IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 (無限の槍製)
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始まる戦い
第1話 プロローグ


どうも 無限の槍製 です。

今日はレーザーが人型になった記念でこの小説を始めました。まあレーザーが好きなだけです!!

それではスタートです!


IS

 

それは突如として広まった……まあパワードスーツだ。それは女性にしか扱えない。

 

勿論自分は男なんで、それは使えない。

 

使おうとも思わないが。

 

それでも誰かが使えって言えば……いややっぱり使わない。代わりに、

 

『爆走バイク!!』

 

「変身!」

 

仮面ライダーになるだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「っ……何処だここ」

 

おかしい。俺は千冬姉のISの試合を見ていたはず。なのにこんな真っ暗な倉庫にいるなんて。もしかして誘拐されたのか!?

 

「目が覚めたか坊主」

 

俺に声をかける男。みるからにテロリストのように武装している。間違いない。俺は誘拐された。

 

「騒ぐなよ。ここで騒いだら化け物に見つかる」

 

「化け物?お前ISを化け物って言ってるのか。それとも千冬姉か」

 

「それよりも怖え化け物だ。特撮に出てくるやつだ」

 

特撮。勿論それはわかる。要は悪の組織みたいなやつ。そんなやつがいるのか?いいや嘘だ。そんな非現実的なやつはISだけで充分だ。

 

でもこの男の言うことは事実かもしれない。そんなことを思う俺もいた。

 

「せめてこの小僧とお宝だけでも」

 

「お宝?」

 

「そうだ。長野の石櫃からパクって来た遺物だ。はるか太古のな」

 

長野?日本の長野県からパクって来たのか?そして俺を誘拐した?わけがわからない。

 

「そっからどうして俺を誘拐することに繋がるんだよ」

 

「誘拐?ああそうか、お前は誘拐されたのか」

 

「?どうも引っかかる言い方するな」

 

「いや、お前を誘拐したであろう奴らは全員殺されたからな」

 

「は?」

 

殺された?誰に?化け物にか?いやコイツが殺したのかもしれない。

 

「俺はお宝を持って家に帰る途中で偶々ここに寄ったんだ。そこで倒れてたお前を連れてあの化け物から逃げてるってわけだ」

 

「それじゃあ化け物ってのは」

 

その瞬間だった。倉庫の扉を破壊して入って来た化け物を見たのは。

 

「あいつだ」

 

蜘蛛の姿をした化け物。あんなグロテスクな化け物は特撮にはいない。どちらかというとパニック映画に出てくる人を喰い殺すクリーチャーだ。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」

 

「言葉を喋れ化け物!」

 

男がマシンガンで応戦する。それでも止まらない。いや化け物には効いていないのだ。

 

「チッ!おい小僧!俺が時間稼ぐからお宝持って逃げろ!」

 

「はあ!?あんたは!」

 

「あとで追いかける!いいな、絶対にお宝を腰に巻くなよ(・・・・・・)!」

 

化け物が走ってくる。まだ逃げられる。この男が足止めしてくれる限り。早く逃げないと俺も死ぬ。あの化け物は簡単に人の命を奪う。

 

「早く行け!!」

 

「………ありがとう」

 

ちょうど空いていた穴から逃げる。逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて。

 

「ハァ……ハァ……っ」

 

でも現実は非情だ。蜘蛛の化け物は俺の前に立ちはだかった。もう逃げられない。

 

戦う?いいや無理だ殺される。

 

逃げる?逃げられないって言っただろ。

 

助けを求める?誰もいない。

 

奇跡を信じる?……いいや奇跡は自分で起こすものだ。

 

『腰に巻くな』あの男はそう言った。それは腰に巻けば何かあるからだ。ならそれにかける。

 

木箱から遺物を取り出す。形はベルトのようだ。確かに腰に巻ける。一か八かの勝負だ。

 

命の危機を感じた時、人は何をするかわからない。俺は腰にベルトを巻く。そして俺は、

 

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎!?……クウガ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クウガに変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが少し前の話だ。

 

 

そして現在

 

「なんでさ……」

 

説明を省くが俺はISを動かしてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あーあダルいダルいダルいったらありゃしない」

 

目の前には大量の列。全部男だ。

 

「自分にゃ関係ないと思うんだけどなぁ」

 

近くのベンチに腰を下ろす男。大人びた風貌だがこれでも中学三年生。もう高校一年生だ。しかも入学先も決まっている。

 

「ほんとめんどくさいことしてくれたねぇ」

 

九条桐也。アロハシャツに革ジャンにダメージジーンズ。しかもサングラス。まるで不審者だ。

 

「列長いし男ばっかりだし。中のIS関係者はオバサンばっかり………帰るか」

 

つい先日、男がISを動かしたとニュースになった。そこで政府は『他の男も動かせるんじゃね?』という理由でこのような検査を行っている。

 

検査は簡単。ISに触ればいい。それで動くか動かないかが分かる。

 

「帰って『マイティアクション』の続きでもするかねぇ」

 

呑気に家に戻るキリヤ。しかしこの時気付いていなかった。

 

街に『未確認生命体』が現れたことに。




初めは短め。次回はレーザーに変身です。

この小説は作者のfateの方を優先しているのと、仮面ライダーエグゼイドの進み具合で更新がかなり遅いです。

それでも読んでくれると嬉しいです!ではsee you next game!


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第2話 変身 〜Level1〜

初変身!といっても最後の方!


3月20日 PM02時00分

 

「それでは行ってきます社長」

 

「うん、頼んだよ木綿季くん」

 

幻夢コーポレーション社長室。社長室とは到底思えないその部屋から出た私=更式(さらしき)木綿季(ゆうき)はそのままとある場所を目指す。

IS学園。その名のとおりIS〈インフィニット・ストラトス〉について学ぶ学校。私の知り合いの二人もあそこで教師をしており、また学生である。

 

「千冬……元気かなぁ」

 

織斑千冬。ISの世界大会で一度優勝している、まさに世界最強(ブリュンヒルデ)を名乗るのに相応しい。しかし二度目の大会で優勝することはなかった。

千冬の弟である織斑一夏が誘拐されたのだ。一夏くんはその後遠く離れた工場跡地にて発見された。発見時重傷だったがその2日後には完治していた。

 

『さすがブリュンヒルデの弟!』『てか医療機関がヤバすぎる件について』『最近出回ってるクモのバケモノの映像wwww』などなど

 

ネットの反応はこんなものだった。しかし一夏くんは更に世界中の目を集めることになる。

 

世界で初めてISを動かした男性になってしまったのだ。

 

流石にこれには世界中が驚いた。どこぞの社長は社長室で笑い転げたらしい。うちの社長だけど。

一夏くんは身柄保護、ならびにISの勉強の為に無理矢理IS学園に放り込まれたのだ。

社長はそんな一夏くんにプレゼントをあげるらしい。その為プレゼントを渡す為に私はIS学園に向かっているのだ。

 

(一夏くんまだ入学してないのにいいのかな……)

 

そんな不安をよそに私はタクシーに乗り込んだ。

 

 

そしてあの出会いはその5分後に起きる。

 

「車進みませんね〜」

 

『タドルクエスト』を遊んでいた私に運転手が話しかける。ゲームに夢中で気づかなかったけどタクシーはさほど進んでいなかった。というよりは渋滞したままだ。クラクションがうるさいほど聞こえる。

 

「このままだとあと30分はかかるかなぁ」

 

「30分ぐらい構いませんよ。特に急いでいないので」

 

嘘だ。社長には『寄り道せずに千冬君に渡してくれ』と念を押されている。少しは秘書を信じてほしいものだ。

 

『ここで緊急ニュースです。先ほど未確認生命体と思われる怪人が目撃されたと情報が入りました。危険ですので屋外には出ないようにしてください。繰り返します…』

 

「未確認出たみたいだね。どうするお客さん、そこらの店に入るかい?」

 

「未確認が屋内へと入らない保証はありません。いざという時は全速力で逃げてください」

 

本当に危ない時は私が……

 

「ん?進み始めたね」

 

タクシーは前に進み始める。私はゲームに集中するためにイヤホンをつける。

が、次の瞬間全身に衝撃が走る。

 

「っ!?ちょ、ちょっと運転手さん?」

 

「………」

 

反応がない。ただの屍のようだ。そんな風に思いながら運転席を覗き込む。そこには口から血を流しながら絶命している運転手がいた。

 

「!!って律儀にアクセル全開ですか!?」

 

タクシーはスピードを上げ続ける。このままだとビルに激突してしまう。というよりもう目の前だった。

すぐさまタクシーから飛び出す。タクシーはそのままビルに激突するが、どうやら怪我人はいないそうだ。

 

「どうしていきなり……まさか未確認?」

 

「ソウ、ソノ未確認ダ」

 

不気味な声のした方を見る。そこにはコウモリの姿をしたバケモノ、いや未確認生命体3号がいた。現時点で未確認生命体は13号まで現れている。その中でも2号と3号が未だ活動している。それ以外は2号が撃破したらしい。

 

「リント ノ 言葉 ムズカシイ。ギサギサグス(イライラする)!」

 

「ここは日本です。日本語で話して」

 

未確認を挑発する。悪いがこちらには切り札がある。負けるつもりはない。

 

ギベリント(死ね人間)!」

 

「おっとなにやってんの?おたく」

 

未確認を蹴り飛ばす一人の男。アロハシャツに革ジャン、ダメージジーンズにサングラス。完全に不審者だが……

 

「女の子に詰め寄るなんて案外ゲスいんだな未確認様も」

 

「なにやってるの!早く逃げなさい!」

 

「そうもいかないんだよねぇ。新しいゲームの予感がしたからさ。例えばその鞄!なんか入ってんじゃないの?」

 

「っ!それは企業秘密よ、ってなに開けてるのよ!」

 

「ふーん……これはゲームガシャット?それに…ベルトのバックルか」

 

これでベルトのバックルって分かるの?天才?私は初めて見た時新しいゲーム機かと思った。いや新しいゲーム機であっている。それを見抜けるこの人は…天才だ!

 

「すみません社長、このゲーマドライバー、この人に託します」

 

「ん?なに言ってんの?」

 

「これを腰に巻いてライダーガシャットをドライバーに差し込んで!」

 

「は?なに、ライダーガシャット?」

 

「ほら早く!」

 

割と勢いだが問題ないよね。男の腰にゲーマドライバーを装着させてライダーガシャットをベルトに差し込む。しかし……

 

「あれ?なんで?なんで変身しないの?」

 

「いや落ち着けって、未確認もういないんだからさ!」

 

「え?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

未確認3号が逃げた先は廃工場だった。思わぬ乱入者、突然の攻撃、そしてそれが思った以上にダメージがあったこと、どれもこれも想定外だった。

奴に黙ってゲームをしていることがバレては自分の存在が危うくなる。これ以上目立つ前に立ち去らなくては。

しかしそんな行く手を阻む者が二人いた。木綿季と桐也だ。

 

「ほらいた。やっぱり2ちゃんは役に立つね!」

 

「デマが多いんだからあんまノせられんなよ?」

 

桐也の腰にはゲーマドライバー。手にはライダーガシャットを持っている。既に木綿季から手解きは受けている。

 

「んじゃノッてくか」

 

『爆走バイク!』

 

桐也が『爆走バイクガシャット』の電源を入れる。そしてそれをゲーマドライバーに差し込む。この時桐也は新たなステージに立つことになる。

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイム ア カメンライダー!!』

 

「これが……社長の作ったライダーシステム…」

 

そして桐也の姿は………

 

「おいおい、これが仮面ライダーなのか?」

 

仮面ライダーレーザー《バイクゲーマーレベル1(二頭身のゆるキャラ)》に変身した。




更式 木綿季
更式は誤字にあらず。
2ちゃんとかゲームとかアニメ視聴とか趣味。幻夢コーポレーション社長秘書。かなり思い切った行動に出ることも。


とまあオリ主と原作主人公よりも先に紹介されるオリキャラでした。

次回は初バトル。あと桐也が木綿季と出会うまでの出来事。そしてクウガとレーザーが出会う!といった感じです。

ではSee you Next game!


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第3話 出会う2人のRider

まさかゾンビ社長に殺されるとは……しかしあれが最後のレーザーとは思えない!きっと蘇ってくれる!だってゲームでしょ?え、しない?それなんてSAO?

今回はレーザーとクウガが出会う!


3月20日 PM02時30分

 

「それじゃあノッてくぜ!」

 

未確認生命体3号に開幕ドロップキックを叩き込む。前から足技には自信があったけど、ここまで吹っ飛ぶとはな。

 

「オラオラ止まらないよぉ〜!」

 

「グ、グギギギギ!!」

 

「そぉらよ!!」

 

武器である車輪で未確認の喉を潰す。そのまま止まらずに攻撃し続ける。ここまでサクサク進んでると本当に楽だなぁ。

 

「そろそろ決めさせてもらうぜ」

 

「ガシャットを腰のスロットに差し込んで!」

 

ガシャットを引き抜き腰のスロットに差し込む。スロットにボタンがあるからこいつを押せばいいんだな。

 

「もう一回押して!」

 

「なるほどね。今のはチャージってわけ」

 

もう一回ボタンを押す。特に変化はないが、フェイクってわけか?

 

「そらトドメだ!」

 

未確認にスクリューキックを叩き込む。ドラム缶を吹き飛ばしながら飛んでいく。そんで引火したのか大爆発を起こす。

 

ってオイオイ未確認速攻で死んだけどいいのかよ!?

 

 

「いや凄いわ。まさか初めての変身で未確認を倒すなんて」

 

「いやいや、おたくもいい指示出してくれたよ。まあ必殺技の時だけだけどな」

 

「あははっ。でも未確認を通常攻撃とスクリューキックで倒すなんて凄いわ!他のライダーとは大違いね」

 

「他?」

 

「ええ。あ、そういえば貴方どうしてあの時私を助けてくれたの?」

 

「あの時?まあ話せば長くなるんだけど」

 

 

(ん、メールか)

 

家に帰ろうとした自分がどうして街に行ったのか。それは一通のメールだった。簡潔な内容で書かれており送り主は『社長』と書かれていた。

 

『君に贈り物がある。ここまで来てくれないかな?』

 

写真の場所は都内の割とデカめのビルだった。このまま誘いを断るのもアレだったから、自分はその誘いにノッたわけ。

 

 

「そしたらあんたが襲われてて、自分がそれを助けたわけ」

 

「それって……そのメール見せてくれる?」

 

「え?ああ、うん」

 

メールを見せる。その途端顔が険しくなり急いで電話をかける。なんとなーく誰にかけたか分かるような。

 

「社長!どうして見ず知らずの人を巻き込むんですか!!」

 

「ああ、やっぱり」

 

『巻き込むも何も彼がそこに行ったのだろう?ならそれは彼の自己責任だ。私に非はないよ』

 

「何バカなこと言ってるんですか!!もし適合者じゃなかったら死んで……あ」

 

『やっと気づいたかい?そう彼は仮面ライダーの適合者だ。そこにまだいるんだろ?ちょっと変わってくれないかな?』

 

「……不本意ですが分かりました」

 

自分に携帯を差し出してくる。どうやら社長さんと話さなきゃいけないみたいだ。

 

「はいはいお電話変わりましたよ?」

 

『やあ初めまして。私が幻夢コーポレーション社長の檀黎斗だ。秘書の木綿季くんがお世話になってるね。今回は君に折り入ってお願いがあるんだが……』

 

「社長さん?」

 

「ちょっと!あれって……」

 

木綿季が指差す方向には別の未確認生命体が立っていた。しかもその姿はテレビを見ているやつなら誰でも知っている。

 

「未確認生命体……」

 

「2号……」

 

「………あのー」

 

そんな未確認2号から声をかけて来た。どうする?

 

▶︎話を聞く

ぶっ飛ばす

逃げる

ノリにのってるねぇ!

 

「ここにコウモリみたいな未確認生命体来ませんでしたか?」

 

「それならさっき自分が倒したよ」

 

「本当ですか!!いやー俺以外にも未確認と戦ってくれている人がいるなんて!嬉しいです!名前教えてください!」

 

「(教えて大丈夫なの?)」

 

「(きっと大丈夫……なはず)」

 

「あ、俺未確認2号とか言われてますけどちゃんとした名前あるんですよ。クウガって呼んでください」

 

クウガ。それが未確認2号の本当の名前か。案外カッコいい名前じゃないか。もう少し角が長くて色が赤だったらもっとカッコいいんだが。

 

「仮面ライダーレーザー。それが自分の名前。まあ今日が初乗りなんだけどさ」

 

「仮面ライダー……いいですね!俺も仮面ライダークウガって名乗ろうかな。あ、もしよかったら拡散してくれてもいいですよ!クウガって名前全然浸透しなくてさ」

 

「OKOK分かった分かった。気が向いたらな」

 

「よろしくお願いします。あ、今回はご協力ありがとうございます!メアド交換したかったんですけど今日携帯持って来てないんですよ。まあメアドはまた今度ってわけで」

 

「OK。まあそん時はやりあうことなく終わればいいがな」

 

未確認2号、もとい仮面ライダークウガはそのまま走って帰っていった。バイクとかなら様に去るんだけどなぁ。

ガシャットを引き抜き変身を解除する。うーんなんか肩が痛い。

 

『それで、終わったかい?』

 

「え?ああスミマセン社長。また変わります」

 

「なーんか未確認と友達になりましたよ社長さーん。こうなるって分かってたんじゃないの?」

 

『さあなんのことかな。それより話を戻そう。君にお願いというのはだね、君にはIS学園に入学してもらい特殊部隊に入ってもらいたい』

 

 

「よかったの?あんな簡単に答えを出して」

 

「まあね。ぶっちゃけ進学先に不満がなかった訳じゃないし。どうせなら女の子がたくさんいるところの方がいいからさ」

 

「………思ったんだけど貴方って女好き?」

 

「別に?男より女のほうが好きなだけだよ」

 

「それを女好きって言うんだけど……そういえば貴方の名前を聞いてないわね。私は更式木綿季よ。幻夢コーポレーション社長秘書を務めているわ」

 

「自分は九条桐也。この春高校生だよ」

 

「え?高校生?この春?」

 

「おう」

 

「てっきり大学生かと」

 

どうやら自分は大学生に見られてたみたいだ。まあ悪い気はしない。木綿季もかなり可愛い部類だ。でも薄ーく水色の髪が見えるけど……あれが本当の色かな?

 

「今日は送っていくわ。タクシーでも」

 

「いいよ別に。すぐそこだから」

 

「なら夕飯ぐらい奢るわよ」

 

「いいって。カップ麺あるし」

 

「もしかして一人暮らし?ずっとカップ麺なんてダメよ!なんと言おうと今日は貴方の家に行くわよ!」

 

いや自分としては大歓迎なんだけど……なんていうかこういう時にはヘタれるのやめたいぜ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「グ、グギギギギ」

 

未確認3号《ズ・ゴオマ・グ》はまだ死んでいなかった。命からがらあの爆発から生き延びたのだ。そしてゴオマはとある女に踏まれていた。

 

「………」

 

ボゾガ・ギダギ(喉が痛い)!……」

 

「ここではリントの言葉で話せ」

 

更に力を込めて踏みつける。ゴオマは泣き叫ぶがその表情はどこか嬉しそうだった。

 

「リュウチョウ 二 ハナセル オマエ ダケ」

 

「お前も中々話せるじゃないかバヅー」

 

今度現れたのはバッタの未確認生命体《ズ・バヅー・バ》。その後ろにはガムを噛む女が壁にもたれている。彼女も未確認生命体だろう。

 

「次はお前かバヅー」

 

「デモ ペナルティ ダロ?」

 

「そうだ。次のゲゲルは四月だ。それまで待機していろ」

 

「オマエノ セイダゾ!ゴオマ」

 

ギダギ(痛い)ーーーー!!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふう……」

 

変身を解除して家に入る。大丈夫だ。誰にもバレてない。

 

「って千冬姉帰って来てたのか」

 

「ああ一夏。おかえり&ただいま」

 

「ただいま&おかえり。晩ご飯食べるの?」

 

「いやもうすぐ出るよ。それにしても女一人連れ込まんとはな。お姉ちゃんは悲しいぞ?」

 

「何期待してるんだよ千冬姉。次はいつ帰るの?」

 

「どうだろうな……また忙しくなるし、とりあえず予定は未定だ」

 

「そうか」

 

また忙しくなる……多分俺のせいかな。千冬姉の仕事は知らないけど多分俺のことで色々と対応してくれてると思うし。

 

それに俺が未確認、いや仮面ライダークウガだってバレたら更に大変なことになる。その時は黙ってここからいなくなろう。

 

それにしても仮面ライダーレーザーか……

 

「友達になれるかな、あいつ」

 

そんなことを呟きながら、夕飯の準備をする俺だった。




更新遅くついに年末になってしまった。今後もこのペースです!

次回は一気に入学までとびます。やっとこさヒロインズを出すことができる。オラワクワクすっぞ!

ではSee you Next game!


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1学期 〜New HERO〜
第4話 学校 〜Admission〜


こっちは今年初です。学園始まるよー!


4月3日 (月) AM08時50分

 

「全員揃ってますかー。揃ってますね。それじゃホームルームを始めますよ」

 

黒板の前に立つのは副担任の『山田真耶』先生。下から読んでも『やまだまや』。うん、なんとも言えない。

そんな山田先生が何か話している。しかし教室には変な緊張感に包まれて誰からも反応がない。山田先生涙目である。それも仕方ないような気はするが。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介してもらおうかな。出席番号順で」

 

うろたえる先生。反応のない生徒。山田先生に精神的ダメージ!山田先生のライフはもうゼロよ!

なんてことも言っていられない。なぜなら。

 

俺ともう一人以外、クラスメイトが女子なのだ。しかももう一人男がいたなんて知らないぞ!?てかなんで制服じゃないんだ!?なんでアロハシャツなんだ!?なんで教室でサングラスかけてるの!?

 

(いろんな意味で……キツイな)

 

そんな不審者同然の奴にも視線が集まっているが、当然俺にも視線の雨あられ。俺のライフもゼロになりそうだ。

だいたい席も悪い。真ん中プラス最前列。こんなとこ真面目な奴に座らせろよ!目立つんだよ!アロハ兄さんは後ろの方なのに!

 

「織斑くん?」

 

「え?あ、はい!」

 

「大丈夫?自己紹介が次だったからね」

 

「あ、そうですか。すいませんボーッとしてて」

 

自己紹介。これを失敗すれば三年間高校生活をぶっ壊すことになる。ウケ狙いで1発ギャグでもしてみろ。それこそ三年間ボッチルートまっしぐらのデッドエンドだ。

 

「えー…織斑一夏です。趣味は………」

 

ヤバイ。勢いで趣味は、なんて言いだしてしまった。なんか周りの女子が目をキラキラさせている。

 

「……ぼ、盆栽…です。以上です」

 

『…………』

 

「(な、なんだこの沈黙は)ええっと、」

 

続けて話そうかと迷ったその瞬間、背後に寒気を感じる。

 

「何が盆栽だ。盆栽などしたことなかろうに」

 

「げえっ、カードキャプター?」

 

「さくらだよ!って違うわバカ!」

 

まさかのノリツッコミ。みろよ若干女子が引いてるぜ。これがドン引きってやつだ。てか……千冬姉ってこの学校の先生だったのか。

 

「もう会議は終わられたんですか織斑先生」

 

「クラスへの挨拶を任せて悪かったな山田君」

 

「いえいえ、これでも副担任ですから」

 

胸を張る山田先生。スキル『強調』である。一部の女子が悔しがっている。

 

「えー、見ての通り私が織斑センセーだ。フルネームは織斑千冬。君たちを一年で立派な操縦者に育てるのが私の役目。とまあ堅苦しいのはここまで。一回きりの高校生活を楽しむように。以上だ」

 

『はい!!』

 

山田先生の時とは大違い!千冬姉の時はこんなにもみんなが元気になるとは。キャーキャーと騒ぐ女子たち。唖然とする俺。態度の変わらないサングラス兄さん。

 

「で、挨拶もまともにできんのか?お姉さんはお前をそんな風に育てた覚えはないぞ?」

 

「いやだって特に話すことないし」

 

と、このやり取りでクラスに姉弟なのがバレた!いやまあ織斑で分かるか……

 

「やっぱり織斑君って、織斑先生の弟?」

「それじゃあ、男でISを動かされるのもそれが関係して?」

「じゃああのアロハの人は?あの人も親戚?」

「あーいいなー。代わってほしい」

 

なんて会話がチラホラ。ここで一応説明しよう。

俺は『名目上』唯一のISを使える男として公立IS学園にいる。

IS学園とは『ISについて勉強する学校』である。そのままである。実につまらん。

 

「まあいい。自己紹介の続きをしてくれ」

 

「はい、それじゃあ次に行きましょう」

 

こうして俺の番は終わった。うん、実に長かった。俺だけかな?そんなことを考えているとアロハサングラス兄さんの番になる。

 

「では九条君。次お願いします」

 

「はいはい。自分九条桐也って言います。まあ好きに呼んでもらっていいけど。あと私服なのは制服がまだ出来てないから。まあこんなとこかな」

 

九条桐也。キリヤ……なんか似た名前を聞いたことがある。確かあれは最近買ったゲームの……

 

 

4月3日(月)AM09時40分

 

「ふぁー……」

 

参った。もう駄目だぁ、お終いだぁ。逃げるんだ!分かるわけがない!あれは伝説のスーパー難関授業なんだぞ!恐れを知らないのか貴様らは!

 

「………」

 

それにしても、この状況はどうにかならないのか。どこを見ても女子、女子、女子、男子、女子、女子、女子女子女子女子女子女子ああああああ!!!

というわけで廊下には他クラス、二、三年のパイセンが詰めかけている。まるで動物園のパンダだ。パンダの気持ちがわかったよ。

 

「………」

 

チラッと桐也を見る。もう表情でわかった。教科書を見て『うわーこんな授業するのかよー。いやだなー』って顔だ。つまり引きつっている。そう、つまり俺たちは同じ!この授業についていけない組だ!

 

「な、なあ」

 

「ん?」

 

「俺、織斑一夏って言うんだ。よろしくな」

 

「改めて、九条桐也だ。まあ好きに呼んでよ」

 

「じゃあ、キリヤでいいか?」

 

「ん?妙に発音が違うような……まあいいか。自分も一夏って呼ばせてもらうよ」

 

「おう」

 

見た目に反していい奴だ。やっぱり人を見かけで判断してはいけない!そう考えさせられるな!

 

「……ちょっといいか?」

 

「え?」

 

突然話しかけられた。この声には妙な懐かしさを感じる。無理もない、6年ぶりの再会になる幼なじみなのだから!

 

「久しぶりだな箒」

 

「6年ぶりだな一夏。それと久しぶりだなキリヤん」

 

「キリヤ、ん?」

 

「それはヤメろって自分言ったよね?」

 

「好きに呼べって言ったのはキリヤんだろ?」

 

篠ノ之箒。俺が昔通ってた剣道道場の娘。ポニーテールが似合う幼なじみだ。不機嫌そうな目は生まれつきらしい。このことにはあまり触れたくない。昔の古傷が……

 

「箒はキリヤと友達なのか?」

 

「中学でな。と言ってもキリヤんがすぐに転校したからな」

 

「大人の事情さ」

 

箒の場合、見た目がチャラチャラしたチャラ男を最も嫌う。キリヤもアロハにサングラス(もう外している)でだいぶチャラチャラしているはずだ。しかし箒はそんなこと気にしていないような。

 

「6年ぶりなんでしょ?自分に構わず再会を喜びなよ」

 

「どこに行くんだキリヤん」

 

「悪いけど、俺は特別授業なんだ。それじゃ」

 

もうすぐ2時間目のチャイムが鳴る。キリヤは足早に教室を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

3月21日 AM11時00分

 

「本気で九条君をIS学園に入れるつもりなんですか社長」

 

「うん、彼には『対未確認用特殊部隊』に入ってもらう。仮面ライダーの適合者である以上それが一番だ」

 

「仮面ライダーの適合者……彼が天才ゲーマーなのですか?」

 

「いや、彼は普通のゲーマーだ。ただある一点を除いては」

 

「ある一点?」

 

「ガンゲイル・レーシングを知っているね?」

 

「ちょうど一年前に発売されたゲームですよね。銃で攻撃しながらレースをする」

 

「それのチャンピオンの名前は?」

 

「えっと……キリト、ですよね」

 

「それが九条君だよ」

 

「ええ!?九条君がキリト?あの誰も抜けないタイムを叩き出したキリトが九条君なんですか?」

 

「確認してあるから間違いない。あとレベル1であのポテンシャルを秘めているんだ。間違いないよ」

 

「それでも、それでも私が変身したほうが!」

 

「木綿季くん。君は彼の入隊を拒否しているのかい?自分の妹が属しているというのに」

 

「もう、あの家とは縁を切ってます。関係ないです」

 

「それでも私は九条君が仮面ライダーレーザーとして戦ってくれると信じているよ」

 

「……社長、別に目的があるんじゃないんですか?」

 

「無いよ。さて、仕事に戻ろうか」

 

 

4月3日(月)AM09時50分

 

あの時は誤魔化されたけど、多分社長は何か考えているとしか思えない。だって九条君は……絶望的にレースゲームが苦手なんだから。

彼の家にお邪魔した時、一緒にガンゲイル・レーシングを遊んだ。結果は私の全勝。到底彼がレースゲームの優勝者とは思えない。

 

「ほら来たぜセンセー」

 

「ちょうどだね九条君。君はIS学園に通うことになるけど、君はISを動かせない。だから君には普通の高校の授業を受けてもらいます」

 

「自分しかいないのは寂しいねぇ」

 

「それについてはごめんなさい。本当なら君は友達と授業を受けるべきなんだけど、君は特殊だからね。こうなってしまった」

 

「まあ気にしないよ。休み時間と体育は一緒に居られるんでしょ?なら気にしない」

 

「そう、ありがとう。それじゃあ早速授業を始めようか。まずは英語からだね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「だいぶ、慣れたな」

 

「もう普通に話せるかバヅー」

 

「虫唾が走るガナ!これもゲゲルの駄目ダ」

 

「ではお前は……2日で40人」

 

「……楽勝ダ」




社長が怪しい?気にするな。

次回は『早よクウガ、赤にならんかい!』の巻、になる予定。あとセシリアも出るよ!レーザーのレベル2はマイティフォームが出てから!

ではSee you Next game!


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第5話 代表 〜Recommendation〜

今回は一夏とセシリアの口喧嘩(言うほどかな?)

あと映画でレーザー復活!キリヤさんが帰ってくるよ!やったね!
あとヒロイン決まりました。


4月3日 (月) PM00時50分

 

今日は入学初日ということで授業は午前中で終わり、今は帰りのホームルームの時間だ。別の部屋にいたキリヤんも今は席についている。

 

「入学初日ということでこれで終わりにする」

 

「あ、織斑先生。あのこと決めなくていいんですか?帰りのホームルームで決まるからって授業中にはしませんでしたが」

 

「ああ、そうだったな。まったく上も我々を急かしてくるな」

 

教室を出ようとした織斑先生、千冬姉は山田先生に何か言われ教壇に戻ってきた。何やら大事な話らしい。

 

「すまないが今からクラス長を決めようと思う。まあクラスの代表だ。上から今日中に決まるようにと迫られていてな」

 

学校の先生も大変だ。しかしクラスの代表か。まあここは責任感の強い誰かに任せたいな。俺?無理無理。そうなったら学級崩壊待った無しだ。

 

「一度決めたら一年間は変えるつもりはない。誰かいないか?」

 

当然の如く誰も手を挙げない。皆んな誰かが手を挙げるのを待っている状況だ。多分千冬姉のことだ誰か自己推薦してほしいのだろう。だがしかし!今時の現代っ子は自己推薦などしたくないのである!

 

「なしか。では誰か適任と思う奴はいないか?」

 

所謂生贄に捧げる人はいないか。そうなると誰が誰を指名するかが決め手となる。まあ俺が選ばれることはないだろうから安心しておこう。

 

「はい!織斑くんがいいと思います!」

「あ、私も私も!」

「せっかく男子がいるんだからね!」

「きっと盛り上がるよ!」

 

「俺が生贄になるとは……」

 

しかし現実は非情である。何故俺なんだ!男子がいいならキリヤんもいるじゃないか!

 

「あ、私九条くんがいいなー」

 

ほら来た!キリヤん、お前も俺と一緒に生贄になるがいい!!

 

「すまないが九条は諸事情でクラス長には出来ん」

 

はあ!?なんでキリヤんは選ばれないんだよ!まさか全てを見越した上でのあの余裕の表情だったのかキリヤん!!

 

「このまま意見がなければ織斑になるが?」

 

「俺の意見は?」

 

「推薦されたなら推薦してくれた人の希望に応えなくてはな」

 

「通りませんかそうですか」

 

いかん!このままじゃ俺がクラス長になってしまう!それだけは何としても回避しなくては。

 

「ちょっとお待ちになってください!!」

 

『!!??』

 

声をあげたのは金髪ロールの女の子。多分イギリス人かな?クラス全員が注目している。

 

「さっきから黙って聞いていれば!男男男男男!なんですか?男だからクラス長にしよう?冗談ではありません!クラス長は実力がある者がするべきです!このイギリス代表候補生のセシリア・オルコットのように!」

 

「だったらさ、最初に自己推薦すりゃよかったじゃん」

 

オルコットさんに言葉を返したのはキリヤんだった。しかしその言葉もごもっともだ。そんなことを言うなら自己推薦して欲しかった。そうすれば俺も他薦されることもなく、オルコットさんはクラス長になれる。まさにwin-winだ。

 

「他に自己推薦する人がいないか待っていましたの。いないことを確認した上で手を挙げようとしましたが、ちょうど他薦の時間になりましたので。まあそこでも私が他薦されるのは目に見えていました。見えていましたのに」

 

「一夏が推薦されて怒ってるのか」

 

「何故なのですか!実力のないただ珍しいだけのパンダと、圧倒的な実力がわかるライオンと、どっちを推薦するかは皆さんもお分かりでしょう!」

 

どうやら俺はパンダと言われている。まあそれは悪い気はしないが、

 

「ちょっと待てよ。俺に実力がないのは認めるけど、自分の価値観を他人に押し付けるのはどうかと思うぞ」

 

「押し付けてなどおりません。当然のことだと言っているのです」

 

実力がないだけに反論ができない。ISならば負ける。でもクウガだったら勝てる。でもここはIS学園だ。ここだと実力がないんだ。

 

「ですから私セシリア・オルコットが自薦いたします」

 

「なるほどな。自薦と他薦、ライオンとパンダ、女と男か。なるほどなるほど。よしお前ら、戦え」

 

「「………は?」」

 

「いやだから戦えって。クラス代表は一人だけだぞ?ならば勝負してどっちがクラス代表に相応しいか決めるんだよ」

 

「ちょ待ってくれよ千、織斑先生!そんなの俺が負けるの確定じゃないか!」

 

「いや、そうとも限らんぞ?」

 

「?それってどういう」

 

「では決戦は来週の水曜日、第3アリーナで行う。それまで各自準備しておくように。以上だ」

 

 

「はあ〜どうしよう」

 

「オルコットが代表候補生と分かっていたら他薦していたのか?」

 

「多分な」

 

現在食堂。本来より時間をオーバーしてホームルームを終えた俺たちは食堂に来ていた。本当なら午後は自由に行動できるのだが、精神的に疲れた俺には飯を食うのがやっとだった。

 

「なあ箒、キリヤん。俺にISについて教えてくれないか?」

 

「私は構わないが、キリヤん教えられるのか?」

 

「悪いけど自分、そういうの苦手だから」

 

「そんな殺生な」

 

「それに自分の方がわからないとこ多いよ?それ以外ならサポート出来るけど」

 

「まあそれがいいだろうな。よし一夏!2時間後に剣道場に来い。剣の腕が鈍ってないか一度見てやる」

 

剣道か。そういえば中学は帰宅部でバイトばっかりだから竹刀なんて握ってないぞ?多分滅茶苦茶鈍ってるよな。箒怒るだろうな。

 

「キリヤんも来るんだぞ」

 

「いや自分どっちかと言うと遠距離型なんで」

 

「来るんだぞ?」

 

「……あ、はい」

 

あれは脅迫だろうか。箒の後ろに鬼が見えたぞ。

 

「あ、織斑くん!それに九条くんも!」

 

鬼に怯えている俺たちを助けてくれたのは山田先生だ。何やら鍵を2つ持ってるが。

 

「どうしたんですか山田先生」

 

「織斑くんと九条くんの部屋が決まりましたので」

 

「部屋が決まった?しばらくは家から通学って聞いてたけど?」

 

「急遽部屋割りがされまして。織斑くんと九条くんは今日から学生寮での生活になります」

 

つまり俺たちも今日から寮で寝泊りをすると。まあそれは別にいいけど、荷物とかないぞ?

 

「荷物などは今から取りに行ってもらいます。午後8時までに寮へ戻っていただければ構いませんので。あと………お二人の部屋なのですが、急遽部屋割りを行なったために同居人がいます。それも女の子の」

 

「「は?」」

 

「す、すみません!ですがこれからキチンとした部屋割りをいたしますので!どうか今は我慢してください!」

 

頭を下げる山田先生。俺たちが我慢というか、多分同居人の女子が我慢しなくちゃいけないと思う。

 

「それと学生寮でのルールですが特に厳しいものはありません。最低限どのマナーを守っていただければ。あとお二人には申し訳ないのですが大浴場は使用できません」

 

「ええ!?なんでですか」

 

「おバカ一夏。女の子がいるのに全裸のお前が突撃したらお風呂じゃなくて独房に入ることになるぞ?」

 

「あ、そうだよな。元は女子校だもんな。だったら男の風呂なんてないよな」

 

「そういうことですのでお願いしますね。一度同居人の方にご挨拶をしておいてください」

 

「わかりました」「りょーかい」

 

そう言うと山田先生は帰って行った。しかしいきなりだな。同居人も気になるが大浴場が使えないのは痛いな。

 

「なあ箒。ちょっと荷物とか挨拶とかあるから少し遅れるかもしれないぞ?」

 

「少しぐらいなら構わんさ。失礼のないようにな」

 

「分かってるよ。行こうぜキリヤん」

 

「ああ。また後でな箒」

 

 

「ここか……555号室」

 

寮はいたって普通の学生寮だった。まあ寮っていうよりはホテルだな。泊まるところに変わりはないが。

 

「とりあえずノックしないとな」コンコン

 

………。反応がない。どうやらこの部屋には屍がいるらしい。

 

「失礼しまーす……って誰もいないのか」

 

部屋には誰もいなかった。荷物はあるがとうの本人はいないようだ。

 

「緊張して損したぜ。早いとこ荷物取りに行かないと」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この部屋か……753号室。間違いないな」

 

部屋の同室は一夏になると思っていたが……どうやら自分ツイテルネ!ここでノックせずに入ると高確率でラッキースケベが発動するが、同時に非常識な変態のレッテルも貼られる。ここは無難にノックしておくか。

 

「は〜い。どうぞ〜」

 

妙に間延びした声。休み時間に聞いたぞ。多分クラス一緒だ。

 

「失礼するよ……ってなんだこれ」

 

まず始めに見たのは散らかったお菓子のゴミゴミゴミゴミゴミ。まず最初に思ったことを口に出そう。

 

「汚っ!」

 

「お〜お〜いらっしゃ〜い」

 

「いくらなんでも汚すぎるぜ。初日でこんなに汚れるなんて」

 

「えへへ〜褒めても何にもでないよ〜」

 

「褒めてないけど……自分九条桐也。同じクラスだよな布仏本音」

 

「よろしくね〜キリヤん」

 

「もうそこまで自分のあだ名が……」

 

「??今考えたんだよ?」

 

どうやら布仏はエスパーらしい。のほほんとした雰囲気はフェイクと。勉強になったよ。

 

「ベッドは窓際をもらったからね〜」

 

「まあどっちでもいいけど。それじゃ遠慮なく」

 

布団に荷物を置く。と言っても取りに帰るからまだ荷物は増えるのだ。下手したら寝るスペースがなくなるな。

 

「ん?本音は自転車に乗るのか?」

 

目に付いたのは折りたたみの自転車。お菓子のゴミだらけのなかその自転車だけは綺麗だった。

 

「そ〜だよ〜。風にノってビューーンって」

 

意外とアクティブだな。この袖の余る服で自転車に乗れるのだろうか?

 

「それじゃあ荷物取りに行くから。またな」

 

「またね〜」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月3日(月)PM04時05分

 

「やっべー。遅くなったよ。箒怒ってるよな」

 

家に荷物を取りに行き、それから何を持って行くか吟味していたらかなり遅くなってしまった。やっぱりタクシーぐらい拾えばよかったか。それか千冬姉に迎えに来てもらうとか。

 

「にしても重いな」

 

着替えにゲーム、漫画とかを詰め込んだらかなり重くなった。ハードごと持ってくるんじゃなかったな。

 

「待て」

 

「ん?」

 

そんなこと考えてると突如止められる。ライダースーツに身を包んだ男。メイクしてるのかな?

 

「お前、クウガ 、ダろ?」

 

「!?まさか……未確認」

 

「俺、止めなきゃ、リント、死ぬぞ?」

 

「またゲゲルか!そんなこと俺が許さない!」

 

荷物を置き、腹に手をかざす。具現化したベルト。変身するために集中する。

 

「……変身!」

 

体中を熱いものが駆け巡る。そして俺の体は徐々に白く異形の姿に変化していく。

これこそが未確認生命体2号、いや仮面ライダークウガ。

 

ゴグザ・ゴセゼギギ(そうだ、それでいい)・クウガ!」

 

「いくぞ!!」

 

未確認に飛び蹴りを繰り出す。しかしそれは交わされて逆に攻撃を食らう。それも余裕で。なるほど、こいつは強敵だな。

でも、俺は負けるわけにははいかない!




キリヤんの同居人はのほほんさんになりました。のほほんさん可愛いよ!

次回はクウガ(白)VSバヅー!もしかしたらレーザーのレベル2も出るかも?

ではsee you next game!


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第6話 同居 〜Old playmate〜

すまない、今回はレーザーレベル2は出ないんだ。多分もう少し後だ。



4月3日 (月) PM04時12分

 

「うわあっ!!」

 

未確認14号に吹っ飛ばされて土手を転げ落ちる。バッタみたいな未確認生命体。予想通り強力なジャンプ力、そして急降下キック。攻撃手段は今のとここれだけだか。

 

「一撃一撃が重い。そう何回も食らっていられないか」

 

ログゴパシバ(もう終わりか)クウガ」

 

「そんなわけないだろ!」

 

ここで引き下がったらみんなに危険が及ぶ。ここで倒さないと。

土手を駆け上がり14号に攻撃する。パンチパンチキック。それの繰り返し。14号はそれを軽々回避する。よしこれなら、

 

「そこだっ!」

 

「!?」

 

足払いで14号の体勢を崩す。これには予想外で14号もすぐに体勢を整えられない。すかさず14号に膝蹴りを叩き込む。その時に右足が熱くなる。どうやら準備は整ったみたいだな。

 

「こいつで、どうだぁ!!」

 

ハイキックで14号の頭に叩き込む。いつも通りキレイに決まった。しかしそれでも未確認には効果がないように見える。

 

ゴセガゲンガギバ(それが限界か)?」

 

「嘘だろ…ぐはっ!?」

 

お返しとばかりに腹に強烈な蹴りを食らう。恐らくジャンプの応用だ。それを利用して俺と距離を取る。これかなりマズくないか?

 

「何回でも叩き込むしかないのか」

 

「そんな弱攻撃じゃ倒せないってことだろ?」

 

「!?レーザー!!」

 

「助っ人とーじょー!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こちとら予約があるんでね。手短に終わらせてやるよ」

 

「俺も約束があるんだ。一緒に行こう!」

 

未確認14号が出現したと連絡があった。まあ偶然近くにいたからクウガと合流できたけど。しかしこれは大変だな。ぶっちゃけこれで変身するのは二回目だ。助っ人と自分で言うには実力不足だ。

 

正直に言おう。あまり戦況は変わんないんじゃない?

 

「そらっ!!」「てやあっ!!」

 

「ガアッ!?」

 

いやダブルキックでかなりダメージ受けてるから案外いけるんじゃね?いやここまで来たなら押し切ってやる!

 

「手ぇ止めんなよ!」

 

「分かってるよ!」

 

自分とクウガのラッシュに押される未確認14号。遠目で見てた時はクウガのラッシュは軽々回避していた。でもやっぱり手数が多い方が避けにくいみたいだな。

次第に未確認に焦りが見えてきた。多分逃げる準備は整ってるはずだ。ここで手を緩めたら逃げられる。だったらとっとと押し切らねぇと。

 

「キメるぜ。ノってけよクウガ!」

 

「ああ。トドメは任せろ!」

 

クウガの右足が赤く光り炎をまとう。あれが必殺技か。トドメは任せるとして、コッチはどうにかして動きを止めないとな。

 

「っと逃がすわけないだろ。お前はコッチだよ!」

 

ジャンプして逃げようとする未確認の足を掴み地面に叩きつける。おーおー顔面から叩きつけられちゃって、痛そうなこった。

 

「ほらトドメ決めろ!!」

 

「うおおおお!!!」

 

クウガ目掛けて未確認を放り投げる。そのままクウガは未確認に横蹴り。未確認を川目掛けて蹴飛ばしたのだ。

 

「ってバカ!水落ちは生存フラグだ!!」

 

「え?生存フラグ!?」

 

ここの川はそこまで深くない。深くない故に水落ちしても姿が見えるはずだが……ものの見事に逃げられちまった。

 

「逃げ足は速いな」

 

「スマン、俺のせいだ」

 

「いいや、自分もハッキリ言ってそこまで考えてなかったからな。おあいこだ」

 

あの未確認14号はまだ生きている。恐らくまだ人殺しを続けるよな。ったく落ち着いてゲームもできやしない。それに人殺しは許せねぇよなぁ………明日ぐらいから調査を開始するか。今日は野郎も動かねえだろ。

 

「じゃ、俺約束あるんだ。これで失礼するぜ」

 

「ああ、またなクウガ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

川から這い出た未確認14号『ズ・バヅー・バ』は帰っていくレーザーとクウガを睨みながらバヅーは呟く。

 

「ゲゲルンラゲビ・ラズゴラゲダヂバサザ(の前に、まずお前たちからだ)。クウガ、ライダー」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月3日 (月) PM06時50分

 

「遅すぎるぞ二人とも!」

 

「仕方ないだろ、未確認同士の戦いで電車が止まったんだから」

 

「む、それなら仕方ない。だが連絡ぐらい」

 

「多分一夏は電話番号知らないんじゃないか?」

 

「あ、そう……だったな」

 

現在剣道場。まず俺たちが道場に上がった瞬間に見たのは見事な大和撫子。しかし俺たちに気づいた瞬間に悪鬼に変貌する。なにもそこまで怒らなくてもいいと思うのに。

 

「んでどうするんだ?今から特訓するのか?」

 

「ここを貸してくれてるのは19時までなんだ。だからもう終わらなくてはいけないのだが」

 

「だが?」

 

「一本だけだ。一本だけ今からする」

 

「え、防具なしで?」

 

「そうだ。今から付けていては時間がなくなるだろう!安心しろ。寸前で止める」

 

「おい一夏。箒の寸前は当たると思っとけよ」

 

「うん知ってる」

 

そして予想通り箒は全力で面を打ってきて、そこから俺の記憶は曖昧だ。

 

 

「ん……あれ?ここ……俺の部屋か」

 

気がついたらベッドで寝ていた。時刻は午後19時10分。箒かキリヤんが送ってくれたのか。あとで礼を言わなくちゃな。

 

「気がついたか一夏!!」

 

「あれ箒。なんでここにいるんだ?」

 

「なんでって…ここは私の部屋だからな」

 

「あれ、じゃあ俺の部屋の同居人は箒だったのか」

 

「そういうこと……らしい」

 

なんだか箒の歯切れが悪い。バツが悪そうに目をそらす。どうしたんだ?

 

「その一夏………さっきはすまなかった。寸前で止めるなどと言っておきながら」

 

「ああ、そのことか。気にするなよ。避けれなかった俺の責任でもあるんだ」

 

「ち、違う!お前のことだから生活のためにバイトをしていたのだろう?それで剣を握っていないのはお前の構えから分かった。それなのに私が……本当にすまなかっ……ごめんなさい」

 

だんだんと声が裏返ってきてる。よくみると泣くのを必死に我慢している。不味いぞ、箒に泣かれたくない。それにこんな状況を他の誰かに見られたら。

 

「おーーい、一夏ーーー」

 

「おーーい、オリムーー」

 

ドアをノックする音。声からしてキリヤんと同じクラスののほほんさんだ。箒も気づいたのか目元を拭っている。

 

「お、おう。どうしたんだ?」

 

「いや一緒にゲームしよーかなーって」

 

「キリヤんゲーム上手なんだよ〜。ぜーんぜん勝てないも〜ん」

 

「いやあれは本音が勝手に自滅するからだろ……」

 

「そ、そうか。でも」

「構わん。入ってこい」

 

そう言ったのは箒だった。目元が少し赤いがよく見ないと分からないレベルだ。

 

「な、なにをジロジロ見ている。目つきが嫌らしいぞ一夏」

 

「そ、そうか?スマン」

 

「お邪魔しまーす」

「お〜オリムーの同居人はしののんだったか〜」

 

「し、しののん?しののんとは私のことか?」

 

「そうだよ〜。オリムーはオリムーで、キリヤんはキリヤんで、しののんはしののんだよ〜」

 

つまり俺がオリムーで、キリヤんがキリヤんで、箒がしののんと。まさかのほほんさん……クラスみんなにあだ名をつけてるんじゃ。

 

「まあそんなことより、ゲームしようぜ」

 

 

「今日は失礼するよ。ほら帰るぞ本音」

 

「ん〜〜むにゃ〜〜むにゃ〜もう食べれな〜い」

 

「フフッ、夢を見ているみたいだな」

 

「ったく。んじゃ今日はありがとな」

 

「おう、また明日な」

「おやすみ二人とも」

 

もうそろそろ消灯時間だ。ここは寮だからそういうのは守らなくてはいけない。にしても目が覚めてからずっとゲームだからまだシャワーを浴びてない。今日は14号とも戦ったし汗がベトベトだ。まだ夏じゃなくて助かったぜ。

 

「あ、そうだ箒。お前シャワー浴びたのか?」

 

「いやまだだが」

 

「なら先に使うか?男の後って嫌だろ?」

 

「い、いやお前から使っても構わん」

 

「そうか?……もしかして「馬鹿者!それ以上言うな!!さっさとシャワーを浴びにいけ!!」

 

どうやら図星らしい。ありがとうな箒。でも俺のことはいいから先にシャワーを使えばよかったのに。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はあ〜〜」

 

ダメだな私は。一夏に対してどうも素直になれない。何故あんな素っ気ない態度を取ってしまうんだ。私のバカバカバカ!!

 

「………寝るか」

 

今時の女が聞けばドン引きするだろうか。シャワーぐらい明日にでも浴びればいい。幸いにも私は早起きだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き………お……う……おい……き……おい、箒」

 

「ん………一夏?」

 

「シャワー、空いたぞ」

 

目を開けると目の前に一夏の顔があった。近い、近い、近い、近い近い近い近い近い近い。

 

「う、うわああああああ!!?!?!???!」

 

「だああ、落ち着け箒!!」

 

「ハア、ハア……ば、馬鹿者!起こすのにそんなに顔を近づける必要はなかろう!!」

 

「え、だって中々起きてくれないから」

 

「それにも限度というものが………いやいい、ありがとう」

 

「お、おう」

 

早足でシャワールームに駆け込む。一夏の顔があんなに近くに……備え付けられた鏡をみると私が顔は真っ赤になっていた。危なかった。もう少し遅れていたら……色々と危なかった。

とりあえずシャワーを浴びて頭を冷やそう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月3日(月) PM09時05分

 

「ああ、開発は順調だ。バンバンシューティングは来月には完成する。ジェットコンバットもその時に送るよ。ただギリギリチャンバラは少し遅れるかな……なに、臨海学校までには完成させるよ。だから君は安心して学校の先生をしてくれ。それも秘書の仕事だよ。それじゃあ私は帰るよ。レイドボスに参加しないとギルドメンバーに怒らなくてしまうからね」

 

電話を切る。そこから荷物をまとめ社長室を後にする。誰もいなくなった社長室。そのデスクには白いガシャットが残されていた。




一夏の同居人は箒です。そのままですね。あとさらっと言いますけど一夏ハーレムではなく、一夏には誰か一人決めてもらいます。誰にするかまだ決めてないけど。キリヤはのほほんさんだからね!!

次回は……出来ればセシリアと戦うところまでいきたい。
ではsee you next game!


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第7話 白式 〜Report〜

お久しぶりです。
実は最近少しばかり家を空けることがありまして。6日ほど他県で遊んでました!ほんとすいません!
ただでさせ更新の遅い『バイク名人』ですが、今回は更に遅くなってしまって本当に申し訳ないです。

今回は一気にvsセシリアまでとばします。ぶっちゃけその間って出来事あまりないですよね?それではどうぞ。


4月8日(土)AM10時40分

 

「それでは業務連絡頼むよ」

 

「それが秘書に対する態度ですか社長?」

 

黎斗の現在の姿はまさに鎧武者。時代を間違えたのではないかと考えるほどの再現っぷりだ。ギリギリチャンバラガシャットを完成させるために必要な姿らしい。

 

「恐らく社長もご存知でしょうが、一夏くんとセシリア・オルコットさんがクラス代表をかけた勝負をする予定です」

 

「そうだね。それは少し小耳に挟んだよ。できればその後の面白い展開はないかな?」

 

「面白いって……そうですね。社長が面白いと判断するかわかりませんが……」

 

 

4月5日(水)PM02時50分

 

「織斑。お前のISだが少し待て。現在調整中らしい」

 

「俺のIS?」

 

「一夏は世界で初めてIS動かしたんだろ?だったら…後は分かるよな?」

 

「………ああ、なるほど」

 

「絶対わかってないな」

 

千冬からそう告げられた一夏。桐也はわかっているようだが一夏は何故自分のISが作られているのか理解できていなかった。最早バカを通り越してマヌケである。

 

「IS、女にしか動かせない。でもお前、IS動かした。世界中ビックリ!どうして動かせる?データ取りゃわかるだろ。なら専用機作ろう!……理解できたか?」

 

「ああ、分かったぜ。そう考えたら当然だな」

 

桐也の説明でようやく理解する一夏。呆れる桐也と千冬。アハハハーと笑い飛ばす一夏。そんな様子を見つめる女子が一人。セシリア・オルコットだ。

 

「あら、専用機を使うのですね。私安心しましたわ。訓練機なんだから仕方ないなどと言われた時にはどうしようかと不安でしたから」

 

「そうか。なら次は負けた時に言うセリフでも考えときな。俺は中途半端な負け台詞しか聞けないんじゃないか心配だったぜ」

 

「言いますわね極東のお猿さん」

 

「そっちこそ言ってろメシマズ大国さん」

 

「貴方、私の祖国をバカにしますの?」

 

「先にバカにしたのはそっちだろ」

 

売り言葉に買い言葉。なんとも言えない言葉の応酬に更に呆れる千冬と桐也。今回は桐也も仲裁に入るつもりはないようだ。しかしそんな言葉の応酬は授業開始のチャイムで、

 

「言いましたわね、この黒髪凡人!!」

 

「うるせぇ!この金髪縦ロール!!」

 

止まることはなく、千冬の鉄拳でドローに終わるのだった。

 

 

「ハハハッ。そんなことがあったのか。いや青春しているじゃないか」

 

「これを青春と言っていいんですか?」

 

「そうやって友達と喧嘩して先生に怒られて。そんなことができているのは青春している証拠だよ」

 

黎斗の目が何処か遠くを見つめている。木綿季もなんとなく悟った。

 

「その後はこれといった出来事はありませんでしたね」

 

「うーむ、それだけか。まあ学園生活はまだ始まったばかりだからね。今後に期待するとしよう」

 

そう告げると黎斗は慣れた手つきで鎧を脱いでいく。そしてあっという間にいつものスーツの黎斗に戻った。

 

「それで社長。未確認の方は」

 

「今のところアレ以来報告はなし。犠牲者もいないからね。極めて平和な日常が続いているよ」

 

学園生活初日の未確認生命体14号との戦闘の後、14号は姿を見せていなかった。何処かに潜伏しているのではないかと警察や自衛隊、日本のIS部隊が血眼となって探している。

 

「このまま現れなければいいのだが」

 

「そうもいきませんよ。未確認との戦いは始まったばかりと言ったのは社長ですよ?」

 

「そんなこと言ったかな?」

 

「昨日の夜。外国にいるアノ2人が今どうしているかと尋ねた時に言っていましたよ」

 

「ああーーそんなこと言ったね。ああ、それとその件なんだが」

 

黎斗はワザとらしく咳払いをしてこう告げた。

 

「あの2人。日本に帰ってくるのは丁度夏休みの時期になるらしいよ」

 

「……は?」

 

「まだまだやるべきことがある。調査結果が出るまで日本には帰りません。今日の朝にFAXで届いたよ」

 

「じ、じゃあ暫くは……」

 

「未確認2号と協力しながら九条君が戦ってもらうしかないね」

 

木綿季の口が開きっぱなしだ。まさに開いた口が塞がらない。この社長は何を言っているのか。それならば他のゲーマーを探して少しでも戦力を増やすべきだというのに。

 

「さて、私はバンバンシューティングの調整に取り掛かる。君は先生を全うしてくれ。先生は土曜も仕事だろう?」

 

「……九条君だけで戦わせるのは反対ですからね」

 

木綿季はそれだけ言うと社長室を後にした。そしてカタカタとキーボードを叩く音だけが響く社長室で黎斗は呟く。

 

「九条君だけ……だからといって適合者ではない君を戦わせるわけにはいかないよ」

 

キーボードを叩くのをやめ黎斗は外を見る。この社長室は周りに大きなビルがないことからそれなりにいい景色が見える。それこそ目がいい人ならIS学園がうっすら見えるらしい。しかし黎斗の視力は度重なる仕事、そして趣味のゲームであまり良くなかった。

 

「さて、君はいつ進化してくれるのかな?クウガ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM00時56分

 

あと4分でクラス代表を賭けた勝負が始まる。まあ自分には関係ない。でもこれであの口喧嘩がひと段落つくと思うと、仲裁役としては非常に助かったり。

 

「どうだ一夏。体調は大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ千冬姉。何も問題ない。むしろ前から体の一部みたいだ」

 

「そうか……ならいいのだが」

 

織斑先生もやっぱり自分の弟が心配なんだな。一夏も時々危なっかしい場面もあった。5、6時間ほぼ休みなしで剣の打ち込み。IS教本の暗記などなど。箒から自分の体を大事にしろと心配されたほどだし。

 

まあ、それぐらい負けたくない。ってことなのか。まあ分からなくもないけど。

 

「キリヤん。一夏は大丈夫だろうか?」

 

「さあ、どうだろうな。オルコットについて少し調べたけど……あいつかなり強いぞ」

 

「そ、そうなのか?まあ代表候補生だけあって少しは分かっていたが」

 

「そうだなぁ…自分と箒、一夏が専用機に乗れて、尚且つ訓練時間が……だいたい10,000時間ぐらいあって互角ぐらいか」

 

「そ、そんなに!?」

 

「ゴメン、少し盛った」

 

鬼の形相で睨みつけてくる箒をスルーし一夏に声をかける。気丈に振る舞っても緊張は隠せねぇからな。

 

「まあなんとかなるだろ。頑張れよ一夏」

 

「ああ、全力で戦ってくる!」

 

準備を終え一夏は白銀の専用機=白式でピットに向かう。多分向こうは臨戦態勢ってとこか。

 

「一夏!!必ず、必ず勝ってこいよ!」

 

「箒……ああ、必ず勝ってくる」

 

自分たち全員にサムズアップで微笑む。そして一夏はそのままアリーナへと飛び立った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM01時00分

 

「さあ、始めようぜ」

 

「あら、いきなり蜂の巣にして下さいと頼んでくるとは」

 

「何を言ってるんだ?あんたを負かすための戦いを始めようって言ったんだぜ?」

 

まだ試合開始の合図はなっていない。相手を少しでも見極めるなら今しかない。時間があまりなかったし、見間違えかもしれないから確信はないがこの白式。もの凄い欠陥品の可能性大だ。

 

近接ブレード。それが俺の武器スロットに一本だけ入っていた。近接ブレード一本だけ。見間違えじゃないならそれ以外に武器はない。とんだアホな機体を預けられたもんだぜ。

 

『試合開始まで3……2……1……試合開始!』

 

「さあ、踊っていただきますわよ。私セシリア・オルコットと蒼い雫(ブルー・ティアーズ)の奏でる円舞曲(ワルツ)を!!」

 

「そんなのお断りだぜ!!」




やっとここまで辿りつけました。これ終わるのいつぐらいになるのかな?とりあえずvsセシリア編はあと3、4話ぐらいで終わらします。

そして遂に次回レベルアップです!

ではsee you next game!


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第8話 進化 〜Level up〜

いや1ヶ月も空いてしまうとは。誠に申し訳ないです。いや新生活は大変ですね!ペースをつかめてきたらいつも通りに更新できるかな?かな?

今回はついにレーザー、クウガ、レベルアップです!


4月12日(水)PM01時20分

 

一夏を見送った後、本音たちに席を確保してもらっていたためアリーナ席に向かったのが約20分前。迷いに迷って20分かけてようやくアリーナ席に到着できた。

 

「キリヤん遅〜い」

 

「悪い、道に迷った」

 

「確かに複雑なとこはあるよねここ」

 

そう言ったのは本音の隣に座ってる相川さん。その隣には鷹月さんに四十院さん、黛さん……って、

 

「あんたは学年1つ上でしょ……」

 

「まあまあ落ち着いて。これも新聞の記事にするんだから。あ、そうだ!九条君はこの勝負どう見る?」

 

そう聞かれてチラリとアリーナを見る。現在一夏が押され気味だ。しかし代表候補生に食らいついていくとは予想外だった。一夏には意外と才能というものがあるらしい。

 

「まあ自分としてはどっちが勝とうが興味ないけど……まあ勝ち負けならオルコットの方が勝つだろうな」

 

「おや、これは予想外。てっきり一夏君が勝つって言うかと思った」

 

「まあ応援は一夏の方をしてるよ。でもどっちが勝つかってなったら、そりゃあオルコットでしょ」

 

一夏とオルコットでは力の差がありすぎる。こうして一夏がオルコットに食らいついて行けてるのもマグレかオルコットが今だに手を抜いているかのどちらかだ。案外オルコットも驚いてるかもな。

 

「あれ?キリヤん電話鳴ってるよ?」

 

「鷹月さんまでキリヤんって……ハイもしもし」

 

『九条君大変よ!未確認15号が現れたわ』

 

「はあ!?」

 

 

4月12日(水)PM01時30分

 

未確認15号の目撃情報があったのはIS学園からさほど離れていなかった。本音から自転車を借りて目撃情報があった廃工場を訪れる。

廃工場から炎が出ておりまさに未確認が暴れたと確認できる。

 

「こいつはまあ……随分と暴れてるねぇ」

 

壁などの破壊された跡を見ると鉄球、しかも建物を壊すようなサイズの鉄球が使われている。いや下手したらもっとデカイかも。

 

「ウオオオオオオッ!!!」

 

「なんだ!?」

 

そんないきなり叫びながら襲われたら誰だってビックリするだろ!不意打ちをギリギリで回避して敵の姿を確認する。

パッと見はゴリラ。しかし背中には亀の甲羅を背負ってる。まさにゴリラガメ。新種の動物の発見だ。

 

「ガアアアアアアッ!!!」

 

「ったく、普通に喋って欲しいぜ」『爆走バイク!』

「変身!」

 

ゲーマドライバーを装着しガシャットを差し込む。そして表示されるパネル、その中でもレーザーのパネルを蹴り飛ばす。これが最近考えた変身方法だ。

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイム ア カメンライダー!!』

 

「よーし、ノッてくぜ!!」

 

「ウオオオオオオッ!!!」

 

15号の鉄球を躱してフロントアームド、リアアームドの両ユニットで撃つべし撃つべし。でもあんまり効果がない。だったら殴るべし!

懐に入り込んで打つべし打つべし。しかし実際に殴ってみてわかる15号の硬さ。背中の甲羅ならまだ分かる。だが奴の鍛え上げられた筋肉はまさにダイヤモンドのように硬かった。

 

いやダイヤモンド殴ったことないからわかんないけど。

 

「オラッ!!」

 

「グウオオオオオッ!!!」

 

そんなカチカチ15号でも顔面は少し、ほんの少しだけ柔らかい。狙いどころはそこだな。

だけどレベル1のゆるキャラ体系では本当に頑張らないと15号の顔に届かない。さっきのはマグレでなんとか当たったが、弱点とバレたならそこを重点的に防御するはずだ。そうなると本当に狙いどころがなくなる。

 

「こいつならどうだ!!」

 

両ユニットで殴りつけながら射撃。打撃と銃撃のダブルパンチだ。こいつなら多少ダメージは入るだろ。あ、いやあんま効いてないな。

 

「いい加減くたばれっての!!」

 

全身全霊のアッパーカットが綺麗に決まって15号が吹き飛んだ。多分記録更新だな。あとはキメワザっと。

 

「九条君!後ろ!!」

 

「あ?って、がはっ!?」

 

人が後ろ向いた瞬間に飛び蹴り、しかも急降下キックって酷いよな。しかし状況が最悪だ。なにせ14号と15号。未確認生命体が同時に二体現れたのだから。

 

ラズゴラゲバサザ(まずお前からだ)ライダー!」

 

「だから日本語で話せって、の!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM01時36分

 

初期化、つまりフォーマット。最適化、つまりフィッテング。この2つの作業が終わり、俺の白式が完全に俺の専用機となったのが恐らく2分ぐらい前。

そして謎の頭痛がし始めたのが恐らく10分前。ここ最近ごく稀にとんでもなく頭が痛くなる。理由はなんとなく分かる。その時だけ耳と目がすごく良くなるのだ。

これだけ聞けば便利な能力と思えるが実際は違う。普段よりも圧倒的に多くなる情報量に頭が追いついていないんだ。整理できないせいでパニックを起こし頭痛がする。

 

これがこの戦闘中に起きたのはまさに最悪だ。

 

「くっ、うおおおおおっ!!」

 

1秒でも早くこの頭痛を止めたい一心で剣を振るう。しかしその剣が空を切る風切り音でも頭に響く。もう棄権したい気分だ。

 

「まったく、正面からぶつかってくるなんて無茶苦茶しますわね。ですが無駄な足掻きです!」

 

IS=ブルー・ティアーズのビットから連続でレーザーが放たれる。それも法則性が分かってきたから避けられる。だがそのレーザーの発射音が頭に壮大に響いて頭が割れそうだ。

 

「こんのっ………ん、この声は」

 

そんな中不意に聞こえた声。1つは獣の叫び声。1つは人ならざるものの声。1つは最近知り合った仮面ライダーの声。

つまりレーザーが未確認二体相手に戦ってる!?そんな未確認二体同時だなんて無茶すぎる!すぐに助けに行かないと。

 

「戦闘中に考え事ですか。そういう人間からやられるのですよ!」

 

「キーキー騒ぐな。うるさい」

 

「なっ……!」

 

これは後から聞いた話だが、この時の俺の顔はとんでもなく殺意がこもっていたとかなんとか。そんなつもりはなかったのだが。

 

一気に加速して懐に入り込む。その瞬間にオルコットさんが笑うのが見えた。多分奥の手だ。

 

「お生憎様、ブルー・ティアーズは6機あってよ!」

 

「だろうな」

 

「え……?」

 

彼女の奥の手のミサイルを直撃してISのシールドエネルギーがゼロになるのを確認した。残念だが負けだ。でもこれでいい。このまま落下していけば。

 

後にクラスメイトの1人が言う。あれは綺麗な丸だ、と。

 

俺はそのままアリーナの壁に激突。壁に穴を開けることとなった。

 

 

「よし、今のうちに」

 

ISを解除し走り出す。いつの間にか頭痛も無くなってるから全力で走れる。こんなに風が気持ちいいのは実にいいことだ。

 

「変身!」

 

人目のつかない、尚且つ監視カメラのない場所で変身してから更に加速する。今頃俺がいないことで騒いでそうだが気にしたら負けだ。

 

そのまま走ること3分弱。目的地に到着しました。世界チャンピオンもビックリの早さで廃工場に到着した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM01時40分

 

「助っ人登場!」

 

「クウガ!ったく来るのが遅いんだよ」

 

「悪い悪い。女の子と喧嘩してた」

 

駆けつけたクウガと軽口を叩きながら再度戦闘準備に入る。これで2対2。だが戦力的には向こうが上だ。正直勝てる気がしない、が負けるつもりはない。

 

ゴゴバダダバ(遅かったな)クウガ」

 

「言ったろ。女の子と喧嘩してたんだ。そういうお前こそ随分と隠れてたみたいだな」

 

ザラセ(黙れ)ビガラビパ バンベギバギ(貴様には関係ない)

 

「14号は任せたぞ。自分は15号を押さえる」

 

「ウオオオオオオッ!!!」

 

15号の叫び声と鉄球の攻撃でタッグマッチが始まった。15号の攻略はなんとかなるとして、問題は14号のジャンプ力だ。今のクウガでは飛距離が足りない。もっと高く飛ばないと奴の急降下キックを攻略できない。となると自分がサポートするのが一番だが、

 

「こいつの鉄球、やけにスピードがある。こっちも機動力が欲しいな」

 

そんな時にベルトから変な音が流れる。具体的に言うと某RPGのレベルアップ音みたいな。

 

「くじょ、コホン。レーザー!社長から連絡!」

 

「どう見ても今無理でしょ!かわりに頼むわ!」

 

木綿季さんが取り出したのはノートパソコン。それを開いてメッセージを流し始める。

 

『やあ仮面ライダーレーザー。さっきの音楽は君のガシャット、爆走バイクガシャットに一定の経験値がたまってレベルアップが可能になったお知らせだ。以後覚えておくように』

 

「ご丁寧にどうも社長さん」

 

15号と距離をとりゲーマドライバーのレバーを開く。いざレベルアップの時!

 

「二速!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!』

 

「って、ええーーーー!?」

 

「………社長さん。あんたオモシロイ趣味してるわ」

 

レベルアップ完了。その姿はまるでバイク。いいやバイクそのものだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐはっ!?」

 

ルザザ(無駄だ)ダバガゼパ ゴセビパバデン(高さでは俺には勝てん)

 

確かにそうだ。高さでは圧倒的にジャンプ力が足りない。もっと高く跳ばないと奴を落とせない。

 

もっと高く。もっと、もっと、もっともっともっと!もっと高く空へ!

 

「はっ!!」

 

ルザバボドゾ(無駄なことを)

 

もう一度跳ぶ。もっと高くへ。14号はあっという間に俺に追いついた。でもまだだ。まだ跳べる!もっと高く跳べる!

 

「!?……ゴンバザババ(そんな馬鹿な)!」

 

気がついたら俺は14号よりも高く跳んでいた。そのまま踵落としを14号の頭に直撃させ、そのまま地面に叩きつける。壮大な地響きと砂埃が舞う。14号は急いで距離を取り俺の姿を見て驚いた。

 

実際、俺も驚いた。

 

「………青くなった」




レーザーはバイクゲーマーLevel2に。そしてクウガはドラゴンフォームに!マイティとばしてドラゴンです。これにも理由があるんですがそれはもっと先になりそうです。

15号は見た目キングコングがガメラの甲羅背負った感じです。一応名前も考えてます。次回ぐらいにわかるかな?

さて次回はドラゴンフォーム、バイクゲーマーLevel2が活躍します!多分!あとセシリア出番少なくてゴメンね。

ではsee you next game!


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第9話 蒼龍 〜Level2〜

ドラゴンフォーム、バイクゲーマー!大進撃!


4月12日(水)PM01時42分

 

「なんなんだよその姿!?どうしてそうなった?」

 

「そっちは青くなったのか。いいよな人型で」

 

未確認2号、クウガは白から青へ。九条君、レーザーは二頭身からバイクへと進化した。

さっきの戦闘を見るにクウガはジャンプ力が強化されている。つまり脚力。当然キックも強くなってるはず。これなら14号は倒せるはず。

問題は九条君。バイクになったことでほぼ攻撃手段を失ったと言ってもいい。15号の鉄球を躱せるようになったのは大きいけど攻撃手段が少なくなったのは痛いところね。

 

「こうなりゃ作戦変更だ。一緒に叩くぞ。乗れ!」

 

「それには同意だな」

 

クウガはレーザーにまたがりハンドルを握る。しかしすぐに降りる。そして少し考えた後に。

 

「運転できねぇ……」

 

「………まあ後で練習しとけ。今は自分が走る。お前は攻撃に専念しろ」

 

「了解だ。でももう少しリーチが欲しいな」

 

「鉄パイプでも待っとけ」

 

「そうだなっ、と。おお?なんか変わった!?」

 

クウガの持った鉄パイプが変化してロッドへと姿を変える。なるほどクウガにはその周りの物を自分の武器に出来るのね。使い方によっては最強ね。

 

「よーし、面白くなってきた〜!!」

 

「運転頼むぜ!」

 

「自分、速さには自信あるんだよ」

 

次の瞬間、その言葉は事実だと分かった。到底バイクとは思えないスピードで未確認に突っ込んでいくレーザー。未確認2体もあまりのスピードに回避が遅れてしまう。

Uターンして再び突っ込んでいくレーザー。今度は未確認15号が鉄球で反撃にでる。不規則な動きで迫ってくる鉄球。それでもスピードを緩めないレーザー。きっとそれはクウガを信用してるから。

 

「うおおおおっ!!!」

 

「上に弾け!」

 

「おりゃあああ!!!」

 

鉄球を弾き飛ばすクウガ。そのまま天井を突き破り鉄球は15号を引っ張りながら姿を消した。倒したわけではないけど、これで14号だけになった。

 

「ノリにのってくぜ〜!」

 

「よっしゃあ!!」

 

クウガはレーザーから降り、レーザーはレベルを1に戻す。

敵が一体減っただけでも彼らの勢いは止まることなかった。クウガのロッドを使ったリーチのある攻撃。更に伸縮自在ときた。上に跳んで逃げようとする14号をはたき落としている。レーザーはアームドユニットを使った重い攻撃が14号の体力を確実に削っている。

 

ダババ、ガシゲバギ(馬鹿な、ありえない)!!」

 

「自分のペースに乗せられちゃった〜?」

 

「これで決めよう!」

 

「OK!二速!!」

 

再びレベルアップしてバイクモードになるレーザー。クウガもレーザーにまたがりハンドルを形だけだが握っている。運転はレーザーがしてるから本当に形だけ。

 

「ベルトからガシャットを抜いてスロットに入れろ!」

 

「これか?」

 

『ガシャット!キメワザ!!』

 

レーザーの車輪から黄色のエフェクトが溢れ出る。そのまま14号に今までの倍のスピードで突っ込んでいく。あまりのスピード、そして今までのダメージの蓄積で14号は回避が少し遅れてしまう。少しジャンプしたところでクウガのロッドが丁度14号の腹に叩きつけられる。そのまま壁を突き破って、

 

「って、どこまで行くのよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ウイニングランを決めるのは!!」

「俺たちだ!!」

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「「うおおおおっ!!!」」

 

未確認14号をロッドで叩きつけたまま壁を突き破り爆発させてもいいところまで持って行く。ニュースで見たが時折クウガと未確認の戦闘でバカみたいな被害が出ることがあるみたい。そこが発電所とか関係なくてもだ。この近くで被害が出にくいと言えば、

 

「おら、飛んでけえ!!」

 

とんでもないスピードからの超急ブレーキ。その答えは、

 

「うわああああっ!??」

 

運転者は吹っ飛んで行く。まあ下は海だし、あいつクウガだから問題ないでしょ。

 

「こんのっ!!おらっ!!」

 

更にそこからクウガは14号をロッドで吹っ飛ばす。お〜お〜綺麗に飛んだねぇ。普通の人からしたら見えないだろうなぁ。それから数秒後に遥か遠くから爆発音が聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お疲れさん名人」

 

「おう、って名人?」

 

「未確認退治の専門家、名人みたいなもんだろ?自分そういう何かに特化したやつを名人って呼んでるから」

 

「じゃあレーザーは運転の名人だな」

 

「まあ、それなりに自信はあるからな。っと時間もアレだな」

 

「俺もそろそろ戻らないとマズイな。怪しまれるかも」

 

「それじゃあお先、名人」

 

「あ、くじょーーーーんんレーザー!私を乗せて行って!!」

 

そのままレーザーは木綿季先生を乗せて走り去って行った。?あれ?あれれ?あれれれれ?あえてツッコミ入れなかったけど、なんで木綿季先生いたんだ?それにあの方向ってIS学園だし、

 

「案外キリヤんがレーザーだったりしてな」

 

そんなことを考えながら俺はIS学園に戻った。

 

 

戻ったのはいいんだけど……

 

4月12日(水)PM01時57分

 

「なんで帰ってきていきなり説教なんだ……」

 

「何か言ったか織斑?」

 

「ええ、何も言ってないですハイ!」

 

織斑先生、箒、オルコット、山田先生に囲まれる俺。少し離れた場所でキリヤんとのほほんさんがニヤニヤしてる。いやニヤニヤしてないで助けてよ!

 

「もう一度聞くぞ織斑「もう6回目だぞ……」ナ・ニ・カ・イッ・タ・カ?「いえ、何も!!」

 

「ゴホン。お前はトイレに行きたいが為にワザとオルコットに負けて、挙げ句の果てにアリーナの壁に穴を開けた。これで間違い無いんだな?」

 

「あーーえーーと……そうです」

 

「何を考えているんだ一夏!戦場では誰もトイレには行かせてくれんぞ!」

 

ラストサムライ箒が叫ぶ。

 

「まあまあ篠ノ之さん、織斑君もお腹が痛かったって言ってますし。きっと緊張でお腹を痛めたんですよ」

 

ラストエンジェル山田先生が俺の味方になってくれる。

 

「甘やかしてはいけません山田先生。織斑、後で瓦礫を出来るだけ片付けること、いいな?」

 

ラストエンペラーデビル千冬姉が追い打ちをかける。しかしそんな俺にも味方がいてくれた。

 

「安心しろよ一夏。自分も少し手伝ってやる」

 

「私も手伝うよオリム〜」

 

「キリヤん!のほほんさん!」

 

「私も少し手伝いますわ。元はと言えば私の攻撃でこのようなことになりましたし」

 

「オルコット…あんたまで」

 

「まったく……もうオルコットではなく、セシリアでいいですわ。昨日の敵は今日の友、なのでしょう?私その言葉だけは信じてますから」

 

「ははっ、ありが「だからといってワザと負けたのは許しませんから!」デスヨネー」

 

こうして俺、キリヤん、のほほんさん、セシリアの4人で瓦礫片付けを始めた。そして五分で休憩に入った。正直疲れた。

 

 

4月12日(水)PM06時30分

 

「ところで一夏」

 

「なんだ箒」

 

「なんで、ワザと壁に突っ込んだ(・・・・・・・・・・)?」

 

「え?」

 

それは夕食を俺と箒、キリヤんにのほほんさん、あとセシリアの5人で食べた帰り道。突然箒にそう言われた時は正直ビビった。

 

「そんなわけないだろ。セシリアの攻撃でアリーナに穴開けちまったんだから」

 

「……まあ、お前がそう言うならそれでいい。だがな一夏」

 

箒に袖を引っ張られる。振り向くと箒の表情はどこか不安そうな顔だった。まるで俺がクウガとして戦っているのを知っているかのように。

 

「あまり、無理はしないでくれ」

 

それに俺は何も言い返せなかった。これから未確認との戦いは激しさを増すはずだ。ゴメン箒、そればっかりは少し難しいお願いかもしれない。

 

「どうした一夏?」

 

「いやなんでもない。戻ろう箒」

 

それでも、君は俺が絶対守るから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM06時35分

 

「バヅーもやられたか。これであと『ズ』は2人か。随分減ったな」

 

「グルルルルッ」

 

「ご苦労だったなゴメラ。『ジョ』としての仕事ご苦労だった」

 

「それで、次はどうする?」

 

「そう焦るなドルド。次のゲゲル次第でゲームを少し変更する。その時にはジョ・ゴメラ・ダにも動いてもらう。いいな」

 

「ガアアアアアアッ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月12日(水)PM06時40分

 

「あれ〜?私の自転車がな〜い」

 

あ、廃工場に置きっぱだ。

 

次の日まで自転車が置いてあったのは正直助かった、ってのはまた別の話。




鉄球を使うゴリラグロンギはジョ・ゴメラ・ダというオリジナルのグロンギです。『ジョ』っていう階級は一応用心棒の『よ』からとりました。ゴメラは単純にガメラ+ゴリラです。
ついでに言うとレーザーのライバルポジションですハイ!

次回はセカンド幼馴染がやってくる?出来ればそこまで進みたい!
ではsee you next game!


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第10話 襲来 〜Training part1〜

遂にヤツがやってくる。あ、因みに前編です。


4月27日(木)AM08時20分

 

「ヤッホー!一夏久しぶりー!元気して………た?」

 

私、凰鈴音は、昨日の夜にこのIS学園にやってきて、1組に一夏がいると聞いて、ウキウキして寝れなくて、朝起きてから試しに違う髪型にしたけど結局いつもの髪型にして、そんで怒られない程度に走って一夏に会いにきたというのに。

 

「なによこれ……クラスみんなの目が……死んでる!?」

 

一夏だけでなく、クラスの女子みんなの目が死んでいるのだ。いや全員じゃない。金髪ロール髪の女だけはウキウキハツラツしてる。後のみんなは目が死んでる。

 

「よ、よお……鈴じゃ……ない…か」

 

「ちょっとどうしたのよ一夏!なんでみんなの目が死んでるわけ!?」

 

「まあ、がくがくじかじかじがしががくが………」

 

「言えてないわよ一夏…」

 

「……早く帰らないと織斑先生が来るぞ〜」

 

「っと、あんたが2人目の男性操縦者?にしてもなんで制服にアロハ柄が入ってるわけ!?」

 

「それは、それが自分のチャームポイントってな」

 

2人目の男性操縦者、九条桐也だったっけ?そいつはまだマトモな目をしている。死んでる目じゃなくて死にかけの目。どのみち酷いじゃないのよコレ!

 

「なにをしている凰。早くクラスに戻れ」

 

「げえ、千冬さん!?って千冬さんの目に隈が!?」

 

「あまり大きな声を出すな。頭に響く」

 

フラフラと歩く千冬さん。これって何があったのよ……。

 

 

4月27日(木)PM00時10分

 

「よお鈴。朝はゴメンな、まともな対応ができなくてさ」

 

「一夏!?あんた大丈夫なの!?」

 

「ああ、今は問題ないよ。もっとも今日の夜にから明日の朝にかけてまたあの状態になると思うけど」

 

「何があったのよ…一体」

 

「まあ、少し前になるんだけどさ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月13日(木)AM08時40分

 

「というわけで、1組のクラス代表は織斑君に決定ですね!あ、一繋がりで縁起がいいですね」

 

「どうしてこうなった!?」

 

朝のホームルームで発表された謎の決定事項。俺は昨日負けたはずなのにどうしてだ?

 

「それは私が辞退したからですわ」

 

「辞退?どうしてだよ、セシリアはクラス代表がしたいんじゃ」

 

「確かに、クラス代表に相応しいのは私だと思っています。ですが!!どうやら一夏さんは昨日の試合でわざと(・・・)負けたらしいので?「いやあれはわざとじゃ」ということは?一夏さんは?本気を出したら?クラス代表生など簡単に倒せると。だって代表候補生にわざと負けるぐらいですからねぇ〜」

 

「………」

 

セシリアの目が笑ってない。怖すぎる。これが噂のブラックセシリア。又の名を黒リア。今初めて使った。

 

「まあ、こればっかりはお前が悪いよ」

 

「そんなキリヤん!」

 

「頑張ってね〜オリム〜」

 

「のほほんさんまで!」

 

「ま、決定事項は覆らんだろうな」

 

「なんとかしてくれ箒!!」

 

「無理だな。だがまあ訓練ぐらいなら付き合ってやる。キリヤんもな」

 

「そうだな。まあ頑張れよ」

 

 

4月13日(木)PM04時20分

 

「今日から専用機使っての特訓か……セシリアが教えてくれるって言ってたけど」

 

「嫌な予感しかしないんだけど……大丈夫か?」

 

「昨日はまあまあ乗りこなせたし大丈夫だと思う。だと思うんだけど」

 

「どうした?」

 

「セシリアって、絶対スパルタだよな?」

 

「だろうな」

 

セシリアとの特訓をイメージする。『何をしているのですか!』『こんなこともできないのですか?』『これだから軟弱な男は』『ほら、早く立ちなさいこの〔ピーーー〕!!』『〔ピーーー〕!!〔ピーーー〕!!』

 

「いやそんなはずない。セシリアがそんなこと言うもんか」

 

「どうした独り言なんて喋って?」

 

「なあキリヤん。セシリアって口悪いかな?」

 

「それはお前が一番わかってそうだが。まあ上から目線なとこは少しあるけど、いい奴だろ」

 

「だよな。そうだよな。セシリアはあんな悪口は言わない。言わない」

 

 

「そうです一夏さん!その調子ですよ」

 

「こ、こうか?」

 

「一夏さんは飲み込みが早くて助かりますわ!さあ次のステップに行きましょう!」

 

セシリアの特訓は親切丁寧だった。どちらかと言うと体を動かして覚えようとする俺や箒と違い、どちらかと言うとキリヤんみたいに頭で覚えるタイプだ。

少なくとも箒の『スッ!といく感じ』『グワッ!と飛ぶ感じ』『ガーン!って武器を出す感じ』よりかは百倍ぐらい分かりやす、箒が睨んでる……。

 

「どうしたキリヤん。さっきから表情が険しいが?」

 

「ああ。なーんか嫌な予感がしてさ。自分と箒も巻き込まれるような気がする」

 

「それはないだろう。私たちはまだ訓練機も貸してもらってないんだぞ?」

 

「それもそうだが……まあ言っちまえばISなしでも特訓はできるだろ。それこそ箒の剣道みたいにな」

 

ISに乗っているとそんな会話も筒抜けだ。それこそスラスターの調子とか周りの状況判断のためとか、耳を使うことは多々あるらしい。スラスターの調子は変な音がなるらしい。そうなったらメンテものだ。

 

『ただいま午後17時をお知らせします。自主訓練を終わってください。訓練機を持ち出している生徒は18時までに返却してください』

 

「おや、どうやら今日はこれまでみたいですね」

 

「そうか。今日はありがとなセシリア。ISの特訓に付き合ってもらって」

 

「いえいえとんでもない。一夏さんにはクラス代表として恥をかいて欲しくありませんから。それに特訓はまだ終わりではありませんよ」

 

「だろうな。明日も頼むぜ」

 

「いえ、この後も行いますわよ?」

 

「………はあ?」

 

箒もはあ?といった顔をし、キリヤんはやっぱりといった顔をしている。何々?これから何するんだよ?

 

「今からは2時間ほど休憩をはさみまして、19時からは箒さんとキリヤんさんもご一緒にお勉強会ですわ」

 

「やっぱり巻き込まれたか……」

 

「なあセシリア?今日は一夏に教えるので疲れただろう?なにも私たちの面倒まで見ることはないんだぞ?」

 

箒もオロオロしながらセシリアを説得する。しかしセシリアには効果がないようだ。

 

「いいえ、御三方とも成績はあまりよろしくないと織斑先生から伺っております。ですのでこの私が家庭教師を任されたわけですわ」

 

「はい集合ーー」

 

キリヤんが俺と箒を集める。勿論セシリアは置いてけぼりだ。

 

「どうすんだよ名人!あ、一夏は女たらしの名人な」

 

「それについて後で抗議するにして。この様子だと就寝時間まで勉強会だぞ?それはどうしても避けたい。俺もテレビみたい」

 

「それは私も同意見だ。何とかならないかキリヤん?」

 

「適当な理由つけて逃げるしかない。といってもそれがバレた後が面倒だ。セシリアのことだから後々撃たれかねない」

 

「怖すぎだろ!セシリアでもそんなことしないって……多分」

 

「とまあこうなったら出来ることは1つだ」

 

「「1つだけ……」」

 

キリヤんは俺と箒の肩に手を置いて諦めた顔でこう言った。

 

「勉強会……しようぜ」

 

結局そうするしかないのか。まあ仕方ないことだよな。俺も箒もキリヤんも頭はあまり良くはない。こうして勉強を教えてくれることが本当はありがたいことなんだと自分に無理矢理言い聞かせて、俺は自室でテレビの録画予約をしに戻るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月27日(木)PM00時20分

 

「セシリアは別にスパルタすぎることはないんだ。たださ、休憩が欲しいなって……2時間じゃ足りないよ……」

 

「まさか毎日特訓してるわけ!?ちょっとバカじゃないの?確かに特訓は大事だけど、それで無理して体壊したら全て無駄になるのよ!」

 

「いや特訓は別に毎日じゃないんだ。基本2日やって1日休んでって」

 

「あ、そう。なら大丈夫じゃない。特訓なんてそんなものでいいのよ。まさか一夏!そんなことで泣き言言ってたわけ!?男ならもっとシャキッとしなさいよ!!」

 

「お前はどっちの味方なんだ!!」

 

さっきからこの2人の会話を隣で聞いてるわけだが……一夏とこの女の間には一体どんな関係が。

 

「おい一夏」

 

「どうした箒?唐揚げ欲しいのか?」

 

「ああ、レモンは絞らなくて大丈夫だ、って違う!!」

 

「こんなノリツッコミ、千冬さん以来だわ」

 

「この女とは一体どういう関係なんだ?」

 

「ん?いや鈴とは幼馴染だけど?」

 

同時に私の両サイドの友人がお茶を吹き出した。セシリアは苦しそうな顔をして、キリヤんは小声で「何爆弾発言してんだよ名人は」と笑いながら呟いている。

確かにこれは爆弾発言だが笑い事ではない。

 

「一夏!幼馴染は私だけではなかったのか!!」

 

「ええ?そんなこと言ってないけど…」

 

「ちょっと一夏!アタシ以外の幼馴染ってどういうことよ!!」

 

「いや鈴まで何乗っかってきてるんだよ!」

 

「まさか一夏さん………浮気?」

 

「ちょっと黙ろうか!セシリアさん!!」

 

「違う違うセシリア。名人はただの女たらしだ」

 

「キリヤんは余計なこと言わないで!!」

 

「オリムーは〜女たらし〜!」

 

「のほほんさん、やめてぇぇぇぇ!!!!」

 

お昼から絶叫する一夏を千冬さんが沈めたのは言うまでもないだろう。




鈴が転入してきました。しかし例のごとく鈴は2組。だから食堂ぐらい鈴に主導権握らせないとね!

次回は何処まで行きましょうか……
ではではsee you next game!


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第11話 約束 〜Training part2〜

後編です!


4月27日(木)PM00時24分

 

「だったらさ、今日のクラスの死んだ目はなんなのよ。特訓はあんたら3人だけなんでしょ?」

 

ラーメンを食べ終えた鈴が聞いてくる。因みに俺は唐揚げ定食、箒はきつねうどん、キリヤんはロコモコ、セシリアはオムライスだ。

 

「まあ最初はな。多分4日後ぐらいからかな?セシリアのバk、無茶な特訓がクラス全体を巻き込んだのは」

 

「一夏さん?今バカと言いました?バカと言いましたか!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月17日(月)AM09時40分

 

「というわけで!これよりクラス全員でのゲームを使った特訓を行いたいと思います!」

 

突然の山田先生の提案。いやこの人の隣でドヤ顔で立っている奴の提案だろう。セシリア、今度は何を思いついたんだよ。

 

「ISに乗っていると様々な状況に出くわすものです。機体トラブルに敵の増援、天候が急に悪くなるかもしれません。もしかしたら先日の一夏さんのように急に腹痛に襲われるかもしれません」

 

「そこで俺の名前を出さないでくれ……」

 

「そこでです!元々ありましたこのようなシミュレート授業を私セシリア・オルコットが少しばかり改造、もとい改修を行いました!」

 

「とにかく嫌な予感しかしない。織斑先生!いいんですか!?」

 

「面白そうだからオッケー」

 

箒の質問に即答する我が姉、我らが担任。面白そうだからオッケーとか教師としてどうかと思うのですが!

 

「確かにいつ如何なる時、問題が発生するかわからん。そんな状況に出くわしても素早く対応できる力がお前達には必要だ。その力を身につける授業も予定していたのだが、今回のオルコットの申し出でこのゲームをすることになった」

 

千冬姉が教卓に置いたのはVRゲームの『バンバンシミュレーション』とそれを遊ぶためのゲーム機…が入っているであろうダンボール。もしかしなくてもクラス全員分か?

 

「心配しなくても学校の金だ。安心しろ」

 

クラス全員思っただろう。安心できねぇと。

 

「バンバンシミュレーションってバンバンシューティングの派生作品じゃなかったっけ?確かシューティングの方は発売中止になったって聞いたけど?」

 

「それはバンバンシミュレーションをオルコット家が買い取ったからですわ!まあシューティングの方は幻夢コーポレーションが買い取りましたが」

 

買い取るとか流石セシリア。なんか普通にこういうことする奴がクラスにいるって、やっぱりIS学園ってスゲーな。

 

「自分、VRゲームはあんまり得意じゃないんだけどなあ〜」

 

「私もコントローラーを持ってやるゲームならまだ大丈夫だが、VRになると少し……」

 

「箒は苦手そうだけど、キリヤんは意外だな」

 

「VRゲームも遊ぶには遊ぶけど、なんかアレ慣れないんだよな」

 

VRゲームは人気なゲームではあるが、その反面否定的な意見も目立つゲームだ。少し前にVRゲームに関する事件が起きてからVRゲームは売れなくなったし遊ばれなくなった。まあそれでもソフトを出し続けるんだし、少しは遊ばれているらしい。

 

「まあクラス全員が一斉に遊ぶわけにもいかん。半分に別れゲーム側を私が、座学側を山田先生に見てもらう」

 

「自分がしたいだけじゃないのか……」

 

「ナニカイッタカ?オリムラ?」

 

「いえ!なんでもありません!!」

 

 

というわけで行われたわけだが、座学側は言わずもがな、普通の座学でしたとさ。肝心のVR側だが、なんともこれが凄いの一言。ただのシミュレーションゲームとは言えないデキだった。現実ではわずか25分弱だが、ゲーム内では3日も過ごした。作戦会議や戦闘、それと肝心の緊急事態の対処法などなど。

たかがゲーム、されどゲーム。この充分すぎるほどの結果に千冬姉も気分を良くしたのか今回の授業を今後も取り入れると言ったのだ。

 

そう、言ってしまった。

 

 

 

 

それからというもの、何人かの生徒が暴走。すっかりゲーム中毒になってしまい、他の生徒を巻き込んでしまい、クラス全員が廃人寸前になってしまったのだ。メンバーは5人。セシリア、箒、キリヤん、のほほんさん、俺。いやゲーム中毒というのは撤回しよう。

 

セシリアは自分が提案しただけあってバリバリプレイしていた。

箒の場合は彼女の性格の負けず嫌いが表へ出てしまい、勝つまで何度も何度も作戦を練り直し、戦闘を繰り返した。

キリヤんは元がゲーマーというのもあってセシリア同様バリバリプレイしてました。あとヘッドショット上手すぎだろ!!

のほほんさんも意外とゲーマーしてた。

俺?俺はただ単にゲームにハマってました。

 

という、ほとんど俺たちのせいでわずか3日でバンバンシミュレーション授業は中止となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月27日(木)PM00時30分

 

「って、あんたらのせいじゃないのよ!!」

 

「全くもってその通りです」

「返す言葉もない」

「まんまとノせられたぜ」

「あんなに夢中になるとはお恥ずかしい」

「でもでも、楽しかったよね〜」

 

恐らく反省という言葉を知らないこの5人。下手したらまた何かしでかすわね。

 

「でもそれなら昨日はゲームしてないでしょ?仮にゲームしてあんな廃人みたいな目になるならわかるけど。一夏の話だと少し前に辞めたって」

 

「ああ、昨日は単純に俺のクラス代表おめでとー会ではしゃぎすぎたからだ」

 

「…………」

 

もうツッコミする気にもなんないわ。どんだけはしゃいだのよこいつらは!てか千冬さんまではしゃぎすぎたって。絶対飲んでるわ。もう5、6本いってるわ。てか教師が平日から飲んで大丈夫なわけ?いや絶対ダメだわ……大丈夫かIS学園?

 

ああー大丈夫かなアタシの学校生活……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月27日(木)PM06時50分

 

「最近ISの訓練ばっかりだったから、剣道が幾分か楽に感じるぜ」

 

「そうか。なら一夏にはこの剣道部に伝わる伝説の特訓を」

 

「いやー流石剣道だわー。IS乗るよりもキツイかもなー。ISのアシストないから素早く動けないし、ほとんど自分の力だからしんどいわー」

 

「そうかそうか!剣道は楽しいか!」

 

箒が嬉しそうにこっちを見つめてくる。その表情は剣道をしている時の真剣な表情とは違いなんというか……

 

「……そうだな、剣道は楽しいよ」

 

「え、そ、そうか。剣道は楽しいか。それは良かった」

 

「久しぶりに剣道を楽しいって感じた。最近は何かと忙しかったし」

 

クウガに変身して、未確認と戦い始めて、

 

「そうだろうな。突然IS学園に入学させられ、セシリアに勝負を挑まれて」

 

仮面ライダーレーザーと出会って、一緒に未確認と戦って、

 

「でも、全部いい思い出だよ。キリヤんやのほほんさん、セシリアとか鈴。みんなと出会えたし。何より箒ともう一度会えたのは大きいな」

 

「な、何を言いだすんだ馬鹿者!そんなに煽てても、特訓は緩めんからな!」

 

「ハイハイ、これからもよろしくな箒」

 

こうして鈴がやってきた日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っていましたとも!

 

「ヤッホー一夏!」

 

「「鈴!?」」

 

着替え終わり、剣道場に寝転がって寝ているキリヤんを起こして、さあ帰ろうと道場を出ようとした時に鈴と出会った。

なんだろう、嫌な予感がする。

 

「聞いたわよ一夏。あんた箒と一緒の部屋なんでしょ?箒も男と、それも一夏と一緒なんて嫌じゃない?なんならアタシが変わってあげてもいいわよ!」

 

「なっ!?」

 

「あーりゃりゃ、これは面倒ごとに」

 

「何言ってんだよ鈴。それは難しくないか?」

 

「そ、そうだぞ!それに私は別に嫌ではない!」

 

「でもいろいろ不便なとこはあるんじゃないの?アタシならそこまで気にしないし」

 

「私も気にしない!」

 

箒と鈴の言い合いは熾烈を極めた。ハッキリ言って俺はキリヤんと同じ部屋の方が気が休まるから嬉しかったり。前にそういったら『せっかく女子と相部屋になれたんだから楽しめよ』なんて言われた。多分楽しんでるのはキリヤんだけだと思う。

 

「そうそう一夏!あんたあの時の約束覚えてる?アタシが国に帰る時にした」

 

「約束?鈴と約束なんて結構してるだろ。まあほとんど俺から頼んでることだけど……鈴が国に帰る時……」

 

「まさか忘れたわけ!?」

 

「いや覚えてる。確か……毎日酢豚を…」

 

「そうそう、それそr「奢ってくれるってやつか!」……はあ?」

 

「え?違う?おかしいな………ああ、そうだ少し違うな!」

 

「そうそう、少し違うのよ」

 

「確か、料理が出来るようになったら、毎日自分が作った酢豚を食べてくれ。だろ?」

 

途端に鈴の顔が真っ赤になる。風邪かな?ていうかすぐに顔真っ赤ってそれ新種のウイルス。

 

「そ、そうよ。なによちゃんと覚えてるじゃない……ああ、もういいわ。部屋は箒のままでいいわ。今は少し気分がいいから」

 

「そ、そうか。だがまだ勝負は始まったばかりだ!お前は約束、私は相部屋!まだ同じ土俵というのを忘れるなよ!」

 

「わかってるわよ!!じゃーねー!おやすみーー!」

 

「同じ土俵?2人とも相撲でもやるのか?」

 

「「うるさい!!」」

 

「やれやれ、流石だな名人」

 

こうしてなんとなく長く感じた鈴との再会の日はこうして終わりを告げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月30日(日)PM11時50分

 

「ああ、やっと完成したよ。流石発売中止になったゲームだ。調整に時間がかかってしまったよ。ともあれこれでバンバンシューティングは完成だ。ああ、使用してもらう人は決めてあるよ。君も驚くと思うよ。まあ気にせずに先生を続けてくれたまえ。当面はクラス対抗戦かな?多分天災もその時に動き始めるだろう。その警戒も忘れずにね」

 

黎斗は電話を切ると金色のガシャットを手に持つ。普通のガシャットとは少し形が違っている。

 

「4人チームプレイをするのも、そう遠くないかな」

 

黎斗がタブレットを操作すると、そこに3人の仮面ライダーが映し出された。

ピンク色が目立つ仮面ライダー。

水色の騎士の仮面ライダー。

 

そして、ピンク色の仮面ライダーと同じ形の黒い仮面ライダーが。




鈴と喧嘩せずにクラス代表対抗戦へと突入です。そしてさらっと狩ゲーガシャットが出てきましたがまだ完成してません。こればっかりは4人揃ってからですね。

次回は一夏vs鈴のクラス対抗戦。出来ればバンバンシューティングさんにも登場していただきたい。

ではsee you next game!


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第12話 甲龍 〜League match〜

ISの最新巻買ったんですけど……おめでとう、シャルロットは進化したよ!あとセシリアとの絡みも多くて満足。
そして何より!のほほんさんの出番が少し多かった!これだけで買う価値ありですな!
因みに本作は11巻の内容にも入ります。もしかしたら12巻もかな?

では、クラス対抗戦です!


5月10日(水)AM10時50分

 

「思い返せば……ゴールデンウィーク全然遊んでないな」

 

「ほとんどお前は特訓ばっかりだもんな」

 

「そのおかげでかなり強くなった、気がする」

 

白式に乗り込んで待機する俺となにやら妙にソワソワしているキリヤん。どうしたのだろうか?トイレかな?

 

「さっきから何ソワソワしてるんだキリヤん?トイレか?」

 

「いや、トイレなら終わらせてきた。そんなことより自分の心配でもしてろ。対戦相手リンリンなんだろ?」

 

「それ鈴に言ったらキレられるぞ?」

 

なんでもパンダみたいだと言って嫌うのだ。

そんなことよりそう、クラス対抗戦の最初の対戦相手は2組のクラス代表に無理矢理なった鈴だったのだ。鈴の実力は多分セシリアと同等、いやそれ以上かもしれない。

 

「まあ、私なら鈴さんに遅れをとることはありませんが!」

 

とか言うのはセシリア。優雅に(自販機の)紅茶を飲んでいる。最初は抵抗があったらしいが飲んでみたら悪くないとのこと。

 

「相手はセシリアと同じ代表候補生だ。油断するなよ一夏」

 

と言うのは箒。鈴に関するレポートを読みながら俺に話しかけてくる。というかそのレポートは俺が見なくちゃいけないんじゃないか?

 

「まあ全力でぶつかってこい名人。負けるにしてもカッコいい負け方してこい」

「期待してますわよ一夏さん!」

「行ってこい一夏!」

 

「おう!」

 

 

5月10日(水)AM11時00分

 

「来たわね一夏」

 

アリーナには既に鈴がISを纏って待っていた。マゼンタカラーの機体が目立つ鈴の専用機。甲龍って書いてシェンロンって呼ぶらしい。俺的にはシェンロンって読んだら願いを叶えてもらう方のシェンロンを連想してしまう。これから『こうりゅう』と読もう。

 

「ねえ一夏。ただ勝負するだけじゃ面白くないでしょ。ここは負けた方が勝った方の言う事をなんでも聞くのはどうかしら?」

 

「いいぜ。そっちの方が面白い」

 

そして試合開始のブザーが鳴り響く。しかし俺も鈴も動かない。俺としては鈴の出方を見たかったのだが、どうやら鈴も俺の出方を、

 

「ほら先手必勝!!」

 

「っていきなり来るなよな!」

 

青龍刀みたいな剣で攻撃してくる。それを雪片弐型で受け止めるが、もう一本の青龍刀で殴られる。今のでシールドエネルギーがかなり削れてしまった。

 

「へえ、まだやるじゃない一夏。だいたいの奴は今ので出鼻くじかれてメンタルやられて降参するんだけど」

 

「諦めが悪いのはお前も知ってるだろ鈴」

 

まだ一回当たっただけだ。これから攻撃に当たらなければいい。そういうもんだ。

 

「じゃあ、これならどう!」

 

「っあ!?なんだよ今の!」

 

見えない衝撃で殴り飛ばされる。白式のハイパーセンサーには反応がなかったはず……いやちがう。ハイパーセンサーでも捉えるのに時間がかかるんだ。だからハイパーセンサーには反応している。まさしく直撃寸前に。

 

「くそっ!」

 

「あら、もう避けれるわけ?龍砲は砲身も砲弾も見えないからあんたには対処は無理だと思ったのにね」

 

「言ってろ!俺だって伊達にゴールデンウィーク無駄にしてないんだ!」

 

蘇るのはゴールデンウィークの地獄の特訓。箒との剣道、セシリアとのISの実技訓練、千冬姉による個人授業、キリヤんとのほほんさんとの夜中のゲーム大会。おかげで剣を扱うのも前よりも上達したし、白式の操作もマシになった。千冬姉のおかげで白式の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)の仕様も理解できた。ゲームは知らん。

 

「うおおおっ!!」

 

「ッ!!やるじゃん一夏!」

 

龍砲を掻い潜りながら鈴に一刀を叩き込む。それでもすぐに青龍刀で反撃されるが…これならいける!

 

「フッ……あんた今、これならいける!とか考えてたでしょ」

 

「え!?」

 

「グーパーグーパーしてるの、見えてるわよ」

 

千冬姉にもよく言われた。どうも俺は調子に乗ってると手をグーパーする癖があるらしい。これも無意識にやってるから余計にタチが悪い。

 

「そうやって調子乗ってたら足元すくわれるわよ!」

 

「そんなことで俺が負けると思うか!!」

 

龍砲の攻撃を躱しながらチャンスを待つ。流石に鈴も龍砲だけで俺を倒せるとは思っていないはず。だからこそ鈴はあえて抜け道を作るはず。

 

(ほーら、引っ掛かれ!)

 

(ここだ!)

 

「ほーら引っ掛かっ「それはお見通しだぜ!」なっ!?」

 

急加速で下降する。そして地面ギリギリでターン。下から鈴に向けて加速する。

 

「くそっ!加速して真っ正面から突っ込んでくると思ったのに!」

 

「それの裏をかいたのさ。抜け道を作れば俺がそれをチャンスと思って加速して鈴に突っ込む。それを読んで返り討ちにしてやろうとか考えていたんだろうが、まだ考えが甘かったな!」

 

「そこまで読まれたらイラッてくるわね!」

 

流石代表候補生。下からくる俺に対してすぐさま体制を整え、迎え撃つ。でも俺の方が早い!

 

「もらった!!」

 

鈴の青龍刀が俺を捉えるより先に俺の雪片弐型が鈴を捉えた。そう思った瞬間だった。

 

天井のシールドをぶち破り、ソイツは現れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月10日(水)AM11時20分

 

「な、なんだ?何が起きたんだ?」

 

状況が飲み込めない一夏。ぶっちゃけあたしもよく分かっていない。でもやることは1つしかない。

 

「一夏!試合は中止よ!すぐにピットに戻って!」

 

そう一夏に伝えた瞬間、ハイパーセンサーが緊急通知を行って来た。

曰く、ステージ中央に熱源あり。所属不明のISと断定。ロックされている、と。

 

「一夏、早く!!」

 

アリーナのシールドを貫通する威力のレーザー。シールドはISと同じもの。つまり食らえば即終了!つまりピンチ!!

 

レーザーをギリギリ躱す一夏。ギリギリだから次は当たるかもしれない。当たってしまえば一貫の終わりだ!

 

「あたしが時間稼ぐから、その間に逃げなさいよ!」

 

「なっ!?馬鹿言うなよ……女を置いてそんなことできるか!」

 

馬鹿、それはもっと強くなってから言いなさいよ一夏。

 

「別に、あたしも最後までやるつもりはないわ。こんな緊急事態、すぐに先生が「あぶねぇ!!」きゃっ!?」

 

間一髪、あたしの体をレーザーが掠めた。ていうか今ので分かった。セシリアのISよりも出力が上だ。

 

「てか、助けてくれたのはありがたいけど……どこ触ってんのよ!」

 

「え、ああ悪い」

 

「うわああっ!?急に離さないで……って、一夏?」

 

一夏の表情は真剣そのもの。いいや、殺意が込められている。一夏が本気で怒るなんて、今まで見たことなかったかも…

 

「お前、誰だ」

 

「………」

 

「反応なし、ね」

 

目の前の敵、全身装甲のISは姿からして異形だった。腕は太いし長い。頭部には剥き出しのセンサーが不規則に並び、ビーム砲口は計四つあった。

こんなIS、見たことない。

 

『織斑くん!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生たちが制圧に向かいます!』

 

割り込んで来たのは山田先生。心なしかいつもより声に威厳があるよな……。

 

「いいえ、アレは俺たちで食い止めます。いいな、鈴」

 

「誰に言ってんのよ……ほら向こうはやる気満々よ?」

 

「みたいだな」

 

それぞれの得物を構え、全身装甲のISと対峙する。作戦は話さなくても分かっている。近距離しか取り柄のない一夏。ならばあたしはそれのサポートをするのみ!

 

「じゃあ、行くか!」

 

「ええ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「もしもし!?2人とも聞いてますー!?」

 

「本人がやると言っているのだから、2人にやらせればいいだろ」

 

「お、織斑先生!?何を呑気なことを!?」

 

「まあ落ち着け。コーヒでも飲め。糖分が足りないからイライラするんだぞ」

 

「あの、それ塩なんですけど……」

 

「………なぜ、塩が」

 

などと、教師2人がどちらも落ち着いていないのが目に見える。その場に居合わせたセシリアに至っては代表候補生らしからぬ慌てっぷりだ。

 

何せアリーナの遮断シールドのレベルが4に設定されているからだ。さらに扉は全てロックされている。これでは避難も救助も不可能なのだ。

 

更に追い討ちをかけるようにアラームが鳴り響く。

 

「今度はなんだ!」

 

「またしても、アリーナのシールドが破られました!2体目の侵入者です!」

 

「次から次へと!!」

 

しかし、それが強力な助っ人であることは、未だ知らない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月10日(水)AM11時30分

 

またしてもシールドが破られて侵入者が現れた。

 

でもそれは俺たちにとって最高の侵入者だった。

 

「何よ、アイツ」

 

「鈴は初めてか……あれは、仮面ライダーだ」

 

顔の形が違うが、あの体型、あのベルトは間違いなく仮面ライダーだ!あれがレーザーならもっと安心できたのだが。

 

「一撃でこの経験値。もうレベルアップもできるか」

 

シールドをぶち破って来たとき、あの仮面ライダーは自身の体を弾丸のように回転させながら突っ込んで来た。つまりあれはシューティング系の仮面ライダー!レベルアップしたら拳銃になるのかな!?

 

「第弐戦術」

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

『ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!!』

 

レベルアップしたその姿はレーザーのようにバイクにはならず、普通に大きくなった。特徴的なのはイエローのローブ、右目を隠す前髪みたいなパーツ。そして極め付けが、

 

『ガシャコンマグナム!』

「ミッション開始」

 

『STG』の文字。完全にシューティングゲームの仮面ライダー。

名付けるなら、『仮面ライダースナイプ』!!




テレビ本編ではレーザーターボなる仮面ライダーが出て来ましたね。勿論こっちにも出します!

そして仮面ライダースナイプ、遂に参戦です!変身者分かるかな?案外簡単で、単純です。深く考えるな!

次回でクラス対抗戦終わり!早い!そんでもって次はオリジナル編の中間テスト編に入ります。そこならクウガでるから!

ではsee you next game!


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第13話 銃弾 〜SNIPE〜

スナイプ大活躍!?


5月10日(水)AM11時30分

 

「ミッション開始」

 

ハンドガンで未確認ISを攻撃するスナイプ。手慣れた手つきでハンドガンを操る。

 

「何やってんの!さっさと加勢するわよ!」

 

「え?お、おう!」

 

鈴は青龍刀を構え、俺は雪片弐型で未確認ISを攻撃する。俺たちが近接戦闘を繰り広げる中でもスナイプは的確にISに攻撃を当て続ける。

でも時々俺の頬ギリギリを狙ってきてるのは何故だ?

 

「つあっ!!」

 

「どりゃあ!!」

 

その中でもISは両腕からレーザーを放とうとするが、それを俺と鈴で両腕の砲口を潰し破壊する。これで主力武器を潰すことに成功した。あとは、こいつを機能停止に追い込むだけだが、

 

(なんか、変だな……人間味がない)

 

普通主力武器を破壊されれば誰しも少しは焦るものだ。しかしこいつはただ淡々と俺たちに攻撃を仕掛けてくるだけ。まるで機械のように作業を繰り返すだけだ。

 

「なあ鈴。ISって人が乗ってなくても動くのか?」

 

「はあ?そんなのありえないわ。現段階でISは人が乗ってなくちゃ動かない。これからの研究次第じゃ無人機なんて可能だろうけど、今の技術じゃ不可能よ。それこそ生みの親でもない限りね」

 

ISの生みの親。その瞬間に1人の女性の顔を思い浮かべるが……いやあの人がこんなことするはずない。

 

「でもそうね。一夏の言いたいことも分かるわ。確かにこいつ人間味が薄いかも」

 

「いっそのこと、無人機として攻撃するか?」

 

「それで無人機じゃなかったらどうすんのよ!」

 

「おい。そろそろお喋りはそこまでにしとけ」

 

ふと声をかけられる。どうやら下からスナイプが俺たちに話しかけたようだ。ハンドガンをライフルに変形させながら言葉を続ける。

 

「無人機かどうか分からないなら、俺が分からせてやる」

 

スナイプはBボタンを押してエネルギーをチャージする。狙っているのはISの右肩。そして攻撃が放たれる。

 

ライフルから放たれた弾丸はISの右肩を吹き飛ばした。そう文字通り吹き飛ばしたのだ。肩という繋ぎが無くなった機械の右腕がボトリと地面に落ちる。

 

普通のISでそんなことになれば腕と肩から血が止まらないほど出ていただろう。でも目の前のISは普通ではなかった。

 

壊れた右肩から火花が飛び散る。よく見ると奴の体は機械だらけ。人が入れるスペースなんてない。いや元から人を必要としない機械の塊だ。

 

つまりこいつは正真正銘の無人機だ。

 

「嘘、ほんとに無人機だったわけ…」

 

「こいつで分かったか?ならとっとと仕掛けるぞ!」

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

スナイプは無人機だと分かるとライフルにガシャットを差し込む。こうなったら俺たちも本気で行くしかない。

 

「無人機って分かったなら、本気でやらないとな!」

 

「ったく、あんたの観察眼は中々なものね一夏。後でなんか奢らせなさい」

 

「なら、後で酢豚作ってくれ。お前の料理、久々に食いたいからさ」

 

「なっ………あんたってほんと…」

 

俺は白式の切り札『零落白夜』を発動させる。鈴は青龍刀に衝撃砲のエネルギーを全て託す。そのせいか衝撃砲が地面に真っ逆さまに落ちていった。

 

「行くぞ鈴!!」「行くわよ一夏!!」

 

同時に声をかけ、同時に加速する。青白く光る雪片とオレンジに輝く鈴の二本の青龍刀。俺たちがやるのはトドメに繋ぐための足止めだ。トドメはスナイプに任せればいい。

 

「「うおおおおっ、らあっ!!」」

 

無人機のボディを切り裂く3つの剣。エックスの文字に切られた無人機目掛けてトドメの一撃が届く。

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「決めるぜ!」

 

ライフルから放たれた超高密度のエネルギー弾。さっきの比じゃないほどの一撃は無人機の中心を立ち抜いた。バチバチと火花を散らす無人機。こうなったら後はお約束だ。

 

「はいポーズ」

 

「「よっしゃああ!!!」」

 

大爆発を起こす無人機をバックに決めポーズをする俺と鈴とスナイプ。結構いい画でしょ?

 

 

5月10日(水)AM11時40分

 

「あんた結局何者なのよ!」

 

いきなりスナイプに食ってかかる鈴。確かに俺も正体気になるけどそんなにグイグイ行かなくても。

 

「あんまり怒鳴ると可愛い顔にシワが刻まれるぜリンリン」

『ガッシューン』

 

「って、ええ!?」

 

「そんな、キリヤん!?」

 

スナイプは変身を解除した。そして現れたのは九条桐也、つまりキリヤんだった。スナイプの正体はキリヤんだったのだ!

 

「どどど、どうなってるんだ!?」

 

「まあまあ名人落ち着けよ。向こうで話そうぜ」

 

 

「どういうことなんだよキリヤん。どうしてキリヤんが仮面ライダーやってるんだよ」

 

「それについては私が説明してやる」

 

アリーナから戻った俺たちを待っていたのは千冬姉、山田先生、セシリア、箒の4人だった。

 

「元々九条はISが操縦できない。ならば何故この学園にいるか。それはこの学園に対未確認用の対策チームがあるからだ」

 

「未確認用の対策チーム…」

 

「実はこの学園には2人の仮面ライダーが既にいる。そいつらは任務で海外にいるが「千冬姉!!」……なんだ織斑」

 

「どうして、キリヤんが仮面ライダーなんだ。どうしてイチ高校生にそんな命がけの仕事を任せるんだよ!」

 

「落ち着けよ名人。こいつは自分から飛び込んだんだ。だから自分は後悔してないし、それに仮面ライダーになったおかげでこの学園に来られた。そんでこんなにも可愛い女の子たちに囲まれている。それにお前にも出会えた」

 

「キリヤん……女の子のくだりがなければカッコいいのに」

「箒さん!ツッコミは後で!」

 

「まあ、ハッキリ言って自分にとって万々歳だから。あんまギャーギャー騒ぐな一夏」

 

「……悪い」

 

我ながらギャーギャー騒いでしまった。後で千冬姉にも謝っておこう。

 

「話を続ける。確かに未確認用の対策チームは危険がつきものだ。だからこそ我々学園の教師も全力でサポートしている。それにとある企業もサポートしてくれているからな。これで少しは安心できたか一夏?」

 

IS学園の先生はほとんどが各国のトップクラスの実力を持つIS操縦者ばかりだ。まあそれなら安心できる……わけがない。いくらISでも相手は未確認生命体だ。どんな手で来るかわからないんだぞ。

 

「……不安は残ってるけど、分かったよ千冬姉」

 

「織斑先生だ。さて九条の件だが、この事は他の生徒には話さないように。そこから外部に漏れてはまた面倒になる」

 

ああ、だからキリヤんの事がニュースにならなかったのか。確かにISに乗れないのにIS学園にいるってなったらそれこそ色々言ってくるやつが現れるか。

 

「それでは以上だ。九条は少し残れ。あとは教室で待機していろ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて九条。お前、あの仮面ライダーだったか?」

 

「スナイプは今日初めて。社長から送られてきたのさ。やっぱり人型っていいね。レーザーよりスナイプの方が戦いやすいよ」

 

「黎斗か……木綿季にも聞いておくか」

 

「思ったんだけど、あの無人機。操っていたの」

 

「十中八九、束だろうな」

 

「やっぱりね。こいつは第三勢力の登場か?」

 

「だろうな……ところで九条、一つ言っておくが」

 

「なんです?」

 

「お前、嘘をつきすぎだぞ」

 

「……まあ、それが自分だから」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月10日(水)PM00時10分

 

「うーん……」

 

「何唸ってるんだよ鈴」

 

「いやクジョキリなんだけどさ」

 

「クジョキリって……お前はそんな呼び方してんのか」

 

「だってあいつリンリンって呼んでくるのよ!だったらこっちもそれなりに呼んでやる、って違うわよ!」

 

「相変わらず騒がしいな鈴。で結局何なんだよ」

 

「別に、些細なことよ。クジョキリの一人称なんだけど、あいつ自分のこと『自分』って呼んでるじゃない。でもたまに『俺』って言ってるのよ」

 

「ん?そうなのか?」

 

「まあ、あんまり気にすることじゃないと思うけどね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

フランスに疾風あり、

 

「準備できた?先生」

 

「言っとくが、俺はお前の主治医になったつもりはない」

 

「ハイハイ、分かってるよ先生」

 

 

 

ドイツに切り札あり、

 

「申し訳ありません隊長。どうやら逃げられたようです」

 

「まったく、しつこいものだな財団Xも。だが成果がないわけではない」

 

『ジョーカー!』

 

 

 

日本に黒い影あり、

 

「さあ、そろそろ動き始めよう。ゲームスタートだ」

 

 

 

そして、IS学園にて戦いあり、

 

「中」

 

「間」

 

「テ」

 

「ス」

 

「ト」

 

「!?」

 

「九条、織斑、篠ノ之、オルコット、布仏、凰。それが打ち合わせなしで出来ていたら私も褒めているところだ。あと凰は2組に戻れ」

 

「あ、はーい。お邪魔しましたー」

 

そう、中間テスト。学生なら誰しも通る、戦いである。




というわけで色々謎を残してクラス対抗戦終了なり!

スナイプの変身者はキリヤんでした。つまりレーザーとスナイプの1人2ライダーです。キリヤんとしてはスナイプの方が戦いやすいとのこと。これが後々の戦いで面倒なことに。

そしてフランスとドイツの2人がそろそろ姿を現わす頃合いです。でもまずは中間テストだ!


あと関係ないんですけど活動報告をあげると思うので暇な方はどうぞ。

ではSee you Next game!


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第14話 昼飯 〜Study meeting Part1〜

中間テスト編、パート1です。
関係ないけど皆さんはテストどうしてました?自分は勉強しないで挑む人です。ええ、後から後悔する人です笑。


5月20日(土)AM10時40分

 

「………」

 

「………」

 

寝息だけが聞こえる部屋。2人ともだらしない格好で寝ている。

男=桐也と女=本音は昨日の夜遅くまで勉強をしていた為に今現在まで寝ているのだ。幸いにも今日は学校がない。それ故に約束も忘れてずっと寝ているのだ。

 

そんな2人の部屋をノックする音が響く。

 

「おーいキリヤん。起きてるかー?」

 

「本音も起きているか?」

 

一夏と箒だ。しかし2人の声は熟睡している2人には届いていない。勿論部屋には鍵がかかっているため入ることはできない。

 

「どうする?」

 

「あの2人は中々起きないからな。また後で声をかけよう」

 

「そうだな。とりあえずメールしとくか」

 

いつも使っている連絡アプリで桐也に連絡する。

 

『一夏:もう勉強会始めてるからな〜』

 

するとすぐに既読マークがつき、

 

『キリヤん:りょー』

 

「いや起きてんじゃねえか!」

 

『キリヤん:バレたか笑』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そんなに怒ることねえじゃんよ」

 

「じゃんよ〜」

 

「馬鹿者。休日だからといって緩みすぎだ。朝は最低でも9時には起きておけ」

 

(俺今日9時半に起きたんだけど……)

 

なんて俺が考えているうちに目的地に到着する。目的地は俺の家。時刻は11時半を過ぎている。最早勉強会は午後からにした方がいい。

 

「ここが名人の家か」

 

「おっきいね〜」

 

「お前の家も久しぶりだな」

 

「昔はよく遊びに来てたよな箒」

 

IS学園の生活を始めてから滅多に帰ってなかったからな。掃除してないから埃っぽいかもな。

 

「それにしても学校の勉強部屋が全部埋まってるなんてな。流石中間テストだな」

 

本来なら学校の勉強部屋を使わせてもらう予定だったが、全てが全て埋まっておりとてもそこで勉強する気分にはなれなかった。だって熱気凄いし。

それなら掃除ついでに俺の家でやろうと提案した。幸いにも明日は日曜日。今日は勉強して、明日は息抜きで掃除したりゲームしたり。また月曜から頑張ればいい。

 

「「「お邪魔しまーす」」」

 

「どうぞ上がってくれ」

 

「よし、名人の部屋にエロ本探しに行こうぜ!」

 

「イェ〜イ!」

 

「何言ってんだよキリヤん!?のほほんさんも同調しないで!」

 

それに、箒には内緒だけどエロ本なら学校に持って行っている。第一俺はエロ本は3冊しかない。そのうち2冊は友達に貸してるから実質学校にある1冊しかない。対策は万全だぜ。

 

「仕方ないな。んじゃゲームするか」

 

「うわ〜オリムーゲーマーだね〜」

 

「なんだこれは、珍しく散らかってるな一夏」

 

「あー、荷物詰め込む時に片付けてなかったな」

 

リビングに入ると机の上の散らかり具合が目につく。荷物まとめてる時に片付けてなかったゲームばかりだ。

 

「じゃなくて勉強会だろ!ほら勉強するぞ!」

 

「とは言っても一夏、もうお昼だぞ?」

 

「腹減ったー」「お腹すいたー」

 

起きてから朝ごはんを食べずにここまで連れて来たキリヤんとのほほんさんにはちょっと辛いかもな。何か出前でも頼んでもいいけど…

 

「名人って料理上手いんだろ?なら作ってくれよ」

 

「私も食べた〜い」

 

「私も久しぶりに一夏の手料理を食べたいな」

 

食いしん坊達は俺に料理を作ってくれと頼んでくる。冷蔵庫を見ると食材が全然入っていない。これで作るとなると少し厳しいな。

 

「悪いけど今の食材じゃ少し難しいから食材買ってくるよ」

 

「なんだよ、それぐらい自分達が行くよ」

 

「そうだな。作ってもらう側としてはこれくらいはしないとな」

 

「みんなでお買い物だね〜」

 

それは料理する側としてはとても助かる。助かるんだけど……これ勉強会始まるのいつになるんだ?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM00時05分

 

「ちょっと、あんたの買い物多くない?」

 

「そうですか?普通だと思いますが」

 

「それのどこが普通なのよ」

 

ショッピングモールにて。セシリアと鈴は一夏達との勉強会の前に少しだけ買い物をしていた。勉強会が午後からとなったためにそれまで少し買い物をしようと鈴が提案したのだ。

 

そして後悔してるのも鈴だ。セシリアが買いまくる買いまくる。支払いは謎の黒いカード。店員は一瞬物欲しそうにカードを見つめるがすぐに会計を済ませる。

 

「さて、そろそろお昼にしましょうか」

 

「それなら、ここの近くにできたお店に行きましょうよ!」

 

「あら、それは良いですわね!では荷物は届けてもらいましょう」

 

セシリアが携帯で連絡するとすぐに黒い車が到着し、中から現れた数人の女性が荷物を回収してすぐに立ち去った。あれがなんなのかすぐに鈴は理解した。

 

「流石お嬢様ね。あたしのも頼めば良かった」

 

「あら?鈴さんも学園に届けてもらいますか?それならもう一度呼びますが」

 

「いいわよ!さっき行ったばかりなのにまた戻って来てもらうなんてなんか悪いわよ!」

 

その場を早足で離れる鈴。それを追いかけるセシリア。

 

「あ、鈴さん!あのお店に寄ってもいいですか!?」

 

「あーーー、あれはご飯食べてからにしましょ。それの方が美味しいでしょ」

 

セシリアが指差したのはケーキ屋。一夏達へのお土産にするつもりなのだろう。

 

(まったく、セシリアは優しすぎるのよ)

 

今でこそセシリアは買い物をしたりケーキを見てはしゃいだりと可愛らしい少女だが、先の無人機戦にて何もすることができず、その夜に悔し涙を流していたのを鈴は知っていた。それからというもの、セシリアは以前よりも積極的に訓練に取り組むようになり、鈴もそれに付き合っていた。

 

(何もできなくて。それが悔しくて。だから前よりも頑張る。なんか分かる。あたしもそうだったし……)

 

「どうかしましたか鈴さん?」

 

「なんでもないわ。ほら、あたしが奢ってあげるから早く行くわよ。あそこランチタイムになったら結構混むんだから」

 

「はい鈴さん!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

桐也達が買い物を、鈴達が食事をしている中、

 

「や、やめ、やめてよっ!!」

 

「………フッ」

 

「いや、いやいやいや!あ、あ、ああああああっ!!」

 

少し離れたビルの屋上から人が落ちる。いや落とされる。落とした張本人は屋上から顔を覗かせる。下には大勢の人間が下に広がる肉片を見て騒いでいる。

 

やがて姿を豹の怪物から女の姿に変え屋上を後にする。その表情に笑みを浮かべて。




うーん、パート5ぐらいまで続くかも?出来るだけ早く終わらせてシャルとラウラを出したいです。ならテストとかいらねー!と思うと思いますが、やっぱり学園モノってテストやらないとね!

勿論中間ですから期末もあります。そっちは夏休み前ですね。

次回は戦闘多め。なんだかんだでセシリア達が初めてクウガと出会う!

ではSee you Next game!


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第15話 騎士 〜Study meeting Part2〜

パート2です!


5月20日(土)PM00時30分

 

「キリヤん、あとこれも〜」

 

「カゴがお菓子だらけに……」

 

「などと言いつつお前も菓子を入れているだろう」

 

「なんて言いながら箒も芋羊羹入れてるじゃないか!」

 

「とか言いながら、オリムージャガイモ入れてる〜」

 

「と言いつつまだお菓子を入れる本音であった」

 

以下無限ループ。

 

気がつけばカゴがいっぱいいっぱいだ。これ俺の財布だけでいけるのか?いや無理だ。俺のお財布事情では到底無理だ。千冬姉に怒られるレベルだ。そういや今日は帰ってこないよな?

 

「なあ名人。飲み物あるのか?」

 

「どーだったかな?お茶ならあると思うけど」

 

「よしコーラ買おうぜ!」

 

「私オレンジジュース!」

 

「あ、なら私は緑茶を」

 

「お茶で我慢しなさい!!」

 

「「「ええ〜〜」」」

 

これ以上このカゴに何か入れるわけにはいかない。さっさとレジに持ってかないと。ってレジ混んでないよな?

 

「なあ名人。金足りるのか?」

 

「うーん……多分大丈夫」

 

「そうか」

 

って今の流れ……足りないって言ったらキリヤん払ってくれたのかな?

 

「お会計が1万6千円になります」

 

「え、い、いちま、1万!?」

 

どんだけ買ったんだよ。ってか足りない……みんなには悪いけどどれか減らしてもらわないと。

 

「なあ、みんな悪いけ「2万円からお預かりいたします。4千円のお返しになります」え?」

 

「ん?どうした名人?」

 

「え、いや今払ったのキリヤんか?」

 

「自分以外に誰か見えるなら是非教えて欲しいね。ほら本音、箒。袋に詰めてくれ」

 

「分かった」「りょ〜か〜い!」

 

「みんな……」

 

「自分たちの買い物で名人の財布をスッカラカンにするのは違うだろ?」

 

俺、今すんごい泣きそう。

 

とまあそんなこんなで昼ごはんの買い出しが終わった。でも待ってほしい。これから家に帰り、そしてご飯作って、ご飯食べて、そんで少し休憩して………ほんと勉強会いつから始まるんだよ……。

 

俺がそんな心配しているとキリヤんの携帯が鳴る。てか今の着信音、最近の曲だな。あとでダウンロードしとこ。

 

「はーい木綿季さん。どしたの?……はあ、またか。分かったすぐ行きますよー。それじゃ後で」

 

「まさか今のは」

 

「感がいいな箒。おい名人。レディ2人を頼むぜ。寄り道せずまっすぐ帰れ、いいな?」

 

この感じ、未確認案件か。だったら俺も行かないと。キリヤん1人で戦わせるわけにはいかない。でもこの2人も心配だ。

 

「キリヤん……ちゃんと帰ってくる?」

 

「当たり前。だから菓子食ってまってろ本音」

 

そういって走り出すキリヤん。やっぱりキリヤんには俺のこと話すべきかな……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM00時40分

 

「目撃情報が追加されたわ。あっちのビルの屋上ね」

 

「バッタ野郎といい、動きが速いやつばかりだ。まあ自分、スピードには自信あるけど」

 

「とかいいながら持ってるのはバンバンシューティングだけど?」

 

「こっちの方が使いやすいから仕方ない」

 

『バンバンシューティング!』

 

「変身!」

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイム ア カメンライダー!!』

 

「よーし、始めるかぁ。よっと!」

 

木綿季さんと合流して未確認16号が目撃されたビルの屋上まで跳躍する。屋上には白いシーツが干されている。そんですぐに姿を隠した、

 

「そこのお前、姿を見せな!」

 

「!?」

 

ガシャコンマグナムで奴さんが隠れた場所を狙い撃つ。それを回避する黒い影。確かに速い。でも自分の方がもっと速い!

 

「そらそこだ!」

 

「グアッ!?」

 

「もっとも、今のは予測しただけだけど?」

 

「貴様……仮面ライダーか」

 

「お?やっと現代社会に慣れてきた?なんなら自分が美味しいファミレス案内するけど?」

 

「冗談は…そこまでだ!」

 

豹の姿をした未確認16号は爪を立てて高速で動く。さっきよりも速いな。だったらこっちも、

 

「ほらこっちだぜ!」

 

「な!?」

 

ビルの屋上から飛び降りる。それに驚いたのかすぐに屋上から顔を覗かせる16号。そんなホイホイ顔出したら、

 

「狙い撃つぜ?」『レベルアップ!バンバンシューティング!!』

 

ガシャコンマグナムをライフルモードに変形させ狙い撃つ。攻撃はギリギリ交わされるが体制を崩せた。

 

でも自分、落ちてるけどね。

 

「ッと!!」

 

綺麗に着地、とはいかないか。足が痛い。なんかカッコいい着地は膝に悪いらしいから足から着地したが……足折れるな。

 

「キサマッ!!」

 

「おいおい、ビルを駆け下りるってそういう意味じゃないだろ」

 

ビルの壁を走りながら降りてくる16号。ここでもし外したらビルが壊れるな。怒られたくはない。

 

「ガアッ!!」

 

「チッ!おらっ!!」

 

駆け下りてきた16号は爪で攻撃してくる。その攻撃を躱しながら蹴りを叩き込……みたかった。スナイプは近接格闘が極端に弱い訳ではない。自分だって少しは格闘にも自信がある。でも16号の攻撃はそれ以上に速く鋭い。下手すりゃ仮面ごとやられるんじゃないのか?

 

「そこだっ!!」

 

ガシャコンマグナムで16号のボディに銃弾を叩き込む。よしよし効いてるな。だったらこのまま、

 

「キリヤんさん!」「クジョキリ!」

 

「え!?セシリア!リンリン!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM01時10分

 

「ごちそうさま」「ごちそうさまでした〜」

 

「ははっ、よく食べたな2人とも」

 

「オリムーのご飯美味しいからねぇ〜」

 

「そうだぞ!お前の料理が美味しいからつい食べすぎるんだ!」

 

「そりゃ、料理を不味く作ってやろうなんて考えないだろ」

 

「それもそうだが……お前の料理を食べると負けた気分になる」

 

箒は一体何と戦ってるんだ……でも戦ってると言ったらキリヤんだ。遅いなぁ。セシリアたちも少し遅れるなんて言ってたけど……

 

「大丈夫だよオリムー」

 

「え?」

 

「だってキリヤん、強いもん!」

 

そうだよな……この前の無人機戦も大活躍だったんだ。今回もきっと……いや前回のように上手く行くなんてありえない。絶対なんてないんだ。

 

「あ、悪いトイレ」

 

俺が、クウガがやらないと。俺はトイレで変身して、そのまま窓から飛び出した。その時にケツをぶつけた。痛い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM01時15分

 

「鈴さん!」

 

「ちょっせーい!!」

 

リンリンの双天牙月が16号の首を狙う。てかなんだ『ちょっせーい!!』って。

でも全力の大振り攻撃は16号に受け止められる。ISの攻撃を受け止めるとは、流石未確認生命体と言ったところか

 

「クジョキリ!」

 

「分かってる!」

 

攻撃を受け止めている無防備な16号をライフルモードでぶっ放す。見事に店に吹っ飛んでいく。さて店には悪いがトドメといくか。

 

「セシリア!」

『ガシャット!キメワザ!』

 

「お任せを!」

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

16号が吹っ飛んだ先に攻撃を叩き込む。自分はクリティカルフィニッシュ。セシリアはビットとスターライトmkIIIで一斉狙撃で攻撃する。相手が動かないならビットの細かい操作も必要ない。動きが止まってるからこそできる一斉狙撃だ。

 

「やった…ですの?」

 

「バカ!それはフラグだ!」

 

しかしフラグはすぐに回収される。

 

「やってくれたな……死ねぇ!」

 

「「セシリア!!」」

 

「見えていますわよ!」

 

爆炎の中から飛び出してきた16号に対してビットを操るセシリア。しかし目に見えてわかる。16号のスピードが格段に上がっている。さっきの比じゃないぞ!?

 

「この、ちょこまかと!」

 

「落ち着けリンリン。お前の腕じゃ当てられないし、セシリアの邪魔になる!」

 

「んな!?わ、わかってるわよ……あーもう!」

 

リンリンがすごくイライラしているのがわかる。そんなの俺だって一緒だってのに。

 

「シャアァッ!!」

 

「なっ!?スラスターが!?」

 

「セシリア!」「こんにゃろ!!」

 

あーだこーだ言っているうちにセシリアのISのスラスターがやられた。不味いぞ、動揺して動きが止まってる!あれじゃあ狙ってくださいって言ってるもんだぞ!

 

「死ね!」

 

「しまっ「させるかっ!!」

 

リンリンが援護に入るよりも、自分がライフルで撃つよりも、16号の爪がセシリアに突き立てられるよりも速く動く青い影があった。

 

セシリアをお姫様抱っこで助け出したのは青いクウガ。仮面ライダークウガだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「大丈夫か?セシリア」

 

「ど、どうして私の名前を」

 

「え!?そ、それは……スナイプ、そう!スナイプから教えてもらったんだよ!」

 

「そ、そうなのですか」

 

どうしたことか。セシリアを助け出した途端、セシリアの顔が真っ赤だ。風邪でも引いたのかな?

 

「クウガ……またゲゲルの邪魔か!」

 

「お前の好きにはさせない。ここで倒す!」

 

何としてもセシリアを守る。そんでコイツを倒す!あとはさっさと帰って勉強会だ!

 

「あ、あの」

 

「大丈夫、君は俺が絶対守るから!」

 

そんな俺の誓いがクウガに新たな力を授けた。今度は俺にもちゃんと確認できる。ベルトの青い部分が紫に変わり、体には銀色の鎧を纏っていく。

 

「な、それは……ダグバを封印した!?」

 

「騎士…みたいです」

 

「騎士か……じゃあ剣を持たないとな」

 

雪片弐型を一瞬だけ呼び出し、形を変える。コイツでセシリアを守る騎士になれたかな?

 

「まーた姿変わったのか」

「大丈夫なのセシリア!」

 

「キリ、んん!スナイプに鈴か」

 

「………」

 

「あんた、なんであたしの名前を」

 

「リンリン、その話は後だ。セシリア連れて少し離れてろ」

 

「……そうね、悔しいけどあたしじゃ足手まといね」

 

すぐに鈴はセシリアを連れて離脱する。とにかくこれで気兼ねなく戦える!

 

「いくぞ名人。自分が足止めるから、その先に叩き潰せ」

 

「おう!」

 

「どいつもこいつも!ぶっ殺す!!」




というわけでタイタンフォーム登場!メビオ相手にどう戦うのかな?全然考えてないよ!イエイノープラン!

あとなんか仮面ライダーWの続編が出るそうで。しかも映像作品じゃないときた。それじゃあ何だろうか?舞台かな?それとも漫画とか?いっそのこと龍が如くみたいなゲームでも作ったらいいんだよ笑

次回はパート3!の前になんか番外編入れるかも。息抜きは大事ですよ?

あ、あと活動報告上げますので。ていっても大したことなってないけど。

ではSee you Next game!


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番外編 〜桐也と箒の出会い〜

ちょっとした息抜き番外編です。中学時代の桐也と箒の出会いです。

あ、関係ないけどエミヤの絆レベルが10になりました。うん関係ないね!


私がこの中学校に転校してきたのは中学2年の春。とある理由で転校を繰り返してきた私にとって大した意味はない。でもこの時期を覚えているのは彼との出会いがあったからか。

 

「篠ノ之箒です。よろしくお願いします」

 

ありきたりな挨拶を済ませクラス全体を見渡す。このクラスのみんなと一緒に居られるのは何ヶ月だろう、そんな考えをしているとき、

 

「すいませーん。遅れましたー」

 

「九条くん!遅刻ですよ」

 

彼=九条桐也ことキリヤんと出会ったのだ。

 

 

「自分、九条桐也。まあ好きに呼んでよ篠ノ之さん」

 

「……分かった九条」

 

席は偶々キリヤんの隣だった。この中学校は私服登校であり、この頃からアロハシャツに革ジャン、サングラスは定番だった。

この頃の私はキリヤんの様なチャラチャラした男が苦手、いいや嫌いだった。どうしても一夏と比べてしまう。一夏はチャラチャラなどしていなかったから。

 

(こんな男が隣とは……運がないな)

 

だがまあ、この学校での生活もどうせ長くはない。そう思って割り切った。

 

「篠ノ之さんって結構美人だよね」

 

「……なんだ、いきなり」

 

「いや、事実を言ったまでだよ」

 

「………」

 

この時は本気で殴ってやろうかと考えた。大抵の女子は美人だの可愛いだのと言われれば嬉しいと思うだろうが、この時は嬉しくなかった。度重なる転校でストレスが溜まり、神経質になっていた。

 

そう、神経質になってしまっていたのだ。

 

 

それから3日後。早くも問題を起こしてしまった。体験入部という名目で剣道部に所属していた私だが、その日先輩とちょっとした試合をおこなったのだ。結果は私が勝った。しかし勝ち方がダメだった。

 

ストレスが溜まり、神経質になっていた私は必要以上に打ち込んでしまった。それによって先輩が怪我をしてしまった。

更にその先輩は所謂お金持ちのお坊っちゃんであり、やれ訴えてやる、やれ親が黙ってないぞ、やれ僕は裏の世界とも繋がってるから、秘密裏にお前を消せるのだ、などと。

 

私のせいで彼は怪我をしたのだからこれぐらい言われても文句は言えないと、ずっと我慢していた。だがその数日後、またしても事件がおきる。

 

『篠ノ之箒はテロリストの妹』

 

こんな見出しの紙が学校中に貼られていた。私は怖くなった。この学校でも、姉さんをテロリスト扱いしている人がいる。そして私のことを犯罪者の妹だと言う人がいる、と。

こればかりは流石に我慢の限界だった。直接殴り込みに行ってやるとも考えた。

でも、実際私はその場で泣き崩れる事しか出来なかった。

 

「おい見ろ!テロリストの妹だぞ!」

 

そんな言葉が聞こえる。その声の主は私が怪我をさせてしまった先輩だった。彼は見下しながらこう続けた。

 

「おいみんな!早く逃げろ!こいつに殺されるぞ!」

 

それも大きな声で。多分近隣の家の人にも聞こえているだろう。

 

「やめて……やめ、てよ」

 

またみんなに怖がられる。またみんなに拒絶される。またみんなに、

 

そんな考えが頭をよぎる私の横を、見たことのある革ジャンの男が通り過ぎる。

 

「よいしょ、っと!!」

 

そいつは先輩の頭を回し蹴りで蹴り飛ばす。綺麗に吹っ飛んでいく先輩を見て呆然とする私とその他大勢。そして蹴り飛ばした張本人はこう言った。

 

「あれぇ?もしかしてみんな、この嘘の情報にノせられちゃってる?ダメだよ〜あの人嘘で有名だから」

 

そうキリヤんは不敵な笑みを浮かべて言い放った。

 

 

キリヤんは先輩を蹴り飛ばしたことで停学処分となってしまった。私もその日は早退することにした。そしてキリヤんはこう言ったのだ。

 

「もし早退するならさ、ちょっと遊んでいかない?」

 

いつもの私なら断っているだろう。でもこの時は心に余裕がなく、1人で帰れる気がしなかった。私は柄にもなくこのチャラ男の遊びにノってしまった。いいや、ノせられたのだ。

 

その日はキリヤんと夜遅くまで遊んで、話した。実はキリヤんはレースゲームでもトップクラスの腕だとか、一夏との思い出とか、駅前のケーキが美味しいとか。

その途中もしかしたらこのまま破廉恥な展開になるのではと焦ったが、キリヤんは本当にただ遊びたかっただけらしい。それを聞いて少し安心した。

 

「それにしても、まさか回し蹴りをするなんて思わなかったぞ」

 

「自分も、まさかあそこまでキレイに決まるなんて思ってなかったよ」

 

今日のことをもう笑い話にしている私たち。これを他の生徒が聞いたらなんと言われるか。実際私自身もどうなのかと考えた。

 

「でもまあ、女の子が泣いてて、それを笑う奴がいたら自分がぶっ飛ばしてやるよ。それだけは曲げない主義なんで」

 

「変わった奴だなお前」

 

「転校3日であの悪名高き先輩をボコったお前もだよ」

 

「そ、それは……その…」

 

「ハハッ。まあ元気になってよかったよ箒」

 

「お前、今」

 

「こうして遊んで話すようになったんだ。別に呼び方ぐらい構わないでしょ?それはそうと、そろそろ桐也とかお前以外の呼び方で呼んで欲しいんだけど?」

 

「勝手な奴だな。そうだな……キリヤ……ん。キリヤ、ん。キリヤん!!」

 

「なにその頭が悪そうな奴が考えそうな安直なあだ名は」

 

「好きに呼べと言ったのはキリヤんだろう?なら決定だ」

 

「いやダメだ!キリヤん以外にしてくれ!」

 

「いいや!これは決定事項だ!」

 

きっと、この日は今までの人生で2番目に大泣きした日で、2番目に大笑いした日だろう。そして、中学時代キリヤんと話した最後の日でもあった。

 

 

「突然ですが、九条くんが今日付で転校することになりました」

 

それはキリヤんが停学になって4日後のことだった。なんでも親の都合で転校することになったそうだ。私は急いで電話をかけた。しかしキリヤんは電話に出ることはなかった。ならばと今度はメールを送った。

 

『箒:このメールを見たら折り返し電話をかけてくれ。話がしたい』

 

それから返信が来るまで私は忙しなく携帯を確認した。そして10分後、

 

『キリヤん:悪い、大人の事情で話せない。ごめん。元気でな』

 

私はいつの間にか泣いていた。もしかしたら私のせいで転校したのではないか。ならばなんと言っていいのか、返事の言葉が思いつかず、遂には返事を返すことはなかった……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM08時50分

 

「……き……ほ……き…ほう……ほうき……箒、起きろよ」

 

「……一、夏?」

 

いつの間にか寝てしまったらしい。一夏とキリヤんが帰ってきて、セシリアと鈴は今日は無理だと言うので4人で勉強会を始めたのが15時前。それから30分で本音が寝て、キリヤんが寝て、一夏が寝て、そして恐らく私が寝た。

 

「どうする箒?今日泊まってくか?」

 

「え、ええ!?と、泊まっ、泊まる!?」

 

「キリヤんものほほんさんも泊まってくって。なら箒も泊まるかなって」

 

「ばばば馬鹿なことを言うな一夏!第一千冬さんが許すはずが」

 

「千冬姉なら二つ返事だったぞ」

 

………それでいいのですか千冬さん!!と耳をすませば二階から、やれ布団が柔らかい、エロ本ねえな、本音お菓子ポロポロ落としすぎだ、などなど聞こえて来る。

 

「全く……エロ本ならないって言ってるのに…で、どうする?」

 

「……お前さえ良ければ」

 

「決まりだな。布団用意して来る」

 

そう言って一夏は二階へと駆け上がっていった。そしてすぐに二階から叫び声が聞こえてくる。

 

中学時代は散々な思い出ばかりだったが、今は違う。大切な友達がたくさんできた。そして高校生活はまだ始まったばかりだ。きっとこれからも大事な友達が増えていくだろう。

 

そういう出会いは、大切にしていきたいものだな。




裏設定で箒はあの後もう一回転校する、というものがあります。そしてそこで卒業まで過ごすという。ええオリジナル設定です!

???「みんなも友達は大切にするんだぞ!じゃないと君は絶版だ……」

次回は続きです。クウガ、スナイプvsメビオ!
ではSee you Next game!


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第16話 車輪 〜Study meeting Part3〜

中間テスト編ラストです!


5月20日(土)PM01時18分

 

「オラァッ!」

 

「シャァ!!」

 

スナイプの弾丸を自慢のスピードで避けていく16号。俺もなんとか剣で攻撃するが……重い。剣もそうだがこの鎧、かなりの重量だ。確かに防御力とパワーはピカイチだ。だが圧倒的にスピードが足りない。せっかくスナイプが上手く誘導してくれても攻撃を当てることができない。

 

「クソッ、このままだとこっちがやられる。おい名人!次は上手く当てろよ!」

 

「んなこと言ったって難しいんだよ!」

 

「あの剣と鎧のせいか……当たればそれなりにだが」

 

「何をしても、私のスピードにはついてこれない!!」

 

「………フッ」

 

ん?今笑ったのか?何か作戦でもあるのか?

 

「おい名人!合図出したら思いっきり振りかぶれ!」

 

「え?」

 

そう言うとスナイプはガシャコンマグナムをライフルモードに変形させて16号を狙撃する。しかしそれは楽々と躱されてしまう。さっきのハンドガンモードと違い、ライフルモードは一発一発が強力だが連射機能が備わってない。足止めならハンドガンモードの方が……

 

「ハッ!血迷ったか仮面ライダー!これで死ねぇ!!」

 

16号が一気に駆け抜ける。このままだとスナイプがやられる。でもなんだろう、妙な安心感がある。

 

「おいおい、このバンバンシューティングはオールハードモードのガンシューティングだ。つまりは、」

 

16号の爪の一撃をバックステップで避ける。その瞬間に何かを投げるスナイプ。形からして丸い何かだけど。

 

「なんでもアリなんだよ!名人!!」

 

「お、おう!!」

 

作戦通り剣を振りかぶる。次の瞬間爆発でこっちに飛んでくる16号。なるほど、さっきのは手榴弾ってわけか。

 

「ぐがあっ!!」

 

「このチャンス、逃しはしない!!」

 

「させるかクウガ!!」

 

さすがは16号、すぐさま体勢を変え飛びかかる形で俺に爪を向ける。爆発の反動で更にスピードをつけたってとこか。でもそれは逆にジャストタイミングだぜ!

 

「そこだぁッ!!!」

 

「ぐおおおッ!!!」

 

俺が振り下ろした剣と16号の爪が激突する。でも鍔迫り合いは慣れてるんだよ!

すぐに爪の攻撃をそらす。そのまま勢いで16号は俺の隣を通り過ぎようとする。狙い目はここだ!

 

「ハッ!!」

 

今度は通り過ぎる16号の腹めがけて剣を振り上げる。確かな手応え。でも青のクウガで14号と戦った時とは違い剣に力がこもってない。つまり必殺じゃない。16号をただ打ち上げただけだ。

 

「ナイスだ名人!」

 

『バンバン!クリティカルストライク!!』

 

いつの間にか空中にいるスナイプ。体勢は必殺の蹴り、つまりライダーキックだ!

 

「そら、こいつで終いだ!」

 

これで勝った。多分俺とスナイプはそう確信しただろう。でも思わぬ邪魔は常に最高の場面ではいってくる。

 

「!?なんだアレ」

 

「なっ!ガハッ!?」

 

突如飛んできたナニカがスナイプを吹き飛ばした。そしてソレは俺にも向かってくる。

 

「ッ!結構、パワーあるな……」

 

真っ正面からソレを受け止める。そしてソレの正体も分かった。

 

車輪だ。正確には自転車のタイヤ。それに刃がついてる。何度も刃がぶつかるせいで剣が少しずつ削れていく。結構ヤバイかも……

 

「名人!そのまま持ちこたえろ!」

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ライフルモードの一発でタイヤを吹き飛ばす。そのまま吹き飛んだタイヤは何処かへと飛んで行ってしまった。なんだったんだアレ…

 

「って未確認は!?」

 

「悪い名人、逃げられた。逃げられるギリギリで目ん玉ブチ抜いたからそう遠くは行ってないハズだ」

 

「そうか……ふう」

 

「ま、自分はこれで失礼するよ。探すのはあんたに任せる。なんだったら倒してくれてもいいんだぜ?」

 

「まあ、努力はするよ。ありがとなスナイプ」

 

「……あくまでそう呼ぶか名人」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「別に?ただ、隠し事はすぐバレるってこと」

 

「??」

 

そのままスナイプはビルの屋上から飛び降りる。未確認も気になるが、箒たちも心配だ。ここは一旦戻ろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM01時25分

 

「血痕はここで途絶えてるわ。ここで消滅したか、あるいは傷を治して何処かへ逃亡したか」

 

「多分前者はないな。それなら消えた痕があるハズだ。つまりはどっかに逃げたか」

 

「でしょうね……今日はいきなり呼びつけてゴメンなさいね」

 

「いいや、女性の頼みは断らないタチなんで」

 

「そう。ならば本音ちゃんとの約束も守ってあげてね」

 

「………なーんで、知ってんのかね〜」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5月20日(土)PM02時50分

 

「ただいまー」

 

「おい一夏!トイレに行くフリして外で出かけるとは何を考えているんだ!!」

 

「心配したんだよオリムー!!」

 

家に帰るなり怒鳴られる俺。珍しくのほほんさんもご立腹だ。箒は言わずもがな。

 

「い、いやートイレットペーパー切らしててさ!どうしても我慢できなくてちょっとコンビニまでひとっ走り行ってたんだよ。そ、その……ゴメンな」

 

「心配させないでくれ……お前に何かあったら私は…」

 

「箒……ホントにゴメン。でも心配してくれてありがとな」

 

「うあ〜〜疲れたわ〜〜……って、もしかして自分お邪魔虫だった?」

 

「キリヤ〜ん!!!」

 

帰ってきたキリヤんに凄い勢いで飛びつくのほほんさん。キリヤんは優しくのほほんさんの頭を撫でたあとに、俺たちにドヤ顔を向ける。いやなんでドヤ顔なんだよ。

 

「あ、そうだ。セシリアとリンリン、今日はパスだってさ。色々あったみたいだからさ」

 

「そうか。ならば4人で勉強会だな」

 

というわけで始まった勉強会。初めこそマジメに取り組んでいたが、最初にのほほんさんがダウンした。箒曰くキリヤんが心配でずっとウロウロしていたらしい。多分キリヤんが帰ってきて安心したんだろうな。

そして次にキリヤんがダウンした。まあさっきまで未確認と戦ってたわけだし仕方ないよな。

まあそんなこと考えているうちに俺も寝た。

 

起きた時には箒も寝ていた。因みに箒が起きたのが21時前。夜も遅いから今日は俺の家に泊まることになった。勉強会?もうみんなやる気ないよ。俺もないよ。

 

 

6月2日(金)PM00時10分

 

「あんたらねぇ……どうしたらこんな点とれるわけ?」

 

「正直……驚いてます」

 

俺、キリヤん、箒、のほほんさん。4人の前で立つセシリアと鈴。今は6月の頭。そして中間テストの返却日でもあった。そしてテストが返却されるたびに目が死んでいく俺たちに4人。それを不審に思ったセシリアと鈴が

 

『全テストを持って食堂へ』

 

なんて言ってきた。仕方ないから食堂へ行くとセシリアと鈴にテストを強奪され、今に至る。

 

「本音さんは次も同じ点を取れば補習はないとは思いますが、箒さんは微妙なラインですね。もう少し勉強をされた方がいいかと」

 

「ぐっ、精進します……」

 

「それに比べて男2人!なんなのよこの点!特に一夏!あんた酷すぎない?何これ?一桁!?バッカじゃないのおお!?」

 

「オリムー……8点」

 

「流石名人だな」

 

「逆に凄いぞ一夏」

 

「あんたらも人のこと言えないでしょ!!」

 

いやそんなに言わなくてもいいじゃないか。俺だって頑張って勉強したんだ!なのに……全然わかんなかった(笑)

 

「笑ってる場合じゃないでしょーが!!」

 

「べふっ!?」

 

鈴にしばかれた。しかし鈴は真剣に心配してくれている。なら俺もそれに答えないと、な!!

 

「よし、次は赤点取らないぞ!絶対だ!もし赤点取ったら、なんでも好きなもの買ってやる!!」

 

「はーい全員しゅーごー」

「オリムーには赤点取ってもらわないと」

「私は新しい竹刀が欲しいな」

「私は新しい靴が」

「あたし、こ○亀全巻!」

「んじゃ自分は新しいゲームを」

 

「い、いいぞ!ああ買ってやるよ!なんせ、次は赤点取らないからな!」

 

言ってしまった……こうなったら全力で勉強しないとだな……

 

 

「と、話変わるんだけどさ」

「ホントいきなりだな鈴」

 

「なんでも転校生が来るみたいよ。1組に2人」

 

「俺たちのクラスに?」

 

「それもフランスとドイツから。なんでもドイツは代表候補生で、フランスがなんとビックリの!」

 

「ビックリの?」

 

「ガチの2人目の男性IS操縦者みたいなのよ」

 

「………マジで?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア……ハア……」

 

誰もが寝静まった夜。路地裏でいまだ傷を治しているメビオ。そんな彼女に近づく黒い影。

 

「ハア……ッ!仮面……ライダー…」

 

「………」

 

「ハアッ……死ねぇ!!」

 

「………」

 

黒い仮面ライダーに飛びかかるメビオ。しかし飛びかかった瞬間メビオの身体は真っ二つに引き裂かれ地面に落ちる。そしてメビオだったものがギョロリと残った目玉を動かす。

 

そこに写っていたのは、紫のチェーンソーを自分めがけて振り下ろす、黒い仮面ライダーだった。




やっとこさ6月です。やっとこさあの2人が登場です。長かったね!
そして裏で殺されるメビオ。やったのはあの黒い2Pカラーライダー。変身者は誰なのか!

次回は転校生2人のお話。こっからも長くなりますね。

ではSee you Next game!

あと、メインキャラのテスト順位ですが、
1位、セシリア
2位、鈴
3位、本音
4位、箒
5位、桐也
6位、一夏
となってます。一夏は全クラス中最下位です。ガンバレ一夏!!


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第17話 金色 〜Gentle〜

最近FGOで水着騎士王、ガンバライジングではキメワザチェインのエグゼイドが当たり、運がついてきた気がする。ま、どうでもいいか!

今回遂にフランスの疾風とドイツの黒い雨がやってくる!


6月5日(月)AM07時50分

 

「本日はなんと、転校生が2名います!それでは入ってきてください」

 

朝一発目から山田先生の声が教室に響く。転校生がそんなに嬉しいのだろうか?まあ俺としても友達が増えるのは嬉しい。しかも1人は男らしいからな。

 

教室に入ってきた2人の第一印象を話すと、金色と銀色。これが率直な感想だ。次に金色が美形で銀色が可愛い系で眼帯少女。あと変な角度に曲がっている髪の一部。どうなってるんだあれ?

 

「では自己紹介をお願いします」

 

「はい。フランスから来ました、シャルル・デュノアです。こちらに僕と同じ境遇の人がいると聞いて少し安心しています。これからよろしくお願いします」

 

丁寧に「はーい」って返そうと思ったら女子の叫び声にかき消された。みんなワイワイ騒いでるな。落ち着いてる人の方が少ないぞ。

 

「はーい、皆さん静かに。まだ自己紹介は終わっていませんよ。では次お願いします」

 

「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「………」

 

「……以上だ」

 

それだけ言うとボーデヴィッヒは教室を見渡し……あ、キリヤんのとこ行った。

 

「お前が織斑一夏か?」

 

「いいや、お目当てはあっち」

 

おい、こっち向いたぞ!反射的に顔を背けてしまった。いや別にやましいこととか無いんだけどさ。

 

「貴様が……織斑一夏」

 

「お、おう……」

 

「貴様のせいで!!」

 

瞬間飛んでくる平手打ち。うん、いい平手打ちだ。凄く痛い。てかなんで平手打ち!?

 

「私はお前を……認めはしない」

 

「ええ………急展開すぎて……」

 

ホントに急展開すぎて頭が追いつかない。分かっているのはボーデヴィッヒに平手打ちされて、デュノアが曖昧な表情で目を背けて、キリヤんが爆笑していることだけだった。

 

「何やら騒がしいな。何があった」

 

教室に入ってきた千冬姉。多分会議かなんかしてたんだろうな。って後ろの人誰だ?

 

「名人がボーデヴェッヒに殴られました。大方スケベ案件です」

 

「ボーデヴィッヒだ!」

 

「またお前か織斑」

 

「なんで俺が怒られるの!あとスケベ案件ってなんだよ!」

 

「そんなことより先生、後ろの人誰ですか」

 

あ、スルーした。キリヤんスルーした!でもまあ俺も気になる。白衣を着てるけど……保健の先生か?でも女子校で男の保健の先生ってあんまりいいイメージないけど。まあそれも一部の人のせいだが。

 

「そうだな。花家先生、お願いします」

 

「ああ」

 

花家先生と呼ばれるその人はデュノアの隣に立つと自己紹介を始めた。てか身長結構あるな……

 

「花家タイガだ。暫くの間このIS学園で保険医を勤めることになった。まあそんなとこだ」

 

「ちょっとタイガ先生!それじゃあ可愛げがないよ!」

 

そう言ったのは意外にもデュノアだった。なんか知り合いなのか?

 

「テメェが指図してんじゃねぇ。大人しく席についてろ」

 

デュノアの頭をワシャワシャする花家先生。まるで仲のいい兄弟みたいだ。デュノアもなんだか嬉しそうだし……あ、髪の毛ボサボサになってる。

 

「後は任せたぞ織斑。女の扱いは俺には無理だ」

 

「分かりました。では本日は2組との合同授業だ。午前中はグラウンドにて訓練機による訓練を行う。遅れた奴はISスーツではなく水着で授業を受けてもらうぞ」

 

「「ブハッ」」

 

同時に吹き出す俺と花家先生。キリヤんは「なん…だと…」みたいな顔をしている。今のキリヤんに近づいちゃダメだぞみんな。絶対遅れるからな。

 

「それと、織斑と九条、篠ノ之にオルコット、あと布仏。少し話がある」

 

 

別室に移った俺、キリヤん、箒、セシリア、のほほんさん、千冬姉、花家先生。なんかいつものメンバーになってるような。

 

「お前達に話したいのはデュノアのことだ。花家先生よろしくお願いします」

 

「アイツは軽いパニック症持ちでな、とある奴を見るとパニック状態に陥ってしまう」

 

「とある奴?」

 

「この国じゃ未確認生命体なんて呼ばれてるか」

 

未確認生命体。確かにあんなの見たらパニック状態になるよな。でもそれって大体みんななるようなものじゃ?

 

「まあ、大概の人間がパニックに陥ると思うが、アイツの場合は度が過ぎてる。見境なしにISを展開して武装をブッ放すぞ」

 

「それは、パニック状態というより、バーサーカー状態では?」

 

「似たようなもんだろ。俺はソレの治療の為にアイツについてる。IS学園に来たのもそれが理由だ」

 

「というわけだ。くれぐれも注意してくれ」

 

まあ大体わかった。要はデュノアに未確認生命体を近づけさせなきゃいいんだ。でもこういうことはクラス皆んなに言ったほうがいいじゃないのか?

 

「織斑先生、そういうのはクラス皆んなに言ったほうが良いんじゃない?」

 

「私もそう思ったのだが……花家先生が、コイツらなら任せられる。とな」

 

「んなこと言ってねえ。全部テメェが決めたんだろうが」

 

「まあ、そんなとこだ。話は理解したな?ではグラウンドにいけ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月5日(月)AM08時40分

 

「……誰も遅れてなかったのか…チッ」

 

「どれだけ水着を見たかったのよ…」

 

クソ暑い部屋の中からクソ暑いであろうグラウンドを見る。さっきまでセシリアとリンリンが山田先生相手に模擬戦を行なっていた。結果は惨敗。手も足も出ずにセシリアとリンリンは敗北した。

今は専用機持ちを中心に歩行練習なんかをしている。

 

「それにしてもいきなり平手打ちなんて凄いわね、そのボーデヴィッヒって子」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。眼帯銀髪少女なんてこのご時世珍しいから少し調べたんだけどさ……まさかドイツの特殊部隊の隊長なんて思わないよな」

 

「確か、シュヴァルツェ・ハーゼ。通称黒ウサギ隊。確かそこの副隊長とうちの社長が友達なのよ」

 

「どーせオンラインゲームで知り合ったんだろ?」

 

「その通り。全くいろんなところで友達作るんだから」

 

などとブツブツ言いながらホワイトボードに文字を書いていく木綿季さん。他の生徒がISの授業をしている間、自分は別室で普通の授業をするわけだが、今日からその授業をしていた部屋が変更になった。元はカウンセリング室だったらしい。まあそれもあって狭い。そんで暑い。扇風機だけじゃダメだ。暑すぎる。

 

「暑いんだけど」

 

「同感。こんなジャケットなんて着てられないわよ」

 

ジャケットを脱ぐ木綿季さん……ピンクか。

 

「それにしてもホワイトボードの方が書きやすいわね。黒板も悪くないけどやっぱり汚れが目立つからね。こんな狭い部屋じゃチョークの粉で地獄絵図になりかねないし」

 

そういや色で思い出したけど、昨日仕留め損なった未確認生命体17号。別格の強さだったが油断してくれたおかげで一矢報いることができた。それと気になったのが未確認生命体のバックルの色だ。今までは銅色だったが昨日のは金色だった。なんか階級とかあるのか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月5日(月)PM00時10分

 

「だあ〜疲れた〜」

 

午前の授業を終えて死にかけの俺。まだ午後は座学だからまだマシだな。さっき座席表見たら後ろの方だし。こういう時に人数が多いと助かるよな。

 

「お疲れ様織斑君」

 

「一夏でいいよ。織斑君ってあんまり慣れなくてさ」

 

「そう?なら僕もシャルルでいいよ一夏」

 

「分かったシャルル」

 

今現在はシャルルと一緒に屋上に向かっている。本当なら箒と飯を食う予定だったが、なにやら後からセシリアと鈴が参加すると言い出し、ならキリヤんとシャルルも連れていくと俺が言ったのだ。のほほんさんは先に予定が入ってたみたいだ。

 

「それにしてもシャルルの飯の誘いの断り方凄かったな。あんな台詞よく思いつくな」

 

「そりゃお前、フランスの貴公子だからな。名人とは出来が違うんだよ」

 

「なんでお前が言うんだよ!」

 

「貴公子だなんてそんな。あ、そういえば午前中いなかったよね……えーと」

 

「九条桐也。まあ自分は特別授業で別室だから。気にすんな」

 

「キリヤんは少し訳ありだからな。んで座学は参加するんだよな?」

 

「一応な。睨んできたら起こしてくれ」

 

寝る気満々のキリヤん。まあISに乗れないのにISの勉強してもなあ、っていうのは少しわかる。多分俺もそうする。

 

「お待たせー」

 

「おっそいわよ一夏!」

 

屋上に着くなり叫んでくるのは鈴だ。てかそれは制服なのか?思ったけどIS学園は制服の改造の限度を超えている。制服の着こなしかたは皆んなの性格が出るという。セシリアなんかはお嬢様っぽくロングスカート。キリヤんはアロハ柄が入っている。鈴のは……いくら夏服でもやり過ぎじゃないか?ハッキリ言ってエロい。

 

「な、なに見てんのよ」

 

「いいや別に。それよりご飯ご飯!」

 

「子供かあんたは」

 

さてさてここで皆んなの弁当オープンだ。箒のはよくある弁当。セシリアはサンドウィッチ。鈴のは酢豚だな。キリヤんとシャルルは食堂で買ってきたパンだ。俺?おにぎりです。

 

「皆んなうまそうだなぁ」

 

「な、ならこの唐揚げをやろう。おにぎり1つでは腹も満たされまい」

「なら私のサンドウィッチも」

「あたしの酢豚も食べなさいよ!」

 

「人気だね一夏は」

 

「これが名人だからな。仕方ない」

 

3人から少しずつ分けてもらう。箒の唐揚げも鈴の酢豚も大変美味しいです。さてあとはセシリアのサンドウィッチだけど……

食べれるかな?あ、メッチャニコニコしてる。食べるしかないか……

 

前に一度セシリアの手料理を食べたことがある。気がついたら自分の布団の上だった。

 

「ウーン……オイシイオイシイ」

 

「まあ、ありがとうございます!最近料理の練習をしていますの!」

 

練習をして味が変わらないとはこれいかに。

 

「なんでまた急に料理の練習?」

 

「食べてもらいたいお方の為ですわ。あの蒼き龍の方ですわ!」

 

「「「!!?」」」

 

蒼き龍。これにピンときたのは俺とキリヤんと鈴。まさかと思うけど……ドラゴンフォーム(最近命名)か!?因みに鎧のクウガはタイタンフォームだ。

てか、もしドラゴンフォームの時にセシリアに飯を渡されたら……俺は死ぬのか?

 

恐ろしさに身を震わせながらサンドウィッチを頬張る。まだ半分以上残ってる。先は長い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月5日(月)同時刻

 

「だからあ!それは千冬が片付け下手だから一夏君にドン引きされたんでしょ?ちゃんと片付けしなさいよ」

 

「だからってあんな部屋の入り口で正座をさせることはないだろう!あいつ、家事のことになると周りが見えなくなるからなぁ」

 

「織斑先生が片付け下手なんて意外ですね」

 

「人間誰しも苦手なもんはある。俺もあるからな」

 

「意外ですね花家先生。貴方ほどなら恐れるものはないと思いますが……あ、お化けとか?」

 

「…………」

 

「「「図星……」」」

 

「うるせぇ」

 

職員室ではこんな会話が続いていたとか。




と言うわけでシャル、ラウラ、タイガ先生がログインしました。
タイガは大我だとまんまで少し面白みないのでカタカナにしました。わりとどっちでもいい笑

さて今回でセシリアがクウガドラゴンフォームに一目惚れと判明!
各人物の好きな人は、
箒、鈴→一夏
セシリア→クウガ
?→桐也
まあキリヤんのこと好きな人は隠さないでもわかるか。てかタグに書いてるし。さてシャルとラウラはどうなるか!

次回はキリヤんvsラウラ!?どうなる!?俺も分からん!!

活動報告にてArie nightの続編の設定とか書いてますので、よかったらどうぞ。


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第18話 銀色 〜Joker〜

久しぶりの更新です。いやーやっとお休みが取れました。うん、疲れたね!
今回はキリヤんvsラウラ!


6月10日(土)PM01時20分

 

「一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握できていないからだよ」

 

「違うぞシャルル。名人は把握する気なんてないんだよ」

 

「俺は剣の道一本で行くからな!」

 

「それじゃあ一生勝てないよ……」

 

シャルルが転校してきて早5日の土曜日。今日は珍しく土曜日のくせに午前中授業があった。まあ俺たちのクラスだけなんだが……例のゲーム特訓の影響が貴重な休みの日に響いてくるとは。

そして現在、アリーナにて実習を行なっている。俺もシャルルと手合わせをしてもらった後、戦闘に関してレクチャーを受けていた。

キリヤんは外野から野次を飛ばしている。

 

「一夏は知識としては知ってるよね?でもその知識として知ってるだけって感じだった。だからさっきも間合いを詰められなかった」

 

「おっしゃる通りです…」

 

「一夏は近接格闘オンリーだから、より射撃武器について理解を深めないと。特に一夏の瞬時加速(イグニッション・ブースト)って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

 

「直線的だから、か」

 

「でも加速中に無理に軌道を変えると色々機体と体に負荷がかかるし、最悪骨折するよ」

 

「それは嫌だな…」

 

それにしてもシャルルの教え方は非常に分かりやすい。箒とかセシリアとか鈴も親切なのはいいが、専門用語のオンパレードで頭がどうにかなりそうだ。しかも箒と鈴にいたっては謎の擬音が入るのだ。『がきんっ!』とか『どかんっ!』とか……わかるかい!!

 

「そういえば一夏の白式には後付武装(イコライザ)がないんだっけ?」

 

「何回か調べてもらったけど拡張領域(パススロット)が空いてないんだって。だから量子変換(インストール)は無理なんだって」

 

「うーん…多分だけど、それって唯一仕様特殊才能(ワンオフ・アビリティー)の方に容量を使ってるからだよ」

 

「え、零落白夜ってそんなに容量食うのか?」

 

「零落白夜に限らず、かな。元々唯一仕様が容量食うからね。それに普通は第二形態から発現するもの。でも白式は第一形態から発動させた。しかも織斑先生と同じの」

 

千冬姉もこの能力で世界最強、初代ブリュンヒルデの座を勝ち取ったらしい。2回目は俺のせいで連覇出来なかったんだけど。

 

「そんなに凄いのか……まあでも今は気にしなくてもいいだろ」

 

「それもそう、かな?結構重要だと思うけど……まあ本人がいいならいいか。じゃあ射撃訓練をしてみようか。はいこれ」

 

そう言って渡してきたのは、さっきまでシャルルが使ってたアサルトライフル。名前は忘れた。

 

「ヴェントか」

 

「べんとー?」

 

「ヴェント。桐也、よく知ってるね」

 

「遠距離武器に関してはちょっと知識がある。その銃だってリアルの物をモデルにしてるんだ」

 

「流石自称遠距離型だな。ところで他の人の装備って使えないんじゃないのか?」

 

「普通はね。でも所有者が使用許諾すれば、登録してある人全員が使えるんだよ。一夏に使用許諾を発行したから、試しに撃ってみて」

 

初めての銃器は妙な重さだ。実際ISの力で重たくはないと思うが、やっぱりこういうのは精神的にそう感じるのだろう。

しかし、ここで問題発生だ。

 

「なあ、センサー・リンクが見当たらないんだけど」

 

銃器は使うときに必要なセンサー・リンク。基本高速状態で射撃するから当然ハイパーセンサーとの連携が必要になる。しかし白式にはそれがないのだ。やっぱり欠陥品だな!

 

「しょうがないから目測でやってみようか」

 

初めてだというのにこのハンディキャップ。まあ愚痴っても仕方ないか。とりあえず撃ってみて、

 

(ぐっ!?……ここでくるのかよ)

 

ターゲットに意識を集中させていると急に目と耳が研ぎ澄まされる。頭に大量の情報が流れ込む。ヤバい変な汗かいてきた。この状況で撃って大丈夫か俺の頭?

 

「?どうかした一夏」

 

ごめんシャルル。その問いかけも今の俺にとっては悪魔の物理的な囁きだ。頭を殴られているような頭痛に襲われる。これ絶対ヤバいやつだ。

 

バンッ!!

 

「ぐっ!」

 

ヤバい意識が飛ぶ……っと危ない危ない。危うく死ぬところだった。情けないぜ、これぐらいでヘタレこむなんて。

 

「大丈夫一夏!?凄い汗だけど」

 

「あ、ああ大丈夫だ。ちょっと反動にビビっただけだよ」

 

「でも凄いよ一夏。本当に初心者?」

 

「え?どういう意味だ?」

 

「だって、一瞬で3発も撃ったんだよ?全然手の動きが見えなかったもん」

 

「確かにな。どうやったんだ名人?」

 

キリヤんが見る先にはターゲットが3つ。まず俺は1つだけを集中して撃ち抜こうとした。しかしターゲットは1つだけではなく3つも撃ち抜かれている。どういうことだ?

 

「いや、よくわからない。それと悪いんだけど頭痛くてさ。ちょっと休んでいいか?」

 

「そう?じゃあ少し休憩しようか」

 

というわけでこれから休憩タイムだ。あー頭いてー。

 

「おい」

 

でも嵐はやってくる。こう次から次へと大変だぁ!

声をかけてきたのはラウラ・ボーデヴィッヒ。真っ黒の専用機に乗って仁王立ち。どこのボスキャラだよ。

 

「なんだよ」

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「……確かに俺は専用機持ちだ。お前に喧嘩をふっかけられる理由もなんとなくわかる」

 

「ほう、案外話が通じるらしいな」

 

「だが、断る!!」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「…いやなんか言ってよ」

 

「問答無用!!」

 

っていきなり撃ってきた!しかし俺を庇うようにオレンジの影が前に飛び出す。そしてシールドで防ぎアサルトカノンをラウラに向ける。

 

「いきなり戦闘を始めようなんて、随分沸点が低いんだね」

 

「貴様……フランスの雑魚が私の前に立ち塞がるとはな」

 

「未だに量産化の目処が立たないドイツの新人さんよりは動けるだろうからね」

 

涼しい顔で睨み合いを続ける2人。そんな2人の間に割って入る男が1人。まあキリヤんしかいないんだけど。

 

「んじゃさ。自分の相手してくれよ」

 

「なんだと?」

 

「ISと仮面ライダー。どっちが強いか勝負しようぜ」

『バンバンシューティング!』

 

 

ガシャットを起動させるとゲームフィールドが形成される。次々と配置されるドラム缶。前はこんなの無かったのに。

 

「多分だけどバンバンシューティングはレベル5まで到達してる。このゲームフィールド形成はレベル4の力だ」

 

いつの間にかガシャットのレベルを上げている。マメだなキリヤんは。

 

「変身!」

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイム ア カメンライダー!!』

 

「っしゃあ、ミッション開始だ」

 

「それが仮面ライダーか」

 

ピットから降り立つラウラ。未だに組んだ腕を離す気はないらしい。勝てる自信でもあるのか?

 

「先手必勝!」

 

まず動いたのはキリヤん。自分の体を回転させて突撃する。まさにライダー砲弾。俺自身が砲弾になることだ!ってか?

しかしそれはラウラが右手を翳しただけで止まってしまう。それも回転の勢いも殺して。

 

「今のお前では私に触れることすらできん」

 

「さあて、それはどうかな?」

 

動きを止められても動じないキリヤん。よく見るとベルトはレバーが開かれている。つまりレベルアップか!動きを止められる前に、あの回転の中レバーを開いたんだ。

 

『レベルアップ!バンバンシューティング!!』

 

「なんだと!?」

 

どうやらレベルアップの際の衝撃波は止められないようだ。回避しようとしてキリヤんの拘束を解いてしまった。

 

「そうやって自分の動きを封じ込めてなかったのが敗因だぜ!」

 

そこからドラム缶をマグナムで破壊する。破壊されたドラム缶から出てきたのは赤いメダル。そして他のドラム缶も破壊する。中から出てきたのは同じようなメダル。違うのは色だけだ。

 

「言っとくけど自分、負ける気ないんで」

 

『マッスル化!高速化!透明化!』

 

その三枚を吸収したスナイプは一瞬体が膨れ上がった後姿を消した。完全に姿が見えない。ラウラもどこにいるのか分かっていないのを見ると、恐らくハイパーセンサーにも引っかからないみたいだな。

 

「くそっ!どこに行った………ぐっ!!」

 

「こちとらあんたが転校してきて5日もあったんだ!大体のことはわかってんだよ!両手のプラズマ手刀、大口径リボルバーカノン、ワイヤーブレード、AICこと慣性停止結界(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)もな!」

 

姿が見えないキリヤんの声が響く。リボルバーカノンは多分あのデカイキャノン砲みたいなやつだ。プラズマ手刀は今スナイプの攻撃を防ぐために出してる。もしこれで残る戦力がワイヤーブレードだけなら、この勝負はキリヤんが優勢だ。

 

「くっ、何故そこまで情報が漏れている…我が軍にスパイでもいたのか」

 

「いいや、こっちには天才社長さんがいるからね。大体のことは教えてくれるんだよ!」

 

時間切れなのか姿を現わすキリヤん。ラウラもすかさずリボルバーカノンをキリヤんに向けるがそれよりも、

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

キリヤんの一撃の方が早かった。

 

「ぐあああっ!!」

 

「惜しいな隊長さん。そこでAIC使えば自分を倒せたかもしれないのに、まあ『反射』のエナジーアイテム使ってるから全部あんたに返ってくるけど」

 

 

キリヤんとラウラ。仮面ライダーとISの対決はスナイプが一方的に攻撃して終了した

 

ように見えた。

 

 

「まだ、終わってはいない……」

 

「なら、もう1発行っとくか?」

 

「ほざけ、後悔しても私は知らんぞ」

 

ISが解除されたラウラの表情に不敵な笑みが浮かび上がる。そして取り出したのは黒いナイフと黒い……なんかUSBメモリみたいだな。

 

『ジョーカー!』

 

「貴様が仮面ライダーを名乗るなら」

 

メモリをナイフに装填して、右腿の待機状態ISにセットする。

そして次の瞬間、彼女の体を黒い稲妻が覆い尽くす。まるでこれでは『変身』だ。

 

「おいおい、それは聞いてないぞ……」

 

稲妻が弾け飛びラウラの姿が露わになった。それはISと言うには武装が小さすぎ、仮面ライダーというには肌が露出しすぎている。

 

「私のこれは、仮面装者。仮面装者ジョーカーとでも言っておこう」

 

紫のバイザーの下にはさっきまでしていた眼帯がなく、金色の瞳が露わになっていた。




当初はラウラを普通の仮面ライダージョーカーとして出そうと思ったんですが、やっぱりこういう形にしました。

仮面装者ですが、ISっぽさがある仮面ライダー。分かりやすく言うと『シンフォギア』みたいな感じ。『イグナイト・ガングニール』が一番イメージ的には近いです。

しれっとキリヤんのバンバンシューティングのレベルが5を超えたと言っていますが、これは先日の金色のベルトの未確認生命体と戦ったからです。
レベル4でドラム缶とか出てきて、レベル5で第伍戦術が使用可能。つまり第参戦術はもう使えます。つまり、もうすぐ飛びます。

次回は引き続きのキリヤんvsラウラ。ライダーと装者、どっちが強いのか!

ではSee you Next game!


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第19話 一撃 〜Level3〜

エグゼイド、終わりましたね。凄く楽しい一年でした。Vシネマも楽しみです。ありがとうエグゼイド。よろしくビルド!

今回はスナイプvsジョーカー!!


6月10日(土)PM01時40分

 

「仮面装者…ジョーカーねえ」

 

「粉微塵に吹き飛ばしてくれる」

 

両腕にプラズマ手刀、いやあの爪みたいな形はプラズマクローって言ったほうがいいのか。それに背中に担いでいるのは大口径リボルバーカノン。

ISと違うためかサイズ的にはスケールダウンしている。でもこの圧倒的威圧感はあの状態ならではだろう。

 

「やることに変わりはない。あんたの攻略法は分かってんだ」

 

「ふん、その自信いつまで続くかな?」

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ラウラが不敵な笑みを浮かべた瞬間、ガシャコンマグナムから必殺の一撃が放たれる。その速度も上がっている。これならラウラが右手をかざして動きを止めるまでに着弾する。

 

「無駄なことを」

 

しかし会心の一発はラウラの目の前で消滅してしまった。手をかざすことなくだ。

 

「今度はこちらの番だ」

 

一気に間合いを詰めるラウラ。明らかにISよりも速度は上がっている。しかもプラズマクローはプラズマ手刀よりもリーチが長くなっている。このままじゃまずいぞキリヤん!

 

「せやっ!」

 

「ちっ!!があっ!?」

 

クローによる一撃を躱したと思ったら次は足技だ。しかも一撃決まると次々とキリヤんに叩き込まれていく。これが本来の力なのか。

 

でもキリヤんも負けてはいない。ラウラの足を掴んで投げ飛ばす。ラウラは何事もなく着地するがキリヤんは既に必殺技の体勢に入っている。

 

「おらあっ!!」

 

『バンバン!クリティカルストライク!!』

 

必殺の飛び蹴り。しかし今度はそれも塞がれてしまった。空中で固定されたように動かなくなっている。

 

「終わりだ!」

 

「……終われるかよ」

 

固定されたキリヤんを撃ち落そうとするラウラ。それに対してキリヤんは動けない。でもそれで諦めるキリヤんじゃない。

リボルバーカノンから放たれる弾丸。それは確実にキリヤんへと命中した。

 

爆煙に包まれるキリヤん。でも弾丸が当たる直前、その時に俺は確かに聞いた。『レベルアップ』と。

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『ジェット!クリティカルストライク!!』

 

爆煙の中から放たれる一撃。それは3つの攻撃が1つに収束されているからだった。

その一撃は予想外だったのか驚きを隠せないラウラ。何とかそれを躱すが、全力の一撃はアリーナの地面に大きなクレーターを作り上げた。あれがキリヤんの、スナイプの全力……

 

「これが、第参戦術の力だ」

 

『アガッチャ!』

『ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!ジェットジェット!ジェットコンバット!!』

 

「仮面ライダースナイプ。コンバットシューテングゲーマー。レベルは3。テメェを倒すにはこいつで充分だ」

 

あれ、キリヤんちょっと怒ってる?

 

「ふん、いくら武装が増えたとはいえ、所詮は私の敵ではない。なんなら貴様の全力とやらを打ち砕いてやろう」

 

「ほざいてろ。そんなに食らいたきゃ食らわせてやる。しっかり味わえ」

 

ラウラはプラズマクローを右腕のガントレットにしまうと、今度は3つのメモリをガントレットに挿し込む。

 

『サイクロン!マキシマムドライブ!』

『ファング!マキシマムドライブ!』

『プリズム!マキシマムドライブ!』

 

更には最初のナイフに装填したメモリまでマキシマムドライブとやらを発動させた。これによって計4本のメモリの力が右腕に集まっていく。

 

対するキリヤんは武器と腰のスロットに装填していたガシャットを一度取り出し、もう一度挿し込む。

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

『ジェット!クリティカルストライク!!』

 

「降参するなら今のうちだ。全力の私は止められんぞ」

『サイクロン!ファング!プリズム!ジョーカー!クアトロマキシマムドライブ!!』

 

「テメェこそ、俺にぶっ飛ばされる前に謝っとけ。そしたら直撃は勘弁してやる」

『バンバン!ジェット!クリティカルインパクト!!』

 

 

「ヤバイよ一夏!このままじゃアリーナが壊れちゃう!!」

 

「でも、止められる気がしないんだよなぁ」

 

「そんな諦めた顔しないでよ!!」

 

もうダメだ!おしまいダァ!!ついに放たれる2人の全力。誰もかれもが目を瞑り、自身の生存を祈った。てか観客結構いるなぁ!!

 

「やめんか、馬鹿ども!」

 

しかし!そんな2人を一撃で蹴り飛ばす黒い影があった。

そう、我らが頼れる担任、織斑千冬である!

 

 

6月10日(土)PM02時10分

 

「き、今日はもうあがろっか一夏」

 

「そ、そうだな!銃、サンキュな!」

 

目の前で怒りの一撃を食らったキリヤんとラウラは地面に突っ伏している。そして今までの戦闘を見ていた観客たちには千冬姉の睨みつける攻撃が炸裂した。恐らく『口外するな。したら殺す』の意が込められていると思う。

 

「えっと……先に着替えて戻ってて」

 

「ん?今日もか?まあ、俺はいいけど。じゃあ先行ってるぞ」

 

シャルルにそう伝え、更衣室へと向かう。無駄に広い更衣室を俺1人で使うのは贅沢だよな。

 

「は〜、風呂、入りてえなぁ」

 

特訓の汗とかその他諸々、とにかく今日は汗をかいた。さっぱりしたいのだ。噂によると男子が三人になったから山田先生が大浴場のタイムテーブルを組み直してくれているらしい。

 

『あのー、織斑君にデュノア君、九条君もいますかー?』

 

「ん?えーと、織斑だけいますー」

 

『入っても大丈夫ですかー?まだ着替え中ですかー?』

 

「大丈夫ですよ!着替えは終わってますー」

 

『そうですかー。それじゃあ失礼しますねー』

 

ドアが開くと予想通り山田先生が入ってくる。

 

「あれ?残りのお二人は一緒では?」

 

「シャルルならピットに戻ってると思いますけど、キリヤんなら当分は戻ってこないと思いますよ」

 

「そうですよね。あれは流石に痛そうでした。では織斑君に先に伝えますね。ええと、今月の下旬から大浴場が使えるようになります。時間帯別にすると色々問題が起きそうだったので、男子は週に二回の使用日を設けることにしました」

 

「………」

 

「?織斑君?」

 

「……山田先生………ありがとう、ございます」

 

「お、織斑君!?なんで泣いてるんですか!?」

 

「やっと、やっとさっぱりできる。女子に『え、織斑君汗くさーい』なんて言われなくて済む。なんでキリヤんは全然汗かかないんだよ!」

 

「……大変でしたね」

 

そんな号泣する俺の顔を後から来たシャルルが何事かと覗いてきた。

そして、理由を聞いたシャルルは、

 

『そりゃ汗かいたらすぐにシャワー浴びるでしょ。桐也もシャワー浴びてたよ?汗かいてシャワー浴びないのって、ちょっと僕は引くかな』

 

と『なにこいつ』みたいな目で言ってきて、俺は別の意味で泣いた。

 

 

6月10日(土)PM06時20分

 

「はー、やっと終わった…」

 

白式の正式な登録者となるために色々と書類を書いたが、まあ量が多い多い。あんなの高校生に書かせる量じゃないだろ。結局後は千冬姉がやってくれるみたいだし。あとで礼言っとかないと。

 

「ただいまー。って、シャルルの奴またシャワー浴びてるのか」

 

シャルルが転校してきてから俺の部屋の同居人は箒からシャルルへと変わった。まあそれが普通だ。男女よりも男子男子の方が気が休まるだろう。そういうもんだ。多分。

 

そういえばシャンプーの残りが少なかったな。補充してないからもしかしたらなくなってるかも。確かクローゼットにあったよな。

 

「おーいシャルルー。シャンプー残り少ないだろー。変え持って来たぞー………って、え」

 

「い、い、いち……か………?」

 

シャワールームは洗面所兼脱衣所とドアで区切られている。俺はとりあえず脱衣所まで持って行って、そこで声をかけようと思ったのだ。

 

しかし同時にドアを開けたためにシャルルと鉢合わせたのだ。

 

だがしかしィ!シャワールームから出て来たのは『女子』だったのだァ。どうして分かったかって?簡単だ。胸がある。

サイズはCぐらいだァ。どうしてかって?簡単だ。そういう映像作品をいくつか見てるからだあ!!ブゥーハハハハハッ!!ブゥン!

 

 

 

 

 

 

 

 

………これ、ヤバくね?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月10日(土)PM06時30分

 

「おら、そっち埋めろよ」

 

「お前こそ手を休めるな。でないと終わらんぞ」

 

「どうしてこうなったんだか」

 

「お前が地面に向かって攻撃するからだろう!」

 

「いや、あんたがAICで打ち消すかなあって」

 

「あれは改良型AIC。まだ試作型だがうまく作用したようだ。あれはエネルギー攻撃を停止させ、消滅させることが出来る。それを私を中心として最大周囲30キロに展開できる。どうだ凄いだろ!」

 

「凄いのはあんたじゃなくて、ジョーカーと専用機の力だろ」

 

「それを使いこなす私が一番凄い!」

 

「あー、はいはい。ったく、腹減ったなあ」

 

「……終わったら食べに行くか」

 

「……いいぜ、いつになるか分かんないけど」

 

ため息をつく2人。さっきの敵も今は友。ドイツの副官が言っていた言葉を思い出しながらラウラは地面を埋める。

 

静かになったアリーナに、2人のお腹の唸り声が鳴り響いた。




改良型AICの説明。
ようは周囲に展開してエネルギー攻撃などを打ち消す力がある。つまりラウラジョーカーにはスペシウム光線も通用しない。
しかし弱点もあり、ずっとは展開できない。できたらチートだもん。それと自身のエネルギー攻撃なんかも消してしまう。つまりスペシウム光線が撃てない。しかしラウラのリボルバーカノンは実弾なのであんまり関係なかったり。

つまりはまだ試作型ってことダァ!!

そして次回からシャルルは一夏と、ラウラはキリヤんと関係を深める?

ではSee you Next game!

あと活動報告あげるのでそっちもヨロシクです。


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第20話 即決 〜Diligence〜

ガンバライジングBM1弾、遊んで来ました。ビルドのホークガトリングのLRが当たりました。そんでもってるLRポッピーとCPファイズブラスターで全国対戦に殴り込み。リアルタイムバトルで余裕で勝てました。これが現行ライダーの力か。

今回は一夏とシャルルのお話。


6月10日(土)PM06時40分

 

かれこれ20分ぐらい。俺と彼女…でいいのか、シャルルはお互いのベッドに腰掛けて向かい合い、視線が彷徨ったままの無言の時を過ごしていた。すごく気まずい。

 

「あー、そのだな、お茶でも飲むか?」

 

「う、うん。もらおうかな……」

 

らちがあかないので声をかける。お互い飲み物があったほうが話しやすいと思ったのだろう。俺は電気ケトルでお湯を沸かして急須へと注ぐ。

だが、しかし!お茶が出来るまで、再び沈黙がやってきた。仕方ないと言えば仕方ない。かもしれない。

 

「もう大丈夫だろ。熱いから気をつけろよ」

 

「あ、ありがと––––きゃっ」

 

湯飲みを渡す時に指先が触れ合って、シャルルが手を引っ込める。俺は思わず湯飲みを落としそうになり、慌てて握り直した。そしたらまぁ熱いお茶が俺の手にビチャーですよ!

 

「アチャーー!?!?」

 

急いで水道のところまで行って蛇口全開。なんとか事なきを得た。

 

「ご、ごめん!大丈夫?」

 

「ま、まあな。ここ最近は傷の治り早いし」

 

それは事実だ。クウガになってから傷の治りが尋常じゃないぐらい早くなった。いつだったか、イカの未確認生命体と戦った時に火傷したけどすぐに治った。確かあの時ライダーキック10回ぐらい叩き込んで倒したっけ。

 

「ちょ、ちょっと見せて。……大丈夫じゃないよ。赤くなってる。熱かったよね。ごめんなさい」

 

「だから気にすんなって。こんなのほっといたら治るし」

 

「でも……あ、僕氷もらってくるよ!」

 

「待て待て待ちなさい。その格好はマズイだろ。後で自分で取ってくる」

 

シャルルの格好はいつものシャープなラインが格好いいジャージなのだが、バレたからか胸を隠していない。その上体のラインがくっきりの服装だから胸があるのが思いっきりわかってしまう。

 

「それにここまで冷やしたから大丈夫だよ。じゃあ、ほれ」

 

「う、うん。ありがと」

 

今度はちゃんと受け取ったシャルル。一口日本茶を飲む。俺も一度喉を潤すと、とりあえず胸の事………じゃない、男装の件について聞いてみた。

 

「なんで男のフリなんかしてたんだ?あ、男装が趣味だったとか?」

 

「それは、その……実家からそうしろって」

 

「え、あ、えーと……ごめん、不謹慎だった」

 

「ううん、いいよ。一夏がそうやって冗談言ってくれて、ちょっと安心した」

 

そう言うシャルルの表情はさっきまでと違い、少し明るさが戻っていた。それでもいつもの美少年、もとい美少女の表情とは程遠い。

 

「実家というと……確かデュノア社の」

 

「そう。父がその社長。その人からの命令なんだよ」

 

「命令って、親だろ!?なんでそんな」

 

「僕はね一夏。愛人の子なんだよ」

 

またまた冗談を……なんて言えなかった。正直そんなのドラマの中だけだと思っていた。

 

「引き取られたのが2年前。ちょうどお母さんが亡くなったとき。父の部下の人が来て色々と検査したの。そしたらIS適応が高いことがわかって、非公式だけどデュノア社のテストパイロットになったんだよ」

 

シャルルは恐らく言いたくないことを話してくれている。だったら俺に出来るのはしっかりと事実を知ることだ。

 

「父にあったのは2回くらい。会話も全然なくてね。普段は別邸で暮らしてるんだけど、少しして本邸に呼ばれてね。あのときは凄かったよ。いきなり本妻の人に殴られたんだから」

 

愛想笑いをするシャルルだが、その声は乾いててちっとも笑ってはいなかった。俺もさすがに愛想笑いは返せない。

 

「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの」

 

「え?だってデュノア社って量産機ISのシェアが世界3位なんじゃ」

 

「そうだけど、所詮は専用機。それにリヴァイヴは第二世代型。お金もかかるからほとんどの企業は国からの支援あって成り立ってるとこばかり。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているからね」

 

そういえばセシリアがいくつか言っていた。なんでも次期主力機の選定中らしい。イギリスのティアーズ、ドイツのレーゲン、イタリアのテンペストII型。そのため実稼働データを取るためIS学園に来たらしい。

 

「話を戻すね。それでデュノア社でも第三世代を開発してたんだけど、圧倒的データ不足で形にならなかった。それで政府からは予算を大幅カット、しかも次のトライアルで選ばれなかったら援助を全面カット、IS開発許可も剥奪するって流れになったの」

 

「なるほどな。なんとなくわかった。男装は注目を浴びるための広告塔、それに同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能ならその使用機体と本人のデータを取ってこい……ってとこか」

 

「まあ、そんなところ。一緒に来てたタイガ先生は僕の男装がバレないようにって父が雇った傭兵なんだよ。元々は日本で医者をしてたらしいんだけど、医師免許を剥奪されたみたい」

 

あの人はそういうポジションの人なのか。でもあの人基本カルテ見てるか、ゲームしてるか、散歩してるところしか見てないぞ?

 

「でも一夏にバレちゃったし、多分僕は本国に呼び戻されるかな。デュノア社は……潰れるか他の傘下に入るか。まあどうでもいいけど」

 

「…………」

 

「なんだか話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとうね。それと、今までウソついてゴメン」

 

頭を下げるシャルルを、俺は肩を掴んで頭を上げさせていた。

 

「頭を上げてくれシャルル。そんな謝らなくていいから。それよりお前はこれからどうするんだ?」

 

「どうって……時間の問題だよ。フランス政府もこのことを知ったら黙ってないだろうし、僕は代表候補生をおろされて、よくて牢屋だよ」

 

「え、そ、そんなに?それはヤバイな………あ、そうだ!だったら、ここにいろよ!」

 

その時のシャルルの顔は驚きを隠せていなかった。中々面白い顔できるじゃないか。

 

「特記事項第22、本学園における生徒はその在学中においてありとあやゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人が同意しない場合、それらの外的介入として許可されないものとする」

 

暗記していたテキストがこんな時に役立つなんて思いもしなかった。勉強はキチンとするべきだな。

 

「つまり、ここにいれば少なくとも3年間は大丈夫なんだろ?それだけ時間がありゃあなんとかなる。いやなんとかする」

 

「……よく覚えられたね。特記事項って55個もあるのに」

 

「……勤勉なんだよ、俺は」

 

「そうだね。ふふっ」

 

やっとシャルルが笑った。緊張感のあった空気はやっとのことでなくなったようだ。

 

「とにかく決めるのはシャルルだから、考えてみてくれ」

 

「うん、ありがとう」

 

なんだか勢いで押し切ったが、もう少しちゃんと考えるべきだったか?そう思うと不安になるが……いや、考えるのはヤメだ。今はシャルルが元気になったことに喜ぶべきだ。

 

コンコン。

 

「「!?」」

 

「一夏さんとシャルルさん、いらっしゃいます?夕食をまだ取られていないようですけど、体の具合でもよろしくないのですか?」

 

いきなりのノックとセシリアの呼び声に2人してビビる。一瞬俺たちの会話を密かに盗聴していた悪の手下が来たのかと。

いや普通こんなの考えねえな。どうやら久しぶりに頭を使ってハイになってるみたいだ。

 

「とりあえず隠れろシャルル!いやクローゼットじゃなくて普通に布団でいいから!」

 

「……何をしていますの?」

 

「うおっ!?…セシリアか。なんだ?どうした?」

 

「いやそれよりも、今シャルルさんが凄い勢いでベッドに飛び込んだので何事かと」

 

「え!?いやちょっとアクション映画見ててさ!それのマネしてたんだよ!なあシャルル!!」

 

「そ、そうだよ!もう気分はアクションスターさ!今なら何が来ても生身で勝てそうだよ!アハハハハーー」

 

枕に顔を埋めた状態でシャルルが話す。ハッキリ言ってモゴモゴ言ってるようにしか聞こえない。

 

「あ、そうだ!飯だったな!ほら行こ行こ!シャルルは暴れた後だから少しシャワー浴びるってさ!ほらはやく行こうぜ!シャルルも早く来いよー!」

 

「う、うん!」

 

なんとかゴリ押しでセシリアを部屋から出す。正直怪しさ全開だったな。いやー危なかった。

 

 

6月10日(土)PM10時30分

 

俺とシャルル、セシリアに先に食堂にいた箒と鈴と飯を食べた後、鈴の部屋でゲームを遊び、そしてそれぞれが自分の部屋に戻ったのが今の時間だ。そしてあることについて思い出したのも。

 

「そういや、月末の学年別トーナメントってタッグマッチなんだよな?シャルルはペヤ決めてるのか?」

 

「僕はまだ。そういう一夏は桐也と組むの?」

 

「キリヤんは多分出ないんじゃないかな?確かいろんなお偉いさんが来るんだろ?キリヤんの専用機?って極秘らしくてさ。多分表舞台のイベントには参加しないと思う」

 

「そうなんだ。桐也の仮面ライダーって凄いよね。あんなに火力があるのってそうそうないよ」

 

「それをいうならラウラも凄いよな。てかあの2人がおかしいのか。火力バカだな」

 

「そんなこと言ってると、2人から集中砲火もらうよ?」

 

かもしれない。いやあんなの食らったらISでもクウガでも死ぬ予感しかしない。

 

「あ、そうだ!だったら俺たちで組もうぜ!」

 

「まさか僕と組むの?」

 

「その方が何かと都合がいいだろ?シャルルはアテがあったのか?」

 

「いや正直助かったけど、一夏の方があったんじゃない?」

 

「いや俺もなくてさ。箒はのほほんさんと、セシリアは鈴と組むからさ。だったら俺たちで組もうぜって。近距離の白式と中遠距離のリヴァイヴ。中々いいんじゃないか?」

 

「それもそうだね。うん!いいよ!僕たちなら勝てるよ!」

 

「決まりだな!」

 

まさに5分間で決めた即決コンビ。でも、互いに背中を預けられる仲間なのは、今決まったことじゃない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月26日(月)AM09時00分

 

今日から一週間かけて学年別トーナメントが始まる。それぞれの思惑が交差することになる戦い。そして最初の戦いは、

 

一年の部、Aブロック1回戦1組目

 

織斑一夏&シャルル・デュノア コンビ

VS

九条桐也&ラウラ・ボーデヴィッヒ コンビ

 

だった。

 

「なんで、キリヤんがこの大会に出てんだよ……!」

「しかも最悪のコンビだね」

 

「よし、ノッてくか隊長さん」

「我々の前では、有象無象の1つでしかないことを分からせてやる」

 

 

簡単には終わらない戦いが、今始まる。




やっと6月最終週だね(白目)
この作品の6月が長い!あと数話続くので……多分11月に6月終わるよ。
次回から学年別トーナメント決戦編!まずは一夏、シャルルVSキリヤん、ラウラの対決!オールラウンダーVSバカ火力の対決です。

ではSee you Next game!


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第21話 共闘 〜tag match〜

一夏、シャルルvsキリヤん、ラウラ!!


6月26日(月)AM09時10分

 

「よお名人、シャルル」

 

「よお、じゃないだろ!お前この大会に出て大丈夫なのか!?」

 

試合開始まであと50分。アリーナの控え室でバッタリ相手側と出会った。キリヤんとラウラ。キリヤんはともかく、ラウラは一匹狼っぽさがあったからキリヤんと組むのは予想外だった。

 

「今回は社長さん自らのお願いだからな。向こうには向こうの目的があるんだろ」

 

「大丈夫なのか……?」

 

「その件については大丈夫よ」

 

「木綿季先生」

 

現れたのは木綿季先生。なんか久々に見たぞ?最近この人の授業がことごとく変更されていた。もしかしてこの事と関係が?

 

「今社長が色々な偉い人に説明してるわ。多分大半が納得してくれる。あとは貴方次第よ」

 

「なーんか期待されちゃってる?んじゃまあ、名人達倒して見せつけてやるとしますかね」

 

張り切るキリヤんをよそに、ラウラは1人落ち着いている。これも絶対なる自信からくるものなのか。

 

「織斑一夏、貴様を許しはしない」

 

「またそれか。なんとなく事情は分かるけどな」

 

「と、思っていたが。今はどうでもいい」

 

「は?」

 

今どうでもいいって言った?

多分ラウラが許さない、認めない云々は少し前に俺が誘拐された時の事だろう。

 

あの時、クウガに初めて変身して未確認生命体を倒したあと、俺は気を失っていた。その後目が覚めた時には病院のベッドの上だった。なんでも千冬姉が、その時行われていたISの世界大会の決勝戦を放棄して俺を助けてくれたらしい。

どうもその時ドイツ軍が手を貸してくれたらしく、その見返りとして千冬姉は何年かドイツ軍で教官をしていた。ラウラはその時の教え子で、千冬姉を尊敬しているらしい。

 

そんな尊敬している千冬姉の弟が俺だなんて『認めない』。俺のせいで決勝戦を放棄せざるを得なかったから『許さない』。多分俺に対する恨みはここから来てると思う。もし俺の勘違いなら恥ずかしい。

 

しかし今ラウラの口からどうでもいいって言葉が出て来た。正直驚いている。

 

「いや、お前のことを完全に許したわけではない。事実、お前のせいで教官は二連覇出来なかったのだからな」

 

「返す言葉もな、って今更だけどそれは俺というより、俺を誘拐した奴らのせいじゃ……」

 

「間抜けに誘拐されるお前も大概だ。いやそんなことより、1つお前に聞きたい」

 

するとラウラはイスから立ち上がり(って足届いてなかったのか。確かにそのイス無駄にデカイよな)俺の顔をじっくりと見つめてから、

 

「何故お前と教官は仲が良いんだ?」

 

と一言。いやそれは姉弟だからだろ。それ以上もそれ以下もない。と普通の答えを出したら、なんかまた殴られそう。

 

「そりゃあ………大事な人…だから?」

 

「ほう」

「お熱いねぇ名人」

「もしかして一夏って……」

 

「いやいや変に誤解するなよ!?大事な人ってのは家族だから大事であってだな!」

 

「そんなの分かってるって。変に焦るなよ名人」

「からかってゴメンね一夏」

 

「家族……家族か。なら私も教官と家族になれば……もっと」

 

ふふふっ、と不敵に笑うラウラ。ともかくなんとか納得してくれたのか?それだと良いんだが。

 

「一夏、そろそろ準備しようか。お互い良い試合にしよう」

 

「そうだな。こちらも全力で迎え撃とう」

 

「ついでにシャルルの化けの皮を剥いでやるぜ」

 

「「え?」」

 

「なーんてな。まあ頑張ろうぜ」

 

キリヤんのあの言い方……もしかしてバレてるのか?シャルルがこの学園に来てからもうすぐ1月だ。勘のいいやつなら薄々気づいているかもしれないが。でもフランスには女に見える男もいるらしいし。気づいても確信には繋げられないはずだ。

 

「ねえ、一夏」

 

「大丈夫だシャルル。もしバレててもキリヤんならバラしたりしない。あいつは女の子にはすんごい優しいから」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どう見る?」

 

「やっぱ女だわアレ。あんな可愛い男いるわけない」

 

「我がドイツの副官が言っていたが、この世には女の子のような男の子、つまり『男の娘』がいるらしいが」

 

「そういうのが好きなやつもいるらしいが……やっぱり自分は女の子の方が好きだわ」

 

「暫く黙認し続けたが……そろそろ教官に伝えるか?」

 

「いや、あーゆーのは自分から行かせないと。じゃないと次の一歩が踏み出せないだろ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月26日(月)AM10時00分

 

「全力でやるとは言ったけど……いきなりそれで来るのか!?」

 

俺の白式、シャルルのリヴァイヴと対峙するのはキリヤんとラウラ。しかしその2人の格好が格好だった。

 

キリヤんは『仮面ライダースナイプ コンバットシューティングゲーマーレベル3』。うん、正式名称長いわ!

ラウラは『シュヴァルツェア・レーゲン《仮面装者ジョーカー》』。キリヤんを追い詰めたラウラの切り札。

 

まさに最初からクライマックス。2人は自分たちの全力をこちらにぶつけて来るつもりだ。ならこっちも全力でぶつからないと。

 

「シャルル!作戦通り行こう!」

 

「OK一夏!」

 

「よし、こちらも作戦通りに行くぞ」

 

「りょーかい。派手に決めるぜ」

 

アリーナに試合開始を告げるアラートが鳴り響く。そして戦いが始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

先に動いたのは一夏とラウラ。桐也とシャルルは飛翔しながら互いに牽制しあう。

一夏と雪片弐型とラウラのプラズマクローが激突する。単純なパワーならラウラ。刀の扱いなら一夏が優勢だった。

 

「ふっ!せやっ!」

 

「チッ!」

 

中学ではやめていた剣道だが、タイタンフォームに変身してからというもの、あの日以降一夏が剣を振るわなかった日はなかった。たとえ同居人が眠ったとしても、雨が降っていようとも、とてつもなく眠くても、一夏は剣を振るった。

 

みんなを助ける為、仮面ライダークウガとして戦うために。

 

(やはり剣の扱いは向こうが上か。流石教官の弟。教官も刀を扱うのは上手かったな。何度もあしらわれた。だがそれ故に!)

 

「戦闘中に考え事なんてらしくないんじゃないか!」

 

「やはり、癖も似ているな!」

 

一夏の剣技を破るラウラ。一瞬の出来事だった。一夏は自分の得手を破られ、更にはラウラの膝蹴りが直撃してしまう。

吹き飛ぶ一夏に追い打ちをかけるように腕部と脚部からワイヤーブレードが射出される。

 

「砕け散れっ!!」

 

「そうはいくかよ!!」

 

すぐに体勢を整え飛翔する。それを追いかけるワイヤーブレード。一夏の白式とラウラのワイヤーブレード。速度は圧倒的に白式が上だが、ワイヤーブレードは永遠と追いかけて来る。

 

(そうだ、そのままついて来いッ!)

 

(奴め、何を考えている?クジョーにぶつけるというのなら無駄だというのに……奴のことだ、他に考えがあるはずだ)

 

やがて一夏は桐也とシャルルの銃撃戦の場まで飛んでいく。一夏が飛んで来るのを確認したシャルルは桐也と距離を取り、一夏の方へと飛んでいく。

 

「頼んだぜシャルル!」

 

「任せたよ一夏!」

 

互いにすれ違い、一夏は桐也の元へ。シャルルはワイヤーブレードへと飛んでいく。

 

「勝負だキリヤん!」

 

「選手交代か?いいぜ、自分負ける気ないんで」

 

仮面の下で不敵な笑みを浮かべる桐也。そして一夏の雪片弐型と桐也のガシャコンマグナムが激突した瞬間、アリーナを包むシールドバリアが大きく振動した。

 

 

「そういうまとめる仕事は得意だよ!」

 

逆にワイヤーブレードへと飛んで行ったシャルルはワイヤーブレード一本一本を正確に掴んでいく。8本のワイヤーブレードを全て掴んだシャルルは呼び出したナイフに全てを結びつけ地面に投げつける。

手先の器用なシャルルならではの早業。ラウラも驚きを隠せない。

 

「チッ、面倒なことを!」

 

「お生憎様、僕のリヴァイヴはこういうのが得意なんだよ!」

 

ワイヤーブレードを切り離しシャルルに突撃するラウラ。貴重なワイヤーブレードを失ったのは痛いが、ラウラにはまだ文字通りの『ジョーカー』が存在する。

 

「これならどうだ!」

 

『メタル!サイクロン!ツインマキシマムドライブ!!』

 

両腕のガントレットにメモリを装填し、プラズマクローへパワーを回す。銀色の斬撃と緑色の斬撃がシャルルめがけて放たれる。

 

「確かに、これは当たったら痛いよね。でも当たらなければいいだけのこと!」

 

「なっ!?瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと!?貴様も使えたのか!」

 

「まあね!切り札は残しとくものでしょ!」

 

斬撃を掻い潜りながら攻撃を続けるシャルル。更には手元の武器を瞬時に交換しながらダメージを与えていく姿がより一層シャルルの器用さを引き出される。

 

「くそっ!ちょこまかと!」

 

「ほら、隙がみえた!こいつは響くよ!」

 

リヴァイヴの左腕の盾をパージする。姿を現したのはパイルバンカー。今現在のシャルルの最強の一撃。しかも今のラウラは隙だらけ。ものの見事にラウラの腹部に叩き込まれ、ラウラは地面へと叩きつけられた。

 

「さて、向こうも終わるかな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そろそろ終わりにしようぜキリヤん!」

 

「くそっ、隊長さんはノックアウトか……こいつはヤバイな」

 

「降参した方が傷は少なくなるよ?」

 

俺とシャルルに挟まれたキリヤん。確かにキリヤんは強い。クリティカルインパクトを喰らえば確実に負けるだろう。たがらこそ俺はキリヤんがやや苦手とする接近戦へと持ち込んだ。

 

結果は見ての通り、キリヤんは追い込まれ、俺とシャルルはほぼ無傷といってもいい。ここまで事が上手くいくなんてラッキーだ。

 

そう、この時俺は気付くべきだった。事が上手くいきすぎていることに。

 

「……ハア、おい名人」

 

「なんだキリヤん?」

 

「油断、大敵な」

 

「一夏!後ろ!!」

 

後ろを振り返った時には、クアトロマキシマムドライブを発動したラウラがプラズマクローを振りかぶっていた。




油断大敵。キリヤんとラウラ相手にここまで事が上手くいくなんてありえないのだっ!それに気づけなかった一夏とシャルル。一夏にはクアトロマキシマムドライブの制裁です。

次回、決着!そしてあの黒い仮面ライダーが動き出す!


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第22話 黒影 〜Grade2〜

今回は若干繋ぎです。だから短いよ!しかも話が全然進まない!

それはそうと、みんなFGOで貰う星4決めたかな?自分は槍トリアか剣スロットが欲しいんだけど…まあ、まずは沖田さんと土方さんだね


6月25日(月)AM11時00分

 

「イッテテテ……何も本気で殴ることないだろ」

 

「あれでも私は十分の一しか実力を出していない。あれでノックアウトするお前の耐久力に問題がある」

 

「まあそこまでにしとけよ〜隊長さん。名人は攻撃にステ全振りで防御は紙装甲なんだから。それに比べてシャルルは全部均等なステータスだな」

 

「ハッキリ言ったらどうだ?地味だと!」

 

「うぐっ!?痛いとこつくよねラウラ」

 

試合が終わって約30分後。既に第2回戦は始まっている。

結果から言って俺たちは負けた。いやハッキリ言って勝ち目は薄かった。それなのに上手くいって慢心してたんだ。それが敗因。

 

まずラウラのクアトロマキシマムドライブを食らって白式のシールドエネルギーはゼロになった。その後1人奮戦したシャルルもキリヤんのクリティカルインパクト、ラウラのツインマキシマムドライブでノックアウト。結果、キリヤん&ラウラペアが次に試合に進むことになった。

 

なんでこんなアッサリな説明かって?だって時間にして3分ぐらいの話だぜ?長ったらしく語る方が面倒だ。

 

「にしても、あとは余裕だろ。正直お前らに勝てそうなのCブロックのセシリアと鈴のペアぐらいだろ?」

 

「箒たちはDブロックか。Bブロックも大して目立つ奴はいないし」

 

「ふん、優勝など通過点に過ぎん。その後のエキシビジョンで貴様を倒すクジョー」

 

「エキシビジョンマッチなんてあるの?」

 

「ああ、確かあらかじめ行いたい対戦カードを登録しといて、優勝したチームがその対戦カードの内容の試合を行える、ってプリントに書いてた気がする」

 

因みに俺も出した。鈴との決着があの時無茶苦茶になったから、その時のリベンジを兼ねて鈴との対戦を希望した。まあ初戦敗退の俺にはもう関係ないか。

 

「でもまあ、今日はもうやる事ないからな。少しゆっくりさせてもらうぜ」

 

「私も整備に向かうか」

 

目の前の対戦に目もくれず寝始めるキリヤんと整備に向かうラウラ。自由気ままな2人だからこそのコンビネーションだったのだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「中々の威力だな」

 

「あれが九条の現段階での最大火力らしいです。どう見ます花家先生」

 

「……あれでも出力はかなり抑えてるはずだ。それであの威力だ。直撃したら絶対防御だろうがぶち壊すぞ。よくあの状況で晒す事が出来たもんだ」

 

「最初に使った時から危険だと感じていたらしいです。それ以降ボーデヴィッヒと共に直撃を避けつつ相手に大ダメージを与える方法を考えていたらしいです」

 

「それで実際に出来ていると……流石といったとこか?」

 

「自称遠距離型と自負しているだけはあります。山田くんはどう思う」

 

「そうですね。九条くんの戦いぶりには驚かされます。元々一般人の九条くんが、今では代表候補生と同等の戦いを繰り広げているのですから」

 

「確かに、事が上手くいき過ぎている……何がしたいんだ檀黎斗」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いいんですか社長!あんな脅迫じみた事をして!」

 

「少しぐらいスリルがあった方がいいだろう?」

 

「だからって、仮面ライダーの事を口外したら表舞台からも裏舞台からも消えてもらうって……まるで悪の組織ですよ!」

 

「我々が悪の組織でもいいじゃないか。ヒールも悪くない。それとどうせ口外はしないだろうさ。クリティカルインパクトが全力じゃないのは彼らも分かっていたはず。全力で撃てば国丸々を滅ぼしかねないからね。一応は彼らも国のトップ。まずは自分の国が最優先なんだよ」

 

「……そこまでして、提供してほしいゲームのデータっていったい」

 

「彼らも頑なでね。少々強引だが他の国も巻き込んでみた。私がほしいのは『タドルファンタジー』『バンバンシミュレーション』『パーフェクトパズル』『ノックアウトファイター』。特にバンバンシミュレーションはオルコット家の物だからね。国そのものからの命令でなくては渡さないだろうし」

 

「あれって、社長も合意の上で権利を与えたのでは?」

 

「必要になったから借りるさ。この4つがないと私の計画にヒビがはいる。それだけは避けたくてね」

 

「……貴方は一体何を考えてるのですか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月25日(月)PM07時30分

 

今日の試合は終わった。流石に全校生徒がバカみたいに多いこの学校、1日で全員が参加できるわけもなく、1週間時間をかけて試合を行うのだ。

今日は俺とシャルル以外は無事に勝ち進んだみたいだ。

 

「んじゃ!一回戦突破おめでとー!!乾杯!!」

 

「俺たちは負けたけどな!!」

 

「まあまあ、今は楽しもうよ一夏。せっかくご馳走が並んでるんだから」

 

「作ったの殆ど俺だけどな!!」

 

「うるさいぞ一夏。負けたのはお前の力量不足だ。今後しっかり精進しろ。そうすれば訓練機でも勝てるさ」

 

実際に箒とのほほんさんは訓練機で勝ち進んでいる。箒が刀による近接戦闘、のほほんが援護って形だったが……のほほんさんの力量はとんでもなかった。まず弾が当たらない。恐らく与えたダメージ0だ。

いや、もしかしたらそれのおかげか?弾こそ当たらないもの、運良く相手の進行を邪魔したりした。なんていうか……ある意味強敵だな。

 

「ん?なんだこの音は」

 

物凄い足音の数。それは真っ直ぐこっちに向かってきていた。何事かとその場の全員が食堂の入り口を見る。やがて走って入ってきたのはキリヤんとラウラだった。そういえばまだ来てなかったな。

 

「くそっ!あれが本当に一般生徒なのか!?あの脚力尋常じゃないぞ!ISをファッションか何かと勘違いしている奴らが多いと思ったが、こちらの認識不足か!?」

 

「人間目的の為なら体のリミッターぐらい解除できるんだよ。ったくなんでこんなことに……あ、唐揚げも〜らい」

 

「おいシャルル。早く私の口にチキン南蛮を!」

 

「え、うん?」

 

シャルルがラウラの口にチキン南蛮を入れると2人は反対方向へと走っていった。その数秒後大量の生徒が食堂へと流れ込んで来た。足音の原因とキリヤんとラウラが逃げてるのはこれのせいか。

 

「ねえ!九条くんとボーデヴィッヒさん、ここに来たかしら!?」

 

「え?い、いやー知らねえーわー」

 

「うむ、ここには来てないぞ?」

 

「他の場所ではないかしら?」

 

「ほら、さっさと探しに行きなさいよ」

 

「そう……ねえ、布仏さん」

 

「な〜に〜?」

 

「これ、欲しいでしょ?答えてくれたらあげる」

 

1人の女子生徒がのほほんさんに見せたのは、廊下でずっこけているキリヤんの写真だった。確かその日は雨で廊下が滑りやすかった。なんで知ってるかって?目の前でずっこけたからだよ。でもいつの間にこんな写真を。

 

「さあどうするの?」

 

「あっちに行ったよ〜」

 

「ありがとう!!」

 

どうやらのほほんさんは物に釣られやすいらしい。すぐにキリヤんが走っていった方向を指差して写真を受け取るのほほんさん。満足げな表情してるけど……この後大丈夫なのか?

 

尚この後、揉みくちゃにされたキリヤんから頰を引っ張られるのほほんさんであった。頰を引っ張られても可愛いのほほんであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月27日(水)PM11時50分

 

「た、大変だバラバ!」

 

「どうしたゴオマ」

 

「残りの待機していたズの連中が、黒い仮面ライダーに殺られた!」

 

「……またしても奴か…」

 

「どうするのだ!これでは我々のゲゲルが!」

 

「黙れ。すぐに策を投じる。これ以上我々のゲゲルの邪魔はさせん」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月29日(金)AM11時20分

 

「はあー暇だなー」

 

昨日の試合で各ブロックの優勝者が決まった。Aブロックは自分と隊長さん。Bブロックは4組の代表さんと3組の代表さん。Cブロックはセシリアとリンリン。Dブロックは箒と本音。

今さっきの試合でBブロックの奴らには勝てた。次の試合はCとD。つまりセシリア、リンリン対箒、本音だ。まあそれまで少し時間がある。隊長さんは整備に行ったし、ハッキリ言って暇だ。

 

「部屋に戻ってゲームでもするか」

 

誰もいない廊下で1人呟く。部屋に戻ってゲームするぐらいなら時間はあるはずだ。そう決めて部屋に向かって歩き始めた瞬間、違和感を感じた。何かが広がっていく感じ……そうだ、これはゲームエリアだ。

 

「……あんたか」

 

目の前に立っているレベル1の黒い仮面ライダー。あの顔……成る程、マイティアクションXの2Pカラーか。ゲーマドライバーを使ってるってことは味方か?

 

「………」

 

「だんまり決め込むの、やめてくんない?」

 

「………グレード2」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショーンX!!』

 

レベルアップした黒い仮面ライダー。しかも銃口をこっちに向けている。悪いけどそんなことされたら、自分もヤル気だしちゃうよ?

 

「第弐戦術、変身!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「な、なんだ!?」

 

整備をしていたら聞こえてきた爆発音と悲鳴、更に警報音。整備室のモニターを見ると、アリーナにいくつかの影が見えた。今対決している4人以外の影。それらはよく見ると黒い怪物だった。姿はカラスに酷似している。さらに面倒なのが暴れていた。

 

「教官に言われたが……まさかあそこまでとは」

 

黒い怪物相手、いや見境なく暴れていたのは、狂戦士と化したシャルル・デュノアだった。




これによって、
キリヤんvs黒い仮面ライダー。
セシリア、鈴、箒、本音vs黒いカラスの怪物vsシャルル。
になりました。黒いカラスの怪物はグロンギじゃないです。最近のカラスの怪物といえば……

次回はキリヤんvs黒い仮面ライダーになるかな。もしかしたら番外編をちょっといれるかも……?

ではsee you next game!


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第23話 強敵 〜Life 0〜

一夏、箒、セシリア、鈴、本音vs黒いカラスの怪物vsシャルル!
桐也vs黒い仮面ライダー!


6月29日(金)AM11時30分

 

今まさに、第三アリーナは地獄と化していた。

 

事の発端はCブロックとDブロックの優勝者同士の試合中に乱入者が現れたのだ。黒いカラスの怪物達。どうにも未確認生命体のような何かに見えた。

 

そして奴らを見たシャルルは目を見開いた状態で、

 

「ぶっ殺す……」

 

と1人つぶやいてアリーナへと走って行った。いきなり隣の人がぶっ殺すなんて呟いたらビックリするし状況を飲み込むのに時間がかかる。俺は回らない頭をなんとか働かせながらシャルルを追いかけた。

 

そして今現在、

 

「死ねぇ!!」

 

カラスの怪物の顔にパイルバンカーを叩き込むシャルル。元々アリーナにいたセシリア、鈴、箒、のほほんさんもカラスの怪物と戦っている。

 

「シャルルの暴走って……タイガ先生の言う通りだな。アレは重度のバーサーカーモードだぞ!」

 

あの状態で目が赤色に光っていても違和感がない。それぐらいシャルルの暴走状態は度が過ぎている。壁に叩きつけられたカラスの怪物に何回も何回も拳を叩き込んでいる。生徒の避難が終わっているからと言ってアリーナを壊す勢いだぞ!

 

「来い!白式!!」

 

白式を纏いシャルルの元へ飛んでいく。俺には目もくれずカラスの怪物を殴り続けるシャルル。見るも無残な姿に成り果てたカラスの怪物。黒い血を辺りに撒き散らしながら絶命している。

 

「落ち着けシャルル!もう死んでるんだぞ!」

 

「うるさい!!私の怒りは、この程度じゃ収まらない!!」

 

シャルルの腕を掴むもすぐに振りほどかれ、投げ飛ばされる。うーん、流石代表候補生。男1人なら簡単に投げ飛ばされると。

 

こういう時にキリヤんがいてくれたら。女子の扱い上手そうだし。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐあっ!?」

 

校舎の壁を突き破り中庭へと飛ばされるスナイプ。ライフゲージは残りわずかだ。対する黒い仮面ライダーはライフゲージが1ミリも減っていない。つまり、一撃もダメージを与えられていないのだ。

 

「ちっ……やってくれるじゃねえか」

 

「その程度か、九条桐也」

 

「やっと喋ったと思ったら、結構重要なこと言うね。なんでおたく自分の名前知ってんの?」

 

「話す義理はない」

 

「なら、とっ捕まえて吐かせるだけだ!」

 

スナイプが指を鳴らすと黒い仮面ライダーの足元が爆発し、地面が陥没する。一瞬身動きを止められた黒い仮面ライダーの顔面にスナイプの拳が叩き込まれる。

 

「ふん、1発決めたぜ」

 

「……よく考えたな。バンバンシューティングのトラップ設置能力に爆走クリティカルストライクの超加速。一撃食らわすには充分な力だ」

 

「なんならもう1発いくぜ」

 

「無駄だ。今の1発が君の最初で最後の一撃だ」

 

『シャカリキスポーツ!』

 

「もう一本のガシャット…お前もレベル3に!?」

 

「グレード3」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!マイティアクショーンX!』

『アガッチャ!シャカリキ!シャカリキ!バッドバッド!!シャカッと!リキッと!シャカリキスポーツ!!』

 

黒い仮面ライダーとは真逆の派手なピンク色の自転車を鎧として纏う。そのふざけた姿とは裏腹に圧倒的な力を秘めている。レベル3はそれ程に強力だと桐也自身も知っている。

 

「それはそうと……あの時の車輪。あんたのだったのか。これはますます話を聞かないとな」

 

『ジェットコンバット!』

 

「第参戦術!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!バンバンシューティング!』

『アガッチャ!ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!!ジェットジェット!ジェットコンバット!!』

 

スナイプもレベル3に変身して空を飛ぶ。ふとアリーナの方を見ると黒い煙と爆発音が聞こえる。さっきから携帯のバイブ音が聞こえていたのはアレのせいかと納得する。

 

「時間がねえ。さっさと終わらせる!」

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

『ジェット!クリティカルストライク!!』

『バンバン!ジェット!!クリティカルインパクト!!』

 

「その焦りが、君の敗因だ」

 

『シャカリキ!クリティカルストライク!!』

 

クリティカルストライクはクリティカルインパクトに比べて圧倒的に威力不足だ。しかし桐也には『これだけで充分』だと言われているようなものだった。

 

「舐めやがって……持ってけ全部だ!!」

 

ガシャコンマグナムにコンバットガトリング、更にミサイルの猛攻撃を黒い仮面ライダーへと発射する。それに対して車輪を投げつける黒い仮面ライダー。

 

「重要なのは威力じゃない。タイミングだ」

 

ミサイルを次々と破壊していく車輪。しかし肝心の極大レーザー攻撃は打ち消すことができず、押しとどめるだけだった。

 

「この野郎!このダメ押しならどうだ!!」

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

爆走クリティカルストライクでレーザーの両リアユニットアームを召喚し、コンバットガトリングと合体させる。これで更に威力アップしたクリティカルインパクト。これなら押し切れると確信した瞬間、

 

「確信したな、九条桐也」

『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

「なんだと!?」

 

「言ったはずだ、重要なのはタイミングだと。確かにクリティカルインパクトは最強の技だ。しかしその反面ガシャットのエネルギーを大幅に消費する燃費の悪い技だ。だがタイミングをずらすだけで威力はクリティカルインパクト並み、更にエネルギー消費も少なくなる」

 

黒い仮面ライダーのライダーキックがクリティカルインパクトを押しとどめていた車輪を押し込む。クリティカルインパクトのレーザー攻撃を切り裂きながら突き進む黒い仮面ライダー。スナイプも更に出力を上げるが時すでに遅し。

 

黒い仮面ライダーのライダーキックがスナイプのライフゲージをゼロにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くそっ!なんなのよこいつら!」

 

「鈴さん!後ろ!」

 

「嘘っ!?」

 

倒しても倒しても増え続けるカラスの怪物。合流したラウラのおかげでさっきよりは幾分か戦いやすくなった。というのもラウラ1人で五体ぐらい相手してるんだけど。

 

「大丈夫か鈴!」

 

「ったく、守るべき一般生徒に守られて大丈夫なわけないで、しょ!!」

 

「む、助かる」

 

今度は箒の背後に現れたカラスの怪物を鈴の青龍刀が貫く。なんだかんだいいコンビじゃないか。

 

「私を忘れてもらっては困りますわ!」

 

「失せろ、有象無象が!」

 

セシリアのブルー・ティアーズとラウラのリボルバーカノンが敵を撃ち抜く。てかラウラは仮面装者じゃなくて普通のレーゲンなんだな。

 

「大丈夫かのほほんさん」

 

「ありがと〜オリムー。助かったよ〜」

 

でものほほんさんは、失礼だが専用機持ちレベルの力はないし、箒のように直感で動くタイプでもない。誰かが守ってあげなくちゃいけない系女子だ。今度は箒たちに失礼になるが、1人でもなんとかしてくれそう系女子とは違うのだ。

 

「一夏!後で覚えておけよ!」

「一夏さん!何か失礼なことを考えましたわね!」

「後でぶっ飛ばすから一夏!」

「………潰す」

 

「なんでさ!声には出してないぞ!」

 

「「「「思ってたんかい!!」」」」

 

「ごめんなさい!」

 

かなり危険な状況だがこんなジョークを飛ばされるぐらいは余裕ができた。でも余裕がないのはシャルルについてだ。今だに怪物の頭を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返すシャルル。絵面が最悪だ。

 

何がシャルルをあそこまで駆り立てるのか…後でタイガ先生に聞く必要があるな。それにしてもシャルルのあの動き、若干人間やめてるぞ。あんな無茶な動きをしてたら体を壊しかねない。いや体を壊しても戦いに行くはずだ。

 

「一か八か……やってみるしかない」

 

「おい一夏!ぼーっとするな!」

 

怪物の強烈な一撃を喰らい、壁へと叩きつけられる。更に3匹の怪物が俺の元へと追撃を仕掛けてくる。更に瓦礫が降り注いでくる。

 

「頼むから、みんな気づかないでくれよ……変身!!」

 

怪物と瓦礫を払いのけ、紫のクウガ=タイタンフォームへと変身する。てかみんな気づいてないよな?

 

「未確認生命体……2号」

「何故青ではないのですか!」

「ったく、来るの遅いんじゃない?」

「あれが…噂の」

 

よかった……バレてない。あとはシャルルの気を引ければ、

 

「うおおおっ!!!」

 

「なっ!?ぐううっ!!!」

 

いきなりパイルバンカーで攻撃してくるシャルル。すまんセシリア、ドラゴンフォームだと多分腹に穴開いてる。でも作戦第一段階は成功だ。あとはなんとかシャルルを気絶させて動きを止める。注意を引ける俺でしか出来ないことだ。

 

「こいシャルル!お前の全力、受け切ってやる!」

 

「殺してやる……殺してやる未確認生命体!!」

 

出来れば戦いたくなかった。でも、お前を絶対止めてやる!




シャルルが未確認生命体に憎悪を抱いているのを利用し、なんとか自分に意識を向けさせた一夏。
焦りから大技を仕掛けるも見事に防がれ、更には会心の一発を喰らいライフゲージがゼロになった桐也。

男性陣がかなりキツイ状況に陥っておる。さあどうする!?

次回は多分タッグマッチ最終回!もしかしたらもう少し続くかも!
一夏vsシャルルでお送りします。

ではsee you next game!


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第24話 救出 〜Pegasus〜

少し駆け足気味のタッグマッチ最終決戦!

そして平成ジェネレーションfinalのキャスト、凄いですね!オリキャスだらけでオラワクワクすっぞ!


6月29日(金)AM11時50分

 

「死ねぇ!!」

 

「死ぬかよ!!」

 

タイタンソードとリヴァイヴの拳が激突する。何度目の打ち合いか。タイタンソードはタイタンフォームの武器だけあってかなりの強度だ。未確認なんて一撃で倒せるぐらいに。そんな剣とやり合うのが目の前のシャルル。よく見るとリヴァイヴの装甲にヒビがはいっている。これ以上はシャルルが危ない。

 

「何やってんのよ!防戦一方じゃない!」

 

「んなこと言ったって、受け止めるので精一杯なんだよ!」

 

鈴からヤジが飛んでくるが気にしない。いやヤジを飛ばすな!と言う方が難しい。かれこれ10分はこれが続いている。たかが10分。されど10分。短いようで長いのが10分だ。

 

「動きを止めればいいのだな!」

 

「出来るのか!?」

 

「私を誰だと?私は仮面装者だ!」

『ジョーカー!』

 

そう言うとレーゲンをジョーカーへと変え右手をかざす。発動したのはAIC。見事にシャルルの動きを止めた。

 

「ぐっ!?ううううっ!!」

 

「なっ!?AICでも動きを止められないと言うのか!!」

 

「邪魔を……するなあっ!!」

 

しかし止まったのはほんの数秒。AICを無理矢理解除しラウラへと向かっていく。しかも瞬時加速。タイタンフォームじゃ追いつけない。

 

「くそっ!超変身!!」

 

タイタンフォームからドラゴンフォームへと姿を変えシャルルを追いかける。しかしドラゴンフォームでも追いつかない。いや追いつけなかった。

 

「がはっ!?」

 

「ラウラ!!よくも!」

 

「待ちなさい箒!!」

 

ラウラに強烈な一撃。普段のラウラなら難なく止められただろう。しかし怪物達との戦い以前にラウラは試合も行なっている。今現在暴走状態のシャルルを除いて一番疲労が溜まっているのはラウラだ。そこへシャルルの強烈な一撃。ジョーカーの変身が解け地面に倒れてしまう。

 

そこへ鈴の制止を聞かなかった箒が飛び込んでくる。それに続いて鈴とセシリア。しかしシャルルもすぐに対応する。取り出した銃を箒に弾がなくなるまで撃ち込むとすかさず別の武器へと切り替え立て続けに鈴とセシリアを攻撃する。

 

これは不味い。我を忘れて暴れていたシャルルだが、ここにきて本来のバトルスタイルに戻ってきている。本来の戦闘スタイルだと例えクウガでも重症は免れない。だったら、

 

「次は、お前だ!」

 

「そこだっ!!」

 

今までで一番足に力を入れたかもしれない。一気にシャルルの目の前まで接近して銃を奪い取る。しかしすぐにパイルバンカーで変身した場所まで吹っ飛ばされる。

 

再び捲き上る土煙。叩きつけられて全身が悲鳴をあげている。でも今は集中しろ。神経を研ぎ澄ませ。狙うのは一点だけだ。銃を構え狙いを定める。

 

よく見える。よく聞こえる。今までの頭痛は全然しない。自分の心臓の音も聞こえない。いやそれは言い過ぎた。しかしハッキリと聞こえ、見えてるのは……

 

「お前………泣いてるじゃないか」

 

シャルルの瞳から涙が流れる。彼女は途中から気づいたんだ。我を忘れて暴れたとしても、大切な友達の事を傷つけてしまったことに。そしてそれを止められなかった自分自身に対して怒り、悲しんでいる。

 

そして彼女の口が動く。『お願い、助けて』と。

 

「任せろ」

 

銃口から放たれる一撃。それは確かにリヴァイヴに命中し、シールドエネルギーを一撃でゼロにした。ISが解除され倒れこむシャルルを地面にぶつかる寸前で支えるラウラ。シャルルは気を失ってるみたいだな。

 

これが、緑のクウガ=ペガサスフォームの力か。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「………」

 

「ここまでか…拍子抜けだな九条桐也」

 

地面に倒れる桐也。姿はボロボロで今にでも死にそうな様子だった。黒い仮面ライダーはそのまま歩いて去っていこうとする。

しかし、それを阻む者が1人。

 

「よお、5年ぶりだなゲンム」

 

「花家タイガ……随分と成長したな」

 

「お陰様で、25だ」

 

タイガが地面に落ちていたガシャコンマグナムを構えて黒い仮面ライダー=ゲンムの前に立ちはだかった。

 

「あの時のように、鏡ヒイロと一緒に挑んだ方が良いんじゃないか?」

 

「ふん、お坊っちゃんの手は借りねぇ。テメェは俺がぶっ潰す」

 

そう言った瞬間、タイガの姿がゲンムの目の前にあった。少し距離があったにもかかわらず、タイガはそれを一瞬で詰めたのだ。そしてタイガは拳を既に振りかぶっている。

 

「らあっ!!」

 

「があっ!?……流石、5年経てば体にも馴染むか」

 

「言ったはずだぜ、テメェは俺がぶっ潰すってな……いや、今は先約がいたか」

 

不敵に笑うタイガ。それを不審に思ったゲンムは彼の視線の先、つまり自分の後ろを見る。そこには仮面ライダーレーザーに変身した桐也が拳を振りかぶっていた。

 

「おらあっ!!!」

 

「バカなっ!?ぐおっ!!」

 

フロントアーム付きのパンチがゲンムの顔面にクリーンヒットした。そのまま校舎へと叩きつけらるゲンム。正直驚いていた。あそこまでボロボロだった九条桐也に何故ここまでの力があるのか。そして、

 

「何故、レベル1がレベル3にここまでのダメージを」

 

シャカリキスポーツで見えていないが、ゲンムの満タンだったライフゲージは半分まで減っていた。レベル1にここまでの力は存在しないはず。しかしそれを可能とする存在を忘れていた。

 

「正解は、『火事場の馬鹿力』のエナジーアイテムだ。正直こんなエナジーアイテムがあるなんて思いもしなかったぜ」

 

「私も、想定外だ……」

 

ゲンムはそのまま映像が消えるように姿を消した。それを見届けた桐也は変身を解除すると気を失い地面に倒れてしまった。

 

「ったく、ガキが無茶しやがって」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「確かに『火事場の馬鹿力』のエナジーアイテムは体力がピンチな程力が増大するエナジーアイテムだ。しかしここまでの力はない。となると……やはり彼も5年前から成長している、というわけか」

 

1人屋上でさっきの出来事を考えるゲンム。そして変身を解除する。そこに立っていたのは………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

6月29日(金)PM07時20分

 

「謝って許してもらえるなんて思ってないけど……皆んな、本当にごめんなさい!!」

 

俺の部屋で皆んなでトランプをしていた最中ドアが開くと同時にシャルルの口から出たのが今のセリフだ。

 

「頭上げてくれシャルル。別に気にしてないよ」

 

「で、でも。僕のせいで専用機も使えなくなってるし、怪我もしてるし」

 

そうなのだ。シャルルやあの化け物との戦闘で俺たちの専用機はしばらくの間使えなくなってしまった。怪我もそれなりに。ぶっちゃけ俺はペガサスフォームに変身してから50秒が経過したあたりからすんごい頭痛で気を失っていた。周りの人間は最初に壁にぶつかった時に頭を打ったのだと見ている。

 

「あーー実を言うとね………ぶっちゃけアレ、戦う前から壊れてたの」

 

「え?」

 

「実は試合中に本音さんの銃弾が私達の専用機に致命的なダメージを与えていたらしく、どのみち修理が必要なそうで」

 

そう、実はのほほんさんは意外にもこんな結果を残している。凄いなのほほんさん。それをシャルル相手に出来なかったものか。

 

「怪我ならば問題ない。実戦ならば怪我はつきものだ」

 

「だからシャルルは気にすんなよ」

 

「一夏…皆んな……本当にごめん……それと、ありがとう。こんな僕を止めようとしてくれて」

 

「当たり前だ。私達は友達なのだからな」

「デュッチーとは、友達だよ〜」

「そうそう、友達だしね!」

「はい、友達ですわ!」

「そう、友達なのだ……つまり、友達の前で隠し事は、ダメだろ?」

 

「え、ええ?」

 

「悪いシャルル………皆んなに話したんだ……シャルルの事」

 

「そ、そうなんだ………じゃあ、一夏にも話してない事、今話すよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園、屋上。桐也とタイガ

 

「母親を殺された?未確認生命体に?」

 

「ああ、丁度2年ぐらい前だ。知らないか?フランスで謎の生物が目撃されたって」

 

「聞いたことはある。でもそれって、結局は嘘だったんじゃ」

 

「ああ、その時は嘘だった。それが真実に変わったのはそれから2日後だ。シャルと母親は街に出かけていた。その出先で未確認生命体に出くわした」

 

「ちょい待ち、さっきから気になってるけど、未確認生命体ってどっちかと言うと最近の部類じゃない?2年前からいるってなるとそれなりにニュースになると思うけど?」

 

「それなんだが、お前は実際には見てないのか?今日のアリーナで暴れまわった化け物を」

 

「木綿季さんから少しは見せてもらった……まさか、アレ?」

 

「ああ。今回のカラスじゃなかったけどな。話によると姿はクラゲらしい」

 

「クラゲの未確認生命体……」

 

「目の前で母親をクラゲの未確認生命体に殺されてから、あいつは未確認生命体を見ると今日みたいに暴走してしまうんだ」

 

「実際に見たわけじゃないけど凄かったらしいね。そんでそれをクウガが止めたと」

 

「あの場に未確認2号が出てくるとは思わなかったけどな。今回ばかりは感謝している」

 

「素直じゃないねぇ。『俺のシャルルを守ってくれて、ありがとぉ!!』ぐらい言えないわけ?」

 

「うるせぇ……それと、あいつの本当の名前は」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「シャルロット?それが本当の名前?」

 

「うん。お母さんがつけてくれた名前。シャルロット・デュノア。これが僕の、私の本当の名前」

 

「シャルロット……うん、よくあってる名前だよシャル」

 

「!……ありがとう、一夏!」

 

シャルル、いやシャルロットの過去を知り俺はより一層決意を固めた。未確認生命体が暴れて大事な誰かを失ってしまう。シャルロットのような人を1人でも減らすために、俺は戦わないと。

たとえ、シャルロットの憎悪の対象にクウガが含まれていても。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうだ解析は」

 

「未だ未知の部分が多いですね。謎の細胞です。もう少しサンプルが欲しいところです」

 

「無茶を言うな。あれ以上被害を出されてたまるものか。今回は残りがいきなり消滅したから事なきを得たが……それにしても謎の細胞か…山田先生ならなんて名前をつける?」

 

「そうですね……すばり、分かっていることを踏まえて、『生物に寄生して、その体を変異させる』特徴を持つこの細胞の名前は」

 

「名前は?」

 

「アマゾン細胞です!!」

 

「………君のセンスはよく分からないな」




ペガサスフォーム登場に、タイガ先生とゲンムの因縁、更にアマゾン細胞と駆け足で駆け抜けた!後悔はしていない、だが反省はしている。駆け足ですまない。

次回から臨海学校編!一学期の山場!そして強敵がぞろぞろと。勿論キリヤんと一夏もパワーアップ!

でも海の前には水着を買わないとね!

ではSee you Next game!


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第25話 水着 〜Shopping〜

今回はショッピング回!少しだけな!


7月1日(土)AM09時……まで残り30秒

 

「うわあああっ!?遅刻だあ!!」

 

廊下を凄まじいスピードで駆け抜ける。今まさに遅刻寸前。実はズボンで見えてないけど足だけクウガに変身して駆け抜けている。

例の如く本来土曜日は授業はないのだが、やはりゲーム特訓のツケがここにも回ってきた。全く夜更かしして寝坊した日に限って授業があるってなんなんだよ!

 

まだ予鈴しかなってないからギリセーフ!千冬姉は本鈴ギリギリで教室に駆け込んでくるから大丈夫なはず!

 

「到着!!」

 

「はい遅刻ー」

 

おかしい。まだ本鈴がなっていないのに鬼教師が仁王立ちで教室にいる。そしてその隣にはミニスカートのシャルル……じゃない、シャルロットが青ざめた顔で立っている。成る程遅刻仲間だな!

 

俺たちに正体を明かした次の日には女の子として正式にこの学校に入学したことになった。つまり昨日だ。めっちゃ最近すぎて未だにシャルルと呼んでしまう。

 

「1分でも遅刻は遅刻だ。織斑とデュノアは授業終了後教室の掃除をしておけ。2回目以降の遅刻は反省文提出。5回目以降の遅刻はプラス特別教室行きだ。他の者も分かったな!」

 

「「はい……」」

 

しかしシャルが遅刻とは珍しい。後で何があったか聞いてみよう。

 

「では出席を……おい、九条はどうした?」

 

「はいは〜い織斑せんせ〜。キリヤんは包帯を交換してから来るって言ってました〜」

 

のほほんさんは軽く言うがキリヤんの怪我の具合は正直俺たちよりも酷いものだった。タイガ先生も何故あれでその日に意識が戻るのか不思議だって言ってた。

 

「そうか。ならこれで全員だな。今日は通常授業だな。IS学園生とはいえお前達も立派な高校生だ。赤点など取るなよ」

 

「ハハハッ、どうして俺を見るんですか」

 

「お前が一番バカだからだ」

 

ナチュラルにバカって言ったよこの人。しかし事実なので否定できない。それと最近知ったのだが去年までは中間テストは無かったらしい。それが今年になってから中間テストを追加したと。私聞いてない!!テストを追加したって喜ぶ人は少ないんだぞ!

 

「それと、来週5日から始まる校外特別実習期間だが、忘れ物するなよ。3日間とはいえ学園を離れるんだ。簡単に取りに帰れると思うなよ。あと自由時間は羽目を外しすぎないように」

 

話変わって来週の校外実習、つまり海ではしゃぐ……もとい臨海学校が始まる。初日は丸々自由時間。勿論海だからもう皆んなテンション上がりまくり。ぶっちゃけタッグマッチより盛り上がる始末。

 

因みに俺は水着を買うのがめんど臭い。適当に短パンとアロハシャツ……だとキリヤんとキャラが被るな。しかしまあめんど臭いなんて言ったら鈴とセシリアから色々言われた。面倒だが午後から見に行くか。

 

 

7月1日(土)AM11時50分

 

「自分の遅刻は合法の筈なんだけど?」

 

授業が終わりガランとした教室に俺とシャルとキリヤんは掃除をしていた。包帯姿が痛々しいキリヤんだが文句を言いつつ掃除をするあたり、根は真面目なのだ。

 

「遅刻は遅刻なんだとさ。キリヤんは少し休んでてもいいから」

 

「そうだよ。桐也は怪我人なんだから」

 

「なーんか、そういう特別扱いもむず痒いんだよなぁ。まあ掃除ぐらいなら手伝うけど」

 

「そっか。それにしても楽しいな掃除は。特に普段使ってる教室だと尚更」

 

「そう?一夏って変わってるね」

 

「変人名人だな」

 

キリヤんは兎も角シャルあたりなら同意してくれると思ったのに!

 

「よっこいしょ……おおおっ!?」

 

「っと!無理すんなよシャルちゃん。机運びは名人がするから」

 

「俺かよ!まあやるけどさ!」

 

ていうかそれ岸里さんの机だろ。教科書全部置きっ放しの。本人曰く『机!教科書!ベストマッチ!フルアーマーデスク!』とかなんとか。因みに俺の机は空っぽ。必要な分だけ部屋から持って来るからだ。キリヤんは前に見たときは漫画とゲーム機とノートだけ入っていた。

 

それはそうと、キリヤん何気にシャルのこと『シャルちゃん』なんて呼んだな。

 

「あ、そうだ名人。お前水着持ってる?」

 

「いや、今日買いに行こうかなって」

 

「なら丁度いいな。シャルちゃんと一緒に買いに行きなよ」

 

「「え!?」」

 

 

7月1日(土)PM00時30分

 

「ったく、なんで俺が運転手なんか」

 

「すいませんタイガ先生」

「ありがとうタイガ先生」

 

現在タイガ先生の運転で疾走中の俺とシャル。どうもタイガ先生も水着がないとキリヤんにボヤいた為、キリヤんが『丁度いいから名人と買いに行きなよ』なんて言ったらしい。

 

「織斑は兎も角、シャルも水着持ってないのか?」

 

「うん。臨海学校は休むつもりだったから」

 

確かに、あのままずっと男のフリをしていたら臨海学校は避けるべきイベントの筈だ。しかし折角の学校のイベントを楽しめないのは良くない。そう考えると早めにバレたのはある意味ラッキーかもしれない。

 

「ほら、着いたぞ。俺は適当に歩いてるから、2人でなんか買ってこい」

 

「わざわざありがとうございました」

「ありがとうね先生。そうだ!先生の水着も選んどくね」

 

「余計なお世話だ。テメェのだけ買ってこい」

 

そう言って財布から福沢諭吉を2枚取り出すタイガ先生。先生、やっていいことかどうかは置いといてありがとうございます!これでゲーム買ってきますね!

 

「何嬉しそうにしてる。これはシャルの小遣いだ」

 

「………」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「もっきゅもっきゅ」

 

一夏とシャルロットがショッピングモールに入って行くのを陰から見る4人の影。箒、セシリア、鈴、ラウラだ。

そしてその4人を後ろから見守るのは桐也。心の中では『何やってんのあんたら』などとボヤいている。

 

「何やってんのあんたら」

 

いや、声に出ていた。

 

「一夏め、皆んなをを誘わずシャルロットと2人きりで買い物に行くとは!」

「私達も一緒に買い物したかったですわ!」

「なんだって誘わないのよあのバカ!」

「しかし何故花家先生が送迎していたのだろうか」

 

(あ、これ自分がそそのかしたって言ったら殺されるやつだ)

 

静かに心の中でこれは秘密にしておこうと決意したキリヤんであった。そして始まる。尾行と言う名のミッションが!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ショッピングモールの水着売り場。そこで一夏と別れて今は1人で水着を見て回っている。どうせなら一夏に選んでもらうのもいいかも。タイガ先生は過保護すぎるから『そんな布面積の小さいやつ付けて大人ぶんな。これにしとけ』とか言ってきそう。

 

(でも、やっぱりタイガ先生に選んで欲しい気持ちもあるかも)

 

そう思いながら水着を見ていると何やら騒がしくなってきた。誰かが言い争ってる?

誰だろうと声のする方に行って見ると、

 

「片付けぐらい自分でやれよ。なんでも人任せだと人間バカになるぞ」

 

「ふうん、そういうこと言うの。まったく自分の立場を分かってないみたいね」

 

一夏と女性が言い争ってる……って一夏何してるの!?この世の中女尊男卑の社会になりつつあるのにバカとか言っちゃって!下手したら問答無用で有罪確定だよ!

 

「こら!何をしてるのかね!」

 

ほら警備員さん来ちゃったよ!……って、警備員さんも女性ばっか!男の人は1人って心許ない。大丈夫かな?いざとなったら一夏を連れて逃げないと。

 

「こらこらダメだよ名……うおっほん!!男の子がオバサンにちょっかい出しちゃ」

 

「お、おばさん!?」

 

「こほん。貴女も少しは落ち着いてください。いい歳して子供に突っかかるなんてみっともないですよ」

「品がありませんわね」

「これだから女尊男卑に染まってる年増はめんどくさいのよ」

「見た目年齢より老けて見えるぞ」

 

「な、なんなのよこの警備員!もういいわよ!」

 

警備員さんたちの説得?に応じたのか女性は去って行く。てか今のは下手したら警備員さんたちも危なかったんじゃ?

 

「いや〜すみませんねえ。では引き続きお買い物をお楽しみください」

 

そう言うと一斉に同じ方向に走り去っていく警備員さんたち。なんだったのだろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いやー危なかったな。エナジーアイテム『モノマネ』がこんな時に役立つとは」

 

「あんた思いっきり名人って言おうとしたでしょ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さっきは災難だったね」

 

「全くだよ。どうしてこうもトラブルに巻き込まれるのか」

 

水着を選び終わりタイガ先生を待つ俺とシャル。さっきは変な女に絡まれるし大変だった。でも警備員さんも話のわかる人たちで助かったぜ。

 

「あ、あれタイガ先生じゃない?隣にいるのって……織斑先生!?」

 

「え"え"!?」

 

思わず変な声を出してしまった。遠目からもわかる白衣姿のタイガ先生の隣にはビシッとサマースーツを着こなす千冬姉がいた。何やら買い物袋を大量に持たされているタイガ先生に満面の笑みの千冬姉。なんとも奇妙な光景だ。

 

「おう、お前ら。教室の掃除はご苦労だったな」

 

「買い物は終わったのか?」

 

「僕は買いたいものは買ったけど。一夏は?」

 

「俺も欲しいものはあらかた………いや、まだ買ってないのがあった。悪いけど先に帰っててくれシャル」

 

「そう?分かったよ。先に帰ってるね。それじゃあタイガ先生送迎よろしく!」

 

「よろしくお願いします花家先生」

 

「ったく、ほら帰りの電車賃だ」

 

わざわざ電車賃をくれるタイガ先生。こんな兄ちゃん欲しかったなぁ。千冬姉は小遣いケチるし。

 

その後3人を見送った後とある店に入った。目当てのものは……あったあった。値段も丁度いいし、喜んでくれるよな箒。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月4日(火)PM11時00分

 

幻夢コーポレーション・社長室

 

「遂に完成した!ギリギリチャンバラ!」

 

「やっとですか。随分と時間がかかりましたね」

 

「レーザーは特殊だからね。それなりに試行錯誤したのさ。さああとはうまく乗りこなしてくれよ」

 

 

同時刻、グロンギのアジト

 

「次は俺が出る」

 

「……本気か?お前の出番はもっとあとだぞ?」

 

「勘違いするな。ゲゲルをするのではない。クウガと仮面ライダーを倒しに行く」

 

「ハハッ、活気盛んだなガドル」

 

「お前も呑気に過ごしていると足元を掬われるぞダグバ」

 

「そうだな。んじゃ俺もついてくよ。ハハッ心が躍るなぁ」

 

「全く……何故『ゴ』の奴らは問題児ばかりなのだ」

 

 

同時刻、IS学園・桐也と本音の部屋

 

「明日は海だねぇキリヤん!」

 

「楽しそうだな本音。自分は浜辺で優雅に過ごさせてもらうよ」

(それはそうと……明日は何も出てこないよな。バンバンシューティングもジェットコンバットもエネルギー充填が完璧じゃないって木綿季さん言ってたし。変身はできて一回だけか)

 

「キリヤん?どうしたの?」

 

「え?ああ、いやなんでもないよ」

 

「ねえキリヤん………無茶だけはしないでね」

 

「………分かってるよ。本音に心配はかけない」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「よお箒。こんな時間まで練習か?」

 

「なんだ一夏、お前も起きていたのか」

 

シャルが女だと分かってから1人部屋となった俺は時間を潰すために寮の休憩室でまったりしていた。そこに現れたのは箒だった。剣道の自主練をしていたのかうっすらと汗をかいている。

 

「む、なんだ一夏。そうジロジロと見るな」

 

「え、ああ悪い。なんだかお前と2人きりって久し振りだなって」

 

「それもそうだな。まあここ最近も色々あって語らう時間などほとんどなかったからな」

 

それもそうだ。最近は無人機に謎のカラスの怪物、シャルが暴走したり、キリヤんとラウラのコンビにボコボコにされたり。未確認との戦いも激しくなっていくし。まともに休める時間がなかった。

 

「正直疲れが溜まってるよ」

 

「だろうな。顔を見れば分かる。最近よく眠れてないんじゃないか?」

 

「え、そんなに顔に出てる?」

 

「どれだけお前の顔を見てきたと思ってる。それぐらい分かる」

 

なるべく疲れは顔に出さないようにしたつもりだったが、まさかバレてたとは。いや〜流石箒。中々の観察眼だ。

 

「その……なんだ。大変なら、私達を頼れ」

 

「え?」

 

「お前の重荷を全て背負えるわけではない。だが支えることぐらいなら出来る。だから頼れ。誰にでもそれは許されることなんだ」

 

そう言われた瞬間、俺は声に出そうとした。

 

『実は、俺がクウガ、未確認2号なんだ』と。

 

でもそれが箒に聞こえることはなかった。怖かった。それを伝えたら拒絶されるんじゃないかって。また箒と離れ離れになるんじゃないかって。それが怖かった。

 

「おう、いざって時には頼らせてもらうぜ!」

 

ダメだ。箒やみんなに頼っちゃ、みんなを危険にさらしてしまう。

 

「ああ、いつでも頼ってこい!」

 

ダメだ。そんなことをそんな笑顔で言われたら……

 

「んじゃ寝るな!箒も早めに寝ろよ。明日は海なんだからな」

 

「ああ、おやすみ一夏」

 

休憩室を後にし部屋に戻り、俺はベッドに倒れこんだ。そこから後はよく覚えていないが、朝起きると枕が少し濡れていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

やがて戦いが始まる。

 

兎が仕掛ける陰謀に、白き翼と紅き翼が海を駆ける。

 

そして黒き強戦士に、赤き戦士と最速の侍が挑む。

 

波乱の臨海学校が始まる。




みんなに頼れば戦いに巻き込んでしまうと考えてしまう。それが怖くて1人で抱え込みがちになり始める一夏。
表向きは飄々としているが、裏では色々心配する桐也。

そして戦いは前半戦の山場!いきなり『ゴ』の殴り込み。ギリギリチャンバラの完成。そしてまさかの箒と鈴の対決?

次回はこんな感じで、どうすっか?

ではSee you Next game!


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第26話 波乱 〜Ocean〜

俺「ほーん、ISのアプリでるんか〜」
サイト「新代表候補生続々」
俺「へえー新しい代表候補生でるんだー」
サイト「布仏本音」
俺「ふあっ!?」

のほほんさんが代表候補生という衝撃の事実が!しかも新キャラ扱い!?これはアレか。実は新キャラののほほんさんはのほほんさんの別人格でそれがなんらかの力で実体化した、いわゆるノホホンサン!
つまり永夢とエムみたいな?

とまあ興奮してる作者です。事前登録が一定数いくと好きなキャラのカードがもらえるんだって。勿論本音をもらいますが。

まあ関係ない話はここまで、臨海学校編スタートです。


7月5日(水)AM09時50分

 

「海っ!海見えたよ!」

 

トンネルを抜けたバスの中で女子が声を上げる。

臨海学校初日。天候にも恵まれ絶好の海日和。泳ぐには気持ち良さそうだ。

 

「やっぱり海を見るとテンション上がるな」

 

「うむそうだな。ところで一夏、ゴ◯ラはこの海にもいるだろうか?」

 

「多分◯ジラ出てきたらISでも勝てないから考えない方がいいぞ」

 

バスで隣の席になったのはラウラだった。俺としてはクジで決めたことだし、別に誰が隣でもいいのだが、

 

「しかしクジョーは後から来るとは。この景色を共に見ることができずに残念だ」

 

というのもキリヤんはなんでも木綿季先生と一緒に少し遅れて来るらしい。キリヤんはイベントには敏感だから寝坊じゃないと思うけど、どうしたのだろうか。

 

「シャルはキリヤんについて何か聞いてるか?」

 

「うふふっ……っ、ああごめん!なんだっけ?」

 

後ろの席のシャルはシャルで楽しそうだ。なんでもタイガ先生からブレスレットをプレゼントされたらしい。それからずっとあの調子だ。逆に怖いぞ。

 

「シャルロットさんったら、まだご機嫌ですわね」

 

通路の向こう側、セシリアが呆れ顔で言ってくる。その隣ののほほんさんは既に寝ている。てかバス乗った瞬間には寝ていた。

 

「うん。そうだね〜ごめんね〜。えへへ……」

 

「やれやれ、当分はこの調子だな」

 

シャルの隣の箒も疲れ顔で言ってくる。隣の人間がずっとニヤニヤしていたら疲れてくるだろう。それに昨日は夜遅くまで練習していたみたいだし。

 

「大丈夫か箒?顔色悪いけど。酔い止め飲むか?」

 

「いや大丈夫だ。心配かけてすまない」

 

心配ないなんて言っているが、無理をしないかちゃんと見ておかなくては。

 

「そろそろ目的地に着くぞ。全員席に座っておけ」

 

千冬姉の言葉で全員がさっと座る。流石担任だ。海に目をキラキラさせている山田先生とは違う。

言葉通りほどなくしてバスは目的地である旅館前に到着。4台のバスからIS学園1年生がわらわらと出てくる。てかバス4台で収まるんだな。

 

「それでは、ここが今日から3日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の皆さんの仕事を増やさないように。挨拶!」

 

『よろしくお願いします!』

 

千冬姉の言葉の後、全員で挨拶する。高ーい声の中に俺のとあるキャラの声マネも入れてみる。効果はないようだ。てか誰も気づいてない?結構自信あるんだけど今の声マネ。神になったゲームクリエイターのマネなんだけど。ブゥン!!

 

「はい、こちらこそ。今年の1年生も元気があっていいですね」

 

歳はタイガ先生と同じぐらいだろうか。しっかりとした大人の雰囲気を漂わせている。どこぞのゲーム好きの先生とは違う。

 

「ちょっと織斑くん!今私に対して変なこと考えたでしょ!」

 

「あれ、木綿季先生。キリヤんも。もう来たのか」

 

「結構飛ばしてきたからな。もう肩バッキバキ。もう少し痩せた方がいいんじゃない?」

 

「そう?これでもスタイルには自信あるんだけど」

 

など言っている木綿季先生とキリヤん。これでも生徒と先生の関係のはずなんだけど……おかしいな、俺には普通の先輩後輩に見える。

 

「あら、こちらが噂の…?」

 

「ええ。今年は男子が3人いるせいで浴槽分けが難しくなってしまい申し訳ありません」

 

「いえいえそんな。それにいい男の子じゃありませんか。さっきの男の先生も中々のイケメンですし。このお二人もしっかりしてそな感じを受けますよ」

 

「感じがするだけですよ。2人とも挨拶しろ」

 

「あ、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「九条桐也です。よろしくお願いします」

 

「「九条(くん)がまともに挨拶した!?」」

 

「あんたら先生は自分をなんだと思ってんの……」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。一条桜子です」

 

そういって女将さんは丁寧なお辞儀をする。その動きは気品のあるもので、ここにいるとうてい先生とは思えない先生よりも大人っぽく、耐性のない俺としては少し緊張する。

 

「それでは皆さん、お部屋の方へどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられますので」

 

女子一同、はーいと返事をするとすぐに旅館の中へと歩いていく。とりあえず俺も荷物を置いてこよう。

 

「そういえば俺たちの部屋ってどこだ?」

 

「さあな。名人は廊下で寝るんじゃねえの?」

 

「あー、床冷た〜い、ってバカ!俺の扱い雑じゃね!?」

 

とまあノリツッコミをしたわけだが、普通に考えれば男子が3人なのだ。俺にキリヤんにタイガ先生。これが普通だろう。しかしそれなら普通に知らせるはずだろうから多分違うんだろう。

 

「織斑、九条、お前らの部屋はこっちだ」

 

「えーっと、織斑先生。俺らの部屋ってどこなんですか?」

 

「もう少し待て…………ここだ」

 

「はあ?」

「いやここって……」

 

ドアに貼られた紙には『教員室』と書かれている。つまり先生の部屋。

 

「最初は花家先生と3人部屋といえ話だったのだが、それだと就寝時間を無視した女子が押しかけてくると思ってな。このような形になった」

 

「確かに……想像はつくけど。じゃあタイガ先生は?」

 

「花家先生は1人部屋だ。あの人なら間違いを犯すことはないだろう」

 

タイガ先生なら安心……なのか?どっかのフランス女子が押しかけそうな予感が……大丈夫か。

 

「さて、今日1日は自由時間だ。荷物も置いたし、好きにしろ。羽目を外しすぎんようにな」

 

千冬姉の注意に返事をして俺たちは部屋を出る。荷物から取り出した軽めのリュックサックには、水着、タオル、替えのパンツ、双眼鏡を入れてある。双眼鏡は目の保養のためだ。勿論キリヤんも持っている。

 

さあ、いざ海へ!

 

 

直行できると思っていた時期が俺にもありましたハイ。

 

「「「…………」」」

 

更衣室のある別館へ向かう途中に箒とばったり出くわした。それはまあいいんだが……問題は目の前の謎の光景。

想像できるだろうか?地面からウサミミが生えている光景を。しかも『引っ張ってください』の張り紙付き。

 

「なあ、これって「知らん。私は関係ない」……」

 

言い切る前に即否定。間違いくあの人だ。

箒の実の姉。篠ノ之束。その人に違いない。

 

「えーと……引っ張るぞ?」

 

「やめとけ名人。第一そういうのは引っ張らなくても『もー、なんで引っ張らないのよー』とか言いながら出てくるタイプだ。つまり相手したくない」

 

「……だよな」

 

俺は掴んだウサミミを離し、別館へと着替えに走る。その後に何かが地面に落ちる音がしたが無視だ。俺には関係ない。

 

 

更衣室から浜辺に出てすぐ、ちょうど隣の女子更衣室から出てきた女子数人と出会う。みんな可愛い水着を身につけていて、その露出度に照れてしまう。いいよな、水着って。

 

「あ、織斑君に九条君!」

「え、嘘っ!私の水着変じゃないよね!?大丈夫だよね!?」

「わ〜織斑君鍛えてるね〜。九条君は……いつもと変わらないね」

 

というのもキリヤんはいつものアロハシャツだ。放課後とか休みの日とかいっつもこれだから正直代わり映えしないんだろう。

 

「まあ、そんなに泳ぐつもりはないしな。自分は優雅に日向ぼっこでもしてるさ」

 

「真っ黒になっても知らないぞ?」

 

シートを引いてパラソルを立てすぐに寝転がるキリヤん。サングラスで寝てるのか起きてるのかわからない。

 

「まあ荷物ぐらいなら見といてやるよ」

 

「そうか、まあよろしくな」

 

とりあえず準備運動から始めるか。中学は海に来てないし、足がつって溺れたらカッコ悪いしシャレにならない。みんなも準備運動しているのだろうか。はい腕伸ばしてー脚伸ばしてー背筋伸ばしてー、

 

「い、ち、か〜〜〜!」

 

「ん?って、のわっ!!」

 

「あんた基本は忘れないのね〜えらいえらい」

 

いきなり俺に飛び乗って来たのは鈴だった。そういえば小学の時、海に来た時に同じように飛び乗って来た。お前は猫か。

そこからしゅるりと駆け上がり肩車の体勢になる。お前は猿か。いや猿は言い過ぎか。

 

「おー高いわねー。遠くまで見えていいわ。ちょっとした監視塔ね」

 

「監視塔って……嬉しくねー」

 

「いいじゃん。人の役に立つわよ」

 

「誰が乗るんだよ」

 

「んー……あたし?」

 

何を言っているんだまったく。このまま海に飛び込んでやろうか。いやそれは危ないな。

 

「お、おい!何をしている!」

 

と、やって来たのは箒。イルカの浮き輪を持っている。そうそう、箒ってアレが好きなんだよな。そんでアレを空気入れを使わずに自分の口で空気を入れるんだから……普通に凄くね?

 

「何って……肩車。あるいは移動監視塔ごっこ」

 

「ごっこ!?と、とにかく!そこから降りろ!」

 

「ヤダ」

 

「「子供か……」」

 

そうこうしているうちに騒ぎを聞きつけた女子がこちらにやってこようとしている。その数ざっと10人。あれだけの女子を肩車するのはちょっと……。

 

「り、鈴。降りろ、誤解が広まる」

 

「まーったく、しょうがないわね」

 

俺から飛び降りる鈴。手のひらで着地して、そのまま前方宙返りで起立。みんなは危ないからしちゃダメだぞ。

 

「あ、そーだ箒。あんた泳ぎ得意って言ってたでしょ。なんなら向こうのブイまで競争しない?」

 

「む、いいだろう。売られた勝負は買うのが私だ。受けて立とう!」

 

そして俺を置いて泳ぎに行く2人。なんだよ、やっぱ仲良いじゃん。

 

「あ、一夏。ここにいたんだ」

 

ふと声に呼ばれて振り向くと、そこにはシャルと……バスタオルのお化け?なんなんだこいつは……?

 

「ほら、出てきなよ。大丈夫だから」

 

「そ、そうか?本当に大丈夫なんだろうな!」

 

この声は……ラウラか。いつもの自信に満ちたラウラにしては弱々しい声だな。

 

「大丈夫だよ。それにラウラの部隊の人たちが『学校指定の水着もいいですが、せっかくの海ですので』って送ってくれたんでしょ?ならちゃんとみんなに見せてあげないと部隊の人たち泣いちゃうよ?」

 

「わ、我が部隊はその程度で泣くことはない……と思うが……ええい、脱げばいいんだろう!脱げば!」

 

バババッとバスタオルをアーマーパージみたいに弾き飛ばしたラウラ。そこには水着姿のラウラが立っていた。

 

「おかしなところなんてないよね一夏?みんなもそう思うでしょ?」

 

「そうだな。似合ってるぞ」←俺

「そういう水着も……イイね!」←キリヤん

「きみ、かわいいね〜〜」←のほほんさん

「可愛らしい。人形さんみたいですわ!」←セシリア

「「似合ってるよ!!」」←泳いでいる箒と鈴

『ちょーイイね!ベストマッチ!サイコー!』←他多数

 

「………」

 

今のラウラの表情は嬉しそうな、恥ずかしそうな、顔がにやけながらも涙目。なんとも曖昧な表情だ。

 

「あ、織斑くーん!」

「ビーチバレーしよー!」

「わ〜、オリムーと対戦〜。いえ〜い」

 

次に声をかけてきたのはのほほんさんたちビーチバレー組だ。そういえばバスに乗る前に約束してたな。危うく忘れるとこだった。

 

「それっ、織斑君にパース」

 

「へへっ、俺と勝負するってんなら、それなりの覚悟をしてもらおうか!行くぞシャル、ラウラ!」

「任せて一夏!」

「よし、やるからには勝つぞ一夏」

 

既にコートは完成している。サーブは向こうから。サーブを打とうとする櫛灘さんの目が光る。

 

「ふふっ!7月のサマーデビルと呼ばれた私の実力……受けてみよ!」

 

いきなりのジャンピングサーブ!しかもスピードといい角度といいビーチボールの域を超えている!

 

「任せて!」

 

シャルがすかさずレシーブ。そしてラウラがトスを上げる。つまり決めてはこの俺!

 

「いくぜ!スーパーウルトラデンジャ「はいブロックーー」もがっ!?」

 

俺のアタックを止めただと!?しかもブロックされたボールが顔に当たって痛い。ほら空気を入れるところ。あそこって凄く痛い。

 

「悪いな名人。トロトロした動きが気になってよ」

 

「キリヤん……イイぜ、ノッてやるよ!!」

 

これは宣戦布告と受け取っていいだろう。

そして始まるキリヤんとたまたま近くにいたセシリアを巻き込んだ大乱戦………という名のビーチバレー。

全力のアタックとブロックを繰り返し、やがてそこは戦場と化した。

 

決着がつかないその戦いを止めたのは、まさかの千冬姉、山田先生、タイガ先生、木綿季先生の大人気ない本気のビーチバレーだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぷはあっ……あたしの勝ちね!」

 

「くっ、あと少しだったのに」

 

「残念でしたー。それはそうと随分遠かったわね」

 

「そうだな。少ししたら戻るか」

 

「そうね……でも箒。その前にちょっといいかしら?」

 

「どうした鈴?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「単刀直入に言う。この臨海学校であたし、一夏に告白する」

 

「………は?」




第一の波乱。まさかの鈴が一夏に告白すると箒に宣言!

次回は第二の波乱。あの天災兎と原作とは違うガドルが現れる!

ではSee you Next game!


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第27話 紅椿 〜Genius〜

第2の波乱!


7月5日(水)PM07時30分

 

時間はあっという間に過ぎていき、現在大広間3つを繋げた大宴会場にて夕食タイムに浸っていた。

 

「うん、美味い!昼も夜も刺身がでるなんて豪勢な旅館だなぁ」

 

「そうだね。ほんと豪勢だよ」

 

そう言って頷いたのは俺の右側に座るシャル。今は全員がそうなのだが、シャルの姿は浴衣姿だ。外国の人に浴衣を着せてみると結構似合うというのは本当らしい。

ちなみにメニューは刺身と小鍋、それに山菜の和え物が二種類。それから赤だし味噌汁とお新香。ははっ、ザ・和食!不味いわけがなかった。

 

「あー、美味い。しかもこのわさび、本わさじゃないか。高校生のメシで本わさを出してくるとは……恐ろしい」

 

「ほんわさ?」

 

「ああ、シャルは知らないのか。本物のわさびをおろしたやつを本わさって言うんだ」

 

「じゃあ、学園の刺身定食のわさびって……偽わさ!?」

 

「いやいやなんだよ偽わさって。あれは練りわさ。着色したり、合成したりして見た目と色を似せてあるやつ」

 

「ふぅん。じゃあこれが本当のわさびなんだ?タイガ先生知ってた?」

 

俺の左側に座るタイガ先生に聞くシャル。因みにタイガ先生の隣は木綿季先生、山田先生、織斑先生だ。

 

「当然だろ。まあ大概のやつはその違いが分からずに食ってる奴がほとんどだ」

 

「そうなんだ。はむ」

 

「「!!??」」

 

え?今この子わさびの山食べなかった?タイガ先生も目見開いてるよ!?

 

「っ〜〜!?」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ら、らいひょうふ……」

 

「バカが」

 

鼻声で返事しながらも笑顔で応えようとするシャル。まあ涙目に崩されてイマイチ決まってないけどな。

 

「風味を味わえて美味いだろ」

 

「ひょ……ひょうでひゅね……」

 

意地悪なタイガ先生は悪戯な笑みを浮かべてシャルに質問する。これは後で痴話喧嘩になりそうだ。

 

それはそうと、箒とキリヤんはどこだろうか。セシリアに鈴、ラウラは隣のテーブル席に移動して食べている。というのも座敷だから食事中はみんな正座しているのだ。多国籍なIS学園というのを考慮して、正座が出来ない生徒は隣の部屋のテーブル席を利用している。

 

セシリアはキツそうだけど、ラウラは難なく正座をし続けそうだ。鈴はメンドくさいの一言ですませる奴だ。

 

(お、いたいた。隣の空席は……キリヤんか)

 

隣のテーブル席にキリヤんは行っていない。ならあそこがキリヤんの席だろう。食べるの早いな。

箒はというと、流石剣道道場の娘と言うべきか、綺麗な正座で食事をしている。浴衣姿も様になっていてまさに大和撫子だ。

 

「あ、織斑君。やっほー」

 

ふと隣の女子が俺に気づいて手を振ってくる。すると箒もこちらを一瞬見て、すぐに目をそらす。ちょっと酷くない?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(い、いかん!今一夏を直視できる状況ではない!)

 

1人心の中で葛藤する箒。と言うのも遡ること数時間前。鈴との出来事が原因だった。

 

『一夏に告白するから』

 

『………は?』

 

『もうそろそろ、決着つけようよ。私はさっさと決着をつけたい』

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ。いきなりそんなこと言って』

 

『あんたはどうなのよ。一夏のこと好きなんでしょ』

 

『そ、それは……』

 

『ふーん……自信ないんだ。フラれるのが怖いの?』

 

『ば、そんなわけあるか!告白ぐらいやってやるさ!』

 

『ハハッ。そうよ、箒はそうでなくっちゃ。じゃあいっそのこと同時にコクッちゃう?』

 

『ど、同時だと?』

 

『相手が知らない間に告白してオッケーもらってたら悔しいじゃない?なら同時に告白してどちらか選んでもらった方があたしは気持ちの整理もつく』

 

『そ、それもそうか。つまり恨みっこなしだな』

 

『そうよ。ま、怖かったら逃げていいけどね』

 

『ふっ、それはコッチの台詞だ』

 

など勢いで約束してしまったのだ。よくよく考えてみれば同時に告白してどちらか選ばせるのも酷い話だ。優しすぎる一夏はきっと選べないかもしれない。困らせるだろう。

 

(しかし、いずれは告白するつもりだったのだ。それが早まっただけのこと……そういえばいつ告白するのか聞いてなかった)

 

言っていたような気がするが思い出せない。仕方なく箒は食事に集中することにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………」

 

浴衣からいつものアロハシャツに着替えて桐也は浜辺を歩いていた。その歩く先には2人の青年。1人は笑顔でコッチに手招きをし、もう1人は不機嫌面で桐也を見る。

 

「お前が仮面ライダーか」

 

「そういうおたくらは未確認生命体だろ?ちょくちょく視界に入ってたんだわ」

 

「なら声ぐらいかけてくれよ。俺たちと遊ぼうぜ?」

 

「そんな殺人ゲーム楽しめるかよ」

 

ゲーマドライバーを装着する桐也。それを見て1人が呟く。

 

「そうだな、ソレ欲しいな」

 

「幻夢コーポレーションに行けばもらえるんじゃない?もっとも行かせないけど」

 

「待てって。俺は仮面ライダーとは戦わない。戦うのは隣のガドルだ」

 

ガドルと呼ばれた男はその姿をカブトムシの未確認生命体に変える。それを見た桐也は本能的に後ずさりしてしまう。コイツはヤバイ。戦ったら負ける、いや殺されると。

 

「俺は未確認生命体という名ではない。ゴ・ガドル・バだ。そしてコイツが」

 

「名乗りが遅れたな。ゴ・ダグバ・バだ。よろしく」

 

「生憎あんたらと握手することは一生ない」

 

「そうか、それは残念だ。よし帰るぞガドル。今日のとこはな」

 

ダグバはその場を離れていく。ガドルもそれについて行く。桐也はただ助かったという安心感に包まれていた。流石にアレに戦いを挑むほどバカじゃない。戦闘になったら、まずは他の奴らを逃すとこからしないと。

 

桐也は緊張で汗まみれになった体を洗うべく温泉へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月6日(木)AM09時05分

 

合宿2日目。今日は午前中から夜まで丸一日使ってISの各装備試験運用とデータ取りに追われる。特に専用機持ちは大量の装備を持っているのだからまあ大変。

 

「ようやく集まったか。おい遅刻者」

 

「は、はい!」

 

千冬姉に呼ばれて身をすくませたのは、意外にもラウラだった。珍しいなあいつが寝坊なんて。

そして今、千冬姉にISの『コア・ネットワーク』について説明しろと問われる。まあそこはラウラ。スラスラと説明できる。俺はあと40年勉強したら覚えられると思う。

 

「流石に優秀だな。遅刻はこれで許してやろう。さて、それでは各班ごとに振り分けられた装備の試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ」

 

はーい、と一同が返事する。因みにISのないキリヤんは先生側の手伝いだ。それにしても、昨日部屋に戻ってから一言も喋らずに布団に入ったけど……遊びに来てたみんなが心配していた。今日も今日とてあたりをキョロキョロと。

 

「ああ、篠ノ之。お前はこっちだ」

 

「?はい」

 

打鉄用の装備を運んでいた箒は千冬姉に呼ばれてそっちに向かう。

 

「お前には今日から専用「ちーーーーーちゃーーーーーん!!!」

 

ものすごい砂煙を上げながら人影が走ってくる。無茶苦茶早いな。もしアレが黒くて虫でカサカサ動く感じだったら専用機持ちが一斉に攻撃を開始しただろう。

攻撃しないのは勿論それが虫ではなく人であり、なおかつその人が、

 

「束……」

 

だということ。篠ノ之束。多分昨日のウサミミとか全部この人の仕業ナンダローナー。ウンウンゼンゼンワカラナカッタヨ。

 

「やあやあ!会いたかったよちーちゃん!さあキスしよう!愛を確かめぶへっ!?」

 

「黙れ束」

 

「相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ!」

 

飛びかかる束さんに千冬姉のアイアンクローが炸裂。効果はいまひとつ、いや逆効果だな。しかも簡単にそれを抜け出すあの人もおかしい。

 

「やあ!」

 

「どうも……」

 

「アハハ!久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかな?大っきくなったね!おっぱい!」

 

「殴りますよ?」

 

「いやーん、暴力はんたーい」

 

スキップしながら箒の攻撃をかわす束さん。あたりの女子一同は驚いている。キリヤんにいたっては物凄く嫌そうな顔をしている。なんか意外だな。束さんも美人だからキリヤんは興味あると思ったんだけど。

 

「おい束。自己紹介ぐらいしろ。生徒が困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。天才の束さんだよー、はろー。はい終わり」

 

雑な挨拶だがこれが素だから何も言えない。あの人は俺と箒、千冬姉以外にはこんな雑な態度だ。いやこれは千冬姉がいるからだ。多分千冬姉がいなかったら顔すら向けないだろう。

 

「それで、何故ここに」

 

「あれ?ちーちゃんから聞いてない?ちーちゃん言ってない?」

 

「話しているときにお前が来たんだ」

 

「ほうほう、なるほどね!んじゃ箒ちゃんはまだ知らないんだ。それじゃあサプラーイズ!」

 

びしっと直上を指さす束さん。それにつられてみんなが空を見上げる。

 

「名人!避けろ!」

 

「え?……のわっ!?」

 

いきなり、いきなりである。なにやら金属の塊が砂浜に落下して来た。てか危なかったぞ!もう少しで下敷きになるとこだった。

銀色をしたそれは、次の瞬間壁がばたりと倒れてその中身を俺たちに見せる。そこにあったのは、

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃんの専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

真紅の装甲に身を包んだその機体。新品だからだろうか、太陽の光を反射する赤い装甲がとても眩しい。

それにしても全スペックが現行ISを上回るって言ったな。つまり最強のIS。

 

「これは、いったい?」

 

「束さんから箒ちゃんへの誕生日プレゼントだよ!まあ1日早いけど」

 

箒の誕生日は7月7日。つまり明日だ。勿論俺もプレゼントを渡すつもりなんだが……これの後ってなるとちょっと渡しづらいな。

 

「さあ!今からフィッテングとパーソナライズを始めようか。私が補佐するからすぐに終わるよ!」

 

紅椿に乗り込む箒。それを確認した束さんはコンソールを開いて指を滑らせる束さん。さらに6枚のディスプレイとキーボードを呼び出し、目配りをしていく。それと同時にキーボードも叩いて……天才か!いや天災だわ。

 

「おい名人。あの変人が箒の姉ちゃんなのか」

 

「ああ、ああ見えて箒のこと思ってるお姉さんだよ」

 

「どうだか。本当に箒のこと考えてるなら専用機なんてあげないだろ」

 

「君が箒ちゃんの何を知ってるのかな?」

 

俺たちの会話を聞いていたのか束さんが聞いてくる。その間もキーボードを叩く手を休めない。

 

「知ってるぜ?少なくともあんたが知らない箒の気持ちとかな」

 

「どういう意味?」

 

「本人に聞けば?」

 

「………ふーん。そういえば君が仮面ライダーか。どうだい?仮面で顔を隠して正義の味方になるのは?」

 

「何が言いたい」

 

「コソコソ隠れて嘘ついて、それで人生楽しい?」

 

キリヤんと束さん。一触即発だ。混ぜるな危険すぎる。なんでこの2人仲悪いんだよ。初対面だろ。

 

「はーい全行程終了!んじゃあ試運転もかねて飛んでみようか。ついでにそこの仮面ライダー君と速度勝負でもしてみたら?」

 

「………」

 

束さんの挑発にキリヤんは……あれ、ノらない?いつもなら後先考えずにノッてくるのに。今日はやけに冷静だ。

 

「あっそ。んじゃ箒ちゃん。イメージ通りに動くと思うから行ってみよー!」

 

「分かりました」

 

瞼を閉じて意識を集中させる箒。次の瞬間に紅椿はもの凄い速度で飛翔した。

 

「どう?思った以上のスピードでしょ?束さんもビックリだね!んじゃあ刀使ってみよー。右が『雨月』で左が『空裂』ね。武器特性のデータ送るよん」

 

武器データを受け取った箒は二本の刀を抜き取る。一通り理解したのかその場で色々試している。

俺の見た感じ、雨月は打突に合わせてエネルギー刃で貫く。空裂は斬撃に合わせてエネルギー刃が切り裂く。今を生きる侍の箒にピッタリの攻撃方法だ。

 

「たっ、大変です織斑先生!」

 

いきなりの山田先生の声に千冬姉は見上げるのをやめ向き直る。なんかただ事じゃない感じだな。しかも手話で会話している。

 

「なあ、分かるかラウラ?」

 

「だいたいな。そして状況が最悪なのも分かった」

 

「全員注目!現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止だ。各班ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内で待機すること。守れないものは身柄を拘束する!いいな!急げ!!」

 

『はっ、はい!』

 

「それと専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!それと篠ノ之もだ」

 

箒も?確かに今さっきだが専用機持ちになった。俺がいうのもなんだが大丈夫なのか?

 

妙な胸騒ぎがする。頼むから何事もなく終わってくれよ。




鈴と箒の告白対決!?ガドルとダグバがキリヤんに接触!?そして緊急事態に専用機をもらった箒が参戦!?

千冬が酔っ払った話はまた別の機会にやりたいと思います。

それとガドルとダグバの人間体はエグゼイドのあの2人の姿をイメージしていただけたら。だから原作とは違うガドルなのだよ。

次回、一夏、キリヤん絶体絶命!?

ではSee you Next game!


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第28話 福音 〜Defeat〜

なんかすんごい端折りまくった戦いです。先に言います。負けます。


7月6日(木)AM11時00分

 

「では、現状を説明する」

 

旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷に、俺たち専用機持ちと教師陣が集められた。

照明を落とした室内に、大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走し、監視空域より離脱したとの連絡があった。時間にして50分後、福音はここから2キロ先の空域を通過することが分かった。そして学園上層部からの通達で、我々がこの事態に対処することになった」

 

いきなりの説明で面食らってポカンとしてしまう。頭の悪い俺でも分かったこと。つまり『軍用ISが暴走したからお前達で止めろ』ということだ。

正式な国家代表候補生なのだから、こういった事態に対しての訓練も受けているであろう他の専用機持ちの表情は真剣そのものだった。

 

「それでは作戦会議をはじめる。意見があるものは挙手をするように」

 

「はい」

 

早速手を挙げたのはセシリアだった。セシリアは目標ISのスペックデータを要求した。セシリアをはじめ代表候補生の面々と教師陣は開示されたデータを元に相談をはじめる。

しかし、俺はその話について行けなかった。正直情けない。

 

「この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは一回のみだ」

 

「一回のチャンス……つまり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

 

山田先生の言葉に、全員が俺を見る。これには流石の俺にも理解できた。つまり俺の零落白夜で落とすしかないのだ。零落白夜なら目標を一撃で仕留めることができるはずだ。

 

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。無理強いはしない」

 

………悪いな千冬姉。実戦なら誰よりもしてきた。命のやり取りを。それこそISのような絶対防御も持たないクウガで。それに比べたら、一撃当てればいい簡単な仕事だ。

 

「俺がやる」

 

「………そうか。では織斑にはエネルギーを全て攻撃に回してもらう。となると織斑をそこまで運ぶ役が必要になるわけだ。現在、この専用機待ちの中で最高速度が出せる機体は……」

 

「はいはーい!それなら箒ちゃんの紅椿が最速だよー!!」

 

いきなり底抜けに明るい声が響き渡る。そして声の主が天井から現れる。この状況でこんなに明るいのは……言うまでもなく束さんだ。

 

「紅椿の装甲展開を調整して……ほいっ、どんなもんだい!」

 

「これが……紅椿、第四世代型ISの装備か」

 

「そうだよ!あ、第四世代型機体ってのは『パッケージ換装を必要としない万能機』という、現在の凡人さんたちじゃ辿り着けない机上の空論のものだよ」

 

全てのISには『パッケージ』と呼ばれる換装装備を持っている。単純な武器以外にも追加アーマー、増設スラスターなど。その種類は豊富で多岐にわたる。

それを必要としないISが第四世代。そしてそれを作り上げる束さんはやはり天才だ。

 

「………」

 

「さてさて、どうするかなちーちゃん?ファイナルアンサー?」

 

「………紅椿の調整にはどれくらい時間がかかる」

 

「7分あれば余裕のよっちゃん」

 

「千冬姉!まさか箒をいきなり実戦に出すのか!?」

 

「織斑先生だ。では本作戦を織斑、篠ノ之の両名で行う。作戦開始は30分後。各員、準備にかかれ」

 

千冬姉が手を叩くと、それを皮切りに教師陣はバックアップに必要な機材の設営を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月6日(木)AM11時25分

 

「暇だね〜キリヤん」

 

「………そうだな」

 

今現在本音たちの部屋で待機中。他の女の子はISの運用試験がなくなったからと遊んでいる。まあ部屋から出なけりゃいいんだ。別に遊んでたっていいだろ。

 

「なんだかバタバタしてるみたいだよ〜?」

 

「………そうだな」

 

「……何かあったのかな?」

 

「………そうだな」

 

「………キリヤんはエッチ」

 

「…………」

 

「「「そうだなって言わないんだ!?」」」

 

どうも頭の中をチラつきやがるあの顔。昨日今日と嫌な顔を連続で見てしまった。

まず、昨日のガドルとダグバ。ガドルの圧倒的威圧感とダグバの何考えてるか分からない雰囲気は独特すぎて変に体が強張ってしまう。

そして今日の篠ノ之束。あの見下した感じ……どうも好きになれない。気分が悪くなる。

 

「はあ……名人たちは大丈夫なのか?」

 

「なら、見に行こうぜ?」

 

今のは男の声だ。そして昨日聞いた声でもある。

 

「ここだよ、お前の真上」

 

天才を見るとダグバが天井から顔を覗かしている。他の女の子たちは驚きからか声が出せないでいる。当然だ。いきなり天井から男が現れたら女の子にとって決して気分のいいものではない。

 

「ガドルが外で待ってる。後でな」

 

「………どうしても、戦わなくちゃいけないのか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月6日(木)AM11時30分

 

「来い、白式」

 

「行くぞ、紅椿」

 

全身が光に包まれ、ISアーマーが俺たちの体に装備される。それと同時にPICによる浮遊感などで全身の感覚が変化する。

 

「じゃあ箒、よろしく頼む」

 

「あ、ああ」

 

作戦の性質上、移動の全てを箒に任せる形になるので、まあ仕方なく背中に乗っかる形になってしまうのだ。仕方なくだ。仕方ないんだ。

 

そんなことを考えていると、オープンチャンネルから千冬姉の声が聞こえる。

 

『織斑、篠ノ之、聞こえるか』

 

「「はい」」

 

『今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心がけろ』

 

「「了解」」

 

『それと篠ノ之。お前は専用機を使い始めてからの実戦経験はゼロだ。突然、なにかしらのトラブルが発生するとも限らない。そうなった場合はすぐに離脱しろ。他の専用機持ちを向かわせる』

 

「わ、分かりました。頭にいれておきます」

 

うーむ……箒のやつ緊張してるな。これは俺が出来るだけサポートしてやらないと。いざとなったらクウガで戦う。これぐらいは覚悟しとかないとな。

 

『では、最後に。必ず生きて帰ってこい。いいな!』

 

「「はい!!」」

 

『では、作戦開始!!』

 

箒は俺を背負ったまま、一気に上空300メートルまで飛翔した。その速度は瞬時加速と同じか、それ以上。ハッキリ言って数値以上じゃないのか?

更に上昇する紅椿は、ほんの数秒で目標高度500メートルに達した。

 

「目標の現在位置を確認。一気に行くぞ一夏!」

 

「ああ、頼む」

 

紅椿を加速させる箒。その速度はさっきよりも速い。展開装甲の名にふさわしく、脚部及び背部装甲が開き、そこから強力なエネルギーを噴出させる。

 

そして数分…いや数秒か。思ったよりも早くに目標を発見した。

ハイパーセンサーの視覚情報が目標を映し出す。まず気になったのは一対の巨大な翼。資料によると大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新型システムだそうだ。

 

俺は雪片弐型を握りしめ、合図を待つ。

 

「加速するぞ!接触は10秒後だ!」

 

「……ああ」

 

10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……!

 

行ける……!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「織斑くん、篠ノ之さん、目標への接触まで後10秒!」

 

「……いよいよか」

 

「お、織斑先生!!」

 

「!?なんだ布仏!今は自室で待機だと!「キリヤんが!キリヤんが!!」……!?」

 

「大変です織斑先生!浜辺で九条くんが未確認生命体と交戦中です!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐああっ!!」

 

もう何度目か。またしても砂浜に叩きつけられる。スナイプレベル3のアーマーは既に半分が破壊され、仮面も割れて自分の顔が少し見えている状態だ。

 

「仮面ライダー、やはりその程度か」

 

「舐めんじゃ……ねえ!!」

 

立ち上がりガドルに殴りかかる。拳はガドルの肉体に叩き込まれるが、奴に効果はない。全身が今までの未確認生命体とは段違いに硬く、力も圧倒的にこいつの方が上だ。

 

「くそっ!うらあっ!!」

 

「ぬるい。全てがぬるい。このぬるい攻撃でやられるあいつらは、やはり下その程度だったというわけだ」

 

「そう言うなよガドル。あいつらも上に上がろうと必死だったんだろ?」

 

「負けては意味がない!勝ってこそ全てを得るのだ」

 

自分が攻撃している間もそのおしゃべりな口を閉じる気はないらしい。だったらコッチで塞いでやる。

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ガシャコンマグナムでガドルの顔にゼロ距離射撃。もくもくと煙をあげるガドルの顔。しかしその顔には傷一つなかった。とことんふざけた野郎だ。

 

「だったらこいつだ!」

 

『バンバン!ジェット!クリティカルインパクト!!』

 

クリティカルインパクトを発動する。しかしアーマーが壊れているため発射までに時間がかかってしまう。この間にやられてもおかしくなかった。だが奴は攻撃してこなかった。

 

「お前の全力……受け止めてやろう」

 

「そうかよ……後悔するなよ!これが自分の全力だ!!」

 

限界を超えた一撃がガドルめがけて放たれる。それに対しガドルは、

 

「ふん!」

 

拳一つで打ち消した。自分の、俺の全力をたった一回の殴りで打ち消したのだ。こんなの……無理ゲーすぎるだろ。

 

「少しは期待したのだが……ダグバ、終わらせてもいいか」

 

「勝手にしろよガドル。俺はISのほうを見てて手が離せない……っと、向こうも終わったな」

 

次の瞬間、海の方で稲妻が走り、空で爆発が起きた。距離的には少し離れた場所だがここから爆発が見えるあたり、相当の規模のものだ。いったい誰が向こうで戦ってるんだ。

 

「白いのと紅いのが落ちたな。残ったのは銀色か」

 

「白と…紅……一夏……箒………!」

 

「行かせると思うか?」

 

エネルギーが尽き、変身が解除された俺の首を掴んで放り投げるガドル。当然変身していない状態で俺は地面に叩きつけらるわけだ。つまり滅茶苦茶痛い。一瞬息が出来なくなった。それに意識が朦朧とする。視界がぼやける。だがガドルが歩いてくるのは分かった。それと同時に複数の足音が聞こえる。それぞれに何か言っているのも分かる。そして、

 

 

 

 

 

 

 

みんながガドルにやられるのも、ハッキリと分かってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

崖の上から見る黒い影。それはゲンムだった。腕を組みながら浜辺で行われている戦いを見る。

 

セシリアがブルー・ティアーズで攻撃するが、全てをガドルに潰され、自身のアサルトライフルも破壊されてしまう。

 

鈴が二本の青龍刀で攻撃する。しかし一本を海に放り投げられ、一本を完全に破壊されてしまった。

 

シャルロットは暴走しながらパイルバンカーで攻撃する。しかしパイルバンカーを装備した左腕のアーマーを引き千切られ、逆にガドルにパイルバンカーを叩き込まれる。

 

ラウラもジョーカーで戦うも、AIC、プラズマクロー、更にはクアトロマキシマムドライブまでも通用せず完敗した。

 

 

 

その中でゲンムはある一点、桐也のことを直視していた。

なんとか立ち上がった桐也は爆走バイクと新しいガシャットをベルトに装填しレバーを開く。通常ならレベルアップするのだが、レーザーはレベルアップしなかった。

 

何度も何度も繰り返すがレベルアップしない。ゲンムにはその理由がすぐに分かった。

 

 

 

 

爆走バイクのガシャットレベルが上がっていないのだと。

 

 

 

 

桐也はスナイプ、つまりバンバンシューティングばかり使っていた。おかげでガシャットレベルはそれなりに上がっていた。

しかし爆走バイクはレベルが2に上がって以降、全然使っていなかった。つまり2で止まっている状態だ。ならばガシャットを二本使うレベル3以降には変身できるはずがないのだ。

 

しかし桐也は焦りのあまりそのことを忘れていた。

 

「こまめにレベルを上げておけば……こんな悲劇にはならなかったかも知れないぞ」

 

 

 

 

やがて専用機持ちは全員が敗北し、桐也もガドルの拳の前に倒れてしまった。

 

これでガドルの前に立ちはだかる者はいなくなった。と思われた。

しかし、立ちはだかる2人の姿があった。

 

 

織斑千冬と花家タイガだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

業務連絡

 

今回の『銀の福音』撃退作戦。結果は失敗。負傷者を多数出す結果となってしまった。

 

セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ。4名は重症、及び専用機の破損。

 

九条桐也、篠ノ之箒。2名は意識不明の重体。

 

織斑千冬、花家タイガ。2名は軽症で済んだ。

 

織斑一夏。彼は篠ノ之箒を庇う形で、福音の攻撃を受けてしまい、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死亡。




ああーもう少ししっかり書きたい。しかし俺にはそこまでの力がない。みんなすまない。本当はもっと凄いバトルがあったと、みんなで想像しといてくれ。

次回、臨海学校最終決戦開始!までいけばいいかな

ではSee you Next game!


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第29話 反撃 〜Remodeling〜

前の話を書いてすぐに思ったこと。『別に一夏死なす意味なかったんじゃね?』

今回は戦闘までは行かないんだ。本当にすまない。


7月7日(金)PM05時40分

 

軍用ISの暴走、未確認生命体の襲撃。これらが重なり臨海学校は中止となった。負傷した代表候補生と桐也、箒は最寄りの病院へと緊急搬送された。

 

雨の降る中、IS学園の屋上に私は立っていた。唯一、一夏だけはこのIS学園にいた。もっとも彼の体は動かない。箒を守るために敵の攻撃を受けてしまった。その為彼を死なせてしまった。

 

『私の力が及ばないばかりに……ゴメンね一夏』

 

でも、彼は帰ってくる。彼の中の霊石が彼を助けてくれる。ならば私は待とう。

 

もう一度、彼と空を翔けるために。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「げ」

 

「げ、とはなんですか。げ、とは」

 

「いや、起きたのあたしが最後っぽいから」

 

病室で目を覚ましたら既にみんなは起きていた。セシリアは少し元気がなくて、シャルロットは俯いたまま。ラウラにいたっては如何にも『私は不機嫌です』と言わんばかりの顔をしている。

 

「強かったな……あの未確認生命体」

 

「うん、全然歯が立たなかった」

 

「しかも専用機まで壊されてしまいましたわ」

 

「打つ手なしか……」

 

自然とネガティヴオーラが病室に立ち込める。実際あいつは強かった。仮面ライダーであるクジョキリも敵わなかった相手だ。そんなの、勝てるわけがなかった。

 

「でもさ、あたしたちがやらないと……誰がやんのよ」

 

「そう……ですわね」

 

「うん、専用機は壊れちゃたけど」

 

「まだ出来ることはあるはずだ」

 

でもそこは代表候補生、いや元から諦めの悪かったあたしたちの意地がその場の空気を変える。まあこの程度で凹んでたら、あたしはきっと無人機戦の時にこの学園を去っている。

 

「でも実際出来ることって……何があるのかな?」

 

「それならば、君たちに頼みたいことがある」

 

病室に聞こえた声は男の声だった。全員が入り口を見る。そこにはスーツ姿の男性が立っていた。その男性はテレビを見ている人なら誰もが知っている有名人、檀黎斗その人だった。

 

「まさか、幻夢コーポレーションの社長がこんなところに来るとはな」

 

「私でも病室ぐらい来るさ。それにこの病院には九条君も入院してるからね」

 

「桐也は無事なんですか!?」

 

「私が来る1時間前には意識を取り戻したみたいだね。もっとも戦える状態ではないけどね」

 

「箒さんは、どうなのでしょうか」

 

「ああ、篠ノ之君なら面白いよ。意識を取り戻した瞬間に病室を抜け出そうとしたからね」

 

病室を抜け出そうとした!?あいつどんだけタフなのよ……でも、なんか安心したかも。箒が無事で。

 

「しかし彼女も負けず嫌いだね。私が必ずあいつを倒す!と意気込んでいたよ。私もその気迫に押されてね。つい『回復』のエナジーアイテムを与えてしまったよ」

 

「「「「はあ!?」」」」

 

今コイツはなんて言った?回復のエナジーアイテムを与えた?そんなことしたら猪突猛進な箒ならすぐに戦いに向かってしまう。しかもそんな便利アイテムを知ったら必ず無茶をする。だって回復出来るのだから。

 

「安心してくれ。まだ彼女は平静を保っていた。だから私は『絶対に勝ちたいならここに来てくれ』と彼女を先に送り出したよ」

 

「先に送り出した、というのは……」

 

「つまり、君たちもそこへ連れて行くからだ。さあ行こうか、戦って勝ちたいのなら」

 

迷っている暇はない。箒がそこに行ったのならあたしたちもそこに行く。当然だ。あいつ1人に抜け駆けさせてたまるかっての。

 

どうやら他のみんなも考えは一緒のようだ。

 

「そうか、ならばまずは回復しないとね」

 

そう言うと社長は黒いガシャットを起動させる。そして展開されるゲームエリアとエナジーアイテムのボックス。それを割ると中から回復のエナジーアイテムが現れた。

 

因みに、黒いガシャットの起動音は『マイティアクションX』だった。

 

 

「ここって……」

 

社長の車で向かった先は幻夢コーポレーションだった。ここいらでも有名なゲーム会社。タドルシリーズやドレミファビートなど人気商品が多数販売されている。

 

「さあ、コッチだ」

 

エレベーターに乗せられ、地下へと下りて行く。その階数は地下5階。こんな高いビルは地下にも続いていた。どんだけよ、まったく。

 

地下5階はまるで秘密基地のような作りになっていた。これもゲーム会社に必要なのだろうか?いいや必要ない。第一ここは普通のゲーム会社じゃない。仮面ライダーを作っているのだ。そりゃあ地下があってもおかしくなかったか。

 

「さあ、これで全員揃ったな」

 

「あ、箒さん!………ってええ!?」

 

そこにいたのは箒、だけではなかった。千冬さんにタイガ先生、木綿季先生もいた。一夏とクジョキリはいなかった。

 

「まったく………結局全員来たのか。分かってるのか?これがどれだけの重罪なのか」

 

「重罪って……何をするんですか?」

 

「黎斗から聞いてないのか?紅椿をお前たちの専用機のデータを使って違法改造するんだ」

 

違法改造。ISはそれこそ国一つをぶっ潰すのに充分すぎる戦力だ。よって勝手な自己改造、つまりパッケージなどの公式の装備ではなく、まったくの別物(例えば仮面ライダーの装備など)を使っての改造は違法改造にあたる。

 

簡単に言えば、ラウラが国からの許可を取らずに仮面装者ジョーカーの変身能力をレーゲンに付け加える、といったものだ。

 

「それって、大丈夫……じゃないですよね!?」

 

「大丈夫さ。バレなきゃ犯罪じゃないって木綿季君も言っていたしね」

 

「そうそう、ってそれはアニメの台詞です!!」

 

「それに改造と言っても一時的なものだ。すぐに元に戻せばいい。そうしたらバレることもないだろう?」

 

「この犯罪者が……っても、協力する俺たちも人のことを言えないか」

 

なんだか凄くヤバイことに足を突っ込もうとしているあたしたち。しかしここでラウラが口を開いた。

 

「紅椿を改造するのは分かったが……まさか箒1人で戦わせるのか?」

 

それもそうだ。合体ロボみたいにISは分離とかしない。専用機は基本1人しか乗れないのだから、これでは箒が1人で戦うしかない。流石に紅椿を改造するとは言え戦闘経験が皆無な箒1人では危なすぎる。

 

「言うと思ったよラウラ君。でも君はそこの専用機持ち全員が戦うことを可能にする力を持っているだろう?」

 

「コイツらに……ガイアメモリを使わせると?」

 

「君のベルトなら出来るはずだが?」

 

ラウラは少し黙った後、部屋を出て行った。多分1人で考える時間が欲しいのだろう。ガイアメモリ……ラウラがいつも使ってるメモリのことだ。アレをあたしたちも使える?あれだけ強力な力を使えるなんて凄いわね。

 

「それと花家先生。貴方のゲーマドライバーを返します」

 

「……10年ぶり…か」

 

「それとこのガシャットも。まだ半分のゲームしか入っていませんが」

 

「あんたは相変わらず俺にプロト版を渡してくるな」

 

社長はタイガ先生にゲーマドライバーと普通のガシャットとは形の違う赤紫のガシャットを渡す。10年ぶりってことは10年前に仮面ライダーに変身している?

 

そんなタイガ先生の意外な過去が分かったところで、ようやく本題に入った。

 

「それではこれより紅椿の改造を始める。もう一度聞くが君たちは戦って勝ちたいかい?」

 

「当たり前ですわ!」

「当然じゃない!」

「もう負けたくないんだ!」

 

「私は……あの時何も出来なかった。もう、そんな想いはしたくない」

 

「どうやら、全員気持ちは揃ったみたいだね。では始めよう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「失礼します。キリヤん……起きてる?」

 

「よお本音。今日は普通に学校があるって社長さんから聞いたけど?」

 

病室に来たのは本音だった。何やら元気がない。どうしたのだろうか。

 

「ゴメンねキリヤん」

 

「…?突然どうしたんだよ」

 

「だって……あの時私がキリヤんを止めていれば……キリヤんはこんな怪我をしなかったのに」

 

突然の本音の謝罪に言葉がでなかった。それは本音が謝ることじゃない。ビビってたのに、心のどこかで『なんとかなる』なんて考えていた自分の甘さがこの事態を招いたんだ。本音は悪くない。

 

「私って……何をするにも遅くて、力がなくて。だからあの時も見送ることしかできなくて。先生に助けを求めることしかできなくて。私って……本当に役立たずで…」

 

「……違うだろ本音」

 

「……え、」

 

「確かに、本音はのほほんとしてる。いつも平和そうな顔をして楽しそうに過ごしてる。だからこそ自分は……俺は戦えた。本音が笑顔で待っててくれたから俺は戦えた」

 

そうだ、俺は本音の笑顔があったから戦えた。待っててくれたから戦えた。ベタだけど……誰かがいてくれるから戦える。

誰かが待っててくれるってこんなにも嬉しいことなんだ。

 

「だから本音はいつもみたいに笑顔で待っててくれ。必ず帰ってくるから」

 

「キリヤん………うん、待ってるよ」

 

本音の表情に笑顔が戻る。そうそう、女の子は笑顔じゃないと。ああ、そうだ。この際だから聞いてみよう。

 

「んじゃあ、一つ聞くけど、本音はレーザーとスナイプ。どっちが好き?」

 

「うんとね………レーザー!だってキリヤんが私とお揃いでツインテールにしてるみたいで、嬉しいから」

 

ああ、確かにレーザーのレベル1の頭にはハンドルが付いてる。確かにそこは本音とソックリだ。そうか、本音はレーザーが好きなのか。そうかそうか。

 

「それじゃあ、レーザーで頑張らないとな」

 

本音に『睡眠』のエナジーアイテムを投げる。すると次第にウトウトしだす本音。それから1分もしないうちに寝てしまった。相変わらず可愛い寝顔してるな。

 

「まったく、絶対自分が戦いに行くって分かってるだろ社長さん」

 

密かに机の上にエナジーアイテムを数個置いていった社長さん。確信犯だわアレ。

 

「さーて、ノッてくか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月7日(金)PM07時50分

 

「調子はどう、箒?」

 

「悪くない……その、みんなありが「ありがとう、は戦いが終わった時までとっときなさいよ」……ああ!」

 

幻夢コーポレーション屋上。そこに紅椿をまとった箒とあたしたちはいた。改造された紅椿は見た目こそ変わっていないが、そのスペックは本来の紅椿を遥かに凌駕する。ほんとバケモノスペックになったわ。

 

「では作戦を改めて説明する。銀の福音に対して、主力は篠ノ之、そのサポートにボーデヴィッヒと凰で当たる。花家先生は浜辺で未確認生命体を抑える。これだけ聞けば簡単に聞こえるが、危険な任務だ。心して当たるように」

 

「「「はい!」」」

 

「それでは作戦、開始!」

 

作戦が始まった。狙いは銀の福音。可能ならあの未確認生命体もぶっ飛ばす。その為にあたしたちはもう一度海へと飛んで行く。

 

「行くわよ!セシリア!」『ファング!』

「行きますわよ鈴さん!」『トリガー!』

 

「派手に行くぞシャルロット!」『ジョーカー!』

「派手に行こう!ラウラ!」『サイクロン!』

 

腰につけたベルトにメモリを装填する。ラウラの部隊が開発したガイアメモリの力を引き出すベルト。名前は知らない。

 

『ファング!トリガー!』『サイクロン!ジョーカー!』

 

あたしとラウラにISとは違うアーマーが装着される。あたしには白と青色のアーマーが。ラウラには緑と黒色のアーマーがそれぞれ装着される。

それと同時にセシリアとシャルロットは意識をあたしたちに移し、地面に倒れる。あたしの中にセシリアの意識が入ってくる。まるで一つになっているみたいだ。

 

これこそが専用機を壊された私たち唯一の反撃の一手。

 

「『メモリギア・ダブルFT!』」

 

「『メモリギア・ダブルCJ、出るぞ!』」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「行ったか……」

 

「では、貴方も行くんですね」

 

「その為にコイツを渡したんだろうが……ったく」

 

「期待していますよ」

 

「勝手にしてろ……第伍十戦術!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『ねえ、そろそろ起きて』

 

目を覚ますとそこは青空が広がっていた。そういや俺どうなったんだ?箒を福音の攻撃から庇って……それから記憶がない。なんかビリビリきたんだよな。

 

そんな青空の広がる世界に白いワンピースを着た女の子が立っている。

 

『貴方の友達が……それぞれ、戦いに行ってるわ』

 

「そうか……でもさ、俺の体動かないんだけど」

 

『それもそうよ。貴方は死んだのだから』

 

そうか死んだのか。そうかそうか……ん?俺死んだの?

 

『でも貴方はまだ戦える。貴方に宿った力はまだ死んでいないから』

 

「俺に宿った力……クウガか」

 

『その力は世界を滅ぼせるし、世界を救える力を持っている。それほどの力を持っているのだから、死者を復活させることも可能なのよ』

 

「なんか凄いな……てかそれって、俺ゾンビになるんじゃ」

 

『ああ、もう!めんどくさいわね!クウガの時点でバケモノになってるんだからゾンビになったって変わらないわよ!』

 

うわ、なんか逆ギレしてきたぞこの子。しかし考えてみればそうかもしれない。うん、理解したら理解したでなんか悲しくなってきた。

 

「でもまあ、決めたからな。例えみんなに嫌われても、俺はみんなを守り続けるって」

 

『嘘つき。ほんとは嫌われるのが怖いくせに……でもまあ、貴方の守り続けるって気持ちは、私も分かってる』

 

「そうか。ありがとうな。ところで君はいった『さあさあ!さっさと行くわよ!今すぐ蘇りなさい!ザ・ゾンビよ!』

 

「………分かったよ……変身!」

 

 

やがて赤き戦士は目覚める。そして、夜空に白き流星が翔ける。




みんな負けちゃて。でも諦めが悪くて。強敵相手に再び戦いを挑む。

メモリギアは簡単に言えば仮面ライダーWです。ラウラの仮面装者みたいに『シンフォギア』の『ガングニール』をイメージしています。

次回からは、
箒、鈴(セシリア入り)、ラウラ(シャル入り)vs銀の福音。
タイガ先生、キリヤん、復活した赤き戦士vs鬼強ガドル。
こんな感じで最終決戦開始!

ではSee you Next game!


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第30話 決戦 〜Level3・Mighty〜

箒、鈴(セシリア入り)、ラウラ(シャル入り)vs銀の福音!

そしてスナイプ(タイガ先生)vsガドル!


7月7日(金)PM08時00分

 

海上300メートル。そこで静止していた銀の福音は不意に顔を上げる。

次の瞬間、超音速で飛来した砲弾が直撃、大爆発を起こした。

 

「初弾命中!頼んだぞ鈴、ラウラ!」

 

『わーってるっての!』

 

『箒は引き続き砲撃を行え!』

 

5キロ離れた場所に浮かんでいる紅椿をまとった箒。姿こそ変わらぬ紅椿だがスペックと装備で本来の紅椿を遥かに凌駕する。

たった今行った砲撃はラウラのシュヴァルツェア・レーゲンの80口径レールカノンを装備した一撃だ。

 

次弾を装填する箒に福音が迫る。しかしそれを阻むものが2人。

 

「そーらこっちよ!」

 

「遅い!」

 

箒へ右腕を伸ばしてくる福音に対し、海中から現れる2つの影。メモリギアと呼ばれる新武装をまとった鈴とラウラだった。

鈴は右腕についた白い刃=アームファングで。ラウラはサイクロンの力を使った手刀で攻撃する。

 

海中からの奇襲に驚き離脱する福音。それに追い打ちをかけるように箒は雨月と空裂のエネルギー斬撃、鈴はトリガーライフル、ラウラは自前のエターナルエッジで斬撃を飛ばし攻撃する。

 

『ラウラ!海岸でも戦闘が始まったよ!』

 

「よし、ここまでは作戦通りだ。あとはさっさとコイツを倒して、花家先生の元へ急ぐぞ」

 

『鈴さん!ライフルの扱いが雑ですわ!私に変わってください!』

 

「あーもう!うっさいわね!これでも射撃は得意なのよ!」

 

『鈴さんが得意なのは精密射撃ではなく、広域爆撃ですよね!』

 

それぞれ鈴にはセシリア、ラウラにはシャルロットが意識を移している。そのせいでこのように頭の中に直接話しかける形で会話することができる。もっとも、箒には独り言にしか聞こえないが。

 

「先に行くぞ!」

 

加速して逃走を図る福音を追いかける箒。それに対し自身の翼からエネルギー弾を飛ばしまくる福音。しかしそれもリヴァイヴ専用防御パッケージ『ガーデン・カーテン』を改造した檀黎斗製パッケージ『ガーデン・カーテンX』の前では無意味だった。

 

「このまま……推して参るッ!!」

 

 

海岸。そこも戦場と化していた。

 

「おいダグバ。仮面ライダーは1人が2人の仮面ライダーに変身しているのではないのか」

 

「どうも違うみたいだな。ハハッ、心が躍るなぁ」

 

ガドルとダグバの目線の先には、遥か上空に浮かんだ戦艦=シミュレーションゲーマの上に乗っている仮面ライダースナイプ。彼は仁王立ちで2人を睨みつける。

 

「悪いが、俺はあのガキとは違う。甘く見てると数秒でゲームオーバーだぞ」

 

「ならば、貴様の実力見せてもらうぞ!」

 

シミュレーションゲーマの上から飛び降りるスナイプ。その体に分離したシミュレーションゲーマが合体する。これこそが仮面ライダースナイプレベル50の姿。

 

『スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーション!!発進!』

 

「御託はいいからかかってこい」

 

「後悔するなよ!」

 

未確認生命体に姿を変えスナイプに突進するガドル。それを避けようとはしないスナイプに対し、ダグバは不思議に思った。

あの速度のガドルのパンチを食らえば体が真っ二つになる。昨日のスナイプもそれが分かっていたのか回避に専念していた。

 

「ふんっ!!」

 

「………ハッ、その程度か?」

 

「なに!?」

「避けろガドル!!」

 

しかしダグバの忠告虚しく、ガドルに無数の砲撃が叩き込まれる。その威力はスナイプレベル3のクリティカルインパクトに匹敵する程の威力。それが一発ならガドルも難なく耐えれた。しかしそれを連続で叩き込まれれば、さすがのガドルも耐えられずに吹き飛ばされる。

 

「どうだ、舐めてかかってきた自分に何か言ってやりたいだろ?」

 

「まったくだ……しかし、これは楽しめそうだ」

 

ガドルが力を込めると全身の筋肉が膨れ上がった。見るからにパワータイプ。レベル50でも耐えられるか不安になるタイガ。しかしその不安は一瞬で消える。

 

再び突進しようとするガドルに弾丸が命中する。スナイプの砲弾程の威力はないが、ガドルの意識を向けるのには充分だった。

 

「貴様……昨日の仮面ライダー!」

 

「はろー、送迎屋でーす。地獄まで送り届けてやるよ」

 

「ったく。来るのが遅いんだよ九条」

 

 

「箒!武器を捨てて緊急回避しろ!」

 

紅椿の二刀が福音に受け止められてしまった。それによって動きを封じられた箒に両翼の砲門が開放される。このままでは箒がやられてしまう。そう感じた鈴とラウラはベルトのメモリを交換する。

 

『ヒート!メタル!』

 

『ルナ!トリガー!』

 

「絶対当たるコイツなら!」『トリガー!マキシマムドライブ!!』

 

「焼き切る!」『メタル!マキシマムドライブ!!』

 

背後から無数のホーミング弾を発射する鈴と、炎をまとったメタルシャフトで福音の翼を狙うラウラ。しかし相手は軍用IS、すぐに片翼だけを鈴とラウラに向けてエネルギー弾を発射する。

急いでターゲットを福音からエネルギー弾へと変更し、ホーミング弾で全てのエネルギー弾を撃ち落とした。

そしてエネルギー弾を撃ちきった片翼目掛けてラウラはメタルシャフトを振るう。

 

「『はあああっ!ぜやあっ!!』」

 

ついにその一撃は福音の片翼を奪った。

 

「一枚奪ったんだ。後はなんとか出来るな」

 

「助かる!」

 

もう片方の翼のエネルギー弾は限界を超えてチャージされていた。だが箒の前でそれは無意味と終わる。グルンと一回転し、爪先の展開装甲がエネルギー刃を発生させる。

 

「たあああああっ!!」

 

踵落としのような格好で斬撃が決まる。ついに両翼を失った福音は、崩れるように海面へと堕ちていった。

 

「はっ、はぁっ、はぁっ……やった」

 

「やれやれ、やっと終わったか」

『お疲れ様、ラウラ』

 

「あー肩こったー。セシリア肩揉んでー」

『肩がこるほど重たいものつけてませんのに……』

「ああ!?今なんつった!!」

 

いつものみんなの会話。これだけで箒は1つの戦いが終わったのだと実感した。あとはタイガ先生と合流して未確認生命体を倒すのみ。この勢いでいけば勝てる。誰もがそう思った。

 

 

しかし、問題は、簡単にはクリアさせてもらえない。

 

 

 

 

 

突如海面が吹き飛ぶ。それと同時に竜巻状のエネルギー光線が鈴とラウラに直撃する。メモリギアはISのような絶対防御は発動しない。つまりその攻撃を和らげることなく直撃してしまう。

 

全身をズタズタにされた2人は海へと堕ちていく。

 

「貴様……よくもっ!!」

 

海から現れた福音は第二形態に移行していた。切断された機械の翼の代わりにエネルギーの翼が生えている。

 

箒が福音を睨みつけるように、福音も箒を見つめていた。

 

そして動いたのは同時だった。

 

「うおおおっ!!」

 

互いに回避と攻撃を繰り返しながらの格闘戦。徐々に改造された出力を上げていく紅椿。第二形態に移行した福音もそれに食らいつくが、やはり差は開いていく。

 

「これで、どうだっ!」

 

確信を持って、最後の打突を繰り出す。しかし……

 

「なっ!?ここで、エネルギー切れ……!?ぐあっ!」

 

エネルギー切れを起こした紅椿。その隙を見逃さず、福音の手が箒の首を捕まえる。そしてゆっくりと光の翼が箒を包み込む。

 

(ごめん……一夏………仇を……取れなかった……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の仲間は!誰1人やらせねぇ!!」

 

箒が微かに見たのは、白き翼を持った赤き戦士だった。

 

 

「そらそらっ!」

 

「くっ!小賢しいマネを!」

 

「悪いけど今回は邪魔しかしないよ?メインはタイガ先生だからね」

 

「ったく、さっさとレベル上げろ!」

 

レーザーとスナイプの砲撃に苦戦するガドル。時々レーザーは接近して攻撃してくるが、何故か二頭身に似合わないアクロバティックな動きをするレーザーに翻弄される。

 

何故あの体型で側転ができるのか。何故あの体型でバク転ができるのか。第一バク転の時に腕は届いていないのではないのか。

そして何より、昨日あそこまで痛めつけたのに、何故動けるのか。それがガドルにとって最大の謎だった。

 

「ガドルのやつ、押されてるな」

 

「よーし、ここで決めたら一気に50ぐらい上がりそうだなぁ」

 

「だったら決めるぞ」

「あいよ!」

 

今現在スナイプのレベルは50。つまりフィールドにはエナジーアイテムが入ったドラム缶が置かれている。それを破壊してエナジーアイテムを取り出すレーザー。

 

「そらよ!」『停止!』

 

停止のエナジーアイテムをガドルに投げつける。そしてガドルの動きは停止する。

 

「ここが正念場だぞ!」

 

複数のドラム缶をロックし、一斉に破壊するスナイプ。中から出てきたのは全て赤いメダル、攻撃力アップの『マッスル化』だった。

 

『マッスル化!マッスル化!マッスル化!』

『マッスル化!マッスル化!マッスル化!』

 

『爆走!クリティカルストライク!』

『バンバン!クリティカルファイヤー!』

 

レーザーは両フロントアームの銃口から。スナイプは全砲門から必殺の一撃を放つ。停止しているガドル目掛けてトドメの一撃が迫る。攻撃力をアップした攻撃を全て受ければさすがのガドルでも耐えられない。

 

そう考えたダグバは、1つのドラム缶を破壊し、エナジーアイテムを吸収する。そしてそのままガドルの前に立つと、なんと片手でレーザーとスナイプの合体技を跳ね返してしまった。

 

当然それはレーザーとスナイプへと直撃してしまう。

 

「ぐああああっ!!」

「うああああっ!!」

 

「エナジーアイテム反射。凄く便利だぞガドル!」

 

「敵の物を利用するとは。さすが頭が回ってるな」

 

攻撃が直撃した2人の変身は解除され地面に伏してしまう。タイガは気絶しているが、桐也は大切なアロハシャツがボロボロになりながらも、まだ立ち上がろうとする。

 

「ふむ、やはり貴様は立ち上がろうとするか。昨日もそうだったな。その根性だけは認めてやろう」

 

「へっ……認めてもらっても……嬉しくねぇよ」

 

「さらばだ、仮面ライダー。言い残すことはあるか」

 

「んじゃ、1つ……どのゲームにも、経験値はある。それは勝った時だけもらえるんじゃない。負けても半分はもらえるんだぜ」

 

「………何が言いたい?」

 

「自分言ったよな。ここで決めたら50ぐらいレベル上がりそうって……でも負けた………けど、経験値は入ってきてる」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

 

「なに?まさか!」

「おい、ガドル!そこを離れろ!」

 

ダグバに掴まれて放り投げられるガドル。次の瞬間、ガドルの立っていた場所に何かが飛来する。それは一言で言うと銀色。銀色が銀色の何かを押さえつけている。

 

「貴様は……まさか!」

 

「まさか、第二形態になった途端に簡単に福音に勝てるなんて凄いよな。死んだの案外無駄じゃなかった?」

 

「チラチラ見えてたけど、お前クウガで白式まとってたろ。箒に見つからなかったのか?」

 

「げ、バレてるのかよ………そ、そう!何を隠そう俺こそがクウg「ああ、そういうのいいから。てか結構前から気づいてたから」……はあ!?だったら言ってくれよ!てかお前がレーザーって今初めて知ったんだけど!?」

 

「ったくうるせえな。福音も倒したんだったらさっさと変身しろ。周りの目はねえんだから」

 

「それもそうか……よし、一緒に行くか!」

 

銀の福音を片手で掴んで海岸に叩きつけた張本人=一夏は白式を解除し、腰に手を当てる。そこに浮かび上がるクウガのベルト『アークル』。

 

「三速!」「超!」

 

「「変身!!」」

 

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!』

『アガッチャ!ギリギリ!ギリギリ!チャンバラ!!』

 

一夏はクウガ、それも赤き戦士『クウガ マイティフォーム』へと。

桐也はレーザー、それも第3の姿『チャンバラバイクゲーマーレベル3』へと変身する。

 

「「決めてやろうぜ、俺たちのウイニングランを!」」




遂にここまでやってきた。レーザーはチャンバラバイクに!クウガはマイティフォームになりました!長かったね!
因みに桐也の言っていた経験値云々。つまり爆走バイクのガシャトレベルは25になってるって言いたかったんだよ。一気に成長したね!

次回遂に臨海学校編決着!まさかの隠し玉も?

ではsee you next game!

あと、サブタイのマイティって英語の綴りあってる?


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第31話 空我 〜XX〜

今回で臨海学校編終わり!


7月7日(金)PM09時00分

 

『ガシャコンスパロー!』

 

「っしゃあ、ノリノリで行っちゃうぜ?」

 

「本気で行くぜ」

 

レベル3にレベルアップしたキリヤんと赤のクウガ(マイティフォームでいいか)に進化した俺。つっても俺はちょっと前に進化している。コイツの戦い方も分かる。つまり殴る蹴るの喧嘩殺法!

 

「先手必勝!」

 

キリヤんはガシャコンスパローを弓モードから二本の鎌モードに変形させてガドルに切りつける。ガドルは難なくそれを防ごうとするが、

 

「っ!?」

 

「そらそら!!」

 

「くっ!」

 

少し当たっただけで大げさに避けるガドル。不思議に思う俺を置いてキリヤんは更に追撃を仕掛ける。俺も遅れるわけにはいかないな。

 

「そらっ!」「たあっ!」

 

「うぐっ!?おのれっ!」

 

俺はガドルに一気に詰め寄り、殴る蹴るの連続攻撃で逃げるのを許さない。なんか手足がビリビリするけど気にしない。

隙ができたガドルにガシャコンスパローで切りつけるキリヤん。思ったよりもダメージがあるんだな。

 

「くっ……レベル3。さっきの戦艦の仮面ライダーよりもレベルは低いはず。いったい何故そこまでの力が」

 

「さっきの戦艦ライダー……レベルっていくつだったんだ?」

 

「50」

 

「50か……ん?50!?え、キリヤんレベル3だろ?なんでそんなに強いんだよ!」

 

「ギリギリチャンバラは『一撃一撃がHPレッドゾーンギリギリに追い込むチャンバラゲーム』だ。つまり自分の攻撃は即死級の攻撃力なわけ」

 

攻撃の一撃一撃が即死級……あれ、これ俺今回必要ないんじゃない?

 

「まあ、それだけ言えば最強なんだけど……こっち自身も一撃でHPレッドゾーンギリギリまで追い込まれるから油断できないんだよな」

 

「ダメじゃないか!てか紙装甲だな!」

 

なんだか白式に似ているな。一撃必殺の攻撃、それに対してガス欠になりやすい紙装甲。ますます白式だな。

 

「確かにその攻撃力は脅威だな。しかし、当たらなければ意味はない!」

 

「それはこっちのセリフ。行くぞ名人!さっきみたいに攻めれば勝てる」

 

「それを大声で言わなかったら通用したかもな!」

 

同時に駆け出す。左右から攻める俺とキリヤんに対し、ガドルは地面を叩き、地面を隆起させて攻撃してくる。

 

俺はドラゴンフォームに変身して隆起してくる地面を回避していく。キリヤんも爆走バイクのクリティカルストライクで回避していく。しかし次々と隆起していく地面を回避するばかりじゃガドルへとたどり着けない。

 

「名人!これ使え!」

 

キリヤんが弓モードに戻したガシャコンスパローをこっちに投げてくる。射撃ならキリヤんの方が上手いから俺に渡す意味はあまり無いと思う。でも託されたからにはやり遂げる。

 

弓は射抜くもの。だったら!

 

隆起する地面を使って天高くジャンプする。かなりの高度だ。ISを使えばこれくらいなら余裕で跳べるが、やっぱりクウガで跳ぶのとはまた違うな。

 

『ギリギリ!クリティカルストライク!!』

「さっさと決めろ名人!」

 

下でキリヤんが蹴りの形で斬撃を飛ばし攻撃している。やはりガドルは警戒して斬撃を回避していく。こっちに意識を向けている暇はないようだ。

 

「そこだッ!」

 

ペガサスフォームに変身し、ペガサスボウガンでガドル目掛けて矢を放つ。貫通こそしなかったが傷をつけることはできた。

俺はすぐにタイタンフォームに変身し、雪片弐型をタイタンソードへ変化させる。そこから急降下でガドル目掛けて剣を向ける。

 

「うおおおおっ!!!」

 

「くっ!おのれクウガ!」

 

「おっとよそ見する暇はないぜ!」

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

ガドル目掛けてドロップキックを叩き込むキリヤん。それをガードするガドルだが、それは俺の攻撃をガードできない証拠だ。

 

「っ、だあっ!!」

 

「ぐっ、うおおおおおっ!!」

 

傷がついた肩にタイタンソードを突き刺す。鮮血が飛び散るがそれでも俺は手を止めない。ガドルも振り払おうと一生懸命だ。

 

「キリヤん!一気に決めてくれ!」

 

キリヤんはガシャコンスパローを受け取る、すぐにギリギリチャンバラガシャットをガシャコンスパローに装填する。更に爆走クリティカルストライクをもう一度発動する。

 

その時俺は不思議に思った。なんかまだ、ベルトにガシャット刺さってるけど、あれも切り札なのか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふうっ……まったく発育のいい子は重たいわね」

 

「これで、海に落ちた篠ノ之さん、凰さん、ボーデヴィッヒさんは救出出来ました。お疲れ様です」

 

「まあ、今回参加が遅れた分は働かないとね。それで、九条くんは?」

 

「はい………今ゲーマドライバーから二本のガシャットを抜いています。恐らくクリティカルインパクトを使うかと」

 

「そう……今爆走バイクのガシャットレベルは25よね?」

 

「今しがたレベルが上がって、ただ今レベル28です」

 

「なら、これを使えるわね」

 

「恐らく使えると思えますが……」

 

「なら決まり。ダブルアップで援護するわ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なあキリヤん!ベルトのそれなんだ?」

 

「ベルト?……うおっ!?いつのまにこんなガシャットが……」

 

キリヤんも気づいていなかった?ならいつベルトに刺したのか。でも今はそんな事を気にする余裕は、

 

「ふん!!」

 

「うわあっ!!」

 

肩からタイタンソードを引き抜いたガドルに投げ飛ばされる。血が流れるがガドルは未だ健在だ。俺はマイティフォームに戻ってキリヤんと並び立つ。

 

「なんだか分かんないが、使ってみるか」

 

「大丈夫なのか?」

 

「心配するな名人。自分の速さは常に進化する」

 

『ガッチャーン!ダブルアップ!!』

『俺がお前で!お前が俺で!マイティ、マイティ!ブラザーズ!!ダブルエーックス!!』

 

キリヤんは更に姿を変えた。半分オレンジのツンツン髪で、半分青色に近い緑色の髪。左肩に半分になった顔がついてる。まあ簡単に言えば今までのレーザーとは全然違う姿になってる。

 

「ふーん……なんか別の仮面ライダーになったっぽいな」

 

「いくら姿を変えたどころで!」

 

「そいつはどうかな……ダブルエックス……XXは20、つまりレベル20だ!」

 

レベル上がりすぎだろ。3から20って……まあ俺からしてみれば嬉しいんだけど、ガドルにとってみれば嬉しくないよな。

 

「うーん……あんま体に馴染まないな。一撃で決めるぞ名人!」

『爆走!クリティカルストライク!!』

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

『マイティ!ダブル!クリティカルストライク!!』

 

『爆走!ギリギリ!マイティ!クリティカルインパクト!!』

 

「そんなに発動させて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「ならOK!」

 

俺も右足に力を集中させる。ビリビリと足が少し痺れ、だんだんと足裏が熱くなる。これならいける!

 

俺とキリヤんが同時にジャンプするのと同時に、ガドルも両拳に力を溜めている。なんか赤いオーラ出てるけど大丈夫かアレ?多分アレとぶつかることになるけど……俺の足、もってくれよ……!

 

「ガドル、エナジーアイテム使うか?」

 

「不要だ。これが奴らの本気なら、俺は正々堂々打ち破る!」

 

「そうか、まあ骨は拾ってやるよ」

 

「来い仮面ライダー!貴様らの全力!俺にぶつけて来い!」

 

向こうはやる気満々。こっちも準備は整っている。ならば後はぶつかるだけ。後悔しないために、全力で行く!

 

「行くぞ名人!!コイツで決める!」「行くぞキリヤん!!コイツで終わらせる!」

 

俺のマイティキックとキリヤんのクリティカルインパクトによるダブルライダーキックは、ガドルの拳と激突する。その衝撃であっちこっちで爆発が起きる。

てか、結構ダメージ与えたはずなのに、なんでこんなにパワーあるんだよ!

 

「押し切れ!名人!」

 

「んなこと言っても……!」

 

「勝負、あったな!!」

 

遂にガドルのパワーが俺たちのライダーキックを上回った。衝撃で空中を舞う俺たち。あと少し、ほんのひと押しで押し切れた。俺の力不足か………。

 

「まだ、終わってないぞ!一夏!!」

『爆走バイク!レベルアップ!!』

 

遥か上空まで吹っ飛ばされた俺たちだったが、キリヤんはまだ諦めてなかった。レベル20のライダーからレベル2のレーザーへと姿を変える。

 

「ウイニングランを決めるのは俺たちだろ!」

 

「キリヤん………」

 

「乗りな。自分が走るとこ、それは全部自分のコースだ」

 

「……無茶言うぜ………でも、」

 

レーザーのハンドルを握る。そうだな、結構無茶言うよなお前って。

 

「ノッてやるよ!桐也!!」

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

マフラーから炎を出し一気に加速する。落下の勢いもあってかそのスピードは白式にも勝るとも劣らない。

やがてガドルの姿が見える。てか結構飛んでたんだな俺たち。そういや若干雲の上から来たもんな。てか向こうは迎撃準備整ってるんだけど!

 

「名人!もっと加速する。合図が来たら飛べ!」

 

「わかった!」

 

更に加速する俺たちに対し、ガドルはその場を一歩も離れない。やはり迎え撃つつもりか。上等だぜ。

だんだんと距離が近くなる。てかもうあいつの射程圏内じゃないのか!?でもノッちゃってるしな……信じるしかないよな。

 

「準備しろ!………今だ!飛べ!!」

 

「来い!白式!!」

 

俺が白式で飛ぶのとガドルが拳を突き出して来たのはほぼ同時だった。俺がもう少し遅かったらやられてた。

 

「減速!!」

 

「なに!?」

 

キリヤんはレーザーをレベル2からレベル1に戻し、フロントアームでガドルの拳を防いだ。だがやはりレベルが低いこともあって簡単に吹っ飛んでいく。でも、おかげで一矢報いることが出来る!

 

「雪羅!!」

 

第二形態になった白式の新装備、雪羅をガドルに向ける。エネルギー満タン。チャージ完了!コイツをくらいな!!

最大威力の荷電粒子砲をガドルに叩き込む。クウガの力も上乗せで。

 

「ぬうっ!!」

 

「うおおおおっ!!」

 

「もう一押しだ!踏ん張れ名人!!」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

背中に荷電粒子砲を受け続けるガドル目掛けてレーザーのクリティカルストライクが叩き込まれる。

 

「くっ!これが……仮面ライダーの、力かッ!!」

 

「「うおおおおっ!いっけえええええ!!!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「!?……な、なんだ!」

 

激しい爆発で目がさめる。体の節々が少し痛むが動けなくはない。音のした方を見ると激しい爆炎が舞い上がっていた。

 

「起きたか箒。動けるか」

 

「結構無茶したでしょアンタ」

 

「鈴、ラウラ!無事だったのか」

 

「なんとかな………しかし今の爆発、まさかと思うが一夏とクジョーではないのか」

 

「だろうな」

 

後ろから声をかけてきたのはタイガ先生だった。ボロボロの白衣を着た先生。やはり向こうでは激戦が……

 

「そ、そうだ!一夏が、一夏が来たんだ!」

 

「知ってるわよ。海の中からうっすら見えた。なんかちょっと赤くなかったアイツ?」

 

「奇遇だな。私もそう見えた。箒は何か知ってるか?」

 

「いや、あの後すぐに気を失ったから分からない。だが、一夏が来たのは分かったぞ」

 

帰って来てくれた。私のせいで死なせてしまったと思ったが、一夏は生きていたのだな。それは良かった。だが今の爆発は少し不味いんじゃないだろうか……。

 

そう考えた私は無我夢中で走った。砂浜に足を取られながら走った。妙に長い道のりだった。そしてたどり着いた。そこで私が見たのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハッ。なんとかなるもんだな名人!」

 

「そうだなキリヤん!」

 

肩を組んで笑い合う、私の友達がそこに座っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月8日(土)

 

俺たちがみんなが待つ幻夢コーポレーションについたのは日付が変わってからだった。みんなが笑顔で出迎えてくれて、ああ、終わったんだなって感じて……まあそこから記憶がないんだけど。

 

結論から言って、ガドルは倒せなかった。結局最後の最後もガドルに防がれて、絶体絶命。まさにそんな状態だった。でもガドルは俺たちを見逃した。

 

『お前たちは俺が倒すに値する強者だ。俺以外に倒されることは許さん』とかなんとか。

正直助かった。そこからというもの、キリヤんと肩組んで笑いあってた。なんだか気が抜けて笑みが込み上げてきたからだ。

 

幻夢コーポレーションに帰ってからというのも大変だった。まず速攻で病院送り。俺以外もキリヤん、箒、鈴、ラウラも病院送りだ。セシリアとシャル、のほほんさんは付きっきりで看病してくれた。

そんな中タイガ先生はいつも通りだった。正直体おかしいと思う。

 

 

 

7月9日(日)

 

この日は疲れからかほぼ一日中寝ていた。起きたのは腹が減ったから。まあクウガの力でほとんど怪我も治ってたから、正直ベッドで寝ていても意味がなかった。だから俺はふらっと外へ出た。

 

「あ、箒」

 

「む、一夏?ダメじゃないか。大人しく寝ていろ」

 

「それはこっちのセリフだ。紅椿改造したんだって?そんなのに乗って大丈夫なのか?」

 

「見ての通りだ。大丈夫ではない」

 

「だろうな」

 

廊下を歩いていた箒の姿は包帯を巻いて痛々しい姿をしていた。その姿でベッドを抜け出すのは良くないと思う。しかも夜中だぞ?何があるか分かったもんじゃない。

 

「お前は大丈夫なのか………その、一度、死んだだろう?」

 

「ああ、そういやそうだった………多分だけど……白式と…いや白式が俺を呼び戻したんだと思う」

 

本当はクウガの力も働いてると思うが。

 

「ISにそんな力があるのか?……いや、そんなことより……そのだな」

 

「なんだよ、歯切れ悪いな」

 

「………こうして生き返ったと言ってもだな……一度お前を死なせてしまったことに変わりはない。その……謝って許してもらえるとは思わない。だが言わせてくれ。すまなか……ごめんなさい」

 

そう言って頭を下げる箒。いやいやアレは俺が勝手に突っ込んで行ったことだし、箒が謝ることじゃない。

それに、それこそこうして生きてるんだから気にすることじゃない。

 

「お前にはいつも迷惑をかけてばかりだ。ホント……ダメな友人ですまない」

 

「誰も箒がダメな友人だなんて思ってない。心配してくれたんだろ?すっごく嬉しいぜ俺は。誰かが誰かを思うって凄く大事だと思うんだ。だからそれが出来る箒は……その、なんて言えばいいか」

 

こういう時にいい言葉が思い浮かばない。なんか変にキザな言葉をかけるのもアレだな………。

 

「その……そう、好きだ!…………好き……だ」

 

好き。今まで何度か言ったことがある言葉。箒やセシリア、鈴。シャルやラウラ、勿論キリヤんにも言ったことがある言葉。

でも、俺の今の言葉には違和感があった。なんか……本心?そんな感じの言葉………そうか、そうだったんだ。

 

「………箒。俺はお前が好きなんだ。友達として……でもあるし、その……こ、恋人にしたいって、意味でも……」

 

「い……ち…か?」

 

「だああっもう!ハッキリ言う!お前が好きだ箒!この世界の誰よりも!君を守りたい!あ、いやみんなも守りたいけど!」

 

「…………」

 

やっべ……勢いで告白してしまったぞ。でも確かに俺の本心は伝えた。ずっと俺はこう思ってたんだ。それをひた隠しにして、やがて自分自身でも忘れていた、忘れちゃいけない気持ち。

 

てか箒うつむいたままなんだけど。これもしかして……3年間気まずい関係に!?

 

「私も………だ」

 

「え?」

 

「私も……好きだ!一夏が好きだ!!」

 

顔を真っ赤にして俺に対して言い放つ箒。それはつまり……OK?

 

「あ、いや……その………今後も、よろしくな」

 

「そ、そうだな……不束者ですが、どうぞよろしくお願いします。一夏」

 

「ああ、よろしくな箒」

 

互いに気持ちを伝えあった俺たちは、やがて顔を近づけて………。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ〜あ。ほんと嫌になっちゃう。一緒に告白しようって言ったのに抜け駆けしちゃって」

 

「じゃあどうする?このまま名人を奪いに行くのか?」

 

「それこそバカよ。一夏が好きなのは箒。箒が好きなのは一夏。両想いだったのよあの2人。ハッピーエンドじゃない」

 

「お前の顔はハッピーに見えないけどな」

 

「ハッピーよ……友達に……恋人が………できたのよ。それに同時に告白したってこうなることは決まってたのよ。アイツが箒を好きである限りね」

 

「そうか………まあ、今日ぐらい、強がりやめてもいいんじゃない?」

 

「だからってアンタの胸の中では泣かないわ。セシリアはちょっと大きいから……そうね、シャルあたりに慰めてもらうわ」

 

「そうかい………まあ、頑張ったよ鈴は」

 

「いつもみたいに………リンリンって呼びなさいよ……バカ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「箒!!」

 

「!?り、鈴」

 

「あんた知ってるわよ………昨日の夜に一夏に告白したでしょ」

 

「そ、それは………すまない。約束を守らなくて」

 

「そうよ、許さないわよ。でもどうしても許してほしいなら………一夏に絶対に幸せにしてもらいなさい!!それで今回の件はチャラにしてあげる!」

 

「!!…鈴………ごめん……ありが……とう…」

 

「ちょ、アンタが泣いてどうすんのよ!ほら一夏!あんた恋人なんだからどうにかしなさいよ!」

 

「ええ!?」

 

箒と鈴が話をしていたと思ったら箒は泣き出すし、シャルとラウラは噂を聞きつけて駆け寄ってくるし、キリヤんはやれやれって顔でこっち見るし、のほほんさんはいつも通りのほほんとしている。

 

ほんと、コレだけだと普通の高校生と変わらないんだよな。

 

でも俺はクウガだ。

 

誰かを守るための力を持っている。

 

普通なんて当分は訪れない。

 

それでも俺は挫けずに戦える。

 

みんなが、笑顔で待っててくれるから。

 

俺は、クウガとして戦えるんだ………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、クウガでも倒せない敵がいた。史上最大の強敵が。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「えー、今日で1学期は終了だが、織斑。お前は赤点だから補習だ。以上」

 

「……………は?」

 

期末テスト……奴には勝てなかった………。




というわけで、1学期編も終了です!

一夏は箒と恋人同士になり、キリヤんも更なるレベルアップを果たし、物語は折り返します。その前に夏休み編がありますが。

この作品のマイティブラザーズはちょっとややこしい設定にしてます。それは二学期編でね。

鈴と箒。恋人にするならどっちか……結構悩んだ。と言いますが、実はこの作品を書く前から実は決めていたり。ほら原作だとメインヒロインじゃん?まあ自分はあの5人全員がメインだと思ってますが。

次回から夏休み編ですが……内容を決めていない!何かあったら意見をよろしくお願いします!
あ、活動報告も今日中にあげますので、そっちもよろしくです。

ではsee you next game!


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夏休みを楽しむものは、戦いを制する
第32話 二匹の子猫のラプソディー


最近は届いた社長バグヴァイザーで遊んでおる。面白すぎるぞあの玩具!やはり神の恵みは偉大であった。

今回から夏休み編!まずは原作みたいにシャルとラウラのお買い物!


8月3日(木)AM07時00分

 

「あ、あのー……ラウラさん?」

 

「………はっ!」

 

ラウラが抱きついているのは、いつもの自分の抱き枕(千冬の抱き枕カバー)ではなく、隣のベッドのシャルロットだった。しかも目の前に顔がある。その距離はあと少しでキスをするぐらい。

 

「えーと、あのね?キスはしてないからね?」

 

「………するか?」

 

「しないよ!で、いつまでこのままなのかな!」

 

「それもそうだな」

 

よっこいしょとシャルロットから離れるラウラ。散々よっこいしょはおじさんみたいだからやめてとシャルロットに指摘されるが、一向に直る気配がない。それとシャルロットはもう一つ指摘する。

 

「ところでさ……やっぱり服は着ないの?」

 

というのも、ラウラは寝るときはいつも全裸なのだ。その理由が、

 

「寝るときに着る服がない」

 

「学校のジャージとかは?」

 

「あれは体育の時の服だぞ。寝るときには着ない」

 

「いや、そうかもしれないけど……ああもう、風邪ひくってば」

 

サイドテーブルに置かれてあるバスタオルはこのためのものだ。8月というクソ暑いこの季節。汗をかいていれば体が冷えて風邪を引く可能性もある。そんな理由からシャルロットが置いたものだった。

 

「ところで、私はシャワーを浴びてくるが、お前はどうする?」

 

「うん、僕も浴びようかな」

 

「一緒にか?」

 

「ち、違うよっ!ラウラの後だよ!」

 

「ふっ、冗談だ」

 

シャワールームに行くラウラ。前なら冗談なんて言わなかったのに。やはり周りの友人たちの影響だろうか。

 

友人1「俺は攻撃にステータス全振りだ!」

友人2「剣さえ握れば勝てる」

友人3「掃除?お掃除ロボットがしてくれますわ!」

友人4「中華料理屋の娘だけど……最近イタリアンが好き」

友人5「宿題なんてするわけないだろ!いい加減にしろ!!」

友人6「お菓子〜お菓子〜……お菓子がない、だと!?」

 

「…………」

 

いやきっと先生方の影響だよきっと。

 

先生1「私は攻撃にステータス全振りだ!」

先生2「私、寝るときはジャージです!」

先生3「ちょ、今無駄に回復魔法使ったの誰!」

先生4「医者の仕事よりゲームが好き。オバケは嫌い」

 

あれ、周りの人、みんなおかしい人?

 

今更気付くシャルロットであった………。

 

 

「買い物?」

 

「うん、そう。ラウラのパジャマとかね」

 

寮の食堂、そこで早めの朝食をとりながらラウラとシャルロットは話していた。周りには部活動の面々がちらほらいる程度で混んではいない。その部活動の中にはセシリアの所属するテニス部と鈴の所属するラクロス部の姿もあった。セシリアと鈴も当然そこにいた。

 

シャルロットの料理部とラウラの茶道部は今日は休みだ。

 

因みに一夏は部活に入ってなく、箒は当然の如く剣道部。桐也と本音は何やら新しく同好会を作ったとか。

 

「それにしても……朝からステーキって、胃がもたれない?」

 

「分かっていないなシャルロット。朝に一番食べる方が稼働効率はいいのだぞ?そもそも後は寝るだけの夕食どきに一番食べるという方がおかしいのだ。消化されないエネルギーはすべて脂肪だぞ?」

 

「………それ、一夏から聞いたでしょ」

 

「そうだ」

 

存外、感化されやすい性格なのを忘れていた。純粋な水晶…みたいな感じ?。なんてことを考えながら、フォークの先端にマカロニを通して食べるシャルロット。

 

「それで、買い物には何時に行くんだ?」

 

「あ、うん。10時くらいには出ようかなって。1時間ぐらい街を見て、どこかでランチにしようよ」

 

「そうか。ところでシャルロット」

 

「どうしたの?」

 

「私には私服がない。公用の服ならあるのだが」

 

「………制服でいいよ」

 

 

バス停に着くとちょうどバスが走ってきた。時刻は10時過ぎ。車内はかなり空いていた。

 

(そういえば街の方ってあんまりゆっくり見たことないかも。タイガ先生と日本に来た時も、必要最低限の場所しか見てないし)

 

窓から見える景色を眺めるシャルロット。その隣のラウラは何やら雑誌を読んでいた。その内容は『謎が謎を呼ぶ!?雪男vsネッシー!!』。まさかの内容にラウラは引き込まれていた。

 

(雪男とネッシーが戦っただと!?バカな、UMA同士の戦いなど聞いたことがないぞ!しかし、UMAといえば未確認生命体か。今日の買い物で出て来なければいいが)

 

そんなことを考えるラウラ。それぞれに考え事をしている2人の乗るバスの隣を通り過ぎる黄色いバイク。その存在に2人は気付くことはなかった。

 

なんだかんだ考え事をする2人を乗せたバスはやがて目的地に到着する。シャルロットはバッグから雑誌を取り出し、それをデパートの案内図と交互に見て何かを確認していた。

 

「最初は服から見ていって、途中でランチ。それから、生活雑貨とか小物とか見に行こうと思うけど、ラウラもそれでいい?」

 

「よくわからん。任せる」

 

相変わらず一般的な十代女子のことには疎いラウラだった。

それにしても、とシャルロットは思う。ラウラは本来我が強い。それなのにシャルロットの言葉には特に抵抗なくすんなりと頷いてしまう。不思議なものだ。

 

7階フロアの店に入る。そこは人気のある店であり、女子高生や女子中学生が多くいた。セール中というのもあって店の中は騒々しい。それはまるで一夏と桐也と鈴が、互いの夕食を巡って争うが如く。

そのため、接客がおざなりになるのが当たり前だ。しかし…

 

「………お客さんお願い」

 

客に手渡すはずの紙袋が店長の手からすり抜けて落ちる。店長の異変に気付いた他の店員も、文句を言おうとした客もまたその視線を追う。その視線の先にはシャルロットとラウラの姿があった。

 

恐らく一夏と桐也は普段から会っているからそれなりに耐性がついているから分からないだろうが、本来シャルロットやラウラのような美少女を超えた存在はそうそう存在しない。店長や店員、その他の女性客はそんな2人の姿に魅せられていた。

 

「ど、どっ、どんな服をお探しでしょうか?」

 

「とりあえずこの子に似合う服を探しているんですが、いいのありますか?」

 

「こちらの方ですね!今すぐ見立てましょう!」

 

そう言うなり、店長は展示品のマネキンからセール対象外の服を脱がせる。本来それらは『とっておきのお客様』のためであって、初めて来店したお客のためにわざわざ脱がすというのは普通なら無い。

 

しかしシャルロットとラウラの可愛さは普通ではない。

 

闇医者曰く「ゲームから出て来たんじゃないか?」だそう。

 

「ど、どうでしょう?お客様の綺麗な銀髪に合わせて、白のサマーシャツは」

 

「薄手でインナーが透けて見えるんですね。ラウラはどう?」

 

「いや、わから「わからない、はナシで」むう……」

 

言葉を先回りされて、ラウラは珍しくむくれたような顔をする。それからじっと商品を眺めて一言。

 

「白か。悪くないが、今着ているのも白だぞ」

 

なんとも女子力の低い回答に驚いたようにパチパチと瞬きをする店長。シャルロットはやれやれといった表情だ。

 

「せっかくだから試着してみたら?」

 

「……どうせ、面倒くさいはナシとか言うのだろう…」

 

「うん。こっちも色々探しておくから」

 

そうこうしている間に店長とシャルロットはシャツに合うインナーとボトムスを選んでいった。あれやこれやと楽しそうにラウラの服を選んでいく。着せ替え人形の気持ちが少し分かったラウラであった。

 

(まあ、シャルロットがこうして選んでくれたのだ。着るくらいな

らいいか)

 

試着室に入って制服を脱いでいくラウラ。シャルロットや店長が選んでくれた服を着る。鏡に映ったその姿は所謂『クール系』というタイプだった。

 

(………なんだか、いつもと変わらなんな)

 

女の子らしいスカートなどを機能的ではないという理由で敬遠していたため、いつのまにかクール系というイメージがついてしまったラウラ。恐らく初めて出会った人にも分かるほどに。

 

(どうせなら、可愛い服が良かったな………)

 

「そんなラウラにこんな服はどうかな?」

 

「うわあっ!?」

 

試着室のドアから顔を覗かせていたのはシャルロットだった。驚きのあまりに部屋の隅まで後ずさりするラウラ。

 

「はい、これ着てみて」

 

「う、うむ」

 

渡されたのは肩の露出した黒のワンピース。部分的にもフリルのあしらいがあり、可愛らしさを演出している。

それを着て試着室のドアを開けると、店内の客と店員が一斉にラウラの姿を見る。言葉通り妖精さながらの格好に目が釘付けになっていた。

 

服を手渡したシャルロットに至っては、ヨダレまで垂らしている。

 

(シャルロット……花家先生という人がいながら、女もイケるクチか)

 

友人の姿に衝撃を受けながらも、シャルロットの用意したヒールのある靴を履く。しかし初めて履く靴に姿勢を崩す。

全員が助けに入ろうとした時にはシャルロットがその体を支えていた。

 

「す、すまないな」

 

「どういたしまして、お嬢様」

 

体勢を立て直したラウラの手を取り、お辞儀をするシャルロット。その数秒後に店内を人の海で満たされることを、2人は知らない。

 

 

「ふう、疲れた」

 

「まさか、最初のお店であんなに時間を使うとは思わなかったね」

 

時間は12時を過ぎたところで、2人はオープンテラスのカフェでランチをとっていた。

 

「しかしまあ、いい買い物はできたな」

 

「せっかくなんだし、そのまま着てればよかったのに」

 

「い、いや、せっかくお前が選んでくれたんだ。汚しては困る」

 

「ふふ、ありがと」

 

ふと、シャルロットが隣のテーブルの女性に気がつく。二十代後半でスーツに身を包んでいる。何か悩み事があるらしく、深々と漏らすため息には、深淵の色が見て取れた。

 

「……どうすればいいのよ………」

 

「あの、どうかされましたか?」

 

そこは優等生シャルロット。悩んでいる人を見過ごせないのである。ラウラもそれを分かっているから止めはしない。

女性は声をかけてきたシャルロットを見るなり、イスを倒す勢いで女性が立ち上がる。そしてそのままシャルロットの手を握った。

 

「あ、あなたたち!」

 

「は、はい?」

 

「バイトしない!?」

 

「「え?」」

 

 

「というわけでね、いきなり2人辞めちゃったのよ。いや駆け落ちかな。はは……それ以前にも2人用事がはいってこれなくなってね、急いで2人追加したばかりなのにね」

 

「はぁ」

 

「ふむ」

 

「でね、今日は超重要な日なの!本社から視察の人も来るし。だからお願い!2人に今日だけバイトで入って欲しいの!」

 

女性のお店に向かいながら話を聞く。なんとも不運続きな人だと思うシャルロット。もしかしてこの後もなにか起きるのではないかと考えてしまう。

 

「ここ!ここが@クルーズ!私のお店よ!」

 

@クルーズ。この近くでは一番有名なカフェだ。この女性はここの店長だったのだ。

店長が店のドアを開けると中から2人の男性が挨拶をした。

 

「お客様、@クルーズへようこそ」

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 

女性は使用人の格好、男性は執事の格好で接客するのがこのお店の特徴だ。この2人も似合っている。などと2人をよく見ると、

 

「この2人が臨時のバイト君たち。織斑君と九条君よ」

 

「はい、よく知ってます……」

 

挨拶してきた2人の男性は一夏と桐也だったのだ。その2人もシャルロットとラウラが来店したと分かると、

 

「あれ、シャルちゃん?隊長さんもどうしたの?」

 

「2人が助っ人なのか。店長、助っ人探して来るって2時間ぐらい前に出てってから帰ってこなかったからな」

 

笑い飛ばす2人。お店は忙しいはずなのにこの余裕。いったい何故余裕なのか。

 

「はいはい、2人はバイトに戻って。女の子2人は着替えてもらうから」

 

こっちこっちと手を引かれ裏側に連れて行かれる。差し出されたのはメイド服。シャルロットは執事服を渡されるんじゃと内心不安だったがメイド服で安心した。対するラウラは機能的じゃないなと内心呟いた。

 

やがて着替え終えた2人の、初めてのアルバイトが始まるのであった。

 

 

カウンターから飲み物を受け取ってトレーへと乗せる。そんな単純な動作にさえ気品がにじみ出ているシャルロット。

初めてのアルバイトに動きがぎこちなくなるラウラ。それでも一生懸命頑張る彼女を、みんな愛おしく思う。

 

バイト経験のある一夏はテキパキと作業を繰り返し、桐也も臨機応変に対応していく。

 

「お砂糖とミルクはお入れになりますか?よろしければ、こちらで入れさせていただきます」

 

「待た……お待たせしました。オ、オムライスの客……お客様は?」

 

「かしこまりました。それでは、失礼いたします」

 

「それでは、何かありましたら何なりとお呼びください、お嬢様」

 

シャルロット、ラウラ、一夏、桐也。最早このカフェの救世主と化した4人。

 

「あのっ、追加注文いいですか!?できれば金髪のメイドさんで!」

 

「コーヒー下さい!銀髪のメイドさんで!」

 

「こっちにもイケメン執事さんを一つ!」

 

「アロハのおにーちゃーん。ジュースおかわりー」

 

(((執事の格好なのにアロハの人って分かるのか!?)))

 

驚愕するシャルロット、ラウラ、一夏をよそに女の子にジュースを渡す桐也。

 

そんな混雑が2時間ほど続いた頃、その事件は起きた。

 

「全員、動くんじゃねえ!」

 

ドアを壊さんとばかりの勢いで雪崩れ込んできた6人の男たち。一瞬、何が起こったのか理解できなかった店内の全員だったが、次の瞬間に発せられた銃声で悲鳴が上がった。

 

「騒ぐんじゃねえ!静かにしてろ!」

 

男たちの格好はジャンパーにジーパン、覆面に銃。バッグからは紙幣が飛び出している。

見るからに強盗、しかも襲撃した後の逃走犯だ。

外を見ると警察機関が既に包囲網を作っていた。

 

「どうしましょう兄貴!このままじゃ」

 

「うろたえんな!こっちには人質がいるんだ。向こうも手は出さねえよ」

 

へへへっと銃を構えるリーダー格の男。他の5人もそれにつられて銃を構える。多種多様な武器を揃えている6人だが、ここに4人の超人がいることを知らない。

 

(2人はショットガン、2人はサブマシンガン、リーダーがハンドガン)

 

(他にも何か持ってるかもな)

 

(さてさて、どうしたもんか……ん?隊長さん大胆だねぇ)

 

桐也が店内の状況を確認しようと視線を動かして、そこでぎょっとした。

店内で強盗以外にただ1人立っていたのはラウラだった。よくも悪くも目立つ容姿のラウラ。案の定リーダーがやって来るの。

 

「おいお前。大人しくしろって聞こえなかったのか?それとも日本語が通じないのか?」

 

ラウラのこめかみにハンドガンを押し付ける。店内が騒つくがラウラは微動だにしない。やがて苛立ち始めたリーダーがトリガーを引こうとする。

 

「撃てるのか?」

 

「なんだと!?」

 

「人を撃つのが怖くてここまでオメオメと逃げてきたのだろう腰抜け。そして人質を取らないと反抗できない」

 

「こ、このガキッ!」

 

「撃っていいのは、撃たれる覚悟があるやつだけだ」

 

本気でトリガーを引こうとするリーダーの男。しかしそれより早くラウラが動く。それを見て3人は「やれやれ」とため息をつきながら戦闘に参加する。

 

すぐにリーダーを膝蹴りでダウンさせるラウラ。

ショットガンの男の肩に、顔を赤らめながら踵落としを叩き込むシャルロット。この時ばかりは執事服が良かったと感じた。

落ちたショットガンを拾いもう1人のショットガンの男をショットガンで殴りつける桐也。それでも倒れない男に回し蹴りを叩き込む。男はきりもみ回転しながら地面に倒れた。

一方1人で2人を相手する一夏。ペガサスの力で銃弾を見切り、マイティの力で相手を蹴り飛ばす。格闘戦に長けるマイティの力ならあっという間に制圧できた。

 

「こっちは大丈夫!そっちは!?」

 

「問題ない。制圧完了」

 

(おい、今クウガの力使ったろ?)

 

(じゃないと無理無理!一般人に軍人レベルを求めるな!)

 

「どうしたの2人とも?」

 

「「いやいやなんでも!?」」

 

しばらくの間、静まりかえる店内。それもそうだ、まさか店員、しかもアルバイトがこの状況を鎮めたのだ。

やがて助かった実感が今になってハッキリしたのか、突然店内が騒がしくなる。警察機関も店内の様子が変わったのを見て詰めかけてくる。

 

しかし、事態は再び一変する。

 

「捕まってムショ暮らしになるくらいなら、いっそ全部吹き飛ばしてやらあっ!」

 

ダウンしていたリーダーが起き上がったのだ。ジャンパーを左右に広げると、そこにあったのはプラスチック爆弾の腹巻きだった。

形勢逆転。店内はさっき以上にパニックになる。しかし、

 

「諦めが悪いな」

 

2人の男から奪い取った拳銃を放り投げる一夏。シャルロットとラウラはそれを受け取って高速5連射。的確に起爆装置と爆薬の信管、そして導線を撃ち抜いた。男に当たってないところを見ると、流石は代表候補生だと思う桐也であった。

 

「まだやる?」

 

「次はその腕を吹き飛ばす」

 

「じゃあ俺はその足を吹っ飛ばす!」

 

「甘いぞ名人。自分はあんたの《ピーーー》を吹き飛ばす」

 

3人の容赦ない発言と1人のありえない発言に、男は戦意を喪失した。

 

 

8月3日(木)PM08時30分

 

「楽しかったねラウラ」

 

「そ、そうだな……」

 

「いろんなことがあったね」

 

「う、うむ……」

 

「ラウラの服買ったり、バイトしたり、それから」

 

「な、なあシャルロット」

 

「どうしたの?」

 

「い、いつまで、この格好なのだ?」

 

今現在、2人の寮部屋。夕食を済ませた2人は今日買ってきたパジャマ姿になり、またまた買ってきたクレープを食べている。それもシャルロットがラウラを膝の上に乗せて抱きしめた状態でだ。

 

「そりゃあ……ずっと?」

 

「な!?ずっとだと……ほ、ほら食べづらいだろ?」

 

「いいよ別に、気にしない。ほらクリームがついてる」

 

ラウラの頬を舐めるシャルロット。恥ずかしがるラウラをよそに幸せゲージが振り切ったシャルロット。このまま襲いかねないレベルだ。

 

そんな時にドアをノックする音が聞こえる。

 

「はーいどうぞ〜」

 

女子寮特有のフランクさで答えるシャルロット。しかし入ってきた客が客だった。

 

「………なんだ、取り込み中なら出て行くが」

 

「助けてください花家先生!!」

 

花家タイガ。この学校の三大ゲーマーなどと呼ばれている。1人は木綿季先生、もう1人は桐也だ。

 

「どうしたのタイガ先生?」

 

「ああ、大した用事じゃないんだが」

 

「「!?」」

 

差し出したのは@クルーズの袋だった。中にはクッキー。思い当たる節がある2人は汗を流しはじめる。

 

「なんでも強盗犯が起こした事件に巻き込まれた客にクッキーを配ってたみたいだ。俺は巻き込まれてないんだが、店長が押し付ける形でな」

 

「へ、へえ〜」

 

「そ、そうなんですか」

 

「まあ、俺は食わねえからやろうと思ったんだ。じゃあ、とりあえずお茶でも入れるか?」

 

「あ、いいよ!僕が用意するから」

 

「テメェの手じゃ無理だろ。大人しく座ってろ猫」

 

「猫!?猫……猫かぁ……えへへ」

 

「いかん!シャルロットの幸せゲージが振り切れた!避難だ花家先生!」

 

「なんだか分からんが、シャルがめんどくさくなってるのは分かった。退避だ!」

 

急いで部屋を飛び出す2人。そんな中シャルロットは1人ベッドの上で幸せオーラを纏っていたという。




シャルやラウラみたいな友人が欲しい。まあいても声をかける勇気はないのですが!可愛すぎるんだよ!

次回はセシリアの悩み編です。悩みを聞くのはキリヤんと本音、そして鈴。果たして3人はセシリアの悩みを解決できるのか!?

ではsee you next game!


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第33話 S・O・O

ノリと勢いの悩み相談。鈴はツッコミきれるのか!?


「私もあだ名で呼んでほしいです!」

 

「「………ふ、ふーん……」」

 

「うまうま」

 

なんとも言えない空気が食堂に立ち込める。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月5日(土)AM09時13分

 

「いきなりどうしたんだセシリア」

 

「そう、それです!!」

 

「どれよ!」

 

あたし、クジョキリ、本音が朝食を食べている最中に突然セシリアが言ってきたのだ。いきなりすぎて朝ごはんを吹き出しそうになった。

 

「ですから私も『セシリア』ではなく、あだ名で呼んでほしいのです!」

 

「つまり…セッシーとか?」

 

「雑ですね、却下です」

 

「「めんどくさっ!!」」

 

この面倒さ、そういえばセシリアはこういう奴だと再確認させる。イギリスから帰ってきたのが昨日。それまで少しばかりセシリアとは会うことがなかった。イギリスで何かあったの?

 

「どうして、いきなりそんなことを?」

 

「私、イギリスに帰った時にチェルシー……私のメイドですが、彼女にこの学校生活のことを伝えたのです。それに対してチェルシーはこう言ったのです、

 

『お嬢様……影とキャラが薄いですね』

 

と!!」

 

鬼気迫る表情のセシリアはかなりキャラが濃いと思う。

 

「確かに、男性IS操縦者の一夏さん。仮面ライダーのキリヤんさん。サムライガール箒さん。ツッコミキャラの鈴さん「おいこら!」ボクっ娘シャルロットさん。銀髪眼帯愛され妹キャララウラさん。どう考えても『ですわ系お嬢様キャラ』では太刀打ちできないのですわ!」

 

「お、おう……」

 

「大変ねセシリアも……」

 

ていうかあたしは好きでツッコミキャラをやっているわけではない。周りのボケが多すぎるからこうしてツッコミに徹しているだけであって、決してツッコミが好きなのではない。出来るならボケもやりたいのに!

 

「ですから!是非お二人には私のあだ名をつけてほしいのです!」

 

「そんなこと言われてもなあ」

 

クジョキリも困っている。当然あたしも困っている。本音はまだ朝食を食べている。結構自信のあるセッシーが却下された以上相当考えなければいけない。

 

「名人とかには聞いたの?」

 

「いえ……その、一夏さんのネーミングセンスはちょっと…」

 

「さりげなく拒否したわね」

 

「一応他の方からも意見はもらいましたの。しかし『ブルー』や『BT兵器の人』。挙げ句の果てには『チョロイン』などという訳の分からないあだ名まで!せめて理由を言って欲しかったですわ織斑先生!」

 

千冬さんにも聞いたんだ。となると残りはあたしたちか。ん?でもここにはあたし、クジョキリ、本音がいる。なのにあたしとクジョキリにしか聞かない。てか本音はセシリアのことセッシーって呼んでるじゃん!

 

「本音さんはいつもセッシーですからノーカンですわ。ですのでいつもどおりでお願いしますね」

 

「オッケ〜セッシー」

 

「「セシリア……」」

 

「では!お二人も早く!」

 

いそいそとフリップとペンを渡してくる。これに書けってか?めんどくさいわね……普通にセシリアでいいじゃない。

 

「でーきた」

 

「早っ!?」

 

「お早いですわねキリヤんさん。ではどうぞ!」

 

「えーっと……『オルコットン』!」

 

フリップにはオルコットンと書かれて……ってその前にグチャグチャにされてるけど『メシマ』って文字が見える。こいつ『メシマズ』って書こうとしたわね。

 

「微妙ですわね。30点」

 

「30点!?点数までつけるのか!?」

 

「次は鈴さんですわね」

 

「そうなると難しいわね………できた!」

 

「マトモなのを期待していますわよ」

 

「ふっふっふ………『オルトリア』よ!」

 

「オルトリア……セシリアのリアとオルコットのオル・トを引っ付けたのか」

 

中々いいんじゃない?結構自信あるんだけど!

 

「わ、悪くありませんわね……し、しかし!私のあだ名はそう簡単に決められていいものではないのです!」

 

「めえぇんどぉくせえぇなあぁぁ!!!」

 

あ、クジョキリ壊れた。クジョキリの叫びにセシリアは驚き、涙目になってオロオロしている。

 

「セシリアはセシリアでいいじゃんか!箒だって箒のままだよ!?だからって箒はあだ名をつけてほしいなんて言わないよ?なのにセシリアってばあだ名あだ名って………あだ名が全てじゃねええんだよおお!!」

 

「す、すみません!」

 

「そう思ってるなら………明日からツインテ&ポニテ&縦ロールですごすように」

 

「は、はい……「って何この茶番!!」

 

「おいおいリンリン、こっからだろ?」

 

「なによツインテポニテタテロールって!新しいカフェのメニューか!」

 

「鈴さん……それは面白くありませんわよ?」

 

「ウケ狙いで言ったんじゃないわよ!」

 

いよいよ疲れてきた。ボケが2人だけでこんなに疲れるなんて。やっぱりクジョキリのレベルが高いのか……本音がドーナツに夢中で助かった。

 

「決められないなら、全部くっつければいいんだよ〜」

 

「はい来たー。もうあたしツッコミいれないわよー」

 

「つまり『セッシー・オルトリア・オルコットン』ってことか?」

「頭だけとって『セオオ』だね」

「『(S)ッシー・(O)ルトリア・(O)ルコットン』つまり『SOO』!動物園みたいですわね」

 

ツッコミをいれるのもめんどくさい。それ程までにこの3人の世界は色濃く広がっていた。

 

ラーメン……食べるか。

 

 

「鈴さん!鈴さん!」

 

その夜、食堂に向かう途中でセシリアに出会う。結局あの後あだ名は決まらず、クジョキリが出かけるという理由でお開きになった。

 

「遂に決まりました!私のあだ名!」

 

「そ、そう。聞かせてもらおうかしら」

 

「はい!『セブン・シリアル・リア・オルタナティヴ・コットン』!略して『セシリア・オルコット』ですわ!」

 

「…………変わってないじゃない」

 

結局セシリアはセシリアで通すことになった。




あだ名をつけてもらうより、親がつけてくれた名前を誇ろう。そんないい感じで終わってみる。
前回のシャルとラウラ編と比べると圧倒的に短い。いかに適当かが伺えるだろう。もっと文章力があれば……

次回はみんなでゲーム!part1!

ではsee you next game!


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第34話 DKH・W キャラメイク編

FGOがコンビニとコラボということで行って来たのよ。色紙ほしくて。いやユン●ル高すぎワラエナイ。ああゆうドリンクは買わないので値段にビックリしたぞ!二本買ったけどな!一番安いやつで二本1000円だった。おかげで色紙はコンプだぞ!

今回はみんなでゲーム編!まずはキャラメイク!


8月7日(月)PM01時00分

 

「ドラゴナイトハンター・ワールド?」

 

『ドラゴナイトシリーズのオンライン版だ。名人も聞いた事はあるんじゃないか?』

 

部屋で過ごしているとキリヤんから電話がきた。キリヤんから持ちかけられたのはオンラインゲームの誘いだった。ドラゴナイトシリーズは勿論知っている。古くは10年ぐらい前から発売されているゲーム。簡単に言えば狩りゲーだ。

 

『いろいろ声かけてさ、結構人数集まったからやらないか?』

 

「いいけど、ソフトがないぞ?」

 

『なんなら自分のやるよ。景品でこの前当たったんだ』

 

「そっか。今部屋か?なんなら取りに行くよ」

 

『んじゃ待ってるぜ』

 

その後キリヤんの部屋に取りに行ったら、既にキリヤんはスタンバイ済みでのほほんさんに色々レクチャーしていた。俺もソフトを受け取って部屋に戻った。

 

「んじゃ、早速始めるか!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

注意!ここからはゲーム画面の中の出来事です。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

キャラを作らないとな……まあ普通に男で、名前は……『ワンサマー』でいっか。ジョブは剣士っと。みんな気づくだろ。てかキリヤん誰を誘ったんだ?人数集まったとか言ってたけど。

 

ーこのキャラでゲームを開始しますか?ー

 

→ーはいー

ーいいえー

 

よし、始めるか!

 

〜ロード中〜

 

◇始まりの街◇

 

結構人がいるんだなこのゲーム。流石人気ゲーム。みんな強そうだな。まあ、まずはみんなと合流しないとな。確か中央広場にいるって言ってたな。

 

?「すまない。中央広場とは何処だろうか?」

 

ん?話しかけてきたな。いかにも侍っぽいキャラだけど……ん?このキャラネーム……もしかして、

 

ワンサマー「箒か?」

 

?「ん?確かに箒だが」

 

ワンサマー「言い方が悪かったな。篠ノ之箒か?」

 

?「何故わかった!?」

 

ワンサマー「いやキャラネーム箒にしてたら普通気づくだろ!」

 

箒「ん?もしかして一夏か?」

 

侍っぽいキャラの正体は箒だった。確かに生真面目な箒なら名前ってあったら迷わず箒と書きそうだ。とりあえず注意しとくか。

 

ワンサマー「キャラネームで本名は特定されることがあるから、名前を変えることをオススメするぞ」

 

箒「どこでかえるんだ?」

 

ワンサマー「オプションからできるぞ」

 

箒「そうか、名前を変えてくる」

 

そう言って箒は少し離れていく。こうなったら色々と他のメンバーも予想できてきたぞ。

 

?「お待たせしましたわ」

?「待たせたわね!」

?「やっぱり一夏だったんだね」

?「ワンサマー……成る程、一夏か」

 

次々に声をかけてくるキャラ。うん、なんとなく予想できたぞ。

金髪のアーチャーはセシリアか。キャラネームは……『オルトリア』。この前言いふらしてたアレか。

ツインテの格闘家は鈴か。キャラネームは『コウリュウ』。専用機の甲龍から付けた名前か。

金髪の魔法使いはシャルか。キャラネームは『シャルル』。男装時期の名前か。なんだかんだ気に入ってんだな。

銀髪のバーサーカーはラウラだな。キャラネームは『ラビットジョーカー』。なんかカッコいいな。

 

オルトリア「すぐに分かりましたわ一夏さん!」

 

シャルル「ここではゲームだから、出来るだけキャラネームの方がいいのかな?」

 

コウリュウ「そっちの方がいいんじゃない?雰囲気も出るし」

 

ラビットジョーカー「そうか。なら今後はキャラネームで呼ぶとしよう」

 

なんだかんだで分かりやすい姿だよなみんな。俺も結構似せた姿だけど、みんなのも結構キャラパーツが揃ってるよな。

お、そうこうしてたら箒が帰ってきたな。キャラネームは『サムライガール』。うんこれなら分からないんじゃないか?

 

サムライガール「すまない、待たせたな」

 

コウリュウ「遅いわよ箒」

 

コウリュウ「ってサムライガールか笑」

 

サムライガール「よく分かったな鈴」

 

サムライガール「いやコウリュウの方がいいのか?」

 

ワンサマー「まあゲームの中だからな。キャラネームの方が雰囲気がでるだろ」

 

こうしてなんだかんだでみんな揃った。あとは主催者のキリヤんとのほほんさんを待つだけだな。

 

?「待たせたなみんな」

 

?「お待たせ〜」

 

次にやって来たのは……可愛らしい赤髪の騎士、そして色黒のゴリゴリマッチョメン。ジョブはトレジャーハンター。あんな見た目でトレジャーハンターなのか……。

 

キャラネームは騎士が『アンリミテッド』。ゴリゴリマッチョメンが『ヘラクレス』。これは騎士がのほほんさんで、マッチョメンがキリヤんか。いかにもやり込んでる見た目だもん。

 

アンリミテッド「見た目じゃ分かんねえか。自分が桐也」

 

ヘラクレス「私が本音だよ〜」

 

チャットではみんな書かなかったけど、こう思ったはずだ。

 

『普通逆じゃね!?』

 

と。

 

こうして、俺たちいつもの仲良しメンバーによるクエストが始まろうとしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ワンサマー(一夏)Level1

ジョブ・剣士

スキル・なし

 

サムライガール(箒)Level1

ジョブ・侍

スキル・なし

 

オルトリア(セシリア)Level1

ジョブ・アーチャー

スキル・なし

 

コウリュウ(鈴)Level74

ジョブ・格闘家

スキル・龍の息吹(一定時間攻撃力大アップ、防御力ダウン)

 

シャルル(シャル)Level13

ジョブ・魔法使い

スキル・指輪の魔法(回復魔法使用時、味方の攻撃力アップ)

 

ラビットジョーカー(ラウラ)Level1

ジョブ・バーサーカー

スキル・狂化(体力一定量低下で攻撃力小アップ)

 

アンリミテッド(桐也)Level120

ジョブ・騎士

スキル・天使の大号令(チーム全体の攻撃力、防御力大アップ)

最速の証(移動速度アップ)

遊び人(敵の注意を引きやすくなる)

 

ヘラクレス(本音)Level30

ジョブ・トレジャーハンター

スキル・レアドロップUP(高ランクアイテムがドロップしやすくなる)

 

 

 

ワンサマー「いやキリヤんレベル高すぎww」

サムライガール「ww」

オルトリア「ww」

コウリュウ「ww」

シャルル「ww」

ヘラクレス「ww」

ラビットジョーカー「wwとはなんだ?」

アンリミテッド「レベル高すぎてスマンww」




こんな感じで一夏たちのクエストが始まる!

キリヤんは当然ですが、鈴は元からプレイ済み、シャルは時々タイガ先生と一緒にオンライン、本音はキリヤんのおかげでレベルが上がってます。

次回は遂にクエストへ!まさかの助っ人登場?
ではsee you next game!


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第35話 DKH・W クエスト編

みんなでゲーム編!今回はクエストへゴー!


8月7日(月)PM02時30分

 

チュートリアルを終わらし、少しだけみんなとクエストを行なった。まあほとんどはキリヤん…アンリミテッドの一撃で終わっていくのだが……てか強すぎだろ!

 

アンリミテッド「もう少し難易度上げるか?」

 

ラビットジョーカー「操作も慣れたからな。大丈夫だと思うぞ」

 

シャルル「そうだね。少しだけなら大丈夫だよ」

 

コウリュウ「あたしも大丈夫!」

 

オルトリア「アンリミテッドさんがいるなら安心ですわ」

 

サムライガール「それなりに張り合いのある奴でも大丈夫じゃないか?」

 

ヘラクレス「私もおっけ〜」

 

ワンサマー「俺も行けるぜ。新しいスキルも試してみたいし」

 

パーティーメンバー全員が了承したのを確認したアンリミテッドはクエストを受注してきた。因みに俺はレベル32、サムライガールは34、オルトリアは30、コウリュウは87、シャルルは49、ラビットジョーカーは38、アンリミテッドは143、ヘラクレスは60となっている。まあなんとかなるだろ。

 

ーアンリミテッド さんがクエストを受注しましたー

 

ー龍騎士グラファイト・最終決戦(ワールド編)ー

ー制限時間50分ー

ー推奨レベル・200ー

ー勝利条件・グラファイトを倒す、制限時間まで全員が生存ー

ー敗北条件・パーティー全体で3回力尽きるー

 

いやいやおかしいだろ!龍騎士グラファイトっていったらドラゴナイトハンターシリーズ全作を通じてのライバルキャラだろ!?しかもメチャクチャ強すぎて後々のアップデートで下方修正されたって聞いたぞ。

しかもワールド編って…お前全作通じて何回最終決戦してんだよ!しかも推奨レベル200って誰も到達してないんだけど!?このゲームレベル上限150じゃなかった?

 

コウリュウ「グラファイトとか無理ゲーじゃない?初級でも勝てなかったんだけど!?」

 

アンリミテッド「自分も最近『黒兎副官』さんと『Dr.スナイプ 無免許医くん』さんと協力してやっとクリア出来たからな」

 

シャルル「それ強すぎない?」

シャルル「てかそれタイガ先生のアカウントだよね?」

 

アンリミテッド「マジか笑」

 

ラビットジョーカー「その黒兎副官も聞いたことあるぞ」

 

ワンサマー「このゲーム知り合いばっかかよ笑」

 

しかしタイガ先生もかなりのゲーマーだ。きっとやり込んでるはずだ。そのタイガ先生とキリヤん、それと黒兎副官さん(多分凄腕ゲーマー)が協力してやっとのことで勝てた相手に勝てるのか?

 

サムライガール「強いならそれだけ燃えるというものだ」

 

アンリミテッド「そういうことだ。勝てないクエストなんて運営は作らねーよ。なんとかなる!」

 

根拠のない2人の自信。不安しかないぞ……。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーフィールドに移動していますー

ー到着しましたー

ー龍騎士グラファイト・最終決戦(ワールド編)ー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー制限時間は50分ですー

 

フィールドに到着した。しかしこのクエスト、俗に言うG級と呼ばれる最高難易度のクエストだ。このクエストの特徴として、まずクエストの開始場所はいつも違う。今回は隣にヘラクレス、つまりのほほんさんがいる。他のみんなの姿は見えない。

 

ーサムライガールさんが力尽きましたー

ー残り挑戦回数は2回ですー

 

早っ!?まさか箒のいた場所にグラファイトがいるのか?しかし燃えるとか言ってたサムライガールがこの様とは。下手したらサムライガール(笑)とか呼ばれるぞ?

 

サムライガール「すまない。グラファイトはエリア8だ」

 

アンリミテッド「ドンマイ。ちなエリア3」

 

ラビットジョーカー「私はエリア4だ。コウリュウも一緒だ」

 

オルトリア「サムライガールさんがベースキャンプに猫に運ばれてきました笑」

 

サムライガール「喧嘩を売ってるのか?( *`ω´)」

 

ワンサマー「俺はエリア6だ。ヘラクレスも一緒」

 

アンリミテッド「一番近いのは名人だから、一旦エリア6に集合」

 

あれ?こうなったらシャルルがいないぞ?

 

ーシャルルさんが力尽きましたー

ー残り挑戦回数は1回ですー

 

シャルル「ごめん」

 

……勝てるの?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ークエスト残り時間 10分ですー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

コウリュウ「回復アイテム尽きたー!」

 

シャルル「回復するよ!」

 

なんだかんだ残り10分になった。このクエストは制限時間まで全員が生存してたらクリアになる。アンリミテッドが最前線、俺とサムライガール、コウリュウが交代で切り替わりながら接近戦、オルトリア、シャルル、ラビットジョーカー、ヘラクレスが遠距離から援護でなんとか耐えてきた。

 

しかしグラファイトもおかしい強さだ。流石推奨レベル200。HPゲージが3本と本数は少ない。でもその量がおかしい。ゲージ一本六百万とか多すぎだろ!

しかもスキルで二百万回復すると同時に永続攻撃力特大アップを使ってくる。そのかわり防御力が下がるが……本当に下がってるのかこれ?

 

それにしても、制限時間まで全員が『生存』というのもおかしな話だ。このゲームは力尽きてベースキャンプに戻ることはあっても死ぬことはない。つまり俺がやられても俺はベースキャンプに戻るだけで、現場に戻ることは可能だ。なのに生存か……なんか裏がありそうだが。

 

グラファイト「ぐっ…やるな貴様ら。ならば俺の真の力を見せてやろう」

 

アンリミテッド「この攻撃は絶対当たるなよ!」

 

そうこうしてたらグラファイトの特殊イベントが発生した。絶対当たるなって…結構難しいぞ?グラファイトの斬撃を躱していく俺たち。しかし次第にその勢いは増していき、遂に俺、サムライガール、オルトリア、シャルル、ラビットジョーカー、ヘラクレスに当たってしまった。てかアンリミテッドとコウリュウ以外当たってた!

 

次の瞬間一気にHPゲージがゼロになり、その場に全員が倒れた。しかもベースキャンプに戻らない。もしかしてこれが死亡か?初めてなんだけど!なるほど、だから生存だったのか。こうなったらグラファイトを倒すしか手がないぞ?

 

アンリミテッド「ちょ、2人だけとかキツイんだけどw」

 

コウリュウ「やるしかないでしょ!」

 

しかし2人で倒せるはずもなく、最後はアンリミテッドが力尽きてクエストは失敗した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ークエストに失敗しましたー

ー町に戻りますー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アンリミテッド「そろそろ落ちるわー」

 

ーアンリミテッドさんがログアウトしましたー

 

それからいくつかのクエストをこなしていき少しずつレベルを上げていった。時刻はもうすぐ18時。パーティーメンバーも俺以外がログアウトした。さて、俺はどうするかな……

 

?「あのすいません。今時間ありますか?」

 

声をかけてきたのは1人のプレイヤーだった。プレイヤー名は『M』。レベルは10とチュートリアルを終えたぐらいだな。

 

M「お時間があればキークエストに協力してほしいのですが」

 

ワンサマー「いいですよ。時間もありますから」

 

M「ありがとうございます(^_^)」

 

ということでMさんとクエストに行くことになった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー制限時間は50分ですー

 

クエストはバケガニ一体の討伐だった。確かアンリミテッドが一撃で終わらしたから、相手の行動パターンとか分からない。

それでも俺のレベルは53。なんとかなる相手だな。

 

M「回復ありがとうございます!」

 

ワンサマー「いえいえ(^_^)」

 

Mさんもきっと色んなゲームをしているのだろう。動きに無駄がない。レベルが10しかないのに凄いな。

 

M「トドメお願いします!」

 

ワンサマー「了解!」

 

ーワンサマーさんのスキル『ゼロダウン・ホワイトナイト』が発動!ー

ーバケガニに六万ダメージー

ーバケガニの討伐に成功しましたー

ーあと1分で町に戻りますー

 

クエストも苦労することなく簡単に終わった。初級のクエストだし俺のスキル一回使えば一瞬で終わってたな。

 

M「今回はありがとうございます!」

 

ワンサマー「いえいえ。また一緒にクエストに行きましょう」

 

M「その時までレベル上げときますね!」

 

ワンサマー「俺も頑張ってレベル上げますね(^_^)」

 

M「お互い頑張りましょうね!未確認さん!」

 

!?なんで………。

 

M「あ、それともこう言った方がいいですか?」

 

 

「仮面ライダークウガ」

 

後ろを振り返る。そこには誰もいない。しかし確かに後ろから声が聞こえた。

 

「誰か…いるのか…?」

 

返答はない。それに安心していいのか複雑な気分だ。俺がクウガであることを知っている?それはキリヤんだけだ。それ以外に誰かに見られたなんてことはないはずだ。変身の時は細心の注意を払っている。

 

「……一体、誰なんだあんたは」

 

俺は画面を見る。そこには『ーMさんかログアウトしましたー』と表示されていた。




グラファイト、討伐失敗!しかしこれで終わる彼らではない!次はリベンジだ!
あと前回『まさかの助っ人』などと書いたけど、グラファイト戦を一回で終わらせるのはあれなんで次回のゲーム編で助っ人を出します。

そして謎のプレイヤーM。イッタイダレナンダ……

次回は大人の1日を密着!千冬とタイガと木綿季の1日を密着です。

ではsee you next game!


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第36話 密着!生徒は見た!先生の1日!

密着取材的な?


8月8日(火)

 

本日は、一部の生徒の証言から判明した、3人の先生の1日を追っていこうと思う。

 

 

AM04時30分

 

織斑先生の朝は早い。今は夏休みで生徒は休みとはいえ、先生にとっては休みではない。休日にもやることはあるのだ。

織斑先生はそんな1日をまず朝のランニングからスタートする。

 

と、その前に。

 

「……また入ってきたのかコイツは」

 

織斑先生が布団をめくると、そこにはネコのパジャマを着たラウラ氏が丸まっていた。彼女が転校してきてから一ヶ月後、つまり臨海学校の前ぐらいから織斑先生の布団に入ってくるようになったらしい。

 

ラウラ氏曰く『家族になれば仲良くなれると一夏から聞いて。家族といえば添い寝とクラリッサから聞いて』らしい。

これに関して一夏氏は『どうして千冬姉と仲が良いって聞かれたから、それは家族だからだ、って言ったんだよ』

 

寒い冬なら織斑先生も考えたが、時期は夏。一緒のベッドで寝るには暑苦しかった。よって織斑先生は部屋のセキリュティーを色々といじったが、ラウラ氏には通用しなかった。

 

「おい、起きろ」

 

「……ん…」

 

「クソッ………可愛い」

 

ラウラ氏に布団を被せると織斑先生は着替え始める。いつものスーツではなく、動きやすいジャージだ。それも織斑先生の大好きな俳優『霧ヶ峰藤五郎』のファンクラブ限定直筆サイン入りジャージ。これが汚れると恐らく次の日にはIS学園は存在しない。

 

「よし、行くか」

 

織斑先生のランニングコースはかなり長い。IS学園がある人工島、二週らしい。距離はフルマラソンよりも長い。それを日課にしているのだ。そりゃあ人間やめれるわけだ。

 

因みに織斑先生が走っているとすれ違う部活は必ず道を開ける。何故なのか聞いて見たところ『織斑先生の顔が死にそうだから道を譲らなくてはいけない気がして』らしい。

つまり、織斑先生もまだ人間だった。

 

 

AM06時30分

 

花家先生の朝は、まずゲームのログインから始まる。一通りのゲームにログインしておかなくては気がすまないのだ。いつメンテナンスがあるか分からないから時間が少しでもあるうちにログインする。これは九条氏の言葉である。

 

「まだログインしてないのかアイツ……今日は9時からメンテだぞ」

 

フレンドの管理も日課になっているようだ。彼自身元医者であった為に、フレンドが長い間ログインしていないと心配になるのだ。

 

ベッドから降りてテレビをつける。この時間はいつものニュースを朝ごはんの時間まで眺めている。

花家先生はいつも寝間着の黒いTシャツに迷彩柄のズボンに保健室の白衣をまとっている。つまり今は黒いTシャツと迷彩柄のズボン。起きてから夜お風呂に入るまで着替えないのだ。単に面倒くさがりである。

 

『それでは、今日のラッキージャンケン運試し〜!ジャンケンに勝てば、良いことあるかもよ?それじゃあ、ジャンケン…』

 

「ぽん」

 

「ポオオオオンッ!!!」

 

「うわあっ!?」

 

ドアを勢いよく開けたのは、シャルロット氏。手はチョキになっている。因みにテレビのアナウンサーはグー、花家先生はパーになっている。

 

「タイガ先生、また寝起きの格好でウロウロするつもりでしょ!寝ている間にも汗かいてるんだから着替えてよ!」

 

「うるせえなぁ……別にお前が困ることないだろ」

 

「困るよ!……だって、最近先生………臭いよ?」

 

「!?」

 

まさかの生徒からの臭い宣言。花家先生のHPはゼロになった。

 

「これ借りてくね〜」

 

シャルロット氏はパーティーゲームを回収すると部屋から出て行った。部屋にはお天気お姉さんの声だけが響いていた。

 

 

AM09時50分

 

先生が全員早起き、というわけではない。

現に更式先生は今起きたところだ。未だに寝ぼけ顔。髪もボサボサ。でも部屋はキッチリ片付いている。

 

「………眠い」

 

目をこすりながらゲームを起動する。彼女もまた朝起きたらログインする人間である。そしてそのままプレイするので時折他のゲームにログインすることをすっぽかすことがある。その都度時が戻ればいいのに、と考えるらしい。

 

「んげ!?今日9時からメンテじゃない!!もーなんで言ってくれないのよタイガ先生は!!」

 

1人嘆く更式先生。そんな彼女の部屋をノックする音が響く。

 

『おい木綿季、起きてるか?』

 

「千冬?今起きたとこ」

 

『さっさと朝ごはん行くぞ』

 

ハイハイと部屋を出ようとする。しかしこの時彼女は気づいていなかった。自分の格好に。上は白いシャツ、下は履いてなく下着が丸見えだ。更にタイミングが悪いことにこの部屋を通り過ぎる2人がいた。

 

『おはよう千冬姉』

 

『ういっす織斑センセー』

 

一夏氏と九条氏である。実は更式先生の部屋は一般生徒と同じ並びにある。そして2人が食堂に向かうのに必ず通る道でもある。

 

『おはよう2人とも。今日は早いんだな』

 

『たまには男2人で出掛けようぜって』

 

『こういう付き合いも大事なんだよ』

 

この会話が聞こえた瞬間に、やっと自分の姿に気がついた更式先生。しかし部屋の自動ドアは無慈悲にも開いてしまう。その瞬間2人にもこの姿が見えてしまった。

 

「あ…」

 

「ええっ!?」

「木綿季さんはもうちょっと周りの目も気にしなよ?」

「馬鹿め……」

 

「もう!見ないで変態ッ!!」

 

ではここで臨海学校開始前の九条氏と更式先生の会話を思い出そう。

 

『結構飛ばしてきたからな。もう肩バッキバキ。もう少し痩せた方がいいんじゃない?』

 

『そう?これでもスタイルには自信あるんだけど』

 

九条氏がここでセクハラまがいの発言をしているが更式先生はサラッと流している。つまりこの変態扱いされているのは一夏氏だけである。

 

「それ、ひどくね!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

AM11時50分

 

織斑先生は書類をまとめ、花家先生は基本保健室でカルテをまとめている。更式先生は外へ外出中だ。そんな3人が同じ時間に集まる。それはお昼ご飯の時間である。

 

 

「今日もカレーか?九条もロコモコばかり食べるが、お前もカレーばかり食べるな」

 

「ここのカレーが美味しいからよ。それに花家先生だって最近Bランチばっかりよ」

 

「これは健康的な定食だからな。お前みたいに偏ってない」

 

織斑先生はキツネうどん、花家先生はBランチ、更式先生はカツ&唐揚げカレーを食べている。因みにこの3人が同じテーブルを囲んで食べているのは珍しい光景でもない。この3人プラス山田先生が食事をしていることもある。

因みに山田先生は実家に帰省中だ。

 

「ああ!またカレーをバカにしましたね!そういう人にはカレーのお裾分けです」

 

「あ!テメェ俺のエビフライにカレーかけやがったな!」

 

「食べてみてください」

 

「たくっ…………美味い」

 

「ですよね!ほら千冬もカレーを味わえ〜」

 

「黙れ、うどんにかけるな、インドに帰れカレーの化身!」

 

この生徒のような男女のやりとりを羨ましそうに眺める他の生徒たち。それもそのはず。何よりこのIS学園は女子校。今でこそ一夏氏と九条氏、花家先生がいるから普通だが、本来ならこんなやりとりは普通できない。

 

「しつこい奴には……ほらうどんの出汁だ」

 

「いやああっ!!カレーがうどんに侵されてる!!」

 

「バカばかりだ……」

 

などと言いながらも、きっと心の中ではここが心地いい居場所なんだと思っているに違いない。花家先生はそんな人だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

PM04時40分

 

仕事がひと段落し、それぞれがそれぞれの休息の取り方をする。

 

 

『月に代わって……成敗いたす!』

 

自室のテレビで霧ヶ峰藤五郎のドラマを見る織斑先生。しかもポテチを食べながら。最早晩御飯の支度前のお母さんである。

 

『またつまらぬモノを切ってしまった……か』

 

「カッコいいな………」

 

そして何を思ったのかベッドの上に立つ織斑先生。手には通販で買った安い木刀。980円の木刀と自慢していた。

そして木刀を構えて、

 

「魑魅魍魎跋扈するこの地獄変。織斑千冬はここにいる。さあさあ、罪を認めぬ愚か者や……月に代わって……成敗いたす!」

 

決め台詞と同時に木刀をふるう織斑先生。部屋にラウラ氏が訪れたのも知らずに……。

 

 

「なんだかんだ余ったな…」

 

他の先生のお土産のチーズケーキを食べていた花家先生。しかし思った以上に量が多く、1人では食べきれなかった。男が手をつけたモノを食べる女子はあまりいないと思う。それならと男子2人の元へ行こうとするが、

 

「そういや、今日は2人で出かけるって言ってたな…」

 

2人は今日はいないことを思い出す。それならと、最後の望みをかけて一つの部屋を目指す。その部屋からはテレビの音が少し聞こえるから住人はいるのだろう。そして花家先生はついいつもの癖でノックをした後、すぐにドアを開けてしまった。

 

「いるかシャル」

 

「いつもキラメク7つ星!狙った相手にシューティング!悪い子にはパイルバンカー!そう、オレンジの疾風をまといし私こそ!疾風魔法少女、マジカルシャルちゃん!なんダゾ!」

 

「………」

 

ベッドの上で決めポーズをするシャルロット氏。きっと花家先生には気づいている。7つ星のところから気づいている。それでも止まらなかった。止まれなかった。だからこそ花家先生はこう告げる。

 

「止まるんじゃねえぞ」

 

「早く出てってーーー!!!」

 

 

「ん?今シャルちゃんの部屋から叫び声が……ま、いっか」

 

部屋で恋愛ゲームをする更式先生。絶賛女の子攻略中である。現在のシチュエーションは『もうすぐ大会が迫っているなか、中々タイムが縮まらない女の子を励ます』王道シーンである。

 

『もうダメよ。私は……あの大会に出ない。出るだけ恥をかくだけなのよ!』

 

「なんだこいつめんどくさい奴だな……やっぱ前の女の子の方が素直で可愛かったな」

 

・そんなことはない!大会ならきっと実力がだせるさ!

・だろうな。恥をかくだけだ。やめとけ。

・そんなことより飯食いに行こうぜ。

 

「この選択肢……これか」

 

『そんなことより飯食いに行こうぜ』

 

『そんなこと?そんなこととはなによ!人が真剣に悩んでるのに!』

 

『だから、悩む暇があるなら飯食おうぜ?練習終わったなら、あとは飯食って寝る!……お前は優柔不断なんだから、勢いに任せとけ。それに恥かくのもいい経験だろ?恥で終わらせたらそこまでだ。それを次のバネに活かせるかどうかが大事なんだから』

 

『………君は、ホントサラッとそういうこと言うね』

 

ー彼女の好感度が上がったー

 

「…………早く『ときめきクライシス』作ってくれないかな社長」

 

どんなにクソゲーでも最後までクリアする。それが更式先生だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

PM10時50分

 

さて、ここまで先生方の日常を記してきたが、分かる人には分かっているだろう。お昼ぐらいから適当になっていると。ぶっちゃけめんどくさい。これも部長に言われなかったらやってない。

 

「お、ちゃんと書けてるね」

 

「部長に言われましたから。それにしてもここまで書いて後はどうするんですか?」

 

「特に決めてないわ。まあ残しといたらいざという時にネタに困らないでしょ」

 

「あとは就寝の部分なんですけど……私行きたくないです」

 

「え?どうしてよ」

 

「更式先生は兎も角、後の2人は命の危機を感じます」

 

「なるほどね……でも甘いわ!そんなんじゃ新聞部部長の座は渡せないわ!」

 

「いらないです」

 

「ま、ここは部長の私が本気を見せるしかないわね……じゃ、行ってくるZE!」

 

 

織斑先生は夜23時前には寝ている。ラウラ氏は恐らく日付が変わってから潜入しているらしい。

 

「誰だ貴様!」

 

「なんだとっ!!」

 

朝は恐らく寝ぼけて私には気づいていなかったみたいだ。流石お婆ちゃんから教わった忍術だ。

 

 

次に花家先生。

潜入しようとしたら部屋の前にシャルロット氏がいたらしい。

 

「今一夏と桐也とタイガ先生、ゲームで疲れて寝てるから。また今度お願いします」

 

流石花家先生の正妻だ。華麗に部長を撃退した。

 

 

最後に更式先生。

部屋に入ると、目が血走った更式先生がゲームをしていた。ブツブツと『イベント……イベント……』と呟いていたらしい。

その後、目があった更式先生に引き込まれて部長は夜通しゲーム地獄を味わったらしい。

 

 

以上、就寝時間が適当になったが、これが先生たちの日常である。

私は今から部長の看病があるので、これで失礼します。




ええ、途中から適当になりました!本当にすまない。思えばこういうのは普通の学校の日を書くのが一番ですね。

今回密着していたのは所謂謎キャラ。今後もその存在が出たり出なかったり?忍術を使ってたため千冬たちには気付かれず密着取材的な何かが出来てました。つまりこの謎キャラが最強……!

次回から遂に『平成ジェネレーションズ編』に突入!と言いたいところですが、その戦いにつながる前日談をまず書いていこうかなと。

ではsee you next game!


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第37話 一夏と箒のドキドキ肝試し

丁度一年前。この小説がスタートしました。
つまり1周年なわけだ!

こんな小説ですが、これからもよろしくお願いします!

今回は一夏と箒の肝試しデート?です!


「なるほど……これがこの世界のお宝、インフィニット・ストラトスか……前の世界のお宝も興味深いけど。これはこれで、楽しめそうだ」

 

訓練用の量産型ISを見て呟く男。その手には水色の変わった形の銃が握られていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月10日(木)AM01時00分

 

「第一回、チキチキ、IS学園、肝試し大会!!」

 

「しーっ!声がデカイですわ!」

 

鈴のそんな掛け声で始まった肝試し大会。時刻は夜中の1時。夏休み前から計画しており、俺としてはすごく楽しみだ。これに参加出来ないキリヤんとラウラは残念だな。

 

「ほんとあの2人、『明日は用事があるから寝る』なんて言っちゃってさ。今夜参加しなかったこと後悔させてやるんだから」

 

「まあまあ。あの2人もホントは参加したかったと思うよ」

 

「あのキリヤんさんが私たちの誘いを断るとは思いもしませんでしたが、それほどにまで大切な用事なのでしょうね」

 

今回参加したのは俺、箒、セシリア、鈴、シャル、のほほんさんの6人だ。開催場所はIS学園の1年生の学舎だ。今回特例で先生たちから許可がおりた。まあ夏休みなんだから1日ぐらいならいいんじゃない?的な感覚で許可が出たのだ。それで大丈夫かIS学園。

 

「んじゃ早速ペアに別れましょ。まあここは一夏と箒、あたしとセシリア、シャルロットと本音でいいかしら?」

 

「ん?俺はいいぜ」

「わ、私も大丈夫だ」

 

「さ〜んせ〜い」

「僕もそれでいいよ」

 

「では、決まりですわね」

「んじゃ、さっさと行って来なさい一夏。ビビって箒を置いてくるんじゃないわよ」

 

「バカ、死んでもするかよ」

 

というわけで始まった肝試し大会。その時俺は思いもしなかった。この肝試しが、まさかあんな戦いになるなんて。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「行きましたわ」

 

「よし、それじゃあ『一夏と箒をもっと引っ付けよう作戦』開始よ!」

 

ネーミングセンスを疑う作戦名。しかしこれ以外に名案が浮かばなかったから仕方ない。

実はこの肝試し大会。元々はみんなで楽しむ用の企画だったが、臨海学校後から付き合い始めた一夏と箒の距離感を見て鈴が、

 

『何よアノ『私たち初めての恋なんです』感は!見ててイライラする!さっさとイチャイチャしなさいよ!!』

 

などと訳の分からない事を言い始めて、それから企画が変更になった。まあ私としては楽しめるから充分だ。

 

そしてこの作戦、タイガ先生、織斑先生、更式先生の3人も全面協力してくれている。先生が生徒の恋路を支えるなんてドラマみたい。それほどまでに学校中から注目されていると捉えてもいい。

 

「千冬さん、一夏たちが第一ゾーンに入ります」

 

『了解、花家先生に連絡する』

 

無線機で会話する鈴と織斑先生。準備が整い過ぎのような気がする。

 

そして、第一ゾーン……そこには花家先生と更式先生が驚かせる役でスタンバイしている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第一ゾーン・理科室前

 

「怖かったら言ってこいよ?」

 

「ば、馬鹿者!怖いはずなどないだろ!」

 

そう言いながらも箒の顔は怖がってる。無理もない。このIS学園にも七不思議が存在する。その一つがこの理科室前にあるのだ。

 

なんでも『夜な夜な人体模型が自分の下の聖剣を探している』とか。そりゃ人体模型が動いてたら怖いし、ここは女子校だ。男の人体模型が夜な夜な自分の聖剣探してたら怖いだろ。一般男性なら即警察のお世話になる。

 

「い、一夏!歩くが早い!」

 

「え?って……動けてないじゃないか」

 

考え事をしていると、箒が理科室の手前から一歩も動けていなかった。

 

「ほら、大丈夫か?」

 

「て、手など繋がなくても大丈夫だ!」

 

「そうか、じゃ先行くぞ」

 

「ああ〜!手を繋いでくれ〜!」

 

うちの彼女が可愛すぎて命燃えそう。いやいやシャレにならないぞ。以前ならもっと粘ってから言ってきそうだが、今になってはこの有様だ。控え目に言って超可愛い。

 

「うわああっ!!?」

 

「「!!??」」

 

そんな時突如響いた叫び声。その声の主は真正面から走ってくる。スカジャンを着た……タイガ先生か?

 

「ま、待ってくれ!誤解だ!俺はやってねえ!!」

 

「何が誤解よ!!」

 

その後ろから来たのは……返り血で赤く染まってる衣装の木綿季先生。何してるんだこの2人は……。

 

「毎月毎月…アプリの課金額が馬鹿みたいに請求されるのよ。一ヶ月に十連ガチャ分だけって約束したよね〜?」

 

「し、した。それはした。でも今月は課金してねぇ!運営から詫び石300個くれたから課金してねぇ!」

 

「でもこれは貴方が課金したことになってるわよ?……それに、次限度額超えたら…………殺すって、言ったよね」

 

「ひ、ひいぃぃ!!」

 

「怖いの?でも私はね………毎月毎月この請求書を見るのが怖いのよぉ!!」

 

なんだこの茶番は……たしかになんか怖いけど…これはまた違ったジャンルの怖さだ。オバケとかそんなんじゃない。現実的な怖さだ。ほら、箒の顔も真顔になってる。

 

「貴方の指を切れば……課金出来ないわよねぇ!」

 

「嘘だ!俺は課金なんかしてねぇ!だれか俺の冤罪を証明してくれぇぇ!!」

 

「「あ、横失礼しまーす」」

 

俺と箒が通り過ぎた後も、その茶番は続けられたという……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『第一ゾーン突破!繰り返す!第一ゾーン突破!』

 

「なっ!?あの2人が負けたというの!?…くそっ、次はセシリアと本音か……大丈夫でしょうね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねえ〜セッシー、ホントに見たの〜?」

 

「間違いありませんわ!アレはこの学園の七不思議の一つ『理事長の銅像に落書きする怪盗D』に違いありません!」

 

「ホントかな〜?」

 

セシリアと本音が歩いていたのは、第二ゾーンの1年教職員室から離れた場所。そこでセシリアが七不思議の一つを見たという。

それを追いかけて追いかけて……今現在1年の寮の玄関前である。

 

「ねえ〜オリムーたち来ちゃうよ?」

 

「ムムム……仕方ありませんわ…もう一度見る機会もあるかもしれませんし、ここは戻りましょう」

 

「それじゃあ、急いで戻らないとね〜」

 

諦めて第二ゾーンに戻ろうとした2人。しかしその2人の前に2つの影が立ち塞がる。

 

1つは鎧武者。陣羽織にはレモンの柄が描かれている。

もう1つはフォーミュラカーの擬人化のような姿をしている。

 

そして2つに共通していたのは、ベルトをしていたことだった。

つまり、この2人は仮面ライダーなのだ。

 

「ど、どうして仮面ライダーがここに…」

 

「なんだか怖いよ…」

 

無言で迫る仮面ライダー。セシリアがISを展開しようとしたその瞬間、

 

「人が寝てんのに、邪魔してんじゃないよ」

 

間に割って入ったのは仮面ライダーレーザーLv3、桐也だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『おい、いつの間にか第二ゾーン突破されてるぞ!私の第三ゾーンまでもうすぐだ!』

 

「ウッソ!?……何やってんのよあの2人…千冬さんはそのままお願いします。あたしたちも移動するわよシャルロット!」

 

「りょーかい。ワクワクするね!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ふと思った。俺たちって……まだデートしてないなと。更に思うと、俺、箒に誕生日プレゼント渡してなかった……。

 

「なあ箒。今度デートでも行くか?」

 

「な、ななな!何を言って、いいいいいるでしょうか?」

 

「動揺しすぎだろ……まあ予定があるなら無理強いはしないけど。時間があるならどっか出かけようぜ」

 

「そそそそうだな!うん、そうしよう!」

 

そうとなればキリヤんに少しでも話を聞いておくか。確か前にのほほんさんとデートに行った時は、サイクリングをしたとか行ってたな。のほほんさんの趣味がサイクリングとは意外だった。確かに自転車置いてたな、と今更思う。

 

「さて、この教室にある本を持って帰ればクリアだな。鈴たちも待ってるだろうし、さっさと帰ろうぜ」

 

「う、うむ…そうだな……」

 

アレ?箒の元気が一気に下がったな。なんか寂しそうな感じだ。まあ俺としてももう少し箒とブラブラしたかったけど、後がつっかえている以上、早く戻らないとな。今はイチャイチャする時間じゃない。みんなで遊んでいる時間なんだから。

 

「失礼しま〜す……お、コレか?」

 

誰もいない教室に入り、教卓の上の本を一冊とる。薄い本だな。えーと本のタイトルは…………って、

 

「これ俺の部屋に隠してたエロ本じゃねえか!!なんでここにあるんだよ!!……ハッ!?」

 

「………ほう、エロ本、とな?」

 

勢い余って叫んでしまったが、箒にはエロ本の事は伝えていない。言ったら多分燃やされる。それはなんとしても防がなくてはならない。このエロ本は俺が一番最初に買った思い出のオカズだ。あの中学生の時、友達とエロ本を買うドキドキ感をまだ覚えている。

 

今は別の意味でドキドキしてるけど。

 

「ま、まあ落ち着け箒。ほら、一般的な男子高生ならみんな持ってるから。大丈夫、きっとキリヤんも持ってるよ。だから、落ち着こ?」

 

「破廉恥な!成敗してくれる!」

 

「まて!篠ノ之箒!!」

 

絶体絶命!そんな時に入り口から声がする。そこに立っていたのは、黒いライダースーツに黄色いヘルメットを被った女。そして手には何故かエロ本が……ってそれ弾に貸してたやつ!なんであの女が。

 

「これを見てみろ。コレは一夏のエロ本だ」

 

「なっ!もう一冊あったのか!しかも女同士で抱き合って……破廉恥極まりない!」

 

「その割には食いついて読んでいるな篠ノ之箒」

 

「そ、そんなわけあるか!」

 

いやいや!なんで肝試し大会で俺のエロ本を読んだんだよ2人は!こんな公開処刑初めて見たぞ!俺もう泣きそうだよ!

 

「篠ノ之箒。彼氏のこんな変態じみた性癖も受け入れてやれ。でなければその身が持たなくなるぞ」

 

「くっ……やはり理解してやるべきなのか…エロ本を!!」

 

「なんなんだコレ……」

 

穴があったら今すぐ入りたい。俺を置いてきぼりに2人でトークしてるし。俺もう帰っていい?

 

 

そんな時だった。

 

気がつくと俺はスタジアムの真ん中に立っていた。何が何やら訳がわからない。何故俺はここにいる?もしかして夢か?

 

「ここは夢じゃないよ。僕が君をここへ連れてきた」

 

後ろから声をかけられる。そこには1人の男性が立っていた。右手には変わった形の銃。左手にはカードが握られていた。

 

「初めまして、この世界の仮面ライダークウガ」

 

「誰だアンタ。もしかして、この前のMって奴か?」

 

「なんのことか知らないけど、1つだけ教えてあげよう」

 

男性は銃にカードを装填する。そして上に向けて発砲する。やがて男性の姿が変わっていく。その姿はまるで仮面ライダーだった。

 

『カメンライド!ディエンド!!』

 

「僕は仮面ライダーディエンド。通りすがりの怪盗さ」

 

「仮面ライダー……ディエンド」

 

いや仮面ライダーでした。




分かる人には分かるキリヤんの対戦相手。そう鎧武とドライブです。え、分かりづらい?それはごめんなさい。
そしてディエンド登場。一応本人って設定です。

次回は後半戦
レーザーLv3vs鎧武ジンバーレモン&ドライブフォーミュラ
クウガvsディエンド
です!その次から平成ジェネレーション編です。

ではsee you next game!


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第38話 出会う前の戦い

クウガvsディエンド!
レーザーvsドライブ、鎧武!


8月10日(木)AM01時30分

 

スタジアム内

 

「さあ、君のお宝をいただくよ」

 

「俺の宝だと?」

 

目の前の仮面ライダー、ディエンドは更に銃に4枚のカードを装填する。

 

『カメンライド!エターナル!ポセイドン!ソーサラー!ダークゴースト!』

 

ディエンドが打ち出した多数の影が重なり、仮面ライダーが4人召喚される。

白いボディに黒いマントの仮面ライダー。海の生き物のような仮面ライダー。金色の魔法使いのような仮面ライダー。そしてパーカーを着た仮面ライダー。これで5対1か。でもまあ、引かないけどな。

 

「宝がなんだか知らないが、勝負ってなら受けて立つ」

 

「意外と短気なんだね君」

 

「そりゃあ、楽しい時間を邪魔されたんだ。タダじゃすまないぜ!」

 

「そうかい。まあ君の事情なんざ知ったこっちゃない」

 

「そうかよ!変身!!」

 

クウガに変身する。さて、誰から相手するか…。

白い仮面ライダーは黒いナイフを構える。あれは接近戦が得意そうだな。マイティで行くか。

てかアレって、ラウラが使ってたナイフと同じじゃないか?

 

「さあ、行きたまえ、僕の兵隊たち」

 

ディエンドの言葉で一斉に動き出す仮面ライダーたち。一番早く飛び出してきたのは海の生き物のような仮面ライダーだ。多分アレがポセイドンだな。

 

「いくぞ!」

 

俺もポセイドンめがけて駆け出す。

ポセイドンは槍で攻撃してくる。相手の間合いで立ち回れたら厄介だ。でも、篠ノ之道場で槍も少しは触ったし、ドラゴンフォームは長モノを使うんだ。対処法はあるはずだ。

 

「はっ、せやぁ!!」

 

ポセイドンの槍を足で弾く。弾かれた槍はポセイドンの手から離れ、宙を舞う。今がチャンスだ。

 

「超変身!」

 

ドラゴンフォームに変身して跳び上がる。ポセイドンも跳び上がるが、俺の方が早いし、跳べる!

先にポセイドンの槍を掴み取り、ドラゴンロッドに変形させる。そしてポセイドンにドラゴンロッドを叩き込む。ポセイドンはそのまま地面に叩きつけられた。案外呆気ないな。

 

「まだまだいくぜ!」

 

地面に降り立つと同時に他の3人のライダーが攻撃を仕掛けてくるが、それらを全てドラゴンロッドで防ぎ応戦する。

 

「やれやれ、厄介だな未確認生命体は」

『アタックライド!ブラスト!!』

 

それを見てディエンドが銃で攻撃してくる。それを金色の魔法使いを盾にして防ぐ。今の悪役っぽいよな。

 

「お返しだぜ!」

 

金色の魔法使いからハルバートを奪い取り、ドラゴンロッドへ変形させる。そして二本のドラゴンロッドを金色の魔法使いへと叩き込む。今のはクリティカルだな。

 

必殺のダブルスプラッシュドラゴンを食らった金色の魔法使いはそのまま爆散した。

 

「これで一体、次!」

 

ドラゴンロッドを捨てパーカーライダーにとびかかる。パーカーライダーの武器は黒い剣だ。だったらタイタンフォームで!

雪片弐型を呼び出してタイタンソードを形成する。パーカーライダーも剣で応戦してくる。でも悪いな。俺の方が上だぜ。

 

「そこだっ!」

 

確実に胴にタイタンソードを叩き込んだ。

 

はずだった。

 

しかし俺の攻撃はまるで効果がなかった。まるで幽霊だ。俺の攻撃が全部すり抜けてしまう。これじゃ倒せない!

 

「そんなにのんびりしていていいのかい?」

 

「どういう意味だ!」

 

「なにも僕が狙ってるお宝は一つじゃない。元の場所のことも考えておきたまえ」

 

「まさか……IS学園にも仮面ライダーを送ったのか!?」

 

「まあね。さあ、こっちも早く終わらせよう」

 

そしてディエンドは2枚のカードを装填する。また仮面ライダーを召喚するつもりか!

 

『カメンライド!ビルド!クローズ!』

 

「これが前の世界のお宝さ」

 

現れたのは赤と青の仮面ライダーと竜の仮面ライダー。2人とも同じベルトをしている。1人倒して2人補充か……。

 

「勝利の法則は、決まった!」

「今の俺は、負ける気がしねぇ!!」

 

「上等だ……その法則を覆す!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園・中庭

 

『高速化!』『フォフォフォーミュラ!!』

 

『ロックオン!レモンエナジー!!』『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

高速で仮面ドライバーと刃を交え、武者ライダーと撃ち合う。正直色々と大変だ。セシリアには本音を連れて離れてもらってる。故に1人でこの2人を攻略しなくてはいけない。

 

「チッ、オラッ!!」

 

広範囲に矢を放って2人から距離をとる。中々しんどいぜ。せめて名人かタイガ先生の助けが欲しいとこだ。

 

「手こずってるな」

 

「……ったく、そう思うなら早く手伝って欲しいんだけど」

 

まったく、助けが欲しい時にちゃんと来てくれるんだから、ホントタイガ先生ってば男前。でもなんでスカジャンなんだ…?

 

「第弐戦術、変身!」

 

『レベルアップ!バンバンシューティング!!』

 

さてこれで2対2だ。タイガ先生は武者ライダーに銃口を向ける。それに対して武者ライダーも刀についた銃口をタイガ先生に向ける。

 

となるとコッチは仮面ドライバーが相手か。それにしてもあの速さは厄介すぎる。あんなにボディが邪魔そうなのに、見た目以上に動き回りやがる。さすがフォーミュラカーみたいな見た目してるだけある。

 

「ミッション、開始」

「ノリにノってくぜ!」

 

『高速化!爆走!クリティカルストライク!!』

『フルスロットル!フォーミュラ!!』

 

最大速度で仮面ドライバーと激突する。でも相手の方がまだスピードは上だな。こちとら高速化5回目の上乗せだぞ!?しかもキメワザの上乗せだというのに。

 

タイガ先生にいたっては、本領発揮は遠距離の筈なのに、もう接近戦始めちゃってる。相手は刀と刃のついた弓だぞ!?タイガ先生には見えていないのか!?

 

「ホント、嫌になっちゃうな」

 

スピードが落ちてくる。そろそろ1枚目の効果切れか。次も高速化が出てくれればいいが。そんな期待を込めながらトロフィーを破壊する。出てきたのは、

 

『逆転!』

 

「ここで来ちゃうか!」

 

逆転のエナジーアイテム。相手との状況を入れ替える切り札的エナジーアイテム(by社長)。つまり今は向こうが速く、コッチが遅い。てことは!

 

「反撃開始!」

『爆走!ギリギリ!クリティカルインパクト!!』

 

すれ違いざまにガシャコンスパローで切り裂く。まったく、これだからエナジーアイテムはチートなんだよ。一枚で状況が一変するんだからな。

 

ガシャコンスパローで仮面ドライバーの背中のブースターを破壊する。一気にスピードダウンした仮面ドライバーにエネルギーの刃がついた回し蹴りを叩き込む。刃に切り裂かれた仮面ドライバーはそのまま爆散した。

 

「ほらタイガ先生!」

 

「悪い、借りるぞ」

 

爆走バイクを受け取ったタイガ先生はスロットに装填する。

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

加速して膝蹴りを叩き込む。怯んだ武者ライダーの背後に回り込み、ガシャコンマグナムを突きつける。

 

「こいつでゲームセットだ」

 

『バンバン!クリティカルストライク!!』

 

必殺の弾丸が武者ライダーを貫いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はあっ……はあっ…………っ、どうだ!」

 

「これは驚いたな……まさか全て倒すとは」

 

白い仮面ライダー、ポセイドン、パーカーライダー、赤と青のライダー、龍のライダーを全て倒した。今にも倒れそうだ。意識を保つのがやっとなレベル。しかも時刻は深夜。すごく眠い。

 

「でも残念。僕にはまだカードがある」

 

「呼ぶなら……呼んでみろよ!」

 

「ふむ……そうしてもいいけど、君が死んだら、士が面倒くさがりそうだ」

 

「士?」

 

「どうやら、次の厄介ごとはこの世界みたいだね。士もご苦労なことだ」

 

「どういう意味だ?」

 

ディエンドは静かに上を指差す。俺が上を向くと、スタジアムの天井が消滅していく。まるでこの世界にはなかったみたいに。跡形もなく。どうなってるだ!?

 

「仕方ない。この世界のお宝は諦めよう。下手をしたらアレもこっちの世界にくる。アレと関わるのは嫌だからね」

 

「アレ?どれだよ!」

 

「アマゾンだよ」

 

それだけ言い残し、ディエンドは不思議なオーロラの壁の中に消えていった。そして変身を解除した俺も、そのオーロラに飲み込まれ、目を開くと、夜の教室だった。

 

 

「キリヤんとタイガ先生が倒したのか。肝心な時にいなくて悪いな」

 

「気にすんな。自分もそっちの援護には行けなかったんだから」

 

俺の部屋でキリヤんと状況を報告しあった。学園に現れたのは2体だけ。それもキリヤんとタイガ先生が倒したと。みんなに被害が及ばなくてよかった。

まあ、こんなことになったから肝試し大会は終了だ。千冬姉も黒いライダースーツのまま報告書を作りに向かっていった。

 

「学園って無駄に防音設備整ってるからな。ちょっとやそっとじゃ誰も起きないでしょ。それより、そのディエンドが言ってたアマゾンってのは」

 

「多分、山田先生が命名した、タッグマッチの時の未確認生命体だ。正しくはその未確認の細胞の名前だけど」

 

「…………もしかしたら、あの未確認は別の世界から来たんじゃないか?」

 

その可能性はゼロじゃない。現にディエンドは別の世界から来たみたいな様子だ。それに『こっちの世界にくる』とも言っていた。つまり『あっちの世界』も存在するということだ。

 

「ま、それが本当だとしてもぶっ潰すだけだけどね。簡単なことだろ?」

 

「そうだけど……ああ〜!……よくわかんね。寝よ」

 

「こちとら飲み物買いに行こうとしたらアレと出くわしたんだ。そんでドンパチやって……もう目が覚めたぞ」

 

「それは災難だな。じゃ、おやすみ!」

 

「他人事みたいに流しやがって……………あ!箒のエッチな写真だ〜。これはエロいな〜凄いな〜〜。名人起きてくれたら、コレあげよっかな〜」

 

「よっしゃ!夜はこれからだぜ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

???・路地裏

 

「こら〜!!待ちなさい!!」

 

「ちょ、ハル!走るの、は、速い……」

 

「ちょっとハル!さっさとしないと振り切るよ!」

 

「ホント、なんでそんなに速いのさ……」

 

「私に質問するな!」

 

犯人を追いかける2人の刑事。1人は赤いジャケットを着た女性。もう1人はキチンとスーツを着こなした男性。

 

そして犯人はヒトではなかった。アリの姿をした怪物。2人はそれを追いかけていた。

 

「士さんは!?」

 

「連絡とってるけど、繋がらないよ。てか、走りながら連絡とってたら余計に疲れるんだけど!?」

 

「しっかりしなさい!あんた男でしょ!ジンさんみたいになれないよ!」

 

「僕が目指してるのは、マッキーさんと組んでる方のジンさんだよ!」

 

「マッキーって呼んでるのハルと光太郎さんだけよ…」

 

「ホント!?」

 

そんな会話をしている中、アリの怪物は突如現れたオーロラの中へと姿を消す。それに気づかずに、2人もオーロラの中へと足を踏み入れる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

この出会いは、きっと最初で最後の出会い。

 

仮面ライダーたちは、世界を救う為に手を取りあえるのか?

 

次回『仮面ライダー 平成ジェネレーション編』

第1話『Aで振り切れ/別世界の仮面ライダー』




今回の敵ライダーはディエンドが召喚した奴だから!本物はもっと強いから!まあ一夏たちも一学期戦いばっかりですから、多少はレベルアップしてますが。

そして展開が駆け足ですまない。これなら前回と組み合わせてもよかったかも?

次回から遂に『平成ジェネレーション編』です。オリジナルフォームも出てくるよ!もう少し後にね!

ではsee you next game!


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第39話 Aで振り切れ/別世界の仮面ライダー

今回から平成ジェネレーション編です。展開的には平成ジェネレーションズとほぼ同じです。


8月10日(木)AM09時50分

 

「ふあ〜〜あ……眠い」

 

「夜更かしするからだ馬鹿者。まさか私との約束を忘れたわけではないだろうな」

 

「忘れちゃいねぇよ。ただ夜中に少しバタバタしてな」

 

道路を走るレーザーLv2。運転しているのはラウラだ。

今現在2人はとある用事で空港に向かっている。いや、用事はラウラにしかない。桐也はただの送迎役である。

 

「んで、今から来る軍の副官さんだっけ?その人からモノをもらえば用事は終わりなんだろ?」

 

「そうだ。我々黒ウサギ隊も暇ではない。モノをもらったらすぐに帰ってもらう」

 

「中々手厳しいねぇ。少しぐらい息抜きさせてあげれば?」

 

「むう……まあ、考えておく」

 

2人が会話をしている間にも、空港に近づいていった。

 

 

「敬礼!」

 

副官=クラリッサの号令で彼女の背後の部下が敬礼をする。1ミリもズレのない動きに桐也はただただ感激するばかりだ。

 

「お久しぶりです隊長」

 

「久しぶりだなクラリッサ。紹介しようクジョー、私の副官のクラリッサ・ハルフォーフだ」

 

「クラリッサ・ハルフォーフです。お話は隊長から聞いております。なんでも日本のSAMURAIだと」

 

「いやいや違うから」

 

「ではSAKIMORIですか!?」

 

「いやいや普通の高校生だから!自分は九条桐也。一応仮面ライダー。それだけだから」

 

「なるほど。それで隊長、例のモノですが」

「あ、スルーなの?」

 

桐也の話を中断し、ラウラにアタッシュケースを手渡すクラリッサ。ラウラは中を開いて確認するとアタッシュケースを閉じ、クラリッサたちに敬礼する。それに続きクラリッサたちも敬礼する。

 

「ではお前たちに次の任務を通達する」

 

「次の任務ですか?」

 

「お前たちの次の任務は、この日本で休暇を消化すること。勿論本国への土産も忘れるな。以じょ「ヒャッホーイ!みんな遊びに行くぞ!!」………………」

 

「失礼しました隊長。では任務を開始します」

 

そう言うクラリッサの表情は緩みっぱなしだった。ラウラは呆れつつもクラリッサたちを見送る。みんなスキップで空港を後にしていった。

 

「慕われてんの隊長さん?」

 

「今日はたまたまだ」

 

落ち込むラウラの肩を叩く桐也。なんだかんだで苦労しているラウラであった。

 

「んで、そのケースの中ってなに?」

 

「中は秘密……と言うところだが、お前は仮面ライダーだからな。特別に教える」

 

ラウラがケースを開き桐也に中を見せる。中にはバイクのハンドルが付いたベルトが入っていた。そう、ベルトが入っていたのだ。

 

「ちょ、これって!?」

 

「そう、仮面ライダーの変身ベルトだ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻

 

「社長!襲撃です!」

 

「いきなりすぎるよ木綿季くん」

 

幻夢コーポレーションは襲撃されていたのだ。白衣を着た5人組によって警備員や警察官は全て排除されてしまったのだ。

そしてその魔の手はすぐそこまで迫っていた。

 

タイミングが悪いことに、黎斗はプロトガシャットを他の場所に持ち出す用意をしていた。そして襲撃者の目的もプロトガシャットだった。

 

ドアを蹴破って入ってくる襲撃者。それに対して木綿季が応戦する。

 

「目的は……プロトガシャットね!」

 

「分かってるならどいて。死にたくなかったらね!」

 

襲撃者のうちの1人が剣で木綿季を攻撃する。達人の域を超えている女の攻撃に対応できない木綿季。その隙に他の襲撃者が黎斗へと迫る。

 

「社長!逃げてください!」

 

「何処へ逃げても一緒だぞ社長」

 

黄色い仮面を被った男が黎斗に忠告する。恐らくこの襲撃者たちを束ねるボス。黎斗はそのボスの声に聞き覚えがあり、そしてこの襲撃者たちの顔を知っていた。

 

「なるほど……君たちは会社をクビになった社員だね」

 

「分かってるなら……俺たちがどうするかも分かるよな?」

 

襲撃者の中で一番ガタイのいい男が黎斗へと詰め寄る。黎斗は観念したようにプロトガシャットの入ったアタッシュケースを渡す。

襲撃者たちはそれを受け取るとすぐに社長室を出ていった。

 

「社長!大丈夫ですか!」

 

「なんとかね。いや前から思ってたが迫力が凄いね彼は」

 

「クビになった社員と言いましたね………彼らは一体」

 

「彼らは…私と一緒にガシャットの開発に携わった社員だよ。君は会ったことないかい?」

 

「元々事務作業の私に聞きますか?秘書になったのも1年前ですし」

 

そんな話をしていると外で爆発が起きる。木綿季が窓の外を見ると、地上でクウガが謎の敵と戦っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「襲撃だなんて、物騒だな」

 

朝早くから未確認と戦い、撃破した後だ。たまたま幻夢コーポレーションの近くを通ったらこの騒ぎ。まったく強盗なんてよくないぜ?てか強盗にあうなんてドンマイだな幻夢コーポレーション。

 

「クウガか……なら、この力を試してやる」

 

そう言って筋肉モリモリマッチョマンの男はケースから黒いガシャットを取り出す。ん?ガシャット?

 

『ゲキトツロボッツ!』

 

男はガシャットを起動させると、そのまま体に刺しやがった。うわ、吸い込まれてる……てかそれ大丈夫なのか?いやクウガのベルトを体内に宿してる俺が言えたことじゃないけど!

 

やがて男の姿が変貌していく。右腕が巨大なアームに変化し、体全体も怪物へと姿を変える。これがガシャットを取り込んだ結果なのか?

 

「こい……クウガ!」

 

「のやろ…舐めんじゃねえぞ!」

 

全力のマイティパンチをロボット野郎に叩き込む。まず最初に思ったのは硬い。硬すぎるのだ。多分タイタンフォームと同等レベル。かなり厄介だな。

 

「フンッ!」

 

「どわあっ!?」

 

ロボット野郎のロケットパンチに吹っ飛ばされ車に叩きつけられる。しかも追い討ちのロケットパンチが容赦なく俺と車を巻き込み爆発する。

 

「この程度か、クウガ」

 

「……クソッタレ…………今のは痛かったぞ!」

 

タイタンフォームに変身し、さらに白式を纏い瞬時加速でロボット野郎に斬りかかる。全力のカラミティタイタン+零落白夜を発動させる。

 

「うおおっ!!」

 

「甘いんだよなぁ〜」

 

しかし俺の攻撃は横からの銃撃に阻まれた。攻撃してきたのは戦闘機のような姿の怪物。あれもガシャットを取り込んだ姿か!

 

「チンタラしすぎなんだよ。とっとと片付けようぜ」

 

「上等だ。2人がかりでかかってこいよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「幻夢コーポレーションが襲撃!?マジかよ……分かったすぐに行く」

 

「襲撃だと?一体どういうことだ?」

 

「さあな。でも今こうしてチンタラパフェ食ってる場合じゃないのは確かだ」

 

空港からの帰り道にカフェに立ち寄った自分と隊長さん。そんな中、木綿季さんからの連絡が入った。内容は幻夢コーポレーションの襲撃、そして道路でクウガが謎の敵と戦っているということ。

 

名人1人だと何かと危ないからな。急がねえと。

 

「クジョー!……どうやら、こちらも暫くは動けんかもな」

 

「あ?……なっ、未確認生命体!?」

 

カフェに姿を現したのは五体の黒い未確認生命体。タイガ先生に見せてもらった映像の奴とほぼ同じ姿をしている。話だとかなりの強敵らしいけど……まあ今の自分には関係ない。

 

「速攻で片付ける。隊長さんは避難誘導を頼む!」

 

「分かった!すぐに戻る!」

 

他の人たちを隊長さんに任せ、自分はガシャットを起動させる。

 

『爆走バイク!』

 

「変身!」

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『アイム ア カメンライダー!!』

 

レーザーに変身して黒い未確認生命体へと挑む。

爪や牙で攻撃してくる未確認。それを避けるかわりにイスや机が犠牲になるが、一撃で木っ端微塵だもんな……ありゃ食いたくねぇわ。

 

「はい、よいしょお!」

 

未確認を投げ飛ばす。さらにフロントアームで銃撃。なんだかんだで倒せそうだな。このまま倒して、早く名人のとこに行かないと。

そして自分がキメワザを発動しようとしたその瞬間だった。

 

「こいつで終いだ」

 

「クジョー!そいつらを止めろ!」

 

「は!?」

 

後ろから隊長さんの声がする。振り返るとこっちに走ってくる3人。

1人は隊長さん。珍しく息切れしている。

もう1人は赤いジャケットの女。手に持ってるの……隊長さんのベルトじゃね?

そしてもう1人はスーツを着た男。ひ弱そうな見た目だが……。

 

「いくよハル!」

 

「まったく、僕たち警察なんだから人のモノ取っちゃダメでしょハル!」

 

「後で返すの!」

 

ジャケットの女が懐から取り出したのは赤いメモリ。ん?メモリ?

 

『アクセル!』

「変…身ッ…!」

『アクセル!!』

 

それに対してひ弱そうな男は赤いベルトを巻くと注射器のようなアイテムをベルトに突き刺す。

 

「アマゾンッ!」

『New…Omega…!』

 

そして2人は変身した。

女は赤い装甲の仮面ライダーに。

男は緑のボディに黒い装甲をまとった仮面ライダーに。

 

「さあ……振り切るぜ!!」「狩り……開始!」

 

「なんなんだアンタら………」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐっ……これは想定外だ…」

 

「なっ、なんなんだテメェ!」

 

ロボット野郎と戦闘機野郎に苦戦する俺の前に現れた1人の仮面ライダー。そう仮面ライダーだ。ピンク色で顔面にバーコードがぶっ刺さってる見た目だが仮面ライダーだ。

 

この人は颯爽と現れると、あっという間にロボット野郎と戦闘機野郎を圧倒した。この強さは普通じゃない。まるで破壊者だ。

 

「教えてやる。俺は……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 

通りすがりの仮面ライダー。この人との出会いが、俺とキリヤんのさらなる戦いの始まりだった。




サブタイのAは『アクセル』です。

というわけで今回の参戦ライダーはクウガ、レーザー、ディケイド、アクセル、アマゾンニューオメガです。アマゾンアルファも出そうかなと思ったんですが、流石に多いかなと思ってやめました。

次回はまさかのレーザーvsアクセル、アマゾンニューオメガ!?

ではSee you Next game!


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第40話 Mを付けた者たち/お互いの事情

平ジェネfinal観てきました。レジェンドライダーの活躍もかっこよかったですし、観ていて思ったのは『万丈の成長記』みたいだな、と思いました。貴利矢さんもかっこよかった!あと映司とアンクの関係もよかった。泣きそうになったもん。

あとISのアプリ始めました。星4は鈴を、星5は本音をもらいました。名前が『キリヤん』で本音を使っていたら多分自分です。多分。同じ名前の人ももしかしたら………いないか?

今回は平ジェネ編第2話!


8月10日(木)AM10時50分

 

「さあ………振り切るぜ!」

 

「狩り……開始!」

 

同時に駆け出すアクセルとアマゾンニューオメガ。2人は次々と未確認を圧倒していく。

的確に攻撃を当てて相手を怯ませるアクセル。弱った敵を一気に片付けるアマゾンオメガ。2人の動きには無駄がない。まるである程度の戦闘をこなしてきたように。

 

「あいつ…アクセルを使いこなしているのか?」

 

「それなりにやるみたいだな。ほんじゃまあ、自分もノッていきますか」

 

『ギリギリチャンバラ!』

 

「三速!」『ガッチャーン!レベルアップ!!』

 

ギリギリチャンバラを起動させてレベル3に変身する。ガシャコンスパローで未確認を次々と薙ぎ払う。

3人の仮面ライダーの前に未確認は順調に倒されていった。そう、今のところは……。

 

「ウアアアッ!!」

 

「っとわあ!?危ねぇだろ!」

 

「はあ…また暴走なのハル?」

 

突如として戦闘スタイルが変わるアマゾンオメガ。未確認の頭や腕を切断していく。飛び散る体液を避けるアクセルと桐也。アクセルはため息をつきながらもアマゾンオメガの元へ向かう。

 

「ほら落ち着けハル!」

 

「グウウウッ……」

 

「まったく……犬かそいつは」

 

「ちょっと!ハルを犬扱いしないで!」

 

「例えただけだ。でも、その様じゃ犬呼ばわりされても言い訳できないんじゃない?」

 

「グウウウッ………ッ!」

 

アマゾンオメガの目が赤く光った瞬間、彼は桐也に飛びかかっていた。右腕にブレードを装着し桐也に襲いかかった。

 

アマゾンオメガの攻撃は単純で避けるには問題ない。しかし暴走気味のアマゾンオメガの攻撃力は普通ではなかった。

ブレードをガシャコンスパローで受け止める桐也。だがアマゾンオメガの力はレーザーレベル3を上回っていた。簡単に吹っ飛ばされる桐也。これが桐也にスイッチを入れる結果になってしまった。

 

「犬呼ばわりで怒ったか?……そいつは悪かったな。でも」

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

吹っ飛ばされた場所から一気に駆け出す。アマゾンオメガに防御させる暇も与えずにガシャコンスパローを押し付ける。そしてゼロ距離から放たれる一撃。今度はアマゾンオメガが吹っ飛ばされた。

 

「一発は一発だ。まあ俺の一発は大きすぎたかもな」

 

「子供かお前は……」

 

「ハル!大丈夫!?」

 

「…………痛い…」

 

吹っ飛ばされたアマゾンオメガは変身が解除されてしまった。よく見れば怪我をしている。しかしこれが今度はアクセルにスイッチを入る結果に。

 

「よくもハルを!」

 

「来るなら来いよ。相手になるぜ?」

 

「警察舐めるな!!」

 

桐也に飛びかかるアクセル。それを迎え撃とうとする桐也。それを呆れながらも2人をAICで動きを止めるラウラ。桐也は片足を上げた状態で。アクセルは空中で動きを固定されている。

 

「私だって強くなってるんだ。お前ら3人ぐらいなら同時に息の根も動きも止められる。さあ、どうする?」

 

「ご、ごめんなさい…大人気なかったわ」

 

「ご、ごめんちゃい隊長様」

 

「え、えっと……なんかすみません」

 

「分かればいい。さっさと片付けるぞ」

 

AICを解除したラウラは残りの未確認に向かってリボルバーカノンで砲撃する。

 

「しゃーない。一緒に行くぞ!」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「分かったわ」『アクセル!マキシマムドライブ!!』

 

同時に飛び上がり、残りの未確認をライダーキックで全て倒す。

 

こうして、3人のライダーとラウラによる戦闘は終わりを迎えた。

 

 

「風都警察署の照井ハルナです」

 

「同じく、水澤ハルカです」

 

突きつけられたのは警察手帳。これを見て桐也は不思議に思う。

 

「風都って…何処?」

 

「そりゃあ……風都は久留間市の隣で」

 

「ハル。僕たちは別世界から来たんだよ?この世界には風都はないんじゃないかい?」

 

別世界という単語で理解するラウラ。一方桐也は理解出来ていないような顔をしている。それについてハルカが説明する。

 

「僕たちはこことは別の世界から来たんです。ちょっと犯人を追いかけてたらこの世界に迷い込んじゃって」

 

「その犯人はアリアマゾン。さっきのアマゾンと似たような怪物よ」

 

「そっちの世界にもアマゾンがいるのか……」

 

「こっちの世界にもアマゾンが存在するとは驚きよ。しかも仮面ライダーもいるなんて」

 

「仮面ライダーはクジョーだけではない。クウガにスナイプ、それとクジョーのレーザー。この世界には仮面ライダーが3人いる」

 

正確にはゲンムを含めて4人だけどな。桐也は心の中で思った。しかしゲンムの事はあまり知られていない。それを今話して状況を引っ掻き回すのは良くないと判断してのことだ。

 

「でも困ったわね。元の世界に帰る手段がないのよ」

 

「士さんか海東さんがいたら帰れるのにね」

 

「誰それ?」

 

「士さんは仮面ライダーディケイドで海東さんは仮面ライダーディエンド。平行世界を旅する仮面ライダーだよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さっきはありがとうございます。俺、織斑一夏っていいます」

 

「門矢士だ。覚えておけ」

 

士と名乗るその人は、さっきの襲撃者を退けて、更にはこうしてカフェでご馳走してくれている。いい人だな。

 

「士さんも仮面ライダーなんですね」

 

「仮面ライダーディケイド。別の世界に行く度に世界の破壊者なんて呼ばれてる。そういえばお前……コートを着たオッサンに会わなかったか?」

 

「いいえ?その人がどうかしたんですか?」

 

「いや、会っていないならいい……」

 

そういう士さんの顔はどこか寂しそうだけど。士さんはコーヒーを飲み干すと再び口を開いた。

 

「俺はこの世界に迷い込んだバカ2人を連れ戻しにこの世界に来た。だからこの事件に介入するつもりは…………」

 

士さんの携帯にメールが届いたみたいだ。それを見た瞬間にため息をつきながら返信する。

 

「いや、事情が事情だ。俺も協力する」

 

「え?いいんですか?知り合いを連れ戻すんじゃ」

 

「さっきの連絡はその知り合いからだ。どうも向こうに桐也とラウラとかいう奴がいるみたいだが、お前の知り合いか?」

 

「え?ラウラとキリヤんが?確かに知り合いですけど」

 

「よし、なら動くぞ。確か…幻夢コーポレーションだったか。そこで待ち合わせだ」

 

 

8月10日(木)正午

 

幻夢コーポレーション社長室

 

「遅かったな名人」

 

「キリヤん!ラウラ!」

 

「?何故一夏がいるんだ?」

 

「それはコイツがクウ「だああああっ!?」むぐっ!?」

 

(すいません士さん!ラウラにはクウガは秘密なんです!)

 

(それは最初に言え!)

 

現在、社長室に集まったのは俺、キリヤん、ラウラ、士さん、ハルカさん、ハルナさん。それと社長さん。木綿季先生はどうやら学園に向かったらしい。

 

「さて、君たちに集まってもらったのは他でもない。先程の襲撃事件についてだ」

 

「何者なの?そんで何が目的なの?」

 

「襲撃者は全員、この会社の元社員だ。5人組で会社を辞めたのも同時期だ。恐らくリーダー格が他の4人を集めたのだろう」

 

社長からその社員についての資料を渡される。

 

シドウ、オオタキ、タカイ、ミサキ、フクダの5人。どうやらそれぞれが担当していたゲームがあるらしい。

シドウがドラゴナイトハンター。

オオタキがゲキトツロボッツ。

タカイがギリギリチャンバラ。

ミサキがドレミファビート。

フクダがジェットコンバット。

 

どうやら俺が戦ったのはオオタキとフクダらしい。

 

「彼らはプロトガシャットを強奪した。プロトガシャットには所謂没データが入っている。調整ミスやバグが多く残っているガシャットだ」

 

「故に、バカでかい力があるってわけか」

 

士さんがそういうのも何となくわかる。確かにアレは未確認を遥かに超えた力を持っている。

 

「調整ミスやバグは今後のシリーズを出すためにも、必要なデータだ。出来れば全て無傷で取り戻して欲しい」

 

「それなら、どうして私達まで?コッチは逃亡犯のアマゾンを追いかけているのよ」

 

社長の提案にハルナさんが疑問を示す。確かにプロトガシャットなんかはコッチの世界の問題だ。となるとハルナさんの世界のアマゾンが関係している。そう考えるのが普通だ。

 

「勿論、そのアマゾンも関係しているからだよ。5人を追跡していた暗部の人から連絡があってね。なんでもアリの怪物と行動を共にしていたとか」

 

「それって!」

 

「間違いないよハル。アリアマゾンだよ」

 

つまり、必然的に一緒に戦うことになるな。俺とキリヤんとラウラはプロトガシャット。士さん、ハルカさん、ハルナさんはアリアマゾンを追いかけると。

 

「それと、もう一つ付け加えるよ。暗部の調査結果で分かったことだが、襲撃者とは別に彼らに協力している人物がいる。えーと……おや?資料がない………宝生くん」

 

「は、はい…」

 

社長室に1人の女性が入ってくる。俺も数回しか見てないが…確か名前は『宝生エム』さん。キリヤん曰く『ミステリー系少女』らしい。いやエムさんの方が歳上だと思うけど、なんとなく少女っていうのも分かる。雰囲気がそう感じさせるのか?

 

「天条タカアキについての資料をくれないかい?」

 

「はい……どうぞ」

 

「ありがとう」

 

資料を渡すとそそくさに部屋を出て行った。なんか一瞬コッチを見たような……。

 

「なーによそ見してんだ名人。浮気か?」

 

「違うよ。ちょっと気になっただけだ。それと俺が好きなのは箒だけだ」

 

っと、なんかみんなこっち見てるな。恥ずかしい。

 

手渡された資料に目を通す。そこには天条タカアキと呼ばれる人物について色々と書かれていた。なんでも『仮面ライダークロニクル』と呼ばれるゲームに携わっていたらしい。約1年前から謎の失踪で行方不明に。

 

「天条タカアキ。彼が襲撃者の協力者で恐らく今回の事件の首謀者だ。彼はゲーム製作者にして、生物科学者だ。そして、彼の研究していたのが」

 

「………アマゾン細胞…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

???

 

「フハハッ……素晴らしい…」

 

暗い研究室に人影が一つ。髪の毛は真っ白で顔は痩せこけている。しかしその目には生気がある。

男の名は天条タカアキという。

 

「遂に……遂に………最強のアマゾンが、完成したっ!」

 

今まで何度もアマゾンを作っては失敗し、やっとのことで完成したアマゾンをIS学園に解き放つもクウガと専用機持ちに破壊され、さっきのアマゾンも仮面ライダーに破壊された。

 

しかし、別世界のアマゾンを改造することで彼は最強のアマゾンを完成させた。腰にベルトを取り付けることで永久的にアマゾン細胞を取り込み、戦闘力を上げることができる。

 

「こ、これさえあれば……マサムネを見返せる!アイツに指図されることもなくなる!」

 

高笑いするタカアキ。それをじっと見つめる最強のアマゾン。

灰色の獣は、ただ戦いの時を待つばかりである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月10日(木)PM01時50分

 

俺と士さん、ハルカさんの3人とキリヤんとハルナさん、ラウラの3人のチームで別れて動く。襲撃者の潜伏場所は目星がついているらしい。なんでも天条タカアキが使っていた研究所が奴らの潜伏場所らしい。

 

俺たちは正面から、キリヤんたちは裏側から攻めることになった。

 

「こんな正面から攻めることになるなんて……」

 

「僕も初めてだよ……なんか緊張してきた」

 

「お前は警察だろ。今後もこんなことがあるかもしれないぞ」

 

「それもそうですね……よし、気合い入れないと」

 

「気合い入れすぎて空回りしないように気をつけてくださいね」

 

そして俺たちは正面から研究所に乗り込んだ。

 

中にはトラップらしきものもなく、簡単に中心部までたどり着くことができた。そして中心部にも何もなかった。そう、何もなさすぎる。まるで俺たちがここに来るのを分かって、全ての証拠を消したように。

 

「何もなさすぎるよ……これ」

 

「どうなって………ん、キリヤん?」

 

その時キリヤんから連絡があった。

 

『急げ名人!アイツらの狙いはIS学園、しかも専用機だ!』

 

「は?どういうことだよ」

 

『いいから急げ!』

 

それを最後にキリヤんからの連絡は途絶えた。意味がわからない。どうして天条タカアキと襲撃者の狙いがIS学園なんだ。

 

意味は分からないがとにかく急いだ方が良さそうだ。士さんとハルカさんに事情を話してIS学園に向かおうとする。

 

しかし、そんな俺たちの前に黒い影が立ちはだかる。

 

「遅かったな…仮面ライダーども」

 

「お前は……!」

 

「ゲンム………仮面ライダーゲンム」

 

黒い仮面ライダーだった。




サブタイの『M』は『マスク』、つまり『仮面』です。5人集まったからね。

なんだかんだの新キャラのエムさんとタカアキさんは平ジェネ編以降も出てきます。どういう立ち回りになるかは決めていない!イェイ。

次回は『その頃のIS学園は?』的なお話です。

ではSee you Next game!


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第41話 Aの襲来前/学園乱戦

なんだかんだでもう年末ダァ!すごく間が空いた気がする。すまない。

今回はIS学園で教師が頑張るお話です。


8月10日(木)PM02時14分

 

IS学園、食堂

 

「はーい、またあたしの勝ち!」

 

「これで箒さんの連敗記録が更新されましたわね」

 

「ぐぬぬっ……も、もう一回だ!もう一回勝負しろ!」

 

食堂でババ抜きをして遊ぶ箒、セシリア、鈴の3人。先ほどの戦いで箒の連敗記録が7になった。鈴は内心『7連敗してなお勝負を挑むとは……負けず嫌いにもほどがある』と思っていた。

 

「にしてもセシリアも強いわね。何かコツでもあるのかしら?」

 

「そんなことはありませんわ。ただの直感です」

 

「一夏みたいなことを言うなセシリアは……」

 

「そういえば一夏の奴、朝から見てないけど」

 

鈴の疑問に2人もそういえばと思う。朝早起きの箒でさえ一夏の姿を見ていない。箒が朝から出会った人といえば、ラウラに引っ張られながら連れていかれる桐也。寝不足で顔色が悪い織斑先生と山田先生。そしてこの2人。それはこの2人も同じだった。

 

「ひょっとして家にでも帰ってんじゃない?」

 

「それなら連絡の一つぐらいは寄越すはずだ。となると」

 

「内緒のお出かけか、それとも偶々出会わなかっただけか、ですわね」

 

「ま、あいつのことだから忘れた頃にひょっこり出てくるわよ」

 

「それもそうですわね。さあもう一度始めますわよ」

 

しかし箒は安心できなかった。何かと厄介ごとに巻き込まれる体質の一夏のことだ。何かトラブルに巻き込まれているのではと考えてしまう。

 

(やはり連絡した方が……ん?一夏からメール?)

 

連絡しようと携帯を開いた瞬間、一夏からメールが届く。内容は短く、簡単なものだった。

 

一夏『学園から離れろ。危険だ』

 

「学園を離れろだと?アイツは何を言っているんだ?」

 

「何?一夏から連絡あったの?」

 

「ああ、なにか変でな。学園から離れろとかなんとか」

 

「IS学園から離れろ、と言うことは学園に何かがあると言うことでしょうか?」

 

「もしくは、学園に迫っているか、ね」

 

(学園に何かが迫って来ている。それなら教師陣が早急に対応してくれるはずだ。しかし今のところ連絡は一つもない。つまり一夏のイタズラなのか?)

 

しかし鈴の予想は的中してしまう。

突如として響き渡る悲鳴。それは食堂の入り口付近から聞こえてきた。食堂に押し入る一般生徒たち。何事かと目を見開く3人。

そして最後に入ってきた生徒が急に倒れる。遠目からでも分かる。白いIS学園の制服が真っ赤に染まっていた。背中には斬られた跡。

 

「な、何がどうなっている!?」

 

「もしかして一夏の逃げろって」

 

「このことですの!?」

 

コツコツとヒールで歩く音が聞こえる。やがて音の主が現れる。白い服で身を包んだ女性。その女性の右手には血のついた刀。誰が見ても分かる。コイツが犯人だと。

女性は箒に刀を向ける。

 

「見つけた、紅椿」

 

「狙いは私か……」

 

紅椿を部分展開で腕アーマーと武器を装備する。鈴とセシリアも同じように装備する。

この時3人は気づいていなかった。彼女以外にもこの学園に攻め入っている奴がいることに。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園 保健室

 

「外が騒がしいねタイガ先生」

 

「どうせバカが騒いでるだけだろ」

 

パソコンの画面を見ながら呟くタイガ。その隣で椅子でグルグル回転するシャルロット。時々タイガが足で回転を止めながら2人の日常は進んでいく。

 

「バカって、一夏?それとも桐也?」

 

「両方だ……いや、2人とも朝早くに出て行ったな」

 

「確か桐也はラウラと約束があるから朝早くに出て行ったけど。一夏は見てないよ」

 

「異様に走るの早かったなアイツ」

 

「一夏って急に早くなる時があるから……って、さっきから何を見てるの?」

 

シャルロットがパソコンを覗き込もうとするも、タイガにデコピンされ見ることは叶わなかった。おでこを押さえるシャルロットを見てタイガは鼻で笑いながら、

 

「ガキが出しゃばってくんな」

 

と一言。少しトゲのある言い方だが、シャルロットを思っての一言だった。

 

(これ以上、シャルや他の生徒を巻き込むわけにはいかねぇよな)

 

「もぉ〜タイガ先生!少し痛かったよ」

 

「悪い悪い…………そうだな、気分転換に少し出かけるか」

 

「いいの!?やった!」

 

シャルロットのご機嫌取りは得意中の得意なタイガ。タイガ自身、シャルロットを怒らせた時の面倒さはよく知っているつもりだ。その影響か、シャルロットが喜ぶことが少しわかったのだ。

 

「さっさと準備してこい」

 

「はーい!」

 

元気よく保健室を出て行くシャルロット。ISや未確認生命体などがいなかったら、彼女はあんな辛い思いをせずに今みたいに笑って生きてこれたかもしれない。

そう考えると、フツフツとタイガの中に怒りが湧いてくる。シャルロットの母親を殺したクラゲの未確認生命体。いや未確認生命体と言うが、実際はこの前学園を襲ったアマゾンと同じ類だろう。

 

(山田の見解では、アマゾンは人工的に作られた細胞で形成されているらしい。そしてアマゾン細胞を研究していたのは幻夢コーポレーションの天条タカアキ。しかも今朝幻夢コーポレーションを襲撃したテロリストのボスもそいつの可能性が高い。ついてるのかついてないのか分からないな)

 

さっきまで見ていたパソコンの画面には黎斗から送られてきたテロリストの情報であった。何人かで対処しているが、もしかしたらタイガも呼ばれる可能性はある。その時はシャルロットになんて言い訳をすればいいのだろうか。自分から誘っておいて断るなんてタイガには難しいことだった。

 

「いざとなりゃ篠ノ之やオルコットを呼べばいいか…」

 

タイガが安心してコーヒーに手を伸ばそうとしたその時だった。タイガの戦う時が来たのは。

 

「きゃあああっ!!」

 

「!?……シャル?」

 

シャルロットの悲鳴が廊下から聞こえてくる。急いで廊下に出るとそこには白い服を着た男が立っていた。身長はタイガよりも少し大きい。そして足元で倒れているのはシャルロットだった。

 

「リヴァイヴ確保」

 

「テメェ……ミサキって野郎だな。幻夢コーポレーションを襲撃したテロリストの1人」

 

「だったらどうする?」

『ドレミファビート!』

 

ミサキはプロトドレミファビートを起動させる。しかし体に突き刺すよりも早く、タイガの飛び蹴りがミサキを吹っ飛ばした。その勢いでプロトドレミファビートはミサキの手から離れた。

 

「俺の患者に手を出したんだ……どうなるかわかってんだろうな?」

 

「……やれやれ」

 

先に動いたのはミサキ。長い足を使った蹴り技でタイガに迫る。同じように蹴り技で対抗するタイガ。しかしどちらかといえばミサキが優勢だった。

 

確かにタイガは戦闘なれしているが、ミサキは格闘特化の人間だった。数をこなしたタイガよりも一を極めたミサキの方が有利だったのだ。

そしてタイガの背後にはシャルロットが倒れている。いつも後ろを気にせず戦うタイガにとって、彼女を守りながらの戦いは難しいものだった。

 

「動きが鈍いぞ?」

 

「黙ってろ。こっからテメェをぶっ潰す!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園 食堂

 

「くっ、パワーなら勝っているというのに」

 

「完全に技量の差ね……」

 

「悔しいですわね……」

 

一方食堂では、タカイに対して3人で挑んでいた。訓練をしてきた専用機持ちのセシリアと鈴に戦闘経験を積んできた箒の3人がかりでもタカイに対して有効的なダメージを与えることができていなかった。

だがそれは相手が悪かった。タカイは剣術に加え、八極拳までも極めている。それこそタイガと戦っているミサキよりも強敵なのだ。

 

「これが力の差よ。大人しく専用機を渡しなさい」

 

「だとしても!」

 

「アンタなんかに!」

 

「負けるものですか!!」

 

それでも立ち上がる3人。そんな彼女達を見ながらタカイはプロトガシャットを起動させる。担当していたゲーム『ギリギリチャンバラ』。そのプロトタイプ。自らを怪物に変貌させるタカイ。

 

「かかってきなさい。まずは紅椿をもらう」

 

「やってみr「食堂で暴れるな馬鹿者」

 

3人とタカイの間に割って入る1人の女性。黒いスーツに身を包んだ黒髪の女性。頼れる先生ナンバーワンの織斑千冬だ。

 

「よく考えたものだ。まさか生徒の中にスパイを送り込み、警備システムをダウンさせる。そして自分は堂々と真っ正面から入り、仕事が終わったスパイを斬り殺す。良くも悪くも仕事人だな。だが詰めが甘かったな」

 

「織斑先生!応急手当て終わりました!」

 

「悪いが軽傷で済むと思うなよ。骨の6本は覚悟してもらおう」

 

「戯言を!」

 

タカイの刀をISの装備で受け止める千冬。不敵な笑みを浮かべながらタカイを蹴り飛ばした。

 

「お前が相手しているのは世界最強だ。簡単に倒せると思うな!」

 

刀を突きつける千冬の姿は、まるで仮面ライダーと同じぐらいの頼もしさがあった。




サブタイの『A』は『アマゾン』。つまり次回やってくる。みんな何手で詰むのかな?

次回はキリヤん、ラウラ、ハルナvs?
一夏、士、ハルカvsゲンム
千冬、タイガvsタカイ、ミサキ、アマゾン
でお送りすると思われ。次回は来年です!

ではSee you Next game!


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第42話 Zの猛攻/信じられる仲間

遅めのあけましておめでとうございますの挨拶です。
今年もバイク名人をよろしくお願いします!!

では新年最初の話はバトルばかり!でもいつものグダグタ具合だから安心だね!ラストにあの2人が参戦だよ!


8月10日(木)PM02時20分

 

道路を高速で走る黄色のバイク=レーザーLv2。

それに乗っているのは赤い革ジャン刑事=ハルナ。

その上をレーゲンで飛行するのはドイツの代表候補生=ラウラ。

 

3人が目指しているのはIS学園。最悪の事態を防ぐために最高速度を遥かに超えるスピードで走っている。一応黎斗に連絡を入れて道路を封鎖してもらっているお陰で爆走できている。

 

「ねぇ、やっぱり嘘の可能性もあるんじゃない?」

 

「そんな可能性の話をしてたらキリがないでしょ?」

 

「それに学園とは先程から連絡が取れていない。アイツが嘘を言っていたとしても、私達は学園に向かうべきだ。嫌な予感がする」

 

3人は先程まで天条タカアキの研究所にいた。裏側から一夏たちと挟み討ちをする手はずだった。しかし3人の前に敵が立ちはだかった。

仮面ライダーゲンム。桐也と激闘を繰り広げた強敵だった。

 

当然3人は身構えたが、ゲンムはただ一言、『IS学園に向かえ。敵が迫っているぞ。狙いは専用機だ』とだけ伝え姿を消した。

 

3人とも最初は疑ったが、ラウラの言う通り学園と連絡が取れないこともあり、予定を変更して学園に向かっているのだ。

 

「名人たちもさっさと追いついてくれればいいんだけど……」

 

しかし一夏たちはゲンムによる足止めを食らっていた。その事を3人は知らない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

研究所内部

 

「うおおおっ!!」

 

「ハアアアッ!!」

 

俺のマイティキックとハルカさんのバイオレントストライクがゲンムにヒットする。しかしあまりダメージがない。今のはクリティカルだと思ったのだが、どうやら浅かったみたいだ。

 

「やはりプロトガシャットの力は凄まじいものだ。これ程の力があるとは」

 

今のゲンムはプロトシャカリキスポーツを使用してレベル0になっている。初めはレベル2の姿で戦っていたが、追い詰められるとプロトガシャットでレベル0の姿に変身したのだ。

 

数字が低くなったからと言ってゲンムの力が弱まる訳ではなかった。むしろ戦闘力は数段階上昇している。

 

「チッ……このままじゃ埒が明かない………一夏!ハルカを連れてIS学園に向かえ!」

 

「え!?じゃあ士さんは!」

 

「俺はコイツを食い止める。心配するな。俺は破壊者だからな」

 

そう言って士さんはカードを取り出す。

俺たち3人がかりでも苦戦していたのに士さん1人残していくわけには……でも学園のみんなも心配だ。キリヤんたちも向かっていると思うけど…………どうすればいい!?

 

「士さん、ここは頼みます」

 

「ハルカさん!?士さんを1人残していくんですか!?」

 

「大丈夫だよ一夏くん。士さんには……頼りになる仲間がいるから」

 

「それって……?」

 

「彼が旅してきた9つの世界の仮面ライダーだよ」

 

『クウガ!アギト!龍騎!ファイズ!ブレイド!響鬼!カブト!電王!キバ!』

『ファイナルカメンライド!ディケイド!!』

 

士さんの体に9人の仮面ライダーのカードが装着されていく。中にはクウガのカードもあった………なんか、遺影みたい。

 

「早く行け!」

 

「…………行きましょうハルカさん!」

 

「うん!」

 

白式を纏いハルカさんを乗せ、研究所の天上を突き破ってIS学園を目指す。あ、天条タカアキの研究所の天上を突き破る………いやそんなこと言ってる場合じゃないな。待ってろよみんな!

 

「来いよ。0が10には勝てないって教えてやる」

 

「この世界、数字が全てではないと知れ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園

 

「はあっ………はあっ…なんとか……なったか」

 

千冬の体はボロボロだった。頭から血を流し、右腕は既に折れていた。これ以上の戦闘は命に関わる。

だが幸いにも戦いは千冬の勝利で先程終了した。タカイは壁に突き刺さっている。

 

「すまん箒、肩を貸してくれ」

 

「無茶をしすぎです千冬さん!貴女が倒れたら、悲しむのは一夏ですよ!」

 

「そうだな……すまん、無茶をしすぎた」

 

素直に謝罪する千冬の姿に周りの生徒は驚きを隠しきれていない。それも当然だ。いつもは厳しく頼れる最強の先生が、血を流し怪物を倒し、更には素直に謝罪をしているのだ。普段とのギャップに皆驚いている。

 

「だが、まだ終わっていない。侵入者は2人だ。恐らく花家先生が相手をしているはずだ。動ける専用機持ちは援護に向かってくれ。勿論無理はするなよ」

 

「「「はい!!」」」

 

箒、セシリア、鈴は食堂を後にする。彼女たちが向かうのは先程から爆発音がしている保健室方面。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐっ!?……貴様のどこにそれほどの力が…」

 

「おい、さっきまでの威勢はどうした?まだ生身の方が手応えがあったぞ?」

 

「そりゃあ僕が目を覚ました瞬間にタイガ先生の動きがガラリと変わったからじゃない?」

 

保健室前ではタイガとシャルロットがミサキと対峙していた。ミサキはもう1つのガシャット、プロトドラゴナイトハンターで変身していた。プロトガシャットの中でも最強クラスの力を持つ。

 

しかしタイガの前では雑魚同然だった。というのも、シャルロットが目を覚まして戦場から少し離脱した瞬間、タイガの動きがガラリと変わったからだ。後ろを気にせずに戦える。タイガとってそれはとても重要なことだった。

 

「リヴァイヴは取り返したんだ。他の専用機持ちと合流して来い」

 

「……タイガ先生も無茶しちゃダメだからね」

 

「………なるべく努力する」

 

あとをタイガに任せてシャルロットはその場を離れる。タイガはミサキと向かい合う。ミサキもボロボロだがまだ諦めたわけではなかった。

 

「俺が……負けるかぁ!!」

 

「いいや……テメェの負けだ!!」

 

ミサキの拳を躱し、腹部に強烈なボディーブローを叩き込む。怯んだところに更に拳を叩き込むタイガ。最後は思いっきり蹴り飛ばす。

 

「言っただろ。俺の患者に手を出したんだ……それ相応の覚悟はしてもらうぞ」

 

『バンバンタンク!』

 

バンバンタンク。変身用ともレベルアップ用とも違う、いわば必殺技専用ガシャット。臨海学校後、黎斗から譲り受けていたのだ。

 

『ガシャット!キメワザ!!』

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「はああっ!!」

 

最大出力の砲撃がミサキに着弾し、爆発した。その場に倒れこむミサキ。プロトドラゴナイトハンターは壊れていなかった。

 

「ミッション、コンプリート……ふうっ……」

 

疲れ果ててその場に座り込むタイガ。これで一件落着。俺の仕事は終わりだと思っていた。問題があるとすれば、暴れまわった結果ぶっ壊れた保健室周辺についての説明ぐらいだ。

 

しかし、敵はタイガに休ませる暇など与えてはくれなかった。

 

「…………三手」

 

「あ?」

 

「一」

 

突如銀色の獣に拳を叩きこまれるタイガ。なんとか吹っ飛ばされずにその場に踏みとどまるが、すぐに2発目が叩き込まれる。タイガは成すすべもなくその場に倒れてしまった。

 

そして銀色の獣はただ機械的にタイガを見下ろしながら、

 

「しまった……一手早かったか」

 

そう呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園周辺道路・南ゲート

 

「危ねぇ!?」

 

突然の爆撃。ハルナさんを吹っ飛ばす形になったが今のを食らうのよりはマシだと思ってもらいたい。だって地面が消滅してるんだぜ?爆撃でぶっ壊れているならわかる。だがこれは完全にこの世から道路の一部が消滅しているのだ。

 

「今のを躱すか仮面ライダー」

 

上空から声がする。上を見上げるとUFOが飛んでた。いやアレはUFOみたいな怪物と言うべきか。

 

「私は天条タカアキ。君たちが探している天条タカアキその人だよ」

 

「おかしいな。自分らは人を探してるんだ。生憎喋るUFOは探しちゃいない」

 

「君にはこれがUFOに見えると?違うな。この姿は全ての空間を操る最高神の姿さ!」

 

おいおい自分のこと神とか言ってるぞ?頭大丈夫か?あとさ、

 

「バレバレなんだよオタクら。奇襲するなら殺気ぐらい消したら?素人の自分でも分かったよ今の」

 

ラウラがオオタキにプラズマブレードを、ハルナさんがフクダに拳銃を突きつける。

 

「何もかも手抜きだねあんたら。もう少し計画を練ることをオススメするよ」

 

「言ったはずだよ。私は全ての空間を操ると」

 

次の瞬間、いきなりオオタキとフクダが目の前に現れた。驚いて飛び退くが、次に瞬きをした瞬間には自分の体は遥か上空に浮いていた。

 

正直何を言ってるかわからないと思うが、自分も分かっていない。何がどうなったんだ!?

 

「空間を操る………それが出来るのはゾーンのメモリ!」

 

「正解だよドイツの特殊部隊隊長。この私、ゾーンドーパントの力は目標を私のフィールド内のマスに瞬間移動させることができる能力を持っている」

 

「でもタネが分ったならこっちのものよ!」『アクセル!』

 

「分からないかなお嬢さん。タネを明かしても勝てるから私は今言ったのだよ?」

 

『ゲキトツロボッツ!』『ジェットコンバット!』

 

オオタキとフクダがプロトガシャットを使って怪物に変身する。コイツは単純に面倒くさい相手だ。やりにくいったらありゃしない。

 

「三速」『ギリギリチャンバラ!』

 

自分はチャンバラバイクゲーマーに、ハルナさんはアクセルに変身する。単純な力比べじゃコイツらには勝てない。頭を使わないとな。つまり時間がかかる。

 

信じてるぜ名人。間に合ってくれよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それぞれがそれぞれの場所で戦う中、戦況が変わる場所が2つ。

 

1つは士とゲンムの戦闘場所。2人の間に割って入るピンクの仮面ライダーの姿がそこにはあった。

 

「ノーコンテニューでクリアしてみせます」

 

もう1つはIS学園。銀色の獣=アマゾンシグマが専用機持ちと戦っている時だった。水色の騎士の仮面ライダーがアマゾンシグマを吹き飛ばした。

 

「これより、切除手術を開始するわ」

 

戦いはいよいよ佳境に入る。




サブタイの『Z』は『ゾーン』です。『ズー』でも良かったんだけどね。

わかる人にはわかる最後の2人。変身者も大体わかるかな?

駆け足で進んできたバトルもいよいよ最終局面。平ジェネ編もあと半分です。はいそこ!まだ半分とか言わないの!

次回はキリヤん、ラウラ、ハルナvsタカアキ、オオタキ、フクダ
士、ピンクの仮面ライダーvsゲンム
専用機持ち、水色の騎士の仮面ライダーvsアマゾンシグマ
でお送りしたいな!出来たらいいな!

ではSee you Next game!


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第43話 Oの覚醒/咆哮する狩人

今回から反撃開始!


8月10日(木)PM03時00分

 

研究所内部

 

「お前は……」

 

「私は仮面ライダーエグゼイド。手を貸しましょうディケイド」

 

研究所の天井を突き破って降り立ったのはピンクの仮面ライダー。見た目はゲンムをピンク色に染めた感じ。更に腰のホルダーには赤色と金色のガシャットを装備している。

 

「懲りないな君も」

 

「生憎天才ゲーマーの名をお嬢様から頂いている身としては、たかがウイルスに負けるわけにはいきませんので」

 

「だそうだ。ここからはちょっとばかし本気でいくぞ」

 

士はケータッチのカードを引き抜くと別のカードを挿入した。つい最近新たな仮面ライダーの世界に立ち寄った際に手に入れたカード。まだ完成はしていないカードだが、エグゼイドと協力できるなら。

 

『W!オーズ!フォーゼ!ウィザード!鎧武!ドライブ!ゴースト!エグゼイド!ビルド!』

『ファイナルカメンライド!ディケイド!!』

 

「いくぞエグゼイド!」

 

「はい!」『ガシャコンブレイカー!』

 

新たなコンプリートフォームに変身したディケイドとガシャコンブレイカーを装備したエグゼイドがゲンムに向かって突撃する。

対するゲンムもプロトスポーツゲーマーの車輪を手に持ち応戦する。

 

激突するハンマーと剣と車輪。先程まで3人の仮面ライダー相手に優位に立ち回っていたゲンムだが、エグゼイドの動きにはついてこれていなかった。

そのエグゼイドの戦い方はまるでアクションゲームだった。使えるギミックをフルに活用してダイナミックに動き回る。

 

「そこです!」

 

ハンマーをゲンムの腹部に叩きつける。動きが鈍ったところ追撃するディケイド。

 

『ウィザード!カメンライド!オールドラゴン!!』

『ファイナルアタックライド!ウィ・ウィ・ウィ・ウィザード!!』

 

ディケイドが召喚したのは紅い魔法使い=仮面ライダーウィザード。ディケイドと動きがシンクロしているウィザード。ディケイドとのダブルライダーパンチをプロトスポーツゲーマーに叩き込む。

 

「くっ!……流石と言ったところか。だが今はこれで充分だな」

 

「逃すと思うか?」

 

「ここで倒します!」

 

『ビルド!カメンライド!ラビットタンクハザード!!』

『ファイナルアタックライド!ビ・ビ・ビ・ビルド!!』

 

『ガシャット!キメワザ!』

『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

逃げようとするゲンムに対して、ディケイドは赤と青の複眼を持った黒いライダー=仮面ライダービルドを召喚。エグゼイドもスロットにガシャットを差し込みキメワザを発動させる。

 

「たあああっ!!」

 

「チッ……!」『鋼鉄化!マッスル化!』

『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

ゲンムは辺りのエナジーアイテムを吸収し、キメワザで対抗する。しかし世界の破壊者であるディケイドとビルドのライダーキックはゲンムのキメワザを相殺する。

 

「フィニッシュは必殺技で決まりです!」

 

怯んだゲンムにエグゼイドのライダーキックが命中する。会心の一発がゲンムを吹き飛ばす。吹き飛んだ衝撃でプロトシャカリキスポーツガシャットがドライバーからこぼれ落ちた。

 

「ゲームクリア。さあ、そのプロトアクションもいただきますよ」

 

「待てエグゼイド。コイツには聞きたいことがある」

 

コンプリートフォームから通常のディケイドに戻った士はゲンムに問いかける。

 

「単純な疑問だ……何故手を抜いた」

 

それが疑問だった。アマゾンニューオメガやクウガの力は決して弱くない。それでも3人がかりで苦戦したのだ。しかしエグゼイドが参戦した途端、たった2人でゲンムを撃破できたのだ。

 

「簡単な答えさ…………新しいゲームを作るため。私はクリエイターだからな……」

 

「話はここまでです。さあガシャットを」

 

しかしゲンムは透明化のエナジーアイテムで姿を消してしまった。研究所に残ったのはコンプリートフォームから通常のディケイドに戻った士とエグゼイドだけだった。

 

「逃げられましたか……でもプロトガシャットを回収できたのはいいことです。ご協力ありがとうございます」

 

「まだココでの戦いが終わっただけだ。まだ問題は片付いていないだろ?」

 

「ですがそれも時間の問題。頼れる仮面ライダーは私達だけではない、ですよね?」

 

エグゼイドは二本のガシャットを取り出しディケイドに渡してくる。その内の一本はドラゴナイトハンターZ。仮面ライダー達を新たなステージへ連れて行ってくれるガシャットだ。

 

「これを九条桐也に渡してください」

 

「お前が渡せばいいじゃないか。仲間なんだろ?」

 

ゲーマドライバーを指差しながらディケイドが言う。それに対してエグゼイドは静かに、

 

「ええ、レーザーは味方です。ですが九条桐也は……私の敵です」

 

そう告げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

IS学園 中庭

 

アマゾンシグマの猛攻で紅椿のシールドエネルギーがつき、箒は敗北した。そんな箒に迫るシグマ。セシリアや鈴、シャルロットも倒れた以上、箒を救う者はいない。諦めかけたその時だったのだ。

 

「これより、切除手術を開始するわ」

 

水色の騎士の仮面ライダーが現れたのは。

 

「切除だと?」

 

「ええ。貴方はこの世界の癌。存在してはいけないのよ」

 

「ならば自分が切除される前に切除してみろ」

 

シグマが一気に踏み込み、仮面ライダーの懐へと入り込む。そして鋭い爪を腹部へと突き刺す。その威力は腹部を貫通するほどだった。一手で終わってしまったと拍子抜けするシグマ。腕を引き抜き血を払う。

 

「呆気ないな」

 

「もう、せっかちなんだから。私はこっちよ」

 

背後から仮面ライダーの声が聞こえる。振り返るとそこには巨大な槍と愛用の剣=ガシャコンソードを装備した仮面ライダーが立っていた。

 

「そっちは私が作った水の分身。中々綺麗にできていたでしょ?」

 

「小賢しいマネを」

 

「まあまあそんなに怒っちゃ嫌よ?平和的に解決しましょ?このままおとなしく帰ってくれるなら私も手は出さないわ」

 

「断ったら?」

 

「ちょっと痛い目にあってもらうわよ?」

 

「やってみろ………お前は三手で詰む」

 

その場から駆け出すシグマ。腕のカッターで切りかかる。それをガシャコンソードで防ぐ。

 

「そう言えば名乗り忘れたわ。私は仮面ライダーブレイブ………変身者(中の人)の名乗りもいるかしら?」

 

「必要ない!!」

 

今度は足のカッターで攻める。後ろ回し蹴りをブレイブ目掛けて放つが、今度は槍で塞がれてしまう。流石にマズイと思ったのか距離を取るシグマ。

 

「必要じゃないかしら?貴方の宣言を初めて打ち破った相手として語り継がれるのだから」

 

「黙れっ!!」

 

冷静さを欠いたシグマはブレイブ目掛けて突進する。それに対してブレイブは地面に剣を刺したまま動かない。勿論今のブレイブは水の分身ではなく、本物だ。このままいけば爪の餌食になる。

 

「私も宣言するわ…………貴方は一手で」

 

「うおおおっ!!」

 

「詰む」

 

シグマの爪がブレイブに当たることはなかった。何故ならブレイブが刺した剣から放たれた冷気で、シグマの動きが止まったから。相手に凍ったことを認識させる前一気に凍らせる。それはもう1つの力があって成せる技。

 

「さようなら」

 

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

 

これこそがIS学園生徒最強の力である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

少し時を遡り、

IS学園周辺道路・南ゲート

 

「まさか……父さんからパクったコイツを使うことになるとは」

『トライアル!!』

 

「まさか……ここまで強えとはな」

 

苦戦。いや今の状況は大苦戦と言うべきか。照井とクジョーの攻撃は強力だ。アクセルの爆発力のある力、ギリギリチャンバラの一撃必殺。どれも申し分のない力だ。しかも2人とも高速移動が可能な仮面ライダー。当たりさえすれば必ず勝てる。

 

そう、当たりさえすれば。

 

「ハッハハハハ!!さっきまでの威勢はどうしたのかな仮面ライダーの諸君よ!」

 

「あの野郎、ぜってぇ泣かせてやる」

 

「全て……振り切る!」

 

照井はアクセルトライアルへとフォームチェンジする。トライアルメモリ。別世界では完成していたのか。しかしトライアルのスピードをもってしてもゾーンの能力の前には意味を成さなかった。

 

何か別の方法でゾーンの能力に対抗しなくてはならない。

 

「戦場で考え事か?そんな奴から死ぬんだぜ!」

 

「軍人でもない、ましてやリストラされた人間が、戦場を語るな!」

 

フクダの攻撃を全て避ける。だがゾーンの能力でエリアを移動させられる。そして死角からのミサイル。更にオオタキがゾーンの能力でエリア移動して私の目の前に現れる。急いで飛翔するがすぐに元の場所に戻され、ロケットパンチを叩き込まれる。

 

空中にいても場所を移動させられるのは厄介だ。だが奴にも弱点があるはず!

 

「ぐあっ!?……クッソォ……名人はまだなのか!?」

 

「ハルも遅いなぁ……暴走してなければいいけど」

 

「………………なんだ、簡単な話じゃないか」

 

「「??」」

 

「2人が来るまで持ちこたえろ。今はそれが作戦だ」

 

「秘策があるならノるぜ隊長さん!」

 

「今は貴女に賭けるわ!」

 

そう、簡単な話だ。エリア外にいる一夏と水澤。ならばエリア外から一気に加速してゾーンを切り伏せればいい。一夏の白式ならそれが可能だ。

それにゾーンの能力にはやはり限界がある。一度にたくさんの対象を動かすことはできない。出来ても3人だ。ならば話は早い。

 

『一夏、聞こえるか?』

 

『ラウラか?今研究所を出た!すぐに学園に向かう!』

 

『それだがな。今現在南ゲート付近で敵と交戦中だ』

 

『マジかよ……学園は!?』

 

『連絡はない。だが今はアイツらを信じろ。それと今交戦中の相手にはお前の力が必要だ』

 

『俺の?』

 

『手短に話す』

 

 

「任せたぞ一夏……さて、クジョー!照井!水澤が来るまで残り3分だ。耐えられるな!」

 

「あったりまえ!」

 

「私に質問しないで!」

 

「よし……畳み掛けるか」

 

一夏とのプライベートチャンネルを閉じ、再び戦場に戻る。この付近にはエナジーアイテムの入ったトロフィーがいくつかある。それら全てが作戦に適したエナジーアイテムかどうか分からないが、それでもこれだけ数があれば問題ない。

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『トライアル!マキシマムドライブ!!』

 

「ゼロ距離から叩き込んでやるぜ!」

 

「このスピードなら!」

 

クジョーはガシャコンスパローにガシャットを差し込みキメワザを発動させる。照井もマキシマムドライブを発動させゾーン目掛けてバレーキックを叩き込もうとする。

 

「悪いが例えスピードがあっても、ゾーンの前では無意味!その攻撃は友達にプレゼントしたまえ!」

 

クジョーと照井がゾーンによって場所移動させられる。移動先は私の正面と背後。AICとワイヤーブレードでなんとか動きを止めるが、これが続くとなると面倒だ。

 

「悪い隊長さん……にしても3分って長いな」

 

「カップラーメンが出来るぐらいだからね」

 

「だが、何事にも想定外は存在する。例えば、予定より早く到着とかな」

 

レーダーに反応あり。反応は上空から。上を見上げる。つられて全員が上を見る。

 

「隊長さん!上からアマゾンが!?」

 

「ハル!!」

 

空から突撃してきたのはアマゾンニューオメガ。つまり水澤だ。腕からブレードを伸ばしゾーンを狙う。角度や速度からして上手くいけばゾーンを串刺しに出来る。

 

「それも無駄なこと、串刺しになるのはお前たちだ!」

 

「(きた!)総員!防御体制!!」

 

『伸縮化!』『縮小化!』『鋼鉄化!』

 

すかさずトロフィーを破壊してエナジーアイテムを吸収する。次の瞬間私は水澤の目の前にいた。なるほど私が選ばれたか。だが私のエナジーアイテムは鋼鉄化。この程度なら防げる!あとはお前の出番だぞ!

 

「決めろ!一夏!!」

 

水澤の遥か後方、猛スピードで迫ってくる白い機体。零落白夜を発動させた一夏だ。

水澤と私の横を通り過ぎゾーン目掛けて剣を振る。その間僅か数秒。言ってしまえば私が水澤の目の前にテレポートした瞬間には一夏はゾーン目掛けて剣を振りかぶっていた。

 

「たあっ!!」

 

「ぐおおっ!?ば、バカな!?」

 

「もう一発!!」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「食らいなさい!!」『トライアル!マキシマムドライブ!!』

 

更にダブルライダーキックがゾーンに叩き込まれる。そしてメモリブレイクしたのかゾーンから老人の姿になる。写真通り天条タカアキその人だ。

 

「悪い、遅くなった」

 

「いいや、来てくれただけありがてぇよ」

 

「にしても考えたわね。ハルを囮に使ったのね。そしてハルに意識を向けさせた後に、一気に加速した一夏くんがゾーンを斬り伏せる」

 

「ゾーンの弱点は一度に移動させられる数は3人まで、それと移動させた後数秒間はその能力が使えない。それを利用させてもらった。もっとも一夏のスピードがあれより遅くてもゾーンは斬り伏せれた」

 

「俺たちの作戦勝ちだな!」

 

敵3人に剣を向ける一夏。5対3。そのうち仮面ライダーが3人もいるのだ。こちらに分がある。

 

「ラウラ、学園が心配だ。先に行ってくれ」

 

「む、それもそうか。よし、ここは任せたぞ」

 

確かに学園も心配だ。ここは彼らに任せよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くっ…………ふん!後悔しろ、戦力を1つ減らしたことにな!」

 

そう言ってタカアキはプロトガシャットを4つ取り出す。まさかとは思うけど、全部刺さないよな!?

 

『マイティアクションX!』『タドルクエスト!』『バンバンシューティング!』『爆走バイク!』

 

「ふん!!」

 

俺の予想通りになってしまった。タカアキはプロトガシャット4つを全て自分の体の中に取り込んでしまった。やがてタカアキは赤い怪物に変貌する。

 

「1人減った?違うな19人分は俺1人でなんとかなるぞ?」

 

しかしこちらにも強力な助っ人が来てくれた。バイクに乗ってやって来たのは士さん。更にキリヤんにガシャットを手渡す。

 

「お前にプレゼントだとよ」

 

「自分に?…………ふーん、まあやってみるかね」

 

キリヤんが二本のガシャットを起動させる。俺もベルトを出現させ、意識を集中させる。

 

『バイオレントオメガ!NEW!』『ドラゴナイトハンター!Z!』

 

「変身!」「アマゾン!!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!』

『ア・ア・マママ!ゾ・ゾ・ゾ・ゾーーン!アマ!ゾン!バイオレントオメガ!NEW!』

『ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!Z!』

 

「よっしゃあ……ノリノリで狩り開始だ!」

 

「ここでお前達を倒す!」

 

変身完了。俺はいつものマイティフォーム。キリヤんはニューオメガをゲーマライダー風にアレンジした姿。更にドラゴンのアーマーを纏っている。すんげー強そう。

 

「仮面ライダーが……5人だと!?」

 

「貴様ら……私の邪魔をする貴様らは、一体なんなんだ!!」

 

「通りすがりのかめ「私に質問するなあっ!」おい!俺の台詞!」

 

全員で一斉に駆け出す。さあ、最後の勝負だ!




サブタイの『O』は『オメガ』です。気づいている人はきっと気づいている。サブタイを繋げると……。

エグゼイドとブレイブ参戦。そしてバレバレの中の人。一応隠しとくけどね!

キリヤん、ついに新フォーム。所謂映画限定フォーム。その名も『仮面ライダーレーザー ハンターオメガゲーマー』です。レベルは存在しないので楽々変身可能という設定。

それとガシャット4つ吸収したタカアキの見た目は『ゲノムス』をイメージしてください。つまり申し訳程度の平ジェネ要素。

次回は恐らく平ジェネ編ラスト。ライダーズvsゲノムス+α。

ではSee you Next game!


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第44話 N.Sへのチケット/始まったばかりの戦い

何とか2月中に書き上げられた。ホント時間がないのも考えようですね!

(MHWとSAOFBやってた人)

今回で平ジェネ編は終わりです!


8月10日(木)PM03時30分

 

廃工場内部

 

「「おらぁっ!!」」

 

天条タカアキの変身したゲノムスは無数の兵隊を呼び出した。数はおよそ300体。制圧するには十分すぎる数だ。でも甘いんだよねぇ〜。自分たちが仮面ライダーだってこと忘れてるんじゃない?

 

「たあっ!」

 

ディケイドがライドブッカーで兵隊を切り裂いていく。途中途中で様々な仮面ライダーにカメンライドしながら倒していく。

 

「ハル、いくよ!!」

 

「まっかせなさーい!!」

 

ニューオメガが兵隊を投げ飛ばす。投げ飛ばされた兵隊に確実に攻撃を当てていくアクセルトライアル。あの速さ、自分よりも上なのか?余裕があったら速さ比べとかしてみたかったけど。

 

「キリヤん!そっちに敵行ったぞ!」

 

名人に声をかけられる。他の奴に目を向けてる場合じゃないな。振り返るとフクダとオオタキが迫ってくる。相変わらずゲノムスは奥で立っているだけ。よほど自信があるのかなぁ?

 

「悪いけど、今の自分の相手じゃないね」

 

『キメワザ!ドラゴナイト!クリティカルストライク!!』

 

ロケットパンチとガトリングの銃撃を飛翔して躱す。そしてすかさずドラゴンソードとドラゴンガンからビームを発射する。そんでもって綺麗に決まったわけ。勿論2人はそのままゲノムスの元へとご返品。

 

「そらおまけだ!」

 

頭のドラゴンファングから大量の火炎弾を発射する。無数の兵隊を一気に片付ける。爽快爽快。やっぱ無双ゲーも悪くない…………あ、名人達にも当たってた?

 

「ちゃんと周りを見てから撃て!」

 

「悪い悪い。さて、さてさて、ご自慢の兵隊さん達にはご退場してもらったわけだけど。まだやる?」

 

「バグスターウイルスの兵隊を駆逐したぐらいでいい気になるなよ」

 

それでもゲノムスは態度を変えない。それどころかまたしても兵隊を召喚していく…………てかサラッとバグスターウイルスとか言ってるけど、なんなんだそれ?

 

「我が研究結果を、甘く見るなよ!!」

 

「アンタこそ、自分たちの力をナメすぎ」

 

『ファイナルアタックライド!』

『トライアル!マキシマムドライブ!』

『AMAZON-SLASH』

『ドラゴナイト!クリティカルストライク!!』

 

ディケイドとアクセルがフクダにダブルライダーキックを。自分とアマゾンオメガがオオタキをすれ違いざまにドラゴンブレードとアームカッターで切り裂く。

 

残ったゲノムスに飛びかかる名人。ボスは任せたぜ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ぜってぇ負けられねぇ!」

 

「超古代の力に頼る小僧が!」

 

ゲノムスに飛びかかりラッシュを仕掛ける。俺の攻撃を全て防いでいくゲノムス。それでも俺は攻撃をやめない。やめちゃいけないんだ。

 

これは俺の予想だけど、この世界のアマゾンを作り出したのはコイツだ。シャルの母親を殺したアマゾン。それを作り出したタカアキ。

きっとシャルがケジメをつけなきゃいけない相手だろう。でも俺は俺のケジメをつけるために、今ここで拳をふるう。シャルの様に、誰かが傷ついて流す涙ほど、女の子に似合わないものはない。

 

「超変身!!」

 

タイタンフォームに変身してゲノムスを攻撃する。それでもゲノムスには通用しない。だとしてもッ!!

 

「なぜ諦めない!お前の攻撃は通用しない!それは分かるはずだ!」

 

「うるせぇ!お前のせいで、涙を流した人がいる!怒りを燃やした人がいる!今の俺は、そんな人達がもう一度心から笑顔で笑えるようにする。その為に戦う!」

 

「言うじゃないか一夏!」

 

士さんがライドブッカーでゲノムスを射撃する。ハルナさん1人でフクダを抑えていた。

 

「でもな一夏。誰かを笑顔にするには、自分も笑顔じゃなきゃいけないんだ。それを忘れるなよ」

 

「!…………はいッ!!」

 

「くだらん!くだらん!くだらん!!所詮は戯言!貴様は誰も笑顔にすることはできん!」

 

ゲノムスの放つ光弾に吹き飛ばされる。さらに追撃で光弾が飛んでくる。直撃を覚悟する。

でもそれは俺に届くことはなかった。

 

「そらよっと!!」

 

キリヤんが寸前のところで光弾を弾き返してくれた。弾き返された光弾はまっすぐにゲノムスの元へと飛んでいく。それを体から伸ばした触手で弾き落とす…………のではなく、オオタキとフクダを触手で捉え、そのまま盾として使ったのだ。2人は変身が解除され、ゲノムスに投げ飛ばされる。

 

「仲間をそんな風に………」

 

「仲間?違うな!これは私の実験材料でしかない!………お前は誰かを笑顔にすると言ったな。だが私は違う!私の実験、研究で笑顔になるのは私1人でいい!理解者など必要ない、孤高こそが最強の力を手に入れる近道なのだ!」

 

「ちげーだろ。人間助け合わなきゃ高みには登れない。誰かの助けがなきゃ頂上にはたどり着けねぇよ。アンタはきっと一合目で挫折する」

 

『レベルアップ!爆走バイク!!』

 

「乗れ名人。あいつに見せてやろうぜ。自分たちの力をさ!」

 

「ああ!」

 

キリヤんはレーザーレベル2に。俺はマイティフォームに変身する。レーザーに跨りゲノムスを見据える。ゲノムスは巨大なエネルギーボールを繰り出そうとしている。逃げ道はないし逃げるつもりもない。真っ向勝負だ。

 

「このレース、ノらない手はない」

 

「最速で、一直線に駆け抜ける!」

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

アクセル全開。最初からクライマックスのマックススピード。しかし速度で言えばゲノムスのエネルギーボールも同じ速度だ。走り出したタイミングと放たれたタイミングは同じ。距離もそれほど離れていない。このままいけば直撃だ。躱す暇もない。ならどうする。

 

「跳べ名人!」

 

直撃する直前にレーザーを踏み台にして高く跳び上がる。そのままエネルギーボールの上を通過する。ゲノムスは驚いているが、すぐに俺に向けて光弾を投げつけようとする。

 

「そらお返しだ!」

 

しかしそれは跳ね返ってきたエネルギーボールの直撃によって阻まれる。以前のガドルとの戦いの時のように、攻撃が直撃する寸前でレベル1に戻りその攻撃を跳ね返したのだ。相変わらず無茶するなキリヤんは。

 

あとは俺が決めるだけ。右足に力を集中させる。ビリビリと電気が流れてくるのが分かる。銀の福音との戦いの時に、俺は福音の電撃攻撃を直撃してしまった。それからだ、体に力を込めるとビリビリと電気が流れらようになったのは。

 

やがて右足に金色のパーツが現れる。これなら……いける!

 

「うおおおっりあぁぁぁ!!」

 

「ぐっ!?がああああっ!!」

 

しかしゲノムスは倒れない。確かに奴の胸には封印のマークが刻まれている。それでも奴は倒れない。まだ足りないってのかよ!

 

「一発で足りないなら、みんなで何発も叩き込めばいいんだよ!」

『トライアル!マキシマムドライブ!!』

 

「ハルの言う通りだよ!ライダーは助け合いだからね!」

『AMAZON–STRIKE』

 

駆け出したのはハルナさんとハルカさん。ハルナさんは逆回し蹴りで、ハルカさんは踵落としでゲノムスに攻撃する。

更に士さんがディメンションキックで追撃する。

 

「行け一夏、桐也!お前たちの世界のケジメは、お前たちで決着をつけろ!」

 

「だとよ。もう一回付き合えよ一夏」

 

「……ああ!!やってやるぜ!」

 

もう一度右足に力を込める。今度は全身を電気が走る。やがて赤き体に金色のラインがはいる。感じる。物凄い力を!!

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

「トドメは任せたぜ!」

 

「ぐうっ……小賢しいマネを!!」

 

ゲノムスはまだ倒れない。それどころか更に光弾で攻撃してくる。でもあれはどちらかと言うと暴走に近い。光弾も手からだけではなく、全身から放たれている。

 

「狙い目は……そこだぜ!!」

 

キリヤんのドロップキックが直撃する。しかも封印のマークが刻まれた部分だ。弱まっていた封印エネルギーも衝撃で活性化している。俺があそこにもう一度攻撃を叩き込めたら、今度こそ倒せる!!

 

「今だ!決めろ一夏!!」

 

一気に駆け出す。右足が地面に触れるたびに地面が燃え上がる。なんとなく分かる。今すぐにこの力を解放しないと俺がヤバイ。もってあと30秒。この形態に変身してから50秒ぐらいが今の俺の限界だ。

 

「これで、終わりだあああっ!!!」

 

超強化版マイティキック。カッコ良く言うならライジングマイティキック。これがゲノムスに直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の意識はそこで途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あの戦いからもう3日か……」

 

8月13日(日)PM10時00分

 

ふと部屋のカレンダーを見てそう呟く。ゲノムスとの戦いから丸3日。自分は自分の家(って言ってもアパートの一室なんだけど)で寛いでいた。というのも訳があって……。

 

とりあえず、ことの結末を言っていくと、

 

 

あの戦いでゲノムスは確かに倒した。しかし天条タカアキは倒せていなかった。少しややこしいな。簡単に言うと、アレは天条タカアキではなかった。テロ集団最後の1人、ドラゴナイトハンターZの製作者シドウだったのだ。

名人がゲノムスを倒したあと、テロ集団は刑務所送りになる予定だった。だから最後に天条タカアキの面でも拝んでやろうとマジマジ見てみたらあら不思議、天条タカアキの顔がシドウの顔になっていたのだ。

簡単な話、シドウは天条タカアキの偽物を演じていたのだ。つまり影武者。本物は未だ行方不明。目下捜索中らしい。

 

 

それとプロトガシャット。ほとんどは回収できた……けど、回収できなかったものとか壊れたものとか……結局全部は集めきれなかった。社長も苦笑いだったぜ。

 

 

刑事さんたちはまだこの世界に残るらしい。というのもアリアマゾンがまだ捕まっていないからだとか。学園に現れたアマゾンシグマを名乗る敵が怪しいとかなんとか。

確かシグマは水色の仮面ライダーが倒したらしいが、結局自己再生して逃げたらしい。ツメが甘いって言ってやりたい。

 

 

そしてそのシグマが現れたのをきっかけに、IS学園はセキュリティー面の見直しの為にしばらく休校となった。これが自分がアパートに戻っている理由。

確かにクラス代表戦とかタッグトーナメントとか、セキュリティーに問題あるんじゃないかって言いたくなるような出来事が多すぎた。まあ仕方ないよな。

 

 

とまあ色々と面倒ごとを残したまま3日も過ぎたのだ。今のところ何も面倒ごとは起きていないが……。

 

「こらー本音!ちゃんと髪乾かしなさいよ!」

 

「いや〜ん、リンリンが襲ってくる〜」

 

「どうしてこうなった……」

 

IS学園が休校となった為、寮で生活していた人間も強制的に追い出されている。セシリアと隊長さんは本国に戻って、シャルちゃんはタイガ先生の看病、箒も元々住んでいたという神社に戻っている。

しかし本音とリンリンは家に帰るわけでも、本国に戻るのでもなく、何故か自分のアパートに転がり込んできたのだ。

 

本音曰く『家にいても暇だから〜』

リンリン曰く『今実家に戻るのもアレだから、アンタに家に泊まるわ』

 

リンリン……そこは普通名人の家に行きなさいよ……

 

「賑やかなのはいいけど、健全な男子高生だってこと忘れないでもらいたいねぇ……」

 

何はともあれ、激しい戦いの1日はもう終わってるんだ。今は少しでもゆっくりしよう。

そんな時だ。楽しい知らせが来るのは。

 

「…………ったく、戦いが終わったと思ったら、意識失って丸々1日も寝てたやつが………まあ元気なこった」

 

それは名人からのメールだった。




サブタイの『N.S』は『ネクストステージ』の略です。そして平ジェネ編のサブタイの英語を繋げると……はい、変に頑張った結果です。サブタイ考えるので力の90%ぐらい使いました。おかげでこの中身ですよ!

一応の決着はつきましたが、結局テロ集団を捕まえたことしか出来ていない一夏達。まだ始まったばかりの戦いです。二学期編でもコラボしよう。頑張ろう。

では次回はバトル無しのほのぼのでいきましょう。もしかしたらちょっとした番外編を挟むかもです。

ではSee you Next game!


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第45話 真夏の夜の夢

「僕はね、夏祭り編を書きたかったんだ」

「書きたかったって……諦めたのかよ?」

「実のところ、前の話で8月15日まで飛ばしてしまってね。夏祭り編は8月のお盆。つまり15日までなんだ」

「…………じゃあ8月13日に書き直せば?」

「…………それもそうだね」

というわけで、前の話のラストを8月13日にしました。だから今回は8月15日のお話なんだ。時間を間違えたわけじゃないからね!


8月15日(火)AM11時22分

 

(やはり、何も変わっていないな……)

 

8月のお盆週。私は自分の生家、篠ノ之神社にいた。というのも、今IS学園はセキュリティー面の見直しの為に立ち入り禁止となっている。色々と問題があったのだ当然だろう。

そして寮で生活していた生徒も強制的に追い出された。勿論私もだ。

 

だがタイミング的にはちょうど良かった。この時期は篠ノ之神社で夏祭りが行われる。そこで私は神楽舞を披露することになっていた。どのみち帰って来る予定だったのだ。それが少し早まっただけのこと。

 

しかし心配事もある。あのアマゾンシグマが襲撃してきた日。一夏はキリヤんに連れられて帰ってきた。しかも意識不明の状態で。幸いにも今現在は意識が回復して、元気に動き回れるとメールが届いたが、正直不安だ。

キリヤんは『バナナで足滑らせて頭打った』と説明してくれたが……どう考えても嘘だ。なら何故お前も怪我をしているんだと、言ってやりたかった。

 

「あら、ここにいたのね箒ちゃん」

 

「雪子叔母さん。すいません勝手に出歩いて」

 

「いいのよ。元々住んでいたところだもの。誰だって同じことをするわ」

 

うふふと微笑む雪子叔母さん。やはりこの人の笑顔は特別だ。心が洗われる。

 

「それにしても、夏祭りの手伝いなんてしてて本当に良かったの?」

 

「はい、午前中は特に用事はありませんから」

 

「そう?確かに箒ちゃんには神楽舞をお願いするけど、午前中ぐらいはゆっくりしててもいいのよ?」

 

確かに夏祭りの準備はほとんど終わっている。あとは些細な確認のみ。私がやることなど特にないだろう。だが、大人しく待っているのも性に合わない。

 

「すみません。もう少し歩いてきてもいいですか?」

 

「ええ、大丈夫よ。神楽舞は18時からだから、それまでにお風呂に入っておいてね」

 

叔母さんと別れ、剣道場へと向かう。板張りの剣道場は昔のままだった。今では結構な人数がいるらしい。昔は私と千冬さん、それと一夏だけだったのに。

少しだけ昔を思い出す。

 

『今日は俺が勝つ!』

 

『やってみろ』

 

『うおおおっ!!』

『明日は俺が勝つ!』

 

『ふふっ、その明日はいつになるのだろうな』

 

叩いても揺すっても思い出すのはこんな思い出ばかりだった。あとは千冬さんが二刀流で大暴れしたとか、そんな思い出ばかりだ。

 

「千冬さんがつけた傷……まだあるんだ………しかし、こんな思い出ばかりとは」

 

頑張って思い出そうとする。しかし思い出すのはあの日の夜。一夏に好きだと告白した夜のことだった。思い出しただけで顔が熱くなる。

 

「……いかん、風呂に入ろう」

 

少しは落ち着くと思ったが…………結局落ち着いたのは1時間後だった。

 

 

8月15日(火)PM06時35分

 

「よっ!」「お疲れちゃ〜ん」「やっほ〜しののん!」「遊びに来たわよー」

 

「…………聞いていないのだが」

 

「言ってないからな!」

 

一夏がいた。キリヤんがいた。本音がいた。鈴がいた。

いやいや、待て待て待ちなさい。私は神楽舞を終えてから軽く汗を拭くついでに巫女服に着替え、お守り販売の手伝いに来たところに何故みんなが!?

 

「それにしても凄いな。様になってて驚いた。名人の誘いに乗って正解だったな」

 

「それに、…………綺麗だった」

 

「っ!?」

 

一瞬で真っ赤になるのが自分でも分かる。本来ならキリヤんたちが冷やかしたら怒るところだが、今の私にとってそこは重要ではない。

 

「あらあら………箒ちゃん、あとは私がやるから、お友達と楽しんで来なさい」

 

「ええっ!?で、でもまだ仕事が」

 

「いいからいいから。まずシャワーを浴びてきてね。その間に浴衣出しておくから」

 

私の反論もなんのその。強引に奥へと連れて行く叔母さん。そして去り際に一夏に向かって何か言ったが………とにかく今の私にはそれを気にする余裕はなかった。

 

 

8月15日(火)PM07時00分

 

「すまない、待っただろうか」

 

「「おお〜っ!」」

 

「名人もなんか言ってやんな」

 

「この箒はお持ち帰りできますか?」

 

「ば、馬鹿者!!」

 

鳥居に着くと、すでに人で溢れかえっていた。見つけた途端にこの言われよう。喜ぶべきなのだろうか?

 

「さて、色々見て回ろうぜ。それにしても夏祭りに来るのも2年ぶりか。去年は受験勉強してたし」

 

「自分も何かとバタバタしてたな」

 

「おお〜!綿菓子に焼きそば、焼きとうもろこし!一通りあるなんて天国だよぉ〜」

 

「こらこら、急がなくても食べ物は逃げないわよ」

 

「で、最初はどこに行く?………箒?」

 

人混みで聞こえていないと思ったのだろうか。一夏が顔を寄せてくる。刹那、あの夜を思い出して、慌てて距離を取る。

 

「か、顔が近い!そんなに寄らなくても聞こえている」

 

「そうか?………あ、そうだ。箒って金魚すくい苦手だったよな?」

 

「いきなり話が変わるな………それは昔の話だ。いつまでも過去の私だと思うなよ」

 

「じゃあ勝負するか?負けたら食べ物奢りな」

 

「その勝負、ノッた!」

 

腕を組んでうなずく。恐らくこの時の私の顔はとてつもない自信満々な顔だったのだろう。後々に後悔することも知らずに。

 

 

「………納得いかん」

 

「何がだよ?勝ったじゃないか」

 

「それなのに私が焼きそばを奢ってもらったことムグッ!?」

 

私が言い終わる前に鈴がたこ焼きを口に突っ込んでくる。とてつもなく熱いわけでもなく、冷めているわけでもなく丁度いいおいしさだ。

 

勝負は一夏が勝った。だから私は全員分を買おうとしたのだが、キリヤんが『自分たち3人は勝負に参加してないから別にいいよ』と言った。それに対して一夏は『俺だけ奢ってもらうのはなんか嫌だな。俺がみんなの分買うよ』と言った。

結果、私は焼きそば、本音はフランクフルト、鈴はたこ焼き、一夏とキリヤんは綿あめを買った。

 

「はーいしののん、あ〜ん」

 

「モグモグ………あ、あーん………もっきゅ、もっきゅ…………何故私は皆から色々と食べさせられているのだ!?」

 

「おいおい、口元汚れてるぜ?名人拭いてやんな」

 

「あーあーこんなに汚して。ジッとしてろよ箒?」

 

一夏に口元を拭かれる。まるでこれでは私が小さい子供みたいではないか!?しかし私が反論しようとすると、キリヤんたちは次の屋台へと歩いていった。

 

「お、次はアレするか?」

 

キリヤんが指差したのは射的屋だった。不味いな。私はアレが苦手だ。弓ならば問題ないのだが、どうも勝手が違うようだ。

 

「へい、らっしゃーい」

 

「おっちゃん、5人分お願い」

 

「お、女の子を3人も連れてるとは、羨ましいねぇ。よしっ、おまけ無しだ!」

 

「いやいや、そこは女の子の分だけでもまけるのがデキル大人だと思うよ?」

 

「ははっ、そんなこと言ってもまけないよ。こっちも商売だからね」

 

それぞれ鉄砲とコルクの弾を5発受け取る。そしてすぐに構える一夏とキリヤん。キリヤんは自称遠距離型と言っていただけあって難なく1つ目の景品を当てた。

そして一夏は……あいつ片手でやってるのか?それにしても凄い集中力だな。私も見習わなければ。

鈴は本音に射的を教えている。学校でも射撃はてんで駄目な本音。それは近くで見ていたからよく分かる。きっと彼女には向いていない。

 

「ぐっ………」

 

そして私も向いていない。

 

「相変わらず下手だな」

 

「うるさい!私は近距離型だ!」

 

「はいはい………ちょっと待ってろよ」

 

一夏は私に残りのコルク弾とすでに弾込めしてある鉄砲を渡してくる。

 

「大体構え方が変なんだよ。こうやって腕を真っ直ぐにしながら……」

 

直接体を触っての指導をされ、今私の仏頂面の下では大変なことになっている。近い。とにかく近い。息が顔にかかる。離れ……てほしくはない。むしろもう少し………

 

「どうだ、わかったか?」

 

「な、なんとなく……とにかく撃ってみればわかる」

 

「…………ちゃんと狙えよ?」

 

「わ、わかっている!!」

 

引き金を引く。実のところ、景品などよく見ていなかったし、狙ってなどもいなかった。

しかし弾は、キチンと景品に命中した。クッションとしても使えそうなサイズのネコのぬいぐるみ………いやネコにしては目がデカイし紫のスカート履いてるし……なんなのだろうか。

 

「やったな!」

 

「……ふふっ、そうだな」

 

妙なぬいぐるみの事など、一夏の笑顔を見れば気にならなくなった。

 

 

8月15日(火)PM07時55分

 

「せっかくなんだし、キリヤんたちも一緒に見ればよかったのにな」

 

今私と一夏は神社裏の林を歩いていた。背の高い針葉樹が集まっているこの林。ある一箇所だけ天窓を開けたように開いている。そこが花火を見る際の秘密の穴場だ。

しかもそれを知っているのは私と一夏だけ。小さい頃、一緒に花火を見ようとこの林に入り込み、迷子になった末に辿り着いた場所。

 

「お、やっぱ変わってないな」

 

虫の音だけが鳴り響く。人気もなく、わずかに吹く風が心地いい。そんな場所で彼氏と2人きり。そうなると平常心を保つのが難しかった。

 

チラリと一夏を見る。当の本人はワクワクした顔で空を見つめていた。

 

「……あ、そういえばさ」

 

「どうしたいきなり」

 

「俺、箒に誕生日プレゼント渡せてなかったんだよな」

 

私にとってはあの告白がプレゼントなんだが……。だが確かに形としてはもらっていない気がする。別に寄越せと言っているんじゃない。相手が用意してくれたならキチンと受け取る。それが礼儀だ。

 

「だからさ…………今度渡すな!」

 

「い、今じゃないのか!」

 

「いや、キリヤんたちも誘ったから今日はみんなで遊ぼうって決めてて。箒と2人きりになるとは思ってなくてさ………なんか、ゴメンな。用意出来てなくて」

 

「いや別に構わないが………キリヤんたちが一緒にいては渡せない代物なのか?」

 

「そうじゃないんだけどさ…………出来れば2人きりの時に渡したくてさ。まあ俺のわがままだ!」

 

ヤケクソ気味に笑い飛ばす一夏。

 

その時だった。夜空を花火が明るく照らしたのは。

 

「おおっ!始まったな花火!!」

 

「ああ………綺麗なものだな」

 

「本当だな」

 

この花火大会は100連発で有名だ。つまり1時間ぐらいはずっと夜空を彩っていく。

 

「なあ一夏」

 

「ん?どうした箒」

 

「私にとって………お前がそばにいてくれること。それが何よりも嬉しいプレゼントなんだ。だから……今だけでいい」

 

空を見つめながら、一夏の左腕にそっと自分の腕を絡めた。大胆だろうか?いやこのくらいは許してほしい。こうしていないと一夏は何処かへ行ってしまいそうだからな。

 

「…………大丈夫、箒の側は離れない」

 

一度だけ横を向いた一夏の表情はどこか寂しそうで、今にも泣き出しそうな顔だった。でも夜空の花火へと視線を戻した時には、いつもの頼れる、私の好きな一夏になっていた。

 

「今度は、朝から晩まで、2人で遊びに行こうな!」

 

「そうだな。その時はエスコートしてくれ」

 

「任せろ!」

 

こうして、16歳の夏の思い出は、大事な彼と共に過ごし、過ぎていった。




夏祭り編完!アニメでも原作でもこの話は大好きです。俺も花火大会行きてーなー。彼女いないけど。

あと本当なら蘭が出てくるはずなんですけど、キリヤんたちが一緒に出てきたので今回は出番なしになりました。蘭ファンの皆様、どうもすみません!

次回はちょっと趣向を変えて『IF』の話でも書いて見ようかなと。どうなるかはわからん!

ではSee you Next game!


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番外編 〜IF・もしもこの世界が少しだけ賑やかだったら〜

注意、キャラ崩壊しています。キャラ崩壊しています。キャラ崩壊しています。キャラ崩壊しています。キャラ崩壊しています。


私は篠ノ之箒。IS学園に通うごく普通の女子高生。そんな私にはある悩みがある。それは同室の男についてだ。

男の名は織斑一夏。この世界でISを動かせることができる男だ。そして私の幼馴染でもある。

 

そんな私の幼馴染だが、テンションが異常だ。どれくらい異常かというと、

 

「おはよぉぉぉぉうっ!!!…………箒ぃ!!!」

 

こんな感じ。

 

「ちょっとちょっと!!テンションが低いんじゃないのぉぉ!?そんな時は!動いて元気になろうZE!!」

 

昔はこんな風に朝っぱらから起こしに来ることはなかった。いやまず起こしに来たこともない。昔は普通の男だったはずだ。それが6年会わないだけでこうも変化するものなのか。

 

「イエス!早速朝ごはんいこうぜぇぇ!!」

 

何がイエスなのかサッパリだが、このテンションに慣れなければこの学校では生活できない。それは同室なったとき、いや自己紹介の時から思っていたことだ。

 

『イエス!織斑一夏デェェェェェエス!!ヨロピクッ!!』

 

恐らくクラス全員、下手をすれば隣のクラス、最悪学校全体が感じたことだろう。こいつはめんどくさい、と。

 

「おはよぉぉぉぉう……キリヤんッ!!」

 

「よお、今日もうるせえな名人」

 

九条桐也。この学園にいるもう1人の男。ISは動かせないが仮面ライダーレーザーとしてこの学園にいる。因みに鈴と付き合っている。そしてその鈴がいないが………。

 

「あれ?あれあれあれ!?鈴がいないぞぉ!!」

 

「あいつ風邪なんだよ。昨日はハッスルしすぎたからな」

 

「ワオ、ヤッちゃたんだぁ!どおりで腰をおさえてるわけダァ!!」

 

寮の廊下で話すことではないと思う。ましてや私が隣にいるのに。私は男に見られているのだろうか?

 

「んなことより飯行こうぜ。腹減っちまって」

 

「イェーーーイ!カツ丼ていしょぉぉぉく!!」

 

カツ丼定食と叫びながら廊下を走るのは恐らくこの地球上探し回ってもコイツぐらいだ。キリヤんはポケットに手を入れてテクテク歩いていく。私もそれについていく

 

 

「おばちゃん!!エビフラァァァァイ定食……ちょうだぁぁい!!」

 

「カツ丼定食じゃねえのかよ」

 

言うのを忘れたが一夏はバカだ。こう、勉強が出来ないバカじゃなくて…………とりあえずバカだ。いい意味で。

 

「朝からうるさいサルがいるもんだ。ほれトマトをくれてやろう」

 

「こらラウラ。自分が嫌いな食べ物だからって人に押し付けたらダメだよ?」

 

ストレートに悪口を言う女とそれを注意する女がいる。シャルロット・ハナヤとラウラ・ハナヤだ。双子の姉妹らしいが、金髪と銀髪であまり似ていない。胸も大きさが違う。因みにラウラが姉でシャルロットが妹だ。

 

「サルって言うなし!モンキー様と呼べ!!」

 

「意味は同じだな」

 

「ではモンキー。私の嫌いな食べ物を食べる権利を与えよう」

 

そう言って皿を突き出す。皿には野菜が残っている。ブロッコリーにピーマン、トマト。小学生かお前は。だからそんなに小さいんだぞ。

 

「小学生かーーいお前は!だからそんなにオッパイ小さいんだぞッ!!」

 

「普通に言ったね一夏………ほら、ラウラ泣かないの。頑張って食べよう?僕も付き合うから」

 

「ううっ………えっぐっ………ひっく………シャルロット……頑張って………食べたら………オッパイ……大きくなる!?」

 

「難しいんじゃない?」

 

「うわぁぁぁぁん!!!」

 

ガラスのように繊細な心は今日も健在のようだ。

さて、朝ごはんを貰ってから席に着くまでに永遠に近い時間が経過したような気がするが気にしないでおこう。

 

「いただっきまーす」

「いただきマンモォォォォォス!!」

 

いきなりエビフライを二本口に入れる一夏。欲張りすぎだお前は。キリヤんの冷たい目が一夏に突き刺さる。突き刺さっているはずだ。しかし一夏は止まらない。止まらない。止まらない。止まら……水?水が欲しいのか?そんなに顔色悪くして?

 

「…………ぶはあっ!?死ぬかと思った……」

 

ここ。ここが昔の一夏のテンションだ。死にかけた時、自然と昔のテンションに戻るらしい。しかしすぐに戻ってしまう。ああ、残念。昔のテンションなら彼女ぐらいできただろうに。

 

「おお?犬みたいにガツガツ食ってんのはぁ、一組の一夏じゃ〜ねぇか!!」

 

「!!3組のデンジャラスウーマン!セシリアナントカ!」

 

「オルコットだナメてんのかテメェ!!」

 

一夏の胸ぐらを掴んだのは3組のセシリア・オルコット。ギャングのボスの娘らしく、この口調も自然と身についたもの。しかしセシリア自身が可愛いため、あまり迫力を感じないのが痛いところ。

 

ついでに言っておくが、1組は私と一夏とキリヤん。2組は鈴。3組はセシリア。4組飛ばして5組にシャルロットとラウラが所属している。

 

「今日の合同練習はウチラが勝つんでそこんとこ夜露死苦!!」

 

「熱い戦いにしようZE!!」

 

念のために言っておくが合同練習は実戦ではない。ただの訓練だ。それにウチラとか言っているが乗り気なのはお前だけだぞ。

 

セシリアが去りようやく食事に専念できると思った矢先、食堂内にサイレンと歌が鳴り響く。このサイレンと歌は街に未確認生命体、もしくは北都政府か西都政府が攻めてきた時に鳴る。

 

またしても言うのを忘れたが、我が国日本は謎のパンドラボックスが引き起こしたスカイウォールによって東都、西都、北都の三つに分断されている。IS学園は東都に位置する。

 

「この歌知ってる!ちゃーらー、へっちゃらーだ!」

 

「せめてエキサイトって言えよ!」

 

食事の手を止め走り出す2人。そう2人は仮面ライダー。決してプ◯キュアではない。日曜午前9時から放送される系ヒーローなのだ。

 

と、私も行かないとな。

 

 

現場に着くとそこは既に瓦礫の山だった。犯人は目の前にいる。2人組の最強タッグだ。

 

「遅かったな一夏」「やっほ〜キリヤ〜ん」

 

パラドとノホホンだ。2人ともバグスターと呼ばれる存在でかなりの強敵だ。ナメてかかればすぐに死ぬ。それぐらいの強敵だ。

 

「今日も遊ぼうぜ」

 

腰にゲーマドライバーを巻きつけるパラド。そしてガシャットギアデュアルを起動させ、ゲーマドライバーに装填しレバーを開く。マックス大変身した彼は仮面ライダーパラドクスへとその姿を変える。

 

「それじゃあ〜、へんし〜ん!」

 

ノホホンはバグルドライバーツヴァイに仮面ライダークロニクルガシャットを装填する。そしてボタンを押した瞬間、ベルトからパネルが飛び出す。それを潜るとそこにはノホホンの姿はなく、仮面ライダークロノスの姿がそこにあった。

 

「よし、行くか名人!」

 

「オッケー牧場!!ザ・アルティメット変身ターイム!!!ジャッキーン!キュインキュインキュインキュインピカーン!!」

 

「ゼロ速、変身!」

 

キリヤんは仮面ライダーレーザーターボに一夏は仮面ライダークウガアルティメットフォームに変身する。ホント、究極の闇を使いこなすこのバカは一体何者なんだ。

 

「究極の闇か……心が躍るなぁ!!」

 

「とりあえず皆んな絶版だぁ〜〜」

 

「ノリに乗ってくぜ!」

 

「イエス!変身完了ッ!!最初からクライマックスだぜぇ!!」

 

始まる最強たちの戦い。さて、私も今のうちに変身しよう。一応謎の戦士ポジション獲得してるからな。

 

私も青いベルト、スクラッシュドライバーを装着する。そこにロボットスクラッシュゼリーを装填し、レバーを倒す。そしたら潰れる、流れる、溢れ出ること。私の体は謎の仮面ライダー、グリスへと姿を変える。

 

さて、心火を燃やして…………もう少し見守ろう。

 

 

「疲れたーリンリン疲れたー。エッチしよー」

 

「あんた風邪ひいてんの見てわかんないの!?そういうのは元気な時にして!」

 

戦闘が終了したのは夜中だった。午前中はガチバトル。お昼ご飯を挟んで午後からはボウリング大会だった。そして今現在鈴の部屋。鈴のお見舞いだ。

 

「元気そうじゃん鈴。オッパイは小さいけど」

 

「うっさいわね!!……にしてもいつものテンションはどうしたのよ」

 

「名人、パラドにボウリングで負けてテンション下がってんだよ。ガーター防止のやつまでつけてガーターだもん。そりゃテンション下がるわ」

 

結果優勝したのは私だった。グリスの力でゼリーの壁を作りストライクゾーンを作る。完璧な作戦だった。

 

「んじゃ夜も遅いし、帰るわ…………よっっっっしゃゲームしようぜ箒!!」

 

「うるさいぞ織斑!」

 

廊下の端から千冬さんが叫んでくる。それも気にせず部屋へと向かう一夏。それを後からついて行く私。なんだかんだコイツのことが、いやこの世界のことを気に入っている私であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「にしても箒、今日も無口だったな。クールビューティーって言うのか?」

 

「ああゆうのは基本心の中ではお喋りなのよ」




テンションがおかしい一夏アルティメット
彼女が違うキリヤんターボ
無口で心の中ではお喋りな箒グリス
オラオラ系セシリア
いつも通りの鈴
優しいシャル
泣き虫ラウラ
ラスボス系本音

って感じですね。ホント自分までおかしくなりそうだった。因みにこの話は本編とは一切関係ありません。繋がりません。融合しませんのでご注意を。

次回からは話を戻して夏休み編を。出来れば一夏の家で遊ぶ話をしたい。

ではSee you Next game!


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第46話 夏を騒がす乙女達

お久しぶりです。いや仕事とかロシアで戦ったりとかGGOでデスゲームしたりとか忙しく中々更新出来ませんでした。すまぬ!

今回は夏休みほのぼの編のラストだ!何故かって?次回からまたバトルだからだ!


8月21日(月)AM10時40分

 

「……………」

 

日差しが照りつける中、その表札を見つめる箒。『織斑』と書かれたそれを何度も確かめる。ここの訪問が初めてではない箒。しかし一夏の彼女となってからは一度も来たことはなかった。

 

(大丈夫、大丈夫だ……今日は家にいると言っていたではないか。いつでも遊びに来いと言っていた。ならば大丈夫、大丈夫だ…)

 

何度も何度も自分に言い聞かせる。しかし変に緊張しているのかずっと表札とインターホンと睨めっこしているだけだ。

 

(しかし、何と言って切り出せばいいものか……『来ちゃった♪』………いやいや無理だ。そんなこと言えるのはシャルロットぐらいだぞ!)

 

「何やってんだ箒」

 

「待て一夏。今お前の家にどうやって入ろうかと…………え?」

 

「よお、祭り以来だな」

 

「う、うえええって??!?!」

 

「お、おう?大丈夫か?暑さでやられたんじゃないか?」

 

いきなり後ろから声をかけられ、自分でも何を言っているのか分からなくなる箒。そこにはレジ袋を下げた一夏が立っていた。

 

「そ、そのだな!べ、別に不法侵入しようとしたとかそんなことはないぞ!うん!ちゃんとインターホンを押そうとしてたからな!うん!」

 

「………まあ、そういうことにしとくよ」

 

「ほ、本当なんだぞ!」

 

実は箒がインターホンと睨めっこを始めた頃には一夏はすぐそこまで帰って来ていた。そしてインターホンと睨めっこをしている箒を『何やってんだアイツ』と遠巻きで見ていたのだ。

 

「ここに立ってるのも暑いだろ。ちょうど飲み物買って来たところだからさ。上がってけよ」

 

「い、いいのか!?」

 

「おう、今日はみんな来てるし」

 

みんな来てる。箒はその言葉で今一夏の家にいるメンバーをだいたい察した。というよりも家の中から桐也と鈴の声が聞こえてくる。恐らくゲームをしているのだろう。

 

「ただいまー。箒も来たぞー」

 

「おかえりオリムー。いらっしゃ〜い、しののん」

 

一夏に続いて家に入る。玄関にトコトコと歩いて来たのは本音だった。その格好はIS学園の寮で生活している格好。つまり着ぐるみだ。しかも髪の毛もボサボサ。箒はもしやと怪しむ。そして一夏の発言で箒のもしやは現実となる。

 

「やっと起きたのかのほほんさん。顔は洗ったのか?」

 

「うん、ばしゃばしゃしてきたよ〜」

 

「ばしゃばしゃって……洗面所濡れてないよな……?」

 

「い、一夏!やっと起きたのか、とは……もしかしなくても、泊まったのか?」

 

「ん?ああ、昨日から4人泊まってるぞ」

 

頭の中で4人の姿を思い浮かべる。桐也、鈴、本音は確定だろう。そうなるとあと1人は一体誰なのだ?

そんな箒の疑問はリビングに入ると解決された。

 

「ラウラ!お前帰ってきていたのか!?」

 

最後の4人目はドイツに一時的に帰国していたラウラだった。そんなラウラの格好は黒猫のパジャマだった。

 

「む?まさか本妻がやって来るとは。少し邪魔しているぞ」

 

「ほ、本妻!?」

 

「そりゃあ名人の嫁だからな。いずれここも名人と箒の愛の巣に」

 

「あー……なんか一夏を旦那にするより、箒を嫁にした方が楽しそうだわ」

 

ニヤニヤしながら話す桐也と鈴。しかしそんな時でもゲームをする手を止めなかった。今2人がしているゲームは対戦格闘ゲーム。桐也の操る女性キャラが鈴の操る男性キャラにコンボを決めていく。やがて勝負は桐也の勝ちで幕を下ろす。

 

「んで今からデートか?」

 

「い、いやそんなことはない。今日も偶々だ」

 

「ふーん……ま、今日はみんなで遊ぼうぜ。この後セシリーとシャルちゃん来るからさ」

 

「セシリー?ああ、セシリアか。今まで普通に読んでいたじゃないか。何故いきなりセシリーなどと」

 

「いや少し前にアイツがあだ名で呼んでほしいとか言ってきたからさ。ずっと考えてて、今思いついた」

 

「ていうか、なんでセシリアに対しては最初からあだ名じゃなかったんだ?」

 

一夏が桐也に尋ねる。確かに桐也は一夏を名人、鈴をリンリン、シャルロットをシャルちゃん、ラウラを隊長さんと呼ぶ。普通に名前を呼んでいたのは箒、セシリア、本音だけだった。

 

「それはまあ……アレだよ。自分にも色々とあるわけ」

 

「単に思いつかなかっただけじゃないのか?」

 

「ハハッ、そうそうソレソレ」

 

適当にはぐらかす桐也。鈴はそれが少し気になった。

 

「それよりそろそろお昼じゃないか?自分腹減っちまった」

 

「それもそうだな。ちょっと軽く作るか」

 

台所へと移動する一夏。なんだかんだ夏休みになっても集まるメンバーはいつもと同じだった。

 

 

「お邪魔しまーす。みんな久しぶりー」

 

「お邪魔します。みなさんお久しぶりですわ」

 

シャルロットとセシリアがやってきたのはちょうどお昼過ぎの時だった。丁度一夏の作った昼ごはんを食べ終わり、一夏と桐也が皿洗いをしていた頃だった。

 

「おお、久しぶりだな。ってこんな格好で悪いな」

 

「久しぶり一夏。ううん、こっちこそ押しかけちゃってゴメンね」

 

「ケーキを買ってきましたの。丁度みなさんお昼ごはんを食べ終えた頃だと思いまして。食後のデザートとしてお召し上がりください」

 

セシリアが皿洗いを終えた一夏に紙袋を手渡す。それは最近美味しいと話題のデザート専門店『シャルモン』のケーキだった。

 

「わざわざありがとな。早速食べるとするか。おお、美味そうだな!今日は暑いし、アイスティーいれるよ」

 

新しい食器を用意する一夏。その間に桐也と本音がケーキを確認する。イチゴのショートケーキにチーズケーキ、洋梨のタルトなど様々なケーキがそこにはあった。だらしなくヨダレを垂らす本音をケーキから引き剥がし、お皿にケーキをのせていく桐也。

 

「なんか………男どもの方がよく働いているような……」

 

「うむ……私たちの女子力の低さといったら……」

 

「女子力?そんなものより筋力の方が必要だ」

 

「キリヤんは〜よく出来た私の嫁なのだよ〜」

 

「それ、普通逆だから」

 

ツッコミながらもケーキをリビングに持ってくる桐也。並べられるケーキに女子たちは目を輝かせる。

 

「はーいアイスティーお待たせー」

 

アイスティーを持ってきた一夏。既にみんなは各々が食べたいケーキを確保していた。偶然にも誰とも被らず、一夏も食べたいケーキが残っていた。

 

「それじゃあ、いただきまーす」

 

各々ケーキを食べ始める。すると全員が全員驚きの表情を見せる。口の中に広がる甘さ、クリームの溶けていく感触、スポンジのふんわり加減など、どれもこれもが滅多に経験できないものと感動していた。

 

「うん、美味なコレ!家で作れないかな……」

 

「一夏さんがお料理上手でも、さすがに難しいでしょう。何せ『シャルモン』のシェフ『凰蓮・ピエール・アルフォンゾ』さんは国際大会で受賞経験のあるお方ですから」

 

えへん、と自らのことのように誇らしげに語るセシリア。そんな話を聞きながら、桐也はふと思ったことを口にした。

 

「なあセシリー。今日のレジ担当の特徴分かるか?」

 

「レジ担当ですか?………ええっと、メガネの男性でしたわね」

 

「城之内、まだバイトやってたのか………いや、それが聞けただけ十分だよ」

 

ふっ、と自分だけ納得したように笑う桐也。それを桐也を除くみんなは不思議に思っていた。

 

 

「さて、これからどうする?外は暑いし、出来れば中で過ごしたいけど」

 

時刻は14時50分。ケーキを食べながら談話をしていたらいつのまにかこの時間になっていたのだ。

 

「じゃあさ、バルバロッサやろうよ!」

 

鈴がカバンから取り出したのはバルバロッサと呼ばれるゲームだった。カラー粘土で何かを作り、それを当てていくゲームだ。昔はよく鈴とこれで遊んだものだ、と思い出に浸る一夏。

 

経験者の一夏と鈴は最初説明役に回るということで、ゲームが始まった。

そしてみんなが粘土を完成させ、シャルロットがサイコロを振り、ゲームが開始される。

 

「えーと、1、2、3っと」

 

「私は……質問マスか。よし、ラウラに質問するぞ」

 

「ふっ、受けて立とう」

 

「ちなみに回答は『はい』『いいえ』『わからない』の3つね。『いいえ』を出されるまで質問できるから。まあ初めは大分類がお得ね」

 

鈴の説明を聞きながら、ラウラの粘土を見る。それは円錐状のなにかで、全く見当がつかない。

 

「それは地上にあるものか?」

 

「そうだ」

 

「人より大きいか?」

 

「当たり前だ」

 

「ビルより小さいのか?」

 

「いや、巨大だな」

 

「…………分かったぞ!!」

 

箒とラウラを除く参加者が驚きの表情を浮かべる。この変に威圧感を放つ円錐状のなにかが分かると。箒はそう言ったのだ。

 

「答えは………山だ!」

 

「ほう、正解だ」

 

ええー!?、と更に驚きの表情を浮かべる参加者。山にしては尖った造形にしたラウラもだが、それを当てられる箒は一体何者なんだと、心の中で思う。

 

その後も、

 

「ボロ雑巾か?」

「違いますわ!キリヤんさん失礼すぎません!?」

 

「これは桃まんよ!」

「げっ、桃まんかよ。水餃子じゃなかったらシューマイだと思ったのに」

 

「あ、お馬さんだ〜。作るの上手だね〜」

「ありがとう、本音。なんだか照れちゃうな……」

 

などとわいわい騒ぎつつ、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

「みんな寝ちまったな」

 

「だな」

 

時刻はPM23時49分。もうすぐ日付が変わる。

あの後、みんなで夕食を共にし、今現在一夏と桐也を除き熟睡している。遊び過ぎた反動だろう。それを確認した2人はたまには男同士腹を割って話そうとソファに座っていた。

 

「んじゃ早速聞くけど、お前箒とどこまでいったんだよ」

 

「どこまでって………まだデートもしてない」

 

「おいおいもう夏休み終わるぞ?一回ぐらい行けよ」

 

「うん……でも未確認とかいるし、俺もそんなに遊んでらんないし」

 

「遊べる時に遊ばねぇと後悔するってよく言うだろ?未確認が出たら自分に任せとけって。タイガ先生も元気になったんだし」

 

「…………うん」

 

「そんでそのデートの最後には勿論………悪い電話だ」

 

桐也の会話を遮るように、携帯から着信音が流れる。通話するために席を外す桐也。仕方なく一夏はテレビをつけた。

 

「まあ、確かにデートしないとな………明後日ぐらい、いや急すぎるか」

 

テレビを見ながらデートプランを考える一夏。しかし次の瞬間、一夏の頭の中からデートのことは消えることになった。

 

「おいおい………マジかよ」

 

「なあ、名人。ちょっと悪いんだけど自分帰る……ってどうした?」

 

「悪いキリヤん。俺明日から長野に行ってくる」

 

今現在、テレビで流れている記者会見。

 

その内容は、

 

『長野で発見された古代遺跡の調査の完了と碑文の解析』についてだった。




こうしてやっと碑文とか遺跡とかクウガらしさを出していくスタイル。そして次回は新キャラ続出です。バトルのとこまで書けたらいいな〜。

ではsee you next game!


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第47話 闇に覆われた日

すまない、バトルまで書けなかったよ!


8月22日(火)PM00時30分

 

電車に揺られること約3時間。俺は長野県諏訪市にやってきた。理由は前の話を見てくれ。

荷物の用意やみんなへの言い訳、千冬姉からお小遣いをもらいにIS学園までドラゴンフォームで跳んでいったり、色々あったがなんとか諏訪までたどり着いたぞ。

 

さて、俺はここ諏訪市についてよく知らない。道なんて全然知らない。地図を見ても迷子になるのがオチだ。俺はそういう人間だ。

ということでこの諏訪市についてよく知る人物に案内してもらうことになった。

 

「あ、いたいた!おーい一夏くん!」

 

「歌野さん!お久しぶりです!」

 

この人は蒼崎歌野さん。千冬姉の中学時代からの友達。俺も会うのは久しぶりだ。古代の遺跡だの文明だの黒魔術だのよく聞かされた。それと何故か農業の話も。

 

「いやー一夏くんが再び古代遺跡に興味を持ってくれるなんてね!昔は目をキラキラさせながら聞いてたのにね!」

 

「そうでしたっけ?あ、でも農業の話はよく覚えてますよ。俺も畑手伝いに行ったりしましたし」

 

「懐かしいわね〜。あの頃は私に一夏くん、千冬の3人で畑を耕したわね」

 

そう言いながら車に乗り込む歌野さん。ナビを操作する手つきは妙に慣れている。っていうか、

 

「確か碑文の解析してたの、歌野さんの研究所ですよね?え、なんでカーナビ操作してるんですか?家に帰るようなもんでしょ!?」

 

「気にしないの!さあ、レッツゴーよ!」

 

どうやら方向音痴は治ってないようだ。

 

 

研究所に着いた。昨日の記者会見の後から片付けてないのか、妙に散らかっている。それでも机の上の資料だけは綺麗にまとめられていた。

 

「座れるところに座っといて。それと勝手に読んでいいから。ちょっと準備してくるね」

 

そう言って奥の部屋へと入っていく歌野さん。読んでいいなら読ませてもらおう。

 

机の上の資料はやはり古代遺跡の調査結果と碑文についてだった。調査が行われていたのは知っている。俺も行こうと思ったのだが、未確認やら代表戦やらで行けなかった。

 

遺跡はおよそ2000年前のものらしい。となると……今が2017年だから……西暦17年に存在したことになる。西暦17年とスマホで調べてみるが特にヒットしない。まあそんな昔の物が今になって出てきたんだ。当たり前っちゃ当たり前だな。

 

「この文字………確かクウガに刻まれてる」

 

「へぇ、一夏くんクウガ知ってるんだ」

 

「うええっ!?歌野さん、驚かさないでくださいよ!!」

 

「ソーリー。ちょっとこっちに来てくれる?」

 

歌野さんに連れられて奥の部屋へと入る。中には巨大な石像が鎮座していた。形的にクワガタみたいだ。その隣に置かれていた石板を持ってくる歌野さん。意外と力持ちだな。

 

「この石板。所々欠けちゃって読めないところがあるんだけどね。読めるところを何とか翻訳したのよ」

 

「なんて書いてあったんですか?」

 

「とりあえず単語を並べていくと『リント、グロンギ、クウガ』なの。何となく文章にしてみると」

 

「『リントはグロンギを倒すために、クウガを作り出した』ですか?」

 

「アメイジング!!凄いじゃない一夏くん!まさか読めちゃうなんて!とんでもない逸材が私の身近にいたのね!」

 

「ど、どうも……」

 

俺自身、何故読めるのか分からなかった。可能性としてクウガの力。いや正直これしか思いつかない。

 

「それで、そこから色々調べてみたんだけど。この『リント』が今風で言うと『人間』にあたるの。『グロンギ』は『未確認生命体』、『クウガ』は『未確認生命体2号』なの」

 

「つまり、昔の人が未確認を倒すためにクウガを生み出した、ってことですか?」

 

「昔からあんな怪物が暴れていたなんて。アンビリバボーだよ」

 

更に別の石板を持ってくる。今度は更に欠けていて読めない。文字も恐らく一文字二文字だ。

 

「で、こっちの石板には『ゲーム』、『闇』って単語は分かるんだけど、あとが分からなくて。今もこの調査中」

 

ゲームに闇………まさか超古代のデュエリストが!?いや冗談はさておき。ゲームからどこをどうして闇につなげるのか。まるで失敗した伝言ゲームだ。

 

「他に碑文は無いんですか?」

 

「やっぱりこんな小さな研究所じゃ、綺麗に読める碑文は貸してくれなくてね。そこの部分は大きな研究所に持ってかれたんだけど」

 

「けど?」

 

「ちゃーんと!データは残してあるわ!コッチよ!」

 

パソコンの前に座る歌野さん。その横から覗き見る。デスクトップに農業王と書かれている。

USBメモリを差し込み、ファイルを開く。

 

「データだけ勝手にもらって来たわ。これが発見された碑文で一番綺麗なものだった」

 

そこに書かれていたのは長文だった。

 

『邪悪なるものあらば希望の霊石を身につけ炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり』

 

『邪悪なるものあらばその技を無に帰し流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり』

 

『邪悪なるものあらばその姿を彼方より知りて疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり』

 

『邪悪なるものあらば鋼の鎧を身につけ地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり』

 

多分上からマイティ、ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームに該当するんだろう。でも最後の文がどれに該当するのか分からなかった。

 

『聖なる泉涸れ果てし時、凄まじき戦士雷の如く出で太陽は闇に葬られん』

 

凄まじき戦士……雷の如く……今度は手から電気を飛ばすサンダーフォームか?……いや違うな。それと太陽は闇に葬られん、って言うのも気になる。てかどれもいいワードには聞こえないんだが。

 

「闇……ここでもその単語か。歌野さんはどう思います……歌野さん?」

 

「一夏くん、天気悪くなって来たわよー?今日は晴れるって聞いたのに」

 

「もう、人が碑文読んでる時に何天気の様子を伺って………」

 

外を見てみると確かに空は曇っていた。でもそれは普通の曇り空って言うよりは、

 

「『太陽は闇に葬られん』………まさか!?」

 

俺は急いで研究所を出て白式を起動させる。片道3時間かけた道をあっという間に駆け抜けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月22日(火)PM00時30分

 

午前中、女子達で遊んでいた私と本音は、たった今クジョキリの部屋に戻って来た。一夏はいきなり長野に行くとか言うし、クジョキリはいきなり帰るで、コッチの予定が狂いまくり。まったく、男2人揃って何を考えているのやら。

 

「ただいまー」「ただいま〜キリヤ〜ん」

 

「だから何度も言ってるだろ。俺は家には帰らない。何回言えば分かるんだ?」

 

「それはこっちのセリフや!なんでお婆の家に帰ってこんの!?そんなに都会っ子になりたいんか!!おにい!」

 

「「おにい!?」」

 

「げ、本音……リンリン」

 

「なんや、誰やあんたら!!」

 

部屋ではクジョキリとクジョキリ似の女の子が口喧嘩をしていた。

 

 

「コイツ、自分の妹の花凛」

 

「初めまして、九条花凛よ。兄貴がお世話になってるわね」

 

「私は布仏本音だよ〜よろしくね〜」

 

「鳳鈴音よ。まさかクジョキリに妹がいたなんてね。もしかして妹が来るからさっさと帰ったわけ?」

 

「さっさと追い返すためにな」

 

「何よ!人が迎えに来たって言うのに!」

 

「呼んだ覚えはない!」

 

妹、花凛はどうやらクジョキリを連れて帰ろうとしていたらしい。それは何故か。まあ大体予想はつくけど。

 

「こんな化け物ばっかりの街に兄貴を住ませるなんて危ないじゃない!お婆も心配してるんだよ!犠牲者の中に兄貴の名前がないか不安で不安で……」

 

「だから心配しすぎなんだよ。自分は大丈夫だから」

 

「…………知ってるもん。兄貴が自分のこと『自分』って言ってるのは「それ以上言うな!」ッ!?」

 

「…………ハァ…もういい、お前が出て行かないなら自分が出て行く。好きなだけくつろいでろ」

 

そういうとクジョキリは部屋を出て行った。花凛は頰を膨らませてそっぽ向いている。

 

「子供かあんたら……本音、クジョキリを連れ戻してきて」

 

「分かったよ〜。キリヤんもピリピリしてるな〜」

 

トコトコと部屋を出て行く本音。さて、2人だけになったけど、まったくどうしたものかしら………外も天気悪くなってきたし。

 

カーテンを開ける。外は夜かと疑うぐらいに暗かった。今日は晴れるってテレビで言っていたはず。なのにこの暗さ。ウソもいいところよ。

 

「にしても、なーんか嫌な予感がしてきたわね」




新登場の『蒼崎歌野』と『九条花凛』。2人とも『ゆゆゆ』の白鳥歌野と三好夏凛をイメージしています。分からなかったら検索検索ゥ。

次回はちゃんとバトルするから。もしかしたらまた新キャラ出すかも。

ではsee you next game!


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第48話 眼帯の狙撃手との因縁

アポイベが楽しい。アタランテでカタストロフィするの楽しい。


8月22日(火)PM00時37分

 

未確認が三体現れた。怪我も治り休暇を取ってゆっくり過ごしてた時にそんな知らせを受けた。俺も仮面ライダーである以上、仕方のないことだと割り切るが、やはりせっかくの休暇を潰されたのには腹がたっていた。

 

現場に到着すると、そこには確かに未確認生命体がいた。数は二体。一体は何処かへ逃げてしまったのだろうか。

しかし俺はそんなことよりも気になることがあった。未確認生命体の様子がおかしい。二体とも苦しそうに呻き声を上げて歩いている。いつもの未確認生命体と様子が違うのか、チラホラ人の姿が周囲に見える。

 

「まあ、やることに変わりはない」

 

『バンバンシューティング!』

 

「第弐戦術、変身」

 

スナイプに変身して攻撃を開始する。

まずはガシャコンマグナムで牽制。全弾命中。

次にライフルモードで頭を狙う。ヘッドショットで一発KOだ。

 

「くたば……なに!?」

 

標準を頭に合わせたときだ。未確認生命体の口から黒い煙が吐き出される。口からだけじゃない。撃たれた箇所からも黒い煙が噴出している。毒ガスか何かか?だとしたら周りの奴らが危ない!

 

しかし、時すでに遅く、最悪の事態が起ころうとしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻

 

「こんなとこにいたんだねキリヤん。足が速いから探すのに手間取ったよ〜」

 

「本音………なんか、変なとこ見せちまったな」

 

人気のない公園のベンチで、キリヤんは座っていました。彼は笑みを浮かべてくれるけど、それはいつもの優しい彼らしい笑顔じゃなかった。

 

「花凛は変に頑固だからな。こうなった以上は無理矢理連れて帰るつもりだろうな」

 

「キリヤんはどうしたいの〜?」

 

「うーん……自分としては、まあ一度帰ってから、婆ちゃんとかを説得してからこっちに戻ってくる。多分それが一番理想的なんだけど」

 

「未確認とかが心配?」

 

「そうなんだよな〜。名人やタイガ先生がいるから大丈夫だと思うけど」

 

「キリヤんの心配事はそれだけじゃないんじゃない?」

 

「…………それは」

 

「私とリンリンなら大丈夫だよ〜。ちゃんとキリヤんのお部屋掃除しておくからね」

 

「そこで何故リンリンの名前が出るんだ?あとずっと自分の部屋で過ごすの?」

 

キリヤんのお部屋はとっても過ごしやすいんです……いや違うね。キリヤんと一緒に過ごすのがとても心地良い。学校の寮でも、キリヤんのお家でも。

 

「だから安心して帰っても大丈夫なんだよ?私としては妹さんとは、兄妹仲良くしていてほしいから」

 

「兄妹か……そういえば、本音にはお姉さんがいるんだったな。いつか挨拶に行かないとな」

 

「いつか学校で会えるよ。でも早くしないとお姉さん三年生だから、いつのまにか卒業して、挨拶しそびれるなんてことも!」

 

「だったら、尚更花凛のことをどうにかしないとな」

 

ベンチから立ち上がるキリヤん。どうやら元気戻ったみたいだね。

ふと、空を見た。今の空模様は元気がないよ?一雨降りそうだねぇ。

 

「雨降る前に帰るか……確か今日は雨降らないはずなんだけどぉ!?」

 

キリヤんが歩き出そうとした瞬間、突然地面が揺れた。爆発で揺れたのかな?凄く大きい揺れでした。

そして、その揺れの正体はすぐに分かりました。

 

「グウウウウッ……」

 

「…………未確認15号…また会ったな」

 

未確認生命体15号。ゴリラが亀の甲羅を背負ったような姿。確かキリヤんが倒し損ねた未確認。

 

「本音、家に戻って鈴と一緒にいな」

 

「キリヤん……」

 

「俺は大丈夫だ」

 

いつのまにか俺口調になっているキリヤん。私がいたら足手まといだよね。戦う手段のない私。専用機があれば隣に立てたのかな……

 

「あん時とは違うってとこ、見せてやるよ」

 

『爆走バイク!』『ギリギリチャンバラ!』

 

「三速、変身」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!』

 

キリヤんはレーザーレベル3に変身した。私としてはレベル1が可愛くて好きなのに……やっぱり男の子はカッコいい方を使いたがるのかな?

 

「っしゃあ、ノリノリでいくぜ」

 

「グオオオオッ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ガシャコンスパローと15号の鉄球が激突する。前の自分なら押し返されてただろうな。でも今は違う。力をさらに込め鉄球を押し返す。15号も驚きの表情を浮かべる。

 

「まだまだこっからだぜ!」

 

「グウッ!ガアアアッ!!」

 

15号は更に鉄球を振り回し、公園の遊具を壊していく。おいおい、ここのベンチ結構気に入ってたんだぞ!弓モードで狙撃する。狙いは目。直撃すれば恐らく脳まで一直線だろう。流石にそこまですれば一撃で倒せるはず。

 

「ったく!あぶねっ!!」

 

「ゴオアアアッ!!」

 

「オラアッ!!」

 

ピンク色の矢が15号めがけて飛んでいく。しかしそれをヒラリと躱す15号。図体に似合わず素早く躱していく。クソッ、イライラしてきた。

 

「避けんなっ、て!」

 

空めがけて放った矢が拡散、矢の雨が15号目掛けて降り注ぐ。それを鉄球を振り回して弾く15号。なら今がチャンス!

 

『キメワザ!』

 

「!?」

 

「遅いぜ!!らあっ!!」

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ガシャコンスパローを15号の腹に殴打する。それと同時にクリティカルフィニッシュを放つ。特大の一撃だ。『零式・弩弓一閃』。本当なら鎌モードで切り裂いてから、その切り裂いた部分に叩き込むって形なんだけど。

 

「ハハッ、余裕余裕〜」

 

「グゥ……」

 

吹き飛んだ15号を挑発する。この程度でくたばるとは思えない。だったらさっさと起き上がってこいよ。何回でも相手してやる。

 

「なんならもう一回、いっとく?」

 

「………………面白い」

 

「喋れんのかよ!?」

 

「今まで、獣に徹していたが……なるほど、これは戦士の血が騒ぐ」

 

おいおい、ここに来てガドルタイプかよ。めんどくせぇ。そして15号は亀の甲羅を脱ぎ捨てる。おいおいどこぞの仙人かよ。

 

「やはりこの肉体で打ち砕くべきだな」

 

「本当のガドルタイプかよ………殴り合いは得意じゃないんだ」

 

『バイオレントオメガ!NEW!』

 

「一撃で終わらせるぜ…………アマゾンッ」

 

『レベルアップ!』

 

チャンバラバイクゲーマーからオメガゲーマーに変身する。変身した時の衝撃波で更に遊具が吹き飛ぶ。

 

15号は腰を低く落とし、拳を強く握る。

自分も溢れ出す本能を抑えながら、拳を強く握る。

 

『キメワザ!』

 

飛び出したのは同時。15号の拳と自分の拳が激突する。おいおい、コイツまだ力を隠してやがったのか。このままじゃ押し負ける!?

 

「そこまでだゴメラ」

 

次の瞬間、自分の拳は空を切る。15号が何かに引っ張られたのだ。そのまま地面に叩きつけられる。何が巻きついて……バラのツタ!?しかもそれを引っ張っているのが女ときた。かなりの美人だけど……

 

「むう……ここまでか」

 

「ここまでも何も、今のお前はガミオの用心棒だろう。勝手な行動をとるな」

 

「あの男の匂いがしたのだ。優先するに決まっているだろう」

 

「犬かテメェは……アンタも未確認生命体か」

 

「その名で呼ぶな。我らはグロンギ。私はラ・バルバ・デ。覚えておけ仮面ライダー」

 

バルバとゴメラ……いや15号でいいか。2人はバラの花びらに包まれ、姿を消した。あんなゴリラ野郎が用心棒か……だったらボスはどんなVIPなんだ?

 

そんなことを考えていると着信が入る。木綿季さんからか。

 

「はいはい、どうしたの?」

 

『大変よ九条くん。未確認生命体が……300体現れた』

 

「…………は?」

 

 

8月22日(火)PM01時00分

 

現場に着くとタイガ先生が1人レベル3で奮闘していた。先生1人でよく持ちこたえたな。しかも話によると……

 

「クソッ、なりふり構ってらんねぇ」

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

レーザーレベル2を召喚する。最近このシステムを知った。便利だよな。

とにかく未確認に囲まれているタイガ先生を救出しないと。

 

「ハイハイどいてよー」

 

「九条!?」

 

「ほら、先生今のうち!」

 

バイクで未確認を蹴散らす。その隙に飛翔して離脱するタイガ先生。にしてもコイツは下手に刺激できないよな。

 

「九条、話は聞いてるか」

 

「だいたいは…………コイツら、みんな人間なんでしょ?」

 

そう、今自分たちが相手しているのは全て人間なのだ。なんでも、最初に現れた三体の未確認生命体の出した黒い煙を吸った人たちが、みんな未確認生命体に変身したらしい。しかもみんな同じ。少しぐらい個性つけろよ。

 

「どうしたら元に戻るかとか」

 

「知るか………多分、大元を潰せばなんとかなるんじゃないか」

 

「大元ねぇ………あー……もしかしなくても、大元ってアレじゃね?」

 

「あ?……なるほどな。確かに別格だ」

 

話をしている間に未確認が道を開いている。その道を歩いてくる、王者の風格をまとった未確認生命体。ってアレ?アイツどっかで。

 

「見つけたぞ、眼帯の狙撃手!」

 

「眼帯の狙撃手………俺か?」

 

「あ〜〜…………ゴメン、タイガ先生。多分ソレ自分のことだわ」

 

そう、6月の初め頃。たまたま見つけた未確認生命体。倒してやろうとスナイプで勝負を仕掛け、ボコボコにされて、でもギリギリのところで顔面に一発撃ち込んでやった。

コイツはそのときの未確認生命体、17号。

 

「まだ痛む、貴様につけられたこの傷が!!」

 

「何やってんだお前!?」

 

「いやあ、倒せると思ってさ……いつのまにか因縁つけられちゃったね」

 

「お前のせいだろ!!」

 

タイガ先生がガミガミ言ってくるが無視だ。今は目の前の17号に集中しねぇと。ハッキリ言ってコイツもガドルレベルだ。相当ヤバイ奴だ。あの時は片手で相手されたから一矢報いることができた。

でも今のアイツは怒り心頭。激おこプンプン丸だ。

 

「油断できないな」

 

『爆走バイク!』『ギリギリチャンバラ!』

 

レベル3に変身する。さてさて、こっからどう仕掛けたものか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻

 

病院の廊下を歩く白衣の男。

 

腰にはゲーマドライバー。

 

手にはライダーガシャット。タイトルは『タドルクエスト』

 

そして男は呟く、「未確認生命体、お前たちの存在はノーサンキューだ」と。




17号との因縁は『金色〜Gentle〜』を読んでいただくと少し書いてるのだよ。
そしてまさかの天才外科医がログインしました。まあいるってことは少し前に明かしてるけど。

次回は仮面ライダー5人vs未確認生命体17号です!

ではsee you next game!

あと活動報告あげたので。暇でしたら是非。


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第49話 答えは自分自身の中

ゼノバース2 でやっとアバターが超サイヤ人ブルーになりました。
でも超ベジータの方が使いやすいという………

今回はいつもより気持ち長いよ!


8月22日(火)PM01時10分

 

「おわっ!?」

 

「ぐあっ!?……クッソォ…あの野郎前より強いじゃねえか」

 

従業員が避難して、人がいなくなったビル。その五階まで放り投げられた自分とタイガ先生。17号の力は前戦った時よりも遥かに上だ。あの野郎、加減ってもんをしらねぇのか!

 

「俺は止められんぞ!仮面ライダー!」

 

「うわっ、アイツ宙に浮いてる!?」

 

「別格だな。よく一発決められたな」

 

「そんときは油断してくれたからさ……ホント、今回も油断して買わないか、な!!」

 

ガシャコンスパローから矢を連続で放つ。それは確かに17号に命中するけど、威力が足りない。クリティカルインパクトでも止められるかどうか分からない。いや分からないからこそ使うのはやめたほうがいいな。

 

「お前はそこから撃ち続けろ!俺が叩き落としてやる!」

 

「あ、ちょっと!……ったく、ノリが良すぎるぜ」

 

窓ガラスを突き破ってタイガ先生が飛び立つ。ガトリングで17号を攻撃する。17号も攻撃を避けながら手から電撃を放ってくる。ちゃっかりこっちにまで攻撃を加えてくるあたり抜かりない。

 

「まったく……飛び回るのはいいけど、自分に飛行手段がないこと知ってるよね?」

 

まあ、移動手段がないわけじゃない。自分の走るところ、そこが自分のコースになる。その気になりゃ壁だって走れるんだぜ?

でもそれはガシャットのエネルギーを大幅に使うことになる。それを知らなくて何回も使ってピンチになったことが何回かある。

 

「でもまあ、手段は選べないよな」

 

窓から飛び出して隣のビルの壁に着地する。そこからの全力疾走。なんかスーパーヒーローみたいだ。

 

「へいへい、忘れてもらっちゃ困るよ!」

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

無数の矢が17号を囲む。大したダメージにはならないだろうが、追い詰められて逃げようとしても逃げられないぞ、というプレッシャーを与えていく。ささやかな抵抗だ。

 

「そら、くらいな!!」

 

「オマケだ。死ねぇ!」

 

『ジェット!クリティカルストライク!!』

 

無数の矢が17号に命中すると同時にジェットコンバットのガトリングが一斉に火をふく。全弾命中。流石に少しはダメージはいったろ。

 

「てか気持ち悪っ。酔うなコレ」

 

「何やってんだ馬鹿」

 

ビルの屋上へ駆け上がる。17号の様子よりも自分のコンディションだ。ほら、体調悪かったら戦えないじゃん?

 

「んで、敵さんは?」

 

「まだ元気そうだ………はぁ、お前の変な因縁に巻き込まれて最悪だ」

 

「そう言わないでよタイガ先生。何かの縁だし、ここはもう少し協力してよ」

 

「まあ、未確認生命体にされた一般人の件もあるしな。ここで手を引くつもりはないが」

 

17号が咆哮する。まるで狼の遠吠えだ。するとさっきまでノロノロ動いていた未確認の動きが活発になった。しかも至る所から未確認が湧いてくる。この数はハッキリ言って東京都民の三分の一はいるんじゃないか?

 

いやそれは言い過ぎか。

 

「まるでゾンビ映画だな」

 

「だったらどうにかしてよドクター」

 

「無理だな。そこの無免許医では」

 

「なんて言われてるけど?…………え?」

 

自分とタイガ先生の会話に割って入る声。振り向くと仮面ライダーが立っていた。第一印象であだ名をつけるなら『DJシアン・ナイト』ってあだ名だな。だってアンプついてるし。

 

「テメェ……なんでブレイブに」

 

「ゲーマドライバーとライダーガシャットなら借り物だ。知り合いからのな」

 

「あ、水色の騎士で思い出した!あんたアマゾン仕留め損なっただろ!」

 

「…………楯無め、仕留め損なったのか。まだまだアイツも未熟だな」

 

1人で納得するな!って言ってやりたいけど、状況が状況だ。話は後にしないと………ほら、ゾンビ映画みたいに積み重なって登ってきてる!

 

「だが、俺は違う。未確認生命体はこの世界の癌。全て切除する。いくぞ虚」

 

「はい」

 

ブレイブが指を鳴らすと、隣のビルからピンクの仮面ライダーが下手へ飛び降りた。左腕のアームを地面に叩きつけ未確認生命体を吹っ飛ばす。

 

あのピンクのギザギザ頭。もしかして士さんの言ってたエグゼイドか?

 

「遅れをとるなよ無免許医、レーザー」

 

「テメェこそ、足引っ張んじゃねえぞ」

 

「仲悪いねぇお二人とも」

 

3人で飛び降りて未確認を退ける。傷でもつけたらそこから煙がでて更に被害が拡大する。そのことに気をつけながら周囲の未確認生命体を吹っ飛ばしていく。

 

ここに、4人のゲーマライダーレベル3が揃った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時間は少し遡り、

 

8月22日(火)PM01時00分

 

「そう、アイツ行ったのね」

 

「うん。家でリンリンに守ってもらえって」

 

「あたしも簡単には外に出られないか……ま、あの子と話したいこともあるし」

 

本音は1人で帰ってきた。まあさっきから鳴り響いている爆音で想像は簡単だ。クジョキリは今戦っているはず。それにしても簡単に言ってくれるわね。あたしに守ってもらえ?随分信頼されてるわね。

 

「ねえ花凛ちゃん。キリヤんって、お家だとどんな感じなの〜?」

 

「はあ?こんな未確認生命体が出てきてるのにそんな話………どんなもなにも、普通の兄貴よ。ちょっと無理しすぎるところあるけど」

 

「うんうん、分かるよ〜。キリヤんいっつも無茶して怪我するんだよ〜」

 

「そうなんよ!おにいったら、私がちょっとトラブっただけで殴り込みに行くんよ!自分のことはほったらかしのくせして、他人に親身になる!そんなん………もっと自分のこと大事にしてほしいのに」

 

確かにそうね。クジョキリはもっと自分のことを大事にするべきだ。なんていうか、一夏とは違った部分で危なっかしい。

 

にしてもこの子、テンション上がったら口調変わるわね。多分こっちが本当の九条花凛なんでしょうね。

 

「そうだよね〜。もっと自分を大事にしてほしいよね〜………でも、今しばらくは難しいかも」

 

「ちょ、本音!」

 

「え?どう言う意味よ」

 

「キリヤんは今、戦ってるんだよ。みんなを守るために。きっと今まで以上に自分自身のことをほったらかしにして、他人のために命をかける。私達が自分を大事にしてって言っても、多分話半分で聞いてると思う」

 

あちゃ〜言っちゃった……きっとクジョキリは仮面ライダーであることを隠している。これからもこの子には教えないつもりだったはず。だってそれを言えば、

 

「な、な、なんで!?なんでおにいが戦わなあかんの!?そんなん………他の人がやればええんや!どうしておにいが命をかけないかんのよ!」

 

言うと思った。そりゃそうだ。大事な兄貴がそんな危険なことをやっているのだ。誰だってそう思う。赤の他人より身近な兄貴が優先でしょうね。

 

「ねえ花凛ちゃん。花凛ちゃんが私の立場で、私に今の言葉を言われたらなんて答える?」

 

「そ、それは……」

 

「答えれないよね。私も答えられない。なんでキリヤんが戦うのか。それはきっとキリヤんしか知らないと思うよ」

 

本音は立ち上がって花凛に手を差し伸べる。

 

「だから聞きに行こう。どうして他人のために無茶をするのか。どうして戦う役目を他人に押し付けないのか。どうして仮面ライダーとして戦うことを選んだのか」

 

「本音さん……」

 

「偉そうなこと言ってるけど、私もまだ4ヶ月しか一緒にいなんだよ〜。だから私も知りたい。これから、もっと長い付き合いになるから」

 

まったく………理由はなんであれ、外に出ていくような気はしてた。だったらあたしから言えるのはただ一つ。

 

「話勝手に進めてるけど、絶対クジョキリに怒られるわよ?それでも行くなら、あたしの側から離れないで」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月22日(火)PM01時12分

 

「くそっ、誰かいないのか……」

 

東京に戻ってみたら、そこは地獄と化していた。大量の未確認生命体、いやグロンギになってしまった人たちと言うべきか。この中に箒たちがいなければいいんだけど。

 

東京に戻った瞬間、一気に飛ばしてきたのもあると思うがシールドエネルギーがゼロになった。多分微妙に立ち込めている黒い霧のせいだと思う。俺はクウガだから大丈夫だけど、普通の人ならかなりヤバイ。さっさと大元を倒さないと。

 

「一夏?おーい、一夏!」

 

「ん、箒!?無事だったのか!」

 

上から声がする。上を見ると女の子が顔が見えた。ビルの窓から顔を覗かしているのは箒だった。

 

「お前の方こそ!東京に戻ってきてたのだな!」

 

「ああ、白式で飛んできた!他のみんなは!?」

 

「無事だ!………やはりシャルロットは暴走してしまったがな!それに民間人も数十人いる!」

 

未確認生命体を見ると暴走するシャルロット。まあ今回ばかりは数が数だからな。にしてもよく止められたな。

 

「お前も早く…!危ない、後ろだ!」

 

後ろを振り返ると未確認生命体が爪を振り下ろしてきた。とっさにバク転で回避し距離を取る。会話に夢中になっていつのまにか囲まれていることに気づかなかった。

どうする、ここでは変身できないぞ。

 

「一夏!」

 

「箒!俺がこいつらを引き連れてここを離れる。お前はみんなと一緒にそこを拠点にして防衛に徹しろ!場所が場所だから何とかなるはずだ。その間に俺が元凶を叩き潰す!」

 

「無茶だ!お前1人じゃ「俺を信じろ!」!?……一夏」

 

「頼む。みんなを守ってやってくれ」

 

敵を引き連れてその場から離れる。箒が何か言っているが、ペガサスフォームじゃない俺には聞き取れなかった。

 

「また今度、2人でデート行こうな箒……………変身!!」

 

当然、俺の言葉も箒の耳には届かない。




エグゼイド、ブレイブ、レベル3が2人もログインしてくれました。てか前回で5人ライダーvsとか言っておきながらまだ合流できていない一夏。すまない、俺の力不足だ。

次回は夏休み編最終バトル!バトルが最後なだけだからね!まだデートしてないからね!

ではsee you next game!


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第50話 戦う理由

いつのまにか52話だった。
今回で夏休み編ラストバトル!バトルが最後だからね!


8月22日(火)PM01時27分

 

「ふんふん、やってるね〜」

 

激しさを増す戦い。4人の仮面ライダーとグロンギの頂点の存在。赤きクウガも多数のグロンギを相手に奮闘している。

ディスプレイに映る彼らの姿を見て束は呟く。

 

「それにしてもみんな強いね〜。スナイプとブレイブは当然の強さだけど、エグゼイドも中々……でも、レーザーは」

 

ガシャコンスパローで戦うレーザー。レーザーの素早い動きで敵の攻撃を避けながら、すれ違いざまに攻撃を叩き込む。他のライダーと比べると誰よりも攻撃を当てている。

 

「まだまだレベルが足りないねぇ。まあ、所詮はレベル5までしか想定されてないライダーだし、ゲームで死んでも大した影響はないか」

 

ニコニコしながらディスプレイを消す束。立ち上がり腕を伸ばす。彼女の視線の先にはIS学園があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うらあぅ!!」

 

迫り来る大量の未確認生命体を掻い潜り、17号に攻撃を当てる。今現在、17号メインで戦っているのは自分とブレイブ。周りの未確認相手に奮闘しているのはタイガ先生とエグゼイドだ。

自分はヒット&アウェイでブレイブはガシャコンソードの冷熱攻撃とリズミカルな打撃攻撃を織り交ぜて戦っている。

 

「はあっ!」

 

「ぐうっ!………小癪な」

 

「言ったはずだ。お前を切除すると!」

 

更に攻撃のペースを上げていくブレイブ。あの剣さばき、箒以上じゃないか?戦わせてみたら恐らく負けるだろうな。

ガシャコンソードに黄色いガシャット=ドレミファビートのガシャットを装填する。自分もおこぼれに預かるか。

 

『キメワザ!爆走!クリティカルストライク!!』

 

『キメワザ!ドレミファ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「決めるぜ!ハアアアッ!!」

 

「終わりだ!」

 

ブレイブが切り上げた17号にライダーキックを叩き込む。吹っ飛ぶ17号に更に追い討ちをかけるように、タイガ先生とエグゼイドの攻撃が加えられる。4発の必殺技を連続で食らったんだ。流石にダメージが入ってるだろう。

 

「案外呆気ない、のでしょうか?」

 

「どうだろうな。これくらいでくたばってるなら、とっくに俺と九条で片付けている」

 

「つまりまだ、か」

 

「おーおーしぶといねぇ」

 

立ち上がるり一瞬こっちを睨んだと思ったら、天に向かって咆哮する17号。

すると奴の咆哮を聞いた周りの未確認生命体がバタバタと倒れ始めた。そして体から黒い煙が吹き出る。まるで中身が抜けているみたいだ。

その抜けた黒い煙を吸い込み始める17号。やがて筋肉が膨れ上がり、牙が鋭くなり、体が大きくなっていく。

 

「おい!煙が抜けきった未確認生命体が!」

 

「人に……戻っている」

 

「未確認生命体化した人間の問題は解決した。だが」

 

「新しい問題発生ってか?…………つーかデカくね?」

 

一つの問題が解決すると、高確率で新たな問題が発生する。そう、目の前の17号だ。人型のフォルムから巨大なオオカミの姿へと変貌した。こんなデカイやつ相手するの初めてなんだけど!?

 

「リントの戦士にしては中々やる。だが、俺がこの姿になったからには、楽には死なせん!!」

 

「ああ?デカくなったのは図体だけじゃなくて、口までデカくなったのか?」

 

「俺は確信した。弱い犬ほどよく吠える」

 

「犬だけに、ですか?」

 

「うわ、それ自分が言おうと思ったのに!?」

 

それぞれの挑発に激昂し、強烈な咆哮をあげる17号。そして一気に距離を詰めてきやがった。油断はしてないはずだったのにな〜。

 

自分はそのまま17号の引っ掻きでビルに吹っ飛ばされてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻 長野県諏訪市 歌野の研究所

 

「あーあ、一夏くん飛んで行っちゃうなんて。せめて蕎麦ぐらい食べていけばいいのに」

 

東京が大変な時に蕎麦をすする歌野。テレビはつけているが、レンタルしてきた映画を観ている。しかも大音量。今現在歌野の研究所は小さな映画館とかしていた。

 

そして隣の部屋から、クワガタの石像が姿を消していた。天井には大きな穴。勿論それなりに大きな音がしたが、映画を満喫している歌野の耳には届かなかった。

 

「はあ〜蕎麦って……最高…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

場所は戻って東京

 

「この野郎!」

『ジェット!クリティカルストライク!!』

 

「動きを封じる!虚はレーザーを回収しに行け!」

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

 

スナイプのガトリングが17号の顔面に炸裂する。更にブレイブの作り出した氷塊で17号の足元を凍らせている。言葉だけなら状況は優勢だ。

しかし、未確認生命体から人間に戻った人たちが、まだ倒れたままだ。本気を出せば周りの人たちに危害が及ぶ。

 

「おいブレイブ!周りの人をさっさと安全な場所に動かせ!」

 

「それなら機動力のあるお前がやるべきだ無免許医!」

 

「何押し付け合いしてるんですか!?」

『マイティ!ゲキトツ!クリティカルインパクト!!』

 

エグゼイドの渾身のパンチとハンマーによる攻撃が17号の脳天に炸裂した。

 

「おい、九条はどうした!」

 

「彼なら……今から来ますよ」

 

エグゼイドの目線の先には穴の空いたビル。レーザーが吹っ飛ばされて出来た穴だ。ビルの反対側まで穴が空いている。そして穴の向こう側から聞こえてくるバイクのエンジン音。

 

「飛ばすぜ名人!」

 

「よっしゃ!いくぜ!」

 

レーザーLv2に乗ったクウガが、猛スピードで穴から飛び出してきた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

キリヤんにまたがり………いや変な意味に聞こえるな。レーザーに乗って最速でデカイ狼の足元を駆け抜ける。地面が凍ってるからちょっと滑りやすいな。

 

「こっちだぜ犬っころ!」

 

「俺を犬扱いだと!?………貴様だけは絶対に殺す!」

 

「おい!俺が言ったみたいになってるぞ!」

 

「黙ってろよ?舌噛むぜ!!」

 

更にスピードを上げるキリヤん。狼野郎も氷を砕いて追いかけてくる。つーか早くね!?

 

「キリヤん!追いつかれる!!」

 

「あのな、吹っ飛ばされてからここまでずっとお前を乗せて走ってるんだ。少しは手伝えっての!」

 

ガシャコンスパローを召喚するキリヤん。ペガサスフォームなら急所を狙えると思うけど、この揺れの激しい状況じゃ標準が合わない。もっと確実に狙える位置につかないと無理だ。

 

「名人、青くなれ!あの姿ならまだ軽い!」

 

「お、おう!超変身!」

 

ドラゴンフォームに変身すると、確かにスピードが上がった。しかし後ろを振り返ると狼野郎の牙がすぐそこまで迫っていた。超怖い。

すぐにガシャコンスパローで攻撃する。矢は全てホーミング弾の如く、次々と命中する。でも全然効いてないぞ!!

 

「くっそぉ…………もっとスピードが……」

 

それはキリヤんが更にスピードを求めた瞬間だった。

 

 

狼野郎がクワガタの形をしたナニカに吹っ飛ばされたのだ。

 

 

「なんだアレ!?」

 

「アレは…………味方だ!!」

 

あの姿、もしかしなくても歌野さんの研究所に置いてあった石像だ。狼野郎をぶっ飛ばしたってことは、多分超古代でクウガをサポートしていた存在なんだろうな。だから俺を助けてくれた。

 

「こっちに飛んできたぞ……うわ、分裂した!?しかも挟まれた!?」

 

「大丈夫だキリヤん。コイツはきっといい奴だ。そんで、お前を更に早くしてくれる!」

 

「あー……なんとなく力がみなぎってきたわ」

 

クワガタ君は二つのパーツに分かれてレーザーと合体した。言うなればクワガタレーザー!ってかキリヤんそれ前見えてる?

 

「しゃーない。このまま突っ走るぞ!」

 

「よし!反撃開始だ!」

 

起き上がり、飛びかかってくる狼野郎を躱して加速するキリヤん。それは明らかに違法速度だし、てか地面燃えてるし、てかキリヤんから変な音してる!?

 

「調子がいい!これならいける!加速して17号に突っ込むぞ!」

 

「マジで言ってる!?」

 

「横滑りしながらアイツの足元潜るから、腹に決めてやれ!」

 

ったく、無茶言うぜ。でも確かにそれならいける気がする。問題は俺だ。タイタンだとスピード落ちるし、マイティはリーチがないし、ドラゴンじゃ威力不足。となるとペガサスか。

 

一か八か、賭けるしかない!!

 

「任せろ!」

 

「よし、行くぜ!」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

Uターンしマックススピードで17号の元へと向かう。距離はあるがキリヤんも17号もスピードがある。多分すれ違うのは7秒後。

 

7

 

ペガサスフォームに変身し、ガシャコンスパローをペガサスボウガンに変形させる。

 

6

 

神経を研ぎ澄ます。

 

5

 

全身が痺れてくる。これは……、

 

4

 

力がみなぎる。

 

3

 

キリヤんが横滑りを開始する。

 

2

 

ペガサスフォームの体に金色のラインがはいり、武器が強化される。

 

1

 

すれ違う。17号の下を通過する。狙うのはここだ!

強化されたボウガンから10発の弾丸が放たれる。全て命中する。作戦は成功。後はダメージがあればいいんだけど、

 

「あ、やべ!」

 

「うわあっ!?」

 

キリヤんはそのまま横転した。俺も当然地面に叩きつけられる。しかもそのまま白いクウガに戻ってしまう。ヤバイぞ、まだ倒しきれていないこの状況で白はヤバイ!

 

「頼む…………ッ!」

 

効果があった。17号が苦しそうに呻き声を上げて倒れた。腹には封印マークが10個刻まれている。これは確実に倒した!!

 

「流石にやっただろ。なあ名人」

 

「ああ」

 

キリヤんはレベル1に戻り俺の隣に座り込む。そして17号は爆発四散した。俺は少ししか戦ってないけど、キリヤんが凄く疲れている。かなり強かったんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リントは……」

 

「「!?」」

 

「リントは…………いつから、グロンギを………上回る戦闘民族に……なった?」

 

まだ生きていた。まさかとは思うがあの狼は鎧で、本体のあの姿にはダメージが通ってないとか!?それは流石にヤバすぎる!!

 

「あちゃ〜いつのまにかフラグ建てちゃった?」

 

「そんな……嘘だろ?」

 

キリヤんは勿論、俺もペガサスフォームを使ったせいでほとんど戦う力が残っていない。俺たちを殺すならこのタイミングが絶好のチャンスだ。しかし17号は、

 

「いつのまに…………いつのマニ……イツノマニ…………」

 

ぶつぶつ呟きながら黒い煙に包まれて姿を消した。

またグロンギに見逃してもらったのか俺たちは…………はあ、情けないぜ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月22日(火)PM02時10分

 

なんとか17号を退けた自分たちはタイガ先生の元へ戻ろうとした。しかし思い出した。未確認生命体絶対切除するマンがいることを。

名人も世間一般から言えば未確認生命体だ。コイツはマズイなと名人を別ルートから帰るよう説明した。

名人も箒たちが心配だから、その方が助かると言って走っていった。

 

そんで1人で避難所に帰ってきたら帰ってきたで面倒ごとになった。

 

怪我をしている自分の顔を見て、泣きじゃくる花凛とそれをなだめる本音と鈴の姿があった。逆にタイガ先生とブレイブとエグゼイドの姿はなかった。

 

「おにいぃぃ!!無事でよがっだぁぁ!!」

 

「ハイハイ心配かけて悪かったな…………んで、なんでお前らがここにいるわけ?」

 

「キリヤん、怒ってる?」

 

「今回ばっかりはな。家で待ってろって言っただろ。無事でよかったからいいものの、何かあったらどうするんだ」

 

「ごめんなさいねクジョキリ。あたしが連れ出したようなもんなのよ」

 

「ってか、なんで外に出たんだ?」

 

リンリンから外へ出た理由を聞いた。呆れた。それこそ家で待っていればいずれ聞ける質問ばかり。急ぐもんでもないだろ。

まったくもう!激おこプンプン丸だぞ!プンプン!

 

「一度言っちゃったら、止まんなくなっちゃって、テヘペロ」

 

うん、可愛いから許す。やっぱり本音は天使だなぁ。

 

「ほら花凛ちゃん。今がチャンスだよ」

 

「う、うん………………あのね、おにい。おにいの事本音さんから聞いた。学校でも色々無茶してるって。だから聞きたいの!どうして他人の為に無茶するの?」

 

「それは………まあ自分が仮面ライダーだから、かな?そこまで無茶してないけどな」

 

「どうして戦う役目を他の人に押し付けないの?」

 

「うーん…………簡単に言っちゃえば、あの日みたいに逃げたくないから(・・・・・・・・・・・・・・・)、かな。それと仮面ライダーは一部の人以外変身できないし」

 

「どうして仮面ライダーとして戦うことを選んだの?」

 

「それは………………仮面ライダーってカッコイイだろ?だからモテると思ったのさ!」

 

「「「………………は?」」」

 

全員の目が点になる。ん?なんか変なこと言ったかな?てかどうしたお前ら?そんなに肩を震わせて。

 

「はあ、キリヤんらしいというか」

 

「あんた、そんな理由で仮面ライダーやってたの?」

 

「なんだよ。悪いのか?」

 

「おにいのバカ…………それで死んじゃったら、モテるとかモテないとか関係なくなるんだよ……」

 

花凛が抱きついてくる。女子に抱きつかれるのは悪くないが、生憎妹に興味はない。一番はやっぱり本音だ。何より幸せになれる。

 

「でも、納得できたかな花凛ちゃん?」

 

「うん…………おにいはどうしようもなくバカだって、改めて分かったよ」

 

笑う3人。おいおい自分置いてけぼりなんだけど?

でも、やっぱり笑顔が似合うよ花凛。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月23日(水)AM11時20分

 

花凛はなんとか納得して帰ってくれた。最後に『来年は私もIS学園に入学する』とか言い残して。

さて、これで夏休みを満喫できる。と思ったが、夏休み殆ど終わってんじゃんかよ。本音は実家に戻ったし、鈴はセシリアの借りているアパートに行ったし。1人で何しようか。

 

「ん?おーい、木綿季さん」

 

「ッ!?……なんだ九条くんか……」

 

「お久しぶりだね。んで何してんのこんなとこで」

 

「えーと…………実は実家に戻ってこいって連絡があったのよ」

 

「あ、もうイイよ。どうせ乗り遅れたんでしょ?」

 

「そうなのよ!!私の実家時間に凄くうるさくて!ゴメン!家まで乗せてって!!」

 

渋々承諾し、変身して木綿季さんの実家目指して走り出す。しかしそれが新たな波乱の幕開けだとは、この時の俺は知らなかった。




結局倒せてない17号。てか17号って書くから人造人間の方を想像してしまう。
そんで中々急ぎ足ですまぬ。それとキリヤの戦う理由ですが、結構その場のノリで書きました。後悔はしてないし、反省もしない!

次回、遂に夏休み編最終回!!いや長かったね。やっと二学期だよ。

そしてちょっとしたお話があるので、興味がある人は後で活動報告まで。

ではSee you Next game!


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第51話 さようなら夏休み

夏休み編ラスト!


8月29日(火)AM11時20分

 

雨。

 

雨が降ってる。

 

そう、雨が降ってるのだ。

 

つまりだよ?

 

「お家デート確定コースッ!!!」

 

家で1人ガッツポーズする俺。こんなの千冬姉に見られたらビルの屋上から紐なしバンジーするところだ。

 

本当なら今日、俺は箒とデートする予定だった。しかし今現在の天気は雨。こんな日は外に出る気力がわかない。仕方なくデートを中止にしようかと、箒に連絡をいれようとしたとき、

 

『雨が弱いうちにそっちに行く』

 

と箒から連絡があった。本来のデート開始の時間が午前10時半。箒の家から俺の家まで約一時間。歩いてくるなら更に時間がかかる。俺が迎えに行こうとしたが、

 

『全力で走ってる。タオルを用意して待っててくれ』

 

と連絡がきた。いやだから迎えに行くっての!

しかし箒は頑固な性格だ。最近は柔らかくなってきたがそれでもだ。こうなっては俺はタオルを用意して待つしかできない。一応風呂も用意している。そこで俺は気づく。

 

ビショビショの箒=透けて見える下着

風呂を提供=俺への好感度アップ+風呂上がりの箒

なんやかんやでいい感じになる。

イタダキマス。

 

この結論に至るまで約3秒。そして冒頭に至る。

 

人生の勝ち組になりつつある俺。しかし、そんな俺の最高の計画を邪魔するものが現れる。

 

 

「よお、名人……ぶえっくしょん!!?」

 

「キリヤんに全力で走ってもらったんだ。なんとか濡れずにすんだ。キリヤんを風呂にでも入れてやってくれ」

 

「オウ、マイ、ガッ!?」

 

最大の敵は最強の友だったか。

 

 

「いや助かったぜ名人。風呂まで用意してるなんて。しかも入浴剤まで」

 

「た、たまたまだよ。それにしてもキリヤんはどうしたんだよ?偶々箒と会ったのか?」

 

「箒が雨の中歩いてるからな。声をかけたらお前の家に行くって言うから、ついでにお前に色々伝えようと思ってな」

 

?それはデートが終わったあとでもいいんじゃないんですかねぇ?俺は心の中で呟いた。今箒は風呂に入っている。カッパ着ていたとはいえ体は冷えてるはずだと、俺が無理矢理入れたのだ。勿論お湯を入れ替えて。

 

「箒が席を外してる今のうちに言っとくぞ」

 

「もしかして、戦いの方か?」

 

「以外に何があるんだ?くだらない用事なら携帯に連絡するし、本当は新学期が始まってからでも間に合うと思ってたぐらいだぞ」

 

「間に合う?急ぎなのか?」

 

「単刀直入に言って、お前正体を知ってる奴らがいる」

 

!?声が出なかった。でも表情には出てるはずだ。俺がいつ正体がバレるようなヘマをしたんだ?いっつも周りに人がいないことを確認してから変身してるし、変身解除している。

 

「まあ心配しなくても自分たちの味方だ。今のとこは」

 

「今のとこは?」

 

「お前が人類に害をなす存在だと分かれば、どんな手を使ってもお前を殺すってさ」

 

「マジかよ…………」

 

「少なくとも暫くは大丈夫じゃないか?お前がそんなことをする奴じゃないってことを、少なくともお前の周りの人は知ってる」

 

キリヤんが机に並べられたお菓子を食べる。煎餅の噛み砕く音だけが響いている。

俺が人類に害をなす存在。そうはならない、と言い切れないのがクウガの力だ。俺にもわかる。クウガの力は日に日に強くなっている。

士さんたちと一緒に戦ったあの日。初めて金色の力を使った。そして先週、ペガサスフォームで金色の力を使った。

 

はっきり言って威力が桁違いに上がっている。根拠は爆発の範囲だ。マイティフォームの時はそれこそ工場が一つ吹っ飛んだぐらいで終わったらしい。

だがペガサスフォームの時は道路は勿論、周辺のビルの窓ガラスを全て粉々に粉砕したし、一部のビルは倒壊してるらしい。

 

勿論状況が違うから、と考えることもできる。敵がグロンギじゃないかどうか。フォームの違い。その時のキリヤんのレベル。

でも俺には、クウガの力が強大になってるとしか思えなかった。

 

「まあ、変に心配すんなよ名人」

 

「え?」

 

「さっきも言ったけど、お前は1人じゃない。自分や箒がいる。他にも頼れる奴がいる。些細なことでも相談してくれよ。少しぐらいなら力になれるかもだぜ」

 

「…………そうだな。俺にはみんながいるもんな……って、相談してくれって、それキリヤんにも言えることだぞ?」

 

「さて、なんのことかな」

 

そのままキリヤんは立ち上がり部屋を出て行こうとする。

 

「邪魔したな名人。まあ、あとは箒とイチャイチャしてな」

 

「お、おい!………ったく、また学校でな」

 

「おう、またな」

 

 

キリヤんが帰り、箒が風呂から出てきてから約一時間が経過した。ソファに2人で座って約一時間だぞ?その間何をしていたかって?風呂上がりの彼女が隣にいるんだ、緊張してお喋りどころじゃない。

 

(ヤバイ、寮にいる時はここまで緊張することなんてなかったのに!なんたってこんなに緊張するんだ!?)

 

「い、一夏!」

 

「は、はい!?」

 

「そ、その…………これからどうする?」

 

「これから…………そうだな。この雨だし、家の中で出来ることがいいけど……箒はゲームあんまりしないよな?」

 

「そうだな。最近はドラゴナイトハンターもログインしかしてない」

 

「ああ〜そういや皆んなでやったな。あれから続けてたんだな」

 

8月7日にみんなと遊んだ『ドラゴナイトハンター・ワールド』。あの日以降も続けており、最近レベルが100を超えた。でもキリヤんは200になったらしいけど。

 

「続けられるのは皆で遊べるからだ。きっと私だけならこんなに長続きしない」

 

「誰かのおかげで続けられる………そうだよな。俺も前みたいに箒と剣道が出来るのか嬉しくて、もう一度竹刀を握ったんだ」

 

まあタイタンフォームになってから本腰を入れ始めたんだけど……。

 

「そういえば一夏、お前最近竹刀は握っているのか?」

 

「握れる時は握ってるよ。あの感覚を忘れたくないからな」

 

「そうか、それならいいんだ。となれば学校が始まったらまた稽古をつけてやるぞ」

 

「頼むぜ、箒」

 

箒の頭を撫でる。触り心地のいい髪。ずっと撫でていたいでござる。

にしてもなんだかんだで会話が続いていたな。これも箒のおかげなのかな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月29日(火)PM03時09分

 

IS学園

 

「何も夏休みが終わってないのに学校に来ることないだろ」

 

「だってタイガ先生に会いたかったんだもん」

 

タイガの腕に抱きついてくるシャルロット。タイガはそれを引き剥がそうとするが、シャルロットのパワーは凄まじかった。

 

先日までセキュリティー面の強化で封鎖されていたIS学園。その封鎖も新学期の始まりに合わせて昨日から解除されている。それを知ったシャルロットは急いで荷物をまとめて学校に戻ってきたのだ。

 

「あのな、俺はこれから人に会いに行くんだ。さっさと離れろ」

 

「もしかして……女の人?」

 

「違う。ただの後輩だ」

 

「後輩?学生時代の?」

 

「前の職場のな」

 

なんとかシャルロットを引き剥がし保健室を出て行くタイガ。その足はIS学園の玄関ロビーに向けられていた。

 

 

「まさかお前から来るとはなブレイブ」

 

「お前が顔を見せないからだろう無免許医」

 

玄関ロビーでタイガを待っていたのは、タイガと同じように白衣を身につけた男=鏡ヒイロだった。

 

「昔はそんな先輩に噛みつくような口調じゃなかったのにな」

 

「尊敬できない先輩だけだ」

 

「尊敬してねぇのか?」

 

「お前に対する言葉と態度がその答えだ」

 

両者一歩も譲らず、平行線をたどっていた。そして訪れる沈黙。雨が地面に叩きつけられる音だけが響く。

 

「黙ってても仕方ねぇだろ。何の用で来た」

 

「なら単刀直入に言わせてもらう。お前の体は限界だ。ガシャットを寄越せ」

 

「…………そんなことか。俺のことを長い間見てきたお前なら分かるだろ。俺がそう簡単に渡さないってことぐらい」

 

「お前が死ねば、悲しむ人がいるだろう!!助けられる人も助けられないんだぞ!」

 

「仮面ライダーの力がなかったら!!それこそ、助けられる奴を助けられない……………それに俺は、まだアイツの主治医だ。アイツが完全に俺の元を離れたら……ガシャットを返してやる」

 

これ以上は無駄と判断したのかその場を去るタイガ。その背中にヒイロはかける言葉が見つからなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8月29日(火)PM07時00分

 

「ハッピーバースデー!箒!!」

 

「あ、ありがとう。あれから日にちが経ってるがな」

 

「遅れてごめんな。色々バタバタしてたし………いや、言い訳は男らしくないな。すまん」

 

「謝らないでくれ。むしろ嬉しいんだ。遅れても祝ってくれる人がいることが」

 

箒にプレゼントを渡す。正直誕生日当日に紅椿をプレゼントした束さんには負けるかもしれない。

俺がプレゼントしたのはリボンだ。前使っていた奴は福音との戦いの時に燃えてしまっていたからだ。前のやつと同じなのはどうかと思ったが、どうにも他のやつを付けていると違和感が残った。やっぱり箒はこっちの方が似合う。

 

「ありがとう一夏。大事に使わせてもらう………それで、大方このリボンをつけたところを独り占めしたかった。それが夏祭りの時に渡せなかった理由か?」

 

「ええっ!?な、なんのことかなー………って、まあそれもあるけど、本命は違う」

 

「えっ、独り占めしたかったのは本当なのか…………それで本命とは?」

 

やっぱ聞いてくるよな。まあ俺がそんな風に誘導したんだ。なら覚悟を決めろ男織斑一夏!渡すなら今しかないぞ!

 

「も、もう一つ、渡すやつがあってな」

 

「う、うむ」

 

「……………………やっぱなし」

 

「はあ!?」

 

「無理無理!今の俺には無理ですー!!」

 

「あ、コラ逃げるな一夏!」

 

逃げようとする俺の服を掴む箒。しかしそれは不味かった。バランスを崩した俺たちはそのまま床に倒れこんだ。箒が俺を押し倒す形で。

 

「…………あのー、箒さん?普通逆だと思うんだけど」

 

「こ、こうなったのはお前のせいだろ…………バカ」

 

「可愛い」

 

そのまま俺と箒は一夜を過ごしたのでした。めでたしめでたし。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月1日(金)AM00時00分

 

しかしこの物語はまだ終わらない。

 

超古代の戦士は、己の闇と戦い、

最速のゲーマーは、自分の過去と向き合うこととなる。

 

そして紅き侍、蒼き狙撃手、赤紫の龍、橙の疾風、黒の切り札の少女たちも、史上最悪のゲームに身を投じることになる。

 

眼帯の狙撃手は守るべきものを守る為、

魔王の力を宿し勇者は全ての命を救う為、

無敵のゲーマーもまた、愛する妹を守る為、戦場に足を踏み込む。

 

 

戦いは新たなステージ『仮面ライダークロニクル』へ、続いていく。




これにて夏休み編終了なり!長かったね。無駄な話が多かった気がするけど気にしない。

さて活動報告にもちょこっと書きましたが、ちょっとの間バイク名人はお休みです。もしかしたら予定変更して書くかもしれないけど。その時はまた活動報告にてお知らせします。

次回から二学期編です。みんな大好き生徒会長の登場だよ!

ではSee you Next game!


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New Legendの2学期
第52話 生徒会長はBrave man?


長らくお待たせしました。今回から再スタートです。
なんならジオウのスタートだ同時に再スタートも考えたんですけど、色々と思い浮かんで来たので再開しまーす!

今回から二学期編です!


雨の中、俺は必死に走った。

 

後ろから助けを求める女の子の声が聞こえる。

 

俺はそれを無視して走った。いや逃げた。

 

次に彼女に出会った時、

 

彼女は俺のことを忘れていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月4日(月)AM09時30分

 

二学期が始まった。そう、夏休みは終わってしまったのだ。思い返せば俺ほとんど戦ってばっかじゃないか?宿題はなんとかなったけどもっと遊びたかったな……。

 

そして二学期1発目の授業……とは言いにくいな。ホームルームと1時間目の時間を使って全校集会が行われた。

内容は今月の学園祭についてらしい。夏休みが終わっても、学生は遊ぶことをやめない。実にいいことだ。毎月学園祭でもいい……いや良くはないか。

 

しかしこれだけ女子が集まるとすんごいうるさい。

 

「それでは、生徒会長からのお言葉です」

 

静かに告げたのは生徒会の1人だろう。メガネが似合うクールビューティってやつ。その声でざわつきが一気に収まった。

 

「やあみんな。おはよう」

 

壇上で挨拶しているのは水色の髪が特徴的な女子。2年のリボンをしたその人は扇子をバッと広げる。そこには『自己紹介』と書かれていた。

 

「今年は海外遠征に行ってたから、私のことを知らない人もいるわよね。私の名は更識楯無。この学園の生徒会長よ。以後よろしくね」

 

ニッコリと微笑む生徒会長。何人かの女子は魅了されたようだ。

でも俺の後ろからバカでかいため息が聞こえてくる。めんどくさそうにそっぽ向くキリヤん。どうしたんだろうか?

 

「早速だけど本題に入るわ。今月の一大イベントの学園祭だけど、特別ルールを導入するわ。その内容は……」

 

慣れた手つきで扇子を閉じ、横へスライド。それに応じるように空間投影ディスプレイが浮かび上がる。

 

「名付けて!『各部対抗九条桐也争奪戦』よ!!」

 

ディスプレイにデカデカとキリヤんの写真が映し出された。どういうことかと思い後ろを振り向く。するとそこには今まさに逃走しようとするキリヤんの姿があった。

 

「自分はこういうの嫌なんだよ!」

 

「あら、そう言って逃げるのかしら?」

 

逃げるキリヤんの前にさっきのメガネの生徒会役員さんが立ちはだかる。てか……なんであの人がアレを………ゲーマドライバーを持ってるんだ!?

 

「逃がしてくれない?お姉様?」

 

「その言い方はやめなさいと言ったでしょう九条桐也。それに本音は貴方には渡さない」

 

『爆走バイク!』『ギリギリチャンバラ!』

 

『マイティアクションX!』

 

キリヤんと生徒会の人はゲーマドライバーを装着して仮面ライダーに変身する。キリヤんはレーザーLv3に。一方相手は………アレ?あのピンクの頭……まさか、この前の仮面ライダー!?

 

「この前の借り、ここで返すぜ!」

 

「ノーコンテニューでクリアです!」

 

集会をしている後方でバトルが始まってしまった。キリヤんはLv3に対して相手はLv1。スペックの差は歴然としてるのに……何故か胸騒ぎがする。

 

「えー、後ろでバトルが始まっちゃったけど説明を続けるわ。学園祭では毎年各部『ギリギリ!クリティカルストライク!!』て投票を行っ『爆走!クリティカルストライク!!』まらないと思って『マイティ!クリティカルストライク!!』ことよ!」

 

いや全然聞こえない。バトルの音がデカすぎて全然聞こえないから!ほとんど被っちゃってるから!

 

「ぐあっ!?」

 

「ゲームセットね。会長、彼を連れて行きます」

 

「りょうか〜い。また後でね虚ちゃん」

 

虚と呼ばれた生徒会の人はキリヤんを担いでその場を後にしてしまった。てかキリヤん白目向いてなかった?

 

かくして波乱の二学期が始まったのである………。

 

 

9月4日(月)PM04時13分

 

放課後の特別ホームルーム。今はクラスごとの出し物を決めるために、わいわい盛り上がっていた。一応俺はクラス代表として意見をまとめてるんだけど……。

 

『織斑一夏と九条桐也のホストクラブ』

『織斑一夏と九条桐也とツイスター』

『織斑、九条とポッキーゲーム』

etc………

 

「全部却下!」

 

ええええー!!と女子たちの大音量ブーイングが響く。

 

「こんなの誰が嬉しいんだ!なあキリヤん!」

 

「え?王様ゲームならやってもいいぞ?」

 

「おい!!」

 

助けを求めて視線を動かすも、すでに千冬姉は職員室に戻り、山田先生はなぜか頬を赤らめ、タイガ先生は立ったまま寝ている。おい教師どもそれでいいのか!

 

「とにかくまともな意見をだな!」

 

「それなら、メイド喫茶はどうだ?」

 

そう言ったのは、なんとラウラだった。まさかのラウラが立案したのがメイド喫茶だったためクラス全員がポカンとしている。

 

「客受けはいいだろう。それに経費の回収も行える。休憩所としての需要も少なからずあるはずだ。メイド服や執事服にもツテがある。どうだ、悪くはないだろう?」

 

説得力がある。言われてみればという感じだ。メイド服や執事服のツテは多分夏休みの時俺たち4人がバイトしてた喫茶店だろう。

 

「えーと……みんなどう思う?」

 

俺の質問は無意味だった。何故なら既にクラス全員の気持ちは一つだったのだから。

 

 

職員室

 

「…………というわけで、一組は喫茶店になりました」

 

「また無難なものを選んだな。立案は誰だ?まさか九条ではないだろうな?」

 

「ラウラです」

 

キョトンとする千冬姉。それから何度か瞬きをして、盛大に吹き出した。

 

「ぷっ…………あっはははははは!!アイツが!?ラウラがそんなことを……くうっ…いかん………ハハハハハハハヴェ!?ゲホッゲホッ!?………あー、お腹痛」

 

思わずラウラと呼んでしまうほど面白かったのか。てか笑い方が汚い。人のこと言えないけどな。ブゥン!

 

「さて……ではこの申請書に必要な機材とか食材を書いとけ。1週間前には出すように。いいな?」

 

「うげ〜、めんどくさそうだな……まあやるしかないか……」

 

そんなこんなで千冬姉への報告を終え職員室を後にする。やっぱり職員室って変に緊張するから嫌なんだよな。

 

「やあ」

 

不意に声をかけられる。職員室を出てすぐのところにその人は立っていた。生徒会長の更識楯無さん。間違いはない。

 

「えっと……ども」

 

「おやおや?態度がお堅いゾ?もっとリラックスリラックス!」

 

「…………俺に何か用ですか?」

 

「うん。単刀直入に言って、君のコーチをしてあげようかなって」

 

俺のコーチ。真っ先に思い浮かんだのが箒、次に鈴、セシリア、シャル、ラウラ……片手はいっぱいだ。

 

「お気持ちはありがたいんですけど、生憎コーチはいっぱいいるんで」

 

「もう、そう言わないでよ。この学園の生徒会長……つまり学園最強の私がコーチにつくのよ?」

 

なに!?生徒会長=学園最強なのか!?いや多分学園最強なら千冬姉だ。アレは人間やめてる。多分生徒の中では最強なんだろう。

でもこの学校にはキリヤんという仮面ライダー(イレギュラー)がいる。それに同じ生徒会のあのピンクの仮面ライダー。多分あっちの方が強いんじゃ……

 

「私がコーチにつけば…………今よりもっと強くなれるはずよ、クウガ君」

 

「!?」

 

反射的にバク転で距離を取りつつ顎を狙う。なんで俺がクウガだってことを!?まさか夏休みの最後の方でキリヤんが言ってた『俺の正体を知ってるやつ』って…………この人なのか!?

 

「それじゃあ、一度生徒会室に招待するから来なさい。ケーキぐらいだすわよ?」

 

「拒否しても連れて行くんじゃないんですか?」

 

「アハッ!正解」

 

俺は両手を挙げて降参のポーズをとる。確かに今の俺じゃこの人には勝てない。多分白のクウガだと今の状況でも圧倒されそうだ。

先輩はニンマリと笑う。まるで悪戯っ子のような笑顔で。

 

 

生徒会室

 

「……いつまでぼんやりしてるの」

 

「ねむ…………ねむ…………ねむ……」

 

「こら、しっかりしなさい。もうすぐお客様が来るのよ」

 

そんな声がドアの向こうから聞こえて来る。2人とも何処かで聞いたことがある声だ。

楯無さんがドアを開ける。出迎えてくれたのは3年生の女子……てか今日キリヤんをボコボコにした人じゃん!!

そして、その後ろにいたのは意外な顔だった。

 

「えへへ………シュークリームが…………いっぱ〜い」

 

のほほんさんだった。まさか生徒会夜会だというのか!?

 

「申し訳ございません会長、すぐに起こしますので」

 

「いいのよ虚ちゃん。このまま寝かせてあげて。久々にたくさん動いたから疲れてるのよ。それと虚ちゃん、一夏くんにお茶を出してあげて」

 

お茶の準備を任せて、2年生でありながら会長職を務める楯無さん。優雅に腕組みをして座席にかける。一連の流れに違和感を感じないのはすごいな。

 

「彼女は布仏虚。本音ちゃんのお姉ちゃんであり、ここの生徒会のとっーーーーても大事な存在なの。彼女がいないと生徒会は崩壊するわ」

 

「私たちは代々更識家、いえお嬢様にお仕えする身。それが私どもの仕事ですので」

 

「虚ちゃん、ここでお嬢様はやめてよ」

 

「失礼しました。ついクセで」

 

やりとりからして楯無がすんごいお嬢様で、更識家がすんごい名家なのはわかった…………てか、木綿季先生も更式だよな。漢字違うけど。

 

「思ったんですけど木綿季先生もサラシキですけど関係あるんですか?」

 

「ないわ。一ミリもね」

 

即答…………これ関係あるんじゃないか?楯無さんは笑顔で返答してくれたけど、俺にはそれ以上その質問をするなと言っているように見えた。

 

「織斑君も、どうぞ」

 

「ど、どうも」

 

「プハー!やっぱり美味しいわね虚ちゃんの紅茶は!…………コホン。さて本題に入りましょうか………単刀直入に言うわ。一夏くん、君は弱い。無茶苦茶弱い」

 

いきなり切り込まれたぞ。そんなの分かってんだよ。誰よりも俺自身が。

 

「だから、学園祭までの期間私が特別に鍛えてあげましょう。ISも生身も、勿論……ね?」

 

声には出さなかったのはのほほんさんは俺の正体を知らないからだ。それなりに気遣ってくれてる。

 

「俺が弱いのは認めます………でも今の言い方は……少しイラッとしましたよ」

 

「うん、わざとだから」

 

ニコニコしながら楯無さんは遠慮なく言ってくる。まったく言ってくれるもんだ。流石にキレちまったよ…………。

 

「だったら勝負しましょう。一対一の真剣勝負…………楯無さんも仮面ライダーなんでしょ?それで勝負しましょう」

 

「ええ、いいわよ。それで私はどれだけ手を抜けばいいのかしら?」

 

「何言ってるんですか?本気で来てくださいよ」

 

「そう?じゃあ、お言葉に甘えるわね」

 

 

畳道場

 

「なんで袴なんですか?」

 

「え?その方が雰囲気出るでしょ?」

 

放課後の畳道場で俺と楯無さんは向かい合っていた。ギャラリーはゼロ…………いや逆にいたら困る。俺が凄く。

 

「そういえば虚さんも俺の正体を?」

 

「勿論よ。そして危険分子だと分かればすぐに殺すべきって言ったのも虚ちゃん。そして現段階での最強の仮面ライダーも虚ちゃんよ」

 

「え?学園最強は楯無さんじゃ!?」

 

「学園最強はね。ライダー最強なら虚ちゃんよ。今日の戦い、いいえ以前の戦いから見て分かるでしょ?」

 

俺はあまり見てないんだけど……キリヤんの話を聞く限りかなり凄いらしい。

 

「さて、勝負の方法だけど……流石に君を再起不能にするのは色々問題になりそうだから……私を床に倒せたら君の勝ち。逆に君が降参したら私の勝ち。それでいいかな?」

 

「舐められましたね。痛い目みますよ」

 

「どうせ私が勝つから大丈夫よ」

 

楯無さんはゲーマドライバーを装着してガシャットを手にする。それはタイガ先生が以前使っていた大きめのガシャットだった。

 

『タドルファンタジー!』

 

楯無さんがガシャットを起動させる。そして現れたゲーマ。まるで魔王を彷彿とさせるその姿。これが楯無さんの本気なのか。

 

『Let's Going King of Fantasy!』

「術式レベル50!」

『デュアルガシャット!』

「変身!」

『ガッチャーン!デュアルアップ!タドルメグルRPG!タドルファンタジー!!』

 

「…………変身!」

 

俺はクウガマイティフォームに。楯無さんは水色のボディに赤い鎧を見にまとった仮面ライダー=『仮面ライダーブレイブ ファンタジーゲーマーLv50』に変身した。

 

「かかって来なさい。お姉さんが相手してあげる」

 

「…………絶対泣かせてやる!」




というわけで楯無さんが仮面ライダーブレイブ。虚さんが仮面ライダーエグゼイドです!え、知ってた?

さていきなり本気のレベル50ですけど勿論100も後々出しますので。

次回は一夏クウガvs楯無ブレイブ!

ではSee you Next game!


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第53話 Fantasyな特訓?

一夏vs楯無さん!


9月4日(月)PM04時50分

 

畳道場

 

「行きますよ」

 

「いつでもどうぞ?逃げも隠れもしないわ」

 

楯無さんが言い終わる前に踏み出す。こういうのは速攻で片付けるのが賢い戦法だ。とにかく、まずは小手調べだ。

ガラ空きのボディに1発パンチを叩き込む。正直女子を殴るのはどうかと思うがなりふり構ってらんない。

 

「いやん。女の子のお腹は殴っちゃダメなのよ?」

 

「今の俺は貴女を仮面ライダーとして見てます。なら問題ないでしょう?」

 

「そう、その考えが正解」

 

「!?」

 

一瞬で壁に叩きつけられた。何が起きた!?あの人は何もしていないぞ。だからといって俺が勝手に吹っ飛んだわけでもない。

 

「まずは一回……今のタネ明かしは後でしてあげるから、迷わずヘナチョコパンチを打ち込んできなさい」

 

楯無さんが挑発する。人を馬鹿にするわ、悪口は言うわで正直最悪だ。でも…………この人は本気だ。本気で俺を鍛えるつもりだ。

 

考えを巡らせる。千冬姉よりも仮面ライダーに変身している分圧倒的に強い。なら無闇にに攻めても効果は無いはず。ここは一度楯無さんの出方を見ても問題はない。

 

「来ないのなら、こっちから行くよ」

『ガシャコンソード!』

 

手にしたのは剣。キリヤんのガシャコンスパローと同じ様にボタンが二つ。刃の形はまるで炎を思わせる。

 

「はあっ!!」

 

いきなり目の前に急接近される。早すぎる!ドラゴンフォームでもここまでのスピードは出せない。

楯無さんは大振りに剣を振り下ろす。まるでガードしてみろと言わんばかりに。なら完璧にガードしてやる。剣の扱いなら俺だって少しは自信がある!

 

「超変身!雪片弐型!!」

 

タイタンフォームに変身し、タイタンソードで受け止める。いや受け止めれるはずだった。

 

楯無さんの剣はタイタンソードをいとも簡単に打ち砕き、更には鎧にまで傷をつけた。冗談キツイぜ。

 

「一夏くん。今の、私がもう少し踏み込んでいたら死んでいたわよ」

 

生徒会室にいた楯無さんとは違う。本気の警告だ。例えお遊びでも、この人は本気で殺しにくる。常在戦場とはよく言ったものだ。

 

楯無さんがバックステップで距離を取る。俺の足元にはタイタンソードから雪片弐型に戻った剣……だったものが転がっている。流石に精神的にキツイ。剣で勝負ならと思ったが、どうしたものか。

 

「まだやる?」

 

「当然ですよ」

 

「そう、頑張る男の子は素敵よ…………奥の手、見せなさい」

 

その言い振りだと多分1時的に変身できるアレを知っているみたいだな。今までマイティとペガサスでソレが発動したけど、多分タイタンとドラゴンでも可能なはず。

 

でも俺の脳裏に、『もしもの事』がよぎる。アレは強すぎる。あんなデカかった狼野郎を撃退することができたんだ。この部屋、いやIS学園を半壊させることは可能なはず。その力をここで使ってもいいのか?

 

「安心しなさい。『もしもの事』は起こさせないから」

 

「……読心術でもあるんですか?」

 

「あら、図星だったの?」

 

首をかしげる楯無さん。不思議とムカつかなかった。たった二回しか攻撃を食らってないが、なんとなく本能が伝えてくるのだ。彼女ならなんとかしてくれる、と。

 

意識を集中させる。何となくコツはつかめている限界まで意識を集中させ、倒すべき相手だけを考える。視界に捉えるのは目の前の仮面ライダーのみ!

 

「………超変身」

 

タイタンフォームの銀色の鎧が紫に染まる。金色のラインが入り、全身に力がみなぎる。成功したようだ。あとはここからどうするかだけど…………っていうか楯無さん、あんまり驚いてないな。ちょっとショックだな。

 

呼吸を整える。落ち着け、何も変身しているだけで中身は人間だ。しかも女の子だ。攻略法は必ずある!

 

「本気だね………」

 

「…………」

 

俺の無言に、楯無さんも無言で応える。射撃で倒す覚悟で……決めるしかない!

相手よりも早く仕掛ける!

 

さっきまでと違う早さに一瞬驚いたのか、楯無さんは距離を合わせるために半端下がる。俺自身タイタンフォームでここまで動けることに驚いている。

 

「もらった!!」

 

「勝利を確信するな!名人!」

 

一瞬聞き覚えのある声が聞こえた。その声の主を探す前に、俺の拳は楯無さんに避けられた。すかさず楯無さんはガラ空きのボディに蹴りを叩き込んできた。一瞬呼吸ができなくなる。そのまま前のめりに倒れそうになる。

 

畜生……ここまでだってのか?……

 

「だからって、敗北を認めるなよ。諦めはお前には似合わねえぞ」

 

「……………だよな」

 

やっと声の主がわかった。包帯グルグル巻きのキリヤんがいつのまにか畳道場に来ていた。

そうだ、ここで諦めてたまるか!

 

一歩踏み出し、倒れるのを阻止する。それとほぼ同時に右拳に力を込める。キツイの1発、かましてやるか!

 

「せりゃあああああっ!!!」

 

俺の拳は雷をまとっていた。最後の力を振り絞って楯無さんめがけてもう一度右ストレートを叩き込む。今度は確実に入った!

 

「うん、君は凄いよ」

 

でも楯無さんの声が後ろからした。俺は確実に楯無さんに右ストレートを叩き込んでいるはずなのに。まさか…………偽物!?

 

俺がそれに気づいた瞬間、俺の体は空中に浮かんでいた。そして意識を失う前に聞いたのは『タドル!クリティカルスラッシュ!!』というキメワザの音声だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「柄にもなく、本気の本気出しちゃったか………」

 

最後の一夏くんの攻撃。アレは予想してなかった。例え桐也くんが応援しても、そこから立ち上がる王道展開なんて想像もしてなかった。何故ならその時の蹴り、アレはキメワザを使用してたからだ。

一夏くんは集中しすぎて聞き逃してたのかしら?

 

「私も考えを改めないとね」

 

一夏くん、一瞬右側の紫の瞳が黒く染まっていた。アレはよくない兆候だ。私がなんとかしないと…………。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月4日(月)PM10時45分

 

医務室

 

耳に優しい鼻歌を聴きながら、俺は瞳を開けた。暗い部屋に月明かりが差し込んでいる。

俺が起きたのに気がついたのかその人は俺の前に顔を寄せてきた。

 

「起きた?」

 

「…………たて……なし…さん?」

 

「うん、このままでいいわよ。まだ体辛いでしょ?」

 

頭を撫でられる。うーん、妙に柔らかくて心地いい、しかもいい匂いのする枕だこと…………いやこれ膝枕か。普段の俺なら何かしらツッコミを入れるところだけど、正直そんな元気もない。

 

「この体制のままでいいから聞いてね。まだ辛いと思うけど、明日から特訓を開始するから。手始めにISの操縦ね。一夏くんには……ってもう聞いてないわね」

 

 

9月7日(木)PM04時10分

 

第三アリーナ

 

「一夏くん、スピードが落ちてるわ。もっと集中しなさい」

 

「はい!」

 

あの決闘以降、自分で言うのもアレだが少しは素直になれた気がする。楯無さんという今の俺では絶対に変えられない壁が、今の俺を作っているのかもしれない。

 

俺は今、マニュアル制御の訓練を行っている。

昨日シャルとセシリアが『シューター・フロー』でサークルなんとかをやってくれた。射撃型の戦闘動作を何故俺がするのかというと、第2形態で獲得した荷電粒子砲のせいだ。

連射できない、俺の狙撃能力はお察し……いやペガサスフォームなら話は別だけど、あれ限定的に力を使ってもかなり体力を消耗するからあまり使いたくないんだよな。

 

とまあ、とにかく射撃戦には向いてないのだ。だからあえて近距離で叩き込む。言葉で表すと簡単そうに見えるのが困る。

 

「うん、最初よりはかなり良くなってるわね。それじゃあそこから瞬時加速してみようか。シューター・フローの円軌道から、直線軌道にシフト。敵の弾幕を突破して、ゼロ距離で一気に決める!」

 

「わ、分かりまし………うわあっ!?」

 

意識を瞬時加速に切り替える。しかしシューター・フローを途中で止めてしまった。結果制御を失って俺は壁に頭から突っ込んだのだ。すんごい痛い。

 

「こらこら、瞬時加速のチャージをしながらシューター・フローも途切れさせないの」

 

「難しいですね………すいません、大丈夫です。もう一回お願いします」

 

「うん、頑張る子は大好きよ。でも一夏くん、今頭から突っ込んだでしょ?念のため少し休憩しましょ」

 

そう言って渡してきたのはスポーツドリンク。冷たすぎない丁度いい冷たさ。俺はそれを一口飲むと、少し気になっていたことを聞いてみる。

 

「そういえば楯無さん。キリヤんと虚さん、最近よく一緒にいるのを見ますけど、まさかあの2人」

 

「そ、桐也くんのコーチをしてるのよ虚ちゃんは。彼女自身彼に思うところがあるみたい」

 

「まあのほほんさんのお姉さんですし。なんとなくわかる気がします」

 

「最初は仲が悪かったのよあの2人。桐也くんは特訓サボるし、虚ちゃんは鬼教官すぎるし。相性は最悪だったの」

 

「その口ぶりだと最近は違うんですか?」

 

「ううん、今も相性は最悪よ。でも相性が最悪でも付き合い方ってものがあるの。一夏くんもあるんじゃない?嫌いな人とか怒りやすい人とペアを組むとき、どうすれば自分に面倒ごとが起きないかって考えること」

 

ないと言えば嘘になる。確かにわかる気がする。怒りやすい人と組んだ時、どうすれば相手は怒らずにすむのか。多分人はそれを考えるのが嫌だから、親しみやすい仲の良い人としか組まないのだろう。

 

「桐也くんってば、そういうことばっかり頭が回ってるって虚ちゃん言ってたわ。でも最初に比べたら桐也くんも虚ちゃんも楽しそうにしてるわ」

 

それは何よりだ。そういえば最近キリヤんと話をしていない気がする。日常的な挨拶はするけど、会話という会話を全然していない。今度会ったら色々聞いてみよう。

 

「俺も負けてらんないですね。楯無さん、続きお願いします」

 

「あら、流石男の子。もう元気になったのね。いいわ、やりましょうか」

 

どのコーチよりも分かりやすく優しい反面、どのコーチよりも厳しい。そんな楯無さんの指導はまだまだ続く。

 

 

9月7日(木)PM06時50分

 

俺は疲れた体を引きずりながら、部屋のドアを開けた。

 

「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

テレレレレレレッ。やせいの たてなしさん が あらわれた。

どうする?

 

戦う=敗北決定、てかそんな元気ない

ご飯にする=食堂で食べるから必要ない

お風呂=今風呂に入ったらそのまま永眠しそうだから今はパス

わ・た・し=俺には箒がいるから絶対にダメだ

 

とにかく状況を整理する。現在地、一年生寮。俺の部屋の前。表札に織斑の字を確認。うん、何も間違っていない。今のは夢か幻だろう。いくらなんでも裸エプロンの楯無さんがいるなんてありえない。

そう思いながら、再度ドアをあける。

 

「お帰り!私にします?私にします?それともほ・う・き・ちゃん?」

 

「箒でお願いしますッ!!」

 

「はーい!箒ちゃん、オーダー入りましたー。テイクアウトでーす!」

 

「何を言ってるんですか楯無さん!!」

 

「あ、箒いたんだ。てかなんで2人とも俺の部屋に?」

 

「うん、今日から私、ここに住もうと思ってね!いやぁみんなに自慢できるなぁ。まだ2人しか女子が泊まってない一夏くんの部屋で寝泊まり。いやん獣に襲われちゃう!」

 

俺は混乱でまともに思考回路が働かない。どうせ生徒会長権限でこれを可能にしたんだろう。なんなんだこの人は!てか生徒会大丈夫か!?

 

「まあ、寝泊まりするのにやっぱり彼女さんの許可は必要かなって。だから箒ちゃんを呼んだのよ」

 

「勿論断ってくれたよな!?」

 

「いや、別に構わんが」

 

「へあっ!?おいおいそりゃないぜ箒!」

 

「私は、お前が他の女に手を出すなどとそんな心配はしておらん。私はお前を信じているぞ一夏」

 

「いやん!あり得ないほどのリア充オーラが私の心に傷をつけていく〜」

 

ぐわ〜、とその場に倒れこむ楯無さん。あ、裸エプロンじゃなくて水着エプロンだったのか………箒が水着エプロンなんかしてたら本気で襲いかねんぞ。

 

「とまあ、これからよろしくね一夏くん」

 

「はあ………面倒ごとだけは起こさないでくださいよ」

 

「分かってるわよん!はあぁぁ楽しみねぇ!」

 

いや絶対分かってないよこの人。




ライジングタイタンフォーム登場!しかも剣を使わない。まるで弓を使わないアーチャーだ。そして片目が黒く染まる。この作品でのライジングフォームの完成形はまだ登場しません。今のところのライジングフォームは全て未完成です。

本妻の余裕からか楯無さんを一夏の部屋に泊まるのをOKしてしまう箒。これがまさかあんなことになるなんて!

ではSee you Next game!


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第54話 S C Pはイタズラ好き

SCPはStudent Council President=生徒会長って意味です。
いや長いわ!


早く元の部屋に戻らないかな〜……って何回思ったのか。多分両手両足じゃ数えきれない。

俺がこう思い始めたのは、楯無さんと過ごし始めてからだ。

 

9月9日(土)PM09時57分

 

波乱、その1

 

「一夏くーん、ちょっと来てー」

 

「なんでふか……!?」

 

寝る前の歯磨きをしていた俺は楯無さんに呼ばれて部屋に戻った。正直嫌な予感しかしなかった。あと、歯磨きしながら歩くのは危険だぞ。転んだら死んじゃうかもしれないからな!箒にも怒られた!

 

部屋に戻った俺が目にしたのは、ベッドに寝転んだ楯無さんだった。いやそれはいいんだよ。いいんだけどさ……下着姿にワイシャツっておい!

 

「楯無さん……パンツ見えてますよ」

 

「あら、一夏くんならもっと面白い反応するかと思ったのに。でも逆に新鮮かも」

 

「箒のほぼ毎日見てたんで………んで、どうしたんですか?」

 

「一夏くんマッサージ上手なんですって?私にもマッサージしてして〜」

 

どこで情報を手に入れたのか気になるところだ。この学校に来てからマッサージは全然してない。箒とシャルにはしたような気がする。キリヤんにもしようと思ったけど『お前にベタベタ触られるなんて絶対嫌だね!』と断られた。

 

「まあ、構いませんよ。けど…………」

 

「けど?」

 

ハッキリって楯無さんはスタイルがいい。服の上からでもわかる胸!腰のくびれ!形のいいお尻!

これは男性特攻宝具!世の男どもを殺してきた兵器だ!俺は今からこれに挑まなくてはいけない!

なんかヤバイ気がする。具体的には俺が。その理性とかその他諸々。

 

せめて下に何か穿いてください」

 

「下?ちゃんとパンツ穿いてるじゃない」

 

「ズボン的な何かを穿いてください!じゃないとマッサージしませんよ!」

 

「も〜分かったわよ………!パンツじゃないから恥ずかしくないわよ!」

 

「じゃあそれで買い物に行けるんで・す・か!?」

 

「…………ごめんなさい」

 

名称が何であれ俺がパンツに見えるものはすべてパンツです。大臣がなんと言おうとそれはパンツだ。神が言おうとそれはパンツだ。

 

「これならいいかしら?」

 

そう言ってシャツをめくって見せてきたのは、お尻のラインがくっきりと出たとてもエロいスパッツだ。当然、下着のラインも浮いている…………今度、箒に穿いてもらおう。

 

「あ、エロい顔」

 

「悪いですか!?そんなにスタイルいい楯無さんにも責任があるんですよ!」

 

「謎の逆ギレ!?まあ、いいわ。とりあえずマッサージよろしくね」

 

ベッドに寝転ぶ楯無さん。もはややるしかあるまい。覚悟を決めろ男織斑一夏!たかがマッサージだ!そんなに苦戦することも……あ、なんかいい匂いがする。箒とも他の女子とも違う、甘いのにどこか涼しげな香りが部屋を満たしていく………くそっ!第4の男性特攻宝具だと!?

 

「じゃあ、始めます」

 

早速脚から始める。ていうか脚の段階でこの柔らかさ。脂肪の柔らかさではなく、中にしっかりと筋肉を感じられる………とにかく手触りがいい。この時点で理性を保つのに必死だった。

 

「ねー、早くお尻〜。座ってばかりでこってるのよ〜」

 

大丈夫なのか俺?今お尻を触って理性を保てるのか!?

 

そんな時、俺の目の前に天使(の格好の俺)が現れる。

『大丈夫だ。今のお前には箒がいるだろ。箒のことを思い出せ。お前には愛する彼女がいることを!』

 

そんな時、俺の目の前に悪魔(の格好の俺)が現れる。

『理性?そんなもん捨てちまえ。目の前にいい尻があるんだ。触らずして男かよ!箒だって許してくれるさ』

 

そうだよな。大丈夫だよ。俺は天使をぶっ飛ばして、お尻に手を伸ばす。

触ってみて………とても柔らかい。そしてかなりのボリューム。

 

「一夏くん」

 

「はい」

 

「鼻血でてる」

 

「…………はい」

 

 

9月11日(月)AM11時50分

 

波乱、その二

 

「それでは皆さん、中間テストはもうすぐですから頑張ってくださいね」

 

4時間目、一般科目が終わり、教室内はいつもと同じく騒々しくなる。この授業に関しては言語園に依存するため、クラス内には日本人しかいない。いざ黒髪ばっかりだと普通の高校みたいだ。

 

「今日も死んだように寝てたなキリヤん」

 

「やっぱ箒も気になってたか?二学期になってからずっとだぜ」

 

最近キリヤんは授業中寝ていることが多くなってきた。まあ一学期の頃から寝てたけど、千冬姉に怒られたら素直に起きてたのに、ここ最近は叩かれても起きなくなった。しまいには昼飯も食べずに夕方まで寝ていることもある。

 

「虚ちゃんとの特訓が厳しくなってきたみたいね」

 

「当然の如く教室に現れますね楯無さん。メニューの変更でもあったんですかね」

 

「うーん、多分だけどメニューの量は変わってないはずよ。変えたのは質ね。いわゆる難易度変更。虚ちゃんもそうやってレベルアップしてきたし」

 

レベルアップ?仮面ライダーとして戦うためのレベルアップだろうか。キリヤんもそれが重要とか言ってたな。

 

「まあ、彼にも休息は必要なのよ。それにこの匂いを嗅げば起きてくるわ」

 

そう言って俺の机に何かをドンと置いた。それは弁当……いや重箱五段だった。さらにテキパキとイスを用意する。

 

「楯無さんが弁当作ったんですか?」

 

「普段は作らないんだけどね。今日は気分がいいから作ってみたの」

 

気分がいいから作ったって……じゃあ気分が悪かったらどうなるんだろう。そんなことを考えている間にも楯無さんは弁当を広げていく。

 

「さあ、召し上がれ!」

 

「………………あの、楯無さん?」

 

「どうしたの一夏くん?」

 

「すいません、俺の見間違いならいいんですけど……この弁当、おにぎりと唐揚げしか入ってないんですけど?」

 

「………………私、得意料理が唐揚げなの。テヘ♪」

 

楯無さん、それは得意料理じゃなくて作れる料理と言うんです。でもまあ、いい匂いはするし美味しそうなのには変わりない。集まってきた女子達もパクパク食べている。

 

「……ん、なんか美味そうな匂いすんじゃん」

 

「お、やっとお目覚めかキリヤん。楯無さんが作ったんだってさ」

 

「へえ〜会長さんがねぇ。それじゃあお言葉に甘えて………お、美味いじゃん。もう一個もーらい」

 

キリヤんは唐揚げをひょいと口に放り込むとそのまま教室を出て行った。

 

「うんうん、男子2人のお墨付きの唐揚げ、これからもっと腕を上げないとね」

 

楯無さんは楽しそうな笑みを浮かべながらおにぎりを食べている。味はとても美味しい。更に美人生徒会長が作ったとなるとそれなりに場の空気も賑やかになる。

 

でも楯無さん、重箱五段全部おにぎりと唐揚げは女の子にはキツイと思うんですよ。

 

結局俺が一番食べました。お腹痛い。

 

 

波乱、その三

シャワー中に背中を洗いに入ってくる楯無さん

 

波乱、その四

いつのまにか俺の布団の中で下着姿で寝ている楯無さん

 

波乱、その五

特訓が早く終わったと思ったら、教師のコスプレで勉強会を開始する楯無さん。そして何故かそれに巻き込まれるタイガ先生。

 

その他諸々………多分その九まで続くと思う…のでカット!!

 

9月15日(金)PM07時30分

 

「あ〜………」

 

食堂のテーブルに突っ伏している俺を、いつものメンツが苦笑いで眺めている。

今日も疲れた。主に楯無さん絡みで。普段は茶目っ気満載の人だけど、放課後の訓練はかなり厳しい。今日はISではなく、生身での特訓。普段どれだけ白式に助けられてるかよく分かった。

 

「一夏、お疲れ様。お茶飲む?食欲なくてもせめてこれだけでも」

 

「おー……サンキューシャル………」

 

みんな夕食を食べている。美味しそうなんだけど今の状態ではまたお皿に戻ってしまう。しかもモザイク付きで。

 

「あの女はまだ部屋に居座っているのか」

 

そう言ってきたのはラウラだった。ラウラもなんだかんだで楯無さんを警戒している。昨日はラウラと楯無さんの模擬戦を見てたんだけど、自身の専用機の槍だけであのラウラのジョーカーと互角なんてヤバすぎる。

 

「なんでも文化祭終わるまでいるんだってさ。まあ今日は生徒会の仕事があるから自分の部屋で寝るって言ってたけど」

 

「そーそー。書類がちょ〜溜まってるんだよ〜」

 

間延びした声が聞こえる。まあのほほんさんなんだけど。てか生徒会書記。会長手伝いなさいよ。

 

「私はね〜、いると仕事が増えるからね〜、邪魔にならないようにしてるのだよ〜」

 

「だから自分と同好会作ったんだよな〜」

 

そう言って俺の目の前にお茶漬けを持ってきたのはキリヤんだった。そういえばキリヤんとのほほんさんの同好会ってなんだ?聞いたことないし、活動してるってのも聞かない。

 

「食欲なくてもちゃんと食っとけよ。明後日は学園祭なんだからな。名人には執事としてキチンと働いてもらわないとな」

 

「そう言うキリヤんさんも執事では?」

 

「自分はホラ、列の最後尾で看板持つ係だから」

 

サボる気満々ですね、とセシリアが呟く。でもキリヤんのことだから看板持ちながら色んな女子に声をかけそうだ。

 

「あんた、ちょっと包帯の量多くなってきたんじゃないの?変に無理して体壊したらみんなからなんて言われるか分からないわよ」

 

「甘いなリンリン。コイツはな……」

 

ふと鈴がキリヤんの包帯を見て心配してきた。しかしキリヤんは怪しげな笑みを浮かべながら右腕の包帯を外していく。まさか……。

 

「ジャジャーン、フェイクでーす。いやまあ包帯の量が多くなるにつれて特訓も少しずつ楽になってさ、もしかしたらって包帯を余計に巻いてみたら今日は楽だったわけよ。お姉様を出し抜くにはこれくらいしないとな!」

 

「ほう、フェイクですか」

 

「そうそう、フェイクフェイク…………ふぇ?」

 

笑い飛ばすキリヤんの背後に虚さんが立っていた。手には缶コーヒーが握られているが、次の瞬間缶はベッコベコに潰れ、中身が溢れ出した。

 

「ハハハ…………もしかして、ノせられちゃった?」

 

「…………貴方にはコンテニューする暇すら与えない」

 

「あばよ、名人!」

 

全力で逃げ出すキリヤん。それを早歩きで追いかける虚さん。なーんか後で『廊下を走るな!』って声が聞こえてきそうだ。

 

「んで、なんの話してたっけ」

 

「一夏、疲れているなら無理に私たちに付き合わなくてもいいぞ。部屋に戻って少しでも寝ておけ」

 

「箒が隣で寝たら、もっと回復するんじゃない?」

 

「な!?こら、鈴!」

 

「冗談よ。でも部屋ぐらいには送って行きなさいよ。途中で倒れたら大変だもの」

 

「それもそうだな。一夏立てるか?」

 

箒に支えられながらなんとか部屋まで歩いていく。なんかみんなに心配させちまったかな…………肉体だけでも早く元気にならないとな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月15日(金)PM08時10分

 

一夏を寝かしつけ、みんなが集まっているというシャルロット部屋へ向かう。

 

その途中だった。

 

「!?キリヤん、大丈夫か!」

 

廊下で倒れているキリヤんを見つけたのは。

 

「ん………ああ、箒か」

 

「もしかして虚さんにやられたのか?だとしても廊下に放置とは」

 

「あ………ああ、そうか。そうだったな………俺追いかけられてたな」

 

何やらキリヤんの様子がおかしい。よく見ると包帯の部分が赤く染まっている。もしかして傷口が開いたのか?何はともあれ早く保健室に連れて行かないと。

 

「立てれるかキリヤん」

 

「ああ、心配ご無用ってね。さあ、振り切らないとな」

 

「待て!フラフラじゃないか!そんな状態で走れるわけないだろう!それにお前包帯が………」

 

包帯の事を指摘しようとした瞬間、私は壁に叩きつけられた。キリヤんが私の胸ぐらを掴んで壁に押し付けたのだ。

 

「心配すんな!!……って言ってんの………自分は大丈夫だから……さ」

 

「キリヤん………」

 

「……………ごめん」

 

キリヤんは手を離すとフラフラした足取りで歩いていく。彼のあまりの迫力に、私はただ見ていることしかできなかった。




一夏もキリヤんもお疲れ気味。そんな時は飯食って風呂入って寝る。それでだいたい回復するはずです。僕は全然回復しないですけど。

次回はちょっと早い気がしますが学園祭です。それと別サイドの話も書けたらなって思ってます。

ではSee you Next game!


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第55話 Festival開始!

学園祭スタート!


9月17日(日)AM11時00分

 

いよいよやってきた。祭りの時間だあああぁぁ!!

と、テンション高めで最初は接客していた。まあ10分ぐらいでいつもの調子に戻ったけど。

 

とにかく学園祭当日になった。一般開放はしてないから開始の花火なんてものはない。それでも生徒の弾けっぷりは異常だったが。

 

「うそ!?1組で織斑くんと九条くんの接客が受けられるの!?」

 

「しかも執事の燕尾服!九条くんいっつもアロハだから、これは見逃せないわ!」

 

「それだけじゃなくてゲームもあるらしいわよ?しかも勝ったら写真を撮ってくれるんだって!ツーショット!」

 

とりわけ1年1組の『ご奉仕喫茶』は盛況で、朝から大忙しだ。こちとら昨日も特訓がキツかったのに。

 

「いらっしゃいませお嬢様!こちらへどうぞ」

 

こんなにも大忙しなのに他のメンツは普通に楽しんでいる。特にメイド服のシャルは楽しそうだ。

ちなみに接客斑は俺、セシリア、シャルにラウラだ。箒は裏に回って料理を作っている。キリヤんはというと、

 

「はいはーい、こちら2時間待ちだよー。2時間待てば名人の接客プラスツーショットが出来ちゃうよ〜」

 

廊下の長蛇の列を整理している。各種クレームにも対応してて、かなり忙しそうだ。それでもキリヤんの奴、自分から雑務係がいいなんて言いやがって。

 

「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」

 

次のお客を案内しようと入り口に向かうと聞き慣れた声が聞こえた。やや乱暴な口調だが、決して彼女は怒っているわけではない。そう、鈴はそんな不器用な子。

 

「ちょっと、何自分一人で納得したような顔してんのよ」

 

「おっと失礼。にしてもチャイナドレス似合ってるな鈴」

 

「クジョキリとは大違いね。アイツあたしを見るなり『パンツ見えてるぜ』なんて言ってくんのよ!」

 

「あ、鈴。パンツ見えてるぞ」

 

「お前もかぁぁ!!」

 

一枚布のスカートタイプで、かなり大胆にスリットが入っている。けしからん!実にけしからんぞ!

そういえば鈴は中華喫茶をやっているらしい。ヤムチャって奴だな…………あれ?これは違うな……そう飲茶(ヤムチャ)ってやつだ。

 

「あれ、お前いつもの髪型じゃないんだな。頭の丸いぼんぼんみたいなのなんだっけ…………シニン?」

 

「シニョンよ!勝手に殺すな!」

 

「そうそう、それそれ。相変わらず似合うな」

 

「そ、そう……まあ、ありがと。そ、それより!早く案内しなさいよ」

 

「あ、ああそうだったな。コホン……それではお嬢様、こちらへどうぞ」

 

鈴を空いているテーブルへと案内する。テーブルだのティーセットの高級感が漂ってくる。鈴はこういうのが苦手なのか、2回ほど座り直す。その度に見えちゃう。何がとは言わない。

ちなみに、メニューをお嬢様に持たせるわけにはいかないので、こうして俺やメイドが手に持ってお見せしている。

 

「この『執事にご褒美セット』って何よ?」

 

「…………お嬢様、当店オススメのケーキセットはいかがですか?」

 

「おいこら、誤魔化そうとしたでしょ」

 

「とんでもございません」

 

「…………その喋りやめて、気持ち悪い」

 

「…………こっちは仕事なんだぞ。少しは我慢してくれ」

 

「仕事ならメニューの説明ぐらいしなさいよ。結局コレなんなのよ」

 

『執事にご褒美セット』。文字通りのメニューである。執事にご褒美。つまり俺かキリヤんにご褒美が与えられるという、訳の分からないメニューだ。考えたの誰だおい!

 

説明を聞いた鈴は呆れながら他のメニューを見る。すると分かりやすい二度見をした。何か気になるものがあったのか?

 

「ねえ………なんで喫茶店にラーメンとかうどんとか市販のお菓子を置いてるのよ!」

 

「あー、多分それ考えるのが面倒になったから適当に書いたやつだ。食うか?」

 

「なんで喫茶店でラーメンなのよ!いや置いてるとこもあるかもしれないけどさ!」

 

「因みにラーメンは2回、うどんは6回、市販のお菓子は12回の注文が入ってる」

 

「いやお菓子結構人気か!?…………もう、普通のコーヒーでいいわ」

 

ツッコミに疲れたのかコーヒーだけを頼む鈴。そんな鈴にサービスでもしてやりたいんだが、生憎当店はそのようなサービスを行うことは禁止されている。すまんな鈴。

 

「一夏!お客様の案内よろしく!」

 

「はーい。まったく……人気者は辛いぜ…」

 

特に人気があるわけでもないが呟いてみる。いや人気が欲しいわけでもないけど。

 

 

9月17日(日)AM11時50分

 

「そうそう、一夏くん。私、もうしばらくお手伝いするから、校内見てきなさい」

 

「さも当然の如くクラスにいるんですね楯無さん」

 

裏手に回って水分補給をしていた時に、楯無さんが話しかけてくる。いやホントなんでこの人いるの?貴女二年生でしょ?

 

「おねーさんの優しいサービスよ。ありがたく受け取っときなさい」

 

「でも俺がいなくなるとクラスの奴らからお叱りが……」

 

「私が適当に誤魔化すから大丈夫よ。ほら行った行った」

 

確かに楯無さん人気ありそうだもんな……普段の人との接し方で大体予想できる。楯無さんが代わりならお客さんも怒らないだろう。多分。

だったら楯無さんの厚意に甘えるとしよう。

 

「それじゃあお願いできますか?なるべく早く戻りますから」

 

「ゆっくりでいいのよ。じゃ、行ってらっしゃい」

 

執事服の上着を脱いで、廊下に出る。相変わらずの長蛇の列だ。そういえばキリヤん20分前にフラッと出て行ったな。同好会の手伝いとか言ってたけど………後で行ってみるか。

 

「少し宜しいですか?」

 

「はい?」

 

ふと、声をかけられた。それも階段の踊り場で。声の主はスーツの女性だった。うーん、なんとなく未来が見えるぞ……。

 

「失礼しました。私、こういうものです」

 

「………IS装備開発企業『みつるぎ』……もしかしなくても白式の装備提供ですか?巻紙礼子さん?」

 

「はい。織斑さんにぜひ我が社の装備を使っていただけないかと思いまして」

 

このような企業の人と会うのは初めてじゃない。一学期や夏休みの数日をこのような人と過ごしたことがある。

世界で唯一ISを使える男である俺の白式に装備を使ってもらえるというのは想像以上に広告効果があるらしい。

 

まあ、白式が嫌がるからどうしようもないんだけどな!

 

俺の白式は《雪片弐型》以外の格闘武器を好まない。盾も嫌がるし射撃武器なんて以ての外。けれども一度シャルに貸してもらって射撃武器を使ったもんだから、その結果射撃、格闘、防御をこなす《雪羅》が生み出された。

 

「すいませんけど、こういうのはちょっと……とりあえず学園側に許可を取ってからお願いします」

 

「そう言わずに!」

 

巻紙さんは見た目とは裏腹にズイズイと迫ってくる。腕を掴まれ、その場を後にすることができなくなってしまった。

 

「こちらの追加装甲や補助スラスターなどいかがでしょう?今なら脚部ブレードも付い「はーーーい、悪いけどそこまでだよ〜」

 

俺と巻紙さんの間に割って入ってきたのはキリヤんだった。いつものアロハと違うその姿は新鮮だ。まあ夏休みのバイトの時に見てるけど。

 

「名人にそういった商売は意味ないよ?名人に付けてやるべきなのは、お湯沸かし器とか黒歴史抹消装置とかだぜ?なんなら自爆装置なんかもいいかもな」

 

「え、いやそういったものは」

 

「無いなら帰るんだな。第一せっかくの学園祭で商売の話しされたんじゃコイツも気分がノらないってもんだぜ?ほら、お帰りは彼方でございます。行くぞ名人」

 

「あ、おい!」

 

キリヤんの後を追いかける。踊り場には巻紙さんが一人取り残されていた。

 

 

「しっかりしろよ名人。ああいうのには気をつけろって先生から言われてるだろ?」

 

「お前みたいにペラペラ喋れないんだよ………いやホント助かった」

 

廊下を歩きながら礼を言う。いつまでたっても企業の人っていうのは慣れないものだ。

 

「自分が来てなかったどうなってたことやら。上手く断れなくて無理矢理商品買わされて織斑センセーに怒鳴られるとこまで見えたぜ」

 

「ごもっともです…………はあ、なんか変に緊張したから腹減ったな」

 

「12時過ぎてるからな……そういやお前、誰か招待してるんじゃないのか?」

 

「え?……うわぁ!!忘れてたヤバイ!スマンキリヤん!このお礼は後で必ず!」

 

時計を確認しながらその場を後にする。時刻は12時13分。待ち合わせから13分も過ぎてる。しかもここから待ち合わせ場所の正面玄関に行くには最低でも4、5分はかかる。あいつ怒ってなきゃいいけど。

 

 

「お、いたいた。おーい、弾!」

 

「おー!一夏久しぶりだな!」

 

待ち合わせ相手は友達の五反田弾。この学園祭、一般開放はしてないが一人だけ生徒の紹介でこの学園祭に参加できるのだ。俺はそのチケットを散々行きたい行きたいと言うこの男に渡したのだ。

 

「あ、そういやお前に借りてたエロ本。アレお前に返したっけ?」

 

「え?あ、あーーーうん、返してもらったよ。うん夏休みに」

 

「そうだっけ?いや、返そうと思って探してたんだけど見つからなくてさ。そっか返してたか」

 

うん、返してもらったよ。黄色いヘルメットを被ったライダースーツの女に。

にしてもこんなエロ本だのなんだのという会話も久しぶりだ。最近はキリヤんとも話せてないし、楯無さんが部屋にいるせいで色々と溜まってきてる。ウン、ツライ。

 

「そんなことより!早く案内してくれよ〜。俺楽しみで1時間しか寝てないんだぜ?」

 

「そんなことって……話ふったのお前だろうが。それに遠足前の幼稚園児か。幼稚園児でももっと寝るわ…………まあ、取り敢えず鈴のとこでも行くか?あいつ驚くぞ」

 

「いいなそれ!でも……んー、いや、すぐじゃなくていいから、色々見て回りてえ」

 

確かに俺も全然見て回れてない。丁度いいし二人で回ろう。ホントは箒と回りたかったけど……そういや弾に彼女ができたって言ってなかったな……まあ、後でいいか。

 

とりあえず手近なところにあった美術部のクラスに入ってみる。

 

「芸術は爆発なんだぜ!!」

 

すぐに出る。さて次に回るか。

 

「ちょ、ちょっと待って織斑くん!うちの部長がごめんね!いきなりでゴメンね!謝るからすぐに帰ろうとしないで!」

 

「…………ここ、何やってるんですか?」

 

「ここは爆弾解体ゲームをやってるよ。景品もあるからやってみない?」

 

「やっていかないと!お前の首に時限爆弾をくっつけてやるぜ!」

 

「部長は黙ってて!さあさあ、どうぞどうぞ。男友達も一緒にね!」

 

暴走する部長を制御しながら部員が案内してくれる。てかあの部長でよく部活成り立つな。

爆弾を手渡されゲームが開始される。せっかくだから弾に教えてみるか。

 

「弾隊員!これより爆弾の解体作業に入る!まずは俺のやることをよーく見てるんだぞ!」

 

「了解であります一夏隊長!…………てかこのノリ懐かしいなオイ」

 

「あの時は鈴もいたからな………まずはセンサー類を無効化っと」

 

配線を調べ、隙間からニッパーを差し込む。そして衝撃センサーへと通じてる導線を一度に切る。よし、ジャンパー線が無くても大丈夫なやつだな。

隣で弾がアホみたいな顔で見ているが無視しよう。

 

「おお、流石織斑くん!早くも最終フェイズに突入ね!」

 

「さ、最終フェイズ?なんだそれ?」

 

「簡単に言えば映画でよくある『赤か青か』ってやつ」

 

ゲームのこれも最後は赤と青の二本のコードになり、どっちかを切れば解体完了、間違えれば俺たちは死んでしまう。

 

「弾隊員、好きな方を切りたまえ」

 

「了解であります!………え、ホントに切っていいの?」

 

「切ってよろしいのです。ほら早く切らないと部長さんに首に時限爆弾つけられるぞ」

 

「うおおっ!?もう後ろにスタンバってる!?」

 

部長さんが弾の後ろで待ち構えている。すぐに部員さんに取り押さえられたが。

弾隊員はまだ迷っている。赤か青か。マイティフォームかドラゴンフォームか。紅椿かブルー・ティアーズか。ラビットかドラゴンか。うどんかラーメンか。決めるのはお前だぞ!

 

「うおおおっ!コッチだぁぁ!!」

 

パチン、と青のコードを切る。ビーーーッとアラームが鳴った。

 

失敗である。残念だね。

 

「いやなんかそんな3人一斉に『コイツ何やってんの』みたいな目で見るなよ!なんか悲しくなるだろぉ!」

 

ギャーギャー騒ぐ弾を置いて参加賞の飴玉をもらい部屋を後にする。黄金のリンゴ味だった。美味である。

 

 

「あー、なんか疲れたな……どっかで飲み物飲もうぜ」

 

「あれから結構回ったな……よし、鈴のとこ行こうぜ」

 

時刻は12時52分。何だかんだ1時間ぐらい休憩をもらってる。連絡ないし大丈夫だろうけど、なんか心配だな。

俺たちは階段を上って2組の教室へと入った。チラッと1組を見たが落ち着いた様子だった。これなら大丈夫だな。

 

「いらっしゃいま………帰れ」

 

「いきなり暴言吐きましたよこのツインテ!どうなってんの!」

 

「どうして弾がここにいるのよ!」

 

「第一チャイナドレス似合わねー。もっとこう大人の女性になってからだな」

 

弾の言葉にイライラが限界値に到達したのか、鈴の投げたお盆は弾の顔面に直撃した。スッゲー痛そう。人ごとみたい?そりゃ人ごとだもん。

 

「なんだよいってーな!あーあ、さっき会った可愛い人と大違いだ」

 

「誰よそれ」

 

「虚さん。コイツ緊張して噛みまくってんの」

 

「うるせえ!」

 

ワイワイと騒ぐ中学時代トリオ。いかん、他のお客さんがめっちゃ見てる。

とりあえず席に着いてメニューを開く。

 

「はい、水」

 

「おわっ!?お前もっと静かに置けよ」

 

「顔にかけられてないだけありがたいと思いなさい」

 

「相変わらず凶暴だなお前は!」

 

「うっさいわね。それ以上喋ったら一本ずつ歯をへし折る」

 

デンジャラスである。でもまあこれでも中学時代に比べれば落ち着いた方だ。昔は3人で厨二病拗らせてたもんなぁ。

 

『白き閃光!イチナツ!』

 

『赤き剛腕!ダ・ン!』

 

『龍の拳!スズネ!』

 

うん、バカだわ。でも何だかんだ楽しかったよな…………なんかあの時に戻りたくなってきた………もし、あの時に戻って、俺がISに触らなかったらどうなってたんだろう。みんなに出会ってないんだろうか。

 

「おい……おーい」

 

「え?どうした弾」

 

「なにボケッとしてんだ?携帯なってんぞ?」

 

「あ、ああ悪い」

 

確かにボーっとしてたかも。携帯の音に気づかないなんて。相手はシャルだった。何かあったのか?

 

「はいはい、どうした?」

 

『あ、一夏?他の人が休憩入るからそろそろ戻ってきてほしいんだけど』

 

「お、了解。今2組だからすぐに戻るよ………ってわけで、俺戻るから。弾も暇だったら寄ってってくれよ」

 

「「おー、キリキリ働けー」」

 

二人して同じこと言うなよ………そして、そんなこんなで学園祭前半が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時思ってもみなかった。まさかこの学園祭であのゲームが始まることになるなんて。




特に進展のないお話です。皆さんは学園祭どんな思い出がありますか?私は部室で友達とたこ焼き焼いてサボってました。

次回はバトルまで書きたい!多分書けるはず!

ではSee you Next game!


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第56話 Cinderellaは落ち着けない?

ジオウ面白いですね。私はゲイツが好きですね。顔の文字が平仮名だから『ゆゆゆ』とか『わすゆ』って書いても違和感なさそう。

今回は演劇のお話です!


9月17日(日)PM02時00分

 

「じゃじゃーん!楯無おねーさんの登場です!」

 

「いなくなったと思ったら、またいきなり現れる。正直心臓に悪いんでやめてください!」

 

休憩を終え、教室に戻ってきた時には楯無さんはいなかった。そして1時間経過した今現在戻ってきた。任せておいてと言っておきながら職場放棄。いや生徒会の皆さん!?大丈夫なんですかこんな人が会長で!

 

「まあまあそう怒らないで。私も出し物があるんだからそっちに行ってたのよ……で、だよ一夏くん。君たちのお手伝いしてあげたんだから、生徒会の出し物にも協力してよ」

 

「出し物?生徒会も何かするんですか?」

 

「そりゃ、生徒会にも学園祭を楽しむ権利はあるもの。出し物ぐらいするわよ。それで出し物なんだけど、演劇をするの。観客参加型演劇」

 

既に嫌な予感がする。生徒会の権限とかで無茶苦茶な演劇になるはずだ。そしてそれによって胃に穴が開くようなおもいをする虚さん。だいたいここまで想像できたぞ。

 

「まあ、裏方なら手伝えますよ。でも少しだけですよ。こっちも売り上げとかあるんですから」

 

「大丈夫よ、すぐに終わるわ。それと仲良しの女の子達も連れてきてね。あの子達も必要になるから」

 

バッ、と開いた扇子には箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、のほほんさんの名前があった。てかよく書いたなそれ。なんかもう最後の方とかイライラしてグチャグチャになってるし。

 

「ちなみに、演目ってなんですか?」

 

「ふふん………シンデレラよ」

 

 

9月17日(日)PM02時13分

 

「まさかキリヤんまで巻き込まれてるなんてな」

 

「自分のとこの売り上げがあるんだけどな〜。ほぼ強制だよ」

 

第四アリーナの更衣室では俺とキリヤんが着替えている。服装は王子の格好だ。あの人のことだから面白半分でシンデレラのドレスでも渡してくるかと思った。

 

「まったく……学園祭ぐらい静かに過ごせると思ったのに……」

 

「あ、そういえばさ。この学園祭ってなんかキリヤん景品扱いになってないか?」

 

「嫌なこと思い出させてくれるねぇ。まあ色々あるんだよ」

 

キリヤんは不機嫌そうな顔をしながら説明してくれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ほら自分と本音って同好会開いてるんだよ。顧問に木綿季さんを配置してな。でも活動を全然してなかったんだよ。そしたら生徒会から今後成果を上げなければ同好会をやめてもらい、生徒会に入ってもらうってな。

 

まあそれも無視してずっと活動してたんだよ。そんでそのまま夏休み。注意勧告をすっかり忘れて夏休みを満喫してたんだ。

そして夏休みの最後の方……8月の23日だったかな。たまたま木綿季さんに会ったんだ。実家に帰る途中だけど、遅れそうだから乗せてってくれってな。それから家の近くまで送った。

 

その後だよ。あの人と出会ったの。

 

『九条桐也くんね』

 

『あんたは?』

 

『私は布仏虚。本音の姉です。そしてIS学園の生徒会でもあります』

 

『ああ、本音のお姉さん。初めましてですね。それで自分に何か用で?』

 

『単刀直入に。あなたは我々生徒会の勧告を無視し、活動をするわけでもないのに同好会の為だからと空き部屋を占領、挙げ句の果てには本音の成績を落とした。これらの他にも罪を重ねています』

 

『………耳がいたいね。まさかそれを伝えるために後ろつけてきたの?』

 

『へえ、やはり周囲をよく観察しているのね。それに関しては見事だわ。それと私がここに来たのは勧告通り二学期に貴方をイベントの景品にするということを伝えるため』

 

『はあ?何それ聞いてないんだけど!』

 

『ちゃんと書いてあります。『尚、勧告を無視し活動を続けるならば、貴方を二学期のイベントの景品にするから覚悟してね♡』と』

 

『クッソマジかよ!本音に全部任せるんじゃなかった!しかも注意勧告なのにハートつけてやがる!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ていうわけ」

 

「うん、なんかお前も悪いんじゃね?」

 

「お前に言われたらもう人生終わりだな」

 

結局のところ、同好会の活動を全然してこなかったから『各部対抗九条桐也争奪戦』なんてものが始まってしまったのだ。

 

「2人とも、ちゃんと着替えたー?」

 

「開けながら言わないでください楯無さん!俺もキリヤんも着替えてますよ」

 

「うんうん、似合ってるじゃない。あ、それとコレ」

 

「やっぱ王冠あるよな……自分こういうの苦手なんだけど」

 

「そう言わないの。さて、そろそろ始まるわよ」

 

一度覗いたが、第四アリーナいっぱいに作られたセットはかなり豪華だった。観客はもちろん満席で、時折聞こえる歓声は更衣室まで聞こえてくる。

 

「そういえば、脚本とか台本とか一度も見てないんですけど」

 

「大丈夫、基本的にこっちからアナウンスするから、その通りに話を進めてくれればいいわ。あ、勿論セリフはアドリブでお願いね」

 

大丈夫なのか?いや大丈夫じゃないだろコレ。でもまあなんとかなるだろキリヤんいるし。不安を抱きながら、俺たちは舞台袖に移動する。

 

「さあ、幕開けよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

むかしむかしあるところに、シンデレラという6人の少女がいました。シンデレラ・シノノノ、シンデレラ・オルコット、シンデレラ・ファン、シンデレラ・デュノア、シンデレラ・ボーデヴィッヒ、シンデレラ・ノホトケ

 

彼女たちはとても仲良く、共に助け合いながら生きてきました。

 

そう、この血と硝煙が漂う戦場で!

 

幾多の舞踏会…否、武闘会をくぐり抜け!群がる敵兵をなぎ倒し!灰燼を纏うことさえいとわぬ地上最強の兵士たち!まさに灰被り姫(シンデレラ)

 

そして次のターゲットはここ、アイエス城の王子、イチカ王。そしてたまたま借りてたエロ本を返しにきてたレーザー城の王子、キリヤ王。

なんと王子の冠には隣国の軍事機密が隠されているのだ!

 

今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる…………。

 

「もらったぁぁぁ!」

 

「のわっ!?」

 

いきなりの叫び声と共に現れたのは、白地に銀のあしらいが美しいシンデレラ・ドレスに身を纏ったファンだった。

 

「よこしなさいよ!」

 

反射的によけたイチカ王をキッと睨みつけ、すぐさま中国の手裏剣こと飛刀を投げる。

あ、おもちゃだから安心してね。

 

「アホか!死んだらどうすんだよ!」

 

「だったらその冠を置いていきなさい!軍事機密をいただくのはアタシよ!」

 

「くそっ!こんなとこでやられてたまるか!」

 

イチカ王はテーブルの上のティーセットをひっくり返し、そのトレーで飛刀を凌ぐ。

しかしそれはファンの飛び蹴りで吹っ飛んでしまう。いやん鈴ちゃんパンツ見えちゃうわよ!

 

「って、ご丁寧にガラスの靴まで履いてんのか」

 

「アンタをぶっ飛ばす用の特別性よ。それと、アンタの相手はアタシだけじゃないわよ」

 

ファンが指を鳴らすと……壁をぶち壊して2人のシンデレラが現れたじゃないですか!ちょっとやりすぎよ!これ来年も使おうと思ってたのに!

 

「僕たちもいるよ」

 

「覚悟してくださいまし、一夏さ……イチカ王!」

 

「くそ………こうなったら、逃げる!」

 

ああ、イチカ王よ!逃げてしまうとは情けない。ていうか変なところに逃げてセット壊さないでよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、こちらは場面変わりましてキリヤ王が3人のシンデレラと交戦中。シノノノ、ボーデヴィッヒ、本音……ノホホンの3人のシンデレラと刃を交えています。

 

「みんな、がんばれ〜」

 

「アンタと決着つけたいと思ってたんだよ隊長さん!」

 

「私もだクジョー!そろそろどっちが強いか白黒はっきりつけようじゃないか」

 

「私を忘れるなよキリヤん!」

 

…………なるほど、これはコチラも臨機応変に対応しろと。え?私じゃ無理?いや会長しっかりしてくだ………コホン!ええー………3人とも演技に戻ってください。本気で戦わないでください。セットを壊さないでください!本音は少し離れなさい!

 

『ジョーカー!』

 

『爆走バイク!』

 

「こい!紅椿!!」

 

「本気でいくぞ。変身!」

 

「見せてやるよ、自分の新しい変身……零速を」

 

ああ…………もうメチャクチャよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

劇はメチャクチャになっている。最初こそそれなりに頑張ったが、結局みんな劇には向いてないらしく、セシリアはすっ転んで途中退場、鈴はドレスが破けて途中退場、シャルは途中で顔が真っ赤になって途中退場。

 

因みにこのセット、第四アリーナの中心に大きな城が建てられており、西側のステージを俺が、東側のステージをキリヤんが担当している。東側は途中から爆発音とか凄かったけど大丈夫かな?

 

そして俺はというと、

 

「さあ!ただいまからフリーエントリー組の参加です!王子の王冠目指して頑張ってね!」

 

地響きと共に数十人以上のシンデレラがなだれ込んできた。俺はそれから必死に逃げていた。

 

「ああ、もう誰でもいいから助けてくれぇ!」

 

「こちらへ」

 

「え?」

 

俺は足を引っ張られ、セットの上から転げ落ちた。

 

 

「はぁ……た、助かりました」

 

俺は誘導されるまま、セットの下をくぐり抜けて更衣室へとやってきた。俺たちが使った部屋だから制服も揃ってる。

 

「にしてもどうして巻紙さんがここに?」

 

暗くて誰が俺をここまで連れてきたのか分からなかったが、改めてその人を見ると、今日名刺をくれた巻紙さんだった。

 

「はい。この機会に白式をいただきたいと思いまして」

 

「……は?」

 

「いいからとっととよこしやがれよ、ガキが。マジでムカつくぜ」

 

次の瞬間、思いっきり腹を蹴られた。その衝撃でロッカーに叩きつけられる。

 

「……!ッてめぇ…一体……」

 

「あぁ?私か?企業の人間になりすました謎の美女だよ。おら、嬉しいか?」

 

「悪いけど全然嬉しくないし、箒の方が可愛い。それと、1発は1発だぜ」

 

ドラゴンフォームの力を解放し、一瞬で間合いを詰め、タイタンフォームの力で殴り飛ばす。正直女性の顔を殴るのは嫌なんだが、コイツは別だ。本能でわかる。コイツは敵だ。

 

「があっ……このクソガキッ!その首をねじ切ってやる!白式を貰うのはその後だ!」

 

スーツを引き裂いて、女の背後から鋭利な爪が飛び出す。まるで蜘蛛の脚だな。しかもご丁寧に銃口付き。

 

「なんなんだ、アンタは?」

 

「ああん?知らねーのかよ、悪の組織の1人だっつーの!」

 

「初対面だってのに知るわけねーだろバカかお前!」

 

「なんだとクソガキ!秘密結社『亡国機業(ファントム・タスク)』が一人、オータム様って言えばわかるかぁ!?」

 

「分かるわけねえだろ。それに秘密結社とかいいながらベラベラよく動く口だぜ。あんたセールスマンの方が似合ってるんじゃないか?勿論そのバカっぽい喋り方を直したらの話だけどな」

 

「このクソガキ………昼間の別のガキを思い出しちまった……ッ!」

 

オータムは完全なIS展開状態になると、同時に装甲脚の銃口から実弾射撃を行ってくる。

 

それでも俺は避けない。オータムは仕留めたとか思ってんだろうなぁ。

銃弾は突如現れた3人の戦士によって全て落とされた。

 

「中々の煽りだったぞ名人」

 

「やはり侵入していましたねお嬢様」

 

「うーん……せっかくの学園祭なのに、結局変身しなくちゃいけないのね」

 

「俺が避けなかったは、これが作戦だから。アンタを誘き出すためのな!」

 

虚さんが変身する仮面ライダーエグゼイド、アクションゲーマーLv2。

楯無さんが変身する仮面ライダーブレイブ、クエストゲーマーLv2。

そしてキリヤんが変身する仮面ライダーレーザー………だよな?

その姿は俺の見たことのあるレーザーとは異なっていた。

 

「名人は初めてか?コイツが仮面ライダーレーザーターボ。バイクゲーマーLv0だ」

 

アクションゲーマーと同じボディを持つレーザー。そいつの声は間違いなくキリヤんだ。

 

「これより、学園祭からオータムを切除するわ」

 

「自分、負ける気ないんで」

 

「さあ、ノーコンテニューでクリアです!」




遂に登場!仮面ライダーレーザーターボ!そして亡国機業も本格的に動き始めます。最近未確認生命体全然出してないなぁ。

次回、オータム死す!

ではSee you Next game!


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第57話 最速のZero速

今回はレーザー、エグゼイド、ブレイブvsオータム!


9月17日(日)PM02時30分

 

「もう、どこ行ったのよ社長は」

 

演劇が行われているまさにその時、更式木綿季は檀黎斗を探していた。もとよりフラッと消える癖がある黎斗を見つけるのは木綿季にとってそう難しいことではなかった。しかも今は演劇に人が向かっており全体的に人を探すには好都合な状況だった。

 

しかし黎斗はどこにもいなかった。

 

「そんなに走ってどこに行くんだ?」

 

彼女を呼び止めたのは花家タイガ。購買部で買った焼きそばを食べながら木綿季の元へ近づいてくる。

 

「社長を探してるんです。迷子にはならないでくださいねって言ったのに」

 

「どうせゲーム開発部とかにいるんじゃないのか?」

 

「そこは一番最初に行きました。でも社長は来てないって」

 

頭に考えを巡らせる。黎斗が行きそうな場所。しかし考えても、二人の頭の中にはゲームセンターという答えしか出てこなかった。

 

「まあ、いいや。タイガ先生一緒に探してください」

 

「はあ?なんで俺が………いや、アイツを捕まえて新しいガシャットをもらうチャンスか…」

 

「決まり!早く行きますよ!」

 

こうして二人で黎斗を探すこととなる。そして肝心の黎斗は……。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『敵ですか?』

 

俺がそれを聞いたのは学園祭前日だった。なんでも敵がまぎれ込む可能性があるらしい。

そして楯無さんが続けて言う。

 

『一夏くんには囮になってもらいたいの。敵を誘き出すための』

 

『………一応聞きますけど拒否権は?』

 

『あら、断ってもいいのよ?その時は私がするだけだし』

 

淡々と答える。流石と言うべきか。でもそれならなんで俺?

 

『ほら、一夏くんクウガだから、他の人より頑丈でしょ?』

 

『………分かりました。やりますよ囮役。でも条件があります』

 

『何かしら?』

 

『危なくなったら助けてくださいよ』

 

『勿論、全力で助けるわ。だって君達生徒の長なんだから』

 

 

9月17日(日)PM02時55分

 

そんなことを平気で言って、そして今助けに来てくれている。楯無さんイケメンかよ!

 

『ステージセレクト!』

 

エグゼイドがキメワザスロットのボタンを押す。するとさっきまで更衣室だった部屋が見たことのない荒野へと姿を変えた。

なるほど、場所を選べるのか。確かにステージセレクトだ。

 

「さあて、どう仕留めてやろうか」『ガシャコンスパロー!』

 

「彼女には聞かなければいけないことが山ほどあります。くれぐれもやり過ぎないように」『ガシャコンブレイカー!』

 

「それじゃあ、そろそろ始めましょうか」『ガシャコンソード!』

 

3人がそれぞれの武器を構える。それと同時にオータムも戦闘態勢に入る。仮面ライダー対IS。正直どうなるか分からない。確かに以前ラウラとキリヤんが戦ったが、アレは決着つかずだ。

 

だが今回は未知の機体に3人の仮面ライダー。レーザーのあの姿の実力もわからないし、エグゼイドとブレイブ、というより虚さんと楯無さんの本当の実力が底知れない。いやまあ俺より強いのは確実だろうけど。

 

「名人は下がってな。ここは自分達だけでやる」

 

「たった3人でこのオータム様のアラクネを相手するってのか?そこのガキを加えたほうが勝率は上がると思うぜ?」

 

「いいえ、織斑君を加えた場合こちらの勝率は100%となります。ですので3人で相手をするのですよ」

 

「ハッキリ言うとね、貴女に少しでもチャンスをあげようと思うのよ。大人しく投降するチャンスをね」

 

「ハッ!言うじゃねえかぁ!このクソガキどもガァ!」

 

アラクネの脚から実弾が放たれる。連射制度は鈴の衝撃砲よりも上だ。普通のISだと交わすのは難しい。訓練機ならまず撃ち落とされる。

 

しかしこの3人の仮面ライダーはそれを三方向へ散らばることで全て避ける。レーザーとエグゼイドは左右に、ブレイブは上空へジャンプする事で攻撃を躱した。

 

「空中じゃ身動き取れねぇだろ!」

 

アラクネの砲門が全てブレイブへと向けられる。そして実弾がブレイブ目掛けて放たれる。

 

「あら、私が専用機持ちだって知らないのかしら?」

 

ブレイブが左手を前に向ける。そして展開される水の障壁。放たれた実弾は全て水の壁に突き刺さっていき、ブレイブ本人に到達することはなかった。

 

「そんな雑な攻撃じゃ、この水は破れないわよ」

 

「ただの水じゃねぇな!?」

 

「正解。この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンによって制御しているの。そして正解した貴女にプレゼント」

 

ブレイブが指を鳴らす。それと同時にオータムが吹っ飛ばされる。レーザーとエグゼイドに同時に蹴られたのだ。吹っ飛ばされたアラクネがすぐに体勢を整える………よりも早くレーザーとエグゼイドはその場を駆け出した。ガシャコンスパローの鎌モードとガシャコンブレイカーのブレードモードでアラクネの装甲に傷をつけていく。

 

「そら、もういっちょ!」

 

「そこです」

 

レーザーが鎌をアラクネの脚をに引っ掛けそのまま一本引きちぎる。

エグゼイドはガシャコンブレイカーをハンマーモードへと切り替え、アラクネの脚を叩き折る。

 

「なっ!?アラクネの脚を!」

 

「あんた、自分達ナメすぎ」

 

「ノーコンテニューでクリアすると言ったはずですが?」

 

「クソッタレがあぁ!!」

 

辺り一面を乱射し始めるオータム。二人ともすぐに距離を取り、レーザーはガシャコンスパロー弓モードでオータムを攻撃する。そしてエグゼイドは、

 

「迷惑な攻撃ですね。一撃で沈めます」

 

『ゲキトツロボッツ!』

 

赤いガシャットを起動させる。背景に現れたタイトルは『ゲキトツロボッツ』。そして現れたのは赤いロボット。間違いなくロボットゲーマだ。

 

「大・大・大変身!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティ・マイティアクションX!!』

『アガッチャ!ぶっ飛ばせ!突撃!ゲキトツパンチ!ゲキトツロボッツ!!』

 

ロボットゲーマがエグゼイドと合体する。赤い装甲を身にまとい、左腕には巨大なロボットパンチが装着されている。そうだ、狼野郎と戦った時もあの姿だった。

 

「迫ってくるやつは全て撃ち落としなさい」

『ゲキトツ!クリティカルストライク!!』

 

「無茶言うぜまったく」

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

それでもキメワザで全て撃ち落とす。流石自称遠距離型だな。そして出来た隙間からエグゼイドがロケットパンチを発射する。それは見事にオータムのボディに直撃し、そのまま吹っ飛ばした。

 

「虚ちゃん!追撃!」

 

「はい!」『マイティ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ブレイブが指示するよりも先に駆け出すエグゼイド。そしてオータムを吹っ飛ばしているロケットパンチに更にハンマーを叩きつける。

 

つまりだ。元々のロケットパンチにハンマーの叩きつけの力が加わるのだ。威力マシマシだ。

 

「桐也くん!トドメ、行くわよ!」

 

「りょーかい。んじゃトドメ行きますか!」

 

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「はあああっ!!」

 

レーザーは加速してオータムを追い越し、吹っ飛んできたオータムに回し蹴りを叩き込む。

 

「せいっ!!」

 

ブレイブは氷の滑り台を作り、その上を滑りながらオータムとすれ違いざまにガシャコンブレードを叩き込む。

 

因みにこの二つの攻撃。叩き込まれたのは同時である。

 

「ぐああっ!?」

 

きりもみ回転しながら吹っ飛んでいくオータム。アラクネからは火花が散りコアが露出してしまっている。もうこれ以上は無理だろう。

完勝。この3人の仮面ライダーにはその言葉がピッタリである。

 

「さあ、大人しく投降しなさい」

 

オータムの前に3人の仮面ライダーが立ちはだかる。もう逃げることはできない。

 

「ざけんな………テメェらに捕まるぐらいなら……」

 

カチッと言う音が聞こえる。そしてアラクネから光が溢れはじめる。

 

「死んだ方がマシだ」

 

「みんな伏せて!!」

 

次の瞬間、強烈な光を放ちながらアラクネが大爆発し

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE・・・RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

た。楯無さんが咄嗟に水の障壁で守ってくれなかったらヤバかった。爆発跡を見るとオータムの姿はなかった。一緒に爆発したのか、それとも寸前で逃げたのか、俺には分からなかった。

 

「クソッタレが……」

 

「最悪ね……」

 

「でも、こうなることは予測は出来たはず。なのに油断した。これは私たちの負けね」

 

3人は変身を解除する。それと同時に周りの風景が元の更衣室に戻る。

 

「………とりあえず戻りませんか。みんな心配してると思いますよ」

 

「それも………そうね。反省会は後にしましょ」

 

こうして俺たちの対亡国企業は『戦いには勝ったが勝負には負けた』という結果に終わった。

 

そして、アリーナに戻った俺たちを待っていたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより、『仮面ライダークロニクル』のルール説明をする』

 

巨大な空中ディスプレイに映った仮面ライダーが主催する、後に史上最悪のクソゲーと言われる『仮面ライダークロニクル』のルール説明だった。




レーザーターボの初戦がこんな形になってしまい申し訳無い。次から、次から頑張るから!

そして次回からクロニクル編が始まります。まずはルール説明です。

ではSee you Next game!


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第58話 Chronicle起動!

学園祭編ラスト!


9月17日(日)PM05時23分

 

IS学園食堂

 

今現在、食堂には俺とキリヤんしかいない。他の生徒も食堂のおばちゃんもこの場にはいない。まあおばちゃんは時間じゃないから来ていないだけだろうけど、生徒は違う。今学園の生徒は全員部屋で待機ということになっている。俺とキリヤんは部屋から出てるけど。

 

「腹減ったな……勝手になんか作るか?」

 

「怒られるだろ。それに作る気力なんてないよ」

 

キリヤんは長椅子に寝転がり、俺も机に突っ伏している。なんとなく食堂に来てみたらキリヤんがいて、今後のことでも話そうかなと思ったけど、結局このざまだ。

 

第一部屋を抜け出してきてるから、絶対怒られる。

 

「なあキリヤん」

 

「みなまで言うな」

 

キリヤんはずっとこの調子だ。そう、仮面ライダークロニクルのルール説明を仮面ライダークロノスから聞いてから。

 

 

9月17日(日)PM03時15分

 

巨大な空中ディスプレイに表示される『仮面ライダークロニクル』の文字。周りの生徒は動きを止め、ディスプレイに視線を送る。

 

『それより先に仮面ライダークロニクルについて説明しよう。仮面ライダークロニクルとは、プレイヤー自らが仮面ライダーとなって人類の敵、バグスターを倒すゲームだ。全てのバグスターを倒し、全てのガシャットロフィーを集めてラスボスを倒せばゲームクリアだ』

 

淡々と作品紹介をする仮面ライダー。にしてもあの顔、エグゼイドに似ている。となるとあれもガシャットを使って変身しているのか?

 

『そういえば私の自己紹介がまだだったな。私は君たちが目指すべき存在、仮面ライダークロノス。ラスボスを倒すことができる唯一の存在』

 

「クロノス?ハッ、神にでもなったつもりかよ」

 

キリヤんが呆れ気味に言い放つ。クロノスと言えば時の神だろうか?だとすると時間を操るぐらいはしそうだな。

 

『さて、気を取り直してルール説明をしよう。ルールその1。ゲームに参加するには『仮面ライダークロニクルガシャット』を使用しなければならない。それ以外に参加条件はない。ガシャットがあれば老若男女誰でもプレイすることができる。それと、各プレイヤーにつき、クロニクルガシャットは一つまでだ』

 

当然と言えば当然のルール。ソフトがなきゃ遊ぶことは出来ない。

 

『ルールその2。バグスターは1日1回、毎週5回しか現れない。出てくるバグスターは下級、中級、上級の3種類。中級バグスターに挑むには下級バグスターを全て倒し、ガシャットロフィーを集めなくてはならない。上級も同じだ』

 

より強力な敵と戦うにはまず自分にあった敵を倒す必要がある。これも当然だ。レベル1でいきなりレベル100に挑んでも負けるのは目に見えている。まあ立ち回り次第でなんとかしそうなのが隣に3人いるけど。

 

『ルールその3。ゲーム以外でのクロニクルガシャットの使用は禁止されている。もし私的利用が確認できたなら、それなりのペナルティがあるので注意するように』

 

確かに、ガシャットがあれば誰でも仮面ライダーに変身できるのだ。そこら辺の人が仮面ライダーに変身して銀行強盗だの暴動だのを起こされたら、警察なんかじゃ対応できない。それこそISの出番かもしれない。いや下手すりゃキリヤんとか楯無さんの出番になるのか。

 

『私からの説明はここまでだ。詳しいルールはガシャットを起動してから始まるチュートリアルで確認するように』

 

「あとの説明は全部丸投げかよ!神さまが聞いて呆れんなオイ!」

 

キリヤんがヤジを飛ばす。それにつられて他の生徒もヤジを飛ばし始める。なんだか大変なことになってきたぞ。

 

『それでは最後に、みんなで楽しくプレイしよう。私からは以じょ』

 

最後まで言い終わる前にディスプレイにピンク色の剣が突き刺さる。深く突き刺さったディスプレイは完全に壊れている。

あまりにも突然のことで周りは一気に静かになる。そしてみんながピンク色の剣を投げた張本人を見る。そう、布仏虚さんを。

 

「仮面ライダーは…………ゲームであっても、遊びではないんです…」

 

それだけ言うと虚さんはアリーナを後にした。

 

 

IS学園食堂

 

「あんなにキレてる先輩初めて見たぜ。うっかり先輩のパンツ見たとき以上にキレてた」

 

「お前なぁ……んで、仮面ライダークロニクルのことだけど」

 

「こいつはクセェ。クソゲー以下のニオイがプンプンするねぇ。あんなの売れるわけねぇだろ」

 

「でもSNSとか凄いことになってるぞ」

 

話題は全て仮面ライダークロニクルのことで持ちきりだ。どうやらあの放送は全国に放送していたらしい。幸いにも放送はアレで終わりらしく、虚さんのせいで聞き逃した、と言うことはないようだ。

 

「やっぱり興味あるんだなみんな。買う気満々のやつが結構多いぞ」

 

「買う気満々でも、それこそ政府とかがなんとかするんじゃねぇの?製造元を潰しに行くとかさ」

 

「だよなぁ。でも手に入れる奴は1人はいると思うぞ。それこそ裏ルートを使ったりとか」

 

「怖い世の中になったなぁ……」

 

なんて言いながら欠伸をするキリヤん。緊張感のかけらすら感じられない。でもそれだけ余裕があるってことなのかな?だとしたら結構心強いけど。

 

「なあ名人。お前だったらクロニクルガシャット欲しいか?」

 

「え?うーん………欲しくないって言ったら嘘になる」

 

「自分は欲しいな。そんな簡単に変身できるんなら、周りを押しのけてでも手に入れる」

 

「そんなに欲しいのか?」

 

「そりゃあな………人間ってのは常に競争してんだよ。周りより強くなりたい賢くなりたいって。そんでもって人間は楽するのが好きなんだよ。まあ、全人類がそうとは限らないけどな」

 

「つまりクロニクルガシャットは『楽して周りより優位になれる』アイテムってことか」

 

「金さえ払えば誰でも変身できるんだからな。それもお手軽価格で」

 

キリヤんは起き上がると携帯を見せてきた。

携帯には『仮面ライダークロニクルガシャット、購入完了』の文字が見えた。

 

「悪いな名人。ここからしばらくは別行動だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻 生徒会室

 

「う、虚ちゃん?」

 

「?どうかしましたか会長」

 

「もう怒ってない?大丈夫?」

 

「……もう忘れてください。我ながら恥ずかしいのですから」

 

虚ちゃんの機嫌は良くなってるみたいね。だったら話を切り出すチャンスは今しかない。

 

「それじゃあ虚ちゃん。お話しようか」

 

「…………正直に言いますが、私は反対派ですからね」

 

「だよねーー!…………でもね、あの仮面ライダークロニクルが始まろうとしている今だからこそ、この計画は進めなくちゃいけないと思うの」

 

「確かに、未確認生命体と戦うよりはマシかもしれません。ですが」

 

「あの子達はもう、普通の高校生じゃないの。ISという特別な力を手に入れているのよ。あの6人、いいえ7人はこの『インフィニティーズ計画』に必要なのよ」

 

「………お嬢様、7人に言い直したと言うことは」

 

「……ええ、専用機はまだ完成していないけど、あの子は絶対戦力になる」

 

虚ちゃんがため息をつく。当然よね。あの子をもこの戦いに巻き込もうとしている。そんな私を見ればため息ぐらいでる。グーで殴られないだけマシと思おう。

 

「かいちょ〜、おね〜ちゃん、集計終わったよ〜」

 

本音ちゃんがドアを開けて入ってきた。彼女にはこの学園祭で行われた催し物への投票結果を集計してもらっていた。

 

「お疲れ様本音。では会長行きましょう。それとこの話は後ほど」

 

「そうね……それじゃあ、まずは祭りを終わらせましょうか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月17日(日)PM06時00分

 

体育館

 

『それではこれより、投票結果の発表をはじめます………が、時間がありませんので上位3組のみ発表します』

 

かくしてキリヤん争奪戦の結果発表である。私としてはどうでもいい話だ。それよりも一夏の元気がないことが気になる。

 

『第3位。1年1組の『ご奉仕喫茶』!』

 

「なっ!?私たちの喫茶店が3位?何かの間違いではありませんの!?」

 

「残念だね。僕たち頑張ったんだけどなあ〜」

 

「となるとやはり生徒会の劇が上位に食い込んでくるか」

 

「何言ってんのよ。あたしのとこが一位に決まってるじゃない」

 

「それはないですわ」「それはないんじゃないかな?」「よくて4位だろうな」

 

「なによアンタら!寄ってたかって!」

 

鈴がなにやら喚いているが……そっとしておこう。

 

『第2位。生徒会主催の参加型劇『シンデレラ』!』

 

「あれ?生徒会のシンデレラが2位だよ?」

 

「となると」

 

「まさかまさかの鈴さんのクラスが!?」

 

「ふふん、当然よね!お客さんたくさん来たもの!」

 

『第1位。ドーナツ同好会の『ドーナツ販売』!』

 

1位の発表と共に辺りが静まり返った。セシリアも鈴もシャルロットもラウラも口をあんぐり開いている。

そんな中勝利の雄叫びが聞こえた。

 

「よっしゃあ!やったな本音!」

 

「やったねキリヤん!バンザ〜イ!」

 

キリヤんと本音だ。

 

「ってあんたらかい!!」

 

「当然だろ。ドーナツ買うために票を2票ずつ入れてもらったんだ。別に1票しか入れちゃいけないなんて言ってないだろ?」

 

周りは呆れてしまっている。しかしそれと同時に他の部活に取られるぐらいならキリヤんのところが勝ってくれてよかったと思っているのだろう。

 

「へへっ、どーだ!あんたら生徒会に勝ったぞ!これからも同好会は続けるからな!」

 

「続けるからね〜!」

 

『こら本音!貴女は生徒会側でしょう!』

 

虚さん、マイク越しに怒らないでください。耳に響きます。

 

 

それにしても、気になってしまう。友があんなにはしゃいでいるのに、1人壁際で座り込んでいる一夏の姿が。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月17日(日)PM11時50分

 

「お前、何者だ」

 

「私は、君を退屈から救いに来た………神だよ」

 

光が届かない建物中、ダグバとガドルは仮面ライダークロノスと接触していた。

そしてクロノスはダグバにあるガシャットを渡す。それは黄色いダイヤルがついた青いガシャットだった。




キリヤんが別行動とか、インフィニティーズ計画とか、ダグバがガシャットもらったりとか、色々あった58話。次からはクロニクル編本格始動です。

そんでもって次回は番外編を書こうと思います。クロニクル編はおふざけがあまりできない予感がするので。

ではsee you next game!


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トゥルーエンディング 〜自分と先輩と会長さん〜

これは少し未来の物語


「はあ〜、やっと終わった〜」

 

「はいお疲れ様」

 

「サンキュー先輩。仕事終わりのコーヒーは中々美味いねぇ」

 

一仕事終え、虚先輩が淹れてくれたコーヒーを口にする。俺の好みが分かっている。そりゃあ、高校の時からの知り合いだし。なんといっても嫁のお姉様で、仮面ライダーエグゼイドなんだからこれくらい当然のことだよな。え?理由になってない?細かいことは気にすんな。

 

「そういや会長さんは?」

 

「お嬢様ならオペの最中です。もうしばらく時間がかかると思いますが………というより桐也、貴方まだお嬢様のこと会長と呼んでいるの?」

 

「そういう先輩だってお嬢様って呼んでるじゃん。会長さんは普通に名前呼んでって言ってたよ?」

 

「それは貴方に対しても言えることです」

 

先輩は自分の分のコーヒーを淹れると立ったまま飲み始める。高校の頃は『座って飲みなさい』なんて言ってたくせに、今となっては自分から立って飲んでるんだもん。

 

「んあーー!終わったわよ2人ともーー!」

 

「おつかれー会長」「お疲れ様ですお嬢様。予定より早いですね」

 

「当然!なんたって天才外科医ですから!」

 

部屋に入ってきたのは白衣に身を包んだ会長さん。高校の時と違い髪の毛は黒色になっている。まあカツラだけど。いややっぱ黒髪似合わないね。

 

「自分で天才とか言ってると、いつか足元すくわれるよ?」

 

「大丈夫、初心は忘れてないわ。それに天才外科医なんてみんなが言ってるだけじゃない。高校の時と同じよ。あの時も学園最強なんて言われていたけど、結局の最強は虚ちゃんだったじゃない」

 

「ムテキだもんね」

 

「ハイパームテキなら桐也もお嬢様も使えるではないですか。それにトータルの最強なら私かもしれませんが、剣の扱いならお嬢様、最速なら桐也に軍配があがるはず。それに本当に強いのは」

 

「あのバカぐらいだもんな」

 

1人の男を思い出す。あの学校で肩を並べた戦友。究極の闇の力を持つ超古代の戦士。

 

「結局、彼に勝てたの桐也くんだけじゃないかしら?」

 

「さあ?あれもチーム戦だったし。てか運動会だし」

 

昔を思い出す。今となっては未確認生命体も仮面ライダークロニクルも懐かしい。それだけ歳取ったってことか。今や俺も25だ。会長は26、先輩は27だ。あと3年で三十路って嘆いてたな。

 

「懐かしいですね。あの頃は一番バタバタしてましたね」

 

「虚ちゃんもピリピリしてて怖かったわ〜」

 

「あの頃は私も若かったので」

 

「そうだよねぇ〜あの頃はまだ十代だもんねぇ〜もう三十路だもんねぇ」

 

「桐也。ハイパームテキとゴッドマキシマム、どっちがいい?」

 

「まだ勝ち目があるゴッドマキシマムで」

 

「そう、分かったわ覚悟しなさい!」『ハイパームテキ!!』

 

「嘘つき!」『爆走バイク!タドルレガシー!』

 

その時だった。部屋の固定電話が鳴ったのは。

 

「はい、こちら聖都大学附属病院電脳救命センターです!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「桐也くん、虚ちゃん。患者さんのこと任せたわよ」

 

「ま、変身できるの俺と先輩だけだし。張り切って行きますか」

 

「行ってきます!」

 

高校を卒業しても、監察医になっても、俺の戦いは続いていく。ドクターとして、仮面ライダーとして。

 

 

 

 

 

 

 

トゥルーエンディング 〜九条桐也、布仏虚、更識刀奈〜




これから一区切りごとにトゥルーエンディングを書いていこうと思います。何故このような結末にたどり着いたのか。それらはこれからの物語で。

ではSee you Next game!


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第59話 Team結成!

今回からクロニクル編本格突入です。


9月20日(水)AM07時32分

 

「えっ!?一夏の誕生日って今月なの!?」

 

「ああ、9月27日」

 

寮での朝食、いつものメンツ(でも1人いないけど)で食事を摂りながら談笑していたら、この話題になった。そういえば箒と鈴以外知らなかったかも。

 

「一夏さん、そういう大切なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ。あと一週間しかありませんわよ!?」

 

「え?なんかマズイのか?」

 

「私はいつも誕生日の1ヶ月前からプレゼントを考えているのです!なのに一週間しかないとなると……」

 

それからブツブツと唱え始めるセシリア。セシリアは優しいなあ。

 

「それにしても、どうしてお前は誕生日のことを黙っていた?箒が話題に出さなければ私たちはお前の誕生日を祝えなかったのだぞ」

 

「え?いや、別に大したことじゃないかなーって。別に年取ったからって特殊能力ゲット出来るわけじゃないし」

 

「まったくお前という奴は……」

 

ラウラが呆れながらパスタを口にする。季節のサラダパスタ美味しいよね。

 

にしても、みんな俺の誕生日祝ってくれるんだな。なんか嬉しい。別に今まで祝ってもらったことがないってわけじゃない。ただ今は特別嬉しい。多分今まで一番人生が充実しているから。

 

「とにかく、9月27日ですね!一夏さん、予定はどうなってます!?」

 

「ん?一応、中学の友達が祝ってくれるから俺の家に集まる予定。許可申請ももう出してるし」

 

「学校終わりで?それだとあまり遊べないんじゃない?」

 

「シャル忘れたのか?その日は午前授業。『キャノンボール・ファスト』中止になったからな」

 

ISの高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』。本来なら国際大会として行われるが、IS学園があるここでは市の特別イベントとして開催される。いや開催されるはずだった。

 

まあ度重なるIS学園の襲撃、未確認生命体、そしてクロノスが発表した『仮面ライダークロニクル』。これらが積み重なって今年の開催は中止となった。

 

俺としてはそういうの大好きだし、何よりレース好きのキリヤんと戦えるかも知れないと思うと結構ワクワクしてた。だってのに……

 

「せっかくなら休みにしてくれてもいいじゃない。ねぇ?」

 

「学生の本分は勉学だ。それを午前だけでもさせたいという学校の考えだろう」

 

鈴の愚痴に箒が答える。俺も休みにしてくれた方が嬉しかったんだけどなぁ。ゲームしたいし。

 

「そういえばクジョキリはアンタの誕生日知ってんの?」

 

「え?………いや、知らない」

 

ていうか、ここ最近会話すらしてない。教室で会うには会うけどずっとノートに何か書いてるし、放課後も生徒会室に直行だし。今日も今日で学校休むってのほほんさん言ってたし……どうしちまったんだよキリヤん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻 幻夢コーポレーション前

 

「世間一般は仮面ライダークロニクルで盛り上がってるのに。ここは相変わらずだねぇ」

 

「なんで俺まで連れ出したんだ」

 

「そりゃあタイガ先生いた方が心強いじゃん?」

 

停車しているレーザーレベル2にまたがる自分と自身のバイクにもたれるタイガ先生。俺たちの目線の先には幻夢コーポレーションの入り口。そこである人物を待つ。今現在ライダーガシャットに一番関わっている人物。

 

「お、来た来た。はぁーいおはようございます。宝生エムさん」

 

早足で会社に入ろうとする女性、宝生エムを引き止める。今現在ライダーガシャットの開発は彼女がトップらしい。

 

「……!?………な、何か用ですか九条さん、花家さん」

 

「あんな放送が全国に流れたら、誰かしらくるとは思ってただろ?」

 

自分は兎も角、顔が怖いんだからそんなに睨んだらエムさん泣いちゃうよタイガ先生?

にしても、まさかこの人がライダーガシャットの開発のトップなんてな……。

 

 

2日前……

 

『社長が行方不明?』

 

『ええ、学園祭で見失ってからね。会社にも戻ってないし、携帯にも出ない。ゲームのログインもしてない』

 

木綿季さんから社長さんが行方不明だと聞かされた時、仮面ライダークロニクルの犯人は社長かって思った。だってタイミングばっちしじゃん。

 

『私としては仮面ライダークロニクルとのタイミングがバッチリすぎると思うの。だからって社長がクロニクルの犯人とも思えない』

 

『その心は?』

 

『だって、そんな如何にも『私が犯人です』ってタイミングでいなくなると思う?あの社長が?だから私は、犯人を捜すために姿を消したんだと思うわ』

 

なるほどねぇ。確かに社長さんならやりかねない。まったく生態がわからない幻夢コーポレーションの社長、檀黎斗。分かっているのはゲーム好きってことだけ。

 

『因みに木綿季さんは犯人に心当たりは?』

 

『心当たりっていうか……まずライダーガシャットを作れるのはウチだけよ。なら犯人は幻夢コーポレーションの中にいる。その中でもライダーガシャットに関わっているトップは……』

 

 

「更式先輩がそんなことを………疑われても仕方ありませんよね……でも」

 

「でも?」

 

「私は、そんなことしてません……確かに、仮面ライダークロニクルは天条さんの企画を復活させたものです。でもそれをガシャットにするなんて………そんな恐ろしいことは」

 

「恐ろしいこと?てか仮面ライダークロニクルってな「テメェの言ってることが全部嘘なら、分かってるな?」いやまだ自分が話してるんだけど?」

 

「嘘は言ってません!本当です!」

 

エムさんが必死に訴えてくる。なんか嘘ついてるようには見えないんだよなぁ。ここは一旦引いた方がいいかな。

 

「帰ろタイガ先生。彼女は嘘ついてないよ」

 

「九条、根拠はあるのか?」

 

「そりゃあ、嘘つきの自分が言うんだから」

 

それに次のターゲットは決まった。すっかり忘れてたけど、これはタイガ先生にも好都合かもしれない。

 

さあ、(アマゾン)狩りを始めようか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月20日(水)PM04時00分

 

「はい、みんな集まってくれてありがとう。ご存知楯無さんだぞ!」

 

今日の昼、いきなり楯無さんから生徒会室に集合するようメールが来た。今現在生徒会室には俺と専用機持ち、楯無さんと虚さんだ。

 

「さて、今回集まってもらった君達に聞いてみたい。君たち、仲は良いかな?」

 

全員がキョトンとする。そりゃそうだ。いきなりそんなことを言われたら思考が停止する。てかそんなことで呼んだのか?ほらラウラが帰ろうとしてる!

 

「ああ、待って待って。今回の重要任務で必要なことなのよ」

 

「重要任務?なんだそれは?」

 

ラウラが聞き返してくる。それに対して楯無さんは咳払いをして扇子を広げる。そこには「戦隊」と書かれている。

 

「仲の良さってよりは、チームワークの良さかな?この任務に重要なのは」

 

虚さんが資料を配る。そこには『インフィニティーズ計画』と書かれている。

 

「インフィニティーズ計画?なんですかこれ」

 

「そこんとこは……虚ちゃん、お願い」

 

パンパンと手を叩く。それでいいのか生徒会長。

 

「はい。手始めにまずインフィニティーズ計画について説明します。インフィニティーズ計画は専用機持ちがIS学園を警備するというものです。その為の新装備をインフィニティーズ計画で主に使用します」

 

「新装備?俺たち専用機のですか?でも俺の白式がそれを受け入れるかどうか」

 

「それについてですが、新装備はISとはまったく異なるものです。起動には専用機が必要ですが、その性能はISを凌駕します。言ってしまえば進化系ISと言いましょうか」

 

「進化系……IS……って結局ISでは?」

 

「チッチッチ、これが違うんだよ箒ちゃん。この進化系ISは仮面ライダーに近いの。来るべき仮面ライダークロニクルに備えて、この進化系ISで学園を守ろっていうのが、このインフィニティーズ計画」

 

なんかとんでもない計画だな。にしても俺たち専用機持ちが仮面ライダー……結局はISだけど、それに近い存在になれなんてな。なんかキリヤんの隣にやっと立てた気がする。世間一般から見ればクウガは未確認生命体。でもこの進化系ISなら堂々とみんなの前でキリヤんと変身できる。感動だな。

 

「それじゃあとりあえず、アリーナ行こっか」

 

 

第3アリーナ

 

「これが進化系IS?」

 

「正式には『インフィニット・モーフィンブレス』よ。さあ、みんな変身よ!」

 

テキパキとブレスを操作する楯無さん。えっと、このボタンを押して……白式を呼び出す。確か声に出さないといけないんだっけ。

 

「着装!こい、白式!」

 

白式が起動して俺の全身を光が包み込む。そして光が弾け飛ぶ。

 

その時には既に、俺の体は白と銀のバトルスーツに包まれていた。

 

「それが、無限戦隊インフィニティーズの白担当、インフィニットホワイトよ!因みに私はインフィニットシアンね」

 

これが、インフィニットホワイト………てか、

 

「なんですか無限戦隊って。これそんな感じで進むんですか?」

 

「そうよ?箒ちゃんはレッド、セシリアちゃんはブルー、鈴ちゃんはマゼンタ、シャルロットちゃんはオレンジ、ラウラちゃんはブラック。そして私がシアンで一夏くんがホワイト」

 

みんなそれぞれの専用機のカラーと一緒の姿に変身する。いざ揃うと本当に戦隊だな。

 

「はい、それじゃあ無茶振りいくよ。みんな即興で名乗って!はい一夏くんから!」

 

「ええっ!?えーっと………白き閃光!インフィニットホワイト!」

 

「インフィニットレッド。篠ノ之箒」

 

「煌めく雫、インフィニットブルー!」

 

「ドラゴンマスター!インフィニットマゼンタ!」

 

「疾風の再誕!インフィニットオレンジ!」

 

「インフィニットブラック」

 

「辿り巡る淑女、インフィニットシアン!ってみんなバラバラ!」

 

確かにみんなバラバラだ。可笑しくなってみんなが笑いだす。こういうのも悪くないかも。てか結構即興でみんな言えるんだな。

 

 

 

こうして、俺たち無限戦隊インフィニティーズの特訓が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お嬢様………いつまで隠されるおつもりで」

 

「………全部終わるまで?」

 

「流石にそれは無理かと。事態が悪化する前に皆さんにお伝えすべきかと。元々無限戦隊は『未確認生命体対策部隊決戦装備』だと」

 

「未確認生命体用だって知れば、真っ先に飛び出す子がいるでしょ。明かすのは未確認生命体を全部倒してからでも遅くないわ」

 

「…………決断されたからには、後悔しないように」

 

「分かってるわ。いざとなったら私が………」

 

決意を固めた楯無。その瞳の先には…………インフィニットオレンジ=シャルロットの姿があった。




無限戦隊インフィニティーズ結成!!前々から仮面ライダーとISを並べるとやっぱりスケールが違うって思ってた。だから並び立たせるにはチームを組んでもらうしかねぇ!という風にできました。

次回からは夏休み編にやったアマゾン関係を少しずつやりながら、クロニクルを進めようと思います。

ではsee you next game!


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第60話 始まるDeath Game

クロニクル初日!


9月23日(土)PM11時40分

 

IS学園屋上

 

「…………」

 

空気が重い。それも当然だ。インフィニティーズ全員が全員だんまりを決め込んでいるからだ。理由は2つ。

 

1つは仮面ライダークロニクルの開始日が決まったのだ。9月24日から。つまり明日になった瞬間、ゲームが開始されるのだ。SNSを見てみると配信をまだかまだかと待つ人が多い。やはりクロニクルガシャットを購入した人はかなり多いらしく、その中にはキリヤんも含まれている。

 

2つ目は俺たちインフィニティーズに原因がある。早い話特訓が上手くいかなかったのだ。やはりISとは勝手が違うのかセシリアや鈴といった代表候補生もインフィニティーズでの戦い方に違和感を感じていた。

空は飛べない、絶対防御はない、武装は1つしか使えない、その他諸々、誰かは不満があるそうだ。

 

セシリアの武装はライフルのみ。BT兵器を使えないとなると戦略がかなり絞られ戦い方が単調になってしまうとか。

 

鈴は青龍刀。あまり不満はなさそうだったが青龍刀自体が小さくなっているため、パワーが足りないとか言っていた。

 

シャルはライフル……ではなくパイルバンカー。本人の戦い方からしてパイルバンカーだけというのは辛いだろう。普段文句をあまり言わないシャルだが、こればっかりは不満だそうだ。

 

ラウラは両腕のプラズマブレード。ラウラもあまり不満はなさそうだった。与えられた武器だけで戦場を駆けたこともあるからとか。

 

箒は刀。雨月とも空裂とも違う刀。名前はまだ無いらしい。箒も不満はなさそうだった。けど絶対防御がないのは少し怖いらしい。

 

俺は…………武器がなかった。

 

 

とまあ、慣れないインフィニティーズでの特訓は普段チームワークがいい俺たちでも、次第にイライラを募らせるぐらいには慣れないものだった。

 

「そろそろ時間だな」

 

ラウラが沈黙を破る。あと15分ぐらいで日付が変わる。日付が変わる5分前にそれぞれの持ち場につくことになっている。俺とセシリア、鈴とシャル、箒とラウラでIS学園を警備することになっている。勿論IS学園の先生たち、つまり千冬姉や山田先生も持ち場についている。

 

「いいか箒。相手の戦力は未知数だ。クロニクルガシャットの力がクジョーの力を超える可能性もある。気を引き締めるんだ」

 

「分かっている……だが、相手は一般人だ。あまり強引に押さえ込むなどしたくない」

 

「はぁ………それは私も同じだ。だがISに不満を持つものがいないわけではない。そんな時に仮面ライダーになるアイテムが手に入るチャンスが訪れるんだぞ。クロノスからゲーム以外での使用は禁止されているとはいえ、それでもルールを破るものは現れる。この学園が狙われる可能性はゼロではないんだ」

 

「だったら、ゲームエリアを作って、その中でしか変身できないとかにすればいいのに。そうすればこんなことする必要もないのに」

 

「確かにね。僕もそれは気になったよ」

 

鈴とシャルが言う通り、ゲームエリアを設けてその中でしか仮面ライダークロニクルを起動できない、そうすれば管理も楽だし変な暴動なんかも起きる可能性はない。この運営は少し抜けてる。

 

「そろそろ時間ですわね。行きましょう一夏さん」

 

「ああ、みんなも気をつけてな」

 

「よし、作戦開始だ」

 

もうすぐゲームが始まる。このゲームのエンディングはきっと誰にも想像できない結果になる。そんな気がする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月23日(土)PM11時55分

 

「なになに、タイガ先生も買ってたの?」

 

「どういうもんか確認するためにな」

 

今自分たちがいるのは都内の公園。それなりの大きさを誇るそこは仮面ライダークロニクルを今か今かと待つ人間がそれなりにいた。

それなりっていうのも、実はネット上に『仮面ライダークロニクルコミニュティ』なるものが存在し、そこの掲示板に9月24日の0時丁度にこことは別の広場に集まり一緒にプレイしよう、という風に書き込まれていた。

 

だからここはそれなりに集まっている。目に見える範囲だけでも15人ぐらいだ。

 

「だが、本当にこっちでいいのか?コミニュティが作られるぐらいなんだ。運営もあっちに敵キャラを用意するんじゃないのか?」

 

「いいや、コッチにもくる。よく思い出してよ。バグスターは1日1回。1体じゃないんだ。1体だったら10年ぐらい時間かけなくちゃいけないんじゃない?」

 

「なるほど………そろそろか」

 

時計の針が59分を指している。まもなくゲーム開始。それと同時にバグスターが召喚されるのか。それとも時間はランダムなのか。そこは自分にもよく分からない。ゲーム開始、つまりサービスが始まるのが24日0時なだけで、実際にバグスターが出てくるのは24日の23時かもしれない。

 

「さてさて、どうなることやら」

 

そして時計の針は12を指した。

 

9月24日(日)AM00時00分

 

公園にいる人たちが仮面ライダークロニクルを起動させる。起動させた人たちの姿が次々と仮面ライダーへと変身していく。形はエグゼイドに似てる。違いは色とか髪の有無とか。いかにも量産型って見た目だ。

 

「俺たちも行くか」

 

「そだね。始めますか」

 

『『仮面ライダークロニクル!』』

 

自分とタイガ先生も変身する。見た目は他の奴らと変わらない。さて試すことは色々あるけど、

 

『はーーい!みんな、ちゅうもーーーく!』

 

公園のど真ん中に奇抜な格好の女が立っている。視線が彼女に集中する。まさかと思うけどアレが仮面ライダークロニクルのチュートリアルを案内するナビゲートキャラか?

 

『私はポッピー!この仮面ライダークロニクルのナビゲーターにして、ドレミファビートのバグスターだよ!みんなよろしくね!』

 

「なに、じゃあドレミファビートのトロフィーゲットするときはアレ倒すの?」

 

「可能性は低いと思う。別の攻略の仕方があるんじゃないのか?」

 

タイガ先生に耳打ちする。タイガ先生は否定したけどやっぱりアレを倒すっていう可能性はゼロじゃないと思う。

 

『それじゃあ!私が仮面ライダークロニクルについてナビゲートするね!みんな仮面ライダークロニクルの大まかなルールは知ってるよね!私が説明するのは、それよりも大事なこと!みんなちゃんと聞いてね!

 

まず1つ目!みんなの変身しているソレ、名前はライドプレイヤーって言うんだけど、ライドプレイヤーの胸のライフゲージが無くなればゲームオーバー!逆に敵バグスターを攻略すればゲームクリア!簡単でしょ?

 

2つ目!武器はなんでもあり!バグスターにはなんでも通用するよ!知恵と勇気を振り絞って戦ってね!』

 

ここまでは普通のルール説明か……まだ心配なんだけど。

 

『3つ目!特別なキャラ、仮面ライダーが参戦することもあるよ!彼らはレアキャラだから倒せば強力な武器をゲットできるよ!

 

4つ目!これが一番大事だからね!このゲームでのゲームオーバー=現実での死を意味するよ!それに一度クロニクルガシャットを起動させたらバグスターウイルスが体の中に入っちゃって、体がピプペポパニック!でも大丈夫、クロニクルのラスボスを倒せば、ぜーんぶ元通り!だからみんな頑張ってね!』

 

ルール説明を終えたのかポッピーは姿を消した。あたりがざわつく。当然だ。こんなの誰も予想してないはず。自分だって、きっとタイガ先生だって予想だにしなかっただろう。

 

仮面ライダーがレアキャラか。つまり自分たちも狙われる可能性はある。それに一度バトルを開始したら抜け出すことはほぼ不可能。さらにウイルスに感染させることでゲームを途中で辞退できないようにしてやがる。

 

「じょ、冗談じゃねえ!!俺は死にたくない!」

 

「なんで……たかがゲームで命かけなくちゃいけないんだよ!」

 

「どうして!どうして元の姿に戻れないの!」

 

みんながみんなパニック状態だ。まあこの状況で落ち着く方が難しいだろうな。自分とタイガ先生の落ち着きっぷりが逆に怖い。

 

そして一人が逃げ出した。それにつられて逃げ出す人たち。結果公園には自分たちを含めて6人しか残らなかった。

 

「少なくなっちゃったね」

 

「普通だろ。ライドプレイヤーに変身した時点で死へのカウントダウンは始まってるんだ。勝ち目があるかどうか分からないバグスターを相手にして、自分の寿命を縮めたい奴はそうそういないだろうな」

 

「………自分、思うんだけどさ。別にライドプレイヤーに変身したから死へのカウントダウンが始まってるわけじゃないよね。生まれた時から始まってるんだよ、カウントダウンは。それをイマイチ分かってない人、多いと思うんだよね」

 

「…………何が言いたい?」

 

「別に。ただ思っただけ…………っと、そろそろ始まるみたいだね」

 

残ったライドプレイヤー6人の目の前に茶色いブロックが現れる。見た目からしてマイティアクションXのブロックだ。となると敵は……

 

「私の名はソルティ伯爵。君たちが私の相手ということかね?」

 

現れたのはソルティ伯爵。マイティアクションXのボスキャラだ。マントに偉そうな口調はまさに伯爵。でもまあ、

 

「相手は自分とタイガ先生だけだぜ。速攻で終わらせる」

 

「ったく。とっとと終わらせるぞ」

 

『爆走バイク!』

 

『バンバンシューティング!』

 

「零速!変身!!」

 

「第弐戦術!変身!!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!』

『爆走バイク!!』『バンバンシューティング!!』

 

ライドプレイヤーに変身した状態で更にゲーマドライバーを装着、そしていつも通り変身。とりあえずライドプレイヤーの状態でも変身はできるな。

 

あとはコイツを倒すだけ!

 

「そらそら、動き止まってんぞ!」

 

「くっ、いきなり蹴ってくるとは卑怯な!」

 

「卑怯もクソもあるか。テメェをぶっ飛ばしてガシャットロフィーをもらう。それだけだ!」

 

連続で蹴りを叩き込む。それと同時にタイガ先生がマグナムでソルティに反撃を許さない。

 

「そらよっと!」

 

「時間が惜しいな。九条!さっさと決めるぞ」

 

「ほいほいりょーかい。んじゃ早いけど決めますか」

 

『『ガシャット!キメワザ!』』

 

「これで決まりだ!」

『爆速!クリティカルストライク!!』

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

自分のサマーソルトで打ち上げられたソルティにタイガ先生の一撃が突き刺さる。まあこれで死ななかったら大したもんだよ。

 

ソルティはそのまま爆散し、中から小さなピンク色のガシャットが落ちてきた。これがマイティアクションXのガシャットロフィーか。多分最速クリアだよね。

 

「おい、ボケっとすんな。次行くぞ」

 

「ああ、はいはいっと………って、邪魔なんだけど。そこどいてくれる?」

 

次の場所に向かおうとすると、自分とタイガ先生の前にライドプレイヤーが立ちはだかる。まあ、なんとなく理由分かるんだけどね。

 

「レアキャラはっけーん。怪我したくなかったらそのベルト置いてってよ」

 

「おいおい、このベルト使ったらさっきのに勝てると思ってんのか?確かに逃げずにこの場所に残ったってことはあんたら4人、腕に自信はあるんだろうけどさ」

 

「俺たちを倒そうなんざ考えない方がいいぞ。怪我したくなかったらな」

 

「ナメた口聞いてんなオイ。悪いけど俺たち4人ダチなんだよ。4対2。勝てると思ってんの?」

 

「たった2人多いだけで勝った気になるなんておめでたい奴だな。勝ちたいならお前らみたいなの、あと30人は呼んでくるこった」

 

売り言葉に買い言葉。正直一般人相手するのは気がひける。でもこっちだって仮面ライダーとしての責任がある。早く別の場所に行って、1人でも死人を出さないこと。きっと他の場所にもコイツらみたいに無謀にもバグスターに挑戦する奴がいるはずだからな。

 

「しょうがない。最速で決めるぜ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

こうして、仮面ライダークロニクルの長い初日が始まったのだ。




なんかクロニクル編がすごく長くなりそうな予感がする。やりたいことたくさんあるのに。

とりあえず今年の更新はコレが最後になります。次回は来年になります。

次回はとりあえず夏休み編のハルナとハルカを出したいところ。

ではSee you Next game!


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第61話 Sea of bloodで染まる

あけましておめでとうございます!

今更だけどこのお話、もう2年過ぎてたね


9月24日(日)AM09時00分

 

IS学園

 

「ん………うん?」

 

眩しさを感じて目を覚ます。そこは見慣れた天井……ではなく、俺の部屋の天井だった。眩しさは朝日が差し込んでいたからだ。

 

「あ………そっか、今日日曜か」

 

この時間、平日の学校のある日ならば遅刻確定。でも今日は日曜日。正直そこは助かった。

 

昨日、いや今日の夜中。インフィニティーズ最初の任務であるIS学園の警備は異常なく終わった。本当に何もなくてよかった。そして布団に入ったのが午前5時前。4時間しか寝れてないのか………体がだるい。

 

「にしても………これは大惨事だな」

 

体を起こして部屋を見る。そこには着物を着る途中で寝てしまっている箒。下着姿で床で寝ているセシリア。足だけ俺のベッドに残し体が落ちてしまってる鈴。それとは逆のシャル。机に突っ伏して寝ているラウラ。

 

「みんな疲れてるんだな………俺も寝るか」

 

正直この大惨事、普通の俺なら目を覚まして二度見ぐらいする。下手すりゃ俺の大事な〔ピーーーー〕も起きるだろう。しかし今の俺はそこまで頭が働かず、そのまま二度寝に戻るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻、都内公園

 

「起きてたのか九条。ほら朝飯だ」

 

「ありがとタイガ先生。あらー、寝起きでカツ丼キツくね?」

 

公園で目を覚ますなんて、まるでホームレスにでもなった気分だ。正直あまり良くない。ベンチは硬いし、妙に寒いし。相方の先生は朝からカツ丼食わそうとするし。

 

昨日……正確には今日の夜中、ソルティを倒した後が大変だった。複数のライドプレイヤーに絡まれ、死なない程度に動けないようにしたあと別の公園に向かい、アランブラバクスターを倒してタドルクエストのガシャットロフィーをGET。したらまたライドプレイヤーに絡まれるし。

 

結局この公園で寝たのが午前6時過ぎ。タイガ先生は寝てないんじゃない?

 

「それとだ、さっきコンビニで知り合ったんだが、」

 

「おひさね桐也くん」

 

「久しぶりだね九条くん」

 

「あれ、刑事さんにハルカさん。まだこの世界に残ってたの?」

 

「ちょ、何で私だけ刑事さん?」

 

タイガ先生が連れてきたのは、照井ハルナと水澤ハルカだった。2人とも別の世界からアマゾンを追ってこの世界に来た。まだいるってことは、アマゾンは見つけられてないのか。

 

「まあ、いいわ。これから2人には少し協力してもらうから」

 

「いきなり過ぎないちょっと?」

 

「正直あまり時間がないんだ。助けてくれると嬉しいんだけど」

 

「まあハルカさんが頼むなら」

 

「なんなのよ!なんで私のときだけ適当な応対なのよ!」

 

「喚くな照井。俺たちが協力しないと言ってないだろ」

 

「タイガ先生は知ってるわけ?」

 

「俺たちの目的とコイツらの目的が一致した……って言えば分かるか?」

 

 

「天条タカアキの居場所が分かったの?」

 

現在場所は港。合流して来た虚先輩が聞いてきたように、どうやら2人は天条タカアキの居場所が分かったらしい。

天条タカアキはアマゾン細胞の研究と仮面ライダークロニクルに携わっていたらしい。確かに刑事さん達の目的のアマゾンに繋がっているかもしれないし、俺たちの知らない仮面ライダークロニクルの情報を握っているかもしれない。

 

とにかく目指すべき一つ目のゴールとして決めていた。

 

「ここから少し離れたところにある小島に潜伏している。この目で見たから間違いないわ!」

 

「え?この目で見た!?」

 

「ハルがウッカリしてね、天条に捕まったのよ。それを助けに行く時にね」

 

「面目無い………その時にアリアマゾンの情報でも手に入れば良かったんだけどね」

 

「ハルを助けるのに一生懸命でそこまで頭が回らなかったのよ」

 

自分たちが知らないところで頑張ってたんだなぁ。でもここで疑問に思うよね。

 

「お前たち2人に居場所がバレているなら、天条は潜伏先を変えるんじゃないのか?」

 

「確かに……」

 

「ああ、それなら大丈夫。ハルを救出したの昨日の夜中だから」

 

「「「……………は?」」」

 

つまり刑事さんはついさっきまでタカアキの潜伏先にいたってことか?そしてハルカさんを救出してから俺たちに接触してきた?

 

いやアンタら体力バケモノかよ。

 

「ほら、善は急げって言うでしょ?大量の資料なんかがあったから、今なら天条は潜伏先を変えていないはず。痕跡を残すわけにもいかないからね」

 

「元気だねぇアンタら………自分らはすんごい眠いってのに」

 

「でも一つ心配があってね……………ホラ来た」

 

ハルカさんが指を指す方を見る。そこには灰色の人型。目は紫色のトカゲのバケモノ。ってアレまさか………アマゾンシグマ!?

 

「あちゃー追いかけてきたか………多分私たちを追いかけてきたんだと思う」

 

「だろうね」「だろうな」「でしょうね」

 

自分たち3人は呆れながらもゲーマドライバーを装着する。ハルカさんもネオアマゾンズドライバーを。刑事さんもアクセルドライバーを装着する。

 

多分アレ会長さんが仕留め損なったやつだよね。それに刑事さんが怪しいと睨んでいた目的人物?だろうね。

時間ないだろうしさっさとやろうか。

 

「零速、変身!」

 

「第弐戦術、変身!」

 

「大変身!」

 

「変……身ッ!」

 

「アマゾンッ!!」

 

それぞれ仮面ライダーに変身する。アマゾンシグマもそれを視認すると走り出してくる。

さあ、ノリノリで行っちゃうぜ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月24日(日)AM11時13分

 

「ふあぁ〜……眠い…」

 

「一夏さん、気が緩んでいますわよ」

 

「まあまあ、昨日……いや今日か。寝るの遅かったからさ」

 

今俺はセシリアとシャルと街を歩いている。理由は買い物……兼仮面ライダークロニクルに関する情報収集だ。

 

起きた俺たちを待っていたのは楯無さんだった。キリヤんの情報が正しければバグスターが現れるのは1日1回であり、1体ではなく1回なら、今日はもうバグスターは出てこないらしい。

ならば街に出て情報収集を兼ねた買い物でも行ってこいと楯無さんに言われ、現在街中を歩いている。

箒と鈴とラウラはお留守番だ。

 

やはり注目されているだけあって、あちこちで話をしている。しかし目新しい情報はなく、正直普通の買い物になってしまっている。

 

「にしても仮面ライダークロニクルもふざけてるよなぁ。仮面ライダーがレアキャラで、ガシャットを起動したらウイルスに感染して、プレイヤーのライフがゼロになったら死ぬ」

 

「製作者の頭は狂っているとしか思えませんわね」

 

「そこら辺も桐也とタイガ先生が調べてくれてるみたいだけど」

 

「………大丈夫なのかなキリヤん」

 

昨日からキリヤんの姿を見ていない。無茶してなきゃいいけど。

 

そんな心配をしていた時だ。

 

 

後方から悲鳴と爆発音が聞こえる。それと同時に血の匂いも漂ってくる。もしかしなくても未確認生命体か!

 

「俺が食い止めてくるから、シャルとセシリアは避難誘導を!」

 

「そんな一夏さん1人では!」

 

「心配すんな。無理はしないから」

 

そう言って俺はインフィニットホワイトに着装して駆け出す。2人には申し訳ないが俺がクウガ(本気)で戦うには2人はいない方がいい。特にシャルが暴走したらかなりマズイ。

 

 

現場に到着する。まず俺を襲ったのは吐き気だった。辺り一面血の海。道路が真っ赤に染まり、人間だったモノが辺り一面に散らばっている。

その中で異彩を放っていたのは、宙に浮いているクラゲのような未確認生命体………いや、違う。あれはそんなんじゃない。どちらかと言うとアマゾンだ。

 

「クラゲでアマゾン………まさか、シャルのお母さんを殺したのって!」

 

クラゲアマゾンが触手を伸ばしてきた。しかもかなり早い!?

 

「くそっ!変身!」

 

ドラゴンフォームに変身して回避する。あれで貫かれたら流石の俺も死ぬぞ!?

すぐに体制を整えてマイティフォームにチェンジする。更にインフィニットホワイトを纏う。これでクウガとホワイトの二重構造の鎧の完成だ。

 

「いくぞ……!」

 

クラゲアマゾンに殴りかかる。しかしクラゲアマゾンの触手が俺に攻撃を許さない。パンチやキックが届かない。それどころか少しずつ距離を離されている。この野郎逃げるつもりか!?

 

「ッ!!おりゃあ!!」

 

右足に封印エネルギーを込めて触手一本一本に叩き込んでいく。その度に触手が爆発していくが、新しい触手がすぐに姿をあらわす。

 

「これじゃ、キリがない!」

 

しかも一瞬の隙を突かれて右足と左腕を触手で掴まれてしまう。このままじゃヤバイ!

そして俺の予感は的中してしまう。更に伸ばした触手が俺の体を貫いた。

 

全身を痛みが走る。今の今までこんなに痛いのは初めてだ。ホワイトのスーツがだんだん赤く染まっていく。しかも口から血を吐き出してしまう。クソ……メットの中が血生臭い。

 

そしてそのまま店の方へと投げつけられる。クウガの力で傷はすぐに治るとはいえ痛いものは痛い。俺の体が動くことを拒否している。

 

「くっ………ああっ!!」

 

心臓を貫かれなかっただけマシと思うべきか、それでもクラゲアマゾンが迫ってきているこの状況は絶体絶命と言わざるを得ない。

 

「だからって………ここで負けられるかっ!」

 

右足に力を込める。触手を掻い潜ってアイツに一撃叩き込んでやれば逆転のチャンスになるはず!

体に電気が流れ始める。もう少し、もう少しで………ッ!

 

「一夏さん!伏せてください!」

 

クラゲアマゾンの背中に青いレーザーが直撃する。クラゲアマゾンが振り返るとインフィニットブルーに着装したセシリアがライフルを構えていた。

 

クラゲアマゾンがセシリアに近づこうとした瞬間、オレンジ色の人影がクラゲアマゾンに飛びついた。

 

「お前は………ここで、絶対に殺すッ!!」

 

インフィニットオレンジに着装したシャルがパイルバンカーをクラゲアマゾンに叩き込んだのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

桐也side

 

 

「ヘイヘイ、コッチコッチ!」

 

シグマの攻撃をかわしながらスパローで攻撃を与える。後方からはタイガ先生の銃撃。虚先輩とハルカさんがラッシュを仕掛け、刑事さんの重い一撃が炸裂する。中々いい布陣だ。

 

「しっかし、聞いた話だと三手で終わらせる、とか言ってくるらしいけど?」

 

「確かにお嬢様が言っていたわね。余裕がない………ではないでしょうね」

 

「ふん、ぶっ潰せば関係ない話だ」

 

「それじゃあ、さっさと終わらせる?」

 

「それがいいかも。僕も疲れてきた」

 

刑事さんとハルカさんがシグマを蹴り飛ばす。その隙にそれぞれの武器にガシャットを差し込む。

 

『『『ガシャット!!キメワザ!!』』』

 

『マイティ!クリティカルフィニッシュ!!』

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

虚先輩のブレイカーブレードモードがシグマの胴を切り裂き、そこへ自分とタイガ先生の攻撃が連続で叩き込まれる。そんでダメ押しいくぜ!

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「はっ!うおらぁぁぁあッ!!」

 

弱ったシグマにライダーキックが命中し、そのまま地面に叩きつける。それと同時にシグマは黒い液体となって絶命した。

 

「って汚ねっ!!」

 

変身してても汚いのは嫌だな。血の海で戦うとか最悪だわ。仕方ないって割り切らないといけないけど。

 

「さて、これでようやく出発出来るわね」

 

「そういえば会長さんは?」

 

「お嬢様なら仮面ライダークロニクルについて作戦を練ってるはず…………と早速ね……はい布仏です」

 

どうやら会長さんからみたいだ。まあ電話が終わるまで先に船に乗って一眠りっと…………「はあ!?どういうことですか!!」………なになに?

 

「どうした布仏?」

 

「…………花家先生。落ち着いて聞いてください」

 

「勿体ぶるな。さっさと言え」

 

「デュノアさんが拐われました」

 

「………………誰に」

 

「………街に現れたアマゾンらしいです」

 

「……天条、覚悟しやがれ……」

 

もしかして、なんかヤバイ展開になってきた!?




桐也「遂に天条タカアキの居場所がわかるけど、シャルちゃんが誘拐されちゃった!タイガ先生ムカ着火ファイアー!名人は名人でボッコボコにされちゃって。次回はどうなることやら?」

次回は遂にアマゾン軍団との対決!遂に俺がお前のあのフォームが!そして夏休み編にはライダーはもう1人いた!つまり通りすがりのアイツが!

ではSee you Next game!


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第62話 All right。それは確証のない言葉

アマゾン編、戦闘開始!


正直言って、俺とシャルのお互いの最初の印象は最悪だっただろう。

 

俺はいきなり訳の分からんガキを押し付けられ、シャルも訳の分からん医者を押し付けられる。

 

「花家タイガだ。名前は?」

 

「……………シャルロット…」

 

最初はぶっきらぼうで人見知り激しかったな。今とは大違いだ。

それからしばらく一緒に行動した。主従医として一緒に行動しろとシャルの父親から言われたからだ。

 

あいつ自身、相当嫌だっただろうな。

 

「あっち行って!」「私の部屋に入ってこないで!」「服が臭いから近寄らないで!」

 

散々な言われようだった。それもこれも治療の為仕方ないと割り切って我慢していた。ガキに怒鳴っても何にも解決しない。そう言い聞かせて。

 

そんな時、日本でISを動かした男のニュースを耳にした。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月24日(日)PM00時27分

 

虚先輩、タイガ先生、ハルカさん、刑事さんと自分を含む5人は船に揺られること20分強、天条の潜伏する小島に到着した。

 

その間会話がないんだから気まずいったりゃありませんよホント!

 

「さて、島に着いたけど、これからどうすんの?」

 

「とりあえず、私が通った道は無理だろうから…………って、お出迎えよ」

 

船から降りた瞬間大量のアマゾンが森から姿を現してくる。しかも海からも来やがった。これ囲まれた?

 

「倒さないと前に進めないコレ?」

 

「遅かれ早かれぶっ潰すだけだ」

 

「待ってください花家さん。貴方は先に行くべきだ。ここは僕が食い止めます」

 

そう言ってハルカさんはニューオメガに変身した。この数一人で抑えるって無茶過ぎない?ここはもう一人残るべきじゃ。

 

「お前一人じゃ心配だ。俺も残ってやる」

 

突如現れた銀色のオーラからピンク色の弾丸が放たれ、一体のアマゾンを撃破した。

そして銀色のオーラから現れたのは、

 

「士さん!」

 

「どこ行ってたのよ士さん!」

 

「少し野暮用でな」

 

門矢士。仮面ライダーディケイドだ。ライドブッカーの一撃は更にアマゾンを倒していく。

 

「なるほど、これがこの世界での最後のやることか…………変身!」

 

『カメンライド!ディケイド!!』

 

前のベルトとは色が違う。ピンク色になってる。全身ピンクにまた一歩近づいたのか。

 

「早く行け。お前の守るべきものを守ってこい」

 

「言われなくても、俺が助ける」

 

変身しながら、士さんとハルカさんが作った抜け道を通って森の中へと入っていく。まだ森の中にも何体かいるが、自分と刑事さんがバイクモードになってほとんどを跳ね飛ばしていく。

 

「それより士さん。そのベルトどうしたんですか?」

 

「これか?…………課金した」

 

 

バイクで走ること数分。そんなに時間はかからなかった。

 

「もしかしなくてもアレ?」

 

「そうよ。アレが天条のアジト……研究所?まあ、どっちでも良いけど」

 

いかにもって感じの建物が目の前に立ち塞がる。しかしそこまで大きくない。となると地下に伸びてるのか。

どっちにしろ、入ったら簡単には出られないな。

 

「さて、ここからは花家先生と照井刑事でお願いします」

 

「アレ?先輩、もしかして気づいてた?」

 

「当たり前よ」

 

振り向きざまにガシャコンブレイカーをぶん投げる先輩。まっすぐ飛んでいき、人影に命中した………いや、受け止められてるな。

 

人影の正体はアマゾン………しかもシグマっぽいし、ニューオメガにも見える。青いアマゾンだ。バイザーで隠してるけど赤い目が見えている。

 

「グウゥゥゥッ!!」

 

「ほらほら、早く行って。シャルちゃん待ってるよ?」

 

「…………悪りぃ」

 

「任せたわよ2人とも」

 

タイガ先生と刑事さんが中に入っていく。簡単に中に入れるところを見ると、警備がザルなんじゃなくて誘ってるんだろうな。

 

「さっさと終わらせて追いつきますか。眠いし」

 

「なら、ダブルアクションで行くわよ」

 

先輩が取り出したのは緑とオレンジ色が半々のガシャット。臨海学校の時、自分を助けてくれたガシャットで、正直もう見たくないガシャット。

 

それがマイティブラザーズXX。

 

「コードXX。起動!」

 

『マイティブラザーズ!XX!!』

 

自分はレベル0になり先輩の隣に立つ。

起動したマイティブラザーズXXが分離し、自分の手の中に収まる。

 

これでマイティブラザーズの特徴である『超協力プレイ』で戦うことができるのだ。

 

「「大!変身!!」」

 

『『ガッチャーン!ダブルアップ!!』』

『『俺がお前で!お前が俺で!マイティ!マイティ!ブラザーズ!!ダブルエーックス!!』』

 

自分がダブルアクションゲーマーLvXXLに。

先輩がダブルアクションゲーマーLvXXRに変身する。

そして自分がガシャコンスパローを。先輩がガシャコンキースラッシャーを構える。

 

「超協力プレイで!」

「クリアしてみせます!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ところで花家先生」

 

「ああ?」

 

アジトの中を突き進む途中、照井に話しかけられる。

 

「聞きたいんですけどぉ?シャルちゃん?とはどういったご関係で?」

 

「はっ倒すぞクソ刑事」

 

「ええー?少しぐらいいいじゃないですかー!この先エレベーター乗らないと降りられないし」

 

ったく。この刑事がここまでめんどくせぇ野郎とは。確かにここから先はエレベーターに乗らないと進めないらしい。せっかちなコイツがエレベーター破壊して降りなかったところを見ると、かなりの耐久性があるな。

 

「はい、乗りましたー。このエレベーター私でも壊せなかったからね!それに、ここまで妨害がなかったところをみると、天条は私たちを待っていると思います」

 

「なるほど………だからと言って話なんざしねぇぞ」

 

「ええー!ケチんぼー!」

 

頰を膨らます照井。悪いがこればっかりはお前に話すつもりはねぇ。

 

 

日本でISを動かした男のニュースは当然シャルの父親の耳にも届いており、シャルを男としてIS学園に編入させようとした。

 

それからシャルは男として振る舞うよう努力していた。

 

「花家先生、わた……じゃない、僕の鞄どこ?」

 

「…………はあ、そこだろ」

 

「あ、ありが………サンキュ…」

 

正直無理があった。しかもシャルはフランスの代表候補生。男で代表候補生なんて怪しすぎる。もって1カ月が限界だ。それ以上は無理だと俺は思っていた。

 

「俺の前でぐらい普通に振る舞ったらどうなんだ?」

 

「……だって、男のフリしないとIS学園で生活できないし…」

 

「俺は女として編入してもいいと思うけどな」

 

「男として潜入して、織斑一夏の専用機のデータを取ってくる。それが私の……僕の任務なんだよ」

 

その時のシャルは泣いていた。本当はこんなことしたくないだろうに。本当なら友達と青春を謳歌している年頃だというのに、この時やらされていたのはスパイの真似事だった。

 

「バレないようにしないと……デュノア社も危ないし……」

 

「別にいいじゃねえか。バレたって。デュノア社がヤバくなっても。お前は俺がなんとかしてやる」

 

「口ではなんとも言えるんだよ!誰だって!お母さんだってそうだった!大丈夫って言ってたのに、お母さん自身が殺されて…………もう……嫌だよ……」

 

シャルの母親が未確認生命体……クラゲアマゾンに殺されたのは知っている。それからシャルはよくパニック症状になるという。

本人曰く頭の中が真っ白になったと思ったら、ドス黒い何かが頭の中を覆い尽くすと。

 

「私は!大事な人が目の前からいなくなるのが嫌なの!あんな辛い思い……したくないの!!」

 

その時、初めてシャルの本音を聞いた。

 

 

「花家先生?はーなーやーせーんーせーい?」

 

「…………何でもない。行こうか」

 

エレベーターが到着した。ドアが開くと一本道だった。奥に見える厳重な扉。あいにく俺は短気だからな。

 

これぐらいはぶっ壊してやる。

 

ドアをガシャコンマグナムで破壊する。部屋の中は何かの機材でいっぱいだった。しかしシャルはすぐに見つかった。部屋のど真ん中で倒れていたのだ。

 

「シャル!」

 

駆け寄り脈をはかる。どうやら気を失ってるだけのようだ。

 

「いらっしゃい!我が研究所へ」

 

その時、背後から声をかけられる。振り向くと初老の男が立っていた。間違いなく天条タカアキだ。

俺と照井はすぐにベルトを装着する。

 

「まあ、待ちたまえ。私は君と話がしたいのだよ花家先生」

 

「俺には話すことはない」

 

「私にはある。取引をしないかい?君の持っているガシャット全てと、そこの娘の交換だ。君にとってその娘は命と同じくらい大事な物だろう?」

 

「…………シャルを物扱いした時点で交渉決裂だ」

『バンバンシューティング!』

 

『アクセル!』

 

「第弍戦術!変身!!」

 

「変……身ッ!!」

 

スナイプとアクセルに変身し天条に迫る。しかし天条の表情は変わらなかった。気味の悪い笑みを浮かべながら指をならす。

 

「バァァカが!!こちらも貴様と交渉なんてするつもりなどない!!貴様をあの娘の目の前で殺し、ガシャットを奪った後にあの娘もアマゾンにして世に解き放ってやろう!」

 

「下衆が……人の皮を被ったバケモノね」

 

「なんとでも言うがいい別世界の仮面ライダーよ!因みに貴様の追いかけていたアマゾンだが、私の研究材料として役立ってくれたよ」

 

「そう………貴様はどうしようもない下衆野郎みたいだな」

 

「天条…………テメェだけは俺の手でぶっ飛ばす!」

 

「やってみるがいい!できるならな!」

 

天条の背後から姿を現わすクラゲアマゾン。

 

丁度いい。まとめてぶっ飛ばしてやる!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月24日(日)PM01時14分

 

IS学園 保健室

 

「ッ!?………いっつ……」

 

嫌な夢でも見たのか、俺の体が自分の意思とは関係なくいきなり起き上がる。そのせいで傷が痛む。マジ痛い。

 

「あら、随分早起きね一夏くん」

 

ベッドの隣で椅子に腰掛けているのは楯無さんだった。読んでいた本を閉じる代わりに扇子を開く。そこには非常事態の文字が。

 

「そうだ……シャルは!シャルはどうなったんです!?」

 

「落ち着いて。順を追って話すわ。まず君が戦った未確認生命体……いいえ、アマゾンだけど、一夏くんとセシリアちゃんにトドメをささずにシャルロットちゃんを連れ去ったわ」

 

最悪の結末だ。俺が不甲斐ないばっかりにセシリアとシャルを戦闘に巻き込んじまって、挙げ句の果てにシャルを連れていかれた。

 

「今、先生たちが探してるわ。インフィニティーズは居場所がわかるまで待機よ」

 

「…………俺がその命令を聞くと思ってるんですか?」

 

「…………なんで、インフィニティーズには命令違反を犯す子が多いのかしら…」

 

「え、それって?」

 

「みんな君と同じこと言ったわ。まさかラウラちゃんまで命令違反なんて………私リーダーの素質ないのかしら?」

 

いやリーダーの素質は絶対あると思う。メンバーが俺を含めて問題児だらけなのがいけないんだ。

 

「それで、みんなは何処に?」

 

「生徒会室で待たせてるわ。一夏くんの意見を聞いてくるから待ってて、ってね。」

 

「そうですか…………シャルの居場所も実は知ってるんじゃないんですか?」

 

「……………鋭いわね。ここからそう遠くない小島よ。そこにシャルロットちゃんはいる」

 

「そうですか…………分かりました」

 

ベットから降りて私服に………うわ血まみれじゃん…………コレしかないし仕方ないよな。

楯無さんはやれやれって顔してる。

 

「責任は私がとるわ。だからシャルロットちゃんを救出して、全員で懲罰房で反省文書くわよ」

 

「はい!」

 

待ってろよシャル。絶対助けに行くからな!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻

 

研究所前 森林

 

「はっ!オラアッ!」

 

「ふっ!ぜやぁっ!」

 

ガシャコンスパローの鎌モードでアマゾンを切りつける。怯んだ隙にガシャコンキースラッシャーの斧モードで顔面を叩く先輩。

 

戦況は正直微妙なラインだった。攻撃面ではコッチが押してるけど、相手のタフさがおかしい。もうキメワザ5回ぐらい叩き込んでるのに倒れる気配すらねぇ。

 

「もう一発行っとく!?」

 

「倒れるまで何回でもやるわ!」

 

先輩と同時にレバーを閉じて開く。コレばっかりはタイミングがかなり大事だ。

 

『『マイティ!ダブル!クリティカルストライク!!』』

 

「「はっ!たあぁぁっ!!」」

 

ダブルライダーキックがアマゾンに炸裂する。そう、キメワザは全部当たるのだ。避けるわけでもなく、受け止めようともしない。ただ真正面からキメワザを食らう。それだけ。

 

「グッ……ガアアッ!!」

 

「なんか段々凶暴になってない?気のせい?」

 

「気のせいと思いたいけど………あの鎧、いや拘束具。壊れてない?」

 

次の瞬間、アマゾンの身をまとっていた拘束具が弾け飛んだ。

中から現れたのは腕が8本、首が3本、足が4本、しかも無数の触手つき…………うわ、触手なんてエロ本でしか見たことねぇぞ。

 

とにかく一目でコイツはヤバイと思える敵が目の前に立ちふさがっていた。

 

「2人とも、大丈夫ですか!?」

 

「おい、なんだあの怪物は」

 

「いろんな世界旅してたら、あんな生き物1匹ぐらい見たことあるんじゃない?」

 

駆けつけてくれたハルカさんと士さんも若干引き気味だった。

 

それぐらい目の前の怪物は、規格外過ぎた。




ダブルマイティ、ニューオメガ、ディケイドvsアマゾンネオ(暴走形態)という中々見られないであろう光景。
スナイプ、アクセルvsクラゲアマゾンもだろうけど。

次回はアマゾン編クライマックス……かな?多分

ではsee you next game!


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第63話 All right。それは信じてみたい言葉

アマゾン編クライマックス!


桐也side

 

9月24日(日)PM01時20分

 

研究所前 森林

 

『アタックライド!ブラスト!!』

 

「はっ!」

 

士さんがライドブッカーを分身させアマゾンネオを狙い撃つ。しかし放たれた弾丸は触手に阻まれる。

 

「クソったれ、コレならどうだ!」

 

『ファイナルアタックライド!ディ・ディ・ディ・ディケイド!!』

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『アクション!ロボッツ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

三方向からの同時射撃、もとい爆撃。アマゾンネオも触手で防ぎきれず爆炎に包まれた。でもどうせ、効いてないんでしょ?

 

「ボサッとしない!ダメ押し行くわよ!」

 

「へいへい!」

 

『爆走!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『マイティブラザーズ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

スパローからタイヤ型のエネルギー弾、キースラッシャーからオレンジと水色のビームがアマゾンネオにさらに叩き込まれる。

 

「流石に効いたっしょ」

 

「だといいがな……」

 

しかしアマゾンネオはピンピンしている。奴の咆哮は炎を消し、周りの木々をなぎ倒していく。マジモンのバケモノだ。

 

「これじゃ埒があかないな」

『W!オーズ!フォーゼ!ウィザード!鎧武!ドライブ!ゴースト!エグゼイド!ビルド!』

『ファイナルカメンライド!ディケイド!!』

 

『ドライブ!カメンライド!トライドロン!!』

『ファイナルアタックライド!ド・ド・ド・ドライブ!!』

 

士さんはコンプリートフォームに姿を変え、赤い車の仮面ライダー『仮面ライダードライブ』を召喚する。

士さんと動きをシンクロさせながらライドブッカーとドライブのトレーラー砲から車型のエネルギー弾が発射される。

 

「あいつの動きが止まってるうちに仕留めろ!」

 

「ったく、無茶言うんだから」

 

「行こう、九条くん!」

 

『AMAZON−STIKE!』

『バイオレント!クリティカルストライク!!』

 

「はっ、うるあぁぁぁ!!!」

 

「ふっ、うおおおおっ!!!」

 

自分とハルカさんのダブルライダーキックがアマゾンネオの背中に命中する。それでも目の前の怪物は動きを止めない。

 

「グゥッ………グガァァァァア!!!」

 

「なっ!?」

 

「嘘だろっ!?」

 

アマゾンネオの全身から放たれた衝撃波で俺たちは吹っ飛ばされてしまう。

 

おいおい、これホントに勝てるのか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

タイガside

 

同時刻

 

研究所内

 

『トライアル!マキシマムドライブ!!』

 

「こんのおぉぉ!!!」

 

クラゲアマゾンの触手をマシンガンスパイクで弾いていく照井。アイツが作ってくれた隙間を狙うんだ。そうすれば確実に叩き込める。

 

「花家先生!時間がない!」

 

「………………ッ!そこだッ!!」

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

一瞬の隙も見逃さないぞ俺は。

放たれた弾丸はクラゲアマゾンに確実に命中した。

 

吹っ飛ぶクラゲアマゾン。機材に叩きつけられ動かなくなった。これで倒したとは思えない。でもシャルを連れて逃げることは出来るはずだ。

 

「照井!シャルを連れて外に出ろ!」

 

「花家先生は!?」

 

「ケリをつけなきゃいけない相手は……まだいるんでな」

 

ガシャコンマグナムを天条に向ける。天条は不敵な笑みを浮かべている。

これだから科学者だの発明家だのは嫌いなんだ。幻夢の社長とかな。

 

「これで勝った気になるとは、いやはやおめでたい頭をしている」

 

そう言うと天条は懐からベルトを取り出す。アレは水澤がしていたネオアマゾンズドライバー…………成る程、捕まった時に解析でもされたか。

 

「アマゾン」

 

『NEO−ALPHA!』

 

天条は迷彩色のアマゾンネオアルファに姿を変える。腕にはガトリングとチェーンソーが合体した武器を装備している。完全に敵を殺すための武器だ。

 

「早くしろ!ここで俺とお前が倒れたら、誰がシャルを守るんだ!!」

 

「……ッ!絶対帰ってきてください。彼女には貴方が必要なんですから」

 

照井はシャルを連れて部屋を後にする。あとは俺がコイツをどうにかすればこの問題はケリがつく。

 

「懸命な判断だよ。彼女の死体を見ずに済むのだから」

 

「テメェ…………これ以上口を開いてみろ。ぶっ殺す」

 

「やってみたまえ………クズがぁ!!」

 

ネオアルファのガトリングが火をふく。間一髪で躱すがマントに風穴が開いている。かなり頑丈な筈なんだが、意図も簡単に穴が開くとは。

 

『ジェットコンバット!』

 

「第参戦術!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

 

Lv3に変身しガトリングで攻撃する。ネオアルファはそれを躱し、尚且つ自身もガトリングでコッチを攻撃してくる。

 

「チッ、動きが早い!」

 

「ノロマめ、疲れが見えているぞ」

 

一瞬の隙を突かれて背後に回られてしまう。

マズイと思った瞬間には遅かった。

 

奴のチェーンソーが俺の体を切り裂いた。鮮血が飛び散る。コイツ、ゲーマライダーの装甲も切り裂くのか!?

 

それから容赦なく俺の体を切り刻んでいくネオアルファ。切られる度に動きが鈍くなり、意識が遠のいていく。

 

「その程度か仮面ライダー!!」

 

そしてネオアルファのチェーンソーがスナイプの仮面を貫いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シャルロットside

 

私とタイガ先生の最初の印象は良くなかったと思う。

 

そう、良くなかったのは最初だけだった。私の中では。

 

いつからか忘れたけど、タイガ先生の事を鬱陶しく思わなくなった。タイガ先生はどう思ってたか分からないけど。

 

そんな時だった。日本で男の人……一夏がISを動かしたのは。

 

それから私は男としてIS学園に転校する為、男として生活をしていた。

そんな私を見てタイガ先生は、バレてもいいじゃないか。俺がなんとかするって言った。

 

その頃、いろんな事で頭がいっぱいになってた私は、タイガ先生にキツく当たってしまった。

 

「口ではなんとも言えるんだよ!誰だって!お母さんだってそうだった!大丈夫って言ってたのに、お母さん自身が殺されて…………もう……嫌だよ……私は!大事な人が目の前からいなくなるのが嫌なの!あんな辛い思い……したくないの!!」

 

全部吐き出した。頭の中にあるもの全部タイガ先生にぶつけた。涙も止まらなかった。

 

そして、そんな私を見てタイガ先生は言った。

 

「そうだな、口ではなんとでも言える。だから俺も勝手に言わせてもらう…………俺はお前の主従医だ。患者を放ったらかしにして医者が死ねるかよ。だから」

 

タイガ先生は私の隣に立って、

 

「お前こそ、俺に治される前にどっか行くんじゃねぇぞ。俺の側から離れるな………まあ、口で言ってもアレだならな。行動で示すさ」

 

それからタイガ先生はずっと私を守ってくれた。どんなにボロボロになっても、タイガ先生は約束を守ってくれた。

 

だから私もタイガ先生について行った。この人の『大丈夫』を確証のない言葉じゃなくて、信じられる言葉として受け止めるよう。そう思い始められたから。

 

 

「…………ん、あ……」

 

「あ、お目覚め?まあ、寝心地悪かったかもね」

 

意識が覚醒すると私は青い仮面ライダーにお姫様抱っこの形で抱き抱えられ、その青い仮面ライダーは全力で走っていた。

 

「あ、あの!」

 

「ゴメン!質問は後!!」

 

足元に銃弾が着弾する。走る足を止める青い仮面ライダー。目の前には迷彩色の仮面ライダーが立っていた。

 

「追いついたぞ照井ハルナ。シャルロット・デュノア。花家タイガの後を追うのはどっちかな?」

 

「花家先生………」

 

「今………なんて……」

 

迷彩色の仮面ライダーはタブレットを取り出し、映像を流す。そこに映っていたのは迷彩色の仮面ライダーに頭を刺されるスナイプの姿が映っていた。

 

「これが現実だ……お嬢さん!」

 

高笑いする迷彩色の仮面ライダー。

 

でも、

 

 

「そう、これが現実なら…………」

 

「俺はまだ……死んでねぇ」

 

砲撃が迷彩色の仮面ライダーを吹き飛ばす。

 

吹き飛ばしたのは仮面ライダースナイプ。

レベルは50のバンバンシミュレーション。

 

そして隣には、

 

「俺の仲間を、返してもらうぞ!!」

 

インフィニティーズのみんなが立っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

桐也side

 

アマゾンネオとの戦いは森を抜け、浜辺にまで及んでいた。

状況は最悪って程じゃないけど良くはない。しかも爆走バイクはエネルギー切れで使えない。

 

「いよいよマズイかも?」

 

「軽口叩ける程度には余裕そうね」

 

「士さん、何か手は無いですか?」

 

「…………ある。時間がかかるけどな」

 

「んじゃ、時間稼ぎますか」

 

手があるならそれに乗るしかない。時間ぐらい幾らでも稼いでやる!

俺と虚先輩でアマゾンネオを挟み込む。左右から同時にスパローとキースラッシャーで攻撃する。ハルカさんは無数に伸びる触手を切り刻んでいる。

 

『アタックライド!イリュージョン!!』

 

3人に増える士さん。

 

『クウガ!アギト!龍騎!ファイズ!ブレイド!響鬼!カブト!電王!キバ!』

『ファイナルカメンライド!ディケイド!!』

 

1人は胸のカードを別の9人の仮面ライダーに変える。

 

「さて、一か八かやってみるか」

 

『カメンライド!ジ………オ……ウ!』

 

音声が途切れ途切れだがもう1人の士さんは別の仮面ライダーに姿を変えた。顔に『カメンライダー』と刻まれた仮面ライダージオウだ。

 

「「「後悔させてやるぜ」」」

 

準備万端みたいだな。アマゾンネオから距離をとって攻撃態勢に入る。

 

コンプリートフォームの2人がカードをかざす。するとカードは消え、代わりにディケイドのライダーズクレストがアマゾンネオを拘束する。そしてそれぞれ9人のライダーのライダーズクレストがコンプリートフォーム2人の前に現れる。

 

『ファイナルアタックライド!ジ………ジ………オウ!!』

 

「チッ、力が安定しない。これが最後のチャンスだ!」

 

「決めてやるよ………」「行くわよ……」

 

『『マイティ!ダブル!クリティカルストライク!!』』

 

『AMAZON-STRIKE!』

 

「これで決める!」

 

最初に動いたのはハルカさん。動けないアマゾンネオにムーンサルトを叩き込む。

 

次に動いたのは士さん。3人のディケイドのライダーキック……20人分のパワーが込められたディメンションキックが叩き込まれる。

 

最後は俺と虚先輩。最後の力を振り絞って、最後のダブルクリティカルストライク。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

「たああああっ!!!」

 

「ハルカ!」

 

「はい!」

 

ダブルクリティカルストライクを胸で受け止めるアマゾンネオ。その背中を士さんとハルカさんは自身の刃で切り裂いた。その一瞬の怯みが俺たちに勝機を与える!

 

「「くらいやがれぇぇぇ!!!!」」

 

必殺のダブルクリティカルストライクはアマゾンネオの体を貫き、ヤツの体は爆散した。

 

それと同時にガシャットのエネルギーが切れたのか、変身が解除される。これでマイティブラザーズにはしばらく変身できないな……。

 

「…………はぁ……はぁ…………ゲーム、クリアです」

 

「へへっ…………お疲れさん……」

 

諦めずに積み重ねた結果だ。地道な努力が勝利の鍵になる………自分1人だと諦めてるね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一夏side

 

「この爆発……へへっ、キリヤんやったな」

 

俺と箒、セシリア、鈴、ラウラ、楯無さんは専用機でこの島に上陸。研究所でタイガ先生を救出して、今現在アマゾンネオアルファとクラゲアマゾンと戦闘中だ。

 

「我々もクジョーに続くぞ!この勝負、絶対勝つ!」

 

「ああ!」

 

「当然!アイツばっかにいい格好させてたまるかっての!」

 

両腕のプラズマブレードでクラゲアマゾンの触手を切り裂いていくラウラ。

箒と鈴も触手を切り裂いていく。

 

クラゲアマゾンの対処法は分かってる。アイツは遠距離攻撃……というよりは光線技が有効だ。だからセシリアのライフルが直撃したし、タイガ先生も一撃叩き込めた。

 

「セシリア!俺たちが隙を作るから一気に叩き込め!!」

 

「分かりましたわ!」

 

木の枝を拾いドラゴンロッドに姿を変える。アイツの触手を切ってもダメなら、全部ロッドに束ねてやる!

 

「なるほどな。切ってダメなら、集めて動きを封じるか!」

 

インフィニティーズの武器は普通の兵器よりも頑丈だ。この程度で壊れるほどヤワじゃない。

 

「大人しくしなさい、ってのよ!」

 

「今よセシリアちゃん!」

 

俺、箒、鈴、ラウラ、楯無さんがクラゲアマゾンの触手を全て武器に巻きつける。動きが止まっている今がチャンスだ。

 

「セシリア!」

 

「!シャルロットさん、貴女……!」

 

クラゲアマゾンに狙いを定めるセシリアの隣にガシャコンマグナムを手にしたシャルが立つ。あいつクラゲアマゾンを目の前にしてるのに大丈夫なのか!?

 

「私も……いつまでも自分を………保っていられない…………だから、手を貸して!」

 

「当然ですわ。私たちは仲間ですもの!」

 

シャルはインフィニットオレンジに姿を変えるとガシャコンマグナムを構える。

 

「私の大事な人達は……絶対に傷つけさせない!」

 

『キメワザ!バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「スターライトブレイク!フルパワー、シュート!!」

 

シャルとセシリアの放った弾丸はクラゲアマゾンの顔面を消しとばした。

それと同時に俺たちの武器に巻きつけていた触手も黒い液体に姿を変えた。

 

「や、やっ……た……」

 

「シャル!?」

 

無我夢中だったのか、シャルは気を失いその場に倒れてしまった。

 

「…………お疲れ様シャル。今はゆっくり休め」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

タイガside

 

「はあっ!!」

 

助けに来てくれた更識からガシャットギアデュアルβを借りた俺はLv50のシミュレーションゲーマーに変身。バンバンシミュレーションの砲撃がネオアルファに炸裂する。怯んだネオアルファに照井がエンジンブレードで切り裂く。

 

「まだまだぁ!!」

 

「グゥッ!?」

 

「花家先生!」

 

「食らいやがれッ!!」

 

照井がエンジンブレードでネオアルファをかち上げ、俺が砲撃を叩き込む。吹っ飛ばされたネオアルファは崖から落ち、浜辺に叩きつけられる。

 

「ナメるなぁ!!」

 

しかしネオアルファも負けてはいなかった。チェーンソーが照井に叩き込まれる。装甲の薄いアクセルトライアルじゃ致命傷だ。

 

それでも照井は、

 

「ナメてるのは……どっちよ………不死身の男の娘は不死身なのよ……これが人間の根性ってヤツよ…………人間ナメんなぁぁ!!!」

 

『アクセル!マキシマムドライブ!!』

 

エンジンブレードをネオアルファの頭に叩きつける照井。ネオアルファの顔半分までエンジンブレードが深く突き刺さった。

 

『バンバン!クリティカルファイア!!』

 

「退け、照井!!」

 

最大級の火力をネオアルファに叩き込む。今のボロボロの体の俺が使えば反動は凄まじいものだ。下手すりゃ体が壊れちまいそうだ。

 

だとしてもッ!俺は!

 

「オラァァッ!!!」

 

爆炎に包まれるネオアルファ。しかし炎の中にヤツの姿が見える。

 

「な、何故だ!?何故貴様は戦える!?あの時確実に致命傷を与えたはずだ!」

 

「ああ、確かに死ぬかと思ったぜ。実際今俺は右目が見えてねぇしな………でもな、俺はアイツと約束したんだ。口じゃなくて行動で示す。アイツが安心して笑って過ごせるために…………俺がシャルの居場所を守る!それまで俺は絶対に死なねぇ!!」

 

バンバンシミュレーションの装甲を脱ぎ捨て、一気に駆け出す。

ネオアルファもエンジンブレードを抜き、炎の中から飛び出してくる。

 

「俺は死なん?バカめ!貴様は自ら弱点を晒したのだ!!」

 

ネオアルファの姿が消える。

 

「バカはテメェだろ。弱点ってのは守らなきゃいけないだろうが」

 

『バンバン!クリティカルファイア!!』

 

俺の裏拳が右後方にいたネオアルファの顔面に叩き込まれる。

お前なら見えてない右側を狙ってくると思ったぜ。

 

「花家先生!」

 

照井からエンジンブレードを受け取る。エレキトリックを発動させネオアルファの動きを封じる。

 

「これで終わりだ天条。呆気ない最期だな」

 

「貴様…………ドクターのクセに人である私を殺すのか!?仮面ライダーである前にドクターだろう貴様!!だというのに!!」

 

「………………俺はドクターでも闇医者だ。料金払わねぇ奴に手術するつもりはねぇ」

 

それに、と付け加える。

 

「お前はもう『ヒト』じゃねぇだろ」

 

『エンジン!マキシマムドライブ!!』

『バンバン!クリティカルファイア!!』

 

俺の一振りはネオアルファを真っ二つに切り裂いた。そのまま奴は黒い液体となってその場で消滅した。

 

一度押し始めたら案外呆気ないものだ。だが、これで長い因縁も終わりを迎えるのか。

 

「やりましたね……花家先生」

 

「………………」

 

「花家先生?花家先生!」

 

「……………………シャル…」

 

「花家先生!しっかりしてください!花家先生!!」

 

悪いなシャル。必ず戻るから……今は少し……休ませてくれ…………。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おー終わったー終わったー。いやあ、仮面ライダーのみんな頑張るねぇー…………もしかして『諦めない力が俺たちを勝利に導いたぜ、ブイ!』みたいなこと思ってるのかなぁ?

 

実際は私が作ったアマゾン細胞を脆くするこの『アマゾン死滅してやるぜ君』で弱体化したから都合よく倒せたのに。

 

 

ま、これからが本番だよ。いっくん、箒ちゃん、九条桐也くん」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9月25日(月)

 

自分たちはアマゾン、天条タカアキとの戦いに勝った。

 

奴の研究所にはアマゾン細胞に関する研究論文に仮面ライダークロニクルに関する資料も発見した。それらは今後解析してくそうで。

 

ハルナさんとハルカさんは士さんに連れられて元の世界に帰っていった。

ハルカさん少しダルそうにしてたけど体大丈夫かな?

ハルナさんは逆にその傷であそこまで元気なのか分からなかった。可愛い妹分に会えるから元気だ、とか言ってたけど。

士さんはまた別の世界に行くみたいだ。あの人の旅はいつ終わることやら。

 

シャルちゃんはあの時クラゲアマゾンを相手にして暴走しなかったらしい…………けど、それは一時的なものみたいで、やっぱりこれからも治療が必要みたいだ。

 

んでそのシャルちゃんの主従医のタイガ先生だけど、結構な重症なくせにもう目を覚ましてる。残念ながら右目は治らなかったみたい。

だけど、あの2人、いつも以上に仲良しさんになっちゃって。熱々なんだから〜。

 

それからインフィニティーズのメンツだけど、勝手に学園から抜け出したから反省文プラス反省室行きらしい。けど織斑先生もそこまで鬼じゃなかった。小一時間で全員出てきた。

 

自分と虚先輩は所持してるガシャットの殆どがエネルギー切れに。自分はギリギリチャンバラ以外、虚先輩はマイティアクション以外ガス欠だ。

 

でも、士さんがプレゼントって、17本のガシャットをくれた。ミラーラビリンス龍騎とかモシモシファイズとか、変な名前が多いけど、大事に使わせてもらうよ。

 

 

 

 

 

そして自分は…………今、とある病院の病室前に立っている。

 

俺も、過去と向き合う時が来たようだ……

 




これにてアマゾン編完結でございます。少し駆け足気味になったのが悔しいところ。

次回はトゥルーエンディングになります。その次からは『桐也vs一夏』編第1部サラシキ編になります。3人のサラシキの関係が今明らかに?

ではSee you Next game!


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トゥルーエンディング 〜金髪医者と銀髪軍人〜

これは少し未来の物語


「久しぶり〜ラウラ」

 

「…………おい」

 

とあるファミレスの一角。私は久しぶりにシャルロットと待ち合わせをしていた。最後に会ったのはいつだったか。多分2、3年前だとは思うが…………にしてもだ。

 

「なんだその姿は……」

 

「あはは……ちょっとバタバタしてて」

 

放射線科医師であるシャルロットがバタバタするのは仕方ないかもしれない。だが今のシャルロットの姿は酷かった。

 

ボサホザの髪、目の下の隈、ヨレヨレの白衣。

高校時代、私に散々オシャレのアレコレを言っていた奴と同一人物とは思えない。

 

「髪ぐらい解いたらどうなんだ?」

 

「時間なくて……」

 

「まったく………じっとしていろ」

 

鞄からアレコレ取り出しシャルロットの髪を解く。もともとキレイでサラサラな髪がここまで酷くなるとは……

 

「あはは、ラウラこういうの出来るようになったんだ」

 

「いつまでも昔の私と思うなよ。これくらいできる」

 

「IS学園のころは私がしてたのにね」

 

「まったくだ」

 

ふと昔のことを思い出す。10年くらい前になるのか。仮面ライダーとグロンギの戦いは。

 

あの頃の私は未熟だった。些細なことで仲間にあたり、何度迷惑をかけたことか。

 

それから卒業し、黒ウサギ隊の隊長として再び舞い戻ったわけだが、やれ甘くなっただの、やれ可愛くなっただの、以前より部隊に締まりがなくなってしまった気がする。だというのに部隊の戦果は前よりも良くなった。

 

「ほら、だいぶマシになっただろう」

 

「ありがとラウラ……ふぁ…」

 

「眠いなら少し横になったらどうだ。幸いにも他に客の姿はない。夜中の11時だからな」

 

「じゃ、お言葉に甘えて………」

 

私の膝枕でスヤスヤと寝始めるシャルロット。IS学園のころはコレが逆の立場だったというのに。今ではコイツの方が甘えん坊になってしまった。

 

いや、甘えん坊なのは昔からか。

 

「それにしても、この街も変わらない………クジョーが高校時代最後に戦った場所もこの近くか……やはり時が進めば街も元どおりになるか」

 

クジョーの最後の戦いを思い出す。あそこまで無茶する男は初めて見た。絶対にアイツを倒すという気迫が伝わってきた。まあ、最後は自分の命を優先して、私たちの元へ帰ってきたが。

 

「今思えば、誰よりも人間臭かったのはクジョーなんだろうな」

 

怖いことから逃げ、めんどくさいことから逃げ、嫌なことから逃げ、でも結局は立ち向かわなくちゃいけない。仕方ないと受け止め、全力で立ち向かう。それが九条桐也という男だった。

 

「…………ううん………タイガ………先生…」

 

「なんだ、夫婦になってもその呼び名なのか?」

 

シャルロットの頭を優しく撫でる。きっと花家先生もシャルロットのことを『シャル』と呼んでいるのだろうな。それこそ、シャルロットにとっては一つの幸せなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

今、シャルロットは幸せそうな笑顔をしている。

1人でも多く、こんなマヌケで幸せそうな笑顔を、守りたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

トゥルーエンディング 〜花家シャルロットとラウラ・ボーデヴィッヒ〜




次回から、新章『桐也vs一夏編』第1部サラシキ編です!

ではSee you Next game!


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桐也vs一夏!過去と闇!
第64話 サラシキの章 Paradox参戦


遅くなりもうした。新章開幕なり!


10月1日(日)AM10時24分

 

「ふあぁ〜」

 

「お眠かな〜キリヤん?」

 

「最近忙しすぎて笑えない……」

 

整備室にて。

 

自分は本音の工作を見ていた。工作って言っても図画工作じゃない。なんでもプロトガシャットを改良しているらしい。

てか改造できるんだな本音。技術者としてかなり優秀って先輩から嫌ってほど聞かされてたけど。

 

「ほほ〜ここがこうなってるだね〜」

 

「自分には意味不明だ……」

 

ゲームをするのは得意だけど、作るのは無理。てか作る気もないけど。

 

「それにしても最近、木綿季さんそわそわしすぎじゃない?」

 

「まあねぇ〜、実の妹が海外から帰ってきたんだもん」

 

「あ、やっぱり会長さんって木綿季さんの妹だよね?仲悪すぎじゃない?」

 

更識楯無と更式木綿季。同じサラシキなんだから関係はあると思ってた。

てかあからさますぎるんだよね。会長さんは露骨に木綿季さん避けてるし、木綿季さんは物陰から会長さん見守ってるし。

 

「なんであんな仲悪いの?」

 

「流石に私の口からでは言えないよ〜。説明も下手だしね〜」

 

「やっぱ本人に聞くしかないか……」

 

携帯を開き木綿季さんにメールを送る。

 

『至急、整備室に来られたし。さもなくばアンタのセーブデータを全て消す』

 

「よし」

 

「鬼だねキリヤん」

 

 

5分後。廊下を全速力で走る音が聞こえる。

 

「ちょっと桐也くん!?このメールはどういう意味!?」

 

「まあ、とりあえず座ってよ」

 

全力で走ってきた木綿季さんを椅子に座らせる。自分と本音も対面で座る。

 

「自分の質問に答えてね。答えなかったり嘘ついたらセーブデータを1つずつ消していく」

 

「鬼!悪魔!」

 

「簡単な質問だよ…………会長さんとどういう関係?」

 

わーわーわめいていた木綿季さんの動きが止まった。それと同時に目をそらす。やっぱりワケありじゃんか。

 

「本音ちゃん、助けて……」

 

「それはむりぽ〜」

 

「ここにも悪魔が……………いいえ、いずれ話すつもりだったし…………話すわ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻 食堂

 

「あら、お勉強かしら一夏くん」

 

「最近お前は外に出ずっぱりだから、今日は中にいろ、って言われまして……仕方なしに勉強です」

 

「うんうん、向上心がある子はお姉さん好きよ」

 

食堂で勉強をしていると楯無さんが話しかけてきた。楯無さんも暇そうだなぁ……。

 

「あ、そうだ。木綿季先生さっき全速力で走って行ったな……」

 

「…………話題作りが下手ね一夏くん」

 

「すいません…………でも、気になるんです。楯無さんとどういう関係があるのか」

 

楯無さんは一瞬険しい表情になったが、すぐにいつも通りの楯無さんに戻った。

 

「…………そうね、私もいつまでも意地をはってる場合じゃないか……」

 

楯無さんは俺の隣に座ると話し始めてくれた。

 

更識家の過去を。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

更識家は代々『楯無』の名を受け継いでいる。楯無こそ更識家一番の実力を誇り、暗部としての重要な役割を担う。

 

そしてその楯無の名を継ぐ『はず』だった人がいる。更識木綿季。更識家の長女だ。

 

成績優秀、スポーツ万能、何事においても優秀だった木綿季。楯無の名を継ぐには相応しい人材だった。

 

しかし木綿季は楯無の名を拒んだ。

 

木綿季には夢があった。それはゲーム制作会社に就職して、世界で一番面白いゲームを作ること。

木綿季は更識家の家系の中で一番のゲーム好きだった。故に夢を持ってしまった。

 

それでも木綿季に楯無の名を継がせたい更識家。木綿季は拒み続け、遂には家を出て行ってしまった。その後更識家から勘当扱いにされてしまった木綿季。

それから彼女は更識を更式に変え、更式木綿季として生きることを選んだ。

 

 

 

では、受け継がれなかった楯無はどうなるのか。

 

 

 

次に優秀な人に受け継がれるのだ。

 

それが楯無………いや、更識刀奈だ。刀奈こそが本当の名なのだ。

 

刀奈は楯無の名を継ぐことを拒まなかった。木綿季と同じぐらい優秀な刀奈。楯無を名乗ることになっても優秀なことに変わりはなかった。

 

いや、優秀すぎたのだ。優秀すぎた故、周りからの期待が重くのしかかった。何度も挫けそうになった。それでも『私は楯無だ』と何度も自分に言い聞かせてきた。

 

結果、刀奈は歴代で最強の楯無となった。

 

 

 

 

 

木綿季は刀奈が楯無になったことを聞いて、酷く自分を責めた。自分のせいで妹の未来を壊してしまったと。楯無となった以上、自由に夢を見ることは出来なくなる。

木綿季は今でもそれを後悔している。あの時自分が楯無になっていればと……。

 

 

対する刀奈は自分に何も言わずに出て行ったことを怒っていた。朝起きたら姉がいなくなっていた。両親に聞けば姉は勘当扱いになったと言う。楯無を継げと言われたことよりも、姉が何も言わずに出て行ったことにショックを受けていた。

 

 

木綿季からそれを聞いた桐也と、

 

刀奈からそれを聞いた一夏。

 

離れていても、考えることは一緒だった。

 

「「うん、とりあえず謝ろうか」」

 

「あのねぇ?自分が妹の夢見る権利を奪ってしまったって思うならよ?まず謝ろうよ。物陰から見てる場合じゃないよ?」

 

と桐也

 

「どうして?って思うならまず聞きましょうよ。露骨に避けるのは違いますよ。まずそのことを謝ってから聞いてみましょう?」

 

と一夏

 

その後も2人の説得?が続き、

 

「「分かりました………謝ってきます……」」

 

と年上2人を謝らせに行かせたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ……なんか説教みたいになっちゃった?」

 

「あのくらいがちょうどいいんだよ〜」

 

本音は再びガシャットの改良に取り掛かった。自分もなんかやること見つけてやりたいけど……

 

「やることねぇなぁ…………先輩に電話しよ」

 

虚先輩に電話をかける。するとすぐに繋がった。

 

『ナイスタイミングね。今貴方に電話しようと思ってたの』

 

「自分に?嬉しいねぇ。何の用?」

 

『仮面ライダークロニクルの時間よ』

 

「オゥ………………りょ、すぐ行きまーす」

 

電話を切る。このタイミングは最悪だよバカ。爆走バイクはまだ使えないし………士さんからもらったアレらを使うか。

 

「ちょっと行ってくるわ」

 

「待ってるね〜」

 

 

というわけで現場到着………って、

 

「ライドプレイヤー同士の戦いは禁止じゃなかった?」

 

そこではライドプレイヤー同士が戦っていた。更に爆走バイクのバグスター、モータスと戦うエグゼイド、虚先輩の姿もあった。

 

「さりげなくレジェンドライダーガシャット使ってんだからあの人」

 

虚先輩もマイティアクションX以外が使えない状態だ。だから士さんからもらったレジェンドライダーガシャットを使って戦っている。

 

虚先輩が使っているのは『ミラーラビリンス龍騎』。鉄仮面のドラゴンライダーだ。

 

「んじゃ、自分も行きますか」

 

『モシモシファイズ!』

 

自分が起動させたのは『モシモシファイズ』。携帯電話で変身する仮面ライダーだ。

 

「変身!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!モシモシファイズ!モシモシファイズ!!』

 

ファイズゲーマーに変身してライドプレイヤーたちを退かしていく。

 

「はいはい邪魔だよっと!」

 

「来るのが遅かったわ、ね!!」

 

「姉妹の仲直りを手伝ってただけだよっ、と!」

 

モータスを2人で蹴り飛ばす。それから虚先輩はドラグセイバーとガシャコンブレイカーの二刀流でモータスを追い詰める。

 

自分は乱闘してるライドプレイヤーたちを止めに入る。ゲームは楽しくプレイしましょうってね。

 

「はーい、そこまでだよっと!」

 

「邪魔すんな!」

 

「退けよ仮面ライダー!」

 

「散々な言われよう………あのね?自分もそこまで言われたら手が出ちゃうよ?」

 

ライドプレイヤーの1人を殴り飛ばす。勿論本気で。こういうのは本気でやらないと。

 

「まったく、騒ぎを大きくしてどうするのよ!」

 

『ミラーラビリンス!クリティカルストライク!!』

 

「はあっ!だあぁぁぁ!!!」

 

炎を纏ったドラグセイバーがモータスに炸裂する。怯んだモータスに更に炎の連続攻撃を叩き込む。オーバーキルにも程があるよ先輩?

 

「これで、終わっ「そこまでだぜエグゼイド」なっ!?」

 

いきなり虚先輩が吹っ飛ばされる。

何事かとモータスの方を見ると……

 

「テメェ……ダグバ!」

 

「久しぶりだなレーザー。一夏はいないのか?」

 

ダグバが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。あの野郎に吹っ飛ばされたのか。

 

「名人はいねぇよ。自分じゃ不満か?」

 

「…………ひー、ふー、みー……いや、この数なら不満って程じゃない」

 

そう言うとダグバは懐からガシャットを取り出しやがった。形はタイガ先生や会長さんが持っているガシャットと同じ。なんであいつが?

 

「俺とゲームしようぜ」

 

『PERFECT PUZZLE!』

『what's the next stage?』

 

「変身」

 

『DUAL UP!Get the glory in the chain!PERFECT PUZZLE!』

 

ダグバはガシャットを操作して青い仮面ライダーに変身した。その姿は明らかに自分たちのゲーマライダーを凌駕していると見える。

 

「そうだな……仮面ライダーパラドクスってのはどうだ?正義の味方仮面ライダーが人類に牙をむく。矛盾したライダーが俺だよ」

 

「ハッ!言ってろ。自分たちに勝てると思ってんのか?」

 

「油断しないで。相手の力は未知数よ」

 

「上等だ……ノリにノッてくぜ!!」

 

『モシモシ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

パラドクス目掛けてガシャコンスパローで攻撃する。しかしパラドクスは避けようとしない。

 

「それじゃあ、遊ぼうか」

 

パラドクスはスパローの攻撃を手で受け止めるとコッチに投げ返してきやがった。

なんとか自分は回避できたけど、虚先輩が食らってしまった。

 

いや、避けられなかった。避けてしまえば背後にいたライドプレイヤー達に当たってしまうからだ。

 

「先輩!体力が!」

 

「いい、から………目の前の敵に、集中しなさい!!」

 

「先輩…………くっ!」

 

複数のライドプレイヤーに怪我した虚先輩。

あらら……結構ピンチ?

 

「まあ、簡単に負けてやるつもりはねぇぜ」

 

「ハハッ、心が躍るなァ!!」




パラドクス参戦です!え、サブタイで分かってた?
そしてバイク名人オリジナル設定!更識三姉妹なり!長女の木綿季、次女の刀奈、三女の簪で構成されてます。出来れば簪は次回に出せるかな?

次回はレーザーvsパラドクス!そして姉妹は仲直り出来るのか!?

ではsee you next game!


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第65話 サラシキの章 史上最強のKNOCK OUT!

何だかんだ遅くなって、何だかんだ内容がぐだった。いつも通りだね!


10月1日(日)AM11時46分

 

『ステージセレクト!』

 

自分とパラドクスだけをステージセレクトで場所移動させる。こうすれば虚先輩や他のライドプレイヤー達に被害が及ぶことはない。

 

『名探偵ダブル!』

 

2人で1人の仮面ライダー、Wの力が宿ったガシャットを起動させる。ダグバの変身したパラドクスは未知数すぎる。オールラウンドに対応しないと。

 

『ガッチャーン!レベルアップ!!』

『ハーフボイルド!数えろ!お前の罪を!名探偵ダブル!!』

 

「へえ、まだ新しい姿があるんだな」

 

「悪いけど初乗りだ。手加減しろよ」

 

パラドクス目掛けて蹴りを放つ。レーザーの蹴りよりも早く鋭い一撃。

しかしパラドクスはそれをいとも簡単に躱す。

 

「まだまだこんなもんじゃないだろ?」

 

「当たり前だろ」

 

自分の言葉を合図に緑色のボディが赤色に変わる。そして炎を纏った拳をパラドクスに叩き込む。流石に多少はダメージが入ったようだ。

この隙を逃さずラッシュを叩き込む。与えられる時に少しでもダメージを稼いでおく。ゲームの基本だ。

 

「よっ」

 

「おらあっ!!」

 

「ハハッ、そう熱くなりすぎるなよ」

 

パラドクスが反撃してくる。しかし攻撃はどれも自分にあたることはなかった。いや、当てられなかった。

 

「テメェ、ふざけてんのか?」

 

「悪いな、この姿に慣れてないんだ」

 

そういうとパラドクスの動きがガラリと変わる。パンチやキックのキレが良くなった。つまり押されてる!

 

「チッ!コイツなら!」

 

今度は黒色の方を銀色に変える。さらに専用武器、メタルシャフトを取り出しパラドクスを攻撃する。棒の使い方は名人が良く使ってたから何となくわかる。

 

「ハッ!オラッ!」

 

「おっと、いいねぇ!」

 

パラドクスはメタルシャフトを掴むと自分を引き寄せ拳を叩き込んできた。いきなりの一撃で意識が飛びかける。

 

「左側だけ硬いな」

 

「ッ!ナメんなよ!」

 

今度はパラドクスに頭突きをおみまいする。悪いけど自分の頭突き結構痛いよ?

メタルシャフトを手放し、ボディの色を緑と黒に戻す。

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

キメワザを発動させる。自分を中心に風が吹き始める。やがて風は右足に集中し、右足は風の鎧でコーティングされた。左足も紫色の炎に包まれている。

 

「キメワザか。ならコッチもパラドクスの真価を見せる時だ」

 

パラドクスが手をかざす。するとゲームエリア内にあったブロックや宝箱、ドラム缶からエナジーアイテムが飛び出してきた。

パラドクスはそれらを自身の目の前に集め、パズルのように動かし始めた。

 

「やられる前にやる!」

 

「遅いぜ」

 

『名探偵!クリティカルストライク!!』

 

今の自分のドロップキックは今までのライダーキックの中で最速だ。風の力でブーストしてのライダーキック。

だけどパラドクスはそれを避けた。更に隙だらけになった自分に腕を伸ばして攻撃してくる。

 

「伸縮化と高速化か!?」

 

「あったり〜。パーフェクトパズルは周囲のエナジーアイテムを自由に組み合わせることができる。こんな風にな」

 

更にパラドクスはエナジーアイテムを組み合わせていく。

自分はそうはさせまいと黒色のボディを青に変え、専用武器トリガーマグナムで狙い撃つ。

 

「おいおいコンボ中に邪魔するなんてマナー違反だぜ」

 

「テメェらの口からマナーって言葉が出ていることに驚いてるよ」

 

更に緑色のボディを黄色に変える。黄色と青、この組み合わせなら全弾必中だ。自分はパラドクスの目の前に並ぶエナジーアイテムを全て撃ち落とす。

 

「はぁ…………しらけるぜ」

 

「勝手に言ってろ。次はお前の頭を狙う」

 

「いいぜ?やってみろよ。俺には効かないけどな」

 

パラドクスはギアデュアルを抜き、ダイアルを回す。

 

『KNOCKOUT FIGHTER!』

『The strongest fist!"ROUND1"Rock & Fire!』

 

「大変身」

 

『DUAI UP!Explosion Hit!KNOCK OUT FIGHTER!』

 

パラドクスの肩の装甲が外れ両腕に装着され、顔が回転し別の顔になる。ノックアウトファイター……成る程、格闘ゲームか。ギアデュアルを使ってる時点で2つのゲームの力を持っているとは思ったけど、パズルと格闘ゲーム…………対照的だな。

 

「さぁ、第2ラウンドの始まりだ」

 

「やってやるぜ」

『刀剣伝ガイム!』『ギリギリチャンバラ!』

 

自分はフルーツ鎧武者、仮面ライダー鎧武の力が宿ったガシャットを起動させる。更にギリギリチャンバラをも組み合わせた侍コンボ。

 

『ガッチャーン!レベルアップ!』

『刀剣伝デンデンデンデデデン!フルーツチャンバラ!!アガッチャ!ギリギリギリギリチャンバラ!!』

 

鎧武ゲーマーの青い部分が黒く染まり、金色の部分は銀に染まる。

これこそがチャンバラ鎧武ゲーマー、又の名をジンバーゲーマー。

 

「クソッタレが。デカイの一発は決めてやる!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻、IS学園

 

「…………」

 

「…………」

 

かれこれ30分以上、木綿季と楯無はこの沈黙の中気難しい顔で過ごしていた。一夏と桐也に謝ってくると言った手前何もせずに帰るわけにもいかず、非常に気まずい空気が流れていた。

 

「…………ね、ねぇ楯無さん?……いや刀奈」

 

「な、何かしら更式先生……じゃなくて、お姉ちゃん…」

 

お互いに男子に言われたことが効いてるのか、少しだけ素直になれている。

 

「先に、どうぞ刀奈」

 

「じゃあ、聞かせてもらうね……どうして、あの時何も言わずに出て行ったの」

 

「それは………言えなかったの。貴女になんて言われるか分からなかったから……怖かったの……」

 

「お姉ちゃん…………そんなの怒るに決まってるじゃない」

 

「え?」

 

木綿季から腑抜けた声が漏れた。

 

「夢があるから楯無継がずに家を出る!?私だって夢があったのよ!?世界一のラーメン屋さんをこの手で作り上げるって夢が!」

 

「え、ええ?そうだったの!?刀奈ラーメン好きだっけ?」

 

「嘘よ嘘。でも夢はあるの。世界で一番のドクターになる。それが私の夢。幼い頃からずっと胸にしまっていた………夢」

 

「刀奈………」

 

「…………実はね、私もずっと考えてた。私がお姉ちゃんの立場ならどうするかなって。いい案なんて思いつかなった。結局お姉ちゃんみたいにするしかなかったのかなって」

 

これはどちらかが夢を諦める必要があったのかもしれない。

木綿季がそのまま楯無を継げば、刀奈はドクターになる夢を追いかけられた。

そして今の状況がその逆だ。

 

「考えることは一緒なのね……」

 

「そうだね……ごめんなさいお姉ちゃん」

 

「ううん、謝るのは私だよ。ごめんね刀奈」

 

「だから謝るのは私だって」

 

「いやいや私だから」

 

「いやいやいやいや」

 

「「…………ふふっ」」

 

こうなっては決着がつかないのは姉妹である2人がよく知っている。

 

「こればっかりは、桐也くんに感謝しないとね」

 

「私も、一夏くんにお礼言わないと」

 

いつのまにか、2人の表情は優しい笑顔に変わっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うわあっ!!」

 

「おいおい、この程度か?シラけるぜ」

 

そう言いながらもパラドクスの拳が俺の体力を削っていく。このままだと負ける!

 

「ッ!うらぁ!!」

 

「甘いっての!!」

 

パラドクスは俺のソニックアローとスパローの攻撃を左の拳で受け止め、カウンターのボディブローを叩き込んできた。

 

避ける隙もなくモロに食らってしまう。息が出来なくなる。コイツの拳一発一発がキメワザ級の威力だ。しかもこれが通常攻撃?冗談じゃない。

 

「くあぁぁ!!」

 

「シッ!」

 

パラドクスの拳を躱し、スパローを叩きつける。少しの遅れ、少しの油断が命取りだ。少しでも早く、一撃でも多く叩き込め!

 

「ッ!やるじゃ、ないか!!」

 

「ここで負けれるかぁ!!」

 

『キメワザ!刀剣伝!クリティカルストライク!!』

 

ハイキックをパラドクスに叩き込む。しかし左腕でガードされてしまう。

 

「いいラッシュだった、ぜ!!」

 

「ごはっ!!」

 

更にパラドクスの全力の拳が俺に直撃する。吹っ飛ばされて、そのまま壁に激突する。

 

もう、立ち上がることができなかった。

 

「ん?もう終わりか?………まあ、準備運動にはちょうど良かったかな」

 

「……ッ!」

 

「本命は一夏だしな。お前はちょうどいい前菜だったよ」

 

「……ッ、ァァァ!!」

 

「やめとけって………」

 

『キメ・ワザ!デュアル・ガシャット!』

『KNOCK OUT !CRITICAL SMASH!!』

 

パラドクスが拳を軽く突き出す。それだけで凄まじい突風が吹いた。

 

「次は…………死ぬぜ?」

 

パラドクスの姿がダグバに戻る。そのまま奴は歩いて離れていった。

 

 

 

 

 

 

俺の背後にあったビル数件は、跡形も無く消し飛んでいた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

10月1日(日)PM05時32分

 

「一夏くん」

 

「あ、楯無さん。仲直り出来たんですか?」

 

「ええ。いざ話してみたらあっという間にね」

 

食堂にて。勉強を終えた俺のところに楯無さんがやってきた。その表情はとてもニコニコしている。

 

「何事も話してみるものね。今の今まであんな態度とってた自分がバカみたいよ」

 

「そうですよ。何事も話してみないと」

 

何事も話してみないと。

自分の言葉を頭の中で何度も繰り返す。

 

そうだよ。何事も話してみないとな……

 

「それはそうと………私からお願いがあるんだけどぉ?」

 

「ん、なんですか?」

 

「お願い!……私の妹をよろしくお願いします!!」

 

「は?」

 

これは新しい波乱の予感がするなぁ……




サラシキ姉妹は仲直り出来ました。しかしキリヤんはダグバに負けました。

そして次回からはキリヤんの過去編になります。キリヤんの謎が明らかに!?

それと今月はバイク名人更新出来ないと思います。理由は他の作品を書き始めるからです!ごめんね!

ではsee you next game!


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第66話 九条桐也の章 幼馴染がTarget!?

お久しぶりです。
一か月後に書くとか言いながら二か月近く間が空いてしまいました。申し訳ございません!
これからも少し書くペースが落ち可能性があるのでご了承ください!

今回は桐也の過去にちょこっと触れたいと思います。


10月11日(水)AM10時20分

 

桐也の姿は病室にあった。先日のダグバとの戦いの傷は癒えている。では何故か?

 

「あ、来てくれたんだね桐也くん!」

 

「よっ……まあ、幼馴染だし」

 

幼馴染に会いに来たのである。理由は2つあるが。

 

 

10月10日(火)PM05時20分

 

「5日で30人………ねぇ」

 

書類に目を通す桐也、虚、楯無の3人。書類には未確認生命体による被害について書かれていた。

 

場所はとある高校。時刻は今日の午前11時頃。被害者はその生徒1年3組。被害人数は15人。いずれも鼻や口から血を吹き出して死んだらしい。

そして死体のそばに置かれた紙に『5日で30人』と書かれていた。このクラスの人数は30人。つまり1年3組全員を5日で殺すという意味だろう。

 

「ですが、ターゲットが分かっているなら防ぎようはあるのでは?」

 

「被害者の頭の中から歪に曲がった針が見つかったわ。恐らくこれで脳を傷つけて殺したのでしょうね」

 

「頭の中に針?何クラス全員の頭の中にあるってわけ?」

 

「恐らくね…………それは既に頭の中に仕込まれていて、未確認の合図で針が変形、脳を破壊する…………タチが悪いわね」

 

残虐な手法。いかにも未確認生命体が好きそうな殺し方だ。奴が指を鳴らせばその時点で死が確定する。

 

「とりあえず残りの14人には暗部が護衛についてる…………まあ、役に立つかどうか分からないけど……」

 

「既にスタンバイ完了してるからねぇ………ん?14人?あと1人は?」

 

「あと1人は病院に入院しているみたいなの。今回の事件とは関係なく生まれつき体が弱い子みたいでね」

 

そう言って楯無は桐也に写真を渡す。その写真を見て桐也は、

 

「この子には俺が護衛につく。誰が何と言おうとな」

 

自ら警護につくと志願したのだ。そうその写真の子こそが桐也の幼馴染である『藍原奈津子』だったのだ。

実は体が弱いことを知っている桐也は前々から彼女の元を訪れていたのだが、それを知らない虚達は、『珍しくやる気な桐也』としか思えず楯無もダメとは言えず、そのまま警護をお願いしたのだった。

 

◇ーーーーーーー◇

 

「最近よく来てくれて嬉しいよ!病院退屈だもん」

 

「あのね、病院は楽しむところじゃないからね?」

 

「そ、それは勿論知ってるとも!……でも退屈なのに変わりはないよ」

 

病院が退屈なところってのは彼女が一番分かっているのだろう。

ガキの頃からよくなっちゃんとは遊んだもんだ。俺がアロハ好きなのもなっちゃんに色々とアロハグッズを押し付けられたからだし。

 

「まあ仕方ないよなっちゃん体弱いし」

 

「ううっ………あーあ、早くハワイ行って豚骨ラーメン食べたいなぁ」

 

「アロハ好きなのにハワイ行ったことないもんな」

 

「それ桐也くんもでしょ!まあ自分、ハワイより凄いとこ行ってますからぁ?」

 

「はい嘘」

 

「何でバレたのぉ!?」

 

なっちゃんは嘘をつく時一人称が『自分』になる。これも昔からの癖だが直す気はないようだ。

 

「でもでも!アロハシャツって可愛い柄が多いから好きなんだよね!桐也くんのそのデザインのも大好き!」

 

「サイズ違いのをなっちゃんに貰ったからな」

 

「およ?そうだっけ?……ごめん忘れちゃった!」

 

やはり、と言うべきか。

なっちゃんには記憶がない。何故記憶がないのかは…………まあ、今はいいだろう。

 

「あ、そろそろヒイロ先生来る時間」

 

「げ、マジかよ自分あの人苦手なんだよなぁ。変に目つけられる前に隠れなきゃな」

 

「私も苦手なんだぁ。なんかこう、『私失敗しないので!』って感じが苦手」

 

「分かる分かる。んじゃ、また」

 

「うん、バイバーイ」

 

なっちゃんの病室を後にする。部屋を出たと同時にある男に声をかける。

 

「苦手だってよ大先生?」

 

「患者に嫌われるのは慣れている。心配は無用だ」

 

鏡ヒイロ先生。この病院の天才医師とも呼ばれ海外でも色々実績を残しているらしい。そんでもって仮面ライダーブレイブでもある。まさか会長さんと貸し借りしてたなんてな。

 

「お前の任務は彼女の護衛ではないのか?対象から離れてどうするつもりだ」

 

「いっつもこれぐらいで切り上げてんの。なのにいつもより長居したら変に思うでしょ?」

 

「お前なら適当な理由が思いつきそうだがな」

 

それと同時にタイミングが良いのか悪いのか俺の携帯が震えた。大先生に許可を貰ってメールを確認する。

 

「…………適当……って訳じゃないけど、これならここを離れても問題ないよな?」

 

「…………行ってこい」

 

「りょーかい」

 

近くの窓から飛び降りながら変身する。

メールには未確認が現れたと書かれていた。

 

◇ーーーーーーー◇

 

10月11日(水)AM10時50分

 

工場跡地

 

「何処かなぁ………何処に行ったのかなぁ…………ここかな?」

 

未確認生命体ゴ・ジャラジ・ダは人を探していた。自分が殺すターゲットを探していた。警護についていた護衛は手足をもいで動けなくした。そう自分が決めたターゲットしか殺してはいけないルールだからだ。

 

「出ておいでよぉ〜」

 

ジャラジから逃げてきた女子生徒は恐怖のあまり失禁し動けないでいた。誰か助けてとしか願えなかった。

 

「出ておいでぇ…………ん?」

 

「おら出てきてやったぜ」

 

「そこを動くな。狙いがそれる」

 

ジャラジを挟み込む形で2人の仮面ライダーが現れた。エグゼイドとレーザーターボ。2人ともゲキトツロボッツとプロトシャカリキスポーツで武装している。

 

「テメェのやってるのは未確認の中でも最低レベルのクズさだぜ」

 

「よしなさい。奴にとってはそれは褒め言葉になるわ」

 

「よく分かってる、なぁ!!」

 

ジャラジはネックレスから針を取り外し、長槍に変化させて2人に迫る。

それに対してレーザーはスポーツゲーマの車輪を、エグゼイドはロボットゲーマのナックルを発射する。

 

ジャラジが車輪とナックルを弾くと2人に向けて針を投げつける。

2人はそれを躱してスパローとブレイカーで接近戦を仕掛ける。

 

「はっ!先輩!」

 

「たあっ!!」

 

ジャラジを飛び越え背後に回り込むレーザー。それに気を取られているとエグゼイドがジャラジにハンマーでダメージを与えていく。更に怯んだジャラジ目掛けて矢を連続で撃ち込むレーザー。

2人の連携はここ数日でかなりの物に仕上がっていた。

 

「うげっ!?」

 

「そらよっ!!」

 

レーザーの回し蹴りで吹っ飛ばされるジャラジ。吹っ飛ばされた先には、

 

『キメワザ!ゲキトツ!クリティカルストライク!!』

 

決め技を発動し、ナックルに力を込めたエグゼイドが待ち構えていた。

 

「せやあっ!!」

 

特大の一撃を食らったジャラジはそのままドラム缶などが積まれた場所に吹き飛ばされ、大爆発を起こした。

 

「しゃ、楽勝じゃん」

 

「ええ…………上手く行き過ぎている」

 

虚の不安が的中したのか、爆発した場所から指を鳴らす音が聞こえた。

その数13回。

 

「ヒッヒヒヒ…………ウェッヒャハハハハ!!!」

 

「あの野郎、まだ生きてやがったのか!」

 

「なら今度こそ!」

 

「残念でーしーたー!!今ので13人死んだぜ?」

 

「なんだと?」

 

「そんなデタラメが「デタラメかどうか試してみるかぁ?」…………なにを」

 

ジャラジは再び指を鳴らした。今ので合計14回。

すると桐也たちの戦っていた方とは逆から女の悲鳴が聞こえた。

 

「痛い!痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!!!助けて助けてよ!助けああああああっ!!」

 

虚と桐也がその場に走ったときには既に遅く、ジャラジから逃げ隠れていた女子生徒は鼻や耳から血を流し、目と口から針が飛び出していた。

 

「ソイツにはサービスしてやったぜ?」

 

気味の悪い笑い声をあげるジャラジ。

奴の言葉が本当なら、今ので14人死んだのだ。つまりターゲットはあと1人。

 

あっという間に14人も殺されてしまったことに、唖然とする桐也と虚。

 

その場にはジャラジの笑い声だけが響いていた。




一気に14人殺されて合計29人殺されてしまいました。この時点で桐也たちの負けみたいなもんですが、あと1人は絶対に守らなければならない。じゃないと色々と不味いもん。

次回は桐也の過去、ゼロデイ、そしてレーザー最強オリジナルフォームが登場です!

ではsee you next game!


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第67話 九条桐也の章 最強最速のGAMER

かーなーり時間が空いて申し訳ないでございます。今後のバイク名人の展開とかその他のこととか次回作の事とか色々と立て込んでました!

今回で遂に桐也が最強フォームに!


10月11日(水)PM05時17分

 

「………………」

 

重い空気が生徒会室を包み込む。桐也、虚、楯無の3人は一向に口を開こうとしない。

先の戦いで犠牲者が一気に14人も殺されてしまったのだ。まだ1人残っているとはいえ、この時点で桐也達は負けているといっても過言ではない。

 

「………………はぁ…」

 

沈黙を破ったのは桐也のため息だった。そのまま立ち上がり生徒会室を出て行く桐也。その後ろ姿を2人は追いかけられなかった。

 

「…………桐也くん、大丈夫かしら……」

 

「こちらで調べはつきましたが……そういう事だったとは……」

 

桐也と最後のターゲット、藍原奈津子の関係について調べた虚。

 

桐也と奈津子は幼馴染だ。5年前とある事故をきっかけに疎遠となっていたらしい。そして虚と楯無には5年前の事故……もとい事件には心当たりがあった。

 

 

5年前

 

とあるショッピングモールで起きた大規模火災。奇跡的に犠牲者は出なかったものの、負傷者はその年で最大数だった。

火災の原因は料理店の火の不始末とされているが、一部の人間は本当の原因を知っている。

 

バグスターウイルス。

 

2000年問題のコンピューターの僅かな誤作動で生まれたコンピューターウイルス……とされているが詳細は不明。今現在分かっていることはコンピュータのみならず、人にまで感染すること、感染した人の一部の記憶を消すこと。そして怪物として実体化すること。

 

バグスターウイルスは一部の人間の間で噂されており、檀黎斗もバグスターウイルスについて調べていた。その後微量のバグスターウイルスが感染したコンピュータを調べた結果、バグスターウイルスに対抗するシステムを作ることとなった。

 

それがゲーマドライバーを用いた仮面ライダーだ。

 

5年前の大規模火災の際に実体化したバグスターウイルスを討伐するため、当時放射線医だった花家タイガと助手の鏡ヒイロがスナイプとブレイブとして事に当たった。

 

しかし初めての実戦での仮面ライダー運用もあり、タイガとヒイロは苦戦を強いられ、最終的にそのバグスターは世界中にバグスターウイルスを撒き散らしそのまま行方をくらませたのだ。

 

その後世界中で軽微な記憶障害を引き起こす事件が発生、これをバグスターウイルスの仕業とし、あの日の事件を『ゼロデイ』として一部の人間は呼んでいる。

 

 

「まさかゼロデイの被害者だったとは……」

 

「桐也くん自身は軽傷だったみたいだけど、幼馴染の子は重傷だったみたいね……」

 

再び生徒会室に重い空気が漂い始める。いつも飄々としている桐也も過去には辛い思いをしたのだろうと。

 

◇ーーーーーーー◇

 

10月11日(水)PM06時35分

 

学園の屋上。雨が降る中桐也は1人手すりにもたれかかっていた。

 

「風邪ひくよ〜」

 

そんな桐也に傘を差し出したのは本音だった。

 

「…………本音はさ、俺が死にそうな時に逃げろって言われたら逃げる?」

 

「死にそうなキリヤんを置いていけないよ。私も残るよ」

 

「………………あの時の俺はそれが出来なかった……」

 

悔しそうに唇を噛み締め、拳を握る桐也。桐也の過去について虚から少しは聞いていた本音。何のことかはすぐに把握出来た。

 

「5年前のあの日、俺となっちゃんはショッピングモールに遊びに行ったんだ。ゲームの発売日で親の仕事の都合で夜に行ったんだ。そこであの事件だ……」

 

「大規模火災……でも、キリヤんの場合は」

 

「目の前に見たことのないバケモノがいたよ。黒くて、怖くて………すぐになっちゃんと逃げたよ。でもなっちゃんは落ちてきた瓦礫の下敷きになって動けなくなった」

 

本音は想像する。もし自分が同じ状況になっても今の桐也なら変身してでも助けてくれるだろうと。

でも昔の、変身ができない桐也は助けてくれるのだろうかと。

 

「なっちゃんを連れて逃げたくても瓦礫は重くてどかせなかった。そしてバケモノが迫ってきてた……」

 

桐也の声がだんだん震えてきた。顔を流れる雫は雨か涙か分からなかった。

 

「なっちゃんは逃げろって言った。ドラマとかアニメなら逃げないって言ってバケモノにでも立ち向かうんだろうな。でも俺は一目散に逃げた。バケモノに対する恐怖心が勝ったんだよ」

 

今の桐也からは想像もつかない行動。今の桐也ならそれこそ立ち向かうだろう。でも昔の桐也はそれを拒み、一目散に逃げたという。

 

「事が収まったとき、俺は…………忘れてたんだ。なっちゃんのことを。逃げるのに精一杯だったからじゃない。綺麗さっぱり、幼馴染がいたことを忘れていたんだ」

 

「バグスターウイルスの……記憶消去……」

 

「思い出したのは俺が中学2年の時だ。何の前触れもなく思い出した。そして思い出した俺はすぐに引っ越ししてなっちゃんが入院していた聖都大学付属病院に向かった」

 

本音は最悪の展開を予想してしまった。

 

「なっちゃんも、俺のことを忘れてたんだ。俺は当然だよなって思った。大事な幼馴染をほったらかしにしたんだ。これくらいの罰で済んだのが運が良かったのか悪かったのか」

 

バグスターウイルスでの記憶消去は全人類に起きているらしい。それは本音も例外ではない。ただ些細なことを忘れても人は気がつかない。記憶を無くしたことすら分からないのだ。

 

「だから俺は二度となっちゃんを忘れないために…………色々真似してるんだ……自分って一人称とか…アロハシャツとかな……」

 

「キリヤん……」

 

「おかげで二度と忘れることはなかった。それからその後俺は仮面ライダーになった…………だからもうあの日の出来事は繰り返させない。俺はもう二度と逃げない」

 

逃げないと言った桐也の表情はさっきまでと違い、決意に満ち溢れた顔をしている。

 

「今度は絶対守らないとね…………はいこれ」

 

「え……これガシャット?…………ノイン……シュヴァンツ……?」

 

本音が桐也に渡したのは銀色のガシャット。名前はノインシュヴァンツ。ドイツ語で九尾だった。

 

「私も元々代表候補生だったんだよ〜IS学園代表〜」

 

「は?マジで?」

 

「だから専用機も用意されてたんだけどね〜結局ボツになっちゃったから〜。でもでもデータは残ってたから、それを使ってガシャットにしてみました〜」

 

「マジか……天才かよ……てかこのタイミングとかナイスタイミングかよ」

 

「勿論、未確認に対抗するためでもあるけど〜。キリヤん明後日誕生日でしょ〜?」

 

「………………あーー!!!」

 

完全に忘れていた桐也。ラブコメ鈍感主人公みたいな展開には絶対ならないと決めていた桐也だが、思った以上にバタバタしており曜日感覚が無くなっていた。

 

「マジか……完全にすっぽ抜けてた……サンキュー本音」

 

「どういたしまして〜。じゃあ、中入ろっか〜流石に体冷えちゃうよ〜」

 

「……そうだな…………ありがとな本音」

 

本音に礼を言う桐也。過去にケジメをつける時は刻一刻と近づいていた。

 

 

10月12日(木)AM11時48分

 

聖都大学付属病院。

 

「雨の中ありがと〜来てくれて」

 

「今はそんなに降ってないし、大丈夫だよ」

 

桐也の姿は奈津子の病室にあった。あの未確認の性質上、ダーゲットを精神的に追い詰めてから殺すはずと踏んだ桐也。病室の外には虚とヒイロがスタンバイしている。

 

「でも天気予報だとこれから酷くなるみたいだよ?昨日も夜中は雨凄かったし」

 

「ま、自分の心配はいいからさ」

 

奈津子と話しながらもいつも以上に警戒を怠らない桐也。しかしそれが奈津子には違和感として感じ取ってしまったのだろうか。

 

「どうかした?いつもより顔怒ってるよ?」

 

「え?そう?…………そう、かもな……」

 

「何かあった?」

 

「うん……まあ、色々とね………ケジメをつけなきゃいけなくてね」

 

「え、ケジメって小指切るの!?」

 

「いやいや、そんなことはしないから。てかなんの映画観たのそれ?」

 

「フフッ……やっといつもの顔になった」

 

笑う奈津子。桐也自身も少しは肩の力が抜けた気がした。ガチガチになってちゃいざという時に動けなくなる。

 

「ふぅ…………わり、気張り詰め過ぎてた。大事なことに変わりないからさ」

 

「大事なことでも、桐也くんなら大丈夫!だって桐也くんだもん!」

 

「それ、答えになってないからね?」

 

病室がいつもの雰囲気に包ま

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE・・・RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

れた。

 

「!?……なっちゃん?」

 

目の前から奈津子が消えた。目を離したわけでもない。未確認が攫っていったわけでもない。目の前から忽然と姿を消したのだ。

 

「先輩!大先生!」

 

「どうしたの?」

 

「…………いなくなった…」

 

「何?」

 

虚とヒイロが病室に入る。病室に誰かを入れたり出したりしたということはない。2人はずっと部屋の前で立っていたのだから。

 

「…………ッ!」

 

すぐさま病室を飛び出す桐也。虚とヒイロも追いかけるが、この時の桐也は誰よりも速かった。

 

 

10月12日(木)PM00時26分

 

雨の音が響き渡る。場所は廃工場。昨日桐也と虚が未確認と戦った場所だ。

 

そこに奈津子は横たわっていた。

 

そしてその近くのドラム缶の上に未確認のジャラジが座っていた。

 

「うっ…………冷た……ここは……」

 

「あ、起きたー?ちゃんと目覚めたぁ?」

 

「だ、誰ですか貴方!?」

 

「俺?うーん、怪人?」

 

ジャラジは人間態からグロンギの姿に戻る。当然目の前に未確認生命体が現れたのだから奈津子は逃げようとする。

 

しかし足が動かない。恐怖で動かなかった。

 

「逃げてよ〜、みっともなく足掻いてよ〜じゃないと面白くないじゃんかぁ〜」

 

ジャラジは針を取り外し奈津子に投げつける。針は奈津子の頬をかすめ、地面に刺さった。

 

「いや……こないで………こないでよ!あっち行って!!」

 

「もっと!もっと聞かせて!君の!リントの悲鳴を!!」

 

ジャラジが指を鳴らそうと構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数秒前に桐也はガシャコンスパローから矢を放った。

そして矢はジャラジの両手に風穴を開けた。

 

「ぐうっ!?ぎゃああああっ!!?俺の手がぁぁあ!!」

 

「はぁ……はぁ…………間に合ったぜ」

 

悶絶するジャラジを横目に桐也は奈津子に駆け寄る。

 

「桐也くんッ!桐也くんッ!!」

 

「待たせてごめんな。時計壊れて体感1時間ぐらい走ってやっと見つけれたよ」

 

「ありがとうッ……見つけてくれて…………助けてくれて…………」

 

奈津子は桐也に抱きついて泣いていた。

 

「テェェメェ!!!俺の手をよくもぉ!!」

 

「あ?手ごときでギャーギャー言ってんじゃねぇよ」

 

桐也はベルトを装着すると2つのガシャットを取り出す。

爆走バイクと新しいガシャット、ノインシュヴァンツ。

 

「悪いな。今回ばっかりは手加減出来ねぇぞ」

 

『爆走バイク!』

『ノインシュヴァンツ!』

 

「最速、変身!!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!』

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク』

 

桐也の姿がレーザーターボに変わる。が、それだけでは終わらない。

今ベルトには二本のガシャットが刺さっているのだ。

 

『激走!合装!幻想!無双!シュヴァンツバイク!!』

 

レーザーターボの黄色い装甲がオレンジに変わり、キツネの耳を模したパーツが付き、腕にも銀色の装甲が追加され、極め付けはキツネの尻尾のようなパーツが腰から伸びていた。

 

これこそが本音が作り上げたノインシュヴァンツガシャットの力で変身した『シュヴァンツバイクゲーマー LvX』だ。

 

「最速で決めるぜ」

 

武器のガシャコンキースラッシャーを構えジャラジに接近する桐也。怒り狂ったジャラジも腕を振り回しながら襲ってくる。

 

が、冷静さを失った未確認生命体など、最速の力を手に入れた桐也には雑魚当然だった。

 

「はっ!らあっ!せりゃぁ!!」

 

高速で移動しすれ違いざまにキースラッシャーで切り裂いていく。そのスピードは今までのレーザー、及び仮面ライダーや未確認生命体よりも速い。

 

「ふっ、そらよっと!」

 

尻尾でジャラジを屋外へと吹き飛ばす。外は今だに雨が降っていた。

雨に打たれて冷静さを少し取り戻したのかジャラジはこの前では勝てないことを悟った。屋外に出れば逃げられる。そう思った。

 

「いつまでもお前に付き合ってられるかよ!!」

 

「そうだな。それはこっちのセリフでもあるんだぜ?………じゃ、お望み通り終わらせるか」

 

逃走を図るジャラジ。逃げ足は速い故、ここで逃してしまうと後が面倒になる。

 

「ノインシュヴァンツ、右足、1本ゲージ」

 

桐也がそう言うと、尻尾のパーツから右足へとエネルギーが伝わっていく。

ノインシュヴァンツ最大の特徴、それは尻尾のパーツに仕組まれている『ブーストゲージ』だ。尻尾の中には3本のゲージが積まれており、使用者の任意のタイミングでゲージが起動。指定した箇所にエネルギーを回すという仕組みだ。

 

「くらい……やがれッ!!」

 

一気に駆けた桐也は逃げようとするジャラジの背中めがけて蹴りを叩き込んだ。

 

メキメキッと骨が軋み、最終的には体が折れ曲がってしまった。

こうなってしまっては、ジャラジに逃げることはできなかった。

 

「グッ……ギィヤァァ……た、たすけて……」

 

命乞いするジャラジ。それを見た桐也はキースラッシャーでジャラジの左腕を斬り飛ばし、更に右手を踏みつけ顔にキースラッシャーを突きつける。

 

「……いいこと……教えてやるよ」

 

「ああ…………ああっ!!あああっ!!?」

 

「俺今な…………楽しすぎて、狂っちまいそうなんだぜ」

 

キースラッシャーに残りゲージ2本分のエネルギーを流し込み、ジャラジの体を両断した。つまりベルトも真っ二つになった。

爆発に巻き込まれる桐也。しかし仮面ライダーに変身している桐也には少しの衝撃が走っただけだった。

 

戦いが終わると同時に雨は止んだ。

 

桐也の心の中には少しの安堵があった。

 

◇ーーーーーーー◇

 

10月12日(木)PM01時43分

 

「…………ん……あれ…」

 

「起きましたか?あまり無理はしないでください」

 

目を覚ますとそこは病室で、私のベッドの隣には女性が座っていた。気品があり真面目そうなその女性は私が眼を覚ますのを確認するとその場を離れようとする。

 

「では、私はこれで」

 

「あ、あの…………桐也くん、私の……幼馴染……見てませんか?」

 

「…………安心してください。彼はもう二度と逃げません。ケジメをつけたらまた来ると言っていました」

 

「ケジメ……」

 

「貴女と再び会い、同じ時間を過ごしたことで、彼の中の決意もより強いものになったようです。ですから待ってあげてください。いい加減なところもありますが、それでも彼は」

 

「約束を……守ってくれる……」

 

「…………ええ……では」

 

女性は病室を出て行った。

 

『逃げて!早く逃げて桐ちゃん!』

 

『…………ッ!絶対!絶対戻ってくるから!なっちゃんを助けるから!』

 

『…………うん、待ってるよ……桐ちゃん』

 

あの時君は泣きながら駆けて行った。帰ってくるのに時間がかかっちゃったね。きっと君はその事で悩んで悔やんだのだでしょう。でもいいの。ちゃんと帰ってきてくれたから。

 

「約束、守ってくれたね…………ありがと桐ちゃん」

 

病室に、心地よい風が流れてきた。

 

◇ーーーーーーー◇

 

「うーーーーーん、バケモノかな?」

 

暗い部屋。唯一の光であるテレビにはシュヴァンツバイクゲーマーのレーザーが映っていた。

 

「スペック、能力、いずれも従来の仮面ライダーを超えてる…………変身者がヘッポコなのが唯一の救いかな?」

 

ブツブツと独り言を言いながらパソコンを開き、カタカタと打ち込む。

 

「ノインシュヴァンツのデータが取りたいから結果的に未確認に手を貸しちゃったし、女の子見つけるまで彼の以外の時間止めてみたけど…………その苦労も無駄じゃなかった」

 

笑顔になる女。その笑顔はパソコンの光が当たり狂気的な笑顔になっていた。

 

「……それじゃあ、そろそろ始めようか。究極の闇による破壊を」

 

パソコンにはIS学園破壊計画と記されていた。




ノインシュヴァンツガシャット。レーザーの最強フォームをどうしようかなと悩んだ結果がシュヴァンツバイクゲーマーになります。変身音は友人達が考えてくれました。仕事しろ作者。

なんだかんだ一夏が出てきてませんが、次回からは出てきます。
次回は最後のヒロイン、簪の予感が!

ではsee you next game!


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第68話 究極の闇の章 苦笑いのHERO

今回から究極の闇の章でございます。つまり…そういうことさ


10月1日(日)PM05時33分

 

「妹……ですか?」

 

「そう、名前は更識簪ちゃん。世界で一番可愛い私の妹よ。あこれ写真ね」

 

そう言って見せられた写真には、どこか陰りのある少女が写っていた。

 

「妹って、その……ちょっとネガティブっていうか、暗めの子なのよ」

 

「ま、まあ……なんとなく……イメージつきますけど……」

 

「でも実力はあるのよ!だから専用機持ちなんだけど………専用機がないのよ」

 

楯無さんが言うには簪……さんは日本の代表候補生なのだが専用機がまだ完成していないらしい。

というのも彼女の専用機の開発元は倉持技研、つまり俺の白式と同じところなのだ。どうやら俺の白式の方に人を回してしまったらしく、そのせいで未だに完成していないという。

 

「って俺のせいじゃないですか!すいません!!」

 

「ああ、いや全て君のせいじゃないよ?倉持技研も全員白式に回して簪ちゃんの専用機を疎かにして…………むしろ向こうを潰すべきかも……」

 

バキバキと指と首を鳴らす楯無さん。シャレにならないのでやめてください。

 

「それで、妹を頼むってどういう意味ですか?」

 

「うん、ここ最近の事件を踏まえて、各専用機持ちのレベルアップを目的とした全学年合同タッグマッチをやろうと思ってね。そこで簪ちゃんと組んで欲しいの」

 

「はぁ、まあいいですけど」

 

「勿論箒ちゃんと組みたい気持ちはあるだろうけどここは私の顔に免じて…………え?いいの!?」

 

「え?ああ、はい。専用機持ちのレベルアップが目的ですよね?だったら組んだことのない人と組んだ方が自分のレベルアップに繋がると思いますし」

 

「………いぢがぐぅん!!!」

 

涙を滝のように流しながら飛びかかってくる楯無さんを避ける。いつもはマイペースなのにこうも頼み込んでくると調子が狂うような………。

 

「それじゃあ、妹さんには俺から誘えばいいんですか?」

 

「うん、よろしくお願いね。あの子気難しいところがあるけど、優しい子なの。出来ればタッグマッチ後も仲良くしてあげて」

 

 

 

 

と楯無さんと約束したのがだいたい約2週間前。

 

 

10月16日(月)PM00時19分

 

食堂

 

「ダメだぁ……全然進展なしだぁ……」

 

アレから2週間。俺は今日も簪さんをタッグマッチに誘った。結果は『嫌』とのこと。ていうか初日に誘ってからずっと断られてるの辛い!

 

「うへぇ……ここまでくると辛いを通り越して無の境地にたどり着きそう……」

 

「何を唸っている一夏」

 

「ああ……ラウラとシャルか……いやまぁ色々となぁ」

 

「大体は知ってるよ。4組の簪さんをタッグマッチに誘おうとしてるんでしょ?」

 

俺の正面に座るラウラとシャル。確かタッグマッチ、ラウラはシャルと組むらしい。鈴はセシリアと。箒は意外にも楯無さんと組むらしい。楯無さんが箒を誘った時、木刀を突きつけられたらしい。そりゃ修行中に後ろから近づいたら突きつけられるでしょうに……

 

「ここまで物事が上手くいかないのも珍しいな一夏」

 

「うん。やっぱ直球すぎたのかな……専用機が出来てないの俺のせいだし……そんな俺がタッグマッチ誘ってきたらそりゃ断るよなぁ……」

 

「元気だしなよ一夏。ほらカマボコあげるから」

 

「ここで油揚げをくれないあたりシャルはキツネうどん好きだよなぁ……」

 

因みに俺はチキン南蛮、ラウラはかき揚げうどんだ。

 

「少しずつ攻めればいいのではないか?搦め手は戦場でも必要になるからな」

 

「うん……そう思って今日の別れ際にお昼誘ったんだよ……中々来ないから先に食べてるけど」

 

まずはちょっとしたスキンシップから。と思ったけど……来なきゃスキンシップもクソもない。そうこうしてるうちにご飯が少なくなってきた。

 

「はぁ……今日も進展なしか……」

 

「いや、そうでもないかもしれんぞ」

 

ラウラはフッと笑う。俺が後ろを振り返るとそこにはうどんを持った簪さんが立っていた。

 

「……お、おまたせ…………」

 

「…………ハハッ……待ってたよ。さ、座って座って」

 

4人席のテーブル席。反対側はラウラとシャルが埋めているため隣に座ることになるが大丈夫だろうか……

 

「はじめましてだよね。私はシャルロット・デュノア。フランスの代表候補生だよ」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。よろしく頼む」

 

「あ……えっと…………更識簪……です。2人のことは…………よく知ってる……」

 

疾風のシャルと切り札のラウラ。その噂は4組にまで届いていたらしい。

 

「無理に誘ってゴメンな簪さん。でも来てくれて嬉しいよ。ありがとな」

 

「え、えっと…その……タッグマッチは………」

 

「まあ今はそのこと置いとこうぜ。早く食べないとうどん伸びちまうぜ?」

 

「う、うん……」

 

簪さんはうどんの上に乗ったかき揚げをつゆの中に沈めている。これはまさか、

 

「貴様!まさかかき揚げベチョ漬け派の人間かッ!!」

 

「やっぱり食いついたよラウラ」

 

「え、ええっ!?こ、これは……た、たっぷり全身浴派……」

 

「あ、新しい派閥だとぉ!?」

 

かき揚げサクサク派のラウラは血相を変えて食堂のカウンターに向かった。数分後帰ってきたラウラはうどんを手にしていた。かき揚げ付きで。

 

「貴様にサクサクかき揚げの美味さを教えてやる!食え!!」

 

「え、えぇ……」

 

明らかに困惑している簪さん。これはラウラを止めるべきなのか否か。変に止めに入ると俺まで攻撃をくらいそうだ。

 

「まあまあ落ち着きなよラウラ。簪さん困ってるよ?」

 

ここで救世主シャルロット!まさに慈愛の女神だ!

 

「ところで簪さん…………このベチョ漬けかき揚げもどうかな?」

 

まさかの悪魔シャルロット!これには俺もメンタルやられちゃう!ていうかいつのまにかかき揚げを!?

 

「おいおい2人とも、簪さんが困ってるだろ?簪さんも無理に食べなくてもいいからなってもう食ってるッ!!?」

 

「ん…………お、おいひい…………よ?」

 

明らかに口に詰めすぎである。急いで水を簪さんに差し出す。ゴクゴクと飲みなんとかなった。

 

「2人とも……好きなものを押し付けるのは良くないぞ?節度を守ろうな?」

 

「す、すまん……つい……」

 

「ごめんね簪さん……」

 

ショボくれた2人を見つめながら簪さんはうどんとかき揚げを食べる。その時いったいどんな味がしてどんな気持ちだったのか。俺はとても気になった…………。

 

◇ーーーーー◇

 

大体2週間前ぐらいから、織斑くんは私に話しかけるようになった。内容は月末に行われる専用機持ちのタッグマッチ。その日の朝にタッグマッチの話を聞き、その日のお昼休みに織斑くんから誘われた。

 

「俺とタッグマッチ組んでくれ!」

 

直球も直球。断られることを知らない勢いで誘ってきた。私自身、専用機がないことで様々なイベントを欠席している。もちろん今回のタッグマッチも欠席しようと考えていた。織斑くんも私に専用機がないことは知っているはずだし、それに何故いきなり誘ってきたのか………疑いやすい私は何か裏があるのではと考え、

 

「……嫌…」

 

断った。

 

 

それからも織斑くんは私を誘い続けた。

 

「簪さん!」「ヘイ!そこの彼女!」「お嬢さん、俺と話を」「簪様、話を聞いてくださいませ!!」

 

その度に私は断り続けた。どうしてここまで執着してくるのか、疑問とイライラが溜まっていった。

 

「せ、せめてさ!今日の昼食堂で飯食おうぜ!少しだけでもお喋りをさ!?」

 

そして今日。いつも通り話しかけてきた織斑くんは最後にこう言い残した。

タッグマッチの誘いを断り続けた私がお昼ご飯の誘いには乗るのは如何なものかと思ったけれど、ここはキチンと私の気持ちを伝えて、織斑くんには諦めてもらおうと私は食堂へと向かった。

 

そこで待っていたのは織斑くんと1組のデュノアさん、ボーデヴィッヒさんの3人だった。2人がいるのは予想外だけどここは私の気持ちを伝えないと。

 

しかし織斑くんはタッグマッチの話は今は置いとこうと言った。散々私を誘って来たのに今はその話はやめようと言ったのだ。

挙げ句の果てにデュノアさんとボーデヴィッヒさんからかき揚げ攻撃をくらった。

 

 

10月16日(月)PM19時47分

 

分からない。彼が何を考えているのか。何故私を誘うのか。誰かに言われたから?それは誰?何も分からなかった。自分の心さえも。

 

「…………アニメでも……観よう…」

 

ルームメイトに迷惑がかからないようにするためにイヤホンを付け携帯の液晶でアニメを観る。少し前に流行ったストロングマンだ。

 

「はぁ…………明日も…誘われるのかな……」

 

このセリフも、何回目か分からなくなった。憂鬱なままみるアニメはどこか面白くなく、そして退屈だった。

 

「あ、それ少し前の特撮アニメじゃん!俺それ好きなんだよ」

 

「うん……特に主人公が……カッコいい」

 

「あの決め台詞だよな!天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!」

 

「正義の使者!ストロングマン!!……え?」

 

勢いでストロングマンの決め台詞を言ってしまったが……

 

「な、なんで部屋にいるの!?」

 

「ん?いやノックしたら同室の子が良いよって。あとタッグマッチの参加申し込み今日までなんだよ。俺も今思い出してさ」

 

アハハと笑う彼は能天気そのものだった。

 

「でだ。これが最後の頼み。俺とタッグマッチ、一緒に出てくれ!」

 

そして頭を下げる彼は真剣だった。

 

「……ハッキリ言うと、君を誘ってくれって頼んできたのは楯無さんだ」

 

「お姉ちゃんが……」

 

「そこで君のことを聞いた……専用機がまだ完成してないこと、そのせいでイベントを欠席してること……その時にさ、楯無さんの頼みなんて関係ないって思ったんだ」

 

「え?………どういう」

 

「だって、俺のせいで簪さんがイベントに参加出来てないんだ。だったら俺は君を助けたい。困ってる簪さんを助けたい」

 

いつにも増して真剣な彼の瞳には困惑している私が写っていた。だってそうだ。今までこんな台詞言われたことがない。

 

「貴重な高校1年の思い出が全然ないとか……そんなの……なんか嫌なんだ」

 

「………なんで……織斑くんが…嫌なの?」

 

「…俺誰かの笑顔を見るのが好きなんだ……笑って平和に過ごしてる日常が好きなんだ。だから君にも笑顔でいてほしい……っていう、まあ俺の自己満足なんだ」

 

照れ臭そうに苦笑いする織斑くん。その顔は私の好きなヒーロー物の主人公によく似ている。異形の姿になってもみんなの笑顔を守る為に戦ったヒーローに似ていた。

 

「貴方は……そんな理由で…貴方の貴重な時間を潰したの……」

 

「簪さんと話出来たのも、貴重な時間で思い出だ!」

 

どうして貴方はそこまで眩しい笑顔を私に見せるの……そんな顔見せられたら………縋りたくなるよ…

 

「………私と組むと…勝てる確率は……低くなるよ」

 

「勝ち負けより……戦ったかどうかだ。俺はそれが大事だと思うぞ」

 

「……ホント……ヒーローみたい…」

 

「完全無欠のヒーローじゃないけどな。最低でも手が届く範囲は助けたいんでね」

 

「……じゃあ……助けて…くれる?」

 

「ああ!」

 

私は、差し出された織斑くんの手を握った。彼の手は大きくて暖かった。




簪が攻略されてしまった!早い!早すぎる!
というわけで次回は打鉄弐式の組み立てと……

ではsee you next game!

因みにかき揚げはたっぷり全身浴派です。


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第69話 究極の闇の章 束の間のPEACE

遂に4年目に突入しました。ぐだぐだ書いてなかったら今年中には終わるはずなのにッ!

時間があるときにちょびちょび書いてるので完結はしますええ。

ではなんだかんだ始まる4年目もよろしくお願いします!


10月22日(日)PM16時36分

 

「緊急召集って…これまたいきなりだね」

 

「どうせクロニクル案件だろ」

 

会長さんからの緊急召集メールを受けて生徒会室に向かう俺とタイガ先生。4つのガシャットロフィー以外を全て集めた俺とタイガ先生にとって仮面ライダークロニクルはただのバグスター退治と化していた。

 

「失礼しゃ〜す」

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「テメェは!」「アンタは!」

 

生徒会室で俺たちを出迎えたのは行方知らずと化していた檀黎斗社長だった。

 

「かれこれ数日留守にしてすまなかった」

 

「数日ってレベルじゃないだろ。連絡もしないで。木綿季さん心配してたよ?」

 

「私も私で色々と手が混んでいてね。そのお詫びと言ってはなんだけどお土産があるよ」

 

そう言って社長さんはカバンの中から色々と取り出した。

 

「まずはタドルレガシーガシャット。タドルシリーズの最高傑作だ。これ一本ならレベル75までいけるよ」

 

「75……ギアデュアルよりも上か」

 

「それと私が一から手を加えたインフィニット・モーフィンブレス。従来のモノよりも性能アップと装備の増加、その他諸々と大幅パワーアップしたよ。これは専用機持ちに渡しといてくれ」

 

「渡すなら自分で渡しなよ……」

 

「それから、1番のお土産は仮面ライダークロニクルの首謀者が分かったこと、かな?」

 

その言葉に俺とタイガ先生は耳を疑った。まさか本当に犯人探しをしているとは思ってなかったし、更に犯人まで見つけたとか。

 

「何者なんだよ社長さん……」

 

「私はただのゲーム会社の社長だよ。それで犯人だが、君たちも大方予想はついているのだろう?」

 

「まあ、大体わね」

 

先のアマゾン事件で手に入れた仮面ライダークロニクルの資料。それによると仮面ライダークロニクルは天条タカアキが企画したもの……ではなかった。

 

実際のところ企画したのは宝生マサムネと呼ばれる前ライダーガシャット開発の責任者だ。宝生から分かると思うが現幻夢コーポレーションにおけるライダーガシャット開発の責任者、宝生エムの父親らしい。

 

今現在宝生マサムネは行方不明になっているらしい。突如として連絡が途絶えたと。

 

俺の考えとしてはこの宝生マサムネがクロニクルを自身の手で完成させ、そして仮面ライダークロニクルを実際に行った…と考えるのが普通だと思う。

 

「犯人は簡単だよ。宝生エム。彼女が首謀者…の1人だよ」

 

「1人?じゃあ犯人は複数人だっての?」

 

「これはあくまで予想だが、篠ノ之束も関係していると私はみているよ」

 

「篠ノ之束か……それはそれでありそうだが、宝生エムが犯人なのはどういう理由があってだ?」

 

「仮面ライダークロニクルに関する管理者権限を持っているのは彼女だけだ。父親から託されたからね。その父親、宝生マサムネだけど彼は既にこの世にはいない」

 

「死んでたの?」

 

「ああ、5年前にね。それから仮面ライダークロニクルに関する資料を天条タカアキに持っていかれ、仮面ライダークロニクルは天条タカアキが企画したモノとしてすり替えられた」

 

「自分のモノにしたわけか」

 

「でも実際のところ、資料を持っていかれただけでデータ諸々は管理者権限でエムさんが持ってた、と?」

 

「そう考えるのが普通だね。大雑把に言ってしまえば仮面ライダークロニクルを起動、開催出来るのは幻夢コーポレーションの中でも彼女しかいないということ。当たり前すぎるけどね」

 

結局のところ犯人は宝生エムということ。となるとクロニクルを止めるのは簡単だろうけど……多分まだ何かが足りない気がする。

 

「今宝生エムを捕まえても、クロニクルは止まらない気がする」

 

「だろうね。それにまだ裏があると私はみている。だから動き出すのはもう少し待ってくれ」

 

ようやくゴールが見えてきた感じがする。このクソゲーを一刻も早く終わらせるためにも、早いとこケリつけないとな。

 

「そういや会長さん、自分から呼び出しといていないんだけど」

 

「彼女は彼女でやることができたらしいからね」

 

◇ーーーーー◇

 

同時刻 IS整備室

 

簪の専用機『打鉄弐式』の完成目指して作業を始めてそろそろ1週間になろうとしていた。装甲チェック、スラスター調整、飛行テストetc。飛行テスト中に事故があったり、俺が転んでスパナに頭をぶつけたり、俺が滑って高いところから落ちたりとトラブルもあったけど。

 

「なんとか様になってきたな」

 

「機体の動作……違和感なし…うん、大丈夫」

 

「よしっ、少し休むか。おーい!みんな一旦休憩にしよう!」

 

打鉄弐式はほぼ完成していた。それもこれも、

 

「ふぅ…やはり整備…機械のというのは慣れないものだ」

 

「あら箒さん、貴女はまだまだ未知の部分の多い紅椿を持っているのですから、これくらいで根をあげてはこの先辛いですわよ?」

 

「まあこういうのはやって慣れろって感じだし、箒もゆっくり慣れていけばいいのよ。それまでアタシ達もいるわけだし!」

 

「少なくとも3年間は一緒にいるしね。困ったらお互い様だよ」

 

「整備の基本はまず、周りを片付けることだ。散らかっていては大事な部品を紛失することに繋がるからな」

 

箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラが手伝ってくれたから。いやこの5人なら頼めば手伝ってくれる可能性は高かった。意外だったのは簪だった。1人で作ることを拘っていた彼女故に拒否するかと思ったけど。

 

「みんな…ありがとう…」

 

「いやなに、私なんかが役に立てているなら本望だ」

 

「同じ学友なのですから、これくらいは当然ですわ」

 

「いや、マジで助かってるよ。俺と簪じゃ正直もっと時間かかってたかもだし、最悪完成しなかった」

 

「見切り発進するからでしょうがバカ」

 

「整備科の人も色んなところに駆り出されてるから頼めなかったのが痛かったな。でもみんなが手伝ってくれて助かったぜ」

 

そりゃあ整備科の人に頼めればもっと早く終わっただろうけど、

 

「火器管制システム……マルチ・ロックオン・システムはどうする?」

 

「うん……今のところは通常のロックオン・システムを使う予定……でも…諦めたくはない……」

 

「うん、私達も手伝うよ!」

 

「あ、ありがとう……シャルロット…」

 

こうしてみんなと仲良くなれたのは大きいな。友達と何かするって楽しいし幸せなことだ。

 

「だーかーら、いつまでもそこに隠れてないで出てきては?」

 

「??」

 

俺は整備室の入り口に向けて声をかける。俺に声をかけられて少しビクッとした姿が見えたが間違いない、楯無さんだ。

 

「あ、アハハ……バレてたかぁ」

 

「お姉ちゃん……」

 

「言いたいことあるんじゃないんすか。簪も。言いにくいのなら俺たち出ていくけど?」

 

「だ、大丈夫よ!そこまでしてもらわなくても……」

 

モジモジと気まずそうに目をキョロキョロさせる楯無さん。簪も簪で目で助けを求めてくる。勿論某猫型ロボットの温かい目で見守る。

 

「あのね簪ちゃん。貴女が1人で専用機を完成させようとしたのは……私がそうしたから、かしら?」

 

「……うん」

 

「やっぱりね……簪ちゃん、私は1人で完成させてないわ。周りの人たちの協力があったから完成させれたの」

 

「1人で完成させたんじゃ…なかったの?」

 

「正直何処からその噂が広まったのかは知らないけれど……何はともあれ、私も貴女も完璧じゃない。勿論そこの一夏くんやみんなも完璧じゃないのよ。誰かと手を取り合って生きていく。それが人間なの」

 

私も偉そうなこと言えないけどねと付け加えて楯無さんは苦笑いをする。確かに人は1人では生きていけない。誰かの助けが必ず必要なんだ。勿論俺も……キリヤんも……。

 

「それで、えーっと何が言いたいかって言うと……これ」

 

「コレは?」

 

「ミステリアス・レイディの機体実戦データ……私にも貴女の専用機製作を手伝わせてくれないかしら…」

 

「お姉ちゃん……」

 

「貴女が私をコンプレックスに感じていたのは、なんとなく分かってたわ。そんな私からの提案なんて乗りたくはないでしょうけど……それでも私は!」

 

「打鉄弐式……ほぼ完成してる……」

 

「………ヴェ?」

 

今まで聞いたことのない声が楯無さんの口から漏れた。うん、そうだよな。今ほぼ完成したから休憩してたもんな。

 

「そ、そんなぁ!?」

 

「………ふふっ……でも……ありがとう、お姉ちゃん」

 

それでも簪は楯無さんの手を取り優しく笑った。

 

「こんな私の為に……手を手を伸ばしてくれてありがとう……」

 

「こんな私、だからじゃないわよ。大事な妹だからよ。大事な妹だからこそ私は手を伸ばしたの。簪ちゃんとの繋がりを大事にしたいから」

 

「お姉ちゃん……」

 

姉妹揃って目に涙を浮かべている。オラも泣きそうだぞぉ!これで更織家の姉妹問題は完全に解決って事かな!

 

「さあ!作業再開といこうか!楯無さんも言ったからには手伝ってくださいよ!」

 

「分かってるわ!みんなやりましょう!」

 

『おーー!!』

 

「ふふっ……ありがとう、一夏」

 

「さ、行こうぜ簪!」

 

こうして8人での打鉄弐式の完成作業が始まった。

 

◇ーーーーー◇

 

10月23日(月)AM07時46分

 

「起きろ九条」

 

「んっ………なにさこんな朝早くから…」

 

「いいから、さっさとガシャットロフィーを確認しろ」

 

朝早くからタイガ先生に起こされた。これ以上反抗するとめんどくさいので仕方なくガシャットロフィーを確認する。まさか今になって全部無くなったとか言われたら、俺もうクロニクル参加しないからね?

 

「あれ?なんか増えてる……ときめきクライシスとかゲットしてないんだけど!?」

 

「あとパーフェクトパズルとノックアウトファイターもあるんだ」

 

「もしかして……無料配布とか?」

 

「なんでこのタイミングなんだ……いや」

 

携帯を取り出しSNSを確認するタイガ先生。やがてその表情は険しいものとなっていった。

 

「ちょうど1ヶ月だ。クロニクルが始まってな」

 

「マジ?つまり記念配布的な?」

 

「運営からアナウンスがあるな……

『この度仮面ライダークロニクルがリリースされて1ヶ月となりました。それを記念して『ときめきクライシス』『パーフェクトパズル』『ノックアウトファイター』の3つのガシャットロフィーを無料配布致します。これからも仮面ライダークロニクルをお楽しみください』

………何はともあれ、これで残るは一つになったわけだ」

 

「ドラゴナイトハンターか……」

 

お楽しみもクソもないがクロニクルも終わりが見えてきた。クロニクルのクリアとクロニクルの黒幕。この2つの問題を解決すれば長かった戦いに一休みを挟めれる。

 

「やるっきゃないよね」

 

「当たり前だ。俺たちでクリアするぞ」

 

こうして決意を改めて固めた朝。

 

 

 

 

 

 

ドラゴナイトハンター グラファイト攻略イベントのお知らせが来たのは、その日の夕方だった。




次回

聖なる泉枯れ果てし時

凄まじき戦士雷の如く出で

太陽は闇に葬られん

そして、

心清き戦士

力を極めて戦い邪悪を葬りし時

汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん


see you next game


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第70話 究極の闇の章 究極のDARKNESS

つまり、そういうことさ


10月30日(月)AM11時55分

 

都内大型広場

 

「結構いるね」

 

「コイツら全員残るはドラゴナイトハンターだけってわけか」

 

都内の広場に集まった約50名のクロニクルプレイヤー。彼らは今から始まる最後のガシャットロフィー、ドラゴナイトハンターZをゲットしようとこのイベントに参加している。

 

事の始まりは1週間前……

 

 

10月23日(月)PM04時32分

 

「ドラゴナイトハンターゲットイベントねぇ……」

 

生徒会室に集まった俺とタイガ先生、虚先輩、会長さん。ついさっき発表された仮面ライダークロニクルの初イベント『協力イベント 討伐!グラファイト!!』。内容的にクロニクルメンバーで協力してドラゴナイトハンターのバクスター グラファイトを倒そうというものだろう。

 

「参加条件はドラゴナイトハンター以外のガシャットロフィーを所持か」

 

「かなり限定されるんじゃないかしら?桐也くん達は大丈夫でしょうけど……もしかしたら2人だけってことも?」

 

「可能性としてはありえます。一部の敵は攻略方法が分からないと詰みますから」

 

「ドレミファビートは辛かった。ね、タイガ先生?」

 

「俺にふるな。嫌なこと思い出す」

 

ドレミファビート攻略は至って簡単だ。バグスターのポッピーにダンスゲームで勝てばいいのだから。俺は難なくクリアしたけど、タイガ先生がまぁ酷い酷い。リズム感覚なさすぎでしょこの人。

 

「それにしても開催日がタッグマッチと同じなんてね……さてどうしたものかしら」

 

「ここは俺とタイガ先生だけでもクロニクルに参加した方がいいんじゃない?」

 

「クロニクル完全攻略にはそれが良いのですが……大丈夫なの?」

 

「大丈夫でしょ。ね?」

 

「ま、なんとかしてやる。何かあったらすぐに呼べ」

 

「うーん、勢いで決めたら後から後悔しそうだけど……やらないよりやって後悔!頼んだわよ2人とも!!」

 

 

それでこうしてイベントに参加している次第だけど、まさかここまで多いとはね。

 

「今頃学園はタッグマッチの準備か」

 

「時間的にはそろそろだと思うけどね。向こうは何も無かったらいいんだけどさぁ」

 

ホント、マジで頼むぞ………。

 

◇ーーーーー◇

 

少し遡り、

 

10月30日(月)AM11時40分

 

IS学園 第3アリーナ

 

「ほーおーきーちゃん!」

 

「うわあっ!?いきなり飛びつかないでください!」

 

「私なりの緊張の解し方よ〜」

 

「今ので心臓が止まるかと思いましたよ!」

 

タッグマッチのため待機する楯無と箒。反対側のピットには一夏と簪が待機している。

 

「楯無さんは緊張してないんですか?」

 

「してるしてる。もう心臓バックバグだよ〜」

 

恐らくこの心臓バクバクとは、クロニクルのことも気にしてるが故だろう。

今は信じることしか出来ない。それ故の歯痒さも楯無にはあった。

 

「あと20分ぐらいですね……」

 

「このまま何も起きなければいいのだけれど」

 

「一夏がそういうのをフラグと言っていましたよ」

 

「そんな私が一級フラグ建築士みたいな言い方やめてよね〜」

 

アハハと笑う楯無。しかし現実は非情だった。

 

『緊急警報!緊急警報!』

 

突如鳴り響く警報音。それと同時に隔壁が降り厳重にロックされてしまった。

 

「!?…まったくタイミング最悪よ……みんな聞こえる!?みんな!」

 

「通信ダメです!」

 

「箒ちゃんは通信続けて!私は隔壁を破る!」

 

ミステリアス・レイディを纏った楯無は隔壁を破ろうとする。

 

「野蛮だなぁ。学園の生徒はみんな脳が猿以下なのかなぁ?」

 

「え?きゃあ!?」

 

「!?楯無さん!!」

 

何者かの攻撃を受けた楯無は隔壁に打ち付けられてしまう。

 

「何者だ!」

 

「酷いな箒ちゃん。お姉さんの顔、忘れちゃった?」

 

「ッ!?………そんな……姉さん!?」

 

「そうだよ〜!会いたかったよ私のマイ妹、愛しの箒ちゃん」

 

箒と対峙したのは、実の姉である篠ノ之束だった。

 

「どうしてこんなことを!」

 

「どうして?パーティーの為だよ!もうすぐここはパーティー会場になる。楽しい楽しいパーティーにね!!」

 

束が指を鳴らすと同時に外から爆発音が聞こえてきた。それも一回ではなく複数回。

 

「何をした!」

 

「パーティーの下拵えかな?この学園の敷地内にえーっと……多分50ぐらいかな?爆弾置いてきたから全部爆発させてみたよ!」

 

「爆弾!?」

 

「アリーナだけだとジョボそうだから、教室とか中庭とか、あと宿舎にも置いてきたよ!今頃全部燃えてるんじゃないかな?楽しそうだよね!」

 

束がニコッと笑うと同時に箒は束に殴りかかった。自慢の剣術を使うのを忘れるほど箒は怒っていた。

 

「許されない……貴女のやったことは!絶対に許されない!!」

 

「許す許されないとかそんなことどうでもいいんだよ箒ちゃん」

 

束は箒の手首を掴むとそのまま投げ飛ばし地面に叩きつけた。更に追い討ちで倒れた箒の右手首を踏みつける。

 

今まで聞いたことがなかった音と痛みが箒を襲った。

 

「ふぅん、叫ばないんだ箒ちゃん。でもその顔でどれだけ痛いのか分かるよ〜うん」

 

「お前は……姉さんじゃ………ない!」

 

「お姉さんだよ。少なくともガワはね」

 

そして束はバグルドライバーと仮面ライダークロニクルガシャットを取り出した。

 

「もうすぐだよ。もうすぐ私の理想郷が誕生する!」

 

『仮面ライダークロニクル!』

 

「変身」

 

『バグルアップ!天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は極まれり!!』

 

束の姿は仮面ライダークロノスへと変わった。仮面ライダークロニクルの元凶クロノス。それが自身の姉が変身していると分かった箒。

 

「貴様が……貴様がぁぁ!!!」

 

「そう、私がクロノス。この世界を統べる者」

 

そしてクロノスはもう一度指を鳴らす。それは彼女の言うパーティーの始まりの合図だった。

 

◇ーーーーー◇

 

10月30日(月)PM00時00分

 

カウントダウンが終わり、ゲーム開始!となった瞬間に俺とタイガ先生以外のプレイヤーが消えた。そう、消えたのは俺とタイガ先生以外のプレイヤー。

 

敵は残っていた。

 

「始まったなイベント。まあお前たちは俺と遊ぶことになるんだけどな」

 

「ダグバ……他のプレイヤーは何処に行った」

 

「お前たちのよく知ってる場所さ。それより始めようぜ。心が滾ってるんだ」

 

ダグバは他のプレイヤーなど気にしておらず、俺とタイガ先生と戦いたいらしい。まあ当然だ。赤の他人を気にするなんて俺だってするかどうか分からない。

 

「九条、お前は学園に戻れ。嫌な予感がする」

 

「相手がそれ許すと思う?アンタがいるんなら前みたいにはいかないし、さっさと終わらせれるだろ?」

 

「だとしてもだ。今の学園のメンツ的にお前が必要な筈だ」

 

「………頑固なのは昔から?それともシャルちゃんに影響された?」

 

「………両方かもな」

『バンバンシューティング!』

 

『爆走バイク!』

 

「「変身!!」」

 

『レベルアップ!爆走バイク!!』

『レベルアップ!バンバンシューティング!!』

 

「行け!」「任せたよ!」

 

俺はIS学園へ、タイガ先生はダグバの元へと駆け出した。

 

「ちょまま!逃げるのかレーザー!」

『PERFECT PUZZLE!』

 

ダグバもパラドクスになり俺を追いかけようとするがタイガ先生が立ち塞がる。

 

「俺じゃ不満か?」

 

「……いいや!」

 

レベル2とレベル50。いくらタイガ先生がベテランでもレベル差が大きいのはあまり良くない。

 

「まったく!どうしてこうなるのかねぇ!」

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

レーザーレベル2を召喚しIS学園へと向かう。その頃、最悪の事態になっているとも知らずに。

 

◇ーーーーー◇

 

10月30日(月)PM00時10分

 

状況確認。

 

私がアリーナの外にいて本当に良かった。

 

学園のあちこちで起きた爆発による被害は甚大。死者はまだ聞いてませんが重傷者が多数。瓦礫の下敷きになった人も少なからずいる。

今現在、教職員と一部の専用機持ちが救助並びに避難誘導を実施中。

 

第4アリーナには突如転送されてきた複数のライドプレイヤー。恐らく今日のイベントで何者かに転送された…そしてその転送した犯人とこの騒動の犯人は同一……

 

オルコットさん、鳳さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんの4名は無数に現れたバグスターウイルスの戦闘員と交戦中。数は多いけれど彼女達なら問題はない筈。

 

未だ確認ができていないのはお嬢様、簪様、織斑君、篠ノ之さん。

 

「無事だといいのですが……ッ!?」

 

殺気。それもかなり鋭い。咄嗟に回避行動をとる。次の瞬間私の走っていた場所に複数の槍が突き刺さる。

 

「ほう、躱すかリントの戦士よ」

 

「貴方は……桐也が言っていた未確認……ガドルね」

 

「ああ、俺がゴ・ガドル・バだ」

 

「IS学園3年、布仏虚….仮面ライダーエグゼイド!」

『マイティアクションX!』

 

「大変身!」

『レベルアップ!マイティアクションX!』

 

ガシャコンブレイカーをガドル目掛けて振り下ろす。しかしガドルは簡単にかわし逆に自身の剣で斬り付けてきた。

 

「くっ!」

 

「ふむ、今のも擦り傷で済ませるか。中々やるな」

 

「未確認に褒められても嬉しくはありませんね」

 

時間がない。ここはやはり速攻で終わらせるべきですね。

私は従来のガシャットとは違う、少し大きめのガシャットを取り出す。

 

「本気で行きます」

『マキシマムマイティX!!』

 

「マックス大変身ッ!!!」

 

◇ーーーーー◇

 

同時刻

 

いてぇ……何が起きた……

 

そうだ…急に警報音が鳴り響いたと思ったら簪の背後にゲンムが……

 

「かん……ざ…」

 

声がでねぇ、血の味しかしねぇ、胸から流れる血が止まらないし、口からも溢れてくる。

 

「嫌……来ないで……!」

 

「テメェ……かんざ…し…から……離れやがれッ!!」

 

足に力が入らないが気合いで立ち上がる。

 

「まだ立つか織斑一夏。お前の心臓は確かに貫いたぞ」

 

「男には……心臓潰されても……立たなきゃいけない時が…あんだよ……」

 

「ふむ……実に下らん」

 

突然衝撃が走った。どうやら俺の右腕に何か当たったみたいだった。

しかし確認は出来なかった。だって無いモノを確認なんて出来ないだろ。

 

「いやぁぁぁ!!」

 

「腕が……マジかよ………」

 

せっかく立ち上がったのに倒れてしまう。俺が踠いてる間にもゲンムは簪に迫る。

 

ダメだ……動け!動け動け!動け動け動け!動け動け動け動け動け動け動け動け!!動いてくれ俺の体!!

 

「まずは1人……チェックメイト」

 

「動けぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、俺の目の前が真っ黒に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

 

聖なる泉枯れ果てし時

 

 

「なんだ今の爆発!?」

 

「もしかして……覚醒したのか…一夏?」

 

 

凄まじき戦士雷の如く出で

 

 

「ちょ、今の爆発なによ!?」

 

「第3アリーナからですわ!」

 

「第3アリーナって、一夏と簪に楯無さんと箒がいたよね!」

 

「チッ、嫌な予感がする。総員さっさと片付けるぞ!!」

 

 

太陽は闇に葬られん

 

 

「へぇ……目覚めたんだ……究極の闇…」

 

 

そして

 

 

「この光は!?」

 

「これが究極の闇……!」

 

 

心清き戦士

 

 

「おいおい……マジかよ……」

 

 

力を極めて戦い邪悪を葬りし時

 

 

「…………」

 

 

汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん




see you next game……


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第71話 究極の闇の章 最強無敵のGAMER

遂にエグゼイドが輝きます


10月30日(月)PM00時06分

 

第4アリーナではライドプレイヤー達とグラファイトの戦闘が行われていた。グラファイトは強敵だが、流石は何回も戦いを繰り広げてきたライドプレイヤー達。自然と連携し効率よくダメージを与えていく。

 

「そろそろいけるぞ!」

 

「よっしゃ、ぶちかませ!」

 

戦闘開始から約6分。ライドプレイヤー達は遂にグラファイトを追い詰め、

 

「ラストアタック!」

 

「おりゃあ!!!」

 

『グッ!?グオオァァァッ!!!』

 

《GAME CLEAR!》

 

グラファイトを倒す事に成功した。流石にこれだけのライドプレイヤーが集まればたとえグラファイトといえどひとたまりもなかっただろう。

 

「ラストアタックおめでとう!」

 

「やったな!」

 

「ありがとう!」

 

各々が互いを褒め称える。最初は我先にとバグスターと戦っていたプレイヤー達だが、今となっては協力しあう仲となっていた。

 

『おめでとー!!全てのバグスターを倒した貴方にはラスボスに挑む権利が与えられるよ!受け取ってー!』

 

ゲームクリアと同時に現れたポッピーからアイテムを受け取るライドプレイヤー。それはクロノスに変身するためのバグルドライバーだった。

 

『さあ!君の勇姿を見せつける時だよ!クロノスに変身して!!』

 

「よ、よーし!」

 

『仮面ライダークロニクル!』

 

「変身!」

 

バグルドライバーにクロニクルガシャットを挿し込む。そして彼の姿は仮面ライダークロノス

 

 

 

 

とは似て非なる違う姿となった。

 

◇ーーーーー◇

 

10月30日(月)PM00時13分

 

何が起きたのかすぐには分からなかった。私がゲンムに殺されそうになった時、一夏の体を黒い炎が包み込んで、そのまま第3アリーナのピットを破壊した。

 

私はなんとか無事だった。そして炎がなくなったと思ったら、そこに立っていたのは一夏じゃなくて未確認生命体2号だった。

 

「面白い…その姿のクウガがどこまで強いか、確かめてやろう」

 

『シャカリキスポーツ!』

 

「………」

 

一夏…もといクウガは何も言葉を発する事なく、手を前にかざした。

するとゲンムはそのまま壁に叩きつけられた。

 

「ぐおっ!?一体何が!?」

 

「………」

 

無言のままゲンムのもとに歩くクウガ。ゲンムは車輪を投げて攻撃するけど、車輪はクウガに当たった瞬間燃え尽きてしまった。

 

「うぐっ!?き、貴様ッ…!」

 

クウガはゲンムに近づくと首を掴み持ち上げる。そしてゲンムを地面に叩きつけた。叩きつけた衝撃で地面に穴が空きクウガとゲンムは地下へと落ちていった。

 

「一夏……」

 

どうすればいいのか分からなかった。助けに行くべきか、逃げるべきか。クウガが一夏だとしても頭のどこかでは認めたくないという思いもある。

 

「どうすればいいの……一夏…」

 

◇ーーーーー◇

 

「ふんふん……究極の闇がこれ程とは…想定外だけど…問題ないね」

 

「究極の…闇ですって…?」

 

強烈な一撃をもらった楯無と箒がなんとか立ち上がる。それを見た束は「タフだねー」と爽やかな声で言う。

 

「特別に束さんが授業を開いてあげよう!究極の闇のクウガ。まあ簡単に言えば世界を滅ぼすほどの力を秘めた生体兵器ってところかな」

 

「生体兵器……」

 

「自我は無く、加減はしない。まさに究極!世界を滅ぼすのはいつだって闇なんだよ!しかも正義のヒーローを名乗っていたクウガが世界を滅ぼすなんてさいっこうだね!」

 

狂気に満ちた笑いを発する束。こんな邪悪な存在は切除しなくてはいけない。楯無は自身の槍と蛇腹剣を構える。

 

「私と戦う気?無理無理勝てない勝てない。私と君たちの時点で差はついてる。それにクロノスとただのIS。どっちが強いかなんて言わなくても分かるでしょ?」

 

「だとしてもよ!!」

 

 

楯無が駆け出そうとしたその時だった。

激しい揺れが楯無と箒を襲う。そして束は仮面の下でニヤリと笑っていた。

 

 

「さあ!始まりの合図だ!世界は私のものになる!」

 

「何をした!」

 

「今この瞬間、クロニクルの1プレイヤーが全てのガシャットロフィーを集めきった。そしてクロノスに変身したんだよ………ラスボスの力を秘めたクロノス、ゲムデウスクロノスにね!!」

 

「ゲムデウス…クロノス!?」

 

「ゲムデウスクロノスはいわばパンデミックの発生元!ゲムデウスクロノスを中心に、仮面ライダークロニクルのガシャットを持っているものはゾンビゲーマーへと姿を変える!そしてゾンビゲーマーは一般の人間共をゾンビに変える!」

 

「それが…貴様の目的なのか!」

 

「私の目的は私の世界を作る事。その為には言う事を聞いてくれる、有無も言わずに働いてくれる手駒が欲しかった。それが今手に入った!」

 

クロノスが指を鳴らすとピットの防壁が開いていく。そして楯無と箒が見たのは第4アリーナから伸びる禍々しい光の柱。

 

「止めないと……ぐっ…!」

 

「無駄だよ無駄。今行けばゾンビになるのが早まるだけ。対抗手段なんて何にも『あるぜ』………は?」

 

楯無と箒、恐らくIS学園にいる人全員に聞こえただろう。ある男の声が。

 

『はーい第4アリーナ放送室から失礼しまーす。わたくし九条桐也、今からパンデミック止めまーす』

 

『ドクターマイティ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

キメワザの音声が流れると青白い弾丸が空高く打ち上がり、そして炸裂し光は空へ広がり続ける。

 

『今のでパンデミック止まりましたー!はい拍手ーパチパチパチパチー』

 

「はぁ!?ふざけるなよ人間!!」

 

『ふざけてんのはどっちだよ。テメェのママゴトに付き合う程人類は暇じゃねぇんだよ!!』

 

次の瞬間クロノスが殴り飛ばされアリーナへと落ちていった。

 

「今のはただの挨拶代わりだ」

 

「桐也くん!」「キリヤん!!」

 

「おまたせ、助っ人とーじょー!」

 

仮面ライダーレーザーターボ、九条桐也がそこに立っていた。

 

 

殴り飛ばしたクロノスを追って俺もアリーナに降り立つ。予想外のダメージでクロノスは少しふらついていた。

 

「よおクロノス。お前のくだらない野望を笑いに来てやったぜ」

 

「貴様ッ……どうやってパンデミックを止めた…」

 

「はぁ……ま、親切な俺は答えてやるよ。まずゾンビゲーマーにならないのはコイツのおかげ」

 

ガシャコンキースラッシャーから白い大きめのガシャットを引き抜く。『ドクターマイティXX』と書かれたソレをクロノスに見せつける。

 

「このドクターマイティにはあらゆるウイルスを打ち消す効果がある。ソレを使って俺はゾンビゲーマーにならずに済んだし、パンデミックを止めることができた」

 

「そのガシャット……檀黎斗か」

 

「いいや?お前も把握してるかどうかわ分からないゲストからのプレゼントさ」

 

ドクターマイティを仕舞いノインシュヴァンツを取り出す。

 

「………フッ…フフッ………ハハハハッ!!」

 

「何がおかしい」

 

「いいや…パンデミックを止めたぐらいで勝った気でいるのが面白くてね。パンデミックなんていつでも起こせれる。今日この時に引き起こしたのは引き起こす口実が出来たから……記念日だもんねぇ」

 

「ホント…クロニクル1ヶ月記念とか……そんなの迎える前に潰したかったけど」

 

「無理だよ。君1人じゃね!!」

 

クロノスはバグルドライバーに手を伸ばす。

 

1人じゃ無理。確かにそうだ。でも、

 

誰が1人で戦うって言ったよ?

 

『マキシマムマイティ!クリティカルブレイク!!』

 

バグルドライバーのボタンが押される前に特大のキメワザが文字通り飛んできた。

回避したクロノスがソレを睨みつけている。

 

「遅いんじゃない?」

 

「これでも急いだ方よ。ガドルは他の専用機持ちに任せたわ」

 

「大丈夫なの?」

 

「今の彼女達なら負ける事はないわ。信じなさい」

 

「りょーかい。んじゃま、コッチも始めますか!」

 

今飛んできたのは虚先輩。最大級のパワフルボディを持つレベル99のエグゼイド。

 

『マキシマムパワーX!!』

 

「ノーコンテニューでクリアです!」

 

仮面ライダーエグゼイド マキシマムゲーマーレベル99。それが今の虚先輩の姿だ。

 

◇ーーーーー◇

 

同時刻 都内大型広場

 

『バンバン!クリティカルファイア!!』

 

『PERFECT!CRITICAL COMBO!!』

 

「ウラァァ!!」

 

「デヤァァ!!」

 

スナイプの一斉砲撃とパラドクスの飛び蹴りが激突する。

一瞬スナイプの砲撃がパラドクスを上回ったが、最後はパラドクスが押し勝ってしまった。

 

「勝負アリ、ッてね!!」

 

「ぐあっ!?」

 

そのまま吹っ飛ばされるスナイプ。まだ変身は解除されていないが、ライフゲージは大幅に減少していた。ゼロになれば強制変身解除。そうなればパラドクス、ダグバの攻撃を防ぐ術は無くなってしまう。

 

「俺の火力だけじゃ足りないか……ッ!」

 

「そういうこった。俺よりレベルが上なら勝てたかもな?」

 

 

 

「ほう……ならば俺の相手をしてもらおう」

 

倒れたスナイプに詰め寄るパラドクスに声をかける男。スナイプ、タイガはその男に見覚えがあった。

 

男の名は、鏡ヒイロ。

 

「テメェ……お坊ちゃん!」

 

「情けないぞ無免許医。それでも俺の先輩か?」

 

「うるせぇ。来たならお前も手伝え」

 

「無論、そのつもりだ」

 

『タドルレガシー!』

 

ヒイロは白銀のガシャット、タドルレガシーを起動させる。タドルファンタジーと似たゲーマが現れヒイロの周りを飛び回る。

 

「へえ?じゃあ次はアンタが相手してくれるんだ?」

 

「バグスターも未確認生命体も、この俺が切除する!術式75!変身!!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!』

『辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!!』

 

ヒイロの姿はブレイブと似て非なる姿のトゥルーブレイブ レガシーゲーマーへと変わった。そのレベルはパラドクスも上回る75。

 

「75か…面白いじゃん!心が躍るぜ!」

 

「行くぞ。援護を頼む」

 

「射線上に入っても容赦なく撃つからな」

 

「問題ない。お前が俺に当てることはないからな」

 

「ふん」

 

白銀の騎士と戦艦纏し狙撃手が最強のライダーに挑む。開戦の合図はスナイプの砲撃だった。

 

◇ーーーーー◇

 

IS学園第3アリーナ

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

「はっ!オラァ!!」

 

「チッ!」

 

戦況は劣勢でもないが優勢でもなかった。マキシマムゲーマーとシュヴァンツバイクゲーマーのコンビネーションでクロノスを攻撃するが

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE・・・RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アイツの能力か知らないが今みたいに避けられてしまう。瞬間移動かなんかの類だろうが厄介極まりない。

 

「………」

 

「トリックが分かったなら早めに教えてよ。じゃないとやられる」

 

「あと少しなんです…あと少しで何かが…」

 

「仕組みがわかったところで私は攻略出来ないよ!」

 

バグヴァイザーからビームで攻撃してくるクロノス。中々の威力のこの攻撃、下手に当たればライフゲージ半分以上持っていかれるな。

 

「コッチもスピード上げてくか!」

 

ゲーマドライバーのレバーを閉じ開く。ギアデュアルならコレでキメワザだけど、ノインシュヴァンツは違う。

 

「2倍速!」

 

『ガッチャーン!スピードアップ!ノイン!ノイン!ノイン!九尾と絆!ダッシュゴーイング!走れノインシュヴァンツ!!』

 

スピードアップ。コレがノインシュヴァンツの能力の一つ。スピードアップすることで赤いオーラを纏い、尻尾も増える。つまりブーストゲージが更に3本使え、合計6本一点集中も可能になる。

 

コレがシュヴァンツバイクゲーマーレベルXXだ。

 

「かなり速いよ?」

 

「速くても意味ないってこと、教えてあげ、ッ!?」

 

「だから、速いよって言ったじゃん」

 

クロノスの言葉を遮るように膝蹴りを叩き込む。XXになったことでスピードは勿論パワーも上がっている。さっきまでとは違うってこと!

 

「まだまだいくぜッ!!」

 

ブーストゲージを左拳と右足に使用する。怯んでいるクロノスに左拳のアッパーで打ち上げる。間髪入れずにかかと落としで地面に叩きつけ、バウンドしたところを右ミドルキックで吹っ飛ばす。

 

「流石に痛いだろ?でもまだまだ終わらねぇぞ!!」

 

「調子に……乗るな!!」

 

クロノスがベルトに手を伸ばす。しかしそれを虚先輩が止めた。

 

「貴様ッ!」

 

「トリック、分かりましたよ。瞬間移動にしては不可解な動き、そしてクロノスという時の神の名前……貴方の能力は時止め…ポーズと言ったところでしょうか」

 

「なっ!?」

 

「そしてコレに対する対処法は、ッ!?」

 

 

突然地面が揺れ始めた。

 

 

そして俺たちが戦っていた第3アリーナが突如爆ぜた。なんとか回避した俺と虚先輩。巻き込まれればよかったもののクロノスも回避してやがった。

 

「これは……まさか」

 

炎に包まれる第3アリーナ。俺と虚先輩、クロノスの前に現れたのは黒い仮面ライダー。

 

「……随分と黒くなったな名人」

 

「コレが…クウガ……織斑君……」

 

仮面ライダークウガ。黒いボディに金色のライン、印象的だった赤目も黒く染まっていた。

 

「それが究極の闇。言うなればアルティメットフォーム」

 

「究極の闇……」

 

「………」

 

クウガが手を翳すとクロノスの立っていた場所が爆発した。更に炎の勢いを増す第3アリーナ。流石にアレは俺でも止められないって。

 

「……仕方ありません。クロノスのポーズに対応する為に使おうと思いましたが、状況が状況です」

 

「先輩、一夏は」

 

「分かっているわ。まずは『止める』。状況次第で『殺す』わ」

 

「……まずは止めてくれるだけありがたいよ」

 

虚先輩は金色のガシャットを取り出す。一度だけ見たことのあるそのガシャットは従来のモノやギアデュアル、マキシマムとも異なる姿をしていた。

 

そのガシャットの名は、

 

『ハイパームテキ!!』

『ドッキーング!!』

 

「ハイパー……大変身!!」

 

『パッカーン!!』

 

マキシマムガシャットと合体したハイパームテキのスイッチを押すとカバーが開いた。

次の瞬間金色に光るマキシマムゲーマー。そして射出されるエグゼイドと黄金の星。

 

『輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!!』

 

エグゼイドが黄金の星を纏うとその姿は最強無敵の姿へと変化した。

 

『ハイパー!ムテキ!エグゼーイド!!』

 

コレこそがエグゼイドの、虚先輩の切り札、仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー。

 

「ノーコンテニューで、クリアしてみせます!!」

 

 

今、究極と無敵の戦いが始まる。




情報量が多い?いつも通りです気にしてはいけない。この作品のムテキは少し特殊な仕様になってますのでポンポン使えるものではありません。

今回が今年最後になるかどうか……出来ればもう1話投稿したい。だから頑張る。間に合わなかったらごめんなさい!

それではsee you next game!


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第72話 究極の闇の章 究極VS無敵&最速

今年最後の更新になりますゥゥ!!


10月30日(月)PM00時26分

 

都内大型広場

 

「はあぁぁぁ!せいっ!!」

 

「はっ!らあっ!!」

 

「チッ!このっ!!」

 

トゥルーブレイブの剣を拳で受け止めるパラドクスのノックアウトファイター。その隙にスナイプが一斉砲撃でパラドクスを攻撃する。

 

エナジーアイテムはトゥルーブレイブに無効化され、ノックアウトファイターではスナイプに遠距離から蜂の巣にされる。便利な能力を持つパラドクスだが、流石に2対1では分が悪かった。

 

「おいおい…仲悪そうに話す割には息ピッタリじゃないか」

 

「はっ、この際教えといてやる」

 

「奇遇だな。俺も言っておきたいことがある」

 

「俺は鏡ヒイロが!」「花家タイガが!」

 

『『キメワザ!』』

『タドル!クリティカルストライク!!』

『バンバン!クリティカルファイア!!』

 

「「大嫌いだ!!」」

 

「ははっ……そういうのが仲良いって言うんじゃ、『KNOCK OUT !CRITICAL SMASH!!』ないのかよ!!」

 

パラドクスの渾身の拳とトゥルーブレイブの蹴りが激突する。双方ともかなりの威力を誇るが、比べてしまえばパラドクスよりレベルが大きいトゥルーブレイブが押し勝つのは分かりきったことだった。

 

「ぐあっ!?」

 

「持ってけフルコースだ!!」

 

スナイプの砲撃が全てパラドクスに着弾する。ガードする暇もなく全弾食らってしまったパラドクスは変身が解除されダグバの姿に戻ってしまう。

 

「くっ…俺がここまでやられるなんてな……次は負けないぜ?」

 

ダグバは思いっきり地面を殴り砂埃を起こした。トドメを刺そうとしたヒイロの剣はただ砂埃を払うだけだった。

 

「逃したか…」

 

「かまわねぇ。次なんてねぇからな。今はそれよりIS学園の方だ…ぐっ……」

 

「無理をするな無免許医。IS学園には俺が行く」

 

「ざけんな…俺はあそこの教師だ。センコーだけ尻尾巻いて逃げれるかよ」

 

「はぁ……やれやれ、遅れるなよ」

 

こうしてトゥルーブレイブとスナイプはIS学園を目指して走り出した。

 

無敵と究極が戦う戦場と化しているとも知らずに。

 

◇ーーーーー◇

 

同時刻 IS学園第3アリーナ

 

「ノーコンテニューで、クリアしてみせます!!」

 

次の瞬間、クウガとエグゼイドが消えた。それと同時に何かが衝突する音が辺りに響く。大方お互いの瞬間移動的な能力で移動しながら攻撃をぶつけ合ってるんだろう。

 

「向こうは大丈夫として……」

 

「問題は私かな?」

 

「お前以外にも問題はあるけどな」

 

俺はクロノスと対峙する。残念ながら俺にはポーズに対抗する手段が存在しない。となると俺が取る戦法は、

 

「ポーズさせなきゃ、お前は倒せるだろ!」

 

「まあ、そうくるよね!」

 

ポーズをさせる前に一気に叩く。単純な事だが意外と難しい。分かっちゃいたがポーズ抜きでもクロノスは強い。

 

「はっ!やあっ!!」

 

「ハハハッ!甘い甘い!」

 

俺の蹴りや殴りが全て防がれる。だったらコレならどうか。クロノスから距離を取りキースラッシャーにガシャットを装填する。

 

『チャンバラ!バイク!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「いっけ!!」

 

キースラッシャーからタイヤ型の弾丸を発射する。一直線に進む弾丸に対し、クロノスは動く様子を見せない。

 

「余裕ってか?ああ?」

 

「ま、余裕だよね!」

 

「だったらオマケだ!!」

 

『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ガシャコンスパローを取り出しキメワザを発動させる。空中に放った無数の矢がクロノス目掛けて落ちてくる。

 

前方の弾丸。頭上の無数の矢。なら後は後方からの斬撃って相場がきまっているんだよな!!

 

「一気に決めてやる!」

 

ブーストゲージを2本ずつ使用し、キースラッシャーとスパローを強化させる。これでブーストゲージ全部使い切る形になる……倒し切れる気もしないが…それでも!

 

「一気に来たねー。でもさ、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE・・・』

 

 

無駄だよね?」

 

「いいえ?そうとも限りませんよ?」

 

「ッ!?」

 

「流石の究極の闇もこの止まった時の中では動けないようですね。ですがこのハイパームテキならば」

 

『キメワザ!ハイパー!!クリティカルスパーキング!!!』

 

「問題なく動けますッ!!」

 

「ぐっ!?うわあっ!!」

 

 

『RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いきなりクロノスが吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。更に俺の放った弾丸と矢も全弾クロノスに命中した。俺の斬撃は外れたけど。

 

「今の、先輩?」

 

「ええ、キメワザを腹部に叩き込んでやったわ」

 

「うっわエッグいことするわこの人……んで一夏は」

 

聞こうとした瞬間振り向いて蹴りを叩き込む先輩。

 

後方からクウガが突っ込んできたのだ。てか今のに対応できんのかよこの人。マジやべぇ。

 

「桐也!専用機持ちと合流して一般生徒の避難を優先させて。下手をすればIS学園が吹き飛ぶかもしれないわ!」

 

「え、マジ!?」

 

「最初の爆発で学園の地下プラントが誘爆を起こしている可能性も考えられるわ。早くしないと全員吹き飛ぶわよ!」

 

「ったく、なんでこんな事に!!」

 

確かにさっきからあちこちで爆発が起きてるとは思っていたけど、まさかそのレベルまで行ってんのかよ。

 

「ふっ!」

 

「………」

 

「相変わらず喋りませんか…随分と変わりましたね」

 

クウガの背後にショートワープするがクウガは腕の棘を伸ばして攻撃する。それを全部見切って避けるって、あんた何者だよ先輩。

 

「とりあえず、他の奴らと合流しないと」

 

俺は一気に駆け、第3アリーナから脱出する。無事でいろよみんな。

 

◇ーーーーー◇

 

避難誘導を桐也に任せたはいいものの、私のこの状況もあまり良くはありませんね。

 

ハイパームテキは文字通り無敵になる力を秘めています。あらゆる敵を殲滅できるハイパームテキ。しかしこの究極の闇に目覚めたらクウガにはあまり通用していない気がする。

 

当然無敵なのだからクウガの攻撃は通用しない。しかしコチラの攻撃も軽減されている気がする。言ってしまえば手応えがない。

 

「ハッ!てやぁ!!」

 

ショートワープを繰り返しながら全方位から攻撃を繰り出す。しかしクウガはそれら全てに対応してくる。

 

私のかかと落としを両腕をクロスさせ防ぐクウガ。すぐさまショートワープを駆使してガラ空きになった腹部、ベルト部分目掛けて肘打ちを叩き込む。

 

「…………ッ」

 

「!?…反応ありッ!!」

 

一瞬の怯みは見逃さない。体勢が少し崩れたクウガにサマーソルトを繰り出し空中へと打ち上げる。さっきまで感じていた手応えのなさも無くなった。恐らくさっきのベルトへの攻撃が有効だったのでしょう。

 

空中で数回打撃を叩き込みハイパーライドヘアーでクウガを縛り上げそのまま地面に叩きつける。バウンドしたところを更に蹴り飛ばしアリーナの壁へと叩きつける。

 

「まだ、終わりません!」

 

『キメワザ!ハイパー!!クリティカルスパーキング!!!』

 

壁に叩きつけられたクウガ目掛けてキメワザを叩き込む。ショートワープを利用して何度も何度も叩き込む。やがてアリーナ外へと抜ける。空中に蹴り上げてすぐに地面に叩きつける。

 

ふらつくクウガ。しかし時間差でクウガの全身から無数の当たり判定、「HIT!」「GREAT!」「PERFECT!」が炸裂し一斉に敵にダメージが入る。

 

「トドメよ……目を覚ましなさい」

 

『キメワザ!!』

 

ハイパームテキのスイッチを3回連続で押す。コレがムテキゲーマー究極の技、

 

『ハイパーマキシマム!!!クリティカルスパーキングブレイク!!!!』

 

通常のクリティカルスパーキングが連続ヒットならクリティカルスパーキングブレイクは究極の一撃。

 

満身創痍のクウガのボディに究極の一撃が炸裂する。その瞬間、空間が歪んだ。

 

◇ーーーーー◇

 

「しっかしガドル相手に全員無事とは、やるねぇまったく」

 

「私たちも必死に抵抗した。だが奴は途中で戦場を離脱した。何かを察したかのようにな」

 

今現在IS学園…というよりはこの人工島にいる人々を救命艇へと誘導している。今のところは漏れもなく全員救命艇へ乗り込めている。

 

「セシリア!そっちは!」

 

「いっぱいですわ鈴さん!シャルロットさんの方へまわしてください!」

 

「うん!まだこっちはいけるよ!!」

 

「コチラも大丈夫だ!」

 

上手い具合に進んでいる。流石の連携というべきか。

 

「キリヤん!」

 

「無事だったか本音!」

 

「うん……でもかんちゃんが何処にもいないの!」

 

「かんちゃん?……簪ちゃんか!」

 

確か事前に先輩に見せてもらったタッグマッチのリストには簪ちゃんのペアは一夏だった。となると……

 

考えを巡らせていると一際大きい爆発が起きる。それに釣られて更に爆発が各地で起きる。あの方向には第3アリーナ……

 

「結局、逆戻りか……」

 

「キリヤん?」

 

「悪い箒。ここ任せた………10分して帰ってこなかったら船だせ。いいな、絶対だぞ!!」

 

「な!?待てキリヤん!!」

 

箒の制止を無視して駆け出す。あーもうホント走ってばっか!!

 

◇ーーーーー◇

 

「うっ……えっ………」

 

燃え盛る炎。私の周りは炎で包まれていた。

 

「ここは……けほっ!けほっ!」

 

思い出した。あの時私は意を決してクウガとゲンムを追いかけたんだ。それで戦いに巻き込まれて……瓦礫に埋もれて……

 

「自業自得……うっ…」

 

追いかけなければこうはならなかった。お姉ちゃんを呼べばきっとこうならなかった。全て自分のせい。私がもっと強かったら……臆病じゃなかったら一夏はああならなかったかもしれない……

 

一度後悔すると後悔の念が止まらない。

 

「とにかく……ここから出ないと…」

 

でも炎の勢いは増すばかり。下手に打鉄二式で壁でも破壊すればあっという間に下敷きになる。ISを纏っていれば大丈夫なのかもしれないけれど、『かも』の時点で不安がある。

 

「どうすれば……」

 

とにかく動かなければ何も始まらない。少しでも炎がないところに……

 

その時私が無理に動いたせいで、瓦礫がバランスを崩した。マズいと思った時にはもう瓦礫が目の前に…

 

「簪ちゃん!!」

 

一閃。瓦礫が砕かれ私は連れて行かれた。それが誰かわかった時、私は涙が溢れ出した。

 

「お姉ちゃん!」

 

「よかったわ無事で。すぐにここから出るわよ!」

 

お姉ちゃんに連れられて外に脱出する。すでに第3アリーナは炎に包まれていて、他の場所も爆発を繰り返していた。

 

「会長さん!簪ちゃん!」

 

「ナイスタイミングよ桐也くん!簪ちゃんをお願い!」

 

「会長さんは!?」

 

「もう少し人がいないか探してくるわ。あと虚ちゃんも回収しないとね!大丈夫、ISなら飛んで離脱出来るから!」

 

「……帰ってきなよ会長さん…」

 

私は桐也くんにお姫様抱っこされその場を離れた。

 

「また後でね簪ちゃん!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「時間がないか……一気に飛ばすから!」

 

桐也くんが一気に駆ける。お姉ちゃんの姿はあっという間に見えなくなった。

 

「あの場所にいたってことは一夏がクウガだってのも知ったんだろ?」

 

「え…うん……だから…助けたい…って」

 

「凄いよ簪ちゃんは。あいつがクウガ、未確認だったってのに助けに行こうとした」

 

「だ、だって!と…友達……だから」

 

「友達だからか……そうだな。ダチなら助けないとな…」

 

あっという間に救命艇が見えてきた。本音の姿も見え、私は安心感に包まれた、

 

「キリヤん!かんちゃん!」

 

「本音!」

 

「本音、簪ちゃん頼んだぞ」

 

「また行くの?…」

 

「俺だって行きたくねぇよ熱いし。でもま、ツレが寝ぼけてんだ。起こしてやらないとな」

 

そう言って桐也くんは来た道を戻って行った。助けに行ったんだ…一夏を……

 

◇ーーーーー◇

 

「はぁ……はぁ……」

 

「………」

 

「余裕があるのか…それとも喋れないほど余裕がないのか……」

 

「先輩!」

 

第3アリーナ……とはもう呼べない場所に到着した。最早学園の施設があったことさえ分かりにくい状態と化している。

 

ムテキゲーマーの先輩が息を切らしている。これは相当長い間殴り合ってたか?

 

「随分とお疲れだね。もう休んでいいんだよ?」

 

「悪魔みたいな囁きね。でも状況が分からないわけじゃないでしょう?」

 

「まあね。でも残りはそこのバカと先輩とどっか飛んでる会長さんぐらいだよ。学園の生徒、教師、関係者にライドプレイヤーは全員救命艇に乗せた」

 

「ライドプレイヤーも全員救助しているとは……流石仕事が早いわね」

 

「なになに?今になって多少は褒めてくれるって?やめてよ柄じゃないんだから」

 

何はともあれ残りはここにいる奴ら。目の前のバカをどうやって目を覚まさせるか。

 

「ベルトよ。アレを攻撃した瞬間は動きが鈍ったわ」

 

「なるほどねー。だから少しヒビが入ってるわけ?」

 

クウガのベルトにはヒビが入っている。アレを攻撃って……ムテキが強いのか、それとも先輩が馬鹿力なのか……多分両方だな。

 

ベルトのレバーを閉じる。ノインシュヴァンツの2回目の強化。これが真の最速。

 

「3倍速!」

 

『ガッチャーン!スピードアップ!』

『繋がれ!永遠の絆!最速のキツネゲーマー!ノインシュヴァンツレーザー!!』

 

尻尾が3本に増えバランスがとりづらくなり前傾姿勢になる。さながら獲物に飛びかかろうとする獣。これがシュヴァンツバイクゲーマー レベルXXX。

 

「さっさと帰るぞ名人」

 

「………」

 

「だんまりか……そういやあの時からお前と喋ったことないかもな。元気でやってたか?」

 

「………」

 

「まさか怒ってんのか?ったくズルズル引きずりやがって。まあ言い過ぎたかもしれないけどさ」

 

「………」

 

「なんとなくこうなることは分かってたからああ言ったんだぞ。分かってんのか?」

 

「………」

 

「……説教じみたことはやるもんじゃねぇな。お前にはグーパンが一番効くだろ」

 

『ガシャット!キメワザ!!爆走!クリティカルストライク!!』

 

ゲージを3本消費して全身を強化する。今の疲れてる状態じゃ何処までもつか分からない。それでもやらなきゃいけない。

 

お前(ダチ)を連れ戻すのは、(ダチ)の役目だろ一夏ァ!!!」

 

黄色い稲妻と共に駆ける。一撃で終わらせてやる!

 

「うらあぁぁっ!!!」

 

本気の殴りがクウガのベルトに叩き込まれる。それはつまりコイツは防ぎも避けもしなかったのだ。

 

ヒビが広がるベルト。やがてベルトがクウガの中へと沈んでいく。それと同時にクウガの姿が一夏へと戻っていった。

 

「やった…の?」

 

「まあ……ね……ぐっ…」

 

「フラフラじゃない!無茶をしすぎよ!」

 

変身が解除される。エネルギー切れか。

 

「ま、まあ、名人は元に戻ったし……結果よければ何でもいいって言うじゃん?」

 

「終わりよければすべてよし?この状況は正直よくはないけれど」

 

先輩が俺と一夏を抱えて走り出す。わーはやーい。

 

「お嬢様!2人を回収!これで全員です!」

 

『オッケー!私も戻るわ!』

 

燃え盛る炎のなか俺と一夏に負荷がかからないように、それでも素早く駆け抜ける先輩。いやー、ホント頭上がんないわ………

 

俺の記憶はここで途切れた。

 

◇ーーーーー◇

 

「ハハハッ……ハイパームテキとかは予想外だったけど……目的は果たした…………」

 

束はIS学園から離れた場所に位置する島からIS学園を見つめていた。

 

手には仮面ライダークロニクルガシャット。しかしこれは自身のものではない。ゲムデウスクロノスへ変身したライドプレイヤーのものだ。

 

桐也がパンデミックを止めた際、ゲムデウスクロノスの変身も解除され、その場にガシャットが落ちていたのだ。

 

「まあ、どの道殺してでも手に入れる予定だったし。手を洗う必要がなくなっただけヨシとしようか……それにぃ…」

 

彼女の見つめるIS学園は遠くから見ても分かるほどに炎が舞い上がり、黒煙が空へと上っていった。そして、

 

◇ーーーーー◇

 

これは後の歴史の教科書にも載ったレベルの事件、事故となった。

 

 

10月30日(月)PM01時00分

 

 

IS学園及び人工島、爆発

 

この日、地図から一つの島が無くなった。




IS学園、爆発!今年最後の更新で爆発オチです!爆発オチなんてサイテー!!

そして次回からは遂にクロノス、ゲンムとの決着をつけるために桐也たちが動きます。

それでは良いお年を〜。see you next game!


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未来へのFINAL LAP
第73話 始動 〜終わりのSTART〜


あけまして…遅いのは分かってますハイ。
長らくお待たせしました。今回から最終章に突入でございます。長く……いや長過ぎたこの物語もようやくゴールが見えてきました。

あと少し……下手したらまた来年になるけど、付き合っていただければと。

今年もよろしくお願いします!


 

9月17日(日)PM05時27分

 

IS学園食堂

 

「べ、別行動って、なんでだよ!」

 

「簡単な話、お前じゃこういうゲームには向かないだろ。単純な役割分担だ」

 

「役割分担って……敵の仕掛けたゲームに自分からノるってのかよ!」

 

「たまにはノせられるのも悪くねぇだろ」

 

「だったら俺も!」

 

「お前は!……自分の力、コントロール出来なくなってるだろ」

 

「ッ!それは……」

 

「危なっかしい今のお前にゃ背中は預けられない。もう少し力をコントロール出来るようにしとけ」

 

「…………ッ……」

 

 

今思えば俺も言いすぎたのかもな。要約すれば『今のお前はいらない』って言ってるもんだ。そりゃあ怒るよな一夏。

 

「九条君……九条桐也君」

 

「あ?ああ、はい」

 

「私の授業はつまらないかね?」

 

「え、あーまあ、やったとこなんで」

 

俺の返しに顔をしかめる教師。周りの生徒たちはクスクス笑っている。

 

11月06日(月)PM04時30分

 

羽丘高校1年A組

 

あの戦いから随分立った。結論から話すとIS学園は半壊、封鎖されている。まああれだけのバトルをしたんだ。当然っちゃ当然だけど。

 

で生徒は全員無事。日本国籍の人はそのまま他校に転校という形になった。国外の人は帰国、勿論代表候補生も例外ではない。会長さんもロシア代表のため日本にはいない。

 

仮面ライダークロニクルはあれ以来動きがない。バグスターが現れることもなく運営からの発表も何一つない。となると自然とプライヤーも減っていっているみたいだ。

 

そして肝心の一夏だけど……あの日から目を覚ましていない。医者によると意識が覚醒するのを拒否しているみたいだと。もしかしたらアイツ自身どこかで気がついていたのかもしれない。

 

「くーじょ!遊びに行こうぜ!」

 

「黒ちゃん、いいね行こうか。そこのしかめっ面も連れて」

 

「しかめ面ではない。これは生まれつきだ」

 

「白峰〜お前顔にシワ残るぞ?」

 

俺は元々入学する予定だった羽丘高校に転入することになった。そこで黒咲と白峰っていうツレも出来た。

 

 

仮面ライダーにならなかったら、もっと早く出会えていたのかもしれない。

 

 

「おーい!置いてくぞー!」

 

「わりわり、今行く」

 

◇ーーーーー◇

 

11月06日(月)PM09時16分

 

幻夢コーポレーション 社長室

 

「では宝生エムは現在行方不明と」

 

「荷物も全部持ってね。あーこんなことなら先に動いとくべきだったー!」

 

社長室に響く木綿季お嬢様の声。社員がいない今多少大声を出すのはいいが、私がいるということを忘れないで欲しい。

 

「社長から聞かされた時に動いとくべきだった。とりあえず動きを封じるべきだった。そうすればこんなことには」

 

「落ち着いてください木綿季お嬢様。あの戦いで我々も傷を負い動けなかった。仕方のないことです。過ぎたことを悔やんでも前には進めません」

 

「虚ちゃんは冷静だなぁ……あとお嬢様はやめて」

 

「ひとまず当面は篠ノ之束及び宝生エムの捜索を重点的に行いましょう」

 

「未確認が全然動きみせないのも気になるから、そっちも警戒してね。にしても現状日本で動けるのが桐也くんと虚ちゃんだけになるなんて」

 

「動けそうな他の代表候補生も全員国内待機を余儀なくされているみたいです。簪お嬢様も現在は専用機の修復で手が離せない状態です」

 

「とにかく!私も頑張るから!みんなで頑張ろ!」

 

「かしこまりました木綿季お嬢様」

 

◇ーーーーー◇

 

「どういうことだダグバ」

 

バルバが俺目掛けて疑問を投げかける。まあ当然だよな。

 

「何故、他のゲゲル参加者を殺した」

 

ここは俺たちのアジト。そこに広がるのは無数の亡骸。全員俺が殺した。ある一つの目的のために。

 

「簡単な話、早く挑戦したいからだよ。究極の闇にね」

 

「これはルール違反だ。貴様に最早ゲームに参加する権限はない」

 

「堅っ苦しいルールだよな。そんな昔のルールに縛られてるからクウガに負けるんだよ」

 

バルバにギアデュアルを見せつける。バルバは現代のリントが作った物を使っていることにあまり賛成的じゃなかった。

 

「それがゲゲルのルールだ。従えん者には」

 

バルバの腕が変化してツタが伸びてくる。俺はすかさずパーフェクトパズルを起動して変身し、ツタを弾く。

 

「制裁あるのみって?ハハッ……シラけるぜ」

 

「そこまでだダグバ」

 

俺を止めたのはガドルだった。俺は変身を解除しバルバも手を引いた。

 

「死んだものは蘇らん。こうなった以上は次のゲゲルは俺が出る。構わんだろう?」

 

「…………いいだろう」

 

バルバはガドルのバックルに手をかける。こうしてガドルのゲゲルが始まった。

 

「目標は?」

 

「強き者を……3日で1000だ」

 

◇ーーーーー◇

 

11月07日(月)AM10時10分

 

聖都大学付属病院

 

とある病室。1人の患者がいまだに目を覚まさなかった。

織斑一夏。仮面ライダークウガであり究極の闇を呼び起こしIS学園を半壊させた張本人。

 

本来なら厳重に拘束し政府の管理下にでも置くべきなのだろうが、なんとか更織家の権力でこの病院に留まることができた。

 

「一夏……」

 

そんな病室に2人の少女が入ってきた。篠ノ之箒と布仏本音だ。

 

「オリムー、まだ目を覚まさないんだね」

 

「もう1週間はすぎるのか……」

 

目を覚まさない彼を心配する2人。何もしてあげることが出来ないことに歯痒さを感じていた。

 

そしてそれは……

 

◇ーーーーー◇

 

 

 

 

何処まで歩いても闇が広がる。

 

 

何処まで歩いても炎が消えない。

 

 

熱い、熱い、熱い。

 

 

流れ落ちる汗は地面に落ちた瞬間消え失せた。

 

 

闇と炎の世界で俺はずっと歩いている。

 

 

いつから?

 

 

生まれた時?そんなわけがない

 

 

仮面ライダーになったとき?それも違う

 

 

じゃあいつ?それは……

 

 

 

誰かを守るために闇に飲まれた。

 

俺自身が望んだこと?違うとは言えない。

 

力が欲しかったのは事実だ。

 

 

 

俺はいつまで歩き続ければいい?

 

 

《…………ッ》

 

 

声が聞こえた気がする。でも姿は見えない。

 

 

 

 

 

 

闇はまだ続く。

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

それぞれの信念が交差する。

 

もうすぐ終わり。もう終わらせる。

 

それぞれの終わりに目掛けて、若者達は走り出す。

 

このレースのゴールに待ち受けるのは、

 

希望か絶望か…………




久々に書き進めたらこの有り様。次回はもう少し書けるように頑張ります。

終わりへと近づくこの物語。次回予告もこれからはそこまで多くは語りません。少しでも楽しんでいただければ幸いです。

それではsee you next game!


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第74話 開戦 〜激闘不可避のBATTLE GAME〜

ゲゲル最近してませんね。

ガドル、動きます。


 

11月09日(水)PM12時10分

 

「進展無しねぇ……まあそうだろうと思ったよ」

 

『こちらの戦力が分散されている以上派手な戦いになる前にどうにかしたいのだけれどね』

 

昼ごはんを食べながら虚先輩へ定時報告を行う。と言ってもコッチは特に変わりはないわけで、向こうも向こうで動いてるみたいだけど進展無しが続いてる。

 

「ま、向こうは隠れる天才なんだしすぐに見つけられる方が凄いと思うよ?それに向こうもコッチが探してるって分かってるだろうから下手には動かないし動けないでしょ」

 

『時間はあまりかけられないけれどね。それに問題は篠ノ之束だけじゃないわ』

 

「未確認……久々に動いたと思ったら1日で300人でしょ?おかげで自宅待機中だよ」

 

遂に未確認が殺人ゲームを再開したのだ。1日で300人ともなるとトータル1000人を超える可能性も充分あり得る。そしてそれを可能とする力を持つとなると虚先輩や会長さん、タイガ先生……あとはアイツの力が不可欠だ。

 

『狙われたのは警察署やボクシングジム、空手道場……その中でも名の知れた者ばかり殺されているわ』

 

「狙いは強い奴…ってこと?」

 

『恐らく。そして最後に狙われる可能性があるのは…』

 

「仮面ライダー……俺たちってわけ?」

 

『可能性の話よ。少なくとも0%ではないはず』

 

俺たちを最後に狙ってくるとすれば、今回動いてるのはダグバか?それとも隣のガドルか。はたまた新参か。

 

『とにかく、警戒は怠らないこと。動きがあれば連絡するわ』

 

「りょーかい、悪い知らせが入らないことを願ってるよ」

 

電話を終え一息つく。このままじゃ問題が増える一方だ。今は先輩が動いてくれてるけど、いつまでも頼れるわけじゃない。

 

「……しょうがない、留年ぐらいは覚悟するか」

 

 

「まぁあ、デカい道場なこった…」

 

事件現場の1つの剣道場に赴いた。まあ仮面ライダーとはいえ俺は一般人。当然事件現場の道場の中には入れない。

 

「まあ当然いるよな箒」

 

「キリヤん……」

 

事件が起きた場所には箒がいた……というのもここは篠ノ之道場。昔一夏と箒が通ってたとか。ここで師範を務める人が殺されたらしい。

 

「私が来ていれば…なんとかなったのだろうか」

 

「んー、どうだろうな。ターゲットが箒になるか……それとも狙いは変えずか。どの道この道場はしばらく閉鎖されるだろうな」

 

「……」

 

悔しい気持ちが顔に現れる箒。正直箒1人では勝てるとは思えない。だからといって黙ってることなんて出来ないだろうけどな。

 

「今先輩も色々調べてくれてる。悔しいとかあると思うけど今は抑えろ」

 

「分かっている…分かっているのだ……あの時もみんなで未確認を退けることができた。私も力になれると思った矢先にこの始末だ!結局私では……」

 

「過ぎたこと考えても仕方ないだろ。今大事なのは次どうするかだ。反省なら物事終わった後でも出来る」

 

「そう…だな……」

 

その時俺の携帯が鳴る。相手は虚先輩。つまりそういうことか。

 

「未確認か!」

 

「だと思うけど……はい俺だけど」

 

『出たわよ!未確認は現在移動中!位置情報送るから合流して倒すわよ!』

 

「りょーかい、すぐ追いつく……結構近いな…飛ばせばすぐだな」

 

「キリヤん、私も!」

 

「はいはい落ち着いて。箒には別任務だ。結構危ないしかーなーり、難しいぞ。いけるか?」

 

「……任せろ」

 

 

「ここか……む」

 

『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「はああっ!!」「うらあっ!!」

 

俺と先輩のライダーキックが未確認に命中した……けど効いてない。

 

「っと、やっぱお前レベルになるとコレじゃ無理っぽいなガドル」

 

「そうと分かっていながら挑むとはな」

 

「ならばレベルを上げるだけです。行くわよ桐也」

 

『マイティブラザーズ!XX!!』

 

先輩が起動させたマイティブラザーズが分裂して俺のベルトに装填される。

 

「「大!変身!!」」

 

『『マイティ!マイティ!ブラザーズ!!ダブルエーックス!!』』

 

俺はXXLに先輩はXXRに変身してガドルに挑む。

先輩がキースラッシャーで攻撃し、俺がスパローで援護する。

 

「はっ、たあっ!!」

 

「ふんッ!!」

 

ガドルはキースラッシャーの攻撃を腕でガードしながらスパローの矢をはたき落としていく。

XXはコンビで戦えば強いけど火力不足な面がある。しかもスロットを2つ使う為他のガシャットでパワーアップも出来ない。

 

「先輩!」『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「ふっ!」

 

先輩が跳躍し、ガドルから離れたのを見て一気に距離を詰める。零距離からのクリティカルフィニッシュ。

 

『ゲキトツ!クリティカルストライク!!』「桐也!」

 

そしてすかさず先輩が渾身のパンチをガドルに叩き込む。流石に多少はダメージが通ってるみたいだ。

 

「一気に!」「決める!」

 

『『マイティ!ダブル!クリティカルストライク!!』』

 

怯んでいる隙にコイツを決めれば決定打になるはずだ。倒せなくとも今日はコイツも暴れることが出来ないはず!

 

「むぅ……ゴメラ!」

 

「!?…チッ!」

 

突如飛んできた斧。それを避けるために無理に体を捻る。嫌な音が一瞬聞こえたけど気にしてられない。何せ相手が2体になったのだから。

 

「ったく、ご無沙汰だな」

 

「決着をつけようか、仮面ライダー」

 

何かと戦って倒せていないゲーム不参加者のゴメラ。コイツともそろそろケリつけないとな。

 

「任せて大丈夫?」

 

「暴れてきなさい」

 

「オーケー!んじゃひとっ走り付き合ってもらおうかな!」

 

『爆走バイク!』『ノインシュヴァンツ!』

 

爆走バイクとノインシュヴァンツを起動させてシュヴァンツバイクゲーマーに変身する。コイツで戦うのは初めてだ。自己強化出来るとはいえ相手は生粋のパワータイプ。長期戦になるとコッチが不利だ。

 

「速攻で決めるぜ!」

 

初手ブーストゲージ3本。一点集中ではなく全身に満遍なく。身体全体強化。体が熱くなるが3本なら問題ない、20分は戦える!

 

「ではコチラももう少しギアを上げますか」

 

『マキシマムマイティX!!』

 

「マックス大変身!!」

 

『レベルマーックス!!マキシマムパワー!エーックス!!』

 

「ノーコンテニューでクリアしてみせます!」

 

先輩もマキシマムでガドルと戦い始めた。ムテキになれば早い話だろうけど、段階踏んでかないと変身出来ないらしいし……。

 

「むん!!」

 

「ッと!あいっかわらず大振りなくせに避けにくい!!」

 

ゴメラの斧を体を逸らして避ける。ブーストしてなかったら当たってたなこりゃ。ブーストしてギリギリとなるとコイツの本気の本気はガドル以上もありえるぞ。

 

「こんのっ!!」

 

「ぬっ!」

 

振り下ろしてきた斧を避けた瞬間に斧を踏みつけ動けないようにする。この動きが止まってる隙に!

 

「貰っ、な!?」

 

「笑止!!」

 

キースラッシャーの斬撃を斧を手放す事で回避するゴメラ。更にそこから足技で反撃してくる。

咄嗟にガード出来たから良かったものの、モロ当たってたら結構なダメージになってたぞ……

 

「この野郎……2倍速!」

 

『ガッチャーン!スピードアップ!走れノインシュヴァンツ!!』

 

スピードアップしてブーストゲージを増やす。計5本分の身体強化。流石にキツいな…!

 

「まだ上げるか。面白い」

 

「コッチはギリギリだっ、つーの!!」

 

俺のスピードはゴメラの背後に一瞬で回り込めるほどに上がっていた。ゴメラとすれ違い様に拳を数発叩き込み、頸部分に膝蹴りを2発叩き込む。

 

「ぐおっ……」

 

「ッるあぁ!!」

 

振り向いたゴメラにサマーソルトが命中する。怯んでする隙にダメージを与えろ。体を動かせ九条桐也!

 

「うおおおっ!!!」

 

「があああっ!!!」

 

だけど隙なんてなかった。コッチの動きにもうついて来ている。出鱈目すぎるだろ!

 

「お前もまだ本気じゃなかったって?冗談よせよこの野郎!!」

 

「貴様が倍以上のスピードで動くならば、コチラも倍以上のスピードで身体を動かせば良いだけの話だ」

 

「普通は出来ねぇ…よ!!」

 

ブーストゲージを起動。右足が発光する。エネルギーが貯まった瞬間に回し蹴りを叩き込む。が、

 

「分かりやすい攻撃だ。その様に足を発光させればな」

 

「故に裏があるって、思わなかった?」

 

「!?」

 

「嘘だよん」

 

一瞬ゴメラの意識が右足から離れたのが分かった。この隙だ。この隙を逃すな!

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「オラアアッ!!!!」

 

渾身の一撃がゴメラを吹き飛ばす。と同時に身体強化の効果が切れた。5本でコレか……9本とか1分も戦えないんじゃないか……?

 

そういや夢中になってたけど先輩の方はどうなってんだ…

目を向けると最初戦ってた場所から少し離れていた。戦況は五分五分。相変わらずのマキシマムだけどガドルがソレと互角に戦ってるのも大概だ。

 

「はああっ!!」

 

「くおッ!…いい拳だ……ふん!!」

 

「ぐっ!?マキシマムでもガードを崩される…やはり前よりもパワーアップしている……」

 

「当然だ。そしてまだ強くなる!」

 

ガドルの身体に稲妻が走る。この感じ……アイツの…金のクウガの力と似ている!?

 

「させません!!」『マキシマム!マイティ!クリティカルブレイク!!』

 

マキシマムのライダーキックがガドル目掛けて放たれる。

 

「このっ、間に合え!」『バイク!チャンバラ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

俺もキースラッシャーのキメワザをガドル目掛けて放つ。

しかし奴には届かなかった。

 

「ぬおおおおっ!!!」

 

「なっ!?こんのくたばりぞこないが!!」

 

ゴメラが俺の攻撃を受け止めたのだ。生命力高過ぎだろコイツ!

 

「グウゥゥッ!!ガアッ!!」

 

ガドルが全身から放つ雷と先輩のキメワザが激突する。ていうかコッチにも雷飛んできてるんですけど!

 

雷を避けながらガドルを見ると、奴の体の一部が金色に染まっている。まるでクウガだ。となるとアレにも匹敵するのか?

 

あの究極の闇にも……

 

「くっ!?この力はッ!!」

 

「ふんッ!!」

 

「先輩!!」

 

押し負けた先輩が地面に叩きつけられ変身が解除される。

相手はタフネスゴリラに金ピカカブトムシ。先輩を守りながら戦うのは無理だろうな。逃げるにも簡単には逃げられない。

 

「あはは〜、万事なんとかってヤツ?」

 

「くっ……」

 

「予定より早いが…終わりだ仮面ライダー!」

 

ガドルが迫ってくる。この野郎…せめて先輩だけでも!

 

「避けなさいクジョキリ!!」

 

「!?ッぶな!!」

 

上空から聞こえて来た女の声で咄嗟に先輩を担いでその場から離れる。

次の瞬間、未確認2体を巻き込んで地面が爆ぜた。その後も爆発を繰り返していく。

 

「まったく…アンタも箒に無茶頼むわね!」

 

「……ハァ…近いところから攻めろって言ったからな。早い到着で助かったぜ」

 

地面に降り立った爆撃者。そいつはマゼンタカラーの専用機甲龍を身に纏っていた。

 

「ま、コレで一個借りね!」

 

「はいはい、借りは返すぜ鈴!」

 




鈴が来た!ドヤ顔で地面にスーパーヒーロー着地する鈴を思い浮かべると頼もしいと同時に微笑ましい気持ちになります。

鈴参戦で戦況は変わるのか!?
え?だいたい分かってる?そんなー

では


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第75話 激戦 〜REGRETRしない為に〜

前回ガドル動きましたね?


ガドル、止めます。


11月09日(水)PM12時56分

 

「ぬぅ……貴様、あの時の小娘か」

 

「ハッ、覚えてたのね。あんまり嬉しくないけど」

 

鈴が来たことによって形勢が逆転した……とは言い難い。正直まずい状況に変わりはない。

 

「さぁて、どうすんの?」

 

「今は逃げ……かな。今この状況で勝てる気がしない」

 

「同感。アイツも5人で挑んで対等だったわ。2、3人では無理よ」

 

「なら逃げ一択だな!」

 

スパローで2体の足下を狙撃する。相手が怯んだ隙に虚先輩を担いで緊急離脱!

流石の向こうも瞬間移動みたいな技は持ってないだろうし。

 

にしても、こうして尻尾巻いて逃げることになるなんてな……早いとこ対処法を見つけねぇと…

 

◇ーーーーー◇

 

「取り逃したか……」

 

一方桐也達を取り逃してしまったガドル。人間態になったガドルの瞳はある方向を見つめていた。偶然か否かその先には幻夢コーポレーションが存在している。

 

「やはりお前たちは最後の相手になりそうだ」

 

そう呟いたガドルはゴメラを引き連れその場を後にした。

 

◇ーーーーー◇

 

11月09日(水)PM01時24分

 

聖都大学附属病院

 

「まさかあの虚先輩がここまでやられるなんて……」

 

「それだけ相手も強くなった。前とは比べ物にならないくらいにな」

 

虚先輩の怪我が酷く、意識不明の入院コースになった。これでこちらの戦力はガタ落ち。未確認にとっても篠ノ之束にとっても嬉しいことこの上ないだろう。

 

「少なくとも箒には早く帰ってきてもらわないと……次はシャルロットの所に行くって行ってたけど」

 

「シャルちゃんのとこにはタイガ先生もいるから優先してもらった。あと難しそうなのは隊長さんと会長さんか…」

 

箒には他の専用機持ちを今すぐ日本に向かわせるよう指示した。おかげで鈴はすぐに来てくれたが、あとのメンツが心配だ。

 

というのも、アイツら個人はきっと動いてくれるだろうが、それを国が許すかどうかだ。ラウラは黒ウサギ隊の隊長も務めているし、会長さんにいたっては「ロシア代表」なのだ。そうなると勝手に動くことも難しいだろう。

 

でも集まらなきゃガドルには勝てない。後々の事なんて今を乗り越えなきゃ考える意味なんてない。

 

「戦力を揃えてる暇もなさそうだけどね」

 

「それなんだよな…向こうも大人しく待ってくれるはずがない」

 

今この瞬間にもアイツらは動いている筈だ。全員は待ってられない…

 

「……こうなりゃ、俺が時間稼ぐしかないな」

 

「アンタマジで言ってんの?怪我だってしてるのにアンタ1人で抑えられるわけないでしょ!?」

 

「抑えるんだよ。それしか方法はない」

 

「待ちなさいって!アンタまで倒れたらコッチの勝ち目がさらに薄くなるのよ!?」

 

鈴の言う通りなのは分かってる。だからってここで指を加えて待ってるのも俺じゃない。

 

「……はぁ……せめて名人がさっさと起きりゃあな」

 

「一夏……」

 

頼みの綱は未だ目を覚まさず。こうなってしまっては期待はしない方がいいだろう。目が覚める事を前提に物事を進めてはいけない。常に最悪を考える、そうすれば負ける事はない。

 

◇ーーーーー◇

 

「はぁ……はぁ……」

 

辺りは闇に包まれ、炎が俺を囲う。

 

「…………お前」

 

『…………』

 

俺の前に立つソイツは全身真っ黒に金色のラインがはいっていた。俺はコイツを知っている。なにせコイツは、

 

「クウガ……究極の闇……」

 

太陽は闇に葬られん。長野で見た碑文通りの姿だな。

 

『………』

 

クウガが手を前にかざすと俺の頭の中に映像が流れ始めた。

 

人とグロンギが戦っている。いや、グロンギの蹂躙に人が抵抗している。だけど抵抗虚しく殺されていく。

 

場面が切り替わる。

 

人々はクウガを生み出した。クウガはグロンギを次々と封印していった。この時はまだ『倒す』には至らなかったのか……。

 

場面が切り替わる。

 

最後のグロンギを封印して戦いは終わった。だけど戦いの中で傷ついたクウガはそのまま死んでしまった。

 

これで映像は終わる。

今の映像に目の前の姿のクウガはいなかった。つまり先代はコレにならずに全てのグロンギを封印して世界を救ったのだろう。

 

「そう考えると……俺はまだまだなんだな…」

 

禁断の力を使っても救うところか壊してばっかりだ。

 

『………後悔しているのか?』

 

「……してないとは言えば嘘になる。でも、あそこで俺が戦わなかったらもっと後悔してる…」

 

『そうだろうな。お前はそういう奴だ』

 

結果的に……まあ良い結果とは言えないな。

 

「もう後悔はしたくない。でもその為にはお前の力が必要なわけだ」

 

『だがこの力でお前は後悔した。ならばどうする?』

 

「決まってる……後悔しないようにお前の力を使う」

 

『…………』

 

「…………」

 

『……そのままか。お前らしいな』

 

「だろ?」

 

俺はキチンとクウガの瞳を見る。闇に飲み込まれた真っ黒な目。碑文通りの力。その力で後悔した。なら、

 

「俺が後悔しない、強くある為に!俺が歴史を塗り替える!」

 

◇ーーーーーー◇

 

11月09日(水)PM09時55分

 

「………よし」

 

「キリヤん…」

 

「どうした本音?」

 

少し休んで体が動くようになった。

アレから鈴に説得され少し休まされた。その間ガドルがゲームを再開し人を殺害したという情報は一つも入ってこなかった。

 

「ホントに行くの?怪我もしてるのに」

 

「俺に散々行くな行くな言っておきながら、自分が行ってるんだぞ?そりゃ説教しに行かないとな」

 

代わりに本音から聞かされた情報は、俺が休んでいる間に鈴がガドルと闘っているというものだった。その後タイガ先生、セシリア、シャルロット、ラウラも合流して相手しているらしい。

 

「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」

 

「キリヤん!」

 

「これで終わらせる。篠ノ之束ももう少しの間は引き篭もってるだろうし、少し余裕が出来たら遊びに行こう。話したいこともあるから」

 

「………分かった…」

 

「じゃ、行ってきます」

 

病室を後にする。ここ最近本音とキチンと話せていない。一夏ともアレっきりだ。

 

「大事な仲間……友達なのにな……」

 

 

幻夢コーポレーション前

 

俺が駆けつけた頃にはみんな既に疲弊していた。

 

「ッオラァ!!」

 

「やああっ!!」

 

「ムッ!!」

 

インフィニットマゼンタに変身した鈴の青龍刀とオレンジに変身したシャルロットのパイルバンカーがガドルに叩き込まれる。

 

そしてすぐに離脱。すかさずセシリア、ラウラ、タイガ先生の遠距離攻撃が次々と炸裂する。

 

「チッ、火力不足か!」

 

「タフすぎませんこと!?」

 

「前回よりもパワーアップしている…というのはハッタリではないか」

 

「だから言ったでしょうが!!」

 

「文句言ってもしょうがないよ!ここで止める!」

 

「無駄だッ!!」

 

ガドルの全身から稲妻が放たれる。接近戦を仕掛けようとした鈴とシャルロットはモロに食い変身が解除されてしまう。

 

「ったく、世話が焼けるんだよお前らは!」

 

『爆走バイク!』

 

レーザーターボに変身して鈴とシャルロットの前に立ち、なお放たれる稲妻を受け止める。

 

「ッ……ウラァ!……まったく、来てみてすぐにコレだなんて聞いてないんだけど?」

 

「クジョキリ!」

 

ガドルの拳が俺に迫る。ギリギリで受け止めることに成功……いや奴のパワーに少し押された。

 

「人が話してる途中でしょうが…ッ!」

 

「遺言だったか、邪魔をしたな」

 

「口悪くなってるよ?あとリンリンはあとで説教な!!シャルちゃんはよく頑張った!」

 

「九条!!」

 

「あいよ、っと!!」

 

ガドルに蹴りを入れ距離を取る。次の瞬間、ガドルに次々と砲弾が叩き込まれる。シミュレーションゲーマーのキメワザだ。

 

「隊長さん、コンビネーション決めようか!」

 

「行くぞクジョー!」

 

「オルコット、援護にまわれ!」

 

「了解しました!」

 

ラウラもブラックに変身し、プラズマブレードを展開する。俺とラウラがガドルとすれ違い様に武器で斬りつける。更にタイガ先生とセシリアの援護射撃がガドルにヒットする。

 

ダメージは少ないかもしれないがコレが1番俺たちが『負けない』戦い方だろう。こんなチマチマしたヒット&アウェイ戦法、いつまで通用するか分かんないけどな!

 

「小賢しい!」

 

「それがオタクらのターゲットの人間のやり方ってもんだぜ!」

 

「せいっ!!」

 

ラウラがガドルに蹴りを叩き込む。気を取られた瞬間に反対側からスパローの矢を発射する。

 

「タイガ先生!!」

 

『バンバン!バンバン!クリティカルインパクト!!』

 

「閻魔様のところに帰りな!!」

 

最大出力の砲撃が発射される。ソレは付近の地面を抉りガドルに炸裂する。

 

「九条!」

 

「サンキュ!」

 

『爆走!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『ジェット!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「もういっちょ!!」

 

スパローから放たれるタイヤ型のエネルギー弾。マグナムから放たれる複数のミサイル。1発が弱くても数撃ちゃナントカってやつだ。

 

「決まったろ……流石にね?」

 

「だといいのですが…」

 

「………チッ」

 

「あの野郎……しぶてぇな」

 

ラウラが舌打ちし、タイガ先生が愚痴を漏らす。

 

「ぐうっ……ここまで食らえば流石に…ダメージが大きいな………」

 

「確実にダメージは入ってるわ!このまま一気に!」

 

「…少し遅かったな……この手の野郎はここからが本番……だろ?」

 

闘気ってやつ?そんな感じのものがガドルから溢れ出てる。この場に及んでまだ力を上げるってのが!?

 

「ここまで力を解放するのは初めてだ…ッ!一瞬で死ぬなよ?」

 

「なんならお前が一瞬で死ねって話なんだ、よ!!」

 

ギリギリチャンバラのキメワザをスパローで発動させる。

しかしスパローから放った矢はガドルにたどり着く前に消滅した。

 

「おいおい…マジかよ……」

 

◇ーーーーーー◇

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の聖都大学附属病院のとある病室にて、

 

 

 

 

1人の患者の姿が消えた。




戦いは激しさを増す。追い込まれる桐也たち。そんなピンチを救ったのはとあるライダーのライダーキックだった。

see you next game!


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第76話 死闘 〜黒の金のAMAZINGなヤツ〜

フルボッコタイム、始動


11月09日(水)PM10時09分

 

「くっ……のわっ!?」

 

ガドルのパンチを受け切れず幻夢コーポレーションの壁に叩きつけられる。

 

「九条!この野郎ッ!」

 

「遅いッ!」

 

「なっ!コイツ、ガッ!?」

 

タイガ先生の腹に肘打ちを決め、怯んだタイガ先生の頭を掴みビル目掛けて投げつけた。地に伏せたタイガ先生は変身が解除されてしまっている。

 

セシリアや鈴、シャルロットにラウラも応戦したが圧倒的な力の前に地に伏せた。

 

さっきまでとは大違いだ。これが本気なのか?こんなの…ノインシュヴァンツのゲージ全部使っても勝てねぇ。そもそも現在使えるゲージは6本。5時間で1本回復するブーストゲージ。5本でも怪しかったのに6本とか無理だろ。

 

「この…野郎…!」

 

「無理に動けば貴様の骨や肉が使い物にならなくなるぞ」

 

「テメェを倒せるなら、問題ねえ!!」

 

なんとか立ち上がる俺。俺が負けるにしても、女の子達は逃さないと。

 

「ここで貴様らは死ぬ。俺をここまで追い詰めたことを誇りに思いながら死ね」

 

「死ぬならテメェを倒してからだ!」

 

「その通りよ!!」

 

ガドルの眼前に白い剣が複数落ちてくる。それから遅れて降りてきたのは白い騎士。燃え盛る剣を構えガドルの前に立ち塞がる。

 

「会長さん!」

 

「仮面ライダーブレイブ レガシークエストゲーマー Lv100!遅れてごめんなさいね」

 

「みんなーッ!!」

 

遅れて紅椿を纏った箒が降りてくる。これで国外にいた奴は全員帰ってきたってことだ。頼んだ俺が言うのもなんだけど、よく集めてこれたな箒。

 

「大丈夫かキリヤん!」

 

「まあ、見ての通りってとこ」

 

「状況はあまりよろしくはないわね」

 

会長さんが手をかざすと光を俺に放ち、ライダーゲージを回復させてくれた。でもまあ、俺自身は回復してない。仮面ライダーとして戦える時間が増えただけ。

 

「2人増えたところで変わりはしないぞ」

 

「あら?それはどうかしら、ね!」

 

一瞬で距離を詰め炎を纏ったガシャコンソードを振るう。ガドルがそれを腕でガードするがお構いなしに何度も何度も斬りつける。

 

「確かに頑丈ね」

 

「頑丈だけが俺ではないと知れ!」

 

ガドルが反撃のパンチを繰り出す。

 

しかし会長さんはそれを片手で止めた。

 

「なっ!?会長さん、実はゴリラかなんか!?」

 

「ちょっと失礼ね!タネも仕掛けもあるわよ!」

 

「バカな!俺の拳をいとも簡単に!?」

 

「あら、それ以上はやめておきなさい」

 

ガドルがもう一度拳を振るうと、ガドルの右腕が切り離された。

 

「ぐおっ!?これは!」

 

「ガシャコンソードの炎はただのあつ〜い炎じゃないわよ。オシャレに言うなら聖なる炎。これで焼き切っただけよ」

 

「焼き切った!?んなこと」

 

「出来るわ。一応《学園最強》の称号を貰ってたのだから、ね!!」

 

「ぬうっ!?」

 

俺たちがここまで苦戦したガドルの腕をこうも簡単に焼き切り、更に氷漬けにするなんて……学園最強はやっぱ伊達じゃないってことか。

 

「さ、一気に決めましょうか」

 

「待ってください!!」

 

会長さんがガシャットをソードに装填しようとしたその時、聞き覚えのある声が響いた。

 

「はぁ……はぁ……あとは、俺たちがやります」

 

そんなバカな発言をしたのは、今頃病院で寝ている筈であろう一夏であった。

 

◇ーーーーー◇

 

何とか間に合った……のだろうか。多分俺がここにいることに驚いているのだろう、箒たちの顔が驚きに染まっている。

 

キリヤんと楯無さんは分からないけど。

 

「一夏さん!お怪我の方は!?」

 

「完全には治ってない!」

 

「治ってないって…アンタバカなの!?」

 

「だろうな!」

 

「無理しちゃダメだよ!」

 

「無理しなくちゃ倒せないからな!」

 

「お前という奴は……」

 

「そう呆れてくれるなよ。俺たちで倒すんだから」

 

「一夏!!」

 

「おお簪、走ってきたのか。お疲れ」

 

とにかく、これで全員揃った。この人数…いや俺たちなら!!

 

「………ッ!」

 

「いってぇ!!?何でケツ蹴るんだよ!」

 

「うっせぇ、オメェが来ねえからコッチはバカみたいに苦労してんだぞ分かってんのか!?」

 

「はあ!?元はと言えばお前が別行動しようって言ったからこうなったんだろ!」

 

「いつ暴走するかわかんねぇ奴を側に置いとけるかよ!俺は自分の身の安全を優先してんの!」

 

「嘘ばっか!誰よりも前に突っ込んでる奴がどの口で言ってんだバーカ!!」

 

「お前よりかはマシなんだよバーカ!!」

 

「………」

 

「………フッ、悪かったな」

 

「コッチこそ」

 

言いたいことを言えた気がする。あの時からずっと話してなかったもんな。文句とか溜まりに溜まってたし、一緒に戦ってもいなかった。

 

でも俺と桐也が最強のコンビなのは間違いない!

 

「いくか」

 

「ここで変身すんのか?」

 

「……ああ………みんな、今まで黙っててごめん。この事知ったらみんなに拒絶されるんじゃないかって思ってて…ずっと話せなかった」

 

「一夏…?」

 

「特に箒……ホントごめん!1番箒に話すのが怖かった。箒に嫌われるのが1番辛いから…」

 

「私がお前を嫌うなど…そんな事など無い!!」

 

「そう言ってくれて嬉しいぜ。ありがとうな………じゃあみんな、見ていてくれ!」

 

俺はアークルを呼び出し構えをとる。

 

これがみんなと最後の共闘になるかもしれない。だからこそ知っていて欲しかった。織斑一夏が仮面ライダーだったことを!

 

「俺の!変身ッ!!」

 

体が熱くなると同時に何だか少し軽くなった気がする。吹っ切れたって感じか……

 

「一夏さんが……未確認…」

 

「アンタ…嘘でしょ?」

 

「一夏がクウガ……」

 

「お前….こんなことを隠していたのか」

 

予想通りの反応だ。そりゃそうだよな。今まで一緒にいた人間が実は化け物でしたって言われたら驚くよな。

 

「って、言うと思ったわけ?」

 

「………え?」

 

「なんとなく…そうではないかと思っていましたわ」

 

「……ええ?」

 

「一夏とクウガ…なんだか雰囲気が似てるんだよね」

 

「いや…ちょっとまって??」

 

「隠し事が下手なんだお前は。それでは潜入捜査など無理だぞ?」

 

「まさか……喋ったのかキリヤん!?それとも簪!?」

 

「喋ってねーよ。簪ちゃんもな」

 

嘘!?みんなにバレてる!?まさか箒にも…!?

 

「一夏」

 

「箒!まさかお前まで!?」

 

「わ、私は……今知ったぞ!うん!」

 

「バカ言ってんじゃないわよ。1番最初に言い出したのアンタじゃない」

 

「り、鈴!!」

 

この瞬間魂が抜けそうになった。俺が必死に隠してきた事をみんなは『ああ、どうせ一夏がクウガなんだな』って思ってたわけ!?

 

「名人」

 

「キ、キリヤん…」

 

「これで分かったろ?お前がクウガなんじゃないかって、みんな思ってても誰もお前との接し方を変えなかった。お前がクウガだったところで俺たちの関係は変わらないってこった」

 

「……泣きそう」

 

「泣くなら後でな。向こうもそろそろお目覚めみたいだぜ」

 

氷漬けにされたガドル。その氷にもだんだんと亀裂が入っていき、遂には砕けた。

 

「この程度で…俺を倒せると思うな!仮面ライダー!!」

 

「さーて、それじゃあ行きますか」

 

「おう!ウイニングランを決めるのは」

 

「「俺たちだ!!」」

 

◇ーーーーー◇

 

戦いの火蓋を切ったのはセシリアのライフル。真っ直ぐ放たれたビームはガドルに命中する。氷漬けにされたことで動きがまだ少し鈍っているのか、直撃すると少しよろめいた。

 

「畳み掛けろ!!」

 

「一気に行くぜ!!」

 

片腕だけのガドル。流石に桐也と一夏の連携を完全には捌き切れていない。

 

「一夏!」

 

「サンキュー簪!」

 

簪から夢現を受け取る一夏。それからドラゴンフォームに……いや金の力が加わったライジングドラゴンフォームへと変化した。

 

「いけるよな!」

 

「ったりまえ!」

 

ライジングドラゴンロッドを構え跳躍する一夏。桐也はガシャコンスパロー、ラウラはレールカノンで攻撃する。

 

遠距離からの攻撃に苦戦するガドル。そこへ一夏の渾身の一突きが炸裂する。

 

「ぬうっ!この程度!!」

 

「だったらコレなら…どうだ!!」

 

ライジングドラゴンからライジングタイタンへ姿を変え、武器もライジングタイタンソードへ変化した。

 

「うおおおっ!!!」

 

タイタンソードを深く突き刺す。片腕なら引き抜かれていただろうが、今のアイツでは無理だ。

 

「おのれッ!」

 

「!?ぐあっ!!」

 

しかしガドルもやられっぱなしじゃない。雷を纏った拳を一夏に叩き込む。いくら強化されたタイタンフォームの鎧でも簡単に砕けてしまい、そのまま壁に叩きつけられた。

 

「一夏ッ!!」

 

「俺に構うな!今が攻め時だろ鈴!!」

 

「くっ……分かってるわよ!シャルロット!」

 

「オッケー!援護よろしく簪さん!」

 

「分かった…!」

 

タイタンソードを引き抜いたガドル目掛けて最大出力で突撃する鈴とシャルロット。青龍刀をすれ違いざまに振るい、パイルバンカーを傷口に叩き込む。

 

「やああっ!!」

 

「今よ簪!!」

 

「いっけぇ!!山嵐!!」

 

シャルロットが離脱した瞬間に叩き込まれるミサイルの嵐。避ける間もなく全弾直撃する。本来ならこの程度のミサイル群では怯みはしないが、数発が傷口に直撃しガドルをさらに追い詰めた。

 

「……これが…リントの力か…!」

 

「そうだ。これが俺たちの力だ!」

 

蹌踉めくガドルの肩をライジングペガサスの一撃が射抜いた。

 

「ここまで追い詰められるのも初めてかアンタ?」

 

「これで終わらせる!」

 

「いくぞ2人とも!」

 

ライジングマイティに姿を変えるとボウガンはガシャコンスパローへと戻った。

桐也はガシャコンスパローを受け取りギリギリチャンバラガシャットを装填する。

 

「突っ込め!!」

 

「おう!」「ああ!」

 

キメワザを発動させたタイミングで突撃する一夏と箒。繰り出された矢は一夏と放棄を追い越してガドルへと命中、すかさず抜刀した箒が追撃を仕掛ける。

 

「はあっ!!」

 

「おりやぁ!!」

 

「ぐぬぅ!?この俺が…負けるものかぁ!!」

 

箒の刀を掴むガドル。箒も離すまいと抵抗するがガドルはそのまま箒ごと投げ飛ばしてしまう。

 

「箒ッ!!」

 

「前を見ろ一夏!次が来るぞ!」

 

「備えろ一夏!!」

 

壁に叩きつけられる箒。それとほぼ同時にガドルの全身から雷が放たれる。誰かを狙うわけでもなくただ無差別に放たれる。

 

桐也たちはなんとか避けるが、そのうちの一撃がまだダメージが抜けきっていない箒へと迫る。

 

「やらせるかよ!!」

 

「一夏ッ!?」

 

箒の前に立ち自分の体を盾とし雷を防ぐ一夏。いくらクウガとはいえ気を失いそうになる威力。それでも一夏は耐え続けた。

 

「俺の目の前で…俺の仲間は……誰1人…!」

 

やがてクウガの体が黒く染まってくる。それは究極の闇などではなく、誰かを守りたいと戦い続ける一夏の想いに霊石が応えた姿。

 

「絶対に死なせねえぇ!!!」

 

黒の金のクウガ。桐也は少し身構えるがそれもすぐに喜憂に終わる。

 

一夏の目は闇に染まっていなかったのだから。

 

「アメイジングだな…一夏……」

 

「これで…終わりだ!」

 

「しゃーねぇ、一気に決めるぞ!花は持たせてやる!」

 

一夏の目が赤く発光する。それと同時に両足にエネルギーが溜まる。

 

『ガシャット!キメワザ!!』

 

先行する桐也。なお放たれ続ける雷を掻い潜りながらガドルを目指す。

 

「歯ァ食いしばれよカブトムシ野郎!!」

 

桐也が飛び上がった瞬間ガドルは雷を放つことをやめすぐに左腕で防御体制に入る。

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

桐也の蹴りはガドルの左腕で防がれてしまった。

しかし防がれたのはエネルギーの溜まっていない左足での蹴り。桐也の狙いは一夏の攻撃を確実に当てること。

 

「オラァ!!」

 

着地からの右足での回し蹴りで左腕を払い退ける。ガラ空きになったボディ。声に出さずとも今がチャンスだと一夏には伝わったようだ。

 

「おりゃあぁぁ!!!!」

 

いつもの片足のライダーキックとは違う、両足でのキック。それが今までのクウガとは違うことをガドルに最後に分からせたことだった。

 

「ぐっ!がああっ!!?」

 

「はあぁぁっ!!だあっ!!」

 

ガドルのボディに刻まれた2つの封印マーク。そこからベルトへとエネルギーが流れ込んでいく。

 

「…はぁ……はぁ…」

 

「……強くなった…いや、お前達リントは強くなりすぎた…」

 

「この野郎…まだ生きて」

 

「強すぎる力はいずれ自ら滅びを招くことになるぞ……」

 

「だとしても、だ。俺たちは1人じゃない。支え合って……なんとかするさ」

 

「……この状況で笑うか……成る程、それがお前達…人間の強さ……」

 

ガドルのベルトが割れた。それと同時にガドルを巨大な火柱が包み込む。

 

ガドルとの死闘はこうして幕を下ろしたのだ。

 

◇ーーーーー◇

 

11月09日(水)PM11時30分

 

「あー、身体バッキバキ……クッソ痛えんだけど!」

 

「痛いなら大人しくしろよ!俺のケツを蹴るな!」

 

戦いが終わって緊張の糸が切れたのか全員座り込んでいる。

 

「しかし、一夏さんが本当に未確認……いえクウガだったとは……私知らぬ間にフラれてます!?」

 

「いやいや、アンタの場合最初から無理だから」

 

「な!?失礼ではありません鈴さん!?」

 

「彼氏作るならまず料理をなんとかしなさいよアンタ!今度教えてあげるから!」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます鈴さん!!」

 

「いや抱きつくな!痛いからー!!」

 

相変わらず元気な2人だ。見ててホッとするっていうかなんていうか。

 

「一夏、あの時はごめんね。もし一夏って分かってたらあんな事態は防げたかもしれないのに…」

 

「いやいや、それこそ俺がちゃんと伝えなかったせいだろ?なら俺の責任だって」

 

「で、でも…」

 

「シャルロット。お前は先に一夏に伝えることがあるだろう?」

 

「ラウラ……うん、あの時は助けてくれてありがとう一夏」

 

あの時のこと、まだ少し気にしてたんだな。こんな時にもお礼を言ってくれるなんてシャルは優しいなぁ。

 

「悪かったな。こういう時、大人が率先して前に出るべきなのによ」

 

「ホントだよタイガ先生?先にダウンしてくれちゃってさ〜。この埋め合わせはキチンとしてもらうからね〜」

 

「相変わらずだな九条。だがまあ、お前に変に気を遣われるよりはマシだな」

 

少し…というよりだいぶ疲れてるけどタイガ先生もなんとか元気そう…いやダメそうだな。

 

「あぁ〜!私の最強フォームのお披露目でカッコよく終わる予定だったのに〜!全部持っていったな一夏くん!」

 

「仕方ないよ……一夏も新フォームみたいだったし……」

 

「これも若さかぁ!!くぅ〜!若さが欲しい!」

 

「お姉ちゃんは…主人公というより……面白ヒロイン…」

 

「か、簪ちゃん!?お願いだから面白とか言わないで〜!」

 

珍しく楯無さんが簪に振り回されている。あの姉妹がこれからも仲良くしてくれるとあの時頑張ったかいがあるってもんだ。

 

「何ニヤついてんだ変態名人」

 

「変態は要らないだろ!」

 

「確かに強敵はこれで一体減ったけどな。まだ控えてる奴はいるんだぞ」

 

「分かってるって……でもさ、俺たちなら」

 

「なんとかなるって?はぁ……ま、そうかもな」

 

1つの節目を迎えた。この戦いは俺たちを新しいステージに導いてくれた……なんてな。

 

「桐也……ただいま」

 

「……バーカ。言う相手間違ってんだよ」

 

桐也の目線の先には箒がいた。そうだよな。まず言うべき相手がいるよな。

 

「箒……ただいま」

 

「ああ……おかえり、一夏」

 

俺は今帰ってこれた。みんなが待っていてくれたこの場所に。

 

 

俺はそれがただ嬉しかった。

 




激しい戦いを終えた桐也たち。

そんな彼らに与えられた次のミッションは『休む』こと。

しかしそれでもトラブルに巻き込まれるのは彼らの運命。

桐也たちは貴重な休みを守れるのか?

see you next game!


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第77話 古都 〜そうだ、KYOTOに行こう〜

お待たせして申し訳ございません!入院とかしてバタバタしてました!あとサボってました!ごめんなさい!


11月18日(金)AM11時26分

 

「さて、君たち2人に新しい任務を与えるわ」

 

木綿季さんに幻夢コーポレーションへ呼び出された俺と一夏。新たな任務とか嫌な予感がするんだけど。

 

「次の任務は……休む事よ!」

 

「よし、帰るぞ名人」

 

「そうだな」

 

「いやちょっと待ってちょっと待って!」

 

「休む事だろ?なら帰っても問題ないでしょ」

 

慌てて引き止める木綿季さん。休む事なら任せてほしいのに何を引き止める必要があるのか。

 

「コレを渡しておきたかったの!みんなで遊んできなさい」

 

「これ…旅行券?」

 

「京都への二泊三日!!やったなキリヤん!IS学園の修学旅行も京都行く予定だったんだぜ!」

 

「学園吹き飛んだのお前が原因だけどな」

 

「はい…スミマセン」

 

「でもまあ、ありがたく受け取るけど…いいの?俺らがこぞって出て行っても」

 

「休める時に休むのも任務よ。みんなでまあ楽しんできなさい」

 

太っ腹と言うべきか危機感が少し薄れてると言うべきか。でも休める時に休むのは大事なことだ。

 

「分かったよ。お土産買ってくる」

 

「期待して待ってるわよ」

 

こうして俺たちの京都旅行が決定したのであった。

 

 

「おーい」

 

11月20日(日)AM10時16分

 

場所は東京駅、今まさに京都へ向けて新幹線が出発しようって時に売店に食いついている隊長さんがそこにはいた。

 

「すまん。この駅弁というやつをくれ。なるべく栄養価が高くて食べやすくて安い……ん?なんだこのひよこは」

 

駅弁を頼む隊長さんの視線の先には薄茶色の東京駅名物のひよこが鎮座していた。

 

「か、かわいい……こ、これを!あ、あ、あああるだけ売ってくれ!!」

 

「くらぁ!もう出発でしょ!ほらキビキビ歩く!」

 

「ま、まてクジョー!私にはあのひよこを救い出すという使命が!」

 

「救い出して自分の胃の中に監禁するんでしょ?隊長さん鬼だねー。本音も富山のますのすし我慢したんだから、アンタの方が大人なんだから少しは我慢しろってーの!」

 

「なあ!?わ、私はそんなこと……そんなことぉ!!!!??」

 

隊長さんを座席に座らせると俺も席に着く。窓に顔を押し付け名残惜しそうに売店を見つめる隊長さん。無情にもひよこは後から来た人に買われていた。

 

「だ、大丈夫だよラウラ。京都にもひよこあるよきっと…多分……うん」

 

「せめて自信を持って発言をしてくれシャルロット!」

 

「ラウラさん、余程楽しみでしたのね…」

 

ラウラの向かい側に座るシャルちゃんとセシリー改めリアちゃん。パッとみ誰か分からない?知らない、良いと思ったから使うだけじゃい。

 

「京都かー。アタシ京都って中学の修学旅行ででしか行ったことないのよ。箒は?」

 

「何度かあるな。それこそ家族や中学の修学旅行でもな。その時はキリヤんもいたな」

 

「そっか〜。しののんとキリヤんって同じ中学だもんね〜」

 

「そうだったんだ……昔からあんな感じなの?」

 

「そうだな。変わってない……気がする」

 

本音、箒、リンリン、簪ちゃんの4人が仲良く会話をしている。ほのぼのとしたひととき。こういうの大事だと思うのよ俺はね?

 

「なにが悲しくてお前の隣なんだよ」

 

「はー?別にいいだろたまには男2人でもさー!」

 

俺の隣には名人がいる。まあ確かに積もる話もあるとは思う。でもさ?せっかくの旅行でそんなしみったれた話してられっかよ。

 

「京都行ったらやりたいこと沢山あんだよ!楽しみだな!」

 

「はいはい。あんまはしゃぐなよ」

 

子供みたいにはしゃぐ名人。余程帰って来れたのが嬉しかったのだろう。ガドルを倒したあの日から謎に中身ゼロの会話をすることが多くなってきた。

 

まあ、そういうのも悪くはないけどな。

 

◇ーーーーー◇

 

『まもなく京都、京都です』

 

もうすぐ京都に着くアナウンスを聞き各人荷物の準備をしだす。かくいう俺も準備してるんだけど……あったあった。

 

「なにそれ。カメラ?」

 

「あんた、まだそれ持ってたのね」

 

キリヤんと鈴が横から覗き込む。俺が取り出したのはふr……いや年季の入ったアナログカメラだ。最近のスマホにすら高画質カメラが搭載されてるこの時代でコイツは古めかしいものに見えてしまう。

 

「うん、まあコイツは俺と千冬姉にとって大事なものだからな」

 

「そーね。あんたそれ使ってる時、すっごく楽しそうだもの」

 

コイツは千冬姉が初めて俺に買ってくれた大事なものだ。季節の節目節目にコイツで写真撮影をするのが、俺と千冬姉の間の取り決めになっていた。

 

「リンリン、オカンみたいな顔になってるぞ」

 

「う、うっさいわね!誰がオカンよ!」

 

鈴は照れながら座席に戻る。今回の旅行は沢山撮れそうだな………沢山撮らないとな。俺が今後、生きてるか分からないんだし………

 

 

そんなこんなで12時28分。新幹線は京都に到着した。

ぞろぞろと電車内から降りると京都駅名物の長い階段が姿を現した。いや長いところじゃねぇなこれ。デカくね????

 

「ここで写真撮ったら映えそうだな」

 

「いいじゃん、撮ろうぜ」

 

「え?いいのか?」

 

「周りの邪魔にならなきゃ良いだろ。ほらさっさと並べー」

 

キリヤんが女子ズを整列させる。なんかこういう時要領いいよなキリヤん。

 

「じゃあ撮るぞー!」

 

「何やってんだバカ。お前が写らなくてどーすんだよ。あ、すみませんカメラお願いしてもいいっすか?」

 

シャッターを切ろうとしたらキリヤんがカメラを奪い取り同じく階段を歩いていた俺たちと同じくらいの男性に手渡した。

 

「ああ、構わないが」

 

「いやー、どうもすいません。ほら早く入れよ名人」

 

「分かった!分かったから引っ張んなって」

 

前例左からのほほんさん、キリヤん、俺、箒。後列はラウラ、シャル、セシリア、鈴、簪の順で並ぶ。

 

「それじゃあ撮るぞ」

 

はいチーズとシャッターを切る音が聞こえる。なんで写真撮る時チーズって言うか、前気になって調べたんだよ。なんでもチーズって言う時の顔が口角が上がって笑顔に見えるかららしいぞ。

 

ズの時だと口角上がらなくない?

 

「………」

 

「どうしたんだよ。さっきの写真撮ってくれた人みて」

 

「ああ、いや。なんかな……また会いそうな気がする」

 

「……そうか?」

 

「うーん、次会った時用にあだ名考えるか………髪が白いしイナバのホワイトラビットくんだな」

 

「てっきとうな名前つけて…怒られても知らないからな?」

 

「あとあのお医者さんとか、白髪の女子高生とか………そこら辺も会いそうだ」

 

「……やめろよ、なんか怖くなってきた」

 

笑いながらキリヤんは階段を降りて行く。うーん、もしかしたら俺も会ったりすんのかな……?

 

 

「さてこっからどうすっか?」

 

旅館に荷物を置きこれからは自由時間。回りたいところは沢山あるし早いところ決めてしまいたい。

 

「どうする?2人組作っても1人余るよな」

 

「キリヤんはのほほんさんと回るだろ?」

 

「……いや、今回はお前についた方が面白そうだ。それに明日もあるんだしな」

 

「そ、そうか?電車の中じゃ嫌がってたくせに」

 

気にすんなとキリヤんは手をヒラヒラさせる。

そして各々チームを決めていく。箒と鈴、セシリアとラウラ、シャルと簪とのほほんさんのチームに分かれた。

 

「それじゃあ観光スポットの相談してから出発するから一夏達は先に行ってて」

 

「おう。それじゃあまたな」

 

こうして二泊三日の京都旅行が始まったのであった。

 

 

「あ、一夏!桐也!こっちこっちー!」

 

「わーいキリヤんだ〜」

 

「は、早いね……」

 

2人でぶらぶらしていたらシャルからメールが来たのだ。どうもお菓子屋さんを見つけたから来て欲しいとのこと。

 

そして現在そのお菓子屋さんに到着。手を振っていたのはシャルとのほほんさん。その隣では控えめに簪が手をあげていた。

 

「お、着物か!似合ってるな3人とも」

 

「本音は可愛さに磨きがかかったな」

 

隙あらば彼女を褒めるキリヤん。いいことなんだけどこの時だけ妙に顔が険しくなるから何事かと思う。

 

「えへへ、このお菓子屋さんで着物体験サービスやってたんだ!」

 

「かんちゃん凄いんだよ〜?私とデュッチーの着物選んでくれて〜、髪もセットしてくれたんだ〜」

 

「べ、べつに…これくらいは……」

 

「ていうかのほほんさん、簪のお付きの人とかじゃなかった?立場逆になってない?」

 

あはは〜と笑うのほほんさん。キリヤんは既に携帯で3人を撮影している。仕事が早いねーこの人は!

 

「あ、俺も撮らせてもらっていいか?」

 

「うん!あ、その写真今度現像してもらえる?」

 

「ん?……あー、りょーかい。なるべく早く渡すな」

 

恐らく…いや十中八九タイガ先生に見せる用だろう。明日は箒を連れてここに来てみよう。

 

「よし、撮るぞー。はいバター」

 

「バター?チーズじゃないの?」

 

「まあ、どっちでもいいだろ。とりあえず和菓子でも食おうぜ」

 

「私お腹ぺこぺこ〜」

 

「電車の中で食ってたろ本音」

 

「それとこれとは別腹だよ〜」

 

「どうして太らないのか……不思議……」

 

俺たちは赤い布を敷いた腰掛けに座る。流石に5人だと狭いな。

 

「せっかくだし、団子食べてるところ撮影するか」

 

「えぇ?そこも撮るの?」

 

「いいじゃん。撮ってタイガ先生に見せびらかそうぜ。うまくいけば将来2人で京都旅行行けるかもよ〜?」

 

「そ、そうかな……そうだよね!うん!撮ろう!!」

 

拝啓タイガ先生。シャルは上手いことキリヤんにノせられました。

 

「うまうま〜」

 

「本音…口にタレがついてる……」

 

「ん〜ありがとかんちゃん」

 

「そんな簪ちゃんもタレ付いてるよ」

 

「え……そうn「ペロりんこ」ちょ、本音!?」

 

「ん〜かんちゃんの味〜。大変美味ですな〜」

 

タレが付いた簪の口元をのほほんさんが舐めた。

俺とキリヤんはお互い無言でサムズアップする。この光景は心のカメラに収めておこう。てか撮ったら千冬姉に殺される。

 

「一夏〜桐也〜」

 

「見ろ、舐めてもらえなくてご立腹だぞシャルちゃん」

 

「えー、でもそこはタイガ先生の役目だよなキリヤん」

 

「ハハハ。俺、そこまで言ってないから」

 

「え?」

 

オホホホ、と笑うキリヤん。ノせられてたのは俺の方か畜生この野郎!!

 

 

次に合流したのは箒と鈴。俺の隣に箒、キリヤんの隣に鈴。両手に花とはいかないがそれなりに目立つな。

 

「で、俺たちは今どこに向かってんだ?」

 

「京都といえば!」

 

「鴨川だ!」

 

「………そうなの?」

 

「いや、分かんない」

 

キリヤんが俺に聞いてくるけど俺に分かるわけがなかった。片手間にスマホで鴨川について調べてみる。

 

鴨川は、京都府京都市を流れる淀川水系の一級河川らしい。てか鴨川だけ調べたらなんかたくさん出てきたんだけど!富山とか埼玉にもあんのかよ!

 

「なーんかカップル多くね?」

 

「京都の鴨川の河原ってカップル河原って呼ばれてるみたいなのよ。だから昼間っからカップルであふれてるわけ」

 

「箒、ここに来たかったのか?」

 

「た、たまにはこういうことも…な?」

 

「今日もウチの嫁が可愛いです」

 

「わーった、わーった。2人で行ってこいよ」

 

キリヤんと鈴がニヤニヤしながら手をヒラヒラさせてくる。俺と箒はちょうど空いてたところを見つけて腰を下ろす。

 

勿論ハンカチを箒の下に敷いてな!ここ大事だぞ!!

 

「…………」

 

「…………」

 

川のせせらぎに耳を傾ける。うん、なんかいいなこれ。

 

「って!なんか話題ふりなさいよアンタ!!」

 

「せっかくのデートなのに話題を提供しないあたり名人らしいよな」

 

なんだかんだキリヤんと鈴も近くに座ってるんだよな。距離的にいえばコンビニの揚げ物コーナーとレジぐらい。

 

「あー、秋といえば……昔落ち葉で焼き芋したよは」

 

「一夏、それは……」

 

「ハハハ……まあ、あんまり思い出したくはないよな…」

 

その昔、篠ノ之神社で落ち葉を集めて焼き芋を作ろうとしたのだ。俺、箒、千冬姉、束さんの4人で。

 

『火が足りん…もっとだ……もっとだぁ!!』

 

ここで、暴走したのが千冬姉。火力を更に求めてあれよこれよと。

結果千冬姉はさんざん怒られ、巻き込まれた俺たちもついでに軽く怒られた。

 

「2人して乾いた笑いしてるわよ…」

 

「これがデートとは思えないぞ」

 

良い子の皆さんは保護者と一緒に焚き火をしような!近くに水の入ったバケツを用意しておこうな!仮面ライダークウガとの約束だ!

 

「にしても、この季節の河原は冷えるな…箒、寒くないか?」

 

「う、うむ。問題ない。一夏こそ大丈夫なのか?」

 

「まあ、俺クウガだし」

 

これは答えになってるのだろうか。いやでも少し冷えるのは事実だ。

 

「少し移動するか。体冷やして体調悪くなったら元も子もないしな」

 

「そうだな。キリヤん、鈴!そろそろ行こう!」

 

「ういー。デートはもうお終い?」

 

「明日があるからな。今はみんなで楽しもうぜ」

 

カメラを構え3人を撮る。鴨川をバックにしたその写真は3人の笑顔がバッチリ写っていた。

 

 

「次はセシリアとラウラだけど……ここでいいんだよな?」

 

「待ってろって……いったいなん……おいアレ」

 

俺とキリヤんはセシリアとラウラを待っていたのだが、目の前に高速でやってきたのは人力車だった。

 

「一夏さん!キリヤんさん!お出迎えに参りましたわ!」

 

「さあ一夏、クジョー、乗り込むがいい」

 

人力車の客席に座っていのはセシリアとラウラだった。しかもお姫様ドレス。京都でドレスってのもなかなかアリだな。

 

「ぜーはー……ううっ……」

 

「おい名人。あの赤い髪」

 

「え?あああっ!?弾!何やってんだよお前!」

 

「よ、よお……桐也も久しぶりだな……」

 

セシリアとラウラを乗せた人力車の運転手は五反田弾だった。てか2人とも知り合いだったのか。学園祭の時に話でもしたのかな。

 

「京都にバイトに来たら、なんか巻き込まれたっつーか……ほら、学園祭で一応顔は合わせたんだよ俺たち。だから身元バレしてな……」

 

「なんか…ドンマイ」

 

「強く生きろファイブマン」

 

「何をしている五反田弾!さあ!お前の目的のためにキビキビ働くがよい!」

 

「い、イエスマム!!」

 

ラウラが客席でなんな長い銃を構えている。なんだよアレ。ちゃんとおもちゃなんだろうな…?

 

「メーターモーゼルか?珍しいね隊長さんがそんなアンティークを持つなんて」

 

「良い品ですわ。歴史を感じます」

 

「お前らな……まあ褒め言葉として受け取っておこう」

 

セシリアとラウラはともかくキリヤんまで銃の話についていけるのか。そういえばキリヤんってなんか銃のゲームでえらい有名になったとか言ってたな。

 

「よっしゃあ!そんじゃ行きますか!あ、これ3人乗りだからどっちかは走ってくれよな!」

 

「お前が乗れカメラマン」

 

「え?いいのか?キリヤんはどうすんだよ」

 

「俺は俺でここら辺ブラブラしてるよ。行ってこい」

 

「分かった。また後でな」

 

人力車に乗り込む。今度はセシリアとラウラという両手に花状態だ。

 

「さあ、お願いしますわ五反田さん!京都の街を案内してくださいまし」

 

「お任せあれぇ!!では出発ッ!!」

 

人力車をグッと持ち上げゆっくりと歩き始めた。しっかし高校生なのに人力車のバイトなんて大変だろうに。よくやる奴だよお前は。

 

「とりあえず、3人で自撮りするか」

 

「うむ、頼むぞキャメラマン」

 

「綺麗に撮ってくださいね♪」

 

揺れる人力車の上でなんのか写真を撮った。何枚かはブレてしまったけど、綺麗に撮れた一枚は3人とも楽しそうな笑顔だった。

 

 

11月20日(日)PM03時46分

 

紫雲山 頂法寺

 

「ふぅ〜動いた動いた」

 

「どいつもこいつも元気なこった」

 

ここは生花発祥の地とも言われるお寺で、聖徳太子が健立したとも言われている。なんで俺とキリヤんがここにいるかというと、特に理由はない。

 

「なーんか久々に肩が軽い気がするぜ」

 

「ああ?いっつも軽そうな頭ぐらぐらさせてるくせによく言うぜ」

 

「えぇー?俺そんなにぐらぐらしてたか?」

 

「もう少し落ち着くことを覚えろ」

 

「………」

 

「何ニヤニヤしてんだよ気持ち悪い」

 

「え?あー、うん。こうしてキリヤんとサシで話すの久しぶりだなって」

 

学園祭の時から一度も話す事なくガドルとの決着まで時が過ぎていた。簡単な挨拶くらいあると思ったけどそれすら無かったんだからな。

 

「まあ、それに関しては俺も失敗だったと思うよ。お前と協力してりゃ、学園は吹き飛ぶことはなかっただろうからな」

 

「ああ……そうだな。でもあれは結局のところ俺がクウガの力を抑えきれなかったのが原因だし」

 

「それでもだろ。お前をぼっちにさせた俺にも原因があるんだ。悪かったな」

 

面と向かって謝ることはないキリヤん。今もキリヤんは前を見ながらそう言ってきた。そうそうコイツはこういう奴だ。なんだか少し安心したよ。

 

「ま、これからは頼れる奴らが沢山いるからな。お前も一人でメソメソ泣かなくてすむな」

 

「泣いてねぇつーの!」

 

「は、どーだか」

 

意地悪な笑みを浮かべるキリヤん。この感じも久々だけど、久しぶりに食らったらちょっとムカつく!

 

「にしても修学旅行で京都なんてベタベタすぎてつまんねぇって思ってたけど、来てみりゃそれなりに……」

 

「って!?いきなり止まんなよ……なんか焦げ臭いな…」

 

「鼻は詰まってねぇみたいだな。コッチだ」

 

何かが燃える匂いがする。ここまで来て火事案件とか正直やめてほしいんだけど……

 

「うおっ!?」「うわあっ!!」

 

俺たちの目の前にビームが着弾する。地面が爆発して俺たちは吹っ飛ばされるがすぐに体制を整えベルトを装着する。

 

「アイツッ!?」

 

「オータム!?」

 

「なっ!?このガキども、なんでここにいやがる!!」

 

ビームを撃ってきた張本人。それは学園祭を襲撃してきた亡国企業のオータムだった。でも既にアラクネを展開し、誰かと戦っている。

 

「仮面ライダーが3人たぁ、めんどくせぇなぁ!」

 

「3人?あと1人何処に」

 

「あそこだ……なんで京都にいるんですかねぇ…」

 

アラクネが戦っていたのは黒い仮面ライダー。俺たちもよく知っているゲンムだった…………いや、違う。ゲンムは体のラインが紫だ。アイツは白いラインだ。

 

「その節はどーも黒いエグゼイド」

 

「味方で…いいのか?」

 

「ま、敵だったらあの時俺にドクターマイティは渡してこねぇだろ」

 

ドクターマイティ。俺も話でしか聞いてないけどコレのおかげで一時的にパンデミックを防いだらしい。

 

「いくぞ名人。敵の敵が味方のうちにオータムを倒す」

『爆走バイク!』

 

「おう!」

 

「ゼロ速、「変身!」!」

 

俺はマイティフォームに、キリヤんはレーザーターボに変身してオータムへ挑む。

 

アラクネとの戦いはキリヤんたちが戦ったあの時と同じように立ち回ればいけるはずだ。つまるところまずは部位破壊!狩ゲーでも基本だよな!

 

「このガキ共、前よりもっ!?」

 

「あの時よりレベルダウンするわけないでしょ、ってね!」

 

アラクネの脚から放たれるビームを自慢のスピードで避けながら発射口を破壊し、アラクネの脚そのものもへし折ってしまう。

 

確かに、キリヤんのスピードは学園祭の時より遥かに上がっている。仮面ライダーのレベルだけではなくキリヤん自身のレベルも確実に上がっている。

 

「俺も負けてらんない、なッ!!」

 

「チッ!このクソガキがぁ!!」

 

俺だって負けてない。究極の闇に一度到達して、更にアメイジングマイティへと進化できた俺の力は普通のマイティキックでもかなりの破壊力を出せるようになった。

 

「あと6本!」

 

「一気に叩きおっとっ!?」

 

キリヤんの横を黒いエグゼイドが駆ける。オータムはアラクネの脚を使い黒いエグゼイドへ刺突を繰り出す。

それを紙一重で避ける黒いエグゼイド。あの身のこなし、ゲンムと同等……てかあの動きどっかで。

 

「ッ!!危ねぇ!!」

 

アラクネの脚から放たれたのはさっきまで直線型のビームとは違い拡散型のビーム。その数本が黒いエグゼイドの進路を阻み、別の数本が黒いエグゼイドを直接狙っている。

 

しかし黒いエグゼイドはそれを全て右手で防ぎ再びオータムへの攻撃を再開する。

 

「今の…」

 

「右手には何も展開してなかった。防御力もレーザーとそんなに変わらないだろうにな。ったく無茶な戦い方しやがる」

 

自らへのダメージなどお構いなしに挑む黒いエグゼイド。良く言えば勇敢、悪く言えば無謀。これだとどっちが先に倒れるかのチキンレースだぞ!?

 

「援護する。突っ込め一夏!」『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「頼むぜ桐也!」

 

ライジングマイティの一撃ならオータムを簡単に倒せるだろうけど、黒いエグゼイドを巻き込みかねないし、何より観光客を巻き込んでしまう。

ここは一点集中の一撃だ。俺はその辺にあった木の枝を足で蹴り上げ掴む。

 

「超変身!」

 

「今だ!行け!!」

 

ドラゴンフォームになると同時にガシャコンスパローから矢が大量に放たれる。俺はドラゴンロッドで矢を束ね纏わせる。即席キメワザドラゴンロッドの完成だ!

 

「避けろ!!」

 

黒いエグゼイドもこちらに気が付いてアラクネの脚を一本へし折ることでオータムのバランスを崩させる。

 

「うおおおっ!!!」

 

スプラッシュクリティカルフィニッシュをオータムのボディに叩き込む。キメワザのエネルギーと封印エネルギーが同時にアラクネのボディを駆け巡る。

 

「あああっ!!?」

 

「おおおおっ!!!だあっ!!」

 

オータムを吹っ飛ばした俺は更に跳躍、ドラゴンロッドを吹っ飛ぶオータムに叩きつけ地面にバウンドさせる。

 

「桐也!」

 

「合わせろよ」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「………」『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

レーザーと黒いエグゼイドの息ピッタリのダブルキメワザがオータムに炸裂。そのまま木々を薙ぎ倒しながら吹き飛び壁に激突し、アラクネは解除されオータムは気を失った。

 

 

11月20日(日)PM21時13分

 

温泉旅館 露天風呂 男湯

 

オータムを倒した俺たちはすぐに楯無さん達に連絡し、黒服の人達がオータムを回収していった。

一応そのことを箒たちにも伝えたらなんか怒られた。無茶してだのなんだの。

 

箒たちは箒たちでシャル達が迷子になったと大慌てだったらしい。

 

「にしても、黒いエグゼイド…何者なんだろうな?」

 

「さあな……まあ目星はついてるがな」

 

「マジかよ!?」

 

「アイツが使ってるのはプロトマイティアクションだった。つまりまずはプロトガシャットのゲーマドライバーを手に入れられる人物が怪しいってわけだ」

 

そうなると必然的に幻夢コーポレーションの人間が怪しい。そして幻夢コーポレーションの怪しい人物といえば社長の檀黎斗だ。

 

「まあ思いつくのは社長だよな?でも違うんだよな〜」

 

「なんで言い切れるんだよ」

 

「社長にドクターマイティを見せたら『知らない』って言われた」

 

「つまり……幻夢コーポレーション製のガシャットじゃない?」

 

「ここまで来れば大体分かるだろ。ようはドライバーとガシャットを手に入れられ、尚且つガシャットを作れる人間だ」

 

「そんな人間……」

 

「いるさ。あとコレもヒントかな。何故プロトマイティなのか……だな。プロトタドルクエストでもプロトバンバンシューティングでも、プロト爆走バイクでもなくプロトマイティアクション」

 

「マイティアクションに拘ってるのか?」

 

ゲーマドライバーとプロトガシャットを手に入れられ、ガシャットを作れて、プロトマイティアクションを好んで使う?………まさか、

 

「桐也、お前どうすんだよ」

 

「まあ、全ては明日だな。今日はもう考えねー」

 

ぷー、っと息を吐く桐也。温泉に入ってるってのに、俺の体はなんだか冷たく感じた。

 




京都旅行2日目

桐也は疑問を解決する為に1人行動する。

そして『黒いエグゼイド』と向き合うこととなる。

心のモヤが晴れる時、桐也の口から放たれた言葉は……

see you next game!


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第78話 落涙 〜嘘つき2人のLOVE STORY〜

ええ、ええ、お待たせしました。もしかしたら今年最後の更新です。

あ、なんだかんだ5年目になりました。桐也たちとも随分長い付き合いになりました……


11月21日(月)AM09時24分

 

温泉宿で一夜を過ごし今日は各々自由に動くことになっている。いやまあ昨日も自由っちゃあ自由だったけど。

 

「世間一般は平日で俺らも本当なら学校あるんだよな。観光客が少ねえ気がする」

 

「そこら辺は木綿季さんが手を回したとかなんとか聞いてるけど」

 

「ま、どの道あんなドンパチがあったんだ。辺りの学校はしばらく休校だろうな」

 

現在温泉宿のロビーで俺とキリヤんがマッサージチェアに座っている。他のみんなはまだ準備とかしているらしい。

 

「休校ってなったら勉強大変だよなー」

 

「俺らはまだマシだろ。これが一年前とか二年後だったら結構面倒だぞ」

 

「あー、受験かー」

 

いたって真面目な話をしているのだがマッサージチェアの振動で声が震える。脳も震える。

 

「そういやキリヤんは将来の進路決めてるのか?」

 

「あ?あー……決めてねぇ」

 

「まだパッと思い浮かばないよな」

 

「いや候補は幾つかある」

 

「え"?」

 

思わず汚い声が出た。キリヤんは割とその場の空気とかそういうのに身を任せるタイプだと勝手に思っていた。だから適当に大学に行ってそこで決めるとかいうのかと思ったけど。

 

「とりあえず適当に大学に行くってのが候補一だ」

 

「……」

 

「なんだよその目」

 

「あ、いや…まあ、その……お前らしいなって」

 

予想的中。いやこんなところで予想的中しても困るな。

 

「あとは……お、本音来た」

 

「おまたせ〜」

 

「え、話終わり!?嘘だろ言ってけよ!」

 

「秘密の一つや二つあった方が面白いだろ?じゃーなー」

 

キリヤんはマッサージチェアから離れるとのほほんさんと一緒に温泉宿を出て行った。1人マッサージチェアで揺れる俺はキリヤんの進路が気になり、箒に頬をペチペチされるまで考え込んでいた。

 

◇ーーーーー◇

 

「さーて、とりあえず何処行くかな」

 

「キリヤんと一緒なら何処でも楽しめるよ〜」

 

「そう言ってもらえるのが嬉しい反面、考える側としては悩みどころなんだぞー」

 

本音のほっぺを突く。えへへと笑う本音は今日も天使でございます。

 

「とりあえず走るか。しっかり掴まれよ」

 

俺はレーザーレベル2になり本音を乗せて走り出す。もう少し時間が経てば本音と2ケツ出来るんだけどな。免許取って時間が経ってないからそういうことが出来ない。

 

「わぁぁ〜風が気持ちぃ〜」

 

「あんまり大口開いて舌噛むなよー」

 

「は〜い」

 

本音を乗せたまま、とりあえず俺は清水寺へと向かった。

 

 

人目を避けて清水寺の裏手で変身を解除した……んだけど、人が少ない。

平日なのもあるんだろうし、ここは裏手だから少ないのは普通なのかもしれないが……

 

「これ間違えて変な所入ったか?」

 

「誰もいないね〜」

 

そう言いながら敷地を少し歩いてみる。確かにここは清水寺だ。間違えたわけじゃない。でもこの人の少なさはちょっとなぁ。

そう思いながらズカズカ歩いていくと、1人の女性が血相を変えてこっちにやってきた。

 

「ちょっとあなたたち!?何処から入ってきたのよ、今は映画の撮影中よ!?」

 

「あ?あー、そーなんだー。ハハーすんません。そんじゃお邪魔しまし…」

 

「ちょっとま!!貴方……よく見るといい顔してるじゃない!いいわ、丁度エキストラ役がもう少し欲しかったの。貴方映画撮影に参加してちょうだい」

 

いかにも私仕事出来ますーな感じの女性。歳は20くらいか?木綿季さんより若く見えるぜ。

 

「さ!行くわよ行くわよ!」

 

「あぇ!?いやちょままはこっちの台詞なんだけど!?」

 

まさかここに来てこんなに引っ張られるとは。しかもこの人冷え症かよ手冷た!!

そんでもって本音は面白そうに笑ってるし。いやこれ笑い事じゃないって!

 

で、連れてこられた場所は緊張感漂う映画撮影現場だった。

 

「エキストラ連れてきましたー!」

 

映画監督らしき人の元へ連れて行かれる。正直帰りたい。俺は映画撮影に来たんじゃなくてデートしに来たってのに。

ここは適当に切り返してここから出ていくしかないか。

 

「あー、ども。なんか連れてこられました」

 

「……ウーム…」

 

「なんか唸ってますけど…」

 

「監督!」

 

「よし!主役変更!君に決めた!ヒロインはそっちの君ね!」

 

「は?」「ほえ?」

 

この青いメッシュの監督は頭がおかしいのだろうか。いやいや普通の高校生カップルをいきなり映画撮影現場に連れてきて主役とヒロインにするかね普通!?

 

しかも監督の一声でその場のスタッフ達も色めきに立つ。なんで?ねぇなんで?

 

「君!8月に@クルーズで強盗を撃退した子だよね!やっぱり!その頃から撮影は少しずつしてたんだけどさ!君のカッコ良さが忘れなくてね!是非君に主役をやってもらいたい!さあ、映画撮影を楽しみな!」

 

「頭おかしいんか?」

 

「脚本、30分で直す!スタイリスト、準備!ライト、控えめで!音響、マイクの調整!あとは各自即対応出来るようにしろ!」

 

「頭おかしいんかぁ!?」

 

叫ぶ俺とポカーンとしている本音はあっという間にロケバスへと連れて行かれた。日本の芸能界の行く末が心配である。

 

「それじゃあ服装決めちゃいましょうか!なんだかアロハは様になってるから髪型の方を変えましょう♪」

 

「あ、結構です…結構ですって!!ちょっと!?」

 

「あらぁ、いい肌してるじゃなぁい。そっちの子は彼女さん?あの子もいい体してるじゃなぁい。私の方がおっぱい大きいけど……私の方が!おっぱい大きいけど!!」

 

「うるせぇ!!」

 

耳元で叫ばないで欲しい。いやほんとに。

 

「貴女も素材がいいんだからオシャレしなさいよぉ?こんなダボダボな服着てもぉ!」

 

「えぇ〜?動きやすいんだけどなぁ〜」

 

「そぉ?なら似たような服探すけどぉ。彼氏さんの前くらいもっとオシャレな服着てあげなさいよぉ?」

 

プリプリクネクネ動くこのオネエ。正直仮面ライダーになっても勝てる気がしなかった。

 

 

「さあ、これでゲームオーバーだ」

 

「諦めて俺たちの元に来るんだな!」

 

場所は清水の舞台。オシャレにメイクされた本音は黒スーツのライフル持ちと上半身裸のムキムキ男に追い詰められていた。

 

「待ちな」

 

「何もんだテメェ!!」

 

ここでいい感じのBGMが流れる。そして結局スーツに着替えた俺が姿を現す。

 

「女に手を出すなんて…男としてどうなんだい?」

 

「うるせぇ!なんならテメェからぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

「ゲームスタート」

 

ライフルを発砲する。勿論弾なんて出てないが俺はいかにも回避しているように横へと跳ぶ。

 

「はっ、いい風が吹いてきたぜ!」

 

ライフル持ちに急接近しライフルを蹴り上げる。男はすぐにライフルを手放しナイフ(勿論切れない)で攻撃してくる。それを避けながら回し蹴り(当たるギリギリ)で男を撃退する。

 

「やるじゃねぇか小僧……コァァァァッ!」

 

「アアァン?…ホオァァァ!……いくぜ、マッチョメェン」

 

マッチョメンが鉄の棒を振り回す。それを受け止めるが吹っ飛ばされて柱にぶつかってしまう。続け様に棒を突き出してくるのを避け、蹴りでマッチョメンを吹っ飛ばす。

 

「勝負だ」

 

「いいぜ……オラァ!!」

 

「うおっりゃあぁぁ!!!」

 

俺とマッチョメンの拳が繰り出されたのは同時。つまりクロスカウンターだ。そして俺の拳は見事マッチョメンに炸裂、マッチョメンはその場に倒れた。

 

俺は本音に駆け寄る。

 

「お待たせ、愛しの君よ」

 

「ああ、私の愛しい人。風となって迎えに来てくれたのね…」

 

「少しばかり強い風になっちまったが……飛ばされないように気をつけな」

 

俺は本音を抱えて清水の舞台から飛び降りた。そしてすぐにホルダーのステージセレクトを発動させこの場所からワーフする。

 

逃げられたぁ!なんて言葉も少しだけ聞こえたけど、まあ、勝手に参加させられたんだ。勝手に帰ってもいいだろ。

 

 

◇ーーーーー◇

 

 

「ったく、散々な目にあったぜ」

 

「私は楽しかったよ〜?」

 

「もう夜だぜ?まったく……」

 

ここは街を見下ろせる丘の上。時刻は既に夜7時をまわっていた。

ベンチに腰を下ろす私と桐也。桐也はとても疲れた顔をしている。確かに撮影は大変だったけど私は楽しかった。

 

「……綺麗だな…」

 

「そうだね……」

 

少しの沈黙が流れる。とても静かで優しい時間。桐也が隣にいてくれるだけで私は嬉しかった。

 

「本音」

 

「なぁに?」

 

「本音はさ、いっぱいいっぱい頑張ってるんだよな。でもさ、もっと俺たちに頼っていいんだぞ」

 

完全な不意打ち。そして桐也は私を抱きしめて頭を撫でてくれた。

 

「辛いときは、みんなに任せればいい。みんな、みんな、本音の味方なんだ」

 

その言葉を聞いて、不意に涙が溢れてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、布仏本音は名前に似合わず嘘つきだ。

 

私が私を偽り出したのは中学の頃から。この頃から私は更織家の従者として仕え、暗部の一員としても動いていた。そして必然的に本当の布仏本音を隠していた。偽っていた。

 

それは高校に入っても変わることはないだろうと思った。おっちょこちょいな本音を演じるのが普通になる。これからもそれを続けるのだと思った。

 

そしてあの日、私は桐也と出会った。

 

「同室の九条桐也、よろぴ」

 

彼と同室なのと最初にこんな挨拶された時は正直戸惑った。でも彼が仮面ライダーに変身したと知らされて、なるほどと思った。私は監視役なのだと。

 

いつも毎日を楽しそうに過ごす桐也と一緒にいて、私は徐々に楽しくなっていった。監視役として同室になったはずなのに、いつの間にか彼と離れたくないと感じていた。そう感じるのは初めてだった。

嘘つきなのに正直者な彼と一緒にいて、私は私を偽るのがバカみたいだと思い始めた。彼の前ぐらい素直になろう。甘えよう。そばにいようと。

 

そんな時、私は忘れていた記憶を取り戻した。その記憶自体は些細なことだった。でもこうして記憶を取り戻したということは、ゲーマドライバーを使用する条件は揃ったということ。

 

私はプロトマイティアクションを使い黒いエグゼイドになった。お姉ちゃんと同じエグゼイドになれたのは嬉しかった。でも桐也には教えれなかった。絶対反対すると思ったから。私はまた嘘をついた。

 

それでも彼を助けたかった。だから桐也の為に新しいガシャットを作ったし、ドクターマイティだって本当はヒイロさんに渡す予定だったのを桐也に渡した……こればっかりは結果オーライってやつなのかな。

 

そして戦いは今最終局面へ突入した。もう終わろうとしている。ここまで来たら最後まで嘘を貫こう、彼に知られることなく終わらせよう、そう思っていた。そう思っていたのに……

 

 

「ううっ……ああっ………っ…」

 

涙が止まらなかった。溢れ出したものはどうやっても止められなかった。

 

久しぶりだった。こんなに涙を流したのは。今も桐也は優しく頭を撫でてくれる。

 

撫でてくれている間は、右手の怪我も痛くなかった。

 

◇ーーーーー◇

 

本音は目を擦りながら顔を上げた。目の周りは少し赤くなってるし涙の跡も残っている。それでも彼女の笑顔はとても綺麗だった。

 

「そろそろ帰ろっか。今日は久しぶりに遊べたから楽しかったよ桐也。それに久しぶりに泣いた気がする。ありがとね」

 

「そっか………お嬢様のご期待に添えて光栄ですよ。じゃあ戻る前に一つだけ」

 

俺は私の前に立ち手を差し伸べた。このデートの最後、俺はこうすることを決めていた。

 

「布仏本音さん。俺と付き合ってくれませんか」

 

実のところ、俺は本音に告白したことはない。ぶっちゃけ最初の頃なんて俺と本音は付き合ってすらいなかった。ただの仲のいい友達。だけどいつの間にか付き合ってるって噂が流れ始めて。

 

でも、それもお互いに満更じゃなかった。そんな関係もいいなって思ってた。

 

そして今、俺の気持ちは『それもいいな』じゃなくて『それじゃないと嫌だ』になっていた。

 

「………急にどうしたの?」

 

「ちゃんと言葉にして伝えたかったんだ。こういうのも大事だって思ったわけよ」

 

「フフッ……いつもはめんどくさがり屋で頑張るのが嫌いだーって言ってるのに、頑張り屋さんで努力家で………嘘つきだよね本当に」

 

「ま、嘘つきなのはお互い様じゃない?」

 

「そうかもね」

 

「それで、返事貰えるかな?」

 

「そんなの、決まってるよ」

 

本音は俺の手を握り、そのまま唇を重ねた。

 

「よろしくお願いします、九条桐也さん」

 

彼女が見せた笑顔は嘘偽りのない、今までの中で1番のとびっきりの笑顔だった。

 

 

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

 

 

 

 

 

11月22日(火)AM09時16分

 

「忘れ物ないか確認しろよー」

 

桐也がみんなに声をかける。俺も荷物は確認したし大丈夫だ。

今日で俺たちは東京に戻る。息抜きはコレで終わり。今度こそ決着をつける。

 

「キリヤん、電話が鳴っているぞ?」

 

「え?うわぁー先輩からだ……あい桐也ですよー………は?マジで言ってんの?」

 

桐也の声色が変わる。付き合いが長いからなんとなく分かる。コレは悪い知らせだ。

 

「分かったすぐに戻る……」

 

「どうしたキリヤん」

 

「………篠ノ之束が動き出した」

 

◇ーーーーー◇

 

「そーらーをじゆうにーとーびたーいなー。はい、何が必要かな?」

 

束が呼びかけるが応答はない。当然だ。ここにあるのは燃え盛る護送車と肉塊ばかり。人間だったもの。人の原型を留めているものは何一つなかった。

 

「うーん、こんな役に立たないならもっと早くゴミに出しちゃえばよかった。亡国企業、なんでこんなのと契約しちゃったんだろ」

 

オータムだったものを踏みつけながら束は首を傾げる。最早人の所業ではなく、怪物の気まぐれに過ぎなかった。

 

「まーいいや!みんなそろそろコッチに帰ってくるだろうし、始めちゃお!」

 

『仮面ライダークロニクル』

 

束はクロノスに変身する。しかしその姿は緑色のクロノスではなく、ゲンムを彷彿とさせる色をしていた。

 

「やっと見つけたぞ束」

 

「おお?これはこれは珍しいねちーちゃん」

 

クロノスの前に立ち塞がったのは織斑千冬。腰にはゲーマドライバーを装着していた。

 

「お前のことだろうからそろそろ動くとは思っていた。誰もいない時を狙うんじゃない。少しでもギャラリーが多い時、お前はそういう時を狙う」

 

「ありゃりゃ〜流石ちーちゃんだね。篠ノ之束のことをよく理解している」

 

「いつもドキドキハラハラする展開が好きだろう束。白騎士の時ももっと他に手はあっただろうに、デモンストレーションでミサイルを飛ばすなんて考えるか普通?普通考えないことをやるのがお前なんだよ」

 

千冬はポケットから2つのガシャットを取り出す。1つはドレミファビート。もう1つはピンク色のガシャット、ときめきクライシスだ。

 

「どうせお前のことだ。宝生エムもお前が変装してたんだろう?敵の懐でウロチョロして引っ掻き回して、笑いを堪える気持ちはどうだった?」

 

「ああ、最高だったね。よもやここまで気づかないものなのかーってね。でも彼処にいたから今の私がある……神に戻れたんだよ」

 

「神?ハッ、どの口が言う。細菌如きが神を名乗るなんて二万年以上早いぞ」

 

『ときめきクライシス!』『ドレミファビート!』

 

千冬はゲーマドライバーにときめきクライシスとドレミファビートを装填しレバーを開く。

 

『背伸びしたいけど〜♪ちょっぴり照れるわ♪ときめきクライシ〜ス♪』

『アガッチャ!ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OKドレミファビート!』

 

千冬の姿は仮面ライダーポッピー ビートクライシスゲーマーへと変わった。そしてガシャコンソードを突きつけ束に言い放つ。

 

「私の親友を返してもらうぞ病原菌」

 

「面白い、さぁ最後のゲームの始まりだよ」

 

束….否、ゲンムの仕掛ける最後のゲームが幕を上げた。

 




始まる最後のゲーム。それぞれのライダーと代表候補生がラスボスの野望を砕くため動き出す。

see you next game!


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第79話 閃光 〜LAST BOSS、攻略開始〜

あけましておめでとうございます!もう2月です!節分ですね!終わりましたけど!

ついに始まるラスボス攻略、残すところあと5話(ぐらい)


とりあえず耳だけ貸してほしい。

 

まず宝生エムの正体がわかった。篠ノ之束が変装していたんだ。彼女の性格を考えると変装して私たちの元に潜り込むこともしかねない。それだけ彼女は奇想天外だからね。

怪しい人物、別々に考えるのではなく同一の可能性を考えるべきだったみたいだ。

 

現在千代田区を中心に篠ノ之束がウイルスを散布した。これはバグスターウイルスを活性化させ強制的にバグスターにする厄介なものだ。

恐らくこれは先の仮面ライダークロニクルで優勝したプレイヤーのガシャットを使って生成したウイルスだろう。早速ウイルスについて調べたら色んなバグスターウイルスが発見されたよ。優勝したプレイヤー、つまり全てのバグスターを倒しトロフィーを獲得している。だからこんなことも出来たのだろう。

 

そしてこのウイルスからは興味深いものも見つかった。

ゲンムのバグスターウイルスだよ。ずっと探してた原初のバグスターゲンム。そのウイルスも見つかった。

ここから考えること、それはつまり篠ノ之束の中にゲンムはいる。

 

5年前ゲンムを倒し損ねたが奴にもそれなりのダメージが入っていた。それを篠ノ之束と一体になることで彼女の中で回復、そして徐々に仮面ライダーゲンムとして動き、仮面ライダークロニクルを完成させ、クロノスとして君臨した。

 

恐らくゲンムの目的はこの世界の支配。元々マイティアクションXの2Pカラーのキャラだ。そいつの目的も世界の支配だからこれは間違いないだろう。

 

さて、前置きが長くなったね。これから私はウイルスに対抗するためのワクチンを開発する。それを君たちの変身用ガシャットに転送する。だけど思った以上に容量が大きくなりそうだ。だからレベル2への変身するデータを一時的にワクチンデータと取り替える。だから戦闘……いやオペはレベル1で行ってもらう。厳しいと思うが頑張ってくれ。

 

◇ーーーーー◇

 

11月22日(火)AM09時26分

 

「ったく、ホントなげぇ!」

 

「言ってもしょうがないだろ!とりあえず別れて対応しよう!」

 

俺はレベル2の状態で愚痴を漏らした。それに対して一夏がチーム分けをすると言う。

俺が把握してる情報では先輩、会長さん、タイガ先生の3人がバグスターを抑え込んでいる。ベテランライダーだとしても突破されるのは時間の問題だ。

 

「セシリアと鈴は楯無さんのところだ!頼む!」

 

『分かりましたわ!』

 

『りょーかい!アンタらも遅れんじゃないわよ!』

 

専用機持ちは当然の如くISで飛んで向かっている。本音は簪ちゃんに任せてある。

 

「シャルとラウラはタイガ先生だ!3人のチームワーク期待してるぞ!」

 

『言われなくてもそっちに飛んでるよ!』

 

『改めて作戦、了解した』

 

「箒は俺たちと虚さんのとこだ!あそこが1番多いみたいだからな!」

 

『分かった!先に向かう!』

 

「……しっかりしてんじゃねぇか名人」

 

いつの間にかまあ頼りになる男になって。それぞれ仲が特に良いコンビを向かわせている。仲が良い分抜群のコンビネーションになる。だけどそのコンビだからこその弱点も見えてくる。ま、そこはベテラン勢がなんとかしてくれるでしょうけど。

 

「ッ!!っぶね!」

 

「っと!?……マジか」

 

思考する脳をすぐに止める急いでブレーキをかける。

目の前に奴が立っていたからだ。俺たちと何回か激突しそして未だ撃破に至っていない未確認生命体。

 

「ゴメラ……」

 

「ここまでだ仮面ライダーども」

 

「どうする…2人で一気に行くか?」

 

「……いや、ここは俺に任せて先に行きな」

 

一夏を降ろし俺はレベル0に変わる。ここで決着をつける。コイツはマジだ。ここでコイツを倒せれば残る敵っていう敵は篠ノ之束…ゲンムとダグバだけになる。

 

「フラグ、今立ったからな。折ってこいよ!」

 

「任せな」

 

一夏は白式を展開して飛翔、すぐに姿は見えなくなった。

 

「テメェごとバッキバキにへし折ってやるぜ」

 

◇ーーーーー◇

 

楯無side

 

「まったく、数が多いわね!」

 

タドルレガシーに変身している楯無はガシャコンソードを振るい冷気を放出、バグスターウイルスの感染者の動きを鈍らせる。より多く対処するにはこうする方が手っ取り早いのだ。

 

「調整を間違えれば傷つけてしまう。バグスターウイルスに感染しているとはいえ生身の人間だものね……」

 

この感染者を止める方法は恐らくもう一つある。それは感染者の波の奥に白いアーマーが追加されたゲンムが存在している。そのゲンムがウイルスを散布しているのだ。そいつを倒せばこの感染者達は止まらなくとも少なくともこれ以上の感染者は増えないはずと楯無は見ている。

 

「まあ、どうにもこうにもまずこの波を突破しないとね」

 

更にガシャコンソードを振るう。しかし今度は冷気が弱かったのか感染者達の動きは止まらなかった。

 

「ヤバッ」

 

「やあぁ!!」

 

「てりゃあ!!」

 

楯無の頭上を二つの人影が飛び越える。そのまま感染者達の前に立ち塞がり足元を攻撃して感染者達を下がらせる。

 

「貴女達!」

 

「煌めく雫!インフィニットブルー!」

 

「ドラゴンマスター!インフィニットマゼンタ!お待たせしました楯無さん!」

 

影の正体はインフィニットブルーとマゼンタに変身したセシリアと鈴だった。相変わらず名乗りがバラバラなのね、と楯無は少し感じていた。

 

「ナイスタイミングよ。この状況大方わかるわね」

 

「ええ、まずはこの感染の波を止め」

 

「ワクチンが完成するまでの時間稼ぎってところですよね」

 

「そう、ワクチンが完成したら私がなんとかする。だからその間貴女達2人にはこの波を止めてほしいの。出来るかどうかは聞かないわ。やりなさい」

 

「言われなくても!」

 

「その間楯無さんは?」

 

「私は奥にいる元凶を叩いてくるわ。上手くいけばこれ以上の感染者は増えない」

 

「勝てるんでしょうね!?」

 

「私を誰だと思ってるの?さあ、作戦開始よ!!」

 

「「了解!」」

 

楯無が感染者達の頭上を飛行して飛び越える。そして奥にいるゲンムにガシャコンソードで攻撃を開始した。

 

「さあ、いっちょやってやろうじゃないの!」

 

「正念場ですわ。参ります!」

 

パワーアップしたことによってインフィニティーズの装備は従来の専用機と同じになっている。それぞれ使い慣れたアイテムで感染者の波を止めにかかる2人。

 

 

そして、同じようなことが他の場所でも起きていた。

 

 

 

タイガside

 

「らあぁっ!!」

 

「ちょ、タイガ先生乱暴すぎ!」

 

「これくらいやんねぇと止まらねぇだろ」

 

「先生の言う通りだ!まずはコイツらの動きを止めることに集中しろ!無傷にこしたことはないが、骨の一本や二本は仕方ないと考えろ!」

 

「ラウラまで!もぉ!」

 

スナイプレベル2に変身したタイガと駆けつけたシャルロット、ラウラの3人は大量に押し寄せる感染者をなんとか押しとどめていた。

些か乱暴な止め方になっているがこれ以上感染者を増やすわけにはいかないと判断した結果である。

 

「チッ!奥まで行けりゃああの野郎ぶっ叩いてこの波が止めれるはずなんだがな」

 

「この数を置いて奥まで行くなんて無茶だよ!」

 

「むぅ……こうなったら私が止めるしかあるまい!」

 

ラウラが両手を前にかざす。強化されたAICで無理矢理感染者の波を押さえつけたのだ。

 

「長くは保たない!早く倒してこい!」

 

「分かった!行こうタイガ先生!」

 

「さっさと始末してくる!それまで踏ん張れボーデヴィッヒ!」

 

本来対1を想定したAICで複数人の動きを止めるなどほぼ不可能に近い。それでも可能なのはラウラ自身の力とインフィニットブラックの装備のおかげだろう。

 

「まったく……いつまで耐えれるか…」

 

ラウラが感染者の波を止めている間にタイガとシャルロットは感染者達を飛び越えて白いアーマーのゲンムの元へ急ぐ。

 

「分身体だろうがゲンムに変わりはねぇ。あの時の借り、ここで返させてもらう!」

 

『バンバンシミュレーション!発進!』

 

 

虚side

 

大量の感染者に挑む虚と箒。数は他と比べて圧倒的に多い。それでも他よりも後退が少ないのは布仏虚、仮面ライダーエグゼイドの存在だろう。

 

「1人ずつ的確に……これが学園最強の仮面ライダー…」

 

感染者を1人ずつ確実にダウンさせていく虚。無駄のない動きで1人、また1人と動きを封じていく。勿論撃ち漏らしもあるわけだがそこは箒が確実にダウンさせていった。

 

しかしほとんどの感染者をダウンさせていったのは紛れもなく虚だった。

 

「ふぅ……大丈夫ですか篠ノ之さん」

 

「むしろ私必要ですか?」

 

「必要ですよ。この世界に不必要な人間はいません。勿論貴女も、貴女の姉も」

 

「………早くこの波を止めましょう」

 

「ええ…とはいえここには2人だけ。奥に控えているゲンムを倒せばこの波は止まるかもしれませんが…」

 

「正直、私1人でこの波を止められるとは思えません」

 

「失礼になるけど、私もそう思うわ。だから貴女がゲンムを倒しなさい」

 

虚からガシャコンブレイカーを渡される箒。一瞬戸惑うも自分のするべきことを理解した箒は感染者の波に向かって走っていく。

 

「インフィニットレッド!篠ノ之箒!押して参る!!」

 

そして跳躍。感染者の波を飛び越えてゲンムへと斬りかかる。

 

「さあ、正念場ね」

 

1人残った虚は軽く手首をならし、再び感染者達へと向かっていく。

 

 

桐也side

 

「ッらあぁ!!」

 

「ぬおおっ!!」

 

桐也、レーザーとゴメラの戦いは桐也が劣勢だった。この後の戦い、つまりゲンムとの戦いのためにノインシュヴァンツをまだ使っていなかったのだ。

先の戦いでノインシュヴァンツのゲージ数本を使ってようやく撃退出来た相手に普通のレーザーターボで戦いを行なっている。

 

「早く本気を出せ!!」

 

「チッ、るっせぇ!!」

 

桐也のガシャコンスパローとゴメラの斧がぶつかり合う。当然ブーストのかかっていない桐也は押し込まれ膝をついてしまう。

 

「ここで本気を出さずに死ぬか、ここで本気を出して死ぬかだ。どちらが名誉なことか分からぬ貴様ではなかろう」

 

「だからうっせぇってんだよ。お前こんなにお喋りだったか?あぁ?」

 

「ゲゲルの参加者がゼロになったことで、枷が外れたのやもしれん」

 

「参加者ゼロ?まだダグバが残ってるだろ!?」

 

「奴…いやあのお方が為さるのは究極の闇のゲーム。俺の出る幕ではない!」

 

「ガハッ!?」

 

踏ん張る桐也を蹴り飛ばし壁に叩きつける。一瞬息が出来なくなり意識が飛びそうになったがそれでも桐也は踏ん張って耐えた。

 

「究極の闇のゲームだと…?そういうのはデュエリストだけにしてくれ…」

 

「訳の分からん戯言を。貴様との戯れもここまでだ」

 

「ああ、そうだな。ここで…終わらせてやるぜ!!」

 

『ギリギリチャンバラ!』

『刀剣伝ガイム!』

 

ガシャコンキースラッシャーを取り出しギリギリチャンバラと刀剣伝ガイムを装填する。一撃必倒のギリギリチャンバラに侍の力が込められた刀剣伝ガイム。相性が悪い筈もなく。

 

『キメワザ!チャンバラ!ガイム!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「そらもういっちょ!」

 

『キメワザ!爆走!クリティカルストライク!!』

 

『爆走!チャンバラ!ガイム!クリティカルインパクト!!』

 

更に爆走バイクのキメワザも同時に発動させクリティカルインパクトを発動させる。

 

「いくぜ……はっ!」

 

「ゆくぞ……ぬんっ!」

 

同時に駆け出す。速さは桐也が上。しかし武器の振るう反応の速さはゴメラの方が早かった。

 

(コッチの方が早いことを見越して武器を振るってやがるのか!)

 

「もらったぁ!!」

 

「こなくそッ!!」

 

咄嗟にクリティカルストライク分のエネルギーを左腕に回してゴメラの攻撃を受け止める。今までで何度か聞いた骨が軋む音。激痛が桐也を襲う。

 

「がっ!?…ッアアアァァァァッ!!!」

 

「まだやるか!!」

 

全力の一撃は防いだ。ならば次はこちらの一撃だ。叫びながら振るったガシャコンキースラッシャーはゴメラのボディを切り裂いた。

 

「ぬおおっ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

しかし反撃の拳を桐也は顔面に食らってしまう。その威力はレーザーの仮面を破壊するほど。大きく仰反る桐也。それでも踏ん張りガシャコンキースラッシャーをゴメラに突き刺す。貫通はしていなかった。つまり、

 

「まだ、だ……もってけ」

 

「!!!」

 

ガシャコンキースラッシャーの銃口はゴメラの体内にあった。

 

『チャンバラ!ガイム!クリティカルフィニッシュ!!』

 

強力なエネルギー弾がゴメラの体に風穴を開けた。

 

「ッオラァァァ!!!」

 

そのまま斬り上げゴメラの上半身を両断する。

 

「ハッ!流石に…死んだろ……」

 

「見事だ」

 

「はあぁ!?真っ二つのくせに喋んなよ!怖えぇよ!!」

 

「だが、これでは倒れん。倒すことは叶わん!」

 

「ざけんな。真っ二つの分際でベラベラ言ってんじゃねぇよ!両面テープか接着剤でも持ってきてからモノ言いやがれってんだ!」

 

確かにゴメラの体が徐々にくっつき始めていた。しかし桐也にも限界が近づいていた。回復のエナジーアイテムを取れば体力全快で戦える。

 

「そんな余裕ねぇか……一か八か、力を貸してくれッ!」

 

一か八か。自分の残り体力を信じて桐也は黒いガシャットを取り出す。大事な人からの預かり物。生きて帰る為に授けてくれた力だ。

 

『ガシャット!キメワザ!マイティ!クリティカルストライク!!』

 

「こいつでぇぇ!!」

 

今まともに動かせるのは足だけ。ならば叩き込むのは必然的に、

 

「シメぇだぁぁぁ!!!」

 

桐也の右足がゴメラのバックルに叩き込まれ、そして砕いた。

 

「ハァ…ハァ……ッ」

 

「………見事」

 

ゴメラは身体が石化し風が吹いたと同時にその身体は崩れ去った。

桐也は遂に強敵ゴメラを倒したのだ。その事をキチンと頭で理解すると桐也は地面に倒れた。

 

「っこ悪りぃ………」

 

後のクロノス用に温存していたノインシュヴァンツ。しかし今こうして身体が動かないとなると使っておけばよかったと後悔する桐也。

 

「……ホントに勝ったのか俺…もっとこう……実感が湧けば、いいのに…」

 

こうして倒したものの、後に残ったのは呆気なさに疲労感と虚しさ、そして沈黙だった。

 

 

千冬side

 

「ハハハハッ!この程度か織斑千冬!!」

 

「チッ!体がアイツなだけはあるかッ!」

 

今のクロノスは全ての武器を扱える。左手にガシャコンブレイカー、右手にガシャコンスパロー、そして宙に浮く3丁のガシャコンマグナム。

対する千冬のポッピーはガシャコンソード一本で対抗している。千冬の身体能力でなんとかカバーしているに過ぎなかった。

 

「例えブリュンヒルデだとしても!私の前では赤子同然!全ては私の前に跪き、全ては私にひれ伏す!」

 

「束の声で喋るなぁぁぁ!!!!」

 

ガシャコンソードから炎の竜巻を放ち一気に跳躍、上から竜巻の流れに乗ってクロノスに斬撃を繰り出す。

 

「ッアァァ!!!」

 

「無駄だぁ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE…』

 

動きが止まった千冬の頭をガシャコンブレイカーで殴り、ガシャコンスパローでボディを切り裂き、ガシャコンマグナムの弾丸を周囲に展開する。

 

『RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ガッ!?ぐあっ!!」

 

頭部に走る衝撃を筆頭に体を切り裂かれる痛みに追い討ちで無数の弾丸が叩き込まれる。

 

「ッ……ァ………」

 

「フフフハハハハハハッ!!だから言っただろう!私に勝つなど不可能なのだよ!!」

 

「………ハッ」

 

割れたポッピーの仮面から見えた千冬は不適な笑みを浮かべていた。

 

「まだ笑う余裕があるんだ」

 

「まあな……お前は負けるよ絶対に…人類史、根絶した病原菌が1つでもある以上…お前は完全に消滅するッ!」

 

「戯言を」

 

ガシャコンブレイカーをブレードモードに変形させ倒れている千冬に突きつける。流石の千冬も先程の一撃で今すぐ動ける状態ではなかった。

 

「私を消す?ありえない!全世界にこうして広まっているウイルスすら防げないお前たちでは私を根絶するなど不可能なのだよ!あの男も必死に知恵を働かせてワクチンを作っているようだが時間の問題だ!」

 

クロノスがガシャコンブレイカーを振り上げる。

 

「私が消える前に、お前たちが死ぬのだぁ!!」

 

「うるせぇぇ!!!!!」

 

白い閃光がクロノスを吹っ飛ばした。そして地面に落ちているガシャコンソードを拾い、自身の雪片弐型とガシャコンソードをライジングタイタンソードへと変形させ吹っ飛んでいる最中のクロノスに追いつき斬撃を加える。

 

「があああっ!!?」

 

「俺の家族に……俺の仲間に……俺の友達に!!」

 

タイタンソードを放り捨てたインフィニットホワイトの装甲が爆ぜる。中から現れたのは黒いクウガ、アメイジングマイティクウガだった。

 

「手ェ出してんじゃねぇ!!!」

 

全力の右ストレートがクロノスのバグルドライバーに叩き込まれた。

 

「……大きくなったな……一夏…」

 

「………遅くなってごめん、千冬姉」

 

白い閃光は黒き稲妻として、世界を、家族を、仲間を、友達を守る為に神へと立ち向かう。

 



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第80話 決着 〜LAST GAMEの勝者は?〜

前回後書き書くの忘れてました。まあ書くことあまり無いので問題ないんですがッ!

クロノス(ゲンム)というややこしいゲームもこれで終わりじゃい!


11月22日(火)AM09時49分

 

「立てよクロノス。まだ始まったばっかだろ」

 

「クククッ……ハハハッ!!………今のは少し効いたよクウガ」

 

立ち上がるクロノス相手に一歩も引かない一夏。引くわけにはいかない。後ろには大事な姉がいるのだから。更に後ろには大勢の一般人がいるのだから。

 

「君1人で勝つつもりなのかな?」

 

「ここに他の奴らが来なかったらそうなるな」

 

「クハッ!お笑いだね!私にたった1人で勝つつもりとは!君の姉ならまだしも、究極の闇を使いこなせないクウガなんて、相手じゃないよ!」

 

クロノスはバックルに手を伸ばしボタンを押す。そして世界は静止する、

 

 

はずだった。

 

 

「は…?」

 

「フンッ!!」

 

「ゴハッ!?」

 

世界は静止しなかった。ポーズが発動しなかったのだ。その事を一瞬理解出来なかったクロノスは顔面に一夏の一撃を貰ったのだ。

 

「ば、馬鹿なッ!何故!何故!何故ェ!!」

 

「ポーズさえ発動させなきゃコッチのもんだぜ!」

 

一夏のラッシュに冷静さを欠いたクロノスは押されていた。アメイジングマイティは究極の闇程の力は引き出せないがそれでも今までのどのクウガよりも強い力を引き出せる。

 

「ダッ!セリャァ!!」

 

「ガアッ!!おのれぇ!!」

 

トドメの右ストレートがクロノスのある場所に再び炸裂する。直撃をくらったクロノスはそのまま地面に倒れた。

 

「あと1発入れれば、お前は束さんから出ていくか?」

 

「……ハハハ…ようやく分かった……簡単なことだ…如何にも非力な人間の考えそうなことだった!」

 

蹌踉めきながら立ち上がるクロノス。流石に一夏の本気のラッシュは応えたようだ。

そしてクロノスはバグルドライバーを取り外し一夏に見せつける。

 

「ドライバーの破壊が目的だったか……そうだな、貴様が勝ち目を見出す為にはこれしか方法がなかったのだろうなぁ!」

 

「ああ、それが俺に出来る最速でお前をぶっ倒す方法だ。現にもうポーズは出来ないし、その様子だと射撃機能とチェーンソーも使えないだろ」

 

「人間離れした馬鹿力のおかげでねぇ?流石グロンギと同じ生命体、未確認生命体クウガだよ!!」

 

クロノスはバグヴァイザーをバックルに戻すと新たなガシャットを取り出した。

 

「そんな怪物を倒すのは…殺すのはいつだって勇者か神と決まっている……」

 

「勇者とは程遠くて、神とは名ばかりのくせに」

 

「黙れェ!!!醜い怪物はここで消える運命!!新世界の神たる私の手で!殺してやるぅ!!」

 

『ゲムデウスムテキ!』

 

「ブゥン!!」

 

クロノスはゲムデウスムテキガシャットをバグルドライバーに突き刺した。液晶画面部分に突き刺したのだ。

そして巻き起こる激しい暴風。闇が噴き出すという表現が正しいだろうか。

やがて風は止み、クロノスの姿が…否、新たな仮面ライダーの姿が露わになった。

 

「あの姿……ムテキゲーマー!?」

 

「フフフフッハハハハッ!!!よもやここでこのガシャットを使うことになろうとはなぁ!!私がこの世界の支配者ゲムデウスムテキだぁ!!」

 

「ゲムデウス…ムテキ……」

 

瞬間、一夏の体に衝撃が走る。ゲムデウスムテキがワープして一夏の腹部に拳を叩き込んでいたのだ。更に頭を掴み地面に叩きつけ、踏みつける。その行為は倒れていた千冬にも行われた。

 

「ガハッ!!」

 

「千冬…姉……ッ!」

 

「姉弟共々私に歯向かった愚かな人類代表として惨たらしく殺してやろう。そして!」

 

ゲムデウスムテキの目が光り全身から紫色の光球が三方向へと放たれた。

 

「無駄な足掻きを続ける仮面ライダー共に絶望を与えてやろう!」

 

「何しやがったテメェ!!」

 

「他の仮面ライダーが足止めしているバグスターウイルスの感染者のウイルスを活性化させたのさ!私の計算ではそろそろワクチンが完成するころだ。ようやくワクチンが完成して希望が見えた時に私のゲムデウスムテキウイルスを送り込むことでその希望を……打ち砕くッ!」

 

 

現に戦闘を繰り広げる3人のライダーの元へワクチンのデータが無事届けられた。しかし、

 

「ちょっと、ワクチンが効かないのだけれど!!」

 

「どうなってやがるッ!!」

 

「そんなバカな……まさかウイルスが進化している!?」

 

楯無、タイガ、虚はそれぞれワクチンが効かない現実を突きつけられていた。

そしてそれぞれ仮面ライダーを援護する専用機持ちも限界が近づいていた。

 

「このままですと、私達も!!」

 

「諦めないわよ!こんなとこで!諦めてたまるかってぇのぉ!!!」

 

 

「もう保たないよラウラッ!!」

 

「踏ん張れシャルロット!!我々が前線を退くわけにはいかないんだ!!」

 

 

「万事休す……このままでは終われないと、分かっているというのに……ッ!!」

 

 

「ハハハハッ終わりだ!この世界は一度死ぬ!!そして私が神として君臨する新しい世界が創造されるッ!!」

 

「誰がそんな世界ッ!!」

 

全力のアメイジングマイティキックがゲムデウスムテキに直撃する。しかし相手は無敵。渾身の必殺技も全て無駄に終わる。

形勢逆転。この場において最も口にしたくない、耳にしたくない言葉だった。

 

「クソッたれッ!!」

 

「全て無駄だァ!」

 

「無駄なんかじゃないッ!!」

 

突如響く少女の声。そしてゲムデウスムテキに降り注ぐ無数のミサイル。ダメージは与えれずとも一夏がゲムデウスムテキから距離を取る時間稼ぎとしては充分だった。

 

「この攻撃……簪か!!」

 

そして降り立つ銀色の戦士。その名も、

 

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと私を呼ぶ!聞け悪人ども!!私は正義のヒーロー!インフィニットシルバー!!!」

 

インフィニットシルバー、更織簪。ここに現着。

 

「………お、おう!よく来てくれたな簪!」

 

「一夏、作戦だと箒のところに行く予定だったでしょ……」

 

「あ、ああ…そうなんだけど、偶々ここが見えてさ。虚先輩もいるしなんとかなるかなぁって……」

 

「まったく……でも…文句を言っても状況は変わらない…」

 

簪が薙刀を構える。煙の中からゲムデウスムテキが姿を現す。当然だが無傷。ダメージなど入っていない。

 

「これからどうすりゃ……」

 

「作戦は…ある……」

 

「あるのか!?」

 

「スゥ………全仮面ライダー!全専用機持ちに通達!!現在布仏本音がワクチンを改良中!本人曰く3分で完成させるとのこと!総員全力で3分耐えよ!!以上!!」

 

今までの簪とは違う迫力のある声。言い終わった瞬間簪は薙刀を構えゲムデウスムテキへ立ち向かう。

 

「3分でワクチンを改良してゲムデウスムテキウイルスに対抗する?お笑いがすぎるぞ人間!お前達にそのようなことできるはずがない!!」

 

「出来る!私の友達を!バカにするなぁ!!!」

 

ゲムデウスムテキが指を鳴らす。するとゲムデウスムテキの影から6体のゲンムが飛び出してきた。

 

「コイツ、ゲンムを作り出せるのかッ!?」

 

「当然、私は新世界の創造神!兵隊など幾らでも作り出せる!」

 

それぞれ3人ずつ相手をする一夏と簪。しかしゲンムの強さはアメイジングマイティを持ってしても苦戦を強いられるものだった。

それでも諦めない2人。絶対に耐え切ってみせる。その強い意志が2人を奮い立たせていた。

 

「あうっ!」

 

「簪!!このテメェら、退きやがれッ!!」

 

「退け、一夏ッ!!」

 

炎と氷の斬撃がしゃがんだ一夏の頭スレスレを飛んでいく。斬撃は簪を襲う3人のゲンムに直撃し簪から遠ざけることに成功した。

 

「仮面ライダーは……ここにもいるんだぞ…」

 

「千冬姉!」「織斑先生!」

 

「3分耐えろって言ったな?……ならあと10分は耐えろ!アイツらがすぐに感染者を抑えたとしてもこちらに来るまで時間がかかる!合流するまで10分は見積れ!そして全力で持ち堪えろ!!」

 

ガシャコンソードを構える千冬。ゲムデウスムテキはそれを確認すると更にゲンムを召喚した。

 

「おおおおっ!!!」

 

「はあぁぁっ!!!」

 

「足掻くねぇ。カウントしてあげようか?」

 

「うるせぇぇぇぇ!!!」

 

そして3分が経過した。本音から連絡は無い。そして他の仮面ライダーからも。しかし立ち止まるわけにはいかなかった。

 

「時間が来たわけだけど……どうやら間に合わなかったみたいだねぇ」

 

「本音……」

 

「いや、まだだ!まだ終わってない!」

 

「クドイよ。いい加減終わりを迎え入r「終わってねぇもんは終わってねぇんだよ!!」

 

「一夏……そうだよ…まだ終わってない…」

 

「3分で出来なかったら5分、それでもダメなら10分、それでもなら出来るまで!俺たちは仲間を…友達を信じる!」

 

一夏の雷を纏った回し蹴りがゲンムを吹き飛ばし消滅させる。

 

「まだ力が残っているのか……ならば数で押し通すだけ」

 

「数で止められると思わないことね!」

 

再び呼び出されたゲンムを一瞬で凍らせ崩壊させる。更に無数の砲撃がゲムデウスムテキを襲う。

 

「悪いな。時間がかかっちまった」

 

「ですが、全て救いましたよ」

 

「遅くなって悪いな、一夏!」

 

ゲムデウスムテキの元に投げつけられる3体の白いアーマーのゲンム。それらは徐々に消滅していき、4人の仮面ライダーと5人の無限戦隊が集まった時には、残る敵はゲムデウスムテキだけとなった。

 

「みんな……無事だったんだな!」

 

「本音が5分で仕上げてくれたんだ。ドクターマイティを軸にワクチンを再構成、ウイルスを常に上書きし続けるものにしてくれたんだ」

 

「これで感染者のウイルス進行は一時的に止まり、パンデミックも一時的に止まりました」

 

「後は奴を倒して新たなワクチンを開発してウイルスを死滅させれば」

 

「完全に俺たちの勝ちってわけだ」

 

桐也の変身するオメガゲーマー、虚の変身するムテキゲーマー、楯無の変身するトゥルーブレイブ、タイガの変身するシミュレーションゲーマーが順を追って説明してくれる。

 

「その為にも」

 

「ここでゲンムを倒して」

 

「アタシら人間様の意地ってやつを」

 

「見せつけてあげないとね」

 

「その為に我々はここにいる」

 

簪を守るように並び立つ箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ。限界などとうに超えている。それでも立ち上がる。選ばれた者としての責務を果たす為に。

 

「役者は揃ったぜ。あとはテメェをぶっ飛ばして」

 

「束さんを助ける!」

 

「ハッ、有象無象が揃ったところでムテキに勝てるとでも?」

 

「勝ちますよ」

 

虚がゲムデウスムテキ目掛けて飛び蹴りを食らわせる。大きく後ろへ下がるゲムデウスムテキ。その怯んだ隙を虚は見逃さなかった。

 

「同じムテキ同士なら!」

 

「私の方が上だよ!」

 

虚の拳を受け止めるゲムデウスムテキ。しかし虚を飛び越えて楯無がガシャコンソードを振るう。

 

「ダメージは入らなくても!」

 

「テメェの足止めくらいは出来んだよ!」

 

タイガの砲撃が更にゲムデウスムテキに命中していく。しかし相手はムテキ。ダメージを与えられないことは2人も理解している。

 

「コイツら…何が目的で」

 

「考えている暇が!」

「あると思ってんじゃないわよ!」

 

箒と鈴による左右からの同時攻撃。それに合わせてセシリア、シャルロット、ラウラ、簪の遠距離攻撃が合わさる。

 

「お前たちの攻撃は私には通用しない!届きはしない!無敵である私には!」

 

「いいや!お前にも弱点はあるぜ!」

 

桐也がゲムデウスムテキに飛びかかる。アマゾンを思わせるラッシュを繰り出すがゲムデウスムテキに『避けられる』。

 

「お前自身分かってんだろ?その姿になったことで弱点を晒しちまってることによ!!」

 

「当てられなければ弱点とはなり得ない!」

 

「ハッ!今のでソレが確実に弱点だって晒しちまったな!」

 

桐也を飛び越えて一夏がゲムデウスムテキにアメイジングマイティキックを叩き込む。封印エネルギーがバグヴァイザーに流れ込むが寸前のところでゲムデウスムテキは払い除ける。

 

「ンなのアリかよ…」

 

「心配すんな、突破口は見えたんだ。あとは時間との勝負だ」

 

「作戦は?」

 

「あの人が1発決める。それで全部終わりだ」

 

桐也が後ろを指さす。その先にはさっきまでとは違う姿のポッピー=千冬が立っていた。3本の尻尾に狐の耳のようなパーツを身につけた千冬はガシャットをホルダーへ装填した。

 

『キメワザ!ときめき!クリティカルストライク!!』

 

「この身果てようと、お前を止めるのが私の役目だ」

 

瞬間、千冬の姿が消える。流石のゲムデウスムテキも満身創痍の千冬がここまで早く動けることに驚きを隠せなかった。

 

「勝機を逃すな!必ず掴め!」

 

『マイティアクションX!』

『タドルクエスト!』

『バンバンシューティング!』

『爆走バイク!』

 

『アイム ア カメンライダー!!』

 

千冬の合図と共に4人のライダーはワクチンのデータが転送されたガシャットを使いレベル1へと姿を変える。

 

「九条がお前用に残した力だ!受けてみろ!」

 

「自信ありげにモノを言う!ムテキの前にそんな急造の姿、意味など無いと知れ!!」

 

千冬渾身のキメワザ、左脚による一撃がゲムデウスムテキに叩き込まれる。

それはただのキメワザではなかった。ノインシュヴァンツによるブースト、それが9本の一点集中。グロンギの体を簡単に破壊するその一撃、その最終系、その最強系。

 

「なっ!?」

 

「貫いてやるさ…ムテキなんてな!」

 

たった一撃、されど一撃。

だがその一撃はあのゲムデウスムテキに確実にダメージを与えたのだ。

 

「いまだぁぁぁ!!!!」

 

『マイティ!』『タドル!』『バンバン!』『爆走!』

 

『『『『クリティカルストライク!!!!』』』』

 

千冬がゲムデウスムテキにキメワザを叩き込んだと同時に飛び上がり、ゲムデウスムテキが千冬を吹き飛ばした時には専用機持ちの攻撃がゲムデウスムテキの周囲を狙い撃ちしていた。

 

ゲムデウスムテキ…否ゲンムの頭を過ぎる敗北の2文字。今のゲンムはムテキである。故に普通にあの4人のライダーのキックは避けられる。専用機持ちの攻撃など通用しない。普通に避けられる。

しかし現にゲンムは千冬の攻撃でダメージを負っている。ムテキの姿で。

 

絶対的な確信が崩れた時、もしもの可能性がゲンムの思考を支配していく。

もしも4人のライダーの攻撃がさっきの千冬と同じくムテキを突破出来るものだとしたら、専用機持ちの攻撃がムテキを超えるものだったら。

 

そしてこの思考が、そして己の慎重さとムテキを過信しすぎたゲンムの未来を決定するのだった。

 

「いっけオラァァァァ!!!」

 

エグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザーの4人のキックがゲムデウスムテキに炸裂する。その瞬間ガシャット内に蓄積されたワクチンの効果でゲムデウスムテキから1人の女性=篠ノ之束が弾き出される。すかさず箒が受け止めその場から離脱する。

そしてゲムデウスムテキの姿は通常のゲンムを通り越して怪人化したような見た目のゲンムへと変わった。宿主を無くした本当の姿のゲンムだった。

 

「いくわよ桐也!」「いくぜ先輩!」

 

『マイティブラザーズ!XX!!』

 

「全部終わらせるわ!」

 

『タドルファンタジー!』

 

桐也と虚はダブルアクションゲーマーXXL、XXRに、楯無はタドルファンタジーへと姿を変える。そしてすぐにキメワザを発動させる。

桐也と虚のクリティカルストライクがゲンムに炸裂する。

 

『タドル!クリティカルストライク!!』

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

『タドル!クリティカルスラッシュ!!』

 

『タドル!タドル!タドル!クリティカルインパクト!!』

 

「どぉりゃあぁぁぁ!!!」

 

タドルクエストをキメワザホルダーに、タドルファンタジーはドライバーのレバーの開閉、タドルレガシーはガシャコンソードに装填することで発動させるブレイブ最後の切り札。楯無は桐也と虚がゲンムから離れたのを確認し、一気に振り下ろす。

光と闇と炎と氷が混ざり合った最強の一撃。ムテキでもないゲンムにはひとたまりもない一撃だった。

 

『バンバンタンク!』

 

「決めろ…織斑ァ!」

 

「はい!!」

 

タイガがガシャコンマグナムにバンバンタンクを装填して一夏に投げ渡す。それを受け取った一夏は一気に跳躍、ゲンムの真上まで跳んだ。

ガシャコンマグナムにクウガの力が流れ込みアメイジングマグナムとなったソレをゲンムへ向ける。最早ゲンムに逃げる程の力は残されていなかった。

 

「お前の負けだ、ゲンム」

 

「私は……不滅だぁぁぁぁ!!!!!」

 

雷撃一閃。ゲンムは雄叫びを上げながら光の粒子となって空へと消えていった。

 

「………次は、みんなが心から楽しめるゲームをしような…」

 

これで、ゲンムの仕掛けたゲームは終わりを迎えたのだった。

 

◇ーーーーー◇

 

「前にもまして、派手にやったなぁ」

 

「最近こんなのばっかじゃないか?せっかく旅行終わりで気持ちよく帰って来れると思ったのによ…」

 

ボヤく俺に桐也は確かにと呟いた。でもこれでゲンムの仕掛けるゲームは終わった。ようやく終わったんだ。

 

「にしても、ノインシュヴァンツにムテキゲーマーの装甲貫く効果なんてあったのか?」

 

「いいや?無いね」

 

「はあ!?じゃあなんで」

 

「最初からアレはムテキじゃなかったんだよ。ただの防御力の高いゲムデウスムテキって名前の敵。ムテキゲーマーはあの金ピカボディあってこそのムテキだ。そこまでは再現する時間が無かったんだろうな」

 

「じゃあ、ただ単に千冬姉のスゲェ強い一撃がゲムデウスムテキの防御力を上回っただけってか?」

 

「そういうこと。まあいいじゃねぇか終わったことなんだし。それに……ノインシュヴァンツにムテキ貫通能力付けるのいいかもな」

 

「それでも私は負けないわよ」

 

ボロボロの虚さんがやってきた。今回の戦いはガドルとの戦い以上に怪我が酷いのが何人もいる。千冬姉と束さんにいたっては命に別状は無いというもののかなりの重傷だ。

 

箒達専用機持ちも怪我はしたもののインフィニティーズのスーツのおかげでそこまで酷いものにはならなかった。まあスーツはオジャンだけど。

 

「これであとは…ダグバを倒せば終わりね」

 

「最後はあいつか」

 

「ダグバ……」

 

グロンギ最後の生き残り。奴を倒せば全て終わる。グロンギのゲームも終わって平和が戻ってくる。

 

「ダグバは……俺が倒します」

 

「……勝てんのか?」

 

「勝つ」

 

「……ま、頑張れよ」

 

「え、手伝ってくんねぇの?」

 

「いやいや、今のはお前1人で倒しに行く流れでしょ」

 

こんな時まで薄情な奴だまったく!

でも、もう少しでこんな生活が続く世の中になるんだ。してみせる。絶対に!

 

 

 

「へえ、俺とタイマンしてくれるのか?」

 

不意に、男の声がした。

 

「じゃあ、邪魔なのは退けないとな」

 

鮮血が飛び散る。

 

「先輩ッ!!」

 

突如現れたダグバの腕が、虚さんの胸を貫いた。

 







「お前と過ごした毎日、楽しかったよ。ありがとな一夏」



see you next game!


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第81話 桐也 〜雪降る日のFINAL LAP〜

お待たせしすぎました

桐也、最後の戦い


12月24日(土)PM02時40分

 

「元気ぃ?メリクリメリクリ〜」

 

「元気に見えるかしら?」

 

「勿論!!」

 

「動けるなら貴方をぶん殴りたいわ」

 

聖都大学附属病院 虚の病室

 

あの日から……ああ、ゲンムを倒した日から随分日が経った。だいたい1ヶ月。それまで特に大きなニュースはない。

強いて言うなら織斑先生と篠ノ之束の意識が戻ったこと、セシリアの誕生日パーリーが今日行われること。あと先輩が無事に一命を取り留めたこと……

 

 

11月22日(火)AM10時32分

 

「テメェ!!」

 

「動くなよ一夏。今ここで動けば俺はコイツの体から腕を引き抜く」

 

「さっさと引き抜きやが「落ち着け名人」

 

今にも飛びかかろうとする一夏をなんとか押さえる。ここで腕を引き抜けば出血が抑えきれなくなる。

 

「何が目的だお前」

 

「別に。ただ一夏とタイマンがしたいだけ。これが正真正銘最後のゲームだ。受けてくれるよな一夏?」

 

「当たり前だ!お前を倒してこの戦いを終わらせる!」

 

「ハハッ、心が躍るな。お前とはさいっこうでエキサイティングなゲームを楽しめるって信じてるぜ。その為にも」

 

ダグバは自分の腕を引きちぎり、俺の方へと歩いてくる。

 

「邪魔な奴は退けないとな?」

 

「その邪魔者に消される時のお前の顔が今から楽しみだぜ」

 

 

それから虚先輩を病院へ運び込み数時間に及ぶオペの結果なんとか、一命を取り止めることに成功した。

 

ダグバは去り際に

 

「1ヶ月は楽しい生活を送らせてやるよ」

 

と言った。

そして1ヶ月はもう過ぎた。そろそろ奴が動き出す頃だ。どう見てもあの時喧嘩を売られたのは俺だ。ということで会長さん達からいくつかガシャットを借りた。準備万端ではある。

 

「んじゃ、パーティーの買い出し頼まれてるんでね。ここいらで失礼しますよっと」

 

「そういえば今日が誕生日ねオルコットさん。おめでとうと伝えておいてくれる?」

 

「お姉さまに頼まれちゃあねぇ?」

 

「きーりーやー」

 

「ハハッ、冗談冗談。ちゃんと伝えるって。そんじゃね。年末前にはみんなで顔出すよ」

 

俺は病室を後にした。

 

 

果たして、全員で顔出しは出来るのだろうか……

 

 

◇ーーーーー◇

 

織斑家 リビング

 

「こーらー!なぁに暗い顔してんのよ一夏」

 

「うぇ!?俺そんな暗い顔してたか?」

 

今俺の家を使ってセシリアの誕生日パーティーの準備をしている。本来ならセシリアの家……ってか写真見せてもらったけどお城?でパーティーをするんだが、まあ時期が時期で状況が状況だから今年は俺の家でやることになった。

 

溜まり場になってない?

 

「友達の誕生日なんだから笑ってなさいよ笑って!」

 

「わはっはわはっは、わはっははらほほをひっはるはぁ!」

 

「おい鈴、この皿はどこに置けばいい」

 

「ああ、もうそんなに沢山一度に運ぼうとしないでよ!人の家なんだから落としたら大変でしょー!」

 

なんだかんだ面倒見がいい鈴。助けられてばっかだな。

 

「一夏」

 

「箒……なんかみんなに迷惑かけちまったな」

 

「そんなことはない。正直私も不安だ。敵がお前と一対一を望んでいることも怖い。だからこそこの瞬間を楽しもうじゃないか。いつ壊れるか分からないんだからな」

 

「……壊させないよ。俺が…絶対守ってみせる」

 

そんな時リビングのドアが開いてセシリアとシャルと簪が帰ってくる。

 

「ただいま〜、雪積もってきたね。車渋滞してたよ」

 

「まったくもう、パーティーの主役がケーキの買い出しだなんて!」

 

「セシリア…ジャンケン弱い……」

 

「皆さんが強すぎるのです!」

 

頬を膨らませながらケーキを机の上に置くセシリア。あとは桐也が買い出し、のほほんさんと楯無さんがそれぞれ実家から荷物を取ってくれば準備完了だ。桐也は虚さんのお見舞い行ってから取りに行くって言ってたからもう少し時間かかるかな。

 

◇ーーーーー◇

 

「うぅ〜さみぃ〜」

 

雪のせいかクリスマスのせいか渋滞に巻き込まれた。買い出し終わらせて帰るだけなのにここまで渋滞されちゃあ体の芯から冷えちまうぜ。

 

「にしてもぜんっぜん動かなねぇな……」

 

そうボヤいた瞬間前方で爆発が起きた。熱気がここまで伝わってくる。いよいよ動き出したってわけか……よりによって今日。

 

俺はバイクを降り逃げ惑う人達をかき分けて爆発現場へと向かう。そこには案の定ダグバがいた。

 

「よお、メリークリスマス&死ね」

 

「なんだよ、これが最後だってのにツレないな」

 

「……そうだな、どの道コイツで終わるんだ」

 

ゲーマドライバーを取り出すとダグバもゲーマドライバーを取り出した。あの野郎いつの間にゲーマドライバーを。

 

「何処ぞの病原菌から貰ったか、それとも本社から奪ったか、今はそんなことどーでもいい」

 

「なんだ、ゲームの楽しみ方を分かってるじゃないか。そうだよ、そんな些細なことはゲームには関係ない」

 

ダグバはゲーマドライバーを装着しガシャットギアデュアルを装填する。

 

『デュアルガシャット!』

『The stongest fist!What's the next stage?』

 

「マックス大変身」

 

『ガッチャーン!マザルアーップ!!』

『赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!!』

 

「仮面ライダーパラドクス、レベル99だ」

 

ダグバの姿が新しいパラドクスへと変化した。見た目からしてパズルとファイターが一緒になってやがるのか。

 

「……はぁ…」

 

「?どうしたスマホなんか取り出して。助けを呼んでも死体が増えるだけだぞ?」

 

「遺言ぐらい残させろって。まあ、こういうのって変に生き残った時恥ずかしくなるよな」

 

「安心しろって。どうせここで死ぬんだ。無駄にはならないだろ?」

 

「……そう面と向かって正直に言われると腹が立つな」

 

『爆走バイク!』『ノインシュヴァンツ!』

 

「変身」

 

『繋がれ!永遠の絆!最速のキツネゲーマー!ノインシュヴァンツレーザー!!』

 

最初から全力を出すために本音にノインシュヴァンツを少し弄ってもらい、初めから尻尾3本で始められるようになった。

 

「さっさと始めようか。これがラストレースだ」

 

「いいぜ、心が躍るなぁ!!」

 

◇ーーーーー◇

 

「………」

 

テレビに流れる緊急速報。そこにはレーザーとパラドクスが戦っている姿が映っていた。

 

「よりによって今日なの……」

 

「空気の読めん奴め」

 

「助けに…行かないとッ」

 

そんな時俺の携帯が震えた。桐也からのメールだった。

 

メールには一言、

 

『お前と過ごした毎日、楽しかったよ。ありがとな一夏』

 

とだけ書かれていた。

 

「ッ!!」

 

「一夏、待て!!」

 

俺は家を飛び出して走り出した。

 

◇ーーーーー◇

 

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

タドルレガシーを装填したガシャコンスパローから炎と氷の矢を連射し、バンバンタンクを装填したガシャコンマグナムの砲撃を放つ桐也。

 

「ハアッ!!」

 

「チッ!こんのやろッ!」

 

遠距離攻撃をエナジーアイテムを使いながら避けていくダグバ。振りかぶったガシャコンパラブレイガンの一撃が地面を砕きながら桐也へと迫る。

 

(エナジーアイテムで強化されてるとはいえ、ここまで厄介なのは初めてだ。1発1発があん時の一夏みたいだ)

 

地面から跳躍、ビルの壁面を走りながらダグバを攻撃する。ダグバもパラブレイガンをガンモードに切り替え連射してくる。

 

「流石に早いな。ならコイツは避けられるかな?」

 

『高速化!鋼鉄化!』

 

『パーフェクト!クリティカルフィニッシュ!!』

 

パーフェクトパズルに切り替えたギアデュアルをパラブレイガンに装填して放つエネルギー弾。しかもそれは超高速の硬質化させたもの。当たれば致命傷は避けられないものだ。

 

「ッ!!」

 

息つく間もなく桐也に迫るエネルギー弾。今まで培ってきた動きで何とか避けるが1発がガシャコンマグナムに被弾、爆発、衝撃で桐也は地面に降り立つことに。

 

「隙だらけ」

 

「わーってんだよ!」

 

今度はガシャコンソードとガシャコンブレイカーを構えダグバへと向かっていく桐也。ダグバもパラブレイガンをアックスモードに変形、ギアデュアルをノックアウトファイターに切り替え再び装填。

 

『マッスル化!マッスル化!マッスル化!』

 

『ノックアウト!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「来いよ」

 

「言われなくてもなぁ!」

 

『ゲキトツ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ダグバ目掛けてガシャコンソードを投げつける。当然ダグバによって破壊されるが、

 

「!?凍結…」

 

破壊されたガシャコンソードは氷剣モード。破壊された影響で中に蓄積されていたエネルギーが解放されダグバの動きを凍結で封じたのだ。

 

「舐めすぎッ!」

 

クリティカルフィニッシュを発動したガシャコンブレイカーを頭に叩きつける桐也。衝撃でダグバを覆っていた氷は砕けるが間髪入れずにダグバの頭に蹴りを叩き込む。

 

「そうッ…こなくっちゃなぁ!!」

 

『ノックアウト!クリティカルスマッシュ!!』

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「らああっ!!」

 

ウラワザを発動したダグバの右ストレート、キメワザを発動した桐也のハイキック。激突した衝撃で周りの雪やビルのガラスが吹き飛び降り注ぐ。

 

「いいねこの感じッ!心が激るッ!」

 

「ッ…!!」

 

ダグバは拳を開き桐也の脚を掴む。そのままビルへ放り投げ桐也の体は残った窓ガラスを突き破りオフィスの中へと転がり込んだ。

 

「あんのやろ……なんてパワーだ…」

 

今までのダグバとは違うことを改めて実感した桐也。力の差はある。しかしその差を埋めることなら今の桐也なら可能だ。

 

「休憩は終わりだぜ。さあ、ゲーム再開といこうか」

 

「こんなのは休憩って言わねぇんだよマヌケ」

 

オフィス内に現れるダグバを見てフラフラと立ち上がる桐也。その体は次第に稲妻を纏い目が光り輝く。

 

「最速で決めるぜ」

 

拳の叩き込まれる音が響いた。桐也のボディブローがダグバに叩き込まれていたのだ。

 

「ハハッ…心が……踊るなァ!!」

 

「悪いけど、自分負ける気ないんで」

 

 

 

 

 

 

布仏家

 

「桐也……」

 

テレビで放送されているのは遠方から撮影されたレーザーとパラドクスの戦い。激しい戦いが行われている様子を本音は見ていることしかできなかった。

 

自分が行っても足手まといになるだけだと分かっているから。

 

そんな本音の手にはスマホが握られていた。画面には桐也からのメッセージが来ていた。

 

『愛してる』

 

の一言、ただそれだけが来ていた。

 

「お願い……生きて帰ってきて…」

 

彼女の頬を大粒の涙が流れた。

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

外へ飛び出したダグバを追ってビルの側面を走る。ノインシュヴァンツ9本ゲージを発動した最強最速の力。全力で駆け抜けるとビルの側面が粉々に破壊された。

 

「ッらあっ!!」

 

「ぐうっ!!?」

 

俺の踵落としを両腕でガードするダグバ。間髪入れずに脚技を繰り出し続ける。この状態を維持し続けるのはかなり厳しい。しかも空中戦、難しいに難しいをかけあわせ面倒なことになったなと自分でも感じる。

 

この状況だからこそ燃えるものがある、なんて熱血少年漫画みたいなことは言わない。楽出来るなら楽するし、サボれるならサボる。痛いことはしたくないし、正直もう帰りたい。

 

俺はそんな人間だ。でも今こうして痛い思いして戦っている。まったくどうしてこーなったのやら。それもこれもアイツに影響されたからかな。ホント……

 

「いい迷惑だこった!!」

 

「ッ!!」

 

回転しながら3本の尻尾を連続でダグバに叩きつけ、トドメに蹴りをお見舞いする。直撃を喰らったダグバはそのまま地面に叩きつけられコンクリート片が宙を舞った。

 

「はぁ……はぁ……ッ…テメェらのせいでずっと痛い思いしたんだクソッタレ。でもな、テメェらがいなかったら俺は一夏とは会えてなかった。そこだけは感謝しといてやるよ」

 

「お前も…一夏がいなかったらここまで来なかったか」

 

「当たり前だろ。わざわざ痛い思いしたい奴が何処にいやがるってんだ」

 

ダグバが起き上がる。多少はダメージを与えられたはずだ。だからってこのまま戦い続けれるほど俺は頑丈じゃない。

 

「早いとこケリつけよーや」

 

『キメワザ!』

 

「ゲームセットってか…ハハ、いいぜ」

 

『ウラワザ!』

 

『ノイン!クリティカルストライク!!』

 

『パーフェクトノックアウト!クリティカルボンバー!!』

 

尻尾を全て切り離し真の最速の姿へ変わる。ダグバの両足には青と赤の炎が燃え盛っている。辺りの残った雪を溶かしながらゆっくりと歩いてくるダグバ。

 

「終わりだ」「終わりだぜ」

 

先に動いたのは俺、いや動いたのは同時か。でも俺の足の方が早く届く。当然ですとも最速なんですから。俺の回し蹴りがダグバの頭を捉えた、そう思った瞬間

 

「そう来るって分かってたぜ!」

 

ダグバの左腕に防がれた。防いだ瞬間勝ち誇ったようにお返しの回し蹴りが俺の頭目掛けて放たれた。

 

「分かってるならッ!」

 

俺はそれを全エネルギーを回した頭突きで受け止めた。さっきまでの比にならない衝撃が襲ってくる。当然仮面は割れて外の冷たい空気が直で伝わる。

 

「っああぁ……こぉなることも…分かってたんだろ…?」

 

「お前…それは無茶苦茶だぞ!」

 

「無茶しねぇと……勝てねぇからなぁ!!」

 

ノインシュヴァンツのブーストは終わっている。だからって止まらねぇ、止まれねぇ。終わらねぇ、終わらせねぇ、終わりたくねぇ!!アイツらとの毎日を!思い出を!

 

「こんな、ところでッ!!!」

 

「ハアァァァァッ!!!」

 

「ウオォォォォッ!!!」

 

俺とダグバの拳、先に顔面に当たったのは俺の拳だった。

 

「アアアァァッ!!!!」

 

ノインシュヴァンツガシャットが赤く輝き、俺の拳に力が宿る。なるほど、幻の10本目はこのガシャットそのものだったか。

 

そして俺はそのままダグバを殴り飛ばした。

 

 

綺麗に吹っ飛んだな……最後の最後できめてやったぜ。

 

 

 

ただまあ、こんなダッセェ終わりかたじゃなくてさ、

 

 

 

 

もっとスマートにさ、かちたかった……

 

 

 

 

 

あんなメッセおくってなんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

いきてかえるつもり、だったんだぜ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ーーーーー◆

 

「はぁ…はぁ……桐也!!」

 

俺が来た時には桐也は血塗れで倒れていた。周りを見るとダグバとの戦闘がどれほど激しかったかよく分かる。

そしてそのダグバの姿は……

 

「いない…?何処行った!?」

 

「ここだよ、こ〜こ〜だ〜よ〜」

 

俺の背後から声が聞こえる。間延びした声で呼びかけてくるが間違いなくダグバの声だ。

 

「ここで決着をつけよう」

 

「おいおい俺の顔くらい見てくれよ。まあいいや……決着はまた今度だ。今はお互い万全じゃないだろ?」

 

確かに、今の俺は冷静に物事を判断できる余裕が無いとも思う。ダグバも平静を装っているがここまでの戦闘だ、奴も余裕が無いはず。

 

「3日後だ。IS学園で待ってるぜ」

 

「………分かった…」

 

ダグバは消えた。俺が振り返ることはなかった。

 

 

俺は膝から崩れ落ちて、拳を地面に打ちつけた。







「……いってくる」

「……いってらっしゃい」



see you final game!


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第82話 一夏 〜GAMEはここで終わらせる〜

最終決戦!


12月27日(火)AM11時26分

 

聖都大学附属病院

 

とある病室に木綿季はこの3日間毎日通っていた。病室のネームプレートには九条桐也の文字。ダグバとの戦いの後奇跡的に一命を取り留めた桐也はすぐに病院に運び込まれ治療を受けることになった。

 

「………」

 

「やっほー木綿季さん」

 

「本音ちゃん……」

 

「まだ、起きないんだね…」

 

病室にやってきたのは本音。彼女もこの3日間病室に通っている1人だった。

 

本音の言う通り桐也はあれから目を覚ましていない。峠は越えたらしいが容態が急変する可能性もゼロではなかった。

 

「初めて彼が仮面ライダーになった時、ここまで戦いが激しくなるなんて思ってなかった。未確認もバグスターもそれなりに倒して、それなりに平和な生活を送れるって思ってた」

 

「でも、現実はこの有様。高校生が背負っていくような宿命じゃないよね」

 

「彼が怪我をするたびに思った。今すぐにでもベルトを取り上げて普通の高校生に戻すべきだと」

 

「でも桐也は変身した時点で普通じゃなくなってる。小さい頃からの責任をずっと感じてるような人だもん。きっともう一度ベルトを手にしてたよ」

 

「今でも覚えてる…彼が初めて変身した時のこと。私を助けてくれた……あの頃から誰かのためになりたいって思っていたのね…」

 

「その時から目の前の出来事から逃げないって決めたんだろうね…だから臨海学校の時も逃げなかった……」

 

誰よりも面倒ごとを嫌い、誰よりも逃げることを嫌った。誰よりも楽することを優先し、誰よりも他人を優先した。嘘に塗れた桐也だが友人達の前で見せた笑顔は本当の笑顔だったはずだ。

 

「……今日なのよね…」

 

「さっきすれ違ったよ。私には何もしてあげられないから、『いってらっしゃい』ってだけ伝えたよ」

 

「私は何も言えなかった……傷だらけの親友が目の前にいて辛いはずなのに…笑顔で『行ってきます』って…」

 

木綿季の瞳から涙が溢れる。木綿季の拳に力が籠る。何も出来ない自分の無力さに腹が立つ。ただ待つことしか出来ない、祈ることしか出来ない自分が嫌だった。

 

「悔しいよね……でも待つことしか出来ないなら…せめて笑顔で迎えてあげようよ。帰ってきた時に『ああ、帰って来れたんだ』って思えるように」

 

「そうね……本音ちゃんは強いわね…」

 

木綿季のそれがどういう意味なのか……恐らく全てを分かった上での『強い』なのだろう。

本音は木綿季とは違い仮面ライダーに変身できる。しかし彼女の力ではダグバには勝てない。それは本音自身が1番分かっている。

 

戦う力があるのに待つことしか出来ない。それでもそれが自分に出来ることならと、自分に言い聞かせて。

 

「帰って来てね……一夏…」

 

 

一夏が病院を出ると外は一面雪景色だった。昨日の夜にかなり降ったようだ。

一夏は病室から持ってきた爆走バイクガシャットをキメワザスロットホルダーに装填しレーザーレベル2を召喚する。

 

「一夏!」

 

バイクに跨りヘルメットを被った一夏の元へ箒が走ってきた。息を切らしながらも駆け寄ってくる。

 

「はぁ……はぁ……行くのだな…」

 

「…ああ」

 

「…………行くなとは言わない。仮面ライダーがそういうものだと分かっている…分かってしまった………お前がどういう奴なのかも分かっている…………だが、必ず帰ってきてくれ」

 

箒は一夏に白いブレスレットを渡す。それは待機状態の白式だった。

 

「私に…私たちに出来るのはこれが精一杯だ……本当に不甲斐ない」

 

「いいんだ。ありがとう、俺の為に」

 

一夏はブレスレットを身につけバイクのエンジンをかける。

ふぅ、と息を漏らす。このまま進めば生きて帰れる保証はない。でもここで立ち止まればみんなの明日の保証はない。

 

「……いってくる」

 

「……いってらっしゃい」

 

雪降るこの日、この時、箒に見送られ一夏はかつての学び舎へと向かった。

 

 

雪が少し残る砂浜。デートスポットとしても有名な場所だが今は一夏以外人がいない。

ここはIS学園が見える場所でも有名だった。しかし今見えるのはIS学園があった人工島の成れの果て。そして全てが終わる場所。

 

「………変身」

 

静かに呟いた一夏の体は黒い闇に覆われ、やがて黒い目のクウガへと姿を変えた。学園を崩壊へと導いてしまった究極の闇の力。あの時と違うことと言えば、

 

「………」

 

明確な行動理由が定まっていること。右腕につけたブレスレットが光り一夏の背後に白いレールガンが現れる。決戦仕様に仕上がった白式には大幅な改造が施され代表候補生達の専用機、その最大戦力が搭載されている。

 

レールガンから放たれた荷電粒子弾は海を裂き、人工島に着弾した。最大火力を吐き出したレールガンは役目を終えたのかゆっくりと砂浜に横たわる。その砂浜に一夏の姿はなかった。

 

 

「よお、随分な挨拶だな」

 

ダグバが立っている場所は雪が積もった旧アリーナ。大部分は崩壊しているが一部分だけ真新しい破損部分が存在した。ゆらゆらと燃える瓦礫を踏み砕きながら一夏は姿を現した。

 

「究極の闇の力……俺も手に入れたんだ。これで俺とお前は似たもの同士により近づいたってわけだ」

 

「………」

 

「俺はな、他の奴らと違ってお前らの言う『未確認生命体』としての姿を持たないんだ。アイツらと同じグロンギなのにな」

 

ダグバがゲーマドライバーを身につける。

 

「最初はどうしてって思ったけど、それもどうでもよくなった。結局は俺もグロンギ、姿が変わらないだけのお前らにとっての『未確認生命体』」

 

ゲーマドライバーにガシャットギアデュアルを装填する。

 

「そしてお前も同じ『未確認生命体』だ。クウガは俺たちと同じなんだよ」

 

レバーを開く。ダグバは仮面ライダーパラドクスに変身する。赤と青の装甲は白と金に変化し背中のダイヤルは消失し金色のマントのような装飾が装備される。

 

「グロンギでありながらリントの姿をし仮面ライダーになった俺。リントでありながら仮面ライダーを名乗り、クウガ…グロンギになったお前。俺たちはどっちつかずな半端者だが過程は違えど究極の闇を手にした。だから似たもの同士なんだよ」

 

「………」

 

ここまで一夏は一言も言葉を発していない。それが究極の闇に呑み込まれたが故か、それとも別の理由なのか。

ダグバもこれ以上は意味を成さないとゆっくりと歩き始める。

 

「……」

 

「……」

 

一夏も歩き始め、お互い拳が届く距離で止まった。

 

「……」

 

「…来いよ」

 

ダグバがそう言った瞬間、一夏の拳がダグバの顔面を捉えた。続け様に膝蹴り、肘打ち、アッパー…更に右手に双天牙月、左腕にパイルバンカーを装備し攻撃を加える。

 

「やる、なぁ!!」

 

3撃目を加えたところで双天牙月は砕け、パイルバンカーはダグバの真正面からの拳の前に敗れた。

 

「こっちの番だ」

 

反撃と言わんばかりにダグバの攻撃が一夏に炸裂していく。

 

ここで今の一夏とダグバの違いと言えば、一夏の体はクウガに『変化』しているのに対しダグバはパラドクスを『纏っている』状態。お互いに究極の闇に到達したとは言え装甲のアドバンテージは確かに存在している。

 

「ハハッ!心が躍るなぁ!!」

 

ダグバの拳が一夏の、クウガの肉体を抉り取っていく。鮮血な雪を赤く染め、返り血を浴びたダグバも徐々に赤く染まっていく。

 

「まだ終わりじゃないだろぉ!!」

 

「……」

 

フラフラになりながらもダグバの渾身のパンチを頭で受け止める一夏。骨の折れる音が2人の間で響きダグバは僅かに顔を歪める。

 

その隙に一夏は蒼流旋と夢現をクウガの力で強化しダグバを刺し貫いたまま壁に突き立てる。封印エネルギーが流れ込むがダグバは一夏を蹴り飛ばし武器を引き抜く。

 

「ッ…アァハァァ……心が沸る…楽しいなぁ!!」

 

ダグバの傷口からダバダバと血が流れる。それは一夏も同じだった。通常の人間ならば致死量の血を流しながら立っている。それは同時に一夏がもう普通の人間には戻れないことを意味していた。

 

「お前も…楽しいだろ?…誰にも邪魔されずお互いに全力の殺し合い!ここまで心が躍って沸るゲームは存在しない!」

 

狂ったように笑いながら左の拳に炎を灯すダグバ。

 

無言で立ち上がるもフラフラな一夏。

 

勝敗はほぼ決まったも同然。ダグバはそう確信しながら一夏の元へ突進していく。

一夏も雪片弐型を手にするが力が入らず落としてしまう。

 

「楽しかったぜ……一夏ァ!」

 

そしてダグバの拳が一夏を、

 

「ッ!!」

 

貫くことはなかった。

 

紅い花弁が舞い散る。雪の上に落ちるとソレは消え、代わりに鮮血が雪の上に落ちた。

 

「お前との戦いは…何も楽しくねぇよ………」

 

一閃。空裂を手にした一夏がダグバの胴体を斬り裂いた。その時、一夏…クウガの瞳は赤く光っていた。

 

「ハハッ……さいご…の…さい、ごで……」

 

「……」

 

ダグバが絶命したと同時にクウガの姿から一夏の姿に戻る。それと同時に膝から崩れ落ち地面に倒れ伏す。もう体は動かなかった。雪片を落とした時点で限界は迎えていた。

 

「……桐也…箒………」

 

大事な友達、そして大事な愛する人の未来を、笑顔を守るために、一夏は限界を超え伝説を塗り替えた。

 

「……………」

 

ゆっくりと瞳を閉じる。5分間の最後の戦い。その場に最後まで立っている者は居らず、音が消えたその場にはただただ雪が積もるのみだった。



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トゥルーエンディング 〜料理と道場とあの場所へ〜

これは少し未来の物語


〜淑女と龍と特撮女子〜

 

「だぁかぁらぁ!!ちゃんとレシピ見なさいっての!」

 

「見てますわよ!ここに適量と書いてあるではありませんか!!」

 

「だからってドバドバ入れるのは適量じゃないっての!!」

 

セシリアと鈴の大声が部屋に響き渡る。ここは私が一人暮らしで使っているマンションの一室。幸い左右上下に住人はいないけどその隣から苦情が来る可能性はゼロじゃない。

 

「2人とも…うるさい」

 

「うっ…と、とにかく!曖昧なヤツはコッチに回しなさい!」

 

「鈴さんが作りますと濃い目の味になるではありませんか」

 

「アンタのゲテモノよりよっぽどマシでしょうが!」

 

それは同感である。セシリアは10年前から何も変わっていない……ある意味良いことだし悪いことでもある。せめて料理の腕前は変わってほしかった。

 

鈴はなんか面倒見が良くなった気がする。あと体格も。今ではアクションスターとして大ヒット映画に何本も出演しているほどだ。

 

そして私はと言うとそこまで変わったことはなかったり。幻夢コーポレーションに就職して25歳でそれなりの立場にはなったけど、恋人が出来たとかは無い。本音の話をよく聞く身としては羨ましいし欲しいとは思ってる。

 

「うー、これでは花見に間に合いませんわ!」

 

「大丈夫…いざとなったら出前頼む」

 

「いや正直ナイス判断よ簪…でもせっかくセシリアがやりたいって言ってんだから、もう少し任せて貰えないかしら」

 

「それはいいけど…時間あんまり無いよ?」

 

「うわあっ!?もうすぐシャルロットとラウラ来るじゃない!!ほらテキパキやる!」

 

「ううっ…こんなことならシャルロットさん早く来て手伝ってくださいましー!!」

 

セシリアの叫びがこだまする。お願いだからもう少し静かにして……

 

 

 

トゥルーエンディング 〜セシリア・オルコット、凰鈴音、更織簪〜

 

 

◆ーーーーー◆

 

〜侍ガールとのほほん少女〜

 

「にやぁぁぁ!?箒ちゃんタンマタンマ!」

 

「…またですか?剣道に待ったは無しだと何度言えば」

 

「でもでもでもだよ!?剣道初心者に本気で打ち込むのはどうかと思うなぁ!」

 

「初心者ではありませんよね?あと人間をやめかけた身体能力のくせに何言ってるんですか」

 

叫びながら逃げる姉さんを捕まえる。この道場を引き継ぐのならばもう少ししっかりして欲しいものだ。

 

「あ!そう言えばぁ!もうすぐ迎えが来るんじゃなぁい!?」

 

「そのくらい分かってます。本音が来るまでしっかり鍛えますので」

 

「鬼!悪魔!」

 

ジタバタ暴れる姉さん。元気になったなとは思う。

 

10年前の戦いが終わってから目を覚ました姉さんはあの戦いをほとんど覚えていなかった。当然と言えば当然だ。ずっとゲンムに操られていたのだから。

 

でも私としては姉さんと今こうして一緒に過ごせていることが嬉しい。たとえあの時のことを覚えていなくても。

 

「やっほ〜来たぞよ〜」

 

なおジタバタする姉さんを押さえつける中本音が道場にやってきた。桐也と結婚してはや三年。子供の予定はまだ無いらしいが桐也とはまだまだラブラブらしい。1週間おきに連絡してくるのは嬉しいがやめて欲しい。

 

「いらっしゃい本音」

 

「いらっしゃい本音ちゃん!出来れば助けてほしいなぁ!!」

 

「やらなくていいぞ」

 

「うん、やらないよ」

 

「酷い!!」

 

すぐに立ち上がった姉さんはダッシュで道場を後にした。追いつけなくもないが、まあ姉さんも花見に行くのだから今か後かの問題だろう。

 

「う〜ん」

 

「ん?どうした本音」

 

「いやぁ、またおっぱい大きくなった?」

 

「なっていない」

 

「えぇ?嘘だぁ」

 

「確かめなくていい揉まなくていい!」

 

胸から本音の手を剥がす。女同士だからといってセクハラは辞めてほしい。更織家と布仏家はダイレクトにセクハラをしてくる人がいるのは何故なのだろう。

 

「好きな人に揉まれると大きくなるって言わない?」

 

「言わな……まさかキリヤんに?」

 

「それはご想像にお任せするよ〜」

 

キリヤんのことだ、絶対に揉んでる。いや私は何を考えているんだ。

 

「それはそうと、早くいい人見つけなよ?」

 

「それについては問題ない。既に解決済みだ」

 

へぇ〜とニヤニヤする本音。本当の事を言えば一夏が良かったさ。でもアイツは……

 

「おーい!みんな来てるよー!」

 

「あ、束さん呼んでるね。みんな来たみたい」

 

「着替えるのが早いなぁ姉さん……はーい!今行きます!」

 

思考を切り替える。今は仲間達と花見を楽しみに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いから10年。

 

今は桜舞う季節。

 

彼はまだ…………

 

 

 

トゥルーエンディング 〜篠ノ之箒と九条本音〜



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最終話 エピローグ

私たち、人間の勝ちだ。

 

『そうだな。お前達の勝ちだ。

だがそれは同時に、リントは我々よりも強大な存在ということになる。

いずれ後悔する。ここで死んでおけばよかったと』

 

常に何かに後悔するのが人間さ。

 

そしてその後悔をバネにして強くなるのも人間だ。

 

それが出来ている限り、我々は人間であり、グロンギでは無い。

 

それが出来ている限り、我々は負けないよ。

 

『………リントは強大になりすぎた。そうは思わないか壇黎斗』

 

私もそう思うよ、バルバ。

 

 

2027年3月20日(土)PM02:00

 

「それじゃあ行ってくるね!みんなも今日は早く帰るんだよー!」

 

幻夢コーポレーションの社長室から出た私は社員にそう伝えながら会社を後にし、とある公園を目指す。

 

「みんな元気かな…」

 

あの戦いから10年。高校生だった彼らは今や成人……って成人は5年前か。成人してからというものみんな仕事や家事にと忙しく中々会う機会に恵まれなかった。

 

そして今日、なんとかみんなの予定が合い花見をすることになった。開花情報見てないけど大丈夫だろうか。

 

「……そういえば…3月20日って始まった日なんだ」

 

10年前の3月20日。私は社長からの指示でIS学園にゲーマドライバーを届ける最中に桐也くんと出会い、彼は仮面ライダーとなった。そこから未確認生命体とバグスターの戦いが始まった。

 

件の社長は戦いが終わった10年前の12月を最後に私を新社長に任命し社長自体は会長という立場になった。いや、会長とは名ばかりで結局は隠居を決め込んでいる様なものだ。

 

「確かあの時渋滞に巻き込まれたのよね……今日は違うといいけど」

 

若干の不安を抱きながら私はタクシーに乗り込んだ。

 

 

「車進みませんね〜」

 

『タドルレガシー』を遊んでいた私に運転手が話しかけてくる。ゲームに集中していたとはいえ流石に渋滞が起きていたのは分かっていた。

 

「今日は急いでるのになぁ…間に合うかな」

 

「最悪、ここらで降りて電車に乗るのも手だと思いますよ〜」

 

確かに電車に乗れば少し場所が遠くなるが公園近くの駅には着くだろう。

荷物をまとめてお金を払おうとした時、

 

「へい彼女、乗ってかない?」

 

「え"桐也くん!?あ、すいませんここで降ります!」

 

窓をノックして手をヒラヒラさせているのは九条桐也くん。10年前の戦いで意識不明になったけどなんとか回復、リハビリ生活も長かったけど今はこうして聖都大学附属病院で監察医として働いている。

 

私は急いでタクシーから降り、彼を追いかける形でコンビニに止めているバイク…レーザーレベル2の元まで歩いていった。

 

「ビックリしたぁ。誰かと思ったよ」

 

「ちょっと今週の週刊誌が出てたから、時間もあるし立ち読みしてたんだよ。コンビニから出たらタクシーに木綿季さんが乗ってるのが見えてね」

 

「でも正直助かったよ。バイクなら間すり抜けれるもんね。あと今は楯無よ私は」

 

「いいじゃんそこら辺はさ。それに合間すり抜けるなんてトロい事するわけないじゃん。近道使うよ」

 

近道などあっただろうか。少し考える間にレーザーレベル2は消滅した。そしてゲーマドライバーを装着して爆走バイクを装填する。

 

「変身」

 

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!』

 

「ほい、んじゃ失礼っと」

 

「え、嘘、まってまってまってえぇぇぇぇぇ!!!!」

 

桐也くんはレーザーレベル0に変身すると私をお姫様抱っこで抱えそのまま一気に跳躍。ビルの上を高速で跳び駆けていく。軽い絶叫マシンだ。

 

「確かに近道だけどぉぉぉ!!!?」

 

「舌噛むぜ!口閉じてな!!」

 

「はじめてのお姫様抱っこがコレなのは嫌ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その後も桐也くんの爆走は止まらず、あっという間に目的地に着いた。

 

 

「ううっ…酔ったわ……」

 

「みんな来てるみたいだな」

 

スタスタと歩いて行く桐也くんをなんとか追いかける。確かに花見席には今日参加するメンバーがほとんど揃っていた。

 

「あら、キリヤんさんと木綿季さんが来られましたわよ」

 

「遅いわよクジョキリ!木綿季さんとゲーセン行ってたんじゃないでしょうね?」

 

「いや…流石に社長は今日出勤日だったから……」

 

セシリア・オルコットさん。オルコット家の当主として様々な事業に取り組んでいる。料理はまだ苦手らしい。

 

凰鈴音さん。中国でアクションスターとして活躍中。映画も沢山出てるし、私もファンの1人だ。

 

更織簪ちゃん。私の大事な妹であり幻夢コーポレーションのチーフポジション。出来る妹がいるのはとても嬉しい。

 

この3人には今日のお弁当を任せていた。というかセシリアさんが任せてほしいと頼み込んできたのだ。

 

「大丈夫?ちゃんと料理出来たのそっちは?」

 

「食べれない事はないわ。安心しなさい」

 

「ちょっと失礼ではありません!?」

 

「でも…高校の時の見た目も悪い料理じゃなくなってるよ…」

 

「揃いも揃って私の傷口を抉るのはやめてください!!」

 

見た目は多少変わっても中身はほとんど変わらないなぁこの3人。

 

「あ、2人とも来たみたい」

 

「おい、ジッとしていろ。写真が上手く撮れん」

 

桜の木の下でシャルロット・デュノアさんとラウラ・ボーデヴィッヒさんが写真を撮っていた。

今では花家シャルロットと、花家先生と結婚し放射線科医師として働いている。

一本ラウラさんはドイツで黒ウサギ隊の隊長として相変わらず世界各地を飛び回っているらしい。よく休み取れたね。

 

「花家先生へのお土産ってところかな?」

 

「提案してくれたのはラウラなんです」

 

「へぇ、隊長さんがねぇ?昔はこーんなことなんて自分からしなかったくせに」

 

「クジョー、お前からも言ってやってくれ。私とシャルロット、立場が逆転するのはお前のこれからを思うと良くないとな」

 

「ラウラは心配症なんだよ〜」

 

「ええい!引っ付くな鬱陶しい!」

 

ベタベタ甘えるシャルロットさん。結婚してから甘え上手が天元突破したのかな?逆にラウラさんは面倒見が良くなったかな。

 

「あ!揃ったよちーちゃん!ほら飲んでないで!」

 

「うるさいなぁ…昼間ぐらい飲ませてくれ…」

 

「正直お昼から飲むのは早いかなぁ!」

 

既に出来上がっていたのは織斑千冬。それを引っ張るのが篠ノ之束。千冬は別の高校の教師を続けて、束は箒ちゃんに『道場を引き継いでくれる都合のいい人』としてしごかれているらしい。

2人とももうすぐ40なのに元気だなぁ。いやそんなこと言ったら私もだけど。

 

「悪い大人の見本」

 

「それ私も巻き込まれてる!?ねぇえぇちーちゃん!?ちーちゃんのせいで私までダメ大人だよ!?」

 

「違うだろ九条!ダメ大人は束だけだ!」

 

「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

激しく抗議する束に振り回す千冬。ここも立場が逆転したなぁ。昔は束が破天荒で千冬がそれを抑える役割だったけど。

 

「キリヤん、久しいな」

 

「よお箒。相変わらず目つき悪いな」

 

「余計なお世話だ」

 

「やっほ〜桐也〜お家ぶり〜」

 

「なんだよお家ぶりって。ちゃんと手伝いしてたのか?」

 

「してるよもぉ」

 

次に顔を見せたのは篠ノ之箒さんと旧姓布仏の九条本音ちゃん。それぞれ仮面ライダーを彼氏にしたが故か今でも仲が良いみたい。

 

「コレで全員かしら?」

 

「いやいや、まだアンタの妹とお姉様来てないでしょ」

 

「2人とも遅いねぇ」

 

「ごめーん!遅れた!!」

 

「噂をすれば、だな」

 

箒さんが見つめる先にいるのは更織刀奈ちゃんと布仏虚ちゃん。2人とも聖都大学附属病院の医師を務めている。刀奈ちゃんも私が楯無を襲名したからこうして医者の夢を叶えることができた。

 

「結構急いでいたんだけどなぁ。ヒイロくん説得してたら時間かかっちゃって」

 

「結局は鏡さんは来ませんでしたが。その後に彼を迎えに行っていたので遅れました」

 

「ちょっとぉ!荷物少しくらい持ってくださいよ!」

 

刀奈ちゃんと虚ちゃんを追いかける形で最後の花見メンバーが到着した。

 

「遅いぞ一夏」

 

「ったく、何やってんだ名人」

 

「ええぇ?俺だって仕事で北海道から帰ってきたばっかだぞ?飛行機が遅れたんだから仕方ないだろ」

 

織斑一夏。10年前の戦いに決着をつけた仮面ライダー。IS学園跡地にてダグバを撃破するも瀕死の状態で発見。これで2回目だよ死ぬの。

 

でも今はこうして生きている。当時の聖都大学附属病院のドクターの腕と彼自身の、クウガの治癒能力のおかげでなんとか存命出来たのだろう。

 

「これでみんな揃ったわね」

 

「主役は遅れてやってくる…お前これで2回目だぞ名人」

 

「んなこと言ったってよ…それを言うならお前だって卒業式の時に俺と一緒に遅刻しただろ!」

 

「アレはお前がトイレに籠城してるからだろ。お前のクソが長くなけりゃ俺だって遅刻しなかったんだよ!」

 

「おい2人とも」

 

「花見の席だよ桐也」

 

お互いの彼女さんに止められる2人の仮面ライダー。この2人の関係性は10年経っても…これから更に10年経っても変わらないだろう。

 

「おら、さっさと乾杯の挨拶しろよ一夏」

 

「え、俺がするのか!?……っと、まあ……みなさん飲み物持って!えーー………とりあえず、乾杯!!」

 

『乾杯!!!』

 

ぐだぐたな挨拶だけど、これも一夏くんらしい。周りのみんなからも笑みが溢れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いから10年。

 

今は桜舞う季節。

 

彼もこうして帰ってきた。

 

ならばみんなで少し思い出に浸るのも悪くないかもしれない。

 

 

 

 

せっかくなら、10年前のあの出会いの日から………ね!

 




これにてバイク名人完結でございます!!

いや長かった。初投稿が2016年の11月20日です。これはレーザーレベル3が初めて登場した回なんです。それから約5年。今ここに桐也と一夏の物語は終わりを迎えました。

今まで書いた小説で1番の長丁場になりました。中々原作の最終巻が出ないなか、まさかコッチが先に終わるとは思ってもみませんでしたよええ!!

何はともあれ、これにて彼らのSchool Lifeは終わりです。
ご愛読と応援ありがとうございました!!!


桐也「また機会があったら会おうぜ」
一夏「じゃあな!!」

◆ーーーーー◆

IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜    

           The game is over


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