その先の向こうには (峰白麻耶)
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入学式1

キャラぶれ、魔法理論など不備は出来るだけ起きないようにしてますが暖かい目で見てください


魔法。

 

魔法が現実となりフィクションでなくなったことはそこまでも遠く無い過去である。魔法と言う物が技術体系化し、世界各国は魔法師の育成に乗り出した。日本もその一つである。

 

魔法師の育成機関である国立魔法科大学附属第一高等学校では入学式が今日行われる。

 

二十分前となり新入生の誘導に慌ただしく在校生があっちこっち忙しく動き回ってる。が珍しい人も居るようで人気のない桜の木の下で熟睡に近い状態で寝ている男が一人。暗い灰色の髪を春の暖かい風がなびかせ、体に付いた桜の花弁が飛んでいく。付いてる量を見ると長時間そこに座り寝ていることが分かる。丁度入学式が始まる一五分前。二人の少女が来て一人は小走りにどこかえ行った。もう一人の少女はふらふらと視線を泳がすと男が居ることに気づいた。もう一人の少女が戻ってくるまでの暇つぶし、あるいは善意、もしくはこんな所で眠ってると言うことに興味を持ったのか少女は男の方に近づいた。男が起きたのはそのときである。

 

 

 

俺は誰か近づいてきた気配がして目を覚ました。昨日は急な呼び出しのお仕事があり、帰宅時間が今日の午前六時。もうね。徹夜だね。いくら高校生になって不規則な生活が慣れてると言ってもつらくない訳じゃないんだよ?てか入学式前日に呼び出さないでくれよ……なんて文句の言える立場でないけど既に過ぎ去ったことだし早めに高校に付いてギリギリまで寝る決意はしっかりした。お陰様で二時間キッカリ寝ることができ少しはスッキリした。

 

しかしながら目の前の少女は何だ?まるで俺を未知の珍獣のように見ているんだが?

 

「何でそんなところで寝てたの?」

 

落ち着いた声で聞かれる。確かに誰も好き好んでこんな場所で寝ないしな。強いて言うなら

 

「そこに寝れる場所があったから」

「どこかで聞いたことがある…」

 

そこに山があるからですね分かります。

 

「凄い桜の花弁付いてるよ?」

「おお。本当だ。さすがに二時間も寝ればそうなるか……」

 

頭、制服に付いた桜の花弁を払うとまたもや

 

「よくこんな場所で寝れる」

 

確かにいい寝場所とは言えない。運が悪ければ物を取られる。が俺は気づくからノープロブレム。それにお仕事がらこう言うのは慣れている。つまり

 

「俺が寝れない場所はない」

「それは羨ましい」

 

表情が余り動かないが少しの変化と声のトーンで本気で羨ましがってるのが分かった。確かに少し眠そうだ。

 

「私は北山雫」

 

少女、北山はいきなりそう言ってきた。口下手なのかよくわからないが恐らくあなたは?と言うのが省略化されてるんだろう。

 

「俺は鬼頭 雪路だ」

 

そう言うと北山はほっとした表情になった。まあ、省略のしすぎで意味が伝わるか焦ったのだろう。多分。だが恐らくこの名前を呼ばれることももっと言えば北山と関わることも無いだろう

 

「ねぇ。もう少しで友達が戻ってくると思うんだけど一緒に行かない?」

 

恐らくその友達と言うのは今丁度小走りでこっちに向かってる人だろう。だいたい後四十秒くらいで来るだろう。少し待てばいいだけ。この少女と話すのも悪くない。

 

だが俺は胸をトントンと二回叩いた。そこには北山にはある才能の象徴とも言える八枚花弁のエンブレムがない。一科生と二科生。ブルームとウィード。入学した時からもう優等生と劣等生はいる。将来が期待され教員の直接指導が受けられる一科生と自力で這い上がらなければ行けない二科生。二科生をウィード。つまり雑草呼ばわりすることは差別用語として禁止されている。しかしそれが校内で使われているのは悲しいかな。今朝通りすがりに言われたしな。一科生は二科生を見下す傾向がある。この北山と言う子は違うだろうけど少数だ。二科生と共にいることはマイナスでしかない。北山の連れにも悪いだろう。

 

 

俺は早歩きでその場を去った。歩きながら制服に入れておいたチョコを五つ食べながら、端末を取り出して学内地図を見ながら会場に足を進めた。

 

 

 

 

 

寝不足だったせいかただ眠れそうな場所を求めゾンビのように学内を歩いていたから中をよく見てなかったが………金がかかってる。まるで大学のキャンパスだな。これで高校なら大学はこれ以上か……。と驚いてるうちに会場に到着。目の前に広がるのは一科と二科の亀裂がよくわかる。自由席なのに一科と二科がきれいに分かれてるしな。

 

二科で一科の席に座る猛者がいるかと探すか流石に居なかった。勿論俺もそんなことはしないので適当に腰を下ろした。予定に目を通して入学式が一時間くらいかかることにうんざりするが寝て過ごすように決め五分前に起きようと眠りについた。

 

 

 

 

がざわとした音が一瞬響きそれのせいで目を覚ます。その原因を探ろうと目線を回すとすべて視線が壇上に向いてる。諸悪の根元に目線をやればざわつくのも納得な美少女がいた。時間と照らし合わせると新入生総代の挨拶の時間。あの美少女が新入生総代か……。うん、要するに俺には関係ない。

 

俺はまた来た睡魔に身を委ねた。

 

 

 

 




感想募集です


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入学式2

誤字や脱字などあればお願いします。後感想を書いてくれると次の投稿が早くなるかもと言ってみたりする


おはようございます。入学式をぐっすりと寝た鬼頭です。現在、自分のクラスのホームルームに着ています

 

例えここの高校に入学する事が自分の本意ではないとはいっても入ってしまった以上は観念して学生になります。はい。そして学生らしく顔見知り位は作らないと実習で不便なのでホームルームに着たというわけだ。

 

席の順番は名字のアイウエオ順っていうか?てやつでキ。そしてそこから跳んで次がシと五つ跳んでいる。学生に不可欠なコミュニケーション能力を武器に友人作りに励んでる奴も居れば俺の隣の奴は、女子二人と話しながらキーボードをもの凄い速さでタイピングしていた。どうやって入学式から少ししか立ってないのに女子と知り合ったのか聞いてみたかったがそんな事を初対面で聞くのはおかしいと流石の俺でも分かる。気にしない方向で

 

そしてそれ(女子が二人居ることではない。タイピングのことだよ)を物珍しげに見ている奴も居る。そんな視線に耐えかねたのかタイピングを途中で止め話し始めた。それを聞きながらボーとして何か甘いものでも食べようと鞄を開けチョコの包装をペリペリはがし口に放り込む。俺はふと思った。これが普通の高校生活?

 

俺をこの高校に強制的に入れた張本人はどんな高校を俺に望んでいたのだろうか?一つ分かることはこれは違うと言うことだ。恐らく俺が今BGM替わりに聞いているこの雑談に混じっていることを望んでいたのではないのか?だがあえて言おう。

 

無理だ。顔見知り位作ろうと思ったが無理だ。多少おかしな人生を送って来た俺があのような集団に入るのは難しい。そう、俗に言うコミュ力が足らない。機会があればとも思うが残念ながらその機会が訪れないのだ。神様何て信じないが居るなら神様は少し仕事をした方がいいと思う。誰もがそんな事を考える暇があるなら誰かに話しかけるとかすればいいじゃないかと考えるだろうがそれには経験値が足りなかったのだ。

 

 

カリキュラムを決めると言うのは重要なことだ。それは言わずとも分かること。しかしもう決めてあり入力も済んでる人には暇な時間である。故に終わっている者は帰って良いと言われたが一人が立つだけだった。あの空気の中で退席するとは勇気があると一人感心していたのは俺だけではないはず。そう言えばさっきの人はカリキュラムを打っていたのかと今更気づき出来るのならさっさとやっておけばと後悔しながらカタカタとキーボードを叩いていた。

 

 

登録が終われば自由である。そうと決まれば荷物をさっさとまとめ帰るのが俺である。間違っているか?そうか。気にしない。突然だが俺の趣味は料理である。何故俺の趣味が料理なのか話すとそうしなければ俺が生きられないのだ。歴々の同居人と言っても二人だが料理が正直下手なのだ。ゲテモノを作るわ、食品を粗末にするわなどなど、数えればきりがないがそれほどの失敗をするほどの料理下手だ。それならと俺が作ったのが始まりだ。それからと言うもの料理担当として腕を振るっていた結果こうなったと言うわけだ。そんな俺は今までの通りお菓子が好きだ。特に甘いが。そんな俺はたまに甘いものの食べ歩きをすることがある。昨日の今日で呼ばれるほどこの町は危険じゃないはずである。多分。そこで早帰りを良いことに近くのケーキ屋でお昼である。仕事で一応はお金を貰っているが基本的にお菓子や料理本や調理器具にしか使わない。むしろそれにすら使えない事もある。(同居人が食べたいと言った物を作るための時だ)そのため俺の貯金は貯まりに貯まっている。今日もお目当てのケーキ屋に行った後五パーセント安くなるあのお店に行き買い物をして帰るという将来は専業主夫かとツッコミが入る日課だ。残念ながらそんなツッコミを入れる人は言うまでもなく居ないことをあらかじめ言っておく。

 

一人てくてく歩きお目当てのケーキ屋に付いて席に座る。俺と似たような考えなのか学生が多い。特にカップルだ。この店の匂いも甘いのにカップルたちの会話も甘すぎて立ち去りたくなる気持ちをグッと抑えホットココアとチョコケーキ、チーズケーキ、モンブランとサンドイッチを頼む。店員は一人でこんな食べんのか?と疑惑の目立ったが俺と目が合うと営業スマイルを浮かべ立ち去っていった。その後ろ姿を見て一息といきたいが残念ながら店内は学生で騒がしい。余り騒がしいのは嫌いなんだがお菓子の為と我慢するのは何時もの事であり俺にとっての基準では殆どの場所が騒がしいに当てはまるのでもう慣れたのだ。

 

俺に注文した物が届くと俺はそれにだけ集中する。小さく手を合わせ心の中で頂きますと言うと食べ始める。この時ちょうどあの四人組が来店していた。これが交流の機会と分かっていたが食事に夢中と言う言い訳を作りケーキを食べていたがサンドイッチを食べ終わりデザートに口に入れたチョコケーキがおいしすぎてそんな事はきれいさっぱり忘れていたのだった



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入学式3

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします


入学二日目友人どころか知りあいすらいない俺はおかしいのか?そう思って周りを見渡すと少数派ではあるがポツポツと同じような人は居る。なら別に急ぐ必要はないとは今日もチョコ……ではなくキャラメルを食べてチョコとは違う甘さに歓喜する。午後に何としても見学したい三年生の授業があり俺はそれを楽しみにしていた。そして不思議なことにそんなときだけ時間というのは遅くなるものだ。工場の機械のように時間を過ごし昼ご飯は屋上で食べて遂にその時が来た。

 

昼ご飯を食べ終わり弁当箱をバックに入れて一番乗りで射撃場に来た。ここは遠隔魔法用の実習室で次の授業は三年A組の実技が行われる。そして俺がこの実技を見学したい理由は遠隔精密魔法の分野で十年に一人と言われる英才七草真由美が所属するクラスであるからだ。彼女は魔法もさることながら容姿も優れ生徒会長。否の打ち所のない優等生である。そんな人の実技を見学出来るなら是非したいだろう。俺もそうだ。

だが俺みたいな食べてすぐ来る奴は居なかったようだ。

 

昼休みが中盤にさしかかった頃。最初の人が来た。その人は俺を見て軽く驚いた表情をした後すぐに視線がある場所に向かった。肩だった。一科、二科を区別するのにはエンブレム。それは胸と肩にある。俺が振り返るときにエンブレムの有無を確認できるはじめの地点は肩。そこを見ていたのだ。俺が一科じゃないと分かると俺の付近に陣取る。そこから続々と人が来る。どちらかと言えば二科生の方が先に着てるのではないか?と思う。だが一科生が来ると何故か罰が悪いのかどんどん後ろの方へと行ってしまう。俺の付近に陣取っていた人もいつの間にか居なくなり俺の周りは一科生だけだった。明らかに好意的ではない純度百パーセントの悪意が俺を向くがその悪意は可笑しいと一周する。一科と二科差は魔法の指導に先生が付くかどうか。それ以外の立場は同じでありお前が見ても無意味だと言われようが関係ない。むしろ何故一科に譲るのかが謎だった。この学校はおかしい。二科が一科に譲りそれを当然とあるいは気にしない一科生も。

 

 

 

悪意の視線を受け流しながら見た三Aの実技。特に七草先輩の実技は他の三年より抜き出た物があった。でも自分が同じことを出来るか?と聞かれると出来ると俺は答えるだろう。そんな事を言えば暴動が起きかねないので黙って置くが

 

見学が終わり、さっさと帰るかと自分用のCADを取りに行く。学内でCADを持つことが認められるのは生徒会と一部の委員のみ。学外での魔法の使用は法令で細かく規制されてる。しかし学外でCADの所持が制限されてるわけではない。CADが無くても魔法は発動できるため意味がないからだ。だから自分のCADを持っている生徒は授業前にCADを事務室に預ける。正直に言えば面倒くさい事この上ない決まりだが決まっていることにケチをつけても仕方ない。事務室を訪ねCADを受け取り帰り道についた。いや、着こうとしたが着けなかった。何やら一騒動起こっているのか人だかりが出来ている。何とかすり抜け他と思ったら何と騒動の最前列でありE組のタイピングの確か司波とその他大勢が話して………前言撤回。喧嘩をしていた。メンバーを見ると入学式に俺を起こす原因となった新入生総代が恐らく中心。新入生総代は司波の近くに居る。………彼女?いや、兄妹の方が現実味がある。恐らく新入生総代と帰りたい一科と兄と帰りたい妹を保護する二科の構図か。

 

現状把握に勤めているといきなり大きな男の声がした。

 

「だったら教えてやる!」

 

そんな声の大きくしなくてもいいと心の中で毒づきながら目を向けると特化型のCADを抜き出そうとしている姿があった。正直、こいつは馬鹿だなと冷静に見ていた。CADを抜く手際、照準のスピード。魔法師の戦闘に慣れている動きだった。さっきこの男が言っていた教えてやる。それは殺し合いのことなのか?魔法師同士の戦闘に慣れているからこそ自分が持っている特化型のCADが人を殺せる拳銃と同じであると気づかないのか?色々と戦闘以外にも役に立つからかそんな感覚も薄れているのか?ある意味そんな考えの出来るこいつは羨ましい。そんな事を考える内に女子生徒が警棒を振り回し男のCADを吹っ飛ばしていた。女子生徒はいい腕を持っていると感心してるまもなく一人の生徒の態度がおかしいことに気づいた。そういう人間が次にどのような行動をとるか俺は把握していたのでその生徒がCADに指を走らせ魔法を構築し始めた瞬間に俺はサイオン弾を放った。俺のサイオン弾は生徒の魔法式を壊し魔法を不完全にさせた。そこから数秒後に

 

 

「自衛目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反である以前に犯罪行為ですよ!」

 

 

そう我らが生徒会長のお出ましだった。しかも風紀委員もお出ましである。何をするのかは知らないがそこそこ偉いのは何となく分かる。そこからは司波が嘘をきれいに並べ起動式を意識して理解すると言う頭がわかしいことを言い(おおざっぱに言えばDNAの羅列を見てこれがどの生物か当てられると言うこと)これにより何もかも綺麗に収まると思いきや

 

「さっきサイオン弾を打ったのは君か?」

 

急に矛先が向いてきた。そうですよね分かりますよね。

 

「そうです。何か問題でもありましたか?」

 

俺はこう返す。横やりを入れたのは横において置いて悪いことはしていない

 

「いや……君が打ったサイオン弾に驚いただけだ」

 

サイオン弾で魔法式だけを壊す。言うだけならば簡単だが実行に移すには高い技術が必要だ。失敗すれば術者に影響を与えるか魔法式を壊せずに終わる。それを二科生が涼しい顔でやりのけたのだから驚いたと言うことだろう。

 

「射撃は得意なので」

 

七草先輩は軽く目を開き、風紀委員はニヤリと笑う。そして言った後で後悔した。これじゃ七草先輩に喧嘩を売ってるようだと。まあ良いかそれで怒る人ではないだろうし喧嘩を売るぐらいの力量は持ってる。と軽く解釈した。

 

 

「君達二人の名前は?」

 

俺と司波の目を見て問う

 

「一年E組司波達也です」

「一年E組鬼頭雪路です」

「覚えておこう」

 

反射的にやめてくださいと言いそうになったのは司波も同じだと信じたい。

 

 

 

 

二人の先輩が過ぎ去った後にため息を付く。一科の奴は何やら言ってるがそれを理解する気力はなく入学二日目から三年の先輩に目を付けられる事で疲れていた。司波目を向けると先にあちらが口を開いた。

 

「入学早々に目を付けられたな……」

「後でカツアゲでもされるのか?」

「そんな一昔前前の学園物みたいにはならないだろ」

 

はあと言うため息がまたもや同時にこぼれた。なんだかんだ苦労人気質なのかもしれない

 

「改めて司波達也だよろしく」

「鬼頭雪路だ」

 

自己紹介をして苦労を分かち合ってると

 

「司波くん災難だったね。あと鬼頭くんも」

 

そう言って来たのは俺の席の隣の隣の………確か千葉だ。名前がうろ覚えなのは気にしないでくれ

 

「ありがとう千葉さん」

「流石に隣の隣だから分かるよねー。じゃあこの子はわかる!?」

 

そう言って前に出したのは眼鏡の女子。確か……

 

「柴田さんだよな」

「おお!正解。でこいつは西城レオンハルトね」

「おい……何で俺だけ」

「そりゃーあんたは席遠いし影薄いもんねー」

「んだとこのアマ」

 

と夫婦漫才を繰り広げる。

 

「柴田さん。何時もこの二人こんな感じなの?」

「あ、あははー。そうですね。えっとよろしくお願いします鬼頭くん」

「こちらこそ」

 

と様子見しながら雑談してると一段落したのか

 

「俺は西城レオンハルト。レオで良いぜ」

 

なんというコミュ力流石だ。

 

「入学早々目を付けられた鬼頭雪路だ。俺も雪路で良いぞ」

「おうよろしく」

 

と言っているが言葉の端々に力がない。やはりさっきの一騒動で疲れてるのか、さつきの痴話喧嘩で疲れたのかはどっちでも良いが

 

「帰ろう」

 

と司波が言う。知り合ったばかりなのに俺も同じく誘われた。高校生とはこういうものか……。と思ったのもつかの間さっき俺魔法を妨害した生徒が出てきた。またやっかいごとか?と思ったがどうやら一緒に帰りたいとのことだった。度胸があるなと他人ごとに考えていたがすぐそんな考えは無くなった。何と隣に北山がいたからだ

 

 

 

 

 

 

「久しぶり」

 

北山がそう話しかけてくる。ついでに今どんな感じかと言えば司波の隣に総代と光井と名乗る人。俺がいたことに気づかなかったのか気づいて直ぐに謝ってきた。どうしてあんな集団に居たのか謎である。それに着くようにぞろぞろ並び俺と北山は最後尾だ

 

「久しぶりでもないだろ。二日ぶりだ」

 

そう返すとぼーと上を見てそうか……と呟き納得した風だった

 

「ありがとう」

 

突然そんな事を北山が言う。いきなりどうした?と思った

 

「鬼頭さんが何もしなければほのかは大変なことになっていた」

 

そのことか

 

「俺がしなくても生徒会長が何とかしたさ。ただ俺の方が少し早かっただけだよ」

 

七草先輩らしき足音が来ていたのは分かったしもう少しCADを操作するのが遅かったら七草先輩に任せていた。

 

「それでも」

「あ、ああ。どういたしまして?」

 

お礼を言われるのはどうも慣れずむず痒い。よほど光井と親しいのだろう。と言うよりあのときの足音は三井の事がと今更ながら合点が付いた。

 

 

そしてそれから沈黙が続く。俺があまり話す方でもないし北山もそうなのだろう。だが別に無理して話す必要もないし北山も恐らく気にしてないだろうと思った。それから少し歩くと

 

 

「そうだ」

 

と急に言い出す。北山は俺の肩をポンポンと叩く

 

「気にしてる?」

 

暗い顔で尋ねる。それは俺が初対面の時にやった北山に関わらないための理由付け。あの時は北山の連れに悪いと思っての行動だった。しかし当の本人はあれである。気にする必要は無かったようだ。

 

「してない」

「良かった」

 

とそういえばと念のための補足をしておくのを忘れてた。暗い顔だったから念のためだ。

 

 

「一応言うけど二科生だから避けていたんじゃなくて北山の連れ。要するに光井に気を使ったんだよ?」

 

というと少しだけだまり

 

「気を使わなくても大丈夫」

 

というと北山は光井を見る。

 

「あの通りだから」

 

その言葉に色々詰まってる感じがしたのは俺の気のせいだろうか

 

 




今回は原作のメインメンバーとの絡み、そして久しぶりの雫さんです。雫さんの言葉は色んな意味で取れるのが読者としては美味しいと思います。作者の想像道理に受け取って貰えるか少々不安です。結論を言えば雫さんは可愛いで済みます。


今年も亀更新ですがこの劣等生、ごちうさを進めていくのでよろしくお願いします。



感想募集中(*´Д`*)


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入学式4

鬼頭雪路は睡欲と食欲が強い。本人曰く寝ても寝ても眠い。食べても食べてお腹はすく。朝は睡眠と食事の二つが両立するような時間にするため寝るのも小学生とまではいかなくても中学生位には早く寝る。具体的には九時から十一時だが入学式の前日のように仕事が入ると徹夜もありその当日は完全に屍のごとくだ。昨日は精神的に疲れたのか九時には布団に入り七時起ていた。

 

 

 

朝は料理が面倒なので冷凍食品を次々と使いご飯と味噌汁の他七品を作り、黙々と食べる。腹ごしらえを終えると使った皿をキッチンに入れ水に浸す。作っておいた弁当とお菓子を鞄に次々と入れ鞄の半分が埋まると教科書を入れ閉める。ここまでを五十分で終わらせて、着替え自分のCADとその他小物を制服のポケットに入れ準備は完了。家の主らしく火の元、電気、窓の鍵を確認し家の鍵を閉める。

 

 

この家は運がよく第一高校の近所でありその点はこの家の持ち主に感謝しないといけない。強制的にぶち込んだのもそいつだが……と学校までの道のりを早歩きで行く。遅刻すれすれの時間に教室に入って席に近づくとレオ、千葉さんに続いたれ司波に柴田さんに挨拶される。なお、千葉さんと読んだらエリカでいい。代わりに雪路ってよぶからとなり柴田さんと司波もその流れにのり全員名前呼びになった。俺の周りをビフォーアフターするとその差は明らか。ぼっちから四人。しかも名前呼び。何と素晴らしい。彼が普通の?高校生活かは知らんが多分合ってるだろう。だが気がかりなのは……

 

「達也。何か疲れてるか?」

 

表情と雰囲気で何となくそんな気がした。

 

「よく分かったな……」

 

その顔は驚きに変わった。余程ポーカーフェイスに自信があったのかもしれない。朝に何かあったかはエリカが面白そうに語ってくれた。内容はもはやお疲れ様としか言えなかった。生徒会長が通学路で大声で声をかけてしかも妹の付き添いで昼休みに生徒会室に連行確定。確かに朝からそんな面倒な事に巻き込まれればそんな顔になるのは分かる。他の人から見れば、例え妹の付き添いでも生徒会長と昼を一緒に食べると言うのが死ぬほど羨ましい人も居るだろう。ある意味贅沢な奴だ。

 

 

休み時間の度に友人と話す。そんな普通の時間を今日初めて過ごした。

 

 

達也は生徒会室に行き、俺は屋上で昼ご飯を食べるために教室を出て階段を上る。扉を開けると春の暖かな日差しと風が迎えてくれる。備え付けのベンチに座りバックの中から二段のB5サイズの弁当を出す。それと菓子パンを出し、手を合わせる

 

「いただきます」

 

ボソッと呟き箸を持ち、蓋を開ける。唐揚げ、玉子焼、ウィンナー、エビフライにエビのグラタンその他弁当の定番からちょっと違った変化球まで色々詰まっている。美味しいに越したことはないが量がないとお腹がすいてしまう。お菓子を休み時間の度に食べてもだ。完全に自分のお腹はブラックホール。大食い番組にもでれるかもしれない。

 

ところて弁当の醍醐味は何が入っているかと食べる場所。場所は屋上という人が居なく静かな最高の場所であるが自分で作ってるので開ける前のドキドキ感はゼロだ。楽しみがない。まあ、自分で作ってるからこそ自分の好物を沢山入れるという利点もあるからな…。

パンとかおにぎりとかを買うとすごい量になるしコンビニ弁当も三つ四つは買わないといけない。流石にそれを何度もやると店員に覚えられるのでやりたくない。まあ、スーパーの人には覚えられてるけどな。一度に大量の食品を買う人ってな。

 

 

黙々と箸を進め、半分近くが胃に収まった時だった。

 

 

プルルル。プルルル。

 

 

その音が聞こえた瞬間に制服の内ポケットに入れている黒いガラケーを出すが………

 

「あれ?」

 

これじゃない。てことは……。外のポケットに入れてある俺の保護者が入学祝として買ってくれた端末を取り出す。そう言えば昨日、連絡先を交換したと言うことをすっかり忘れていた。普段は殆ど使っていないから存在を忘れていた。画面を見ると電話の主は達也だった。口の中のものを飲み込み、普段は使わないから操作に不安があったが何とか電話に出れた。

 

「もしもし」

「雪路か?今どこにいる?」

「屋上でご飯食べてるけどなに?」

「七草先輩と渡辺先輩がお前にも話があるから生徒会室に来いと言ってな」

 

すごいやっかいごとの匂いがプンプンする。行きたくない。物凄く行きたくない

 

「行かないとどうなる?」

「校内放送するとさ」

 

脅迫だ。完全に権力を傘に脅迫してる。絶対に行かないとさらし者だ。

 

「はあ。行く。行きますよ……」

 

そう言って電話を切る。食べかけの弁当をしまいとぼとぼと生徒会室に向かうのだった

 

 

 

 

 

生徒会室。俺が絶対に関わることがないと思っていた場所。ため息を一つ出しノックをする。するとロックが外れたので中に入る。

 

「よかった。ちゃんと来てくれたみたいね」

 

七草先輩がにっこりと微笑む。半分脅迫だろと言いたいが相手は生徒会長でしかも十師族。無理である。

 

その隣で同じように不敵に微笑む渡辺先輩にも同じことを言いたいが風紀委長で三巨頭と呼ばれてるだ。同じく無理である。

 

「どこに座ればいいですか?」

 

そう言うと達也君の隣にと言われたので座る。正直何で呼ばれたのか分からないのだが取りあえず

 

「昼ご飯食べ終わってないので食べて良いですか?」

 

「ごめんない。もう食べ終わってるかと思って達也君に電話して貰ったんだけどお食事中だった?」

「まだ半分も食べてないです」

「なら食べながらで良いから話を聞いてちょうだい」

 

俺は弁当を出し、広げる。すると達也以外は絶句していた。まあ、達也も少し引いていたけどな。

 

「な、なあ。その量を何時も食べてるのか?」

 

驚きの声で渡辺先輩が聞く。

 

「いつもですよ?」

「それにこいつは休み時間に何時もお菓子を食べてますよ」

「そ、そんな……」

 

七草先輩は自分の体に思うところでもあるのか?体型はすごく良いと思うけど。

 

「あの。鬼頭さん?」

「何ですか?」

「これ全部手作りですか?」

 

司波さんが俺に聞く。

 

「六割は昨日の作った夕飯の余り物で後は夜にちゃっと作っただけですけど……」

 

すると今度は渡辺先輩が

 

「負けた……何か負けてはいけないところに負けた気がする」

 

完全に落ち込んでいた。もう何これ。取りあえずご飯を食べよう。無心に箸を進めているとやっと復活したのか七草先輩がこほんと咳払いをし

 

「鬼頭くんにはお願いがあるの」

 

箸は止めずに顔だけ向ける。

 

「達也くんと一緒に風紀委員に入って欲しいの」

 

は?

 

箸を止める。この人何言ってんの?風紀委員?いやそもそも

 

「二科生は風紀委員になれるんですか?」

「問題はないです。一科生の縛りがあるのは生徒会のみで風紀委員は関係がありません」

 

さっきまで沈黙していた人が言う。

 

これは反論しないと強制的になるのが決まる。

 

「どうして俺が?達也のように相手の使おうとした魔法が分かるという能力が不適正使用の抑止力になります。それを踏まれると達也は充分風紀委員になる資格が有ると思います。しかし俺にはそんな特殊技能は有りませんよ?」

 

ごく普通に誰もが思うことを言う。

 

「理由ならあるさ。だが……」

 

チャイムがなる。

 

「昼休みも終わりだ。三人ともまた放課後に来てくれないか?」

 

 

 

ため息混じりにはいと答えた。

 

 

結局昼ご飯は全部食べられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出るキャラが増える度に口調がおかしくないかと言うのが気になります。

感想や誤字に脱字。こうしたらいいんじゃないかというアドバイスがあればお願いします


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入学式5

昼休み後。今は魔法実技の時間である。今日の課題はレールの中央まで加速させそこから減速して停止。また逆にを三往復する課題である。そのために据え置型のCADに並んでいる。教員は居ないため皆自由に話している。が俺はその和から外れていた。無論、はぶられているわけではない。単純に

 

「お腹が空いて力がでない……」

 

昼ご飯を喰い損ねてしゃべる気力もない。

 

「雪路。昼休みあれだけ食べていたのにか」

 

そう言うが俺にとってはあれだけでは足らないのだ。本当は一日中食べては寝てを繰り返す生活が理想なのだがそれではだめ人間だ。ついでに今は学生の身だ。授業に支障が出るほど食べるわけにはいかない。

 

「あれは妥協した量なんだよ。俺の食事の速さでちょうど昼休み終わる頃に食べ終わる量なんだよ。本当はもっと食べたいんだけどな」

「雪路くん何時もお菓子持ってるじゃん。今持ってないの?」

 

エリカにとって俺のイメージはお菓子らしい。まあごもっとも。昼休みのたびにお菓子を食べてるからな。けど

 

「生徒会室からここに来たから補充する暇がなかった……」

 

前に並んでいた美月が振り返り

 

「生徒会室ですか?呼ばれたのは達也さんだけですよね?」

 

と疑問を投げかける

 

「昼休み中に電話が掛かってきてな。生徒会に呼ばれて厄介なことになったんだよ。俺と達也で風紀委員になれってさ」

 

俺はため息を尽きながら言葉を吐き出す。

 

「本当に。何なんだ?あれは。」

 

達也も同じように考えていたようだ。

 

「達也が風紀委員になるのは分かるんだが……。何で俺が巻き添えを食らってるっんだ?」

「おい。俺は妹のおまけだぞ?」

「おまけじゃなくて豪華特典だろ。何が起動式を読みとれるだよ。風紀委員にとっては喉から手が出るほど欲しい人材だろ。俺の昼の説明聞いたら分かるだろ?」

「そうだが」

「まあ、あの生徒会長と風紀委員長が関わってるんだからチェックメイトだろ。反対する奴がいても綺麗に論破か力押しだろうし」

 

はあ。と二人でため息を吐く。風紀委員なりたくねえー。

 

「でも生徒会にスカウトされるのはすごいですよ」

 

と実技を終えて戻って来る美月がそう言うが

 

「面倒事のオンパレードだろ。どうせ」

「と言うか結局風紀委員は何やるの?」

 

という素朴な疑問に達也が懇切丁寧に答える。それを聞くと益々俺の利用価値は無いんじゃないかと思う。力仕事はこりごりです。エリカがそれを聞いてボソッと何かを言ったがそれは聞かなかったことにした。明らかきに男前のあの風紀委員長だろう。

 

「おもしろそうじゃねーか。受けろよ、達也、雪路。応援するぜ」

「でも。喧嘩の仲裁に入るって事は攻撃魔法のとばっちりを受けるかもしれないんですよ?」

「それに逆恨みをする奴だって居るだろうし」

 

確かにそこを聞けば風紀委員は割に合わない仕事じゃないか?内申が上がるかは知らないがどちらにせよリスクの方が高い

 

「でもよぉ、威張り散らしている一科生の連中よりは達也と雪路の方が良いと思わねぇか?」

 

確かにそうだ。レオの言うとうりだと思う。

 

ここで俺は話に入らなくたった。お腹が空き喋る気力がなくった。列について並びながら寝ることで何とか持たそうと頑張っていた。

 

美月、エリカ、達也、レオと続いて俺の番となった。ペダルで足の高さを調節し、半透明のパネルに手を乗せてサイオンを流す。返ってきた起動式のノイズに吐き気を催しながらも魔法を発動した。台車が動き出すのは他のクラスメイトに比べて早かった方だ。しかしその速度はクラスメイトより劣っている。三往復させ課題を終わらせると俺は後ろに戻り授業が終わるまで眠った。

 

 

 

 

放課後。見送られて生徒会室に向かう。達也と司波さんの間に入るのもはばかられるので俺は遠慮して二人の後ろについていった。早く帰りたいのに帰れない。その苦痛を紛らわすために甘い飴を舐めている。チョコの味を堪能している間に生徒会室に着いてしまった。達也がドアを開け中に入る。俺も達也もIDカードの認証システムに登録済みだ。さっきチェックメイトと言ったのもこれが原因だ。入ると同時に明確な敵意が含まれた視線が達也の方に向く。その発生源は昼には空席だった場所だった。そしてその視線は俺にも向いてくる。

 

………え?会ったことも。ましてやすれ違ったこともないだけど………。

 

まあ。この視線は慣れてる。むしろ落ち着くとまで言えるかもしれない。言い過ぎだな。取りあえずこれぐらいなら可愛いもんだ。達也に続き黙礼するとその視線は司波さんの方に移った。

 

「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、生徒会へようこそ」

 

神経質な声。服部先輩はそのまま席に戻った。その態度にイラっときたのか司波さんが表情を少し変えるがすぐに戻った。完璧な仮面である。

 

「よっ。来たな」

「いらっしゃい深雪さん。達也くんと鬼頭くんもご苦労様」

 

完全に身内の挨拶だ。

 

「さっそくだけど、あーちゃん、お願いね」

「………ハイ」

 

そう言えばこの先輩は何と言うのだろうか。あーちゃんというニックネームは可哀想だ。

 

「じゃあ。わたしらも移動しようか」

 

だんだん口調が変わっている。何ともフレンドリーな先輩である。

 

「どこへ?」

「風紀委員会の本部だよ。色々見て貰った方が分かりやすいだろうからね。この真下の部屋だ。といっても中でつながっているんだけど」

「変わった造りですね」

「あたしもそう思うよ」

 

達也と渡辺先輩の会話をボーと聞く。まあ、ついて行けばいいやと考え速く終わるよう無駄口はたたかない方向でいた。がやはりそのもくろみは速くも崩れ去る。

 

「渡辺先輩、待ってください」

 

あっ。始まった。そう考えた瞬間俺は無心になり寝始めた。体感時間で三分ぐらいだろうか?そのぐらいたって

 

「それでは彼はどうなんですか?」

 

矛先が俺に向いた。

 

「彼にも同じような実力があるのですか?」

「いや、ないぞ」

「は?」

「すまん。達也くんと同じく起動式を読み取るなんて力はない。だが真由美と同じくサイオン弾による起動式の破壊を得意とする魔法師だ。初めて見たときは驚いたよ。二科生にも関わらずここまでできるのかってね。ちょっと入学試験の実技を見てみたがお世辞にも良いとは言えなかった。だが彼の実力は確かなものだ。達也くんのような異能ではなく純粋な努力だ。努力に対して結果が出るのは当然だろ?それに二科生が風紀委員に続けてなればその流れは続いていくと言うわけだ。まあ。こんな生きのいいのがまた出るかは分からんがな」

 

渡辺先輩がそう言うと

 

「摩利ったら達也くんだけかと思ったら鬼頭くんの事も考えてたのね。鬼頭くんを気に入ったのかともったわ」

「会長お静かに」

 

この会話で空気が奇妙なものとなる。早くも帰りたい。もう帰って良いですか?と聞こうとしたがその前に

 

「会長。私は副会長として、司波達也と鬼頭雪路の風紀委員就任に反対します。渡辺先輩の言葉には一理ありますが風紀委員の本分は違反者の摘発。魔法力に乏しい二科生にそれが出来るとは思えません」

 

この人。頑固ってレベルじゃないな。そう思ってると司波さんが達也を貶されプッチンした。魔法実技は悪いが実践は強いと。それに対して服部先輩は目を曇らせるな。冷静を心がけ見定めることというがそれは火に油を注ぎヒートアップして達也が言葉の途中で止めた。

 

俺は完全に蚊帳の外だった。達也が止めた言葉の先が気になったが詮索のつもりはなかった。すると達也が驚くべきことを言った。

 

「服部副会長。俺と模擬戦しませんか?」

 

この言葉を聞き今度は服部先輩がプッチンした。補欠の分際でとか。この人はさっき自分の言ったことを忘れたのか。そしてついでに言えば生徒会の副会長が補欠の分際でというのは問題があるんじゃないかとかどうでも良いことが浮かんだ。達也と服部先輩の応酬が続いて達也が勝利。そして生徒会と風紀委員会が認めたことにより正式な試合が決まった。

 

 

「渡辺先輩、七草先輩。俺のこと忘れてませんか?」

 

二人の視線がこちらに来る。渡辺先輩はあっとでもいいたげに表情を変え、七草先輩はそんなこと無いわよ?とでも言いたげだが表情が引きつっている。

 

「帰ります」

 

そう言うと

 

「待って!ね?忘れてなんかないから!落ち着こう?雪ちゃん!」

 

七草先輩が言ったことに一瞬え?となった雪ちゃん?

 

「真由美。雪ちゃんてなんだ」

「え?鬼頭くんのニックネームよ。鬼頭くんって呼ぶのも他人行儀じゃない」

「あの……。わざわざニックネーム付けなくてもいいんですよ?」

「私のインスピレーションがこう呼べって言うのよ。良いじゃない。可愛いんだし」

「俺は男ですよ?百歩譲って雪くんにしてくれません?」

「だめよ?雪ちゃん」

 

あーちゃんと呼ばれていた人を見た。その人は同情と仲間意識が芽生えていた。

 

さっき会長を咎めていた人を見た。助ける気はなさそうだ。

 

またもや起こった微妙な空気を渡辺先輩がコホンとせき払いをして切り替える

 

「それでは雪ちゃんには達也くんの模擬戦に加わって貰う。三人のバトルロワイヤルだ」

 

ジロッと渡辺先輩を見る。何やってんだと言う意味を込めて。すると真面目な顔を笑みに変え

 

「すまんすまん雪路くん。だが真由美のは諦めろ。あいつに抗議しても無駄だぞ?」

 

そう言うとあーちゃんと言われていた先輩を見た。言わんとしたことが分かったので諦めた。

 

 

 

そして三十分後に正式な試合が始まる。



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入学式6

戦闘パートです。原作を読んで魔法理論とかを理解しようとしてますが不十分な所もあるかもしれないのであしからず。


模擬戦

 

正直、服部先輩と達也の私闘になっている気もす正直、それに混ざるのは気が引ける。が今更どうこう言ったて無駄なのは分かってる。自分のボロが出る可能性は極力避けたかったが致し方なしだろう。まあ、この体質とは長い付き合いだから今更ミスはない。

 

事務室でCADを受け取り模擬戦の会場となる第三演習場についた。俺は事務室に行く前に昼に残っていた弁当を食べていたので遅れ、達也の方が先に来ていた。渡辺先輩と達也が向き合い渡辺先輩が上目遣いに達也を見ている。会話の内容を聞くと真面目な話をしているようだが何分距離が近い。からかっているとすぐに分かった。どうやらここら辺にはSっけの多い人が多いのだろう。

 

達也と楽しい会話を終えた渡辺先輩は俺の方に向かってくる。

 

「雪路くん。きみはどうだい?何か勝算はあるのか?」

 

そう聞いてくる。しかし毎度思うのだがこの先輩は色気より男っ気と言う感じだ。もしかしたら俺よりも男らしいかもしれない。影で女性のファンもたくさんいらっしゃるだろう。そんなどうでも良いことを考えててる。勝算?うーん?

 

「完全に巻き込まれた私闘ですけどやるだけやりますよ」

「はあ。達也くんにも言ったがこれは正式な試合だ。私闘ではない」

 

なるほど、物は言い様だ。恐らくこの人が原因で正式な試合と言う名の私闘は増えてるだろう。

 

渡辺先輩の視線が俺が開けているケースに向かう。そこにあるのは黒い拳銃型の特化型CAD。

 

「ほう。雪路君も特化型か」

「まあ、実戦レベルで使える魔法が少ないんで」

 

俺がそう言うと服部先輩が冷笑した。それを気は気にしない。俺が実戦レベルで使えるのは自分もしくは自分の触れている物を魔法の対象とする魔法。例えば自己加速だったり自分の着ている服を硬化したりなどなど。例外として無系統魔法と射撃系の魔法。これは俺の得意魔法だ。しかし改めて得意不得意がひっちゃかめっちゃかだ。基本的に俺の戦闘のスタイルは無系統、射撃系に偏るのだが今回はどうしようか?達也の力量は分からないが司波さんの言葉も有る。身内の目というのを差し引いても強いのは変わらない。油断していると言うより実技と実戦の勘違いをしている服部先輩が邪魔だ。もうさっさと服部先輩を倒す。達也に集中する。これで良いかな………。別に人の命が関わっている分けではないし。

 

俺はCADをケースから出したホルスターに入れ服部先輩、達也が居るところに歩く。ちょうど二等辺三角形になる。底辺は俺と服部先輩。頂点は達也だ。そして渡辺先輩によるルール説明が行われる。要約すれば捻挫以下の怪我で武器を使わなければ何やってもいい。武器を使えないのが正直痛いがまあ、仕方ない。CADをホルスターに入れたまま待機する。

 

「……雪路くん。それでいいのか?」

「え?あっはい。どうぞどうぞ」

 

全員が疑問を感じている中試合の合図が始まった。

 

「始め!」

 

その言葉の瞬間に体術的に限界の速度まで上げる。俺と同様に近づいて来た達也よりも速くまた、魔法の準備をしている服部先輩よりも速く服部先輩に手の届く範囲まで来た。それと同時に走りながら俺と服部先輩に無系統の振動魔法を達也が放とうとしているのが分かった。俺はそれを無視して服部先輩をポンと叩く。それと同時に服部先輩は吹き飛ばされる。マーシャルマジックアーツ。魔法の発動座標を相手と触れた座標に固定し魔法の発動速度を速める技術。今回は移動魔法を発動し服部先輩を倒す。そして達也の魔法が発動する。が俺には効かない。俺は仕事である無系統魔法を使う都合上大量のサイオンに触れている。それのおかげで並みの無系統魔法は俺には効かない。達也が次を準備している隙に俺は達也に接近し格闘戦に持ち込む。

 

もう、模擬戦をやる意味はほとんどない。これは勝ち負けが決まるまでやるのか?そう考えるとやる気が失せながら接近し打ち、捻り、時に達也が魔法を使おうとするがそれをサイオン弾で壊す。膠着状態に持ち込めば模擬戦も終わるだろう。そう考えてそのまま五分。格闘戦が続いてそのまま渡辺先輩の合図で終わった。

 

渡辺先輩の方に戻る。そうすると開口一番

 

「始めの動き、自己加速術式を予め用意していたのか?」

 

俺と達也を見てそう言う。

 

「そんな訳がないのは先輩が一番良くお分かりだと思いますが」

 

達也が反論する。まあ、そもそもルール説明の中にフライングは止めると言ったのだ。それがない時点で何を今更と言う話だ。

 

「しかし……」

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な体術ですよ」

「私も証言します。あれは兄の体術です。兄は忍術使い、九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

司波さんのその一言で渡辺先輩が息をのんだ。いきなり有名人の名前が出てくればそうなるか。

 

「それでは鬼頭は?」

 

一応状況的に雪路くんと呼ぶのは場違いと感じたのか。Sっけはあるが常識は守るようだ。

 

「俺のも身体的な体術です。俺も納得させる根拠が必要ですか?」

「いや、その必要はない」

 

渡辺先輩が納得すると俺が無視した達也の無系統の振動魔法に話が移る。俺はその間にCADをしまい、ロックをする。放課後ここに寄る前にポケットに詰めたお菓子を頬張る。飲食できることは確認済みだ

 

「雪路くん」

「ふぁい?」

 

達也の話が終わったのか話が俺に向く。しかしお菓子食べていたので変な返事になってしまった。

 

「また食べてるのゆきちゃん……」

「雪路くん……」

 

七草先輩と渡辺先輩の呆れた視線を受け流し味わってからまた返事をする。

 

「雪路くんのあれはドゥロウレスか?」

 

ドゥロウレスとは拳銃型特化型CADの特徴である銃口にある座標補助システムを損なわずに銃口を相手に向けずに魔法を発動する技能である。

 

「そうですよ」

「よくあんな連続してしかも格闘戦をしながらできるな」

 

渡辺先輩の発言に

 

「結局は慣れです」

 

すると七草先輩も

 

「それじゃあ鈴ちゃんが言っていた波の合成で作ったサイオン波を受けなかったのも?」

 

鈴ちゃん。多分さっき達也の魔法を解説した人だな

 

「最終的には慣れです」

 

それでしめた。理由は秘密である。このあと起き上がった服部先輩が七草先輩におちょくられ、司波さんに謝罪したことで今回の騒動は一段落した。

 

「さて二人とも。風紀委員本部にいこうか」

 

 

俺達は渡辺先輩に連れられていく。風紀委員本部。その第一印象は…………汚い。

 

「すまん。男所帯なんでな。毎日整理整頓は口をすっぱく言ってるのだが」

「誰も居ないにしても片づかなすぎですよ。これ放置してません?埃も被ってますし片してもいいですか?」

 

俺は置いてあるCADを撫でるとやはり埃がついてる。渡辺先輩はポーカーフェイスを保とうとしたが少し表情がぎこちない。

 

「委員長、俺もここを片づけてもいいですか?魔法技師志望としてはCADが掘ったからかしにされてるのは耐え難いので」

「あれだけの対人戦闘スキルがあるのにか?」

「自分ではどんだけ足掻いてもC級ライセンスしかとれませんから」

 

渡辺先輩はそのことを言われ返す言葉を失ったが達也の催促で

「ああ、私も手伝おう。手を動かしながら聞いてくれ」

 

達也は目の前の書類を整理しているので俺は放置されている本を片す。話を聞いてくれと言われたが風紀委員入りが確定した今、入る理由を言われても無駄なだけだ。

 

俺は気になる場所がまだあったのでそこを整理している。その間BGMは達也と七草先輩の会話だ。類は友を呼ぶとはまさにこのことと納得した。

 

 

七草先輩が去ると同時に風紀委員本部に来る足音が聞こえた。少し立つと二人の男子生徒が入ってくる。渡辺先輩とコントのようなやりとりをしたあと話題が今日の模擬戦に変わる。

 

「へぇ。あの服部にそこのちっこいのが?」

「ああ。正式な試合で。もう一人も同等の実力が有る」

 

整頓は終わったので速く返してくれ。そう思って話を聞いてると今まで品定めしているような目線が賞賛に変わる。二人の方を見ると真っ直ぐ俺を見ていた

 

「三ーCの辰巳鋼太郎だ。よろしくな、腕の立つ奴は大歓迎だ鬼頭」

「二ーDの沢木碧だ。君を歓迎するよ、鬼頭君」

 

二人が握手を求めてくる。ここまでの会話でこの人達は良い人と言うのが分かった。差別意識もない。品定めはあくまで実力が有るか無いか。なるほど案外この雰囲気も悪くない

 

そう思った。しかしそういえば沢木先輩の手が離れない。何故だ?と思った直後に理由が分かった

 

「くれぐれも名前で呼ばないでくれたまえよ」

 

そう言うと万力のような力がかかる。これは忠告だろうか。そもそも先輩を名前呼びすることはまずない。が忠告してくれたのだ。お礼のために俺はその手を握り返した。

 

「む?」

「おお!沢木の握力は百近いのに握り返すのか、すごいな」

 

 

風紀委員はいろんな人が居るらしい。そんなことが分かった。

 



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入学式7

身体的には全く疲れてはないが精神的に疲れた俺は買い物後、家に帰る。ただいまと小声でボソッと呟き玄関に入ると女性の靴が一足。はあとため息をつく。そのまま突き進みリビングに入ると

 

「ふっふっふ。お帰りゆき」

 

そこにいたのは淡緑の髪を腰まで伸ばし、緑の目で俺を見据える女性。

 

「花蓮。帰るなら帰るって言ってくれって何度言えば分かるんだよ……」

 

彼女は鬼頭花蓮。今年で三十路の後半戦に入る俺の仕事の上司兼同居人兼保護者。ごめんなさいと謝る姿はとても三十後半戦には見えず新社会人くらいなら通用するぐらいは若作りをしている。

 

「帰るって分かってるなら好きな物を用意できるんだけど?」

「何時も言ってるじゃない~。ゆきの料理なら何でも良いって。今日は何作るの?」

 

見ていたテレビから離れ、俺の方にするすると近づき抱きしめる。

 

「苦しい。離れて」

 

俺がそう抗議すると、さらにきつく抱きしめ

 

「いやだ~」

 

この人の抱きつき癖は治らない。俺がこの人と知り合った時から俺はこの人のぬいぐるみになっている。

 

「離れないと料理できないんだけど」

 

俺がそう言ってやっとテレビに戻る。反抗期だーなどブツブツ呟いているがそうじゃない。料理を作らせろ腹が減ってるのだ。

 

「今日は何作るの~」

 

見たいものが無いのかリモコン片手にチャンネルをドンドン替えながらくつろいでいる花蓮を横目に俺は買い物袋から今日買ってきたものを取り出し

 

「鰹のたたきとハムカツとシーフードサラダ、豆腐の味噌汁に炊き込みご飯」

「我ながらちょうどいいときに帰ってきたわね」

 

グッと握り拳を作り、待ちきれなさそうにテレビとキッチンに視線を往復させる。残念ながらそれなりに時間がかかるので我慢して貰おう。

 

 

 

 

 

「花蓮。できたから運ぶの手伝って」

「はいはーい」

 

そう言ってスキップしながら鰹のたたき、ハムカツ、シーフードサラダの乗った大皿を一気に持って行く。

 

「落としたら夕飯抜きな」

 

俺はそう忠告すると

 

「そうなりそうになったら魔法使うからいいのよ」

 

もう何も言う気が無くなった。

 

二人でテーブルを挟みテレビを見る。久しぶりの家族団欒。花蓮は料理をパクつきながらおいしいと連呼して食べている。そう言われるとこっちとしても作ったかいがある。

 

「そう言えば学校は楽しい?」

 

唐突に花蓮は言う。しっかり俺の目を見て聞いてくる。

 

「楽しいとは思う。けど仕事の方が優先だからあるなら言ってよ」

 

俺がそう言うと花蓮は呆れ顔になる。

 

「そうそう私達が必要になる案件が出てきてたまりますか」

 

プリプリと怒りながらハムカツをパクッと食べる。

 

俺と花蓮が付いてる仕事。それは警視庁警備部特集事案対策部。昔存在したSATでは魔法という新たな技術に対抗できない為組織されたものである。SATは今でも残っている。なぜなら魔法師は地位が確定されてるためほとんどの場合犯罪を起こす理由がないからだ。がほんの一部の魔法師が要人を金銭目的でねらう場合など。他にはテロなどなど表に出したくないもの、失敗が許されないものなどが依頼として回ってくる部署である。依頼の特性からそのメンバーは一流の腕を持つ人ばかりである。俺は数年前に色々あり、推薦を受け試験を受け合格したのだ。

 

「確かに俺達が暇って事は良いことだけど」

「良いから普通に友達と話して恋人作って高校生ぽいことしなさい。うちは腕だけは良いから安心して謳歌しなさい。高校生は三年しかないのよ?」

 

花蓮は高校生生活に未練でもあるのだろうか?そんなどうでも良いことを受け流す。

 

「それが簡単にできたら苦労はしない」

 

俺は普通ではない人生を送っている。その内容は楽しい夕飯時なので思い出さないが嫌でも思い出す時が来る。

 

「まったくゆきたっら………じゃあ学校でなんか面白いことないの?」

 

まだそこまで通っていない学校だが色んな事が起きた。その中で一番ホットなのは

 

「風紀委員になった」

 

そういうと花蓮は驚いた顔になった。

 

「あれ?雪って二科生だよね?風紀委員になれるっけ?」

 

当時のことを思い出そうとしてるのだろう。このことから分かるとおり花蓮は一高のOGだ。

 

「今の風紀委員長が言うには二科生の縛りがあるのは生徒会だけで風紀委員にはないんだとさ」

「おへー。そうだったんだ。風紀委員は月姉さんがやってたから分からないんだよね。生徒会なら分かるけど」

「その話初めて聞いたんだけど」

 

そして俺は風紀委員の仕事に不安を覚えた。鬼頭月見。俺を花蓮の前に俺を引き取った人である。俺を妹の花蓮同様特対部に所属していた。性格は月という文字が入っているのにも関わらず豪快で男らしいと言えばいいか。戦闘狂とまではいかないがそれに近い人物で特対部最強と言われた人だ。そして今は亡き人である。

 

「まあ、言う必要もないかなって思ったのよね。試験の結果は月姉さんが主席で私が自席。姉さんは生徒会の勧誘を受けて私が風紀委員の勧誘を受けたんだけど風紀委員の仕事内容を聞いた姉さんが風紀委員になりたいって言ってね。最終的に私が生徒会、月姉さんが風紀委員になったの。ゆき覚悟しといた方がいいわよ。姉さんが毎日笑顔で楽しいって言っていたから」

「月見が?」

 

戦闘狂に近く細かい事務的な作業が嫌いな月見。そんな人物が毎日楽しいと言うのは毎日事件が起きるとどう意義である。

 

 

俺はもう明日から学校に行きたくなくなった。




今回で主人公の仕事が明らかになり、新キャラが二人。一人亡くなってますが……。この二人が主人公の過去に関わるのでお楽しみに。



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入学式8

七か月ほど放置していたのに驚きました。すいません。久しぶりに投稿しようと思います。


俺は、憂鬱だった。

 

言わなくてもわかるとうりあの戦闘大好き人間の月見が楽しいなんか言う委員会に俺は、入ってしまったのかと昨日の夜から気が重かった。思わず冷蔵庫に入れておいたケーキをワンホール食べきってしまうくらいには現実逃避をしていた。それでも足りずにもうワンホールいこうかと言ったところで花蓮に止められた。ひとつ言いたい。俺は、悪くない。悪いのは、あの生徒会長と風紀委員長だ。

 

今日の放課後から風紀委員会の巡回に加わることになっていている。今は昼休みの真っただ中。達也は、あの生徒会長に昼ご飯に誘われたらしく、妹共々一緒に行らしい。俺も誘われたがそんな魔窟には行きたくはなかった。というよりも会話に時間を取られて食べる量が減るのがいやだというのも本音だった。真っ青な青空の下、屋上のベンチで日光浴をしながら、昼ご飯というのは気分がすごくいい。春ということもあって暖かい日差しと少し冷たい風が何とも心地よかった。今が昼時ではなかったら昼寝でもしていたかった。

 

前に生徒会に行った時と同じ大きさの弁当箱を膝とベンチに乗せ、周りにいる生徒たちを眺めながら食べる。仲間たちと話してにぎやかに食べるもの、恋人だろうか仲睦まじそうに食べている二人組。、まさに青春というものがそこにはあった。今まではそんなものは目の前にはなかった。俺にとって当たり前ではなかった普通が今は目の前にあって俺は、今その普通を手にしようとしている。

 

いいのだろうか?

 

自分がしたことは分かっている。人を殺した。たくさん殺した。子供だろうが年寄だろうがだ。それが自分から望んだことではないにせよ、結果として多くの人を殺した。それが俺の罪。与えられた罰を成し遂げるために俺は、今ここで生きている。

 

そう、すべては・・・あいつを殺すため。

 

それまではこの普通を生きていてもいいだろうか?

 

なあ、月見?

 

思わずそうつぶやきそうになるのをグッと抑えた。そんなことを言えば月見の鉄血制裁が待っている。あっちに行ったときに殴られるのは勘弁だった。

 

 

 

 

●●●

 

 

思わず感傷的になってしまった昼休み。気持ちを切り替えて。挑んだ午後の魔法実技もちゃんと終わり残念ながら放課後になってしまった。これから荒事ぽいことをやるらしいから、途中で燃料切れにならないようにお菓子で燃料を充填しておく。

 

「雪路。俺は、先に行っているぞ。遅れるなよ」

「大丈夫。流石にそこまでの勇者じゃない」

 

いかにもthe体育会系の委員会のにおいがするのに遅刻なんてするわけがない。特に風紀委員長が怖いからな。俺は、味わいながらも、気持ち急ぎ気味で今日のおやつのチョコを食べ終えた俺は、重い体に鞭を打って風紀委員会に行くのだった。

 

風紀委員会の扉を開けた俺に向けられたのは鋭い視線だった。その視線をたどると森崎がいた。あの騒動の後に本人からのいらない自己申告があり知った名前だった。森崎は何か言いたそうにこっちを見ているが、既に釘を刺されているのか結局何も言わなかった。恐らく達也が来た時に委員長が釘を刺したんだろう。それなりに人が集まっている中で変な注目を浴びずにすんだ。

 

それから五分もしないうちに全員が集まり風紀委員会が始まった。

 

「今年もあのバカ騒ぎの一週間がやってきた」

 

始めは、委員会は委員長のその一言から始まった。話の要点をまとめると魔法を取り締まる側が騒ぎを起こすな大きくするなということだった。そこからは急な自己紹介もあったが無難に終えて先輩は出動していった。なお、新入り三人は説明があるらしく待機だった。

 

「まずはこれを渡しておこう」

 

そう言って渡されたレコーダーだった。。これを胸ポケットに入れとけと言われ巡回中は常に持っとけと言われた。違反行為を見つけたらスイッチを入れろ、別に撮影を意識する必要はないといわれる。それなら楽だと安心した。

 

「次はCADについてだが風紀委員会は学内でのCADの携行が許可されている。いちいち使用の判断を仰ぐ必要はないが、不正利用が判明した場合は委員会除名の上に一般生徒よりも重い処分が下る。それで退学になった生徒もいるから甘く見ないことだな」

 

そう言って釘を刺される。その後は達也が学校の備品を使っていいかという話になり、俺のあだ名に同情的な目を送っていたのが中条先輩で消去法でスルーをしたのが市原先輩だとわかった。

 

おっと。俺は、ひとつ言い忘れていたことがあったのを思い出す。

 

「委員長」

「なんだ?雪路君も備品を使いたいのか?」

「いえ、武器を使っていいかていう質問なんですけど。そこの木刀使っていいですか?」

 

俺は、整理した時に見つけた木刀をわかる位置に置いといたのだ

 

「これか?いいぞ。しかし武装一体型のデバイスではないぞ」

「はい。わかってますそれでいいんです」

 

 

 

しっかりと木刀の使用許可を得て初めての巡回は始まる。

 

 

 

 

 

 

 



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入学式9

書く時間があるうちに書いときます。




各部活が勧誘のためにテントを出して賑わっている中、風紀委員会という腕章をつけて風紀委員長からもらった袋の入れ物に木刀をしまっている俺は一昔前の番長だ。ただし、悪ではなくて正義のだけど。多分花蓮も同じ事をいうだろう。

 

だからといえば目立つかといえばそうではなく、そんな事より勧誘の方が大事らしい。むしろ健全に勧誘して平和に終わったら、なんと幸せだろう。今のところ騒ぎはなく万々歳。巡回のルートが運よく平和なところだったみたいだ。

 

「鬼頭さん」

 

落ち着いた声。俺を鬼頭さんと呼ぶのは学校で二人しかいない。落ち着いた声から北山だということが分かった。なんて、消去法じゃなくてもすぐに分かったが。

 

「北山に光井か。部活見学か?」

「はい、そうです!」

「鬼頭さんは風紀委員会の仕事?」

 

北山は俺の腕章に気づいたのかそう聞いてくる。

 

「そう。さっそくこき使われてるよと言っても騒ぎにはいまだあってないけど」

「もしかして忙しかったですか?」

 

光井がそう聞いてくる。それとなく北山の顔を見ると、例えるなら悪いことをしたような黒猫もような表情だった。ついでに黒猫なのは北山の髪が綺麗な黒髪だからだ。

 

「いや、巡回ルートを回るだけだから忙しいという訳じゃないよ」

 

ちょっと最悪感とそんな顔をしてほしくないから出た言葉だった。北山の表情が気になってついて若干北山の方を向いてしまう。多分だけど表情がよかったみたいな顔をしていたから安心した。そんな北山は俺を見ると

 

 

「・・・ついて行ってもいい?」

 

予想外の提案をするのだった。

 

 

 

 

 

 

●●●

 

その三人組は異様に見えただろう。男子一人に女子が二人。しかも男子生徒が二科生だ。密かに出回っている新入生の成績ではその二人の一科生は上位の成績を持つ。密かに狙っていた上級生はこの二科生をどうにかできないかと思ったが質の悪いことにその二科生は風紀委員会の腕章を左腕につけていた。なんかの見間違いかと思ったがやはり風紀委員会の腕章だった。二科生が風紀委員など腹立たしかったが、流石に目の前でことを起こす人はいない。せいぜい悪口が限度だった。

 

 

俺は心の中でため息をつく。あちらさんはこの騒ぎ出し、小声だ。聞こえないと思っているんだろうが、残念ながらばっちり聞こえている。文字通り俺の聴力は人外だ。それぐらいなら簡単に聞き取れる。とはいえ聞いても何の役にも立たないしそんなのは流すに限る。それぐらいならとうに聞き飽きている。

 

「鬼頭さん?」

「え?」

 

音は流しても少しボーとしていたのか。俺の名前を呼んだ北山はいつの間にか目の前にいて思わず止まる。

 

「大丈夫?」

 

と心配そうな顔をして俺を見てる。沢山の言葉はないく言葉は少ないがいろんなことが詰まっているような暖かい大丈夫だった。

 

「あ、ああ。少しボーとしていたみたいだ」

 

思わず少し慌てた俺を北山はじっと見つめる。何だか北山の位置が普通より一歩前なような気がする。がそれは気のせいだろう。そもそもおれに人の物理的な距離感がわかるわけがない。北山は納得したのかそのまま俺の隣に戻った。

 

そこから少し歩いたところだった。魔法が発動した感覚がする。それは二人も分かったのか光井も北山も俺を見ていた。

 

「それじゃあ行ってくる」

 

俺がそう言ってその方向に行こうとすると後ろから頑張れという北山の声がした。

 

 

●●●

 

そこに行くと二人の上級生が魔法を打ち合っていた。えーとレコーダーのスイッチを入れてから木刀をしまっていた袋を取る。足音を消し気配を消しサッと忍び寄り、想子弾で魔法式を壊す。いきなり不発になった魔法に驚いた

隙に距離を一瞬で詰め、胴に一発当て、気絶させる。もう一人は、さっきから魔法がことごとく砕け散り、自棄になったのか自己加速魔法を自分にかけ突進してる。いくら魔法師だからって少し位格闘技をかじっても良かったのにと思いつつ俺は、一歩横にずれて足を出す。不意を突いて当たると確信し、にやけていた上級生は見事に吹っ飛び頭から地面にダイブしていった。

 

 

「本部ですか?逮捕者二名です」

 

 

取り敢えず俺の初取り締まりはうまくいったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




取り敢えず一巻はこれで終了です。裏では達也が乱闘を制圧中です。





感想アドバイス、誤字脱字などありましたらお気軽にどうぞ。



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入学式10

今日の部活勧誘の時間が終わり、俺は、風紀委員会に戻ってきた。とはいっても、木刀を置いたら、報告のために、部活練に行かないといけない。面倒だ。自分のカバンを探し出しその中から、チョコが入ったパウンドケーキを取り出した。やっぱり疲れた後は糖分とカロリー摂取だね。さっさと報告をしたら夕飯を食べよう。今日は・・・餃子にでもしようかな。冷凍だけど。そう思いながらカバンを持ち部活練へ向かう。流石、部活勧誘期間中。勧誘が終わった部活がまだ残って帰り支度をしている。そんな中でも、残業で残っている俺は、なかなかえらいと思う。くだらないことを考えながら歩けばすぐに部活練に到着。さっさとノックをして中に入る。

 

部屋を見ると丁度、達也と委員長、生徒会長。そして、部活練会頭の十文字克人先輩が話しているところだった。四人は、丁度、闘技場での剣術部と剣道部の乱闘騒ぎの件で話している。そう言えば、丁度俺が、違反者を連行中に、闘技場で、乱闘騒ぎがあった。その取り締まりをしたのが確かに達也だった。けが人がいるからとタンカを要請がされたがあいにく連行中だったから、無視・・・ではなく行けなかったのだ。四人は、ドアを開ける音に築いたのかこっちを見ている。言っては失礼だろうが、今までの姿を見ていると会長は、威圧感というか威厳というかそういうのを感じない。まあ、一科生とのいざこざの時は別だが。もちろん十師族として優秀なんだが・・・そう雰囲気が緩いのだ。だが、部活練の会頭である十文字克人は、高校生とは思えない風格がある。制服なんか来てなければ、年上のしか見えないだろう。どうすればこんな高校生が出来上がるのか教えてほしい。

 

「お疲れ様です」

 

俺がそう言うと、会頭は委員長と会長に聞いたのか、はたまた俺が腕章をつけていた甲斐あっておれがすぐに風紀委員だとわかるとお疲れと返した。外見は山男みたいだが意外といい人そうである。会頭がそう言うと続けて三人も。

 

「あっ。ゆきちゃんおつかれ~」

「おう、戻ったか。お疲れ」

「お疲れ雪路」

 

三者三葉だが労いの言葉が帰ってくる。素直に存在感を出すためにあと少し身長が欲しい。会頭か達也もしくはレオに分けてもらえないだろうか。だから会長にゆきちゃん呼びされるんだし、会長のゆきちゃん呼びが定着しているんだ。しかしもう俺は、もう諦めていた。あの先輩が涙目で一年間、懇願してきたのにいまだに呼び方も変わっていないのだ。口には出さないが頑固な部分がありそうなので、気にしたら負けだろう。きっと。せいぜい我慢は一年だ。

 

「話しは終わったんですか?」

 

実際は、話していた内容は聞こえていたし、終わったことは知っていたけど念のためだ。

 

「ああ。ちょうど今終わったところだよ」

 

委員長がこっちを向いてそう言う。

 

「それなら俺の方も報告です」

 

それを言った後、俺は今日逮捕した人たちの言い分をまとめて報告した。

 

「分かった。お疲れ様雪路くん」

 

俺があらかた報告すると委員長がうなずき、

 

「ふむふむ。私の目に狂いはなかった。達也くんは闘技場で大人数を相手に攻撃せずにあしらい、雪路くんは、一科生二人を相手に、木刀で瞬殺。二人共やるじゃないか。どうだ?私と模擬戦してみないか?」

 

委員長がウキウキ、ワクワクと好戦的な目でこっちを見る。誰がこの学校で三巨頭なんて言われてる人と模擬戦なんかやるもんか。冗談じゃない。

 

「まったく、摩利ったらやめなさいよ。達也くんは死んでも死ななそうだけどゆきちゃんの顔に傷が付いたらどうするのよ。お嫁さんに行けなくなるわよ」

 

「俺は、今のところ女になる予定もお嫁に行く予定もありませんが?会長がそんなことを言うと、委員長が凄く悪い意味でのいい笑顔を浮かべる。

 

「そうならないように気を付けるさ。無論、万が一があったらその時は・・・」

 

と言って俺のそばまで近寄り人差し指を首からツーとなで顎までもっていき、顎をグッと上げると女性の方々でも惚れるハスキーボイスで「私がもらってやるさ」といった。

 

・・・えーと、何この茶番?残念ながらかっこいい女性っていうのは昔に慣れている。前にも言った花蓮の姉の月見だ。まあ・・・あれはかっこいい?という場面もあったが豪快、ワイルド?の方がしっくりくると思うけど。まあ違いはあんまりないだろう。

 

という訳この攻撃は無効。取り敢えず反撃で表情を一切変えずに委員長をじっと見つめる。顔はさっきの決め顔のままだが、俺から反応がない事に徐々に顔がひきつっている。さらに見つめ返し、委員長の反応を見ると・・・

 

「あはは。摩利ったらおかしい!私がもらってやるさ・・・だって!あはは」

 

と会長が笑い始めた。会長・・・あんたがけしかけたんだろ。思わずそう敬語が抜けた突っ込みが出そうになった。

 

「真由美が始めたんだろ」

 

と不機嫌そうに呟く委員長だが、乗ってきたのは摩利じゃないという返しに撃沈した。うん、ごもっとも。委員長が乗って自爆しただけだ。

 

「あー。ゆきちゃんなかなか手ごわいわね」

 

といたずらっ子が浮かべるような笑みを浮かべた会長の後に、今まで蚊帳の外だった達也のもう帰っていいですか?という声が妙に響いた気がした。

 

 

●●●

 

達也が終止符を打った茶番劇の後俺たちは、部活練から出て、今は達也と歩いていた。

 

「俺は生徒会室に戻るけど雪路はどうする?」

 

そう言って達也が言うがどうしようか。別に生徒会室には、用はない。恐らく達也は、生徒会室に妹さんを迎えにいくつもりなんだろう。どうせだし付き添いますか。そう考えた時だった。制服の内ポケットに入っている携帯が振動した。それは、前に達也と連絡を取った方ではなく仕事の方のガラケーだった。俺は、口から出てきかけたついていくという言葉を飲み込んだ。

 

「もうすぐ、スーパーの特売だから帰るよ」

 

俺は、俺は達也にそう答えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一か月ぶりの更新ですがいかがだったでしょうか。委員長、会長雪路の会話は、書き途中に思いついて入れたんですが、面白いと思ってくれたら嬉しいです。

作者的に雪路と雫の場面を増やせればいいんですけど・・そうもいかずというやつです。次話は、雪路の仕事のお話です。ちょくちょく雪路の過去にも少し触れるかな?

最後に更新については、作者の気分と忙しさに左右されます。気長に待ってください。お願いします。

誤字脱字感想アドバイスなどあればお願いします。


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入学式11

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


達也と別れた俺は、人気のない道を歩きながらガラケーを取り出して電話に出る。

「もしもし」

「五分後に迎えを送るからそれまで待機」

 

そんな簡素な命令をしてぶちっと切られる。電話の主は花蓮である。普段は緩いがこんな時はこんな感じで別人に変わる。待機といいても俺のガラケーはGPS付き。俺の居場所なんてすぐに分かる。必要なのは、目立たないところに行くぐらいだ。俺は、学校を出て少し人の少ないところに行く。そして、ピッタリ五分後、俺の目の前に森のクリーニング屋という会社名が入ったワゴン車が来る。これが花蓮が言っていた迎えというやつである。俺は、その車に乗り込むと車は、今日の現場に向かって進み始める。俺は、その間にいつものように仮眠を取ることにした。

 

 

 

●●●

男は歩いていた。むせかえるように濃い血の匂いと声変わりのしていない男とも女とも区別の付かない、幼い子供の叫び声がする、この廃病院の中をまるでここが天国であるかのように悠々と歩いていた。本来は真っ白であったはずの壁は、見る影もなく、灰色となり、ところどころが赤黒く染まっている。元々病院であったここで、医療行為ではない事が行われているのは明白であり、今ここで行われているのは人体実験だった。そのことを知りながらこの廃病院を歩く男は、普通ではない。この男は、この人体実験を初期の頃からいたメンバーだ。今更世間一般の常識なんて、ゴミ箱にでも捨てているだろう。

 

男が曲がり角を曲がると突如として、三、四メートル先のコンクリートの壁が轟音を立てて壊れる。普通なら有り得ない事態でもこの場所では、日常茶飯事。男は、気にすることなく、突貫工事によって出来上がったがれきの山の廊下を歩く。無論、何かが壊れたのなら壊した犯人がいる。その犯人は突貫工事で空いた風穴から姿を現した。その犯人は、少女だった。年端もいかない、世間で言えば、小学校四年生ぐらいだろう。その年ならば、小学校でもお姉さん。年上の自覚が出て、お姉さんのようにふるまったり、気になる男の子が出てきて、初恋の味をかみしめていてもおかしくはない。この世には、沢山の楽しい事があって、好奇心に目を輝かせてもおかしくない年頃だろう。しかし、その少女は、ボロボロの大きいtシャツをワンピースのように着て、目は、虚ろで焦点が合ってない。足は、はだしのせいか、がれきの破片を踏んで血だらけだ。少女は、そんなことを一切気にせず、ゆっくりと男の方に足を進める。

 

「ねえ、お兄さん。ここの人?」

 

男は、何も話さない。まるで少女がそこにいないようにふるまっている。足を止め、振り返ることもなく、男は、どんどん先に進む。足の長さのせいか、男と少女との距離はどんどん離れる。

 

「おなかすいたよ。あの人たちぜんぜんおいしいごはんくれないの」

 

ごはんのりょうも少ないのと少女は、文句を言うが男は、気にせず歩く。少女は、動きを止め、こう言った。

 

「だからね。食べちゃった。その人たち」

 

少女の目が徐々に男に焦点を合わせる。その目は、男を、人なんて生易しい表現ではもう見ていなかった。餌だ。少女は男を餌としか見ていなく、食事を何日も食べていない獰猛な獣のような雰囲気を纏っていた。こんな一般人でも命の危険を感じそうな場面でも男は、気にせず歩いている。それは、男が優秀な魔法師だからというわけではない。

 

「お兄さん、私がさっき食べた人よりもおいしそう」

 

そもそも男は、研究職で戦闘は専門外だ。それにもかかわらず、男が平然としているのは、やはり理由がある。

 

「いただきます」

 

その瞬間に少女の姿は消えた。一瞬にして人間が近くできない速度までスピードを上げて男に接近する。五メートル離れた距離が一瞬でつまりあと二メートルになったところだった。

 

「っっ!?」

 

 

と言う言葉にならない断末魔を残して少女は、ゴキという骨が折れる音と、首が潰れるグシャと言う音とともに絶命した。廊下に残ったのは驚愕の表情のままの少女の首と、噴水のように首から血を噴き出す首なしの少女の体。一瞥もせず歩き続ける男。そして、いつの間にか現れた少女の首を蹴り、頭を吹き飛ばした少女よりも年下に見える少年だった。

 

人間が消えると思う速さで突進してきた少女を蹴り飛ばしたのにもかかわらず、少年は平然としていた。少女を蹴るには、それを捉える目と力が必要だ。目で追うことができなければ、蹴りは少女をとらえない。力なければ、逆に少女に立ちふさがった少年が吹き飛ばされる。結果としては、ご覧のとうり少年はその二つを持っている。

 

言って置くが少年も少女も魔法は一切使用してない。そして、体術と言ってもそれでは出せない速度だ。普通じゃない。お忘れかもしれないがここで行われているのは人体実験。その被験者である二人が普通の可愛い子供であるわけがない。ここでの実験の目的は魔法師でない人間が魔法師を殺すことができること。その目的における手段として、人間が持っている能力を魔法や薬、その他もろもろで強引に上げる手段が問われた。結果的にできたのがこの少年たちだ。

 

少年は念願の成功作…に近い。とは言え欠点は、少年の能力を考えればお釣りがでるほど。色んなものの副作用で食欲の魔人になってしまったがお安いもんだ。少年は片足だけ血の足跡を残しどこかに消えた。

 

 

 

●●●

 

「着きました」

 

俺は、その一言ですぐ覚醒する。寝ていたという感覚がしないのは多分夢を見ていたせいだろう。何の夢だったかはうろ覚えだけど多分施設にいたころだ。あの頃のことはこうして夢に出ることがある。だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。俺は、後部座席からおもちゃ(ライフル)を取り、近くにいた花蓮達に合流する。

 

「今回やる事は、危険物の回収よ。うっかり、失敗するとわたし達、死ぬからね」

 

と花蓮は作戦に加わる人物に言う。動揺するものは一切いない。なんせ、自分たちの生死がかかっているのはここに居れば常に付きまとう。

 

「今回は、運がいいわね。市街地での取引よりはよっぽど善良的だわ」

 

小声でつぶやいていて俺以外には聞こえていないと思うが、善良的だと思っているのは花蓮だけだ。

 

「いつもどうり、ヒット&ゲット後に二船とも制圧。お話できる人は多いに越したことはないけど、無理はしないように。そのせいで、敵じゃなくて味方の死体が増えるから」

 

そう花蓮が言うと全員が頷き、各自持ち場につく。俺は、と言えば花蓮に近づく。

 

「で、その船はどこに出るの」

「中に居る人によるとここらへんね」

 

そう言って花蓮は地図上に赤丸で囲う。ああ、完全に陸上からじゃ届かない。これはたぶん

 

「ヘリコプターからの狙撃お願いね」

 

俺は、言われる前に察して動いていた。ヘリコプターに乗り込み、移動中に準備をする。黒のケースを開ければそこには、スナイパーライフル。俺専用に改良されたもので、四キロ以内なら、射程範囲だ。それを取り出して、いじり、不備がないか確認する。ないことを確認したら狙撃の態勢を作り、目標が来るまでじっと待つ。ヘリコプターの地点は船の取引場所から大体、三キロ離れている。これはヘリコプターがいることを悟られないためだ。銃を構えつつ周りを見渡して船を待つ。

 

幸いにも、待ち時間はそうも長くはなかった。

 

ヘリコプターから二隻の船が見えた。その船は徐々に近づき、二隻の隙間がゼロになる。すると中から二人づつ男が出てくる。恐らく一人が渡し訳もう一人は受け取り役だろう。どっちの船が危険物を持っているか、花蓮から連絡があった。俺は、危険物を持っている方の船の男に狙いを定めた。例え三キロ離れていようが俺の目はしっかりと男を捉える。耳にはヘリコプターの音に混じって男達の会話が聞こえる。

 

そして、

 

「撃て」

 

俺は、引き金を引いて、男の頭を吹っ飛ばした。船内は突然の出来事に動けないでいる。男が即死し、自由になった危険物は、水中に潜んでいた隊員の移動魔法によってこちら側に来る。名前のまんまこれがヒット&ゲットだ。危険物を回収できればあとは制圧。次々と隊員が海から出てきて、抵抗する間もなく取り押さえられていくのが見える。しかしこれ以上乗られてたまるかと一人の男が操縦席に入り込もうとしているのが見える。俺は、リロードをするともう一度引き金を引き、今度はその男の頭を吹き飛ばす。仮に抵抗しようとしても、それを許すほどの間抜けはいないし、成功前に俺が弾丸をプレゼントする今のが実際例だ。

 

結局俺の今日の仕事は、弾丸を一発打っただけで終わった。

 

そのままヘリコプターで帰りたかったがそんなことはできず、車で帰った。家に着いたのは日が変わるころで、そのままベットに直行し、さっさと寝た。

 

 

 

 

 

 

 




これで主人公のお仕事は終わり、次は本編に戻ります。

突然ですが一年はあっという間ですね。気がついたらこれを投稿して一年たってます。なのにまだこれを含めて11。いや、一年で一巻。この調子だと終わるのはいつになることやら。

とにかく!今年も頑張りますのでよろしくお願いします。

誤字脱字、感想があれば気楽にどうぞ


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