ロウきゅーぶ!~疾風迅雷の天才~ (園部)
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第一話 

原作忘れてうろ覚えですが・・・・まぁいいよね!


俺は朝から逃げていた

 

「バスケ部入れー!!」

 

「断る!!」

 

やつは竹中・・・・・竹中なんとか。いや、俺は最近転校してきたから知らんし

 

「なんでだよ!」

 

「この時期から入ってもしょうがないだろ!」

 

「そんなことねえ!お前って晴嵐学園の疾風迅雷だろ!?月バスでみたぞ!」

 

「だからなんだ!そんなもん俺が入る理由になにはならん!!」

 

「戦力になるんだしバスケ好きなんだろ!入れ!!」

 

「ふざけんな!」

 

俺は本気を出し竹中を引き離す

 

「くそー・・・やっぱ速いな・・・・諦めないからなー!!」

 

背中から何か聞こえてくるが無視する。

 

 

はーウザイなぁ。この時期から入れるわけないだろ・・・・・

 

俺が入らない理由は単純。別にバスケが嫌いでもないし辞めたわけじゃない。ただ俺が入ったら今までレギュラーだったやつが腐ってしまうかもしれない。ポット出のやつにスタメン取られるとか絶対嫌だろうし、チームワークにも影響がある。

だから俺は小学校にいるうちはチームには入らない。

 

「(どうせすぐ6年に上がるし実質1年ちょっとだ。自主練して中等部になれば入ればいい。まぁ、新規のチームがあるなら入るけどそんな都合よく作られないだろうしな・・・・あれは?)」

 

どうやら女の子がイジメられている・・・・ってまたか。

 

「(アイツらまた愛莉を・・・・ムカつく。平気で他者を虐げるやつや複数で1人の子を虐めるのやつらをみるとイライラするぜ)」

 

「相変わらずデカいな香椎は!」

「ホントは男じゃねーの?」

「言っとくけど頼みの御巫は来ないからな!」

「あいつは竹中と追いかけっこしてるから呼んでもこねーよ!」

 

「呼んだか?」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

「まだ懲りてなかったんだな・・・・・テメーら歯食いしばれ!!!」

 

「「「「ギャー!!!!!」」」」

 

俺は4人を沈めて愛莉に近づいた

 

「大丈夫か?アイツらまだ懲りてなかったんだな・・・・」

 

「うん、ありがとう・・・空君」

 

「立てるか?怪我はないか?」

 

「大丈夫だよ・・・・・っと」

 

「その調子なら大丈夫そうか?じゃあ教室まで行こうか」

 

そのまま教室に向かうと

 

「ごめんね。また迷惑かけちゃった・・・」

 

「愛莉のせいじゃないだろ。またバカ共に呼ばれたら携帯で呼べ」

 

「うん、空君ありがとう!」

 

愛莉は俺が転校してきた初日からイジメられていた。助けてくれる人もいたがいつもそいつらがいないタイミングで狙ってくる。

 

「いいよ。今度こそ懲りるといいんだけどな・・・・」

 

「そうだね・・・・・」

 

「大丈夫だよ。愛莉のことはちゃんと守るからさ」

 

「空君・・・・・」

 

教室に戻ってきた俺達は・・・・

 

「アイリーン!」

 

「心配したのよ。またあいつらに連れていかれたんじゃないかって」

 

「おーヒナ、心配した」

 

3人の女子が寄ってくる。

 

「大丈夫だよ。空君が守ってくれたから」

 

「さすがソーラン!」

 

ソーランというのは俺のあだ名らしい。ソーラン節を連想しちゃうからやめてほしいとは思う。

 

「よかった。竹中と鬼ごっこしてたんでしょ?空は大丈夫だった?」

 

「大丈夫だよ。紗季」

 

「ヒナもー空、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ、ヒナ」

 

そうして話しているとお昼終了のチャイムが鳴った。

 

「やば!次の時間体育だ!」

 

真帆が焦ったように言うと、みんな一斉に更衣室に向かう・

 

 

体育館

 

今日の体育はバスケらしい。竹中がはりきってるが変なことにならないといいけど

 

「下手糞がシュートすんな!」

 

「ふざけんな!!」

 

男女合同の体育。競技はバスケで男女混合のチームになっていたが・・・・

 

「全部俺ら男子にボール渡せばいいんだよ!下手糞なんだからジッとしてろ!」

 

「ふざけんな!みんなで楽しんでやってるんだろ!」

 

真帆と竹中の喧嘩が発生した。

 

「(素人相手に下手糞って・・・・当然だろう。いるんだよなー体育のとき自分の得意競技になるとすぐ熱くなるやつ。こいつら色々喧嘩してばっかだけど今回は真帆が正論だな。体育なんだからみんなで楽しめばいいのに・・・・でも俺が一番気になるのは・・・・)」

 

俺はピンク髪の・・・・湊?を見る。

 

「(明らかに動きが経験者だ・・・・あまりボールに触らないようにしてるから実力はよく分からないけど・・・・もうちょっと動いてやればいい試合になるのに)」

 

俺より少し後に転校してきた子であまり明るい感じの印象はなかった。

 

「それなら白黒ハッキリつけるか!男女別れてで試合をするぞー」

 

「あ、それなら俺女子チームで」

 

俺は手を挙げて宣言する。

 

「は!?お前男子だろ!」

 

「俺が思うに今回お前が悪い。だから俺は女子チームに入る。美星先生、いいですよね?」

 

「いいぞー。まぁ、戦力的にもありじゃないか?」

 

「普通にキツイわ!!」

 

「その代わり俺はシュートしない。それで認めてくれないか?」

 

体育館がざわつく

 

「それならいいぞ!」

 

「ちょっと大丈夫なの!?」

 

紗季が慌てたように言うが・・・・

 

「大丈夫。その代わり俺がメンバー選出するから女子集まってー!」

 

俺は女子に号令をかける

 

「メンバーは当事者の真帆。残りは紗季、愛莉、俺、そして湊だ」

 

「え!?」

 

湊は驚いた声を出す。

 

「大丈夫だろ?俺はシュートできないから代わりにみんなを助けてやってほしい」

 

「わ、私は・・・・・」

 

「お願い湊さん!」

 

「お願いー」

 

みんなからお願いされる湊は逃げ場がなくなったようで

 

「は、はい・・・・」

 

「(これでよかったんでしょ?)」

「(あたしが何も言わなくても分かってたのか)」

「(先生がバスケやってるとき湊のほうを気にしていたし、湊も動きが経験者っぽいけど存在感を示さなかった。多分前の学校で何かあったんだろうな。でも先生はこれをきっかけにしてみんなと馴染ませようとしてたんでしょ?)」

「(お前エスパー?まぁ、そうなんだよ。助けてやってくれ)」

「(分かってます)」

 

「じゃあ頑張っていこうかー」

 

そして試合が始まる。

 

ジャンプボールを愛莉にやらせてみたがビビって飛べなかった。

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「気にしなくていいよー。まずはディフェンスだ」

 

どうやら経験者は竹中だけっぽいな。ということは・・・・

 

「ボールよこせー!」

 

竹中がボールを呼び込むが俺がカットする。

 

「な!?」

 

「そらそうだよ。お前にボール集まるのって当然だろ?」

 

俺はドリブルでコートを駆ける。しかし一旦ストップしてみんなが来るのを待つ

まず湊の実力を把握しときたいな・・・・

マークにあった湊だったがそれを軽く振り切る。その一瞬を見逃さずに俺はパスを送る。

 

「シュートしてみて」

 

湊は俺の言う通りジャンプシュートをするが、そのシュートは俺の想像を大きく超えていた・・・・

 

「(なんつーシュートを打つんだよ・・・・)」

 

ジャンプシュートすればある程度実力が分かる。入る入らないは重要じゃない。重要なのはフォーム。ジャンプシュートにはバスケの基本の動きが全て詰まってると言っても過言じゃない。そこから見た湊の実力は・・・・

 

「(個人技のみなら全国レベル・・・しかも男子を混ぜても全く遜色ない)」

 

こんなところに原石が埋もれていたなんて・・・俺はそう思わずにいられないほど湊に見入っていた。

 

「湊、ナイシュー」

 

「うん、ありがとう」

 

「で、湊の下の名前は?」

 

「え?智花だよ」

 

湊 智花・・・か

 

「じゃあ今から智花って呼ぶから、俺の事は空でいい」

 

「え?う、うん!」

 

「智花の実力はある程度分かったよ。正直想像以上だった」

 

「ありがと・・・」

 

「本気でボール回すから目離すなよ!」

 

俺は智花の返事を待たずディフェンスに戻る

 

「ちっ・・・・ワンゴール決めたくらいで盛り上がってんじゃねえよ!」

 

竹中がドリブルで突っ込んでくるが

 

「(あの様子じゃパスもないな。)真帆と紗季!竹中について!ボールは取らなくていいぞ!」

 

「「了解!!」」

 

そうして2人が竹中にマークする。

 

「(素人2人。いつもなら抜けるんだろうけど熱くなってる頭じゃ・・・)」

 

「邪魔だ!」

 

「「キャッ!」」

 

「竹中ファールだぞ。あからさますぎだろ」

 

美星に言われ、2人に突っ込んだことによるファールを貰う竹中。

 

「(あらら、想像以上に頭に来てるな)ボール頂戴」

 

愛莉からボールを受け取る俺

 

「(さて、智花・・・・俺の本気のパスを取れるかな?)」

 

俺は速攻でドリブルを仕掛ける。

 

「あいつを自由にさせんな!全員つけ!」

 

「(俺はシュートを打たないのに?そんなことまで忘れてるのか・・・)」

 

俺は4人に囲まれる。

 

「じゃあ、ダンスと行こうか?」

 

相手は手を出してくるが俺はその場回りながらドリブルをして相手に取らせないようにする

 

「は?素人とはいえ4人に囲まれてんだぞ?・・・これが全国クラス・・・」

 

竹中は茫然としているが俺は相手が自ら作ったスキをついてパスを出す

 

「智花!!」

 

バシン!と強い音が体育館に鳴り響く。

 

「(凄い。痛いけど不快な痛みじゃない・・・・・パスのスピードも速いのに正確だしリズムが狂わないタイミングでくれた・・・でも、握り直さなくていいようにボールの縫い目に合わせてパスするなんて。さすがに偶然だよね?)」

 

智花は偶然と片づけて2本目のシュートを決める。

 

「ナイス!もっかん!」

 

「も、もっかん?」

 

「あんたまた変な渾名を・・・」

 

「いいじゃん!もっかんもいいよね!?」

 

「う、うん・・・・」

 

「智花ちゃん凄いなー・・・」

 

「そうだな。女子であれだけのセンスなんて久しぶりにみた」

 

まぁ、前に見たのは海外でだけど

 

さて、ディフェンスだけど・・・・・竹中が冷静になってるな。

無理な突破もやめてボール回しに徹してる。

 

「よぉ、無茶はやめたのか?」

 

「ああ、お前のドリブルみて頭冷えた。」

 

「そっか。じゃあこっからかな・・・て言いたいけど」

 

「分かってる。俺以上の実力を持つ湊とお前じゃこっちの負けだ。だから最後に」

 

竹中がパスを受けると

 

「全国MVPの疾風迅雷に1on1を挑みたい」

 

「いいぜ。全国の頂きを見せてやる。」

 

明らかに空の雰囲気が変わって場に緊張が走る。

 

「(これが全国クラスのプレッシャーか・・・怖い・・・けど、負けない!)」

 

「(竹中か・・・・実力は県大の下位から中位クラスってとこだけど、努力してるのは分かる。才能もないわけじゃなさそうだし、恐らく中学の後期辺りで化けるタイプだな。中学での楽しみが増えたよ)」

 

竹中がフェイクをかけて抜こうとするも、スティールをくらいボールは取られる。

 

「時間もないしこれが最後の攻撃だな。折角だし見せてやるよ」

 

俺はそのまま走ってダンクを決める。

 

「マジかよ・・・・」

 

「と、俺はシュート禁止だったな。すまんこっちの反則負けか」

 

「いいよ。どっちにしろ点数で負けてるし」

 

「じゃあ引き分けってことで」

 

「・・・・お前もしかして初めからそのつもりだった?」

 

「どうだろうねー」

 

俺は竹中から離れ智花のところに向かう

 

「よ、どうだった?」

 

「空君・・・・・」

 

「楽しかったか?」

 

「・・・・・うん!」

 

どうやら楽しんでくれたみたいだ。

そこに4人が来る

 

「もっかーん!ソーラン!2人とも凄いな!」

 

「ホントに凄かったわ。2人ともあんなに上手かったのね」

 

「2人ともカッコよかった!」

 

「おー、かっこいい!」

 

「じゃあ、智花後は任せた」

 

「へ?」

 

俺はその場を後にした。

 

 

翌日

 

「ソーランソーラン!」

 

「朝からどうした?」

 

「女子バスケ部作ったから入って!」

 

「・・・・・はい?」

 

真帆のこの一言によって俺の学園生活が変わることになるんだが、その時の俺はそんなことを予想していなかった




原作発掘してこよう


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第二話

ちょっと年齢設定ミスってましたね。
今は5年生の冬辺りです。若干前話も編集していますが、特に見ても見なくても支障はありません。

今回若干昴アンチが入ってますので注意


朝から真帆に勧誘されるが・・・・

 

「俺男子なの分かってるよな?」

 

「もちろん!でも入って!」

 

「・・・・なんでバスケ?まさか昨日のでハマったのか?」

 

「うん!昨日のもっかんとかソーランが凄いかっこよかったからあたしもやりたい!」

 

「部活って言っても簡単に承認されないだろ?」

 

「大丈夫!もう5人揃ったし顧問もみーたんがやってくれるって!」

 

その行動力は褒められるべきなんだろうけど・・・

 

「じゃあ俺が入る必要ないんじゃないか?」

 

「やだ!ソーランも一緒じゃなきゃ嫌!」

 

なんという我がまま姫なんだろう・・・・

 

「メンバーは?」

 

「紗季とヒナとアイリーンともっかんと私!」

 

智花も入ってるのか。昨日の今日で大分仲良くなれたみたいだな。

まぁ、みんなで放課後バスケして遊ぼう程度だろうし別にいいか。

 

「いいぞ。でも男子バスケが放課後体育館使ってるけど?」

 

「大丈夫!1日置きに女子部で使わせてもらうことになったから!」

 

一日・・・・実質放課後だけでそこまで決めてたのかよ・・・

 

「そこまで決まってるなら俺も何も言わないよ。」

 

「うん!じゃあそういうことで!」

 

ま、ちょうど練習場所探してたし都合はよかったな。

 

 

 

放課後

 

今日から早速練習に入る。

 

「さて、女子バスケ部になんで俺がいるかとか疑問があるだろうけど、真帆のやったことだから察してくれ」

 

「真帆が迷惑懸けるわね・・・・」

 

「気にすんな。つーか紗季のそれは・・・・?」

 

「アイガードよ。今日の朝真帆から渡されたわ。こんな特注品貰っちゃ断れないわよ・・・・」

 

「じゃあ最初は何をしようか・・・?」

 

愛莉がそういうと

 

「まずは準備運動。怪我の予防だけはしっかりとね」

 

俺達は2人組になった柔軟をする。ちなみにペアは、真帆と紗季、ヒナと智花、俺と愛莉だ。

 

「愛莉身体硬いねー」

 

俺は愛莉の長座前屈を手伝っていた。

 

「ううぅ・・・・」

 

「ちょっと痛むかもしれないけど・・・・押すよ」

 

俺は愛莉の肩に両手を置き押すと

 

「いたいよぉ・・・・」

 

「痛むけど10秒だけ我慢してねー」

 

10秒が経ち俺は愛莉の肩から手を離した。

 

「ひどいよぉ・・・」

 

「ごめんごめん、でも身体は柔らかくしといたほうが怪我の予防にもなるしね」

 

みんな準備運動が終わって集まる。

 

「今日は初日だしね。とりあえず3対3でゲームしようか。」

 

俺はそう提案するとみんながそれに乗る。

 

「俺と智花は分けて、それ以外は適当でね」

 

そういって今日はゲームをするだけで今日は終わった。

 

練習が終わり、俺は智花に声をかける。

 

「智花、ちょっといい?」

 

「空君?大丈夫だよ」

 

「一緒に帰らない?ついでにこれからの練習についてなんだけど・・・・」

 

「そうだね。決めなきゃいけないのは分かってるけど・・・」

 

「みんなお遊びの延長線上だもんねー。大会とか目指してるわけじゃないしそこまで決めなくていいかな?」

 

「うん、私はみんなとバスケが出来れば何でもいいから」

 

「・・・・そっか。智花がそれでいいなら俺は何も言わないよ」

 

それだけの実力があって勝利を目指さない。前の学校で何かあったのは確定なんだろうけど、それを聞くにも付き合いがまだ足りないか・・・・

 

「じゃあ、今日は帰るね。練習はまた来週からだね」

 

「うん、じゃあね」

 

とあるマンションの1室

俺は家に帰ってきた。

ただ家には誰もいない。

 

「家に金を置いて後は放置。まぁ、金を出してくれるだけ有難いか・・・・」

 

俺の両親は仕事人間だ。お互いそこに愛なんてものはなく、ただ体裁の為に結婚して体裁の為だけに俺を生んだ。

ここに転校してきたのも親の都合。親曰く「俺達に迷惑を掛けなければ好きにしていい。金は毎日置いてやるからそれも好きにしろ。欲しいものがあって金が足りないならホワイトボードにその品を書け。必要な金額を置いておく。学生でいる間は金の工面だけはしてやる。それ以降は勝手に生きろ」

本当に俺の親か?って思うよ。超絶放任主義。親に書いて貰う書類も置いとけば勝手に書くし3者面談のときも「息子の意志を尊重して全て任せます」だもんなー

 

「・・・・・買い置きしてた冷食でも食べよ」

 

 

 

それから特に何も起こらなかった。

バスケは週2日のゲーム中心。ただみんなが楽しんでやっているのがよかった。智花と親睦を深めるためにみんなで真帆の家に遊びに行ったりとか、真帆の家でクリスマス会をしたとか。そんなこんなで俺達は6年生になる。

 

 

「クラスの面子ってたいして変わらないんだな」

 

「みんなと一緒で嬉しいよ!」

 

「おーヒナも嬉しいー」

 

「私はまた委員長やらされるのかしら・・・・」

 

「それが紗季のしゅくめーだ」

 

「紗季ちゃん、頑張って」

 

この当たり前の日々がずっと続けばいいのに・・・・そう思っていたが・・・・

 

俺達はいつものように放課後バスケをしていた。そのとき体育館のドアが思いっきり開く音が聞こえた。

 

「お前らに体育館を使う資格はない!!」

 

竹中と男子バスケ部だった。

 

「いきなり来て何を言ってるんだ?」

 

「そうだぞ!今日は女子部が使う番だろ!」

 

「お前らお遊び部が体育館を週3日も使うなんて勿体ないだろ!だから俺達と勝負して勝ったら場所を明け渡せ!」

 

「勝手なこと言わないでくれる?」

 

「それに何で今更?文句があるなら去年から言えばよかったんじゃないか」

 

「真面目にバスケやってんならこっちも文句ねーよ。けど、実際はただバスケで遊んでるだけだろ!こっちは今年こそ県大会で優勝したいんだよ。頼むからこの場所を返してくれ!」

 

「悲劇のヒーロー気取りはやめろ。この場所は正式に学校に申請して受理してもらった場所だ。お前にも事情があるんだろうけど、正直こっちはお前の事情なんてどうでもいい。それにこっちは週3日しかここを使えない。今の状態でも男バスが優遇されてるのが分からないのか?」

 

練習して強くなりたい気持ちはよく分かる。けど、一度決まったことに対して駄々をこねるのはよくない。それに文句があるなら決まった段階で言えばよかったのに何をいまさら・・・・

 

「空君厳しい・・・・」

 

「ソーランって仲間以外には意外と厳しいとこあるからなー」

 

「その代わり仲間には甘いんだけどね・・・」

 

「・・・・・そもそもなんでお前が女子部に入ってんだよ!入るならこっちだろ!」

 

「俺が女子バスケ部に入って何が悪い?いつから女子バスケ部は女子しか入っちゃダメなんて決めた?実際俺はちゃんと学校から女子部に入ることを承認されてるぞ」

 

「お前男バスは断ってたじゃないか!」

 

「それも俺の勝手だが・・・・・話題がズレてるぞ。今は体育館の件だ。なんにせよこっちが決闘に乗るメリットはないしな」

 

「ふんっ!ちゃんと学校には許可を貰ってる!」

 

「・・・・は?」

 

「うちの顧問とそっちの顧問で話しがついてんだ!決闘は2週間後の日曜。勝ったら女子部は廃部。負けたらそのまんまだ」

 

「・・・・それお前が持ち出した条件か?お前らが負けても失うものなんて無いじゃないないか。それは公平って言えるのか?」

 

「違う・・・・そもそも決闘なんて顧問2人が言いだしたことだ。実際俺達は不満を持ってたしちょうどいいかなって。」

 

美星せんせぇー・・・

 

「はぁ、学校側が認めてるなら受けざる得ないか・・・・・その試合は当然俺も出ていいんだよな?」

 

「それについてはダメだ。お前は女子じゃない。だから女子チームに入るのはおかしいからダメ」

 

「・・・・・まぁいい。じゃあ話しは済んだな?お前のせいで時間を無駄にしたんだ。とっとと出ていけ」

 

「う・・・・・分かったよ」

 

そして竹中達が体育館を出ていく

 

「試合どうする?」

 

「当然勝つ!」

 

真帆がそう言うが・・・・

 

「あんまり現実的じゃないわね」

 

紗季がそれを否定する

 

「なんでだよ!」

 

「真帆落ち着け。普通に考えて今まで遊んでいた素人が努力してる経験者に勝てると思うか?」

 

「それは・・・・」

 

真帆が言葉に詰まる

 

「ぶっちゃけ戦力になるのは智花だけ・・・・でも智花1人じゃ絶対に勝てない」

 

俺が出れれば別だけどな・・・・

 

「・・・・どうにかできないかな?・・・・やっと見つけた居場所なのに・・・・」

 

「智花ちゃん・・・・」

 

そうして一同が意気消沈していると

 

「おー。だったら練習する」

 

「ヒナ?」

 

「頑張って練習して竹中たちに勝つ」

 

・・・・・それしかないか

 

「みんな。ヒナの言う通りだ。」

 

俺はみんなに向けて言葉を紡ぐ

 

「ここを失いたくないのはみんな同じだろ?なら練習しかない。2週間。ひたすら練習して勝つ。今までちゃんと練習をさせてなかったし辛いかもしれないけど・・・・ついてきてくれるか?」

 

これで拒否られたら多分泣くかも・・・・

 

「もっちろんだ!ソーラン!」

 

「当然!」

 

「おーヒナもがんばるー」

 

「私も頑張るよ!」

 

「私も・・・・!」

 

良かった。そう思っていると・・・・体育館が開く

 

「おー諸君。竹中たちから聞いた?」

 

美星先生だった。

 

「先生、俺達に何一つ確認もせずどういうことです?」

 

「ごめんな空。それに皆も。でも安心していい。まだ話は通してないがコーチを用意できそうだ」

 

コーチ?こんな急に用意できるのか?

 

「空は不安そうだけど安心していい。私の甥の高校生だけど腕は確かだ。中学のとき県のベストメンバーに選ばれてるやつでな。今事情があって暇だから絶対連れてくる」

 

事情ねえ・・・・

 

「その方の名前は?」

 

「長谷川 昴だ」

 

 

今日は水曜日。コーチが来るらしいので俺は美星先生と共に案内の為に待機する。

 

「(どんな人か見極めなきゃな・・・・・美星先生の甥だし心配はないと思うけど、万が一皆に害を及ぼすなら・・・・何をしてでも追い出してやる)」

 

「そう不安そうな顔をするな。危険じゃないやつなのは私が保証するよ」

 

「・・・・すみません、美星先生の親族だし問題ないとは思うんですけど」

 

「にゃはは♪お前は優しいなー。」

 

美星先生が俺の頭を撫でる

 

「・・・・止めてください。」

 

「ちょっと嬉しそうなのにか?」

 

否定出来ない。今まで誰かに撫でられたことなんてなかったし・・・・

 

「そんなことないです・・・・・ってあれですか?」

 

俺は校門前で挙動不審にしてる男に指を差す

 

「あれだな。面白いから少し見てよう」

 

そして少し見ていたが、すぐに我慢できなくなったのか急に走りだしてその男に飛び蹴りを喰らわす。

 

「(容赦ないな・・・・)」

 

俺は倒れてる男に近づいて

 

「長谷川昴さんですね?お待ちしていました」

 

「・・・・・君は?(あれ?どこかでみたことあるような・・・・)」

 

「俺は御巫空。女子バスケ部員ですよ。男子ですけどね」

 

「そうなんだ・・・・っと」

 

「じゃあアタシはこれから仕事があるから空に全て任せた。」

 

「分かりました。頑張ってくださいね」

 

「おう!」

 

そして美星先生は職員室に戻っていった。

 

「では行きましょうか」

 

「あ、はい」

 

そうして体育館に向かう道中で

 

「君は男子なのに何で女子バスケ部にいるの?」

 

「ああ、女子バスケ部を創った子に誘われたからですよ。大層な理由はありません」

 

「そっか・・・・」

 

そして体育館に着いた。

 

「ここです。みんなもう待っているはずなので。では開けますよ」

 

俺が開けるとそこにいたのは

 

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

 

メイド服を着た女子バスケ部員達だった。

 

「・・・・・みんな似合ってるけどそれどうしたの?」

 

「似合ってるだって!よかったなーみんな!」

 

「じゃあ着てみた甲斐はあったのかな?」

 

「恥ずかしいけど空君喜んでくれたし・・・・」

 

「おーヒナ似合う?」

 

「ああ、ヒナもよく似合っているよ」

 

俺はヒナの頭を撫でる。

 

「ソラに褒められたー」

 

俺はフリーズしてる長谷川さんを起こし皆に着替えて集合するように言う。

 

「申し訳ありません長谷川さん。貴方を歓迎するにはどうしたらいいかと思ってたんですが、まさかメイド服で歓迎するなんて・・・」

 

「い、いや・・・・大丈夫だよ」

 

「そう言ってくれると助かります。彼女たちも別に馬鹿にしていたわけじゃなく純粋に歓迎したいと思っていただけなので・・・・」

 

そうして皆が体操服に着替えて集まる。

 

「えっと、長谷川昴。15歳、高校1年、バスケ歴は・・・・6年くらい。ポジションはガード。中3のときはPGでした。」

 

各々の紹介が終わり、練習に入る。今日は実力を知りたいとのことなので全体練習からやるはずだが、真帆が長谷川さんにジャレついて練習にならない。

 

「真帆、長谷川さんに迷惑だからやめな。」

 

「ソーラン嫉妬?大丈夫だよ!ソーランのことも大好きだから!」

 

「嬉しいけどそうじゃない。折角時間を割いて練習に来てくれたのに・・・これじゃああまりにも失礼だよ」

 

「うー・・・・分かったよ」

 

「じゃあ、真帆も落ち着いたし練習始めようか。」

 

そうして練習始める前にポジションの説明と役割を説明するときに

 

「ねぇ愛莉?」

 

長谷川さんが愛莉に話しかけた

 

「!?は、はい・・・・」

 

愛莉ビビってるな・・・・性格上だししょうがないけど

 

「愛莉って背が――――――」

 

マズイ!?

 

「長谷川さんごめんなさい!!!!」

 

「え?ゴホッ!」

 

俺は長谷川さんに持っていたボールをぶつける。俺は長谷川さんの元に行き小声で話しかける。

 

「すみません手が滑りました。」

 

「え?謝りながら投げてたよね?」

 

「手が滑ったんです。そんなことより教えてなかったんですけど・・・・」

 

「そんなこと?まぁいいや・・・なに?」

 

「愛莉に背の話題はタブーです」

 

「え?」

 

「愛莉に背が高いとか言おうとしてましたよね?それ絶対やめてください」

 

「なんで?」

 

「愛莉は背が高いことを気にしているんです。もし背が高いなんて言ったら絶対泣きだしてました。なので背の話題はやめてください」

 

「う、うん。分かったよ」

 

「すみません、最初に話しておくべきでしたね。すっかり忘れてました。」

 

「気にしなくていいよ・・・・じゃあ練習始めよう!」

 

 

今日の練習が終わった。

みんなでマップ掛けをしてる最中、智花が落ちていたボールを拾ってジャンプシュートをする。それを見て長谷川さんは興奮していた。

 

「(なるほど、見る目はありそうだな。あれを見て智花の凄さが分かったんなら継続してコーチをしてほしいとこだね。今日見た感じ悪い人じゃないのは確かだし。俺のボールをぶつけたときも許してくれたし。ただ、小学生のメイド服に狼狽してたのは・・・いや、あれは誰でも処理落ちするか。)」

 

まさかメイド服で待ってるなんて予想出来ないだろうし

 

 

そして2日目に問題が起こった。

 

「ねーねーすばるん!今日の練習でレベルどれくらい上がったかな?」

 

「え?んーっと・・・・・18くらい?」

 

適当だろうなー・・・・

 

「じゃあじゃあ18あったら地区優勝の相手くらいよゆーに倒せるかな?」

 

「あっはっは!それはいくらなんでも無理だよ!」

 

「・・・・・え?」

 

「え?」

 

「それじゃあ困るよ!どれくらいレベル上がったら倒せるの!?20?30?RPGだと一晩で10くらいあげられるじゃん!だったら一時間で3くらいあげられるよね?」

 

「・・・・それは無理だよ。急激に上手くなるなんてありえないし、まずは体力つけてからだし、大丈夫。真帆なら運動神経いいから半年・・・・いや1ヶ月ちゃんとメニューをこなせば上手くなれるって!」

 

それじゃあ遅いんだよ・・・・・

この後は空気が重くなって練習は終了した。

 

 

3日目

今日が最終日の予定だけど何とか説得して継続してもらおうかと思っている

しかし・・・・・

 

「さっき、男バスから聞いた。試合のこと」

 

「あ・・・・」

 

「・・・・・ごめん、これ以上コーチはできない。俺にこの短期間の指導で勝たせてやれることなんて出来ない。勝ちたいなら別の方法を考えたほうがいい。俺がどうしようと結果は変わらない。」

 

「すばるん!他の方法なんてないんだよ!すばるんしか・・・・すばるんしか・・・」

 

真帆・・・・・

 

「悪いとは思うけど俺にはどうしようもない。真帆たちのことを可哀想だと思うけど、ちょっとだけ男バスの気持ちも分かるんだ・・・・」

 

「ひどい!ひどいよ!!」

 

俺は泣きだした真帆の元に行って慰める。

 

「とりあえず泣き止め。長谷川さんのことは諦めよう。やってもないのに最初から無理無理言ってる人の力なんて必要ない」

 

俺がそういうと長谷川さんが驚いた目をしてる。

 

「実際そうでしょう?貴方はうちの戦力は知ってても敵の戦力を完璧に把握してるんですか?まさか地区優勝相手だからってだけで無理だとでも思ってるんですか?」

 

「それは・・・・・」

 

「全てを理解して無理だって言うならまだ分かりますが、貴方は実績のみでしかみていない。地区優勝とは言っても小学生チームなんだから隙だってあるはずなのに・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・けど、俺は貴方がいなくてもいいですが、彼女達には貴方が必要みたいなんです」

 

「え?」

 

「だからちょっと賭けでもしませんか?」

 

「賭けって・・・?」

 

「俺と1on1して俺が勝ったらコーチ継続。負けたら貴方の好きにしてください。コーチ続けてもいいし辞めてもいい。」

 

「小学生相手に・・・・」

 

「自分が負けるわけないと?それこそやってみなきゃ分かりませんよね?なら聞きますが、貴方は公式戦でも相手の実力が上程度で諦めるんですか?」

 

「そんなことはない!どんな相手だろうと全力で・・・」

 

「そう、だからやりましょうか?」

 

そして賭けバスケが始まった。

ルールは3本先取。ボールを弾いた時点で相手の攻撃になる

 

「(俺は小学生相手に何をやってるんだ・・・・いい、早く終わらせよう)」

 

昴は抜こうとするが

 

「動きが散漫ですよ。集中してくださいな」

 

空はスティールでボールを取る。

 

「(速い!?口だけじゃないとは思っていたけど・・・・・)」

 

「じゃあ次は俺の攻撃ですね」

 

「(どんな攻撃を・・・・・・)」

 

その時昴の横で風が吹いた。

昴が後ろを向いたときには既にボールはゴールに入っていた。

 

「集中したほうがいいんじゃないですか?」

 

「(・・・・思い出した。去年の月バスで見た。晴嵐学園の疾風迅雷・・・そしてU-13日本代表のエース)」

 

昴対空の一進一退の攻防・・・・勝者は・・・・

 

「俺の負けですね」

 

昴だった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「では、賭けの通り長谷川さんは好きにしてください。コーチを続けるにせよ辞めるにせよ・・・・・それにしても、楽しかったですねー長谷川さんはどうでした?」

 

「・・・・・正直燃えたよ」

 

「そうですか。それならよかった」

 

そうして最後の練習は終わった。

帰り道で昴以外のみんなと一緒に帰る

 

「今日の練習は一対一の観賞だったけど・・・・どうだった?」

 

「凄かったけど、あの賭けってなんだったの?」

 

「うーソーランが勝ってれば継続だったのにー!」

 

「でも残念だな・・・・」

 

「大丈夫だよ」

 

俺がそういうとみんなはこっちを見てくる

 

「今回勝ったとしてもそれはやらされていることだから却って負けて良かったんだ。自分の意志であの人にはコーチをやってほしい。だから好きにしていいって言ったの。とりあえず全力でプレーしてもらえば何か思うところはあるかなーって期待したけど・・・・」

 

『けど?』

 

「やってよかった。あの人は絶対戻ってくるよ。なんとなくだけどそう思うんだよねー」

 

 

 

 

おまけ

 

帰り道

 

「ソーランはすばるんがいないほうがよかったの?」

 

「あのセリフのこと?あれは嘘だよ。1対1に持って行きたくてああ言ったの。年上相手に大分失礼言ったからねー後で謝罪するよ」

 




若干昴アンチが入ってしまいましたが、そんな気はなかったんです・・・・


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第三話

ロウきゅーぶを書くのが楽しみになってる


「すみませんでした」

 

日曜の午後。俺は長谷川さんの家にいた。

先日の無礼を詫びる為に俺は美星先生から住所を聞いてここにいる。

 

「いやいや、そんなわざわざ頭を下げにこなくても・・・・」

 

「いえ、無礼を働いたことに謝罪をしなきゃ人として最低です。物で許して貰おうなんて浅ましいとは思いますけど、これを詫びの印として納めますので謝罪を受け取ってもらえないでしょうか?」

 

「う、うん・・・・」

 

俺はここに来る前に謝罪の品として有名所の和菓子詰め合わせを買った。

 

「謝罪を受け取ってもらえて感謝します。ところで・・・・」

 

「なにかな?」

 

「なぜ長谷川さんの家に智花が・・・?」

 

「はう!?」

 

さっきから黙っている智花に向けて言う

 

「もしや2人はそういう関係だったのですか?それは空気が読めずにすみません。俺が来たことで微妙な顔をするのも分かります。謝罪はなるべく早いうちにと思っていたんですが、余計でしたね。ああ、安心してください。この事は内密にしますので・・・」

 

俺が席を立とうとすると

 

「「違うから!!」」

 

「そこまで息ピッタリに否定しても仲の良さが隠せませんよ。俺としては少しショックですが、2人が合意ならそれはそれで祝福を・・・」

 

「ちょっと事情を説明するから誤解しないで!今日自主練しようとしたら体育館使われててどうしようかと思ったら長谷川さんがウチで練習すればいいって誘ってくれただけなんだから!」

 

「そっか。でも日曜に長谷川さんが何でうちの体育館に?」

 

「うっ・・・・それは」

 

「ああ、もしかして今日が試合日と勘違いしました?なるほど、辞めるとは言っても気になったんですね」

 

「・・・・・」

 

「負い目がありますか?賭けは長谷川さんが勝ったんだから別に気にしなくてもいいんですけどね。」

 

「それは・・・・・」

 

「・・・・背中でも押してほしいんですか?」

 

「!?」

 

俺はこの人の事情は知らない。でも女バス以前に何か悩んでる様子も分かる。

 

「俺は貴方が何を抱えているか分かりません。けど、俺と1on1をしたとき余計な事を考えてやっていましたか?最初の方はともかく、途中からはバスケしか集中してないように見えたんですけど」

 

「それはそうだけど・・・・・」

 

「自分の気持ちに素直になってください。少なくても俺とヤってた時のあなたは3日間の中で一番良い顔をしてましたよ」

 

「・・・・・」

 

本気でこっちから背中を押さないと動かないのか・・・?なら

 

「・・・・・賭けに負けた俺が言うのは違うかもしれませんが、お願いします。力を貸して下さい。俺達の居場所を守る為に力を貸して下さい」

 

俺はその場で土下座する。

 

「ちょ!土下座なんて・・・・」

 

「私かもお願いします!私たちに力を貸して下さい!」

 

智花も土下座する

 

「・・・・・分かったよ!けど絶対勝てるなんて言わないからな!」

 

なんというか、素直じゃない人だな・・・・

 

「それで構いません。じゃあ早速対策会議をしましょう。こういう時に備えて男バスの資料を用意してます」

 

「どんな備え!?君もしかして初めからそういうつもりで・・・」

 

「そんな事はどうでもいいじゃないですか。さ、まずは最近の試合のビデオを5試合分用意できたのでまずはそれを見ましょう。智花もこっちおいで。一緒にみよう」

 

「うん!」

 

「ここ俺の部屋・・・・」

 

「コーチの昴さん、エースの智花、マネージャーの俺。この3人なら男バスの弱点なんてすぐ浮彫になりますよー」

 

「今昴って・・・・」

 

「一定期間とはいえコーチに就任したんですからいいでしょう?これからは昴さんと呼びます。俺が名前で呼ぶのは信頼の現れなので嬉しがっていいですよー」

 

「はぁ・・・・困った小学生だよ。空は」

 

「お褒めに預かり恐悦至極~♪」

 

そうして俺達は時間の許す限りビデオを見る。

 

「・・・そういえば空って晴嵐学園の疾風迅雷だろ?なんでまた慧心に?」

 

「そうですねー親の都合ですよ。全小も制覇したので割とあっさり別れは出来ましたね。というよりチームメイトはそこまで仲良くなかったんですけど」

 

「なんでまた?」

 

「ぐいぐいきますねー。まぁ、チーム方針が俺中心になったからですね。」

 

「なんでそれだけで?」

 

「極端だったんですよ。みんな俺にパスして俺が全部決める。ただそれだけのチームなんです」

 

「は?・・・・・いやいやそんな馬鹿な・・・」

 

「・・・・苦しかったなー。それで優勝出来たのが一番苦しかったです・・・」

 

優勝したことによって方針が正しいと証明されてしまった。それを否定したいからって態と負けるのも相手に失礼だから嫌だった・・・・。結果は

 

「大会の後はみんな辞めました。俺もその後は代表に選出されたり転校しなきゃいけないでごたごたしていたのでその後のチームのことは分かりません。ただ・・・・もう2度苦しい思いのするバスケはしたくないですね」

 

「そっか、空も苦労したんだな・・・・・」

 

「とりあえず昴さんにはそういう方針はしないようにしてほしいですね。」

 

「大丈夫。1人に負担が集中する方針は俺も嫌いだから」

 

なら安心。

夕飯もごちそうになり帰りは智花を送りに行く

 

「勝てるかな・・・・?」

 

「分からない。けど、諦めたら絶対に勝てないよ・・・・」

 

「うん・・・・そうだね。私たちの居場所を絶対守ろう!」

 

「その意気だ。明日からまた頑張っていこう」

 

「うん!」

 

 

翌日

コーチ復帰したのをみんなで歓迎する。

本格的に練習に入り、それぞれに指示を出す昴さん。

 

「(初コーチなのに的確だな。恐らく昨日俺達が帰った後も考えていたんだろう。必死で不慣れながらも彼女たちの為に・・・・)」

 

練習が開始されて1時間以上が経ったときに異変が起きた。

ひなたが倒れたのだ。

 

「メディーック!救護班を早く!」

 

「落ち着いてください。ただの酸欠でしょう。ひなのイノセントチャームにやられないでください・・・・」

 

「え・・・・?」

 

「無垢なる魔性。ひなの愛らしい容姿と無垢な笑顔が重なって起こる現象です。同学年の男子・・・というかひなに関わった男子は全員餌食になりました」

 

「空も?」

 

「俺は唇を噛んでその痛みで耐えました」

 

「そこまでする!?」

 

あんなデレデレした顔を見せる醜態は絶対したくない。

 

「とりあえずひなを一応保健室に連れて行きますよ。昴さんはそのままみんなを見ていてください」

 

「分かった。ひなたちゃんのこと頼むよ」

 

俺はひなを背負って保健室に向かう

 

「悪いな。無理をさせすぎた」

 

「おー。ひなきにしてない」

 

「そう言ってくれると少しは助かるよ」

 

途中で竹中と遭遇する。

 

「ひなた!?御巫!お前何やってんだよ!」

 

「竹中か・・・・見た通り背負ってんだよ」

 

「おー。たけなかー」

 

「もしかして怪我したのか?」

 

「おー。してねー」

 

「そうか・・・・あんま真帆に付き合ってるとそのうち本当に怪我するぞ」

 

「おー。うるせー」

 

ひなって結構口悪いな。真帆あたりの影響もあんのか?

 

「念の為、保険医に見せるだけだ。心配ない」

 

そういって竹中から離れ保健室に向かう

 

「あれ?羽田野先生いないじゃん。まぁいいか。そのうち来るだろ」

 

「ねーそら」

 

「どうした?」

 

「ひな・・・もっとうまくなりたい。いっぱいがんばるから、とちゅうでやめないから、ひなにもバスケおしえて」

 

「・・・・ひなはバスケ好きか?」

 

「好き。へたくそだけどみんなと一緒にやるバスケ大好き」

 

「その気持ちがあるなら大丈夫だ。絶対上手くなるよ。体力だって鍛えれば鍛えた分ついてくる。だから今度の試合一緒に頑張ろうな」

 

俺はひなの頭を撫でる

 

「おー。ひな頑張る」

 

ひなは大事を取って今日の練習をそのまま休んだ。

 

 

 

「で、愛莉のほうどうでした?」

 

俺は昴さんの家にいる。今日の練習の反省会だ。

 

「やっぱり怯えているね。智花の猛攻に完全にビビっていた」

 

「まぁ、そこは性格ですからねー。愛莉のセンター諦めます?ぶっちゃけポジションって身長も大事ですけど性格の方が重要だと思いますけど」

 

「いや、そこは否定しないけどやっぱり愛莉がセンターでいてほしい」

 

愛莉の身長は本当に武器だからなー・・・・

 

「じゃあ愛莉のことは任せてくださいな。こっちの真帆と紗季は問題ありません。お互いライバルみたいなもんですからね、お互いが刺激になって良い感じですよ」

 

「それならよかった。ひなたちゃんは?」

 

「特に異常もないみたいです。まぁ、普段激しい運動なんてしませんからね。次からちゃんと見ていれば問題ないでしょう」

 

今日のところはこんなもんかな?じゃあ

 

「さぁ、食べましょうか!」

 

「うん、ここ誘ったのはこっちだし別にいいんだけどね・・・自然に混ざってるせいで違和感ないよ」

 

「お代わりいっぱいあるからねー♪」

 

家族ってこういう感じなんだなー

 

「家でお母さんご飯作ってるんじゃないのか?」

 

「・・・・大丈夫ですよー。」

 

「?そっか」

 

これが家庭の味!久しぶりだけど美味しいのは確かだ

 

「美味しいですねー。店とかで食べるのとはまた違った感じがしていいですね!」

 

「いや、当たり前だろ。家庭料理なんだから」

 

当たり前か・・・・・

 

「そうですねー。でも超美味しいのでお代わりお願いしていいですか!?」

 

「ふふふ、いいわよー」

 

そういって茶碗を受け取る七夕さん。

 

「にしても・・・・」

 

「どうしたんです?」

 

「いや、空が夕飯の誘いに乗るとは思わなかったな。なんか遠慮しそうなイメージがあったよ」

 

「ああ、まぁ折角の機会ですからね」

 

家庭料理を食べる機会なんてそうないし、これからも長い付き合いになりそうだからねー

そこに美星先生も来た。

 

「よ、ご飯食べにきたぜー。あ、空もいたのか」

 

「誘いにのっちゃいましたー」

 

「そっか・・・・・いっぱい食えよ」

 

そういって俺の頭を撫でる先生

 

「恥ずかしいからやめてほしいですなー」

 

「にゃはは♪」

 

美星先生も含めて久々に楽しい夕食になった

 

 

 

昴side

 

「じゃあお邪魔しましたー!」

 

そういって昴は帰って行った。

俺と姉さんが玄関まで見送りに出た

 

「・・・・・あの子はさ」

 

「ん?」

 

「母親・・・・両親の手料理すら食べたことないんだよ」

 

え・・・・・?

 

「普通に生きてるけど、あの子の両親は放任主義なんだ。異常なまでのな」

 

「それって・・・・・」

 

「金だけ渡されてずっと放置。初めて食べた家庭料理が他人の家。愛莉の家だった」

 

初めての家庭料理が11歳のときだって!?だから俺が聞いたときに一瞬辛い顔をみせたのか

 

「あの子があんなに大人びてるのはそういう家庭環境から生まれたものだ。本来ならグレてもおかしくないのに、両親からの唯一の願いからそれも出来なかった」

 

「・・・・それって?」

 

「『私たちに迷惑を掛けるな』あの子が物心ついたときに両親に言われた最初の言葉らしい。」

 

「そんな・・・・・」

 

「で、実質1人暮らしで今までやってきたらしい。でもあんたにああしろこうしろとは言わない。たまに機会があれば今日のようにご飯に誘ってやって。」

 

「分かった。」

 

じゃあ空は今まで・・・・・10年も1人だったのか?誰にも頼らず頼れず・・・ずっと1人で頑張って来たのか・・・・?

 

「あたしは立場上あんまり1人の生徒に深入りは出来ない。まぁ、あの子はああいう性格だししっかりしてるからあんまり心配はしてないけど・・・・今は女バスのみんながいるしねー。」

 

「ああ、そうだな・・・・・」

 

 

 

side out

 

 

翌日、俺は愛莉にセンターをやらせる為に早速動く

 

「あ~いり♪」

 

「そ、空君!?」

 

俺は後ろから愛莉に抱きつく

 

「ごめんごめん、愛莉って小さいから抱きしめやすいんだー」

 

「ち、小さい・・・・・へへ・・・」

 

ちょろい。俺の身長は170だから、ぶっちゃけ愛莉のほうが2㎝高いんだけどね。

 

「ちょっとだけ愛莉に話があるんだけどいいかな?」

 

「う、うん・・・でもこの体勢で?」

 

「愛莉は嫌だ?俺とこうしてるの・・・・」

 

「そ、そんなことないよ!!でもここ教「ありがとう!」うん・・・・」

 

「じゃあバスケの話なんだけどさ、愛莉にやってほしいポジションがあるんだー」

 

「ポジション?」

 

「そ!それは・・・・スモールフォワード!!」

 

「す、スモール!!」

 

「そう!ゴール下で仕事をする人の事いう!ゴール下からの攻めを防ぎゴール下から攻める!!スモールにぴったりな仕事だからスモールフォワードって言うんだよ!」

 

「そ、そうなんだ~」

 

ごめん、嘘です。身長が大事なポジションでスモールにぴったりとかないです。

 

「だから、スモールフォワードを愛莉にやってほしい!・・・・出来る?」

 

「う、うん!私、スモールフォワードやりたい!!」

 

ごめんね、試合が終わったら全力で謝るから・・・・

 

俺は昴さんにメールを打つ

 

「愛莉はスモールフォワードという名のセンターをやってくれることになりましたー。智花にはこっちで話しておくので昴さんも合わせてねNE☆」

 

俺は智花に事情を話す。

 

「朝のあれって愛莉を説得してたんだね・・・・」

 

「なんだと思ったの?」

 

「イチャイチャしてると思ったよ!教室の真ん中で急に何をやってるか皆噂してるよ!?」

 

「おー。最初に警戒心を取らなきゃと思ったけど、噂になっちゃったかー」

 

「あれで警戒心が薄れると思ってるのは空君だけだよ・・・・」

 

「でもセンターの問題は解決したしOKOK」

 

「愛莉に申し訳ないなぁ・・・・」

 

「その時は俺一人のせいにしていいからねー」

 

「ううん、私も知ってて見逃したんだし同罪だよ・・・」

 

「智花もやっさしー♪」

 

俺は智花にも抱きついた

 

「きゃっ!ちょ・・・・ここも教室―!」

 

「教室じゃなきゃいいんだ?」

 

「そういうこと言ってるわけじゃ・・・・皆こっち見てるよー!」

 

「嫌なら離してどうぞー」

 

「うぅ・・・・嫌じゃないから困るんだよぉ・・・」

 

この後、俺は愛莉と智花の二股疑惑が浮上したのだが、特に気にもしなかった

 

 

 

木曜日

 

今日は体育館が使えないので皆で長谷川家で練習することに、愛莉は俺の言うことを信じてSF(スモールフォワード)という名のC(センター)プレイを嬉々としてこなしている。

 

「(うわぁ・・・・後が怖いなぁ・・・・泣いたらどうしよう・・・・)」

 

とりあえず練習会は終了。この後は夕食会が開かれる

 

「グラタン超おいしー!七夕さんの料理やっぱ美味しいですねー!」

 

「ソーランのテンション高いな!なゆっちお代わり!」

 

「真帆!失礼でしょ!すみません七夕さん」

 

「いいのよーいっぱいあるから紗季ちゃんもお代わりしてね?」

 

「は、はい・・・・」

 

「おー。真帆と空のテンションたかい」

 

「空君がここまではしゃぐの初めて見たかも・・・・」

 

「(そういえば、うちでご飯食べたときもテンション高かったなー)」

 

夕食が食べ終わりみんなはお風呂に入る。

 

「さすがに突入できませんねー」

 

「やったら犯罪だよ!?」

 

俺と昴さんはみんなが上がるまで食後の1on1を軽くする。

 

「そういえば聞きたかったんだけど・・・・」

 

「どうしたんです?」

 

「初めて1on1やったとき・・・・最後手抜いた?」

 

「・・・・・なぜ?」

 

「最後動きのキレが急に落ちたなーって」

 

「どうでしょうね。少し鈍ってたので体力が持たなかったんじゃないですか?」

 

「・・・そういうことにしといてあげるよ。」

 

やっぱりバレてたか・・・・言っとくが別に舐めてるとか馬鹿にしてるとかそういう話じゃない。実際体力的には鈍っていたし・・・・ただあそこで勝つ訳にはいかなかったのは事実だ。予想以上のヘタレだったし今思うと勝てるかはともかく全力で勝ちにいってもよかったとは思うけど

 

「さて、俺はそろそろ帰りますねー」

 

「え?」

 

「やー皆の湯上り姿に胸がドキドキで耐えられそうにないので・・・・」

 

「・・・・・みんなと一緒に帰って暗い部屋を見られるのは嫌なのか?」

 

・・・・美星先生か

 

「先生から聞いたんですねー。甥だからって生徒の個人情報喋っていいわけじゃないのにねー。困った先生だ」

 

「誤魔化さなくていい。俺は空の本音が聞きたい。」

 

 

side昴

 

 

俺は空の本音が聞きたい。実際今の環境をどう思ってるのかを

 

「本音って・・・・じゃあ聞きますけど、聞いてどうするんです?」

 

「それは・・・・」

 

「聞いたからって何も変わらない。それに変わることにも期待していない」

 

なんて冷たい目をするんだ・・・これが小学生のする目なのか・・・?

 

「皆は事情を知らないので家の人に呼ばれたとか言っとけばいいので。ではまた明日体育館で」

 

そう言って空は帰った。

 

「普段の顔と今見せた冷たい目・・・・どっちが本当の空なんだ?」

 

 

side out

 

 

やってしまった・・・・本来なら見せるつもりなんてなかったのに・・・

 

「自分が思ってるより、大事だから・・・・・なのか?」

 

昴さんや女バスのみんななら素を見せてもいいと思ったか?ふざけるな!俺はずっと1人だ!誰と何をしてようがそれは絶対に変わらない・・・・もう二度と見せない為にもう1度作ろう。同年代より大人びた御巫空を・・・・たまに愛嬌を見せる御巫空を・・・誰にも迷惑かけず、嫌われず。みんなから一目置かれるような御巫空を・・・・

 

 

そして、試合の当日になった・・・




生を受けてから誰からも愛されなかった人間が歪まないわけないんだよなぁ・・・


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第4話

感想やお気に入り感謝でーす


今日は試合の日。やれることはやったしどんな結果になっても受け入れるつもりだ。

 

「みんな今までよく頑張ってきた。昴さんの指導の下、みんな短い期間でかなり成長できていると思う。男バスなんかに負けず全力で試合を楽しんでこい!」

 

『はい!』

 

後は昴さんに任せよう。俺から言うことは後はなにもない。ただ全力で応援するだけだ。

 

試合が始まった。序盤は愛莉を中心にゴール下から攻める。

 

「(やはり背が高いだけで武器だな。男バスのC(センター)も頑張っているけど届かない攻撃はどうしようもない)」

 

もし俺が相手の立場だったら、高さで勝負はしないけどな・・・・

 

どうやら相手は2人で対処するらしい。

 

「(バカだな。愛莉は正直まだ技術なんてない・・・・わざわざ人数増やさなくてもやりようはあるのに・・・・)」

 

愛莉はシュートが出来ないので真帆にパスをし、ジャンプシュートを決めた。

 

「(右斜め45℃からしか決めれないけどハッタリとしては充分。仮に真帆についても・・・・)」

 

真帆は紗季にパスをして受けた紗季はジャンプシュートを決める。

 

「(紗季は真帆とは逆の左斜め45℃でしか決まらない。けど相手はそんなことは知らない。インサイドならある程度どこでも決めてくると思わせればそれで上々。真帆や紗季にも両方マークをつけたいとこだがそれも無理・・・・・智花にダブルチームがついてるから。智花と愛莉にダブルでつき、残り1人は真帆と紗季の両方ケア?無理だな。まぁ、ひなをスルーしてるのは若干イラつくがそれもしょうがないだろう。)」

 

ただ、不安要素がある・・・・それは後半開始すぐに訪れた

 

「(やはり、スタミナだけは一朝一夕じゃ無理か)」

 

前半の貯金を使い果たし逆転されてしまった。しかしまだ終わってない。

 

「(ここまで目立った活躍をしていない智花。そもそもあの程度のダブルチームなら智花ならいつでも抜けた。それをしないのは昴さんの指示で一定の時間が来るまで体力の温存に務めてた。みんなの体力が落ちた頃に動けば・・・・・このコート上で彼女を止められる者は1人も居ない)」

 

相手のエースの竹中も奮闘するが。ひなの演技によって余計なファールをもらってしまう。

 

「(好きな女が目の前で突然後ろに倒れたら動揺するよな・・・にしても昴さんも鬼だな。竹中の好意を利用するとは・・・・・俺も使えるなら使うけど)」

 

しかしここからは通用しないだろう。こっちも全てを出した。ここからは両エース同士の殴り合いだな。

実際試合はシーソーゲームになった。智花が取れば竹中も取り返す。

 

「(さてこれがラストの攻撃・・・残り1点差で智花にトリプルチーム。時間も少ない。智花はどうする?自分だけで足掻くか?それとも・・・・)」

 

智花は前方にボールを放った。それは一見自暴自棄にも見えたがボール先には真帆がいた。それをジャンプシュートで決め女バスの逆転勝利が決まった。

 

「(あの状況で仲間を信じるか・・・・・俺だったら意地でもぶち抜いて1人で決めに行ってただろう。ガス欠状態でもパスが来ると信じて走った真帆と視界が塞がれてたのに的確に真帆にパスをした智花・・・・・異常なまでの信頼関係だな)」

 

 

長谷川家で祝勝会が行われる

俺は昴さんのほうを向いて頭を下げた

 

「ありがとうございました。貴方のおかげで女バスは救われました。」

 

「いや、俺なんてたいした事はしてないよ。みんなが頑張ったこその結果だ」

 

「間違いなくこの結果は貴方がもたらしたことですよ・・・・ところでコーチを延長する気はありませんか?これからも貴方に指導していただけると有難いのですが・・・」

 

「そーだぞ!すばるん!」

 

「いや、そろそろ自分のことに戻らないといけないからね。」

 

「すみません、こちらもそれではいサヨナラとは言えないんですよ・・・・ではまた賭けでもしましょうか?」

 

「この前みたいに1on1でもするの?」

 

「いえ今度はフリースローです。」

 

「フリースロー?連続で何本か決めるとか?」

 

「そうです。50本連続で決めるのでその時は正式にコーチに就任してください」

 

「でも空なら普通に決めるんじゃない?」

 

「やるのは智花です」

 

「ふぇ!?」

 

「どうでしょう?」

 

「それなら・・・・まぁいいか」

 

言質は取ったよ・・・・

 

「というわけで智花。よろしくね、コーチを手に入れられるかどうかは君にかかっている」

 

「う、うん・・・・」

 

「大丈夫。期限決めてないし軽い気持ちでやっちゃいな」

 

「あ・・・・」

 

もう遅い。承諾した時点で追及しなきゃ・・・・

とりあえず俺は愛莉の所に向かう

 

「愛莉、ちょっといい?」

 

「なに?空君」

 

「愛莉のやっていたポジションさ・・・・」

 

「SF(スモールフォワード)だよね!上手くできてたかなぁ・・・・」

 

「上手くできていたよ!・・・・Cだけどね」

 

「え・・・・?」

 

「愛莉のやっていたポジションは、背が高い人が基本行うCなんだ」

 

そういった瞬間愛莉は泣きだしてしまった。覚悟はしてたが・・・・・ここまで泣くとは・・・・

俺は他のメンバーからのパッシングを受けながら愛莉を全力で宥めた。

なんとか許して貰えたところで今日はお開きになった。

 

 

 

1週間後

今日は練習がないので教室に残って喋っていた。

 

「もっかんいつまで掛かるのかなー・・・」

 

「んーさぁ?でも智花ならそこまで時間も掛からないはず・・・・」

 

「ねぇ・・・・なんで賭けなんかにしたの?」

 

そう聞いてくる紗季。

 

「必要だったから。ただお願いしただけじゃ戻ってこないと思ったし・・・素直じゃないしね、昴さんは」

 

「・・・そう」

 

そうして喋っていると携帯が鳴った。

 

「智花からか・・・・・どうやら勝ったらしいぞ」

 

「ほんと!?よかったー・・・・」

 

そうしてみんなが安堵する。

昴さんが正式に戻ってくるなら・・・・・俺ももういいかな

 

「昴さんも戻ってくるし皆に話しておく、俺は今日かぎりで女バスを退部する」

 

「・・・・・え?」

 

「智花や昴さんにもそう言っておいてくれ。じゃあな」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!何で急に・・・・」

 

「これから心機一転して女バスはスタートする。そこに俺は必要ないからだ」

 

「必要ないって・・・・・そんな」

 

俺はみんなから背を向けて教室を出ていく

 

 

 

最近自分を上手く作れなくなってきた。それはマズイ。その原因になったのは間違いなく女バスだろうと結論付けた。だから離れる。部活は辞めるがそれで付き合いがなくなるわけじゃない。これからはその他大勢のような接し方をすればいい。あぁ・・・面倒臭い。こんなに自分を保てなくなるって分かってたら絶対入らなかったのに・・・ちょうどよく昴さんが戻ってきてくれて助かった。

 

 

翌日

 

「ソーラン!」

 

真帆と女バスのみんながこちらに来る。

 

「どうした?」

 

「どうしたじゃない!何で部活を辞めた!」

 

「いいか?真帆。俺は男だ。いつまでも女バスにいるっておかしいと思わないか?」

 

「思わない!」

 

「悪いが戻る気はないよ。部活を辞めるだけ。それだけで俺達の関係は変わるのか?」

 

「変わらないけど・・・・」

 

「じゃあいいじゃないか。今まで通りやっていけばいい」

 

『・・・・・・』

 

 

数日後、美星先生が話があるようで俺は職員室に向かう

 

「何かありました?」

 

「確か空も球技大会はバスケだったよね?」

 

「そうですね。それがなにか?変更してほしいなら別に構いませんが」

 

「そうじゃなくて・・・・合宿に来ないかって話?」

 

「合宿?球技大会の為に?別に必要ないでしょう。うちの男子や真帆は打倒6-Dに燃えてますけど俺自身は遊びの延長線上だと思ってますし」

 

「・・・・なぁ、話は変わるけど何で真帆と竹中の喧嘩を仲裁しなかったんだ?お前なら真っ先に仲裁に入ると思ってたんだけど」

 

先日、竹中と真帆が休み時間に喧嘩した。得意競技で負けてイラついてた竹中に真帆が絡んだのが原因。あれは竹中じゃなくてもキレる。

 

「そうですね。あの時は本に夢中になっていたので・・・・」

 

「あれだけ大騒ぎになったのに?愛莉に声をかけらてもシカトしたんだって?」

 

「本に夢中になって気づきませんでしたよ。愛莉には後で謝罪しました。それが何か?」

 

「いや、もういい。とにかく合宿には来ること。これは教師としての命令だ」

 

「分かりました。」

 

美星side

 

普段通りに見えるけど壁作ってるなー・・・・・拒絶オーラが半端ないって・・・

みんな辞めたことを気にして練習にも身が入ってないし、昴も昴で折角コーチに就任したのに覇気がない。今回の合宿中でなんとかなればいいけど・・・・

 

 

sideout

 

 

金曜日になり体育館に向かう。今日から合宿だ。

ただ・・・・・・やる気は全くない

 

俺は体育館のドアを開けるとそこには喧嘩中の竹中と真帆が決闘していた。

 

「お久です。昴さん」

 

「あ・・・・空」

 

「またあの2人喧嘩してるんですね。こんなんで合宿になるんですか?」

 

「・・・・・なんとかやってみようとは思う」

 

俺はあの2人を止めようとする。

 

「いい加減しろバカ2人」

 

「う・・・・・御巫」

 

「ソーラン・・・・」

 

「隣のバレー部にまで迷惑かける気か?喧嘩するなとは言わない。ただ・・・・時と場所を考えろよ」

 

「「は、はい・・・・・」」

 

 

昴side

 

凄い。あの2人の喧嘩を押さえちゃったよ・・・・

 

「でもなんで2人が空の言うことを・・・?」

 

「あ、それはですね・・・・」

 

智花が理由を知ってるみたいでそれを聞く

 

「空君。転校初日に愛莉をイジメてた男子たちを1人で倒したからです。」

 

「それは凄いと思うけど「10人」・・・え?」

 

「10人いたんですけどみんな倒して保健室送りにしました。それ以来みんな空君だけは本気で怒らせちゃいけないって思ったんです。」

 

10人って・・・・・むしろそんなに愛莉を虐めてたやつが多いことにビックリした。

2人を窘めた空がこちらに来る

 

「まだ部活中でしたよね?俺は図書室で暇を潰してくるので。何か用があったら携帯鳴らしてください」

 

「ちょっと待った・・・・一緒に練習しないか?」

 

「今は部活中でしょ?部外者なんで外れときます。」

 

部外者・・・・・その言葉に竹中以外は悲しい顔をする。

 

「何だ御巫もようやく気付いたのか。女バスなんかに居る意味ないしな」

 

「そうだな・・・・・でも竹中。女バスなんかに負けたお前がそれを言うのか?」

 

「うっ・・・・・」

 

そういって空は体育館から出た。

 

「うぅ・・・ソーラン・・・」

「空君・・・・・・」

 

この空気はマズイな。なんとか入れ替えしよう

 

「みんな!まだ部活時間中なんだ。気を取り直して練習だ!」

 

俺はみんなを鼓舞すように言った。空の事も気になるけど今はみんなが優先だ

 

sideout

 

「(もうこんな時間か・・・・)」

 

俺は図書室で本を読んでいた。気が付いたときには夜になりかけていた

そのとき昴さんが来た。

 

「ごめん、今いいかな?」

 

「いいですよー何か用でも?」

 

「真帆と竹中の間を取り持つのを手伝ってほしい」

 

「・・・・・なぜ?別に放っておけばいいじゃないですか。」

 

「え?なんでって・・・・このままだと雰囲気だけが悪くなる。それじゃあダメだろう」

 

「・・・・なにかプランでもあるんですか?」

 

「ああ、ミホ姉から色々グッズを差し入れてもらったんだ。それを使えば・・・」

 

「ダメですね。それじゃあ何も変わりませんよ」

 

「やってもいないのに何で分かるの?」

 

「今回の原因はバスケにあります。解決もバスケじゃなきゃ一時的に仲直りしてもすぐにバスケが原因で仲が悪くなる。」

 

「それは・・・・・」

 

「手っ取り早い方法はありますよ」

 

「それってなに!?」

 

「真帆がバスケを辞めれば次第に仲直りできるでしょうね」

 

「・・・・それは出来ない」

 

「・・・そもそも何故竹中があそこまで怒ってるか理解してますか?」

 

「え?真帆にバスケで負けて挑発されたからじゃ・・・・」

 

「それもある。けど、根本はそうじゃない・・・・竹中に聞いてみればどうです?アイツは多分俺達の知らないことを知っています。そして恐らくそれが原因でしょうから」

 

「・・・・何でそこまで分かるの?」

 

「喧嘩をしてもここまで長引いたことはない。原因はバスケ。そして竹中はバスケが好き。それだけ分かればなんとなく・・・・ってことです」

 

そうして昴さんは出ていった。

俺もそろそろ戻ろうと思い図書室から去った。

 

 

夜、昴さんと竹中が真帆の自主練を覗いていた。

 

「(どうやら、解決したっぽいな)」

 

俺は2人に近づく

 

「よぉ、竹中。ちょっとは真帆を認める気になったか?」

 

「・・・・・ふん。これから次第だよ」

 

素直じゃないねえ・・・

 

「ま、いいけどねー」

 

「・・・・それより、お前は何で女バス辞めたんだ?辞めたら男バスに来ると思ったけどそういうわけじゃないし、合宿にも参加してる。今回も真帆のことを心配してるしお前の考えてることがよくわかんねー」

 

「別に友人だし心配するのはおかしくない。女バスを辞めたのもおかしくはないだろ?俺は男なんだからさ、今までが異常だったんだよ。合宿は美星先生からの教師命令だよ。無茶な願い以外は聞くさ」

 

「・・・・そうかよ」

 

そういって竹中は宿舎に戻っていった。

 

「・・・・違うだろ。」

 

「何がです?」

 

「お前が辞めた理由。女バスにいるのがおかしい?そんなの最初から分かっていたはずだ。それを理解して女バスにいたんじゃないのか?」

 

「・・・・さぁ?どうでしょう。俺自身深く考えずに入りましたからねー。別にいいじゃないですか。俺がいようといなくても誰も興味ないでしょう」

 

「本気で言ってるのか?」

 

「当然でしょう。」

 

「そんなわけない!」

 

そこに自主練を終えた真帆が立っていた。

マズったな・・・・

 

「何でそんな事言うんだよ!」

 

「何でって・・・・事実だろ。」

 

「ふざけんな!あたし達がどれだけソーランのこと心配してると思ってんだ!」

 

心配?俺を?・・・・・・笑わせんなよ

 

「そうか心配してくれたのか、ありがとう。じゃあそろそろ宿舎に戻るか」

 

俺は仮面の笑顔を作り真帆に言った。

 

「ソーラン!何で・・・・そんなに冷たい目をしてるんだよぉ・・・・」

 

・・・・・ダメだ・・・・・・もう・・・・・上手く作れない・・・・

その時真帆のデカイ声に気付いた女バスのみんなが外に集まる。

 

「空に真帆に長谷川さん・・・?」

 

「おー。3人でどうしたのー」

 

「なにかあったんですか・・・?」

 

「真帆の大きい声が聞こえた何かあったんじゃないかって思って・・・・」

 

俺は何でもないように言う

 

「いや、なんでもないよ。明日も練習だろ?もうみんな休め」

 

「ソーラン!話はまだ終わってないぞ!何で辞めた!何でそんな顔してる!何で・・・・」

 

うるさいなぁ・・・・

 

「黙れ真帆。お前らも別になんでもないって言っただろ?とっとと宿舎に戻れ」

 

「空君・・・・?」

 

「何だ愛莉?俺がいつもと雰囲気が違うって思うか?」

 

そういうと愛莉が頷く

 

「当たり前だろ。今までキャラを作って来たんだから・・・・折角お前らから離れて良かったと思ったのに・・・・やっぱり数日でも一緒にいるのはダメだな。無理にでも参加しなければ良かったよ」

 

「ソラ・・・・・」

 

「どうしたひな?俺がお前らの事をなんとも思ってなかったのはショックか?いや、それとも薄々気づいていた・・・・とでも言うか?まぁ、どうでもいいけどな」

 

「・・・・・私たちを騙してたの?」

 

「騙すって人聞きが悪いな。誰だって本音や建て前くらい使い分けるだろ?俺はそれが人よりも極端なだけの話だ。そもそもお前らなんかを騙して何の得がある?」

 

「私たちに言ってくれたことも建て前だったの?」

 

「俺なんて言ったっけ?興味ないし忘れたよ」

 

「空、もういい。よせ」

 

「・・・そうですか。まぁ、これが俺の素なのでよろしく。じゃあ俺は宿舎に戻りますよ。」

 

そういって俺は宿舎に戻る

 

 

昴side

 

正直まいったな。まさか空が・・・・

 

「すばるん・・・・・私たちって空から見ればその他大勢だったのかな?仲間じゃなかったのかな?」

 

真帆・・・・・

 

「みんな聞いてくれ。」

 

『?』

 

「俺は空が違う1面を持っていることに気づいてはいた・・・・・」

 

みんなが驚愕する。

 

「今から話すのは他言無用で頼む。空の家庭環境についてだ」

 

そして俺が知る限りのことを話した。

 

「そんな・・・・・生まれたときから愛されずに育ってきたって・・・・」

 

紗季が震えている。いや紗季だけじゃない。みんな震えていた。想像してしまったんだもし自分がそういう立場だったら・・・・少なくても歪む。自分自身を作ってきた空を誰も責められない・・・・・

 

「・・・・・助けてあげられないですか?」

 

愛莉・・・・

 

「じゃあ空から直接聞こうか」

 

「え?」

 

「今まで生きてきた空の人生を、まだまだ知らないことだらけだし知ればきっと何か助けになれるかもしれない」

 

「教えてくれますかね?」

 

「聞くだけ聞いてみよう」

 

そういって俺達は空のところに向かう。

 

 

sideout

 

 

「なるほど、だから俺のほうに来たと?というか喋ったんですね。叔母が叔母なら甥も甥ですか」

 

「あはは・・・・」

 

「というか、美星先生も来たんですか?」

 

「にゃはは。担任として聞いておきたいんだよ。少なくても幸せではなかったんだろ?」

 

「そうですねー。まぁいいでしょう。暇つぶしに聞いてもいいですよ」

 

「え?こっちから頼んできたことだけど・・・・いいの?」

 

「ええ、部屋に入ったと同時に背中を愛莉、右腕を真帆、左腕にひなが掴んで離さないのでね。絶対聞くまで離れるつもりないですよね?」

 

「当然だ!今日は寝かさないぞ!」

 

「おー。ひなも寝かせない」

 

「寝かせません!」

 

「ご、ごめん・・・・・」

 

「いや、いいです。では話しましょうか。誰からも愛されなかった男の物語を・・・」

 




なんかなー・・・・・


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第5話

過去話+etc


俺が生まれたのは神奈川の某所。

仕事と体裁のみに生きる両親の元で生まれた。物心を着いたときに言われたのは「迷惑を掛けるな」俺はそれを忠実に守った。

5歳のときから今のような生活が始まった。毎日コンビニ弁当や買い込んでいた冷食を食べて生活していた。別に不便ではなかった。少なくても金には苦労したことはないし金で苦労している人よりは幸せなんだろう。

けど、寂しかった。家でも1人幼稚園でも1人。誰もいない・・・・

 

小学校に入学した。当然親は観に来なかった。

一度だけでいい俺は親に褒められたかった。だからまずはテストで全部100点を取ろうと思った。しかし取っても親からの反応はなかった。きっと親は勉強には興味がないのだろうと思った。それで次に始めたのは・・・・

 

「バスケ・・・・か」

 

「そうです。バスケで一番になればきっと褒めてくれるだろうと思ってました・・・」

 

俺は近くのチームに所属した。幸い才能があったらしメキメキ上達していきました。文武両道じゃないと褒めないかもと思っていたので勉強も継続していきました。

バスケをやって初めて友達が出来た。シュート決めればみんな褒めてくれる。俺は嬉しかった。だから何本でも決めよう。そして全国の頂点に立って両親に褒めてもらうんだ。だから俺は1日も欠かさず努力を続けました。小4の時点で全国クラスになれました。そして小5になったある日

 

「これからの中心は御巫だ。全員御巫にボールを預けること。」

 

監督からの新しいチームの方針。それは・・・・俺を活かす為にお前らはパスだけを送り続ける機械になれ・・・・・そういう方針だった。

歯車が狂ったのはそれから。みんな俺にパスを送る。それを俺が決める。ただそれだけのバスケ。楽しかったバスケが急速につまんなく感じた。けどそれで勝てるなら、全国優勝できるならいいと思った。みんなの意志を無視して・・・・

 

「パスが遅い。もっと早く出せ」

 

「な!?ふざけんな!」

 

「俺の意に刃向うなら交代しろ。代わりはいくらでもいる」

 

俺はただただ勝利に徹した。今まで仲良かったチームメイトも俺にパスを送るだけの人形・・・・・俺自身いつしかそういう思考に墜ちてしまった。

そして全国優勝した日。やっとこの時が来たと思った。俺は急いで家に帰った。きっと今日は家に帰ってきていると思った。けど・・・・

 

そこにはいつも通りの光景しかなかった。

 

・・・・・きっと仕事で忙しいだけなんだ。だから俺が優勝したことを知らなかったんだな。俺は無理やりそう思うことにした。

そういえば三者面談も近いしその時報告しようと思った。

 

三者面談当日

 

「・・・・お久しぶりです。母さん」

 

「ええ、久しぶり。」

 

それで会話が止まってしまった。言わなきゃと思っても言えなかった。

順番が来たので母と共に教室に入る。

 

「空君。凄いですよねーテストは毎回100点ですし、この前なんてバスケットで全国優勝したんですよ。志望校があるならどこでも行けるんじゃないでしょうか?」

 

「・・・・そうですか。進路はこの子に一任してますので。」

 

「そうですか。子供の自主性に任せる!だから空君はここまで立派に育ったんですね!」

 

三者面談が終了した。

俺は母に言った。

 

「・・・・どうでしたか?」

 

「なにが?私はこれから仕事に戻るので手短に。」

 

「優勝したんですよ・・・・テストも毎回100点なんですよ・・・・何か言うことはありませんか?」

 

「何か?・・・・特に何もないわね。」

 

「・・・・・頑張ってる息子に対して何もないんですか?」

 

「息子?誰も望んでないわよそんなの。」

 

え?

 

「ああ、ちょうどいいから言っておくわね。貴方は体裁の為に生まれたの。別に望んで生んだわけじゃないわ。結婚したのも体裁の為で別に夫を愛してないわ。だから貴方がどれだけ頑張ろうが私たちは興味ないの。興味のないスポーツ選手が賞を取ったところで別に何も思わないでしょ?つまりそういうことなのよ。ああ、時間ないわ。」

 

そういって母は仕事に戻った。

 

体裁の為・・・・?興味がない・・・・?望んでいない・・・・?じゃあ俺は今まで何の為に努力してきたんだ?友達を作らず勉強して、チームメイトを捨ててまで優勝したことに・・・・・・何の価値もなかった?俺の・・・俺は・・・・ただ、両親に1度褒めてほしかっただけなのに

 

「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

そこからは抜け殻のような生活を送っていました。その時、召集があったんです。

U-13日本代表に。

 

「とりあえず休憩しま・・・・みんな?」

 

そこには皆がボロボロ涙を流していた。

 

「うぅ・・・ソーラン・・・・」

 

「ひどい・・・ひどいよぉ・・・・」

 

「うぅ・・・ひどすぎます・・・」

 

「ああ、別に泣かなくていい。大丈夫。代表合宿で少しは報われるから」

 

 

俺は召集に応じた。正直どうでもよかったけど、断る理由もなかったので

 

「全員揃いましたね?私は監督の安西と言います。みなさんよろしく。とりあえず今日は適当に五対五でもしましょうか。チーム分けも好きな人同士組んでください」

 

「かんとくーそれトラウマあるのでやめてください」

 

誰かがそういった瞬間体育館は笑いに包まれる

 

「ほっほ。じゃあ適当にランダムで決めましょうか」

 

そうして別れて、早速試合が始まる

 

「おーい!パスよこせー」

 

俺は無視してゴールに特攻して決める

 

「おい!なんで俺を無視した!フリーなの見えていたろ!」

 

「なぜパスする?俺が決めたほうが早い」

 

「は!?あ!お前あの疾風迅雷か!全国でみたぞ!うわー・・・あのジコチューと同じチームとか最悪・・・」

 

「あ?」

 

「だってそうだろ。お前大会中1回もパスしねーじゃん。どんだけジコチューだっつーの」

 

「パスなんていらないだろ。俺が全部決めるんだから。」

 

「だからそれがジコチューって言ったんだよ!そんなプレーばっかしてるといつか負けるぞ!」

 

「は?それで優勝してんだけど?・・・・・群れなきゃ何もできない雑魚がギャーギャーうるせーよ」

 

「!?・・・テメー!!」

 

俺はそいつと乱闘になった。

 

「なに仲間同士喧嘩してるんだ!お前ら2人こっちこい!!」

 

コーチの1人が俺達2人を呼んだ。

 

「一体何が原因だ?」

 

「「コイツのせいです」」

 

お互いに指を差す。

 

「ほっほ。緒方君私に任せてもらえませんか?」

 

「しかし安西監督・・・・・」

 

「いいから、君は他の子たちを見ててね」

 

そういって緒方というコーチは去っていった。

 

「さて・・・・二人の事情を聞かせてもらえるかい?」

 

俺達は監督に話した。

 

「なるほど・・・・だからといって暴力はいかんなぁ。試合中でも挑発されることもあるのに君たちはそのたびに手を出すのかい?」

 

「「いえ・・・」」

 

「試合なら2人とも退場もありえるよ。気をつけなさい。それと藤森君はもう行っていい。」

 

は?

 

「俺は?」

 

「君は残りなさい」

 

「はは、じゃあこってり絞られろよ」

 

「黙れ名無し」

 

「俺は藤森だ!」

 

藤森はコートに戻っていった。

 

「で、なぜ俺だけが残されるんですか?」

 

「聞きたいことがあってね・・・・君は自分だけが決めればいいと言っていたがもったいないね」

 

「もったいない?」

 

「パスの面白さが全く理解していない。それじゃああまりにも勿体ない」

 

「なにを・・・・」

 

「今からパスの面白さを教えてあげよう」

 

そういってコートに行く監督

 

「私も混ぜてくれんか?」

 

そう言った瞬間止まる時間。そりゃそうだ。

現役の時は知らないが今じゃデブのじじい。アップしただけで息切れしそうな巨体だ。

 

「しかし監督」

 

「いいからいいから、じゃあ御巫君も入って」

 

「・・・・はい」

 

始まる試合。そして既に息切れをおこしてる監督。そして俺にパスをしようかと思ってたのか、俺とは逆の位置にパスをする。相手はミスパスを取ろうと俺のマークから外れる

 

「(こんなんで何がパスの面白さだ・・・・え?)」

 

そう思っていたらバウンドした瞬間俺の方に方向転換するボール

 

「シュート!」

 

俺は言葉に驚いて言われるままにシュートをした。

 

「(今のは一体・・・・・)」

 

「これはまだ序章だよ・・・・まだまだ私のパスを受けてもらうね」

 

俺は今までパスなんて特に気にもしてなかったが・・・・これは・・・・

 

「(縫い目に合わせてのパス!俺だけにしか反応できない俺の為だけのパス!リズムも乱れない最高のパス!こんなに気持ちよくパスを受けれるなんて初めてだ・・・)」

 

「どうだい?気持ちよく打てるだろ?最高のパスは最高のリズムを創るんだ」

 

「最高のパスは・・・・最高のリズム・・・・」

 

「やってみるかい?色々試してごらん」

 

「はい・・・・」

 

俺は相手チームのPG(ポイントガード)に入った。

 

「またジコチューと同じチームかよ!」

 

「さっきはすまなかった。」

 

「は?」

 

「協力してほしい。」

 

俺は頭を下げた

 

「この短い時間で何があったか知らないが・・・・謝るなら許す!そして俺もごめん!」

 

「・・・・・おもしれーなお前」

 

「藤森だ。藤森祐樹」

 

「じゃあユーキ。聞け、今から色々試すけど全部予定通りだから動揺すんな」

 

「お?分かった」

 

「他のやつらも頼むよ。この時間だけ勝手させてくれ」

 

全員頷いてくれた。いいやつらじゃないか・・・・

 

 

試合はこちらが負けた

 

「なぜだ・・・・・」

 

「当たり前じゃねーか!まともにパス通ったの10本中に1本のみ!どんだけミスるんだよ!動揺じゃなくてイライラしたわ!」

 

「いや、案外難しくて・・・・でも最後に通ったパスはどうだった?結構会心だったんだけど」

 

「いや、正直おお!って思ったけど・・・・」

 

「あれを常にやりたいんだけど、どうすればいいかな・・・」

 

「じゃああの時・・・」

 

「お前ら何やってんの?あーあのパス?おーいみんなも集まって意見交換しよーぜ」

 

そうして選手たちが集まって意見交換を交わす

 

「あの中心の2人って喧嘩してたんじゃ・・・」

 

「ほっほ。子供というのはそういうものですよ」

 

その後も色々あった。一緒に練習して喧嘩してそして合宿の最後に親善試合があった。相手はフランス代表。試合は無事に勝利して合宿は無事に終わった。

 

「あの時はみんなでやるバスケが凄く楽しかったな、で、合宿終了で少し経ったころ慧心に転校することに決まった。後は・・・・自分を作った理由か。それは晴嵐にいたころの身勝手な自分と決別したかったからですね。」

 

「・・・・・女バスを辞めたのは・・・・」

 

「・・・・慧心に来たころはまだ余裕でした。でも、女バスに入ってみんなと過ごすうちに仮面を作るのが難しくなっていったんです。このままだと自分を出してしまう。そうしたらまたあの時のように俺は1人になってしまう。俺はね、どうしようもないくらい1人が嫌なんですよ。だから自分を殺して新しい自分を作った。話は以上です。」

 

「・・・・正直何て言っていいか分からない。でもU-13で少しは救われたのか?」

 

「そうですね。バスケに対しては救われましたけど、それだけです」

 

「そうか、今親は何をしてるんだ?」

 

「職場で寝てるんじゃないですか?もはや彼らが何をしようと俺は興味を持てません。俺にとって両親はお金を出してくれる他人です。」

 

「寂しくないか?」

 

「寂しいですよ・・・・・。でもどうしようもないんですよ。俺は望まれない子供なんですから。温かい家庭で育ったお前らに理解出来ないのはしょうがないけどな・・・・」

 

「分からないよ!いっぱい話されて頭こんがらがってるけど、上手く言えないけどでも・・・でも・・・・・ソーランは望まれない子供じゃない!」

 

何を言ってるんだ?

 

「あたし達がいる!あたし達がソーランと一緒にいるから寂しくない!」

 

「ああ、同情か?そりゃこんな話聞いたら同情くらいするか。ただそういうのは望んでないんだ。同情するくらいなら腕を離せ」

 

「同情じゃないわ。いえ、多少入ってるかもしれないけど・・・・・それ以前に空は仲間でしょ?私たち女バスのね・・・・」

 

「仲間?さんざんお前らに冷たくした俺が?言っておくが俺は本来冷たい人間だ。お前らと一緒に居るべき人間じゃない」

 

「冷たくないよ。本当に冷たいなら私をイジメから守らなかったはずだよ。」

 

「それは作っていたからだ。俺が作った御巫空はそういう人間だ」

 

「もっと単純に考えていいんじゃないかな?私たちは空君と一緒にいたい。たとえそれがどんな人間でも・・・・空君も単純に考えていいんだよ。空君は私たちと一緒にいたくないのかな?」

 

「俺は・・・・」

 

「ひなも、ソラといっしょにいたい。ずっと一緒に・・・」

 

「・・・・・」

 

「ここで重要なのは空の本心だ。空自身はどう思ってるんだ?」

 

「俺は・・・・・・もう1人は嫌だ・・・・1人でご飯なんて食べたくない。1人で暗い部屋に帰りたくない。1人で寝たくない・・・・・俺はお前らと一緒にいたいよ」

 

「じゃあ一緒にいろ!きょひけんはないからな!ソーランはもう1人にさせない!」

 

「無理だよ・・・・俺は・・・・」

 

「無理じゃない!じゃあソーランは今日からうちの子にする!」

 

「ま、真帆?あんた何言って・・・・」

 

「パパに電話して掛けあってくる!絶対に空を救うからな!」

 

そう言って真帆は電話をかける

 

「あ、パパ?ソーランを息子にして!・・・・ソーランもいいって言ってるから!」

 

言ってないよ!?

 

「うん、えっと・・・・いくじほうき?で、なんとかなる!!」

 

「真帆・・・・・?ちょっと・・・・急展開すぎてついてけない」

 

「あはは・・・真帆の行動力って凄いなぁ・・・・」

 

「おー。ソラ。三沢空になる?」

 

そうして電話が終わると

 

「ソーラン!事情話したらパパがんなんとかしてくれるって!息子欲しかったしソーランならいいよって!」

 

風雅さん!?ちょ・・・・

 

 

一週間が経ち球技大会も無事に終わった。

 そこからは話が速かった。育児放棄の証拠や証言がすぐに集まったので親権を剥奪し俺は正式に三沢家の養子になることになった。

 

「と、言うわけで御巫空改め三沢空です。怒濤の展開すぎて自分自身ついていけません。先日は色々ご迷惑をおかけしました。改めて女バスに入部するのでこれからもよろしくお願いします。」

 

俺は改めて女バスの前で自己紹介をした。

 

「硬い!硬いよにーちゃん!」

 

誕生日は真帆のほうが遅いのでこれからはにーちゃんと呼ばれるようになった

 

「悪いな・・・なんかもう・・・・考えるの面倒になった」

 

「しょうがないわよ。まぁこれからもよろしくね。」

 

「おー。よろしくソラ」

 

「よろしくね!空君!」

 

「空君が真帆と兄妹か~・・・・」

 

「さて、空の紹介も終わったし練習始めるか!」

 

『はい!』

 

 

苗字が変わったおかげか分からないけど、新しい自分になれた気がする。

これからも色々悩むかもしれない、トラウマがフラッシュバックするかもしれない

けど・・・・

 

「にーちゃんも練習するぞ!」

 

「分かってる。そう急がなくていいだろ」

 

新しい妹と、女バスのみんながいればなんとかなるって思う気がするんだ・・・・

 




球技大会?カットです
色々気にしないでください。シリアスはとっとと終わるべしがモットーなので
真帆が妹になりました。勢いで書くとロクなことにならんな

それにしても安西監督・・・・いったいどこのカーネルおじさんなんだ・・・


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第6話

俺が三沢家の養子になって1ヶ月近くが経った。

最初は全く慣れず困惑していたが周りもよくしてくれたので大分早く慣れることができた。

 

「真帆、朝だし起きなー」

 

「う~ん・・・・・」

 

俺は隣で眠っている真帆をゆすって起こす。

俺が住み始めてから一緒に眠ってくれている。俺が寂しい思いを二度としないようにとのことだが・・・・

 

「(俺はこの子たちがいる限り、寂しい思いなんてしないんだけどな)」

 

真帆や女バスのみんなに救われてからどうやら俺は変わったらしい。前に真帆の父である風雅さんが言っていたが、年相応の笑顔が増えたらしい。

と、朝の日課を熟さないとな。

 

「ほら、朝連するんだろ?早く起きないと練習できないぞ」

 

「うん・・・起きる・・・」

 

「じゃあ着替えて庭に集合。ほら自分の部屋に戻って」

 

「はーい・・・・」

 

そういって自分の部屋に戻る真帆。

俺も着替えて庭に行く。

 

庭にはバスケットゴールが2つある。ちゃんとコートとしても利用できる。前に風雅さんに頼んで設置してもらったらしい。

真帆の家はお金持ちだ。メイドさんもいるし家は豪邸。金持ちが多い慧心の中でも真帆の家は最上位だろう。

 

「にーちゃんきたぞー!」

 

「じゃあ、始めようか」

 

俺と真帆は毎朝この時間に練習してる。もっと上手くなりたいから教えてほしいらしい。とは言っても俺自身人に教えるのは苦手なのでもっぱら1on1ばかりやっている。

 

「今日こそ勝つ!」

 

「100年早い」

 

そして今日も俺と真帆の戦いが始まる。

色々あったが今の日常に俺は満足している。

 

 

「今日も負けたー!」

 

真帆が悔しそうに言う。

 

「まだまだ兄として負けるわけにはいかないんだよ」

 

「うー・・・・いつになったらにーちゃんに勝てる?」

 

「そうだなぁ、真帆も普通の人より成長スピードはあるけど俺も成長してるから・・・学生でいるうちに追いつけるといいな」

 

「なんだよー・・・そんなに差があるのか?」

 

「真帆はバスケ本格的に教わり初めてまだ1、2ヵ月そこそこだろ。俺はこれでも年代別日本代表だぞ。それで負けたら立つ瀬がなさすぎるよ」

 

「でも負けるの悔しい!」

 

「負けて悔しいって思いはずっと持ってろよ。その思いがある限り成長が止まることはないから」

 

「うん!明日は勝つ!」

 

「だから100年早いって」

 

自主練が終わって俺達は朝ごはんを食べるために食堂に向かう。

 

「やぁ、おはよう。まほまほに空」

 

「おはよう。真帆に空」

 

そこでは父である風雅さんと母である萌衣さんが席に座っていて俺達を待っていた。

 

「おはようございます。すみません待たせてしまいました。」

 

「おはよー!パパ!ママ!」

 

「いや、さっき来たとこだからね。大して待ってないよ」

 

「そうですね。ところで真帆、もっと行儀よく挨拶なさい」

 

「う・・・・」

 

萌衣さんは真帆の天敵だ。行儀に関して厳しい萌衣さんとそこら辺無頓着の真帆では合わないのは仕方がない。だからといって別に仲が悪いわけでもないので俺はあまり気にしないことにしてる。

 

「まぁ、その辺にして食べよう。」

 

そうしていつも通りのやりとりをしながら朝食を食べる

 

これが三沢家の朝の風景。

 

 

放課後になり練習が開始される。

慧心学園女子バスケットボール部の練習時間は16時~18時まで。これ以降だとスクールバスにも乗り遅れるのでこれ以上の練習は出来ない。

 

「試合出たい!」

 

練習が終わり真帆の不満が爆発する。

しかし残念ながらこのままだと女バスは公式の大会には出れないのだ。

最初はみんなでワイワイやれればいいというスタンスだったが男バスとの試合を経験してから時折こうして騒ぎ始める。

 

「なーにーちゃん試合ないの?」

 

「あー・・・・そうだなぁ・・・昴さんに聞いてみるといいよ」

 

俺は昴さんに丸投げした。真実を教えて泣かれるのは嫌なのだし・・・・

 

「空君・・・昴さんが可哀想だよ」

 

「智花・・・・だってしょうがないだろ。」

 

そうして話してると昴さんが愛莉のもとに行って、爆弾を落とした

 

「俺・・・・愛莉のことすごい大切に思ってるから!」

 

・・・・・・は?一体何があったんだ・・・・

 

「昴さんって愛莉のことが好きなのかな?」

 

「いや、そんな感じで言ってる様子じゃなかったけど・・・・」

 

盛り上がる体育館。どうやらみんなの反応で自分が何を言ってるか理解したらしいけど・・・・

 

「ち、違う!そういう意味じゃなくって俺は愛莉の事がかけがえのない存在だと・・・・」

 

いや、何も変わってませんよ・・・・?

 

「そ、そらくぅん・・・・」

 

愛莉がこっちを見て涙目になっている。

 

「いや、多分そういう意味じゃないから・・・・え?泣くほど告られたのが嫌だったの?それならそれであまりに昴さんが可哀想なんだけど・・・・」

 

昴さんがガックリ肩を落としているところで話の真意をきいた。

 

 

「なるほどねー、愛莉が元気なさそうだったから元気づけようかと思ったんですか」

 

どうやら前の試合で大したことを教えなかったことが原因で落ち込んでると思ったかららしい。

 

「そ、そういうこと・・・・・」

 

「愛莉が元気なかったのは前の試合のことじゃなくて、プールが原因なんですよ」

 

「プール?」

 

「愛莉泳げないみたいなんで・・・・・」

 

智花が補足する。

 

「そうだったのか・・・・」

 

「ま、あまり気にしなくていいですよ。今回はバスケとは無関係なんで」

 

そうして解散することになった。

 

 

俺は家で・・・・・真帆が女バスのみんなとチャットをやってるのを横で眺める

 

「これって真帆が作ったチャットなんだって?」

 

「そうだよーにーちゃんもやる?」

 

「俺こういうの苦手だからいいや」

 

「ちぇー・・・・あ、アイリーンに水泳教えることになったからにーちゃんも協力してくれよ!」

 

「水泳なぁ・・・・得意でも不得意でもないけど教えるほどじゃ・・・・」

 

「そっかー・・・・じゃあすばるん呼ぶ?」

 

「昴さん?水泳出来るか分からないけどいいんじゃないか?ここなら問題ないだろうし」

 

三沢家にはプールもついている。

 

「じゃあけってー!」

 

 

水曜日の放課後。俺達は早速昴さんに頼み込んでみる

 

「で、どうでしょう?愛莉のコーチをお願いしてもいいですか?」

 

「うんいいよ。泳ぎは別に得意ではないけど、俺で役に立てるなら」

 

よかったー。断られたらどうしようかと思った。

 

「では土曜に真帆・・・・と俺の家に来てくださいね。智花に案内を頼みますので」

 

「え?家?」

 

「家にプールがあるんですよ・・・・・」

 

「そ、そっか・・・・」

 

さてこれでOK.後は・・・・

 

「智花ー土曜に昴さんを迎えに行ってほしいんだけどいいか?」

 

「うん、いいよー。」

 

これで準備OKだな。

 

 

土曜日になった。今日は昴さんがうちに来て愛莉のコーチをしてくれる

 

「後は昴さんを待つだけだけど・・・・・愛莉、その姿は・・・」

 

「だって恥ずかしいもん・・・・」

 

愛莉は水着の上から布を身体に巻き付けていた。

 

「大丈夫だって!すばるんもにーちゃんも褒めてくれるよ!」

 

「そうよ、恥ずかしがっちゃ余計に目立つし・・・」

 

「・・・・俺は愛莉の水着姿を楽しみにしてたんだけどなー。愛莉が隠してたら悲しいかも・・・」

 

「・・・じゃあ」

 

愛莉は布を広げた。なるほど

 

「オレンジのビキニか。愛莉によく似合ってていいんじゃないか?」

 

「・・・・そう?ありがとう空君!」

 

そうして昴さんと智花が来たので練習に入る。

昴さんの指導のかいあって少しは水に対する恐怖心は和らいだらしい。

 

 

ある日の放課後。

 

いつも通り練習していると体育館の扉が開かれる。

てっきり美星先生だと思ったがそこにいたのは・・・・

 

「昴・・・・」

 

「あ、葵!?み、みんなは練習してて!」

 

そうして昴さんが葵さんという人を連れて外に行った。

 

「あれって誰なのかな?」

 

「うーん、昴さんと親しい友人か恋人ってところかなー。親しくもないのにわざわざここまで来ないだろうし」

 

「そっか、大丈夫かな?昴さん」

 

「戻って来たときに聞いてみるか。じゃあスリーメンの続きから・・・・」

 

そして俺達は練習に戻った

 

少しすると戻って来たので聞いてみると幼馴染ということが分かった。

 

「(幼馴染ねー・・・・事実なんだろうけど、相手は昴さんのことをどう思ってるのやら)」

 

わざわざ気になってここまで来る時点で察しはつく

 

 

 

土曜日になり再び愛莉の水泳指導。

 

昴さんとみんなで水慣れの為鬼ごっこをしていたのだが、

そこでまた問題が起きた。なぜかあのお姉さんが家に来ていたのだ。

 

「で、やんばるはなんでこの人を連れてきたんだ?」

 

「すみません、悪い人には見えないもので・・・・」

 

はぁ、面倒臭いことになったな・・・

 

「今あんたはこんなことをしてる場合じゃないでしょ!」

 

「必要なことなんだよ!」

 

2人は喧嘩になってるし皆はオロオロしてるし

その後帰る帰らないの下りが始まりみんなは昴さんを守る為に盾になる。

 

「この場面だけ見ると異様にお姉さんが悪者だけど、最初から昴さんがシッカリしてればこんなことにならなかったと思うんだけどね。やんばるはどう思う?」

 

「ノーコメントで」

 

しかしテストが近かったとは・・・・言ってくれれば・・・いや、昴さんのことだし結果は変わらないか。

俺はみんなのもとに行き言葉を紡ぐ。

 

「ねぇ、お姉さんは昴さんを取り返したいんだよね」

 

「取り返すって・・・・別にそんなんじゃ」

 

「いやいや、俺達から昴さんを取るつもりなんでしょ?2人の間に何があったかなんて知らないけどさぁ・・・・・傲慢すぎじゃない?」

 

「は・・・?」

 

「アンタが昴さんの為に色々やったのは理解できた。けど、そんなのアンタが勝手にやっただけだろ?なぜ昴さんに構う?ただの幼馴染如きが・・・・昴さんが何をしようとアンタには関係ないよな?アンタが何をしようとアンタの勝手だけど、それを昴さんに押し付けんなよ。」

 

『(き、厳しい・・・・)』

 

「やっぱり身内以外には厳しいね・・・・」

「おー。あの空はすこしこわい・・・」

「味方のときは頼もしいけどね」

 

そこで少し沈黙した葵は

 

「じゃあ賭けをしない?」

 

「しない」

 

「・・・・・え?」

 

「受けるメリットがない。どうせ昴さんを賭けてバスケで勝負とか言うんだろ?」

 

「そ、そうだけど・・・・いいの?そっちが受けないなら二度と昴をあなた達の元には行かせない。なにがあろうとも・・・・監視してでも勉強と自分のバスケに集中してもらう」

 

「へー・・・・そんな事したら昴さんはアンタをずっと他人として接するだろうね。よかったな、幼馴染から格下げだってよ」

 

「・・・・・負けるのが怖いの?」

 

「小学生相手だから随分強気だね。程度が知れるよ?」

 

俺とお姉さんはニラミ合ってる。

 

「(こ、怖い・・・・・というか俺が当事者なのに・・・・)」

 

「・・・・まぁ、アンタが純粋に昴さんの為を思ってるなら賭を受けようじゃないか」

 

「な!?あたしは別に昴のことなんか・・・・」

 

「いいからいいから、ここまで来てる時点で否定してもしょうがない」

 

さて、じゃあどんなルールにするかな・・・・

 

「まずはそうだな・・・・こっちは昴さんが育てた女子5人対あんた1人でどうだ?」

 

「ダメよ。せめて2人にしなさい」

 

「まぁ、そう言うだろうな・・・・けどこっちは5人一緒じゃなきゃ意味がないんだ。その代わりそっちは適当に助っ人を用意して構わない。ただし2人まで。高校生と小学生なんだ。人数はハンデとしてもらおうか」

 

「いいわよ。5対3ってことね」

 

「そうだ。長くやってもしょうがないし10点先取で。スリーはなしで。後は・・・・こちらからは特にない。ただリングはこっちはミニバス用。そっちは普通用でいいか?」

 

「分かったわ。こっちも特にない」

 

「じゃあとっとと終わらせたいから明日10時にここで。急な助っ人だが何とかしろよ」

 

「言われなくても」

 

そういって葵は帰って行った

 

「さて・・・・悪いなみんな頑張ってくれ」

 

「大丈夫!すばるんはぜったい渡さない!」

 

「うん、頑張りましょう!」

 

「おー。ひなも頑張る」

 

はぁ・・・・身内以外に冷たくするクセ直さないと・・・・

 

「昴さんもすみません。幼馴染相手に酷い事言いました」

 

「いや、いいよ。葵も悪いしね」

 

さて、とりあえず明日か・・・・・

 

 

 

日曜日。晴れ

 

昴さん奪還の為、葵さんと戦うことになった俺達は・・・・

 

「あれが助っ人でいいのか・・・?」

 

「いいのよ・・・・」

 

「大変だな・・・・」

 

「中学で慣れたわ・・・・」

 

助っ人は2人の水着姿のお姉さんだった

 

「じゃあ、アップしたな?そろそろ始めるぞ。審判は昴さんで俺が代理の監督をやる」

 

俺は5人のところに戻って作戦会議をする。

 

「公平感のためにお互いノーデータだ。が、こっちのほうが数は多い。常にボールを持ってる1人に対して2人のマークをつくこと。後はそれぞれ1人について、残った1人はフォローに徹するように。」

 

『はい!』

 

「後は様子見て色々指示を出す。絶対昴さんを渡すなよ」

 

『おう!』

 

さて、試合が始まったけど・・・・・やはり高校生の経験者は強いな。愛莉も怯んでるし・・・

 

そして1回目のタイムアウトを取った。

 

「まずポニテの強さや残り2人は分かったな?じゃあポジション変えるぞ。智花と愛莉がチェンジ。智花の身長じゃ平面では勝負できても高さ勝負じゃ勝てない。愛莉出来るか?」

 

俺は愛莉の返答を待つ。

 

「・・・・怖いけど・・・・やってみる!」

 

「よし、愛莉はゴール下でポニテが来るのを待て。残り2人に対してはそれぞれ2人ずつケアしてこい」

 

「それって・・・・・」

 

智花が口を開く

 

「ポニテと愛莉の1on1。ゴール下限定のな」

 

俺は愛莉に向けて言う

 

「この勝負は愛莉にかかってるってことだ。お前が負けたら昴さんは帰ってこない」

 

いい機会だし愛莉には思いっきり成長してもらおう。ポニテにはその為の踏み台になってもらう。

 

「頑張るよ!」

 

「なら行って来い。オフェンスは今まで通りだ」

 

 

 

色々あったがポニテが試合放棄した為にこちらの勝利で幕が閉じた。

どうやら俺達のことを認めてくれたらしい。

今は女バスのみんなでプールで遊んでいる。

俺と昴さんはプールサイドで話をしていた

 

「まぁ、これからは何も気にせず指導してもらうってことで・・・」

 

「うん・・・・」

 

「で、実際どう思ってるんですか?あのポニテのこと」

 

「ポ、ポニテ・・・・・葵には感謝してるよ。俺の事情って知ってるっけ?」

 

「美星先生から少しは。バスケ部復活させるために頑張っている程度です」

 

「うん・・・・その手伝いとかもしてくれてるんだ。勉強とかにも世話になってるし小さいころから助けられてる」

 

「そうですか・・・・この間は余計なこと言って間に入ってすみません」

 

「それ・・・・葵にも言ってやって。多分気にしてるかもしれないから」

 

「分かりました・・・・・葵さーん!」

 

俺はプールで遊んでいる葵さんを呼んだ

 

「なに?」

 

「昨日はすみません。それと・・・これからよろしくです」

 

「うん、私も昨日は大人気なかったしいいよ!」

 

「ありがとうございます。まぁ、それだけです。あ、それと・・・・」

 

俺は葵さんに耳打ちする。

 

「昴さんは、貴方に助けられて感謝してるそうですよ」

 

「そっか・・・・」

 

俺は2人きりにさせてあげようと皆の元に行く

 

「おー少年も来たか!」

 

「ええ、折角なので2人きりにさせようかと・・・ジョージさんでしたっけ?」

 

「そうだよーじゃあ遊ぼうか!」

 

「はい!」

 

それから皆と色々遊んだ。

 

 

 

ある日の放課後

 

「みんな!葵からの紹介で他校との合同練習が決まったぞ!」

 

おー良いね。公式戦には出られないしうちにとっては渡りに船だ

 

「相手ってどこですか?」

 

紗季が聞く。

 

「硯谷女学園ってとこらしい」

 

「硯谷ですか・・・確か全国常連の強豪ですね。」

 

「知ってるのか?」

 

皆が俺の方を見る。

 

「ええ、そこの選手の1人と知り合いなんですよ」

 

未有とは去年の全国以来だけど元気にしてるだろうか?こっちも色々あって連絡とって・・・・去年連絡先聞いてから1回も連絡してねーや

 

「なら空には橋渡しを頼もうかな」

 

「・・・・ええ、任せてください」

 

どうしよう・・・・・あいつ俺の事覚えているだろうか・・・

 

 

そうして色々不安要素がある合同練習が始まる

 



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第7話

合宿スタート


「山登りキツイなぁ・・・」

 

俺達は今山登りをしていた。

最初は美星先生の送迎で山の奥にある硯谷女学園に向かっていたが途中で体調を崩した美星先生を救急車に乗せる。その後俺達は美星先生に言われて徒歩で硯谷に向かうことになった。

 

「みーたん大丈夫かな?」

 

「大丈夫だろ。ただの盲腸らしいしすぐに元気になるさ」

 

俺は真帆を慰めて山を登る。そうして登りっ切ったさきには建物が見えた。

守衛に話を通して顧問の先生を呼んでもらう。

恐らくあの女性がコーチか・・・・去年みたし間違いないな

 

まずは遅刻の謝罪をしたが・・・・

 

「(機嫌悪そうだなぁ・・・・愛莉もビビってるし・・・・でもこんなにキツそうな人だったっけ?)」

 

「顧問はいつこちらに?」

 

「分かりません・・・・急な盲腸なので」

 

「盲腸の人間が車を運転できるわけないでしょ?わざと大げさに言って同情を引こうなんて感心しませんね」

 

俺は言い返そうとする真帆とひなを抑える。

 

「(なにすんだよにーちゃん!)」

「(おー。ソラはなして)」

「(たださえ立場が弱いのにここでお前らが反抗したら余計立場が弱くなるだろ。いいから今は抑えてくれ)」

 

とりあえず話はなんとか済んで、合同練習は明日からということになった。バスケが出来ないのは痛いが、ここに来る山道でも充分トレーニングになったしとりあえず納得はする。

 

そして宿舎に案内される・・・・と思っていたが、案内されたのはキャンプ場だった。

話に聞いてないと昴さんは言うが双方に連絡の行き違いがあったらしく話が拗れる

 

「なら、帰ってもらっても構いませんよ」

 

その一言で俺達はここで寝泊まりすることになった。用具はこちらで借りれるらしいのでよかったのと、皆はキャンプでテンション上がってるのが救いだった。

 

「暗くなるまでにテントの準備しちゃいましょう。」

 

テントの準備をする俺達。

そこで昴さんと葵さんが怪我をした1人の女性と話していた。

どうやら行き違いの発端は彼女とショージさんが原因らしい。困ったものだ

 

 

夜になる。どうやら浴場まで案内をしてくれるということで俺と昴さんは怪我をした女性・・・野火止さんに案内される

 

「ごめん、こんなところで・・・・」

 

「いえ、夏ですし・・・・」

 

そこは夜でも使用可能な手洗い場だった。女学園だしこれはしょうがないね・・・

 

「じゃあ昴さん先にどうぞ。俺はトイレに行ってきます。」

 

俺がトイレに行き戻ろうとすると女子の悲鳴が聞こえた。

方向は昴さんのいるところだし、なにかあったのかと思って向かってみると・・・

 

「未有!?」

 

こっちに向かって走ってくる女子だった。

 

「男!?・・・・って空!?なんであんたがここに・・・・それよりオオサンショウオウの男をみたの!」

 

「オオサンショウオウ・・・・」

 

一体こいつは何を見たんだろうか・・・・

 

「まぁ、落ち着きな。」

 

俺は未有の頭を撫でる

 

「うん・・・・・」

 

どうやら落ち着いてくれたみたいだな。

俺達は地べたに座りながら話す

 

「で、何であんたがここにいるの?」

 

「うん?合同練習の話聞いてない?慧心学園の女バスにいるからだよ」

 

「は!?意味分かんない!何で!?」

 

「色々事情があってねー。未有は元気そうでなにより」

 

「・・・・なんで連絡くれなかったの?」

 

「色々忙しくてね・・・・正直忘れてた」

 

「未有ずっと待ってたのに・・・・・」

 

「うん、ごめん・・・・」

 

「・・・・大会は?」

 

「小学生でいるうちは出ない。U-13に呼ばれたら行くけど・・・・多分、今年は何も実績ないから呼ばれないだろうね。だから去年のが小学生最後の大会だな」

 

「それでいいの?」

 

「いいんだよ。今の環境は気に入ってるし、来年になったら男バスに入るから・・・」

 

「・・・・未有は嫌だよ・・・」

 

「未有・・・・」

 

「空のプレーが見られないのは嫌。去年が最後なんて絶対認めない。」

 

「・・・・・そんなこと言われても・・・来年になれば全国で見れるじゃないか」

 

「そうかもしれないけど・・・・長いよ・・・・」

 

「じゃあここで見せるから我慢してくれ」

 

「え?」

 

「合同練習には俺も参加する。お前らの顧問も渋られないはずだろ。それで我慢してくれ」

 

「・・・・分かった。約束だからね」

 

そういって未有は去っていった。

 

 

そして翌日

 

「ぎゃー!なんでなんで!?空以外の男がいるなんて聞いてない!!!」

 

未有の男アレルギーが発生した。

めちゃくちゃ罵倒をする未有。昴さんは何故か安堵している。

 

「納得できない!それに先生!空はともかく彼女たちが私達の練習相手になるなんてとうてい思えない!大会だって近いのに余計なことして遊んでる暇なんてないと思います!!」

 

そういうとこは変わってないのか・・・・

 

「大会が迫ってるのは私が誰より分かっています。レギュラーの邪魔をさせません。だから慧心さんには下級生の練習に合流してもらいます。」

 

は・・・・・?

あの監督・・・・・みんなが抗議をあげる。俺はそれを止めるつもりはない。今回は俺も参戦しようと思ったが・・・・

 

「つくりかけのバスケチームなんて相手になるわけないし!」

 

未有・・・・・

 

言ってはいけないことを言われてしまった。どういうことか真帆が聞いて、それを小馬鹿にしながら説明をした。ミニバスは規定で10人以上いないとチームとして認められないからだ・・・・それを知った真帆はショックで飛び出してしまった。

俺も真帆を追う

 

真帆を見つけたので話しかける

 

「真帆・・・・・ごめんな」

 

「にーちゃんは知ってたのか?」

 

「ああ、ミニバスやるうえで当たり前のことだからな・・・・」

 

「なんで・・・・?」

 

「ミニバスの交代ルールに関係するからだ。必ず1Qから3Qまでに10人以上の選手が1Q以上出ないといけないルールが存在する。だから最低でも10人必要なんだ」

 

「・・・・・そっか、じゃあ諦める」

 

「バスケを?」

 

「ううん、大会を」

 

「バスケは続けるのか?」

 

「もちろん。最初は人数増やしせばいいとか思ったけど・・・・違うんだよ。数合わせなんてダメ。それはしたくない」

 

「・・・・・そっか。小学生のうちは公式戦出られなくても?」

 

「もちろん!バスケ好きだし!」

 

もう大丈夫そうだな、

 

「じゃあ戻ろうか、多分ひな辺りが主導で下級生に混ざって練習してるだろうし」

 

「なんでひなが?」

 

「ひなが一番上手くなりたいって思ってるからだよ」

 

「?」

 

ひなは自分が上手くなるならどんなことでもするだろう。二度と仲間の足をひっぱりたくないと思っているから。だから俺にこう言ったんだ。

 

「みんなの為にソラのバスケットを教えて」

 

俺は毎日昼休みにひなを鍛えている。俺の指導は厳しいのに、それでも仲間や自分の為に努力を続けているひなを俺は尊敬する。

 

翌日

 

「え?試合をすることになったって本当ですか?」

 

「そうなんだよ、急に向こうの監督に謝罪されてさ。でもいい機会だし本気で倒しに行こうって思って」

 

「へー・・・・なんか心境の変化でもあったんですかね」

 

どうやら合宿最終日に練習試合をすることになった。それにしてもあれだけこちらを見下してた監督がねぇ・・・・

 

まぁいい。俺は今は下級生と混じって練習している。やはり下級生の中には素材がいいものもいるので俺は指導していた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ああ、いいよ。今言ったことを改善すればもっと安定感が増すから」

 

「はい!」

 

少し疲れたので俺は壁に背を預ける

 

「・・・・で?チラチラみてるけど未有は何か用か?」

 

「べ、別に見てないし!私も休憩中だからたまたま・・・・」

 

「・・・・なぁ、何で真帆たちにあんなこと言ったんだ?」

 

「だって・・・・未完成のチームなのは事実でしょ!それにあんなチームに空が入るのが許せない!!」

 

「どのチームに入ってるかお前には関係ないし俺の自由だ。お前に文句を言われる筋合いなんてない」

 

練習してる子たちがみんなこっちを見る

 

「あんな未完成なチームに入って空は何を得られたの?あんなところで1年棒にふるなんて考えられない!!」

 

「色々貰ったんだよ・・・・・決して他のチームじゃ得られないものが・・・」

 

「・・・・・・だったら私が倒す。」

 

「は?」

 

「明日の試合。絶対負かしてやるから!空の認めたチームなんて私は認めない!」

 

そういって未有は去っていった。

 

「おやおや~未有が君だけ邪見にしなかったのは知り合いだったからなんだね」

 

「・・・・麻奈佳さん」

 

「いやー未有が男を邪見にしなかったのは君が初めてだったから気になってね」

 

「去年の全小で会っただけですよ」

 

「へー、あの疾風迅雷と知り合いだったとは未有もやるね」

 

「・・・・知ってたんですか?」

 

「うちのみんな気づいてるよー。去年の全小のMVPで歴代最多得点者。そしてU-13日本代表のエース。御巫空」

 

「あ、今は三沢空なんで・・・・」

 

「ありゃりゃ。訳ありかー・・・・」

 

「ええ、取るに足らない事情ですよ。それよりそちらの監督さん。心境の変化でもあったんですか?」

 

「ああー、まぁお姉ちゃん余裕がなかったからねー」

 

「だから去年見たときよりも顔つきが険しかったんですね。でも今は余裕を取り戻せたんじゃないですか?」

 

「そだねー。いい感じだよ。未有も珍しくやる気あるし、明日は勝てるかな?」

 

「慧心のみんなならきっと勝ちますよ。俺も出たいんですけどねー」

 

「あはは、それは残念だね。じゃあそろそろ戻るよ」

 

そう言って麻奈佳さんは戻った

 

 

夜テントで

 

「空君・・・・今日何かあった?あっちの子と」

 

「ああ、ちょっとモメただけ。気にしなくていいよ愛莉」

 

「そっか・・・・明日は勝ちたいね」

 

「大丈夫。きっと勝てるさ」

 

「おー。ひなもがんばる」

 

俺はひなの頭に手をのせる

 

「おおう。ひなの努力はよく知ってる。明日は目に物みせてやれ」

 

「おー。めにものみせる」

 

「じゃあ明日に障るとマズイし早く寝ようか」

 

俺達は寝袋で寝た。

 

 

 

今日は試合の日。

お互いが全力を出して気持ち良く終わってくれるといいけど・・・・

 

「とりあえず無事に終わってくれればいいです」

 

「・・・・なにかあった?」

 

さぁ、試合の開始だ

 

 

まずはジャンプボールは愛莉が制した。しかしそのボールは向こうのPGにカットされた。相手はすぐに未有に送ってレイアップを決める。

 

「ザル。弱い。そして雑魚。なんでこんなチームなんかに・・・・」

 

智花がボール運びをして敵の密集地で真帆がボールを呼び込む

悩んだ智花だったが真帆の言う通りボールを預ける。

 

「くらえチビリボン!」

 

「誰がチビリボンよアホリボン。不快、そして笑っちゃう。へたくそ」

 

「う、うるさいな!あほじゃねーし!」

 

ボールはすぐに未有に取られて速攻で点を奪われる。

 

タイムアウトが取られる。

これからはPGに紗季が入り、智花はボール運びから解放される。

 

「なんで最初からこの形にしなかったんですか?」

 

「まだ多少の不安要素があったから。けど真帆の暴走でそう言ってられなくなった。智花じゃ真帆の暴走を止められないけど、紗季なら止められるだろ?」

 

「ま、そうですけどね・・・・」

 

そして紗季のPGがうまくハマってくれた。暴走状態の真帆も落ち着いてくれたので勝負はこれからだろう。

 

そしてエース同士の対決が始まる。未有は小6で考えても中々のプレイヤーだ。智花なみに小さい体で名門のキャプテン。技術が素晴らしいのは理解してる・・・でも

 

「(同年代の女子で智花が負けるなんて想像できないな・・・・)」

 

実際勝負は智花が勝った。オフェンスでは未有を抜きディフェンスでは未有からスティール。エース対決の勝敗は明らかだった。

 

「・・・・多分、悪い癖が出ますよ」

 

「癖?誰の?」

 

「向こうのキャプテン。技術はあるのに精子面が子供すぎなので。勝ってる間はいいですけど負けてる時は感情のまま行動します」

 

「じゃあそこを突こうか」

 

そうして未有をひたすら追いつめる慧心のみんな。

 

「ちびリボンさっきから取られてばっかじゃん。ププ」

 

「は?み、未有は別に・・・・」

 

「にーちゃんの知り合いって聞いてたからもっと強いもんだと思ったけど・・・」

 

「は?にーちゃん?それって・・・・」

 

「ソーランだよ。御巫空。今は三沢空だけど、うちのにーちゃんになったんだ」

 

「・・・・は?なにそれ・・・・・空があんたなんかと兄妹になるわけないじゃない!ふざけんな!」

 

「事実だし。いつも一緒にいるんだー。」

 

 

未有side

 

 

「事実だし。いつも一緒にいるんだー。」

 

空と出会ったのは運命だと思った。私の唯一の拒絶反応がない男。だから初めて会ったときはこの人しかいないと思った・・・・私は・・・・空が好きなのに・・・・

いつも一緒?こんなやつと空が・・・・・認めない絶対認めてやるもんか!

 

 

未有sideout

 

 

「ふっざけんな!!!空は私のものだ!!お前なんかに渡すもんか!!」

 

体育館中に響き渡る未有の声・・・・・あれ?俺今告白されたの?

 

「ふざけんてのはチビリボンのほうだろ!空は私のにーちゃんだぞ!渡すわけないだろ!」

 

「黙れ!私が一番最初に出会って好きになったんだ!邪魔をするな!!}

 

いま・・・・・試合中なんですけど・・・・

 

「未有!」

 

「麻奈佳先輩・・・・」

 

「ごめん長谷川君・・・・1度だけ交代していい?」

 

「・・・・どうぞ」

 

「じゃあ未有と・・・・5年生の子で交代しようか」

 

「な、何でですか!?私はこいつらを叩き潰さなきゃ・・・」

 

「未有・・・・あんまり硯谷を舐めるな。未有は硯谷のキャプテンだろ。私情でチームに迷惑懸けていいと思ってる?お前の行動はうちのチームに泥を塗る行為だ。下がれ」

 

「で、でも!」

 

「下がって!!」

 

歯を食いしばりながら未有は下がる

 

「・・・・チャンスですね。相手のエースが下がった今絶好の好機です」

 

「本気で言ってる?」

 

「・・・・俺も下がります。すみません」

 

「うん、行ってやったほうがいいね」

 

俺は未有のもとに向かう

 

未有はすぐに見つけた。

 

「顔洗ってたんだな。すぐに見つかってよかったよ」

 

「・・・・何の用?」

 

「体育館で言ったことは・・・」

 

「・・・・本気。私は空が好き・・・・初めて会ったときから好きだった」

 

「そっかぁ・・・・・嬉しいけど試合中にビックリした笑」

 

「だってあれはチビリボンが・・・・ホントなの?チビリボンと兄妹なんて」

 

「ホント。最近兄妹になった。」

 

「なんで・・・・」

 

「理由を話すと長くなる。でも、俺にとっては救われたことだった」

 

「そうなんだ・・・・私じゃダメ?恋人になれない?」

 

「・・・・未有、うちのみんなはどうだった?」

 

「みんなまだへたくそ。けど、1人だけ強かった」

 

「そのへたくそに追い詰められてたな(笑)」

 

「う、うっさい!別にあいつらごとき私が本気を出せば・・・・」

 

「じゃあ本気を出してくれ。お前はキャプテンだ・・・・お前がいないせいで負けていいのか?」

 

「・・・・・返事は後で聞かせてね」

 

未有は体育館に戻っていった。

 

「・・・・・はぁ・・・」

 

俺も体育館に戻った。

 

 

「お願いです。試合に出してください」

 

未有は頭を下げていた。

 

「下げる相手違うんじゃない?慧心さんが許可するならいいけど」

 

未有はこちらにきて選手とベンチに頭を下げた

 

「試合に水を差してすみませんでした。許してくれるならもう1度私を試合に出してください。」

 

「・・・・みんなはどう思う?」

 

その返答は分かってるくせに聞くんですね。

もちろん全員一致でOK

 

「チビリボン今更戻ってきても遅いぞー」

 

「うっさいアホリボン。まだ試合は終わってない。そして私の全力を理解したと思うな」

 

ボールを持つ未有。今まで以上のキレで真帆を抜く。

 

「あたしがエース張ってる理由は実力。実力!そして実力!」

 

ああ、知ってるよ。お前が強いなんてな。けどお前以上がうちのチームにいる。

 

「もっかん!」

 

真帆から智花へのパス。それにマッチアップする未有

 

「認めるよ・・・・あんたは強い」

 

「ありがとう・・・」

 

智花が抜くがそこに敵が待ち構えていた

 

「でも、試合じゃ負けない」

 

智花がスティールされた

 

「誘導されてましたね」

 

「ああ、みずから隙を作って抜かせてそこをつく。冷静だな」

 

そうして未有がまたボールを保持し決める

 

「絶対に負けない・・・・チームの為にも自分の為にも」

 

今の未有は最高に集中してる。それを止めるのは智花でも難しいだろう。どうする?

 

「時間がない!オールコート!!」

 

そうして硯谷はオールコートマンツーをしかける

 

「ここで来るか!」

 

「残り時間20秒で1点差・・・・ここを守り切って勝つ気でしょうね」

 

そこで智花がボールを呼び込む

 

「ちょうだい!絶対決めるから!!」

 

「抜かせない!!」

 

2人のエースの1対1・・・・・勝敗は・・・

 

「よく抜いた智花!!」

 

しかしすぐにヘルプにつく。

 

「早いけど、すぐにヘルプについたのが仇になったね・・・・紗季!」

 

紗季にボールが渡りノーマークからのジャンプシュートを放つ・・・その瞬間笛が鳴り響く・・・・

 

これが決まれば勝利、外せば敗北・・・・勝敗は・・・・

 

無情にもリングに嫌われたボールはバウンドして転々とする・・・

 

 

硯谷に軍配があがった。

 

 

 

 

「あぶなっかったー!」

 

「最後超焦ったよー」

 

硯谷から安堵の声が聞こえる。

 

「負けたか・・・・・」

 

「でも、最高の試合だったよ」

 

「そうですね。多少条件があったとはいえ全国常連に1点差まで追い詰めた・・・・だからこそ皆悔しいでしょうね」

 

紗季は出ていったがすぐに真帆が追いかける。

 

「真帆と紗季は幼馴染ですから・・・任せましょうか」

 

「そうだな・・・・勝たせたかったな」

 

「今できる最前は尽くしました・・・・だから昴さんが責任を感じる必要性はないですよ」

 

「・・・・」

 

「悔しい思いがあるなら大丈夫です。皆満足してません。この敗北を機に皆これから沢山成長するでしょう」

 

「ああ・・・・そうだな」

 

 

 

そして試合の後に向こうの監督がバーベキュー大会を開いてくれた。

 

「肉沢山あるのでいっぱい食べてください。では、いただきます」

 

『いただきます!!』

 

それぞれ交友を深める。同ポジション同士だったり教えた子たちだったり・・・学年関係なくみんなで話す

 

「色々あったけど・・・・最終的には良い合宿になりましたね」

 

「うん、本当によかった」

 

俺は葵さんと話していた。

 

「というか俺といていいんですか?そういえば昴さんとハプニングがあったとか・・・・・」

 

「何で知ってるの!?」

 

「麻奈佳さんが教えてくれましたよ。結構楽しい人ですよね」

 

「うぅ・・・・恥ずかしい・・・・」

 

「まぁ、肉あげますので元気だしてください」

 

そして俺は焦げ付き肉を渡す

 

「ありが・・・コゲてるじゃない!」

 

「おや、失礼失礼。つい、イジるタイミングかなと思って・・・・」

 

「確信犯!?」

 

そこで未有がこちらに来る

 

「空・・・・」

 

「私邪魔?」

 

葵さんが空気を読んで去ろうとするが

 

「いえ、すぐ済むので。返事だけど・・・・・今は付き合えない。俺はやっと新しい家族との生活に慣れてきた。悪いけど今は誰かと恋人なんて考えてないんだ・・・」

 

「・・・・なんとなく分かってたよ。うん、でもそれって今でしょ?だったらまだチャンスはあるんだよね?私はずっと好きだからそれだけは覚えておいてね」

 

「・・・・分かった」

 

そう言って未有は真帆たちのほうに行く

 

「よかったの?」

 

「フったことですか?実際今そんな余裕ないんですよ。俺は今新しい家族を大切にしたいんです。恋人は考えてません」

 

「新しい家族って・・・・・」

 

「色々あって三沢家・・・・真帆の家の養子になりました。詳しく話すタイミングでもないのでその話はいずれ・・・・」

 

「うん、分かった」

 

「じゃあ、俺も真帆たちの話しに混ざってきます。」

 

「え?いいの?フったばかりで・・・・」

 

「大丈夫です・・・・多分」

 

「多分!?」

 

俺は真帆たちのところに行った。

 

「よう、何の話だ?」

 

「あ、空。あー・・・・諦めずにメンバー集めて大会に出なさいよって話」

 

「ああ、8月と12月に全国大会とかあるしな。」

 

「なぁにーちゃん。にーちゃんって優勝したんだろ?」

 

「去年8月の全国でな」

 

「もしあたしたちが出たらどこまで行ける?人数関係なしに」

 

「そうだなぁ・・・・・予選突破ギリギリいけるかどうかって感じだな」

 

「えー!もっと上じゃないの!チビリボン達を追いつめたじゃん!」

 

「うっさいアホリボン!」

 

「喧嘩すんな。たとえ全国クラス1人いても厳しい。バスケは1人じゃ勝てないんだからさ」

 

「でもにーちゃんの元チームはワンマンチーム?だったんだろ?」

 

「あのねぇ・・・・それは空だから成り立ってたの。分かる?小学生の野球チームに甲子園ピッチャーと4番バッターが紛れ込んでるようなものなのよ。ワンマンチームでも負けるわけないでしょ」

 

さすがに言い過ぎだけどな

 

「にーちゃんってそんなに凄いのか?毎日1on1やってるけどよく分からない」

 

「は!?空と毎日!?どんだけ恵まれてんのよアホリボン!!」

 

「なんだよチビリボン!羨ましいか!」

 

「羨ましいわよ!」

 

「落ち着けアホ共。まぁ、なんにせよ今はいいだろ。ほら肉食って落ちた体力回復させろ」

 

「でもそんなに凄い空君なら今年もU-13に呼ばれるんじゃない?」

 

「・・・・麻奈佳さん・・・・それはどうですかね。俺が転校したことすら把握してないでしょうし、多分見つからないから諦めるんじゃないでしょうか?苗字も変わってるし」

 

「いやいやーその気になれば調べられるでしょ。そしたら行くの?」

 

「行きますね。行かない理由がないです」

 

「そしたらにーちゃん離れるの?寂しくない?」

 

「真帆・・・大丈夫。そんなに気にしなくていいぞ。今はお前らがいるんだから」

 

「なに、どういうこと?」

 

「チビリボンには教えねーよ!慧心女バスだけの秘密だ!」

 

「な・・・・教えてくれたっていいじゃない!」

 

「やーだよ!」

 

2人の追いかけっこが始まった。

 

「あはは!試合終わったばっかなのに2人は元気だねー」

 

「体力ありますからねー。まぁ今回のことは本当に麻奈佳さんに感謝ですね。硯谷とのパイプが出来たのはこの先練習試合の相手に困らなそうですし」

 

「いやーうちも慧心さんと出会えたのはよかったよー。うち山奥のせいで試合相手に困ってたし・・・・それにここまでのレベルとは思ってなかったから予想外の収穫だったよ」

 

「恐らくこれから先お世話になることもあるので、その時はよろしくです」

 

「いえいえ」

 

そして俺は昴さんにもとに・・・・・美星先生?

 

「盲腸は大丈夫なんですか?」

 

「お!空!聞いたぞー告白されたって?よかったじゃん」

 

「断りましたけどね。まだ余裕ありませんし」

 

この調子なら問題ないか・・・

 

「えー!勿体ない!」

 

「そんなこと言われても・・・・まぁ、そういう相手はこれから長い人生なんですからゆっくり探しますよ」

 

「爺臭いな!」

 

「うるせーです」

 

 

 

「では、短い間でしたがお世話になりました!」

 

『お世話になりました!』

 

俺達はこれからバスで帰るので最後に挨拶をする

 

「いえ、こちらも酷い対応を取ってしまって申し訳ありません。次に来るときは是非宿舎を利用可能にしておくので」

 

「ありがとうございます。こっちも申し訳ありません。急に保護者不在なんてことになって・・・・」

 

大人たちが話てるので俺は最後に未有と話していた

 

「次にいつ会えるか分からないけど元気でな」

 

「・・・・・」

 

そんな不安そうな顔しないでくれよ・・・・

 

「・・・空!」

 

俺の名前を呼び俺にキスをした

 

『はー!!!!???』

 

大人たち以外が絶叫する。

 

「次会ったら絶対ものにするから覚悟しておきなさい!」

 

そこで噛みつく真帆たち

 

「ふざけんな!にーちゃんを渡すわけないだろ!」

 

「おー。ソラはひなたちの」

 

「空君は渡しません!」

 

「ふん!絶対って言ったら絶対だもん!」

 

とりあえずバスに乗り込むか・・・・

 

「いいの?放っておいて」

 

「葵さん・・・・俺が何をしても火に油です」

 

「最後の最後で爆弾を落とされたね・・・・」

 

そうして俺達はバスに乗り込んで帰宅する

 

「あー・・・・・私もキャンプしたかったなー」

 

「美星先生・・・・諦めてください」

 

「だってお前ら羨ましい!」

 

「ミホ姉、少し自重してくれよ・・・・」

 

そこで美星先生は真帆に話をかける

 

「なぁ、真帆」

 

「どうした?みーたん」

 

「今年も別荘に行こうよ。あそこで近々練習合宿といこうか」

 

「おー!いいねいいね!行こう!!」

 

そうして俺と昴さんと葵さん以外が賛同する

 

「いや、今週合宿行ったばかりなんですけど・・・・」

 

「そうだよミホ姉。無茶じゃないか?」

 

「いーじゃんいーじゃん!真帆の別荘って海の近くなんだぜ!今週は山、来週は海!似てるようで違う!」

 

そうして押し切られてしまい来週は別荘で合宿をすることになった

 

 

俺と真帆は一緒に自宅に帰った。

 

「まずは風呂!合宿中は水浴びだけだったからなー」

 

「よし行くぞー!」

 

「真帆ステイ。入るなら先どうぞ。一緒はダメ」

 

「えー・・・・しょうがないなぁ」

 

そうして奥から風雅さんがこちらに来る。

 

「おう帰ってきたんだね。2人ともおかえり」

 

「ただいまです。」

 

「ただいま!」

 

「そうそう、不在の間に空に連絡だ」

 

「俺にですか?」

 

「U-13に召集されたよ。返事は保留にしたがどうする?」

 

「もちろん受けますよ。早速電話しますね」

 

俺は連絡先を聞いて電話をかける。

 

「もしもし・・・・あ、安西監督!?監督自ら1人1人電話をかけたんですか?」

 

『久しぶりだね。御巫君・・・いや、三沢君か』

 

「あ、調べたんですね。色々あってそうなりました」

 

『さて、単刀直入に聞くが今回の召集を受けてくれるかね?』

 

「もちろんです。今年もよろしくお願いします」

 

『うんうん、承諾してくれてよかったよ。で、日時だけど30日から3日までの5日間を予定してるんだけどどうだろうか?無論最終日には去年と同じように親善試合を予定している』

 

「え?30日からですか?もう3日後なんですけど・・・・」

 

『調べていたせいで連絡が遅れてね。それでどうだろう?』

 

多分合宿とも被るかな?途中から合流できそうだし、別にいいか

 

「分かりました。よろしくお願いします」

 

『では君が来るのを待っているよ』

 

そういって電話を切った。3日後からかぁ・・・・ハードだな。




おーう未有ちゃんってどんなキャラか忘れたぞい

1万字初めて超えたなぁ・・・・


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第8話

注意!!!今回は完全オリジナルとなっています
原作キャラは一切出てきません。ロウきゅーぶ要素皆無です
あ、最後の最後にやんばるが出るくらいです
それが許せない方は見ないことをお勧めします

ほぼほぼバスケです。
申し訳ありません


「今年もここで合宿か・・・・」

 

俺は今東京にある体育館に来ていた。今年も去年と同じ場所で年代別代表の合宿が行われる。

4日後にみんなと別荘での合宿が行われるので、俺だけは途中合流になる。

 

「しかし、何でこのタイミングで?」

 

俺は不思議に思っていた。俺は出ないが、この時期は全国大会前の大事な時期である。なのにチームから離れるのは大きな損失なはず。それはバスケ協会もよく理解してるはずなのに・・・・

 

俺は体育館の扉を開けるとそこには大体集められた小学生が揃っていた。

しかし・・・・・

 

「(何だこの視線?俺遅刻かなんかしたか?)」

 

俺が不思議に思っていると

 

「お!空じゃん!お前バスケ辞めてなかったのか!?」

 

こちらに来るのは去年合宿で一番仲よくなった藤森祐樹と・・・・

 

「去年冬の大会に出てなかったからみんな辞めたって噂してたんだよ」

 

この合宿で恐らく一番背の高い183㎝の藤堂祐介だった。

 

「おう、久しぶり。つーかなんで辞めた噂流れてんだよ」

 

「お前が去年の夏以降どの大会にも出てなかったからだろ!」

 

「その様子じゃ辞めてなかったみたいだね。正直安心したよ。でも何で出て来なかったんだい?夏のリベンジをしようかと思って気合い入れてたのに、トーナメント表にも載ってなくて肩すかしをくらったよ」

 

「ああ、それは悪いな。リベンジは中学の時で頼む。それに転校とか色々あったんだよ」

 

「ふむ・・・・色々事情がありそうだね。聞かないでおくよ」

 

「助かる」

 

藤堂祐介は愛莉と同じポジション。C(センター)だ。普段は温厚でみんなに気を使える優しいやつだが、コートの上に立った時は全く容赦がない。

去年の夏に準決勝で当たったが、俺を何度もブロックしたのはこいつだけだった。

 

「そろそろ時間だな。今年は新顔も多いしなるべく雰囲気良くしてこうか」

 

「それ君がいう?君ら2人は去年初日から喧嘩してたのに・・」

 

「「あれはコイツが悪い」」

 

俺達はお互いに指を差す。

 

「君らは仲が悪いのか良いのかよく分からないよ・・・・」

 

 

監督やコーチが来て壇上に上がった。

俺達はそれを見て近くに集まる。

 

「さて、みなさん久しぶりの人もいれば初めましての人もいますね。監督の安西です。大事な時期でしかも急な誘いにも限らず全員が集まってくれて感謝します。」

 

全員集まったのか・・・・

 

「まずはお話ししましょう。なぜこんな時期に皆さんを呼び集めたのか・・・・それは、来年の2月に大きな国際大会があるからです。」

 

それを聞いてざわめく体育館。

 

「各国の13歳以下対象の世界戦ですね。しかし・・・・皆さんを鍛える前にここにいる100人でサバイバルをしてもらいます」

 

それ聞いてさらにざわつく体育館

 

「静かに。今回の合宿では初日で半分落とします。落ちた方は帰って構いません」

 

初日で半分か・・・・

 

「ふざけんな!こっちは呼ばれたから来たんだぞ!」

「そーだそーだ!」

「横暴にもほどがあるだろう!」

 

一部のやつらが不平不満を言う。何を甘い事を・・・・

 

「・・・・・・世界を舐めてんのか?」

 

・・・・仏の顔が鬼に変わったのを俺は見た。

そして場内が一瞬で静まる。

 

「ほっほ。この程度のサバイバルで落ちる人はどのみち世界で戦うなんてとてもできません。不満があるなら帰って構いません。やりますか?やりませんか?」

 

俺達は頷く

 

「ではルールを説明しましょう。まずは適当に20チームを作ります。その後ランダムでそれぞれ3分間試合を行い負けたほうが退去。勝った方は残留です。これで生き残った10チームで合宿を行います。」

 

「質問です」

 

「どうぞ、三沢君」

 

「初日で半分と仰いましたが、それ以降も落とす気ですか?」

 

「そうですね、この合宿に至っては初日と最終日前日以外は落としません。最終日にはドイツ代表との親善試合がありますからね、前日に50人の中で最強の15人を選びドイツと試合を行います」

 

「分かりました」

 

「他に質問がなければ早速サバイバルを行います。」

 

生き残りを賭けたサバイバルマッチ・・・・

面子がユーキやユースケだったら楽だけど、そんな都合よくいかないか・・・・

 

チームに分かれて早速Aチーム対Bチームの試合が始まった

 

「行くぞオラァ!」

 

Aチームにはユーキがいるしほぼ決まったようなもんだな。相手のチームにはユーキを止められるやつなんていない

予想通り試合はAチームの完勝で終わった。

 

「(アイツはどのチームにいても存在感を示すな・・・)」

 

その後でCDEFGHIJKLと試合が続いた。負けた者は即刻退去。そこに慈悲なんてなかった。

 

「やっと出番か・・・・」

 

俺の所属するチームMとチームLの試合が始まる。

 

「(相手にユースケもいないし恐らく負けることはないだろうが・・・・)」

 

うちのチームメンタル弱いやつ多くね!?みんな小鹿みたいに震えてんだけど!?

去年見た顔がいないし新顔か・・・・俺が何とかしてみよう。

 

「あーとりあえず落ち着こうか・・・・お前ら聞いてる?」

 

「え?あとりおrこkそs?日本語で話しちょれよ・・・・」

 

お前が日本語で話せよ。ダメだこりゃ・・・・

 

「うぅぅ・・・」

 

何か泣きだしそうなやつもいるし・・・

 

これを見ていたユーキ達は・・・・

 

「あ、これダメだ。まともに動けるのが空だけって・・・・」

 

「んー。なんとか落ち着かせればいいけど・・・・時間も短いし難しいだろうね」

 

「久しぶりに一緒にプレーできると思って楽しみにしてたんだけどなー」

 

「でも空抜きで世界を相手に勝てると思う?」

 

「・・・・・俺らがいるし」

 

「去年のフランス戦。空がいなかったら100%負けてたんだけど」

 

「・・・・・・・空!!絶対勝てよー!!!」

 

「やれやれ・・・・」

 

さて、ユーキからの熱い激励も貰ったし頑張るしかないか・・・・

 

「時間は3分・・・・なら1分半だな・・・・・お前ら!!」

 

俺の声に反応するチームメイト。

 

「1分半時間をやる!だからそれまでに硬さを取れ!」

 

「だ・・・・だって・・・無理だよぉ」

 

「こんなところで終わっていいのか?お前らもバスケ好きなら今を楽しめ!折角強い相手なんだぞ!安心しろ・・・・俺がいる限り絶対に負けない」

 

そうして試合が始まった

 

ジャンプボールは相手が取りこちらの防御からだった

 

「は!ビビって腰が引けてる相手に負けるわけねえ!」

 

そうしてボールを取った1人がこちらのゴールに突っ込む

 

「お前バカか?初めての相手に開幕突っ込むとか愚策中の愚策だな」

 

俺はすぐに相手からボールをスティールした。

 

「な!?」

 

「じゃあ行こうか・・・・俺の言った言葉が嘘かどうかは今から俺のプレーをみて判断してくれ」

 

返事を待たずに俺は相手の陣地に1人で突っ込む

 

「は?お前だって俺と同じことしてんじゃねーか!」

 

「お前の自己中と一緒にするな。俺のは・・・・味方の為の鼓舞だ」

 

そうして近づいてくる相手を全員抜き去りゴールを決める。

 

「・・・・さて、ディフェンスか。お前ら、俺のプレーを見たな。嘘じゃないのは理解したか?でも俺はお前らが動かない限り1人で決めるし1人で守る。でもそれはしたくない。何故か分かるか?」

 

「・・・・・」

 

「俺はお前らと一緒にプレーしたい・・・・俺を1人にしないでくれ」

 

そう言った瞬間彼らの目に光が戻った。

 

「は!1対5だと?ナメんじゃねー・・・え!?」

 

「何もせず終わりたくない!」

 

仲間の動きが見違えるように変わった

 

「く・・・・」

 

相手はボールを取られた。そしてそのボールは別の味方がフォローする。

 

「俺だってやってやる!」

 

もう安心だな。やっとプレーに集中できそうだ。

1分後・・・俺は敵味方の動きを全て把握した。これなら負ける要素はもうない。

 

「三沢くん!」

 

俺にボールが渡る。

 

「さて、ここからは全力だ。思いのほか俺の味方は全員スペックが高い。さすが全国から選ばれた面子だな。そして俺は彼らの100%を引きだせる自信がある。言っただろう俺がいる限り負けは無い」

 

「ヒッ・・・」

 

そこからは圧倒的だった・・・・

 

 

全試合が終わり再び俺達は集められる。

 

「皆さんお疲れさまでした。ここにいる50人で明日から本格的に練習を行います。明日から地獄なので今日はもう休んでいいですよ」

 

なんかさらっと恐ろしい事を言われた気がする。

 

 

俺達は宿舎に戻った。

2人1部屋で俺の相方はユースケだった。俺は疲れたのですぐにベットに飛び込む

 

「今日は大変だった・・・・」

 

「見てたけどお疲れさま。どうなるかと思ったけど結果は変わらなそうだったね。仮に彼らが変わらなくても君1人でなんとかなったでしょ?」

 

「まー結果は変わらないけど、この場合仮定のほうが重要だ。ここであいつ等が変わらずに生き残ってたとしても先がないからな。ちょっとしたお節介だ」

 

「君そういうキャラだっけ?去年なんて着いてこれる奴だけ着いて来いって感じだったと思うけど」

 

「今もそういう所があるのは否定しないけど、まぁ変わったんじゃないか?」

 

「自分で疑問符つけないでよ。しかし明日は地獄って言ってたけど何をやるんだろうね?」

 

「さぁ?もう寝ようぜ。本当に地獄なら明日からの練習が・・・・」

 

その瞬間ドアが思いっきり空いた。

 

「トランプしようぜ!!」

 

「死ね」

 

俺はユーキにドロップキックを仕掛けた

 

「ぐはぁ!・・・・何すんだ!」

 

「寝ろバカ」

 

「折角の合宿じゃねーか!トランプなり恋バナなりしようぜ!」

 

「修学旅行かよ。同室のやつとやれ。俺らはこれから寝るんだよ」

 

「お前らもかよ!もう俺と同室のやつ寝ちまって暇なんだよー相手しくれよー」

 

「あはは、1回くらいならいいんじゃないかな?」

 

「ユースケは甘いなぁ・・・・」

 

「やりぃ!」

 

その後熱くなって1回では終わらずほぼ徹夜でトランプをしたことを深く後悔することになる。

 

 

翌日

 

今日は体育館前の集合なので俺達は集まった。

 

「なぁ・・・・何か言うことはあるか?」

 

「お前らだって楽しんでたじゃーん」

 

「・・・・そんなことより見てよ。体育館が暗幕で閉めきっているよ?何か凄い怖いんだけど・・・・」

 

そうしてると監督とコーチがくる

 

「みなさん集まりましたね。では、入りましょうか」

 

そして体育館に入るとそこは・・・・蒸し風呂状態だった

 

「見たときに予想は出来ていたけど・・・・・」

 

「これはひどいな・・・・」

 

「なーなーあのアスレチックっぽい器具ってなに?」

 

監督がこちらを見る

 

「あれらの器具が見えますね?皆さんには3時間このサーキットで身体能力の強化をしてもらいます。水は自由に飲んで構いません。休憩も各々のタイミングで5分のみ許可します。ただし時間が過ぎた者はペナルティとして30分追加です。お昼は12時から13時まで食堂が開いてます。つまりペナルティを2度貰った人には昼食はありません。」

 

この中で3時間?休みは5分?・・・・水分補給が自由なのだけが救いだな

 

「・・・・もちろん強制はしませんが、その場合は合宿から退去願います。体調を崩した者はすぐにスタッフを呼ぶのでその場で待機。ただし仮病だと分かった時は退去です。ペース配分は任せます。とにかくこれを3時間やりとげてください」

 

そして2時間が経った頃には50人が39人になった。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

あまりの過酷さに声も出ない・・・・・水がほしい・・・

 

「なんだ三沢。さっき水を飲んだばかりだろ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

 

「喋る気力もないか・・・・随分体力は落ちたみたいだな」

 

確かに去年と比べて体力は落ちた。練習は続けても体力トレーニングはしてこなかったからだ。

 

「・・・・よう死にそうだな?」

 

「・・・・うるせーよ。お前だっていつものうっとうしい元気はどこいった?」

 

「うっとうしいは余計だよ・・・・しかしこの分ならまだ脱落者がいそうだな」

 

「・・・・最終日には5人も残らなかったりして」

 

「・・・笑えねーよ」

 

「お前ら!喋る余裕があるなら時間増やすか!?」

 

「「勘弁してください!!」」

 

 

午前の部が終わった。

 

「さて、お疲れさまでした。脱落者は12人ですか・・・・結構ハードでしたね。ああ、喋る気力もありませんか」

 

俺達は全員その場に座り込んでいる

 

「午後からはもっとハードですよ。アスレチックの代わりにスリーメン3時間です」

 

は・・・・?

 

「走りっぱなしでしょうが頑張ってください」

 

そういって監督は去っていった。

誰も立ち上がらない。

 

「・・・・昼飯行くか。お前らも食わないと午後持たないぞ」

 

「そーだな。無理やりにでも食わねーと・・・・」

 

「・・・・じゃあ行こうか。出来れば軽いものでお腹を満たしたい」

 

そういって俺達は行こうとするが

 

「・・・・待てよ」

 

「あん?」

 

「こんな練習に何の意味があんだよ!こんなに体を痛めつけて却って効率が悪いだろ!」

 

どうやら不満が爆発したらしい。どうやら新顔ばかりが不満が大きいみたいだ

 

「みんなで監督に直談判しようぜ!全員で言えば監督だって・・・」

 

「「「アホか」」」

 

「は?・・・・今、何て言った?」

 

「お前はアホか。俺達は何のためにここにいると思っている。」

 

「何の為って・・・・強くなるために決まってんだろ!」

 

「分かってるのになぜ喚く?まさか本気で意味がないと思っているのか?」

 

「意味ねーだろ!今更体力をつけたって・・・・」

 

「はぁ・・・・体力だけじゃねーよ。筋力もそうだし・・・・何より精神力が鍛えられる」

 

「精神力?そんなの何の意味があんだよ!技術と体力があれば精神力だって・・・」

 

「去年のフランス戦。お前は新顔だから知らないけど去年いたやつは覚えているはずだ。世界の壁を実感したよな」

 

去年いたやつは当然覚えていた。自信に満ちていた自分を粉々に破壊されたのを・・・

 

「俺達に1番必要なものは何があっても折れない心だ。この程度の練習で心が折れるなら世界を相手に戦えない。そして安西監督は俺達に足りないものを必死で考えて与えてくれる・・・・・・いいかお前ら!俺達は全国から集まった日本の代表候補だ!この程度で負けて帰っていいのか!?選ばれなかったやつに失礼だとは思わないのか!?そんなんで大事な時期に送り出してくれたチームメイトに顔向け出来るのか!?」

 

「そ、それは・・・・」

 

俺はそいつの胸倉を掴んで言う

 

「日の丸を背負う気があるやつに・・・・・途中で諦める権利はないんだよ!!」

 

体育館が静寂に包まれる・・・・

 

「そうだよな・・・・こんなんで帰ったらチームメイトに顔向けできねーじゃん」

「ああ、途中で退去宣告されるまで絶対生き残ってやる!」

「俺だって負けない。何があろうと生き残る」

 

どうやらみんなの活気が戻ってきたな・・・

 

「で、お前はどうする?」

 

「俺だって・・・・・絶対生き残ってやる・・・・・15人に絶対選ばれてみせる!」

 

どうやら心配なさそうだな。

 

「じゃあお前ら食堂行くぞ!まずは腹いっぱい食って午後もやりきる!!」

 

『おう!』

 

そうして食堂に向かう俺達

 

「去年とはまた違うけど、やっとまとまってきたかな?」

 

「やっぱ今年も空がキャプテンかー?」

 

「だろうね。空以外にいないし・・・・」

 

「祐介は?俺から見たらお前も適任なんだけど・・・・」

 

「俺は副キャプテンとしてキャプテンを支えるさ。このままだと空の負担があまりに大きい・・・・」

 

「去年は大変だったもんな。キャプテン、フロアリーダー、エース。最後の最後まで空に任せっきりだった。」

 

「今年は俺達で空を支えよう。もう去年みたいな醜態は見せない」

 

「分かってる!俺だって成長したんだからな!」

 

 

午後の部になった。

 

体力が回復しきれてないから全員動きが悪い・・・・

 

「もっと速く動きなさい。バテるのは早すぎですよ」

 

「しゃー!!もっとこーい!」

 

ユーキはまだまだ元気だな。皆もバテているけど目は死んでない。これなら今日は乗り切れるだろう。

 

「三沢君。考え事ですか?時間増やしますよ・・・・みなさん三沢君のせいで1時間延長です」

 

ファ!?

 

『三沢ー!!!!』

 

みんなの怒声が・・・・

 

「・・・・さぁ、まだまだ始まったばかりだ!時間延長如きに俺達は負けないぞ!」

 

『誤魔化すな!!!!』

 

「ごめん・・・・」

 

そして2日目3日目とこなしていく

 

 

「驚きましたね・・・・まさか38人も残るとは思ってませんでした・・・・最悪5人残ればいいかなとか思ってましたが・・」

 

え?今なんつった?

 

「まぁ、いいです。では、明日の試合に出る15人を発表します・・・」

 

とうとう発表される・・・・

 

「背番号で渡すので呼ばれたら来るように・・・4番三沢空」

 

「はい!」

 

ユニフォームを取りに前に出る

 

「負担が大きいでしょうが、頼みますよ」

 

「任せてください」

 

次々に呼ばれる名前・・・・最後に

 

「18番・・・・・・・相沢浩太」

 

「うおっしゃー!!!」

 

おーあいつって率先して辞めようとしたやつか

 

「君の意外性に期待しますよ」

 

「はい!・・・・・意外性?」

 

「ほっほ。ではユニフォームを受け取れなかった君たちは退去・・・・の予定でしたが、帰るも残るも自由です。今日はどちらにせよ練習は休みなので・・・・夜にミーティングがあるのでユニを貰ったものは会議室に集まってください」

 

『はい!』

 

 

そして実質1日オフを貰った俺達は・・・

 

「パスパスパース!!!」

 

「うるせーな・・・・コータ!」

 

「しゃあ!」

 

「ちょ!?何で浩太にパスすんだよ!俺が呼んでただろうが!」

 

「お前目立ち過ぎなんだよ!パスコースほぼ防がれてたじゃねーか!」

 

バスケをしていた。ゆっくり休もうかと思ったけど実質みんなといられる最後の時間のようなものなので、楽しくバスケをしよう。なんてことになった。

 

「それでもお前なら何とかできるだろ!」

 

「何で無理をしてまでお前にパスしなきゃダメなんだよ!普通にコータがノーマークだったわ!」

 

「はいはい!2人とも止めときな!たくっ・・・なんでいつも喧嘩するかなー」

 

「「コイツが悪い!」」

 

「明日の試合大丈夫かな・・・・・」

 

 

そして夜になりミーティングが開かれる

 

「では早速始めましょうか。まずはドイツ代表のビデオなんですが・・・・ありません」

 

『は・・・・?』

 

「彼らのビデオなんてないんですよ。ぶっちゃけノーデータです」

 

・・・・・

 

「じゃあ、明日のスタメンは?」

 

「では発表しましょうか。PG三沢、SG森山、SF藤森、PF和田、C藤堂。予定ではこれがスタメンです」

 

「・・・・そうですか」

 

「三沢君は何かあるんですか?」

 

「いえ、不安要素は・・・・チーム練がロクに出来てないから・・・・」

 

「君がPGなら問題ありません。チームの100%を引きだし、自らも点が取れる。ゲームメイクは基本的に君に任せます。DFのみ序盤はマンツーで様子見ですね。」

 

「分かりました。序盤というか・・・・ゾーンの練習してませんし即興じゃ無理ですよ」

 

「そこは言わないでください。相手も同じなはずですから」

 

もうこちらから話すことはないかな。出たとこ勝負か・・・・1Qは様子を見たいな。

 

「最後に1つ。1Qのみでいい様子を見させてくれ。相手を観察したい」

 

「いいぞー!じゃあ1Qはほぼお前なしって感じ?」

 

「いや、そこまではない。ただ本格的に動かないだけ・・・・動くなら2Qからだ」

 

「じゃあそれまでは様子見ってこと?相手の力量も分からないししょうがないか」

 

「それまでは俺はパスしか送らないと思う。状況によるけど・・・」

 

どうするかと思ったとき

 

「俺に・・・・パスちょうだい」

 

静かに闘志を燃やす男・森山淳

 

「モリ・・・・切り込み隊長やるか?」

 

「うん・・・・絶対決める・・・・」

 

「じゃあ任せる。1Qはモリ中心でアウトサイドから攻める。ユーキも中じゃなくて外寄りでポジション取ってくれ。」

 

「あいよ!」

 

「リバウンドは任せたぞ。ユースケとアキラ」

 

「任せて」

 

「OK!リバウンドなら誰にも負けない!」

 

和田明。パワーが売りのリバウンドマシーン。

 

「では、とりあえず1Qの方針は決まりました。後は試合の中で考えていきましょうか」

 

『はい!』

 

明日の試合は国際大会の前哨戦だ。絶対に負けない

 

 

 

翌日

 

 

アップも済ませ体育館に向かうと相手が既に来てアップをしている。

 

「デカイの2人・・・・あれ180越えだな。マッチアップは2人だけど大丈夫か?」

 

俺はユースケとアキラに聞く

 

「愚問だね」

 

「関係ない!」

 

どうやら相手を見てビビるってこともなさそうだな。

 

「テンションMAX!」

 

「うっさい・・・・ゆうすけ・・・」

 

あの2人もいつも通り。ユースケ辺り静める必要あるか・・・・どうかは試合で判断しよう。

 

「みなさん揃いましたね」

 

安西監督がこちらに来る。

 

「今向こうの監督さんと話しをしてきました。本気で来るそうですよ。こういう時はアニメや漫画だと大抵相手を舐めてかかるもんだと相場は決まってますが、どうやら国際試合の為の踏み台にするそうです」

 

「ホームの俺達に勝って勢いをつけようって事ですか?」

 

「そうですね・・・・皆さんはどう思います?」

 

「そうですねー・・・・どっちが踏み台か分からせてやりますよ」

 

「では、間もなく始まります。勝ってきなさい」

 

『はい!』

 

 

そうして試合が始まった。

 

ジャンプボールを制したのは・・・・ドイツだ

 

「はっはー!デカイだけじゃねーか!」

 

あん?俺の仲間を侮辱してんじゃねーぞデカブツが

 

「・・・・空相手がなんて言ってるか分かるの?」

 

「多少は・・・・ほらハーフマンツー!」

 

そうして俺達は相手につく

 

「(身長差はそんなにないけど・・・・ミスマッチをつくならモリの方に集めてくるとかな?)」

 

案の定モリのほうにボールが行く

 

「行くぞチビ!」

 

「・・・ドイツ語わからない・・・・」

 

モリの粘り強いディフェンスで相手を抜かさない。

 

「ちっ・・・シュナイダー!」

 

今度はユーキのほうか

 

「・・・・ダサ・・・この程度の相手すら抜けないのか・・・」

 

こいつらこっちが聞き取れないからって好き勝手言ってやがるな

 

「来い!!」

 

目を輝かせながらマッチアップにつくユーキ

 

「・・・うぜぇ、目輝かせてんじゃねーよ日本人如きが!!」

 

そうしてユーキを抜くシュナイダー

 

「油断すんなよユーキ」

 

俺は相手からスティールする

 

「・・・っとごめん空」

 

「いいさ、次はこっちの攻めかな・・・・」

 

俺は予定通りボールをモリに預ける

 

「は!こんなチビに何が出来るんだよ!」

 

「だから・・・・」

 

モリはクイックモーションで3Pを打ち、決める

 

「ドイツ語わかんない・・・って」

 

そしてモリを中心とした攻撃。相手は中々捉えきれず16-13こっちのリードで1Qは終わった。

 

「どうでした?」

 

「多分相手も様子見です。お互い情報入手してないんすね・・・・恐らく動くのはこれからでしょう」

 

「心配しすぎじゃね?空もまだ動いてないし大丈夫だって!」

 

「・・・・途中で見に変えた」

 

モリが何かに気付いたようで言葉を発する

 

「最初は・・・・潰せるようなら・・・一気に潰そう・・・・としたんだけど・・・・相手が・・・・予想以上・・・・だったから・・・・まずは・・・・様子見に・・・・変えた・・・・思う」

 

「モリがそう言うならそうなんだろうな。じゃあ本番はこれから・・・・ゴール下の2人はどうだ?」

 

「あれで様子見なら・・・・ヤバイかも」

 

「同じく!でも楽しい!」

 

「どういうこと?」

 

「パワーゴリ押し。技術もなにもなく純粋なパワー。明なら楽しめそうな相手なんだろうけどああいう脳筋は苦手かな」

 

「俺は楽しい!パワー合戦!」

 

「なるほど、アキラと同じく脳筋タイプか・・・・ユースケならそのうち対応できるだろう。とりあえず頑張れ」

 

「はいはい」

 

「俺の方は・・・・多分あっちはそこまで上手くはない。」

 

『え?』

 

「ただ上手くないのにドイツ代表になったということはそれ以外のなにかがあるということだ。油断はしない。あっちのSFに抜かれたユーキは?」

 

「次は負けない!」

 

「・・・まぁ、いいや。じゃあそろそろ行こうか」

 

 

第2Qが始まって早々相手に決められた

 

「早いな・・・・なるほど、そういうチームってわけか・・・」

 

「ドイツ語分かるんだ?今の攻撃だけで気づいたんだ・・・・その通りうちは徹底した戦略特化チームだ」

 

最初は個人技の印象だったがそれは間違い。相手はチーム一丸がモットーのチームだった。

 

「・・・・お前の指示か」

 

「それも分かったんだ?頭良いね。そうだよ、うちのチームはオーケストラのようなもの。僕がタクトを振り指示通りに演奏をする。決められた通りに動くからタイムラグなんてほぼ存在しない」

 

マズイな・・・・どうやらディフェンスもそうらしい。

 

「これからはゾーンで守るよ。そっちのスリーを止めつつインサイドも止める。うちのゾーンを壊せるものならやってみるといい」

 

面白い・・・・

 

「なら、本当に止められないかどうか試そうか・・・・アキラ!」

 

俺はアキラに向けてパスをする。

 

「言い忘れてたね・・・・無駄だよ」

 

パスがカットされる。そのまま速攻で決められた

 

「君のことは大体理解した。うちのゾーンはパスすら通らせない」

 

俺の思考を読んで味方に指示を出しカットする。こいつ頭良いな

 

「そうか・・・・俺の思考を・・・・」

 

「さぁ?どうする?」

 

「・・・・俺の事を分かった気でいるが・・・それは間違いだ」

 

「?」

 

「例え読まれていようと・・・・お前らが追いつけないパスをすればいい」

 

俺はノーモーションで今までより速いパスを出す。

 

「これは!?」

 

「俺の本気のパスはお前ら程度じゃ止められない」

 

「ナイスパス!」

 

そのままユーキは決める

 

「指示が遅れたな。気づいたら通っているパス。ノーマークにさせるパス。お前の指示じゃ追いつけないぞ・・・・さぁどうする?」

 

相手が苦虫を噛んだような顔をする。

 

さて、このままでは終わらないだろうが、まずはディフェンスだ。

 

「さっきはどうも。だけど君達もうちの攻撃は止められない」

 

「それはどうかな?指示を出すのがお前ならやりようはあるぞ」

 

俺は相手のPGにフェイスガードを仕掛ける。

 

「これだけ近かったら指示も意味ないよな?味方から見えないんだから。俺はこの時間お前にべったりと貼り付こう。」

 

「・・・言っとくけどこれで止められると思う?個人技だってうちのほうが・・・」

 

「うちを舐めるなよ。俺の仲間は強いぞ。」

 

そうしてボールは相手のSFに渡る

 

「またぶち抜いてやるよ!」

 

「来い!」

 

今度は抜けない。

 

「ちっ・・・ダニエル!」

 

今度はセンターのほうにボールを預ける

 

「はっはー!最初から俺に渡せ!貧弱センターなんて吹き飛ばしてやるよ!」

 

「・・・・何を言ってるか分からないけどムカついたな。」

 

そうしてボールを持つダニエルは・・・・ユースケを吹き飛ばしたシュートを決める

 

「どうだ!」

 

その時笛が鳴った。

 

「オフェンスチャージング!黒5番!」

 

あれだけ相手を吹き飛ばせばチャージングを取られるのは当然

 

「脳筋の仲間を持つと苦労するな」

 

「く・・・・」

 

 

32-28で第2Qが終わる。

 

「これならいけるんじゃね?」

 

「ユーキ。確かに今うちが押してるが点数はそこまで差がない。決めるべきところではしっかりと決めてきている」

 

「仮に指示がなくても個人技が強いことには変わりないしね」

 

「それにあのまま終わるなんてないと思う。必ず何かしらの対策をしてくるだろう」

 

「・・・・油断大敵・・・・」

 

「わ、分かってるよ!」

 

ただ相手が何をしてくるかは分からない・・・・

 

「オフェンスは?空のノーマークにさせるパスはバッチリ機能してるけど」

 

「それもいつまで通用するか。多分それを勘定にいれて計算してくるだろうから・・・俺もパスだけじゃなくて点を取りにいくよ」

 

「じゃあますます大丈夫じゃね?」

 

「どうだろうな。相手の組織的DFを突破するのは俺1人じゃ厳しい」

 

「じゃあアレやってみるか?」

 

「・・・・・マジ?ぶっつけ本番で?」

 

「あれは・・・まだ成功率も高くはないんだよ?」

 

「危険・・・・無駄リスク・・・」

 

「でも面白そう!」

 

脳筋2人が賛成してるけど・・・・

 

「大体お前ら2人がまだ上手く出来てないから反対してるんだけど?」

 

「「今なら出来る気がする!!」」

 

・・・・・はぁ、確かにアレをやれば相手の組織的DFは確実に突破できるけど諸刃の剣なんだよなぁ

 

「安西監督はどう思います?」

 

この試合で始めて助言を貰おうとする

 

「いいんじゃないですか?これは親善試合。失敗を恐れずやってみなさい」

 

どうやら覚悟を決めるしかないようだ

 

「・・・・失敗したらお前ら2人飯奢れよ」

 

「「おう!!」

 

 

そして第3Qが始まる

 

「走れ!!」

 

全員が一斉に相手のコートに走る。

お互いがお互いを見ずに高速パスで突き進む

 

「これは!?」

 

相手のPGが動揺するが・・・・・関係ない。このパスは止められないだろう。なぜなら味方のポジションなんて関係ない。思考を読むなんて意味ないんだ

 

「(初めから最後までパスコースが決まってるんだ。読むも読まないもないんだよ)」

 

ラストパスをアキラに渡して決める。

 

「しゃー!出来たー!」

 

「すぐ戻れ!デイフェンスだ!」

 

そういってすぐ戻る俺達

 

「(今のパスは相手が相手を見ていなかったぞ。ありえない!5人全員がノールックパスなんて・・・)」

 

動きが散漫だな

 

俺はボールをスティールする

 

「走れ!」

 

俺はすぐに指示を出して高速のパスワークを開始する

 

「(ありえない!タネはあるはず・・・絶対に見破る!)」

 

最後は再びアキラに出して決める

 

そして俺達は攻撃の度に高速の見ないパスワークを出して点を決め続けた

 

 

49-38で第3Qが終わる

 

「決まったな!」

 

「ひやひやもんだけどな・・・・」

 

実際危ない箇所は色々あった。さすがにまだドイツにタネはバレていないだろうけど、正直見せたくなかったな。

 

「この調子でいけば勝てるよね?点差的に」

 

「だから油断はするな。最後の笛が鳴るまで油断禁止。相手だって選ばれたやつらなんだから」

 

特にあのPG。パスの派手さに気を取られてくれればいいんだけど・・・・

 

 

ドイツside

 

「なんだあのパスは!?アーベルト!何か分かったか!?」

 

監督が怒鳴っている。そうだ最初はこんなはずじゃなかったんだから

 

「いえ・・・・(フィニッシュを決めるやつが最初から決まってると思ったけど実際そうじゃなかった。今まで確認したのは3人。PF,SF,SG。逆を言えば最後はCとPGは無視していいんだろうけど・・・・特に規則性はなかったはず。特定して止めるのは無理だ)とりあえず分かったことを話します」

 

そうして話終えたアーベルトはみんなに意見を聞く

 

「3人か・・・・あの高速パスワークについていけてない以上厳しいな・・・」

 

「相手は外からもある・・・・ゾーンを解除してマンツーにするか?」

 

そうして皆は監督を見る

 

「・・・・それはダメだ。付け焼刃のマンツーであいつらには勝てん。すまんみんな。私の調査不足だ。日本チームを侮っていた」

 

「・・・・じゃあディフェンスは捨てましょう」

 

『アーベルト!?』

 

「オフェンスに全神経を集中します。みんな・・・・アイコンタクトだ」

 

「どういうことだ?」

 

「シュナイダー。俺達のチームワークならアイコンタクトできっと通じるはずなんだ・・・みんなとこれまで練習してきたことを思い出してくれ。きっと出来る」

 

「・・・・・やってみよう。俺はお前のように他人の思考なんか読めない。けど、他人じゃなく仲間なら・・・・」

 

「覚悟を決めるか!!」

 

「ダニエル!・・・・・みんな、日本チームは確かに強い!でも俺達が勝つ!!行くぞ!!」

 

『おう!』

 

 

sideout

 

 

ドイツチーム相当気合い入ってるな・・・・

 

「じゃあ俺達も行こう。いいか、決して油断はするな。相手はまだ死んでない」

 

『おう!』

 

 

そして俺は向こうのPGと対峙する

 

「よう、何か対策は講じてきたか?」

 

「なにも。今日のところはディフェンスは諦めるよ。その代わり・・・」

 

相手が動き出す

 

「試合には勝たせてもらう!!」

 

な・・・・指示は通っていないはずだぞ!

相手はPGとSFのコンビプレイで点を取った。

 

「・・・・まさか」

 

「やっぱり君は気づくよね・・・思っている通りだと思うよ」

 

アーベルトはDFに戻った

 

「(バカな!?アイコンタクトのみで思考を共有しただと!?)」

 

あり得ない。そもそもドイツチームは最近できたばっかじゃないのか?なのにアイコンタクトを出来るほどの信頼関係が既にあるなんて・・・

 

「空!ボサっとすんな!」

 

そうだ・・・今は攻撃中・・・・

俺はパスを弾いてしまった。

 

「速攻!」

 

相手に速攻を仕掛けられ点を取られる。

 

「どうした空?」

 

「悪い。切り替える」

 

落ち着け・・・アイコンタクトが出来ようとうちが有利であることには変わりない。

 

「・・・・1人で背負わなくていい・・・・」

 

モリ・・・・?

 

「・・・・去年もそうだった。なんでもかんでも1人でやろうとする・・・・今度は・・・ボク達も背負わせて」

 

「淳に言われるなんてね・・・・でもその通りだよ。大丈夫。君は1人じゃない。」

 

ユースケ・・・

 

「よく分からないけど大丈夫だって!なんとかなる!」

 

アキラ・・・・

 

「仲間なんだから頼れよなぁ・・・・キャプテン!」

 

ユーキ・・・・

 

ああ、俺も変わらないなぁ・・・・慧心のみんなのおかげで変われたと思ったのに

 

「じゃあ、助けてもらうかな」

 

『おう!』

 

最高だよ。お前らは

 

「さて・・・・・行くぞ!!」

 

俺達は再び高速パスを使い点を取った。

 

「(崩れたようにみえたけど・・・・・気のせいだったか)」

 

そして俺はDFに着く

 

「言っとくけど、僕たちのチームワークに勝てると思ってるの?」

 

「勝てるさ・・・・そもそも何を勘違いしてる?」

 

「なに?」

 

「自分だけが思考を読めると思ったのか?」

 

「な・・・・」

 

やつのパスはアキラにカットされた。

 

「すげー!ドンピシャじゃん!」

 

「うっさいアキラ。とっとと行くぞ!」

 

そして俺達はゴールを決める。

 

「(どいうことだ!?まさか僕の思考を・・・?)」

 

「お前は頭が良いな。別に自慢じゃないが俺並みに頭が良いやつを初めてみたよ。それに囚われすぎてここまで時間を喰ったよ・・・・同等の頭脳があるのにお前に読めて俺に読めないわけないだろ」

 

「く・・・・」

 

「そしてもう1つ・・・・お前は単純に俺よりスペックが低い。」

 

俺は相手がパスをする前にスティールをする。

 

「・・・・強かったよドイツ代表。でもこれで終わりだ」

 

俺はダンクを決める・・・・・そして試合が終了した。

 

 

 

この後はドイツ代表と一緒にバーベーキューをした。俺は通訳者さんとともに色んな席に行って通訳をする。

それが一段落して、俺も席についた

 

「はー疲れた」

 

「お疲れ。はいジュース」

 

俺の元に来たのは飲み物を持ったアーベルトだった。

 

「サンキュ、そっちの脳筋は大丈夫か?うちの脳筋と大食い勝負してたろ?」

 

「ああ、今は他の仲間が介抱してるよ。言葉は通じなくても勢いでなんとか会話になってた」

 

「そっか・・・・・お前らって最近出来たチームじゃないのか?」

 

「ああ、アイコンタクトね。最近じゃないよ。少なくてもレギュラー5人とは小さい頃から知り合いだから付き合い長いんだ。あんまりバスケ人口多くないからかな。ドイツでバスケやってれば皆友達だ」

 

「うちもだけど・・・・あんまり盛んじゃないからなー」

 

「だからもっとバスケ人口が増やしたいんだよね。今度の国際大会は絶好のバスケアピールになるし、その為に踏み台にしてやろうと意気込んできたら・・・・まさか日本に化物がいるとは」

 

「誰が化物か」

 

「頭の良さだけは自信あったのに・・・それをコナゴナに砕かれ、個人技では結局誰も止められない。頭と身体が優れてるってどんなチート?」

 

「うっせー・・・・こっちだってお前らの信頼関係にはビビったよ」

 

「ファンブルしたときね(笑)」

 

「動揺しちゃったなー・・・・キャプテン失格だ」

 

「でも・・・・いい仲間がいたね」

 

「お互いにな・・・・」

 

俺達は馬鹿やってるアイツらを見る

 

「そういえば・・・・名前なに?」

 

「空・・・」

 

「ソラか・・・・いい名前だね。自由に飛べそうだ」

 

「ありがと・・・・お前は?」

 

「アーベルトだよ」

 

「じゃあアーベルト。今度は国際大会でな。」

 

「うん、鍛え直してリベンジに行くよ」

 

アーベルト達は帰って行った。

 

「さてみなさん。合宿も無事に終わり、最後は勝利で終われてよかったです。次の合宿は1月を予定しています。その時にはこの場にいる38人全員を呼ぶ予定なのでまたよろしくお願いします」

 

「結局帰らんかったんだな」

 

「そうだね。次こそ自分たちもって思う人が多いから」

 

そして合宿が終わり解散となった。

 

 

「空様、お疲れ様です」

 

「ああ、やんばる迎えありがとう」

 

体育館を出るとやんばるが待機していた。みんなが驚いているが・・・

 

「空!誰!?このメイドさん!」

 

「・・・・りあるめいどさん・・・」

 

「やんばる。メイド。以上」

 

「適当すぎだろ!!」

 

俺はうるさいのを無視して車に乗り込む

 

「じゃあなお前ら。今度は1月か・・・・大会頑張れよ」

 

「おう!またな!」

 

そう言って俺達は分かれた

 

車の中でやんばると話す。

 

「真帆たちはもう?」

 

「ええ、空様もすぐに向かいますか?」

 

「ああ、頼む。早くあいつらに会いたい」

 

「・・・・やっぱり寂しかったんですか?」

 

「・・・・寂しいに決まってんだろ」

 

「空様は甘えたい盛りですね。私に甘えていいんですよ?」

 

「・・・・・今運転中だろ。」

 

「運転中じゃなきゃ甘えていたんですね。可愛いですね」

 

「・・・・疲れたから寝る」

 

「おやおや・・・・・おやすみなさいませ。空様」

 

 

俺は別荘につくまで寝ることにした。

合宿が無事に終わってまた合宿。そして再び合宿。

今年は今までにないくらい濃い夏休みになっている。




終わり!
ここまで読んだ人!長すぎてゴメンね!!
14994文字だってよ!2つに分けるべきだったね・・・・


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第9話

日刊ランキング28位頂きました。
ありがとうございます。これからも頑張りますー
原作5巻辺りですー


「着いたので起きてください。空様」

 

俺がやんばるに起こされ目が覚める。辺りを見渡すとそこには大きな別荘と海が見えた。

 

「着いたんだ・・・・まだ眠い・・・・」

 

「相当過酷だったんですね・・・・すぐに皆様の元に行きますか?」

 

「うん・・・・・行く」

 

俺は半分寝ぼけた状態で車を降りてみんなのいる場所に案内してもらう

今みんながいるのは勉強部屋らしい。どうやら午前と午後で遊びや練習をして夜は宿題。

俺はドアをノックして返事を待つ。

 

「はーい」

 

返事をしたのは真帆か・・・

 

「空だけど、開けていいか?」

 

するとドタバタ音が鳴って勢いよくドアが開いた

 

「にーちゃん!おかえり!」

 

「おー。そら。おかえり」

 

真帆とひなが強く抱きしめてくる。

 

「2人とも・・・・・ただいま」

 

紗季と愛莉もこちらに来る。

 

「空じゃない。おかえり」

 

「空君、おかえり~」

 

「ああ、紗季と愛莉も・・・ただいま。智花は?」

 

「ああ、今は長谷川さんのところよ」

 

どうやら昴さんのところに行ってるらしい。宿題で分からないところを聞きに行ったみたいだけど・・・・口実っぽいな。

 

「それよりにーちゃんも入って!」

 

俺は部屋に入ってみんなに合宿について話した

 

「え・・・・そんなに厳しかったの?」

 

「うぅ・・・私は無理かも・・・・」

 

紗季と愛莉が驚いてる。あれは小学生にやらせるメニューじゃないからな・・・

 

「お前らはどうだったんだ?」

 

「あたしたちも大変だった!」

 

「おー。ひな疲れた・・・・」

 

ひながこてんっとこちらに寝転ぶ。ちょうど膝枕の態勢だ。

 

「あらら・・・・そっちも相当ハードだったんだな」

 

俺はひなの頭を撫でて言う。

 

「でも、ひながんばった。ほめてー」

 

俺はそのままひなの頭を撫で続ける

 

「にーちゃん!私も頑張ったんだから褒めてよ!」

 

空いてる手で俺は真帆の頭を撫でる。

どうやらリラックスしてくれたみたいだ。

 

「うぅ・・・羨ましいよ・・・・」

「愛莉はもうちょっと積極的にいかないと・・・・」

 

小声で2人は何か話しているが小さすぎて聞こえないな

 

そして俺も宿題をやる為にノートを出した。どうやらやんばるが俺の分も持ってきてくれたらしい。感謝。

 

 

「じゃあそろそろ時間も遅いし切り上げるか。俺は部屋に戻るよ」

 

「ん?じゃあ私もいくー」

 

そうして俺と真帆は一緒に出ようとするが

 

「待ちなさい。まさかアンタ達一緒に寝てるの?」

 

紗季が疑問を挟む

 

「「うん」」

 

俺と真帆は同時に頷いた

 

「ちょ・・・・あんた達は兄妹とはいえ義理なのよ?割と最近まで他人だったのよ?何とも思わないの?」

 

なんともって・・・・

 

「別に・・・・最初は多少意識したけどすぐ慣れた」

 

「思ってないに決まってんじゃん!」

 

「おー。ひなも一緒にねるー」

 

「ひ、ひなちゃん・・・」

 

紗季は不服なのだろうか?

 

「そう怒らないでくれ。真帆は俺が寂しくならないように一緒に寝てくれるだけ。他に他意はないよ・・・・」

 

「あ・・・・ごめん」

 

どうやら俺の事情を思い出したらしい。俺は真帆が嫌という日が来るまで出来れば一緒に寝たいと思ってる。誰かと一緒に寝るのがこんなに温かいものだなんて知らなかった。こういうところは幼児退行してるのかな・・・・

 

「おー。ひなもいい?」

 

「いいよ。一緒に寝ようか」

 

「わ、私も・・・・」

 

「愛莉も?もちろんいいよ」

 

さすがに愛莉も含めると幅が狭いけど大丈夫かな?

 

「・・・・これで私だけ1人で寝たら空気読めないじゃない」

 

「別に無理しなくていいんじゃないかな?智香も別って言うかもしれないし」

 

「別に無理してないわ。・・・・合宿中は大丈夫だったの?」

 

「ああ・・・・うるさいのが連日部屋で騒ぐからな」

 

あのトランプ大会は合宿中ずっと続いた。2日目3日目のころには無駄に人も増えてみんなで夜通しトランプ・・・・朝が死ぬほど辛かったなー

 

「何か大変そうね・・・」

 

「いいんだ。今夜はグッスリ寝れそうだし」

 

来る途中の車で寝たけど正直寝足りない。着いたのが夜でよかった。

 

寝室に移動する俺達。途中智花と合流して皆で一緒に寝る

 

「あはは、ちょっと恥ずかしいかも・・・・」

 

智花がそう言うけど・・・・

 

「俺や真帆は慣れてるけど・・・・みんな狭くない?」

 

「おー。そらのお腹。あたたかい」

 

「大丈夫だよ!」

 

愛莉のテンション高いけど本当に大丈夫か?

 

「まぁ、たまにはいいかもね」

 

「紗季はすなおじゃないなー」

 

「うっさい真帆!」

 

左から、紗季、真帆、俺(腹の上にひな)、愛莉、智花の配置で寝ている

 

「ひなは寝づらくないか?」

 

「おー。だいじょうぶ・・・・zzz」

 

どうやら疲れてひなだけでなくみんなもう眠ってしまった。俺も眠気に身を任せ意識を落とした。

 

 

翌朝になりリビングに行くとそこには葵さん、竹中、羽多野先生、そしてひなの妹のかげつがいた

 

「・・・・・なにこのメンツ?」

 

俺が不思議に思ってると昴さんが説明する。

どうやら昨日俺たちが寝入った後に到着したらしい。いや聞きたいのはそこじゃなくて何でこのメンツでいるかなんだけど・・・・まぁいいか

 

「かげつとは久しぶりか。元気にしてたか?」

 

「は、はい!空先輩!」

 

恐らくひなが心配だったから来たんだろうな。前から過保護だったし。

 

「折角来たんだ。楽しめよ」

 

「いえ、姉様のお世話をしなきゃいけないので・・・」

 

これだ・・・・今のひなをちゃんと見てやればいいのに

 

おっと、どうやら真帆と紗季が竹中をからかってるな・・・・面白いし参加しよう。

俺は竹中たちのもとに向かう

 

「どうやら竹中は特定の誰かさんが心配で来たみたいだけど・・・・誰を心配したのかな?」

 

「げ・・・空」

 

「ほらほら言うてみい」

 

そうすると葵さんが竹中に助け舟を出した。さすがに葵さんに介入されるとこれ以上は無理だな・・・

 

「葵さーん。もうちょっと楽しませてくださいよー」

 

「あれ以上は竹中君が可哀想でしょ?あんまりからかっちゃダメだよ?」

 

「しょうがないですねー・・・ところで葵さんが来たのは昴さんが気になったからですか?」

 

「こっちに飛び火した!?」

 

ついでに葵さんもからかっておこう

 

どうやら昴さんのほうはかげつと話しているな。竹中が余計なことを言って不信感を与えたらしい。本当に余計だな・・・・

 

「かげつ。昴さんはお前が思っている人じゃないぞ。俺が保証する」

 

「空先輩・・・・でも・・・・もしそうじゃなかったら・・・」

 

「・・・・・そんなに心配なら自分の目で確かめな。昴さんや・・・今のひなを・・・」

 

「・・・・分かりました。でも!もし信頼に足る方じゃなかったら姉様を連れて帰ります!」

 

「それでいいんじゃない?」

 

かげつは俺達から離れてひなのもとに戻った。

 

「助かったよ・・・」

 

「まー、頑張ってくださいな。あの子は過保護なので本当に連れ帰ることもしますよ。下手するとバスケ部を退部させるかもしれません」

 

「そこまで?」

 

「溺愛してますからねー」

 

さて、朝食にしますか。

 

 

朝食が終わり俺達はジムに移動する。最初は筋力トレーニングからだ

 

「ちゃんとアップはしとけよ。怪我だけには気をつけろ」

 

俺はみんなにそう言って自分のトレーニングを始める

にしても竹中うるせーな。言ってることは間違ってないけどここでキャプテンシー発揮しなくていいんだぞ。

 

「竹中、全体の指示や注意は昴さんがする。お前もここで練習するつもりなら自分のことに集中しろ」

 

「うぇ・・・空」

 

「俺達の事はちゃんと昴さんが見てる。それに今回は葵さんもいる。昴さんは信じられなくても葵さんは信用してるんだろ?」

 

「当然だろ!」

 

「なら自分のことをやれ!真帆たち気にしてる余裕があるならメニュー倍増すんぞ!」

 

「分かったよ!」

 

これで竹中も大丈夫だろう。昴さんがこっちを見て目で謝ってる

 

「(ごめん)」

 

「(気にせずに)」

 

ちゃんと伝わっただろうか?

 

 

昴side

 

竹中がうるさいせいで皆が集中しづらそうだな・・・・・俺が言っても反発するだけだろうしどうするか。

お、どうやら空が言ってくれたらしい。やっぱり頼りになるよ。

俺は目線で空にごめんと伝えた。

 

「(ごめん)」

 

「(コーチのつもりならちゃんと仕事してください)」

 

そういう目で返された気がする。空の言う通りだな。俺自身ちゃんとみんなに指導しないと・・・

 

 

sideout

 

 

ジム練が終わったので次に砂浜に移動した。どうやらディフェンスの為にひたすらフットワークを磨くらしい。

 

「(砂浜でフットワーク練習か・・・・砂に足を取られてすぐに疲労が溜まるぞ・・・)」

 

俺の懸念は当たった。騒いでた竹中も余裕がない。女バスのみんなも余裕がない。

そして俺は・・・・

 

「(死ぬ死ぬ死ぬ!こっちは前日まで合宿だったんだぞ!殺す気か!)」

 

疲労が回復しきれてない為に動きの質が悪い。

 

「空!いつもより動きが悪いよ!一体どうした!?」

 

「大丈夫です!(どうしたもこうしたもねーよ!絶対昴さん忘れてるな・・・・)」

 

フットワークのみの練習はその後も続いた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・お前らいつもこんな練習してんのか?」

 

「と・・・とーぜんじゃん・・・」

 

真帆強がり言うな・・・・こんなのが普段のメニューなわけないだろ・・・・

 

「なわけねーだろ。多分合宿だから特別メニューなんだよ・・・・」

 

「そうね・・・・私たちが頼んだのよ。もっと強くなりたいからね・・・」

 

「へー・・・・でも空は情けないな。実力はトップクラスでも体力は俺らと変わんねーじゃん」

 

「馬鹿ね、夏陽・・・・空は前日までこれ以上のハードな合宿と試合を熟してそのまま昨日の夜にこっちに来たのよ。疲労が残ってるに決まってるでしょうが」

 

「・・・・・マジで?その状態でこの練習に耐えたのか?」

 

「・・・・代表合宿ほどじゃないけど、この練習も相当キツイぞ。体力がフルでも普通に疲れる。むしろお前らがこの練習に着いてけることに驚いてる」

 

「・・・・強くなりたいからね」

 

やはりこの間の試合が相当悔しかったんだな・・・

 

俺はひなたの方を見るとどうやらまたかげつの過保護が始まったらしい

溜息をつきながらひな達のところに向かう。

 

「かげつ、いい加減にしろ。ひなは大丈夫だ。いつもより練習がハードだから余計疲れてるだけ。」

 

「しかし空先輩!なにか悪い病気だったらどうするんですか!」

 

「だったらこの練習がこなせるわけねーだろ」

 

「でも・・・・・」

 

「でもじゃない。それに万が一何かあれば羽多野先生に診てもらえばいいだろ」

 

「・・・・わかりました」

 

不服そうだが納得はしてくれた。やれやれ・・・・

 

休憩がてら女子のみんなはシャワーを浴びにいくらしい。昴さんと葵さんは残って俺達以上の負荷をかけてフットワーク練をするらしい。

 

「竹中シャワー浴びないのか?」

 

「ん、ちょっと見てる」

 

「そ、身体は冷やすなよ」

 

俺もシャワーはまだいいや。5分あれば洗い流せるしこの疲労の状態でどの程度プレーに影響が出るか実感したいのでコートに行く。

そして30分くらい懸けてプレーのチェックをする。

 

「(思ったより動けないな・・・・自分が感じてる以上に疲労が蓄積してるのか・・・どっちにせよ情けないな)」

 

プレーのチェックが終わったのでシャワーを浴びにシャワー室に向かう途中で葵さんに遭遇する。

 

「あ、お疲れ様です。練習終わったんですか?」

 

「あ、空君。そうだよー空君は?今からシャワー?」

 

「はい、ちょうどよく疲労が溜まっていたのでプレーのチェックを」

 

「え?あの練習の後で?凄いねー。でも無理しちゃダメだよ。合宿の疲労が残ってるんでしょ?」

 

「疲労が残ってるからこそなんですけどね・・・・あれ?合宿のこと言いましたっけ?」

 

「さっき練習中に昴に聞いたの。昴本人はさっきまで忘れてて怒鳴ったの後悔してるって」

 

「ああ、別にいいんですよ。動きが悪いのは事実ですし」

 

「ちゃんと選手の状態は把握しろ!って怒っといたから」

 

「ほどほどにしてやってくださいね」

 

「昴次第かなー」

 

シャワー室の前に行って別れる俺達。

 

シャワーを浴びた後はやんばる特製のカレーを食べた。やっぱりやんばるのカレーは美味いなぁとほくほくしていたら、昴さんから午後の予定を聞かされた。

しかしそこに異を挟めるのが・・・

 

「ま、待ってください!午前中に無理したのにまたバスケットをやるんですか!?今度こそ姉様が倒れてしまいます!」

 

ハァ・・・・俺は今のひなを見ろって言ったのに・・・

 

「かげつ・・・・お前ひなと勝負してみるか?今のひながどれだけ凄いか分かればお前も納得するだろ」

 

「勝負?」

 

「分かりやすいだろ。お前とひなが勝負してひなが勝ったら運動はひなのほうが優れていることになる。お前より優れてたらお前も納得するだろって言ったんだ」

 

「そうね・・・ちょうどよく明日トライアスロンがあったわね。そこの最後のマラソンで競わせたらどうかしら?」

 

明日はトライアスロンリレーの大会があるらしい。対象は小学生のみ。3人ずつのチームで水泳・自転車・マラソンの3つの競技が行われる。

 

「私勝負するなんて言ってません!姉様と勝負なんて・・・」

 

「勝負しないなら不戦勝でひなの勝ちだ。敗者は黙ってろ」

 

ちょっと言い方が厳しいかも・・・・

 

「そんな・・・・」

 

「嫌ならひなに勝てばいい。そうすれば今まで通りだ」

 

「・・・・マラソンだって危ないですよ」

 

「本当に危ないなら羽多野先生が止めるさ。もちろん競技前に最終チェックをさせよう。いいですよね?羽田野先生」

 

「もちろんよ。かげつちゃん、ひなたちゃんの身体は私に任せて!」

 

なんだろう含みを感じるけど・・・・

 

「ひなはどうだ?かげつに勝ってみたいと思わないか?」

 

俺がひなに聞くと。案外ノリノリで

 

「おー。ひな、かげに勝ちたい」

 

どうやら問題は無さそうだな

 

「受けろかげつ。そして今度はちゃんと見ろよ。今のひなを」

 

「分かりました・・・・その代わり私が勝ったら無茶な練習は禁止にしてもらいます!」

 

「OKだ」

 

そして翌日、トライアスロンリレーが開幕する。

 

 

それぞれのチームに分かれて勝負をする慧心女バス+かげつ

水泳・自転車と一進一退の攻防が終わり、ついにマラソンに差し掛かる

 

最初は同じペースで進んでいるかげつとひなた。しかしそれに俺は怒りを感じていた。

本来かげつはもっと速い。去年のマラソン大会の4年の部で優勝しているくらいだ、この程度の訳がなかった。証拠に後ろからひなを心配してる顔が見える。

 

「(真剣勝負で相手を気遣う?・・・・ふざけんな!)」

 

俺はいてもたってもいられずかげつに怒鳴った

 

「ふざけんなかげつ!真剣勝負で相手を気遣ってんじゃねーぞ!お前はひなを侮辱してんのか!」

 

俺のセリフに反応するかげつ

 

「侮辱なんてしてません!ただ姉様が心配で・・・・」

 

「それが侮辱してんだよ!ひなは真剣にお前に勝とうとしてるんだぞ!そんな心配なんて必要ないんだよ!いい加減今のひなを見ろって何回言わせる気だ!!」

 

そして2人の姉妹が話す。ここからじゃ何を言ってるか聞こえない・・・・けど

 

「全力出せよ・・・・・それでも勝つのはひななんだからさ」

 

そうして本気を出したかげつ。さっきと比べられないスピードだが・・・・

 

「(ペース配分がなってない。これは学校のマラソン大会よりも距離があるんだぞ・・・)」

 

ひなは安定したペースで走る。ペース配分をミスったかげつは徐々に下がり、ひなと並んだ。残りは500m

勝者は・・・・・ひなただ

 

 

夜になり、みんなで花火をやる。俺はそれを見ながらかげつと話していた。

 

「今のひながよく分かったか?」

 

「はい。迷惑かけてすみませんでした」

 

頭を下げるかげつ。

 

「いいよ。ひなも大分成長しただろ?」

 

「そうですね。もう私は必要ないなって思ったとき姉様に言われたんです・・・・・これからも一緒に遊ぼうって」

 

「そっか・・・・・かげつはバスケ部に入らないのか?」

 

「みなさん真剣ですから・・・・ただ姉様が心配だからってだけじゃ失礼だと思うし・・・・でも、姉様の自主トレの相手をすることにしました」

 

「かげつは運動神経いいしひなも助かるだろう」

 

「ありがとうございます。あ、みなさん呼んでますよ?」

 

「そうだな・・・じゃあかげつも行こうぜ」

 

俺はかげつの手を取って引っ張る

 

「あ・・・・」

 

「折角来たんだ。楽しめよ」

 

俺はかげつに最初に言った言葉を再び言う

 

「・・・・・はい!」

 

心配してる顔よりその笑顔が一番だ。

 

 

俺達の合宿はこれで終了した。色々あったがみんなとの絆が深まった合宿になったと思う。まだまだ楽しい夏休みはこれからだ・・・・

 




すまんな竹中。お前の数少ない名シーン奪っちゃった


OKシーン

ちょっと言い方が厳しいかも・・・・

「そんな・・・・」

「嫌ならひなに勝てばいい。そうすれば今まで通りだ」


NGシーン

ちょっと言い方が厳しいかも・・・・

「そんな・・・・」

「これでもこっちは譲歩してんだよ。本来ならお前の言葉なんか無視してもいいんだ。けど、それじゃあ可哀想だから提案してんの。それにお前がいちいち騒ぐせいで練習にも入れない。お前・・・・自分がみんなに迷惑かけてる自覚あるか?」


さすがに厳しすぎなのでボツ
敗者は黙ってろのセリフもボツにしようかと思ってましたがなんとなくそのまま残しました


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第10話

原作6巻ですが・・・・


合宿から1週間近くが経った。その間に竹中と共に自主練とか紗季の家で試食会とか短い期間ながらも充実して過ごせた。そして週末に女バスのみんなと昴さんとで夏祭りに行くことになった。

今日風雅さんから浴衣を貰ったので真帆にその浴衣をみせる

 

「風雅さん、俺の分の浴衣も用意してくれたんだな」

 

「当然!にーちゃんに似合ってるかっけー浴衣だよ!」

 

白を基準とした浴衣。大分大人っぽいデザインだけど俺に似合うのかな?

 

「じゃあ試着してみるか・・・・似合ってなかったらどうしよう」

 

似合ってなくても着るけどね・・・・父親からの2度目のプレゼントだし。ついでに最初に貰ったのは温かい家族だ。

 

「(いつまでも風雅さんって呼ぶのはなぁ・・・・でもなんて呼べばいいんだろうか?パパ?親父?父さん?なんか恥ずかしいかも)」

 

当分呼び方は変えられそうにない。

俺は浴衣を着て真帆の前に立つ。

 

「どうだろうか?おかしいとこ無い?」

 

真帆は俺の姿を見てボーっとしてる。やっぱり身の丈に合わないんだろうか?

俺が真帆の反応を待つと

 

「すっげー!にーちゃんすごい似合ってる!」

 

どうやら真帆のお気に召したみたいだ。これなら問題ないかな。

 

「よかった。小学生っぽくないと思ったんだ」

 

「うん!小学生には見えない!でも大人っぽくてかっけー!」

 

あ、小学生には見えないのね・・・・身長もあるしそこはしょうがないのかな

 

「あ、見えないのか・・・・まぁ似合ってるならいいか」

 

「ねえ私はどう?似合ってる?」

 

真帆の浴衣は黄色地にモダンな幾何学模様が描かれ、丈も膝上でカットされたミニサイズだ。

 

「似合ってるけど下着見えないかな?」

 

「大丈夫!気を付けるし」

 

「真帆の気を付けるはあまり信用できないんだけどなぁ・・・・絶対はしゃぐだろ?」

 

「はしゃぐけど大丈夫!」

 

はしゃぐのか・・・なるべく注意してよう。

 

「それよりもっかん大丈夫かな?」

 

「ああ、明日ちゃんと来れるといいんだけど・・・・」

 

智花のお父さんは智花が夏祭りに行くことに反対してるらしい。ついでに智花がバスケをやるのも好ましいとは思っていない。不良がやるスポーツとか思っているし前の学校のこともありあまり良い顔はしない。決定打になったのは夏合宿。

 

「(智花の両親か・・・・一体どんな人なんだろうな・・・)」

 

今悩んでも解決の糸口はつかめないので明日智花が来なかったらその時みんなで考えよう。そう思った。

 

夏祭り当日。俺達は待ち合わせである近くの公園に来るとそこには智花もちゃんと来ていた。

 

「よかった。来れたんだな」

 

「うん。お母さんが何とかしてくれたんだ」

 

お母さんだけでも味方なのが幸いだな・・・・

 

そして俺達は会場につく。

 

「結構立派なんだな。みんな人も多いしはぐれないように気を付けようか」

 

そこで真帆が提案をする。

 

「くふふーはぐれないようににーちゃんに抱きつこうー」

 

「おー。ひなも」

 

そしてひなと真帆が俺の腕に抱きついてくる。

 

「わ、私も・・・・」

 

「愛莉も?腕は空いてないから・・・・じゃあ帯に捕まって」

 

「う、うん・・・・」

 

どうやら紗季と智花は昴さんに捕まってるみたいだ。これならみんなはぐれずにすむだろう。

 

「・・・・昴さんがいるなら大丈夫かな・・・ちょっと3人とも折角だし智花にはデート気分を味わってもらわないか?」

 

「どういうこと?にーちゃん」

 

「折角の祭りなんだし2人きりにしてやろうってこと」

 

「おー。ひな賛成」

 

「うん、いいと思うよ。えへへ、智花ちゃん頑張ってほしいな」

 

そうして紗季を昴さんから離れさせ移動を開始する。

 

「こっちは心配せずにお二人で楽しんでください。みんな行くよー」

 

『おー!』

 

後ろで昴さんや智花が何か言ってるが無視していいだろう。

 

俺と紗季と真帆は射的屋で遊んでいた。

真帆はなかなか上手くできずに四苦八苦している。

 

「当たんないぞ!」

 

「ちゃんと狙いを定めなー」

 

そして銃を前に突き出してなるべく距離を近くにするがそれも上手くいかない。

 

「にーちゃん。ちょっと支えて!」

 

「しょうがないな・・・あまり無理はするなよ」

 

俺は真帆を支えて前に突き出す。そうしてやっと景品に当てることができた。

 

「やった!・・・・わ!」

 

「え?ちょ・・・」

 

あまりに前に突きだしすぎたのか真帆が勢いよく前方に倒れようとする

俺もバランスを崩してしまいそのまま転倒してしまった。

 

「いたた・・・・あ」

 

俺の目の前に黄色と白のストライプ柄が見えた。これって・・・

 

「うわー!にーちゃんのえっち!!」

 

どうやら真帆の下着みたいだ・・・・だからあまりはしゃぎなと言ったんだ

俺は起き上がって真帆の身体を掴んで立たせる

 

「見たこと謝るが事故だろう。そんなに騒ぐな」

 

「真帆、落ち着きなさい」

 

俺と紗季で真帆を落ち着かせるが真帆は聞かない

 

「ちゃんと責任とってくれなきゃ許さない!」

 

まぁ、事故でも見たのは事実だしなぁ・・・・

というか隣で紗季が色々考え込んでいるけど、責任=結婚じゃないぞ。

 

「分かったよ・・・・今度何かの形で返すから許してくれ」

 

「じゃあ一緒にパンツ買に行って!そして一緒に選ぶの!」

 

「ランジェリーショップ?それくらいならいいけど、金はないから出せないぞ」

 

「ちょ!?空いいの!?」

 

紗季が驚いてるけど別に問題はないだろう。

 

「一緒に下着を選ぶんだろ?問題ないよ。あ、嫌がらせに昴さんも連れて行こうか。どういう反応示すか楽しみだな」

 

「すばるんも?いーよー!」

 

うん、今回の件に何一つ関係ないけどついでだしな。

 

「どうせなら皆も連れていこうか。」

 

「あんたに羞恥心ってないの!?」

 

最近そういうの気にしなくなったなー

 

 

そして昴さんたちと合流した俺達は愛莉とひなを探すことにした。つい遊びに夢中になってしまったのは申し訳ない。今から探そうとしたが真帆が花火を見たいらしいから場所取りをしてほしいし・・・

 

「じゃあ3つに別れるぞ。俺と昴さんで探すから、他の皆は花火の場所取りをしていてくれ。見つけたらすぐに戻るから場所が決まったらメールして。昴さんは見つけた時点で電話をお願いします」

 

俺は2人を探すと早速愛莉を見つけた。どうやらナンパされてるみたいだけど・・・いい度胸じゃねーか。年上みたいだが問題ない。その程度でビビると思うなよ。

 

「おい、うちの小学生の妹になにしてるんだ?」

 

俺は3人のチャラ男に向かって言う

 

「は?妹?・・・・今小学生って言ったか?」

 

「言ったがそれが?とっととその手離せよ・・・・潰すぞ」

 

「・・・・は、こんなデカイのが小学生なわけねーだろ!!」

 

コイツ愛莉のNGワードを言ったな?穏便に済ませようと思ったが予定変更。恥かかせてやるよ。

 

「みなさーん!ここに小学生をナンパしているロリコンがいまーす!」

 

俺は大声で周囲に聞こえるように言う。

 

「ああ!?テメーなんてこと」

 

知るかバカ

 

「荒い息をたてながら小学生に大人が3人でナンパしています!大人としてこれってどうなんですかー!?」

 

周囲にいる人たちがこちらを見てヒソヒソと話しだした。

 

「あの子小学生みたいよ?あの3人ロリコンかしら」

「いやーねー。今そういうの多いみたいし・・・」

「警察に通報する?」

 

いたたまれなくなったアホ達がその場で逃げるように去っていく。いや逃げたんだろうけど・・・

 

「愛莉大丈夫?」

 

「うぅ・・・空くぅん・・・」

 

「来るのが遅くなってごめんね。でも泣かないでいい。もう大丈夫だよー」

 

愛莉がしがみ付いて来たのでポンポンと頭を撫でる

 

 

昴さん達もひなを確保したみたいなので合流して真帆たちのとこに向かった。

みんなで集まった後は展覧席で花火を見る。後ろで智花と昴さんがイチャイチャしてる会話が聞こえるけど・・・・・

 

「(気のせいですよね?昴さんってガチじゃないですよね?いや、本気で愛し合ってるなら応援はしますけど・・・・お縄になったら・・・・)」

 

俺が考えてるとさらに後ろの方で智花を呼ぶ声が聞こえる・・・あれは・・・

 

「言いつけを守れないなんていつからそんな子になった!さぁ、家に帰るぞ!」

 

智花の父親?・・・・あれって

 

「(忍さんか?じゃあ母親って花織さんだったのか!?)」

 

智花を連れて行く忍さんを昴さんは追いかける。みんなは残っててって言うけどそうもいかんでしょう。みんな言葉を発っさなくても理解している。俺達は昴さんの後についていく。

昴さんと忍さんで話をしているが・・・

 

「(バスケットなんかをやってる人間にロクなやつはいない・・・か)お久しぶりですね。忍さん」

 

「君は・・・・」

 

「一度ご自宅で会っていますけど覚えていますか?三沢空です」

 

智花が驚いているが今は気にすることじゃない

 

「・・・覚えているとも・・・・・智花の友人だったんだな。あの時は礼儀正しい少年だとは思ったが、君もロクな人間じゃないようだな」

 

「今回の件は申し訳ありません。しかし智花さんには何も責任はありません。全ては私と監督の独断です」

 

「(俺だけに責任を取らせないようにしてくれたのか・・・・相変わらず空は・・・)そうです!僕たちで行ったことです。本当に申し訳ありませんでした!」

 

「空君に昴さん!家を出たのは私がお母さんに・・・・」

 

「・・・花織の差し金か。まったくあいつは・・・」

 

夫婦仲は(見た感じ)良好なはずだから今回のことで険悪にはならないはず・・・

そして昴さんと俺で忍さんに謝罪する。君が智花について何を知ってるかと聞かれたがそこは昴さんに任せる。俺は・・・・

 

「では聞きますが、忍さんはバスケットの何が分かるんですか?」

 

「なに?」

 

「どんなスポーツだってガラの悪い人はいるじゃないですか。なのにバスケットをやっているだけでロクな人間じゃない?じゃあバスケットをしてる貴方の娘はロクな人間じゃないと?」

 

「そんな訳あるか!」

 

「貴方が言ってるのはそういうことですよ。貴方の発言は真面目にバスケに取り組んでる私の仲間を侮辱する言葉です。訂正してください」

 

この人はみんなを侮辱する言葉を言ったんだぞ?俺だけならともかく仲間を侮辱されて我慢できるほど、俺は人間が出来ていない。

 

「・・・・それはすまない。訂正しよう。しかし君たちの存在が智花にとって悪影響なのは否定できない」

 

「・・・・それは彼女たちの言葉を聞いて判断してください」

 

そこで女バスのみんなが忍さんに訴えかける。俺みたいなやつの言葉より真っ直ぐ話す彼女たちの方が心にくるだろう。

どうやら説得も上手くいったみたいだな。

 

 

花火に戻ろうとしたがもう場所も取られてるだろうと思った俺達だったがどうやら智花の家で花火が見れるらしいので忍さんの提案でそっちに移動した。

俺は花火をしている皆と離れながら忍さんと話す。

 

「今日はすみませんでした。智花さんのことや・・・・色々生意気言って・・・」

 

「いや、私も悪かった。仲間を侮辱されたら怒るのは当たり前だ。気にしなくていい」

 

「ありがとうございます。」

 

少し頑固で偏屈なんだろうけど、やっぱり忍さんは良い人だ。今回のことだって娘を心配する父親としては当然なんだろう・・・・多分

 

「そういえば・・・私の記憶違いじゃなかったら君の苗字は御巫じゃなかったか?」

 

「・・・・色々ありまして、三沢家の養子になったんです。だから今の私は三沢空なんです」

 

「そうか・・・・立ち入った事を聞いてすまない」

 

「いえ・・・・・今の家族は私を大事にしてくれてるので気にしてませんよ」

 

「・・・・よかったな。初めて会ったときは礼儀正しいが精神が辛そうだったのが気になったが・・・今は随分年相応になった」

 

なんだろう、人の親だとやはり子供のそういうところは気が付くのか?

 

「それって褒めてます?」

 

「褒めてるさ・・・・良い顔になった」

 

「・・・なら、褒め言葉として受け取っておきます」

 

そして花織さんもこちらに来る。

 

「あらら、空君・・・・・久しぶりね」

 

「お久しぶりです。いつぞやはお世話になりました」

 

「いいのよ。いつでも家に来ていいのよ?」

 

花織さんには一度智花とは関係なしにお世話になったことがある。恐らく別の話で語ることになるから割愛するが、あの時は本当に世話になった。

 

「そうですね・・・・今度は皆とまた遊びに来ます」

 

「うん・・・・元気になってよかったわ。ところで・・・・」

 

あ、これは・・・

 

「智花って昴さんが好きなのかしら?私的には貴方も・・・」

 

「そういうのは智花さんの意志が一番大事なので智花さんに聞いてください。恐らく昴さんが好きだと思うので・・・・」

 

「あらやっぱり?」

 

「ちょっと昴くんのところに行ってくる」

 

ごめんね昴さん。やっぱり忍さんってちょっと親バカも入ってるのか・・・

 

「・・・・で?忍さんを離して何か言いたいことでも?」

 

「あら、バレた?」

 

舌を出してこっちにウインクを見せる花織さん。どうみても20代前半にしか見えません。

 

「まぁ、分かりますよ・・・・俺は元気ですよ」

 

「それはさっき聞いたわ。顔つきを見ても心配なさそうだし・・・・初めて見たときは酷い顔してたもの」

 

酷い顔か・・・・確かに

 

「じゃあ、何の用で?」

 

「・・・・あの時はごめんなさいね。壊れそうになった貴方を私は助けられなかった」

 

ああ、別に気にしなくていいのに・・・・というか

 

「あの時は俺が悪いんです。むしろ謝るのはこっちです」

 

「そんな・・・・無理矢理にでも私が「ストップです」」

 

俺は花織さんの口を掌で塞ぐ。

 

「俺は今幸せです。貴女の娘や女バスのみんなに救われてここにいる。色々ありましたけど・・・・・もう過去なんて気にすることじゃないんですよ」

 

俺がそう言っても花織さんは納得してくれない・・・・なら、

 

「じゃあ、今度遊びに来たときにご馳走してください。あの時食べ損なりましたからね。それでチャラということで・・・」

 

それで納得してくれたのか笑顔になる。あ・・・・・手を離さないと

 

「あー!にーちゃんがかおりんに手を出してる!にーちゃん!かおりんはもっパパのなんだぞー!」

 

こちらに気づいた真帆が余計な事を言った。

 

「おー。ソラ。かおりすき?」

 

「え!?空君・・・」

 

「略奪愛か・・・昼ドラみたいね」

 

「違う!これはそういうことじゃ・・・」

 

俺は必至こいて弁明する。じゃないとこちらに鬼が来てしまう。

 

「ええ、今手籠めにされそうになったわ。悪い気はしないけど・・・」

 

「お、お母さん!?空君私の母親に何をしたの!?」

 

花織さーん!悪ノリしないで!頬染めないで!あと智花も誤解だから・・・・

 

「・・・・どうやら話をする相手がもう1人いたな」

 

鬼来ちゃった!!昴さん安堵しないで助けてよ!!

 

 

色々カオスになりながらも楽しく過ごせた夏休みの1日だった。




竹中と自主練していたため長谷川家に行かなかったので花織さんとは会っていません。

花織さんとの出会いについてはそのうち書くかもしれないし、書かないかもしれないし・・・・・必要?


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第11話

原作7巻ですね・・・・ある場面で悩みました。



「何か言うことは?」

 

「・・・・・・・」

 

ある晴れた日の午後。俺と昴さんと女バスのみんなである場所に出かけていた。

その場所とは・・・・・

 

「自主練に付き合ってほしい・・・・・って聞いたんだけどな」

 

「そうでしたっけ?それはすみません。でも暇だって言ってましたし別に問題はないでしょう」

 

「問題大ありだよ!何でランジェリーショップ!?場違いにも程があるよね!?」

 

夏祭りで真帆の下着を見てしまった責任で下着を一緒に選ぶことになった俺は、ついでに皆も巻き込もうと思い今日ここに集合させた。昴さんについてはちょっとしたイタズラ。

 

「まぁ来てしまったんですし入りましょう。真帆たちはもう来てるはずなので・・・まさかここで帰るとか言わないでしょうね?智香なんて昴さんが来るのを楽しみにしてたんですから・・・・」

 

嘘だ。いやあながち嘘でもないんだけど・・・・智花は口では恥ずかしいと言っていたが本心はきっと昴さんに選んでほしいと思っているはず・・・・・多分。

 

「小さい女の子の楽しみを・・・・昴さんは奪う気ですか?」

 

この俺の発言が決定打になって昴さんは覚悟を決めた。

 

「ふーん、結構品揃え豊富なんですねー。女性の下着って種類もメーカーも多そうだしここは専門店だし当然なのかな?」

 

俺は中に入って辺りを見渡す。俺達以外に今客は存在しない。なぜなら真帆が貸切にしてしまったから

 

「・・・・なんで空は平気なんだ?」

 

「むしろ何でそんなに動揺してるんですか?確かに男にとってはアウェーですけど・・・別に悪い事をしてるわけじゃないんですから堂々としてくださいよ」

 

「それはそうだけど・・・・客がいないだけまだマシだけど・・・」

 

「それは真帆が貸切にしちゃいましたからねー。」

 

「え・・・・・?」

 

ポカンとしている昴さんを置いて歩き出す。

 

「にーちゃんすばるーん!」

 

「真帆!店の中で大声出さない!」

 

そこにいたのはこっちに向けて手を振る真帆とそれを窘める紗季だった。残りの3人はどこいったのだろうか?

 

「よ、2人とも。残りの3人は?」

 

「今試着中よ。私達も今選んでたの」

 

そうか・・・・なら

 

「じゃあ昴さん。好みの下着を持って智花のところに行ってくださいよ」

 

「は・・・・・・は!?」

 

「きっと智花なら昴さんの為に着てくれると思いますよー」

 

「いや無理無理無理!!」

 

さすがに難易度が高すぎたかな?

 

「じゃあ俺と一緒に真帆の下着でも選びますか?」

 

「それだったら・・・・・いや空と一緒でも無理だからね!」

 

「えーじゃあ何のために来たんですか?」

 

「ハメられたからだよ!」

 

何を言ってるか分かりませんなー。さて真帆の下着選びに付き合いますかねー

 

「真帆ってもう選んだ?」

 

「にーちゃん来るの待ってた!」

 

じゃあまだ選んでないのね。それなら先に真帆の下着を選んじゃおうか

 

「じゃあ昴さんは適当に過ごしてください。なんなら紗季の下着を選んでみては?」

 

「え!?」

 

俺は真帆の手を引いて店内を物色する。

 

「どれがいいかなー?」

 

「真帆に合うやつを見つけたいねー」

 

「大人っぽいやつがいい!」

 

真帆が紫色のショーツを見せてくる。

 

「それを着ても真帆じゃ全く活かせないからもう少し年相応のやつのほうがいいかなー」

 

俺は1枚手に取って見せてみる。

 

「この編みレースはどうだろう?色は黄色で真帆にも似合うと思う。」

 

「じゃあそれにする!せっかくにーちゃんが選んでくれたしなー」

 

早々に決まった真帆の下着。そして智花の悲鳴が聞こえた。恐らく昴さんのラッキースケベが発動したんだろう。後でイジっておこう。

 

「じゃあ戻るかー」

 

そうして俺達が戻ってくると半泣きの智花をみんなで慰めてる姿が・・・・

 

「通報?」

 

「違うから!事故だから!」

 

冗談だよ。そんな行為する人じゃないのはちゃんと理解している。でもね・・・・

 

「智花泣いてますしねー。見た責任をちゃんと取らなきゃ・・・」

 

俺がこう言えば恐らく昴さんは・・・・

 

「・・・・分かった。ちゃんと責任は取るよ」

 

「ふぇ!?昴さん!?」

 

こう言うよね。そして智花は責任というワードだけでどこまで想像したのかな?夏祭りのときの紗季みたいだ。

慰めたあと旧友から電話があった昴さんは店内から出た。

 

「じゃあ俺らもそろそろ出ようか」

 

そうして俺達も会計を済ませて店内を出る。

昴さんが向かいにあるベンチに座ってニヤニヤしていたのを見て俺は言った。

 

「通報?」

 

「違うから!ちょっと良い事があっただけだから!」

 

昴さん曰く、もしかしたら俺達にも関係がある話らしい。愛莉を見ながら言っていたけど最も関係があるのって愛莉なのか?

 

 

ランジェリーショップから2日後の朝。俺はある待ち合わせ場所に向かって歩いていた。そこには・・・・

 

「待ったか?・・・・・かげつ」

 

「いえ、私も今来たところなので・・・」

 

ひなの妹である袴田かげつがいた。

俺はかげつの手を取り歩き出した

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

 

「もう限界か?まぁ体育以外で運動をしてないからな。1時間は持ったほうか」

 

「いえ・・・・まだイケます」

 

「じゃあもっと腰を落とせ・・・・イクぞ」

 

「はい・・・」

 

俺とかげつが何をしてるかというと・・・・

 

「急だったから驚いたな。まさかかげつが・・・・・ひなの特訓相手になりたいからバスケを教えてほしいなんて言うとは・・・」

 

「素人のままじゃ姉様の役に立てませんので・・・」

 

昨日の晩にかげつからバスケを教えてほしいと連絡があった。ひなの相手をするなら多少なりとも上手くなりたい・・・と

 

「まだ余裕があるなら続けるぞ。さっきはDFの基礎を教えたから次はOFだ。まずはドリブル左右百回だ」

 

「はい!」

 

かげつは運動神経抜群だな。多分スポーツならある程度何でもこなせるタイプなんだろう。コツを掴むのが早い。

 

「ドリブルをするときも腰を落とせ。低くドリブルをしろ。腰高だと相手にボールを取られやすくなるぞ」

 

「はい!」

 

俺が言った箇所はすぐに修正される。いいな、やっぱりセンスあるよ。

 

「その状態でキープだ。・・・・気になったが何で俺に頼んだ?俺じゃなくても適任者はいっぱいるぞ」

 

昴さんもそうだしひなの為なら竹中だって嫌がらないはずだ。

ドリブルをしながらかげつは口を開く。

 

「バスケの上手い知り合いで一番話しやすいのと・・・・姉様が深く信頼している方なので・・・・」

 

そっか。そう思ってくれてたのか・・・・少し嬉しいかも

 

「・・・・ドリブルが終わったら少し休憩。その後は今日の復讐を込めて1対1をやる。休憩のときはスポドリ用意したから飲めよ。タオルも用意したから汗を拭くこと。風邪をひいたらひなに合わす顔がない」

 

「はい。ありがとうございます!」

 

弟子を持った師匠ってこんな気分なのかな・・・・?

 

練習が終わりかげつと帰宅する。ちょうどよくお昼に近いので俺達は近くにあるアミューズメント施設内にあるフードコートに来ていた。

 

「金は俺が出すから好きな物頼め。ここなら種類豊富だろうしな」

 

「いえ、それは申し訳ないですし・・・・」

 

「こういう時は素直に奢られるもんだよ。良い女なんだから男を立ててくれ」

 

「良い女・・・・」

 

かげつの顔が赤いな・・・・もしかして熱中症か?さすがに素人にやりすぎたかな?

 

「水分は取れよ・・・・あと気分が悪くなったら早めに言ってくれ」

 

「は、はい・・・・」

 

俺がかげつと少し早いお昼を食べていると、見知った顔が見えた。

 

「(あれって昴さんと葵さん?でももう1人って誰だ?ちょうどよく植木が邪魔で見えない・・・・)」

 

「どうしたんですか?」

 

かげつが俺の顔をみて心配そうに聞いてくる。

 

「ああ、あの席見てみ」

 

かげつが俺の指差すほうを見ると

 

「あれって長谷川コーチと葵さんですよね?デートでしょうか・・・・でももう1人いますね」

 

「ただ食事を摂ってるだけなら問題はないんだが・・・・昴さんと葵さんの表情が険しいのが気になるな。まさか修羅場ってことはないだろうし・・・・」

 

葵さんは昴さん一筋だろう・・・・俺が知らないだけでもしかしてってことはあるかもしれないけど

 

「しゅ、修羅場ですか!?」

 

「いや、ないない。考えすぎだな。でも・・・・少し気になるから行ってくる。かげつはここで待ってて」

 

「は、はい・・・分かりました」

 

そして俺は昴さんたちのほうに近づくと、男が昴さんに張り手をしようとしていた。

 

「(は?あの野郎俺の大事な仲間に何をしようとしてやがる!)」

 

 

昴side

 

 

困ったことになってしまった・・・・まさか万里が愛莉の兄だったなんて・・・

 

「俺はな、バスケのリハビリをした後は変態コーチをバスケでぶっ潰してやりたいんだよ」

 

どうやら万里はシスコンらしい。なぜ俺が変態になってるかは分からないけど、万里曰く「小学生女子を鍛えようとする男子高校生なんてみんなロリコンの変態」らしい。心外だなぁ・・・

 

「そうだ長谷川!お前もあの馬の骨を追い出すのを協力してくれ!」

 

「あ・・・・」

 

ここで葵が俺に耳打ちをする。

 

「(このままじゃ隠し通せないだろうし、言っちゃえばいいんじゃないかな?)」

「(・・・・・分かった)」

 

俺は覚悟を決めて万里に言い放った。

 

「万里・・・・・」

 

「どうした?それにしてもお前らさっきから汗が凄いことになってるが・・・・」

 

「気にしないでくれ。それよりその馬の骨は・・・・・・・・・・俺のことだ」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

万里がこちらに張り手をしようとしてる。あの鉄のような手でやられるのか・・・

俺は目を閉じて歯を食いしばり耐えようとするが・・・・・デカイ音が鳴った。しかし張り手は俺には届いていない。不思議に思って目を開けると、そこにいたのは・・・・

 

「・・・・あんた俺の仲間になにしやがる?」

 

万里の張り手を蹴りで相殺(恐らく)した空がいた。

 

 

昴sideout

 

 

俺は蹴りで相手の張り手を相殺した。手だと絶対弾かれて昴さんに当たってしまうけど蹴りなら防げるだろうと思って・・・

俺は相手の顔を見てもう1度同じことを訪ねようと・・・・あれ?

 

「・・・・・万里さん?」

 

「お前は・・・・空か?」

 

張り手をしたのは愛莉の兄である香椎万里だった。

 

「・・・・・どういうことです?なぜ万里さんが昴さんに暴力を?」

 

「・・・・・すまない。頭を冷やしたいから、事情は2人に聞いてくれ。」

 

万里さんはここを去っていった。本当に何があったんだ?

 

「ありがとう空君。昴は大丈夫?」

 

「うん、空が守ってくれたからな・・・・ありがとう空。でも何で空がここに?」

 

んーかげつの特訓のことは言っていいのだろうか?秘密にしといたほうが面白いかな?

俺が考え込んでると、かげつがやってきた。

 

「空先輩!大丈夫ですか!?」

 

「ああ、かげつ。大丈夫だよ・・・・心配してくれてありがとう」

 

「良かったです・・・・あ、長谷川コーチに葵さん。お久しぶりです」

 

「かげつちゃんも・・・・・もしかして2人デート?」

 

葵さんがそう言ってきた。事情を説明するの面倒だしそれでいいや。

 

「そーですよー」

 

「そ、空先輩・・・・」

 

あれ?てっきりかげつが否定すると思ったんだけど・・・・やっぱり練習のことは知られたくないのかな?

 

「そうなんだ・・・・(ちょっと意外かも)」

 

今度は俺達が事情を聞いた。

 

「ふむふむ、そういう事だったんですねー。しょうがないですね。万里さんはシスコンなので」

 

「そういえば万里とは知り合いなの?」

 

「昔愛莉の家に行ったときに・・・・・あの時は隙あらば睨みつけられてましたよ。あの人めちゃくちゃ愛莉を大事にしてますからね。ただ今はお互い距離感掴めてないみたいですけど」

 

「距離感?」

 

「別にお互い嫌ってるわけじゃないし・・・・むしろ昔のように仲良くなりたいんじゃないですかね?少なくても愛莉はそう言っていましたし万里さんもきっとそうなんでしょう」

 

「?」

 

「俺から言えるのはここまでです。後は愛莉か万里さんにでも聞いてください。」

 

俺はかげつとこの場を離れることにする。

 

「どこ行くの?」

 

「言ったでしょう。今デート中なので空気読んでくださいな」

 

かげつの肩を抱いてその場を離れた。後ろから葵さんの怒声が聞こえる。どうやら昴さんに説教してるみたいだ。

 

「ごめんねかげつ。デート中とか言っちゃって」

 

俺はかげつの肩から手を離した。

少し寂しそうに見えるのは気のせいだろう。

 

「あ・・・いえ大丈夫ですよ」

 

「なら良かった。この後はどうする?家に帰る?」

 

「はい、午後から友人と一緒に勉強会なので・・・・空先輩は姉様たち女バスとまたここに来るんですよね?」

 

「ひなから聞いたのかな?そうだよ。でもちゃんとかげつを家に送ってからにするよ」

 

「そんな・・・・迷惑なんじゃ・・・」

 

「いいからいいからほら行くよー」

 

俺はかげつの手を引いて家まで送った。ひなは家にいなかったのでもう向かってるんだろう。待ち合わせ時間には間に合いそうにないし昴さんに遅刻の有無の連絡をしておいた。

 

 

「(予定よりも大分遅れてしまったな・・・あれは?)」

 

俺がアミューズメント施設の屋上に行くとそこには昴さんたちが誰かと3on3をしていた。

 

「(へぇ・・・・あの金髪なかなかだな。恐らく昴さん以上か・・・・)」

 

俺が皆の元に行って葵さんに事情を聞く。

どうやら相手の金髪は伊戸田商業の1年生らしい。伊戸田といったら毎年全国に行ってる強豪だな。そして中学時代昴さんが敗れた相手でもあるらしい。

 

「(因縁の対決ってやつ?尚更おもしろうそうじゃん)」

 

と思ったがそうでもない。昴さんと智花が噛みあってない・・・・というか智花がめちゃくちゃテンパっている。1回のミスが焦りを生みまたミスをして焦り、負のスパイラルに陥ってるな。昴さんも昴さんで相手を気にし過ぎて本来のバスケが出来てないし、愛莉は愛莉であの妙な威圧感があるセンターのせいで何も出来ていない。

 

「(これメンバーチェンジありかな?うるさいやつとセンターはともかくあの金髪とやりあってみたい)」

 

俺がそう思っていると昴さんと金髪の1on1が始まる。

最初は互角同士だと思ったがそうじゃなかった。相手の金髪のほうが圧倒的に上だった。

 

「(ジャブステップを必殺技にまで昇華したのは凄いな。けど隙がないわけじゃない。俺なら止められる自信はある・・・・・)」

 

それよりも俺が気になったのはあの昴さんのオフェンスだ。前に1on1したときよりも弱くなってないか。というよりまさか自分で気が付いていないのか?本来の自分の動かし方を・・・・。

そして昴さんは負けた。完全な実力差ではないからあまり落ち込まないでほしいんだけど・・・・無理か、ライバルらしいし。

にしてもあの金髪あそこまで言うか?

 

「(踏み台。価値がない。さすがにあそこまで仲間が罵倒されて怒らないわけないよなぁ・・・・)おい金髪くん。そこの口がデカイのに頂点を取ったことすらない金髪くん。キミだよ」

 

「あぁ?誰だテメー」

 

こちらを睨みつける金髪。目つき悪いね。というか皆心配そうな顔をしないでほしいもんだ。

 

「随分うちのコーチに好き勝手言えるもんですね。その程度の実力で」

 

「なんだお前?長谷川昴の教え子か?コーチの敵でもうつつもりかよ」

 

「いえ、それは昴さんがリベンジするべき問題なので・・・・ただ忠告を」

 

「・・・・ガキの忠告なんざ聞く意味なんてねーよ」

 

「貴方は随分ジャブステップに自信を持ってるみたいですが、弱点はそのままにしないほうがいい。改善することを勧めます」

 

「おい・・・・あんまり舐めてんじゃねーぞ!ガキだからってこっちが容赦すると思うな!コートに入れ!教育してやるよ」

 

俺がそのままコートに入ろうとすると昴さんが止める。

 

「やめてくれ・・・・空が俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、相手が悪すぎる」

 

随分、低く見られてるなぁ・・・

 

「いいから昴さんはコートから出てください。」

 

俺は昴さんの横を抜いてコートに入る。

 

「今謝れば許してやるよ。恥はかかなくて済むぞ」

 

「つべこべ言わずに得意のジャブステップをどうぞ。今まで止められたことがない自信のあるステップを小学生に止められたらお笑いですよね」

 

「いい加減にしろよクソガキ!!」

 

金髪の攻めは燃えるような炎。どんなフェイクも全てが本物に見えるレベルだ。右左とボールを切り替え俺を抜こうとする。しかし俺は釣られない。確かに素晴らしいレベルだよ。全国レベルの強豪校で1年でベンチに入れるのはそういないだろう・・・俺は金髪からボールを取った。

残念だが、今回は俺の勝ちだ。

 

周りがシーンと静まる。

 

「どうやら俺の勝ちのようだ。惜しかったね」

 

俺のこの言葉で我を取り戻した金髪は・・・

 

「マグレだ!俺のジャブステップを止められるやつなんて・・・」

 

「マグレに見えた?見えたならその程度なんでしょうね」

 

歯を食いしばる金髪。自分でも気づいているんだ。でもそれを認めたくはないだろうな。

 

 

昴side

 

最初は無理だと思った。いくら空が強くても須賀のジャブステップは止められないと思った。空が凄いのは知っている・・・・知っているつもりだったけど・・・まさか須賀を止められるレベルだったなんて・・・・でも正直悔しい

 

「凄いね・・・・空君。昴は・・・・悔しいよね」

 

「今まで誰も止めたことのないステップ。俺が一番最初に止めたかったよ・・・」

 

けど少しスッキリしたのは俺の胸の内に閉まっておこう。

 

 

昴sideout

 

 

「・・・・なるほどな。これが疾風迅雷の実力ってか」

 

金髪は悔しそうに俺の異名を呼んだ。

 

「知ってたんですか?」

 

「は!お前は有名だからよ・・・再戦だ!」

 

「嫌です」

 

「な!?そこは受けるとこだろ!」

 

「俺と勝負したいなら夏休み中にまた3on3して勝ったらいいですよ。」

 

「・・・・いいぜ。どうせ俺が勝つんだからよ!せいぜい首洗って待ってな!」

 

金髪と2人の女子中学生は帰っていった。

 

 

 

翌日になり昴さんがみんなに謝る。無様を晒したことへの謝罪みたいだけど・・・

 

「全くですね。俺達のコーチがあの程度に負けるなんて・・・・というわけで再戦の約束は取り付けたので特訓しましょうか」

 

『え?』

 

みんなが驚くので補足しよう。

 

「昨日戦った後勝手ながら再戦の約束を取り付けました。期限は夏休み中。あっちがグリーンコートを使ってるのでそこいけば再戦できるでしょう。みんなだってリベンジしたいよね?」

 

もう夏休みも残り1週間程度。期限はあまりにも少ないので俺には俺の出来ることをしようかな。どうやら皆もそれに向けて頑張るみたいだし。

葵さんも来てくれて愛莉の特訓をしてくれる。でも・・・愛莉に必要なのは技術云々じゃなく精神力なんだよなぁ。智花のほうはみんなの協力のもと昴さんとコンビネーションはなんとかなりそうだし・・・・。

だが一番の問題は愛莉や智花よりも昴さんのほうだ・・・・。

 

 

そして2日語体育館にはなんと愛莉の兄である万里さんが来た。

真帆やひなが驚いてるが快く受け入れる。兄妹仲も良好だし連れてきた昴さんには感謝です。

 

「よう・・・・この前はすまなかったな。怪我はないか?」

 

「大丈夫ですよ。こちらもすみません。怪我はないですか?」

 

「ああ、問題ない。それにしてもアレが小学生の蹴りかよ・・・・大分痺れたぞ」

 

「鍛えてはいるので」

 

バスケの為だけど

そしてみんながこちらをジっとみてくる。

 

「にーちゃんって愛莉のにーちゃんと知り合いなのか?」

 

ああ、そのことか

 

「去年の冬に愛莉の家でな。」

 

「なにー!にーちゃん聞いてないぞー!」

 

「おー!ひなもひなもー」

 

だって言ってないし・・・・

 

「あーまあ、言うことでもないしな。それより折角万里さんが来てくれたんだ!みんな、聞きたいことがあったらこのお兄さんにも聞きなさい!君達よりも遥かに格上なんだから」

 

「ちょ・・・・」

 

これなら万里さんだって馴染みやすくはなるだろう。

今、愛莉は葵さんと万里さんにセンターについて教わってる。昴さんと智花については他の子らに任せて俺も混ざろうかな。

 

「ある程度慣れてきたら2on2やってみようか。俺と愛莉、葵さんと万里さんで」

 

「そうだね。実際の動きの中でちゃんとやれるか見てみたいしいいかも」

 

万里さんがここで難色を示す。

 

「しかし戦力差がありすぎじゃないか?小学生チームと高校生チームじゃ・・・」

 

「大丈夫よ万里君。空君の実力はここにいる全員の中で1番強いから・・・・多分」

 

「それって小学生の中ではだろ?」

 

「全員よ・・・・私も昴も万里君も含めてね。この前須賀君のジャブステップを止めたんだし少なくてもDF面では確定で上よ」

 

驚く万里さん。まぁ、しょうがないよな

 

「須賀のジャブステップを・・・?さすがに冗談だろう・・・・」

 

「本当よ。ここにいる皆が証人」

 

ここで愛莉も証人してくれる。

 

「本当だよ。お兄ちゃん。みんなで見てたの・・・・」

 

「愛莉がそういうなら本当なんだろう・・・・凄いな空!」

 

俺は葵さんとヒソヒソ話をしている。

 

「あのゴリスコン(ゴリラシスコンの略)。愛莉の言うことは無条件で信じましたよ」

「そうね。私の言うことはすぐには信じなかった癖に・・・・・あのゴリスコン」

 

俺達はジト目で万里さんを見つめる

 

「謝るから止めてくれ!!」

 

 

 

翌日は昴さん達に市体育館に誘われてバスケ同好会の活動に参加させてもらう。

 

「ゾノさんにショージさんじゃないですか。久しぶりですねー」

 

「おー空君じゃん久しぶりー」

 

そして軽く話をしてるとどうやら竹中も呼んだらしく3on3が開始される。最初は俺が外れて観戦する。

すぐに異変が訪れた。なんと昴さんが竹中に1on1で止められた。

 

「あれ?昴?どうしたの?」

 

「いや・・・・あれ?」

 

そして何度かやっても止められる。

ムキになった昴さんが20㎝も低い竹中相手にスクープシュートを決める。

 

「(ダメだな。もう見てられないや)」

 

本来なら自分で気づいてほしかったけど・・・・ヒントくらいならいいよな

 

「ちょっとストップ・・・・昴さん」

 

みんながこちらに注目する。

 

「どうした?空」

 

「どうした?じゃありません。あまりに今の昴さんが哀・・・・じゃなくて迷いがあるので少しだけヒントをあげます」

 

『(今絶対哀れって言おうとした)』

 

みんなの心が1つになった瞬間だった。

 

「ヒントって・・・・空は俺の不調の原因が分かるのか?」

 

「・・・・はい。俺が上げるのはヒントだけなので後は自分で見つけてくださいね」

 

そして一同は黙って俺の言葉を聞く。

 

「俺と1対1をしたときと今回金髪と1対1をしたとき・・・この違いを考えてください」

 

「1対1の違い?」

 

「そうです。はっきり言って4ヶ月前にした俺との1対1のほうが昴さんは強かった」

 

「何だって・・・・・?」

 

「別に昴さん自身が弱くなったわけじゃない。ただ状態が違った。」

 

ちょっとヒントを出し過ぎたかな?

 

「全部教えてあげてって言っても・・・・ダメかな?」

 

葵さん・・・・

 

「教えてあげたいとは思うんですけどねー・・・・・今後の為にも自分で気づいたほうがいいんですよ。昴さんの為にもならないし、本来ならヒントだってあげるつもりなんてなかった。けど今回時間がない。それに昴さん個人は気に入ってますからねー」

 

「・・・・・分かったよ。空から貰ったヒントをもとに考えてみる。そうだ、もう1つ。須賀のジャブステップをどう防いだんだ?」

 

「自分で考えて下さいよ・・・・じゃあ1つ彼は動きの全てが本気に見えてフェイクに見えません。でも、フェイクは本気に見えようとフェイクなんですよ。これもヒントになるので考えてみてくださいね」

 

俺も甘いなぁ・・・・

 

 

俺は再戦の前日、昴さんの家を訪ねた。

 

「さて、答えは見つかりましたか?」

 

昴さんの部屋に案内されベッドに腰掛ける。

 

「ああ、見つけたよ。ずっと考えていた・・・・あの時との違いは熱量の差・・・だよな?」

 

「そうです。加えて言うなら俺とやった時は感情があまり出ていなかった。金髪とやったときは熱くなっていた。本来ならこの程度でプレーに差なんて出ないんですが、昴さんの場合は違う」

 

「ああ、俺に気合いは不要・・・・というよりそれをプレーに出しちゃいけないってことだろ」

 

うん、ここまで分かってるなら心配はないかな。

 

「本来の動かし方も理解したようですね。なら早速庭に行きましょうか」

 

「庭?」

 

「ええ、今まで無意識でやっていたことを意識的にやらなきゃいけないでしょう。あまり時間はありませんが、今日のうちにある程度馴れておきましょう」

 

俺達は庭でひたすら1on1をやった。

 

 

そして今試合が始まる。智花と昴さんのコンビネーションも問題ない。万里さんとの練習で精神的に向上した愛莉も問題はない。3on3の勝負はこちらが勝利した。

そして・・・・

 

「1on1?数日で何が変わるってんだよ・・・・」

 

「変わったさ。それを今から見せてやる」

 

そして始まる金髪対昴さん。

昴さんのオフェンスから始まったこの勝負は、昴さんがアッサリ金髪を抜き去ったことで決着が着いた・・・・が

しかしDFの対策までは出来ておらず結局勝負は引き分けという形で終わった。



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第12話

前回の話の最後を修正して無理やり終わらせました。すみません
いずれ前話についてはちゃんと書きます


ある日の朝。俺は再び長谷川家を訪ねていた。

今の昴さんのスタイルを完璧にする手伝いの為来ていたが、そこに智花もいた。

 

「なんでポーカーなんですか?」

 

2人でポーカーをしている様子を見て俺は発言する。

 

「いや、顔色から心を探り合うことでバスケの駆け引きも上手くなるんじゃないかって・・・」

 

ポーカーとバスケじゃ状況とか全然違うし練習にはならんだろう。そもそも顔色からじゃ相手の心情までは読めても細部までは読めないよ・・・・それに

 

「智花を相手に・・・?それは人選ミスです」

 

「はう!?」

 

だって智花って昴さんに惚れてるし・・・・顔見ただけで赤くなっちゃうから練習になるわけないだろう。

 

「とりあえず朝ごはんにしませんか?時間もちょうどいいし」

 

そうして俺達は1階に降りて七夕さんが作ってくれた朝ごはんを食べる。

そこには美星先生の姿も見える。どうやらたまに食べに来ているらしい

 

「昴さんのお父さんが帰ってくるんですか?」

 

どうやら長期出張していた昴さんの親父さんが帰ってくるらしい。

美星先生や昴さんが燃えている。どんな親父さんなんだろうか・・・・

 

「私ずうずうしく毎朝お邪魔していますし・・・何て説明すれば・・・」

 

「んー、そのこと含めて一度挨拶しとこうか。普段お世話になってる人の親父さんだしねー」

 

「2人ともそんな気にしなくたっていいんだよ?それに智花は不安そうだけど親父は馴れ馴れしい人だし会うにしても気楽にね」

 

どんな人か気になるし俺も明日も来よう。

 

 

翌日。玄関に並んで帰宅するのを待つ俺達。

 

「緊張します・・・」

 

智花は緊張してるみたいだけど、ただ挨拶するだけなのに・・・・やっぱり好きな人の家族だからなのかなー

そして帰ってきたのは昴さんに似た顔の肌が黒い大柄な男性。

 

「(似てるのは顔のパーツと髪型くらいだな。身長や体格や性格はあんま似てないかも)」

 

かなり明るい人だな。昴さんや七夕さんと話している。でも俺が一番気になるのは・・・・

 

「(この銀髪で人形みたいな子。2人の様子を見るに初対面っぽいし・・・誰だろう?)」

 

「智花や空のことは置いといて、親父が連れてきた子は誰だよ!」

 

名前はミミ・バルゲリーというらしい。どうやら同僚の娘さんらしく今日から長谷川家でお世話になるらしい。

 

リビングに移動して詳しい話を聞く。あまり興味はないので聞き流してるとミミと呼ばれた子がこちらをジっとみてくる。

 

「・・・・どうした?」

 

「・・・ナマエ」

 

「俺の?空だよ。三沢空」

 

「・・・・ミサワ・・・ソラ」

 

なんだろう?俺はこの子とは初対面のはず・・・・

家族で話していると銀河さんがこっちを見る。

 

「しかし驚いたぞー。まさか子供が2人も増えてるなんてな」

 

「す、すみません!家族の団欒を邪魔しちゃって・・・・」

 

「すみません。お世話になってる人のお父様にどうしても挨拶したかったんです」

 

銀河さんは気さくそうな笑みを浮かべて

 

「わはは、そんなこといいからもっと寛いでくれ!にしても・・・へー昴の知り合いだったのか」

 

ん?俺の方を見た?

 

「親父・・・・?空のこと知ってるのか?」

 

「ああ、去年フランスで見たことがある。ミミと一緒にな」

 

去年のフランスというと・・・・・あのフランス代表との親善試合か!

去年合宿の最後にフランスに渡りU-13のフランス代表と死闘を演じた。

 

「去年のフランス・・・・親善試合ですか?」

 

「ああ、たまたま近くによったら年代別の代表戦をやっていたからミミと見たんだよ。まさかあの日本のサムライと昴が知り合いとは思わなかったけどな」

 

・・・・サムライ?

 

「何です?そのサムライって・・・」

 

「知らないのか?あの試合を見たフランスの関係者が君のことをそう表していたよ。あの劣勢でただ1人諦めずチームのピンチを救った若きサムライ。フランスの1部では有名らしいな」

 

初めて聞いた・・・・

 

「あの試合を見て以降、ミミも君のファンになったんだ!よければ仲良くしてやってくれ!」

 

だからこっちをジっと見ていたのか・・・・

 

「そうなのか?」

 

「ウイ、ソラはカッコヨカッタ。イッショにバスケしたい」

 

「ああ、そうだな・・・・」

 

 

場所は変わって庭。

てっきり俺とミミとでバスケをするのかと思ったがまずは智花とミミで対戦するらしい。

 

「ミミってどの程度の腕なんですか?」

 

俺は銀河さんに尋ねた

 

「ミミはかなり強いぞ!智花ちゃんの実力は分からないけど互角程度には戦えるはずだ」

 

そして1対1が始まる。

 

「(なるほど、あれだけ強く推す気持ちが分かる。荒削りなとこもあるけど才能だけならもしかしたら智花以上かもしれない。現段階では智花のほうが上だけど)」

 

昴さんと金髪のプレイスタイルを足して2で割ったようなスタイル。もちろん2人には及ばないけどそれでも高い才能があるのが分かった。

 

「トモカ・・・つよいです」

 

「ミミちゃんもすっごく強いよ!」

 

これが女子小学生のレベルかよ・・・・

 

「な!ミミは強いだろ!」

 

「そうですね、あれで小学生だなんてビックリです」

 

「きっと2人も空には言われたくないだろうな・・・・」

 

結果は智花の勝利だった。

 

 

「智花相手に5点差。普通なら驚くことですが銀河さん的に逆の意味で驚きですかね」

 

「そうだなー1歳上だけどまさかミミと対等に戦えるどころか上の人材がいるなんて思わなかったぞ」

 

じゃあそろそろ俺も参戦しますか。

 

「2人ともー俺も混ぜっていいか?」

 

「うん!いいよ!」

 

「ウィ、ソラとバスケ・・・たのしみ」

 

じゃあどうするかな・・・・

 

「昴さん入ります?」

 

人数が奇数なので昴さんも誘うが・・・

 

「いや、俺はいいよ。親父ともう少し話したいし」

 

あらら、断られてしまった・・・

 

「じゃあ俺対2人で。俺がDFやるから2人で攻めてきてねー」

 

「うん分かった!本気で行くよ!」

 

「トモカとふたりならまけない」

 

さて、始めようか

 

 

昴side

 

 

ミミちゃんは想定より強かったな。でも智花ならきっと勝てるって信じていたよ。

っと、空対智花&ミミちゃんの対決が始まった。

この2人なら空にも勝てるんじゃないだろうか?

 

「親父はどう見る?」

 

「ん?まぁ、空君の勝利だろうな」

 

え?

 

「いや、いくら空でも智花とミミちゃん相手だぞ?高さならともかく平面なら勝てる可能性があるんじゃ・・・・」

 

空の身長は170㎝。高さでは勝てなくても2人なら平面でいい勝負できるんじゃ・・・

 

「可能性は・・・・ほぼない。俺はフランス戦の空君を見たことあるが、彼の実力はモンスター級だぞ」

 

モンスターって・・・・

 

「いや、空の技術は分かってるよ。でも1人ならともかくあの2人なら・・・」

 

「分かってないなー。技術も小学生離れしてるけど空君の本領は・・・・ま、試合見てろ。見れば分かるはずだ」

 

どういうことだ?空の本領って・・・・

 

 

昴sideout

 

 

そういえば智花とやるのってかなり久しぶりかも。

 

「じゃあお手柔らかに頼むよー」

 

俺は間合いを通常のDFより離れてにつく。

この間隔なら抜かせないしパスもシュートも防げる。

智花って顔に似合わず剛のドリブラーだよね。最近はチームプレーを楽しんでるけど本質的には突撃思考。でも今回は2対1。だから・・・・

 

「バレバレだぞ。パスを出すにしてもタイミングを読まれないようにしなきゃ」

 

「あ・・・・」

 

智花はチームプレーを誰より大事にする。序盤は自分から攻めることはあんまりしない。

 

「さて俺のOFかな」

 

お?ダブルチームでつくか・・・・

 

「単純だけど効果的だよね!」

 

「ぬかせません」

 

2人はOFの印象が強いけどDFも下手じゃない。

俺ならクイックモーションからジャンプシュートを打てる。身長差を考えても絶対届かないし反応されても無意味だけど・・・・

 

「(それは野暮だよな)智花・・・忘れてない?」

 

「?」

 

「俺の異名」

 

「あ!」

 

想いだしたようだけどもう遅い。俺は一瞬でミミの脇を通り過ぎてゴールを決める。

 

「ハヤイです・・・」

 

「疾風迅雷・・・・」

 

俺は必要な時以外相手を抜くときにフェイントはしない。相手を置き去りにする圧倒的なスピードとドリブルスキルがあるからだ。

 

「次は俺のDFね」

 

今度はミミがボールを運ぶ。色々試すのね・・・

 

「ヌキます!」

 

ジャブステップか・・・・

 

「それはさっき見たよ」

 

悪いな。ミミのプレースタイルは理解したんだ。

俺はスティールしてボールを奪った。

 

「ソンナ・・・・」

 

さて、2人はこの後どう攻めるかな?

 

 

昴side

 

ここまで手も足も出ないなんて・・・・

 

「分かったか?」

 

俺が驚いてる横で親父が聞いてくる。

 

「・・・・・読み?」

 

「半分正解だ。加えて言うなら相手の思考を読んでる」

 

「・・・・そんな事できるのか?どれだけ強くても小学生なんだぞ」

 

さすがに信じられない・・・・

 

「空君は恐ろしいほど頭と観察力が良いんだろう。そして智花ちゃんとは同じ部活で一緒だから読みの精度も高い。ミミについてはさっきの試合だけである程度固まったんだな」

 

あんな短時間で?・・・・そういえば須賀のジャブステップも見ただけで止めてた。

 

「だからって・・・・」

 

「対フランス戦。劣勢にも限らず勝利できたのは空君自信の実力もあったんだろうが、勝因は高精度の読みだ。4Qになるころには相手全員の思考を読んでDFを行い、OFについては隙や弱点をついて勝利した。異常なまでの観察力と頭の良さ、そしてモンスター級のバスケの才能。それらが揃っているからこそだ。もはや読みというか予言に近いな」

 

どれだけ才能に恵まれてるんだよ・・・親父がモンスター級って言うのも理解できる。

 

「親父は空に勝てるか?」

 

「勝てる。まだ小学生でパワーが足りない。ゴール下での1対1に持ち込めば100%勝てるな」

 

「・・・・それ持ち込めなかったら勝てないってことか?」

 

「いや最初は勝てる。だが相手は思考を読むモンスターだぞ。回数を熟せば熟すほど勝率は落ちるだろうな」

 

マジかよ・・・・正直悔しいぞ。

 

 

昴sideout

 

 

「さぁ、次はどうする?」

 

俺は肩で息をする2人を見る。

 

「ミミちゃん・・・」

 

智花がミミに耳打ちする。

 

「・・・・ワカリマシタ」

 

どうやら作戦があるみたいだ。

予想はつくが、恐らく止められるか微妙だな。

 

「いくよ空君!」

 

智花が俺に突っ込むが・・・・

 

「それはフェイントでジャンプシュートだろ」

 

「やっぱり読まれてるんだね・・・・でも止めていいの?パス出すかもよ」

 

突っ込むと見せかけてその場でジャンプシュート。

俺が距離を詰めればパス。そのままミミを警戒すればシュート。

俺の動きを見てから決められるので読みもクソもない。

 

「確かにこれなら読みも何もないな・・・・でも俺は両方止めるよ」

 

俺は智花に突っ込みその場で軽くジャンプをする。

 

「(よし!)ミミちゃん!」

 

智花がミミにパスをする。

 

「(パスをするのは分かってるんだ・・・軽くジャンプをしたからすぐに着地してミミのほうに向かえる。俺のスピードならそれで充分追いつける!)」

 

俺は着地してミミの方に向かう。ミミはちょうどシュートモーションに入った。

 

「(よし!その場でジャンプシュート・・・・その場で?)」

 

普通ならパス受けてランニングシュートでいいのにわざわざジャンプシュートだと?

 

「(しまった!ミミは囮で本命は・・・・でも放置しても決められるし結局止めるしかない)」

 

俺は軽く跳んでブロックしようとするがミミは智花にリターンパスを出す。

 

「(気づいてるよ!全力で戻って全力ジャンプすれば・・・・)」

 

俺は戻ろうとするがミミがスクリーンをかける。

 

「(俺を一瞬足止めするために・・・・)」

 

その一瞬が命取りになった。

俺は結局間に合わずそのまま智花にジャンプシュートを決められた。

 

「やったね!ミミちゃん!」

 

「ウィ、サスガです。トモカ」

 

「ううん!ミミちゃんのスクリーンがなければ止められてたよ!」

 

30cmくらいの身長差でよくビビらずスクリーンかけたなぁ・・・

 

「おめでとう、2人とも。やられたよー・・・」

 

「あ、ううん。結局総合点ではこっちが負けてるし・・・」

 

「カンゼンにはかってない」

 

いや、恐らく続行してもこちらが負けていただろう。逆にあっちは俺を止められないし勝負は引き分けってとこかね。

 

「いや~3人とも凄かったぞ!本当に小学生か!?ってくらい!」

 

「うん、本当に凄かったよ。2人がかりとはいえ空に勝つなんて・・・・」

 

負けてません。引き分けです。

 

 

家に入ってみんなでトランプをしている。

 

「ミミ・・・・俺の膝に座っていたらカードが見えるんだけど・・・」

 

「ダイジョウブです。モンダイありません」

 

ミミに懐かれたのはいいけど、これじゃあゲームにならない・・・

 

「はっはっは!ミミがここまで懐くなんてなー。しょうがないし2人はペアになってやってくれ!」

 

銀河さんにそう言われて俺とミミはペアになってトランプをする。

それなら・・・・

 

「じゃあ折角だし2人1組でやりませんか?昴さんと智花、銀河さんと七夕さんで」

 

「お、いーねー!じゃあなゆなゆも俺の膝の上で!」

 

さすが銀河さん。ノリが良いな

 

「ほら、昴さんも智花を膝の上に乗せてくださいよ」

 

「え!?」

 

昴さんが動揺するが・・・

 

「俺と銀河さんが乗せてるのに昴さんだけ乗せないのって変ですよね?」

 

「いや膝の上に乗せてる2人のほうがおかしいと思うけど・・・・」

 

しょうがない。あまり言いたくないが・・・・

 

「なるほど、昴さんって智花のこと膝の上に乗せたくないほど嫌いなんですね・・・」

 

「え?昴さん・・・・?」

 

智花の悲しそうな顔は見たくないから言いたくなかったんだけど、膝に乗る為だから許してな。

乗せたくないほど嫌いっておかしい気はするけど・・・・

 

「いや!そんなことないよ!俺にとって智花は大切な人なんだ。・・・分かった。それで智花に笑顔が戻るなら・・・・・智花ゴメン!」

 

「昴さ・・・・キャッ!」

 

おー智花の両脇を抱えて自分の膝に乗せるとは・・・・

 

「ダイタン。トモカうれしそう」

 

「ミ、ミミちゃん・・・・」

 

そして始まった大富豪。

ミミがルールが分からない為解説を入れながらやっていくが・・・

 

「あれ?空が相手の思考を読めるなら・・・」

 

気づいてしまったか。

 

「大丈夫です。手札までは分かりませんしミミが迷った時以外はミミにやらせるので」

 

順位

1位ミミ&空

2位七夕&銀河

3位智花&昴

 

「強すぎだろ!というか終盤確実に手札読んできたよね!?」

 

昴さんがツッコム。

 

「・・・・誰がどのカードを出したか記憶してこっちの手札を見て残りのカードを予測する・・・・人数も実質3人ですし枚数が少なければ特定も出来ますからね。」

 

「大富豪でそんなことする人初めて見たよ・・・」

 

「負けられない勝負以外ではしませんよ。ただ今回はミミに勝たせたかったので」

 

俺はミミの頭を撫でる。

 

「ミミは楽しかった?」

 

「ウィ、ソラといっしょたのしい」

 

大富豪の感想を聞きたかったけど楽しんでくれたのならよかった。

 

 

夕方になり俺達は帰宅するため玄関に向かう。

 

「じゃあ今日はお世話になりました。ミミもまたな」

 

「またバスケしましょう」

 

俺はミミと別れて門を出ようとしたところで白いタクシーが止まる。

 

「ミミ!ミミ!」

 

ミミのお父さんらしい。

そもそも予定ではミミは長谷川家に2,3日程度の滞在だったらしい。

しかしミミパパが即刻終わらせた為、ミミを迎えに来たらしい。

 

「パパ、ニホンはおもしろそう。ソラとトモカにあえたし」

 

「ほう、もうお友達が出来たのデスね・・・・これからもミミのことよろしくお願いしますね。ソラさん、トモカさん」

 

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

 

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

どうやら人当りも良さそうな人だ。

そしてタクシーに乗り込んだミミが顔を出した。

 

「ソラのスクールおしえて?ナマエしりたい」

 

「ん?慧心学園だよ」

 

「ケイシンガクエン・・・・おぼえた」

 

そしてタクシーは走り出した・・・・

 

 

今日は智花の誕生日。プレゼントの準備もちゃんとした。

 

「今日はかげつも智花の家に行くんだよな?」

 

「はい。姉様からもお誘いいただいて・・・・一緒にプレゼントを買いにいったんですよ」

 

今日もかげつとの練習が始まる。

週3日で朝の1時間だけだけど、かげつは確実に成長してる。

 

「そっか。良かったじゃないか。じゃあ次はシュート練習な」

 

「はい!・・・・今日もあのやり方で?」

 

「大変だろうけど頑張れ」

 

あのやり方とはゴール下からのシュート練習だ。

それだけなら普通だが、入ったボールをジャンプしてキャッチ。そして打った場所とは逆の位置で打ってまたキャッチ。そしてまた逆に・・・という無限ループだ。

 

「時間は5分。外れてもそのまんま続けること。」

 

「はい!」

 

短いと思うけど実はこれかなりキツイ。1回往復するのにかかる時間は約5秒。5分は300秒だから往復60週する。シュート本数は計120本。

しかもノンストップで行うし頻繁にジャンプするからとても疲れる。

 

「5分経ったなー・・・・シュート本数98本入った本数69本・・・・やはり後半に入ると疲労で成功率が落ちるな。腕も下がってくるしフォームに変な癖つくと困るからやっぱり止めとくか?」

 

「いえ・・・・大丈夫です・・・・」

 

普通なら辞めたくなるのに・・・・根性があって努力家で才能もある。

 

「なら正しいフォームを常に意識しろ。疲れていても勝手に正しいフォームで打てるくらいになるまで身体に染み込ませるんだ」

 

「はい!」

 

本来なら手伝い程度で上手くなりたいやつにここまでしない。

けど、やっぱり惜しいと思う。背丈もあり才能もあり努力家でもある子が手伝い程度で終わらせるなんて・・・・

 

「今日の練習は終了だ・・・・かげつ」

 

「なんですか?」

 

「辛かったらいつでも辞めていい・・・・・正直、ひなの練習相手になれる程度にはお前は上手くなってるんだ」

 

「・・・・・・辞めませんよ」

 

「何でだ?お前は目的を達した。これ以上の指導なんて無意味だと思わないか?」

 

「・・・・確かに最初は姉様の練習相手になりたいからって理由でした。もちろん今でもそう思ってますけど、私はこの時間が好きなんです」

 

「好き?」

 

バスケが好きになったのだろうか・・・・

 

「はい、空先輩と一緒にバスケする時間が好きです。だから辞めません。空先輩が嫌になる日が来るまで私に付き合ってくれますか?」

 

そっか・・・かげつはそう思ってくれてたのか

 

「そうか・・・・残念ながらかげつ。俺が嫌になる日なんて来ないよ」

 

「え?」

 

「俺もこの時間が好きだ。日に日に上手くなってくお前を俺自身ずっと見たい。それに師匠が弟子を捨てるなんてするかよ」

 

「空先輩・・・」

 

昴さんも女バスのみんなに対しての心境ってこんな感じなんだろうか?

 

「じゃあ帰ろうか。智花の誕生日もあるしな」

 

「はい!」

 

今回かげつとの絆が深まった気がする。

師匠として俺がかげつに出来ることって何かあるのか考えながら俺達は一旦お互いの家に戻った。

 




ミミ可愛いですよね。
かげつも可愛い。

私は決してロリコンじゃない!


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第13話

ガルパンはいいぞ

最近ハマった。愛里寿ちゃんが可愛い。


 智花の誕生日会を行うので俺は湊家に向かう。

 

「なるほど、みんな似合ってるな」

 

 そこに居たのはドレスを着ていた女バス+かげつだった。

 

「どうどうにーちゃん!このドレスおとーさんが作ってくれたの!」

 

「良く似合ってるよ。真帆だけじゃなくてみんな似合ってる。可愛いよ」

 

「えへへ、ありがとう空君」

 

「おー。ひな、空にほめられたー」

 

「ありがとうございます・・・・・空先輩」

 

 そして色々話した。

 ちょうどいい機会だし、そろそろ皆に俺とかげつのこと話すか?

 

「なぁ、かげつ」

 

 俺はかげつの耳元に近づいて小声で話す。

 

「はい、なんですか?」

 

「いや、そろそろ皆に俺とかげつの関係話さないか?」

 

「か、関係!?・・・・あ、バスケですね」

 

 何を勘違いしたんだろう?

 

「あんまり秘密にしておくの悪いし・・・・どうだろう?」

 

「そうですね・・・・・・すみません、もう少し待ってもらえませんか?」

 

「いいけど・・・・・何で?」

 

「えっと・・・・(言えない。2人だけの秘密が無くなるからなんて・・・・)と、とにかく言うタイミングは私に任せてもらえませんか!?」

 

「あ、ああ。じゃあ任せるよ」

 

 かげつの様子がおかしくなったが大丈夫だろうか?

 

 各々話し込んでると遅れて昴さんがやってきた。

 昴さんが智花を褒めるけど

 

「お嫁さんみたいで可愛いよ、智花」

 

 お嫁さんか・・・・ウェディングドレスみたいってことかな。

 あそこまでの派手さはないけど、可愛いのは同感です。

 周りが妙にざわついてるけどどうしたのか・・・・あ

 

「今のプロポーズみたいに取られたみたいですね。え?女子小学生にプロポーズですか・・・・・もしもし?」

 

 俺は携帯で警察に電話をかけるフリをする。

 

「どこかけてるか分からないけど空ストップ!」

 

「冗談ですよ。でもよかったですね・・・・・忍さんがこの場にいなくて」

 

「ああ・・・・・」

 

 あの人に聞かれていたら・・・・想像だけで恐ろしいな。

 

 

 料理が運ばれ俺達は席に着いた

 

「では、乾杯の音頭は我らがコーチにやってもらうのはどうだろう?」

 

「え?俺?」

 

 主賓がやるのはおかしいし、だからと言って他の子がやるのも違うし・・・・

 ぶっちゃけ昴さんなら無難だろう。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・智花、12歳の誕生日おめでとう!乾杯!」

 

『かんぱ~い!!』

 

 皆で料理を食べる。

 

「(これが香織さんの料理か・・・・・はぁ、あの頃の俺を殴ってやりたい)」

 

 少し俺が過去を思い出して憂鬱になってると

 

「おーそらどうしたの?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、2人とも。大丈夫だよ。少し昔を思い出してね・・・・」

 

 俺は2人の頭を撫でて言う。

 

「あ、あの・・・・頭は・・・」

 

「ああ、ごめん。デリカシーなかったな。最近色んな子にやってるせいで感覚がマヒしてた・・・・」

 

「え・・・・?色んな方に・・・そうですか・・・」

 

 あれ?何でかげつのテンションが下がるんだ?

 

「おー。空のなでなで気持ちいい。かげもやってもらう」

 

「いや、さっき拒否られたんだけど・・・・」

 

「かげ、素直じゃない」

 

「ね、姉様・・・」

 

 それなら、もう一度・・・・

 

「あ、あうあう・・・・・」

 

「嫌なら言ってくれ。3度目は絶対しないから」

 

「絶対・・・・?い・・・・・嫌じゃないです・・・・」

 

 良かった。

 

「にーちゃん!ひなとゲッタンばかり構ってないでこっちにも構ってよー!最近付き合い悪いぞー!」

 

 確かにそうかもしれない・・・・・

 

「じゃあおいで」

 

 俺は手招きして真帆を呼ぶ。

 

「うしし、やった!」

 

 真帆はダイブして俺の膝の上に座った。

 

「まほ、ずるい」

 

「ズルくないよ!ここはいもーとであるあたしのとくとーせきだもん!」

 

 ごめん、最近別の子座らせたんだ・・・

 

 

 美星先生から電話があり何かが決まったらしいけど・・・

 

「実はさ、まだ決まってないって聞いて・・・・・考えたんだ。智花の二つ名」

 

 ああ、確か俺や智花が来る前にブームになったって言っていたな。

 

「じゃあ早速聞かせてもらいましょうか。智花も聞きたいよな?」

 

「う、うん!」

 

 一同が昴さんに注目する。

 

「雨上がりに咲く花《シャイニーギフト》ってどうかな?」

 

雨上がりに咲く花か・・・・・

ギフトが智花自身の才能とか智花が俺達にとって大事な存在だから。そんな智花がずっと輝いてくれたら嬉しいって意味らしい。凄いカッコイイと思う。

みんなからも好評だし最高の贈り物を貰えたな。

 

 

「これが俺からのプレゼント・・・・ネックレスだ!」

 

今は各々プレゼントを渡す。俺は最後だったのでいつもよりテンション上げて渡してみた。

 

「ありがとう!大切にするね!」

 

「智花の私服に合わせてみたからきっと似合うと思うよ。昴さんとのデートのときにでも着けてみてくれ」

 

「デ、デート!?・・・・う、うん」

 

よしよし。喜んでくれたみたいでよかった。

 

「では。ラストに、つまらないものデスガ、どうぞ」

 

「えへへ・・・ありがとミミちゃん!」

 

え?・・・・・・ミミ?

 

「ミミ!?いつからいたんだ?」

 

「ギンガがおしえてくれた」

 

いや、違う。そこ聞いてるんじゃなくて・・・・

 

「そら、どちらさま?お人形さんみたい。すごくかわいい」

 

「おにんぎょうさん。オタガイサマデス」

 

確かにどっちも人形みたいだけど・・・・

とりあえず俺と昴さんで知らない子達に教えた。

どうやらミミはみんなから好評みたいだな。

 

ミミもプレゼントを渡した後はすぐ帰った。

 

「制服から見てうちの5年に編入するっぽいな。楽しみだ。かげつは仲良くしてやってくれな」

 

「はい、空先輩」

 

この分なら孤立することにはならないだろうな。

 

 

 

夏休みが終わって数日後の放課後。

俺はミミとかげつと一緒にいた。

 

「かげつは仲良くしてくれたんだな。ありがとう」

 

「いえ、同じクラスだったので声をかけてみたんです」

 

「カゲツ。やさしい」

 

今俺達が向かってるところは体育館。本来なら今の時間男バスが使ってる予定だが、ミミが用があるらしい。

 

「ところで、何で体育館?今は使えないぞ?」

 

「ダイジョウブデス。DOUJO、やぶり?にイクデス」

 

は?道場破り・・・・・?面白そうだから観察してよう。

 

「頑張れミミ!」

 

「空先輩!?」

 

 

そして体育館に着くと何故か真帆とひな・・・・後は竹中の妹達だっけ?が竹中に絡んでいた。

俺はそれを無視してミミの動向を見守る。

 

「DOUJOやぶりにキマシタ。ツヨイひとだしてクダサイ」

 

おおー皆目を点にさせてるよ。

 

「止めなくていいんですか?」

 

「いいよ。面白そうだし見てよう」

 

そしてこちらに気づいた竹中がダッシュでこちらに来る。

 

「何やってんだ!?」

 

「バスケぶは、ワタシがいただきます。キャプテン、ワタシとしょうぶ」

 

真帆とひなも竹中の妹たちもこっちに来る。

んーこれは予定外。ちょっとイジったらすぐ帰るつもりだったんだけど、面子的にそれも難しくなるな。場が混沌とする・・・・

 

「さて、お前ら帰るぞー。他の部員に迷惑かけるからな」

 

「空・・・・」

 

竹中・・・・お前にそんな目で見られても嬉しくないぞ。

 

「なんだよにーちゃんこっからが面白くなるとこじゃん!」

 

真帆を筆頭に他の子も反論してくるが・・・

 

「今は男バスの時間だ。それを邪魔する権利があるのか?ミミも男バスに決闘するよりも他にいい案があるぞ」

 

「ホントウデスカ?」

 

「ああ、だから今は体育館出るぞ・・・・・あんまり長居するとカマキリがキレるしな」

 

そして俺は皆を連れて体育館を出る。

 

「何で俺まで出なきゃいけないんだよ!?」

 

「ついでだ。気にするな」

 

真帆とひなは教室に智花たちを待たせてるようで先に戻った。

俺は竹中に事情を話した。納得はしてないが理解はしたらしい。

 

「ミミ、男バスは男だけの物だからミミじゃ入れない・・・・だから決闘に勝ってもお前の物にはならないんだ」

 

「ソウナノデスか?」

 

「だから、決闘をするなら自分でチームを作って女バス相手にしなさい」

 

俺の言葉を聞いて双子がハッとなった。

 

「そっか!そうだよ!」

 

「バスケがしたいならもういっこ女バス作ればいいんだ!」

 

へー。なるほどね・・・・これは使えるかもしれない・・・

 

「君達は既存の女バスには入りたくないのか?」

 

「「真帆がいるから嫌だ」」

 

OKOK。じゃあ後は1人か・・・・

 

「あの、空先輩?何を考えてるんですか?」

 

「うん?いやいい機会だと思ってさ・・・ただあと1人足りないなー」

 

「?」

 

俺は竹中に聞いてみる

 

「なぁ、竹中」

 

「どうした?」

 

「お前の知り合いで女バスの誰かに因縁あるやついない?最悪バスケ初心者でいいからさ」

 

「あー・・・・いるっちゃいるけど・・・・どうする気だ?」

 

「いやな、ここにいるミミとかげつと双子・・・そしてお前の知り合いでチームを作るんだよ」

 

「は!?」

 

「大丈夫。男バスには迷惑をかけない。」

 

「いいねそれ!」

 

「空先輩だっけ?そのアイディアいいよ!」

 

双子が賛同してくれる。

 

「ミミもいいよな?」

 

「トモカとたたかえるなら」

 

「かげつは?」

 

「私は・・・・姉様と戦いたくはないんですが・・・」

 

やはりかげつはやる気出ないか・・・・・

 

「お前の成長した姿が見たかったんだけどな・・・・きっとひなもお前の成長を見たら喜んでくれると思うんだけどなー」

 

「やります!」

 

これで確定4人

 

「なぁ、いいのか?」

 

「なにがだ?」

 

「お前って立場的に女バスサイドだろ?ある意味裏切りじゃないのか?」

 

裏切りか・・・・

 

「そこまででもないさ。それにこれは両方メリットがあるんだ」

 

「メリット?」

 

「一石二鳥どころか三鳥四鳥もある。一番は、そろそろアイツらにもバスケの辛さを教えてやりたいってな・・・・本来なら昴さんが教えるんだが、あの人は優しすぎるし周りも優しい。誰かが教えなきゃいけないんだよ」

 

色々出来るようになり、全国常連校に1点差ゲームをしたアイツらは今絶好調だが、それだけじゃダメなんだ。最も楽しいと思える今だからこそ5年生チームを使って教えてやりたい。

 

「・・・・それって要はアイツら踏み台にする気なのか?」

 

竹中がこっちを睨んでくる。自分の妹もいるからか。優しい兄ちゃんだ。

 

「いーや、5年チームは5年チームでちゃんと考えてある。何より自分の弟子を踏み台扱いする師匠がいるかよ」

 

「は?弟子?」

 

「かげつ。俺の弟子」

 

「マジか!?」

 

「マジ。夏休みからだが成長スピードやばいぞ。試合する時はお前も見ろよ」

 

「分かってる」

 

「それともう1人なんとか頼むわ。その子いないと話にならん」

 

「それも分かってるよ・・・・」

 

さて、面白くなったきたな。

 

 

数日後

 

『たのもおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

来たな・・・・

皆が話している横で俺はそのやり取りを見てる。

 

「私たちが真・慧心女子ミニバス部だ!」

 

さて、そろそろ行くか。

 

「あ、空。空からも言ってやって「すみません昴さん」え?」

 

「俺、今回こっち側なので」

 

俺は5年チームの方に行きみんなに向き合う。

 

「そんな・・・・」

 

「にーちゃん・・・・・」

 

「そら・・・・・」

 

正直心が痛すぎる・・・・

 

「空、どういう事だ?」

 

「昴さん、分かりやすく説明しますね。彼女達と試合して5年チームが勝ったら練習場所と時間をそのままソックリ貰います。女バス自体はそのままメンバーが入れ替わるだけですね」

 

「だけって・・・・」

 

「そもそも決めるのは昴さんじゃない。そっちの5人は試合受ける?受けない?選択はそっちに任せるよ」

 

「受けるにきまってんじゃーん。最初はにーちゃんがそっちについてショックだったけど・・・」

 

「空君だもんね。何か理由があるんでしょ?」

 

「おー。ひなも負けない」

 

「やってやろうじゃない。ただ試合が終わったら空が何でそっちにいるか聞かせてね」

 

「受けるよ。ミミちゃんともバスケしたいしね」

 

・・・・・正直今にも泣きそうです。うれし泣きです。試合終わったらいっぱい謝ろう。

 

「じゃあ今日は宣戦布告だけなので・・・・試合は明後日の放課後。楽しみにしててくださいね」

 

俺達はそのまま体育館を出た。

 

 

俺達は今ゴールのある公園に集まっている。

 

「さて、試合は明後日で練習は今日明日しかありません。練習については必要な分だけしかやりません。後は対策会議を行います。質問ある人いる?」

 

そこで手を挙げるのは・・・・サイドテールの髪型をした紗季と因縁がある藤井雅美さん。

 

「どうぞ」

 

「すみませんが、貴方を信じていいんですか?竹中先輩の話に乗ってここにいるんですけど、私は信用できません」

 

「それって人柄?バスケの腕?」

 

「両方です。もとは6年チームにいた貴方がなぜこちらに肩入れを?それにバスケ上手いんですか?」

 

「こっちにいるのは弟子がいるから。バスケの腕は日本代表に選ばれる程度だよ」

 

「「「日本代表!?」」」

 

信じられない目をしてるなー

 

「ウィ、ソラのいってるのはジジツ。ワタシのクニ、ソラたちにマケタ」

 

「私もそう聞いています。空先輩は信用できます」

 

俺を知ってる2人がいると話が早くて助かるなー

 

「で、雅美さんは納得したかな?」

 

「はい・・・・なら、腕を見込んで聞きます。正直、私達は紗季たちに勝てますか?」

 

「今のままじゃ100%無理」

 

皆に動揺が走る。それはそうだろうな。

 

「ミミはともかく、他の子はせいぜい素人に毛が生えた程度だ・・・・この5ヵ月みっちり練習した子たちに勝てない・・・・・けど、俺がいる。俺が君達に可能性を与える」

 

「可能性?」

 

「勝てる確率を50%まで引き上げる。今日明日で対慧心女バス6年に特化したチームを作る。普通なら無理だが、俺は彼女達をよく知ってるからできる事だ」

 

『・・・・・・』

 

「勝率は50%。負ける確率も50%。絶対勝てるなんてとても言えないけど・・・俺を信じてくれるか?」

 

「ウィ、ソラをシンヨウしてマス」

 

「師匠を信じられなくて弟子なんて名乗れませんよ」

 

さて他の子たちは?

 

「・・・・・信じます。指導お願いします!」

 

「にーたんから空先輩のこと聞いたことあるので・・・」

 

「信じます!」

 

良かった・・・・

 

「じゃあ今から練習を始める。1分1秒が惜しい。悪いが容赦しないぞ」

 

『はい!!!』

 

さて、俺からの試練。皆は乗り越えてくれるだろうか・・・?




寒い寒い寒い寒い!冬ファック!
沖縄行きたいんじゃあ


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14話

試合はじめまりまっす


昴side

 

最初は驚いたけど、案外この試合が組めたのはよかったかもしれない。

こっちが負けるとは思えないし上手くいけば彼女達を女バスに入れれれば公式戦にだって参加できる。

ただ問題なのは空だ。空はコーチの才能もあるんだろうか?

いや、仮に才能があろうとも実質2日で俺達に勝てるチームは作れないはず。

でも油断だけはしないようにしよう。

 

「おっと、空たちが来たか」

 

 

昴sisdeout

 

 

俺達は体育館に行った。今日は6年対5年の試合。

どうやら皆は集まってるみたいだな。

 

「椿、柊、真帆と遊んでないでこっちに来なさい。最終打ち合わせだ」

 

「「はーい」」

 

この2日で距離も縮まり俺は皆のことを名前で呼ぶようになった。

そして俺は5年女バスを集めて作戦会議を開く。

 

「じゃあ最終確認だ。まずはDF。最初は相手に好きにさせる。もちろんこっちはある程度DFはするが対策通りにしなくていい。そしてOF。これは最初から練習通りにする。ミミがボールを運んで適当にパスを散らす。雅美は常にアウトサイドでマークを躱し続けること。いつパスが来てもいいようにな。ただしボールが来てもシュートは打つな。すぐ味方にパスな。あとボールから目を離すなよ」

 

「はい」

 

「かげつもゴール下でパスを貰いやすいようにポジションとること。愛莉はお前よりも10cm以上高いし最近は技術も精神も高く向上してる。一番厳しいけど一番俺の練習に耐えたお前なら通用する。」

 

「はい!」

 

「椿、柊についても基本は2人と同じで常にパスが来ることを意識して。ただ2人は自由に動いていい。足を止めるな」

 

「「はーい!」」

 

「最後ミミ。お前がチームの生命線だ。だから最初は智花との1対1は避けろ。パスに徹して味方のフォロー優先で」

 

エースのミミが仮に初っ端からやられたら最悪すぎる。

 

「ウィ・・・トモカとショウブ・・・」

 

「大丈夫。必ずお前と智花の勝負は実現させる。イケルと思ったらイッっていいけどそれ以外はPGとしてゲームのコントロールを頼む。お前が折れたら負け確定だ。チームの柱として期待してる」

 

「ハイ!」

 

さて、後は・・・・

 

「対策通りのDFについては俺から開始の指示を出す。質問は?」

 

雅美が手を挙げる。

 

「なぜ最初好きにやらせるんですか?DFも最初から作戦通りに進めればいいと思います」

 

「相手に自分は絶好調だと思わせたいから。なのに急にシュートが入らなかったり止められたりしたら相手は混乱する。そしてこれでいいのかと迷う。迷えばプレーに影響が出てさらに動きが悪くなる。そうなれば悪循環に陥っていつも通りのプレーが出来なくなる。そうなればこっちが有利だ。それにお前らも実物見てイメージ修正しときたいだろ?」

 

「それもそうですね。分かりました」

 

さて、そろそろ試合が始まるか・・・

 

「じゃあアップしてきて。俺は相手のコーチに挨拶してくるから」

 

『はい!』

 

俺は昴さんのもとに行く。竹中もいるのか。

 

「おはようございます。昴さんに竹中」

 

「空・・・おはよう」

 

「おっす」

 

「今日はよろしく。胸を借りるつもりで相手になります」

 

「そんな気さらさらないよな?空の事だし何かあるんだろ?」

 

「それは試合の中で見せますよ。審判って竹中がやってくれるのか?」

 

「おう。中立だしな」

 

なら問題ないな。

 

 

そして試合が始まった。

 

まずは6年チームからか。さすがにジャンプボールでは愛莉に勝てないししょうがないか。けど昴さんは予想外だろ?差なんて掌1つ分だったんだから。

さて、まずはDFからだ

それぞれのマークについては、雅美が紗季に柊が真帆に椿がひなにかげつが愛莉にミミが智花に。

柊と椿のとこが若干揉めたけど、前後半でチェンジということで落ち着いた。

 

「愛莉!」

 

紗季が愛莉にパスをする。ミスマッチを考えれば当然だな。

受けた愛莉がそのままかげつを抜いてランニングシュートを決める。

 

「ナイッシュー!アイリーン!」

 

「えへへ、ありがと。真帆ちゃん」

 

こちらを見るかげつに俺はそのまま頷く。

相手を抜いてシュートは気持ちいいだろ?その感覚を忘れないでほしいね。

次はこっちからのOF。ミミがボールを運び辺りを見渡す。

マークは智花か。ま、当然だな。

 

「止めるよ」

 

「トモカ・・・・まだハジマッタばかりデス」

 

そしてミミはかげつにボールを渡した。

さぁ、見せてやれかげつ。夏から練習したお前の技を。

ゴールを背に向けたかげつはそのまま半回転して後ろに飛びながらジャンプシュートを決めた。

 

「フェイドアウェイ!?」

 

昴さんは驚くよな。素人だと思ってた子がまさかフェイドアウェイをやってくるなんて思わなかっただろうし。成功率は精々5,6割だけどね。

 

「すげーなゲッタン!何今の!?」

 

「かげ。すごい。いつの間に?」

 

「空先輩との特訓の成果ですよ。驚かせようと思って秘密にしていたんですけど、夏から練習に付き合ってくれてたんです」

 

「マジか!?にーちゃんいつの間に・・・・」

 

真帆がじっとこちらを見てくる。かげつが暴露したみたいだな。

 

「かげつちゃん凄いね・・・・でも次は絶対止めるよ。」

 

お、愛莉の心に火がついたか。

とは言っても後は出させないけどね・・・・意識してくれたら儲けものだ。

今度は6年チームが真帆とひなの連携で点を取る。

こちらも負けじと椿、柊コンビで取り返す。

 

点数が8-8になった。

そろそろ頃合いか・・・・

俺は両手を大きくパンッ!と体育館中に鳴り響かせる。

体育館にいる皆がこちらを見る。5年チームは気づいたな。

 

「(試合は今からが本番ですよ。昴さんやみんなはどう対処するかな?)」

 

 

昴side

 

 

今のは一体なんだ・・・・?何かの合図?じゃあなんの・・・・

 

「愛莉!」

 

ここで紗季から愛莉にボールが渡る。さっきと同様抜こうとするが・・・抜けない。

 

「簡単には行かせません・・・(愛莉先輩は一度で抜けなかったら周りを見ようとする。その時ボールから一瞬意識を逸らしてしまう)ここ!」

 

かげつちゃんが愛莉からスティールを決める。

 

「(動きが変わった・・・・?)」

 

そして動揺するみんなを置き去りに5年女バスは速攻で決める。

 

そしてボールは紗季の手に渡る。

 

「(どういうこと・・・?愛莉が抜けなかったのはともかく簡単にスティールされたように見えたわ。とりあえずパスコースを・・・)」

 

「(紗季はチームが慌しくなったとき、周りを見すぎてるのが弱点・・・・)目の前に相手がいるのに随分余裕ね!」

 

紗季がスティールされた!?かげつちゃんはともかく少なくても雅美ちゃんは素人同然じゃなかったのか!?

 

「(タイムアウトを取るか・・・?こちらの想定以上にあっちはやる・・・)」

 

俺が迷ってる間に4点差になった。

 

「紗季パス!」

 

智花がパスを呼び込む。智花ならきっとこの不気味な雰囲気を変えてくれるはず!

 

「やっとデスカ・・・でもアンイデス」

 

そのパスは柊ちゃんにカットされボールがコートの外に出る。

 

「やったー!空先輩の言った通りだ!」

 

「(空か!?・・・・そういう事かよ!)」

 

タイムアウトを取ろうとしたが止めた。

なぜなら後数秒で1Qが終わるから。

そして第1Qが終わった。

 

 

昴sideout

 

 

今タイムアウトを取ろうとしてやめた?数秒だったしね。まぁ、気づいたところでどうしようもない。でもさすが本職のPG。流れに対する嗅覚は流石です。

 

「みんなお疲れ。こっちから言うことはない。後は教えた通り全て出せばいい」

 

『はい!』

 

「ミミはパスどう?面白い?」

 

「あまり・・・・オモシロくないデス」

 

「そっかそっか。じゃあそろそろトモカと勝負する?」

 

「イインデスカ!?」

 

「ただし1Qで1回。後は俺が指示するまでPGに徹してね」

 

「・・・ショウガナイデスネ」

 

「この試合が終わったら皆でアイスでも食べようか。俺が奢ってやろう!」

 

『おー!』

 

「あの・・・・空先輩」

 

「どうした雅美?」

 

「私もそろそろシュート打ちたいです」

 

「お前のシュートはうちの切り札だ。抜くタイミングは俺に任せてほしい」

 

「・・・・・・」

 

「紗季の絶望する顔見たくないか?」

 

「見たいです!」

 

即答かよ。紗季が不憫だ・・・・

 

「じゃあ俺に任せろ。あっちにとっては最悪のタイミングで打たせる」

 

さて、あっちの様子はどうかな?

 

 

昴side

 

 

「どういうことなの?序盤のDFと終盤のDFが明らかに違うじゃない」

 

「わっかんねー!」

 

「ごめん。皆・・・・私が止められたせいで・・・」

 

「おー。愛莉のせいじゃない」

 

「そうだよ・・・私もあそこで呼びこまなければ・・・・」

 

俺は皆に言う

 

「まずは落ちついて話を聞いてほしい」

 

そして皆がこっちを見て黙る。

 

「なぜOFが止められたか・・・・十中八九それは空のせいだ。恐らく皆の動きや心情を読んでる空が指示したことだと思う」

 

「にーちゃんが?」

 

「私たちのことを読んだ?」

 

「愛莉を止めたときも先を読んでる動きだったし智花へのパスをカットしたときの柊ちゃんの言葉で確信を持ったよ。」

 

「そんな・・・・読まれてる相手にどうすれば・・・・」

 

愛莉の言う通りだ・・・・・

恐らく空は全員の癖も把握してるはず。それを消すことは出来ない。何故なら本人達も分かってないから。

 

「(試合に出てないのに影響力が強すぎだろ・・・・)」

 

「とりあえずDFのときは私が皆のフォローに回ります。雅美は見たとこシュートはないみたいですし、ノーマークにしても問題ないかと」

 

確かに彼女は一本も打ってない。

 

「DFについてはそれでいいと思う。問題なのはこっちのOFだ・・・」

 

迷ってると時間が来た。必ずこのQで逆転の芽を見つけてやる!

 

 

昴sideout

 

 

そして第2Qが始まる。

 

「ふふん、随分落ち込んでるみたいね」

 

「雅美・・・・・あなた何もしてないじゃない」

 

「は!?これからするわよ!」

 

「はいはい・・・・じゃあね」

 

「ちょ・・・どこ行くの!?」

 

「貴女シュートしないんだからマークしても意味ないの」

 

おー何か揉めてるっていうか、ああ。紗季が雅美のマークを解いたのね。

 

「思ったより早いな。まぁ、ノーマークだし打たせるか」

 

めちゃくちゃ笑顔でこっちを見る雅美。いつもそんな顔ならいいのに。

 

「マサミ」

 

ミミからのパスを受け取った雅美は、その場でシュート打つ。

 

「「え!?」」

 

昴さんと紗季が驚く。

 

「誰がシュートしないなんて言ったのよ」

 

めちゃくちゃドヤ顔だなぁ・・・・

さすがにマークを外せなくなったので再び紗季がつく。

 

さぁ、こっちのDFだ。

 

「ひな!」

 

「おー。ないすパス」

 

「へっへーん!絶対通さないもんね!」

 

「ひな。通らないよ?」

 

そしてひなは愛莉にパスをする。

 

「行くよ!かげつちゃん!」

 

「愛莉先輩・・・・」

 

ゴール下での1対1が始まる。

しかし愛莉はボールを受け取ってそのままジャンプシュートをする。

 

「これなら読みもなにも関係ないよね!」

 

「はい・・・・・入ればの話ですけど」

 

そのシュートは失敗に終わる。

かげつは愛莉をブロック出来ないのを理解してる。

だからかげつは視界を封じることにした。

掌を愛莉の目の前に被せゴールを見づらくした。

 

「そんな・・・・」

 

そして点差は8点に広がる。

 

「紗季ちょうだい!」

 

「へへーんまたと「ノン」え?」

 

椿のユニを引っ張りカットさせないミミ。

 

「なにすんのさ!」

 

「ココでトメマス。ソシテトドメもサシマス」

 

「・・・・そういうことならいいけどさ」

 

渋々だけど椿は下がった。味方の邪魔をしたミミには後で説教だ。

 

「トモカ。ショウブデス」

 

「うん・・・行くよ!」

 

ここでエース対決か・・・・正直悪手としか言えないな。もしここで智花がやられたら希望が無くなる。みんなの心が折れ試合は決まってしまうだろう。あまりにリスクが高い。

 

しかし始まる1on1

智花が力強く素早く抜こうとしても中々抜けない。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

そして智花が真帆にパスをする・・・・・え?

 

「え?」

 

「よっしゃー!」

 

真帆のマークの柊が呆けてると真帆がそのままジャンプシュートを決めた。

なるほど、あくまでチームに徹するか。

そして今ので恐らく分かったな。昴さんがこっちを見てニヤついてるし。

色々予定通りにいかないもんだ。

 

あちらがタイムアウトを取る

 

「柊、お前のマークは真帆だろ。ボーっとしてんな」

 

「うー・・・・だって今の明らかに1対1の場面でしょ」

 

「トモカ・・・・・ニゲタ?」

 

「いや、逃げるというより気づいたんだな。こっちの死角に」

 

『死角?』

 

さてさてどうするか・・・・

 

 

昴sideout

 

 

空が異常すぎて気づかなかった・・・・・本来ならもう少し早めに気づいてもおかしくなかったのに・・・・

 

「智花やったわね!」

 

「うん!真帆がちょうどいいところにいたからね」

 

「パスするとは思わなかったよもっかん!」

 

「でも、真帆ちゃんナイスシュートだったよ」

 

「おー。真帆ないす」

 

こっちの雰囲気も明るくなったな。

 

「さて、そろそろ逆転しようじゃないか」

 

俺がそう言うと皆がこっちを見る。

 

「策あるの!?すばるん!」

 

「それを今から話すよ。正直最初は騙されたよ・・・・確かに空は完璧に読んでるんだろう。でもあの読みを活かすのは空だからこそ出来ること。他の子じゃ絶対無理なんだ」

 

「え?じゃあ何で雅美たちは・・・」

 

「それは・・・・1人に絞ってるからね」

 

「1人に?」

 

「たった1人だけに絞ってるんだ。他の子の癖を知らなくても1人だけに絞れば活かせる。各々の相手にね・・・」

 

「待ってください。私はパスカットされたんですが・・・」

 

「ホントに完璧に読んでるなら全部カットされてるよ。じゃあ何で1回カットされただけなのにここまで印象深いんだろうね?」

 

「それは・・・・・柊の!」

 

「そう、あの発言のせいで印象深かったんだ。あれも計算して言わせたんだろうね・・・恐ろしいよ空は・・・」

 

1Q終わりのタイミングでのカットと発言内容。本当に小学生かよ。

 

「あと、これからは変則になるよ。まずDFは愛莉は柊ちゃん、紗季が椿ちゃん、真帆がかげつちゃん、ひなたちゃんが雅美ちゃん、智花はそのまま継続。ミミちゃんは智花にしか止められないからね」

 

「それで問題ないと思います。でもこっちのOFはどうしましょう?あっちは引き続きマークしてきますよ」

 

「ここからは体力勝負になるよ・・・・・みんな覚悟はある?」

 

「とーぜんじゃん!」

「もちろんです!」

「絶対に負けられません」

「私も頑張ります!」

「ひなもー」

 

さぁ、ここからは読みもクソもないぞ。6年女バスの力を見せてやる。

 

 

昴sideout

 

 

さて、こちらはどうするか・・・・

 

「向こうは確実に何かやってくる。だからこちらからは何もしない。勝負は次Qからだ」

 

『はい!』

 

見せてもらいましょうか。

 

タイムアウトが終わり試合が再開される。

なるほど、マークを変えてきたか・・・・

柊に渡るがこちらの攻撃は止められてしまった。

愛莉とじゃ分が悪いか・・・・

 

「走って!」

 

紗季の号令で全員がゴールに向かって走り出す。

そしてそのまま前方にボールを投げる。確かにこれなら読みもなにもないが・・・・

ひながキャッチしてそのままシュートを決める。

 

「なるほど、ラン&ガンか・・・」

 

こちらのOFはかげつに渡る。高さを生かしたミスマッチだが

 

「おらおら!ゲッタン負けねーぞ!」

 

「く・・・・」

 

身長はかげつのほうが高いはずなのに・・・・

そこでフェイドアウェイを打とうとするが・・・

 

「使うなって言っただろうが!!」

 

俺はたまらず大声で言ってしまった。

 

「かげつ!」

 

柊がかげつに声をかけるが遅い。後ろから来た愛莉にかげつは止められてしまった。

相手の速攻でまたもや点を入れられるとこで第2Qが終了した。

 

 

「まずかげつ。何であそこでフェイドアウェイを打った?俺は使うなと言ったよな。しかも自分よりも小柄のやつに」

 

「・・・・すみません」

 

「未完で成功率も低い。外す可能性が高いのに接戦で使うな。分かったか?」

 

「・・・・・はい」

 

「今にも泣きそうな顔してんなよ。ちょっと来な」

 

俺はビクビクしてるかげつを近寄らせて頭を撫でる。

 

「大丈夫。お前はよくやってるよ。未完の技に縋らなくてもお前は強いんだから自信持っていけ」

 

「は、はい!」

 

とりあえずかげつはOK。

 

「さて、雅美。3Qからはバンバン打っていけ。仮に外してもかげつが取る。」

 

「・・・・・・私も・・・・」

 

うん?

 

「・・・・・撫でられたいです(ボソ」

 

顔を赤らめながらこっちをチラチラ見てくる。

 

「・・・・・おいで」

 

「は、はい・・・」

 

俺は試合中に何をやってるんだろうか・・・・

 

「ソラ。コウハンから・・・・」

 

「うん?ああ、もう好きにやっていい。読みも通用しなくなってきたしな」

 

ミミにパスの楽しさを覚えてほしいと思ったけど・・・・安西監督みたいにはいかないな・・・・

 

「メルシー。ゼッタイかちマス」

 

問題は・・・・・

 

「2人とも、大丈夫か?」

 

「「だ、大丈夫・・・・」」

 

肩で息をして呼吸を整える2人。

 

「お前らが一番走ってたからな。イケルか?」

 

「もちろんだよ・・・・だってにーたんの妹なんだからね」

 

「にーたんが見ててくれるもん」

 

うん、兄想いのいい妹達だ。竹中は幸せだな。

 

「全員聞け。相手は後半全部の攻撃足が止まることはないと知れ」

 

「そんな・・・・スタミナが持つんですか?」

 

「持たないだろうな・・・・こっちがな」

 

『え?』

 

正直スタミナじゃあの5人には絶対勝てない。

そもそもこっちは2日しかないんだ。体力トレなんて普段からもしないし・・・・ミミとかげつ以外だけど。

 

「だから相手に付き合う必要はない・・・・・勝手に自滅してもらうって言ってもお前ら反対だよな?」

 

『もちろん!』

 

だろうな。自滅なんかよりも自分達で倒したい気持ちが強いだろうし。

 

「ならあっちの策に乗るか。そのうえで叩き潰す。具体的な策を言うぞ。予定通り椿と柊マークチェンジ。DFは相手に付き合って、OFは外の雅美。中のかげつ。突破力のミミで攻める。悪いが椿と柊は2人でボール運びとパスを頼みたい」

 

「「ええー!!」」

 

「頼むよ。お前ら2人が総合的に一番上手いんだから」

 

「私たちが・・・・」

 

「一番・・・・?」

 

「当然だろ。ドリブルは雅美やかげつよりも上手くてパスはミミより上手いんだからさ。頼むぜ、お前ら2人でチームを救ってくれ」

 

「そういうことなら・・・」

 

「しょうがないなー!ボクたちが助けてあげるよ!」

 

正直策ってほどじゃないんだけどな、ラン&ガン。受けてやるんだからそっちも受けてくれよ

 

 

昴side

 

 

「まだ終わりじゃないよ。こっちもなんとか点を取れるようになったけどあっちのOFも完璧には止められてないんだから」

 

「そうですよね・・・・それに」

 

「ミミちゃんのOF・・・・今はまだパスばっかりで智花クラスの実力は見せてないけど必ず後半でやってくる」

 

「だいじょーぶ!安心してみていいよ!」

 

真帆は元気だなぁ。チームのムードメーカーはこうでなくちゃな。

 

「じゃあOFは引き続き走りっぱなしでマークを外して。そしてDFも引き続き同じように。策という策はないけど結局うちの強みはチームワークにある。急造チームに負けないように!」

 

『はい!』

 

俺は空の策は読めない。けど、だからってうちは負けないぞ!

 

 

昴sideout

 

 

最初は6年女バスにバスケの辛さをこの試合で教えようと思った。

彼女たちがこれからもバスケを続けるなら必要だと思ったからだ。

でも・・・・

 

「(余計なお世話だったな・・・・・)」

 

俺を救ってくれた彼女たちは俺みたいに弱くない。

どれだけ相性が悪くても、癖や弱点を見抜かれそこを突かれてもへこたれない。

見誤っていたな・・・・彼女たちのハートの強さを。

 

「残り半分!後悔しないように全部出してこい!」

 

『はい!』

 

そして第3Qが始まる。

お互いのOFは止められず一進一退の攻防を繰り広げている。

決められたらすぐに取り返す。それの繰り返し。

第4Qが始まってもそれは変わらなかった

そしてゲームが動いた。

 

「トモカ・・・・こんどはカチマス!」

 

「ミミちゃん・・・・受けてたつよ!」

 

両エース同士の1on1

ここで勝負が決まるな。もうスタミナもない。ここでエースが負けたら心に残る希望が消えてしまう。だからこれが最後の勝負だろう。

俺は智花の弱点だけは教えなかった。ミミが拒否したからだ。

智花とはそういうの抜きでやりたいって・・・・

 

「(ヌケきれマセン)・・・・コレデ!」

 

ミミはスクープシュートを放つ。

これは・・・・・

 

「させない!!」

 

凄い跳ぶな・・・・

本来スクープシュートはブロックされた時点で失敗だ。明らかに軌道が低い。

でもだからって普通触れられるか?

そしてそのまま智花は速攻に持ち込み決めた。

最後は結局足がまともに動かず5年女バスが負けた・・・・

 

 

色々言い訳はある。体力が最後まで残ってたらとかミミが智花の弱点を把握してればとか相手の自滅を誘えばとか・・・・・でも結局それは敗者の言い訳だ。何を言おうと関係ない。俺達は負けた・・・・・だから

 

「もう1回はないよ。椿、柊」

 

「「だってだって!!」

 

「・・・・・後任せるわ。竹中」

 

「おう、お疲れ」

 

竹中に全部投げて俺は昴さんのほうに行った。

 

「お疲れさまです。どうでした?」

 

「正直、序盤からあのままやってたらこっちが負けてたと思うよ・・・」

 

「まー完璧弱点とか突いてましたし」

 

「それにかげつちゃんには驚いたなー」

 

「俺の弟子なんで。まだまだ荒削りですけどこれからもっと成長しますよ」

 

「そこも驚いた。一体いつの間に・・・・」

 

「夏からですね。ひなの自主練に付き合いたいって・・・」

 

「でもあの動きは・・・・」

 

「本格的に教えてますよー。ただ、あの子たちに正式なコーチがついてくれればって思うんですけどね・・・・俺がやってもいいですけど毎回は無理ですし・・・」

 

「・・・・一応あてはあるんだ」

 

「昴さんのあてか・・・・・銀河さん・・・は、仕事だから・・・・葵さん辺りですか?」

 

「正解。流石だね」

 

なら安心かな。さて、出ていった5年チームを追いますか。

 

「じゃあ俺もそろそろ行きます。」

 

「あ、待って!何で敵対したか教えてほしいんだけど!」

 

「・・・・・色々あります。かげつに試合経験させたりとか6年女バスに試合させてやりたいとか、あの子達のうっ憤を晴らす手伝いとか、人数不足の女バスにあの子達が入ってくれれば公式戦に出れるんじゃね?とか」

 

「思ったより多いね・・・・」

 

「まぁ、一番の懸念は解消されたので問題なしです!ではまた今度!!」

 

俺はそのまま体育館を出た。後ろから真帆の声が聞こえるけど昴さんが説明するだろ。

 

 

俺は近くの公園で彼女達+竹中を見つけた。

 

「皆お疲れ。勝たせてやれなくて悪いな・・・・」

 

「いえ、空先輩はよくやってくれたと思います・・・・それに反則しない程度で手段を選ばなければ勝っていたかもしれません」

 

「そうだよ・・・・・負けたのはボク達のせいって分かってるもん・・・」

 

「だから余計悔しいの!」

 

椿と柊には八つ当たりされるのを覚悟してたが・・・・

 

「気持ちよく勝たせてやれなかった時点で敗因は俺だよ。もっとやりようあったんじゃないかって思う」

 

「いや、2日でアイツら追いつめるって相当だと思うけど・・・」

 

うっせー竹中。それでも負けは俺のせいなんだよ。

 

「ワタシのせいデス・・・・トモカのジャクテンを聞かなかったワタシが・・・・」

 

「それなら私も・・・・終盤は愛莉さんにいっぱい止められたし・・・」

 

雰囲気が暗い。さて、どうするか・・・・

 

「試合見てたよ・・・・負けちゃったね・・・」

 

そうか・・・葵さんは見てたのか・・・

 

「おねーさんだれ?」

 

「いまひーたち機嫌悪いんだけど」

 

「やめろ2人とも。この人は俺や竹中、かげつの知り合いで・・・」

 

「荻山葵って言います。それで・・・・まだ君たちが女バスに勝ちたいって言うなら・・・私を雇ってみない?」

 

「デモ・・・・ワタシたちにはソラがいます・・・」

 

ミミ・・・・

 

「俺はずっとお前らを見てられるわけじゃない。見捨てる気はさらさらないけど・・・コーチが2人いてもいいんじゃないか?」

 

「それなら・・・・」

 

「いいけど・・・・」

 

椿と柊は賛同する。

 

「私も賛成です」

 

「ウィ。ワタシもいいデス」

 

かげつとミミも賛成・・・後は

 

「私は・・・・・空先輩はあそこに戻らないんですか?」

 

「俺はどっちも大事。お前らに愛着も沸いたしな・・・・・優柔不断な男は嫌いか?」

 

「い・・・・いえ・・・」

 

「じゃあOK?」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

良かった。どうやら竹中も手伝ってくれるみたいだし・・・・コーチが3人か。

 

「ありがとう。急に来た私を受け入れてくれて・・・・」

 

これから楽しくなりそうだな・・・・・

 

 

 

「これが近況。部員は残念ながら増えませんでしたとさ・・・・」

 

俺は今自分の部屋で電話をしている。相手は・・・・・

 

『そうなんだ。残念だったねー増えたらまた練習試合したいなーって思ったのに』

 

「未有のところはどうだ?」

 

『未有の所はすっごい生意気な後輩いるんだよ!』

 

「それはお疲れさま・・・・あれ?未有も結構生意気だったような・・・」

 

『昔の話禁止!未有はちゃんと変わったの!』

 

「へーじゃあ今はちゃんとキャプテンやってるんだ」

 

『とーぜんでしょ!それより・・・・空に会いたーい!』

 

「週1で電話してんじゃん・・・・つーか随分素直になったというか・・・今部屋なんだろ?相方は?」

 

相方は部屋の同居者。寮住まいの未有は2人で1つの部屋で生活してる。

 

『だって皆知ってるし隠す必要もないでしょ。相方は今お風呂言ってるよー。未有はこれから入るところ!・・・・想像しちゃった?』

 

「してませんー」

 

俺の部屋のドアが開いて真帆が抱きついてくる

 

「にーちゃん!暇!寝る前になんかしようぜ!」

 

「今電話中です。あとで『その声・・・・・アホリボンね!』こら・・・」

 

「お?チビリボンと電話中?」

 

俺の携帯を奪った真帆が未有と話す。

 

「にーちゃんは私のだぞー。今から一緒に寝ますー!」

 

『はぁ!?ふざけんな今からそっち行・・・・あ、先生!?いやこれは・・・」

 

そして電話がきれた。

 

「どうしたんだろう?」

 

「いーじゃん!とりあえず寝よう!」

 

「遊ぶんじゃなかったっけ?」

 

「一緒に寝る!ほらベッドいこうよー」

 

はぁ、しょうがない妹様だよ。

 

「へっへーにーちゃんのお願い何にするかなー・・・・」

 

「ほどほどで頼む」

 

俺は今回裏切った罰で6年女バス+昴さんに俺に出来る範囲で何でも1つ願いを叶えることになった。智花や紗季や愛莉は事情を話して理解してくれたし納得もしてくれたがひなと真帆だけは中々許してくれずこういうことになった。




未有の口調ってどんな感じでしたっけ?


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15話

久しぶり?


朝、いつもの公園でかげつを待つ。

しかし今日はかげつだけでなく・・・・

 

「おはよーそら」

 

「おはようございます。師匠」

 

「おはようひなたにかげつ」

 

今日は朝練にひなたも同行することになった。

なんでも5年チームに味方した俺に対する罰らしい。

正直罰になってないと思うけど・・・・

 

「じゃあ最初は柔軟から。今日はひなもいるから2人で組んでね。その後ドリブル左右100回ずつ」

 

「はい!」

 

「おー」

 

俺は最初にバスケの基本をやらせる。

バスケに限らず全ての土台は基本からだ。

 

「終わったね。かげつは10分ゴール下からの打ちっぱなし。ひなはこっち来て」

 

「おー。どうしたの?」

 

「俺はここでは個々のスキルアップを上達させる為にやってる。だからかげつに対しては今は徹底的にゴール下からの攻めや守りをさせているんだ」

 

「うん。それで?」

 

「ひなとかげつではポジションが違うから同じ練習はさせないってことを言っておきたくね。で、ひなに必要な練習は・・・・・・1対1のスキルをひたすら磨く」

 

「ひな上手くなる?」

 

「なる。ひなの身長じゃバスケじゃ短所だと言われてるけど・・・・逆に長所にさせてみせるよ。じゃあ早速やろう」

 

そして5分間まずは練習させる。

 

「ひな。相手を抜くときもっと屈んで抜きなさい。かげつはフォーム乱れてる。」

 

「はい!」

 

「おー・・・」

 

さて、こんなもんかな。

 

「終了だな。かげつは次にフェイドアウェイシュートな。自分の前に壁があることをイメージして20×5本。落とした回数腕立てな。ひなは俺と1対1。ひなの攻めでひたすら数を熟していくぞ」

 

さて・・・・

 

「ひな。フェイントするときは常にゴールを狙う意識でやりなさい。漫然とやってもバレバレだ。」

 

「おー。全然抜けない・・・・」

 

「簡単に抜かせちゃ意味ないだろ。考えろ。どうすれば抜けるかどうすれば勝てるかを」

 

「ぶー・・・必殺技とかない?」

 

「姉様・・・・さすがに「あるぞ」あるんですか!?」

 

かげつが驚いている。

まー必殺技というほどのものじゃないけどな・・・・

 

「本当ならまだ教えないつもりだったけど・・・・見せるくらいはしてやる。かげつ、少しシュート中断。」

 

俺はボールを持ちかげつをDFに立たせる。

 

「恐らくひなから見たらただ抜いただけなんだろうけど・・・・・かげつから見れば・・・・」

 

俺は一瞬でかげつの横を抜く。

 

「え・・・・消えた・・・・?」

 

「消えたように見えるよな」

 

かげつとひなが詰め寄ってくる。

 

「今のなんですか!?」

 

「ひなは見えたよな?」

 

「うん。そらがかげの左から抜いたよ」

 

「そうだ。じゃあひなが見えたのにかげつには見えなかった理由はなんだと思う?」

 

「え・・・・?動体視力は姉様と変わらないはずですし・・・・」

 

「おー。分からない・・・・」

 

「それは俺が一瞬でかげつの死角に移動したからだよ」

 

「「死角?」」

 

「ああ。まず右にフェイントをかける。そうすると相手の意識が若干右に寄ってしまう。その瞬間左下にダックイン。タネを説明するとこれだけなんだ」

 

「でも、それだけで消えたように見えるなんて・・・・」

 

「俺は一歩だけでMAXスピードが出せるからな」

 

「えぇ・・・・・それ姉様出来るようになるんですか?」

 

「俺と全く同じには無理だけど、似たようなことは出来るようにするよ」

 

「ほんと?ひなも出来る?」

 

「出来るようにする。完成すれば智花ですら止められないよ」

 

「おー!ひながんばる!」

 

そして今日の練習が終わる・・・・

 

「じゃあお疲れさま。汗はちゃんと拭いてな」

 

「お疲れさまです。姉様、タオルとスポドリです」

 

「おー。ありがとう。かげ」

 

献身的にひなの世話をするかげつ。

 

「お前も疲れてるんだ。ちゃんと汗は拭きな」

 

俺はかげつにタオルを渡す。

 

「ありがとうございます。それで・・・・今日の練習は何点でしたか?」

 

「60点」

 

「微妙ですね・・・・」

 

「何のお話?」

 

「いつからだっけ・・・・かげつの練習に点数をつけるようになったんだよ。90点以上でご褒美をあげることになってさ」

 

「いまだに貰えませんけどね・・・・」

 

過去最高は85点だ。

 

「じゃーひなは?ひなは?」

 

「ひなは55点」

 

「低すぎませんか!?姉様ならどう考えても100点でしょう!」

 

相変わらずのシスコンっぷりだなぁ

 

「バスケで贔屓はしません。悔しいならもっと頑張りな」

 

そして俺は2人を送る。

 

「ひな。今日の昼練は無しな」

 

「おー。分かったー」

 

 

俺が家に帰ると・・・

 

「にーちゃん勝負だ!」

 

今度は真帆との1対1。

 

「朝飯入れると20分程度か・・・・今日もボコボコにするぞー」

 

「今日こそ勝つもんね!」

 

真帆はいいね。俺がどんだけボコボコにしても決してヘコたれない。

 

「じゃー最初は俺がOFで・・・・」

 

「抜かせないもんね!」

 

俺はその場でジャンプシュートをする。

 

「ずっこい!」

 

「ずるくない。ちゃんとシュートも警戒するようにって毎回言ってんだろ。相手を抜かせない距離、シュートを打たせない距離、パスを出させない距離。その3つを意識してもう1回最初から!」

 

「にーちゃんジャンプしたら届かないじゃん!」

 

「ジャンプする前にボール取ればいいんだよ」

 

「そっか!」

 

そう上手くはいかないけどな。

 

1対1から5分程度経ったとき・・・・

 

「そういえば俺の罰考えた?」

 

「まだかなー。にーちゃんにしてほしいことって普段からしてもらってるもん」

 

「じゃあ無しでいいか?」

 

「やだ!あ!他の皆には何やらされたの?」

 

やだって・・・・

 

「ひなにはかげつとの朝練に参加。愛莉考え中。紗季は新作試食。智花は特に無いらしいから昴さんとのデート画策中。で、昴さんは・・・・本気の1対1をしたいってさ」

 

「ふーん・・・・すばるんと1対1?」

 

「そう。本気の本気でやってみたいってさ」

 

どうやら最初にやったときの1対1はお気に召さなかったらしい。

 

「私も見たい!にーちゃんとすばるんの対決かー」

 

「却下」

 

「えー!なんでー!?」

 

「本気の勝負は必要以外あんまり人に見せるもんじゃないよ。」

 

それに良い結果になるか分からないしな。

 

 

登校して俺は愛莉と話していた

 

「愛莉ー何か決まったか?」

 

「う、うん・・・・・一緒にお買い物に行きたいなって」

 

「それが罰?全然いいよ。じゃあどこに行こうか・・・・」

 

俺は考えていると愛莉は・・・・

 

「え、映画見たいな。」

 

「そっか。じゃあ次の日曜日に10時に駅前でいい?」

 

「う、うん!えへへ、楽しみだなぁ」

 

それからは他愛のない話をしながら時間が過ぎていく

 

 

早いもので日曜日になった。

俺は駅前で愛莉を待ってると走ってこちらに来る姿が見える。

 

「おはよう愛莉。そんなに急がなくても時間まで10分あるぞ?」

 

「うん、でも待たせたら悪いし・・・」

 

「そんなに待ってないさ。せいぜい5分程度だ」

 

本当は20分前だけど、言わなくていいよな。

 

「そうなんだ。じゃあそろそろ行く?」

 

「ああ。ではお手をどうぞ」

 

俺は愛莉の前に手を出す。

 

「え?」

 

「日曜だから人も多いだろ。はぐれないように」

 

「う、うん!じゃあ・・・・」

 

そうして手を繋ぐ俺達。

 

「・・・・結構恥ずかしいもんだな」

 

「そ、そうだね・・・・あ、行こうか!」

 

そして俺達は手を繋ぎながら映画館に向かう。

 

 

昴side

 

さっきから万里がビルの壁に頭突きをしている。

 

「何で休日の日に他人のデートを尾行しなきゃいけないんだよ・・・」

 

俺達は今空と愛莉のデート尾行している。

何でそうなったかというと愛莉が数日前からソワソワしていたので聞いてみたら日曜に空と出かけるらしい。愛莉は多分空の事が好きなんだろう。

それだけならよかったんだが、その話は万里にも伝わってしまった。

シスコンの万里にとっては邪魔はしたくない気持ちと全力で邪魔したい気持ちが葛藤して結局尾行になってしまった。

 

「おー。愛莉幸せそう。ひなも混ざりたい」

 

「駄目よひな。今日は愛莉に譲るんでしょ?」

 

「ぶー。愛莉ズルイ」

 

「うぅ・・・・ごめんね愛莉・・・・」

 

「もっかん気にすんなー。あ、2人移動した!あたし達も行こう!」

 

尾行には女バス6年チームも混ざっている。

空と愛莉に申し訳ないなぁ・・・・

 

「早く行くぞ長谷川!愛莉が空に襲われる前に!」

 

「襲わないだろう。空は良い奴だし、身長デカくても小学生だぞ」

 

「男はみんなオオカミなんだよ!それに空は早熟だからそういうこともありえるだろ!」

 

「ねーよ」

 

そして尾行が再開される。

 

 

昴sideout

 

 

俺達は映画館に着いた。

 

「じゃあ何見ようか?何か見たいのある?」

 

「えっと・・・・。今話題の『あなたの名は。』がいいかな」

 

ああ、ニュースにも取り上げられてるしな。

 

「じゃあそれに・・・・・ああ、ダメだ。空席がない」

 

今日は休日だしかなり人気だしなぁ・・・・

 

「えっと・・・じゃあどうしようかな?」

 

うーん・・・あ、これでいいか。

 

「これはどうだろう?『仄暗い穴の底から』ってやつ」

 

「じゃあそれにしようかな?内容分からないけどそれも映画の楽しみ方だよね」

 

「ああ、初見でも楽しめそうだしな」

 

俺達は早速チケット売り場に移動した。

 

「すみません。この映画のチケットを小学生2枚で」

 

「はい。小学生2枚・・・・小学生?」

 

あ、お姉さんが怪しんで見てる。

 

「愛莉、学生証持ってきた?」

 

「うん。大丈夫だよー」

 

かばんから学生証を取り出す愛莉。

事前に映画を見に行く予定だったしな。

 

「これでいいですか?」

 

「はい。確認しました。『仄暗い穴の底から』2枚ですね」

 

そしてチケットを貰い俺達は上映場所に向かう。

 

 

昴side

 

俺達は空たちを追って今映画館にいる。

 

「おい!愛莉たちは何を見るんだ!?」

 

「ここからじゃ確認出来ないから」

 

帰りたい・・・・

 

「問題ないですよ。既に愛莉に『今日映画見に行くって聞いたけど何を見るの?面白かったら教えてね』ってメール打ったので!」

 

さすが紗季・・・・でもこんなところで用意周到さは発揮しなくていいんだよ。

 

「ありがとう永塚さん!それで返信は?」

 

「えっと・・・・・『仄暗い穴の底から』ってタイトルです」

 

「早速全員分買ってくる!」

 

万里が走ってチケット売り場に行く。

190cmの男が全力ダッシュとか恐怖なんだが。

あ、警備員に呼び止められている。

 

「違うんすよ!ただチケットを買おうと・・・・」

 

「それで何で走ってくるんだ!それに息をハァハァしながらなんてどう見ても不審者じゃないか!」

 

「それは走ってたから・・・・」

 

「それだけじゃない。チケットが小学生4枚高校生2枚だと?まさか誘拐してきたんじゃ・・・」

 

「違いますよ!信じてください!あ、長谷川!長谷川昴!!ちょっと来て説明してくれ!」

 

「この状況で人の名前をフルネームで呼ぶな!」

 

もうホントに帰りたい・・・・

その後は子供たちと一緒に警備員さんに事情を説明した。

何とか分かってくれて解放してくれた。

 

 

昴sideout

 

 

外がちょっと騒がしいけど何かあったんだろうか?

 

「どうしたの?」

 

「いや、何でもないよ」

 

まぁ、俺達には関係なさそうだしいいか。

 

「どんな内容なのかな?」

 

「うーん、タイトル的に明るい感じじゃなさそうだけど・・・・どうだろうな」

 

そして映画が始まった。

どうやらホラーみたいだ。

ミスったな。俺は大丈夫だけど愛莉がビビってしまった。

俺は愛莉に小声で話しかける。

 

「愛莉」

 

「ひゃい!」

 

ああ、声をかけるだけで驚かせてしまった。

 

「ごめん、声押さえて・・・・大丈夫じゃないな。ごめんな」

 

「う、うん・・・・大丈夫ダヨ」

 

全然大丈夫じゃないな・・・・

そうだ。前に真帆がホラー見てビビったときの対処方やってみるか?

 

「愛莉、ちょっとゴメンね」

 

「え・・・ひゃ!」

 

俺は隣に座る愛莉を持ち上げて俺の膝の間に座らせて抱きしめる。

 

「これなら少しはマシになるか?」

 

「う・・・・うん。大丈夫だよ。ありがとう」

 

やっぱり恥ずかしいのか顔が赤く染まってる。

 

「うん、じゃあ終わるまでこうしてやるよ。大丈夫。怖くないよー」

 

俺は愛莉の頭を撫でる。

 

「えへへ・・・・・」

 

うんもう大丈夫かな・・・・

 

 

昴side

 

「落ち着け万里ぃぃ!!あれは怖さ軽減の為の処置だ!」

 

俺は思いっきり万里を羽交い絞めにする。

パワー強すぎて俺じゃあ抑えきれない!

 

「頑張ってください昴さん!」

 

智花が応援してくれるし負けるわけにはいかない!

残り1時間半耐えてみせる!

 

「でも空もやるわね」

 

「おー。ひなもやられたい」

 

「あーアレなー。ホラー見たときあの態勢で毎回見てるよ」

 

「あ、誰にでもあれやるのね。親しい人なら誰にでもやるのかしら?」

 

「にーちゃんだもん」

 

誰にでもやる・・・・その言葉を聞いた万里は激昂した。

 

「俺の妹だけじゃなく他の子にまで!?あのタラシがぁ・・・!」

 

く・・・・パワーが上がった。

 

「落ち着け!誰にでもやるんじゃなくて親しい人限定だ!それに真帆は妹だ!つまり家族並みに親しい人しかやらないってことだ!」

 

まぁ、女バスなら誰でもしそうだけどな。

 

「家族だと!?恋人を飛び越えて家族なんて許せるかぁ!!」

 

何を言っても無駄なのか。

一応小声だからまだ冷静ではあるんだろうが、いつ爆発してもおかしくないぞ。

この状態で残り時間までもつのか・・・?

 

昴sideout

 

 

映画が終わった。

結構ストーリーは面白かったなぁ。

 

「愛莉立てる?」

 

俺は抱きつくのをやめて愛莉に声をかける。

 

「うん大丈夫だよ。ありがとう空君」

 

おお、良い笑顔だ。

 

「そんなに映画面白かった?」

 

「え?・・・・・えへへ、あんまり覚えてないや」

 

ありゃ勿体ないな。

後で感想言い合いたかったけどこれじゃあ無理か。

 

「じゃあ出ようか。良い時間だしお昼にしよう」

 

「うん!」

 

そして俺達は外に出る。

 

 

愛莉side

 

急に持ち上げられて抱きしめられたときは驚いたな。

でも、凄い・・・・・気持ち良かったな。

空君に包まれて嬉しかったし・・・でも恥ずかしいしで全然映画に集中出来なかったよ。

それでも2時間近くも空君に包まれて幸せだったなー

 

愛莉sideout

 

 

「さてどこで食べるか・・・・」

 

今昼飯時だからどこも混んでるよなぁ・・・

 

「どこも混んでるね・・・・」

 

ふむ。気温もちょうどいいし・・・・

 

「じゃあどこかで買って公園で食べる?」

 

「うん。それがいいかもー」

 

俺達はモスドで昼飯を買った後公園に向かった。

 

「あそこのベンチでいいか?」

 

「うん」

 

結構綺麗なベンチがあったのでそこに座る。

 

「それにしても・・・・愛莉と2人で出かけるって始めてだな。いつもは皆と一緒だけど・・・」

 

「うん、皆といるのも楽しいけど・・・・・一度2人だけで遊びたかったんだ」

 

「何で?」

 

「それは・・・・」

 

すると後ろの茂みから

 

「押すなよ紗季!」

「よく見えないじゃない!」

「おー。智花重い・・・」

「え!?」

 

・・・・・はぁ。

 

「どうする?」

 

「あはは。いつからいたのかな?」

 

「分かんないけどとりあえず・・・・後ろにいる奴ら出てこい!!」

 

俺は大声で呼びかける。

 

「に、にーちゃん奇遇だな!」

 

「どこが?つけといて何言ってんだか・・・」

 

するとひなが

 

「おー。愛莉ズルイ。ひなも空とデートしたい」

 

「ひ、ひなちゃん・・・・」

 

あぁ、これデートだったか・・・・・

すると思いっきり肩を掴まれる

 

「やぁ空君御機嫌よう。とりあえず一発殴らせてくれ」

 

「こんにちは万里さん。万里さんもつけてきたんですか・・・・俺信用ない?」

 

「男はみんなオオカミなんじゃー!」

 

何を言ってるんだか・・・・

 

「ごめん空!邪魔する気はなかったんだけど・・・」

 

「いえ、大体分かります。万里さんの暴走止めてくれてたんですよね?ありがとうございます」

 

「よく分かったね・・・さすが空」

 

「ボロボロの昴さんと憤慨してる万里さんを見れば多分誰でも分かります」

 

苦労お察しします。

 

「・・・・・もう皆で遊ぶか。2人で遊ぶ雰囲気でもなくなったし」

 

「そうだね。皆と一緒も楽しいもんね・・・・・少し残念だけど」

 

そして今日のデートは終了し皆で遊ぶことになった。

遊ぶと言っても公園の遊具でだけどね。

俺は今昴さんと万里さんでベンチで話している。

万里さんはなんとか落ち着いてくれたのでよかった。

 

「え?葵さんと京都旅行ですか?」

 

「うん、福引で当たったからね」

 

どうやら福引で京都旅行に当たったらしい。これは・・・・

 

「俺らの修学旅行先も京都なんですよ。もしかしたらあっちでも会えるかもしれませんね」

 

「ま、その時になってみないと分からないから何とも言えないんだけどね」

 

「そうですか。まぁ、頑張ってください」

 

「?ありがとう」

 

今度の5年チームの練習のときにこの事でからかってみよう。

そして万里さんが俺に耳打ちする。

 

「どう見ても彼女と旅行行くって感じだよなー」

 

「ですねー。昴さんは無自覚なんでしょうけど、多分葵さんのほうは意識しまくりですよ」

 

「荻原も可哀想に・・・・」

 

昴さんは鈍感野郎だからな。

あり得ないけど俺と葵さんが付き合ったらどう思うんだろうか?

多分・・・・・普通に祝福するか、葵さんに対して「いくら空相手でも小学生なんだぞ」とか言いそう。全く嫉妬する様子が想像出来ない・・・

 

「どうしたんだ?」

 

「「いえいえ別に」」

 

そのまま3人で話しているとジャングルジムで遊ぶ真帆が呼ぶ。

 

「にーちゃんすばるんばんりーん!こっちで遊ぼーよ!」

 

「今行くから!・・・じゃあ遊びますかー」

 

「公園の遊具で遊ぶっていつ以来だろ?」

 

「たまにはいいんじゃないか?それに愛莉と遊べるなら何でもいい」

 

俺達は真帆達のもとにいく。

久しぶりに公園の遊具で遊んだけど案外悪くないかも。

多分女バスのみんなが一緒だからかもしれないけど。

 

 

夜。今は自室にいる。

俺が座椅子に座り真帆が俺の膝に座ってテレビを見ている。

 

「アイリーンとのデート楽しかった?」

 

急に何を聞くんだろうか・・・

 

「楽しかったよ。途中で終わったけど」

 

「うぅ・・・だって気になったんだもん」

 

「別に真帆が気にする問題じゃないだろ」

 

真帆の体がこっちを向いて俺に抱きついてくる。

 

「気にするもん。にーちゃんは私のだもん」

 

俺はそのまま頭を撫でる。

 

「別に俺は真帆のものじゃないけどな・・・・お前そんな甘えたがりだったっけ?」

 

「分かんない。けどにーちゃんが誰かに取られるのは嫌」

 

誰かに・・・・か。

 

「そういえば前に未有の電話でもそんな事言ってたっけ?独占欲が強くてお兄ちゃんは少し真帆の将来が心配です」

 

「にーちゃんがずっと私といれば問題ないよ」

 

うーん・・・・日々依存度が上がってる気がする。

 

「ずっとかはともかく学生でいるうちは離れないから安心しろ」

 

最低でも6年?でも大学行くだろうから10年?

 

「離れない?絶対?」

 

「絶対だ。そばにいるうちは一緒にいるよ」

 

「うん!」

 

最初は俺の方が依存してる感じだったけど・・・・今じゃ真帆の方が強い気がする。

 

「じゃあそろそろ寝るか。明日も学校だし再来週から修学旅行だしなー」

 

「うん。楽しみだよねー」

 

後はいつも通り一緒に寝た。

もう当たり前すぎて1人で寝るのが想像出来なくなってきた。

そして修学旅行が始まろうとしている。

 




次は修学旅行かな?かな?


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16話

ガルパンばっか書いてて更新空けてすみません。
修学旅行の始まりです。
原作9巻ですね。


今は新幹線の中。

慧心学園6年生は今日から3泊4日の修学旅行が行われる。

昴さんや葵さんも別口で京都に来るそうなので、もしかしたらあっちで合流できるかもしれない。

5年チームを見る人がいなくなるが、一応練習メニューを残してきたので問題ないだろう。

 

「空君どこ見てるの?」

 

俺がボーっと外を見ていたら愛莉が話かけてきた。

 

「富士山。初めてみたなーって」

 

あんなに大きいんだな。ただデカイだけなのになんでこんなにワクワクするんだろうか。

俺の富士山というワードに反応した真帆が窓に張り付いてデッカイ声を上げた。

 

「うおー!ひな見るんだ!富士山だぞ!フッジサーン!」

 

「おー。ふっじさーん」

 

「あんたら落ち着きがな「フッジサーン!」空まで!?」

 

富士山を見て何とか落ち着こうと思ったけどダメだった。

逆にテンション上がってしまいもう抑えられない。

 

「ほら智花も愛莉も見ろ!初めてだろ!こんなに大きいんだなぁ・・・」

 

「ほんとだぁ、もっと天気が良ければ頂上まで見えるんじゃないかな?」

 

「えへへ、私も初めてだけど生で見るとこんなに違うんだね」

 

正直言おう。前日はワクワクして全く眠れなかった(まほも)

 

「さぁ、紗季も一緒に・・・・フッジサーン!」

 

たまにはこうして羽目を外すのもいいだろう。

ただ純粋に楽しめればいい。

 

「空!?ホントにどうしちゃったの!?」

 

「そうだぞー紗季も一緒に・・・・もっかんとアイリーンも!」

 

「ふ、ふっじさーん」

 

「ふっじさーん。え、えへへ・・・・」

 

うんうん、2人とも凄い恥ずかしがってるけどやってくれるな。

俺も後で冷静になったら絶対後悔するけど・・・・

 

「絶対恥ずかしいわよ・・・・ふっじさーん」カシャッ

 

ふぅ、仕事したぜ。

 

「ナイスにーちゃん!」

 

「紗季のふっじさーんはちゃんと昴さんに届けるから安心しろ」

 

「安心できないわよ!バカ兄妹!」

 

紗季が俺の携帯を取り上げようとする。

 

「冗談だ紗季・・・・俺が本当に昴さんに送ると思うか?」

 

俺が真剣な目で紗季に語りかける。

 

「あ・・・そうね、さすが空。何だかんだ言ってもちゃんと「昴さんじゃなくて雅美に送ってやる」携帯よこせ馬鹿空!!」

 

俺は紗季に携帯を奪われて消去された。

 

「えー雅美なら絶対喜ぶと思ったのに・・・・」

 

「雅美に送ったら商店街中にバラまかれるでしょ!」

 

えー・・・・そこまでやるかなぁ。

せいぜい紗季をからかうネタにするくらいだろうし、そこまでしないと思うんだけど。

 

「ま、いいか。紗季の反応面白かったし」

 

「にーちゃんにーちゃん車内販売で何か食べようよ!」

 

車内販売!?これは見過ごせませんなぁ・・・

 

 

騒いで疲れたのか、みんな寝てしまった。

トイレに行きたいけどひなと真帆が俺の肩に寄りかかってるので動けない。

 

「騒がしいのが静かになったと思ったらこういうことか」

 

「夏陽か。まぁ、見ての通りだよ」

 

「ん・・・・夏陽?」

 

そういえば竹中を名前で呼んだのって初めてだっけ。

 

「中学からは俺も男バスに入るからなぁ・・・・まだまだ長い付き合いになるんだ。名前呼びくらいさせてくれ。それにお前の妹も竹中だし紛らわしいだろ」

 

「そうか・・・そうだな。お前が入れば来年の中等部は相当強くなるな。全国出場も現実的なものになるかもしれないし」

 

全国出場?コイツは本気で言ってるのか?

 

「何言ってんだ。全国出場なんて通過点だろ。狙うなら全勝だ。つまり、全国制覇だよ」

 

「・・・・ハハ、来年の中等部は本気で面白くなりそうだ」

 

話しているとひなが起きてしまった。

 

「ん・・・・そらぁ・・・?」

 

「ああ。起こしてしまったか?まだ着かないしもう少し寝てていいぞ」

 

ひなの頭を優しく撫でながら言う。

 

「うん・・・・そらぁ。あたたかい・・・」

 

再びひなは寝た、

 

「・・・・」

 

ん?夏陽の様子がおかしいな。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

「何か・・・・じゃねーよ!なんだ今のやり取りは!」

 

ん?何か問題が・・・・・ああ、そういえばコイツってひなの事好きだっけか。

 

「何も問題はないだろう。まだ着くまで時間あるしな」

 

「そうだけど・・・そうじゃなくて!・・・お前まさかひなたの事が・・・」

 

ああ、好きな相手が異性に寄りそってるのが気になるのか。

 

「好きだよ」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

面白いなー

 

「もちろん、まほも愛莉も智花も紗季もな」

 

「・・・・・え?」

 

「友達なんだ。好きなのは当たり前だろ?あ、まほは妹か」

 

脱力してその場に座り込む。

 

「はぁ・・・・本気で焦った」

 

「何でお前が焦るんだ?」

 

「い、いや・・・それは・・・その」

 

こいつはバレてないと思ってるのか?

残念ながら、お前がひなのこと好きなのはひな以外にはバレてるよ。

 

「さっきからうるさい・・・・」

 

ああ、まほが起きてしまったな。

 

「おはよう。でももう少し寝てても・・・」

 

「うーん・・・なにかあった?」

「いけない・・・・眠ちゃった・・・」

「・・・・おー?」

 

あらら、皆起きてしまったのか。

 

「夏陽・・・・・?・・・・・夏陽がしゃがみこんでひなのパンツ見てるぞー!!!」

 

うわぁ・・・・夏陽ドンマイすぎる。

今の車両中に聞こえたぞ。

 

「夏陽アンタ何やってんの!!」

 

ああ、タイミングが悪かったな。

脱力さえしなきゃ俺と話てる風だったのに。

 

「はぁ!?ふざけんな!そんな事実はねーよ!くそっもう知るか!」

 

そのまま自分の座席に戻っていった夏陽。

ま、この2人は本気で言ってるわけじゃないだろう。

夏陽ってそういう人間じゃないし。

 

「ま、反応が面白いのは分かるがほどほどにな」

 

「にしし、夏陽おもしれー」

 

ひなのパンツを覗いてたか・・・・そういえば・・・

 

「ひなのパンツって合宿中に無くなったんだっけ?」

 

「そうなのよ・・・・一体どこに行ったんだが・・・」

 

ふむ、合宿中かぁ・・・ま、そこまで気にすることないか。

うちはセキュリティは完璧だし外部犯はない。

あのとき学園にいた男って俺、夏陽、昴さん。

俺を抜かしてもあの2人が盗むようなマネはしないだろうし・・・

そのうちひょっこり出てくるだろ。

 

 

新幹線から降りて荷物をホテルに預けた後、俺達は最初に金閣寺を見物していた。

 

「見ろ!金だ金!」

 

うっわー本当に金閣寺って金なんだなぁ・・・

 

「おー。まっきんきん」

 

「キンカク!キンカク!」

 

まほも超興奮してるな。

 

「ほら3人とも・・・・もう少し静かにしなさい」

 

紗季に注意されるが、残念ながら聞く気はない。

お?智花がキョロキョロしてる・・・・昴さんを探してるのか。

 

「こーら智花!今は皆で金閣寺みようぜ。昴さん探したい気持ちは・・・・別に分からないけど」

 

だって金閣寺優先だし。

 

「ふぇ!?そ、そんなことないよ・・・」

 

分かりやすいなぁー。

 

「ま、昴さんとは明日の自由時間で会えるんだからさ・・・・今はこっちに集中!」

 

「う、うん・・・」

 

紗季のナイスなプランによって明日の自由行動では昴さんも一緒に行動できるようになった。

 

「でも本当に嬉しいな。昴さんや葵さんと一緒に京都を見て周れるのって・・・」

 

お、愛莉それは・・・

 

「なんだー俺らと一緒じゃ満足できないというのか」

 

「そ、そんなことないよ!空君やみんなと一緒に周れるだけで満足だよ!」

 

「冗談だからそんなに慌てることないって・・・・俺もあの2人と一緒なのって嬉しいしな!」

 

「うん!」

 

 

お次は八坂神社!

 

「恋みくじあるってよ!智花買ってくれば?」

 

「こ、恋・・・・どんなことが分かるんだろう・・・」

 

うーん・・・・良縁に恵まれてますとか?買ったことないしよく分からないなー

 

「想い人と上手くいくかどうかじゃない?」

 

ほう、想い人とな・・・

 

「おー?想い人?」

 

「きっとお相撲さんだ!」

 

「まほ惜しい!」

 

想いと重いの違いだな。

日本語って面倒だよね。

 

「違うから・・・物理的に重い人じゃなくて好きな人ってことよ」

 

「つまり・・・にーちゃんやすばるんとの相性も分かるのか!」

 

多分抽象的なことしか書いてなさそうだけどなぁ・・・

おみくじってそういうものだし。

 

「空君との相性・・・・ちょっと買ってくる」

 

おー愛莉の俊敏な動きってバスケ以外でも発揮されるのな。

 

「ひなもー」

 

「あたしもあたしも!」

 

あらら、ひなも真帆も駆け出しちゃったよ。

 

「智花や紗季はいいのか?」

 

「ど、どうしよう・・・・」

 

「私は占いなんてあてにしてないし!そういう空はどうなの?」

 

俺か―

 

「占いは面白そうだけど・・・・」

 

もし結果で、貴方の大事な居場所がなくなります。って出たらショックで吐く自信あるし・・・・

 

「うん。無理」

 

とりあえず真帆たちを追いかけて境内に入るとそこには夏陽もいた。

 

「お、夏陽じゃん。おみくじ引くのか?」

 

「は!?男で引くやつなんているわけ「ぶー。たけなかつまらない。ひなはがっかりです」ちょっと行ってくる」

 

ダッシュで引きにいく夏陽を見送る。

 

「どんな結果になっても面白いぞ。ちょっと観察しようぜ」

 

「いいわね。夏陽の反応が気になるわ」

 

「おー」

 

そして俺と紗季とひなで夏陽の行方を見守る。

 

「お、夏陽選手。いま自分の状況を理解しました」

 

「あれは周り女性ばかりで恥ずかしがってる様子ね」

 

「そして恥ずかしながらも恋みくじを確保!周りの大人の女性は皆夏陽を微笑ましい目で見てます」

 

「なつひ。かおまっかっか」

 

「そしてくじの中身を見る夏陽!あーっと出ました!orz!orzです!」

 

「これは凶あたりね」

 

ドンマイ夏陽。まぁ、いいことあるさ・・・・

 

「にーちゃん達なにしてんの?」

 

お、真帆と智花と愛莉か。

 

「夏陽。くじに敗れるの図を見てた。」

 

俺がいまだに肩を落としてる夏陽がいる。

 

「あっはっはははは!!!ちょっとからかってくるー!」

 

気をつけろ夏陽。爆弾がそっちに行ってしまったぞ・・・

 

「まぁ真帆のことは置いといて・・・結果どうだったんだ?」

 

「えっと・・・・吉だって」

 

ほう、智花は吉か。なんか微妙だな

 

「愛莉は?」

 

「私は中吉だって。今後の努力次第でしょうって書いてあったよ」

 

「なんかパっとしないなぁ・・・そういえばひなはどうだった?」

 

「おー。ひな大吉だったよ」

 

「やったじゃん!えっと大吉のときって木にくくりつけるんだっけ?」

 

「それ悪かったときでしょ・・・・」

 

ああ、そうなのか。

 

「ただいまー!」

 

満足したような顔をして戻ってきたな。

 

「じゃあそろそろ行くか。次はどこだ?」

 

「次って・・・・今日はもうホテルに戻るのよ」

 

なんだ・・・もっと遊びたかったのに・・・

 

「ビックリするほどテンション下がったわね・・・」

 

「元気出して空君・・・・また明日いっぱい見られるよ。それにほら、夜は一緒にトランプとかしようよ」

 

愛莉が俺を慰めてくれた。

確かにそうだ・・・夜はみんなで遊ぶんだ。

 

「そうだまだ初日は終わらない!夜通し倒れるまで遊びつくすぞー!」

 

「さすがにーちゃん!その言葉を待っていた!」

 

俺はそのまま真帆と一緒に走ってバスまで戻る。

 

「夜通しって部屋違うのに・・・・あれ?もしかして忘れてる?」

 

「今の空君ならあり得るかも・・・」

 

「おー。空と部屋違う・・・残念」

 

 

 

ホテルに戻った俺達。

そこにいたのは・・・・

 

「あれ?昴さんじゃないですかー!同じホテルですか!?」

 

「空!?それにみんなも・・・・というか、普段の空から考えられないくらいテンション高いね」

 

「気のせいですよ!」

 

お、葵さんも発見!

 

「葵さーん!」

 

「空君・・・・みんなも。そっか、団体さんって慧心だったんだ・・・・ありがとう」

 

何で礼を言われたんだろうか・・・

そして昴さんや葵さんと話してると夏陽に注意される。

 

「おい!紗季や空・・・・今日の空はいいや。紗季がいながら列から離れんなよ!」

 

ぶつぶつ文句を言いながら俺達に説教をする。

 

「なんだか竹中機嫌悪い?」

 

「ああ、それはおみくじの結果が悪かったからですね。あれは笑えました」

 

「ふふ、そうね・・・・では長谷川さん。私達はこれで」

 

「あ、夜になったら部屋でトランプとかするので来てくださいねー」

 

そして昴さんたちと別れた後部屋に行こうとするが・・・

 

「忘れてた・・・・部屋一緒なのはさすがにマズイから部屋だけは竹中達と一緒だった・・・」

 

「やっぱり忘れてたのね。普段の空ならあり得ないのに・・・・いくらなんでも浮かれすぎじゃない?」

 

はぁ・・・・

 

「そうかも・・・・とりあえず荷物置いて風呂入ったらそっち行くよ」

 

「はいはい。元気出しなさいよ」

 

部屋には夏陽含む竹中班の4人がいた。

 

「部屋割りだけだけどよろしくなー」

 

「あー気にすんな」

「三沢の優先順位はクラス全員理解してるし」

「お前に刃向うやつもいないしなー」

 

おう、気の良い連中だな。

折角だし女バスの連中以外とも交流深めますかね

 

「じゃあ早速風呂でも行きますかねぇ・・・お前らも行こうぜ」

 

俺が誘うと夏陽以外が乗ってくれた。

 

「夏陽いかねーの?」

 

「お、おう・・・・今から大事な用があるんだ」

 

旅先で大事な用事?

 

「ふーん・・・・ま、いいや。じゃあ先行ってるわ」

 

「お、おう・・・ゆっくりしてこいよ」

 

俺達は部屋から出て風呂場に向かう。

夏陽の大事な用事ってなにかねぇ・・・

 

「お前らどう思う?」

 

「告白!」「逆告白!「覗き!」

 

ふむ・・・・

 

「あるとしたら最後意外だろうな。夏陽ってそういうやつじゃないだろうし」

 

「いや分からないって!男のロマンだぞ!」

 

えー・・・・

 

「覗くなら逆に風呂に行くんじゃないか?」

 

「あーそっか・・・・じゃあ告白系?」

 

「相手はひなだろうけど・・・・アイツにそんな度胸あると思うか?」

 

「「「ない」」」

 

愛されてるな。

 

「じゃあ逆告白」

 

「「「もっとない」」」

 

なんだろう、夏陽が哀れに思えてきた。

脱衣所につきすぐに服を脱いで風呂に行く。

せっかくなので露天風呂に入ってると柵のほうから大きな音が聞こえた。

 

「何だ今の音?」

 

女子の方でも騒がしいし何かあったのか・・・・?

 

「ま、どうでもいいか」

 

 

俺は風呂から上がって早速真帆たちの部屋に向かう。

真帆たちはまだ帰ってないだろうけど、鍵は開いてるので好きに入っていいそうだ。

 

「物騒だなぁ・・・というか夏陽が結局風呂に入らなかったけど・・・」

 

本当に何をやってるんだが・・・・

俺が部屋の前に着くと何か物音が聞こえる。

 

「(ん?真帆たちのほうが早かったのか・・・・いや、男の声が聞こえる・・・)」

 

 

昴side

 

早くパンツを返さないと・・・・

 

「ひなたちゃんの鞄はどれだ・・・・?」

 

「これだ!このストラップはひなたのだ!」

 

さすがいつもひなたちゃんを見てるだけある。

 

「慎重に・・・・今になって出てきた感じにしなきゃ・・・」

 

「早くしろ!つーか余計なものには触るなよ!」

 

「うるさいなぁ・・・・あ、敷板がある。ここにひっかけて今に出てきた感じを演出すれば・・・」

 

そのとき部屋の扉が開いた。

そこにいたのは・・・・

 

「なに・・・・やってるんですか・・・」

 

「空・・・・」

 

見つかってしまった・・・・

 

 

昴sideout

 

 

部屋から男の声がする・・・

 

「さて・・・どうするか」

 

先生を呼びに行く?いや、逃げられる可能性があるからダメか・・・

ちゃんとは聞こえないけど、声は2人分。

 

「2人程度なら・・・」

 

俺は扉を開いて中に入ると、そこにいたのは・・・

 

「なに・・・やってるんですか・・・・」

 

「空・・・・」

 

昴さんと夏陽だった。

 

「その鞄・・・・確かひなのですよね?鞄をまさぐって・・・2人で何をやっているんです?」

 

「違う誤解なんだ!」

 

昴さんの手には下着が握られていた。

しかも、確かあの柄って・・・

 

「その手に持ってるのって・・・ひなが無くした下着の柄と一緒なんですね・・・まさか偶然持っていた・・・・なんて、ふざけたことは言いませんよね?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「しかも夏陽も共犯か・・・・・最悪だ。騙された気分だ」

 

「誤解なんだ!聞いてくれ!」

 

誤解って・・・・現行犯じゃないか。

合宿のとき入手して満足したから返しにきたってことだろ。

 

「いいから聞いてくれ・・・」

 

「・・・・聞くだけ聞きますよ。ただ・・・・納得出来なかったら美星先生を呼んで2人ともしかるべき処分を受けてもらいます」

 

「ああ、それで構わない」

 

 

「・・・以上だ」

 

なるほど、要は事故で手にいれてしまったけど今まで返すタイミングがなくてずっと保管していた。夏陽も無関係じゃないしこの機会に返す為に2人で色々した・・・か。

 

「よく分かりました・・・・」

 

聞いてるうちに冷静になったな。

そもそも最初から盗むならリスクを負ってまで返しにくるわけないのに・・・

やっぱり今日の俺はどこかおかしいかも。

 

「2人を信用してこの事は胸の内にしまっておきますよ。奇跡みたいな事故だなぁ」

 

「本当か!?」

 

「夏陽。この状況で嘘はつかないよ」

 

そして昴さんがパンツを返そうとすると、女生徒の声が聞こえてくる。

 

「早く隠せ!」

 

「大丈夫。完了した!」

 

そして夏陽はそのままクローゼットの中に隠れる。

 

「あれ、俺は!?」

 

昴さんが焦る。おもしろいなー

そしてドアが開かれた。

 

「やっほー昴さん拾って遊びにきたよ」

 

「あら、やっぱり空たちが先だったのね。すみません長谷川さん・・・お待たせして」

 

「すばるんも来たか!じゃあ早速遊ぶぞー!」

 

「へ・・・・?」

 

呆けた顔も面白いなぁ・・・

俺は小声で昴さんの耳元で囁く。

 

「事前に遊びに行くことは言ってたんですよ」

「そうなんだ・・・本当に助かったよ」

「いいえ・・・」

 

さて・・・・

 

「人数多いし人生ゲームやろうぜ。この人数でトランプだと枚数少ないし・・・」

 

「じゃあ準備するねー」

 

その間に・・・・。

 

「あーいり、おいでー」

 

俺は愛莉に手招きする。

 

「どうしたの?空君」

 

「うりゃ」

 

俺はそのまま愛莉の手を引いて抱きしめる。

 

「・・・え!?え!?え!?」

 

え!?3連発いただきましたー

さて、この意図が通じると良いんだけど・・・

 

「おー!にーちゃん大胆すぎ!」

 

「おー。愛莉羨ましい・・・」

 

「空積極的すぎでしょ!」

 

「空君大胆だなー・・・・」

 

俺は昴さんにアイコンタクトを取る。

 

「(皆が注目してる隙に夏陽を退却させて!)」

 

「(空・・・・こっちを見てなにを・・・・ハッ!この前家で遊んだときみたいに空気読めというのか!?さすがにそれは・・・・)」

 

あ、これ通じてないや。

どうしよう・・・・ひなも呼んで・・・・ダメだな。

夏陽がキレそうだし・・・ここは智花だな。

 

「智花もおいで」

 

メンバーに衝撃が走った。

 

「まさかのトモ!?」

 

「おーもっかんを呼んだぞにーちゃん!すばるんから奪う気か!」

 

「おー。略奪愛?」

 

いい感じに場が混沌としてきたな。

 

「あ、あの・・・空君・・・・私には・・・・その」

 

分かってる。

 

「空君・・・・私だけじゃダメ?」

 

愛莉が上目づかいで俺を見てくる。

 

「ダメだ」

 

「あんたは鬼か!」

 

紗季にツッコミされる。

くっそ・・・いい加減気づけよ。

こっちにみんな注目してるんだぞ・・・・逃げ出す好機を与えてるのに・・・

 

「ひぅ・・・」

 

ああ、もう・・・愛莉が泣きそうになってんじゃん。

 

「冗談だ愛莉・・・・でも俺は1人じゃ満足できないんだ」

 

「空・・・・さっきから最低なこと言ってるの理解してる?」

 

「うん・・・・空君が私だけじゃ満足できないなら・・・・いいよ」

 

「いいんかい!!」

 

さっきから紗季のツッコミがいい感じに面白いな。

昴さんに伝わらないなら手だけでやってやる。

俺は手で昴さんにジェスチャーをする。

 

「(指で開けるジェスチャーと・・・・人差し指と中指で走るジェスチャー・・・・これでどうだ!)」

 

「(さっきから空は何をしたいんだ・・・・指を・・・・開ける?・・・走る・・・そうか!)」

 

やっと意図を察した昴さんは壁に近づいて電気を消そうとする・・・・それでいい。

そして急に真っ暗になった部屋

 

「うわ!どうした!?」

 

「焦るな!まずは電気をつける。急に光がきたら目が驚くだろうから、全員目をつぶって!」

 

俺の言う通り全員目を・・・つぶったか分からないけど・・・とりあえず夏陽は脱出できた。

俺は電気をつけようとしたが・・・・愛莉がしがみついて離れないので昴さんに任せた。

 

「全員目を開けていーよ」

 

「あー驚いた」

 

「一体なんだったのかしら?」

 

「おー。でも楽しかった」

 

俺は愛莉をゆする。

 

「愛莉、もう大丈夫だよー」

 

「うん・・・・」

 

さて、愛莉も大丈夫そうだし遊びの続きだ。

 

「愛莉離れていいよー」

 

「あ、うん・・・・」

 

「智花も・・・・さっきのは冗談だからそこまで悩まなくていいよー」

 

「あ、冗談だったんだ・・・」

 

そらそうよ。

 

「もうさっきはビックリしたわよ」

 

「いやーやっぱり舞い上がってるのかも。旅行楽しいしな」

 

「そうね・・・じゃあ遊びましょうか」

 

 

途中で美星先生がくるハプニングもあったが特に問題もなく終わり・・・

 

「で、今度は真帆のパンツですか・・・」

 

「まさか竹中のジャージの足首のジッパーに挟まるなんて・・・」

 

もはや偶然通り越して本当に奇跡だ。

 

「で、話って?まさか俺に返せと?」

 

「いや・・・・これはともかく。これを・・・」

 

俺が渡された紙には『MM:誘拐ルート候補』と書いてあった。

 

「・・・・これはどこで?」

 

「怪しい人が女子のフロアにいてさ・・・これを落として逃げていった」

 

なるほど、MMは・・・三沢真帆ってことか?

誘拐か・・・・

 

「これが本当な証拠はないし・・・・動きがあったら美星先生に報告でいいでしょう」

 

「大丈夫?もし真帆が誘拐「させません」・・・空?」

 

「絶対に、何があろうと、誘拐はさせません」

 

真帆は絶対に守る。誰が来ようと俺の妹に手を出す人間は許さない。

 

「・・・・分かった。じゃあそういうことで・・・」

 

「はい。明日は俺が常に傍についてるようにするので・・・・とりあえず明日は折角一緒に遊べるんです。忘れて楽しみましょう」

 

「そうだな」

 

そして俺達は各々の部屋に戻る。

真帆がいないとまともに寝れないことを忘れたまま・・・・




久々の更新。
次回は今週中に(多分)


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17話

修学旅行後半スタート!


今日は2日目。京都駅の改札口付近で待ち合わせをする。

相手は勿論昴さんと葵さん・・・・

修学旅行での自由時間は事前に5つのルートの中から1つ選んで指定の場所を見る感じになっている。

奇跡的なことにこのルートを選んだのは俺達だけ、そしてこのルートの引率者は羽多野先生ということで、昴さんや葵さんが同行しても問題ない。

 

「おーい!」

 

と、そこへ昴さんと葵さんが着いた。

 

「おはようございます。昴さん葵さん」

 

「おはよーすばるん!」

 

智花や真帆が挨拶をして俺達も挨拶する。

正直俺のコンディションは最悪だ。

抱き枕(真帆)不在の為中々寝つきが悪くかなり寝不足だ。

 

「大丈夫?」

 

葵さんが心配してくれる。

 

「なんとか・・・・」

 

正直言葉を返すだけで精一杯だ。

 

「さて、皆揃ったし行きましょうか」

 

羽多野先生引率の元、俺達はまず宇治市に向かった。

 

 

「にーちゃん眠いなら七味唐辛子飴食べる?」

 

真帆が昨日気に入って買った飴か。

 

「食べる・・・」

 

「はい、あーん」

 

そして俺の口に七味唐辛子飴が送られる。

このピリピリとした感覚、そして味のマズさ。

眠気覚ましにはちょうどいいかもしれない。

 

「空君・・・大丈夫?顔が凄いことになってるけど・・・」

 

愛莉が心配してくれる。

真帆が俺の為にくれたんだし問題なんてあるわけないんだ・・・

 

「大丈夫だよ愛莉。口の中が凄いことになってるけど」

 

正直吐き出したいけど真帆が悲しまないようにちゃんと最後まで食べるさ。

 

「にーちゃん気に入った?まだまだあるからいっぱい食べていいよー!」

 

・・・・俺はもうダメかもしれない。

俺達は駅から降りて行き先である

 

「さぁいくぜ!ダイゴーインメッシュドウ!」

 

ダイゴーイン・・・あれ?おかしいな。俺達の行く所ってそんな奇抜な所だっけ?

 

「違う。平等院鳳凰堂。名前の原型ないじゃない」

 

ああ、違うのか・・・・

平等院に着くと色々お店があった。

あらら、皆はしゃいでるな~・・・

最初はそれぞれ目的の店に行こうとしたが、羽多野先生が参拝を先にしてしまおうと言ったので俺達は参拝をする。

 

「おー!ホントに10円玉と同じだー!」

 

真帆のテンションが上がる。

本当に10円玉と同じだな・・・・凄い。

 

「すっげー!でっかー!これが10円玉の世界か!」

 

「空・・・眠気吹っ飛んだのはいいけど、10円玉の世界って凄い安っぽく聞こえるわ」

 

紗季にツッコまれるけど今はどうでもいい。

 

「じゃあ記念撮影しちゃいましょうか」

 

羽多野先生の指示に従い境内をバックに俺達は記念撮影を行う。

最初は割とまともだった羽多野先生が暴走するトラブルがあったが、それ以外は何も問題なく撮影は終わった。

 

「抹茶ソフト美味いな~」

 

「えへへ、そうだね」

 

「おーひえひえ」

 

撮影終わった後は俺と愛莉とひなで抹茶ソフトを食べる。

他の皆もそれぞれお土産を買ったりして宇治を漫喫してる。

その後は新しい目的地に向かって出発した。

 

「にしても・・・・このコースなら他の希望者がいてもよかったと思うけど、何で智花達だけだったんだ?」

 

昴さんが疑問を挟むのも分かるけど・・・

 

「制限時間ありますからね・・・宇治まで来てしまうと他の所見れないんですよ。平等院を見てみたい人もいたと思いますけど、やっぱここ1つだけじゃねぇ・・・」

 

折角京都に来たのだから、他の名所も見たいって言う人ばっかだし。

 

「後は・・・・源氏物語の舞台ですね」

 

「源氏物語?」

 

昴さんに紗季が説明する。

源氏物語の宇治十帖と呼ばれる一部の章で宇治が物語の中心舞台になっている。

俺はあまり興味はなかったけど、紗季が結構推していたし・・・

 

「そして次の行き先は・・・・・この動画館です」

 

源氏物語動画館『浮舟』

源氏物語の衣装を借りて写真を撮影してくれるだけじゃなく役になりきってビデオ撮影もしてくれる。

 

「と、言うわけで昴さんも葵さんも一緒にどうです?」

 

「「え!?」」

 

折角だし2人も一緒に楽しみたいじゃん。

 

「自由行動についてはフィルムとか提出する必要ありませんし・・・・問題ありませんよね?」

 

俺は羽多野先生に確認する。

 

「ええ、もちろんよ。だから遠慮なく光源氏をやるといいわ。昴君」

 

「え!?光源氏って主人公じゃ・・・・それって空がやるんじゃ・・・」

 

「俺は桐壷帝をやります」

 

光源氏のパパ役。そっちのほうが面白そうだし。

 

「年齢的に俺がそっちの方がいいんじゃないかな!?」

 

「昴さんが父親役とか無理ゲーなので・・・」

 

というわけで無理矢理やらせてみたよ。

 

 

 

「早くセリフ覚えないと・・・」

 

今は控室で光源氏の衣装を着た昴さんが台本を覚えようと必死に読み込んでいる。

 

「大体でいいと思いますよー。何もかも台本通りってつまらないでしょ?素人なんだからちょいちょいアドリブぶち込んだほうが面白いと思いますよ」

 

「しかし皆の劇を俺のせいでめちゃくちゃにするわけにも・・・」

 

それならそれで面白いとは思うけどね。

 

「ま、そう気負わずに・・・・気楽にやっていいと思いますよーやばかったらカンペ出すので」

 

ま、カンペ出すときは色々遊ぶけどね。

その時は恐らく真帆やひな辺りもノッてくれそうだし。

 

「昴、空君。そろそろ良い?」

 

お、葵さんから呼ばれたし行くか。

ドアが開かれそこにいたのは十二単に身を包んだ葵さんがいた。

 

「すっごい綺麗じゃないですか」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「そういう服意外と似合うんだな」

 

「んな!?」

 

意外とは余計だと思うけど昴さんの言葉に葵さんは内心喜んでるな。

撮影所に行くと皆既に揃っていた。

 

「にーちゃんとすばるん来た!」

 

「おー。空もおにーちゃんもかっこいい」

 

「すっごい似合ってるよ空君!}

 

「うん、皆もよく似合ってるねー。これなら俺が光源氏役やってもよかったかも」

 

お、智花は昴さんを見てめちゃくちゃ照れてるな。

ガチ惚れか・・・・

そして撮影が始まった。

 

「父上。源氏です。この度元服を迎え、一人前と認められる日が来ました」

 

昴さんの光源氏はちょっと硬いね。もっとリラックスしてほしいなぁ・・・

 

「あい、分かったよー。藤のやつにも報告してきなー」

 

「(かっる!父上軽すぎだろ!というか藤って・・・)分かりました」

 

俺の出番終了。

そして他の人物との撮影も終わり

今は智花と昴さんの出会いのシーン。

 

「ああ、なんと麗しい幼女。・・・この気持ち、まさしく恋」

 

幼女って・・・他に表現の方法は無かったのか?

ま、なんやかんやで撮影も無事終了。皆結構楽しめたみたいでよかった。

 

 

宇治駅まで戻った俺達は人数分のキップを買いに行った羽多野先生を待つ。

 

「えへへ、楽しかったね」

 

「そうだな。あの衣装欲しかったなー。それに真帆の・・・・」

 

あれ?真帆がいない・・・・

俺を辺りを見渡してもその姿が無かった。

やばい。忘れてた・・・あの紙に書いてあったのは・・・

 

「昴さん!ちょっと・・・」

 

「どうしたんだ?」

 

「真帆がいなくなった。さっきまで居たはずだし遠くには行ってないはず」

 

「な・・・・すぐに探しに行こう!葵はみんなを見てて!」

 

俺と昴さんはもと来た道を引き返すとそこに真帆がいた。

 

「よかった・・・見つかった」

 

「いや・・・あんまり良くないですね」

 

「え?・・・・あ」

 

真帆を囲んでる2人組。

サングラスに黒のスーツの2人組・・・

 

「え?黒七味の美味しい店あるの!?」

 

「本当だよ。僕たちで連れてってあげる」

 

真帆・・・あんなあからさまに怪しいやつと楽しそうに・・・

 

「とりあえず行ってきます・・・昴さんは待っててください」

 

「な!?行くなら俺の方が・・・」

 

「昴さんは万が一の保険です。昴さんが居たほうが何かあった場合良い。一応すぐに警察に電話出来るようにしといてください・・・・あ、こっちをチラチラ見といてくださいね」

 

俺は黒服のほうに近づいて・・・

 

「申し訳ありませんが、彼女に何か用事でも?」

 

「ああ・・・・紹介したい店が・・・」

 

「そんな恰好で小学生に?誤解されたらお兄さん達も困るんじゃないですか?ほら、あそこのお兄さんなんか怪しがってチラチラ見てるし・・・」

 

俺は昴さんの方を見て指を差す。

 

「それにこちらも時間なので・・・・ほら、真帆行くよ」

 

俺は真帆の手を引いて歩き出す。

 

「あ・・・・ごめんねおじさんたち!教えてくれてあんがと!」

 

その後は昴さんと合流する。

 

「真帆・・・・前から風雅さんに言われてるだろ。知らない人について行くなって・・・」

 

「あははートウガラシって聞いたら放っておけなくて!」

 

「とにかく真帆が無事でよかったよ・・・」

 

しかしあの紙に信憑性が出てきたな・・・

真帆を狙う理由も分かる。金持ちの娘で今は修学旅行で警戒が薄れるし・・・でも不可解な点がある。

 

「とにかく、1人で行動するなよ。初めての土地なんだから。出来るだけ俺の傍にいてくれ・・・」

 

「はーい」

 

俺達はその後昴さん達と別れてホテルに向かう。

 

「真帆そんな事あったの?」

 

「ちゃんと気をつけなきゃ・・・」

 

「いやーごめんごめん!でもにーちゃんやすばるん来てくれたし大丈夫!」

 

いつでも見れるわけじゃないんだけどな・・・

その後は皆で夕飯を食べて男部屋の連中と風呂に入る。

俺が風呂からあがって皆の部屋にいると着信があった。

 

「(昴さんから?)もしもし?」

 

『あ、空か!よかった・・・』

 

「どうしたんですか?」

 

「真帆のことで・・・」

 

なら、部屋から出るか・・・

 

「友人から電話入ったからちょっと出かけてくる」

 

俺は真帆たちに言い残して部屋を出て非常階段に出る。

ここなら誰も来ないだろう。

 

「で、真帆のことって?」

 

『実は誘拐犯から犯行予告があった。明日KYOTO映画村で真帆を攫うって』

 

「それって・・・・昴さんの携帯に?」

 

『ああ。あいつらが言うにはゲームのつもりらしい・・・とりあえずミホ姉には言ったけど空も警戒しておいてくれ』

 

なんだろう・・・あまりにも不可解すぎる。

 

「分かりました」

 

そして電話を切る。

あまりにもおかしいな。

まず本気で攫うならあんなサングラスに黒のスーツなんて目立つ格好は普通しない。

これが計画的な犯行だとしたらどうやって俺達が京都に行くことを知ったか。日程まで知られてるのはおかしい。

何より一番不可解なのは犯行予告。

ゲームって言ったけど・・・誘拐するなら無駄リスクでしかない。本気で攫う気がない?なら狙いはなんだ?

 

「本気でゲームのつもりか・・・?」

 

考えるのはここまでにしていいか。

狙いが何であれ、真帆は絶対に守る。

その為に・・・・寝不足を解消しなきゃ・・・

 

「ただいまー」

 

俺は真帆達の部屋に行く。

 

「おー。おかえりそら」

 

「おー。悪いが俺ここで寝るから」

 

「まぁ、私達はいいけど・・・バレたら大変よ?」

 

確かに紗季の言う通りだ。

 

「その時は・・・・その時考えるよ」

 

戻って来る前に竹中には「戻らないから見回りの教師を何とか誤魔化せ」ってひなの浴衣写真を添付してメールしたから問題ないだろう。

 

「じゃあにーちゃんかもーん!」

 

「おー。かもーん」

 

ひなと真帆の間か。

俺は二人の間に入って横になる。

 

「空も子供ねぇ・・・・真帆がいないとまともに寝られないって」

 

「なんかもう、習慣になっちゃってさ・・・なんとか改善しないとヤバイのは理解してるけど・・・」

 

「大丈夫だって!にーちゃんとはずっと一緒にいるんだからさ!」

 

ずっと一緒に居る為にも絶対守らないとな・・・

俺はそのまま真帆やひなを抱いて寝た。

 

 

 

KYOTO映画村。

時代劇や特撮など、大きく扱ったテーマパークで敷地内には平屋建てのセットが軒並み連なっている。それが迷路のように入り組んでるので誘拐には適した場所ともいえる。

 

「ここお化け屋敷になってるのね・・・真帆入ってみる?」

 

「ヨユーすぎて入るまでもないね!」

 

紗季が真帆をからかっているが、今はそんなことを気にしてる余裕はない。

俺は周辺を警戒しながら皆と周る。

 

「見て見て!この後ヒーローショーやるって!お化け屋敷よりもこっちだろ!」

 

ヒーローショー?

 

「そんなお子様が見るようなもの・・・」

 

「ごめん紗季・・・私も見たいかな?えへへ・・・」

 

「おー。ひなもひなもー」

 

智花もこれを見てるのは少し意外だな・・・

 

「いいんじゃないか?たまにはこういうのも」

 

「私も・・・皆が見たいならいいよ」

 

俺らも賛成すると紗季が折れたのか・・・

 

「ちょうど良い時間にやるみたいだし・・・しょうがないから付き合ってあげるわよ」

 

そして会場にやってきてヒーローショーを見る。

 

「これは・・・・周り園児ばっかだな」

 

「あはは・・・・少し恥ずかしいね」

 

俺は周りを見渡すと、昴さんや葵さんもいた。

結構人がいるけど周りが周りだし分かりやすいな。

一番見入ってるのが智花なのは意外だけど。

そして物語が佳境に入る。

今回敵さんは秘策があるようで・・・なんと客席から人質を取ろうとした。

 

「ほぇ・・・あたし?」

 

・・・・え?これって偶然か?

たまたま真帆が選ばれただけか?

そして真帆がステージに上がる。

そうして人質役として上がるも敵にステージ脇に連れて行かれた。

 

『ふははは!あの少女を返してほしかったら変身しないことだな!』

『卑怯な!』

『代わりに・・・・コイツで勝負だ!』

 

出てきたのはバスケットリングだった。

 

「(確定だな・・・)」

 

この作品はバスケなんて関係ない。

なのに今回だけバスケが出てくるということは・・・

 

『私達はバスケなんてしたことがないわ!なら・・・この会場の皆に助けてもらうしかない!』

 

『そうね!使うリングは一般用だから・・・出来れば中学生以上の2人組でお願い!』

 

これは昴さんを誘ってるな。

分かりやすい意図だ。鈍感な昴さんでも気づくだろうし・・・

俺は真帆を追おう。

 

「ちょっと出かけてくる」

 

「え・・・うん」

 

俺は愛莉に言ってこの場を離れる。

 

 

俺は観客席から舞台裏に周って奥に行く。

一番奥に到達した先に真帆がみえる。

 

「真帆!!」

 

奥にあるプレハブ小屋に連れて行かれそうになった真帆を見つける。

顔すら隠れてる全身黒づくめの人間に手を引かれながら。

 

「にーちゃん?」

 

何でここに・・・?って顔だな。相変わらずで呑気な妹様だ。

 

「はぁ・・・・ケガがなさそうで安心した」

 

まずは真帆から引きはがすか。

 

『・・・・三沢空か。長谷川昴はどうした?』

 

ボイスチェンジャーか?

 

「昴さんは今頃バスケを頑張ってるよ・・・・俺はひとまず真帆の確保をしにね!」

 

そのまま相手に近づいて右ハイキックをいれる。

 

『チッ・・!』

 

怯んだ隙に相手の懐に入って腹に蹴りを入れて真帆から引きはがす。

 

「にーちゃん・・・・」

 

「真帆・・・・俺の後ろから離れないようにな」

 

黒づくめが俺に声をかける。

 

『三沢空・・・お前は何故その娘を助ける?』

 

は?コイツ何言って・・・

 

「何で・・・家族を守るのに理由が必要か?」

 

『本当の家族じゃないのにか?』

 

コイツ・・・・そんな事まで・・・・

 

『調べさせてもらった。出逢って1年程度。家族になって半年そこそこ・・・・その程度の付き合いでお前が庇う価値があるか?バスケを一生出来ない身体にされたくなかったらその娘を寄こせ・・・・』

 

要はバスケか真帆ってことか、迷うまでもない。

 

「悪いけど俺は真帆を選ぶよ。バスケが一生出来ない?それがどうした・・・そんなものよりも大事なものがあるんだよ!」

 

俺は相手に拳をぶつけるが防がれてカウンターをくらう。

 

「にーちゃん!」

 

真帆がかけよってくるが・・・

 

「来るな!真帆はそこにいろ!」

 

最悪俺がやられても昴さんが来てくれる。

フェイントを入れて近づきボディブローを喰らわせる。

 

『クッ!・・・・本当はその子迷惑してるんじゃないのか?拾ってみたけど邪魔だなぁ捨てたいなぁって思ってるんじゃないか?家族だって思ってるのはお前だけじゃないのか?調べではその子って飽きっぽいんだろ?』

 

「・・・・その程度で動揺すると思ったか?」

 

『なに?』

 

「こんなに真っ直ぐな子がそんな事考えてたらすぐに分かるに決まってんだろ!隠し事とか下手だぞこの子!」

 

俺は真帆に向かって指を差す。

 

「そ、そんなことねーし!」

 

『・・・・お前自身はその子のことどう思ってるんだ?』

 

「好きだよ・・・・・・だからお前には・・・・いや、誰にも渡さないし渡したくない」

 

俺は自分が出せる全力で近づく。

 

『な!?(速すぎます!)』

 

「今までの速さになれたか?これが全力だ!!」

 

黒づくめの顔を思いっきりぶん殴る。

 

『グァ・・・・』

 

そのまま黒づくめは倒れた。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ」

 

俺はその場で尻もちをついた。

 

「おい凄い音したぞ!」

 

こっちに向かって美星先生が近づく。

 

「あー先生。悪いけどあれロープで縛ってくださいな」

 

俺は黒づくめに指を差す。

 

「あ、ああ分かった」

 

よかった。美星先生が来てくれて・・・

 

「にーちゃん!」

 

真帆怪我もない・・・よかった。本当によかった。

こちらに掛けてくる真帆に俺は抱きついた。

 

「よかった・・・」

 

「よくない!にーちゃん怪我してる・・・」

 

カウンター喰らったときか。

 

「大丈夫・・・・真帆が居てくれるならどんな怪我でもすぐ治る」

 

「そ、そうかなぁ・・・」

 

美星先生が縛ったやつに腰を掛ける。

 

「しかしこれが昴の言っていたやつかぁ・・・・あ、空!危険なことした罰で後で反省文な!」

 

「分かりました・・・・さっきまで頭に血が昇っていたので冷静じゃなくなってたんですよ。ま、今は冷静になって色々理解しましたけどね」

 

「は?何が分かったんだ?」

 

なんで気づかなかったんだろうな。

この不可解な誘拐劇。

ただの茶番じゃないか・・・

 

「この誘拐劇が茶番だってことですよ・・・・もう起きてんだろ?」

 

俺は美星先生に椅子にされてる黒づくめに声をかける。

 

『・・・・気づいたんですね』

 

「ボイスチェンジャー切っていいぞ。」

 

主犯はあの人しかいないよなぁ・・・

そう考えてると向こうから昴さんと葵さんがやってくる。

 

「遅いぞ昴、葵」

 

「ミホ姉!?なんでここに・・・」

 

「美星ちゃん・・・その人は?」

 

「ん?ああ、空がぶっ飛ばしてあたしが縄で結んだ。それにしても、嘘じゃなかったんだな。一応辺りを見回っていたときに空がコイツをぶん殴っててさー。ま、誘拐阻止出来てよかったな」

 

「よかった・・・あ、警察には?」

 

「まだ・・・というか、必要ないです」

 

「え?必要ない?空・・・どういう事?」

 

「それは・・・「私が説明します」」

 

ボイスチェンジャー切ったんだな。

俺はサングラスと帽子を取った。

 

「なにやってんの?・・・・やんばる」

 

美星先生がやんばるからどける。

 

「説明してくれるんだろ?」

 

俺はやんばるからの説明を待っていると

 

「説明はぼくからしよう」

 

ま、主犯はこの人だよな。

 

「納得のいく説明じゃなかったら殴りますよ・・・・・父さん」

 

俺は昴さんや葵さんにも分かりやすくこの人が誰か教える為にあえて父さんと言ったが・・・

 

「空が!空が私の事初めて父さんと・・・!」

 

言うタイミングをミスってしまった。

 

「空君・・・・あの人って」

 

葵さんが聞いてくる。

 

「俺と真帆の父さんで、三沢風雅さん」

 

未だに泣いてる風雅さんを宥めてまずは話しを聞く為に愛莉たちと合流してフードコートに行く。

 

 

「ひとまず初めまして、まほまほと空の父親、三沢風雅です」

 

そして風雅さんから説明を受けた。

 

「緊急時対策訓練?・・・・そんなものの為に修学旅行ぶち壊してくれたのか」

 

緊急時対策訓練とは、真帆を誘拐から守る為のシミュレーションらしい。

年に数回やっているが今年はやんばるが大きなミスをしたとか・・・

しかし修学旅行中にやらなくていいだろうが

俺は風雅さんに軽く蹴りを何発かいれる。

 

「いたっ!痛い!・・・空蹴らないで!ホントはバレないようにするはずだったんだよ」

 

「ああ、それがやんばるのミスか」

 

やんばるが落とした紙も誘拐阻止ルートってわけか。

昨日の声掛け事案についても訓練というわけね。

 

「訓練なのは理解しましたが・・・俺への電話は一体・・・」

 

「あれは君を試したんだ。まほまほと空が信頼する君のことをね・・・」

 

ん?つまり・・・

 

「おとーさんひどい!あたしとにーちゃんの言うこと信じられなかったの!」

 

「いや、そういうわけじゃなくて・・・・ほら、百聞は一見に如かずと言うだろ?なんにせよ、これからも2人を預けるに相応しいと思うんだ。今回の件で深く迷惑をかけたから・・・良ければ何か要望があったら言ってほしい。ある程度なら何でも叶えられる」

 

「何でもって言われても・・・・あ!なら・・・」

 

ん?昴さんは何を思いついたんだ?

 

「・・・ふむふむ、何とかしてみようじゃないか!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「任せなさい」

 

そしてその後風雅さんとやんばるは帰って行った。

 

「昴さん結局何をお願いしたんですか?」

 

「秘密かな。でも皆にとって悪い話じゃないのは確かだよ」

 

皆に関係することか・・・

後は昴さんと葵さんは一足先に帰った。

俺達も午後になって京都から離れた。

 

 

 

京都から帰って自宅に戻った俺達はいつもお世話になってる給仕の方々にお礼の言葉とお土産を渡した。

 

「今の時間なら部屋で待機してるし・・・・やんばるの所に行って来るな」

 

「ん?にーちゃんが行くならあたしも」

 

「いや、話したいことがあるから・・・・先に風呂入ってきな。終わったら部屋行くから待ってて」

 

「うん。分かった」

 

そして俺はやんばるの部屋に行ってノックする。

 

「はい?」

 

「俺。空」

 

そしてガチャって音と共に扉が開かれる。

 

「どうしました?」

 

・・・・やっぱり、頬腫れてたんだな。

やんばるの顔にはガーゼが貼ってあった。

 

「中入っていい?」

 

「ええ、どうぞ」

 

そして俺はやんばるの部屋に入って土下座する。

 

「ごめん!知らなかったとはいえ・・・顔殴っちゃって・・・」

 

「空様・・・顔を上げてください。私が旦那様に叱られちゃいます」

 

「だって・・・もし傷が残っちゃったら・・・」

 

「大丈夫ですよ。口の中を切ったのと頬が少し腫れただけなので・・・」

 

「でも・・・俺にとってはやんばるも家族だし・・・大事な家族を殴るなんて・・・」

 

すると、やんばるが俺の事を抱きしめた。

 

「空様・・・・私を家族って言ってくれてありがとうございます。でも、本当に良いのです。だって・・・貴方は真帆様を守る為に拳を握り、大好きなバスケを捨てる覚悟を持って挑んできました。こんなに素晴らしい方の使用人になれて私は本当に嬉しいんですよ」

 

「やんばる・・・・・ありがとう」

 

俺はやんばるの部屋から出て真帆の部屋に向かう。

 

「まほー」

 

「あ、にーちゃん・・・」

 

俺はそのまま真帆のベットに座る、

 

「にーちゃん・・・・あの時、私の事好きって言ったよね?ほんと?」

 

「ああ、嫌いなわけないじゃん」

 

「そうだよね・・・それって兄妹として?それとも・・・」

 

「・・・・兄妹としてなのは当然。真帆が言いたいのって恋愛的な意味?」

 

「・・・うん・・・チビりぼんがにーちゃんにキスしたことあったじゃん?その時胸がボワァってしたの。なんだろうなぁ・・・って思ったんだけど・・・」

 

ああ、そういうことか・・・

 

「今日やっと分かったよ。私はにーちゃんが・・・空が好き。大好き」

 

真帆・・・・

 

「俺は・・・・・今はまだ兄妹でいたい・・・」

 

「今は・・・・・ね。じゃあ約束してくれる?」

 

「約束って?」

 

「いつか・・・絶対に返事して・・・兄妹とかそういうの抜きにして・・・空の気持ちを」

 

真帆のほうを見ると、今まで見たことないくらいの・・・真剣な真帆の顔が見える。

 

「分かった。約束する・・・いつになるか分からないけど、絶対に」

 

「これでチビりぼんと同じスタートラインかなぁ・・・・あ」

 

「どうした・・・ング!」

 

俺は真帆にキスをされた。

 

「これでチビりぼんとの差もないよね?私・・・・絶対諦めないから!」

 

「・・・・」

 

「じゃあにーちゃん!今日はもう寝ようぜい!」

 

いつもの調子に戻った真帆が電気を消してベットに入る。

 

「・・・・告白した相手と一緒に寝るってどう思う?」

 

「今までは何でもなかったけど、すごくどきどきして恥ずかしい・・・・」

 

暗くてよく見えないけど顔赤いのかな?

 

「慣れるよ。俺も最初どきどきしたけど慣れたし」

 

「そっかー。その時ゆーわくしてればよかったかな?」

 

「今でもどうぞ」

 

「・・・恥ずかしいから慣れてきたらで」

 

俺は卑怯だな。

今の状態が居心地良いから返事を先延ばしにして・・・

ごめんな真帆・・・・卒業するまでには絶対答えを出すから・・・

 

 




まほまほ可愛い!!!!


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