Fate/STEINS;Order (電磁パルス6号)
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始まりと終わりのプロローグ
超対称性のパラダイムシフト


──忘れないで──

─あなたは、どの世界線にいても1人じゃない─

──わたしがいる──




 

 

 

塩基配置 ヒトゲノムと確認

霊器属性 善性 中立と確認

 

ようこそ、ここは人理継続保証機関 カルデア

 

指紋認証 声帯認証 遺伝子認証 クリア

魔術回路の測定 完了しました

 

登録名と一致します。貴方を霊長類の一員である事を認めます。

 

 

 

 

 

「フォウ…?キュウ…キュウ!? 」

 

…なんだ?脳がグラグラと揺さぶられたように頭がひどく痛いし気持ち悪く気分が悪い…。そのせいだからかリスなのか猫なのかよくわからない生物の幻聴が聞こえてくる。

 

「フォフォフォッ!フー、フォーウ! 」

 

…ん?いま、頬を舐められたような…。

それに体がバキバキに凝っているようだ。

はて?ラボのソファーはこんなにも寝心地が

悪かっただろうか?まるで布団も無しで床にでも

寝ているような…。

 

「……………あの。朝でも夜でもありませんから、

起きてください、先輩 」

んん??先輩??我がラボにこの俺、狂気のマァァっっドサイエンティストこと鳳凰院凶真を先輩などと呼ぶラボメンなどいないはずだが…?ひどい車酔いにも似た倦怠感をなんとか抑えて瞳を開いてみると…

 

「だっ、誰だ貴様は!? わ、我がラボにいっ、いったいどうやってやって侵入した!!?? 」

 

「? いきなり難しい質問で、返答に困ります。名乗るほどのものではない…とか?それから我がラボといいますが、その言葉が所長の耳に入ると何時間お説教されるか分かりませんので、あまり口にしない方が賢明ですよ、先輩 」

 

「フォウフォウッ!ンキュッ!!」

 

 

白衣を着た眼鏡のよく似合う少女と聞いたことのないようなやかましい鳴き声の犬?猫?リス?がいた。

 

いや待て!そんなことはどうでもいい!いやよくもない訳ではないがそんなことよりも!

 

ここはどこだ?窓もない広く長い近未来チックなデザインの廊下?いやいや待て待て!

 

今自分の格好を確認してみる。うむ、いつもの白衣を着ていて、特に変わった様子はないな。

 

次に眠っていた前のことを思い出そうとしてみる。俺は昨日助手とまゆり、ダル、ルカ子、フェイリス指圧師、ミスターブラウンやシスターブラウン達と助手の来日パーティをしていたはず…。ダルの注文したピザやルカ子の作ったカレーを食べ…ラボメン対抗雷ネット大会フェイリスに惜しくも(ここ重要)敗北してしまい…その間に助手が残ったピザとカレー+αで生成してしまった味覚破壊暗黒物質ダークマターをダルと押し付けあって…まっ、まぁ涙目になった助手が可哀想になったとかそんなものではなく、ダークマターの犠牲になった食材が勿体無いから仕方なく食べ…そして口にした途端意識が遠のいて…そして…

 

「……思い出せない……?」

 

「いえ、名前はあるんです、ちゃんと 。でもあまり口にする機会が無かったので…印象的な自己紹介ができないと言いますか、なんといいますか…。どうしましたか、先輩?顔色が優れない様ですが、カルデアの廊下で寝ていて、風邪をひいてしまったのではないんですか?」

 

「カルデア?何のことだ、俺はそんなものは知らないぞ!それにさっきから気になっていたのだが、貴様は何者なんだ?それからなぜ俺のことを先輩と呼ぶ?俺はまだ大学1年だぞ!」

 

「いっ、一度にたくさん質問されても困ります! 一つずつ答えますから落ち着いて下さい、先輩!」

 

メガネをかけた自称後輩もこの状況に困惑しているようだ。確かにいきなり聞くには質問が多すぎたがそれでも俺にとってみれば見知らぬ場所で、見ず知らずの少女や説明しづらい猫っぽい生物に囲まれているのだ!聞きたいこともそれなりに多くはなる!しかし…ここはメガネの少女の言う通り、少し落ちついて話しをしなければ会話もままならない。

 

「す、すまん。俺も冷静じゃなかった、謝ろう…では一つずつ質問させてくれ。まず貴様…いや、君は何者だ?」

 

「マシュです。マシュ・キリエライト。カルデアに所属している、マスター候補の一人です 」

 

「俺は狂気のマッドサイエンティスト!鳳凰院凶──」

 

「偽名ですよね?先輩、本名を教えてください 」

 

「岡部倫太郎だ。日本電機大学一年、よろしく… 」

 

くっ…冷静になったらいつも通りのテンションで会話してしまったな。流石に今この場では鳳凰院凶真はいったん封印だ。自分の置かれている立場がまだ全くわからん状況であるからな。

 

「はい、私のことはマシュと呼んでください。それからこちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に闊歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導され、お休み中の先輩を発見したんです 」

 

「フォフォフォウ…ンキュ、フォーウ!」

 

フォウとやらが俺の方を向いて一声鳴くと、廊下の奥の方へ走り去っていった。ふむ、見たことのない生物だった。マッドサイエンティストの血が疼く!いや待て岡部倫太郎、鳳凰院凶真は封印だとさっき決めたばかりではないか!

 

「…またどこかへ行ってしまいました。あのように特に法則性もなく散歩しています 」

「不思議な生物なのだな… 」

 

「はい。私以外にはあまり近寄らないのですが、先輩は気に入られたようです。おめでとうごさいます。カルデアで二人目のフォウさんのお世話係の誕生です 」

 

「あまり嬉しくもないんだがな。それでは二つ目の質問だ。ここ…カルデアとはいったい何なのだ?俺にはここにいる理由に全く心当たりがないのだが 」

 

「先輩、本当に分からないのですか?カルデアにいるのなら、ここで何らかの役職があるはずなのなのですが…先輩が嘘を言っているようには見えないですね 」

 

役職?ここは俺の通っている大学で、そこの研究棟なのか?いや、そんなはずはないか。あの大学はこんなに綺麗な棟などないはずだからな…。

 

ではカルデアとはいったいなんなんだ、とマシュに質問を続けようとした時…

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。ダメだぞ、断りもなしにで移動するのはよくないと… おっと、先客がいたんだな。君は…そうか、今日から配属された新人さんだね 」

 

シルクハット帽の長髪の男が声をかけてきた。配属…ここはどこかの研究院なのか?

 

「私はレフ・ライナール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。君の名は…?」

 

「鳳──あーいや、岡部倫太郎です 」

 

「ふむ、倫太郎君と。招集された48人の適正者、その最後の一人というワケか。ようこそカルデアへ。歓迎するよ。一般公募のようだけど、訓練期間はどれ程だい? 一年?半年?それとも最短の三ヶ月?」

 

「え?あっいえ、訓練は…していません 」

 

「ほう?ということは全くの素人なのかい?ああ….そういえば数合わせに採用した一般枠があるんだっけ。君はその一人だったのか。 申し訳ない。配慮に欠けた質問だった 」

 

訓練?採用?ますますわからん。…が、今は話を合わせておこう。このレフとかいう男、気さくな笑顔を浮かべているが、どうにも気に食わん…気持ち悪いのが治りきってないからイライラしているのか?俺は…?

 

「けど一般枠だからって悲観しないでほしい。今回のミッションには君達全員が必要なんだ 」

 

「 ? ミッションですか? 」

 

「む?聞いていないのかい?おかしいな、事前に説明してもらっているはずだが… 」

 

「あの!もしかしたら先輩はカルデア入館時にシュミレートを受けたのではないでしょうか? 」

 

「なるほど、道理で少し寝ぼけた反応をしている訳だね。霊子ダイブはあまり慣れていないと中々脳にくるからね 」

 

「シュミレート後、先輩は意識がはっきりせずにここまで歩いてきて、倒れてしまったのでしょう 」

 

なんだか話が勝手に進んでいるようだが、今度は霊子ダイブなどという言葉が…。助手が聞いたら非科学的だのと言って興味津々で実験漬けに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…非 科 学 的 …? まさか…そんなはずは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マシュ…さらに質問ができてしまった…。 いや…!さっきの質問よりも重大な質問だ…!」

 

「 ? なんです──ッ! 先輩っ!どこか具合が悪いのですか!? 顔色が真っ青ですよっ、先輩! 」

 

「──いいからっ!答えてくれ!今は……今は西暦何年だ!!答えてくれっ!!! 」

 

「せッ、西暦ですか? 先輩やっぱり体調が優れていないんですか? ─────今年は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────2015年ですよ?───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界変動率 ??.597312%

 

 

 

 




短めで申し訳ありません。こんにちは、電磁パルス6号と申します。最近シュタゲにハマったので配信時からプレイしているFGOとのクロスオーバーSSを投稿しました。では、また近いうちに。エル・プサイ・コングルゥ


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平行上のホメオスタシス

──世界線が変わっても、たった一人──

──岡部が忘れなければ私はそこにいる──

──だから──




───2015年ですよ?───

 

マシュは今、確かに言った。今この時代は2015年だとはっきりと。しかし俺は、その言葉をそのまま理解できずに、ただ目の前が真っ白になってしまい、立つことを保つのに精一杯だった。

 

「やはり先輩は休息をとるべきです!これからマスター候補生の説明会がありますが、今は先輩の体調を優先すべきです!」

 

「しかし、マシュも私も説明会に出席しなければならないからね…倫太郎君はともかくAチームであるマシュは欠席する訳にも…」

 

「ですがっ…先輩をこのまま放って置くことは私にはできません!」

 

マシュとレフが何か揉めているようだが、今はどうでもいい!そんなことよりも…!

 

「…マシュ!…マシュっ!──」

 

「先輩っ?どうしましたか?どこか痛いですかっ?わ、私は医療にそこまで詳しいくは───」

 

「第二次世界大戦後に第三次世───」

 

 

 

「───倫太郎君、少し、落ち着きたまえ。」

 

 

 

──声が出なくなった。なぜだ、突然声帯が全く機能しなくなったような感覚…。マシュの後ろ隣から…気の良さそうな笑顔を浮かべていたレフ・ライナール。あいつが今、少し慌てた様子で俺に駆け寄り肩に手を置いた。だが困り顔の顔の下から…あの時のシスターブラウン…天王寺綯のような真逆の言葉が聞こえてきた───。

 

 

 

 

 

『────それ以上口にすると、殺す─────』

 

 

 

 

 

 

体が動かない──。…天王寺萎の時とは全く違う。あの時は親を殺されたと思い込み復讐鬼となったシスターブラウンの底知れない狂気と目の前で殺された桐生萌郁の死体で恐怖に身が動かなかったが、この感覚は違う…何か、見えないが実在する縄で縛られているような感覚…、さっきの言葉も幻聴ではない!頭の中に直接囁かれたような…これは、まるで魔法でもかけられたかのようではないか…ッ!

 

「マシュ、どうやら倫太郎君は初めての霊子ダイブでひどく疲れて夢遊状態が続いているようだ」

 

「はいっ、やはり先輩はすぐに医務室でお休みになるべきです!」

 

「しかし、さっきも言った通り、私もマシュも欠席するという訳にはいかない。ふむ…医務室はここからけっこう離れているね」

 

──レフは何事も無いかのようにマシュと話しているが…クソっ!いったいどうなっているんだッ!

 

「そうだ、この廊下を少し歩いたところにマスター候補達の個室がある。マシュ、倫太郎君を個室まで送ってあげなさい。ここからなら説明会にも十分に間に合うだろう」

 

「先輩にはそれが最適解ですね。先輩っ、すぐに案内します!」

 

「では私は先に中央管制室へ行っているよ。倫太郎君はファーストミッションには後から開始すると、マリーに伝えなければならないからね」

 

──ッ!瞬間、俺の体を縛っていた見えない縄が解けた感覚がした。声も…よし、特に問題も無く発声できそうだ…。しかし…

 

「──すみません、レフ教授。俺の為にわざわざ手間をかけさせてしまって…」

 

「礼には及ばないさ。君は本当に運がいいからね」

 

「ここにレフ教授がいて助かりました…マシュもありがとな」

 

「なんの。先輩の頼みごとなら、昼食をおごる程度までなら承りますとも」

 

「──いやいや、たまたまさ。私は運命の出会いとか、宿命のライバルとかそういう数奇を重要視しているんだ──」

 

 

 

 

 

レフは中央管制室へ。俺とマシュはマスター候補達の個室へそれぞれ向かった。さっきの金縛りは間違いなくレフが何かしたのだろう…だがどうやったのか方法が全く考えつかない。いや、それよりもあの人間ではないような冷酷な殺気──。未だにカルデアやら霊子ダイブやら訳がわからん状況に俺がいるには変わらないが、まず間違いないのは、レフは危険な存在だということ。ここからはなるべくレフから距離を置かなくてはならない。

 

「ここが先輩の個室になります。本当に一人で大丈夫ですか?」

 

「うむ、なんの問題もない。もともと、今ではそれほど倦怠感や頭痛も治まってきたところだからな」

 

「それは何よりです。ですが念のためにもちゃんと休んでいてください。それでは、私は急いで説明会に参加してくるので、失礼します。先輩?無理をしてはダメですからね?」

 

ふむふむ…なるほど。俺の見立てによるとマシュは中々心配性で世話焼きな性格のようだ。さっきのレフナール(命名、特に意味はない)とは大違いだな。

 

───クイっ、クイっ───

 

ん?ズボンの裾が引っ張られる感触にふと見下ろす。そこには俺のズボンの裾を噛んで、必死に引っ張っている珍種猫がいた。…ほほう、ラボでは小動物を飼ったことはなかったが、なかなか悪くないものではないかッ!

 

「フォウさんが先輩を見てくれるようですね。これなら私も安心です」

 

「フ…世話係が逆に世話にされるとはな…」

 

「ふふ…それでは、私はこれで。またお会いしましょう、先輩」

 

最後にマシュは微笑んで中央管制室へ去っていった。本当にいい娘だ…。──助手もあれくらい素直で可愛げがあればなぁ…。

 

「フォフォフォッ!!フォウフォォウ!!」

 

「ぐはッ!なんだ珍種猫!いきなり腹にタックルしてきおってぇ!」

 

このフォウとやら…!なんとも気性が荒い猫(?)なんだ!さっきはズボンの裾を必死に引っ張っている時はちょっと可愛い奴だなと思ったが、前言撤回だ!なんとも生意気なぁ!!!

 

「ンいぃだろぉぉ!人間様──いィィやっ!この狂気のマァッッドサイエンティスト!鳳凰院凶真に逆らうとどうなるか思い知らせてやろォォ!」

 

「フォウッ!ンキュッ!フォフォフォッ!!」

 

おっと、生意気な猫のせいでつい封印していた鳳凰院凶真をうっかり名乗ってしまったが、まあ周りに人は見当たらないし問題もないか…。

そォォれ!捕まえた!

 

「ンキュっ!?フォフォフォッ!フォウッ!」

 

ようやく捕まえた珍種猫を抱え上げる。フゥーハハハっ!手こずらせおって!…おや?…ふむ…抱え上げられてなお暴れる珍種猫を観察していて分かったが…

 

 

「────メスか…。」

 

「ドゥフォォォォォォォォォウ!!?!?!!」

 

 

 

 

 

 

(──なんだか廊下が騒がしいな…まさか僕がサボっているのがバレたとかじゃないだろうな──)

 

 

 

 

 

 

 




エル・プサイ・コングルゥ(挨拶) 一話よりも短くなってしまいました。早くオカリンの英霊召喚までいきたいです…。おのれテストぉ…。


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変革のイグナイト


──なんで北欧神話なのよ?──




まったく…珍種猫の相手をしていたら余計に疲れてしまった。これでは何のために個室へ来たのかわからなくなってしまいそうだ。とっ捕まえてなお暴れるフォウとやらの首根っこを掴んで個室へ入る。というかこいつ、生殖器の有無でメスであると確認した途端、俺の手を噛むは顔をひっかくは、やたらと「フォフォフォウ!」と吠えまくったりはで散々な目にあった…。猫(?)畜生の分際でなんとも生意気な…!

 

「はーい入ってまー──って、うえええええ!?誰だキミは!?ここは空き部屋だぞ、ボクのさぼり場だぞ!?誰のことわりがあって入ってくるんだい!」

 

「貴様こそ何者だ。俺はさっきここをマシュに案内されたのだが…?」

 

空き部屋であるはずの俺の部屋には、白衣を着たポニーテールの男のがベットに座ってくつろいでいた。ふむ…しかしこの男、初対面のはずなのに隠し切れていないヘタレでチキンな匂いがこの上なく漂ってくるのはなぜだろうか…。と、俺は椅子に腰掛け膝の上にフォウを乗せた。また暴れておりるだろうと思っていたが、膝の上から動こうとしない。ふん、まぁ勝手にすればいいさ。別にこいつの毛並みが膝に心地いいとかそんなことは思っていないからな!

 

「何者って、どこからどう見ても健全な、真面目に働くお医者さんじゃないかな!というか、キミこそ誰なんだい?見たところ君も医療部門のメンバーのようだけど、知らない顔だし…」

 

そういえば俺はいつも通り白衣を着ている。確かにこの格好だと医者に間違えられても仕方ないだろう。

 

「いや、俺は医療部門とやらには所属していない。ここにいるのは、まぁ成り行きといったところでだな。マスター候補というものなのだが、体調が優れなくてな、個室で休むことにした」

 

「優れないって…けっこう元気そうに見えるけどな、キミ…。まぁいいさ!予期せぬ出会いだったけど、改めて自己紹介をしよう。ボクは医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。何故かみんなからDr.ロマンと略されていてね。君も遠慮なくロマンと呼んでくれ」

 

「俺は岡部倫太郎。カルデアには来たばかりでな、不慣れなところもあるが、よろしく頼む」

 

というかカルデアのことは全く分からないのだがな。ロマンは医療部門のトップだということだし、頃合いを見てさりげなーくカルデアのことを聞いてみるか。

 

「待て、仮にも医療部門のトップがこんなところでサボっていていいのか?所長からの説明会とやらには出なくていいのか?」

 

「ははは、確かにその通りなんだけどね。ボクはその所長に叱られて待機中だったんだ。『ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!』って追い出されて、仕方なくここで拗ねていたんだ」

 

なんとも理不尽な…と思ったがどことなくふわふわしているロマンがいると、何とも締まらないだろうな。ロマン、あまり所長からいい印象を受けてないのだろうか…。

 

「でもそんな時にキミが来てくれた。地獄に仏。ぼっちにメル友とはこのコトさ。所在ない同士、ここでのんびりと世間話でもして交友を深めようじゃないか!」

 

「まぁいいだろう。そもそもここは俺の部屋らしいしな」

 

「うん、つまりボクは友人の部屋に遊びに来たって事だ!ヤッホゥ、新しい友達が出来たぞぅ!」

 

ふむふむ、ぼっちとはな。ロマンもなかなかの苦労人と見える。別に俺もラボメン以外に親しい者がほとんどいないから同情しているわけではない。断じて、そんなことは、無い。

 

「ところでキミの膝の上にいるの、もしかして噂の怪生物?うわぁ、初めて見た!」

 

「おや?フォウは昔からカルデアにいたのではないのか?」

 

「あぁ、一週間くらい前からどこからともなく侵入してきたとマシュから聞いていたんだけど、ほんとにいたんだね…。どれ、ちょっと手なづけてみるか」

 

そういうとロマンはベット立ち、こちらの方へ歩いてフォウが『ここは私の場所なのだぜ☆(ドヤ顔)』と言いたげな顔で鎮座している俺の膝の前でしゃがみこんで…

 

「はいお手。うまく出来たらお菓子をあげるぞ?」

 

とロマンは右手を差し出した。さてフォウは…

 

「……………………フゥ」

 

とこれ以上ないというくらい見事に鼻で笑った。こいつ、やっぱり生意気だ!全然可愛くない!そもそも反応が動物っぽくない!

 

「あ、あれ?今、すごく哀れなものを見るような目で無視されたような…」

 

「とてもメスには見えんな。というかロマン、猫にお手は無いだろう、お手は」

 

「あれ?この子、猫なのかい?ボクは犬だと思っていたんだけど…まあいいや…」

 

猫(?)にまで軽んじられるとはロマンという男。なんとも哀愁漂う顔をして手を引っ込めた。

 

「すこし喉が渇いてきたから何か持ってくるよ。倫太郎君、キミにも何か持ってくるよ。何がいいかな?ついでにフォウさんにも持ってこよう」

 

「フ…では俺は至高の知的飲料、ドクペを要求するとしよう」

 

「えぇーっ!?キミあんな不味いものよく飲めるね!いや、ここにも一応あるにはあるけどボクの知る限りだと、知り合いの天才変人しか飲まないよ、アレ!?」

 

「ほほう、このよくわからん所にもドクトルペッパリアンがいるのか。そいつとはいい飲み仲間になりそうだ」

 

「いやぁボクとしてはあまり関わりを持たない方が…まあいいか、それじゃついでにフォウさんにもミルクか何かでも持ってくるよ」

 

「待〜て、ロマンよ。こいつにもドクペを持ってきてくれ、散々コケにしてくれたからな、このバカ猫にも至高の知的飲料を飲ませて、少しでも知能を上げてやるとしよう」

 

「キミって実はとんでもなくやっかいな性格をしているんじゃないかな…とりあえず持ってくるとするよ」

 

えぇーと財布はどこに置いたかなぁと、ロマンが個室の中で財布を探している。むむ…言ってみては何だがやはり猫(?)にドクペはマズイだろうかとフォウを見てみると、『はいはいワロスワロス』などと言いたげにニヤけなが「フォウフォウ(笑)」と鳴いていた。この猫殴りたい…!おのれ…少し可哀想かなと思ったが、こうなったらコップ一杯飲みきるまで口に流し込んでやろか…!

 

ピリリリリ!ピリリリリ!

 

「あれ、僕に電話だ。まったく人が友人とせっかくコーヒータイムを楽しもうしているのに…」

 

とぶつくさ言いながらロマンが懐から携帯電話を取り出す。あれは…プッシュボタンが無いではないかと疑問に思ったが、マシュに聞いた通り、ここは2015年の世界なのだと思い出した。

 

『ロマニ、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?Aチームの状態は万全なのだが、Bチーム以下、慣れていない者に若干の変調が見られる。これは不安からくるものだろうな。コフィンの中はコックピット同然なのだからな』

 

音が漏れてきたがこの声は…さっきの…。

 

「やあレフ。それは気の毒だ。ちょっと麻酔をかけに行こうか?」

 

『ああ、急いでくれ。いま医務室だろ?そこから二分で到着できるはずだ』

 

「あ、あぁ!分かったよレフ、うんっ、すぐに向かうさ!」

 

ガチャ…プー、プー、プー…

 

「どうするのだ職務怠慢ドクター。俺の目が確かならここは医務室ではないはずだが」

 

「…あわわ…それは言わないで欲しい…。ここからじゃどうあっても五分はかかるぞ…」

 

「フォフォ〜ウ…」

 

見るからに動揺しているロマンにフォウが白い目で見ている。珍しいなフォウ、俺も同じ気持ちだ。

 

「ま、少しくらいの遅刻は許されるよね。Aチームは問題ないようだし」

 

こ、こいつ!あっさりと遅刻宣言しやがったぞ!そこらへんはまゆりと同じくらいフワフワだな!

 

「本当にそれでいいのか医療部門トップよ…」

 

「流石に早足でいくさ。おっと、お喋りに付き合ってくれてありがとう、倫太郎君。今度はドクペといっしょに美味しいケーキぐらいはご馳走するよ」

 

じゃあねっと言いロマンが個室から出ようとした時

 

 

 

 

 

暗転

 

 

 

 

 

「なんだ?明かりが消えるなんて、何か──」

 

「フォウっ!?フォウっ!?」

 

ロマンが訝しげにつぶやく。いきなり真っ暗になったせいか俺の膝にしがみついてくる。

ドオォォォンと雷が落ちたような爆音

 

すぐ後に大音量の警報とアナウンスが流れ始める。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。中央発電所、および中央管制室で火災が発生しました』

 

『中央区間の隔壁を90秒後に閉鎖します。職員は速やかに第二ゲートから退避してください』

 

『繰り返します。中央発電所、および中央──』

 

 

警報が響く中、明かりはすぐに戻った。しかし…

 

「今のは爆発音かっ!?一体何が起こっている…!?」

 

「ロマンっ!これは…!?」

 

「ボクにも分からない…モニター、中央管制室を映してくれ!みんなは無事なのか!?」

 

ロマンは個室の壁に貼り付けてあるモニターに向かって怒鳴る。するとロマンの声に反応したように、モニターが中央管制室だと思われる場所を映し出す。

 

 

 

 

──そこは、地獄のような惨状だった。火の海に焼き焦がされ元々人であったのであろう肉片。爆発で落下した瓦礫に押しつぶされ千切れ潰れた手足。中央に立つ暗い色で覆われている地球儀が人々を燃やしたつくそうとしている太陽のように見える──

 

 

 

 

「────────」

 

「─────これは」

 

思わず声が出なくなる。だが、ロマンはさっきとは打って変わって真剣な顔つきになっていた。

 

「倫太郎くん、すぐに避難してくれ。ボクは管制室にいく。もうすぐ隔壁が閉鎖するからね。その前にキミだけでも外に出るんだ!」

 

そういうとロマンは個室を走って出て行く。残っているのは俺とフォウだけ──

 

 

俺は未だに、このカルデアはどこなのか分からない。2015年という未来。もしかしたらシュタインズゲート世界線と違う世界線なのかもしれない。ダルやまゆりなどといったラボメンもいない。まゆりを救うために俺を支え続けてくれた紅莉栖も──

 

「フォフォフォウ!」

 

はっと足元を見た。フォウだ。生意気な性格のようで散々俺を困らせたが、ふと見せる仕草が可愛くないこともない。あのフォウが俺をじっと見ている。こいつが俺に何と言っているかは分からない。だが、何を伝えようとしているかは──今は分かる。

 

 

「──分かっている。マシュを助けに行くぞ!」

 

「フォウ!」

 

 

 

 

マシュ。見ず知らずで素性の知れない俺を、先輩と甲斐甲斐しくも心配してくれた少女。その少女が今、あの地獄で助けを求めているのなら──

 

 

 

 

 

 

──ここはどこなのか、どの世界線なのか、ラボメンはどこにいるのか、今はひとまず置いておく。だからまずは──!

 

 

 

 

 

 

「これより、マシュ・キリエライト救出作戦、神へと至る為の祭壇作戦(オペレーションホルグス)を開始する!行くぞ助手2号よ!」

 

「フォウ、フォウフォウッ!」

 

 

 

 

 

 




エル・プサイ・コングルゥ(こんにちは)書きたいところの一つがやっと書けました。まぁほんとに書きたいところは次の次あたりになりそうです…。オカリンのサーヴァント引き継ぎ募集中ですので、オカリンと合いそうなのがいたら活動報告からのコメント、お願いします!ではまた近いうちに、エル・プサイ・コングルゥ(今度はさようなら)


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離散時間のサイクロトロン



──相対性理論ってとてもロマンチックで、とても切ないものだね──




けたたましい警報が鳴り響く廊下を、フォウ…改めて助手2号と走るとその途中でロマンの背中が見えた。

 

「えぇー!?倫太郎君っこっちは危ないよ!避難してって言ったじゃないか!」

 

「えぇいうるさい!ヘタレドクター!今はそんな事を言っている場合ではぬぁぁい!」

 

「フォウファーーウ!」

 

「へ、ヘタレドクターかぁ…僕ってそんなに頼りなく見えるかなぁ…ショック…」

 

何やらロマンが凹んでいるように見えるが気にしない。しかし、ロマンはこっちは危ない、と言っていた。ということは…

 

「ドクターロマンよ!こっちが危険だということは中央管制室はこの廊下の先という事だな!?」

 

「いや、それは確かにそうだけど…」

 

「頼む!俺に行かせてくれ!危険なことくらい最初から分かっている!だが、あそこにはマシュが…!」

 

慌てふためいていたドクターロマンだったが、俺の様子を見て、何かを感じ取ったらしい。その顔つきが一転して俺を見据えていた。

 

「──分かったよ、でもそれならすぐに行くよ!今中央管制室は原因不明の火災が発生しているから、すぐにでも閉鎖するから─」

 

「…あぁ!分かっている!行くぞ助手2号よ!」

 

「フォウフォーーウ!」

 

助手2号、そしてドクターロマンと中央管制室へ向かう、しばらく走り、少し大きい閉じきっているゲートが見えてくる。そしてかなりの煙がゲートから漏れ出して廊下を覆っている。これ以上進むのは消防官でもない俺たちには間違いなく危険だ。しかし…

 

 

 

───先輩、大丈夫ですか───

 

 

 

見ず知らずの俺に、自分がどこの世界に迷い込んでしまったのかひどく混乱している俺に手を差し伸べてくれた彼女がここにいるのなら…

 

 

 

「迷いなんか、要らないじゃないか…」

 

 

 

ゲートは開かれた。そこは、俺の個室から見た時と同じ、地獄だった。まずやったことはゲートのすぐ近く、入ってきた俺たちの足元に転がっている男の遺体を見て、胃液を吐き出すのを堪えることだけだった。

 

「生存者は…いそうにない…無事なのはカルデアスだけだ…」

 

口元を押さえながらもこの惨状から目を背けないロマンが苦しそうに一言零した。

 

「そんな訳ない!まだ…まだ探せばきっと…!」

 

「僕だって辛いさ!でも倫太郎君…君だって分かっているだろ!こんな状況で生き残っている人がいるわけ──」

 

その時だった。けたたましく鳴る警報が一層大きく鳴り響き、さっきとは違うアナウンスが流れる。

 

 

 

動力部の停止を確認。発電量が不足しています。

予備電力への切り替えに異常があります。

職員は手動で切り替えてください。

隔壁閉鎖まであと40秒。

中央区画に残っている職員は速やかに──

 

 

 

「──倫太郎君、僕は地下の発電所に行く、何としてでもカルデアスの火を絶やすわけにはいかない」

 

ドクターロマンは早口で言う。そうだ、今は悠長に言い争っている場合ではない!

 

「分かった!それでは俺は──」

 

「倫太郎君は戻るんだ!今来た道を戻れば、ギリギリ間に合う!早く避難するんだよ!」

 

俺の返事を待たずにドクターロマンは急いで中央管制室を飛び出していった。ドクターロマンは本気で俺の身を案じているのだろう。しかし、それではここに来た意味がないじゃないか!

 

 

 

「誰か!誰か生きている者はいないか!おい、返事をしろ、おい!」

 

 

 

──システム、レイシフト最終段階へ移行します。

座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木。

ラプラスによる転移保護 成立。

特異点への因子追加枠、確保。

アンサモンプログラム、セット。

マスターは最終調整に入ってください。

 

 

 

また機械の声のアナウンスが流れ出す。えぇいやかましい!訳の分からんことをまくし立てるな!生存者が見つからず、焦りと苛立ちで俺はがむしゃらに瓦礫を退かす。角で切ったのか手から血が出るが、そんな事は関係ない。そして──

 

「────見つけたっ!」

 

「────……先…輩……?」

 

退かした瓦礫の陰で見えていなかったマシュを発見した。だが喜ぶのは後だ!急いで中央管制室から出ようとマシュを担ごうとするが…

 

「──マシュ…お前その体は…!」

 

「──……ダメですよ、先輩…私はもう、助かりません…」

 

巨大な瓦礫でマシュの下半身は、完全に潰されていた。おそらく、もうマシュは助からないのだろう。だが…

 

「そんな事関係あるか!必ずお前を連れてここから脱出する!」

 

「───先輩……」

 

肉は裂け、爪が剥がれた手で何とか瓦礫を退かそうと力を込め続ける。しかし、全く動く様子も見られない。

 

すると、中央管制室のちょうど真ん中に立つ巨大な地球儀のようなものが、黒から灼熱の太陽のように赤く燃え盛った。

 

 

 

観測スタッフに警告。

カルデアスの様子が変化しました。

シバによる近未来観測データを書き換えます。

近未来100年までの地球において人類の痕跡は発見できません。

人類の生存は確認できません。

人類の未来は保証できません。

 

 

 

「……そんな……カルデアスが真っ赤に…」

 

「マシュよ、そんな地球儀の事は後回しだ!少しでも力を入れろ!」

 

「……先輩……いえ、そんな、ことよりも…」

 

 

 

中央隔壁、封鎖します。

館内洗浄開始まで、あと180秒です。

 

 

 

アナウンスが響く。もう中央管制室から出ることは、できない…。

 

「──隔壁…閉まっちゃい…ましたね…」

 

「………気にするな、マシュよ。このぐらい、この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真にかかれば、どうという事はない!!」

 

「………先輩…ふふ…不思議…ですね…何だか…安心しちゃう…マッドさん…なんですね…」

 

マシュは笑った。俺が最後の強がりを、眩しいものを見るかのように、目を細めながら…。

 

 

コフィン内マスターのバイタル、基準値に達していません。

レイシフト定員に達していません。

該当マスターを検索中………

発見しました。

暫定適応番号00 岡部倫太郎をマスターとして再設定します。

アンサモンプログラム、スタート。

霊子変換を開始します。

 

 

アナウンスが鳴り響く。だが、燃え盛る炎の現場に長居したせいか、煙を多く吸いすぎて意識が朦朧としているらしい。俺の、そしてマシュの体が光の粒子を纏っているかのように光り輝いて見えた。

 

「……あの…先輩…」

 

そんな中、マシュは、最期の力を振り絞っているような細いながらも確かな意識を感じさせる声で言う。

 

「……手を握ってもらって、いいですか?」

 

「……あぁ、もちろんだ。マシュ、きっと、大丈夫だ…」

 

きっと、大丈夫、俺はさらに続けてそう言い、マシュと手を重ねた。

 

 

 

 

あぁ…不思議だ。こんなにも炎が燃え盛っているのに、どうして、マシュの手はこんなにも、冷たくなっていくのだろう…。

 

 

 

 

そして、アナウンスは響き渡る。

 

 

 

レイシフト開始まで、あと、

 

 

3

 

 

 

 

2

 

 

 

 

1

 

 

 

 

全行程、完了。

ファーストオーダー、実証を開始します。

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺とマシュは光の渦の中に巻き込まれた。その時俺は、どこかで聞いたような、しかし誰からのものか分からないメッセージを聞いたような気がしたまま、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『頑張れよ、これから始まるのは、未来を取り戻す、長くも大切な物語だ』

 




エル・プサイ・コングルゥ(謝罪) 思っくそ更新してませんでした。ホントにすんません。期末テスト→受験のコンボで書く気が無くなった、ではなく、忙しくて気がついたら何ヶ月もほったらかしにしてました。ホントにすんません。この春から一人暮らしを始めて自分の時間が今までよりは取れそうになったので、なるべく間を空けずにこれならも更新していきたいと思います。…はぁ、いつになったらオカリンがあのサーヴァントを召喚できるんだろ…。でばでは、また。


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