚い

 

どうでもいいけどスカさんの認識悪すぎワロタ

 

 

恵也「テロリストだからって濡れ衣は本当に無いわ」

 

なのは「だっ、だって!咄嗟に出ちゃったんだよ!?仕方ないよね!?」

 

恵也「咄嗟でメディアにあんなこと吹き込むのか御主人は…怖いなぁ酒禁止にしよ」

 

なのは「ご、ごめんなさーい!!」

 

恵也「…こんなもんか、ちょっと少ないけどコメント返しって憧れるものもあるよな」

 

なのは「そんなものなの?」

 

恵也「そう言うものだ。またやるかもなぁ…今回少ないけどコメント返しだけの話をこう言う形式でやってもいいかもしれない」

 

なのは「ニコ○コとかYouTu○eとかじゃないから見てる側はつまらないかもしれないよ?」

 

恵也「その時はその時、それでは御主人?そろそろお別れの時間です」

 

なのは「あっ、戻った…それじゃまた機会があれば!進行は私高町なのはと!」

 

恵也「家政婦がお送りしました」

 



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10 私は家政婦と死合いがしたい

連載になりました!やべぇ手が震えてきた!頑張ろう!


「家政婦、ちょっと一緒にトレーニングを…」

 

「お手伝いさーん?ちょっと来てくれへんかー?」

 

「あー…」

 

「…行ってこい」

 

「ありがとうございます。行ってきます。はやてさんどうかしましたか?後私は家政婦です」

 

「おんなじやんか。あのな?また食堂でコックさんして欲しいんやけど…」

 

「またですか」

 

「…」

 

皆さんお久しぶり、烈火の将で有名なシグナムだ。私はあの情熱的な夜から家政婦に猛烈なアタックを仕掛けているのだが一向に思うように行かない。どうしてだろうか?しかも最近誘う度に若干嫌な顔をされてしまう。本当に何故なのだろうか。

 

あれからヴィータやテスタロッサと模擬戦をしても私の心は以前より歓びを感じられない、力や魔法の腕はあちらが上だと言うのにだ。

 

恐らくあのときの…彼の殺気のせいだろう、あれは通常の兵士のそれではなく…幾多の戦場を駆け巡ったベルカの…戦人の眼であった。もう一度あの時の刺激が欲しい…欲しい…

 

「と言うわけで何とかならないのか高町教導官」

 

「どうして私に相談するのかな…?」

 

そう言うわけで家政婦の主人に相談しにきた。あわよくばこっちから家政婦を借り受けて一日中殺し合えれば…!

 

「と言うわけで家政婦を貸してくれないか」

 

「それはちょっと無理かな」

 

「何故だ貴様!事と次第によっては許さないぞ高町ィ!!」

 

「わっ!わっ!シグナムさん落ち着いて!私はそう言う権限無いの!私が勝手にクビにさせないために雇用主ははやてちゃんってなってるの!だから私の一存で決められないよ!」

 

そうだったのか、なるほどだから貸せないしクビに出来ないのか。私は掴みかかった高町の襟首を離して平静を保つ。

 

「…なるほど分かった、主かぁ…貸してくれと言っても無駄だな。理由を聞かれてしまうしそもそもダメ人間の高町を差し置いて私に貸し出すとは思えない」

 

「本人の前でダメ人間って…と言うか、一回本気で食事に誘ったて見たらどうかな?」

 

「誘ったさ、しかし軽く流されてしまうんだ」

 

「すぐにトレーニングルームに連れ込もうとするから悪いんだよ。家政婦さんはそう言う邪心には敏感なんだから…例えばデートと偽って会って速効ラブホテルに連れ込もうとする男性がいたらどうする?」

 

「打ち首物だな」

 

「そう言うことなの」

 

「よし分かった!それじゃあ早速行ってくる!高町!今日は自炊するんだな!」

 

そう言うと走り出して家政婦に食事の誘いを言ったのだ。結果は高級レストランでの外食と言う手痛い結果になってしまったが二つ返事で了承した。

 

そしてその日の夜、雰囲気の良いレストランで家政婦を待つ。そして彼のグラスには度数の高いアルコール…酔ったついでに適当なホテルに連れ込んでそこでお付きあい(物理)を決め込んでやる!!

 

「こんにちは、待ちましたか?」

 

「いや、全く待っては…?」

 

「いやー!シグナムの奢りでこんな良いところで飯なんて着いてるなー!」

 

「えっ?主…?えっ?」

 

「急やけど私もええかな?」

 

「は、はいドウゾ…」

 

「サンキューなシグナム!」

 

どう言うことだ、何故主はやてがここに?一体これは…!

 

「すいません、シグナムさんと御食事に行くと告げたら私も行くと駄々を捏ねられてしまいまして…」

 

「なんでや!そんな迷惑そうな顔しないでお手伝いさーん!私らもう友達やろ?」

 

「家政婦です」

 

「は、ははは…喜んで貰えて何より…です…」

 

 

 

 

 

 

 

「…で?駄目だったの?」

 

「主がいる中でやれるわけ無いだろ!いい加減にしろ!お陰でスカンピンになってしまったぞ!!」

 

(…まぁはやてちゃんも家政婦さん壊されると思ったから行ったんだろうけど…)

 

「高町教導官!何か妙案がないか!?」

 

「う、うーん…不意打ちで行けば?」

 

「不意打ちなんて騎士のやることじゃない!私は正面から堂々と死合いをしたいんだ!!」

 

「そ、そんなことを言われても…」

 

なのは困った表情を浮かべて腕を組んでいる。御主人である高町なのはならばと思ったが駄目なようだ。やる気を感じられない、私を奴と戦わせようとする意思を感じられない。

 

「…また来る」

 

そう言って私は高町の部屋を出る。

 

 

□◆□◆□

 

「最近げんなりとしてるようで…どうしましたか?」

 

その日の晩、家政婦の間藤恵也は主人であるなのはが元気が無いのを見ると心配になったのか声をかける。するとなのはは気だるそうに語り出すのだ。

 

「…シグナムさんがね、家政婦さんと試合がしたいようなんだよ。それで年中私のところに来てはどうしようかと相談をしによく来るの…」

 

「…あぁー…なるほど。しかし私とシグナムさんではスペックにも差があるからマトモな試合にならないでしょう?」

 

「高ランク魔導師二人を沈めるだけの技量があってよく言うの」

 

「いやぁー…正面から行ったら相手にもならな…」

 

否定的な意見を遮るかのようになのはは言葉を重ねる。最初に言っておくがこの時彼女は眠くてあくびを我慢していたのだ。

 

「私、このままじゃストレスで倒れちゃうよ…」

 

目に涙を貯めて言った発言をどう受け取ったのか、恵也は表情が険しくなる。

 

(…あ、あれ?)

 

「…シグナムさんに伝えて下さいませんか?」

 

「えっ?何を…?」

 

「調子悪いとか言われるのは嫌万全の態勢取れたら呼んでくださいね…と」

 

(あっ、火が付いちゃった…?)

 

その後、シグナムと連絡を取って見て伝言を伝えると大学に合格した受験生のように喜んでいた。これ私のせい?

 

『なのは、貴女のせいですよ』

 

…しーらないっ!

 

 

 

 

 

 

シグナムVS間藤恵也の模擬戦と言う名の果たし合いが決まって数日、その舞台は用意された。

 

舞台は廃墟と化した10階のビル、ここは実戦を想定する為に管理局が訓練の一環の為に使っている廃ビルであった。シグナムは屋上でレヴァンティンを地に差して相手を待っている。

 

【シグナム?くれぐれも怪我させないでね?相手は…】

 

「分かってる。まぁそこで見ていろ。それよりも彼に武器は?」

 

【一応武装は貸したけど…】

 

「それでいい。良いな?お互いのどちらかが降参、または倒れない限り止めるな。これは訓練だ、訓練なんだ」

 

【え、えぇ…】

 

念話を切ると男は目の前に居た。彼は何時もと同じ燕尾服、腰には刀型のデバイス、手に嵌めているのは殴り易いよう改良された白のグローブ…他にも何か小道具を仕込んでいるだろう。

 

「この前はご馳走さまでした」

 

「…いや、それは構わない。人払いも済んでいる…貴様、専用のデバイスは?見たところ支給品しかないが」

 

「生憎と無いのです」

 

刀を抜いて正中に構える。シグナムもそれに習うかのようにレヴァンティンを構える。

 

「…行くぞ」

 

「はい、来やがれ戦闘狂いが」

 

シグナムは一歩思いきり踏み込むと家政婦へと一気に距離を詰めレヴァンティンを振るう。その振りは目に留まらないほど速かったが恵也は反応して、攻撃を全て防ぎ鍔競り合う!

 

「刀を折る気でいたが…なるほど、刀に強化をかけているか…だがそれではガス欠が先にくるだろう?」

 

「その前にお前掃除すれば解決するんだよ。気を使ってるならさっさと降参しろ、御主人の迷惑だ」

 

「そうか…しかしこんな楽しいこと止められるか」

 

「じゃあブチのめして寝かすか」

 

「子守唄を唄ってくれないか?」

 

「拳骨で十分だろ」

 

鍔競っていた刀を離すとサイドステップで瞬時にシグナムの左側面に回り込んでテンプルに拳を放つ!

 

「クッ!」

 

シグナムはそれを左腕でガードする。こちらはバリアジャケットを着ていると言うのにも関わらず拳が重い、まるでバリアジャケットを貫通しているかのようである。

 

「ハァッ!!」

 

「うぉっ!?」

 

脚を上げて前蹴りで家政婦から距離を開けた。恵也は防御こそしたが軽く飛ばされてしまいだいぶ距離を離されてしまう。

 

「…先程防いだ左手がまだ痺れる…それだけの技量を持って魔力が雀の涙とは同情する。もしお前が私と同じくらいであったのならば私を凌駕する魔導師になっていただろう」

 

「同情するなら倒れろ」

 

恵也は両手を掲げファイティングポーズを、シグナムはレヴァンティンを構えると…再びぶつかり合った!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれー!やっちゃえ恵也ー!!」

 

「家政婦さん頑張って下さい!押し込めば勝てます!」

 

「いけいけー!!」

 

「…」

 

「あ、あのーなのはさん?どうしてそんな青ざめた顔を…まさか今回仕掛けたのは…」

 

「黙ってティアナ、黙らないとディバインバスターだよ」

 

「えぇ…」

 

上空では一台のヘリが見える、ヘリには六課の主要メンバーが勢揃いで戦いを観戦していた。戦いに驚いている者や応援する者、結果的にこの事態を引き起こしてしまって頭を抱える者と多様だ。勿論シャマルは何時でも治療出来るようにスタンバイしている。

 

「お手伝いさん随分動きが良いなぁ。なんかやってたり?」

 

「あっ、はい!魔法が身体強化が得意と言うことで格闘技を少々やっていたと聞いています!家政婦の必須技能だそうです!」

 

「SPか何か?」

 

「…あれ?」

 

キャロは少し引っ掛かった。それだけだろうか?たしか前に彼は話の中で何か言っていたような…

 

「…あっ!」

 

そして、去り際に聞いた彼の台詞を思い出す。たしかあれは最初に家政婦間藤恵也と初めて出合ったときだ…!

 

 

 

 

 

「フッ!」

 

右の袖口に仕込んだナイフ型のデバイスを瞬時に取り出すと急所である首筋に振るうがレヴァンティンで弾き飛ばされ、ビルの外に投げ出される。

 

「そこだ!レヴァンティン!」

 

シグナムはカートリッジをリロードして渾身の力でレヴァンティンを振るう!

 

「クッ!!」

 

恵也は拾った自身の借りた刀型デバイスでそれを受けるが軽く吹き飛ばされて柵に叩き付けられた!デバイスは先の衝撃で只の鉄屑と化していた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

非殺傷のためか大した外傷はない、だが所々打ち込みを貰っている為にボロボロであった。持ち込んだ武装は最早無い。

 

「ここまでか家政婦!そうであれば降伏しろ!」

 

シグナムはそうは言うがシグナム自身も何度も良いのを貰っている為身体中青アザだらけであり、数分前には肋骨を鉤突きで砕かれたのだ。

 

(だが…だが勝てる…!)

 

シグナムはこれまでの二回の戦いによって分かったことがある。間藤恵也は魔力を身体強化、触れた物を固く強化出来る。物については一種のバリアジャケットのように周りをコーティングし攻撃、だから箒だろうがベットだろうが武器のように扱える。

 

しかし今回それは無い。今回戦場に選んだのはビルの屋上、武器に出来る物は一切無いのだ。仮に床をぶち抜いてそれを武器にしようともその隙に切り捨てる、だから彼が今使えるのは自前の体術のみなのだ。シグナムはジリジリと恵也に歩み寄ってレヴァンティンを差し向ける。

 

「だがこれで詰みだ!これで最後…」

 

「…上を見ろ」

 

恵也は空を指す、シグナムはちらと上を見ると…そこには黒い空洞が開いておりタンスや車、ガレキ等が浮いている。その空洞は丁度屋上と同じ大きさでその中ではタンスや車、ガレキが今にも落ちてきそうであった。

 

(召喚魔法!?まさかあれ全部落とす気か!?)

 

家政婦はニンマリと笑って口調穏やかに話し出す。

 

「私にはキャロさんのような高度な召喚は出来ません出来ても精々物を出し入れする程度…でもこんなのでも逆さに振るって落とすくらいは出来ます。もうじき洗濯物が乾く時間なので失礼しますね」

 

そう言うと恵也は柵を乗り越えて10階から飛び降り…瞬間、宙に浮いていたタンスや車等は真っ逆さまに雨のように落ちていった!

 

「うぉっ!?逃げるか!逃げるのか!おのれ!おのれ家政婦ゥウウウウウウウウウウウウウウ!!だが私は魔導師!このくらい簡単に凌ぐ!」

 

雨のように落ちてくる物を一掃する力は今のシグナムにはない、シグナムも恵也に習うように柵を飛び越えて飛ぶ。だがシグナムは飛べるため落ちたりはしない。故にそのまま真横に飛ぶ…

 

 

 

 

 

そのシグナムを、真下で待っていた恵也は掴んだ。

 

「…何っ!?」

 

「飛び降りたと思ったか?思ったろ馬鹿が、降りるフリして真下でぶら下がって待ってたんだよ。空から降ってくるゴミを一掃するかと思ったがお前ボロボロだもんな、余裕ないもんな」

 

足から掴んだ恵也はそのまま魔力で飛んでいるシグナムの背中に引っ付いて首に腕を廻して締めた。

 

「グゥ…かはっ…!」

 

「そのまま落ちてろ…!」

 

遊びは無い。反撃を貰う前にと恵也は残りの魔力を身体の強化に回し、シグナムを落としに掛かる。

 

(い、意識が…!上の召喚魔法はフェイク…本命は…これか…!)

 

もがけばもがくほど絞まっていくシグナムがその後覚えているのは、下に落ちてくるような景色だけであった。

 

 

□◆□◆□

 

 

「…知らない天井だ」

 

「むしろ知ってる天井の方が少ないだろ」

 

次に起きた時、そこはシャマル先生が運営している医務室であった。そしてその横のベットには片足を釣り上げている家政婦の間藤恵也が居た。彼はこちらを向いて不機嫌そうな顔をしていた。

 

「…ゴホンッ。あの後二人とも落ちてしまいまして…貴女は眠り、私はガス欠になり…勝負はドローです」

 

「そうか…」

 

「はぁ、怪我自体はすぐ治るものらしいので安静にと言うことです」

 

「そうか…これでまたお前と殺し会えるんだな」

 

「そうですね…んっ?」

 

意図してない発言に恵也は少し驚く。

 

「私は分かったんだ。お前との死合いは楽しいし生きている実感を感じた…」

 

「待て、待ってシグナムさん」

 

「そう、これは恋愛感情に似たような物だ。いやこれは凌駕する感情だ」

 

「愛を凌駕するってなに?なんなの?オイゴラ何してる止めろ。松葉杖を持ってるんだ」

 

「男と言うのは女の純粋な愛に弱いものだろ?私は自分に正直になると決めた。家政婦よ、私の愛を受けとるんだ」

 

「皆さん全身怪我まみれのトチ狂った女が松葉杖を持って襲ってきたら恐怖を覚えませんか?少なくとも俺は怖い」

 

「行くぞ家政婦!」

 

「爽やかな笑顔で来るなバカ女!」

 

その後止めに来たシャマルやその他六課フォーワード勢によって取り抑えられたのは言うまでもない。



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11 私は仲直りがしたい!

すまない…投稿遅れて本当に申し訳ない…これも全部FGOがわるい…!


「高い高ーいですよー」

 

「キャー!!」

 

「次俺っ!俺だよっ!」

 

「いや!僕の番だねッッッ!!」

 

ミッドの町に買い物していた帰りに歩く異物、買い物なのに執事が正装でマイバック片手に買い物していると密かに噂されていた家政婦間藤恵也は子供たちに捕まり遊び相手になっていた。最初は数人の筈だったが次第に数が増えて今では十数人となっていた。

 

「はーい、終わりですよー」

 

「「えーー!」」

 

そろそろ帰宅する頃合いと見て高く掲げていた少女を降ろし、帰る旨を周囲の子供に話すと他方からブーイングの嵐だ。

 

「えー…じゃあこれでラスト、誰が高く上げられたいですか?」

 

「俺!俺!」

 

「僕が並んでたんだぞ!僕だっ!」

 

「私よー!」

 

「オイコラ家政婦何遊んでんだ」

 

「はい、それじゃそこの子ですね。高いたかー…」

 

適当な子供を選んで両脇をしっかりと掴むと一気に高く掲げる。

 

しかし子供は喜ばず青くなったり赤くなったりと顔を変化させていた。あれ?何か怒ってる?その子は赤毛で茶色の制服見たいな格好を…あれ?これ管理局の制服?しかも何か見たことある顔を…

 

「こ、この…この…」

 

──ヤバイ、ヴィータさんを高い高いしてしまった。

 

「馬鹿野郎がぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

「ヴィータさーん、ヴィータさーん?」

 

「うっせぇ!!付いてくるな!目障りだ!消えろ!」

 

後日、あの後憤慨したまま帰っていったヴィータに謝ろうと局の廊下で捕まえて謝ろうとする…がっ、駄目。暖簾に腕押しと言うように全く話を聞いてくれない。

 

「そんなこと言わずにちょっとお話を…」

 

「話すことなんてねぇよ!!」

 

「いやありますよ。昨日私貴女の事を間違えて子供見たいに抱っこしたことを…」

 

「それ以上言ってみろ!殺すぞ!!」

 

取りつく島がないとはこの事か、昨日からヴィータの機嫌が悪く話すら聞いて貰えない状況であった。

 

「バーカ!」

 

フンだ!と捨て台詞を吐いてヴィータは去ってしまう。恵也はそれを見送ると苦虫を潰したような顔つきで頭を抱える。

 

(やべぇよ…やべぇよ…ヴィータさんの自尊心傷つけちったよ…)

 

「恵也?どうしたの?」

 

背後から声をかけられて振り向くとそこにはスバルとティアナの二人が居た。二人ともどうしたのだと言わんばかりの表情であった。

 

「あ、あぁ…実はな…」

 

 

 

 

 

「それは恵也が悪い」

 

「うわぁぁぁ…やっぱりなぁ…」

 

場所を替えて急騰室で話をし、事の一部始終を話すときっぱりとそう言われる。

 

「どうすんだよぉ…話すら聞いて貰えねぇしそもそもヴィータさんとは接点無いから会おうにも…」

 

「…と言うか家政婦さん、どうしてそんなにヴィータ副隊長仲良くないんですか?」

 

「そうだな…あれは…」

 

【家政婦回想中】

 

高町なのはの家政婦を初めて少し月日が流れた頃、確かヘルプで食堂の厨房で働いていた頃だった。

 

「特製チャーハン二つ!フォワード勢の良く喰う方のオーダーだから特盛で!」

 

厨房は戦場であった。何十人と止まない長蛇の列、発狂し出す従業員、それを嘲笑うかのように追加されていくオーダー…その日は些細な事にかまけている暇などは無かった。

 

「家政婦ー、ラーメンくれー」

 

そこにオーダー待ちテーブルにヒョコっと顔を出しているヴィータ副隊長の姿があった。その姿を見て俺はお子様ランチ(リインフォース専用)を出してしまった。

 

「…お、おい…これはなんの冗談だ…?」

 

その頃のヴィータさんの怒っているんだが悲しんでいるんだか分からないあの何とも言えない顔が忘れられない…

 

「アウトね」

 

「ぐわぁぁぁ……」

 

今までの丁寧口調ではなく砕けた口調で話していることから恐らく本心でヤバイと感じてるのかティアナの前でも素の反応で返す。

 

「取り合えず謝り行く?」

 

「いや、それじゃあまた来るなと門前払いされるだけでしょ?私達がフォローしてなんとか…」

 

「助けてくれるのか?」

 

「当然でしょ!?だって恵也は仲間だもん!そうだよね!ティア!!」

 

「うーん…相方が世話になってるし一応ね?」

 

「スバル、この人ってあれか?ツンデレって奴か?」

 

「そうだよ!」

 

「何言ってるのよアンタらは!!」

 

ぎゃーぎゃーと暫く騒いだ後、真面目な話を切り出す。

 

「…実際問題どうしたら良い?」

 

「やっぱり今すぐに謝りに行った方が良いよ。謝るのは早い方が良いしね」

 

「少し間を置いてから謝るって手もあるわよ?そのくらい経てば副隊長も頭が冷えるでしょうしね」

 

「プレゼントとかどうよ、確か使ってない金あるからそれでなんとかならないか?」

 

「それ良いわね」

 

「でも副隊長って何貰って嬉しいんだろう…」

 

「うーん…」

 

 

 

 

 

一方のヴィータははやての執務室に居た。

 

「…なぁはやて」

 

「ん、なんやヴィータ?相談か?」

 

「…私よ、子供みたく見えるか?」

 

「見えるで」

 

「…じゃあやっぱり私がわりぃんかなぁ…こんなナリして子供の大群に紛れてたらそりゃ間違えもするよなぁ…」

 

「…なんや?」

 

「あのな…かくかくしかじか…」

 

「そりゃお手伝いさんも悪いけどヴィータも悪い、大人ならそのくらい許したれや」

 

「やっぱそうだよなぁ…やっぱあそこで意地張らなきゃ良かったな」

 

そう言われたヴィータはばつが悪そうな顔をして頭をポリポリとかき始めた。

 

「そりゃあヴィータ、ヴィータが局員の服着ても世間様から見たら可愛い子供のコスプレに見えなくもないし、そんなのが子供に紛れたら私だってやるかもしれへんよ?」

 

「…」

 

「ヴィータは精神的にも大人なんやから分かっとるよね?」

 

「…おう、分かってる。そんじゃ行ってくる」

 

ヴィータはそう言って部屋を出る。向かうところは勿論家政婦が良く行くであろう部屋高町なのはの自室。話によると彼はなのはと同室なのだと言う。

 

「…失礼すんぞー。なのは、家政婦居るかー?」

 

パッと見て目的の家政婦は居なかったが家主のなのははそこにいた、今日は休みか。ヴィータはそう思いながら部屋に上がり込む。

 

「あっ、ヴィータちゃん。家政婦さんなら出掛けてるよ」

 

「もうすっかり家政婦便りだな、部屋が綺麗すぎる」

 

「…それって普段一人だとどうしようもないって意味かな?」

 

「そう言ってるんだよ。茶は…良いや。家政婦帰ってくるまで待たせて貰うわ」

 

そう言うとヴィータはすぐそこの椅子に座る。

 

「聞いたよ、家政婦さんに子供に間違われたんだって?」

 

「誰から聞いた」

 

「家政婦さん本人から、凄い落ち込みようだったからちょっと心配だったよ」

 

「あー…」

 

「ヴィータちゃんどんな手を使ったの?私家政婦さんのあんなあたふたした姿見たことないなぁ!弱味として欲しいから教えて!?」

 

「屈折した性格してんなオメー」

 

環境は人並みに戻ったか時折来るゲス発言は治らない…いや、外の人間には何時もの真面目ななのはなのだが身内にはたまーにこう言う風な口をする。

 

「…でも人間、少しくらい欠点があった方がモテるのかねぇ」

 

「つまりわたしはモテモテに!?」

 

「しまったこいつの前でそれはNGだった」

 

「…さて、冗談はさておいて…ここに来たってことは家政婦さんと?」

 

「ケリつけに来たんだよ。家政婦は何処に?」

 

「ヴィータさんに謝りに行くーって行ったきり帰ってこないよ?」

 

「アイツあの時から随分経つけど戻ってねーのか」

 

「その様子だと一回門前払いかー」

 

「…ん?」

 

何かの視線を感じ取ってヴィータは先程出てきた入り口を見る。そこには三人分の目線がそこにあった。

 

「……なぁあれ」

 

「黙って見てない?」

 

「えぇ…」

 

 

 

 

 

 

(ヴィータ副隊長が居るよ恵也!早速作戦を始めよう!!)

 

(おいスバルマジで上手く行くのか?ちょっと俺心配になってきたんだが…)

 

(大丈夫!そのときはティアが援護してくれるよ!何たって私のパートナーなんだから!)

 

(…帰りたい)

 

(オイパートナー死んだ魚の目してんぞ)

 

(いくよー!)

 

(話を聞けよ)

 

 

部屋を大きく開けて二人が入って来る。スバルと恵也だ。

 

「うぉっほっほっほ…恵也くぅん、チミにはしつぼーしたよ。まさかこのような大失態を犯してしまうなんてねぇ」

 

「許してください…何卒…何卒…!」

 

なのはは何が始まるのかとうきうきして眺める一方、ヴィータはとても嫌な予感をさせながら傍観していた。関わりたくないが関わらざるを得ない状況じゃない限りスルーしたい心境であった。

 

「本来なら出来る筈なんだよ恵也くぅん…本当にすまないと言う気持ちで………胸が一杯なら……っ!!」

 

「土下座ですか…?」

 

「あるだろう?立派な土下座が………本当にすまないという気持ちで一杯なら何処ででも土下座が出来る…っ!」

 

そして今度は熱気が籠った鉄板をティアナが運んできた、付き合わされているのかその顔は分かりやすくとても疲れきっていた。

 

「お持ちしまシター」

 

「こらティア!ちょっと棒過ぎない!?もっと気合い入れてよー!…ごほんっ、肉焦がし骨を焼く……鉄板の上でも……っ!!」

 

「分かりました…っ!!男…家政婦…恵也…行きます…っ!」

 

「止めんかバカタレどもが」

 

鉄板にダイブしようとした恵也を展開したグラーフアイゼンで叩く。

 

「止めないで下さい!俺は反省の意を示さないと…!」

 

「嫌、こんな曲芸紛いなことで示されても…」

 

「そうだよ!ヴィータちゃん止めないでよ!」

 

「なのは、テメーはビール片手にこれを肴にしようとするな」

 

「昔これやって父さんに叱られたなー。これやるとたいていの事は許してくれるけど」

 

「それお前のオツムを心配されてんだよ理解しろ」

 

「…」

 

「ティアナ、お前は頑張った」

 

「…普通に慰めないで下さい!なんか話してたらいつの間にか「じゃあ取って置きのアレで行くよ!ティアナ」って本編見たいな口調で言うもんだからそれに頷いたらあれよあれよと話進んでこうなったんですよー!!」

 

「…スバルとティアナは訓練場を走ってこい」

 

「そんな!でも…」

 

「私が暴れないうちな早く行け」

 

「「ハイッ!!」」

 

二人はそのまま逃げるように走り出す、そしてヴィータは恵也と向き合う。

 

「あー…なんだ、随分追い込んじまったみたいだな」

 

「……まぁ、自分でもアホな事をしたなとは思いますよ。まだ未熟ということで許して下さい」

 

「いや、人間欠点がある方が味があるぞ…悪かったな家政婦。あの時同じ立場なら私でも普通にやるわ。反省するよ…心が狭い事をな」

 

「…此方こそ、もう少し私がしっかりしてればヴィータさんを不快な目に会わせずに済みました」

 

「じゃあお互い様だな」

 

「そうですね」

 

「…へへっ」

 

どんなに話しづらくとも、どんなに相手が自分の話を聞いてくれなくとも…きっかけがあればこのように互いに分かり会える。その事を二人は学んだと思う。

 

「…いい話だなぁー!」

 

…そしてそれを見ながらビールを煽っている女。旗から見ると混沌としていた…雰囲気ぶち壊しである。

 

「…ご主人様」

 

「何ぃ?」

 

「…今何時と?」

 

「お昼時だよー?」

 

「…お酒は、夜にして下さいとあれほど、あれほど言いましたよねわたしは…あと雰囲気ぶち壊しです」

 

「…あー……」

 

「…ヴィータさん、少し遊びに行きませんか?」

 

「そう言うことなら大歓迎だ。安心しろなのは、今日はトコトンこいつに付き合ってやっからよ…自由にしてくれ」

 

そう言うと彼らは部屋を後にした。

 

「…あ、あれ?今私フルボッコを覚悟してたんだけど…」

 

安心も束の間、その後追加の酒を取ろうと冷蔵庫を見ると…中が空になっていたのだ。

 

(あ、あれ?さっきまであんなに…まてまて。無いならお金で買えば…)

 

そして財布を探すが…見つからない。

 

(ま、待って!確かにテーブルの上に!な、ならば通帳!銀行で…)

 

通帳、まさかの失踪であった。

 

「や、やば…一文無し…嘘…?このまま?はやてちゃんに相談…」

 

そしてはやてからの念話がなのはに届く。

 

(ヴィータからの伝言やでー。全部返してほしかったら家政婦さんに謝ってなー…流石に今回は許さへんで)

 

「家政婦さーん!?ちょっと本気すぎない!?」

 

『なのは…今度は貴女が同じことをしてみたら?』

 

「う、うわーん!!ごめんなさーい!!!」

 

…その後、家政婦が帰ってくるまで三日かかったと言う。



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12 家政婦はヴィヴィオと会うようです

遅れました…すいません…すいません…!何でもするから許してください!


「…」

 

「ヴィヴィオ、ママが居なくて寂しい?」

 

「…うん」

 

…その少女は震えていた。目に涙を貯めて必死に口からでる嗚咽を我慢し途切れながらも言葉を紡ぐ。

 

「…よーし!ならヴィヴィオが寂しくならないように私がヴィヴィオのママになってあげる!」

 

「…へ?」

 

「だから泣かない!ヴィヴィオが安心できるまで私がヴィヴィオを守るから!頑張るよ私!」

 

自分事ながらも無責任な言葉と思った。自身の世話は人にやってもらっているのにも関わらず小さな子供にカッコつけたいのかこんなセリフ…だけど、嘘を本当にしなければならない。泣いてる子を放っておくなんて私には出来ないからだ。

 

「よーし!それじゃ行こうか!」

 

「…うん」

 

幸い家政婦さんは前の一件で家に居ない…後で文句の一つ言われるかもだが…住んでしまえばこっちのものっ!家主は私なんだからぜっったいにガタガタ言わせないの!

 

 

【管理局機動六課 高町なのはの自室】

 

「…あー…」

 

「…あっ、おかえりなさい御主人、そこに脱ぎっぱなしになってた寝間着は洗濯しときましたよ」

 

「…戻ってたの?」

 

「つい先程、良い休暇でした」

 

…この男、間藤恵也は先日の件で休暇がてらにはやてちゃんの所に行ってたのだ。

 

「どうして?はやてちゃんからはまだしばらくいるって聞いたよ?」

 

「…御主人」

 

「何かな?」

 

「ザフィーラさんって…ふわふわで…なだらかな毛並みをしてますよね…あれってとっても素敵だと思うんですよ」

 

「…ん?んん?」

 

…聞き間違いだろうか、今家政婦さんの口から凄い事が聴こえた気がする。何?その見たことないクッソ爽やかな笑顔は?ちょっと怖いよ?子供に見せられない顔してるよ?

 

「ご紹介されたときから思ってはいましたが…こう…何て言うか…彼最高ですよね。ヤバイ、喋れるワンちゃんとか最高。ちょっとよしよしさせてと言って10分くらいやってたらやめろと拒絶されたのはちょっとキツかったですけど」

 

「か、家政婦さん?」

 

「彼ああ見えて結構繊細なんですよ?毛並みは毎回気を使ってるみたいで髪と同様の扱いをしてるんです。凄いでしょう?だから私、触ってる内にヒートアップしていって…ヴィータさんが引きつった顔で見てましたが私は彼を撫で倒すまで続行しました。あぁやっぱ動物って良いものですね最高ですねスバルには絶対に動物飼わないでねなんて言われてましたがこの際私も動物を買って一生奉仕する所存で…」

 

「家政婦さん!ちょっと止めてくれないかな!?怖いの!」

 

「ヴィータさんもシグナムさんもすごい剣幕でそう言ってましたがザフィーラさんは最後の方ではもっと!もっと!なんてねだってちょっと興奮を…」

 

「分かった!分かったから!私お腹すいたナー!スッゴイお腹すいたナー!家政婦さんのご飯食べたイナー!」

 

「あ、なるほど。それじゃあ今から簡単なのを作りますのでお待ちを」

 

恐ろしいマシンガントークから一変、彼はケロッとした顔でキッチンの方へ向かって行った…良かった。ヴィヴィオを部屋の前で待機させといて…本当に良かった。

 

(…それにしてもどうしよう。ヴィヴィオのことをなんて説明しようかな…?)

 

しばらく考え…ふと閃く。

 

「…よし!これなの!」

 

 

「御主人、フレンチトーストをお持ちしました」

 

「…ありがとう!いただくね!」

 

リビングの椅子に座り出されたモノに向かう、トースト上にかかったハチミツの臭いが食欲を掻き立てる。

 

「…ん?御主人、あれは…?」

 

恵也が先程まで無かった物を見る。それは少し大きめの段ボールでテープで厳重な密閉がされていた。

 

「あぁ、あれはフェイトちゃんから頂いたものなの」

 

「へぇ、結構大きめなんですね。言ってくれれば私が運んだのに」

 

「ダメダメ!あれは乙女のデリケートな物が入ってるの!男の子が触っちゃダメなの!」

 

「乙女って…酒食らいが何を冗談を…」

 

「文句ある?」

 

「申し訳ありません」

 

家政婦さんは箱の中身を言及しない…こう言えば向こうが「あっ、詮索しちゃダメなんだな」と気を使って詳しい言及はしないでくれる…伊達に少し長く世話はされてない。と言うことなの!

 

「そうですね、中身がどうあれ大事に至らなければ私は…」

 

ゴトゴト…

 

ん?なんか箱がゴトゴトした?え?何?ヴィヴィオちょっと我慢出来なくなったの?どうしたの?

 

「…動き、ましたね」

 

「き、気のせいなの。やだなー!家政婦さん疲れてるんだよ!あれ単なる雑貨で動いたとしてもそれは中の物が移動した拍子で…」

 

ママー、オシッコー

 

嗚呼ヴィヴィオ、おしっこしたかったの。言ってくれれば行かせてあげたのに。

 

「…御主人?雑貨がおしっこしたい宣言しましたが?あれなんの雑貨なんですか?」

 

「え、えぇと…ファー○ー…だよ?」

 

「へぇ、○ァービー…なーるほど!それなら喋りますね!合点が…いくわけねぇだろうがよぉ!!ファービ○がオシッコしたら漏電してぶっ壊れるだろうが!あの大きさなんだ!?人か!?あぁ!?」

 

「モルスァ!?え、えーと違うよ?あれは管理局が改造したデバイス型ファ○ビーであってね?」

 

「であってもあんなクソでかいファー○ー使いにくいわ!中身なんだ!?」

 

「あっ!待って!」

 

恵也がまっすぐ箱に向かうと厳重に閉ざされたテープを素早く外し中を見る。

 

「…あっ」

 

「…」

 

中には金髪オッドアイの少女…その頭には申し訳程度のネコミミ。その顔は何かを堪えてるが決壊寸前の顔付きであることが容易にわかる、だって内股だもん。

 

「…御主人……」

 

「か、かせーふさん!プレゼントだよ!ネコミミ大好きでしょ!?」

 

「徹底的にやるならば、あるべきところに尻尾もちゃんとつけるべきでしょ…?」

 

「えっ」

 

「!?」

 

なのはは少しドン引きし、ヴィヴィオはその台詞に恐怖してしまう。あるべきところにって…何処に、何処に付ける気なの?お尻なの?変態通り越して犯罪者だよ。家政婦さん変にこだわらないでよ。逮捕するよ?

 

「うーん…」

 

フェイトさんから頂いた→おしっこしたくなるまで放置→出られないよう密閉されたテープ→フェイトさんと御主人で誘拐?

 

「…御主人、天下の局員が誘拐はちょっと…」

 

「えっ!?違うよ!?違うからね!?」

 

「ママァ…おしっこ…」

 

「あぁゴメンね!?トイレだね!?」

 

「御主人、ママ…?彼氏いない御主人がママ…?」

 

「ちょっと失礼だよね?それ失礼すぎない?」

 

「何がプレゼントだよ御主人、お前ぜっったい俺いないの分かって連れ込んだろ」

 

「あー!あー!きーこーえーなーいー!」

 

「子供か!」

 

「ママァ…!」

 

「あ゛ー!分かった!分かったからここで決壊するのは止めて!」

 

「御主人トイレ!トイレに連れていって!」

 

「家政婦さんが…」

 

「女児にそんなことできっかよぉ!!」

 

 

「…」

 

「…と言うわけなんだよ」

 

「…成る程、事件の保護者に…」

 

リビングのテーブルに座り経緯を聞く。レリック…危険な物に関係し、狙われていた事から六課が保護。後に教会で会って交流しなつき、連れてきた…

 

「…成長しましたね御主人。会った当初の酒浸りの貴方ならこんなことしないでしょうに」

 

「…ママ?お酒?」

 

「か、関係無いよヴィヴィオには…い、いやーヤバかったら家政婦にも手伝って貰おうとね?」

 

(…悲しいかな、もう少しすれば俺の手も要らなくなるか…?)

 

―家政婦の当初の六課から出された依頼は高町なのはの矯正とサポート、それが済んだら家政婦間藤恵也は渡された契約日数を過ぎたら此処を去る。今までもそうだったしこれからも多分そうだ。

 

(ヴィヴィオを育てられるまで、そこからは…一人でも平気だな。それまでなら…)

 

「…良いですよ。それじゃあ今日のご飯は御主人がお願いしますね?」

 

「えー!?」

 

「ほら、ヴィヴィオの前ですよ?格好つけましょう?」

 

「うー…」

 

それを言われグゥの音も出ないのか渋々キッチンの方に歩いていった。その間ヴィヴィオと恵也と二人きり、後のためにも交流の良い機会だ。

 

「…やぁ、私はあの人の家政婦の間藤恵也だよ。ヴィヴィオちゃんだっけな。よろしくね」

 

少女は何も返さず、ただこちらを見る。その目は恐れと…少しの興味の目だ。

 

「…しつじさんじゃなくて?」

 

「いや、これは知人から頂いた物だよ。これ着ると身が締まって何でも出来ると思えるんだよ」

 

「おもうだけなの?」

 

「思えばスーパーマンにもなれるんだよ」

 

「…すーぱーまん?」

 

「ヒーローだよヒーロー、知らない?」

 

「…テレビの中だけだとおもってた」

 

「ヒーローを見たことない?じゃあちょうど良いね。ヴィヴィオ?ここに来る前は悪い人に狙われてたんだっけ?」

 

「…うん」

 

「じゃあこれらはそんな奴ら、俺が蹴飛ばしてあげよう。ヴィヴィオが怖がらせるものは、このスーパー家政婦が相手だ」

 

そう言うとヴィヴィオは少し、呆気に取られた顔をした。

 

「…はじめて」

 

「ヒーローが?」

 

「あっけらかんに自分をスーパーとかヒーローとか言う人…」

 

「そこかーい!」

 

「アハハ。うん、そこだよ」

 

遠慮しがちに突っ込みをいれるヴィヴィオに対してわざとらしくリアクションをする、少し大きな事を言った気もするが大丈夫だろう。

 

…ん?なんか焦げ臭い。

 

「かせいふさん…なんか臭い」

 

「まさか…ッ!」

 

リビングを飛び出して直ぐ様キッチンに向かう、そこにはぼうぼうと燃え上がるフライパン片手にあたふた半泣きしていたなのはがいた。

 

「あっ!家政婦さん!助けて!鳥の照り焼きにしようと思ってたら燃えちゃった!」

 

「何が原因で!?」

 

「フランベしようと酒をぶっかけて…」

 

「照り焼きには要らないでしょうがぁーーー!!!」

 

「ま、ママ!火事だよ!?」

 

「ヴ、ヴィヴィオ心配しないで?心配しないで?」

 

「おろおろしながら言っても説得力ゼロ!水!バケツに水ーーー!!」

 

――まだもう少し、此処に居なければならないと苦笑しながらも思う家政婦の間藤恵也であった。

 



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ex 家政婦となのはのオマケ話&マテリアルパニック!

恵也「コメント返信を面白おかしく返せだって?行きますよ御主人」

なのは「なんで私を真っ先に指すのかな?」

恵也「御主人は面白いですからね」

なのは「皮肉かな?芸人って言ってるのかな?」


 

恵也「ほら御主人、始めますよ?」

 

なのは「まって、深呼吸してから」

 

恵也「間藤恵也とぉーーーーっ!!」

 

なのは「えっ!?たっ、高町なのはのぉーーーー!」

 

恵也・なのは「オマケ話ぃーーー!!」

 

恵也「さぁ始まりました間藤恵也と高町なのはのオマケ話。このコーナーは依然行ったコメント返信的な何かの延長話、ここでは皆様の感想を拾いつつこうやってSS方式で駄弁って行きます」

 

なのは「9話のあれだね!前のがどんななのかは9話をチェック!…と言うかこんなことしといて大丈夫?こう言うの嫌いっていう人も少なからずいるんじゃないのかな?」

 

恵也「本編とかでもなんかラジオドラマCDなんてやってたから大丈夫だろ。リスペクトリスペクト…そしてここでの最大の変更点は御主人にタメ語使える点にあります。と言うわけなんで御主人、粗相しないように」

 

なのは「いっつも粗相してるみたいに言うの止めてよ」

 

恵也「してる、めっちゃしてるからな。さて手始めに…」

 

なのは「感想、所謂コメント返信だね!じゃあ早速…」

 

恵也「誤字脱字を指摘してくれる方々に感謝を」

 

なのは「え?」

 

恵也「特に最近の報告をしてくれたクオーレっと様、大変勉強になりました。いやこの人スゲーわ最近復活したのに2、3話の修正の指摘してくれてるんだわ。マジすごい」

 

なのは「見直ししなかったの?」

 

恵也「バカヤロウ投稿する前なんて緊張で動揺してるから結構ミスがあるんだぞ」

 

なのは「えー…このように、すごい助かってます。これからもどうぞよろしくね。さて、感想そろそろ良いかな?」

恵也「オケオケ、何時でもこい」

 

なのは「おおぅ、凄い張り切り具合だね。それでは初っ端からいくよー!」

 

黙示録

騎士の腕へし折るとかスカさん最低だな(棒読み

 

恵也「凄いね、きっとチャンピオン級の強さダヨ」

 

なのは「おい元凶、最初から罪をよそ様に擦らないの」

 

恵也「だって普通に戦うとシグナムさん強いんだもん、やるならセットアップ前か不意付いてパパッとやっちまうのが一番だっての」

 

なのは「何処でそんな格闘技を学んだの?」

 

恵也「格闘技やってる奴のを見真似、基本ケンカよミッドだとバリアジャケット着た輩も多いからジャケットを抜く魔法を交えた技術も必要だし…まぁ本来物を何処でも出せるしか取り柄が無かったから、そこは努力よ」

 

なのは「家政婦に戦闘能力は要らないと思うの!?召喚魔法も結構レアだよ!?」

 

恵也「何処でも道具を出せるから野外でもティータイムし放題」

 

なのは「ドラえもんかなにか!?次行くよ!?」

 

ふたなり執事♂ビジュアル

家政婦なのに彼とは...はっ!ふた○りなのか!とか思いながら読んでました。

 

恵也「????(訳な分からないという顔)」

 

なのは「前にも似たようなこと言ったと思うけど家政婦さん、あの口調で家政婦という名前ならしゃーないの」

 

恵也「クソ、作者に絵の才能があれば…」

 

なのは「描けば良いじゃん?」

 

恵也「正面向いたカービィしか描けない画力クソザコナメクジなんだぞ!書けるか!」

 

なのは「えぇ…」

 

hisashi 5話

ゲンヤさんが嘘をついたのもスカリエッティのせいなんだ(迫真)

 

なのは「そう言えば気になってたんだよね、どうして家政婦さんってスバルの事を男の子って見てたの?控えめに見てもあの娘可愛いよね?」

 

恵也「それは…」

 

 

【ナカジマ家家政婦時代】

 

ゲンヤ「お前らクイントから話は聞いてると思うが今日からここで世話になる男だ。おら恵也、自己紹介を」

 

恵也「家政婦の間藤恵也です。掃除洗濯何のその、SPもこなせます」

 

ギンガ「よろしくね?」

 

スバル「私スバル!ねぇねぇ家政婦さん!私よりちっこいけど家事とか平気なの!?」

 

恵也「お嬢様、舐めちゃ困ります。私はこのために修行を積み重ねて来た一人前の男です。働いてそれに見会う銭を取るのは当然」

 

スバル「じゃあサッカーしよ!早く!早く!」

 

恵也「えっ、サッカー?私友達いなかったからリフティングしか出来ない…」

 

スバル「えー、出来ないのー?一人前のくせにぃー?」

 

恵也「上等だお嬢様、私の足がブチ折れるまで付き合ったるわ」

 

ゲンヤ「あまりはしゃぐなよー?…全く、男の子は元気だなぁ…」

 

キャッキャキャッキャ…

 

 

恵也「…タックルで倒れた時に胸に当たって「あっ、これは男ですわ間違いない」と思ったせいですかね」

 

なのは「死刑ものだよ」

 

恵也「!?」

 

なのは「次いくよー」

 

名無しのネギ

作中ちょいちょいフェイトの名前がフルネームで登場しますがフェイトのフルネーム間違ってますよ

 

正 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン

誤 フェイト・テスタロッサ・ハラウオン

 

なのは「あー…」

 

恵也「えっ、まさかそんな…」

 

…確認中

 

なのは「…二回くらい、間違えてたね」

 

恵也「…ぷく」ボソッ

 

なのは「ん?なんか言った?」

 

恵也「切腹もんだわ…切るわ…」

 

なのは「わー!どうどう!落ち着いて!どっち!?どっちの意味で!?作者を!?自分を!?」

 

恵也「るっせぇ!!何がウオンだよ!犬の鳴き声かよ!んなもん一年放置って重罪ものだろうがよぉ!!一年間もフェイト・テスタロッサハラオウン間違えてフェイトさん可愛そうだろうがぁ!!」

 

なのは「止めて!本当にカッターナイフ持ち出すの止めて!次!次行くから座って!」

 

フレイ・スカーレット 13話

ん?今なんでもするって

 

恵也「言いましたねぇ?ねぇ?」

 

なのは「と言っても何すれば良いんだろ、オマケ話?アナザーエピソード?…そうだ!私の輝かしい歴史を!」

 

恵也「申し訳ない、次行きましょう次」

 

なのは「なんで無視するのぉーーー!!」

 

恵也「飲んだくれの輝かしい歴史?冗談はいけないって」

 

雨蓮 12話

恐らく初めて感想を書かせて頂きます。

失礼を承知で言わせていただきましょう。

 

とんでもねぇ!待ってたんだ!!

 

スーパー家政夫(誤字にあらず)の日常がまた読めると思うととても嬉しいです

これからもペースは気にせず面白いお話を作って下さい!!

 

蒼空の魔導書 13話

あのスーパー家政婦とロクでなしあーぱー教導官がっ!およそ一年の時を経てっ!帰って来たどーーーーーッ!!!

 

ホント首を長くしてお待ちしておりましたっ!!連載再開おめでとうございますっ!!!

 

恵也「指摘を交えた事も言われると改善点にもなるし参考になるから良いけど、こう言うの貰うととても嬉しい」

 

なのは「ちょっと待って?私誉められてない。なにあーぱーって?ちょっとあの人たちのお家破壊してくるの」

 

恵也「本当のことだろうが!止めろ!ぶん殴ってでも止めるからな!?」

 

…このあと喧嘩になり続行不可能となりました。のでここまでとなります。これからもどうぞよろしくお願いします。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

【マテリアルパニック!】

 

「…」

 

「執事さーん!はやくはやくぅー!」

 

突然ですが何か蒼色の髪をした黒マントの娘が訪ねてきた。いや、正確には帰ってきたら居たのだ。

 

本来なら不審者としてボコボコにして局員に付きだすのだが彼女がフェイトさんの知人と言い、しかも昔の仲間と言うではないか。

 

(適当いってるだけか…でも似てるしな…妹?身内なら局のセキュリティも抜けるか?)

 

「どうぞ、クッキーです」

 

「おぉー!さっすが!出来る執事さんはひと味違うなぁ!」

 

「家政婦です」

 

「んんぅー!おいしい!執事さんこれ自作なのかな!?」

 

「家政婦ですって」

 

それにしても押しが強く元気な人、自分の知っているフェイトさんとはえらい違いだ。

 

「…失礼ですがお名前は?」

 

「レヴィ!」

 

「御主人に何か御用で?」

 

「御主人?…あー!御主人サマね!だいじょーぶ!君には関係無いことなのだ!」

 

何処か偉そうに言うレヴィを見る、今一瞬だが頭にクエスチョンマーク浮かんでるような顔してたのが見えた。

 

「…どうやってここに?」

 

「跳ばされて…」

 

「跳ばされて?」

 

「あー!違うよ!歩ってきたんだよ!」

 

「…そうですか、ちなみにフェイトさんとはどういう関係で?」

 

「えっ…い、妹」

 

「…少し失礼します」

 

リビングの部屋を出て直ぐ部屋前の廊下で様ポケットから携帯を取る。念話が使えない異常これに頼るしかない。デバイスの応用で通話できるように改良してもらったから相手に電話がなくともデバイスさえあれば繋がるだろう。

 

『もしもし、テスタロッサです。間藤かな?』

 

「お仕事中申し訳ありません、単刀直入に訪ねます…フェイトさん、妹さんはいますか?」

 

『…妹は居ないよ』

 

「そうです…っ!?」

 

殺気を感じその場でしゃがむ、すると先程頭のあった所に鎌が通る。そこにいれば首を跳ばされていた。

 

「密告はよくないなー!まわりに言いふらされるとこまるんだよぉー!」

 

「家政婦を背後から襲うなんて…お前もう客じゃねぇからな!」

 

「ケンカ!?面白いね!」

 

燕尾服の上着を脱ぎレヴィに投げ捨てる、上着は直ぐ様斬り捨てられるが一手潰せた。返す刃が来ないうちに距離を詰める。

 

(御主人がヴィヴィオと居て良かった…遠慮なくブチのめす!)

 

拳に魔力を込めて殴るが鎌によって防がれる。

 

「うおっ!?意外に鋭い…でも取り柄がそれしかないのかな!!それだけじゃボクには勝てないよ!」

 

迫る刃を避ける、バックステップで避けても恐ろしいスピードで追ってくる

 

(速く威力のある武器を振り回す近距離型…なら)

 

レヴィは右袈裟懸けに鎌を振る、そこに恵也は合わせて飛び出して左肩を刃に刺される。

 

レヴィ「ヤバ!バリアジャケット抜きで刺しちゃった!?ごめんすぐ抜く…?」

 

刺さったレヴィのデバイスバルフィニカスを抜こうと力を入れるも抜けない。

 

(なんで!?ただ刺さってるだけなのに…!?)

 

抜けぬ原因は単純明快、恵也が左手でバルフィニカスの柄を握り締めてるからだ。

 

「ビビったな、まさか人刺して何も無しなんて考えてない」

 

右手に魔力を込める。魔力はバリアジャケットを貫通するように練り込み、拳は力を込めて握り締める。そこに筋力強化の魔法…何度もやってくことだ。

 

「ジャケットに守られてるからって怪我なしなんて理屈、俺に通用しない!」

 

そのまま踏み込みレヴィの腹に撃ち込む!殴った衝撃でレヴィの体の内から鈍い音が響き、そのままバルフィニカスを離してそのまま壁に衝突した!

 

「かはっ!」

 

「内臓いったろ、すぐシャマルさん所に連れて…その後逮捕だ」

 

バルフィニカスを離してそのままレヴィに返す。レヴィはそれを受け取って杖がわりに立った。

 

「ごほ…困ったなぁ。ちょっと弾みでここに来て侮ってたら痛い目を見たよ…そっか。君はそう言う魔法に長けてるんだね」

 

自信の腹部を見る。そこには少しシワになった…拳の当たったところに小さな穴が開いたジャケットの姿があった。

 

「魔法でジャケットを抜いてそこから衝撃を流し込む…うん、初見なら内臓抉られて終わり…ははっ、いいもの見たなぁ…シュテるんとかが聞いたらどんな顔するだろ」

 

「何言って…」

 

「バイバイ、もう時間だし帰るよ…あっ、僕のことは誰にも言わないでね?本当に事故みたいなもので来ちゃっただけだからさ」

 

そう言うとレヴィは光り輝き…姿を消した。

 

「……何だったんだ今のは」

 

「家政婦さーん!なんか凄い音聞こえたけどどうしたの!?」

 

「御主人、仕事終わったのですか?」

 

「うん!でも帰りの道中で凄い音が…家政婦さん!?手!手!」

 

「えっ?」

 

レヴィを撃った右手を見ると、右手首からぷらんと変な方向にぶら下がっているではないか。

 

「…全力で撃ちすぎました、めっちゃ痛い」

 

「えっ!?本当に何あったの!?」

 

「あー…襲撃?あれは…雷刃の襲撃者ですかね?殴ったら消えました」

 

「と、とにかくシャマルさんの所に行くよ!?」

 

「痛い、右手を掴まないで…掴まないで…掴むなっ!」

 

「あっ、ごめーん!」

 

――――――――――――――――――――

 

【…何処かの世界】

 

「…なるほど、そんなことが…」

 

「我らに黙って行くからだ」

 

「ごめーん…あっ、お腹はデリケートに触って?」

 

「これ明日辺り赤いおしっこが出ますよ」

 

「マジで!?」

 

「…なのはの自室に…男…」

 

「シュテル、何を考えている」

 

「いえ、少し殺意を」

 

「!?」

 

雷刃と星光と闇すべる王が話し合っている…どうやら、同じパニックがまだ続きそうだ。



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13 家政婦の今と過去

「家政婦さん!はやくはやく!」

 

「アイナさん、良いですか?今から御主人の用があるので外しますが…」

 

「は、はい!分かりました!」

 

ヴィヴィオを保護した翌日の事だ。なのはが仕事でヴィヴィオの面倒を見れない、着替えや風呂なんかにヴィヴィオが異性である恵也を恥ずかしがる事から急遽、機動六課の寮の管理をしているアイナ・トライトンを呼んだのだ。

 

しかしアイナさんが来て以来、恵也の目が険しいものになっている。少し雰囲気が怖い。

 

「あのー…家政婦さん?ちょっと厳しくないかな?仕方無いでしょう?家政婦さんがヴィヴィオの風呂の事とかやるわけにいかないでしょう?」

 

「にしたってもっとちゃんとやってもらわないと、この前私が見たら固まってました…いや違うんですよ。職業柄ちょっと厳しく…」

 

恵也がアイナを見る目付きは姑が息子の嫁を視る目と同じ様なものである。

 

「それ家政婦さんが怖いからだと思うの。目から凍てつく波動、もしくはデスビーム出てる」

 

「何処が?私普通ですが」

 

「今、気を張ってるのか殺気を感じるよ」

 

「嘘、それほど?」

 

「そんな必要以上に確認とる所とかまさにそう。年上相手だからって接し方難しいくて変な方向に走ってるのだろうけどちゃんと謝って仲良くしてね」

 

「むぅ…」

 

しばらくそう話をしながら歩くと外の木々が生えている広場に着いた。今回呼ばれたのは、なのはが実力がみたいから見せてほしい。相手はこっちで用意するから思うようにやってほしいと言われて恵也はそれを了承し、燕尾服のまま来た。

 

「…それ脱がないの?」

 

「これが正装で、戦闘服なので」

 

服は特注で作られているらしく、見かけによらず凄い動きやすいそうだ。

 

「御主人、別に結構ですがお相手は?」

 

「スペシャルゲストだよ」

 

「ゲスト?」

 

「こんにちわー家政婦さーん!!」

 

ふと、何かの駆動音と声と共に、森の向こうの茂みの方から紫の髪をリボンで纏めた女の人が飛び出してきた。しかもバリアジャケットを着込んだ臨戦態勢でた。

 

「ギンガちゃ―」

 

「久しぶりっ!!元気にっ!してたっ!?」

 

彼女はそのまま間合いを詰め、その肢体を次々に恵也に向けて振り回し始めた!

 

「久しぶり!クイントの奥様に似てきましたね!でも戦いのスタイルも…てか止めろ!御主人!ちょっとこれは…」

 

驚きながらも恵也は紙一重で回避し、繰り出される拳を受け流してなのはの方を向く、だが彼女は既にふよふよと空中で退避を始めていた。

 

「頑張ってねー」

 

「戦闘データの協力を買って出たの!よろしくね!昔みたいに本気でじゃれあいましょ!?」

 

「厳しくないですか!?揃いも揃って…人の話を…聞けやオラァアアアア!!!」

 

少し離れた所でははやてとティアナ、スバル、キャロル、エリオのFW陣、そして遅れて退避してきたなのは合流し、その様子をモニターにて眺めていた。

 

「おぉー、凄い凄い。そこでカウンター気味にヘッドバットかぁ…ガッツあるなぁ…おー、激しい」

 

テレビを見るかのように観測されるデータを見ながら呑気に話し出す。

 

「フィールド系とブースト系の魔法を重視して…へぇーベルカかと思ったら近距離型のミッドチルダ式。あっ、今ホウキでギンガさんの頭を叩いたわ!無手やろ彼?」

 

「ウチのホウキだね、きっと召喚魔法で取り寄せてきたんだよ…あっ、叩き折られて捨てられた」

 

「レアスキルやないか!じゃあキャロみたいに…」

 

「ただ結構大きな物を出しちゃうと魔力満タンでもガス欠起こしちゃうらしいの。普段は身の回りの物を引き寄せるマジックハンドみたいな扱いでひじょーに勿体ない魔法だねぇー」

 

「えぇ…じゃあカートリッジシステムは必須やね」

 

「アームドデバイスとかは除外しても良いかな?ローコストで魔力運用出来るようにしてやったら…」

 

「なんか他人のデバイス考えるのって、楽しいなぁなのはちゃん!」

 

モニターで話し合ってる二人とは別に、離れた所では微妙な顔でその様子を見ているFW陣の面々の姿があった。

 

「スバル、あんたの姉さん凄いニコニコした顔で家政婦さん殺そうとしてない?ねぇ?あれじゃれてるの?明らかに急所狙ってるわよね?」

 

「で、でも体術と筋力ブーストだけだから…」

 

「自分等のランク考えて言ってる?」

 

モニター上では、今度は放たれた強打を額で受け止める恵也の姿がそこにあった。

 

 

 

額に拳が当たった瞬間、防御に回していた魔力を切って両の拳に瞬間的に出せる魔力を集束させる、そして次の打撃が来る前にギンガの右脇腹に拳を突き立て魔力を放出!魔力はバリアジャケットを貫通させ自身の強打をほぼ相手に与える――!

 

「カハッ!」

 

「フォーカススマッシュ…!もう一発あるぞ!」

 

拳を喰らってふらつくギンガを見て手応えを感じた恵也はギンガの顔に直ぐ様左の拳を振るう…だがそれはギンガの防御の為に出される両手で防がれた。

 

「くぅー…!ジャケット抜いての攻撃は効くわぁ…!」

 

「この…!」

 

全ての魔力を両手に集めラッシュを放つ。その様子を一目見たギンガは両手でガッチリとガードを固め防ぎ始めた。

 

「まだまだ!さっきの技でそろそろガス欠でしょう!?今のキメ技でしょう!?防がれてどんな気持ち!?どんな気持ち!?」

 

「あっ!まだ意識あった!クソ!倒れろ!両手モロに喰らって痺れてるくせに!倒れろ!普段しない煽りをするな!」

 

 

 

 

「わぁー…なのはちゃん今のコレ集束魔法やで?拳に魔力をあるだけ集めてぶん殴っとるわ、しかもジャケット抜いての一撃」

 

「あぁ、これでバリアジャケットを針のように抜いて、魔力でブーストした拳の威力を肉体に与えてるんだねー…うん、道理で魔力量の割りに痛いわけだよ」

 

「シグナムもそんなこといってたなぁー。奴の大振りは手が痺れるって。そら生身で筋力強化された拳受けるワケやからなぁ」

 

「あのー…なのはさん?そろそろ止めた方が良いですよ」

 

「スバル?なんで?」

 

「そろそろ恵也、電池切れになります」

 

「え…?」

 

 

 

 

右側頭部に向けて放たれる拳をギンガは右腕で防ぐ。防いだ腕は生身で受けたような衝撃が伝わる。

 

「あら!?今度は技の名前言いながら打たないの!?分かりやすくて助かったんだけど…っ!」

 

恵也は打つ度に表情に疲れが見え、魔力がゴリゴリけずられていくのが分かる。手の内を知っている者に゛持久戦゛をさせたくはないのか…それでも手を休めない。

 

「いい加減そのガード抉じ開けて…ッ!」

 

叫びながら踏み込んで力一杯の右アッパーを放つとギンガのブロックが弾け僅かに隙間が出来た…!

 

「っ!!」

 

「拳を捩じ込んで終いだぁ!!」

 

一瞬、恵也は更に一歩踏み込んで、その僅かに開いたガードに左を捩じ込み、その一撃は綺麗にギンガの頬を捉えた!

 

「…あっ」

 

「…」

 

…だが、ギンガは倒れなかった。全力で込めた一撃で倒れなかったギンガはニヤリと笑い、恵也はその表情が青ざめていく。

 

「…家政婦さん、魔力保有量は変わらないんですね…クリーンヒットなのにダメージ入ってませんよ」

 

「じ、女性を思いきり打つのは流儀に反しますので…」

 

「嘘、家政婦さんは男だろうと女だろうとグーで殴りますよね?しかもいい笑顔で男女平等を謳って」

 

「…ス、ストライクアーツならこれで決まりですよね?い、いやー…久しぶりの友人にキツいのは入れられない…」

 

「私の両手とお腹、多分青アザだらけなんですよ。酷いですよね?次は私の番ですよね?乙女の柔肌傷付けた報いを受けるべきと思うんですよ。こら家政婦の皮被って逃げようとしない」

 

「…このあと夕飯の支度あるのでこれで、さようなら!」

 

直ぐ様踵を返して走る、それに続いてギンガも身体に魔力を充填させて追った!!

 

「逃がしません、親睦を深める為に第2ラウンドをしましょう?魔力無しの家政婦さんが逃げ切れると思ってるんですか?」

 

「助けて!たすけてスバルーーーー!!見てるんだろスバル!助けてぇぇぇぇえええ!!マジで打つ手ない!無理!本当に限界!」

 

モニターの状況を見たはやては速やかにその場にいる全員に声をかける。

 

「はーいフォワード陣、今から訓練や。今市民がテロリストに追われてる、それを救助して欲しい。OK?」

 

「部隊長!私達その為に呼ばれたんですか!?」

 

「エリオとキャロ、いい?今のギン姉は邪魔するなら本気でぶん殴るから気を付けてね」

 

「それもう野獣ですよね!?」

 

「あ、あの…家政婦さん今捕まって地球のプロレス技で言うコブラツイストをくらってます…」

 

「…あー!もう行くわよ!家政婦奪還よ!」

 

「じゃあ私達はデバイス案をまとめてくるね」

 

「あっ、ズルいですよなのはさん!」

 

 

 

…数時間後

 

恵也をボコボコにしたギンガと、それを必死に止めたスバルはなのはの自室で夕食にお呼ばれしていた。

 

「すいません、久々だったから本気で…家政婦さん自室で寝込んでるって聞いたんですが…」

 

「良いの良いの!久々に怨みを晴らせたから満足なの!」

 

「なのはさん、それ元の堕落した生活をしてるからじゃ…」

 

「なんか言った?」

 

「何でもないデス」

 

そんな三人に珈琲が出される。出したのはアイナさん、彼女は少し緊張しているのかぎこちなくなっており、お辞儀をした後に別室にいるヴィヴィオの元へと行ってしまう。

 

「あの人は…」

 

「アイナさん、ヴィヴィオの世話をしてもらうために呼んだんだけど…ちょーっと家政婦さんと合わなくて…」

 

「…あー…けーや…」

 

「…すいませんなのはさん、彼がちょっと面倒を…」

 

「と言っても家政婦さんが姑みたいに小突くのが悪いんだけどね!それでちょっとなんかあったのかと思って今回…ね?」

 

二人は少し納得いったような顔でうんうんと頷く。思い当たる節があるようだ。

 

「やっぱりお母さんのが糸を引いてるよね…」

 

「あの時ちょっと様子変だったしね…」

 

「やっぱり何かあったんだね」

 

「ちょっと話が長くなるけど大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ」

 

 

 

※※※

 

 

路地裏で少年は、行く宛もなくさ迷っていた。少年は両親は共々行方が分からず、気が付いたら少量の金と共に捨てられていた。それ以降は野良生活…住むところを歩いて探し、気に入らない奴が居たら手段を選ばないで倒す。懐には常に武器が握られていた。

 

少年は独り、ボロボロの身なりで傷だらけのままごみ捨て場で生ゴミを漁っている。

 

「…無いなぁ。喰えそうなの…腹へった」

 

「あら、坊や…貴方がここいらのボスかしら?他の子に聞いても貴方のことが出てくるの。そんなところで何してるの?」

 

振り向くとそこにはメイド服を着た…少し年老いた女性が居た。少年はぶっ飛ばした誰かがチクったのかと思いながら…ふと思い付いて答えを返す。

 

「…そう、両親も蒸発して…こんな生活を…」

 

「あぁ、なんて悲しいのかしら。おいで、パンくらい…」

 

その言葉が言い終わらないうちに少年はメイドに向かって疾走する、懐から手製の錆びたナイフを取り出してメイドの胸に体当たりするように突き刺す!

 

「パンより金を置いてけ!この糞ババア!」

 

「…うーん、ちょっと手癖悪いわぁ…」

 

「…ん?」

 

胸をナイフで突いた筈だ、何故元気なんだ?平気なはずがない。

 

「なんでだ、刺した筈…」

 

刺し傷の方を良くみると、錆び付いた刀身は黒い穴に吸い込まれている。黒い穴が閉じ、中に入っていた刀身がパキッと折れて呑み込まれてしまった。メイドには傷ひとつ付いてない。

 

「イキナリ挨拶にナイフなんて…うぅーん、その反骨精神…叩き上げたい…!」

 

「な、何するんだ」

 

「君を、調教するわ。決めたわ。この子にするわ」

 

そういってメイドは少年をひょいと担いだ。

 

「わっ!」

 

「孤児を立派な職業マンにする…これね!実に良いわ!テンション上がってきた!キミを立派な家政婦にしてあげるからねぇー…!!」

 

「これユーカイじゃ!?えっ!?何!?家政婦!?俺男だよ!」

 

「私が家政婦なんだから教わる貴方も家政婦なのよ!職業に性別は関係無し!いくわよー!」

 

メイドは担いだまま表通りに出ると高笑いしながら走った!

 

「はーはっはっはっは!!サーヴァントハント成功ぅーーーー!!」

 

「局員さーん!助けてぇぇぇぇえええ!!誘拐ですぅぅううううう!!頭おかしいのに拐われるぅーーー!!」

 

「さっきから怒ったり怖がったり騒いだり忙しいわねぇ…情緒不安定なのかしら?」

 

「アンタのペースについていけないんだよぉ!!」

 

 

 

 

あれから数週間の日にちがたった。あの日、このメイドに誘拐され少年は…いや、間藤恵也は色々な手続きを取ってこのメイドの世話になっている。どういうわけかこのメイド方々に顔が利くらしく、家庭教師や衣類、本などが容易く手に入れられる。

 

「ハラヘリー!ハラヘリー!恵也!まだなの!?そんなんじゃまだまだよ!」

 

「もうすぐ出来ますからアニメ見てて待っててください」

 

「アニメじゃない!特撮よ!日曜の朝に見るヒーローは最高ね!!元気出るわ!レンタルだけどね!」

 

「へー」

 

「恵也!あなたも観れば分かるわよ!!」

 

このメイドはエメリー、生まれは地球と言う所で数々の使用人を育てて来た家政婦…らしい。と言うのも全てこの人の自称で普段は俺に家政婦の極意とやらを教え、余った時間で魔法で取り寄せた地球の特撮?を見ている。黒い穴に顔を突っ込んで取引する様は少し恐ろしくも感じる…そして今、家政婦の教育によって朝御飯を作っている。

 

「最強フォームからまさかの相棒のメダルで変身!?よして!それ割れてる!!」

 

「…ご飯、出来ましたが」

 

「まって!?今良いとこだから…あっ、あーーーーッ!!!……うっそぉ…割れた…割れたよぉ…」

 

「…さっ、切り良いからもう食べましょう?」

 

「…いただきます…あっ、昼のデザートにアイス良いかしら?あ、後ベルトの注文も」

 

「わかりました、前者のみ叶えましょう。ベルトは前のがありますよね?そんなポンポン買ったら破綻しますよ」

 

こうわがままぶっているのは本人曰く「主人の命令に如何様にも対応する対応力を鍛える特訓!でも度が過ぎたら反対するのよ!」…らしい。口調も直された、少しでも丁寧語を使わないと張り手を食らう。

 

彼女からは本当に色々な事を教わった。世の中を上手に渡っていく術、彼女が得意な魔法である召喚、転移魔法の使い方、過去にあったトラブルの片付け方を…

 

「恵也、集中なさい。場所と場所を点で結ぶのよ…そしたら後はガッとやってポイよ。なんでも出したい放題よ」

 

「……エミリー、流石にその説明で高等魔法が出来るとは思えませんが」

 

「要はイメージ!さっさとしなさい!」

 

「そんな簡単にレアスキルが…」

 

目の前に手をかざし念じる、場所は部屋の隅のあるぬいぐるみ…場所は把握してる。召喚なんて高等な事はするな、ルートを作れ。ありったけの魔力で、演算なんて関係なく感覚だけで…道を…

 

…すると目の前の空間に暗い穴が空いた。そこに手を突っ込んで手を伸ばし続けるとふわふわした物に当たる。

 

「…ぬいぐるみ、掴みました」

 

「やったじゃないの!さ?早く引き抜いて?」

 

「あ、あの。魔力がガツガツ減ってるんですが…動くのがしんどく…」

 

「あっ、それ手を突っ込んだまま魔力切れたら腕切断されるわよ?」

 

「先に言ってください…っ!!」

 

後から分かったことだが……間藤恵也のリンカーコアは他の人より幾分か小さく、魔導師としては大成出来ないと判断された…だがエミリーはそれでも自分の知ってることを教えた。バリアジャケットが張れないなら服に魔力を張って代わりに、ある場所が把握できるなら限定的に物を召喚出来るように特訓を…

 

…そして一年後、間藤恵也の初仕事が始まった。

 

「…えぇクイント、こちらが私が育てた使用人よ。ほら恵也?ご挨拶は?」

 

「間藤恵也です。不束な者ですがどうぞよろしくお願い致します」

 

「…んー…?」

 

相手は管理局捜査官をしている人だった、家族内訳は父母と姉妹。少し緊張しながらも自分なりに丁寧に挨拶したつもりだったが…こちらをジロジロ見ている…見た感じはあまりウケがよろしくなかったようだ…

 

「何かあったクイント?」

 

「んー…エメリー?この子初仕事?」

 

「初仕事よ」

 

「あらやっぱり。ギンガとスバルも初めて会った時こんな顔してたわ。じゃあ私色々教えちゃっても良い?」

 

「良いわよ。あっ、もしかしてクイント…」

 

「私、息子も欲しかったのよ」

 

「恵也、彼女はもうちょっと子供らしい反応が良かったらしいわ」

 

「はい?」

 

少し呆れた様子を見せるエメリーを他所にクイントはしゃがんで目線を合わせてこちらの手を握り締めた。

 

「恵也君、趣味は何かな?」

 

「スポーツです…」

 

「エメリー!確か事前の話では格闘技に興味あったって言ってたわよね!?良し!それじゃあお義母さんが娘共々色々教えてあげるわね!」

 

「えっ!?えぇ!?」

 

「恵也、任期の方は貴方が一人前になるまでよ。まぁ今はアレだけどクイントは家庭を持っている母親、しっかり¨学んで¨来なさい」

 

「…はい」

 

恵也はこれは仕事ではなく、ある種の研修なのだと感じ返事をした。家庭を失った自分への気遣い…そして、子が産めないクイントを思っての事なのだと思った。

 

 

 

 

ナカジマ家での出来事は恵也にとって楽しいものだった。

 

「おい恵也、悪いが買い物を頼んでも…何?生活必需品は買った?あー…助かった。ありがとうな」

 

ゲンヤさんはとても優しく家族を想っている恵也にとっての理想の父親だった。

 

「けーや!あそぼ!」

 

「家政婦さん!組み手お願いします!」

 

スバルとギンガは…ここにきて暫くたった日に彼女らの秘密をゲンヤさんとクイントさんから聞いた。だがそんなのは関係無い、変わらずに二人と接した。

 

「恵也ー?ストライクアーツしましょう?今日は何を教えようかしら?」

 

クイントさんとは毎日組み手やストライクアーツをした。彼女はこちらのレベルに合わせてるがその顔はにこやかなものであった。恵也自身も楽しい事だったと記憶している…たまに、ガチスパーリングされる時もあったが。

 

「恵也、今度捜査に犯人を油断させる為に子供を募集してるのだけど…えっ?行く?本当?…ようし!貴方が何かあったら私がそいつをぶちのめすわ!だから安心して!」

 

たまに自分の仕事について軽くこちらに話すこともあり、その事件にも関わった事もあった。

 

「恵也ー、暑い。冷たいご飯食べたい」

 

楽しい日々、いつまでも続くと思ってた。

 

「ちょっと聞いて恵也!あのクソ上司が…」

 

一人前になったらエミリーに無理言って…この人の側に居たいと願ったら、許してくれるだろうか。

 

「恵也!今日は魔力操作が上手い貴方にバリアジャケットを貫通する必殺技を伝授しましょう!その名はフォーカススマッシュ!必要魔力は結構あるけど大丈夫よね!思い付きの技だけどきっとできる!」

 

教えられた必殺技、上手く出来ない。出来たら真っ先にクイントさん見せてあげよう…どうだ思い付きを実現してやったぞと。

 

「うぅー…後もうちょっとだけ寝かせ…分かった、分かったからつつかないでけーや…起きるから…」

 

…いつまでも、行かないで欲しい

 

「…恵也、今回の事件に貴方は連れていけない。分かって」

 

嫌だ、行く。

 

「そんな泣きそうな顔をしないで、大丈夫。今日も恵也のご飯食べに帰るから…何時ものように送ってちょうだい?」

 

 

「あぁ、泣いちゃった。こんなところスバルやギンガに見せられないじゃない。男の子が泣いちゃダメ、泣いて良いのは嬉しい時の嬉し涙よ」

 

じゃあモノもいで男の子止める。

 

「困ったわ…そこまでなの。じゃあ…こうしましょう?貴方の大切なものが無くしそうになったら…貴方が守って?はいこれ。貴方のために服を買ったのよ?これを着て、明日帰る私に見せてちょうだい…これは燕尾服って言うの。本来は執事さんとかが着るものだけど…何だかヒーローマント見たいでカッコ良いと思わない?」

 

…分かった、着るよ。

 

「じゃあ行くわ。スバルとギンガの事をよろしくね?」

 

…さよなら

 

※※※

 

「…んぁ…ここは…?」

 

目を開けるとそこは自室の天井、意識がはっきりすると同時に身体に痛みが走り、記憶が流れるように思い出される。自分はあの時に擬戦でギンガにボコボコにされたのだ。

 

昔の夢を見ていたせいで。気分も少し悪かった。

 

「…懐かしい思い出だったな」

 

「…家政婦さん?」

 

横から声がしてそちらを向くと六課の制服姿の高町なのはがそこにいる。彼女は心配そうにこちらを向いていた。

 

「あー…御主人、仕事の方は」

 

「早めに終わらせたよ。ヴィヴィオもアイナさんとザフィーラが見てる、」

 

彼女は少し気まずそうに、そう話した。

 

「…あのね、家政婦さん苦しそうだった。うわ言で行かないでって言ってた…何かあったの?」

 

「…」

 

「昔の事?スバル達から聞いたよ…大事な人を亡くしたみたいだね」

 

どうやら自分は相当うなされていた様だ。ここで何もないと話しても余計に心配されるだけ、ならある程度話した方が良いだろう。

 

「…昔の事、ごみ捨て場で拾われて家政婦として育てられ…今度は最初に息子のように私を見てくれ最初の主人を…」

 

黙るなのはを尻目に、恵也はつらつらとこぼれだすように話し出す。

 

「あの時、無理矢理ついていけば変わったかもしれない、あの時強ければクイントさんを無くさないで済んだと…だから、必死になった。どんな事にも手を伸ばせるように努力したし、自分に出来る精一杯を鍛えた…けどそれでも度を越えた敵には敵わない…アイナさんの件だってそうだ。優しくすりゃ良いのに万一を考えて凄い厳しくなってしまう…本当は、よくやってくれてるのに。俺最低だわ…年上だぞ相手…」

 

「家政婦さんも、よくやってると思うよ?そんな深く難しいこと考え無いでもいいと思うよ」

 

「それができれば苦労はしないと…」

 

するとなのははすっとアルコールの匂いがするコップを恵也に差し出した。

 

「臭っ…御主人、私は未成年でそもそもアルコールは…」

 

「嫌なことあったら酒呑んで忘れる!これに限るよ!私も入院してたときこうやって励まされたの!」

 

「…誰ですかそんなふざけた悪友は」

 

「忘れちゃった!ささっ、飲も飲も!家政婦さん未成年だけどかんけーない!!飲め!主人命令なの!はいお猪口!これ飲んで忘れて明日からシャキッとする!」

 

「…では。厚意に甘えさせて貰いましょうか…御主人?」

 

「何?」

 

「気遣いありがとう」

 

「…さっ!早く呑もう!これ高いやつなんだよ」

 

「…はいはい」

 

…その翌日から、家政婦の間藤恵也がアイナさんに向ける目が優しくなった。



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