TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者 (ヒーロー好き)
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恋姫†無双
第一席 高杉、神様に会うのこと


TINAMIからの投稿です


「さて、家までもう少しだな」

という少年が一人

 

彼の名前は高杉勇作(たかすぎゆうさく)17歳。どこにでもいる普通の高校生だ。だが彼には両親はいない。彼が3歳の時、交通事故で両親はなくなったのだ。その後、彼は親戚に引き取られてた。裕福ではなかったが、ここまで生活をしてきた。学校では、あまり友達は出来ず、一人でいることが多かった。

 

「この角を曲がれば家だ」

と曲がろうとした時

 

「ん?」

何かが目に、止まった

 

彼が見たのは、楽しそうに話している。自分と同じ年の高校生の姿だった。

 

「楽しそうだな・・・」

としばらく見て

 

「さて、行くか」

と歩こうとした時

 

ドン!!

 

「うっ!」

頭に強い衝撃が来た

 

「やばい」

と俺は倒れ意識を失った

 

 

 

 

 

 

目が覚めると暗い場所にいた

 

「あれ、此処はどこなんだ?」

と辺りを見たが何も見えない

 

「確か俺は、頭に衝撃が走って、それで気を失ったんだ」

 

「おお、ここに居たのか」

と声が聞こえた方に視線を向けると

 

「貴方は?」

そこにお爺さんが居た

 

「わしか?わしは神様だ」

 

「神様?」

 

「そうじゃ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「なんじゃ。その信じていなさそうな視線は?」

 

「(当り前だ!いきなり出てきて、神様だと言われても信じられるか!?)」

 

「まあ、そうじゃそうな」

 

「!?」

何も言っていないのにまるで俺が言ったことを聞こえたかのように言った

 

「そう警戒するな」

 

「でも・・・」

 

「いいから・・・」

 

「わかりました」

と俺は警戒を解いた

 

「(それにしてもここはどこなんだ?)」

と思っていると

 

「此処はあの世とこの世の境だ」

 

「へ!?」

何も言っていないのになんで

 

「わしは神様じゃ!お主が考えていることなどわかる」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?まだ信じられないのか?」

 

「すいません。まだちょっと・・・」

 

「なら、これならどうじゃ!」

と神様は何もない所から、物や建物を出現させた

 

「!?」

突然のことに驚いた

 

「どうだ」

 

「信じます。疑ってごめんなさい」

と頭を下げた

 

「いいんじゃ。むしろ謝るのは、わしの方じゃ!」

 

「どういう事ですか・・・」

 

「実はの・・・」

 

 

 

 

 

 

「と言う訳じゃ!」

 

「・・・・・・・・・・」

俺は話を聞いて言葉も出なかった

 

 

話を聞くとお爺さんは此処から下界の様子を見ていたが、この爺さんは女風呂を覗いていたらしい。見ているのに夢中になってしまい、思わず杖を落としてしまい、そして俺の頭に当たり、死なせてしまったということ

 

「(こんな変態神様のせいで死んだのかよ!?)」

 

「変態ではないわ」

 

「何処がだ!」

 

「うるさい!これからお主を転生させようとしようと思ったのに・・・」

 

「転生?」

 

「そうじゃ!わしのミスで死なせてしまったのじゃが、生き返させることは出来んが、変わりに転生をさせてやる」

 

「そうなんですか?でもどこに?」

 

「それは教えられん!」

 

「ケチ」

 

「ケチで結構。そのかわりいくつか能力を与える」

 

「良いですか?」

 

「良い。ただし不老不死以外な・・・」

 

「そっか。どんな能力を貰おうかな・・・」

と俺は考えて、神様に言った

 

「言って良いですか?」

 

「良い。なんじゃ?」

 

「一つ目は戦国BASARAの伊達政宗の使う技が使えるようにしてくれ。2つ目はONE PIECEの覇気三種をくれ。あとこの2つを最大まで極めた力に」

 

「わかった」

 

「あと武器もお願いします」

 

「どんな武器がいい?」

 

「戦国BASARA3宴で使っている。『応龍』をお願いします。これも最大まで強くしたのに」

 

「了解じゃ。他は何かないか」

 

「後、行く場所の文字がわかるようにしてください。あと言葉も」

 

「了解。けど言葉は大丈夫じゃ。わかるようにしてあるし文字は読めるようにしてやる」

 

「ありがとう」

 

「もういいか?」

 

「後は良いよ」

 

「しかし、この2つだけで良いのか?欲のない男じゃな・・・」

 

「別にいいよ。そうだ神様」

 

「何じゃ?」

 

「少し練習したいんだけど良い」

 

「別に良いが・・・何でじゃ?」

 

「良いじゃん別に・・・」

 

「わかった。わしが付きっ切りで教えてやろう」

 

「お願いします」

 

 

 

 

 

ーーーー半年後ーーーー

 

「たくましくなったのー」

 

「そうですか?」

 

「そうじゃ。どうじゃ?体の調子は?」

 

「絶好調だよ」

 

「そうか。では送るぞ」

 

「お願いします。師匠」

 

「おいおい、師匠は無いじゃろ」

 

「良いじゃないですか?呼んで」

 

「そうじゃの・・・では送るぞ」

 

「はい」

 

と言った瞬間、俺の下に穴が開いた

 

「へ?」

 

「頑張るのじゃ」

 

「もう女湯を覗くなよーーーー」

と言いながら落ちて行った

 

「余計なお世話じゃ・・・・・・さて、また覗くか」

と行こうとした時

 

「そうじゃ、師匠と読んでくれた礼じゃ。高杉の行く世界にこの噂を流しておくか・・・」

と姿を消した




主人公詳細

名前:高杉 勇作 たかすぎ ゆうさく

年齢:17歳

身長:180cm

体重:76㎏

容姿:世間からいうとイケメンの容姿。服装は水色シャツに黒のベストを着用。さらに青いロングコートを羽織っており、下は黒のストレートパンツ。靴は黒のシューズ

性格:マイペースで穏やか。しかし、人と関わりが少ないこともあり、悲しいことは一人で抱えることが多い。そのせいか、女性との関わりはほとんどない。鈍感ではないが、避けることが多い

好き嫌い:特になし


武器:応龍(おうりゅう)
   ・ 武器レベル200(MAX)攻撃時に確率で雷属性効果が付加される
   ・武器に装備している装具 黄金の鉾×3 雷のお守り 韋駄天抄 猛進の荒馬

技:PHANTOM DIVE(ファントムダイブ)

  DEATH FANG(デスファング) 
六爪流時 DEATH BITE (デスバイト)

  JET-X(ジェット-エックス) 
六爪流時 X-BOLT(エックス-ボルト)

  MAGNUM STEP (マグナムステップ)
六爪流時 MAGNUM STRIKE (マグナムストライク)

  CRAZY STORM (クレイジーストーム)
六爪流時 CRAZY STREAM (クレイジーストリーム)

奥義:HELL DRAGON (ヘルドラゴン)

   WAR DANCE (ウォーダンス)

   TESTAMENT (テスタメント)

能力

見聞色の覇気(けんぶんしょくのはき)レベル150 相手の気配をより強く感じる覇気。この力を高めることで、視界に入らない敵の位置・数、また敵が次の瞬間何をするか先読みする事ができる。

武装色の覇気(ぶそうしょくのはき)レベル170 体の周囲に見えない鎧のような力を作り出す覇気。より固い「鎧」は防御だけではなく、攻撃にも転用できる。武器に纏わせ、威力を上げることも可能。彼は修行で威力だけでなく意識すれば雷属性を纏った攻撃が出来る

覇王色の覇気(はおうしょくのはき)レベル190 周囲を威圧する力であり、発動すると、圧倒的な実力差がある相手(戦うまでもないほど弱い相手)を気絶させる。またその矛先を特定の人物だけに絞ることができる


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第二席 高杉、関羽と出会うのこと

辺りに桃の木が生い茂り桃の花びらが風で舞う光景は正に桃園。その桃園の一部の空間が軋み大きな口を開けた。その中から一人の女の人が出てきた。手には青龍偃月刀が握っていた

 

「桃か・・・そろそろ出てきたらどうだ?」

すると木の陰から5人の男が出てきた

 

「此処は俺たちの縄張りでな・・・」

とリーダーらしき人が言ってきた

 

「通してほしかったら金めの物をおいていきな・・・」

 

「まったく、世の末だな」

とフードをとった。すると小さい男が黒髪を見て、言った

 

「ん?兄貴。こいつもしかして黒髪の山賊狩りじゃ?」

 

「ん?何じゃそりゃ?」

 

「知らねんですか!あっちこっちの山で襲いかかった山賊を返り討ちにしている黒髪の美しい武芸者が居るって・・・最近、巷じゃチョイと話題になってますぜぇ」

 

「はん!だからってビビることわねぇ」

と剣を突き出した

 

「ご自慢の黒髪。首ごとたたきって兜の飾りにしてやるぜぇ!」

 

「やれやれ・・・」

とマントをとり、武器を突き出した

 

「我が名は関羽!乱世に乗じて婿の民草を苦しめる悪党ども。これまでの悪行を地獄で詫びたくば!かかってこい!」

 

 

 

 

ちょうどその頃、少し離れた所には

 

「痛ってー。着地に失敗した」

変態神様によって送られた高杉がいた

 

「ん?ここは何処だろ・・・日本ではないなー」

と考えていると

 

「ん?近くに人が6人いるな。その人たちに聞いてみよう」

とその場所に向かった

 

 

その場所に行くと、五人の賊と長い黒髪の女性がいた。女性は偃月刀を構え賊達と戦おうとしている。

 

「(何をしているんだ?)」

と見ていると黒髪の女性は五人の賊を吹っ飛ばした

 

「(一瞬で倒した。強いなあの人)」

と見ていると

 

「隠れていないで出てきたらどうだ」

 

「!?(気づかれた。出てきた方がいいな・・・)」

と出て行った

 

「すいません。つい見てしまって・・・」

 

「お主、何者だ?」

 

「俺は高杉勇作と言います」

 

「姓は高、名は杉、字は勇作でよろしいですか?」

 

「え?いや姓は高杉で名が勇作、字って言うのは無いよ。(こんなことを聞いてくるなんて何でだ?)」

 

「字が無い!珍しい名ですね?」

 

「あのー貴方は?」

 

「はい。姓は関、名は羽、字は雲長と申します。」

 

「・・・・・え?」

 

なんて言った

 

「すいませんもう一回言ってもらえますか」

 

「姓は関、名は羽、字は雲長と申します。」

 

「(そんな馬鹿な・・・・・・この人の目はうそ言っている人の目じゃないし・・・まさか!)」

 

「ちょっと聞くけど、今って後漢の時代?」

 

「いかにも、それがなにか?」

 

「(嘘だろ?俺、今三国志の時代に居るのかよ。とんでもない所に送ってくれたな・・・)」

 

「如何しました?」

 

「いや、なんでもありません」

 

「そうですか・・・」

 

「あのー近くに村はありますか?」

 

「ありますが・・・」

 

「あのー同行しても構いませんか?」

 

「ええ、構いませんけど・・・」

 

「ありがとうございます」

 

「良いですよ。では参りましょう」

 

「はい」

と俺は関羽と名乗る女性と共に近くの村まで同行することなった

 

 

「(何なのだ?この御仁は。見たことのない服を着ているし、腰に剣なのか?それも左右に3本ずつ刺している。何者なんだ?)」



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第三席 高杉、張飛と会うのこと

共に村へ行く事になった高杉と関羽は歩き続け村が見える所まで来た。通り掛かろうとした一本の木の隣に土が盛られていて二人は足を止めた。

 

「(お墓?)」

見ると札が貼られて花が供えてある事からお墓だと分かった。そこに村から歩いてきた籠を背負った老婆が二人の前で止まった。

 

「最近はこの辺りまで賊が出るようになってのぅ。身ぐるみ剥がされて殺されたもんも何人もおってな、花はその人らのせめてもの手向けじゃよ」

 

「そうだったのですか」

 

「お役人様がしっかりしとったら物騒な事は起こらんじゃたろうに。いやな世の中になったもんだねぇ」

 

二人はお墓に手を合わせ拝み老婆は再び歩きだし二人が来た方へ進んだ。関羽はその老婆の背中を見ながら悲しい顔をして見ていた。

「(俺の居た世界じゃ考えなれないなーそこまでひどいのかこの国は・・・)」

 

そして二人は歩きだし村に入った。

 

「(こんな村の近くまで賊が出没しているとは。一体、この国はどうなっているのだ)」

 

「どうしました?真剣な表情をしていますけど・・・」

 

「いえ何も。それより「ひいぃ、出たぁ」賊か!うわぁ!?」

 

村を歩き続けていたら突如聞こえた悲鳴に身構えた二人だが鶏がいきなり目の前に現れて関羽は驚き声をあげた。

 

「退けどけどけぇー!!鈴々山賊団のお通りなのだぁーー!!」

 

鶏の後に続くように「鈴」の文字の旗を掲げ、豚に乗ったショートカットの虎の髪飾りをした少女を先頭に子供達がこちらに走ってくる。

 

「こ、子供!?」

 

「な、何だ!?」

 

「きゃっ」

 

「あぶねっ」

 

子供達の前で逃げていた鶏を咄嗟に避けたが尻餅をついてしまった関羽。勇作は避け道の脇に避け子供達は二人の前を通り過ぎ村から出て行った。

 

「な、何だったんだ?」

 

「嵐のように去っていたなー・・・」

 

 

 

 

 

「フッハハ!それは災難だったねぇ」

 

「笑い事では無い」

 

「そうですよ」

 

飯屋に入った二人は炒飯を食べながら女将に先程の騒動の事を話した。

 

「何だのだあの悪ガキ共は鈴々山賊団とか名乗っていたが」

 

「名前通り、"鈴々"って子が大将の悪ガキ集団さねぇ。ま、やっていることは畑荒らしたり、牛にイタズラしたりって事だけどねぇ。そういやぁ、この前なんか庄屋様の家の塀にバッカデッカイ庄屋様の似顔絵を落書きしとったけどアレは傑作だったねぇ」

 

「それにしても親や何をしてるんだ。山賊気取りの悪ガキをほって置くなんて」

 

「あの子、親は居ないんだよ。」

 

「えっ」

 

「・・・・・・」

 

「何でも小さい頃に押し行って来た賊に両親を。その後、この村の近くの山小屋に住んでいた母方のじいさんに引き取られたんだけどね。そのじいさんも亡くなって、今は・・・一人」

 

「・・・」

 

「あの子だって、根はいい子なんだよ。今はただ羽目を外しているだけ、手下の子供達の親も大目に見てやっているのよ」

 

「(そうなんだ)」

 

鈴々の事情を知り黙ってしまった。関羽は重苦しく言った。

 

「ところで・・女将・・実は折り入って頼みがあるのだが」

 

「頼み?」

 

「俺もあるのですが」

 

「え?」

 

 

 

一方、その頃。鈴々山賊団は山小屋(鈴々の家)に居た。中から笑い声が聞こえ楽しそうだった。

 

「今日も大成功!!」

 

「そういやぁ、この間の庄屋の家の塀に書いてたアレ。消されちゃってたよなぁ~」

 

「傑作だったのに勿体ないよね。」

 

「ないよね~」

 

「なぁに、今度はもぉっとスゴイやつを書いてやるからイイのだぁー!!」

 

「さすが、親びん!」

 

「鈴々山賊団、最高!」

 

「「「最高!」」」

 

「「「アッハハハ」」」

 

〈カーカー〉

 

子供達は楽しく笑いあった時、カラスの鳴き声が聞こえ外は夕方だった。

 

「そろそろ帰る?」

 

「うん!」

 

「あっ」

 

「アタシも」

 

「俺も」

 

「アタイもっと」

 

「親びん、さよなら~」

 

「また明日~」

 

「うむ、また明日山賊するのだぁー!!」

 

鈴々は帰る手下の子供達に元気に手を振り続けた。見送り終わった鈴々は家の中に入っていったが、悲しい顔をしていた。

 

「明日になれば、また皆に会えるのだ。明日になれば・・・」

 

 

 

 

 

時間は過ぎ、夜。勇作と関羽は昼間の女将の店で飯代の立て替えのため働いていた後、寝屋に倉庫を借りた。

 

「ふぅ、あの女将。結構人使いが荒いなぁ」

 

「でも此処を使わせてくれるんですからありがたいですね」

 

「確かに私のいつもの野宿に比べたら天国です」

 

「さて、寝ますか」

 

「そうですね。おやすみなさい、高杉殿」

 

「おやすみなさい」

 

関羽は横になりながら昼間の鈴々の話を思い出し目を閉じた。

 

「賊に・・両親を・・か」

 

 

 

 

 

 

 

「(此処に来るとき見た墓もそうだったけど、鈴々って子も相当つらい思いをしたんだな。あの子だけじゃない。この世界からして相当いるんだろうなー。俺に出来ることがあるのかな・・・)」



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第四席 勇作と関羽、張飛と兄妹(姉妹)の契りを結ぶのこと

夜が明けた朝。勇作と関羽は厨房で働いていた。

 

「ハァ!」

 

関羽は大根を宙に投げ、見事な包丁捌きで切った。

 

「たいしたもんだねぇ、けどあの子みたいに普通に切れないのかい。」

 

女将の指差す先には普通に手際よく野菜を切っていた勇作がいた。

 

「ちゃんとした料理は余りやったことがないので、つい。」

 

「まぁ、いいさ。それが済んだら次に二人で薪割りに店の掃除。納屋の片付けも頼もうか。あと、山に行って芝を刈ってきておくれ。急いでだよ。」

 

「えっ!い、いやあの・・ちょっと本当に人使い荒くないか・・」

 

「頑張りましょう、関羽殿」

 

「はい」

 

「(と言うかすごい包丁さばきだったなー)」

女将の人使いの荒さに軽く涙を流す関羽を励ます勇作達は順に仕事を終わらせ、芝刈りの帰り道。

 

「ん?(人が集まっているな)」

 

「どうしました?」

 

「あれ、何でしょう?」

 

勇作が指差す先には大きな家の前で人が集まっていた。二人はそこに行くと敷地の中で偉そうな男と兵士達が会話をしていた。

 

「いいですか、相手は子供と言っても手がつけられない暴れ者。油断は禁物ですぞ!」

 

関羽は近くの女性に聞いた。

 

「何かあったのですか?」

 

「何でも今からお役人に鈴々を捕まえて貰うんですって。」

 

「お役人にって、子供相手に大袈裟な。」

 

「庄屋様、この間の落書きが相当頭にきなさったらしくて。今回ばかりは堪忍袋の緒が切れたと」

 

「しかしお役人も本物の山賊には怖くて手を出さんくせに、こんな時だけ・・・」

 

「捕まったらどうなるんじゃろう」

 

「まさか殺されたりはせんじゃろうけど、鞭で打たれたりはするかもの。惨いことじゃ・・・」

 

「(相当、腰抜けの役人なのかなー)」

と思っていると

 

「庄屋殿、お話の途中で申し訳ないが」

 

関羽は庄屋に所に居て話し掛けていた

 

「(関羽殿・・・)」

 

「何だ?お前は」

 

「私は旅の武芸者で名は関羽、字は雲長と申す者。聞くところによると鈴々なる者は、大人でも手を焼く暴れ者とか。万が一不覚を取って、役人の方々が怪我をされてはつまらぬでしょう。ここは、ひとつ私に任せてくれぬか」

 

「アンタが!?確かに物騒な物を持っているが本当に強いのか?」

 

「これはちょっと・・・もちろん腕にはいささか覚えがあります。いくら暴れ者とはいえ所詮は子供。本物の山賊に比べれば」

 

「ああ!?もしかして貴様が最近噂の黒髪の山賊狩りでは!」

 

「なに?!あんたが!」

 

関羽を見て突然、役人の一人が声をあげ、庄屋もそれを聞いて驚いた。

 

「まあ///自分で名乗った訳ではないですが・・」

 

「「「「えぇ!」」」」

 

「髪が綺麗な絶世の美女と聞いたのだが」

 

「噂は当てにならんなぁ」

 

「え、えぇと#それはどういう意味ですか#」

 

「本人の前でそれは失礼でしょ」

 

「ん?お主は?」

 

「俺は高杉と申します。その話、俺にもお任せくれますか?」

 

「アンタも?」

 

「高杉殿」

 

「どうする?」「しかし」

 

関話し合う役人達。結果、鈴々の事は二人に任される事になった所を男の子が見ていた。

 

「(ん?一人見ていたのかなー。向かっていったということは知らせに言ったなー」

 

 

 

 

 

 

「これが一本杉かぁ」

 

「左の道に行けば、あとは道なりだそうですよ」

 

関羽と勇作は鈴々の家へと行くため山道を歩いていた。

 

「木の上に一人いるなー」

 

「え?(何言っているのだ。高杉殿は)」

と思っていると

 

「危ない!」

 

(カァン!)

 

「なっ!? 」

と関羽は驚いた。

 

「(私でも分からなかったのに、なぜわかった?)」

関羽が見ると木の上には男の子が居てたくさんの石を持っていた。

 

「ここからは鈴々山賊団の縄張りだ!役人の手先はとっとと帰れ!」

 

「コラ!やめないか、当たったらどうする!」

 

「ふっ!はぁ!」

 

男の子の石攻撃を二人は打ち落としていく。

 

「うるさい!絶対親びんを捕まえさせないぞ!」

 

「あぁ、めんどくさい!こうなれば、ハァ!」

 

〈キィン!!〉

 

「うわぁー!」

 

「よっと!」

 

石攻撃に我慢ならず男の子が居る木を切り倒し落ちてきた男の子を勇作がキャッチした。

 

「はぁ~助かった~」

 

「それはどうかな#」

 

「ひいぃ、ギャアー!」

 

関羽にお仕置きをされた男の子の悲鳴が山に響き渡った。先に進んで行く二人を追いかけてくる男の子だがこちらが振り向くと岩などに隠れた。どうやら関羽のお仕置きは効いたようだ。二人は男の子を気にせず先へ進もうとしたら女の子達が二人の前に現れわれた。

 

「やぁ~い、バ~カ」

 

「ブス~」

 

「年増~」

 

「なぁに!誰が年増だ・・・誰が#」

 

「落ち着いてください。その先は落とし穴があります」

 

「はい?」

 

関羽の足元には明らかに落とし穴と分かるたくさんの葉っぱがあった。

 

「ありがとうございます、高杉殿。ふっふふ、子供にしては知恵を絞ったようだが、ハアァ!」

 

関羽は足元の落とし穴を飛び越えた。

 

「このような罠に掛かる関雲長ではないわぁ!」

 

子供達の前に見事な着地した関羽だが子供達はにやけていた。

 

「ん?キャア!!」

 

「関羽殿!?」

 

「う~、関雲長一生の不覚っ!」

さらに落とし穴があり関羽は落ちてしまった。

 

「(大丈夫なのか?)」

 

「やぁ~い、引っ掛かってやんの」

 

「デ~ブ」

 

「どうする?」

 

「おしっこ、かけちゃえ~」

 

「コラーー!!」

 

「「「「ひいぃ」」」」

 

怒った関羽が子供達にお仕置きをし子供達の悲鳴がまた響き渡った。

 

「親びんはお前達なんかに捕まらないからな」

 

「わかった、わかった」

 

「鈴々の事は悪いようにはしないよ、皆は村に帰ったほうがいいよ」

 

「本当に?」

 

「村に帰ったら親びんを役人に渡したりしない?」

 

「もちろん、約束する」

 

「ねぇ、帰ろう。」

 

「そうすっか!」

 

「うん」

 

関羽と勇作の言葉を信じ子供達は帰ることにしたが帰り際に。

 

「ブ~ス、デ~ブ、年増!お前達なんか親びんにやられちゃえ~」

 

「ハァ~」

 

「(良い友達を持って羨ましいなー)」

 

 

 

 

 

 

「まったく、確かにお前達に比べたら年上かもしれんが・・・」

 

関羽は子供達に言われた事を気にしていた。

 

「気にしているんですか?」

 

「いや、気にしてはいないです」

 

「そうですか」

 

歩き続けた二人は広い場所に着いた。二人は周りに誰か居ないかと見ながら進んでいくと高い崖の上に自分の身長より大きい得物〈蛇矛〉を手にした鈴々が立っていて関羽が声を掛けた。

 

「お前が鈴々か!」

 

「真名で呼ぶなぁ!真名を呼んでいいのは親しい者だけなのだ!だからお前に呼ばれる筋合いはないのだ!」

 

「なるほど、改めて名を聞こう!」

 

「鈴々の名は張飛、字は翼徳。寝た子も泣き出す鈴々山賊団の親びんなのだ!」

 

「(え?張飛!?あの子が。まさかと思っていたけど・・・やっぱり女の子なんだ)」

 

「君の手下の子は村に帰ったよ」

 

「えっ!」

 

勇作の言葉に驚いて崖を器用に飛び降りた。

 

「鈴々の友達に何をしたのだ!」

 

「なにちょっとしたお仕置きをな。」

 

「おのれ~#仲間の敵!十倍返しなのだ!」

 

「い、いや敵って死んでないからね」

 

「どうやら口で言っては聞いて貰えないようですね、ならば体でわからせてやる。来い」

 

「とおうりゃあ~!」

 

〈ガキィン!〉

 

関羽は張飛の攻撃を真っ向から攻撃した

 

「(いきなり来たなー)」

と勇作は簡単に避けた

 

「高杉殿は下がってください」

 

「はい」

と勇作は下がった

 

「ハァ!」

 

「ふっ、うりゃあ~!」

 

張飛は攻撃を避け反撃、関羽は攻撃を受けとめ飛んだ。

 

(重い、力押しでは不利か)

 

「ハァ!」

 

〈ガキィン!〉

 

「にゃあ!」

 

〈ガキィン!〉

 

関羽と張飛の攻防は夕方まで続いた。

 

「なかなか、しぶといな」

 

「そっちこそなのだ、でも鈴々の本気はここからのだ!うりゃあ~!」

 

「ハァ!」

 

〈ガキィン!〉

 

「(すごいなー。初めて見たよこんなの。最後まで見届けるか・・・」

 

今だまだ続く得物同士がぶつかり合う音は夜になってから止んだ。

 

 

「惜しいな」

 

「はぁ?何がなのだ?」

 

「これほどの強さを持ちながら、やっていることと言えば山賊ごっことはな」

 

「余計なお世話なのだ」

 

「張飛よ、お主、幼いころに親を殺されたようだな」

 

「そ、それがどうしたなのだ」

 

「私も幼いころに両親を失った」

 

「っ!?」

 

「(嘘!?)」

 

「村が戦に巻き込まれ父も母も・・・そして兄者も。私は誓ったのだ。こんな悲しみは繰り返したくない。二度とこんなことが起きぬよう目指そうと」

 

「それが鈴々と何の関係があるのだ」

 

「お主は変えたいと思わぬか?戦に巻き込まれ賊に襲われ罪のない人々が傷つきられていくこんな世の中を?」

 

「う、うりやーーーー」

と声を上げながら関羽に攻撃してきた。関羽は偃月刀で防御しようとしたが

 

〈ガキィン!〉

 

「(え?)」

勇作が割り込み張飛の攻撃を防いだ

 

「高杉殿」

 

「張飛」

 

「何なのだ?」

 

「お前は寂しかったんだろ?だからあんなことをしていたんだろ?」

 

「・・・そうなのだ。鈴々はずっと寂しくてどうしていいかわからなくて、それで・・それで」

 

と勇作は張飛をそっと抱きしめ

 

「もう大丈夫だから」

 

「う、うぇ~ん!」

 

と張飛はわんわん泣き出した。

 

 

 

 

 

 

張飛の家の風呂場。

 

関羽は張飛の家の湯舟に浸かっていた。

 

(妙な事になったな)

 

泣き止んだ張飛は勇作と関羽の前でふて腐れて座っていた。

 

『好きにしろ、それはどういうことだ?』

 

『勝負の途中で泣いちゃったからさっきのは鈴々の負けなのだ。だから勝った方は負けた方を好きにしていいのだ。』

 

『別に私達はお前をどうこうする訳ではない。』

 

『張飛が庄屋さんや村の人達に謝ってもらえばそれだけでいいんだよ』

 

『う、うん』

 

『謝る時は私達も付き添ってやるから明朝に村の入口で待ち合わせとしよう。では、帰るな』

 

『よ、夜の山道は危ないのだ。だから今日は家に泊まっていくのだ。』

 

『私は旅が長いだから、これくらい慣れている。じゃ・・・』

と関羽は帰ろうとしたが

 

『泊まっていくよ』

 

『高杉殿!?』

 

『良いじゃないですか。一晩ぐらい・・・』

 

『しかし・・・』

と関羽は張飛の悲しそうな表情を見て

 

『そうですね。一晩厄介になっていいか?』

 

『にゃはは!』

 

 

 

 

 

こうして二人は張飛の家に泊まることになった。

 

「ふぅ(不思議なお人だ、高杉殿は)」

 

「湯加減はどうなのだ~」

 

「調度よい加減だ。」

 

「なら、鈴々も入るのだ!突撃~!」

 

〈バァッシャーン〉

 

「コラ!飛び込むな!」

 

「にゃっ!」

 

「まったく、風呂の入り方も・・・ん?」

 

「ジ~」

 

「何だ?どうした?」

 

「おっぱい、大きいのだ~」

 

「な///」

 

「どうしたらそんなにバインバインになるのだ?」

 

「どうしたらって・・そうだ、志だ!胸に大志を抱けばその分だけ大きくなるはず・・」

 

「本当に?」

 

「まあ、そういう説も有ったり無かったり・・」

 

「ようし、だったら鈴々も大志を胸に抱くのだ!」

 

「そうだな、そうすればいい。大志を抱くことは悪いことじゃない」

 

 

 

 

 

「楽しそうだな」

 

勇作はお風呂場から聞こえてくる2人の声を聴いていた

 

「なんか姉妹みたいだな」

 

と勇作は座り壁に背中をつけ

「それにしても、すごい所に送られたんだなー俺」

と目を瞑った

 

「(俺に何が出来るだろう・・・)」

と思っていると

 

「高杉殿」

と声が聞こえ目を開けると関羽が居た

 

「上がったんですか?」

 

「はい」

 

「では入ってきます」

と俺はお風呂に入った

 

 

 

 

 

 

風呂から出た勇作は着替え部屋に行くと寝間着に着替えた関羽と張飛が寝床を用意し待っていた。

 

「すまんな。寝床まで貸してもらって」

 

「良いのだ。勝負に負けたのだから一晩一緒に寝るぐらいしょうがないのだ」

 

「なんか誤解を招きそうな表現だな・・・」

 

「(確かに)」

と思っていると

 

「お兄ちゃんも一緒に寝るのだ」

 

「うわっ!?」

と腕を引っ張り関羽とは反対の方に寝かせた

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい。でもこれじゃあ狭くなるけど良いの?」

 

「別にいいのだ!それにこんな風に誰かと一緒に寝るのは久しぶりで・・その全然嫌じゃなくて・・その父さまと母さまと一緒みたいで・・」

 

「バ、バカいえ!私はお主のような娘がいる歳ではない!せいぜい、姉と言ったところか・・」

 

「姉・・」

 

「そ、それ以前に私は子供ができるようなことは一度も///」

 

「(何言いってるんだ?)」

 

「姉だったら、お姉ちゃんだったらいいのか?」

 

「ま、まあそれだったらいいが・・」

 

「だったら今日から関羽は鈴々のお姉ちゃんなのだ」

 

「えっ!ま、待って・・姉ならいいと言ったがそういう意味じゃなくて・・」

 

「ダメなのか?(ウル)」

 

「ダ、ダメではないが」

 

「やったー!鈴々にお姉ちゃんが出来たのだ!」

 

張飛は嬉しくなって関羽に抱き着いた。

 

「よかったな、張飛」

 

「そ、そのお兄ちゃんにも鈴々のお兄ちゃんになってほしいのだ///」

 

「俺が?」

 

「ダメなのか?」

 

「別にいいよ!」

 

「やったー♪お兄ちゃんも出来たのだ!これで夜も・・寂しくないのだ」

 

張飛は勇作にも抱き着いた。二人はその姿を見て決心した。

 

「わかった、お主の姉になってやろう」

 

「俺も兄に」

 

「うん、ずっと一緒なのだ」

 

「ならば私と共に世の中を変えるための旅に出てくれぬか?」

 

「世の中を変えるため?」

 

「まあ、実際にはどうすれば世の中が変わるのかを探すと言ったところなんだがな。どうする?一緒に来るか?」

 

「当然なのだ!でも、お兄ちゃんは?」

 

関羽と共に行くことを決めた張飛は勇作がどうするのかと勇作の方を見た。

 

「もちろん、俺も行くよ」

 

「ありがとうございます、高杉殿」

 

「やったー!」

 

勇作も関羽と張飛と共に行くことを決め三人は仲良く川の字で寝た。

 

 

 

 

 

朝。

 

三人は村へ庄屋、村人達にこれまでの張飛の行いを謝りに行き許してくれた。そして、張飛が世直しの旅に出ることを知った村人達に見送れ三人は村を出た。

 

「よかったな、張飛。庄屋殿も村人も心よく見送ってくれて、これもお前がちゃんと謝ったからだぞ」

 

「う、うん」

 

三人は歩き続け一本杉の所まで来た。

 

「一本杉を右に行くぞ。それとも一度、小屋に戻るか?」

 

「う、ううん。いいのだ」

 

一本杉の右側の道を歩く三人。ここまで元気が無い張飛に関羽は声を掛けた。

 

「どうした?もう村が恋しくなったのか?」

 

「そうじゃないのだ。ただ、山賊団の皆が見送りに来てくれなかったから」

 

「・・・」

 

「きっと鈴々がいい親びんじゃなかったから・・・だから皆それで・・・」

 

「(ん?)そんなことはないみたいだよ、張飛。」

 

「えっ」

 

「ほら、アレ」

 

勇作が指差す先には小屋があり、屋根の上には山賊団の子供達が居た。

 

「親び~ん!!」

 

「武者修業して強くなってね~」

 

「皆、親びんが帰って来るのを待っているから~」

 

「親び~ん!」

 

「み、皆」

 

思わない山賊団の皆の登場に涙を流す張飛。

 

「泣くな、旅立ちに涙は不吉だぞ」

 

「そうだよ」

 

「泣いてなんかいないのだ」

 

「人は次に会う時まで別れ際の顔を覚えているものだ。立派な親びんならばそんな情けない顔を覚えて貰いたくはないだろう」

 

「そうだよ。笑顔で手を振ってやれ」

と張飛は涙をふき

 

「うん、皆~!行って来るのだ~!」

 

こうして旅が始まった

 

〈紀元二世紀も末の頃、この世は乱れに乱れておりました。そんな中、〉

〈力を蓄え密かに野心を研ぎ澄ます者〉

〈己の力を試さんと文武に励む者〉

〈護るべき者のために闘うとする者〉

〈様々な想いを胸に抱く者達があやなす運命の糸が絡み結ばれる〉

 

「そろそろマントは要らぬな」

 

「もう、春なのだ」

 

「そうだな(見つけよう。自分に何が出来るかを・・・)」

 

〈世紀末に舞う無双の姫達と転生者の行く末をとくとご覧あれ〉



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第五席 勇作、趙雲、公孫賛と会うのこと

新たに張飛を仲間に加え旅をする勇作と関羽。次の村へと向かうため歩いていたが張飛が不機嫌だった。

 

「む~」

 

「どうした、さっきから難しい顔をして」

 

「お腹でも痛いのか?」

 

「二人共、おかしいのだ」

 

「おかしい?何がだ、張飛」

 

「そうだよ、張飛」

 

「そこなのだ!」

 

「「はぁ、そこ?」」

 

「関羽もお兄ちゃんも鈴々のお姉ちゃん、お兄ちゃんなのにどうして鈴々のこと鈴々って真名で呼んでくれないのだ。親しい同士は真名で呼び合うのが普通なのにおかしいのだ!」

 

「確かにそうだが、知り会ってまだ間もないし」

 

「まあ、俺も」

 

「鈴々は関羽のことちゃんと真名で呼びたいのに教えてくれないし・・・お兄ちゃんも呼んでくれないし・・」

 

「わかった、わかった」

 

「ごめんな。・・・・・・所で真名って何?」

と言った瞬間、二人ともこけた

 

「知らなかったのですか!高杉殿」

 

「お兄ちゃん、知らなかったら言ってほしいのだ」

 

「ごめん」

 

「真名とは聖なる名で許可なく言えば首を切られてもおかしくないものなのです」

 

「え!?(そんなに大切なことだったのか!?)」

と驚いていた

 

「わかりましたか?」

 

「はい」

 

「そうですか。では!んっ!私の名は関羽、字は雲長、真名を愛紗という。お主には真名で呼んでもらいたい。これでいいな、"鈴々"」

 

「俺は姓が高杉、名は勇作。字と真名はないから好きに呼んでくれ、"鈴々"」

 

「わぁ!うん!」

 

勇作と関羽に真名を呼ばれた鈴々は上機嫌になった。三人は歩き続け街の入口に到着した。入口を入った所で門番に声を掛けられた

 

「ちょっとまて」

 

「なにか?」

 

「違っていたらすまぬが、おぬし最近噂の黒髪の山賊狩りでは無いか?」

関羽さんは顔を少し赤らめながら

 

「いや、そう呼ぶものも居るようですが、自分から名乗っている訳では・・・」

 

「良かった、近くの村に現れたと聞き、それらしき武人が居たら声を掛けていたいたのですか、黒髪の綺麗な絶世の美女と聞いていたので、危うく見過ごす所でした。」

 

    !!!!!!! カチャーン!!!!!!!  

 

「( ガラスを砕くような音が関羽さんの方から聞こえたような・・・)」

 

「そうですか・・・」

 

「(関羽さんやっぱり気にしてたのかな・・?)」

 

「そうと分れば、早速我らが主に知らせねば」

 

「え?」

 

「しばらくここでお待ちを」

 

「はぁ」

 

 門番の男は村の中へと歩いて行った

 

「愛紗は綺麗で有名なのだ~」

関羽さんは眉をピクピクとうごかしながら

 

「ああ、黒髪がな・・」

 

「関羽さんは綺麗ですよ、自信をもってください」

 

「えっ/////・・・フフッ、お世辞でもうれしいです、ありがとうございます」

 

「(お世辞を言ったつもりはないんだけど・・)」

 

 

 

その後、門番が戻って来て三人はこの辺りを治めている太守の元へ案内された。三人は屋敷の庭の東屋(休憩所)で待たされていた。すると二人の女性が近づいきた。青い髪で白を基調にした服の女性と影が薄そうな女性。

 

勇作と関羽は椅子から立ち上がった。

 

「そのままで、結構」

 

「(また、女の子だ)」

 

「待たせて済まない、我が名は公孫賛、字は伯珪。太守としてこの辺りを治めている。こちらはお主と同じ旅の武芸者で」

 

「我が名は趙雲、字は子龍。お初にお目にかかる」

 

「(へ!?趙雲に公孫賛だと)」

と勇作は驚いていた

 

「お招きに与り光栄です、我が名は関羽、字を雲長と申します、それでこちらは・・」

 

「鈴々なのだー!」

張飛は元気良く答えた。

 

「こら、真名ではなく、ちゃんと名乗ってあいさつせぬか」

 

「そうだよ、鈴々」

 

「関羽殿、歳の割りに随分大きなお子様をお持ちですな、そちらが旦那さまですか?」

 

「ちっ違います、鈴々は娘ではなく姉妹の契りを交わした仲で」

関羽さんは、あわてて否定している、そして趙雲さんは少し悪戯っぽく、

 

「ほーぅではどちらが攻めでどちらが受けなのですか?」

 

「どっちかと言うと、鈴々が責めなのだ」

 

「コラ!よく意味も分からんくせに適当な返事をするな!」

 

「じゃあ、どういう意味なのだ?」

 

「そ、それはだな・・高杉殿、お願いします」

 

「お、俺ですか?!えぇっと・・」

 

「あ、まあ、そういう話はまた後にしてもらって、そちらは?」

 

「俺は高杉勇作といいます。関羽殿と共に旅をしている者です」

 

「そうですか」

 

「あのー用があったのでは?」

 

「そうであった、実はおぬしに、折り入って頼みたい事が有るのだが?」

 

「私に?」

 

公孫賛が真剣な話をし始めた。

 

「辺境の小領主ではあるがこの公孫賛、今の世を憂いる気持ちは人一倍あるつもりだ。キ州の袁紹、江東の孫策に都で最近頭角を現して来た曹操と天下に志を抱く者は皆、ういの人材を求めているとか、昔日の漢王室の権威、既に無く乱れに乱れた世を正すためお主の力をぜひ、私に」

 

「公孫賛殿、お話しの途中、申し訳ないがそれは少し早計ではありませぬかな?」

趙雲が言った。

 

「と、言うと?」

 

「黒髪の山賊狩りの事は私も旅の最中に風の噂で耳にしました。だが噂というのは得てして尾ヒレが付きがちなもの・・」

 

「まあ・・確かに」

関羽は心当たりがあって否定できなかった。

 

「故に関羽殿の実力を見極めてからお召しかかえになっても遅くないのでは?」

 

「うむ、なるほど」

 

「差し支えなければ、私がその役を、お引き受けしますが」

 

「ぉおー、いかがかな?趙雲殿と一手、手合わせしてはもらえぬか?」

 

「いやぁしかし私は・・」

 

「臆されましたかな?」 

関羽さんの表情が厳しくなる・・、と同時に張飛ちゃんが立ち上がる。

 

「そんな訳ないのだ!」

 

「こら、鈴々!」

 

「愛紗は、すぅーごく強いのだ!だからお前なんかに、ずーえたい負けたりしないのだ!お前なんか愛紗が出るまでも無いのだ!鈴々が、ちょちょいのプーで、コテンパンにしてやるのだ!」

頭を抑えている関羽さん、趙雲殿は立ち上がると。

 

「ほぉ~ずいぶんな自信だな、それでは一つその自身のほどを試させてもらおうか」

 

「望む所なのだ!」

張飛ちゃんが啖呵を切ると、二人は庭に歩きだした。

 

 

 

鈴々と趙雲が手合わせすることになり五人は東屋を少し離れた広い所に移動した。鈴々と趙雲は己の得物〈蛇矛〉〈龍牙〉を手に対峙する。

 

「止めなくて良かったのですか?」

 

「ああなっては止められません、鈴々の気持ちを考えるとなおさら・・」

 

「そうですか」

 

 

 

「始め!!」

 

中央に居る公孫賛の合図で始まった。

 

「どおうりゃあ~!」

 

鈴々は飛び上がり趙雲に向かって得物を振り下ろした。

 

〈ガッキィン〉

 

「ほ~」

 

趙雲はそれを受け止めた。鈴々は宙返りをして後退し得物を頭上で振り回し再び攻撃する。

 

「うりゃりゃりゃ~!」

 

〈ブン〉

 

「ふっ」

 

〈スッ〉

 

「りゃあ!」

 

〈ブン〉

 

「ふっ」

 

〈スッ〉

 

鈴々の攻撃をギリギリに避ける趙雲に公孫賛の隣に居る関羽の顔が真剣になった。

 

「りゃあ!りゃあ!りゃあ~!」

 

〈ブン ブン ブン〉

 

「ふっ!ふっ!ふっ!」

 

〈スッ スッ スッ〉

 

鈴々の攻撃は続くが趙雲はそれを避けるばかりだった。

 

「ヒラヒラ逃げてばかりなのだ!」

 

「ふっ、どうした?もう終わりか?」

 

「まだまだなのだ~!」

 

「鈴々!そこまでだ!」

 

趙雲の挑発に乗り攻撃しようとした鈴々を関羽が止めた。

 

「・・っえ?どうして止めるのだ、鈴々はまだ戦えるのだ!」

 

「(確かに)」

 

「わかっている、ただ・・私が立ち会ってみたくなったのだ」

 

「ん?」

 

鈴々に代わり関羽が趙雲と手合わせとなり関羽は自分の得物〈青龍偃月刀〉を手に構え関羽から闘気が溢れ出す。

 

「(何だ!関羽殿の体から赤い闘気が溢れている様にも見える。)」

 

「いざっ!」

 

趙雲が構えを解いた。

 

「ん?」

 

「本当に強い相手ならわざわざ撃ち合わなくても分かる。公孫賛殿、関羽殿のお力しかと見届けました」

 

「うむ」

 

「ふえ?はにゃ?」

 

「ふー」

納得する公孫瓚殿、訳が分らず困惑する張飛ちゃん、構えをとき、緊張を解くかのように息を吐く関羽殿。反応はさまざまだった。

 

「(早かったなー)」

 

手合わせは終わり五人は東屋に戻りお茶を飲んでいたが鈴々は不機嫌だった。

 

「む~」

 

「どうした、鈴々。そんな膨れっ面して」

 

「さっきのだと何だか鈴々が本当は強くないみたいなのだ」

 

「い、いや・・それは」

 

関羽はどう言えばいいか悩んでいると趙雲が言った。

 

「張飛、確かにお主は強い、ただその強さを上手く使えていないがな」

 

「ん?」

と考えていたが

 

「よくわかんないのだ」

 

「そうか」

 

「そういえばお兄ちゃんは戦わなくてよかったの?」

 

「俺は・・・」

 

「おや、高杉殿も武に心得もあるのですかな・・・」

 

「まあ、ちょっと」

 

「ならば、私と仕合ってみぬか?」

 

「えっ?」

趙雲さんがとんでも無いことを言いだした。

 

「遠慮しときます」

 

「おや、それは残念」

趙雲さんはイタズラぽく微笑んだ

 

「(この人どこまで本気なんだ)」

と思った

 

「ところで、公孫賛殿。この間、お話しした例の件ですが・・」

 

「ああ、尺銅山の事か」

 

「尺銅山の事とは?」

 

関羽が気になり公孫賛に聞いた。

 

「いや、恥ずかしながら山賊退治にちょっと手こずっていてな、奴らの出没している範囲を考えて賊の隠れ家が尺銅山の山中にあるのは確かなのだがそれらしき砦が見つけられず討伐隊を出す事が出来ないのだ」

 

「(何か、気まずそうな話したな)」

 

「それを聞いて先日、私が一件を案じたのだ」

 

「その策は?」

 

勇作が趙雲に聞いた。

 

「偽の隊商を仕立ててその荷物の中に潜み、これをわざと賊に奪わせて隠れ家に忍び込む。つまり、賊自らに隠れ家に案内させる寸法だ」

 

「なるほど、それは面白い」

関羽が興味を持った。

 

「しかし、賊の隠れ家に単身乗り込むなど・・」

 

「虎穴にいらずんば虎子を得ず、狡猾な賊を中滅するには多少の危険はやむ得ぬこと、どうだ関羽殿、私と一緒に賊の隠れ家を訪ねて見ぬか?」

 

「ひきうけた」

 

「鈴々もいくのだ!」

 

「おぬしにはむりだ!」

 

「(あっさり否定したな。何か背後には、(絶対にダメ!)の背景が見えたような・・・)」

 

「なんでなのだ!?」

鈴々は趙雲さんの前に座りすごい勢いで問い詰める!

 

「よいか、荷物の中に潜み賊の隠れ家に向かう間はずっと息を殺して居なければならんのだぞ、お主の様な根が騒がしく出来ている人間には無理だ、きっと一時だってジットはしていまい」

 

「うぅ、そんな事無いのだ!!!鈴々はやれば出来る子なのだーー!!」

予想していたようで、耳を塞ぎながら平然としている

 

「ほぅ~では今ここでやって貰おうか」

 

「(うぁ・・この人また何か企んでそうな顔をしてるよ・・・)」

 

「お安いご用意なのだ!」

鈴々はイスに座りジッとした。

 

「こうやって、ジッとしていればいいのだから簡単なのだ!」

 

               ・

 

               ・ 

 

           一分経過・・・・

 

               ・

 

               ・ 

 

               ・

 

           五分経過・・・・

 

「(おいおい、大丈夫か?もうウズウズしてるぞ・・)」

 

               ・

 

               ・        

 

               ・

 

               ・   

 

           十分経過・・・・

 

「(頭から煙が出てる・・水をもらっておくか・・)」

 

               ・          

 

「ハニャ----!(ボフゥ!)・・・(コテ)」

鈴々は爆発した・・ついでに倒れた・・

 

「(なんで爆発するんだ!?人体発火能力者か?この子は)」

 

「鈴々!?大丈夫か!しっかりしろ!」

 

関羽が空かさず鈴々に駆け寄る。趙雲さんは予想済みのようでのんびり茶を啜っている。

 

「目を覚ませ!凄い熱だ!公孫賛殿!医者!早く医者を!」

 

「落ち着いてください、関羽殿!」

 

「私は落ち着いている!」

 

「(だめだこりゃ・・・)」

と勇作は思った



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第六席 勇作と関羽、趙雲と死地に赴くのこと

屋敷の外。勇作、関羽、趙雲は外に居た。

 

「ここに隠れるのか?」

 

「うむ、少々窮屈だがやむおえまい」

縦130センチ横60センチ高さ60センチぐらいの赤い箱だ。

 

「この中に二人で入るとなると、相当体をくっ付けないと・・」

 

「心配するな、私はその気が無くも無いので・・むしろ大歓迎だ」

 

「なるほど、それなら・・っへぇ!?その気て・・その・・あの・・ええ!」               

 

「(イタズラ好きだなーこの人)あれ?」

 

「どうしました?」

 

「いえ、箱がもう一つあることが気になりまして・・・」

 

「ああ、これは高杉殿の入る箱です」

 

「え?」

 

「武に心得があると知ったので、一緒にどうかと・・・」

 

「そうなのですか」

 

「よろしいですか?」

 

「趙雲殿」

 

「わかりました。行きます」

 

「では、入ろうか」

 

関羽と趙雲が一つ目の箱に入り勇作が二つ目の箱に入り出発した。尺銅山の山中を関羽達を乗せた偽の隊商が進んでいく。箱の中の関羽と趙雲はというと。

 

「ちょ、趙雲殿!」

 

「シッ、いつ賊が来るのか知れんのだ声を出されたら困る」

 

「そ、それはわかっているのだが趙雲殿の膝が///」

 

「私の膝がなにか?」

 

「あ///・・あぁ///」

 

「・・・///」

そばで聞いていた偽の隊商の男は恥ずかしながら運んでいく。

 

「(何をしているんだろ・・・・・ん?2人いるな)」

 

もう一つの箱の中で二人を心配する勇作、するとなにか感じた。それは偽の隊商を木陰から見る二人の賊だった。

 

その頃の公孫賛は執務室で仕事をしていた。するとそこに文官の男が入って来た。

 

「公孫賛様」

 

「どうした?」

 

「先程、囮の隊商が賊に襲われたの報告が」

 

「で、首尾は?」

 

「はい、隊商を装っていた者に怪我は無く荷物の方はまんまと賊供の手に」

策が成功し公孫賛の顔は笑みを浮かべた。

 

賊たちは、荷物を貯蔵庫に運んでいる、そして赤い箱を床に置いた、

 

「んぁ」

 

賊の一人が

 

「ん?」

と辺りを見回す、

 

「どうしゃした?」

 

「今、女の声がしなかったか?」

 

「ハァ?何言ってるんですかアニキ、幻聴がするなんてよっぽど飢えてるんですね」

 

「ふぅ、そうかもな、よし!村の娘に酌でもさせるか」

 

「今日も祝杯ですね!」

賊どもは、部屋を出て行った。

 

「行ったな」

と勇作が箱から出てきた。そして辺りを警戒しながら趙雲は顔を出す、

 

「大丈夫なようだな・・ふぅ」

 

「あ~ぁ~あ~ぁあ~ぁハァハァハァ」

 

関羽は、疲れきった様子でフラ~と立ち上がると、その場に座り込む。息が乱れ服も乱れていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はい」

 

「どうやら地下のようだな」

 

「地下?」

 

三人は倉庫を出て辺りを警戒しながら進んでいく。

 

「恐らくここは昔、鉱山だったのだろう」

 

「その坑道を隠れ家にしたという訳か」

 

「いくら探しても見つからないはずだ」

 

「思った以上に広いようだがこれでは出口を探すのは一苦労だな」

 

「しかし、適中にあって得物がこれとは些か心もとないな」

関羽が懐から短剣を取り出した。関羽と趙雲の得物が長すぎるため持って来れなかったのだ。勇作は刀を一本しか持ってこれなかった

 

趙雲は関羽の揺れる胸を見ながら

「やむおえまい、おぬしのちちが邪魔でこれ以上大きい武器が入らなかったのだ」

 

「なぁ、べ、別に私の胸だけが場所を取っていたのではあるまい!」

 

「ふむ、確かにちち因りもおぬしの尻の方が場所塞ぎだったのかもしれぬな」

 

「な!///」

 

「(なんか、師匠みたい・・・ん!)」

 

「シィ」

趙雲は、辺りの音に聞き耳をたてる。関羽の表情が変わった・・おそらく賊たちであろう声が聞こえる

 

「(50人ぐらい居るな)」

 

 

 

賊の連中は坑道の広間らしき場所で酒を飲み交わしている。そして奥の方にには盗賊の親玉らしき人物が玉座で女の子に酌をさせている

 

「イヤ!やめてください!お願いします」

 

「へへへ~ぃ、いいじゃねーか減るもんでもない」

 

その様子を三人は影から見ている、関羽は怒りを露にしている

 

「おのれ、無体な・・成敗してくれる」

 

「関羽どうするつもりだ?」

 

「どうするも何も、助けに行く」

 

「とは言え、相手はあの人数だ」

 

「しかし」

 

「俺に任せてください」

と飛び出した

 

「高杉殿!」

 

「おい」

 

「ん?」

と数人の賊が振り向いた

 

「誰だ、テメェ!」

 

「俺の名は高杉、お前たちを退治しに来た」

 

「お前一人で」

 

「えへへ」

 

「クククッ」

 

勇作の前に大人数の賊が立ちはだかる

 

「この人数で勝てると思っているのかい」

と勇作は賊に向かって歩き出した

 

「高杉殿」

 

「バカ、戻れ」

 

「野郎ども、やっちまえ」

と賊たちは、勇作に向かって来たが

 

「うるさい」

と賊たちを睨む。すると

 

バタバタバタバタバタ!

 

賊たちは全員、気絶した

 

「ありゃ、もう、終わりかよ」

 

 

「なっ!」

 

「何をしたのだ!?」

と関羽と趙雲は勇作のやったことに驚いていた

 

「大丈夫?」

 

「はい、危ない所をありがとうございました」

 

「別にいいよ。当然の事をしたまでだ」

と関羽と趙雲が近ずいてきた

 

「(全員、気絶している!?)」

 

「(何故だ!?)」

 

「どうしました?」

 

「いえ」

 

「高杉殿」

 

「何?趙雲殿」

 

「これが終わったら手合わせして貰えますかな」

 

「こんな時にからかわないで・・・・・」

 

「今度は本気ですよ」

 

「・・・・・・」

趙雲殿は本気の目をしていた

 

「分かりました、お受けします」

と約束した

 

 

 

三人と村娘はその場所から離れた。そして事情を説明した。

「私はこの山の麓に住む者ですが、村の子供達と山菜摘みに山に入った時、偶然、ここへの出入り口を見つけてしまい・・」

 

「なるほど、それで捕まったという訳か」

 

「実はここの地下牢に村の子供達が捕まっているのです。もし、私が逃げ出した事が知れたらあいつらに何をされるか・・」

 

「どうするつもりだ?」

 

「無論、助けに行く」

 

「俺も」

 

「だろうな」

 

子供達の救出に地下牢へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃の公孫賛は鎧を身に着けながら、

 

「何!張飛殿が」

 

「はい、関羽殿のお戻りが遅いので心配だから自分も賊の隠れ家に行くと・・」

 

「しかし行くと言っても、そもそも賊の隠れ家の場所が分からぬからこその今回の策であろう」

 

「はぁ、それは私も申したのですが、行けば何とかなるだろうからとにかく尺銅山の場所を教えろと」

 

「で、教えたのか?」

 

「はい、そしたら風の様に飛び出していかれて・・・」

 

 

 

 

 

尺銅山の山中。鈴々は歩いていた。

 

「迷子になったのだ~!」

 

涙目で叫ぶ声にカラスが一斉に飛び立った

 

「うぅー困ったのだ、これだと愛紗を迎えにいけないのだ・・そうだ!山で迷ったら木の切り株を見ればいいって、じっちゃんが言ってたのだ」

張飛は切り株を見付けてジィと見つめる

 

「んー年輪の広い方が南だから・・こっちなのだ!」

張飛はそちらに歩き出した。

 

 

 

賊の隠れ家の地下牢。賊の一人が地下牢を見張っている、中には子供たちがいるようだ

 

「なんで、俺だけ・・とんだ貧乏くじだぜ」

 

コン、コン

 

「ん?」

 

音の方を見ると壁に隠れて誰かは分からないが布切れを垂らすように持っている・・布切れを落としたと思ったら、そこから女性の生足・・そして(こちらにいらっしゃい)と言わんばかりのような手招き・・見張役の目がハ-トになると、吸い寄せられるようにそちらに向かっていく。そして

 

バキ!ドカ!ドゴ!

 

趙雲は鍵とついでに槍を取り上げる

 

「(普通、分かるだろう)」

 

「カギだ!」

倒れた賊からカギを取り地下牢の扉を開け子供達と逃げ出した。

 

「娘!出口の見当はつかないのか?」

 

「すみません」

 

「(探しながら行くしかないか!・・・ん?)まずい!引き返すぞ!」

 

「え?」

と趙雲は勇作のことに驚いていた。すると目の前に賊が横の通路から出てきた。

 

「なっ!」

 

「あ、いたぞ!こっちだ!」

見つかってしまい別の通路へと逃げる。

 

「(何で、分かった)」

方向を変え走り出した、分かれ道を抜け坂道を登ってゆく太陽の光が見えた

 

「出口だ!」

 

先頭を走っていた関羽に光が見えその先に行くと、行き止まりだった。下には深い谷底が見え向こう側との距離はかなりあった。

 

「くっ」

 

 

 

 

一方、鈴々は南に向かって歩いていた。

 

「はぁ、よく考えたら南に向かったからって何がどうなるものでもなかったのだ」

 

鈴々は落ち込み、ふっと横を見るとその先に関羽達の姿が見えた。

 

「ん?」

 

 

 

 

 

関羽と勇作は谷底を見てどうするか悩んでいたその時、

 

「愛紗~!お兄ちゃん~!」

 

向こう側から鈴々が居たのだ。

 

「やっと見つけたのだ!」

 

「「鈴々!」」

 

「そんな所で何をしているのだ?愛紗~!お兄ちゃん~!」

 

崖の反対側に鈴々は立っていた、勇作の目には横の大木が映り

 

「鈴々!その木をこっちに向かって切り倒せ!」

 

「なんでなのだ?」

 

「早く!」

 

「わかったのだ!うりゃあ~!」

 

蛇矛の太刀筋が木を一閃すると・・バキ!バキ!バキ!・・・ドーーン!轟音とともに木が倒れ橋が出来た

 

「なるほど!」

 

「これを渡って向こうへ逃げるんだ」

 

「さ、みんな」

 

「うん!」

 

子供たちは木の橋を渡ってゆく

 

「(よし、これで・・・・・もう、来たか)」

 

「ん?」

趙雲は後ろから追っての気配に気付いた。

 

「まずいな、急げ!」

 

「早く渡るんだ」

 

「大丈夫だ」

 

「はい」

 

「皆も焦らず落ち着いて」

 

賊が入り口から姿を現す、と同時に趙雲が槍で洞窟内部に叩き戻した。坂道を転げ落ちるように賊は転がり、中に居た数名を巻き込んで倒れていた。子供たちと女の子は、無事、橋を渡り終えた

 

「よかった~」

 

「怖かったよ~」

勇作と関羽が安心した顔で見ていたその時、二人の足場に亀裂が入り崩れ木が落ちた。

 

「きゃあ~!」

 

「うわっ!」

 

「愛紗~!お兄ちゃん~!」

 

その光景を向こう側から見ていた鈴々が叫んだ

 

「あぶな!」

 

「高杉殿!」

 

関羽が谷底に落ちそうになったが勇作が寸前に関羽の手を掴んでいた。そしてそのまま引き上げた

 

「危ない所でした」

 

「ありがとうございます、高杉殿」

 

「無事か、二人共!」

 

そこに趙雲が駆け寄る。

 

「危ないところだったな」

 

「ああ、だか橋が」

 

「万事休すか・・」

 

「クククッ」

洞窟の中から賊たちの声が近づいて来る。

 

「こうなったら覚悟を決めるしかないようだな」

 

「うむ」

 

「そうだな」

 

関羽は先程、趙雲が倒した賊が落とした剣を手にした。

 

「なまくらだが無いよりはマシだな、行くか、高杉殿、趙雲」

 

「星だ」

 

「えっ」

 

「共に死地へ赴く中だ、これから私の事は真名で呼んでもらう・・もちろん、勇作殿にも敬語はなしですぞ」

 

「わかった、星。私の事は愛紗と呼んでくれ」

 

「俺の事は勇作と呼んでくれ、星」

 

「では、行くぞ!勇作殿、愛紗」

 

「ああ!」

 

「おう!」

 

三人は賊達へ向かって行く

 

ザシュゥ!ザシュウ!肉を切る音と共に賊たちが倒れて逝く

 

「ぐは!」

 

「ギャー!」

 

「うあぁぁぁ!」

 

愛紗と星と勇作は賊の屍を乗り越えると、また賊たちへと斬りかかって行く劣勢を感じた親玉は、

 

「取り囲んで一気に押し込めー!」

 

声と共に賊たちは、三人を円方で包囲した。

 

「(キツイ、けど)」

 

「不思議だ。お主達に背を預けていると負けぬ気がせぬぞ、愛紗、勇作殿」

 

「私もだ!背中は任せたぞ!星、高杉殿」

 

「了解!」

 

「「「ハァ!」」」

 

三人は賊達に向かって行った。



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第七席 勇作、趙雲と手合せするのこと

 

公孫賛の屋敷。公孫賛は武装し中庭で自分の白馬を用意して剣を振りやる気十分だった。

 

「公孫賛様」

 

そこへ文官がやってきた。

 

「どうした?」

 

「関羽殿、高杉殿、趙雲殿がお戻りになられました」

 

「ほう、して首尾は?」

 

「はい、みごと族の隠れ家を付きとめられたのですが・・」

 

「が?」

 

「はぁ、そのままお三方ですべての賊を成敗されたと・・」

 

「三人だけで・・すべて・・では私の出番は!?」

 

「残念ながら」

 

「白馬に跨りながら花々しく、白馬将軍公孫賛推参!みたいなのは?」

文官の男は黙って首を横に振る

 

「はぁ・・そうなんだ・・」

 

後ろの白馬と共に公孫瓚どのはがっかりとしていた

 

「して、皆は今何処に?」

 

「それが・・手合わせをする様な事を言われてまして、今は離れの辺りかと」

 

「な!?」

公孫賛はそちらへと走り出した

 

 

 

 

 

 

 

「準備はよろしいですか?」

 

「はい・・・・・あ!待ってください」

 

「どうしました?」

 

「一人誰か来ます」

 

「ん?」

と趙雲は何を言っているかわからなかったが

 

「此処に、居たのか・・・」

と公孫賛が来た

 

「!?(なぜ!わかった)」

 

「もう、いいですよ」

 

「そ、そうか」

と二人は武器を構えた

 

 

「では、始め!!」

中央に居る関羽の合図をした

 

「はぁ!」

趙雲が先手を打ち、突きを入れる

 

「よっと」

勇作は避ける

 

「せいっ!やぁ!」

間髪入れずに突き、薙ぎ払いなどを繰り出すが

 

「よっ」

余裕でかわす

 

「意外とやりますなぁ」

 

「それはどうも」

 

「まだまだいきます」

と趙雲は攻撃の突きのスピードを速める

 

「はいっはいっはいっ!」

と攻撃をするが

 

「(首、胸、もう一度首だと思わせて、右からの薙ぎ払い)」

と覇気の力で読み取り、避ける

 

 

 

「お兄ちゃんすごいのだ・・」

 

「趙雲の本気なんて初めて見たぞ・・・?」

 

「でもお兄ちゃん避けてばかりなのだ」

 

「たしかにな」

 

 

 

「(なぜ・・・!なぜ一発もあたらぬのだ・・・!?)

趙雲は動揺していた

 

「(なら、これならどうだ!?)」

と空中に飛ぶと落下の勢いともに槍を振りおろす

 

「よっ」

とかわすが

 

「(隙あり!?)」

着地すると、左足を軸に体を左に回転させながら右薙の斬撃を振るうが

 

「よっ」

と簡単に避けた

 

「!?」

避けられたことに趙雲は驚いた

 

 

 

「また避けたのだ」

 

「確かに」

 

「・・・・・・」

 

「どうしたのだ?愛紗」

 

「いや(さっきから避けてばかりだが、まるで星の攻撃をまるで全ての動きを読んでいるように・・・)」

 

 

 

 

「(そろそろ、決めるか?)」

と距離をとり

 

「星!」

 

「ん?」

 

「今度はこちらから行きます・・・よ」

と俺は覇王色の覇気を発動した

 

「っ!?」

と3人は雰囲気が変わったことに驚いた。公孫賛は耐えきれず気絶した

 

「(何だ!?この覇気、いや威圧感は!?)」

 

「(お、お兄ちゃん怖いのだ・・・)」

 

「(何と言うことだ!?私はとんでもない人と戦っていたのか!?・・・・・・それに)」

 

「「「(体が動かない(のだ)」」」

 

「どうしました?体が震えていますよ」

 

「!?」

と体が震えていることに気付いた

 

「(私は怯えているのか?)」

と勇作は趙雲に近ずいていく

 

「あ・・・」

力が抜け、その場に座ってしまった

 

「(ん?ちょっとやりすぎたか・・・)ふっ」

と息を吐いた

 

「!?」

威圧感が消え、関羽と張飛もその場に座り込んだ

 

「怖かったのだ」

 

「たしかに」

 

「俺の勝ちで良い」

 

「あ・・はい」

 

「大丈夫?星」

勇作は星に手を差し出す。

 

「あ、すまぬ」

 

「良いですよ」

 

「っ//」

と星を立たせた

 

 

「お兄ちゃん、すごく怖かったのだ」

 

「ごめん」

 

「でも、今は全然怖くないのだ」

 

「そうか」

 

「お見事です」

 

「ありがとう」

 

「星も大丈夫か?」

 

「ああ」

 

「公孫賛殿を起こさないと・・・」

と勇作は気絶している公孫賛を起こしに行った

 

 

 

「愛紗」

 

「何だ、星」

 

「私はとんでもない人と戦ったのだな・・・」

 

「そうだな。正直、ここまでとは思わなかった」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けて公孫賛の屋敷を後にし次の村へと向かう関羽、勇作、鈴々の隣には星の姿があった。

 

「しかし、よかったのか?我々はまだ志願するつもりはなかったが、星はあのまま公孫賛殿に仕えれば一角の将として兵を任せられただろうに」

関羽が気になり星に質問する。

 

「公孫賛殿は決して悪い人物ではない。だが、ただそれだけだ・・この乱世を治めるような器ではないし、影も薄い」

 

「何気に結構、キツイこと言ってるな」

 

「確かに」

 

「この広い蒼天の下、真に仕えるに値する主はきっと他にいるはず・・それに何よりお主達といた方うがこの先、楽しそうだ」

 

「そうか。見つかるといいですね」

 

「ええ、もっとも大方、決まっていますがね」

と言いながら勇作の右腕を組む

 

「こちらこそ、よろしく頼みますぞ勇作殿。色々と」

 

「あ、ああ(む・・胸が///)」

 

「む!?」

 

「(う・・後ろからすごい殺気が・・・)」

 

「ふふっ」

 

「にゃはは!」

 

四人となった勇作達は次の村へと向かうのであった



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第八席 勇作、曹操と出会うのこと

キ州の太守の屋敷の玉座の間。

袁紹は文醜と顔良を隣に侍らせ玉座に座り、その前には金髪を短いツインにしクルクルと巻いた髪型をした女性、曹操が居た。

 

「都からわざわざ賊退治とはご苦労な事ね、曹操」

 

「ええ、本来なら私が出向く事は無いのだけれど賊共が貴女の領地に逃げ込んだとなれば話は別」

 

「ん#」

 

「放って置けば、見す見す逃がしてしまうようなものですからね」

 

「ちょっと、それはどういう意味ですか#」

 

「袁紹、貴女が賊一匹も倒せない無能な領主と言っているのよ」

 

「な?!」

 

「曹操!袁紹様に向かって無礼であろう!いっくら本当の事でも面と向かって言って良い事と悪い事があるんじゃ・・」

 

「ちょっと!それってどういうことですの!」

 

「い、いや、とっさの事でつい、本音が・・」

 

「何ですって!」

文醜は袁紹を怒らせてしまった。

 

「ふっ、無能な領主にマヌケな家臣とは良い取り合わせね、恐れ入ったわ」

 

「へん!参ったか!」

 

「ちょっと、今のバカにされてるのよ!私達!」

 

「そうなの?」

 

「あ~も~」

 

「ぷっふふ」

 

文醜と顔良のやり取りに笑う曹操。その後、曹操は帰り袁紹達は屋敷の廊下を歩いていた。

 

「まったく、もう貴女達のせいで大恥をかいたじゃありませんの」

 

曹操の前で大恥をかいた袁紹は怒っていた。

 

「貴女達って私は何も」

 

「けど、良いんですか?いくら曹操が来たからって賊の事を全て任せちゃって」

 

「良いんですのよ。賊退治なんて汚れ仕事、あの小娘に遣らせておけば」

 

袁紹は止まり後ろに居る二人に振り返った。

 

「そんなことより、舞踏大会の方はどうなってますの?」

 

 

 

 

 

袁紹の屋敷を後にした曹操は長い髪をした女性と共に馬に乗り街の中を移動していた。

 

「華林様、袁紹殿はいかがでしたか?」

 

「相変わらずよ、名門の出であることにあぐらをかいて己の無能さに気づきもしない、あんな愚屈が領主として踏ん反り返っているかと思うと虫ずが走るわ。春蘭、兵達はどうしている?」

 

「既に門外にて待機しております。合流し次第、すぐに出発できます」

 

「そう」

 

「うわぁ!」

 

大きな声が聞こえ曹操がそちらに向くと鈴々が曹操に指を差していた。

 

「あの人、頭すっごいクルクルなのだ!」

隣に居た関羽が鈴々の口を手で塞いだ。

 

「っ!! し、失礼した! この者は髪の事を言ったのであって、その、別に頭の中がどうとかいう事ではなく・・・」

 

勇作達も袁紹が治める町に居て偶然、曹操と鉢合わせたのである。曹操は勇作達をじっくりと見た。

 

「ん~~~~!! ん~~~~」

 

「は、ははははは・・・・」

 

「ふっ、子供の戯言、咎めるつもりはない」

 

「ふぅ~」

 

「子供って」

ほっと安堵する姉と、子供と言われた事にむくれる妹

 

「いいから」

 

「髪と言えば」

 

「え?」

 

「貴女も中々、美しい物を持っているわね」

 

「い、いや、これは他人に褒められるほどの物では」

 

「下の方もさぞかし美しいのでしょうね///」

 

「え?!///」

 

「(っ!?)」

 

「そうなのだ!愛紗は下の方もしっとりツヤツヤのだ!」

 

「こ、コラ!///な、何を言って!///」

 

「ふ~ん、それは是非に拝んで見たいものね」

 

「い、いや!///あ、あの!///そ、その!///」

顔を真っ赤にして否定をする

「(何、言っているんだ!?この人!?)」

 

「けど、今は野暮用が有って残念だわ。我が名は曹操、縁があったらまたいずれ」

 

曹操と黒髪の女性は去って行った。

 

「何なんだ?」

 

「(あれが最近噂の曹操か、侮れぬ奴だ)」

 

「(まさか、こんな所で曹操と出会うとなー・・・でも女の子なんだ)」

 

 

 

 

「「「お帰りなさいませ、ご主人様(なのだ)」」」

 

勇作達が働く事になったのはメイド喫茶であった。関羽、鈴々、星は接客をし、勇作は厨房で料理をする事になった。

 

「(何でこの時代にメイド喫茶が有るんだよ!)」

 

ツッコミながら料理を作っていた。

 

「(一人暮らしが長ったから、料理は作れるけど、どうなっているんだよ!この世界!?)」

 

 

 

関羽達の方はというと

「・・・・・・どうして私がこんな事を」

舞台裏に下がるなり、いきなり壁に手を当てて反省のポーズを取っていた。

 

「今日の宿代にも足りない有様なのだ、やむを得ない。探した中ではこの仕事が一番給金が良かったのだ」

 

「しかし、主でもない相手にご主人様と言わねばいかんとは・・」

 

「お帰りなさいませ~ご主人様~どうぞ~こちらへ~さ、ご主人様~」

 

入って来た客を相手にしてきた星が戻って来た。

 

「星、お主ちょっと上手くやり過ぎではないか?」

 

「腹が減っては戦は出来ぬ、先立つ物が無くてはこの先、旅も間々ならん。これも軍略の内だと思えば何て事はない」

 

「う~ん」

 

「お帰りなさいませ~ご主人様~」

 

「(恐るべき、趙子龍)」

 

 

 

「お待たせしましたなのだ~」

 

鈴々は客の注文で炒飯を持って来た。

 

「ええ!俺、大盛り頼んだんだけどこれってちょっと少なくない?」

 

客が鈴々の顔を見ると口にご飯粒が付いていた。

 

「と、当店ではこれが大盛りなのだ」

 

「お前~#」

 

「す、すみません!すぐに代わりをお持ちしますから~」

 

「うわぁ!」

 

関羽が鈴々を裏方に連れて行った。

 

「客に出す物を運ぶ途中に手をつけるとはどういう了見だ!」

 

「だって、お腹が空いていたからつい・・」

 

「ついじゃない、ちゃんとやらなきゃダメだろう!」

 

「えへへ♪ごめんなさいなのだ、次からは気をつけるのだ」

とは言ったが、皿は割るは料理を台なしにするはでついに関羽に追い出されてしまった。

 

「鈴々!ここはもういい!宿に戻って大人しくしていろ!」

 

 

 

「ちょっと失敗しただけなのに酷いのだ!こうなったら何とかお金をいっぱい稼いで愛紗をビックリさせてやるのだ!」

鈴々はふて腐れながら街を歩いて行くと、

 

「ん?」

道の脇で人だかりが出来ていて近付くと看板が立っており字が書いてあった。

 

「う~ん、難しい字が多くて読めないのだ」

 

「キ州一舞踏会、本日開催!飛び入り歓迎!優勝者には賞金と豪華副賞有りだってさっ!」

鈴々の隣に現れたのは長い髪をポニーテールにし先が十文字の様な型をした槍を持つ女性だった。

 

「優勝者には賞金!じゃあ、これで優勝すればお金がいっぱい貰えるのだな」

 

「いや~まあ、確かにそうだけど、まさかお前本気で優勝するつもりじゃないんだろうな?」

 

「もちろん!本気なのだ!」

 

「大した自信だけど、それは無理だな」

 

「どうしてなのだ!」

 

「そんなの決まっているだろ、優勝するのはこのアタシだからさっ!」



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第九席 張飛、馬超と相打つのこと

舞踏会会場。そこには多くの観客が集まっていた。

 

「さあ、始まりました!キ州一舞踏会!北は幽州から南は江東まで全国各地から集まった腕に覚えのある猛者が!最強の座をかけて競います!」

 

『わぁーー!!』

 

「それでは、試合開始に先立って本大会主催者をご紹介しましょう!キ州太守にして超名門袁家の当主であられる袁紹様!」

 

『わぁーー!!』

袁紹が登場し文醜と顔良が観客に向け、声呼歓や掌鼓の看板を掲げる。

 

「皆さん!私、主催の舞踏会へようこそ!今日は全国から集まった豪傑達の闘いを心行くまで楽しんでいってくださいね!」

 

『わぁーー!!』

再び文醜と顔良が看板を掲げ観客は声援をする。

 

「ありがと、ありがと。名族袁家は「さあ、皆さん!袁紹様の有り難いお言葉を賜った所で第1試合の開始です!」

 

袁紹の長くなる話を遮り司会者が先へ進めた。

 

 

 

「優勝候補の声もあるマサカリ使いの鉄牛選手!に対するは今回の参加者で最小もとい最年少の張飛選手!果敢にも飛び入り参加した張飛選手には是非、頑張って欲しい所ですが相手が悪いかっ!」

 

鈴々の相手の鉄牛は大男で身長差は何倍もあり手には大きなマサカリを持っていた。

 

『ゴォーン』

ドラが鳴らされ試合開始。

 

「うおりゃあ~!」

 

鉄牛は鈴々に向けマサカリを振り下ろした。

 

「おおっと!鉄牛選手、先手をとった!早くもこれで決まっ・・ああ!」

 

『ガァキィン』

 

「受け止めたぁ!張飛選手、常人では持ち上げる事も敵わないあのマサカリの一撃を受け止めましたぁ!」

 

「このガキィ!」

 

「この程度なら鈴々には敵わないのだぁ!とおりゃあ~!」

 

「ガハァ!」

 

鈴々の一撃で鉄牛は場外に吹っ飛び気を失った。

 

『わぁーー!!』

 

「や、やりましたぁ!張飛選手!優勝候補の鉄牛選手を破りましたぁ!これは序盤から大判狂わせです!」

 

「はぁ~」

 

袁紹は退屈そうにあくびをしていた。

 

 

 

 

『ゴォーン』

 

「さあ!続いては第2試合!既に開始から一分が経過しています!只今、絶賛武者修行中の馬超選手は遥か西の西涼よりの参加です!」

 

先程、鈴々と共に居た女性だ。

 

「一方、相手は槍の名手との事ですが・・」

 

「りゃあ!」

 

『ガァキィン』

 

槍の名手の女性は次々と突きを放つが馬超はそれを防いでいく。

 

「おおっと!これはすごい!目にも止まらぬ速技だぁ!馬超選手は防戦一方です!」

 

「はぁ・・はぁ・・」

 

「何だ?もう終わりか?」

 

「なにぃ!?」

 

「ふっ、今度はこっちは行かせてもらうぜ!てぇえい!」

 

「くっ!」

 

馬超の猛攻に槍の名手は倒れた。

 

「安心しな、急所は外した」

 

『わぁーー!!』

 

「・・・」

 

袁紹は横になっていた。

 

 

 

 

『ゴォーン』

 

「やりましたぁ!張飛選手!見事、秒殺!」

 

「すごいっ!馬超選手!圧勝です!」

 

「小さな巨人、張飛選手!ついに決勝に王手をかけたぁ!」

 

「準決勝も一撃で決めた、馬超選手!新たな神話の誕生かぁ!?」

 

次々と対戦相手を倒す鈴々と馬超は決勝戦へと勝ち進んだ。

 

 

 

 

 

『ゴォ ゴォ ゴォーン』

 

 

「キ州一舞踏会も等々、最後の試合です!並み居る強豪を打ち倒して決勝の場にコマを進めたのはこの二人ぃ!先ずは驚異の小旋風、張飛!それに対するは西涼の暴れ馬、馬超!今大会最強を決める闘いも終に決着!注目の決勝戦はこの後すぐ!!」

 

袁紹の席には、所厠と書かれた看板があった。数分後、戻って来た袁紹は退屈そうな顔だった。

 

「まさか、本当に決勝に昇ってくるとはなぁ、ハァ!タァ!かかってこいっ!」

 

馬超は、銀閃を振り回し構える。

 

「お前に勝って、優勝賞金は鈴々が貰うのだ!うりゃあ!ふんっ!」

 

鈴々も負けじと、蛇矛を振り回し構え、二人は激突する。

 

「たぁ!」

 

「ハァ!」

 

『ガァキィン』

 

「ふぅ!」

 

「そりゃあ!」

 

『ガァキィン』

 

鈴々と馬超の激しい攻防戦が続く中、袁紹は寝そうだった。

 

「中々、やるのだぁ!」

 

「そっちもな!」

 

「すごい!これはすごい!決勝戦に相応しい激闘だぁ!」

 

「(なんだ?このチビ、ちっこいくせにどうして強いだ!でも、一番強いのは)・・アタシだぁ!」

 

『グゥ~』

 

「な?!」

 

鈴々のお腹が鳴り馬超は気が抜け、銀閃を床に刺してしまった。

 

『ハッハハハ!!』

 

「え、えへへ///」

会場は笑いに包まれ鈴々は恥ずかしながらお腹を摩った。

 

「えへへ、じゃない!真面目にやれ!」

 

「ごめんなのだ」

 

「まったく#勝負の最中にお腹が鳴るなんて緊張感が〈グゥ~〉な?!///」

 

「ああ!」

 

 ハッハハハハ!

馬超のお腹も鳴り会場は再び笑いに包まれる。

 

「両者、そこまで!」

 

「「え?!」」

 

今まで退屈にしていた袁紹が突如、言った。

 

「この勝負、引き分け!よって両者を優勝とします!」

 

袁紹のいきなりの行動に文醜と顔良は急いで声援の看板を掲げた。

 

 

 

 

『わぁーー!!』

 

観客の声援で気分を良くした袁紹。

 

「(ようやく、私の出番ですわ)それでは閉会の言葉を私が・・えぇ?!」

 

袁紹が見ると既に観客は誰ひとり居なく舞踏会は流れ解散で終わった。

 

 

 

 

 

「鈴々」

勇作たちは仕事を終え、宿に戻って来た

 

「おい、鈴々」

 

「どうしたのですか?」

 

「鈴々が居ないです」

 

「え!?」

 

「本当ですか?高杉殿」

 

「はい」

 

「何処へ行ったのだ、鈴々」

 

「そうなると外に居るでしょうね」

 

「どうしましょう?」

 

「今日はもう、遅いですし鈴々なら大丈夫ですよ」

 

「しかし・・」

 

「俺が探しておくので安心して下さい」

 

「・・・分かりました。お願いします、高杉殿」

 

「任せて下さい、関羽殿」

 

関羽は自分の部屋に戻って行った。



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第十席 張飛と馬超、試験を受けるのこと

袁紹の屋敷では鈴々と馬超は袁紹に招待され食事をご馳走になっていた。

 

「おいしいのだぁ~♪」

 

「うめぇ~♪」

 

「おっほほほ!良い食べっぷり沢山召し上がれ、それにしても今日の貴女達の闘いぶりは本当に見事でしたわ!」

 

「いや~♪」

 

「そこで貴女達に相談なんですけど、もし良かったら我が袁家の客将になって頂けませんこと?」

 

「「ん?」」

 

「客将って何なのだ?」

 

「う~ん?まあ、簡単に言えばお客さんみたいなもんだな~」

 

「ふ~ん、客将になったら毎日こんなご馳走を食べられるのか?」

 

「おーっほっほっほっほ!!もちろんですわ!朝昼晩と最高の料理人が振るった料理をお出ししますわよ」

 

「だったらなるのだ!」

 

「少しの間ならいいかな♪」

 

「おーっほっほっほっほ!!」

 

そのやり取りを扉を少し開け文醜が見ていた。

 

 

 

顔良の部屋。顔良は鏡に向かって自分のお腹のお肉を摘んでいた。

 

「う~ん、ここんとこ出陣してないから運動不足かしら?」

 

『バァン』

 

「斗詩!大変だ!」

 

「何よ!猪々子、いきなり入って来ないでよ!」

 

「麗羽様、どうやら馬超と張飛を召し抱えるつもりみたいだぞ!」

 

「良いじゃない、あの二人強いしきっと戦力の増強に・・」

 

「何のんきなこと言ってんだ!今ではアタイ達、麗羽様の側近だけれども、もしあんなバカ強い相手が入って来たら・・」

 

「た、確かにそうね」

 

「ど、どうする?!」

 

「どうするって言われたっても・・ああ!そうだ!」

 

自分達の居場所の危機を察した顔良は思い付き文醜に耳打ちをした。

 

 

 

 

鈴々と馬超は袁紹の屋敷にそのまま泊まった翌日の朝。文醜と顔良は袁紹に話をした。

 

「張飛と馬超を召し抱えるのをやめろですって?」

 

「い、いいえ、そうは言ってないのですけど」

 

「あの二人の強さは昨日貴女達も見たでしょう?あれだけの豪傑を配下にすれば、きっと曹操の鼻を明かせてやれますわ♪」

 

「武勇に優れているのは認めます。あの二人、強く賢く美しくを掲げる袁紹軍の将に相応しいかどうか」

 

「ふ~ん、確かに余りお上品とは言えませんわね」

 

「「ですよね~」」

 

「(私達も馬賊出身で人の事言えないけど)っで、そこで一つ提案があるのですけど」

 

「提案?」

 

「はい、馬超と張飛が麗羽様の配下に相応しいかどうか試験をするんです」

 

「なるほど、適性試験というわけね」

 

「はい!」

 

「良いでしょう」

 

「「ああ♪」」

 

「(ようし!これであの二人に無理難題を吹っ掛けて試験に失格したからってお払い箱にすれば)」

 

「では、試験の課題は私が出します」

 

「「ええ?!」」

 

「それで、あの二人と勝負しなさい」

 

「勝負・・ですか?」

 

「勝って、貴女達があの二人より優れている事をお見せなさい、そうすれば今まで通り私の側近は貴女達・・・ただし、もし負けたりしたら」

 

「負けたりしたら?」

 

文醜が聞き返したら袁紹は手で首を切る動作をしながら言った。

 

「これよ!こ・れ!」

 

「ええ!それって斬首?!」

 

「違うわよ!クビよ!お払い箱って事よ!」

 

「なんだ~良かった、良かっ・・って、ええ?!」

 

 

 

試験会場。

 

「さあ!突発的に始まった袁紹軍適性試験!張飛、馬超の新参組とお馴染みの文醜、顔良組がぁ!強さ!賢さ!美しさ!の三つを競います!」

 

〈わぁーー!!〉

 

「では、まず賢さの試験から」

 

袁紹の合図で舞台にはイス、マジックハンド、吊されたバナナが用意された。

 

「って、これは///」

 

「アタイ、こういうのは苦手何だよな~」

 

「いや、苦手とかそういう事じゃ無くて」

 

文醜と顔良が会話している間に鈴々が動いた。

 

「あれを取るぐらいなら簡単なのだ!こうやって」

鈴々はイスをバナナが吊してある真下に動かし乗り手を伸ばした。

 

「あれ?届かないのだ」

 

それを見ていた顔良は呆れ顔した。

 

「馬鹿だな!こういう時は道具を使うに決まってるんだろう!ほら!」

 

馬超はマジックハンドを拾いそれを使って取ろうとしたがギリギリ取れない所を見ていたが顔良は我慢ならず動いた。

 

「あのこれって、こうやってこうすれば簡単なんじゃ」

 

顔良はイスを動かし、その上に乗りマジックハンドを使いバナナを取った。

 

「ほう!」

 

「その手が有ったのだ!」

 

「どうだ!知力34の力を見たか!ダアッハハ!」

普通に納得する馬超と張飛に、偉そうに高笑いする文醜。だが正直な話、顔良は複雑なことこの上なかった。

 

「う~、勝ったのに何か嬉しくないぃ~」

 

賢さ試験は文醜、顔良が勝利した。

 

「次は我が配下に不可欠な美しさの試験ですわ!おーっほっほっほっほ!!」

 

舞台裏の控室には色々な衣装が用意されていた。

 

「面白い服がいっぱいなのだ!」

 

「まいったな、私。おしゃれとかあんまり・・」

 

馬超は渋々、服を選んだ。

 

「さあ!そろそろ準備が出来たようです!それでは先ずは張飛、馬超組です!」

 

「がお~がおがお~なのだ~!」

 

『ハッハハハハ!』

 

鈴々はトラの着ぐるみを着て登場、会場は笑いに包まれたが・・・次の瞬間はたと笑いが止まる。そこにいたのは……非常にかわいらしい服装の馬超だった

 

『おぉーー!!』

一部の観客から黄色い悲鳴が飛び交う。

 

「あんま・・ジロジロ見んなよ///私・・こういうヒラヒラしたのは似合わないって分かってるんだからな///」

 

「え、ええと馬超選手、一部の観客に激しく受けておりますが!それでは、観客の皆さん!審査、お願いします!」

 

美しさの試験は観客の丸の札の数が多い方が勝ちのルールであり観客達は一斉に札を上げた。

 

「なお、集計はキ州野鳥の会の皆様にご協力頂いています!」

 

双眼鏡を片手に会員達が丸の数を数える。

 

「集計の結果が出ました!87点!かなりの高得点!果たして、文醜、顔良組はこれを越えられるのか!」

 

舞台袖の文醜、顔良は。

 

「ちっ、中々やるな~あの二人~」

 

「ねぇ、本当にこの格好じゃなきゃとダメなの?!」

 

「今さら、何言ってんだ!一か八か、こいつで勝負だ!」

 

「でも、やっぱり~」

 

「行くぞ!」

 

「乱世に乗じて平和を乱す賊共め♪」

 

「漢王室に代わって成敗よ☆」

 

某少女達の衣装で文醜、顔良は登場だが完全な場違いで会場は冷めた。大人がやるには痛々しいその格好は。これには袁紹も引き、司会者も面倒臭さがりながら言った

 

「え~それでは、審査をお願いしま~す、あ~以外に点数が伸びませんね~ 87対13で張飛、馬超組の圧勝です!」

 

「やった~!」

 

「「・・・」」

 

文醜と顔良は色んな意味で死んだ二人は舞台裏の控室でも沈んでいた。

 

「負けた」

 

「色々捨てて頑張ったのに負けちゃったぁ~」

 

「では、最後は両者に強さを競って貰います!」

 

二組はそれぞれ武装をし立っていた。

 

「ただし、武器を取って撃ち合うのではなく、我が袁家に代々伝わるこの・・・」

そういって袁紹が取り出したのはなんと………股間に白鳥を模した飾りがついたマワシだった。

 

「華麗で優雅で壮麗な白鳥の回しを締めて女相撲で決着を着けてもらいますわ」

 

「「「「えぇー!」」」」

 

文醜と顔良は回しを着け張飛、馬超組を待っていた。

 

「え~盛り上がって来ました~泣いても笑ってもこれが最後の闘いですが張飛、馬超組の登場がまだ・・ん?え!」

 

司会者に近づいた男が何やら耳打ちをした。

 

「え、え~ここで残念なお知らせです、只今入った情報によりますと張飛、馬超組はこの最終試合を棄権するとの事です!」

 

「「えぇ!」」

 

張飛・馬超組は最終試合を辞退したのだ。

 

「いや~いくら何でもアレは勘弁して欲しいよな~」

 

「さすがの鈴々もあれはきついのだ~」

 

 

 

「この程度で逃げるとは華麗で優雅で壮麗な我が袁家の家臣は勤まりませんわ、二対一で文醜、顔良組の勝利とします!」

 

『わぁーー!!』

 

「勝った!私達、勝ったのね!」

 

「ああ!アタイ達は勝ったんだ!」

 

「代わりに何か大事なものを失った気がするけど勝ったのね!」

 

「「うわぁ~!」」

泣きながら抱き合うのであった

 

 

 

 

 

 

 

「結局、昨日は見つからなかったし、どこに居るんだー」

勇作は昨日、鈴々を見つけることが出来ず、今日も探していた

 

「ん?あれは・・・」

と何かを見つけ、見ると

 

「居た!?」

と走っていた

 

 

 

鈴々と馬超は鈴々の泊まっている宿に向かっていた。

 

「鈴々~!」

 

道の向こうから勇作が走って来た。

 

「お兄ちゃんなのだ!お兄ちゃん~!」

 

鈴々は勇作に向かって走り抱き着いた。

 

「おっと!一晩も宿に戻らなかったから心配したぞ」

 

「えへへ♪ごめんなさいなのだ、お兄ちゃんこそ何でここに居るのだ?」

 

「迎えに来たんだよ」

 

「そうだったのか、ありがとうなのだ♪お兄ちゃん♪」

 

「え、ええと張飛、誰なんだ?」

 

馬超が勇作の事が気になり聞いた。

 

「お兄ちゃんは鈴々のお兄ちゃんなのだ!」

 

「はあ!?」

 

「初めまして俺の名は高杉勇作、鈴々の義兄だ」

 

「ああ、アタシは馬超だ。よろしくな、高杉」

 

「鈴々、早く帰えるぞ!関羽殿が怒っている」

 

「わ、わかったのだ!」

 

「あ、あの~アタシも一緒にいいのか?」

 

「大丈夫な・・・はずなのだ!」

 

「本当か?どうなんだ、高杉」

 

「まあ、なんとかするよ・・・たぶん」

 

三人は急いで宿に帰った

 

 

 

勇作達が泊まっている宿。

 

「た、ただいまなのだ」

 

「コラーー!!」

 

「うにゃあ?!」

 

「今まで何処にいたのだ!ちゃんと宿で大人しくしていろと言ったのにフラフラと居なくなっては一晩、帰って来なくて高杉殿が探していてくれたのだぞ!」

 

「ごめんなさいなのだ」

 

「全く心配をかけて、高杉殿もすみません。探しに行って下さって」

 

「良いですよ」

 

「ん?お主は?」

と後ろから馬超が出てきた。

 

「あ、どうもアタシ馬超って言うんですけど」

 

「馬超はね、鈴々の新しい友達なのだ!」

 

「は、はあ」

 

「(まさか、ここで馬超と出会うとは・・・なんか慣れてきたなー)」



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第十一席 馬超、曹操を討たんとするのこと

西涼の馬超の家の庭で幼い馬超は父親の馬騰と共に稽古をしていると長い木の棒を持ち構えていた馬超の手が震える。

 

『翠、お前何か隠し事してるな?』

 

『な、なに言ってるだよ!アタシ、今朝オネショなんて・・・あっ!///』

 

『ハッハハハ!そうかそうか、隠し事はオネショか』

 

『け、けど何で分かったんだよ!アタシが隠し事してるって』

 

『武術というのは正直なものだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる』

 

『それじゃあ』

 

『ああ、お前の構えには心気の曇りが感じられた』

 

『ああ』

 

馬超は落ち込み、下を向いた。

 

『どうした?オネショの事ならそんなに気に病む事はないぞ』

 

『そうじゃないよ、父ちゃんはアタシの構えを見てアタシの気持ちが分かったのにアタシが父ちゃんの気持ちが分かんなかったのが何か悔しくて』

 

『何だ、そんな事か・・・大丈夫!お前もちゃんと修行すれば、すぐに気が読めるようになる』

 

『本当にぃ!』

 

『ああ、もちろん』

 

 

 

 

 

 

「父ちゃん・・アタシ、いっぱい練習するから・・・ん?夢か」

 

「やっと、起きたか」

 

朝になって起きた馬超は寝床の下から声が聞こえ見ると星が床に居た。

 

「な、何でそんなとこに寝てんだよ?」

 

「好きでこうしている訳では無い、寝ている間にお主に突き落とされたのだ」

 

「ええ?!わ、悪い!アタシ、寝相悪くって」

 

星は馬超と一緒に寝て、隣の寝床は関羽と鈴々が寝ている。

 

「なに、そう謝る事ではない。お返しに私もお主が寝ている間に・・いや見た所、生娘のようだし 何をしたかは黙っておこう」

 

「って、寝ている間にアタシに何かしたのか?!おいっ!」

 

その後、関羽と鈴々も起き着替え終わった四人は勇作と合流し朝食を食べいた。

 

「やあ~相部屋させてもらった上に飯までおごってもらって悪いな~」

 

「気にする事はないのだ!旅は道連れ、世は?・・・世は情けないって言うし」

 

「それを言うなら世は情け、だよ」

 

「そうだぞ。まあ、二人部屋に無理言って四人泊まらせ貰っているのは情けないと言えは情けないが・・」

 

「かと言って俺の部屋に泊まらせるのはマズイからね」

 

「武闘大会の賞金、ちゃんと貰ってくれば良かったのだ」

 

「そうだよなー。でも今さら取りに行くのもなんか悪いよなぁ」

 

と・・・ここで星が口を開く。

 

「お主たち、こんな話を知っているか?」

 

「ん?」

 

「昔…越という国の王・勾践(こうせん)は、敵国に囚われた時の恨みを忘れぬよう、寝室の天井に苦い肝を吊るし、それを舐めては復讐の気持ちを新たにしたという」

 

「・・・へぇ~そうなんだ。で、今の話と何か関係あるのか?」

その翠の質問に対し、答えは・・・・・

 

「いや。特に関係ない」

一言であっさり片付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町の外

 

賊退治に来た曹操軍の天幕があり、その中心の天幕では猫耳フードが特徴の曹操軍軍師、荀彧が居た。地図を眺めていると、武器が置かれる音が聞こえて顔を上げると、曹操が入って来た。

 

「華琳さま、戦況の方はいかがでしたか?」

 

「圧倒的ね我が軍は、わざわざ私が出る幕ではなかったわ」

 

「随分、汗をおかきになっていますわ。すぐにお拭きしますね・・あっ」

 

手ぬぐいを取りに行こうとした筍イクの腕を曹操が掴む。

 

「ええ、ただし手ぬぐいでは無く桂花、貴女の舌で」

 

「え///か、華琳さま/// でも・・・///」

 

「どうしたの?もしかして、いや?」

 

「・・・・・・・・・っ///(フルフル)」

荀彧は首を横に振った。

 

「それじゃあ」

 

玉座に座り片腕を上げ脇を見せる曹操。荀彧は曹操の脇の下へ顔を近づけ、舌で汗を舐めていく。

 

「ぺろっ・・・ぴちゃぴちゃっ、ぺろっ」

身体を舐められている側の曹操も、若干顔が赤くなっている。

 

「そうよ///・・・ふふっ、また上手くなったのね///」

 

曹操の汗を舐めとる筍イク。

 

「華琳さま・・・あっ」

 

そこへ夏候惇が入って来て見たのは荀彧が曹操の足の指を舐める所だった。

 

「・・・ん///」

 

荀彧は夏候惇が居るのが気になり、舐めるのを止まった。

 

「桂花、続けて」

 

「はい///・・・ぺろっ・・・ぴちゃぴちゃっ」

 

「春蘭、何か報告があるんじゃないの?」

 

「は、はい!敵主力はほぼ殲滅、首謀者も捕らえて今は夏候淵の部隊が残敵の掃討に当たっています」

 

「そう、ご苦労様。下がっていいわよ」

 

「はあ」

 

 

 

数分後、街の中を捕虜達が投獄された檻を乗せた馬車が行脚する。曹操軍を脇で多くの町民達が見ていた。

 

「どうしたの?春蘭、まだすねているの?」

 

先頭に居る曹操が後ろに居る夏候惇に問う。

 

「別にすねてなどいません」

 

「そんなにむくれないで、今夜は桂花では無く貴女を閨に呼んであげるから」

 

「な、何を言って///私は何も///そ、そんな」

 

「ふふふ・・・・」

 

「な、何だ!秋蘭、何を笑っている!」

 

夏候惇の隣には前髪を片目側だけ伸ばし夏候惇の赤色とは対となる青色の服を着た妹の夏候淵が微かに笑っていた。

 

 

 

 

「荷物運びのお仕事、思ったよりお金が貰えて良かったのだ」

 

「ま、なんつってもアタシの働きが良かったからな!」

 

「それだけじゃないのだ!鈴々もいっぱい頑張ったのだ!」

 

「そうだね」

 

鈴々と馬超と勇作は仕事が終わり町を歩いていた

 

「それにしても、何でお兄ちゃんも来たのだ?」

 

「料理するより、体を動かすことをしたかったからだよ」

 

「そうなんだ」

 

「でも、お兄ちゃんと仕事が出来て、うれしかったのだ」

 

「そうか・・・・・・あ!」

 

「どうした?」

 

「やべっ!忘れ物した。先に行ってて・・・」

と勇作は忘れ物を取りに行った

 

 

2人がしばらく歩くと前方に人だかりが出来ていた。

 

「ん?何なのだ?」

 

二人は人だかりを抜けるとちょうど町の大通りの道で曹操達が馬でこちらに近づいて来る所だった。

 

「あ、曹操なのだ!」

 

「え、曹操?!」

 

「こんにちはなのだ!」

 

「お前はこの前の」

 

曹操と聞き驚く馬超。駆け寄った鈴々に気づき曹操は止まる

 

「今日はあの黒髪の者は一緒では無いのか?」

 

「愛紗はお仕事中なのだ」

 

「ほう、あの者は愛紗と言うのか?」

 

「愛紗は真名で、名前は関羽なのだ!」

 

と話をしていた・・・次の瞬間。

 

「曹操っ!覚悟っ!」

 

馬超が衛兵から槍を奪い、曹操に襲い掛かった。

 

〈ガァキィン〉

曹操に届く寸前に夏候惇が幅広の刀〈七星餓浪〉で防ぎ、同時に夏候淵は曹操に抱き着き馬上から離れた。

 

「何奴っ!」

 

「西涼の馬騰が一子っ!馬超、推参っ!」

 

「えっ!?」

 

「父の敵っ!取らせてもらうぞっ!」

 

「よすのだ!ケンカはダメなのだ!」

 

「離せ!邪魔するなぁ!」

夏候惇に襲い掛かる馬超に鈴々は飛び付いた。

 

「何をしているっ!引っ捕らえろっ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

夏候淵の命令で兵士達は槍を手に馬超を取り囲む。

 

「ちっ!」

 

取り囲まれた馬超は手が出せず捕らえらようとした、その時

 

「ぐわっ!」

二人の兵士が飛ばされた

 

「大丈夫か?」

と忘れ物を取りに行っていた勇作が来た

 

「高杉!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「お前ら、人の妹に何をした!?」

 

「誰だ!」

 

「アイツは関羽と一緒に居た男!?」

 

「こいつを捕えよ」

と兵士たちは勇作を取り囲んだが

 

「失せろ!」

 

バタバタ

 

と覇気で威圧し全員、気絶した。そして勇作は曹操たちを睨み付けた

 

「(なんて覇気なの!? あれは私や春蘭さえも超えているわ!)」

 

「(明らかに姉者よりも強い覇気を放ったぞ…………)」

 

「(なんだとっ!? この私が華琳さま以外の覇気で怯えただと!?)」

と3人は思った。だが

 

「私は認めんぞ!」

と夏候惇が切りかかって来たが、

 

「よっ」

と簡単に避けた

 

「まだまだ」

と目にも止まらむ速さで切りかかってくるが

 

「(右からの払い、左からのすくい上げ、そのまま突く)」

と見聞色の覇気の力で読み取り、かわしていく

 

「なぜ、当たらん!」

 

「隙あり!」

武装色の覇気を右の足に纏い、回し蹴りをした

 

「ぐっ!」

と何とか、防いだが

 

「(なんて蹴りだ!腕が痺れる)」

と両腕が痺れていた

 

「さて、決めるか!」

と勇作は気絶している兵士から、二本の剣を取り、二刀流となる。そして高々と掲げた二刀を頭上で交差させる構えから

 

「JET-X」

と言い、Xの字の斬撃が放たれた

 

「ぐあわわわわーー!」

何とが受け止めようとしたが、受け止めきれず飛ばされ、虜達が投獄された檻に背中から叩き付けられた

 

「春蘭!?」

「姉者!?」

と二人は夏候惇に向かった

 

 

 

バリーーーーーン

 

と両手に持っていた剣が砕けた

 

「やっぱり、砕けたか・・・」

と剣を捨て

 

「大丈夫?二人とも・・・」

 

「ああ」

 

「大丈夫なのだ」

 

「そうか、それより何があった?」

 

「こいつらヒドイのだ!馬超たちが斬りかかったら、怒って馬超たちを捕まえようとしたのだ!」

と鈴々が言った

 

「・・・・・・・・え?馬超が」

 

「そうなのだ」

 

「なんで・・・・・」

 

「そ、それは・・・」

と言おうとした時

 

「ぐっ!」

頭に衝撃が走る

 

「お兄ちゃん!」

 

「どうした」

 

「何だ!?」

 

「悪いが、おとなしくしてもらうわよ」

と曹操が言い、兵達が俺たちを囲んだ



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第十二席 関羽、曹操と取引をするのこと

「「おかえりなさいませ!ご主人さ・・・え?」」

 

いつものように来客を出迎えた二人の前に現れたのは・・・・・・目を回している鈴々を抱えた夏侯淵とだった。

 

「私は夏侯淵。ここに関羽という御仁がいると聞いたのだが」

 

「え・・・?」

 

「こいつらヒドイのだ!馬超たちが斬りかかったら、怒って馬超たちを捕まえちゃったのだ!それにお兄ちゃんも・・・」

状況が飲み込めない愛紗に、鈴々が説明する。

 

「・・・お主たちの説明だと、相手が悪いように聞こえないが?」

 

倉庫に場所を移した一同は、改めて夏侯淵から事情を聞いた。

 

「なるほど、そうでしたか・・・分かりました。馬超は私の妹分の友、高杉殿も妹分の兄…見過ごすわけにはいきません。とりあえず、会って話をしてみましょう。鈴々、私はこれから曹操殿達の元へ出向いて、馬超と高杉殿に会ってくる。鈴々は星と一緒に宿に戻っていてくれ」

 

「どうしてなのだ!鈴々も行って馬超とお兄ちゃんを取り戻すすのだ!」

関羽が言い聞かせるが、やはり一緒に行くと言い張る鈴々。と、ここで星が口をはさむ。

 

「短気なお主たちが行けば、まとまる話もまとまらなくなるだろう・・・ここは、愛紗に任せておけ・・・」

 

「でも・・・!」

 

「鈴々、私を信じろ・・・心配するな、馬超と高杉殿は必ず連れ戻す。いいな・・・」

 

反論しようとした鈴々だったが、関羽に促され渋々頷いた。

 

 

 

 

 

 

ここは、馬超が投獄された檻がある天幕。檻の中で座り込んでいると・・・と夏侯淵に付き添われ、関羽がやってきた。

 

「馬超」

 

「!関羽・・・」

 

「話は聞いた」

 

「アタシとした事が血が上り過ぎて、ドジ踏んじまった。まさか、あんな所で出くわすなんて思ってもみなかったし、おまけに張飛が邪魔しやがるから・・」

 

「鈴々は馬超の事を想って邪魔をしたんだよ」

 

「それでも!」

 

「お主、なぜ曹操殿を殺そうと」

 

「曹操は我が父を・・・アタシの父ちゃんを殺したんだ!」

 

「えっ!?」

 

「それも卑劣極まりないやり方で!」

 

 

やがて関羽は、曹操の元へ向かう。

 

 

「華琳さま、関羽殿とが参られました」

 

「通しなさい」

 

二人は天幕の中へ入り、曹操は玉座に座っていた。そして勇作が居た

 

「高杉殿!?」

 

「関羽殿!?」

 

「大丈夫なのですか?」

 

「ああ、何とかな・・・」

 

「よかった・・・あの」

 

「馬超ことは聞いたよ・・・」

 

「そうですか・・・」

 

「話はそれまでよ・・・それにしても意外だったわ、こんな形で貴女と再会するなんて・・・」

 

「単刀直入にお聞きしますが、馬超をどうなさるおつもりです?」

 

「もちろん、斬るわ!」

 

「そんな!?」

 

「(そうなるよな)」

 

絶句する関羽を見ながら、曹操は淡々と言葉を紡ぐ。

 

「理由はどうあれ、この曹操の命を狙ったのよ?それなりの報いを受けてもらうわ」

 

「いや、だが!」

 

「官軍の将の命を狙ったのよ?無罪放免とはいかないのよ」

 

「それは、そうだが」

 

「(状況が状況だしな・・・)」

 

的確なことを言われ、返す言葉がない関羽だったが・・・決して諦めなかった。

 

「曹操殿!馬超の命、何とか救っては頂く訳には参られないか?」

 

「関羽、そこまで馬超を助けたいのなら私と取引しない?」

 

「取引?」

 

「そう今夜一晩、私と閨を共にするの。そうすれば、馬超の命助けてあげても良いわ」

 

「な、何を馬鹿な///」

 

「(何を言い出すんだ!?この人は!?)」

 

その言葉に、勇作は驚き、関羽も思わず顔を赤らめてしまう。無理もないだろう、寝屋を共にする・・・即ち「女同士で一緒に寝ろ」と言っているのだから。しかし曹操は二人の反応を気にすることなく、関羽を見つめながら話を続ける。

 

「初めて見た時から貴女の艶やかな黒髪を手に入れたいと思っていたの」

 

「・・・」

 

「そして、私は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる」

 

「ひ、人の命が懸かっているのにそんな戯けた事///」

 

「そう!貴女の気持ち一つで人が救えるのよ?」

 

「っ!?」

 

たわごとと称して曹操の言葉を否定しようとした関羽だったが、曹操の一言で返す言葉がなくなるが、俯き悩む関羽に曹操が言った。

 

「関羽、そこまで悩むなら取引をもう一つだけ増やしてあげるわ」

 

「もう一つ?」

 

「そう」

 

曹操は隣に居る勇作を見ながら笑みをした。

 

「貴方、名は?」

 

「高杉勇作と言います」

 

「珍しい名ね」

 

「よく言われます」

 

「高杉、私の物になりなさい!」

 

「!?」

 

「(やっぱりか!?)」

 

「曹操殿!なぜ高杉殿?」

 

「あら、貴方聞いていないの?」

 

「何がですが・・・」

 

「実はね・・・」

と曹操はあの時のことを話した

 

「・・・ということがあったのよ」

 

「・・・・・・」

曹操の話を聞いて関羽は驚いていた

 

「女尊男卑の世で、彼の強さには驚いたわ!?」

 

「俺はそんなに大した者では・・・」

 

「誤魔化さないで!貴方は私の軍の中で屈指の家臣を一撃で倒したのよ。それに尋常ではなかったわ!貴方の覇気・・・」

 

「・・・・・・」

 

「初めてよ、男を欲しがるなんて・・・それに私は不思議に思うわ、貴方が噂にならず、野に居るなんて・・・貴方何者なの?」

 

「・・・・・・」

 

「まあ、いいわ。さっきも言った通り、私は欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる」

 

「(決めるしかないのか)」

 

「貴方が私の物になるのなら馬超の命が助かる、これがもう一つの取引よ、どちらか選びなさい」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・曹操殿、貴女に仕え「ダメです!」

 

「関羽殿」

 

「鈴々とずっと一緒に居ると約束したではありませんか!なのに・・・」

 

「・・・でも」

 

「どうするの?関羽が今夜一晩だけ私と閨を共にするか、高杉が私の物になるか、選びなさい!」

 

曹操に向き直り関羽は決心した。

 

「ほ、本当に!一晩、閨を共にしたら馬超は助けてくれるのだな!」

 

「ええ、約束するわ」

 

関羽は戸惑いながらも、曹操の取引を受け入れるのだった。

 

「すみません、関羽殿」

 

「いいえ、馬超のためですし・・・」

 

「そうですか・・・」

 

「いいのです」

 

「秋蘭、関羽を案内しなさい」

 

「御意。関羽殿、こちらへ」

 

「はい」

 

関羽は夏候淵に案内され、出て行き、曹操と勇作だけが残された。

 

「今回は貴方を物に出来なかったけど、次は必ず貴方を物にするわ!」

 

「・・・」

 

「誰かある!」

 

「はっ!」

 

曹操が兵士を呼ぶ。

 

「高杉を空いてる天幕に案内しなさい」

 

「御意っ!」

 

「貴方も一晩、過ごして行きなさい」

 

「ありがとうございます、曹操殿」

 

勇作は兵士に案内されて行く。

 

「(・・・・・・大丈夫だよな?)」



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第十三席 勇作、真実を知るのこと

関羽はずっと、天井を見つめていた。布団に横になっていれば、それは当然なのだが・・・・・・全裸になっている今の関羽には、そうでもしなければ落ち着かなかった。今から何をされるだろう・・・・・・その不安ばかりが、関羽の中で駆り立てていく。と・・・・・・曹操の影が見え、関羽は今一度曹操に聞いてみる。

 

「そ、曹操殿///本当にこれで馬超を///」

 

「約束は守ると言ったでしょ?」

 

そう言いながら寝巻を脱ぎ……同じく全裸になった曹操も布団の中に入る。思わず身体を背ける関羽・・・だが華琳は構うことなく、愛紗に近づく。

 

「っ・・・・・・!///」

 

「もしかして初めて・・・?」

 

「・・・・・・(コクコク)///」

 

「ふふ・・・ますます気に入ったわ・・・てっきり、もう・・・」

 

やがて関羽の背にピッタリとくっついた曹操は、関羽の身体を徐々に触り…遂にその手が大事な所へと伸びる

 

「っ・・・あぁ・・・!///」

 

「ふぅん・・・本当にシットリツヤツヤなのね・・・」

 

 

 

 

 

 

ここは勇作のいる天幕

 

「いってっーーーー」

と勇作は頭を押さえていた

 

「我慢していたけど、痛い」

勇作は、あの時、後ろから頭を殴られて、それで捕まってたのだ

 

「大丈夫か?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

「(大丈夫かな・・・・・・・・・ん?)」

と勇作が何かを感じた

 

「(曹操の天幕には関羽殿と曹操の二人しかいないのに・・・もう一人の気配を感じる)」

と勇作は夏侯淵に聞いた

 

「あの、いいですか?」

 

「何だ!?」

 

「曹操殿の天幕に誰かを入れることは・・・」

 

「そんなことはない。今の状況では誰も入れない!」

 

「・・・でも、一人いますよ。曹操殿の天幕の中に・・・」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

曹操が居る天幕

 

目を閉じ我慢している関羽の上に曹操は被さるような姿勢になった。

 

「ん///」

 

「ふっ、恐がることはないわ」

 

関羽は目を開け、曹操に顔を向ける……次の瞬間。

 

〈キラン〉

 

「きゃっ!」

 

「はぁ!」

 

天井に輝き見えた関羽は曹操を突き飛ばした瞬間、手に刃物を持った刺客が襲い掛かり関羽は寸前で刺客の攻撃を防いだ。突き飛ばされた曹操は起き上がり刺客の存在に気付いた。

 

「曲者だ!であえっ!」

 

刺客は関羽の上から飛び離れ煙り玉を投げ逃げた。

 

「華林さまっ!」

 

〈ボワン〉

 

煙りの中、入って来た夏候惇が急いで歩み寄る。

 

「華林さま、ご無事ですか?!」

 

「私は大丈夫だ!それより、賊を追え!」

 

「はっ!」

 

夏候惇は急いで兵士を引き連れ、賊を追った。

 

 

 

 

 

 

曹操の暗殺を失敗し、逃げている刺客の目の前に

 

「何処に行くの?」

勇作が居た

 

「!?」

 

「まさか刺客だったとは・・・」

 

「どけ!?」

と切りかかろうとするが

 

「眠れ!」

と睨み付けた。すると賊は気絶した

 

「とりあえず、捕まえておくか・・・」

と舌を噛み切れないように刺客の口に手ぬぐいを噛ませ、手足を結んでいる所へ夏候惇率いる部隊が追って来た。

 

「なぜ、貴方が?!」

 

「探していたら鉢合わせたので捕まえおきました」

 

「感謝します、高杉殿。連れて行けっ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

刺客を渡した勇作。兵士達は刺客を連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

曹操と関羽はガウンを羽織り、中心にある天幕に居た。

 

「華林さま」

 

「関羽殿」

 

そこへ勇作と夏候惇が入って来た。

 

「高杉殿、なぜ夏候惇殿と?」

 

「春蘭、賊は?」

 

「はっ!高杉殿が生け捕りにしました」

 

「なっ?!」

 

「え~そう」

 

勇作の功績に驚く関羽。勇作を見ながら笑みをする曹操。

 

「曹操殿、先程の刺客はいったい?」

 

「出る杭は打たれる。都では、私を煙たく想う者が多くてね、でもまさか、こんな所まで刺客を放ってくるなんて、油断したわ」

 

曹操が席を立ち、天幕から出て行こうとする。

 

「邪魔が入って興が削がれたわ、今夜はもう寝た方が良さそうね」

 

「あの、曹操殿」

 

「関羽、高杉。刺客の手より私を救い刺客を捕らえた事、礼を言うわ、褒美として馬超の命、助けてとらす」

 

「曹操殿!」

 

「ただし!私はまだ、あなた達の事は諦めていないわ、関羽のその美しい黒髪に高杉の武、必ず手に入れ見せるわ!だから、その時を楽しみにしていなさい」

 

曹操は勇作と関羽に背を向けたまま出て行く。

 

「春蘭、馬超を引き渡してあげて」

 

「かしこまりました」

 

夏候惇の案内で二人は馬超の元へ向かった。

 

 

夏侯惇に率いられ、勇作と関羽は馬超が囚われている天幕へと向かっていた。と、ここで関羽が口を開く。

 

「夏侯惇殿・・・一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「私に答えられることなら、なんでもいいぞ」

 

「その・・・曹操殿が馬超の父を手に架けたというのは、本当なのですか・・・?」

 

「俺も聞きたいです」

 

おそらく聞かれるだろうと分かっていたのか、夏侯惇は一旦足を止める。

 

「高杉殿、関羽殿。これから私は独り言を言う、あれは数年前・・・」

 

夏侯惇は「独り言」という形で当時のことを語り始めた・・・

 

「都で、何進大将軍の屋敷に招かれた時だった」

 

『曹操』

 

『何でしょう?』

 

『妾は、そなたの事を知謀の資と思うておったが聞けば、剣の腕も中々と』

 

『恐れ入ります』

 

『どうじゃ?この中の者と太刀おうて、その腕前を見せてもらえぬか?』

 

『大将軍の仰せとあらば』

 

立ち上がった曹操。しかし周りの人々は強さを知っているが故、誰も名乗りを上げようとしなかった。と、何進の目に酒を飲んで大分酔っている馬騰が止まる。

 

「馬騰殿、如何であろう?』

 

『お臨みとあらば』

 

『お待ち下さい』

 

馬騰が引き受け立とうとしたら曹操が止めた。

 

『お見受けした所、馬騰殿はかなり酔いが回られている御様子、座興とはいえ剣をお取りになるのは』

 

『何も、このぐらい飲んだ内には入らぬ』

 

そう言って立つ馬騰だがふらついており、尻餅をついてしまった。

 

《クスクスッ》

周りの者から笑い声が聞こえた。

 

『どうやら、曹操の言うように馬騰殿は少し酔わられているようじゃな、無理をせぬほうがよかろう』

 

『クッ!』

 

「満座の中で恥をかいたのを紛らすためか、その後、馬騰殿は浴びるように酒を飲まれ、宴が果てた後、供も連れず一人お帰りになられたんだが、その途中で・・・」

 

《ドサッ》

 

馬騰は馬から落ちてしまった。

 

「そこをたまたま、夜間の警備をしていた私の一隊が見つけたのだ、落ちた時に頭を強く打たれたのだろう、既に虫の息で・・・」

 

『酔って馬から落ちて死んだなどと永遠の恥、この事は内密にしてもらいたい』

 

 

 

 

「その場に居た者には堅く口止めしたのだが、どこかで見た者がおったのか、しばらくすると妙な噂が・・・」

 

「妙な噂?」

 

「そう、我が主が恥をかかされた腹いせに馬騰殿を襲わせたと」

 

「どうしてそんな?」

 

「我が主はその、少し誤解されやすい所があって、それでこうした事が起こると口さがない者共が悪い噂を立てるのだ」

 

「馬超はその悪い噂を信じてしまったと」

 

「そうだと思われる」

 

「しかし、それなら真実を明らかにせぬのだ!」

 

「そうですよ!」

 

思わず関羽と勇作が反論するが、夏候惇は慎重に答えた。

 

「私も何度かそう申し上げたのだが、我が主は『西涼にその人ありと言われた、馬騰程の武人が最期に口にした頼み、聞かない訳にはいかぬだろう』っと」

 

「・・・・・・」

 

「それに父の武勇を誇りに想う子に父のそんな死に様を知らせなかったかもしれん・・・はっ!いやっ、これはあくまで私の勝手な想像なのだが」

 

「しかし、それでは曹操殿が!」

 

「そういうお人なのだ、あの方は・・・」

 

「・・・・・・・」

夏候惇の話を聞いていた勇作が口を開く

 

「夏候惇殿」

 

「ん?」

 

「先程の独り言、馬超の前でもう一度してはもらえせんか?」



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第十四席 勇作、馬超と別れるのこと

(ゴスッ!!)

と、鈍い音が響く。

 

檻から出してもらった馬超が、先ほどの夏侯惇の独り言を聞いて「信じられない」と言わんばかりに、檻に拳をぶつけたのだ。

 

「そんな?!父上が・・・アタシの父ちゃんが酔って馬から落ちて死んだなんて」

 

関羽はそんな馬超の肩に手を置いた。

 

「馬超、曹操殿は馬騰殿、そして、お主の事を想ってこの事を黙っておられたのだ。武人としての体面を重んじる馬騰殿の気持ち、それを尊重して自ら悪評を引き受けた曹操殿の振る舞い、いずれも立派なものだと思う・・・だが、そのためにお主が曹操殿に恨みを抱き、その命を狙うのであってはお主のためにも良くないと・・・」

 

「嘘だっ!曹操の手下の言うことなんて信じられるかっ!」

 

しかしは馬超受け入れようとせず、逆に夏侯惇が嘘をついていると叫ぶ。

 

「ほう、それでは私が偽りを言っていると?」

 

「夏候惇殿!馬超は今、取り乱していて、馬超、お主の気持ちは分かるが少し落ち着い「さわるなっ!」・・っ?!」

 

馬超は関羽の手を払いのける。

 

「大方、お前達も丸め込まれたんだろ!上手く事が運んだら、召し抱えてもらう約束でもされたか!」

 

関羽がフォローしようとするも、更にありもしない言動を繰り返す馬超・・・・・・・・・・・と。

 

「いい加減に・・・・・・」

 

「えっ!?」

 

「いい加減にしろっ!」

と勇作は思いっきり檻に拳をぶつけたのだ。

 

(バキ!!)

と音と共に檻の扉が砕けた

 

「「なっ!?」」

と関羽と夏候惇は勇作のやったことに驚いていた。そして勇作は胸ぐらを掴み

 

「いつまで復讐の事を考えてるんだっ!こんなことをいきなり聞かされても、信じられない気持ちは分かるっ!けどな、いい加減、受け入れろっ!復讐しても、何も良いこともないんだぞっ!」

 

「うるさいっ!お前に何が分かるっ!この話をどう信じればいいんだっ!」

 

「馬超、立って武器を取れ!!」

 

「夏侯惇殿!?」

 

それまで黙っていた夏侯惇が、突然馬超に勝負を挑んできたのだ。関羽が驚くのも構わずに、夏侯惇は話を続ける。

 

「私も武人!嘘つき呼ばわりされて、黙って引き下がれるか!!」

 

「望むところだ!!仇討ちの景気づけに、貴様の首を飛ばしてやる!!」

 

そのまま馬超と夏侯惇は、己の武器を手に拠点近くの草原へと移動した

 

「二人共よせっ!こんな無益な争いをして何になる!」

 

関羽は二人が止めるように問い掛けるが。

 

「止めるな関羽殿!!死なねば治らぬバカも居るのだ!」

 

「ほざけっ!!」

 

止める気がない二人。関羽は隣に居る勇作に話し掛ける。

 

「高杉殿からも二人を止めるように言って下さいっ!」

 

「それは無理だ、こうでもしないとわかってくれないことだってある!」

 

「しかし!」

 

「今は、見守りましょう」

 

関羽はただ、見守るしかない。互いに構えたまま動かない夏候惇と馬超・・・が

 

「(なんだ、こいつ・・・全然隙がない・・・深い林の木立のように静かな構え・・・それに・・・澄んだ水のような“気”が伝わってくる・・・あっ!!)」

 

『武術というのは正直なものだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる』

 

馬超の脳裏によぎったのは、幼き日に教わった父の教え。そして父の教えの通り、夏侯惇からは決して気の濁りが見られなかった。そのことは、夏侯惇が嘘をついていないという確かな証拠だった。

 

「っ・・・・・・!!それじゃあ・・・・・・こいつの言ってることは、本当で・・・!!父ちゃんは・・・」

 

真実を悟った馬超が構えを解き、その場に座り込む。夏侯惇もそれに気付き構えを解くと、関羽が馬超の元へ近寄る。

 

「夏侯惇殿の心気に濁りがないのを感じて、貴女がたが嘘をついていないと分かったのでしょう・・・そうだな、馬超?」

と馬超は頷いた。そして勇作も近づいて来て、

 

「よく頑張ったよ一人で。もう、大丈夫だから!」

 

「う、うわぁ~~ん」

 

馬超は勇作に抱き着き、泣いた。悲しいけれど、それは真実を受け入れたから出来たことだった。馬超の涙を照らすように、夜空に星が光っていた。

 

 

 

 

次の日の朝。勇作達は町を出て次の町へと向かう道中の別れ道に差し掛かり、馬超と別れる事となった。

 

「ここで、お別れだな」

 

「せっかく、友達になれたのに残念なのだ」

 

「やはり一度、西涼に戻るのか?」

 

「ああ、故郷の連中に本当の事を教えてやんなきゃなんないから」

 

「そうだな、それがいい」

 

真実を話しておかなければ、再び今回のような騒動が起きてしまうかもしれない。それを防ぐためにも西涼に戻るという馬超の決断は、正しいものだろう。

 

「関羽と高杉には色々と世話になっちまって」

 

「いや、それほどでも」

 

「別に構わないよ」

 

「それから、その」

 

馬超は勇作と関羽の腕を掴み、鈴々と星から距離を取り二人の耳元で言った。

 

「アタシが泣いちゃったことは、秘密にしといてくれよ、特に張飛には絶対っ!」

 

「ああ」

 

「分かったよ」

 

「そ、それと高杉!」

 

「ん?」

 

「手は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「そ、そうか・・・」

 

「ん?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

顔を赤くしながら俺のことを見ている、馬超

 

「どうしたの?」

 

「そ、その・・・私の事は翠って呼んでくれっ!///」

 

「えっ!良いのか?」

 

「い、良いから呼べよっ!///」

 

「分かったよ、翠、俺の事は勇作って呼んでくれ」

 

「・・・・・・・・」

 

「あの?翠?」

 

「じゃ、じゃあなっ!///あばよっ!またな~」

 

翠は顔を赤くしながら走り去って行った。

 

「じゃあな!翠~!」

 

「バイバイなのだ~♪」

 

勇作と鈴々は笑顔で翠に手を振る。

 

「(顔真っ赤にしていたけど・・・・・・・・・まさかね?)」

 

ふと星が問いかける。

 

「友との別れだと言うのに、随分ニコニコしているな?」

 

「人は別れ際の顔を覚えてるもんなのだ!鈴々は馬超に、鈴々の一番いい顔を覚えていてもらいたいのだ!」

 

「ほう・・・それにしても高杉殿も罪なお方ですね・・・」

 

「へっ!?それはどういう・・・」

 

「さあ・・・」

 

「ふんっ///」

 

勇作達は翠が見えなくなるまで見送りました。きっと、またどこかで会える・・・・・・そう信じて



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第十五席 勇作、トントンと出会うのこと

馬超と別れ、山越えをしている勇作達。先頭を歩く鈴々は楽しそうに自作の歌を歌っていた。

 

「や~ま~があ~るか~ら山な~のだ~♪か~わがあって~も気にし~ない~♪」

 

「おい、余り変な歌を大声で歌うな、恥ずかしい///」

 

注意にも構わずニコニコする鈴々に、関羽はあきれ顔になる。

 

「何を言っているのだ愛紗。山を歩く時は熊除けの歌を歌った方がいいのだ。じっちゃんがそう言ってたのだ!」

 

振り返って関羽に言った鈴々は再び前を向いて歩き出した

 

「(確かに・・・)」

 

「そうだ。こんな山の中で愛紗と鉢合わせたら、熊が驚くだろう?」

 

「そうそう、こんな所で私にばったり会ったら、熊がかわいそうって、何でだっ!」

 

「・・・・・・」

 

さりげなく星に釣られて発言した愛紗が、即座にノリツッコミを返す。その様子に勇作は驚いていた

 

「あ!高杉殿! これは、その///」

 

勇作が見ているのに気付き関羽は恥ずかしがり、焦りだす。そんな関羽を見て、星はニヤついていた。

 

「な、何だ!! 星、私の顔に何か付いているか?」

 

「いや、公孫賛殿のより、やはりお主の方が面白いと思ってな」

 

「は、ははは」

 

「しかし、本当に熊が現れたら、怖いですな・・・」

 

「そうです・・・と言うか・・何故腕にしがみつくのですか?」

 

星は勇作の腕に抱きつく様につかまっている・・・それも体を密着させているので・・・・

 

「(む・・・胸が・・///)」

 

「おやおや勇作殿は私の体はお気に召しませんでしたかな?」

 

「いや・・・そうではなくて・・・(どうすればいいんだよ・・・・・・うっ、また殺気が・・・)」

 

関羽が殺気を放っていた。次の瞬間

 

〈きゃあぁぁ!!〉

 

「「「「!!っ」」」」

 

どこからか聞こえた悲鳴に勇作達は悲鳴の聞こえた方へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

山の中にある人気のない場所・・・そこでは白い着物の少女が三人組の賊に追い詰められていた。

 

「ひどい、私を騙したんですね」

 

「別に騙しちゃいねぇさっ!」

 

「でも、村への近道を教えてくれると言ったのにこんな所まで連れてきて」

 

追い詰められながらも、少女は臆することなく賊たちにまっすぐな視線を向けていた。しかし賊の頭目はニタニタと怪しい笑みを向けながら口を開く。

 

「近道は教えてやるよ。でも村へのじゃなくて、天国へのだけどなっ!」

 

「て、天国! それでは、私を殺すつもりなのですね」

 

「「「うへへっ!」」」

 

賊達が下品な笑い声をあげる

 

「そうじゃねぇよっ! 気持ち良くして、天にも昇る心地にしてやるつもりなのですよ」

 

少女の問いかけに賊たちが笑いながら答えた・・・・・・その直後。

 

「ほう、お前が連れて行ってくれる天国とは大層、良い所らしいな?」

 

「そりゃあ、もちろ・・・・・・・・・えっ?」

 

関羽に話し掛けられた賊は気付き、声が聞こえた方へ振り向くと勇作達が居た。

 

「何だ? オメェらっ!」

 

「聞いて驚け! この者こそ噂と違って、絶世の美女では無いので気付かぬかも知れぬが」

 

「おいっ!」

 

「黒髪の山賊狩りだ!」

 

前に出て、関羽の紹介を済ませ(内容にツッコミを入れていたが)、自身も武器を構える星。それを聞いた賊は顔をしかめ、少し後ずさる。

 

「弱い者イジメする奴は許さないのだぁ!」

 

「私も貴様達の様な無粋な台詞を吐く輩は嫌いでなぁ#」

 

「残念ながら、天国には案内してやれぬが、この青龍偃月刀で地獄に送ってくれるっ!」

 

「やれるもんならやってみやがれぇ!!」

 

恐れることなく賊たちは襲い掛かる・・・・・・・・・が。

 

「地獄へっ!」

 

「行ってっ!」

 

「来ますっ!」

 

賊は呆気なく倒され、空へ飛んで行った。

 

「ざまあみろなのだ」

 

「(すごく飛んでいったなー)」

 

「助かりました、ありがとうごさいます。あんな恐そうな人達をあっという間にやっつけてしまうなんて本当に皆さん、お強いんですね」

 

「いや、何!///それほどでも///」

 

純粋な眼差しを向ける少女に対し、関羽は照れ臭そうに答える。

 

「あ・・・申し遅れました。私は・・・・・・」

 

ふと、少女は自己紹介をしようとした・・・のだが、若干考えるようなそぶりをした後・・・

 

「と・・・と・・・・・・トントンと申します!!」

 

「鈴々と似てて、良い名前なのだ」

 

「そ、そうですか?」

 

自分の名前と似てて喜ぶ鈴々にトントンは少し苦笑いだった。

 

「私は関羽」

 

「鈴々は張飛なのだ」

 

「趙雲と言います」

 

「・・・・・・・・・」

 

関羽、鈴々、星の順番に自己紹介をしたが、勇作は黙ったままトントンを見ていたのでトントンから声を掛けてきた。

 

「貴方さまは?」

 

「高杉勇作と言います」

 

「どうです? トントン殿、村の方へ行かれるのなら我々と一緒に参りませんか?」

 

「宜しいのですか?」

 

関羽の申し出に喜ぶトントン。

 

「気にすることないのだ!旅は道連れ、世は・・・世は・・・・・・」

 

世は情け、が答えなのだが、その先が出てこない鈴々・・・と、ここで星が一言。

 

「酔わせて何をするつもりぃ?(ちょっと色っぽく)だ」

 

「そうそう、それなのだ!」

 

「ちっがーう!ていうか、それじゃ意味が分からないだろう!」

 

星の冗談を普通に聞き入れる鈴々の鼻に軽くデコピンしツッコミを入れた関羽。その光景を見て、トントンは微笑んでいた。

 

「(なんで、偽名を使っているんだろう?)」



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第十六席 勇作と関羽、化け物を退治せんとするのこと

董卓の屋敷。

 

眼鏡をかけた董卓軍軍師〈賈駆〉は手に書簡を抱え、執務室に入った。

 

「ん? 月(ゆえ)? 月? どこにいるの?」

 

室内の中を見回すが、仕事をしているはずの賈駆の幼なじみでもあり、この辺りの太守でもある〈董卓〉が居なかった。

 

「あの子ったら、また性懲りもなく抜け出したのね。ったく、この忙しい時に~#」

 

怒りながら賈駆は執務室から出て、廊下を歩いていると、

 

「あっ、華雄将軍!」

 

「何だ、賈駆ではないか。浮かぬ顔でどうした?」

 

廊下の突き当たりで会ったのは銀髪を短く切り揃えた董卓軍の猛将〈華雄〉だった。

 

「月が、董卓様がまた居なくなってしまわれて」

 

「と言うと、また例のアレか? お忍びで下々の暮らしぶりを見て回るという」

 

「ええ」

 

「やれやれ、仕事を放り出して、フラフラ出歩くとは困った太守様だな」

 

「領民と直に触れ合って、その声を聞くのは決して悪い事ではないっ!」

 

「なら、別に良いではないか」

 

「そうはいかないわっ! ここの所、地方の賊の征伐に人手を取られて、逆にこの辺りの治安が悪くなっていると言うのにっ! それに物の値段が上がって、民の間に不満が募ってるし! 山の方では人食い熊が出るとか何とかっ!」

問題が多すぎて、賈駆は頭をワシャワシャと掻きまくる。この状況で太守がいないのだから、焦るのも無理がないとは言えるのだが

 

「賈駆、そんなに心配ばかりしていると早死にするぞ?」

 

「華雄将軍。貴女は悩みが無い分、長生きしそうねぇ~」

 

「まっ! 体は鍛えているからなっ!」

と、ちゃっかり笑顔で返すのだった

 

「はぁ」

 

皮肉で言ったのに気付かない華雄にため息をする賈駆であった。

 

 

 

 

 

一方、勇作達は村に向かって歩き続けている途中であった。そこでトントンからある噂話を聞いていた。それは・・・・・・・・・今から向かう村に化け物が出ると言うものである。

 

「えぇ?化け物?」

 

「はい。ある日、村の庄屋様の門に白羽の矢が打ち込まれ、それに結び付けられた文に『今宵、村の外れのお堂に食べ物を供えよ、でなければ、村に災いが降り懸かるであろう』と書いてあったとか、最初は質の悪いイタズラと思い、そのままにしていたらしいのですが、朝になってみると山から運んで来たのか門前に大きな岩が忽然と置かれていて」

 

「ほう」

 

星が興味深そうに相槌をした。

 

「これは、とても人の力で持ち上がる物ではない、化け物の仕業に違いないと」

 

「「んっ!」」

 

関羽と鈴々の顔が少し強張る。

 

「それで、慌ててその夜。御堂に食べ物を供えたら、それからは七日に一度の割合で催促の矢文が打ち込まれるようになったとか」

 

「なんと、奇怪な」

 

「ですけど、これは町で聞いた噂、本当かどうか確かめたくて」

 

「なるほど・・・・」

 

と勇作が納得していると、星がとある疑問を抱く。

 

「しかし、トントン殿。なぜ、そのような事を?ただの娘が思い付きでする事とは思えぬが」

 

「(確かに・・・)」

 

「え!?あ、いや・・・それは、その・・・」

 

確かに、村娘が興味本位でやることとは思えない。指摘されてしまい、トントンが慌てていると・・・・・・鈴々が突然声を上げて何かを指差す。

 

「なんなのだあれは!?」

 

指が差された先には既に目的の村があったのだが、注目すべきは・・・・・・・・・庄屋の屋敷の門前にデンと置かれた巨大な岩。近くで見てもかなり大きく、それなりに大きい門をあっさりと越えてしまっている。

 

「きっと、これが化け物が置いて行った岩なんですね」

 

「「うっ!」」

話に出た岩と知り関羽と鈴々が驚く。こんな大きい岩を運ぶなど・・・どう考えても人間業とはないと、一行は改めて実感した。

 

 

 

 

庄屋の家。

 

一行は庄屋の元を訪ね、改めて話を聞くことにした。

 

「庄屋様、それでは化け物が出るというのは本当だったのですね」

 

客間に通された勇作達は庄屋に化け物について話していた。

 

「はい、困り果ててお役人様に訴えってみたのですが、化け物が出たなどと怪しい事を言って、御上(役所)の手を煩らさんなっと逆にお叱りを受ける始末」

 

〈バァン〉

 

「そんな酷い事を!」

 

「「「!?」」」

 

思わず立ち上がるトントンにポカンとする一同。我に返ったトントンが座ったのを見て、庄屋は改めて話を続ける。

 

「オッホン! それで村の力自慢の若者や旅の剣客らに頼んで、化け物を退治して貰おうとしたのですが、いずれも這う這うの体で逃げ帰って来て」

 

「そ、そんなに恐ろしい化け物なのですか?」

 

顔を引きつらせながら関羽は聞いた。

 

「しかと、姿を見た者はおりませんが、ある者は身の丈が三十で紅く光る目をしていたと言い、またある者は鋭い牙と爪を生やしていたと言い、全身毛むくじゃらで恐ろしい唸り声をあげていたと言う者もおり」

 

「「うぅ~」」

 

化け物の容姿について色々な例をあげる庄屋の話を聞き関羽と鈴々の顔は青ざめた。

 

「いったい、この村はこの先どうなってしまうのか・・・・・・・・・」

 

「こういう時こそ、我らの出番だな!」

 

「「えぇ!?」」

 

「どうした? お主達から言うと思っていたが」

突然の星の申し出に驚く愛紗と鈴々、星はというと、逆に驚く二人を見てキョトンとしていた。更にトントンは星の申し出を受け入れている。

 

「お願い出来ますか?」

 

「しかし、相手は正体不明の化け物」

 

「この方達は、恐ろしい山賊をあっという間に倒してしまうほどお強くて。ですからきっと、化け物相手でも自信がお有りなのでしょう」

 

「ほう!ならば是非!」

 

トントンの話を聞き、庄屋は関羽達の方へ向く。

 

「い、いや、そんな勝手に決められても・・・!」

 

「そ、そうなのだ! 鈴々にも都合があるのだ」

 

「そうだ! た、高杉殿はどう思いますか?」

 

「そ、そうなのだ! お兄ちゃんはどうするのだ」

 

「俺は引き受けてもいいと思うよ」

 

「高杉殿!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

必死で断る関羽と鈴々は頼みの綱の勇作に聞くもあっさり失われた

 

「駄目なのですか・・・・・・(ウルウル)」

 

「う・・・!だ、駄目・・・・・・ではないが・・・・・・」

 

「お願いします・・・村の方々が困っているんです・・・(ウルウル)」

 

「っ・・・」

 

「お願いします・・・・・・(ウルウル)」

 

ウルウルとした視線を送るトントン。

 

「そう言うことならば」

 

「良かった、引き受けて下さるのですね♪」

 

「いや、その・・・・・・・・」

 

口を滑らせた関羽。すると星が

 

「いやなら、行かなくていいぞ!そのかわり、勇作殿と二人で退治しますからなー」

と言いなら、勇作の腕に抱き着いた

 

「星、お前、わざとやっているだろう!?(うっ・・・・腕にまた・・・む・・・胸が・・///)」

 

「おや、驚かないのですか?」

 

「いい加減慣れました・・」

 

「勇作殿の驚く姿を楽しみにしていたのですが・・・それは残念」

 

「そんなもの楽しみにしないいでください(うっ・・・また殺気が・・・)」

 

「みなさん、ありがとうごさいますっ!」

 

「はぁ」

 

「うぅ~」

 

「ふっ」

 

引き受ける事になった関羽と鈴々の顔が青ざめているのを見た星は不適な笑みをした。

 

「(星の奴、絶対何かする気だな)」

 

それを横で見た勇作は思ったのであった

 

 

 

 

その日の夜・・・一同は大量の食べ物を積んだ荷車を引く村人や庄屋と一緒に御堂へと向かっていた。松明を片手に進む山道は薄暗く、辺りを警戒しながら進んでいく。

 

「二人共、少し震えておるが、もしかして怖いのか?」

 

その道中、星が関羽と鈴々に話し掛けた。

 

「こ、怖くなんかないのだっ!」

 

「その通り! こ、この震えはその、武者震いだっ!」

 

「(少々無理があるぞ)」

と心の中で勇作は思った

 

「ほう、そうか?」

 

「な、何だ!? 何か文句あるのかっ!」

 

「いや、別に・・・うむっ!」

 

「「ひぃい!?」」

 

突然星が立ち止まり、愛紗も鈴々も軽くだが悲鳴を上げる。

 

「どうしたっ! 何か出たのかっ!?」

 

「いや、せっかく月が綺麗だったのに雲が出て来たなと思ってな」

 

「何だ、そんなことか」

 

大した問題ではなかったようなので、再び先へ進む一同。と・・・

 

「はっ!」

再び歩き続けた所で、また星が止まった。

 

「「ひぃい!」」

 

「今度は、何だっ!?」

 

「昨日、茶店で団子を食べた時にお主、私より一個多く食べていなかったか?」

 

「まあ、確かそうだったかもしれんが今、そんな事を思い出さなくても」

 

「ふっ」

 

星は再び歩き出した。

 

「お主、わざとやっているだろう#」

 

「(確かに・・・なんか、可愛そうになってきたな・・・)」

と勇作は思い

 

「あの・・・怖かったら手でも繋ぎましょうか・・・」

と言うと、勇作の右腕に愛紗、左腕に鈴々が抱き着いた

 

「何で、抱き着くんだよ!?」

 

「勇作殿が言ったでは、ありませんか?」

 

「抱き着くまでとは・・・」

 

「だめなの・・・(ウルウル)」

と鈴々が今にも泣きそうな瞳で見つめる

 

「いや、別にいいけど・・・」

 

「やったーなのだ!」

と強く抱き着いた

 

「何かお兄ちゃんに抱き着くと全然怖くないのだ・・・」

 

「それは良かった・・・・・あの、関羽殿・・・」

 

「はい?・・・」

 

「強く抱きしめないでください・・・」

 

「何故です?」

 

「そ、それは・・・(む、胸が当たっているですけど・・・///)」

 

「だめですか?」

 

「いや、良いです・・・(やばい、星より、大きいかも・・・・・・///・・・けど、これは、これで、良いかも・・・・・・///)」

と思ってしまう勇作であった

 

「・・・・・・・・・・」

それを見ていた星は、ムッとした顔になっていた



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第十七席 勇作、呂布と出会うのこと

勇作達は御堂に到着

 

食べ物を御堂の中に運び終わった庄屋は勇作達の方へ向く。

 

「それでは、お頼み申し上げますぞ」

 

「う、うん」

 

「化け物退治、頑張って下さいね」

 

「ど、ドーンっと任せるのだっ!」

 

そう言う関羽と鈴々だったが顔は引きつっていた。トントンと庄屋達は村へ帰って行き、勇作達はお堂の中へ入った。

 

「これはまた、いかにも何か出そうだな」

 

御堂の中を見渡す星。中は薄暗く、仏像がロウソクの明かりに照らされ、不気味な雰囲気を出していた。勇作達は円になるようにその場に座った。

 

若干、声を震わせながら答える関羽。その手は隣にいる勇作の服の袖を掴んでいた。因みに反対側の鈴々は腕に抱き着いていた。

 

「そういえば、あれもこんな月が無い夜だったな」

 

「「・・・」」

 

いきなり話をし始めた星に関羽と鈴々の体が強張る。

 

「日のある内に、山を越えるため歩き続けたのだが、道を間違えたのか、行けども行けども人里に出ず、これはもう野宿をするしかないと思った頃、何処からか春先にしては生暖かい風が吹いて来て」

 

「「っ!」」

 

〈ぎゅっ〉

 

「どれほど眠ってしまたのか、カリカリっと何かを引っ掻く音で私はハッと目を覚ました。最初は天井裏でネズミがたててる音だと思ったが、よく耳を澄ましてみると、どうやらそれは真新しい棺から聞こえて来るらしい」

 

「「ん!」」

 

〈ぎゅう〉

 

「(痛いっ!)」

 

雰囲気を出しながら、しゃべる星の話を聞く内に勇作の腕を掴む関羽と鈴々の手に段々と力が入る。

 

「嫌な予感を覚えつつ、それでも何故か、まるで吸い寄せられるかのように私は棺の蓋に手を掛けて、恐る恐る中を開けて見ると・・・」

 

「「ん!」」

 

「うわぁあああ!!」

 

「「ぎゃあああ!」」

 

〈ぎゅう~~~〉

 

「「あぅ~」」

 

〈ドサッ〉

 

星のいきなりの大声に驚いた関羽と鈴々。勇作に強く抱き着き、気絶してしまった。

 

「やり過ぎだよ、星」

 

「これは失敬」

 

「気絶しちゃったよ、二人共。大丈夫かな?」

 

気絶した関羽と鈴々を気遣う勇作。すると星が抱き着いてきた

 

「せ、星!?(・・・・む、胸が・・・・・)」

突然のことに勇作は驚いていた

 

「これで、二人きりになりましたなー」

 

「そ、そうですね・・・」

 

「それはそうと・・・」

 

「ん?」

 

「此処に来るまで、愛紗に抱き着かれて、うれしそうにしていましたな・・・」

 

「い、いや・・・」

 

「そんなにうれしかったのですかな・・・」

 

「そ、それは・・・」

 

「ま、良いですよ。化け物が来るまで、いろいろとやりましょう・・・」

と星は勇作の顔に近づいてきた

 

「いろいろって!?(や、やばい!このままじゃ、理性が飛びそうなことに・・・ど、どうすれば・・・)」

と思っていると

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

「外に誰かいます・・・」

 

「!?」

と驚いていたが

 

「・・・来ましたね」

 

「はい」

 

「早く二人を起こそう」

 

「それでしたら、私にお任せください」

 

「またやり過ぎるなよ」

 

「ふっ、どうですかな?」

 

「(また何かする顔だな、あれは)」

 

勇作に不適な笑みをした星はロウソクを一本だけ手に取り、倒れている関羽と鈴々に近づいた。

 

「愛紗!鈴々!」

 

「「んっ?」」

 

「めぇ~をぉ~さぁ~まぁ~せぇ~」

 

「「いやぁああ!!」」

 

目を覚ました二人が見たのは手にしたロウソクを顔の下から照らした星の顔で、二人は驚き外へ出てしまった。そのまま走っている内に、二人は「何か」にぶつかった。尻もちをついた二人が顔をあげると・・・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

赤く眼を光らせている二つの影が、二人を睨みつけていた。

 

「ば、化け物ぉ・・・!!」

 

「なのだぁ・・・!!」

 

本当に出てきたと思いこんだ二人は、その場に倒れてしまう

 

「やっと、お出ましか」

 

「・・・・・・」

 

御堂から星と勇作が出てきたのと同時に、雲が晴れる。月明かりに照らされ現れたのは・・・・・・・・・白い虎の毛皮を被った愛紗程の背丈で手に方天戟(三日月状の刃が片側に付いた槍の一種)を手に持ち立っている少女だった。

 

「正体を現したな!」

 

「(誰なんだ?)」

 

「そこに倒れている二人と違って、私はそんな物で驚かされたりせぬぞ」

 

「(彼女、只者ではないな・・・)」

 

「はぁ!」

 

「星ぃ!」

 

勇作が咄嗟に制止するが、星は〈龍牙〉を手に虎の少女に向かって走って行った。

 

「はぁ!」

 

〈ガァキィン〉

 

「っ!? 何だ? この重い一撃は」

 

星の攻撃を虎の少女は横の一振りだけで防ぐ。後ろに飛ばされた星は、苦痛な顔をし、再び虎の少女へ向かって行く。

 

「ふっ!」

 

〈ガァキィン〉

 

「・・・」

 

〈ガァキィン〉

 

「くっ!」

 

鍔ぜり合いとなり、虎の少女の力が圧倒的に強く星は押される。

 

「(こいつ、強い! だが)」

 

星は諦めず、攻撃するが全て防がれる。

 

〈ガァキィン〉

 

「(しまった!?)」

 

虎の少女の一撃で、星の〈龍牙〉は飛ばされてしまった。

 

「(やられるっ!)」

 

「・・・」

 

星にとどめの攻撃がされる瞬間。

 

〈ガァキィン〉

 

「星! 大丈夫か!」

 

「勇作殿!」

 

勇作が二人の間に入り、〈応龍〉を抜き虎の少女の一撃を防いだ。

 

「勇作殿、この者」

 

「ああ、かなり強いな」

 

「・・・」

 

割って入って来た勇作に警戒する虎の少女。

 

「星! 一旦、退却するぞっ!」

 

「何故ですか!? 勇作殿!! 私と勇作殿なら奴を倒せるかも知れぬのに!!」

 

「今、闘ったら関羽殿と鈴々を巻き込んでしまうだから一旦、退くぞ!」

 

「っ・・・・・・・・・承知した!」

 

「行くぞ! ハァァ!」

 

〈ドカァン〉

 

「・・・・・・・・・・!?」

 

〈ブゥン〉

 

一瞬悩む星だが、勇作の案が正しいと判断した。勇作は覇気を纏わせた〈応龍〉の一撃を地面に放ち、目眩ましの砂煙を起こした。虎の少女はいきなりの砂煙に一瞬だけ怯むが、すぐに砂煙を槍で振り払った。

 

「・・・・・・・・・・・・?」

 

振り払ったその場には、勇作と星の姿も倒れていた関羽と鈴々は無く、虎の少女は辺りをきょろきょろと見回した後、御堂にあった貢ぎ物を持って暗い林の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

昨夜、戻って来た勇作達は庄屋の家に泊まらせてもらい、トントンと一緒に朝食を食べていた。

 

「何!? 化け物ではない?」

 

「ああ、紛れも無くあれは人間だ」

 

「己~謀りおって~# しかし、そうと分かればもう怖くない!」

 

「やはり、そうと分かるまでは怖かったのだな」

 

化け物の正体が人間と分かり憤る愛紗に、ふと星がツッコミを入れる。

 

「い、いや! そ、それは!」

 

「と、とにかく! 化け物で無いのなら、次に会った時は必ず成敗してくれる!」

 

「こてんぱんにしてやるのだ!」

 

「確かに奴は化け物では無い。だが、強さは化け物並だ。」

 

「化け物並」

 

リベンジに燃える関羽と鈴々に言った星の言葉にトントンは復唱するように呟いた。そんな中、勇作は黙ったまま手の平にある昨夜、退却する際に拾った犬の木彫りを見ていた。

 

「(誰なんだろう?)」

 

 

 

 

 

その昼間。勇作達は虎の少女の消息を掴むため御堂の近辺を捜索していた。

 

「しかし、ここまでついて来なくてもトントン殿は村で待っていれば、良いのに」

 

関羽は一緒に手掛かりを探すトントンに言った。

 

「相手が化け物ではないのなら、こんな事をする理由があるのかも、それだったら話を聞いて」

 

要するに説得を試みようと言い終わる前に、星が声を上げる。

 

「あった!」

 

星が近くの茂みから奥へと続いている足跡を発見した。

 

「これが奴の足跡だ」

 

「あちらの方へ続いてるようだな」

 

「行ってみるのだ!」

 

勇作達は足跡を辿って、奥へと進んだ。広い場所に出た勇作達は辺りを見回した。

 

「おい、アレ!」

 

関羽が指差す先には住家にするには最適な洞窟があり、その前では焚火の跡が残っていた。

 

「うむ。おそらく、アレが奴の住家だ」

 

もっと詳しく調べようと、先へ進もうとしたその時!!

 

「(・・・来る!?)」

 

「どうしまし・・・〈ガァキィン〉っ!?」

 

後ろの林の中から虎の少女が関羽に襲い掛かって来たのを勇作が防いだ。

 

「早く後ろに隠れるのだ!」

 

「は、はい!」

 

鈴々に言われて、トントンを後ろに下がった。

 

「気をつけろ、奴だ!」

 

気を引き締めて言う星に関羽と鈴々の手に力が入る。

 

「昨日、勝手に気絶した二人」

 

虎の少女が関羽と鈴々を見て言った。

 

「さ、昨夜は不覚を取ったが、今度はそうはいかぬぞ!///」

 

「鈴々の強さ、思い知らしてやるのだ!///」

 

さりげなく昨晩気絶したことを突っ込まれ、若干顔が赤い愛紗と鈴々。

 

「貴様、化け物で無ければ名があろう?」

 

星の問いに答えながら、被っていた虎の毛皮を脱いで、素顔を見せた。

 

「呂布、奉先」

 

「(なっ!?呂布だと!?)」

 

名前を聞いて、勇作は驚いた。呂布は、名前を言った後に攻撃を仕掛けて来た。

 

〈ガッキィン〉

 

「くっ」

 

呂布の攻撃を正面から受けた関羽は顔をしかめる。

 

「うりゃあぁ~!」

 

〈ガッキィン〉

 

「・・・・・・・・・」

 

そこへ鈴々が横から攻撃を仕掛けるが、あっさりと防がれてしまった。

 

「こんなの初めてなのだ」

 

「な、何だ!? コイツは!」

 

呂布の強さに驚く関羽と鈴々。

 

「だから言ったであろう。強さは化け物並みだと・・・・・・・・・はぁっ!」

 

「はぁっ!」

 

〈ガキィィン〉

 

「・・・・・・・・・・」

 

「うりゃあぁ~!」

 

〈ガキィィン〉

 

関羽と星の攻撃に続くように鈴々が上からの攻撃を呂布は画戟を振り回し弾き返した。

 

「お前達、弱い」

 

「俺を忘れているよ!」

 

「お前、昨日逃げた奴」

 

「戦略的撤退って言うんだよ」

と言い、呂布に向かって、覇気を放った

 

「っ!?」

呂布の目の色が変わった

 

「お前、強い」

 

「それは、どうも・・・」

と言うと、勇作は目を瞑った

 

「?」

呂布は勇作のやったことに『?』を浮かべた

 

「何で、目を瞑るの・・・」

 

「別に・・・来いよ」

 

「・・・・・行く」

と攻撃を放つが

 

「・・・(ヒラ)」

と簡単に躱した

 

「!?」

躱されたことに呂布は驚いていた

 

「避けられた・・・」

 

「・・・驚いた?」

 

「・・・コク」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

〈ガキィィン〉

 

「・・・・・・・・・っ!」

 

勇作の一撃が呂布を初めて後ろに押した。

 

「・・・・・・・・ふっ!」

 

「はぁっ!」

 

〈ガキィィン〉

 

「・・・・・・・・っ!」

 

「はっ!」

 

〈ドゴォン〉

 

「・・・・・・・・・すごい」

 

「お兄ちゃん、強いのだ~」

 

「これほどまでとは・・・」

 

勇作と呂布の激しい攻防に関羽、鈴々、星は驚いていた。

 

「・・・・・・・・・・っ!」

 

〈ブゥン〉

 

「ふっ!」

 

〈ガキィィン〉

 

「ワンっ!」

 

「・・・・・・・・・っ!」

 

「なっ!」

 

勇作が避けた呂布の一撃は勇作の後ろにあった木を斬った。その斬った木は洞窟から出て来た呂布と同じスカーフを首に巻いた犬へ倒れて行く。

 

「危ないっ!!」

 

そこへ後ろに下がっていたトントンが駆け寄り犬を守るように抱きしめた。

 

「・・・・・・・・・・・っ!」

 

「くそ、間に合わない!」

 

〈ドゴォン〉

 

斬り倒された木がトントンと犬を下敷きにしたと思われたが、

 

「くっ」

 

「うぅ~」

 

間一髪、関羽と鈴々が食い止めていた。

 

「だめよ、くすぐったいわ♪」

 

トントンと彼女の顔を舐めている犬にも何処にも怪我は無かった。関羽と鈴々は木を退けて、勇作達の方へ歩いて来る。

 

「お前達、良い奴。良い奴とは戦えない」

 

呂布はそう言いながら、武器を降ろした。

 

「そうか。呂布」

 

「・・・・・・・・・・・?」

 

「訳を話してくれないか? 君が村人に貢ぎ物を差し出させていた訳を」

 

「・・・・・・・・・・・わかった」



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第十八席 勇作、トントンの正体を知るのこと

勇作達は呂布に話を聞くため、洞窟の前で焚火をするかのように円となって座り、勇作は呂布に昨夜拾った犬の装飾品を渡した。

 

「村人に食べ物を貢がせていたのは、犬のエサにするためのですか・・・」

 

「自分でエサ代を稼ごうとした事もあったけど・・・///」

若干顔を赤らめる呂布が言うには・・・

 

 

 

 

 

それはメイド喫茶で働いていた時だった。

 

〈ガラガラッ〉

 

『あ、あの・・・・・・・・・・』

 

『お帰りなさいませ、ご主人様』

無表情な呂布の接客に入ってきた客は気まずい顔をした。

 

注文取りにおいても、

 

『ええと、俺、炒飯と餃子ね』

 

『俺も同じの。ただし、炒飯は大盛りで』

 

『俺は坦々麺。あと、春巻も』

 

『俺は、回鍋肉に白飯。それから玉子スープ』

 

『・・・・・・・・・コクッ・・・・・・・・・ラーメン四丁』

 

『『『『えぇ!』』』』

 

と言った具合で、仕事が続く訳が無くクビとなった。

 

 

 

 

「全然、ダメダメなのだ」

 

「お前が言うな」

 

前科のある鈴々が言える事では無いと、関羽がツッコム。

 

「しかし、子犬一匹飼うのにあれだけの食べ物はいらぬだろう?」

と星が言うが

 

「それは、どうかな・・・」

 

「どういう事ですか?」

 

「呂布、一匹だけじゃないんだろ・・・」

 

「え?」

 

「・・・・・・・コクッ」

 

呂布は口笛を吹くと、洞窟の中から二十匹近くの犬達が出て来た。

 

「こ、これは確かに」

 

「友達、たくさん。皆捨てられたり、怪我したりかわいそうで、ほっとけなかった」

 

呂布は自分と同じ赤いスカーフをした犬を抱き、暗い顔をした。そんな呂布にどう声を掛けるべきか、悩んでいると馬のいななく声が聞こえた。

 

「(誰だ!?)」

 

「あっ! 月っ!」

 

「あら、詠ちゃん」

 

近くに馬を止め、賈駆が駆け寄ってきた。それに気付き、トントンも立ち上がる。

 

「あら、詠ちゃんじゃないっ! 連絡が来るまで僕がどれだけ心配したか」

 

「ごめんなさい」

 

「下々の声を直接聞きたいとは立派な事だけど、もし危ない目にでも遭ったりしたら」

 

「それなら大丈夫。今回はこの方達に助けて貰ったから」

 

トントンは勇作達の方を向いて言った。

 

「って、 危ない目に遭ったの!?」

 

「うん、少しだけ」

 

「えぇ!?」

 

「お取り込み中、申し訳ないが、お主は一体?」

 

話が全く分からない関羽が声を掛けた。

 

「我が名は賈駆、字は文和。こちらにおられる太守の董卓様にお仕えしている者だ。」

 

「「「えぇ!?」」」

 

「(なっ、何!?、この子が董卓だと!?)」

 

関羽、鈴々、星はトントンがまさかの太守だと知り驚愕した。勇作も正体を知り驚いてた。驚くのも無理はない。自分の思っている董卓と全然違うのだから

 

「それで、化け物の件は?」

 

「もう解決しちゃった♪」

 

「ああ、そう」

 

笑顔で答える董卓に拍子抜けの賈駆であった。

 

 

 

 

 

 

董卓の屋敷

 

やがて一同と呂布、そして庄屋は屋敷に招かれた。

 

「皆さん、お待たせしました」

 

しばらくして現れたのは・・・高貴な衣装を身に纏ったトントン、改め董卓だった。その高貴な中にも清純なたたずまいに、一同も感嘆の表情になる。

 

「なるほど、そう言うことでしたか」

と庄屋は今までの董卓の行動に納得していた

 

「確かに呂布さんのした事は良くない事です。ですが、それは全て傷つき捨てられた犬達を救うため、決して悪心から出たことでは無いのです。門前の岩もすぐ退けますし、出来る限りの償いをするそうです。そうですよね、呂布さん?」

 

「・・・・・・・・コクッ」

 

呂布はしっかりと頷いた。

 

「分かりました。既に本人からも謝って貰ったことですし、村人からも私の方から話をして見ましょう」

 

「そうして頂けると助かります・・・・・・・・・・所で、詠ちゃん。役所では、化け物が出て困るという訴えを取り合わなかったとか」

 

「えぇと、それは」

 

ふと、役所での一件で賈駆を叱る董卓。

 

「董卓さま、その事は既に済んだ事ですので」

 

「いいえ、良くありません。どんな些細なものであれ、民の訴えを疎かにせぬのが政の基本なのですから」

庄屋の言葉も構わず、董卓は知らないところで起こっていた自分の失態を反省している。見た目はか弱い少女ではあるが、太守としての風格を醸し出している証拠だった

 

「かしこまりました。今後、そうした事がないよう全ての役人に厳しく申し付けます」

 

「良いでしょう。それから・・・・・・・・・」

 

董卓は扉の前に居る犬達に顔を向けながら言い出した。

 

「あの子達、私の所で飼ってあげる訳にいかないかしら?」

 

「って、あの犬全部を!?」

 

董卓の要求に驚く賈駆。董卓は手を組み、お願いをする。

 

「詠ちゃん。この間から最近、街の治安が悪いのは、警備の兵士が足りなからだって言ってたでしょ? だから、あの子達をちゃんと躾けて街の警備の手助けをして貰うの。どう良い考えでしょう?」

 

「そりゃあ、ちゃんと躾ける事が出来れば泥棒除けにはなるかもしれませんが・・・・・・・・・・・」

 

「それなら、大丈夫。呂布さん、犬達の躾けお願い出来ますか?」

 

「・・・・・・・・・・コクッ」

 

董卓の問い掛けに頷く呂布。

 

「待って、月! 僕はまだ飼って良いとは・・・・・・」

 

「ダメ、なの?(ウルウル)」

 

「うっ」

 

潤んだ瞳で賈駆を見上げる董卓。

 

「お願い・・・・・・(ウルウル)」

 

「うっ、いや、それは」

 

呂布と犬達も一斉に賈駆を潤んだ瞳で見詰める。

 

「・・・・・・・・分かった。飼うよ~」

 

「詠ちゃん! だぁ~い好きぃ♪」

 

了承を得た董卓は賈駆に抱き着き、頬ずりをする。

 

「ちょっ、月! だぁ~い好きって・・・・・・・・・・・・い、言っとくけど、こんな無茶なお願いは今回だけだからねっ! 本当にもう絶対に・・・・・・・・・・ちょっと、何だ!?」

 

突然、無言で抱き着き、頬ずりをする呂布に賈駆は戸惑った。

 

「きっと、お礼の気持ちを表しているのだ」

 

鈴々が何も言わない呂布に代わって言った。

 

「って、だったら口で言え!・・・・・・・・・懐くなっ!」

 

ずっと賈駆に頬ずりを董卓と呂布にその場に居た皆は笑いあった。

 

「(ま、これでめでたし、めでたしだな。・・・・・・それにしても、呂布と董卓と会うとは・・・・今までで、一番驚いたかも・・・)」

と勇作が思っていると

 

「・・・ん?」

と賈駆に抱き着いていた呂布が近づいてきた

 

「どうしたの・・・」

 

「・・・・・・・やろう」

 

「何を?」

 

「・・・戦いの続き」

 

「・・・・・・・・・・え?」



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第十九席 勇作、呂布と手合せするのこと☆

董卓の屋敷中庭

 

 

俺は董卓の屋敷中庭いる。なぜ、ここにいるかと言うと・・・

 

「本当にやるの?」

 

「・・・・・・コクッ」

 

呂布と手合せするためだ

 

 

「・・・準備は良い?」

と賈駆が言って来た。両者が頷き

 

 

「・・・始め!!」

 

 

「・・・行く」

と呂布が先に仕掛けるが

 

「・・・・・・よっ」

と勇作は簡単に避けた

 

「・・・・・・次」

と続けて仕掛けるが

 

「・・・余裕」

と簡単に避ける

 

「今度はこっちから行くぞ!」

勇作が刀で攻撃を仕掛ける

 

ガチン

 

「くっ!!」

呂布は何とか防御するが少し後ろに押された

 

「まだまだ行くぞ!!」

 

勇作はそのスキに攻撃し続ける

 

「ふっ!」

 

呂布も反撃するし攻防が続く

 

 

 

「すごい攻撃なのだ・・・」

 

「確かに・・・」

 

「だが、これを簡単に避けている高杉殿もすごい・・・」

と鈴々、星、関羽が言った

 

 

「なかなかやるわね、あいつ」

 

「そうだね、詠ちゃん」

と賈駆、董卓も言った

 

 

 

すると呂布の攻撃が終わり

 

「・・・・・・どうして」

と何か言い始めた呂布

 

「ん?」

 

「・・・どうして、本気で戦わないの?」

 

「っ!?」

この言葉に、全員驚いた。みんなは勇作の攻撃が本気だと思っていたからである

 

「・・・・・・」

 

「・・・恋、本気で戦いたいのに」

 

「それ、本当なの?」

賈駆が言うと

 

「・・・・・・コクッ」

呂布は頷いた

 

「・・・・・・・」

 

「・・・恋、本気で戦っている。だから・・・」

と武器を構え直し

 

「・・・お前も本気出して」

 

「・・・・・・」

 

 

 

「お兄ちゃん、本気で戦っていないのか?」

 

「そうらしいな・・・」

 

「しかし、我ら3人が本気を出しても呂布に勝てなかったのに・・・」

鈴々、星、関羽が思った

 

 

 

 

「・・・お願い」

 

「・・・・・・・」

呂布がお願いしてくるが、勇作は黙ったまま

 

「本気出せないの?」

 

「・・・高杉殿」

 

「・・・・・・・」

勇作は黙ったままだった

 

すると

 

「・・・高杉殿」

と関羽が勇作に向かって

 

「ん?」

 

「なぜ本気を出さないのですか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「武人にとってそれは失礼なことです」

 

「(わかっている。わかっているけど・・・)」

 

「・・・何かを怖がっていますね」

 

「・・・・・・はい」

 

「何を怖がっているかわかりませんが、相手が本気で戦いたいのですからそれに答えてください・・・」

 

「そうなのだ・・・」

 

「そうですよ、高杉殿・・・」

 

「・・・お願い」

 

「・・・わかった」

と勇作は刀を納めた

 

 

 

「本気出す前に、董卓さん」

 

「はい?」

 

「先に謝っておく」

 

「へっ?」

 

「それどういう・・・」

 

「・・・いくよ」

と言った同時に勇作の体中から蒼い闘志が発生し,それが徐々に大きくなっていく

 

「っ!」

関羽たちもそれに気づいた。そして

 

「WAR DANCE!!!!!」

腰の全ての刀の柄に手をかけ、一気に抜き放つ。身体や辺りに青いイナズマが走り、一爪流から六爪流になる

 

「な、何だあの奇妙な剣の構えは・・・」

 

「変なのだ・・・」

 

「そ、それに高杉殿の体中から、イナズマが出でいる・・・」

 

「・・・すごい」

 

「な、何あれ・・・」

 

「へう~」

とみんな驚いていた

 

「変かもしれないが、これが俺の得意な構えそして龍の爪とも言われる剣技、六爪流だ」

 

「六爪流?龍の爪?」

 

「ああ」

と答えた

 

「いくぜ!」

呂布に向かって

 

「PHANTOM DIVE!」

と言い6本の刀を熊手のように持ち、右に払う

 

「ぐっ!」

呂布は何とか防いだが、後ろに数メートル後退した。そして呂布は態勢を立て直そうとしたが

 

ドクン!

 

「っ!?」

 

何かを感じ、その場を離れる。そして同時に

 

「YEAーーーHaーーー!」

 

飛び上がっていた勇作が6本の刀を一気に振り下ろした

 

ズバーーーーン

 

それと同時に、大地はえぐれ、吹き飛び、斬撃の衝撃波が爪のように地を疾走する。

 

「何が起きたのだ!!」

 

「地面が根こそぎ吹っ飛んだ!!」

 

「信じられない・・・」

 

「何なのよ!!」

 

「あわわ」

 

「・・・・・・すごい」

 

その光景に皆驚き、動揺していた

 

「良く避けたね・・・」

 

「いやな予感したから・・・」

 

「そうか・・・・・・ん?」

と呂布が構えを解いた

 

「・・・どうしたの?」

 

「・・・もう、十分」

 

「・・・そうか」

と勇作も六本の刀を納めた

 

「・・・大丈夫?」

 

「・・・コクッ」

と皆が近づいてきた

 

「・・・高杉殿」

 

「ん?どうした関羽殿?」

 

「・・・驚きました」

 

「・・・え?」

 

「貴方の強さに・・・」

 

「そうなのだ。お兄ちゃん」

 

「私もここまでとは・・・」

 

「・・・そうか」

と勇作は、賈駆、董卓に向き

 

「すいません。こんな風にして・・・」

 

「まったくよ・・・」

 

「・・・はい」

 

「・・・すいません」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

董卓の屋敷門前。

 

勇作達も次の村に向かうため門前に居た。そこには勇作達を見送るため董卓達も居た。

 

「高杉さん、関羽さん、張飛さん、趙雲さん。道中、お気をつけて下さいね」

 

「董卓殿。ただの旅の武芸者である我らに御見送りなどと・・・・・・」

 

「いいえ。皆さんには大変、お世話になったのですから当然です♪」

 

「すいません。董卓殿、中庭をあんなふうにしてしまって・・・」

 

「良いですよ。今回の件で、取り合わなかった役人の罰として片付けさせますので・・・」

 

「そ、そうですか・・・・・・・ん?」

 

董卓の隣に居た呂布が勇作に近づいて来た。

 

「呂布、どうした?」

 

「・・・・・・・・・・恋(れん)」

 

「ん?」

 

「恋の真名は、恋」

 

「真名を預けてくれるのかい?」

 

「・・・・・・・・コクッ」

 

「どうして?」

 

「恋より、強いから、だから」

 

「・・・・・・・・・・分かった。俺の事は勇作って呼んでくれ。」

 

「・・・・・・・コクッ」

しっかりと頷く呂布。

 

「じゃあな、恋」

 

「勇作、また会える?」

 

「ああ、会えるさ」

 

「・・・・・・・・・・・・約束」

 

「ああ、約束するよ」

 

「・・・・・・・・コクッ///」

顔を赤くしながら頷く恋

 

「行きますよ。高杉殿」

 

「わかりました・・・じゃあな、恋」

 

「・・・・・・・・勇作、元気でね」

 

「ああ、では董卓殿。お元気で」

 

「はい。高杉さんもお元気で」

 

歩き出す勇作達。董卓達の見送れ、次の村へと向かったのであった

 

 

 

 

 

「行っちゃったね・・・」

 

「そうね」

 

「・・・・・・」

 

「それにしても高杉って男、豪いことしてくれたわね・・・」

 

「・・・詠ちゃん」

 

「まあ、あの後始末は、月の言う通りするよ・・・」

 

「・・・ありがとう」

 

「アンタもすごいわね。あの本気の攻撃をよく避けたわね・・・」

 

「・・・・・・・本気じゃない」

 

「「え?」」

 

「・・・・・あの攻撃・・・本気じゃなかった」

 

「「っ!?」」

呂布の言ったことに2人は驚いていた

 

「・・・わかるのですか?」

 

「・・・・・・コクッ」

 

「あれで本気じゃないですってーー」

と賈駆は驚いていた

 

「何者なの?あいつは・・・」



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第二十席 勇作、星とはぐれるのこと

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ありがとうございます。今後もよろしくお願いします


董卓達と別れ、次の村を目指し森の中を歩いている勇作達一行。しかし、一行の間には気まずい空気が漂っていた

 

「なぁ、星。さっきの事、まだ怒っているのか?」

 

関羽は不機嫌な態度で後ろを歩く星に声を掛けるが、

 

「別に怒ってはいない。ひどく不機嫌なだけだ」

 

目を合わそうとせず、素っ気なく返してくる。

 

「やっぱり怒っているではないか・・・お主が厠に行っている間にメンマを食べた事は謝る。このとおりだ」

 

「・・・」

 

星は謝る関羽を見ずにそっぽを向いたままである

 

「いやぁ、ほら。ずっと残していたからてっきり嫌いなのかなぁと思ってつい・・・なっ?」

 

「うんうん」

 

関羽の言い訳に頷く鈴々

 

「そうではない」

 

「「ん?」」

 

「大好物だったから最後に食べようと思って大事に取って置いたのだ」

 

「(確かにいるな・・・そういう人・・・)」

 

勇作は星が不機嫌になった原因が起こった飯屋の事を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

それは森に入る前の飯屋で一同がラーメンを食べていた時のことだった。

 

『ぷはぁ、美味しかったのだ~♪』

 

『ぷはぁ、ご馳走さま♪』

 

食べたラーメンに満足している関羽と鈴々。

 

すると鈴々が、

『あれ? 星、メンマ残しているのだ』

 

星の器に残っているメンマに気付いた。

 

因みに星は二人より先に食べ終えて厠に行っている。勇作は水を飲みに店を出でいる。

 

『此処のメンマ、美味しいのに勿体ない』

 

『だったら、鈴々が食べるのだ』

 

『では、私も』

 

《パクッ モグモグ》

 

『『ぷはぁ、美味しかった♪(のだ♪)』』

 

二人は星の器からメンマを取って食べてしまった。その後にちょうど星が厠から戻って来た。

 

『あああぁぁぁっ!!』

 

星がメンマの無い器を見て叫び声をあげた。

 

《ギロッ!!》

 

『『っ!!』』

 

星に本気の睨まれた二人は驚いた。これが星の不機嫌になっている原因である。

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

「・・・メンマ」

 

飯屋の事を思い出したのか、眉間に皺を寄せてボソッと言った星。残りの二人はというと、

 

「鈴々。お前が食い意地が張った事をするから」

 

「愛紗だって、食べたのだ」

 

「だから、それは」

 

責任の擦りつけ合いをいしていた。

 

「「うっ!?」」

 

「・・・(ジー)」

 

二人は視線に気づき、振り返ると星が冷たい目で見ている。

 

「そ、そうだ。次の村に着いたら、またラーメンを食べよう。今度は私のメンマをやるから」

 

「鈴々のも食べていいのだ」

 

二人は何とか、星の機嫌を取ろうとするが、

 

「人とメンマは一期一会。あの時のメンマはもう戻って来ない」

 

「「はぁ・・・」」

 

変に芝居染みた言い方をしてくる星に二人はため息をし肩を落とした。

 

 

「星」

 

と勇作が話し掛けた。

 

「何ですかな?」

 

「その辺で二人を許してくれないかな? 二人共、深く反省しているから」

 

「・・・どうですかな?」

と言いながら、星はジト目で二人を見る。

 

「高杉殿の言う通りだ。本当にすまない、星」

 

「鈴々もごめんなさいなのだ」

 

二人は再び、星に謝る。

 

「こう言っているし、許し上げてくれないか?」

 

「・・・しかし、勇作殿」

 

「お願いします・・・」

 

「・・・・・・・・・」

と星はしばらく考えていると

 

「愛紗、鈴々よ」

 

星が顔をあげた。

 

「今回は、勇作殿に免じて許そう。しかし、次は気をつけるのだぞ」

 

そう言って、星の機嫌は戻り歩きだした。

 

「良かった」

 

「高杉殿。ありがとうございます」

 

「ありがとうなのだ、お兄ちゃん♪」

 

「良いんですよ。それより、二人共。今度は気をつけような」

 

「はい」

 

「もちろんなのだ」

 

「じゃあ、行きますか」

 

勇作達は星を追いかけるように歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「別れ道か」

 

「どっちに行ったものか?」

 

勇作達の目の前には左右に別れ道があった。

 

「こんな時は鈴々におまかせなのだ!」

 

と、鈴々が前に出て蛇矛を地面に軽く立てる。そして手を離して強く念じると

 

〈ガシャン〉

 

「あっちなのだ!」

 

倒れた〈蛇矛〉の先は右の道に倒れた。

 

「そちらに行ってみますか。星、お主もそれで良いよな?」

 

「構わぬぞ」

 

勇作達は右側の道を歩き始めた

 

 

 

しばらく歩いていると

 

「勇作殿」

 

と星が話しかけてきた

 

「ん?」

 

「・・・一つ貸ですよ」

 

「えっ!?」

 

「本当は許せませんでしたからな・・・」

 

「そ、そうなんですか・・・」

 

「そこでなんですけど・・・」

と笑みを浮かべらがら

 

「一つだけなんでも言うことを聞いてくれるということでよろしいですかな・・・」

 

「え?」

 

「良いですな・・・」

 

「(ま、いっか)はい」

 

「・・・ふふ」

 

「(何なんだろう?)」

 

 

 

 

 

歩いていると

 

「霧が出て来たな」

 

「どんどん、濃くなっていくのだ」

 

「(これでは“キリ”がない。てか・・・)」

 

数分後、霧が辺りを覆い始めた。

 

「まずいですね。これでは道を外れても分かりませんよ」

 

「注意して歩かないといけませんね」

 

霧が予想以上に濃くなり視界が見えなくなってしまった。

 

「鈴々、待て!」

 

「一人で先に行くな」

 

「星はどうしたのだ?」

 

「「えっ!?」」

 

一人で先へ進む鈴々の肩を掴む勇作と関羽。鈴々は二人の方に振り向くと星が居ない事に気付き、二人も後ろに振り向くと星の姿が無かった

 

「星!」

 

「星、何処だ!居るなら返事をしろ!」

 

〈・・・〉

 

二人は呼び掛けるが、星の声は聞こえない

 

「(近くにいないか・・・)」

 

「いかん、どうやら星と逸れてしまったようだ!」

 

「探すのだ!」

 

「ま、待て!二人共」

 

気配を探そうとする勇作だが関羽と鈴々が慌てて動いてしまった。

 

「星! 返事をしろ!」

 

「星~! 何処なのだ~!」

 

「関羽殿!鈴々!この霧の中を動くのはダメ「きゃあぁぁぁ!!」・・・関羽殿!」

 

勇作が二人を止めるように言うとした瞬間、関羽の悲鳴が聞こえた。

 

「関羽殿!何処ですか!」

 

「高杉殿!」

 

勇作は悲鳴の聞こえた方へ足元に注意しながら急ぐと下から声が聞こえた

 

「気をつけて下さい! 崖になっています!」

 

足元を見ると少し崖になっていてその下に関羽が座り込んでいた。

 

「関羽殿!」

 

急いで勇作は崖を下り、関羽に掛け寄った。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈・・・うっ!」

 

立とうした関羽が足首に手を当て、座り込んでしまった

 

「どうしました?」

 

「くっ・・・どうやら足をくじいたようだ・・・」

 

「大丈夫ですか・・・」

 

「お兄ちゃん! 愛紗!」

 

「鈴々、崖になっているから気をつけろよ!」

 

「わかったのだ」

 

勇作より少し遅れて鈴々が崖を下りて来た。

 

「ど、どうしたんのだ?」

 

「足をくじいたらしい・・・」

 

「えぇ!?・・・ど、どうしよう・・・・・・」

 

「この霧ではどうにもならない。下手に動かずじっとしていよう」

 

「はい」

 

「わかったのだ」

 

勇作達は霧が晴れるまで、その場を待機する事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。逸れた星は、

 

「・・・・・さて、勇作殿に何をしようか・・・・・・ん?あれ?」

 

ぶつふづ言いながら、霧の中の道を歩いていた星はやっと自分がはぐれた事に気づいたところだっだ



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第二十一席 勇作、諸葛亮と出会うのこと

勇作達は、霧が晴れるまでその場を動かず居た。やがて、それまで森を覆っていた霧が晴れてきた。

 

「だいぶ、霧が晴れてきたな」

 

「あっ、あそこに家があるのだ」

鈴々が指差す先には山間に佇む家を見つけた。

 

「助かった!あそこで少し休ませてもらおう」

 

「そうですね」

 

「鈴々がおぶっていくのだ!」

 

「武器は俺が預かるよ」

 

青龍偃月刀と邪矛を勇作預け、鈴々が関羽をおぶって屋敷へと向かう。

 

「すまない・・・」

 

「水臭いことは言いっこなしなのだ!それに、ぷにぷにのおっぱいが当たって気持ちいいのだ!」

 

「!?」

 

「のわああ!?///」

 

「わあああ!!暴れちゃダメなのだ~!!」

 

自覚のないセクハラ発言に勇作は驚き、思わず変な声をあげてしまう関羽であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた」

 

「たのもー。たのもーなのだ」

 

長い階段を上り終えて、家に着いた勇作達。鈴々が門にむかって叫ぶ

 

「(道場破りじゃないんだから・・・)」

と勇作が思っていると

 

「はぁーい」

 

〈ガラッ〉

 

門が開き、黄色い短髪にベレー帽を被った少女が出てきた。少女は怪我をした関羽を見るなり慌てて、屋敷の中で書物を読んでいた綺麗な御婦人の下へ駆け込んだ。

 

「はわわわ~!大変です先生~!水鏡先生~!」

 

「どうしたのですか? 朱里、そんなに慌てて」

 

「旅の方が来られたんですけど、ひどい怪我をされてて」

 

「えっ!?それは大変!」

 

御婦人は少女を連れ、勇作達の所へ急いだ

 

 

 

 

 

 

 

「そうでしたか。それは災難でしたね」

 

部屋に案内された勇作達。御婦人は勇作達のこれまでの事情を聞きながら関羽を寝床の上に寝かせて、足の怪我を診察している。

 

「この辺りは急に濃い霧が出ることがよくあって」

 

「うっ」

 

「これで、よしっと」

 

薬を塗られた時に痛みを感じたのか関羽は顔をしかめた。

 

「足が治るまで、此処でゆっくりなさるといいわ。その内に逸れた方も見つかるかもしれないしね」

 

「ありがとうございます」

 

関羽の診察を終えた御婦人は自己紹介を始める。

 

「私は、司馬徽。水鏡と号しています。そしてこの子は・・・」

 

「私は諸葛亮。字は孔明といいます」

 

「!?」

少女の名前を聞いて勇作は驚いた

 

「朱里。包帯を巻いてあげて」

 

「はい。先生」

 

諸葛亮は、薬が塗られた関羽の足に手際良く包帯を巻いていく。

 

「世話をかけるな」

 

「いいえ。ふぅ、出来ました」

 

「あら。随分うまくまけたわねぇ」

 

「はい。先生みたいに上手になりたくて、いっぱい練習しましたから」

 

「そう。えらいわねぇ」

 

「えへへ♪」

 

諸葛亮は水鏡に頭を撫でられ喜んだ、鈴々はじっと見ていた。それから数分後・・・関羽は寝間着に着替えさせケガした片足を動かさないように吊るし上げられた状態で横になっていた。

 

 

 

「寝間着に着替えさせ水鏡殿。手当てをして頂いたのはありがたいが、ここまでしなくとも」

 

「何を言っているんですか。骨が折れなかったことが幸運なぐらいなんですよ。動かさないようにしないと」

 

「そうですよ」

 

「しかし、これでは厠が・・・」

 

「大丈夫!おしっこしたくなったら鈴々が厠まで負ぶって行ってあげるのだ」

 

「あら。そんなことしなくても・・・ちゃんとこれが有りますから」

 

「えぇっ!?」

 

諸葛亮がベッドの下から取り出したのは寝たままの病人が尿をするために使う容器(尿瓶)いわゆる「おまる」だった。

 

「催したくなったら遠慮なく声を掛けて下さいね」

 

「い、いやぁ。それはちょっと///」

 

照れくさそうに返事を返す関羽

 

「む~」

 

その様子を見ている鈴々は諸葛亮をちょっとばかり睨んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外はすっかり暗くなり、夕飯の時間となった。

 

「おぉ!これはうまそうだ!」

 

鈴々に肩を借りて関羽は席につくと、目の前にはおいしそうな料理が出来上がっていた。

 

「今日の夕食は朱里が作ってくれたんです」

 

「ほう、孔明殿は料理も出来るのか」

 

「お口に合うといいですけど」

 

「さあ、いただきましょう」

 

「「「「「いただきます(なのだ)」」」」」

 

〈パクッ モグモグ〉

 

「うまい」

 

「おいしいのだ」

 

「おいしい」

 

「良かったぁ」

 

勇作達の口に合い孔明は安心し笑顔になった。

 

「しかし、その年でちゃんとした料理が作れるとは。それに比べて鈴々は食べるばかりで」

 

ジト目でにらむ関羽に対し、大量におかずをほおばってた鈴々が反論する。

 

「むっ。鈴々だって料理ぐらいできるのだ」

 

鈴々は顔を背けながら言った。

 

「ほう?では、どんな料理が作れるのだ?」

 

「お、おにぎりとか・・・おむすびとか」

 

「両方とも同じものだよ。鈴々」

 

しかし実際に何が出来るかと言えば、レベルが低めのものばかり。勇作が指摘した後に皆、可笑しくて笑った。

 

「な、何で? 何で皆笑うのだ!」

 

鈴々は恥ずかしくなってそれを誤魔化すためさらにご飯を口にいっぱい入れた。そんな鈴々を見て、再び笑った。

 

「(それにしても、伏龍と言われた軍師、諸葛亮とこんな所で出会うとはなー)」

と思いながら、料理を食べていた



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第二十二席 勇作、諸葛亮の過去を知るのこと

夕飯を食べ終えた関羽は部屋に戻り、寝台に横になりながら窓から星空を見ていた

 

「星の奴。無事であればいいのだが」

 

「そうですねー」

 

布団に横になりながら、関羽と勇作が星との身を案じていると・・・・・・

 

「ふぁー・・・久しぶりのお風呂気持ちよかったのだ~」

 

なんと風呂上がりの鈴々が下着姿で関羽の部屋に入り、タオルで頭を拭いているではないか

 

「コラ! そんな格好でウロウロするな。風邪をひくぞ!」

 

「そうだよ、鈴々」

と関羽と勇作が注意した。すると勇作が

 

「まだ髪が濡れているじゃないか」

 

「にゃぁ。お兄ちゃんくすぐったいのだ~」

 

鈴々の少し濡れた髪を拭く勇作。すると再び扉が開き諸葛亮がお湯の入った桶を持って入ってきた。足が動かせないため、風呂にも入れない関羽の体を拭くためである。

 

「関羽さん。お体をお拭きしますね」

 

「・・・あっ。ああ、孔明殿。頼む」

 

「俺は風呂に入って来ます」

 

「わかりました」

 

「ありがとうなのだ。お兄ちゃん」

 

「孔明ちゃん。風呂を借りるね」

 

「はい。ごゆっくりどうぞ、高杉さん」

 

鈴々の頭を拭き終えた勇作は部屋を出て行った。

 

「何から何まで世話になって済まない」

 

「いいえ、困った時はお互い様ですから。さっ、服を脱いで下さい」

 

「あっ! だが、その前に」

 

「ん?」

 

お湯で濡らして固く絞ったタオルを手に、関羽に脱いでもらうよう声をかける諸葛亮・・・と

 

「だから、その。いわゆる一つの生理現象というか、何というか」

 

「あぁ! これですね」

 

その一言で関羽がもよおしたと分かったのか、諸葛亮がさっと例の「おまる」を取り出す。

 

「お、お気遣いはありがたいがそれはちょっと」

 

「あっ! もしかして大きい方ですか?」

 

「い、いや///そうじゃなくて///・・・鈴々!」

 

「合点承知なのだ♪」

 

できれば「おまる」は使いたくないようで、関羽は寝間着に着換えた鈴々におぶってもらおうとする

 

「頼むぞ」

 

「おまかせなのだ♪」

 

「あの。それでしたら」

 

「「えっ?」」

と鈴々が関羽を起こしたところで諸葛亮が何かを取りに行った。そして数分後持ってきたのは・・・・・・木造の車いす。

 

「ほう! これは!」

 

「私が造ったんです。足を怪我した人でも移動できるようにって」

 

「これは便利だな♪ あははっ」

 

関羽を乗せ、諸葛亮は車椅子を押して部屋を出て行く。その後ろ姿を鈴々は眉間にしわを寄せながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝

 

「子曰く、学びて時に之を習う、また説ばしからずや」

 

諸葛亮が勉学に励んでいた。

 

「朋有り遠方より来る、また楽しからずや」

 

関羽の部屋から眺めていた。怪我の診察のため水鏡も傍に居た。勇作も手伝いで部屋にいた。

 

「水鏡殿。孔明殿はいい子ですね。素直で賢くて学問が好きでそれにちゃんとお手伝いもするし」

 

「鈴々ちゃんだっていい子じゃありませんか」

 

「いや、鈴々は全然」

 

「元気があって、明るくて私は大好き。それに何よりとってもご「水鏡殿」なんですか?」

 

水鏡が何か言おうとした時、勇作が口を挟んだ

 

「言っときますけど、両親ではありませんよ」

 

「えっ? 違うですか?」

 

「ち、違います! 鈴々は私と高杉殿の間に生まれた子ではなく! 姉妹の契りを! 義理の! 何故、そういう勘違いを! 私はまだ一度も子を宿す行為は一度も!」

 

「わ、分かりました。分かりましたから落ち着いて下さい」

 

顔を赤くし、慌てる関羽を何とか水鏡は落ち着かせた。すると水鏡が諸葛亮の過去を語り始めた。

 

「あの子は幼い頃に両親を亡くし、姉妹揃って親戚をたらい回しされている内に姉や妹と別れ別れにその後しばらく私の師匠に当たる人の所に居たのですが、結局私が預かることになったんです」

 

「そ、そうだったんですか」

 

関羽は諸葛亮の辛い過去を知り、庭に居る彼女に視線を向ける。

 

「関羽さんが仰って下さったようにあの子は本当にいい子。聞き分けが良くて私の所へ来てからもワガママなど一言も言ったことがなくて、私にはそれが辛い境遇を過ごす内に知らずに身についてしまった悲しい性だと思えるのです」

 

「水鏡殿・・・」

 

関羽は水鏡の想いを聞いてからそれ以上何も言えづらくなった

 

「・・・・・・・・・・・」

 

草庵で学問にはげむ諸葛亮を見つめる水鏡の瞳が、勇作にはさびしそうに見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

関羽は体を拭きに来た諸葛亮と会話していた。

 

「ほう。水鏡殿の作る薬はそんなに良く効くのか」

 

「はい。ですから時々、麓の村の方に頼まれて作ったお薬を届けたりもしているんですよ。」

 

背中を拭いた手ぬぐいに再び諸葛亮はお湯に入れ絞る。

 

「わたし。先生みたいに皆の役にたつ人間になりたいです。でも、そのためにはもっと色んなことを学ばないと、と思ってて」

 

「そうか。孔明殿は本当に偉いな」

 

と関羽は孔明の頭を撫でた。

 

「あっ、すまん。時々、水鏡殿がしていたものだからつい」

 

「いいえ。わたし、なでなでされるのが好きですから」

 

とそんな二人の楽しい会話を扉の隙間から鈴々がこっそり覗き、これまた面白くなさそうな顔をしていた。すると廊下を歩いていた勇作が、声を掛ける。

 

「どうした、鈴々」

 

「あっ。お兄ちゃん」

 

「何かあったのか?」

 

「ううん。何でもないのだ。おやすみなのだ」

 

そう言って鈴々は部屋に入って行った

 

「・・・・・・・・・・・」



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第二十三席 張飛、孔明と張り合うのこと

屋敷に来てから三日目。しかし関羽の足の腫れは、未だに引く様子が見えない

 

「辛抱してから三日。余り腫れがひいていないわ」

 

水鏡の言うように関羽の怪我は一向に治ることがなかった。

 

「こんな時、サロンパ草があればいいんだけど」

 

「(サロンパ草?)」

 

「サロンパ草って何なのだ?」

 

「こうした腫れにとてもよく効く薬草なの。白い小さな花を咲かせ、その葉をすりつぶして使うんのよ」

 

「あっ、先生。サロンパ草なら、わたしが採って行きます」

と、ここでが諸葛亮が申し出てきた。

 

「えっ。でもサロンパ草が生えているのは随分、山の奥の上の方よ」

 

「大丈夫です。何度か先生と行った所だから場所は覚えていますし」

 

「そうね・・・私が一緒に行けるといいのだけど。今日は頼まれていたお薬を麓の村まで届けなくてはいけないし」

 

「・・・・・・」

 

諸葛亮は期待を込めた目で水鏡を見る

 

「それじゃあお願いしようかしら?」

 

「あ、はい!」

 

水鏡の言葉に元気良く返事をして、部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

数分後、諸葛亮は出かける準備を整えた。愛用のポシェットを肩にかけ、帽子の位置もちゃんと正して

 

「それじゃあ、行って来ます」

 

「転ばないように気をつけて行くんですよ」

 

「はぁーい」

 

諸葛亮は元気良く返事をしてから、サロンパ草を採りに行くため山の方へ歩いていった。水鏡は心配そうに諸葛亮の後ろ姿を見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

「子曰く、学びて時に之を習う、また説ばしからずや・・・・」

 

諸葛亮は山の奥へと続く道を歩きながら孔子の一説を復唱していた。さて、サロンパ草を取りに向かった諸葛亮の後ろをついていく人がいた。大体察しはついているだろうが先日から諸葛亮のことを快く思っていない鈴々である

 

「あいつにだけ良い格好はさせないのだ」

 

諸葛亮にばれないように木陰に隠れながら尾行している。

 

「こうやって、後を着いていって・・・あいつが摘んだ薬草を横取りぃ・・・じゃなくて!」

 

鈴々の脳内では自分が諸葛亮から薬草を取って逃げるという画が出来上がったがそれを振り飛ばす

 

「薬草の生えている所まで行ったら、鈴々が先に摘んで一足先に持って帰るのだ。それで、愛紗やお兄ちゃんに・・・」

 

『じゃあ~ん! サロンパ草なのだ♪』

 

『ほう! 偉いぞ、鈴々♪ さすが私の妹だ♪』

 

『鈴々が妹で俺達は幸せだ♪』

 

『えへへ♪』

 

『うぅ~~』

 

鈴々の脳内では二人に褒められ頭をなでなでされている自分の横に指をくわえて見ている諸葛亮の姿を想像する。その想像に段々と鈴々の顔がにやけてくる。

 

「うわぁ!?」

 

<ドサッ>

 

「あ!?」

 

前を歩いていた諸葛亮が転んだのを見て、鈴々はばれないように口を隠して笑いを堪える。

 

「何も無いところで転ぶなんて、とんだドジッ娘なのだ。足も遅いし、これならあいつの後で薬草を摘んでも楽勝で先回りできるのだ(にやり)」

 

諸葛亮を見ながら悪役のような笑みをする鈴々。また歩きだした諸葛亮の後を静かに着いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の関羽。

 

「・・・っ・・・厠に行きたく」

 

寝ていた関羽に生理現象が襲い、目を覚ました。

 

「孔明殿も水鏡殿もいないし・・・」

 

片足がまだ治っていないので歩くことが出来ないので、誰かの手を借りなければ厠にもいけない。

 

「そうだ。鈴々! 何処にいるんだ! 鈴々!」

 

<・・・・・・>

 

鈴々がいることを思い出し呼ぶが、一向に現れる気配がない。

 

「何処に行ったんだ、鈴々は・・・こんな時に・・・・・そうだ。高杉殿!」

 

と、今度は勇作を呼ぶが

 

<・・・・・・>

 

何の反応もない

 

「何でいないんだ・・・」

 

早く厠に行きたいのに行けないもどかしさが生理現象を速める。

 

「・・・仕方がない、これを使うしかないか」

 

関羽がベットの下から取り出したのは尿瓶だ。

 

「///」

 

使うのが恥ずかしいのか顔を赤らめて尿瓶を凝視する。関羽の闘いが静かに始まった

 

 

 

 

 

 

その頃の鈴々は、諸葛亮の後ろに隠れながら、山の奥へと進んでいた。

 

「はわぁ!?」

 

諸葛亮は古びた橋の前で足をすくませていた。橋の下は濁流になっていて、それなりに高さがある。

 

「何グズグズしているのだ?・・・ははーん あいつきっと高いところが苦手なのだ。だから、怖くてつり橋が渡れないのだ」

 

怖がる諸葛亮をニヤニヤ笑いながら見る鈴々。

 

「先生と来たときは、いつも手を引いて渡ってもらってたんだけど。関羽さんの為だものがんばらなくちゃ!」

 

勇気を振り絞って諸葛亮はつり橋の綱を握り一歩一歩慎重に渡って行く。橋の真ん中に差し掛かると、板が砕けて穴が空いていた。

 

「怖くない・・・怖くない・・・えいぃ!」

 

勇気を出して穴が空いている所を跳ぶ。そしてまたゆっくりと橋を渡り出す。

 

「はぁ・・・つり橋渡るのに何時までかかっているのだ・・・」

 

鈴々は木陰から諸葛亮が橋を渡るのを静かに見て、呆れ気味になるのだった。そして諸葛亮が橋を渡りきって地べたにへたり込んだ。そして更に先へ進んでいく。やがてサロンパ草が生えているという場所へたどり着いたようだ。

 

「ふぅ、着いた」

 

諸葛亮が着いた場所は崖の下の辺りだった。この近くにサロンパ草が生えているのか、辺りを見回している。

 

「確かこの辺に生えてる筈なんだけど・・・あっ! あった!・・・でも」

 

サロンパ草を見つけたが、それが生えているの場所が崖の真ん中に生えていた。登って採るのには危険である。

 

「高いところが苦手なあいつが、あんな所まで登れっこ無いのだ」

 

諸葛亮に追いついた鈴々は、木の陰からサロンパ草を見ている彼女を見る

 

鈴々は木にもたれかかりながら、腕を組み彼女が諦めて帰るのを待つが、

 

「あっ」

 

「んしょ」

 

しかし予想を超えて・・・突然、諸葛亮が崖を登り始めた。危なっかしい足取りでゆっくり登っていく

 

「ふん、どうせ怖くなって途中で諦めるに決まっているのだ」

 

しかし、諸葛亮は降りる事なく登り続ける。

 

「あっ!危ないのだ!」

 

途中でバランスを崩し落ちそうになるが岩にしがみついて難を逃れる。思わず鈴々も声をあげるが、それでも上へ上へと登っていくまた登っていく

 

「な、何でなのだ?何であいつあんなに頑張るのだ?高いとこ怖いくせに、どうしてあんなに必死になって・・・」

 

鈴々はまったく分からなくなり複雑な気持ちになってきた。

 

「もう少し・・・あと、少しで・・・」

 

鈴々が考え込んでいる内に気づいたら、諸葛亮は手を伸ばせばサロンパ草が届きそうな所まで来ていた。必死に手を伸ばす諸葛亮。それを固唾を飲んで見る鈴々。そして、

 

「あっ」

 

草に少し触れる事が出来た諸葛亮だが、その瞬間、

 

<ガシャアァァァン>

 

「はわぁ!?」

 

「あっ!?」

 

「ああぁぁぁぁぁ!?」

 

諸葛亮の足元の崖の一部が崩れて、彼女は悲鳴を上げて落ちて行った。このまま地面にたたきつけられたと思ったが地面に落ちたのは崩れた石と諸葛亮が持っていたポーチだけだった

 

「ひゃぁぁぁぁ・・・・はわぁ?」

 

泣き続ける諸葛亮はいつまで経っても地面に激突しない事に疑問に思い泣き止み、誰かに支えられているのに気づき下を見ると、

 

「うぐぅ・・・」

 

「張飛さんっ!?」

 

尾行されていたことに気づかなかった諸葛亮は鈴々がいることに驚き、鈴々は安全な所に諸葛亮を降ろし、彼女が落としたポーチを拾い渡す。その表情は不貞腐れているように見える。

 

「んっ」

 

「どうしてここに?」

 

「ど、どうしてって・・・た、たまたま通りかかったのだ、たまたま!」

 

諸葛亮の質問に顔を背けて鈴々は答えた

 

「こんな山の中を?あっ!もしかして私の後を「そ、そんな事より、サロンパ草を摘むのだ!」えっ? は、はい」

 

諸葛亮の言葉を遮って、鈴々はサロンパ草が生えている所までに登っていく。

 

「はっ・・・よっと」

 

鈴々はテンポ良く軽やかに登っていく。諸葛亮は心配そうに見つめる。そして

 

「うりゃ」

 

「やったぁ」

 

見事サロンパ草を摘んだ鈴々。諸葛亮は喜び声を上げる

 

「ほらなのだ」

 

降りてきた鈴々は、摘んだサロンパ草を渡そうとする。

 

「えっ?でも、これは張飛さんが・・・」

 

「見つけたのはお前なのだ。鈴々は手伝っただけなのだから、お前が愛紗に渡すのだ」

 

鈴々の行動の驚く諸葛亮に照れくさいのか顔を背けながら喋る。そんな鈴々を見て微笑んで諸葛亮はサロンパ草を受け取った。

 

「ほら。早く帰るのだ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

時刻は既に夕方。諸葛亮は帰り道を歩いていた。鈴々は諸葛亮の少し前を歩いている。すると、例のつり橋に着いて諸葛亮が足を止めてしまった。既につり橋を渡っている鈴々は気づいて戻ってくる。そんな鈴々に嬉しそうに笑みをする諸葛亮

 

「ほら。一緒に渡ってやるから、さっさと来るのだ」

そう言って、鈴々は諸葛亮の腕を掴んで引っ張って行く。そんな不器用な優しさに微笑む諸葛亮とムスッと膨れる鈴々がいた。穴が開いている所を飛び越えようとした時

 

バキ

 

「にゃ!」

 

「はわ!」

 

突然足元が崩れ、落ちて行きそうだったが

 

ガシッ!

 

鈴々の手が何かに捕まれた。

 

「何が起きたのだ!?」

 

落ちたはずなのに落ちないことに疑問を感じた鈴々が手の先を見てみると

 

「間に合った!」

 

勇作が居た

 

「今引き上げるから・・・」

 

ずるずるっ

 

そして勇作は鈴々と諸葛亮を引き上げると

 

「何でお兄ちゃんがここにいるのだ? 」

 

鈴々の質問に勇作は

 

「鈴々の姿が無かったから、探しに来たんだよ」

 

「そうなのだ」

 

「ありがとうございます。高杉さん」

 

「良いですよ」

 

そして無事に橋を渡りきった



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第二十四席 孔明、旅に加わるのこと

俺は今、諸葛亮と鈴々と歩いていた。すると諸葛亮が

 

「張飛さんって優しいんですね」

 

「な、何を言っているのだ!?」

 

諸葛亮の言葉に反論した

 

「手を繋いでいるのに・・・」

 

まだ繋いでいる手を勇作は指摘した

 

「あっ」

 

気づき放して歩きだす。

 

「お、お前がグズグズしているから、仕方なく・・・だから鈴々は優しく何か無いのだ」

 

「(照れているなー)」

 

「あの張飛さん!」

 

一人で前を歩いていく鈴々の後を追いかける諸葛亮と勇作

 

「張飛さんのこと鈴々ちゃんって呼んでいいですか?」

 

「なっ!?」

 

「(!?)」

 

いきなりの事で驚き諸葛亮の方へ振り向くと笑顔で自分を見ている。それを見てまた歩きだした。

 

「お前がそうしたいなら、別に構わないのだ!けど、鈴々はお前の事を真名でなんか呼んでやらないのだ!それでも良いなら、勝手にすれば良いのだ!」

 

「はい、鈴々ちゃん」

 

「良かったね!」

 

「はい!」

諸葛亮は笑顔で答えた。すると鈴々が

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「家まで手を繋いで居たんだけど良い?」

 

「良いよ」

 

「やったなのだ!」

と俺の右手を握ってきた

 

「あ、あの私も良いでしゅか!」

 

「いいよ」

と左手を握った。そして3人仲良く帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい」

 

家に帰ってきた三人を出迎えたのは、水鏡だった。

 

「まあ、随分汚しちゃったのね」

 

そう言うも水鏡の表情は微笑んでいる。

 

諸葛亮はサロンパ草を前に出す。

 

「先生、これ」

 

「まあ、偉いわ。一人でちゃんと採って来れたのね」

 

「いいえ。一人じゃなくて・・・」

 

そう言って、諸葛亮は鈴々の腕を掴んで

 

「私と鈴々ちゃんの二人で摘んで来たんです」

 

「えっ?」

 

諸葛亮が鈴々の真名を呼んでいるのに一瞬驚いたがそんな二人に水鏡は微笑んだ

 

「あの、なぜ高杉さんが一緒に?」

 

「鈴々の姿が無く探して居た所、見つけて一緒に帰ってきたんです」

 

「そうなんですか・・・」

 

 

 

その夜。皆が寝静まった中、諸葛亮の部屋では水鏡が一人どこか悲しそうな表情で諸葛亮の寝顔を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の朝。関羽の部屋では怪我の具合を見るため水鏡がいた。そこには勇作も同伴していた。

 

「まあ、すっかり腫れがひいているわ」

 

諸葛亮達が採って来たサロンパ草で作った薬が効き、関羽の足の包帯を取ってみると・・・腫れは跡かたもなく消えていた

 

「(すごいなー)」

 

「サロンパ草が良く効いたようね」

 

「それでは」

 

「もう歩いても大丈夫」

 

「よかったですね」

 

「はい」

 

関羽はとても喜んでいる

 

「水鏡殿にはすっかり世話になってしまって、何とお礼すればいいのか」

 

「困った時はお互い様、お礼なんて別に」

 

「それでは私の気がすみません。何か私に出来ることがあれば、言っていただけませんか?」

 

水鏡は道具を片付けていた手を止めて言う。

 

「それでは、一つお願いがあるのですか」

 

「はい」

 

「ご迷惑かと思いますが、朱里を一緒に旅に連れて行って欲しいのです」

 

「え、孔明殿を旅に?」

 

「!?」

 

思いも知れない頼み事に関羽と勇作は驚いて聞き返した

 

「はい。あの子は以前から旅に出て世の中を見て回りたいって言って。私も若い頃は、あちこち旅をして見聞を広め、多くの物を得ました。ですから、あの子にも同じ様にやらせてあげたいと思っていたのですが。最近は物騒ですし。幾ら確りしているといっても、あの年で一人旅というのも・・・それで、もし宜しければ、あの子を旅のお仲間に加えて頂きたいたいのですが・・・」

 

「そうですか・・・しかし、水鏡殿はそれで宜しいのですか?」

 

「そうですよ」

 

「そうですね。確かにあの子が居なくなくるとここは寂しくなります」

 

しかし、水鏡の決意は揺るがなかった

 

「でも、旅に出たいと言うのはあの子が私に言った、たった一つのおねだり。その気持ち叶えてやりたいと思います」

 

「・・・・・・」

 

水鏡の決意を聞き、勇作と関羽は

 

「・・・関羽殿」

 

「分かりました。この関羽、責任を持って諸葛孔明殿をお預かりします」

 

「俺もです」

 

真剣な表情になって申し出を受けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、諸葛亮を加えた勇作一行は水鏡の家を出て次の町を目指し歩いている

 

「水鏡先生ー!お元気でぇー!」

 

諸葛亮は振り返り、水鏡の屋敷に向かって手を振る

 

「こっからじゃ聞こえないのだ」

 

「けど、もう当分の間お会いできなくなるし」

 

「なら旅に出なければ良いのだ」

 

冗談をこぼす鈴々に軽く言われて顔をムスッとして振り向くが、また後ろを向く

 

「(先生。今まで本当にありがとうございました)・・・私」

 

諸葛亮は先に歩く勇作達を追い抜き、

 

「頑張りまぁす!」

 

ジャンプしながら、元気な声を上げた。こうして、勇作達は新たな仲間〈諸葛亮〉を加えて旅を始めたのでした

 

「(水鏡さん。貴方の言葉、絶対に無駄にはしません)」



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第二十五席 張飛、関羽と仲違いするのこと

孔明を旅仲間に加えた勇作たちは、再び先へと進んでいた

 

「鈴々。一人で勝手に先へ行くな、はぐれても知らんぞ」

 

どんどん前へ進んでいく鈴々を関羽が注意する横で、ふと孔明が口を開く

 

「そう言えば霧の中ではぐれてしまったお仲間の方・・・名前は確か・・・」

 

「趙雲だよ」

と勇作が答える。そう・・・水鏡の屋敷から出た後も、前回霧の中ではぐれた趙雲とは再会できず、結局それっきりになってしまったのだ。

 

「そう、その趙雲さんとは結局はぐれたままでちょっと心配ですね」

 

「・・・けど、あやつも子供ではない。きっとこの空の下で、元気にやっているさ」

 

「(そうだと良いけど・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、鈴々が立ち止まっていたため関羽と勇作と孔明も足を止める。その前では・・・道が二手に分かれていた

 

「む・・・分かれ道か」

 

「どっちにいきます?」

 

「そうだなぁ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「こんな時は鈴々におまかせなのだ!」

 

そういって前に出た鈴々に、関羽は「またあれ(=占い)をやるのか」と軽くため息。蛇矛を地面に軽く突き立てた後、鈴々が軽く念じる

 

「(右に倒れろ)」

勇作は心で願った。見聞色の覇気で右に人が大勢いることを知ったからだ。けど皆に言った所で信じないと勇作は思い、覇気のことについては教えていない。そして願いが通じたのか

 

カタン

 

音を立てて、蛇矛が右側へ倒れる

 

「(良かったー)」

 

「あっちなのだー!」

 

「うむ・・・それじゃあ行くのはこっちだな」

 

「(え!?)」

 

しかし関羽は占いの結果をあっさり無視して左へ行こうとする。

 

「なんでそうなるのだ!?」

 

「当り前だ!この間お前の占い通りに行ったら、霧に捲かれるわ、崖からすべって怪我をするわで散々ではないか・・・」

 

「(確かにそうだけど・・・)」

 

「うぅ、そ、それはー・・・けど占いではあっちって!」

 

「だから、その占いが信じられないというのだ!!」

 

先日の経験から占いを信じようとしないと関羽と、絶対に占いが正しいと言い切る鈴々。にらみ合う2人に対し、孔明が戸惑いながらも助言する。

 

「関羽さん・・・確かに鈴々ちゃんの占いに根拠はないと思います。でもそれなら、占いどうりにしたからって必ず悪いことは起きるとは限らないと思うんです」

 

「そうだな、鈴々の方に行っても良いと思うよ・・・」

 

「孔明殿と高杉殿が言うのなら・・・」

 

「それじゃあ・・・」

 

孔明と勇作の言葉を聞いて、関羽がそうしようとする。

 

「(これで右に行ける)」

 

一瞬安心した勇作と孔明・・・だったが

 

「余計なこと言わなくていいのだ」

 

「「えっ・・・」」

 

「これは鈴々と愛紗の問題なのだ。お前には関係ないから黙ってるのだ」

 

「おい、それは無いだろう!」

 

あろうことか、鈴々が孔明を邪魔者扱いしたのである。これには勇作と関羽も黙ってはいられない。

 

「鈴々!なんてことを言うんだ!!孔明殿はお前のことを思って!!」

 

「それが余計ことなのだ!!」

 

更に関羽の言葉を切り捨て、鈴々は右へ進もうとする。

 

「鈴々!!」

 

「おい、待て、鈴々!!」

 

「とにかく鈴々は占いどうりこっちに行くのだ!!」

 

「っ・・・勝手にしろ!!」

 

「勝手にするのだ!!」

 

そのまま鈴々は、勝手に右へと進んでしまった。

 

「おい!」

 

「鈴々ちゃん!」

勇作と孔明が声をかけるが、止まらない

 

「(何でこんなことに・・・)」

 

「いいんですか!あのまま一人で行かせてしまって・・・!」

 

「構わんさ!どうせすぐに寂しくなって『やっぱり皆と一緒の方に行くのだー!』とか言って追いかけてくるさ」

 

「でも・・・」

 

「(と言うか全然似てなかったぞ・・・)」

心の中でツッコむ勇作

 

「さぁ、孔明殿、高杉殿、我らもいこう・・・」

 

孔明が戸惑うのも構わず、関羽はそのまま左へと進んでいくのだった。しかし勇作はその場を動かず、鈴々の姿を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛紗ったら孔明たちの味方ばっかり・・・」

別れてから数分後・・・占いの通りに進んでいく鈴々は、孔明にばかり味方する関羽にぶつぶつ言い続けていた。すると後ろから

 

「鈴々!!」

と声がして後ろを向くと

 

「お、お兄ちゃん・・・」

勇作が来た

 

「やっと追いついた・・・」

 

「なんでお兄ちゃんが・・・」

 

「一人じゃ心配だから来たんだよ・・・」

 

「そうなのか・・・」

 

「うん」

 

カバ

 

と鈴々が勇作に抱き着いた

 

「・・・どうしたの?」

 

「良かったなのだ。お兄ちゃんは、鈴々の占いを信じてくれて・・・」

 

「・・・あ、ああ(別に信じてるわけじゃあないんだけど・・・)」

 

そして二人はしばらく歩いていくと・・・前方に街が見えてきた

 

「あ!街なのだ!やっぱり鈴々の占い正しかったのだー!」

 

「・・・そ、そうだね(呼び戻した方が良いかなー・・・)」

と勇作が思っていると

 

「ざまぁみろなのだー!!」

と言いながら鈴々は街に向かって走って行った

 

「あ、そんなに急いで行くなー」

と勇作も後を追いかけた



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第二十六席 勇作、翠と再会し許緒と出会うのこと

二人は街を歩いていたが・・・・

 

グギュルルルル~

 

「お腹すいたのだ・・・」

 

「でもお財布は関羽殿が持っているからご飯食べれないよ(もらっておけば良かった)」

 

考えていると

 

「ん?」

看板の前に人だかりが出来ているのに気付いて近づいてみる

 

「うーん、難しい字はあんまりないけど、やっぱ読めないのだ」

 

「じゃあ、俺が読むよ」

と勇作が読もうとすると

 

「大食い大会本日開催、飛び入り歓迎!」

 

「優勝者には賞金と、豪華副賞あり!」

 

二人の後ろで看板を読む者たちがいたので振り向いてみると

 

「馬超!!」

 

「翠!!」

 

「よ!久しぶりだな!」

 

そこにいたのは以前袁紹の街で仲良くなった馬超だった。

 

「ど、どうしてここにいるのだ?故郷の西涼に帰ったんじゃ・・・」

 

「んー、一度は西涼に戻ったさ。で、やることやって武者修行の旅に出たのは良いんだけど・・・ここに来て路銀が底をついちまって///」

 

「んじゃあ・・・もしかして!」

 

「ああ!!あれに優勝して、賞金をいただくって寸法さ!」

 

勇作の予想通り、翠が大食い大会に出場する気マンマンである。やはり賞金が手に入るだけあって、意気込みも大きいようだ。

 

「そうはいかないのだ!優勝は鈴々たちがいただくのだ!」

 

「ほーう、やっぱお前らも優勝狙いか!相手がお前らなら不足はない!」

 

「(二人とも燃えている)」

 

「勝負だ、張飛!!」

 

「望むところなのだ!!」

 

 

 

 

ところ変わって、ここは大食い大会の会場。さまざまな勝負が繰り広げられたこの大会も、いよいよ決勝戦が始まろうとしていた。

 

『さーぁさぁさぁさぁ!毎年恒例の大食い大会もいよいよ大詰め!決勝戦まで勝ち残った三人の勇者をご紹介しましょう!まずははるばる西涼からやってきた馬超選手!!続いて、虎の髪飾りとイカヅチ模様は伊達じゃない!猛虎もびっくりの食べっぷり、張飛選手!!』

 

「二人とも頑張れよ」

観客席から勇作が応援する

 

『最後に!!ちっちゃい体からは想像もできない脅威の食欲・・・“許褚”選手!!』

それはピンクの髪をとがった形のおさげに結った小柄な少女、許緒であった。

 

「・・・ちっちゃいって言うな」

しかし、季衣は小柄なのを気にしているらしく、客席からも「ちっちぇえー!!」「ちっちぇえなーおい!」と歓声(?)をあげられやや不服そうだった。

 

「(え、あの子が許緒!?)」

名前を聞いて勇作は驚いていた

 

『最後は、深すぎないほどほどの味が人気の銘菓「十万斤饅頭」を制限時間内にどれだけ食べられるかを競ってもらいます!それでは用意が出来たところで…勝負開始っ!!』

 

始まりを告げる銅鑼が鳴り、三人同時に食べ始めた。一つ一つを確実に食べていく翠、容赦なく大量に頬張る鈴々、澄ました顔で口に放り込む許褚。全員が優勝をかけて十万斤饅頭を食べつくしていった

 

「(くっ・・・許褚って奴、相変わらずごい勢いなのだ・・・!)

 

(ここまでの勝負で誰よりも多く食べてるはずなのに、まだあんな底力が・・・!)

 

(でも・・・鈴々たちだって負けられないのだ・・・!)

 

許緒にただならぬものを感じつつ少しでも数を稼ごうと、鈴々も大量の十万金饅頭にがっつく。

 

「(くそ、このままじゃあの二人に置いてかれる・・・)」

このままでは二人に取り残されると、翠も必死に食べていたが・・・・・・

 

「う゛っ・・・!!!!?」

 

突然顔が青ざめてきた…どうやら流石に限界が近づいてきたようだ

 

「(まずい・・・さすがにそろそろ限界が来た・・・・ああ・・この大会で食べ来た料理が走馬灯のように眼の前を・・・・ここまでか・・・!私はここまでなのか・・・だがたとえ!!どぶの中でのたれ死にするとしても、あたしたちは前のめりに倒・・・れ・・・・・・)

 

デーーーーーンッ!!!!!

 

そのまま翠は前のめりに皿に顔を突っ伏し撃沈した。

 

「(大丈夫なのか)」

その様子を見て、心配する勇作

 

「(馬超が脱落・・・!?ということは、あいつとの一騎打ち・・・!)」

 

「あ!?」

ここで一気に決着をつけようとする鈴々。ふと鈴々が許緒の皿を見てみると・・・残り三個で手を止めているではないか!

 

(残り3個で手が止まっているのだ。ここで鈴々たちが追い上げれば逆転なのだ!!ここから追い上げれば一気に逆転なのだ!!)

必死に手に持ってる分をほおばる鈴々。流石にこちらも限界が来ているようだが、なんとか震える手で残り三個を取ろうとする。

 

(これを・・・これを食べれば・・逆転なのだ!!)

と、それまで目を閉じていた許褚が目を開けたかと思うと

 

「・・・・・・あ゛ーーーー(ザザーーーーッ)」

 

「ガーーーンなのだ」

 

なんと皿を持ちあげ、残り三個を一気に流し込んでしまったのだ。そのまま全部食べ終えて、鈴々に軽く笑うと・・・

 

「おかわり☆」

まさかのおかわりを注文した。

 

「ま・・・負けたのだ・・・・・」

 

流石の鈴々も、これには完敗であった。

 

「(見てるこっちがお腹いっぱいになってきた)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・賞金貰えなかったのだ・・・」

 

「でもまぁ、腹はいっぱいになったからよしとするか」

 

「俺は食べていないけど・・・」

 

大食い大会が終わり、どこかさびしそうに帰っていく三人。と、ここで翠が気になったことを口にする。

 

「あ、そう言えば関羽たちと趙雲たちはどうしたんだ?またどっかの店で働いてるのか?」

 

「それは俺が説明するよ」

と勇作が事情を説明する

 

「えぇっ!?趙雲たちとはぐれて関羽たちとも喧嘩別れした!?」

 

「鈴々は悪くないのだ!?愛紗意地悪言うから、それで・・・」

 

打ち明けた後も、決して自分たちは悪くないと言い張る鈴々。その様子に翠どこか複雑な面持ちになる・・・・・・と

 

「おーい!!」

と三人を呼ぶ声が聞こえ、現れたのは許褚だった。

 

「お前はさっきの・・・」

 

「ボクの名前は許褚、字は仲康!全国を廻って大食い修行してるんだ!」

 

「鈴々たちは張飛、字は翼徳なのだ!」

 

「あたしたちは馬超、字は孟起。西涼の出だ」

 

「俺は高杉勇作だ」

 

「二人ともなかなかやるじゃん!!大食いで僕にあそこまで挑む奴は初めてだよ!!」

 

「鈴々たちもあんな化け物じみた大食いは初めて見たのだ・・・」

 

「いやぁ~、それほどでも」

 

「別にほめてないのだ」

 

「え。そなの!まぁいいや。なぁなぁ!こうして出会ったのも何かの縁!親睦を深めるためにも、これから四人で何かウマイもんでも食べないか!?」

 

「って、お前まだ食うつもりかよ!?」

 

「ホントに底なしの大食いだなぁオイ」

 

「あ、お金なら気にしなくていいよ。大食い大会の賞金で僕がおごるから☆」

 

「いやぁそうじゃなくて・・・」

 

「ははは」

 

先ほど大食い大会が終わったばかりだというのに、今から更に何かを食べようと意気込む許褚に、微妙な表情になる三人だった



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第二十七席 勇作、少年を助けるのこと

「何言ってんだよ!!」

 

「「「「!?」」」」

突然聞こえた声に一同が振り向くと、少年がガラの悪そうな三人組につっかかっていた

 

「借りた分はとっくに返したはずだろ!!」

 

「小僧、借金には利子ってもんがつくんだよ」

 

「ほれ証文も・・・この通りだ」

 

「くっ・・・よこせっ!!」

 

「おっと危ねぇ危ねぇ・・・」

 

「おい、ちょっと痛い目見せてやれ」

 

会話を聞く限り、どうやら三人組はよくいる悪徳な借金取りらしい。筆頭の男が取り出した証文を少年が奪おうとするが、即座に図体がデカイ子分に抑えられてしまう。これは見過ごせないと、一同は前に出る。

 

「そこまでなのだ!!」

 

「あぁ?なんだテメェら」

 

「通りすがりの大食い修行者だ!」

さりげなくドヤ顔で名乗る許褚

 

「・・・いや、それはお前だけだから」

翠のツッコミに対し、借金取りたちは横柄な態度をとる。

 

「大食いだかアリクイだが知らねぇが、首突っ込むとケガするぜ」

 

「そうだ!とっとと失せろチビどもが!」

 

「チビって誰のことなのだ!」

チビと言われて黙ってられない鈴々に、デカイ子分が答える。

 

「誰ってそりゃあ、オメェとオメェと・・・・・・コレ」

しかし、さりげなく最後に小さい子分を指差していた

 

「・・・俺は入れなくていーんだよっ!!」

 

「やーい!墓穴掘ったのだ!」

 

「うっせーよチビ!!」

 

「・・・チビ・・・・・・」

とそれまで黙っていた許褚から得体の知れぬオーラが現われ始めた

 

「(な、なんだ?)」

 

「またチビって言った・・・・・・チビって言った・・・・・・!!」

 

「い、言ったらなんだってんだよ?」

 

「ぶっつぶす!!!!!」

 

次の瞬間、どこからか巨大な鉄球『岩打無反魔』を取り出し、それを振りまわす!!

 

「どっからそんなもん出したー!!」

 

「(確かに)」

勇作も驚いていた

 

「てええええええええええええええい!!!!」

 

「(ってこんなもの地面に落ちたら、衝撃で近くの家屋が崩れる)」

と素早く、落ちる場所に行き

 

「はあ」

武装色の覇気を纏った左手を前に出し

 

ガッキン!!

 

巨大な鉄球を弾いた

 

「!?」

勇作のやったことに皆、驚いていた

 

「(嘘!ボクの鉄球が素手で弾かれた)」

許褚は信じられない表情をしていた

 

「ば・・・バケモンだぁーーーー!!」

 

「明後日きやがれなのだー!!」

 

「それを言うなら一昨日だろ・・・」

慌てて逃げ出した借金取りを小馬鹿にする鈴々であった

 

 

 

一同は少年の家へと向かっていた

「あいつらホントにずるいんだ。借金は全部返したのに、いつの間にか変な証文を作って・・・まだ利子が残ってる。もしも返せないなら、姉ちゃんを借金の片に連れていくって・・・」

 

「なんと非道な・・・!!」

 

「くそ~!!兄ちゃんが邪魔しなければ潰してやったってのに!!」

 

「周りのことも考えてよ」

と左手を押さえながら言った

 

「(覇気を纏ったのにもすごい衝撃だったな。まだ痛い。おまけに棘で少し切った)」

 

「勇作、大丈夫か?」

と翠が心配そうな声で聞いてきた

 

「大丈夫だよ」

 

「本当に大丈夫なのか?」

鈴々も聞いてきた

 

「心配しなくて良いよ」

と鈴々の頭を撫でながら言った。道中でマントに身を包んだ少女とすれ違うが、気にせず先へと進んだ。少女が、ちらりと自分たちの方を向いたことにも気付かずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後、一同は少年の家へと到着した。

 

 

「姉ちゃんただいまー!」

 

「おかえりなさい・・・その方たちは?」

 

それまで薬を作っていた女性が顔をあげると、弟だけでなく見慣れぬ者たちがいた。最初はキョトンとしたけれど、弟や一同から事情を聞いて納得する。

 

「まぁ、そうだったんですか・・・弟の危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございます」

 

「姉ちゃん、この人たち旅の途中なんだって。まだ宿は決まってないっていうから、お礼の代わりにうちに泊まってもらおうよ?」

 

「そうね。そういうことですので、是非・・・」

 

「だったらお世話になるのだ!」

 

「じゃあ宿代にこれ・・・」

そう言って許褚が大食い大会の賞金を取りだすが

 

「いけません。そんなことをしていただいては・・・」

女性は断る

 

「えーなんでだよ?これがあったら借金だっていくらか返せるのに・・・」

 

「何言ってるんですか!この方たちに泊まっていただくのは、あなたを助けてもらったお礼としてなのですよ?それなのにお金をいただいてしまっては意味がないでしょう?そもそも貴方が軽はずみなことをしなければ・・・」

少年に女性が説教する・・・よくある姉弟喧嘩の光景を見て、鈴々の顔はどこか複雑になっていた

 

「ん?どうした、鈴々?」

と勇作が聞く

 

「な、なんでもないのだ!なんでも・・・」

 

「そ、そうか(気にしているんだな)」

と女性が勇作を見て気づく

 

「貴方、血が出ていません?」

 

「「「「えっ?」」」」

と皆、勇作の左手を見た

 

「本当なのだ!」

 

「おい大丈夫か!?」

鈴々と翠が心配そうに聞いてきた

 

「大変!すぐに手当しないと!?」

 

「別に大丈夫ですよ」

 

「駄目です!手当しますからじっとしてください!」

 

「は、はい」

勢いに負け、手当を受ける勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

鈴々と勇作と別れて左の道を進んだ関羽と孔明は、森の中で野宿をしていた。未だ複雑な表情を浮かべる関羽に、孔明が声をかける

 

「関羽さん・・・関羽さん」

 

「!」

 

「あ・・・・・・な、なんですかな、孔明殿?」

 

「何を・・・考えてたんですか?」

 

「いや、別に・・・何も・・・」

 

「嘘・・・本当は鈴々ちゃんのことを考えてたんじゃないですか?」

ごまかそうとする関羽だが、孔明に核心をつかれ言葉が出なくなる。

 

「関羽さん、やっぱり今から引き返しましょう!」

 

「えっ?」

 

「夜通し歩けば、どこかで鈴々ちゃん達に追いつけるかも・・・」

 

「何をばかなことを・・・」

 

「でもこのままじゃ・・・」

 

このままじゃもう会えないかもしれない・・・その孔明の言葉をさえぎるように関羽が口を開く。

 

「孔明殿。もう夜も更けた・・・そろそろ寝た方がいい」

 

「関羽さん・・・」

そのまま横になる関羽・・・だが表情も未だ複雑なままだった



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第二十八席 勇作、張遼と華蝶仮面に出会うのこと

翌朝、翠と勇作は泊めてもらってるお礼にと薪割りをしていた。一方屋根の上で寝転がってる鈴々はというと・・・未だに関羽のことが頭から離れないようだ。

 

「こんなもんかな」

 

「ご苦労様です。ホントにすみません・・・こんなことまでしていただいて・・・」

 

「いやぁ・・・何もしないでいると飯がまずくなりますから///」

 

「うふふ・・・」

 

「姉ちゃん、ただいま」

と許褚と一緒に食糧を集めに行った少年が戻ってきた。来てみれば、出かけた時は空だった籠の中にたくさんの山菜やきのこが詰まっている

 

「まぁ!こんなにたくさん・・・」

 

「姉ちゃん、この人すごいんだ!初めて入った山なのに、山菜やきのこの場所もすぐにわかっちゃうんだ!」

 

「ふふーん、いかなる場所でも食材を見つけるのは大食い修行の基本だからな!」

 

「そ、そういうもんなのか・・・!」

ちょっと微妙な表情になる翠

 

「そういや張飛達はどうした?一緒じゃなかったのか?」

と鈴々がいないことに気づく

 

「へ?てっきり馬超たちと一緒なのかと・・・」

 

「鈴々なら・・・」

と勇作が言いかけた瞬間

 

「お前ら何しに来たのだ!」

武器を携えとっさに屋根から下りてきた鈴々。翠と勇作と許褚も来てみると・・・

 

「「「へへへへへ」」」

昨日の借金取りたちが来ていた!

 

「やっぱりここにいやがったか」

 

「昨日は世話になったなぁ」

 

「なんだ?またぶちのめされにきたのか?言っとくけど今度は手加減しないぞ!」

 

「おっと、今日の相手は俺たちじゃねぇ・・・先生、おねげぇしやす!」

そう言って借金取りの筆頭が下がると・・・・・・・紫の髪を束ねて後ろで止め、酒瓶片手にぐいっと酒を飲んでいた上半身サラシと上着だけの女性がいて、手には飛龍偃月刀が握られていた

 

「なんや、ごっつ強い奴らと撃ちあわせてくれるゆうから小遣い銭で雇われたってのに・・・相手はガキかいな」

 

「ガキとはなんなのだガキとは!」

 

「そーだ!張飛はともかく僕はガキじゃないぞ!!」

 

「って、ちょっと待つのだ!?どういう意味なのだ!?」

 

「今は仲間割れしてる場合じゃないだろ!!」

 

「そうだよ」

さりげなく馬鹿にされ怒る鈴々に突っ込む翠

 

「はっはっは!おもろい子らなー」

再び一口飲んだ後

 

「これ預かっといて・・・まだ残っているからおとしなや!!」

 

「へ、へい」

酒瓶を子分に預けてその手に携えた偃月刀を構え、名乗りをあげる

 

「うちんの名は張遼!!昨日までは旅から旅への風来坊で、今日は出銭稼ぎの用心棒や。アンタらに恨みはないねんけど、ちょっくら痛い目見てもらうでぇ」

 

「(え!?張遼!合肥の戦いで活躍した。あの・・・)」

勇作は名前を聞いて驚いていた

 

「はんっ!痛い目に合うのはお前の方なのだ!?」

名乗りに対し、絶対に負けないと言わんばかりの意気込みを見せる鈴々

 

「その意気や・・・それぐらい無いとおもろない」

その気迫を感じ目つきが鋭くなる張遼

 

「一匹ずつ相手にするのは面倒や!いっぺんにかかって来い!!」

 

「てええええええええええええい!!!」

張遼の挑発の直後に、許褚が鉄球を振りまわす!!

 

「うわーーー!」

3人の借金取りたちはあわてて逃げ出す

 

ドーーーン

 

と張遼の目の前に落ちた

 

「って、こないなもん、何処からだして・・・」

と困惑するが

 

「おりゃ、おりゃ、ありゃーーー!」

直後に斬りかかる鈴々

 

ガチン

 

「ツッコみ入れさせんか」

と攻撃を防ぐ

 

「たあーー」

と今度は翠が攻撃してきた

 

ガキン ガチン

 

撃ちあいをしたり、避けたりした。

 

「おりゃーー」

横から鈴々が攻撃してくるが

 

ガチン

 

簡単に防ぎ

 

「おりやぁーーー」

許褚の鉄球で攻撃するが

 

「ふん」

宙返りでかわして距離をとる

 

「ええでー!ええでー!ガキかと思うとったけどお前ら、3人ええ腕しとるわー(酒代目当てで引き受けた仕事やけど、久々に血たぎってきたわ・・・!!)」

 

「くそー。なんなのだこいつ!」

 

「3対1なのに・・・」

 

「戦いを楽しんでやがる!」

 

「俺を忘れるなよ」

 

「!?」

と張遼の後ろに勇作が居た

 

「あんたもやるんか」

 

「もちろん」

 

「なら、行くでー」

右から攻撃してくるが

 

スッ

 

簡単に避けた

 

「なっ!?」

 

「何驚いているの?」

 

「何でも(なんやこいつ男のくせにうちの攻撃を目を瞑ったまま、かわした)」

 

「もう終わり・・・」

 

「まだまだや」

と攻撃するが

 

「(右から左、そのまま突き)」

簡単に避けた

 

「(何で当たらん)」

と焦っていた

 

「・・・うわ」

と勇作がバランスを崩した

 

「(今や!?)」

攻撃のチャンスと上から切りつける・・・・・・が

 

ガシ

 

「!?」

勇作は素手で攻撃を止めた

 

「(うそやろ、うちの攻撃を素手で・・・)」

突然のことに張遼は驚いていた。

 

「嘘だろう」

 

「すごいのだ!?」

 

「たしかに」

他の三人も驚いていた

 

「男だと思って舐めていたけど、すごく強いやん。アンタ」

 

「それはどうも」

 

「こりゃ、久々に楽しめそうやな・・・」

とその時

 

「きゃーっ!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

許褚の鉄球攻撃にビビってひいたはずの借金取りたちが、姉弟を人質に取っていた

 

「へへへ・・・勝負あったなぁ」

 

「えへへへへ」

 

「くっ・・・卑怯な!」

 

「おい、武器を捨てろ。さもないとこのガキの命はねぇぞ」

少年に短剣を向けながら脅す小柄な子分

 

「ちょー待ち!何のつもりや!」

 

「何のつもりって?」

 

「これからおもろなってくるとこに水差しおって、どういうつもりかて聞いとんや!」

 

「いや・・・でも・・・」

 

「先生、アンタには悪いがこっちにはこっちの都合ってもんがあるんだよ」

 

「くっ・・・・・・」

 

「さあ・・・お前ら早く武器を・・・」

 

「(あいつら・・・・・・ん?)」

と勇作は屋根の上に人が居ることに気づいた

 

ピューーー(口笛)・・・・・・・・プッ!ビシィッ!!

 

「いってぇ!?」

突然どこからか枝が飛んできて、小柄な子分の短剣を弾き飛ばしたのだ!

 

「!?」

一同が驚く間もなく、先日通りすがったマントの人が現われ子分たちをふっ飛ばし、姉弟を屋根の上へ避難させた!

 

「な、なんだテメェは!?」

 

「顔見せやがれー!!」

 

「乱世を正すため、地上に舞い降りた一匹の蝶・・・・・・」

マントを勢いよく取って、その姿を見せる!!

 

「美と正義の使者・・・華蝶仮面!!推参!!」

 

「か・・・」

 

「蝶仮面って・・・おい・・・」

 

「何をやっているんだよ!星」

 

はたから見れば蝶の仮面をつけたどっかの誰かさんでしかないため、一同はポカーン状態であり、勇作は頭を抱えてた

 

 

「鈴々、馬超、勇作殿・・・久しぶりだな」

 

「ん?」

 

「あいつ・・・お前らの知り合いか?」

 

「いやぁその・・・なんというか・・・」

何とも言えない気持ちになる翠

 

「あんな変な奴知らないのだ」

 

「え?」

 

「おい!!何処で鈴々の名前どこで聞いたか知んないけど、お前みたいなへんてこりんな奴に知り合いずらされたら迷惑なのだ!!」

 

「・・・・・」

華蝶仮面から明らかに怒りのオーラが出ていた

 

「(怒ってる・・・・あれは明らかに怒っているな・・・)」

 

「(本当にわからないのかよ。鈴々)」



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第二十九席 鈴々、関羽と仲直りするのこと

「おい!!華蝶だかガチョーンだか知らねぇが、降りてきやがれ!!」

 

「降りてもいいが、そうするとお主らがますます不利なるが・・・いいのか?」

 

「え?」

星の言葉にキョトンとしながら借金取りたちが後ろを向くと

 

「人質取るなんてド汚いマネして・・・よくもうちの楽しみを台無しにしてくれよったなぁ」

張遼がめちゃくちゃ怒っていた

 

「今度こそペッチャンコにしてやるーーーっ!」

更に許褚が勢いよく鉄球を振りまわす

 

「ア、アニキ!」

怯える借金取り・・・が

 

 

ガチーーーン

 

張遼が自分の武器で防いだ

 

「なんで邪魔するんだよ!?」

 

「金で雇われた身とはいえ、一応こいつらはうちの身内や・・・身内の不始末は身内で蹴りつける」

と張遼は近ずき

 

「おい!借金の証文を出し」

証文を出すよう告げる張遼

 

「は・・・はい・・・」

頭目が証文を取りだす

 

「しっかり持っときや」

と忠告し

 

「は・・・はい・・・」

 

「ふん」

と証文を切り、跡形もなくバラバラになった

 

「あ・・・あああ」

 

「えぇか、今後一切あの姉弟に近づくんやないで・・・わかったか!?」

 

「「「はっ、はいっ!!」」」

 

「ほなら、とっとと行けっ!!」

 

「「「失礼しましたっ!!」」」

張遼の釘差しにビビりながら、借金取りたちは逃げて行った

 

 

 

「・・・やれやれ」

 

「めでたし、めでたしなのだ」

 

「んん・・・」

安堵する翠と鈴々。しかし許褚は納得していない表情をしていた

 

「ふう」

勇作は落としていった酒瓶を拾い、張遼に渡そうとした

 

「おお、ありがとう」

 

「空だけどいいの?」

 

「・・・あらら」

空になったのを見て若干しょげていた

 

「ほんなら、うちも消えるとしよか・・・」

 

「お前これからどうするつもりだ?」

 

「さぁて。風の向くまま気の向くまま・・・これまでどうりの風来坊や・・・・・・・あ!」

その場を去ろうとするが何かを思い出し振り向く

 

「おい!そこの兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「名前教えてくれへん?」

 

「え?・・・高杉だけど」

 

「高杉か・・・・・・覚えておくでその名前」

と言い去って行った

 

「なんか変わった奴なのだ」

 

「変わった奴と言えば、あの妙な仮面野郎は・・・」

 

思い出したように皆が顔を上げると・・・・・・屋根の上には姉弟だけで、華蝶仮面の姿はなかった

 

「いない」

 

「うーん。最初から最後まで怪しい奴なのだ」

のんきにそんなことを呟く鈴々

 

「(張飛の奴、ホントに気づいてないんだ)」

翠は驚いた顔をしていた

 

「(うーーん。駄目だ。何処に行ったかわからない)」

勇作は覇気で見つけようとしたが、分からなかった

 

 

 

 

 

その日の夕方…湖のほとりで蝶の仮面を片手に悩ましい顔をする少女がいた

 

「かっこいいと思うんだけどなぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「本当にありがとうございました」

 

「さよならーー」

 

「元気でなーー」

姉弟に別れを告げて4人は家を出た

 

 

 

「ところで許褚、お前、この先どうするんだ?」

 

「とりあえず洛陽かな。そこに行けばもっと大きな規模の大食い大会があるだろうし」

 

「そっか、じゃあこの先でお別れだな・・・張飛と勇作はどうする?」

 

「うーん・・・」

 

「(本当は仲直りさせたいんだけどな・・・・・・ん?あれは・・・)」

 

「もし良かったらあたしと一緒に来ないか?どうせ二人だけで行くあてもないのなら「翠」ん?」

一緒に同行しないかと話を持ちかける翠・・・・・が勇作が声をかけ、前方を指差した

 

「張飛、今のは取り消しだ」

 

「え?」

 

「ほら」

前方を指差したと・・・道の先には、二日前に喧嘩別れした関羽がいた

 

 

「愛紗ーっ!」

鈴々も思わず駆けより、飛びつく

 

「こ、こら!!なんだ急に!」

 

「どうして・・・どうしてこんな所に居るのだ?何で?」

 

「昨日の朝引き返して、夕方街について・・・宿を探したけど二人がみつからなくて・・・そしたら孔明殿が、街の出口近くの街道で待っていれば会えるかもしれないと・・・」

 

「孔明はどうしたのだ?」

 

「もしかしたらお前が道を引き返しているかもしれないと言って、街の反対側の出口で待っている」

 

「愛紗は・・・愛紗は何で引き返しにきたのだ?」

 

「なんでって・・・お前のことを探すためにきまっているだろう」

 

「だから・・・なんで鈴々を探しに来たのだ?なんでそのまま孔明と二人で行かなかったのだ?」

更に質問をされ、返答しにくい関羽だったが

 

「あーもうめんどくさいっ!!いいか鈴々!私は姉で、お前は妹だ!だからどこに行くのも一緒だ!いいな」

 

「・・・!うん!」

その答えがうれしくて、鈴々も笑顔でうなづいた。その反応に、関羽も自然と笑みがこぼれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの黒髪の女は誰なんだ?張飛の知り合いか?」

 

「関羽は・・・あの者たちは張飛の姉だ」

 

「血は繋がってないが、本当に仲が良い」

 

「へぇー・・・」

遠くから光景を見ていた許褚に、翠が説明する。そして勇作も鈴々達に近づいた

 

 

「仲直りできてよかったね?」

 

「うん」

 

「高杉殿」

 

「何ですか?」

 

「鈴々のそばにいてくれてありがとうございました」

 

「別にいいですよ。俺は鈴々の兄なのですから」

 

「そうですね」

 

「これからも3人どこに行くのも一緒なのだ」

 

「ああ」

「おう」

 

3兄妹は新たに強い絆で結ばれていることを証明していた



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第三十席 勇作、孫尚香と出会うのこと

旅を続けている勇作達は山道を歩いていた

 

「うわぁー、いいお天気なのだ!!」

 

「そうだな」

 

「こんな晴れた日には何かいいことがあるかもしれ「きゃあ」!?」

 

突然の悲鳴が上がり、声が聞こえた方に視線を向けると店でピンク色の髪の少女が髭を生やした男に捕まっているのであった

 

「なにすんのよ!!離しなさいよ!?」

 

その様子を見た関羽は男の前に立った。その後に鈴々と勇作と孔明が現れた

 

「そこまでだ!!かよわき物を虐げんとする悪党め、この場で成敗してくれる!!」

 

「悪党って、おらはただ・・・・」

 

「問答無用!!覚悟!!」

 

「うりゃりゃりゃ~!!」

 

「うわああああああああああ!!」

 

そのまま、男を殴り飛ばしてしまった

 

 

 

 

 

 

「ええっ!食い逃げ!?」

 

「んだぁ、さっきの娘っ子、飲み食いした後、金払わずに逃げようとしたから、それで・・」

 

「ああ、いやぁ・・そうとは知らず、とんだ勘違いを・・」

 

すると店主が関羽に手を出した

 

「ん?」

 

「代金、食い逃げの・・」

 

「あ、ああ。そっか・・・って何で私が!?」

 

「おめぇらのせいで、あの娘っ子が逃げちまったんだから。弁償してもらわんと・・・」

 

「うっ・・・・」

 

「(仕方ないか)」

 

勇作が思っていると

 

『・・・助けて・・・』

 

「え?」

と茶店の向かいにあるボロ屋敷の方を見た

 

「どうしたのですか?高杉さん」

 

「いや、あの屋敷から声が聞こえたんだけど・・・」

 

「私は聞こえませんでしたけど、気のせいなのでは?」

 

「そうだな(・・・・・・気のせいなのかな?)」

 

 

 

 

 

 

「とほほ・・・とんだ災難だ・・・」

 

関羽は落ち込んでいた。そんな姿に鈴々と孔明が励ます

 

「あの元気出してください」

 

「そうなのだ!!」

 

すると後ろから

 

「ちょっと、待ちなさいよ!!」

 

すると後ろから勇作たちを呼びとめる声が聞こえてきた。後ろを振り向くと先ほど食い逃げした女の子の姿が見えた

 

「なっ!?お主は先ほどの食い逃げ娘!!」

関羽は怒り出した

 

「今までどこへいったのだ!?お主のせいで私は!!」

 

「あんた達、なかなか見込みがあるわね。気に入ったわ!!」

 

「シャオの家来にしてあげる。」

 

「はぁ?・・・」

 

突然の家来にする宣言したので疑問に思い恥じる

 

「あの・・・シャオとやら。全然、話が見えないのだが・・・」

 

「ちょっと、初対面なのにシャオだなんてなれなれしく呼ばないでよね!!」

 

「あ、いや。すまん」

 

「自分でシャオって言ったのに・・・」

 

「うるさいわよ。そこのちびっこその二」

 

呆れて喋る孔明に怒鳴りつける。それをみた鈴々は笑い出す

 

「ぷぷぷ。孔明、ちびっこ扱いなのだ」

 

「いや、孔明がちびっこその二なら、その一は、鈴々だと思うのだけど・・・」

勇作がそう言うと

 

「誰がちびっこなのだ!お兄ちゃんひどいのだ!」

ちびっこ呼ばわりされた鈴々が勇作に怒鳴りつける

 

「ご、ごめん」

 

「と・に・か・く。あんた達はこの江東に覇を唱える孫家の末娘、この孫尚香の家来になるのよ!良いわね!?」

 

「「「ええっ!?」」」

 

「(ええっ!?この子が弓腰姫と言われたあの孫尚香!)」

 

家来発言に驚く関羽たち、勇作は名前を知り、驚きを隠せなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、町にたどり着いた

 

「さーて、晩御飯はどこがいいかしら」

 

孫尚香は走り出した。そして、一軒の料理屋の前に立った。

 

 

「ここがいいわ、ここにしましょう」

 

「飯は宿を決めてからだ」

 

「えっー、いいじゃない!!シャオ、おなかすいた!!・・・ねぇー、御飯!!」

 

宿を探す関羽達に文句を言う孫尚香。すると関羽が

 

「お主、飯を食う金はあるのか?」

 

「何言っているのよ?そんなの家来のあんた達が払うにきまっているでしょ!!」

 

「っ!?おい!!」

 

「てゆかー、お金があったら茶店で食い逃げなんかしないんじゃない?」

 

「なるほど・・・」

 

「そこ、感心する所じゃないと思いますけど・・・・」

 

「たしかに」

 

納得する関羽に孔明と勇作が突っ込む

 

「しかし、それなら今までどうしていたのだ?まさかずっと一文無しで旅に出ていたわけではあるまい?」

 

「もちろん、それなりの路銀は持っていたわ。前の町までは・・・でもそこで・・・・これ買っちゃって」

と頭についていた髪留めをとった。それには宝石が埋め込まれていた

 

「って、路銀全部はたいて、それらを買ったのか!?」

 

「だってほしかったんだもん!! 見てよ、これ。キラキラして綺麗でしょう。お店で見たとき、これだぁって一目惚れしちゃったのよね。あぁ、こうやって見てると、何かうっとりしちゃう」

 

「はあー」

髪留めを見て、うっとりする孫尚香を見てあきれる勇作たち・・・・・・・・・・すると

 

 

 

「きゃあ!?何するのよ!!この泥棒!!」

 

カラスが突然、孫尚香の持っていた髪留めを奪い取ってしまった。孫尚香はカラスを追いかけ始めた。勇作たちも仕方なく追いかけ始めた、そして、カラスは上空へと飛んでいた

 

「あ!? こらぁ、返せぇーーーっ!!」

 

すると宿の窓から紫の髪の女性が弓を構えた。勇作と関羽はそれに気付いた

 

「ちょっと、何よ!?」

 

ビュッ!!

 

そして、矢をカラスに向かって放った。しかし、カラスに当たることはなかった

 

「(外したか?)」

 

「(外したのか・・・いや違うな)」

 

すると、カラスが突然、落ちてきた。すぐ様に鈴々がカラスを捕まえる

 

「すごーい!!あたったのだ!!」

 

その後に孫尚香は髪留めを受け止める

 

「よかった・・・壊れていない」

 

壊れてないことに安心したその時

 

「カァー、カァー!!」

 

「ちょっ・・・痛たたたたた・・・・」

 

カラスが眼を覚まし、孫尚香に八つ当たりを始めた。そして、そのまま飛び去った

 

「もう何するのよ!!この馬鹿!!」

 

「いったいどうなっているのだ?」

 

「おそらく、矢が頭をかすめた時にできた空気の波に当たって、気を失ったのだろう」

 

「でも、そんなことができるんですか?」

 

「出来るも何も。今、目の前で見た通りだ」

 

「偶然・・・・・・じゃないんですか。狙いが逸れて、それで偶々」

 

「そうかもしれない。だが・・・もし狙ってやっていたのならば、まさに神業」

 

関羽が目線を向けたが、そこにはすでに女性の姿はなかった

 

「(恐ろしいほどの腕前だ)」

 

「(確かにすごかったな・・・けどあの茶店で聞こえた声はいったい何だったんだ?)」



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第三十一席 関羽と勇作、黄忠の企みを阻まんとするのこと

その後、5人は先程の店で、食事をしていた

 

「おいしかったのだ!!」

 

「でしょ?一目見たときからここはいけるとピンと来たからね。このシャオ様の目に狂いはなかったって訳」

 

「フン!鈴々は腹が空いていればなんでもおいしい体質だから別にお前が威張ることはないのだ」

 

「鈴々ちゃん、それはあまり自慢にならないような・・・」

 

「ところで尚香殿、お主が孫家の末の姫君だと言うのは本当なのですかな?」

と関羽が聞いてきた

 

「もちろん!」

 

「別に疑うわけではないが、何か証明するものはないのか?」

 

「証明もなにも、こうして本人が言ってるんだから間違いないわ」

 

そして、四人は離れたところで話し合う

 

「と、言っているが。どう思う?」

 

「お姫様がお臍出して、一人でウロウロしてるなんてどう考えても可笑しいのだ」

 

「たしかに可笑しい」

 

「そうですね。最近、陽気ですし、もしかしたら・・・」

 

ヒソヒソと話している四人に孫尚香は立ち上がって

 

「そこ!!聞こえるようにヒソヒソと言ってんじゃない!」

 

「しかし、それでは、なぜ姫君達が供も連れずにこのようなところにいるのです?」

 

「うっ・・・それは・・・いろいろとあるのよ・・・」

 

「まさかと思うけど、堅苦しいお城暮らしにうんざりして、家出当然に飛び出して来たぁってことじゃないよね」

と勇作が言うと

 

「そ、そんな訳ないでしょう!確かに合っているけど、そんなんじゃ無いんだからねええぇぇぇ!!」

 

その言葉に四人は呆れ、静かに席に戻った

 

「何よ、その眼は・・・・・・それよりアンタ!」

孫尚香は勇作を指差す

 

「何?」

 

「何でわかったのよ!理由を!」

 

「それは・・・」

と言おうとした時

 

 

「おやまぁ。綺麗に平らげて暮れたもんだねぇお茶のお代わりどうだい?」

 

「あ、申し訳ない」

と女将がお茶を注ぐと

 

「あんた達、旅の人みたいだけど。やっぱり明日の行列を見に来たのかい?」

 

「は?行列?」

 

「おや、違ったのかい。あたしゃ、てっきり・・・」

 

「行列とはいったい?」

と勇作が聞く

 

「実はね、ここの領主様である劉表様の姫さんに、隣の領主様ん所から三番目の息子が婿入りするんだけど。明日の昼過ぎ、その行列がこの前を通りを通るのさぁ」

 

「ほぉ」

 

「噂によると、何でも大層豪華な行列のうえ。婿入りしてくる三番目の息子ってのが、とびっきりの美形らしいってんで。これはもう一目拝んとかなきゃあって、近くの村からも人が集まってんだよ」

 

「そうですか何にしても結婚はめでたいことだな」

 

「所が・・・近頃、妙な噂があってね」

女将が顔が暗くして言った

 

「と言うと?」

 

関羽が聞き返すと、女将は周りを見てから近づき

 

「ここだけの話なんだけどね・・・」

と小声で話そうとした時

 

「ふーん・・・主様の身内か側近かで、この結婚に反対してる人がいて、その一味が婿入りしてくる息子の暗殺を企ててるんじゃないかって言われているのか」

 

「そ、そうだけど・・・何でわかったんだい!」

 

「え?・・・・・・あ」

勇作はしまったという顔になった

 

「ええと・・・・・・宿でそういう噂を聞いて・・・」

 

「そうなんだい」

 

「しかし物騒な」

 

「本当だよ。せっかくの晴れの日だってのに、やんなっちゃう」

 

すると、孔明が・・・

 

「けど、これで理由が分かりましたね」

 

「理由?」

 

「ほら・・・この町へ入るとき、関所で妙に調べられたじゃないですか・・・あれはきっと。怪しい者が入って来ないように警戒してたんですよ」

 

「ならば、明日は領主も十分な警護を固めている筈だな」

 

「はい」

 

「なに・・・事前に漏れた隠謀が成功するなど、早々ないものですぞ」

 

「そうだと良いんだけど・・・とにかく・・・殺したり殺されたりは、もううんざり・・・早く穏やかな世の中になってくれないもんかね」

 

そう言って、仕事に戻る女将。関羽は、女将の言葉に、やりきれない哀しみを感じていた

 

「(物騒だな、暗殺なんて・・・それにしても危なかった。見聞色の覇気で読み取ってしまった・・・そういえばあの声は何だったんだ。気のせいではないけど、何であんな所から声が?」

 

 

 

 

 

そして、離れた席では・・・・・

 

 

「へいお待ち! 特製ラーメン、ニンニク、チャーシュー抜きのメンマ大盛りね」

 

そこにはマントを被った少女が座っていた。そして、ラーメンを見ると少女はよだれを流していた

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

五人は街を歩いていた

 

 

「ふあああああ~まったくなんで二人部屋で五人で押し込めらなきゃならないのよ・・・おかげでろくに眠れなかったじゃないのよ」

 

「おなか丸出しでいびきかいていたのによく言うのだ!!」

 

「ちょっといい加減なこと言わないでよ!!このシャオ様がいびきなんてかくわけないでしょ!!」

 

「いーや、かいていたのだ!!」

 

「はわわ、喧嘩はだめですよ」

 

喧嘩なりそうな鈴々と孫尚香を孔明は止めた

 

「こら、こんなところでグズグズしないで早く来ぬか・・・」

関羽が注意すると、太陽が出てきた。すると、関羽の眼には女性が矢を放った宿が見えた。そして、先日の女将の言葉を思い出した

 

『明日の昼過ぎ、その行列がこの前を通りを通るのさぁ』

 

『もし狙ってやっていたのならば、まさに神業・・・恐るべき簿の腕前だ』

 

そして、何か不吉な予感を感じた関羽は先ほどの宿へと向かった。

 

「ちょ、ちょっとどこに行くのよ」

 

その姿を勇作は見て

 

「・・・・・・・」

何かを感じとった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃宿では紫の髪の女性の下に宿主がやってきた

 

 

「私に客?」

 

「はい、昨日の礼をしたいと・・・・・」

 

「昨日の御礼?」

 

 

 

「そうでしたか、貴方が昨日の・・・」

 

「関羽と申します。先日は、連れの者が世話になりました」

 

「そんな。礼を言われることは何も、根がお節介な者ですから・・・つい余計な事をしてしまって、申し遅れましたが、私は黄忠、字は漢升と申します」

と自己紹介をし

 

「すみません、今、お茶を」

 

紫苑がお茶を入れようとすると

 

「それにはおよびません」

 

「え?」

 

「いい天気だそうだな。大通りのほうまでよく見える」

窓を開けて、大通りを見た

 

「!?」

その一言に黄忠が驚く

 

「とは言え・・・ここからだと、大通りを通る人の頭は、精々豆粒ほどだ。しかも、動いているとあっては、生半可な弓の腕では、まず当たらないだろう。警護の連中も、その可能性を考えなかったとしても・・・・・・責めは出来ない」

 

「関羽さん、貴方何をおっしゃりたいのかしら?」

 

「いや、もし弓の神・・・曲張に匹敵する程の名手がいたら、不可能を可能にすることが出きるかも知れないと・・・」

 

「くっ・・・」

 

黄忠は堰月刀を手に取るが、壁に飛かかってしまい、関羽に弓を突き付けられてしまった

 

「動くな!!どうやら長物の扱いは弓ほど得意ではないようだな・・・鈴々、高杉殿、入ってきていいぞ」

 

関羽がそう言うと勇作と鈴々と孔明と孫尚香が入ってきた。それを見て黄忠は観念した

 

「(この女性が黄忠か・・・俺なんだかんだで蜀の五虎大将軍に会ったな)」

と勇作は思った



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第三十二席 関羽と勇作、人質を救出するのこと

勇作たちは黄忠の話を聞いていた

 

「数年前に主人を亡くした私は幼い娘の璃々と二人、この街から離れた村で静かに暮らしていたのですが・・・ある日、隣町に用足しに戻って見ると。璃々が居なくなっていて、代わりに一通の置き手紙が」

 

『娘は預かっている。こちらの指示に従えば無傷で返す。そうでなければ、命の保証はしない』

 

「何と卑劣な!?」

 

「許せないのだ!?」

 

「そして・・・待ち合わせの場所には・・・・」

 

 

 

 

待ち合わせの場所には仮面をかぶった男(腰に赤い宝石の付いた剣)の姿があった

 

 

 

「娘は・・・・娘は無事なんでしょうね?」

 

「全てはお前次第だ」

 

「私にいったい何をしろと・・・・」

 

「ふっ・・・・」

 

 

 

「成る程。それで、止む無く暗殺を請け負ったのか」

 

「はい、どんな理由であれ、人の命を影に隠れて奪うような行いが、許されるとは思いません・・・・・・・・・・・・・・でも、でも娘の璃々は、私の全て何です!! 璃々を救うためには・・・・・・他にどうしようもなくて」

 

 

涙を流して泣くの堪える紫苑を見て、五人は見守ることしかできなかった。すると孫尚香が何かを発見した

 

「ねぇ、これって・・・?」

 

「それは娘が監禁されている場所で描いた絵です。昨日、一味の者が娘が無事であること証として持ってきて・・・・」

 

すると孫尚香の持つ一枚の絵に孔明が

 

 

「その絵は・・・・」

 

髭面の男の顔の書かれた絵を五人は見た

 

「なんでこんな絵を描いたかしらね。」

 

「さあ?」

 

「孔明殿、この絵が何か?」

 

「これ、誰かに似ていると思いませんか?」

 

すると・・孫尚香が気付いた

 

 

「あっ!!茶店の髭親父!!」

 

「ではあの茶店の主人が!?」

 

「いえ、それはないと思います。もしこれが犯人一味の誰かを描いたとあればいくらなんでもこれを黄忠さんに渡すようなへまはしないはず・・・たぶんこれは誘拐された娘さんが監禁されている場所から見た者を描いたと思われます」

 

 

「あの茶店の向かいの・・・」

 

「あのボロ屋敷か(声が聞こえたのは、そのためか!くそ)」

 

「娘の居場所に心当たりがあるのですか!?」

 

「え・・・・ま・・・たぶん・・・」

 

「場所を教えてください!!すぐにも私が」

 

立ち上がった黄忠を勇作が止めた

 

「やめた方が良い」

 

「なぜです!?」

 

「高杉さんの言う通りです」

と孔明も止めた

 

「どうして!?」

 

「顔を知られている黄忠さんが監禁場所に近づいたりしたら娘さんの身に危険が及ぶかもしれません。娘さんの命を最優先にするなら黄忠さんは何も知らないふりをしてここに残ってください」

 

「辛いと思うが、ここは孔明殿の言うとおりにしたほうがよいですよ」

 

勇作に言われて仕方なく座り込む黄忠

 

 

「黄忠さん・・・」

 

「あの茶店までさほど時間はかからない・・・」

 

「それでは・・・」

 

「いくか関羽殿」

 

「ええ」

 

「黄忠殿、お主の娘は必ず救います」

 

「ありがとうございます・・・・」

 

勇作の言葉を聞いた黄忠は涙を流した

 

「(俺にも責任がある。絶対救い出す)」

 

そして、五人は茶店へと向かった。それと入れ違いするかのように犯人の一味である人が入ってきた

 

「入るぜ」

 

「なんのよう?」

 

「へへ、そんなつれなくするなよ。親分から首尾を見届けるように言われてな・・・」

 

「そう、ご苦労なことね。(危なかったわ。もし私があのまま飛び出していたら・・・)」

 

すると男が何かに気付いた

 

 

「!?」

 

「どうしたの?」

 

「いや・・気のせいだ・・・」

 

そして、宿の屋根の上ではマントを被った少女がいた。そして、そのまま去った

 

 

 

 

 

 

 

五人は茶店につくと店主にわけを話した

 

 

「え!?向かいのボロ屋にさらわれた子供が!?」

 

「その子を救うためにお主の協力が必要なのだ!!」

 

「え!?協力?」

 

そのころ、ボロ屋の中には三人の盗賊と一人の幼い少女がいた。その少女こそ紫苑の娘である璃々であるのだ

 

「おい、異常はないか?」

 

「なんにもつーかなさすぎて退屈で退屈で」

 

 

すると

 

 

「ちょっと変ないいかがりはやめてよね!?」

 

「!?」

 

賊の小さいほうが覗くと、そこには店主と孫尚香がみえた

 

「このシャオ様がせこい盗みなんかするわけないでしょ!!」

 

「この間食い逃げしといて何いっとるんだ!!だから今回もおめぇにちげぇね!!」

 

「わかったわよ。そんな疑うなら盗んだものがあるかどうか裸にしてでもしらべたらいいじゃない!!」

 

「何!?」

 

なんと孫尚香は上の服を抜き始めた。賊はそれに目が釘付けになってしまった

 

「どう、これで良い//」

 

「//・・・・・ま、まだだ、まだ下が残っている!!」

 

「わかったわよ。」

 

さらにスカートまで脱ごうとしていた

 

 

「ちょっと、ちょっと、おもしれぇことになってますぜ!!」

 

「なんだ?っておおおおおお!!」

 

「さあこれでわかったでしょ!!」

 

「「「おおおおおおおおお」」」

 

「(もうまだなの・・・・さすがに・・・・これ以上は脱げないわよ・・・////)」

 

賊達が孫尚香の下着姿に注目しているころ、木の上では短刀を加えた関羽。木のしたでは鈴々と勇作。そして、店の中では孔明が様子を見ていた

 

「(引き付け成功・・・)」

 

そして・・・・

 

 

「(1・・・・・)」

 

「(2・・・・・)」

 

「(3・・・・・)」

 

「今です!!」

 

孔明の号令と同時に三人は潜入した。そして、関羽は賊の一行の前に立った。

 

「なんだ!?てめぇは!?」

 

「いつもなら名乗りを上げるところだが・・・・貴様らのような卑劣な輩に聞かせる名などない!!」

 

「なんだと!!」

 

「ふざけるな!!」

 

「やっちまえ!!」

 

賊達が関羽に襲い掛かった。しかし簡単に片づけてしまった。そこへ下にいた賊を退治したと勇作が駆けつけてきた

 

「愛紗、下にいた奴らはみんな叩きのめしたのだ!!」

 

「うむ!!」

と安心していると

 

「おのれ、こうなったらその小娘を殺してやる」

と兄貴らしき人が、璃々に切りつけようとしたが

 

ガチン

 

勇作がそれを止めた

 

「な、何!?」

 

「この子に近づくな!?」

勇作はその賊の顔面を思いっきり殴りつけた

 

「ぐわわ!?」

賊は外に飛ばされた

 

「高杉殿」

 

「お兄ちゃん」

関羽と鈴々が心配そうに声をかけた

 

「大丈夫だ・・・・・・璃々ちゃんだね・・・」

 

「うん・・・・」

 

「一緒に帰ろう。君のお母さんが待っているぞ」

 

「お母さん!!」

 

そして、三人が璃々が外へ出ると・・・・

 

 

「皆さん、こっちです!!」

 

そこには一頭の馬を連れた孔明がいた

 

 

「さすがは孔明殿、手回しが良いですな。」

 

「いえこれは関羽さん達がすぐ飛びこんだ後に仮面をつけた人がもし急ぐならこれを使えと・・・」

 

「仮面の!?」

 

「(星だな)」

 

「とにかく今は時間がありません。急ぎましょう!!」

 

「関羽殿、お願いします」

 

「はい・・・はぁ」

 

関羽は璃々と共に町へと向かった。

 

 

「(頼む・・・・間に合ってくれ!!)」

 

その頃、町ではついに行列が始まってしまった

 

 

「おい、そろそろ」

 

「わかったわ」

 

黄忠は弓を構え始めた。黄忠は焦っていた

 

「(まだなの)」

 

 

 

 

そして、関羽は何とかたどり着いたのだが・・・

 

 

「馬はだめだ!!ここで降りろ!!」

 

まさかの足止めを食らってしまった。そして馬から降りると関羽は璃々を連れて、黄忠のいる宿へと向かうが、人混みのせいで進むことができなかった

 

 

「この人込みじゃあ宿に向かうまでは間に合わない・・・こうなったら・・・・いちかばちか・・・」

 

そして、行列では娘婿がついに来てしまった

 

 

「おっ、来た、頼むぜ!!」

 

「ええ・・・」

 

黄忠は弓矢を構え、撃とうとしていた

 

「おい、どうした、早くしろ!!」

 

「(ああ、もうダメ・・・・これ以上・・・)」

 

黄忠は観念して矢を討とうとした

 

「(はっ)」

 

その時、黄忠は何かを見つけた。それは関羽に掲げられた、愛する紫苑の娘、璃々の姿であった。そして、璃々は何かを言っていた

 

「お・か・あ・さ・ん」

黄忠はそれを理解していた。璃々の無事を確認した黄忠は矢を下げた

 

「おい、何のつもりだ!?なぜ矢を・・・・」

 

男は黄忠の肩をつかもうとした。その時

 

「!?」

怒りの一撃で賊を殴り飛ばした。安心した黄忠は腰を抜けて、座り込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、黄忠と璃々と別れの時が来た

 

「名残惜しいけど、ここで別れね・・・貴方達には何とお礼を言ったらよろしいでしょうか」

 

「ありがとう、お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 

「いえ・・もう礼は十分すぎるほど言ってもらったので、これ以上は・・・」

 

すると黄忠は関羽の手をとった

 

「関羽さん、これからも小さな子供を持つ者同士、がんばっていきましょうね」

 

「はっ?こども?」

 

「あら、ごめんなさい。私、てっきり鈴々ちゃんのことを・・・・////」

 

「何を言っておられる!?鈴々は私の娘ではなく・・・・」

 

 

 

すると鈴々が

 

 

「鈴々と愛紗とお兄ちゃんは寝床で契りを交わした仲なのだ」

 

「「!?」」

 

「あらそれじゃ・・・」

 

「違います!!契りというのは兄妹の契りでして・・それで・・」

 

「それで?」

 

「いや・・・その・・・・って誤解を招く言い方をするな!!」

 

「(これでめでたしだな。ひと波乱あったけど・・・)」

と勇作が思っていると

 

「あ、あの」

 

「ん?」

璃々が声をかけてきた

 

「ありがとう。お兄ちゃん守ってくれて」

 

「別にいいよ」

と言いながら頭を撫でた

 

「あの、すいません」

と今度は黄忠が話かけて来た

 

「どうしたんですか?」

 

「名前を教えてくれませんか?」

 

「はー、高杉ですけど」

 

「高杉さん。私の事を紫苑と呼んでください」

 

「え!?でもそれは・・・」

 

「良いのです。璃々を守ってくれたお礼です」

 

「そうですか。ありがとうございます。紫苑さん」

 

「・・・////」

 

「あーお母さん、赤くなっている」

 

「こ、こら璃々!!」

 

「はは・・・いててててて」

と関羽に腕を抓られた

 

「何するのですか」

 

「早く行きますよ!!」

と関羽に腕を引っ張られながら、黄忠と璃々と別れた



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第三十三席 袁紹、宝を掘り当てんとするのこと

都にある大きな屋敷。そこの大浴場で袁紹が風呂に入ってくつろいでいた

 

「う~ん、やっぱりお風呂はいいわよね・・・こうやって一人で静かに入っていると一日の疲れが取れるわね」

とその時

 

「麗羽様!!」

 

そこへ文醜が慌ててやってきた

 

「きゃあ!?何よ、猪々子!?どうしたの?まさか敵襲!?」

 

「そうじゃなくて見せたいものがあるんです!!」

 

「はあ?見せたい物?」

 

「いいからとにかく来てくださいよ」

 

文醜は袁紹を連れだした

 

「ちょっと、私、裸!!」

 

「大丈夫ですって文字のみですから見えませんって」

 

考えもせずに動いている文醜に袁紹はキレた

 

 

「もう・・・いいかげんにしなさい!!」

 

ゴッチーン!!

 

 

「プギャ!?」

 

文醜は殴られたのであった

 

 

 

 

 

 

 

そして袁紹は部屋に戻った。その前には頭にたんこぶができた文醜と顔良がいた

 

 

「んで、私の憩いの場を邪魔してまで見せたいものはなんですの?」

 

「はい、蔵の中の物を虫干したときにこれを見つけたんです!!」

 

顔良が出したのはボロボロの地図であった

 

「何よこれ・・・汚い地図。おまけに虫食いだらけじゃない」

 

「それはそうなんですけど・・・・とりあえずここを見てください」

 

顔良が指差したところを袁紹が見た

 

「なになに?地図に記せし場所に我らが生涯かけし宝あり・・・・宝・・・はっ・・・これってもしかして・・・・」

 

袁紹はその地図がなんの地図か理解した

 

「そうですよ、宝の地図ですよ。掘れば金銀財宝がザクザク、これで麗羽様の無駄遣いが原因で苦しくなっている当家の台所も・・・・」

 

「誰の無駄遣いが原因ですって」

 

「あ・・いやその・・・」

 

文醜が余計な事を言い出したので怒りそうになっている袁紹を顔良が宥めた

 

「まあまあお金と赤ちゃんのおむつは困らないといいますし・・・」

 

「そうそう・・・」

 

「それもそうね。たしかにお金はたくさんありすぎても困ることはありませんよね」

 

「それじゃ・・・」

 

「ええ!明日の朝までには準備して、宝探しに出発よ!!」

 

こうして袁紹一行は宝探しを行うことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、山岳では曹操、夏侯惇、荀彧が馬を連れて歩いていた

 

「しかし、よかったのですか?こんな時に我々だけで温泉に慰安旅行に行くなど・・・」

と夏候惇が言った

 

「春蘭、仕事熱心なのはいいけどたまには休息も必要よ」

 

「そうですよ。しっかり働いて、しっかり遊ぶ。天の運用と同じで何事も緩急をつけることは必要なのですよ」

 

「そういうこと・・・」

 

荀彧一言に夏侯惇も黙るしかなかった。

 

 

「あ~あ、温泉、楽しみ。通しか知らない本当の穴場で、お湯には美肌効果があるからゆっくり使って、肌をつるつるにしてその後は・・・・・華琳様と二人で・・・・」

 

「んっ!」

 

「春蘭、そんな怖い顔しないで貴方を仲間はずれにしないから・・・」

 

「私は別にそういう意味で・・・・」

 

「ふふ・・・」

 

「ふふふ・・・」

曹操と荀彧は笑った

 

「それはともかく・・・秋蘭にはかわいそうなことをしましたね。一人だけ留守番なんて・・・」

 

「そうね。しかし、さすがに我が首脳部全員休暇を取るわけにはいかないでしょう。念のために誰か残ってもらわないと・・・」

 

「それはそうですけど・・・(秋蘭・・すねてたりしてないといいけど・・・)」

 

 

 

 

 

その頃、留守番をしている夏侯淵は

 

 

『いやぁー、温泉っていいものだな』

 

『そうね、気持ちがゆったりするわね。』

 

『本当、来てよかったですね。』

 

『秋蘭、そんなところで一人でいて、貴方もこっちへいらっしゃい。』

 

『はい、ただちに・・・』

 

華琳一行は温泉入っているという・・・・寂しさを紛らわすための指人形劇をしていた

 

「はあ・・・仕事するか・・・」

すぐに飽きるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、別の場所では

 

「痛ってーーー」

勇作たちがいた。

 

「大丈夫ですか。勇作さん」

腕を押さえながら歩く勇作を孔明が心配そうに声をかけた

 

「はい、なんとか・・・」

 

「すまぬ。高杉殿」

 

「良いですよ」

 

「(なぜだ!私はどうしてあんなことをしてしまった?)」

と関羽が考えていると

 

「どうしたんですか?鈴々ちゃん」

と孔明が鈴々に声をかけた

 

「なんか臭いにおいがするのだ」

 

「シャオじゃないわよ!!そりゃ、たしかにおやつで食べたお芋でちょっとおなかが張っているなと思っているけど・・・・絶対シャオじゃないからね!!」

 

「それじゃ・・・」

 

「私でもないぞ!断じて違うからな」

 

すると孔明がかすかに笑った

 

「皆さん、違いますよ。これは硫黄の匂いですよ」

 

「硫黄?」

 

「それじゃ・・・もしかして・・・」

 

「はい、きっと近くに温泉があるんですよ」

 

「(温泉か・・・でもその割には楽しそうな声が聞こえてこないのは、何でだろう?)」

 

勇作たちは温泉に向かうことになった

 

 

 

 

さっそく服脱いだ鈴々が飛び出した。その後を孫尚香が追いかけた

 

「一番乗りなのだ!!」

 

「ちょっと抜け駆けなんてずるいわよ。」

 

「何言っているのだぬけがけは戦場の花なのだ」

 

「ってここは温泉でしょ」

 

そういって二人は温泉に飛び込んだのだが

 

ゴッチーン!!

 

 

「「痛い(のだ!!)」」

 

何かをぶつける音がした

 

 

「どうしたのだ?」

 

「お湯が入ってないのだ・・・」

 

「どうなっているのよ!?」

 

なんと温泉は空になっていたのだ。すると隣の方から

 

「おーい。こっちもお湯が入ってないよ!」

と勇作が言った

 

「これでは湯につかれんな・・」

 

「風邪ひいちゃいますよ。」

 

すると

 

 

「あら・・・」

 

「お主は・・・・」

 

そこへ曹操、夏候惇、荀彧がやってきた

 

「どうしてこんなところへ・・・・」

 

「どうしてって温泉に入りにきたに決まっているじゃない」

 

「あっ・・・そうか・・」

 

「ところで関羽。相変わらず下もしっとりつやつやなのね」

 

「////////!?」

曹操の言葉に顔を赤くして、タオルで隠す関羽であった

 

 

隣では

 

「(あれ?何で曹操が居るんだ?・・・それにしても温泉に入れないとは・・・)」



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第三十四席 勇作、温泉を探すのこと

一行は茶店でくつろいでいた

 

「んもうー!?何よ、温泉にお湯がないなんてどういうこと!」

 

「しょうがないだろ。地元の人の話では半月ほど前に起こった地震の影響でほとんど湯がわき出さなくなったって言うんだから・・・」

 

「(それで聞こえなかったのか)」

 

「おかげでお尻にあざができちゃったわ」

 

「鈴々のお尻も真っ赤なのだ!!」

 

「しかし、これではせっかくの慰安旅行も台無しです。」

 

「そうね。久しぶりに温泉に入って疲れをいやそうと思ったのに・・・残念だわ」

 

「鈴々も温泉に入りたかったのだ」

 

「(そうだな・・・)」

 

一行は愚痴を言っていた・・・すると孔明が

 

「あの・・・みなさん、それでしたらだったら新しい温泉をさがしてみるのはどうでしょう?」

 

「新しい温泉を探す?」

 

「それってつまり他に温泉が湧き出る場所を探して掘ること?」

 

「はい、もちろん絶対見つかるとはいえませんがやってみる価値はあると思います」

 

「桂花、貴方はどう思う?」

 

「私も可能性はあると思います」

 

「(そう簡単に見つかるのかな?)」

 

「よーし!それじゃ温泉さがしに出発なのだ!!」

 

鈴々が温泉さがしを出発をかけようとしたとき

 

「ちょっと待ったー!!」

 

「なんなのだ?」

 

突然、孫尚香が待ったをかけた

 

 

「せっかく探すならシャオ達とあんた達、どっちが温泉掘り当てるか競争しない?」

 

「競争?」

 

驚く一行

 

「うむ・・・おもしろそうね」

 

「言っとくけどこれはただのお遊びじゃないわよ・・・もし、この競争でシャオ達が勝ったら、あんた達はシャオ様の家来になってもらうわ」

 

「なっ!貴様!」

 

孫尚香の一言に夏侯惇は怒り出し、立ち上がるが・・・

 

「春蘭・・・孫尚香とやら私達が負けたら家来になってあげるわ」

 

「なっ!」

 

「華琳様!?」

 

「ただし、私達が勝てば関羽と高杉は私の物になってもらうわ。いいわね?」

 

「え!?」

 

「はあ!」

 

「失礼ですが、華琳様!」

 

「どうしたの?桂花?」

 

「関羽はともかく、何故この男が欲しいのですか?」

と勇作を指さしながら言った

 

「そういえば貴方はまだ知らなかったわね」

 

「何のことですか?」

 

「彼は、春蘭を一撃で倒したことがあるのよ」

 

「え!?本当なの?」

 

「恥ずかしいが、その通りだ」

と隣に座っている勇作を見ながら言った

 

「信じられない・・・こんな奴が」

 

「何か、ひどい言いわれようだな」

 

「いいかしら?」

 

「わかったわ」

 

「っておい!!何を勝手に!?」

 

「よし!そうとわかれば出発よ!」

 

「はい」

 

「あ・・・いや・・その・・・え・・え・・えええええええ!?」

 

その一言を本気にした曹操一行に関羽は驚きを隠せなかったのであった

 

「(何でこんなことに)」

勇作も困惑していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳様、あんな約束してよろしかったのですか?」

 

「虎穴に入らずんば虎児を得ずよ、関羽や高杉ほどの豪傑を手に入れるためには多少の危険もやむを得ないわ」

 

「ですが、いくらなんでも、負けたりしたらあんな素性も知れない者の家臣になるなんて」

 

「私たちが、ただ勝てば良い話よ」

 

「それはそうですけど・・・」

 

それでも浮かない顔の夏候惇に曹操が・・・・

 

 

「どうしたの、春蘭、そんなに勝つ自信がない?」

 

「いえ、そういうわけでは・・・・・」

 

「それともヤキモチ?」

 

「なっ・・・・/////。何を・・・」

 

「心配しなくてもいいわ。例え関羽と高杉が配下になっても貴方のことはいつもどおりかわいがってやるわ。私の寝台が広いのは貴方も知っているでしょ・・・」

 

「華琳様・・私は・・・その・・・・」

 

「ふふ・・かわいいわよ春蘭」

 

それでも赤くなっている夏候惇をからかう曹操であった

 

 

 

「ところで桂花。もうだいぶ歩いているが本当にそれで温泉が見つられるのか?」

 

「もちろんです。疑似科学を集めた推移の方法は温泉はおろか土中に埋まっている土管でさえ見つけられる優れものなんです」

と見せたものは、ダウジングに使うものだった

 

 

 

 

そのころ、離れた森の中では袁紹一行が宝探しをしていた。袁紹はかなり疲れている状態であった。

 

 

「う~斗詩、なんだかさっきから同じところを歩いているような気がするけど・・・まさか道に迷っていないでしょうね」

 

「迷ってはいないと思いますけど、この地図あちこち虫食いだらけで、どうすれば印の場所に行けるのかいまいち、わからなくって・・・・・・」

 

「ちょっと、それじゃあ宝の在処へ行きつないんじゃありませんの!」

 

「あ~でもこの辺なのは間違いない・・・はずですけど・・・・」

 

言葉が小さくなっていくと、文醜が何かを見つけた。

 

 

「あっ、麗羽様、あれ、あれ・・・・」

 

「みつけたの?」

 

しかし、それは曹操一行であった

 

「げぇ、何よ、どうしてあの生意気小娘がなぜこんな所に?」

 

「あっ、もしかして、あいつらも宝を探しているんじゃ」

 

「あの小娘に。またしても私の邪魔を・・・」

 

曹操を見て怒り心頭の袁紹に文醜が言った

 

「麗羽様。見たところあの中で腕が立ちそうなのは夏侯惇一人。一か八か飛び出してあいつらをぶっ飛ばちゃいましょうか」

 

「待って猪々子。こっちには麗羽様がいるのよ」

 

「ああ、たしかに・・・」

 

「ちょっとお持ちなさい!!その言い方だとそれでは私が足手まといみたいじゃありませんの!!」

 

「みたいというか・・・・ずばりそのものというか・・・・」

 

「何ですってぇ!?」」

 

怒り心頭の袁紹を顔良が宥める

 

 

「麗羽様、落ち着いてください。とりあえずもう少し様子を見ましょう」

 

「様子を見たところでどうなりますの?」

 

「このまま曹操達の後を付けて、奴等が宝を見つけたら。隙を見て、横取りするんです!」

 

「なるほど・・・・・・。それはいい考えね」

 

「さっすが、智力32」

 

「むぅ。34よ」

 

こうして一行は曹操一行についていくことになった



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第三十五席 袁紹、温泉を掘り当てるのこと~あと修羅場もあるよ~

温泉をさがしあてると、一つの大きな石の前に反応した。

 

 

「あっここです」

 

「「え!?」」

 

「ここに間違いありません」

 

「じゃあ、この岩の下に温泉があるというのね・・・」

 

「それじゃ早速岩をどけて・・・」

 

「あっちょっと待って、のどが渇いたわ。さっき通り過ぎた小川で水を飲んでからにしましょう」

 

「何も今でなくても・・・」

 

「私も行きますね」

 

「じゃあ、私も」

曹操一行は岩から離れていたのであった。そして、その後を袁紹一行が見つけた

 

 

 

「どうやら見つけたようね」

 

「でも、あいつらいなくなっちゃいましよ」

 

「ぞろぞろ連れだってどこへ行ったのかしら?」

 

「厠じゃないっすか?あたい達もよく連れだって行くじゃないッスか」

 

「とにかく今のうちに宝をいただいちゃいましょう」

 

「そうですわね」

 

そして、袁紹一行は岩を持ちあげ始めた

 

 

「この下にお宝が・・・」

 

「これをどかせば・・・」

 

せーので岩をどかすことができた。宝を確認するために見たが・・・一同は絶句した。それは大量の虫であった

 

「「「いやあああああああああああああ!!!!!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、勇作達は

 

「ん?」

 

「どうした?孔明殿」

 

「いえ、何か聞こえた気がして・・・」

 

「(聞こえたな・・・曹操達じゃあないけど)」

 

温泉を掘り続けるが・・・孫尚香はさぼっていた

 

「ねぇー、温泉まだでないの?シャオ退屈」

 

「だったら少しは手伝ったらどうなのだ!」

 

「やだ、シャオはお姫様だからそんな汗臭いことはしないの」

 

「はあー」

 

「そういえば孔明、出かける前に村の人たちにいろいろと聞いて、地図に何かを書き込んだけど、あれってなんだったの?」

 

「温泉って、地脈と水脈の交わる地点に湧くことが多いんですけど。そう言う所には、よく怪異が起こると言われてるんです・・・例えば、変な雲がその上に一日中かかってるとか。怪しい光の柱が立ち上るとか、だから、村の人達にそういう言い伝えや体験談を聞いて、その場所に印を付けてたんです」

 

「へぇ。じゃあ、ここもそう言う所の一つって、わけね」

 

「はい」

 

「(へえーそうなんだ)」

 

一行は温泉を掘り続けるがなかなか見つからない。孫尚香も退屈であくびをした。すると・・・・

 

「あっ、ウサギ」

 

ウサギを見つけ追いかけ始めた

 

「おい、一人で遠くいっていると危ないぞ」

 

「こら、待て待て、待ってたら、おーい!!」

 

関羽の注意を聞かずに孫尚香は森の奥に入ってしまった。すると・・・

 

 

「ひゃあああああああああああああああああ!!!」

 

何かから逃げるように戻ってきた。すると・・・・

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

出てきたのは大きなクマであった。

 

「ヒィー、虎、虎!?」

 

「クマだ」

 

すると・・・・

 

 

「あっ、あれは蘭々!!」

 

「え!?」

 

「グオ?」

 

一同は驚き、クマも足を止めた。鈴々はクマに近づいた

 

 

「やっぱり、蘭々なのだ!!」

 

「おい、鈴々、蘭々って?」

 

「蘭々は昔、鈴々が飼っていたクマなのだ!!・・・・・・コグマの時からずっと一緒なのだ。でもじっちゃんが大人になったらもうお山に返してやれというから・・・泣く泣くお別れしたのだ・・・まさかこんな所で会えるなんて、感動の再会なのだ」

 

「(なんかこの映像が頭に浮かぶ)」

 

「いや、しかし、そのクマ、本当に昔飼っていたクマなのか?」

 

「もちろんなのだ。その証拠に蘭々はこっちの足の脇の下に白い房があって・・・・」

 

鈴々はクマの左前脚を上げた。そこには白い房が・・・・・・・なかった。そして、鈴々の顔が青ざめていく

 

 

「ないのだ・・・・どうやら・・クマ違いのようなのだ・・・・」

 

「おーーーい!(こうなったら、覇気使って・・・)」

と思った瞬間

 

「「「「うわあああああああああああああああああああ!!!???」」」

 

「ひええええええええええええええええええええええ!!!!!?????」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

クマに追いかけられてしまったのであった

 

「ちょっと関羽殿、そんなに腕を引っ張らないでーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

その後、何とか逃げ切った一行は座り込んでしまった

 

「たく何が感動の再会だ!!」

 

「よく似てたから・・・てっきり・・・・」

 

「てっきりじゃないわよ!!てっきりじゃ!!」

 

「しかし、闇雲に逃げてきたから。場所が分からなくなってしまったな」

 

「それじゃあ、地図で調べて見ますね」

 

そう言って、ポーチの中から地図を出して今の場所を確認する孔明であった

 

「あのー関羽殿?そろそろ離してくれませんか?」

 

「え!?」

勇作の声に反応して、見てみると、勇作の腕に思いっきり抱き着いていた。それもかなり密着いたので

 

「(む・・・胸が・・///ダイレクトに当たっている///)」

 

「っ!?す、すまぬ///」

 

「大丈夫です・・・(星が居なくなってこういうことはあまりなかったけど・・・久々に良かったかも・・・って何考えているんだ!?俺は!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、袁紹一行は宝探しを続けていた

 

 

「たく・・・・・いったい何なんでしたの!!」

 

「きっと罠ですよ。荀彧の罠」

 

「んー、あの猫耳軍師め。今度会ったらただじゃおきませんわ!!」

 

「腰がぬけるまでイカと玉ねぎを食わせてやりましょう」

 

「鮑の肝もいいですわね。」

 

「あと鼻先にミカンの皮を二つ折りというのも効きますよ。」

 

「あっ、麗羽様、猪々子。あれあれ・・・」

 

顔良が指差した先には地図調べている勇作一行であった

 

「どうやら、あの者達も宝探しに来たみたいですね」

 

「麗羽様。あの者達の地図見た所、虫食いもありませんしあれなら宝の在処が分かるかも・・・・」

 

「いただいちゃいましょう!!」

 

「そうね」

 

勘違いした袁紹一行は・・・・

 

 

「「きゃあ!!」」

 

 

孫尚香の悲鳴が聞こえた同時に四人が振り向くとそこには孫尚香を人質に取った袁紹一行の姿であった

 

 

「おっほほほ!!」

 

「何するのよ!!」

 

「ええい、うるさい!!」

 

「あっ、お前はあの時の知力24!!」

 

「34よ!!」

 

「けっこうこだわるんだな・・・・」

 

「えええい、そんなことはどうでもいいですわ!!貴方達の持っているその地図を私にお渡しなさい!!」

 

「誰だよお前達!?」

 

「あら、この名族袁紹を知らないとは、とんだ田舎者ですわね」

 

「ちなみにあたいは文醜」

 

「私は顔良」

 

「(え!?袁紹、文醜、顔良だと!?)」

 

「早くお渡しなさい。でないとでないとこの小娘たちがどんな目にあうのか?」

 

もっとも悪党らしい言い方をする袁紹一行であるが・・・

 

 

「べつにどうなってもいいのだ!!」

 

鈴々のズッバとした一言に関羽と孔明と勇作はずっこけた

 

「ちょっと待ちなさいよ!!どうなってもいいってどういうことよ!!」

 

「そうだぞ。そんなこと言ったらこいつを人質に取ったこっちの立場はないだろ!!」

 

「立場がないのはこっちのほうよ!!」

 

「そうだぞ、鈴々。気持ちはわからんでもないが相手にも立場が・・・」

 

「そうですよ。いくら何でも面と向かって本当言うのはよくないと思います」

 

「酷い言いようだな・・・・・・ん?」

 

「あんた達ね!!」

 

一行に酷い言い方をされた孫尚香が怒りだそうとするが・・・

 

 

「あれ?どうしたのよ?」

 

「あっ・・・・いや・・・後ろ、後ろ」

 

顔を青ざめた3人は後ろへと下がり始めた

 

「おっほほほほ、後ろだなんてそう言って、こちらが振り向いた隙に人質を取り返そうという作戦なんですけど、そんな手に引っ掛かると思うのかしら・・・おっほほほ・・・ほ」

 

「「「え!?」」」

 

袁紹は高笑いをしながら人質を確認するが、何かを見て硬直する。そして、四人も後ろを振り向いた。そこには・・・・

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

「「「「クマ!!!!????」」」」

 

袁紹一行はそのままクマに追いかけられてしまった。孫尚香はその隙を見て、関羽一行と合流してほっと一息をした

 

「おーい、そっちは危ないぞ!」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

「「「いやぁー、来ないで!?」」」

 

クマに追われる袁紹一行。ずっと逃げ続けているが、茂みに入った。しかし、そこは・・・崖であった

 

「「「うわあああああああああああああああああああ!!!!!??」」」

 

 

 

 

 

 

袁紹が目覚めるとそこには輝かしい川辺であった。そして、その先には一人の人物が見えた

 

「まあ、あれは私が幼い時に亡くなったお婆様・・・お婆様が私を呼んでいる・・・お婆様」

 

袁紹は川を渡ろうとするが何かに引っ張られてしまった。何とか渡ろうとする袁紹であったが、結局、引っ張られてしまった

 

 

 

 

袁紹が目覚めると涙目になっている二枚看板の姿があった。

 

 

「よかった。気がつかれたんですね。」

 

「麗羽様!!」

 

「ここは・・・」

 

そこは川辺であった。

 

 

「麗羽様!!つねってもひっぱ叩いてもうんともすんとも言わないから死んじゃったと思いましたよ!!びえええええええええええええん!!!!!」

 

袁紹に泣きじゃくる文醜。それにつられて泣きだす顔良

 

「猪々子、斗詩(二人とも私達のことをこんなに心配してわざわざこんなところまで探しに行かなくても本当の宝は近くにあったかも)」

 

その後

 

「さあ、猪々子、斗詩、帰りましょうか」

 

「え!?でも宝は・・・」

 

「もういいんですのよ(だって私にとって宝なんかより素晴らしいものがあったんですのよ)」

 

しかし、次の瞬間、袁紹は岩で足を滑らせてしまった。その際に支えになった岩が崩れた。

 

「「「はははは」」」

 

一行は苦笑いをするが、次の瞬間、足元から大量のお湯が出てきた。一行は驚き、尻もちをついた

 

 

「暖かい」

 

「これって・・・・温泉?」

 

見事温泉を掘り当てたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、関羽一行、曹操一行、袁紹一行は温泉に入っていた。勇作も居るが目隠しをして足湯状態で温泉に入っている

 

「いいですこと?この温泉は私達が見つけたんですからね。ちゃんと感謝してはいってくださいましね」

 

袁紹一行は自信まんまに温泉につかっていると

 

「ふん、見つけたといっても偶然でしょ」

 

「あーらー、そこの貧乳小娘がなんか言ったみたいですけど・・・斗詩、聞こえまして?」

 

「ええ、何かひがみっぽいこと言いましたけど、胸が小さいと心もせまくなるでしょうかね?」

 

袁紹と顔良に嫌みを言われて、そっぽを向く曹操

 

「それにしても服を脱いでの勝負は我々の圧倒の様ね」

 

「むむ~」

 

「はい、まあ猪々子はおまけみたいですけど・・・」

 

「え!?」

 

「物量なら圧倒的かと・・・・」

 

と胸を自信まんまにしている袁紹一行だが・・・・

 

 

「量だけで質を問わないとは・・・・・・。いかにも、いくさベタな袁紹軍らしいこと」

 

「何ですってぇ!?」

 

「本当の事を言ったまでですわ。それとも無駄な胸の脂肪に栄養を取られて、回転の悪くなった頭では理解出来ないのかしらぁ~~」

 

袁紹が切れて、立ち上がり、口論となる

 

 

「胸が大きいと頭が悪いなんてとんでもない俗説ですわ!!」

 

「そうだぞ。それでは私も頭が悪いということになってしまうではないか!!」

 

「って春蘭はどっちの味方なんですか?」

 

「ちょっと仲間割れはよしなさい!!」

 

「そもそも胸の優劣を大きさでつけること自体間違いなんです!!もっと色とか形とか・・・・感度とか・・・・////」

 

すると孫尚香が

 

「あら、感度ならシャオのほうが上よ」

 

「それならあたいだって!!」

 

「いえ、感度なら華琳様が一番です。そうですよね、華琳様?」

 

「そ・・・それは・・・その・・・・」

 

「だったら誰が一番か試してみましょう!」

 

胸のことで大騒ぎとなった。関羽は鈴々と孔明の眼を隠していた

 

「み、見るんじゃないぞ。これは子供も見るもではない」

 

「(聞いてたらおかしくなってくる)」

と勇作が思っていると

 

「そうですわ!こうなったら貴方に決めてもらいましょうか!」

 

「!?」

 

「ちょっと待ちなさいよ!男に見られたら妊娠しちゃうわよ」

 

「あーらー負けるのが怖いのですか?」

 

「というかなぜ高杉がここに居るのだ?」

と夏候惇が聞いた

 

「私のことを知らなかったようですから、知るために連れてきたの」

 

「無理やりね」

 

「さあ、目隠しをとってください」

 

「断る!?」

とその時

 

「そこまでだ!!」

 

「(この声は)」

一同は振り向くとそこには全裸の仮面少女の姿が見えた

 

「乱世の中で力を合わせなければならぬ者たちがこのことで仲間割れするとは・・嘆かわしい」

 

「そういう貴方は何ですの?」

 

「私か・・・私はその名を」

 

「変態仮面なのだ!!」

 

鈴々に変態仮面扱いされてしまった

 

「変態仮面ではない!!華蝶仮面だ!!」

 

「いや・・それでは変態仮面にしか見えないのでは・・・・」

 

関羽に指摘された華蝶仮面は・・・

 

「まあ、それはそうとして・・・」

と華蝶仮面は温泉に入り

 

「高杉殿!」

と言い勇作に飛びついた。

 

「!?」

しかも、そのまま胸に顔を埋める形で

 

「き、貴様何をしている!?」

と顔を真っ赤にしながら叫ぶ関羽

 

「何とは・・・」

 

「んーーんーーー」

 

「あっ!高杉殿・・・」

 

「(変な声を出すな!?・・・服着ていないから、ダイレクトに胸の感触が・・・柔らかくて、温かくて、すごく良い・・・・・・って違う!?)」

 

「・・・・・・・」

 

「何か、愛紗凄く怖いのだ」

 

「はわわ!?」

 

「はなしぇ!」

と何とか抜け出した・・・が

 

「あら!?」

 

石に躓き倒れそうになり、手を伸ばした・・・が

 

ムニッ

 

左手に柔らかい感触を感じた

 

「(何だこの感触は?)」

目隠しをしていて、分からなかった

 

「ちょっと何私の胸を触っているですか!?」

 

「(え!?これ袁紹の!)ごめんなさい!」

慌てて、手を放した・・・・・・が

 

ムニッ

 

また左手に柔らかい感触

 

「(へっ!?)」

 

「「ああああああ!?」」

 

「!?」

 

「貴様!?華琳様の胸を触るとはどういうことだ!?」

 

「離しなさい!?変態!?」

 

「(今度は曹操かよ!?)・・・・・・・何だ袁紹より大きいような?」

 

「!?」

 

「なっ!?」

勇作の言葉に驚く、一行

 

「ちょっと待ちなさい!?何ですの今の!?」

 

「あら、私の方が大きいようよ」

 

「どう見たって私の方が大きいわよ!?」

 

「というより、早く離れろ!?」

 

「わあ。ごめんなさい!」

手を離し、後ろに下がった

 

ドン

 

と何かに当たった

 

「な、何だ?」

 

「たーかーすーぎーどーの!」

 

「か、関羽殿!?」

 

「随分とお楽しみなりましたね・・・」

 

「な、何か怖い」

 

「覚悟は良いですか」

 

「ちょっと待って!?」

 

「問答無用!?」

 

「わあああ」

殴られ覚悟で、覇気を纏ったが

 

「・・・え?」

関羽は勇作の両手を掴み、自分の胸に押し当てた

 

「か、関羽殿!?」

 

「・・・ずるいです。私にもしてくれても良いのに・・・」

 

「(何かいつもの関羽と違う!?)」

 

「ずるいー!鈴々にもしてー」

 

「はわわ!だ、だめでしゅ!鈴々ちゃん」

 

「こんな貧乳小娘に負けるわけありませんわ!?もう一度、確かめてなさい」

 

「あら、何度やっても同じよ。・・・高杉、さっきの御礼にまた触っても良いわよ」

 

「か、華琳様ーー!?」

 

「うらやましいー///」

 

「俺、どうすればいいんだよ!」

 

「面白くなってきたが、私は退散する・・・諸君・・・・さらばだ!!」

と華蝶仮面は去って行った

 

「逃げるなーーーーーーーーーー!?」

 

 

勇作の声が響いた

 

 

 

 

 

ところで肝心の宝は・・・・

 

 

「グオ?」

 

クマの洞窟にあったのであった



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第三十六席 勇作、江東に着くのこと

ここは孫尚香の故郷である江東

 

その城の中でピンク色の髪をした褐色肌の少女が走っていた。

 

「姉様!!」

 

王室に入ると、そこにいた3人の姿を見て少女は顔を赤くして、頭を下げた

 

「ご無事のご帰還、なによりでございます!!」

 

「蓮華、今更かしこまることはないわ」

 

「申し訳ありません、姉様が戦場で怪我をされたと聞いたので、慌ててしまって・・・」

 

「怪我といってもかすり傷よ」

 

「それなら、良いのですが・・・」

 

「どうした?蓮華?何か言いたそうだな?」

 

「っ!・・・・・・姉様!姉様はどうして、そうまでして戦いを好まれるのですか!?」

 

「!?」

 

突然の言葉に驚く3人

 

「孫権、何言い出すのです!!孫策は此度も我が孫家の名を高めんとして・・・・」

 

「たしかに戦いを重ねることで領地は増え、孫家の名を近隣まで響くまでになりました・・・しかし、国の礎である民は疲弊して、このままでは遠からず・・・」

 

「滅びるか?」

 

「いえ・・・・けしてそうは・・・・」

 

場が静かになっていくと・・・・・そこへ

 

「みなさん、お待たせしました。宴会の用意ができ・・・・・・たんですけど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、場所は変わって宴会場では

 

 

「はーい、江東一の美少女・双子の・・・・・」

 

「大喬と・・・・」

 

「小喬が・・・・」

 

「「歌いまーす!!」」

 

「「「うおおおおおおおお」」」

 

 

 

 

宴会場では華やかに始まっていた。外では一人女の子が夜空を眺めていた。すると

 

 

「なんだ、こんなところにいたのね」

 

「孫策様・・・」

孫策がやってきた

 

「冥琳。二人の時は真名で呼び合うって約束でしょ?」

 

「そうでしたわね、雪蓮さま」

 

「あまり浮かない顔してどうしたの?孫家を支える名軍師周喩とあろう者が何に頭を悩ませているのかしら・・・」

 

「孫権さまのことを少し考えていて・・・」

 

「蓮華のこと?」

 

「孫権さまはあまりに眼の前のことが見られておられない。たしかにここ数年、戦続きで領民たちは疲弊しています。だからと言ってここで立ち止まっていれば、江東に覇を唱えることができても・・・ここで止まってしまう・・・・とうてい天下へは届かない。どれだけ苦しくても明日のために戦わなければならない。なのに孫権さまは・・・」

 

「たしかにそうね・・・でもそれがあの子のいいところでもあるわ」

 

孫策の言葉に周喩は疑問に思った

 

「江東の虎と呼ばれた今は亡き母様、先代孫堅の意思を継いで私が血まみれになって奪い取ったものをあの子なら受け継いで、守り育ててくれる。そんな気がするの・・・」

 

「何を不吉な!?」

 

「えぇ!不吉?」

 

「そうです!!それではまるで雪蓮さまが志半ばで倒れてしまうようではないですか!」

 

「ふふふ、冥琳!いくらなんでもそれは考えすぎよ」

 

「で、ですが雪蓮さま」

 

「まったく、頭がよすぎるのも考えものね。」

 

それでも浮かない顔を見せる周喩に孫策は

 

「心配しなくてもいいわ。私は必ず天下をこの手につかんで見せる!蓮華に渡すのはその後よ」

 

「雪蓮さま」

 

「冥琳。志遂げるその時まで私と共に歩んでくれるわよね?」

 

「はい」

周喩もうなづいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは重役達が集まっている場所。ここでは重役達が会議を行っていた

 

 

「えーい、戦、戦、戦。これで今年何度目だ!?」

 

「まったくだ!!これでは民が田を耕す暇もないぞ!!」

 

「張昭殿、貴方は我らの中では一番の長老。なんとかお諫めさせることはできぬのか?」

 

そして、中央に座っている張昭は

 

「なんども申し上げておる。だが、孫策さまは今では周喩のほうを重く持ち上げられて、私の甘言など耳を貸さぬ!!」

 

「周喩か、あの嘴黄色い軍師め!!」

 

「我ら普代な重臣を差し置いて、政事を左右するとはおごがましい!!」

 

「張昭殿、かくなるうえは一刻もあの計画を・・・」

 

「うむ、すでに手はずは整っておる・・・」

 

「おお、それではついに・・・」

 

「戦狂いの孫策を倒し、あの方が孫家の舵取りなれば、必ずは我らが表部隊に立つ時が来る」

 

「事がなった時の周喩供の泣き面を早く見たいものですな」

 

重役達は笑いが止まらなかった。それをみた張昭はニヤリと静かに笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁー、これが長江か!!でっかいのだー!!」

 

勇作一行は孫尚香のふるさとである長江へとやってきた。長江の大きさに感激した鈴々。

 

「(確かにデカいな。これ本当に川なのか。unbelievable(アンビリバボー)だぜ)」

 

「どう驚いた凄いでしょ」

 

「たしかにすごいけど・・・別にお前が威張ることはないのだ。」

 

「あー、この景色を見ると『帰ってきたー!!』って気になるわね」

 

「『帰ってきたー!!』はいいが大丈夫か?尚香」

 

「何が?」

関羽の問いに孫尚香が首をかしげる

 

「お主、家出したのであろう?旅に飽きて、戻るになったのはいいが家族から大目玉を食らうのではないか?」

 

「何言っているの?このシャオさまは孫家で一番、愛されている姫なのよ!!帰ってきて泣いて喜ばれはしても、怒られることなんて絶対にないわよ」

 

「そうだと良いけど・・・」

 

「そうですね。高杉・・・殿///」

勇作の名前を呼ぶと、顔を赤くする関羽

 

「(はーまたか)」

温泉での騒動があったばかりに、二人はほとんど口をきいていない。勇作が呼びかけても、関羽は顔を赤くするだけ。今は何とか会話はしているが

 

「(恥ずかしい///何故私はあんなことをしてしまったのだ!!)」

 

「(あの時はマジでヤバかったな。これも師匠といた影響だったかな?関羽殿とはあまり会話してないし・・・どうすればいいんだ)」

 

二人はこの調子だった

 

 

 

 

 

 

 

「まったく!!貴方は何を考えているのですか!!孫家の姫達が供を連れずにいなくなるなんて、皆がどれほど心配したかと・・」

 

「あの・・・孫静叔母さま・・・・それについてはシャオにもに言い分が・・・・」

 

「そんなものはありません!!だいたい貴方達は・・・」

 

見事に怒られているのであった。そして孫家をみた勇作一行は円をつくって話した

 

「皆、おへそを出しているのだ」

 

「皆じゃないぞ鈴々。けど多いな」

 

「うむ、おそらくはこの家の家風かなのだろう」

 

「別に尚香さんが残念な子だなのではなかったのですね」

 

勇作たちが話していると

 

「伯母上、もうそのくらいで・・・」

 

「ですけど、孫策」

 

「それ以上叱りつけたらまた家出をしかねませんぞ」

 

 

孫策の説得に孫静は説教を辞める

 

「関羽とやら、妹がずいぶんと迷惑をかけたようね」

 

「大迷惑なのだ!!」

 

「こら、鈴々!!」

 

「でしょうね。同情するわ」

 

「雪蓮お姉様、ひっどーい」

 

一同は笑っていた

 

「関羽、張飛、孔明・・・それと貴方は」

 

「高杉ですけど・・・」

 

「ふーん」

と孫策は勇作に近ずいていき、勇作の顔を見つめていた

 

「・・・・・・・」

 

「あのー何か」

 

「別に・・・・・とりあえず江東の孫家はあなた方を歓迎するわ。ゆっくりしていってちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

その夜、関羽はうなされていた

 

『今すぐ。寝台の下に隠れろ!早くしろ!?』

 

『目を瞑ってじっとしていろ』

 

ドサ

 

 

 

「!?、夢か・・・しかし今になってあんな夢・・・・しかもまだ胸が苦しい・・・・」

 

関羽は自分の上を見ると寝ぼけた鈴々がいた

 

「うにゃーこのマグロまんは鈴々が食べるのだ」

 

「・・・って・・・お前が原因か!?」



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第三十七席 孫策、命を狙われるのこと

翌日。孫策はテラスでくつろいでいた

 

「うーん!!」

 

そこへ周喩がやってきた

 

「まだ、眠そうね」

 

「昨夜はちょっと飲みすぎたから」

 

「関羽殿とかなり話が弾んでいたそうですが」

 

「ええ、かなり腕も立つようだし、あのまま野においていくのは惜しいわ。ふふ・・・それにあの張飛も面白いわね。もしあれ以上、大きくならないのなら庭で飼いたいくらい・・・」

 

雪蓮の頭の中には庭で飼われている鈴々がいた

 

『ワンワンなのだ』

 

「ふふ・・・お戯れを・・・」

 

「で、その客人達は起きているの?」

 

「はい。既に朝食を済まされ、関羽殿と張飛殿は尚香さまと山の狩り場へ・・・」

 

二人は山の方を見た

 

「誰かつけてあるの?」

 

「案内役として甘寧を・・・」

 

「そう、ならいいわ」

 

「孔明殿は書庫を見たいと申されたので、陸遜が案内をやっています」

 

「ふーん」

 

「あと高杉殿は城の中を見たいと言っていたので、孫権さまが案内をしています」

 

「へー蓮華が・・・ね」

 

「随分とあの男を気にしているようだが・・・」

 

「まあ、良い男だと思うけど、あまり強く無さそうだったわ」

 

「そうですか」

 

「冥琳・・・もしかして妬いているの?」

 

「妬いていません」

 

 

 

 

書庫では孔明と陸遜がいた

 

「うわぁー、こんなにたくさんの書物、始めて見ました」

 

「政や軍略に関する物はもちろん、農工、天文、史書、暦、あらゆる書物がここに集められているのです」

 

「もしかして陸孫さんはこれを全部読まれたのですか?」

 

「ええ、私、書物が大好きなんです」

 

「私もです。」

 

すると陸遜の様子がおかしくなった。

 

「書物っていいものですね。読むと新しい知識が波のように押し寄せてきて、それが体の一番、深い所に体を喜ばす魅力ときたら、あっは~ん!!」

 

陸遜は興奮状態となって、モジモジしていた

 

 

「いえ、私は、そういうのとはちょっと違うんですけど・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、山の狩り場では関羽と鈴々が孫尚香と一緒に狩りに出かけていた。案内役として、甘寧も一緒である

 

「しっ」

すると孫尚香一行を止めた。そして、弓を構え始めた。すると茂みから一羽の山鳥が現れた。そして、矢を放つと山鳥に当たり、墜落した

 

「おおお・・・」

 

「お見事です。尚香様・・・獲物は私が」

 

そういうと甘寧は獲物が落ちたほうへ行った

 

「頼むわ。甘寧・・・この前会った黄忠ほどじゃないけど弓にはちょっと自信があるのよね」

 

すると鈴々が・・・

 

「ふん、薄い胸張って威張っても全然かっこがつかないのだ!!」

 

「ちょっと、薄い胸とはなによ!!アンタのほうがよっぽどのつるぺったんのお子ちゃま体型じゃない!!」

 

「温泉の時見たけど、お前のだって鈴々とたいして変わらないのだ!!」

 

「言ったわね!!変わるか変わらないか勝負しようじゃない!!」

 

「望むところなのだ!!」

 

鈴々と孫尚香は睨み始めた

 

「って何をくだらないことを・・・」

 

「くだらなくないのだ!!」

 

「そうよ!!おっぱい勝ち組は黙ってて!!」

 

「いや・・・勝ち組って・・・・///////」

 

関羽は自分の胸を隠した。すると

 

「張飛、あそこで乳比べよ!!」

 

「わかったのだ!!」

 

そして、茂みに入ると・・・・

 

「大きさ、形、感度の三番勝負だからね!!」

 

鈴々と尚香は服を脱ぎ始めた

 

「はあ」

関羽はため息をした

 

「山鳥でも探すか・・・」

と歩くと、城のテラスでくつろいでいる孫策と周喩がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、勇作は

 

「広いなー、迷子になりそうだ」

城の中を見ていた。案内として孫権がいた

 

「城の中を見たのは初めてですか?」

 

「ああ。こんなに広いとは思いませんでした」

 

「そうですか・・・」

 

「孫権殿」

 

「如何しました?」

 

「暗い顔してますけど、どうしました?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

「・・・・・・・嘘ですね!」

 

「・・・・・・」

 

「何か悩んでいませんか?」

 

「!?」

と孫権は驚いた表情をした

 

「あの孫権ど・・・」

と言おうとした時

 

「孫権さま!?」

と一人の兵士が走ってきた

 

「どうした?」

 

「実は・・・」

 

「それは本当か!」

 

「はい」

と孫権は走り去っていった

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「周喩!!」

 

「孫権さま」

と来たのは、孫策と周喩がいたテラスだった

 

「姉様が襲われたって本当なの!?」

 

「残念ながら・・・昼前、ここでくつろいでいられたときに、矢を射かけられて・・・」

 

「矢を・・・!?」

 

孫権は先ほど関羽がいた山のほうをみた

 

「それで姉様の容体は?」

 

「矢傷は浅いのですが矢じりに毒が塗ってあって、傷口からすぐに毒を吸い出して、何とか一命を取り留めたのですが・・意識は今だ戻られず・・・」

 

「そんな・・・姉様・・・」

とそこに勇作が来た

 

「(事件でも起きたのか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大量!大量!・・・今日のお昼は牡丹鍋にするのだ」

と狩りに出ていた関羽たちが戻ってきた。すると

 

「関羽!張飛!お前達の身柄を拘束する」

 

関羽達は兵に囲まれ、兵の一人が関羽に剣を突きつけられた

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

王間の中には孫権、甘寧、周瑜、鈴々、孫尚香、勇作そして手枷をかけられた関羽がいた。すると孔明が慌てて、入ってきた

 

「関羽さん!!何があったんですか!?」

 

今までのことを聞いた孔明は驚いた

 

「関羽さんが孫策さんを暗殺しようとした!?・・・何かの間違いです!!関羽さんがそんな事をするなんて、絶対あり得ません!!証拠は・・・証拠はあるのですか?」

 

孔明の問いに孫権は答えた

 

「証拠はない・・・」

 

「それならなぜ!?」

 

「確たる証拠はないが、姉さまがいたところに矢を射かけるにはあの山の狩り場が絶好の場所なのだ!!姉さまが矢を受けた正にその時、そんなところ素性も知らない旅の武芸者がいたのだ。疑われるのは当り前であろう」

 

孫権の推理に孔明は納得しなかった

 

「当たり前じゃありません!!たしか狩り場には御家中の方が案内役として付いていたのでは?」

 

「ついてはいたが、ずっと一緒だったのではないと甘寧は言っている」

 

「孫策さまが矢を受けられたと思しき頃、私は尚香さまが射かけた獲物を捕りに、関羽殿の下から離れました」

 

「それなら尚香さんが近くに・・」

 

「ちょうどその頃、シャオは張飛と一緒、関羽の近くにはいなくって・・・」

 

孫尚香も申し訳なさそうに言った

 

「けどだからって愛紗を疑うのはおかしいのだ!!」

 

「そうです。おかしいです!!甘寧さん、貴方は獲物を拾いに行くために関羽さんのもとを離れたといいましたよね?」

 

「いかにもそう言ったが・・・」

 

「ということは、孫策さんが射られたとき、甘寧さんも山の狩り場にはお一人だったということですね」

 

それを聞いた甘寧の表情が変わり、孔明を睨みつけた

 

「貴様、何が言いたい?」

 

「なるほど、一人で狩場にいた関羽殿が怪しいのなら、同じく一人でいた甘寧殿も怪しいということか・・・」

と勇作が言った

 

「な?!ふ、ふざけるな!?私は孫家に仕える身だぞ!!そんな私が孫策さまの暗殺をたくらむなど!!」

 

「孫家に仕える身だからこそじゃないんですか?毎日のように顔を合わせる主君と臣下であればこそ、日々の軋轢、考えの違い、利害の不一致・・・。相手を殺してやりたいと思う可能性は、孫家とは何の関わりの無い旅の武芸者より、ずっと高い筈。違いますか?」

 

「言わせておけば・・・この小娘が!?」

孔明の問いに完全に切れ、甘寧は兵士から剣を奪い取り

 

「ああ!?」

驚く関羽と鈴々

 

「ひっ!?」

目を瞑る孫尚香

 

シャキ

 

孔明に向けた

 

「武人をそこまで辱めてただで済むと思うなよ」

 

「甘寧さん!!貴方が誇り高き武人なら関羽さんだって同じです!!それを確たる証拠もなくて疑って、こんな恥辱を与えることなど、それこそただではすまないことですよ!!」

 

「くっ!」

孔明の言葉に動揺しつつも武器を治めようとはしない甘寧。すると

 

「はっ」

 

ガチン

 

と甘寧が持っていた剣を勇作は蹴り、上に弾き飛ばした

 

「!?」

 

「なっ!」

 

突然のことに皆、驚いた。そして落ちてきた剣を掴み、甘寧に向けた

 

「高杉さん」

 

「孔明の言っている事も分からないのか!このminnow!(ミノウ)」

 

「何だと?」

 

「この雑魚がって言ったんだよ」

 

「き、貴様!」

 

「そこまでだ!?」

と周瑜の声が響いた

 

「すまぬが剣を引いてくれ」

と勇作は剣を引いた

 

「孫権さま、どうやらいささか勇み足だったようですね。孫策さまが倒れられて動揺しているのはわかりますが、こんな時だからこそ冷静に物事を判断し、皆を率いるのが上に立つ者としての務め。そうではないか?」

 

それを聞いた孫権は

 

「そうだな、周瑜。お主の言う通りだ」

 

関羽の手枷を外したのであった。

 

 

「関羽殿、すまなかった」

 

「いえ、わかっていただければ・・・それで・・・」

 

すると

 

フラフラ~

 

突然、孔明が目を回して倒れてしまった

 

「うわああ!?大丈夫ですか?孔明さん」

 

「はわわ~ちょっと頑張りすぎちゃいました」

 

「はあ・・・これ返します」

と俺は剣を甘寧に返した

 

「・・・・・・・・・」

甘寧は勇作を睨みつけながらも剣を受け取った

 

「(何かありそうだな・・・この事件)」



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第三十八席 勇作、事件の真実を知るのこと

その夜、孫権は孫策の無事を祈っていた

 

 

「姉様・・・」

 

すると部屋に孫静が入ってきた

 

「孫権、まだ起きていたのですか?」

 

「叔母上」

 

「孫策の容態が気になるのはわかりますが、そんなことでは貴方の方が参ってしまうのですよ」

 

すると二蕎が慌てて、部屋へ入ってきた。

 

 

「「孫権様、あっ・・・・孫静様!?」」

 

「どうしたのです?こんな夜更けに」

 

「まさか、姉様が!?」

 

「いえ、その逆です。孫策さまのご容体は持ち直しました」

 

「まだ意識がもうろうとしていますが、医者は峠を越したと・・・」

 

「よかった・・・姉様・・・本当によかった・・・」

 

「しばらくは絶対安静ですが、熱が引けば会って話してもいいと・・・」

 

無事を知った孫権は泣き崩れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは孫策の部屋である。そんな・・・中で何者が侵入してきた。そして、近づくと針を取り出した。すると・・・

 

 

「なるほど、その針の先端に毒が塗ってあるというわけですか・・・ようやっと尻尾を出しましたね・・・・・・・叔母上」

 

孫策が目覚めた。そして、孫静がいた

 

「私の容態が回復したと聞いて、お忘れになれましたかな?」

 

「孫策・・・そなた・・・」

 

「死にかけていたのではなかったのかですか?・・・叔母上が私のやり方を快く思われていないのはわかっていましたが、まさか、命まで取ろうとするとは・・・乱世とはいえ嘆かわしい限りです」

 

さらにそこへ周喩と兵達がやってきた

 

「孫静さま、恐れながら反逆の罪でお身柄を拘束させていただきます」

 

「周喩、これは全て貴様の企みか!?」

 

「ご想像にお任せします」

 

兵に拘束された孫静は・・・・

 

「孫策、そなたのやり方は間違っておる!!どれだけ多くの物を得ようとも、そのために流されたおびただしい血がいつか孫家に綽名すこととなろう!」

 

「母上の意思を継ぎ、覇道を歩む決めた時からそれは承知の上です!ですが伯母上、たとえどれだけ血を流そうとも私には手に入れたいものがあるのです!!」

 

「っ!?」

 

「連れて行け」

 

「はっ!?」

 

 

 

 

 

とある部屋

 

「そうか、終わったか」

 

「はい。すべて全て滞りなく」

 

重役の一人である張昭と周喩がいた

 

「あとはこれに名を連ねた者たちの始末じゃな。こたびに際し作った連判状じゃ。反逆の揺るがぬ証拠となるじゃろう」

 

張昭は反逆者側にわざと入っていてのであった

 

「しかし、関羽とかと申す者には悪いことをしてたの」

 

「あの時、偶然あそこに居たのが身の不運と申せましょうが、まさか孫権さまが本当はいもしない暗殺の下手人を捕まえるとは・・・想定外でした」

 

「名軍師だの智謀の師だの言われても、神でならぬ身である以上全てを見通すことはできぬか」

 

「恐れいります」

 

 

 

 

 

 

「(なるほど)」

別の場所で、勇作はすべてのことを見聞色の覇気を使い聞いていた

 

「(何かあると思えばこういう事だったのか・・・身の不運だけでは済まされないだろう。問いただしたいけど、軍師相手に勝てないし、この力を言っても信じてもらえないし良いか・・・けどこれが乱世なのかな・・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「このたび、妹の早とちりで迷惑をかけてしまいすいませんでした」

と孫策が頭を下げた

 

「いえ、気にしなくても」

 

一同は王座の間に居た

 

「関羽殿・・・」

 

すると、孫権が関羽に語りかけた

 

「こたびのこと、そなたには何とお詫びしてよい事やら・・・・・」

 

「何度も申しあげましたように、そのことはもう・・・」

 

「あの時、私はどうかしていたのだ。すっかり気が動転して、何の罪もないそなたを疑いをかけてしまった・・・まったく、人の上に立つ者としてあるまじき行為だ」

 

「過ちを改めらず、すなわちこれを過ちという。人間だれしも過ちを起こすことがあるものです。過ちを犯した後、それに気づいて謝罪して、反省して、同じ過ちを繰り返すまいとする。それができる貴方は人の上に立つ者としての資質は十分あると私は思います」

 

「関羽殿・・・・」

 

関羽の言葉に涙ぐむ、孫権

 

「さて、そろそろ行きますかね」

 

「そうですね。高杉殿」

と帰ろうとした時

 

「ちょっと待て!?」

と甘寧が叫んだ

 

「どうした!甘寧!?」

突然のことに皆、驚き周喩が声をかけた

 

「貴様!私と勝負しろ」

と勇作に向かって言った

 

「はあ?」

 

「甘寧、いったいどういうつもり?」

と孫策が聞いた

 

「孫策さま、ご無礼をお許しください。こいつは私のことを雑魚呼ばわりしました。私はそれが許せないのです!」

 

「高杉殿、どういう事ですか?」

と周喩が聞いた

 

「あ・・・あの時ね。たしかに呼んだよ・・・けど何で勝負?あの時剣を飛ばしたけど・・・」

 

「あれは偶然だ!私が油断してたからだ!」

 

「・・・・・・・・・哀れだな」

 

「なんだと!?」

 

「アンタも武人なら戦わずとも相手の力量を見抜けるはずだ。それでも戦うなんて哀れだと思ったんだよ」

 

「き、貴様!」

 

「落ち着きなさい、甘寧・・・高杉、貴方が武にどれほどの自信があるかわからないけど、甘寧は孫家でかなりの武を持っているのよ。それを雑魚と呼ぶなんていくら客人の貴方でも許さないわよ!?」

と孫策が言った

 

「私でも貴方の今の言葉は許さない・・・取り消しなさい!?」

と孫権が言う

 

「シャオも許せないわよ!」

と尚香も言う。そして王座の間にいた孫家の武官、文官が全員、勇作を睨んでいた

 

「(ちょっと言い過ぎたかな・・・けどなんかちょっと羨ましいな)」

と心の中で思う勇作

 

「高杉殿」

 

「お兄ちゃん」

 

「高杉さん」

 

「・・・・・・甘寧殿」

 

「何だ」

 

「貴方との勝負!受けて立ちます!」

 

「なら、場所を変えるわ」

と孫策が言い放った

 

「(絶対に負けん!?)」

と心の中で思う甘寧であった



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第三十九席 勇作、甘寧と一騎討ちするのこと☆

此処は孫呉のとある広場、なぜこんな所に居るかというと

 

「・・・・・・・」

俺の目の前にいるのか殺気に満ちた甘寧がいる。俺はこれから一騎討ちをするためだ

 

「あのひとつ良いか」

 

「何だ!」

 

「周りいるGallery(ギャラリー)は何ですか!?」

 

「何?」

 

「観客のことだよ。これどういう事?」

 

「私が呼んだのよ」

 

「孫策殿が・・・」

 

「だってこんなに面白いことは無いでしょ♪」

 

「そうじゃなくてさ・・・」

あまり乗る気はなかった。なぜなら観客は・・・

 

「甘寧!負けるんじゃないわよ!」

 

「シャオ、少しは落ち着きなさい」

 

「楽しみです」

 

「まったくこんなことになるといつも・・・」

 

「「「甘寧様、頑張ってください!」」」

 

「お前は、どっちに賭ける」

 

「俺は頭に夕食をかける」

 

「俺も!」

 

観客は孫家の関係ある者だからだ。武官、文官、兵士まで

 

「(完全にAWAY(アウェー)だな・・・というか賭けごとするな!それにone thousand people(ワンサウザントピープル)も居るんかい!)」

 

※AWAYは敵地 one thousand peopleは千人です

 

「何をブツブツ言っている」

 

「いや、なんでもないです・・・あともう一つ良いですか?」

 

「今度は何だ!?」

 

「あそこにいる女性たちは・・・」

 

「私と同じ親衛隊だ!」

 

「あ、そうなんですか・・・(女尊男卑の世だと曹操が言っていたが、本当なんだ・・・)」

 

「「「甘寧さま!」」」

 

「はあーー」

 

 

 

「大丈夫でしょうか?高杉さん」

勇作を心配する孔明

 

「大丈夫ですよ、孔明殿」

 

「そうなのだ。お兄ちゃんは強いから安心してみているのだ」

 

「はい・・・」

 

 

「さて、やるか」

 

「両者、構え!」

と中央いる審判が言い、甘寧が自分の得物を構える。しかし勇作は構えない

 

「(何故構えない・・・・・・!?)」

と思っていると、甘寧は驚いた。いやその場にいた全員が驚いた。勇作が取り出したのは小刀だった。鞘から抜くと刃渡りが8センチしかなかった

 

「貴様!どういうつもりだ!?」

 

「周瑜さんにお願いして貸してもらったんだよ」

 

「本当なの?」

と孫策が聞く

 

「はい、本当です」

 

「なぜ、それを使う!」

と甘寧が言う

 

「別にこれでも十分に勝てるから」

 

「な、なんだと・・・」

 

「高杉殿!?いくら何でもそれは無茶です」

 

「そうなのだ!」

 

「高杉さん」

 

「大丈夫だ!安心して見ていろ」

 

「人を馬鹿にするのも大概にしろ!?」

と甘寧が叫ぶ

 

「そう思うなら、来いよ」

 

「言われるまでもない!」

 

「始め!?」

と声が上がると同時に

 

「はっ!」

甘寧が仕掛ける

 

「もらったぁぁぁ!?」

誰もが決まったと思ったが

 

バシン!

 

「な、何!?」

甘寧の攻撃を素手で受け止めた

 

「な!?甘寧の攻撃を素手で受け止めた!」

 

「信じられない・・・」

 

「剣ならまだしも素手で受け止めるなんて、何なんだ!あ奴は」

孫策、孫権、周瑜が言う

 

「・・・・・・・」

他の人は驚きのあまり、声が上がらない

 

「すごい!」

 

「すごいのだ、お兄ちゃん」

 

「はわわ!?」

 

「(バカな、私の攻撃を素手受け止めるなんて、しかも力を入れているのに全然動かない・・・こんなこと・・・格が違うというのか、そんなわけない。偶然に違いない)」

 

「おい、偶然じゃないぞ。完全に見切ったんだぞ」

 

「!?」

驚いていると、勇作は剣を離した

 

「どういうつもりだ!」

 

「別に」

 

「ふざけるなー」

甘寧は攻撃を仕掛けるが

 

ガキン!ガキン!ガキン!

 

勇作は小刀ですべて防御する。さらに

 

「(右から左、突きと思わせて右から切りつけ)」

見聞色の覇気で読み、躱す

 

「何故だ!何で当たらない」

 

「それ」

勇作は小刀で突きを入れる

 

「ぐっ!」

何とか防御したが、後方に飛ばされる

 

「甘寧様どうしたのですか!?本気を出してください」

と親衛隊の一人が叫ぶ

 

「(何なんだ、こいつは)」

甘寧は勇作を睨みつけ、再び攻撃を仕掛ける

 

ガキン!

 

「おいおい、もう少し冷静になれ、そんな狂暴な剣じゃ無理だろ」

 

「だまれーーーーーー!?」

 

ガチーーーン!!

 

「駄目だなこれ、少し遊ぶか・・・」

 

「(くそ、くそ!!)」

攻撃が乱暴になってくる

 

「足元お留守だよ」

 

足払いをする勇作

 

「ぐわ!」

倒れる甘寧

 

「ほら、立ってよ」

 

「ふざけるな!!」

 

真正面から切りかかる

 

「だから冷静に」

簡単によけ、甘寧の背中を押す

 

「うわ」

バランスを崩し倒れる

 

「くそ!くそ!」

ふらふらに何ながらも立ち上がる

 

「くそ!!!!!」

 

その後も甘寧から怒涛の攻撃も勇作軽く受け流す。まるで子供と大人の遊びのようだ

 

 

 

「凄いのだ」

 

「高杉殿の強さは知っているが、ここまでとは、私と鈴々とでは次元が違い過ぎる」

 

「はわわ・・・すごいです」

関羽たちは、勇作の強さに驚いていた

 

「シャオ夢でも見ているの?」

 

「夢ではないですよー」

 

「信じられない」

 

「奴は化け物なのか」

 

「・・・・・・」

と尚香、陸遜、孫権、周瑜も驚いていた。孫策は声を上げず試合を見ていた

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

数分が経ち、状況は歴然だった。甘寧は息を上げ、汗をかいていた。勇作は息が上げず、汗もかいていなかった

 

「・・・・・・(ここまでかな)」

勇作は小刀を鞘に入れた

 

「何のつもりだ?」

 

「もういいでしょう!これ以上やっても貴方のpride(プライド)じゃなくて誇りが傷つくだけだ」

 

「ふざけるな!まだ・・・」

 

「(しかたない・・・)」

俺は息を吸い

 

「もうやめろっていってんだろ!?」

と言いながら覇王色の覇気を発動した

 

「!?」

雰囲気が変わり、その場にいたほとんど人が気絶した

 

「何なの!この覇気、体の震えが止まらない。私が怯えているの」

 

「なんてことだ!こんな覇気。今まで感じたことがない」

 

「あり得ません。こんなの」

 

「・・・・・・」

 

「蓮華お姉さまどうしたの?」

 

「!?なんでもない」

 

「またあの覇気だ」

 

「お兄ちゃん、怖いのだ!」

 

「はわわ」

 

「(何なんだ!この覇気は・・・これほどの覇気受けたことが・・・格が違い過ぎる)」

 

「(覇王色の覇気を使ったけど、女の人だけは気絶はしてないな・・・あ、でも、公孫賛は気絶したな)」

気絶していないのは孫策たち 関羽たち、そして観客では親衛隊だけだった

 

「さて、これでもう・・・!?」

と前方を見ると武器を構える甘寧の姿があった

 

「まだだ、まだ終わっていない」

 

「(嘘だろ・・・)」

 

「はああああああ」

勇作に向かって攻撃を仕掛ける

 

ドン

 

「がはっ!」

が甘寧の喉元に突きがさく裂した。もし小刀を鞘に納めていなかったら確実に刺さっていただろう

 

「甘寧!?」

 

「甘寧さま!?」

 

「どういうつもりだ!これ以上戦っても意味がないことは分かったはずだ!何でやめない!」

 

「こんなことで止められるか、私から貴様に勝負を申し込んだのだ。こんなとこでやめられるか!」

 

「そんなことで続けるのか!鞘に納めていたからよかったものの、下手すれば死んでいたぞ!」

 

「これだけ、恥じをさらしたんだ。このまま死んだ方がマシだ」

 

「本気で言っているのか」

 

「ああ、本気だ!」

 

「ふざけるな!」

 

「!?」

 

「こんなことで死ぬだとそんな勝手なことが許されると思っているのか!?」

 

「貴様に何がわかる!孫策さまや孫権さまの前でこんな無様なことをしたんだぞ、こんな私を誰が・・・」

 

「勝手に決めつけるな!」

 

「なんだと」

 

「お前の主がそんなことをする人だと思うのか!此処にいる人がこんなことで見捨てるようなことすると思うのか、違うだろ!お前を雑魚と言った時、お前のために、怒ってくれただろ!あのことは忘れたのか!」

 

「忘れてなどいない!」

 

「だったらなぜさっきあんなことを言ったんだ!それに周りを見ろ」

 

「周り?」

甘寧は周りを見た

 

「甘寧、諦めるなんて貴方らしくないわよ」

 

「そうだ!」

 

「私たち孫家は貴方を見捨てるようなことはしない!だからそんなことをいうな!」

 

「シャオだって同じよ」

 

「そうですよー」

 

「甘寧さま、我々親衛隊も同じです」

 

「だから、最後戦ってください」

 

「「「甘寧さま」」」

 

見捨てるどころか、必死に応援をしていた

 

「・・・・・・」

 

「これで分かっただろう。お前を見捨てる人は此処にはいないって」

 

「そうだな」

 

「それに俺は貴方が羨ましいよ」

 

「何?」

 

「こんなにも必要とされている事なんてなかった。俺はいつも一人で孤独だった。貴方はこんなにも人から愛されている、俺にとっては羨ましいくらいです」

 

「高杉」

 

「あ、ごめんなさい、変な話をしてしまって」

 

「いや、気にしていない」

 

「甘寧殿」

 

「何だ!」

 

「貴方はもう限界のはずだ。次で最後にしましょう」

 

「そうだな」

と距離をとった

 

「貴方の力をすべて出して来い!俺も・・・」

と俺は応龍を抜き

 

「礼儀も持ってそれに答える」

と言い俺は、刀を横に構えた。構えると同時に勇作の体が青く光り出した。

 

「「「「「きれい」」」」」」

 

その姿は美しく皆見とれていた

 

「きれいだ。だが私もこれに全てこめる・・・・・・鈴の音は黄泉路に誘う道標と心得よ!」

甘寧は勇作に向かって走り出す。そして勇作の刀が光ったと同時に

 

「TESTAMENT!」

と言いながら体を反転させながら刀を横に一閃した

 

ガチーーン!!

 

お互いの剣がぶつかり合い

 

ピタリッ!

 

その場から動かなくなった。すると

 

ピシ、ピシ

 

と甘寧の得物にヒビが入り、そして

 

パリーーーン!?

 

粉々に砕けたと同時に甘寧は片膝をついた

 

「俺の勝ちだな」

 

「その様だな・・・」

 

「甘寧殿」

 

「何だ!?」

 

「さっき雑魚って言ったけどあれは取り消す!アンタは誇り高い武人だよ」

 

「・・・そうか、礼を言う」

 

「大したことはしてないよ」

 

「勝者、高杉!」

と言うと同時に二人の元に人が駆け寄る

 

「甘寧」

 

「申し訳ありません。孫策さま、負けてしまいました」

 

「良いのよ。貴方は十分にやってくれたわ。これからもその力を孫家のために尽くしなさい」

 

「孫策さま」

 

「よく頑張ったわ」

 

「そうよ甘寧」

 

「孫権さま、尚香さま」

 

「甘寧さま」

 

「すまない、負けてしまって」

 

「いえ、凄かったです。これは親衛隊全員が思っていることです」

 

「「「はい」」」

 

「凄かったですよね、周瑜さま」

 

「そうだな」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「勝ったぞ」

 

「お兄ちゃん、凄かったのだ」

 

「高杉さん、凄かったでしゅ」

 

「驚くばかりですよ、貴方の強さ」

 

「はは、ありがとう」

 

「高杉殿」

 

「どうしたの、関羽殿」

 

「今度、一緒に鍛錬をしてください」

 

「ああ、ずるいのだ!鈴々もお願いするのだ」

 

「時間があればね・・・さてといこう」

 

「何処にですか」

 

「あれじゃあ、声も掛けれないし、船場にいこう」

 

「そうですね・・・」

 

「行くのだ」

 

「はい」

と俺たちは船場に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それしても、勝手に来てよかったでしょうか?」

と孔明がいう

 

「そうだな、誰かに声をかければよかったな」

 

「そうですね」

 

「そんなことより、早く船に乗るのだ」

と皆が船に乗ろうとした時

 

「!、鈴々、船に乗るのはまだ早いぞ」

 

「どうしてなのだ?」

 

「見送りが来たみたいだ」

と全員が前を見ると

 

「よかった、間に合った」

と孫権、甘寧、陸遜、尚香が来た

 

「もう、勝手に帰るんじゃないわよ」

 

「はは、ごめん」

 

「孔明さん、もっと、書物の話がしたかったです」

 

「陸遜さん、私もです」

 

「気が向いたら、お手紙下さいね」

 

「はい、かならず!!」

 

 

「この間は決着つかなかったけれど、今度会ったら、大きさ・形、色、つや、感度、弾力、味の7番勝負だからね!!」

 

「望むところなのだ!!」

 

「ってお主らまだそんなことを・・・」

 

「はは」

 

「高杉」

と甘寧が声をかけて来た

 

「どうしたんですか?」

 

「さっきの勝負はわたしの完敗だ。今の私では貴様の足元にも及ばない・・・だが少しでも追いつけるよう努力する」

 

「そうか・・・アンタなら強くなると思うよ」

 

「そうか・・・その・・・」

 

「ん?」

 

「私のことは思春と呼べ」

 

「え?それは真名じゃあ?」

 

「私に勝ったんだ、呼んでもかまわない」

 

「そうか。じゃあ俺のこと勇作と呼んでいいよ」

 

「・・・ふん///」

 

「そうだ、孫権さん」

 

「!?、何だ」

 

「あの時、何かを悩んでいたようですが、一人で悩むより、誰かに話した方がいいですよ・・・」

 

「そ、そうか」

 

「もう少し時間あれば、聞いてあげたんですが、すみません」

 

「気持ちだけでも、うれしいです」

 

「さあ、我らの旅立ち、笑顔で見送って差し上げますよな?」

 

関羽の言葉で笑顔になる孫権

 

「(笑った顔の方が良いじゃんか!)」

と心の中で思う勇作であった

 

「また来ますよ、孫権さん」

 

「・・・蓮華だ」

 

「え?」

 

「私のことは蓮華と呼んでも良い」

 

「いいんですか?」

 

「か、かまわないわ//」

 

「ああ、ずるい・・・高杉、私のこともシャオと呼んでもいいよ」

 

「ああ、ありがとう(真名をもらうのはうれしいけど)」

 

「・・・・・・・」

 

「(後ろから猛烈な殺気が・・・)」

 

 

 

 

 

 

「いやー、船旅はいいものだな。こうやってのんびりしているだけで目的地に着くと」

 

「本当なのだ!!陸の上もこれでいけば楽なのだ」

 

「そうだな」

 

「ん?どうした、孔明殿?船酔いか?」

孔明が険しい顔をしていた

 

「あっ、いえ、ちょっと気になることがあって・・・・」

 

「気になること?」

 

「はい、今回のことって、本当に単なる暗殺未遂事件だったんでしょうか?何かあらゆることがあまりも出来すぎるような気がして、まるで一編のお芝居を見いているような、そうこの事件の背後に誰か筋書きを書いた人がいるんじゃないか。そんな気がするのです」

 

孔明の言葉に疑問を思う関羽と鈴々であった

 

「(さすが、伏龍とよばれるほどの軍師、感づいていたのか・・・とても頭では勝てないな)」

と思う勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、陸遜が書簡で仕事をやっている周喩の元へとやってきた

 

「周瑜さま」

 

「陸孫か。見送りは済んだか?」

 

「はい」

 

「陸遜。貴方、孔明の事をどう思う?」

 

「そうですね。あの年にして利と正論をした演説、剣を鼻先に突きつけられても一歩もひかぬ胆力。この先、どのくらい、のびるか楽しみな逸材かと・・・」

 

「楽しみか・・・私にはむしろ恐ろしいと思ったのだが」

 

「え?」

 

「なぜだが、分らぬのが、あの者は、いつか我らの前に立ちはだかるような気がする。時が来て、あの才にふさわしい立場を得たらな・・・」

 

「けど、もう一人恐ろしい人がいるでしょ」

と孫策、蓮華、思春が入って来た

 

「ああ、あの高杉と言う者、私の予想を超える強さだった」

 

「ええ、甘寧、戦ってみてどうだった」

 

「はじめは、大したことはないと思っていましたが、格が違いすぎました。もし戦場だったら、死んでいたとおもいます。それに凄い覇気でした」

 

「確かに、あれは私や母上すらも軽く超えていたと思うわ」

 

「私も、意識を保つこと精一杯でした」

孫権が言う

 

「シャオも」

 

「気絶しなかっただけでも大したものよ・・・それにしてもほしいわ、彼」

孫策が言う

 

「確かにな、敵だと恐ろしいが、味方だととても心強い」

周瑜が言う

 

「けど、何者なのでしょうか?」

孫権が言う

 

「確かに、男であれほどの強さなら噂になってもおかしくないが・・・」

 

「けど、そんな噂聞いたことありませんよー」

陸遜がいう

 

「でも関係ないわ、いつか手に入れてみせるわ」

と言う孫策だった



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第四十席 勇作、劉備と出会うのこと

「う・・・うーん」

 

ここは勇作達が野宿している洞窟。関羽はうなされていた

 

「はっ・・・夢か・・・鈴々。お前のせいでまた変な夢を・・・あれ?」

 

お腹を見るが、居なかった。起き上がり、横を見ると

 

「すーすー」

 

「すやすや」

 

「ZZZ」

 

勇作が寝ており、鈴々と孔明は勇作の腕を枕にして寝ていた

 

「まだ寝ているのか・・・」

 

関羽はその様子を見ていた

 

「(まったく、こうして見ると高杉殿が強いとは、とても思えない・・・けど今まで高杉殿の戦いを見てきたが、私ではとても敵わない。高杉殿、貴方は何者なのですか)」

と勇作を見ながら、関羽は思った

 

「う///・・・いかん、いかん・・・思わず見とれてしまった。顔洗ってくるか」

 

 

あくびをしながら関羽は洞窟から出ると・・・そこには

 

ガチーン!

 

「うぉぉおぉぉおおお!!」

 

「はっ!?」

 

たくさんの賊と戦っている兵士達の姿が見えた・・・・・あまりの出来事に呆然と見てしまう関羽

 

「ぎゃあああああ」

 

一人の賊が兵士を斬ろうとしていた

 

「やめろ!!」

 

「なんだ!?女?てめえらも義勇軍の仲間か!?」

 

「あっ・・・いや・・・」

 

「覚悟しやがれ!!」

 

賊が斬りかかろうとするが、関羽は真剣白刃取りのように剣を受け止めた。すると孔明が洞窟から出てきた

 

「うう、どうしたんですか?関羽さん・・・なんか騒がしいですけど」

 

「孔明殿、戻れ!!鈴々と高杉殿を起こしてくれ!!」

 

「ふぇ?」

 

「それから私の青竜堰月刀を・・・」

 

「は、はい」

 

孔明は慌てて、洞窟に引き返した。

 

 

「くっ・・・」

そして、関羽が抑え込まれそうになった。しかし、蹴り飛ばすことに成功した

 

「くそ!でぁぁぁぁぁぁ!」

 

賊は関羽に斬りかかろうとするが

 

ガチーーン!

 

鈴々が受け止めたのであった

 

「鈴々!!」

 

「うりゃああああああああああああ!!」

 

そこへ武器である青竜堰月刀を持った孔明がやってきた

 

「関羽さん!!って・・・はわわわわ・・・」

 

「すまぬ!!」

 

孔明が転んでしまい、青龍堰月刀を投げ出してしまったが、関羽はそれを受け取った。そして二人の前に賊が集まってきた

 

「なんだかよくわからぬがこうなったらひと暴れするぞ!!」

 

「わかったのだ!!」

 

そして二人は戦い始めた

 

 

 

 

「はわわ」

 

賊たち「「「えへへ」」」

 

その時、孔明は賊に囲まれていたが

 

「どけーーー!」

と勇作が二人の賊を蹴り飛ばした

 

「高杉さん!」

 

「安心しろ、今からこいつらを・・・」

と腰に挿してある刀を抜こうとしたが

 

「・・・あれ?」

なかった

 

「oh my God!(オーマイゴット!)あまり急いでいて洞窟に忘れた!」

と頭を抱えながら言った

 

※oh my Godはしまったと言う意味です

 

「「「「「アホだー!!」」」」

 

「どうするんですか・・・・・!?高杉さん!危ない!」

 

「死ねーーーーー!?」

 

一人の賊が剣を勇作に振り下ろした

 

「ん?」

 

ガチーーン!!

 

勇作に頭に当たり砕けた

 

「・・・・・・・・え?」

 

・・・賊の剣が

 

「「「剣が頭に負けたーーーー!!」」」

 

「「「えぇぇぇぇぇーーーーー!!!!」」」

 

「はわわ!?」

 

信じられない光景に賊と孔明は驚いていた

 

「これが本当の石頭!」

と言っているが、実際は武装色の覇気を纏っているだけなのだ。纏っていなかったたら、確実に死んでいるだろう

 

「ば、化け物だーー!」

と賊たちは逃げて行った

 

そして関羽や鈴々の方も

 

「うりゃぁぁぁ!」

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

賊たちを倒していった

 

「なんだ・・・こいつら・・・」

 

「こんなのとやりあってたら命がいくつあっても足りないぜ」

 

賊たちは敵わないと思い、逃げ出したのであった。それをみた馬に乗っている義勇軍の大将は

 

 

「おい、何をしている!!敵は崩れてたぞ!!押し返せ!!」

 

「は、はい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義勇軍の勝利に終わり、戦いが終わると先ほどの義勇軍の大将がやってきた

 

 

「いやー、どこのどなたか存じませぬが加勢いただき、かたじけない。私はこの義勇軍を率いている劉備、字を玄徳といいます。以後お見知りおきを」

 

関羽は劉備の顔に見とれていた

 

「私は関羽、字を雲長と申します。これらは妹分の張飛。そしてこちらは・・・・」

 

「孔明と申します」

 

「関羽殿に張飛殿に、そして、孔明殿か」

 

すると劉備が関羽を見て気付いた

 

「もしや、先ほどのお手並み、そしてその髪。もしかして貴方はもしやあの黒髪の山賊狩りでは・・・・」

 

「あっ・・・いや・・・一応・・・」

 

どうせ噂とは違うといわれると思い、落ち込み始める関羽であった。

 

 

「おおそうでしたか、絶世の美女と言われる美しさ・・・」

 

「あっ・・あの!?今、私のことをなんと!?」

 

「噂に違わず、お美しいと申したのですが・・・」

 

劉備の一言で愛紗は顔を赤らめた

 

「あ・・・え・・・・それはどうも・・・・・その//ありがとうございます。そういってくれたの貴方で二人目です」

 

「二人目?」

 

「はい」

 

「誰ですか?」

 

「それは・・・あの方です」

と指をさすと

 

「ふう、終わった」

と勇作が来た

 

「お兄ちゃん、何やっていたのだ?」

 

「怪我人に包帯を巻いてあげたり、薬草を使って治療をしていたんだよ」

 

「そうだったのですか・・・かたじけない」

 

「別にいいですよ」

 

「関羽殿この方は?」

 

「ああ、こちらは・・・」

 

「初めまして、俺は高杉と言います」

 

「初めまして、私はこの義勇軍の大将の劉備です」

 

「へ!?劉備!?」

 

「どうしたのですか?そんなに驚かれて・・・」

 

「いえ、なんでも(俺の知っている人物は女性だけだったけど、男の人もいるんだ・・・・・・何だ、この安心感?)」

 

「関羽殿、高杉殿とは一緒に旅をしているのですか?」

 

「いえ、私が旅の途中に、出会い、それからずっと一緒にいるのです」

 

「何処で出会ったのですか?」

 

「たしか場所までは分かりませんが、確か桃の木が生い茂り、桃園という表現が合っている場所でした」

 

「そうですか」

と劉備は勇作を見ながら言った

 

「(青い衣に6本の剣、そして桃園・・・まさか、この御仁、前に流れていたあの噂の人物!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、4人は義勇軍と共に桃花村にやってきた。

 

「どうしたね?義勇軍の大将さん、まるで勝って帰って来た様子じゃが」

 

「勝って帰ってきたのだ!!」

 

「おっー、そうか、そうか勝って帰ってきたのか・・・・えええ!?」

 

勝って帰ってきたことに驚きを隠せない民

 

「(What?そんなに驚いているんだ?)」

その光景に疑問を浮かべる勇作であった

 

※Whatは何という意味です



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第四十一席 勇作、噂を聞くのこと

勇作達は劉備と共に桃花村の屋敷へとやってきた。そこの当主も加えて話を始めた

 

「いやはやー、劉備殿が勝って戻られるとは長生きはするものな・・・」

 

「んんっ!庄屋殿・・・」

 

「あの劉備殿の義勇軍。それほど負け続きだったのですか?」

 

「ああ、それはもう・・・はあー」

 

ため息をし、話始めた

 

「劉備殿がわずかな手勢を連れて、この村、桃花村に来られたのは三月ばかり前のこと。最初はあまりに胡乱な身なりをしていたので食い詰めた賊か何かと思いましたが、話を聞くと中山靖王の末裔という高貴な血を引くお方とか・・・」

 

 

3月前

 

 

『ほお、義勇軍のですとな・・・』

 

『はい、今この辺りでは巨悪な賊どもが跋扈しております。そうした不逞の輩を成敗し、民の安命を図ろうと我ら旗揚げしたとしだい、こちらの庄屋殿は義にあつく、徳の高い方だとお聞きしました。我ら、志はあっても、武器はおろか、その日の糧食にも事欠く始末。ここはひとつ、天下万民のため、お力添えいただきたいかと思いまして・・・』

 

 

 

 

「とまあそういう訳で、我が家の倉の中を開いて、武器と兵糧を整えて、いざ出陣・・・・・となったのですが・・・・七度出陣して、七度負けるというありさまで、さすがに今度負けて帰ってきたら村を出て行ってもらおうと思っていたのですが・・・」

 

「まあ、いいではないかこれまでのことは・・・とにかく今回は勝ったのだから・・・・・・・んんっ!」

 

そして、劉備は勇作達に視線を向けた

 

「お聞きの通りのありさまで真に恥ずかしい限りなのだが、暴虐非道な賊を討ち、この地に平和を取り戻すため、私に力を貸しもらえないだろうか?」

 

「(・・・・・・嘘はついていないが、何だこの違和感?)」

 

「・・・・・・お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「どうしたのだ?難しい顔をして」

 

「ああ、何でもない、どうする?」

 

「協力しましょう」

 

「鈴々も協力するのだ!」

 

「わたしも協力します」

 

「俺も協力します」

 

「ありがとうございます。関羽殿、張飛殿、孔明殿、高杉殿・・・いや」

 

劉備は立ち上がり、勇作の横に来て

 

「大陸の危機を救いに舞い降りた天の御使い様、協力して頂き感謝いたします」

 

「何?」

 

「はあ?」

 

「??」

 

「え?」

 

「劉備殿、この方はもしや・・・」

 

「はい、以前話したあの方です!」

 

「いやはや、驚きましたな」

 

「あの劉備殿?どういうことなのですか?」

 

「おや、皆さんは以前流れていた噂を知らないのですか?」

 

「何なのだ?」

 

「もしかして、あの噂ですか?」

 

「孔明殿、あの噂とは」

 

「ほら、洛陽からある噂が広まっているってかなり騒ぎになった時がありましたよね」

 

「洛陽から・・・・・・・・・!?もしかしてあの噂のことか!」

 

「噂ってなんなのだ?鈴々ぜんぜんわからないのだ」

 

「俺もわからないぞ」

 

「では、ここは私が」

と席に着き、話始めた

 

「実はある時期に洛陽から、ある噂が流れ大陸に広まったのです」

 

「噂?」

 

「はい・・・『大陸に大いなる危機が訪れる時、青き衣を身に纏い、龍の名前を持つ6本の剣を操る天の御使いが桃園の地に舞い降り、大陸の危機を救うであろう』・・・という噂が流れていたのです」

 

「私も水鏡先生から聞いたことがありますが、まさかそれが高杉さんの事だったのですか」

 

「私も旅をしている時、耳にしたことがあるが・・・」

 

「けど、それがお兄ちゃんのことだと思うのだ?」

 

「それは・・・」

 

「まさかと思うが、見た目だけで判断したっと言わないでしょうね」

 

「!!・・・はは、そんなわけ・・・」

 

「(目が泳いでいる・・・図星かい・・・それにしてもそんな噂が流れていたなんて・・・・・・・・・・師匠の仕業だな)」

 

「しかし、それが高杉殿とは限らないではありませんか?」

 

「いえ、そうでもないとおもいます」

 

「どうしてなのだ?」

 

「だって御使いの噂は多分大陸にいる人たちは知っていると思います。しかし高杉さんのことは噂になっていないのはおかしいと思いませんか?」

 

「確かに、私も、高杉殿に対しての噂は聞いたことがありません」

 

「皆さんも、聞いたことありませんよね」

と尋ねると皆、頷いた

 

「高杉さんの強さは私も見ましたが、男であれほど強さで噂にならないなんておかしいです。それに関羽さん」

 

「何だ?」

 

「たしか、高杉さんとは桃園の地で会ったと言ってましたよね」

 

「確かにそうだが・・・・・・そういえば」

 

「どうしたのだ?」

 

「高杉殿には字がないと言っていました」

 

「字がない」

 

「初めは、珍しいと思っていましたが・・・」

 

「お兄ちゃんどうなのだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言うしかないか」

 

「「「「「??」」」」」」

 

「俺が天の御使いなのか、それは分からない・・・・・・・・けど」

 

「けど?」

 

「その噂、俺に当てはまると思います。それに俺はこの世界の人間ではありませんし・・・」

 

「この世界の人間ではないとな?」

 

「別の場所から来た・・・天の国から来たと言ったほうがわかりやすいと思います」

 

「では、やはり貴方は天の御使いなのですね」

 

「あ、いや」

 

「ほお、天の御使いに会えるとは、今日は驚くばかりですな」

 

「よくわからないけど、お兄ちゃんが凄い人だということは分かったのだ」

 

「そうだな」

 

「私も驚きました」

 

「(はは・・・なんかえらいことになっているな)」

 

 

その後、勇作たちは、義勇軍に加わったのであった

 

 

 

 

その日の夜、関羽は風呂につかっていた

 

「劉備殿か・・・あの人・・・どこか兄様に似ていたな・・・」

と顔を赤くする関羽

 

「それにしても、高杉殿が天の御使いだったとは・・・そういえば高杉殿と初めて会ったあの場所、あの噂を信じて行ったんだな・・・賊を退治していてすっかり忘れていたが・・・・・・・う//いかん、いかん!何を考えているんだ」

顔を赤くしながら、首を振る

 

「高杉殿・・・」

 

 

場所は変わって、勇作のいる部屋

 

「はあ、それにしてもあんな噂が流れていたとは・・・師匠、豪いことしてくれたな」

と勇作は、剣を一本取り、鞘から抜いた

 

「明日から戦が始める・・・きっとたくさんの声が消える・・・それに俺は人を殺せるのか」

 

勇作は此処に来てから、人を殺していない。前に趙雲と賊のアジトに潜入し、賊と戦闘になった時も人は殺していないのである

 

「・・・何かを得るためには何かを犠牲にする必要がある・・・言いかえれば、民を守るには賊を人を殺さないといけない・・・・・俺に出来るのか」

 

 

 

 

 

 

そして、翌日、義勇軍は賊と戦っていた。そして、孔明が作戦を説明していた

 

 

「いいですか?まず小人数の部隊を出して、砦の賊達を挑発します・・・挑発に乗った賊達が砦を出てきたら少しだけ戦って、囮の部隊はすぐに後退させてください」

 

そして、戦いは激化していく。そして・・・

 

「よし、退け!!退け、退け!!」

 

囮部隊は後退したのであった。そして、砦から賊達の頭が出てきた

 

「者ども!!腰ぬけの義勇軍を蹴散らしてやれ!!」

 

「おおおおおおっー!!」

 

賊達は囮部隊を追いかけ始めた

 

「そして、賊達をこの谷に誘い込みます」

 

孔明の示した谷へとやってきた賊達であったが

 

ドーーン ドーーン ドーーン

 

銅鑼の音に足を止めた

 

「な・・なんだ!?」

 

そして、左右からは関羽部隊と張飛部隊の義勇軍が現れた

 

「し・・しまった!!?罠か!?」

 

「乱世の常時、善良な民達を苦しめる賊共め!!その命運、ここで尽きたとしれ!!」

 

「けちょんけちょんにしてやるのだ!!」

 

そして、義勇軍は賊達に追撃を始めたのであった

 

「敵が谷の中ほどまで来たら、谷の両側に待機している関羽さんと鈴々ちゃんの部隊で一斉に攻撃します」

 

と二人は頷いた

 

「・・・そして、高杉さんと劉備さんは別の一体を率いて・・・」

 

義勇軍の攻撃から頭は逃げて、砦へと向かっていた

 

「くそ、義勇軍の奴らめ、こざかしいことを・・・一旦、砦に帰って、出直しだ」

 

頭は砦へと戻ってきた

 

「おい、門を開けろ!!」

 

次の瞬間、砦から劉備軍の旗が揚げた。そうすでに劉備の部隊によって砦は落ちたのである

 

「一足、遅かったな。この砦は我ら義勇軍がいただいたぞ!!」

 

「なっ・・・・・」

と突然、門が開き、勇作が出てきた

 

「な、何だ!貴様」

 

「・・・・・・・失せろ」

と頭の乗っていた馬を睨みつけた

 

ヒヒーーン

 

「どあぁぁぁぁああ!?どうした!」

馬は暴れ

 

バタン

 

口から泡を吹き、気絶した

 

「何をした!?」

 

「別に何も・・・」

 

「貴様、何者だ!?」

 

「聞いて驚け。この方は大陸を救うために舞い降りた天の御使いである高杉殿だ」

 

「天の御使いだと!」

 

「・・・・・・・」

 

「ふん、御使いだか知れないが、そんなの俺様の敵じゃあねえ!」

 

と持っていた槍を勇作に向かって突き刺すが

 

ガシ

 

「な!?」

 

勇作は槍を右手で白刃取りをした

 

「バ、バカな!?」

 

驚く賊の頭

 

「それ!」

 

勇作は槍を引き、頭の胸を思いっきり殴った

 

ガツーーーン

 

「がはっ!」

と頭は飛ばされた

 

「(バカな!鎧を着ているはずなのに、体に衝撃が・・・)」

と思いながら倒れた

 

 

 

その後も義勇軍と賊達の戦いは激化していた

 

 

 

 

関羽はハンマーも持った賊と戦い、賊の被っていた兜の角を切った。鈴々は豚に乗りは賊達を飛ばしていった。勇作は覇気を使い、伏兵の場所を当てたり、殴ったり、威圧した。孔明の策立てたりしていった結果、義勇軍は連戦連勝続きであった。しかし勇作は人は殺さなかった



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第四十二席 一同、宴会をするのこと

桃花村の屋敷では宴会が行われていた。鈴々と孔明は御馳走を堪能していた。そこへ庄屋がやってきた

 

「いやいや、高杉殿達が義勇軍に加わってから、連戦連勝。この辺りもすっかり平和になりました。しかし、高杉殿と関羽殿と張飛殿の武勇もさながら、孔明殿の知略には恐れ入りました。まさに昔、漢の高祖劉邦を助けて天下を取らせた張良に勝るともおとらぬ名軍師ぶり!」

 

「はわわ、名軍師だなんて//////私はただ皆さんにちょっとした助言しているだけで・・・」

 

「そうなのだ!!」

 

そんな中で輪に入ったのが骨付き肉を食らいつく鈴々であった

 

「鈴々と愛紗とお兄ちゃんがいれば、別に小難しい策なんか立てなくても、賊退治なんかちょいちょいのぷーなのだ!!」

 

「さすがは張飛殿、勇ましいことですな!!」

 

大いに笑い始める鈴々と庄屋。ムッとした表情になる孔明であった。そのころ、関羽は夜空を眺めていた。すると・・・

 

「関羽殿」

 

そこへ劉備がやってきた

 

「劉備殿」

 

「どうしました?何か宴で気に入らぬことでも?」

 

「あっ、いえただ・・・・月があまりにもきれいなものでしたから・・・」

 

「月?」

 

劉備は月のほうを見た

 

「たしかにこれは美しい。もっとも関羽殿、貴方の美しさには及びませんが・・・」

 

「なっ!?何を言って・・・・・からかっては困ります」

 

劉備の発言に驚いて恥ずかしがってしまう関羽

 

「関羽殿」

 

「はい」

 

「いきなりこんなこと言って迷惑かもしれぬが、この先、私とずっと一緒にいていただけないだろうか?」

 

「それって・・・もしかして・・・//////」

 

「私のようなものが貴方のような豪傑の主と思っていない。だが、私とていつまでもこのままいるつもりはない。賊を退治することで名声を上げて、より多くの兵を養い、いずれは人過度の将として身を立てるつもりだ。そのためにも私にはあなたの力が必要なのだ。もちろん御使い殿も」

 

「あっいや・・・(いっしょにいてって・・・そういうこと・・・)」

 

劉備の言葉の真意にがっかりする関羽。

 

「どうだろう?関羽殿、私に仕えてもらえないか?」

 

「え・・・・いや・・・そういうことでしたら・・・」

 

そういうと劉備は愛紗の手を握った

 

「おお、承知していただけますか?」

 

「いや・・・・その・・・・」

 

すると・・・

 

「あっー、こんなところにいたのだ!!」

 

鈴々がやってきたのであった。関羽は慌てて、劉備を押し倒した。

 

「ごちそう、あと少ししかないから早く来ないと・・・・」

 

来ると・・・関羽は柱にしがみついていたのであった

 

「何・・・しているのだ?」

 

「なんでもない」

 

「ん?それよりお兄ちゃんは何処にいるのだ?」

 

「え?高杉殿?」

 

 

 

 

 

 

その頃、勇作は

 

「・・・・・・・」

 

別の場所で月を見ていた

 

「楽しそうだな。皆」

見聞色の覇気を使い、宴会の様子を聞いていた

 

「此処まで、連戦連勝か・・・・・・確かにそうだけど、たくさんの声が消えたんだな・・・それに俺はまだ人を殺していない」

これまでの事を思い出しながら言った

 

「はあ・・・何をやっているんだろう俺は・・・・・・・・・・!?」

と何かに気が付いた

 

「・・・・・・こんな所に居たのですか?」

と劉備が来た

 

「あれ?劉備殿」

 

「こんな所に居たのですか・・・皆さんと一緒に参加しましょう」

 

「・・・わかりました」

と行こうとすると

 

「・・・・・・高杉殿」

と声を掛け、勇作は止まった

 

「なぜ貴方は人を殺さないのですか?」

 

「・・・・・・・・」

 

「理由は分かりませんが、そんな甘い考えは捨てるべきです。賊を殺なければ、被害が増えるだけなのですよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「我々は民のために戦っているのです。そのために賊を殺しているのです!」

 

「・・・・・・・れ」

 

「貴方の影響で、士気が下がってしまいます!」

 

「・・・・・・・まれ」

 

「平和のために賊を殺し・・・」

 

「黙れ!!??」

と勇作は覇気全開で言った

 

「!」

 

バタバタバタバタ

 

劉備を含め、周りに居た人の殆どが気絶した

 

「ハァ・・・ハァ・・・あ!」

と勇作は周りを見て、気が付いた

 

「・・・・・・くそ!」

と勇作は走って自分の部屋に戻った

 

 

「あ!高杉殿!?」

途中に関羽と出会うが無視して走った

 

「高杉殿・・・」

 

 

 

 

 

 

 

勇作は自分の部屋に着き、ベットに座った

 

「・・・・・・・」

 

『なぜ貴方は人を殺さないのですか?』

 

「・・・・・・・・」

 

『理由は分かりませんが、そんな甘い考えは捨てるべきです。賊を殺なければ、被害が増えるだけなのですよ』

 

「(分かってる。そんな事ぐらいわかるよ・・・けど俺は・・・俺は・・・)」

と勇作は声を殺しながら、泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、勇作達は薬草探しをしていた

 

「孔明殿、薬草積みはもうこれくらいでよいではないか?」

 

「はい、でももうすこしだけ・・・」

 

「だが、もうそろそろ日も暮れかかってきたし」

 

「すみません。あと少しだけお願いいたします、ここのところ戦続きでけが人が増えてますから、すこしでも手持ちの薬草を増やしたくって」

 

「確かにそうだな・・・・・ん?あれは」

 

「あ!!」

 

突然、孔明が走り出した。その先には薬草があった。

 

「どうした?」

 

「見てください。これは三日草と言って、熱を下げるのにすごく効果がある薬草なんです」

 

「ほおー。珍しい形の花なんだな」

 

「たしか動物の死骸に寄生して、一日で目が出て、二日で葉を茂らせて、三日で花を咲かせることから、三日草と言われていて、四日で枯れてしまうからめったに見つからない貴重なものだったはずだな」

 

「はい!そうです。良く知っていますね」

 

「ま、まあな(修行で怪我した時に薬草を使っていたし、師匠からも薬草や漢方についても教えられていたからな・・・まあ、サロンパ草みたいに知らない薬草もあるけど・・・)」

と心の中で思った

 

「さっそく抜きましょう」

 

そして、孔明は三日草を抜いた。すると突然、関羽と鈴々が青ざめた顔となって、指をさした。

 

「ん?」

 

孔明が三日草を見ると・・・・・・そこにはやつれた顔となった翠があった

 

「え?」

 

「はわわわわわわわわわわ!!!!!!?????」

 

孔明は驚いて、翠を投げ飛ばした。ご丁寧にその手には三日草が握られていた

 

「(何で翠が・・・)」

 

 

 

 

その後、屋敷では翠が食事をとった

 

「それにしても馬超。あんなところに生き倒れになっているとはいったい何があったのだ?」

 

「ひつはむひゃひゅぎょうのひょひゅうでろぎんがそこをついてしまって・・・・」

 

わけを話すが、食べながらなので訳がわからなかったのであった

 

「何を言っているのか全然わからないのだ」

 

そういうと鈴々は骨付き肉を取ろうとしたが、翠に取られてしまった。そしてそれを一口で食べ、ラーメンのスープを飲みほした

 

「ブハーーー!いやー、だからさ。武者修行の途中で路銀が底をついちまって、腹ペコになって困っていたとき、ほら、あの大食いのチビ許緒が、山で野草をいっぱい積んでいること思い出してさ。あたしも探してみたんだけど、どれが食えるのかさっぱり分なくて。とりあえずその辺に生えていた茸を焼いて食ってみたら、ある意味これが大当たり・・・すぐに眼の前がぐるぐるして、しばらくすると耳のでっかいネズミや、くわくわうるさいアヒルとか見えてきて、気がついたらそいつらと一緒に一晩中、高笑いしながら山の中を走り回って、その挙句、力つきて、朝までばったりってわけ・・・」

 

「馬超さんが食べたのはサイケ茸だと思います。幻覚作用があって、並の神経をしている人なら笑い死にしていたかも・・・」

 

「まあ、たしかにこいつは並の神経じゃないな・・・」

 

関羽は寝ている翠を見て、そう思ったのであった

 

「(というか、毒茸を食べているのに、平気な人なんて初めて見たぞ!俺)」

と心の中で思う勇作であった



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第四十三席 翠、勘違いするのこと

その夜、部屋で寝ていた翠は目を覚ました

 

「う~、おしっこ」

と厠へ向かった

 

「やばい、やばい・・・厠何処だ?早くしないと・・もれちゃう・・・・」

 

すると、翠は何かを見つけた。それは見張りの兵士達であったが・・・・・

 

「て・・・・・て・・・・・敵襲だ!!!!!!」

と勘違いをしてしまったのであった。

 

「皆、起きろ!!敵襲だ!!敵襲!!」

 

翠は走り出した。

 

「(何の騒ぎだ?)」

 

その後、場は大広間に移った。一同は大笑いであった。

 

「「「「ブハハハハハハハ」」」」

 

「そんなに笑わなくてもいいだろ/////」

 

「けどけど、見張りの兵士を敵襲と間違えるなんておっちょこちょいにもほどがあるのだ」

 

「しょうがないだろ。まさかここが義勇軍の本拠地になっているなんてぜんぜん知らなかったから・・・武器を持った奴が夜中うろうろしていたら、勘違いするっての!」

 

「あの時の馬超の慌てぷりときたら・・・プププ・・・」

 

笑いをこらえる鈴々にムッとなる翠。すると関羽が・・・・

 

「こら鈴々、いつまでも人の失敗を笑うのはよくないぞ・・・・くくく」

 

「自分も笑ってるじゃん。こっちはビックリしてちょっとちびっちゃたってのに」

 

「え!?」

 

「(嘘!?)」

 

「//////////!?」

 

「今、何て?」

 

「なんでもない、なんでもないってば」

 

顔を赤くする翠。すると孔明が

 

「でもこれはいい機会かもしれませんね。今回は寝ぼけた馬超さんの勘違いでしたけれど、本当に敵が攻めてきたことも考えたほうがいいと思います」

 

「一応、それを考えて兵に見回りをさせているのだが」

 

「いえ、それだけでは不十分です。村の何箇所かに見張りのためのやぐらを設け、いざという時はこの屋敷にこもって戦えるよう、堀を掘ったり、坪を高くすべきでしょう」

 

「孔明殿の考えもわからんでもないが、何もそこまですることはないと」

 

「劉備さん、備えあれば憂いなしですよ」

 

「そうだな、やった方が俺は良いと思うよ」

 

「・・・そうだな」

 

翌日、兵士達は堀を掘ったり。坪を立てていた。勇作も一緒に手伝ったいた。しかし、鈴々は座っていて、何かを見ていた。そこへ翠がやってきた

 

「あと少しで完成って所だな。ん・・・どうしたんだよ?ぶっちょ面して」

 

「気にいらないのだ」

 

「気に入らないって、孔明がか?」

 

「そうじゃなくってあいつのほうなのだ!!」

 

「あいつって劉備殿のことか?」

 

どうやら、鈴々は劉備のことが気に入らなかったらしい

 

「あいつ、戦いの時はいっつも後ろにいて、全然、前に出てこないのだ。大将のくせにとんだ臆病ものなのだ!!お兄ちゃんが大将やった方が良いのだ」

 

「戦は大将がやられたら、それまでだからな・・・そういう戦い方もあるさ。ま、そういうの私はあんまり好きじゃねぇけど・・・勇作が大将か・・・」

 

「それに、賊のアジトから取り戻したお宝。全部、倉に閉まって、独り占めしているのだ!!」

 

「独り占めって・・それは軍資金にするためであって、別に自分の物にしているわけではないだろ」

 

「馬超も愛紗と同じこと言うのだ!!」

 

「え!?そりゃまあ、普通に考えたらそうだろうってことで・・・」

 

「もういいのだ!!」

 

「なっ、おい、張飛!!」

 

そういうと鈴々はどこかにいった。翠は呆然と見ていた

 

「やれやれ、大好きなお姉ちゃん取られた妹のやきもちってとこか」

 

翠がやれやれと嘆くと・・・・空から雪が降ってきた

 

「雪か・・・・」

 

 

 

「(ふう、だいたいこんなもんかな・・・それにしても俺が大将か・・・)」

と勇作は覇気で二人の会話を聞いていた

 

「どうしました?御使い様?」

 

「いや、なんでもない・・・それより」

 

「はい?」

 

「その御使い様って呼ばなくていいよ」

 

「え、しかし」

 

「普通に高杉って呼んでも良いよ、皆」

 

「はあ・・・・・・なら今度から高杉様と呼ばせていただきます」

 

「俺も・・・」

 

「俺は・・・ちょっと言いにくいです」

 

「え、お前・・・」

 

「すいません・・・」

 

「別にいいよ・・・・・・・・・・・・・・・!?そうだ!なら筆頭でも良いぞ」

 

「筆頭・・・いいです!そう呼ばせて頂きます。筆頭!」

 

「なら俺も」

と兵の間で広がり・・・勇作は『高杉様』または『筆頭』と呼ばれるようになった。ちなみに割合は『高杉様』は2『筆頭』8の割合である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雪が積もっていた。鈴々は外へ出た

 

「うわぁー、真っ白なの・・・ぶへぇ!?」

 

突然、鈴々の顔に雪玉が当たった。

 

「何するのだ!?」

 

そこへ三人の子供達が出てきた

 

「べぇー」

 

「悔しかったらここまでおいで」

 

「おいで」

 

「むっきー!!今すぐ行ってやるから覚悟するのだ!!」

 

鈴々が怒って、子供達の所に向かったが

 

ズボ!!

 

「うわ!!」

 

落とし穴にはまってしまった。そこへ子供達が向かった

 

「やーい、引っ掛かった、引っ掛かった」

 

「義勇軍ちか言っても大したことねぇーの」

 

「ねぇーの」

 

「ぐぐぐ・・・一生の不覚なのだ」

 

見事はまってしまった落とし穴の中で、ひっかかった己を恥じていた

 

その後、部屋に戻った

 

「へっくち」

 

盛大なくしゃみをしていた。そこへタオルを持ってきた関羽がやってきた

 

「まったくとんでもない悪ガキどのなのだ!!」

 

「そうか、とんでもない悪ガキどもか」

 

関羽はなぜか笑っていた

 

「何がおかしいのだ?」

 

「いやいたずら好きの悪ガキどもと聞いて、お前と初めて会った時のことを思い出してな」

 

「ん?」

 

「鈴々山賊団のお通りなのだ!!」

 

「鈴々山賊団はあんなへなちょこなのとは違うのだ」

 

「まーそういうな。あの子達がいたずらしたのは案外、お前と仲良くしたいからだとしれんぞ」

 

「仲良くしたいからいたずらするなんて訳わからないのだ。例え、もしそうだったとして鈴々はあんな奴らと絶対仲良くなんかしてやんないのだ!」

 

そういう鈴々であったが

 

 

 

 

 

 

「鈴々義勇軍のお通りなのだー!!」

 

「なのだ!!」

 

すっかり仲良くなっていたのであった。

 

「どけどけーー!」

 

「うわあ!?」

と道を歩いていた翠は尻餅をついた

 

「こらーーー!この悪がきども!?」

と鈴々は鼻を押しながら

 

「これが本当のトンズラなのだ!」

 

「なのだ!」

 

 

そのあと鈴々義勇軍は枯れ木がたくさんある広場に集まった

 

「ねぇ、おやびん」

 

「おやびんじゃなくって大将なのだ」

 

「じゃあ大将。次は何して遊ぶ?」

と鈴々は考えると・・・・・

 

「お花見」

 

「バカだな。まだ花が咲いていないのにお花見なんてできるかよ!!」

 

「この村、花見ができるようなとこなるのか?」

 

「ここだよ。ここ」

 

「満開になったらすごいんだよ。ぶわーと桃の花がいっぱいになって」

 

「だからこの村、桃の花の村と書いて桃花村というんだ」

 

「ふぅーん、よーしそれじゃあここの桃の花が咲いたら皆でお花見するのだ!!」

 

「「「「おっー!!」」」」

 

「おーい!鈴々!?」

と呼ぶ方に顔を向けると

 

「あ!お兄ちゃん!?」

とものすごい勢いで勇作に向かった

 

「え!ちょっと待て!スピードを落とせ」

 

「にゃ?」

と言うが分からす

 

ドン

 

押さえきれず後ろに倒された

 

「痛ってーーーー」

 

「お兄ちゃん?大丈夫なの」

 

「ああ、何ともない」

 

「良かったのだ。それよりお兄ちゃんも一緒に遊ぶのだ」

 

「よし!遊ぶか!?」

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、離れたところの茶店では紫苑・璃々親子がくつろいでいた

 

「璃々、そろそろ行きましょうか」

 

「うん!!」

 

「あらまあ、口の周りがべたべたじゃない・・・・・・はい、きれい、きれいしましょうね」

 

紫苑は璃々の口の周りをハンカチで拭いた。そして、お勘定をすませると

 

「へい、確かに」

 

「ご主人。桃花村まではあとどのくらいかかりますでしょうか」

 

「桃花村?あっー、最近、義勇軍が旗揚げして、近くの賊どもを成敗して回っているという」

 

「ええ、そうです。その村です」

 

「そうだな。ここからまだ山を二つ三つ越さんとならんから、子連れの足だと四、五日、かかるかもしれんな。もしかしてあんた義勇軍に参加するつもりかね?」

 

「ええ、以前私の世話になった関羽さんと高杉さんが義勇軍で将軍をやっていると風の噂で聞いたものですから・・・それで力を貸そうと思って」

 

「高杉・・・ああ、そういえば」

 

「如何しました?」

 

「いや、その高杉って人、前に流れて来た噂の天の御使いとかいうらしいが・・・本当なのかの・・・」

 

「本当だもん!」

 

「これ、璃々」

 

「はは、元気がよろしいですな」

 

紫苑と璃々が去り、店主が店の中に戻ると、先ほどの話を聞いたマントを着た少女が・・・・

 

「主人」

 

「へい、なんでしょ?」

 

「桃花村の義勇軍の話、詳しく聞かせてもらえませんか?」

と振り向いた。それは行方不明となっていたはずの星であった



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第四十四席 鈴々、風邪を引くのこと

「官軍からの参陣要請?」

 

ある日の夕方、勇作たちは集まっていた

 

「ああ、なんでも州境で領民がかなり大規模な反乱を起こしたらしい」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「討伐隊を出したのだが、一向に乱を鎮めること敵わず。結局、大将軍の何進、自らが軍を率いて出で来ることになったのだが、我らの活躍がその耳に届いたらしく、朝廷に尽くさんとする志があらば、我が陣に参ぜよと・・・」

 

「漢王朝の偉い人もやっと鈴々達のすごさに気付いたってことなのだ!!」

 

「成り上がり者の何進の下につくとってのは気に入らないが・・・・・・この際、大暴れしてふぬけた官軍共の目を覚ましてやろうぜ!!」

 

「おめめ、ばっちりなのだ!!」

 

鈴々と翠はそんなやりとりを続けていると孔明はなぜか難しい顔をしていた

 

「孔明殿はどう思う?」

 

「そうですね。聞くところによると各地で反乱が続発して官軍はネコの手も借りたい状況とか・・・大将軍の自らの出陣といっても実のところさほどの兵力ではないのかも・・・」

 

「なるほど、それで俺達に声をかけてきたというわけか(翠が成り上がりと言っているけどそこまでヒドイのかな?)」

 

「理由はどうであれ、これはまたとない機会だ!!ここで華々しい手柄を立てれば我らの名はさらに高まるだろう。そうすれば義勇軍に参ずる者は増え、我が軍はより強く、より大きくなれるのだ!!」

 

劉備の態度に呆然と見つめる勇作たち

 

「あっ・・・・そして、それがより多くの人を救える。それでは出発は明朝!!皆、早速準備にかかってくれ」

 

「「「はい!」」」

 

「合点なのだ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

こうして義勇軍は賊討伐に向かうことになった。

 

 

 

 

その夜、関羽は風呂に入っていた。関羽は以前の劉備の言葉を考えていた

 

「そして、それがより多くの人を救うことになるか・・・・・・」

 

そして風呂から上がり、部屋に戻ろうとした時

 

「・・・あれは」

勇作を見つけた

 

「高杉殿」

 

「!あれ関羽殿、どうしたのですか?」

 

「いや、姿が見えたので声を掛けただけです」

 

「そうか・・・・・・・・・」

 

「暗い顔をしていますけど、どうしました?」

 

「いや、なんでもないよ。俺は部屋に戻ります」

 

「あ、はい」

と勇作は部屋に戻った

 

「・・・・・・・・・高杉殿」

 

 

 

 

 

そして、翌日、義勇軍は出発に取りかかっていた。関羽、勇作、翠は今まさに出陣しようとしていた。しかし・・・

 

「う~・・・・」

 

「はわわ、鈴々ちゃん!!風邪ひいていますからちゃんと寝ていなきゃだめですよ!!」

 

なんと鈴々は風邪をひいてしまったのであった。孔明は止めていたが言うことを聞かなかった

 

「やれやれ・・・」

 

「鈴々は風邪なんかひてないのだ!!」

 

「熱が出て、咳が出て、鼻水を垂らしているから、風邪に決まっているじゃないですか」

 

「熱が出て、咳が出て、鼻水を垂らしていても・・・・(ズズッー)なんとかは風邪ひかないからこれは風邪じゃないのだ!!」

 

「なんとかってお前・・・・」

 

「何言っているんですか!!馬鹿は風邪ひかないなんて迷信です!!馬鹿だって風邪ひくときあるのですから、鈴々ちゃんは風邪ひいています!!」

 

「(おい!明らかにヒドイこと言っているぞ)」

 

「孔明殿、言っていることは間違ってはいないがもう少しお手柔らかに・・」

 

「でも関羽さん」

 

「鈴々はずっと愛紗とお兄ちゃんとずっと一緒に旅をして戦ってきたのだ!! なのに二人が出陣して、鈴々だけが置いてきぼりなんていやなのだ!!」

 

「鈴々、お前の気持ちはわかるが、その体では出陣するわけにはいかぬだろ」

 

「そうだぞ。かえって足を引っ張ることに・・・」

 

関羽と翠が言うが

 

「行くたら行くなのだ!!絶対に愛紗達と一緒に出陣するのだ!!」

 

鈴々はどうしても行きたがっていた。無理したか、鈴々はフラッとした

 

「ほら熱があるのに暴れたりするからから戦に行くのは無理ですよ」

 

「そんなことないのだ・・・鈴々は一緒に・・・」

 

「張翼徳、お主に任務を与える!!」

 

「ん?」

 

「我らが出陣している間、ここに残って村を守ってくれ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「私も残ります。戦が長引いたときに備え兵糧を準備しつつ、鈴々ちゃんと一緒に村の守備につきます」

 

「孔明・・・」

 

「なら、俺も残るわ」

 

「え!?」

 

「高杉殿!」

 

「今回の遠征、俺が行かなくても大丈夫だと思うし、それに鈴々の負担を少しでも減らしたいし・・・」

 

「お兄ちゃん・・・」

 

「分かった。劉備殿には私から伝えておく」

 

「村を守るなんて張飛には荷が重いんじゃ・・・・」

 

「馬超は黙っているのだ!!」

 

「どうだ。留守を頼めるか・・・」

 

「わかったのだ・・・そこまで言うなら鈴々は残って村に守るのだ」

やっと事が済んだ

 

「よし、それで我が妹だ!!村を任せたぞ!!」

 

「合点なのだ!!」

 

そして、関羽は鈴々の耳元に・・・・

 

「早く元気になれ・・・」

とつぶやいた。すると安心したか鈴々は崩れ落ちてしまった。

 

「おい、鈴々!?」

 

「まったく、無理するからだよ」

と勇作は鈴々をお姫様抱っこのようにして持ち上げた

 

「お、お兄ちゃん!」

 

「部屋まで連れて行くよ」

 

「・・・うん」

鈴々はさらに顔を真っ赤にして頷いた

 

「(何でなのだ!胸がすごくドキドキするのだ)」

 

鈴々と勇作と孔明は留守を任せることになった。そして、義勇軍は出発したのであった

 

「しかたないですね。三人抜きで戦いましょう」

 

「申し訳ない・・・・」

 

「ちっ・・・(まあいい、御使い殿が来ないだけマシか、それに村が襲われてもアイツ一人でも倒せるし人を殺すようになるしな)」

 

関羽視線を村のほうを振り返った

 

「どうした、関羽」

 

「いや・・・なんでもない」

 

すると何者かが義勇軍の移動を見ていた

 

「ん・・・・・?遠征か?」

 



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第四十五席 関羽、軍議に参加するのこと

そして、義勇軍は討伐隊の本陣へとたどり着いた。その天幕の一つには大将軍・何進がいた

 

「皆、集まったようじゃな・・・ではこれより軍議を始める。曹操」

 

「はっ!!」

 

集まった諸侯の中には曹操の姿があった。

 

「反乱軍のこもる山はまさに天然の要塞。正面から力押し攻めてもいたずらに犠牲を増やすばかり・・・まずは山を囲んで、糧道を断ち、兵糧攻めにするのが上策かと・・・・」

 

「うむ・・・」

 

「そもそもこたびの反乱は両者の華憐中継が原因とか、兵糧攻めで相手の指揮が挫けた所で、これまでしさくの誤りを認め、降伏したものは罪一等と減じれば大半は山を下るはず・・・うまくいけば、戦わずして乱を治めることが可能かと・・・」

 

「手ぬるいな!!」

 

「手ぬるいとは・・・」

 

「朝廷に盾突いた賊共の罪を許すなど手ぬるいにもほどがある!!それにこれ以上時をかけては朝廷の威信にも関わる!!悠長に兵糧攻めなどせず、一気に攻めつぶせ!!」

 

「しかし、正面からの攻撃はあまりにも無謀!!」

 

「賊軍など所詮はうごうの集。首謀者さえ打ち果たぜば、後はなんとでもなろう・・・どうじゃ、誰ぞ明日の先陣を務め、敵将の頸を上げようとするものはおらぬか?」

 

一行は黙ってしまった

 

「功名を立てるまたとない機会じゃぞ!!」

 

すると・・・・・

 

「閣下!!恐れながらこの役目、この劉備めにお命じてください!!」

 

「お主はたしか義勇軍の・・・・」

 

突然、劉備が名乗り出た

 

「この劉玄徳、身も心も朝廷に捧げる所存!!その朝廷に弓引く敵が何万あろうとけして恐れるものではありません!!」

 

「よくぞ申した。明日の先陣、貴様に申し渡す!!」

 

「はっ、閣下のご期待にこたえて、賊将の首を取ってごらんにいれてあげましょう!!」

 

「うむ、見事、賊将の首を取った暁には貴様を官軍の将として、わらわの側近としよう」

 

「おお!!」

 

「期待しておるぞ!!」

 

劉備は快く引き受けた。しかし、関羽は浮かない顔をしていた

 

「・・・・・・そういえば貴様の所に天の御使いがいるという噂を聞いたがどこにいるのじゃ?」

 

「申し訳ありません。御使い殿は此処には来ておりません」

 

「ちなみにその者は何と申す」

 

「はっ!高杉と申しております」

 

「な、何ですって!?」

 

曹操は驚いた声を上げた

 

「どうした?曹操!」

 

「・・・・・・・・いえ、なんでもありません」

と言うとまた座った

 

「・・・・・・・前に流れていたあの嘘くさい噂が本当かどうか確かめたいと思ったのじゃがな・・・まあ、よい。次の機会にしようぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、義勇軍本陣では関羽は月を眺めていた

 

「兄様、世の中を変える方法が見えました。どうか私を見守ってください」

 

すると、関羽の兄の顔が劉備に変わったことに驚く関羽。笑顔になるがしかしまた暗くなった顔となった。さらに

 

「・・・・・・・・高杉殿」

と呟く

 

「(・・・なぜ高杉殿のことを思ってしまう)」

と思っていると・・・・・・

 

「関羽殿、そろそろ明日の作戦会議を・・・・・」

 

劉備がやってきた

 

「どうしました?」

 

「いや・・・・別に・・・・」

 

すると・・・劉備が関羽に近づいてきた

 

「関羽殿」

 

「はい!?」

 

「私には貴方だけがたよりです。ずっとそばにいてくれますね?契りの証を・・・」

 

「劉備殿・・・・///////」

 

「さあ・・・」

 

「劉備殿・・・」

 

するとそこへ翠がやってきた

 

「ん?いっ!?////////」

そして、翠が見たのは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、鈴々の看病をしている勇作と孔明は薬を渡した

 

「さあ、飲んでください」

 

「孔明、これはなんなのだ?」

 

「三日草を煎じて作ったもので、熱を下げるのに取っても効き目があるものなんですよ」

 

「なんか変なにおいがするのだ」

 

「馬超殿の精気を吸い取った薬草だからな、まあ、風邪直すためだ。飲まないと罰があたりますぞ」

 

鈴々仕方なく飲みほした

 

「まっずーい!!!もう一杯!!」

 

「はい!!」

 

「(どっかにCMで聞いたことある言葉だな・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃離れた場所では・・・・なんと義勇軍にやられた賊達が集まっていたのであった

 

「お頭方、念のためもう一遍様子を見てきやしたが、義勇軍の奴ら、本当に出払っているようですぜ!!」

 

「そうか・・・・」

 

「残っているのは見張りの兵と村人だけで・・・・」

 

賊の頭達は・・・・・

 

「へっ、やっと好機が来たか・・・・」

 

関羽に右のつのを切られた賊頭1

 

「根気よく待っていたかいがあったぜ」

 

鈴々にこてんぱんにされた賊頭2

 

「ああ、今夜こそあの時の恨みを晴らしてやるぜ!!」

 

そして、劉備に砦を攻め落とされ勇作に倒された賊頭3

 

「もどってきたら、砦が奪われたのは今度はあいつらの番というわけだ・・・」

 

「けど頭!村にはあの天の御使いもいますけど・・・」

 

「心配するな!アイツの対策もしてある」

 

「な、何ですか?」

 

「俺はこう見えても裏での顔が広いんだよ・・・だからいろんな奴に声掛けたんだ!そしたら5千人集まったんだよ」

 

「ご、五千人!?」

 

「ああ」

 

「それだけ居るならいけるな」

 

「そうだな」

 

「じゃあ景気づけに乾杯するか」

 

「そうだな」

 

「「「ははははははははは」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「どうしたのだ?お兄ちゃん」

 

「静かに!」

 

「え?」

と勇作は目を瞑った

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

「どうしました?」

 

「孔明殿!」

 

「はひっ!」

 

「今すぐ村人をこの屋敷に避難させろ!」

 

「え!?」

 

「早く!急げ!」

 

「わ、分かりました」

 

「それと関羽達への伝令の準備をしとけ!」

 

「ぎょ、御意」

と言うと勇作はいつも羽織っている青いコートを袖に通し部屋を出た

 

「(なんとか、間に合ってくれ!?)」



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第四十六席 関羽、志を貫くのこと

義勇軍は作戦会議をしていた。すると関羽を見て翠がにやついた

 

「どうした?」

 

「別に」

 

すると・・・

 

「劉備殿!!」

 

「どうした?」

 

「村が・・桃花村が賊の大軍に襲われました」

 

「「なっ!?」」

 

「なんだと!?」

 

「たった今、村に着いた伝令の話によりますと相手はかなりの数、おそらくは退治された賊の残党どもが協力して一気に襲い掛かってきたと・・・」

 

「くそ・・・で・・・」

 

「孔明殿が指揮をとって庄屋の屋敷にて防戦に努めていますがいつまでもつとはわからない・・・・増援をこうっと」

 

「なんてことだ!!」

 

「劉備殿、何をしているのです!!すぐに村へ・・・」

 

関羽は劉備にそういうのであるが・・・・・・

 

「いや、村には戻らない」

 

「何を言っているのです!!はやくしないとこうやっているうちに村が・・・」

 

「大丈夫、堀と櫓で守備は完ぺきなはずきっと孔明殿と高杉殿が・・・」

 

「伝令!?」

 

さらにそこへ傷だらけの伝令がやってきた

 

「賊軍は外堀を突破・・・また村の後方より賊の援軍が出現!その数、約五千人!?」

 

「「「なっ!?」」」

 

「高杉殿が単身で止めに行きました・・・至急、救援を・・・」

 

伝令はその場に倒れた。関羽と翠の顔は真っ青になった

 

「劉備殿、お願いです。すぐに村へ援軍を・・・」

 

関羽は援軍を頼むのであるが・・・・

 

「だが、我らは明日の先陣を承っている・・・」

 

「ですが!!」

 

「明日の戦で柄を立てれば官軍の将になれるのだぞ!!それも今をときめく大将軍何進様の側近に!」

 

「しかし、今は村を救うのが大事なのでは!?」

 

「たしかに拠点を失うのはつらい、倉にため込んだ軍資金を賊に奪われるのは癪だ!!」

 

「私が言いたいのはそういうことではない!!我々が村を見捨てたら村人はどうなるのかを考えてください!!」

 

すると劉備が

 

「関羽殿、そなたの気持ちはよくわかる。だが世の乱れを正し、より多くの民を救うにはより大きな力を手にいれる必要なのだ。大義のため、私のために傍につくさないか。村は高杉殿に任せて、我ら輝かしい大義のために共に歩んでほしい。私のことだけを考えて、村はやむを得ないと・・・・・」

 

劉備は関羽を口説き落とそうとしたが

 

バシ!!!

 

関羽は劉備を平手打ちした

 

「ふーー。お見事!」

 

そして、関羽は村へと向かおうとした

 

「ま・・・待って、いくらお主が豪の物でも一人だけでは死にに行くようなものだぞ。高杉殿のような化け物で無い限り!それよりも今は大義のために・・・」

 

「貴方の大義が何かは知らぬが・・・私には私の志がある!私の志は真に愛する者を守り抜くことだ!!」

 

そして、関羽は村に向かった

 

「あたしも抜けるぜ・・・けどその前に」

 

バジ!!!

 

翠は劉備の顔を殴った

 

「な、なぜ?」

 

「勇作を化け物と呼んだ罰だ!」

 

「あんな人を殺めたことのない奴にか?」

 

ガツ!!

 

更に殴り劉備は気絶した

 

 

 

 

 

 

 

「鈴々、孔明殿、高杉殿、無事でいてくれ」

 

関羽は馬に乗って村へと戻った。

 

 

 

 

 

そのころ、曹操は酒を飲んでいた

 

「まったくなんなのよ、あの劉備ってやつ!!関羽ほど者があのような男を主に選ぶなんて・・・けどあの高杉が噂の天の御使いだったなんて・・・」

 

すると・・・

 

「こんな時間になんのようだ!!」

 

「曹操に合わせてくれ・・・」

 

「あっ、おい!!よさぬか!!」

 

「曹操、話がある、聞いてくれ!!」

 

夏侯惇に止められている翠が来た。そして、曹操に訳を話した

 

「なるほど、それで私にどうしろというの・・・」

 

「関羽は頭に血が上って一人で飛び出してしまったが、一人だけでは殺されるようなものだ!!だから私に兵を貸してくれ!!」

 

そう言うが・・・

 

「嫌よ!!」

 

「「え!?」」

 

「愚かな主を選んだ報いよ!助ける義理なんてないわ」

 

「このとおりだ!!」

 

曹操と夏候惇は驚いた。なんと翠は土下座していた

 

「だから・・・たのむ」

 

「かつては父の仇とつけ狙った相手に頭を下げるとは・・・馬超、何のためにそうまでする」

 

「友のためだ!!」

 

「っ!?・・・・・・くだらないわね」

 

「華琳様!!」

 

「春蘭。今すぐ手勢を率いて偵察に行きなさい」

 

「偵察?・・・・・偵察の途中で賊に遭遇したらどうしたしましょうか?」

 

「それは自分で判断しなさい!!いちいち私に聞かないで!!」

 

「わかりました」

 

「曹操・・・」

 

「何ぐずぐずしているのよ・・・早く出発なさい!!」

 

「はっ!直ちに」

こうして、翠は曹操軍から援軍を率いることに成功したのであった

 

 

 

 

 

 

その頃、勇作は

 

勇「この!?」

 

ガツ

 

「ぐえ」

 

村の反対に出現した五千人の賊と戦っていた。初めは覇気で気絶させて村の人を避難させていたが、賊たちが目を覚まし襲っていた。覇気を使いたいが村人まで気絶させる恐れがあるため武装色の覇気を纏った応龍で峰うちをしていた

 

「何とか伝わるといいが・・・」

 

「「「この!?」」」

 

右から三人の賊が攻撃してくるが

 

ヒラ

 

簡単によけ

 

「ふん」

 

ドシ バシ ドシ

 

峰うちし気絶させた

 

「よし!このまま」

 

とその時

 

「ぎゃあーーー」

 

悲鳴が聞こえた

 

「!?」

 

声の聞こえた方を見ると逃げ遅れた小さな女の子とその親が居た

 

「くそ!」

勇作は助けるためその親子に向かった

 

「へへへ・・・」

 

「おかあさん」

 

「大丈夫よ」

 

「死ね!」

 

五人の賊が剣を振り上げる

 

「「ひっ!」」

 

思わず目を瞑る

 

ガチン

 

が勇作がそれを止める

 

「な!?」

 

「御使い様!」

 

「大丈夫か!」

 

「は、はい」

 

「・・・ふん」

 

覇気で威圧し気絶させた

 

「ちょっと失礼!」

と言うと勇作は二人を両脇に抱え、門の入り口まで運んだ

 

「ここまでくれば・・・」

 

「ありがとうございます!」

 

「礼はいいから・・・早く行け」

 

「はい」

 

「ありがとう」

と親子は屋敷に向かった

 

「・・・・・・」

屋敷に向かった親子を見送った後

 

「おい」

 

近くにいた兵を呼び

 

「はい」

 

「門を閉じろ!」

 

「え!?」

 

「早くしろ!!」

 

「は、はい」

 

そして門が閉じられた

 

「・・・・・・・」

 

『なぜ貴方は人を殺さないのですか』

 

「・・・・・・・」

 

『人を殺さないのですか』

 

「・・・・・・・」

 

『人を・・・・殺さない』

 

「・・・・・・・」

 

『人を・・・・殺せ』

 

「・・・・・・うっ」

 

勇作は頭を抱えた

 

人を・・・殺せ 殺せ 甘い考えは捨てる 賊を殺し 殺せ 殺せ 殺せ 民のために被害が増えるだけ 殺せ 殺せ コロセ コロセ コロセ 

 

さまざまな声が聞こえてくる

 

「・・・・・・やめ・・・ろ」

 

こわいよ お母さん 助けてくれ 負傷者の救護を いそげ 者どもいけー やめろ 怖い 死にたくない もうだめ 助けて 復讐の時だ 行け行け 殺せ

 

「や・・・め・・・ろ」

 

「ん?おい!アイツ御使いじゃないか」

 

「そうだな、野郎ども!行くぞ」

 

「「「「「おお!!」」」」」

 

五人の賊が勇作に向かう

 

「や・・・め・・・・・・・・」

 

殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ

 

「や・・・めろ」

 

「「「「「「「死ねーーーー!」」」」」」」」

 

賊が切りかかる

 

こ           ろ            せ

 

 

「やめろーーーーーーー!!?!??!?!!?」

 

声と共に勇作は刀を振った

 

ザク

 

音と共に賊の上半身と下半身が別れ、大量の血が噴き出した

 

「ひっ!?」

それに怯える賊

 

「・・・・・・・・」

 

勇作は六爪流になり

 

「うわわわわわわわわわ!!!」

と声と共に五千人の賊に行った



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第四十七席 英雄、村を救うのこと☆

そのころ、桃花村では孔明が村人達を避難していた。そのなかには紫苑と璃々の姿もあった。

 

「これで全員ですね!守りを固めて牢城します!!」

 

すると鈴々が着替えるとそのまま出撃したのであった

 

「負傷者の救護を最優先に、あと西のやぐらに増援を・・・・」

 

「私が行きます!!」

と西のやぐらに向かった。すると・・・・

 

「鈴々ちゃん、まさか、その体で戦に出るつもりじゃ」

 

「こんなとき、鈴々だけ寝ているわけにはいかないのだ」

 

「でも!!」

 

「愛紗は鈴々に留守を頼むと言ったのだ。お兄ちゃんも後ろで戦っているのだ。だから鈴々も絶対村を守るのだ。そして、村の子達と一緒にお花見するのだ」

 

「鈴々ちゃん・・・」

 

「朱里、後を頼むのだ」

 

「っ!?わかりました!ご武運を・・・」

 

そして、鈴々は戦いに向かった。

 

 

 

その頃賊達は城門を破ろうとしていた

 

 

「あとはこの屋敷だけだ!!一気に落とすぞ!!」

 

そして、ついに破られたのであった。しかし・・・・・・

 

「よし!!・・・・ん!!」

 

すると鈴々が丸太を持ちあげて、賊達の前へと進んでいくのであった

 

「通せない・・ここは絶対に通せないのだ!!」

 

そして丸太を投げた

 

「ここから先はこの張翼徳が絶対に通さないのだ!!命が惜しくない奴はかかってこい!!」

 

「あれが燕人張飛・・・」

 

「おい!!何ビビっていやがるんだ!!相手は一人だ!!やっちまえ!!」

 

鈴々は襲い掛かってきた賊達を次々に倒していくのであったが・・・・

 

「行け行け!!押しまくれ!!」

 

「(熱で体が思うように動けないのだ・・・・でも負けられないのだ!!愛紗との約束を果たすのだ・・・村を守るのだ・・・村を・・・愛紗との約束を・・・)」

 

熱で思うように動けず、ついに武器がはじかれてれてしまった。

 

「その首、貰った!!」

 

賊の斧が鈴々に襲い掛かろうとした・・・・その時

 

ガッキーン!!

 

何によってはじかれてしまった。そして、鈴々が目にしたのは・・・・

 

 

それは関羽であった

 

「愛紗!!」

 

「鈴々、よくがんばったな」

 

鈴々は涙ぐんだ。そして、関羽は賊達の前に立ち、

 

「妹が世話になったな!!この礼は十倍・・・・いや百倍にして返させてもらうぞ!!」

 

「黒髪の山賊狩りまで出やがった・・・・」

 

「えーい弓だ!!遠巻きして弓で仕留めろ!!」

 

賊達は矢を放とうとしたが

 

ザク ザク ザク ザク ザク

 

先に打ったものがいた関羽は撃った先を見ると・・・・

 

「弓ならこの黄忠がお相手しますわよ!!」

 

「おお、黄忠殿、どうしてここに!?」

 

「話はあと!!今は屋敷の守りを!!」

 

そのころ、外にいた賊達は・・・・

 

「屋敷はまだ落ちねぇのか?」

 

「他の所はあらかた制圧したというのに・・・それにしても反対側の仲間遅くないか?」

 

「たしかに・・・」

 

「敵襲だ!」

 

声が上がり・・・

 

「西涼の馬騰が一族、馬超・推参!!」

 

「者ども!!我らが力を見せてやれ!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「錦馬超に・・・・」

 

「黒騎兵・・・」

 

そのころ、屋敷では

 

「何!?曹操軍が!?」

 

「その数、およそ三十騎兵!!」

 

すると・・・

 

「悪党ども!!どうやら年貢の納め時だな」

 

「誰だ、貴様!?」

 

「ある時はメンマ好きの旅の武芸者・・・・また時は美と正義の使者・華蝶仮面。しかしその実態は・・・」

 

仮面を取ろうとしたが・・・・

 

「星!!来てくれたのか!?」

 

「・・・星?」

 

「ゴッホン・・・またある時は美と正義の使者・華蝶仮面。しかしその実態は・・・・」

 

改めて、仮面を取ったそれは・・・・

 

「常山の趙子龍!!ここにあり!!・・・とお!」

 

星は賊達をなぎ倒しながら、関羽達の所に向かった

 

「この大群の中をたった一人で駆け抜けるとは・・・」

 

「・・・・・」

 

「次から次へと邪魔しに来やがって、こうなったらみんなやっちまえ!!」

 

「星、背中を預けるならやはりお主だな」

 

「その言葉、そっくりそのまま返してもらうぞ」

 

「「はああああああ」」

 

そして、ついに反撃が始まった

 

「反撃に出ます!!戦える人は二人ひと組となって、一人の敵と戦ってください!!」

 

村人たちに指示を与える孔明

 

「お母さん、しっかり」

 

「・・・奪うことしか知らぬ賊共よ!!守るべきものを持つ我が手が放つ矢を受けて見よ!!」

 

賊達に矢を放つ紫苑、それを支える璃々

 

「あたしは今、燃えに燃えているんだ!!やけどしたい奴はかかってこい!!」

 

賊達を撃退する翠

 

「よし!こうなったら鈴々も負けてられないのだ!!」

 

賊達を撃退する鈴々、星、関羽

 

「お頭が・・・・お頭がやられた・・・」

 

「逃げろ!!こいつら強すぎる!!」

 

賊達はそのまま逃げて行った

 

「ざまみろなのだ!!」

 

「って鈴々、風邪はもういいのか?」

 

「なんかひと暴れしたら治ったみたいなのだ」

 

「はっ!?治った!!まったくお前という奴は」

 

愛紗は鈴々の頭をなでた

 

「・・・あれ?お兄ちゃんは?」

 

「え?」

 

「お兄ちゃんは何処なのだ?」

 

「そうだ!高杉殿は一人で五千の兵を食い止めに・・・」

 

「まずい!早くいかないと・・・」

 

「行っても無駄だぜ!いくらアイツでもさすがに・・・」

 

「そんなことないのだ!お兄ちゃんは鈴々達よりもすごく強いのだ!だから・・・」

 

「例えそうでも・・・」

 

「か・・・頭」

 

すると一人の賊が来た

 

「おお!来たか・・・今度こそお前たちの終わりだな・・・」

 

「頭・・・5千人の・・・・兵が・・・・・・全滅・・・・しました」

 

「な!?何だと!?」

 

「アイツは化け物です・・・俺たちは龍の逆鱗に触れてしまった・・・・・・かないっこない」

 

そう言って倒れた

 

「た・・・高杉殿!?」

 

関羽たちは反対側の門に向かった

 

「おい!門を開けろ!!」

 

「は、はい」

 

門を開けると・・・そこには

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

地獄が広がっており・・・全員息をのむ。そこらじゅうに血だまりが広がり、無数の遺体があり、地面はえぐれ、木々が倒されていた

 

「な・・・なんだこれ」

 

「・・・・・・!?」

と何かを見つけた

 

「・・・た、高杉殿!?」

 

勇作だった。関羽たちは勇作に向かって行く

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「高杉殿!」

 

勇作が振り向き・・・

 

「よかった・・・無事だったの・・・!?」

 

ガチン

 

なんと勇作は関羽に攻撃してきた。偃月刀で防ぐ

 

「な、なにをするのですか?」

 

「何だ・・・・・・・まだいたのか・・・」

 

「私です!分からないのですか?」

 

「・・・うるさい」

 

再度攻撃してくる

 

ガチーーーーーン

 

関羽は防ぐが

 

「(何て一撃だ!この前戦った呂布と同じいやそれ以上だ!・・・一旦距離を・・・)」

 

一旦離れようとするが

 

「一旦離れて、峰うちをする気か」

 

「なっ!?」

することを読まれ、動揺した

 

「・・・ふん!」

 

ブン!!!

 

カツーーーーーーーーン

 

重い一撃に関羽は後ろに飛ばされた

 

「・・・ぐっ!」

 

あまりの一撃に両腕は痺れ・・・偃月刀を落とす

 

「愛紗!大丈夫か!」

 

「な、なんとか・・・」

 

「お兄ちゃん!鈴々ことわからないのか!?」

 

「殺す・・・殺す・・・・・・・殺す!!!!」

と覇気を発動した

 

「「「「「「っ!?」」」」」

 

雰囲気が変わり全員息を呑む

 

「な!?何!この覇気・・・・・・」

 

「前より強い!?」

 

「ヤバい!集中しないと気を失うそうだ」

 

「黒騎兵は下がれ・・・」

 

「体の震えが止まらないのだ」

 

「・・・・・・・・」

 

勇作は六爪流の状態で歩いてくる

 

「・・・来るぞ」

 

関羽たちは構える

 

「・・・なるほど。弓で俺の足を狙って態勢を崩してから・・・一斉に来るか!」

 

「えっ!?(何で分かったの)」

 

「お前たちのやることなんて手に取るようにわかるよ・・・それにお前達の攻撃なんて目を瞑っても躱せる」

 

「ふ、ふざけるな!?」

攻撃してくるが

 

「・・・ふん」

目を瞑り躱した

 

「これならどうだ!?」

 

「・・・・・・」

 

また躱した

 

「なんだと?」

 

「だから言ったろ・・・ああそれと」

 

ヒラヒラヒラ

 

後ろから飛んできた矢を躱した

 

「奇襲も効かないよ」

 

「そ、そんな!」

放った矢を後ろを向いたまま躱した

 

「なめるな!!」

夏候惇が再度攻撃するが

 

「・・・ふん」

簡単にさけ、お腹にパンチをする

 

「ぐは!」

 

「哀れなり、弱きもの!」

 

「げほ・・・がは!」

そのすさまじい衝撃に耐えられず、お腹を押さえ、その場にうずくまる

 

「お、お兄ちゃん」

 

「全員で止めるぞ!」

 

星と鈴々が仕掛けるが

 

「・・・・・・」

 

バシ バシ

 

二人の攻撃を素手で防ぎ、獲物をつかんだ

 

「なっ!」

 

「は、離れないのだ」

二人は離れようとするが、全く動かなかった

 

「今なら」

紫苑は勇作の向けて矢を放とうとする

 

「(ふーん。矢を放って俺の手から二人を解放する算段か)」

覇気で読み

 

「おりゃー!!」

勇作は両腕を交差させる

 

「え?」

 

「にゃ!!」

 

あまりの突然のことに反応できす、二人はぶつかった

 

「せいや!!」

 

そのまま二人を投げた

 

「ぐは!」

 

「げほ!」

 

「きゃあ!」

 

星は地面に叩きつけられ、鈴々はそのまま紫苑にぶつかった

 

「星!!鈴々!!」

 

「いい加減に目を覚ませ!」

翠や槍で突撃してくる

 

「愚かだな・・・MAGNUM STRIKE!!」

刀を回転させながら左手から突進してくる

 

「な!」

何とかガードするが

 

「ぐは!」

あまりの衝撃に後ろに飛ばされ、壁に背中からぶるかる

 

「馬超!!」

 

「よそ見は禁物!」

勇作はそのまま右手で関羽にも攻撃する

 

MAGNUM STRIKEは左手→右手の2連撃である

 

「しまっ!」

 

ガチン

 

なんとかガードするが、同じように後ろに飛ばされ、翠にぶつかった

 

「だ、大丈夫か」

 

「な、何とか」

 

関羽たちは何とか立ち上がった

 

「・・・・・・・・」

勇作はそれを見て、関羽たちに向かう

 

「待て!」

 

「ん?」

後ろを振り向くと、夏候惇がふらふらしながらも自分に武器『七星餓狼』を構えた

 

「まだ終わって・・・」

 

ブン

 

勇作が刀を振る

 

「は?」

 

すると信じられないものが目に映った。自分の持っている武器が持っている所から消えたのだ。

 

チャリン

 

音と共に、視線を向けると七星餓狼が落ちていた。そして気づく。消えたのではない

グリップから5センチ上が切られたのだと

 

「そ、そんな」

体がすくみ、その場に尻餅をつく

 

「・・・まず貴様から」

 

覇気を纏った応龍が青くなる。そして夏候惇に向かう

 

「まずい!?」

 

関羽たちが向かうが

 

「・・・邪魔・・・X-BOLT!!」

 

Xの字に斬撃が飛んでくる。以前よりも威力をまして

 

ガツ―ーーーーーン

 

「ぐっ!」

 

「にゃにゃにゃ!?」

 

「ちっ」

 

「うわ!」

 

「きゃあ」

 

全員の武器が弾かれ・・・後ろに飛ばされた

 

「・・・邪魔ものは消えた」

 

夏候惇に向かう

 

「やめてください高杉殿」

 

「もう賊はいないのだ!鈴々達がやっつけたのだ!」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

「そうですぞ・・・もういいのです」

 

「もうやめてくれ!勇作のそんな姿見たくねえ!」

 

「・・・勇作さん、もう戦う必要ないのです」

 

「・・・・・・・・あれ?俺は・・・・・・・あああああ」

 

自分を取り戻した勇作はこれまでのことを思い出していた

 

「・・・俺は・・・俺は・・・」

 

勇作は膝から崩れる

 

「・・・・・・俺は・・・・・・・俺は」

 

すると関羽が勇作を抱きしめる

 

「・・・か、関羽殿」

 

「もういいのです・・・貴方は村を守ったのです」

 

「けど俺は・・・・・・」

 

「いいのですよ」

 

「・・・・・・」

 

「勇作、思いっきり泣いた方が楽になるぞ」

 

「・・・ごめん・・・みんな・・・俺」

 

「いいのだ」

 

「そうですよ」

 

「はい・・・」

 

「うわあああああああああ!!!」

 

勇作は思いっきり泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、朝になった

 

「夏候惇殿、ありがとうございました」

 

「本当助かったよ」

 

「曹操殿には改めてお礼に伺います・・・」

 

「それはやめといたほうがよいでしょう。また閨に引っ張り込まれますよ」

 

「っ!?」

 

「夏候惇殿、本当にすいませんでした」

と頭を下げる

 

「・・・・・・」

 

「俺、賊たち殺した後訳が分からなくなってしまって・・・」

 

「初めて人を殺めてしまったのです。無理もありません」

 

「・・・・・・けど」

 

「今度、私たちの所に来たとき、私と手合せください・・・それで十分です」

 

「・・・・・・・・・・ありがとうございます!!この恩は必ず・・・」

 

「引き上げるぞ!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

そして去っていった

 

「黄忠殿もありがとうございました」

 

「いいえ、少しでも恩返しできたのでうれしいです」

 

「ところでなんで星は何で華蝶仮面になってのだ?」

 

「うむ、実はお主たちと別れてから私達は空から落ちてきた光の球に当たって、一度死んだのだ」

 

「「「「「「「えええええええええええええ!!!!」」」」」」」

 

「その光の球は実は天からの使いらしく『申し訳ない事をした、そのかわり私の命を君に与えよ、私と一心同体となって君達と天下のために戦いたい』とそうして新たな命を得られた私が目覚めると枕元にこの仮面があり、それ以来、私は華蝶仮面となって正義のために働いていたのだ」

 

「何と不思議・・・・」

 

「いくらなんで嘘はだめだよ(というか今のウ○トラマンと同じだろう)」

 

「おや・・ばれましたか・・・・」

 

ズコ!!!!

 

勇作以外は、ずっこけた

 

 

「相変わらずだな・・・星」

 

「みんなごめん!」

 

勇作はみんなに向かって頭を下げた

 

「もういいのですよ」

 

「けど・・・」

 

「それよりも服を着替えませんか」

 

勇作はさきの戦で服だけでなく髪の毛には返り血がついていた

 

「・・・そうですね」

 

「じゃあ私が洗濯しますね」

 

「ありがとうございます」

 

「なら、私と一緒にお風呂に入りましょうか・・・」

と腕に抱き着く

 

「せ、星!?」

 

「な、なにをしている!」

 

「おや、顔が赤いぞ。愛紗」

 

「う、うるさい」

 

これからギャーギャアー騒いでいたのだった

 

 

 

 

劉備率いる義勇軍が村に戻ってきたのはそれから3日ばかり経ってからのこと。もとより無駄な策だった上、関羽、馬超の勇将をかいては成功するはずもなく無様に敗れた劉備は朝廷の威信を傷つけたと何進から強い叱責を受けました。結局曹操の策が入れられ反乱は見事に静まりました

 

 

「いやー、無事で何より」

 

そう言うが勇作たちは劉備に冷たい視線を与えた

 

「勢ぞろいでお出迎えとは痛み入る。ほお私の知らない・・・新顔も・・・・ん!?・・・げ!!黄忠、なぜお主がここに!!」

 

突然、劉備が紫苑の顔を見て驚いた

 

「どうして私の名を・・・それにその剣・・・・どこかで」

 

紫苑は劉備の腰につけている黄金の剣に注目した。すると・・・・

 

「あっ悪い人!!」

 

「どうしたの!!」

 

「や・・・やべぇー!!!!!」

 

劉備は逃げようとするが

 

「・・・何処に行く」

 

勇作が喉元に応龍を翳す

 

「ひい」

 

「ありがとうございます」

 

「いえ・・・」

 

「黄忠殿、いかがなされましたか?」

 

「なんで劉備は逃げようとしたのだ?」

 

「関羽さん、あいつは娘を璃々を誘拐し、わたしに暗殺させようとした一味の黒幕なのです」

 

「「「「ええええええええ!!!!!」」」」

 

「おそらく、らた業めいたの悪事だけ飽き足らず、世の乱れに乗じて、ひと旗挙げようとしたのでしょう。おそらく中山靖王の末裔というのは真っ赤な嘘。劉備という名も本当か・・どうか・・・」

 

「よかったな。あんな奴に唇奪われなくって」

 

「み、み、見てたのか!?」

 

「もうチョイのところで・・・突き飛ばちゃうんだからな・・・」

 

「そ、それは・・・」

 

関羽が赤くなっていると・・・

 

「おいこいつどうするんだよ・・・」

 

「うううううう」

 

「そうですね・・・たっぷり仕返しをしなくては・・・」

笑顔になりながら近ずいてくる

 

「(ま・・・まずい・・・こうなったら)あ!あれは何だ!?」

 

「「「「「「ん?」」」」」」」」

全員が指差すほうを見る

 

「今のうちに・・・」

 

逃げようとする・・・・・・が

 

「古臭いよ・・・」

 

勇作だけは引っかからない

 

「な!?」

 

もう終わりと思ったその時

 

「みなさん!お花見の準備ができましたよ」

 

と孔明が来た

 

「ん?」

 

その声に勇作は気を緩める

 

「今だ!?」

 

その隙に馬に乗り逃げた

 

「げっ!?しまった」

 

そして見えなくなった

 

「・・・・・・・すいません」

 

「・・・・・・・・・・いえ私も油断しました」

 

「あの・・・どうしたのですか?」

 

「何でもありません・・・さあ!お花見をしましょう」

 

そして、全員はお花見を始めた

 

大食い勝負をする鈴々、翠、

 

酒を飲む星、紫苑

 

シュウマイを食べさせっこする朱里、璃々

 

桃の花を見つめる愛紗、勇作

 

璃々を加えた鈴々・張飛・義勇軍は駆けまわる。調子に乗りすぎてしまったため、関羽にお仕置きされる

 

同じころ、花見を楽しむ、曹操、夏侯淵、荀彧、(夏侯惇はお留守番)

 

いたずらばっかりする孫尚香を追いかけまわす二蕎。それを温かく見る蓮華、思春

 

陸遜がテラスにやってきて、そこには月夜を見て酒飲む孫策、周喩の姿があった

 

クマに乗って宝探しを始める袁紹、文醜、顔良

 

恋、華雄が仕合をしていると、セキトが恋に近づいてじゃれる。華雄も触ろうとするが、ほえられたりするであった。それを笑顔で見る董卓、賈詡

 

大食い大会で勝利する季衣

 

メイド執事喫茶で働く張遼

 

自分が活躍している夢を見て、寝ている公孫賛

 

孔明の手紙を読む水鏡

 

そして、木によっかかている勇作の腕に抱き着いている鈴々と関羽を星たちは眺めていた

 

「愛紗、お兄ちゃん、これからも、これからもずっと一緒なのだ」

 

「なんたってお前は私の妹だからな」

 

「ああ・・・けど何で腕に・・・」

 

「良いじゃないですか・・・今はこうしていたいのです」

 

「鈴々も・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「羨ましいのか馬超」

 

「な、私は別に・・・」

 

「璃々もしたい」

 

「あとでしてもらいましょう・・・ねぇ・・・孔明さん」

 

「はわわ・・・・・は・・はい」

 

花咲き誇る桃園で誓いを新たにした勇作と関羽と張飛。そして、3人の元へと集った無双の乙女や行く手にはこれから何が待ち受けているのでしょう?そのはなしはいずれまたどこかで・・・・・・



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真・恋姫†無双
第四十八席 英雄、賊退治をするのこと


アニメ、第二期です
では、どうぞ


時は二世紀も末のころ・・・・・乱世に蔓延る悪を切り裂かんと美しい黒髪をなびかせ、青竜堰月刀を振る、関羽。前の世界から転生してこの時代にきた高杉勇作。そしてその勇作達と堅い兄妹の契りを交わした張飛。不思議な運命に導きから勇作達の元へ集った、趙雲、馬超、黄忠、そして孔明。無双の姫達と転生者の物語が今再び!

 

 

 

とある谷

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

そこでは戦が行われていた

 

 

 

「どー!!村を襲う賊共め、この錦馬超が相手をしてやるぜ!!」

 

賊を打ち倒していく翠

 

「うりゃうりゃうりゃー!!鈴々様のお通りなのだ!!邪魔なのだ!!

 

同じく、賊を打ち倒していく鈴々

 

「出てこい、大将!!鈴々と勝負するのだ!!」

 

賊達は狭い谷まで動けずにいた

 

 

「ちきしょう、これでは身動きが・・・・」

 

「このままじゃ先方は総崩れですぜ・・・」

 

「狭い谷に誘い込んだのは罠だったなんだな・・」

 

「一旦、退くぞ!!広い所に出て反撃だ!!」

 

賊達は撤退し始めた

 

「こらー、逃げるな!!皆、追撃するのだ!!」

 

「張飛、待てよ」

 

「なんで止めるのだ!!今が好機なのだ!!」

 

「って孔明の策を忘れたのか?」

 

「あっ、そうだったのだ」

 

「後は皆に任せようぜ」

 

「うん」

 

その頃、逃げ出した賊達を紫苑が率いる弓兵部隊が待ち構えていた

 

「うふふ・・・孔明ちゃんの読み通り・・・こっちに逃げてきたわね」

 

そして・・・

 

ドンドンドン

 

「ん?」

 

「賊共よ、武器を捨てて下ればよし、刃向かうとなれば・・・黄忠の弓の餌食となれ!!」

 

賊達を撃退に成功した

 

 

 

「お頭、伏兵が・・・」

 

「くそ、はめられたか・・・」

 

ドンドン

 

「銅鑼?」

 

「銅鑼?」

 

すると銅鑼が鳴らされた。その上には星がいたそして・・・・・

 

「今だ!!」

 

星の指示で丸太が落とされた

 

 

「どわあああああ!!!走れ!!!」

 

「はあああああああああああ!とお!地獄への道案内、この趙子龍が務めてやるぞ!!」

 

またも賊を撃退することが成功

 

「もう俺達しか残っていないんだな」

 

「うるせぇ!!」

 

「お頭・・・前・・・」

 

そこに『関』の旗が見えた。

 

「関の旗・・・ってことは・・・げぇ!!関羽!?」

 

「乱世に乗じて民を虐げんとする賊共め・・・我が青竜堰月刀の・・・・錆となれ!!」

 

 

 

 

 

別の場所

 

「筆頭!」

 

「ん?」

 

「関羽殿から敵の大将を討ち取ったと報告が・・・」

 

「そうか!(敵もほとんどいないし・・・これで終わりか)」

 

勇作がいて、報告を聞いた。そして覇気を使い状況を確認した

 

「全軍に通達。負傷者の治療に当たり、投降したものを捕えよ」

 

「はっ!?」

 

勇作の指示を聞き、兵は去った

 

「・・・・・・・・・・また声が消えたな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その夜、屋敷では宴が行われていた。全員はごちそうと酒に堪能していた

 

「いやあー、この辺り一帯に巣くっていた賊もほとんど退治されて、めでたい限り、これも全て御使い様と皆様のおかげと村民一同感謝しております」

 

すると庄屋は孔明の所に向かった

 

「とりわけ高祖劉邦を助けて漢の礎を築いた陳平にも勝るとも劣らず、孔明殿の知恵の数々、この庄屋、真に感服いたしました」

 

「そんな・・私なんて・・まだまだ」

 

孔明は顔を真っ赤になって照れた

 

「そう謙遜することはない・・・我ら義勇軍の勝利は孔明殿の策の多い所なのは事実なのだから・・・」

 

「まあ、愛紗が一番おいしいところを持っていく場合が多いのはちと不満だがな・・・」

 

すると翠が星のメンマを取ろうとした。

 

(ギロリ!!)

 

「げっ!!」

 

「(おい・・・目が赤く光っていたぞ・・・)」

 

「いやいや関羽殿と並んで趙雲殿、馬超殿、黄忠殿と我が桃花村の義勇軍はつわもの揃い!!」

 

「ん?鈴々が入っていないのだ!!」

 

鈴々は自分がいないことに怒りだそうとするが

 

「なかでも!!戦場を豚に乗って駆け抜ける、張飛殿の姿は勇ましく、兵達に猛豚将軍と呼ばれているとか・・・」

 

「にゃははは、そんなこと言われると照れるにゃー」

と照れ始めた。

 

孔明は豚姿の鈴々を想像して笑っていた

 

「(いや・・・別、照れる所じゃ・・・)」

 

鈴々はシュウマイを取ろうとしたが・・

 

「隙あり!!」

 

先に翠が取っていた。取り合っているうちに最後に手に入ったのは・・・

 

「よっと」

 

勇作だった

 

「あ!お兄ちゃん」

 

「璃々ちゃんも見ているから行儀の悪いことはしないの・・・」

 

「悪かったよ・・ごめん」

 

「わかったのだ・・・」

 

そう言うと座った

 

「しかしやはり一番なのは」

と勇作に近ずき

 

「天の御使いである高杉殿がこの義勇軍の大将となり皆を引っ張っていることですな」

 

「いや・・・別・・・大将なんて俺はそんなに」

 

「そう言うでないぞ、主」

 

「そうです!ご主人様が凄いのは皆が良く知っていますから・・・」

 

「鈴々もお兄ちゃんが大将でよかったのだ」

 

「実際、ご主人様が大将になってから軍に士気も高まっていますし・・・」

 

「そうだぞ。ご主人様」

 

「ええ」

 

「ご主人様、凄い」

 

「はは、ありがとう」

 

と孔明は鈴々のほっぺを見て

 

 

「あっ鈴々ちゃん、ほっぺに何かついていますよ」

 

「よすのだ朱里・・・やめるのだ・・・自分でやれるのだ・・・」

 

そんな二人の様子を見た璃々が・・・

 

「鈴々お姉ちゃん,子供みたい」

 

「これ璃々」

 

「ん?」

 

「いくら親しい相手でも相手から許しを得ずに真名を呼んじゃ駄目よ。ちゃんと張飛お姉ちゃんと呼びなさい」

 

「えっー、いつも鈴々お姉ちゃん、自分のこと鈴々って言っているよ」

 

「それでもです!!許しも無しに呼んだりしたら何をされるかわからないのよ」

 

「(・・・確かに・・・そうだな)」

 

「べつにいいのだ!!」

 

鈴々が立ち上がった

 

 

「璃々はもう家族のようなものみたいだから真名で鈴々って呼んでもいいのだ」

 

「よかったわね、璃々」

 

「うん!!鈴々お姉ちゃん、大好き!!」

 

「(楽しそうだな・・・)」

と思っていると

 

「さてと・・・主!」

と勇作に抱き着いた

 

「ちょっ!!星」

 

「な、ななな何をしている!」

 

「何とは・・・別に」

 

「あーーー!ずるい!鈴々もする!」

と言うと反対側に抱き着いた

 

「おい!鈴々!!」

 

「へへ・・・お兄ちゃん」

ギュウ

 

「・・・おや、私も・・・」

 

ギュウ

 

「(柔らかい胸の感触が・・・これはこれで・・・・・・)」

 

ギロ

 

「!?」

 

関羽が勇作を見らみつけた

 

「・・・・・・・・」

 

「(うう・・・久々の殺気が・・・・・・覇気で心読みたくない)」

 

 

それからはどんちゃん騒ぎであった



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第四十九席 馬超、悶々とするのこと

そして、宴のあと翠は風呂に入っていた

 

「ふぅー、賊退治の後の風呂はまた格別だぜ!宴の料理もうまかったし、言う事なしだな・・・・けど可笑しかったな・・・張飛の奴・・よりにもよって璃々に子供みたいって言われちゃって・・・」

 

すると・・鈴々と朱里のやり取りを思い出した

 

「ん・・・いつの間に張飛のやつ、孔明のこと真名で呼び合うようになったんだ?私がここに来てすぐの頃は違ったよな・・・つぅーか!!なんであたしのことは真名で呼んでくれないんだ!!仲間だろ!!友達だろ!!戦友だろ!!・・・いや待て落ち着け、私だってあいつのことを真名で呼んでないわけだし」

 

そして・・・風呂に潜ると

 

「そうだよな・・なんとなくきっかけがなくてまだ真名を預け会ってなかったんだよな。だからって今更改まってても事難しいし・・・・・」

 

考えると

 

「よし、風呂からあがったら『鈴々』って呼んでみるか!!案外、『馬超が鈴々の事を真名で呼んだから鈴々も馬超のことを翠って真名で呼ぶのだ!!』ってなったりしてな・・・うん」

 

そして、風呂から上がった

 

「あ~考え事していたらちょっとのぼせてちまったな・・・」

 

歩くとそこへ

 

「ん?」

 

「あっ、馬超!!」

 

「ギク!?」

 

鈴々と出くわしたのであった

 

 

「お風呂どうだったのだ?」

 

「あっ・・・・いい・・・・湯加減・・・だったぜ」

 

「じゃあ鈴々も入ってくるのだ」

 

「(絶好の機会じゃないか、ここでなにげなく鈴々って・・・)」

 

そう確信した翠は

 

「あっ、ちょっと、りん・・・」

 

「なんなのだ?」

 

「り・・・・り・・・・り・・・・・りん・・・・ぷはぁー!!!」

 

翠は真名で呼ぼうとしたが失敗した

 

 

「ちゃんと言ってくれないとわからないのだ」

と翠の顔に近づいた

 

ボン!!

 

「あっー、いや、なんでもない・・・なんでも」

 

「変な馬超なのだ」

 

鈴々そのまま風呂に向かった。そして、翠もとぼとぼして部屋に向かった

 

そして、部屋では

 

 

「まつ毛は多いほうがかわいいよな・・・おお、髪飾りを忘れていたぜ・・・おお、できた。これでよし!我ながらよく書けたじゃないか、張飛にそっくりだ」

 

書き上げたのは全然似ていない鈴々の似顔絵であった。そして、枕にかけると

 

「やっぱりいきなりは無理だよな・・・まずはこれをあいつだ思って、真名で呼ぶ練習だ」

 

早速呼ぶ練習を始めたのであったが

 

「り・・り・・り・・・り!・・・・・・・・ぶはっ・・・・・なかなか手ごわいな」

 

かなり苦戦していたのであった

 

「よっ!張飛!・・・ってこれならすんなり言えるんだよな・・・この感じで真名も・・・」

 

再び言おうとするが

 

「り・・・・り・・・り・・・り」

結局言えずにいた

 

 

 

 

 

その頃

 

「鈴々お姉ちゃん、関羽さん、おやすみなさい」

 

「お休みなのだ」

 

「お休み」

 

「明日は蹴鞠で遊ぶのだ!!」

 

「うん!」

 

部屋へ戻る途中、翠のやり取りを見たのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の夜

 

「え!?馬超達の様子がおかしい?」

 

「ええ、昨日の夜、璃々が馬超さんと孔明さんの部屋の前を通りかかったた扉の隙間から変な声が聞こえてきて気になって覗いてみたら・・・」

 

「はげしく指を使って、天国の階段を登っていたと」

 

「おい!星!」

 

星の一言に驚いた勇作。関羽は飲み物を吹いた

 

「それだったら別に心配ないのですが・・・」

 

「あ・・・いや・・・・黄忠殿」

 

「真に受けないで」

 

孔明は顔を真っ赤にし、鈴々は分からない顔をしていた

 

「実際は枕に変な御札を張り、その前に正座して何かぶつぶつ何か言っていたらしくて」

 

「うむ、夕食もそこそこに部屋に戻っていったが、今日一日、あ奴には珍しくあまり食が進まむようだったな・・・」

 

「昨日の夜はあまりよく眠れなかったようですし、今日もほとんど部屋に閉じこもりぱなし・・・・これはもしかすると気鬱の病かもしれませんね・・・」

 

「え!?病気!?」

 

「聞くところによると・・・」

 

何かを言おうとした時

 

「西涼の民は人馬一体となって、広大な野を駆けまわり、狩りでとらえた獲物を生で頭からバリバリとかじる生活を送っているという、故にこうした里の生活はしょうに会わぬかもしれぬな・・・と言おうとしてるけど・・・そんなこと言ったら西涼の民から抗議の手紙がくるぞ!」

 

「!?何で分かりました?」

 

「顔にそう書いているから(本当は覇気だけどな)」

 

「え?」

 

「お母さん。星お姉ちゃんの顔に何か書いてあるの?」

 

「・・・書いてないわよ」

 

「与太はともかく、環境が変わって本人が気付かぬうちにうっ屈された気が蓄積され心の具合が悪くのはままあること・・・もしそうなら故郷に帰ってしばらく静養したほうがいいかもしれませんね」

 

「まあ、しばらく様子を見た方が良いと思うぞ」

 

「そうですね・・・ご主人様の言う通りにしましょう」

 

そのころ部屋では翠が鈴々の事を真名で呼ぶ練習をしていた。しかし相変わらず呼べずにいたのであった

 

「なんで肝心なことが言えないんだよ・・・・・・あーもう、ちょっと休憩しようぜ」

 

翠は昨夜のことを思い出した

 

『璃々は家族のようなものだから真名で鈴々って呼んでいいのだ」

 

「だったらあたしのことも真名で呼んでくれたって良いじゃん・・・・それともあいつはあたしのことをそんな風には思ってくれないのかな?・・・ああもう何で言えないんだよ!ご主人様の時はすんなり言えたのに・・・・・・・・・・・ご主人様」

と思っていると

 

「馬超・・・」

 

「ん?」

 

鈴々が入ってきたのであった。翠は慌てて、鈴々の似顔絵を隠した

 

「な・・・なんなんだよ?何かようか?」

 

「ちょっと話があるのだ」

 

「話ってのは何だ?・・・り・・り・・・」

 

「馬超、西涼に帰ったほうがいいのだ」

 

「!?」

 

「ここにいるのはよくないから帰ったほうがいいって皆言っているのだ」

 

言葉が足りなかったので・・・翠は勘違いをしてしまった

 

「なんだよ・・・それ・・・あたしがいなくなったほうがいいって言うことかよ?」

 

「そうじゃなくって鈴々は馬超が西涼へ帰ったほうがいいって・・・」

 

「同じだろ!!」

 

「同じじゃないのだ!!」

 

「じゃどう違うんだよ!!」

 

「それはつまり・・・帰るというのはいなくなるっていうことだけど・・・いなくなったほうがいいというわけじゃ・・・・」

 

「出でけ!!」

 

「出でけって何なのだ!!せっかく鈴々が心配しているというのによ!!」

 

「うるさい!!うるさい!!お前の話なんか聞きたくない!!出でけ!!出でけ!!」

 

その態度に怒った鈴々は・・・

 

「分ったのだ!!出ていくのだ!!」

 

出ていたのであった。

 

「ん?」

 

孔明は部屋から出てくる鈴々見て、部屋に戻ると

 

 

「馬超さん・・・今・・・?」

 

翠は横になっており、その床には破り捨てた鈴々の似顔があった



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第五十席 英雄、真名を預け合うのこと

翌日、外では鈴々が鍛錬をしていた。そのそばには璃々がいた

 

「鈴々お姉ちゃん・・・」

 

「なんなのだ!?」

 

「馬超お姉ちゃんと喧嘩した?」

 

璃々の一言に鈴々はずっこけた。そう、二人の関係はより悪化していた

 

「こ・・・・子供には関係ないのだ」

 

「むぅー、そうなんだ。せっかく仲直りの方法を教えてあげようと思ったのに」

 

「え!?どんな方法なのだ?」

 

「教えてほしい」

 

「うんうん」

 

「じゃあ教えてあげる。あのね、始めははほっぺにチューしてそれから・・・」

 

「え!?」

 

「お父さんがまだ生きていたころ、お母さんと喧嘩した時があったんだけどそれしたらすぐに仲直りしたよ」

 

「そうじゃあ・・・鈴々と馬超も・・・」

 

「絶対仲直りできるよ!だから仲直りしたらまた璃々と遊んでね」

 

「合点なのだ!!」

 

 

 

 

そのころ、翠は河原で横になっていた

 

 

「本当に・・・西涼に帰えっちまおうかな・・・」

 

空を見ながら言っていると

 

「あっー、こんなところにいたのだ!!」

 

鈴々がやってきた。翠はそっぽを向くが・・・

 

「馬超、馬超ってば!!」

 

「なんだよ!!」

 

「馬超・・・」

 

「な!なに!!」

 

最初に翠に、チューをしたのであった。チューされた翠は

 

ボン!!

 

顔を赤くなってしまったのであった

 

「馬超・・・」

 

「バカ!!」

 

「!?」

 

「馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿!!」

 

そう何度も言うと翠は森へと向かった

 

「なんだよ、なんでいきなりあんなことを・・・なんで、どうして・・・くっそー、なんかもう訳わからなくて、頭が沸騰しそうで・・・・もう、もう・・」

 

前見ていないまま走り出していると

 

ゴン!!!!!

 

木にぶつかって気絶してしまったのであった

 

 

 

 

 

 

そのころ、鈴々はふてくされた顔になって帰っていた

 

「まったく、何が仲直りの方法なのだ!!言われたとおりにやったら余計に怒らせたのだ!!これだから子供の言うことはあてにならないのだ!!」

 

 

 

 

 

そして、夕方になった。夕食時になったので全員が集まっていた。翠は除いては

 

「馬超さん、遅いですね。他の時はともかく馬超さんが夕食の時間に遅れたことなんてこれまでなかったのに・・・」

 

「山の中で行き倒れてて、また三日草に寄生されていたりしてな・・・」

 

「!?」

 

「趙雲さん、変なこと言わないでください!!」

 

「まあ、あやつのことだから大丈夫だと思うが・・・」

 

「けど・・・朝も少し様子がおかしいようでしたし・・・」

 

「とはいえ、いくら気鬱の病が生じた所で山に分け入って首をつるわけではあるまい・・・」

 

それをきいて驚き

 

「山で!!」

 

「それはそうですけど・・・」

 

「ちょっと探してくるのだ!!」

 

「探してくるってどこを・・・っておい!!」

 

翠をさがしに行ったのであった

 

「俺達も行きましょう!」

 

勇作達も探しにいった

 

「(覇気で場所がわかったし教えようとしたのに・・・慌てすぎだよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、翠は気絶していた。すると鈴々の声に気付いて、眼が覚めた

 

「おーい、馬超!!どこにいるのだ!!聞こえたら返事するのだ!!」

 

「いっつーー」

 

「馬超・・・首吊っちゃダメなのだ!!」

 

「なんだよ・・・」

 

「うーん、山の中に走っていったから山の中さがせば見つかると思ったのに・・・全然見つかんないのだ!!」

 

「相変わらずおおざっぱだな・・・・・ってあれは・・・・」

 

呆れる翠は鈴々のところに何かが向かってくるのが見えた

 

「ブヒィ!!ブヒィ!!ブヒィ!!」

 

それは大きなイノシシであった。イノシシは今まさに鈴々の所に向かっていた

 

「鈴々、危ない!!」

 

「あっ馬超!!」

 

「後ろ!後ろだ!!鈴々!!」

 

翠とはとっさにイノシシの前に立った

 

「カンカン!!」

 

「え!?」

 

「ブヒィ!?」

 

翠はきょとんとし、イノシシもうるんだ瞳となって足を止めた

 

「やっぱりカンカンなのだ!!」

 

「おい鈴々、カンカンって・・・」

 

「カンカンは昔、鈴々が飼っていたイノシシなのだ!!・・・・・・・・・ちっちゃいころからずっといっしょなのだ。でもじっちゃんが大人になったから山に返してやれと言われたから・・・泣く泣く返したのだ・・・まさかこんな所で会えるなんて感動の再会なのだ!!」

 

「感動はいいけど、本当に、昔飼ってた奴なのか?」

 

「もちろんなのだ。その証拠にこっちの脇の下に白い房が・・・・・」

 

イノシシの足を上げた。その脇の下には白い房が・・・・・・なかった・・・それをみて顔を青ざめた

 

「あっ・・・・ないのだ・・・・どうやらイノシシ違いのようなのだ・・・・」

 

「ブヒィ!!」

 

「逃げるのだああああああ!?」

 

「ブヒィー!!」

 

鈴々は翠を抱えて、イノシシから逃げていくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、イノシシから逃げ切った2人は這いつくばっていた

 

「何が感動の再会だ!!」

 

「あーいう繰り返しは基本中の基本だからしかたないのだ・・・」

 

「なんなんだよそれ・・・」

 

「にゃはははは・・・」

 

「やれやれこれだから鈴々は・・・・あれ?あたし、いつのまに張飛のことを真名で呼んでいる」

 

そういつのまにか鈴々の事を真名で呼んでいたのであった

 

「あのさ・・・あたし、その・・・真名で鈴々って呼んじゃっているけどいいのかな?」

 

「馬超がそうしたいなら・・鈴々はかまわないのだ」

 

「ん」

 

「だって馬超は鈴々の友達だから!!」

 

鈴々の言葉に翠は笑い始めた

 

「ははは、そっか、そうだよな・・・鈴々とあたしは友達なんだもんな!!」

 

「何で笑うのだ?」

 

「いや、ワリィ・・ふふふ・・・・」

 

「なんなのだ!!なんで笑うっているのか教えるのだ!!」

 

「まあいいじゃん、友達だから気にするなって!!」

 

すると後ろから

 

「ここに居たか」

 

勇作がきた

 

「お兄ちゃん!!」

 

「ご、ご主人様」

 

「皆、待っているぞ!」

 

そして3人はみんなの所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になると鈴々はこれまでのことを皆に話した

 

「なるほどそういうことだったのか・・・」

 

「まったく、そんなことで人騒がせな・・・」

 

「いいじゃありませんか。微笑ましくて」

 

「しかし、鈴々、馬超のことどうして自分から真名で呼んでやらなかったのだ?」

 

「だって・・・・星が・・・・」

 

「ギク!?」

 

「西涼の民は血のつながりのないものに真名で呼ばれると馬になるっていうから・・鈴々は馬超に馬になってほしくなくて・・・」

 

「お馬さんに!?本当!?お母さん、そんなことないよね・・・」

 

「趙雲!!!!」

 

めちゃくちゃ怒っていた

 

「いや・・その・・・すまん・・・ちょっとした遊び心がこんなおおごとになるとは・・・」

 

「(遊び心なのか?)」

 

「もう趙雲さんも趙雲さんですけど、璃々ちゃんもだませないような嘘を信じる鈴々ちゃんも鈴々ちゃんですよ・・・」

 

「そもそも私の真名を聞いた時のように無邪気に聞けばこんな騒ぎには・・・・」

 

ギロリ!!

 

「私が真名で星と呼ぶようになったら自分もそう呼びたいとしつこく頼んだからな」

 

「なんでも愛紗とお兄ちゃんと一緒がよかったのだ!!」

 

「どうでしょう?これを機会に改めてお互いの真名を預けあうというのは?」

 

「大賛成なのだ」

 

「そうしようぜ」

 

「異論はない」

 

「いいですわね」

 

「璃々も璃々も」

 

「しかし、あまりに年上の方を気軽に真名で呼ぶのはいささか気が引けるな・・・」

 

「関羽さん、何が言いたいのかしら?」

 

「いや、べつその深い意味は・・・・」

 

「(こえーー!目に光がなかったぞ!今)それじゃ俺の事も真名で呼ぶのかな」

 

「いや!主のことは主と呼びますよ」

 

「やっぱり」

 

「そうですよ!ご主人様」

 

「貴方はこの義勇軍の大将で私たちはあなたについて行っているのです」

 

「あの時、そう呼んでよろしいと言っていたではありませんか。ご主人様」

 

「そうだぞ!ご主人様」

 

「まあ・・・そうだけど」

 

 

「(皆も気になっていると思うけどなぜ俺がこう呼ばれているのかというと・・・それはすこし遡る)」

 

 

 

次期は皆でお花見にをした翌日

 

 

 

「いやーまさかあの劉備殿が偽物だったとは・・・庄屋も焼きがまわったようですな」

 

「自分を責めるものではないのですよ・・・俺達だって騙されていたのですから」

 

「はあ・・・しかし・・・劉備殿が居なくなってはこの義勇軍の大将は誰が・・・」

 

「それならいますよ!高杉殿が!!」

 

「っ!?俺」

 

「そうですよ!この中では高杉さんが一番適任です」

 

「あたしもそう思うぞ!!」

 

「ええ、私も同じです」

 

「璃々も」

 

「・・・・・・・」

 

「おお、天の御使いである高杉殿が大将となれば心配ありませんな・・・どうかこの義勇軍の大将になってくれませんか?」

 

「・・・・・・・・・・どこまで出来るかわかりませんが、俺でよければ、やります」

 

「おお、ありがたいです」

 

「なら・・・勇作殿」

 

「ん?」

 

「私は貴方のことをこれからは「主」と呼ばせて頂きます」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「お、おい星!いったい」

 

「主がこの義勇軍の大将になられたのならそう呼ぶのが自然でしょう」

 

「でも・・・俺なんかで」

 

「前には申しましたよ・・・仕えるべき主はもう決まっていると」

 

「星」

 

「なら私は「ご主人様」と呼びましょうかしら」

 

「紫苑!?」

 

「璃々もご主人様と呼ぶ」

 

「ちょっ!?」

 

「な、なら、わたしも・・・」

 

「翠!?」

 

「おい・・・高杉殿が困っているではないか」

 

「愛紗はどうするのだ?」

 

「わ、私は・・・・・・・」

 

勇作をみて

 

「私もご主人様と呼ばせて頂きます」

 

「え!?」

 

「鈴々はお兄ちゃんもままでいいのだ」

 

「わ、私もご主人さまとお呼びましゅ」

 

「さあ・・・どうします!主」

 

「(断りずらい)」

 

そう思った勇作は

 

「好きに呼んで良いです」

 

こうして俺は「主」や「ご主人様」と呼ばれるようになったのだった

 

 

 

 

「という訳なんです」

 

「誰に話しているのですか?」

 

「いやなんでもない」

 

「では私から・・我が名は関羽、字は雲長、真名は愛紗。この真名、皆に預けよう!!」

 

「鈴々は張飛、字は翼徳、真名はもちろん鈴々なのだ!!この真名、皆に預けるのだ!!」

 

「あたしは馬超、字は孟起、真名は翠。皆に預けるぜ!!」

 

「我が名は趙雲、字は子龍、真名は星。この真名、皆に預けたい」

 

「私は諸葛亮、字は孔明、真名は朱里。この真名、みなさんに預けましゅ」

 

「私は黄忠、字は漢升、真名は紫苑ともうします。この真名、みなさんに預けましょう」

 

「璃々は璃々です!!」

 

「俺は姓が高杉、名は勇作という」

 

「あれご主人様?字と真名は?」

 

「俺の居た天の国のは字と真名は無いんだ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その言葉に皆、驚いた

 

「そうなのですか?」

 

「いや愛紗、鈴々に真名を預ける時に説明したよね」

 

「・・・すいません。ご主人様が真名を知らないと申していたので・・・聞いていなかったです」

 

「あ、そうなんだ・・・・・・まあ、それは良いとして・・・これを機により一層絆を深め・・・共に世のため民のために戦っていこう!!」

 

「「「「「御意!!」」」」」

 

「「おお!!(なのだ)」」

 

こうして、乙女と御使いの絆はより一層高まるのであった・・・すると

 

ぐうーーーーー

 

勇作以外、お腹が鳴る音がした。それを聞いた皆は笑った

 

「さて、そろそろ帰りましょうか・・・」

 

「その前に主?」

 

「ん?」

 

「食事が終わったら庭に来てくれませんか?」

 

「良いけど何で・・・」

 

「それはその時に話します。皆も来てほしい」

 

「ん?」

 

首をかしげる勇作であった



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第五十一席 勇作、覇気について教えるのこと

食事を終えて、勇作たちは庭に来ていた

 

「中庭に来たけど、どうしたの?星?」

 

「主にお願いしたいことがあります」

 

「お願い?」

 

「主の強さの秘密を教えてくれませんか?」

 

「秘密?」

 

「どういうことなのだ?星」

 

「皆も知っているだろう?これまでの主の戦いをその強さを」

 

「ああ、知っているが」

 

「私も手合せしたことあるが、武力で言えば私たちより強い、いや私たちが束になっても敵わないという事があの時の戦いでいやと言うほと理解した」

 

「確かに・・・あれは私もやれるかと思ったくらいだぜ」

 

「鈴々も」

 

「私もです」

 

「確かにそうだが」

 

「けど、それを知ってどうする気だ?」

 

「強くなりたいのです」

 

「・・・・何のために?」」

 

「民を守ることはもちろん主を超えるためにも・・・」

 

「俺を超える?」

 

「今のまま、戦っても勝てないことは分かります。だから少しでも強くなり武人として主に勝ちたいのです」

 

「・・・わからない」

 

「え?」

 

「・・・何でそこまで強さに拘る、強さの果てに何を望むんだ?」

 

「・・・・・・」

 

「星は今のままでも十分強いじゃないか・・・愛紗たちだってそうだよ。別に俺が教える必要なんて」

 

「お願いです!主!」

 

「え?」

 

星はその場で頭を下げた

 

「・・・・・・・」

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

「私からもお願いします!」

と愛紗も頭を下げた

 

「あ、愛紗」

 

「私も強くなり、この世の中を変えたいのです!民を守りたいのです!」

 

「・・・・・・」

 

「そして私も武人としてご主人様を超えたいのです・・・お願いです」

 

「あたしもお願いする」

 

「翠」

 

「鈴々もお願いするのだ」

 

「私もお願いします」

と他の人も頭を下げた

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

沈黙が流れる

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった。うまく教えることが出来るか分からないかもしれないけど教えてやるよ」

 

「っ!!ありがとうございます」

 

「でも、今日は遅いからあんまり長くは教えられないけどそれで良いか」

 

「はい」

 

「じゃあまずは・・・・・・・・・・・・・俺の強さに秘密から教えるよ」

 

「お願いするのだ!!」

 

「俺の強さ、覇気という力を」

 

「覇気?」

 

「覇気というのは生きているすべての者に潜在すると言われる物なんだ」

 

「すべての者に・・・」

 

「気配・気合・威圧と言った感覚を鍛えた力を覇気を言うんだ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、でも大半の人はそれに気づかず、あるいは引き出せそうとしても出せないことがあるんだ・・・」

 

「すごい力なのですね・・・」

 

「うう、何か心配になってきた」

 

「大丈夫だよ・・・じゃあまずは見聞色の覇気から教えるよ・・・じゃあ鈴々そこの木の棒で俺に攻撃してくれ」

 

「え?」

 

「いいから」

 

「でも」

 

「一回でも当てたらご飯おごるから」

 

「分かった!!やるのだ・・・うりゃあ!」

 

「・・・」

 

目を瞑ったまま避けた

 

「まだまだなのだ!」

と攻撃を続けるが・・・・・・・全然当たらない

 

「なんで当たらないのだ」

 

「これが相手の気配をより強く感じる力・・・見聞色の覇気だよ」

 

「見聞色の・・・」

 

「覇気?」

 

「ああ、これを高めれば視界に入らない敵の位置・数、また敵が次の瞬間何をするか先読みする事ができるだよ」

 

「じゃあ私の攻撃を簡単に避けたのも・・・」

 

「呉で甘寧の攻撃を避けたのも・・・」

 

「敵の伏兵を言い当てたのも・・・」

 

「ああ、すべてこの力のおかげなんだよ・・・・・・後、人の心が読めるから鈴々が今考えていることがわかるぞ」

 

「え?」

 

「いくら何でもそこまで・・・」

 

「(そうなのだ!わかるわけないのだ!・・・・・・・・ご飯食べられなかったのだ)」

 

「そうなのだ!わかるわけないのだ!ご飯食べられなかったのだっと思ってるような」

 

「!?・・・そんな」

 

「その様子じゃあ図星だな」

 

「本当に読めるのですね」

 

「これは戦において大きな成果を持ちますね」

 

「さすが軍師・・・朱里」

 

「相手の心を読むなんて・・・ある意味反則だな」

 

「そうでもないよ・・・次は武装色の覇気だ・・・体の周囲に見えない鎧のような力を作り出す覇気で何も着ていない状態でもこれを使えば攻撃を弾くことが出来るんだ」

 

「攻撃を弾く?」

 

「うん・・・・・・・・・・・・」

 

「隙やりなのだ!」

 

鈴々が仕掛けるが

 

「はっ!」

 

鈴々が持つ棒に手をかざすと

 

ガツーーーーン

 

弾かれた上に粉々に砕けた

 

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

その光景に皆、言葉を失った

 

「こんな感じにだ・・・武器なんかも素手で止めることも出来るぞ」

 

「じゃあ、前に許褚の攻撃を弾いたもの・・・・」

 

「呉で甘寧の攻撃を素手で止めたもの・・・・・・」

 

「剣が頭に当たったのに剣が砕けたのも・・・・・・すべてこの力が」

 

「まあ・・・そうだなこの覇気のおかげなんだ・・・後防御だけでなく攻撃も応用が出来るんだ」

 

「攻撃にもですか?」

 

「ああ・・・例えば・・・」

と勇作は木の棒を拾い木の前に立つ

 

「この棒でこの木を刺して貫通させることが皆に出来る?」

 

全員が横に首を振る

 

「普通はね出来ない・・・けど覇気を纏えば・・・・・・・・はあ!!」

 

勢いよく突くと貫通した

 

「「「「「!?」」」」」」

 

その光景に皆驚く

 

「まあ、こんな感じにだ」

 

「これも、ある意味反則だ」

 

「けど、いざって時には大きな効果がでますね」

 

「見聞色の覇気、武装色の覇気、一般的にはこの二つに覇気が基本だな・・・けど、まれにこんな覇気を扱う事が出来る人がいる・・・」

 

「なんなのだ?」

 

「相手を威圧する力、覇王色の覇気だ」

 

「覇王色の覇気?」

 

「皆も感じだことがあるはずだよ・・・これだよ」

と勇作は少し覇王色の覇気を出した

 

ゾク

 

「!?こ、これは」

 

「私と手合せした時の・・・」

 

「怖いと鈴々が感じた時の・・・」

 

「あ、あの時の威圧感」

 

「こ、これが」

 

「ああ、覇気の中でも特殊な種類の覇気で、数百万人に1人しかその素質を持たない・・・居るとすれば曹操や孫策みたいに王の資質を持つ者にしか扱えることが出来ないものなんだ」

 

「王の資質・・・」

 

「敵を威圧し圧倒的な実力差がある相手を気絶させる事も出来るんだ。上達すればその矛先を特定の人物だけに絞ることが出来る」

 

「気絶・・・」

 

「これは本人の成長でしか強くなることができないんだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「これが俺の扱う覇気だ・・・どう?」

 

「・・・・のだ」

 

「え?」

 

「すごいのだ!!お兄ちゃんは」

 

「たしかに」

 

「はい」

 

「いやいや、ここまでとは」

 

「凄いですよ、ご主人様」

 

「おれなんて大したことないよ」

 

「けど、お兄ちゃんは何処で覚えたのだ?」

 

「師匠から教えてもらったんだよ」

 

「師匠?」

 

「ああ、凄く強くて俺でも手も足も出ないほどの武人だ」

 

「そ、そんなにですか」

 

「ああ、でも暇さえあればエロいことしている変態だったけど・・・」

 

「え・・・」

 

「あのそれはいったい・・・」

 

「女風呂覗いたり女の着替え覗いたりとか・・・」

 

「エロエロ魔人かよ」

 

「はわわ!!」

 

「何驚いているのだ?」

 

「鈴々は知らなくていい」

 

「あらあら」

 

その後、解散し部屋に戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、愛紗は空を見ていた

 

「どうした?眠れぬのか?」

 

そこへ星がやってきた

 

「いや、そういうわけではないが・・・」

 

「平和なものだな・・・」

 

「ああ、だが・・・」

 

しかし、すぐに愛紗の表情が曇った

 

「何か気にかかることでもあるのか?」

 

「確かにこの辺りは平和になった。しかし世の中には苦しんでいる人々がいる・・・そう思うと、このままここにこうして居ていいかどうか・・・」

 

「また旅に出るか?」

 

「そうだな・・・それもいいかもしれん」

 

「分っている思うが、その時は私も付いていくぞ」

 

「それはかまわぬが、また途中でいなくなったりするなよ」

 

「鈴々も一緒なのだ!!」

 

「「ん?」」

 

「鈴々はずっと愛紗とお兄ちゃんと一緒なのだ!!」」

 

寝言を言う鈴々であった

 

「旅か・・・」

 

「さて、寝るとしますか・・・」

 

「おい、星・・・何処に行く?」

 

「何処って自分の部屋にだが・・・」

 

「嘘を言うな・・・今、ご主人様のいる右側に行こうとしただろ・・・星の部屋は左だ」

 

「おや・・・ばれましたか」

 

「何しに行くつもりだった?」

 

「いや・・・主と一緒に寝ようかと」

 

「な、ななななな・・・何を言っているのだ!!」

 

「何を赤くなっている・・・・・・・・・・なあ愛紗」

 

「なんだ」

 

「愛紗は女として主が好きではないのか?」

 

「何を言っている!!ご主人様は尊敬する人であって別に・・・そう・・・いう・・・」

 

「好きなのか」

 

「・・・そういうお主はどうなのだ」

 

「私は好きだ・・・女として主に私のすべてを捧げてもいいくらいにだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

星の言葉に驚いているが目はまっすぐな眼差しをしていた

 

「まあ・・・他の者も主の事を好きになったとしても負けるつもりはない」

 

そう言いながら部屋に戻って行った

 

「・・・・・・・女として・・・・・・か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、桃花村へ向かっている乙女がいた

 

「あのすみません・・・・」

 

「へい、なんでしょう?」

 

「その・・・桃花村へはどっちに行けばいいのでしょう?」

 

「桃花村?・・・・・・ああ、あの義勇軍と天の御使いがいる・・・」

 

「はい」

 

店主に教えられ乙女は桃花村に向け歩き出した



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第五十二席 劉備、桃花村を訪れるのこと

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今後とも、よろしくお願いします


ある日

 

朱里は書店を訪れていた。中には二人組の男性客と、奥には眼鏡をかけた老人風の店長がいた。

 

「すいませーん」

 

「ん?ああ、頼まれてた本なら届いてるよ」

 

店長は品物を後ろの棚から出そうとし、朱里はポーチがらピンクの布を取り出す

 

「ええっと・・・(初級房中術・入門)に(図解・体位百科)だったね?」

 

ピシ

 

黒く固まり、二人組の男性客は、朱里を見る

 

「はわわっ!!書名は言わなくていいですから!!」

 

朱里は顔を真っ赤にして、あたふたと慌て出す

 

「はい、これ」

 

「あ、ありがとうございましゅ!!」

 

本が出されると、手元にあるピンク色の布で素早く包んだ。

 

『お前知ってるか?公孫賛が身に過ぎた宝剣を手にいれたって話』

 

「っ?」

 

他の客人の話が朱里の耳に届いた。

 

『公孫賛?誰だそれ?』

 

『ほら、幽州の太守で、白馬将軍って自称してる』

 

『あ〜、あの影の薄い・・・』

 

『聞いた所じゃ、退治した賊の隠れ家の中から、大層立派な剣が見つかって、きっとこれは由緒ある物に違いないって』

 

客が話している間に、朱里は代金を店長に支払う。

 

「毎度あり」

 

「また来ますね」

 

「あいよ」

 

朱里は布で包んだ本を抱え込み、店を出る。

 

『そんな話より、張三姉妹って知ってるか?めちゃめちゃすごい人気らしいぜ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里は急いで合流場所である店へと移動する。店では、勇作、愛紗、鈴々、星が料理を食べていた

 

「お待たせしました」

 

「いや。しかし、書店に行くだけなら、何も別行動をする事はなかったのではないか?それぐらいは付き合ったのに」

 

「あ、でもほら、皆さんを私の趣味に付き合わせるのは悪いですし・・・」

 

愛紗から問われると、朱里は、あははっと誤魔化す様に笑う

 

「・・・・・・・・・・」

 

勇作は朱里をじっと見ていた

 

「・・・・・・あの、ご主人様、私の顔になにかついているのでしょうか?」

 

「・・いや・・・そういう訳では・・・」

 

「・・・まさか・・・覇気で」

 

ソーーー

 

勇作は目をそらす

 

ボン

 

朱里は顔を真っ赤にし

 

「ご主人様!!」

 

「いや!俺だって、聞くつもりは・・・たまたまであって・・・」

 

「それでも聞いたことに変わりありません!」

 

「落ち着・・・・・・!!」

 

何かに気付き、立ち上がる

 

「どうしたのだ、お兄ちゃん?」

 

「向こうの森で、人が襲われそうになっている!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の外れの森林の中、ピンク色の髪の少女が危機に陥っていた。彼女の目の前には、お馴染みのアニキ、チビ、デブの三人の賊が立ち塞がっている。後ろには身の丈を軽く越える大きな岩が置いてある

 

「な、何なんです?あなた達。お金なら、ないですよ?」

 

「ま、確かに金目のモンは持ってなさそうだなぁ。けどその代わり、良いもん持ってんじゃねぇか」

 

あの木は汚い笑みを浮かべて、少女のよく育った豊満な胸を見る

「「「ちちち」」」

 

賊三人はにやけながら少女に近づく。

 

「な、何をするつもりですか!?」

 

「別に痛いことしようってんじゃねぇんだから、そんなに怖がんなよ」

 

「そ、そうなんだな。むしろ気持ち良い事するんだな」

 

すると、少女は怯えながら、背負っている籠から筵を取りだし、丸めて一本の棒を作って構える

 

「そ、それ以上近寄ったら、この筵で…!」

 

「はぁ?そいつでどうしようってんだよ。観念しな」

呆れた風に言うと、少女は何を思ったのか、その場に座り込み、筵を頭から被る。

 

「ほ、ほうら、これで何処にいるのかもう分かりませんよぉ〜?」

 

「「「「頭隠して」」」

が全身を隠しきれていない。

 

「なめてんのかテメェッ!!」

 

「きゃああっ!!」

 

業を煮やしたアニキが筵を剥ぎ取る。少女は悲鳴を上がる

 

 

 

その時

 

「そこまでだ!!」

 

そこへ武器を構えた勇作一行が現れた

 

「なんだ、てめえら」

 

「冥土の土産に教えてやろう。この者こそしっとりつやつや下の毛が自慢の・・・」

 

【しばらくおまちください】

 

その後、星は愛紗に殴られてしまって、頭にタンコブが出来る

 

「テイクツー」

 

 

 

 

 

 

「冥土の土産に教えてやろう。この者こそ弱気を助け、強きをくじく、黒髪の山賊狩りだ!!」

 

ピンクの髪の少女は愛紗をじっと見た。そして賊達もビビり始めた

 

「お・・・お前が・・・」

 

「アニキ・・・・」

 

「上等じゃねえか・・・俺達でその自慢の下の毛をつるつるに剃り落としてやろうぜ!!」

 

「下の毛は余計だ!!」

 

「やっちまえ!!」

 

賊達は襲い掛かったが・・・

 

「はああああああああああああああああ!!!!」

 

横払いをし

 

「一振りかよ」

 

あっさり倒され、空に飛んでいく

 

「「「でも・・・気持ちいい」」」

と言いながら星になった

 

「Mか・・・おまえら」

 

 

「やれやれやっと片付いたのだ」

 

「ふむ、我らの活躍で再び平和が戻ったな・・・」

 

「なにもしてないだろう!二人は・・・」

 

「朱里、出てきてもいいぞ・・・私のつぼ漬けメンマは無事であろうな?」

と茂みから朱里が出てきた

 

「はいはい、割れたりしていませんよ・・・・・・星さん、全然戦っていないのにメンマのことより自分のたんこぶのことを心配してください」

 

「愛紗は気が短くていかん・・・」

 

「お前があんなこと言うからだろう」

 

そして、愛紗とは少女のところに向かい、手を掴み立たせる

 

「立てるか」

 

「はい、危ないところをありがとうございました」

 

「なに礼にはおよばん」

 

「そうなのだ!!あんなへなちょこども、鈴々にかかれば、ちょちょいのぷーなのだ!!」

 

「鈴々ちゃんも全然戦っていません」

 

「でも私を助けるために・・・あんな怪我まで・・・」

 

少女は星のたんこぶのことを心配していた。そして、星は愛紗を連れ出すと・・・

 

「愛紗、ここは突っ込むところなのか?」

 

「って私に聞くな!!しかし、この辺り一帯の賊は全て退治したと思ったら桃花村の近くにあんな輩がいるとは・・・」

 

桃花村という言葉に反応するかの様に、目を大きくする少女

 

「そうですね。恐らくは他所から流れてきた追い剥ぎ何でしょうけど、村の人達に注意する様、言っておいた方がいいかもしれません」

 

「あの〜もしかして、皆さんは桃花村の方なんでしょうか?」

 

「そうだが?」

 

「よかったぁ~実は私、桃花村に行く途中だったんですけど、さっき怖い人達に襲われて」

 

「そうだったか・・・」

 

「だがもう安心だ。桃花村はこのすぐ先だ。村まで、我々が案内しよう」

 

「重々、ありがとうございます」

頭を下げて礼を述べる。

 

「あ、申し遅れましたが、私の名前は劉備、字は玄徳と言います」

 

「劉備」

 

「玄徳」

 

「「「「ええぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」

 

「(こ、この子、本物の・・・劉備!!)」

 

「え?え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてここで、皆様にご説明!

 

そもそも、桃花村にて義勇軍を旗上げしたのは、中山靖王の末裔と称する劉備なる男!!

 

天下太平を願うその志に、感銘を受けた勇作らは、共に戦う事となったのですが、こいつがとんだ食わせもの!!

 

正義を唱えるは口先ばかり!

 

その正体は己が立身出世の為には民を犠牲にしても屁とも思わない卑劣漢!!

 

こんな外道とは付き合えないと、すっぱり袂を別った勇作達!!

 

更にはこの男!実は嘗て、黄忠の娘を誘拐した悪党一味の黒幕でありまして!!

 

それがばれるや否や、尻に尾を巻いて姿を眩ませたのでありました!!

 

 

 

(あの・・・水鏡さん・・・なんで顔を隠しているのですか)

 

私は水鏡ではありません・・・ナレーさんです

 

(声でまるわかりですよ!つかナレーさんってなんだよ!お父さんみたいに言うな)

 

はいはい・・・もどりますよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達は桃花村の客室にて、劉備にその男の事を伝えた。

 

「そうだったんですか。やっぱり、私の名前と素性を語っていたんですね・・・」

 

「えっ?」

 

「きっと、あの人に違いありません」

 

「あの人?何か心当たりがあるのか?」

 

「はい・・・・・・実は、私は年老いた母と二人。筵を織ってはそれを近くの町で売り、日々の糧を得ていたのですが・・・・・・・ある日、帰り道に峠の茶店で一休みしていると、隣に腰掛けてた若い男の人が話しかけてきて・・・・・・・」

 

「お嬢さん?」

 

「ん?」

 

「もしよろしければ、その御腰の物。少し拝見させて頂けませんか?」

 

「えっ?別に構いませんけど」

 

「うーん、これは素晴らしい!いやはや何とも大したものだ!刃の輝きも去ることながら、鞘の造りの見事な事。そしてこの柄の宝珠、いやはや全くもって素晴らしい!」

 

(その人があまりに褒めてくれるんで、私、つい嬉しくなって・・・この宝剣は我が家に代々伝わる物で、中山靖王の末裔であることを明かす物だと話してしまったんです)

 

「ほほう、中山靖王の・・・」

男は目を見開き、驚いた様子を見せる。

 

「ちゃんと系図もあって、私から何代か遡ると、中山靖王劉勝様の名前があるんですよ」

 

(茶店を出て暫く行くと、やがて人気のない崖道に差し掛かったのですが、さっきの人が後を追いかけてきて)

 

「いやぁ、申し訳ないが先程の宝剣。もう一度見せて頂けませんか?」

 

「はぁ、別に構いませんけど・・・」

 

またまた大事な宝剣を渡してしまった劉備。男は品定めするように見つめている。

 

「流石に中山靖王に所縁のある宝剣。見れば見るほど素晴らしい」

 

男は劉備の方を向く。

 

「所で劉備殿。御名前は先程お伺いしましたが、宜しければ字もお教え頂けますか?」

 

「玄徳です」

 

「劉玄徳ですか・・・良い響きだ」

 

「それはどうも・・・・・・」

 

「それではその名とこの宝剣、頂かせてもらうぞ!」

 

「えっ?」

 

ついに本性を表し笑みを浮かべた瞬間、劉備を崖から蹴落とした。

 

「てやっ!!」

 

「きゃあああああ!!!」

 

そのまま真っ逆さまに落ちていった。男は卑劣な笑みを浮かべたまま、宝剣を腰に携えてその場を去った。

 

(幸いにも途中で木の枝に引っ掛かり、何とか一命はとり留めたものの、家に帰って母に事の次第を話すと)

 

「阿備や。母はお前にご先祖のお心を教えてきましたね・・・」

 

劉備の母は筵を織りながら、劉備に語りかける

 

「時が来たら、世の為、人の為。剣を取って走路から立てばならぬぞ、と」

 

「はい・・・・・・」

 

母はにっこりと笑った瞬間。鬼の様な形相になった。

 

「えぇい!!情けない!!その御先祖のお心を代々伝えてきた大事な宝剣を奪われ、おめおめ戻ってくるとは!!」

 

(怒り心頭に走った母は、私の首根っこを掴むなり走り出して、家の側を流れる川へ思いっきり放り込み・・・それ以来、母はその時の怒りを思い出す度に私を捕まえては川に放り込むようにになってしまって)

 

「きゃあああああああ!!」

 

ドッボォーン!!

 

「う・・・・・・・」

 

ボコボコ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話終えた後、他一同は苦笑いを浮かべていた。

 

「な、中々、豪快な母上だな・・・」

 

「いやそれ・・・虐待になるんじゃ・・・」

 

「このままでは身が持たない。いつか溺れ死ぬと思っていた所へ、桃花村で私と同じ名前の人が義勇軍を率いていると、風の噂に聞いて・・・」

 

「成程・・・それで宝剣を奪って自分に成り済ました相手が、この村にいると思って訪ねて来た訳ですね」

 

「そこまで確信があった訳ではないですけど、他に手がかりもないので、藁にもすがる気持ちで・・・」

と話していると

 

 

「あーー劉備、ちょっと失礼」

 

「え?」

 

勇作は立ち上がり、ドアの立つと同時に

 

 

バン

 

扉が勢いよく開く

 

「劉備!かく」

 

「はっ!!」

 

バン

「きゃあ」

弓を構えたまま入ってくるが・・・勇作の覇気で弓が弾かれる

 

「何をするのですか!ご主人様!!」

 

「違う人物だよ!!」

 

「・・・え?」

その言葉に呆気にとられた表情をする

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、そうだったんですか・・・・・・・」

顔を羞恥に染めて、もじもじと内腿に手を入れている

 

「すみません。村の人達から劉備が来たというのを聞いて、頭にカァッと血が昇ってしまって・・・本当にごめんなさいね?」

 

「いえ、気にしないでください・・・」

 

「それにしても許せないのは劉備さんを語っていたあの男・・・もし見つけ出したら耳を削ぎ、鼻を落として目を潰し、時間をかけて生爪を一枚一枚剥がしてから三枚に下ろし!肩身を薄く切ってサッと湯通しにして、骨は油でカラッと揚げて!!」

 

悪魔の様な形相で身震いするほど恐ろしい事を語り出す・・・・・・皆一同、顔は青ざめて冷や汗をかいている。

 

「(怖えーーー、山姥か!!アンタは)」

 

「紫苑・・・みんなドン引きなんで、そのくらいに・・・・・・」

 

「あーあーあの時、無理してをでも追いかけてあの男捕まっていれば、劉備さんの宝剣を取り戻せたのに」

 

「それはしょうがないですよ。その時は皆さん、事情をご存知なかったんですし」

 

「あの、宝剣でちょっと思い出したんですが・・・」

 

「どうかしたのか?朱里」

 

「はい。今日、町の本屋さんで注文していた本を受け取った時、幽州の公孫賛さんが、身に過ぎた宝剣を手に入れたという噂を聞いたのですが、それってもしかして・・・」

 

「公孫賛・・・公孫賛・・・・・・あっ!白珪ちゃん!」

何かを思い出したのか、声を上げる。

 

「劉備さん、公孫賛さんをご存知なんですか?」

 

「ええ!!昔、同じ先生に付いて、一緒に学問を学んいたことがあって」

 

「公孫賛?何処かで聞いた名だな」

 

「思い出せないのだ!」

 

「星、お主はわざとだろ?」

 

「(あの人か・・・元気にしているかな)」

 

別の場所では

 

「ぶえくしょん!!今日はやけにくしゃみが出るな。どうやらだれかが私のうわさをしているようだな・・・最近、白馬将軍として名が売れて、やっぱり宝剣を手に入れたから運が向いてきたのかな?」

 

高笑いをする公孫賛。そばにいた白馬がため息をついていた

 

 

 

 

 

 

「賊の隠れ家で手に入れた宝剣が、劉備さんの探している物かどうかは分かりませんが、他に手掛かりがないのなら、訪ねてみる価値はあるんじゃないでしょうか?もしそれが劉備さんの宝剣で相手がお知り合いなら、事情を話せばきっと返してもらえるでしょうし・・・」

 

「そうですね・・・分かりました。じゃあ私、白珪ちゃんを訪ねてみます」

 

「といっても、今からだと日がある内に山を越えるのは無理だ。事に一人旅では、山中の野宿は危ない。今日はここに泊まっていってはどうだ?」

 

「そうだな・・・その方が良い」

 

「えっ?でも、そこまでお世話になるのは・・・・・・」

 

「ご主人様がそう仰っていますし・・・晩御飯、腕を振るいますから!知らぬ事とは言え、失礼を働いてしまった御詫びをさせて下さい」

 

「そういうことなら」

泊まることのした時

 

 

「劉備さん・・・失礼・・・パートツーです」

 

「え?」

 

勇作は紫苑の時と同様に扉の前に立つ・・・すると

 

バン

 

銀閃を突きつけようとする翠が勢いよく入ってくる。隣には頬をプクッと膨らませて怒っている璃々ちゃんがいる

 

「劉備!かく!!」

 

「よっと」

 

ベシ

 

勇作は覇気を纏った手で銀閃の先を上に払った

 

「うわ!!」

 

突然のことに翠は態勢を崩す

 

「なにをするんだよ!ご主人様!!」

 

「人違いだよ!!」

 

「「え?」」

 

そして二人は人違いだと知ると、呆気にとられた表情をする



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第五十三席 英雄、再び旅に出るのこと

一泊することになった劉備。今彼女は、屋敷の風呂場で体を安らいでいた。

 

「お風呂なんて久し振り・・・うふふ・・・お魚になった私・・・なんちゃって」

桃色の長髪をタオルでまとめ、湯に浸かっていた。

 

「えっと・・・黒髪が綺麗なのが関羽さん、お利口な方のチビッ子が孔明ちゃんで、そうじゃない方が鈴り・・・じゃなくて張飛ちゃん・・・言葉にしにくい雰囲気の趙雲さんに、おっぱいが一番大きい黄忠さんと娘の璃々ちゃん、皆さんからご主人様と呼ばれている高杉さん、最後に馬超さん」

 

劉備は今日あった人たちの名前を憶えていた

 

「みんな優しい人達でよかったなぁ・・・」

と心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

快晴の青空の下、劉備の見送りに勇作、愛紗、鈴々と朱里、そして星の五人が村の前の一本道に来ていた。

 

「それじゃあ皆さん。お世話になりました」

 

「ああ、また賊に襲われぬ様、道中気を付けてな」

 

「はい。けど、いくら私がぼんやりでもそう度々襲われる程、間抜けじゃないですよぉ?」

 

「い、いや、そういう意味では・・・」

愛紗に対して、ふてくされた様に言った後、すぐに笑顔を返す劉備。

 

「達者なのだ!」

 

「皆さんも」

と皆が戻ろうとした時

 

「・・・!!ちょっと待て!」

声を上げる

 

「どうしましたか?」

 

「劉備の所へ行くぞ!!」

と同時に

 

 

 

 

〈きゃああああああっ!!〉

 

 

森の方向から聞いた事のある悲鳴が聞こえ、急いで駆けつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大人しくしやがれぃ!!」

昨日、劉備を襲った三人組がまた彼女を襲っていた。アニキは劉備の胸元を掴むと、力一杯引っ張った。服はビリビリに破け、劉備の胸が露になる。

 

「嫌っ!!」

 

顔を羞恥に染め、嫌がるように胸を隠す劉備。

 

アニキ「昨日はしくじったが今日こそは・・・」

 

 

 

〈そこまでだっ!!〉

 

「あぁっ?ってまたお前らか!」

声のする方を向くと、勇作達がいた。

 

「これはこっちのセリフだ!性懲りもなく悪行を繰り返すとは言語道断!今度こそ、この青竜偃月刀の錆にしてくれる!!」

皆それぞれ、武器を構える。しかし、賊は慌てる様子を見せない。

 

「へっ!?威勢がいいのは結構だがこいつがどうなってもいいんだろうな!

 

「ひっ」

と剣を向ける。

 

「くっ!卑怯な!」

 

「ん~どうしたぁ?人質が居ちゃ手も足もでないか!ひゃははははは」

 

「スゲー!アニキ。本当の悪役みたい」

 

「さーて昨日の分も含めてたっぷり借りを返させてもらうぜ!」

 

「そこまでだっ!!」

と聞こえ、上を向く。大木のてっぺんに、蝶の仮面を被った水色の髪の少女がいた。

 

「何だてめぇは!」

 

「ある時はメンマ好きの旅の武芸者。またある時は露天風呂に華を添える謎の全裸美女。しかしその実態は・・・!乱世に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者!華蝶仮面推参っ!!」

 

とうっ!という掛け声と共に、華蝶仮面は飛び降り、華麗に着地する。この名乗りを何度も聞いた勇作達は、呆れ混じりに見ていた。

 

「悪党共・・・観念するなら今の内だぞ?」

 

「へっ、何言ってやがるこっちには人質がいるんだぞ?へへへ」

 

賊が余裕をかましている中、劉備はキラキラと尊敬の眼差しを送っていた

 

「くっ、やむおえない。この技だけは使いたくなかったが・・・秘技!(影分身)!!」

 

華蝶仮面は、賊の周りを残像が出来る程の速さで走り出した。円を描く様に回り、彼女が数人いるように見える。

 

「アニキ!か、仮面野郎が仮面野郎がだんだん増えて!?」

 

「び、ビビるたことはねぇ、只の目眩ましだ!!」

 

賊の三人は動揺を隠せない。

 

「(スゲー・・・(かすが)みたい)」

暫くすると、華蝶仮面が動きを止めた。

 

「こ、今度は何しようってんだ・・・?」

 

彼女は頭を押さえ、膝に手を置く。どうしたのかと、皆が思った。そして、口を開いた。

 

「・・・・・め・・・目が回った・・・」

 

「だあーーー!!」

賊は勢いよくずっこけた

 

キラーン

 

その瞬間、華蝶仮面は目を光らせる

 

「隙ありっ!」

 

「あ、てめぇっ!!」

 

彼女は劉備を抱き抱え、賊から離れる。

 

「さぁ、もう大丈夫だ」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「怪我はないか?」

 

「はい・・・華蝶仮面様」

 

うっとりと彼女を見つめる劉備

 

「相手がずっこけざるを得ない状況に追い込んで、その隙をつく。人間心理を巧みに利用した見事な策と言えましょう」

 

「ほ、本気か朱里・・・」

 

「いえ、冗談です・・・・・・・」

 

真顔で解説する朱里に、愛紗は苦笑いを浮かべる。

 

「卑怯だぞ!てめー!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「お前達がそれ言うか!」

と勇作が賊に向かって歩く

 

「何だ貴様!」

 

「高杉だが?」

 

「高杉だと・・・」

 

「兄貴!こいつは」

 

「何か知っているのか」

 

「知っているも何も此奴はヤバいすよ!こいつは高杉!義勇軍の総大将で天の御使いと言われて・・・前にこの村を襲った5千人の賊を返り討ちにし化け物っすよ!」

 

「な!何だと!」

 

「え!高杉さんが!!」

 

勇作は賊に向かってまだ歩く

 

「ビビるな!やっちまうぞ!」

と賊が武器を勇作に向けて振り下す

 

「・・・武装色・・・硬化!」

と言うと勇作の体が黒く変色した

 

ガチーーン

 

と音が響き

 

パリーーーン

 

賊たちの武器が砕けた

 

「な!なんだと」

 

「嘘だそう!!」

 

「ありえないんだな」

3人は信じられない表情をした

 

「・・・・・・」

劉備も同じだった

 

「気が済んだか・・・・・・・うせろ」

と勇作は覇王色の覇気を使い

 

バタバタバタ

 

3人は気絶した

 

 

「終わったよ!」

 

「賊はどこだっ!?賊は!?」

と何食わぬ顔で草の茂みから出てくる星

 

「賊なら、高杉さん達が退治してあそこに倒れています」

 

「くそっ、出遅れたか!」

と劉備が説明すると、星は悔しそうに歯軋りをする。その途端、他の四人は小さく集まりだした。

 

「(ど、どうするのだ?)」

 

「(取り敢えず、付き合ってあげた方がいいと思います・・・)」

 

「(だな。後でへそ曲げられたら面倒だ・・・)」

 

「(異議なし)」

話の結果、黙っておく事にした。

 

「そういえば、お主人質にとられていたのだろう?一体どうやって助かったのだ?」

 

「はい!華蝶仮面と名乗る、とってもかっこいい人が現れて、私を賊の手から救いだしてくれたんです」

 

「((((・・・えっ?))))」

 

どうやら、本人が目の前にいることに全く気づいていない様子。四人は目を丸くする。

 

「ほう、そんな事があったのか」

 

「せめて一言お礼を言いたかったのに、いつの間にかいなくなっていて・・・はぁ」

と劉備は息をつく。

 

「かっこいい上に礼も言われぬ内に姿を消すとは…きっと謙虚で慎ましい人柄なのであろう」

 

「よく言うよ・・・」

 

「凛々しく、美しいあのお顔。きっと仮面の下の素顔もさぞ素敵なのでしょうねぇ」

 

「そうかそうか!その華蝶仮面とやらはそんなに凛々しく美しかったか!」

 

「はい!」

 

機嫌の良い星は、勇作達の方を向く。

 

「なぁ愛紗、主。なんと言ってもこのご時世だ。劉備殿一人では、また賊に襲われるとも限らん。公孫賛殿の所まで、我等で送り届ける事にしてはどうだろう?」

そう提案する。

 

「星さん、劉備さんの事すっかり気に入っちゃったみたいですね」

 

「らしいな」

朱里がそう言うと、皆も同意する。

 

「どうだ?久し振りに旅に出るというのも悪くないと思うが」

 

「旅か・・・そうだな、それもいいかもしれないな・・・しかし、何はともあれ、まずは劉備殿の格好を何とかしないと・・・」

 

「!!」

 

「えっ?・・・あっ!きゃ!!」」

今の状態に気づき、劉備は体を抱く。

 

「・・・これを着てくて」

と勇作は羽織っていた青いロングコートを渡す

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかった・・・寸法はぴったりだな」

 

「昨日、街で買った愛紗さんの替えの服が役に立ちましたね」

 

鏡を前に立つ劉備を、愛紗と朱里は感想を述べる

 

「あ、あのぅ、良いんでしょうか?こんな服まで頂いて・・・」

 

「なに、これから暫く一緒に旅をする仲だ。つまらぬ遠慮はなしにしよう」

 

「はあ・・・」

 

「よし、着替えもすんだしそろそろ出発するか」

 

「鈴々、お主はどうする?一緒に来るか?それとも留守番しているか?」

 

「愛紗が行くなら鈴々も行くのだ!姉妹の契りを結んだ仲だから二人は何処でも一緒なのだ!それにお兄ちゃんもなのだ」

 

「朱里は?」

 

「私もお供します。そろそろまた旅に出て、見聞を広めたいと思っていましたから」

 

「なるほど、旅をしながら世に埋もれている未知の様々な体位を見て回ろうと言うわけか」

 

「はい、広い世界にはきっと私達には想像もつかない様な格好でくんずほぐれつ・・・ってそれだけの為に行くんじゃありません!」

 

朱里は顔を真っ赤にして否定する。途端にその場は笑いに包まれる。

 

「所で、体位って何なのだ?」

 

派手にずっこける鈴々以外の四人。鈴々は全く理解できていなかった

 

「心配することはない!そのうち知るさ!主と一緒にいろいろとやれば・・・」

 

「星!!余計なことは言うな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、勇作、愛紗、劉備、鈴々、星、朱里の計六人が旅に出ることとなった。

 

「それでは、留守を頼みます」

 

「はい、旅の無事を祈ってます」

 

「あたしと紫苑は留守番かぁ・・・」

 

「すまん・・・よろしく頼む」

 

「分かりました!ご主人様」

 

「ご主人様、愛紗お姉ちゃん、いってらっしゃい!ちゃんとお土産買ってきてね」

 

「これ璃々・・・」

 

「分かったよ」

微笑みながら、璃々の頭を撫でる。璃々は嬉しそうな表情をした

 

「翠」

 

「ん?ああ」

鈴々と翠はお互いに笑い合う。

 

「ん?なんだ?新手のにらめっこか?」

 

「そうじゃないのだ。人は次に会う時まで別れ際の顔を覚えているものだから、鈴々は翠に飛びっきりの良い顔を覚えてもらっているのだ」

 

「で、あたしも鈴々に飛びっきりの良い顔を見せて、それを覚えてもらってるって訳」

 

「ふむ、それでは私も・・・」

 

はぁっと息を吸い、星は飛びっきりの良い顔を見せようとした

 

「(・・・やばい!!)」

とっさに手で星の顔を隠した

 

「!!」

突然のことに驚く星

 

「何をするのです?」

 

「いや・・・いやな予感したから・・・」

 

「おや残念・・・」

 

「それじゃ出発だ!」

 

「「「「「「おう(なのだ)っ!!」」」」」

 

紫苑と璃々ちゃん、そして翠は手を振って見送る。勇作達も手を振ってそれに応える。

 

 

 

 

 

 

 

こうして今、始まった・・・

 

「(旅の始まりだ!Here we go!!)」



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第五十四席 勇作、公孫賛に再び会うのこと

桃花村から旅立った勇作達は、道を歩いていた

 

 

「公孫賛、公孫賛・・・思い出せないのだ・・・・・・あ!ああ、街が見えるのだ」

ようやく公孫賛が治める街へと辿り着いた

 

「あれが公孫賛さんが治める街なんですね」

 

「ああ、やっと着いたな」

 

「白珪ちゃんが持っている宝剣、あたしのだったらいいのだけれど」

 

 

 

屋敷へ向かう途中、ある十字路が目に入った。

 

「あっ、この道見覚えがあるのだ」

と十字路の真ん中に立つ。

 

「この向こうに鈴々の村があって、確かこの辺で愛紗とお兄ちゃんに真名を預けたのだ」

 

「そうだったな、鈴々・・・よく覚えてるじゃないか」

 

「なつかしいな」

 

勇作と愛紗も、鈴々との出会いを懐かしむ。そのまま先を行くと、今度は大きな山を目にした

 

「あれが赤銅山か」

 

「ああ、お主達と賊退治に行った山だ」

 

「あれもなつかしいな」

 

赤銅山に蔓延る賊を討伐するため、三人が賊の隠れ家へと侵入した

 

「あ、あの、潜入の為に小さな箱にお2人で入ってくんずほぐれつしたっていう・・・」

顔を赤くして俯く

 

「星、朱里にどんな話をしたんだ・・・・・・・」

 

「ありのままをだが?」

 

「おい!」

 

 

 

 

そんなこんなで、一行は公孫賛の屋敷の門前に着いた。

 

「これは趙雲殿、関羽殿、張飛殿に高杉殿。本日は我が主に御用で?」

 

「うむ、取り次ぎを頼む」

 

星は門番にそう頼む。

 

「はい。関羽殿、相変わらず綺麗な黒髪ですね」

 

門番は屋敷へと案内する

 

「(黒髪の山賊狩り)の名は伊達じゃないですよね」

 

「前来た時も褒められたのだ」

そう言うが

 

「ああ、黒髪だけ・・・な」

複雑な心境だった。

 

「大丈夫だよ・・・自信を持ってもいいから」

 

「ありがとうございます・・・ご主人様」

 

「ああ、それと高杉殿!」

 

「ん?」

 

「貴方の噂は聞いております・・・ぜひ話を聞かせてください・・・我ら兵一同聞きたがっていますので」

 

「はあ」

 

「おや・・・これは愛紗以上ですな・・・主」

 

「そうかな」

と勇作は少し困惑していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作たちは屋敷の庭にある、客間で待っていた。そこへ、支度をした公孫賛がやって来た。

 

「待たせたな!ん?」

と劉備の顔を見ると、

 

「おおっ、桃香!どうしてお前がここに?」

と喜びと驚きの声を上げる。

 

「実はね、白珪ちゃん」

 

「おいおい、私とそなたの仲ではないか。昔共に机を並べて学んでいた時の様に、私の事も真名で呼んでくれ」

 

「え?」

 

「どうした?まさか私の真名を忘れた訳ではあるまい」

 

「ギクッ!う、うん!もちろん!え、えーと確かー」

 

「(本気で忘れてるな・・・これ)」

考えている姿を見てそう思う勇作

 

「あっ!パイパイちゃん!」

 

「白蓮だ!!」

間違えを指摘するように、自分の真名を叫ぶ

 

「ほ、ほら、ちっちゃい時はそう呼んでたから、つい・・・・・・」

 

「ちっちゃい時はちっちゃい時だ!これからはちゃんと、白蓮と呼んでくれよ?」

 

劉備に呆れながら公孫賛は溜め息をつく。

 

「それにしても、懐かしいね」

 

「ああ。ほら、皆で盧植先生の所へ遊びに行ったのを覚えるか?」

 

「うん!あれ?その時パイパイちゃんいたっけ?」

 

「白蓮だ!!」

 

その後も公孫賛はその時の話をするが、劉備は思い出す気配がない。

 

「うーむ」

 

「どうした?星」

 

「いや、流石にああいうのを見せられると、影が薄いのをネタにしていたこと罪悪感が・・・」

 

「そうですね。劉備さん、悪意がない分、ある意味星さんよりたちが悪いかも・・・」

 

「たしかに・・・」

 

「む!主!どういう事ですか」

ムッとする星

 

 

「思い出したのだ!公孫賛は、このお姉ちゃんなのだ!」

 

今頃思い出した鈴々。公孫賛は忘れられていた事に気づき、またも肩をガクンと下ろす。

 

「ま、まあ、それはさておき、張飛、関羽、趙雲、高杉。お主達も久し振りだな」

四人を見渡すと、見たこともない女の子、朱里がいることに気づいた。

 

「そちらは」

 

「この子は諸葛孔明!軍師だよ」

 

「おお、そうか・・・てっきり」

 

「違いますからね!!」

 

「えっと・・・私はまだ何も・・・」

 

「なんとなく予想は付きます」

と言う

 

「(なんで何かしらと子供につながるんだ)」

と覇気で読む勇作

 

「それはそうと高杉・・・桃花村での活躍!耳にしたぞ」

 

「え?」

 

「何の話?」

 

「何だ・・・桃香は知らないのか」

と公孫賛は話す。村に襲いかかる五千人の賊を一人で壊滅させ、村を救ったこと、勇作が前に流れていた天からの御使いだということ、そのことがあっちこっちの所で噂になっていて、一部の所じゃ、勇作のことを(天竜王)天の国からきた竜の王と言われている

 

「という訳だ」

 

「へえ・・・高杉さん・・・凄いですね」

 

「別に・・・そういうわけじゃ」

 

「そういうことはない・・・誇って良いことだぞ」

 

「そうですよ」

勇作をほめる公孫賛と劉備

 

「どうも」

少し顔を赤くしながら頷く勇作

 

「・・・・・・・・・」

その様子に少し不機嫌な表情になる・・・愛紗 星 朱里

 

「(なんで愛紗達、不機嫌になっているのだ)」

と3人の様子に?マークを浮かべる鈴々であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!!宝剣はここにはない?」

宝剣がないことを知る劉備。公孫賛は暗い表情になり、顔を俯かせている。

 

「うむ・・・実は去年、我が領内は大変な不作でな。どうにか遣り繰りしてきたが、とうとうそれにも行き詰まり、少し前・・・袁紹の所へ行って、食糧を貸してくれる様頼んだのだが・・・私が宝剣を手に入れたという噂を何処かで聞いたのだろう。食糧を貸すのはいいが、そのかたに宝剣を預けていけと言われ、やむ無く・・・・・・」

 

「袁紹殿の所に宝剣を置いてきた、と」

 

「すまぬ!そなたの物だと分かっていれば、食糧のかたになどしなかったのだが・・・」

思いきり頭を下げ、劉備に謝罪する公孫賛

 

「しょうがないよ。知らなかったんだし」

と答える

 

「いや、今にして思えば、あの見事な鞘の造りといい、柄に填められた赤く輝く宝珠といい、あれは正しく子供の頃、家で見せられた宝剣に違いない。気づいて当然だったのに・・・!」

 

「もういいって・・・」

自らを責め続ける公孫賛。そんな彼女に、優しく微笑む

 

「それに、宝剣をかたにしたのって、ご飯を食べられなくて困っている人を助ける為にした事なんでしょ?だったら私文句なんて言えないよ」

 

「・・・・・・桃香」

 

「うん!」

 

「ほう」

 

「(仁徳の王だな・・・劉備は)」

 

「事情はともあれ、宝剣がないのなら、長居は無用だな」

 

「何日もかけて旅してきたのが無駄になっちゃったのだ」

 

「その旅の間に、入れ違いになってしまうとはな・・・」

 

「まあ、こういうことはあるよ」

 

「こうなったら、素直に返して貰えるかは分かりませんが、袁紹さんの所に行って頼んでみるしかないですね」

 

「そういうことなら、私も一緒に行って、返してくれる様に掛け合おう」

 

「ありがとう、パイパイちゃん!」

 

「白蓮だ!!」

 

公孫賛の手をとって、礼を言う劉備。またまた真名を言い間違えられるのを見て、愛紗星はため息をつく

 

「(そう簡単にいくかな・・・)」

と心配するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

袁紹の屋敷の一室。目の前に鏡を置いて、下着姿の自分を眺めている顔良がいた

 

「うーん、やっぱりお腹を出す水着はやめといたほうが無難かな」

自分の体の腹部を見て思う

 

「斗詩!!」

 

突然バン!と扉が勢いよく開き、文醜が入ってきた。顔良は慌てて体を抱いて踞る

 

「ちょっと猪々子!いきなり入ってこないでよ!!」

 

「客が来たんだけど、麗羽様は?」

 

「え?きっといつもの所よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・ん、そこそこ・・・・・もっと、もっと強く」

艶々しい声を出しながら、憩いの時間をを過ごしている。しかし、突然の入室によってその時間は終わった。

 

「麗羽様!あ!」

袁紹はそこで、侍女達によるマッサージを受けていた

 

「何ですの、猪々子?私の憩いの時間を邪魔しないで頂戴」

 

「いいじゃないですかちょっと位!麗羽様は憩いの間に人生やってる様なもんですし」

 

「何ですって!?」

 

「ふん!」

 

「あの、先程から公孫賛殿がお待ちなんですけど・・・」

 

「分かってますわよ」

と面倒そうに体を起こす。

 

「あんな辺境の貧乏領主。いくらでも待たせておけばいいのよ」

 

「「はあー」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い謁見の間・・・勇作達六人と公孫賛は、横一列に並んでいた。正装に着替えた袁紹は、文醜、顔良と共に入室する

 

「あら関羽さん・・・あなた達も来てたんですの?」

 

「遅いぞ袁紹!どれだけ待たせる気だ」

 

「あーら公孫賛さん?人から物を借りてる割には態度が大きくありませんこと?」

 

「ぐっ」

 

「あの、袁紹さん」

 

「あなたが劉備さん」

 

「ん?」

と袁紹は玉座に腰掛ける。

 

「用件は聞いていますわ。あの宝剣を返せというのでしょう?」

 

「は、はい」

 

「駄目ですわ。あれはわたくしがそこの貧乏領主から貸した食糧のカタとして預かっているものなんですから。もし返して欲しければ、貸した食糧耳を揃えて持っていらっしゃい」

貸した分を返せと言い放つ。

 

「袁紹!そこを何とか、頼む!」

 

「お断りですわ」

 

「えっ!?」

頭を下げるも即座に断られる公孫賛!すると、袁紹はニヤリと口角を上げる

 

 

「・・・と言いたい所ですけど、丁度退屈してた所ですし・・・私達と勝負して勝てたら返してあげてもいいですわよ」

 

「「「「「「勝負?」」」」」」」

そのことに驚きの声を上げる

 

「(・・・・・・・・・)」

だが勇作は袁紹をじっと見ていた

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、屋外にある鍛練場。

 

「さぁ!袁紹様の気紛れで始まった(宝剣争奪戦)!!果たして勝つのは!?・・・名門袁家を代表する可憐にして優雅な袁紹様か!?影の薄い貧乏領主の公孫賛か!?」

 

「くぅ・・・好き勝手言いおって」

陳琳の紹介に腹を立てる公孫賛。闘技場の周りには、大勢の観客が観に来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「注目の第一試合は・・・・・・次回の投稿で!!」

 

 

 

「(何を言っているんだ?)」



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第五十五席 英雄、競技を開始するのこと

「さあ、お待ちかねの第一試合は、顔良対諸葛亮の知識対決です!」

用意された二つの席に、二人は腰掛ける

 

「へへーん!朱里はおっぱいは小っちゃいけど頭はすっごくいいのだ。だから知力三十四なんかに負けないのだ」

 

「(おっぱいはちっちゃいけど)」

 

このワードが頭の中に響き、胸を押さえながら、朱里は顔を赤くする

 

「はん、斗詩がいつまでも知力三十四だと思うなよ!麗羽様からもらった書物を読んで、知力三十六になったんだぞ」

 

「うんうん」

 

「ここんとこ知力も胴回りの寸法もどんどん数値が上がってるんだからな!」

 

「余計なこと言わないで!!」

 

「第一試合、知識対決のお題は・・・・・・・・・袁紹様の秘密です」

 

「え?」

 

「はぁ!!ちょっと待て!!」

予想だにしていないお題に戸惑う朱里と勇作。横の顔良は笑みを浮かべている

 

「第一問!今日の袁紹様の下着の色は?」

 

「黒!」

 

「正解!」

早押しで答える顔良。袁紹は顔を赤らめて、スカートを引っ張っている

 

「第二問!袁紹様が怖い夢を見ないよう、寝る前にしているおまじないは?」

 

「枕を裏返して三回叩く!」

 

「正解!」

顔良が答え、朱里は何も出来ずにいる

 

「第三問!袁紹様に最後のお通知があったのはいつ?」

 

「三日前!」

 

「正解!」

 

「(おい!待て!何だよ!この問題は!!)」

後の問題も、袁紹に関わる問題ばかり

 

「さぁ、いよいよこれが最後の問題です!袁紹様がおねしょをしていたのは何歳の時まで?」

 

「十二歳!」

 

「正解!!・・・・百対零で、顔良の完全勝利です!」

とぼとぼと戻っていく

 

「やられたな」

 

「すみません、微塵も興味のない事ばかりだったので」

 

「やむを得ん・・・教えられても知りたくもない事ばかりだったからな」

 

「た・・・たしかに」

 

「こっちが勝ったのに何となく気分が悪いのはどうしてかしら」

 

「気のせいですよ、気のせい」

自分の恥ずかしい話を赤裸々に暴露され、頭を押さえる袁紹であった

 

 

「第二試合は、鰻の掴み取り対決!・・・生け簀の中の鰻をどちらが多く捕まえられるかを競ってもらいます!!・・・但し!鰻を手で掴むのではなく、おっぱいで挟んで捕まえてもらいます!!」

 

「「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」」

内容を耳にすると、観客が声を上げる。

 

「愛紗、お主の出番だな」

愛紗の肩にポンと手を乗せる。

 

「ってさも当然の様に私に振るな!」

 

「おっぱい勝ち組の力を見せてやるのだ!」

 

「そうですね・・・残念ですけどこの競技、私や鈴々ちゃんには荷が重いようですし」

 

「え、ちょ、朱里まで〜!?」

 

「(誰だよ!この競技を考えたの!)」

 

「どうしましたの?誰が出場するか早くお決めなさい。それとも棄権して不戦敗かしら?」

 

「くっ」

 

「私が行きます!」

 

「いや、でも劉備殿」

 

「この勝負は私の宝剣を取り戻す為・・・皆さんばかりに迷惑はかけられません!!」

着ていた服を脱ごうとした

 

「ちょっと待て!!まだ脱ぐな」

 

「はい?」

 

「誰か目隠し持ってないかな」

 

「目隠しですか」

 

「終わるまで見えないようにしようと」

 

「目隠しはありますよ」

 

「え?どこに・・・!?」

突如、目の前が暗くなった

 

「って!星!!」

星が勇作に抱き着いた

 

「おい!!」

 

「これで見えますまい」

 

「(そうだけど・・・胸がダイレクトに・・・)」

 

「そんなに暴れなくてもいいのに」

 

「(そうじゃなくて!!)」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「(殺気が両方から・・・殺気が)」

 

「劉備殿・・・よろしいですぞ」

 

「は・・・はい」

着ていた服を脱いだ

 

 

「それでは、よ〜い」

開始の銅鑼が鳴った。両手で胸を隠している劉備と顔良は、大量の鰻がいる生け簀に向かって、胸で挟もうとする。

 

「えいっ!」

 

「きゃっ!」

 

「この、逃げるなぁ!」

 

「待てぇ!」

生け簀に入り、鰻を掴もうとする

 

「ちょっ!そこ、ちがぁーう!」

 

「あん、だめぇ、こんなの太すぎぃ!〉

 

「動いちゃ・・・動いちゃだめぇ!〉

 

ぬるぬるとした鰻が二人の少女の胸の中で暴れだす。胸の中だけでなく、いろんな所に

 

「(早く終わってくれ!!)」

別に意味でピンチな勇作は心でそう願っていた

 

 

 

そして、結果発表。

 

「十三対十一でこの勝負、劉備選手の勝ちとします!」

 

「やったぁ〜!!」

 

両手を万歳して喜ぶ劉備。愛紗は慌てて彼女の胸を隠す・・・負けてしまい、俯いている顔良に、文醜は肩に手を置く。

 

「残念だったな・・・斗詩」

 

「猪々子」

 

「胸じゃなく、腹の肉でだったら絶対有利だったのに!」

 

「有利じゃないわよ絶対に!!」

両手を振り上げて怒る顔良。文醜は両手で彼女の胸を隠そうとしている。

 

「第3試合 腕相撲」

 

鈴々対文醜

 

「「ぐぬぬにににに!!」」

力自慢の二人。顔を真っ赤にして、握りあっている手が震えている。

 

「第4試合 早口言葉」

 

「隣の袁術はよく蜂蜜を舐める袁術だ、隣の袁術はよく蜂蜜を舐める袁術だ、隣の袁術はよく蜂蜜を舐める袁術だ!!」

 

「第5試合 物真似」

 

愛紗対顔良

 

「こほん、鈴々は胸はつるぺったんだけどお腹はポンポコリンなのだ!」

 

「鈴々はそんな事言わないのだ〜!」

 

「(つか、全然似てないよ!)」

 

「お〜っほっほっほ!斗詩、あなた最近また太ったんじゃありませんこと〜?」

 

「むぅーー!!」

 

「箱の中身は何でしょう?」

 

「ひゃっ!動いた!何かヌルッてしたぁ〜!」

 

「にらめっこ」

 

すぅ、と星は息を吸う。

 

「・・・・・・・・」

 

「ひぃぃぃぃ!?」

表情が一気に青ざめる

 

 

「小豆運び」

 

「ぐににに!」

顔良は順調に箸で運んでいく。細かい作業が苦手な鈴々は力みすぎて、小豆を弾いてしまう

 

「(なぜ、出たし)」

 

 

 

「続いての勝負は・・・貝合わせ!」

 

「はわぁっ!?」

言葉に反応し、顔を赤くする

 

 

「何か誤解している様だが、(貝合わせ)というのは、バラバラにした沢山の貝殻の中から、元は一つだったものを探すという無闇な遊びであって、別に厭らしい事ではないぞ?」

 

「へっ!?あの、わ、私別に・・・」

 

「(何を想像したんだ?)」

 

 

 

 

「仮装対決!」

 

文醜・顔良ペアは、文醜が黒、顔良が白を基調とした何処かのヒロイン物のバトルスーツを着ている。

 

劉備・愛紗・鈴々・星・朱里の五人も自分の色にあったヒロイン物の衣装を着用している(劉備・ピンク、愛紗・緑、星・青、朱里・黄、鈴々だけ赤いスカーフを巻いた橙色の虎の着ぐるみを着ている)。

 

「あの、私こういうのはちょっと」

 

「孔明ちゃん、笑顔ですよ笑顔!」

 

「そうだぞ朱里・・・印象点というのがあるからな!」

 

「会場で鈴々と握手なのだ!」

 

「どうして私がこんな事を・・・」

 

「(自分で選んでおいて・・・それはないでしょ)」

 

 

 

 

 

「さーて、最終戦を前に、ここまでの競技が終わって125対100で袁紹様のリードでございます」

 

「これで私達の勝ちが決まったようですわ」

 

「そうですね」

 

「・・・・・・くそ!」

 

「あの・・・提案があるのですか」

 

「提案ですか?」

 

「ここままじゃ・・・面白くないでしょ!だから最終戦を前にもう1つ競技をしませんか?それに勝てば点数を同点にするという」

 

「もう1つですか?」

 

「はい!」

 

「別にやらなくてもよろしいのではないではありませんか」

 

「へー・・・名族が提案を呑んでくれないなんて・・・心が狭い」

 

「な!何ですって!!」

 

「いや・・・いいです・・・名族にお願いするなんてそんな・・・」

 

「きいいい!言わせておけば・・・良いでしょ!行いましょう」

 

「さすが!名族!袁紹様!!」

 

「当然ですわ!おほほほほ!!」

 

「お兄ちゃんは何をしているのだ?」

 

「けど・・・これで望みがつながりました」

 

「いったい何をやるのですか?」

 

「模擬戦です」

 

「模擬戦?」

 

「ええ!俺一人と文醜と顔良の二人がかりでの模擬戦です」

 

「えっ!!」

 

「何ですって!!」

 

「おい!お前!舐めているのか!」

 

「舐めていませんよ」

 

「じゃあ何で?」

 

「勝ったら同点にするのです・・・これぐらいのハンデ・・・じゃなくてそれぐらい当然の条件だと思いますけど・・・」

 

「いいでしょ!それでやりましょう」

 

「麗羽様」

 

「猪々子、斗詩!あんなブ男!コテンパンにしなさい」

 

「はい」

 

「了解!」

 

「(良かった・・・これで俺も出られる・・・突っ込みしてただけだからな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・急きょ、始まった模擬戦」

 

「さてと・・・やるか」

 

両陣営から出場者が舞台にあがる

 

「袁紹陣営から文醜と顔良の二枚看板」

 

「「「「おおおおおおおおお!!」」」」

 

「公孫賛陣営から高杉勇作」

 

「高杉?」

 

「誰だよ・・・あいつ」

 

「もう少しで思い出しそうなんだけど」

 

会場に皆は誰か知らないようであった

 

「(知名度低いな・・・俺!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「注目の試合は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次回にて」



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第五十六席 公孫賛、袁紹と雌雄を決するのこと

大変遅くなり、すいません
では、どうぞ


「それでは、試合開始です」

 

銅鑼がなる

 

〔両者、武器を・・・ってあれ?〕

 

文醜と顔良を武器を構えるが、勇作は構えない

 

〔どうしたことでしょう?高杉選手、武器を構えません〕

 

「おい、なぜ構えない?」

 

「アンタたち相手に武器を構える必要はない。多少強いかもしれないけど、まだまだだからね」

 

「な!何だと!」

 

〔なんという発言だ!〕

 

「いくら何でも」

 

「もういい!アタイから行かせてもらう!」

 

文醜は大剣を振る

 

「でぇぇぇぇいいい!!」

 

勇作の頭に向けて大剣が迫る

 

〔これは決まったか!!〕

 

「・・・・・・・はあ」

 

ガシ

 

「へ?」

 

「「「「「「「「ええええええええええええ!!」」」」」」」」

 

〔な、なんと高杉選手!文醜選手の大剣を素手で止めた!信じられません!これは現実なのでしょうか〕

 

「う・・・動かない!!」

 

「文ちゃん!」

顔良も大金槌で攻撃する

 

「無駄だよ」

 

勇作は反対の手で大金槌を止めた

 

「うそ」

 

〔今度は、顔良の大金槌を止めた!!〕

 

「何で?」

 

「くそ!」

 

「よいしょ!」

 

勇作は二人を押した

 

「うわっ!!」

 

「きゃぁ」

 

二人は後ろに吹っ飛んだ

 

「・・・時間も押しているし、一気に決めるよ」

 

勇作が文醜に向かう

 

「くっ!」

 

大剣でガードする

 

「オラ!」

 

ガツン

 

ピシピシ

 

大剣にヒビが入り

 

バリーーン

 

大剣が砕け、勇作の拳が文醜に顔面に迫る

 

「ひぃ!」

 

寸前で止まる

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

文醜を腰が抜け、その場に座る

 

「・・・・・・・・」

 

勇作はそのまま顔良に向かう

 

「こ、こないでぇぇぇぇ!!」

 

武器を振るが

 

「・・・・・・・・・ふん」

 

バキーーーーン

 

 

同じように覇気を纏った拳で大金槌を粉々にした

 

「あ・・・ああ・・・あ」

 

同じようにその場に座り込む

 

「二人とも、降惨する?」

 

二人は頷く

 

「審判」

 

・〔・・・・・・・・・・・・はっ!き、決まった!!高杉選手の勝利!圧倒的勝利です!!〕

 

その瞬間、大歓声が上がった

 

 

 

 

 

 

 

〔さぁ、これまで様々な競技で対決してきましたが、結果は125対125の同点です!次が最後の勝負となりますが、それは如何なる競技か!?そして、最終的に勝利の栄冠を掴むのはどちらか!?〕

すると、袁紹が椅子から立ち上がった。

 

「こうなったら、私が出るしかないようですわね」

 

ここまで一切の競技に出ていない袁紹。今頃になってようやく出場するようだ

 

「最後の勝負・・・この袁家に伝わる白鳥のまわしを締めての女相撲とします!」

 

観客側から歓声が込み上げる(主に男)。

 

「愛紗」

 

「だから私に振るな!」

 

またまた星が愛紗に出場を促す。

 

「そ、そうだ鈴々。ここは一つお前が」

 

「まわしだけならいいけど、白鳥の首が付いてるのは流石にきついのだ」

 

鈴々にも出来る事と出来ない事がある

 

「なら、劉備殿!」

 

「母の遺言で財布の紐は締めても、白鳥のまわしだけは締めるなと」

 

「劉備殿の母上はご健在であろう!?」

 

「諦めるのだ!愛紗」

 

「ちょっと待て!!」

 

「私が行こう!」

 

「パイ蓮ちゃん!?」

 

「今回の事は私に責任の一端がある。ここは私に任せてもらおう」

 

「しかし!」

 

「案ずるな。こんな事もあろうかと、白馬将軍の名に恥じぬよう、新たに作らせた白馬のまわしを持ってきた!白鳥のまわしごときに遅れはとらん!!」

 

「こんなこと持って」

 

「(なんでそんなもん用意しているんだよ!)」

心の中でツッコみを入れるとその時

 

カバ

 

「!!」

勇作の目の前が真っ暗になった

 

「(なっ!何だこれ!?)」

 

「愛紗、何でお兄ちゃんに抱き着いているのだ?」

 

「(えっ!!)」

 

「め、目隠しだ!」

 

「(布を持ってこれば良いだろう!!なぜ抱き着く!)」

勇作はジタバタと動く

 

「そんなに動かないでください」

 

「(少し離れて!胸がダイレクトに当たっている上に呼吸が!!)」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

「(また殺気が・・・ヘルプミー)」

 

 

 

 

 

[女相撲]

 

【公孫賛】対【袁紹】

 

袁紹は白鳥の頭が付いたまわし、公孫賛は白馬の首が付いたまわしを締めている。まわしを着けている為、勿論裸である。二人は両手で胸を隠し、土俵に上がる。

 

 

「その者、白き回しを纏いて土色の土俵に立つべし」

 

「おばば様」

 

観客がいる所にジ○リに出てくるナウ○カのおばば様の服を来た老婆が歩いてきた

 

 

「この戦い、どちらが勝っても歴史に残るであろう」

 

「(あるか―!!)」

 

 

 

〔見合って見合って!はっけよ〜い!〕

 

二人はお互いに睨みを効かせる。そして

 

〔のこったぁ!!〕

「「っ!」」

 

ガチン

 

〔おっと!両者は正面からぶつかりあってのガチンコ勝負だ!〕

 

「くぅぅぅ!!」

 

「っ!中々やりますわね・・・けど、これならどうですかしら!!」

 

袁紹は一旦離れると、腰を捻り、白馬に往復ビンタの猛攻を浴びせる

 

〔おっと!袁紹選手、すさましい猛攻だ!しかし公孫賛も耐える〕

 

「見える。ばばの死んだ目にも見える。なんと、なんと壮絶な戦いじゃ!」

 

「こうなったら私も本気を出させていただきますわ!!」

すると、袁紹のまわしの白鳥の目が赤く光る。

 

「斗詩、白鳥の目が攻撃色に・・・!」

 

「麗羽様、本気なんだわ!」

側近二人も主の本気を身に感じていた。

 

「そぉ〜れそれそれそれそれそれそれ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

〔こ、これは!袁紹の何ともいやらし・・・あっいや、凄まじい腰の動きだ〕

 

「(これが名門の力なのだろうか。私は、私はここまでなのか…このまま影の薄い馬鹿の子で終わってしまうのか・・・・・・!)」

ジリジリと、土俵の外へ外へとと追いやられる。

 

「(いつも、いつもそうだった・・・・・・)」

 

袁紹が繰り出す猛攻の最中、公孫賛の脳裏を過去の記憶が

 

「(いくら手を挙げても、先生に当ててもらえず・・・親と買い物に行っても、途中で存在を忘れられ、町中に置き去りにされ・・・友と言えば、白馬だけの日々・・・!)」

 

「(何だ?凄い親近感がわいてくるような)」

勇作は覇気で公孫賛の心を読んだ

 

 

「うぅ、うぅぅぅぅぅぅ!!」

過去の出来事を思い返した瞬間、公孫賛の体を黒色の氣が漂っていた

 

「っ!」

 

「どうした、星?」

 

「白珪殿の心中に、鬱屈した氣が充満し始めている」

 

「ど、どうなるのだ!」

 

星が何かに気づき、愛紗はどうしたのかと問いかける。

 

「白珪殿は器が小さいだけに、溜まりに溜まったその氣が溢れだした時、それは激しい力となる!!」

 

星はそう断言した

 

「秘技・・・白馬彗星拳!!」

 

その氣は白馬と一体となった

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その一撃は、白鳥ごと袁紹を土俵の外へと吹き飛ばした。そして、銅鑼が音を鳴らした。

 

〔突出しで公孫賛選手!!〕

 

次の瞬間、闘技場が拍手喝采の渦に包まれた。

 

「勝った…私は勝ったぞぉぉぉ!!」

 

涙を流し、万歳をしながら喜びを表す

 

「(ま!まずい!!)」

 

勇作は羽織っているコートを公孫賛に投げた

 

「!!」

 

投げたコートは公孫賛に架かりに視界が暗くなる

 

「な!何だこれは!前が見えない!!」

 

「(愛紗に抱き着かれて前が見えないけど、なんかヤバそうな気がしてコートを投げたけど、良かったみたいだな・・・・・・・・というか早く離れて!!)」

 

 

こうして、勇作達は勝利したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝剣争奪戦が終わり、袁紹の屋敷の謁見の間に集まる。やっと宝剣を返して貰えると思いきや

 

「えっ?宝剣はここにはない!?」

 

袁紹から発せられた言葉に驚く公孫賛。

 

「どういう事だ!?」

「実は・・・・・・」

 

玉座に座っている袁紹の横にいる顔良が、申し訳なさそうに語り出す。

 

 

 

 

 

『先日、従姉妹の袁術様から、遣いの方がやって来て・・・』

 

「お久し振りね張勲さん。美羽さんは元気にしていて?」

 

「はい、それはもう手に負えない程!」

 

袁紹が袁術の真名を呼ぶと、目の前にいる、濃い青色のショートヘアの少女がそう答える。

 

「そう、所で今日は何の用で来たのかしら?」

 

「はい、聞いた所では袁紹様は素晴らしい宝剣を手に入れられたとか」

 

「あ〜らやだ、もう噂になってますのねぇ」

 

満更でもない表情を浮かべる袁紹。

 

「我が主は事の外、その宝剣に興味を示されて、もし宜しければ、この世にも珍しい(バカには見えない衣)と交換していただけないかと」

 

張勲は傍らに置いてある黒の重箱を開くと、何かを取り出すような仕草を行う。彼女は袁紹にその衣を見せるが

 

「ん?何もないじゃありませんの」

 

「えぇっ!?まさか袁紹様、この衣がお見えにならないので・・・?」

 

「ば、馬鹿を言っては困りますわ!見えてるに決まってるじゃありませんの!!」

 

「ですよね〜!この色、この手触り、高価な刺繍、何処を探しても手に入らないかと」

 

「そ、そうですわね・・・本当に美しいこと・・・・・・」

 

とか言いながら、ダラダラと顔は大量の汗で濡れている。

 

「猪々子!あなたもそう思うわよね!?」

 

「いっ!?ま、真に、結構な、お召し物で・・・・・・」

 

急に話を振られ、たじたじになりながらその衣を称賛する。

 

「なら、これと宝剣、交換していただけますよね!」

 

 

 

 

 

「と言われて、交換してしまったんです…私は止めたんですよ?でも麗羽様が・・・・・・・」

 

これにはもう全員呆れた表情を浮かべるしかなかった

 

「(裸の王様かよ!!)」

 

「だが、それなら何故勝負をしようなどと」

 

「しょうがないでしょ!まさか負けるとは思ってなかったんだから!なのに、あなたたちが勝ったりするから悪いんですのよ!!」

 

「袁紹、貴様・・・・・・・!!」

 

理不尽な言い訳をする袁紹を睨み付ける公孫賛

 

「分かりましたわよ。あなた達が勝ったんですから、公孫賛さん。あなたに貸した食糧の件、帳消しにしてさせてあげますわ。それでよろしいでしょ?」

 

何か文句でも?と言っている様にも聞こえ、更に苛立ちを募らせる公孫賛

 

「そういう事を言っているのではない!私は・・・!!」

 

何かを言おうとした時、部屋の空気を重くなった

 

「・・・・・・・・」

勇作が覇気全快で袁紹を見ていた

 

「・・・・・・・・」

勇作は袁紹に近づく。六爪流になって

 

「・・・・・・」

他の人は動こうとしない、いや動けないでいた。また声も出なかった

 

シャキ

 

勇作は袁紹の前に立ち、喉元に刀を突きつけた

 

「ひっ!!」

 

「おい!覚悟はできているんだよな!」

 

「ご、ご主人様!!」

 

「何をしているのですか!私をいったい誰だと」

 

「シャラップ!!」

 

「!!・・・誰か!誰か!」

 

声を上げるか誰も来ない!勇作の覇気で気絶しているからだ

 

「猪々子!斗詩!」

 

二人に助けを求めるが

 

「止めとけ!」

 

「「!!」」

 

「模擬戦の時のようになりたいか!言っとくがあの時は手加減しただけでその気になればお前達を殺すことなんて簡単だぞ!貴様らの武器を粉々にした時みたいな!!」

そういうと二人はあの時の事を思い出したのか表情が変わり、小さく震えだした。余程の事だったせいかトラウマになっていた。

 

「・・・・・・・」

同様に袁紹もそのことを思い出したのか震えだした

 

「・・・・・・・・」

 

「高杉さん!」

 

「ん?」

 

「お願いします!もういいです!」

 

「え?けど?」

 

「良いんです!」

 

「・・・・・・・・」

 

勇作は刀を仕舞い、元の位置に戻った。そして、今度は劉備が袁紹と向き合う

 

「袁紹さん・・・」

 

「な、何ですの?」

 

「私、袁術さんの所へ行きます。それで直接、宝剣を返してもらいます」

劉備は真剣な表情で袁紹に伝える。その瞳は強い意志が込められているようにも見える。

 

「そ、そう、分かりましたわ。それなら事情を説明した手紙を書いてあげますから、それを持って早くお行きなさい・・・」

すると、横にいる二人の側近が何か物言いたそうな顔を見せる。それに気づき、袁紹ははぁ、と息を吐く。

 

「でも今日はもう遅いから、ここに泊まっていくといいわ」

その言葉を聞いて、文醜と顔良は明るい表情を浮かべる。

 

「何をしてるの?すぐに宴の準備をなさい」

 

袁紹は玉座から立ち上がる。

 

「ちょっと着替えてきますから、その間にお酒もお料理も一番良いのを用意するのよ?」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、袁紹の屋敷から旅立ち、十字路に差し掛かった。太守である為、幽州へと戻らなければならない公孫賛

 

「それじゃあ、私はこれで・・・」

 

「公孫賛殿、今回は世話になりました」

公孫賛に礼を述べる。

 

「では桃香、道中気を付けてな。宝剣を取り戻せる様、祈っているぞ」

 

「ありがとう、パイパイちゃん!」

 

〈忘れるなよ?白蓮だ~!!〉

 

白馬に跨がり、公孫賛は幽州へと戻っていった。

 

「それでは、我らも行くか」

 

「あの、皆さん・・・」

 

劉備に呼び止められ、全員足を止める。

 

「ここから袁術さんの治める街までは、かなり遠いと聞いています。そんな所まで、皆さんにご一緒してもらっていいんでしょうか?ご迷惑な様なら、私一人で・・・」

 

「そんな、今更水くさいですよ」

 

「えっ?」

 

「そうですよ劉備さん」

 

「乗り掛かった船だ。最後まで付き合おう」

 

「うむ」

 

「皆さん・・・」

 

快く引き受けてくれる彼女達に、劉備は喜びの笑みをこぼす。

 

「よく言うのだ。旅は道連れ、世は・・・世は・・・・」

 

「弱気な気分をぶっ飛ばせ!だ」

 

「あ、それなのだ!」

 

星に囁かれて、口にする鈴々。それがあまりにも可笑しく思い、鈴々以外の全員が笑いだした。何のことなのか全く分かっていない鈴々

 

「(これにて一見落着だな・・・それにしてもなんであんなことしたんだろう?以前なら考えられなかったな。人殺した影響かな)」

 

「それはそうと主」

 

「ん?」

 

「昨晩は公孫賛殿と何やら話してしましたが?」

 

「白蓮と」

 

途端に回りの空気が重くなる

 

「あれ?」

 

「高杉さん、いつからパイパイちゃんの真名を」

 

「いや、白蓮って太守じゃん。俺も一応義勇軍の大将だから上に立つものとしても心構えや助言など聞いていたんだ。それで教えてもらった御礼に」

 

「なるほど、それは納得しましょう・・・それでその後は」

 

「袁紹のことに行ったんだよ。お詫びを言いに」

 

「お詫びですか?」

 

「まあ、あんなことしたからな・・・ちゃんと許してくれたよ。その後、いろいろお話もしたし」

 

「そうですか」

 

「あんな人だけど、猪々子、斗詩の二人の仲間もいる・・・・・・し・・・・・・・」

また空気が重くなった。今度は殺気も交じっていた

 

「あ・・・あれ?」

 

「主?」

 

「「ご主人様!!」」

 

 

その後、勇作は愛紗達から説明&お話(説教)を受けるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、袁紹はというと

 

「はあ、気持ちいですわ」

 

憩の場でマッサージを受けていた。そばに猪々子と斗詩もいた

 

「麗羽様」

 

「何かしら?」

 

「よくお許しになりましたね」

 

「どういう意味かしら」

 

「麗羽様のことですから、許さないと思ったんで」

 

「私も鬼ではありませんのよ!きっちり謝罪すれば許してあげますのよ」

 

「そうですか」

 

「(あのブ男に、今度会ったらタダじゃ起きませんわよ!覚えておきなさい!!きーー!!)」

実際はまだ許していなかった

 

 

 

 

二人は袁紹の部屋を出た

 

「ねえ、猪々子」

 

「何だ?斗詩」

 

「また会えると良いね」

 

「そうだな!今度はアニキに絶対勝つ!」

 

「猪々子らしいわね」

 

「そうか」

 

「(勇作さん・・・・・・・ご主人様)」

 

「斗詩?」

 

「はっ!何?」

 

「今、なんて?」

 

「何でもない・・・さあ、仕事に行きましょう」

 

「??」

 

「(いつか会いましょう。ご主人様!なんてね)」



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第五十七席 張三姉妹、太平要術を手に入れるのこと

大変、遅れてしまい申し訳ありません
今後とも、よろしくおねがいします

では、どうぞ


静かに太陽が沈みかける夕暮れ時。夕陽からの光を浴びているとある街。街の民が通りかかる路上で、旅芸人らしき少女達がいた

 

「さぁて、お立ち会い、お立ち会い!ここにございますは、何の変哲もない只の箱」

 

明るい桃色ロングヘアーの少女は、隣にある大きい箱を見せる。それは人一人が入れる位の大きさだ。少女は、箱の扉を開ける

 

「はい、中には誰もいませんよ〜」

 

「ご覧の通り、中は空っぽで、種も仕掛けもございません」

 

少女の後を追うように、薄紫のショートカットの少女は自分達の前にいる観客に箱の中身は空だと言うことを伝える

 

「所が所が、こうして扉を閉めて…」

 

扉を閉める。観客の一人が後ろの方を見たが、箱の後ろには何の小細工も見当たらない

 

「それっ!イー、アル、サンッ!」

 

箱からは誰も出てこない。

 

「あ、あれ?ちょっとお待ち下さいね…」

 

若干焦りを見せ、箱に近づく

 

「(ちいちゃん、大丈夫…?)」

 

小声でそう囁くと、中からコンコンと叩く音が聞こえる。準備ができた事を知ると、前に出る

 

「それでは今度こそ、イー、アル、サン!」

 

「は〜いっ!大成功!」

 

掛け声と共に、中には誰もいなかった筈の箱から、一人の少女が出てきた。淡い水色で、左側にサイドテールで結んでいる

 

「お気に召しましたら拍手など!」

 

「すご〜い!

 

「不思議!」

 

観客の一人である小さな兄妹が珍しそうに見ている。さっきの芸を見た観客は、拍手をする人もいれば、興味無さそうに見ている者もいるといった結果だ

 

「ありがとうございます。お楽しみ頂けましたなら、お気持ちだけで結構です。こちらの笊へ」

 

「お米、お野菜でも大歓迎」

 

「お金だったら大感激」

 

「皆さんのお心尽くしを」

 

「「よ・ろ・し・く!」」

 

「お気持ちだけで結構です」

 

「お願いしま〜す!」

 

「この笊に…」

 

笊には一銭も入る事はなかった

 

「え、えぇっと、今の手品は前座。次が私達の本業、張三姉妹の歌と音楽をお楽しみ下さい」

 

そう言うと、琵琶、二胡、小太鼓と、それぞれ楽器を手にする

 

「まず一曲目は(YUME☆蝶ひらり)お聞き下さい」

 

三姉妹の音楽が始まった。琵琶と二胡の弦楽器から奏でられる緩やかな音色。リズム良く音を出す小太鼓。その三つの楽器から放たれる、中国特有の音楽と共に、彼女達は歌を歌った

 

 

 

 

 

 

夕陽が完全に沈み、辺りは夜の景色に包まれた。三人の前には誰もいない。さっきまでいた観客は、全員帰ってしまった。三人の目の前を、小さいつむじ風が寂しく通りすぎていった。

 

「「「はぁ~…」」」

三人の口から出るのはため息だけ。すると横の方からパチ、パチと拍手が聞こえる。三人は一斉にその方向を向く

 

「いやぁ、中々良いものを見せて頂きました」

 

穏やかな声と共に、その男は暗闇から姿を現した

 

「はぁ、それはどうも…」

 

「箱から出る時、ちょっと手間取った様ですが、貴女の妖術も見事でしたよ」

 

「あれが手品じゃなく妖術だって気づいたって事は、もしかしてあなたも術が?」

 

「えぇ、まあ少しですがね…」

 

「…あなた何者?私達に何の用なの?」

 

「そう怖い顔しないで下さいよ。私の名は于吉。通りすがりの、只の妖術使いです」

 

「「「えっ」」」

 

「どうです?良いものを見せてもらった御礼に、私も少しばかり術を御披露しましょうか?」

 

 

 

于吉は片手で印らしきものを組んだ。すると、辺りが光に包まれた。突然の事に驚いていると、三人はいつの間にか何処かの野外ステージに立っていた。気が付けば服装も変わっていた

 

「ど、どうなってるの!?」

 

「手触りは本物みたいだけど…」

 

「素敵な服〜!」

 

三人の耳に、聞き慣れた音楽が流れてきた。

 

「えっ?これ私達の曲…」

 

今度は前から大歓声が聞こえる。観客らしき人々が数万人見える

 

「凄い人の数…」

 

「こんなの見たことない…」

 

「ここって野外舞台?……あは…ちいちゃん、人和ちゃん、歌おっ!」

 

「でも、天和姉さん…」

 

「これって何かおかしい」

 

「でも、お客さんが…皆が待ってるよ!」

張宝と張梁の二人は、戸惑いを隠せなかったが、目の前にいる大勢の観客を見て、笑みを浮かべた

 

「うん、歌おう」

 

「うん」

 

「それじゃ、いっくよ〜!それっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、景色が元に戻る

 

 

 

「あれっ?ここは…」

 

「姉さん、天和姉さん」

 

「ん?」

 

「正気に戻って!

 

「ふぇっ…あれっ、お客さんは?」

 

「しっかりしてよ!今のはあの于吉っていう妖術使いが見せた幻よ」

 

「幻…」

 

『どうです?』

 

あの男の声が響く

 

『一時の夢、楽しんで頂けましたか?』

 

「どこ?どこにいるの!?」

 

「ちい姉さん、それ…」

 

「えっ?」

 

少女の手には、一冊の本が握られていた。

 

『その本の名は太平要術』

 

「えっ!?」

 

「何…何なの?」

 

『それを使って、貴女達の夢を掴むのです』

 

「夢を、掴む……」

 

 

 

 

 

 

 

下宿している宿に戻り、二人は眠りにつき、一人は傍らにある蝋燭で小さな明かりをつけ、太平要術を一ページずつ眼を通していく

 

「う〜ん、おしっこ…ちいちゃんまだ起きてたの?」

 

「姉さん、この本凄いよ…!他のどの本にも書いててなかった妖術の使い方が一杯載ってて…これがあれば、きっと私達の夢が叶うわ…!」

 

「う〜ん、何かよく分かんないけど、夜更かしはお肌に悪いからほどほろにねぇ〜……」

 

そのまま布団を被る。

 

 

 

「……………………おしっこ、忘れてた」

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

朝から三人の間に不穏な空気が流れている

 

 

「一体どういうつもりなの?へそくり全部はたいてそんなもの買っちゃうなんて!」

 

「人和ちゃん、落ち着いて……」

 

「落ち着いてなんかいられないわよ!」

いつも静かな人和が、珍しく声を大にしていた。理由としては、今後の生活の為にこつこつと遣り繰りして貯めた金を、張宝がある物を無断で買ってきたからである。

 

 

「黄昏よりも深きもの、血の流れよりも熱きもの、時の流れに祈りしもの、尊大なる汝の名において、我、ここに天に遣わん、我と汝の力とて、我の望みを叶えん事を……」

目の前に買って、置いてある楕円形の丸い石にブツブツと呪文を唱えていた

 

 

「ちい姉さん…?」

 

「急々如実令!!」

 

すると、三つの石に、紫色の小さな氣が吸い込まれていった。その内の一つを手に取り、軽いキスをする。その石は一瞬輝くと同時に、宝石の様な光沢を見せる

 

「わぁ、綺麗!」

 

「けど、これがなんだって言うの?」

 

すぅっと息を吸う。

 

「わぁっ!!」

 

「「っ!?」」

 

大音量の声に、キーンと耳鳴りを起こす。耳鳴りが止むと、へなへなと座り込む

 

「どう?驚いた?」

 

「今の一体…」

 

「どういう事なの?ちゃんと説明して」

 

「この球に術をかけて、これに向かって声を出せば、それが大きくなるようにしたのよ。いい材料を使ったから、効果もバッチリね」

 

「バッチリって…それが何の役に立つのよ?」

 

「分かんない?これがあれば、どんなに広い所で、どんなに沢山のお客さんを相手にしても、私達の歌を聞かせられるじゃない!」

 

「うわ〜すご〜い!ちいちゃん最高!」

 

「けどその肝心のお客さんをどうやって集めるのよ?私達それで苦労してるんでしょ」

 

「大丈夫、それもちゃんと考えてあるから、このちいちゃんにお任せよ!」

可愛く片目を閉じる。

 

 

 

 

 

3人は下着姿になって、全員の服の裾を切っていく二人

 

「あ…あ、ちょっと、それって、切りすぎじゃない?ねぇ大丈夫?ねぇったら〜…」

 

姉は妹たちのしていることに不安を露わにする

 

「で、袖もこうやって切っちゃって」

 

「それに合わせるなら、もっと短い方がいいかも」

 

「えっ?」

 

「そうね、太股バンバン見せなきゃ」

 

「でも…」

 

「基本よね」

 

「そうなの?」

 

「さぁ頑張ろ!」

 

「ええ!」

 

「うぅ〜、お姉ちゃんも混ぜてよ……ん?」

 

妹二人から仲間外れにされている姉は、机の上にある黄色のリボンを見つけた

 

「出来た〜!」

 

「お姉ちゃんも出来たよ!」

 

姉の方を向くと、彼女はリボンを頭の後ろに可愛く着けていた

 

「どう?」

 

「お〜、それじゃ私も!」

 

「待って…ちい姉さん、私も」

 

二人も、黄色のリボンを手にする。一人は腕に巻いてブレスレットの様に、一人は胸の前に止めている。こうして、三人の衣装が出来上がった。三人はお互いに笑いあい、楽しそうにしていた



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第五十八席 張三姉妹、舞台を成功させるのこと

街中にある河川敷。その上に橋が架かっており、街の住民が歩いている。その下に三人の姉妹がいた

 

「この服やっぱり短すぎない?」

 

「今更何いってんの」

 

張角は短いスカートの裾を掴み、恥ずかしそうにしている

 

「天和姉さん、振り付け覚えた?」

 

「うん、一通りは…」

 

「あれだけ練習したんだもん。大丈夫だって」

 

緊張と不安を抱く姉を励ます張宝

 

「でも…」

 

「とにかくここまで来たらもう後がないんだから、背水の陣で行こう!」

 

「う、うん…」

 

三人は、目の前にある丁度いい土台になる岩に向かい、その上に立つ。岩の前には呪符が貼られた三つの楽器(琵琶、二胡、小太鼓)が置いてある。三人はマイク(掌サイズの竹筒に張宝が買った玉を付けた物)を手に声をあてる

 

「皆さ〜ん!これから、私達張三姉妹の歌と踊りを始めま〜す!お暇な方は是非ご覧になって下さ〜い!」

 

マイクを通しているおかげで、張角の呼び掛けは遠くまで届いた。その声を聞いて、数十人の歩行者が河川敷に集まってくる

 

「み、皆集まって来ちゃったよ〜…」

 

「って、集める為に呼んだんでしょ〜?」

 

「天和姉さんしっかりしてよ」

 

「そんなの無理だよ〜、お姉ちゃん生まれてこのかたしっかりしたことないも〜ん」

 

「天和姉さん、いつもみたいにやればいいから」

 

「でもでも〜…」

 

「それじゃいくよ!」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

「音楽開始!」

 

張宝の掛け声と共に、紫色の小さな氣が楽器に流れ込む。すると、楽器がひとりでに動き始めた。音楽が鳴ると同時に、三人は振り付けを踊る。手に持っているマイクも働き、三人の歌声は観客に届いた。道行く人も、三人の歌を聞き付け、その足を止めた

 

そして、歌が終わった

 

「……」

 

三人に緊張が走り、ゴクンと息を呑む。その三人に待っていたのは

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

大声援と拍手だった。観客全員が笑顔を浮かべていた。三人の心は安心、そして達成感に溢れていた。彼女達の挑戦は、大成功を収めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。宿屋に戻り、張梁は今日得た路銀の集計をしていた。三姉妹のお金の管理も、いつも張梁が行っている

 

「今日一日でこれまでの一月分以上の稼ぎになったわ」

 

「「わぁ〜い♪」」

 

張角と張宝は喜びのあまり、ハイタッチをする

 

「ついに、ついに私達の時代が来たのね…」

 

「いや、まだそこまでは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は寝間着に着替え、寝台に寝転ぶ

 

「けど、ちいちゃんがあんな凄い妖術使えるなんて、お姉ちゃんびっくりだよ…」

 

「本当だわ。ろくに修行していないちい姉さんにあれだけの妖術を使える妖力を持ってたなんて」

 

「ろくに修行していないは余計よ…でも正直、あたしもそこが不思議なのよね〜」

 

机の上にある太平要術を手に取る

 

「この本、太平要術があると、なんかいくらでも妖力が湧いてくるみたいで…」

 

 

 

 

 

それからというもの、三人の名はどんどん広まっていった。旅をしながら歌を歌い、客も増え、時には宮廷に呼ばれる事もあった。そうして小さな事からこつこつとやり通して、自分達専用の会場を設けられる程に大きくなっていった。握手会、グッズ等も販売されている。そして三人は于吉が見せた幻を現実のものとしたのだ。幻で着ていた衣装を身に付け、数万人の観客の前で歌を披露する

 

 

 

 

 

張三姉妹の歌は、大陸全土に響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や~ま~があ~るか~ら山な~のだ~♪か~わがあって~も気にし~ない~♪ぬ~まがあったらくびまでつかる~く~ま~がで~てき~てく~まったな~」

 

「こら鈴々、大声で変な歌を歌うな。恥ずかしいだろう!」

 

「何を言ってるのだ。熊避けに歌を歌うのは常識なのだ。じっちゃんがそう言っていたのだ!」

 

「(この会話、前にもあったぞ)」

 

「こんな街中で熊が出るわけないだろ」

 

「ああ~っ!!」

隣にいた劉備が大声を上げる

 

「どうした?熊が出たのか?」

 

「えっ!!」

 

「あっいえ、これ…」

 

劉備は街の塀に貼ってある張り紙を指差す

 

「只今人気絶頂の張三姉妹、本日当地にて公演開催」

 

「(張?まさかこれって)」

 

「なんだ…この張三姉妹というのは?」

 

「さあ?」

 

「聞いた事ないのだ」

 

愛紗と鈴々は同時に首を傾げる

 

「えぇ〜っ!?皆さん知らないんですかぁ!?」

 

劉備はまたまた大声を上げる

 

「今話題の歌って踊れる三人組の歌手ですよ!」

 

「(アイドルみたいものか)」

 

「能天気な笑顔が魅力の天和こと張角、ノリノリな盛り上げ役の地和こと張宝、キラリと光る眼鏡が知的な人和こと張梁の三姉妹で、青州中心に活動してて、すっっっごく人気なんですから!!」

三姉妹の凄さを伝える劉備

 

「ほう、そんなに有名なのか…」

 

「そういえば、街に書物を買いに行った時、そんな噂を耳にしたような…」

 

「ああ、あの本を買いに行った…あだ!!」

勇作があの時の事を言おうとした時、朱里は勇作の左足を思いっきり踏みつけた

 

「いきなり踏むことないでしょう」

左足を抑えながら朱里に言う勇作

 

「ふん」

怒った表情し目をそらす朱里

 

「何でお兄ちゃんの足を踏んだのだ?」

 

「鈴々ちゃんは知らなくていいです」

 

「にぁ?」

 

「(これは今後言わないでおこう)」

そう心に誓った勇作であった

 

「姉妹だけに息の合った歌と踊りもさることながら、張宝の妖術でやってるっていう舞台効果もすっごくて、一度でいいから見たいと思ってたんですよね〜」

はぁ、と尊敬の息を漏らし、キラキラと瞳を輝かせる劉備

 

「それがこんな旅の空で拝めるなんて〜」

 

「あの〜劉備殿?盛り上がってる所を申し訳ないが、そんな事をしていては袁術殿の所へは行け」

 

「ええぇっ!?」

 

愛紗の遠慮気味の声をかき消す劉備

 

「見に行かないんですかぁ〜…?」

 

「い、いや…うっ!」

 

両手を拝むように合わせ、捨てられたチワワの様にうるうると瞳は潤んでいる

 

「うるうるうるうる」

 

「愛紗…あきらめよう」

 

「わ、分かりました…皆で見に行きましょう…」

 

「わぁ〜い!やったぁ〜〜!」

劉備は子供の様に跳び跳ねて喜ぶ

 

「(張角、張宝、張梁か、まさか黄巾の乱を起こした3人に会いにいくとは…それにしてもなんでこんな時代にアイドルみたいことが出来るんだよ……まさかあの乱がまた起きたりして)」

勇作は心の中にそう思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、あんなことが起きるとは思いもよらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何だ!!俺!何かへんなフラグ立てちゃった!!立ててないよね!!)」



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第五十九席 勇作、張三姉妹のライブに行くのこと

遅れてしまいすいません

新作の恋姫が発売されましたね。プレイするのが楽しみです

ではどうぞ


張三姉妹の公演が行われる会場へと足を運ぶ勇作達。見上げる程にでかいドーム状の建物。周りにはファンらしき人々が会場へと進んでいく

 

「わぁ~、なんか色々売ってありますよ」

 

「人形とあれは抱き枕か?」

 

「あっ!飴が売ってるのだ!」

鈴々が目にしたのは、オレンジ色で長いスティック状の棒付きキャンディ

 

「うわぁ!美味しそうなのだ」

 

「まったく、お前はどこに行ってもまず食い気だな」

 

「そこが可愛い所なのだ」

 

「自分で言うな」

というわけで、合計6本の飴を買った

 

「ん~、れろっ…おいひいのら…」

 

「この飴はむごもご…」

 

「ん、ん〜…まったりとしたこくのある甘さとここなっつがいい具合に混ざり合っているな…ぱっ…」

 

「もちかちて、ハチミツを使ってるんじゃないでちょうか…」

 

「ほうかも。でも、こんなに長いとちょっと舐めにくいですね…」

美少女5人は飴を舐めながら、各々感想を述べる

 

「……あの~これ食べ物じゃないだけど」

勇作が言う

 

「そうですか?」

 

「というか舐めらがら話すのはやめて!何を言っているか分からん」

 

 

6人観客席の方へと移動した。会場内は、二階建てとなっており、勇作達は、上の方の席に座っていた

 

「ここが会場か」

 

すると、星があることに気づいた

 

「妙だな…」

 

「どうした?星」

 

「いや、みんなあの飴を持ってはいるが、誰も食べていないのはどうした訳だ?」

 

「もしかして、会場内は飲食禁止なんでしょうか?」

 

星の言う通り、黄色の法被らしきものを着ているファンのほとんどが、あのオレンジ色の飴を食べずに、手に持っている

 

「今にわかるよ」

 

その直後、ライトが照らされた

 

「おっ!……そろそろ始まるみたいですよ」

 

伴奏が鳴り、ライトが照らしている場所に、張三姉妹が現れた

 

「みんな~~!いっくよ~~!!」

 

ワアアアアァァァァァ!!!

 

三人の登場で、会場内は騒然となった。

 

「凄い鬨の声なのだ!?」

 

「なんか怖い位ですねぇ…」

 

張三姉妹が歌を披露すると同時に、ファンの全員がオレンジのスティックを天に掲げ、ゆらりと左右に揺らしている。勇作も同じようにする

 

「おお!!」

 

「成程、こうやって使うものだったんですね」

 

「チュパチュパ音をさせて舐めるものではなかったのだな」

 

「「………」」

 

星の一言で、愛紗と朱里は顔を赤くする。

 

「おい、星。知っていていたんじゃないか?」

 

「さて、どうだが」

 

「はあ」

 

「お望みなら」

 

「遠慮します!自分を大事にして」

 

二人が会話をしている間には、三人の踊り、そして歌は会場内の観客全員に伝わり、劉備と鈴々もノリノリで声援を送っている。三人が楽しく歌い、踊っているのが分かる

 

「(テレビとかで、こういうのは見ているけど、実際に見ると凄い迫力だな!!)」

 

「みんな〜!ありがと〜〜!!それじゃ、いつものいっくよ〜〜!!」

 

張角は観客に声をかける

 

「みんな大好き~~!」

 

てんほ~ちゃ~~ん!!

 

「みんなの妹~~!」

 

ちいほ~ちゃ~~ん!!

 

「とっても可愛い…」

 

れんほ~ちゃ~~ん!!

 

 

「ありがと~~!今日もバッチリ決まったね!」

 

ホワッホワッホワァァァァァッ!!

 

 

 

「えぇ~っと、今日は、その…………私、何て言うつもりだったんだっけ?」

 

「知らないわよ!」

 

「天和姉さん、しっかりしてよ…」

 

観客席から笑いが聞こえる

 

「おい何すんだよ!」

 

「えっ?」

 

声のする方を見ると、二人の男がお互いの胸元を掴み、取っ組みあっている

 

「何ってお前が押すからだろっ!」

 

「してねぇよ!」

 

「何だとコノヤロッ!」

 

二人の喧嘩は激しくなる様子を見せている

 

「あ、ど、どうしたのかなぁ〜、喧嘩は駄目だよ〜…?」

 

こんなことは想定外だったらしく、張角は狼狽え始める

 

「いい加減にするのだっ!!」

 

「え?」

 

「ここは歌を聞いたり、踊りを見たりして皆で楽しくなる所なのだ!それを邪魔するなら出てくのだ〜!!」

 

「うるせっ!チビは黙ってろ!!」

 

「チビじゃなのだ!!」

 

「鈴々」

 

「お兄ちゃん」

 

勇作はケンカしていた二人の男を見る

 

「止めろ!」

 

「何だと、貴様!」

 

「もう一度言う……………ヤメロ」

 

覇気もとい殺気を二人に向ける

 

「「ひっ!!」」

 

二人はその場に尻餅をつく

 

〈そうだそうだ〜!〉

 

〈邪魔すんだったら出てけ!〉

 

〈そうだよな〉

 

〈喧嘩するなら外でやれよな〉

 

他の客にも咎められ、二人はガックシと肩を下ろす

 

「……」

 

三姉妹は顔を見合わせる

 

「よぉ~しっ!気分直しに次の曲は思い切り盛り上ってこ~~!!」

 

《ワアアアアァァァァァッ!!》

 

「お二人さん、ありがとう!!」

 

張宝が言う

 

「……」

 

「(結構いい男かも!………そうだ!)」

 

張宝はマイクに術を掛ける

 

「ねえ、私を好きになって!!」

 

勇作に向けて声を出す

 

 

「!!」

 

勇作はとっさに手を翳す

 

「………」

 

「(あれ?)」

 

「どうしたの?」

 

「!!なんでもない」

 

「??」

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとしたいざこざがあったものの、なんとかやり終え、楽屋に戻る三人

 

「はぁ、今日も最高だった〜!」

 

「うん!最高だった」

 

「けど、問題もあったわ…」

 

「そうだよね。大した騒ぎにはならなかったからよかったけど」

 

「お客さんが増えるのはありがたいけど、ああいうのはちょっとね…」

 

「でも、このままだと、ああいう事ってますます増える可能性があるわ。いつもいつも今日みたいに止めてくれる人がいるわけじゃあないだろうだから、何か対策を考えないと」

 

今日起こった問題の対策を考える

 

「対策か……」

 

張宝はテーブルの上にある太平要術を見る

 

「(それにしても、何で効かなかったのかしら。ああすればちいにメロメロになるはずなのに)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街を出発した勇作達、劉備と鈴々は先程張三姉妹が歌っていた歌をノリノリで歌っていた

 

「劉備さんも鈴々ちゃんも張三姉妹の歌すっかり気に入っちゃったみたいですね」

 

「まあ、熊避けにはいいだろう」

 

「そうかもしれんな」

 

楽しく歌っている二人を見て、愛紗、星、朱里の三人も笑みをこぼす

 

「………」

 

勇作は難しい顔をしていた

 

「ご主人様」

 

「……」

 

「ご主人様!!」

 

「!!、どうしたの?」

 

「さっきから難しい顔をしていましたが、どうしたのです」

 

「…いや、なんでもない」

 

「??」

 

勇作は適当に誤魔化す

 

 

 

 

 

 

 

「(それにしても、さっきのは何だったんだ?とっさに武装色の覇気で防御してしまったけど……あれはいったい?)」



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第六十席 勇作、華陀に出会うのこと

橙色に染まった空。そびえ立つ山々も、夕焼け色に染まっている。勇作達は、森の中を歩いていた

 

「う~ん、やはりさっきの分かれ道。反対の方へ行くべきだったようだな…」

 

「このままだと、野宿か」

 

日が沈みかけるのを見て、愛紗と星はそう述べる

 

「鈴々、お前の占い通りにしたらこの様だ。当てにならないにも程があるぞ?」

 

「うぅ……」

 

愛紗がそう言うと、鈴々はお腹に手を添えている

 

「どうした?鈴々」

 

「お腹、痛いのだ……」

 

「だから言っただろう。茶店を出る時、厠に行っておけと」

 

「そんなんじゃなくて」

 

「愛紗!鈴々の様子がおかしいぞ!」

 

「えっ!」

 

「お腹がきりきりして…すごく、痛くて……っ!」

 

お腹を押さえて、その場に蹲る

 

「おい!!鈴々!?」

 

「鈴々ちゃん!」

 

「ぅぅ……ぅ…」

 

愛紗や朱里が声をかけるも、返事を返す事も出来ない位に苦しんでいた

 

「しっかりしろ!」

 

「ん?あっ!」

 

劉備が何かを見つける。目線の先には、煙が見えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み、辺りが完全に夜へと変わった。暗闇に包まれた森。その中で、一人の男が横たわった木を椅子代わりにして、焚き火をしていた

 

「突然、申し訳ない」

 

「ん?」

 

視線を向けると、勇作達がいた。勇作は鈴々をおんぶしていた

 

「実は、連れの者が急な病で、良ければ火に当たらせてもらえぬか?」

 

「何っ?病!」

 

その男は立ち上がる

 

「なら、俺に見せてみろ」

 

「えっ?」

 

「心配するな。俺は医者だ」

その男の指示に従い、地面に薄い毛布を敷いて、鈴々をそこに寝かせる。男は鈴々の腹を触診していく

 

「ここは痛いか?」

 

「ぅ……ぅ…痛くないのだ」

 

「昼は何を食べた?」

 

「鰻を揚げたのと、ご飯…後さっき、茶店でおっきな瓜を………」

 

鈴々がそう説明すると、男は何かに反応した

 

「ここか…!」

その男は、両手にそれぞれ一本の針を取り出す

 

「一体、何を…?」

 

「病根を滅する坪に針を刺し、そこに氣を流し込む」

男は、針を天にかざす

 

「我が身!我が針と一つなり!心気同体!全力全快!病魔服滅!」

 

「(な…何をする気だ)」

 

「元気にぃなぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

男の体が眩い光に包まれ、針も同様に輝きを増していく。その光に驚きを隠せない。その氣は周りの木々の葉を激しくカサカサと揺らしている。男は針を鈴々の右ひざ、右手の甲に軽く刺した

 

「病魔…退散っ!!」

 

針をゆっくり抜いていく。すると光が収まる

 

「あ、あれ…お腹、痛くなくなったのだ!」

鈴々は、自身のお腹を摩りながら起き上がらせる

 

「えっ?ほ…本当にもう大丈夫なのか?」

 

「チクッ!としてピキューン!てなってハッ!て気づいたらもう治ってたのだ」

 

先程の事が嘘の様に、明るい声で答える

 

「恐らく食い合わせが悪くて、胃の府が引き付けを起こしたのだろう。痛みが収まったのなら、もう心配ない」

 

「突然押し掛けたのにも関わらず、難儀な所を救って頂き、ありがとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

勇作と愛紗が礼を言って頭を下げる

 

「何、医者は病に苦しむ者を救うのが使命。礼には及ばんさ」

 

「申し遅れましたが、我が名は関羽」

 

「鈴々を治してくれてありがとうなのだ♪」

 

「こちらは連れの公明に、劉備殿」

 

「諸葛公明と申します」

 

「劉玄徳です」

 

「常山の趙子龍……そしてこの方が我らの主である」

 

「高杉勇作です」

 

「俺の名は華陀。旅の医者だ」

 

「(えっ!!華陀!!この人が………女ではないな)」

 

「華陀…もしかして、五斗米道の」

 

「ちっがぁぁぁぁう!!」

大声で否定した。

 

「五斗米道ではなく…ゴッドヴェイドォォォォォォォォ!!…だ」

 

いきなりハイテンションの掛け声で叫ぶ華陀。それを見て苦笑いを浮かべる一同

 

「うん…大事な事なので、正しい発音を心がけてくれ」

 

「わ、分かりました…」

 

「それで朱里。そのごと…ごっ…ごと?」

 

「ゴッドヴェイドォォ!だよ」

 

「おお…!素晴らしい発音だ!」

 

「そうですか?普通に言っただけですけど?」

 

「だが、間違わずに言ったのは先生と俺以外では、お主が初めてだ!ありがとう。今日から俺達は友達だ」

と勇作を手を取り、握手する

 

「(………友達)」

困惑する勇作だが

 

「ありがとう!俺の事、勇作と呼んでいいよ」

 

「そうか、俺の事は華陀と呼んでくれ」

 

二人は友達になった

 

「(こんな友達、欲しかったな………)」

 

「朱里、その、ゴッドヴェイド~~!というのは?」

 

「はい。ゴッドヴェイド~~!というのは、漢中を中心に奉行している道教の教団で、貧しい者に施しをしたり、病に苦しむ者を治したり、という活動をしているんです。聞いた所では、華陀さんはその、ゴッドヴェイド~~!の中でも一番の名医とか」

 

「ほう、ゴッドヴェイド~~!一の名医か」

 

「はい、ゴッドヴェイド~~!一の名医です」

 

「ゴッドヴェイド~~!一とは凄いですね」

 

「ゴッドヴェイド~~」

 

「ゴッドヴェイド~~」

 

朱里と鈴々は二人でゴッドヴェイド~~を連呼している

 

「お主等、段々楽しくなってきているだろ…?」

 

「(そうでもしないと言えないのかこれ?)」

 

「うんうん、良い発音だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

「太平要術?」

 

焚き火を囲う様に座り、勇作達は華陀の話を聞いていた。鈴々はすやすやと眠っている

 

「ああ、俺はその本を探し、封印するよう教団から命を受けて、こうして旅をしているんだ」

 

「太平要術っていったい?」

 

「太平要術というのは、只の妖術書ではなく、それ自体が妖力を持つんだ」

 

「妖力を持つ?」

 

「妖術というものは、例えその術の使い方を知ったとしても、それに応じた力。所謂、妖力がなければ使う事は出来ない」

 

「つまり、武術の型を知っていても、それ相応の体力や見のこなしがなければ、戦いでは意味をなさないようなものか」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「(そんな本があるのか)」

 

「だが太平要術は、自ら妖力を持つが故、少しばかり妖術の心得があれば、それを用いて様々な術が使える様になる。そしてその妖力の源が、苦しむ民の怨鎖の声なのだ…乱れた世を恨み、平和を乞う力程、強い物はないからな……」

 

「あの、民の恨みの声を妖力に変えるのって、悪い事なんですか?」

 

「ん?」

 

「だって、その妖力を使って民が喜ぶ様な事をすれば、世の中良くなる様な気が……」

 

「ああ、そうだ。本来はその様に怨鎖の声を妖力に変え、それを使った妖術を苦しむ民を救う為の書物だったのだが……いつしか太平要術自身が、まるで自らの意思を持つかの如く、妖力を蓄える事、事態を目的とする様になってきたのだ」

 

「……」

 

「どうやら太平要術は、それを手にした者の、胸の内にある…悪しき心を擽り、妖術で世を混乱させようと仕向けるらしい」

 

「成程。そうすることで民の間に怨鎖の声が高まり、太平要術はより多くの妖力を蓄えられるようになるという訳か」

 

「なんて恐ろしい……」

 

「(民の怨鎖の声……もし見聞色の覇気を使ってその声を聴いたら……いや、やめておこう)」

 

「で、その太平要術がこの辺りにあると……?」

 

「実は、曹操が内々に太平要術を探し求めていると聞いてな」

 

「曹操殿が?」

 

「もし、既に手に入れているのなら、訳を話して、封印させてもらう。まだならその危険性を説き、入手を諦めさせるつもりだ」

 

「う~ん」

 

愛紗は腕を組む

 

「どうした?関羽殿」

 

「いや、私は曹操殿を知っているが、あの御仁の性格からして、そうした物に頼る様な方とは思えなくて……」

 

「確かに」

 

「そうか。ならば深い訳があるのかもしれんな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

 

快晴の下、勇作達は昨日出会った華陀と共に道を歩いていた。先頭では昨日の事がなかった様に、鈴々が劉備と一緒に張三姉妹の歌を明るい声で歌っている

 

「鈴々ちゃん、元気一杯ですね。昨日、腹痛を起こしたのが嘘みたい」

 

「子供は元気が一番。あの様子なら、母上も安心だろう」

 

華陀は愛紗を見ながらそう言った

 

「は…母上!?」

 

「それはどういう……」

 

「ん?違うのか?」

 

「(まただよ)」

 

「ち、違います!鈴々は私と姉妹の契りを結んだ仲で……ていうかそもそも!私は子供が出来るような事はまだ一度も!!」

 

「お。落ち着いて!」

 

「!!」

 

視線を外す愛紗

 

「あっ!」

 

「ん?」

 

「大変!」

劉備が向こうの方を指差す

 

「人が倒れています!」

 

全員でその方向へと駆けつける。森の茂みを掻き分けながら行くと、一人の女性が地面に横たわっていた。女性の顔の周りには、赤い血らしきものがベットリと付いていた。

 

「(これは!)」

 

華陀は直ぐ様女性の側に座り、呼吸や心音を確かめる

 

「息はあるか?それとも……」

 

「華陀殿、容態は?」

 

華陀は目を大きくする

 

「どこも悪くない…!」

 

華陀以外の全員がその場にずっこけた

 

「だ、たが!それならその血は一体」

 

「…大丈夫なのです」

 

声がする方に全員が後ろを振り向くと、少女が一枚の布巾を持って立っていた

 

「それは鼻血なので、ご心配には及ばないのです」

 

「(えっ!これが?)」

 

その少女は女性の近くに寄り、上半身を少し起き上がらせる

 

「稟ちゃ~ん。ほら、近くの小川で手拭いを濡らしてきたから、おっきしてこれでフキフキしましょうね」

 

そう言いながら、眼鏡の女性の顔を拭いていく

 

「けど鼻血って……その血溜まり……」

 

「どうなっているの?」

 

困惑する一同であった



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第六十一席 勇作、程昱、郭嘉と会話するのこと

近くの小川。勇作達は岩に腰掛け、倒れていた女性も連れである少女と一緒に岩に座っている

 

「先程は、お恥ずかしい所をお見せしました」

 

「驚いておへそが飛び出しそうになったのだ」

 

「それを言うなら目が飛び出しそうになっただよ」

 

突っ込みを入れる勇作

 

「我が名は郭嘉、字は奉孝こちらは、共に旅をしている…」

 

「程昱と申します」

 

「(えっ!!郭嘉に程昱!この二人が!)」

 

程昱は、頭に乗せている人形の小さい手を動かす

 

『俺は宝慧。皆よろしくな』

 

「よろしくなのだ!」

 

「おぉ……」

 

「どうしたのです?宝慧」

 

「あ…いや、人形の俺に普通に挨拶を返して来たんで、ちょうとびっくりしてしまって」

 

「人形が喋るなんてスゴいのだ~」

 

「(やはり、さっきのはツッコミ待ち立ったのか……)」

 

「実は、私とこの風は、軍師として召し抱えて貰おうと、曹操様の所へ赴く途中だったのです」

 

「ほう、曹操殿の所に……」

 

「私と風は、孫子を始め、数多の兵書を読み、古今の軍略を学び、いずれは志ある人物に軍師として仕え、世の乱れを正したい!…と思っていたのですが、主を求める旅の最中に、曹操様の噂を聞いて治世の能臣、乱世の姦雄と言われるあの方こそ、真に今の世に必要な人物と思い定め」

 

「いや、なんか漢字が違うような」

 

「と、まあこの稟ちゃんは曹操さんの熱狂的な信奉者なのです」

 

「あ、いや、別に信奉者というわけでは……」

 

「でも好きなのとは違いないんでしょう?」

 

「まだお会いした事はないので、好きというか、憧れというか……」

 

「できることなら軍師として曹操さんのお側に仕え、その身を捧げたいと思っている」

 

「そ、その身を捧げるとは大胆な……で、でももし本当にそうなったら……」

 

「あの~郭嘉さん」

 

「い、いけません!私は軍師としてお仕えするのであって決してその様な事は……た、確かに見も心も捧げるとは申しましたがそれはそういう意味では、うふ、あ、あぁ~!そんな強引に、で、でもその乱暴な指使いが私を狂わせるぅあぁ~~!」

 

「相当過激な妄想をしているようですね……」

 

「止めなくていいんですか?放っておくとその内誰か偉い人に怒られそうな気がするんですけど……」

 

「これ、もう手遅れだろう」

 

「だ、駄目ぇそこは~~」

 

ブシャァァッ!と彼女の鼻から真っ赤な血液が吹き出てきた。その光景に一同驚く

 

「(こ…これがあの血だまりに答えか)」

 

 

 

鼻血を披露した郭嘉は鼻に紙を捩じ込んだ

 

「うほほ、またまたお恥ずかしい所を」

 

「いえ、お蔭で先ほどの血だまりの謎が解けました」

 

「それはさておき、それほどの熱意があれば、人材好きのあの曹操殿の事。貴方達の願い、きっと聞き入れて下さるだろう」

 

「そうだな」

 

「そう仰られる所を見ると、もしや曹操様をご存知なので?」

 

「ご存知処か、愛紗は曹操殿に股間のしっとり艶々をまさぐられた程の仲でな」

 

「おい星っ!」

 

「こ、こ、股間の…しっとり艶々…………」

郭嘉は、更に妄想を膨らませる

 

「ぶはぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あらあら、稟ちゃん、トントンしましょうね~トントントントン」

 

プシュッと少量しか出なかった

 

「なにしろこうして曹操さんのお知り合いと出会えたのも好都合。もし宜しければ、曹操さんにご紹介頂けると有難いのですが」

 

「まあ、どうせ通り道なので、それは構いませんが…どうであろう?劉備殿、ご主人様」

 

「そういう事でしたら、私は別に」

 

「俺も良いぞそれで」

 

『お〜それじゃよろしく頼む~』

 

「おお~~」

鈴々はパチパチと拍手した

 

「(郭嘉って若くして亡くなったことは知っているけど、まさかこれが原因じゃないだろうな!もしそうなら…泣けるぞ)」

 

 

 

 

「ところで?」

 

「ん?」

 

「先ほどこの方をご主人様と言っていましたが…いったいどちら様で」

 

「そうであったな…この方は我らの主である」

 

「高杉勇作です」

 

「高杉勇作」

 

「もしかして、貴方が噂の天の御使いなのですか?」

 

「まあ、そうです」

 

「おお!まさかこんな所で御使い殿に会えるとは」

 

「……」

 

「どうしました?風」

 

「御使いっていうから、どんな人物かと思ったら…普通の人だなって思っているでしょう。程昱殿」

 

「!!」

 

「風?」

 

「(何で、風が宝慧を使って言おうとしている事を)」

 

「はは…ごめん!宝慧の言葉を取ってしまって」

 

さらに驚く程昱であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして勇作たちは、目的の町へと辿り着いた

 

「賑やかな町ですね〜」

 

「きっと曹操さんの政がうまくいっているんでしょう」

 

「(確かに……賑やかだけど………)」

 

「??どうしました?主」

 

「いや(悪い声も聞こえるな…)」

 

「俺はこのまま曹操の所に行くつもりだが、一緒に行くか?」

 

「そうですね」

 

「あ!は、腹が減っては戦はできぬと言うし、まずは腹ごしらえをしようと……!」

 

『ヘっ、腹ごしらえとか何とか言って、今になって腰が引けてんじゃねぇのか?』

 

「これ宝慧。そういった事は図星なだけに言わずに黙っておくのですよ〜」

 

顔が真っ赤に染まる郭嘉

 

「それでは、とりあえず我らは腹ごしらえするとしよう」

 

「……」

 

「お兄ちゃん?」

 

「俺も曹操の所に行くよ!」

 

「何でなのだ?」

 

「いや…あの時の御礼と約束を果たしに」

 

「そうですか」

 

「皆は先に食べてて」

 

「わかりました」

 

「では、また」

 

 

勇作と華陀は曹操のいる宮廷へと向かった

 

 

 

 

 

勇作と華陀が抜け、一行は近くの料理店へと向かった。その料理店は大変評判の良い店で、かなりの人気を誇っていた

 

「おっ、料理が来たぞ」

 

「うわ〜、美味しそ~~」

 

「いっただっきま~~すなのだ」

 

円形の台に並べられる豪華な中華料理を頬張る鈴々。他の一同も食を進める

 

「この麻婆豆腐美味しいですね」

 

「この肉も美味しいのだ」

 

「これは、羊の肉ですね」

 

「このメンマは中々」

 

『俺にも俺にも、一口』

 

「宝慧はその飴で我慢するのです」

 

鈴々はガツガツと目の前の料理を平らげていく

 

「おいおい、また腹が痛くなっても知らんぞ?」

 

「そしたらまた華陀のおじちゃんにチクッ!ピキューン!ハッ!てしてもらうから大丈夫なのだ」

 

「おじちゃんって」

 

「華陀さん、これを聞いたら落ち込みますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、宮廷では

 

「へぇっくしょん!!」

 

「うおっ!!」

 

謁見の間へと連れられた華陀と勇作は、目の前で玉座に腰かけている曹操と対面している

 

「あ、すまん。とにかくそういう訳なんだ」

ズズッと啜り、鼻をかむ華陀

 

「驚いたわ。太平要術がそんな危険な書だったなんて……分かったわ華陀。太平要術を探すのはやめましょう」

 

「分かってくれて何よりだ」

 

「それより、久しぶりね」

 

「どうも」

 

「貴方の噂は聞いているわ。御使いさん」

 

「御使いさんってそんな大した身分じゃないよ」

 

「あら、春蘭に随分なことをしたのに」

 

「あはは、すまない。けどあの時の救援感謝します」

 

「ふふ。所で貴方は何でここに?」

 

「ああ、ちょっとした用でね、いずれ愛紗じゃなくて関羽もここにくるぞ」

 

「そう…それは楽しみだわ」

曹操は目を細めて、ニヤリと口角を歪める

 

「(また、しょうもないこと考えているな)」

 

「しかし、そもそも何故太平要術を手に入れようとしたのだ?」

 

「ああ、実は、最近体の調子が良くないの。色々な薬を試して見たのだけれど、どれも効き目がなくて、それで藁にもすがる気持ちで……」

 

「妖術を試してみる気になったのか」

 

「ええ…」

 

「だが、見たところ重い病を患っているとも思えぬが……」

 

「な、ないのよ。アレが………」

 

「えっ?何がないって?」

 

急に小声になりだした曹操に、もう一度聞き取ろうとする華陀

 

「だからアレがないのよ……」

 

「アレがない?……っ!

 

「(あー。なるほど!それは言いづらいな)」

勇作は覇気で原因を知る

 

「心配するな。それは病ではない。寧ろおめでたい事で」

 

「違うわよ!女以外は閨に入れない私が孕む訳ないでしょ!?アレっていうのはそっちじゃなくて…」

 

「ならなんだ?俺は医者だ。恥ずかしがらずに言ってみてくれ」

 

「だから、その、えと、お通知が……」

 

「あ~、便秘かぁ!」

 

「ちょっ!」

 

「大きな声で言わないで!!」

 

「しかし、糞詰まり位で大袈裟な」

 

「だから大声で言わないでって言ってるでしょ!?もう一ヶ月もアレがないせいで、食も進まないし、肌も荒れてくるし、何よりイライラして何事にも集中できなくて……!」

 

「成程。そうとう重症のようだな。思い切って腹を裂いて溜まっている物を絞り出せばスッキリするが?」

 

「馬鹿言わないで!腹を裂いたら死んじゃうじゃないの!!」

 

「それは大丈夫。俺の調合した秘薬、麻沸散を服用すれば、あっという間に眠りにおちて、その間は何をしようと痛みは感じない。治療してから縫い合わせれば、さして傷も残らないから、安心だ!」

 

「(麻酔薬みたいなものか)」

 

「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「…………………………………………勿論、大丈夫だ」

 

「ちょっとぉ!!今の間は何よ!今の間は!?」

 

「腹を裂くのが不安なら、針を打つという手もあるが?」

 

「なんだ、まともな治療法があるんじゃないそれはどうやるの?」

 

「まずーーーを摩擦して血行を良くしてからーーーに針を刺しそれを振動させて適度な刺激を与えつつ更にーーーしてーーー続いてーーーをーーーしてーーーするとーーー」

 

だんだんと顔が赤くなる曹操

 

「いや…あの…華陀さん」

 

「だから、最後にこの黄金の鍼をーーーに深々と刺し、そこに氣を流し込めば」

 

「そんな事ぉぉぉ…………!!」

 

「うわぁ!逃げろ!華陀!!」

 

「出きるかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うわっ!」

 

「うううぅぅぅぅ……!!」

 

「お…落ち着いてください!」

 

宮廷の門の前に追い出された華陀。後ろを振り向くと、怒りのオーラ全開の曹操。得物である大鎌の刃の先を手に覇気を纏わせて真剣白刃取りのごとく止めている勇作が見えた

 

「ちょ、ちょっと待て!これはあくまでも治療であって、別に妙な下心があっての事では」

 

「アホか!あんなこと言ったら誰だって怒るわ!」

 

「そこをどきなさい!」

 

曹操は大鎌を華陀に振り下そうとするが

 

「だから落ち着いて!」

 

勇作が必死に止める

 

「華琳様っ!何事です!?」

 

そこへ、部下である夏候惇が数人の親衛兵を連れてやって来た

 

「春蘭!その男を捕らえて首を跳ねなさいっ!!」

 

「はっ!直ちにっ!」

 

命令する曹操。夏候惇は命を受け、華陀を標的に捉えた

 

「うわわわわ」

 

「待て!逃がすな!」

 

「うわわわわわぁぁぁぁぁっ!!」

 

華陀は慌てて宮廷前の階段を駆け下り、夏候惇率いる親衛隊から砂煙を出しながら逃げていった

 

「全く!何なのよあの薮医者…!」

 

「だから落ち着いて」

 

「………」

 

「………」

 

沈黙が支配する

 

「はあ、分かったわ」

 

そういうと曹操は力を抜く

 

「はあー」

 

勇作も手を離す。曹操は大鎌を下げる

 

「ああ、良かった」

 

「よくも邪魔してくれたわね」

 

「目の前で友達がピンチなんだよ!助けないと」

 

「ピンチ?」

 

「危機って意味だよ……それよりも」

 

「ん?」

 

「いまだに命を狙われていますね。曹操さん」

 

「どういう意味かしら」

 

「屋敷内に居ますよ。刺客」

 

「…………」

 

「…………」

 

「華琳様」

 

横から軍師である荀彧が声をかける

 

「なぁに?」

 

「関羽が目通りを願ってきましたが、どう致しましょう?」

 

「えっ?関羽が?」

 

表情がパアッと明るくなる。

 

「何でも、仕官を望んでいる者を紹介したいとか…」

 

「いいわ。それじゃあ、直ぐ謁見の間へ」

 

「はい」

 

「いえ、待って。良いことを思い付いたわ」

 

曹操は朱色に染まった頬をかきながら、ニヤニヤと歓喜の笑みを浮かべるのであった

 

「(またし変な事考えているな)じゃあ俺はこれで」

 

そう言って、その場を後にする勇作であった



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第六十二席 郭嘉と程昱、曹操に仕えんとするのこと

愛紗は仕官を願う郭嘉と程昱と一緒に曹操の所へと赴いたのだが、今いるその場は謁見の間ではなく、湯気がモクモクと立つ、かなりの広さを持つ温泉

 

「久しぶりね。関羽」

 

「そ、曹操殿。どうしてこんな所で会おうとなどと……」

 

曹操は既に湯船に浸かっており、愛紗と横に並んでいる郭嘉と程昱は衣服のない体を、タオル一枚で包んでいる。郭嘉に至っては風呂場でも眼鏡をかけており、レンズが完全に曇っている。宝慧は布で目を隠している

 

「その二人が、私に仕官したいと望んでいる者達ね?」

 

「お……お目通りをお許し頂き、か、感謝申し上げます!か、郭嘉と申します!」

 

「程昱と申します」

 

「関羽、こうして一糸を纏わぬ姿で会ってこそ、相手の身なりに左右されることなく、その人物の本質を見極められるというものよ」

 

「は、はぁ……」

 

「さあ、あなた達も湯に入りなさい」

 

「それでは……」

 

「お待ちなさい」

 

タオルを巻いたまま、湯船に浸かろうとすると、曹操に止められた

 

「湯の中には手拭いを入れぬのが風呂での礼儀と言うものよ」

 

「いや、だが……」

 

「礼儀を守れぬなら、話はここまでよ」

 

「うっ……」

 

それを言われると、言い返せない。愛紗は恥じらいながら仕方なく巻いているものを取る

 

「フフッ」

 

曹操は頬を緩ませる。そのまま湯に入り、郭嘉と程昱も続いて入る

 

「(こ、これが生曹操様、想像以上にお美しい……湯船で眼鏡が曇っているからいいものの、もし直に見ていたら……)」

 

ツウーッと鼻の穴から一筋の赤いものが垂れている

 

「(い、いかん、また鼻血が……)」

 

「さて…それじゃあ、まず程昱とやら」

 

「はい」

 

「貴女は今の世の中をどう見ていて?」

 

「嘗て天下を覆うまで葉を繁らせた大樹も、今は根本から腐り始めています。徒に高みを目指し、枯れ始めた木に登るより、いつか訪れる芽生えの時を待って、じっと寒い冬を耐える種の様に、ここは力を蓄えべきかと」

 

「そして、いずれは倒れる大樹に変わり、自らが新しい大樹となる、か……」

 

頭を下げる程昱

 

「ふーん。さて、もう一人の貴女は確か……」

 

「か、かかか郭嘉です!」

 

「これから私が進むべき道について、貴女の意見を聞かせて貰えるかしら……?」

 

美しい笑みに見惚れ、郭嘉は更に顔を紅潮させる

 

「わ、わわわ私が、かか考えまするは!!」

 

完全にパニックに陥っている郭嘉。若干呆れた表情を浮かべる曹操

 

「っ!」

 

曹操は上を向いた。それと同時に、何かが上から降ってきた。

 

「あっ!」

 

「っ!」

 

ドボンッ!と水飛沫が飛び、曹操は瞬時に避ける。偶々そこにいた郭嘉に覆い被さる様になった

 

「これは!?」

 

上から飛来した物体、黒装束を纏い、短刀を手にしている。曹操の命を狙う者が仕向けた刺客である

 

「(こ…この感触は)」

 

曹操に抱きつかれてる状況になり、郭嘉の心情は正に有頂天に到達した

 

「っ!」

 

「はぁっ!」

 

刺客が曹操に襲いかかろうとすると、横から愛紗が助太刀に入る

 

「ぶぁあああ~~~!!」

 

ブシャアアッ!と限界を越えた郭嘉の鼻から放たれた赤い鮮血が相手にかかり、視界を潰した

 

「う、くっ!」

 

「でぇいっ!」

 

目潰しを喰らい、狼狽える刺客に飛び掛かる愛紗。曹操は郭嘉の見ると、彼女は鼻血を出したまま気絶してしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事なきを得て、場所は謁見の間へと移された

 

「ふぅ、やれやれ。ひどい目にあったわ」

 

寝間着姿で玉座に座る曹操

 

「関羽、また貴女に助けられたわね」

 

「礼ならば私よりも、郭嘉殿に言われるが良かろう」

 

自分ではなく郭嘉殿にと、愛紗は曹操に言う

 

「しかし、曹操殿も相変わらず敵が多いようだな」

 

「しょうがないわ。間違った今の世で正しい事をすれば、それを快く思わない者から命を狙われるのは当然よ」

 

「ふふふ」

 

「さて程昱。貴女は私と共に語るに足る人物の様ね。これから私の軍師として働いて貰えるかしら?」

 

二人は顔を見合わせて、歓喜の表情を浮かべる。程昱は曹操と向き合い

 

「仰せのままに」

 

「郭嘉」

 

「は、はっ!」

 

「鼻血で刺客の目を眩ました技、見事だったわ」

 

「へぇっ!?あ、いや、あれは……」

 

「その技を生かし、親衛隊の一員として、これから私を守って頂戴ね」

 

「……は?親衛隊?軍師じゃなくて、その、親衛隊って……」

 

「期待しているわよ」

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

こうして、程昱は軍師として、郭嘉は軍師……ではなく、親衛隊の一員として、曹操の元についたのであった

 

 

 

「ああ、それと関羽」

 

「何でしょうか」

 

「御使い…いえ、高杉に礼を言ってもらえないかしら」

 

「ご主人様にですか?」

 

「ええ…元々彼から屋敷内に刺客がいると警告を受けていたけど、まさか本当にいるとは思わなかったから」

 

「は、はあー」

 

「よろしくね」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わって

 

「………無事に済んだようだな」

 

勇作が見聞色の覇気を使い、すべてを聞いていた

 

「…程昱は無事に軍師になったから良いけど、郭嘉さんは………まあ、ドンマイ」

 

苦笑いをする勇作であった

 

「さて…愛紗が来るまで待つか………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曹操がいる屋敷のある場所

 

 

「何!!失敗したじゃと!」

 

「はい」

 

「くそ!使えない奴め……おい、分かっているな」

 

「はい…処分します…あの」

 

「何だ!」

 

「もうやめた方が」

 

「何だと!貴様!逆らう気か!」

 

「いえ、そうではありません!だたこれ以上は」

 

「ふざけるな!奴を殺るまでは諦めん!!」

 

「しかし」

 

「案ずるな!次の策は用意してある」

 

「策ですか」

 

「ああ、それで曹操を殺す」

 

「どうやって?」

 

「明日は例の日だ。そこで奴に…………」

 

「なるほど!さずが」

 

「分かっているな」

 

「承知しました」

 

「……曹操よ!明日が貴様の命日だ!!ふはははははははは!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」



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第六十三席 勇作、典韋と出会うのこと

空はすっかり橙に染まり、もうすぐ夜になろうという頃、それでも街の活気は変わらない。民が行き来する中を二人の男女が共に歩いていた

 

「此処みたいだな」

 

視線を向けると、赤いベレー帽を引っかけている蛇矛が、建物の二階の窓から姿を現していた

 

 

 

 

 

 

今日泊まる宿屋の二階部屋。その部屋では各々がそれぞれの時間を過ごしていた。星は愛槍の龍牙の手入れを、劉備は鈴々と朱里にあや取りを教えていた

 

「ここをこうして、ここに指を入れて…はい、橋」

 

「わぁ!」

 

「はい、定軍山!」

 

「すごいのだぁ!」

慣れた手つきであやとりを行う劉備。鈴々と朱里は劉備を称賛する

 

「劉備さん、あやとりお上手なんですね」

 

「えへへ…私小っちゃい頃から筵や草鞋を織ってたんで、こういうの得意なんです。それじゃあ次は…」

 

星が槍の手入れを終え、劉備が新しいあやとりをしようとしたその時、タイミング良くドアが開かれた

 

「お帰りなのだ」

 

「高杉さん、関羽さん」

 

「遅かったな。ん?」

星が二人に近づくと、何かに気づいたのか、鼻をくんくんと動かす

 

「もしかして、風呂に入って来たのか?」

 

「ああ、曹操殿の所でな」

 

「成程、閨でかいた汗を流して来たというわけか」

 

「なっ!!」

 

「な!何言っているの!!」

 

顔を赤らめながら、朱里。劉備は分からない表情をする

 

「そうではない!色々とあったんだ色々!」

 

「と、所で、郭嘉さんと程昱さんの首尾はどうでした?」

 

「うむ。二人共無事、曹操殿に召し抱えられる様になったそうだ」

 

「それはよかったですね」

 

「(まあ、郭嘉さんは別の事で召し抱えられたけどね)」

心の中でそう思う勇作

 

「そんな事より早く晩ごはん食べに行くのだ!鈴々はお腹ペコペコで背中とお尻がくっつきそうなのだ」

 

「それを言うならお腹と背中だよ」

 

「そうですよ。鈴々ちゃん、背中とお尻がくっついたらお腹真っ二つですよ…」

 

「だからそうならない為にも早く晩ごはん食べに行くのだ!」

 

「お昼ご飯食べたお店、美味しかったからあそこにしませんか?」

 

「うむ、あの店のメンマは中々だった」

 

「鈴々は、羊の肉の炒めものが気に入ったのだ」

 

「麻婆豆腐も美味しかったですよね」

 

「そんなにすごい店だったのか?」

 

「そうなのだ」

 

「それは楽しみだな」

 

「ん?どうした?浮かない顔をして?」

 

愛紗に声を掛ける星

 

「あ、もしかして、別のお店がよかったですか?」

 

「いや、そういうことではなくて、ちょっと華陀殿の事が気になってな…」

 

「華陀のおじちゃんがどうしたのだ?」

 

「詳しくは聞けなかったのだが、どうやら曹操殿を怒らせてしまったようで…」

 

「それは厄介だな」

 

「ああ、まだ、首と胴がくっついていればいいが……」

 

「そうだな……(まあ、あんなこと言えば誰だって怒るけど)」

 

「ご主人様…覇気でわかりますか?」

 

「いや…この街にはいなかった。だから分からない」

 

「そうですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み、辺り一面夜の色に染まった。街から少し外れた森の中、夏候惇率いる一部隊が必死に周りを見渡していた

 

「えぇい、逃げ足の早い奴め…!やむを得ん!ここは一旦引き上げるぞ!!」

「はっ!」

 

夏候惇は部隊を連れて引き上げた

 

「ど、どうやら、撒いたようだな……」

 

撤退する様子を、茂みの中から見ていた。ほっと一安心し、荒れた呼吸を整える華陀

 

「ったく、何で俺がこんな目に……」

 

丁度後ろにあった木にもたれて腰かける

 

「一刻も早く太平要術を見つけて、封印せねばならんというのに…」

 

夜空を見上げる。生い茂る木々の間から、北斗七星が輝いていた

 

「(それ自体が強い妖術を持つ妖術書、太平要術。悪しき事に使われていなければ良いのだが…………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所、その書物は今、張三姉妹ありこの日もライブをし観客の心を満たしていた

 

「みんな〜!今日もありがとーー!天和、皆の事、愛しているよ!」

 

「ホワッ!ホワッ!ホワアアアッ!!」

 

「まだまだ元気一杯だね!それじゃあこっちも負けずに」

 

「おい、足踏むなよ!」

「踏んでねぇよ!」

 

張角はおろおろと狼狽えている。すると、張宝の手に持っているマイクが、翡翠色から、暗い紫色に染まった

 

「はぁい!そこの二人、喧嘩はダメだよ?仲良くしてねーー!」

 

そのマイクで声を通す。その音は、周りに広がっていった

 

「喧嘩は駄目……仲良くする…………」

 

「喧嘩は駄目……」

 

「仲良くする……」

 

「喧嘩は駄目……仲良くする……」

 

取っ組み合っていた二人がいつの間にか手を離していた。それだけでなく、他の観客もどこか様子がおかしい。何か、催眠にかかったような。張角と張梁が左の方を向くと、張宝は可愛らしく、片目を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

舞台が終わり、三人は控え室で待機していた

 

「今日も大盛況だったわね」

 

「ねぇねぁ、さっきのあれ、どういうことなの?」

 

「まあ、ちょっとね」

 

「何々?勿体ぶらずに教えてよ!」

 

「地和姉さん、新しい術を使ったのね」

 

マイクを持って

 

「昨日これに、もう一つ術をかけといたの。それを発動させてから、これを通してお願いすると、相手に聞いてもらえるってわけ」

 

「それじゃあその術を使えば、誰にでもお願いを聞いてもらえるの?」

 

「とはいかないんだよね~この術が聞くのは、あくまで私達の虜になっている人……つまり、私達の歌を気に入って、私達に好意を持っている人だけなの」

 

「そうなんだ」

 

「つまり、元から私達のお願いを聞いてくれそうな人達のそうした気持ちを増幅させる術なのね?」

 

「まぁ、そんなとこね」

 

「なぁんだ…」

 

「って言うけど、これって結構妖力使うから大変なんだよ?私程度の力じゃあ、使える術じゃないんだけど…ほぉんと、太平要術様様よね~!」

 

張宝は太平要術の手に持ち、抱き抱える

 

「(これで、いつかの人も虜にするわよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、晩ごはんを摂っている勇作は愛紗たちと一緒に昼食を摂った店で食事をしている

 

「んーやっぱりここは羊の炒めものが最高なのだ!」

 

「麻婆豆腐も侮り難い味ですよ」

 

「ふっ、このメンマの奥深さが分からんとは、二人共まだまだ子供だなぁ」

 

「何言っているんだ?けど本当に美味しいな!」

 

「趙雲さんって、本当にメンマがお好きなんですね」

 

「実は私の母方の祖父がメンマでな」

 

「成程それで……ってなんだそれ!意味分からんぞ!」

 

「炒飯大盛り出来ました!ん?」

 

厨房にいる一人の少女の視界に、その様子が少し入った

 

「「「「「「「ご馳走さま(なのだ)」」」」」」」

 

円卓台の上にある料理を平らげた一同。皿にあった料理は、全て腹に入っていった

 

「この店の料理、見た目は庶民派だが、どれも一工夫してあって、腹が減っていれば何を食っても旨い鈴々には勿体ない位の味だったな」

 

「ホントおいしかったのだ!」

 

「え〜っと鈴々ちゃん……」

 

「あっ、綺麗に平らげてくれたんですね!」

 

「ん?」

 

全員、声のする方を向く。赤い腰エプロンを付けた女の子がそこにいた

 

「(誰だ?)」

お茶を飲む勇作

 

「あ、私、この店で料理人をしている典偉と申します」

 

ブー!!

 

お茶を噴き出す勇作

 

「うわ!どうしたのだ!?」

 

「ご、ごめん、ちょっとむせて」

 

「気を付けてくださいね」

 

「それではこの料理…お主が作ったのか」

 

「はい…それで、もし良かったら、コレ試してくれませんか?」

 

そういうと、典偉は後ろからあるものを取り出した。竹や木を編んで作られた蒸し料理用の、小さめの蒸籠である。俗に、中華まんや小籠包等で使われる容器である。蓋を開けると、硝子が曇る程の湯気を出し、中には六個の中華まんがあった

 

「肉まんなのだ!」

 

「これは旨そうだ」

 

「今度、新しく出そうと思ってるんですけど、食べて感想聞かせてもらえませんか?」

 

「そういう事なら、遠慮なく」

 

六人は中華まんに手を伸ばし、口にする

 

「肉汁たっぷりなのにあっさりしていて美味しいですね」

 

「ほんほにおいひいのら〜!」

 

「お行儀悪いですよ鈴々ちゃん。口に物を入れたまましゃべっちゃ」

 

「しかし本当に美味しいな!」

 

「この肉、豚ではないな…さりとて牛でもないし」

 

「典偉とやら、これは一体何の肉だ?」

 

「えへ!何のお肉か当ててみて下さい」

問題が出題され、う〜んと唸る一同

 

「鹿や猪でもないようですが……」

 

「ほら、分かりませんか?頭ににが付いて、二本足の……」

 

「頭ににが付いて二本足……」

 

「二本足でにから始まる生き物といえば……」

 

「うっ……!」

 

「そ、それは、もしかして……に」

 

深刻な表情を浮かべる

 

「お~い!何を考えているか知らないけど…鶏だよ。これ」

 

「はい、鶏です!」

 

途端、四人がズッコケた

 

「お、脅かすな!」

 

「へっ?」

 

「いや~、正に人を食った…いや、食わなかった話か」

 

「何も冷や汗かきながら上手い事言わなくてもいいですよ…」

 

「おごりの肉まんおいしかったのだ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「(この美味しい料理を作っているのが、あの悪来典偉だと誰が信じるかね……あははは)」

 

心の中で苦笑いをする勇作であった



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第六十四席 典韋、曹操に試されるのこと

夕食を食べ終えた一行は宿へと戻り、一休みしていた。そこへ、とある客がやって来た

 

「これは、夏候淵殿」

 

曹操の部下の一人、夏候淵がそこにいた

 

「えっ?曹操殿が先程の礼を?」

 

「はい。当家では月に一度、華琳様自ら腕を振るって、招いた客人をもてなす美食の会というものを開いております。明日の昼よりそれを催しますので、刺客より救っていただいたお礼として、是非関羽殿とお連れの方達をお招きしたいと」

 

「美食の会って、何をする会なのだ?」

 

「美食というのは、美味しい料理の事ですよ。だからきっと、何か御馳走してくれるんじゃないでしょうか?」

 

「「ご馳走!?やったぁ!」」

 

劉備と鈴々は二人してその言葉に反応する。お互いハイタッチするほどの喜び様だ

 

「こら鈴々!はしたないぞ!」

 

恥ずかしい所を見せるな、と愛紗は怒鳴る。二人はビクッ!と震え、縮小する

 

「あ、いや、劉備殿はその、なんというか程々に……」

 

「それでは主の招き、お受け頂けますね?」

 

「もちろんなのだ!明日の朝ごはんは、おかわりを三杯までにしてお腹を減らしとくのだ!」

 

「あははは」

 

苦笑いする愛紗

 

「…………」

 

「あの…ご主人様」

 

「ん?」

 

「どうしたんですか?難しそうな顔をして」

 

「…いや、なんでもない!どんな料理が出るのかなと考えていただけだよ」

 

「そうですか」

 

「………」

誤魔化す勇作。その様子に朱里は心に悪い予感を抱いたが、気のせいだと気にしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日となり、場所は曹操のいる屋敷に移る。屋敷中のとある一室。中は薄暗く、一本の蝋燭だけが灯されているその部屋に、黒のマントを羽織った一人の少女がいた。少女の目の前には、肉・野菜・魚と、料理に欠かせない食材が台の上にずらりと並べられていた。少女は食材の中から一粒の梅を手に取ると、前に進む

 

「(出てきたか)」

 

 

部屋から出ると、目前に調理するために必要な器具やらが置かれている調理台。高い場所に配置された観客席から見下ろしているのは、少女から見て、右側に位置するのが魏の面々。反対が招かれた勇作達一行である。周りを少し見渡すと、愛紗に視線を向ける

 

「関羽、よく来てくれたわね。他の者達も、今日は私の料理をゆっくり楽しんでいってね?」

 

曹操は手に取った梅をかじると、舌を刺激する酸味に身を震わせた。

 

「それでは只今から、美食の会を始めるわ!」

 

曹操はエプロンを着け、早速調理を開始する

 

「曹操殿が料理も嗜まれるとは…」

 

「古代より料理の道は兵法に通ずと言いますし」

 

「そんなの聞いた事ないんだけど…」

 

「あぁ…さっき青梅をかじった時の酸っぱそうな華琳様のお顔…あれを思い出すだけで唾が湧いてくるわぁ……」

 

「別にそうでなくても、貴様は華琳様の御姿を見ては妄想を逞しくして四十涎を垂らしているではないか」

 

「春蘭、あなたこそ下の唇から四十、涎を垂らしていて乾く暇もないんじゃないの?」

 

「なっ、何を根拠にそんな事を!私がそうなっている所を見たとでも言うのか!?え!」

 

「あ、姉者。此れから物を食べようという時にそうした話題はちょっと……」

 

「私とて、好きで下の唇の話をしているのではない!桂花が……」

 

「分かった分かった。分かったから姉者、調理中に煩くしては華琳様の邪魔になる」

 

曹操は、てきぱきと調理を開始していた。今は魚介類を手にかけている

 

「見事な手つきですね」

 

「うむ、本職顔負けだな」

 

「どんな料理が出来るんでしょうね?」

 

「楽しみなのだ」

 

そこに、侍女が六個のコップがある御盆を手にやって来た

 

「飲み物と前菜を御用意しましたので、先ずはそれをお楽しみ下さい」

 

侍女は、コップを六人の前に出す

 

「曹操様が好物の蜜柑で御作りになった、果実酒です」

 

コップには芳醇な香りを漂わせる橙色の果実酒が入っており、勇作と愛紗、劉備と星はそれを口にする

 

「おお、これは…」

 

「初めて飲むが、悪くないな」

 

「美味しいな」

 

蜜柑の果実酒を飲み、絶賛する四人。他の二人はというと

 

「何で鈴々達はあれじゃなくて、山羊の乳なのだ?」

 

「大人の事情です」

 

魏の面々にも蜜柑の果実酒が出された

 

「はぁ~~~~……何て芳醇な香なの」

一口飲んだ後、コップを覗く荀彧

 

「(仕込みのために、美しいおみ足でみかんの身を踏みつぶす華琳様のお姿が目に浮かぶよう…そしてこの独特の風味!きっと滴る汗が中に落ち、それが絶妙な隠し味となっているんだわ。あぁ~果実を踏んでみかん色になった華琳の足をお舐めしたい。指のまたに下を這わせて綺麗にしたい!)」

 

「(お~い…何を想像しているんだ)」

 

「(いえ…いっそのこと………私が汁気たっぷりの果実となって華琳のおみ足に踏みしだかれてみたい!あぁ~もっと!もっと!)」

両の頬を押さえ、悶え始めた

 

「曹操軍は百合百合しいとは聞いていましたが、まさかこれ程とは……」

 

「野放しにしとくのは、何かまずいじゃないか?)」

 

「(いや…もう手遅れだと思うよ)」

 

そうしている内に、前菜の一品が目の前に置かれた

 

「温泉卵でございます」

 

「鶉の卵かしら?」

 

荀彧は黄身をスプーンで掬うと、それを口に運ぶ

 

「あ!こ、これ、もしかしてウミガメの卵?鶏卵では決して出せないこってりとした濃厚な風味。一見単純だけど奥の深い味だわ」

 

「(う、ウミガメの卵!……逮捕されないよね…これ食べても)」

 

「うぅ、こんなんじゃお腹の足しになんないのだ…」

 

鈴々は一口で食べ、勇作は躊躇しながらも食べた

 

「出来たわ。まずは一品目、江東の長江で獲れたススキの洗いよ。付け合わせに蜀の生姜があれば良かったのだけど、手に入らなくて…」

 

「口の中にまったりとした脂が広がり、舌の上で蕩ける様。吟味に吟味を重ねた素材の良さを損わない絶妙な仕上がりですわ」

 

「これ向こうが透けて見えるのだ。こんなに薄く切るなんてとんだケチンボなのだ」

 

「(刺身でも美味しいけど、お寿司にして食べたかったな)」」

 

ぶつぶつと言う鈴々。心の中でいう勇作

 

「蜂蜜に漬けた熊の掌の佃煮でございます」

 

「(何で佃煮…しかも熊の手)」

 

「燕の巣をチョウザメの卵の塩漬けで和えた物でございます」

 

「(初めてのキャビア)」

 

「軽く炙ったガチョウの肝臓に西方から取り寄せた松露の薄切り添えでございます」

 

「(これ…フレンチだよね)」

 

「ああもう!ちまちました料理ばっかで全然お腹一杯にならないのだ!こんなんだったら町の食堂で食べた典韋の料理の方がずっとずうっとおいしいのだ!」

 

「おい!ちょっと!」

 

「…それは聞き捨てならないわね」

 

「い、いや、子供の言うことなので、お気になさらずに……」

 

「私の治める地にそんなに腕の良い料理人がいるなら、その者の作った料理、是非食べてみたいわ。春蘭、その者を連れて来て頂戴」

 

「ぐむっ!?ふぁ、はい!」

 

口に含んだ料理を詰まらせかける夏候惇

 

「(あははは………………)」

 

この状況に苦笑いをする勇作。その後、ある場所を見続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、典韋が来て、は調理台の前に立っていた

 

「あのぅ、これは一体……」

 

「典韋とやら、聞けばそなたは中々の腕を持つ料理人とか。貴女の作る物を食べてみたいわ…そこにある材料は何を使っても良いから、何か一品作ってみなさい」

 

後ろにあるありとあらゆる食材を目にする

 

「何か一品……」

 

「すんごいの作ってクルクル頭をギャフンと言わせてやるのだ!」

 

「(クルクル頭って)」

 

「と言われても……」

 

腕を大きく振り、典韋に声援を送る鈴々。少し困惑するが何かを思い付き、顔を引き締めた

 

「分かりました!何とかやってみます!」

 

典韋はいつものエプロンを着け、調理に取りかかる。他の一同はその様子をじっと見つめている。包丁でトントンと慣れた手つきで食材を切り、中華鍋で炒める。今度は小麦粉等をこね、それに炒めたものを入れ、丸める。更にそれを竹を編んで作られた容器に入れ、蒸していく

 

「できた!どうぞ召し上がって下さい」

 

出来たのは肉まんであった。想定外だったのか、あまりにも普通過ぎて呆気にとられる魏軍

 

「いただきますなのだ!」

勇作たちは肉まんを食べる

 

「ん~おいしいのだ!」

 

「中のお肉は羊ですね」

 

「麻婆のピリ辛味が食欲をそそるな」

 

「この歯応えはメンマか?」

 

「皮もホクホクで美味しいですよ」

 

「確かに、美味しいな!」

 

六人が感想を述べるなか

 

「(肉まんか……)」

 

曹操もその肉まんを口にする

 

「(皮の食感は申し分ない。具に混ぜ混んだ細かく刻んだメンマの歯応えもいいわね。ただ、ちょっと味付けはしつこいかしら?羊の肉につけた下味と麻婆が互いの良さを打ち消しあっている)」

 

「あ!?これってもしかして……」

 

「この肉まんがどうかしたのか?」

 

「ほら、羊の肉に麻婆にメンマ。これってみんな典韋の店で食べて私たちが気に入った物じゃないか?」

 

「ああ、確かに!」

 

「皆さん、昨日の昼と夜、続けてうちの店に来てくれましたよね」

 

「(俺は夜だけだったけど)」

 

「どちらの時も、その三品を注文してたから、きっと気に入ってもらえたんだと思って…それで、急なことで何を作ったらいいか分からなかったから、皆さんの気に入っているものを一つにしちゃおうって考えたんです」

 

「成程、それでこの肉まんを」

 

「ただ、初めて作ったものだったから、味付けがちょっとちぐはぐな感じになってしまったんですけど……」

 

「…………」

 

「確かに、街の料理人が作ったにしては、良い味でしたけど、華琳様には叶いませんわ」

 

「いいえ桂花。私の負けよ…」

 

「えっ!?」

 

「関羽への礼の為と言っておきながら、私は招いた相手の好みを聞きもせず、自らの腕を見せつける様な料理を出してしまった。これでは、もてなしの心得がないと言われてもしょうがないわ」

 

「……」

 

「それに比べて、典韋は突然の事だったにも関わらず、食べる相手の好みを第一に考えて料理を作った。これは、明白に私の負けよ……」

 

「あの、それはちょっと違うんじゃないでしょうか?」

劉備が声をかける

 

「ん?違うって何が?」

 

「曹操さんは、関羽さんの為にと思って、一生懸命料理を作ったんですよね?だったらそれも、充分立派なもてなしの心だと思います。それに、張飛ちゃんにはちょっと口に合わなかったみたいですけど、私は曹操さんの御料理も美味しいと思いました。ていうか、そもそも料理に勝ち負けなんてないんです。ご飯は皆で楽しく食べるのが正解なんです」

 

「皆で楽しく食べるのが正解……勝ち負けなんてない……?」

 

一瞬呆ける曹操だが、すぐにフッと笑う。呆れが混じりつつも、綺麗な微笑だ

 

「全く、とんだあまちゃんね…」

 

「(皆で楽しくか……)」

 

突然、ガシャン!と典韋の後ろにある部屋から大きな物音が聞こえた

 

「(な、何だ!!)」

 

一人の侍女が悲鳴をあげながら逃げてきた

 

「た、大変ですっ!食材の牛が突然…きゃあ!」

食材の一つでもある牛が鼻息を荒くし、侍女を押し退けてその場に乱入

 

「郭嘉!貴方の鼻血で目つぶしよ」

 

「い、いや…赤い見せたら余計まずい事になるのでは」

 

牛は周りを少し見渡すと、ある一点に視線を向ける。目に捉えたのは、典韋。牛は狙いを典韋に定め、突進してくる

 

「(まずい!)」

 

劉備は顔を覆い、勇作は身を助けようと下に降りる

 

「……え?」

 

すると勇作の目に飛び込んできたのは

 

「う、ぐくくく……!!」

 

典韋が牛の頭から生えている二本角を両手でしっかりと握り、その動きを止めていた

 

「うぉぉりゃあああああっ!!」

 

典韋はそのまま、牛を上空に投げ飛ばした。牛は屋根を突き破り、空中で高速回転しながら、星となった

 

「(…嘘)」

 

ある意味予想だにしていなかった結末に、その場はしーんと静まり返る

 

「はぁ、びっくりした」

 

その場の全員、ズッコケる。

 

「びっくりしたのはこっちよ!」

 

「(あははは………………やっぱ悪来典偉だわ)」

勇作も内心驚きながら、動いた

 

 

 

皆が落ち着きを取り戻し

 

「えぇっ!私が曹操様の親衛隊に!?」

 

「ええ。貴女の怪力。このまま眠らせておくのは惜しいわ。よければ、私の側で仕えてはもらえないかしら?」

 

「私なんかには勿体無い御話ですけど、でも今働いているお店の事もありますし、急には……」

 

「勿論、今すぐにとは言わないわ。店の主人とよく話し合って決めて頂戴」

 

「…はい、分かりました」

 

「実は前から、料理について語り合える者が身近に欲しいと思っていたのよ。残念ながら、我が軍には料理の味が分かるものがいなくて……」

 

「稟ちゃん…早速良い後輩が出来そうで良かったですね」

 

「馬鹿……私は…私は…」

涙を浮かべる郭嘉

 

「貴女が私の所に来てくれるのを、楽しみにしているわ」

 

「はいっ!」

 

「(これでめでたしめでたしだな…それにしても鈴々といい、許緒といい、この子といい、何で小さい武人がこんな怪力の持ち主なんだよ。秀吉もびっくりするな!)」

 

そう思いながら勇作は、調理場に置いてコップを取り、飲む

 

「!?ちょっとアンタ!!」

 

「……」

荀彧はそれに気づき声を上げる

 

「それ!華琳様がこの後飲む果実酒なのよ!何飲んでいるのよ!!」

 

「!!」

 

勇作はすぐにコップを調理台に置く

 

「……」

頭を下げる勇作

 

「謝って済むはずないでしょう!」

 

「よしなさい!桂花!」

 

「しかし華琳様!」

 

「良いのよ…彼に貸しがあるし」

 

「でも」

 

「桂花」

 

「わかりました」

 

「高杉」

 

「………」

 

「これで貸し借りなしよ!次は無いわ」

 

「………」

 

「ご主人様」

 

愛紗が声を掛けるが反応がない

 

「………うっ!」

 

突然、首を押さえつけて苦しみ出す

 

「ご、ご主人様!!」

 

その光景に驚く皆

 

「……がは!」

 

次の瞬間、勇作の口から赤い液体が吐き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れた



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第六十五席 勇作、演技をし犯人を当てるのこと

お待たせしました
すこしというか強引な所もあると思いますが
楽しんで読んでもらえるとうれしいです


「「ご主人様!!」」

 

「主!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「高杉さん!!」

 

愛紗達は勇作に駆け寄る

 

「しっかりしてください!」

 

朱里が勇作の体をゆする

 

「う…う…」

 

声を出すがかなり苦しそうだ

 

「春蘭、今すぐ医者を!!」

 

「は、はい!」

 

曹操達も勇作に近寄る

 

「しっかりしなさい!」

 

「は、はい……」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「何で倒れて」

 

「確か、華琳様が飲むはずだった果実酒を呑んだ後に倒れて…」

 

「!!」

朱里は何かに気づき

 

「すいません!水をいっぱい持ってきてください!それと塩とおわんも!」

 

「えっ!」

 

「お願いします!」

 

「わ、分かりました!」

 

典韋は食材がたくさんある部屋に入る

 

「何をするのだ?」

 

そして塩と水そしておわん持って典韋が来た

 

「これで」

 

朱里は水の入った桶に塩を手掴みで3つほど入れ、手でかき混ぜる。そしておわんに食塩水を入れる

 

「ご主人様!これを全部飲んでください!」

 

「…え?」

 

「早くしてください」

 

「いや………あの」

 

「お願いします!」

 

勇作はおわんに入った食塩水を全部飲んだ

 

「なにをするのだ?」

 

「すいません…失礼します」

 

朱里は勇作の口の中に人差し指と中指を入れる

 

「(うっ!!)」

 

勇作は容器に嘔吐した

 

「げほ!げほ!」

 

「これで、全部出たかもしれません」

 

「全部出たって?」

 

「曹操さん」

 

「何かしら?」

 

「ご主人様が飲んだ…それ」

 

「これの事かしら」

 

そう言ってコップを持つ

 

「もしかしたら、それに毒が入っているかもしれません!」

 

「毒!!」

 

「まさか…そんな」

 

「いえ…そうかもしれないわ」

 

「そんな」

 

「しかし誰が…そんなことを」

 

「誰が入れたのだ?」

 

「私たちは全員、上に居たから…毒を入れることが出来るのは……」

 

「曹操様、典韋…侍女の誰かですかね」

 

「華琳様じゃないでしょ!」

 

「典韋も違うのだ!あんな美味しい肉まんを作った人が毒を入れるはずないのだ!」

 

「じゃあ後に残るのは侍女しか」

 

「いえ、待ってください!侍女も一度も下に降りていませんよ」

 

「いえ…念のため身体検査を…秋蘭」

 

「御意」

 

夏侯淵は侍女の二人をチェックし始めた

 

「うーん」

 

「ご主人様」

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん…楽になった」

 

「お兄ちゃーーーん!!」

 

鈴々が勇作に抱き着いた

 

「良かったのだ…良かったのだ」

 

「鈴々」

 

「主」

 

「「ご主人様」」

 

愛紗と星そして朱里も近づいてくる目に涙を浮かべ

 

「よかった」

 

「倒れた時はどうかと」

 

「………」

 

「華琳様」

 

「どう?」

 

「侍女のふたりから何も出ませんでした」

 

「そう」

 

「じゃあ、どうやって毒を入れたんだ?」

 

皆が考えていると

 

「華琳様…連れてきました」

 

夏候惇が一人の男を連れてきた

 

「それで、倒れたのは曹操様ですか?」

 

「いえ、違うわ」

 

「……は?」

 

「倒れたのはそこの高杉よ」

 

「!!………そうですか」

 

男は勇作を見る………勇作を睨み見つけて

 

「(あー、こいつが犯人か…………………なるほどね)」

 

「では、検査します」

 

「大丈夫です」

 

勇作は立ち上がる

 

「ご、ご主人様、大丈夫ですか」

 

「ああ……それよりちょっと集まって」

 

勇作は愛紗達を集める

 

「どうしました?」

 

「ちょっと力を貸してほしい」

 

「え?」

 

「では…私はこれで」

 

「ちょっと待ってください!」

 

勇作が声を上げる

 

「な、何でしょうか」

 

「すいませんが、皆さんこの場に集まってくれませんか?」

 

全員が頭をかしげるが…曹操の面々、医者(犯人)、愛紗達、侍女が集まる

 

「さて、みなさん…今回、俺が毒が入った果実酒を飲んで倒れてしまった事件ですが、犯人はこの中に居ます!!」

 

「………」

 

シーンとなる空気

 

「あーオホン!ではまず聞きます。曹操殿」

 

「!私?」

 

「ええ、曹操さんがこの後飲むはずだった果実酒ですが、それは美食の会が終わった後に飲むと決まているのですか?」

 

「そうよ。これは私の好物で作った酒なのだか」

 

「月に一度の美食の会が終わった後に必ず?」

 

「そうよ」

 

「これは曹操軍の皆全員知っている事?」

 

「ええ」

 

「そうですか…今回も飲むつもりだったのですよね」

 

「何が言いたいのよ」

 

「!!まさか」

 

「朱里、どうしたのだ?」

 

「いえ…まさかそんな……でもそう考えてると」

 

「さっきから言っているのよ」

 

「荀彧さん」

 

「何よ!」

 

「貴方も軍師でしょう……少し考えればわかるはずです」

 

「何!」

 

「朱里、説明して」

 

「はわわ!わ、わたしが!」

 

「お願い」

 

勇作はウィンクをする

 

「そ…それでは今回の事ですが、もしかしたら曹操さんを殺すために仕込んだことだと思います」

 

「な!」

 

「何だと!!」

 

「考えてみてください!ご主人様が飲んでしまったあの果実酒、本来なら曹操さんが飲むはずだったんですよ」

 

『なるほど…本当なら曹操が倒れていたはずだったと』

 

「つまり…美食の会で曹操様を暗殺しようと考えた人が毒を」

 

「はい」

 

「しかし、誰が毒を?」

 

「それは………わかりません」

 

「ってあんた!!」

 

「けど、犯人の曹操軍の中に居るという事はたしかです。俺達は初めて知ったので」

 

「まさか反乱?」

 

「何だと!!なら私がこの手で」

 

「落ち着け!姉者!」

 

「秋蘭!」

 

「誰かも分からないのだぞ」

 

「し、しかしだな」

 

「……そうですよ」

 

「そうだ!誰が犯人何だ!」

 

「(アンタが犯人のくせに)」

 

心の中でツッコミを入れる勇作

 

「それより医者さん、汗かいてますけど走ってきたのですか?」

 

「ああ、すぐ来てくれっていたので」

 

「そうですか…なら水を飲みません?まだ水余っている?」

 

「はい、壺にまだ大量に…」

 

「そうか…じゃあこのコップに水入れてきてくれない」

 

そう言って典韋にコップを渡す。すると医者の表情が変わる

 

「…どうした?」

 

「いえ…なんでもでは私はこれで」

 

「そう言わないでよ」

そう言って勇作は医者を止める

 

「持ってきました」

 

「そうか…ではどうぞ!」

 

コップを近づける勇作

 

「い…いや」

 

「さ…どうぞ!!」

 

「いや!」

 

「飲んでください!!」

 

勇作は強引に飲ます

 

「がばがば……助けて!!毒が…毒が!!」

 

苦しそうにノタウチ回る

 

「死ぬ!!死ぬ!!」

 

「………」

 

勇作は心の中でニヤケる

 

「何を苦しがっているですか?」

 

「だから毒が………あれ?」

 

医者は起き上がる

 

「何ともない」

 

「それは良かったですね……で何でこれに毒があると」

 

「そ……それは」

 

「もしかしてさっき俺が飲んだコップとこれに毒を塗ったのは貴方なのですか!?」

 

「ち…ちが」

 

「じゃあさっきのあれは…どう説明するのですか…俺から見たらこれに毒が塗られていることがわかっていたとか見えませんよ」

 

「ぐ……ぐぐぐ」

 

皆の視線が集まる

 

「(くそ!かくなる上は!!)」

 

医者が何かをしようとした時

 

「おい!」

 

勇作がむらぐらを掴む

 

「舌噛み切って自殺しようとするな」

 

「!!」

 

「…とりあえず……眠れ!」

 

覇王色の覇気を発動する。医者は気絶した

 

「……曹操さん」

 

「!!」

 

「犯人確保したよ」

 

「春蘭!!」

 

「わ、分かりました」

 

これにて事件は解決

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…まだ終わりではない……勇作は見聞色の覇気である光景が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯人の医者と曹操が刺客に襲われる光景が



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第六十六席 勇作、暗殺を阻止するのこと

「(……失敗したか)」

 

「(そのようだな)」

 

「(……どうする?)」

 

「(手筈通りにやる)」

 

「(分かった)」

 

犯人の医者の付添の二人が近づく

 

「手伝います」

 

「頼む」

 

一人の男が医者に近づく

 

「(……悪く思うなよ)」

 

一人の男が医者に隠してあった毒針で殺しにかかる

 

「(死ね!!)」

 

毒針が迫る

 

「……おい!」

 

勇作が刺客の右腕を捕まえる

 

「何する気だ?」

 

「な、何だ!貴様!離せ」

 

「離しますよ……右手首に隠してある物を見せれば……ね」

 

「なっ!!」

 

「さあ、見せてください」

 

「な…何の事かな」

 

誰でも分かるぐらい動揺していた

 

「いいから見せろ!!何もなければ見せられるだろう!」

 

「……そ…それは」

 

「したかたない…星」

 

「!!」

 

「手伝ってくれ」

 

「……御意」

 

星が近づく

 

「こいつの右腕を抑えてくれ」

 

「わかりました」

 

星は勇作の言う通り刺客の右腕を抑える

 

「………」

 

そして右手首を調べる。刺客は汗をダラダラさせる

 

「……あった」

 

すると10cmほどの針が出てきた

 

「これは何?」

 

「そ…それは」

 

「これでこいつを殺すつもりだったのですか?口封じに」

 

「ち…ちが」

 

「じゃあこれは何ですか!?」

 

「そ…それは」

 

「言えないなら…これ貴方に刺しますよ」

 

「なっ!」

 

「何を驚いているのですか?何もなければチクっと痛むだけでしょう」

 

「い……いや」

 

「じゃあ……失礼しますよ」

 

針が迫る。逃げようとするが星に腕を捕まえられているため逃げられない

 

「………」

 

「……」

 

針が刺さりかける。すると

 

 

「うわあああああああ」

 

刺客が暴れ出す

 

「やめてくれ!!それに刺されたら死んでしまう!!」

 

「死んでしまう?」

 

「毒針だ!!毒針なんだ!!頼むから刺さないでくれ!!何でも言うから!!」

 

「……分かった」

 

針を引っ込める

 

「(くそ!!こうなったら)」

 

もう一人の刺客が曹操に向く

 

「曹操!!覚悟!!」

 

曹操に向かう。突然のことに全員の動きが止まる

 

「(貰った………!!)」

 

そう思った瞬間

 

 

「な…何だこれ!」

 

刺客の目の前が暗くなる

 

「(お見通しだよ)」

 

勇作が羽織っていたコートを刺客に向けて投げたのだ。それが刺客に被さり視界を奪う事に成功した

 

「愛紗!鈴々!」

 

「「!!」」

 

突然呼ばれた二人は驚く

 

「そいつを抑えろ!!」

 

「え?」

 

「早く!」

 

「分かったのだ!!」

 

「はい!」

 

もう一人の刺客も押さえつけられた

 

「さて……説明してもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

 

「(………まだか)」

 

ある部屋に今回の黒幕がいた

 

「(いったい、いつになったらくるんだ)」

 

「失礼します」

 

「ん?」

 

扉の向こうから声が聞こえた

 

「誰だ?」

 

「私です…無事に完了しました」

 

「そうか……ふははは、曹操よ。これでこの国は私のものだ!」

 

「……あら。それはどうかしら?」

 

「なっ!この声は」

 

扉が開かれると曹操達がいた

 

「き、貴様!!」

 

「私が生きていることに驚いているの?」

 

「そ…それは」

 

「貴方の刺客はすべて捕えたわよ。貴方の指示だって事も…ね」

 

「ぐ……ぐぐぐ」

 

「春蘭」

 

「はっ!」

 

「くそ!なぜだ!!なぜ!」

 

「簡単な事よ」

 

「何?」

 

「守ってくれたのよ……天が」

 

「天…だと」

 

「私は天の加護によって救われた。だたそれだけだわ」

 

「……なん……だと」

 

「連れて行け」

 

 

 

こうして曹操暗殺は失敗に終わった。だた言えることある

 

 

「(私の天運はまだ尽きていない……天は私に生きろと告げたってことかしら)」

 

 

高杉勇作がいなければ、曹操は今日で死んでいた。これは確かであることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という訳なんだ」

 

同じころ、別の部屋に移動した勇作は愛紗達に説明した

 

「…………」

 

「(………あ、あれ?)」

 

沈黙が支配する

 

「……何で?」

 

「……え?」

 

「何で言ってくれなかったんですか!!」

 

朱里が怒鳴る。あまりの迫力に皆、ビクっとなる

 

「いや……確信あったわけじゃないし」

 

「だとしても相談してほしかったです!!話を聞いた限りじゃ、運よく事が運んだとしか思えません」

 

「まあ…そうだけど」

 

「……信用できないんですか?」

 

「…え?」

 

「私がいえ私たちがそんなに信用できないんですか?」

 

目に涙を浮かべる

 

「そんな訳ない!」

 

「だったらもっと私たちを頼ってください!!一人で抱えないでください!!」

 

「…朱里」

 

「朱里のいうとおりです。主」

 

「星」

 

「そうです!ご主人様」

 

「愛紗」

 

「そうなのだ!」

 

「鈴々」

 

「貴方は私たちの主なのです!!あんなことはもうしないでください!!」

 

「あんなこと?」

 

「ご主人様が血をふいた時です!あの光景を見て時、頭が真っ白になりました。もしかしたら死んでしまうかと思ったのです!大切な人がいなくなる…そんなことはもう体験したくないんです!!」

 

「(……そういえば朱里の両親は死んで姉と妹とも離れ離れになったんだ)」

 

「お願いですから…いなくならないでください。ずっと一緒にいてください!!」

 

「………」

 

「………」

 

「…あれ?」

 

微妙な雰囲気に気付く朱里

 

「意外と大胆だな。朱里は」

 

「はわ…はわ」

 

「あ…あの」

 

「はわわ!!!!!!」

 

顔を隠しながくら右往左往する朱里。誰から見てもその顔は赤くなっていた

 

「…落ち着いて!」

 

「これはしばらく駄目ですな」

 

「…星」

 

「こうなったのは主の責任ですよ」

 

「俺!!」

 

「そうです!この責任はしっかり取ってくだされ。私はもちろん、愛紗達にも」

 

「…え?」

 

「星!」

 

「あはは」

 

「お兄ちゃん!責任とるのだ!!」

 

 

曹操達が来るまで部屋の中は修羅場は続くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある朝。とある高級建物の一室に張三姉妹が宿泊していた。穏やかな寝顔で、ベットでゆっくりと寝息をたてている

 

 

コンコン

 

 

すると扉をノックする音が聞こえる

 

「うぅ〜ん、誰よこんな朝早くから……」

 

音で目覚ましに、張梁が眼鏡をかけ、ゆっくりと扉に近づき、開けた

 

「はい、今開けます」

 

「お届けものです」

 

配達係らしき男性から、小包を渡された。その後またコンコンと鳴る

 

「お届けものです」

 

また小包、そしてまた扉が鳴る

 

「お届けものです」

「お届けものです」

「お届けものです」

 

「え?あ!ちょっと」

 

それからどんどんどんどん小包を渡され、やがて部屋中に埋め尽くされる程までになった。ようやく姉二人も目を覚まし、小包を開いていく

 

「わぁ、十万斤饅頭だぁ!私これ大好物なんだよね」

 

「地和ちゃん、こっちも十万斤饅頭だよ」

 

「天和姉さん、こっちもだわ」

 

「えっ?」

 

三人は手当たり次第に小包を開けていく。中身は全部十万斤饅頭だった

 

「どういうこと?これまでにも差し入れとか贈り物とけあったけど、こんなに沢山、それも同じものばっかりなんて……」

 

「あっ、もしかして十万斤饅頭を大安売りしてたから〜……てのはないか」

 

「いくらなんでも、これってちょっとおかしいわ……」

 

「あっ!」

 

「ふぇっ?」

 

「何か心当たりがあるの?」

 

「いや…ほら、昨日舞台で新しい術を発動させた後、解除するのを忘れて、暫くそのまま喋ってて………」

 

「あ!!」

 

張梁は思い出した

 

 

『そっか。 地和ちゃん、十万斤饅頭好きだもんね〜』

 

『うん。十万斤饅頭だったらいくらでも食べられるから、皆じゃんじゃん差し入れしてね〜!』

 

 

 

 

 

「それじゃあ…」

 

三人は高く積みあがった十万斤饅頭を見た後、再び視線を合わせる

 

「もしかして私達、凄い力…手にしちゃったんじゃあ……」

 

ベットに置いてある太平要術。その本が怪しく光っていた



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第六十七席 勇作、袁術の治める町に着くのこと

街の大部分を埋め尽くす程の屋敷。そこに、街の主である袁術がいた。侍女に楽器を奏でさせ、張三姉妹の歌を歌っていた

 

「うわ!まあ、流石美羽様。お上手ですわ!」

 

袁術は歌い終わり、傍らにいた世話係の張勲はパチパチと拍手をする

「そうじゃろう、そうであろう、遠慮せずもっと褒めてたも」

 

歌い終えると、袁術は玉座に座る

 

「一杯歌ったら喉が乾いたのじゃ。張勲、蜂蜜水を持て」

 

「はぁい直ちに」

 

「あと、献上品の桃の蜂蜜漬けがあったのう。あれも持ってくるのじゃ」

 

「両方は駄目ですよ?美羽様」

 

「どうしてなのじゃ!わらわは両方欲しいのじゃ」

 

「さっきおやつ食べたばかりじゃないですか。またこの前みたいにポンポン痛くなっても知りませんよ?」

 

「うぅっ…ポンポンが痛くなるのは困るじゃ……」

 

「でしょう?蜂蜜水か、桃の蜂蜜漬けか、どっちか片方だけにして下さい」

 

「う~ん、どっちも捨てがたいのう……」

 

そして選んだのは

 

「ぷはぁっ!やっぱり歌った後の蜂蜜水は最高なのじゃ」

 

蜂蜜水を選んだ袁術は、それを一気に飲み干した。

 

「蜂蜜水を飲んだ後の美羽様の笑顔も最高ですよ」

 

「そういえば、董卓の所から誰か来ると言っておったが」

 

「はい、そろそろ来ても良い頃なんでけど……。どうしちゃったんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、袁術殿の治める街か」

 

宝剣を取り戻すべく、袁術の治める町へと辿り着いた一行。見る限りでは、人通りが少なく、街に活気がない

 

「やっと着きましたね」

 

「しかし、領主のお膝元にしては、何となく 街の人々に活気がないな」

 

「(たしかに……)」

 

「そうですね…。袁術さんは、あの袁紹さんと血が繋がっている訳ですから、きっと人の上に立つ者として問題があるんじゃ」

 

「うわ!!」

 

朱里が言うと、鈴々は突然、何かに向かって走り出した

 

「でっかいキ◯タマなのだ!」

向かった先には、子供の身長程の大きな狸の置物があった

 

「ちょっ!」

 

「こ、こら鈴々!そんな事を大声で言うな!」

 

「そうだぞ鈴々。もう少し遠回しな言い方があるだろう?陰嚢とか布久利とか」

 

「あんま遠回しじゃない気がするけど……」

 

「(なんであんなものがあるんだよ!」

 

少し歩くと、土産物屋が見えた

 

「そういや旅立つ時、璃々ちゃんからお土産頼まれてたな」

 

「ちょっと覗いてみるか」

 

そして店内へと入る。中には皿や茶瓶等、陶器類の他にも様々な品物が置いてある

 

「結構いろんなものがあるな……ん?」

 

品物の棚を見ていると、愛紗が木刀を手に取り、鑑定するように眺める

 

「これって木刀?」

 

「ご主人様の武器を同じですね」

 

「そうだな(素振りように買おうかな)」

 

劉備と朱里は、陶器類を見ていた

 

「色んな湯呑みがありますね」

 

「あっ、これなんか可愛くていいかも」

 

劉備が見たのは、桜の花が彫られている湯呑み

 

「でも、これくらい大きい方が使い勝手はいいんですよね」

 

朱里は、上半分が灰色。下半分が茶色の、底が蓋をしてある様な形をした湯呑みを手にとる

 

「朱里、湯呑みなら此方の方がいいのではないか?」

 

「はうっ!?」

 

星が見せたのは、妖艶な女性の絵が描かれている湯呑み

 

「なんでも、お湯をかけると絵の中の女性の服が透けるらしいぞ」

 

「星さん」

 

「それとも、此方の子宝飴の方が良いか?」

 

「何でソノ手の物ばかりを勧めるんですか!?」

とツッコミを入れる朱里

 

「(………子宝………ご主人様との子供………って何を考えてるいるのですか!!)」

 

「(主との子供……悪くないな)」

 

星と朱里は心の中でそう考えていた

 

 

鈴々はと言うと、動物の形をしたストラップらしい陶器を見ていた。

 

「色んな動物のがあるのだ」

 

「これって、御守りなんですね」

劉備もその陶器を眺める。

 

「えぇっと、何々……。鼠は子沢山で子孫繁栄、犬はワンワン吠えて病魔退散、猫は福を招いて商売繁盛。種類によって、効き目が違うんですね」

 

「それじゃ、鈴々はこの前みたいにお腹が痛くならない様に、病魔退散の犬の御守りを買うのだ」

 

「それならまずお腹を出さずに寝た方が効果あると思うんですけど……」

 

犬のストラップを取る鈴々に、苦笑い気味で言う朱里

 

「ああーーーっ!!」

 

横から大声が聞こえた。軍帽を被った鈴々より小さい少女

 

「これは、ねねが最初に目をつけておいた物なのです!」

 

少女は鈴々に近づくと、犬のストラップを取り上げる

 

「何するのだ!それは鈴々の物なのだ!」

 

「まだお金を払ってないなら、そうじゃないのです!」

 

「何無茶苦茶言ってるのだ!」

 

鈴々とその少女は、言い合いながら、犬のストラップを奪い合う。その声が、勇作の方へと聞こえた

 

「何だ?」

 

「どうした?また鈴々が何かやらかしたのか?」

 

「いえ、今回は珍しく、鈴々ちゃんの方が正論なのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、確かに今回は、鈴々の言い分が正しいな」

 

朱里から事情を聞き、愛紗も同意する。鈴々は勝ち誇った様に、小さな胸を張る

 

「きっと明日は大雨だな」

 

「何でそうなる」

 

「むぅ……」

 

少女は頬を少し膨らませ、俯く。その様子を見た劉備は、手を叩いた

 

「そ、そうだ!お店の人に聞いてみたらどうです?もしかしたら同じものがあるかも」

少女は早速、店主に話す

 

「生憎、そちらの品は店頭に出ているだけでして、次の入荷はいつになるか……」

少女は、溜め息と共に肩を下ろす。

 

「残念だが、諦めるしかないようだな…」

 

「まあ、そうがっかりするな。人生は一期一会。出会いもあれば別れもある」

 

「星さん…それ全然慰めになってない様な気がする……」

少女は深く俯き始めた

 

「お前なんか……お前なんか……!」

 

「んっ?」

 

「アライグマにおへそ洗われて風邪ひいちゃえなのですっ!!」

 

少女は大音量で叫ぶと、そのまま店から走り去っていった

 

「な、なんなのだ、あいつ……」

 

「(誰だったんだ?)」

 

皆一同、呆然と立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商品を購入すると、次は近くの飲食店で腹ごしらえする

 

「ありがとうございました」

 

「美味しかったのだ」

 

「そうか?私はイマイチだったが」

 

「鈴々ちゃん」

 

「ん?」

 

「せっかく買った木彫りの犬…忘れちゃだめですよ」

 

「あっ!そうだったのだ」

 

「おいおい、気を付けろよ。鈴々」

 

「えへへ」

 

「孔明ちゃんはさっきの土産物屋で何を買ったのですか?」

 

「私はほら、あの大きめの湯飲みを買いました。あまりかわいくないですけど…薬湯を飲む時に良いかなって」

 

「そうか……ん?」

 

勇作が何かに気づき視線を向けると

 

「…恋?」

 

呂布が歩いていた。傍には大きい犬がいた

 

「おう、呂布ではないか!」

 

「関羽…張飛…趙雲……勇作」

 

恋も気付き、名を呼ぶ

 

「あは、でっかいワンコなのだ」

 

鈴々は犬に近ずき、しゃがむ。そして触ろうとした時

 

ダタダタ

 

「ん?」

 

「ちんきゅ~~~!飛び膝蹴り!!」

 

少女が走ってきて高く跳躍し、空中で綺麗に右足を突き出す

「はにゃあああああ!?」

 

蹴りは、鈴々の後頭部に直撃した

 

「えっ!!」

 

勇作達は驚き

 

「う~~~~」

 

鈴々は倒れ、目を回していた

 

「恋殿!勝手にうろうろしては駄目だと、あれ程申したですのに!しかも、どこの馬の骨とも知れぬ輩の接近を許すとは、平時はあってもここは他国の領内。気を付けるに越した事は!」

 

「いきなり何するのだ!!」

 

「うるさいのです!ねねは今大事な話を」

 

「あっ」

 

「あっ、お前はさっきの……」

 

「陳宮……」

 

振り向くと同時に体が硬直する。呂布の目元に陰がかかり、深紅の瞳は少し怒気が含まれていた。陳宮は怯えの様子を見せる

 

「さっきの飛び膝蹴り違う」

指を立てながら言った

 

ダー!

 

勇作達はずっこげた

 

「ってそこじゃないだろう!突っ込むとこは!」

 

「??」

首をかしげる恋

 

「あはは(それにしても恋とこんな所で会うとはな……何か用事があってきたのかな?」

 

心の中でそう思う勇作であった



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第六十八席 陳宮、呂布に拾われるのこと

それから近くの茶屋へと場所を移した一行。円卓台に座り、話を聞く

 

「しかし、董卓殿に仕えているお主が、何故こんな所に?」

 

「お見合いに、来た……」

 

「「「「「えぇっ!?」」」」」

 

「お見合いって、そなたが?」

 

恋は首を左右に振る

 

「それじゃあ」

今度は陳宮の方を向く。本人は何の事か分からず、目をパチパチと瞬きさせる

 

「違う。陳宮に……」

「ちょっと待て!!」

 

「??」

 

「お見合いするのはその子じゃないの?」

勇作は指を指す

 

「「「「「犬?」」」」」

 

どうやら恋の傍らで眠っている、この犬がそうらしい

 

「この子、張々は体大きい……同じ位大きい相手でないと、こ……」

 

「言わなくていい」

 

「あの…ご主人様?さっきから何を」

 

「何でもない(……あんなことは言わせないためだよ)」

 

「?………張々と同じ種類の犬、袁術が飼っていると聞いたのでお見合いに来た……でも止めにした……」

 

「お見合い、うまくいかなかったのか?」

 

「まだ、袁術の所に行ってない……この町の人、ちょっと元気がない……多分、領主が良くないせい……。そんな相手との縁組み、張々の為に良くない……だから、お見合いせずに帰る」

 

「……なるほどね」

 

「流石、恋殿!ねねもそう思っていた所なのです!」

 

「なんか偉そうにしてるけど、お前一体なんなのだ?」

 

「ねねの名は陳宮。恋殿の軍師なのです!」

「「「「「えぇっ、軍師!?」」」」」

 

「(えっ!この子が陳宮!!曹操を追い詰めたことのある!!)」

 

全員が驚く。勇作も別の意味で驚く

 

「武勇では天下第一の恋殿を補佐すべく、ねねは軍師として命を懸けて御仕いしているのです」

 

「陳宮…違う」

 

「違うって何がですか」

 

「一番は…勇作」

 

そう言って恋は高杉を指差す

 

「な、何を言っているのですか?こんなブ男が恋殿より強い訳…」

 

「勇作…恋より強い。戦ったけど…完敗だった」

 

「恋殿…冗談にしては」

 

「あの…陳宮殿…呂布が言っていることは間違っていないぞ」

 

「そうなのだ。鈴々達はこの目でちゃんと見たのだ」

 

「うむ」

 

愛紗達はそう言うが

 

「そんな訳なのです。ねねは信じないのです!」

 

まったく信じなかった

 

「おい、お前」

 

「鈴々」

 

勇作が止める

 

「けど」

 

「いいの」

 

「む…」

 

「そ、それより…さっき命を懸けてってどうしてそこまで?」

 

劉備がそう聞くと、陳宮は少しだけ目線を下にする。

 

「話せば長くなるですけど……孤児みなしごだったねねは」

 

「っ!」

 

孤児という言葉に、鈴々は無意識に反応した

 

「生まれ育った村で子犬の頃から飼っていた張々の引く荷車に、牧場で搾った山羊やぎの乳を積んで、街まで運ぶ仕事をしていたです…………でも、大雨が降った日の夜……家代わりに寝泊まりさせてもらっていた水車小屋から火が出て。本当は水車をちゃんと整備してなかったせいで、木の歯車と歯車が強く擦れてそのい摩擦で火が付いたのに、ねねの火の不始末が原因と言われ、村を追いだされる羽目に……それ以来、ねねは張々と一緒に、村から村へと彷徨って、旅の一座で操り人形の芝居を手伝ったり、煙突掃除婦になったり……そんな風に旅をしながら、ねねと張々は食べていく為に色んな仕事をしたのです」

 

「……」

 

「そして、ある街に辿り着いた時……」

 

 

 

 

 

 

「お願いするのです!何でもいいから仕事をさせてほしいのです!一生懸命働くですから、実はもう十日もろくに食べてなくて」

 

「っるせぇ!!」

 

「あうっ!」

 

「ここんとこ不景気で、ただでさえ仕事がねぇってのに、お前みたいに他所から流れてきたガキに任す仕事なんかあるもんか!物乞いなら、てめぇの村でやりやがれ!」

 

冷たく吐き捨てる男は、店に戻っていった

 

「物乞いじゃないです…物乞いじゃなくて、ねねはただご飯を食べる為に働きたいだけで……だから、物乞いなんかじゃ………」

 

少女は、張々と共に森の中を歩き続ける。泥で汚くなっている体

「もう心配しなくていいです。ねねはあんな事でへこたれたりしないです」

 

日が沈み始め、夕方になろうとする時、古ぼけた御堂が目に入った

 

「今夜は、あそこに泊まるです……」

 

扉を開けて、中に入る。

 

「食べ物はなくても、せめて雨露は凌げるです……」

 

祀られている仏像の前に行くと、陳宮は膝をついた

 

「張々…ねねはもう疲れたです……」

 

側で寝ている張々を撫でると、陳宮は瞼をゆっくりと閉じた

 

そして、小さな天使ならぬ小さな天女が光と共に陳宮と張々の側に寄る。二人の魂を持つと、そのまま天へと持っていってしまう。こうして二人は仲良く天国に……かと思いきや

 

「クンクン」

 

扉の隙間から美味しそうな匂いが漂ってくる。それは二人の鼻を刺激し

 

「これは…この匂いは?」

 

二人は起き上がり、匂いの元を辿って行く。やがて森を抜け、小川付近に到着した。焚き火に焼かれる串を刺された魚が目に入った。同時に、傍らにいた深紅の髪を持つ少女と目を合わせた

 

「……食べるか?」

 

呂布は焼き魚を一本手に取ると、陳宮に渡そうとする。陳宮は一瞬目を輝かせるも、すぐに否定する

 

「い、いらないです。ねねは、物乞いじゃないです!」

呂布の得物である方天画戟を服の袖でゴシゴシと擦り出した

 

「……恋は、お腹が空くとご飯が食べたくなる。ご飯を食べると幸せになる……一人で幸せになるより、皆で幸せになった方がずっと幸せ……。だから、お腹が空いているなら、恋と一緒に食べるといい……」

 

「…………」

 

陳宮と張々は瞬く間に焼き魚を頬張り、腹を満たしていく。全て食べ終え、ようやく腹が落ち着いた

 

「お腹一杯になったか?」

 

「う、うん……」

 

「もうすぐ日が暮れる……そろそろ家に帰った方がいい……」

 

「っ……!」

 

「帰る所、ないのか?」

 

コクッと頷く陳宮

 

「だったら、一緒に来るといい…」

 

「えっ?」

 

「恋と、家に帰ろう」

 

方天画戟を担ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りはすっかり夜になり、呂布は陳宮を連れて、董卓の屋敷に帰途した

 

「なんだ呂布、また捨てられた動物を拾ってきたのか?」

 

武将である華雄が聞くと、呂布はコクッと頷く

 

「しかし今日のはまた、二匹ともバッチィな……」

 

「でも可愛い……」

 

「う~ん、まあお主がそうならそうなのだろう。飼うのはいいが、ちゃんと洗ってやれよ?バッチィままだと、賈駆がうるさいからな」

 

華雄はそう言うと、自分の部屋に戻っていく。呂布は廊下を歩き、陳宮と張々もその後を追う

 

「ん?あんたまたバッチィのを拾ってきたのね」

 

廊下で賈駆と鉢合わせる

 

「もう、これで今月何匹目よ……」

 

「イー…アル…サン………いっぱい」

 

「いいわよ数えなくて!家にはあんたの拾ってきたのがわんさといるんだから、今更一匹や二匹増えた所で大差ないわ。飼うのはいいけど、ちゃんとしつけるのよ?この前みたいにボクの部屋でおしっこしたりしたら承知しないからね?」

 

「わかった…賈駆の部屋でおしっこさせない……」

 

そして、何事もなかった様に立ち去る

 

「ってぇ!ちょっと待ったぁ!!」

 

何かに気付いたのか、急いで呼び止める賈駆

 

「そっちのでかいワンコは良いとして、よく見たらチンチクリンのは人間じゃない!?一体どういう事よ!」

 

「…………バッチィけど可愛い…バッチィけど可愛い…同じ」

 

「同じな訳ないでしょう!?この子、名前は?歳は?拾ってきたって、どこから連れてきたの?まさか、気に入ったからって人様のをお持ち帰りしたんじゃないでしょうねぇ!?どうなの?えぇ?えぇ!?」

 

「……賈駆、怒るの良くない…怖がってる」

陳宮は呂布にしがみつく

 

「事情は後で聞くわ…とにかく、そのバッチィのを洗ってらっしゃい!」

 

そう言いつけると、立ち去っていった

 

 

 

 

 

 

 

呂布は陳宮と張々と共に、浴場へと向かう。泥等で汚れた二人の体を、お湯で流していく

 

「バッチィままだと賈駆が怒る……だから綺麗にする」

 

「えっ?あ、ちょっと、だ、駄目です…くすぐったくて、じ、自分で出来るのです。だから…ひゃあっ!!」

 

背中、尻、体の隅から隅へときちんと洗う呂布。二人共、綺麗になった

 

 

 

 

 

 

寝室を用意され、そこの寝台で横になる陳宮

 

「お布団で寝るの久しぶりだから…かえって寝付けないのです」

 

「陳宮…」

 

「ふわぁっ!?」

 

呂布が突然顔を出し、陳宮は驚きの声を出す

 

「いつの間に」

 

「眠れないのか……?」

 

「……はいです」

 

「じゃあ……」

 

すると、呂布は陳宮の寝台に入り込む

 

「連れてきた子の中で、すぐには家に慣れなくて中々眠れないのいる……そんな時、恋はいつもこうしてる……」

 

恋は陳宮を優しく包み込む

 

「(良い匂い……何だか思い出せないですけど、なんだか、とっても懐かしい匂い……)」

 

「家に連れてきた子は、みんな恋の子供……だから、陳宮もそう……だから、安心して眠るといい…………」

 

優しい音色に、目に涙が溢れ出てくる

 

「その時、ねねは心に決めたのです。恋殿に一生ついていこう、ずっと一緒にいよう。そして、少しでもお役に立とうと……」

 

語り終えると、鈴々は最後まで話を聞いており、見間違いか、少し目が震えている

 

「そうか…そんな事が……」

 

「うっ……陳宮さん、苦労したんですね……」

劉備は微かに泣いていた

 

「(感動する話だったけど……所々、某名作を似たようね話が出てきたんだけど!)」

 

心の中に突っ込む勇作…………だが

 

 

 

 

 

 

 

「(…………俺も小さい時に、その温もり欲しかったな………)」

 

勇作は心覚えがあるのか…羨ましく思うのであった



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第六十九席 呂布、再び勇作と戦うのこと

遅れてしまいすいません

この話で勇作の新しい技が出ます

では、どうぞ


袁術の街から少し離れた場所

 

「………」

 

「………」

 

勇作と恋がお互いの得物(勇作は木刀)を構えている

 

「……恋殿!!そんなブ男なんかすぐに倒してください!!」

 

「お兄ちゃん!負けるななのだ!!」

 

 

 

何でこうなったのかというと………陳宮が話を終えた頃に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……陳宮さん、苦労したんですね……」

 

「へん!一人じゃ眠れなくて添い寝してもらったりするなんて、とんだ甘えっ子なのだ!」

 

「ねねは甘えっ子じゃないです!」

 

「いいや!添い寝で喜ぶのは甘えっ子の証拠なのだ!」

 

鈴々と陳宮は睨みながら言い合う

 

「ふ~ん、添い寝で喜ぶのは甘えっ子の証拠かぁ……」

 

「な、なんなのだ!何が言いたいのだ!」

 

「いいや、別に?」

 

「うぅ~……」

 

愛紗に言われると、鈴々は拗ねた様に膨れっ面になる

 

「い…いつまでもこんな所にのんびりしていられないのだ!はやく宿を捜して晩御飯にするのだ!」

 

「そうですね。そろそろ行きましょうか」

 

「そうだな」

 

「陳宮…恋達も」

 

「承知なのです」

 

「主、勘定はここに置くぞ」

 

皆、席を立つ。呂布が方天画戟を肩に担いだ時、星は戟の石突きに、あの犬のストラップがないことに気付いた

 

「呂布、お主の方天画戟。石突きに木彫りの犬がぶら下げてあったであろう?あれはどうした?」

 

「この前の戦で敵と打ち合った後、気づいたら無くなっていた……」

 

「そうか、戦場で無くしたのか……」

 

「あれ、凄く気に入ってた……だから、とても残念……」

 

心の内が分かる様に、呂布の表情には影がかかっていた。側にいる陳宮も下を向く。その会話は、鈴々の耳に届いた

 

「………」

 

勇作はその様子を見て

 

「鈴々」

 

「ん?」

 

「渡せばいいよ」

 

鈴々にだけ聞こえるように言う

 

「!!なっ…なにを」

 

「隠さなくても良いよ…わかるから」

 

「お兄ちゃん……でも」

 

「渡しづらいの?」

 

「うん」

 

「まあ……あれを聞かれたらね………どうしようか」

 

考えていると

 

「勇作」

 

「ん?」

 

恋が声を掛けてきた

 

「どうしたの?」

 

「恋と戦わない?」

 

「え?」

 

「………」

 

「まだ時間あるし」

 

「………」

 

「無理?」

 

「大丈夫だよ……勝負する?」

 

「……やる」

 

「……そうか……ここじゃ迷惑になるし場所を変えようか」

 

「……コク」

 

「ご、ご主人様!!」

 

「ごめん……皆を宿を…」

 

「何を言っているのですか!!私たちも同行します」

 

「え?」

 

「はい」

 

「こんな面白いことはないからな」

 

「すまない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

といわけで場所を移し、勝負することになった

 

 

 

「こうして戦うのは…2回目だな」

 

「……」

 

「(木刀だから、少しは大丈夫かな)」

 

勇作がそんなことを考えていると

 

ダッ!

 

恋が先に動く

 

「(恋殿の勝ちなのです!)」

 

陳宮はそう思うが

 

「……」

 

フン

 

勇作は上体を後ろに反らし、躱す

 

「なっ!」

 

「よけられた」

 

「躱されるのわかっているくせに」

 

「…ん」

 

 

 

「どういうこなのです」

 

「何を驚いているのだ?」

 

「驚くにきまっているのです!アイツは気を抜いていたのです!明らかに油断していたのです!普通なら恋殿の攻撃が当たるのです!何で躱すことが!」

 

「確かにそうだな……けど」

 

「お兄ちゃんならそれぐらい簡単に出来るのだ…鈴々達よりすごく強いのだから」

 

「むむむ……例えそうだとしてもあんな木刀で恋殿の攻撃を防ぐことなんて」

 

 

 

 

 

「今度はこっちから行くぞ!」

 

勇作が仕掛ける

 

「ふん!」

 

ブン!!

 

強烈な突きが繰り出す

 

ガツーーーン!!

 

「ぐっ!」

 

方天画戟で防御するが予想以上の攻撃に後ろにザザーと押された

 

「(前より凄い!)」

 

「(続けていく!)」

 

続けて突きを繰り返すが

 

「…ふん」

 

右に簡単に躱す

 

 

「(あ!やばっ!)」

 

体勢を崩す

 

「…フッ!」

 

それを逃すはずもなく、勇作の胴体に得物を振る

 

「(貰ったのです!武器で防御しようとしても武器ごと真っ二つなのです!)」

 

陳宮もそう思う

 

「(………なんてね)」

 

ガチン

 

覇気を纏った木刀で簡単に防いだ

 

「なっ!」

 

「………」

 

「(やっぱり慣れないことはしないほうがいいな)」

 

勇作はそう思いながら、木刀で方天画戟を押し返し、距離をとる

 

「(さて、どうしよかな…………あれ、試すか)」

 

「……?」

 

「行くぞ!!」

 

勇作が恋に向かっていく

 

「……」

 

恋も向かう………次の瞬間

 

 

「フン」

 

「!!」

 

恋の視界から勇作が消えた

 

「……逆鱗」

 

勇作は恋の足元に向かってスライディングをした

 

「…ふん」

 

恋は飛び上がるが

 

「…隙あり」

 

回し蹴りを繰り出す。だが恋は方天画戟でそれを防ぐ

 

「ぐっ!……まだだ!」

 

足に痛みが走るが、そこからサマーソルトキックを繰り出す

 

「!!」

 

咄嗟の事に方天画戟が上に弾かれる

 

「もらった!」

 

そこに勇作が木刀を恋の頭に振り下ろす

 

ブン

 

「恋殿!!」

 

「………」

 

「………」

 

木刀が恋の頭数センチの所で止まる

 

「勝負ありだね」

 

「……コク」

 

「ふう~」

 

息を吐き、緊迫した雰囲気が薄れた

 

「恋殿!」

 

陳宮が恋で駆け寄る

 

「陳宮」

 

「怪我はありませんか」

 

「大丈夫」

 

「よかったのです」

 

「お兄ちゃん!」

 

鈴々が勇作に抱き着く

 

「よっと」

 

「やっぱりお兄ちゃんは凄いのだ」

 

「そんなことないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕刻、向き合う様に並んでいる一行

 

「じゃあ、また」

 

「失礼するのです」

 

「ああ。縁があったらまた会おう」

 

愛紗と恋が別れを告げる中、鈴々は歯痒い様な仕草を見せる。手に持っている袋を握りしめた

 

「ちょっと待つのだ!」

 

大声を出し、呼び止める鈴々。小走りで陳宮の元に行くと、小袋を前に出す。受け取り、中を確認する。土産物にあった犬のストラップが入っていた

 

「これ、やるのだ!」

 

「でも、これって……」

 

「急に気が変わっていらなくなったのだ…だからお前にやるのだ……」

 

「あ、ありがとうなのです!」

 

礼を言われたが、恥ずかしいのか最後まで聞かず戻ってきた

 

 

「何?」

 

「秘密なのです」

 

「……ケチ」

 

「宿に帰ってのお楽しみなのです!開けてビックリなのです!恋殿、早く早く、早く帰るのです!恋殿!」

 

 

 

 

 

 

 

「張飛ちゃんって、優しいんですね」

 

「なっ!」

 

「そうですよ。鈴々ちゃんはとっても優しいんですよ」

 

「な、何言ってるのだ!鈴々はワガママで大飯食らいで暴れん坊だけど、絶対ぜ~ったい優しくなんかないのだ!!」

 

劉備と朱里が言うと、否定する鈴々

 

「そうだな鈴々。お前はホント、ワガママで大飯食らいで暴れん坊だな」

 

「そんなことないのだ!鈴々にだって良いところはあるのだ!」

 

「ってどっちなんだ」

 

皆、笑ながらその場を後にするのであった

 

「(さて、いよいよ明日、袁術殿に会えるんだな……結構かかったな)」




新しい技

『逆鱗』

戦国BASARA 真田幸村伝の梵天丸が使用


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第七十席 袁術、化け物を退治させんとするのこと

あけましておめでとうございます
遅れてしまいましたが、今年もよろしくお願いします


「……という次第につき、先日そちらにお預けした宝剣を、劉備なる者にお返しいただける様、お願い奉り候なり。袁術殿へ…優雅で華麗な袁紹より」

 

袁術の屋敷の謁見の間にて、玉座に座る袁術と、袁紹からの文を読み上げる張勲。袁紹からの文を読み終えると、袁術は前にいる劉備達に目を向ける

 

「劉備とやら、宝剣を返してほしいとの事じゃな?」

 

「はい!お願いします!」

 

「駄目じゃ」

 

「あれは妾が馬鹿には見えない衣と交換で手に入れた物なのじゃ。今更お主に返す謂いわれはない」

 

「(いや、そんな物ないから)」

 

「それは分かっています!でも、あれは代々我が家に伝わる大事な物で」

 

「そんな事、妾の知った事じゃないのじゃ」

 

「お願いします!宝剣を返して下さい!返してもらえるなら、私なんでもしますから!」

 

「駄目と言ったら駄目なのじゃ」

 

袁術が頑なに拒否すると、劉備の言葉に反応した張勲が、袁術に耳打ちする

 

「美羽様、ちょっと……」

 

「なんじゃ、張勲?」

 

袁術にひそひそと何かを呟く張勲

 

「(……えっ!マジで!)」

 

勇作はその内容を覇気で聞き驚く。そして離れると、袁術は少しにやけながら劉備を見る

 

「劉備やら」

 

「は、はい」

 

「宝剣の為なら何でもするというのは、本当じゃろうなぁ?」

 

「えっ?…まあ」

 

「まあ~?」

 

「あ、はい!何でもします!」

 

「うむ、よろしい!」

 

一瞬答えに戸惑う劉備だったが、なんとか返事を返した

 

「では、妾の領内に出る化物を退治するのじゃ!さすれば宝剣を返してやろう!」

 

「えぇっ?」

 

「化物……?」

 

「……」

 

劉備の少し後ろにいる愛紗達も話を聞いており少し驚く。勇作はあまり驚かずにいた。そして張勲が詳しく説明する

 

「実は、ここから少し離れた山の中に古びた御堂があるのですが、最近そこに夜な夜な化物が現れて困っているのです」

 

「あそこは取り壊して、妾の別荘を建てる予定たったのに。そのせいで工事が進まんのじゃ」

 

「何度か討伐隊を差し向けたのですが、皆、化物を見るなり腰を抜かして逃げ帰ってくるという始末で……」

 

「劉備よ!宝剣を返して欲しくば、妾の邪魔をする悪しき化物を退治してくるのじゃ!良いな?」

 

あまりにも突然過ぎて、皆呆気にとられている。

 

「よ・い・な!?」

 

「あ、はい!」

 

劉備は慌てて返事をする。袁術と張勲はお互いを横目で見つめ合い、にやりと、口角を曲げた

 

 

「………」

 

勇作はそう様子をじっと見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一行は、部屋を用意されていたのでそのの中いた、部屋の中はよく分からない置物や絵などがあった

 

「化物の退治をするまでの間、屋敷に泊っていけと部屋を用意してくれたのは有難いが……」

 

「こう趣味が悪いと、何か落ち着きませんね……」

 

「しかし、そう簡単に事が運ぶとは思っていなかったが、よりによって化物退治とはな」

 

「うぅ…化物退治なんて絶対無理ですよ……」

 

劉備は震えていた

 

「なぁに、そう案ずる事はない」

 

「鈴々達がついてるのだ!」

 

「随分自信がありげだが、お主等化物の類は苦手ではなかったのか?」

 

星に言われて、ギクッと肩を下ろす愛紗と鈴々

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「へぇ~」

 

「確かにあの時は……」

 

「あ、いや、まあ、本物はちょっと……だが、この手の化物騒ぎは大方、人の仕業と相場は決まっている!」

 

「そうなのだ!ちょちょいのぷーでぶっ飛ばしてやるのだ!」

 

「関羽さん、張飛さん、頼りにしてます!」

 

「任せておけ!」

 

「どーんと、大ブナに乗った気でいるのだ!」

 

劉備から頼られると、愛紗と鈴々は胸を張って答えた。朱里は苦く笑いながら二人を見ていた

 

「(さて、どうなることやら)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

化物退治の為に屋敷を出発した一行。松明を持った愛紗を先頭に、森の中を進む。辺りは暗闇に染まっており、手元にある松明がなければ移動も困難になる位だ

 

「ふむ、いかにも何か出そうだな」

 

「や、やめて下さいよぅ……」

 

星が呟くと、勇作の後ろに隠れている劉備はビクッと肩を揺らす

 

「ん?あそこか……」

 

愛紗の声を合図に、一行は前を見る。目の前にそびえ立つ山。この山の頂に、目的地である御堂がある

 

「この上に別荘を建てればさぞ見晴らしが良いことだろうな」

 

 

愛紗はそう言う。そして一行は長い階段を登っていく。距離が長い分、山の高さも相当な物だ

 

「ふぅ……」

 

「やれやれ、やっと着いたか」

 

階段を登り終え、しばらく歩いていると、目的地に辿り着きた

 

「これはまた、化物の住処に相応しい場所だな」

 

星がまた呟くと、劉備は顔ごと勇作の後ろに隠れる

 

「劉備さんは宿で待ってた方が良かったんじゃあ……」

 

「だ、駄目ですよそんなの!これは私の宝剣を取り返す為なんですから、私だけ安全な場所でのうのうとはしてられません!」

 

少しだけ胸を張りながら言う劉備。すると、どこからか、呻き声が聞こえてきた

 

カ〜エ〜レ〜……!

 

「どこだ!出てこい!」

 

カ〜エ〜レ〜……!

 

「姿を見せるのだ!」

 

音が反響していて、場所を特定できない。得体の知れない声の主は尚も叫んでいる。声が止み重低音が鳴り響く。そして、御堂の扉の隙間から光が見えてきた

 

「鈴々、抜かるなよ!」

 

「おうなのだ!」

 

警戒体制に入る一同。隙間からの光は強まり、扉がカタカタと震え始める。段々と強くなっていき、ようやく開かれた。飛び出してきたのは、金緑色に輝く体毛を持ち、三本の爪を生やした、獅子舞の様な怪物。大きく裂けた口を開き、雄叫びをあげる

 

「(えっ!!)」

 

「ば、化物!?」

 

「なのだ!!」

さっきまでの威勢はどこにいったのやら……愛紗と鈴々は武器を捨ててしまい、近くにいた星に抱きつく

 

「うわっ!へ、変な所に膝を当てるな!そ、そんなに揉みしだかれては、あっ、だ、駄目ぇ、そこは、やっ、うっあぁっ……」

二人は完全に取り乱しており、手や膝が、星の胸や腰、そして下

 

「ふ、二人とも落ち着いて!!」

 

勇作はなんとか二人を剥がそうとするが、まったく離れない

 

「あ、主!何処触ってるんですか!!」

 

「俺じゃないよ!!」

 

そんなコトしている内に、愛紗と鈴々はとうとう気絶してしまった

 

「って、気絶してる場合かぁっ!!」

 

化物の咆哮によって、すぐに切り替える。が、明かりが消えかかっていた

 

「不味いな……ここは一旦退くぞっ!星は愛紗を鈴々は俺が」

 

「承知した!」

 

「ひゃい!」

 

「わかりました!劉備さんは愛紗さんの青竜偃月刀を」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

勇作の指示で星は愛紗を、勇作は鈴々と、器用に脇に抱える。偃月刀は劉備が陀矛を朱里持つ。化物の姿を見て、朱里は何かに気づく

 

「ん?」

 

化物に背を向けて、一同は走り去っていく。去った後も、化物は暫くその雄叫びを空に響かせていた

 

 

「………」



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第七十一席 勇作、再び化け物を退治させんとするのこと

戻った勇作達は袁術の屋敷にある一室にいた

 

「ったく!なぁにが任せておけ、だ!ワァワァギャーギャーと情けない!」

 

「面目ない……」

 

「のだ……」

 

先程の失態を責められている愛紗と鈴々

 

「主が機転を利かしてくれたからいいようなものの、恐怖のあまり己の得物まで投げ捨ててしまうとは、武人の風上にもおけん!」

 

「「うぅ……」」

 

「しかし、劉備殿は意外と肝が太いようだな。失礼ながら化け物が出たら真っ先に腰を抜かそうと思っていたが」

 

「え~と、なんていうか…ビックリしすぎて腰を抜かすの忘れちゃったみたいで」

 

「はあ~」

 

「うふふ」

 

「はあ…で、どうする?」

 

「そうですね…笑ってばかりもいられませんよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一同はもう一度謁見の間で袁術と面会する

 

「な、なんと、そんなに恐ろしい化物であったのか……!?」

 

「はい。顔は猿、胴は狸、虎の手足を持ち、尾は蛇でトラツグミに似た、気味の悪い声で鳴くそれはそれは恐ろしい化物でございました!」

 

両手を使ってその化物の特徴を力説する朱里。化物の姿を思い浮かべて顔を青ざめる袁術

 

「(うわ…これは怖い想像しているな)」

 

「その化物相手に、我ら一丸となり、一歩も引く事なく丁々発止ちょうちょうはっしと打ち合い、バッサバッサと勇猛果敢に切りつけ、死力を尽くして戦いました!」

 

「(実際は、そんなコトなかったけど)」

 

「ですが、後一歩という所で……」

 

「取り逃がしたのか……?」

 

「はい…」

 

「うむ、そこまでに追い詰めながら逃がすとは残念なのじゃ」

 

「それではやはり、あの化物を倒すのは無理」

 

「いえ、まだ無理と決まった訳ではありません」

 

「何か、手があるのかや?」

 

「はい。魔を払う聖なる力の宿る宝剣をもってすれば、不可思議な妖力を持つあの化物にも、必ずや止めをさせる筈」

 

「宝剣……」

 

「袁術様。化物を完全に退治する為に、あの宝剣を我等の手にお戻し頂く訳には参りませんか?」

 

「うぅむ…そか、そういう事なら―――」

 

「だ、駄目ですよ美羽様!」

 

了解しようとする袁術を、慌てて止める張勲

 

「(宝剣を返して、そのまま持っていかれちゃったらどうするんですか!?)」

 

「あっ、そ、そうじゃ!それは駄目なのじゃ!」

 

小声で言うと、袁術もやっと気がつき、宝剣の受け渡しを拒否する

 

「分かりました。では代わりにこれをお預けしていくという事でどうでしょう?」

 

朱里は布に包んだ小さな物を取りだし、布を取る。布の中にあったのは、蓋をしている様に見える湯呑み

 

「見た所、只の湯呑みの様じゃが」

 

「何を仰います!これこそ天下に二つとない名器、はてなの茶碗でございます」

 

「はてなの、茶碗……?」

 

「ご覧下さい!この様に飲み口が塞がっているだけでも驚きなのに、おまけに底が抜けているという、手にした誰もがはてな?と首を傾げ、驚くべき一品!」

 

朱里が強く説明している中、後ろにいる愛紗、鈴々と星の三人は、笑いを堪えていた

 

「おぉ、確かにこれは奇妙な……!」

 

これには袁術の隣に控える張勲も、主の様子に驚いていた

 

「袁術様、これをお預けしますので、一先ず宝剣をお返し願いませんか?」

 

「うむ、良かろう」

 

「(………マジで信じてるよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達が退室した後、袁術はそのはてなの茶碗という物を、品定めするように眺めている

 

「ふぅむ。蓋が取れぬ……見れば見るほど不思議な品じゃのう…」

 

「あのぅ、本当に良かったんですか?そんなものと引き換えに宝剣を返しちゃって……」

 

「なぁにを言っておるのじゃ。これ程の名器が手元にあれば、例えこのまま宝剣を持ち逃げされたとしても、損はするまい」

 

「はぁ……まあ私は美羽様が良いなら、それでいいんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、なんともあっけなく宝剣を取り戻した勇作達はというと

 

「しかしよくもまあ、あんな嘘をまことしやかに捲し立てたものだな」

 

「まったくなのだ」

 

「うん」

 

愛紗と鈴々が笑うと、当の朱里は恥ずかしそうに頭をかく

 

「けど驚きました。我が家に伝わるこの宝剣に、魔を払う聖なる力があったなんて」

 

「あぁ、その宝剣にそんなものはありませんよ」

 

「えっ?じゃあ……」

 

「袁術さんって、どうも信用できない気がして、だからああ言って取り敢えず宝剣を返してもらっておこうと思って…でも一旦引き受けた限り、ちゃんと化け物退治はやりますよ?舌先三寸で、只の湯呑みと引き換えに宝剣を巻き上げた、なんて言われたら後味悪いですからね」

 

「けど、宝剣の霊力が嘘なら、どうやって化け物を倒すのだ?あいつでっかくて光ってて、すっごい声で鳴いて口から火を吹いたのだ!」

 

「光ってたのは、多分ヒカリゴケを塗ってたから。鳴き声は、大きな甕かめに法螺貝ほらがいの音を反響させたものだと思います。後、口から火は吹いてませんよ?」

 

「それじゃああの化物は……」

 

「作り物です」

 

それを聞いた愛紗と鈴々は、一瞬驚くと、すぐにガックシと肩を下げる。作り物にまんまと引っ掛かってしまったという事で、すっかり落ち込んでしまった

 

「進歩がないなぁ二人共……」

 

「作り…物……?」

 

「だから、退治するのは造作もないと思うんですが、ただ誰が何の為にあんな人騒がせな事をしているのかが、気になって……」

 

「そのことなら心配ないよ」

 

「どういう事ですか?ご主人様?」

 

「実は、撤退する前に覇気を使ったんだ。だから何であんなことをしたのか理由はわかったよ」

 

「そうなのですか」

 

「さすがお兄ちゃんなのだ」

 

「それでは、あれが作り物というか、人の手によるものだと知っていたのですか」

 

「・・・ああ」

 

「じゃあなんで、教えてくれなかったのだ」

 

「………あまり責められなくてね…あの子たちの現状を考えると……な」

 

その言葉に皆、?マークを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして空は夜。勇作達は、化け物の御堂の前までたどり着いた。六人が来るのを認知した様に、あの気味の悪い声が聞こえてくる

 

〈カ〜エ〜レ〜……!〉

 

すると劉備は、宝剣を引き抜く

 

「やあやあ我こそは中山靖王の末裔、劉玄徳なるぞ!昨夜は不覚を取ったが、今回はこの値千金、売れば三年は遊んで暮らせる宝剣で一刀両断にしてくれる!」

 

「化け物退治の報酬金、既に前金で受け取った以上、こちらも後には引けんしな!」

 

劉備は宝剣を、愛紗は手に持っている、金の入った小袋を見せつける様に叫ぶ。そしてその言葉に答える様に、扉がカタカタと震えだし、隙間からは金緑色の光が射し込む。

 

「来るぞ!」

 

扉が開き、化け物は吠えながらその姿を見せた

 

グオオォォォォォッ!!

 

「化け物〜!」

 

「なのだ〜!」

 

どこかわざとらしい悲鳴をあげ、勇作達はうつ伏せに倒れた。し…ん、と静まり返る

 

「「「ふははははは」」」

 

すると、どこからか、子供の小さな笑い声が聞こえてくる。少女達が倒れている事に気づくと、草陰から二人、化け物の口の中からも一人の少年が現れた。

 

「なぁんだい、こいつら」

 

「とんだ見かけ倒しでやんの」

 

「今夜は全員のびちまって、笑わせるぜ」

 

少年達は、転げ落ちている武器や持ち物を物色する

 

「おまけに高そうな剣や金まで持ってきてくれるなんて、おめでたいにも程があらぁ」

 

「これもらっちまおうか?」

 

「どうせ役人から貰った金だろ?遠慮するこたぁねぇ」

 

そう言うと、少年達は持ち物を奪おうと手を伸ばす

 

ガシ

 

愛紗に手首を掴まれる少年

 

「人の物に無断で手を伸ばすのはあまり感心せんな」

 

驚いて手を離そうとする。すると仲間の声が聞こえたのか視線を向けると

 

「捕まえたのだ」

 

「動くな、子供相手に手荒な真似をしたくない」

 

「お、重い」

 

「何!!」

 

「金目の物を持っている事を匂わせれば、それを取りに出てくるだろうと思いましたが、案の定そうなりましね」

 

「途中でばれないかドキドキしちゃいましたよ」

劉備達も起き上がる

 

「名軍師が考えたんだ。心配なかっただろう」

 

「ありがとうございます。ご主人様」

 

「ちくしょう!騙したな!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

「くっくそ!」

 

「何故こんなことをしたのだ?悪戯にしては少し度が過ぎているぞ!?」

 

「悪戯なんかじゃねぇ!」

 

「じゃあ何のためだ!?」

 

「それはあそこに隠れている人に聞いた方が良いぞ」

 

そう勇作が言うと

 

「お待ちください」

 

視線を向けると、御堂の入り口の前に、一人の少女がいた。後ろには少女よりも小さな子供が四人、隠れる様にいる

 

「理由は、私が御説明します」

 

「………」



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第七十二席 勇作、化け物騒動の真実を知るのこと

勇作達は御堂に案内された。化け物の方は、造形がよくできており、口の開閉は化け物の後ろにあるレバーらしきもので行っていた

 

「(ほえ~すごいな!長曾我部軍に登場しそうな兵器並だな)」

勇作はその完成度に驚いていた

 

少女は、化け物騒ぎの理由を語った。隣に少年三人もいる

 

「私達は皆、孤児なのです。賊に両親を殺された者、病で親が亡くなった者。事情は各々異なりますが、行き場も無く彷徨う内に、一人二人とこの御堂に住み着く様になり、橋の下に捨てられていた子や、行き倒れた親の側で泣いていた子を連れてくる内に、この人数になってしまって……」

 

少女が話す中、劉備は四人の小さい子供達の遊び相手になっている

 

「野草を摘んだり、近くの農家の手伝いで得た僅かな食べ物で飢えを凌しのいでいる私達にとって、雨露を凌げるこの御堂は、大変有難いものだったのですが、御領主さまがここを壊して別荘を建てる事になり……」

 

「成程、それで化け物の振りをして、近づく者を脅かしていたのか……」

 

「はい、そうすればいずれ誰も近寄らなくなり、取り壊される事もなくなるだろうと……」

 

「許せないのだ!今から袁術の所に乗り込んでぎゅぅ~っと言わせるのだ!」

話を聞いていた鈴々は、声を上げて立ち上がる

 

「まあ、待てって鈴々。そうした所で根本的な解決にはなるまい」

 

「じゃあどうするのだ?」

 

「朱里、何か良い考えはないか?」

 

「そうですねぇ……上手くいくかどうかは分かりませんが、化け物の事を鵜呑みにしている袁術さんが相手なら、打つ手はあると思います」

 

「それじゃあ……」

 

「朱里はおっぱいはちっちゃいけど、頭はいいのだ!」

 

鈴々の言葉に心を痛める朱里

 

「だから大ダコに乗った気でいるのだ」

 

「それを言うなら大ブナであろう?」

 

「「大船です(だよ)!」」

 

途端、その場に笑いが起きた。皆が楽しく笑っている中、一人だけ複雑な表情を浮かべる少年がいた。劉備と勇作はその事に気になっていた

 

「今から山を下りるのは大変でしょう?良ければ今夜は泊まっていって下さい」

 

少女からの誘いを受け、今晩はここに泊まる事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、チュンチュンと鳥の囀りが朝の挨拶をした。すると、扉が開く音が聞こえ劉備は目を覚ます。すると気になっていたあの少年がおり、そのまま真っ直ぐ歩いていく。劉備が少年の後を追う

 

 

 

 

 

 

 

少年が辿り着いたのは、森の中にひっそりと置かれている、小石で積み上げられた小さな石の山。少年はその前に座り、肩を小さく揺らし、涙を堪えていた

 

「母ちゃん……!」

 

「早起きなんだ?」

 

声が聞こえ、腕で目を拭く。振り返ると、劉備がいた

 

「な、何だよ……びっくりするだろ」

 

「ごめんごめん」

 

「もしかして、お母さんのお墓?」

 

劉備は少年の目の前にある石に視線を向ける

 

「俺の母ちゃんだけじゃなくて、皆の父ちゃんや母ちゃんの墓。下には何も埋まってねぇけど、そうしようって皆で決めて……」

 

「そう………」

 

劉備は悲しく表情を曇らせる

 

「ねぇ、お母さんにお花摘んであげない?」

 

「何でだよ?花なんて、そんな女みたいな……」

 

「何言ってるの?お花摘んであげれば、お母さんきっと喜ぶよ?ね?」

 

劉備は早速、近くに生えている白い花を摘む。摘み終えると、それを少年に手渡す

 

「はい。このお花、お母さんに渡してあげて」

 

「……」

 

少年は素直に受け取ると、それをお墓に供える。少年の頬は少し緩み、劉備も様子を見て、静かに微笑んでいた

 

 

 

「………」

 

その様子を後ろから勇作は見ており、そしてその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達は袁術の屋敷に戻った

 

「おお!それでは、見事化物を退治したのか?」

 

「はい」

 

「ほ~それはでかした!よくやったのじゃ!」

 

「しかし、彼奴に止めをさした宝剣はその霊力を使い果たし、光り輝く塵となって、敢えなく消え失せてしまいました……」

 

「なんと……それは残念なのじゃ」

 

朱里は残念そうに物語る。袁術も同じ様にするが、大して気に止めていないようだ。

 

「しかしまあ、あの宝剣は化物を退治した暁には、お主等に与えると約束していたもの。失った事は責めはせぬから、安心してよいぞ」

 

「有り難き幸せ!只、一つ気掛かりな事が……」

 

「何じゃ?申してみよ」

 

袁術に促され、朱里は口を開く。

 

「どうやらあの化物は、貧しさが原因で死んだ子供等の怨霊が寄せ集まって生じたものらしく、年貢を下げ、孤児院を作り、貧しい者に施しをしなければ、いつまた現れるやもしれません」

 

必死に語る朱里。だが、袁術は欠伸をするなど、まともに聞き入っている様子は見当たらない

 

「どうかこの事、心に留め置き、お考え下さい!」

 

 

 

 

 

孔明の説得が終わり、一行が退室した謁見の間。張勲が持ってきた蜂蜜水を受け取り、袁術はそれを飲み干す

 

「天下に二つとない名器で飲む蜂蜜水は格別じゃのぅ……しっかし、あやつらも間抜けじゃのう。妾にこの茶碗を預けた事をすっかり忘れていると見える」

 

「はあ…まぁ、それはいいとして…孔明とやらが言っていた件。どうします?」

 

「ん?貧しい者に施しをせねば、また化物が出るというやつか?」

 

「はい……」

 

「う~ん…正直、妾は自分の事以外にあまりお金を使うのは好きではないのじゃ」

 

「けど、そのままにしていてまた化物が出たらどうします?」

 

「ま、その時はその時じゃ。化物が出てから考えればよい」

 

「さすが美羽様♪惚れ惚れする様な短絡思考!考えの無さは中原一」

 

「うははは♪苦しゅうない、もっと褒めてたも」

 

似たようなバカ笑いをする袁術であった

 

 

 

 

 

 

 

 

袁術から用意された客室。宝剣も無事に取り戻し、一件落着…なのだが

 

「朱里よ。私の見た所、袁術はあの程度の脅しで素直に言うことを聞く相手とも思えぬが……」

 

「実際、そうだよ。まったく懲りてないよあれ」

勇作は覇気でさっきの会話を聞いてそう思うのであった

 

「多分そうでしょう」

 

「では……?」

 

「さっきのは前振り。本番は今夜です」

 

 

 

 

 

 

 

 

街や城の人々が寝静まった頃、勇作達は袁術のいる寝台の間へと進んでいた

 

「良いですか?怨霊の振りをして、死ぬ程袁術さんを怖がらせ、貧しい者に施しをする気にさせるんですよ?皆さん、準備は良いですか?」

 

以上が、軍師孔明が練った作戦である。指揮をする朱里は五人の準備を確認する

 

「ま~か~せ~て~お~け~…!」

 

「お~ば~け~だ~ぞ~」

 

「わ~た~し~も~で~す~」

 

「ふんにゃー!」

 

「……」

 

スタンバイはオーケーな様だ

 

「な、なんかノリノリですね……」

 

「うむ、私はこういう達の悪い悪戯が死ぬ程死ぬ程好きでなぁ」

 

「だと思いました……」

 

「(怒った時の紫苑に似ているような)」

 

「所で、鈴々ちゃんの格好は一体……」

 

「しちゃいけない所でオシッコすると、夜中にやって来てへそを舐めるという恐ろしい妖怪。ふんにゃもんにゃなのだ!」

 

「えっと…とにかく妖怪なんですね?」

 

「(何かアニメで出てきそうな妖怪だな。それ)」

 

全身を藁で羽織り、顔に虎の縞模様を赤い線で描き、鼻には黒鼻が付いて頭の上には豚の形をした陶器を乗せている

 

「愛紗さん、劉備さん。どっちがどっちかよく分かりませんが、お願いします」

 

「おうっ!」

 

「はい!」

 

愛紗と劉備は、頭から白いシーツを被っただけで、目穴もちゃんと空けてある。髪型のせいか、頭の片側だけ盛り上がっているお化けがいる

「ご主人様は」

 

「俺の国に居ると言われる妖怪総大将のぬらりひょんだよ」

 

特徴的な形状をしたはげ頭の老人の被り物をし着物を着た姿をしていた

 

「その被り物は」

 

「借りた」

 

「そ…そうですか…では皆さん、行きますよ?」

 

「「「「「「お~~……」」」」」

 

夜なので、掛け声は小声で行った

 

 

「ちょっと待て」

 

すると勇作が一同を止めた

 

「どうしました?」

 

「いや……袁術の寝室に誰かいるぞ?」

 

その時、袁術の寝室から悲鳴が聞こえた

 

 

 

 

 

 

少し、時間を戻し

 

 

寝室では、天蓋付きベッドで袁術が眠っていた。寝言を言いながら寝相を悪くする袁術。彼女の足を、誰かがユサユサと揺さぶり、起こそうとする

 

「う〜ん…何なのじゃ……妾はまだおねむなのじゃぁ……」

 

ゆっくりと瞼を半開きにする。目の前には、見たことのない女性がいた

 

「誰じゃ…?見たことのない顔じゃが……」

 

途端に、女性の顔が骸骨へと変貌した。眼球のないしゃれこうべとなり、上顎と下顎をカタカタと鳴らす。

 

「ひっ!?」

 

目を見開き、目の前の事が現実と思い知る

 

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

時間を戻し

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

廊下で待機していた勇作達は、逆に驚かされる。悲鳴を聞いて、直ぐ様駆けつける。すると尻餅をついて、壁に背を預けている袁術がいた

 

「わ、悪かったのじゃぁ!も、もう無駄遣いはせぬ!年貢も下げる!孤児院を作って貧しい者に施しもする!蜂蜜水も飲み過ぎぬ様にする!じゃからもう許して……ひぃいい!!」

 

命乞いする様に、袁術は必死になる。勇作達は呆気に立ち尽くしていた

 

「ほ、本当じゃ!絶対じゃぁ!じゃからもう許してたも~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、袁術の街から旅立ち、勇作達は野道を歩んでいた

 

「う~ん…それにしても昨夜のあれは、いったい何だったんであろうな」

 

「きっと本物のお化けが出てきた袁術を懲らしめたなのだ」

 

「何言っているんですか…お化けなんているわけないじゃないですか」

 

「じゃあ袁術はなにをあんなに怖がっていたのだ?」

 

「そうですね…たぶん化け物退治の報告をしていた時に、話していたことが心に残っていて、それで怖い夢でも見たんじゃないですか?」

 

「それにしては、ちょっと様子が尋常ではなかったように思うが」

 

「そうなんだよな……あの寝室には袁術のほかにもう一人気配を感じたんだけど…いったい誰だったんだ?」

 

「まあいいじゃないですか。理由はともあれ袁術さんもやる気になってくれて」

 

「張勲殿に聞いた所では…まずは炊き出しをして貧しい者に食を施し、孤児院も早々に作る手筈を整えたようだし」

 

「まつりごとが良くなるんなら悪夢様様です」

 

「そう言う事だな」

 

談話しながら歩いていると、森の方に視線を向ける。木の側には、両手で白い花束を持っている女性がいた。女性はこちらに向けて深くお辞儀をする。劉備はそれに気づき、微笑みながらお辞儀する

 

「(あれ…この気配)」

 

勇作は気配のした所に視線を向けた。劉備ももう一度振り返ると、そこには誰もいなかった

 

「どうした?劉備殿」

 

「あ、いえ…なんでも」

 

その女性は小石で積み上げられた小さな石の山の中に消えた

 

 

 

「何はともあれ、劉備殿の宝剣も取り返せたし、めでたしめでたしだな」

 

「これも皆さんのおかげです。ありがとうございました」

 

「後は桃花村へ帰るだけ」

 

「ここからはのんびり行くのだ」

 

「って今までも結構のんびりしてた様に思えますけど……」

 

談笑しながら、桃花村へと足を進める一行。その道を、太陽の光が眩しく照らしていた……だが

 

「………」

 

勇作はどこか思いつめた表情をしていた

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

その様子に朱里は声を掛けた

 

「どうしたんですか?思いつめた表情をしていましたが」

 

「……いや、なんでも」

 

「嘘です……言ってください!」

 

「……わかった。なんか今回の事で……俺、無力だなって思ってな」

 

「無力ですか?」

 

「うん、覇気で町の人達の声がすごく聞こえてくるんだ。すごく元気のない声や、さっきみたいな子供達の悲しい声がすごく」

 

「……」

 

「分かっていても何もできない…何をすればいいかわからない。そう思うとすごく無力で、俺なんか役に立ってないなと思っちゃってさ」

 

「そんなことないですよ!」

 

劉備が言って来た

 

「え?」

 

「関羽さん達から、いろんな所で凄く助けられているって聞いてます。だから自信持ってください」

 

「……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、愛紗達からの励ましなどがあり、勇作の心は晴れ、皆の絆は深まるのであった



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第七十三席 楽進、李典、于禁、村を守らんとするのこと

暗雲立ち込める空の下。宝剣を取り戻した劉備と勇作達一行は、桃花村への帰路を歩んでいた。特に劉備は、嬉しさのあまり、張三姉妹の歌を歌っていた

 

「ご機嫌だな、劉備殿」

 

「だって、宝剣を取り戻したんですもの~」

 

愛紗が言うと、劉備は鞘から剣を抜き、天に掲げる

 

「嬉しいのは分かりますけど、そんなことをしてると危ないですよ?」

 

「えっ?」

 

「この雲行きだと、いつ雷が落ちてもおかしくないですから……」

 

「ぷぷっ雷が怖いなんて、朱里もまだまだお子ちゃまなのだ」

 

「そういう事じゃなくて……見てください」

 

朱里が指差した所には、3メートル位の一本の木が、大きく裂かれていた

 

「雷の直撃を受けたら、ああなっちゃうんですよ」

 

「「「「っ!!」」」」

 

愛紗、鈴々、星は驚愕の表情をし、劉備は剣を後ろに隠す

 

「雷は金属にも落ちやすいんですから、皆さんも気をつけて下さいね?」

 

朱里の説明を見計らった様に、ゴロゴロと小さな雷鳴が鳴る。それを聞いて、咄嗟に武器を低く持つ少女達。朱里は、苦笑する

 

「(確かに雷は怖いけど、俺はお守りがあるし、万一の時は雷を殴るか………雷を殴る。出来るのかな…俺。自分で言って何だけど)」

 

心の中でそう思う勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く歩いていると、塀に囲まれた村を発見する

 

「あっ!村がありますよ」

 

「助かりましたね。今夜はあそこに泊めてもらいましょう」

 

「そうだな…いつ降り出すか分からない天気だ。屋根のある所で寝られるのは有難い」

 

「……そうなれば良いけど」

 

「どういう意味ですか?ご主人様?」

 

「あの村、少し厄介な事情抱えているぞ」

 

「事情ですか?」

 

「ああ」

 

「それはいったい?」

 

「それはあそこに着いてから…行こう」

 

「わかりました」

 

 

 

 

村へ行くには、でかい堀の上にかけてある一本の橋を渡るしかない。しかもその橋でしか行けない様に、橋の出口の左右に木で出来た柵が何列も置かれている。

 

「止まれ!」

 

橋を渡り終えると、門番らしき二人の少年が、槍を交差させて立ちはだかる

 

 

「お前ら、何者だ?」

 

「何者って……見ての通りの旅の者だが?」

 

「旅の者?なんか物騒なもん持ってるけど、まさか賊の一味じゃないだろうな?」

 

「はぁ?」

 

「ふっ…皮肉なものだな。黒髪の山賊狩りが山賊に間違えられるとは」

 

「黒髪の山賊狩り」

 

門番の一人が愛紗を見る

 

「嘘つけ!黒髪の山賊狩りはすっげー美人だって聞いているぞ!お前なんかな訳ないだろう」

 

その言葉にブチっとなる

 

「愛紗、落ち着け。子供の言う事だ」

 

「分かっている。わかっているが」

 

右手を握りプルプル震えている

 

「落ち着いて……愛紗」

 

「は、はい」

 

「楽進さん達を呼んでこい!」

 

「分かった!」

 

一人がそう言うと、もう一人は急いで呼びに向かった

 

「なんだか、随分警戒されてるみたいですけど……」

 

「きっと近くに賊が出るのでしょう…ご主人様が言っていた厄介な事情はこれでしたか」

 

「ああ(それにしてもさっきの子…楽進って言っていたけど)」

 

「だからって鈴々達を疑うなんてひどいのだ!」

 

「う~ん…愛紗が噂にたがわぬ美人であればこうした疑いを受けることはなかったのだが」

 

「悪かったな。期待外れで」

 

「そうかな…愛紗は美人だし、俺だったらすぐに信じるけど」

 

「ご、ご主人様!な、何を言っているのですか!!」

 

「自信もっていいよ。愛紗は美人だしかわいいよ」

 

「あ…ありがとうございます」

 

勇作の言葉に顔を赤くする愛紗であった

 

「むっ」

 

「じー」

 

「にぁ」

 

「え~と」

 

「(あ!)も、もちろん、他の4人も美人だしかわいいよ」

 

「本当ですか?」

 

朱里が聞いてくる

 

「ほ、本当だよ(何か怖い…目に光がないような)」

 

そんな事をしていると、向こうから門番兵の一人が呼んできたのだろう。二人の少女達が走ってきた

 

「于禁さん!李典さん!」

 

「(何!!)」

 

「真桜ちゃん!きっとあの人達なの!」

 

「よっしゃあ!賊共、覚悟!」

 

李典は両手で持っていた小型の砲台をこちらに向け、発射した。その弾は勇作達の上に行くと、急に大きな網となって降りかかる

 

「っ!」

 

愛紗と鈴々、星が武器を構える。そして

 

「はっ!」

 

「ふん!」

 

「はっ!」

 

網はバラバラに切り裂かれていた

 

「んなっ!?」

 

「ええっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村へと案内され、一軒家に上がる勇作達。一行の目の前には、先程の二人に加えて、もう一人の少女がいた

 

「……すまなかった」

 

楽進は謝罪を含めて、頭を深々と下げる

 

「こちらの早とちりで御迷惑をお掛けして、申し訳ない」

 

「楽進さん、頭を上げて下さい」

 

「誤解と分かれば、我等はもう……」

 

「頭を上げてください!楽進さん」

 

「真桜も沙和も、決して悪気があってした事では……」

 

楽進の後ろで、李典と于禁の二人が気まずそうにしている

 

「沙和…あんたが賊が来たって大騒ぎするからやで…」

 

「けど、門番の子が慌てて走ってきたから、どうしたの?って聞いたら、賊の手下が来たって……」

 

ヒソヒソと話していると、楽進がわざとらしく大きな咳をする。ビクッ!と肩を震わせる李典と于禁

 

「あの、随分と賊を警戒しているみたいですけど、何かあったんですか?」

 

「実は我等三人は、仕官の道を求めて、曹操殿の元へ赴く途中だったのです」

 

「ほう、曹操殿の所に?」

 

「はい。曹操殿は、有為の人材であれば、身分の上下に関係なく召し抱える、度量の広い人物だと聞いたもので…で旅の途中、この村に宿を求めて立ち寄ったのですが、その夜、近くの山に潜む賊が攻め寄せてきて……聞けばこの村は戦や土木工事に男手をとられ、残っているのは年寄りと子供ばかり。どうやら賊はそれを良いことに、この村を我が物とし、新たな根城にするつもりらしく……」

 

「ほう」

 

「賊のくせに生意気なのだ!」

 

「それ以来、賊は隙を見ては襲って来る様になり、来る度に追い払ってはいるのですが、多勢に無勢。彼奴らを退治するまでは至らず、日々守りを固めているのです」

 

「なるほど、そういう訳だったのですか」

 

「思ったより深刻だな」

 

「私達がこの村に来て、もう三月になるの。その間に十回も賊に襲われて……」

 

「正直ウチらも、いつまでもここで足止め食ろうとる訳にはいかんのやけど、まさかこのまま見捨てるっちゅう事も出来へんし」

 

「当たり前だ!それにもし、この村が賊共の根城となれば、彼奴らは更に勢力を強め、近隣の村や町にまでその手を伸ばすに違いない」

 

「……主」

 

「分かっている」

 

「私もお手伝いします!大した事は出来ませんけど、筵織りなら自信があります!」

 

「じゃあ鈴々は、その筵で賊を簀巻きにしてやるのだ!」

 

「だが聞いた所では、敵はかなりの数だぞ」

 

「真っ向勝負では分が悪いか……」

 

「……朱里、何か策をお願いする」

 

勇作が朱里に聞くと、朱里は楽進達に、村の見取り図を要求した

 

「こんな絵地図しかないが……」

 

「結構です。ここが村、そしてこっちが山の中の賊の住処。これが村の前にあった橋で……」

 

絵地図を指差しながら見ていくと、朱里はあることに気づいた

 

「上流のこれは、湖ですか?」

 

「はい。龍神湖と言って、龍神様が住むという言い伝えがあるらしく、村人の話では、昔はかなり大きな湖だったが、今は水の量が減り、村の前を流れる川もすっかり細くなってしまったとか……」

 

その話を聞き、朱里は口に手を置いて、策を練り続ける

 

「ん?」

 

「どうした?朱里。何か思い付いたか?」

 

「そうですね……もし、龍神様のお力を借りる事が出来れば、何とかなるかも」

 

その言葉に皆が顔を上げた

 

「(朱里)」

 

朱里の隣に居た勇作は朱里に小さい声が呼びかける

 

 

「(な、何でしょうか)」

 

「(覇気を使って賊の人数を教える。朱里は今考えている策を進めてくれ)」

 

「(…御意)」

 

「(それにしても…楽進に李典に于禁か…魏の武将とこんな所で出会うとはな……)」

 

勇作はそう思いながら会議は終わるのであった



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第七十四席 公明、策を伝えるのこと

作戦会議の後、全員それぞれの時間を過ごしていた

 

 

楽進は一人、湯船に浸かっていた

 

「(龍神様のお力か……。見た目によらず、孔明殿はかなりの軍師らしいが、一体何を考えて……)」

 

 

 

その軍師は、李典と一緒にいた

 

「へぇ~~それじゃあ、このからくりは李典さんが作られたんですか?」

 

「そや。細い鋼をこないな風に巻いて、その螺旋の力で物を打ち出す仕掛けになっとんねん」

 

「成程、李典さんは物作りが得意なんですね」

 

「おう!材料さえ揃えば、大抵のもんは何とかしたるでぇ」

 

 

 

 

 

こちらでは、劉備は于禁と会話していた

 

「それじゃあ劉備さんも、張三姉妹の?」

 

「はい!旅の途中で舞台を見て、すっかり好きになっちゃって」

 

「私もなの!歌も踊りも可愛くて大好きなの~」

 

「後、衣装も素敵ですよね」

 

「そうなのそうなの」

 

お互いに張三姉妹のファンという事もあり、楽しいガールズトークが繰り広げられていた

 

 

 

 

 

暗い夜空に半月が上がった頃。村人は全員寝静まっていた。愛紗達も、眠りについていた。その中で一人、劉備はどこか寝付けずにいた。

 

「どうした?劉備殿…眠れないのか……?」

 

「すみません…なんか宝剣の事を考えてたら、目が冴えちゃって……」

 

「宝剣の事?」

 

声をかけた愛紗は、劉備にそう尋ねる

 

「はい。母からよく聞かされたんです。私のご先祖には立派な人が多くいて、皆この宝剣を手にしては民の為に尽くしてきた。だから、この宝剣を受け継ぐからには、お前もそうした気構えを持て、と……。でも、これまでの私、そんな事言われてもピンと来なくて……。自分の事も満足に出来ないのに、民の為に尽くすなんて、ねぇ……?」

 

「あ、いや……」

 

劉備は上半身を少し起き上がらせる

 

「けど、関羽さん達と旅をして、この村の人達とか、この前の孤児みなしご達とか、世の中には困っている人がたくさんいることが分かって……何が出来るか分からないけど、私も何かしなくちゃいけないんだって思って……」

 

「……そうか。なら、これまで我等は宝剣を取り戻す旅の仲間だったが、これからは共に世の中を変える為の仲間となろう……」

 

「っ!……はい」

 

「………」

 

勇作もまだ起きていたがその会話を聞きながら、静かに眠りにつくのであった

 

 

 

 

 

翌日、皆は集まっていた

 

 

「今日一日、色々調べて見たのですが、どうやら龍神様の力をお借りできそうです」

 

皆が朱里を見る

 

「いいですか?皆さん…まずは此処に関を築いて龍神湖から川へと流れ出る水をせき止めます」

 

地図を指刺しながら説明をする

 

「例え、水量が減ってはいても、出口を塞させばいずれは湖に水がいっぱいに溜まる筈。それに村のお年寄りに聞いた所では、この辺りは毎年、今ぐらいになるとひと月ばかり雨の日が続くとか。だとすると準備が整うまでそう待つことは無いはずです。そして湖に水がたまったら夜いんに乗じて、こちらから賊の住みかを少人数で襲います。賊が反撃してきたら賊を引きつけつつ橋まで撤退。こちらが渡ったら橋を落として賊を水のかれた川まで誘い込み」

 

「そこで湖の水の関を切る…か」

 

「…あっ」

 

「ええ、うまくいけば。全滅とはいかなくてもかなりの賊を退治出来るはず」

 

「おもろいな!悪党どもを綺麗さっぱり洗い流そうってわけか!」

 

「はい……それとご主人様」

 

「ああ、ちゃんと調べたよ」

 

「調べたって何をですか」

 

「賊に人数だよ」

 

「人数ですか?」

 

「ああ」

 

勇作は地図の上に小さい石を6個置いた

 

「此処とここにに約二百人、ここに約百人、残りの三つは約五十人。ここが賊のリーダーじゃなくて大将がいる所だ」

 

「約千人ぐらいですか」

 

「ああ、今のところ目立った動きはない。準備が整うまで定期的に教える」

 

「お願いします」

 

「良く調べますね」

 

「見聞色の覇気を使えば簡単だよ」

 

「そうでしたね」

 

「見聞色の覇気?」

 

「俺の特殊能力だよ」

 

「特殊能力?」

 

「はい、この力に私はすごく助けられてます」

 

「うむ、それに主は私たちの中で一番強いのだからな」

 

「そ、そうなのですか……失礼ですけど、名は」

 

「高杉勇作だよ」

 

「高杉」

 

「勇作」

 

「も、もしかして、貴方はあの天の御使いの!」

 

「あ、ああ」

 

「凄いです!こんな所で会えるなんて感激です」

 

「凪ちゃん!落ち着いて!」

 

「せや、今はこんなことをしとるばあいじゃないんや」

 

「!!。失礼しました」

 

「だ、大丈夫だよ」

 

「なら、お願いがあるのですが」

 

「お願い?」

 

「私と手合せをお願いしたいのですが」

 

「……賊退治が終わったら」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

その日から、全員で準備に取りかかる。残された村人達も協力しながら、見張りの為の高台ややぐら等を作っていた。

 

 

「うわあああ」

 

朱里は李典と一緒に龍神湖に来ていた

 

「どや、なかなかのもんやろう」

 

数日という日数にも関わらず、もう完成させていたのだ

 

「はい!よくこの日数でこれだけちゃんとした物を!……李典さんは本当に物作りの天才ですね」

 

「いっや~。そなにほんまのことを言われるとウチ困るがな」

 

「…後は水が溜まるのを待つばかりですね…そろそろ本格的に龍神様のお恵みがあると助かるのですが」

 

「龍神様いうたら…ほれ、あの岩」

 

李典が視線を横に向ける。そこには見上げるほど巨大な岩があった

 

「水門作るの手伝どうてくれた村の人らに聞いたなんやけどな…あれ龍の卵ってちゅう言い伝えがあって、あれ割れたら龍が生まれてくるやって」

 

「……龍の卵…ですか」

 

朱里はその岩をじっと見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、だいたい出来たかな」

 

勇作も見張り台を作るのを手伝っていた

 

「………さてと」

 

勇作はその場を離れ、橋の上を渡り、少し歩いて止まった

 

「………」

 

そして見聞色の覇気で賊の様子を聞いていた

 

「………変わった様子はないな」

 

そう思うと…勇作は村に戻る

 

「……ん?」

 

だが、その足を止める。そしてある場所に走る

 

 

 

 

 

村からすこし離れた場所。そこに一人の子供と大人がいた

 

「なるほどな…良いこと聞いたぜ」

 

「……」

 

「これでこの村は頭のもだ。これで俺も良い思いが出来るもんだぜ」

 

「教えてんだがら、おじいちゃんを返せ!」

 

「おっと、そうはいかねぜ…貴様にはまだまだ働いてもらうぜ」

 

「な、なんだと!」

 

「あっと、変な事考えるなよ。じじいがどうなっても」

 

「…っ!」

 

「まあ、これからよろしく頼むぜ。じゃあ二日後の夜にな」

 

そう言うと、大人はその場を後にした

 

「………」

 

子供はその場に跪き地面を殴った。その表情は悔しい思いでいっぱいであった

 

「どうすれば、どうすれば良いんだ」

 

悔しい思いと己の力のなさに体が震えていた

 

「こうなったら…俺一人でも」

 

「………」

 

 

その様子を勇作を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やめておけ」

 

そして呼び止めた



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第七十五席 勇作、人質を救出するのこと

「…誰だ!」

 

「…俺だよ」

 

「……何の用だよ!」

 

「………何かあったのか」

 

「アンタには関係ないだろう!」

 

少年はその場を去ろうとした

 

「……人質」

 

「っ!!」

 

がその場で足が止まる

 

「さっきの会話を聞いた。爺さん、人質に取られたのか?」

 

「……」

 

「それで一人で」

 

「……そうだよ!!助けに行くんだ!」

 

「やめとけ。死ににいくようなものだぞ」

 

「うるさい!俺にとってはたった一人の家族なんだ!それなのに賊にさらわれて」

 

「……」

 

「だから俺一人でも助けに行くんだ!でないとアイツらに…」

 

「…なるほどね」

 

「…止めるなよ。これは俺の問題なんだから」

 

少年はその場を後にする

 

「待て」

 

「何だよ!」

 

「…行くぞ!」

 

「何処に!?」

 

「助けに」

 

「え?」

 

「だから助けに行くんだよ。アンタの爺さんを」

 

「………」

 

「どうした?協力するって言っているんだ。うれしくないのか」

 

「そんなの嬉しいに決まってるよ!けど相手はかなりの人数なんだよ。それに爺ちゃんがどこにいるか分からないのに」

 

「……心配するな」

 

「え?」

 

「場所は分かっているよ」

 

「そんな」

 

「だから任せておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所

 

 

「親びん」

 

「何だ」

 

「何で頭にさっきの事知らせないんですか」

 

「そんなの決まっているじゃねえか」

 

「ん?」

 

「頭にいい印象を貰うためだよ」

 

「印象」

 

「ああ。奴らは作戦は知っている。だが今言うより、奴らが仕掛けてきた時にさっきのことは話せばどうだ」

 

「さあ」

 

「頭はこう思うだろう。『此奴かなりのキレものだと』そして成功した暁には俺の名は軍全体だけでなく大陸に広がるって訳だ。そうすれば俺の株の上がるってものだ。そうすればお前達にも良い思いをさせることが出来るってもんだ」

 

「なるほど。さすが親びん。頭が良いぜ」

 

「そうだろう!あはははは」

 

「それであのじいじは?」

 

「すべてが終わったら用済みだ。始末するつもりだ」

 

「そうですか。その時はあっしらにまかせてください」

 

「ああ、いいだろう」

 

「ありがとうございます」

 

「気にするな」

 

「「あはははは」」

 

 

 

 

「それはどうかな」

 

「「!!」」

 

二人が視線を向けると

 

「……」

 

高杉がいた

 

「だ、誰だ」

 

「人質は返してもらうぞ」

 

「な、何だと!」

 

「他の奴らはどうした!」

 

「眠ってる」

 

「何だと!!」

 

「アンタたちも……眠れ!」

 

ドクン

 

勇作は覇王色の覇気を発動した。

 

バタ バタ

 

気絶した

 

 

「あっけな…さてと」

 

勇作はある場所に向かう。そして

 

「誰なんじゃ」

 

「アンタの孫に頼まれて救いに来たぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ

 

外では雨が降っていた。そして劉備と于禁が屋敷の中で会話をしていた

 

「ここんとと、毎日雨なの」

 

「そうだよね…でもこの雨のお蔭で湖に水が溜まるのが早くなるんだから文句は言えないよ」

 

「けど、湖がいっぱいになったらまた戦いなの」

 

「ん?」

 

「実は私、戦いとかってすごく苦手なの。悪い人をやっつけるんだから頑張らなきゃって思うんだけど…でもやっぱり怖くて震えちゃって、三人で旅をする間に山賊と戦ったりもしたけど、いっつも足手まといで…他の二人が頑張っているのに情けないの」

 

「情けなくなんかないですよ」

 

「え?」

 

「于禁さんは怖いのを我慢して頑張ってるんだから、普通に頑張っている人より頑張っていると思います。だから情けなくなんかないですよ」

 

「…劉備」

 

「それに、旅の足手まといならきっと私の方が上ですよ。嘘だと思うんなら関羽さん達に聞いてみてください」

 

「それって自慢するとこじゃないかもなの」

 

「えっ!そういえばそうですね」

 

「「あははははは」」

 

笑いながら話していると

 

「あ、お帰りなさい」

 

朱里が帰ってきた

 

「湖の様子、どうですか?」

 

「はい。予定より早く水が溜まりました。今夜、夜陰に紛れて打って出ます」

 

「わかりました。皆さんに知らせますね」

 

「お願いします。そういえばご主人様は何処にいるか知っていますか」

 

「いいえ」

 

「そうですか」

 

「何処に行ったのなの」

 

とその時

 

バン!バン!バン!

 

 

銅鑼の音が鳴り響いた

 

「!!」

 

その音に皆が反応する

 

「この音は……何があったんですか」

 

すると一人の村人が走ってきた

 

「ど、どうしたんですか」

 

「い、今、高杉って人から橋の向こうに賊が100人ほど現れたっと」

 

そのことを聞き劉備たちは橋に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銅鑼がなる少し前

 

「大丈夫か」

 

「ああ、すまないな」

 

「気にするな」

 

勇作が人質になっていた老人をおぶって村に向かっていた

 

「それにしてもワシのせいで大事な」

 

「大事なんですね」

 

「ああ、まだまだ甘えん坊だが、ワシのせいで」

 

「帰ったら思いっきり抱きしめたくだざいね」

 

「ああ」

 

と会話しながら歩いていると

 

「…!!」

 

勇作は覇気で何かに気付いた

 

「どうしたのじゃ?」

 

「爺さん!少し走るぞ!」

 

勇作は村に向かって走り出した

 

 

 

「………!!」

 

村の入り口では例の少年が立っていた。そして勇作を見つけた

 

「じ、爺ちゃん」

 

「おお」

 

勇作は橋を渡り終えた。そして二人は再会を果たした

 

「感動している所悪いけど、緊急事態だ」

 

「え?」

 

「賊がこの村に迫っている!その数は百人だ」

 

「!!」

 

少年は驚く

 

「早く知らせろ!」

 

「は、はい。そ、それと」

 

「ん?」

 

「ありがとうございます。おじいちゃんを助けてくれて」

 

「礼はいいから早く」

 

「はい」

 

少年と老人は村の中に入って行った

 

「……さてと」

 

勇作は橋の方に視線を向けると

 

ドン

 

賊がいた

 

「…来たか」

 

そういうと銅鑼が鳴り響く

 

「ご主人様!!」

 

「愛紗……みんな」

 

愛紗達が集まった

 

「まさか、相手から奇襲にくるなんて。まさか策がばれたんじゃ」

 

「そういうわけではないぞ」

 

「そうなんですか」

 

「ああ」

 

勇作は自信を持っていう。その賊たちはというと

 

 

「くそ!あの男のせいで人質が取られちまった。こうなったら自棄だ」

 

「親びん。知らせなくていいですか」

 

「知るか!!俺達であの村を落とせばいいんだよ!」

 

「は、はあ」

 

 

自棄になっていた

 

 

 

「(自棄になっているな…こっちからすればありがたいけど)」

 

「よーし。鈴々の力!思い知らせてやるのだ」

 

「待て!」

 

「お、お兄ちゃん」

 

「俺一人でやる」

 

「え?」

 

「ご、ご主人様!!」

 

「心配するな。一瞬で終わられてくる」

 

「しかし、武器も無しに」

 

「大丈夫だ!信じろ!」

 

「………わかりました」

 

「ありがとう」

 

勇作は橋を渡る

 

 

「………貴様」

 

「…よくもやりやがったな」

 

「…ほう、やるのか」

 

「「「「おおおおおおおおお」」」」

 

賊たちが勇作に切りかかる

 

「ふっ」

 

勇作はその中を走る

 

 

ブン ブン ブン

 

賊たちは勇作に向けて剣を振り下すが

 

「……」

 

覇気で読み、躱す

 

「……」

 

そしてその中を抜けた

 

「「「「「「「あ、あれ」」」」」」

 

そして六人の賊が剣を収める鞘がないことに気付く

 

「さがしていのは」

 

勇作が後ろを振り向く

 

「これかな」

 

その両手には奪った鞘があった

 

「「「「「「なっ!!」」」」」」

 

「……」

 

勇作は六爪流になる

 

「奴を殺せ!!」

 

 

おおおおおおおおおおお!!!

 

 

賊が向かってくる

 

 

「PHANTOM DIVE!!」

 

薙ぎ払いより賊が飛ぶ

 

 

わああああああああ!!

 

 

 

飛び上がって斬り下ろし、衝撃波を奔らせる

 

げは

 

がは

 

あああああああ

 

それにより賊が断末魔を上げなら飛び、賊たちは川に落ちる

 

「な、なんだよこいつは」

 

「ひいいい」

 

「お前らも落ちろ」

 

ドン

 

「うわああああああ」

 

「うわ!」

 

親びんとその子分も勇作の攻撃を受け、川に落ちる

 

「……」

 

そして百人の賊は、全員枯れた川に落ちた

 

「あれ…もう終わり」

 

そう言いながら鞘を川に投げ捨て、皆の所に戻る

 

「…歯ごたえななさすぎだよ」

 

 

「……」

 

「……」

 

「すごい」

 

勇作のあまりの強さに村人、楽進たちそして劉備は驚愕するのであった



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第七十六席 英雄、策を実行するの事

「おーい。終わったぞ」

 

勇作は皆の所に帰ってくる

 

「……」

 

が皆の反応がない

 

「…あの~」

 

「!!は、はい」

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫です!それより皆さん……作戦実行します!!」

 

 

 

 

 

 

 

村の門の前で、愛紗達五人の武将達に作戦を伝える朱里

 

「皆さんには、今から賊の住処を襲撃してもらいます」

 

「うむ」

 

「お任せなのだ」

 

「目的はあくまで敵をおびきだす事ですから、くれぐれも深入りしないで下さいね」

 

「お兄ちゃんは一緒に来ないのか」

 

「俺が蹴散らした賊がいつ目を覚ますか分からないし…此処で護衛するよ」

 

「李典さんは水門の側。劉備さんは、私からの合図を李典さんに伝える為、湖と村の間の囃子で待機してもらっています。水が来たら、私が銅鑼を鳴らします。そうしたらすぐ川の側から離れて下さい」

 

皆一同、首を縦に振る。その中で于禁はどこか不安の色を見せていて、楽進は隣で、彼女の事を心配そうに見ていた

 

「それでは皆さん……御武運を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武将達の奇襲作戦が始まった

 

「うりゃ~~!てりゃあっ!!」

 

「ぐあっ!」

 

鈴々は得物である蛇矛を振り回し、賊を吹き飛ばしていく。星も応戦し、敵を切り裂く。二人は背を預け合う

 

「鈴々、あまり深追いするな。我等の使命は、賊をおびき寄せる事だぞ」

 

「分かってるのだ!」

 

鈴々はそのまま賊の本拠地に向かっていった

 

「うりゃりゃりゃ~~~!!」

 

「って、分かってないだろ……」

 

後ろで星は呆れた様子を見せた

 

 

 

違う場所では、于禁が賊の一人と戦っていた。しかし、防戦一方で、尻餅をついてしまう。賊が槍で止めを刺そうとするも、後ろから楽進に槍の先端を掴まれた。槍を退け、賊に蹴りを食らわせた楽進

 

「沙和、大丈夫か?」

 

「も、もちろんなの!」

 

楽進が手を貸そうとすると、于禁は自分で立ち上がった

 

 

 

「でぇやぁぁぁぁぁっ!!」

 

愛紗は偃月刀で敵を蹴散らしていく。そして楽進の方を向いた

 

「楽進殿!」

 

「承知っ!」

 

「沙和!!」

 

「はいなの!!」

 

掛け声を合図に、五人全員は村へと戻っていく

 

「ほら鈴々、お主も」

 

「うぅ~!離すのだ~!鈴々はまだやれるのだ~~!!」

 

星は、二人がかりで駄々をこねる鈴々を連れていった

 

 

 

 

 

五人が走り去っていくのを、少し高い崖から見下ろす賊の頭

 

「アニキッ!どうやら奴等、引き始めた様ですぜ!」

 

「ふんっ!不意をついたつもりだろうが、所詮は多勢に無勢。ようしっ!奴等を追ってそのまま村に攻め込むぞ!これで宿無し生活とはおさらばだぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

作戦通り、賊は全員、村へと進撃を開始した

 

「あっ、アニキ!あれ」

 

「ああっ?」

 

チビが指差した方向には、村の前にあった橋が落とされていた

 

「小癪な真似を……。構うこたぁねぇ。どうせ浅い川だ。そのまま一気に押し渡れ!!」

 

橋を落としただけではものともせず、賊の大群は村に攻め寄せてきた

 

「へへっ、一番乗り……ぶぎゃぁっ!?」

 

登ってきた賊達を、勇作達は武器を使って叩き落としていく。賊の数は水のない川を埋め尽くす

 

「……そろそろ、いい頃合いですね」

 

高台から様子を窺っていた朱里は、手に持っている松明を掲げ、劉備に合図を送る

 

「合図だ」

 

気づいた劉備は、同じく松明で李典に合図をする

 

 

「行け~行け!!行け」

 

 

だが水は来ず、賊はどんどん押し寄せてくる

 

「愛紗、水はまだか?そう長くは持たんぞ……」

 

「分かっている……!」

 

愛紗は龍神湖の方角を見上げる

 

「また合図……?まだ水が来てない!?」

 

囃子にいる劉備は、そう察した

 

「ひょっとして、李典さんに何かあったんじゃあ……」

 

劉備は腰にある宝剣に手を添える

 

 

「(くそ!!賊の数が多すぎて声が聞こえない!何で来ないんだよ)」

 

勇作も水が来ないことに疑問に思った

 

「(こうなったら行くしか……!!)」

 

勇作は龍神湖に向かおうとした時、勇作が倒した賊たちが別の場所の柵を壊そうとし、侵入しようとしていた

 

「くそ!!」

 

それに気づき、勇作はそこに向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉備は龍神湖へと向かう。坂道を登って行き、湖に辿り着いた

 

 

「李典さんっ!どうしたんですか!?早く水門をあけ…っあ!!」

 

急に足を止めた。目の前には龍の卵と呼ばれている大岩が倒れ、水が通れないように塞がれていた

 

「これは」

 

「水門を開けたらあの岩が倒れてきて、きっと雨で地盤が緩んどったんや。どうにかして動かすそう思うやったんだけど、押しても引いてもビクともしおらん」

 

膝から崩れ落ち、右手で地面を殴る

 

「くそ!!こなんやことになるんやったら、水門作るついでにあの岩退けとくんやった」

 

悔しさを滲ませる李典

 

 

ゴロゴロ

 

轟く雷鳴。そしてあるものが劉備の目に写った

 

「……」

 

そして、水門を防いでいる大岩の上に立ち、宝剣を抜いた

 

「でい!!」

 

劉備は両手で持った宝剣を振り上げ、大岩に突き刺した

 

「ん?…アホ!!そないやもんで突いたぐらいで、岩が割れるわけ…ん?」

 

遠くで鳴っていた雷が、こちらへどんどん近づいてくる

 

「!!危ない!!」

 

李典は劉備に抱き着き、その場を離れる……と同時に

 

 

ビカ!

 

宝剣が刺さった所に、雷が落ちた

 

「どあほ!!もうちょっとで黒こげになるとこ」

 

すると岩に亀裂が走る

 

「あかん。はよ逃げな!!」

 

二人はその場から逃げると大岩は崩れ、湖の水が放出された

 

「あんた、まさかこれを狙ろうて」

 

「よかった。うまく…い…って」

 

「あ!ちょ…おい!!」

 

安心した様に、劉備は気を失ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…来た!!)」

 

龍神湖から放出された大洪水は、干からびていた溝を激流の如く進み、村の前へと直行していく。高台の上から見えた朱里は、銅鑼を手に取り、合図として鳴らす。銅鑼のデカイ音を聞き取り、愛紗達は村の門の方へと退却する

 

「沙和!!」

 

「はいなの!!」

 

楽進達もその場を後にしようとした時

 

ガシ

 

「…あっ!」

 

于禁の片足を賊の一人が掴む

 

「えへへ」

 

「離せ!!」

 

勇作が賊を蹴ると、手が離れる……が

 

「うわ!!」

 

足場が崩れ、勇作は賊と一緒に川に落ちた

 

「……くっ!」

 

「えへへへ」

 

勇作の周りを賊が囲む

 

「くそ!」

 

立ち上がろうとするが

 

ズキ

 

「ぐっ!」

 

右足首に激痛が走る。落ちた時、変に捻って捻挫したのである

 

「(こんな時に)」

 

「あっ!?アニキィ!!」

 

「あぁっ?なっ!?」

 

ようやく気づき、賊達は急いで登る。が勇作は動けない

 

「ご主人様!!」

 

「おにいちゃん!!」

 

「主!!」

 

「た、助けに行かないと」

 

「無理だ!!呑みこまれる」

 

水が迫ってくる

 

「………こうなったら」

 

勇作は何とか立ち上がり、構える

 

「……」

 

ふうと息を吐き、刀を抜き覇気を込める。刀は黒く変色する。そして勇作の体は青く光りだした

 

「……」

 

水が勇作を呑みこみそうなる

 

「ご主人様!!」

 

「主!!」

 

水が勇作が呑みこむ…………が、次の瞬間

 

「TESTAMENT!」

 

ズゴオオオオオオン!!!!!!

 

 

強烈な音と共に水が左右に分かれる。いや別れたのではない

 

「……」

 

そう、勇作は切ったのだ。見事に真っ二つに

 

「えええええええ!!!」

 

「ええええええ!!!!」

 

「えええええええ!!!」

 

その場にいた誰もが目を飛び出して驚いた

 

「よし!」

 

勇作はその間に痛みを堪えながら走る。そして地面に落ちていたロープを掴む。このロープは橋の手すりのロープでまだ村側の杭に繋がっていたのだ

 

「って驚いている場合じゃなかった!!」

 

我に返った賊たちであったが勇作共々水に飲みこまれ、流された。だが勇作はロープを掴んでいたおかげで流されずに済み、愛紗達によって引き上げられた

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、雲の隙間から日の光が差し込む

 

「一晩で水は引いたようですね」

 

「ああ」

 

村側の橋の前で星と朱里が立っていた

 

「賊もほぼ一掃できたことですし、これでめでたしめでたしっとなればよかったのですが」

 

「劉備殿がな」

 

「ええ」

 

二人は龍神湖がある方角に視線を向ける

 

 

 

「……」

 

龍神湖では、水門が築かれていた跡地で、劉備が宝剣を袖が泥だらけになりながらも、手を休めずに探していた。愛紗と鈴々もいる

 

「劉備殿、ここは一旦、村に戻ってはどうだ?村の人達も手伝うと言ってくれているし、宝剣を探すのは少し休んでから、また改めて……」

 

「もういいんです……雷が落ちた時、宝剣は真っ黒焦げになってて、もし見つかったとしても、あれじゃあもう……」

 

「……劉備殿。やっと取り戻した宝剣を失ってしまった事は、さぞ辛い事だろう。だが、民の為に尽くしたい、こんな世の中を変えたいというあなたの想いは、宝剣が無くなればそれと一緒に失われてしまう様な物だったのか?」

 

「っ!!」

 

「李典殿から聞いた。危険を顧みず、大切な宝剣を犠牲にしてまで村を救おうとしたあなたの行い、御先祖もきっと称賛されるであろう。結果として宝剣は失われてしまったが、そうする事であなたはもっと大事なものを受け継いだんだと私は思う」

 

「関羽さん」

 

「この村に来て初めての夜、私はあなたに言った筈だ。これから私達は、世の中を変える為の仲間だと……だからもし、私で力になれる事があったら、なんでも言ってくれ」

 

「……あの、それじゃあ、早速一つお願いしてもいいですか?」

 

「ああ、もちろん」

 

「関羽さん……私を関羽さんの妹にしてくださいっ!!」

 

「は、はぁっ!?」

 

「関羽さんのさっきの言葉で私、目が覚めました!世の中を変える為、これから一生関羽さんについていきます!だから妹にしてください!」

 

「そんな事駄目に決まってるのだ!」

 

「愛紗の妹は鈴々だけなのだ!」

 

「そ、そうだ劉備殿。私には既に、手のかかる妹がいるので、これ以上はもう……」

 

「えぇっ、駄目なんですか〜……?」

 

「でもまあお姉ちゃんになるんだったら、許してやらなくもないのだ」

 

「えっ!」

 

「ほ、ホントですか!?」

 

「り、鈴々!何を勝手に」

 

「わかりました。なら私、関羽さんのお姉ちゃんになります」

 

「あ、いや、ちょっ、ちょっと……!?」

 

「めでたしめでたしなのだ」

 

「って、ちっがぁぁぁぁう!!!」

こうして新たに、劉備が愛紗の姉として、姉妹の契りを交わしたのであった



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第七十七席 勇作、水鏡の屋敷に向かうのこと

丸い形をした天井の巨大なドーム。そこでは張三姉妹が歌を披露していた。歌い終わり、大歓声の嵐が起きる

 

「ふふ」

 

張宝がマイクに軽くキスをし、マイクが紫の色に染まった

 

「ねぇ、知ってる?今、洛陽の都で流行ってるっていう、新しい化粧品」

 

「知ってる知ってる!お肌がしっとり艶々になるってやつでしょう?」

 

「あれ欲しいよね~?」

 

その言葉が何度も木霊し、観客全員に伝わった

 

「お届けものです」

 

「お届けものでーす」

 

「お届けもので〜す」

 

「ど~も~」

 

三姉妹が泊まっている屋敷にそれが届いた

 

 

別の日のライブ

 

 

「ねぇねぇ知ってる?こないだ新発売したお菓子」

 

「お餅の中に餡子と果物が入ってるっていう……」

 

「そうそう、それそれ!」

 

「あれ、一度食べてみたいよね〜〜!」

 

 

その日の夜

 

「お届けものです」

 

「お届けものでーす」

 

「お届けもので〜す」

 

「ごくろうさま」

 

また三姉妹が泊まっている屋敷にそれが届いた

 

 

「そう言えば」

 

「お届けものです」

 

「あと…」

 

「お届けものでーす」

 

三人は毎回のように妖術を使っていた

 

 

「知っている?今噂の青い木の実」

 

「ああ、知ってる」

 

 

そしてその様子を、ドームの吊り天井から見下ろしている一人の男がいる

 

「ふぅむ、成功に貪欲な割に、考えの浅い彼女達に太平要術を預ければ、大きな騒ぎを起こして世を乱し、妖力をたっぷり溜め込んでくれるかと思ったのですが、これは人選を誤りましたかね……まっ、もう少し見てみますか…葛玄の手を煩わせるのも癪ですしね………」

 

そう言い、張三姉妹を見る于吉であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所。勇作一行は、着いた村で夕食をとっていた

 

「はい、あ~ん」

 

「ちょ、劉備殿…」

 

「もう、駄目ですよぉ。私達姉妹になったんですから、劉備殿じゃなくて、ちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さい」

 

「い、いや、だからあれは鈴々が勝手に……」

 

鈴々の方を向くと

 

「む~」

 

膨れっ面でいた

 

「どうした?鈴々。そんな膨れっ面して」

 

プイッとそっぽを向いてしまった。皆が首を傾げている

 

「鈴々」

 

「愛紗ばっかり、あ~んしてもらってずるいのだ」

 

「何だ。それならそうと早く言え。ささ、劉備殿。あ~んしてやるなら、鈴々に」

 

「そ~じゃないのだ!!」

 

「ん?」

 

「鈴々は劉備じゃなくて、愛紗にあ~んしてほしいのだ」

 

「はぁ!?なんであたしが鈴々にそんなことを?」

 

「愛紗はお姉ちゃんの劉備からあ~んしてもらっているから、鈴々はお姉ちゃんの愛紗からあ~んしてもらって良いはずなのだ!!でないと不公平なのだ」

 

「(何だよ?その理屈)」

 

「ってどういう理屈だ!?」

 

「あ~ん」

 

口を開ける鈴々

 

「鈴々」

 

「夫婦ケンカは犬も食わぬというが、こっちのケンカは猫も跨いで通うだな。なっ?朱里」

 

朱里に同意を求めるも、反応がない。星が見ると、朱里はどこか上の空だった

 

「朱里……?」

 

「えっ?はっ、はい……」

 

「…………」

 

ぎこちない返事に、少し首を傾げる星であった

 

 

 

 

 

 

 

そして夜になり、全員宿屋で睡眠をとる。寝台で寝ている星と同室の朱里は、まだ眠りについていなかった

 

「姉妹かぁ……」

 

夕食時の愛紗達のやり取りを見て、朱里は昔の事を思い出していた

 

「私にだって、家族が離れ離れになる前は、お姉ちゃんと…妹が…………」

 

眠りに落ちた朱里。その瞳からは、一筋の温かい雫が頬に流れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「今日も楽しく山歩き~」

 

一行は山道を歩いていた

 

「お弁当ないけど山歩き~クマが出たって山歩き~」

 

楽しく歌を歌う鈴々

 

「…………」

 

「ん?どうした、朱里?久し振りの里帰りだと言うのに、あまり元気がないようだが?」

 

「そ、そんな事ないですよ?」

 

「もしや、桃花村に帰る途中で寄り道させた事を気にしているのか?」

 

「あ、いえ……」

 

「それなら気にする事ない。帰りは急ぐ旅でなし、私も久々に水鏡殿に会いたいしな」

 

申し訳なさそうに苦笑する朱里であった

 

「(いったいどうしたんだろう?うっ…足が)」

 

以前の賊退治で足を痛めた勇作。痛みにより集中が出来ないのだ

 

「(包帯でテーピングもどきをして、痛みは引いているけど、いつまた痛みが来るか)」

 

 

 

そんなコト考えながら歩いていると、辺りがうっすらと霧に包まれてきた

 

「……すっかり、霧に巻かれちゃいましたね」

 

「どんどん、濃くなってくのだ」

 

「うむ、まったくきりがないな」

 

「ぷっ、やだ!面白~い!」

 

「ウケでよかったのだ……」

 

「うむ」

 

愛紗は喜んでいいのかどうか分からず、複雑な心境だった

 

「そういえば、星。前に来た時は霧の中でお主とはぐれてしまったのであったな」

 

「そんな事もあったな」

 

「もうああいうのは、勘弁してくれよ?」

 

「当たり前だ。こっちだって好きではぐれた訳でもない…だいたいあの時は」

 

「(大丈夫かな?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

森を抜けるが

 

「あれ?趙雲さんが……」

 

「え?」

 

星がいなくなっていた

 

「まったく!はぐれるなと言った側から何でまた……」

 

ここで、劉備以外はあることに警戒する

 

「あの、もしかしてこれって……」

 

「どうせ変態仮面になって出てくる前振りなのだ」

 

「うむ、だな」

 

「そうだね」

 

「「「「うんうん」」」」

 

納得する四人

 

「うん?」

 

首をかしげる劉備

 

 

 

「今日もたのしく山歩き、お弁当やいけど山歩き」

 

一行は歩き始めた

 

「あの、本当にいいんですか?趙雲さんを探さなくて……」

 

「どうせ、その内ひょっこり出てくるから、気にすることないのだ」

 

「そういうことだ」

 

「はぁ……」

そうこうしている内に

 

「そんなことよりほら…見えてきたぞ!」

 

朱里の恩師である、水鏡こと司馬徽の屋敷が見えた

 

「……」

 

表情が明るくなる朱里

 

「(嬉しそうだな)」

 

そう勇作が思っていると

 

「…うお!!」

 

足元が崩れ崖に落ちた

 

「「ご、ご主人様!!」」

 

「お兄ちゃん」

 

「痛って~」

 

「大丈夫ですか」

 

「ああ、崖になっているから気を付けて」

 

「はい」

 

四人は下に降りる

 

「大丈夫ですか」

 

「大丈…夫…ぐっ」

 

痛みで顔が苦痛に歪む

 

「どうしました!!」

 

「右足が」

 

「え?」

 

朱里が勇作の右足の裾をめくる

 

「こ、これは」

 

右足首に白い包帯がきつく巻かれていた

 

「これはいったい?」

 

「こ、これは」

 

「そんなことより水鏡殿の屋敷に行こう」

 

「はい」

 

「鈴々がおぶるのだ」

 

「武器は私と劉備殿が」

 

「はい」

 

「わかりました。それと…ゴシュジンサマ」

 

ゾク

 

「は、はい」

 

「コノケガニツイテジックリハナシテクダサイネ」

 

「(え!何…朱里ってこんな怖かったっけ。目に光がないような)」

 

「…ヘンジ」

 

「は、はい!」

 

「愛紗……な、なんだか朱里が怖いのだ」

 

「そ、そうだな」

 

「は、はい」

 

一同は急いで水鏡殿の屋敷に向かうのであった



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第七十八席 勇作、鳳統に出会うのこと

「たのも~なのだ」

 

屋敷の門まで行き、ノックをする鈴々。解錠音と共に、門が開かれた

 

「はわ?」

 

出迎えたのは、一人の少女だった

 

 

「あわわ……」

 

その少女は勇作達を見るなり、屋敷へと走っていき、水鏡のいる家へと入っていった

 

「えっ?武器を持った人達が大勢押し掛けてきた?」

 

少女はコクコクと首を縦に振る。水鏡は部屋を出て、玄関に向かう

 

「まあ!」

 

そして、警戒を解いた

 

「……先生……ん?」

 

少女は物陰からその様子を見る

 

「先生!水鏡先生!!」

 

「朱里……朱里なのね」

 

朱里は水鏡に抱きついた。水鏡も愛弟子と久し振りに会えて歓喜の声を出す

 

「あわ?」

 

その光景に呆気にとられる少女

 

「先生、お久しぶりです!」

 

「ええ、本当に……。でも、来るなら来るで手紙で知らせてくれればいいのに」

 

「すいません。旅の途中で近くを通りかかったら、急に先生に会いたくなって!」

 

「そう……。朱里、大きくなって」

朱里の頭を優しく撫でる

 

「先生」

 

「朱里」

 

微笑ましく眺めている一同

 

「こほんっ、水鏡殿。お久し振りです」

 

気まずそうに愛紗が声をかける。気がついた水鏡は恥ずかしそうに返事をした

 

「ああ、失礼致しました。関羽さん、高杉さん。張飛ちゃんも」

 

「お久し振りなのだ!」

 

「どうも」

 

「初めまして。私は劉備と言います」

 

「我が庵いおりへようこそ。皆さんには朱里がすっかり御世話になってしまって」

 

「いや、世話というほどとは…寧ろ、此方こちらがなにかと助けてもらっているぐらいで」

 

「っ?先生、あの子は?」

 

「ああ、紹介がまだだったわね」

 

朱里が気がついた様で、水鏡に少女の事を尋ねる

 

「あの子は鳳統。あなたと同じ様に、身寄りをなくし、私の所に預けられているの。まあ、あなたの妹弟子と言った所かしら」

 

「(な、なに!!あの子が鳳統だと!!鳳雛と言われた!!)」

 

名前を聞いて驚く勇作

 

「妹…弟子……」

 

表情が明るくなり、朱里は鳳統に近づいて話しかける

 

「よろしくね、鳳統ちゃん」

 

「あわわ……」

 

朱里に話し掛けられるも、魔女帽を目深に被る鳳統

 

「あの子、人見知りが激しくて……」

 

「ヒトミシリって何なのだ?」

 

「遠慮と一緒に、お前が母親の中に忘れてきたものだ」

 

愛紗の答えに、劉備と水鏡は微笑する。鈴々は頭の上に?マークを浮かばせていた

 

「さあ、大したおもてなしは出来ませんが、ゆっくりしていってくださいね……所で」

 

「ん?」

 

「どうして、高杉さんは、張飛ちゃんにおぶられて」

 

「いや、その……実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、ご主人様は…」

 

「もうそのくらいにして」

 

部屋に案内された勇作達はこれまでの事情を話した。勇作を寝床の上に寝かせて、朱里の説教を受けていた。水鏡は足の怪我を診察しながら、朱里を宥めていた

 

「すいません」

 

「もう」

 

「こうしていると、皆さんと初めて会った時のことを思い出しますね」

 

「そうなのだ。あの時は愛紗が怪我をして」

 

「そ、そうだな」

 

そんなコトを話していると

 

「先生」

 

鳳統がやってきた

 

「ありがとう、雛里」

 

「はい」

 

「さあ、これで良いですよ」

 

「ありがとうございます」

 

「そんなに悪くなかったので2日ほどで良くなりますよ」

 

「はい」

 

「………」

 

「君もありがとね」

 

「……」

 

「雛里?」

 

鳳統に反応がなく、勇作を見ていた

 

「……」

 

「(それにしても)」

 

ピタ

 

「ひう!」

 

勇作は右手で鳳統の右ほっぺを触り、顔を近づける

 

「(俺の知っている鳳統は醜男だと言われていたけど、ぜんぜんそんなことないほど、かわいい女の子なんだよね)」

 

「あわわ」

 

「(董卓ほどじゃないけど、驚いたな…………………あ)」

 

勇作は今の状況を思い出し、咄嗟に手を離す

 

「ご、ごめん」

 

「あわわ」

 

顔真っ赤にして、部屋を出て行った

 

「(やばいことした)」

 

「「ご・主・人・様!!」」

 

「ひっ!」

 

視線を向けると愛紗と朱里が笑っていた。しかし尋常じゃない雰囲気を醸し出していた

 

「貴方はいったい何をしてるのですか」

 

「…ソウデスネ。ホントゴシュジンサマハ」

 

「いや、二人とも」

 

「正座」

 

「いや、俺今怪我を」

 

「セイザ」

 

「…ハイ」

 

勇作は二人から説教されるのであった。他の人は巻き込まれないように速攻で部屋を脱出したのだった

 

 

 

そしてその鳳統はというと

 

「あわわ、男の人に触られちゃった。いやなはずなのに、全然そんなこと思わないし。それにあんなカッコいい人初めて見ちゃった、目があった瞬間に変な感情が…あわわ」

 

顔を真っ赤にしながらこんなこと言っているのであった。勇作に一目ぼれしてしまった鳳統なのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

 

「張り切っているわね。朱里」

 

「ここでお料理するのが懐かしくて」

 

エプロンを着けた朱里。横では給仕姿の水鏡と、同じくエプロン姿の鳳統が夕食の支度をしていた

 

「そういえば、あなたがここにいた時は、よく二人でお台所に立ったものね」

 

「先生には、たくさんお料理を教えてもらって」

 

「朱里がこんなにお料理が出来るようになるとは、正直思ってもいなかったわ」

 

「えっ!そうなんですか?」

 

「だって、最初のころは、かまどに火を点けるのも怖がって」

 

「いやだ。それは本当に小っちゃい頃の事じゃないですか…もう…」

 

楽しく談笑している水鏡と朱里

 

「…………」

 

その光景に鳳統の表情を暗くした

 

「それじゃあ、みんなでお夕飯を作りましょう」

 

「はい♪」

 

「あ、はい……」

 

夕食の準備に取りかかる三人。鳳統は包丁で人参の皮を剥くのに手間取っていた

 

「あっ、駄目だよ鳳統ちゃん。包丁の持ち方、それじゃあ危ないよ」

 

「あっ……」

 

「これは、私がやるから」

 

鳳統は、野菜を洗う事にした

 

「朱里、ちょっと味を見てちょうだい」

 

「はい」

 

「む~」

 

「どうかしら?」

 

「そうですね。もう少しお塩を足した方がいいですね」

 

「そう、じゃあお塩を取って頂戴」

 

「はい」

 

「……」

 

鳳統はその様子を横目で寂しく見ていた

 

 

「本当、美味しい」

 

支度を終え、勇作達は夕食を楽しんでいた

 

「朱里のちゃんとした料理を食べるのは久しぶりだけど、また料理の腕が上がったみたいなのだ」

 

「ふふ」

 

「鈴々の方はどうなんだ?おむすびとおにぎり以外も作れるようになったのか?」

 

「卵かけご飯とお茶漬けも作れるようになったから、料理の腕前急上昇なのだ」

 

「まあ」

 

「(だから、料理じゃないからね)」

 

「…ん?」

 

朱里が鳳統を見ると、鳳統は目を反らす

 

「けど、そうやってると、孔明ちゃんと水鏡先生さんって、なんか本当の親子みたいですね」

 

劉備の言葉に二人は視線を合わせた後、笑った

 

「……」

 

しかし鳳統はむっとして表情になっていた

 

 

「………」

 

勇作はその様子をじっと見るのであった




新作、余命一か月の北郷一刀のリクエスト受付中です

活動報告の方に、それについて書かれています

リクエストのほどよろしくお願いします


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第七十九席 朱里、鳳統と薬草を摘みに行くのこと

お久しぶりです

遅れてしまい、申し訳ありません

「余命一ヶ月の北郷一刀」は一週間以内には投稿するようにします

では、どうぞ


夕食を終え、風呂の時間となった

 

「先生〜!お風呂空きましたよ〜」

 

客間の方では、劉備が懲りずに剥いた蜜柑を愛紗に食べさせようもしていた

 

「はい、あ~~ん」

 

「りゅ、劉備殿…それはもう」

 

「もう、まだ劉備殿なんて…ちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さい」

 

「だから」

 

「愛紗お姉ちゃんは鈴々にあ~~んなのだ」

 

「おいおい」

 

「皆さんの寝台は客室に御用意致しましたから、そちらで休んで下さいね」

 

「かたじけない」

 

「ありがとうございます」

 

「朱里、あなたのお部屋…今はこの子が使っているの。だから、今夜はそこで二人で寝て頂戴ね?」

 

「はい」

 

朱里は快く引き受けてくれた。しかし、鳳統は水鏡の服の裾を握る

 

「えっ?なぁに?どうしたの?」

 

「嫌…知らない子と一緒に寝るの、いや……」

 

「えっ……?」

 

静かに駄々をこねる鳳統

 

「……しょうがないわね。それじゃあ、今夜は私と一緒に寝ましょうか?」

 

鳳統は嬉しそうにコクコクと頷いた。それを見ていた朱里は、どこか残念そうに顔を暗くしていた

 

「……あら、高杉さん」

 

水鏡が廊下の方を見ると、勇作がいた

 

「どうも」

 

「貴方、部屋に居たはずでは」

 

「ちょっと、厠に行きたかったんで」

 

「そのために片足で、ここまで」

 

「なんともないですよ。それに良い訓練にもなりますし」

 

「はあ」

 

「じゃあ、俺は行くんで」

 

「けど、まだ遠いですよ」

 

「…なら鈴々がおぶるのだ」

 

「えっ、いや、でも」

 

「気にするななのだ」

 

「その」

 

勇作が困惑していると

 

「…あの…これを」

 

鳳統が何かを持ってきた

 

「使ってください」

 

「あれ、これって」

 

それは木造の車いすであった

 

「それは私が作った」

 

「そういうばそれがあったな」

 

勇作は車いすに座る

 

「ふう、楽になった」

 

「じゃあ、連れて行きます」

 

「え?いや」

 

鳳統はそのまま勇作を押して連れて行った

 

 

「(あの子が、あんなことするなんて、珍しいわね)」

 

 

 

 

 

 

それぞれが寝台に入り、朱里もかつて過ごしていた部屋で寝ていた

 

「(この部屋で寝るのも久し振り……あの頃と同じ布団……あの頃と同じ枕……)」

 

そう感慨に耽っていると

 

「(私の髪とちょっと違う匂い。そっか……今はこの部屋、鳳統ちゃんの部屋なんだ……)」

 

鳳統の言葉を思いだし、表情を寂しく染める朱里。

 

「明日は…仲良くなれるといいなぁ……」

 

朱里は眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「う〜ん、ポカポカして絶好のお昼寝日和なのだ」

 

鈴々は物置小屋の藁でできた屋根に寝そべっていた

 

「張飛ちゃん!」

 

「なんなのだ?」

 

「そんな所でお昼寝してたら危ないですよ~?」

 

「って言われても、なんとかと煙は高い所が好きだからしょうがないのだ」

 

「なんとかって……」

 

「はあ」

 

劉備は苦笑い、愛紗はため息をついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、お昼もいっぱい食べてくれましたね」

 

「そうね」

 

水鏡と朱里は、台所で食器を洗っていた。すると、水鏡の服の袖を小さく引っ張る鳳統。背中には、竹で編んだ籠があった

 

「ん?どうしたの?」

 

「先生、今日……」

 

「ああ……そういえば、今日は一緒に薬草を摘みに行く約束してたんだったわね」

 

鳳統はコクコクと頷いた

 

「う〜ん……でも、今日はお客さんが来てるから、それはまた今度に……」

 

「………でも……約束……」

 

「そうね……確かに約束したわね。けど、いい子だから、聞き分けて頂戴。ね?」

 

鳳統は更に顔を俯かせ、悲しい表情を見せる

 

「あの、先生」

 

「ん?」

 

「よかったら、先生の代わりに私が一緒に行きましょうか?」

 

「っ!」

 

「そうしてもらえると、助かるけど……」

 

「いつも薬草を摘みに行っていた山、私も久しぶりに行ってみたいですし」

 

「……それじゃあ、お願いするわね」

 

「はい!よろしくね、鳳統ちゃん」

 

水鏡からの頼みを聞き、朱里は鳳統に明るく声をかける。しかし、鳳統は朱里と顔を合わさず、水鏡の服の袖を握ったままであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~前来た時と少しも変わってない!」

 

朱里は懐かしく感じ、目を輝かせている

 

「ほら鳳統ちゃん、これが肩こりに効く安芽流草。それで、こっちが胸やけに効く班白草これが便秘に効く後楽草」

 

薬草の解説をしながら、朱里は鳳統の方を振り向く。しかし、鳳統は彼女から距離を置き、一人で採集を行う。朱里は一人、寂しい表情を浮かべる

 

「鳳統ちゃん、薬草見つかった?」

 

そんなこんなで、採集は夕方まで行ったが、二人の距離は一向に縮まらなかった

 

「……」

 

朱里の籠には、中身が溢れる程の薬草が摘んであったが、鳳統の籠は、まだ半分も入っていなかった

 

「……」

 

黙々と薬草摘みを行う鳳統

 

「し、しょうがないよね……。鳳統ちゃんは、まだこの山の事をあまり知らないから……」

 

「…………」

 

「あっ、そうだ!もし良かったら、私の摘んだ薬草を分けてあげる」

 

籠を両手で持って近づく

 

「あ!!」

 

鳳統は前触れもなく立ち上がった。その拍子、朱里にぶつかって、彼女の籠が地面に落ちてしまった

 

「あっ……」

鳳統は表情を暗くした。朱里は謝りながら、薬草を拾い集める

 

「ご、ごめんなさい!私…ただ鳳統ちゃんとお友達になりたくて……だから」

 

「私はお友達になんかなりたくない……」

 

「えっ?」

 

「嫌い……嫌い……大嫌い!」

 

そう叫ぶと、どこかへ走っていった

 

「あっ、待って!」



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第八十席 朱里、鳳統と真名を交換するのこと

遅れてしまいすいません

では、どうぞ


鳳統が橋に着くと、後ろから朱里が追いかけてきた

 

「鳳統ちゃん!待ってぇ!」

 

朱里は自分と鳳統の分の籠を持って走っている。しかし鳳統は構わず、橋を渡ろうとする

 

「きゃっ!」

 

「っ!」

 

悲鳴の方を向くと、朱里が地面に倒れていた。走る最中に転んでしまったようだ。鳳統も、足を止めた

 

「待って鳳統ちゃん!私に悪い所があるなら謝るから!」

 

「いや……来ないで……!」

 

鳳統は後ろ歩きで下がる。が折れてしまっている足場に落ちた

 

「っ!?」

 

「鳳統ちゃん!」

 

足場が無くなったものの、鳳統は間一髪の所で、縄で出来た手すりの下部分に掴まっている

 

「うっ、ぅぅ……!」

 

「鳳統ちゃん!動いちゃだめ!すぐに助けに行くから、じっとして!」

 

必死で手すりにしがみつく鳳統。朱里は大声で叫ぶと、助けに向かう

 

「こ、怖くない怖くない……高い所なんて、全然怖くない!」

危険に晒されている鳳統を助ける為に、意を決して渡り始める

 

「待ってて……もうすぐ……はわわっ!」

 

この高さから落ちたらひとたまりもないだろう、という恐怖にも負けず、朱里はゆっくりと、確実に近づいていく。そして、ようやく鳳統の元へと辿り着いた朱里

 

「はぁ……も、もう大丈夫よ…さあ、捕まって」

 

手すりに掴まりながら、鳳統に手を伸ばし、彼女の体を掴む。そして引き上げることに成功した

 

「よかったぁ……鳳統ちゃん、本当によかったぁ!」

 

「孔明ちゃん……」

 

鳳統の安否を確認し、半泣きで安堵する朱里。彼女に抱き締められている鳳統は複雑な表情でいた

 

 

 

 

 

 

 

 

それから安全な場所まで避難し、薬草を摘める為の籠を置いて、腰を下ろす

 

「私、先生の所に来るまで何軒も何軒も親戚の間をたらい回しにされていたの」

鳳統が身の内を語り始めた

 

「けど、自分のこともちゃんと出来ないから、どこでも邪魔者扱いされて……でも、でもそんな私に初めて優しくしてくれたのが水鏡先生だったから何か本当のお母さんみたいで」

 

水鏡先生の事を話している時は明るい表情をした

 

「孔明ちゃんの事は先生から良く聞いていた。とてもいい子でお勉強もよくできるって…だから、本当は仲良くしたかった」

 

自身の本音を語る

 

「書物の事とか薬草の事とか、色々教えてほしいと思ってた。でも、でも、孔明ちゃんと先生が仲良くしてるのを見たら、先生をとられちゃう様な気がして、そしたらここがギュウッて苦しくなって、気持ちがトゲトゲしてきて、あんな……あんな意地悪するつもりはなかったのに……なのに私」

 

「鳳統ちゃん……私全然怒ったりなんかしてないよ?ううん、寧ろ鳳統ちゃんがそんなに先生の事を好きでいてくれて、嬉しいくらい」

優しく微笑みながら、鳳統に心の内を語る朱里

 

「私、先生の事大好き。そして、鳳統ちゃんも先生の事が大好き。だから私達、仲間だね」

 

「孔明ちゃん……うん」

鳳統は微かな嬉し涙と共に、可愛らしく微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

空はすっかり茜色に染まり、帰路を歩いていた。その最中、朱里の服の手を掴み、足を止める鳳統

 

「どうしたの?」

 

「鳳統ちゃん?」

 

「雛里……私の真名……」

 

「それじゃあ……」

 

「お友達だから……雛里でいい」

 

「……うん!」

 

二人は真名を預けあった

 

「ねえ、一つ聞いて良い」

 

「何?」

 

「その、ご主人様って呼んでいる人の事について」

 

「ご主人様って高杉さんの事?」

 

「うん」

 

「高杉さんは天の御使いで、私の知っている限りじゃあ、一番強い人だよ」

 

「好きなの」

 

「えっ!!な、何を言って」

 

「やっぱり好きなんだね」

 

「はわわ……けど何でご主人様のことを」

 

「私、好きになっちゃたの」

 

「好きになったって、それって」

 

「うん、一目ぼれしちゃった」

 

「はわわ!!!!」

 

衝撃発言に驚く朱里であった

 

 

 

 

 

翌日、勇作の怪我も治り、別れの時となった

 

「本当にお世話になりました」

 

「いえいえ、また来てくださいね」

 

「はい」

 

「水鏡先生、ありがとうございました」

勇作は御礼を言う

 

「御礼なら雛里に言ってください。ほとんど雛里が世話をしたのですから」

 

「そうですね」

 

勇作は鳳統の目線に合わせるように片膝を付けて姿勢を下げる

 

「ありがとう、鳳統殿」

 

「雛里」

 

「はい?」

 

「雛里っと呼んでください」

 

「いや、それ…真名じゃあ」

 

「呼んでください」

 

「…わかった。ありがとう雛里」

 

「……」

 

ダキ

 

「ちょっ!!」

 

「「「なっ!!」」」

 

雛里は勇作に抱きついた。勇作の首に腕を回して

 

「……」

 

「あの…雛里さん」

 

ギュー

 

「……」

 

「雛里さん」

 

「!!あわわ!!」

 

我に返ったのか、雛里は顔を真っ赤にして水鏡先生の後ろに隠れた

 

「あらあら、大胆ね」

 

「……」

 

「「ご主人様!!」」

 

「はい!」

 

愛紗と朱里に拘束される勇作

 

「ちょっとこちらに来てください」

 

「いや、でも」

 

「言い訳無用!!」

 

そして朱里は別れの言葉を告げた

 

「さようなら朱里ちゃん、気を付けてね!」

 

「雛里ちゃ〜ん!またね!さようなら」

 

「きっとまた会いに来てね!絶対絶対来てね!」

 

「きっときっと来るよ!雛里ちゃん!」

 

こうして一行は、桃花村へと歩を進めていった。勇作を引っ張り歩きながら

 

「(俺は悪くないよね!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、張三姉妹の舞台ドーム。そこは重い空気が流れていた。歌を披露している三人を囲む数人の兵達。二又の長柄を持っており、役所の者も来ていた

 

「途中で舞台を中止しろって、どういう事なんですか!?」

 

「どうもこうも中止は中止だ。こうした大きな催しをする時は、役所に届け出て許可をもらわんとな」

 

「で、でも、公共主はちゃんと許可は取ったって……」

 

「さぁて、儂はそんな話、聞いておらんがなぁ?」

 

「な、そんな……!」

 

「お願いします!せめて今回だけでも、舞台やらせて下さい!」

 

「皆は、私達の舞台を楽しみにしてくれてるんです!」

 

三人に続く様に、観客席のファンも、猛抗議を行っている

 

「ふぅむ……そういう事ならなんとかしてやりたいが……分かるだろう?魚心あれば水心もし、手元に金がないというのなら」

 

男は厭らしく告げると、張梁の肩を抱き、胸を触り始めた

 

「儂は他の物でもいいけどなぁ……」

 

「っ!」

 

「あっ、こらぁ!!」

 

「レンたんに汚い手で触るなぁ!」

 

舞台に乗り込んでくる観客達を、兵士達がすかさず二又で取り押さえる

 

「ちょっと、乱暴はやめてっ!」

 

張角の声は届かず、会場内は混乱していた。この光景を見ていた張宝は、歯を軋ませ、怒りで肩を震わせる

 

「許せない……!」

 

大切な舞台を滅茶苦茶にされ、張宝は怒りに燃えた。マイクに妖気を注ぎ込み、思いの丈を叫んだ

 

 

 

「みんなお願い!薄汚い役人をやっつけてぇぇぇぇぇ!!」

 

その叫びは会場内に響き渡り、観客全員の耳に入った

 

「な、なんだこれは…いったい何が」

 

突然の変わり様に戸惑いを見せる役人とその兵士達。何かにとり憑かれたかの様に殺気を感じさせる観客達。その会場から、役人達の悲鳴が止まなかった



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第八十一席 張三姉妹、決断するのこと

三人はこの街の役所にいた。しかし、役所内は非常に荒れており、強盗が押し掛けた後の様な惨事であった

 

「あぁ~んもう!なんでこんなことになっちゃったのよ~!」

張角は仕事台である机の上に上半身を預け、思いの丈をこぼす。傍らには妹である張宝と張梁の二人

 

「なんでって、それは……」

 

「ちょっ、あたしのせいだって言うの!?」

 

「だってそうじゃない。ちい姉さんが役人をやっつけろなんて言うからこんな事に……」

 

「私だって、まさか、ああ言ったら皆が役所にまでなだれ込んで、この街の役人全部追い払っちゃうなんて思ってなかったわよ……」

 

「だから、お願いする時はもっとちゃんと言わなきゃ駄目だったのよ!ちい姉さんそういう所ホント大雑把なんだから」

 

「な、何でも私のせいにしないでよ!皆が役人をやっつけた時、二人だって「いいぞやっちゃえ~」とか言ってたじゃない!」

 

「二人共、喧嘩してる場合じゃないよ!私達もうお尋ね者なんだよ?捕まったらきっと、牢屋に入れられちゃうよ……」

 

「牢屋で済めばいいけど……」

 

「えっ?それってどういう」

 

「つまり」

張宝が右手で自分の首を切る様にスライドさせる

 

「ど、どどどどうしたらいいの!?お姉ちゃんヤダよ!この歳でお星さまになっちゃうなんて~!」

 

張梁の肩を揺さぶる張角。若干苛立ちを出しながら、張梁は姉を押し退ける

 

「一番簡単なのは、このまま私達だけ逃げちゃう事だけど……」

 

「それいい」

 

「よくな~~い!」

 

「でも、三人ならうまくすればほとぼりが冷めるまでどこかに隠れていられるかも」

 

「駄目よそんなの!みんな私達のせいで、こうなっちゃったんだよ?見捨てるなんてできないよ!」

 

「けど……じゃあどうすれば」

 

「どうすればって、お姉ちゃんに聞かないでよ~!お姉ちゃん、自分で考えてうまくいった事が生まれてこのかた一度もないんだから……」

 

「ああもう!分かったわよ!何とかすればいいんでしょ!何とかすれば!」

 

「で…どうするつもり?」

 

「こうなったら、もう徹底的にやってやるのよ!これから毎日舞台をやって、どんどん仲間を増やすの!一万、二万、ううん、もっとよ!人数が十万、二十万になったら、きっと官軍だってビビって手出し出来なくなるわ!」

 

「ちいちゃん、なに言って」

 

「それ悪くないかも……」

 

「えっ?」

 

「西方の漢中という所には五斗米道という教団があって、そこの信者は数万を越えていて、領主も手出しが出来ないって聞いたことがあるわ。私達も人数を増やして、どこか落ち着ける所を見つけられれば……もしかして……!」

 

「…っ……」

 

「やろう!」

 

「天和姉さん!」

 

張角に差し出された二つの手。見上げれば妹達の顔がこちらを見つめている

 

「ぅ……うん……」

 

半ば流される様に、同意するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い闇の空間。その部屋に用意されている椅子に腰かけている一人の男。大きめの円形の机に置いてある水晶。男は、そこから映し出された三姉妹の様子を観察していた

 

「ふむ、あの三人……。追い詰められて、漸くその気になった様ですね。やっと太平要術の効果が出てきましたか……」

 

水晶を眺めながら冷徹な笑みをこぼした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ここは桃花村。この村にある庄屋の屋敷にて

 

「はい、どうも~、西涼の馬騰が一子、馬超の従妹の馬岱です……今日も今日とて皆さんお待ちかねの寝起き拝見の時間がやって参りました」

 

「わぁ~」

パチパチと小さく拍手する璃々ちゃん

 

「しぃ~!」

 

馬岱が静かにするよう促すと、早速部屋に入っていく手にはマイク代わりのレンゲをもっていた

「抜き足、差し足、忍び足、抜き足、差し足、忍び足、抜き足、差し足、忍び足」

 

二人は部屋の主で翠が寝ている寝台に近づいてきた

 

「よく寝てますね~」

 

「う~ん……もう食べられないよ~……」

 

「うわぁベタです……ベタ過ぎて突っ込む気が起きない寝言です」

 

翠の寝言に少し引いている二人

 

「まあ、それはさておき、相変わらず寝相が悪いですねぇ。西涼にいた頃から全く成長していません。一方こちらは、日々成長しているようですが……」

 

馬岱は翠の胸の部分をずらし、彼女の豊満な胸を観察する

 

「璃々ちゃんのお母さん程ではないですが、結構なバインバインです……!いやぁ、寝る子は育つと言いますが、ちょっと育ち過ぎじゃないでしょうか?」

 

馬岱は自分の胸を触る

 

「こういうおっぱい格差が多くの悲劇を生んでいる事に早く気づいてほしいものです」

 

「うん」

 

「さぁ気を取り直して、お次は恒例のお漏らし確認ですが、緊張の一瞬です……」

 

「ワクワク……」

 

毛布を外すと、璃々と一緒にクンクンと匂いを嗅ぐ

 

「どうやら、今朝は漏らしていないようです……」

 

二人は安堵の息を洩らした

 

「昨晩、風呂上がりに水菓子を一杯食べていたので、どうなる事かと思いましたが、おやぁ?璃々ちゃん、それどうしたんですか?」

 

璃々が小筆を握っているのに気づく

 

「えへっ」

 

「困りましたねぇ……こんなものが用意してあると、その気はなくとも……何か描きたくなっちゃうじゃないですか」

 

頭に指を指し、トンチのように考える

 

「う~~ん、何て、書こ………やっぱこれかな?」

 

思い付いた途端、馬岱は筆を走らせる

 

「何て読むの……?」

 

「後で教えてあげる」

 

二人はこそこそと部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた翠は、部屋から出ると、下の階に降りていく

 

「あら、翠ちゃんおは」

 

廊下を渡る途中で、黄忠こと紫苑と出会う。紫苑は言葉をとぎらせ、口元を手で押さえて、笑いを堪えている

 

「す、翠ちゃん……朝御飯の用意できてるから、顔……ぷっ、早く洗ってらっしゃい……くすっ」

 

紫苑はそう言うと、笑いで肩を震わせながら去って行った。翠は訳が分からないまま、厠へと向かった。

 

「ふぅ~スッキリした」

 

翠は洗面台に顔を覗かせる

 

「うっ!!」

 

翠は驚き、もう一度洗面台に顔を覗かせる

 

「……脳…筋……?」

 

翠の左右の頬にそれぞれ一文字ずつ書かれていたであった



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第八十二席 馬岱、修行するのこと

居間にて、朝食を味わう一同

 

「……」

 

「……」

 

馬岱は気まずそうに横目で様子を窺う。対して翠はいかにも不機嫌なオーラを出しており、しかめっ面を通している

 

「ご、ごちそうさまぁ!」

 

「たんぽぽ」

 

「ギクッ!?」

 

「まったく……脳筋ってどういう意味だよ、脳筋って」

 

「の、脳筋っていうのは、脳みそ筋肉の略で」

 

机を強く叩くと、翠は椅子から立ち上がった

 

「そういう事を言ってるんじゃない!」

 

「てへ」

 

「たんぽぽ、お前が西涼から出てきて修行したいって言うから、ここにおいてやってるのに、毎日毎日イタズラばっかして…………。今度こんな事したら西涼に強制送還だからな!!」

 

「えぇ~~!?」

 

「まあまあ、翠ちゃん。そんなに怒らないで。馬岱ちゃんはうちの璃々とも遊んでくれてるし……時々はお手伝いだって」

 

「だからって、あんなイタズラは……」

 

「……ぷっ!」

 

紫苑は今朝の事を思い出してまた笑いが込み上げる

 

「そ、そうね……今朝のはちょっとアレだったけど。でもほら、悪気はないんだし……ね?」

 

「そうそう、罪のないイタズラなんだから大目に見なきゃ」

 

「ってお前が言うな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃花村から少し離れた場所にある裏山。翠と馬岱の二人は、そこで修行を行っていた

 

「よしっ!それじゃあ、今日も特訓始めるぞ!」

 

「ほいっ!」

 

「まずは…兎飛び」

 

おもりを付けて行うが途中でこける馬岱

 

「腹筋」

 

木の枝に足でぶら下がり、上半身を起き上がらせる。翠はすいすいやるがタンポポは途中で木から落ちる

 

「腕立て」

 

翠が上に乗り、タンポポが腕立てを行うが動けない

 

「素振り」

 

木の棒での素振りをする二人

 

「ハイハイハイハイ!」

 

なぜかコサックダンスをする二人

 

「ぜぇ…はぁ…はぁ」

 

馬岱は息を荒くしながら、地面に寝転ぶ

 

 

「準備運動はこんくらいかな……じゃあ本番行くぞ!」

 

「はぁ~~い」

 

 

 

 

着た場所が

 

 

 

 

「………………えっと、一つ聞いていいかな?いったいここ、どこ?」

 

馬岱が指差す下の場所には、激しい渦潮が発生している湖があった

 

「いいか?激しい渦の回転に耐える事で、どんな動きにも対応できる身体能力を養うんだ。危なくなったら引き上げてやるから、心置きなく行ってこい」

 

用意した縄は、馬岱の腰にしっかりと巻き付いている

 

「いや、だからここは一体どこか」

 

「そらっ」

 

蹴飛ばして馬岱を渦の中に入れる翠

 

「うわあああああ!!」

 

 

渦の中でぐるぐる回る馬岱

 

 

「だから、ここ、何処なの~~~~~~~~!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに別の場所

 

 

「…………ええと、もっかい聞いていいかな?」

 

「ん?」

 

「いったい!ここ、どこぉぉぉぉぉ!!?」

 

場所は分からないが、火山口に二人はいた

 

「次の特訓は、こうやって」

 

「えっ!!」

 

「逆立ちして、この周りを十周だ」

 

「ええっ、わざわざこんな所で?それに…………」

 

「どうした?早くやってみろ。逆立ち歩きは得意だろ?」

 

「たんぽぽは別にいいんだけど、姉様その格好だと、丸見えだよ?」

 

「えっ?」

 

翠はミニスカートを穿いているので、見えるのだ

 

「にししし」

 

「い、いいからさっさとやれ!!」

 

「は、はいっ!」

 

馬岱も逆立ち歩きを始めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数の林に挟まれた、数十段はある石段の先に、紫苑が弓を構えていた。馬岱は、木の棒を手に構え、右横には、的が置いてあった。その様子はまさに野球そのものであった

 

「いきますわよ」

 

「っ!」

 

紫苑は矢を手に取り、弦を強く引いた。馬岱も気を引き締める

 

「っ!」

 

紫苑は狙いを定めた後、矢を放った

 

「どっこいっ!」

 

が当たらす、的である丸太に深々と突き刺さる

 

 

「目を反らすな、タンポポ!」

 

「はぁ……はぁ……!」

 

木の棒で体を支える馬岱

 

「どんなに速くても、ちゃんと目を開いて見てさえいれば、動きは捉えられる」

 

翠からの助言を受け、馬岱は再び立ち上がる

 

「いきますわよ」

 

 

 

 

紫苑は弓矢を構え、対して馬岱も木の棒を構える。放たれた矢は的へと向かっていく。

 

 

「うぉぉりゃあっ!!」

 

的の丸太にまた刺さるが、棒にかすらせる事が出来た

 

「それじゃあ駄目だ!もっと真芯で捉えろ!」

 

馬岱はめげずにバットを構える

 

 

「……」

 

三度放たれた矢。馬岱は片膝を着き、そのまま振り抜いた。

 

「うぉぉぉりゃあああああ!!」

 

棒の真芯に捉え、矢は棒の芯に突き刺さった

 

「よしっ……!」

 

翠は笑みを浮かべる

 

「も、もう、駄目……」

 

限界が来たのか、馬岱は息を切らしながら地面に寝転ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の鍛練を終え、翠と馬岱は、屋敷の居間で休憩していた

 

「昼飯はちゃんと食っとけよ!」

 

昼食を食べ終えると、翠は立ち上がる

 

「さあって、少し休んだら特訓の続きやるか!」

 

「えぇ~、もうヤダ!疲れたよ~~」

 

「何いってんだ。お前修行の為に西涼出てきたんだろ?こんな程度で音ねを上げてちゃ駄目じゃないか……そもそも武術というものは日々の鍛練が大切で、どんなに辛くてもそれを我慢して修行し続けて、初めて身に付くものなんだ」

 

「……鍛練だの我慢だのって言われても、おしっこ一つ我慢出来ないお漏らしっ子のお姉様に言われても説得力ないんですけどぉ?」

 

「だ、誰がお漏らしっ子だ!お漏らししてたのは子供の頃の事だろ!?」

 

翠は顔を赤くして否定する

 

「へぇ、じゃあ今はちゃんと我慢出来るんだ?」

 

「当たり前だ!」

 

「なら証拠見せてよ」

 

「あっ?証拠?」

 

台所に移動した二人。その間にある大きな水瓶。高さは翠の腰までで、中には、大量の水が入っていた

 

「この水ぜぇんぶ飲んで、そうだな……晩ごはんの時までおしっこ我慢できたら、もうお漏らしっ子じゃないって認めてあげる」

 

「ようしっ!」

 

翠はゆっくりとその水を飲み干していく

 

「にひひ」

 

「……ぷはぁっ!これでいいんだな?」

 

「いい?我慢するのは晩ごはんの時までだからね?それまではぜっっったい厠に行っちゃ駄目だよ?」

 

「ああ、分かった」

 

「にひひ、おもらししたら、お姉様がご主人様って言っている人はどう思うのかな」

 

「な、なな何言ってんだよ!!」

 

「嫌いなったりして」

 

「そんなわけないだろう!!そんな…わけ…」

 

「まあ、それまで楽しみにしているよ」

 

「ううう」

 

「私も早くご主人様に会いたいし」

 

「随分と楽しみだな」

 

「だって、お姉様がまったく敵わないぐらい強いんでしょ。それにお姉様その人こと好きみたいだし」

 

「な、何言ってんだよ!!」

 

「にひひ」

 

「たんぽぽ!!」

 

「(お姉さまもそうだけど、璃々ちゃんのお母さんもその人のこと好きみたいだし、これはこれで楽しみだね。早く帰ってこないかな…ご主人様!)」



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第八十三席 馬超、尿意をこらえんとするのこと

「はぁ……。まったく、なぁにがお漏らしっ子だ。この年になって、おしっこ位我慢出来ない訳ないだろ」

 

自室に戻り、寝台に体を投げる翠

 

「………………う~ん……」

 

だが、もぞもぞし始め

 

「(ま、まずいな……我慢しようと意識すればするほどしたくなってくる……)」

 

尿意が徐々に込み上げてきたのだ

 

「よ、よしっ!ここは一つ本でも読んで気を紛らわせるか!」

 

本を開く翠

 

「咲いた、咲いた、桃が咲いた。進め、進め、漢軍進め。空が蒼い、蒼天…青……だあ!こんなんで気が紛れるかっつうの!」

 

本を投げる

 

「そうだ!汗をかいて、体内の水分を排出すればいいんじゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中庭の鍛練場

 

 

 

 

 

 

「ていっ!やあっ!ふんっ!だあ!」

 

一人稽古をする

 

「ふぅ、これだけ汗をかけば……だ、駄目か……つうか、なんか逆効果だったかも……!」

 

 

 

 

 

 

翠は厠へと向かっていった。厠の前まで行くと、左右を確認した後に扉に手を置く

 

「たんぽぽはいない」

 

「ここにいるぞ!!」

 

扉を開いた瞬間、中に馬岱がいた

 

「いっ!?」

 

急いで閉めると、その場を後にした。

 

 

 

 

「くそぉ、たんぽぽのやつ……!こうなったら裏の山で…でもさすがにそれは…けど旅している時はやむ無く茂みの中ってこともあったし…いやいや待て待て」

 

悩んでいるが

 

「っ!!ってためらっている場合じゃ、無くなってきたよ、おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏山の森の茂みに身を隠す翠

 

 

「よしっ、ここなら大丈…」

 

「姉様~?」

ひょいっと顔を出した馬岱

 

「どわっ!?」

 

「こんな所で何してるの~?」

 

「い、いや、その……。あっ!なんか空飛んでたらびっくりするようなもんが飛んでるぅ!?」

 

「えっ?」

 

「(今だ!)」

 

「あっ、姉様!」

 

翠は馬岱から逃走する。対する馬岱は追跡を開始する

 

 

「(こっちの行動はお見通しか……たんぽぽの奴、こっちに来てすぐの頃は全然あたしについて来れなかったのに……どうやら特訓の成果が出てきたみたいだな)」

 

感慨に耽っていると、タイミングの悪い事に尿意が迫ってきた

 

「って、そんな事、感心してる場合じゃないんだってば!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方になり、翠はおぼつかない足取りで、近くの木にもたれかかる

 

 

 

 

 

「や、やばい……そろそろ限界がぁ……!さっきたんぽぽが転んだ隙にちょっとは距離を広げたけど、このままだといずれ追いつかれる。そうなったら」

 

 

その後の事を想像する

 

『あ~!!姉様!お漏らしした!!にししし』

 

 

頭を横に振り、その想像を消す翠

 

「(ここまでなのか……?あたしはこのまま、西涼一のお漏らしっ子として末代まで語り継がれてしまうのか……!?)」

 

諦めかけようとした時

 

「いや、まだだ!!」

 

ドスン!!

 

近くにあった木に拳をぶつけた翠。ぶつけた場所が少し陥没している

 

「まだ何か手はある筈!諦めるな……諦めたらそこで終わりだ!うん~と何か方法が…!!」

 

地団駄を踏む中、森の側を流れている川を目にした

 

 

「そうだ!木を隠すなら森、尿を隠すなら水の中だぁ!!」

 

翠は思い立ち、川に飛び込んでいった。下流に何匹が魚がいたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり夕方になった時、こと無きえた翠は馬岱と歩いていた

 

「いやぁ、参った参った!あんな所で足を滑らすなんてなぁ!おかげで川に落ちてずぶ濡れだよ。あはは」

 

翠が誤魔化し半分で喋っている中、馬岱はジト~っと見つめていた

 

「ん?」

 

すると馬岱は何かに気付いた

 

「ん?あれは……」

 

翠は見つけた瞬間、大声で叫んだ。

 

「っ!みんなぁ!!」

 

「翠!」

 

「鈴々!」

 

「翠!」

 

「鈴々!」

 

鈴々は翠の元へと駆けつける

 

「帰ってきてたのか!」

 

「帰ってきたのだ」

 

抱き合う二人

 

「どうしたのだ?ずぶ濡れで」

 

「い、いやぁその、色々あって……水浴びを」

 

「服着たままで?」

 

「う、うん」

 

「冬なのに?」

 

「いいだろう!別に」

 

その様子を見て笑う馬岱

 

「翠」

 

「ご主人様!」

 

「その子は誰?」

 

勇作が馬岱に指を指す

 

「ああ、こいつは馬岱。あたしの従妹だ」

 

「(え!!この子が馬岱!!)」

 

「初めまして、西涼の馬騰が一子、馬超の従妹の馬岱です!」

 

「よろしく、馬岱」

 

「たんぽぽで良いよ」

 

「けど、それ」

 

「呼んで、良いよ。ご主人様」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、皆は屋敷の中にいた

 

 

「ほう。それでは武者修行をするため、西涼から翠を訪ねてきたのか」

 

「はい!姉様みたいになりたくて、毎日頑張って修行してるんです!」

 

「それは感心だな」

 

「うふふ……お姉様」

 

「何だ?」

 

「ご主人様と何処まで進んだの?」

 

「進んだ?」

 

「だから…チューしたり、ご奉仕したりしたのかって…あ!痛!!」

 

「な、何言ってんだよ!!」

 

たんぽぽを殴る翠

 

「何やってるの?」

 

「な、なんでもない、なんでも」

 

すると、紫苑が夕食を持ってきた

 

「はぁい、お待ちどお様」

 

「ほお…川魚の串焼きか」

 

「いい匂いなのだ」

 

「今日の夕方、裏の川で釣ってきたものですから、新鮮さは保証付きですよ」

 

「えっ!?裏の川って、あの、山の麓を流れてる……」

 

翠はビクッ!とし、立ち上がる

 

「ええ、そうだけど?」

 

「そ、そうなんだ……。あの川で釣った魚なんだぁ……?」

 

「「「「「「いただきま~~す!!」」」」」

 

翠以外の全員が川魚の串焼きに手を伸ばしていく

 

「むぐむぐ、おいしいのだ~」

 

「塩加減が絶妙ですね~」

 

「っ!!」

 

「分かりました!お塩変えたんですね?道理で一味違うと」

 

「別に変えてないけど?」

 

「おしゃかなもっと~」

 

「一味、ねぇ…………」

 

「ん?翠、食べないのか?」

 

「あ、あたしはその、今、あんま腹減ってなくて……あ、あははは……!」

動揺を隠し切れてない翠は乾いた笑いを出していた

 

「(何か、おかしいな)」

 

勇作は翠の様子を見て、疑いの目を向けていた

 

「(!!や、ヤバい、何か気を反らせないと……そうだ!!)」

 

翠は勇作を気を紛らせようと、ある事を思い出した

 

「ご、ご主人様」

 

「ん?」

 

「実はたんぽぽがご主人様に聞きたいことがあるんだ」

 

「聞きたいこと?」

 

「ああ、ご主人様がどんな鍛錬をしたのか?」

 

「え?」

 

「姉様?私そんなこと言った覚え」

 

「いや、ご主人様が強いことは結構たんぽぽにも話してたから、どんな鍛錬をしていたか気になって」

 

「鈴々も聞きたいのだ!!」

 

「??まあ別に良いけど……うっ!」

 

「どうしたのだ」

 

「いや、鍛錬の事を思い出したら、気分が」

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「大丈夫」

 

「気分が悪くなるって、どんな鍛錬をしていたですか」

 

「鍛錬したのは、一週間で後はずっと地獄で死にかけたよ!」

 

「死にかけたって」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は勇作がまだこの世界に来る前に遡ぼる

 

 

「……まあ、こんなもんかな」

 

「はい」

 

勇作はある場所で神様と鍛錬をしていた

 

「一週間たったが、大分、覇気や六爪流を使いこなせるようになったな」

 

「はい」

 

「だが……」

 

「どうしたんですか」

 

「お主はワシが教えるより、実戦ほうが上達が早い気がするな」

 

「そうですか」

 

「ああ、ワシが教えるよりは数倍もマシじゃ」

 

「はあ」

 

「だから、ここからは別メニューに切り替える。そうすればすごく強くなる」

 

「別メニュー?」

 

「ああ、いまからある人物を召喚する」

 

「人物?」

 

「……」

 

神様が念じると何もない空間から、人が出てきた

 

「……」

 

「!!、こ、この人は」

 

「こいつと戦え。全力で」

 

「いや、あの」

 

勇作はその人物を見て、驚いていた

 

「これからは、ワシが召喚する人物と命がけで戦うのじゃ」

 

「少し待ってください。本物」

 

「見た目と強さは本物じゃが、人形だ。本人ではない」

 

「いや!師匠!俺がこの人に勝てるわけないだろう!!死ぬわ!」

 

「心配するな!今のお主は不死身じゃから、死ぬことは無い!!」

 

「だからって」

 

「それに、5倍の速さでお主は強くなる!だから逝ってこい!!」

 

「何か、文字が違うような……ぎゃあああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで、時間は戻り

 

「…いくらなんでも鬼畜過ぎるよ。強くなったけど」

 

「相当大変だったんですね」

 

「そうだよ!大仏!拳骨!マグマ!光!氷!煙!炎!砂!雷!闇!ガス!雪!地震!影!幽霊!毒!鷹の目!冥王!七武海!四皇!動物人間!もう生きた気がしなかったよ!」

 

「あ、あの」

 

「しかも、狂暴な猛獣たちとも戦ったし、もう百、いや千は超えたぞ!死んだの!」

 

「ご、ご主人様」

 

「!!ご、ごめん」

 

「いや、聞いた私も、悪かった」

 

そんなこんなで夕食を終えるのであった

 

「(原作で、強さは知ってたけど、実際に戦って本当に意味で知ったよ!)」



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第八十四席 勇作、曹操の要請を受けるのこと

夕食を終えた勇作達は、部屋に戻らずに集まっていた

 

「何?曹操殿から参陣の要請?」

 

そこにいる全員が朱里の説明に耳を傾けていた

 

「はい。この度、朝廷の命で黄巾党の討伐に赴く事になったので、是非我が義勇軍の手を借りたいと」

 

「(まさか本当に起こってしまったのか……黄巾党)」

 

「コーキントーって何なんでしょう?」

 

「きっと翠みたいな人達の集まりなのだ」

 

「それは脳筋党です」

 

「おい!」

 

朱里がサラッと言うと、翠は少し声を荒げる

 

「…黄巾党というのは、張三姉妹の熱心な追っかけの人達の事です。張三姉妹を支持しているのを表すために彼女達の真似をして体に黄色の布を着けている事からそう呼ばれるようになって」

 

「どうして?どうして、そんな人達を討伐するんですか?何か悪い事でもしたんですか?」

 

「はい……元々は騒がしいだけの大して害のない人達の集まりだったんですが、ある日、突然暴徒と化して役人と騒ぎを起こし、それからはまるで蝗いなごの様に近くの役所を襲ってはそこの蔵を拓き、食料を食べ尽くすと、また次の役所を襲うという事の繰り返しで……」

 

「なんでそんな事を?」

 

「はっきりとは分かりませんが、噂では張三姉妹が中心になって先導しているとか……」

 

その言葉に鈴々が反論する

 

「そんなの信じられないのだ!あんな楽しい歌を歌うお姉ちゃん達が悪い事する筈ないのだ!」

 

「私も信じたくはないのですが、現にこうして討伐の命が下ったという事は、恐らく……」

 

しばし沈黙する一同

 

「皆さん、ここで考えてもしょうがないですよ」

 

「劉備殿?」

 

「もし黄巾党が本当に悪い事をしているのなら、やはりそのままにしておけません。けど、本当に悪い事をしてなかったら……」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

「その時はその時で、また考えましょ?」

 

劉備の言葉を聞いて、呆気にとられる一同

 

「ふっ、そうだな。劉備殿の言う通りだ。ここで考えていてもしょうがない」

 

「それじゃあ……」

 

「ああ……出陣だ!」

 

「そうだな!そうと決まれば、皆!準備に取り掛かるぞ!!」

 

「「「「「「御意!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして出陣の日

 

「え~、何でたんぽぽは行っちゃ駄目なの~?」

 

「当たり前だ。お前はまだ修行中の身なんだから、あたしらと村で留守番だ」

 

「ちぇ~……」

 

「それじゃあ翠、紫苑、留守を頼んだよ」

 

「ああ」

 

「はい」

 

「では、行ってくる」

 

「お気をつけて」

 

「(よし!あれ…やるか!)」

 

勇作は馬に乗ると

 

「お前ら準備はいいか!!」

 

「「「「「「「「「いえぇぇぇぇいいいいいい!!!!!!!」」」」」」」

 

兵士たちが鬨の声上げるがごとく声を上げる

 

「久々の戦だ!!目指すは黄巾党がいる戦場!!遅れずについてこい!!」

 

「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

「す、すごいですね」

 

その迫力に劉備は圧倒された

 

「ああ、ご主人様はこうやって士気を上げているのだ」

 

「鈴々もこれやると、すごく元気になるのだ」

 

「出陣!!!!」

 

仲間に見送られながら、村の兵数千人を連れて、勇作達は出陣していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曹操軍のいる軍地まで辿り着いた一行。曹操の横には愛紗と勇作がいて、後ろには劉備、そして鈴々と朱里がいる

 

「いやぁ……曹操殿自らお出迎えとは、痛み入る」

 

「こちらから頼んで来てもらった以上、相応の礼を尽くすのは当然だわ。それに、私とあなたの仲じゃない。水臭い事は言いっこなしよ」

 

「は、はぁ……」

 

「(仲…ねぇ)」

 

「けど驚いたわ。私が新しく召し抱えた楽進達が、あなた達と知り合いだったなんて」

 

「楽進殿達とは、旅の途中に立ち寄った村で知り合って。そういえば、程昱殿と郭嘉殿は?」

 

「程昱は軍師。郭嘉は親衛隊員として、よく仕えてくれているわ」

 

「(目に涙を浮かべている郭嘉殿の姿が想像できる)」

 

「所で、義勇軍は大将旗…あれは」

 

「ああ、俺の旗だよ」

 

「やっぱりね」

 

曹操は勇作の旗を見てすこし驚いていた。愛紗達の旗は緑地で漢字で自分の名前の一文字が黒地で書かれているが、勇作の旗は黒地で白地で文字の代わりに髑髏と交差した六本の刀が書かれてある、いわば海賊旗である

 

「それは良いわ。けど劉の旗も大将旗に掲げていた様だけど?」

 

「いや、前に話したと思うが、劉備は劉備でも、あの男は偽物で本物は」

 

「ええ、その事は承知しているけど、今の義勇軍は天の御使いである高杉が率いているのでしょう?なら…」

 

「う~ん、まあ、話せば長くなるのだが……」

 

「私は劉備殿と姉妹の契りを結び、義理の妹となったのだ」

 

「ああ、なるほど……。それで義理の姉を立ててやむ無く、という訳ね」

 

「別にやむ無くという訳では……」

 

「後、そうしとくと、前に作った旗がそのまま使えてお得なのだ」

 

「こ、こら!余計な事は言わんでいい!」

 

愛紗は慌てて鈴々の口を塞ぐ

 

「曹操殿…そう言う訳なので」

 

「華琳と呼びなさい」

 

「いや…でも」

 

「私がそう呼びなさいと言っているのよ。貴方は私の命を2回も救っているのだから」

 

「そうですけど」

 

「だから私の事は華琳を呼びない。それとも呼ばない理由でもあるのかしら」

 

「(呼んだら呼んだで、ややこしくなる未来が見えるだけなんだけど……あれ?この気配は?)」

 

天幕に着いた一行。そこには夏侯姉妹の他、大きい欠伸をする袁術と、その側に付き添うの張勲がいた

 

「遅いぞ。いつまで待たせる気じゃ?」

 

「え、袁術殿……?」

 

「ん?おお、お主はいつぞやの」

 

「え、袁術殿も此度の討伐に?」

 

「うむ、朝廷の命でやむ無く出陣してきたが、賊退治等は妾の性に合わぬ故。お主ら、妾の分まで頑張ってたも」

 

「どう?私があなた達に援軍を頼む気になったのが分かるでしょ?」

 

「(た、たしかに)」

 

勇作と愛紗はただ苦笑するしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕に全員が集まり、軍議が開始された

 

「桂花、まずは現状の説明を」

 

「はっ……現在黄巾党はこの広い平地に集結しています。首謀者と思われる張三姉妹の天幕を中心にして、それを取り巻く様に陣を張っており…その数はおよそ数万」

 

「およそ?もっとはっきりした数は分からないの?」

 

「申し訳ありません。張三姉妹は野外に立派な舞台を設置し、士気を高める為か、時折そこで歌を歌っているのですが、それを聞き付けた者達が、続々と黄巾党に身を投じ、そのため正確な数が掴めないのです」

 

「(道理で、続々と集まっているわけか…今いる人数だけでも5万…か)」

 

「……例え烏合の衆とはいえ、それだけの数の相手をするとなると、ちょっと厄介ね」

 

「はい」

 

曹操が考えていると

 

「失礼します!」

 

天幕に一人の少女が入ってきた

 

「典韋殿?」

 

「あっ!高杉さん、関羽さん!」

 

喜びの声を上げるが、すぐに気持ちを切り替え、曹操に耳打ちをした

 

「曹操様……」

 

「………なに?華陀が会いたいと訪ねて来た?」

 

「(……華陀殿が?………えっ!!これは)」

 

その時、勇作は見聞色の覇気である光景が見えた

 

「(……まだ根に持ってたのね。まあ同然だけど…危なくなったら助けよ)」

 

心の中でそう誓う勇作であった

 

 

 

 

「……」

 

そして天幕に連れて来られた途端、夏侯淵に腕を後ろ向きに取り押さえられ、首の後ろには夏候惇の剣が添えられていた。

 

「華~陀?自分から首を捧げに来るとは良い度胸ね?私に浴びせた恥辱の言葉、忘れてないわよ?」

 

華陀は苦痛に顔を歪ませ、そんな彼を、冷たい笑みを浮かべながら見下す曹操

 

「そ、それは誤解だ!俺はただお前の」

 

「無礼者!」

 

「曹操様と呼べ!」

 

「そ、曹操様のべ、いっ!?」

 

「それ以上言ったら本当に首を落とすわよ……!?」

 

曹操に睨まれ、華陀の顔から血の気がなくなっていく

 

「わ、分かった!だから話を聞いてくれ!」

 

「どうだろう?話だけでも聞いてみては……?」

 

「華陀のおじちゃんは良い人なのだ!」

 

「おじちゃ…」

 

「……そうね。関羽がそう言うのなら」

 

その言葉を聞き、安堵する華陀

 

「但し、話が下らないものだった時は」

 

「いっ!?」

 

「分かってるわね……?」

 

曹猛徳に睨まれ、華陀は顔を青ざめていた

 

「……!!な、何だと!!この乱が太平要術の仕業だと!!」

 

勇作は見聞色の覇気で華陀がこれからいう事を読んだ

 

「!!」

 

これから言おうとしたことを先に言われ、驚く華陀

 

「っ!?それは本当なの!!黄巾の乱は太平要術の仕業って?」

 

驚く曹操

 

「あ、ああ……。俺の探った所では、黄巾党の者達は皆、太平要術を使う張三姉妹に妖術で操られているらしい」

 

「張三姉妹は、何故そんな事を?」

 

「前に話したと思うが、太平要術はそれを持つ者の胸の内にある、悪しき心を育み、妖術で世を混乱させる様、仕向ける力がある。今回の事も、恐らくは……」

 

「舞台を盛り上げるのに太平要術を使っているつもりが、いつの間にか自分達の方が使われていた……というですか」

 

「たかが本一冊と甘く見ていたけれど、それがこうまで大きな力を持つなんて……」

 

「ああ。これ以上、被害を広げない為に何としても太平要術を封印する必要がある」

 

「そうね……その通りだわ」

 

「ではその為にも、まずは黄巾党を討伐し、張三姉妹を」

 

「っ!ちょっと待ってください!!」

劉備は声を上げる

 

「黄巾党の人達は、張三姉妹に操られてて、その張三姉妹も悪い事をしているのは太平要術のせいなんですよね!?だったら、太平要術さえ封印すれば良いわけで、何も黄巾党の人達を討伐しなくても」

 

「あなた、事態がよく分かってない様だからもう一度言ってあげるけど、張三姉妹は数万の黄巾党に囲まれた中にいるのよ?」

 

「そ、それは分かってます!」

 

「なら、黄巾党を討たずして、太平要術の封印もないこと位分かるでしょ?まさか『封印させて下さい』と言えば『はいそうですか』と張三姉妹が太平要術を差し出すとでも思ってるんじゃないでしょうねぇ?」

 

「で、でも、黄巾党の人達は操られてるだけなんですよ!?なんとか傷つけない様に」

 

「馬鹿言わないで!誰の血も流さずにこの事態を収める様なうまい手がある訳ないでしょう!?」

 

「け、けど……」

完全に論破され、何も言い返せない劉備。俯く彼女の側に寄る愛紗

 

「(甘いな………俺も人の事言えないけど、今回はその甘い考えが出来るかもな)」

 

「そうだ!!もしかしたら」

 

「何か、策があるの?」

 

全員が華陀に視線を向ける

 

「(……けど万一の時は)」

 

勇作は何かを決意したのか、手にぐっと力を入れ、手のひらを閉じるのであった



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第八十五席 群雄、黄巾の乱を鎮めんとするのこと(前篇)

アニメ版黄巾の乱、前編です

では、どうぞ


「「「悲しみに躓き~瞳を伏せるけれど~流したこの涙~は、こ~お~か~いにしな~い」」」

袁術・張勲・郭嘉の三人組は、歌を歌っていた。そばに曹操、荀彧、朱里がいた

 

「「……」」

 

劉備と于禁の二人は三人の衣装合わせや振り付け指導、歌のレッスンをしていた

 

「……」

華陀は馬に乗ってある場所を目指していた

 

「「「……」」」

鈴々が木材を運んでいた。勇作はその木材を切り、李典自作の設計図を見ながら、指示していた

 

「……」

休憩の際、典韋がおにぎりを差し入れとして持ってきてくれた

 

「……」

楽進も差し入れを出したのだが、持ってきたのは真っ赤な色をした激辛スープ。口にした瞬間、李典と鈴々の口から炎を出す羽目になった。勇作は覇気でこの光景が見えたので口にしなかった

 

「……」

 

天幕では、軍師達も己の頭脳を駆使して、黄巾の乱を鎮める策を練っていた

 

「良い歌だな」

 

愛紗は夏侯姉妹と共に、黄巾党の動きを偵察しに赴いていた

 

「ああ。何でも南陽地方に古くから伝わる歌とか」

 

「ほう」

 

「はぁ~」

 

ため息を吐く姉を見て、笑う夏侯淵

 

「(そう言えば、華琳様も歌を作るとおしゃっていたが、はてさて)」

 

曹操は、作詞作曲を手掛けており、琴を使ってリズムを奏でながら、楽譜を書いていた

 

 

 

「あれが張三姉妹の舞台か……」

馬に誇り、少し高い崖の上から眺める愛紗

 

「黄巾党の連中、あまり警戒している様子はないな」

上から見ても黄色で埋め尽くされており、数えてもきりがない程の規模であった

 

「上手く入り込めればいいのだが……」

 

 

 

 

なぜ、皆がこんな事をしているかと言うと

 

 

 

 

「そうだ!!もしかしたら」

 

「何か、策があるの?」

 

「黄巾党の周囲を探っていて気付いたんだが、どうやら張三姉妹が、人々を操っている術は、彼女たちの歌に心を奪われた者にしか効かないらしい。ならばその者達の心を他の歌い手で虜にすれば」

 

「なるほど、そうすれば黄巾党は張三姉妹の言うままにならないという訳ですね。張三姉妹だけが相手なら捕まえるのは容易いはず」

 

劉備の表情が明るくなる

 

「(あれ?でもそれって、そうじゃない人達もいるってことじゃ?)」

 

「でもそれは、張三姉妹に匹敵する程の歌い手がいて、初めて成り立つ策でしょ?そんな歌い手がどこにいると」

 

「歌なら妾にお任せなのじゃ!」

 

「はい」

袁術が名乗り出て、皆が驚く

 

 

「♪♪♪」

 

歌を披露した袁術と張勲

 

「ふふん!」

 

「嘘!!」」

 

「すっご~い!お二人とも本当に歌がうまいんですね!」

 

「驚いたわ……蜜を舐めるしか能のない生き物だと思っていたのに、こんな才があったなんて」

 

「蜜を舐めては綺麗な声で歌う。まるでコオロギの様な事」

 

「わっはっは!苦しゅうな~い、遠慮せずもっと褒めてたも!」

 

「さっすが美羽様!どんな皮肉も通じない所は正に王者の風格!」

 

皆が苦笑いをする

 

「すごいのだ!」

 

「曹操さん、これなら何とかなるでしょうか?」

 

「そうね、やってみる価値は有りそうだわ。ただ、張三姉妹は三人組。出来ればこちらも、もう一人歌い手が欲しい所だけど……」

 

「んっ!んっ!」

夏侯惇は咳をした

 

「どうした姉者?風邪か?」

 

「我が軍で歌が上手い者と言えば……」

 

「あ~ごほん!ごほん!」

 

「誰かいたかしら?」

 

「げはっ!?」

 

「姉者静かに。煩くしては華琳様の邪魔になる」

 

「……」

 

「曹操様。他に宛がないようでしたら、稟ちゃんがよろしいかと」

 

「こ、こら風ふう!何を!?」

 

「稟ちゃんは故郷の村では黄河の歌姫と呼ばれていた程の歌自慢で、風呂上がりに姿見すがたみの前で輪唱しては、一人悦に入っている事もしばしば」

顔を真っ赤にしてもじもじとする郭嘉

 

「それは意外ね」

 

「い、いえ、その……」

 

「郭嘉。期待しているわよ?」

 

「はっ!」

 

曹操の期待に答えるべく、気持ちを引き締めて臨むのであった。

 

「そうと決まれば早速練習じゃ!張勲!」

 

「はい!」

 

「そこの眼鏡!着いて参れ~」

 

 

 

 

このようなことがあり、皆、それぞれ動いていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

「歌姫の策……か」

 

「敵に気取られぬ様、兵は連れて行けぬ。事が破れた時は、我が黒騎兵が助けに行くが、正に決死隊だな」

 

「袁術殿は気づいておられないがな……ん?」

 

愛紗が後ろを向くと、夏侯惇は馬から下りて一人踞っていた

 

「この頃、夏侯惇殿は元気がないようだが、どうされたのだ?」

 

「構うと面倒なので、そっとしといてやってくれ……」

 

「は、はぁ……?」

 

「うぅ~……私は小鳥ぃ~……歌えぬ小鳥ぃ~……」

負のオーラが出しながら地面の上にのの字を書いていた

 

 

 

 

 

 

 

数日経ったある夜

 

「みんな、待たせたな」

 

「それは?」

 

机の上に置かれた三個の綺麗な宝珠。もう一つは数枚の札

 

「ゴッドヴェイドーの教主…張衡様にお願いして用意してもらった物だ」

 

華陀は今回の作戦に必要な物を仕入れる為、五斗米道の本拠地に行っていて、そして戻ってきた

 

「これは声が大きくなる様に術をかけた珠。こっちは楽器の音を奏でる呪符と、光を操る呪符だ」

 

「それさえあれば、なんとか張三姉妹に対抗できますね」

 

「ただし、どちらも込められた妖力に限りがあるらしい」

 

「つまり、妖力が尽きるまでに勝負がつかなければ、こちらの負けという事ね」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

そして作戦当日

 

黄巾党の陣地に接近する大型トラック程の巨大な車体。天使の羽の様な装飾もあり、明るいカラーリングが施された、移動式舞台車両

 

「(三国の時代なのに、よくこんなのが作れたな)」

 

李典の後方にある席には勇作、愛紗、鈴々、劉備、楽進、于禁、華陀の七人がいた。愛紗と華陀は小型の窓を引いて、外の様子を観察する

 

「いよいよだな……。しかし、やはり劉備殿は本陣で待っていた方がよかったのでは?」

 

「乱を静める為、妹二人が死地に赴く以上、私だけが安全な所でのうのうとしてられません!」

 

「みんなは鈴々が守ってやるのだ」

 

「ぷはぁ!蜂蜜水で喉の具合もバッチリなのじゃ!」

 

「よぉし、そろそろええやろ」

 

「ええ!」

 

「華陀殿!」

 

「おう。音よ……光よ……元気になれええええ!!」

 

その瞬間、舞台は光、音楽が鳴り響く。

 

「すごいな!」

 

勇作は華陀と一緒に歯車を回し、舞台を展開していき、大きな舞台場となった

 

 

「「「「♪♪♪」」」

舞台の中央からゆっくりと出てきた三人。彼女の美声が響き渡り

 

「みんな、妾達の歌を聴くのじゃ~~!」

 

黄巾党の気持ちも段々と高揚していく

 

「どうだ?」

 

「ええ感じや。邪魔する者はおらへん。流石は張三姉妹の舞台が好きで集まっとる奴らだけあって、この手の演出に慣れとるで。凪!沙和!行けるでぇ!」

 

「うむ!」

 

「はいなの!」

 

「気を付けてな」

 

愛紗は扉を開け、外に出る楽進、于禁

 

「劉備殿」

 

「またぁ…ちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さい!大丈夫。歌が好きな人に悪い人はいないよ。じゃあ行ってくるね」

 

笑顔で地上に降りていく劉備を、心配そうに見た後、その扉を閉じた

 

「どうぞなの~!これで応援して欲しいの~!」

 

「舞台前の広場で歌います!みんな集まって下さい」

 

黄巾党の一人一人に蒼い色をした棒付きキャンディを籠から出し、配っていく楽進と于禁

 

「中々可愛いじゃねぇか~」

黄巾党の中には、アニキ・チビ・デブもいた

 

「はい、これで応援して下さいね」

 

「こっちもいい乳!するする!何でもする!」

 

「ホントに!?じゃあ、広場に集まった人達に、飴を配ってもらえますか?まだまだ馬車にいっぱいあるんです」

 

「おう!」

 

「任せとけ!」

 

「任せるんだな!」

 

三人は引き受けるが

 

「うっ、うう……!」

 

「ま…ま…ま!」

 

「前が見えない……!」

 

大量の飴が乗せてある籠を一気に運ぶ三人

 

「よろしくね~」

 

全部押し付けた劉備であった

 

 

 

 

 

一方、舞台の向こう側にある、張三姉妹専用の天幕では

 

「ねぇ、ちいちゃん。外が騒がしいけど、何かあったのかな?」

 

そこで張角と張宝の二人は食事をとっていた

 

「黄巾党のみんなが応援の練習とかしてるんじゃないの~?」

 

「姉さん、大変よ!」

 

張梁が慌てた様子でやって来た

 

「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「もしかして、漢軍の襲撃!?」

 

「とにかく二人共来て!」

 

「あ~~~~!!」

 

外に出ると、車上ライブが行われ、とてつもない熱気が上がっていた

 

「何なの、あれ?」

 

「分かんないわよ。気がついたらあんな所に入り込んでいて……」

 

「けど、この歌結構良いかも」

 

「なに呑気なこと言ってるの!こんな事して、あいつらきっと何か企んでる筈よ」

 

「よしっ、とにかく追い払っちゃおう!着替えるわよ」

 

そして三人の歌が終わった後、大歓声が鳴り止まなかった

 

「こっちのメガネっ子、良くね」

 

「僕は天和ちゃん、一筋だ」

 

「流石、曹操様のお作りになった歌。大ウケだわ……!」

 

「美羽様の歌い方が良かったんですね!」

 

「わははは!も~っと褒めてたも」

 

「来たぞ!」

 

外に出ていた勇作が声を出す。

 

「っ!!」

 

三人は気づく。舞台衣装に身を包んだ張三姉妹が舞台に上がってきたことに

 

 

「ふぅううう!!」

 

張宝がマイクに妖力を流し込み、大声で叫ぶ

 

「みんな~~!あいつらを追っ払って~~~~!!」

 

勇作達は万一に備え構える

 

「皆、早く!」

 

「って言われても……」

 

「なぁ……?」

 

「お願~~い!!」

 

「仲良くやろぉぜ?」

 

「「さんせ~~」」

 

「どうして……?何でいつもみたいに術が効かないの!?」

予想だにしない状況に動揺を隠せない張宝

 

「おしっ!こっちの思惑通りにいっとるようやで、おっちゃん!」

 

「誰がおっちゃんだ!?」

 

華陀はおっちゃんと言われツッコミを入れるが、策が成功した事に一同は安堵した

 

「っ!!ちい姉さん、きっとみんなの心が私達のよりあいつらの歌に惹かれちゃったのよ!」

 

「そっか!!」

 

「こんな時に漢軍が攻めて来たら……」

 

「それがあいつらの狙い!?」

 

「充分あり得るわね」

 

「今漢軍が来たら、私達はすぐに捕まっちゃって」

 

自分の首を切る様にスライドさせる張角

 

「どうすればいいのよあたし達~~~!?」

 

「そんなの簡単じゃない!あっちに心惹かれてるなら、もう一度私達の歌で、みんなの心を奪い返すのよ!」

 

「ちいちゃん」

 

「さあ行くわよ!」

 

「分かった」

 

「えっ?あ、うん!」

 

張三姉妹の舞台も音楽が響き、光の演出が起きる

 

「おお!!」

 

「そう来なくっちゃ」

 

張三姉妹も歌いだすと、会場が一気に盛り上がる

 

「うわ~、張三姉妹の歌をこんな近くで聞けるなんて」

 

「沙和、感激してる時か!」

 

「うぬぬ、こっちも負けずに歌うのじゃ!」

 

「「はい!」」

 

そして戦が始まった

 

 

 

「(何とも熱く平和な戦だな……けど、さっきの張宝が使った妖術で確信した。万一の時は!!)」




真・恋姫†無双編もあと少しで完結です

最後までよろしくおねがいします


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第八十六席 群雄、黄巾の乱を鎮めんとするのこと(中篇)

中編です

では、どうぞ


歌合戦は始まった頃、曹操は軍師達と天幕にて待機していた

 

「物見に出した典韋は?まだ戻って来ないの?」

 

「はい。少し落ち着かれては?華琳様らしくありません」

 

「……そうね」

 

荀彧から茶を渡され、それを飲んで心を落ち着かせる曹操

 

「雲が出てきたのです……」

 

朱里と程昱は外に出ていた。

 

「はい。皆さん、どうかご無事で……」

 

暗雲立ち込める大空に、祈りを捧げる朱里

 

 

 

 

 

少し離れた場所、そこに夏侯淵と曹操軍と義勇軍の兵がいた

 

「(数万の黄巾党に囲まれればいくら関羽殿達でも)姉者!狼煙は?」

 

崖の上に居る夏候惇に聞く

 

「上がってはおらぬ動きは無いようだ」

 

視線を黄巾党がいる所に向ける

 

「(出撃となれば大戦は免れぬ)」

 

 

 

そして歌合戦が行われている場所から少し離れた茂みの中に典韋がいた

 

「うふ…皆、楽しそう。これなら戦にならなくて済むかも」

 

火打ち石を持ちながら、楽しそうに体でリズムを取りながら会場を見ていた

 

 

 

 

 

そして歌合戦が行われている場所では

 

「「「♪♪♪」」」

 

互角の勝負が繰り広げられていた

 

「「「♪♪♪」」」

 

「「「♪♪♪」」」

 

「(これ、俺がいた時代でも戻ったみたいな感覚だな)」

 

「「「♪♪♪」」」

 

「「「♪♪♪」」」

 

「さいっこ~~~~!!」

 

「てんほ~~」

 

「ちいちゃ~~ん」

 

「れんた~~ん」

 

会場の最高潮にまで達していた

 

「押されてますね……」

 

「えぇい!こうなったら妾の十八番おはこで勝負じゃ!」

 

次の曲が流れてくる………が

 

「!!あら」

 

「げっ!!」

 

「しけん!しけん!」

 

伴奏が途切れてしまった

 

「しまった……時間切れだ……!」

 

舞台場となっている大型車の中で、華佗は悔しく顔を歪める

 

「「えっ!?」」

 

「何!!」

 

「なんとかするのじゃ!張勲!」

 

「そんなこと言われましても」

 

「どうやら妖力が切れたみたいね。どこの妖術使いに頼んだのか知らないけど、よくもった方かしら…でも、こっちは、大平要術がある限りいくらでも妖力が湧いてくるんだかね」

 

張宝は余裕の笑みを浮かべて

 

「今が好機!」

 

「えっ?」

 

驚く二人を他所に、張宝はマイクに妖力を流し込んで、大きく叫んだ

 

「皆!あいつらをやっつけてっ!!」

 

妖術で兵士達に術が掛かろうとする

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「JET-X!!」

 

Xの文字の斬撃が放たれ

 

 

 

 

 

 

 

バチーーーン

 

 

 

 

 

 

 

両者の間で激突し、周りに音と共に衝撃が飛ぶ、そして消えた

 

 

「「「うわ!!」」

 

「「「きゃ!」」」

 

その衝撃でその場にいた者は、体をのけ反ったり、倒れたりしていた

 

 

「いったい、何が?」

 

「私の…術が!」

 

張宝は驚愕をしていた

 

「いったい何が?」

 

「何が起こったのじゃ?」

 

袁術たちも今の状況に困惑していた

 

「ま、まさか」

 

華佗はこの状況をいち早く理解する

 

「そんなことない!もう一度!!」

 

張宝はマイクに再度、術を掛ける

 

「皆!あいつらをやっつけてっ!!」

 

術を発動し、妖力が会場全体に広がる………が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「JET-X!!」

 

再び斬撃が放たれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

両者の間で激突する

 

 

 

「(!!あ!やべ!!)」

 

勇作は叫ぶ

 

「張三姉妹!!その場に伏せろ!!」

 

「え?」

 

そして次の瞬間

 

 

 

バチーーン!!

 

 

 

音と共にX状の斬撃が張三姉妹に迫る

 

 

「「「嘘!!」」」

 

3人はその場に屈みこむ

 

 

 

バーーーン!!

 

 

 

3人の上を通り、後ろにあった舞台の壁にぶつかる。そしてX状に壁に穴が開いた…いや切られた

 

 

「な、何これ!」

 

「嘘!」

 

「また私の術が」

 

張三姉妹は驚愕する

 

「間違いない!!勇作が術を破っている!」

 

華佗は叫ぶ

 

「勇作!お前も!妖術使いなのか!」

 

「??違うよ」

 

「何だと!」

 

「何でよ!なんで私の、大平要術の妖力が!!」

 

「(やっぱり思った通りだ!なんでかわかんないけど武装色の覇気を纏えば、攻撃できる!!)」

 

勇作は今まで覇気を纏って攻撃していたのだ

 

「(今のうちに)」

 

勇作は指示する

 

「今のうちに撤退しろ!!俺が殿を務める!!」

 

「!!ご、ご主人様!!」

 

「急げ!」

 

勇作に指示され、楽進たちは舞台の中に入る

 

「劉備はん…早う!」

 

「………」

 

劉備は意を決した表情を浮かべる。大型車には戻らず、崖の縁まで近づき、勇作の隣にきた

 

「な、何して」

 

「ごめんなさい!私は戻りません!」

 

「えっ!!」

 

「私は誰も血を流さずにこれを終わらせたいんです!このままじゃ戦が起きて血が流れてしまう」

 

「こんな時に何を」

 

「甘いかもしれません!けど誰も血を流さずに終わらせる方法があるなら私はそれに賭けたいんです!!」

 

「賭けるって今の状況じゃ!」

 

「高杉さん!!いえ!ご主人様!!」

 

「!!」

 

「お願いします!!」

 

「…劉備」

 

勇作は劉備の表情を見る。それを見て何を言っても無駄だと感じた

 

「皆!あいつらをやっつけてっ!!」

 

「っ!!しまっ!」

 

黄巾党の人達に術がかけられた

 

「あいつら!」

 

「やっつける!」

 

目には狂気が宿り、劉備達の方向へと向かっていく

 

「あいつら!」

 

「たおす!」

 

「!!」

 

視線を向ける勇作

 

「ご主人様!!」

 

「「あいつら!」」

 

「ころす!!」

 

「……」

 

「……わかった!俺が全力で守る!責任も取る!劉備!やってくれ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

劉備は黄巾党の人達がいる方を向き、胸の前で両手を組み、瞳を閉じる

 

「明けない夜はな~い♪君が教えてくれ~た♪」

 

「うん?」

 

「「っ!!」」

 

劉備は歌った。彼女の行動に、目を大きく開く愛紗と鈴々。そして顔を見合わせ、微笑むと、劉備の近くに寄り、二人も歌い始めた。それから楽進や李典、于禁は勿論、袁術・張勲・郭嘉の三人も、その大合唱に加わった

 

「すごく楽しそうだな」

 

アカペラだが、七人はとても楽しそうに歌い、笑顔を浮かべ、その歌声は大空に響き渡った

 

「ふん!無駄よ無駄!悪あがきは…っ!!」

 

次の瞬間、張宝は目を疑った。黄巾党の全員の表情にも笑顔が灯され、青色の飴を上に掲げていた。雲は晴れ、青空が澄み渡る

 

「そ、そんな……どうして……何であんな歌に……!?」

 

張宝は動揺を隠せずにいた

 

「(そう……こんな歌……。みんなが楽しく幸せになれる……こんな歌……)」

 

張角は思い出す。三人が幼い頃の思い出。空を見上げ、閉じている瞳から流れ出た一滴の雫が、頬を濡らす

 

「こんな歌…………」

 

張宝のその瞳には、光が灯っておらず、太平要術の邪気も広がる

 

「私達の歌でかき消してやるっ!!」

 

「もう……やめよ?」

 

「っ!?」

 

「人を操る為だとか、他の歌をかき消す為とか、そんな歌……」

 

「なに言ってるの!?ここで止めたら私達の夢が!!」

 

「違うよ……」

 

張角は微笑みながら語りかける

 

「こんなの……子供の頃、三人で夢見たのとは―――違う」

 

「っ!?……子供の頃……三人で……」

 

動揺する張宝

 

 

 

 

 

 

 

 

ソレデイイノカ

 

「!!」

 

張宝に誰かが語りかける

 

コノママヤメテ

 

「それは」

 

ヤメルナ…コノママダトミナシヌゾ

 

「どうずれば」

 

ワレノチカラ…タイヘイヨウジュツノジュツヲツカエ。ソシテゼンインコロセ

 

「ころ…す?」

 

ソウダ!ソレシカタスカルミチハナイ!サア!タイヘイヨウジュツヲツカエ!ソシテコロセ!!

 

「……」

 

「ちいちゃん?」

 

「ちい姉さん?」

 

反応しない張宝を心配する二人

 

 

 

 

「かな~え~る~♪」

 

歌が歌い終わると歓声が上がる

 

「すごい!」

 

その光景に勇作は感動する

 

「でも…これで……っ!!」

 

だか、勇作はある光景が見えた

 

「これは!!まずい!!」

 

勇作は劉備の前に立つ

 

「いったいどうし?」

 

次の瞬間

 

「妖力弾!!」

 

紫色のエネルギー弾のようなものが迫ってきた

 

「うらっ!!」

 

バチン!!

 

勇作は覇気を纏った応龍でそれを空に打ち返す

 

「な、何だ?今のは?」

 

視線を向けると、太平要術が現れ、それを持った張宝が勇作達を見ていた

 

「ちいちゃん!どうし…」

 

「邪魔」

 

張宝は手を翳すと、衝撃波を放つ

 

「「きゃっ!!」」

 

張角と張梁は後ろに飛ばされた

 

「さて」

 

視線を勇作達に向ける

 

 

「アンタたちを、倒す」

 

 

禍々しい邪気が立ち込めている太平要術を持ちながら睨み付けていた



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第八十七席 群雄、黄巾の乱を鎮めんとするのこと(後編)

最終回です

では、どうぞ


「何だ!今のは!」

 

「ちいちゃ~~ん」

 

「何が起こってるんだ?」

 

黄巾党の皆も、突然の事に動揺を隠せない

 

「あなた達……邪魔」

 

張宝は黄巾党の人達にも、先ほどのエネルギー弾を放った

 

「うわ!!逃げろ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

逃げ惑う人々。直撃しようとした瞬間

 

 

バン!!!

 

 

横から来た青いエネルギー弾によってかき消される

 

 

「……」

 

視線を向けると

 

「……」

 

勇作がHELL DRAGONを放っていた

 

「また邪魔した」

 

「いったいあれは?」

 

「張宝さん!何で攻撃するんですか!貴方を応援してた人達なのに!!」

 

劉備が叫ぶ

 

「うるさい!あなた達!全員!殺す!」

 

張宝の周りから禍々しい妖気が立ち込める

 

「あれは!まさか!」

 

「華佗さん!何か知っているのか!」

 

「おそらくだが、張宝は太平要術に意識を乗っ取られているかもしれない」

 

「乗っ取られているって」

 

「どうにかならないですか!!」

 

「そ、それは」

 

「皆!死んじゃえ!!」

 

勇作にまた妖力弾を放つが

 

「…効かん!!」

 

刀で一刀両断する

 

「お…おのれ!!」

 

「張宝…いや太平要術!!」

 

勇作は肩に羽織っていたコートを着る

 

「ん?」

 

「お前は俺には勝てない!!潔く封印されろ!」

 

「黙れ!!貴様から倒してやる!!殺してやる!!」

 

禍々しい妖気を放つ

 

「知るか~~~!!!」

 

勇作は覇王色の覇気を放つ

 

 

ドドドドン!!!!!!

 

 

 

妖気と覇気が激突する

 

 

オオオオオオオオ!!!!

 

 

その瞬間、周囲に衝撃波は発生。それにより人は吹き飛び、周囲の岩にヒビが入り、気絶をする人が続出した。

 

 

「こ、これは!!」

 

「地面が揺れる!!」

 

バリバリ

 

「!!アカン!舞台が壊れる!早う!そこから逃げるんや!」

 

李典に言われ、袁術・張勲・郭嘉は降りようとする

 

「むりなのじゃ!」

 

「とても降りられません!」

 

衝撃波によって、その場から動けずにいた

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

「!!な、なに!この揺れは!」

 

衝撃は曹操のいる陣まで届く

 

「わ、わかりません」

 

曹操は天幕から出る。そして視線入ってきたのは

 

「空が……空が割れている」

 

勇作達がいる所、雲が真っ二つ割れている光景だった

 

「ご主人様」

 

朱里は祈る

 

 

 

 

 

場所は戻り

 

バチバチバリ

 

「……」

 

「……」

 

勇作と張宝はにらみ合いを続ける

 

「私の妖力が」

 

「……マジか」

 

「おのれ、こうなったら……いでよ!!我が兵よ」

 

すると紫色の妖力が形を変え、剣を持った兵が二人現れた

 

「何だ?」

 

「あれは妖兵!!」

 

「妖兵?」

 

「ああ、文字どおり、妖力が兵の形になったものだ!!強い力を持った妖術使いが5人いてやっと一人出来る術だ」

 

「なら、鈴々が倒すのだ!!」

 

「無理だ!!妖力の塊なんだぞ!普通の攻撃は効かない!」

 

「効かない?」

 

「そうだ!どれだけ切られようが、矢を射ぬかれようが、潰されようが、瞬く間に元に戻る。倒すには同じ術を使うか、妖術使いを倒すしかない」

 

「そ、そんな」

 

「(なるほど)」

 

「勇作!引け!ここは俺が!」

 

「心配ない!華佗殿は皆をお願いする」

 

「勇作!!」

 

「ご、ご主人様」

 

「心配ない…皆を守る」

 

「行っけ~~~!!」

 

二人の兵は勇作に向かってくる

 

オオオオオオオオオ

 

勇作に切りかかる兵

 

「ふん」

 

だが、簡単に避け、片手に二本ずつの四刀状態になる

 

「CRAZY STORM!!」

 

左右への横薙ぎを連発する

 

「オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!」

 

妖兵は切り刻まれ

 

「オラ!!」

 

そして消えた

 

「な、なんだと!」

 

「どうだ!!」

 

「こうなったら!食らえ!」

 

テニスボールサイズの妖力弾がマシンガンのごとく放つ

 

「次はこれだ!」

 

勇作は六爪流になり

 

「CRAZY STREAM!」

 

より攻撃範囲が広がり、妖力弾が切られていき消える

 

「この!この!この!この!」

 

「オラ!オラ!オラ!オラ!」

 

意地の張り合い。その攻防に黄巾党もはじめ、劉備たちも見守る

 

「これならどうだ!」

 

バランスボールサイズの妖力弾を放つ張宝

 

「X-BOLT」

 

X字の3段の斬撃が放たれる

 

 

ドガーーーーン!!

 

 

間で激突し、周りに衝撃波が起こる

 

 

「「くっ!」」

 

衝撃によって勇作と張宝は後ろに下がる

 

「おのれ!」

 

「はぁ…はぁ…どうだ!(やばい…思った以上に覇気と体力の消耗が)」

 

想像以上の消耗に勇作は若干の焦りが生まれる

 

「次はこれだ!」

 

妖力があふれ、巨人族のような巨大な腕の形になる

 

「(あれでつぶす気か!)」

 

勇作は構える

 

「喰らえ!」

 

拳を作り、殴りかかる。しかし攻撃の対象は勇作ではなく

 

「!!しまっ!」

 

劉備に迫る

 

「あ…ああ…あ」

 

腰を抜かし、尻餅をつく劉備

 

「劉備殿!」

 

関羽が叫ぶ

 

 

ドガーーーン

 

 

「………」

 

劉備は目を開けると

 

「う……う」

 

勇作は覇気を纏って劉備を守り、相手の拳は勇作の顔面に当たっていた

 

「ご、ご主人様!!」

 

「うらっ!!」

 

腕を払う。そして勇作は片膝をついた

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「な、なんとか」

 

勇作は右目を手で抑えながら答える

 

「ははは、もう一回!!」

 

再び、迫る

 

「……」

 

勇作は立ち上がり、六爪流に再びなる

 

「死ね~~~~!!」

 

ドカーーーーン

 

 

「………」

 

「ご主人様」

 

「な、何だと」

 

勇作はその攻撃を受け止めた

 

「……未完成だが…RE-BITEだ!せいやーーー!!」

 

ガチーーン!!

 

 

薙ぎ払いで腕を吹き飛ばす

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ」

 

「ふははは…次でトドメだ」

 

腕が上がる

 

「ま、まずい!勇作!逃げろ!」

 

「……」

 

「ご主人様!」

 

「華佗」

 

「な、何だ?」

 

「アイツを…張宝を元に戻す方法は無いのか」

 

「そ、それは」

 

「あるの」

 

「あるにはあるが」

 

「それは」

 

「妖力がなくなるか…意識を失わせるかだが」

 

「なるほど」

 

「どうする気だ?」

 

「次の決着をつける」

 

「これで最後だ!!」

 

巨大な拳が迫る

 

「ウオオオオオオオオ!!!」

 

両腕に電撃が溜まる

 

「行くぞ!!BASARA技!!」

 

巨大な龍の形をした電撃が放たれる

 

「HELL END DRAGON!!!!!」

 

 

ギャオオオオオオオオ~~~~~ッ!!!!!

 

 

「な、何だ!これは」

 

「りゅ、龍!!」

 

「行けぇええええええ!!!」

 

ギャオオオオオオオオ~~~~~ッ!!

 

龍が腕に絡みつき、締め上げる

 

 

バン

 

 

腕が消滅した

 

 

「そ、そんな」

 

グルルルルルルル

 

張宝を睨み付ける龍

 

「あ…あ…ああ」

 

ギャオオオオオオオオ~~~~~ッ!!

 

口を開け、まさに張宝を食おうと迫る

 

「や、やめて~~~~~!!」

 

「ちい姉さん!!」

 

張角と張梁は張宝を抱きしめて守る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャオオオオオオオオ~~~~~ッ!!

 

龍は3人の頭上を通り、そして空に消えてった

 

「………」

 

「あ、あれ」

 

「私たち、生きている」

 

3人は生きていることを確認する

 

「はぁ…はぁ…はぁ」

 

「す、すごい」

 

「か…華佗」

 

「な、何だ」

 

「張宝の…様子…は」

 

華佗は視線を向けると、3人は抱き合って喜んでいた

 

「心配ない!術も解けたようだ」

 

「それ…は……よ…か…」

 

ドサ

 

勇作は倒れた

 

「「ご、ご主人様!!」」

 

「お兄ちゃん!!」

 

愛紗達が近寄ってくる

 

「とりあえず、救護に」

 

「はい!!」

 

 

黄巾党の人達は、ざわざわし始めた

 

 

 

「……それじゃあ、いいよね?」

 

「うん」

 

「……うん」

 

二人の妹の返事を伺った後、張角はマイクを手にした。

 

「うん?」

 

「うん?」

 

全員が張角の方に視線を向ける

 

「皆さん!聞いて下さい!黄巾党は……今日で解散します!」

 

「「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」」

 

「私達!普通の芸人に戻ります!」

 

 

 

 

 

討伐軍本陣

 

「曹操様!曹操様!」

 

典韋が馬を走らせ、天幕に入る

 

「曹操様!ご報告します!黄巾党は全員投降!張三姉妹も太平要術の引き渡しを承諾したのことです」

 

「やったのです!!」

 

「よかった~~~」

 

「ふう」

 

「ふふ」

 

安堵する一同

 

 

 

 

 

黄巾党本陣の天幕の前で、張三姉妹は太平要術を華陀に見せる

 

「おお!それはまさしく太平要術!しっかり持っていろよ……!」

 

華陀は鍼を取りだす。太平要術の一か所に小さい光が見えた

 

「見えた!!我が身、我が鍼と一つなり!一鍼同体!全力全快!病魔覆滅!元気になぁぁれぇぇぇぇぇ!!」

 

「ちょっと待った!」

 

「ん?」

 

「封印するのに、元気になぁれぇはおかしくないですか?」

 

「それも、そうだな……ん?」

 

納得している間に、太平要術は突然現れた男の手に渡ってしまっていた

 

「あっ、あんたは!!」

 

「于吉!」

 

張三姉妹に太平要術を渡した黒幕の男がいた

 

「覚えていてくれたとは光栄ですね。しかし、せっかく大平要術に大量の妖力を溜め込む機会だったのに、こんな事になってしまうとは……」

 

「なっ、おい!待てっ!」

 

風景へと溶け込むかの様に、透け始める于吉。華陀は急いで飛び付くも、于吉の姿はそこにはなかった

 

「それでは皆さん」

 

「ぐっ、チッ!」

 

「……縁があったらまた会いましょう。うふふふふふふ」

 

崩れる事のない余裕の笑いが、その場に木霊するのであった

 

 

 

 

 

 

事後処理が一段落終え、作戦に関わった武将らが全員、天幕に集まっていた

 

「すまん……。俺が気を抜いた隙に」

 

「最後の最後に得体の知れない者に大平要術を奪われるなんて」

 

「佳花、それ以上過ぎた事を責めても仕方ないわ…それよりも今は、先に考えるべき事がある筈よ」

 

「まずは張三姉妹の処分。それから黄巾党に参加した者達をどうするか」

 

「大平要術に操られていたとはいえ、罪を犯した事は事実。見せしめの為にもやはりそれなりの処罰を」

 

「待って下さい!張三姉妹は自ら罪を認めて降伏したんです!だから、できるだけ処分は軽くしてあげて下さい!」

 

「私からもお願いしますなの!」

 

「あの、曹操様……」

 

「どうしたの?郭嘉。何か考えでもあるの?」

 

「はい。私が考えまするに、まずは再び悪事を成さぬ様、監視するという名目で、黄巾党の者達を丸ごと我が軍の管轄下に置くのが良いかと…そして平時は刑罰の意味も込めて、荒地の開耕に従事させ、どこかでまた別の乱が起きた時はそれを収める為の兵として使う。張三姉妹は世を騒がせた償いとして、各地に駐屯している漢軍への慰問や貧しい者への寄付を募る為、舞台を勤めさせる、というのは如何でしょうか?」

 

「厳格に法に乗っ取り処罰をすれば、イタズラに罪人を生むだけですが、この案は国力と兵力を共に高める良案です」

 

「ふむ、悪くないわね」

 

「曹操様の名を高める効果も望めるかと」

 

「そうね。ただ、これまで芸人の追っかけをしていた者を兵として使うには、相応の訓練が必要だわ」

 

「曹操様!その役、私に!」

 

「お願いします!」

 

「ウチらも手伝いますから」

 

「いいでしょう。この役目、あなたたちに任せるわ」

 

「「「はい(なの)!」」」

 

「けど驚いたわ。あなたが鼻血以外に知恵も出すなんて……」

 

「ああ、いや、ですから私は……」

 

「どうやら、あなたは親衛隊員より軍師の方が向いている様ね」

 

「えっ、それじゃあ!」

 

「そうだ!私、この事を黄巾党の人達に知らせてきますね」

劉備は足取りを軽くして、天幕から出ていった

 

「行っちゃったのだ」

 

「やれやれ……まるで子供ね。関羽、あなた、相変わらず人を見る目はないようね」

 

「……そうかもしれん。だが姉と妹を見る目だけは、誰よりも確かなつもりだ」

 

愛紗は傍らにいる妹の頭を撫でる。鈴々は擽ったそうに首を竦め、その様子を曹操は微笑を浮かべながら眺めていた

 

「はしゃいでいるね」

 

「ご、ご主人様!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

勇作が現れ、鈴々は抱き着く

 

「大丈夫なのですか」

 

「ああ、心配ない」

 

「貴方も随分と活躍したそうね」

 

「活躍って…俺はあの子の願いを叶えただけだよ」

 

勇作も劉備の後ろ姿を見ながら言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、夜によって、静けさを感じさせる荒野。そこには、大きな舞台車があり、張三姉妹がいた

 

「はぁ……また一からやり直しか~……」

 

二人の妹は、肩を下ろしながら、ため息をついていた

 

「そんなに落ち込まないの。姉妹三人、力を合わせれば何とかなるって」

 

「もう、天和姉さん本当お気楽なんだから……」

 

「仲良き事は美しきかな!!」

 

声がした方に視線を向けると、一人の少女が立っていた

 

「な、何よあんた!?」

 

「ある時は霧に溶けた謎の美人武芸者……またある時はさすらいのメンマ狩人……しかしてその実態は……乱世に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者!華蝶仮面!出のきっかけが掴めず遅れたが、只今推参!」

 

その人物は舞台車の上にジャンプした

 

「新たな門出に不安を抱くお主らに私からの餞別だ!受け取るがいい!」

 

華蝶仮面は三つの色違いの蝶の仮面を取りだし、それを彼女達に渡す

 

「今日よりそれを顔に着け、謎の仮面芸人として活動すれば人気上昇間違いなし!話題沸騰、老若男女が押し掛けてその名声は大陸の隅々まで」

 

「寝よ寝よ……」

 

「疲れた~……」

 

「明日も頑張ろ……」

 

張三姉妹は一切相手をせず、舞台車に戻っていった

 

「っておい!話を最後までき」

 

扉が閉まり、一人取り残された

 

「…………かっこいいと思うんだがな……」

 

仮面を取り外し、そう呟く華蝶仮面であった

 

 

その近くの場所

 

「さて、今回はあまりいい結果にはなりませんでしたが…いろいろ収穫があったのでよしとしましょう!それにしても…高杉勇作………彼は少々厄介ですね」

 

于吉がいた

 

「今は戦うべきではありませんね…この前、拾った駒を有効に使いましょう。それに奴も徐々に苦しむことになりますからね。うふふふふふ」

 

不吉な笑みを浮かべながら、その場を去るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして戦いを終えた、義勇軍は桃花村に帰還し勇作達は、劉備に連れられて、彼女の故郷である村に招待され、桃の花が咲き誇る木の下で、宴会をするのであった




これで、真・恋姫†無双は完結です

次回、真・恋姫†無双 〜乙女大乱〜に入ります

どうぞ、次回もお楽しみください


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真・恋姫†無双〜乙女大乱〜
第八十八席 劉備、宝剣を手に入れるのこと


真・恋姫†無双〜乙女大乱〜編です

後書きに主人公の詳細2を書きます

では、どうぞ



此処は洛陽。その洛陽を治めている帝が住まう宮殿

 

「陛下よりの急な御召しとの事じゃが」

 

そこに何進が二人の護衛を連れてやって来た

 

「ん?」

 

突然、衛兵が前に立ち塞がる。更に、二人の護衛も取り押さえられてしまった。

 

「張譲!これは一体!?」

 

動揺する何進の前に、背の小さく白髪で、高貴な衣装に身を包む少年が現れた

 

「何進大将軍……いや、逆賊何進!貴様を反逆の罪で逮捕する!」

 

「なっ!?」

 

見に覚えのない罪状を突きつけられる。衛兵は何進の両手を押さえ、口を無理矢理開かせる

 

「ふ!!」

 

張譲は懐から小粒の丸薬を取りだし、邪悪な笑みを浮かべる

 

「がっ…が…ごっ!!」

 

それを彼女の口に放り込むと、同時に兵が口を押さえつける。鼻も摘ままれ、やむ無くその丸薬を飲み込んでしまった

 

「はぁ、はぁ…ち、張譲、何を飲ま―――ごぼっ!?」

 

解放された何進は首もとを押さえて咳き込み、そして、吐血した。

 

「ふ、ふふふふふふ。あははははははは!!」

 

その様子を見た張譲は、声高らかに、暗雲立ち込める洛陽に、その悪意に満ちた嘲笑が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは桃花村

 

 

「拝啓、雛里ちゃん。お元気ですか?私はとっても元気です」

 

桃花村のある部屋で朱里は手紙を書いていた

 

「桃花村の仲間達も、元気一杯。まだ雛里ちゃんと会ったことのない人がいたよね。早く紹介してあげたいな」

 

朱里は窓から外をみた

 

「そういえば、霧の中ではぐれた星さん、まだ戻ってこないんだけど、今頃どこでどうしているのやら…けどいろんな意味で強い人だからきっと大丈夫なはず…うふふ」

 

そしてまた筆を走らせる

 

「後、少し前に素敵な事がありました。前に手紙で書いた、劉備さんが宝剣を犠牲にして救った村。その村の人が桃花村を訪ねてきて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻り

 

 

「この剣を私に?」

 

客間にある長机の上に置かれた一つの剣

 

「はい。皆様が、うちの村を旅立たれた後、村の前の川を埋めた土砂を洗っておりましたら、その中からこれが出てきまして」

 

鮮やかな装飾が施された宝剣である

 

「言い伝えに詳しい者に聞くと、恐らく、これは湖に住む龍神様が授けて下さったものに違いないとの事…どうしたものかと村の衆とで話し合った所…やはり、お家に伝わる大事な宝剣を犠牲にしてまで村を救ってくれた劉備にお渡しするのが良かろうということになりまして」

 

「劉備様って、黄巾の乱で大活躍したんだろ?やっぱ高貴の血筋の人は違うって、みんな噂してるよ」

 

「そんな、大活躍だなんて」

 

「事実なのだから、恥ずかしがる事はあるまい」

 

「中山靖王の末裔というのが、義勇軍の名を高めているようですね」

 

「実際、俺だけの時よりも凄いぞ」

 

「桃香お姉ちゃんも大将にして正解だったのだ」

 

「お気持ちはありがたいのですが、神様からの授かり物を私なんかがもらっても良いのでしょうか?」

 

「はい。儂らが持っておっても、朝晩拝む位が関の山。それより、志のある方にお持ち頂き、世のために役立てて頂いた方が、龍神様もお喜びになる筈です」

 

「ですけど……」

 

「いいではないか」

 

「これは、民を救わんとする姉上の気持ちに応えて、失われた宝剣の代わりに、天が与えて下さった物に違いない。有り難く受け取るのが良いと思う」

 

「そうなのだ!神様がくれるっていうのを断ったりしたら、罰があたるのだ!」

 

「その剣を使って悪い奴を懲らしめてよ。俺も大きくなったら家来になるからさ」

 

周りを見渡すと、仲間達は強い意志のこもった瞳で見つめていた

 

「分かりました。劉玄徳、龍神様より授かりしこの剣。有り難く頂戴致します」

 

表情を引き締め、抱拳礼する。こうして剣を手に入れるのであった

 

「(それにしても、きれいだな)」

 

勇作がその剣を見ていると

 

「御使い様」

 

「ん?」

 

「貴方に手紙です」

 

「手紙」

 

少年から手紙を受け取り、読む

 

「………あの子か」

 

「誰からなのだ?」

 

「ほら、俺が賊からお爺さんを救出しただろう」

 

「あの時ですか」

 

「そのお爺さんの家族の人からの御礼の手紙だよ」

 

「そうですか」

 

「なんて書いてあるのだ?」

 

「助けてくれたお礼とお爺さんが元気なこと。そして孫が俺も目標に頑張っていることだよ」

 

「ご主人様を目標に」

 

「別に俺を目標にしなくても」

 

「そんなことないですよ。子供たちは皆、御使い様を目標にがんばってます」

 

「俺もそうだぜ!村や黄巾の乱での御使い様の活躍は皆知っているんだぜ!」

 

「活躍ってほどは」

 

「お兄ちゃんもすごく活躍したのだからドーンと胸を縮めるのだ」

 

「それを言うなら胸を張るだよ」

 

勇作はツッコミをいれ、周りは笑いに包まれるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは雛里ちゃん。体に気を付けて、お勉強頑張って下さい」

 

雛里に向けての文も一段落終え、朱里は筆を置く

 

「朱里ちゃん、お昼の用意しましょう」

 

紫苑に呼ばれ、朱里は昼食の準備に取りかかる

 

「はい。水鏡先生宛のは後で書こっと」

 

「着けて」

 

紫苑は璃々にエプロンをつける

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「ごちそうさま(なのだ)」」」」」」」

 

昼食を食べ終え

 

「たんぽぽ、午後の訓練にいくぞ」

 

「は~い」

 

「頑張ろう」

 

翠は勇作、たんぽぽと共に、午後の訓練へと向かった

 

「じゃぶ、じゃぶ、じゃぶ」

 

紫苑と璃々が皿を洗っていると

 

「ねぇ、紫苑さん」

 

「何?朱里ちゃん」

 

朱里は古そうな壺を発見した

 

「星さんの壺ずけメンマ、腐ってきたみたいなんですけど」

 

「星ちゃん、メンマにはうるさいから、勝手に処分したら怒るわよ」

 

「あは…そうですね」

 

朱里は壺を戻し、棚の戸を閉めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃の木の下で、愛紗は本を片手に読み、鈴々は桃香の膝を枕にして横になっていた

 

「う~ん、やっぱりお日様の下では勉強よりお昼寝なのだ」

 

「勉強中も寝ているだろう?」

 

呆れながら言う愛紗に、くすりと微笑む劉備

 

「けどホント、鈴々ちゃんはお昼寝好きよね」

 

「後、膝枕も大好きなのだ。愛紗の膝も気持ちいいけど、桃香お姉ちゃんのは一味違うのだ」

 

「一味違うって、どう違うの?」

 

「愛紗のより、柔らかくてスッゴくプニプニしてるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

「う~ん、そんなにプニプニしてるかな?」

 

自室にて劉備は寝台の上に座って太股を触る

 

「えっ!!」

 

危機が迫った表情を浮かべ、今度は腹部に手を伸ばす

 

「確かに旅をしてた時は、もうちょっと引き締まってたかも……」

 

肩をガクンと落とし

 

「よし決めた!今日からおかわり禁止で減量よ!」

 

意気込む劉備であった

 

 

 

 

 

夕食時

 

「はい、大盛り」

 

「おお!!」

 

居間の扉を開ける劉備

 

「遅いぞ。姉上」

 

「どうぞ」

 

「あんがと」

 

「今日の晩御飯は、劉備さんの好きな狼の肉の煮込みですよ」

 

「狼の肉」

 

机の上を牛耳る大きな土鍋。湯気を出しながらグツグツと煮えていた

 

「おお、美味そうだな」

 

それを見た劉備は

 

「(げ、減量は明日からでいい、かな……?)」

 

誘惑に負ける劉備であった

 

「ご主人様」

 

勇作におわんを渡す璃々

 

「ありがとう」

 

勇作は受け取ろうとする……が

 

「…おっとと!!」

 

勇作は受け取り損ね、おわんを落としかける

 

「あ、危なかった」

 

「ご、ご主人様、大丈夫?」

 

「ああ」

 

「最近、そういうの結構ありますけど」

 

「心配ないよ」

 

勇作は席に座る

 

「じゃあ、食べるのだ」

 

全員が席に着き

 

「「「「「「「いたたきます(なのだ)!!」」」」」」

 

皆が、食事をしていると

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

劉備が勇作に声を掛ける

 

「右目抑えてますけど、どうしたんですか?」

 

「え?」

 

勇作は無意識に右目を抑えていた

 

「痛いんですか」

 

「痛くない、痛くないよ」

 

「華佗さんが訪ねてきたら、診てもらいましょう」

 

「いや、そこまで」

 

「ゴシュジンサマ」

 

皆の目が勇作を見つめる(一部の人は冷たい視線で見る)

 

「……」

 

「わかりました」

 

「「「「「「「よろしい(のだ)」」」」」」

 

「(何で、息ピッタリなの?けど、何で目なんか抑えていたんだ?)」

 

そんなコトを考えながら夕食を楽しむのであった




主人公詳細2

名前:高杉 勇作 たかすぎ ゆうさく

年齢:17歳

身長:180cm

体重:76㎏

容姿:世間からいうとイケメンの容姿。服装は水色シャツに黒のベストを着用。さらに青いロングコートを羽織っており、大戦の時は気持ちを引き締めるためにコートを着る。下は黒のストレートパンツ。靴は黒のシューズ

性格:マイペースで穏やか。しかし、人と関わりが少ないこともあり、悲しいことは一人で抱えることが多い。そのせいか、女性との関わりはほとんどない。鈍感ではないが、避けることが多い

好き嫌い:特になし


武器:応龍(おうりゅう)
   ・ 武器レベル200(MAX)攻撃時に確率で雷属性効果が付加される
   ・武器に装備している装具 黄金の鉾×3 雷のお守り 韋駄天抄 猛進の荒馬

技:PHANTOM DIVE(ファントムダイブ)

  DEATH FANG(デスファング) 
六爪流時 DEATH BITE (デスバイト)

  JET-X(ジェット-エックス) 
六爪流時 X-BOLT(エックス-ボルト)

  MAGNUM STEP (マグナムステップ)
六爪流時 MAGNUM STRIKE (マグナムストライク)

  CRAZY STORM (クレイジーストーム)
六爪流時 CRAZY STREAM (クレイジーストリーム)

奥義:HELL DRAGON (ヘルドラゴン)

   WAR DANCE (ウォーダンス)

   TESTAMENT (テスタメント)

   RE-BITE (リバイド)

BASARA技:HELL END DRAGON (ヘルエンドドラゴン)

未完成技:JUMPING JACK BREAKER

     MAGNUM BOOST

能力

見聞色の覇気(けんぶんしょくのはき)レベル170 相手の気配をより強く感じる覇気。この力を高めることで、視界に入らない敵の位置・数、また敵が次の瞬間何をするか先読みする事ができ、極めれば少し先の未来も見え、彼も少し先の未来を見ることが可能

武装色の覇気(ぶそうしょくのはき)レベル176 体の周囲に見えない鎧のような力を作り出す覇気。より固い「鎧」は防御だけではなく、攻撃にも転用できる。武器に纏わせ、威力を上げることも可能。彼は修行で威力だけでなく意識すれば雷属性を纏った攻撃が出来る。そして実体を持たないものにもダメージを与えることが出来、彼はこれにより、妖力で出来た物、技にもダメージを与えることが出来る

覇王色の覇気(はおうしょくのはき)レベル192 周囲を威圧する力であり、発動すると、圧倒的な実力差がある相手(戦うまでもないほど弱い相手)を気絶させる。またその矛先を特定の人物だけに絞ることができる


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第八十九席 劉備、減量するのこと

「はう~……。やっぱり食べちゃった分だけお肉増えてるかも……」

 

寝台の上でお腹の肉を触り、ため息をつく劉備

 

「いや、でも、これは食べた直後の一時的な物で、消化してしまえばきっと元に戻る筈。そう、絶対にそう!元に戻るわよね?」

 

「お~い、風呂が沸いたぞ!」

 

声を掛けるが反応がなく、扉をノックする

 

「お~い、開けるぞ!」

 

扉を開け、部屋に入る翠

 

「なぁ~風呂空いたんだけど?」

 

「ひゃう!?」

ビクッ!と大きく反応する

 

「何やってんだ?」

 

「へっ!あ…あの……ん?」

 

後ろ振り向き…そして

 

「………」

 

翠のお腹をじ~と見つめる

 

「な、何だよ…あたしの腹に何かついているのか?」

 

「むしろ、ついてない」

 

「はぁ!!」

 

劉備は翠のお腹を触る

 

「えっ!な、なんだ」

 

「(こ、この引き締まった感触は…無駄なお肉がまったくない)」

 

触りながらそう思う

 

「おい!よせよ。くすぐった…!!」

 

振り払おうとして、バランスを崩し

 

「あああああああ」

 

「きゃあああああ」

 

ドーーーン

 

二人は床に倒れてしまった

 

 

「!!」

 

物音を聞き付け、様子を見に来た朱里

 

「どうしました?何か大きな音がしましたけど……あら?」

 

部屋を見たが誰もいない。そして中に入ると

 

「……はわわわ!!」

 

衝撃の光景が瞳に入り、顔を真っ赤にする

 

「ん…ん…」

 

劉備を押し倒す翠。そしてお互いの服装が乱れ、翠のある部分が大きくなっていた

 

「はわわ!!え~と!あの!邪魔するつもりはなくて!あの!あの!」

 

顔を真っ赤にし、腕をくんずほぐれつし

 

「と、とにかくごめんなさい!!お邪魔しました!!」

 

凄い勢いで部屋を出て行くのであった

 

「あ!おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「翠姉様!行くよ」

 

「おう!骨の2、3本折るつもりでかかってこい」

 

「はい」

 

中庭で翠とたんぽぽが鍛錬をしていて、傍に劉備もいた

 

「(翠姉様の心気!水のように澄んでて隙がない!よし!こんな時は!)」

 

たんぽぽは指を指しながら

 

「あー!あっちでトンビがタカを生んでる!」

 

「え~」

わざとらしく後ろを向く翠

 

「しし、隙やり!」

 

しめた!と思ったたんぽぽは攻撃するが

 

ガチン!

 

「え?」

 

簡単にいなされ、そして反撃され

 

「ちっ……!!」

 

喉元に武器を突きつけられた

 

「ま、参った」

 

その場に崩れおりるたんぽぽ

 

「いいか、たんぽぽ。武術というのは正直なものだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる。汚い手を使おうとしてもこっちはお見通しなんだからな」

 

「ちぇ~そんなのわかってるよ~」

 

「だったら子供の遊びじゃないんだらそんなせこい手を使うなよ」

 

「は~い」

 

説教する翠。その傍にいる劉備は自分のお腹を触りながらため息をつく。その様子を愛紗は屋敷の2階から見るのであった

 

 

 

 

 

そしてその日の夕方

 

「「「「「「ごちそうさま(なのだ)」」」」」」」

 

皆が夕食を食べている

 

「璃々が切ったニンジン」

 

「そうね」

 

「……ん?」

 

劉備は翠を見た

 

「(馬超さん、あんなにバクバク食べているのに太らないのはやっぱり日頃から体を動かしているからかな?)」

 

そう思い何かを決意する

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、裏山に翠、たんぽぽ、劉備がいた

 

「えっ!あたしたちと一緒に特訓したい」

 

「お願いします」

 

「まぁ、別に良いけど、結構きついぜ!」

 

「たんぽぽ達に着いてこれる?」

 

「はい!頑張ります!!」

 

 

そして、始まった

 

「まずは…兎飛び」

 

おもりを付けて行うがまったく進まない劉備

 

「腹筋」

 

「ひぃ~~」

 

木の枝に足でぶら下がり、上半身を起き上がらせる。翠とたんぽぽは、すいすいやるが劉備は怖くて一回も出来ない

 

「腕立て」

 

翠が上に乗り、劉備は腕立てを行うが動けない。たんぽぽはおもりの乗せながらもすいすいやる

 

「ハイハイハイハイ!」

 

そしてなぜかコサックダンスをする3人

 

「ぜぇ…はぁ…はぁ」

 

息を切らす劉備

 

「よ~し。準備運動はこんくらいでいいか」

 

「はい」

 

「ええっ!!今のが準備運動!!」

 

それを聞いた劉備はその場に倒れ、体から魂が抜けるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、3人は居間にやってくる

 

「めっしだ!めっしだ!」

 

「今日のおかずはな~にかな~」

 

「(特訓たしかにきつかったけど、あれだけ運動すればお腹の肉もちょっとは減ってるはずよね~)」

 

ふらふらになりながらも、席に着く劉備

 

「(これで食べる量をいつもぐらいに抑えれば)」

 

その思いとは裏腹に出てきた料理はというと

 

「今日は、皆さんの好きな羊の肉を焼いたのですよ」

 

「(これは漫画に出てきそうな肉だな)」

 

「これ、あの肉みたいで大好きなのだ」

 

「肉汁たっぷりでうまそう~」

 

「(抑えれば……)」

 

「それから、紫苑が釣ってきた鯉」

 

「鱗がパリパリになるまでじっくり揚げて、特製のアンをかけてあるのよ」

 

「う~ん、これは食欲をそそる匂いだな」

 

「(抑え、れば……)」

 

「食後には胡麻団子もありますからね」

 

「たんぽぽあれ好きなんだ~」

 

「璃々も璃々も~」

 

「(抑え、れ…ば…………エヘヘヘ)」

 

瞳をキラキラと輝かせ、涎を垂らす劉備であった

 

 

 

 

皆が夕食を楽しんでいる時

 

「……ん?」

 

劉備は勇作が食が進んでいないことに気付く

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

「あまり食べていませんけど、どうしたんですか?」

 

「ごめん、ちょっと調子悪くてね」

 

「具合、わるいの?」

 

「そういうわけじゃないけど、ちょっと調子悪くてね…ここまでしとくよ」

 

そういうと、席を立つ勇作。そして自分の部屋に戻ろうとした時

 

ガツン!!

 

「ぐっ~~~!!」

 

テーブルの脚に自分の足をぶつけてしまった

 

「痛った~~~!!」

 

足を抑えながら、その場にうずくまる

 

「だ、大丈夫ですか!!」

 

皆が勇作の方を見る

 

「な、なんとか(おっかしいな。何でなの?急に距離感が分からなくなったみたいに」

 

「ご主人様?大丈夫ですか?」

 

愛紗が心配そうに近づく

 

「ああ、大丈…夫…」

 

勇作は視線を向ける……が

 

「……ぇ」

 

愛紗の顔がぼやけて見える

 

「ご主人様?」

 

「愛紗…な…の?」

 

「そ、そうですが」

 

「……」

 

勇作は両手で愛紗の顔を抑え、自分の顔を近づける

 

「ご、ご主人様」

 

「………」

 

顔を真っ赤にする愛紗。勇作は愛紗の顔をじ~と見つめる

 

「……ぁ」

 

瞬きすると、先ほどのぼやけたことが嘘のようにはっきり見えるのであった

 

「(あれ?見える………ぁ!)」

 

そして、今の状況を理解すると

 

「うわぁああああ!!ごめんなさい!!」

 

急いでこの場を後にする勇作であった

 

「………」

 

その場に残った皆は、顔を真っ赤にしたり、おろおろしたりとさまざまあったが、一人は先ほどの勇作の行動で胸がいっぱいになり、食が進まなかったことは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夕食後、劉備は一人湯船に浸かり、一日の疲れを癒していた

 

「う~ん!満腹満腹!運動した後は食が進むわよね~そしてゆったりとしたお風呂―――って、幸せに浸ってちゃ駄目なのよ!」

 

お腹の肉を摘まむ

 

「はあ~なんか昨日より増えてる気がする……ええい!運動すると余計食べちゃうから、食べない・動かない・太らないのさんない運動よ!」

 

桃香はそう決意した

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く、いただきますするのだ」

 

「姉上は夕飯も」

 

次の日の夕方、皆が居間集まり、夕食を食べようとするがそこに劉備がいなかった

 

「ええ、いらないと……」

 

「ぽんぽん痛いのかな?」

 

「この間も、腹に手を当ててため息をついていたので、それとなく聞いてみたのだが、はぐらかすばかりで……」

 

「私も、薬を煎じましょうか?と聞いたんですけど、病気じゃないからと……」

 

「病気でもないのに丸一日食べないなんて、鈴々には考えられないのだ」

 

「具合が悪くないのに腹の様子が気になるって事は……」

 

「はっ!!それってもしかして………妊娠!?」

 

「「「「「「「「えええええええええええええええ!!!!!」」」」」」」」」

 

その場にいた全員が大声を出す

 

「ま、まさか、姉上が子を孕むなど」

 

愛紗は片目をヒクヒクと震えさせ、口も引きつっている

 

「そういえば、私も璃々がお腹にいる時、つわりが酷くて何も食べる気にならなかった事がありましたっけ……」

 

「そ、それではやはり……」

 

「い、いえ、だから妊娠と決まった訳じゃ」

 

「劉備お姉ちゃん、赤ちゃん産むの?」

 

「どうやらそうみたいなのだ。そしたら、鈴々もお姉ちゃんになるのだ」

 

指で何かを数えていた朱里が鈴々に言う

 

「ん?違いますよ。もし劉備さんに子供が出来たら、鈴々ちゃんと愛紗さんは叔母さんになるんですよ?」

 

「ちょっと待て!私がオバサンとはどういう事だ!」

 

「あぅ、どういう事かと言われましても……」

 

「私はまだ、オバサンと呼ばれる歳ではない!もし姉上に子が産まれても、そうは呼ばせぬからな!」

 

「愛紗さん、そういうの、結構気にするんですね」

 

高らかに宣言する愛紗。他は同時に苦笑している

 

「ねえ、ご主人様は?」

 

璃々は勇作がいないことに気付く

 

「ご主人様は気分が悪いからいらないって」

 

「そういえば朝と昼も調子悪そうでしたし」

 

「病気なのかな」

 

「明日、お見舞いに行きましょう」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、部屋で寝ていた劉備は

 

「う~~ん、うん、く~~~~ん。あっ!もう駄目。我慢できない」

 

空腹のため、眠ることが出来なかった

 

 

「何か…何か食べ物」

 

台所で食べ物を探す劉備

 

「何でもいいから………ん?あっあった!えへへ」

 

そして棚の戸を開け、壺に入っていたメンマを見つけて食べてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変なのだ!!お姉ちゃんが!!桃香お姉ちゃんが!!」

 

朝、鈴々が大声を出しながら、走っている

 

「赤ちゃん産みそうなのだ~~~~!!!」

 

その声に愛紗達は反応するのであった



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第九十席 華佗、桃花村を訪れるのこと

続けての投稿です

では、どうぞ


「うん!!う~~~~~ん!!うん!!」

 

顔は青ざめ、苦痛に歪んでいて、お腹を押さえて寝台の上で踞っている劉備

 

「姉上、しっかりしろ!!」

 

その様子を愛紗、翠、たんぽぽが心配そうに見守る。そして紫苑達が入ってきて

 

「お湯を!お湯をたくさん沸かして下さい!それから、清潔な布も!早くお医者様を!」

 

「分かったのだ!」

 

「お湯だな」

 

「布!布!」

 

紫苑の指示に従い行動する面々

 

「頼む!相手は?相手は誰なんだ!!」

 

その言葉に朱里は翠を止める

 

「あ!翠さんは傍にいてあげた方が……責任があるんだし」

 

「へっ!!なんであたし?」

 

「翠!!姉上を孕ませたのは貴様か!!」

 

「ちょ!な、何言って」

 

「だって翠さん…この間、劉備さんとくんずほぐれつ」

 

顔を真っ赤にしながら腕をくんずほぐれつに動かす朱里

 

「いや、だから!あれは誤解だって。だいいちあたしは女だぞ」

 

「でも!あの時!股間に名前のとおり馬を超えるようなものが!」

 

「だから…」

 

「見苦しいぞ!この期に及んで言い訳か!男なら潔く責任取りやがれ!」

 

「ってあたしは男じゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りをしている頃、屋敷の門の前

 

「う~ん…華蝶仮面としてカッコよく再登場するつもりでわざとはぐれたはいいものの、きっかけをつかめず、ずるずるここまでいい加減ここらで戻っておかんと本当に忘れかれんぞ」

 

星がいた

 

「とはいえ、常山の趙子龍。いまさら何の工夫もなく戻るわけには…あ、いやこういう場合は変に凝ったことをしようとすると得てしてしくじるもの…ここで滑っては音も当てられぬ。この際普通に」

 

どう登場するか真剣に考える星。門に手を当て

 

「待て待て!地中に勝つありという言葉もある。これだけ長期間の前振りを生かさぬ手もない。ここは思い切って勝負に出るのも」

 

そんなことを考えていると

 

「趙雲殿ではないか」

 

後ろから声を掛けられ、ビクっとし、後ろを振り返ると

 

「うん?お主は華佗。どうしてこんな所に?」

 

華佗がおり、更にもう一人、外套に身を包んだ人物もいた

 

「実は関羽殿に頼みたいこと、勇作に用事があって訪ねてきたんだ。村人から関羽殿と勇作は他の仲間と一緒にこの屋敷の一角に住んでいると聞いたんだが、ご在宅かな?」

 

「さあ~ご在宅だと思うが、ひょっとすると出かけて居たり居なかったりしたりしなかったり」

 

つい先ほど帰ってきた星にわかるわけもなく、口笛を吹いて誤魔化す

 

「早く早く!早くなのだ!!」

 

すると鈴々は走ってきて勢いよく門を開ける。

 

「ぐわ!!」

 

鈴々は華佗にぶつかり、星は開かれた門に飛ばされ、堀に落ちた

 

「いててなのだ!はっ!医者は?医者は何処だ!なのだ!」

 

「医者ならここに居るが…もしかして急病人か?」

 

「そうじゃないのだ!お姉ちゃんが子供を産みそうなのだ!」

 

「「なに!!」」

 

星はジャンプをしながら驚く

 

「え?あれ?」

 

鈴々は周りをキョロキョロしてその声を探すのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、劉備の寝室

 

「う~~~ん」

 

「さあ、励ましてあげて」

 

「し、しっかり!」

 

劉備の手を両手で包み込み、必死に励ましている翠

 

「そうだぞ!姉上。こうしたことは天井のシミを数えている間に終わると聞いているから頑張れ!!」

 

「覚悟しておいて……お腹の出具合からして早すぎるわ。もしかしたら赤ちゃんは、下手をすれば劉備も……」

 

紫苑の推測を耳にし、嫌な汗が流れる愛紗と翠

 

「姉上!気をしっかりに」

 

「お湯沸かしてきました」

 

朱里がお湯が入った桶を持ってきた

 

「布持ってきたよ~」

 

「持ってきたよ~」

 

たんぽぽと璃々が布を持ってきた

 

「そこへ置いておいて!」

 

「医者はまだか!?医者は!!」

 

「連れてきたのだ!」

 

華陀が部屋に入ってくる

 

「華陀殿!早く、早く姉上を……!」

 

「任せておけ」

 

華陀は早速診察に入る。

 

「手をどけて。帯を解くぞ!楽にして。ここは痛いか?」

 

華陀が問いかける

 

「喋れないほど痛いか?」

 

「ど、どうだ?姉上は?腹の子は?大丈夫なのか?」

 

「何を勘違いしたが知らんが、これは陣痛ではないぞ」

 

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」

 

その場の全員が呆けた声を出し、翠は朱里を見る

 

「では、何だというのだ?」

 

「多分、食あたりだろう。何か悪いものでも食ったのではないか?」

 

劉備は首を縦に振る。そして全員が力が抜けたみたいその場に座り込むのであった

 

 

 

 

 

「此処がご主人様の部屋です」

 

劉備の治療を終え、一同は勇作の部屋の前に来ていた

 

「此処に居るのか」

 

「ご主人様に一体?」

 

「ちょっとな、思い過ごしだといいが…」

 

「一体?何が」

 

部屋に入る

 

「勇作…大丈………なっ!!」

 

そこにはうずくまり、苦しそうな様子をする勇作がいた。華佗はそれを見て、劉備よりひどい状態だということだと理解する

 

「ご、ご主人様!!」

 

皆が近づく

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「う……う、う」

 

勇作は皆の方に顔を向ける

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

そして勇作を見て、驚く。顔の色はまるで生気がないほど白く、脂汗をかいており、そして右目は赤くなっており、まさに赫眼のようになっていた

 

「ご、ご主人様!!」

 

「ま、まさかここまで!!待ってろ!!今すぐ!」

 

華佗は針を取り出し

 

「我が身!我が針と一つなり!心気同体!全力全快!病魔服滅!元気にぃなぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

男の体が眩い光に包まれ、針も同様に輝きを増していき、針を勇作の右手甲に刺す

 

ガツン

 

「ぐわ!!」

 

が弾かれる

 

「やはり無理か!くそ!!」

 

「華佗殿、ご主人様は一体、どうしたのですか?」

 

「説明している暇はない!手伝ってくれ!」

 

「え?」

 

「早くしろ!!でないと勇作は死ぬぞ!!」

 

「なっ!!」

 

「お兄ちゃんが」

 

「死ぬ」

 

「ど、どうすれば」

 

「勇作を仰向けに」

 

「は、はい!!」

 

皆が勇作を仰向けしようとするが

 

「う……う……」

 

暴れる上に、力も強く、抑えるだけ精一杯であった

 

「ご主人様!!落ち着いてください」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「横になってください!!」

 

「「「「「ご主人様!!」」」」

 

「まずい、ここままじゃ」

 

華佗が焦っていると

 

「皆、大丈夫か」

 

「星!!」

 

星が部屋に入ってきた

 

「帰ってきたのか!!」

 

「今までどこに?」

 

「それは後だ!主を何とかするのが先だ!!」

 

星も加わり、ようやく抑えること出来、勇作は仰向けになった

 

「これなら」

 

華佗は勇作の寝間着の帯を緩め、勇作の心臓部分にお札を張った

 

「これなら!!」

 

再び針をだし

 

「我が身!我が針と一つなり!心気同体!全力全快!病魔服滅!元気にぃなぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

体が眩い光に包まれ、針も同様に輝きを増していき、お札に針を刺す

 

「妖気…退散!!」

 

針を抜いていき光が収まる。そして暴れていた勇作は大人しくなった

 

「どうですか」

 

「これで大丈夫のはずだ」

 

「う~ん」

 

気が付く勇作

 

「あれ?華佗…何で」

 

「説明は後だ。関羽殿達は部屋を出てくれ。少し調べたいことがある」

 

そう言われ、愛紗達は部屋を出るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして華陀の話を聞く為、客間に集まる一同。がその場に勇作がいない

 

「それにしても、華陀の針治療、本当に良く効くんですね」

 

「そうなのだ。華陀のお兄ちゃんは天下一の名医なのだ」

 

「駄目だよ。微妙な年頃の人におじちゃんとかおばさんって言っちゃあ」

 

璃々の言葉に苦笑いをする華佗

 

「しかし孔明殿。一緒に旅をした時、医術には明るい方だとお見受けしたが、今回は見誤った様だな」

 

「あの、つい皆の調子に乗せられて……」

 

「姉上、本当にもう大丈夫なのか?」

 

「ええ。チクッ!としてピキューン!てなってハッ!ってなったら治ってて、さっきまであんなに痛かったのが嘘みたい」

 

「流石、義理の姉妹と言うべきか…鈴々とものの言いようがそっくりだな」

 

「まったくだ。というか星!いつの間に!?」

 

「まあ、そんな細かいことは良いではないか」

 

「細かい事って」

 

「華佗殿、愛紗に頼みごとと言っていたが、そちらの御仁は?」

 

「うむ。実は……」

 

その人物はゆっくりとそのフードを外す

 

「お前は!!

 

「何進殿!?」

 

「え?じゃあこの方が今を時めく大将軍の……あら」

 

何進の頭に猫耳が生えており、ピクピク動いていた

 

「ひ、人の趣味をどうこう言うつもりはないが、何進のお歳で頭にそういうのを付けるのはちょっと……」

 

「こ、こら星……笑っては、失礼、だぞ……」

 

「そういう愛紗さんだって……」

 

愛紗達は笑いを堪えている

 

「笑うな!妾も好きでこんな物を生やしているのではない!」

 

何進はバン!と机を叩く

 

「じゃあ、何で?」

 

「それより、華佗殿。主にも用があったがいったい」

 

「ああ、俺は黄巾の乱が終わった後、一度教団に戻り、乱の事について報告をしていたんだ」

 

「ほう」

 

「そこで勇作の事を話すと、張衡様が慌てた様子で勇作の様子を見るように指示してきたんだ」

 

「何でですか?」

 

「張衡様によると、勇作は太平要術の妖力によって呪われているかもしれないと」

 

「呪われている?」

 

「ああ、太平要術の妖力は術者以外の者とっては毒と同じで、もし人体に触れれば、その者の生気を奪って行き、死に至ると言われているんだ」

 

「人体に触れれば」

 

「けど、ご主人様はいつそれに?」

 

たんぽぽがそう言うと

 

「あ…あの時だ…私の…所為だ…」

 

「劉備殿、いったい?」

 

「私の所為でご主人様は」

 

「何か心当たりがあるのか」

 

「張宝が太平要術の妖力で巨大な腕を劉備殿を攻撃しようとした時、勇作がそれを庇って」

 

「あの時か!」

 

「それでお兄ちゃんは」

 

「ああ、恐らくその時に」

 

「それでご主人様は…大丈夫なのですか?」

 

「大丈夫だ。張衡様から頂いた札の効力で死ぬことはない。だが少し来るのが遅かった」

 

「それはどういう?」

 

「勇作の妖力は完全には無くすことは、出来なかった。さらに後遺症により……」

 

「後遺症により?」

 

「…………」

 

「教えてください!!ご主人様は一体どうしたんですか!!」

 

「そ、それは…」

 

劉備は華佗に詰め寄る

 

 

「言って構いませんよ。華佗」

 

扉が開かれ、勇作が入ってきた。右目を閉じながら

 

「ご、ご主人様」

 

「大丈夫ですか」

 

「ああ…華佗」

 

「しかし」

 

「いいよ。いずれ分かる事だし」

 

そういうと右目を開ける。その目はあの時と同じ赫眼であった

 

「そ、その目は?」

 

「この通りの赫眼。それに……右目の視力が無くなったんだ」

 

「無くなったって?」

 

「右目だけ失明したんだよ」

 

「失明!!!」

 

「何も見えないのかよ」

 

「右目だけね」

 

「そ、そんな…」

 

「それ以外は何とも」

 

「何ともじゃあねえよ!!」

 

「華佗さん!何とかならないんですか⁉︎」

 

「すまないが、これ以上は…」

 

その言葉に皆、悲しみに暮れる

 

「ご主人…様」

 

劉備が涙を浮かべながら、勇作に近づく

 

「ごめんなさい。私の所為で、私の…所為で…」

 

「気にするな」

 

「……何で?何で⁉︎何で責めないんですか!!私があの時、直ぐに逃げていれば…あんな行動を…しなげれば…」

 

「だから気にするなって」

 

「でも!!」

 

「あの時、言っただろ。守るって」

 

「だけど!こんな事に…なるんだったら…」

 

「それ以上は言ちゃダメだよ。それに俺は後悔していないし」

 

「けど…ご主人様……私の所為で……右目が!!」

 

「安いもんだよ。右目くらい……約束を守ることが出来たんだら」

 

「う…う…うわぁぁぁーー!!!」

 

勇作の胸でポロポロと涙をこばし叫びながら子供の様に泣く劉備の頭を優しく撫でる勇作であった



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第九十一席 劉備、決意し新たに旅立つのこと

「……落ち着いた?」

 

「……はい」

 

劉備を落ち着かせた勇作

 

「ところで、この人は?」

 

勇作が何進を指差す

 

「無礼であるぞ!わらわは何進大将軍じゃ!!」

 

「(えっ!!何進!!この人が!!)」

 

名前を聞き、驚く

 

「え~と、頭のそれは?」

 

「それは、何進殿」

 

「うむ」

 

勇作と劉備は席に座る

 

「全ては張譲の罠だったのじゃ!」

 

「張譲って宮廷の宦官を統べる十常侍筆頭の?」

 

「そうじゃ!妾と奴は、政敵としてずっと反目しあってきたのじゃが、ある時皇帝陛下より急な御召しがあって宮中に参内すると……!」

 

何進はくやしそうにテーブルをバン!バン!叩く

 

「あやつめは、妾を無実の罪に陥れ、怪しげな薬を無理矢理飲ませてこの様なおぞましい物を……」

 

「たんぽぽはそういうの可愛いと思うけど」

 

「ふざけるでない!妾は貪欲にして卑劣な宦官共の次に猫が嫌いなのじゃ!それにこれでは南蛮に住むという蛮族も同然。こんな格好では、もはや人前にも出れぬ…死ぬよりも辛い屈辱じゃ……!」

 

「そういう訳で、何進殿が人目を避けて山中を彷徨っている所を出くわしてな」

 

「そういうわけで、何進殿が人目を避けて山中をさまよっているのを出くわしてな…俺が医者だとわかると泣きつかれ、それで調べた所…何進殿は猫子丹を飲まされたらしい」

 

「猫子…丹?」

 

一同は頭をかしげる

 

「この薬は服用した者を徐々に猫へと変化させる効用がある」

 

「憎む相手を本人が嫌いなものに変えるなんて、あまりいい趣味じゃないですね」

 

「まったくだ!」

 

「(そんな薬もあるんだ…どうやって用意したんだ?)」

 

「この薬の解毒剤を作るには、三つの材料が必要でな…泰山の頂上という過酷な環境の中、一度花を咲かせるや、いつまでも散る事がないという持久草。江東の孫家に伝わる秘薬…その名も江東丸。そして南蛮の奥地にだけ生息しているという、南蛮象之臍之胡麻」

 

「(ああ…なるほど、そいうことか)」

 

「本来なら、自分で集めるべき所だが、俺には太平要術を探し出し、封印するという任務がある。聞けばそなたらは、何進殿とは満更知らない仲ではないとの事」

 

「(俺は初めて会うけど……)」

 

「ここは一つ人助けと思って、解毒剤の材料を集めては貰えぬか?」

 

「わかりました、お引き受けしましょう。なあ、姉上」

 

「ええ」

 

「おお!!」

 

「引き受けてくれるかや!?」

 

「いつぞやは鈴々を、そして今日は助からぬかと思ってた姉上を救ってくれた。その華陀殿の頼み、嫌とは言えまい」

 

「ごめんね、心配かけて……。皆も心配してくれてありがとう!!」

 

「しかし、腐っているのを食べてしまうほど劉備殿がメンマ好きだったとはな」

 

「(たぶん、違うと思うけど)」

 

「だが、今度勝手に食べた時は容赦せぬからな!!」

 

「はい」

 

「しかし、江東や泰山ならまだしも、南蛮となると、ちと遠いぞ?愛紗」

 

「え!あ、そ、そうだな……」

 

「そんなに遠いの?」

 

「そうですね…南蛮といえば、ここからは南西に当たる蜀の地に入り、更に南へ進んだ所…辿り着くまでに何日かかるか」

 

「あの、南蛮象之臍之胡麻なら、水鏡先生が薬の材料としてほんの少しですが、お持ちになってます」

 

「お~」

 

「ですから、私が水鏡先生の所に行って分けてもらってきます」

 

「そうか!では、南蛮象之臍之胡麻は朱里に頼むとしよう」

 

「けど、朱里一人だと心配だから、鈴々がついていってやるのだ」

 

「それじゃあ私も」

 

「朱里!鈴々がついているから、どーんと、大豚に乗ったきでいるのだ!」

 

「愛紗、あの組み合わせで旅をさせるくらいなら、いっその事朱里一人で行かせた方が安心ではないか?」

 

「ん?」

 

「……確かに」

 

組み合わせを見て、不安になる愛紗

 

「もちろん、愛紗とお兄ちゃんも一緒に行くのだ!」

 

「そのつもりだけど」

 

「え?いや…私は江東へ行く」

 

「何でなのだ!?愛紗とお兄ちゃんは鈴々といつも一緒なのだ!」

 

「江東の孫策殿と面識があるのは、私を除けばお前とご主人様と朱里だけだ!三人が行くのであれば、私が行くしかなかろう。それともお前がこっちにくるか?」

 

「ぶ~~~」

 

「私たちのことは心配ないから」

 

「一緒が良いんでしょ?」

 

「鈴々はもう子供じゃないのだ!!愛紗がいなくても立派にやってみせるのだ!!」

 

「分かった分かった。後は…星、泰山の方はお主が行ってくれるか?」

 

「うむ、任せろ」

 

「だったらあたしも行くぜ。もう留守番は御免だからな」

 

「たんぽぽも~」

 

「お前は留守番だ!」

 

「えぇ~なんで?」

 

「当り前だ!!お前はまだ修行中なんだからここで大人しくしてろ!」

 

「そんな~」

 

「文句があるんなら西涼に帰ってもいいんだぞ!」

 

「っ!!ちぇ~」

 

「一緒にお留守番してましょ」

 

「璃々も一緒!!」

 

「どうやら、話が纏まった様だな」

 

「よろしく頼むぞ」

 

「俺は先を急ぐので、すぐにここを発つが、猫子丹の解毒剤の作り方は、これに書いておいた。材料さえ揃えれば、作れるのはそう難しくはない。孔明殿程の薬草の知識があれば、大丈夫だろう」

 

「分かりました。それは私がお預かりしておきます」

華陀から手渡され、大事に保管する朱里

 

「しかしじゃな」

 

何進が勇作を見る

 

「……」

 

正確には勇作の右目を見た

 

「おぞましいな。その右目」

 

「何進殿!!」

 

「大丈夫ですよ。華佗殿」

 

「勇作」

 

「華佗さん」

 

「何だ?劉備殿」

 

「ご主人様の目、何とかならないですか?」

 

「すまぬが、俺もわからないんだ。あるとすれば」

 

「すれば?」

 

「太平要術を封印すればあるいは」

 

「それじゃ!!」

 

「だが、俺もこういうことは初めてだから。確信があるわけではない」

 

「封印できても、このままもあると」

 

「ああ」

 

「そんな」

 

「そうですか……治らないかもしれないか」

 

「すまない!俺の力がないばかりに」

 

「治らないなら、いっそのこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀・で・え・ぐ・り・取・ろ・っ・か・な・右・目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作がつぶやいた言葉にその場にいた誰もが驚愕した

 

 

 

 

 

「な、なにを言って」

 

「ん?」

 

「そんなこと」

 

「そんなのだめ!!!!」

 

劉備が大声を上げる

 

「ご主人様!!そんなことしてはだめです!!」

 

「え?え?」

 

「そうです!!」

 

「主、なんてことを」

 

「いや?あの?」

 

「そうだぜ!それを言うなんて」

 

「そうだよ」

 

「そうです!変な事考えないください!」

 

「ご主人様、だめ」

 

「お兄ちゃん」

 

「え?あの」

 

「右目をえぐるなんてこと絶対するな」

 

「ど、どういう?」

 

「勇作が自分で言ったんだろう」

 

「そ、そんなこと言ってたの?」

 

「わからかったのか?」

 

「あ、ああ」

 

勇作は全然覚えていなかった。無意識で出たのであろう

 

「右目をえぐるなんてそんなこと言っちゃだめ!!両親が悲しむよ」

 

「両親がね…たしかに生きていればね」

 

「生きていればって」

 

「うん、俺が小さい時に事故で死んじゃったんだ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「いいよ。それにやっぱり悲しむね。両親が生きていたら」

 

「……」

 

微妙な雰囲気になる

 

 

グ~~~~

 

 

その時、勇作のお腹が鳴った

 

「………あ、ごめん」

 

「ご主人様、お腹すいたの?」

 

「うん!ちょっとね」

 

「無理もない。あの状態で食も進まなかったのだからな」

 

「はい」

 

「出発は明日にしませんか?」

 

「そ、そうだな」

 

「そうとわかれば今すぐ用意しますね。腕を掛けて頑張りますね」

 

「あ、ああ」

 

「何進さんも華佗さんも一緒にどうぞ」

 

「すまない」

 

 

こうして、出発は明日になった。だが劉備の表情は晴れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。劉備は空を見ていた

 

「………」

 

「眠れないのですか?姉上」

 

そこに愛紗がやってきた

 

「はい…ご主人様のことで」

 

「しかしあれは」

 

「わかっています。けどどうしても考えてしまうんです」

 

「……」

 

「私のせいで、ご主人様は」

 

「姉上」

 

「私どうしたら分からないんです。この罪をどう償えばいいか、どうしたら」

 

「姉上」

 

愛紗は劉備を抱きしめる

 

「愛紗ちゃん?」

 

「一人で抱え込まないでください。不安なら一緒に考えます」

 

「けど」

 

「あの時、言ったではありませんか。私達は、世の中を変える為の仲間だと。私たちを頼っても良いのですよ」

 

「愛紗ちゃん」

 

「まだ寝てないの?」

 

二人が振り向くと、勇作がいた。右目に包帯を巻いて

 

「ご主人様」

 

「その包帯は?」

 

「華佗殿に巻いてもらった」

 

「ご主人様、私」

 

「劉備、さっきも言ったはずだよ。気にしてないって」

 

「けど」

 

「それに一人で抱え込むより周りも頼ったら…愛紗も言った通り俺達はお互いを助けあう仲間なんだから」

 

「ご主人様」

 

「それで罪を償う方法が思い浮かんだら、俺に言っても良いよ。俺もそれに納得するから」

 

「じゃあ、二つほど言っても良いですか?」

 

「ああって二つ!?」

 

「ご主人様、私のこと桃香って呼んでください」

 

「それ真名じゃあ」

 

「何時までも劉備じゃなくて桃香と呼んでください。ご主人様」

 

「…分かったよ桃香。それでもう一つは?」

 

「私が、私がご主人様の右目になります」

 

「………え?」

 

「あ、姉上!!」

 

「いや、あの劉備さん」

 

「桃香!!」

 

「桃香さん。何を言って」

 

「私のせいで右目が見えなくなったんです。だから私がその代わりをします」

 

「いや、そういうことでは」

 

「駄目なんですか?」

 

「そういう訳では」

 

「うるうるうるうる」

 

「わ、分かりました。お願いします」

 

「はい!!ご主人様!!」

 

「(なんか勢いに押された感じだな)」

 

心の中でそう思う勇作であった

 

 

 

 

 

 

翌日、出発の時間となり、勇作達は門前にいた

 

「皆の者すまぬな…わらわのために」

 

「何進殿、困ったときはお互…い…うふふふ」

 

愛紗は何進の猫耳を見て笑う

 

「そこは笑うところではなかろう」

 

猫耳を触ろうとする璃々を睨む何進

 

「ん?馬岱の姿が見えんが?」

 

「一緒に連れてってもらえないもんだからすねてるんだよ。まったくいつまでたっても子供なんだら困っちまうぜ!」

 

「やれやれなのだ」

 

鈴々も呆れたように言う。背中に背負っている大きな箱を担ぎ直しながら

 

「それより主?」

 

「何?」

 

「眠そうですが、大丈夫ですか」

 

「ああ」

 

「まだ呪いが」

 

「違うよ!大丈夫だから」

 

「そうですか」

 

「(本当はあの後、なぜか償いだとか言って、桃香となぜか愛紗と三人で一緒に寝ることになって、そのせいで眠れなかったなんて言えない)」

 

「皆!!元気でね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達は見送られながら、村を出発。新たな旅が、始まったのであった



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第九十二席 勇作、葛籠の中身を知るのこと

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ありがとうございます

今後もよろしくお願いします


「一人旅も悪くはないが連れがいるのはいいものだな」

 

猫子丹の解毒剤を探す旅に桃花村を出た一同。星と翠は一緒に歩いていた

 

「うん?どうした?翠。さっきから難しい顔をして、腹でも痛いか?」

 

「あ、いや、ちょっとたんぽぽの事が気になって」

 

「ん?たんぽぽ?」

 

頭をかしげる星だがすぐに思い出す

 

「ああ、お主の従妹の馬岱のことか。あ奴がどうかしたのか?」

 

「たんぽぽの奴、村でちゃんと大人しくしているか心配で、あいつあたしがいないと調子に乗ってイタズラばっかしてるんじゃないか気がしてさ」

 

「ふっ」

 

「なんだよ!何かおかしいか!!」

 

「あ、いや…子供だとばかり思っていたお主が一人前に姉さんぶった口を聞くのが微笑ましくてな」

 

「ってなんだよそれ!つうかそういう自分はどうなんだよ?」

 

「私か、決まっているだろう!私は頭のてっぺんから足の先まで立派な大人だ!」

 

堂々という星に翠は困惑した

 

「それに私の美貌で主もイチコロ!その後ムフフなことも」

 

「な!なな!何言ってんだよ!!」

 

「何を赤くなっている!劉備殿をそうしたことを」

 

「だからあれは違うって!!」

 

「冗談だ……ただ」

 

「ただ何だよ!」

 

「主の右目のことが心配で」

 

「星もか」

 

「ああ」

 

「大丈夫かな?ご主人様。大丈夫って言ってたけど無理してたみたいだし」

 

「そうだな……行く前にムフフことでもすればよかったかな」

 

「そうだなって何言ってんだよ!!」

 

「何をって私は主の事が好きだ!翠もそうだろう」

 

「す、好きって!!」

 

「だから男女の関係も」

 

「なな、何を言って…私はご主人様の…事…なんか……」

 

「ふふ、そう言うことにしとく」

 

「………」

 

「(帰ってきた時が楽しみですぞ!主)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして勇作はというと

 

「ハックッシュン!!」

 

桃香、鈴々、朱里と一緒で特に何かと遭遇する事もなく、森の中を歩いていた

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ!誰か噂でもしているのかな?」

 

「誰かって?」

 

「さあ」

 

「はあ、それより鈴々ちゃん」

 

「何なのだ?朱里?」

 

「ずっと気になってたんですけど、その背負っている葛籠、一体何が入っているんですか?」

 

「分かんないのだ」

 

「えっ?分からない?」

 

「旅の準備をして部屋を出たら、戸口に置いてあったのだ。でも弁当って貼ってあったからなにかおいしいものが入っているに違いないのだ」

 

「(ほ、本当かな)」

 

「うわ~いいな」

 

「いっぱいあるみたいだから、桃香お姉ちゃんや朱里、お兄ちゃんにも分けてあげるのだ」

 

「わ~い、鈴々ちゃん太っ腹」

 

「にはは、桃香お姉ちゃん程太くないのだ」

 

「っ!!それってどういう」

 

「別に深い意味は無いのだ。見たままなのだ」

 

「見たままって……」

 

「……待ってください!」

 

「ん?」

 

「二人とも何かおかしくありませんか?」

 

「たしかに」

 

鈴々と桃香は二人して首を傾げる

 

「何にもおかしくないのだ」

 

そして葛籠の中では、誰かか耳を澄ませている

 

「えっ!!魔物の仕業!?」

 

「はい。以前、古い書物で、葛籠の中に潜み、うっかりそれを開けた人間を食べてしまう魔物の話を読んだ事があります。恐らく、この葛籠にはその魔物が潜んでいるに違いありません!!」

 

「それじゃあ、どうすればいいのだ?」

 

「そうですね………葛籠を開けて魔物が飛び出してきては厄介です。このまま綴に火を着けて、中の魔物ごと燃やしてしまいましょう」

 

「賛成」

 

「鈴々ちゃん、劉備さん、ご主人様は早速焚火を集めてください」

 

「はい!」

 

「分かったのだ!」

 

「了解」

 

 

 

「ちょっと待ったあああああ!!」

 

命の危機に恐怖し、葛籠からその姿を現した

 

「うぐぐ……!」

 

「やっぱり馬岱ちゃんだったんですね」

 

馬岱は視線を上げると、そこには腰に手を置きながらこちらを見下ろす朱里。後方には、勇作と鈴々と桃香がいた

 

「だ、騙したな!?」

 

「それはこっちの台詞です!でもまあ、あんな子供騙しのやり口に騙される方がどうかしてるんですが……」

 

「まったくなのだ」

 

「(アンタのことだぞ!鈴々)」

 

「とにかく、馬岱ちゃんはここから村に戻って下さい。いいですね?」

 

「ええ~なんで~~!?」

 

「なんでって、馬岱ちゃんは翠さんに、村でお留守番してる様、言われてたじゃないですか。その言いつけを破って勝手についてくるなんて、駄目に決まってます」

 

「留守番なんてつまんないよ~!たんぽぽも一緒に連れてってよ!絶対大人しくしてるから」

 

「駄目です」

 

「頼むよ!お願い!」

 

「ダ・メ・で・す!」

 

「ね、ねぇねぇ!張飛からも何か言ってやってよ!」

 

「ダメなものはダメなのだ。子供は村で大人しく留守番してるのだ」

 

「なんだよ子供子供って、張飛の方がよっぽど…………ん?」

 

ピカッ!と何か閃いたのか。瞬時に鈴々の横に付き、耳元に囁く

 

「連れてってくんなきゃ、あの事、孔明に」

 

「いっ!?あ、いや、それは……」

 

鈴々は歯切れが悪くなり、動揺を隠せずにいた

 

「ん?」

 

肘でちょいちょいとつつき、催促する

 

「しゅ、朱里……旅も修行の内だし、馬岱も一緒に連れてってやってもいいんじゃ」

 

「り、鈴々ちゃん!急に何を言い出すんです!?」

 

「べ、別に脅されてる訳じゃないけど、ここは一つ、馬岱の言うとおりにしてやった方がいいかも、なのだ」

 

「……鈴々ちゃん、どうしたんですか?何か変ですよ?」

 

「そ、そんな事ないのだ……変なのはいつもの事だから、変でも普通なのだ!」

 

「ん~~」

目を細めて、ジ~ッと見つめている朱里。鈴々は乾いた笑いを浮かべる

 

「ねえ、孔明ちゃん」

 

「ん?」

 

「ここまで着いて着ちゃったんだし、私も、馬岱ちゃんを連れてってあげてもいいと思うんだけど」

 

「劉備さんまで……」

 

「それに、今から送り返したら、森の中で日が暮れちゃうし……」

 

「それはそうかもしれませんけど……」

 

見上げれば、空は夕方になりかけていた

 

「朱里、連れて行こう」

 

「ご主人様…………しょうがないですね。わかりました。馬岱ちゃんも一緒に連れていきましょう」

 

「やった~!!」

 

「ただし!物見遊山の旅じゃないんですから、遊び半分の気持ちじゃ駄目ですよ?」

 

「は~~い」

上機嫌になったたんぽぽは、元気良く返事するのであった

 

「(いつもなら、覇気でわかるんだけど、右目の事が気になってぜんぜん読めなかった。駄目だな俺)」

 

心の中でそう思う勇作であった

 

 

「旅にでてから何日たった~~~右手の指で足りる~か~な~」

 

たんぽぽを旅の一員に加えた一行鈴々が歌を歌いながら歩く

 

「…まただ」

 

突然、霧が出始めた

 

「あっ、霧が出てきた」

 

「前に来たときも、この辺で霧が出てたのだ」

 

「足元に気を付けて下さいね。まだまだ濃くなりますから」

 

「本当、キリがないですね。なんちゃって……フフ、やだ!私、面白いこと言っちゃった!」

 

「あんまりおもしろくないのだ」

 

「あはは……どわ!!」

 

勇作は木の根に躓き転んだ

 

「いてて」

 

「大丈夫なのか?お兄ちゃん」

 

「ああ」

 

「ご主人様、立てる」

 

「何とか(くそ!霧が濃い上に片目しか見えないから距離感が)」

 

たんぽぽと鈴々の手を借り立ち上がる勇作

 

「ありがとう」

 

「どおってことないのだ……ん?」

 

鈴々は何かに気付く

 

「朱里、桃香お姉ちゃんどうしたのだ?顔を赤くして」

 

視線を向けると二人は顔を赤くしていた。朱里は胸、桃香はお尻を押さえて

 

「そう言えば倒れる時、両手に柔らかい感触があったけど、いったいあれは?」

 

「な、なんでもありません!!」

 

「そ、そそ、そうですよ!」

 

「いや、でも」

 

「は、早く行きましょう!!」

 

「は、はい!」

 

「えっ!あ!ちょっと!!」

 

朱里と桃香に手を引かれながら水鏡先生の屋敷に向かうのであった



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第九十三席 鳳統、隠し事をするのこと

空は橙色に染まり、もう夕暮れ時、庭園にて掃き掃除を行っている雛里。覚えたことを口ずさみながら、作業を行っている

 

「雛里ちゃ~ん!」

 

「ん?」

 

遠くから自分の名を呼ぶ声が聞こえた。その方向を向くと

 

「雛里ちゃ~ん!」

 

「朱里ちゃん……」

 

雛里は喜びの笑みを浮かべ、朱里の元に向かう。距離が零となり、二人は手を繋ぎ合う。

 

「久しぶり~元気にしてた?」

 

「うん……」

 

「鳳統ちゃんは水鏡先生の弟子で、孔明ちゃんの妹弟子にあたるだよ」

 

「へぇ~」

 

「送ってもらった本、凄く勉強になったよ」

 

「本当?よかった~。なら今度は、もっとすごい物を送るね」

 

「うわぁ、楽しみ……」

 

「(何を送ったんだ…いったい?)」

 

「あら、朱里!」

 

この小屋敷の主である、水鏡が姿を見せた

 

「水鏡先生!」

 

朱里は、水鏡の元へ駆け寄り、甘える様に抱きついた

 

「おかえり、朱里」

 

水鏡もうれしそうに抱きしめる

 

「(微笑ましいな)」

 

心の中でそう思う勇作であった

 

「朱里ちゃん」

 

「何?」

 

「その……勇作さんは?」

 

「え?」

 

「勇作さんはいないの?」

 

「ご主人様も来ているには来てるんだけど」

 

「けど…」

 

「何かあったの?」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷に招き入れて貰い、客間にて事情を説明する

 

「妖術による呪いですか」

 

「はい」

 

「書物でそういうものもあるとは知っていましたが」

 

「先生、直す方法は無いんですか?」

 

「ごめんなさいね。私も知らないのです」

 

「そんな」

 

「すいません。力になれなくて」

 

「気にしないでください。そう言う目的で来たわけではないので」

 

「たしか、南蛮象之臍之胡麻が必要なのね?」

 

「はい。貴重な物だと思うのですが、これも人助けの為、ほんの少しでいいので分けてもらえませんか?」

 

「元よりあれは、人を苦しみから救う薬の材料として手にいれた物。人助けに使ってもらえるなら、正に本望。それに、朱里がお世話になっている皆さんの頼みとあらば、断る事なんて出来ないものね」

 

「先生、ありがとうございます!」

 

快く了承してくれた。一同は礼を述べる。水鏡は早速、その薬がある部屋へと向かう

 

 

 

 

 

 

「おかしいわね……」

 

引き出しを開け、中を探している水鏡。だが、目当てのものである薬が見当たらない

 

「確かに、ここに入れてあったと思ったのに……」

 

「見つからないんですか?南蛮象之臍之胡麻」

 

「貴重な物だから、紛れてしまわないよう、○秘と書いた赤い紙に包んでこの中にしまっておいた筈なんだけど……」

 

「……っ!」

 

「私の思い違いかしら……」

 

「あ、あの……先生……」

 

「ん?どうしたの?」

 

両手の指を合わせながら、モジモジと落ち着かない様子を見せる雛里

 

「え、えと……あの………いえ、何でもないです」

 

何も言い出さずに終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから客間へと戻り、全員で夕食を堪能していた。

 

「ごめんなさいね、朱里。南蛮象之臍之胡麻、すぐに見つかると思ったんだけど……」

 

「先生、謝らないで下さい。寧ろ、急にやって来た私達が悪いんですから」

 

「ねえ、南蛮象之臍之胡麻って、どっか他では手に入らないの?」

 

「洛陽の市で売ってたりしないのかな?あそこは国中の珍しいものが買えるって聞いたけど」

 

「そうですね……ものすご~く運が良ければ、どこかのお店にあるかもしれませんが、その可能性はとても低いと思われます」

 

「低いって、どれくらい?」

 

「砂漠の砂の中から、目当ての一粒を探し出す位でしょうか」

 

「そんなに!?」

 

「それに今、洛陽にはあまり近づかない方がいいと思うわ」

 

「都で、何かあったんですか?」

 

「大将軍の何進が、宦官の張譲に追い落とされた事は、あなたも当の本人から聞いて知っているわね」

 

「はい」

 

「その後、張譲は何進の代わりに、并州刺史の董卓を宮廷に招き入れたの。自分の手駒となる兵が欲しい張譲と、匈奴征伐で失敗した国力を宮廷の援助で回復したい董卓。当初は、利害が一致してうまくいっていたのだけど、何が原因か…最近は対立するようになってきて、都は随分混乱しているとか」

 

「じゃあ、やっぱり南蛮に行って探すしかないんだ」

 

「けど、南蛮象は大変珍しい動物で、実物はおろか、絵姿すら伝わっていないんですよ。探すと言っても、どうすればいいのか」

 

「南蛮に覇を唱える孟獲大王が、南蛮象を飼っていると聞いたことはあるけど、風の噂で本当かどうか」

 

「そうなんですか」

 

「とにかく、明日もう一度探してみましょう。私の勘違いで、どこか他の場所にしまっているのかもしれないし」

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

「ご主人様は南蛮象がどういう生き物か知っていますか?」

 

「劉備さん…いくらなんでも」

 

「知っているよ」

 

「「「「「えっ!!」」」」」

 

勇作以外驚く

 

「お兄ちゃん!南蛮象知っているのか」

 

「それが俺が想像している動物ならな」

 

「どういう姿か書いてほしいのだ」

 

「わかった」

 

「朱里!筆と紙」

 

「はい」

 

「(いや、驚き過ぎるだろう……それにしても洛陽がそんなことにな…)」

 

勇作は洛陽の事を考えていると筆と紙が置かれた

 

「じゃあ、書くよ」

 

書こうとした時

 

 

ピタ

 

紙の上に何かが落ちる

 

「……赤?」

 

それは赤い水滴だ

 

「(なんで赤が?)」

 

顔を上げる勇作

 

「「「「「「っ!!」」」」」

 

驚きの表情をする桃香達

 

「どうしたの?」

 

「め、目の包帯が…」

 

「包帯?」

 

手で包帯を触ると

 

「…え?」

 

手に血痕が付いた。紙に着いたのは勇作の血だったのだ

 

「(な、何で!血が!!……あれ、俺泣いているのか?)」

 

気付かないうちに勇作が涙を流していることに気付いた

 

「(何で?)」

 

「先生!!包帯!!」

 

「わかました!!」

 

「いや、大したことじゃあ」

 

「「「「「じっとしてください(のだ)!!!!」」」」

 

「はい!!(なんで息ピッタリなの!!)」

 

そんなこんなで夕食を終える一同であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食が終わり、勇作は自分の部屋で休んでいた

 

「ふう、お風呂気持ち良かったな」

 

「失礼します」

 

雛里が部屋に入ってきた

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、心配ないよ」

 

「そうですか」

 

「雛里」

 

「はい」

 

「夕食の時から気になってたけど、何か悩み事でもあるの?」

 

「っ!」

 

「俺で良ければ相談に乗るよ」

 

「いえ、大丈夫です。失礼しました」

 

そそくさと部屋を出る雛里であった

 

「(何か隠しているのはわかるんだが、くそ!覇気を頼りにし過ぎたな。失ってありがたみがわかるとはこのことだな)」

 

 

 

 

 

 

皆が寝静まった頃、眠っていた鈴々はうなされていた

 

 

「待て待て~!待つのだ~~!」

 

素早い動きで屋敷内の廊下を走り回る一匹の小豚とそれを追いかける鈴々。階段を駆け上がり、誰もいない部屋に逃げ込んだ。ゆっくりとした足取りで、小豚に近づいていく

 

「食べたりしないから……逃げちゃ駄目なのだ……」

 

そのまま部屋の中で小豚と鬼ごっこを繰り広げていく

 

「こらこら、待つのだ!!」

 

机の上に乗り掛かり、そこから地面の上へと飛び降りる

 

 

ガシャン!

 

何かが割れる音が響いた

 

「……」

 

肩を震わせ、ゆっくりと振り返る鈴々

 

「うわああ!!」

 

地面の上には、隅の部分が大幅に欠けている硯が落ちていた

 

「こ、これは……朱里が大事にしている硯……!」

 

知るや否や、一気に顔を青ざめる

 

「はわわ~!ど、どうすればいいのだ!ばれたらきっと目茶苦茶怒られるのだ~~!!」

 

パニック状態となり、慌てふためく鈴々。

 

「っ!!」

 

そこで気がついた。何やら、背中に視線を感じ、ゆっくりと振り返る

 

「………………」

 

「あ、あ……」

 

状況を察知し、後ろの扉前にいたたんぽぽは、ニヤリと小悪魔の様な笑みを浮かべていた

 

 

「うわああああ!!はあ、はあ…夢だったのだ」

 

夢だとわかり、安心する鈴々

 

「ほっとしら、おしっこ行きたくなったのだ」

 

部屋をでる

 

「え~とたしか、厠は庭の隅っこに…ん?」

 

何か、物影が動くのを見つけた

 

「ん!!あれってもしかして…泥棒なのだ!?」

 

鈴々の声に皆が目を覚ます

 

「どうしたんですか!?鈴々ちゃん」

 

朱里がランプを片手にやってきた

 

「曲者を捕まえたのだ」

 

「えっ!曲者!!」

 

明かりを照らすと

 

「雛里ちゃん!!」

 

正体は背中に大きな風呂敷包みを背負って目を回している雛里であった



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第九十四席 鳳統、隠し事を話すのこと

遅れてしまいすいません


声を聞き付け、現場に駆けつけた朱里達。最初は驚いたが、すぐに事情を聞くため、客間に場所を移した

 

「一体、どういう事なの?夜中に、こんなに食べ物を持ち出して」

 

雛里が背負っていた風呂敷の中には、多めの食料が積まれていた。

 

「旅に……旅に出ようと思って……」

 

「旅に?旅ってどこへ?」

 

「……南蛮です」

 

驚きを隠せない一同

 

「でも、でも、どうして?」

 

「私の……私の、せいだから……」

 

「え?」

 

「南蛮象之臍之胡麻…私がなくしちゃったの。水鏡先生に言われて作業場の掃除をしていた時、開けっ放しの引き出しに入っていた小物入れが気になって、中に赤い薬の包みが入っていて、マル秘って書いてあるからどんな薬が入っているか見てみたくなって包みを開いたその時」

 

タイミングの悪いことにくしゃみをしてしまい、南蛮象之臍之胡麻が宙に散らばってしまいさらに慌てふためくたせいで足元にあった掃除用の水桶をこぼして地面が水浸しになり薬が台無しにしてしまった

 

「(ということか)」

 

「だから……だから……私が南蛮に行って、南蛮象之臍之胡麻を取りにこよっと」

 

「雛里ちゃんの馬鹿!!」

 

朱里の怒声が、その部屋に響き渡った。

 

「そんな事なら、どうしてちゃんと話してくれなかったの!」

 

「ごめんなさい……せっかく来たのに、南蛮象之臍之胡麻、私が駄目にしちゃったって知ったら、朱里ちゃん怒ると思って……それに……それに……」

 

目元に大粒の雫を溜め込み、両手で顔を包み、嗚咽をあげる

 

「私、確かに怒ってる……でもね?それは雛里ちゃんが隠し事をしてたから。正直に話してくれれば、私、絶対に怒ったりしなかったよ?」

 

「えっ?」

 

「だって私達、お友達でしょ?」

 

「朱里ちゃん……」

 

雛里は朱里に抱きつき、朱里はそれを優しく抱き止めた

 

 

 

「水鏡先生、大変お世話になりました」

 

翌日、勇作達一行は、門前で見送りに来た水鏡に感謝の言葉を贈っていた

 

「それではやはり、南蛮へ行かれるのですね」

 

「はい。昨日、皆で相談して決めたんです」

 

「ですが南蛮は、遥か南の未開の地。そこへ至る道は険しく、狂暴な蛮族が抜扈しているとか」

 

「そうですね、確かに大変な旅になるかもしれません。でも、皆で力を合わせれば、きっと大丈夫ですよ」

 

「朱里ちゃん、気をつけてね」

 

「雛里ちゃんもお勉強頑張ってね」

 

「うん」

 

「朱里」

 

「はい」

 

「餞別になるかは分からないけど、この羽毛扇を」

 

「えっ!でも、これ……」

 

「長い旅になるでしょうから、くれぐれも体に気を付けるのですよ」

 

「はい!ありがとうございます、先生」

 

「それと高杉さん」

 

「はい」

 

「目の方は」

 

「今のところは大丈夫です」

 

「勇作さん」

 

雛里が声を掛ける

 

「どうしたの?」

 

「あの、えっと」

 

「ん?」

 

「一つ約束しても良いですか?」

 

「約束?」

 

「はい…いっぱい勉強して、いつか勇作さん…いえご主人様の軍の軍師になりたいです」

 

「軍師に」

 

「はい」

 

「………」

 

「駄目ですか?」

 

「いや…約束するよ。その時がきたら歓迎する」

 

「ありがとうございます。それと屈んでくれませんか」

 

「ん?こうか?」

 

勇作は屈む

 

「……」

 

雛里は勇作に近づくと

 

 

 

CHU

 

 

勇作のおでこにキスをする雛里

 

「約束の証…です」

 

「………ぇ」

 

「……あう」

 

顔を真っ赤にして水鏡の後ろに隠れた

 

「あらあら、雛里も大胆ね……皆さん、朱里の事を、どうかよろしくお願い致します」

 

「はい!」

 

「お任せなのだ!」

 

 

こうして旅を再開する一行であった

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里はスキップしながら、歩いていた

 

「羽毛扇!羽毛扇!」

 

「あ、あの~、朱里……」

 

「ん?何ですか、鈴々ちゃん」

 

「ちょ、ちょっと話があるのだ……」

 

「話?」

 

「えと、あの……朱里の硯、落として壊しちゃったのは…………………………………………鈴々なのだ」

 

「はわああああああああああ!!!?」

 

「も、もちろんわざとじゃないのだ!あれは不幸な事故で、これっぽっちも悪気は……」

 

「そうですか……やっぱり、あれは鈴々ちゃんの仕業だったんですね……あれは、水鏡先生の御古おふるを譲っていただいた、とても大事な物だったんですよ……なのにそれを……」

 

「な、なんでそんな怖い顔をしてるのだ!?友達なら正直に言えば怒らないって……」

 

「それとこれとは話が別です!!鈴々ちゃん!!」

 

鈴々を追いかけ回す朱里

 

「待ちなさい!!」

 

「にゃにゃ~!許してなのだ~~!!」

 

「許しませ~~ん!」

 

周りを走り回る二人を見て、桃香は呆れた様なため息をつく

 

「もう、二人とも子供なんだから……」

 

「ははは……」

 

「(キスされちゃった……おでこにまだ感触が)」

 

そんなコトを考えていると

 

「ご主人様」

 

「ん?どうし…っ!!」

 

目が笑ってないというより光がない眼差しで勇作を見る朱里がいた

 

「さっきの出来事についてすこしお話をしましょう」

 

「あ、あの朱里さん」

 

「フ、フフ、フフフフフフフフフ」

 

その様子に怯える勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所、時刻は夕方

 

「………」

 

「………」

 

星と翠が距離を開けて歩いていた

 

「なぁ、さっきから何怒ってるんだよ」

 

「別に怒ってなどいない」

 

「いやでも」

 

「さっきの入った店でメンマが一切れ多く入っていた方のラーメンをお主が食べたことで気分を害したわけではない!だから気にするな」

 

翠は苦笑いしながら

 

「大人じゃなかったのかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所、時刻は夜

 

「………」

 

愛紗が一人焚火に当たっていた

 

「不思議なものだな。以前はこうやって一人旅の空の下で過ごすのが当り前だったのに、今はなぜか少し寂しく思える」

 

夜空を見上げる

 

「鈴々、姉上、皆、元気でいろよ」

 

焚火に木を入れようとすると

 

「……」

 

バキ!!

 

真っ二つに木を折る愛紗

 

「ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様」

 

その表情はあの時の朱里同様、光がない眼差しであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を戻して

 

 

「……」

 

桜が咲き誇る庭園の渡り廊下。両手に書簡や巻物を手に一人の女の人が立っていた

 

「賈駆殿」

 

「これは、張譲殿……」

 

「お仕事、捗はかどっていますか?」

 

「ええ、まあ……」

 

「匈奴との戦いで、疲弊しきった貴方達に援助の手を差し伸べ、この洛陽で陛下の側近くにお仕えできる様、計らったのは、一重に貴方達を、国を想う誠の忠臣と見込んでの事。多難な時ではありますが、だからこそ務めに励んでいただかないと」

 

「……承知しております」

 

「ふん」

 

そういうと張譲はその場をあとにするのであった

 

 

「………」

 

悔しそうな表情をしながら賈駆は去年の秋のことを思い出す

 

 

 

 

 

 

とある戦場。董卓の軍は戦をしていた

 

「ご報告します!我が軍の前線が、匈奴の先鋒に突破されました!」

 

「っ!!」

 

「分かった。お前は下がって指示を待て」

 

「はっ!」

 

「どうやら、潮時の様だな」

 

「いいえ、まだ……まだ何か策がある筈……!」

 

「流行り病で遠征軍の半数は歩くのがやっとという有り様だ。これでは、策も何もあるまい」

 

「でも、ここで引いたら、きっと匈奴は我が領土まで」

 

「だからこそ、今は一刻も早く兵を引いて、国境の守りを固めろ」

 

「……」

 

「并州には、まだ呂布の軍が無傷で残っている。あ奴がいれば、押し寄せてきた匈奴の軍勢を追い払う位は出来るだろう」

 

「…………そうね。今はそれが最善だわ」

 

「よし。なら貴様はすぐに撤退の準備を始めろ」

 

「華雄将軍、あなたは?」

 

「幸い、私の手勢は病にかかっておらぬ者が多い。今から図に乗っている匈奴の鼻っ柱を叩いてやろうと思ってな」

 

「む、無茶よ!相手は万を越えているのよ?千や二千の兵で何が出来るって言うの!?」

 

「貴様らが逃げるまでの時を稼ぐぐらいはできるさ」

 

「華雄将軍、あなたまさか……!」

 

「おいおい、勘違いするなよ。私は貴様らの為に、捨て石になるつもりは更々ないぞ?やられっぱなしでは気が収まらんから、ちょいと挨拶してくるだけだ」

 

「けど……!」

 

「心配するな。こんな所でむざむざやられたりはせんさ。何しろ私は………長生きする質たちだからな」

 

 

 

 

「(あの負け戦は、去年の秋の事だった。そして今はもう春……僕のせいだ……兵に流行り病が広まり始めた時、すぐに撤退を決断していれば、あんな事にはならなかったのに!そのせいで華雄将軍が)」

 

 

自責する賈駆であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所

 

 

「ふふ、無様な様子だな」

 

「悪趣味ですよ」

 

「于吉か…何の用だ」

 

「いえ、私はただ通りかかっただけですよ」

 

「そうか、それで例の件は?」

 

「ええ、順調ですよ」

 

「そうか」

 

「ただ、このままでは足りません。もっと怨嗟の声を上げていただかないと」

 

「あれでは足りないというのか」

 

「はい。厄介な人物がいるので」

 

「高杉という無礼者という奴か。朝廷がありながら天の御使いとかほざく」

 

「ですか、奴の強さは本物です。まともに相手をすれば、こちらもただではすみません」

 

「ならどうすれば」

 

「そのためにもっと怨嗟の声を出さなければなりません」

 

「……なにをするか知らないがアレを手に入れるためだ」

 

「期待させてもらいますよ。もちろん貴方にもね」

 

別の場所から一人の人物が出てくる

 

「…………」

 

「(高杉勇作…今は、妖術の呪いに苦しむがい。うふふふふふ)」



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第九十五席 呂蒙、孫権の警護に就くのこと

呉へと向かうため、愛紗は一人で旅をしていたが暇そうにあくびをしていた

 

「ふあわ~一人旅は気楽でいいがいささか退屈だな」

 

そういうとその場で止まり偃月刀を振る……がすぐにやめる

 

「暇つぶしに一人しりとりでもするか?最初は……鈴々…だと終わってしまうから張飛!」

 

歩きながら考える愛紗

 

「ひ……ひ……昼飯!し……し……汁粉!こ……こ……江東!」

 

江東という言葉に愛紗は空を見ながら

 

「江東か。以前あそこに行ったのは随分前の事になるが…孫家の人達は、どうしているであろうな……?」

 

そんなことを考えていると

 

「………」

 

後ろに視線を向ける

 

「隠れてないで出てきたらどうだ。ずっとつけているのだろう」

 

愛紗がそういうと

 

「「「「「へへへ」」」」」

 

賊らしき男が五人出てきた

 

「良く気付いたな。本当はてめえが油断している時に襲うつもりだったが」

 

「あれだけの気配…私が気付かないとでも」

 

「兄貴…やっちゃいましょう」

 

「へへへ、そうだな」

 

「下郎が!貴様らのような悪党はこの関羽が成敗してくれる!」

 

「関羽だと」

 

「関羽ってたしか…天の御使いの所にいる武人で黒髪の山賊狩りと言われている」

 

「はん!山賊狩りは黒髪の綺麗な絶世の美女はずだ!こんな奴が黒髪の山賊狩りな訳ないだろ!」

 

「………」

 

「言われてみればそうですね!」

 

「そうだな」

 

「こんな奴、御使いが好きになるわけなだろう」

 

「そうっすね」

 

「仮にそうなら御使いの見る目が悪いだろうな」

 

「そうだな」

 

「「「ハハハハハ」」」

 

 

そんなふうに賊たちが言っていると

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶっちぃぃ~~~~~~~ん!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だ音?」

 

「何かが切れたような」

 

「あ、兄貴」

 

「どうした?」

 

「あ…あれ」

 

「あれって……ん?ひぃ!!」

 

五人の賊の視線の先には

 

 

「フフフ、フフフフフ」

 

尋常じゃない雰囲気をだし、笑顔でこちらを見ている愛紗がいた

 

「ア、アニキ」

 

「な、何だこいつは」

 

「恐ろしいんだな」

 

「キサマラ!!」

 

「「「「「ひ、ヒィィィィィィィ!!!」」」」」

 

恍惚の表情で妖艶で狂気に満ち溢れている愛紗に怯え始める賊たち

 

「シヌカクゴ」

 

青竜偃月刀を構え

 

「デ・キ・タ?」

 

「や、やばい!!逃げるぞ!!」

 

賊たちは後ろを向いて逃げようとするが

 

「ニ・ガ・サ・ナ・イ」

 

「「「「「!!?!??」」」」」

 

そこにはまるで瞬間移動でもしたのか愛紗が立っていた

 

「……」

 

賊に近づく愛紗。賊たちは逃げようとするが

 

「「「「「(体が動かない)」」」」」」

 

金縛りにあったのか動かなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして五人の断末魔と女の笑い声が響き渡るのであった

 

 

 

 

 

「(ご主人様。私が愛するご主人様。私の心の居場所のご主人様。この関羽、ご主人様を愚弄した者を見事成敗いたしましたよ!ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

 

 

「うお!!」

 

「どうました?ご主人様?」

 

「いや、俺のせいで断末魔が聞こえたような」

 

「断末魔?」

 

「そんなの聞こえなかったのだ」

 

「気のせいでは?」

 

「そうかな?」

 

「きっとそうだよ!」

 

「(おかしいな?見聞色の覇気は今は使えないのに愛紗が向かっている江東の方から聞こえたようだったみたいだけど)」

 

考える勇作

 

「(江東といえばあの人たちはどうしているかな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり江東

 

 

「………」

 

「………」

 

呉軍の訓練場で、二人の女性が組み手を行っていた

 

「ふっ!!」

 

「ふっ!!」

 

一人は、甘寧。もう一人は、丈の短い戦闘服を身に付けた薄い栗色の髪をした少女

 

「ふっ!」

 

「はっ!」

 

他の親衛隊員が観戦する中、二人は拳と拳をぶつけ合う

 

 

「………ふ」

 

模擬戦を遠くから眺めていた孫権は少し見た後その場を後にした

 

 

「……」

 

「……」

 

けん制しあう二人。その時強風が吹く

 

 

少女が勝機と見たか動く

 

 

「はあ!!」

 

「……」

 

甘寧はそれを躱し反撃する。少女が体勢を崩すと甘寧の鋭い蹴りが、少女の顎を捉える。少女もそれに反応し、回避の動きを取る

 

「(見切った!)」

 

顎を引き、甘寧の攻撃をかわし

 

バン!!

 

た見えたが、甘寧の蹴りは直撃。仰向けに倒れてしまった

 

「(かわした……筈なのに)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ち、夕暮れ時となった

 

「あら、呂蒙さん。おかえりなさい」

 

湿布が貼られた顎を押さえながら、寮に帰宅する

 

「ただいま、管理人さん……」

 

「どうなさったんですか、それ?」

 

「いや、その……ちょっと訓練で」

 

寮の管理人に苦笑いで答える呂蒙

 

「ほら、呂蒙さんにおかえりは?」

 

管理人の後ろに隠れる、小さな男の子

 

「ん?」

 

目を細めて顔を見つめる

 

「ひぃぃぃ」

少々つり目気味な呂蒙を見て思わず怯えてしまう男の子

 

「もう、この子ったらいつまでも人見知りが直らないんだから」

 

「あはははは…はあ」

 

重いため息をつきながら、寮に戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ある日

 

 

「えっ、私が孫権様の部屋の警護に!?」

 

「ああ、日が落ちてから明け方までの夜番だ。しっかり励めよ」

机上で書類仕事をしている甘寧から、突如与えられた護衛任務

 

「で、ですが、私にその様な大役……」

呂蒙は慌て出すが

 

「親衛隊には、命令への質問も拒否もない!」

 

「も、申し訳ありません!」

 

姿勢を正し、掌に拳をつけ、礼を行い

 

「呂子明!孫権様の警護の任、慎んで拝命致します!」

 

後ろ歩きで部屋を退室するが

 

ドン

 

「はっ!失礼します」

 

扉にぶつかりながらも退屋する呂蒙。その様子に心配の表情をする甘寧であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

「………」

 

呂蒙は部屋の前で見張りを行っている

 

「あら、あなた……」

 

すると、孫権が戻ってきた

 

「ほ、本日より、孫権様の部屋の警護を務める親衛隊の呂蒙と申します!」

 

張り切っているのか、大声を張り上げる呂蒙

 

「そ、そう……よろしく頼むわね」

 

「はっ!」

行き過ぎるテンションに、思わず苦笑いする孫権

 

「元気が良いのはいいけど、もう遅いし、あまり大きな声は……」

 

「も、申し訳ありません!以後、気を付けま」

 

その口に孫権の人差し指が添えられ、言葉が終わり、ニコリ、と微笑み、部屋へと戻る孫権

 

「……」

 

残された呂蒙は、唇に手を添え、顔を赤くしていた

 

 

 

 

「孫氏いわく兵は国の大事であり死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」

 

「(孫権様は、今夜も学問に励んでおられる。私が警護の任に就いてから、一日たりとも勉強を欠かされた事がないとは……何と熱心な)」

 

数日間、呂蒙は警護を怠る事なく、与えられた任を遂行していた

 

 

「(それにしても、孫権様の声……。凛々しくて、落ち着きがあって、それでいてどこか優しさが感じられて……)」

 

孫権の声音を耳で拾い、聞き入っていた

 

 

 

「どうだ呂蒙、孫権様の様子は?変わった事などないだろうな?」

 

「はい。毎夜、熱心に勉学に励まれております」

 

 

甘寧への状況報告を終え、今日も任務につく呂蒙であった



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第九十六席 呂蒙、学問を志すのこと

ある日の夜

 

「(どうしたんだろう?今日は学問をされる声が聞こえない……こんなことこれまでなかったことなのに)」

 

不思議に思い、そっと扉の近くに寄る

 

ガチャ

 

不意に扉が開かれた。慌てて定位置に戻る

 

「ど、どちらへ!?」

 

「ちょっと、外の空気を吸おうと思って……」

 

「お供します!」

 

ぎこちない動作で、扉を閉める。その最中、部屋の中を見るが景色全てがぼやけて見えてしまう

 

「ん?」

細目で見ていると、怪訝に思った孫権に声をかけられた

 

「どうかして?」

 

「えっ、いや…あ、あの、その……今日は書を読む声がしなかったので、学問をしておられないのかと思って……それで……ちょっとその」

 

「今日は兵書の中で、大事だと思う所を書き写していたの…声に出して読むのもいいけど、こうする事によって内容がより深く理解できるの」

 

「そ、そうですか。そうとは知らず、失礼しました」

 

「呂蒙、あなたもしかして、学問に興味あるの?」

 

「えっ!?あっ、まあ……」

 

「それなら、私と一緒に勉強しない?」

 

「…………は?」

 

部屋の中に入り、書物を持ち、読書を行う呂蒙

 

「そ、孫子……」

 

「孫子曰く、よ」

 

「は、はい……。孫子曰く……兵とは国のだい…………」

 

「兵とは国の大事なり」

 

「し、死生の地、存亡の道、察せざるをべからずなり」

 

「はい、まずはそこまででいいわ」

 

「戦は国にとっての一大事。だから、兵の生死を分ける戦場や、国の存亡を懸けた進路を選ぶ時は、よく考えなきゃいけないって事よ」

 

「なるほど………………って!こんな事してていいんでしょうか!?私なんかと一緒じゃ、孫権様の学問が捗らないんじゃ……」

 

「そんな事ないわ。人に教えるのは、教える方もいい勉強になるのよ」

 

「けど、私には警護の任務もありますし……」

 

「扉の前で立っているより、こうやって側にいた方が、私の事をよりちゃんと守れると思わない?」

 

「それは、まあ、その……」

 

「さあ、それじゃあ次を読んでみて」

 

「は、はい!」

 

読書を再開する。しかし

 

「兵は詭道なり。ゆえに…能なる…もこれに…」

 

文字を読むところで躓いてしまう

 

「不能を示すよ。どうしたの?それ、読めない字じゃないでしょ?」

 

「すいません……」

 

目を細め、文字を見る呂蒙。横で見ていた孫権が、あることに気づく

 

「呂蒙、あなたもしかして、目が悪いんじゃなくて?」

 

「も、申し訳ありません……自分の目付きが悪いのは、従順承知しておりますが……これはその、気に入らぬ事があるとか……機嫌が悪いとかではなく、生まれつきというか……」

 

「違う違う。目付きとかじゃなくて、目が悪いんじゃないか、って言ってるの」

 

そう言うと、呂蒙から二メートル程離れる孫権

 

「これ、何本か分かる?」

 

振り返り、指を二本立てる

 

「からかわないで下さい。いくら学がないとはいえ、数くらい数えられます」

 

「じゃあ、何本か言ってみて?」

 

そう言われ、またも目を細める呂蒙

 

「えっと、二本……いや、三本……二本?やっぱり三本?」

 

「やっぱりね。今度、あなたの務めが休みの時に、一緒に眼鏡を買いに行きましょう」

 

「はい………………ええっ!?」

大声を出してしまう呂蒙であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日、呉の城下町

 

「孫権様、本当に良いんですか?御忍びで買い物なんて……」

 

祭りが行われているかの様な賑わいを見せていた。横笛を奏でる少女の演奏に人が集まる中、賑やかな町中を、二人の少女は歩いていた

 

「大丈夫よ。姉様なんか、しょっちゅうやってる事なんだし」

 

「でも、万が一の事があったら」

 

「心配ないわ。だって、腕利きの護衛が付いているんですもの」

 

満面の笑顔で言われ、思わず惚けてしまう呂蒙

 

「もしもの時は、私をしっかり守ってね」

 

「はい!畏まりましたっ!!」

 

期待に応えるべく、大声で返事をする。乾いた笑いを浮かべる彼女に対し、呂蒙は機嫌良く、笑みを浮かべていた

 

 

 

「………」

 

眼鏡店の前では呂蒙が、文字通り目を光らせて見張っている

 

「う~ん、どれがいいかしら……?」

 

孫権は数個の眼鏡を物色していく。迷っている中、一つの眼鏡が目に止まった

 

「これなんて、お洒落でいいかも。呂蒙」

 

右目用の片眼鏡を手に取る

 

「はい?」

 

「これ、かけてみて。きっと貴女に似合うわよ」

 

早速それを装着

 

「……」

 

鏡に写った自分が鮮明に見えた

 

「どう?」

 

横にいた孫権の笑顔を直視する呂蒙

 

「とっても素敵です……。見えすぎて、困るくらい」

 

いつもよりも魅力が倍増して見え、頬がさくらんぼ色に染まる

 

「そう。なら、それにしましょう」

 

そして寮に着くと、いつもの様に、管理人が寮の前で掃き掃除を行っていた

 

「管理人さん、ただいま」

 

「おかえりなさい……あら、眼鏡……」

 

「ええ、まあ……」

 

管理人の後ろから、そっと顔を出す男の子。呂蒙も目が合い、じっと見つめる

 

「(眼鏡かけてると、これぐらい離れててもはっきり見えるんだ……)」

 

頭を撫でてやると、身を委ねる様に目を瞑る子供。お互いが笑顔になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の雨の夜

 

「えっ!笛の名手?」

 

二人は休憩がてら、お茶の時間を楽しんでいた

 

「ええ。なんでも、町に来ている旅芸人の中に、まだ年若い娘なのに大変な名手がいると噂になっていて。それで姉様が是非聞いてみたいと言い出して、近々屋敷に呼ぶことにしたのよ」

 

「けど、宜しいのですか?その様な、どこの馬の骨とも知れぬ者を、孫策様の側近くに呼び寄せて……」

 

「もちろん、万が一の事を考えて、武器の類は持ち込めないよう、厳重に調べるとは思うけど……」

 

「ですが、献上する魚の腹の中に短剣を隠し、それを持って暗殺を成し遂げた刺客の話もありますし……」

 

「ああ昔、呉王僚を倒した專諸のことね」

 

「はい。御前で演奏する楽器の中に、何らかの武器を仕込んでいるという事も……」

 

「流石、学問をすると目の付け所が違ってくるわね」

 

「か、からかわないで下さい……」

 

「ごめんなさい。でも心配いらないわ…周瑜の指図でその者達には手ぶらで来させ、演奏する楽器も城の蔵にある物から選ばせるつもりだから」

 

「そうですか。やはり周瑜様は私が思い付く事は、既に考えておられるのですね」

 

「あら驚いた……あなた、周瑜の上をいくつもりだったの?」

 

「めっ、めめめめ滅相もありませっ!!」

 

慌てた様に取り繕うも、椅子から転げ落ちてしまう呂蒙

 

「わ、私なんか例えっ!!」

 

立ち上がろうとする際、追い打ちをかけるようにテーブルの足に脛をぶつけてしまう

 

「どれだけ学問を積んだ所で…あの方の足元にはおよぶはずありません!!」

 

かなり痛かったらしく、目尻に涙を溜める

 

「まあ、周瑜に追い付くのはまだまだ先の事かもしれないけど。とりあえず、今の学力がどれくらいかちょっと試してみない?」

 

「試す……って、一体?」

 

「試験をするのよ。私が作った問題を貴方が解いて、そうね…七割正解すれば合格ってことにしましょう」

 

「って突然そんなこと言われても!」

 

「試験は十日後。それでいいわね?」

 

「は、はあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

 

来るべき試験に向け、官舎で自分の部屋にこもりながら、気合いを入れて呂蒙はひたすら勉学に励んでいた

 

 

「……」

 

窓からその様子を小さな男の子が見ていた

 

「シー」

 

管理人と男の子は温かい目で見守るのであった



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第九十七席 呂蒙、暗殺を阻止するのこと

試験当日

 

「………」

 

問題を全て解き終え、孫権が採点を行っている

 

「………」

結果が気になるのか、呂蒙は時折様子を窺う。孫権が立ち上がったと同時に、慌てて席につく

 

「………」

孫権は腕を組んだまま、寝台に腰かける。少しのため息をついた後、呂蒙は孫権の前に立つ

 

「あの、孫権様……試験の結果は?」

 

「試験の……結果は……」

思い詰めた表情を見て、呂蒙も顔が強張る

 

「……………合格よ」

晴れやかな笑顔を見せる孫権

 

「へぇ!?」

呂蒙は思わず呆けてしまう

 

「おどかさないでください」

 

「ごめんなさい。心配そうな顔をしていたから、つい」

 

「よかったぁ……もし不合格だったらどうしようかと…」

主の寝台に身を投げ出す呂蒙

 

「あっ!?」

無作法に気づき、急いで体を起こすが、孫権がそれを優しく制した

 

「そのままでいいわ。二人きりなんだから、堅苦しい事は抜きにして、寝転がってお話ししましょう。そっちの方が楽でいいわ」

 

「はあ」

 

「試験、七割で合格って言ってたけど、八割以上正解してたわよ。これだと何かご褒美をあげなくちゃね」

 

「ご褒美、ですか?」

 

「そう、何か欲しいものある?」

 

「欲しいものとは、違うんですけど……一つお願いが」

 

「何?」

 

「私を、このまま孫権様のお側で仕えさせて下さい!

 

「それは駄目よ」

 

「えっ……?」

 

「だって……それは私からお願いしたい事だから。あなたへのご褒美にはならないわ」

 

「孫権様……」

 

「合格おめでとう」

 

「……ありがとうございます」

 

「あの」

 

「どうしたの?」

 

「一つ聞きたいことがあるんです」

 

「聞きたいこと?」

 

「はい、甘寧様のことで」

 

「甘寧の」

 

「はい、私…親衛隊の訓練で甘寧様と手合せすることがあるんですけど、一度も勝てなくて…努力はしているんです」

 

「………」

 

「けど、まったく歯が立たなくて少し自信を無くしかけているんです。なんで甘寧様はあんなに強いのか知りたくて」

 

「それ、甘寧から聞かなかったの?」

 

「すいません。とても聞けるようなことではなかったので」

 

「そうね。しいて言うならあれかしらね」

 

「あれと言いますと」

 

「呂蒙は高杉勇作って知ってる?」

 

「はい。天の御使いと噂とされ、黄巾の乱で1万の黄巾党の兵を何もしていないのに倒したという」

 

「そうね。天の御使いどうか分からないけど何もしないで倒したって事はあり得るかもね」

 

「どうしてですか?そんなありえないことなのに……なんで?」

 

「実際に見た…いえ体験したといえばいいのかしらね」

 

「体験?」

 

「彼ね一度ここに来たことがあるのよ」

 

そこから孫権は呂蒙に教えた。そこでの出来事、勇作と甘寧の一騎討ち、そしてそこでの体験を

 

 

「という事があったのよ」

 

「そんなことが」

 

「ええ、彼からの威圧は、正直気を失いかけたわ。姉様たちと親衛隊の者は気絶しなかったけど…その人たち以外は」

 

「気絶していた。確かに何もしていないのに倒したというのは信じられますね」

 

「ええ」

 

「もし戦うことになりましたら」

 

「そうね。こちらもただではすまない…いえ済まされないわね」

 

「はい」

 

「けど、甘寧は彼を倒すという目標を見つけた。それを達成するために努力している」

 

「それであの強さですか」

 

「そうね」

 

「(やはり甘寧様は凄いです。私なんかとは全然違う。それに高杉勇作…どんな人物なんだろう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり

 

「ヘックション!!!」

 

高杉達はある洞窟で野営をしていた

 

「どうしました?」

 

「いや、誰か俺の事を噂している気がして」

 

「ご主人様の事を」

 

「ああ」

 

「誰が噂しているのだ?」

 

「わからない」

 

「それだけご主人様は凄い人だという証拠ですよ」

 

「桃香」

 

「さて、そろそろ寝ましょうか」

 

「そうだね」

 

「じゃあ、お兄ちゃんの隣は」

 

「駄目です!今日は私です」

 

「ずるい!」

 

「タンポポが」

 

「(また始まったよ!雛里と別れてから朱里の様子がすこしおかしくなるし、なぜが俺の隣で一緒に寝る権利の争奪戦を行うし、どうしてこうなったんだ)」

 

これまでの出来事に頭を抱える勇作

 

「(覇気使えば一発なんでけど、この状況を考えれば…いやそんな訳ない…そんな訳が……あ、決まったんだ)」

 

そんなこと考えながら眠りにつくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り

 

 

 

「……ん?」

 

孫権は、寝台の上で不意に目を覚ます

 

「やだ、私…いつの間にか、眠ちゃってたんだ」

 

「……」

隣には、呂蒙が同じように眠りに落ちている

 

「……」

起こそうかと思ったが、手を止める

 

「きっと寝る間も惜しんで勉学に励んでいたのね……厠に行ってくるけどともは無用よ」

 

扉の閉まる音で目を明ける呂蒙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月が雲に隠され、辺りが更に暗くなった時

 

「……」

用を済ませた孫権は、厠から出て部屋へと戻っていく

 

「誰っ!?そんな所で何をしているの!?」

城の倉庫の前を通りがかったその時、門前にて怪しい人影が見えた。黒装束に身を包んだその人物は、孫権の存在に気づくと、その場を離れる

 

「待ちなさい!」

 

孫権も急いで後を追いかける

 

「孫権様、どこですか!?」

 

呂蒙はその人物とぶつかってしまう

 

「……」

 

すぐに立ち上がると孫権が怪しい人物を取り押さえていた

 

「曲者よ!手を貸して!」

 

「はい!」

 

こうして怪しい人物を捕えた

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

ドカ!!

 

 

呂蒙に待っていたのは、甘寧の鉄拳による制裁だった

 

「貴様……勤務中に居眠りをしていただと!?」

 

吹き飛ばされ、後ろの棚にぶつけられる。殴られた左頬は赤くなり、鼻血も少量出ていた

 

「忍び込んだのが、ただのコソ泥だったから良いようなものの…もしあれが刺客だったらどうなっていたと思う!!」

 

「申し訳ありません!」

 

呂蒙はすぐ立ち上がり、謝罪の言葉を述べる

 

「失礼します」

 

「何だ!!」

 

親衛隊の一人が二人を見る

 

「早く報告しろ!」

 

「はっ!!台帳と付き合わせてみた所、蔵の中から無くなった物はないとの事。おそらく蔵に入ろうとした所を孫権様が見つけられたものと思われます」

 

「よし!わかった。賊は徹底的に調べ上げて洗いざらい白状させろ!他に仲間がいるかもしれないからな」

 

「はっ!」

 

「昨夜の警備の者には全員、謹慎を命じてある。呂子明!貴様も官舎で沙汰があるまで大人しくしていろ!いいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉の城内にある巨大な蔵。そこには軍備品や、書物などが貯蔵されている

 

「この中の物なら、どれを使ってもよいぞ。好きな物を選ぶがよい」

 

楽器である、琵琶などの弦楽器。勿論、笛などもある

 

「へい、ありがとうございます。さっ、お言葉に甘えて選ばせて頂きなさい」

 

兵士に礼を言うと、仲間である少女に声をかける

 

「……」

 

横一列に並べられた、笛が入っている木箱。少女はその中の一つを手に取った

 

「それでいいのかい?」

 

少女は、微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(馬鹿だ……私はとんでもない大馬鹿だ……!大事な任務の最中に居眠りするなんて……それで、それで孫権様を)」

 

頭、そして拳を壁に何度もぶつけ、やり場のない悔しさ。自分に対する怒りを吐き出していた

 

「呂蒙さん、どうしたの……?」

 

不意に扉が開かれた

 

「えっ……あっ!」

 

「頭いたいの?もしかして、病気……?」

 

「な、何でもない!大丈夫だから……ん?笛?」

 

「呂蒙さん、また目が怖くなった」

 

男の子の腰紐に収まっている見覚えのある笛だ

 

「その笛、どうしたの?」

 

腰を落として同じ目線になり、呂蒙は質問する

 

「拾ったの」

 

「拾った?何処で」

 

「御屋敷の蔵の側……昨日、泥棒が入ったと聞いきたから様子を見に行ってたんだ。そしたら、近くの茂みの中にこれが落ちていたんだ」

 

「(これが茂みの中に?もしかして、孫権様が賊を取り押さえた時に落ちた?いや、待て…あの時、蔵の仲を調べて無くなったものは無いと言っていた。なのにどうして……もし、これが賊が蔵から持ち出した物だとしたら、蔵にあったのは)」

 

そこで、自分が言った言葉を思い出した

 

『御前で演奏する楽器の中に、何らかの武器を仕込んでいるという事も』

 

呂蒙はすぐに、自分の部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、城の謁見の間

 

孫策が玉座に腰掛け、側には右腕である周瑜、侍女の二喬姉妹が控えている

 

「この度は、私共の様な卑賤の者に拙い芸を披露する機会を与えて頂き、恐悦至極に存じます」

 

旅芸人の二人は、垂れていた頭を上げる

 

「つきましては、本人の口より一言御礼の言葉を申し上げたく……さあ」

 

男性から言われ、少女は口を開く。しかし、静かに呟くだけで、何を言っているかが分からない

 

「聞こえないわ。恥ずかしからずに、もう少し近くにいらっしゃい」

 

玉座から立ち上がり、優しく声をかける。孫策からの許しを得て、少女も立ち上がる

 

そして、ゆっくりと歩み寄る

 

「……」

 

距離が縮まった

 

 

その時

 

 

バン!!

 

 

謁見の間の扉が力強く開かれた

 

 

「……」

 

突入した呂蒙はすぐに状況を察知。少女が両手に持っている笛を見ると光に反射していた

 

「控えろ!孫策様の御前だぞ!」

 

呂蒙は足をフル稼働させ、二人組に立ち向かう。少女は急いで刀を引き抜き、孫策の元へと向かう。もう一人の男が間に立ち塞がる。

 

「であああ!!」

 

顔面に飛び蹴りを入れ、そのまま男を土台にし、高く跳躍する

 

「ああ!!」

 

向かい来る刺客の手から、孫策を守る為に周瑜が間に塞がる。刃が届く前に、呂蒙が飛びかかり、これを防いだ

 

「ぐっ!!」

地面に押さえつけられ、刺客の少女は刀を離してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が経ち

 

「けど、驚いたわ!昨夜、忍び込んだ男は刺客の一味だったなんて」

 

テラスに孫策と周瑜がいた

 

「誰しも賊が入ったと聞けば、何かを盗む為だと思うもの。まさかそれが、当家の蔵にある笛を、刃に毒を塗った物と取り替える為だったとは」

 

「楽器はうちの蔵にある物を使う事…言い渡された条件を逆手に取ったという訳ね」

 

「おそらく、取り替えた笛には彼らにしかわからない印が付けてあったのでしょう。身に寸鉄を帯びていない事を確かめた上に楽器もこちらが用意したものと思い込んでしたためすっかり油断してました」

 

「やれやれ、これじゃあ名軍師も形無しね」

 

「面目次第もございません」

 

「うふ、孫家を支える知謀の師、周公謹ですら見抜けなかった罠。しかし、それを見破った者がいた」

 

「親衛隊の呂蒙なるもの…軍師としての才があるやもしれません…いかがでしょう、試しに軍師見習いとして孫権様の傍に置いてみては?」

 

「そうね。蓮華には…今のあの子にはしっかりと携え、ともに歩んでくれるものが必要だわ。私にとってのあなたのようにね」

 

「雪蓮」

 

 

 

 

 

 

そして呂蒙はというと

 

 

 

「如何なる理由であれ、謹慎中に官舎を抜け出し、勝手に行動した罪は重い!分かっているな!」

甘寧から呼び出しを受けていた

 

「はい!」

 

「呂子明!褌を取れ!」

 

「はい!!えっ!?」

 

「純白の締め込みは、誇りある親衛隊の証。貴様には、それを身に付ける資格はない!」

 

面と向かって言い放たれ、茫然と立ち尽くす呂蒙。次第に、目元が潤み始め、涙が込み上げてくる。しかし、言われた通りに、褌を外した。身に纏いし白き布を、甘寧に手渡した

 

「追って沙汰があるまで、官舎で待機していろ。いいな」

 

「はっ!」

 

退室し、官舎にある自室へと向かう呂蒙。しかし、その足取りはどこか重く、意気消沈としている

 

「あっ、いたいた!」

 

落ち込んでいる呂蒙の元に、二人の少女が駆け寄ってくる

 

「呂蒙さん、周瑜様がお呼びですよ」

 

「えっ、周瑜様が?」

 

「ほら、早く早く」

 

戸惑う暇もなく、呂蒙は二喬姉妹に連れて行かれた

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間の玉座に腰掛ける孫策に、傍で控える周瑜がいた

 

「わ、私が孫権様付きの軍師に……!?」

何が何だか分からず、茫然とする呂蒙に、周瑜は答える

 

「といっても、今はまだ見習いだがな」

 

「何かと手のかかる子だけど、妹を助けてやってね」

 

「でも、私ごときが軍師など」

 

「心配するな。貴様には磨けば磨けば光る物がある。それに甘寧が、学問に現うつつを抜かす様な軟弱者は親衛隊には相応しくない!……小間使いでも何でもいいから、私の下で使ってやってくれ……と言ってきてな」

 

「甘寧様……」

 

感謝してもしきれない。呂蒙は心中で礼を尽くした

 

 

 

 

甘寧は城壁の上にいた。風が吹くと呂蒙が身に付けていた白の褌が風に舞い、天高く、高く上がっていった

 

 

「呂蒙、高く……高く舞い上がれ。その志の赴くままに、天高く」

部下の事を思いながら、甘寧は激励の言葉を送った

 

「(……私もがんばれなければな)」

 

甘寧は自分の得物を上に掲げた

 

「(勇作…私はまだまだ弱い、だがいつか貴方を超えてみせる!!)」



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第九十八席 勇作、魏延と厳顔に出会うのこと

「団子~食べたらうまかっ~た!馬を飼ったら~鹿だった~!」

 

竹藪に囲まれた道を、勇作達は歩いており、鈴々は歌を歌っている

 

「(みたらし団子美味いな……みたらし団子よりずんだの団子のほうが好きだけど)」

 

茶店で購入したみたらし団子を食べながら、談話していた

 

「ねぇ、孔明ちゃん…さっきの茶店で、知らないおじさんと何を話してたの?」

 

「あの人、旅の商人で、都の方から来たと行っていたので、洛陽の様子を聞いていたんです」

 

「へぇ~、そうなんだ。で、どうだった?何か面白いこと聞けた?」

 

「……やはり洛陽には、近寄らなくて正解でしたね」

 

「……」

 

「今や朝廷は、完全に董卓が牛耳っていて、とんでもない悪政を強いているとか」

 

「悪政って何なのだ?」

 

「酷いまつりごとです。民に重い税を課した上に、大規模な土木工事を起こし、逆らう者は片っ端から捕まえられて牢に入れてしまうため…民の間では、怨嗟の声が満ち満ちているそうです」

 

「酷い……」

 

「…………」

 

「ええ、それに噂ですけど捕まえられた者の中には董卓を暗殺しようとしたものがいたそうでその人たちを全員処刑したとか」

 

「…処刑」

 

「ただ、勝手にそう言っている事でしたので、もしかしたら冤罪で処刑されてしまったかもしれません」

 

「そんな、いくら何でもひどすぎるよ!!」

 

「(…冤罪)」

 

「でも、それってなんかおかしいのだ。鈴々とお兄ちゃんは前に董卓に会った事があるけど、そんな悪い奴じゃなかったのだ」

 

「そうですね……私は本人を知らないので、はっきりとした事は言えませんが、董卓といえば、あの呂布さんの飼い主じゃなくて、御主人な訳ですから、それを思うとちょっと腑に落ちない所はありますね」

 

会話をしながら歩いていると

 

「……」

竹藪から何かが飛び出してきた

 

「あっ」

 

「ああああああああ」

飛び出してきた一人の少女は、たんぽぽにぶつかってしまう

 

「あっ!?」

 

「あああああああああああああ!!?」

突然の事で対応できず、少女は尻餅をつき、たんぽぽは前向きに倒れ、手からみたらし団子が手放され、地面に落下した

 

「はっ!!」

少女は我に帰ると

 

「あっ!おい!待て!!」

背を向けて走り去っていった

 

「あんにゃろう、ぶっとばしてやる!待て~~!!」

 

たんぽぽは槍を手に、女性を追いかける

 

「ちょっと!!たんぽぽ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「待て!!」

 

野道を走り、徐々に距離を縮め、タンポポは跳躍し槍を振り下ろす

 

「っ!!」

 

それに気づいた女性は、咄嗟に得物である剣を抜いて防御する

 

「何のつもりだ!!」

 

「団子の恨み、晴らさせてもらうぞ!!」

 

槍を構え直し、タンポポは攻撃を行う

 

ガキン!ガキン!ガキン!

 

連続して繰り出される槍の突き、少女はそれを剣で捌いていく

 

「餓鬼の癖に少しはやる様だな」

 

数回打ち合うと、距離が開かれた

 

「何だと!」

たんぽぽが若干息切れをしているにも関わらず、相手はまだ余裕を見せている

 

「もう少し遊んでやりたい所だが、今はその暇が惜しい。ケリを着けさせてもらうぞ!」

少女は剣を手に、距離を詰める

 

「とお!!」

素早く、鋭い突きを繰り出す

 

「ぐっ!!」

 

防戦一方になるたんぽぽ

 

「とおおおお!!!」

相手は剣を振りかぶり、上から一気に振り下ろした

 

ガキンッ!

 

重い音と共に、足元の石に躓き、バランスを崩して尻餅をついてしまう

 

「もらった!!」

 

「っ!!」

剣を振り下ろす少女。タンポポは思わず目を瞑る

 

 

 

 

ガチン!!

 

 

 

たんぽぽが目を開けると

 

「張飛!!」

 

鈴々が自分の得物で剣を防いでいた

 

「助太刀にきたのだ!!」

 

「くそ!!」

 

少女は後ろに下がり距離をとる

 

「何だってんだ!今日はどっかでチビの大安売りでもしているのか!?」

 

「世を乱す悪党め!冥土に逝った馬岱の仇取らせてもらうのだ!」

 

「あ、いや~まだ生きているから」

 

「うりぁやああああ!!」

 

蛇矛で突きを連続で繰り出す

 

「(何だこいつ)」

 

剣で防御するが

 

「(チビのくせに一撃一撃が重い)」

 

鈴々の攻撃に防戦一方になる

 

「鈴々ちゃん」

 

そこに遅れてきた勇作、朱里、桃香が来た

 

 

「……」

 

少女は勇作達の方をみる

 

「あ」

 

朱里と桃香は肩を上下させながら息を整え、そして少女は桃香を見た瞬間、頬が微かに赤くなる

 

「隙やりなのだ!」

 

鈴々の攻撃に少女の手から剣が離れ、上に舞う。そして少し先に刺さる

 

「覚悟するのだ!!」

 

蛇矛の突きが少女に刺さろうとした

 

 

 

その時

 

 

 

ドン!!

 

地面に何かをぶつけた音が鳴る

 

「そこまでっ!」

 

「ん?」

 

全員が音と声がした方に視線を向ける。そこには一人の女性がいた

 

「なんだ!お前も悪党の仲間か!だったらこいつと一緒に成敗なのだ!」

 

「(誰なんだ?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの茶店に場所を移した一同

 

「申し訳ない!!」

 

女性は頭を深々と下げ、謝罪する

 

「貴様も頭を下げんか!!」

 

少女の頭を掴み、無理矢理頭を下げ鈍い音と共に、机に頭をぶつけてしまった

 

「儂の名は厳顔。この巴群の太守だ」

 

「太守様ですか?」

 

「で、この馬鹿は魏延。まあ、儂の弟子というか、居候というか、とにかく手間のかかる奴で……幼い頃より手元に置いて武術を仕込んでおったのだが、長ずるに従い、少しばかり腕が立つのを鼻にかけ、今では毎日喧嘩三昧の暴れ者に」

 

「え、えっと~」

 

「今朝も町中で破落戸共と大立ち回りを演じた挙げ句、儂がその事で御灸を据えてやろうとしたら…卑怯千万にも逃げ出しよって、それだけでも許しがたいというのに、逃げる途中でまたしても人様に迷惑をかけるとは」

 

「あの、その事ならもう…お団子の方も弁償してもらいましたし」

 

テーブルの上には、大量の団子が乗った大皿があり、たんぽぽは勿論、鈴々も次々に口へと放り込んでいた

 

「(それにしても、厳顔と魏延に出会うことになるとは……団子食べよう)」

 

そんなことを考えながら団子を食べる勇作

 

「……馬岱ちゃんも、いいですよね?」

 

「えっ?まあ……うん……」

渋々と返事をする

 

「(納得していないみたいだな)」

 

「いや、団子くらいでは気が済まぬ!頼む!お主ら、この厳顔の顔を立てると思って、一つ儂のもてなしを受けてくれ!」

 

そう言われ、勇作達は厳顔の住む屋敷に行く事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、厳顔様」

 

門番が挨拶をする

 

「んっ。変わりないか?」

 

「はっ!」

 

塀に囲まれた、立派な屋敷を見回し

 

「へぇ~、厳顔さん本当にこの辺りを治める太守様だったんだね」

 

「けど、全然そうは見えないよね」

 

「しっ!そんな事言っちゃ駄目ですよ!」

 

朱里は慌て出す

 

「厳顔、全然偉い人には見えないのに、本当に太守でびっくりなのだ」

 

「はっはっは!そうか、儂が本当に太守でびっくりしたか?」

厳顔は高笑いする。

 

「……」

音を立てずに去ろうとする魏延

 

「ちょっと」

 

勇作は魏延の手首を掴む

 

「な、何をする!!」

 

「どこ行くの?」

 

「おい焔耶。何処に行く?」

 

「あっ、いえ……ちょっと用足しに……」

 

「なら、その前にちょいとお仕置きを受けてってもらおうか?」

 

その一言に顔面蒼白。魏延の顔は正にその状態となった

 

「(それにしても)」

 

厳顔は勇作を見る

 

「(こやつはいったい何者なんじゃ。只者ではないことは明らかじゃが……それは後にするか)」



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第九十九席 魏延、一目ぼれするのこと

玉座の背後に設けられた隠し扉。そこは石造りの壁に囲まれ、地下牢に似た部屋があった

 

「(何でこんな所にこんなのがあるんだよ)」

 

魏延は両腕を上げる様にして拘束され、身体中も縄できつく縛り付けられていた

 

「さぁて、今回はどれにするかな?」

 

品定めをする様に、武器の数々をじっくりと眺める厳顔

 

「あの、厳顔さん……あまり手荒な事は……」

 

「いやいや、そういう訳には……ん?よし、今日はこれにするか?」

 

厳顔が取り出したのは、綿付きの耳掻きだった

 

「(えっ?)」

予想だにしない物に、一同は目を丸くする

 

「き、桔梗様……そ、それは……」

 

魏延は、顔をひきつらせていた。

 

「焔耶よ、覚悟は出来ておろうな?」

 

「やめ、やめてください!」

 

逃げる様にして仰け反るが、厳顔は綿の部分を魏延の腹に接触させる

 

「あっ……ああ……!」

 

「ここはどうだ~?それともこっちか?」

 

「(どっかの悪代官か!アンタは!!)」

 

「桔梗様……っ、そこは、駄目ぇ……!」

 

するとうずうずと眺めていた、たんぽぽが

 

「ねえねえ、タンポポにもやらせて!」

 

「やってみるか?では」

 

「こ、こらっ!」

 

綿で魏延を擽っていき、喘ぎ声が更に増した

 

「え、え~と、これはちょっとなんていうか」

 

「……っ!だ、だめです」

 

朱里は、はっ、とすると鈴々に目隠しをした

 

「これ以上は鈴々ちゃんの健全の育成にとって有害です!!」

 

「なんでなのだ!?なんで鈴々は見ちゃだめなのだ!!

 

魏延の淫らな悲鳴が響き渡るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり

 

 

「ふぅ……」

 

湯船に浸かり、旅の疲れを癒している桃香

 

「旅に出てから、毎日歩いているからちょっと引き締まってきたかも」

 

「劉備殿」

 

湯室の扉の向こうから声がする

 

「湯加減は如何です?」

 

声の主は魏延だった

 

「丁度いいです」

 

「良かった……。それでは、お背中を御流しします」

 

「……へっ?」

 

魏延は胸にさらしを巻き、スパッツを履いて、湯室に入ってきた

 

「あ、あの……本当、お気持ちだけで結構ですから……」

 

「いいえ、御迷惑をお掛けした償いとして、これくらい当然です」

 

「は、はあ」

 

少し困惑気味の桃香

 

「い、如何ですか?」

 

「あっ、はい。気持ちいいです」

 

「そうですか!気持ちいいですか!」

 

ゴシゴシも更に拭く力を強める

 

「あ、あの、背中はもうそれぐらいでいいですから……」

 

「了解しました!それでは、次は前を洗わさせて頂きます」

 

「えっ?」

 

「身体中、隅から隅まで、隈無く、ねっとり、丁寧に……!」

 

「あっ、ちょっ、そこはだ、だ、駄目ぇ~~~~~!!」

 

今度は、湯室に桃香の声が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

「おお、孔明殿、劉備殿の具合は?」

 

「ちょっとのぼせましたみたいですけど、しばらく横になっていれば良くなると思います」

 

「すまぬ。孔明殿…もてなすつもりがまたまた迷惑をかけてしまって」

 

「ああ、いえ、そんな……けど魏延がああした行為に及ぶなんて、もしかして劉備さんのことを」

 

「う~ん…どうやら焔耶の奴、劉備殿に一目ぼれしてしまったようじゃな」

 

「ええっ!」

 

「実は焔耶には姉が一人いてな、あ奴が幼いころ病で亡くなったのだが、それが劉備殿によく似ているのだ」

 

「まあ」

 

「生き写しと言ったら少々大げさだが顔形といい…乳の張り具合といい、ちょっとゆるそうな所といい…本当に良く似ている。焔耶の奴、よほどその姉が好きだったようで、今でも姉に似ている女性をみると、ほーっとなって、カッとなって訳がわからなるなしくて」

 

「そうだったんですか……うん、所で魏延さんは?」

 

「焔耶の奴はとりあえず、縛って吊るしておいた。これからじっくりおしおきしてやるつもりだ」

 

「は、はあ」

 

「所で孔明殿」

 

「はい」

 

「お主たちと一緒に居たあの男は?」

 

「ご主人様のことですか?」

 

「うむ、只者でない雰囲気をしていたが、あ奴の名前は?」

 

「はい、ご主人様の名前は高杉さんです」

 

「高杉……なるほど、噂の天の御使いであったか」

 

「はい」

 

「なるほど、奴が噂の……なかなかいい男ではないか」

 

「は、はい」

 

「それで孔明殿は御使い殿と何処まで進んだのだ」

 

「え?」

 

「添い遂げしたとか、子種を貰う行為をしたとか」

 

「はわわ!!!何言っているんですか」

 

「その慌てようからしてまだしていないようだな!」

 

「ううっ!!」

 

顔を真っ赤にする朱里であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「何だと!!もうぺん言ってみろ!!」

 

屋敷の中庭に大声が上がる

 

「ああ、何度でも言ってやる」

 

「どうしたんですか!?二人とも」

 

大声を聞き付け、朱里と勇作に桃香、鈴々がその場に駆け付ける

 

「こいつが、たんぽぽの武術がショウベンくさい子供の遊びだって」

 

「本当の事を言ったまでだ!」

 

「なんだと!」

 

「二人とも喧嘩はよすのだ!」

 

「つるぺたのチビは黙ってろ!!」

 

「何てこというのだ!朱里に謝れ!なのだ!」

 

「(おい!お前の事だぞ!)」

 

「あの、鈴々ちゃん…それってどういう」

 

「孔明!張飛!止めるな!こいついっぺんブッ飛ばしてやらないと気が済まないんだ」

 

「なら、一生気が済むことがないな」

 

「言わせておけば!!」

 

「能書きはいいからさっさと来い!!」

 

「いい加減にせんか!!」

 

全員が声のした方に視線を向けると

 

「焔耶…わしの部屋までこい」

 

厳顔がいた

 

 

謁見室へと呼ばれ、その前に立つ魏延

 

「焔耶よ…儂は貴様に事あるごとにつまらぬ喧嘩はするなと言い聞かせてきた。己の力の使い方をもっと良く考えろと……」

 

厳顔は一枚の紙を取り出す。そこには、黒い筆字で厳顔、魏延と、二人の名前が書かれていた

 

「だが、貴様はそれには耳を貸さず、己が力をひけらかす為だけに、意味もなく剣を振るってきた」

 

今度はその紙を紐状に丸め、魏延の得物である剣。その鍔と鯉口に付属している輪に通し、それを結び付ける

 

「よいか?今見た通り、この紙縒こよりには儂と貴様の名前が書いてある。儂に断りなく剣を抜けば、この紙縒は切れる。そしてその時は、師弟の絆も切れたものとして貴様は破門だ!分かったな」

 

魏延は拳を強く握り締めた

 

「が、焔耶よ」

 

「はい」

 

「そこにいる高杉殿と一騎討ちをして勝つことができれば、この件は不問にしてやる」

 

「えっ!」

 

「いや、厳顔さん!いったい何を言っているの!!」

 

「どうだ!やるのか」

 

「やります!」

 

「えっ!」

 

「私があんな貧弱な男に負けるはずがない」

 

「貧弱って」

 

「じゃあ決まりだな!!」

 

「(なんか勝手に決められてしまった)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして中庭

 

「……」

 

勇作と魏延が対峙していた

 

「……両者準備はいいか」

 

厳顔が審判を務める

 

「はい」

 

「……」

 

「おにいちゃん頑張るのだ!」

 

「ご主人様、そんなやつブッ飛ばしちゃえ!!」

 

「(気楽でいいな)」

 

「貴様に恨みがないが勝たせてもらう」

 

「魏延」

 

「何だ!」

 

「俺、そんなに貧弱に見えるのか?」

 

「当り前だ!男は皆、貧弱だそんなやつに私が負けるはずがない」

 

「…はあ~」

 

大きくため息をつく勇作

 

「な、何だ!やる気のないため息は!!」

 

「相手の器量も分からず、男は弱いと決めつける。井の中の蛙とはよく言ったものだ!」

 

「な、何だと!!」

 

勇作は右手で指を1本立てた

 

「1回だ」

 

「何?」

 

「俺が攻撃するのは1回だ!それで貴方を倒す」

 

「貴様!舐めるのもいい加減にしろ!!」

 

「それはどうかな…来いよ」

 

魏延は剣を抜くと勇作の頭に向けて振り下す

 

「でああああ!!」

 

「ふん」

 

簡単によける

 

「この!!」

 

素早く、鋭い突きを繰り出すが

 

「ざんねん」

全て簡単に避けられた

 

「何で当たらないんだ!」

 

「(当り前だ!俺はとんでもない化け物達と修行で戦ったんだ!見聞色の覇気が使えなくても、これくらい簡単に見切れるだよ!)」

 

「くそ!!」

 

剣が一直線に勇作の首に迫る

 

「(貰った!!)」

 

決まったと確信する魏延

 

 

 

ガチン

 

 

「…え」

 

だが魏延の双眸が驚愕に大きく見開かれる

 

「……」

 

まるで時が止まったかのようにピタッと動きを止めた剣

 

「これでおしまい?」

 

疑問を声を掛けなら、剣の刃先を摘まんでいた

 

「……」

 

思考が停止する魏延。おそらく決め技だったかもしれない

 

「じゃあ、次は」

 

剣を離し、2、3歩下がって距離を置き、刀を抜く勇作

 

「俺の番だな」

 

魏延に近づき、刀を振り下ろす

 

「!!」

 

剣でガードする魏延が

 

チャリン

 

「…ぇ」

 

音と共に、視線を向けると剣身が落ちていた

 

「う…そ…」

 

そう見事に真っ二つに切られていた

 

「あ…ああ…あ」

 

そして魏延は理解してしまった。自分がいったい何と対峙していたのかを

 

「さあ、フィニッシュだ!」

 

覇王色を発動し近ずく勇作

 

ドサ

 

恐怖のあまり尻餅をついて動けなくなる魏延

 

「ヒッ!!(こ、殺される)」

 

死を悟ったのか周りの光景が遅くなった感覚になる

 

「……」

 

「(助けて!!)」

 

目を瞑る魏延

 

「……それまで!!」

 

試合終了を宣言する

 

「……」

 

恐る恐る目を開ける

 

「…大丈夫?」

 

片膝を着いて目線を合わせる勇作

 

「……」

 

何とか答えようとするが、声を出せないでいた。さらに恐怖のあまり腰が抜け、体が言うこと聞かないでいた

 

「……」

 

手を差し出す勇作

 

「…あ、ありがとう」

 

手を借りて何とか立ち上がる魏延。そして地面を見てみると濡れているのが分かった。恐怖のあまり失禁してしまった魏延

 

「(ヤバい、少しやりすぎたかも)」

 

少し後悔する勇作

 

「(ここまでとは、噂以上だったな)」

 

勇作の強さに驚愕する厳顔であった

 

 

 

 

 

 

そして、町の外れに当たる一軒の小屋

 

「なに?魏延に喧嘩禁止令?」

 

「へい。厳顔の屋敷で働いてる奴に聞いたんですがね?今度厳顔に無断で剣を抜いたら破門だって」

 

「ふ~ん……へへへ…魏延、今までの借りまとめて返してやるぜ」

 

そう言うと、手に持った酒瓶を地面に投げ捨てる

 

「チビ!デク!すぐに数を集めろ!」

 

「「へい!」」

 

数人の男達が不穏な動きを見せるのであった



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第百席 厳顔、町を案内するのこと

第百話目です

後書きにお知らせがあるので見たい人は見てください

では、どうぞ


翌日、厳顔に連れられ、町を歩いている勇作達。賑やかな町並み。町民達が行き来し、商売人達が生き生きと商売している

 

「太守様、今日は果物がお安いですよ」

 

女主人が、厳顔に声をかける

 

「ああ、悪い。また今度な」

 

「おや?しらふとは珍しいね?寄ってかないの?」

 

わざとらしい咳をする厳顔

 

「太守の厳顔さんが、自ら町を案内して下さるなんて、何だか申し訳ないですね」

 

「なぁに、この町の事なら、儂が一番詳しいからな。まず何と言ってもおすすめはだな……ここ!」

 

厳顔が指差した先にあったのは、酒と書かれた看板が置いてある酒屋

 

「(いや、お酒飲めない人もいますよ)」

 

聞こえたか知らないが、その事に気づき、気まずくなった厳顔は

 

「………………ではなくこっちだ!」

 

その向かいにある店を指差す

 

「(武器商行?)」

 

武器屋があった

 

「うわ~色んな武器がいっぱいあるのだ!」

 

「あっ!これって姉様の武器に似ててかっこいいかも」

 

中には様々な武器類が、至る所々に立て掛けられている。鈴々とたんぽぽとは、興味津々に眺めている

 

「(なんかローグタウンの武器屋を思い出すな)」

 

勇作も物思いにつかる

 

「「……」」

 

桃香と朱里は、物珍しそうに見渡していた

 

「ん?なんだ、見慣れぬ武器だな」

 

カウンターに凭もたれていた厳顔。ふと見上げてみると、天井にぶら下げられている武器が目に入った

 

「はい、これは豪天砲と申しまして、何でも曹操配下の李典と申す者が発案した物とか」

 

巨大な刃が付属された回転弾倉式のパイルバンカーがあった

 

「ほほう……曹操の所には、有為の人材が集まっていると聞いたが、武器を造る者までいるのか」

 

厳顔はそのまま、豪天砲をじっと見つめていた

 

「はぁ~」

 

「どうした店主よ。浮かぬ顔をしているが」

 

「いや、太守様がお気になさるほどでは」

 

「気にするでない。話した方が楽になるぞ」

 

「……わかりました」

 

そういうと店主は店の奥に行き、布に包まれた物を持ってきた

 

「それは?」

 

「これが原因なんです」

 

布を外すと、一本の刀と鞘が現れた

 

「ほう、見事な刀だな」

 

漆黒を思わさるほどの黒色をした柄と鞘と刀身そして刃紋は赤色の直刃で鍔も朱色の刀が出てきた

 

「はい、見事な刀ですが」

 

「いったいこの刀がどうしたの言うのだ?」

 

「どうしたんですか?」

 

勇作が気付き、近づく

 

「何々、どうしたの?」

 

ほかの皆も集まってきた

 

「うわぁ~きれい」

 

「(黒刀を思わせる武器だな)」

 

勇作はそれを手に取ろうとするが

 

「無暗に触らない方が良いですよ」

 

「何でですか?」

 

「呪われるかもしれませんから」

 

「呪われる?」

 

「どういう事じゃ?」

 

「……」

 

店主は語り始める

 

「ある名門の刀鍛冶に一人の息子がいたんだが、その息子は刀鍛冶の才能がなく腫物の扱いをしていたんだが、ある日その息子は家を飛び出したんじゃよ」

 

「ふむふむ」

 

「だが半年後にその息子がある刀を手に戻ってきたんじゃよ」

 

「もしかして」

 

「それがこの刀じゃよ。息子は自分で作ったを言っていたが、あまりの出来の良さに一族は不振がっていたが、その刀を噂はたちまちに広がりその刀を一目見ようと人が集まってしまいそれどころじゃなくなってしまったんじゃ」

 

「それで」

 

「だか、息子が帰ってきてから一週間後に息子を含め一族が全員死んでしまったんじゃ」

 

「ええ!!」

 

「それだけなく、この刀を手にした者も全員不運の死を遂げてしまい、今じゃ妖刀と呼ばれているんじゃ」

 

「妖刀」

 

「だったらささっと処分すれば」

 

「それが出来ないのじゃ。この刀を処分しようとした奴もいたが、その人も家族も悲運の死を遂げてしまってな。だから処分することが出来ないじゃよ」

 

「……」

 

「どうやって手に入れたんじゃ、これを」

 

「ある人物が売りに来たんじゃよ。妖刀とは知らずな…あとからこのことを知ってしまったんじゃな。このままじゃ呪われて死んでしまう」

 

話を聞いた勇作は尋ねる

 

「方法は無いの?」

 

「誰かに渡して了承をしてもらうしか方法ないんじゃが…だが何も知らない人物に売りつけるのは」

 

「……」

 

勇作は刀に近ずく

 

「どうしたんじゃ」

 

勇作は刀を手に取る

 

「じゃあさ、俺に譲ってよ」

 

店主は驚いて声を上げる

 

「な、何言っているんじゃ!話を聞いていたのか!!お主は」

 

「そ、そうですよ、この刀を手にしたら」

 

「死にはしないよ」

 

「そんなコト信じられるかよ」

 

「じゃあこうしようか」

 

「ん?」

 

「俺の運と、こいつの呪い…どっちが強いか試してみようか?」

 

「え?」

 

そういうと勇作は刀を回転させながら上に投げ、刀の下に自らの腕をかざした

 

「な、何やってんじゃ!!お主!!腕が吹っ飛ぶぞ!!」

 

主人が叫ぶ。他の皆は突然のことに止まってしまい動けないでいた

 

「……」

 

目を閉じる勇作。そして回転しながら下に落ちてくる

 

「……」

 

その光景に口を押える者、目を瞑る者、息を呑む者とその瞬間を見る

 

ブンブンブンブン

 

刀が勇作を腕を切り落とそうと迫る

 

ガチーーン

 

刀は勇作の腕を切り落とさずに通り、地面に突き刺さったのであった

 

「………これで文句ないでしょう」

 

笑顔で言う。勇作の勝ちであった

 

「……」

 

ホッとしたのか腰を抜かして座る桃香と朱里であった

 

 

 

武器屋での出来事を終えた勇作は

 

「次はここだ!」

 

「(競馬場!?なんであるの!!)」

 

競馬場で来ていた

 

「あは!立派な馬がいっぱいなのだ」

 

「今からあの馬達を競争させるのだ」

 

「(俺のいた世界とまったく同じだな…これ)」

 

開始の銅鑼が鳴り、馬が一斉に出馬した。迫力のある地鳴りを響かせ、コースを走り抜ける

 

「いけいけぇ!!よしよしっ!そのままそのまま!もうちょい!よしっ、いいぞ!いいぞ!いけいけいけいけいけぇ~~!!」

 

厳顔はというと、馬券らしきものを手にし、選んだ競走馬に檄を飛ばす

 

「面白かったのだ」

 

「たく…あと少しという所で落馬するとは……」

 

結果は駄目で肩を下ろして落胆する厳顔

 

「馬好きの翠さんに見せたら、喜んだでしょうね」

 

「喜びすぎてチビっちゃうかも」

 

「パイパイちゃんなら、白馬で出るって言いそうだよね」

 

「パイパイじゃなくて白蓮だよ」

 

「けど、オススメの第一が武器で、その次が馬って、厳顔は武人の鏡なのだ」

 

「お!お主、武人の心が分かる様だな」

 

「もっちろんなのだ!」

 

「武人の鏡というよりは……」

 

「趣味がおっさん臭いだけじゃない」

 

「あははは」

 

「さて!そろそろ昼時だし、飯にするか」

 

「やった~~なのだ」

 

 

 

勇作達は拉麺の看板が掛かってある店に来ていた

 

「ニンニク入れますか?」

 

「野菜マシマシニンニク油」

 

「鈴々も同じものなのだ」

 

出てきたのは見た目も中身もインパクト抜群なラーメン

 

「(な、何だよこれ!!この店、のちのラーメン○郎か何かか!!)」

 

「(絶対、絶対太る……これ全部食べたら絶対に太っちゃう……)」

 

麺どころかスープすら見えない溢れ出す程に乗せられた野菜炒めにニンニクにチャーシュー

 

「あ~食った食った」

 

「美味しかったのだ~」

厳顔と鈴々は難なく完食しご満悦な表情で、町を歩く二人

 

「な、なんとか食べたぞ」

勇作も何とか完食した

 

「「「………」」」

 

桃香達は苦しそうに呻いていたその後をトボトボとついていく

 

「よし、この調子でもう一軒行くか」

 

「賛成なのだ」

 

「(まだ食うの!!)」

 

勇作達は顔を引きつらせる

 

「次のラーメン屋はこってりとした汁が天下一品で……ん?どうした?」

 

「厳顔さん……私達、もうラーメンは……」

 

「おいおい、つまらん遠慮は無しにしよう」

 

「あの、ここに来るまでに本屋さんがあったんですけど、私書物が好きなのでそこに行ってみたいんですが……」

 

「わ、私も書物が好きなので!」

 

「た、たんぽぽも!」

 

「厳顔、早く天下一品のラーメン食べに行くのだ」

 

「いや、だが……」

 

「わ、私達の事は気にせず、鈴々ちゃんと行って下さい」

 

「そうか……では、そうするか。もし迷ったら厳顔の屋敷と言えば、この町の者なら誰でも知っているから」

 

「は~い、ご心配なく…………」

 

厳顔が鈴々と立ち去った後、勇作達は一気にため息をつくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~危ないとこでしたね」

 

それからは四人で、町を散策する事にした

 

「たんぽぽも結構食べる方だけど、あれ以上はちょっと……」

 

「けど、鈴々ちゃんも厳顔さんもすごいよね。あれ食べてもケロッとしてるなんて」

 

「そうだね」

 

「それよりご主人様」

 

「ん?」

 

「その刀どうですか?」

 

勇作の腰にはさっきの刀を挿していた

 

「良い刀だよ」

 

「けど、あんなことして」

 

「それに関してはもう朱里から…」

 

無事、刀は手に入れたが、方法が悪かったのか朱里から説教を受けていた

 

「本当にびっくりしたんだから」

 

「ごめん」

 

謝る勇作

 

「(それにしても、あの刀を見た瞬間、すごく欲しくなったんだけどなんでなんだろう)」

 

「また明日あの店に行くだよね」

 

「ああ」

 

あの後、勇作の武器である応龍を店主に見せた所、あまり手入れされたいなかったようだったので、代金の代わりと言って手入れすることになり六本すべてを預けてきたのであった

 

「(目の色変えていたけど、盗んだりしないよね)」

 

心の中で心配をする勇作であった

 

「あ!」

 

すると、桃香はあるものを見つける。道端に置かれた大きめの箱。そこには、大量のひよこがいた。見た瞬間、その場に駆け寄る

 

「かわいい~ふわふわでピヨピヨだ~ねえ見て見て、この子達すっごくかわいい………あれ?」

 

振り返ると、勇作達の姿が見当たらない。はぐれてしまった桃香であった




新しい活動報告があります

見たい人は見てください

今後もお願いします


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第百一席 魏延、禁を破ぶるのこと

TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者の今年最後の投稿です

来年もよろしくお願いします

では、どうぞ


河原沿いの土手道を外れた、雑草生い茂る坂。そこで仰向けに寝転がり、青空を見上げる魏延

 

「へっ、探したぜ」

 

そこへ、数人の男達がやって来た

 

「……何の用だ?」

 

「てめぇに今までの借りを返そうと思ってなぁ?」

 

「これまで散々ぶちのめされてきた癖に、懲りない奴だ」

 

魏延は立ち上がり、剣に手を添える

 

「おっと、いいのかぃ?そいつを抜いちまっても」

 

相手は余裕の表情を浮かべたままだ

 

「!!」

 

厳顔に禁止令を言い渡され、刀剣に紙縒が鎖の様に結びつけられていたことを思い出す

 

「へへっ、厳顔の許し無しに剣を抜いたら破門なんだろ?えぇ?」

 

「貴様!」

魏延に詰め寄る男達。リーダーらしき人物に足払いを食らい、石垣に転げ落ちる魏延

 

「「「「えへへへへへ」」」」

 

男達は、下卑た笑いを浮かべている。何も出来ず、魏延は歯を噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう~、孔明ちゃんも、馬岱ちゃんも、ご主人様も、私を置いてっちゃうなんてひどいんだから」

 

桃香は一人、皆の行方を探していた。橋を渡りながら、キョロキョロと辺りを見渡していると下の方から声が聞こえた

 

「ちょっと!!何してるんですか!!あなたたち!!」

 

橋の上から見てたのは、無抵抗の魏延を、男達が囲い込み、殴る、蹴る等の暴行を与えている所だった。衣服だけでなく、顔にも泥がつき、所々に傷が見える

 

「劉備殿」

 

「なんだぁ、あいつ?おめぇの知り合いか?」

 

桃香は急いで駆け付ける。坂を下り、魏延を庇う様にして、前に出る

 

「魏延さん一人にそんな大勢で、卑怯じゃないですか!」

 

「卑怯だと?こちとらいつもこの人数でかかってもコテンパンにされてんだ。だから卑怯者呼ばわりされる覚えはねぇんだよ」

 

「あなた、何言って」

 

「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。可愛がってやるからよぉ?」

汚い笑みを浮かべ、桃香に手を出そうとする

 

「この人に手を出すな!」

それを阻止しようと、今度は魏延が前に出る。またも剣に手を添えるが

 

「何だ、抜くのか?えぇ?抜いちゃうのか?」

 

「……私の事は好きにして構わん。だから、この人には手を出すな!」

 

「魏延さん……」

 

「そう言われちゃ、却って手を出さねぇ訳にはいかなくなったな!どけっ!!」

 

そう言うと、リーダーは魏延を突き飛ばし、桃香をこちらに引き寄せる

 

「捕まえたんだな」

 

後方にいたデブに両肩を掴まれ、拘束される桃香

 

「ちょっ、離して……!」

 

「劉備殿!」

 

「これまでの腹いせに、てめぇの見てる前でこいつに手ぇ出しまくってやるぜ!」

 

「や、やめろ!」

歯軋りし、俯きながら、拳を握り締める

 

「やめてくれ!」

 

「キヒヒ!!」

 

その様子を待て、更に笑みを深めその両手を、桃香の胸へと近づけてようとした

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツン!!

 

 

「痛!!」

 

 

頭に衝撃が走った

 

 

「何だ!!」

 

視線を向けると

 

「此処に居たんだ!」

 

「ご主人様!!」

 

勇作がおり、リーダーに向けて石を投げたのであった

 

「貴様はっ!」

 

勇作は、坂を下りる

 

「やっと見つけたよ!やっぱ覇気が使えないと不便だな」

 

「お前はいったい!!」

 

「名乗るほどの人物じゃないよ。しいて言うなら主だ」

 

「主だと!」

 

「ああ」

 

「アニキ!てことは魏延はもう破門されているってことじゃ」

 

「な、何だと」

 

「え、いや…私はまだ」

 

「くそ!!こうなったらこいつからやっちまえ!!」

 

アニキの指示で男たちは勇作に襲いかかる

 

「だから違うのにな」

 

勇作はジャンプをする

 

「「「「なに!!」」」」

 

そして勇作は一回転しながら刀を振る

 

ブオン!!

 

「「「「「「「わああああああ!!!」」」」」」」

 

風が起こり、兄貴とデブ以外は吹っ飛ぶ

 

 

「ふぅ、こんなもんかな」

 

「な、何だと」

 

「で、まだやる」

 

「くそ!デク行け」

 

「わかったんだな」

 

桃香を離し、斧で攻撃してくる

 

「武装硬化」

 

そういうと右手が黒く変色し

 

ガチン

 

振り下された斧をつまむ

 

「な、何だと」

 

信じられない光景に言葉を失う

 

「止めとけ!お前達じゃ勝てない」

 

そしてデブの顔面にパンチをし、倒れるデブ

 

「貴様!!こいつを見ろ」

 

するとリーダーが桃香の首に剣を当てていた

 

「それ以上やってみろ!!こいつの命はないぞ!!」

 

「劉備殿!!」

 

「……」

 

「ご主人様」

 

「……フ」

 

勇作は笑う

 

「…すぐ助ける」

 

「な、何を言いている。一歩でも動いてみろ!こいつを」

 

「汚い手で桃香に触るな…失せろ!」

 

リーダー限定に覇王色の覇気を発動し

 

「……」

 

バタ

 

泡を吹きながら倒れるのであった

 

「大丈夫?」

 

「…はい。ご主人様」

 

「魏延、大丈夫?」

 

「あ、ああ」

 

「ご主人様!」

 

桃香は勇作に抱き着く

 

「ちょっ!桃香さん」

 

「怖かったよ…ご主人様」

 

「分かったから」

 

「……」

 

そして魏延は勇作をじっと見ていた

 

「このやろう!」

 

すると、一人の男が剣を手に突進する

 

「!!」

 

勇作は少し遅れてそれに気づき、覇気を纏う

 

「死ねぇぇぇぇええええ!!」

 

男が迫る

 

「!!」

 

すると二人と敵の間に、魏延は割り込んだ。剣に手を添えて

 

「バカ!抜くな!!破門になるんだぞ!!」

 

勇作が叫ぶが

 

「うぉおおおおおおおおおお!!」

 

魏延は剣を抜いた

 

 

 

「はあ…はあ…はあ」

 

生き残りを倒した魏延。が剣は折れ、紙縒も破けてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、謁見の間にて、玉座に腰かける厳顔の前で、魏延は跪く

 

 

「劉備殿から事情は聞いた。だが禁を破った事に違いない。焔耶、貴様は破門だ。これより儂とお前は弟子でもなければ師匠でもない……分かったな?」

 

「…………」

 

前には折れた剣と刃先が置かれている。厳顔の決定事項に、何も言わず、ただ俯くだけ

 

「しかし、不思議なものだな。これまでは喧嘩などなんだと騒ぎを起こす度に、お仕置き怖さに逃げ回っていた貴様が、今回ばかりは神妙に儂の前に控えておる。一体これはどうした訳だ?」

 

「そ、それは、その」

 

「これまでと違い、今回は己おのが成した事に、何ら恥ずべき事はないと、儂の前で胸を張って言えるからではないのか?」

 

「あっ」

 

厳顔に言われ、魏延は面を上げる

 

「例え、どれ程強くても、ただ闇雲に振るわれる力は虚しい。守るべき者の為に、高き志の為に使われて、初めてそれは意味を持つ。此度の事でそれが分かった筈。焔耶よ、儂はもうお前の師匠ではない。これまでの様に面倒は見てやらん。これからは、己の心は己で律するのだ。良いな?」

 

師匠の優しい愛情が、身に染みながら、視界が微かに潤むのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。魏延は一人、庭で月を眺めていた。何を思っているのか、ただただ見つめているだけだ。そして厳顔はその様子を、屋敷の廊下から月見酒をしながら眺めていた

 

 

「厳顔殿」

 

そこへ、勇作が来た

 

「おお、これは高杉殿」

 

「寂しくないんですか?」

 

「寂しいか…そうでないと言えば嘘になるが」

 

「だったら」

 

「だが、一度決めたことだ。後はあ奴の心しだいだ」

 

そう言い、微笑みながら、酒の入った瓶を飲み干したのであった

 

「(それにあ奴が剣を抜いたのは守る者のためもあるが、もう一つあるがな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

「それじゃあ、お世話になりました」

 

身支度を終え、旅に出る勇作達を、門前にて送り届ける厳顔と魏延

 

「ここから蜀へと入るには、崖沿いの険しい道を行かねばならん。道中、気を付けてな?」

 

「厳顔も飲み過ぎには気を付けるのだ」

 

「張飛、お主は食べすぎに気を付けろ」

 

軽口を言い、笑い合う一同が魏延一人だけが、どこか浮かない顔をしている

 

「それじゃあ、失礼します」

 

「またなのだ」

 

「おう」

 

そうこうしている内に、勇作達は、出発してしまった

 

「どうした焔耶?」

 

「…………」

 

「昨日、儂が何と言ったのか忘れたのか?己の心は己で律せよ。着いていきたいのなら、着いていけ!」

 

文字通り、背中を押してやった厳顔

 

「桔梗様、私は……」

 

「焔耶よ…儂が何も知らぬと思ったのか」

 

「え?」

 

「お主は、あの高杉の元に行きたいのであろう。あの者に仕えたいから」

 

「そ、そんな!そんな訳は」

 

「ははは!そう言うことにしておておこう」

 

「桔梗様」

 

「ほら、早く行かんと置いてかれるぞ?」

 

「は、はい!!」

 

「ああ、ちょっと待て」

 

厳顔は、あるものを魏延に託す

 

「旅立ちの餞だ。持っていけ」

 

鬼の金棒を彷彿とさせる武器…鈍砕骨をそれをしかと譲り受けた、魏延

 

「ありがとうございます、桔梗様!!」

 

それを担ぎ、魏延は勇作達の後を追っていった

 

 

「(高杉殿、手がかかるが、焔耶をよろしくたのむ)」

 

厳顔は心の中でそう思いながら勇作達を見ていた

 

「……」

 

事情を話し、仲間に加わった魏延

 

 

「(わかりました!厳顔殿!)」

 

聞こえたのかは分からないが、心の中で返事をする勇作

 

「「ふん」」

 

たんぽぽと魏延はいまだ犬猿ではあったが、新たな仲間が加わり、旅はまだまだ続くであった



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第百二席 関羽、再び孫尚香に出会うのこと

遅れましたが、あけましておめでとうございます

今後とも、よろしくお願いします




「袁術殿の治める街に来るのも久しぶりだな」

 

目的地である呉への道中、袁術の治める町に到着した愛紗

 

「うむ、以前来た時よりも、随分賑わいが増している様だな」

 

辺りを見渡してから、愛紗はそう呟いた

 

「………ん?」

 

町を歩いているとある物が目に映る

 

『でっかいキ◯タマなのだ!』

 

大きな狸の置物が置いてある土産屋であった

 

「どれ、ちょっと覗いてみるか」

 

土産屋に入る

 

「鈴々の土産に、一つ買っていってやるか」

 

商品を眺めていく愛紗。中には、動物のストラップが並んでいる。その最中、子豚のストラップが目に写り

 

「ん?ふふ、いやこっちの方が良いか」

 

笑みをこぼす愛紗であった

 

「あれは…」

 

会計をしている内にある物が目に映る

 

「……これもくれ」

 

そしてある物も買う愛紗であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土産屋から出て、再度町を歩く

 

「いっ!」

 

角を曲がった直後、愛紗が何かとぶつかった。ポヨン、と豊満な胸が揺れ、当たった少女は鼻を抑える

 

「関羽!」

 

「尚香殿」

 

孫尚香と鉢合わせた

 

「ん?あれ?張飛は一緒じゃないの?」

 

きょろきょろを周りを見る

 

「ああ…私、一人だ」

 

「残念…今度会ったら、大きさ、形、色、つや、感度、弾力、味、匂い、舌触り、挟み具合の10番勝負で乳比べに決着つけようと思ってたのに!!」

 

「…挟み具合って」

 

苦笑いをしながら尚香の胸に視線を向ける愛紗

 

「何よ!何か言いたいことでもあるの!?」

 

「え、うん、いや……それよりも、尚香殿は何でこんな所に?さては、また家出だな?」

 

「そ、そうじゃなくて……」

 

「まったく、そなたときたら懲りもせず……何が不満か知らぬが、一国の姫君とあろうものが、一人で気ままにフラフラと旅をするなど言語道断。もしもの事があったらどうするつもりだ?そなたの事を心配」

 

ため息をつき、愛紗は説教を行う

 

「もう~~!!だから家出じゃないって言ってるでしょ!!」

 

「え?」

 

「シャオはね?今回は重大な任務を帯びてこの町に来てるのよ」

 

「重大な任務?そなたが?」

 

訝しげに眉を潜める愛紗

 

「な、なによ?シャオが重大任務を任されちゃおかしいって言うの?」

 

「そうは言わぬが……」

 

「大体!関羽はシャオの事何だと思ってるの~~!?」

 

地団駄を踏む尚香

 

「曲者、覚悟!」

 

その時、一人の少女がこちらに急接近してきた

 

「ん?」

 

長い黒髪で、忍装束を身に纏い背中に装備している長刀を抜刀

 

「下がれ!」

 

愛紗はそう言いながら後ろに下がる

 

「きゃあ!」

 

が尚香は押され、尻餅をしてしまう

 

「あああああ!!」

 

「あああああ!!」

 

その一撃を、愛紗は偃月刀で防ぐ。火花が飛び散り、激しさを増す剣檄

 

「はっ!」

 

少女は後ろに跳び、態勢を立て直す

 

「……」

 

「……」

 

距離が離れ、対峙し、少女は動く

 

 

 

 

 

 

「周泰!やめて!」

 

黒髪の少女は、動きを止めた

 

「尚香様……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません!」

 

それから近くの茶屋にて、周泰は、愛紗の前で地に跪き、謝罪していた

 

「周泰殿、さっきの事はもう……だから頭を上げて下さい」

 

「てっきり、その……尚香様が武器を持った厳つい者に絡まれていると思い、つい……」

 

「厳つい者って……ま、まあ、過ちは誰にでもある事だ」

 

店の店員が茶を置き、その場を後にする

 

「しかし、こうして護衛の周泰殿や、軍師の陸遜殿が一緒の所を見ると、尚香殿が重要な任務を帯びて来たのは本当の様だな」

 

「はい…実は、数年来、我が孫家と袁術さんの間では、国境にある山がどちらのものか、という事で争っていたのですが……先日、蔵の整理をしていた所、孫策の母上である先代、孫堅様と袁家との間で交わされた約定の証となる書き付けが出てきて…それには、国境の山は我が方の物と記されており、互いの印まで押されてあったのです」

 

陸遜が説明をしている時、周泰はネコを見つけ、幸せそうな表情をしていた

 

「成る程」

 

「で、このシャオ様がその書き付けを持って、袁術との交渉に来たって訳」

 

「そうであれば、確かにこれは重大な任務だが」

 

「ですが、既に水面下で周瑜様と張勲さんの間で話はついていて、後は形式的に書き付けを確認してもらうだけなので、別に交渉という程の事は」

 

「うむ、それなら大丈夫か」

 

そして周泰は自らの長い黒髪を猫じゃらし代わりにし、猫を誘っていた

 

「尚香様もいずれは孫家を支える柱となる身。その手始めとして、まずはこうした事から任せてみるのも良かろうと、孫策様が仰せになって」

 

「つまり、これは記念すべきシャオの初仕事って事…なのに袁術の奴……忙しいだの、体調が優れぬだの、全然シャオと会おうとしないのよ」

 

「書き付けを見て確認してしまえば、ケリがついてしまう事だけに、尚香様との会見をずるずると引き延ばして、有耶無耶にしてしまおうという腹なんでしょう」

 

「だが、さっきこの件は既に話がついていると」

 

ゆっくり、ゆっくりと、近づいていく猫。さらに表情が明るくなる周泰

 

「その筈だったんですが、土壇場で袁術様が臍を曲げたのか、或いは交渉が決裂しても、ここの所度重なる出兵で疲弊した我が方に事を構える武力はないと判断し、考えを変えたのか……」

 

「あ~もう、ホント腹立つわね!!」

 

ドン!

 

テーブルを叩く尚香。意外と大きく鳴り、当然の如く、猫を驚かせてしまい

 

「ぁ~~~あぅ」

 

咄嗟に逃げてしまった猫。周泰はひどく落ち込んでしまった

 

「袁術なんか、雪蓮姉様が兵を率いて乗り込めばきっと一発で」

 

「駄目ですよ、尚香様…今は力を蓄える時。兵を用いずに話し合いで解決しないと」

 

「でも、この町に来て半月になるのよ!?」

 

「そんなに待たされているのか?」

 

「おかげで暇を持て余し、やむ無く町に出て時間を潰していたのですが、本屋に行って、書物を見ている間に、一緒にいた筈の尚香様がいつの間にか姿を消していて」

 

「だって陸遜てば、ちょっと覗くだけですからって言っといて、ずっと本読んでるんだもん。シャオ退屈しちゃって」

 

「それなら一声かけてくれれば……」

 

「声なら何度もかけたわよ!でも完全に書物に没頭してて、聞く耳を持たなかったんじゃない!!」

 

「まあまあ、尚香殿」

 

「所で、尚香様。例の書き付け、まさか無くされたりしてないですよね?」

 

「それは大丈夫。ここに入れて、肌身離さず持っているから、絶対無くしたりなんかしないわ」

 

体に提げている可愛らしいポーチに手を置くのであった

 

「そういえば、関羽さん…高杉さんは?」

 

「ああ、ご主人様は別の用事で一緒ではないんです」

 

「意外ね、関羽のことだから一緒に着いていくものだと思っていたのに」

 

「そうですね」

 

「まさか、振られちゃったりして」

 

「尚香様!!」

 

「あは、冗談よ」

 

「すいません…関羽さ…ん…」

 

陸遜が謝罪し、関羽に視線を向けると

 

「フ、フフ、フフフフフフ!!」

 

尋常じゃない雰囲気と笑みを浮かべている愛紗がいた

 

「関羽」

 

「私がご主人様に振られてた…フフフ、そんな訳ないじゃないですか」

 

「ええと」

 

「ご主人様は私を愛しているんです!ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様…」

 

目に光のない愛紗に陸遜達は怯えていた

 

「尚香殿」

 

「はい!!」

 

「今回は許しますが…今度…笑えない冗談を…言ったら」

 

そういって取り出したのは、あの店で買った、以前星が朱里に勧めたあの子宝飴であった

 

バキ

 

その飴の先を握り潰した

 

「ツギハ…アリマセンカラネ…フフフフ」

 

黒い笑みを浮かべる愛紗に3人は全力で首を縦に振るのであった

 

「(アア、ゴシュジンサマ、ワタシヲキライニナラナイデクダサイ!キライニナッタラ…ワタシハ…フフフフフ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

 

「ひぃ!!」

悲鳴をあげ、男の大事なところを抑えている勇作

 

「どうしました?ご主人様」

 

「いや…ちょっとね」

 

「??」

 

「(なんか、凄い寒気がしたような…気のせいだよね)」

 

身の危険を感じる勇作であった



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第百三席 孫尚香、務めを果たさんとするのこと

その日の夜、袁術が住まう城に、とある来客が訪れていた

 

「あら、随分ご無沙汰していましたけど美羽さん、私に似てまた美しくなったんじゃありませんこと?」

 

豪華な客間にて、袁術は客人である袁紹の膝に座らされ、長い金髪を手入れされていた

 

「れ、麗羽姉様も、お変わりなくて何よりなのじゃ……」

 

ソファーに腰かけており、両端には、側近である文醜と顔良も腰かけており、向かい側には張勲もいる

 

「お変わりないなんて嫌ですわ。私、前よりも何倍も美しくなってましてよ?」

 

「そ、それは結構な事なのじゃ……」

 

その表情は、どこか無理をしている様に見える

 

「所で美羽さん?」

 

「ん?」

 

「貴女、黄巾の乱を沈めた時の武勇談をお芝居にして上映してらっしゃるとか」

 

「美羽様の舞台、すこぶる民に好評で、順調に回を重ねております。しかも次回の公演は、新たな趣向を凝らした、特別興行を予定しているんですよ」

 

「それは楽しみですこと。私も是非、拝見させていただきますわね」

 

何かを閃めく張勲

 

「そうですわ!折角ですから、袁紹様もご出演なさってはいかがですか?」

 

その言葉に、袁術が物凄く嫌な顔をした

 

「うふ」

 

張勲はアイコンタクトで伝える

 

「あら、いいですわね。けど、私に相応しい役がありまして?」

 

「はい…もしよろしければ、曹操の役はいかがでしょう?」

 

「なっ!?どうしてこの華麗で優雅な私が、あの様な貧乳小娘の役をやらねばなりませんの!?」

 

思わず袁術の髪を引っ張り回してします

 

「いだだだ!麗羽姉様、痛いのじゃぁ……」

 

「ああ、後免遊ばせ」

 

謝罪する袁紹

 

「袁紹様…このお芝居では、曹操は張三姉妹にやり込められて這う這うの体で逃げ出すやられ役……その時の醜態を、袁紹様が殊更大袈裟に演じれば……」

 

「……あの忌々しい小娘の評判を地に落としてやる事が出来ますわね」

 

「はい!」

 

「猪々子!斗詩!舞台に出るわよ!」

 

「「えぇ~~!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

袁紹達が宿泊室に行った後

 

 

「やれやれ……麗羽姉様の相手は疲れてならんの」

 

謁見の間にて蜂蜜水で喉を潤す袁術。飲み干した後、肩を下ろす

 

「どんな相手も呆れさせ、げんなりさせてしまう美羽様も、相変わらず従姉の袁紹様だけは苦手なんですね」

 

「うむ!いつかギャフン!と言わせてやりたいのじゃが、他の者と違って麗羽姉様が相手だと、どうも調子が狂ってのぅ……しかし七乃、その麗羽姉様を何故なにゆえ、今度の舞台に出るよう勧めたのじゃ?」

 

「曹操とは犬猿の仲の袁紹様の事。ああいう風に勧めれば、曹操役をさぞかし無様に演じてくれる筈。ですが、実際に舞台で醜態を晒すのは紛れもなく袁紹様本人。果たして評判が地に落ちるのは……」

 

「成る程、そういう事か」

 

「それに、もしもこの事が曹操の耳に入れば、ただでさえ仲の悪い二人がますます悪くなるのは必定…上手くいけば、互いに争って共倒れってことも」

 

「おほほ!流石張勲!セコい悪知恵を働かせれば、中原一じゃのぅ!」

 

「はい!なんたって私は、美羽様の一の家臣ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「えぇい、そこはそうではない!それでは迫力が足りぬ!もっとこう、グワ~!という感じじゃ!」

 

巨大なドーム状の舞台会場。その場内に、袁術がおり、観客席にて、舞台上の役者に指示を出すが、表現があまりに雑すぎる

 

「あの、困ります……練習中は部外者は入れるなと」

 

「いいから袁術に会わせなさいよ!」

 

その舞台会場に、来客が訪れる

 

「なんじゃ、騒がしい」

 

袁術の元まで近づき、指差す孫尚香

 

「袁術、やっと見つけたわよ!」

 

「誰かと思えば、孫家のチンチクリンではないか」

 

「誰がチンチクリンよ!シャオがチンチクリンなら、あんたはもっとチンチクリンじゃない」

 

「なんじゃと~!?」

 

「まあまあ二人とも」

 

愛紗が止めに入る

 

「むっ?お主は関羽ではないか。久しいのぅ」

 

「はい」

 

「どうした?義勇軍はやめて、孫家に仕える事にしたのかや?」

 

「いや、なんというか…今回…私は付き添いみたいなもので……」

 

「そうなのか?てっきりあの男にふ…」

 

「わああああ!!これ以上はいちゃだめ!!」

 

大声を出して言葉を遮る

 

「なんじゃ?うるさいの」

 

「袁術様、無礼の程は幾重にもお詫び申し上げます。少しで結構ですので、お時間を」

 

「お主、確か陸遜とか申したの?」

 

「はい」

 

「書き付けの件は、都合が付けば呼ぶと言ってあったであろう」

 

「ですが、我らもそういつまでも無為に時を過ごす訳には」

 

「とにかく!今は駄目じゃ!見ての通り、妾は舞台の稽古で忙しくての。特に次の舞台は新しい登場人物として、黒髪の山賊狩りを出そうと思っておるのじゃ」

 

「ん?」

 

黒髪の山賊狩りの言葉に反応する愛紗

 

「お主ら知っておるか?なんでも美しい黒髪を靡かせて、悪しき者を退治する絶世の美女だとか。ここらでも噂になっておって、舞台にも取り入れる事にしたのじゃが、その役に中々相応しい者が見つからなくての。美しい黒髪を持ち、妾程ではないしろ、それなりの美女でなければ観客も納得せんだろうし……」

 

噂の人がすぐ目の前にいるというのに、それに気づかす話す袁術

 

「ん?」

 

すると周泰を見た袁術は

 

「お主、美しい黒髪をしておるの」

 

「え?」

 

「うむ……顔立ちもまずまずじゃ…おし!次の舞台!お主が黒髪の山賊狩りをせい」

 

「えぇ!?でも私……」

 

「え、袁術殿…周泰殿も困っているようですし…そうした無茶ブリは」

 

「なんじゃ関羽。お主には関係のないことである…ん?髪型、眼鏡、髪の色」

 

袁術は愛紗、陸遜、孫尚香のそれぞれの特徴を見て、あることを思い付いた

 

「お主ら…三人張三姉妹の特徴に似ておるの!丁度良い。次の舞台、お主らが張三姉妹役で出演せい」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!なんでシャオ達がそんな事しなきゃなんないのよ!」

 

「もし、妾の舞台を手伝ってくれたら、例の書き付けを見てやらぬでもないぞ?」

 

「うう」

 

「どうする?出るのか?出ぬのか?はっきりせい」

 

「分かったわよ!出てやるわよ!出ればいいんでしょ」

 

やけくそ気味に、シャオは承諾する

 

 

 

 

 

 

 

 

同じこと別の場所

 

「いっただきます!」

 

翠と星がラーメンを食べていた

 

「泰山登るためは精をつけないよな…ん?」

 

星が急いで食べているのを見て

 

「誰もとりゃしなんだからそんなに慌てて食べなくてもいいじゃん」

 

「何を言う…ことわざにはメンマ急げをあるではないか」

 

「へぇ~そうなんだ」

 

関心のないようにラーメンを食べる翠

 

「いや…今のは、善は急げをもじった洒落で…ほら、善は急げ…メンマ急げ、似ているであろう」

 

「……」

 

「ってダジャレの説明をさせるな!恥ずかしいだろう!!」

 

恥ずかしくなったのか大声を出す星

 

「何?急にキレているんだよ」

 

星は荷物の中から小さな布を取り出し、それで口の回りを拭いた

 

「…いつもそれを使っているが洗濯しなくていいのか」

 

「うむ」

 

「大丈夫なのか」

 

「心配ない」

 

「そうか」

 

「(洗濯はせんよ…これは泰山に向かう旅の前に主が使ってた布だからな…匂いが取れたら嫌だからな…フフフ」

 

心の中で言う目の光がない星

 

「恥ずかしいと言えば」

 

「うん?」

 

「翠よ…寝言でご主人様ご主人様って言っているが何の夢をみているのだ」

 

「な!ななな、何だよそれ」

 

「私が知るか」

 

「つうか!アタシがそんなこと」

 

「……」

 

「なあ…嘘だと言ってくれよ!おい!」

 

「主に会えなくて寂しいのは分かるが…毎晩はどうかと」

 

「嘘だと言ってくれ!!!!」

 

「(やはり翠をからかうのは面白いな…まあ毎晩ではないが寝てるときに主の事を呼んでいるのは本当だがな)」

 

心の中でそう思う星であった

 

「(主…私は貴方に早く会いたいですぞ…こんな布ではなく直接…主主主主主主主主主主主主主主主主主主)」

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

 

 

 

ゾクゾク

 

「……ひぃ」

 

寒気に体を抑える勇作

 

「どうしました?」

 

「い、いや…今…寒気が」

 

「??」

 

「(今度は星や翠の居るほうから寒気が……チームに分かれての解毒剤探し、今更だけど間違いじゃないよね)」

 

心に不安を覚える勇作であった



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第百四席 孫尚香、舞台に上がるのこと

そして舞台当日

 

「もっと…もっと強くお締めなさい!今から舞台で、あの忌々しい貧乳娘を演じるんですから、胸がぺったんこになるまで締め付けるのよ」

 

「はいぃ……!」

 

とある控室で袁紹の胸に何重にも巻かれた晒を文醜は更にきつく引っ張りあげていた

 

「けど、いいのかな?私達、こんな事してて」

 

「いいんじゃないの?お芝居なんて面白そうじゃん」

 

「そうじゃなくて……麗羽様、朝廷から河北の平定を仰せつかっていたじゃありませんか。あれ、ほったらかしにしてていいんですか?」

 

「ふん!構いませんわよ。朝廷の命と言っても、どうせ董卓が言わせてる事ですし、まともに取り合うことなんてありませんわ。まったく、何進が追放されたと思ったら、次は張譲……その後釜が董卓……薄汚い宦官の張譲よりはマシかもしれませんけど……よりによって……あんな辺境の領主が…………」

 

 

 

 

視界が薄れ、段々と意識が遠のいていく

 

 

「……」

 

袁紹が目覚めるとそこには輝かしい川辺であった。そして、その先には一人の人物が見えた

 

「あれは…私が幼い時に亡くなったお婆様・・・お婆様~今そちらに参りますまね~」

 

川を渡ろうとした時

 

「「麗羽様!!麗羽様!!」」

 

「猪々子!ちょっと締めすぎでしてよ!?危うく亡くなったお婆様にご挨拶する所だったじゃありませんの!」

 

「てへ」

 

三途の川から何とか帰還するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一つの控え室

 

「シャオ様、やはり詰め物を入れないと……」

 

愛紗達は着替えを行っていた

 

「そうですよ。そうしないと胸の所が余って不恰好ですし……」

 

「分かってるわよ!」

 

「ん~」

 

愛紗は、浮かない表情を浮かべてながら台本に目を通している

 

「皆さ~ん、用意できましたか?」

 

そこへ、張勲が入室する

 

「張勲殿、今になって言うのもなんだが、この台本、ちょっと張三姉妹の事を悪く書き過ぎではないか?あの三人…改心し、兵の慰問や慈善の舞台を務めているわけだし」

 

「その事でしたらご心配なく、このお芝居に出てくる三姉妹は、言葉にやたらちょ~を付ける事から、ちょ~三姉妹と呼ばれているだけで、あの張三姉妹とは別物なんです」

 

台本の片隅を指差す張勲

 

「ほらここに…本作品に登場するちょ~三姉妹は、実在の人物とは一切関係ありませんって小さく書かいてあるでしょ」

 

何とも言えない表情を浮かべる愛紗であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして本番が始まった

 

 

 

 

舞台衣装を身に纏い、黒髪の山賊狩りを演じる周泰

 

「乱世に乗じて民を苦しめる悪党共め!この黒髪の山賊狩りが成敗してくれる!」

 

観客の子供達から歓声が沸き上がる

 

「なにあいつ~ちょ~ムカつくんですけど~」

 

「ちょ~やっつけちゃいましょうよ~」

 

「わ、分かったちょ~」

 

そして刀剣で攻撃を仕掛けてくるちょ~三姉妹

 

(な、なんかやりにくいな……)

 

心中で苦笑いを浮かべる愛紗

 

「はっ!」

 

周泰はそれらを簡単に流していき、ちょ~三姉妹は武器を手放す

 

「なんかちょ~劣勢だし~」

 

「こうなったら妖術でちょ~やっつけたいかも~」

 

「任せるちょ~」

 

愛紗が妖術らしき呪文を(一部自分の願望も含め)唱える

 

「グオオオオオオオ!!」

 

現れたのは、以前愛紗達が袁術の所を訪れた時に化け物退治を依頼された時に出てきた化け物が出現した

 

「おのれ化け物!」

 

得物を携え、対峙する

 

「グオオオオオオ!!」

 

化け物は、威圧する様に、雄叫びを上げる。開かれた口から、クラッカーが弾けた

 

「うわ~~」

 

化け物のクラッカー攻撃を食らい、やられた振りをし舞台袖から、煙玉が投げられ、その煙幕に紛れて退場する

 

「黒髪の山賊狩りと言っても、ちょ~大した事ないかも~~」

 

「恐れいったかちょ~~」

 

「……」

 

舞台を終えた周泰はそのままどこかに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

続いての場面では

 

「賊共よ!この卑しい宦官の養子の娘で、名門でもな~~んでもない貧乳小娘の曹操が来たからには、年貢の納め時でしてよ!夏候惇、やっておしまい!」

 

曹操に扮した袁紹が登場している

 

「はっ!」

 

そして文醜は夏候惇。顔良は荀イクの格好をしている

 

「こいつらちょ~ウザいんですけど~」

 

魏の兵士に囲まれた、ちょ~三姉妹

 

「数が多いからちょ~面倒かも」

 

「なら、歌でやっつけるちょ~」

 

そして、三人が歌を披露し美しい音色と、澄んだ歌声が会場内に響き渡る

 

「な、なんですの?これは?

 

「荀彧曰く、これは妖術を使った悪しき歌かと」

 

妖術に苦しみ始める夏候惇達。そして歌の効力によって、操り人形と化した

 

「荀彧曰く、これは危機的状況かも~!」

 

「荀彧!あなた知力95の軍師なんでしょ!?何とかなさい!」

 

「そんな事言われても~」

 

操られた夏候惇達が襲いかかって曹操と荀彧は成す術なく、撤退するのであった

 

「曹操なんて、ちょ~大した事ないかも~~!」

 

「そこまでじゃ!」

 

「何者だちょ!姿を現すちょ!」

 

スポットライトを浴びて、登場した二人組

 

鮮やかな色合いのアイドル衣装を身に纏った袁術、張勲

 

「悪しき歌で人心を惑わす賊共め!愛と正義に満ち満ちた妾の歌でお仕置きじゃ!」

 

「オオオオオオ!!」

 

観客も盛り上がる。その中にあの時の子供たちもいた

 

「♪♪♪」

 

マイクを手に取り、歌を披露し笑顔で歌いきった

 

「これにて一見落着なのじゃ」

 

袁術や張勲袁術や張勲歌により、ちょ~三姉妹は、破れ去った。観客席から、盛大なる拍手喝采を浴びる袁術。決めポーズを取り、締めを飾るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台が終わり、控室へと向かう愛紗達

 

「何よ、あの猿芝居!けど、これでやっと袁術にあの書き付けを」

 

扉を開いた瞬間、それは視界に飛び込んだ

 

「こ、これって……もしかして」

 

「楽屋荒らし!?」

 

衣装が地面の上に散らばっており、何もかもが乱雑に荒らされていた

 

「ああああああ!!」

 

尚香が身に付けていたポーチが開けられおり

 

「書き付け……ここに入れてた書き付けは……ない!無くなる」

 

驚く三人

 

「どうしよう……」

 

「尚香様、落ち着いて下さい」

 

「け、けど書き付けが……」

 

「しっ!大きな声を出さないで……いいですか?あの書き付けを盗まれた事がもし袁家の者の耳に入ったら一大事。舞台を手伝えば書き付けを見ると約束したものの、袁術さんの事ですから、こちらから強く言わなければ、これ幸いと会見を引き延ばす筈。そうやって時間を稼いでいる間に、対策を考えましょう」

 

「わ、分かったわ」

 

その会話を耳にした、控室の扉付近に身を潜めている一人の少女

 

「うふ」

 

彼女は静かに笑った

 

 

 

翌日

 

「皆の者、昨日はご苦労じゃったの」

 

謁見の間にて、袁術は集まってきた愛紗達に、労いの言葉をかける

 

「そなたらの尽力もあって、舞台は大成功じゃ。では、約束通り書き付けを見てやるとしようかの」

 

「えっ……」

 

「どうしたのじゃ?早よ書き付けを出してたも」

 

「それは、その……」

 

「ん~?まさか、無くしたとか言うのではなかろうなぁ?」

 

「はい、勿論、無くしてなどおりません!書き付けはこれでございます。どうぞお確かめ下さい」

 

陸遜の言葉に茫然とする尚香と袁術

 

「ふふ」

 

「………」

 

書き付けを拝見する張勲。直に見て、動揺を隠せずにいた

 

「ど、どうじゃ?まさか、偽物ではあるまいの」

 

「は、はい……これは間違いなく、本物の書き付けかと」

 

「では、国境の件。我が方の言い分をお認め下さるという事でよろしいですね?」

 

笑みを浮かべる陸遜であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ!?書き付けを盗んだのは周泰の仕業!?どういう事よ!ちゃんと説明しなさいよね」

 

客間にて事の真相を聞かされた

 

「それはその…陸遜様に言われて、自分の出番が終わったら隙を見て、楽屋荒らしを装い、書き付けを隠すようにと」

 

「舞台を手伝えば書き付けを見てやってもいい。袁術は確かにそう言いましたが、所詮は口約束。信用できるものではありません……そこで、書き付けを盗まれたと一芝居打てば、逆に約束を果たすていをとってそれを見ようとふんだんです」

 

「???」

 

尚香は頭に?マークを浮かべる

 

「そうか…このまま書き付けを見ずに、尚香殿を追い出せば、約束を守らない人物と、袁術殿はまた評判を落とす事になる」

 

「はい…でも、こちらが書き付けを出せないとなれば、それは我らの落ち度…不利な条件を呑む事もなく、尚且つ、名も落とさずに済む」

 

「そう考えて合ってみたら、陸遜殿の罠だった、という訳だ」

 

「書き付けが盗まれた事を、袁術さんの耳に入れるのに少し細工がいるかと思いましたが、予想外に上手く運んで……」

 

事の顛末を話し終えたが

 

「……」

 

「どうしたんですか?尚香様。ご機嫌斜めなご様子ですけど」

 

「事情は分かったけど、なんでシャオに黙ってたのよ?」

 

「ほら、敵を騙すにはまず味方からって……それに尚香様、すぐ顔に出るたちですし」

 

「なるほど…賢明な判断だと思うよ?」

 

「も~シャオの事バカにして!陸遜、シャオを騙した罰として

 

そういうと

 

「その無駄に大きいおっぱいをよこしなさ~~い!」

 

陸遜の大きな胸を鷲掴み、引っ張り上げる

 

「あっ、駄目です~、そんなに引っ張ったら伸びちゃいます~~!」

 

微かな嬌声が上がる

 

「尚香殿!気持ちは分かるがあまり」

 

愛紗が止めに入るが

 

「うるさいうるさい!おっぱい勝ち組は黙ってて!!」

 

止めることが出来なかった

 

「勝ち組って」

 

「どうせそのおっぱいでアイツを誘惑しているんでしょう!!」

 

「誘惑…私が…ご主人様を」

 

 

 

 

 

妄想に入る愛紗

 

 

『愛紗』

 

『ご主人様』

 

後ろから勇作の声が聞こえ振り向こうとするが

 

ダキ

 

『ご、ご主人様!!』

 

後ろから愛紗に抱き着く勇作

 

『や、やめてください、こんな所を』

 

『周りに誰もいないから大丈夫だよ』

 

『ですか』

 

『もしかして嫌だった』

 

『そうではありません…少し驚いただけで』

 

『それにこういうことするのは愛紗のせいだから』

 

『私のせいで』

 

『愛紗がその胸で誘惑してくるから』

 

愛紗の胸を鷲掴みする勇作

 

『あっ、ご、ご主人様…やめて…ください』

 

『嫌そうにはしてないのに』

 

『…ご主人様の意地悪』

 

『…』

 

『…』

 

お互いに視線が合い

 

『愛紗』

 

『ご主人様』

 

見つめ合い、顔が近づく目をつぶり、唇が触れ

 

 

 

 

「…う……んう………関羽!!」

 

「!!どうしました?」

 

現実に戻る

 

「どうしましたじゃないわよ!さっきから呼んでいるのに反応がないから」

 

「す、すなない…………ご主人様」

 

顔を赤くしもぞもぞし始める愛紗

 

「(関羽さんがこんなふうになるなんて……高杉さんって変態じゃあ)」

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

 

 

「俺は変態じゃない!!師匠と同じにするな!!」

 

大声を出して否定する勇作

 

「ご、ご主人様」

 

「ど、どうしました?大声をだして」

 

「あ、ごめん…なんか変な誤解を生みそうだったから」

 

「誤解?」

 

「な、なんでもない」

 

目的地に向け再び歩く勇作達であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的を達成した愛紗達は、呉へと帰還する為、船に乗っていた

 

「うーちゃん、陸遜様の御手紙、周瑜様に届けてね」

 

周泰は丸めた手紙を伝書鳩のうーちゃんに結びつけ、大空に解き放った

 

「……」

 

鳩は天高く上がり、呉へと向かった



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第百五席 魏延、気配を感じるのこと

場所は、とある団子屋

 

「……」

 

「……」

 

その店内にて、皿の上に乗っている、一串のみたらし団子を巡り、今、二人の少女が目を離さずに対峙していた

 

「あははは」

 

 

隣では、桃香と鈴々が呑気に食べており、朱里とは苦笑を浮かべる

 

「……」

 

ゆっくりと手を伸ばす魏延

 

「ふん」

 

しかし、手が触れる直前に、たんぽぽが素早く掠め取ったのだ

 

「おい、それは私の団子だぞ」

 

「私のって、名前でも書いてあるの~?」

 

「貴様、私より一本多く食べてるだろ……だから、残ったソレは私のだ」

 

魏延の皿には、三本の串。たんぽぽの皿には四本の串が入っていた

 

「人が食べてる団子の数を数えてるなんて、セッコイの~」

 

「なにぃ!!」

 

「魏延さん…落ち着いて……馬岱ちゃんも、魏延さんに謝って……」

 

「なんでたんぽぽがこんな奴に謝んなきゃなんないさ」

 

「人の団子を取っておいてその言いぐさは何だ」

 

「あの、魏延さん……そんなにお団子が食べたいんだったら、私のを……」

 

「えっ!?劉備殿の、食べかけを……」

 

思わず顔が綻ぶ魏延

 

「……」

向かい側にいるたんぽぽの気配に気づき、取り乱し始める

 

「い、いや、私は別に、団子ごときに執着しているのではなく!こやつの態度が…」

 

その様子を見ていた桃香はふと横にある物が目に入った

 

「……」

 

それは隣に座っていた勇作の皿の上にある食べかけのみたらし団子

 

「(ご主人様の団子……)」

 

スッ!スッ!

 

まさに早業。誰にも気づかれることなく自分のと勇作のを入れ替えた

 

「(ご主人様の団子♪)」

 

でそのまま食べる桃香であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方勇作は

 

「ふう~すっきりした」

 

席を立ち、厠に行っていた。終わった後、店の近くにある井戸から水をくみ、手を洗っていた

 

「……」

 

てを洗っている最中に水面に映った自分の顔を見る

 

「……」

 

 

 

 

 

 

おぞましいな。その右目!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ピキ

 

「……」

 

心に痛みが走り、胸を抑える勇作

 

「……はあ」

 

そして店に戻る勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生い茂った木々の間を、その少女は身軽な動きで駆け抜けていく。森林を軽やかに飛び交い、地面に着地

 

「婆ちゃん、いるか?」

 

団子屋の裏口から入る少女

 

「おや、兀突骨じゃないか。今日はどうしたんだい?」

 

「コレ、やる」

 

兀突骨は、狩ってきた野鳥の首を持ち、獲物を店主に差し出す

 

「いつもすまないねぇ。ちょっと待っておくれ。今、団子でも包んでやるから」

 

「いらない…この前、仲間が病気になった時、薬を分けてくれた礼だ。だから、気にせず貰ってくれ」

 

「そうかい……?それじゃあ」

 

彼女の恩返しに感謝しながら、それを受け取る店主

 

「なんで、たんぽぽ達についてくるの」

 

その際、店の中から声がこちらに漏れてきた

 

「私は劉備殿のお供をしているだけで、別に貴様についてきている訳ではない」

 

「一緒じゃん!」

 

「一緒ではない!」

 

「ちょっとやめろください!たんぽぽちゃんも魏延さんも!」

 

魏延の名を聞いた瞬間、少女は顔色を変え、暖簾をくぐる

 

「あっ!!」

 

そして魏延の姿を見て驚愕の表情をするのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店から暫く歩いていくと

 

「近くに橋もないようですし、川の中に入って、この綱を伝って渡るしかないようですね」

 

幅が何十メートルもある川があり、こちらと向こう岸を繋ぐ様に、手すり代わりの綱が用意されていた

 

「もう、橋くらい作っておいてくれればいいのに」

 

「あんまり人が通らない所のようですし、流れにさらわれないよう、こうやって綱を張ってくれるだけでも感謝しないと」

 

「ん~」

 

鈴々は川を見て考えてる

 

「どうしたんですか?鈴々ちゃん」

 

「濡れないでこの川を渡る方法を考えていたのだ」

 

「濡れないでって、そんな方法」

 

「ん~~あっ!!」

 

頭に何か浮かんだようだ

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「この川、あの時みたいに切れない」

 

「あの時?」

 

「ほら、お兄ちゃんが水に流されそうになった時」

 

「!!あれのこと」

 

鈴々が言っていたのは桃香が宝剣を犠牲にして救った村(この小説では第七十六席)でのことを言っていた

 

「そうそう」

 

「鈴々ちゃん、いくらご主人様でもそんなこと」

 

「やってみる」

 

そういうと応龍を抜き、覇気を纏う

 

「……」

 

集中し、そして

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

振り下した

 

 

 

 

ズバァアアアアアン

 

 

 

 

水しぶきが上がり、川の底が現れる。見事に川を切った勇作であったが

 

 

「……あ」

 

道が出来たのは一瞬で底が見えたくなった

 

 

「駄目だ……やっぱこの綱を使って渡すしかないな」

 

「良い考えだと思ったのに」

 

「もう」

 

「(やっぱりすごいなご主人様…驚いちゃったけど)」

 

「(張飛が前に言っていたこと、本当だったんだ)」

 

「(私は夢でも見ているのか)」

 

あまりの事に驚愕の表情をする桃香とたんぽぽと魏延であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、綱を頼りに、川を渡る勇作達

 

「うんしょ」

 

先頭を鈴々が行き、その次に朱里、たんぽぽの順番に辿り着いた

 

「ん?」

 

向こう岸にたどり着いたたんぽぽは後ろ振り向く

 

「なに!あの3人まだあんな所に」

 

勇作、桃香、魏延がまだ中ほどまで来ていなかった

 

「劉備さん~慌てなくていいから慎重に」

 

「は~~い」

 

「劉備殿、足元に気を付けて」

 

「はい、だいじょっ!!」

 

足が滑り流されそうになる桃香

 

「ぷはっ」

 

「大丈夫」

 

勇作が桃香の手を取り、引っ張り上げる

 

「ありがとう、ご主人様」

 

「「「はあ~」」」

 

鈴々、朱里、たんぽぽはホッとする

 

「ん?」

 

たんぽぽは滝の方を見る

 

「あれ!!」

 

突如、巨大な丸太が、滝に流されてきた。流れに乗りながら、勇作達に掛けて向かってくる

 

「ご、ご主人様!!」

 

「ちょ!」

 

桃香は勇作に抱き着く。バランスを崩しかけるが何とか持ちこたえる

 

「はあっ!!」

 

魏延は二人の前に立ち、鈍砕骨で丸太を粉砕するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡り終えた後、焚き火を起こし、服を乾かす一同

 

「大変な目に遭いましたね」

 

「ホント、下着までびちょびちょだよ」

 

濡れたズボンやスカートを脱ぎ、全身が濡れた桃香と魏延は下着のみとなっている。勇作は見ないように目隠しをしている

 

「けど、さっきはびっくりしたよね。あんなおっきな木が流れてくるなんて」

 

「もう、笑い事じゃないですよ?もしかしたら、大怪我してたかもしれないんですから」

 

「それはそうだけど…」

 

焚き火に当たりながら、暖を取る一同

 

「っ!」

 

その直後、魏延が視線を感じた。得物を持ち、直ぐ様駆けつける

 

 

「ちっ!」

 

森の茂みに隠れていた者は、構えていた弓を下ろす

 

「……」

 

辺りを見渡しても、何も見当たらない

 

「気のせい、か……」

 

勇作達の所に戻ってきた魏延

 

「どうしたんですか魏延さん?急に飛出して行って」

 

「ああ、いや、何でもない……誰かいたように思ったが、気のせいだったようだ」

 

「………………」

 

その様子をたんぽぽは、じ~と見ていた

 

「お兄ちゃんも気づかなかったの?」

 

「ああ、うん」

 

「ふ~ん」

 

そしてその様子を先ほどとは違う人物が覗いていた

 

「……」

 

そしてその場から消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

同じこと、星と翠はというと

 

「……」

 

二人はある店に寄っていた

 

「ふふふ」

 

星が上機嫌で店から出てきた

 

「ついに手に入れたぞ」

 

手に何かを持っていた

 

「念願の秘伝の味特性メンマ!!」

 

「ってたかがメンマで大げさな」

 

「メンマを…なめるなあああああああああ!!!!」

 

大声で翠を怒鳴りつける星

 

「いいか翠…身近過ぎてメンマとは実に奥深いものなのだぞ!」

 

「(話長くなりそう)」

 

翠は静かにその場所を離れる

 

 

数分後

 

 

「とまあこのようにメンマという物は職人の血の滲むような努力の上に…あれ?」

 

星は顔を上げるが翠の姿はなかった

 

「あ、あれ翠?どこだ、どこに行ったぁ~お~い」

 

おいて行かれる星であった



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第百六席 魏延、馬岱と喧嘩をするのこと

夕暮れ時

 

「焚火で服乾かしてたらすっかり遅くなっちゃったね」

 

崖道を歩く勇作達

 

「今夜は野宿か~」

 

「どこか良い場所があればいいのですが……」

 

ポロリ

 

すると、上から小石が転がってきた。

 

「ん?」

 

上を見上げる勇作と桃香と魏延

 

「げっ!!」

 

すると巨大な石がこちら目掛けて落下してきた

 

「まずい!!」

 

「危ないっ!?」

 

「きゃっ!」

 

咄嗟に、魏延と慌てる桃香を脇に抱え込み、落石素早く回避し、勇作は背中に挿してある妖刀を抜く

 

「ふん」

 

振り抜くと岩は真っ二つに切れ、そのまま崖下に落下していった

 

「!!」

 

魏延が上を見上げると人影らしきものが見えた

 

「桃香お姉ちゃん!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「う、うん。大丈…!!」

 

立ち上がろうとすると、鈍い痛みを感じる桃香

 

「どうした?劉備殿」

 

「ちょっと足首を捻ったみたいで」

 

「すまん…私のせいで」

 

「何言っているんですか!魏延が助けてくれなかったから私、岩に潰されてペシャンコになっていたかもしれないんですよ。だから謝ったりしないでください…ね!」

 

「劉備殿」

 

「ご主人様もありがとうね」

 

「………」

 

勇作にも御礼を言うが、反応がない

 

「ご主人様?」

 

「っ!ど、どうしたの?」

 

「いや…ボーとしていましたけど、どうしたんですか?」

 

「な、なんでもない」

 

と言うが

 

「(何だよ!この切れ味!妖刀ってこんなに切れるのか……これは使わないようにしよう)」

 

妖刀のあまりの切れ味に恐怖していた

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね…鈴々ちゃん」

 

あんなことがあったが一同は崖道を歩いていた

 

「姉妹の契りを交わした仲で水くさいことは言いっこなしなのだ」

 

鈴々は桃香を背負っていた

 

「それにおっぱいだけがプニプニの愛紗と違って、桃香お姉ちゃんはお腹も太もももプニプニで気持ちよさ倍増なのだ」

 

「そ…そうなんだ」

 

鈴々の言葉に苦笑いを浮かべる桃香

 

「!!…あれ見て!」

 

歩いている道中、たんぽぽは山の麓に煙が立っているのに気がつく

 

「よかった…あそこに行って泊めてもらえるかどうか頼んでみましょう」

 

小さな納屋にたどり着いた勇作達

 

「たのも~なのだ」

 

「突然押し掛けて、すみません」

 

一人の老人が出てきた

 

「ごらんのとおり、仲間の一人が怪我をしてしまって……ご迷惑でなければ、一晩宿をお貸にいただけないでしょか?」

 

「そりゃ、難儀な事じゃな。オラ一人で何のもてなしも出来んが、雨露くらいは凌げるで…はよ、上り」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

「ん~思ったよりひどいみたいですね」

 

室内で診察している朱里。桃香の右足首は、少し腫れており青くなっていた

 

「そんなにひどい?」

 

勇作は朱里に聞く

 

「ええ」

 

 

 

 

「ふん」

 

そして魏延とたんぽぽは薪割りをしていた

 

「ふん」

 

魏延が斧を振り下ろし、たんぽぽが薪を置く

 

「う~んも~…なんでたんぽぽが薪割りなんか」

 

「止むおえまい…一晩宿を借りるのだ。宿代代わりにこれぐらいして当然だ」

 

「しっかし、誰かさんがついてくる様になってからロクな事ないよね~」

 

「……貴様、何が言いたい」

 

「べっつにぃ~?」

 

「言いたい事があるならはっきり言ったらどうだ?もし言えぬと言うなら、体に聞いてやってもいいが?」

 

「なに?やるっていうの?」

 

「貴様に私とやり合う勇気があるのならなぁ?」

 

「なんだって!……いいよ!やってやろうじゃん!今日こそはあんたと決着つけてやるからね!」

 

それぞれ得物を持ち、対峙する両者

 

「(こいつ……やっぱり強い……!)」

 

「どうした?来ないのか?なら、こちらから行くぞ!」

 

鈍砕骨を振り下ろす

 

ドゴォォォォン

 

一瞬で地面が陥没し、砂煙が発生する

 

「でぁあああああ!!」

 

続けて攻撃をする

 

「くっ!」

 

たんぽぽは状態を反らし、ギリギリで回避する

 

「……」

 

距離をとり、対峙する

 

 

「でぁぁあああ!!」

 

再び鈍砕骨を振り下ろす魏延

 

 

ガツン

 

 

「!!」

 

魏延は驚愕の表情をする

 

「騒がしいと思ったらこれか」

 

それを勇作は右手で止めていた

 

「ご、ご主人様」

 

「……」

 

鈍砕骨を持つ魏延の手が震える

 

「……」

 

たんぽぽはその様子を見て、何かを言おうとした時

 

「二人ともいい加減にするのだ!!」

 

鈴々が大声を張り上げ、魏延とたんぽぽを叱りつける

 

「朱里が桃香お姉ちゃんの足をみてるんだから、うるさくしたら邪魔なのだ!!」

 

「って鈴々ちゃんが一番うるさいんですけど」

 

朱里がちいさくツッコミを入れるのであった

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

「えっ!温泉?」

 

「ああ、ここから、ちぃとばかし登った所に、小さな隠し湯があっての。傷や打ち身によう効く湯で、お連れさんの足にもええと思うがね」

 

「そうですね、確かに劉備さんの足には良いと思いますが……」

 

「桃香お姉ちゃんの事なら任せておくのだ。鈴々がおぶって温泉まで連れてってあげるのだ」

 

「ありがとう鈴々ちゃん」

 

「えへへ」

 

「(本音をいえばご主人様におぶってもらいたかったけど)」

 

視線を朱里に向ける

 

「どうしました?」

 

「な、なんでもないです」

 

「道は一本だから…あんたらだけども迷うことなくあるねえ……そいから隠し湯のそばには湯治客の為の山小屋もあるで。今夜は、そこで寝泊まりすればいいじゃろう」

 

「何から何まで、お世話になってすみません」

 

「なぁに、隠し湯は皆のもんだで…遠慮せんと使うがええ」

 

「よ~し!そうと決まれば早速温泉に出ぱ……あいたたた!」

 

喜ぶ余り、急に立ち上がる桃香。当然ながら、足に激痛が走り、踞る。それにより、場が和むが、ただ一人。魏延だけが、浮かない顔をしていた



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第百七席 魏延、命を狙われるのこと

その後、何事もなく辿り着き

 

「はあ~気持ちいい~」

 

桃香達が先に温泉へと入っていた

 

「こんな山の中でお風呂に入れるなんて、足も挫いてみるもんだね~」

 

「もう…でもまあ確かに月明かりの下で入る露天風呂は風情があっていいですが」

 

そんな中、たんぽぽのみ浮かない顔をしている

 

「どうしたんですか…馬岱ちゃん?何か気にかかる事でも?」

 

「ん……ああ、魏延の奴がなんで一緒に来なかったのか気になって」

 

「そういえば、そうだよね……出かける時になって自分は温泉に行かないと言い出して…何か理由があるんでしょか?」

 

「そんなの決まってるのだ。きっとお尻の青アザがまだ取れてなくて、それを見られるのが恥ずかしいのだ」

 

「やだもう、鈴々ちゃんたら」

 

鈴々の冗談により、その場に笑いが起こる

 

「そうですよ!これ聞いたら魏延さん、怒りますよ」

 

そんな状況でも、たんぽぽだけが笑っていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はここにお泊まりなのだ」

 

小屋に入ると

 

「あれ?どうして、こちらへ?」

 

そこでは老人が火を焚いていた

 

「アンタらが出かけた後、暫く経ってからお連れの魏延さんに、アンタらが大変なドジっ子揃いで、火の始末もおぼつかないから歩いて見てやってくれって言われも、万が一、山火事でも起こされたら大変だで、こうやって様子を見に来たんじゃ」

 

「いや、けど……」

 

「おかしいのだ。確かに朱里はドジっ子だけど、火の始末くらいは出来る子なのだ」

 

「ふぇ!?」

 

鈴々の言葉に驚く朱里

 

「なのに…魏延さん、どうしてそんな事を……」

 

そして何かに気付くたんぽぽ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして魏延はというと

 

「……………」

 

目を閉じ、山小屋で正座をして待機していた

 

「………来たか」

 

目を開き、鈍砕骨を携えて外に出る

 

「おい!いつまでも隠れてないで、いい加減に姿を現したらどうだ」

 

大声でそう叫ぶ魏延

 

「……」

 

すると、森の茂みの奥から、一人の少女が姿を現した

 

「……」

 

仲間と思える少女達が、それぞれ武器を手にして、姿を現し魏延を包囲する

 

「やはり貴様か……ゴツコツトツ」

 

「ゴツコツトツじゃない!兀突骨だ!」

 

「陰からこそこそと命を狙うとは、卑怯だぞ!ゴツコツトツ」

 

「兀突骨だ!!」

 

「貴様、何の恨みがあって私を狙う?」

 

「そんなの決まってるだろ!姉ちゃんの仇だ!」

 

「成程、それで陰から命を狙った挙げ句、一人では勝ち目がないと仲間を集めて闇討ちか。ご立派なやり口に、貴様の姉も草葉の陰で喜んでいる事だろうな」

 

「うるさい!不利だと思うんなら、お前も仲間を呼べばいいだろ」

 

「っ!!」

 

「……って言っても無理か」

 

「何っ?」

 

「お前みたいな嫌われ者と一緒に戦ってくれる奴なんか、いるわけないよな」

 

「……」

 

反論できず、拳を握り締める魏延

 

「あたい知ってるぞ。お前、生まれてこの方、真名を預け合ったのは師匠の厳顔だけで、その厳顔からも破門されたんだってな?」

 

「……」

 

「どうだ、魏延。お前には、共に戦ってくれる仲間がいるか?戦いの中で、背中を預けられる友がいるか!……そんな仲間がいるのか!!」

 

「ここにいるぞっ!!」

 

「っ!!」

 

「っ!!」

 

満月を背に、たんぽぽはやって来れ、立っていた岩から飛び降りる

 

「馬岱……貴様、何故!?」

 

兀突骨の仲間の間を抜け、魏延と向かい合う

 

「質問するのはこっちが先だ!魏延、一人でここに残ったのは、こうなる事が分かってたからなんだろう?」

 

「違う!これは…」

 

「こうなる事が分かってたから、仲間を巻き込みたくなくて、下手な嘘までついて、一人になろうとした!そうだろ魏延!」

 

「っ!!」

 

「お前がそんな風に思ったんなら、お前はもうたんぽぽの仲間だ!」

 

「え!」

 

「そしてたんぽぽは、仲間を絶対に見捨てない!」

 

「あっ!」

 

「お前、とつごつこつとか言ったな」

 

「兀突骨だ!」

 

「どっちでもいいけど、魏延の命を狙うなら、西涼にその人ありと言われた錦馬超の従妹!この馬岱が相手になるぞ!」

 

「ひ、一人増えたからって、なんだってんだ!みんな、二人まとめてやっちまえ!」

 

兀突骨の合図で、一斉に襲いかかる

 

「でぁあ!!」

 

たんぽぽは槍を巧みに扱い敵を倒す

 

「ああああああああああ!!」

 

兀突骨は魏延切りかかるが、魏延は鈍砕骨で、防御し、兀突骨と掛かってきた相手を吹き飛ばしていく

 

「「……」」

 

互いに背中を預け、敵を倒していく

 

 

 

 

 

 

「な、なんだこいつら!」

 

「強すぎ……話が違うぞ!」

 

「こんなの相手にしたら、命がいくつあっても足りねぇや!」

 

武器を手放し、恐れをなして兀突骨の仲間たちは逃げ去っていく

 

「お、おい待て!勝手に逃げるな!」

 

聞く耳持たず、森の中へと逃げていく

 

「どんぐりやっただろ!?後、茸と山鳥も」

 

「どつこつごつ」

 

「兀突骨だ!!」

 

「お仲間はみんな逃げちゃったけど、まだやる気?」

 

「当たり前だ!」

 

兀突骨は再び魏延に切りかかるが

 

「であ!」

 

再び吹き飛ばされる

 

「くそ!!」

 

兀突骨は立ち上がろうとする

 

「何だこれ?」

 

「!!」

 

兀突骨の後ろから声が聞こえ、後ろを振り向くと

 

「凄い音してたけど、これはいったい?」

 

「ご主人様!!」

 

「高杉!!」

 

勇作がいた

 

「ん?」

 

「……」

 

視線を下に向けると少女(兀突骨)が倒れていた

 

「大丈夫?」

 

勇作が手を伸ばそうとすると

 

「来るな!!」

 

兀突骨が剣で勇作を切りにかかる

 

「っ!!」

 

シュッ!!

 

突然の事に加え、覇気が使えない上に完全に油断していたために

 

「ご主人様!」

 

「高杉!」

 

傷は負わなかったが右目に巻かれていた包帯が切られてしまった

 

「ちぃ!」

 

勇作はたんぽぽと魏延に移動する

 

「ご主人様」

 

「大丈夫だ」

 

右手で右目を抑えながら言う

 

「貴様!!」

 

たんぽぽは槍を兀突骨に向ける

 

「落ち着け!」

 

「けど!!」

 

「とりあえず状況の説明をお願い」

 

「………そいつが魏延を殺そうとして」

 

「えっ!!」

 

驚く勇作

 

「何で魏延を殺そうとした!?」

 

勇作が兀突骨に聞く

 

「………そいつはあたいの姉ちゃんを殺したんだ!」

 

「「えっ!!」」

 

「だから、絶対……絶対に仇をとるんだ!」

 

「魏延……こいつの姉ちゃんを殺したって、本当なの?」

 

「………あれは、桔梗様が四年に一度の武闘大会を開いた時のことだった」

 

「(4年に一度ってオリンピックか?)」

 

 

 

 

4年前

 

「「はっ!!」

 

特別席に厳顔、観客席には観客。大勢の視線を浴びながら、魏延は相手の女性と対峙していた

 

「……」

 

「……」

 

この相手こそが、兀突骨の姉だ

 

『さあ、巴群武闘大会もついに大詰め!この決勝戦を制した方が優勝です!!』

 

「あれは本当に激しい……戦いだった……少しでも気を抜けば、こちらがやられていた事だろう。だから、最後の一撃を打ち込んだ時、おもった以上の深手を負わせてしまって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

「その時の傷が元で姉ちゃんは病にかかって、すごい熱が出て、それでそれで」

 

「(亡くなったと)」

 

「お前、試合の時に何かズルしたんだろっ!卑怯な手を使ったのに、領主の弟子だからって、みんな見て見ぬ振りしたんだ!でなきゃ、あたいの姉ちゃんが負ける筈ない!!」

 

「魏延は卑怯な真似なんかしてない!」

 

「絶対にした!そいつが良い証拠だ!」

 

そう言うと勇作に剣を向ける

 

「俺が証拠?」

 

「そうだ!そこの妖術使いを使って卑怯なことをして」

 

「ちょっと待て!!俺は妖術使いじゃない!!」

 

「絶対そうだ!でなきゃ、あんなことが」

 

「あんなこと?」

 

たんぽぽは聞く

 

「あたいは見たんだ!そいつがそいつが妖術を使った瞬間を」

 

「いつ?」

 

「とぼけるな!あの川を二つに割ったり、大岩を真っ二つに切るなんて妖術しか考えられないだろう!!」

 

「…っ!!あの丸太と岩は貴様の仕業だったのか」

 

「そうだ!」

 

「あれは妖術じゃなくて」

 

「うるさい!!おまえみたいな妖術使いは死んじゃえ!!お前みたいなやつは生きる価値もない!!」

 

 

 

ピキ

 

 

兀突骨の言葉に勇作の心に痛みが走り、左手で胸を抑える

 

 

 

「……まえ」

 

「ん?」

 

「黙れ!!」

 

たんぽぽは兀突骨に殺気を放つ

 

「ひぃ!!」

 

すまじい殺気を肌身に感じ、兀突骨は後ろに下がる

 

「馬岱」

 

魏延は驚きを隠せないでいた。さっきまで背中を預け合って戦っていたのに、まるで別人に感じていたからだ

 

「貴様がどう思っているか知らないけど、ご主人様のことを馬鹿にする奴はたんぽぽは絶対に許さない!!さっきの言葉…取り消せ!」

 

「たんぽぽ」

 

「……もう一度言うけど、魏延は卑怯な真似なんかしてない!」

 

「し、試合を見てもいないお前に、なんでそんな事が分かるんだよ!」

 

「分かるよ!」

 

「っ!!」」

 

「武術というのは、心に疚しい所があれば、それが気の濁りとなって現れる。たんぽぽは魏延と何度か立ち合った事があるけど、武器を構えた時は、いつだってこいつの心気は澄んでいた。確かにこいつは口は悪いし、性格も曲がってて、すっごく付き合いにくい奴だけど」

 

「(思いっきり悪口言ってない?)」

 

「武術に関してだけは、絶対に卑怯な事をする奴じゃない!」

 

「け、けど……もし、そうだとしても、魏延!お前は姉ちゃんの仇だ!それに変わりはない!」

 

「……確かにそうだな」

 

「魏延」

 

「だが、今の貴様の腕は、姉の足元にも及ばん。それでは何度やっても私を倒すのは無理だ」

 

言い返せずに歯噛みする兀突骨

 

「兀突骨、修行して強くなれ。強くなって、正々堂々と私の首を取りに来い」

 

見つめ合う、魏延と兀突骨

 

「強くなる……強くなってやるからな!」

 

兀突骨は、その場を去っていった

 

 

 

 

 

 

「あんな事、言って良かったの?あいつどっかで修行して、いつか仇を取りに来るよ?」

 

「その時はまた、叩きのめしてやるまでだ。それに、何かに打ち込むことで悲しみが忘れられるなら、それもまたいいだろう」

 

「……魏延」

 

「(かつて、自分が姉を失った時の悲しみを、武術に励む事で紛らわせた様に)」

 

「(まあ、そうなったらたんぽぽがあいつを倒せばいいか…ご主人様を…好きな人を馬鹿にした報いは受けないと)」

 

「所で、ずっと気になっていたんだが、貴様どうして裸足なんだ?」

 

「あっ!い、いや~慌てて飛び出してきたから、靴履くの忘れちゃって」

 

「何やっているだよ」

 

そんな光景を目にし、魏延は笑みを溢す

 

「それよりもご主人様はどうしてここに?」

 

「…皆が風呂に行っている間、捻挫に効く薬草を探しに森に入ったは良いけど、迷ってしまって」

 

「迷ったって」

 

「けど、白い服を着た人に道を教えられて、歩いていたら音が聞こえて何事かなって向かったら」

 

「ここに来たと」

 

「ああ」

 

「さて、包帯汚れてなきゃいいけど」

 

勇作は切られた包帯を取りに行く。幸いなことにまだ使えるようだ

 

「馬岱……実は貴様に、ちょっと話があるんだが」

 

「奇遇だね……たんぽぽもちょっと話があるんだ」

 

「それに高杉……いえ、お館にも」

 

「ん?お館って俺の事?」

 

右目に包帯を巻きながら魏延の話をきくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明け、勇作達は崖道を歩いていた

 

「や~ま~があ~るか~ら山な~のだ~」

 

「捻挫して~も気にし~ない~」

 

鈴々と桃香は歌を歌っていて

 

「しかし、薬草の力というのは凄い物だな。劉備殿の捻挫が一晩で治るとは」

 

「隠し湯の近くに、サロンパ草が生えてて助かりました」

 

「(俺の苦労はいったい?)」

 

「もっとも、温泉で充分に温まった所に貼ったから普通よりも効いたようですけど」

 

「焔耶の性格を直す薬草もどっかに生えてればいいんだけどね~」

 

「おい!たんぽぽ!どういう意味だ!」

 

「どういう意味って聞いたとおりの意味だけど」

 

「何だと!!」

 

「はわわ!二人とも、喧嘩は駄目ですよ!喧嘩は」

 

「あわわ、落ち着いて下さい……」

 

「たんぽぽ、どうやら貴様とは一度きっちりとケリをつける必要があるようだな!」

 

「それはこっちの台詞だ焔耶!」

 

「はわわ、駄目ですよ駄目ですよ」

 

「はいはい、そこまでしなよ…たんぽぽ、焔耶」

 

「ご主人様」

 

「お館」

 

「あれ、魏延さんと馬岱ちゃん、いつの間にか真名で呼び合ってない?」

 

真名で呼び合っていることに気付く桃香

 

「本当なのだ」

 

「それにご主人様も魏延さんことを真名で呼んでいるし、魏延さんもご主人様のことを」

 

「あ!?」

 

互いに顔を背け合う二人。しかし、その表情はどこか、微笑んでいる様にも見えた

 

「(なにはともあれ、これはこれでありなのかな)」

 

昨日、真名を交換し終え、二人を見る勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んじゃえ!!お前みたいなやつは生きる価値もない!!

 

 

 

勇作は昨日の事を思い出すが直ぐに思い出さないようにするが、

 

「(………くそ)」

 

思った以上に心に刻まれているにであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さま……予定どおりです。…はい……例の……。成功です……続けます」

 

 

そして謎の人物も勇作達に気付けれないように後を付けるのであった



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第百八席 関羽、江東に再び降り立つのこと

水平線まで広がる長江の上空、一羽のカモメが飛んでおり、木製の大船が港に停泊する

 

「……」

 

愛紗は、ようやく呉に到着し船から降りる

 

「関羽殿」

 

「おお、孫権殿」

 

すると孫権が直々に出向いてくれた

 

「お久し振りです」

 

「いや、こちらこそ……そちらは?」

 

愛紗は孫権のそばにいた少女について聞く

 

「これは軍師見習いの」

 

「呂蒙と申します」

 

「関羽殿、長旅でさぞ御疲れでしょう。まずは屋敷の方へ」

 

「あの~蓮華姉様?」

 

見るからに拗ねている孫尚香がおり、陸遜と周泰は苦笑している

 

「シャオ達も帰って来たんですけど~?」

 

「あっ、あら、ごめんなさい!」

 

孫権は慌てて孫尚香の元に向かう

 

「小蓮。周泰からの文によれば、隠忍自重して、見事務めを果たしたとか。

 

「尚香様、隠忍自重というのは、我慢して軽はずみの行動をしないという意味ですよ」

 

陸遜が孫尚香の耳元で教える

 

「分かっているわよ!それくらい」

 

「偉いわ、良くやったわね」

 

「まっ、シャオにかかればあれくらいの任務、どうって事ないわ」

 

姉からの好評価に、喜ぶ孫尚香であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

港から移動し、孫家の屋敷まで案内される。その道中、一人の女性と鉢合わせする

 

「おお、尚香殿」

 

「黄蓋!」

 

尚香は駆け寄る。そのまま黄蓋に抱きつき、彼女もそのまま抱き止める

 

「もう戻っておられたれたのか」

 

「うん、さっきの船でね」

 

「関羽殿、こちらは黄蓋。我が家に古くから仕える宿将です」

 

孫権が自己紹介を行う

 

「古くからは余計じゃ」

 

「お初にお目にかかります。関雲長と申します」

 

「おお、そなたが……袁術の所では、尚香殿が随分世話になったとか」

 

「あっ、いや、別に……」

 

少し驚いていた

 

「……」

 

その光景に笑みを浮かべる黄蓋であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ謁見の間へと向かう

 

「しかし、まさか袁術の所でシャオと鉢合わせするとは…姉様も、その時の話を聞きたがっているので、是非」

 

孫権は扉を開けると

 

「ああもう!うるさいわね!!」

 

瞬間、即座に扉を閉じた

 

「何度も言われなくても分かってるわよそんな事っ!」

 

「分かっておられないから申し上げているのですっ!」

 

「ちょ、ちょっとお待ちを……!」

 

動揺を隠せずにいる孫権。客人を待機させ、素早く中へと入室した

 

「姉様!周瑜!関羽殿達が来たと言うのに、何を言い争っているのです!?」

 

すると、孫尚香は面白がる様に、扉に近づいて耳を寄せる

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

手招きをし、愛紗は自分が呼ばれたことに気付かず、キョロキョロする

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

そして孫尚香は愛紗の手を引いて、扉に近寄る

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

近寄ると中からの声が、よく聞こえてきた

 

「それは雪蓮の方でしょ」

 

楽しそうに聞き耳を立てている孫尚香

 

「何ですって!?」

 

「事実を述べたまでです」

 

「何があったかは知りませんが、客人が来ているというのに喧嘩は止めてください!関羽殿の耳に入ったらみっともないじゃありませんか!!」

 

孫権の言葉に苦笑いを浮かべる愛紗であった

 

 

 

 

 

「よく来たわね関羽、孫家はあなた達を歓迎するわ」

 

謁見の間へと通される愛紗。しかし、玉座に座る孫策の表情は、怒りを押し込め、何とか笑みを浮かべ、どこか無理をしているようだ

 

「袁術の所では、尚香様の手助けをしてくれたとか」

 

それは、周瑜も同様であった

 

「それについては礼を言うわね」

 

そして二人の距離が遠く、離れていた

 

「……」

 

気まずそうに抱拳礼する愛紗であった

 

「ねぇ、周瑜ってば何で雪蓮お姉さまからあんなに距離とってるの?」

 

「尚香様、そこは気づかない振りをすると言うのが大人の対応というものですよ」

 

陸遜は小声で伝える

 

「ふ~ん」

 

二人による険悪な空気が屋敷中を包み込んでいるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ない、お恥ずかしい所をお見せしてしまって」

 

屋敷内を案内される愛紗

 

「いえ。誰にでも、虫の居所が悪い時というのはあるものですから、あまりお気になさらずに」

 

「はぁ……ところで関羽殿は、江東丸を求めて我が家へ参られたとか」

 

「はい。御家に代々伝わる貴重な品だと思うのですが、僅かで結構ですのでお分け頂ければと」

 

「あ、いえ…確かに江東丸は我が家に代々伝わる物ですが、特に珍重している訳でもありませんし、お分けするのは一向に構いません。ただ何処にあるのか分からなくなってしまって……多分、幾つかある蔵の何処かにしまい込んであると思うのですが、先ほど紹介した呂蒙に言い付けて、収蔵品の目録を調べさせています」

 

提灯を片手に倉庫内を捜索する呂蒙だが中には書物や置物などの物品が収納されており、とにかく数が尋常ではない上に蔵はここ一つだけではないので気が遠くなる様な作業をする呂蒙であった

 

「闇雲に探し回るより、そちらの方が早道かと思うので、しばらくお待ち下さい」

 

「お手数かけて申し訳ありません」

 

「いえ、小蓮が任務を果たすに当たって、関羽殿には一方ならぬご助力を頂いたとか。その礼として、これくらいの事はさせてください」

 

「いや~、ご助力という程の事は……」

 

袁術の所でのことを思い出す愛紗であった

 

「当家に滞在中はこちらの部屋を使いください」

 

そして、宿泊部屋へと案内される

 

「かたじけない」

 

「あと、何か用があれば、この周泰に」

 

孫権のそばに周泰がいた

 

「周泰、粗相のないようにね」

 

「はっ」

 

「ところで関羽殿…勇作殿は元気でしょうか?黄巾の乱で怪我をしたと噂をしたので」

 

「ご主人様ですか…まあ少し厄介な」

 

「そうですか」

 

「心配いりません。大丈夫ですから」

 

「…わかりました。早く治るよう願っています」

 

「はい」

 

「(まさか孫権殿は……いや、そんなはずない。ご主人様は私の事が……ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、孫尚香はというと

 

「ほんと嫌になっちゃうわ!」

 

黄蓋とお茶をしていた

 

「せっかくシャオが初仕事を終えて帰って来たっていうのに、雪蓮姉様と周瑜も喧嘩しててろくに褒めてくれないんだから」

 

饅頭をやけ食いし、茶を啜る孫尚香

 

「普通だったら、よくやったわね小蓮、ご褒美に新しい服を買ってあげるわとか、流石尚香様、此度の功績を鑑みて来月から小遣いを倍にしましょう、くらいは言ってくれそうなもんなのに~~!!」

 

「まあ、それはないと思うが……」

 

「何とかしてよ~黄蓋…あなたウチで一番古いんだから」

 

「だああああ!!」

 

テーブルをひっくり返す黄蓋

 

「一番ではない!張昭のじじいはワシより古株じゃあ!!」

 

黄蓋に年齢や古いって言葉は禁句のようであった

 

「んん……それはさておき…あの二人、子供の頃から時折喧嘩をする事はあったが、今回はいつもより些か根が深い様じゃな」

 

黄蓋は立ち上がり、廊下の手すりにもたれながら、空を仰ぐ

 

「放っておいては政にも支障が出かねん。ちょっと探ってみるか」

 

こちらを振り返る黄蓋。その意図を察したのか、ニヤリと口角を曲げる孫尚香であった



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第百九席 黄蓋、原因を探るのこと

夕方になり

 

「そうよ…それで良いわ」

 

孫策はお風呂に入っていた

 

「ふふ、随分うまくなったじゃないの」

 

孫策は横になり、大喬が孫策の背中を洗っていた

 

「ありがとうございます」

 

ガチャ

 

「「ん?」」

 

扉が開く音が聞こえ、視線を向けると

 

「あら、祭!」

 

黄蓋が入ってきた

 

「大喬、ワシが変わろう」

 

「え!でも…」

 

「いいから」

 

「はい、それでは」

 

そう言い、黄蓋と交代するのであった

 

「祭…どういう風の吹き回し?貴方が私が背中を流してくれるなんて」

 

「いやなに、たまにはこういうのもいいかと思ってな」

 

洗っている最中に水滴が黄蓋の頭に落ち

 

「まあ、それはさておき…」

 

本題に入る黄蓋

 

「ここんとこあまり機嫌がよくないようじゃが、何か気に入らぬことでも何かのか?」

 

「うっ…まあ、ちょっと」

 

「どうじゃ…よければワシに話してみい。相談に乗るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜

 

「……」

 

自室にて書物に目を通す周瑜

 

ギギイ

 

「ん?」

 

音がする方を見ると、扉が少し開いていた

 

「…」

 

周瑜は立ち上がり、扉を閉めようと扉に近づく

 

「邪魔するぞ!」

 

扉が開かれ、黄蓋が酒を手に持ち部屋に入ってきた

 

「こ、黄蓋殿……こんな時間にどうしました?」

 

「いやなに…一人で飲むのも味気ないので、一つ相手してもらおうと思ってな」

 

「いや…で、ですが……私は」

 

「そう遠慮するな。お主もイケる口であろう?」

 

そう言って準備をする黄蓋

 

「これはな、ほかでは手に入らない良い酒での」

 

「……」

 

「ん?」

 

「分かりました……そういう事でしたら、ご相伴に預かりましょう」

 

「うむ…そうこなくては」

 

 

 

しばらくして

 

「黄蓋様、追加の酒と魚をお持ちしました」

 

小喬がお盆の上にお酒と料理を持って扉の前に来た

 

「おっ!すまぬな」

 

扉を開け、お盆を受け取る黄蓋

 

「小喬…後はワシらで勝手にやるからもう寝て良いぞ」

 

「はい、それではおやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

「黄蓋殿、おかわり」

 

机の上には、大量の酒瓶が転がっている

 

「のう周瑜……もうそれぐらいにしておいた方が良いのではないか?あまり呑んでは明日の仕事に差し支えるじゃろうし……」

 

「はぁ?呑めと言ったのは黄蓋殿でしょぉ?それを今さら……それとも何ですか?わたしと呑むのはつまらないですか?退屈ですか?不愉快ですか?もっと若い子の方が良いですかぁ?えぇ?」

 

机によじ登り、何かと絡んでくる。しかし、バランスを崩して、地面に転げ落ちてしまった

 

「悪い酒じゃな」

 

「酒は悪くないです…酒は……悪いのは雪蓮です……そうだ!雪蓮が悪い」

 

そして床に倒れ込んでしまった

 

「こりゃ黄巾の乱ならぬ公瑾の酒乱じゃな……まあ言いにくい事を聞き出すにはこれくらい酔ってる方が良いか」

 

黄蓋は周瑜を抱き起こす

 

「そうよ……雪蓮が悪いのよ……あんな事するから、私……」

 

「ん?何だ策殿がどうしたのか?よければワシに話してみ。相談に乗るぞ?」

 

「…ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「はあ?喧嘩の原因はお酒っ!?」

 

喧嘩の原因に驚き大きな声を出す孫尚香

 

「うむ……昨日、二人から聞き出した所では、周瑜が遠方より取り寄せたとびきりの名酒……何でも蜜柑で作られた珍しい物らしいが、それを策殿がこっそり呑んでしまったのが事の発端らしい」

 

「ばっか馬鹿しい。そんな事で喧嘩するなんて。二人ともホント子供なんだから」

 

すると、黄蓋が、クスクスと微笑んでいた

 

「何がおかしいの?」

 

「江東の小覇王も、孫家を支える名軍師も尚香殿にかかっては形無しだと思ってな」

 

「それ、褒めてないわよね?」

 

「いや…とにかくじゃ、あの二人が角付き合わせていては孫家に行く末に関わる…何としても仲直りせんとな」

 

「そりゃあそうだけど、何か手があるの?」

 

「まあ、な……」

 

親指をグッ、と立てる黄蓋であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ事、孫家の中庭

 

 

「そうですか…江東丸の有りかはまだわかりませんか」

 

愛紗は周泰と散策していた

 

「はい…呂蒙が夜を通しかけて調べているのですが、収蔵品の目録、古い物は木簡で扱いが面倒な上、字が掠れて判読が困難な部分もあって…はっ!」

 

すると周泰は何を見つけた

 

「あれは!関羽殿、隠れて!!」

 

周泰は押し込む様に、愛紗と共に草むらへと身を隠す

 

「どうしたのだ周泰殿?もしや曲者」

 

「いえ」

 

視線の先にいたのは

 

「お猫様です~」

 

岩の上に、一匹の白猫が寛いでいた

 

「ね、猫……?」

 

ガクッと肩を下ろす愛紗

 

「関羽殿、ここは私にお任せを!」

 

「いや、お任せをって」

 

「お猫様~ご機嫌いかがですか~決して怪しい者ではございません。ただちょっと、御体をモフモフさせて頂ければと」

 

「もふもふ?」

 

「勿論、ただでは申しません。さあ、この様に献上品をお持ち致しました」

 

腰に提げた袋から小魚の干物を取り出し、それを猫に与える

 

「献上品って……」

 

「きゃ~~可愛い~~それでは早速失礼させていただきますね」

 

猫に触れる周泰。

 

「はうっ!たまりません!この手触り、この暖かさ!!」

 

顔を猫の体に埋め幸せそうな表情になる

 

「さあ、関羽殿も!早く!お猫様の気が変わらぬ内にモフモフを!」

 

「あはは」

 

若干引き気味の愛紗であったが

 

「ふぁ~~……」

 

猫を抱き、可愛さに心を打たれ、戯れる二人であった

 

「(はあ…かわいすぎる………)」

 

愛紗はあることを想像する

 

 

 

 

 

 

 

 

『愛紗!!』

 

『きゃあ!!』

 

勇作が愛紗に抱き着く

 

『ご、ご主人様』

 

『ん~』

 

勇作は愛紗をモフモフする

 

『ご、ご主人様』

 

『ん~愛紗は可愛いな、ずっとこうしていたい』

 

『そ、そんなこんな所で……』

 

『嫌なの?』

 

『いえ、そうでは……こういうのは』

 

『別の場所なら良いの?』

 

『あ、いや…それは』

 

『俺に隠し事は無意味だよ』

 

『……できればご主人様の部屋で』

 

『分かったよ』

 

『え?きゃぁ!』

 

勇作はお姫様抱っこで愛紗を持ち上げる

 

『ご主人様』

 

『このまま連れて行くよ』

 

『あ、あの』

 

『いや?』

 

『いえ……このまま連れてってください』

 

『ああ…今夜はずっと一緒だよ』

 

『はい…ご主人様、私をたくさん愛してください』

 

『仰せのままに』

 

そのまま勇作と愛紗は勇作の部屋に連れてかれ

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~~ご主人様!!ご主人様!!ご主人様!!ご主人様!!ご主人様!!ご主人様!!ご主人様!!」

 

「か、関羽殿!!お猫さまが目を回しています!!」

 

その後は、何を想像したのか、やたら幸せそうな表情をする愛紗であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、持久草を探す翠と星は

 

「此処を上るのかよ」

 

山登りをし崖の前に来ていた

 

「やむおえまい。山頂に向かうにはここを伝っていくしらないらしいからな」

 

「やれやれ。ったくなんで何進なんかのためにこんな苦労しなきゃならないんだよ」

 

不満をこぼす翠

 

「そうぼやくな。留守番が嫌でついてくると言ったのはお主だぞ」

 

「そりゃそうだけど……あっそうだ」

 

すると翠は何かを思い出す

 

「こんな時のためにこれがあるんだった」

 

そういうと荷物が入った袋を開ける

 

「何だ…何か崖を登るのに役にたつ物があるのか?」

 

「ああ、泰山に登るならって旅に出る時、朱里が持たせてくれたんだ。ほい」

 

そういうと小さくまとめてあるロープを星に渡す

 

「……」

 

星はそれを見て

 

「孔明の縄か!!」

 

(孔明の罠か!)っと言いたかったのか星は驚いたように言う

 

「……だ~」

 

その様子に翠は静かにこけた



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第百十席 黄蓋、策を用いて味方を欺くのこと

そして肝心の周瑜はというと

 

「う~~~ん」

 

二日酔いで頭を押さえていた

 

「流石に昨日は飲みすぎたわね……」

 

「周瑜様っ!周瑜様っ!」

 

扉が開かれる

 

「小喬……大声出さないで……」

 

「周瑜様!大変です!黄蓋様が……黄蓋様が倒れられました!」

 

「何だとっ!」

 

その報告に周瑜は驚き立ち上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二日酔いの時にも関わらず、朝から飲んでいたのですが」

 

周瑜と小喬は走りながら、黄蓋にいる部屋に向かっていた

 

「つまみにしていた塩漬けにしていたお肉が腐っていたらしく、激しい腹痛を訴えたられて」

 

小喬は走りながらも説明する

 

「お医者様の話では、おそらくもう助からないと」

 

「そんな…」

 

悲しい表情を浮かべなら、周瑜は廊下を駆け、黄蓋の元へと向かう

 

「黄蓋殿!」

 

部屋に入ると、孫尚香が寝台の横で看病しており、悲しげに首を横に振る

 

「そんな……」

 

寝台の上で、黄蓋は横たわっていた。

 

「黄蓋殿!」

 

「周瑜……か………」

 

顔色は悪く、見るからに弱り果てていた

 

「黄蓋殿!お気を、お気を確かに」

 

「どうやら、儂はもういかん……。お亡くなりになられた先代様の元へ参る時が来た様じゃ……」

 

後ろでは、二喬と合流あい周瑜の見えない所で、孫尚香は親指を立てた

 

「何お弱気な…先代様の頃より、数多の死地を乗り越え、今の孫家を築いた黄蓋殿ではありませんか。病ごときに負ける筈が」

 

「そうは言うても……寄る年波には勝てんよ……」

 

「た、確かに……」

 

「何ぃ!?」

 

思わずその身を起き上がらせる黄蓋。茫然とする周瑜の後方で、孫尚香が慌て出す

 

「……」

 

我に帰り、寝台に倒れ込む黄蓋

 

「周瑜よ……儂の命の灯火は、今正に消えんとしている様じゃ……最後に今際の際に、アレを一口……」

 

「分かりました!アレですね?しばしお待ちを」

 

急いでその場を後にする周瑜

 

「うふ」

 

周瑜が去った後、孫尚香と黄蓋は、互いに親指を立てていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周瑜は、黄蓋が言ったアレのある蔵に向かった

 

「……」

 

そして中に入り、アレがある場所へと向かうと

 

「雪蓮!」

 

先客がいた

 

「冥琳!」

 

「雪蓮!あなた、どうして……」

 

「どうしてって、祭が今際の際にアレを一口飲みたいって言うから私」

 

「雪蓮、もしかしてあなたも?」

 

「けど、黄蓋殿は先にあなたが来ていた事など一言も」

 

バタンッ!と、扉が急に閉じられた。

 

「「!!」」

 

周瑜は慌てて門へと向かい、扉に手をかける。だが、びくともしない

 

「しまった、閂が!」

 

「ちょっと誰かいるんでしょ!ここを明けなさい!」

 

「雪蓮姉様、周瑜、ごめんね…これも二人を仲直りさせるためなの」

 

心の中では、謝罪してるが、その表情は笑っており、全然反省しているようには見えなかった

 

「ふ~ん」

 

後頭部で手を組み、鼻歌混じりで、去っていく孫尚香であった

 

 

 

 

「どうなるか分かってるんでしょうね!」

 

「策殿、無駄なことはおやめなさい」

 

孫策と周瑜は、音源の方へと顔を向ける

 

「祭」

 

蔵の壁にある、小さな窓穴から、病気で弱っていたはずの黄蓋が覗いていた

 

「黄蓋殿、これはいったい!?」

 

「あなた、病に死にそうじゃないの?」

 

「もしやこれは黄蓋殿のたくらみか?」

 

「いや…ワシがあれとしか言わなんだなのに、お二人ともそれが何かに気付いていただけたとは、うれしい限り」

 

「貴方が今際の際に飲みたい物といえば、私が生まれた記念に仕込んだっていう秘蔵の壺酒に決まっているじゃない!」

 

「しかし隠し場所までちゃんと覚えていたとは、家臣冥利に尽きすな」

 

「そんなことよりなんでこんなことを」

 

「そうよ!何で私たちを騙すような真似を」

 

「いやなに、お二人には少し頭を冷やしていただこうと思いましてな」

 

「ど、どういうことよそれ!」

 

「そうです!別に頭を冷やねばならむことは何も」

 

「やれやれ、素直に反省すればすぐにでも出してやろう思っていたがやはりしばらく閉じ込めておかねば」

 

そう言うと、黄蓋は窓穴から顔を隠した

 

「あっ!待って!」

 

「あっ!そうそう…厠に行きたくなった時は、たしか蔵のどこかにワシが子供に使っていたおまるがあるからそれを使われるがよかそう」

 

「あなたが子供の頃って」

 

「50年以上前のことではですか」

 

「そんなに前ではないわ!!」

 

声を荒げる黄蓋

 

「まったくあやつら、ワシをいくつだと思っているのじゃ。ワシとてその気になればまだまだひと肌もふた肌も」

 

踏み台から飛び降り、ぶつぶつ言いながら、その場を去る黄蓋であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく経ち

 

「日が暮れてきたわね」

 

辺りはもう夕暮れになっていた

 

「はあ~」

 

周瑜は、ため息をつく

 

「祭ってば、一体いつまで私達を閉じ込めておく気なのかしら」

 

「さあ……そう簡単には出してくれない様ですね」

 

「こうやっていると、なんか子供の頃を思い出すわね。昔はよく、悪戯をしたお仕置きに、二人で蔵に閉じ込められたっけ」

 

「なに呑気な事を言ってるんですか。今日はただでさえ、二日酔いで仕事が捗らなかったのに……」

 

「それにしても、武人の祭にこうまでしてやられるなんてね~」

 

「腐肉を食らったと言って、味方の我らを欺くとは、なんたる卑劣な策……そんなものに引っ掛かってしまうとは……この周公瑾、一生の不覚!」

 

周瑜は悔しさを露にし、壁に拳をぶつける

 

「ねえねえ冥琳、一杯食わされた仕返しに、祭の壺酒飲んじゃおっか?」

 

「駄目よ雪蓮。元はと言えば、それはあなたが生まれた時に黄蓋殿が、いつか自分にも子が出来たら、その祝いとして飲むつもりで仕込んだ大事な壺酒なのよ?それを勝手に飲んだりしたら、後でどんな目に遭わせられるか……」

 

「でも正直な所、祭はその辺はもう望み薄な訳じゃない?だったら」

 

「それ、黄蓋殿の耳に入ったら、このまま蔵に火をつけられるわよ?それにしても、この状況でそんな事を思い付くなんて……本当お酒に関して人一倍意地汚いんだから」

 

「むぅ……」

 

「まあ、人に届いた荷物を勝手に開けて、中のお酒を飲んじゃうあなただから、そうだった事は分かってたけど」

 

「しつこいわね冥琳!あのお酒の事なら、もうちゃんと謝っ……てなかったわね」

 

思い出したかの様に、孫策は空を仰ぐ

 

「ごめんなさい……流石にあれは私が悪かったわ」

 

「雪蓮……」

 

「けど冥琳も、たかがお酒一瓶の事で、いつまでもグチグチ言って、ちょっとしつこいんじゃない?」

 

「……」

 

「そりゃあ確かに、あなた宛に届いたお酒を勝手に開けて飲んじゃったのは私が悪いけど、だからってあんなに怒らなくても」

 

「あれは……あのお酒は特別だったのよ!」

 

「特別って……美味しい事は美味しかったけど、そんなに貴重な物だったの?」

 

「そうじゃなくて……今年で、丁度、十年目だから……その日になったら、記念に二人で飲もうと思って……それでわざわざ評判の名酒を取り寄せて」

 

「十年目の記念?それって何の?」

 

「何のって、それは、その……」

 

モジモジと、壁に指を滑らせる周瑜

 

「私と冥琳が初めて会ったのって10年以上前だし、私たちの初陣から10年…わけでもないわよねぇ…とすると」

 

そして、孫策は思い出した

 

「あ、そっか!私と冥琳が初めてや」

 

「バカ!!」

 

言いかけた瞬間、周瑜が口を塞いだ

 

「契りを結んだとか、愛を結んだとか、もっと他に言い方があるでしょう!?」

 

「そっか……それで拗ねちゃってたんだ?成る程ね」

 

「わ、悪い?そりゃあ、あなたにとってはどうでもいい事だったかもしれないけど、私にとっては……私にとっては、とても、大切な」

 

段々と小声になっていき、涙ぐむ周瑜

 

「もちろん、私にとっても、大切な思い出よ」

 

「えっ……?」

 

「冥琳、あなたの気持ちに気づいてあげられなくて、ごめんなさいね」

 

「いや、その……」

 

「私、あなたがいつも側に居てくれる事に、甘えちゃってたのかな」

 

「……」

 

「貴方の傍にはいつも貴方がいて貴方のそばにはいつも私がいる…ずっと前からそうだしこれからもずっとそう。どちらがいなくなるなんて考えられない強い交わり…それがあるからって私、油断してしたのかも」

 

「もうそれ以上言わないで…そう言って貰えただけでも私、私……」

 

「冥琳……」

 

二人は、強く抱き締め合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして此度の作戦を実行した黄蓋達はというと

 

「ほお、もう日が沈むか」

 

屋外でお茶をしていた

 

「二人とも、そろそろ仲直りをした頃合いじゃな」

 

「それじゃあ、もう蔵から出してあげてもいいんじゃない?」

 

「やれやれ、ませたこと言ってもまだまだ寝んねじゃのう」

 

「ちょっと!どういう事よそれ」

 

「仲直りしたからこそ、もうしばらく二人っきりで閉じ込めてやるのよ」

 

「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「お待たせして、申し訳ない」

 

孫権と愛紗はとある蔵の前に来ていた

 

「昨夜遅く、呂蒙がようやくこの蔵に江東丸がある事を突き止めて…確か、こっちの一番奥の棚にしまってあるとっ!!」」

 

孫権と呂蒙の案内により、その蔵の中に入り棚の角を曲がり、一同は、目撃してしまった

 

「…………」

 

衣類を身に付けず、生まれたままで抱き合いながら眠っている孫策と周瑜の姿を

 

「こ、これは……」

 

一同は顔を赤くし、言葉が出ない

 

 

「ん…んん…」

 

すると、周瑜が目を覚ました

 

「もう、何よ……朝からうるさ…あっ」

 

眼鏡をかけ、状況を把握し、とても、かなり、気まずい空気が、その場を支配するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、江東丸を手に入れた愛紗

 

「関羽殿、道中の無事を祈っています」

 

見送りに、港には孫権、孫尚香、陸遜、周泰、甘寧、呂蒙が来ていた

 

「お世話になりました、孫権殿」

 

「おっぱい10番勝負のことちゃんと張飛に言っといてよ」

 

そんなこんなで、船に乗り込み、出航した

 

「甘寧…貴方は」

 

「良いのです。私が言うべきことは別の人物なので」

 

「そう」

 

 

 

そして船の上では

 

「(これで江東丸は手に入った。皆も探している物を手に入れられていればよいが)」

 

そんなことを考えながら帰路につくのであった

 

「(はあ~ご主人様…帰ってきたらたくさんほめてください、ふ、ふふ、フフフフフフフフフ)」

 

目に光もなく、怪しい笑みを浮かべながら



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第百十一席 勇作、南蛮に着くのこと

此処は南蛮

 

「……」

 

太陽が燦々と照り、密林を熱してその奥地、一際目立つ大樹に建てられた砦。その玉座にて、少女が気持ち良さそうに昼寝をしていた

 

「美以はどじょうよりもカニの方が好きなのにゃ……」

 

傍らでは、ピンク色の子象が眠っていた

 

「分かったにゃ……そのどじょうも食べてやるにゃ………………かぷっ」

 

寝ぼけて、象の尻尾を噛む少女

 

「パヤァアアアアアア!?」

 

象はあまりの痛さに一気に目を覚まし絶叫。その場を駆け回る

 

「パヤパヤパヤパヤッ!!」

 

「んんっ、何なのにゃ……」

 

眠そうな瞼を擦りながら反論する少女

 

「パヤパヤうるさいのにゃ」

 

「パヤパヤパヤパヤッ!!」

 

尻尾を見せる

 

「何言ってるにゃ?美以はパヤパヤの尻尾を噛んだりしてないのにゃ」

 

「噛んでないものは噛んでないのにゃ!」

 

「パヤパヤパヤパヤッ!」

 

泣きながら鳴くパヤパヤ

 

「ご主人様に向かってその言い草はなんなのにゃ!」

 

「ぬにゅにゅにゅ」

 

少女は段々と苛立ちが募り

 

「もう我慢できないニャ!そんなに美以のとこがイヤなら出てくのニャア!」

 

その言葉に、パヤパヤ目に涙を浮かべる

 

「パヤパヤパヤパヤッ!」

 

そして、外へと飛び出した

 

「あっ……」

 

思わず、手を伸ばしかける。だが、意地を張ってしまい、その場に留まるのであった

 

「パヤッ!」

 

パヤパヤは一匹、密林の奥へと走り去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ……なんかここんとこ日に日に暑くなってない?」

 

「ここはもう常夏の南蛮ですからね。今日はまだまだ暑くなりそうですから、覚悟しておいた方がいいですよ?」

 

「えぇ~!!」

 

蒸し暑い日差しを浴びながら、勇作達は密林を歩いていた

 

「最近、ずっとこの陽気だから、この世に寒い所があるなんてこと忘れちゃいそうだね」

 

「……」

 

勇作の様子が少しおかしい

 

「お兄ちゃん?」

 

その様子を見て、鈴々が少し心配する

 

「………」

 

勇作は歩き出す

 

「ご主人様?」

 

その先には桃香がいる

 

「……」

 

そして

 

ガバ

 

「ええぇ!!」

 

そのまま桃香に抱き着いた

 

「……あ…あ」

 

周りは甘い雰囲気にある

 

「はわわ」

 

「えっ!!えっ!!」

 

「おわあわあわ」

 

「??」

 

勇作の顔は赤くなっていた

 

「ご、ご主人様」

 

「……あ…い…」

 

桃香と勇作は見つめ合い

 

「…っ!!」

 

「あ~づ~い~」

 

と言いながら、その場に崩れる勇作であった

 

「ご!ご主人様!!」

 

桃香の声が密林に響き渡るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ただいまなのにゃ~」」」

 

三人の少女が帰ってきた

 

「果物採ってきたにゃ」

 

「トラはお魚捕ってきたにゃ」

 

「シャムは、シャムは……えっと………いっぱいがんばったのにゃ」

 

獲物を献上する

 

「ミケ、トラ、シャム。ご苦労にゃ」

 

「あれ、パヤパヤはどうしたにゃ?」

 

ミケが頭上を見て、気がつく

 

「本当にゃ。パヤパヤいないにゃ」

 

「いつも頭の上に乗ってるのににゃ」

 

「実は、パヤパヤは…」

 

事情を説明する

 

 

「ええっ!喧嘩して追いにゃした!?」

 

「パ、パヤパヤが悪いのにゃ!美以はやってないのに、尻尾を噛んだなんて言うからそれで、ついカッとして……」

 

「ミケは前に足を噛まれたにゃ」

 

「トラは腕にゃ」

 

「シャムはお尻にゃ」

 

「ガガ~ン!」

 

顔を青くする少女

 

「そ、それじゃあ、パヤパヤの尻尾を本当に美以が……」

 

「パヤパヤ可哀想にゃ」

 

「森で迷子になってなきゃいいにゃぁ……」

 

「大きな獣に襲われて食べられちゃったりしてにゃ」

 

後悔と不安が募り

 

「ものども!ぐずぐずするにゃ~!」

 

号令を出す

 

「パヤパヤを探しに行くにゃ~~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……冷たくて気持ちいい~」

 

道中、上流から流れる川を発見した勇作達。女性陣は脱衣し、一糸纏わぬ姿で、水浴びをしていた

 

「いい所に川がありましたね」

 

気持ちよさそうに水に浸かっていた

 

「ねえ、今更なんだけどさ。南蛮象ってどんな生き物なの?」

 

「南蛮象って言うからには南蛮に住む象なんでしょうけれど、そもそも像自体、謎包まれていて、実際見た人はほとんどいないらしくて」

 

「そうなんだ」

 

「書物によれば、体の一部が異様に長くてたくましく、その上大きくてビラビラしている部分があるとか」

 

「い…異様に長くてたくまして」

 

「大きくてビラビラしている」

 

たんぽぽと焔耶は何を想像したのか顔を赤くする

 

「う~ん…どんな生き物かまったく想像つかないのだ」

 

鈴々は分からない表情をする

 

「お兄ちゃんなら、どんな生き物かわかるはずなのだ…けど」

 

鈴々達は勇作を見る

 

「あつい~~」

 

勇作は川の岸で朱里のバックを枕にして横になっていた。目元には川で濡らしたタオルを当てている

 

「大丈夫?ご主人様」

 

「な、なんとか」

 

「まったくだらしないお兄ちゃんなのだ」

 

「そう言わないでよ…俺、冬国の方の出身だから…この暑さはちょっと」

 

「そうなんだ」

 

「(それにしても熱すぎるだろう!南国みたいな所は皆こうなのか)」

 

「………だからと言って劉備さんに抱き着くつくなんて」

 

「朱里?何を怒っているのだ」

 

「怒ってません」

 

「けど」

 

「怒ってません!!」

 

「は、はいなのだ」

 

「あはは」

 

桃香は苦笑いしていた

 

「(もう…ご主人様…あんなことしたのに何も覚えていないなんて)」

 

勇作は暑さであの時の事は何も覚えていないらしく、桃香はそのことを少し怒ってりがっかりしていた

 

「そういえば」

 

桃香は覚えていないの言葉で

 

「孟獲ってどんな人物か分かる?」

 

「いえ…正体不明といえば南蛮象を飼っている孟獲さんもそうなんですよね。魏延さんは孟獲さんについて何かご存じありませんか?」

 

「ああ、あくまでも噂だが…身の丈は十尺を超え、肌にはウロコが生え、獣やヘビを生きたまま頭からバリバリかじり、南蛮の王と恐れられているとか」

 

「それって、とんでもない化け物じゃないですか!!」

 

「へん!たとえどんな奴でも」

 

鈴々は立ち上がり

 

「鈴々がちょちょいのぷーでブッ飛ばしてやるのだ!!」

 

「何を言っているんですか!!私たちは喧嘩をしに来たんじゃないんですよ!私たちの目的は南蛮象之臍之胡麻を分けてもらうことなんですから。ちゃんと訳を話してお願い…?」

 

すると、草陰から何かが飛び出してきた

 

「パ、パヤ~~!」

 

「な、何なのだ?」

 

桃色の小さい生き物は、助走を付けて飛び付き、鈴々が胸元で受け止める

 

「こんな小さい生き物見たことっ!!」

 

その小さな体が、小刻みに震えていた。その直後、森の奥から、一頭の大柄な虎が現れた

 

「きゃああっ!」

 

「はわっ!」

 

桃香は悲鳴を上げ、朱里と抱き合う

 

「………」

 

獰猛な唸り声を鳴らし、睥睨する虎。鈴々は恐れる事なく、睨み返す

 

「(くそ!!得物が手元にあれば……!)」

 

「……」

 

たんぽぽは得物を取りに行くが

 

「よせ!今は下手に動かない方がいい」

 

それを止める焔耶

 

「………」

 

正に目と鼻の先の間の距離、睨み合いが続く

 

「……っ!」

 

鈴々は眼差しを鋭利に研ぎ澄まし、こちらも虎の如く、睨みを利かせる

 

「グルルルル!!」

 

相手の虎も、若干たじろぐが、まだ後退しない

 

「グルルル」

 

すると虎は何かに気づき、視線を向ける

 

「……」

 

そこに居たのは猛暑でダウンしている勇作であった

 

「……」

 

勇作に狙いを定めたのか視線を顔を向ける

 

バシャ

 

鈴々は虎に水を掛ける

 

「グルル」

 

虎が視線を鈴々に視線を向けると

 

「(お兄ちゃんに近づくな!!)」

 

兄を守るため更に眼差しを鋭利に研ぎ澄まし殺気を放つ鈴々の姿があった

 

「……」

 

それにあてられ、大きくたじろぐ虎。踵を返して森の方に去っていった

 

 

「「「「はあ~」」」」

 

脅威が去り、安堵の息を漏らす一同

 

「か、顔が」

 

鈴々は皆の方に顔を向ける

 

「か、顔が……戻らなくなったのだ」

 

バシャン!と、全員がずっこけた。無理矢理な顔を作ったせいで、眉がヒクヒクと痙攣している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、翠と星はというと

 

「此処は泰山山頂」

 

山頂付近の洞窟の中で焚火を焚いて、体に毛布を巻いていた

 

「実は私たち遭難しそうなんです……なんてな」

 

「やめろ!!余計寒くなるだろうおおおおおおおおお!!!」

 

吹雪により足止めを食らっているのであった



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第百十二席 勇作、孟獲に出会うのこと

水浴びを終え、服を身に付けた一行は

 

「この子、何て生き物なのかな?」

 

「さあ、これまで見たことない動物ですね」

 

謎の生き物について話し合う。岩に腰掛ける鈴々の膝の上で、その生き物は寛いでいた

 

「(象だと言えば象だけど…けど俺が見てきた象と違って小さ過ぎるしピンクじゃないし)」

 

自分が見てきた象とは違っていて困惑してきた

 

「けど、こいつ人懐っこくてかわいいのだ」

 

鈴々はその子象を抱き上げる

 

「よし、こいつをアイアイと名付けるのだ」

 

「名付けるって……」

 

「それ飼うつもり?」

 

焔耶とたんぽぽが言う

 

「アイアイ…アイアイ…もしかして、アイは愛紗ちゃんのアイ?」

 

桃香は何かに気づいた

 

「ちょっ、ちょっと違うのだ」

 

「あっ!分かった!愛紗さんに会いたいからアイアイなんですね?」

 

「ち、違うのだ!図星だけど絶対絶対そうじゃないのだ~~!」

 

顔を真っ赤にして否定する鈴々であった

 

「(自分で図星って言ってんじゃん)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も~り~があるからもりなのだ~と~ら~がでたってきにしない~」

 

アイアイを頭の上に乗せ、歌と歌いながら先頭を歩く鈴々

 

「あの子、すっかり鈴々ちゃんになついちゃったね」

 

「みたいだな。鈴々も嬉しそうだし」

 

「きっと、虎から助けてもらった恩を感じているんでしょう」

 

「(俺も助けられたからな、後で御礼しよう」

 

「あ~~!こんなとこにいたのにゃ~~!」

 

見知らぬ少女が目の前で立ち塞がる

 

「(誰だ?)」

 

少女は息を切らしながら、鈴々の頭上にいるアイアイを奪う様にして抱き抱える。

 

「何するのだ!鈴々のアイアイを返すのだ!」

 

「何言ってるのにゃ!パヤパヤは美以のものなのにゃ!」

 

「違うのだ!鈴々のものなのだ!」

 

「美以のものに決まってるのにゃ!」

 

孟獲は前足。鈴々が後ろ足を掴み、お互い譲るまいと、引っ張り合っている。

 

「パヤ~~ッ!!」

 

両方に引っ張られ、子象は泣きながら悲鳴を上げる

 

「っ!」

 

少女は手を、放した

 

「やったのだ!これでアイアイは鈴々のものなのだ」

 

「それは違います」

 

「何でなのだ?鈴々が勝ったんだからアイアイは鈴々の物なのだ」

 

「両側から引っ張られ、痛がる姿を見るに耐えられず、思わず手を放したのが真の飼い主!!」

 

朱里は羽毛扇で少女を指す

 

「よって、このよくわからない生き物の真の飼い主はこちらの方です」

 

「愛、愛が足りなかったのだ……」

 

両手両膝を地面に付けて、暗い空気を出す鈴々

 

「はい」

 

子象を少女に手渡す朱里

 

「パヤパヤ……ごめんなのにゃ」

 

反省し、謝罪する。そして、嬉しそうに頬ずりする少女とパヤパヤ。微笑ましそうに見る勇作達

 

「こんな所にいたのにゃ!」

 

「途中ではぐれて心配したにゃ」

 

「探したのにゃ、大王さま」

 

三人娘が、合流する

 

「大王さあ……あの、まさかとは思いますけど、もしかしてあなたが南蛮王の」

 

「うむ。南蛮王、孟獲とは美以の事なのにゃ」

 

「「「ええっ!!!」」」

 

驚きの声を上げる桃香、鈴々、朱里

 

「何が身の丈は十尺を超え…だよ」

 

「う…噂と言うのは得てして大げさに伝わるものだからな」

 

「(何をどうやったらここまで大げさに伝わるんだよ…この子が孟獲だということは?)」

 

「それじゃあ、もしかしてよくわからない生き物が」

 

朱里はパヤパヤを指指し

 

「「「南蛮象!!!」」」

 

「(やっぱりか!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか…寝ぼけて尻尾を噛んだのが元で喧嘩を」

 

場所を変え、話を聞く一同であった

 

「へん!寝ぼけて噛みつくなんて、これだから蛮族は!!」

 

「あら、でも鈴々ちゃんも一度寝ぼけて愛紗さんのおっぱいにかぶりついたことがあるって愛紗さんこぼしていましたよ」

 

朱里が告げに思わず笑みをこぼすたんぽぽと焔耶

 

「ああ、あったあった。その時、寝ている俺のお腹を踏みつけたしな」

 

「あ、あれとこれとは話が違うのだ!あれはそのなんていうか……」

 

朱里の言葉に顔を赤くしながらおろおろする鈴々

 

「それはさておき、大王様、折り入ってお願いがあるのですが」

 

朱里は事情を説明する

 

 

 

「いないいないおっぱい」

 

「ふんにゃ~凄いむねむねなのにゃ」

 

「えへへ」

 

「いないいないって言いながら全然隠れてないにゃ」

 

「一家に一組は欲しいおっぱいにゃ」

 

桃香が三人娘と戯れていると

 

「そんなのダメに決まってるのにゃ!!」

 

話終わった直後、孟獲は断固として拒否する

 

「南蛮象之臍之胡麻は、南蛮族の宝!お前らの様な得体の知れない者にやる訳にはいかないのにゃ!」

 

「何が得体の知れない者なのだ!お前の方がよっぽど得体の知れないチンチクリンなのだ!」

 

「にゃ、にゃにを~~!」

 

「はわわ、二人共、落ち着いてください」

 

睨み合う両者を止めようと、朱里が仲裁する。しかし、両者は引くことを知らない

 

「こうなったら、力ずくで臍之胡麻をいただくのだ~!」

 

すかさず、腕を伸ばす鈴々

 

ガブ!!

 

逆にそれを掴み、噛みつく孟獲

 

「あっ痛!!」

 

噛み跡が残る程の痛みに怯んだ隙に、孟獲は木を登り、数秒で頂上に到達した

 

「こら~!降りてきて地上で勝負するのだ~~!」

 

「お前みたいなのろまには捕まらないのにゃ~~」

 

木の上にて、余裕綽々の態度をとる孟獲

 

「お前ら南蛮象之臍之胡麻が欲しかったら、美以を捕まえてギャフン!と言わせてみるのにゃ!」

 

そして子分たちに

 

「者共、引き上げるのにゃ!」

 

三人は、桃香になついており、甘える様に身を寄せていた

 

「「「えぇ~~」」」

 

「引き上げるったら引き上げるのにゃ~~!」

 

「「「はぁ~~い」」」

 

孟獲からの号令に、渋々従う

 

「(あはは、こりゃとんでもないことになったな)」



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第百十三席 孟獲、たくさん捕らわれ、たくさん放たれるのこと

「ふぅ、出来た」

 

近くにあるヤシの木の様な植物等の木材から作り上げた、ザルの様な巨大な籠

 

「流石、手慣れたものですね」

 

「伊達に子供の頃から筵や草鞋を編んでた訳ではないですよ?」

 

「凄いな」

 

「けど、こんな大きな籠を作ってどうするの?」

 

「もちろん、孟獲さんを捕まえるのに使うんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その壹

 

 

 

「あ、あの、いくらなんでもあれはちょっと馬鹿にしすぎなんじゃ……」

 

木の棒で籠を立て、その真下に餌を置く。草むらに身を潜め、その様子を窺う勇作達

 

「私の見たところ、孟獲さんのお頭の出来は鈴々ちゃんと同程度。これならこの策で十分のはず」

 

「いや、でも……」

 

「これで引っかかるわけ…」

 

 

カラン

 

 

音が鳴った方に視線を向けると

 

 

「何なのにゃ~!急に真っ暗になったにゃ!怖いにゃ!助けてにゃ~!」

 

つっかえ棒が倒れ、籠が落ちた

 

「ねっ?」

 

「…………」

 

「(引っかかるんかい!!)」

 

桃香は苦笑いをし、勇作は心の中でツッコみを入れた

 

「つ、捕まったけど、これぐらいじゃ美以は絶対にギャフンとは言わないにゃ!」

 

お縄につくも、一向に負けを認めない孟獲。困った様に顔を見合わせる

 

「美以を逃がした事を後悔させてやるにゃ!次は絶対に捕まらないからにゃ~~」

 

「(フラグが立った気がする)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その貳

 

 

 

 

「孟獲のば~か!ちりょく一桁のふわふわ頭~りょっくりもんきのプニプニのプ~!!」

 

「誰がりょっくりもんきのプニプニのプ~にゃ!!」

 

鈴々の挑発に乗り、武器を手に駆け出す孟獲

 

「や~い、のろま~!ここまでお~いで~」

 

追いかけていき、視線の先には鈴々の他に、たんぽぽがいた

 

「言わせておけば……!」

 

しかし、あることに気づき、急停止する。鈴々とタンポポの前に、たくさんの葉が敷き詰められていた。まるで、仕掛けられている罠を隠すかの様に

 

「そんな見え見えの落とし穴には、引っ掛からないのにゃ~~!!」

 

孟獲は足元の落とし穴を飛び越えた

 

 

ニヤリ

 

 

その瞬間鈴々とたんぽぽは笑みを浮かべる

 

「ニャ~~~!!?」

 

見事な着地、しかしさらに落とし穴がありまんまと引っ掛かってしまった、孟獲であった

 

「二段構えの策とは、やりますね」

 

「これは鈴々山賊団を率いていた時に良く使っていた策なのだ。にひひひ」

 

「(懐かしいな)」

 

「自分が馬鹿だと思っていないマヌケほど良く引っかかるのだ)」

 

「それ、愛紗が聞いたら怒ると思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その参

 

「みんな~、今からおっぱい体操始めるよ~!」

 

「(おっぱい体操って)」

 

「寄せて、寄せて、イー、アル!横に、揺らしてサン、スー!縦に、揺らしてウー、リュウ!」

 

「大きいムネムネにゃ~~!」

 

桃香の豊満なおっぱい目掛けて、孟獲率いる南蛮族は走り出す

 

「うわ!!」

 

その直後、地面の下から網が出現。狙い通り、捕らえられてしまった

 

「上手くいったのはいいけど……なんで焔耶も一緒に捕まってるの?」

 

「いや、その……つい」

 

猫達に紛れ、焔耶も捕まっていた。

 

「(気持ちは分からないでもないが……)」

 

勇作はそう思いながら桃香の豊満な胸に視線を向ける

 

「ご~主~人~様~~~~~~~~っ!!」

 

「ひっ!!」

 

地獄の底から響いてくるような恐ろしい声。振り向くと笑っているが目に光がなく尋常じゃない何かが出ている朱里がいた

 

「いったいどこを・ミ・テ・イ・タ・ノ・デ・ス・カ」

 

「い、いや…あ、あの」

 

「もうご主人様のエッチ♪そんなに見たいなら堂々と」

 

「何を言っているの!あと火に油を注ぐな」

 

「フフフ、ゴシュジンサマ♪」

 

「うわっ!!」

 

朱里は勇作の服の後ろ襟を掴み

 

「チョットコッチデ、オ…ハ…ナ…シ…シ…マ…シ…ョ…ウ♪」

 

体格差がある筈なのにスルズルと密林の奥に引っ張られっていった

 

「いやぁぁあ!!ちょっと助けて!!ヘルプミ~~~~~!!!」

 

しかし皆、助けなかったいや助けることが出来なかった

 

「フフフフフ」

 

言葉は出ていないが朱里から出ている(助けたらどうなるか分かっていますよね♪)という雰囲気をガンガン出しており、全員自分の身を守るため助けなかった

 

 

 

そして

 

 

 

ぎゃぁぁああああああああああああ!!!!!

 

 

 

勇作の悲鳴が密林に響き渡るのであった

 

 

 

 

その肆

 

 

 

 

今度はバナナによる二度目の罠

 

 

 

 

その伍

 

 

 

 

焔耶が魚と共に孟獲を豪快に釣り上げる

 

 

 

 

その陸

 

 

手紙での罠。おびき寄せ孟獲をたくさん捕まえるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「くやしいにゃ!!くやしいにゃ!くやしいにゃ!」

 

度重なる罠にかかり、砦内で悔しさを募らせる孟獲

 

「こうなったら、南蛮族に伝わる秘術を使って、森の悪霊を呼び出すにゃ!」

 

「悪霊を呼び出してどうするにゃ?」

 

「悪霊をパヤパヤにとりつかせて、それであいつらをやっつけるのにゃ!」

 

「パヤッ!?」

 

パヤパヤは冷や汗をかく。

 

「悪霊がついた者は、強い力を持ち、すごく凶暴になるにゃ」

 

悪い事を企む孟獲の言葉に、三匹の子分達は怯え始める

 

「食べたらエビの味がするらしいにゃ」

 

「食べると…」

 

「エビの味」

 

「えへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから孟獲達は、砦の外にある、儀式の間へと移動する。小さなピラミッド上の石段。頂上にある台の上に、パヤパヤを置く

 

「それでは、これより悪霊を呼び出す儀式を行うにゃ」

 

孟獲の号令に従い、呪文を唱え始める三匹。孟獲も加わり、儀式が行われた。

 

「ニャンパパパッ!ニャンパパッ!ニャンパパパッ!ニャンパパッ!」

 

すると、その場が暗雲に包まれる

 

「来たにゃ!」

 

気味が悪い雲。昼時だというのに、薄暗くなっていく

 

 

 

 

「パヤァッ!!」

 

突如、赤き稲妻がパヤパヤ目掛けて落ちてきた。落雷がパヤパヤに直撃。孟獲達は、慌ててその場を見る

 

 

 

 

パヤパヤの体は、みるみる内に巨大化していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これは面白いものがみれました」

 

そして謎の人物がその様子を見ていた

 

「ふふふ……じっくりと拝見しましょう」



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第百十四席 群雄、パヤパヤを救出するのこと

「さ~て今日はどんな罠で孟獲さんを捕まえましょうか」

 

作戦会議を行う勇作達

 

「たんぽぽがやる」

 

「今日は鈴々の番なのだ」

 

「え~、私もやりた~い」

 

割りと乗り気で誰の罠を採用するかで話し合っている

 

「お主ら……段々楽しくなってきてるだろ?」

 

焔耶は一人、やや呆れながら眺めていた

 

「じゃあ誰がやるかおっぱいじゃんけんで決めるのだ」

 

「あ~え~とそれじゃあ私の不戦勝になるんじゃ」

 

「うわ…なにそれ嫌味っぽい」

 

「べ、べつにそういう訳じゃ」

 

たんぽぽの言葉に桃香はあわてて否定するが

 

「そうですよね~」

 

朱里はたんぽぽの言葉に納得するように表情をする

 

「無駄に胸の大きい人は、もっとそれが周囲に与える影響を考えてもらわないと…どうもおっぱい勝ち組はその辺、無神経の人が多くて」

 

「そうだね。それより」

 

たんぽぽはある方を指差す

 

「ご主人様、ほっといていいの?」

 

皆が視線を向けると

 

「………」

 

雰囲気を暗くして体育座りをしている勇作がいた

 

「大丈夫ですよ。直ぐに回復しますから……ね!」

 

「けど」

 

「ね!」

 

「ええと」

 

「ね!!」

 

「「「「……」」」」

 

朱里の迫力に皆、追求するのをやめるのであった

 

「(朱里がいつもより怖いのだ)」

 

「(いつもの孔明ちゃんじゃない)」

 

「(ごめん。ご主人様)」

 

「(いったい、何があったんだ?)」

 

そんなことを考えていると

 

 

 

「にゃ!にゃにゃにゃにゃ!」

 

突如、孟獲達が何かから逃げている様に、喚きながら乱入してきた

 

「「「「「うわあああああああ」」」」」」

 

「ん?」

 

彼女達にぶつけられ、吹き飛ばされる桃香達

 

「いった~い!」

 

「……ピンク」

 

「何なのだお前ら!いきなり飛び出してきて!」

 

「どうしたんですか?今日はまだ何も罠は仕掛けてない筈ですが……」

 

「……青」

 

「たたたたたた大変なのにゃ!」

 

慌てている孟獲

 

「お前らをやっつける為パヤパヤに悪霊をとりつかせたら急に暴れだして全然言うこと聞かないのにゃ~~!!」

 

「あ、悪霊?」

 

「よく分かんないけど、ミケ達に襲い掛かってきたにゃ!」

 

「お前達も早く逃げないと大変な事になるにゃ!」

 

「何を言い出すかと思ったら……」

 

朱里は呆れる様に、ため息をつく

 

「良いですか?悪霊なんてものは迷信で、大抵は何かの見間違いや、気の迷いに過ぎないんですよ?そもそも」

 

孟獲達に向けて、説明する朱里。そんな彼女を、巨大な影が覆い尽くす。朱里以外の全員が、驚愕する

 

「孔明ちゃん」

 

「後ろ!後ろっ!」

 

「へっ、後ろ」

 

振り向くと、8メートルはあるであろう巨大な体躯。鋭利に曲がった象牙に、瞳は真っ赤に染まっている巨大な象がいた

 

「っ!?」

 

振り返り、ようやく危機に気づく朱里。轟く程の雄叫びを上げると右足を上げ、踏み潰そうと、勢い良く下ろす

 

「「「「「うわああああああああ!!!」」」」

 

桃香と朱里と南蛮組は悲鳴を上げながら遠くに避難する

 

「取り押さえるのだ!」

 

得物を構える3人

 

「よしっ!」

 

タンポポは像に向かって駆け出す

 

「うおりゃあああああああ!!」

 

バアン!!

 

「ぐはああああ!!」

 

象の長い鼻で一蹴される

 

「であ!!」

 

今度は焔耶が駆け出すが、像は鋭利な牙を得物で受け止める

 

「ぐは!」

 

そして吹き飛ばされてしまう

 

「パヤパヤ!悪さは駄目なのだ!」

 

説得を試みる鈴々

 

「うにゃ~~!?」

 

ヒラヒラとした耳が、素早く羽ばたき始める。それにより、強風が巻き起こる。何とか踏ん張るも、地面から足が離れてしまった

 

「うにゃ~……目が回ったのだ~……」

 

鈴々は吹き飛ばされてしまった

 

「孔明ちゃん!何か策はある?」

 

「さ、策と言われても、悪霊を祓う方法なんて分かりませんよ……そもそも私は悪霊とか化け物とかその手の類いは、怖いから信じないことにしてて」

 

 

パオオオッ!!

 

 

咆哮を上げる象

 

「信じるも信じないも、現に目の前にいるじゃない!?」

 

「えへ」

 

「悪霊が憑くと、その印として悪しき力の宿った尻尾が生えるにゃ!だから、それを切れば元に戻る筈にゃ!」

 

孟獲が助言を送りそれを聞きた鈴々は動き出した

 

「分かったのだ!馬岱!魏延!援護を頼むのだ!!」

 

3人は象に向かって走りたず

 

「「はあ!!」」

 

タンポポと焔耶は、象の動きを食い止める

 

「今だ!」

 

「行け!」

 

「うりゃりゃ!!」

 

高く跳躍し、背中を駆ける鈴々。瞬く間に、最後尾まで到達

 

「尻尾が!尻尾が二本あるのだ!赤と青……どっちを切ればいいのだ!?」

 

見ると、尻尾はそれぞれ、赤と青の尻尾が二本生えていた

 

「それは、やってみないと分からないのにゃ!もし間違った方を切ったら、手負いの悪霊憑きになって、ますます凶暴になるのにゃ……!」

 

「そんなっ……!」

 

「早くしろっ!そう長くはもたんぞっ!」

 

「(赤……青……どっちを切れば……)」

 

急かされながら、焦りながら、鈴々は必死に考える

 

「あっ!!そうなのだ!!」

 

ふと、赤い方の尻尾を目にする。そこに、見覚えのある跡があった。そして、何かを思い出した鈴々

 

「分かったのだ!!」

 

行動に移す

 

「正解は…こっちなのだ!!」

 

陀矛で青い方の尻尾を切りにかかる

 

 

 

 

ガチン!!

 

 

「えっ!!」

 

が、尻尾は切れないどころか逆に刃は弾かれしまった

 

「パオオオオオ!!」

 

象は尻尾で鈴々を弾き飛ばす

 

「うにゃ!!」

 

「きゃあ!」

 

「ぐあ!!」

 

巻き込まれる形でたんぽぽと焔耶も吹き飛ばされてしまった

 

パオオオオ!!

 

象は3人を睨み付け向かって歩き出す

 

「このままじゃ」

 

万事休すかと思った

 

 

 

ズドオオオオオン!!!

 

 

「えっ」

 

その時、象の巨体が宙に浮いた

 

「………」

 

良く見ると、象のお腹の下に勇作がおり、象を蹴り上げていた

 

ドス~~~ン!!

 

象は地面に叩きつけられた

 

「ご、ご主人様…」

 

「正気に戻ってみれば、これはいったいどうなってるの?」

 

「お、お兄ちゃん」

 

「この象はいったい?」

 

「お館!危ない!!」

 

「ん?」

 

勇作が振り返ると

 

 

パオオオオ!!

 

 

象は右足を上げ、勇作を踏み潰そうとする

 

 

「……」

 

ドンッ!!!

 

が勇作は武装色の覇気を纏った右手を出して、逆に跳ね返した

 

 

パオオオオオオ

 

 

痛かったのか涙目になる象

 

 

「いきなり何するんだよ」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「何?」

 

「パヤパヤに生えている青い尻尾を切るのだ」

 

「え?」

 

「早く!!」

 

「分かった」

 

そういって振り向くと

 

パオオオオオオ!!!

 

象が起き上がって勇作を睨み付けながら勇作の方に向かっていた

 

「……しょうがない」

 

そう言って勇作は包帯を取る

 

ドンッ!!

 

 

覇王色の覇気を発動した

 

 

「………」

 

象の動きは鈍くなり、止まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスウーーーンッ!!!

 

 

 

 

 

 

象の真っ赤に染まっている目が白くなり、倒れた

 

 

「これで良し」

 

勇作は再度包帯を巻き、そして象の尻尾がある方に歩き出す

 

「これか…………フン!!」

 

そして覇気を纏った刀で青い方の尻尾を切った

 

 

パオオオオオオオオオッ!!!

 

 

咆哮を上げる象。体に染み付いていた邪悪なる妖気が、勢い良く排出される

 

「「「うわああああああ!!!」」」

 

その際に生じた衝撃に耐え切れず飛ばされるたんぽぽと焔耶と鈴々

 

「パヤ」

 

 

見上げる程の巨体が徐々に小さくなっていき、妖気は、完全に消滅。その場に残ったのは、桃色の可愛らしい小象のみとなった

 

「パヤパヤ~~っ!!」

 

元に戻ったパヤパヤ目掛け、涙を流しながら、飛び込む孟獲

 

「ごめんにゃ!美以が悪かったにゃ!」

 

何度も何度も謝り、頬ずりする孟獲

 

「何とかなった、かな」

 

「そういえば鈴々ちゃん。どうして、切ればいい方の尻尾が分かったの?」

 

「赤い方の尻尾には、これと同じ噛まれた跡が付いてたのだ。喧嘩の原因は、孟獲が寝ぼけてパヤパヤの尻尾に噛みついた事だって言ってたから、その跡が付いてない方が、後から生えた尻尾だって分かったのだ」

 

「「「「へぇ~」」」」

 

鈴々の説明に皆、関心していた

 

「けど」

 

「うおっ!」

 

勇作に抱き着く鈴々

 

「やっぱりお兄ちゃんは凄いのだ」

 

「……ありがとう」

 

そういって鈴々の頭を撫でる

 

「えへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして

 

 

 

「ええっ!!南蛮象之臍之胡麻を分けてくれるんですか!?」

 

「美以はギャフンって言ってないけど、お前ら案外いいやつだから、分けてやる事にしたにゃ」

 

「ありがとう、孟獲ちゃん」

 

「ただし、一つ条件があるのにゃ」

 

「ん?」

 

「南蛮象之臍之胡麻は、南蛮族に伝わる宝。だから美以はそれが悪いことに使われないようちゃんと見届ける使命があるのにゃ」

 

「それって、もしかして」

 

「美以達も、お前達の村まで一緒に行くにゃ!」

 

「「「「「ええっ!!」」」」

 

「あと、中原にはおっきなムネムネがあるみたいだから、それも見物してみたいのにゃ」

 

「まあ確かに、見世物に出来る位大きい人は何人かいますけど……」

 

「(てか、それが目的だろう)」

 

「けど孟獲さん、私達の村は、ここからすごく遠いんですよ?」

 

「大丈夫なのにゃ!美以達は前にお忍びで遠い遠い巴群へ見物しに行った事があるのにゃ。だから、お前達の旅についていくぐらい、どうってことないのにゃ!」

 

「いや、私達の村は、その巴群よりずっと遠い所なんですけど……」

 

「いいじゃない、一緒に連れていってあげようよ」

 

「ですけど……」

 

「ほら、よく言うじゃない?旅は道連れ、世……世……」

 

「良い子も一緒なのにゃ~」

 

「世は情けだよ」

 

こうして、孟獲達を加えて桃花村に向けて出発する

 

 

 

「それより、ご主人様」

 

はずだった

 

「ん?」

 

「ちょっとこっちに来てくれませんか?」

 

そう言って朱里は勇作の首根っこを掴む

 

「えっ!あの、ちょっと……」

 

ズルズル連れてかれ

 

「うわっ!!」

 

少し密林の中で離される

 

「いたた、いったいどうし…」

 

「見ましたね」

 

「え?」

 

「見ましたね」

 

「な、何を」

 

「とぼけないでください………孟獲さん達とぶつかった時ことを!」

 

「ぶつかった時………う~ん」

 

勇作はその時のことを思い出そうする

 

「………………………………………あ」

 

そして思い出した。ぶつかった時に見えてしまった。朱里のスカートから見える青い物を

 

「い、いや、あれは事故で」

 

「事故でも見たことにかわりありません」

 

「…ひぃ」

 

「ご主人様」

 

朱里は笑みを浮かべる

 

「はい!」

 

嫌な汗を垂れる勇作

 

「責任とってください」

 

「せ、責任」

 

「はい」

 

「いや、そんな」

 

「わかりました」

 

「だから」

 

「わかりました?」

 

「朱里さん」

 

「ワ・カ・リ・マ・シ・タ?」

 

「はい、わかりました」

 

「では、帰りましょう。桃花村に………ウフフフフフフフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、泰山の星と翠は

 

「吹雪に閉じ込められてもう3日…食料も尽きたしこのままじゃ」

 

「案ずることはない!」

 

声がした方に視線を向けると

 

「…ふ」

 

「貴方はもしや美と正義の使者!華蝶仮面様」

 

星もとい華蝶仮面がいた

 

「さあ、差し入れのメンマ丼だ!遠慮せずに食しゅがよい」

 

そういってメンマ丼を差し出す

 

「うまい…ふわふわ卵に包まれたメンマの歯ごたえがまさに絶品」

 

メンマ丼を食べる翠

 

「メンマ最高!華蝶仮面様ありがとう」

 

「そうか!美味いか!これからはメンマに命を救われたことを忘れず常に感謝の心を」

 

 

「おい!しっかりしろ!」

 

翠は星の肩に手を当てていた

 

「メンマ丼なんてないぞ!幻だ!おい!」

 

幻覚を見ていたのか星はぶつぶつを何かを言っていた

 

「これで安らかに」

 

ガク

 

「うわ!寝るな!寝ると死ぬぞ!!」

 

「はっ!!」

 

「良かった…起きって……うわっ!!」

 

星は翠を押し倒した

 

「お、おい!星」

 

「主…来てくれたのですね」

 

「え?」

 

「主…わたし我慢できません」

 

そう言うと、翠の服を脱がし始める

 

「な、何するんだよ!やめろよ!」

 

「主の子供が欲しいです…ここでやりましょう」

 

星も服を脱ぎ始める

 

「やめろぉおおおお!!!あたしはご主人様じゃな~~~~いぃ!!」

 

 

 

 

 

 

そして愛紗はいうと

 

「おおっ!ようやく帰ってきたな」

 

一足早く桃花村に帰ってきた

 

「ようやくだ…ようやく…ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様」

 

 

 

 

 

 

「(俺、死なないよね)」

 

勇作は不安を抱えながら桃花村に向けて出発するのであった



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第百十四席 勇作、桃花村に帰ってくるのこと

遅れてしまいすいません

もう少しで平成も終わりますが、今後ともよろしくお願いします


「みんな~~!!早く来るのだ」

 

「鈴々ちゃん…はしゃいでいるね」

 

「久しぶりに愛紗さんに会うのが待ちきれないのでしょう!」

 

南蛮象之臍之胡麻を手に入れ、孟獲達とともに帰路についていた勇作達

 

「帰ってきたのだ」

 

ついに桃花村に帰ってきた

 

「皆~ただいまなのだ~~!!」

 

門をくぐり、屋敷に向かう鈴々

 

「愛紗!翠!まだ帰ってきていないのか?なのだ!」

 

庭を歩きながら鈴々は確認していると

 

「鈴々!!」

 

屋敷の二階から翠が出ていた

 

「翠!」

 

翠は階段を下りる。そして隣の部屋が開く

 

「帰ってきたのか!」

 

「帰ってきたのだ!!」

 

「ずいぶん遅かったけど一体どうしたんだ?」

 

「いろいろあって南蛮まで行って来たのだ」

 

「ええっ!!南蛮まで!」

 

南蛮まで行ったことに驚く翠

 

「えへへ…そんな遠くまで行く間、愛紗がいなくて大丈夫のか」

 

「うん!当り前だったのだ。旅の間、愛紗がいなくても鈴々は立派にやってみせたのだ」

 

「ほぉ…それは頼もしいな」

 

2階から愛紗が降りてきた

 

「……」

 

鈴々は愛紗が見えると

 

「愛紗…愛紗!!」

 

目に涙を浮かべ愛紗に抱き着く鈴々

 

「会いたかったのだ~」

 

「おいおい…旅の間は私がいなくても立派にやってたんじゃなかったのか?」

 

「立派にやってたけど…立派にやってたけど…でもやっぱりさびしかったのだ」

 

「鈴々…これくらいで泣く奴があるか…お前ときたら本当にもう」

 

鈴々の頭を撫でながら涙を流す愛紗であった。そばには星が壁に乗りかかりながらその様子を見ていた

 

「姉妹の絆って良いもんだな」

 

「本当だよね」

 

「ってたんぽぽ!!やっぱりお前…勝手に劉備たちに着いて行っていたんだな!!お前ってやつは!!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

殴られると思ったのか目を瞑るたんぽぽ

 

「……」

 

翠は両手をたんぽぽの肩を掴む

 

「へっ?」

 

「たく…どれだけ心配したと思ってたんだよ…」

 

たんぽぽが目を開けると翠は目に涙を浮かべていた

 

「翠姉様…ごめんなさい」

 

翠はたんぽぽを抱きしめた

 

「お帰りなさい」

 

「お帰り!!」

 

紫苑も璃々も来た

 

「ただいま戻りました」

 

「お留守番ご苦労さまです」

 

「あら…お客さんがいっぱい」

 

「どうも」

 

「「「「おっきなムネムネ!!!」」」」

 

焔耶や孟獲たちも挨拶をした

 

「あれ?ごしゅじんさまは?」

 

璃々は勇作がいないことに気付く

 

「ご主人様は厠の方に」

 

「そうなんだ」

 

「じゃあ部屋で待ってましょう」

 

そう言って皆は屋敷に中に入っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして勇作はというと

 

「げほっ!!がはっ!!」

 

なんと厠で嘔吐していた

 

「はあっ…はあっ…はあっ…」

 

かなり苦しそうだ

 

「(くそ!南蛮から戻ってからどうも調子が悪い…暑い所から離れて調子は良くなると思ったのに)」

 

すると

 

なんで俺達が 憎い お母さん 待ってください 返してください 助けて

 

 

人々に怨嗟の声が桃花村に向かっている間、日々、大きくなっていた

 

 

「はあっ…はあっ…はあっ…」

 

しかし皆に悟られないよう気持ちを整え、みんなの所に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!それではそなたが南蛮王の」

 

食堂では皆が会話をしていた。そして璃々と孟獲の手下の3人は象のパヤパヤを遊んでいる

 

「そうにゃ!みーは大王様なのにゃ!」

 

「孟獲さんは南蛮象之臍之胡麻がどういう目的で使われるかを見届けるためにはるばる南蛮から来られたんですよ」

 

「ほお!」

 

「後、中原にはすごいムネムネがごろごろしていると聞いて見物しにきたのにゃが…噂は本当だったのにゃ」

 

「はあ~」

 

「で、旅の途中で仲間になったこちらが」

 

「我が名は魏延。字は文長と申す」

 

「焔耶は劉備のムネムネが目当てで着いてきたんだよね」

 

「うむ…私は劉備のムネムネが目当てで…って別に私は劉備のムネムネが目的ではなく」

 

「あっ!じゃあ下の方も狙っているんだ」

 

「いやぁ狙っているか狙っていないかと言われると狙っていないわけではないのだかもちろん無理矢理ではなく」

 

「あの魏延さん…落ち着いて。劉備さんが身の危険を感じているようです」

 

「が~~ん」

 

怯えている桃香の姿を見てショックを受ける焔耶であった

 

「後、焔耶はご主人様と手合せしたけど、コテンパに負けた上にお漏らししてさ」

 

「たんぽぽ!!そのことは言うなぁああああ!!!」

 

「本当のことなのに」

 

「うるさい!あの時はお館の力量を見抜けなかっただけで」

 

「あの…話を戻しても」

 

「す、すいません」

 

「これが今取ったばかり南蛮象之臍之胡麻。そしてこれが孫家に伝わる江東丸。さすが泰山の過酷な環境の中でも枯れることない持久草」

 

朱里はテーブルの上に材料を置く

 

「摘んでからかなり時間が経っているはずなのにしおれる気配もないですね」

 

「いや~これを手に入れるまでには何度も危ない目にあってな」

 

星はそれまで過程を語り始めた

 

「その都度、華蝶仮面が助けてくれなかったら一体どうなっていたか?」

 

「ええっ!華蝶仮面様が助けに来てくれたんですか!!」

 

「うむ」

 

朱里はため息をつきながらその場を後にする

 

「うむ、われらが窮地に陥るといずこから風のように現れ……」

 

星は語りだし、桃香は目をキラキラさせながら聞く

 

「良いんですか?あんな与太話させておいて劉備さん本気にしちゃいますよ」

 

「もう良いって…逆らうと面倒だし」

 

すると扉が開かれる

 

「秘薬の材料がそろったと聞いたが真にゃ」

 

そして入ってきた人物を見て、皆驚きを隠せないでいた

 

 

 

 

 

 

 

それは次回のお楽しみ



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第百十五席 何進、解毒剤を飲むのこと

平成最後の投稿です

令和になってもよろしくお願いします


「早く解毒剤を作ってたもれ!」

 

「えっ~と、何進さん…しばらく見ない間にずいぶん小さいお姿に」

 

入ってきたのは何進であったが、その姿は顔は変わらないが身長は璃々ぐらいで両手は猫の手になり、ネコの尻尾も生えていた

 

「お主らが早くせぬからこんな様になってしまったのにゃ!」

 

「孟獲さん、こちらが南蛮象之臍之胡麻を欲しがっている何進さんです」

 

「なんにゃ…どんな奴かと思ったらみぃ達の仲間なのにゃ。それならそうと」

 

「仲間とはなんにゃ!仲間とは…貴様らのような蛮族と一緒にするにゃ」

 

「いいんですか?そんなこと言ってたら南蛮象之臍之胡麻、分けて貰いませんよ」

 

朱里は何進の耳元で忠告する

 

「うっ!」

 

何進の顔が強張る

 

「そうしたら、いずれそう遠くないうちに完全な猫に…」

 

そのことを想像したのか顔が青くなる何進

 

「なんかえらそうな奴なのにゃ」

 

「ほんとにゃ。偉そうなのは大王様だけで十分にゃ!」

 

「そうにゃ!そうにゃ!」

 

「うんうん」

 

「孟獲さん…何進さんは今はこんなちんちくりんですけど、薬を飲んでもとに戻ればバインバインのゆっさゆっさなんですよ!」

 

「にゃんと!!」

 

「しかも下の方はモフモウのもっさもっさ!」

 

「そんなにもっさりはしておらんのにゃ!!」

 

「よし!決めたにゃ!」

 

孟獲は何進を指さし

 

「お前がみぃ専用のムネムネになるんなら南蛮象之臍之胡麻分けてやるにゃ!!」

 

「にゃにぃ~~~~!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

「お待たせしました」

 

朱里が顔をひきつけ手にはお盆の上にコップと急須が乗せてある

 

「おお!解毒剤が出来たかにゃ」

 

「はい…」

 

テーブルに置いた瞬間、全員あまりの匂いに何進が座っている場所の反対側に移動した

 

「ううっ!!すごい臭いなのだ!!」

 

星と鈴々とたんぽぽと焔耶は鼻をつまむ

 

「くっ!まるで3年間穿き続けた下着を猫の小穂で煮込んだような臭いだな」

 

朱里はコップに解毒剤を注ぐ

 

「……」

 

「さっ!グーッと一息に」

 

「うむ」

 

コップを持つ何進。皆はその様子をじっと見る

 

「……」

 

一気に飲み干す何進

 

「うっ…うっ…」

 

飲んだ後、何進は苦し始める

 

そして

 

「おおおおおおお!!!!」

 

「はあ…はあ…はあ………おお!戻った」

 

元の人の姿に戻った何進

 

「足も…ああ手も…胸も…」

 

喜ぶ何進

 

「耳も元通りに……ん?」

 

耳に手を当てると違和感を感じる

 

「なってないではないか!!」

 

耳は猫耳のままになっていた

 

「どういうことじゃ!!」

 

何進は朱里を怒鳴りつける

 

「よもや解毒剤の調合を間違えたのでないか!?」

 

「そ、そうじゃなくて…たぶん猫になる薬を飲まされてから解毒剤を飲むまでに時間が経ち過ぎたんで完全に毒が抜け切らなかったにかと」

 

「それでは一生このまま」

 

「ああでも…解毒剤を服用し続ければいずれは元に戻る………はず?」

 

「はずとはなんじゃ!!はずとは……」

 

何進は朱里を睨みつけていると

 

「ん?……いぃ!!」

 

「みぃ専用のムネムネなのにゃ!!」

 

孟獲が目を輝せながら何進の胸に飛び込んだ

 

「独り占めはずるいのにゃ!!」

 

「そうにゃ!そうにゃ!」

 

「シャムもしゃむも!」

 

孟獲の子分たちも何進の胸に飛び込み、奪い合いが始まった

 

「こらよさぬか!そんなに強く揉むでない。ちょっと待て、童はそこは」

 

朱里は顔を赤くし、他の皆は驚いた表情でそれを見ていた

 

「あれ~~~~~~~~~」

 

何進の声が屋敷に響き渡るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにしばらくして

 

「本当にこの部屋で休んでいるのか?」

 

全員(孟獲たち、何進を除く)は勇作の部屋の前に居た

 

「はい、解毒剤を作りに台所に向かっている時にご主人様にあって、部屋で休むを言っていたので」

 

「そうか」

 

星が扉を開こうとした時

 

ガシャン!!

 

「!!」

 

窓が割れる音がした

 

「な、何だ!!」

 

部屋に入ると

 

「はあ…はあ…はあ」

 

「ご、ご主人様」

 

「ん?」

 

「ご主人様?」

 

愛紗が近づくと

 

「来ないで!!」

 

「え?」

 

「お願い来ないで!今の俺は何を仕出かすか分からない」

 

「ご、ご主人様…私を嫌いになったのですか?」

 

「違う!!」

 

「なら何で?」

 

「………」

 

「答えてください!!」

 

「……なんでそんなコト言うの?」

 

「え?」

 

「俺は悪くない…俺は悪くない」

 

何かに怯える勇作

 

「ご、ご主人様」

 

「どうしたんだよ!!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「俺は悪くない!!」

 

勇作は発作的に窓から飛び降りようとした

 

「「「「「ご主人様!!」」」」」

 

「主!!」

 

「お館!!」

 

愛紗達は勇作の手を掴むために手を伸ばす

 

 

 

 

 

 

 

 

どうなったかは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く



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第百十六席 勇作、助けを求めるのこと

遅くなりました

令和、最初の投稿です


時間を遡り、夕方

 

「例の件はどうなっている?」

 

洛陽の宮廷のとある塔の最上階。そこに張譲と于吉がいた

 

「あなたが董卓を隠れみのに行った悪政のお蔭で地には民の怨嗟の声で満ち、それを糧として太平要術には順調に妖力をため込んでいます」

 

「民の怨嗟を声を妖力に変え、貯える妖術書か……恐ろしい書があったものだな」

 

「そしてそれを使って、貴方はもっと恐ろしいことをしようとしている」

 

「たとえいくら陛下の寵愛を受けても…己が意のままになる兵力を手に入れねば、どれほどの権勢を誇ろうと所詮は砂上の楼閣」

 

張譲は夕日を見ながら

 

「だが…太平要術に蓄えた妖力を使って“あれ”を蘇らせれば…借り物でもない真の力が手に入る!」

 

「……」

 

「その時が来るのを楽しみにしているぞ…于吉」

 

「御意」

 

そう言って于吉はその場を後にした

 

 

 

「………」

 

「何時までアイツと手を組んでいるつもりだ」

 

張譲と別れた于吉の前に仮面を付けた一人の人物が現れた

 

「おやおや、もう仕事を終えたのですか」

 

「ただ人を殺すだけの簡単な仕事だ。終えて当然だ」

 

「そうですか」

 

「いつになったら俺の望みをかなえてくれる」

 

「そんなに焦らないでください。いずれ近い内に叶いますよ」

 

「本当だろうな」

 

「ええ」

 

「信じるぞ」

 

「そんなに憎いですか」

 

「ああ…憎いね!私の全てを奪ったアイツが…そしてその仲間も」

 

仮面で顔を隠していて分からないが、その人物から憎しみのオーラがあふれ出ている

 

「素晴らしいですね…あなたなら私の期待以上に応えてくれますね」

 

「ふん」

 

「しかし、油断を禁物ですよ」

 

「分かっている…しかし本当に大丈夫なのか?太平要術に書かれた“例の力”を使うことが」

 

「心配いりませんよ…いざって時は張譲を実験に使うのですから」

 

「………」

 

「だから心配いりません」

 

「わかった…失礼させてもらう!」

 

仮面の人物はその場を後にした

 

「……」

 

于吉はその後ろ姿を見て

 

「(拾った駒が此処までになるとはね…さて、万全を期すために私も準備をしましょう。うふふふふふ)」

 

不適な笑みを浮かべる于吉

 

「(あなたの復讐相手は…厄介ですからね)」

 

そしてその場から消える于吉であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間を少し戻し

 

「……」

 

「……」

 

別の場所では、深刻な自体が起こっていた

 

「……ご主人様」

 

「…はい」

 

勇作は愛紗達に囲まれていた。その理由は

 

 

 

 

 

「俺は悪くない!!」

 

勇作は発作的に窓から飛び降りようとした

 

「「「「「ご主人様!!」」」」」

 

「主!!」

 

「お館!!」

 

愛紗達は勇作の手を掴むために手を伸ばす

 

 

 

「……」

 

「……」

 

愛紗が伸ばした手が勇作の腕を掴んでいた

 

「大丈夫!?」

 

桃香達は愛紗が勇作と一緒に落ちないように愛紗に抱き着いて支えていた

 

「引くぞ!!」

 

全員、力を合わせて勇作を引き上げる

 

「……」

 

そして引き上げることに成功した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り

 

「なぜ、あんなことを」

 

「……」

 

「なんで窓から飛び降りるようなマネをしたんですか!!」

 

「……ごめん」

 

「まるで自殺じゃないですか!!」

 

「ごしゅじんさま」

 

「おにいちゃん」

 

「答えてください!!」

 

「そ、それは…………うっ!!」

 

勇作は頭を抱える

 

「ご、ご主人様」

 

「やめろ!俺は悪くない!」

 

そして両手で耳を塞ぐ

 

「わああああああ!!!」

 

「ご、ご主人様!!」

 

突然の悲鳴、そして

 

「…た……す…け……て」

 

勇作からのSOS。皆はどうすればいいか分からないでいた時

 

ガバ

 

桃香が勇作に抱き着く

 

「…桃香」

 

「大丈夫、大丈夫だから…ゆっくり何があったか…話して」

 

「…けど」

 

「大丈夫…私たちを信じて……ご主人様」

 

「……」

 

勇作は少し落ち着き

 

「声が…声が聞こえる」

 

「声?」

 

「悪い声。民の怨嗟の声……苦しい。俺を責めてくる。俺、悪くないのに」

 

「怨嗟の声」

 

「今も聞こえてくる…前より強く。だんだん強く……苦しい、助けて」

 

「いつからですか?それが聞こえてきたのは?」

 

「呪いを受けた時、最初大したことなかった。けど」

 

「だんだん強くなったと」

 

「うん。それで心が痛くなるしそのせいで見聞色の覇気が使えない」

 

「使えない」

 

「皆に心配をかけないように黙ってた……ごめん」

 

「話してくれてありがとう…ご主人様。無理しなくても良いから」

 

「う……う……ひくっ」

 

勇作は桃香の胸で声を殺して泣いた

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜

 

「………」

 

勇作の部屋の前に立つ一人の人物

 

「……」

 

そして部屋に入ってきた

 

「……」

 

視線の先には勇作がベットで横になっていた

 

「……」

 

勇作のそばまで来た

 

「……ん?」

 

勇作が目を覚まし、視線を向けると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………愛紗」

 

部屋に入ってきたのは愛紗だった

 

「ご主人様」

 

「どうしたの?こんな時間に?」

 

「いえ、ご主人様の様子がきになったので」

 

「そうなんだ………愛紗」

 

「何ですか?」

 

「あの時はごめん……呪いせいとはいえ」

 

「気にしないでください」

 

「けど」

 

「ご主人様…私のこと嫌いではないのですね」

 

「嫌いなわけないよ…けどあの時は」

 

「それだけ聞ければ十分です」

 

「でも」

 

「……じゃあ私のお願いを聞いてくれませんか?」

 

「お願い?」

 

「それであの時のことはおしまいにしましょう」

 

「わかった。それでお願いってのは?」

 

勇作がそう言うと

 

「……」

 

愛紗は勇作の布団の中に入ってきた

 

「ちょっ!!愛紗さん」

 

突然の事に驚き、勇作は布団から出ようとするが

 

「出ないでください!」

 

愛紗は勇作に抱き着く

 

「これはいったい」

 

「私のお願いです、今晩、一緒に寝てください」

 

勇作の腕を枕替わりにして寝る形になった

 

「いや…でも」

 

「駄目ですか?」

 

目をウルウルさせる愛紗

 

「駄目ではないです」

 

「よかった……ご主人様」

 

「ん?」

 

「愛しています」

 

「え?」

 

「おやすみなさい」

 

こうして一緒に寝ることになったが

 

「(あかん…意識し過ぎて寝れない)」

 

勇作は全然寝れなかった

 

「……」

 

視線を隣にむけると、愛紗の寝顔が目に入った

 

「(………こうしてみるとやっぱきれいだな……聞こえてないと思うけど……愛しているよ愛紗)」

 

愛紗の耳元で呟く。そして眠りについた

 

「(やっぱり、ご主人様は私の事を嫌いになってなかった。よかった……これを使わずに済んで)」

 

勇作がつぶやいた時、まだ起きていた愛紗。そして胸元には短剣を隠していた

 

「(私の愛するご主人様……おやすみなさい)」

 

光のない瞳を閉じ、今度こそ眠りにつく愛紗であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、二人の状況をみて他の仲間から説明&説教を受けたのはいうまでもない



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第百十七席 賈駆、後悔の念に苦しむのこと

「賈駆…後宮の増築工事が遅れているようだけどどうなっている?」

 

洛陽の後宮のとある部屋、そこに賈駆がおり、ある人物に報告していた

 

「ここの所、函谷関の大改修工事を始め、大規模な土木工事が続いております。働き手を奪われたうえに費用を捻出するための過酷な税の取り立て、既に民は怨嗟の声を上げており流石にこれ以上は…」

 

「賈駆……僕が聞きたいのはそんな返事じゃないんだけど」

 

「くっ!」

 

「賈駆…もう一度聞く…後宮の増築工事すぐにも進めるんだろうねぇ」

 

ある人物は張譲であった。報告書を見ながら賈駆に聞く

 

「……」

 

賈駆は悔しそうに手を閉じ強く握る

 

「仰せにままに……張譲様」

 

「うむ…あと袁紹に命じた賊退治の件は?」

 

「何度も催促しておりますが未だ兵を出した様子はございません」

 

張譲は椅子から立ち上がり

 

「かつて三光を出した名門か何か知らないがここまで朝廷の威信を汚されては、もうそのままにはしておけないな!」

 

怒りを露にする張譲

 

「袁紹の官位を剥ぎ、すぐに都に呼び出せ!わが身に縄を打ち、許しを乞うならよし!そうでなければ逆賊として討つと!」

 

「はっ…直ちに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮廷の廊下

 

「……」

 

陳宮が歩いており、ある部屋に入った

 

「ん?あぁぁぁぁ!!」

 

部屋に入るなり、大きな声を上げる

 

「ん?」

 

そこにいたのは張遼だった

 

「張遼!勤務中の飲酒は厳禁だとあれ程、申したですのに!!」

 

「そんなん言われても、酒でも飲まないとやっとられんわな」

 

そういって酒を飲む張遼

 

「董卓言うたら、始終匈奴とがんがんやりおうとるっちゅうから急いで配下になったのに」

 

酒瓶をテーブルに叩きつける。テーブルの上には酒瓶が6本開けられていた

 

「何をやらされるかと思ったら、囚人を工事現場まで連れて行ったり、年貢払えん奴をとっ捕まえたり、これじゃ借金取りの用心棒してた時と変わらんがな」

 

そう言ってまた酒を飲む

 

「別にねね達だって好きでそんな仕事をしてるわけではないのです。なのに貴様は新参者のくせに生意気なのです!!」

 

怒りと悲しみの表情を浮かべる陳宮

 

「恋殿は…恋殿は…お前なんかの百倍も千倍も辛いのに文句ひとつ言わず意に染まぬ任務をこなしておられるですのに…入ったばっかで事情も知らないくせに!」

 

「陳宮…何を騒いでいるの?」

 

すると賈駆が入ってきた

 

「賈駆!この新入りの無駄おっぱいが仕事中に飲んだくれておったのです」

 

陳宮は張遼を指さしながら言う

 

「おいおい、行く所行ったら豊パイパイと聞くだけで泣く子も黙るウチの胸を無駄おっぱいとは失礼な!!」

 

「ええいい!まだそんな減らず口を!」

 

「陳宮、もうよしなさい」

 

「ですけど!!」

 

賈駆は張遼の肩に手を置き

 

「張遼…あなたも程々にね」

 

「あ…ああ」

 

「悪いけど今日はもう帰らせてもらうからね」

 

そう言って部屋を出る賈駆

 

「はいです」

 

二人は賈駆を見送った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(かつてはいんしんを極めた花の都も今ではこのざまか)」

 

馬車に乗り、帰路につく賈駆

 

「街を行くのは食い詰めて故郷の田畑を捨てた流民か物乞いばかり」

 

洛陽の様子を見ながら心の中で呟く

 

「(あの時と…あの時と同じだ。あの時を同じで僕が見通しを誤らなければこんなことにはならなかったのに)」

 

後悔の念に晒される賈駆

 

「(あの戦に敗れた時、華雄将軍は命を懸けて僕を守ってくれた!なのに僕は命より大切な月を守れなかった!!)」

 

思い出すのは華雄のこと、そして董卓のこと。そして自分のせいでこうなってしまった自分自身への怒り

 

「(僕たちは張譲の手駒に、悪政はすべて月に擦り付け)」

 

目に涙を浮かべる

 

「(これが最初っから奴が企んでいたことだったんだ!そうとも知らずに僕は…僕は……)」

 

一人の人物とすれ違う

 

「……」

 

その人は馬車を見た後、また歩き出した。手に茶碗を持ちながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

袁紹の屋敷

 

「麗羽様!!」

 

「大変です!!」

 

袁紹の部下の文醜と顔良が入ってきた

 

「なんですの?騒々しいですわね」

 

袁紹は侍女によるマッサージを受けていた

 

「くつろいでいる場合じゃないですよ!」

 

「とにかく読んでください」

 

顔良から手紙を渡され、袁紹は開く

 

「え~何々」

 

手紙を読む袁紹。すると表情が段々険しくなってきた

 

「むがああああ!!」

 

袁紹は手紙をクシャクシャにして地面に叩きつけた

 

「麗羽様、落ち着いて」

 

「そうですよ。今、面白い声が出ていましたですよ」

 

「何が至急参内して弁明せよよ!!しかもわが身に縄を打てですって!」

 

手紙を踏みつけながら怒る袁紹

 

「うがああああ!!」

 

そして手紙を蹴り捨てた後

 

「猪々子!斗詩!すぐに檄を飛ばしなさい!!」

 

「はぁ!」

 

「檄?」

 

「打倒董卓の檄を飛ばして袁家の旗の元に諸侯を集めるのよ!そして逆賊董卓を討つ」

 

拳を高く上げ、宣言する袁紹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ぃい!!袁紹めが反乱の兵を上げた!?」

 

賈駆から反董卓連合のことを聞かされ驚く張譲

 

「逆賊を討つと称して諸侯に檄を飛ばし、すでに曹操や袁術らがそれに応じて兵を動かしております。さらには江東の孫策も」

 

「くっ!!朝廷に弓を弾く身の程知らずめ!!」

 

「すでに汜水関に呂布を向かわせておりますゆえ…ご心配には及ばぬかと」

 

「いや…虎牢関にも董卓の残りの兵をすべて詰めよ」

 

「ですが、それでは洛陽の守りが手薄に」

 

「構わぬ。宮廷は近衛兵が固めておるし、汜水関と虎牢関が抜かれぬ限り大群が洛陽に迫ることはできぬ」

 

「しかし」

 

「それとも手近な所から兵がいなくなるのは困るか?」

 

「いえ…そのようなことは決して」

 

「ならばすぐに兵を出せ…良いな」

 

「…御意」

 

「それと賈駆」

 

「はい」

 

「その連合にはあいつもいるのか?」

 

「あいつとは?」

 

「あの天の御使いのことだ!」

 

「御使い?高杉のことですか?」

 

「そうだ」

 

「報告では参戦するようで」

 

「そうか…呂布に伝えろ。そいつは必ず殺せと」

 

「必ずですか」

 

「そうだ」

 

「しかし」

 

「賈駆よ、これは命令だ!背いたらどうなるかわかるね」

 

「…わかりました」

 

そういって部屋から出ていく賈駆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ…か」

 

その様子を仮面の男が聞いていた

 

「いよいよ復讐できる……奴は俺が必ず……だが念のため俺も向かうか」

 

仮面の男も汜水関に向かった



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第百十八席 群雄、反董卓連合に参加するのこと

諸侯に檄を飛ばしてから連合軍が結成する前

 

「でぁあ!!」

 

曹操の屋敷の訓練場では、夏侯惇と許緒がおり、訓練をしていた

 

「どうした!?許緒!もう終わりか!これしきの訓練で音を上げるとはだらしないぞ!」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

許緒はかなり疲労しており肩で息をしている

 

「では、こちらから行くぞ!」

 

武器を構える夏侯惇

 

「夏侯惇様」

 

声がしたほうに視線を向けると

 

「何だ?典韋…もう昼飯か?」

 

典韋がいた

 

「ああ、いえ、そうじゃなくて…曹操様がお呼びです!!」

 

「華琳様が」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

夏侯惇は王の間に入ると、曹操に夏侯淵、そして荀彧、程昱、郭嘉がいた

 

「遅いぞ姉者。何をしていた」

 

「おう…親衛隊の許緒にちょっと稽古をつけていてな」

 

「許緒……ああ、あの典韋の友達の新入りか」

 

「うむ…まだ粗削りだが、あやつ磨けば光るやもしれん」

 

「んんっ」

 

荀彧が咳払いをする

 

「「あっ!!」」

 

二人は視線を曹操に向ける。その手には手紙があった

 

「つい先ほど、袁紹から檄文が届いたわ」

 

「袁紹から檄文?」

 

「志あるならば逆賊董卓を共に討つべく立ち上がれ…と」

 

「おお!!」

 

「それで如何なさいますので」

 

「……」

 

曹操は考え込む

 

「董卓の悪行は天下に隠れも無き事実…これを討つは天の意に沿い、民の苦しみを除くことにほかなりません。曹操様の名を世に知らしめる良い機会かと存じます」

 

「あの袁紹が盟主というのは気に入りませんが、うまくいけば董卓を除いた後、朝廷の中枢に大きく食い込むことが出来るやもしれません」

 

郭嘉と荀彧はそれぞれ曹操に助言をする

 

「ふ~ん……程昱、あなたはどう思っていて?」

 

程昱に聞くが、目を閉じ寝ている程昱

 

「ん?ちょっと、風」

 

郭嘉が程昱を起こす

 

「おお……はい」

 

目を覚まし、視線を曹操に向ける

 

「程昱、あなたの意見を聞かせてもらえるかしら?」

 

「軍師は主の心が定まらぬ時に助言をするのが責務。それが既に決まっている時に申し上げる言葉はありません」

 

「ふん」

 

こうして曹操は連合の参加を決めた

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、孫策の所では

 

「袁紹を盟主とした反董卓連合…か」

 

王の間に孫策、周瑜、陸遜、孫権、黄蓋がいた

 

「少し探ってみた所、袁紹の人望の無さを反映してか…檄文を送られた者の大半は日和見を決め込んでいる様子」

 

「まあ、そうじゃろうな」

 

「ただ曹操だけはいち早く兵を出す構えを見せております」

 

「やはり…な」

 

「此度の件、中原への足掛かりを得るには絶好の機会かと」

 

「では、動くか」

 

「お待ちください!姉様!」

 

孫権が異議を立てる

 

「それはいささか早計ではありませんか!?積年の努力の甲斐もあってようやく江東の地は収まったものの、ここではるばる洛陽まで兵を出すのはあまりにも無謀!今は中原の様子を見つつ足場を固める時では…」

 

「そうね…確かにあなたの言う通りね」

 

「それでは…」

 

表情が明るくなる孫権

 

「でもね…蓮華!」

 

孫策は険しい顔の表情で立ち上がり

 

「正道では決して手につかめないものもあるのよ!!」

 

「…姉様」

 

こうして孫策も参加を決めたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

「お母さんがいない間、お利口にしているのよ」

 

「うん。お母さんも怪我しないでね」

 

「ええ、気を付けるわ」

 

勇作たちも反董卓連合の参加を決め、出陣の準備をしていた

 

「たんぽぽの奴、どこに行ったんだ?見送りぐらいしてくれてもいいだろうに」

 

「出陣できずに留守番させられることになったんだから拗ねてるんだろう…まったくいつまで経ってもガキなんだから」

 

「えへへ」

 

「所で鈴々…その葛籠…いったい何が入っているんだ?」

 

鈴々は大きな葛籠を背負っていた

 

「わかんないのだ…でも弁当って紙で書いてあったから、何か美味しいものが入っているに違いないのだ」

 

「へぇ~いいな!後で私にも分けてくれよ」

 

弁当という言葉に表情が明るくなる翠

 

「良いのだ!いっぱいあるみたいだから皆で食べるのだ」

 

「……いやはや、何と言ったらいいか?」

 

朱里はそのやり取りに頭を抱えるのであった

 

「紫苑いいのか?もし璃々のことが心配ならそなたは村に残っても」

 

愛紗は紫苑に聞く

 

「今は村が襲われることもなくなりましたし、あの子もそろそろ留守番出来る歳になりましたし」

 

視線を向けると璃々が手を振っていた

 

「それに私のほうがもう留守番には飽きちゃったしね」

 

「ふっ」

 

そうしていると

 

「あっ!ごしゅじんさま」

 

璃々の声に全員が視線を向けると

 

「これで良し」

 

勇作がきた。いつもの服装に両腰に応龍が3本ずつ。そして背中に妖刀を装備していた

 

「ごしゅじんさま」

 

「おう、璃々ちゃん」

 

「気を付けてね」

 

「ああ」

 

勇作は馬に乗り、前に出る

 

「……よし」

 

視線を向けると、愛紗たちと兵たちが整列していた

 

「お前ら準備はいいか!!」

 

「「「「「「「「「いえぇぇぇぇいいいいいい!!!!!!!」」」」」」」

 

兵士たちが鬨の声上げるがごとく声を上げる

 

「今度の戦場は今までとは桁が違うぜ!!ど派手に暴れるぞ!!」

 

「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

「出陣!!」

 

 

「張譲めを追い落とした董卓を皆で討つとは好都合…うまくいけば童が返り咲く機会があるやもしれん」

 

何進も勇作達についていく。正体がばれないようマントを着て

 

「と…思って一緒に行くことにしたのじゃが……」

 

何進が後ろを振り向くと

 

「なんでお主らまでついてくるのじゃ!!」

 

後ろの荷台には孟獲達がいるのであった

 

 

 

「……」

 

「どうした?浮かぬ顔をして」

 

星が愛紗に声をかける

 

「い、いや…身分を隠してまで下々の暮らしを見ていた董卓殿が巷で噂されているような暴君とはどうにも信じられなくてなぁ」

 

「ふっ……確かに苦し紛れとは言え、トントンなどという偽名を名乗るような娘がそう悪いことをするとは思えんなぁ」

 

「董卓って人…私は悪い人じゃないと思うなぁ」

 

「えっ?」

 

「だって私の信じている愛紗ちゃんがそう思うならそうに決まっているもの」

 

「姉上」

 

「きっとほかに悪いことをしている人はほかにいるんだよ」

 

「よ~しそれじゃ悪い奴をみんなでぶっ飛ばすのだ!!」

 

「元気良いね」

 

「ご主人様」

 

「ん?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「だいぶね」

 

「きつかったら私がついていますから」

 

そう言って勇作に近づく愛紗

 

「愛紗ちゃん」

 

桃香が愛紗の手を引っ張る

 

「何をするのですか?姉上」

 

「ご主人様にべったりしすぎ」

 

「別にべったりは」

 

「おや…この間は主と一緒に寝たはずでしたが」

 

「あの時は」

 

「愛紗ちゃんばかりずるい」

 

「同感です」

 

「うんうん」

 

桃香や星そしてほかのみんなも頷いていた

 

「この戦いが終わったら一度話し合いをしましょう」

 

朱里がそう言うと

 

「「「「「異議なし」」」」」

 

「……」

 

反董卓連合の戦場に向かって出陣する勇作達であった

 

「(何の話し合いするんだよ)」

 

勇作は心に不安を思えながら向かうのであった

 

「(アネウエトハイエ、ジャマヲスルナラヨウシャシマセン。ホカノミンナモ)」

 

光の無い目で桃香や皆を見る愛紗であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祇園精舎の鐘の声諸侯無上の響きあり!

 

時は二世紀も末のころ、大将軍何進に十常侍筆頭張譲と

 

主を変える洛陽の都では

 

董卓が憲政を欲しいままにしておりました

 

天下万民のためこれを討たんと諸侯に檄を飛ばす袁紹

 

答えて兵を上げた曹操、孫策、袁術そして……他一名

 

(公孫賛だ!公孫賛)

 

怒涛の勢いで洛陽に迫らんとする連合軍の行く手を阻む第一の関門汜水関

 

ここを守るは飛将軍と名高い呂奉先

 

対して攻めるは曹操 孫策 公孫賛の諸侯に加え

 

曹操に助力を問われた天の御使い高杉勇作の率いる桃花村の義勇軍

 

武勇では天下第一と名高い力を向こうに回したこの戦

 

はたしてその結末やいかに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてとある場所

 

「やっと着いた」

 

「ここがあいつのいる世界か」

 

二人の人物がいた

 

「それにしてもなんで俺たちがこんなことを」

 

「しょうがないだろう…あの人からのお願いなんだから」

 

「だったらその人が行けばいいだろう…あいつは」

 

「そう言うなって決まりで行けなんだから」

 

「はあ、それにしてもこの格好でいくとは」

 

「怪しまれないためだよ」

 

「そうだな」

 

「じゃあ行くか」

 

二人の人物は何者なのか。二人はある場所に向かうのであった



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第百十九席 勇作、連合に合流するのこと

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ありがとうございます

今後もよろしくお願いします


「ほえぇぇぇ~……こりゃ、壮大だな」

 

桃花村を出発して数日、反董卓連合の合流地点に到着した

 

「ほわ~……たくさん兵隊さんいるねぇ~」

 

陣地の中は至る所に天幕が張られ、周辺には諸侯の旗が並び、色とりどりの兵隊があちこちにたむろしていた

 

「さすが諸侯連合……といったところでしょうか。こうやって一同に会すると壮観ですね」

 

「うむ……曹操、孫策はもちろんほかにはもいくつも見受けられますね~」

 

「あ!あっちにあるのはパイパイちゃんの旗だ~!」

 

「白蓮だよ…桃香」

 

「あはは…そうだった」

 

「桃香…お前、わざと間違えていないだろな…」

 

「(この声は…)」

 

前から聞き慣れた声が飛んできた

 

「パイパイちゃん!!」

 

「よ、桃香に皆、久しぶりだなぁ……あと白蓮だ」

 

「久しぶり~」

 

「おぁ~勇作、久しぶりだな」

 

「ああ」

 

「黄巾の乱での活躍…すごく聞いているぞ」

 

「そ、そう?」

 

「それと負傷したって聞いたけどその目の包帯が」

 

「まあね」

 

「白蓮ちゃん…」

 

桃香が勇作と白蓮の間に入った

 

「ちょっと話しすぎ」

 

「そんなに話しては…」

 

「……」

 

光の無い目で白蓮を見る桃香

 

「わかったから、そんな目で見るな」

 

「んで何しにきたの?」

 

「いや、袁紹と袁術がまだ到着してなくてな、到着するまで気分転換してたんだ?」

 

「そうなんだ」

 

「ご主人様……私たちも天幕を張りましょう」

 

「そうだな」

 

「じゃあ、白蓮ちゃん。またね」

 

「おう」

 

白蓮と別れ、勇作達は天幕を張った

 

 

 

 

 

 

 

「………暇だな」

 

天幕を張って数時間、勇作は暇を持て余していた

 

「袁紹…いつになった来るんだよ……見聞色が使えればわかるんだけど」

 

盟主である袁紹が来ないため…軍議が始まらないでいた

 

「あ~……だめだ!少し歩くか」

 

勇作が天幕から出ようとすると

 

「…………ご主人様」

 

「うおっ!!」

 

後ろから声が聞こえ、勇作は驚く

 

「……」

 

そこにいたのは愛紗だった

 

「愛紗さん……いつからそこに?」

 

「ついさっきです」

 

「あ…そうなんだ」

 

「ところでご主人様……どちらに?」

 

「いや……軍議が始まるまでそのあたりを歩こうと」

 

「では、私も一緒に行きます」

 

「え?」

 

「ご主人様を一人では危険ですので…護衛します」

 

「いや、別に護衛しなくても……」

 

「いいえ……護衛します」

 

「で、でも」

 

「ご主人様」

 

「……」

 

「……」

 

「……お願いします」

 

勇作は諦めた

 

「はい」

 

こうして愛紗の護衛の元、勇作は天幕を出るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初はここだな」

 

勇作が来たのは孫策のいる天幕だ

 

「ここからですか?」

 

「ああ、一応江東丸を分けてもらったお礼を言おうと思ってね」

 

「そうですか」

 

「ところで……愛紗」

 

「何ですか」

 

「これ……護衛なの?」

 

勇作の右腕に抱き着いている愛紗にそう言う

 

「護衛です」

 

「いやどう見ても護衛じゃあ……」

 

「ご主人様は気にしないでください」

 

そういってさっきよりくっつく愛紗。気持ちよさそうにスリスリ寄ってくるので柔らかいものが押し付けられるわけで……

 

「(気にするわ!!護衛じゃないだろう!!)」

 

心の中で突っ込む勇作

 

「あらあら…仲がいいようで」

 

声が聞こえたほうに視線を向けると

 

「孫策さん」

 

孫策と周瑜がいた

 

「孫策殿、お久しぶりです」

 

「ええ、ところでこんなところで何をしているの?」

 

「いや、江東丸を分けていただいたことと愛紗がお世話になったお礼を言いに……」

 

「別に気にしなくていいぞ」

 

「お礼を言うならあの子に言ってね」

 

「あの子?」

 

「ああ」

 

周瑜が天幕の入り口を上げる

 

「呂蒙……出てこい」

 

「(はぁ!!呂蒙!!!)」

 

勇作が驚いていると

 

「周瑜様……お呼びでしょうか?」

 

呂蒙が出てきた

 

「(この子が呂蒙……)」

 

「周瑜様……こちらの方は?」

 

「こちらは……」

 

「高杉勇作です……愛紗がお世話になりました」

 

「あなたが……天の御使い様ですか!?」

 

「ああ」

 

「あなたの噂は聞いております!お会いできて幸栄です!!」

 

「そ、そう……じゃあ俺たちはこれで」

 

「もう行かれるのですか?」

 

「うん…この戦いが終わったらゆっくり話そう」

 

「はい!!」

 

「あと…ししゅ……甘寧に伝えてくれる。楽しみにしてるって」

 

「甘寧様にですか?わかりました」

 

「じゃあ…これで……愛紗、行こう」

 

「はい」

 

勇作と愛紗はその場を後にするのだった

 

「…呂蒙」

 

「は、はい!」

 

「どうだった?天の御使いと会ってみて」

 

「はい………何と言いますか、普通の人だな」

 

「普通?」

 

「はい……あの人が本当に孫権様が言っていた人とは思えなくて」

 

「そうか」

 

「も、申し訳ございません。つい思ってしまったことを」

 

「気にするな」

 

「そうね……けど」

 

「どうした?雪蓮」

 

「あの子の目の包帯のことでね」

 

「包帯ですか?」

 

「たしか…黄巾の乱で負傷したはずだが…それがどうした?」

 

「あの包帯、怪我じゃなくて…何かにとりつかれている感じがしたの?」

 

「とり憑かれている?」

 

「ええ」

 

「根拠は?」

 

「勘、かな」

 

「またそれか…」

 

「何よ、私の勘は当たるのよ」

 

「わかったわかった。そういうなら信じよう」

 

「全然信じてないでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘックシュン!」

 

「ご、ご主人様、大丈夫ですか」

 

「あ、ああ」

 

孫策の天幕を後にした後、曹操の天幕に向かっていた

 

「(あの子が呂蒙……関羽と倒した武将……か)」

 

「ご、ご主人様?どうしました?」

 

「いや…何でもない」

 

「本当ですか?」

 

「本当に大丈夫!大丈夫だから」

 

勇作は愛紗の手を取り、じっと瞳を目詰める

 

「心配しないで」

 

「は、はい……」

 

手を取られた愛紗の目はハートになっていた

 

「ご~主~人~様~!!!」

 

声が聞こえた方に視線を向けると

 

「何をしているのですか?」

 

朱里と桃香がおり、二人から禍々しいオーラがあふれていた

 

「ええと、二人ともどうしたの?」

 

「軍議が始まるのでご主人様を探していたのです」

 

「そ、そうなんだ」

 

「いい加減、手を放してください」

 

すると後ろから、星が現れ二人の間に入る

 

「せ、星」

 

「さ!行きましょう!」

 

「ちょっと!」

 

星は勇作の手を取り、軍議が行われる天幕に向かった

 

「……」

 

朱里と桃香もついていく

 

「……チッ!」

 

愛紗も不機嫌なりながらその後を追うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後の夜

 

「……」

 

汜水関のとある部屋で呂布と陳宮が夕食の肉まんを食べいていた

 

「……ん。いや~、今日の恋殿の戦いぶりいつにも増して見事だったのです」

 

暗い雰囲気を変えようと陳宮が話しかける

 

「武力100の前ではどんな敵も物の数ではないのです!」

 

「…ごちそうさま」

 

半分しか食べてない肉まんを皿に置く

 

「えっ!でもまだこんなに残ってますのに…」

 

「最近、ご飯たべてもあまり幸せにならない」

 

「っ!」

 

「だからもう良い」

 

席を立つ呂布

 

「疲れたからもう寝る」

 

「…あっ」

 

陳宮が何かを言う前に部屋を出る呂布

 

「……」

 

陳宮は視線を落とした後、何かを決意し、視線を上げる

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「元気がありませんね」

 

呂布が寝室入ろうとした時、仮面の男に声をかけられた

 

「……」

 

「それじゃ、連合軍に勝てませんよ」

 

「……」

 

「それと、例の命令は必ず実行してくださいね。出ないとあなたの主と人質がどうなるかわかりませんよ」

 

「……わかってる」

 

「なら、いいです」

 

そういって呂布は寝室に入った

 

「…じっくりと見させていただきますよ」

 

そういって仮面の男はその場を後にするのであった



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第百二十席 陳宮、助けを求めるのこと

「ええい!袁紹めがいつになったら合流するのだ!」

 

夜、天幕に集まって会議をしている中、公孫瓚の怒りの声が上がる

 

「遅れてくる諸侯を糾合してから後を追うと言って後方に陣取ったまま、未だに動く気配すら見せむとは」

 

「遅れ来る諸侯ね~…袁紹の檄に応じて立つような物好きがこれ以上いるかしら」

 

「例え、いるとしてもそうした者が立つのは大勢が決してからだと」

 

「(たしかに…戦国時代もそうだったしな)」

 

勇作も心の中でそう思う

 

「失礼します」

 

そんなことを考えていると典韋がやってきた

 

「呂布の軍師を称する者が話があると尋ねてきましたがいかがいたしましょう?」

 

「呂布の軍師?」

 

「(呂布の軍師って…)」

 

その言葉に驚く勇作達

 

「良いわ!ここへ連れていらっしゃい」

 

「はっ!」

 

 

 

 

「……驚いたわね」

 

陳宮がやってきて、皆にこれまでのことを説明する

 

「都を追われたはずの張譲が宮廷の奥深くに潜んでいたなんて」

 

「しかも捉えた董卓の命を盾にして、その配下を陰から操っていたとはね」

 

「そうなのです!すべては張譲が仕組んだことなのです」

 

「で?陳宮…あなたは私たちにどうしろと言うの?」

 

曹操が聞く

 

「恋殿を…わが主の呂布を救ってほしいのです!!」

 

「……呂布を救う?」

 

「恋殿は…恋殿は本当はこんな戦したくないのです。でも董卓様のために堪え難きを堪え、忍び難きを忍び黙々と戦っているです」

 

「(陳宮)」

 

「ねねは…ねねは、それを見ているのがつらくて何もできない自分がくやしくてだから…だから」

 

目に涙を浮かべる陳宮

 

「う~ん…話は大体わかったけどにわかには信じ難い話ねぇ…桂花、あなたはどう思って」

 

「私もこのような話すぐには信じられません」

 

「嘘じゃないのです!全部本当なのです!!」

 

「と、言われてもね…」

 

「確たる証拠もないままこんな話を信じろといわれてもそれは無理というもの」

 

「そうですね。確かに今聞いた話だけだとちょっと」

 

「嘘と断じることはできませんが」

 

「さりとて信じるほうが難しいのです」

 

「そもそも敵中に一人のこのこ乗り込んできて、このような話をするなど怪しいと言わざるをえないかと、もしや何かた企みががあってことやと」

 

軍師たちは陳宮の話を信じられない様子であった

 

「何もそこまでいうことは」

 

「では、公孫瓚殿はこの話を信じておられるのですか?」

 

「いやそう聞かれると私も困るが」

 

「(だよな……見聞色がつかえればな…)」

 

他の皆も信じられず話していると

 

「いい加減にするのだ!!」

 

怒りに震えながら鈴々が声を上げる

 

「鈴り…」

 

愛紗が止めに入るが

 

「……(フルフル)」

 

桃香が愛紗の手をつかんで止める

 

「陳宮にとって呂布はすっごく大事ななのだ!その大事な人が苦しんでいるから敵の真っ只中に一人でやって来て助けてくれって頼んでいるのだ!」

 

「……」

 

「本当に大切な人を助けたいから本当のことを言って本当に泣いているのだ!」

 

鈴々が陳宮を指さし

 

「この涙を見て本当かどうか見て、わからないようなら何が君主なのだ!何が軍師なのだ!お前ら皆、大馬鹿なのだ!!!」

 

「……」

 

し~んとなる天幕

 

「プッ!フフフフ」

 

孫策が突然笑いだす

 

「見事に一本取られたわ。張飛…あなたに言う通りね、人が流す涙の真贋を見抜けるようでは、君主として人の上に立つ資格はないわ」

 

「(孫策さん)」

 

「曹操!私は陳宮の言葉…いえ涙を信じるわ。あなたは?」

 

「………」

 

目を閉じ、考える曹操

 

「これより軍議を始める!」

 

目を開け、宣言する

 

「軍議っていったい何の?」

 

「決まっているわ!洛陽から董卓を助け出すのよ」

 

その言葉に陳宮の表情は明るくなった

 

「(俺も反省しないとな…)」

 

 

 

そして地図を広げ、軍議にするが

 

「しかし困ったわねぇ…助け出そうにも肝心の董卓がどこに囚われているかわからないなんて」

 

「ねねも賈駆も探ってみようとしたのですが、宮中だけでなく町中に張譲の息のかかった兵の目が光っていて」

 

「まずは董卓の監禁場所を突き止めるのが先決ね。そうなると宮中に誰かを忍び込ませるのが一番だけど」

 

「洛陽の街なら旅の商人に身をやつして潜り込むことはできるかもしれませんが、さすがに宮廷の中となると…なまなかなことではいかないはず」

 

「そうですね…何はともあれもう少し情報がないと」

 

皆が考えていると

 

「…あ!」

 

「どうした?朱里。何か思いついたのか?」

 

「あ~いえ、そうじゃないんですかど宮中のことに詳しい人が一人いることを思い出したんです」

 

「もしかしてあの人のこと?」

 

「はい…皆さん!その人に一度話を聞いてみませんか?」

 

 

少しして

 

「……」

朱里はその人物を連れてきた

 

「曹操よ…久しぶりよの」

 

「ん?」

 

フードを取る

 

「あなたは何進!!」

 

 

その人物は何進だった……だが

 

ニャー

 

「ちょ!何よそれ…反則よ」

 

猫耳に思わず笑いそうなり口を押さえる曹操。隣の荀彧は目をキラキラさせている

 

「趣味は人それぞれとわ言え」

 

「いい歳あれはないわよね~」

 

周瑜と孫策も笑いを堪える

 

「ブハハハハハ!」

 

郭嘉はお腹を押さえながら笑い出した

 

「稟ちゃん。ちょっと笑いすぎなのです」

 

程昱は注意するが

 

「けど…いくらなんでも猫耳なんて、いったいどういう神経…」

 

郭嘉が視線を上げると

 

「んんんんんん~」

 

体から怒りのオーラを出して郭嘉を睨みつける荀彧が入ってきた

 

「いぃ~」

 

青ざめる郭嘉

 

「んん!!」

 

皆が笑っていると何進は声を上げる

 

「そろそろ話して良いかよ」

 

「あ!はい…お願いします!」

 

「そなたら宮廷に忍び込む手立てを探しているらしいな。それなら良い方法があるぞ」

 

 

方法を教える何進

 

「秘密の抜け穴?」

 

「うん。宮廷には万一の時に備えてそこから逃げ出すための秘密の抜け穴があるのじゃ」

 

「そうした話は聞いたことがあったけど、まさか本当だったとはね」

 

「何を隠そう…わらわも宮廷からそこを通ってにげてきたのじゃ!」

 

「(自慢することかよ)」

 

「ならそこを逆にたどっていけば、宮廷の奥に忍び込むことも可能」

 

「そこから崩れた間者を送り込み宮中を探らせれば董卓の居場所を見つけられるかも」

 

その作戦に皆は関心を寄せる

 

「それなら孫家にはこうした任務にうってつけな者がおります。この仕事その者にお任せいただきませんか?」

 

「誰なの?その者って?」

 

勇作が聞くと

 

「周泰です」

 

「(周泰だと!!孫権を傷だらけにならながらも守った!!あの周泰)」

 

 

 

そして周泰がやってきて

 

「良いか?洛陽を囲む城壁のすぐ外」

 

何進は地図を使いながら説明する

 

「ちょうどこの辺りに茂みに覆われてた小さな丘がある。一説では遥か昔に滅びた…さる国の王族の墓とも言われておるが、実はその石室の中にある石棺が抜け穴の出入口なのじゃ」

 

「それで、その抜け穴は何処に通じているので?」

 

「うむ…この秘密の通路は宮中の庭にある古井戸へと通じておる」

 

何進は周泰に説明するが

 

「ただこれは本来宮中から抜け出るためのもの。古井戸から入って外に出る分には問題はないが逆から辿ると曲者除けの罠が働くとも聞く」

 

周泰の目には何進の猫耳が映っていた

 

「気を付けていくが良いぞ」

 

「はい!」

 

元気よく返事をする周泰

 

「何進様…もう一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「ん?何じゃ?」

 

「出立前の餞別として……そのお耳、モフモフさせて頂くわけにはまいりませんか?」

 

「…まいりませんわ!!」

 

周泰の願いを却下する何進であった

 



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第百二十一席 周泰、宮中に忍び込むのこと

仮面の男の正体があらわなります

皆さんの予想は当たっていましたか?

では、どうぞ


翌日

 

「……ここか」

 

小さな丘の入り口の前に一人の人物がやってきた

 

「……」

 

中に入り、階段を降りていく

 

「……」

 

棺の前に来ると、布を脱ぐ。その正体は周泰だった

 

「…ん!」

 

重い棺の蓋を開け、ランプで中を覗く

 

「…よし!」

 

何進に言う通りで下に続く梯子があった

 

 

「……」

 

下に降り、ランプを片手に道を歩いていく

 

 

「かなり歩いたから、そろそろ出口があってもいい頃じゃ…」

 

長い道のりを歩いていると

 

「あっ!?」

 

扉が現れた。開こうとするが

 

「ん?」

 

ビクともしない

 

「ん!」

 

強く押すがやはりビクともしない

 

「はあ~」

 

ランプを置き、今度は両手で押す

 

「ふん!んんんんんん!!!」

 

力いっぱい扉を押す周泰

 

「ぐぐぐぐぐぐ!」

 

すると

 

ガチャン

 

音とともに扉が突然開いた

 

「わああぁぁ!!」

 

扉の先は広い空間が広がっていた

 

「あ~、今のが曲者除けの罠なんだ。内側からだと大丈夫なんだけど、外から開くと作動するって仕掛けかな」

 

のんきにそんなことを考えていると

 

「ん?」

 

砂埃と一緒に天井の石屋根が落ちてきた

 

「って!のんびり考えている暇じゃな~~~い!!!」

 

全力で逃げる周泰

 

「はわわわわ!!」

 

逃げていくが、途中で道が途切れて

 

「きゃっ!!」

 

水の中に落ちた

 

「ぶはっ!!」

 

水から顔を出す周泰

 

「はあ~ビックリした……ん?」

 

視線を上げると、月が見えた

 

「あれが出口の古井戸か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「何とか忍びこんだけど、やっぱり宮中は広いな」

 

忍び込んだ周泰は董卓を探していた

 

「一晩中探してみたけど孔明さんの書いてくれた人相書きの人…どこにもいなかったし」

 

周泰の手には、朱里が書いた董卓の似顔絵が書かれた紙があった

 

ぐう~

 

周泰のお腹の虫が鳴る

 

「うっ…とりあえず腹ごしらえしようっと…」

 

胸元から袋を取り出す

 

「これ、腹持ちは良いんだけど……不味いのよねぇ…」

 

非常食を食べていると、周泰の胸元で何かが動いた

 

「あっ!ごめんごめん。う~ちゃん窮屈だったよね」

 

出来てたのは、鳩だった

 

「わかってるって。う~ちゃんには、これから一働きしてもらうから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳩は連合軍に向かって飛び、陸遜の頭の上に止まった

 

「宮中に潜り込んだのは成功したものの、董卓の居場所はわからぬ…か」

 

周泰の報告を知る連合軍

 

「おまけに抜け道が崩れたとなると例え董卓を見つけても、連れ出して逃げるのは難しいやもしれません」

 

その言葉に陳宮は不安の表情になる

 

「まあそれはそれとしてまずは董卓を見つける手立てを考えないと」

 

「…朱里!お願いなのだ!!」

 

「ん?」

 

「いつもみたいに何かいい策を出すのだ!」

 

「鈴々…気持ちはわかるけど、すぐには……」

 

勇作はそう言うが

 

「既に準備は進めています」

 

「(あるんかい!!)」

 

「うまくいくかどうかわかりませんが、相手をちょっと揺さぶってみましょう」

 

 

 

 

 

朱里はとある天幕にやってきた

 

「どうです?李典さん」

 

中では李典がカラクリを作っていた

 

「ん?」

 

「私がお願いした物を作れそうですか?」

 

「ああ!体の方は服着せてしもたら何とでもなるし、動きの方もあの程度でええんやったら大丈夫や」

 

李典の目の前には、作りかけのカラクリ人形がある

 

「あとは顔がどんだけ似せられるかなぁ」

 

「それじゃあ」

 

「お~!この手のカラクリやったらこの李典様に任しとき!」

 

「朱里、これを使って何をする気なの?」

 

勇作は朱里に聞く

 

「それはですね……」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして指令が書かれた紙を持った鳩が周泰の所にやってきて

 

「(董卓さんが見つからない時は赤い袋を……)」

 

「うんうん…張譲が鏡を持って、走り出したら要注意か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

陳宮と張々が汜水関に戻ってきた

 

「どうした?」

 

汜水関に兵たちは同様していて、呂布は何事かと聞く

 

「呂布将軍、あれをご覧ください」

 

兵の一人が指さし、呂布は近づいていくと

 

「……あっ!陳宮、張々」

 

驚く呂布

 

「恋殿!!」

 

陳宮は手を振るが

 

「………」

 

呂布は怒っていた

 

「お怒りはごもっともなのです。勝手にいなくなったことは謝りますから」

 

陳宮は張々が引いていたカラクリに近づき

 

「今はこれを見てほしいのです!」

 

カラクリのスイッチを入れる

 

「……っ!?」

 

呂布は驚く。そこにいたのは董卓であった

 

「ご覧の通り、董卓様はすでに洛陽を抜けられてこちらにおわすのです」

 

しかしこれは、董卓そっくりのカラクリであったが、呂布は本物だと思っている

 

「今宮中で囚われの身になっているのは、妖術で子豚に化けさせた偽物なのです!!」

 

「……」

 

「鏡に姿を映せば元の子豚に戻る偽物を後生大事に閉じ込めておくなんて張譲も飛んだ間抜けなのです!!」

 

「いったいどうなっているんだ?」

 

「董卓様が囚われの身なんて初めて聞いたぞ」

 

陳宮の言葉に兵たちも動揺していた

 

「けどあそこにおられるのは間違いなく董卓様」

 

「うむ、宮中にとらわれているという方は偽物に違いない」

 

「……」

 

「騙されるな!!」

 

すると仮面の男が声を上げる

 

「宮中にいる董卓が偽物だと!嘘をつけ!そこにいる董卓こそ偽物だ!!」

 

「何を言っているんですか!宮中にいるのが偽物で」

 

「うるさい!よくそんな嘘をつけるな!この裏切り者!!」

 

「う、裏切り者…」

 

「呂布将軍。今すぐあの裏切り者を殺しましょう!」

 

「っ!!」

 

呂布は驚く。そして仮面の男は呂布に近づき

 

「俺を言うことを聞かないと人質の命はないといいましたよね」

 

「……」

 

「あなたの大切な家族がどうなりますかね」

 

「(セキト…みんな)」

 

呂布の大事な家族である動物たちが人質に取られていた。このことは陳宮もしらない

 

「どうしますか?」

 

「………」

 

「仕方ありませんね…あいつらを」

 

「…だめ!」

 

「なら、あいつを殺せ!そしてそのまま連合軍と戦い、御使いを殺せ!命令だ!」

 

「………」

 

「……残念ですね。始末を」

 

その時

 

「…大変です!!」

 

一人の兵士がやってきた

 

「何だ?」

 

兵は仮面の男に近づき、何かを話す

 

「何だと!!」

 

すると

 

ワンワン

 

犬の鳴き声がする

 

「!!」

 

呂布はその鳴き声がすぐに分かった

 

「セキト!!」

 

現れたのはセキトと呼ばれている犬だった

 

「セキト!!」

 

呂布は駆け寄ってきたセキトを抱きしめる

 

「くそ!!」

 

男は兵士と一緒にその場を後にした

 

「……」

 

呂布はその様子を見て

 

「門を開けろ!」

 

「えっ!!」

 

「恋は門を開けろっと言った」

 

「ですが呂布将軍」

 

「もう戦う理由なくなった。だから恋は戦わない」

 

陳宮は不安な気持ちで待っていると

 

「……あっ」

 

門が開かれると陳宮の表情が明るくなった

 

 

 

 

 

「まずはうまくいったようね」

 

その様子を孫策と曹操が見ていた

 

「けど、本番はこれからよ!張譲がこちらの思う通りに動いてくれればいいのだけれども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何っ!!汜水関が抜かれただと!」

 

張譲はその報告を聞いて驚いていた

 

「はい。囚われている董卓は妖術をかけた子豚で、鏡に映ってしまえば元に戻ってしまうとか」

 

「馬鹿な!!」

 

「お疑いなら呂布の元を離れ逃げ戻った兵たちにお聞きください」

 

「………」

 

張譲は机の引き出しを開け、鏡を取り出し、席を立つ

 

「あの、どちらへ?」

 

「ことの真偽を確かめてくる」

 

そう言って部屋を後にした

 

 

 

 

「貴様ら!!」

 

「すいません」

 

そして仮面の男も呂布の人質を閉じ込めていた牢獄の前にいた

 

「何をしていた!人質を逃がすなんて」

 

「違うんです!!」

 

「何がだ!」

 

「私は襲われたんです」

 

「襲われただと」

 

「はい。私はきちんと警備をしていました。そこに仲間の兵が二人きたんですが、そいつらが襲ってきて」

 

「で?」

 

「もちろん反撃しました。ほかの仲間を呼びましたが、あいつら妖術みたいなものを使ってきて」

 

「もういい……死んでもらう」

 

「えっ?」

 

男は兵を切り捨てた

 

「………くそ!!」

 

仮面を外し、イラつきながらその場を後にする仮面の男………いや

 

「(誰がか知らないが、見つけ出して始末してやる!!高杉と劉備たちを始末してからな!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偽 劉 備

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目と表情は憎しみに溢れていた



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第百二十二席 董卓、洛陽を脱出するのこと

張譲は鏡を手にある場所に向かっていた

 

「あの董卓が偽物だと…まさかそんな」

 

そしてとある資料室に入った

 

「……」

 

部屋の奥の本棚に隠されている仕掛けを入れる

 

「……」

 

そこは地下に通じる隠し扉が隠されていた

 

「……」

 

張譲がその中に入ると、扉は閉まった

 

「……ふっ」

 

そして周泰はその様子をしっかりと見た

 

 

 

 

 

「……」

 

地下室は牢獄になっていて、見張りの兵が二人いた

 

「ん?」

 

その一つの牢屋に董卓がいた

 

「……あ」

 

張譲は董卓に鏡を見せる

 

「……」

 

だが何の反応しない

 

「あっ……ぐっ!」

 

張譲は悔しそうに鏡を地面に叩きつける

 

「え~い!呂布のアホめ!まんまと謀られよったな!!くそっ!くそっ!」

 

鏡を踏みつける張譲。その様子を董卓は不安そうに見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜

 

「……」

 

厠に来た賈駆

 

「賈駆殿、賈駆殿」

 

声が聞こえ、周りを見渡す賈駆殿

 

「賈駆殿、賈駆殿」

 

「誰?何処にいるの?」

 

「賈駆殿、賈駆殿」

 

「……」

 

上を見る賈駆

 

「賈駆殿…そちらではなく、こちらです」

 

賈駆は便座の中を覗くと

 

「あっ!」

 

そこには周泰がいた

 

「どっ!どっから話しかけているのよ!」

 

賈駆は驚き、扉の前まで下がる

 

「ご無礼の談はお許しください。我が名は周泰!江東の孫家に仕える者です」

 

「何?孫家の…」

 

「董卓様の居場所がわかりました」

 

「っ!?」

 

目の色が変わる賈駆

 

「脱出は明日の夜明け…警備の気が一番緩い時を狙って決行します」

 

周泰は手順が書かれた紙を取り出し

 

「詳しい手配はこれに……」

 

賈駆に渡した

 

「……あ」

 

手紙を受け取り、内容を読むと賈駆の表情が明るくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

そしてとある場所では、その会話を聞いていた人物がおり

 

「…ーー」

 

「--」

 

仲間に伝えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明け

 

「……」

 

董卓が寝ていると

 

「ぐっ」

 

「ぐはっ!」

 

「ん?」

 

扉の鍵が開くとともに董卓が目を覚ます

 

「あなたは?」

 

「説明は後で…宮廷の外で賈駆殿がお待ちです」

 

「詠ちゃんが!!」

 

 

 

 

 

 

 

宮廷の外で賈駆が馬車に乗って待っていると

 

「あ?」

 

宮廷内で兵たちに声が聞こえ、鐘が鳴り響く

 

「……」

 

視線を上に向けると

 

「月ぇ!!」

 

「あっ!詠ちゃん」

 

周泰が董卓を抱えて城壁から飛び降りる

 

「詠ちゃん、元気だった?」

 

「感動の再会は後です!早く馬車に」

 

董卓は馬車に乗り込み

 

「絶対顔を出さないでください」

 

そして扉を閉める

 

「……」

 

そしてある人物がその様子を見た後、その場を離れた

 

「賈駆殿!出してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬を走らせ、洛陽を脱出しようとするが、追っ手に見つかり追いかけられていた

 

「…ふっ!」

 

兵の一人が馬上から弩で馬車に射掛ける

 

「……」

 

客室に矢が刺さる

 

「賈駆殿!もっと速く!」

 

段々追いついてきてスピードを上げるように言うが

 

「これで精一杯よ!」

 

「ぐっ!ならば!」

 

このままでは追いつかれると思った周泰は馬車の客室の屋根の上に乗り

 

「ふっ!」

 

吹き矢を放つ

 

「ぐあっ!」

 

矢が兵に当たり落馬する

 

「…」

 

そして馬に飛び乗ると

 

「はっ!」

 

追っ手と対峙する

 

「であっ!」

 

激しい戦闘になるが一人また一人と追っ手を倒していく周泰

 

 

 

「……」

 

しばらく走っていると、出口の門が見えた。そしてそのそばに一人の人物が立っていた

 

「ぐはっ!!」

 

周泰は最後に追っての兵士を倒した

 

「よし!これで追っ手は片付いた!後は門の抜けて洛陽の城外に出さえすれば!」

 

だが視線を向けると

 

「「ぐうう!!」」

 

敵が門を閉めようとしてた

 

「しまった!門が!」

 

門が閉じられてしまう……が

 

「ぐはっ!」

 

「がああ!」

 

ある人物が敵を倒し、門を蹴って開ける

 

「はっ!」

 

そしてその人物は賈駆に座る

 

「賈駆!事情が分からぬが助太刀にきたぞ!」

 

「あなたは?」

 

衣を脱ぎ捨てると

 

「華雄将軍!!」

 

その正体は董卓軍の将の華雄だった

 

「生きて…生きていらっしゃったんですね」

 

仲間が生きていたことに泣きそうになる賈駆

 

「当たり前だ!何しろ私は長生きするたちだからな」

 

感動の再会をしていると

 

「っ!!賈駆!伏せろ!!」

 

華雄の声にビックリし頭を下げる二人

 

バシ!バシ!

 

そして二人の頭があった場所に矢が刺さる

 

「くっ!」

 

視線を向けると

 

「逃げられるとても思ったのか!」

 

前方に30人の敵がいた

 

「そんな」

 

「構え!」

 

10人の弓兵が狙いを定める

 

「まずい!」

 

華雄は賈駆をかばうため体を前に出す

 

「華雄!!」

 

「放て!!」

 

矢が放たれ、賈駆達に向かって飛んでいく

 

「賈駆殿!」

 

周泰が前に出ようした

 

 

 

その時

 

 

 

ババババババン!!

 

 

 

 

破裂音とともに矢がすべて落とされた

 

「なっ!」

 

周泰がが驚愕していると

 

「はっ」

 

周泰の後ろから二騎の馬が現れた

 

「あなたたちは?」

 

「説明は後です」

 

「俺たちが殿を務めます!周泰殿は董卓様を!」

 

「しかし!!」

 

「頼みます!!」

 

二人はスピードを上げ敵に向かっていく

 

 

「何だ!貴様ら…ぐあああ!!」

 

二人は敵を蹴散らし、陣形の真ん中が開く。そしてその開いた道を馬車と周泰は通り抜けた。決して後ろを振り向くことなく脱出に成功するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!」

 

董卓を逃がした張譲は悔しそうに物に当たる

 

「何たる何たる失態!ぐっ!!」

 

頭を抱える張譲

 

「おやおや…随分とお怒りの様子ですが、何かありましたか?」

 

于吉がやってきた

 

「何をのんきな!!董卓に逃げられたのだぞ!!」

 

「良いではありませんか。太平要術に必要な妖力が溜まった今となっては、董卓は用済み」

 

「何?それでは」

 

「逃げてくれたのなら始末する手間が省けたというものです!」

 

「そうか…ついにその時が来たか」

 

笑みを浮かべる張譲

 

「ああ…そうそう、用済みといえばあなたもそろそろ」

 

「うん?」

 

「わかるでしょう。あなたにとって董卓が隠れ蓑でしかなかったように私にとってあなたは単なる道具に過ぎなかったんですよ」

 

「于吉…貴様何を言って?」

 

すると于吉は何かの術を唱えた後、手からおちょこが現れた

 

「なんだ!体が勝手に」

 

自分の意志とは関係なく于吉に近づく張譲

 

「ぐっ!」

 

そして張譲はおちょこにあった液体を飲み干す

 

「ごほ!げほ!」

 

苦しそうにのどを押さえる張譲

 

「い…今のは何だ?何を飲ませた!?」

 

「今の薬はチューベットウ!人をネズミに変化させる薬です」

 

「なっ何だと!!ぐっ!」

 

するとみるみる体が変わっていく

 

「愉快じゃないですか!宮中に潜む黒いネズミが本当のネズミになるなんて」

 

そして張譲はネズミの姿になった

 

「さてさてあなたに猫にされた何進が今のあなたを見つけたらどうするんでしょうね」

 

ネズミはその場を去った

 

「ふふふ!あははははははは!」

 

于吉の笑い声が宮廷に響くのであった

 

「おい!」

 

扉が開かれ偽劉備が現れた

 

「あなたですか」

 

「張譲を俺にくれないか?」

 

「あれをですか?」

 

「ああ」

 

「何に使うのですか?」

 

「もちろん復讐のために使うんだよ」

 

「復讐ですか?」

 

「ああ!!」

 

「……いいでしょう。あなたの好きにしなさい」

 

「感謝する。ついでに頼みがある」

 

「頼み?」

 

 

二人は何かを話した後、それぞれ行動に移った



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第百二十三席 張遼、関羽と相打つのこと

日が昇り

 

「…うむ、もう追っ手はかかっておらぬようだな」

 

洛陽を脱出した董卓達と周泰が虎牢関に向かっていた

 

「さて、賈駆。そろそろ事情をきかせてもら…」

 

「事情を聞きたいのはこっちです!」

 

「何だ?何を怒って?」

 

「生きているんだったらどうしてもっと早く戻ってこなかったんですか?一体何処でどうして」

 

目に涙を浮かべる賈駆

 

「僕はてっきり…てっきりあの戦で…」

 

「いや~実は匈奴の奴らを蹴散らすのについ夢中してな、気付いたら敵陣の中にただ一騎」

 

華雄はその時のことを話し出した

 

「奮戦むなしく囚われの身となったのだが、連中…私の暴れっぷりが気に入ったと見えてな、それなりに大事にされてはいたんだが、隙をみて逃げ出したのだ」

 

「……」

 

「追っ手を暗ますため、一旦西涼へと向かいそれから平洲へと向かったのだが」

 

「……」

 

「その途中、董卓様が暴政の限りを尽くしいるという噂を聞いて…何か訳があるに違いないと物乞いに身をやつし、洛内に潜んで様子を探っていいたのだ」

 

「そうだったんですか。随分苦労したんですね」

 

涙を拭く賈駆

 

「ん?どうした賈駆?私の為に泣いてくれているのか?」

 

「ばっバカ言わないで、ちょっと目にゴミが入っただけよ」

 

「賈駆…しばらく会わなかったが、貴様は相変わらずだな」

 

「華雄将軍…あなただって」

 

「ん?そうか」

 

そのやり取りに思わず笑う賈駆と華雄であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は汜水関に移り

 

「孫策様」

 

「ん?」

 

「ただいま周泰から連絡が入りました。董卓は洛陽を脱出に成功し虎牢関に入ったのこと」

 

陸遜が孫策に報告する

 

「そう」

 

「なら虎牢関は」

 

「はい。門を開いて我らを迎えると」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして連合軍は虎牢関の門の前に集結した。がその門が閉じられていた

 

「董卓は全面降伏の意を表したと聞いたのだけど」

 

「どうもそれでは腹の虫が収まらぬ者がいるようね」

 

門が開かれ一人の人物が出てきた

 

「ウチの名は張遼!字は文遠」

 

「あいつは!?」

 

「あの時の用心棒!!」

 

「嘘!?」

 

出てきた人物に鈴々と翠と勇作は驚いていた

 

「連合軍の皆、耳かぼじってよう聞きや!何やようわからんけど、うちの大将はあんたらに降伏することにしたんやと。まあそれはそれでしゃないけど」

 

「(いいんかい!!)」

 

「一合も打ち合わない内に降伏ってウチは納得できへん!」

 

納得していない表情でさらに言う

 

「そこでものは相談やけど、誰ぞウチと勝負せえへんか!我と思わん者はウチを倒して開城の証であるこの白旗!見事に手に入れてみい!!」

 

地面に白旗を立てる張遼

 

「許緒」

 

「ん?」

 

「貴方、張遼とは知り合いだと言っていたわね」

 

「あ!はい。路銀が尽きてある店で働いていた時に」

 

「一度、戦ったこともあるとか」

 

「はい。3対1だったのに簡単にあしらわれたのが今思い出しも悔しくて」

 

「以外ね…そういう気持ちがあるのならこういう時、貴方はいの一番に飛び出していく性格だと思っていたわ」

 

「そりゃあ行きたいのは山々ですけど、でも親衛隊は命を代えても曹操様の身をお守りするのが第一の任務。ひとたび曹操軍に身を投じた以上、曹操様の命なしに動くことは許されないと夏侯惇将軍がおっしゃってましたから」

 

「あら、春蘭がそんなことを」

 

少し驚く表情をする曹操

 

「単なる猪武者だと思っていたけど、いつの間にか我が軍の将としての自覚が生まれていたのね」

 

そんなことを思っていると

 

「ええい!放せ!なぜ止める!!」

 

夏侯惇が今にも飛び出そうとしていた。夏侯淵が必死に止めていた

 

「姉者!よせ!華琳様の命もなしに討って出ればお叱りを受けるぞ」

 

「だが!あんなこと言われて黙っていられるか!このままでは我らの面子にかかわる」

 

「典韋!手伝ってくれ!姉者を止めるのだ」

 

「あ、はい」

 

典韋は夏侯淵の所に向かい

 

「あっ!こら!放せ!」

 

その光景に曹操と許緒はため息をつくのであった

 

 

 

 

「あ~誰もかかってけえへん所見ると、ウチと勝負する勇気のあるやつはそっちにはおれへんってことか」

 

挑発する張遼

 

「む~言わせておけばなのだ!こうなったら鈴々が」

 

鈴々が飛び出そうとするが

 

「おい!待て!鈴々、抜け駆けはずるいぞ」

 

翠が鈴々の左腕を掴み、止める

 

「けど!あんなこと言われたら黙ってられないのだ!」

 

「当たり前だ!だからここは私が」

 

「何で翠なのだ!?ここは一番気の短い鈴々が行くとこなのだ!」

 

「何言ってんだ!?ここは脳筋のあたしが行くとこだ!」

 

「(お~い。何言ってんだ二人とも)」

 

「って脳筋言うな!!」

 

「言ってないのだ」

 

「はあ~」

 

勇作がため息をついていると

 

「ん?おお!高杉やん。あんたも参加してたんか」

 

張遼は勇作がいることに気付く

 

「…どうや、あんときの決着をいまここで着けようか」

 

「……」

 

勇作は馬を降り、向かおうとするが

 

「お待ちください」

 

愛紗に止められる

 

「ん?」

 

「ここは私が行きます!」

 

「愛紗」

 

「いや…でも」

 

「私が行きます!」

 

「…わかった」

 

勇作は右手を上げ

 

「お願いします」

 

「御意」

 

パンッ!

 

ハイタッチをして愛紗は張遼の方に向かった

 

「おお、やっと出てきよったな。あんま待たせるから寝てまいそうになったで」

 

「我が名は関羽。字は雲長…開城の証もらい受けにきた」

 

「ほう~あんたの獲物も偃月刀か」

 

張遼が武器を構える

 

「おもろい。どっちが偃月刀使いとしてどっちが上かはっきりさせようやないか」

 

「ならばこい!」

 

関羽も構える

 

「あんたを倒してら次は高杉や」

 

「……」

 

「いくで!!」

 

 

関羽と張遼の戦いが始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ

 

「ここにあるのか?」

 

「……ええ」

 

于吉と偽劉備はとある場所に来ていた

 

「…この先です」

 

妖術の作った炎の明かりを手に通路を歩く。壁には兵隊の絵が描かれていた

 

「ここです」

 

しばらく歩いていると大きな扉が現れた

 

「この中に」

 

偽劉備が扉を開けると

 

「これは!?」

 

「やはりありましたか」

 

于吉は炎を回りに飛ばす

 

「なるほど…これが例の」

 

「ええ」

 

その光景に二人は笑うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチン!ガチン!

 

虎牢関では関羽と張遼が互角の勝負をしていた

 

「結構やるやないか」

 

「……」

 

「せやけど、ウチの本気はこっからや」

 

張遼は偃月刀を上で回転させ、その勢いのまま薙ぎ払う

 

「くっ!」

 

関羽はガードするがあまりの威力に後ろに飛ばされる

 

「であ!」

 

続けて攻撃してくるが、ひらりとかわす

 

「うりゃ!」

 

偃月刀で攻撃するが関羽はそれを止め、偃月刀で鍔迫り合いとなる

 

「張遼…お主はなぜこうまで戦いを望む」

 

「そんなん決まってるがな…強い奴と戦こうってウチが一番やっちゅうことを証明するためや」

 

「なるほど…どうりで軽いわけや」

 

「なんやと」

 

その言葉に動揺したのか、張遼に隙ができる

 

「貴様!董卓の元にいたのなら陳宮を知っておろう」

 

反撃に出る関羽

 

「あのちんちくりんがどないしたっていうねん」

 

関羽に猛攻に防戦一方になる張遼

 

「あの者は我らの前で泣いたのだ。恩人である呂布をその呂布が大切に思う董卓を救ってくれと」

 

「ふん!そんであんたらが雁首揃えて出てきたちゅうわけか」

 

一瞬の隙に反撃しまた鍔迫り合いとなる

 

「大切な人を救わんとして流されたあの涙に比べれば己一人の武勇を誇る貴様の斬撃など、小手先に響いても到底胸には響かんぞ!!」

 

「っ!?」

 

お互いの距離を取り

 

「はああああああああ!!」

 

「でああああああああ!!」

 

お互い渾身の力を込め、獲物を振る

 

 

ガチィィィィンン!!

 

 

お互いの得物がぶつかり合い、すれ違う

 

 

バリン!

 

「あっ」

 

愛紗の髪留めが砕ける

 

ビリ!

 

張遼の胸に巻かれているサラシが着られる

 

「ひっ!」

 

左腕で胸を隠す張遼

 

「相打ちか」

 

「いや…鋼の刃はウチの胸に届かなかったけど、あんたの言葉はウチの胸に刺さったで」

 

「あっ!」

 

その言葉に関羽を笑みを浮かべる

 

「それにあんたの刃には別の思いが宿っていたで。あんたとって高杉ってどういう人物や?」

 

「我々のご主人様であり、私の愛するお方だ!」

 

そして風が吹き、白旗が靡いた

 

「勝負あったな」

 

勇作が宣言する

 

「関羽の勝利だ!勝鬨を上げよ!!」

 

その言葉に連合軍から勝鬨が上がった



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第百二十四席 群雄、董卓と対面するのこと

虎牢関のとある部屋

 

「董卓…面を上げなさい」

 

そこには、部屋の中央で土下座をしている董卓。正面には曹操と孫策が座っており、その後ろには曹操の軍師と周瑜がおり、両側面には、ほかの面々がいた

 

「私はたとえ敗軍の将であっても、それなりの礼をもって迎えるつもりよ。だから顔を上げて頂戴」

 

そういわれ顔を上げる董卓

 

「連合軍の諸将の皆さまに一つお願いしたき儀がございます」

 

「何かしら?」

 

「此度の件で多くの民を苦しめた罪…まさに万死に値するもの。ぜひともそれにふさわしい罰をわが身に与たえください」

 

「けれど、今回のことはすべて張譲の企みによるものと私は聞いているけど」

 

「愚かにも監物の策に嵌って囚われの身となり、臣下に悪行をなさしめたことこそわが身の罪。なにとぞ厳しきお裁きを下さるよう伏してお願いいたします」

 

頭を下げる董卓

 

「ふ~ん、良い覚悟ね」

 

「確かにこれほどの大事、官位を剥ぐぐらいでは民も納得せぬでしょう」

 

孫策と周瑜がそう言っていると

 

「月ぇ!!」

 

賈駆がやってきた

 

「僕に黙ってどうしてこんなことを!?」

 

董卓の所に走って近づく

 

「詠ちゃん!私、話を聞くまで何があったか全然知らなくて、こんなことなら…私のせいでこんなにも皆を苦しめたのなら捕まった時に自害していれば」

 

目に涙を浮かべながら悲痛な思いを言う董卓

 

「月…」

 

その様子を見た賈駆は

 

「曹操殿!此度の件で罪があるとするなら張譲の脅しに屈し、悪行に手を貸した僕です!罰を与えるならこの僕に…」

 

「詠ちゃん、臣下の罪は主君の罪。これは私が責を負わねばならないことなの」

 

「けど!?」

 

「曹操殿…もし私の罪に相応しい罰を与えていただけないのなら、我が命を持ってその償いとする所存です」

 

覚悟を持ったその目に皆は動揺していた

 

「曹操様!」

 

すると郭嘉が声を上げる

 

「この場の裁き、私にお任せいただけませんか」

 

 

 

 

 

しばらくして

 

「……」

 

袋を持った夏侯淵が皆の所にやってきた

 

「華琳さま!ご報告が遅れ、誠に申し訳ありません。先ほど討ち取りました逆賊董卓の首持参いたしました」

 

その報告に一同驚愕した

 

「(ど、どういうこと?)」

 

袋を開くとそこには

 

「(これは!?)」

 

董卓の首があった。しかしその首は董卓救出に使用さらた人形だった

 

「ご覧の通りすでに、董卓はすでに夏侯淵将軍が見事討ち果たしております」

 

それを見た曹操は

 

「ふ~ん…どうやらそうみたいね。それでそこに控えているのは何者ということになるのかしら?」

 

「さて、見たところ身なりも安いようですしおそらくただの村娘かと」

 

「何をおっしゃいます!?私は」

 

反論しようとした時

 

「おお!お主どこかに見た顔だと思ったら、トントンではないか」

 

星が声を上げ、董卓に近づく

 

「あっ、あなたは!?」

 

「曹操殿、この者はトントンと申す村娘で少々おつむが弱いのか…時折突拍子もないことを申します。ここは私に免じて許してやっていただけないか」

 

「趙雲さん、いったい何を」

 

「御一同!!今のお聞きになられたか?洛陽の都で位人身を極めた董卓が義勇軍の一員に過ぎぬ私の名を知り、あまつさえ親しく呼びかけてくるなどあり得ぬこと!これこそこの者が村娘であるトントンである何よりの証!」

 

「あっ!!」

 

「どうやらこれで決まりのようね」

 

曹操は立ち上がり

 

「トントンとやら下らぬ妄言で我らの手を煩わせたこときつく叱りよく。もしまた自ら命を絶つなどと口走ったらその時こそ、ただでは済まないわよ。いいわね」

 

「……」

 

「其方、見れば貧しく身寄りもない様子…賈駆、これも何かの縁だと思って貴方の所で使ってやりなさい」

 

表情が明るくなる賈駆

 

「はっ!かしこまりました」

 

「うん」

 

「(これにて一件落着か…)」

 

勇作がそう思っていると

 

「終わりましたよ、主」

 

星が戻ってきて

 

「ナイスだよ。星」

 

「ないす?」

 

「素晴らしいって意味だよ」

 

「そうですか!ありがとうございます」

 

「うん」

 

「しかし言葉だけでは足りません」

 

「えっ?」

 

星は勇作の耳元に近づき

 

「褒美は主の体でもらいましょう」

 

「はっ!おま!何を言って…」

 

「ふふふ」

 

笑みを浮かべる星

 

「(セイ、ゴシュジンサマムカッテ……シニタイヨウダナ。ウフフフフ)」

 

その様子を愛紗は光の無い目で見るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして虎牢関を抜けた連合軍は洛陽の門の前で陣を立てた

 

「ふわふわのぽにょぽにょにゃ」

 

勇作陣営のとある場所、そこで孟獲は紫苑の胸で癒されていた

 

「大王様!そろそろ交代するにゃ!」

 

「独り占めはずるいにゃ!」

 

「そうにゃ!そうにゃ!」

 

子分たちが苦情を言い、紫苑は苦笑いしていた

 

「(どうしましょう?ご主人様なら、いつでも歓迎なのに)」

 

 

勇作陣営の天幕の中では

 

「「「「……」」」」

 

翠、たんぽぽ、焔耶、何進がくつろいでいた

 

「あっ?何進さん…お茶おかわり」

 

「ん?わかっ!?」

 

何進が立ち上がるが

 

「なんでわらわがお茶くみをせねばならんのじゃ!?」

 

「えっ?でもいかにもそういうことをしてくれる恰好しているし」

 

「童とて好きでこのようなものを被っているのではない」

 

何進は頭にバンダナを巻いていた

 

「これは猫耳を隠すため」

 

何進がそう言っていると

 

「おおっ!久しぶりだな。焔耶」

 

「「「「ん?」」」」

 

全員が振り向くと

 

「厳顔!!」

 

「桔梗様!!どうしてここに?」

 

巴群の太守である厳顔が入ってきた

 

「い、いや~袁紹からの檄が届いて、急いですぐに巴群を出たのだが、どうもちょっと遅かったようだな」

 

「……」

 

「あっ!?これは失礼。わしは厳顔。巴群の太守を務めておる」

 

「お主が」

 

「焔耶は厳顔の弟子だったんだよね。もっとも今は破門されちゃったけど」

 

「たんぽぽ…余計なことを言うな!確かにそうだが、今はお館の家臣だぞ」

 

ふたりのやり取りに翠は苦笑いをする

 

「(ほ~焔耶の奴、あれ程いがみ合っていた馬岱と真名で呼び合うほどとなったか)」

 

厳顔は笑みを浮かべる

 

「あの…何か?」

 

「あっ!いや…貴様を旅に出したのは正解だったと思ってな」

 

「は?」

 

「それで焔耶……お主の主は今、どこに?」

 

「それは……」

 

 

 

場所は変わり、洛陽の城門のとある部屋

 

「皆さん、此度は逆賊董卓の盗伐ご苦労でした」

 

そこには盟主である袁紹とその隣に袁術がおり、曹操、孫策、勇作、公孫瓚達と対面していた

 

「袁紹…何もかも片付いてからのご登場とは、ずいぶんとゆっくりだな」

 

「あら。真打は最後に登場と相場は決まっておりますでしょう」

 

「袁紹…貴様」

 

袁紹の態度に激怒する公孫瓚

 

「まだすべてが片付いた訳じゃないわ」

 

曹操が声を上げる

 

「ゆがんだ政の見直しを始め、やることは山積みよ」

 

「そうした後始末は名門の私にはふさわしくありませんわね」

 

「(こりゃ、やる気がないな)」

 

「いいわ。貴方がそういうなら私が引き受けるわ」

 

「あら…そうじゃあ」

 

すると

 

「失礼します」

 

典韋が入ってきた

 

「何事?」

 

「はい…華佗殿がお目通りを願って訪ねて来られたのですが」

 

「何?華佗が…」

 

「(いったいなんで?)」

 

不安を覚える勇作であった



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第百二十五席 華佗、于吉の企みを話すのこと

「まったくあなたときたら、毎回意外なところに突然現れるのね」

 

華佗が深刻な表情で現れた

 

「まさか今回の騒ぎにも太平要術が絡んでいるなんていうんじゃないでしょうね」

 

曹操は冗談ぽく言うが

 

「残念だが…そのまさかだ」

 

「えっ!!」

 

まさかのことに驚く曹操

 

「華佗さん…それってどういうことなんですか?」

 

「うむ…俺の調べた所では、于吉は言葉巧みにさる高官に取り入りそのツテを頼って」

 

「張譲と手を組んだ」

 

「あっ!もしかして張譲が董卓さんを隠れ蓑にして悪政を布いたのは、あえて民を苦しめ怨嗟の声を上げさせるため」

 

「そうか!そうすれば太平要術に凄まじい量の妖力をため込むことが出来る」

 

太平要術の恐ろしさを知っている者が理解していると

 

「ちょっと待って!一体何の話をしているの?」

 

何も知らない孫策はどういうことなのかと聞く

 

 

「民の怨嗟の声を妖力に変える妖術書に、それを携暗躍する妖術使い」

 

孫策たちはほかの者から説明を聞いて

 

「貴方たちがそうまで真剣な顔をしてなかったら、おとぎ話と笑い飛ばしていたところだわ」

 

その話を信じた

 

「しかしどうも信じられないな。そんな書があるなんて」

 

「ありますよ。そのせいで」

 

勇作はそういって包帯を外す

 

「俺の目がこうなったんですから」

 

赫眼の右眼を見せる

 

「なっ!!」

 

「何!その眼は!?」

 

桃香達以外の群雄はその眼を見て驚愕した

 

「太平要術の妖力で呪われてしまったんだよ」

 

「呪い」

 

「黄巾の乱で怪我したと噂が流れていたが……それが」

 

「そうです。これで信じましたか?」

 

「わかった!信じる!」

 

「どうも」

 

そういって包帯を右眼に巻く勇作

 

「しかし…于吉なる妖術使いは、なぜそれほどまで妖力を溜めこもうとしているのだ?」

 

「どうやら奴の目的は秦の始皇帝の遺産を復活させることにあるらしい」

 

「始皇帝の遺産?」

 

「何がすごいお宝でもありますの」

 

袁紹は目を輝かやせるが

 

「そんな良いものではない」

 

はっきりとそう言う華佗

 

「広大な大陸を統一した秦の始皇帝は晩年強い猜疑心に囚われ、配下の誰も信用しなくなった。そして己一人の命に従い決して裏切ることのない兵士を作ろうとした」

 

「兵士を…作る?」

 

「それは一見…土で人を模ったようにしか見えないが、妖力を注ぎ込まれるとよく訓練された兵のように動き戦う。命令には絶対服従の上、抑力に優れ、痛みを全く感じぬ上にいくら傷を負っても怯むことなく敵に向かっていくという」

 

「なんて恐ろしい」

 

「幸いにもそれは実際に使われることなく、存在自体が闇から闇に葬られた。一説では死後の始皇帝を守るため、共に陵墓に埋められたという」

 

「(テレビで特集やっていたけど…あれが)」

 

「私も書物で読んだことがあります」

 

呂蒙は自分が知っていることを言う

 

「その兵士…兵馬に見せた怪しき物という意味で兵馬俑と呼ばれているとのこと。それを生み出すのに手を貸した徐福という法師が書き残した物に記されており、妖術を扱うものの間では、それなりに知られていることとか」

 

「何でも兵馬俑を動かすには強い力を持つ妖術使いを100人集めても賄えないほどの大量の妖力が必要らしい。だから兵馬俑の事を知ってはいても誰も本気でそれを探し、復活させようと企む者はいなかった………だが」

 

「太平要術があれば…それが出来る」

 

「宦官は兵権を握れない。だからそうやって意のままになる兵力を得ようとしたのね」

 

「しかし結果としてことは破れ、張譲は都を捨てて逃げだす羽目になったのだから…そう深刻な顔をすることもあるまい」

 

「何っ!!張譲は宮中にいないのか!?」

 

公孫瓚に言葉に華佗は驚く

 

「我々が、洛陽に入った時には既に…」

 

「張譲が本当に逃げ出したのならよいが……」

 

「どういうこと?」

 

「もし用済みとして于吉に消されたのなら…すでにすべての準備が整っているということです」

 

するとその時

 

「孫策様!!一大事です!!」

 

「どうした?甘寧?」

 

「正体不明の軍勢が、突如押し寄せ函谷関が破られました!!」

 

「何…」

 

その知らせに、驚愕する群雄

 

 

 

「現在、函谷関を抜き洛陽に向かって進軍してくる敵の数は約15万に迫る勢いのこと」

 

勇作達は地図を見ながら緊急の軍議をしていた

 

「それに対してこちらは弱兵の袁紹軍を合わせても3万に届くかどうか…」

 

荀彧の言葉にムッとなる袁紹

 

「敵はこちらの5倍ですか」

 

「なお敵の中心には怪しげな祭壇のようなものを据え付けた巨大な櫓があるらしいんですが…おそらくこれに于吉が乗っているものと思われます」

 

「それはたぶん七星壇のことだろう」

 

「七星壇?なんじゃそれは?」

 

「七星壇は妖力を広く届けるための祭壇で、多分それを使って太平要術の妖力を多くの兵馬俑に送り込んでいるのだろう」

 

「しかし難攻不落と言われてた函谷関が、なぜこうもあっさりと…」

 

「聞けば函谷関は大改修の最中で、ほとんど城塞として体をなしていなかったとか…。于吉が、張譲をそそのかし…この日のためにやらせたのでしょう」

 

「函谷関が抜かれれば洛陽は、西からの攻撃には裸同然」

 

「しかもこの場所は、守りがたく攻めやすい場所。洛陽にこもって戦うのは愚の骨頂かと」

 

「となると…ここは討って出るべきね」

 

「けど、まともに当たったら勝ち目はないわ」

 

「あの~兵馬俑でしたっけ…それって太平要術の妖力でうごかしているんですよね。だったら太平要術を封印しちゃえばいいんじゃ」

 

「たしかに兵馬俑は妖力がなくなればただの木偶人形だが」

 

「それじゃあ」

 

「あのね…あなた相変わらず帽子置き場にするくらいしか頭の使い道を知らないようだからちゃんと説明してあげるけど」

 

荀彧はあきれながらも劉備に説明する

 

「太平要術を持つ于吉は数万の兵馬俑に囲まれた中にいるのよ。こんな状況でどうやって太平要術を封印するって言うの?」

 

「それは…その」

 

「黄巾の乱の時とは違って、今回太平要術を手にしているのは于吉自身。そうなると奴を倒さない限り、太平要術の封印は叶わないだろう」

 

「だったら鈴々が于吉の奴をぶっ飛ばすから…その後、華佗のおじちゃんが太平なんとかを封印すればいいのだ」

 

「おじちゃんではない!威勢がいいのは結構だが、奴ほどの妖力使いにもなれば普通の剣や槍では、その身に傷をつけることすらかなわんぞ」

 

「ん~それは厄介だな」

 

「だっから俺なら于吉を倒せるんじゃ」

 

「そうですよ!ご主人様なら」

 

「残念だが…それは無理だ」

 

「なぜです!!」

 

「黄巾の乱での勇作の活躍を見れば確かに于吉を倒せるかもしれない。しかし下手をすれば命を落としかねない事態になるんだぞ」

 

「ど、どういうことですか?」

 

「勇作が太平要術の呪いに掛かっているのは知っているな」

 

「はい」

 

「その呪いは太平要術が近くにあると勇作に強い悪影響を及ぼすんだ」

 

「悪影響」

 

「変化がない様子を見れば、今は大丈夫だと思うが…もし太平要術がある所に行けば」

 

「…そうか」

 

「ご主人様!」

 

「は、はい」

 

突然、愛紗が勇作に近づき

 

「于吉は私が倒しますので、決して近づかないように!!」

 

「わ、分かったから……ちょっと近いよ」

 

「!!…し、失礼しました」

 

元の場所に戻る愛紗

 

「じゃあ、ほかに方法がないんですか?」

 

桃香が華佗に聞く

 

「そうだな…竜の爪でもあれば何とかなるが」

 

「竜の爪?」

 

「それって…」

 

桃香達は勇作を見る

 

「……どうしたの?」

 

「さっきも言ったが、勇作は無理だぞ」

 

「そ…そうでした」

 

「それで華佗さん。竜の爪って」

 

朱里が華佗に聞く

 

「これは妖術に携わる者の間ではよく知られていることなのだが……時が満ち、卵から孵った龍が雷とともに天に昇らんとする時、一本の爪を落としていく」

 

「(あっ!!)」

 

華佗の話を聞き、朱里はある出来事を思い出す

 

「(龍の卵。雷)」

 

それは前に楽進達を賊退治をした村での出来事を(この小説では、第七十六席でのことを)

 

「地に落ちた爪は、一本の剣となり…それを高貴な血筋に連なる者が手にし、強き思いを込めて振るうと…あらゆる悪しき力を討ち破り敵を貫くという」

 

「高貴な血筋に」

 

「連なる者…」

 

愛紗と星はある人物に視線をむける

 

「ただ実際に竜の爪なる宝剣を目にした者はなく…それが本当にあるかどうかも定かではないのだが」

 

「な~んだ。ただのお話か…」

 

桃香ががっかりしていると

 

「え?」

 

勇作と愛紗と星と朱里と鈴々が自分を見ていることに気付く

 

「え?ええ?え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてとある場所

 

「ええっ!!今日の舞台!中止になっちゃたの?」

 

「陳琳さん…どうして?」

 

張三姉妹が洛陽にやって来ていた

 

「曹操主催で大規模な祝勝会をするっていうから、巡業先から慌てて飛んで来たのに…」

 

「はっきりした理由は教えてもらえなかったんですけど、なんかとんでもないことが起きたらしく祝勝会どころじゃないって」

 

「もお~せっかくの大舞台楽しみにしてたのに~」

 

残念そうにベットに倒れる張角であった



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第百二十六席 程昱、策を話すのこと

勇作達が華佗の話を聞いていた同じ頃

 

「宮中での軍議。長引いているな」

 

曹操陣営では、夏侯惇が落ち着きのない様子でウロウロしている

 

「先ほど訪ねてきた華佗が、また厄介ごとを持ち込んだのでなければいいが」

 

「華佗って黄巾の乱の時、太平要術の話を持ってきた…」

 

「うん…嫌な予感がするな」

 

すると

 

「孫策軍より伝令!」

 

許緒が急いでやってきた

 

「西方より迫る軍勢あり!注意されたしの事」

 

「「なっ!!」」

 

「なんやて!!」

 

その報告に驚く曹操軍一同

 

 

孫策陣営では

 

「周泰!物見の増援の手配は済んだ?」

 

「はい!おうせの通り」

 

孫尚香が周泰に指示を出していた

 

「張り切っておるな…尚香殿」

 

「当然!姉様たちがいない時はシャオが指揮らないと……っで、次は何をすればいいの?」

 

「宮中で開かれている軍議の結果待ちじゃな」

 

「な~んだ…つまんない。じゃお茶にしましょう」

 

「は~い」

 

「すぐに用意しますね」

 

大喬と小喬は指示を受け、準備する

 

「甘寧様の報告を聞いて、連合軍の諸将は驚いたでしょうね」

 

「うむ」

 

 

桃香・勇作陣営では

 

「土人形15万を相手にこちらの手勢はたった3万」

 

「土人形が動くなんて不思議にゃ」

 

何進は孟獲を

 

「臆することはない。戦は数ではないからな」

 

「きっと土人形に悪霊が憑りついているのにゃ」

 

焔耶はミケを

 

「いや…戦は数じゃ。まともに戦っては連合軍に勝ち目はなかろう」

 

「そうにゃ!パヤパヤの時と一緒にゃ」

 

厳顔はトラを

 

「食べてみたいにゃ」

 

「えっ?」

 

「きっとエビの味がするにゃ」

 

紫苑はシャムを膝の上に乗せて会話をしていた

 

「なあ!鈴々の奴、慌てて劉備の剣を持ってたけど…どうしたんだ?」

 

そこに翠とたんぽぽがやってきた

 

「なんでも妖術を破るすっごい剣かもしれないとかなんとか…」

 

「え?」

 

「あの剣が?」

 

 

場所は戻り、会議室では

 

「……」

 

鈴々が持ってきた剣を桃香は鞘から抜く

 

「さあ、劉備殿!剣を掲げて悪を討たんとする思いを込めるのだ」

 

「はい!」

 

剣を構える桃香

 

「「「「……」」」」

 

その様子を見る他の連合軍の諸将

 

「ん!」

 

すると剣が光を放ちながら光りだした

 

「これぞ!まさしく伝説の竜の爪!」

 

華佗が歓喜し、ほかの諸将はその光景に驚いていた

 

「これがあれば妖術を打ち破り、于吉を倒せるやもしれんぞ」

 

「流石、中山靖王の末裔は伊達じゃないですね」

 

「この宝剣が手に入ったのは、きっとご先祖様のお導きに違いない」

 

「絶対そうなのだ!」

 

「ふむ」

 

「うん」

 

桃香は宝剣を見ながら

 

「(地に落ちた爪は、一本の剣となり…それを高貴な血筋に連なる者が手にし、強き思いを込めて振るう時、あらゆる悪しき力を討ち破り敵を貫く)」

 

すると

 

「ぐっ!!」

 

勇作が突然、右眼を押さえながら膝を着いた

 

「「「ご主人様!!」」」

 

「主!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

同じころ

 

「「「祝反董卓連合軍都入り!!」」」

 

張三姉妹が暇を持て余してした

 

「って今頃祝勝会やってたはずなのに」

 

「早く舞台に立ちたい!!そのためなら何でもする!!」

 

「じゃあ天和姉さん…戦出来る?」

 

「うっ……」

 

その言葉に言葉を失う張角であった

 

 

 

董卓軍では

 

「やれやれ…これでうちらも都落ちか…」

 

董卓たちは故郷に向けて出発していた

 

「そうぼやくな。皆、無事でよかったではないか」

 

「そうなのです!そんなに都に残りたかったら曹操の所で行けばいいのです」

 

「いやそれなら…関羽の所がええな」

 

「私…これからどうすればいいのかな」

 

董卓は顔を隠すように布を被っていた

 

「例えもう表に出ることは出来なくても、民のために出来ることはいっぱいあるよ」

 

すると一人の兵士がやって来て

 

「賈駆様、曹操軍より伝令です!都に迫る軍勢あり!ご助力を乞う…と」

 

「詠ちゃん!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、宮中の会議室では

 

「大丈夫か!」

 

華佗が近づく

 

「右眼が…剣の光を浴びたら」

 

「っ!!…まさか」

 

華佗は勇作を抱え

 

「すまない。少し診察するから、会議を進めてくれ」

 

「私も行きます」

 

愛紗が言うが

 

「危険だから駄目だ!」

 

「しかし!」

 

「駄目た!」

 

「けど」

 

「愛紗…ここは華佗の言う通りに」

 

「…ご主人様……わかりました」

 

「歩けるか」

 

「ああ」

 

華佗に抱えられて勇作は部屋を出ようとした

 

「……華佗殿」

 

愛紗が華佗を呼び止める

 

「なん…だ…」

 

振り向いた瞬快、華佗の顔が青くなった

 

「ゴシュジンサマヲオネガイシマスネ」

 

光の無い絶対零度の視線を向けていた

 

「どうしたの?愛紗を見て」

 

勇作が視線を向けると

 

「何でもありません。気を付けて」

 

そこにはいつもの愛紗がいた

 

「い…いこうか」

 

顔を真っ青になりながらも部屋を出るのであった

 

「華佗のおじちゃん、いったいどうしたのだ?」

 

「どうしたんでしょうね」

 

「それにしても」

 

曹操が声を上げる

 

「これほどの宝剣を持ちながら今までろくに使いもしなかったとは、まさに宝の持ち腐れね」

 

「なんて言うかその…なんとなく機会がなくて」

 

「けどもし劉備さんが武勇に優れ、頻繁に剣を振るうような人であれば…竜の爪のことは必ずや噂となり于吉の知る所となったでしょう」

 

「そうか…そうなれば于吉とやらも警戒して何らかの手立てを講じていたはず」

 

「はい。これが劉備さん手に渡り…今になるまで伝説の剣だと知れることがなかったのは、天の采配だと私は考えます」

 

「問題はこの剣の使い手である劉備殿を于吉のいる敵本陣深くまでどう送り込むか…だが」

 

「そうですね」

 

軍師たちが考えていると

 

「それについては一つ策があるのです」

 

程昱が声を上げる

 

「まず我が軍の主力3隊を正面に展開させます」

 

地図と駒を用いて説明する

 

「戦が始まれば3隊とも敵の足止めに全力を尽くしてもらいます。頃合いを見て中軍はわざと後退して敵を誘い込みます」

 

駒を動かす程昱

 

「敵が突出してきたら、予想進路に伏せてあった部隊を突撃させます。伏兵はこのように右に五面、左に五面に陣を布き…敵に当たると最初の陣が左右に分かれ、後に続く部隊のために道を開きます」

 

さらに説明する程昱

 

「後続の兵は出来た進路を進み、また敵に当たれば同じように道を開く。こうしてタケノコの皮を剥くようにして左右の陣を散開させながら劉備殿を于吉の元に送り込むのです」

 

「なるほど…左右合わせて10の陣を使って敵地を邁進させる十面邁進の陣というわけね」

 

「さすが風!これなら何とかなりそうね」

 

「って実はこの策…俺が考えたんだけどな」

 

程昱は頭の上にある人形(宝慧)を腹話術を使って話す

 

「これ宝慧。皆が感心している時にそういうことをばらすものではありません」

 

「あは!こんなことを考え付くなんて宝慧はすっごいのだ」

 

鈴々がそう言うと

 

「いやいやそれほどでも」

 

宝慧もとい程昱がお礼を言う

 

「じゃあこの策は宝慧の皮むき大作戦っと名づけるのだ」

 

鈴々がそういうと一部の群雄達が顔を真っ赤にした

 

「はわわ!!だめですよ!鈴々ちゃん!そんな名前は絶対にダメです!!」

 

顔を真っ赤にしながら鈴々にそう言う朱里

 

「どうしてなのだ?朱里?」

 

「どうしてって」

 

「星!一体どういうことなのだ?」

 

「うむ…鈴々、せいはせいでも申請と火星があってだな」

 

「星!余計ややこしくなるようなことをいうな!」

 

「ん?」

 

「ふふふ」

 

そんなことしていると

 

「なんだこれ?」

 

勇作と華佗が戻ってきたが、誰も気づく人はいなかった

 

 

「……」

 

そして一匹の動物がその様子を見ており

 

「……」

 

その場を後にするのであった



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第百二十七席 群雄、于吉を討たんとするのこと(序章①)

于吉達との激闘がいよいよ始まります

では、どうぞ


夜になり

 

「軍議…長引きましたね」

 

軍議を終えた勇作達が出てきた

 

「はあ~」

 

「どうした?姉上?ため息などついて」

 

桃香を気に掛ける愛紗

 

「今度の戦のことを考えるとちょっと緊張しちゃって」

 

「心配することないのだ!桃香お姉ちゃんは絶対鈴々が、敵の真っ只中に連れて行くのだ」

 

「あ…ありがとう鈴々ちゃん」

 

苦笑いしながら言う桃香

 

「けど…本当はそこから先が心配で、私…剣の腕とかダメダメだし」

 

「……」

 

「よっぽど不意を突けば何とかなるかもしれないけど、ちゃんと于吉を倒せるかどうか」

 

不安な気持ちを訴える桃香

 

「桃香」

 

「姉上…確かに于吉は手ごわい相手だが。我らの力を合わせれば出来ぬことはないはずだ」

 

愛紗は桃香の手を取り

 

「そうであろう」

 

「あ…うん」

 

すると

 

「仲良きことは美しきかな」

 

後ろを振り返ると

 

「あ!あれは…」

 

城門にある屋敷の屋根にある人物がいた

 

「ある時はメンマを母方の祖父を持つ美人武芸者。またある時はオチ担当の締めくくり役……しかしその実態は」

 

「なにやってんだよ」

 

「乱世に舞い降りた一匹の蝶!美と正義の使者!華蝶仮面!」

 

「きゃ~素敵!」

 

「今までで一番高いのだ」

 

「流石に飛ばんか」

 

「どうやってあそこに行ったんだよ」

 

桃香は歓喜し勇作達は苦笑いしていた

 

「大戦を前にして心が落ち着かぬそなたにこれを授けよう」

 

とある物を投げた

 

「戦の前には、それを付けて戦場に望むが良い。さすれば勇気凛凛気合百倍。どんな敵にも引けは取らぬぞ!」

 

それは緑色の仮面だった

 

「では、さらば!!とう!!」

 

そういって姿を消す華蝶仮面であった

 

「あっ飛んだ」

 

「大丈夫だよね」

 

「ありがとうございます。華蝶仮面様」

 

桃香はお礼を言った後

 

「ねぇ孔明ちゃん…似合う」

 

仮面を付ける桃香

 

「え…え~と」

 

「どう!鈴々ちゃん!本当に戦で着けてみようかなぁ」

 

すると孔明はある策が閃く

 

 

 

「えっ!それと同じような物を作ってほしい」

 

孔明は李典の元に来ていた

 

「まあ…見かけだけ似せるんやったら何とでもなるけど…よっしゃ!任しとき!」

 

 

 

 

 

「さあ、寝よ寝よ!」

 

「明日はどうする」

 

張三姉妹が部屋で寝ようとしていた時

 

「あ!は~い」

 

扉をノックする音が聞こえ扉を開ける

 

「あれ?あなたは確か…」

 

ある人物が訪ねるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

「うふふ、洛陽まであと少し」

 

函谷関から少し離れた場所にいる于吉は静かにくつろいでいた

 

「身の程知らずに歯向かう英雄気取りの小娘共を始末した暁にはこの私が……誰だ!!」

 

何者かの気配を感じる于吉

 

「貴方は?」

 

出てきたのは一匹のネズミ。正確にはネズミになった張譲が出てきた

 

「いやはや…その姿で生きながられていたとは、さすがにしぶとい」

 

「……」

 

張譲はテーブルの上に上ると

 

「耳よりの情報?」

 

張譲は于吉に話す

 

「良いでしょう!もし本当に聞くに値するものだったら」

 

そう言って妖術である物を取り出す

 

「褒美として、人間に戻れるこの解毒剤を差し上げましょう」

 

「……」

 

「何!?竜の爪!!」

 

驚いたように席を立つ于吉

 

「ふむ…話には聞いていたが、まさか本当にあったとは」

 

「……」

 

「劉備?ああ黄巾の乱の時の…そうかあの娘か」

 

劉備のことを思い出す于吉

 

「いや!実に興味深い情報でしたよ!」

 

薬を渡す于吉

 

「約束通り…これはあなたに差し上げましょう!」

 

ネズミはそれを銜える

 

「おっと…人間に戻るなら私の目につかない所でお願いしますよ。ここで貴方の裸を見せられても困りますからね」

 

そういうとネズミは于吉のいる天幕からいなくなった

 

「もはや、宮中に居場所がなくなった宦官に生きる術があるとは思えませんが…うふふ。いや…」

 

于吉は何かを思い出す

 

「一つありましたね。そのおもちゃはあなたに上げますよ………偽物さん」

 

 

 

 

少し離れた場所

 

「……」

 

于吉から解毒剤をもらった張譲はそれを飲み、人間に戻った

 

「これからどうすれば」

 

「もしもし!」

 

誰かに声を掛けられた

 

「貴方が張譲殿ですか?」

 

そこにいたのは仮面の男…いや偽劉備だった

 

「貴様は!」

 

「あなたに悪い知らせとすっごく良い知らせを持ってきたんですよ」

 

「…何だと」

 

「悪い知らせは、貴方は一生みじめな人生が待っていますよ」

 

「何だと!」

 

「二度と宦官になることはなりません」

 

「貴様!僕を馬鹿にしに来たのか!」

 

「最後まで聞いてください!良い知らせもあるんですから」

 

「何?」

 

「私に協力してくれませんか?」

 

「…協力だと」

 

「はい。協力してくれたなら…望みをかなえてやりましょう」

 

「望みだと」

 

「はい…貴方をもう一度宦官にしてあげます」

 

「何!本当か!?」

 

「はい…それだけではありません。力も差し上げましょう」

 

「力だと」

 

「その力で連中に復讐することも出来ますよ…どうです?」

 

「…いいだろう!早くその力を寄越せ!」

 

「わかりました…ではこちらに」

 

そう言って偽劉備についていく張譲

 

 

『汚い人ですね』

 

妖術で偽劉備に話す于吉

 

『何とでも言え!俺もあいつらに復讐するんだ。しかし万一のことも考えなければならない。備えあれば憂いなしというだろう』

 

『そうですか』

 

『それにしても本当なのか…竜の爪のことは』

 

『ええ、まず間違いないでしょう』

 

『なるほどな…道理で高杉以外の人間に影響が出ていない理由はそれか』

 

『感謝してくださいね。私が貴方を拾わなかったこんなことをしなかったんですから』

 

『それについては感謝している。だが竜の爪か…』

 

『どうしました?』

 

『于吉…お前の傀儡は高杉を見張っていたんだろう。気づかなかったのか?』

 

『気づきませんよ。私の傀儡にはそこまでの能力はありませんですから』

 

『そうか』

 

『しかし…南蛮では面白いものが見られましたし、力も回収できましたからね』

 

『それが、あいつらか』

 

『ええ、もっともあの人たちは今は貴方の部下ですけどね』

 

『あいつらも復讐したいはずだからな…機会を与えないとね』

 

『優しいですね……では私はこれで』

 

そういって于吉からの通信が途絶えた

 

「……いよいよだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「これより明日の陣立てを発表する」

 

董卓軍を含めた連合軍が明日の決戦に向けての会議をしていた

 

「中軍前衛…公孫瓚!中軍後衛…袁紹!右翼…曹操!左翼!孫策!」

 

荀彧が軍の設置を発表する

 

「洛陽の守備に高杉!袁術!孫尚香!軍師として張勲!陸遜!」

 

続いて周瑜が

 

「伏兵…右1の陣…呂布!左1の陣…張遼!右2の陣…華雄!左2の陣…于禁!右3の陣…黄忠!左3の陣…厳顔!右4の陣…魏延!左4の陣…馬岱!右5の陣…馬超!左5の陣…趙雲!」

 

伏兵の設置を発表する

 

「突入部隊…劉備!関羽!張飛!軍師として…孔明!陳宮!両名の護衛として、楽進!華佗!」

 

発表した後

 

「なお華佗には合わせて太平要術の封印を命ずる」

 

「劉備軍は直ちに出立し、敵に気付かれぬよう所定に位置に伏せよ…以上!」

 

 

解散しようとしたその時

 

 

「も!申し上げます!!」

 

一人の兵が駆け込んできた

 

「何事だ!会議中だぞ!」

 

「申し訳ありません!緊急事態です!」

 

「緊急事態だと」

 

「敵襲です!」

 

「まさか敵がもう」

 

「そんなはずは…進行速度からして明日のはずだ!」

 

「敵の数は?」

 

「一人です!ですか……」

 

「何だ!?」

 

「一人と言っていいか」

 

「どういうことだ!!」

 

すると

 

ドガアァアアアアアン

 

 

大きな地揺れが発生する

 

「この揺れは…何だ!」

 

「とりあえず外に…」

 

連合諸侯が屋敷を出ると

 

 

「何あれ……」

 

「夢を見ているのか…」

 

「なんですの?」

 

「ひいい!!」

 

 

視線の先にいたのは兵馬俑。しかしただの兵馬俑ではなかった

 

 

「(なんだ!あのデカさは…!!)」

 

1km先に超巨大兵馬俑が見えた

 

「(おいおい!これじゃあ…進〇の巨人じゃないか!!)」

 

 

全長約80メートルクラスの兵馬俑が連合軍に向かっているのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、于吉達との激闘が始まる



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第百二十八席 群雄、于吉を討たんとするのこと(序章②)

遅れてしまいすいません

では、どうぞ


「ほお~これは壮大ですね」

 

同じころ、于吉は水晶を使ってその様子を見ていた

 

「そうだろう」

 

偽劉備も同じように見ていた

 

「これでは、私がやる前に片付いてしまいますね」

 

「不満か」

 

「いえ…手間が省けるならそれに越したことはありません」

 

「そうか」

 

「しかし、よく思いつきましたね。5万の兵馬俑を合体させ、それを張譲に与えるなんて」

 

「奴は実験体に過ぎん。だが機会を与えないとな」

 

「やさしいですね」

 

「どうも」

 

「じっくり拝見させましょう」

 

笑みを浮かべながら再び水晶に映っている映像を見る于吉であった

 

「(せいぜい役に立ってもらうぞ…張譲。そして于吉よ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り

 

「一体なんだよあれは?」

 

「華佗のおじちゃん…何なのだあれは?」

 

「おじちゃんではない!だがあれはもしや」

 

「もしや?」

 

「兵馬俑が合体した姿かもしれない」

 

「兵馬俑が合体した姿ですって?」

 

「ああ…しかし、あんな姿は見たことがない。あれを生み出すには相当の兵馬俑と妖力が必要なはず」

 

「しかし…現にこうして現れているではないか」

 

「確かにそうだが……そうだとすれば一体だれがあれを?」

 

すると巨大兵馬俑が動きを止めた

 

「止まった?」

 

「連合ども!!」

 

兵馬俑がしゃべる

 

「こ、この声は?」

 

賈駆はその声を知っていた

 

「僕に跪け!」

 

「まさか張譲!」

 

「え?」

 

「何!?」

 

「間違いない!あの声は張譲よ!」

 

「(ピーカーみたいに高い声を期待してたんだけど、そんな訳ないか)」

 

少しガッカリする勇作

 

「張譲だと!」

 

「于吉に消されたはずでは」

 

「そんなことはどうでもいいですわよ」

 

「誰かあれを何とかできませんの?」

 

袁紹がそういうが

 

「……」

 

誰も言わない。いや言える状況ではなかった

 

「倒す方法はある」

 

華佗が言う

 

「あるの!?」

 

「あれを倒すにはあの中にいる張譲を直接叩くしかない!」

 

「なら…そうすれば」

 

「だが…」

 

「なんじゃ?何かあるのか」

 

「あの巨体だ!探し出すのは困難だ!仮に見つけたとしても、あの巨体をどうにかしないとならない」

 

「この後の戦を考えると」

 

「じゃあ、どうすれば?」

 

「華琳さま!私が!!」

 

夏侯惇が手を上げる

 

「やめなさい!」

 

「なぜです!?」

 

「貴方もわかるでしょう!」

 

「しかし華琳さま」

 

「あれは貴方がどうにか出来る相手ではないわ」

 

「そうかもしれませんが…このまま何もしないよりは」

 

「朱里!何かいい策はないのか?あれば鈴々が何とかするのだ」

 

「すいません鈴々ちゃん。何も思いつきません」

 

「そんな……お兄ちゃん」

 

鈴々は勇作に声を掛けるが

 

「……」

 

「お兄ちゃん?」

 

勇作は何かを考えていた

 

「(できなくもないが……しかし)」

 

「お兄ちゃん」

 

「(そうすればまた俺は人を殺すことに)」

 

「お兄ちゃん」

 

「(くそ!わかっているはずなのに!)」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「うお!」

 

「どうしたのだ?さっきから呼んでいるのに…」

 

「ごめん」

 

鈴々に謝る勇作

 

「(せめて見聞色がつかえればな……)」

 

すると

 

「(あれ?)」

 

何かの気配を感じる

 

「まさか…」

 

目を閉じ、集中する

 

「……」

 

「ご主人様?」

 

「(……やっぱりだ!気配を感じる)」

 

「ご主人様」

 

「(なんでだ?使えなかったのに?)」

 

「ご主人様!!」

 

「あ!ごめん!」

 

「一体どうしたんですか?」

 

「ああ、もしかしたら何とかなるかもしれない」

 

「え?」

 

「どうするのだ?」

 

「それをするには…李典さん」

 

「な!なんや?」

 

「作ってほしいものがある」

 

「作ってほしいもの?」

 

「ああ、それにはあいつを少し足止めしてほしいんだけど」

 

「足止め?」

 

「けど…誰がそれをするの?」

 

「そ…それは」

 

勇作はそこまで考えていなかった

 

「……待って!」

 

声がする方に視線を向けると

 

「その役目…ボクがやる」

 

賈駆が声を上げる

 

「賈駆……あなた」

 

「これがどんだけ危険なことかわからないの?」

 

「わかりますよ!けどほかに方法はある!?」

 

「詠ちゃん!」

 

董卓が心配そうに話しかける

 

「駄目だよ…詠ちゃん。そんな危険な」

 

「…月」

 

「行かないで…私を一人にしないで」

 

「…けど、ほかに方法がないの!!」

 

「嫌だ!詠ちゃんがやるなら…私も!」

 

「それは駄目!月はもう死んだことになっているの。ここで出たら」

 

「けど」

 

「ボクを信じて!必ず戻ってくるから」

 

「………」

 

「お願い」

 

「わかった。必ず生きて戻って来て!」

 

「ありがとう」

 

「高杉さん。詠ちゃんをお願いします」

 

「…心配するな」

 

勇作は肩に羽織っているコートを着る

 

「あいつは何とかする」

 

「けど…どうやってあれを」

 

「それは……」

 

勇作は説明する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ふふふ……これであいつらを叩き潰せる)」

 

「張譲!!」

 

声がした方に視線を向けると

 

「……」

 

馬に乗った賈駆がいた

 

「貴様は!」

 

「この先には行かせないわよ!」

 

両手を横に上げる

 

「ぷははは!!行かせないだと」

 

張譲は笑う

 

「貴様一人に何が出来る。董卓を守れず僕に従っていた弱者に!!」

 

「くっ!」

 

「貴様は何もできない!一生弱者のままだ」

 

「……あなたの言う通りよ!」

 

「何?」

 

「ボクは月を守れなかった。その上、民たちを傷けてしまった。ボクは弱いままだ……けど!」

 

「……」

 

「ボクは二度と貴方に負けない!今度こそ絶対に守って見せる」

 

「貴様に何が出来る!僕と君とでは圧倒的に力の差が違う」

 

「それはどうかしら?」

 

「なんだと?」

 

「だったら試したら、ボクを殺せるか!!」

 

「お望みどうり殺してやる!!」

 

巨大な手が賈駆に迫ってくる

 

「死なないわよ」

 

賈駆は城の方に馬を走らせる

 

「逃げられると思ったのか!」

 

手が迫る

 

「(逃げ切れるわよ!……だって)」

 

城に視線を白旗が降ってあった

 

「(時間を稼ぐことが出来たんだから)」

 

 

 

 

 

 

 

すこし時間を戻し

 

「けど…どうやってあれを」

 

「それは……俺が倒す」

 

「は?」

 

「だからあれは俺が倒すの」

 

「あんた馬鹿?倒せるわけないでしょう。あんなの」

 

「俺には出来る…その為に李典さんの力を借りるんだ」

 

「ウチの力を」

 

「あんた…これ作れるか」

 

勇作は紙に書かれた物を渡す。それはパチンコ(おもちゃ)だった。そして説明する

 

「……どう?」

 

「これやったら、すぐに作れるで」

 

「そうか…なら頼む」

 

 

 

 

 

 

 

そして今

 

「準備よし!」

 

李典によって作られた巨大パチンコ。勇作が玉となって巨大兵馬俑に向けられていた

 

「ご主人様…大丈夫ですか?」

 

桃香が心配する

 

「心配するな……お願い」

 

「わかったのだ」

 

鈴々がY字型の棹の上両端に付けられた発射台を引っ張る。鋼の螺旋がどんどん引っ張られる

 

「(よし…このまま)」

 

作戦とは、勇作がパチンコの弾となって兵馬俑に向かって飛んでいくものだった

 

「準備出来たのだ」

 

「よし……よ~~~~~~い」

 

「……」

 

愛紗が狙いを定め

 

「放せ!!」

 

鈴々は手を放す

 

ブゥウウウウ!!

 

ものすごい勢いで飛んでいく勇作

 

「(うおおお!逆バンジーみたいだ!!)」

 

だんだんと近づく

 

「(よし)」

 

勇作は応龍を抜き覇気を込める。刀は黒く変色する

 

 

 

 

「これで最後だ!死ね!」

 

巨大な拳が賈駆に迫る

 

「私は死なない!」

 

「ありがとう!行くぞ!!」

 

勇作の体が青く光る

 

「(貴様のせいで、多くの人が傷つき、涙が流れ、怨嗟の声が上がった…その罪、今ここで断罪する)」

 

横に一閃

 

「TESTAMENT!」

 

ドガアァアアアアアン!!

 

巨大兵馬俑が上半身と下半身に分かれた

 

「えぇぇぇぇぇえええ!!」

 

曹操陣営はその光景に驚く

 

「な…なんだと!」

 

張譲も驚く

 

「よし!」

 

続けて縦に一閃

 

ドガアァアアアアアン!!

 

右半身と左半身が分かれる

 

「えええぇぇぇぇ!!」

 

孫策陣営も驚く

 

「……」

 

勇作は落ちてきた岩にジャンプして上に昇る

 

「……」

 

そして兵馬俑の目線ぐらいまで上がる

 

「貴様は天の御使い!!」

 

張譲は勇作の存在に気付く

 

「貴様がやったのか!!」

 

「だとしたら?」

 

「おのれ!!」

 

張譲は兵馬俑の右腕を振りかぶる

 

「(やっぱり右半身にいるか……少しだけと気配だけだけど見聞色が使える……でもなんでだろう?)」

 

「死ねぇええ!!」

 

右拳が迫る

 

「MAGNUM STRIKE!!」

 

六爪流になり技を放つ

 

ドガアァアアアアアン!!!

 

張譲の拳と勇作の技が激突する

 

 

パラパラパラ

 

だが張譲の拳……いや

 

「な……ん…だ……と……」

 

拳と右腕までもが粉々に砕けた

 

「……」

 

勇作は張譲にいる場所に飛ぶ

 

「ま、待て!僕の負けだ!降参する!助けてくれ!」

 

「助かりたいか?」

 

「お願いだ…助けて…」

 

「ふ~ん…安心しろ。殺しはしないよ」

 

「ほ、本当か?」

 

「ただ」

 

勇作は右手を翳す

 

「俺はね……」

 

「俺は……それはどういう…」

 

「お前はもうゲームオーバーだよ」

 

「な、なに?」

 

「はあっ!!」

 

ドン!!

 

「ぐはっ!!」

 

内部にいる張譲は口から血を吐きながら外に出た

 

「なん……で……?」

 

何が起こったのか理解できないまま意識を失う張譲であった

 

 

「……武装色……"流桜〟……」

 

 

勇作の勝利



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第百二十九席 群雄、于吉を討たんとするのこと(序章③)

遅くなり申し訳ございません

2020年もよろしくお願いします


 

「……」

 

「やられてしまいましたね」

 

水晶で張譲が倒される様子を見ていた于吉と偽劉備

 

「……」

 

「どこに行くのです?」

 

「奴を回収してくる…ついでに奴を戦に出ないようにする」

 

「そうですか……では気を付けて」

 

「……」

 

「さて私も準備しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして勇作は

 

「……ふっ!」

 

気絶した張譲をキャッチし、無事に着地した

 

「……やべ」

 

落ちてくる兵馬俑の塊を見て、急いでその場から離れる

 

「……捕まって」

 

途中で賈駆の乗っている馬の後ろに乗り、無事に脱出した

 

 

「……」

 

そして刀を一本抜き、それを見る

 

「……刃こぼれなし!」

 

安心した後

 

「……」

 

右腕を高く上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洛陽の門からその様子を見ていた桃香達

 

 

「やったぁあああ!!」

 

「お兄ちゃんの勝ちだ!!」

 

桃香と鈴々は飛び上がって喜ぶ

 

「……」

 

しかしほかの者たちはいまだにあの光景が信じられず、思考が追い付いていなかった

 

「どうしたのだ?」

 

「い、いや……いまだに信じられなくて」

 

「もう何言っているのだ!お兄ちゃんはすごいのはみんなだって知っているはずなのだ!」

 

「そうだけどさ……」

 

「ああ…」

 

勇作の強さを知っているものでさえ、思考が追い付いておらずいた。それどころか

 

「ご主人様って本当に人間なの?」

 

「え…そのはずだけど」

 

強すぎる勇作の強さに恐怖を抱いていた

 

「どうしたんですか?皆さん」

 

「あ…いや…」

 

「あれ?愛紗は?」

 

鈴々が周りを見るが、見当たらない

 

「あ、あそこ!」

 

たんぽぽが指差す方に視線を向けると、馬に乗って勇作に向かう愛紗が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして勇作はというと

 

「何とかなったな」

 

「あんた…大丈夫?」

 

「何とかね……それよりこれどうする」

 

張譲を地面に置く

 

「もちろん連れてって行くわよ。たっぷり礼をしないと」

 

「そうか…じゃあ………ぐっ」

 

右眼を押さえ苦しみだす勇作

 

「どうしたの!?」

 

「目が…目が!!」

 

「しっかりしなさい!!」

 

「失礼ですけど……」

 

「「!!」」

 

「その人は返してもらいますよ」

 

そこにいたのは、仮面の男…もとい偽劉備だった

 

「あんたは!!」

 

「誰だ!あんたは……うっ!!」

 

偽劉備に近づこうとするが、さらに苦しみだす勇作

 

「いい気味だな!天の御使い!」

 

「なんだと?」

 

「本当はこの後の戦で貴方を殺すつもりでしたが」

 

偽劉備は剣を抜き、勇作に近づく

 

「今ここで、殺してあげます」

 

剣を振りかぶる

 

「死ね!!」

 

振り下ろそうとしたその時

 

「ん!?」

 

偽劉備は危機を察知し後ろに飛ぶ。…と同時にその場所に何かが刺さる

 

「これは?」

 

それは青龍偃月刀だった

 

「ご主人様!」

 

馬に乗って愛紗が間一髪の所で勇作を助けたのだった

 

「あ、愛紗」

 

愛紗は地面に刺さった自分の獲物を抜き、刃先を偽劉備に向ける

 

「貴様!ご主人様に何をした!!」

 

「ちっ!仕方ない」

 

偽劉備は張譲を抱える

 

「この場は引きましょう」

 

「マテ!!」

 

愛紗は光のない目で偽劉備を睨む

 

「ニガサナイ!!」

 

偃月刀で切りかかるが

 

「では、失礼」

 

消えてしまい、逃げられてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「どうですか?」

 

自営に戻った勇作は華佗に見てもらっており、愛紗達も一緒にいる

 

「やはり、呪いがひどくなっている」

 

「ひどくですか?」

 

「ああ、前に見たときは少し良くなっていたのだがな…」

 

「良くなったってどういう意味ですか?」

 

「昨日、劉備殿が宝剣を見せただろう。その時、光った剣を見て勇作が苦しみだしたことは覚えているな」

 

「ええ」

 

「あの後、勇作を診察したら少しだが…呪いが少しだが解けていたんだ」

 

「呪いが…」

 

「なるほど…少しだけど見聞色の覇気が使えたのはそれか」

 

「けどなんで?」

 

「おそらくだが、その宝剣には呪いを解く力があったからだと思う。悪しき力を打ち破る力があったからな」

 

「じゃあもう一度使えば…」

 

「それは無理だ!」

 

「えっ!」

 

「今、検査してみたんだが以前より勇作に掛けられている呪い強くなっている。さっきの方法ではもう」

 

「そんな…」

 

「でもなんで?」

 

「おそらくだが…関羽殿が言っていたあの人物が原因だろう」

 

「というと」

 

「その人物こそ勇作に呪いを掛けた人物」

 

「つまりその人物こそ于吉だったと」

 

「いや、違う」

 

「え?」

 

「ご主人様も気づいていたんですか?」

 

「ああ」

 

「どういうことです?愛紗?主?」

 

「あれは于吉じゃない。それは確かだ」

 

「はい……けど、あれは…」

 

「あれは?」

 

「以前にどこかで会ったような気がしてならないんだが」

 

「一体誰なのだ?」

 

「…わからないな」

 

「そんなことよりお兄ちゃんは大丈夫なのか?」

 

「呪い以外は異常はないが」

 

「よかったのだ!」

 

鈴々は勇作に抱き着く

 

「ありがとう……あとは頼むよ」

 

「わかったのだ!」

 

「御意!」

 

「任せて!ご主人様」

 

愛紗と鈴々そして桃香は返事するが

 

「……」

 

ほかの面々は返事はせず頷くだけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

張譲を連れ出した偽劉備は

 

「……ちきしょう!!」

 

張譲を連れ帰り、陣地に戻っていた

 

「おい!俺にもっと力をくれ!そうすれば次は……」

 

「……」

 

「どうした!?早く寄越せ!!」

 

「……」

 

偽劉備は張譲の顔に右手を翳すと

 

「……貴様は用済みだ!」

 

「何っ!…ぐぁああああ!!」

 

張譲の体から黒い氣が出て、偽劉備の右手を通して、吸収されていく

 

「何を…す……る…」

 

「言ったはずだ!用済みだと」

 

そしてすべての氣を吸収されるのであった

 

「貴様!!返せ!」

 

「うるさい!!」

 

ドガッ!

 

張譲のお腹を蹴り上げる偽劉備

 

「ゲホゲホ!!」

 

「され!本当は殺したいが、少しは役に立ったからな…命は助けてやる」

 

「ゴフっ」

 

「早くいけ!それとも殺されたいのか」

 

偽劉備が剣を抜くと

 

「くそっ!」

 

地面を這いずりながら、その場を去る張譲だった

 

「さて、準備は整った。覚悟しろよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして別の場所では

 

「いよいよだな」

 

「ああ」

 

洛陽で董卓の脱出を手伝った例の二人がいた

 

「じゃあ俺は曹操の兵に」

 

「俺は孫権の兵に」

 

「健闘を祈るよ」

 

「そっちこそ」

 

一人は曹操の兵士にもう一人は孫権の兵士に変装し、その場を後にするのであった



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第百二十七席 群雄、于吉を討たんとするのこと(前編①)

遅れてしまいすいません

ではどうぞ


各陣営では、戦の準備をしていた

 

 

袁紹陣営

 

「麗羽様!出陣の準備整いました」

 

「いつでもいけますよ」

 

「猪々子!斗詩!弱兵と侮られた屈辱、見事晴らしてみせなさい」

 

「「はっ!」」

 

「そして必ず生きて戻ってらっしゃい…いいわね」

 

「「あ…はい!」」

 

 

公孫瓚陣営

 

「皆!聞けこれまでの敵はこれまでになく強大だ!」

 

公孫瓚は馬上から兵に向かって檄をとばしている

 

「しかし我らが守らんとしている物もまた大きい!臆するな!大儀は我が方にあり!勝利を信じて我が白馬もつぐれ!!」

 

「噛んだ!」

 

「この一世一代の見是場で!」

 

「残念なんだな…」

 

公孫瓚の兵は苦笑いする

 

「……」

 

当の本人は顔を真っ赤し、白馬はため息をつくのであった

 

 

孫策陣営

 

「まずは先方が敵をこの地点までおびき寄せ、それを2つに分けた本隊で挟み撃ちに」

 

呂蒙が棒で地図を指しながら作戦会議をしている

 

「その先方…私が引き受けるわ」

 

全員が孫策に視線を向ける

 

「蓮華…此度の戦、あなたに任せるわね」

 

「姉様…何言って?」

 

「貴方も孫家の姫として、そろそろ大きな戦の指揮を経験しておいてもいい頃よ」

 

「それはそうかもしれませんが」

 

「呂蒙!妹をよろしくね」

 

「は、はい!」

 

「さあ!冥琳…あなたも一緒に久しぶりに馬を並べて戦いましょう」

 

「雪蓮…一体どういうつもり?」

 

周瑜は困惑するが

 

「周瑜!早く行け!口うるさい小姑が残っていては呂蒙もやりにくかろう」

 

黄蓋がそう言うと

 

「誰が小姑ですか!」

 

周瑜は怒り、その迫力に孫権と呂蒙は身を小さくした

 

「冥琳」

 

「ん?」

 

「貴方が手綱を握っててくれないと、私一人で敵陣に切り込んで帰ってこなくなっちゃうかも」

 

「ちょっと…雪蓮」

 

そういって孫策と周瑜は天幕を出た

 

「え…いや…その」

 

突然の出来事にあたふたしていると

 

「軍師殿!」

 

甘寧が合掌し

 

「ご指示を!」

 

甘寧の言葉に落ち着きを取り戻し、指示をする

 

「黄蓋殿!本隊の半分、貴殿にお任せします!」

 

「心得た!」

 

「残りは孫権様が指揮を!」

 

「うむ」

 

「では、すぐに出陣の準備を!」

 

「御意!」

 

 

勇作陣営

 

「よ~し、出発だ!」

 

「おお!」

 

翠とたんぽぽが気合を入れていた

 

「すごい獲物ね」

 

「巴群の武器屋でみつけてな」

 

二人の前を厳顔、紫苑、愛紗、朱里、荷物を持った鈴々が横切った

 

「あっ!」

 

ボカ!

 

「あいた」

 

翠は荷物を持った鈴々を見て、隣にいたたんぽぽを殴った

 

「なにするのさ…いきなり」

 

「なにするのさじゃない!たんぽぽ…またあんな所に隠れて!こんな大事な時にどんないたずらするつもりだ!?」

 

「ってたんぽぽ、ここにいるじゃん!」

 

「え?あ…ええっ!」

 

翠は驚きながら

 

「じゃあ…あの中には何がはいっているだよ!」

 

「知らないよ!」

 

そんなことをしていると

 

「この中にはすんごく大事な物がはいっているのだ」

 

鈴々が手を振りながら答えた

 

「すごく?」

 

「大事な物?」

 

頭を傾げる翠とたんぽぽであった

 

 

 

 

「ふふん」

 

李典は巨大なカラクリを作り、凧を上げていた

 

「まあ…こんなものやろう」

 

その凧には周泰が乗っている

 

「うわ~高い!……あっ!」

 

周泰が視線を下に向けると

 

「突撃!」

 

「進め!進め!」

 

「黒騎兵の強さ!見せてやれ」

 

孫策軍、公孫瓚軍、曹操軍が突撃を開始していた

 

「始まった…」

 

大陸の運命を賭けた戦が開戦した

 

 

「迎撃開始!小娘共を一人残らず潰せ!」

 

于吉は水晶を見ながら兵馬俑に指示を出した

 

「いよいよ始まったな」

 

すると偽劉備がやってきた

 

「ええ…所でこの二人が例の…」

 

偽劉備の後ろに仮面を被った二人がいた

 

「ああ」

 

「約束は果たしてくれるんだよな」

 

「もちろん、そのために力を与えましたからね。俺を含め3人の強さは呂布を超えているからな」

 

「そうか」

 

「これで復讐できる」

 

「ああ、じゃあ行くか」

 

「はい」

 

3人はそれぞれ持ち場に着く

 

 

「……」

 

洛陽の場内の井戸のある所で董卓が白服を着て水を浴びていた

 

「皆さん、ご無事で」

 

手を組み祈る董卓

 

「…月」

 

その様子を見た賈駆はある場所に向かった

 

 

 

「ついに始まったか」

 

「そうだな」

 

例の二人も兵に交じって進軍していた

 

「お前…死ぬなよ」

 

「それはこっちのセリフだ。いざとなったらこれをつかうからな」

 

そういってある物を取り出す

 

「そうだったな」

 

もう一人もある物を取り出す

 

「というか無くすなよ。一応俺の物なんだから」

 

「わかっているよ」

 

「じゃあご武運を」

 

「おう」

 

そういって別れる二人であった

 

 

 

 

 



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第百二十八席 群雄、于吉を討たんとするのこと(前編②)

遅くなってしまい申し訳ございません

今後ペースを上げていけるようにがんばります

では、どうぞ


「う…うう…」

 

戦闘が始まった頃、勇作は後方の陣営で休んでいた

 

「くそ!あの仮面の奴が現れてから、また調子が……」

 

かなり苦しい様子のようだ

 

「大丈夫かな……」

 

そんなことを考えていると

 

「無様だな」

 

「!!」

 

声がした方に視線を向けると

 

「貴様は!」

 

あの白装束を着た人がいた

 

「なぜここに」

 

立ち向かおうとするが

 

「ぐっ!」

 

右眼を押さえてうずくまってします

 

「貴様をここで殺すのは簡単だが、今は主の命令でこれを取りに来ただけだ」

 

その手にはあの妖刀が握られていた

 

「返せ!それは俺の」

 

「違う!貴様の物ではない!主の掛けた呪いの影響で欲しがっていただけだ」

 

「なんだと!!」

 

「まあ、せいぜい苦しむんだな」

 

そう言ってその場から立ち去る白装束の男

 

「まっ…て」

 

手を伸ばす勇作だが、止める事が出来なかった

 

「……」

 

その様子を別の人物が見ていた

 

「(………すまない。ワシが干渉することは許されないんだ……)」

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

連合軍と于吉率いる兵馬俑の戦は激化していた

 

「ええい!手数の掛かる」

 

馬上から夏侯惇が兵馬俑を切る

 

「これでは十万どころが三十万以上を相手にしているようなものだぞ」

 

兵の一人が兵馬俑に切られそうになるが

 

ガチン!ガチン!ガチン!

 

夏侯淵が矢で兵馬俑を倒す

 

「華琳様が予想された通りだ…これでは兵の体力が持たぬ。戦が長引けば」

 

すると後ろの方で太鼓が鳴る

 

「一の軍引けぃ!二の軍に代わり拠点で体を休めよ」

 

「どうです…兵馬俑の恐ろしさ。身に染みて頂けましたか」

 

于吉は水晶から連合軍の様子を見ていた

 

「引けぇ!引け引け!」

 

「おやおや…江東の小覇王も退却ですか…右翼!追撃して叩け!」

 

 

 

 

「呂蒙!敵の右翼を連れてきたぞ!」

 

孫策軍は敵を谷に引き付けた

 

「まだまだ敵を十分引き寄せて…」

 

谷の上にいる呂蒙が敵の位置を確認し

 

「今です!!」

 

兵に指示し銅鑼を鳴らす

 

「よく来たな!土人形ども!」

 

谷の上から黄蓋軍が

 

「我が軍の強さ!思いしれ!」

 

反対の谷の上から孫権・甘寧軍が現れた

 

「かかれ!!」

 

 

 

「はっ!!」

 

曹操も馬に乗って、兵馬俑と戦闘を繰り広げていた

 

「だあああああ!!」

 

許緒も自慢の武器で兵馬俑を蹴散らしていた

 

「頼もしいわね…許緒」

 

「あ…ありがとうございます。曹操様」

 

姿勢を正し、お礼を言う許緒

 

「ご報告します」

 

「ん?」

 

すると典韋が曹操の元にやってきた

 

「袁紹軍と公孫瓚軍が後退を始めました!」

 

「うむ…まずは予定どおりね」

 

 

 

 

空の上から敵の様子を見ていた周泰が

 

「敵本隊が誘いに乗ってきた」

 

懐から鏡を取り出し、合図を送る

 

「…あっ!」

 

木の上にいた陳宮がそれに気づき、木の上から降りる

 

「孔明!合図があったのです!」

 

「…わかりました」

 

朱里は水鏡先生からもらった羽毛扇を持ち

 

「(水鏡先生…私に力をお貸しください)」

 

馬車から号令する

 

「出陣!!」

 

陳宮が銅鑼を鳴らし、待機していた部隊が于吉目掛けて進む

 

「伏兵とは小癪な…」

 

水晶でその様子を見ていた于吉は

 

「前衛は敵中央を突破して、そのまま洛陽を落としなさい。本隊は進軍停止…ここで伏兵部隊を迎え撃つ」

 

 

 

「いよいよだな」

 

馬車の中では愛紗、鈴々、華佗、桃香と荷物が待機していた

 

「いよいよなのだ!」

 

「どうした?かなり緊張しているようだが」

 

桃香は緊張しているのか、顔を下に向いている

 

「大丈夫…手筈どおりにやれば必ずうまくいく」

 

「ド~ンと大船に乗った気でいるのだ」

 

「鈴々…それをいうなら……いやそれであっているのか」

 

「……」

 

顔を上げる緑色の仮面を着けた桃香

 

 

伏兵部隊は兵馬俑を蹴散らしながら進軍し

 

「恋は戦う…月のため、陳宮のため…そして守りたい者の為に」

 

「兵馬俑か競馬場か知らんが、守るべきもののために振るう刃ちゅうもんだどれほど響くもんか試させてもうで!」

 

「一の陣!開け!」

 

呂布軍と張遼軍が左右に分かれ道を作る

 

「名も無き土人形よ!名が主の名を貶めた罪!我が戦友を苦しめた罪!その身で贖ってもらうぞ!」

 

「皆!愛しき者を愛する心で結ばれた青洲兵の力!見せてやるの!」

 

「「「「ハッ!ハッ!ハッ!!」」」」

 

「二の陣!開け!」

 

華雄軍と于禁軍が左右に分かれ道を作る

 

「母の愛を知らぬ土くれどもよ!この黄忠の矢を受けて母の強さを知るがいい」

 

「例え師弟の縁は切ったとしても、わが娘と思う焔耶の露払い!この厳顔が務めさせてもらうぞ!」

 

「三の陣!開け!」

 

黄忠軍と厳顔軍が左右に分かれ道を作る

 

「我が心の師より受け継いだ!鈍砕骨の威力…その身で味わいたい奴は前に出ろ!」

 

「我こそは西涼の馬超が従妹…馬岱!命を預けて悔いのない…友と共に振るう槍の力…思い知れ!」

 

「四の陣!開け!」

 

魏延軍と馬岱軍が左右に分かれ道を作る

 

「我こそは西涼にその名に高き錦馬超!」

 

「そして常山の趙子龍!」

 

「強き絆で結ばれた」

 

「我らが友の三姉妹」

 

「行く手を塞ぐ敵あらば」

 

「屍山血河を築いても」

 

「「勝利への道!切り開こうぞ!」

 

「五の陣!開け!」

 

馬超軍と趙雲軍が左右に分かれ道を作り、その間を馬車が走り抜ける

 

「于吉!覚悟!」

 

紫苑が于吉に向けて矢を放つが

 

バーーーン

 

見えないバリアは阻まれるように、威力を失った矢はその場に落ちる

 

「あはは…無駄なことを」

 

「「「あっ!?」」」

 

その光景に驚愕する朱里、楽進、陳宮

 

「矢が通じぬ!」

 

「妖術の力…恐るべしなのです!」

 

すると馬車が目的の場所に着き、止まる

 

「着いたのです」

 

着くと同時に、愛紗、桃香、荷物を背中に背負った鈴々が降りる

 

「気を付けてなのです」

 

「心得た!……鈴々、我らの使命は姉上を于吉の元に運ぶこと!わかっているな」

 

「合点承知なのだ」

 

于吉の元に向かう三人

 

「囲まれたのです!」

 

兵馬俑に囲まれる馬車

 

「任せておけ!お主らには指一本触れさせはせん!」

 

「我が身に受けたあまたの傷は、戦場で一歩も引いたことにない証!嘘だと思うのなら掛かってこい」

 

華佗と楽進が朱里、陳宮を守るため、兵馬俑の前に立ちはだかる

 

「鈴々!前は頼んだぞ!」

 

「わかったのだ」

 

兵馬俑を倒しながら前に進む三人

 

「ここを登って、お前らの大将を助けたければ…この燕人張飛を倒してみろなのだ!!」

 

「急いで!……この先へは一歩も通さなん!我らの希望!この関雲長が守ってみせる!」

 

劉備は于吉の元に行き、愛紗と鈴々は七星壇の階段の前に立ちふさがる

 

 

 

同じころ

 

「おりあぁぁぁ!!」

 

曹操軍の一人の兵士が奮闘していた

 

「せいやー!!」

 

次々と兵馬俑を倒していく

 

「(あれを使えばもっと楽なんだけどな~)」

 

そう思っていると

 

「見事ね」

 

「(ん?げっ!?)」

 

声がしたほうに視線を向けると曹操がいた

 

「貴方…名前は?」

 

「…名乗るほどの者ではありません」

 

「いいから答えなさい」

 

「……」

 

「答えられないの?」

 

「今は……」

 

「そう…今は聞かないでおきましょう」

 

「どうも」

 

「(我が軍にこれほどの兵がいたとはね…顔を隠しているようだけどなかなかの者ね)」

 

「(めんどくさいことになった)」

 

 

別の場所でも

 

「うぉおおおおっ!!」

 

孫策軍の一人の兵士が奮闘していた

 

「やぁああああっ!!」

 

次々と兵馬俑を倒していく

 

「(いつもの修行に比べれば楽だな)」

 

そうして敵を倒していく

 

「へえ~」

 

「見事だな」

 

その様子を孫策と周瑜が見ていた

 

「なかなかやるわね」

 

「そうだな。我が軍にあれ程の者がいるとは…」

 

「どこの部隊の者かしら?」

 

「たしかにあれ程の者がいれば、我らの耳に入ってくるはずだが…」

 

「それは戦が終わったらにしましょう」

 

「そうだな」

 

例の二人がそれぞれの大将に目を付けられるのであった



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第百二十九席 群雄、于吉を討たんとするのこと(中編①)

劉備達が作戦を実行している頃

 

「おのれ…我が愛しき白馬を…」

 

後退した中軍の公孫瓚軍と袁紹軍は壊滅の危機に直面していた

 

「えいっ!」

 

「であっ!」

 

文醜と顔良の体力の限界が近いのか息を上げていた

 

「逃げ足だけは自信あったのに…」

 

「追いつかれたらあっという間……屈辱を晴らすどころか生きて戻れそうにないわねぇ」

 

二人は互いを見つめあう

 

「斗詩」

 

「猪々子」

 

覚悟を決めていると

 

「猪々子!斗詩!」

 

「「んっ?」」

 

声がしたほうに視線を向けると

 

「増援を連れてきましたわよ!!」

 

戦車(チャリオット)に乗った袁紹がやってきた

 

「麗羽姉様のじゃなくて、童の軍じゃ!」

 

隣にいる袁術がツッコミを入れる

 

「袁紹様が美羽様に頭を下げて、助力を請うなんて…このこと貴方が進言なさったとか」

 

前にいる張勲が隣にいる賈駆に聞く

 

「僕も力になりたかったんです!みんなのために……そして月のために」

 

 

「来てくれたんだ!」

 

「麗羽さま…来てくれたんだ」

 

援軍が来たことで表情が明るくなる文醜と顔良

 

「シャオ達が来てやったのも忘れないでね」

 

「助太刀します」

 

「螺旋の力見せたるでー」

 

隣には馬に乗った孫尚香と李典、さらに戦車(チャリオット)に乗った陸遜と周泰もやってきた

 

「この地を洛陽の最終防衛線とします」

 

「太平要術が封印されるまで耐えてください!!」

 

 

 

七星壇の階段を登り切った桃香は于吉と対峙していた

 

「……」

 

剣を振り上げ于吉に切りかかる

 

「…ふん」

 

妖気弾を浴びせ、桃香を吹っ飛ばす

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 

「……あっ!」

 

七星壇から落ちそうになるが、台の淵を掴み、落ちずにすむが宝剣を手放してしまった

 

「ふん」

 

于吉は宝剣を蹴り、地面に落とす

 

「どうやって手に入れたのか知りませんが、竜の爪を携え…ここまで辿り着いたことは褒めてあげましょう」

 

于吉は片膝を着いて、見下ろす

 

「……」

 

「だがせっかくの宝剣も、貴方が使い手ではまさに宝の持ち腐れ………おまけに馬鹿馬鹿しい仮面まで着けて、一体どういうつもりです」

 

「そんなのきまってるじゃない…仮面をつけるのは」

 

すると張飛が背負っている荷物から何かが飛び出した

 

「何っ!!」

 

于吉は急いで仮面を取る

 

「うっ…」

 

「貴様は張角!では本物の劉備は!?」

 

「こっちよ」

 

「!?」

 

桃香は飛び上がり、宝剣を構える

 

「于吉!!覚悟!!」

 

思いを込めた宝剣は光り輝く

 

「うわっ!?」

 

于吉はその場から離れようとするが、張角に両足を掴まれてしまい仰向けに倒れてしまう

 

「はあぁぁあ!!」

 

桃香は于吉に向けて宝剣を投げる

 

「ぐはっ!」

 

剣は于吉のお腹に刺さる

 

「馬鹿な…こんな…こんなことが」

 

「驚いた!?これぞ…名付けて」

 

張角と桃香は並んで

 

「「ビックリ大作戦よ」」

 

この作戦は朱里が仮面を見て思いついたのである

 

「やったね!何処もケガはない?」

 

張角の心配をする桃香

 

「平気平気…それより早く!!」

 

張角は太平要術を指さす

 

「はっ!……華佗さん!封印お願いします」

 

桃香は下にいる華佗を呼ぶ

 

「ここは私に任せて早く!」

 

「わかった!」

 

華佗は急いで向かう

 

「おじちゃん!早くなのだ」

 

「おじちゃんではない」

 

華佗は七星壇の階段を上がる。後ろから愛紗と鈴々もやってくる

 

「華佗さん…早く」

 

張角は太平要術を手に持つ

 

「やったな!姉上」

 

「うん!!」

 

「お見事なのだ」

 

3人はハイタッチをする

 

「……」

 

華陀は鍼を取りだす。そして太平要術の一か所に小さい光が見えた

 

「見えた!!我が身、我が鍼と一つなり!一鍼同体!全力全快!天魔覆滅!散りとなぁぁれぇぇぇぇぇ!!」

 

太平要術に鍼を打ち込むことに成功する

 

「……」

 

が華佗は困惑した表情になる

 

「どうしました」

 

「どういうことだ?」

 

「何がなのだ?おじちゃん」

 

「全然封印した手ごたえがない」

 

「手ごたえがない?」

 

「華佗さん…どういうことですか」

 

「うふふ…無駄ですよ」

 

于吉が立ち上がる

 

「于吉!」

 

「こいつ」

 

「やめろ!すでに虫の息だ」

 

于吉の体から煙があがり、崩壊し始めている

 

「それより無駄ってのはどういう意味だ?」

 

華佗は于吉に聞く

 

「それは」

 

言おうとした時、階段から誰かが上がってきた

 

「貴様は!」

 

現れたのは、全身に漆黒の鎧を身にまとい、真っ赤なマントを羽織っている仮面の男が現れた

 

「来ましたか」

 

仮面の男は于吉に向かう

 

「その本に貯めていた妖力はすべてこの男が物にしました。太平要術を封印するにはこの男を倒すしかないのですよ」

 

「な、何だと!」

 

「さあ、はやく私を治すのです」

 

「……わかった」

 

ザクッ!!

 

「なっ!?」

 

次の瞬間、仮面の男が剣で于吉を切り裂いた

 

「き、さま……なぜ……」

 

「貴様は用済みだ」

 

仮面の男は于吉を蹴る。そして真っ二つにされた于吉の上半身が、鞠のように弾み、台の片隅にその身を横たえた

 

「貴様ぁ!恩を仇で返すのか!!」

 

「お前には、感謝している。だから終わらせてやったんだよ」

 

「ふざけるな!貴様なんぞ」

 

「お前にはもうどうすることも出来ない。だからおとなしく死ね」

 

「おの……れ……偽劉備ぃぃいい!!」

 

断末魔を上げながら、于吉の体は崩れ去り、于吉を貫いた宝剣はその場に残った

 

「…ひどい」

 

「姉上!下がって」

 

「……さて」

 

仮面の男…いや偽劉備は仮面を外し、桃香達の方に向く

 

「久しぶりですね」

 

「貴様ぁ!」

 

愛紗は偽劉備に切りかかる

 

「もう」

 

偽劉備は弩(古代中国)を取り出す

 

「食らえ!」

 

そして愛紗に標準を合わせて引き金を引く。するとテニスボールサイズの妖力弾が放たれた

 

「ぐうっ!!」

 

偃月刀でガードするが後ろに飛ばされた

 

「愛紗!」

 

「愛紗ちゃん」

 

鈴々と桃香は愛紗に近づく

 

「大丈夫です」

 

どうやら大丈夫そうだ

 

「邪魔だ」

 

偽劉備は、マントを横なぎにマントをひるがえす

 

「「「「「「うわっ!!」」」」」」

 

すると強風が起こり、桃香達は七星壇から落ちてしまう。しかし下にいた星達が落ちてきた5人を受け止め、地面にぶつからずにすんだ

 

「さて」

 

偽劉備は于吉が座っていた椅子に座り、右手を上に上げる。すると赤い光が空に向かっていく。そしてその光が消えると空が黒い曇天に覆われた

 

 

同じころ

 

「……このままでは、全滅を待つだけです」

 

曹操陣営では、重大な決断を決めかねていた

 

「ご決断を!」

 

「ぐっ!?」

 

曹操に決断をしようとした、その時

 

「ご報告します!!」

 

典韋が陣幕に入ってきた

 

「何事かっ!!」

 

「外を…外をご覧ください!?」

 

曹操が陣幕から出て、外を見る

 

「……これは」

 

全兵馬俑が動きを止めていた

 

「止まったのじゃ」

 

「どうやら…うまくいったようなのです」

 

「それじゃあ!?」

 

「皆の者!勝どきを……」

 

曹操が勝どきを上げようとした

 

「お待ちなさい!!」

 

戦場に声が響き渡る

 

「まだ戦は終わっていませんよ」

 

「何だ?この声は!?」

 

「華琳様!上!」

 

上を見ると、空に偽劉備の顔が映し出されていた

 

「あれは偽劉備!なぜ奴が」

 

「ご機嫌よう…連合軍の皆さん。私の名前は劉備いや…偽劉備と申します」

 

「偽劉備?」

 

孫策軍もその様子をみていた

 

「この兵馬俑を操っていた于吉は私が殺しました」

 

「何っ?」

 

「そして今はこの私がこの兵馬俑軍団の大将です。我が…いや我らの復讐のために貴方たちに殺します」

 

兵馬俑の恐怖はまだ終わらない

 

「いよいよだな」

 

「ええ、この時をどれほど待ったことか」

 

「曹操め…貴様はこの私が」

 

「孫策…いや孫家の者どもめ」

 

別の場所でも二人の人物が復讐に燃えていた

 

「「貴様(ら)を殺す」」

 

一人は両手に持った大きな鎌を持ち、もう一人は影から黒い手をいくつも出現させながら



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第百二十九席 群雄、于吉を討たんとするのこと(中編②)

 

「…あれは、偽劉備……仮面の男の正体はアイツだったのか…」

 

別の場所にいた勇作も空に映った偽劉備に驚いていた

 

「(愛紗達が心配だ!向かわないと…)」

 

勇作は向かおうとしたが

 

「…ぐっ!?」

 

右眼に痛みが走り、右手で押さえる

 

「(くそっ!急がないといけない時に……)」

 

押さえながらも馬小屋に向かう勇作であった

 

 

 

 

そして愛紗達は七星壇の上にいる偽劉備を見ていた

 

「復讐だと!!」

 

「貴方に復讐される覚えはない!」

 

紫苑は偽劉備に弓矢を構える

 

「覚悟!!」

 

矢を放つが

 

「……無駄だ!」

 

于吉の時と同様に見えないバリアは阻まれるように、威力を失った矢はその場に落ちる

 

「今のお前たちでは、私に触れる事すらできない」

 

「そんな……」

 

「さて……久しぶりですね…本物の劉備さん」

 

偽劉備は桃香に視線を向ける

 

「……」

 

「まさか生きていたとはね」

 

「貴方のせいで私がどんな目あっていたと思っているですか!!」

 

「知らないね」

 

「…知らないって」

 

「それに……騙される方が悪いのですよ」

 

「言わせておけば」

 

桃香に向かおうとするが

 

「行くな!」

 

華佗が止める

 

「でも!!」

 

「行った所で何もできないぞ」

 

「……っ!!」

 

その言葉に言い返せない桃香

 

「まあ…いいですよ。どうせこの場で死ぬことになるんですから」

 

「何だとっ!!」

 

「偽劉備!一体何をするつもりだ」

 

「決まっているでしょう!この国の皇帝になることですよ」

 

「なんだと!!」

 

「兵馬俑を使って、この国の皇帝やお前たち、そして私に逆らう者を始末させてね」

 

「そんなこと出来ると思っているのですか!?」

 

「出来ますよ!私にはその力があるんですからね……それにあいつが来ても私が勝ちますしね」

 

「あいつ?」

 

「高杉だよ!今頃は私が掛けた呪いに苦しんでいるはずですしね」

 

「呪いだと!……まさか」

 

「そうですよ!あいつに呪いを掛けたのはこの私だ!あいつは私の作った義勇軍を奪ったんだ!報いを受けて当然だよ」

 

「奪っただと!」

 

「ふざけるな!ご主人様は奪っていない!」

 

「うるさい!うるさい!……何と言われようとあいつは報いを受けて当然なんだ!」

 

「……貴様っ」

 

「御使いを殺した後は貴様らの番だ!」

 

「なぜ…そこまで目の敵にする」

 

華佗が偽劉備に聞く

 

「ふん!冥途の土産に聞かせてやる」

 

そして偽劉備は語りだした

 

「あれは貴様たちから逃げた後のことだ!俺はまた旗揚げしようとした……だが賊の生き残りが俺に復讐しに来たんだ」

 

「……」

 

「俺は剣を捨てて逃げるしかなかった」

 

「屈辱だった…だがいつか再起を図るまで私は逃げ続けた。そしてその好機が訪れた」

 

偽劉備は張角を指さす

 

「お前たちが起こした黄巾の乱がそれだ!そこで出世して私は返り咲くはずだった!だかそれを……」

 

桃香達を睨みつける

 

「貴様たちのせいで、また台無しになってしまった。だが天は私を見捨てなかった…ある人物に拾われたからな」

 

「…それが于吉か」

 

「そうだ!そして後はお前たちの知っているはずだ。張譲を操り太平要術に妖力を蓄える政をしていたことを……だがなもう一つ目的があったんだ」

 

「何っ?」

 

「ある日、太平要術が私に語り掛けてきたのだ。復讐の手伝いをするとな」

 

「なんだと!!」

 

「太平要術が!?」

 

「私も驚いた。……けど私はそれに乗ったんだ!復讐のために……そして力を蓄えていった」

 

「そんなことのために無実の人間を殺していったのか!!」

 

「許せないのだ!」

 

「貴様のせいでご主人様が今も苦しんで……それだけではない貴様は恩人である于吉も殺して」

 

「私の復讐のためだ。恩人を利用して何が悪い!」

 

「利用だと!」

 

「于吉も許せないが、あんたが一番許せない!」

 

「どうするんですか?お前たちでは私は倒すどころか触れる事すら出来ないのですよ!それに周りを見ろ!」

 

兵馬俑が武器を構え近づいてきた

 

「私に近づきたいのならそいつらを倒すことだな」

 

「こんな奴ら、鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ」

 

「そうだな」

 

「姉上と張角殿はあの中に避難を」

 

「はい」

 

「俺が守ってやる」

 

「華佗さん…お願いします」

 

馬車の中に避難する桃香と張角

 

「……殺せ!」

 

偽劉備の指示で愛紗達に襲い掛かる兵馬俑

 

 

「せいぜい足掻くだな」

 

偽劉備は于吉が座っていた椅子に座る

 

「さて、あいつらも動き出したかな」

 

テーブルの上にある水晶を見る偽劉備

 

「……楽しんでいますね」

 

 

 

孫策陣営では

 

「姉様!!」

 

「雪蓮姉様!!」

 

「「「「雪蓮さま!!」」」」

 

「放しなさい!」

 

「無様ですね。孫策」

 

兵馬俑と謎の人物の影から無数の黒い手による攻撃に追い詰められていた

 

「姉様を放せ!」

 

孫権が向かってくるが

 

「ふん!」

 

黒い手に阻まれ、後ろに飛ばされてします

 

「蓮華!」

 

「人の心配をしている場合か!」

 

黒い手によって拘束されていた孫策を孫権に向かって投げる

 

「雪蓮!!」

 

周瑜が受け止めようとする

 

「ぐはっ!!」

 

受け止めることはできたが、ぶつかった衝撃で後ろに倒れてします

 

「冥琳!」

 

「大丈夫です」

 

「いい気味ですね。私を嵌めた罰ですよ」

 

そういうと謎の人物は仮面を取る

 

「貴方は!!」

 

「孫静!!」

 

謎の人物の正体は、以前孫策を暗殺しようとして失敗し反逆者達を一緒に投獄された孫静だった

 

「久しぶりだな…孫家の者どもよ」

 

「貴方は反逆罪で死罪されたはずだ」

 

「貴様らに復讐するために地獄から戻ってきたのだ!同胞よ!復讐の時だ!」

 

黒い手に向かって言う孫静

 

 

そして曹操陣営でも

 

「お下がりください!曹操様!」

 

「久しぶりだな曹操!」

 

「なぜ貴方がここにいるの」

 

両手に持った大きな鎌を持った人物が近づいてくる

 

「もちろん貴方を殺すために戻ってきたんですよ」

 

「ふざけないで、貴方は処刑したはずよ……」

 

「戻ってきたんですよ……新な肉体と張繍の名をもってね」

 

その人物は以前勇作達が曹操たちの美食の会(この小説では第六十四席から第六十六席)で曹操を暗殺しようと部下に指示を出した黒幕であった

 

「今度こそ貴様を殺してやる」

 

 



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第百三十席 群雄、于吉を討たんとするのこと(中編③)

遅れてしまいすいません

では、どうぞ


「新たな肉体だと」

 

「そうだ!」

 

「張繍!一体どういうことだ!?」

 

「いいでしょう…冥途の土産に教えてあげましょう」

 

張繍は語りだす

 

「確かに私はあの時に処刑された……だがあのお方のおかげで私は再び戻ってきたのだ」

 

「偽劉備のことか…」

 

「そうだ!あのお方の言うには南蛮の孟獲が悪霊を呼び出し、象にとりつかせる秘術をしていたらしい」

 

「孟獲が?」

 

「それを見たあのお方は、同じ秘術を行った。そして私は新たな肉体を得て蘇ったのだ!」

 

「そんな…信じられない」

 

「何の目的で俺を蘇らせたかは知らないが、貴様に復讐できるならなんでもよかった。それに太平要術のおかげで力も手に入れたからな」

 

「……」

 

「さて、曹操よ」

 

両手に持った大きな鎌を構える張繍

 

「貴様の首…もらい受けるぞ」

 

「華琳様!今、行きます」

 

夏侯惇らが助けに向かうが

 

「貴様らの相手はこいつらだ!」

 

兵馬俑がその前に立ちはだかる

 

「邪魔をするな!」

 

夏侯惇が兵馬俑の一体に切りかかるが

 

ガチン

 

「なっ!何ぃ!」

 

片手で受け止めてしまった

 

「放せ!」

 

何とかしようとするが一向に離れる様子がない

 

「姉者ぁっ!おのれ!」

 

夏侯淵は3本の矢を放つが

 

バシ!バシ!バシ!

 

別の兵馬俑がそれを素手でキャッチした

 

「なっ!何だと!」

 

「無駄だ!」

 

張繍が叫ぶ

 

「そいつらは今までの兵馬俑とは違う!かなりの妖力によって強化されている。五千ほどしか動かせないが、そいつらは呂布と同等の強さになっているぞ」

 

「なんだと!!」

 

「呂布の強さはお前たちが一番知っているはずだ!五千人の呂布をお前たちに倒せるかな」

 

そういうと一部の兵馬俑が動き始め、曹操軍の兵を蹴散らしていく。その光景はまさに呂布と同等

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時を同じくして別の場所

 

「ふふふ、無様だな…孫策よ」

 

孫策陣営でも危機に瀕していた

 

「孫静!」

 

「貴様らを殺し!私が孫家の頂点に立ってやる」

 

「叔母上!なぜこんなことを」

 

孫権が問いかける

 

「孫策のやり方は間違っておる!!どれだけ多くの物を得ようとも、そのために流されたおびただしい血がいつか孫家に綽名すからだ!」

 

「……」

 

「そのために私は孫策の暗殺を決意したのだ!だが!」

 

孫静は周瑜を睨みつける

 

「周瑜!貴様のせいですべて台無しになってしまった!」

 

「……」

 

「だがあのお方が好機を与えてくれた」

 

「偽劉備のことね」

 

「そうだ!死んだ私をあのお方は蘇らせてくれた。南蛮の秘術をつかってな……そして私に力を与えてくれた」

 

「孫静様」

 

「どうやって蘇らせてたかは知らないが…貴様に復讐できるなら何でもよかった!」

 

「叔母上!」

 

「孫権よ!そちも同じであろう!ならば私と一緒に」

 

「断る!!」

 

「何っ!!」

 

「私は姉様とは戦わない!」

 

「なぜだ!?お前も孫策のやり方に疑問を持っていたはずだろう」

 

「それでも私は姉様を信じます!これが孫呉のためになるなら」

 

「……なら貴様も殺す」

 

影から黒い手を孫権に伸ばす孫静

 

「やらせない!ハァァーーーーッ!!」

 

孫策は黒い手を切り落とす

 

「無駄だ!」

 

切り落とされた黒い手は影の中に消え、そして影からまた生えてきた

 

「私を倒さない限り、こいつらは無敵だ」

 

「なら、貴様を倒すまで!ハァアッ!!」

 

黄蓋は矢を放つ

 

「……ふっ」

 

于吉の時と同様に見えないバリアは阻まれるように、威力を失った矢はその場に落ちる

 

「私にそんな物は効かない」

 

「くそ!」

 

「貴様らはこいつらの相手でもしていろ」

 

そういうと兵馬俑を動かす

 

「くそ!こいつら」

 

「(妖力の大半を黒い手に使っているために、張繍が操る兵馬俑の強さには及ばないが、それでも孫策に匹敵する強さを秘めている)」

 

「さあ、かかれ!」

 

 

 

 

 

「ふふ、始まりましたね」

 

偽劉備は于吉が座っていた椅子に座り、テーブルの上にある水晶を見ている

 

「さて、無事に辿り着きますかね」 

 

『よくもやってくれましたね』

 

偽劉備の正面に半透明の于吉が現れた

 

「感謝はしているよ…于吉」

 

『何をふざけたことを言っているのですか!恩を仇で返す真似をして』

 

「どのみち…貴方は死んでいたんです…。それを俺が終わらせただけですよ」

 

『なぜ太平要術は貴様のような奴に』

 

「それは俺が選ばれた人間だからだよ」

 

『違いますね』

 

「何?」

 

『貴方は決して選ばれた人間ではない……せいぜい操り人形がお似合いだ』

 

「黙れ!黙れ!!アイツさえいなければ義勇軍も関羽も他の女もすべて俺の物になっていたんだ!」

 

『自分でまいた種ですよ…こうなったのは』

 

「うるさい!どのみち貴様には何もできない!とっとと去れ!」

 

『わかりました!せいぜい頑張ってくださいね』

 

そういうと于吉は消えた

 

「……」

 

偽劉備は水晶を操る

 

「……やはり来たか」

 

水晶に勇作が馬に乗って、こっちに向かってくる姿が映る

 

「呪いで苦しいはずなのに、がんばりますね」

 

右眼を押さえ、兵馬俑を倒しながら向かってくる

 

「貴方は私がこの手で」

 

 

 

 

 

 

そしてとある場所では

 

「……くるしそうね」

 

「そうだな……」

 

「しかしあの二人に行かせて大丈夫なのか」

 

「大丈夫よ…それは私が保証するから」

 

「もう一人の方を心配しているのだ。…あいつは………の力を持っている。この世界では強すぎる力だ。最悪の場合、恋姫たちと敵対する恐れがあるんだ……あの力は」

 

「心配しなくていいわよ…ご主人様がいるから」

 

「……しかし」

 

「それより、貴方はお弟子さんの心配をしていなさい。万一のために準備していなさい……お弟子さんとあの子たちの幸せを願うならね」

 

「………わかった」

 

二人の人物はその場を後にする

 

「……死ぬなよ。勇作」




今年、最後の投稿です

年内にOVAも投稿できるよう頑張ります

では、よいお年を


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第百三十一席 群雄、于吉を討たんとするのこと(後編①)

遅れてしまいすいません

今更ですが、今年もよろしくお願いします。


「どけ!」

 

馬上から刀を振り、兵馬俑を倒す勇作

 

「あと少しだ!」

 

そして後少しの所まで来ていた

 

「待ってろよ!偽劉備!」

 

 

 

 

「くそ!キリがない!」

 

愛紗達は迫りくる兵馬俑を切り倒していたが、兵馬俑の多さに苦戦していた

 

「愛紗!大丈夫か!」

 

「ああ……けどこの数はまずい」

 

「鈴々!まだやれる?」

 

「もちろんなのだ!翠」

 

「もう少しなのに」

 

愛紗達にも疲れが見えてきた

 

「こうなったら直接、偽劉備の所に……」

 

「やめろ!お主も見ただろう」

 

「だが、このままでは……」

 

星と愛紗がよそ見をしていると

 

「っ!!危ないのだ!!」

 

二人に向かって矢が飛んできた

 

「「っ!しまっ……!?」」

 

矢が刺さろうとなった……その時

 

 

『JET-X!!』

 

横から来たX字の斬撃によって矢は切られた

 

「この技は……」

 

皆が視線を向けると

 

「間に合った!」

 

「「「「「ご主人様(主)(お兄ちゃん)!!」」」」」

 

勇作がいた

 

「皆!大丈……ぐっ!」

 

勇作は右眼を押さえながら馬上から降りる

 

「ご主人様!大丈夫ですか!?」

 

愛紗が近づいてくる

 

「何とか……」

 

「なんで来たのですか!?その状態では」

 

「皆が戦っているのに、見ているだけなんてできないよ!……それに」

 

勇作に七星壇を見る

 

「まさかアイツが元凶なら尚更な……」

 

そういうと勇作は七星壇の方に向かう

 

「待ってください!」

 

皆が勇作の後を追うが

 

シュ!ザク!ザク!

 

それを阻むように槍が刺り、兵馬俑が道を塞ぐ

 

「……」

 

愛紗は偃月刀を兵馬俑に向ける

 

 

 

 

ソコヲドケ

 

 

 

 

その眼に光はなかった

 

 

 

「……来たか」

 

偽劉備の視線の先に、勇作がいた

 

「……」

 

「久しぶりですね」

 

「偽劉備」

 

二人は対峙する

 

「ぐっ!!」

 

勇作は押さえる

 

「苦しそうですね」

 

「うるさい!」

 

「ようやく貴方を殺すことが出来ます」

 

「なんでこんなことをした」

 

「決まっているでしょう!貴方に復讐するためですよ」

 

「そんなことのためにこんな」

 

「うるさい!俺からすべてを奪った!貴様が悪いんだ」

 

憎しみに満ちた目で勇作を見る偽劉備

 

「こんなことになるんだったら貴様を天の御使いとして祀り上げるんじゃなかった!」

 

「……」

 

「だがそれもこれですべて終わる」

 

偽劉備は椅子から立ち上がり、右手に剣を左手に弩を持つ

 

「(まるで信長だ……)」

 

「ここが貴様の墓場だ!」

 

偽劉備は勇作に向かって走りだした

 

「こい!」

 

互いの武器が交差した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり曹操の所では

 

「くそ!何て強さだ!」

 

「姉者!大丈夫か」

 

「ああ、だがかなり厳しい」

 

曹操軍の兵はほとんど倒され、武人たちも立っているのがやっとの状態であった

 

「このままでは、華琳様が」

 

「わかっているが……」

 

呂布と同等の兵馬俑が立ちふさがる

 

 

「ぐっ!」

 

「ついに追い詰めたぞ」

 

張繍の攻撃に曹操は片膝を着く

 

「私はまだ……」

 

「黙れ!」

 

張繍の大鎌の一撃に曹操が持っていた武器を飛ばされた

 

「そんな……」

 

「死ね!曹操!」

 

切らんと上げし復讐を纏った大鎌は曹操に向けて振り下ろされる

 

 

 

華琳様(曹操さま)!!!!

 

 

 

部下たちは助けに向かおうとするが、兵馬俑に阻まれ届かない

 

「(私は死ぬの……)」

 

死が迫ってくる時、周りがスローモーションみたいになると言われるが、まさにその状況になっていた。曹操の命を奪おうと一閃を描いて王者目掛けて刃が迫る

 

「……」

 

死を覚悟したのか目を閉じる曹操

 

「(皆…ごめんなさい)」

 

曹操の命が尽きようとした

 

 

ガチン!!

 

 

が激しい金属音と共にそれは阻まれた

 

 

「……え?」

 

曹操が目を開けると

 

「…何だと!」

 

敵の大鎌の刃が数センチの所で曹操の武器によってガードされていた

 

「…貴様は!!」

 

張繍と曹操が視線を後ろに向けると

 

「……間に合った」

 

一人の曹操兵がいた

 

「貴方は!」

 

曹操は知っていた。兵馬俑を蹴散らしていた顔を隠している兵だ

 

「おのれ!」

 

「よっ!」

 

兵は武器を巻き上げる。そして周り蹴りを繰り出す

 

「ぐっ!」

 

張繍のお腹に命中し、後ろに後退する

 

「……大丈夫?」

 

「…え?……えぇ」

 

曹操は兵の手を借り、立ち上がる

 

「よくも邪魔してくれたな!お前から殺してやる」

 

大鎌の一撃が兵に向かってくる

 

「っ!?」

 

なんとか躱すが顔を隠していた仮面が斬られた

 

「あちゃ~……やってくれたね……」

 

「大丈夫なの」

 

「心配ないよ……おい!よくもやってくれたね」

 

「うるさい!お前は誰だ!?」

 

「俺?……俺は紅…翼」

 

翼はそう言いながらある物を取り出す

 

「今は……通りすがりの仮面ライダーだ」

 

そしてスイッチを押す

 

『ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

すると腰にネオディケイドライバーが現れる。そしてライドブッカーからディケイドのカードを取り出した。そして

 

 

「変身」

 

カードをバックルに入れるに差し込んだ

 

 

『カメンライド』

 

バックルを正位置に直した

 

 

『ディケイド』

 

 

音声が鳴るとともに、周りにはいくつものカードの壁が現れ、体を包み、姿を変える。そしてドライバーの中心から赤いものが出てきて、その変身した翼の頭につく。そして仮面ライダーディケイドに変身した

 

 

「姿が変わった!」

 

その光景に曹操や張繍そして夏侯惇達は驚いていた

 

「貴様を破壊する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして孫策の所では

 

 

「誰だ!貴様は!!」

 

孫策がピンチになっていたが、仮面の兵によって助けられていた。右手に銃…いやネオディエンドライバーが握られていた

 

「俺は……北郷…一刀だ」

 

仮面を取る

 

「北郷一刀」

 

「ふん!一人増えた所で変わりはしない!」

 

「一人じゃないよ」

 

「何だと!!」

 

「助っ人を呼ぶよ。孫家にゆかりのある人物を…ね」

 

そういうと一刀はカードを取り出し、銃身にカードを挿入する

 

 

『コイヒメライド』

そしてトリガーを引いた

 

 

『ソンブンダイ』

 

 

ある人物が召喚された

 

「なっ!!」

 

「そんな!」

 

「貴方は……」

 

 

「クックックッ、ここが新たな戦場か」

 

「「「母様!!」」」

 

「孫堅!!」

 

「「「炎蓮様!!」」」

 

 

この世界では、死んでいるはずの孫堅が現れ、孫策達は驚き、驚愕するのであった



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第百三十二席 群雄、于吉を討たんとするのこと(後編②)

遅れてしまいすいません

今回、多機能フォームを使用しています

今後も使うつもりなのでよろしくお願いします

では、どうぞ


「なぜ貴様がっ!!お前は死んだはずだ!孫堅!?」

 

孫静が一番驚いていた

 

「何言っているんだよ」

 

一刀が答える

 

「あんたも妖術で蘇らせて貰ったんだろう……。俺も同じことが出来るんだよ」

 

「なんだと!」

 

「(まあ、正確に言えば別の世界から呼んだだけだけど…)」

 

心の中でそう思うのであった

 

「孫静よ!随分と小せえことしているな。死人ならおとなしく死んどけや!」

 

「うるさい!もう一度死ね!!」

 

3つの黒い手が孫堅に向かってくる

 

「おらぁあああっっ!!」

 

横に一閃。振るわれた剣に、黒い手は手首から切られた

 

「そんな物…オレに効くと思っているのか」

 

「なっ…何だと!!」

 

「(俺…ここに居る意味あるかな)」

 

一刀は孫堅の強さにそう思い始めた

 

「なら…これならどうだ!」

 

五体の兵馬俑が孫堅に向かっていく

 

「おらぁっ!オラオラオラァッ!!」

 

が振るわれた剣により切られ、跡形もなく倒れた

 

「瞬殺だと!そいつらは孫策と同等の強さはずだ!」

 

「ハッハ~~ッ!!土人形如きでオレが倒せるとでも思っているのか!」

 

「ぐっ!!」

 

孫静は一刀に目をやる

 

「だったら貴様から殺してやる!!行けっ!!」

 

五体の兵馬俑が一刀に向かっていく

 

「……全集中……水の呼吸」

 

一刀は落ちている剣を拾い、息を吸う

 

「肆ノ型……打ち潮」

 

淀みのない動きと共に、兵馬俑の首が斬られた

 

「そんなもの俺には、意味がないよ」

 

「何っ!!」

 

「……ん?」

 

孫堅は孫策達に視線を向ける

 

「うらぁああっ!貴様ら!!」

 

孫堅から檄が飛ぶ。その檄に孫策らは姿勢を正す

 

「それでも貴様らは、誇り高き孫家の兵か!!こんな奴に苦戦するほど弱くなったのか!」

 

「(いや…孫堅さん。貴方が規格外だけで、別に弱くなっては……)」

 

「違うというなら立ち上がれっ!!孫呉の力を見せつけろっ!!」

 

その言葉に孫策達の目が変わり、立ち上がる

 

「そんなことで私に勝てるか!行けっ!」

 

二体の兵馬俑が孫堅に向かっていく

 

「ハァアッ!!」

 

黄蓋が放った二本の矢が兵馬俑に当たり、倒れる

 

「大殿には、指一本も触れさせぬぞ!!」

 

「……祭か」

 

黄蓋は孫堅に近づく

 

「大殿…儂は……」

 

「話は後だ!任せるぞ!!」

 

「ハッ!!」

 

「さて、俺も……ん?」

 

一刀がもっていたネオディエンドライバーがライドウォッチに変わり、翼の方に飛んで行った

 

「(おい、まじかよ。あれに変身したのか……)」

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻し

 

「くそっ!きついな」

 

ディケイドに変身した翼は、苦戦をしていた

 

「流石に呂布と同等の兵馬俑が5千体もいるのも厄介だな」

 

「華琳様!大丈夫ですか?」

 

翼が兵馬俑を倒したおかげで、夏侯惇達が曹操の所に駆けつけることが出来た

 

「ええ……彼のおかげで」

 

「しかし……苦戦していますね」

 

「…さっきまでの威勢はどうした?またまだ行くぞ」

 

張繍が指示を出す。次々と兵馬俑が襲い掛かる

 

「……ぐっ!!」

 

何とか捌いていたが、攻撃が当たり、後ろに飛ばされる

 

「……くそっ!!」

 

「先に貴様を殺してやる。曹操を助けるつもりだろうが、力のない貴様が俺に勝てるわけないだろう!!」

 

「………」

 

「その次は曹操だ。覚悟しておけっ!!」

 

「……やむを得ない……か」

 

翼は変身を解く

 

「……本当は使うなって言われているけど、そうも言ってられないし」

 

「掛かれ!」

 

五体の兵馬俑が翼に向かう

 

 

「………魔王の力、お借りします」

 

翼の腰に黄金のドライバーが現れる。そして背後の地面がひび割れ、地響きと共に赤黒い巨大な時計の紋章が出現する

 

 

 

 

 

 

変   身!!

 

 

 

 

 

 

コールと共にドライバーの両端を押し込む

 

 

祝福の刻!

 

 

紋章にエネルギーが流れ込み背中から取り込まれていく。そして同時に無数のベルト状のエフェクトが翼の身体を包み込み

 

 

 

最高!

 

 

 

最善!

 

 

 

最大!

 

 

 

最強王!

 

 

最後にライダーの文字がマスクにセットされる

 

 

 

オーマジオウ!!!

 

 

 

変身完了と同時に余波が発生し、翼に向かってきた兵馬俑が粉々になった

 

 

「ぐおっ!!」

 

 

張繍と曹操たちもその余波に大きく怯んだ

 

「………」

 

「なんだ貴様は……」

 

圧倒的な存在感に恐怖を抱く張繍

 

「我が名はオーマジオウ!最高最善の魔王だ!!」

 

空からディエンライドウォッチがやって来て、翼に吸収される

 

 

「最高最善の魔王だと!ふざけるな!王はこの俺だ」

 

十体の兵馬俑が向かってくるが

 

「……ふん」

 

翼は右手を振り上げ翳し、思いっきり開く。その瞬間、衝撃を轟音と共に兵馬俑が粉々になる

 

「!!??」

 

張繍はもちろん曹操たちもその光景に驚愕する

 

「(自分で使っておいてなんだけど、本当にすごいな)」

 

翼も心の中でそう思うのであった

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃

 

「っ!?何だ?今のは……」

 

偽劉備と戦っていた勇作も、オーマジオウの余波に気付いた

 

「よそ見している場合ですか」

 

弩の引き金を引く。よそ見をしていたために、妖力弾が脇腹に直撃する

 

「ぐっ!!」

 

覇気が未完全だったためか、痛みが走る

 

「余裕ですね。しかし何だったんだでしょう。あれは……」

 

「知らないね」

 

「随分と辛そうですね。負けを認めたらどうですか?」

 

「死んでもやだね」

 

「そうですか…ならこれならどうですか」

 

偽劉備の背中から3匹の黒い竜が現れた

 

「!!っなんだそれは」

 

「すごいでしょう。私の妖力で作った竜です。私はもちろんこの竜にも一切攻撃は通じないのです」

 

「なんだと!?」

 

「後、私や竜に触れると毒に侵されますからね」

 

「(なんだよそれ……ドクドクの実のマザランと同じじゃないか!?)」

 

「行けっ!!」

 

竜は勇作に向かっていく

 

「……」

 

勇作は覇気を纏わせた刀を振る。黒くなった刀によって竜の首は斬られた

 

「そんなことで、俺が倒せるとでも思っているのか。こっちは修行で、その手の相手との戦闘は経験済みなんだよ」

 

「…知っていますよ。だから細工を施しました」

 

「細工だと……うぅ!!」

 

勇作の右眼に激痛が走る

 

「その竜は斬られると、呪いの効果を強くするように術を施しましてね。不用意に切ることは貴方の首を絞めることになりますよ」

 

「くそ」

 

「まだまだ苦しんでもらいますよ。こんなことで私の復讐心は満たされませんからね」

 

そう言うと3匹の黒い竜がまた現れるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第百三十三席 群雄、于吉を討たんとするのこと(完結編①)

遅くなりすいません

この物語ももうすぐ完結です

最後までよろしくお願いします


「(くそっ!あまり時間をかける訳には行かないか…)」

 

3匹の黒い竜を目の前にして若干焦る勇作

 

「よそ見をしている場合か!?」

 

3匹の黒い竜が勇作に口を大きく開けて向かってくる

 

「舐めるな!!」

 

勇作は一匹の竜を殴り後ろに飛ばされる。その影響で残りの竜も巻き込まれ飛ばされた

 

「切るのが駄目なら殴ればいいだけだ」

 

「なっ……何だと」

 

偽劉備は動揺する。勇作はその隙を見逃さず

 

「うりゃぁあ!!」

 

右ストレートを左ボディーに食らわせた

 

「ぐほぉ…」

 

その攻撃に体がくの字に曲がり悶絶する

 

「(もう一発!)」

 

今度は偽劉備の顎に右ストレートを食らわせ、後ろに体がよろける

 

「(今だ!!)」

 

刀を抜き、心臓に向けて突き刺した

 

「(……嫌な感触だな……けどこれで)」

 

「フフフフフフ」

 

偽劉備は笑いながら左手で刀を掴む

 

「なっ、何っ!」

 

「こんなことで私が死ぬと思っていたのか。おめでたい奴だな」

 

勇作は刀を抜こうとするが、がっちりと掴まれているため抜けない

 

「逃がすか」

 

偽劉備は右手て勇作の顔面を鷲掴む

 

「ああああああああ!」

 

激痛が走り、刀を放す

 

「死ね!」

 

そのまま地面に叩きつけた

 

「がはっ!」

 

「私の恨みはこんなものじゃないぞ……死ね死ね死ね死ね」

 

何度も地面に勇作を叩きつける

 

「がっ……あ……」

 

「ん?」

 

偽劉備は勇作を持ち上げる

 

もう終わりか…あっけないな

 

両腕が力なく垂れ下がる

 

「……次は関羽達を始末するか」

 

「……るか」

 

「ん?」

 

「そんなこと……させるかっ!!」

 

右足で蹴り上げる

 

「ぐっ!」

 

思わぬ攻撃に勇作を放す

 

「ぐっ!」

 

脱出した勇作だったが動くことが出来ない

 

「この野郎!」

 

偽劉備は右パンチをする

 

「ぐう」

 

が勇作は腕をクロスしてガードするが、後ろに飛ばされた

 

「があぁ!!」

 

さらに右眼に激痛が走り、手で押さえる

 

「こんなもの」

 

偽劉備は心臓に刺さってる刀を抜き、強く握る

 

「こうしてやる!!」

 

強く握られた刃の部分が、真っ二つに折れ、七星壇の外に投げ捨てられた

 

「俺の刀が……」

 

「貴様の爪、一本折ったぞ」

 

「くっ!!」

 

何とか立ち上がろうとするが、右眼の痛みと叩きつけられた時のダメージがひどく、動くことが出来ないでいた

 

「どうやら呪いが酷くなってきたな、御使いよ」

 

ゆっくり近づく偽劉備

 

「死ね!」

 

右手で勇作の顔面に向けて放つ

 

ガチン!!

 

金属音と共に阻まれる

 

「……」

 

「愛紗っ!!」

 

愛紗が偃月刀がガードしていた

 

「これは関羽殿ではありませんか?」

 

偽劉備は手を引っ込める

 

「……」

 

「こんなところで会えるとは、私に会いに来たのですね」

 

偽劉備は愛紗に近づいていく

 

「会いに来たってどういうことだ?」

 

「どうせ貴方は死ぬのですから、冥途の土産に教えてあげます」

 

偽劉備は語りだす

 

「貴方に掛けた呪いの中に貴方を嫌いになる呪いを掛けたんですよ。あなたに親しい人に効果が現れるようにね」

 

「何っ?」

 

「その効果は薄いが段々と強くなっていき、貴様を嫌いになり、最終的に私の女になるんですよ」

 

「親しい人って……」

 

「元々は私の義勇軍を貴様が乗っ取ったです。貴様を絶望させた後に返してもらうんですよ」

 

「落ちるとこまで落ちたな」

 

「何とでも言え!さあ、関羽殿…私の元に来なさい。そして御使いを殺しなさい」

 

偽劉備は近づいてくる

 

「(そんなわけないよな……)」

 

「……くな」

 

「ん?」

 

愛紗が右手を上げる

 

「近づくな!下郎がっ!!」

 

愛紗は偽劉備を平手打ちした

 

「私が貴様を好きになるだと……」

 

光の無い軽蔑の眼差しで見る

 

 

 

フザケルナ

 

 

 

 

「ひぃ」

 

「私の好きなのは、私の体に触れて良いのはご主人様だけだ!!決して貴様などではない」

 

「…愛紗」

 

「なぜだ!?呪いは発動していたはずだ!なぜなんだ!!」

 

「呪いなど私には聞かないのだ!」

 

愛紗は偽劉備の顔面を殴った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、曹操の所では

 

「……それで終わりか」

 

翼いやオーマジオウによって張繍の操る兵馬俑が残り3体となっていた

 

「なぜだ!なぜなんだ!?なぜ倒せないんだ?」

 

「お前に私を倒すのは不可能だ。何故かわかるか? 私は最高最善の魔王だからだ」

 

「わかるか!?行け!」

 

残りの兵馬俑も向かっていく

 

「……」

 

1体目は右手にエネルギーをまとったパンチを放って消滅し、二体目は右足に封印エネルギーを集めて兵馬俑の心臓にキック放ち、クウガの紋章が現れると同時に爆殺し、3体目は黒いモウモリを放ち、張繍もろ共に爆散した

 

「そんな馬鹿な」

 

ボロボロになる張繍

 

「私は曹操に復讐するために復活したのに、それを貴様が……」

 

張繍は大鎌を構え向かってくる

 

「……」

 

翼はドライバーのスイッチを同時に押し込む

 

 

終焉の刻!

 

 

翼は飛び上がると同時に、マント状に展開されている針が上がり、エネルギーは集まる。そしてキックの文字が張繍の動きを封じるように包囲する

 

 

 

逢魔時王必殺撃!

 

 

 

ドス黒いオーラを纏ったライダーキックを叩きこんだ

 

 

「……」

 

「があ……げほ……」

 

手加減したのか張繍はまだ死んでなかった

 

「……」

 

翼は曹操の武器を拾い上げ、差し出す

 

「奴を倒すのは貴方の役目だ」

 

「………」

 

曹操は武器を持つ

 

「感謝するわ」

 

張繍に向っていた

 

「……ひゅー……そう」

 

「張繍よ…妖術で蘇ったとはいえ、私をここまで追い詰めたは認めてあげるわ。せめての礼で私自身の手で葬る!!」

 

鎌を振り下ろされ、張繍の首が落とされる。それと同時に体と首が粉々に消滅した

 



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第百三十四席 群雄、于吉を討たんとするのこと(完結編②)

「(嘘!当たった!!愛紗…いつの間に覇気を)」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「ご主人様!…大丈夫?」

 

鈴々と桃香もやってきた

 

「鈴々、桃香……うっ!!」

 

右眼を押さえる勇作

 

「ご主人様」

 

「大丈夫だ……それより愛紗の助っ人に行かないと」

 

立ち上がろうとするが

 

「無理しないで」

 

「お兄ちゃんは休んでいるのだ。あいつは鈴々に任せるのだ」

 

鈴々は偽劉備に向かって行った

 

 

「愛紗、助っ人に来たのだ」

 

「鈴々か」

 

「くそ、私の顔が殴られるなんて」

 

偽劉備がそう呟いた瞬間に鈴々が動いた

 

「隙ありなのだ!!」

 

「ぐおっ!!」

 

鈴々の得物が偽物の鎧に当たり、少し後ろに飛ばされた

 

「なぜだ!御使いはともかく、なぜ貴様の攻撃が私に当たる!!」

 

「もう一撃」

 

鈴々は真正面に攻撃を仕掛ける

 

「舐めるな!」

 

鈴々の攻撃をいとも簡単に避ける偽劉備

 

「なぜなんだ!」

 

「私は負けん!」

 

「いくのだー!」

 

愛紗と鈴々は、再び偽劉備に攻撃を仕掛けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、一刀がいる戦場では

 

「(どうやら、翼の方は終わったようだな)」

 

「貴様さえ…」

 

「ん?」

 

孫静が一刀を睨みつける

 

「貴様さえ現れなければ、孫策を殺すことが…復讐を果たすことが出来たのに…」

 

そう言うと、5本の黒い手が一刀に向かってくる。その手には槍を持っていたり、剣を持っていたりと様々な武器を持っており、前後左右そして頭上から迫ってくる

 

「(兵馬俑が使っていた武器か……けど)」

 

一刀は呼吸を整える

 

「水の呼吸……陸ノ型……ねじれ渦」

 

 

強烈な回転を伴って斬撃を繰り出し、黒い手が持っていた武器もろとも斬られた

 

「な、なに!!」

 

「言ったでしょ…俺には効かないって」

 

「おのれ……」

 

「さてと、そろそろ…」

 

「おい」

 

「ん?」

 

「そいつはオレに任せてくれ」

 

いつの間にか兵馬俑を倒していた孫堅が言った。そして孫策、孫権、孫尚香もいる

 

「……わかった」

 

一刀は刀を鞘に納める

 

「……なんのつもりだ」

 

「身内の不始末は身内で片付けるだけだ」

 

「あはははは、愚かなだな!その男がいれば、楽にできたものを…」

 

「孫静おばさま」

 

「シャオ!」

 

「情けを掛けるな……奴はもう死んでいるのだぞ」

 

「母様」

 

「母様の言うとおりよ」

 

「覚悟を決めましょう」

 

「………わかった」

 

4人は武器を構える

 

「死ねぇえええええ!!」

 

3本の黒い手と共に孫堅達に向かって行く孫静

 

「「「「………」」」」

 

そして交錯した

 

「「「「………」」」」

 

「……ぐはっ……ばかな」

 

体が砂になっていく孫静

 

「孫静、お前の負けだ」

 

「………そのようだな」

 

「「伯母上」」

 

「孫静おばさま」

 

「あの世で其方たちの生き様、見させてもら……う……ぞ」

 

そして消滅した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで終わりか」

 

「ぐっ」

 

愛紗と鈴々は偽劉備と対峙していたが、覇気が不完全のため、攻撃が当たらず、ピンチになっていた

 

「最初に私に触れる事が出来たことには驚きましたが、それも少しの間でしたね」

 

「まだまだ私は」

 

「無駄ですよ…あなたには私は倒せませんよ。それは貴方自身が一番ご存じでしょう」

 

「……」

 

「関羽殿、私の元に来るきはないですか?」

 

「ふざけるな!死んでも行かないぞ」

 

「そうですか……ん?」

 

偽劉備は何かに気付く

 

「あの二人は死にましたか…役に立たないですね」

 

孫静と張繍が死んだことに気付く偽劉備

 

「私は二人のようにはいきませんよ。御使いに掛かている呪いのおかげで、妖力は無限なのですから」

 

笑みを浮かべながら愛紗に近づく

 

「さよならです!関羽!!」

 

剣を振り下ろす…………が

 

 

 

ガチー---ン!!

 

 

 

その攻撃は寸前で止められた

 

 

「貴様は!」

 

「ご主人様!」

 

「………」

 

勇作が現れ、防御していた



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第百三十五席 群雄、于吉を討たんとするのこと(完結編③)

遅れてしまいすいません

では、どうぞ


「ご主人様!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

勇作が現れ、愛紗と鈴々は驚いていた

 

「何をしに来たのです?今更来たところで貴方は私には勝てませんよ」

 

顔を伏せている勇作

 

「まあ、いいでしょう!呪いに苦しむがいい」

 

一匹の黒い竜が勇作に向かっていく

 

「……」

 

だか一太刀で竜の首を斬る

 

「やったのだ!」

 

「愚かだな!そんなことをすれば呪いの効果が強くなることを忘れたのか!」

 

不適に笑みを浮かべる偽劉備

 

「これでさらに苦し……む……」

 

「……」

 

しかしそんな様子はなかった

 

「なぜ苦しまない!」

 

「もう俺に呪いは効かない」

 

顔を上げる勇作。右眼に巻かれている包帯が血だらけになっていた

 

「なんだその血は……まさか」

 

「……そうだよ」

 

右眼に巻いてある包帯を取る。すると右眼に眼球はなく、空洞になっていた

 

「なんだその眼は!?何をした」

 

「ご主人様!!」

 

「うそ…」

 

偽劉備は驚愕し、愛紗と鈴々は絶句していた

 

「これで呪いに苦しむことはなくなった」

 

「馬鹿な!そんな方法なんて」

 

「宝剣だよ」

 

「宝剣………まさか」

 

勇作の言葉に偽劉備と愛紗と鈴々は桃香の方を見る

 

「……」

 

そこには血だらけの宝剣を持った桃香がおり、その手も血だらけになっていた

 

「お姉ちゃん」

 

「姉上!」

 

愛紗が桃香に向かっていく

 

「ご主人様に何をしたんですか!!」

 

「よせ!愛紗!」

 

勇作がそれを止める

 

「しかし……」

 

「俺から頼んだんだ。……だから」

 

「……頼んだだと」

 

「説明してやるよ」

 

 

 

 

 

時間を少しさかのぼり、愛紗と鈴々は、偽劉備に攻撃を仕掛けた

 

 

「私は負けん!」

 

「いくのだー!」

 

「待て!……ぐっ!」

 

「ご主人様!しっかりして」

 

桃香が介抱する

 

「いくら愛紗達でも、無理だ!俺が何とかしないと……ぐっ!」

 

右眼を押さえる勇作

 

「ご主人様……その状態じゃあ」

 

「くそ!呪いがなければ」

 

 

 

『できるぞ』

 

 

「え?」

 

何処からから声が聞こえた

 

「桃香…何か言った?」

 

「えっ?私は何も…」

 

『わたしだ』

 

声がした方に視線を向けると

 

「おい…嘘だろう」

 

桃香が持っていた宝剣から聞こえていた

 

『どうやら聞こえたようだな』

 

「剣がしゃべった!!」

 

「(この声どこかで……)」

 

「それよりもご主人様の呪いをなんとか出来るんですか」

 

『ああ…出来るぞ……しかしお主にはつらいかもしれぬぞ。本当の意味で右眼を奪うことになるからな』

 

「構いません!どうすればいいのですか?」

 

『劉備よ…宝剣を手にとり、願うのだ。剣よ…小さくなれとな』

 

「はい」

 

桃香は宝剣のいうとおりに願った。すると宝剣は短刀サイズになった

 

「出来ました!それで次は……」

 

「ちょっと待て……」

 

勇作が止めに入る

 

「まさかと思うけど…その短刀を右眼に刺せって言うんじゃないだろう!」

 

『そのとおりだ』

 

「やめろ!そんなこと桃香に出来るわけないだろう!」

 

『じゃあどうする?』

 

「俺が自分でやる」

 

宝剣を手に取ろうとしたが

 

「痛っ!!」

 

はじかれてしまった

 

「なんで?」

 

『今のお主の状態では、無理だ』

 

「だったら何度でも!!」

 

「やめて、ご主人様!」

 

桃香がそれを止める

 

「ご主人様やめて……これ以上は」

 

「だが!」

 

「私がやります!それでご主人様の呪いは解けるですね」

 

『保障する!そして勝てる……速攻で倒せ!出血多量で死ぬからな』

 

「何?」

 

『心配するな、後のことはあいつらが何とかする』

 

「……あいつって?」

 

『さあ、やれ』

 

その後、宝剣の声の指示により、勇作の後ろに回った桃香は短刀になった宝剣を勇作の右眼に突き刺した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけだ」

 

3人は勇作の説明を聞いて驚愕するのであった

 

「そんな…そんな馬鹿な」

 

「これで呪いの心配はなくなった」

 

「ふざけるな!劉備」

 

偽劉備は桃香を指さす

 

「貴様のような…甘ちゃんにそんなことが出来る訳ないだろう。何もできない貴様が!!」

 

「おい!きさ……」

 

 

 

 

「うるさい!!」

 

桃香が大声で叫ぶ

 

「っ!?」

 

「たしかに貴方のいうとおりですよ!私は何もできないかもしれない………私がご主人様の右眼を突き刺してなんとも思わないわけないでしょう!!」

 

「姉上」

 

「呪いを解くためとはいえ、私はご主人様の右眼を奪った。その罪は一生に消えることはない。いくらご主人様が許すと言われても…私は自分を許すことは永遠にない!」

 

「桃香」

 

「でもね!だからってなにもしないでいい理由にはならない!!たとえどんなに苦しくても悲しくても辛くても自分がやってしまったことに目を背けるなんて私には出来ない!!」

 

「お姉ちゃん……」

 

「改めて言います!私はご主人様の右眼です。これだけは誰にも譲ることはありません!!そしてあなたなんかに負けません!!」

 

涙を流しながらも以前とは違い、覚悟決めた力強い瞳をしていた

 

「愛紗と鈴々…桃香を守って…俺が片を付ける」

 

「……はい」

 

「わかったのだ」

 

その場を離れる愛紗と鈴々

 

 

「さあ、決着をつけるぞ」

 

「……だが、呪いの効果がなくなっても貴様は俺には……」

 

「強がるなよ」

 

「なんだと?」

 

「お前の妖力が無限なのは、俺の右眼があったおかげだ。……もうお前に妖力はほとんどないはずだ」

 

「そうだとしても、俺はお前の竜の爪を一本折った。いくら何でも」

 

「あるよ」

 

そういうと一本の刀があった

 

「なんだと」

 

「桃香が使っていた宝剣。これで六爪流が使える」

 

勇作は構えながら

 

「WAR DANCE!!」

 

六爪流になった

 

「だからどうした!!」

 

偽劉備は武器を構え、後ろに背中から3匹の黒い竜が現れた

 

「行くぞ偽劉備!!」

 

「死ね!御使い!!」

 

「うおおおおおお!!!!」

 

「ぬああああああ!!!!」

 

勇作と偽劉備の最後の戦いが始まった……。

 




残り3話で完結です

今年中の完結を目指し頑張ります

次回をお楽しみください



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第百三十六席 群雄、于吉を討たんとするのこと(完結編④)

「……お見事、曹操」

 

変身を解除した翼が声を掛けてきた

 

「…翼とか言ったわね。礼を言うわ……あなたがいなければ私は死んでいたわ」

 

「別に大したことはしてないよ……曹操」

 

「……華琳よ」

 

「え?」

 

「私の真名よ。華琳と呼びなさい」

 

「……わかった。ありがとう」

 

翼は後ろ向き

 

「どこに行くの?」

 

「敵本陣」

 

翼はそういうと偽劉備がいる方に向かった

 

「……華琳様」

 

「私たちも向かうわよ」

 

曹操一行も向かうのであった

 

 

 

 

「お!来たな」

 

「一刀も来たか」

 

一刀も合流した

 

「孫堅達はどうした?」

 

「後から来ると思う…久々の家族との再会だからな」

 

「そうか」

 

そうしている内に到着した

 

「おお、派手になってるね」

 

「大丈夫かなあいつ」

 

「大丈夫でしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七星壇の上では

 

「死ねや!御使い」

 

弩の引き金を引く

 

「……ふん」

 

簡単に躱す勇作

 

「これならどうだ!」

 

剣で切りかかる

 

「……」

 

軽く片手で掴み取る

 

「はぁ?!おま、おまええぇ!!?」

 

「ふん!」

 

覇気を纏った蹴りを食らわせ、後ろに飛ばされる偽劉備

 

「もう終わり?」

 

「なめんなあああ!!!」

 

更に撃ちまくる

 

「CRAZY STREAM」

 

全ての妖力弾が弾かれた

 

「なんだと!!」

 

「……来いよ」

 

勇作は偽劉備を挑発する

 

「ふざけるな!!」

 

偽劉備は勇作に向かって行く

 

「食らえ!!」

 

無数に斬撃を放ち、キリモミ回転しながら突進してくる

 

「MAGNUM STRIKE」

 

直線上に踏み込み、右の突きで斬撃を跳ね返し、左の突きで偽劉備をはじき返した

 

「ぐぉおお!!」

 

背中から叩き付けられる偽劉備

 

「MAGNUM BOOST」

 

六爪をプロペラのように回し飛行する勇作

 

「からのPHANTOM DIVE!!」

 

急降下し、一気に振り下ろす

 

「!!」

 

偽劉備は妖力で結界を作り、防御する

 

「……よく防いだね」

 

「くそ!くそ!くそおおおおおおおお!」

 

弩の引き金を引き、妖力弾を撃つ

 

「……あれ」

 

が、妖力弾が出ない

 

「なぜ出ない」

 

「……妖力が尽きたようだな」

 

「なんだと」

 

「お前の無限の妖力は、俺の右眼のおかげだと忘れたのか?それに大技に連発で妖力を消費していたからな。……考えもなしに使えば枯渇するに決まってる」

 

「そんな……」

 

 

「さあ、懺悔の時だ!貴様のせいで死んでいった、被害者たちの怒りや悲しみをその身に刻み込んでやる」

 

「たすけ……」

 

六爪の刀を連続の攻撃を行い、薙ぎ払いで偽劉備を吹き飛ばした

 

「行け!!」

 

五本の刀を吹き飛ばし偽劉備の背後に、巨大な蒼竜陣となって吹き飛ばした偽劉備を縛り付けるように動きを封じた

 

「う、動かない!!」

 

偽劉備は脱出しようともがくが動くことが出来ない

 

「……」

 

勇作は宝剣を構える

 

「俺が悪かった。助けてくれ!この命を懸けて償うから」

 

「……何言ってんだ」

 

勇作は全力覇王色の覇気を偽劉備にぶつける

 

「ひっ!!」

 

「貴様、今更そんなこと言った所で、遅いんだよ……貴様を倒すことが、俺の……天の御使いとしての役目だ」

 

「あ……ああ……」

 

「BASARA技!」

 

竜のような闘志に身を包み、一閃

 

「JUMPING JACK BREAKER!」

 

蒼竜陣が大爆発した

 

「ご主人様!!」

 

桃香達が近づいてくる

 

「………」

 

煙が晴れるとそこには

 

「………」

 

「がっ………あ……」

 

勇作と息絶え寸前の偽劉備がいた

 

「……ご主人様……大丈夫ですか」

 

「ああ」

 

勇作は無事だった

 

「(くそ!未完成だから、倒しきれなかった)」

 

「お……おのれ」

 

偽劉備が這いずりながら近づいてくる

 

「ご主人様、下がってください」

 

「お兄ちゃんに近づくな」

 

愛紗と鈴々は勇作の前に立つ

 

「……ん?」

 

すると偽劉備がいる地面が黒い液体があふれてきた

 

「なんだ……これは……」

 

そして無数の黒い手が現れ、偽劉備に群がる

 

「は、放せ……」

 

そして偽劉備の体が地面に沈み始めた

 

「(無様ですね)」

 

「この声は于吉!」

 

「(あなたは闇に引き込まれるんですよ。死ぬことが出来ず、永遠に苦しむことになりますよ)」

 

「助けてくれ」

 

「(私を裏切った罰です……さようなら)」

 

「あ……ああ……ああ」

 

絶望の表情を浮かべながら偽劉備は闇に沈んでいた

 

 

「………」

 

勇作達はそれを見届けるのであった

 



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第百三十七席 群雄、勝利を収めるのこと

「………」

 

「終わったの?」

 

「そうみたいですね」

 

「偽劉備を倒したのだ」

 

「……合図をだせ」

 

「はい!」

 

合図を出す桃香

 

 

「倒したようだな」

 

「だね」

 

下にいた一刀と翼が気付く

 

「……皆のもの!我らの勝ちだ!勝どきを上げよ」

 

 

 

曹操がそういうと一斉に勝どきが上がった

 

 

「(……終わった)」

 

その声を聴くと同時に勇作は倒れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

本陣の一つの天幕の外で不安の様子でいる桃香達

 

「ご主人様……」

 

「……愛紗ちゃん」

 

「華佗のおじちゃんがいるから大丈夫なのだ」

 

 

七星壇で倒れた勇作。そして今、天幕に運ばれ、華佗に診察を受けている

 

「それにしても、華佗殿と一緒に入っていった二人は一体?」

 

「一人は曹操殿、もう一人は孫策殿を救ったそうですが」

 

「何者なのでしょう?」

 

「気になるのか?」

 

「はい……何もなければいいのですか」

 

そう思っていると華佗が出てきた

 

「華佗殿!ご主人様は!!」

 

「命に別条はない」

 

「本当ですか!!」

 

「ただ少しの間は安静にしておかないとな」

 

それを聞いて安堵する桃香達

 

「それであの二人は?」

 

「まだ中にいる……調べたいことがあるって」

 

「調べたいこと?」

 

すると一刀が出てきた

 

「貴方は確か……」

 

「北郷だ……聞きたいことがある」

 

「なんですか?」

 

「偽劉備の最後を見たのは誰だ?」

 

「私と愛紗ちゃんと鈴々ちゃんです」

 

「どんな最後だった?」

 

「ええと、なんか黒い水たまりに飲み込まれて」

 

「死んでか?」

 

「いいえ、まだ生きて」

 

「なんだと!!」

 

大きな声だし驚く北郷

 

「それは本当なのか」

 

「え…その……」

 

「答えろ!!」

 

「はいぃ!!間違いなく生きてましたぁ!!」

 

怯えながら答える桃香

 

「まじかよ……」

 

そういうと天幕に戻っていった

 

「姉上!大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ」

 

「いったい何なのだ?」

 

「嫌な予感がします」

 

「……朱里」

 

「我らも天幕に」

 

そういうと桃香達も入っていた

 

 

 

 

「おい……それまじかよ」

 

中に入ると二人が会話していた。桃香達に気付かず

 

「ああ、間違いない」

 

「……そういうことか。……どおりで」

 

「……なんて説明する。劉備達そうだが、こいつにも」

 

「お前の力で何とかできないの?」

 

「出来るならとっくにやっているよ」

 

「そうか」

 

「……やむを得ないな、天の国に連れていくしかないだろう」

 

「やっぱりそうなるか」

 

その言葉に驚愕する桃香達

 

「おい!」

 

「「っ?」」

 

二人が後ろを振り向くと、愛紗が偃月刀を構えていた

 

 

「貴様ら!今のはどういう意味だ!!」

怒りの形相で二人を睨み付ける愛紗

 

「待ってくれ!」

 

「貴様らが何者か知らないが、ご主人様に近づくことは許さん!!」

 

「ちょっと落ち着いて」

 

「黙れ!」

 

完全に頭に血が昇りきった光の無い瞳をしている愛紗には届かなかった

 

「ちょっとこの人を止めて……え?」

 

一刀は周りに助けを求めるが

 

「それなら」

 

「説明を」

 

「してください」

 

「お兄ちゃんは渡さないのだ」

 

星、翠、紫苑、鈴々が武器を構え、威圧していた

 

「(やばいどうすれば…)」

 

 

「「いい加減にしなさい!!」」

愛紗を止めたのは意外な人物だった

 

「曹操殿!?」

 

「そんな武器を振り回して、周りが見えていないの?貴方達は」

 

「うぐぅ……」

 

「関羽の剣を収めて頂戴……貴方達も」

 

「孫策殿」

 

「わかったのだ」

 

そういうと武器を収める

 

「いったいどういう状況なのこれは」

 

「実は……」

 

朱里が説明をする

 

「つまり、そこの二人が貴方達のご主人様を天の国に連れて行こうとしたのね」

 

「はい、それで私も含め、皆さんがあの状態に」

 

曹操は二人の方を見る

 

「それで、貴方達は何者なの?それとさっきの言葉の意味は?」

 

「その方が、早いかもな」

 

「……俺は北郷一刀、こいつは紅翼」

 

「そこにいる高杉勇作と同じ天の国から来たものだ!」

 

「「…………ええええええぇぇ!!!!!」」

 

一同は驚愕した

 

「貴方達も、天の御使いってことになるの?」

 

「御使いなんて大げさだよ。同じ国の出身ってだけだから」

 

「それで、貴方はどうしてこの世界に来たの?」

 

「高杉の師匠に頼まれたからだよ」

 

「ああ、高杉に掛かっている呪いが天の国にも少し影響がでているから…なんとかしてくれって」

 

「それで俺たちが来たわけ」

 

「まあ、大方可愛い弟子を援護してくれってことだと思うけど」

 

「俺もそう思う」

 

「なるほど……貴方達の目的は分かったわ」

 

「けど、なぜそれがご主人様を連れて行くことになるの」

 

「まだ解けてないんだよ…呪いが」

 

「「「「「「え?」」」」」」」

 

「まだ呪いは消えていないんだ」

 

「消えていないって、偽劉備は倒したから…ご主人様の呪いは解けるはずじゃあ」

 

「それは違うよ」

 

「え?」

 

「呪いが解けるのは偽劉備が死んだ時だ!」

 

「けど、貴方達は言ったよね。偽劉備はまだ生きていた。それで消えたって」

 

「……」

 

「話を聞く限り、偽劉備は永遠に苦しむだろう。あいつにはふさわしい罰だからな」

 

「だがそれにより、呪いを解く機会を永遠に失ってしまったってことだ」

 

「……そんな」

 

「なんとかならないのですか?」

 

「はっきり言うけど、無理だ!」

 

「悪いが、劉備の持っている宝剣をでも呪いを解くことはできない。もう天の国に戻る以外に方法はない」

 

「そんな」

 

その言葉に地面に座り込んでしまう桃香

 

「……るな」

 

「ん?」

 

「ふざけるな!!」

 

愛紗が怒鳴った

 

「そんなことが信じられるか!!」

 

「落ち着けよ」

 

「これが落ち着いていられるか!!ご主人様の呪いが解けていないなんて!!」

 

「気持ちは分かるが、事実だ」

 

「黙れ!!」

 

「愛紗ちゃん!ダメです!!」

 

「止めるな朱里!私は信じないぞ!!」

 

「関羽」

 

「なんだ!」

 

「お前がどう思おうが勝手だけどよ……このままほっておげば、高杉は偽劉備と同等あるいはそれ以上の虐殺をするんだぞ」

 

その言葉に皆が驚愕する

 

「それはどういう事ですか!?」

 

「この呪いはいずれは高杉の意識を支配する。そうなれば敵味方区別なく、襲いかかり目に映る全てを破壊しようとする怪物になる。そうなったらもう止められない」

 

「そ……そんな」

 

「けど、皆の力を合わせれば」

 

「出来ると思うか」

 

「え?」

 

「あんた達は一番よく知っているだろう、こいつの強さを……そして経験しているはずだ。暴走してどうなったか」

 

「経験ってどういう」

 

「劉備さんは知らないだろうけど、一度怪物みたいに暴れたんだよ。そして関羽たちにも襲い掛かったからな」

 

「襲い掛かって、そんな覚えはないのだ」

 

「忘れたのかよ!高杉が5千人の賊を返り討ちにした時のことを」

 

「「「「「!?」」」」」

 

一刀の言葉に、愛紗、星、翠、紫苑、鈴々は思い出しだ(第四十七席)での出来事を

 

「方法はわからないが…その時は、高杉の師匠が何とかしたみたいだけど、今度はそうはいかないからな」

 

「お前らだっていやだろう!大切な人が、仲間が、友人が、家族が、罪のない人々が目の前で虐殺する主の姿が!!」

 

「っ!!」

 

「そんな……」

 

「そんなことに……」

 

「そんなの嫌なのだ」

 

「ご主人様ぁ……」

 

「だから俺たちが来たんだ!」

 

「天の国に連れていけば呪いを解いてやることが出来る。信じてくれ」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

しばらく沈黙が続いた

 

「どれくらい掛かるのですか?」

 

「ん?」

 

桃香が聞く

 

「ご主人様の呪いが解けるにはどれくらい掛かるのですか」

 

「……」

 

「2年」

 

「えっ!!」

 

「約2年は覚悟した方がいい」

 

その時間に驚愕する桃香達であった

 




次回最終回

12月31日に投稿予定



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第百三十八席 勇作、旅立つのこと

最終回です

では、どうぞ


「2年だと…」

 

「貴様、ふざけているのか…」

 

「ふざけて言っていると思うか!」

 

「しかし2年って」

 

「それぐらいこいつに掛かっているんだよ呪いを解除するには」

 

「そんな……」

 

「……4日の昼に高杉を天の国に連れていていく。別れを済ませてくれ」

 

「そうだ…孫策さん」

 

「何?」

 

「貴方の母親も4日の昼に消えるから、覚えておいて」

 

二人が天幕から出ようとした時

 

「待って」

 

勇作が目を覚ました

 

「ご主人様!!」

 

愛紗達が駆け寄ってくる

 

「大丈夫なのですか?」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

「ご主人様……その」

 

「言わなくていい。さっき聞いてた」

 

「……ご主人様」

 

「はあ…情けないな。俺がちゃんとやっていればこんなことには」

 

「そんな主のせいでは…」

 

「いや…俺の責任だ…俺の未熟がこんな結果になったんだ」

 

「ご主人様」

 

「皆に話したいことがあるだから」

 

「わかった。俺たちは出で行くよ」

 

「すまない。それと翠」

 

「なんだ?」

 

「たんぽぽ達も呼んできてくれ」

 

「わ、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして

 

「連れてきたよ」

 

翠がたんぽぽと焔耶を連れてきた。さらに

 

「「ご主人様!」」

 

「高杉殿」

 

そこに雛里と璃々と庄屋もやってきた

 

「雛里ちゃん」

 

「璃々!!」

 

「庄屋殿!!なぜここに」

 

「実は、ある人物が来て、この子と一緒にここに来てくれって伝言をもらいましてな」

 

「私も同じです」

 

「ある人物?」

 

「ねえ、お母さん…ご主人様どうしたの?」

 

「璃々……その」

 

「ちょうどいいや…実はね」

 

勇作はこれまでのことを説明する

 

「え?ご主人様いなくなる!?」

 

「ああ」

 

「嫌!絶対嫌!!」

 

「でもね、仕方がないんだよ」

 

「なんで?どうして?」

 

「お母さん、本当なの」

 

「ええ」

 

泣き出す二人

 

「うっぐぅ……ひっく……」

 

「本当にごめんな」

 

「……ご主人様」

 

「なんだ?」

 

「……また会えるよね?」

 

「もちろんだよ」

 

「……約束してくれる?」

 

「ああ、約束する」

 

「そっか……うん!ならいいや!」

 

「璃々?」

 

「だってご主人様がそう言うなら信じる!」

 

「ありがとう」

 

「皆も待ってくれるよね」

 

「もちろんです!」

 

「もちろんなのだ!」

 

「当然です」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

「わかりました」

 

「たんぽぽも信じる」

 

「私もだ」

 

「私も信じます」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

「どうやら大丈夫らしいな」

 

「そうだね」

 

「さて、あいつの武器の修理でもするか」

 

「出来るのか」

 

「魔王に不可能はないよ」

 

 

 

 

こうして戦いが終わった

 

 

 

 

翌日

 

「いい手つきですね」

 

洛陽では宴会が行われていた

 

「まあ、昔とって杵柄というやつじゃな」

 

何進が猪を捌いている

 

 

「ついにあんたと決着をつける時がきたようね」

 

「おっぱい十番勝負…受けてたつのだ!」

 

尚香と鈴々がヒートアップしていると

 

「あらあらどうしたの?」

 

「なんや喧嘩か?」

 

「駄目ですよ。なかよくしないと」

 

紫苑と李典と陸遜がやってきた

 

「どうやら今は互いに争っている場合ではないようね」

 

「そうなのだ!鈴々達が戦うべき本当の敵はほかにいるのだ」

 

そういうと握手する二人

 

 

「みなさんお待たせしました!祝勝会の目玉!張三姉妹と袁術!張勲!郭嘉!加えて大橋と小喬と南蛮部族達による特別舞台を執り行いたいとおもいます!」

 

盛り上がる会場

 

「あれ、もしかして焔耶も歌いたかったりして」

 

「馬鹿なことをいうな…私はただちょっといいなと思っただけだ」

 

「「「みんな今日は楽しんでいってね」」」

 

「「それでは歌います」」

 

「童たちの歌を聴くのじゃ」

 

 

そうやって祝勝会は大いに盛り上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして別れの時

 

「シャオ…泣くな」

 

「蓮華姉様だって泣いてるくせに」

 

「だらしないわよ…ふたりとも」

 

「姉様だって泣いているわ」

 

「しょうがないよ…母様にはもう会えないんだから」

 

孫堅との別れに涙を流す孫家の一同

 

「たく」

 

孫堅は娘たちを抱きしめる

 

「世話の掛かる子達だぜ」

 

そういう孫堅の目も赤くなっていた

 

 

 

そして

 

「もう行くのですね…ご主人様」

 

「ああ」

 

「大丈夫か…桃香」

 

「大丈夫ですよ…私はご主人様の右眼です。それに一人じゃあないのですから」

 

「そうだったな、すまない」

 

「だからしっかり治してくださいね」

 

「わかった」

 

「絶対ですからね!約束ですよ!」

 

「……信用ないな」

 

「……だって」

 

「……それじゃあ」

 

勇作は羽織っていた青いロングコートを桃香に羽織らせる

 

「これを桃香に預ける。俺の大切なコートだ!頼んだよ!もう一人の大将!」

 

「………はい!」

 

涙を流しならがも力強く返事をする

 

 

「愛紗!鈴々!星!翠!紫苑!朱里!」

 

「「「「「「はい(なのだ)!」」」」」」

 

勇作は刀を一本ずつそれぞれに渡す

 

「俺の爪を預ける。それを使って桃香を守ってくれ。頼んだよ」

 

「わかりました!ご主人様」

 

「わかったのだ!お兄ちゃん!」

 

「主……御意!」

 

「おう!」

 

「おまかせてください!」

 

「承りました…ご主人様!」

 

 

 

 

「そろそろいくよ」

 

翼と一刀がやってきた

 

「一刀!」

 

「ん?」

 

「礼を言うよ!貴方のおかげで母様に会えた」

 

「礼なら翼に言え!こいつのおかげだからな」

 

「それでも感謝する」

 

「(一刀の奴、いつの間に孫家の人たちの仲良くなったのかな。それに…)」

 

翼は勇作を見る

 

「(心なしか高杉の奴、若干げっそりしてる上に、劉備達はスッキリしているような気がするけど…まさかね)」

 

翼がそう考えながら、銀色のオーロラカーテンを出現させた

 

「さあ、行くよ」

 

そういうと一刀と翼、そして孫堅と勇作に向かって行く

 

「あばよ!」

 

「行ってくる!」

 

そういいながら歩いていき、通ると同時に消えた

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫なの…あなた?」

 

曹操が桃香達に声を掛ける

 

「大丈夫ですよ……約束しましたから」

 

「強いわね」

 

「強くないですよ…私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして戦いは終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2年後に勇作は桃香達と再会する。桃園の地にて




予定より遅れてすいませんでした

しかし無事に完結することができました

楽しみ読んでいただきありがとうございました!

これにて完結です

応援ありがとうございました


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