ハリー・ポッターと魔法生物の王 (零崎妖識)
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誕生

「予言の子が産まれる年、魔法生物の王が産まれる。その者は人以外の全ての生物を従え、光にも闇にも染まるであろう」

ダンブルドアは困惑していた。一度予言を聞き、目の前のシビル・トレローニーが正気に戻った直後、再び予言をしたのだから。

予言の子、今はまだ見ぬ子供がヴォルデモートを打ち倒す。しかし、恐らくは再び、ヴォルデモートが戻ってくる。

その時に、彼/彼女と同い年に、光にも闇にも染まるであろう二人目の予言の子が産まれる。その子が我らの力となってくれるのなら……

ダンブルドアはその子を闇に落とさず、来たるべき戦いーーヴォルデモートとの最終決戦で敵対しないよう、ホグワーツで育てることに決めた。

 

 

その年の七月末、一つ目の予言に当てはまる子が二人産まれた。

ハリー・ポッターとネビル・ロングボトム。

 

 

そして、その年の十月末、ハロウィンの日。魔法省にとって、魔法界にとって驚くべきことが起きた。

人の感情を吸い取る闇の生物、吸魂鬼。人に懐かぬはずの彼らが、一人の赤子を抱え、崇めていたのだ。

前代未聞の事態に、魔法省はダンブルドアに指示を仰いだ。そのダンブルドアは彼女をホグワーツに入れると言った。

では、それまではどうするのか。

身寄りのない少女は、魔法省に勤める魔女に預けられた。エリザベート・クリミアと言うその魔女は、彼女を自らの養子とし、名前を与え、成長させていった。

 

エリザベートが預かった少女、リアス・クリミアは驚くべき才能を見せた。

魔法界では珍しい蛇語使い(パーセルマウス)。彼女はそれを使え、さらに、他の生物とさえ話して見せた。それこそ、人に懐かないような生物でさえ、人間以外の生物全てと。

魔法生物の持つ毒も効かず、どのような猛獣であろうと彼女には従う。

魔法生物の王と呼ばれた少女は、この年、ホグワーツに入学する。

 

 

「ママ、ホグワーツからの手紙届いたよ!」

「あら、お祝いしなくっちゃ。まずはホグワーツで必要な物を買って、特大のケーキも買わないと」

「ケーキはいいから、みんなの分のご飯買わないと」

はしゃぐ少女の周りには、多種多様な生物がいた。犬、猫、烏、鷲、鷹、梟、蛇、人に懐くことがないはずのドラゴンまで。クローゼットがガタガタいっているのはまね妖怪(ボガート)だろうか。

「この数年で、動物園みたいになっちゃったわねぇ」

「みんな可愛いし、いい子だから問題なし!」

胸を張る少女の頭を、女性が撫でる。

少女の体質ーー人間を除く、あらゆる生物に好かれると言うその体質を前に、女性は驚くばかりだった。討伐記録が全くと言っていいほど存在しない、マンティコアやヌンドゥですら従え、さらにはヌンドゥが撒き散らす病気を、少女の一声でヌンドゥが押さえ込んだのだから。

「そうね。それじゃあ、漏れ鍋に行きましょう。みんなはお留守番しててね?おやつ買ってきてあげるから」

女性は少女の手を掴み、その場から姿を消した。行き先は、イギリス魔法界への入り口の一つ、漏れ鍋。

 

 

さて、一つの予言が連れてきた、存在しなかったはずの一人の少女。彼女はホグワーツで何を学び、どう暮らしていき、どう、ハリー・ポッターに関わっていくのか。

それは、まだ誰もわからない。




新作なのです。


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彼女の入学は石と共に


リアス・クリミアが使役できる範囲
人間の血が混ざっている生物以外の全ての生物。
つまるところ、人に近い形の生物とのハーフや動物もどき(アニメーガス)、人狼以外は全部可能。

今回はリアス視点です。


ママに連れられて漏れ鍋に〈姿現わし〉したのだけれど、なんでかいつも以上に賑わってるわね。

そうだ!トムさんに聞いてみましょう!

「トムさん、なんでこんなに賑わってるの?」

「おや、いらっしゃい、リアスちゃん。こんなに、とは酷いがね、ハリー・ポッターさんがいらっしゃったのさ。今頃はハグリッドとダイアゴン横丁で買い物をしているだろうね」

「ハリー・ポッター?」

「リアス、『例のあの人』を倒した子よ。あなたと同い年なの」

ママがハリー・ポッターについて笑って教えてくれた。

『例のあの人』っていうと、あたしが産まれたときに色々やってた闇の魔法使いだっけ。すごい人なんだ、ハリーって。

いつのまにか、漏れ鍋の裏にいた。ママが一つのレンガを三回叩いた。すると、壁がくねくね動いてアーチ型の入り口が出来上がった。何回も見てるけどすごいと思う。

「さあ、まずはグリンゴッツね。それから、服を買って杖を買って……やることがいっぱいよ?」

町を歩きながらグリンゴッツに向かってる。

あそこの小鬼(ゴブリン)は、お金にがめつい以外はいい人。でも、お金に汚いからね〜。

グリンゴッツの中に入って、奥のカウンターの小鬼に話しかける。クリミア家の金庫へと向かうのだ。

ここのトロッコって楽しいのよね。まるでドラゴンやグリフォンに乗って空を飛んでる時みたいに!

 

 

ガリオン金貨をいくつかお財布にいれて、グリンゴッツを出る。次は制服だ。

 

 

途中で、マルフォイ家の人みたいな男の子や、とっても大きな男の人とすれ違ったけど、特に何事もなくマダム・マルキンの洋装店を出た。

あと、はかりや望遠鏡、教科書、薬も買ったから、残りは杖だけ。

「杖は、このあたり……と言うかこの国ではオリバンダーが一番なのよね。私もそこで買ったし、イギリスの有名な魔法使いは大抵オリバンダー杖店で買ったんじゃないかしら?」

ママは自分の杖をクルクル回した。

松に一角獣(ユニコーン)のたてがみ、三十センチだったっけ。攻撃系の呪文が得意だったはず。魔法省でセクハラしてくる男どもに〈フリペンド〉を使ったって話をよく聞くし。

そんなことを思っているうちに、狭い店にたどり着いた。扉には「オリバンダーの店ーー紀元前三八二年創業 高級杖メーカー」と金文字で書いてある。

中に入るときに、男の子とすれ違った。眼鏡をしてて、どこか嬉しそうな顔。チラリと見えた額には雷みたいな傷があった。

「いらっしゃいませ」

店の中には、お爺さんが一人立っていた。

「おお、エリザベート・クリミアさんですか……松の木に一角獣(ユニコーン)のたてがみ、三十センチで攻撃的。あんたに杖を売ったのもつい昨日のようじゃ」

静かに話す老人。この人がオリバンダーさんなのかな?

「さて、リアス・クリミアさんですな?どちらが杖腕ですかな?」

「ええと、右です」

言いながら、腕を伸ばすと、オリバンダーさんがポケットから出した巻尺が勝手に色々なところの寸法を測り始めた。少しくすぐったい。

「クリミアさん、オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持つ物を芯に使っております。うちの店で扱っている芯材は、一角獣のたてがみに不死鳥の尾の羽根、ドラゴンの心臓の琴線。どれも、一頭から一つしか提供してもらえない。それ故に、一つとして同じ杖はないのです。個体差、と言うものですな。だから、他の魔法使いの杖を使っても、けっして自分の杖ほどの力は出せないわけじゃ。そして、杖を魔法使いが選ぶのではなく、杖が魔法使いを選ぶのです。ですから、自分だけの杖を使えば、自分にとって最高のパフォーマンスが出来るのですよ」

オリバンダーさんは一つの箱を持ってきて、その中から杖を出した。

「では、これを。イチイの木に一角獣のたてがみ、二十センチ。一途で頑固。振ってみなされ」

受け取って振って見ても、何も起きない。そのまま杖は取り上げられて、新しいのが差し出された。

「松にドラゴンの心臓の琴線。三十一センチ、しなやか。どうですかな?」

受け取って振ろうとしたところで、取り上げられる。

他にもいくつか試して見たけど、どれもダメみたい。オリバンダーさんは気難しい顔になって、

「いや、まさか……あの杖が……?」

って呟いている。

頭を振って、オリバンダーさんは店の奥に消えていった。

「……嫌われちゃった?」

「いいえ、あの人は絶対に、あなたに合う杖を見つけてくれるわ。簡単に決まる人もいるし、なかなか決まらない人もいるのよ」

少しして、オリバンダーさんが戻ってきた。手には、真っ黒な箱が握られている。

「もしや、とは思いますがな。この杖を振って見てもらってもよろしいかな?」

柔らかそうな感じの色の杖だったわ。でも、少し怖い。

手に持つと、なんだか、真っ直ぐに進めるような気がした。振った途端に、周りに泡が出てきたから、これなのかな?

「その杖は、檜にとある海獣の骨を芯材として出来ている、この店にしかない、この店にもその芯材を使ったものはその一本しかない代物です。二十五センチ、頑固で真っ直ぐで、何かを呼び出す類の呪文を好む。

……一つ、話をさせてもらえますかな?クリミアさん、リアス・クリミアさんや。あなたは生き物に好かれておる。それは、人間以外のどんな生き物にも。

魔法生物には格があるのです。より正確に言えば、何かの王とも呼べる種が。例えば蛇の王バジリスク、例えば蜘蛛の王アクロマンチュラ、例えば病魔の王ヌンドゥ、海の王クラーケン。

そして、この杖の芯材の骨は、その昔王同士の戦いに敗れた獣の骨なのじゃ。

共に海獣と呼ばれた二体は、なんの事情か争いあい、片方が死んだ。その獣の骨は、とある武器に加工されたのです。一度放たれれば必ず敵の心臓を刺し穿つ、必殺の槍に。

もうお分かりでしょう。その獣はケルトの時代に死に、最近になって、骨の一部が見つかった生物。アルスターの英雄、クー・フーリンの朱槍、ゲイ・ボルクの素材となった骨。

その獣の名は、クリード。

今もまだ、深海に種が残っていると言われておりますが、その芯材は正真正銘、ゲイ・ボルクに使われたものと同じもの。

生きた心地がしませんでした。いつのまにか、影の国の入り口に立ち、スカサハと相対していたのですから。

彼女からこの骨を譲ってもらい、杖を作ったのです。

また、もう一頭の海獣、コインヘンも生き残っていると言う話を聞きました。クリードの子孫に神話の時代から生きているコインヘン。もしかすると、あなたに惹かれてやってくるかもしれませんな」

お代は結構、と店を出される。ゲイ・ボルクと言うと伝説の槍だっけ。そんなに凄いものと同じ素材の杖なんて、もらっちゃってよかったのかな?




型月に出てきた獣は多分出てきます。クリードしかり、コインヘンしかり、トゥルッフ・トゥルウィスしかり。
彼女がハリー側につくかお辞儀側につくかで、ハリーたちの難易度がだいぶ変わります。お辞儀側につけば、原作よりもお辞儀陣営が強化され難易度がハードを通り越してルナティックに入りかけ、ハリー側につけばお辞儀陣営超弱体(吸魂鬼、吸血鬼、トロール、巨人などが抜けるため)、ハリー陣営超強化でイージーレベルに。


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呪文

オリ魔法有り


買った物を持って家に帰る。みんなの分のおやつも買ったからこの後あげないとね。

そう言えば、ボガートって本当の姿知ってる人いないんだっけ?あたしが見たときは黒いもやもやだったけど、あれが本当の姿なのかな?

「あ、リアス。帰ったら一つ呪文を教えるから」

ママに呪文を教わることになった。うーん、恥かかないように予習はするつもりだけど、それとは違う呪文かな?

 

 

みんなにご飯をあげて、リビングへ。

「さて、あなたに教える呪文は私のオリジナルです。召喚呪文と言い、簡単に言えばリアス専用の魔法ね」

「あたし専用の魔法?そんなものがあるの?」

「ええ。一人しか会得できなかった魔法とか、最初からたった一人のためだけに作られた魔法とか、ね」

あたしだけの魔法……何それかっこいい。

「インヴォーカレと唱えた後に、召喚したい子の名前を呼びなさい。あなたのペットしか呼び出せないけどね。さ、やって見て」

「ええと、〈おいで、ユーリ(インヴォーカレ・ユーリ)〉」

杖を前にだして、飼ってるミミズクの名前を呼んでみる。すると、杖先から光が溢れて、その中からユーリが出てきた。

「……凄い、凄い凄い!面白いねこの呪文!ホグワーツでもみんなと居られるの!?」

「うふふ。戻すときはレパトリエーションよ」

「〈ありがとう(レパトリエーション)〉!」

ユーリが光に包まれて消える。小屋を確認してみると、ちゃんとユーリが居た。

「ありがとう、教えてくれて!」

「ええ、どうも。喜んでくれて嬉しいわ」

そのまま今日はみんなと遊んで、次の日から予習を始めたわ。……みんなに遊んでって言われたけどね。

 

 

九月一日、キングス・クロス駅!

今日、あたしはホグワーツ特急に乗ってホグワーツへ入学します!

連れて行けるペットが一匹までだったから、連れてきたのはユーリだけだけど、ママが召喚呪文の使用許可を校長先生にとってくれたそうです!ありがとうママ!

……できれば九と四分の三番線の場所も教えて欲しかったかな?仕事は仕方ないと思うけど、せめてどこから乗れるのかぐらいは教えてください。

仮にも魔法学校行きの列車なんだから、マグルには見えないようになってるはずだけど、どこから乗るんだろう?

と、考えて居たらあんなところに赤い髪の毛の大家族が。多分ウィーズリー家かな?時折マグルがうんたらかんたら言ってるし。

「すいません、ウィーズリーさんですか?」

「ええ、そうですよ?あなたもホグワーツに?」

「はい!リアス・クリミアです!今年入学!」

「そうなの!うちのロンも今年入学なのよ。ね、よかったら構ってやって?」

ウィーズリーさんに聞かれて、あたしは首を縦に振った。九と四分の三番線はこの近くにある柱から入るそうで、せめて何かの目印をつけてほしいところだった。

パーシーとフレッド、ジョージと言う三兄弟(フレッドとジョージは双子)が入っていったところで、ウィーズリーさんに男の子が話しかけた。オリバンダーさんの店ですれ違った男の子だ。

後ろで話している間にさっさとプラットホームに向かう。ぶつかる瞬間は怖かったけど、ちゃんと入れてよかった。

後ろからはさっきの男の子が入ってきて、一緒に空いているコンパートメントを探すことになった。

名前は……ええと、ヘンリーだっけ?




オリ魔法
おいで、○○(インヴォーカレ・○○)
召喚呪文。主人公のペットを召喚出来る
ありがとう(レパトリエーション)
送還呪文。召喚呪文で出したペットを送り帰す。
両方とも主人公専用の呪文。発明者、エリザベート・クリミア。

主人公は真面目ですが、若干アホの子です。あと天真爛漫で無邪気。多分スネイプに対してもズバズバ言っちゃうタイプ。


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列車内

ようやく空いてる席を見つけた。列車の中に入ろうとしたけど、荷物が重すぎて入れない。ヘンリー(?)も同じような感じだった。

「手伝おうか?」

先にプラットホームへ来てたフレッドかジョージのどっちかが話しかけてくれた。もちろん、手伝ってもらう。

もう一人ーーそっちの方がフレッドだったーーも来てくれて、あたしたちのトランクがやっと客室に入っていった。

「ハリー・ポッターかい?」

ん?ママから聞いた英雄さん?どこにいるのかな?

見ると、双子がヘンリー(仮)を指差してた。

「あれ?あなたってヘンリーじゃなかったっけ?」

「いや、ハリーだけど」

ありゃ、間違ってたか。

「ごめんごめん。あたしはリアス。リアス・クリミアよ。よろしくね?」

「あれ?さっきも聞いたような……まあいいや。よろしく」

ハリーと挨拶して、先に席に座る。

「〈おいで、ルーク(インヴォーカレ・ルーク)〉」

暇なのでトイ・プードルのルークを呼んでモフモフしてよう。うん、気持ちいい。

 

 

……はっ!寝ちゃってたみたいね。席にはいつのまにか、ロンと呼ばれてた少年も座ってこっちを見てた。

「起きた?僕はロン。ロナルド・ウィーズリーだよ。でも君、ホグワーツの規則いきなり破ってない?ペットはネズミか猫かヒキガエル、フクロウだぜ?それも一匹まで。君のトランクにはミミズクが既にいるじゃないか」

……ああ!ルークのことか。

「この子は特別。ママが校長先生に、うちのペットを自由に召喚していいって許可をもらったのよ。〈ありがとう(レパトリエーション)〉」

ルークを家に戻すと、ロンは驚いていた。

「すっごい……その魔法、僕も使えるかな?」

「ママが作ったあたし用の魔法だから、多分無理だよ?」

「魔法って、そんな簡単に作れるものなの?」

「いや、無理でしょ」

ハリーやロンと話しているとなんだか楽しい。

「そういえば、二人は予習とかはしてるの?」

「「全然」」

「……しといた方がいいと思うよ?ママが魔法薬学の教師と同い年らしいんだけど、すっごくイジワルな問題出してくるらしいからね。それに、純血の子って、半分くらいはプライド高いから魔法を知らないってなったら色々と言ってくると思うよ?」

二人がゲェと顔を歪める。その時、ロンの上着から尻尾が出ていることに気がついた。

「その尻尾は?」

「ああ、お下がりのペットさ。スキャバーズって言うんだけど、寝てばっかりでね。役立たずさ」

ロンが引っ張り出したスキャバーズを見てると、何か違和感を感じた。何だろう……うちにもこんな感じのネズミはいるけど、この子は何か違う。

「少し借りてもいい?」

「いいよ。でも、ちゃんと返してくれよな。フレッドとジョージは悪戯を仕掛けて返してくるから」

スキャバーズを受け取り、じーっと見つめる。どことなく人間みたいな感じがする。

「むー……【何か出来る?】」

二人がギョッとした顔をしてるけど気にしない。どうやらこの子には伝わってないみたいだ。

「……この子、人間?」

「ちょ、それどう言うこと?それに、君がさっき使ってた言葉は何だい?」

「ええと、さっき使ってたのは、簡単に言えば動物の言葉。あたし、動物と話せて、慕われる体質みたいなの……正確にいえば、人間の血が混じってる動物以外と、ね」

動物もどきには、動物言語は通じない。より正確に言うと、あたしが使う言語が通じないわけで、お仲間の言葉は通じるみたいだけど。

「マーリンの髭!」

何言ってるんだろうかこの男子は。

「ねぇ、動物に慕われるってどのくらい?」

ハリーに聞かれたのでちゃんと答えてあげよう。

「よくわかんない!」

膝に置かれていた手が滑って、ハリーが前にコケた。

「……え?」

「よくわかんないの。少なくとも、ヌンドゥぐらいまでは仲良くなれたけどね」

「ヌンドゥだって?一息で村一つを滅ぼせる、病魔の王だよ!?近くにいるだけでも危険なのに、仲良くなるだなんて!」

「え?頼んだら病気を撒き散らさなくなったけど?それに、生き物の毒とかはあたしには効かないみたい」

「それこそマー髭だよ!一体どんな生物と仲良くなってるのさ!」

「バジリスクにー、ヌンドゥにー、ヒッポグリフにー……ぶっちゃけ、『幻の動物とその生息地』に載ってる種類全て。ただし人狼は除く」

「……ワァオ」

ロンが認識を諦めたみたい。ハリーは魔法薬学の教科書読んでるし。

 

 

スキャバーズが動物もどきかどうかと言う議論は諦めて、車内販売を買う。百味ビーンズだけはダメだ。

ハリーが蛙チョコを開けたけど、窓の外に飛んでって吹き飛ばされた。

途中でネビルと言う男の子がヒキガエルを見かけなかったかと聞いてきたので、ルークを呼び出して捜索してもらう。トイプーはもともとは狩猟犬だしね。ネビルにはこのコンパートメントにいてもらおう。




あっさりとバレかけるワームテール。犬に咥えられて帰ってくるトレバー。

蛙チョコはさすがに操れません。魔法なので。


動物言語
主人公だけが使える言語。全ての動物に使える言語で、人間の血が混じってる動物には何を言っているのか認識できない。使える者はあらゆる動物の言葉を理解出来る。蛇語(パーセルタング)の上位互換。


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汽車の中

少しして、栗毛の女の子が現れた。ネビルがやらかした顔をしてるので、この子に何か頼んでいて、それを忘れていたのだろう。

「ネビルのヒキガエルを探しに来たのだけれど、ネビル、あなたこんなところで何やってるの?ヒキガエルを探すんじゃなかったの?」

「あたしのペットに探させてるよ?もうそろそろ戻ってくるんじゃない?」

答えるとほぼ同時に、ルークが戻って来た。口にはヒキガエルを咥えている。

「トレバー!」

当たりだね!ルークを撫でて、ついでにジャーキーをあげた。

「〈ありがとう(レパトリエーション)〉」

ルークを戻すと、女の子は驚いた顔をしていた。

「その魔法は何かしら?私、教科書は全部暗記したけど、そんな魔法なかったわよ?

ああ、失礼。私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

「リアス・クリミアだよ。さっきの魔法はママのオリジナルであたし専用!」

「ロン・ウィーズリーさ」

「僕、ハリー・ポッター」

「ハリー・ポッター?あのハリー?本で読んだわ。」

他にもペチャクチャ話していたけど、お菓子美味しい。

 

 

いつのまにかハーマイオニーはいなくなってた。代わりに、男の子三人がいた。真ん中の子は洋裁店近くですれ違った子だね。

「僕の名前は、ドラコ・マルフォイだ」

「ドラゴン?」

「ドラコだ」

普通に間違えた。そういえば、ドラゴンへの動物もどきっているのかな?あたしはグリフォンかヒッポグリフあたりがいいけど。

ドラコは色々喋ってるけど、正直うるさい。純血主義?どうでもよくない?

「うん、どうでもいいね。純血だとか何だとかって」

「なに?どういうことか説明してもらえるかい?えーと……」

「リアスよ。リアス・クリミア。で、純血主義がどうでもいい理由だっけ?ママは純血だけど、どうでもいいって言ってたし、魔法使いにはマグルにかなわない部分があるってさ。機械の扱いとか」

「それでも、魔法が使える分魔法使いの方が優れているだろう?」

「そだね。じゃあ、月まで行って来て?」

「は?」

ドラコが驚いた顔をする。

「いや、マグルは魔法を使わずに、機械だけで月まで行ったんだよ?偽だったとしても、宇宙まで飛んでるのよ。魔法使いは、魔法だけでそんなことできるっけ?」

「ちっ……行くぞ、クラッブ、ゴイル!」

ドラコが戻って行った。……あ、そろそろホグワーツじゃん。着替えないと。

「ごめん、着替えるから出て行って?」

「「わかった」」

うん、素直でよろしい。最悪、レシフォールド(レッシー)呼んで包んでもらって、その中で着替えるって手もあったけどね。




「魔法だけで月まで行ってこい」
私が純血主義の頭でっかちどもに言ってやりたかったこと。マグルより優れてるってんなら、当然、マグルの技術使わずに月まで行けんだよなぁ?


レシフォールド
黒いマントのような姿の魔法生物(M.O.M.分類XXXXX)
人も食す危険生物。しかし、この主人公の手にかかればもはやただのマントとしての役割しか持たなくなってくる。


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組分け

汽車がプラットホームに到着した。荷物は車内に置いていって平気みたいだから、楽ちんね。

外は真っ暗で、少し寒かった。あれ?何か光が浮かんでる?

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

大きな人がランプを手に持ってた。うーん、巨人みたいだけど、どこか違う?て言うか、人間の大きさじゃないけど巨人やトロールよりは小さいわね。

彼(名前を知りたいわね)がついてこいと言うので、ついていってみる。狭いし、暗いし、ああ、でも面白そうな虫とかいるかしら?

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。ほれ、この角を曲がったらだ」

巨人さんに言われて前を見ると、大きなお城があった。その手前には黒い湖。何かでっかい生き物がいるみたいね。声が聞こえるし。

四人ずつボートに乗って、湖を進む。巨人さんの掛け声で頭を下げると、蔦のカーテンをくぐって船着場に到着した。

巨人さんが全員いることを確認すると、樫の扉を三回ノックした。

その先には、エメラルド色のローブの魔女がいた。厳しそう。

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

巨人さん、じゃなかった、ハグリッドが先へ進み、あたしたちはマクゴナガル先生についていった。

「皆さん、ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。あなた方がホグワーツの生徒である限り、ホグワーツとは第二の家であり、寮生とは第二の家族です。

寮は四つ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。それぞれが輝かしい歴史を持ち、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。

まもなく全校生徒の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」

マクゴナガル先生が案内してくれた部屋を出ると、みんなはどうやって組分けするのかを話し合っていた。別になんでもいいやと思って壁を見てたら、透き通ったゴーストが二十人ぐらい現れた。

話を聞いて見ると、みんな気さくな人のようだ。死んでるけど。

あ、マクゴナガル先生が戻って来た。準備できたみたい。

「さあ、一列になって。ついて来てください」

マグゴナガル先生についていって大広間に入ると、凄い景色が広がっていた。

天井には夜空が映され、ろうそくが何千本も浮かんでいる。テーブルは合計五つ。寮生用の四つと教師用の一つ。

マクゴナガル先生が四本足のスツールを置いて、その上にボロボロの帽子を置いた。

なんだろうと思っていると、突然、帽子が喋り出した。魔法って、本当になんでもありだね。

「私はきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽は真っ暗で

シルクハットはすらりと高い

私は彼らの上をいく

ホグワーツ校の組分け帽子

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住う寮

勇猛果敢な騎士道で

ほかとはちがうグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん!恐れずに!

おろおろせずに、お任せを!

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!」

組分け帽子が歌い終わると、広間にいた全員が拍手した。四つのテーブルにそれぞれお辞儀した帽子は、またボロボロなだけの帽子になった。

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください。

アボット、ハンナ!」

女の子(あたしもか)が帽子を被った。

「ハッフルパフ!」

「ボーンズ、スーザン!」

「ハッフルパフ!」

「ブート、テリー!」

「レイブンクロー!」

そのあとも進み、さっさとCの順になった。

「クリミア、リアス!」

あたしの番だ!

組分け帽子を被った椅子に座る。前が見えない。

「ふむ、君は面白い」

誰かの声が聞こえる。……あ、組分け帽子か。

「君は友を得たいようだが、誰とでも友達になる。それこそ、人以外とでも。

機知は求めていない。

ならばハッフルパフが一番のような気がするが……君は冒険がしたいようだね」

「うん。あたしはまだ見たことのない生き物をいっぱい見てみたいの」

「よろしい。冒険とはいいものだ。しかし、その決意は勇気がなくてはなせないだろう。そんな君にぴったりの寮がある……グリフィンドール!!」

歓声が上がった。あたしはグリフィンドールで決定らしい。やったね。

「キングズ・クロスで会ったね。僕はパーシー。グリフィンドールの監督生なんだ」

「よろしく!」

聞くと、あたしの組分けにはだいぶ時間がかかったらしい。組分け困難者だって。五十年に一人居るか居ないかぐらいらしいんだけど、今年はいっぱい居るようだ。

ハーマイオニーはグリフィンドールに、ネビルもグリフィンドールに決まった。

「マクドゥガル、モラグ!」

「レイブンクロー!その次はスリザリン!!」

「まだ一文字も喋ってないのですが?取り敢えずミスター・マルフォイ、スリザリンへ行きなさい」

……パーシーから、名前を呼んでる途中に組分けされた子がいると言う話を聞いたけど、名前を呼ぶ前に決まった子は初めてらしい。

「ポッター、ハリー!」

少しの静寂。そして、

「グリフィンドール!!」

耳が壊れるかと思った。ロンもグリフィンドールに決まったみたい。

そういえば、さっきの組分けの時、教員席中央のお爺さんがあたしとハリーのこと見てた気がするけど、気のせいかな?




マルフォイ、とうとう名前を呼ばれる前に組分けされることに。


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最後の生徒の組分けが終わって、マクゴナガル先生が巻き紙と帽子を片付けた。料理まだかなとか考えてたら、中央のお爺さんが立ち上がった。あの人が校長──アルバス・ダンブルドアらしい。フルネームは凄く長いんだって。

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

あの人、頭大丈夫?病院行った方が良くない?

あ、料理が出てきてる。普通の料理に、一度だけ見たことのある中華料理、それに日本の料理も。ママが昔、日本に何度か行ったことがあって、その時に食べた日本食が、ブリテンの料理よりもとっても美味しかったって言ってたわね。

そういえば、日本ってどうなってるのかしら?日本のアニメやマンガとかは時々見ることはあるけど、どうしたらあんな考えができるの?魔法少女だとかそれがゾンビだったとかケモミミだとか。トムさんから聞いたけど、日本人って妖精(フェアリー)みたいなんだって。いつのまにか来ていて、いつのまにか消えている。居る時は繁盛してるけど、気に入らなかったらいつのまにか来なくなっていて、その店は潰れちゃうって。ママは妖精(フェアリー)じゃなくてザシキワラシだって言ってた。あ、この魚フィッシュ&チップスより美味しい。マグロのスシだっけ?

デザートは料理よりも凝ってるんじゃないかしら。スコーンや日本の駄菓子、フォーチュンクッキー、ケーキにチョコレート、パフェ、その他色々。校長先生の思考回路って日本人に近いのかな?

横を見ると、ハリーが額を押さえてた。視線の先には後ろを向いたターバンの人と、意地悪そうな鉤鼻の先生。

 

 

しばらくして、料理が完全に消えた。美味しかったしまた食べたいけど、どこに行ったら食べれるのかな?キッチンぐらいはどこかにあるはずだけど。

ダンブルドア校長が立ち上がった。

「ふむ、全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある禁じられた森には立ち入らないよう。上級生も、何人かの生徒たちには、同じことを特に注意しておきますぞ。そこの、ウィーズリーツインズなどにのう。

管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました。

今学期は二週目にクィディッチ選手の選抜があるので、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するよう。一年生は参加できませんがな。

最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい四階の右側の廊下には入らぬことじゃ。

ああ、それともう一つ。わしが発行する特別許可証があれば、条件付きで禁じられた森に立ち入っても良いことにする。もちろん、森番のハグリッドの引率が必須じゃがのう。森には危険じゃが神秘に満ちた生き物たちがおる。許可証が欲しい者は、それぞれの寮の先生に打診することじゃ」

よし、貰おう。グリフィンドールの寮監はマクゴナガル先生だって。

「では、寝る前に校歌を歌いましょうぞ!」

途端に、先生方の笑顔がこわばる。ああ、この感じは、野生動物が危険を察知した時の感覚だ。

ダンブルドアの杖から金色のリボンが飛び出て、空中に文字を描いた。あれが、ホグワーツの校歌なんだろう。

 

 

せめて、リズムぐらいは統一して欲しいです。歌詞も酷いし、ウィーズリーツインズは葬送行進曲で歌ってるし。

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ!

さあ、諸君、就寝時間じゃ。駆け足!」

みんな立ち上がり、それぞれの寮の監督生についていく。

グリフィンドールの寮はとても高いところにあるらしい。変なところを通ったり、吹き抜けの階段が気分で動いたり、変な仕掛けが多かった。

パーシーが合言葉を言い、太った婦人(レディ)の肖像画の裏を通り抜けると、そこがグリフィンドールの談話室だった。女子寮に入り、ベッドを探す。同室は……あれ?いない?あたし一人?ベッドにはマクゴナガル先生からの手紙が置いてあった。

『Dear Ms.Crimea.

すみません、人数の関係上一人部屋が出来てしまいました。貴女の召喚呪文や動物言語を自由に使うには、一人部屋の方がいいと思い、貴女が一人部屋になりました。

エリザによろしく言っておいてください。

良いホグワーツ生活を。

From M.McGonagall』

うん、同室がいないのは寂しいけど、みんなを気兼ねなく呼べるのなら問題ないね!

「〈おいで、キーパー(インヴォーカレ・キーパー)〉」

ネズミのキーパーを呼び出して、城のネズミの統率と地図作りをお願いしておいた。明日の夜には地図が完成するかな?完璧な地図とはいかないだろうけど。




ホグワーツの料理事情
ダンブルドアの趣味により、世界各国で料理修行してきた屋敷しもべ妖精たちが働いている。彼らの料理は日本食から中華、フランス、ドイツ、スペイン、さらにはブリテン自慢のマッシュポテトまで。お菓子、デザートも完備。素材はそれぞれの場所に屋敷しもべ妖精を派遣し、姿現しで直送してもらっている。それでもマホウトコロの料理人には敵わず、毎月何人かが料理研修に行っているらしい。また、お菓子類は変装した屋敷しもべ妖精たちが各国のコンビニやスーパーなどで買ってきたもの。

日本人が妖精(フェアリー)
知り合いから聞いたこと。日本人の店に関しての観察眼は異常。日本人の発想はもはや世界の一歩先を行っている。

魔法少女だとかそれがゾンビだったとか
うろぶっちー時空の魔法少女アニメ。「もう何も怖くない!」


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授業

朝一番にマクゴナガル先生のところに行って、許可証の発行手続きをしてきた。校長先生から聞いてたみたいで、快く了承してくれた。やったね。明日の朝、渡してくれるらしい。

 

 

ホグワーツでの最初の授業。階段が多すぎて迷うかと思った。迷いそうな時には近くにいたネズミとかに案内してもらったから間に合ったけど。

あと、ミセス・ノリスにも助けてもらった。みんなは嫌ってるけど、可愛いと思う。多分、ニーズルとの混血の猫。頭良いし、フィルチさんによく懐いてるし。フィルチさんとは猫の話で仲良くなった。途中で、通りすがりのマクゴナガル先生も参加したけど。

 

 

少しして、なんでマクゴナガル先生が猫談義に参加したのかがわかった。マクゴナガル先生、猫の動物もどきだった。猫が好きらしい。魔法省に、猫好きのガマガエルみたいなナニカがいるらしいけど、その人のことは苦手だそうだ。確か、ドローレス・アンブリッジだったかしら。ママも、彼女のことは嫌いだと言ってた。人間、それも魔法族以外を嫌ってて、狼人間やケンタウロス、水中人や小鬼も嫌だって。狼人間、普段は良い人らしいんだけど、その人のせいでまともな職に就けないそうだ。もしホグワーツに来たらみんな(ペットたち)に突進させよう。

 

 

魔法薬学はよくわからなかった。スネイプ先生がハリーばっかり指してて、ママから聞いてた通りにイジワルだ。

「どうしたのかね、ミス・クリミア。何か意見でも?」

「えーと、ハリーばっかりじゃバランス悪くないですか?スリザリンの生徒が構ってもらえなくて寂しそうにしてますよ?ドラコとかザビニとか」

「ほう」

スネイプ先生がドラコの方を向いて、凄く簡単な問題をだした。この人、グリフィンドール嫌いなのかな?

 

 

ホグワーツの地図(不完全品。一部の隠し部屋や隠し扉などが描かれていない)と入森許可証を受け取ったあたしは、金曜日の午後、何も授業が無いのを確認して、ハグリッドの小屋へ向かった。ハリーたちも一緒に。

小屋の前に着くと、中から戸を引っ掻く音と唸り声が聞こえた。でも、めちゃくちゃ怖がってる声だった。

「退がれ、ファング、退がれ」

戸が少し開いて、ハグリッドが出て来た。黒いボアハウンド犬の首輪を苦労して押さえてる。

「えーと、ファングだっけ?【あまり困らせちゃダメだよ?ソファの近くで待ってて?】」

ファングは大人しくなって、言われた通りにソファの近くでおすわりしてた。

「……なんじゃ、今のは。マーミッシュ語でもねぇし、聞いたことのねぇ言葉だな」

「動物言語よ。ダンブルドア校長から聞いてない?」

「動物言語?そうか、お前さんがリアスか。ほれ、よう来たな。さ、入るといい」

あたしたちはハグリッドの小屋に入って、そのままハグリッドが淹れたお茶を飲んだ。あら美味しい。

ロンのお兄さん──ウィーズリーツインズ、通称フレッジョは時々禁じられた森に侵入してるらしい。

あたしの体質をハグリッドに話したら、凄く悔しそうにしてた。自分にその力があったら、もっと面白い生き物と触れ合えたのにって。あたしが森に入りたいって、許可証を見せながら言ったら、タイムラグなく了承してくれた。怪物好きらしいが、趣味が合う人がいなかったんだって。で、そこにヌンドゥとかバジリスクとかマンティコアとか好きなあたしが来たわけだ。そりゃ大歓迎してくれる。

ロンのお兄さんの一人、チャーリーという人がドラゴンキーパーをしているという話も聞いた。是非会ってみたい。

グリンゴッツがどうとかこうとか言ってたけど、別にいいや。関係ないし。




入森許可証
ダンブルドア発行の、禁じられた森へ入るための許可証。ダンブルドア直筆のサインと、生徒自身のサインと、生徒の寮監のサインが書かれている。なお、取得には寮監とダンブルドアの二段階審査が必要。ただし、寮監を通ればダンブルドアはほぼ確実に通る。厳しさが寮監>ダンブルドアのため。寮監同士の厳しさは、マクゴナガル(グリフィンドール)>>スプラウト(ハッフルパフ)>スネイプ(スリザリン)>>フリットウィック(レイブンクロー)となっている。フレッジョも申請したがマクゴナガルに突っぱねられた。ドラコも申請はしてみたが危険だからという理由でスネイプから許可が下りなかった。次年度、ルーナ・ラブグッドも申請して許可が下りる。


ホグワーツ敷地地図(未完成)
ホグワーツの敷地内の地図。ネズミによる物なので、人間では分かりづらいところも描かれているが、一部の隠し部屋や隠し扉などが描かれていない。校長室はなぜか描かれている。秘密の部屋や必要の部屋、賢者の石が守られていた一連の部屋は描かれていない。
全体的に見て、忍びの地図>ホグワーツ敷地地図。もっと頑張れば「≧」ぐらいにはなるかもしれない。


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ハグリッドと

短いです。






後書きの方が長いだなんて言えない。


あたしは、生き物が好きだ。あたしは、生き物が大好きだ。あたしは、生き物が大大大好きだ。

普通の生き物が好きだ、魔法生物が好きだ、神話生物が大好きだ。ニーズルが好きだトロールが好きだマンティコアが好きだ火蟹(ファイア・クラブ)が好きだキメラが好きだ全ての生き物が好きだ。 たとえそれが病気を撒き散らすヌンドゥや魔眼を持つバジリスクや静かに人を殺すレシフォールドや人の幸福を吸う吸魂鬼(ディメンター)でも好きだ。

存在してるかどうかもわからない古き者共(オールド・ワン)深き者共(ディープ・ワン)、ショゴスやインスマスやクトゥルフやダゴンやハスターやクトゥグアやシュブ=ニグラスやアザトースやニャルラトホテプでも好きだ。SAN値が直葬されようと大好きだ。

危険生物が好きだ人にはない叡智を持つ生き物が好きだ人にはない力を持つ生き物が好きだ。

「おめぇさん、わかっとるなぁ!」

だから、こうしてハグリッドと意気投合しているのは間違ってない。

あたしは今、ハグリッドの小屋で彼と魔法生物談議をしている。ドラゴンがどれだけ綺麗でいて勇ましいのか、バジリスクがどれだけ美しいのか、ヌンドゥやグリフォン、ヒッポグリフがどれだけ威風堂々としているのか。あたしたち二人は大いに話し合った。

ハグリッドに案内してもらった森の中には、色々な生き物がいた。森の賢者とも呼ばれるケンタウルス、ヒッポグリフ、オーグリー、ボウトラックル、クラバートにホークランプ、ジャービー、ジョバーノール、ナールに、天馬(ウィングド・ホース)の希少種セストラル。セストラルは、通常は死を見たことのある人にしか見えないけど、実際には少し違う。彼らの持つ消える魔力が、死を見た人には効かないだけで、死を見たことのない人にも姿を見せることはある。ただ、臆病なところもあるから普段は消えてるけど。なぜかあたしにも見えるのよね。死を見たことはないのに。より正確には、誰かの死を見て、認識したことはないのに。

森の奥には、アクロマンチュラの巣があった。人語を解する()蜘蛛だ。ハグリッドが卵から育てたらしい。

あたしが、ハグリッドにとって趣味の合う、気心の知れた友人だと聞いて、アラゴグという巣の主は、あたしがこの巣に来たときは歓迎しようと言ってくれた。アクロマンチュラの糸は丈夫だから、ターザンごっこもできた。蜘蛛の糸(ロープ)持って勇気持って、レッツジャンプ。

森の住人たちと仲良くなれて、とても嬉しい。それに、ハグリッドに厨房の場所も聞けたから、いつでもご飯食べに行けるね。

 

 

あ、木曜日に箒の訓練なんだ。えーと、スリザリンと合同かー。誰かが何かやらかしそう。




今回登場した森の住人は、全て「幻の生き物とその生息地」に載っている魔法生物です。
M.O.M.分類(魔法省分類)
XXXXX
魔法使い殺しとして知られる。訓練することも飼いならすこともできない(またはハグリッドが好きなもの)

XXXX
危険/専門知識が必要/専門魔法使いなら扱い可能

XXX
有能な魔法使いのみが対処すべし

XX
無害/飼いならすことができる

X
つまらない

ケンタウルス
M.O.M.分類XXXX
上半身人間、下半身馬の魔法生物。ヒトに分類されることを拒否した。ヒトとは違う叡智を持つ。

ヒッポグリフ
M.O.M.分類XXX
言わずもがな。実は専門家のみが飼育を許されている。ハグリッドは許可を持っているのだろうか。

オーグリー
M.O.M.分類XX
昆虫や妖精を食べる鳥。鳴き声は死の予兆として恐れられていたが、実はただ単に雨が近づいていたから鳴いていた。

ボウトラックル
M.O.M.分類XX
木の守り手。見かけは樹皮と小枝。昆虫などを食べ、住処に危害を加える木こりなどには長い指で攻撃する。杖用の木材を仕入れる際にワラジムシを供えると、その間だけ大人しくなる。

クラバート
M.O.M.分類XX
木に住む生き物。猿と蛙を合わせたような姿をしていて、危険を察知すると額のイボが赤く点滅する。

ホークランプ
M.O.M.分類X
針金のような黒い剛毛。生物というより植物に近い。庭小人の好物。

ジャービー
M.O.M.分類XXX
大きくなりすぎたフェレットのような姿をしている。言葉を話すが無作法でほとんど適当と思われる。庭小人が好物。

ジョバーノール
M.O.M.分類XX
小さな青い鳥。死ぬ時まで一度も鳴かず、死ぬ間際にそれまで聴いたことのある全ての音を一つの長い鳴き声に込める。音は新しいものから古いものへと進んでいく。

ナール
M.O.M.分類XXX
見た目は完全にハリネズミ。ただ、庭にハリネズミ用に置かれた餌を罠と考え、庭の置物をめちゃくちゃに壊してしまう。

天馬
M.O.M.分類XX-XXXX
種類が多く、「炎のゴブレット」でボーバトンの馬車を引いていたのはアブラクサン(限りなく強力で巨大なパロミノ)と思われる。セストラルは天馬の希少種で、普段から消えてるのかと思ったら実は消える魔力を持ってるだけ。

アクロマンチュラ
M.O.M.分類XXXXX(XXXXXXXXX)
魔法使いが産み出したと思われる人語を解する大蜘蛛。アラゴグと言ってしまえば伝わるだろう。なお、()内のXはロンが付け足したもの。

キメラ
M.O.M.分類XXXXX
獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尻尾を持つギリシャの怪物。討伐成功例は一件のみで、討伐した魔法使いは疲労により天馬から落馬して死亡した。卵は取引禁止品目Aクラスに指定されている。

火蟹
M.O.M.分類XXX
宝石をちりばめられた甲羅を持つ陸亀に似た生物。攻撃されると尻から火を噴く。ペットとして輸出されるが特別許可証が必要。

マンティコア
M.O.M.分類XXXXX
頭はヒト、胴体は獅子、尾は(サソリ)のギリシャの怪物。ギリシャってこんなんばっかり。怪物の宝庫ですよ、ギリシャ。キメラと同様とても獰猛で、獲物を貪り食うとき、小声で嘆きの歌を口ずさむ。既知の呪文をほぼ全て跳ね除ける皮を持ち、尻尾に刺されると即死する。

ショゴス
M.O.M.分類不明
クトゥルフ神話の奉仕生物。古き者共。不定形生物で、スライムのような感じ。いや、ほとんどスライムと言って差し支えない。スライムの元ネタ。テケリ・リ!

インスマス
M.O.M.分類不明
クトゥルフ神話に出てくる架空の村。住人は年をとるごとに魚のような顔になっていく。インスマス面というやつ。想像できない人はFate/zeroのジル・ド・レェを想像すれば近いと思う。ダゴンを崇拝している。ああ!窓に!窓に!

クトゥルフ
M.O.M.分類不明
おなじみクトゥルフ。神話の名前になっているのに順位としては真ん中辺り。普段は太平洋の何処かに沈むルルイエにて眠っ(封印され)ている。

ダゴン
M.O.M.分類不明
父なるダゴン。クトゥルフの従者。ハイドラという伴侶がいる。つまりリア充。

ハスター
M.O.M.分類不明
黄衣の王。クトゥルフの異母弟。名状しがたきもの。

クトゥグア
M.O.M.分類不明
生ける漆黒の炎。ナイアルラトホテップの天敵。ナイアルラトホテップが唯一恐れ、彼の隠れ家を一つ焼き払ったことも。呼び出すのは比較的簡単だが、それ故に間違ったものを召喚することも多い。

シュブ=ニグラス
M.O.M.分類不明
千の仔孕む森の黒山羊。ワルプルギスの夜に祀られる悪魔の原型。夫であるヨグ=ソトースとは互いに不倫し合ってる。

アザトース
M.O.M.分類不明
全能にして盲目白痴の魔王。ナイアルラトホテップの主人だが、ナイアルラトホテップはアザトースのことを養豚場の豚を見るような目で見ている。理性はない。

ナイアルラトホテップ(ニャルラトホテプ)
M.O.M.分類不明
みなさんご存知ニャル子様。這い寄る混沌。千の無貌。「+」と「-」を両立させる矛盾そのもの。旧神の中では唯一封印された描写がない。二次創作では役に立つ存在。数ある出自は矛盾し噛み合わず、どれも正しくどれも間違っている。全てが同時に間違っていて、全てが同時に真実である。「ラヴクラフト最大の誤算」の被害者であり、「日本に見つかった結果」の最たる例。元々日本は「クリスマスに騒いで初詣行って葬式には坊さんを呼ぶ」文化なのでなんとも言えないが。


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トロール

フーチ先生が怖かった。でも優しかった。

飛行訓練の時、クィディッチの審判もやっているというフーチ先生が監督した。鷹とか鷲みたいな猛禽類のような目だったけど。

で、ネビルが緊張しちゃってフライングして落っこちちゃって。フーチ先生が救出して保健室に連れて行った時に、事件が起こった。

ネビルの思い出し玉とやらをドラコが拾い、隠そうとしたのだ。ハリーが対抗してドラコと喧嘩になってたけど。

それにしても、ハリーって飛ぶのが上手いね。ドラゴンやヒッポグリフとかによく乗せてもらってるから、あたしも飛ぶのは苦手じゃないけれど、真似できないほど上手かった。

マクゴナガル先生が連れて行ったけど。退学にはならないでしょ。ママ曰く、マクゴナガル先生は厳格そうに見えて寮杯に飢えててほんの少しだけグリフィンドールを贔屓してるって。

 

 

ハリーがグリフィンドールチームのシーカーに決まった。なんでよ。まあ、あんな飛びっぷりを見せられたら、そりゃあ勧誘したくもなるか……さすがに国際チームには敵わないだろうけど。

で、なぜか次の日、立ち入り禁止の廊下の突き当たりの部屋に、三頭犬が居ると聞かされた。興味はある。会いたい。校長に許可でも取ろうかな?問題なのはなんであたしに言ったのかってことだけど。

「君なら、三頭犬を大人しくさせられるの?」

「もちろん。でもさすがに禁止されてるなら行かないよー?」

こんなんでもモラルは守るのだ。多分。

あと、ハリーが箒を貰ってた。ニンバス2000だそうで。生き物に頼って飛ぶのもいいけど、自分で飛ぶのもいいよね。

 

 

妖精の呪文で、物を飛ばす呪文を習うことに。

やってみると、これがなかなか難しい。後ろの方でハーマイオニーが成功させたみたいだ。気を取り直して。

「〈浮遊せよ(ウィンガーディアム・レビオーサ)〉」

ほんの少しだけ、羽根が浮いた。成功……かな?とか考えてたらハリーの隣で爆発が起きてた。どうやったら爆発させれるのやら。

 

 

ハロウィンパーティーは楽しい。美味しいお菓子や可愛いコウモリたち。かぼちゃランタン(ジャック・オー・ランタン)も綺麗だし。

「トロールがぁぁぁぁ!!」

突然扉が開き、クィレル先生が入ってきた。トロールが地下室に入り込んだらしい。……そういえば、パーバティが言ってたわね。地下室のトイレでハーマイオニーが泣いてるって。

こっそりとディリコールの小鳥を呼び出し、姿現しもどきで地下室まで転移。ハーマイオニーのいるであろうトイレに向かう。

「ハーマイオニー、居る!?」

「え……?リアス?どうしたの?」

「トロールがこっちに向かってるの。さっさと逃げる!」

ハーマイオニーの手を引いてトイレを出る……と、見事にトロールと鉢合わせた。

「【動くな!】」

とっさにトロールを従わせ、ハーマイオニーを送り出す。ハリーとロンが向こうにいるから、彼らもハーマイオニーの危機に気がついていたようだ。で、なぜか早くこっちに来いとジェスチャーしてる。あー、今あたし、襲われてるように見えるのかな?

「【そこに棍棒置いて、ホグワーツの外に出て。誰にも怪我させないように】」

トロールが棍棒を放り捨て、きた道を戻っていく。ちょうど、そのタイミングで先生方が来た。

「何があったのですか」

ハーマイオニーが弁解してる。で、あたしの体質を知ってたマクゴナガル先生は納得してくれて、一人に五点ずつくれた。ハーマイオニーからは五点引いてたけど。

寮に戻ると、ハーマイオニーからお礼を言われた。恥ずかしがってる。可愛い。

 

 

 

そういえば、ホグワーツにトロールが簡単に侵入できるとは思えないけど、なんで彼は入れたんだろう?




ディリコール
M.O.M.分類XX
不死鳥と同じく擬似的な姿現しが使える。マグルもドードー鳥という名前でこの鳥のことを知っており、乱獲により絶滅したと考えている。もちろんそんなことはない。ちゃんと生息している。


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クィディッチ

十一月は寒い。でも、あたしたちは外に居る。その理由は、

「決まったぁー!グリフィンドール、先取点!」

グリフィンドール対スリザリンのクィディッチ試合を見に来たのだ。大半の生徒と先生はいると思う。

「ゴーゴーグリフィンドール!ゴーゴーグリフィンドール!」

みんな、必死になって応援してる。うーん、上からちょっと見てみたかったり。ママかフリットウィック先生に頼んで、動物との五感共有の魔法でも開発してもらおうかしら。

 

 

しばらく見てると、ハリーの箒が変な動きをしているのに気がついた。まるで、乗り手を落とそうとしているような、何かに抵抗しているかのような。

ハーマイオニーとロンはハリーじゃなくて、反対側の観客席を見ている。近くの生徒から双眼鏡を貸してもらい見てみると、スネイプ先生が何やらブツブツ言っていた。……あ、クィレル先生もだ。まばたきしないでいて、目が痛くならないのかな?

あ、クィレル先生がつんのめった。で、スネイプ先生のローブが燃え始めた。栗色の髪が隙間から見えたので、下手人はハーマイオニーだろう。

ハリーの箒が元に戻った途端、ハリーが急降下して着地、四つん這いになって咳き込み始めた。あ、何か吐いた──金色のスニッチ。グリフィンドールが勝った。

 

 

あたしたちは試合終了後の騒ぎから抜け出して、ハグリッドの小屋に来ていた。三頭犬について聞くためだ。ハリーたち三人は、なんの目的で三頭犬が校内に居るのか、あたしは純粋に、三頭犬に会いに行ってもいいかどうか。

「お前さんら、なんでフラッフィーのことを知っとるんだ?」

「会ってもいい?」

「あー、今学期が終わったらな」

よし、あたしの目的は達した。さっさと寮に戻ってペットをモフモフしてよう。そうね──ヌンドゥ(ヌル)でいいかな?大きいし、抱きつけそう。

後ろではニコラス・フラメルがどうとか言ってたけど、あたしには関係ないね。そもそも、世界最高位の錬金術師なんて、会う機会も関わる機会もないでしょ。

 

 

クリスマス。いつもなら家でママとケーキを食べてるんだろうけど、今年はママが遺跡調査で帰ってこれないらしい。なんでも、太平洋の海底に、現存もしくは過去のどの建築様式にも当てはまらない遺跡を見つけたそうで。現在も調査してるみたいなんだけど……なにやら冒涜的な本が送られて来た。奥付けには、イタリア語訳されたものをもう一度英訳したと書かれてた。題名が……『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』だったかな?元々は『ルルイエ異本』だったと思うんだけど……まさか魔法省神秘部、死せるルルイエ、見つけちゃった?よっしゃ猟犬とかショゴスとかむぎゅーって出来るかも。




明記しておくが、英霊の座やら魔術協会やら聖堂協会やら聖杯やら聖杯戦争なんてものはない。衛宮家やらブラウニーやらアインツベルンやらうっかり家やらは並行世界の一つということで魔法使いとして存在して居る可能性はあるが、Fateそのものにつながるものはない。あったとしても神秘部ぐらいだ。虚淵時空にしてたまるか。なお、宝石翁はこの世界にも遊びに来てる模様。


エリザベート・クリミア
純血の魔女。リアスの義母。大らかでサバサバしていて人を惹きつける。神秘部所属。ホグワーツ在学中はレイブンクローだった。だいぶ知識欲がある。冒険やら探検やらも好きで、グリフィンドールの適性も持ってた。魔法の開発ができるが、誰か一人しか使えないオーダーメイド魔法の方が多い。独身でスネイプらと同期。ジェームズたちとも一応知り合い。ジェームズ、シリウス、リーマス、ピーター、リリー、セブルス、レギュラスにオリジナルの魔法をプレゼントした。杖は松の木に一角獣のたてがみ、三十センチで好戦的。
名前の由来はエリザベート・バートリー。愛称はエリザ。


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クリスマス

日間ランキング23位行ったー!みなさまご支援ありがとうございます!こんな作者の作品ですが、これからもよろしくお願いします!


クリスマスに学校に残ってる人は少なかった。スリザリンはみんな帰って、グリフィンドールも、ハリーとウィーズリー一家、あたしだけ。で、なぜか教師に混じってご飯を食べることに。ハグリッド、フィルチさん、マクゴナガル先生と魔法生物やら猫やらについて話をした。ダンブルドア校長に『螺湮城教本』の話をしたら、出来る限り読まずに大切にとっておけと言われた。ママが送ってきた本ということで、何が仕掛けられて居るか校長でもわからないらしい。ママのせいで初代悪戯仕掛け人の悪戯が悪化したとかなんとか。とにかく、世界一の魔法使いである校長にも、ママの思考回路は読みきれないということ。

クリスマス当日には、ハリーに透明マントが贈られてきた。元々はハリーのパパの物だったんだって。ママからは新しい魔法が贈られてきた。この前頼んだのに、造るのが早い。部屋に戻り、早速試してみることにした。

 

 

今回頼んだ魔法は「五感共有魔法」。特定の生物と自らの五感を共有させる魔法。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。どれか一つだけ共有させることも、全て共有させることも出来る。そんな魔法……の、はずが……なぜか、憑依魔法に変わっていました。こっちの方が造りやすかったらしい。

簡単に言えば、基本的には五感共有、慣れてくれば憑依も可能と言うことだ。ただ、あたしの身体は憑依中無防備だし、その間に殺されでもしたら、五感共有中ならそのまま死亡、憑依中だと対象から抜け出た時点でゴースト化。ハイリスクな魔法だ。それに、憑依と言うことはあたしのペットを危険に晒すことになる。

だからなのか、もう一つ呪文がついてきた。

使い魔作製魔法。意志を持たない、従順な使い魔を生み出す魔法。器が破壊されるか、器に込めた魔力が切れない限り限界し続けるし、憑依可能だそうだ。では早速。

「〈使い魔作製(クレアチオ・ファミリア)〉」

鳥型の使い魔を出す。使ってみてわかったが、使い魔は魔法生物や人間は無理なようだ。

「〈見せてちょうだい(ポゼッション)〉」

続いて、その鳥型使い魔と視覚を共有する。目を瞑ると、鳥の視界が見えて、目を開けてると視界がダブる。うん、目を閉じてよう。

「校庭飛んできてー」

鳥に指示を出す。前に見た守護霊とは違う、水晶のような鳥の使い魔が窓から空に羽ばたいた。

 

 

「おおー」

ヒッポグリフや天馬に乗せてもらって空を飛んだことはあるけど、こうして鳥の視点で見るのもなかなか。うん、自分の意思で、自分の思うように飛んでみたい。頑張って、憑依呪文を完璧にしなくっちゃ。

 

 

あと、最近気になることがある。キーパーから知らされたことなんだけど、パイプの中を探索させたネズミが何匹か居なくなってるらしい。あと、あたしに愛でられてスヤスヤ眠っている自分が映っている鏡。鏡の方はどうでもいいけど、ネズミが消えた原因は気になる。……まさか、パイプの中に何か潜んでる?

消えたネズミたちが探索して居たパイプは同じ場所で、とある女子トイレ──嘆きのマートルが居るトイレの近くらしい。今度、調べに行こう。




オリジナル魔法
見せてちょうだい(ポゼッション)
憑依魔法。五感共有も可能。むしろ五感共有が本来の目的。五感を特定の生物と共有する。ただし基本的にダブるため、集中するか、本体の五感が働かないようにすることが必須。憑依すると完全に動かせる。憑依された方の意識はあり、術者が離れたあと、すぐに動ける。魔力の込め方次第では憑依対象の意識を眠らせることも可能。人間、魔法生物、普通の生き物、使い魔問わず。

使い魔作製(クレアチオ・ファミリア)
使い魔作製魔法。クリスタルのような使い魔を作製する。魔力の込め方次第で色や見た目材質の変換可能。込めた魔力が切れるか、器が破壊されると消滅する。術者の命令に従い、命令を受けた後は自動で動くため、消費魔力は作製と燃料用のみ。魔力補充可能。作製できるのは普通の生き物のみ。魔法生物、並びに人間型の使い魔は作れない。

双方ともに作成者はエリザベート・クリミア。使用できるのはリアス・クリミアのみ。


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ドラゴン

もう少しの間クリスマス休暇は続くけど、あたしの興味はパイプの中で消えたネズミたちに移っていた。

ネズミが消えると言うことは、多分何かしらの生き物が居ると思うんだけど、何が居るのかわからない……まあ、来年調べれば良いか。

 

 

休暇が終わり、ホグワーツに生徒たちが戻ってきた。あたしは勉強の他に、憑依を完全にしようと頑張ってたけど、調子が良い時は一時間ぐらい、悪い時でも十分ぐらいは憑依できるようになった。

小さな虫の使い魔に憑依して、フラッフィーに会いに行ってみたりもした。気がつかれなかったけど。そしたら、足元に扉があるのに気がついた。まだその先は調べてないけど、ニコラス・フラメルが関係してるのかな?

 

 

グリフィンドールがクィディッチで首位に立った!でも、その後でハリーやロンが何か深刻そうな顔をしてるけど、何かあったのかな?

 

 

……ハグリッドの怪物好きは知ってるし、あたしも怪物とかは好きだけど、まさかここまでするとは。ハグリッドがノルウェー・リッジバックの卵を持ってた。本来はドラゴンキーパーという、魔法省が認めた人物しか扱えない。あとは、何故か魔法省から許可をもぎ取ってきたママ(それとあたし)とか。ママは一体何者なんだろう。

「とりあえず、その卵が孵ったら校長先生に報告すること!ノルウェーに送ってもらわないと。ドラゴンの赤ちゃんは楽しみだけど、それはそれ、これはこれ。ハグリッド、わかった?」

「あ、ああ、わかっとる。だが、少しの間ぐらいなら育てても構わんだろう?」

「だ・め・で・す!法律違反!ママがここにいたら大変なことになってると思うけど?」

「エリザには言わんといてくれ。嬉々としてお仕置きに魔法を繰り出してきそうだ」

あたしがここまで注意するのには、法律以外にも理由がある。リッジバック種が危険だからだ。ハンガリー・ホーンテイルよりは安全だけど、陸上に住むほとんど全ての大型哺乳類を襲い、水中生物すら襲ってみせる。子鯨を攫ったとすら言われてるの。それに、ドラゴンの中で一番早く火を吐くことができるようになる。

で、結局今の内に校長に報告することになった。ハリーたちにもバレたけど、ダンブルドア校長が、

「まあ、卵が孵って一ヶ月ほどなら構わんよ。なにせ、貴重な生命の神秘を見れるのじゃ。それに、リアスが居るのなら、安全じゃろう」

とのこと。信頼されてるのはわかるけど……はぁ。

 

 

ハグリッドから卵がそろそろ孵ると手紙が来た。

薬草学が終わった途端、四人でハグリッドの小屋に向かう。途中でドラコに聞かれた可能性があるけど、こっちは校長から許可もらってるし大丈夫。

テーブルの上に置かれた卵は、すでに亀裂が走っていた。中から叩くような音が聞こえる。唐突に、卵が割れた。中から出て来たのは黒いしわくちゃのドラゴン。あら、結構可愛い。

「よしよし、ちゃんとママがわかっとるな。こいつの名前は……そうだな、ノーバートだ」

「ハグリッド、この子女の子だからノーベルタの方が良いよ?」

赤ちゃんドラゴンを抱き上げ、性別の確認をする。ちゃんとメスだった。突然、ハグリッドが窓に駆け寄った。誰かが覗いていたらしい。おおかた、ドラコだろう。ツンデレなのか構ってちゃんなのか……。

 

 

一ヶ月の間に、ノーベルタはだいぶ大きくなってた。これなら、一匹でも生活していけるだろう。

ドラコは先生に報告したらしいが、事前にダンブルドア校長に報告していたことをその先生から言われたようだ。意気消沈していた。




ハリーたちの罰則フラグが折れました。

しかし、ハリーたちは残念ながら罰則を受けました。ギリギリまで図書室で勉強してて帰ろうとしたら太った婦人が居なかったので。
罰則メンバー
ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル、ドラコ


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試練

何があろうと、試験は必ずやってくる。ハーマイオニーが緊張とワクワクが混じった顔をしてた。

筆記試験は大方問題ない……はず……うん、平気なはずだ。

実技試験はなんとかなった。スネイプ先生の試験での監視は緊張したけど。

「思ってたよりずーっと易しかったわ」

ハーマイオニーが羨ましい。

試験が終わり、あたしは湖畔に座ってた。湖に水中人(マーピープル)や大イカが居ると話を聞いたから、会えるかなと思って。ハリーたちがハグリッドのところに駆けて行ったけど、何かあったのかな?

 

 

夜、何かが気になって目が覚めた。この時間に起きてるのは校則違反だから、トンボの使い魔を作って談話室を覗いてみる。もちろん、色は黒に変えて。

「行かせるもんか」

ネビルの声だ。透明マント(だっけ?)を持って居るハリーたちとネビルが相対してる。

「〈石になれ(ペトリフィカス・トタルス)〉!」

ハーマイオニーの呪文で、ネビルが金縛りにあう。大丈夫かな?

そのまま三人が出て行こうとしたので、使い魔をハリーの服の背中にくっつけておく。

 

 

三人はフラッフィーのところまで行って、彼を眠らせた後に仕掛け扉を開けた。あの先に用があるんだろう。スネイプ先生がどうとか言ってたけど、スネイプ先生、研究室に居るって通りすがりの野良ネズミから聞いたんだけど?

ハリーは扉の中に入って行った。もちろん、使い魔をくっつけたまま。

植物の上に着地した見たいだけど、嫌な予感がする。

「動かないで!私、知ってるわ!これは『悪魔の罠』よ!暗闇と湿気を好み、太陽を嫌う!」

「そこまで知ってるんだったらさっさと火をつけて!」

「でも薪がないわ!」

「君は魔女じゃなかったのか!」

火種がないなら杖を使えばいいじゃない。

「あっ……ご、ごめんなさい!〈燃えよ(インセンディオ)〉!」

火を出して悪魔の罠を脱出する。ちゃんと鎮火はさせてた。

 

 

そのあとも、鍵が鳥として飛んでる部屋だとかチェスの駒として参加しなくちゃいけない部屋だとかがあった。使い魔越しに見て居るあたしからすればアトラクションみたいな感じだけど、実際にその場にいるハリーたちからすれば試練以外のなんでもないだろう。現に、チェスの部屋ではロンが脱落した。

次の部屋にはトロールが横たわって居た。誰かに気絶させられたのかな?

次の部屋には、七つの瓶が置かれて居た。どれか一つが前に進め、どれか一つが後ろは下がれる。他は毒かお酒。ハーマイオニーは少し悩んでから、答えを導き出した。すごいと思う。

 

 

……さて、このまま見てるだけってのもあれだし、この先に何があるのかわからないんだし、ハリーの手助けでもしてあげるとしよう。

「【キーパー、おいで】」

キーパーを呼んで、ハリーが進もうとしている部屋にネズミたちを突撃させる。ちゃんと保護呪文を掛けた上で。

「【お願い、友達が大変な目にあうかもなんだ。助けてあげて】」

キーパーは頷くと、ネズミたちを引き連れて消えて行った。

使い魔に視点を戻すと、ハリーがクィレル先生──それと、その後頭部についてる蛇顔と対峙してた。




気になること。
死の呪文は生きてるものにしか効かない。なら、生き物に死の呪文が当たる前に変身術で石像などに変えれば、死の呪文は凌げるのか?また、死体に変身術を使って物に変え、その後生き物に変身させたら生きているのか。それと、変身術で物を生きた人間に変身させられるのか。


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ネズミ

「ハリー・ポッター……このありさまを見ろ。ただの影と霞に過ぎない……誰かの身体を借りてしか形になれない……この数週間は、一角獣の血を飲むことで、俺様の力を取り戻して行った」

蛇顔が話す。俺様って。ナルシスト?

……でも、一角獣を殺したのは許せないかな。あんなに綺麗で可愛くてかっこよくて、それでいて気高く儚い生き物を殺すなんて。生きるためとはいえども、あたしは許せない。……なぜか、あたしが死にかけたら向こうから血を差し出してくる気がしたんだけど、なんでだろう?

「捕まえろ!」

蛇顔がハリーを狙う。あたしは使い魔に憑依して、蛇顔──正確には、クィレル先生の顔面に張り付いた。

「な、なんだこれは!ええい、邪魔だ!」

トンボだし、直ぐに払いのけられる。でも、少しぐらいの時間稼ぎはできた。

チューチューと音がする。小さな、それでいてしっかりとした足音が聞こえてくる。

部屋にネズミたちが突っ込んできた。ネズミたちはクィレル先生にぶつかり、よじ登り、齧り付く。一匹がアキレス腱を噛み切ったのか、先生のバランスが崩れた。

「なんだこのネズミたちは!次から次へと!〈燃えよ(インセンディオ)〉!」

ネズミたちを狙う炎は、あたしが腕に突進することでほんの少しだけ狙いが逸れる。ネズミへの被害はない。

「あのトンボを狙え!あれが司令塔だ!」

「は、はいっ!」

あたしに向かいクィレル先生が手を伸ばす──けれど、その手は届かない。もう一方のアキレス腱も切られ、崩れ落ちたからだ。そして、ハリーが押さえ込んだ瞬間、ハリーが触れている位置が灼け爛れ始めた。

「う、腕が!私の腕があぁぁぁぁっ!!」

ハリーは驚いて手を離してしまう。しかし、クィレル先生が動き出すことはなかった。ネズミたちがクィレル先生を包み込んだからだ。見たくはないけど、あの中ではクィレル先生が大量のネズミたちに齧られ、咀嚼され、飲み込まれて行っているのだろう。当然の報いだ。あたしの友達に手を出して、あの森の生き物を、一角獣を殺したのだから。それも、邪な目的のために。

ああ、どうせなら軍隊アリか火蟻(ファイアーアント)でも向かわせればよかった。そうすれば、より小さい分苦痛が続いて、毒によるダメージと、不快感その他を与えることができたのに。

使い魔に指示を出す。あの中に突っ込んで行って、クィレル先生を食ってこい。

トンボは肉食だ。ついでに、魔力を付与してさらに大きくする。まるで、原始の頃のトンボのように。

憑依を解き、クィレル先生が喰われゆく様子を眺める。うん、気色悪い。泣き喚いて、懇願して、錯乱して。

 

 

数分もせずに、クィレル先生は骨だけとなった。骨と服以外は全て、使い魔とネズミたちの腹の中。蛇顔は途中で消えたけど、どこに逃げたのやら。今度見かけたら必ずとっちめる。

使い魔に再び憑依して、ハリーを捜す。ハリーは気絶していた。ポケットからは綺麗な赤い石が転げ落ちている。ふと、その石を拾い上げる人影が。

ダンブルドア校長だ。校長は石を懐に入れると、こちらを見つめてきた。

「明日、校長室に来てくれるかのう?話したいことがある。合言葉は『キ○コの山』じゃ」

……ごめんなさい校長室の場所わからないです。でも伝えられないし、校長先生ハリー抱えて行っちゃうし。

……マクゴナガル先生に聞けばいいか。




ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの召喚セリフが可愛すぎる件。


この作品での「死の呪文」について。
感想でもいくつか見解をお聞きしましたが、自分で色々考えてこんな感じになりました。
魂魄のうち、魂を吹き飛ばす魔法。
ブゥードゥーゾンビでは、薬を使って魂を取り除き、リミッターの外れた(肉体)を使役します。で、このことを踏まえて、魂魄から魂を吹き飛ばすとどうなるのか?
おそらく、魂が無理やり引き剥がされることで強制的に魄の機能が停止させられ、表面上はなんの異常もない死体が出来上がる、と解釈。
恐怖により死亡するという解釈もありましたが、それだと心臓麻痺に近い死に方になると思うんですよね。

今回はリアスの黒い一面が見え隠れしました。家族(母親であるエリザベートや自分が知り合った魔法生物たち)を殺されると、真っ黒に染まって相手を苦しめて殺しにかかります。今回は禁じられた森の一角獣だったため、ネズミに喰われて死ぬことになりましたが、まだマシな方。リアスのペットもしくはエリザベートを殺した場合、リアスのペットたち(バジリスク、ドラゴン各種、吸魂鬼、ヌンドゥ、レシフォールド、マンティコア、キメラなどを含む)に一斉に襲いかかられます。そして、死にかけたところで不死鳥によって癒され、そしてまた苦しめられる。さて、五年のピンクガマガエルはどうなってしまうのか、乞うご期待!


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校長先生との話

次の日、マクゴナガル先生の案内で校長室の手前に到着した。ガーゴイルの像が門番らしい。

「『キノ○の山』」

……確か日本の国民的お菓子だっけ?なんでこれが合言葉になってるの?

ガーゴイルが飛び退くと、螺旋階段が現れた。乗ると、自動で動く。

てっぺんには樫の扉。グリフィンをかたどったドアノッカーが付いている。

あたしはドアを叩いた。

「おお、入りなさい」

ドアを開けて中に入る。歴代校長の写真やよくわからない道具で溢れている。ドアの近くには金の止まり木、そして不死鳥が居た。

「この子は、校長先生のペットなんですか?」

「そうじゃよ。名をフォークスと言う。フォークスとはとても運命的な出会いをしたのじゃが、それ以来、わしのペットとして働いてくれておる。不死鳥がペットとしてどれだけ優秀かは、君ならわかるじゃろう?」

校長先生は目をキラキラと輝かせながら、楽しそうに言った。

「さて、わしが聞きたいことはいくつかある。まず、君と繋がって居たあのトンボについてじゃ。魔力で形作られてることはわかったんじゃが、正体が掴めぬ。教えてくれるかのう?」

「ママに作ってもらった使い魔作製呪文です。人や魔法生物以外ならどんな形でも取れますよ。作り出したあとは大きさと色や見た目材質ぐらいしか変更できませんが」

「なるほど、エリザベートの呪文じゃったか。彼女はホグワーツに居た時から、呪文の創作が得意じゃった。わしや先生方を驚かせるような呪文を創り、わしやヴォルデモートですら思い浮かばぬような呪文も作り出した。思えば、彼女がレイブンクローに入ったのも、彼女が神秘部に就職したのも、必然なのかもしれんのう……一度、見せてくれるかな?」

あたしは頷き、杖を構えた。

「〈使い魔作製(クレアチオ・ファミリア)〉」

クリスタルのような鳥が杖から現れ、校長先生の肩に止まる。校長先生はそれを撫で、

「いい出来じゃ。守護霊のように吸魂鬼やレシフォールドに対する特攻はないようじゃが、物理攻撃ができるみたいじゃのう」

と言った。

「さて、二つ目じゃ。君はなぜ使い魔と繋がって居たのか。これには、二つの意味がある。なぜあの場を見て居たのか、そして、どうやって繋がって居たのかじゃ」

「ママの呪文」

「……感覚の共有かね?いや、彼女のことじゃ。悪ノリして感覚共有を憑依にグレードアップさせてもおかしくはない」

ママのことを良く理解していらっしゃるようで。

「あの場に居た理由は、夜中に目が覚めちゃって。それで、どこかに行こうとしているハリーたちを見つけたので、尾行させて居たんです」

ダンブルドア先生は顎に手を当て、何かを考える。

「次で最後の質問としよう。あの場に居たネズミの大群は?なぜ、ネズミたちはクィレル先生を喰らっていたのかね?」

「ネズミたちに指示を出したのはあたしです。もしかしたら、ハリーが危険かもって。そして、クィレル先生が一角獣を殺したことを知って、気づいたら喰わせてました」

ダンブルドア先生は思案し、朗らかに言った。

「よろしい。話してくれてありがとう。これからも、ハリーのことを助けてやってくれるかね?」

あたしは頷く。友達だしね!

「さあ、寮へお帰り。後でお菓子を送ってあげよう。ペット用のも」

やった!美味しいお菓子!

あたしはお菓子を心待ちにしながら寮へと帰って行った。



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一年の終わり

校長先生との談話から二日後、ハリーが起きたと連絡があった。ちなみに学年度末パーティの日。

あの日、賢者の石(ダンブルドア先生に聞いた。壊したらしい)をめぐる試練のことはみんなが知っている。公には秘密ってことになってるけど。でも、あたしが送ったネズミたちがクィレル先生を喰らったことだけは秘密になっている。

 

 

大広間は銀と緑のスリザリンカラーでいっぱいだった。ロンの正面に座り、ご飯を待つ。パーティの時は、とっても豪勢な料理が出てくるから楽しみだ。

と、徒然と考えていると、扉を開けてハリーが入ってきた。ほんの少しの間、みんながおし黙り、また話し始める。

ハリーが席についてから少しして、校長先生が現れた。

「また、一年が過ぎた!

さて、ご馳走にかぶりつく前に、ほんの少し、この老人の言葉を聞いてもらいたい。一年が過ぎ、君たちが頭を空っぽにしてしまうかもしれぬ夏休みがやってくる。夏休み中は魔法を使ってはならぬ。しかし、ちゃんと宿題はやるように。

ではここで、寮対抗杯の結果発表とまいろう。四位、グリフィンドール、三百二点。三位、ハッフルパフ、三百五十二点。二位はレイブンクローで四百二十六点。四百七十二点でスリザリンが一位じゃ」

スリザリンから歓声が上がる。うーん、三位と五十点も差があるのか。残念。

「さて、スリザリンは褒めてやりたいのじゃが、ここ最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

スリザリンの歓声が止まった。全員がダンブルドア校長に注目している。

「駆け込みの点数をいくつか与えよう。まずはロナルド・ウィーズリー君。ここ何年か、ホグワーツで見ることができなかったような、素晴らしいチェスの勝負を見せてくれた。よって、グリフィンドールに五十点を」

グリフィンドール、特にウィーズリー一家から歓声が上がった。

「僕の弟だ!マクゴナガルの巨大チェスを破ったんだ!あいつは、チェスならうちの誰よりも強いから──」

パーシー、弟さん大好きですね。

「歓声を上げるのはまだ早い。次にハーマイオニー・グレンジャー嬢に。危機的とも言える状況下において、冷静な思考と論理での対処を称え、五十点を与えよう」

さらに歓声が上がった。逆に、他の寮──特にスリザリンからは、だんだんと笑みが消えて行った。

「三番目はハリー・ポッター君。その完璧な精神力と、並み居る試練を突破したこと。そして、素晴らしき彼の友達と信頼を称え、六十点を、与えようと思う」

さらに歓声が上がった。最下位から二位まで上昇したしね。

「さて、次に称するはリアス・クリミア嬢じゃ」

え?あたし?

「彼女は自らの友を離れた所からであろうと助けようとした。否、助けたと言っていいじゃろう。よって、十点を与えたい」

耳が痛くなるほどの歓声が周りから上がった。スリザリンと並んで同点一位だ。さっきから右に座っているジョージといつのまにか左に移動していたフレッドに肩をバンバン叩かれている。

「勇気にも色々ある」

ピタリと、歓声が止んだ。

「敵に立ち向かっていくのは勇気がいる。しかし、友に立ち向かうのは同じくらい勇気がいるじゃろう。そこで、わしはネビル・ロングボトム君に十点を……与えるとしよう」

耳が壊れたかと思った。なんの音も聞こえなくなるぐらいの歓声がグリフィンドールから上がったからだ。ネビルは上級生から揉みくちゃにされている。ほっぺたをムニムニしておいた。柔らかかった。

「さて、わしの計算に狂いがないのであれば、広間の飾り付けをちと、変えなければならんのう」

ダンブルドア校長が手を叩くと、スリザリンカラーはすべて、金と紅のグリフィンドールカラーに変わった。

料理はとても豪華だった。世界各国の祝い料理。さらに、ダンブルドア先生が厳選した美味しいお菓子・デザート類。みんなが笑いながら、それらを掻き込んだ。

 

 

試験の結果は上々。ハーマイオニーが百点満点中百二十点なんてとんでもない点数を出してたけど、十五年ほど前にもそんなことがあったらしい。

あたしたちは汽車に乗ってキングズ・クロス駅へと向かっていった。

九と四分の三番線にはすでに多くの保護者たちが集まっていた。その中に、ママの姿も見える。

プラットホームに下りると、ママに抱きしめられた。

「お帰りなさい。ホグワーツはどうだったかしら?」

「ママが規格外だってことは良くわかったけど?」

多分、校長先生以外で一番敵に回しちゃいけないのはママだと思う。

「さあ、帰りましょう?聞きたいことも話したいこともたくさんあるのよ?」

「あたしも!」

あたしはママに連れられて、姿眩ましで懐かしの我が家へ帰ってきた。

 

 

「で、呪文のほどは?」

「完璧な出来よ!ありがとう!」

「どういたしまして。こっちも喜べる知らせができたらよかったんだけどね……」

どうしたんだろう?ママが少し落ち込んでる。

「いや、ルルイエらしき建造物が見つかったって話を手紙に書いたでしょ?多分ルルイエで正解なんだろうけど……クトゥルフやダゴン、深き者共の影すら見つけられなかった。生活臭はしてるんだけどね。ヨハンナ曰く、私たちが認識出来ない裏っ側に居るようなんだけど……認識阻害結界を破る呪文を構築しない限り、これ以上の探索が無意味なのよね。成果はあなたに送った螺湮城教本のみ。しかもあれって不完全な複製品よ?青髭こと、ジル・ド・レェが所持していただとか彼の友人兼アドバイザーだったプレラーティの物だとか言われてるから、コレクターは嬉しいでしょうけど」

ヨハンナ……ああ、結界やら錬金術やら悪魔召喚術について詳しいあの人か。

「しかも、帰り道で巨大な魔獣にあってね。もはや戦うことすらおこがましいレベルのやつ。確実に神話の時代から生きてる種ね……古い傷があったし、もしかしたら、コインヘンかも?」

コインヘン。あたしの杖に使われてる海獣クリードと戦い、勝利した海獣。太平洋に居たとは。

「んで、話を戻すとね?一部の馬鹿が逆転時計(タイムターナー)使おうとか言い出すのよ。失敗作の逆転時計。あれなら短い物なら五分以内、長くても丸一日もすれば勝手に帰還するから」

ママと色々な話をしたあとは、ペットのみんなを集めてモフモフしまくった。あー癒される。

 

 

……クィレルの最後を、ママは知ってた。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ママは何かを隠してる。ダンブルドア先生と一緒に。それでも、あたしはママを愛してる。

 

 

……パイプの先に何が居るのか、調べないとなぁ……。




オリ・パロキャラ紹介
ヨハンナ・ファウスト
出典:フラウ・ファウスト
神秘部所属のドイツ人女性。学者気質で知りたがり。杖は内部だけが原因不明の火で燃え尽きたバオバブに、ハーピィの羽毛、19センチ、捻デレとしか言えない性格。
ゲーテの有名なお伽話(フォルクスメルヒェン)の主人公、ファウスト博士そのもの。ただし、こちらの世界ではゲーテの「ファウスト」の元ネタになった人物の一人。だが、メフィストフェレスと契約して居るのは彼女のみ。マグルの知識にも詳しく、主に錬金術や悪魔、結界方面で神秘部で活躍している。神秘部にいる理由は「面白そうだしなんかやるなら巻き込ませろ」とのこと。

逆転時計について。
「ハリー・ポッターと呪いの子」では、失敗作の逆転時計が登場します。それにより、逆転時計がその気になれば作れることが判明。ただし優れた者でないと、ハーマイオニーが使ったり神秘部に保存されてるような、勝手に帰還しない完全な逆転時計は作れない模様。
オリジナル設定として、完全な逆転時計(ハーマイオニーが使って居たような砂時計タイプ)でも、時間を巻き戻したのと逆方向に時計を回せば、元いた時間までは戻れるようになっています。
ちなみに、呪いの子で逆転時計を所持していたのはセオドール・ノットでした。


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二年目には蛇を拾い
二年目の始まり


新章突入。みんなから弄られるあのナルシスト先生が登場!


あたしが家に帰ってきてから、もう数週間もたつ。宿題したりペットたちをモフモフしたり宿題したりママに使い魔呪文を改良してもらって喋れるようにしたり(でも使い魔は魔法は使えない)トランプしたり。

ママの同僚の人たちも何人か遊びにきた。みんな気さくな人たちで、楽しそうに笑ってた。目の下に隈があったり目が死んでたりする人もいたけど。

 

 

新しい教科書のリストが届いた。大量にギルデロイ・ロックハートって人の本がある。誰だろう?

 

「お、これがホグワーツの教科書リストか?」

 

突然、リストが取り上げられる。銀髪でメガネをかけた女性──ヨハンナ・ファウストさん。ママの同僚だ。

 

「ひーふーみー……うわ、七冊もロックハートの本があんのか。おいおい、ロックハート(あれ)の本使うぐらいならうちの悪魔貸してやった方が建設的だと思うんだが?」

 

教科書リストを見ながらロックハートさんをバッサリ切り捨てるヨハンナさん。

彼女は本を読むのが好きな知識オタクだけど、ロックハートさんが苦手なのかな?

 

「んー?私がロックハート(こいつ)を嫌ってる理由か?そりゃもちろん、こいつの手柄がでっち上げだからな」

 

「でっち上げ?」

 

「ああ、確認もした。あとは取っ捕まえる理由と証拠があれば平気なんだが……その証拠が見つからねぇ。部下のヴァーグナーが探してるんだが……本当に手柄を立てた奴は全員記憶を失ってる」

 

あらら、ロックハートさんって結構ひどい人。

……あれ?

 

「そういえば、なんでヨハンナさんいるんですか?」

 

「あ、忘れてた。エリザに頼まれてたことがあるんだよ。お前をダイアゴン横丁に連れて行ってやってくれってな」

 

 

水曜日、あたしたちはダイアゴン横丁に居た。ママは魔法の研究のために部屋に篭りっきり。代役としてヨハンナさんが呼ばれたらしい。

 

「久々に来たが、相変わらず賑わってるな。まだオリバンダーの店あるのか?」

 

「ありますよ?ほらそこに」

 

「……あの爺さん百年前にも居たんだが……どんだけ長生きなんだよ」

 

ヨハンナさんの驚きを無視して、あたしたちは買い物を済ませていく。教科書は最後。あんな量を持つのは面倒。

途中でドラコやウィーズリー一家、ハリー、ハーマイオニーを見かけた。みんなも今日、買い物に来てたみたいだ。

 

「よし、あとは教科書だけか。フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店だな」

 

ヨハンナさんの言葉に従って、書店に向かう。近付けば近付くほど、人が増えて行っている。

 

「……なんでこんなに混んでるの?」

 

「私に聞くな。

……いや、書店の上階の窓見てみろ」

 

窓?……あ、ギルデロイ・ロックハートのサイン会?だからこんなに混んでるの?迷惑な人。

あたしは必要な教科書を取って、列に並んだ。少し先にはウィーズリー一家とハリー、ハーマイオニーが並んでる。

 

 

「もしや、ハリー・ポッターでは?」

 

突然、声が聞こえた。ロックハートさんが立ち上がり、ハリーの方に向かって行ってる。

 

「へぇ、あの黒髪のがハリー・ポッターか。意外と普通だな」

 

ヨハンナさんは呑気にハリーの観察をしてる。

ハリーは正面に引っ張りだされ、握手しているところを写真に撮られてた。

 

「この九月から!私はホグワーツ魔法魔術学校にて!『闇の魔術に対する防衛術』の担当教授職を!お引き受けすることになりましたぁ!!!」

 

……え?あの迷惑そうな人が先生に?……嫌だなぁ……。ヨハンナさんも同情か知らないけど肩に手を置いてきてるし。

取り敢えず、サインはどうでも良いので教科書を買ってくる。

戻ってくると、赤毛のロンに似た人と、金髪をオールバックにしたドラコに似た人が喧嘩してた。ヨハンナさんはその周りで賭けの元締めをしていた。何してるんですかあんたら。

喧嘩は結局、ハグリッドが仲裁して、賭け金はヨハンナさんが全取りしてた。

 

「ヒッヒッヒ、良いお小遣いになった」

 

「うわ、汚い大人だ」

 

金の入った袋を両手に抱えながら笑うヨハンナさんと彼女についていくあたし。今日はこのまま家に帰る。数日後には、またホグワーツでの生活が始まるのだろう。




ヨハンナさんも登場。多分パロキャラの中では優遇される。ちなみに前話で、「逆転時計使おうぜ!」的なことを言ったのはこの人の部下のヴァーグナー。あと親友一人とライバル一人。


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ホグワーツのパイプの先

ママとヨハンナさん、それになぜか出てきたメフィストに見送られて、ホグワーツ特急は走り出した。

でも、心配なことが一つある。ハリーとロンが見当たらない。ハーマイオニーとドラコ(無理やり)に手伝ってもらって、列車内すべてを捜したけど見つからなかった。車内販売の魔女さんにも聞いてみたけど、見ていないらしい。ホグワーツ特急が出来てからの百九十年間、在学生が乗り込まなかったことは滅多になかったそうだ。……ちょっと待って。魔女さん、百九十年間生きてるの?

 

 

 

結局、ハリーたちは見つからないままホグワーツに到着してしまった。一年生の時とは違って、セストラルの馬車に乗ってホグワーツへと向かった。セストラルのことは同乗者は気づいていない。あたしだけが見えてるみたい。……でも、ネビルは見えてるみたいなんだよなぁ……ビクビクしてる。

 

 

 

組分け帽子の歌は、去年とは異なっていた。大まかな内容は同じでも、細部が全く違う。

 

「クリービー、コリン!」

 

カメラを持った男の子。彼はグリフィンドールに決まるととても嬉しそうにして、キョロキョロし始めた。誰かを捜してるみたいに。

 

「ラブグッド、ルーナ!」

 

「ふーむ……レイブンクロー!」

 

「やたっ!計り知れぬ叡智とは、レイブンクローの宝なり♪」

 

どこかふわふわした女の子。なんというか、将来いい友達になれそうな気がする。あと、神秘部の人たちに雰囲気が似てるかも。

この後も組分けは続いて行って……

 

「ウィーズリー、ジネブラ!」

 

「ふむ、これはこれは…………よろしい、グリフィンドール!」

 

おお、ウィーズリー家がまたグリフィンドールに。これでウィーズリー家は全員なんだっけ?

……後ろの方から噂話が流れてきた。ハリーたちが空飛ぶ車に乗って墜落して、退学処分になったって。うーん、本当なら残念。いい人だったのに。

 

 

 

まあ、本当に退学処分になったわけではなく、処罰が与えられただけだったみたい。

ハリーたちが談話室に来た時、一部の生徒──ウィーズリーツインズとよくいる生徒たちがハリーたちを持て囃し始めた。

うるさいし、パーシーが怒っているようだったので、雷が落ちる前に部屋に避難。部屋は今年も一人部屋。早速、野良ネズミの一匹が報告に来た。可能な限りの探索はした、だけど、例のパイプの先に行ったネズミは戻ってこない。

それを聞いて、この際だから今のうちに探索しちゃおうと思った。

 

「〈使い魔作製(クレアチオ・ファミリア)〉、〈見せてちょうだい(ポゼッション)〉」

 

ネズミ型の使い魔を出して、それに憑依。野良ネズミに案内してもらう。

 

 

 

【あの先でっせ。あっから先に行ったのは一匹も戻ってきやしねぇ。弱肉強食の世界たぁいえ、ビクビクしとるんすわ】

 

「【うん、案内ありがとう。行ってくる】」

 

【気をつけてくだせぇ】

 

ネズミにお礼を言い、パイプの先へ進む。

しばらく走っていると、縦穴にたどり着いた。いや、どっちかっていうと、傾斜が急な滑り台?まあ、突入すれば変わらないでしょ。

て事でジャンプ。そのまま滑り降りていく。その先には、大量の骨があった。

小動物たちの骨を踏みつけながら、先へ進む。どんどん自然の洞窟みたいになっていく。

いきなり、目の前に壁が現れた。……いや、違う。蛇の抜け殻だ。とても大きな。

こんな大きな蛇なんてのは種類が限られる。蛇神と呼ばれる類の神様や、ヒュドラとか。逆に、ミズガルズ蛇は大きすぎて候補から除外。蛇神様も、こんなところにいるはずがない。ヒュドラにしては首が少ない。

……なら、バジリスクかな?先へ進んでみよう。

 

 

 

……何この趣味の悪い扉。いや、可愛いしかっこいいとは思うよ?蛇が絡み合った彫刻。でも、目にエメラルドを使う必要はなかったと思うんだ……緑がイメージカラーだとしても、さすがにこれはダメでしょ、スリザリン。

 

「【開け】」

 

扉が開いていく。スリザリンは蛇語使いだったそうだし、「蛇語なら開くかな?」と思ったけど、まさか動物言語でも開くとは。

中はもっと趣味が悪かった。蛇の頭の彫刻大量はまだいい。でも、さすがに巨大な胸像は、うん、センスがない。

口のとこが開閉するみたいだけど、ここは開けって言っても開かなかった。代わりに、横のパイプから入り込んで見たら、なんとびっくり、そこには寝ているバジリスクが。

起こすといけないし、そろそろ使い魔の魔力も切れるから、今度生身でくることにしよう。

そう思って、あたしは憑依を解除して、そのままベッドにダイブした。おやすみなさい……くぅ。




「」の中の【】はリアスの動物言語、ただの【】は動物の言葉。
また、動物言語は蛇語使いには聞き取れないが、蛇語はリアスには聞き取れる。
蛇語で開けられるところは動物言語でも代用可能。


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ロックハート

二日目の朝、広間に大声が響いた。ロンたちの方だ。

見ると、赤い封筒が浮いていた。あー、『吠えメール』か。お疲れ様。すぐに封筒は燃え上がって灰になった。

まあ、あたしには関係のないこと。そう思いながらマクゴナガル先生から時間割を受け取った。

 

 

 

スプラウト先生の薬草学が最初の授業なんだけど、ロックハート先生がスプラウト先生について来てる。迷惑そう。うん、ロックハートさんに先生なんてつけなくても良いよね。

みんながこれまで入らなかった三号温室に入ったけど、ハリーだけロックハートさんに連れ出されてた。スプラウト先生が不機嫌そう。

少ししてハリーが入ってくる。ようやく、授業が始まった。マンドレイクの植え替えだって。意思があっても、植物とはなぜか話せないんだよね。前にママとヨハンナさんに暴れ柳を見せられたけど、話が通じなかった。というか、声も聞こえなかったし、届かなかった。

スプラウト先生の指示で耳当てを付けて、マンドレイク植え替えの様子を見る。スプラウト先生は簡単そうにやってるけど、実際難しそうだ。

ハッフルパフの三人とグループになり、植え替えを始める。やっぱり、大変だった。外に出るのを嫌がって、出たら出たで戻りたがらない。これをあっさり出来るなんて、スプラウト先生って凄い。

 

 

 

みんな汚れを落とし、マクゴナガル先生の変身術の授業に向かう。コガネムシをボタンに変える簡単な課題だったけど、みんな去年一年間学んで来たことを忘れてしまったようだ。ハーマイオニーは出来てたけど。ロンの杖が煙を上げてたりして、おかしくなってたりもした。

 

 

 

午後は闇の魔術に対する防衛術がある。教室に向かうと、すでにハリーが居た。ロックハートさんの本を全部目の前に積んでいるところを見ると、何か嫌な目にでもあわされたかな?あたしはハリーの近く、一番後ろの方に座った。

クラス全員が着席すると、ロックハートさんは咳払いして注目を集めた。そのままネビルに近づいて、本を一冊持ち上げて掲げる。

 

「私です」

 

ウィンク。顔は良いと思うんだけど……どこか残念。

 

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして──」

 

あたしは聞くのを諦めた。自慢話は聞き流すに限る。

いきなり、テストペーパーが配られた。内容は……

 

1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?

 

よし、白紙で出そう。三十分間、あたしは机に突っ伏して眠りこけた。

 

 

 

三十分後、ハリーに揺すられて目を覚ました。

 

「ありがと」

 

「どういたしまして」

 

ロックハートさんは採点中。ハーマイオニーが満点を取ったらしい。ミーハーなんだね。

ロックハートさんはそのまま、覆いのかかった籠を出して来た。

 

「気をつけて!魔法界の中で最も汚れた生き物と戦う術を授かるのが、私の役目なのです!」

 

魔法界の中で最も汚れた生き物……?ボガートならほとんど何にでも変身できるし(相手のイメージが必要だけど)、吸魂鬼は幸せな感情を吸い取るらしいし、クトゥルフどもなら精神持ってかれるし、それよりも人間(特にアンブリッジって人)が一番危険だと思うけどねぇ。

あ、ロックハートさんが覆いを取り払った。

 

「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精」

 

……微妙。非常にビミョーなんですが。全く危険じゃないし、可愛いのに。

 

「さあそれでは!君たちがピクシーをどう扱うかやってみましょう!」

 

籠の戸が開く。

ピクシーたちは色々な悪戯を始めた。ネビルを釣り上げたり窓ガラス破ったらなんだり。あたしは被害なし。ピクシーたちが避けて行ってる。

 

「さあ、さあ、捕まえなさい。たかがピクシーでしょう?〈ピクシー虫よ去れ(ペスキピクシペステルノミ)〉!」

 

ロックハートさんが呪文を唱えるけど全く効果なし。杖を取り上げられて捨てられてた。

終業のベルが鳴ると同時に、みんなが出口に押し寄せた。それが収まってきたころ、

 

「さあ、そこの四人にお願いしよう。その辺に残ってるピクシーを籠に戻しておきなさい」

 

と、ロックハートさんが外に出て、扉を閉めてしまった。もう「さん」もつけなくて良いや。

残って居たのは、ハリー、ロン、ハーマイオニー、あたし。

 

「……あの人信用できないわ。【籠に戻ってちょうだい?】」

 

あたしの言葉で、ピクシーたちは籠に戻っていく。動物言語を聞くのが初めてなハーマイオニーはいきなり質問してきた。答えられる分は答えたけど、満足してなさそう。

去年もつまらなかったこの授業が、さらに憂鬱になった気がする。三年生になったら魔法生物飼育学が取れるってハグリッドから聞いた。早く来年になれば良いのに。



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バジリスク

暇な時が見つからず、なかなかバジリスクに会いに行けない。……よし、土曜日の夜にディリコール呼んで寮を抜け出そう。あたしにはハリーみたいに透明マントは無いんだし。

 

 

 

と言うわけで、やって来ましたマートルのトイレ!

 

「……どうやって来たのよ」

 

「気にしたら負けだと思うけどね?」

 

突然現れたあたしに驚いたマートルを放っておいて、太いパイプが走ってそうな洗面台に向かう。

 

「えーと、多分この下なんだけど……どうしたら開くんだろう?」

 

洗面台をくまなく探してみる。すると、一つの蛇口に小さな蛇の彫り物があった。……蛇口。蛇の口。洒落かしら?

 

「その蛇口、ずっと前から壊れてるわよ?」

 

「壊れてても平気かな?【開け】」

 

物は試しと動物言語。当たりだったようで、洗面台が動き出す。多分あの部屋を作ったのはスリザリンだと思うけど、なんで女子トイレを入り口にしたの?

洗面台が消えて出て来たパイプは、ネズミの状態で見たパイプと同じだった。

あたしはパイプに飛び込んで、下を目指す。

 

 

 

「よっと」

 

ちゃんと両足で着地する。そのまま、この前見た扉へと向かって行く。

扉に変化はなく、唯一変わっていたことといえば、開けたはずなのに閉まっていたことだ。自動で閉じたんでしょうね。

動物言語で扉を開け、中へと進んで行く。やはりバジリスクの姿は無く、横道のパイプの方で眠りこけていた。

 

「うーん、おっきいなぁ。昔見たバジリスクの二倍はあるかな?とりあえず、【起っきろー!】」

 

大声を出して、バジリスクを起こす。綺麗なエメラルド色の目をしている。

 

【……何者だ。継承者か?五十年前と同じように、誰かを殺せと言うのか?】

 

「【継承者って何?】」

 

うん、継承者って?聞いたこと無いんだけど。

 

【……まさか、知らずにここまで?あの扉は蛇語でしか開けられないはず……いや、お前の話している言葉は、まさか……なるほど。お前の名前は?】

 

「【リアス・クリミアよ。あなたは?】」

 

【私の名は……すまん、忘れた。名前を呼んでくれる者など居なかったのでな】

 

あら、名無しなのね。でも、名前が無いのは可哀想だし、よし、適当につけちゃおう。

 

「【じゃあ……シャルロッテ!シャルロッテでどうかしら?】」

 

【……?】

 

「【あなたの名前よ!名無しじゃ不便だし、いつまでもバジリスクって呼ぶわけにはいかないでしょ?だから、シャルロッテって名前をあなたにあげるわ】」

 

【シャルロッテ……いい名前だ。さて、リアスよ。私はお前に従おう。さて、まずは何を命ずる?】

 

あれ?なぜか一方的に主従契約かわされたんだけど。しかも押し付けた方が従者側で。うーん、主従関係とか、そう言うのは苦手だしね。

 

「【主従関係とかは無し。あなたとあたしは友達。もしくはペット。それでいいかしら?あと、殺しとかはダメよ?】」

 

【……承知したが、そろそろ戻った方がいいのでは無いかね?長く部屋を開けていると此処に来ていることがバレてしまい、罰則とやらがあるのだろう?戻りたまえ】

 

「【うん、またね】」

 

ディリコールをもう一度呼び出し、寮まで転移。また会いに行こう。




その頃のハリー

「私の本はなんと!六ヶ月連続でベストセラー入りしたのです!どうです?新記録ですよ?」

「そうですね(棒)」(早く罰則終わらないかな……)

バジリスクの声が聞こえることもなく宛名書きしてました。


色々とフラグが折れました。バジリスクの名前のシャルロッテは、まどマギの『お菓子の魔女』から。恵方巻きみたいなのが蛇に似てるので。


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シャルロッテとの話

それから、あたしは時々シャルロッテに会いに行った。他愛もない話をしたり、遊んだり、乗っかってみたり。

それで、五十年前の継承者とやらについて聞いてみた。

 

【継承者か。その事を語るには、まずはこの部屋について話さなければならない。

この部屋はお前が察している通り、私の主人だったサラザール・スリザリンが残した部屋だ。

サラザールはこう言った。「いつかお前の事を必要とする者がくる。その時までホグワーツに残っていてくれ」と。

私は待った。何年も何年も、千年にも近しい時を。

そして、この部屋を開く者が現れた。その男が継承者と呼ばれる存在だ。

その男の話では、この部屋は秘密の部屋と呼ばれ、伝説になっているそうだ。

私はその男が、サラザールの意思を受け継ぐのかと期待したよ。

だが、その男が成したことはサラザールの意思とは真反対だった。言っただろう?五十年前に、私が誰かを殺したと。その男に命じられたからだ。

当時の私は継承者──蛇語使いには逆らえないようになっていたからな。従ってしまった。だが、私が殺したのはその一回のみ。それ以降はまた、ここで蠢いていた。

その男が今何をしているかはわからない。こんなところに情報など来るわけがないからな。ただ、その男はこう名乗っていたよ。

ヴォルデモート卿、と】

 

ヴォルデモート卿。あの……えーと……誰だっけ?

 

【……闇の帝王とも言っていたな。お前が言う中二病、と言うやつか?】

 

そうそう、闇の帝王だ。『名前を呼んではいけないあの人』。ダンブルドア先生も名前出してたっけ。あの人、ホグワーツの生徒だったんだ。

 

【まあ、次に継承者が来ても従う気は更々ないがな。お前の一言で、私の呪いは解けた。ついでに、なぜか知らんが魔眼の効果のオンオフを可能になった。

より詳しくこの部屋について知りたいなら、『ホグワーツの歴史』とやらを読んでみろ。書いてあるらしいからな】

 

シャルロッテに頭をこすりつけられる。くすぐったい。

 

【継承者が来て、私に誰かを殺せと命じるなら、殺さずに石にしておこう。私の魔眼を直接ではなく、水や鏡など、何かに反射する形で見たのなら、死なずに石になるようなのでね。マンドレイクがあれば、石化は解呪できたはずだ】

 

ロウェナ・レイブンクローからの知識らしい。さすが知識のレイブンクロー。

あたしはお礼を言って、部屋から出て行った。

 

 

 

そして、ハロウィンの日。ハロウィンパーティが終わり、みんなと階段を上ると、その先の廊下には三人の生徒──ハリー、ロン、ハーマイオニーが居た。壁には、ミセス・ノリスがぶら下がっている。そして、

 

『秘密の部屋は開かれたり

継承者の敵よ、気をつけよ』

 

血のような文字。あたりはパニックになった。

 

「継承者の敵よ、気をつけよ!次はお前たちの番だぞ、『穢れた血』め!」

 

ドラコは列の奥に下がって来たときにこっそり頭を叩いておいた。

そのあと、フィルチさんが来て、ダンブルドア先生も来て、ここから一番近いロックハートの部屋にハリーたちとノリス、フィルチさんを連れて行くことになった。みんなは自分の寮に戻って行くみたいだけど、シャルロッテを悪者にされちゃたまらないし、こっそり先生たちについていこう。




やばい、このままだと秘密の部屋編がめちゃくちゃ早く終わっちまう。


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犯人

こっそりと付いて行ったあたしであったが、先生たちが部屋に入って三十秒後、あっさりとダンブルドア先生に摘まれていた。猫の首筋を掴むようにして。

 

「儂の目は誤魔化せんよ、ミス・クリミア。儂の後にこっそりと付いて行きたいのなら、アラスターでも連れてこなければのう」

 

「うみゅ」

 

部屋の中に連行されて、マクゴナガル先生に怒られた。

 

「まったく、ダンブルドア先生が付いて来いと言ったのはポッター、ウィーズリー、グレンジャーだけですのに!なぜ貴女まで付いて来るんですか、ミス・クリミア!話したいことがあるのなら後で私の部屋に来なさい。いいですね?」

 

「この場でないと意味ないんですけど」

 

「……どう言うことですか?いいでしょう、許可しますから言ってみなさい」

 

マクゴナガル先生から許可を貰って、トコトコダンブルドア先生に近づいていく。最初に、確認したいことがあるから。

 

「校長先生、ミセス・ノリスは石になってるだけですよね?」

 

「そうじゃ。……しかし、なぜその事を見抜けるのかね?儂ですら、調べるのに時間を要したのだが」

 

「秘密の部屋、行きます?」

 

部屋の空気が凍りついた。まるで時間が止まったかのように全員があたしを見てジッとしている。ちょっと恥ずかしい。

 

「……説明してみなさい。君は、何を知っておる?まさか、君が継承者と言うわけではあるまい」

 

「秘密の部屋に行ったことがあるからです。そこに居た怪物本人……本蛇?から聞きましたし。あと、その蛇が、誰かに人を殺すよう命じられても、殺さずに石にすると言ってくれましたし」

 

ダンブルドア先生の目は半信半疑だった。でも、次第に納得したような目になっていく。

 

「……蛇と言ったが、その蛇はどんな蛇だったのか、教えてもらえるかな?」

 

「バジリスクですよ?エメラルド色の綺麗な眼を持ってました」

 

ロンとハリーがいきなりこっちを向いた。

 

「そう言えば一年生の時に、バジリスクとも仲良くなってるって言ってたけど、まさかこの犯人かい?」

 

「いや、違うと思うよ、ロン。あの時僕らはまだ汽車に乗って学校へ向かってる最中だったじゃないか。ホグワーツにバジリスクが居るとしても、そのバジリスクと仲良くなる時間は入学してからだ」

 

「ふむ、なるほどのう。バジリスクの魔眼は目を合わせてしまうと死に至る物じゃが、何かに反射させれば効果は半減、石になるだけで済むと言うことか。アーガス、あの廊下には水が溢れてあったな?確認してくれるかのう?」

 

先生やハリーたちが色々と話し合ってる。その中で、一人だけ見当はずれな事を言ってる奴がいた。

 

「いやいやいや、私はこの女の子が継承者だと言う証拠をたった今!見つけさせてもらいました!」

 

そう、ロックハート。生徒全員が役立たずだと認識したこの人。何を言いだすんだこの人は。

 

「まず!バジリスクの魔眼は見ただけで生物を殺せます!そして、仮に鏡などに映った眼を見ても石になるだけと仮定しても!このミス・クリミアがなぜ!バジリスクの眼を見れたのかと言う疑問が浮上します。なぜなら!バジリスクの眼の色を確認したと言うのなら、この子は死んで居るか石になって居る筈ですからね!」

 

「残念じゃがギルデロイ、この子には生き物の毒や呪いは効かんのだよ。物理攻撃は効くがのう。それに、この子に命じられれば、どう言う原理かはわからんが、その身体から勝手に流れ出る毒性や呪いをも自在に引っ込めることができるようになるそうじゃ」

 

「……失礼!」

 

 

ダンブルドア先生、かっこいいわ。思いっきり論破したわね。

その後も話し合って、バジリスク──シャルロッテに犯人を捜してもらうことになった。より正確に言うと、シャルロッテに命令した人がいる筈だから、その人の特徴を教えて貰って、あたしたちが捜していく。それで候補者をシャルロッテに見てもらって、犯人かどうか確認するってことね。

その日はそれで解散。マンドレイク薬は十二月も過ぎた頃に完成するらしい。それを聞いたフィルチさんは、嬉しそうだったけど寂しそうだったので、家から猫──アルゴを呼び出してフィルチさんに与えてみた。感謝はされたけど、「自分のペットはミセス・ノリスだけだ」と返却された。愛されてるね、ノリス。




アルゴ
猫。金に近いオレンジ色で、ニーズルとのハーフ。元ネタはみなさんご存知であろうSAOの情報屋。理由は、猫と聞いて思い浮かんだのが彼女だったから。鼠なのに。ケットシーなのと可愛いのが悪い。


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秘密の部屋にて

とある誰かの視点からスタート。

《》は蛇語です。【】を動物の言葉と動物言語で使っちゃったので、動物言語と蛇語を分けるために。


僕は地下道を歩いていた。ハリー・ポッターはクィディッチ中に手痛くやられて、今は保健室で休んでいるらしい。確か、彼を信奉しているマグル生まれの男子がいたはずだ。確か、コリンと言ったか。カメラ好きだと『この子』が話してくれた。今度はそいつを襲わせるとしよう。

ふう、ようやく着いた。まったく、なんでこんな面倒な場所にスリザリンも部屋を作ったんだ?確かに、この部屋はバレると面倒だとは思うが、せめて道を整備して欲しかった。

 

「《開け》」

 

秘密の部屋の扉を開ける。まだ自分の肉体を顕現させられないから、『この子』を一時的に乗っ取るしかないし、それもしばらくすれば解除されてしまう。さあ、もっと心を開くと良い。そうすれば、僕は自由になり、また闇の帝王と──

 

「そこまでじゃ、トム。君はこの時代の者ではなかろうて」

 

 

 

・side Rias

校長先生をはじめとした先生方(ロックハートを除く)とロン、ハーマイオニー、マダム・ポンフリーが治療して無事退院したハリー(一度ロックハートが何かしようとしてたけど最初の授業の時以来捕まりっぱなしだったピクシーたちをけしかけておいた)と一緒に、目の前の人物──シャルロッテに命令して、ミセス・ノリスを襲わせた人物を追い詰めている。

 

「ヴォルデモート……お主がそう名乗りこの部屋を開けたことが敗因じゃよ。そこのバジリスクに自らの名を教えてしまったことがのう。五十年前、君が名乗らずにバジリスクに命令を出せば真犯人が君とはバレなかったじゃろうし、君がその子を操らずに遠隔でバジリスクに命令すれば、君は追い詰められることはなかったじゃろう。君の敗因の最大の要因は、慢心なのじゃ、トム」

 

目の前の人物──ジニー・ウィーズリー、ではなく、彼女を操っているトム・マールヴォロ・リドルに話しかける校長先生。ジニー(リドル)は苦々しげな顔をして、バジリスクを呼ぼうとした。でも、シャルロッテはスルスルとこっちの背後まで這って行ってとぐろを巻いた。彼女の眼はジニーに向いている。

 

「ばかな、この僕がこんなに追い詰められるだなんて。……いや、貴方ならあり得るか、ダンブルドア先生。ああ、五十年前も貴方だけが僕を疑っていた!アーマンド・ディペットのじいさんをはじめとして、貴方以外の教師はみんなハグリッドを疑って退学させた。僕の計画通りに。ハグリッドは怪物関係では疑われやすかったからね。狼人間の仔をベッドの下で育てようとしたり禁じられた森でトロールとすもうをとったりね」

 

「去年はこっそりとドラゴンを飼おうとしていたのう。ハグリッドは信用も信頼もできるが、怪物を愛しすぎているのが長所であり短所じゃ。リアス、君はハグリッドのようには……なりそうじゃの」

 

ダンブルドア先生はこっちを向いて諦めたような顔をした。ハグリッドは尊敬してます。将来は日本のムツゴロウさんとやらみたいになりたい。

 

「秘密の部屋の入り口を発見するのにも五年かかった。なんでお前たちはこんなに早くこの部屋を見つけられたんだ!」

 

「この子のおかげじゃよ。ほれ、リアス。トムに挨拶でもしてやりなさい」

 

あたしは校長先生の横まで歩いて行って、リドルにお辞儀した。

 

「どうも、トム・リドル。リアス・クリミアと申しますわ。以後お見知り置きを」

 

ママの同僚から教わった気品のある挨拶。ママの同僚ってほんとどうなってるんだろ。

 

「トム、君は記憶にすぎない。儂らに君が勝てるわけがなかろう。さあ、その本が本体のようじゃし、終わらさせてもらおう。〈来い(アクシオ)〉!」

 

ジニーの手の中から黒い本が飛び出してくる。これは、日記帳?

ダンブルドア先生はそれを掴むと、少し確認した後にシャルロッテの口の中に放り込んだ。シャルロッテがその本を噛むと、まるで血のように黒いインクが溢れ出してきた。

 

「なっ、ぐ、クソォォォォっ!」

 

リドルは悲鳴をあげ、のたうち回り、やがて糸が切れたようにドサリと倒れた。マダム・ポンフリーが診断して、少し衰弱しているが問題はなく、美味しい物を食べて寝てればそのうち回復すると判断した。

 

「では、これにて一件落着かのう。さあ、後は勉学に励みなされ。冬はまだまだ長い。クリスマス休みまで、しっかりとのう?」

 

ダンブルドア先生笑顔であたしたちを送り出す。あたしとハーマイオニーはディリコールの幼鳥で姿現しして、ハリーとロンはその後に。ジニーはマダム・ポンフリーと一緒に、ディリコールに保健室まで姿現ししてもらった。他の先生は順繰りにフォークスに連れて行ってもらうらしい。



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二回目の校長先生との話

一応、色々と説明を。
ディリコールで姿現しができるのは、「ホグワーツで姿現しが使えない」のが魔法使いだけだからです。つまり、人間以外の姿現しなら使用可能。ドビーみたいなもんです。
前話でダンブルドアが呼び寄せ呪文を使ってますが、これは余裕その他による慢心のためです。普段は無言呪文を使ってます。


ダンブルドア校長の部屋にあたしとハリーは連れて行かれる。この事件の後始末について話すらしい。

 

「さて、ハリーよ。君はバジリスクの声を聴いたと言っていたね?なぜだかわかるかね?」

 

「わかりません。その……僕が蛇語使い(パーセルマウス)だってことしか。それと、『例のあの人』も蛇語使いだったってこと」

 

「そう、君は蛇語使いで、君を殺そうとしたヴォルデモートも蛇語使いじゃった。それが、君が蛇語を使える理由なのじゃ」

 

「それって……?」

 

「簡単じゃよ。君を殺し損ねた時に、誤って君の中に自らの力を混ぜてしまったのじゃ。ミス・クリミアが先にバジリスクにかけられていた呪いを解いてくれたのは幸運じゃった。十点、あげようかのう」

 

どことなくおちゃらけた感じの先生。でも、目が笑っていない気がする。

 

「謝ろう。儂は、君がスリザリンの怪物を相手取ることになると思っておったのじゃ、ハリー。君ならば、ゴドリック・グリフィンドールにも選ばれるじゃろうと」

 

ダンブルドア校長はハリーにボロボロの組分け帽子を渡した。すると、ハリーが何かを見つけたかのように帽子に手を入れ、銀の剣を取り出した。銘には、『ゴドリック・グリフィンドール』とある。

 

「それは『グリフィンドールの剣』と言う。創始者の四人はそれぞれ、何かしらの物品をこのホグワーツに遺したのじゃ。ヘルガ・ハッフルパフは『ハッフルパフのカップ』を。ロウェナ・レイブンクローは『レイブンクローの髪飾り』を。サラザール・スリザリンは『スリザリンのロケット』と『秘密の部屋』を。そして、ゴドリック・グリフィンドールはその剣を。もっとも、秘密の部屋とグリフィンドールの剣以外はどこにあるのかもわからなくなってしもうたが。それと、この組分け帽子も、四人が遺した物じゃ」

 

ダンブルドア校長が帽子を撫でる。色々遺してたんだね、創始者四人は。

 

「グリフィンドールの剣は、普段は校長室にあるのじゃ。しかし、本当に必要な時は、組分け帽子が剣を与えてくれる。その者を真のグリフィンドール生と認めればじゃがのう。まあ、グリフィンドール生でなくとも素質さえ──勇気さえ見せれば取り出せるのじゃが」

 

「でも、先生、なんで僕は今これを取り出せたんですか?僕は勇気なんてしめしてない!」

 

「ハリー、本来なら君が怪物を退治せねばならんかった。そして、君はバジリスクを退治できるほどの勇気をすでに持っておる。ただ、今年は発揮する機会がなかっただけじゃ。君が何か悩んでおるとしても、君はグリフィンドールの生徒なのじゃ」

 

ダンブルドア校長はそこで話を区切り、今度はあたしの方を向いた。

 

「リアスよ、君がバジリスクと知り合ったことは、さっきも言ったが完全に予想外じゃった。儂はミセス・ノリスが石にされた時、ヴォルデモート卿が関わっているとわかった。そして、ハリーが解決するじゃろうと予感しておった。儂は君の可能性を信じきれていなかったようじゃ。すまんかった」

 

「謝られても困るんですけど」

 

「そうかね?なら百味ビーンズでもいかがかな?」

 

「それは要りません」

 

ダンブルドア校長はあたしに何か受け取ってほしいようだ。そうでもして誠意を見せないとママに何されるかわからないから。

 

「では……君には森へと許可証を発行しておったはずじゃ。それを特別にさせてもらおう。具体的には、ハグリッドの引率無しでも森をうろついて良い。ほれ、貸してみなさい」

 

校長に許可証を渡す。彼は紅い、綺麗な羽根ペンで何かを書き、サインをした。

 

「これで良し。君に危険なことをする生物は森にはおらんはずじゃ。あの場所はハグリッドの庭とも言える。あの森に住む生物で、ハグリッドが知らないものはおらんし、ハグリッドを知らないものもおらん。招かれざる客でもいない限りは」

 

そこまで聞いて、あたしは外に出された。あとはハリーと二人で話をしたいらしい。

寮への道を曲がる直前、前にダイアゴン横丁で見た、ドラコに似た人が歩いてくるのを見た。足元には屋敷しもべ妖精。気になるし、使い魔をつけておいて、あの子がどんな子かだけ報告してもらおう。



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時間は流れ

使い魔が帰ってきたけど、なんか解雇させられたらしい。より正確には、解雇してもらったって感じ?しもべ妖精にしては珍しく、自由に憧れる子だったみたい。

それと、ロックハートが長期の休みを取った。もともとはスリザリンの怪物を退治しようとしてたらしいけどその必要がなくなったから、別の怪物──最近海で目撃されるようになった謎の巨大生物を倒しに行くと自慢していた。

その次の日、ロックハートの行方が分からなくなったと日刊予言者新聞が報道した。

 

 

 

バレンタインの日、ロックハートが見つかったと報道があった。海岸に打ち上げられていたらしい。杖は折れて、下半身付随、重度の錯乱。多量の打撲痕に切り傷、右腕は喰われたかのように削り取られていたそうだ。

本人曰く、

 

「私はこれまで幾度となく魔法戦士たちを相手取り記憶を消してきた。だがアレだけはダメだ!誰にも倒せない!なんであんなものが生きてるんだ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

とのこと。開心術師が記憶を見た結果、荒れ狂う海と巨大な生き物、そしてそれに翻弄される視点、ブラックアウトしたかと思ったら海岸に打ち上げられていたと。

間違いない、コインヘンだ。太平洋からケルトの方に戻ってきたみたい。

ロックハートは聖マンゴに入院、闇の魔術に対する防衛術は以後自習となった。

 

 

 

四月のとある日、アラゴグにシャルロッテを紹介した。バジリスクは蜘蛛の天敵だからなのかアラゴグはとっても嫌がったけど、話してみて案外気のいいやつだとわかったらしい。苦手なのは変わらないけど。

そもそもアラゴグがこの森にいる理由は、ハグリッドが放したからだそうだ。ハグリッドが秘密の部屋を開けて、生徒を殺したと疑われ、トム・リドルに追い出された。ちょうどその時に、アラゴグはハグリッドに育てられてたらしい。

 

「わしの命は残り数年だろう。もし、その時が来たのなら、子供らをよろしく頼む」

 

アラゴグは見えてないはずの目であたしをしっかりと捉え、そうお願いして来た。あたしは、もちろんと頷いた。

 

 

 

期末試験は滞りなく行われ、寮対抗杯もゲットできた。ミセス・ノリスも元に戻り、フィルチさんは泣いて喜んでた。その日はウィーズリーズが何をしててもフィルチさんからお咎めはなかった。

 

 

 

ホグワーツ特急に乗って帰るその日に、ママから手紙が届いた。『ルルイエ(仮)の前にコインヘン(仮)をなんとかするから、明日から海に行くよ』と。

神話の怪物、コインヘン。一角獣やバジリスクとはまた違う、神秘の生物。あたしは、彼もしくは彼女に会うのが待ち遠しかった。




ロックハートにコインヘン(仮)の討伐依頼が来たのはエリザの根回しです。ロックハートは海に出たところでトンズラしようとしていたようですが、その前にコインヘンに遭遇、攻撃され、下半身は付随となり杖は折れ、打撲切り傷右腕欠損重度の錯乱。記憶を失ってないだけマシかな?
発見したのは地元民。その時のロックハートは出血多量で衰弱、死にかけていてまるでゴミのようでしたとさ。


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三年目はペットを侍らせ
コインヘン


海、だー!

今、あたしとママ、非番のヨハンナさんの三人で海に来ていた。もちろん、コインヘン(仮)を捕獲もしくは討伐するために。

 

「神話の怪物に興味あるからついてきたが、策はあるのか?捕まえるにしても殺すとしても」

 

「ないわね。リアスが彼もしくは彼女を魅了できるかどうかが鍵よ」

 

「わお、責任重大」

 

多分コインヘンと仲良くなることはできるだろうけど、そもそもここに来るのかな?

 

「んー、多分しばらくしたら来ると思うけどね。一週間も居れば確実に。だってさ?近くに好敵手(ライバル)の骨があるんだよ?私だったら絶対に見に来るね」

 

あー、そういえばあたしの杖の芯材って海獣クリードの骨だっけ。確かに、神話の時代から生きてるコインヘンなら来るかも。

この日は海に怪物が現れることはなく、あたしたちは近くの宿に戻って行った。

 

 

 

二日後、あたしは海の上にいた。ママがボートを借りて、海へ漕ぎ出したからだ。

 

「海の上なら彼も来やすいんじゃない?」

 

ママの目はキラキラしている。ママもコインヘンに会いたいようだ。一矢報いたいってのもあるんだろうけど。

昼になっても何も起きなかった。一度海蛇(シー・サーペント)が近くを通って行ったぐらいだ。

 

「私たちの言う海蛇とマグルのウミヘビって違うのよね。マグルのはもっとちっちゃい、海に適応した蛇なのよ」

 

「そうなんだ。どんなのなんだろ」

 

「そこに泳いでるけど」

 

確認したら、エラブウミヘビって種類だった。蛇の蒲焼は美味いと聞いたので捕獲しておく。ごめんね?後で美味しくいただきます。

手に持ったウミヘビをジーっと見ていると、何か変な感覚がした。舟の下を確認して見ると、一面真っ黒。とてつもなく巨大な何かが舟の下に居た。

影があたしたちの乗る舟を背中に乗せたまま、海上へと浮かび上がる。骨のような、鱗のような背中で、幅は広く長い。狗頭で、猛犬というのが一番合っているだろう頭。下半分は見えないけど、身体中古い傷だらけだ。

 

「あー、コインヘンで合ってるわこれ……」

 

「え?」

 

「いや、クー・フーリンって『クランの猛犬』って意味なんだけど、クー(Cu)の方がアイルランド語で犬って意味らしいの。で、複数形がコイン(Coin)。だから、この狗頭の怪物はコインヘンで間違いないって思うのよ」

 

なるほど。それを踏まえてもう一度狗頭を見てみる。キョロキョロと辺りを見渡しているようだ。何か探してるのかな?

そーっと背中に下りて、首筋まで歩く。鈍いのか知らないけど、全く気づかれない。頭の上までよじ登ったところでようやく気づかれた。

 

「バウッ!」

 

うん、犬だ。

 

「【あなたがコインヘンかなー?】」

 

【グルル……ニンゲンはそう呼んでいるようだな。……待て、貴様が我らの王とやらか?】

 

「【?よくわかんないけど】」

 

【わからんのならいい。あの女……影の国の女王が我のところに現れて「獣の王が現れるらしいぞ」と告げただけだからな】

 

スカサハさん、こんなとこにも。影の国の門を離れられないんじゃなかったっけ?

 

【精神体で来て居たからな。まあいい。この近くに彼奴の……クリードの存在を感じたのだが、貴様は何か知らんか?】

 

「【あたしの杖の芯材がクリードの骨だって。作った人がスカサハさんから骨を分けて貰ったんだってさ】」

 

【……そうか】

 

コインヘンはどこか寂しげに沈みゆく太陽を見つめた。

そうだ、もう一つか二つ聞きたいことがあったんだ。

 

「【クリードの子孫も居るんじゃないっけ?】」

 

【彼奴らは確かにクリードの息子どもで、我が面倒を見て居た時もある。今はどこぞの深き海にて泳ぎ回っておるよ。確か……ニンゲンの言うマリアナ海溝というところか】

 

マリアナ海溝……世界で一番深い海。そこにクリードの子孫が……。

 

【彼奴らにも貴様のことは言っておこう。面白い反応をしてくれるかも知れぬからな】

 

「【お願いね!あ、あともう一つ!なんかウザい人を襲わなかった?】」

 

【ウザいニンゲン……?ああ、何やら逃げようとして居たが我の進む方向と同じだったのでな。そのまま少し追ってみたが、いきなり喚いて攻撃してきおった。で、面倒なので腕を食いちぎって尾で吹き飛ばしたのだよ。死んでいるかも知れんなぁ】

 

「【どっこい生きてる。重症だけど】」

 

コインヘンは驚いて居た。自分の尾の一撃を喰らって生きてる人間はほとんどいないそうだ。それこそスカサハさん以下アルスターの者ぐらいらしい。

 

【呼びたければいつでも呼べ。我は貴様の力となろう。陸には猪も居るというが、其奴にも会ってみろ。きっと力となってくれる。

あと泳いでいる最中にこいつを丸呑みしてしまったのだが、要るか?】

 

コインヘンはそう言って何かを吐き出した。ママが回収したそれを確認すると、大きな黒犬だった。

コインヘンに海岸まで連れて行ってもらい、待ち構えていたヨハンナさんと合流する。ヨハンナさんは目を輝かせていた。神秘部はこんな人ばかりだ。ママのチームだけかもだけど。

その日に配られていた日刊予言者新聞を見てみると、ウィーズリー一家がガリオンくじに当たってエジプトへ行ったとあった。ウィーズリー一家ってお金ないんだっけ。良かったね、ロン。




コインヘンの姿がわからなかったので、どこかに載っていたCoin=Cu(犬)の複数形という話を使わせていただきました。さて、クリードの方の姿はどうしよう。


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脱獄囚の黒い犬

お気に入り登録してくれてる人には悪いと思うが、なんでこんなに人気なのかがわからねぇですよ。
とりあえずヒンヒン鳴きながら某有名ハリポタ二次でも読んでるとしよう。


コインヘンが吐き出した黒犬が起きたので、ドックフードとチキンを与えておく。何日も食事を取っていなかったのか、とても勢いよく食べていた。あ、ウミヘビはヨハンナさんが調理して美味しくいただきました。

改めて黒犬を観察する。瘦せ細り、十分な栄養を得ていないようだ。それに、何か()()()()()()

 

「……リアス、こいつは……」

 

ヨハンナさんも違和感に気がついたようだ。どこがおかしいとは言えないけど、何かが違う。

考えていても仕方ないので、今日は寝ることにした。黒犬は一時的に首輪とリードを付けて繋いでおいた。初めは抵抗してたけど、ママの姿を見るなり大人しくなった。それに、ママも嗤ってた。笑うんじゃなく嗤ってた。愉悦の笑みを浮かべてた。

 

 

 

次の日の朝、宿の外でフクロウから日刊予言者新聞を受け取り、代金を渡す。この宿は魔法使いが経営していて、マグルも泊まるけど魔法使いも良く利用しているんだそうだ。魔法省の皆さんが一番利用しているらしい。

さて、内容は……シリウス・ブラックがアズカバンから脱走?吸魂鬼たちから逃げ出せたの?凄い!彼らから逃げられる人なんてそうそういないのに。尊敬できるなぁ。

新聞をママのところに持って行ったら、ママは笑って黒犬の方を見た。その場にいなかったヨハンナさんは散歩に行っているそうだ。

 

「早速バレてるわよ?てか、私はあなたを疑ってる訳じゃないからさっさと元に戻りなさい。詳しい話は聞かせてもらうけど」

 

「……?どゆこと?」

 

「んー、こーゆーこと。〈化けの皮、剥がれよ(スペシアリス・レベリオ)〉」

 

ママが首輪を外した黒犬に向かって呪文を掛ける。その途端、黒犬はみるみる変身していき、人間に──さっき新聞で見たシリウス・ブラックになった。

 

「……手厳しいな、エリザ」

 

「アズカバン脱走してみせたあなたには丁度いいんじゃないの、シリウス?」

 

驚いた。ママとシリウス・ブラックは知り合いだったのか。

 

「エリザ、一応言っておくが私は無罪だ。なんなら真実薬を飲ませてくれても構わない。いや、そっちの方がより簡単に無実を証明できるかもな」

 

「二人の家の『秘密の守り人』はあなただったんでしょう?『あの人』に場所を教えることができたのはあなただけだと思うのだけれど?」

 

「私ではなくピーターだった。私がジェームズと相談してピーターに代わってもらったんだ。『あの人』なら私が守り人だと思って襲撃するだろうからね」

 

「……有り得ない話じゃないわね。じゃあ、ピーターを殺したって言うのは?」

 

「嵌められた。ピーターは爆発呪文を使って目くらましにしたんだ。あとは下水道生活ののちに今の居場所へ居着いたんだろう。ウィーズリー家のペットとして」

 

「……彼の変身はネズミだったわね」

 

「……あ、そう言えば」

 

ママとシリウスの話についていけなくてぼーっとしてたけど、ウィーズリー家のネズミの話が出て思い出したことがある。シリウスとママに注目される中、あたしはそのことを口にした。

 

「ロンのスキャバーズってあたしの動物言語が通じなかったんだよね〜。多分動物もどきだけど?」

 

「君は……」

 

「リアスよ。リアス・クリミア」

 

「エリザ、君、結婚したのかい?」

 

「養子よ。私は独身を貫くことを決めたわ。男ってみんな馬鹿なんだもの。知識方面じゃなく、行動が」

 

「そ、そうか……コホン。リアス、そのネズミは前足の指が一本、欠けていなかったかい?教えてくれ」

 

「うーんと……確かに、なかったね」

 

「ほら見ろ。あいつはまだ生きてる!私がこの手で捕まえてやる!」

 

「真偽は私にはわからないからね。てことで、リアス、ホグワーツ行ったらこいつに協力してやって。私の同級生でね、時々一緒に悪戯したもんさ」

 

「君がくれた呪文はおおいに役立った。ヴォルデモートと戦う時にも」

 

「あらそう。この子にもいくつか渡してあるから。あと、この子の体質なんだけど……」

 

「……なるほど、面白い体質だな。リアス、協力してくれるかい?」

 

「別に良いけど?」

 

シリウスからの問いに間をおかずに答える。

 

「……私が言うのもなんだが、巷では極悪殺人鬼として通ってるんだぞ?良いのか?」

 

「ママの知り合いなんでしょ?それならママも信頼してるし、吸魂鬼たちを突破して来たのなら尊敬できるし。万一ヤバかったらみんな(ペットたち)に襲わせるし」

 

満面の笑みで返答する。シリウスが若干青ざめてる気がするけど、どうせ気のせいだろう。

コインヘンと知り合ってシリウスと知り合って、三年目も面白いことになりそうだ。

 

 

 

散歩から帰って来たヨハンナさんにシリウスは質問責めにあっていた。どうやって難攻不落、脱獄など皆無だったアズカバンから脱獄したのかについて。

それと、なぜかシリウスは呼び捨てしたくなるんだよなぁ……なんでだろう。



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怪物本

シリウスに協力することを約束した次の日、コインヘンに別れを告げて家に帰ることになった。コインヘンには、無闇に人を襲わないようにお願いしておき、ヨハンナさんが血と鱗を採取してた。その間、シリウスはママの後ろに隠れてた。丸呑みされたことがトラウマになってしまったらしい。

家に帰るまでに、シリウスが一回はぐれてしまった。数日後にママが黒犬の首根っこ掴んで持って帰ってきたけど、ハリーに会いに行ってたそうだ。シリウスはハリーの名付け親で後見人なんだって。

 

 

 

ハリーが漏れ鍋に居るとママから聞いた。なんでも、親戚のおばさんを浮かばせてしまったらしい。シリウスが狙ってるかもだからお咎めなしで漏れ鍋に泊まらせられてるそうだ。

ママに許可をもらって、暖炉を使って一人で漏れ鍋へ。トムさんに聞いてみたがハリーは出かけて居るそうだ。

グリンゴッツの金庫からお金を少し引き出してきて、いざ買い物へ。まずは書店で魔法生物飼育学と占い学の教科書を買わなくちゃ。『怪物的な怪物の本』ってどんなのなんだろう。

フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店の店先には檻が置いてあった。その中には百冊ほどの本があって、取っ組み合いの喧嘩をしている。この本どうなってるんだろ。まるで生きてるみたいに、ハードカバーの表紙と裏表紙に牙が生えて、表紙には目もついてる。その時、店長さんが話しかけてきた。

 

「おや、ホグワーツかね?新しい教科書を?」

 

「はい。なのでこの本ください!」

 

「うん、だろうね。少しどいててくれるかな?捕まえなきゃならないからね──もう五回以上噛まれてるけど」

 

店長さんの顔が暗くなる。うーん、気の毒だ。

 

「……あたしが自分で取ることにします」

 

「え、平気かい?私としては感謝したいが、とても危険だよ?」

 

「可愛いじゃないですか」

 

店長さんの顔がこんどは驚愕に染まる。可愛いじゃない、ほんとに怪物みたいで。

店長さんから分厚い手袋を受け取り檻に近づく。入り口を開け、中に入って一冊掴む。初めは抵抗していたけど、ママに睨まれたシリウスみたいにすぐにおとなしくなった。ほんの少し、魔法生物の魔力が宿ってるみたいね。……あら、背表紙が弱点か。ここ撫でれば普通に開くことができる。

 

「……おったまげた。こんな凶暴な本をあっさりと。ああ、助かった。その本は無料であげよう。戦利品だ」

 

「ありがとうございます!あ、あとは『未来の霧を晴らす』と『中級変身術』、三年生用の『基本呪文集』ってあります?」

 

「もちろん。少し待っててくれるかな?すぐに持ってこよう」

 

店長さんは店の奥に入って行き、数分で何冊かの本を持って戻ってきた。

店長さんのご好意に甘えて、怪物本を除く本の代金を払い、本を受け取る。

漏れ鍋への帰り道にあるフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーでハリーを見かけた。宿題をしているようなので声はかけなかったけど、何か悩んでるみたいだった。……ハリーにならシリウスのことを教えても平気かな?それと、校長先生にも。



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五度目の乗車

デルトラ・クエストの生物も登場させることに決めました。一応魔法生物と認識できるレベルまでには抑えます。さすがにオルとか謎の意思とかは出しません。多分。ちなみに、デルトラ・クエストについてはにわか知識。


九月一日、あたしは五度目の九と四分の三番線に居た。シリウスは自由に行動するそうだ。叫びの屋敷で野宿するとも。彼はホグズミードまで来るつもりらしい。バレなきゃ別にいいんだけどね。

ダンブルドア校長にはともかく、ハリーにはまだ伝えないでくれって言われた。ハリーが気付くと、近くにいるピーターが逃げるかもだそうだから。逃げたのならみんな(ペットたち)に捕まえてもらうだけなんだけどね。城の中ならネズミや蜘蛛、シャルロッテに捕まえて貰えばいいし、禁じられた森にも力を貸してくれる友達はいっぱいいる。それに、ブラールたちを森に行かせればすぐに捕まるだろう。被害が計り知れないけど。

適当にハリーを捜す。すると、最後尾のコンパートメントにいつもの三人と男の人の四人で座っていた。男の人眠ってたけど。

コンパートメントの扉を開ける。

 

「おはよう。ここに座っても?」

 

「うん、良いよ」

 

ロンから許可を貰って、ストンとハリーの隣に腰を下ろした。ハリーを挟んだ反対側にはハーマイオニーが居る。

 

「それで?何か話してなかった?」

 

「あー、シリウス・ブラックが脱獄したって話。ハリーを狙って来るかも知れないんだってさ」

 

「巻き込まれてるねぇ」

 

「僕は好きで巻き込まれてるんじゃないんだよ。向こうからやって来るんだから、対処のしようがない」

 

「無茶だけはしちゃダメよ、ハリー。相手は大量殺人犯なんだから」

 

「あたしは尊敬できると思うけどね」

 

「「「え?」」」

 

なんとなく放ったその一言が三人を凍りつかせた。

 

「だってさ?吸魂鬼たちの監視をすり抜けて来たんだよ?あたしは彼らの力をよく知ってるけど、アズカバンからの脱獄ってあなたたちが思ってる以上に大変なことなの。何十、何百って量の吸魂鬼から見つからないようにしなきゃなんだから。目、ないけどね」

 

ハリーたちは唖然とする。その時、ハリーのトランクの中で何かがけたたましく鳴り始めた。ハリーが開けたトランクから出て来たのは、

 

「これって、スニーコスコープ?」

 

「うん。ロンからのプレゼントなんだ」

 

「でも安物だよ。エロールの足にハリーへの手紙をくくりつけようとしたら反応したからね」

 

「……案外信用できるんだよね、これ。前に暴走したクィンタペッドの群に出くわした時にも鳴ってた。ドレア島に旅行に行った時にね。ママがクィンタペッドたちをボコって鎮めてたけど」

 

「ワァオ、凄いんだね、リアスのママって」

 

「えっへん」

 

胸を張ると微笑ましい視線に晒される。主にハーマイオニーから。……確かに胸は無いけどさ?絶壁だけどさ?まだ十三なんだから希望はあるのよ!

その後はドラコがやって来たりドラコの言い方にムカついたからマックルド・マラクローに噛ませておいた。これでドラコは一週間ほど運が悪くなるはずだ。早速滑って転んでたし。

外は雨が降り出し、どんどん暗く、強くなっていった。




クィンタペッド
元魔法使いの一族と噂されてる五本脚の肉食生物。凶暴。元人間だったとしても、元に戻るつもりはないらしい。ドレア島にしか生息しておらず、そのためドレア島は地図には載っていない。

マックルド・マラクロー
海岸に生息する陸生生物。伊勢海老に似ている。食用には適しておらず、人間が食べると吹き出物や高熱が出る。噛まれると最長一週間は運が悪くなる。賭けや賭博などは必ず裏目に出る。


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吸魂鬼

「もう着く頃だ」

 

ロンが言う。汽車の速度は落ち始めた。でも、まだ着かないはず。去年はもっと長かった。

 

「まだ着かないはずよ」

 

ハーマイオニーの言葉で、あたしの考えが正しかったことがわかる。一体何が起こってるんだろう。楽しみ。

汽車が完全に停まり、遠くからトランクが落ちる音と「痛っ!ちゃんと押さえておけ、ゴイル!」と言う声が聞こえた。あ、もう一回。

 

「うわっ!?」

 

なんの前触れもなく、明かりが消えた。廊下の電気も消えて真っ暗だ。多分、汽車全体の電気が消えてる。この時、あたしだけが気づいて居たみたいだけど、窓の端が少しずつ凍り始めていた。

急に真っ暗闇になると混乱が起こる物で、ロンがハーマイオニーの足を踏んづけたり、ネビルが入って来てロンの上に倒れ込んだり、ハーマイオニーとジニーが激突したりしていた。

 

「あれ……?誰かが乗り込んできたみたいだ」

 

ロンの言葉にみんなが静まり、また騒ぎ出す。

 

「静かに!」

 

しわがれ声がした。奥に居た男の人──ルーピン先生が目を覚ましたようだ。ガサゴソと音がして、先生の手に灯りがともる。

 

「動かないで。私が確認してくるから」

 

先生は灯りを前にだし、外に出ようとした。けれど、先生がドアにたどり着く前に、ドアは開いていった。窓は完全に凍りついていた。

ドアの外に立っていたのは、闇のようなマントを被った黒い影──あ、なんだ吸魂鬼か。びっくりして損した。

 

「【何しに来たの?】」

 

【……お嬢、我々はシリウス・ブラックの捜索に来た。ホグワーツの警護もする。……ふふ、怖いか?】

 

「【ネタ禁止。それと、この汽車にシリウスが居ないってことはあたしとママの名前にかけて保証する。誰にも危害は加えないで】」

 

【……了承した。撤収させてもら「うわあぁぁぁぁっ!な、なんだお前たちは!僕はマルフォイ家の長男、ドラコ・マルフォイだぞ!」……すまん。誰か被害にあったようだ】

 

「【あー、うん。彼はどうでもいいや】」

 

【では、また会おう】

 

吸魂鬼はそのままドアを閉めて去っていく。あたしたちが話して居る間、あたしを除く全員が固まって居た。どうしたんだろう。

 

「リアス……君、吸魂鬼とも話せたのかい?おったまげー」

 

「あら、言ってなかった?あたしは養子なんだけど、保護されたのはアズカバンなのよ?ママに引き取られてからの一年くらいはほとんど覚えてないけれど、吸魂鬼(彼ら)に抱えられて居たことは覚えてる。五歳の頃に養子だって教えてもらったんだけどね」

 

「……驚いた。ディメンターが何もせずに立ち去るとは。君は、いったい……?」

 

「リアス・クリミアと申しますわ、先生」

 

「クリミア……まさか、エリザベートの娘なのか?いや、彼女に子供が出来ていたとは。私もそろそろ相手を見つけないと……」

 

「さっきも言いましたけどあたしは養子です。ママは独身を貫くことに決めたそうです」

 

「……そうか。君が先ほど使っていた言葉は、ダンブルドアなら知って居るだろう。あとで確認させて貰うよ。さて、この中に気分の悪くなった者は?居ない?なら良し。一応チョコレートを食べておいてくれ。私は運転士と話をしてくるからね」

 

先生が出ていくと、ハリーたちは話し始めた。恐怖に襲われはしたけど、気分が悪くはならなかったらしい。あたしが居たからかな?



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校長先生からのお知らせ

数分後、先生は戻って来た。あたしが撤収をお願いした後、吸魂鬼たちはすぐに汽車から出て行ったそうだ。被害はほとんど出ていない。気分が悪くなったり、調子が悪くなったりしたのが十数名、トラウマを刺激されたのが数名、尊厳を失いついでに気絶したのが一名、ぶっちゃけるとドラコだそうだ。ドラコ()じゃなくてドラクレア(小竜)とでも名乗ればいいのに。……うん、だめだ。ドラクレアの方がかっこいい。ドラコには似合わない。あと、吸血鬼の祖、ドラキュラの語源だし、ドラキュラを名乗ったヴラド・ドラクレア……串刺し公ヴラド・ツェペシェは偉大な人だし。悪魔だとかなんだとか言われてるけど。

 

「あと十分でホグワーツに着く。そこで、ダンブルドア校長から何か発表されるだろう」

 

ルーピン先生が言う。彼の言う通りに、十分で汽車はホグズミード駅に到着した。まだ雨は降り止まない。

ハグリッドは一昨年、去年と同じように、一年生を連れて行った。今年も湖を渡るのだろう。今年の一年生は大変だね。冷たい雨の中、水かさの増した湖を渡るなんて。誰か落っこちるんじゃない?

あたしたちはセストラルの牽く馬車で城に向かう。城の入り口には吸魂鬼が二体、警備についていた。窓から少しだけ見える空にも、何体か。

馬車から降りると、ドラコが立っていた。

 

「やあ、ポッター。吸魂鬼はどうだった?怖かったかい?ウィーズリーやグレンジャーと一緒に気絶したんだろう?優秀な僕とは違ってね」

 

ドラコが色々と言ってくるが、その後ろからコリンのカメラを持ったフレッジョが近づいてくるのに、彼は気がついていない。

 

「ようマルフォイ。この写真要るかい?」

 

「君が気絶した写真なんだけど、一枚十シックルでどうだ?」

 

「ちなみに千枚ほど刷ってあるな」

 

「僕たちには無用の長物だけど」

 

「お前はこれに出回ってほしくはないんじゃないのかな?」

 

「明日から販売開始するつもりだけど、君には特別に今日から売ってやろう」

 

「「さあ、どうする?」」

 

「なっ……いつの間に!ウィーズリー、返して貰おうか!」

 

「おいおい、今言っただろう?」

 

「これは俺たちにとっては商品なんだ」

 

「返すんじゃない、売るのさ」

 

「君にな」

 

「ちっ……千枚だったか。一万シックル……五百八十八ガリオンと四シックルか。ほら、こんな大金お前たちは見たことがないだろう?」

 

「「毎度あり!」」

 

包みを手にしたフレッジョが城に歩いていくけど、あの笑みを見る限りネガか何かでもあるんだろうなぁ……マルフォイの運勢は本当に悪くなってるようだ。

城に入り、大広間へと歩いていく。大広間に到着したところで、ハーマイオニーがマクゴナガル先生に呼ばれて出て行った。

 

 

 

組分けは去年と同じだったけど、今年は組分け困難者は居なかった。元々五十年に一人ぐらいだそうだし、去年一昨年が異常だっただけか。

組分けが終わったところで、ハーマイオニーとマクゴナガル先生が帰ってくる。ハーマイオニーは、組分けを見逃してしまったと悔やんで居た。

ダンブルドア校長が立ち上がって、話し始めた。

 

「おめでとう!新学期おめでとう!さて、みなにいくつかお知らせがある。後に回すよりも、先に言ってしまってから食事を取るのが良いじゃろうて。

まずは、みなもホグワーツ特急での捜査があったからわかっているじゃろうが、わが校は、現在、アズカバンから吸魂鬼たちを受け入れておる。儂は反対したのじゃが、知っての通り、凶悪犯が脱走してしもうたそうでのう。大臣から直々に、ホグワーツにディメンターたちを置いてくれと頼まれてしもうたのじゃ。

吸魂鬼たちは学校の入り口という入り口を固めておる。あの者たちがいる限り、誰も許可無く学校を離れてはいかんぞ。誤魔化しや変装は効かんし、透明マントですら意味はない。言い訳やお願いを聞き入れることもなかろう。──万が一、そんなことができる者がおった場合には、出来るだけ丁寧な手段で、無理やり戻ってもらうことになるかのう」

 

最後の一言はあたしの方を向いてたし、完全にあたしが勝手に森とかに行くと思ってる。明日あたり、いや、今夜にでも使い魔を使ってシリウスのことを話さなきゃ。

 

「さて、つまらない話はこれまでとし、楽しい話に移るとしよう。ご馳走はまだ待ってくれるかな?

今学期から新たに二人の先生をお迎えすることになった。まずはルーピン先生じゃ。『闇の魔術に対する防衛術』を担当してくださる。もちろん、ピクシーに放り投げられるようなことにはならんと言っておきましょうぞ」

 

まばらに拍手が起こった。スネイプ先生はむすっとしている。ジト目だ。ジニーやハーマイオニーなら可愛いだろうけど、男にジト目されても困る。男の娘ならともかく。

 

「もう一人の新任の先生じゃが、これまで『魔法生物飼育学』をお教えしてくださって居たケトルバーン先生が前年度末を持って退職なさってしまった。手足が一本でも残っているうちに余生を楽しみたいとのう。その代わりに、森番をしてあるハグリッドが教鞭をとってくださることになった。喜ばしいことじゃ」

 

今度は大きな拍手が──主にグリフィンドールから──巻き起こった。確かに、怪物本だなんて指定するの、よっぽどの怪物好きぐらいだよね。ハグリッドとか、あたしとか。

 

「さて、これで大事な話はいい尽くしたようじゃな。あとは諸々の注意事項じゃが、後で寮監から受け取ってくだされ。では、宴を始めようぞ!」

 

ダンブルドア校長が手を叩き、料理が出現した。相変わらず美味しい。デザートも豊富だし。スネイプ先生が何かの薬品をダンブルドア校長の盃に入れようとして校長が必死に阻止してるけど、なんなんだろう。

最後の料理を食べ尽くし、就寝時間の宣言が出された。パーシーを先頭にグリフィンドール寮まで歩く。その時にハリーに聞いたことだけど、ハグリッドは感極まって泣いてたらしい。ケトルバーン先生が辞めた後、まっすぐにハグリッドの小屋にダンブルドア校長は向かったそうだ。泣いてしまってもおかしくない。

おっと、もう『太った婦人(レディ)』の前についてた。

 

「合言葉は?」

 

……あれ?パーシーは?

周りを見渡してみると、後ろの方で遅れてる一年生を引っ張ってきてた。案外優しいのか、監督生としての意識からか。

 

「道を開けてくれ!僕は監督生だ!

新しい合言葉は『フォルチュナ・マジョール。たなぼた!』」

 

「あーあ、覚えられるかなぁ」

 

ネビルが悲しげな声を出した。合言葉で入るのはグリフィンドールとスリザリンだけらしいし。ハッフルパフは独特のリズムが鍵になってるそうだ。レイブンクローは謎かけ。合言葉はともかく、ハッフルパフ・リズムやレイブンクローの謎かけ、それぞれの寮の入り口を知っていたママは本当に何をしていたんだ。……あ、ママはレイブンか。知識欲を満たしたくて探し出したんか。納得。




スネイプがダンブルドア先生に服用させようとしていた薬は、『あらゆる菓子、デザート類を食べられなくなる薬』。効果は一年ほど。ダンブルドアに呑ませるのは阻止され『消失』させられた。


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校長先生との三度目のお話

ベッドに座り、魔法で使い魔を作り出す。ダンブルドア校長へのメッセージを伝え、校長室へ。内容は、「今夜十二時に面会させてください。返事は聞きません」だ。我ながらひどいとは思うけど、まあ、校長先生だし。

十一時五十九分になったので、多分一番呼び出してる気がするディリコール(幼鳥)を召喚して『姿現し』を使う。行き先はもちろん校長室。扉の手前へと移動した。

ドアをノックして、入室していいか聞く。

 

「来たようじゃな。入りなさい」

 

「失礼します」

 

ダンブルドア校長は椅子に座って、キラキラした目でこっちを見ていた。

 

「それで、何故面会したかったのか、教えてくれるかのう。今は殺人犯がうろついておるのじゃ。いくら吸魂鬼のことを友達と言ってのける君でも危ない」

 

「シリウスが無罪の可能性があるんですけど」

 

「……今、なんと?」

 

「シリウスはもしかしたら無罪です」

 

「……それは、本当かね?あの若者は、本当に罪を犯していないのか?すまんが、証拠を見せてくれるかな?」

 

「確か、ピーター・ペティグリューって指だけが遺ってたんですよね?指一本だけが切り落とされてるネズミがいるんです。あたしの動物言語も通じませんでしたし」

 

「……なぜ、ネズミの話が出て来るのじゃ?まさか、ピーターが動物もどきだという訳ではあるまい」

 

「そのまさからしいですけど。シリウスも動物もどきでしたし」

 

ダンブルドア校長は明らかに驚いて、室内を歩き回り始めた。しばらくウロウロしていたけど、やがて考えがまとまったのか再びあたしの方を向いて来た。

 

「……ブラックが無罪である証拠にはいささか重みが足りん。ファッジは信用せんじゃろう。もっとも、ピーターを彼の前に連れてこれるのなら話は別じゃが。ブラックは、なんと言っておったのじゃ?」

 

「真実薬を飲んでも構わない」

 

「……なるほど、彼は無罪のようじゃな。その言葉が出て来るのならば。儂は君を信じよう、リアス。あとは、マクゴナガル先生とルーピン先生にも伝えておかんと。ハリーには?」

 

「シリウス自身が教えるなって」

 

ダンブルドア校長は頷くと、チョコを渡して来てあたしを寮に帰らせた。

マクゴナガル先生に教えるのはわかる。あの人は副校長だし、ダンブルドア校長がもっとも信頼している一人のはず。でも、なんでルーピン先生に伝えるんだろう。何か、関係があるのかな?

 

 

 

翌朝、朝食の席でドラコが頭からかぼちゃタルトをかぶり紅茶に右手を突っ込んでいたけど気にしないでおこう。……あ、パグ犬みたいな女の子が駆け寄って行って転んでドラコがクラッブの下敷きになった。どんまい。



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死神犬

今日の授業は……始めに占い学か。どんな感じなんだろう。

ネズミの案内で北塔のてっぺんに向かう。十分ほどかかってたどり着いた先は行き止まり。人は誰もいない。あたしが一番のようだ。

天井を見ると、丸い跳ね扉がついていて、『シビル・トレローニー 占い学教授』と表札がついていた。

数分後に全員集まり、ハリーがどうやってあそこに行くのかとみんなの気持ちを代弁した途端、扉が開いて銀色のはしごが下りてきた。みんなが黙る中、ハリーとロンが始めに登る。シェーマスとかはともかく、ネビルが怖がってなかなか登ろうとしなかったけど、無理やり登らせた。ひどいとは思うけど、スカートの中を見られないためだ。明日からはスパッツを履こう。

登りきると、そこは確かに、占い店と言ったような感じだった。ランプにトランプ、水晶玉やタロット。色々と置いてある。

 

「先生はどこだい?」

 

ロンが言うと、それに答えるかのように隅の方の暗がりから声が聞こえてきた。

 

「ようこそ。この現世で、とうとうみなさまにお目にかかれて嬉しゅうございますわ」

 

なんと言うか、昆虫みたいな人が出てきた。感じとしてはコガネムシ。もしくはオウゴンオニクワガタとか、そんな感じのキラキラした昆虫。

 

「おかけなさい、あたくしの子供達よ、さあ」

 

先生の言葉でみんなが好きなところに座る。肘掛け椅子に這い上がる男子や丸クッションにペタンと座る女子。あたしはハリーの近くに座った。

 

「『占い学』にようこそ。あたくしがトレローニー教授です。多分、あたくしの姿を見たことがある子はおりませんでしょうね。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば降りて参りますと、あたくしの『心眼』が曇ってしまいますの」

 

そのあとも演説は続いて行き、イースターの頃に誰かが死ぬもしくは退学になることを予感させるような発言と、ラベンダーの恐れていることが十月十六日の金曜日に起こると言った。

紅茶占いを始めても、あんまりよくわからなかった。

 

 

 

ぼうっとしていたら、カップの割れる音がした。見渡して見ると、ネビルがカップを割っていた。確か、占いを始める前も一回割ってなかったっけ。あれは偶然だったけど。

トレローニー先生はハリーのカップを見ていた。

 

「あなたにはグリムが取り付いています」

 

グリム……死神犬だっけ。墓場をうろつき死を運ぶ黒い犬。ブラックドッグとも言う。確か、エジプト神の一柱、墓守であるアヌビスがその正体だとも言われてる。アヌビスも黒い犬だし。

ハーマイオニーは否定するけど、トレローニー先生はハーマイオニーの占い学への素質自体を否定した。

あたしには死神犬(グリム)には見えない。グリムは確かに不幸の象徴だけど、グリム自身が望んで死を運んでるわけじゃないし。もふもふだし。グリムはただ単に警告に来てるだけなのよね。不幸が訪れるであろう人のところに現れて、警告をする。その結果が『死の前兆』と言うあだ名だけどね。

授業が終わって変身術の教室に向かう時、ハリーは不安そうだった。



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ハグリッドの授業

「……私の変身がここまで拍手を浴びなかったのは初めてですね。はぁ……唯一目を輝かせてくれたミス・クリミアに点を与えたいぐらいです」

 

変身術の授業では、まず始めにマクゴナガル先生がトラ猫に変身してみせた。先生が動物もどきだと言うことは一年の時に聞いていたけど、見るのは初めてだ。

 

「一体何があったんですか?──この授業の前の授業は?」

 

「『占い学』です、先生。お茶の葉を読んで、それで──」

 

「なるほど、そうでしたか。ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年は誰が死ぬことになったんですか?」

 

少しして、ハリーが名乗り出た。先生の話によると、トレローニー先生の死の予言は毎年のことらしい。けど、一回も当たってないそうだ。

 

 

 

変身術の授業が終わって、昼食も終了。待ちに待った『魔法生物飼育学』だ!

森の端にあるハグリッドの小屋を目指す。もちろん、一番最初についた。まだかなー?

……あら、スリザリンと合同なんだ。ドラコはむすっとしてて、ゴイルとクラッブはお菓子を持ってる。ダフネ・グリーングラスとかはドラコをなだめようとしている。ハグリッドは気にせずにニコニコしている。

 

「よし、みんな集まったか?これからいいもんを見してやる。きっと驚くぞ?え?」

 

ハグリッドが歩き出し、みんなでついて行く。森の縁に沿って五分ほど歩き、放牧場のようなところに到着した。

 

「みんな、ここの柵の周りに集まれ!ちゃんと全員居るよな?森の中に入っちまった奴は居ないな?よし、教科書を開け。さて、何ページだったか……」

 

「どうやって開けばいいんです?」

 

「あぁ?」

 

ドラコがハグリッドに質問した。うん、普通考え付かないよね、背表紙を撫でるなんて。

 

「リアスは普通に開けとるが?」

 

「えっ」

 

「背表紙を撫でればいいんだよ。この子、背表紙が弱点みたいなの」

 

みんなが唖然としてるけど、あたしは気にしないでハグリッドに何ページを見ればいいのか聞く。指定されたページはヒッポグリフのとこだった。

 

「……良く気がついたな、クリミア」

 

「少しは知ろうとする努力をすることだね、マルフォイ君」

 

ドラコに笑って言う。ハグリッドは森の中に入っていき、数分後にヒッポグリフ十数頭を連れて戻ってきた。相変わらずヒッポグリフはかっこいい。

ハグリッドが柵につないだとき、みんな退がっちゃったけどなんでだろう。

 

「ヒッポグリフだ!美しかろう、え?」

 

わかるわかる!ヒッポグリフってとても綺麗なんだよね。いや、空を飛べる魔法生物って全部綺麗!気持ち悪いとか言われてるアクババも綺麗だし、ドラゴンも天馬も宝石竜も全部綺麗!ハグリッド、ナイスチョイス!

 

「こいつらは誇り高い。絶対に侮辱しちゃなんねえ。死にたくなかったらな。必ずヒッポグリフの方が先に動くのを待つんだぞ。それが礼儀ってもんだ。んで、お辞儀だ。お辞儀を返してくれたら成功だ。触ってもええ。もしも返さなかったらすぐに離れろ。前に一度喰らったがな、こいつらの鉤爪はとても痛い」

 

……ドラコたちが聞いてないけど、大丈夫かな。

 

「よーし、誰が一番乗りだ?」

 

「あたし!」

 

やらせて!絶対に成功させてやる!

 

「おう、やるかリアス!そんじゃあ、バックビークとやってみるか」

 

ハグリッドが灰色のヒッポグリフを連れ出してきた。

 

「まあ、お前さんならいけるだろう。どうせ何度か乗ってるんだろう?」

 

「もちろん」

 

バックビークに向き合い、近づいてお辞儀する。数秒後、お辞儀を返してくれた。

「ほうれ、見てみろ!リアスが成功させたぞ!リアス、くちばしを撫でてやってくれ。それと、乗せてくれるだろう」

 

ハグリッドに言われた通り、くちばしを撫でる。すぐに気持ちよさそうに目を閉じた。あとスリスリされてほっぺた舐められた。

バックビークの背中に乗り、首回りにしがみつく。ハグリッドの合図でバックビークが飛び立ち、遊覧飛行が始まった。

うん、とっても気持ちいい。暖かいし、ふわふわだし、落ち着く。

 

「【ねぇ、バックビーク。もし誰かがあなたを侮辱しても、攻撃しないであげて?ハグリッドに失敗して欲しくないの】」

 

バックビークは頷いてくれた。問題は他のヒッポグリフたちだけど、バックビークが伝えてくれるそうだ。

 

 

 

放牧場に下りると、歓声があたしたちを迎えてくれた。最後にバックビークのくちばしを撫でて、バックビークから降りる。

次に挑戦したのはハリーだったけど、やっぱり成功。バックビークも楽しそうに飛んでいた。ハリーは少し怖がってたけど。

他のみんなもそれを見て、恐る恐る放牧場に入ってきた。やがてあちこちでお辞儀が始まった。ネビルは失敗ばっかりだったけど、もっと堂々とすればいいって助言したら成功してた。

ドラコたちは案の定侮辱──醜いデカブツの野獣とか言ってた──けど、言われた途端バックビークは背を向けて歩き去ってしまった。よかった、ドラコたちに怪我させなくて。

……でもドラコには後でお仕置きだね。マラクローによる不幸をもう一週間追加しよう。



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魔法薬学と防衛術

一週間は何事もなく過ぎていき、木曜日になった。今日は『闇の魔術に対する防衛術』の最初の授業がある。その前に『魔法薬学』があるけど。そう言えば、ネズミたちがスネイプ先生とルーピン先生が嫌味を言いあってるのを聞いたみたいだけど、仲悪いのかな?見た目年齢も近いし、もしかしたらルーピン先生はシリウスやピーターのことを知ってるのかも。……あ、ルーピン先生はママのことを知ってるんだから、何か関係あるのかも。

 

 

 

『魔法薬学』の授業では縮み薬を作ることになった。この薬は時々作ることがあるから簡単に製薬できる。おっきな動物を連れ帰る時とかに使えば楽になるんだよね。もちろん、教えてくれたのは神秘部の人。ヨハンナさんとヴァーグナーさん感謝します。

雛菊の根をきっちり切り分け、萎び無花果の皮を剥く。芋虫の死骸を輪切りにして鍋の中へ。ネズミの脾臓を一つ加えて、かき混ぜる。その間にヒルの汁をほんの少し加える。よし、明るい黄緑色になった。

近くではシェーマスがハリーたちに対して、シリウスがこの近くで目撃されたと話していた。日刊予言者新聞に載っていたそうだ。可哀想に、シリウスはママからのお仕置きにあうことだろう。今度は何をされるのか。

薬を煮込んで、その間にナイフやスポイトなどの器具を片付ける。この薬はちゃんと完成すれば、服用者は縮んで子供の頃に戻る。カエルであればオタマジャクシに、ドラゴンであれば上手く分量を調節すれば産まれたばかりの頃に。ほんの少しだけ配合を変えれば姿をそのままに縮ませることもできる。失敗すると毒になっちゃうけど。確か、体のどこかが上手く動かさなくなるタイプの神経毒。

っと、薬が緑色になった。火から下ろして完成と。薬をスプーンで掬い上げて小瓶に移す。これでよし。

この学科の最後は、なぜかネビルが被害に遭うのがお約束になって来てる気がする。今回はネビルのヒキガエル、トレバーがネビル作の縮み薬を飲むようだ。

ポンと音がしてヒキガエルはオタマジャクシになった。スネイプ先生は面白くなさそうな顔をしてトレバーに魔法薬──多分濃くした老け薬──を垂らして元のカエルに戻した。

 

「グリフィンドール五点減点」

 

……はい?

 

「手伝うなと言ったはずだ、ミス・グレンジャー。授業を終了とする」

 

……みんな知ってるかな?マラクローに噛まれると最長一週間は不幸になるんだけど、マラクローって食用には向かないんだよね。さて、あたしは何を言いたいんでしょうか。

答えは、『今度スネイプ先生のカップにマラクローのエキス入れておこう』でした。ふっふっふ、高熱と緑の吹き出物に悶え苦しむがいいわ。

 

 

 

闇の魔術に対する防衛術では、なぜかルーピン先生は教室にいなかった。少ししてやって来た先生が言ったことは、

 

「教科書は鞄に戻してもらおうかな。今日は実地練習をすることにしたからね。杖を持ってついて来てくれ。他は要らないよ」

 

というもの。あたしたちがルーピン先生について行くと、途中にピーブズがいた。幽霊のくせに物理干渉ができて、その上普通にすり抜けることも可能。さらにほんの少しだけどサイコキネシス擬きも使えるみたいだし、厄介なやつ。面白いけど。

ピーブズは近くの鍵穴にガムを詰め込んでいた。

 

「全く、こいつは変わらないな。〈逆詰め(ワディワジ)〉!」

 

先生が杖をピーブズに向けた途端、ガムが鍵穴から飛び出してピーブズの鼻に突っ込んだ。先生かっこいい。去年のロックハートよりも。

 

 

 

到着したのは職員室だった。スネイプ先生だけがいたけど、嫌味を言って出て行った。ロバラグの毒……はさすがにまずいからフロバーワームの粘液でマラクローのエキスを濃くしておこう。そうしよう。

職員室の奥の洋タンスに案内される。ガタガタ動いてるし、中には真似妖怪(ボガート)がいるみたいだ。ボガート撃退の呪文〈ばかばかしい(リディクラス)〉は幻術系の魔法の解除にも使えるから、ボガートを退治する必要のないあたしでも覚えてる。さて、みんなはどんなのが怖いのかな?あたしが何が怖いのか、自分でも全く予想つかないけど。




縮み薬(改)の効果
適当に考えた。だって、アポトキシン4869みたいな効果があるんだったらミニマムにする効果もあったっていいじゃない。
縮み薬の解毒剤が老け薬というのもオリ設定。


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ボガート

「さあ、ネビル。質問だ。君が世界一怖いものは何だい?」

 

「え、えっと……」

 

「落ち着いて。これがボガートの退治には必要なんだ」

 

「スネイプ先生……です」

 

ネビルの回答にみんなが納得する。毎回被害にあってるしね。

 

「スネイプ先生か。……そうだ、確か君はおばあさんと暮らしているね?いつもどんな服を着てるんだい?」

 

「え、ボガートがばあちゃんに変身するのも嫌ですけど」

 

「違うよ。ボガートの退治法は『笑い』なんだ。私は以前、ミス・ロングボトムとあった覚えがあるんだけど、面白い服装をしていた記憶がある。さあ、思い出してごらん?」

 

ネビルが考え込む。そして、ポツリポツリと話し出す。

 

「高くて、てっぺんにハゲタカの剥製がある帽子をいつも被ってる。それに、緑色の長いドレスを着て、時々狐の毛皮の襟巻きをしてる。ハンドバックは……おっきな赤いやつ」

 

「ようし、思い出せたね?次はそのイメージをボガートにぶつける。このタンスを開けたらボガートが襲ってくる。君を見たらスネイプ先生に変身するだろう。そこで、さっきの呪文を使う。何か面白いもの──君の場合はおばあさんの服装──に精神を集中させながらね。そうすれば、ボガートの変身は君たちのイメージと混ざり合う。聞くよりかは実際に体感した方が早いだろうから、ネビル、準備はいいかな?」

 

「は、はいっ!」

 

先生がみんなを順番に並ばせる。そして、ネビルが杖を構えたのを確認すると、タンスの戸を開けた。

中からはスネイプ先生が出てくる。本物そっくり。

 

「リ、〈ばかばかしい(リディクラス)〉!」

 

ネビルの呪文と共にボガート・スネイプ先生がつまずく。あー……スネイプ先生が出て行って正解だわ。スネイプ先生が見たらネビルに罰則が追加されるだろうし。

パーバティが次に挑むようだ。ボガートが変身したのは血塗れのミイラだった。結果は、包帯に絡まって転ぶ。シェーマスはバンシーの声を出さないようにした。そのあとも色々とあり、だんだんボガートは混乱してきた。

ロンの番も終わり、次はあたしの番だ。前に出る。

パチンという音と共にボガートが変身する。さて、どんな風になったのか──

 

【ごめんなさい謝りますからこの人たち止めてぇぇぇぇえ!】

 

──はい?黒いもやもやがあたしに抱きついて泣いてる。あー、最近見てなかったけど、このもやもやってボガートの正体みたいなもんだっけ。

 

「【ごめん、あたし退治する側】」

 

【後生ですから助けてください!】

 

いや泣かれても困るんだって。おいこらジャパニーズドゲザしようとしない。ほらルーピン先生や周りのみんなが硬直してるでしょうが。

 

「……ルーピン先生、ボガートにもうやめてくれって泣きつかれたんですけどどうしたら良いでしょうかね?」

 

「ああ……うん、君の判断に任せるよ、リアス。私には何がなんだかわからないからね」

 

ルーピン先生の表情が一気に疲れたものになった。ボガートはとりあえずディリコールを呼んで家に送り届ける。多分住み着くだろう。

 

「……イレギュラーがあったけど、これで授業はおしまいだ。ボガートと対決したグリフィンドール生一人につき五点。ハーマイオニーとハリーにもね。クラスの最初に、私の質問に正しく答えてくれたからだ。リアスには十点与えよう。面白いものを見せてもらった。宿題として、ボガートに関する章を読んで月曜までにまとめを提出すること。以上だ。解散!」

 

みんなが興奮した様子で職員室から出る。……あたしも、ボガートが何に変身するか興味あったんだけどなぁ……。



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ホグズミード休暇

カルデアのマスター諸君、頑張ってるかね?私はようやくハーゲンティをパンケーキに変えてバビロニアに突撃し始めたところだよ。


闇の魔術に対する防衛術は人気になった。少なくとも、一年生と二年生のほとんど(三年生も含まれる)の間では。

ボガートのあとは小鬼(ゴブリン)に似た悪鬼の一種、赤帽鬼(レッドキャップ)についての授業。その次は日本の河童。ああ、去年までとは大違いだ。ただしネビルはスネイプ先生のいびりにあってるけど。誰かがボガート・スネイプ先生について喋ってしまったようだ。哀れ、ネビルは犠牲となったのだ。ちゃんちゃん。

そういえば、スネイプ先生にマラクローのエキスによる悪戯を仕掛けてたけど、解除されてしまった。吹き出物はおできを治す薬で無理やり、高熱はアッシュワインダーの卵(丸ごと食べると熱冷ましになる)で解熱。ご丁寧にフロバーワームのエキスとともに。ついでに宿題が1.5倍になった、あたしだけ。バレたか、残念。

魔法生物飼育学はさらに面白い生き物も扱うようになった。クラップというラッセル・テリア似の魔法生物やフウーパー、どこから持ってきたのか知らないけどポリパンやウェンとか。

 

 

 

ハリーたちクィディッチチームは練習で忙しくなってきたようだった。キャプテンのオリバー・ウッドをはじめとした通称クィディッチ馬鹿たちが燃えている。今年こそ優勝杯をと。

まあ、あたしはそんなに興味もないのでいつだったか教えてもらった厨房へ。本日はパンケーキを貰うつもりだ。ホイップクリームにイチゴたっぷり、チョコレートもありかも。……?なんでかは知らないけど、『なぜ私だけがこんな目に』と言うどこかの誰かの言葉が聞こえた気がする。なぜでしょう。神代の魔女が関わってる気がするわ。

 

 

 

十月末には一回目のホグズミード休暇がある。あたしはゾンコの悪戯専門店とハニーデュークスに行って、シリウスの様子を見に叫びの屋敷に向かうつもり。ハリーは色々あってお留守番だ。マクゴナガル先生も、シリウスが無罪(仮)って知ってるなら出してあげてもいいと思うんだけど。あ、念のためか。

時間は飛んで、ハロウィン・デイ。朝ごはんを食べて、いざホグズミード村へ。

都会に比べると素朴だけど、それでもどこか暖かい感じがする。まずはバタービールを飲んでみよう。美味しいって話だし。

三本の箒という店に行き、バタービールを頼む。マダム・ロスメルタという女性が持ってきてくれた。にしても、この店は凄いね。人間以外にも、小鬼に山姥、人喰い鬼に……あれは吸血鬼かな?あんな種までいるなんて。この村は素敵だ。

ゾンコの店は悪戯用品であふれていたけど、その中にはほんの少し掘り出し物があったりする。魔法薬の材料や、取引制限品なども時折見つかる。腫れ草(ブボチューバー)の膿にベラドンナのエキス、トリカブト。それにフィリバスターの長々花火も買った。

ハニーデュークスには美味しそうなお菓子とゲテモノ系と食品があった。糖蜜パイや蛙チョコレートは美味しいけど、さすがに百味ビーンズは遠慮したい。石鹸味は不味かった。普通なはずのレモン味でも不味く感じてしまった。

あとはシリウスの様子見と届け物。尻尾を振って出迎えてくれた黒犬に袋を咥えさせる。中身はチキンとパンケーキ。それにおそらく双子のウィーズリーが忍び込ませていたであろう百味ビーンズ。あたしは黒犬の頭を一度撫でてから、ホグワーツ城へと戻っていった。




石鹸味とレモン味については実体験。


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切り裂かれた婦人

ホグズミードから帰り、大広間でかぼちゃ料理並びにスイーツの数々を食べ尽くして、みんなと一緒に寮に戻る。でも、談話室に入れなかった。グリフィンドール生がすし詰めになっていて、全く進まない。

 

「……?どうしたんだろ」

 

近くにいたロンを足場にして柱に登り、前の方を確認する。本来なら太った婦人の肖像画が見えるはずのそこには、滅多切りにされた絵の残骸が見えた。

 

「誰か、ダンブルドア先生を呼んでくれ!急いで!」

 

いつのまにか前に行っていたパーシーが叫ぶ。誰かが聞きつけて知らせたのか、それとも絵の誰かが知らせたのか、ダンブルドアは三十秒もしないで現れた。

 

「ああ、これは酷い。ミネルバ、フィルチさんのところへ行って、城中の絵を探すように言ってくださらんかね?婦人を探さなければならんじゃろう。もし、そこにおるピーブズが話してくれるなら別じゃが」

 

「へいへい、この城に留まらせてくれてる恩もありますし、教えてしんぜよう校長閣下。あの女はズタズタになり、そんな姿が恥ずかしく、五階の風景画の中を走って行きました。ひどく泣き叫びながらねぇ。ああ、可哀想に」

 

可哀想にとか言ってたけど、ピーブズは笑ってた。こんな時でもピーブズは平常運転みたい。

 

「誰がやったか、お主は知っておるか?」

 

「もーちろん!そこの堅物眼鏡の赤毛にかけて!いやはや、十年ほど見ない間におっそろしくなったもんだ!あのシリウス・ブラックは!」

 

シリウス!?何やってるの!?思わずダンブルドア校長の顔を見ると、首を横に振っていた。考えを整理しているんだろうか。

 

「生徒全員を大広間に戻してくださらんか、先生方。教師全員で城の中を捜索せねばなるまい。少ない人数で生徒を守るには、一箇所に集めた方が良いじゃろう」

 

ダンブルドア校長が他の先生たちに話し終えてすぐ、登ってる柱の下にネズミが現れた。いつもあたしに何かを伝えてくれるネズミだ。

 

【黒い犬が暴れ柳のとこから出てきて、もっかい柳の方に消えてったんですが、何かあったんですかい?】

 

黒い犬。多分シリウスのことだろう。もしかしてだけど、暴れ柳の近くに叫びの屋敷に繋がる道がある?

……ダメだ。会って話をしないと。そう考えて思考を放棄したあたしは、先生の指示に従って大広間へ戻り、ダンブルドア校長が用意してくれた寝袋に入って眠りに落ちた。

 

 

 

……誰かに揺らされる。少しして、また揺らされる。誰かしら?

 

「……おお、起きてくれたかのう、リアスや」

 

「……校長、先生?」

 

天井を見ると、まだ星が輝いている。ポケットから時計を取り出して確認すると、まだ夜中だった。

 

「こんな夜更けに何の用です?」

 

「少し話がしたくてのう。もちろん、件の彼についてじゃ」

 

その言葉を聞いたあたしは、ノロノロと寝袋から起き出して先生に向き合った。

 

「ふむ、まだ少し眠いかね?熱いココアでも与えられればいいんじゃが、それではこの後眠れんじゃろう。何が言いたいのかと言うと、こんな時間に起こしてすまんかった」

 

「あー、シリウスに関係する話ならいいです。で、何ですか?」

 

「君は、シリウスが婦人を切り裂いたと思うかね?……ああ、安心せい。婦人は三階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておるよ。シリウスが入ろうとして、合言葉を言わなかったので拒み、襲われたようじゃ。頃合いを見て、肖像画を修復させようぞ。なに、フィルチは案外器用でのう」

 

笑うダンブルドア校長に、あたしはシリウスがやったので間違いないことを教えた。うん、多分、シリウスで間違いない。

 

「では、なぜ彼はそんなことをしたのかね?……いや、もしやあの若者は……」

 

「多分そのまさかかと。スキャバーズ捕まえようとしたんでしょうねー」

 

あたしもダンブルドア校長も呆れ返る。在学中は学年トップクラスだったそうだけど、案外間抜けじゃないだろうか。

 

「よろしい。彼にはきつく言っておいてくれるかのう。器物損害は厳禁じゃと。婦人が戻ってくるまでは代理の肖像画に頼まねばならんが、先ほど聞いてきたんじゃが、カドガン卿しか立候補せんかった。彼は責任感はあるが、決闘狂で難題好きの気があるからのう。合言葉が大変なことになりそうじゃ」

 

「それは勘弁したいですけどね。それじゃあ、おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

あたしはもう一回寝袋に入る。取り敢えず、明日の夜にはシリウスに説教しなくちゃ。



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スネイプ先生による防衛術

改めて読み返してみて思った事。話の繋げ方とかが下手くそだなぁ、私。こんな文をいつも読んでくれてありがとうございます。


グリフィンドール寮に戻れるようになったけど、カドガン卿は一日に

二回合言葉を変え、しかもとんでもなく複雑なのを考えてくる。グリフィンドール生のみんなは大弱りだった。みんな、切り裂かれたのが婦人じゃなくてカドガン卿だったら良かったのにって言い合ってる。

ハリーからはとあるお願いをされた。吸魂鬼たちに近づかないように頼んで欲しいそうだ。列車の中でのことを時々思い出して、もしあのまま幸せを吸われていたらと考えてしまうんだって。そろそろクィディッチの試合だし、落っこちたら大変だもんね。ハリーには近づかないように伝えておこう。代わりにドラコになら近づいても良いとも。

 

 

 

ハリーからクィディッチの試合を観に来ないかと言われた。週末に行われるそうだ。天気悪いけど平気なのかな?

 

「クィディッチはどんな悪天候でも行われるんだよ。それに、スニッチがキャッチされるまで何があろうと基本的には試合は続行されるんだ」

 

「なんでそこまで過酷なスポーツになったんだろうね」

 

改めて窓の外を見る。空はどんよりと曇り窓ガラスには雨が強く打ち付けている。試合の日にはもっと酷いことになってそうだ。

 

 

 

クィディッチの試合の前日、闇の魔術に対する防衛術の教室に着いたあたしはルーピン先生じゃなくてスネイプ先生がいることに驚いた。

 

「なんでスネイプ先生が?防衛術の担当はルーピン先生じゃ……」

 

「ルーピン先生は、今日は気分が悪く教えられないとのことだ。だから我輩が代わりに教鞭をとることになった」

 

それだけ言うと、スネイプ先生は授業の準備を始めた。いつもよりウキウキしているように見える。

授業が始まり、先生が出欠をとる。見渡してみると、ハリーだけが居なかった。

十分後、ハリーがようやくやって来た。

 

「遅れてすみません。ルーピン先生、僕──」

 

「授業は十分前に始まっていたのだが、なぜ遅れたのかねポッター?ああ、言わなくても良い。どうせ英雄的な何かで遅れたのだろう。グリフィンドールは十点減点とする。さっさと席に座れ」

 

「え、あの、ルーピン先生は?」

 

「今日は気分が悪く、教えられないそうだ。命に別状はない。ほら、席につけ。グリフィンドール五点減点。さっさと座らんと五十点減点するが?」

 

ハリーが慌てて席に座る。スネイプ先生は立ち上がり話し始めた。

 

「さて、ようやくポッターが到着したので授業を始めるとしよう。ルーピン先生はこれまでどのような内容を教えたのか、全く記録を残していないようなので──」

 

「先生、これまでやったのは、真似妖怪(ボガート)赤帽鬼(レッドキャップ)、河童、水魔(グリンデロー)です」

 

ハーマイオニーが手を挙げて一気に答える。さらに喋ろうとしたけど、スネイプ先生が止めさせた。

 

「ミス・グレンジャー、我輩は教えてくれと言ったわけではない。ルーピン先生のだらしなさを指摘しただけである。……非常に残念なことだが、彼が去年、一昨年よりかはマシだとは認めるが。

我輩が本日教えるのは、人狼である。全員教科書三九四ページをめくるように。異論は認めん」

 

全員が文句を言いながら教科書を開く。本来ならヒンキーパンクをやる予定だったんだけどな。

 

「さあ、人狼と真の狼を見分ける方法がわかる者はいるかね?」

 

ハーマイオニーが手を挙げる。もちろんあたしも。

 

「──ふむ、驚いた。ミス・クリミア、答えたまえ」

 

「人狼の鼻面は普通の狼よりも低いです」

 

「正解だ。だが、これは周知の事実であるがゆえに点はやらん」

 

スネイプ先生が少し苦々しげな顔で言う。どれだけグリフィンドールが嫌いなんだろう、先生。



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嵐の試合

感想欲しい……


スネイプ先生の質問のあとは人狼についての記述を、教科書から書き写す。その間先生はルーピン先生が何を教えていたかを調べていたけど、その度にルーピン先生を批判していた。あと先生、河童は蒙古よりも日本の各地、特にトーホクでよく見られるそうですよ。

 

「諸君、各自レポートを書き、我輩に提出するよう。人狼の見分け方と殺し方についてだ。羊皮紙二巻、月曜の朝までだ。くれぐれも、遅れぬように」

 

終了のベルが鳴り、みんなが教室を出る。教室に声が届かないところまで行くと、みんなはスネイプ先生に対する愚痴を色々とぶちまけた。

 

「なんでスネイプはルーピン先生にだけ当たりが厳しいのかしら?去年まではそんなことは……ロックハート先生のことは忘れましょう、ええ」

 

「賛成だよ。スネイプは闇の魔術に対する防衛術の先生になりたい。けど、今年はルーピンがついてしまった。それでイライラしてるのかな?ルーピンの薬を作ってるし」

 

……?ルーピン先生の薬?先生が今日体調が悪いことに何か関係ある?……そういえば、今日は満月だったわね。雨雲で全く見えないけど。

人狼は満月の日の夜、狼に変身する。そして、今日スネイプ先生が教えたのは人狼について。宿題は、見分け方と殺し方。……何か関係がありそうだけど、うまく繋がらない。今度ルーピン先生と話してみよう。シリウスとの関係についても。お土産は百味ビーンズを混ぜたチョコレートで。

 

 

 

翌日、風と雨の音で目が覚めた。もう七時ぐらいなのに外は暗い。窓が壊れそうなほど勢い強く雨が降っている。……クィディッチ選手、大丈夫かな?

朝食を食べて、外にあるクィディッチ競技場へ向かう。雨合羽を着て傘をさしたけど、傘は強風でもぎ取られていっちゃった。周りの声も聞こえない。……っと、吸魂鬼たちに近寄らないように伝えとかないと。あたしはネズミ型の使い魔を作って吸魂鬼たちのところに向かわせた。これで近寄ってこない……はず。

今日の試合はグリフィンドール対スリザリン……の予定だったけど、スリザリンのシーカーの体調不良とかでグリフィンドール対ハッフルパフになった。キャプテンはシーカーのセドリック・ディゴリーだって。

観客席に座っても、選手たちの様子はおぼろげにしか見えない。実況をしているリーの声も、彼を叱責しているであろう解説のマクゴナガル先生の声も聞こえない。あ、ウッドがタイム・アウトをとった。

ふと、反対側の観客席を見る。一番上の、誰も座ってないはずの場所で何かが動いた気がしたのだ。目を細めてジーっと見てみる。……黒い、犬?って、シリウスじゃん。なんであんなところに居るのよ。

シリウスはハリーの飛んでる姿を見るとすぐに姿を消した。まったく、追われてるって自覚がないんじゃない?

……あ、セドリックが急上昇してる。上には……金のスニッチ!ハリーも気づいたみたいで、セドリックを追いかけてる。スピードはハリーの方が速い。ハリーがギリギリでセドリックを追い越してスニッチを獲る。けど、雷が落ちて二人とも感電してしまったみたい。ハリーとセドリックが落ちていく。セドリックは途中で目覚めてハリーをキャッチした。

……あれ、ハリーの箒がそのまま飛んでいってる。あの先には……暴れ柳がある。このままだとぶつかる!

あたしはすぐに駆け出して箒を追った。でも、あと一歩間に合わず、暴れ柳に突っ込んだニンバス2000は粉々にされてしまった。箒は柳にぶつかった途端引き返そうとしてたけど、間に合わなかった。

せめてもと思いわニンバスの残骸を虫やネズミ、トカゲに協力してもらい拾い集める。雨合羽を脱ぎ、残骸を雨合羽で包んだあたしはすぐに医務室へと向かった。多分、ハリーはそこに運ばれただろうから。



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企み?

(おそらく)今年最後の更新


医務室に着いたけど、まだハリーは目覚めてないそうだ。雷が直撃したけど、命に別状はないと、マダム・ポンフリーは言ってくれた。セドリックが落ちてる間に目覚めたのは、ハリーの方に雷が落ちて、その余波をくらっただけだからみたい。

三十分ほどでハリーは目を覚ました。まだ意識ははっきりとはしてないみたいだけれど、受け答えぐらいなら出来る。周りにいたハリーのチームメイトやセドリックが次々にハリーに話しかける。心配したとの声と、賞賛の言葉を。

 

「ところで、僕のニンバスは?意識が消える中で飛んで行くのが見えたんだけど……」

 

ハリーの近くに寄って、包んだ雨合羽を開ける。

 

「ごめん。暴れ柳にぶつかったの。引き返そうとしてたけど……間に合わなかった」

 

ニンバスの残骸を見て、ハリーは落ち込んでしまった。自分があの時、気絶しなければと。

あたしは雨合羽をベッド横の机に置くと、ハリーの頭を撫でてから医務室を出た。落ち込んでるペットを慰めるには頭を撫でるのが効果的なんだよね。

……さて、と。あたしは頭の中でとある計画を立てていた。それにはシリウスの協力が必要だけれど、賛成してくれるだろう。

 

「……メーカーが無茶なお願いを聞いてくれるといいんだけど」

 

あたしは、手の中の木片をもてあそびながらそう呟いた。

 

 

 

 

その日の夜、あたしは使い魔に憑依してシリウスに会いに行った。食べられそうになったけど。

 

「すまない、気がつかなかった。何のようだい?」

 

「追われてるって自覚あるの?」

 

「あるに決まってるだろう!でなければここに隠れ潜んでないし、君たち親子に頼っていない」

 

「はぁ……うかつすぎない?今回は見逃すけど、次やったら差し入れ持ってきてあげないよ?」

 

「それは勘弁願いたいね。ネズミを食べるのには飽きてきた」

 

少しの間シリウスと与太話をしていたけど、あたしはシリウスに会いに来た本来の目的を話し始めた。

 

「シリウス、ハリーの新しい箒を買いたいんだけど」

 

「いいだろう。どれを買うんだい?私としてはニンバスも良いと思うけどやっぱり一番はファイアボルトだろう。ああ、シルバーアローも良いかもしれないけど、生産数が少なすぎるし、スピードはファイアボルトの方が速い。よし、早速注文しに行こう。名義は私で良いかな?一足早いクリスマスプレゼントだ。メッセージカードもつけなければ」

 

「うん、一度黙ってちょうだい」

 

消音呪文でシリウスを黙らせる。よし、これであたしが話せる。

 

「お金を出すのはシリウスね。強制されなくても自分から出しに行くだろうし。買うのはファイアボルトのつもりだけど……少し細工をしてもらいたいのよね。ちょっと無茶なお願いになるから、本来のファイアボルトの金額よりも高くなるはず」

 

「どのくらい金庫にあったかは忘れたが、最低でも千ガリオンはあるけど、これでも足りないか?」

 

「十分だよ。それで、細工っていうのは──」

 

「──ああ、ハリーも嬉しいだろうね。メッセージカードにそのことも書き加えておこう」

 

「シリウスの名前は出さないようにね」

 

シリウスに別れを告げて、憑依を解く。明日にでもママに()()を送ろう。シリウスからのメッセージも。ハリー、喜んでくれるかな?



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学期末のホグズミード

新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


月曜日、闇の魔術に対する防衛術の授業。前回はスネイプ先生だったけど、ルーピン先生は復帰したみたい。目の下にクマができてたけど。

みんなは、スネイプ先生の授業についての不満をぶちまけていた。

 

「代理なのに宿題を出してきたんです!」

 

「人狼についてなにも知らないのに」

 

「それも、羊皮紙二巻も!」

 

「君たち、スネイプ先生に、まだそこは習っていないって、言わなかったのかい?」

 

「言いましたけど、スネイプ先生は僕たちがとっても遅れてるって……」

 

「耳を貸さないんです」

 

全員が怒ってるのをルーピン先生は見渡して、笑いかけた。

 

「よろしい。私からスネイプ先生にお話ししておこう。レポートは書かなくてもよろしい」

 

「そんな!私、もう書いちゃったのに!」

 

「ああ、書いてあるのなら出してもいい。採点してあげよう」

 

さすがハーマイオニー。羊皮紙二巻分書き上げてしまったようだ。

授業はおいでおいで妖精(ヒンキーパンク)についての説明だった。旅人を沼地に誘い込み沼に落とす悪戯妖精。妖精ってどの種も悪戯好きなんだよね。ピクシーもだしインプもだし。ヒンキーパンクは一本足で手にはランプを持っている。凄く綺麗で、幻想的だ。悪戯好きだけど。

就業のベルが鳴り、みんなが荷物を持って出口へと向かった。

 

「ああ、ハリーは少し残ってくれないか。話があるんだ」

 

先生はそう言い、ハリーを呼び止めた。何の話かは気になるけど、次の授業の準備をしなくちゃだからね。あと、盗み聞きは良くないし。

 

 

 

雨は十二月まで降り続けて、クリスマス直前──学期が終わる二週間前にようやく空が明るくなった。城の中はクリスマスムードに満ち溢れていて、フリットウィック先生は自分の教室に豆ランプ(フェアリー・ランプ)を飾り付けていた。よくよく見てみると、本物の妖精(フェアリー)が羽を羽ばたかせている光だったけど。

それと、ママから手紙が届いた。箒メーカーが細工に許可を出してくれたそうだ。細工する理由を話したら「なら仕方がない」と言ってくれたって。クリスマス・イブにこちらに届くようだから、クリスマスプレゼントとして渡せる。学校の箒『流れ星(シューティング・スター)』は乗りづらいって愚痴を言ってたしね、ハリー。

学期最後の週末、クリスマスまであと幾日というところでホグズミード行きが許された。

ハニーデュークスの店はごった返していた。ここには甘いお菓子がいっぱいある。キャンディにガム、チョコレート。変な効果を持ってるやつとか、血の味がするキャンディとかもあるけど。……あれ、今誰かぶつかった?気のせいかな。

外に出ると、大雪が降っていた。さっきまでは弱かったはずなんだけど。寒いし、三本の箒で暖かいバタービールでも飲もう。



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三本の箒にて

邪ンヌ再臨用に北米でキメラを狩る→暇だしイスカンダルは興味ないし福袋ガチャは課金するつもりがないから引けないのでストーリーガチャを単発で引く→金鯖確定演出……だと?→「私はメイヴ。女王メイヴ」→……え?

てことでうちのカルデアに二人目の☆5鯖、スーパーケルトビッチことメイヴちゃんが召喚されました。


書いてて気がついたけど、原作小説ではハリー、ハニーデュークス店舗内に入った時に透明マント脱いでるのよね。この小説ではマントを脱がなかったと言うことで。


三本の箒に入って暖かいバタービールを飲んでると、ロンとハーマイオニーが入ってきた。近くの席に座ったのでちらりと見てみると、なぜかロンとハーマイオニーが座っている以外に、もう一つ、誰かが座ってるみたいに椅子が引かれている。

そのまま見続けていると、ロンが注文しにカウンターへ向かった。ロンがマダム・ロスメルタと話してるけど、顔が赤くなってる。しどろもどろだけど注文を終えて、バタービールが入ったジョッキを三つ、席へ持って帰っていた。ロンとハーマイオニーだけなら二つで十分なはずなんだけど。……あれ?ジョッキ浮いてない?あ、見えなくなった。……もしかして、透明マント?確か、ハリーが持ってたはずだし、もしかしてハリーがいるのかしら?ハニーデュークスでぶつかったのも?……いや、ないか。さすがのハリーでも、フィルチさんの監視をくぐり抜けてホグズミードまで来れるはずがない。あたしが知ってる抜け道は暴れ柳の真下、叫びの屋敷に繋がっている道(フィルチさんは知らないみたい)だけだし、それ以外の抜け道はフィルチさんが網羅しているはずだ。……双子やシリウスなら知ってそうなんだけどね、フィルチさんも知らない抜け道。

バタービールの最後の一口を飲む。そろそろ店を出ようと思って席を立ちかけ、急に冷たい風が顔に当たった。見ると、マクゴナガル先生、フリットウィック先生、ハグリッド、それに、確かあれはファッジ大臣だっけ?が入ってきた。何やら深刻そうな表情をしている。あたしは気になって、マダム・ロスメルタにバタービールのお代わりをしてもらうことにした。

 

「はい、バタービールですよ。今度は少しぬるめにしておいたからね」

 

「ありがとうございます」

 

元の席に戻ると、一つテーブルを挟んだ席に、先生たちが座っていることがわかった。マダムがトレイを持って先生たちの方に向かっている。

 

「ギリーウォーターのシングルです。はい、マクゴナガル先生。ホット蜂蜜酒四ジョッキ分はハグリッドかしら?さくらんぼシロップソーダ、アイスクリームと唐傘飾り付きは、あら、フリットウィック先生?残った赤い実のラム酒は大臣ですね?」

 

「大当たりだ、ロスメルタのママさん。どうだい?私たちと共に一杯」

 

「あら、光栄ですわ」

 

マダムがカウンターへ向かい、グラスと酒瓶──遠目にしか見えないけど、スコッチと書いてある──を持って、戻ってきた。

 

「大臣はなぜ、こんな片田舎へお出ましに?クリスマスならロンドンの方が賑やかですわよ?」

 

「出来る限り部外者には知らせたくない話なんだよ。それに、この村にも関係がある。シリウス・ブラックの話だからね。ハロウィンの日に、ホグワーツで何が起こったかはうすうす聞いているんだろう?」

 

シリウスの話?これは聞いておかなくちゃ。マクゴナガル先生はダンブルドア校長から、シリウスが無罪の可能性があるって聞かされてるはずだし。

 

「ハグリッド、あなたはまたパブ中に触れ回ったのですか……ええ、一昨年フラッフィーのことを怪しげな人物に話してしまったこともそうですし、前にケトルバーン先生の失敗を大声で話してしまったと聞いていますよ?あの後ケトルバーン先生は恥ずかしくてホグズミードにしばらく寄り付かなかったのです」

 

「す、すんません、先生」

 

「よろしい。次やったらあなたの育てているかぼちゃを没収でもしましょうか──泣きそうな顔をしないでください、冗談ですよ。

しかし大臣、あなたはまだ、ブラックがこの辺りにいるとお考えで?私が彼でしたら、しばらくの間はここから離れますが」

 

「間違いなくこの村、もしくは近辺にいるだろう。そのあぶり出しのために吸魂鬼に捜させているんだ」

 

「では、店の中の捜索はやめていただけませんこと?客が怖がって逃げてしまい、そのまま食い逃げ同然ですわ」

 

「今しばらくの我慢だ。なあに、半年もすれば見つかるさ。連中はいけすかないしおっかないが、それよりもおっかないのから生徒たちを守るために配備してるんだ」

 

ファッジ大臣、吸魂鬼を悪く言うのはやめてください。

 

「わたしにはまだ信じられないんですけどね。彼──シリウス・ブラックが闇の勢力に加担するだなんて。あの子がまだ学生の時から知っていますけど、あの子は悪戯好きで、笑顔が好きで、心優しかった」

 

「だが、現に奴はポッター夫妻を裏切った。ブラックと最も仲の良かったジェームズを裏切って、ピーター・ペティグリューを爆四散させた」

 

「ええ、そう言われているようですね、大臣。しかし、アルバスがこんなことを──」

 

「──なに?ありえんだろう。まさか──が生きているなど」

 

「私もにわかには信じられませんよ、ブラックが無罪だなんて。裏付ける証拠でもない限りは」

 

「マクゴナガル先生、まさか、ブラックが無罪だって言う証拠が?」

 

「あるそうです。これ以上は校長先生自身の口から聞いてください、コーネリウス。さあ、会食に遅れてしまいますよ」

 

そう言って、先生たちは立ち上がり外に出て行った。

さて、あたしも帰ろうかな。っと、その前にシリウスのところに寄ってご飯あげないと。帰ったらまず、ハリーがちゃんと寮にいるかどうかの確認だね。



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クリスマスプレゼント

クリスマス・イブの夜。休暇を家で過ごす生徒たちが汽車に乗り込むために荷物をしまい、城を出て行く。残るのはあたしたちグリフィンドールの一部とレイブンクローの一部ぐらいだろう。

マクゴナガル先生に許可を貰い、フクロウ小屋に荷物を受け取りに行く。細長く、それでいて素人のあたしでも綺麗だとわかる滑らかな曲線を描くそれは、あたしたちが待ち望んでいた物だった。

 

「ミス・クリミア。それが受け取りたかった荷物なのですか?」

 

「はい。ハリーへのプレゼントに、ちょっと細工をしたファイアボルトを」

 

「なんですって?ファイアボルト?そんなに高級な箒をですか?ああ、何もそれを買ったことを咎めているわけではありません。ただ、あなたの家のお金は大丈夫なのですか?」

 

「大丈夫ですよ。シリウスに出させたので」

 

「……確かに、ブラック家ならお金は有り余ってるでしょうね。それで、何か危険な魔法は仕掛けられていませんね?私はまだ、ブラックを信用しきっているわけではありません」

 

「大丈夫ですって。わざわざ完成品をメーカーが分解して、安全なように細工をしただけですから」

 

「ではもう一つ質問を。先ほどから度々出ている細工とは一体なんのことですか?」

 

「ハリーのニンバスの欠片、それを箒の柄に組み込みました」

 

「なんと、まぁ……ポッターはあの箒を信頼しきっていました。箒は乗り手によって態度を変えます。ポッターのニンバスは自らの乗り手を信頼していました。ええ、彼も安心することでしょう。少し預からせてください。簡単な検査をした後、真夜中に談話室のクリスマスツリーの下に置いておきますから」

 

あたしはファイアボルトをマクゴナガル先生に渡して、寮に戻っていった。

 

 

 

次の日の朝、ハリーとロンの絶叫で目が覚めた。途中で寝ぼけ眼のハーマイオニーと合流して、談話室に下りる。

クリスマスツリーのそばで大はしゃぎしている二人の手──より正確には、ハリーの手の中には、あたしが昨日、マクゴナガル先生に渡したファイアボルトが握られていた。

 

「二人でなんではしゃいでるのか、教えてくれるかしら?」

 

ハーマイオニーはハリーに近づき、抱えていた猫、クルックシャンクスを落としてしまった(クルックシャンクスはちゃんと着地していた)。

 

「まあ、ハリー!誰がこれを送ってきたの?」

 

「カードが二枚。一枚はマクゴナガル先生からだ。『この箒の安全は保証されていますので、安心して使いなさい』って。もう一枚は、誰からか書いてないんだ。読み上げるよ──『ハリー、この箒は私からのクリスマスプレゼントだ。誰なのかは口止めされているが、君の友達から、君が使っていたニンバス2000の欠片を一つ貰い、メーカーに掛け合って組み込んで貰った。本来のファイアボルトよりも使いやすいはずだ。いいクリスマスとクィディッチを』」

 

「わお、最高じゃないか、ハリー!最高峰の箒に君が愛用していたニンバスの欠片だ、きっと君にとても合った箒だよ!」

 

「でも、危険じゃないかしら?もし、シリウス・ブラックがハリーを殺そうと送ってきたのなら大変よ。ほら、その欠片に呪いをかけたりとかして!」

 

「でもハーマイオニー、マクゴナガルの保証付だぜ。これほど安心なことってあるかい?」

 

「それも罠だったらどうするのよ!ブラックがマクゴナガル先生の筆跡を真似したりしてそのカードを書いていたら!」

 

「なら、マクゴナガル先生に聞きに行けばいいんじゃない?」

 

三人の視線があたしに集中する。これまでクルックシャンクスをもふってたあたしが急に喋りかけたからね。

 

「マクゴナガル先生が保証したのなら、マクゴナガル先生はそのことを覚えてるでしょ。だから、確認しに行けばいいと思うんだけど」

 

「そうだよ、マクゴナガル本人に確認すればいいんだ!ごめん、ハーマイオニー。行ってくる!」

 

「僕も行くよ、ハリー!ハーマイオニーはここで待っててくれ!」

 

「ちょっと、二人とも!……まったく、男の子って単純なのね。ところでリアス、粉々になったニンバスをハリーに届けたのってあなたよね。まさか、メッセージカードの友達って……」

 

「そのことは神のみぞ知るってことで、ね」

 

 

ハーマイオニーの確信を伴った質問に、遠回しにYESと答える。あたしはクルックシャンクスを抱えたまま談話室を出て、大広間へと向かった。早く七面鳥を食べたい。




感想来ない……寂しい


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円卓料理

さて、みなさんに少しお知らせが。
「最近魔法生物の王らしきやりとりがない」との感想をいただきまして──少しはっちゃけることを決めました。具体的にはリアスのペットがさらに強化されますね。
うん、()()も獣だし平気でしょう。ちゃんとタグには入ってますし、舞台イギリスだし。問題はどうやって登場させるかなんですよねぇ……あのガイアnゲフンゲフンあの獣。


大広間では、普段並んでいる各寮のテーブルと教師用のテーブルは壁に立て掛けられ、中央に円卓が置いてあった。円卓の中央には大きなローストされた七面鳥が鎮座し、周りには様々な料理が陳列されて居た。

 

「メリークリスマス、リアス。気に入ってくれたかのう」

 

「メリークリスマス、ダンブルドア校長。あの、なんで円卓を?」

 

「いやはや、今学校に残っているのは先生方と少しの生徒だけじゃからのう。少人数なのに分かれて座り、寂しい思いをするよりは、生徒も教師も関係なく、一緒に食べた方が良いじゃろう?それに、ここで食べるのはちょうど十三人。これほど円卓という席が似合う人数はあるまい。そうじゃ、グリフィンドールの剣でも置いてみるかのう」

 

「いや、剣を置くのはやめて置いた方がいいんじゃ?」

 

でも、確かに十三という数字は円卓にあっているだろう。特にこのイギリスでは。かのアーサー王の円卓、その席の数は十三だったらしいし、ホグワーツが城だということも相待ってふさわしく見えてくる。

 

「できれば、城を純白にしてみたいところじゃが。ほれ、かのキャメロットの城は純白じゃったからの」

 

「キャメロットって妖精が一日で作り上げたんでしたっけ。あの妖精たちに城を一日で作り上げるほどの才能は感じませんけどね」

 

「古代の妖精たちは今の妖精とは違い、賢く、したたかじゃったそうじゃ。根本的なところから違うかもしれぬ。今のように、生物として確立された妖精ではなく、まさに幻想とでも呼ぶべき存在、いわば精霊などと同等じゃったのかもしれん。

おお、生物と言えば一つ二つ、面白い話を耳にしてのう」

 

「面白い話、ですか?」

 

「そうじゃ。一つ目はホグワーツよりも南、ブリテン島の南端付近での話じゃ。とある巨大な猪が目撃されたそうでの、魔法省がマグルたちの記憶を消して回り、その猪を探しておるそうじゃ。ただ、その後は一度も目撃されてないそうでのう、北に向かったとしか分かっておらん。

二つ目はホグワーツよりもさらに北、北端付近じゃ。ある老魔女が白くモコモコとした生き物を見たそうで。リスよりも少し大きく、小型犬よりかは小さく、フォウフォウ鳴いておったと話してくれた。その生き物はどこかに行ってしまったようじゃがな」

 

「それ、片方はアーサー王物語の猪じゃ……」

 

イギリスで猪と言ったらそれぐらいしか思い浮かばない。トゥルッフ・トゥルウィスとか言う猪。……あ、コインヘンが言ってた猪って、トゥルッフ・トゥルウィスのことじゃないかな?会うのが楽しみだ。

少しして、他の先生方、なぜか燕尾服を着たフィルチさん、一年生二人とスリザリンの五年生一人が集まり、後はハリーたち三人を待つだけとなった。

 

「おお、待っておったぞ、三人とも!さあ、席にお座り。みな、お腹がすいておるからのう」

 

ハリーたちが到着し、戸惑いつつも席に座る。ダンブルドア校長がふざけてクラッカーをスネイプ先生に渡して、彼は渋々クラッカーの紐を引いた。大きな音がして、何かが飛び出してくる。あたしの頭に着地したそれは、ハゲタカの剥製がついた三角帽子だった。よし、貰おう。

ダンブルドア校長の合図で食事が始まり、みんなが料理を取り分け始めた。




ええ、例えそれがどこぞの吸血姫の配下の狼、もしくはそれになりうる存在だったとしても、この作品なら出して平気でしょう。


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クリスマス

クリスマス料理はとても美味しかった。食べてる途中でトレローニー先生が参加してきて色々言っていたけど、それに後から気づくくらい食事に没頭していた。聞けば、校長先生の言葉も何回か無視してたらしい。

ハリーたちは校庭をファイアボルトで飛び回っていた。うーん、あたしも飛びたいし、久々にペットを呼び出そう。

 

「〈おいで、ラークス(インヴォーカレ・ラークス)〉!」

 

杖を空に向けて呪文を唱える。光の中からはラークスという名を付けたサンダーバード──鷲やヒッポグリフに似た、竜みたいな大きな鳥──が出てきた。

 

「キュイ」

 

「【乗らせてもらうね】」

 

地上に降りてきたラークスの背に乗り、空へ飛び立つ。蒼い空を横切り、軌跡にはラークスの翼から流れる雷が残る

そのまま、ハリーと競争したり(ギリギリでラークスとあたしが勝った)ハーマイオニーがラークスを見て驚いたり、オカミーやスウーピング・エヴィルなどの飛べる生物を呼び出してみんなで飛んだりしてた。楽しかったな。

 

 

 

年が明け新たな学期が始まり、学校に活気が戻ってきた。そんな中、一度目の防衛術の授業の後に、ルーピン先生から頼みごとをされた。

 

「ボガートですか?」

 

「ああ。一匹でいい、心当たりはないかい?ハリーとの訓練に使いたいんだ」

 

「手っ取り早いのはそこら中の狭くて暗い場所を探し回ることですけどね。……うちの子を片方だけ。絶対に、五体満足で返してくださいよ?」

 

「ああ、約束するさ。なんなら私の一番の秘密を賭けたっていい」

 

「わかりました。〈おいで、ミミル(インヴォーカレ・ミミル)〉」

 

杖から光が溢れ、トランクが一つ出てくる。ミミルはこのトランクがお気に入りなんだよね。

 

「絶対に、退治しないでくださいよ?」

 

「さっき言っただろう?私の一番の秘密──もしかするとこの城を追い出されるような秘密を賭けるんだ。彼、いや彼女かな?──は絶対に、君の元に返そう」

 

「本当なら〈破れぬ誓い〉を結びたいところですけどね……信用します。あと、ミミルは女の子です。あなたが最初の授業でフルボッコにした子」

 

「え……私に復讐したりしないよね?」

 

「しませんよ………………多分」

 

慌てるルーピン先生から目を離して次の教室へ向かう。途中で、ハグリッドがニフラーを連れているのを見かけた。何か落としたのかな?

……あ、先生にシリウスとの関係とか何か人狼に関係があるのかとか聞いてみるのを忘れてた。せっかく作った百味ビーンズ入りチョコレートも……あれ、ない。

 

「おや、誰かの忘れ物かな?まあ食べても平気だろう──不味っ!なんだこのチョコレートは!よくよく見たら百味ビーンズ入ってるじゃないか!」

 

教室に忘れてしまってたか。まあ、上手く先生の手に渡ったようで何より。

 

 

 

 

一月が何事もなく過ぎていき、二月に入った。

ハリーはルーピン先生と、ボガートを使って〈守護霊の呪文(パトローナス・チャーム)〉の訓練をしているらしい。なるほど、確かに守護霊の訓練にはボガートが一番だろう。ほとんど本物の吸魂鬼と同じようになれるし、最悪の場合には〈ばかばかしい(リディクラス)〉でなんとかなるし。あたしも守護霊の呪文、習得してみようかな。

 

……あ、スキャバーズのこと忘れてた。




サンダーバード
映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」で出てくる生物。「幻の動物とその生息地」には出てこない。翼の羽ばたきで嵐や雷が起こせる。また、危険を察知できる能力もある。
ラークスという名前の由来は、FAIRY TAILのラクサス・ドレアーより。第一印象の竜と雷で、ラクサスが思い浮かんだ。インドラとかも思い浮かんだけどさすがにそっちはやめておいた。

ミミル
37話「ボガート」にてグリフィンドール三年生とルーピンによりフルボッコにされたあのボガート。リアスの部屋に置いてあった古いトランクが気に入り住み着いた。
名前の由来はミミック。また、ミミルという名前は北欧神話のミーミルに通ずる。オーディンの相談役の賢者の神がミーミル。簡単に言うと花の魔術師(マーリン)の立場。

ニフラー
M.O.M.分類XXX
光り物大好きな魔法生物。いくらでも詰め込める魔法のバッグを持っているそうで、宝探しなどによく使われる。モグラみたいな姿をしている。
今回登場したのは伏線でもなんでもない。ただ去年から残留していたピクシーの一匹が、城の部屋の鍵を一つ、校庭に埋めてしまったから。一時間後にその鍵は無事見つかった。


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冷戦とレイブンクロー戦と

談話室でうたた寝していると、急に大声が聞こえてきて目が覚めた。

 

「見ろ!血だ!スキャバーズがいなくなっちまった!」

 

階段の方を見ると、顔を怒りで赤くしたロンが、シーツを手に立っていた。真っ白だったシーツには所々に赤い血がついている。

 

「床にはオレンジ色の猫の毛が落ちてた!この中でオレンジ色の猫を飼ってるのはハーマイオニー、君だけだ!クルックシャンクスはとうとうスキャバーズを襲ったんだ!」

 

……えーと、要するに部屋からスキャバーズが消えてて、シーツには血痕、床にはオレンジ色の猫の毛があった。この寮でオレンジ色の猫はハーマイオニーのクルックシャンクスのみ。だからスキャバーズはクルックシャンクスに襲われたはずだ、と。

ハーマイオニーは必死に否定してるけど、ロンは聞く耳を持っていない。次第に、ハーマイオニーまでカンカンに怒ってしまった。

 

「絶対に違うわ!クルックシャンクスは賢いのよ。あなたのネズミを襲ったりなんかしてないわ」

 

「だったらこの毛はなんなんだよ!ほら、頭がいいんだろう?説明して見ろよ!」

 

「クリスマスの時からそこにあったんじゃないの?もしくは、それよりもずっと前から。それに、ちゃんと隅々まで探したのかしら?ベッドの下とかにはいなかったの?」

 

「いなかったよ。クローゼットの中もトランクの中もコートのポケットも全部探した。それでもいなかった!君の猫が食べたんだからね!」

 

「だから、違うって言ってるでしょう!それに、ホグワーツには縦横無尽にパイプが通ってるわ。そこに逃げたんじゃないかしら?」

 

「ありえないよ!あいつにそこまでの体力はない!」

 

「ありえない、なんてことはありえないのよ。覚えておきなさい」

 

「ふんだ!もう君のことなんて知らないよ!」

 

「結構。私も無視させてもらうわね。あとで泣きついてごめんなさいって言っても知らないんだから」

 

これは……修羅場ってやつかな?ともかく、ロンとハーマイオニーは冷戦状態になってしまったようだ。ハリーはロンの味方をするらしい。

あたしは部屋に戻ってキーパーを呼び出した。何をするのか?もちろん、スキャバーズの捜索だ。ハーマイオニーの言った通りにパイプに逃げ込んでるか、もしくは廊下を徘徊しているか。もしかしたら森を彷徨ってるかもしれない。でも、絶対に見つけ出す。シリウスの無罪のために。あと、あの三人が冷戦状態だと談話室の空気が重たいのでさっさと仲直りしてほしいし。

 

 

 

 

数日経っても見つからず、どうしたものかと考える。ただし、今いる場所は寮室じゃない。ここは──

 

「やったれ、ハリー!」

 

「速い、速いぞファイアボルト!さすがは炎の雷!あらゆる動きでチャン選手のコメット号を翻弄しています!コメット号では絶対に、ファイアボルトには敵わないでしょう!」

 

「ジョーダン!あなたはいつからファイアボルトの宣伝係になったんですか!あれが素晴らしい箒だということは認めますが、ちゃんと真面目に実況しなさい!」

 

──グリフィンドール対レイブンクロー戦真っ最中のクィディッチコートだ。グリフィンドールがリードしていて、初心者のあたしでもレイブンクローに勝ち目がないことがわかる。

あ、ハリーが急降下して──急に上昇した。相手側のチョウ・チャンは急降下を続けている。

 

「あっ!」

 

チョウが下を指差す。そこには、

 

「なんでここにいるの!?」

 

あたしが、クィディッチコートには近寄るなと頼んだはずの吸魂鬼が三人、ハリーを見上げ立っていた。

 

「お願いが伝わってない吸魂鬼がいた?いや、それはないはずだし……もし伝わってないのならスリザリン戦の時も寄ってくるはず。だとしたら……誰かの変装?」

 

口元を手で覆い考え込んでいると、ハリーが杖を取り出し、吸魂鬼(仮)に向けるのが見えた。

 

「〈守護霊よ来たれ(エクスペクト・パトローナム)〉!」

 

ハリーの杖から白銀のもやが溢れ出て、吸魂鬼の方に向かう。吸魂鬼たちが避ける暇もなく直撃して、ハリーはそれを見ずに上昇を続けた。

吸魂鬼のフードは脱げて、ドラコ、クラッブ、ゴイルの顔が出てきていた。なるほど、あいつらの変装だったわけか。

 

「ポッター選手、スニッチを獲ったー!試合終了、グリフィンドールの勝利です!」

 

リーの声と共にフーチ先生が笛を鳴らす。

マクゴナガル先生は解説席を下りて、偽吸魂鬼たち──クラッブ、ゴイル、ドラコ、ドラコを肩車していたらしきマーカス・フリント──の前に立ち、(オーガ)も裸足で逃げ出すんじゃないかってぐらいの形相をしていた。

 

「まったく、浅ましい悪戯です!試合中の選手に危害を加えようだなんて言語道断!スリザリンから五十点減点します。ああ、言い間違えました、一人五十点です。もちろん、この悪戯に加担した生徒全員。実行犯の四人は処罰を与えます。また、このことはダンブルドア先生に報告させてもらいます。ちょうどいらっしゃったようですので、あなたたちはここで待機していなさい。逃げようなどと思わないように。減点と処罰を増やしますからね」

 

一転して真顔になったマクゴナガル先生がダンブルドアに報告し、四人を連れて行ったところで、グリフィンドール全体から大歓声があがった。フレッドとジョージがキッチンから料理を取ってくることを計画しているし、ハーマイオニーも笑っている。うん、清々しいね。

 

 

……あとであの四人にはマラクローでお仕置きだけど。




現在、活動報告にてアイデア募集をしています。詳しいことは活動報告「魔法生物の王:アイデア募集」をご覧ください。


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パーティーと侵入未遂

レイブンクロー戦が終わったその夜、グリフィンドール談話室では大規模なパーティーが催されて居た。正確には、レイブンクロー戦が終わってからの半日の間ずっと。フレッジョがどこからかバタービールやらハニーデュークスのお菓子やらを持ってきたり、誰かが余興で歌を歌ったり、パーティーに参加してないハーマイオニーにこっそりとお菓子を差し入れたり。

あたしも余興として、比較的安全なペットたちを呼び出したりして居た。オーグリーやボウトラックル、パフスケイン、珍しいところではミグラージという魔法生物。無色透明なバスケットボール大のスライムみたいな子だけど、なんとミグラージは変身能力を持っている。あたしに変身したり、フレッドもしくはジョージに変身したりしてみんなをからかっている。あ、百味ビーンズ食べて変身が解けた。

 

 

 

パーティーが終わり、久しぶりにペットのみんなと寝ることにした。自分の部屋だと狭いからこっそりと談話室で。

中々寝付けずにパフスケインをもふもふしていると、不意に、廊下へと続く肖像画のドアが開く音を聞いた。少し警戒してそちらを振りまいてみると、そこにいたのはシリウスだった。

 

「なんでこんなところにいるのよ、シリウス」

 

「クルックシャンクスが、ピーターを取り逃がしたと言っていたからね。捕まえにきた」

 

「なんでクルックシャンクスの名前が出てくるの?」

 

「あの猫は賢い。私たち動物もどき(アニメーガス)を見分けることができるんだから」

 

要約すると、数ヶ月前にクルックシャンクスに見つかって、賢かったから協力してもらったと。なるほど。

 

「うん、でもシリウスが探す必要はないよ。キーパーに探してもらってるからね。だから、談話室から出て行って貰えるかしら?エルンペントの一撃を喰らいたくはないでしょう?」

 

「そりゃ怖い。退散させてもらうよ」

 

シリウスは談話室から出て行き、あたしはようやく眠りについた。

 

 

 

「ミス・クリミア、部屋はもっと広く、頑丈にしておきますので、ちゃんと部屋で寝るようにしてください。いいですね?」

 

「はい……すみませんでした」

 

「よろしい。今回は罰則は無しとしますが、次はありません。──いえ、少しばかり手伝ってもらいましょう。トロールを一体、貸して貰えますか?カドガン卿は今しがた、門番をクビになりました。彼の絵を元の場所に運ぶのと、太った婦人の絵をこの場所に戻すのを手伝わせます。できれば婦人の警護もさせたいのですが、よろしいですね」

 

「はい」

 

翌日、カドガン卿がグリフィンドール寮に見知らぬ男を通したと周りの絵から連絡があったらしく、マクゴナガル先生が見回りに来たんだけど、あたしが談話室で寝てるのを見つけてしまった。結果はお説教とお手伝い。廊下に出てから森トロールを一体呼び出して、マクゴナガル先生の指示に従うようにお願いする。よし、仕事終わり。

シリウスが合言葉を知ったのはネビルがどこかで合言葉を書いた紙を落としてしまったかららしい。おかげでネビルは少なくとも三年生の間のホグズミード行きの禁止、罰則、合言葉を教えて貰えないということになった。




オーグリー
M.O.M.分類XX
鳴き声が死の予兆とも言われる鳥。実際には雨が近づくから鳴いているだけで、不吉の予兆だとかそんなことは一切ない。

ボウトラックル
M.O.M.分類XX
見かけは樹皮と小枝で可愛い。しかし魔法使いの目を抉り出すことがあったりする。主に、杖の材料となる木に生息している。

パフスケイン
M.O.M.分類XX
世界中に分布するもふもふ生物。何をされても文句を言わない癒し生物。

ミグラージ
M.O.M.分類XX-XXXX
無色透明で不定形の生物。身体のどこかに核があり、そこが壊されると死ぬ。産まれたときは手のひら大で、大きいものだとバスケットボールほどの大きさになる。
特殊な環境でもない限りどこにでも住み着く。幼少期は暗い場所を好み、気に入った所から離れようとしない。
空気中の魔力が集まって自然発生する珍しい生物。主食は空気中の魔力で、水などは必要がない。また、魔法を当ててもその魔力を食べてしまうため、魔法使いとしては厄介な生物。
有機物無機物問わず一度触れたものに変身することができ、長く生きたものだとその状態から自由に姿を変えられる。しかし、それは性別や顔などであり、その種族に無いものを生やしたりすることはできない。
悪戯好きで、山奥で迷った魔法使いをさらに奥へ進ませたりする。頭は良いらしく、変身した状態であればその生物の言葉を話せる様子。
能力を持つ生物に変身しても、その能力を使うことはできない。
幼少期に捕獲すればペットとして飼いならすことができる。成長しても一応はできるが、見下したりすると叛逆される。
燃やしたり水中に沈めたり凍らせたりしても殺せる。
自然発生のため絶滅することはないが、幼少期に死亡する例が多いために個体数は少ない。また、成長した個体は何かの動物に変身して行動するので、確認例も少ない。
成長すればするほど知能が高くなり、個性も発達してくる。人間に有効的な個体もいれば、生き物に危害を加えることを好むようになる個体もいるためにXX-XXXXの分類になった。
山のくまさんさんからのアイデアです。ありがとうございました。

エルンペント
M.O.M.分類XXXX
アフリカ産のサイのような生物。角はあらゆるものを貫き、破裂させる毒液を持つ。

森トロール
トロールの一種。他には山トロール、川トロールなどがいる。


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イースター休暇までのあれこれ

シリウスの侵入未遂に対して学校全体がピリピリしてる中でも、授業は普通に行われた。

ハグリッドの魔法生物飼育学はさらに面白い生き物を連れてくるようになった。

 

「ようし、集まったな?今回はちぃっと注意してくれよ?もっとも、生き物に関わる時はいついかなる時でも、たとえ扱い慣れてる生物であろうと油断しちゃなんねぇがな。

今回は霧山羊(カペルネブラ)ってやつだ。頭突きが危険だがそれ以外に危険は少ない。まずは近づいて観察してみろ」

 

羊のような巻角を持つ山羊、カペルネブラ。臆病だから物理的な攻撃をしてくることはない。……突進からの頭突きで怪我する人は時々いるけど。

 

「角をよーく見てみろ。小さくて見えにくいが、穴が空いているだろう?ここからいくつかのフェロモンや魔法霧を発生させる。野生でこいつらを見つけたければ南米の霧が深い山奥に行けばええ。泡頭呪文を使ってな」

 

幻覚を見せたりしてくるからね、霧山羊は。

 

「ついでに、こいつらの幻覚フェロモンは混乱薬や戯言薬とかに使われる。長期保存はしにくいがな。

ようし、みんなスケッチとかは終わったか?次の授業の時は湖に集合してくれ。面白いもんを見せてやろう」

 

ハグリッドが授業終了と言い、みんなで城に戻る。湖かー。確か水魔(グリンデロー)や水中人、オオイカがいたなぁ。あと、小さいけど水魔(ケルピー)も。楽しみだ。

 

 

 

 

その日の呪文学は〈元気が出る呪文〉だった。ロンとハーマイオニーは仲直りしたのか気になって周りを見渡して見たけど、ハーマイオニーの姿は見えなかった。……談話室に戻った時に居眠りしてるのを見てしまったけどね。

その後の占い学にはハーマイオニーはちゃんと来ていた。よかった、ハリーたちとは仲直りしたみたいだ──

 

「良い加減にしてよ!またばかばかしい死神犬(グリム)じゃないでしょうね!」

 

思わず振り返ると、立ち上がり両手をテーブルに叩きつけたハーマイオニーと、キョトンとしているトレローニー先生、何が起こっているのかよくわかっていないらしいハリーたちが見えた。どうしたんだろう。

 

「もう結構。私、この授業を取るのをやめさせていただきますわ。何の役にもたたないもの!一度口を開けば死神犬(グリム)を出して、二言目には『死が近づいてますわ』?トレローニー先生、あなたとは分かり合えないみたいですね。それではご機嫌よう」

 

教科書をバッグに詰め込んだハーマイオニーは出口へと歩き、扉を蹴り開けて、かっこよく去っていった。

 

「──……さあ、授業を進めましょう。誰がこの教室から去ろうと、試験は必ずやってきますのよ」

 

トレローニー先生の言葉で再び水晶玉に向き合う。……うん、何も見えないや。

 

 

 

イースター休暇はたっぷりと宿題が出されたし、グリフィンドール寮は来たるクィディッチ優勝戦(ファイナル)に向けて大盛り上がりだった。主にオリバー・ウッドとかが。

休暇の終わりに、優勝戦が行われる。優勝できるのかな。最後に優勝したのはロンのお兄さん、チャーリー・ウィーズリーがシーカーだった時らしい。通称、伝説のシーカー。客席と会話しながらスニッチを獲っただとか、実況のマイクを奪ってドラゴンの魅力について熱弁しながら相手シーカーを翻弄し続けただとか。今はルーマニアでドラゴンキーパーをしているらしい。一年の頃にこの学校で孵化したノルウェー・リッジバック(ノーベルタ)もそこにいるはずだ。いつか会ってみたい。

試合の前日には談話室は喧騒に包まれ、勉強活動が一切放棄された。オリバーが「幸運になれる生物はいないのか」って聞いてきたけど、試合とかでのドーピングは禁じ手だからね?




霧山羊(カペルネブラ)
M.O.M.分類XXX
羊のような大きく太い巻角を持つ山羊。南米大陸の標高が高い山岳地帯に生息。寒さに強く、寒冷地で生息している種ほど角は大きく太くなる。臆病な性格。
霧を発生させる器官を角の中に持ち、危険が迫ると角に無数に空いた穴から霧を出す。また、いくつかのフェロモンも発生させることができる。泡頭呪文などでフェロモンは防ぐことができ、〈霧よ去れ(カリゴ・ヴァニッシュ)〉(ロウェナ・レイブンクローが発明)によって霧は吹き飛ばすことができる。
billy003 さんのアイデアです。ありがとうございました!

霧よ去れ(カリゴ・ヴァニッシュ)
ロウェナ・レイブンクローが発明した魔法。霧を晴らすことができる。というか吹き飛ばす。元々は霧が多い場所での外作業を邪魔されないように創られた魔法だったが、後に魔法霧に対しても効果があると発覚した。本作のオリジナルの魔法。


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優勝戦の結果は

FGOをやっている皆様、山の翁ピックアップは引きましたか?良い者を引かれましたか?
私ですか?


予想通り爆死しましたよこんちくしょぉぉぉぉっ!!


ふぅ。本編どうぞ。


試合当日。リーの実況とマクゴナガル先生のリーへ向けた説教、応援とフーチ先生の声でコートはいっぱいだった。スリザリンのキャプテンとオリバーが握手し、すぐに、試合が始まった。

試合はグリフィンドールの優勢で進み、グリフィンドールの選手が何かするたびにリーは興奮しマクゴナガル先生に怒られた。

 

 

 

六十対十でグリフィンドールがリードしている。今、フレッドがクアッフルを持ったスリザリン選手にブラッジャーを当てて、アリシアがゴールを決めた。

その途端、ハリーが勢い良く上昇し始めた。その先を見てみると──金に光る鳥のような球体。金のスニッチだ。あと一メートルほどでハリーの手がスニッチに届く──といったところで、急激にハリーのスピードが落ちた。

 

「何するんだ、マルフォイ!」

 

ハリーが大声をあげる。ファイアボルトの尾をドラコが掴んでいた。クィディッチ狂たちはみんな怒り狂った。

 

「ペナルティ!グリフィンドールにペナルティ・スロー!こんな手口は見たこともない!」

 

「このゲス野郎!卑怯者!マラクローに噛まれて吸魂鬼に行き会っちまえ!」

 

「ジョーダン!」

 

「なんですかマクゴナガル先生!今回ばかりは後悔も反省もしませんよ!いつもですけどね!」

 

「もっと言ってやりなさい!私が許します!」

 

「ほい来た!トーフの角に頭ぶつけて死んじまえよフォイフォイ!」

 

クィディッチでは公平を心がけているマクゴナガル先生も、さすがにこれは耐え切れなかったようだ。さてドラコ、リーの言葉は後で実行させてもらうから。マラクローに噛ませて吸魂鬼の前に引きずりだして、トーフの角云々は霧山羊(カペルネブラ)の幻覚フェロモンを上手く使えば体験させられるはずだし、試合が終わったら楽しみにしてなよ、ドラコぉ?

なんてことを考えてる間にも試合は進み、現在は八十対二十でグリフィンリード。

誰かが声をあげて下を指差す。その先ではドラコがスニッチを追い、そのドラコにハリーが迫っていた。徐々にハリーは追いつき、手を伸ばし──

 

「獲っ……たぁぁぁぁぁ!」

 

箒から飛び出て地面に転がりながらも、その手の中にはスニッチが握られていた。

 

「ハリー・ポッターが、スニッチを獲ったぁぁぁぁぁっ!二百三十対二十でグリフィンドールの勝利!そして──今年のクィディッチ対抗杯優勝は、グリフィンドールだぁぁぁぁぁ!」

 

獅子寮から耳を壊すかのような大歓声が湧き上がり、あのマクゴナガル先生でさえ寮旗を振っている。

……さて、と。あたしはドラコにこっそり近づいてマラクローをドラコのお尻に噛みつかせる。驚いたドラコの首根っこを掴んで競技場の外へ。目指すは吸魂鬼がたむろしてる場所だ。さあ、覚悟しなよ?

 

 

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁっ!」

 

「ほら、もっともっと」

 

「僕が悪かったから!もうやめてぇぇぇぇぇ!」

 

「えー、どうしようかなー」

 

「頼む!頼むから!なんならポッターに謝ったっていい!」

 

「んー……じゃあ、後五回耐えれたら許してあげよう」

 

「ほ、本当だな?」

 

「うん。まずはウェンの音とフウーパーの鳴き声からね」

 

その日、禁じられた森付近で男の子の叫び声が聞こえたそうだけれど、一体なんだったんだろうね♪




ウェン
デルトラクエストの魔物の一種。生物を麻痺させる毒を持っていて、脚を擦り合わせて耳をつんざくような音を出す。ウェンバーという上位種に支配されている。ウェンが新たにウェンバーとなるかは不明。

フウーパー
M.O.M.分類XXX
美しい歌声を持つ綺麗な鳥。歌声は最初は楽しめるが長く聞くと正気を失う。とある人物はこの鳥の声が健康に役立つと言い、三ヶ月ぶっ続けで聞き続け、その結果を魔法使い評議会に提出した。その時の姿はカツラをつけただけの姿で、そのカツラは死んだ穴熊だった。もちろん評議会は納得しなかった。


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期末試験

ドラコのお尻に大根(提供は禁じられた森のボウトラックル)を突き刺しゲフンゲフン叩きつけてスリザリン寮の前に放置してからグリフィンドール寮に戻ったあたしは、そのまま談話室で行われてるパーティ(珍しくパーシーが参加している)に参加し、みんなに獲らないように言ってから、クィディッチ狂たちが喜ぶであろう生物を呼び出した。

 

「見よ、この子がスニッチの原典、スニジェットだ!」

 

杖先の光より飛び出たのは、スニッチに似た金の球体。いや、より正確に言うのならスニッチがこの子たちに似せて作られたんだよね。絶滅危惧種ゴールデン・スニジェット。その目は赤く、ルビーのように輝いている。スニジェットはしばらく飛び回ったかと思うと、ハリーの頭の上に着地して座り込んでしまった。慌てるハリーと写真に撮るコリン。スニジェットは少ししてあたしの手の中に戻ってきたので、家に戻しておいた。

 

 

 

次の日から、試験の勉強が始まった。フレッドとジョージはO・W・L(ふくろう)(標準魔法レベル)試験の勉強を、二人にしては珍しく行なっていた。裏でこそこそと何かやってたりするけど。ウェンの麻痺毒や霧山羊のフェロモン、サラマンダーの血液その他色々な魔法生物から採れる魔法薬の材料となるものを求められたので提供してあげたりもした。何を作ってるんだろう。

パーシーはN・E・W・T(イモリ)(めちゃくちゃ疲れる魔法テスト)の勉強をしている。誰か一人でも物音を立てたら罰則を与えるほどにピリピリしているけど、それには訳がある。N・E・W・Tはホグワーツで取れる最高レベルの資格テストで、魔法省に入るにはほぼ必須とも言える試験だからだ。応援はする。けど、空気をどんどん重くするのだけはやめてください。週明けからはテストが始まる。……良い点取れるといいなぁ。

 

 

 

一番最初、変身術のテストの一つはティーポットを陸亀に変えることだった。頑張った。とても頑張ってケヅメリクガメに変えた。いやー、体積すら変化しちゃってるんだけど。ちなみにケヅメリクガメの前はヒガシヘルマンリクガメに変身させた。確か、ウサギとカメの亀がこの陸亀だったはず。上手くいったのは生き物への変身だったからだろう。生物から無生物へ、もしくは無生物から無生物へだったら少し失敗してたかも。

昼食の後は呪文学で、〈元気の出る呪文〉が出された。うん、ハーマイオニー、加減間違えちゃってごめんね?まさか三十分間もハーマイオニーが笑い続けることになるとは。ハリーの相手をしてたロンは一時間笑い続けてたけど。

 

 

 

次の日の午前中のテストは魔法生物飼育学、試験官はハグリッドだった。いくつか課題があって、一つはヒッポグリフに乗れるかどうか、二つ目は霧山羊(カペルネブラ)の捕獲。うん、三年生でやる内容じゃないよね、特に二つ目。〈霧払い呪文〉も〈泡頭呪文〉も三年生じゃ使える人少ないよ?あたしは呪文使わずに捕獲できたけど。後でハグリッドに確認したら、一つ目ができれば及第点で、二つ目は追加点用でできなくても別に良かったそうだ。

 

 

最終日の、闇の魔術に対する防衛術の試験は独創的だった。外での障害物競争みたいなもので、グリンデローの入った深いプールを渡りレッドキャップがたくさん居る穴だらけの広場を横切り、ヒンキーパンクが待ち構える沼地を通り抜け、最近職員室に出たというボガートとの対戦。あ、ミミルはこの試験の前にちゃんと帰ってきました。

ハリーは危なげなところもあったけど全部突破して、ロンはヒンキーパンクに惑わされて泥沼に腰まではまり込んだ。ハーマイオニーはボガート・マクゴナガル先生に「全教科落第です」と言われたそうだ。あたし?あたしは全部余裕で突破できたよ?若干卑怯だとは思うけど、使えるものは使わなくちゃ。

トレローニー先生の試験は水晶玉占いだったけど、何も見えなかったからでっち上げた。新種の面白い生き物が見つかるってね。ヨハンナさんがドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)で巨大なドングリを見つけて、なんとそれに目が付いてたって手紙が来たから、たぶん確実に発表されるはず。

 

 

 

夕方、あたしは窓の外を眺めていた。ネズミたちからスキャバーズが見つかったと報告を受けたのだ。同時に、シリウスがロンごと連れていったとも。……さて、動くとしたらそろそろかな。窓を開けてラークスを呼び出し、暴れ柳の近くまで移動する。あたしは、ルーピン先生とスネイプ先生が暴れ柳の下の道を通っていったのを見ている。

 

「頼んだよ、キーパー」

 

キーパーが柳の根を踏みつける。その途端、柳の枝は動くのをやめ、無事に通れるようになった。

抜け道へ入り、キーパーを回収して先へ進む。しばらくして見えたのは、古ぼけた屋敷。叫びの屋敷だ。上の階で怒鳴り声や物音が聞こえで、あたしはそっちにみんながいるって判断した。

階段を上り、ちょっぴりとだけ開かれた扉から中を覗く。ちょうど、ルーピン先生がスキャバーズを掴んでいるところだ。

 

「シリウス、準備はいいな?」

 

「もちろんだ。カウントダウンは三でいいな?」

 

「ああ。三、二、一!」

 

「「〈化けの皮、剥がれよ(スペシアリス・レベリオ)〉!」」

 

シリウスとルーピン先生の杖から出た青白い光線がスキャバーズに当たる。宙に浮かび、少しして地面に落ちたネズミから一瞬、目も絡むような閃光が走り、一秒もしないうちにスキャバーズは人間の男に変わっていた。

 

「やっぱりね」

 

一年生、いや、入学前に発した言葉を思い出しながら、あたしは扉を開けて部屋に入っていった。




巨大なドングリ
しばらくしたら正体が判明するのでお楽しみに

スニジェット
M.O.M.分類XXXX
正式名称はゴールデン・スニジェット。完璧な球体で非常に長く鋭い嘴とルビーのように赤い目を持っている。極めて速く飛び、翼の根元が回転するので素早く方向転換できる。
初期のクィディッチで、現在のスニッチと同じ役割で使用されていた。今では絶滅危惧種で、捕獲すると重い罪に課せられる。リアスの場合はスニジェット自体が懐いてしまったために特例で飼育が認められた。
XXXXの理由は絶滅危惧種のため。


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ピーター・ペティグリュー

全員の視線があたしに向くのを確認しながら、あたしはスキャバーズが変身解除した男に話しかけた。

 

「あなたがピーター・ペティグリューでいいんだよね?やっぱり、入学前のスキャバーズ人間説は正しかったわけだ」

 

「ああ、こいつがワームテール……ピーター・ペティグリューさ、リアス」

 

シリウスが笑いかけてくる。

 

「さて、色々とハリーたちは驚いているだろうから最初から説明させてもらおう。まず、私は無実の罪で投獄された。より正確に言えば冤罪だね。なぜ誰も疑問に思わなかったのか。人を魔法で殺すのなら、爆発させるよりももっと確実な方法があるのに、なぜ爆死させたのか。まあ、それは些細なことだ。

私はジェームズに頼んで、〈忠誠の術〉と言う古い契約呪文をかけさせた。誰かの体内に秘密を仕込み、その秘密の守人が口外しない限りは誰にもその秘密は明らかにできない呪文だ。最初、ジェームズは守人として私を選んだ。でも、私はそれを断った。ジェームズの無二の親友として知られていたからね、私は。『闇の帝王』が狙ってくるのは私だろうと踏んで、別の人間を守人にしてもらった。ああ、誰も思いもしなかっただろうね、あの弱気で簡単に口を割りそうなピーターが秘密の守人だったなんて」

 

シリウスが一気に喋り、ピーターを睨みつける。彼は後ずさるが、すぐに壁にぶつかった。

 

「その結果がこのザマだ。ジェームズとリリーは死に、ポッター夫妻の一人息子のハリーはマグルの元へ。聞いたよ、酷いマグルたちなんだろう?リリーの妹だったか姉だったか忘れたが、慈愛に満ち溢れたリリーとは真反対なんだとか。

ともかく、私はピーターを追いかけた。そして、忘れもしない十二年前のあの日、私はこいつを追い詰めた。ああ、頭に血が上っていて冷静じゃなかったんだろうね、その時の私は。マグルの街のど真ん中でピーターを追い詰めるだなんて。そして、ピーターは自爆し、自ら指を切り落として逃げ去り、置き土産に私を犯人とするようなセリフを爆破前に言い放った。あとは知っての通り、私は拘束されアズカバンに連れていかれた。その時はピーターへの怒りとジェームズたちへの悔恨、ハリーの心配で頭がいっぱいだった。だから、吸魂鬼たちの中でも無事だったんだろう。

転機が訪れたのは夏、ウィーズリー一家がエジプト旅行へ行ったという記事だ。そこで、スキャバーズ──ワームテールを見つけた。あとは犬に変身して脱獄、泳いで海を渡ったというわけだ」

 

「そのあと犬に食われてたけどね」

 

シリウスのセリフの合間に、あたしのセリフを挟む。シリウスはバツの悪い顔になった。

 

「そのことは触れないでくれ。さすがにトラウマ気味なんだ」

 

「いいじゃん。なかなかないことだよ、神話の生き物に丸呑みされるだなんて」

 

「あー、リアス、パッドフットに何があったんだい?」

 

「ケルト神話の生物の一種、狗頭の海獣コインヘンに丸呑みされました。その少し後にあたしとママがコインヘンと会って、吐き出されたシリウスを回収したの。あと、去年ロックハートを再起不能にしたのもコインヘンだったよ」

 

うなだれるシリウスと唖然とするシリウス以外の一同。ほんと、丸呑みされてよく生きてたよね。

 

「それで、うちで匿ってたのよ。ママに協力してやってって言われたしね」

 

「本当、エリザには感謝しかないよ」

 

「な、リアスはエリザの娘だったのかい?ファミリーネームが同じだけかと思ってたよ……エリザは誰と結婚したんだい?」

 

「ママは独身であたしは養子」

 

ママの知り合いに会うたびにこのやり取りをしてる気がする。あとピーターは追い詰められてるって自覚ある?

 

「……あとはまあ、この屋敷を拠点としてピーターを探し回っていたというわけだ。ハリー、君が箒で飛ぶのも見てたよ。ああ、本当にジェームズそっくりだった。ファイアボルトの調子はどうだい?使いやすいだろう?」

 

「え……まさか、マクゴナガル先生もシリウス・ブラックが無罪だってことを知ってるの?」

 

シリウスのセリフから、ハーマイオニーが核心に近づく質問を出す。頭がいいね、本当に。

 

「それどころかダンブルドアも知っているさ。最近になって、ハグリッドやフリットウィック、それにファッジも知ったようだけどね」

 

「そういえば、三本の箒での先生たちの会話、途中から聞きづらくなったけれど、まさかそのことを話していたのかしら」

 

ハーマイオニーがズバズバと真実を導き出していく。正直言って怖い。

 

「さて、話すことも話した。私としては今すぐにでもこいつを殺りたいところだが、ハリー、君は私のことを信じてくれるかい?いや、多分信じてくれないだろうね」

 

「……ブラックが──シリウスが無罪だって証拠は、ピーター以外には……?」

 

「ああ、ファーストネームで呼んでくれるだなんて──そうだね、私とピーターに強力な真実薬(ベリタセラム)を投与すればいいんじゃないか?情報が一致したのなら、それは紛れもなく真実だ。真実薬はその当人が真実だと思い込んでいることを話させるからね。自らがやったことに関しては、無意識でもない限りそのまま話すことになるだろう。薬はそこでのびているセブルスにでも持ってこさせればいい。私を疑って何本でも持ってくるだろうさ」

 

「なら、殺しちゃいけない。信頼できる全員の前でこいつ自身に話させるべきだ」

 

シリウスとルーピン先生は目を見開いてハリーを見つめた。

 

「しかし、こいつは君の両親を──」

 

「それでもだよ。いや、それだからこそなんだ。僕の父さんは親友には犯罪者になって欲しくないはずだ。たとえそれが、自分の仇打ちだったとしても」

 

「追加でこんな証拠もとっておこうか」

 

あたしは懐からカメラを取り出し、パシャリと一枚写真を撮った。え、なんでカメラを持ってるのかって?気にしたら負けだよ。

 

「さすがだ、リアス。グリフィンドールに十点あげたいところだね。ついでにセブルスも起こそうか。気絶にも効くといいんだけどね。〈蘇生せよ(リナベイト)〉!」

 

端っこの方で血を流して倒れていたスネイプ先生の体が一瞬痙攣し、ゆっくりとだけど立ち上がる。シリウスの方を見て身構えたけど、ピーターを確認すると何かを言おうとしていた口が動かなくなった。

 

「さてセブルス。ピーター・ペティグリューは生きていた。シリウスは無罪だった。帰り着いたら真実薬を二人に頼むよ。とびきり不味いのをね」

 

「……ちっ。納得はしていないが、だいたいの状況は掴めた。だが、このまま外に出ていいのかねリーマス。本日分の脱狼薬を飲んでいないだろうが。我輩の心遣いを無駄にするつもりですかな?」

 

「よし、すまなかった。誰か私を失神させてくれるかい?」

 

「ええ、そうさせていただくとしよう。〈失神せよ(ステューピファイ)〉!」

 

スネイプ先生が杖を手に取り、ルーピン先生を失神させる。なにこの状況。

 

「えっとね、リアス。ルーピン先生は狼人間(ウェアウルフ)だったのよ。ほら、色々と考えてみて?納得できるはずだから」

 

……よし、納得した。

 

「ムーニーは私が運ぼう。すまないが誰か、ピーターを縛ってくれ。呪文はわかるね?」

 

「大丈夫だよ。〈縛れ(インカーセラス)〉」

 

杖をピーターに向け、ロープで縛り上げる。

 

「逃げようだなんて思わないでね」

 

隙をみて逃げ出そうとしてるかのように、少しの間キョロキョロとしてたけど、諦めたのかがっくりとピーターはうなだれた。

 

「〈体よ動け(モビリコーパス)〉。よし、これで大丈夫だろう。さあ、外に出るぞ」

 

シリウスの声とともに、スネイプ先生を一番最後に、ハリーを一番前にして屋敷の抜け道へと移動し始めた。




カメラに関してはヨハンナが持たせてたってことでどうか一つ……


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事後処理

高校三年生の皆さん、本日はセンター試験だそうで。頑張ってくださいな。
高校二年生の皆さん、夜はチャレンジセンターですね。頑張ってください。


「──なんと、そんなことが……」

 

十数分後、校長室。あたしたちはダンブルドア校長、マクゴナガル先生、スネイプ先生、ファッジ大臣と向き合っていた。椅子にどっしりと構えてるシリウスにおどおどとしているピーター。それと……

 

「ここも変わりませんねぇ、校長?」

 

「君ものう、エリザ」

 

なぜかいるママ。ケラケラと笑いながら校長室を物色してる。

 

「いやー、本当にピーターが生きてたなんてね。驚いたわ。不健康そうだけど。リーマスは失神してるけど、ここで教鞭をとってるし、セブルスもいるし、あの頃の悪戯好きども大集合ってところ?ジェームズとリリーいないけれど」

 

「君たちには本当に手を焼かされたのう。何回『百味ビーンズゲロ味詰め』を送ってきたのやら」

 

「少なくとも五回。多くて百は超えたかな?」

 

楽しそうに言い合ってるママと校長先生。ママは学生時代ほんとにどんな生徒だったのよ……。

 

「真実薬で裏も取れたことですし、シリウス・ブラックに対する容疑はこれで晴れたでしょう。問題は、ピーターをどうするかです。コーネリウス、私はこのまま吸魂鬼に引き渡してもいいと思うのですが」

 

「落ち着け、ミネルバ。ピーター・ペティグリューは裁判にかける。よくてアズカバン、悪くて極刑だろうさ。ああ、まずはフリーの闇払い含め、魔法省の職員全員にこのことを伝えなければ」

 

大臣は動転しつつも冷静に判断する。机借りて何か書いてるけど、魔法省の各部への連絡だろう。

 

「まったく、貴様が軽率な行動を取らなければこうはならなかったのだ。反省しろ駄犬が」

 

「言ってくれるね泣き虫スニベルス。『あの人』を恐れて向こう側から戻ってきたのは誰だったかな?そう、君だ」

 

「リリーが死ぬきっかけを作ったのはお前だろう、ブラック」

 

「その予言を『あの人』に伝えたのは君だ、スネイプ」

 

「よく聞こえんなぁ、駄犬」

 

「耳まで阿呆になったのかい、泣き虫」

 

「「……よろしい、決闘だ」」

 

「ごめん、誰かわたしの上でいがみ合ってる二人を止めてくれ!」

 

スネイプ先生とシリウスは言い争いをしている。今さっき杖を抜いたけど、半泣きしてるピーターがなんとか二人を抑えている。

 

「オホン。取り敢えずピーターは拘束してどこかの部屋に閉じ込めておくべきじゃろう。早朝に魔法省に送還するのがよいのう」

 

「そうさせてもらうよ、アルバス。どこかいい部屋はないかね?使わない教室などは」

 

「ならばそうじゃのう、城のてっぺんに牢獄じみた小部屋がある。そこなら平気じゃろうて。もちろん、パイプなどは通っておらんし、万一通ってたとしても、パイプの中には頼れる者が──リアスのペットがおる。逃げられはせんよ。コーネリウス、入り口は君が見張っていればよい」

 

「そうさせてもらおう。案内してくれるかね、ミネルバ」

 

「こちらです、大臣」

 

マクゴナガル先生がファッジ大臣とピーターを連れて部屋を出て行く。あたしたちはダンブルドア校長からココアをもらったあと、寮に戻り眠りについた。シリウスは校長室の一角を借りたみたいだ。

 

 

 

翌日、ダンブルドア先生から生徒全員に向けて発表があった。シリウスが無罪で、ピーター・ペティグリューは生きていたと。みんなは半信半疑だったけど、シリウス自身の登場、マクゴナガル先生の肯定で納得したようだ。シリウス、〈破れぬ誓い〉を結んでもいいって言ってたしね。

吸魂鬼たちは朝食前にアズカバンに帰っていった。でも、吸魂鬼全員に頭を撫でられるのは流石に恥ずかしかった。いや、気持ちいいけどさ?

ルーピン先生は辞表を出した。狼人間とみんなに知られてしまった以上、ここにいることはできないと。うん、スネイプ先生がみんなにバラしたのよね。

 

 

 

……翌日、ママからピーターが逃げ出したと手紙を受けた。何やってるんだ魔法省。

寮杯は今年もグリフィンドールが手に入れた。それと、ハーマイオニーが『逆転時計(タイムターナー)』を使っていたことを話してくれた。手にとって確認してみたけど、砂時計の底に小さく『ヴァーグナー』と彫られていた。これ神秘部のか。

ロンは新しいフクロウを手に入れた。シリウスが送ってきた豆フクロウだ。元気いっぱいな頑張り屋。

今あたしたちはホグワーツ特急に乗っている。もうそろそろキングズ・クロスに着くだろう。確か、今年の夏はクィディッチ・ワールドカップがあるはずだ。ママのことだからチケットは手に入れてるだろうし、ママの同僚のみんなと見に行こう──




シリウスの無罪は魔法省関係者並びにホグワーツ生などには伝わっていますが、一般のマグルや魔法使いには伝わっていません。


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新しい家族

新しいオリキャラ(若干パロキャラ気味)が出ます!会話文がカタカナ混じりで若干読みにくいかもですが、そこを含めての新キャラなのでご勘弁を。

そういえば、夜の騎士(ナイト)バスって英語版だとknight Bus(騎士バス)で、本来は『夜の』は必要ないそうですね。昼間にも走行してるそうですし。


駅には誰も迎えに来てくれなかったので、夜の騎士(ナイト)バスを利用して家まで帰った。代金は十一シックル。

久々の我が家だ。そういえば、この前のピーター引き渡しの時になんでママは居たんだろう。そう思いながら、あたしは玄関を開けて中に──

 

「お帰りなサイまセ、お嬢様」

 

──バタン、と、玄関を閉めた。一度離れて確認してみる。うん、あたしの家だ。あたしたちの家だ。よし、さっきのメイドさんらしき人はただの幻覚だろう。そう思いもう一度扉を開けると──

 

「先程はどウなされたノデスか、お嬢様」

 

──わーい、幻覚じゃなかったー。

現実逃避しつつ扉を閉める。うん、誰だ今の。銀髪のメイドさんが居たんだけど。お嬢様って呼んで来たんだけど。どうしよう、思考が追いつかない。

 

「どうしたのよ、さっさと入りなさいな」

 

玄関を開けてママが出てくる。今のあたしにとっては救いだ。

家に入るとやっぱりメイドさんが居た。ほんとに誰なんだこの人。

 

「雇ったのよ、メイド」

 

「いや、うちにそんなお金ないよね?そしてあまり意味ないよね?」

 

「給料ナラ必要ありまセン、お嬢様」

 

ママへのツッコミのすぐあとにメイドさんから給料要らない宣言。謎は深まるばかりだ。

 

「ピーターが見つかった時にダンブルドアのとこに私が居た理由はこの子が関係してるのよ。ルルイエのこと覚えてる?」

 

あたしは頷く。一年生の頃にママが調べてた海底遺跡で、神話生物の宝庫。神話生物たちは見つからなかったそうだけど、どうしたのだろう。

 

「何とかして結界をこじ開けて裏側に侵入することができてね。深き者共がわんさかと。……大半が深ーい眠りについてたけどね、封印という名の。で、その報告に行ってたわけ。わかったことは少なくてね。ほんの少しだけクトゥルフの確認もしたけど、アレを起こそうとするのは無謀だわ。関わっちゃいけない、手を出したら破滅する。そんな予感ばかりしてね。唯一裏側から持ち帰れたのがこの子。数億年間封印されてたショゴスよ。名前はサクヤ。名付けたのは私」

 

「初めマシテ、お嬢様。サクヤと申しマス。こレからよろシくお願いいたシマす」

 

銀髪メイドさん改めサクヤが頭を下げる。なるほど、ショゴス(奉仕種族)だったのか。ならメイドにも納得──できないや。

 

「ショゴスって『テケリ・リ』としか発音できないんじゃなかったっけ?それと人語理解できたっけ?完全に姿安定させることってできたっけ?」

 

「その前に一つ。クラッカーって魔法生物知ってるよね?」

 

「もちろん」

 

クラッカー。M.O.M.分類XX(XXXXX)の細菌のような生き物で他の生物に取り付いて(便宜上『感染』と呼んだりもする)共生する。ちゃんと意識を持って居て、共生した生物と会話可能、さらに博識。魔法が効かず透過する、魔法で作られた物に触れるとソレが粉になって崩れる、魔法がかかった物品は効果がなくなる、変身したのは変身が解ける。つまり魔法使い殺しレベルだけど単体ではそれほど脅威でもない、どこにでも居る生き物。人間やM.O.M.分類の高い生物には感染しにくいそうだけど。

 

「なんと数億年前にも存在していたそうで、サクヤちゃんにも感染してるのよ。数億年の間に完全に同化しちゃったみたいだけど」

 

……え、本当ですかお母様?

 

「本当よ我が娘。しかもこの子、ショゴス・ロード並みに知識持ってるし、クラッカーの魔法無効化能力の範囲を弱める──つまり、魔法物品に触っても崩れたりしないようになってるの。で、私を主人(マスター)として認識したみたいだから連れて帰ってきたの」

 

「なるほど……つまりママが色々とおかしいと。あ、この紅茶美味しい」

 

「それは酷くない?その紅茶はサクヤちゃんが淹れたのよ」

 

いつのまにかサクヤが淹れてくれてた紅茶を飲みながら話を続ける。ワールドカップのチケットはちゃんと手に入れたそうだ。

 

「豪華ってわけじゃないんだけどねー。貴賓席のチケットなんだけどさ」

 

「いや、豪華すぎるでしょ。どうしたのよソレ」

 

「ルードには感謝してるわ」

 

どうやら、ルードという人を何かしらの方法で脅して手に入れたようだ。さすがママ。

 

「そう言えば、神秘部って何してるの?」

 

「今更?」

 

「今更」

 

神秘部って、何をしてるのかよくわからないのよね。ルルイエの調査してたと思ったら黒い森に行ってたりするし。

 

「元々は生命や運命について研究してた部門なの。時間、予言、生、死。ある意味では範囲の狭い、人間に関わってくる神秘ね。でもある時から神秘の範囲を拡大させたのよ。伝承や伝説、言い伝えとかにもね。例えば、初代オリバンダー……よりもさらに昔にもオリバンダーが居たらしいんだけど、裏切りの魔女、メディアに杖を売ってるって記録があったのよ。それに、古代には神が本当に地上に降りてきて居たってことも判明してる。その証拠がナスカの地上絵。

あと、歴史的な史跡の調査もしてるわね。大昔の魔術痕やら魔法的トラップとかが仕掛けられてたりして、闇払いじゃ手に負えないから神秘部に回ってきたり。さらに、大英博物館とかに展示されてるロゼッタストーンに隠された魔法の調査や初期の英国国旗を媒介とした大魔法の再現、キャメロットやアヴァロンの捜索、エクスカリバーが返還された湖の捜索、初代山の翁についての調査だとか色々とね」

 

なるほど、つまりわからないことがあれば神秘部に回せば良いと認識されてるようだ。

さて、聞きたいことも聞いたしさっさと宿題を終わらせてみんなと遊びますかね。あ、新しい教科書とかも買わなくちゃか。

 

「それは私ガ行キますのでご安心ヲ」

 

サクヤは有能だった。




クラッカー
M.O.M.分類XX(XXXXX)
大体は本文に書いた通り。取り付く理由は生命維持で、宿主が死ぬまで出て行くことはない。宿主の種にもよるが、宿主を介しての会話も可能。宿主が死んだ時に体外に出て、その近くで最も(種としての)知能が高い生物に取り付く。周りに生物が居なかったときは死滅する。
取り付いてから二十年ほどで一度分裂し、その後は十年ごとに倍々に増えて行く。
(XXXXX)の理由は、取り付いた種によっては甚大な被害をもたらすため。以前、魔法に弱いが強力で広範囲の攻撃方法を持つ種に取り付き、剣や槍、弓などの武器を持ち出してようやく討伐することができたことがある。
白煙さんのアイデアです。ありがとうございました!

ショゴス
M.O.M.分類不明
不定形の奉仕種族。簡単に言えばメイドスライム。

サクヤ
この度クリミア家に雇われたショゴスのメイド。クラッカーに取り付かれているが完全に同化している。趣味はお世話で恋人は仕事と言ってのける。家事などに関しては万能。本人曰く、「完璧デ瀟洒なメイドを目指シてる」とのこと。セリフはカタカナ混じりになる。
出展:東方Projectの十六夜咲夜
あくまでも咲夜さんの皮を被ったオリキャラですので。

神秘部の仕事
原作よりも手広くなりました。オリバンダーの記録については、代々のオリバンダーが死ぬ間際に、誰にどの杖を売ったと書き残すという設定を創作。
英国国旗の大魔法→とある魔術の禁書目録に出てきた〈連合の意義(ユニオンジャック)〉ですね。この世界においては『全国民に宿る魔力を再分配し、発動中はマグルでも魔法が扱える』という代物。使用後は魔法省が後始末で押しつぶされる模様。格好いいんですよね、あのセリフ。「さあ、群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!!」一度言ってみたい。キャラに言わせてみたい。


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四年目にはペットを貸し出し
キャンプ場への移動


前回出てきたサクヤさん、名前やキャラの案は実はもう一つありまして……そっちは『タマモキャット』だったんですよねー。


数日後、あたしたちの家には何人かの人が泊まっていた。ママの同僚……というか研究チームだ。みんなでご飯を食べ、遊び、宿題を教えてもらったりしてる。

今日は向こう──ワールドカップ観戦用のキャンプ場に移動する日だ。本来ならもう少し遅いんだけど、先に着いちゃダメって規則はないしね。

 

「それで、どう移動するの?」

 

「〈姿現し〉よ。リアスは私が付き添いで行くわ」

 

姿現しを使えなくても、付き添い姿現しなら一緒に移動できるから、それに姿現しなら一足先にキャンプ場へ移動できるからだそうだ。キャンプ場の予約はバージルという人に頼んですでに済ませているらしい。

 

「じゃあ移動するわよ。サクヤちゃん、あとはよろしくね」

 

「かしこマリました、我が主人(マイ・ロード)

 

「マイ・ロードってのはやめてほしいけどね」

 

ママがあたしの手を握り、くるりと回転する。何かが破裂するような音とともに、あたしの内側が引っ張られるような、狭いパイプの中に押し込められたような感じがする。けど、すぐにその感覚は消えて、目の前には森が広がっていた。

 

「えーと……いたいた。おーい、バージル!」

 

ママが声を上げる。すると、遠くの方からキルトとポンチョを着た魔法使いが走ってきた。

 

「来るのが早すぎやしないか、え?まあいいさ、エリザベート。神秘部のクリミア研究チーム御一行は向こうに歩いて行って最初のキャンプ場だ。管理人はロバーツさん。クリミアで予約してある」

 

「ありがと、今度何か奢るわ」

 

「よしてくれ。どんなゲテモノを食べさせる気だ」

 

後ろの方で何かが破裂するような音がする。他のみんなも到着したようだ。

 

「到着したところ悪いんだけど、早く行くよ。テントで休みたいだろうしね」

 

ママを先頭にみんなで歩き始める。自然の霧が森を満たして、時折リスや鹿が姿を見せてくる。キョロキョロしながら歩くこと二十分、キャンプ場が見えた。

キャンプ場の前の小屋には男の人が一人立っている。あの人がロバーツさんだろう。

 

「こんにちは、貴方がロバーツさんですか?」

 

「ん……ああ、そうだが。あんたらは?」

 

「クリミアです。テントを二張りほど予約していたと思うのですが」

 

「クリミアさんね。おめえさんらの場所は森のすぐそばだ。金は今すぐ払ってくれ。泊まるだけ泊まって森から逃げられちゃたまらねぇからな」

 

ママは財布を取り出し、その中からマグルのお金をいくらかロバーツさんに渡した。

 

「ちょうどだ。ほれ、キャンプ場の地図」

 

ロバーツさんから地図を受け取り、キャンプ場へ入る。まだテントは少なく、けど個性的なテントが多かった。しばらく進むと森のすぐそばに到着した。目の前のスペースには『クリミア』と書かれた看板。横のスペースには『うーいずり』と書かれた看板が立っていた。『ウィーズリー』の書き間違いかな?

 

「テントは普通なように偽装するけど、高性能なやつなのよ。あと、すこーし改造していてね、テントの中でなら魔法を使って平気よ。テントの中だけ『匂い』を無効化するようにしたの」

 

改めて思う。神秘部は一体何をやっているんだと。

魔法を使って見た目普通のテント、中身二階建てのキッチントイレバスルームベッドルーム付きのテントを二つ張り、男と女に別れて荷物を置いて水を汲みに行った。それとママ、さすがにサクヤに屋敷しもべ妖精の〈姿現し〉を教えようと計画しないで?確かに便利だけどさ。



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試合前の騒動あれこれ

だんだん吸魂鬼の方に内容が追いついて来たな。さて、どうするか。


数日後、テントの一室であたしはモフモフで囲まれていた。あたしのペットたちだ。寂しくないようにって思って呼び寄せたんだけど、あたしが寝る時に部屋を一つ占領するはめになってしまった。いや、あったかいんだけどさ。ママとかも時々囲まれに来たりするけどさ。

窓から見える外の様子は、来た時とはまったく違っていた。魔法使いが建てたとは思えない平凡なテントがいっぱい──とはならず、特徴のある、いや、目立ちすぎるテントが多かった。城みたいなテントに煙突付きのテント、和風建築なやつに、しまいには象の頭をした男性が鎮座しているようなテント(時々「俺がガネーシャだっ!」って聞こえる)まで。外観がまともなテントなんてほとんどない。

歩き回って見ると、それはそれはいろんな国から観客が押し寄せてるわけで、ちらりと見るだけでどんな国か見て取れた。ドイツ人はよくヴルスト食べてるし、イタリア人はパスタとピッツァを食べてる。他にも、スーツを着た真面目そうな人(あとで日本人だとわかった)とか、海賊みたいな人、そもそもマグルに紛れる気ゼロな人たちばかりだ。まだ神社みたいなとこで飛び回ってる人たちの方がマグル風だと思う。巫女服とか和服とかだけど。

色々と見て回ってとても気になった人がいる。黒髪ロングで黒いタイツを着た綺麗な女性(ひと)。朱い長槍を片手でもてあそび、どこからか出したのか二本目の槍をもう片方の手で持って二槍をぶん回してる。不思議と、あの槍に目を奪われた。初見のはずなのに、知っているような気がする。女性は一通り運動すると、こっちを向いて微笑み、どこかに歩いて行った。

 

 

 

さらに数日後、ウィーズリー家がやってきた。ハリーとハーマイオニーも一緒だ。建てたテントは外観は普通のやつ。ようやく普通のテントが見れた。ここ数日で、あたしの中で「普通ってなんだっけ……」って常識が壊されそうになってたもん。そして考えるたびに緑の巫女服の人に親指を立てられて応援されたんだけどどうすればいいの。

 

ルード・バグマンという人が挨拶に来た。なんでも、この大会で賭けをしているらしい。あたしは乗らなかったけど、ヨハンナさんがアイルランドが勝つのに数ガリオン賭けた。

それと、ママとは別の研究チームの人も挨拶に来た。コムイとか名乗ってたけど、名前の響きからして中国人かな?キリスト教について研究してるんだって。

あと、森の中で珍しい生き物を見かけた。シュヴォルフと言う、M.O.M.分類XXXX-XXXXXの生き物。目と目の周り、尻尾が蛇みたいに鱗で覆われている。尻尾の数は三本だから、シュヴォルフの中ではまだ若い方の個体だ。何年くらいこの森に住み着いてるんだろう。人が近づいてくる音がすると、シュヴォルフは森の奥へ去って行った。

シュヴォルフとは何回か遭遇してるんだけど、なんと言うか、波長が合わないのか懐いてくれない。まるで、「自分の仕える主人はこいつじゃない」って言ってるみたいに。手を舐めたりとかはしてくるんだけどね……。

 

「ところでさ、ママ」

 

「何ー?私はサクヤちゃんへのプレゼントを選んでるんだけど」

 

「いや、その手に持ってる懐中時計は何よ。見た所魔法がかかってるんだけど。『魔法をかけてはいけない物品登録簿』に載ってるよね、懐中時計」

 

「大丈夫。禁止される前のだからね。と言うか、そもそもマグルが作ったのじゃなくて魔法使いが作ったのだからね。ほとんど同じだけど、機構とかは微妙に違うよ」

 

「あ、そう。ついでに、どんな魔法がかかってるの?」

 

「神代のものに等しい魔法。確か、時を止めるんだったかな?」

 

「今すぐ神秘部に戻して来なさい」

 

数分後にはママの手元に懐中時計はなかったけど、ちゃんと神秘部に戻したんだよね?凄く心配なんだけど。




テント群
ほとんど創作。ガネーシャについては悪ノリした。

ドイツ人イタリア人
最初に降って来たイメージがヘタリアだった。

海賊みたいな人
イメージは黒ひげ(オタクの方)

巫女服和服、緑の巫女服
悪ノリその二。

黒髪ロングで同色タイツの朱槍持った綺麗な女性
どこのおっぱいタイツ師匠でしょうねー(目そらし

コムイ
パロキャラ。フルネームは『コムイ・リー』。中国人の魔法使い兼研究者。妹がいて、コムイ自身は重度のシスコン。D.Gray-Manから。

シュヴォルフ
M.O.M.分類XXXX-XXXXX
ヨーロッパ及びロシア圏の森林に生息する。狼の姿をしているが尾と目の周り、眼球が蛇のような鱗で覆われている。視覚はちゃんと機能している。
尾は歳を重ねるほどに増えていき、多いときは八、九本もある。
寒さに強く、ロシアで冬に活動しているのが確認された。ちなみに、その日は数十年の中で最低気温だった。
眼を合わせると幻覚もしくは麻痺の付与ができる。オンオフが可能だが、一度に一つしか使えない。幻覚をかけての麻痺はできない。
麻痺は端的に言えばバジリスクの石化。ただし一、二時間ほどで解ける。
幻覚は主に対人用で、その人間の一番のトラウマを呼び起こし、一番見たくない光景を見させる。シュヴォルフ自身が任意で解くか、一、二時間後に解ける。かけられた本人にとっては十数時間にも感じられる。
人語を完璧に理解できる。
信用できる、信頼できる人間には付き従い、自分の全てを捧げるほどの忠誠心を見せる。しかし、認められなければ亡き者にされてしまう。シュヴォルフを一対一で正々堂々と倒すのが手っ取り早い。
主人が仲間と認めた者は、主人ほどではないが言うことを聞く。
面倒見がいい。
フェンリス狼さんのアイデアです。ありがとうございました!それと、書いてる時にシュヴォルフの名前をフェンリス狼と間違えてました。投稿前に気づけてよかった……申し訳ありません。

時止め懐中時計
悪ノリその三。ちゃんと神秘部に返された。


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試合の始まり

何処からかインフルを貰ってきた。まだ軽いほうだからましだけど……今年はインフル大流行するかなぁ……


夜が近づくにつれてキャンプ場はさらに興奮に包まれ、魔法使いたちは自重と言う単語を忘れ去った。具体的にはレーザー撃ち上げたりとか海賊船持ち出してきたりとかロボットに乗ったりとか。……ちょっと待て、なぜ魔法使いたちの空間にロボットがあるの?

テントがないスペースには行商人たちが店を出し始めた。見て見たけどそこまで気になる物はなかったので、万眼鏡(オムニオキュラー)という真鍮製の双眼鏡とお菓子だけ買ってテントに戻った。

ペットたちと戯れていると、森の向こうからゴーンと深く響く、鐘のような音が聞こえて、木々の間に赤と緑のランタンが灯るのを見た。入場開始だ。

あたしは外に出て、ママたちと一緒にランタンの間を歩き始めた。途中で一対だけ青白い炎のランプが灯されていたけど、なんでだったんだろう。目のようなものがあった気がするけど。

二十分ほど歩いて、競技場へと到着する。押し合いへし合いの大混雑だった。入り口に居た魔女に切符を見せて、階段を一番上まで上がる。到着した場所は小さなボックス席で観客席の最上階、ちょうど左右のゴールポストの中間地点。紫に金箔の椅子が二十席ほど二列になって並んでいる。

あたしたちは後列に座り、観客席が埋まるのを待った。その間にウィーズリー一家とハリー、ハーマイオニーが前列に座り、女の子の屋敷しもべ妖精があたしたちとは反対側の席に座った。それと、ファッジ大臣とブルガリアの大臣も到着した。それと、ドラコのその両親──ルシウスさんとナルシッサさん──も到着した。ルシウスさんとロンの父親──アーサーさんが口喧嘩を始めそうになった時、バグマンさんが貴賓席に駆け込んで来た。そろそろ試合が始まるようだ。

バグマンさんが自らに〈拡声呪文〉をかけ、会場全体に呼びかけた。

 

「『レディーズ・アーンド・ジェントルメーン!ようこそ!第四百二十二回、クィディッチ・ワールドカップ決勝戦へ!前置きもそこそこにしておいて、それぞれのチームのマスコットによるショーを行いましょう!まずはブルガリア・ナショナルチームのマスコット!』」

 

赤の観客席から歓声が上がる。出て来たのはヴィーラ──妖艶でスタイルの整った女性たち。男性方はヴィーラに見惚れていた。……朴念仁な人とかは見惚れてなかったけど。近くに座ってるママの仲間──ロレンツォさんとかね。……あ、反対側の席で誰かドロップキックされ──コムイさんだった。なんで蹴られてるんだあの人。

 

「『さて、お次はアイルランド・ナショナルチームのマスコットの登場です!』」

 

バグマンさんの声が轟いた瞬間、緑と金の彗星のようなものが競技場に飛び込んで来て、巨大なクローバーを形作った。よくよく見てみると、緑か金のランプを持ったレプラコーンのようだ。金貨ばら撒いてるし。

みんな必死そうに金貨を拾ってるけど、レプラコーンの金貨って一日とすると消えるんだよね。魔力で形作られた偽物だから。

 

「『さぁ、いよいよお待ちかねの選手たちの入場です!──ブルガリア・ナショナルチーム!』」

 

バグマンさんが選手の名前を呼び、その度に歓声が上がる。七つの赤い流星は競技場を一周し右側に並んだ。

 

「『ではどうぞご喝采を!──アイルランド・ナショナルチーム!』」

 

続いては緑の流星七つ。見事な編隊飛行を見せつけ、左側に並ぶ。

国際クィディッチ連盟のハッサン・モスタファーと言う人が出て来て、小脇に抱えてた大きな木箱を蹴り開ける。黒いボール二つ──ブラッジャーと金の流れ星──スニッチが飛び出し、真っ赤なクアッフルが宙に投げられた。試合、開始だ!




ただし試合内容は全カットされる模様。

レーザー
どこぞの白黒が撃ち上げた

海賊船
どこぞの黒い髭が持ち込んだ

ロボット
どこぞの超絶シスコンマッドサイエンティストが持ち込んだ

青白い炎のランプ
悪ノリした。どこぞのゴースト系。

ロレンツォ
パロキャラ。本名ロレンツォ・カランドラ。元々はドイツの方でヨハンナ・ファウストを追っていた異端審問官。今はなぜかヨハンナとともに研究中。方向性でぶつかり合うことが多いが。十八話後書きで言及したヨハンナのライバル。出典はフラウ・ファウスト。


ヴォルデモート復活回と炎のゴブレット編最終回、また本編最終回のサブタイトルは決まっていたりする。どこぞの魔術王の宝具みたいな名前だけどな!


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試合後の騒動

「いやぁ、面白かったね!」

 

あたしたちはスタジアムからキャンプ場へ向かっている。つい先ほど、試合が終了したんだ。勝ったのはアイルランドだけど、スニッチを獲ったのはクラム──ブルガリアだった。終了直後に、フレッドとジョージがとてもいい笑顔でバグマンさんに手を突き出してたから、多分、賭けがドンピシャだったんだろう。

アイルランド勢はお祝い騒ぎ、ブルガリア勢も別ベクトルでのお祝い騒ぎだ。ブルガリアは試合には負けたけど勝負には勝ったって感じだから。

あたしはテントに戻り、試合の余韻に浸りながらペットたちに囲まれて眠りについた。

 

 

 

突然、大きな音がした。爆音と──悲鳴。何事かと思っていると、ママが飛び込んできた。

 

「起きてる?よし、みんなを家に送還して、すぐに逃げなさい。闇の魔法使いたちが襲撃してきたわ。──多分、すぐに鎮静するでしょうけど」

 

心配そうな顔をするペットたちを家に戻す間、時々外を見て見たけど、仮面の魔法使いがロバーツさんその他数名を浮かばせていたり、魔法を逃げ惑う人たちに使っていたりしていた。そして、どこからか飛んできた朱槍に仮面の人たちが数名吹き飛ばされてた。

ペットたちを送還し終えて、森の中へと入る。すぐ近くに赤い光が見える──燃えている?

 

「森に火がつけられてる?」

 

まだ被害は少ないけど、このままだと森の生き物たちに被害が出てしまう。なんとかして鎮火させないと……!

 

「水、水を出さないと……!呪文じゃ量が少ないし、水を大量に出せる生き物……あ」

 

気づいた。そうだ、水で消すんじゃなくて、燃えてる木を壊してそれ以上燃え広がらないようにすることもできるじゃん。

 

「〈おいで、グレイル(インヴォーカレ・グレイル)〉!【あの燃えてる木々を壊して!】」

 

杖の光からグレイル──グラップホーンが出てきて燃えてる木に突進し、その鋭い角で壊していく。何度か火の粉が当たってるけど、さすがはドラゴンよりも強靭な皮。まったく火傷していない。

少しして、燃えていた木は全て壊され、さらに踏みつけられることで完全に火も消えた。

 

「【お疲れ様、グレイル】〈ありがとう(レパトリエーション)〉!」

 

グレイルも家に帰し、森の奥へ進もうと思った時、じーっと狼がこちらを向いているのを見た。この前見た三尾のシュヴォルフだ。その子はトテトテとこちらに近づいてきて、あたしの前で座り込んだ。まるで、指示を待つかのように。

 

「えーと、これは……認められ、た?」

 

こんなタイミングで、シュヴォルフに懐かれてしまったみたいだ。嬉しいけど、なんか複雑。

ドンッと音がして近くに何か落ちてくる。──仮面の魔法使いだ。気絶してる。一体、キャンプ場の方では何が起こってるんだろう。あたしはキノ──今名付けたシュヴォルフ(女の子)の名前だ──とともに、さらに森の奥へと入っていった。




一方その頃キャンプ場では

「ワシらの酒盛りの邪魔をしたのだ、慈悲はないぞ!」

「そこの黒タイツに同意するわ。闇の魔法使いだかなんだか知らないけど、巫女をなめないでよね」

「リナリーに怪我があったらどうしてくれるんだー!いっけぇコムリンmarkⅡー!」

「やれやれ、キャスパリーグがどうしてるのか気になったりしてこちらに出てきて、ついでにスポーツ観戦に来たらどうしてこうなるんだろうね」

死喰い人たちはガクブルしていた。


グラップホーン
M.O.M.分類XXXX
ヨーロッパの山岳地帯に生息する。大型で灰色がかった紫色をしていて、背中にはコブが一つあり、長く鋭い角を持つ。極めて攻撃的で、時々山トロールが飼い慣らそうとしているが逆に攻撃される。角の粉末は魔法薬に使われるが非常に高価。また、皮はドラゴンよりも強靭で、ほとんどの魔法を跳ね返す。

シュヴォルフ
前々話で説明。懐いた理由は火消しを見てたから。一目惚れに近い。キノと名付けられた。名前の由来は電撃文庫の『キノの旅』より。


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騒動のあと

しばらく進み、もう大丈夫だろうと思ったところで、ひときわ大きな悲鳴が近くから上がった。魔女が、空を指差している。

空には、緑色の靄でできた、蛇を口から出した髑髏が浮かび上がっていた。

 

「……何あれ。蛇は可愛いけど、気持ち悪い。……と言うよりも、なんか趣味が悪い」

 

ふと、爆音がもう聞こえてこないことに気がついた。仮面の魔法使いたちは撤退したのだろうか?

 

「キノ、帰り道わかる?」

 

キノに問いかけると、彼女は頷いてあたしの前を歩き始めた。

少しして森を抜けたけど、酷い光景だ。テントは燃やされ、地面は穿たれ、そこら中に仮面の破片が散らばってる。少し先では祝杯をあげるかのように酒盛りをする一団が。本当に何があったんだ。

ママがこちらに向かって歩いてくる。少し怪我をしてるけど、転んでついた擦り傷のようだ。

 

「闇の魔法使いたちは撤退したわ。あそこで酒盛りしてる集団のおかげでもあるけれど、『闇の印』が打ち上がったからね。意気地なしどもね」

 

「『闇の印』?」

 

「ええ。あの空に浮かんでる髑髏。あれは『例のあの人』の一派が何か事件を起こした時に打ち上げたマークなの。創り上げることができるのは『例のあの人』の部下──死喰い人(デス・イーター)と『例のあの人』だけ。

ところで、そのシュヴォルフどうしたの?」

 

「懐かれました。名前はキノ」

 

「……来年には伝説上の生物を連れて帰って来てもおかしくないわね」

 

さすがに伝説上の生物は連れて帰ることはしないと思うけどね。

あたしはママと一緒に、家に〈姿くらまし〉た。

 

 

 

「お早ウごザいます、お嬢様」

 

「んー……おはよ、サクヤ」

 

翌日、サクヤに起こされたあたしは朝食を食べ、日刊予言者新聞を確認した。何やら魔法省がボロクソに言われている。書いたのは……リータ・スキーター?

 

「リータ・スキーターってのは何でもかんでもこき下ろす性悪記者さ。魔法省に恨みでもあるのかって思うよ」

 

ヨハンナさんはリータ・スキーターについてこう語った。顔を見る限り、ヨハンナさんも毛嫌いしているようだ。

 

「リアス、スキーターには関わらないのが賢明だ。有る事無い事書き立てられるからな。それに、お前の代はネタになりそうなのが多いしな」

 

 

 

一週間後、あたしは荷造りしていた。明日にはホグワーツに向かうからだ。なぜか、今年の必需品にはパーティ用のドレスローブが含まれている。どんな色があたしには似合うんだろう。

 

「んー、リアスは綺麗な金髪だしなぁ。どんな色でも合うと思うんだが」

 

「もうちょっと伸ばしたほうがいいかな?」

 

「いやいや、肩までで似合ってるよ。てか、伸ばしたら鬱陶しくなると思うぞ。ドレスはこっちで決めて送ってやるから、今は別のモン用意してろ」

 

ヨハンナさんを質問責めして、なんとドレスを選んでもらえることになった。

けど、ドレスが必要になるなんて、今年のホグワーツでは何があるんだろう。あたしは、横でスヤスヤ眠っているキノを撫でながらそう考えた。




リアスの容姿は、肩まで伸びた金髪しか決まってません。あとはロリ気味ってところと、貧乳ってぐらい。麦わら帽子が似合う感じ。
そして作者じゃどんなドレスが似合うかわからないのですよねー。


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校長からの手紙

休暇が終わり、ホグワーツ特急に乗るためにキングズ・クロス駅へと向かう。

やっぱりと言えば良いのか、キノはホグワーツについてきたがったので、ママ経由でマクゴナガル先生に許可を貰って連れて行くことに。その報告を聞いたキノは三つの尻尾を千切れんばかりに振り回していた。

 

 

 

駅に着き、中に入る。その少しの間にびしょ濡れになってしまった。今日はとても強い雨が降っている。空にサンダーバードでも飛んでるんじゃないの?

九と四分の三番線のホームに入り、汽車に乗り込む。と、なぜかそのタイミングで誰か──ダンブルドア校長からフクロウが届いた。ホグワーツの公式書類などを送るときに使われる封筒だ。手紙の内容は──

 

『Dear Rias

 

これを読んでいるのはもしかしたら特急の中かもしれんのう。さて、急で悪いのじゃが、今年ホグワーツで行われるとあるイベントに君のペットたちを貸してほしいのじゃ。そして、君にもイベントに協力して貰いたい。そのイベントの主役は魔法使いじゃが、内容的に魔法生物たちが多く必要でのう。君のペットたちならば従来の生物よりも安全じゃし、君が居てくれればそれだけで安全対策ができる。もし、引き受けてくれるのならば、今夜のパーティが終わった後に校長室に使い魔をよこしてくれるかのう。ネズミしか知らぬような抜け道も知ってるのじゃろう?

良い返事を期待しておるよ。

 

From Dumbledore

 

P.S.

ハグリッドが新しい生物を生み出してしまったんじゃが、君からきつく言っておいてくれるかのう?』

 

──とのこと。イベントの内容次第だけど、ペットたち(みんな)が活躍できるのなら手伝う気はある。

それと、ハグリッドには後でお説教だね。専門家以外が新種の魔法生物を生み出すことは禁じられてるから。

列車が走り始める。窓を叩く雨は、去年のようにどんどん強くなって行く。少し寒い気がするけど、キノのおかげで暖かい。

 

「お前の人生最初で……あっ、間違えた」

 

いきなりコンパートメントの扉が開いてドラコが何やら言いながら入ってきた。そしてバツの悪そうな顔で扉を閉めた。何がしたかったんだ。

隣のコンパートメントの扉が開く音と先ほどのセリフ──「お前の人生最初で最後のな、ウィーズリー!」──が聞こえた。隣のロンたちのコンパートメントとここを間違えたのか。憐れな。キノには敵認定されてしまったようだよ。

もう一度こちらの扉が開き、ドラコが姿を見せる。

 

「やあ、先ほどはすまなかっ………………」

 

いきなり固まった。どうしたのかと思ったら、キノの目が黄色くなっていた。シュヴォルフの麻痺の魔眼を使われたようだ。

 

「クラッブ、ゴイル。お菓子分けてあげるからドラコを元の席へ連れてってあげて。一時間もすれば元に戻るからさ」

 

二人に蛙チョコレートを一つずつ分けて、ドラコを連れていって貰う。二人の肩に担がれたドラコは、どこからどう見ても荷物としか思えなかった。




シュヴォルフの能力について
麻痺と幻覚、二つの魔眼と普通の眼を切り替えることができますが、麻痺の時は眼の色が黄色くなり、幻覚の時は紅くなります。
何かしらの魔眼の見分け方が必要だろうと思い、作者の独断で付け加えました。

リアスのドレス
現在思い浮かべてるのが某騎士王のようなドレス。次点で紅いドレス。さて、この二つから選ぶのでも別のを考えるでもいいが、どうするか。


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新入生たちの組分け

なぜだか前話後書きの紅ドレスで赤セイバー(Not嫁バージョン)を思い浮かべた方が多いようで。一つ言いましょう。うちの子にパンモロドレスを着させる気はありません!
まあ、ラッキースケベの餌食ぐらいなら妥協しますけどね。


あれから二、三時間ほどで、汽車はホグズミード駅に到着した。雨はさらに強く降り、水煙が霧のように漂っている。

手を振るハグリッドに微笑み、駅の外で待っていたセストラルの馬車に向かう。乗り込む前にセストラルの頭を撫でてあげると、嬉しそうに嘶いた。ついでに、キノも馬車に乗り込んできた。あたしから離れる気はないようだ。

 

 

 

あたしが乗った馬車は最後尾だったようで、玄関ロビーに入るとどんな魔法がかけられてるのか、外と遮断するように玄関扉が閉まった。一昨年は閉まらなかったけど、去年と今年は大雨だからだろう。

前の方を見て、最後尾でよかったと思った。ピーブズが風船片手に大はしゃぎしてる。何人もの生徒に水風船をぶつけているようだ。あ、マクゴナガル先生が怒りに行った。

 

「さあ、大広間へ、急いで!」

 

先生の声で広間へと向かう。すれ違ったとき、先生はため息をついていた。ここを掃除するための指揮をとるのは先生のようだ。

 

 

 

大広間はとても暖かかった。長テーブルの一箇所に座ると、横にキノがペタンと伏せた。尻尾を丸めているし、緊張してるんだろう。

教員席に座ってる先生たちを数えて見たけど、ハグリッド、マクゴナガル先生を差し引いても一人分足りない。誰かが別教科に移動したわけじゃないのなら、闇の魔術に対する防衛術の先生が居ないみたいだ。

空に稲妻が走り、同時に扉が開く。マクゴナガル先生を先頭とした一年生たちだ。みんな、見事にびしょ濡れで、一人は湖に落ちたのか、ハグリッドのオーバーにくるまっている。うん、今年一年生じゃなくてよかった。

マクゴナガル先生はこれまでのように、一年生たちの前に三つ足の丸椅子を置き、三角帽子をその上に乗せる。一年生たちは何が始まるんだろうと緊張し、それ以外は今年はどんな歌なんだろうかと耳をすませる。そして一部はご馳走をまだかまだかと待ちわびる。

そして、ボロボロの三角帽子──組分け帽子は高らかに歌いだす。四つの寮を讃える歌を。

 

「今を去ること一千年、そのまた昔その昔

私は縫われたばっかりで、糸も新し、真新し

その頃生きた四天王

今なおその名を轟かす

 

荒野から来たグリフィンドール

勇猛果敢なグリフィンドール

 

谷川から来たレイブンクロー

賢明公正レイブンクロー

 

谷間から来たハッフルパフ

温厚柔和なハッフルパフ

 

湿原から来たスリザリン

俊敏狡猾スリザリン

 

共に語らう夢、希望

共に計らう大事業

魔法使いの卵をば、教え育てん学び舎で

かくしてできたホグワーツ

 

四天王のそれぞれが

四つの寮を創設し

各自異なる徳目を

各自の寮で教え込む

 

グリフィンドールは勇気をば

何よりも良き徳とせり

 

レイブンクローは賢きを

誰よりも高く評価せり

 

ハッフルパフは勤勉を

資格ある者として選び取る

 

力に飢えしスリザリン

野望を何より好みけり

 

四天王の生きし時

自ら選びし寮生を

四天王亡きその後は

いかに選ばんその資質?

 

グリフィンドールその人が

素早く脱いだその帽子

四天王たちそれぞれが

帽子に知能を吹き込んだ

代わりに帽子が選ぶよう!

 

かぶってごらん。すっぽりと

私が間違えたことはない

私が見よう。みなの頭

そして教えん。寮の名を!」

 

帽子が歌い終わり、大広間は割れるような拍手に包まれる。

 

「バウッ!?」

 

あ、キノが飛び起きた。暇だったから寝てたのね。そしてこの拍手でびっくりしたのか。よしよし、おすわりしてよっか。

マクゴナガル先生が諸注意をして、組分けが始まる。とりあえず変わったことはない。オーバーを羽織った子はデニス・クリービーと言い、コリンの弟なんだって。デニスはグリフィンドールに組分けされて、湖に落っこって何者かにボートに持ち上げられたことを自慢していた。多分大イカだろう。彼以外には、人を持ち上げられるほどの力の持ち主は湖には居ないからね。




キノがだいぶメインキャラになって来た気がする。まあ、書いてて楽しいからいいけどね。可愛いし、モッフモフだし。これで現実世界にも居てくれたら最高だった。……自分じゃ主人として認めてもらえないか。

あ、オリジナル魔法生物募集はまだしてますよ。もしかしたら、死の秘宝上巻までは続けるかもしれません。使わなかった生物はアフターストーリーにでも登場してもらいます。


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ハーマイオニーとの確執

魔法生物案には全て目を通して、スマホのメモ帳へコピーしています。見落としなどはありませんのでご安心を。
ただ、魅力的な生物が多いのはいいのですが、能力やら住処やらの関係上出しにくいのが案外いたりします。仁(響提督)さんの鋼鉄蟹(メタルシザース)は野生を出すにはアフターストーリーとかでないと難しいですね。また、影のビツケンヌさんの亜空虫(あくうちゅう)も、出しどころが難しいですね。

……意地でも出すつもりですがね!全てのオリジナル魔法生物!ふっふっふ、現在の心境は本作りに挑むローゼマイン(本好きの下剋上の主人公。本狂い)ですよ!は!はは!ははは!やってやらぁ!


一年生全員の組分けが終わり、マクゴナガル先生が帽子と椅子を片付ける。男子生徒たち(それと一部の女子生徒)は料理はまだかと待ち構え、キノはジーッとおすわりしているけどヨダレをたらしてる。

ダンブルドア校長が立ち上がり、飢えた生徒たちのギラギラとした視線に驚いたのかほんの少し後ろに退がる。

 

「一年生の諸君、よく入学してくださった。二年生以上の諸君、よくぞ帰って来てくれた。今年は色々と言わねばならんことがあるのじゃが、みなにはそれよりも前に、こう言わねばならんようじゃのう。

思いっきり、かっ込めい!」

 

校長先生が年甲斐もなく叫び、金の大皿には豪華な食事が出現する。あたしはまずローストビーフを小皿に取り分け、一口食べる。うん、美味しい。

たしか、ここの料理は屋敷しもべ妖精が作ってくれてるんだっけ。いつもお疲れ様です。ところで、屋敷しもべ妖精って給料要らないんだったよね?サクヤも要らないって言ってたし、奉仕種族は仕事=給料みたいな感じなのかな。

 

「キノ、おすわり。お手」

 

「バウッ」

 

キノにローストビーフを少し与える。多分、丸ごとあげてもすぐに食べきってしまうだろう。うちの子たちは基本的に森とかで狩りをして自分でご飯を獲ってきたりするから、うちの餌代は安くすんでるのかな?

食べているうちに、ガチャンと何かが倒れる音がした。あたしよりも先に反応していたキノの視線の先には、呆然としているハーマイオニーの姿が。

あたしはハーマイオニーの近くに行き、彼女に話しかける。

 

「ハーマイオニー、何があったの?」

 

「ねぇ、リアス。ホグワーツにも屋敷しもべ妖精がいるのね。いえ、それはまだいいわ。ちゃんとお給料や休みを貰ってるのなら!でも、病欠も年金も有給休暇もないのよ!あなたならわかってくれるでしょう?酷いと思わない?」

 

「ごめん、あたしはハーマイオニーのその思考にはついていけないみたい」

 

「何でよ!ちゃんとお休みやお給料が有るべきなの!仕事をする上ではお休みやお給料は絶対!なかったらそれは仕事じゃなくて奴隷労働よ、奴隷労働!」

 

どうしたらいいんだろう。ハーマイオニーが壊れた。何言っても聞いてくれなさそうだし、このまま突っ走ってしもべ妖精たちに被害が出るんだったら先に心を折っておいた方が良いのかな?

 

「ハーマイオニー、ちゃんとしもべ妖精たちの言い分を聞いたの?」

 

「聞かなくてもわかるでしょう?お給料を貰えないだなんて!しもべ妖精たちは悲しんでるに違いないわ!こうなったらハンガーストライキするわ!」

 

ああ、それじゃいけないんだよハーマイオニー。ちゃんと話し合って、言い分を聞かないと。マグルの常識が魔法族にとって非常識であるように、ヒトの常識はしもべ妖精たちにとっての非常識なんだよ。話し合って、お互いの意見を擦り合わせて、どこかで妥協しないと必ず不和が出る。ハーマイオニーの意見は人間を雇うのには正しい意見だけど、しもべ妖精たちからしてみれば横暴なんだよ。分不相応とも言う。そもそも、人間の召使い──執事やらメイドやらの中にも給料と休暇が必要ないっていう人もいるのに。

 

「ハーマイオニー、あなたはまずしもべ妖精たちにどうしたいのか聞きなさい。それからじゃないと、しもべ妖精たちのために何かしてあげようだなんて思っちゃダメ。あなたのソレは独りよがりなのよ。彼らの仕事への精神を見てみなさい。ほら、こんなに綺麗に料理してるでしょう?本当に待遇に不満があるのならもっと質素な料理になってるはずよ。例えば、豚が切られず焼かれずに出てくるとか」

 

「何よ、予想以上の働きをすることで待遇の改善を目指してるかも知れないじゃない!あなたに何がわかるのよ!」

 

「少なくとも、ハーマイオニーよりかは屋敷しもべ妖精についてはわかってるよ」

 

ハーマイオニーの口が閉ざされる。何か反論したいようだけど、何も思い浮かばないようだ。ハーマイオニーはそのままそっぽを向き、何も食べるもんですか、と言わんばかりに目も閉じた。

ちょ、キノ、ハーマイオニーを敵認定しないの。ただ意見がすれ違ってるだけなんだから。ほら、ステイ!




前書きでは暴走しました。ごめんなさい。反省?するわけないじゃないですかー。

この辺りはハーマイオニーを擁護できない。まだまだ子供なのよね、ハーマイオニーも。わがままを言ってるだけなのよ、理想論と言う名のわがままを。ハーマイオニーの言ってることをヨーロッパの常識として、屋敷しもべ妖精の常識を日本の常識として考えればわかりやすいはず。ほら、全然違うでしょう?人間同士でもわかりあえないのに、人間と人間以外の生物がわかりあうだなんて、絶対にできないのよ。何があっても、ね。


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発表

夢幻月さん、お礼を言わせていただきます。対アンブリッジ(ガマガエル)用最終兵器として使える生物のアイデアありがとうごさいましたぁぁぁぁぁ!これで原作よりも悲惨な目に(アンブリッジが)あうぞぉぉぉぉぉ!


デザートも皿の上から消え去り、ダンブルドア校長がもう一度立ち上がった。

 

「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。少し不満そうな生徒もおるようじゃがのう。

いくつか知らせることがあるので、よく耳を傾けて欲しい。

管理人のフィルチさんから、持ち込み禁止品の追加のお知らせじゃ。何が加わったのかはフィルチさんの事務所で確認してくだされ。もっとも、確認したい生徒がいればじゃが。

いつもの通り、校庭内にある森は許可証を持つ者以外は立ち入り禁止じゃ。ホグズミード村も、三年生まで禁止じゃよ。

次に、ごく少数、もしくはほぼ全員にとって悲しいお知らせを。今年の寮対抗クィディッチ試合は取りやめじゃ」

 

ダンブルドア校長が最後の言葉を言った時、全テーブルから野太い声と甲高い声で悲鳴が上がる。そしてダンブルドア校長に文句を言い始めた。

 

「みな、落ち着いてくだされ。これは、とあるイベントのためなのじゃよ。先生方も、この十月から始まり、今学年の終わりまで続くこの行儀にほとんどの時間とエネルギーを費やすこととなる。そして、クィディッチ試合をしている時間がなくなってしまうのじゃよ。

しかし、じゃ。わしは君たちがこのイベントを大いに楽しんでくれるであろうことを確信しておる。では、大いなる喜びを持って発表しよう。今年、ホグワーツで──」

 

校長先生がその続きを言う前に、一際大きい雷鳴とともに大広間の扉が開いた。

長いステッキに寄りかかり、黒い旅行マントをまとった男の人。フードを脱いで、教職員テーブルに歩き出したけど、一歩ごとに硬い物同士がぶつかり合う音が響いた。

 

「グルルルル……」

 

あたしの近くを通り過ぎた時、キノが歯をむき出して唸り始めた。どうしたんだろう。とりあえず、落ち着かせないと。

男性の顔が見えたけど、あれはとても怖い。片方の目が義眼で、しかもグルグルと回っている。

男性は、教職員テーブルの最後の席へと座り、ソーセージを食べ始めた。

 

「闇の魔術に対する防衛術の新しい先生をご紹介しよう。アラスター・ムーディ先生じゃ。マッド-アイ・ムーディと言ったら、わかりやすいかのう」

 

聞いたことはある。確か、数年前まで魔法省の闇祓い局に勤めてたんだっけ。ヨハンナさんとか、神秘部の人たちが時々捕まりそうになったこともあるとかないとか。

ムーディ先生は目の前のかぼちゃジュースには手をつけず、マントから携帯用酒瓶を引っ張り出して、お酒を飲み始めた。飲み過ぎは良くないと思う。

 

「えー、先ほど言いかけたことの続きを話させてもらおう。これより数ヶ月に渡り、我が校はここ百年以上行われていない、まことに心踊るイベントを主催することになった。知っている者はこの行事のことを良く知っているじゃろう。栄光の歴史、同時に負の歴史としても。安心して欲しい。あらゆる側面において、関係者全ての、もちろん君たち全員を含めての安全を保障しますぞ。では、発表しましょう。今年、ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行うことが決まった」

 

「ご冗談でしょう!」

 

フレッドが叫ぶ。三大魔法学校対抗試合ってなんだろう。聞いたことがあるようなないような。

 

「ミスター・ウィーズリー、わしは決して冗談など言ってはおらんよ。

三大魔法学校対抗試合とは、おおよそ七百年前に、ヨーロッパでもっとも権威のある三つの魔法学校──すなわち、ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラング──の親善試合として始まったものじゃ。各校から代表選手を一人ずつ、統一された公正な手段により選び出し、三人が三つの魔法競技を争った。五年ごとに持ち回りで競技を主催してのう。国境を越えて、若い魔法使い、魔女たちの絆を結ぶにはこれがもっとも適した方法じゃった──おびただしい数の死者が出るにいたって、競技そのものが中止されるまではのう。

ただ、安心してくだされ。先ほども言ったように君たちには安全を約束しよう。最大限の安全対策をとり、危険が及ばんように尽力する。今は、最後の砦にして最大の対策に協力してもらえるよう、とある人物と交渉しておる。交渉に成功した場合、競技はさらに難しくなるがのう」

 

そこまで言って、ダンブルドア校長はあたしの方を向いてウィンクした。ハードルを上げないでください。

 

「何世紀にも渡り、この試合を復活させる動きはあった。じゃが、時期尚早と判断され、全て失敗に終わったのじゃ。しかしながら、ようやく再開できることになったのじゃ。

十月に、ボーバトンとダームストラングの校長が、代表選手の最終候補を連れて来校する。ハロウィンの日が代表選手の選考じゃ。選考方法は初めの時より今も変わらず、公明正大なる審査員によって決定される。その決定にはそれぞれの学校の校長も、協力してくださる魔法省の役員も関与はできぬし、発表するまでは誰が選手になるのか、誰にもわからぬ。ただ、選ばれた場合には古き魔法契約がなされることになり、破る場合には重い罰が与えられるじゃろう。それに、細心の注意ははらうが代表選手には危険が迫る。優勝杯と学校の栄誉、個人への賞金一千ガリオンを得るために危険を冒すか、観戦するだけに留めておくかは君たちの自由じゃ。……まあ、十七歳未満の生徒は参加禁止じゃがのう」

 

参加するとはしゃいでいたウィーズリーツインズがピシリと固まる。錆びついた機械を動かすような音を立ててダンブルドア校長の方を向いた二人の顔は二人の心境を吐露していた。「嘘だろ!?」と。

 

「十七歳未満が選考の審査員に名前を提出できぬよう、わし自ら一定以下の年齢の者を弾く魔法をかけさせてもらう。老け薬を使っても無駄じゃから、時間を無駄にせんように。

ボーバトンとダームストラングの生徒たちは今年のほとんどを我が校にて過ごすことになる。外国からの客人を、みなが礼儀と厚情を持って迎えることを願い、ホグワーツから誰が選ばれようと、みながその者を心から応援することを信じておる。さて、もう夜も更けた。明日からの授業に備えてゆっくり休むのが大切じゃ。就寝!」

 

ダンブルドア校長の掛け声でみんな立ち上がり、玄関ホールに向かう。さて、この後は校長室に使い魔を送らないと。うちの子たちの活躍が見れるのなら、努力は惜しまないよ。



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校長との会談

対アンブリッジ要員となりうる魔法生物たちが増えていっている今日この頃。あー、早く騎士団編入りたい。
てか、主人公がダンブルドアとよく話してる気がするな……これで何度目だ。


暗い道をトテトテと歩く。今、あたしはネズミ型の使い魔に憑依しているのだ。本体の方はキノに警備してもらっている。報酬は明日の朝ごはんでお肉の塊を一つ。

校長室の戸棚の裏にある穴から中に入り、机の上によじ登る。一息ついて前を向くと、ダンブルドア校長がニコニコ笑いながらこちらを見ていた。

 

「来てくれて助かるのう、リアス。手伝って、くれるかね?」

 

「もちろんです。うちの子たちが活躍できるのならいくらでも」

 

校長と笑いあい、競技にどんな生物を貸すかはハロウィンで話し合うことに決まった。その日なら責任者全員──ホグワーツ校長ダンブルドア、ボーバトン校長マダム・マクシーム、ダームストラング校長イーゴル・カルカロフ、国際魔法協力部部長バーテミウス・クラウチ、魔法ゲーム・スポーツ部部長ルード・バグマン、魔法省大臣コーネリウス・ファッジなど──が集まるそうだ。うちの子たちを貸し出すのは第二競技から。第一競技はすでに決まっていて、あまり変更できないような競技なんだそうだ。

 

「それと、選手に選ばれた者への贔屓は禁止じゃ。もっとも、マダム・マクシームはともかくイーゴルが守るかどうかは怪しいがのう……第一競技はドラゴンじゃ。選手一人につき一頭、つまり三頭を各地から連れてくる。それと、もしもどの種かが怪我をして試合に出れなくなった時のためにもう一頭。ウェールズ・グリーン種、スウェーデン・ショート-スナウト種、中国火の玉(チャイニーズ・ファイアボール)種、予備としてハンガリー・ホーンテール種じゃ」

 

「もしホーンテールに当たることになってしまったら大変ですね……」

 

「それぞれの種からランダムに一頭選出して連れてくるからのう……もしかしたら宝石竜が選ばれるかもしれぬ。四種連れてくるということは、そのうちの一種には確実に宝石竜がいるのじゃから。オパールアイではないことが救いじゃろう。オパールの竜はすでにオーストラリア・ニュージーランド・オパールアイ種で確認されてあるからのう」

 

「やっぱり、オパールの竜(ホープ)はオパールアイに出ましたか。他には確認されたんですか?」

 

「エメラルドの竜がホーンテールで確認されておるよ。宝石竜は普通の種よりも賢く、気高く、怒らせた時は一番恐ろしい」

 

エメラルドの竜(オナー)は宝石竜の中でも一番プライドが高いですからねー。引き当てる人がいないように祈っておこう」

 

「そうしてくれるかのう。第二競技で水中生物を貸してもらい、第三競技では君にも準備を手伝ってもらいたい。よろしいかな?」

 

「もちろんです」

 

ダンブルドア校長が微笑んだのを見て、あたしは使い魔を消して眠りについた。なんか重いものが乗っかってる気がするけど、まあいいか。お休みなさい……




宝石竜
デルトラクエストの竜種で、トパーズの竜(フィデリティー)ルビーの竜(ジョイ)オパールの竜(ホープ)ラピスラズリの竜(フォーチュン)エメラルドの竜(オナー)アメジストの竜(ベリタス)ダイアモンドの竜(フォース)の七頭が存在する。ハリポタ世界では竜は十種存在するが、その十種のうち七種、一つの種に一頭の宝石竜が存在する。どの宝石竜がどの種に生まれるかはランダムで、必ず七頭は世界のどこかにいる。また、宝石竜は記憶を引き継ぐ。なぜかオパールの竜はオーストラリア・ニュージーランド・オパールアイ種によく生まれる。


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尻尾爆発スクリュート

最近、皆様のアイデア魔法生物の大体がアンブリッジボコる要員になりそうな奴らばっかりなんですが。つまり、いいぞもっとやれ、ということです。上手くいけばグレイバックとかもヤれるかも。


朝、目が醒めると、体の上にキノが寝転んでいた。そういえば、寝る前に何か重いものが乗ってる気がしたけどキノだったのか。あ、キノ起きた。

 

 

 

嵐はすでに止んで、空は青空……とまではいかなくとも曇り空までにはなっていて、あたしは大きなお肉を取り分けながら時間割を確認していた。

 

「よっと……月曜日は薬草学と魔法生物飼育学、午後に占い二連続ね。ハグリッドはどんな生き物を生み出しちゃったのやら。はい、お肉」

 

「バウッ!」

 

今日の午後、占い学が終わった後なら森に行けるかもしれない。まだ探索を終えていない場所も多いから、早く冒険したい。あ、日曜日なら遠くまで探索できるはず……!前に神殿の跡地みたいな場所とか、遠くの方、森の奥深くに沢みたいな場所があったんだよね。きっと何かいるはずよね……!

 

 

 

薬草学の授業は腫れ草(ブボチューバー)の膿集めだった。直接触ると悪影響があるけど、適切に加工すればにきび取りだとかに役立つ植物。トロールが踏んづけたりしてのたうち回ってることがあったりする。

授業の終わりを告げる城の鐘が鳴って、グリフィンドール生はハグリッドの小屋に向かう。

ハグリッドは小屋の前に立ち、片手をファングの首輪にかけていた。足元に何個かの木箱が置いてある。近づくにつれてガラガラという音とか、爆発音が聞こえるけど、一体どんな生物が入ってるの……?あたしでもわからないんだけど。

 

「おう、今日からは『尻尾爆発スクリュート』ってのをやるぞ!まだリアスでも見たことないんじゃないか、え?」

 

うん、聞いたこともないね。

木箱の中を見に近づく。一緒に見にきたラベンダーは悲鳴をあげて飛び退いた。

スクリュートの姿は奇怪だった。殻をむかれた奇形のロブスターみたいで、胴体は青白くぬめぬめとしていて、勝手気儘に肢が突き出している。頭は良くわからない。体長は十五、六センチほどで、腐った魚のような臭いをしている。尻尾爆発っていうぐらいだから、時々爆発してる方が尻尾なんだろう。爆発のたびに十センチほど前進してる。

 

「……サクヤの真の姿よりもマシ。てか、普通に可愛いと思うけどね」

 

「おう、こいつらの良さがわかるか、リアス!」

 

「リアス、戻ってくるんだ!ハグリッドみたいになっちゃいけないよ!」

 

ごめんね、ハリー。あたしは元からハグリッド側なんだよ。そして、専門家以外が人工で新しい生物を生み出すのは禁止されてるけど、生まれてしまった生物に罪はないんだよ。だからあたしは、この子たちを目一杯可愛がる!

 

「ハグリッド、この子たちはどんなものを食べるの?」

 

「わからん。だから最初の授業ではそれを調べることにしてる」

 

「その前に、なぜ我々がそんなのを育てなければならないのでしょうねぇ?」

 

声が割り込む。見ると、ドラコがニヤニヤしながら立っていた。

 

「こいつらが何の役に立つって言うんですかねぇ?」

 

「生命の儚さと大切さについて学べるけど?」

 

「それに強靭さもな、うん」

 

ドラコのことは放っておいて観察観察。生まれたばっかりみたいだね。役半分ほどに棘が生えていて、もう半分のお腹には吸盤がある。オスとメスの差かな?

色々試してみたけど、ほとんど何でも食べるようだ。次から観察日記でもつけてみようかな。



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占い学での奇跡?

第67話──第4章の12話目にして明かされる衝撃の真実────主人公の詳しい設定が固まっていない!ようやく主人公の詳しい設定の一部が決定したんですよ。決定した裏設定は最後の方で明かす予定なので楽しみに。──実は、これまでにもその裏設定に関するフラグは少し混じってたりするんですがね。


お昼休みに、ノートの注文書を書いて校庭へ。ユーリを召喚して注文書をダイアゴン横丁まで届けてもらう。明日にはノートが届いてくれるだろう。これでスクリュートの日記がつけれるね。スペースが余ればホグワーツの敷地の探検日記もできるかも。

……あ、早くご飯食べないと!

 

 

 

広間へ戻ると、出てくるハーマイオニーとすれ違った。何か楽しげな顔をしている。ハリーとロンは彼女をポカンとした顔で見送っていた。

 

「何があったの?」

 

「ハーマイオニー、絶食でのストライキは辞めて暴食でストライキでも起こすのかと思った」

 

「いつもよりも多く食べてたんだよ。昨日食べなかった分も食べてるんじゃないかってぐらいに。今は図書室で何か企んでるみたいだ。ところで、どこに行ってたの?」

 

「ノートの注文に。次からスクリュートの観察日記書くんだー」

 

「「気が狂ったのかい?」」

 

二人揃って酷いなぁ。幼生体と生体では姿形が全く違うのとかがいるんだよ。昆虫だとか、蛙だとか。もしかしたらスクリュートも成長すると姿が変わるかもしれないじゃない。

 

「つまり、これは学術的興味とかそんなもので、個人的な興味とは違う。証明終了(Q.E.D.)

 

「証明できてないと思うのは僕だけかい、ロン?」

 

「ハリー、君が間違ってたらマーリンの髭だよ」

 

そこ二人、うるさい。

 

 

 

そろそろ鐘が鳴りそうな時間になったから、北塔のてっぺん──占い学の教室、トレローニー先生の部屋へと向かう。もうみんな梯子を上ってるみたいだ。今年は短パンをパンツの上から履いてるし、覗かれても大丈夫だね。覗かせる気はないけど。

ハリーたちはまだ来てないみたいだけど、二人以外はみんなすでに座っている。トレローニー先生はまだ見当たらない。

二人が到着して、前の方の席に座ると、どこからともなくトレローニー先生が現れた。この人、案外凄いと思う。占い以外は。

ハリーに対して不吉な予言をすると、今度はあたしの方に寄ってきた。

 

「ああ、あなたは頭に気をつけた方がいいかもしれません……取るに足らない小さな虫でも、命取りになることがありますが、今回は心配しなくても大丈夫でしょう。ですが、もし続くようならば……これ以上は語らなくてもわかるでしょう?」

 

意味深なことを言っていたけど、要は頭に何かぶつかるかもだから注意してろってことかな?普段から気をつけてるよ。森の中だと猿に林檎とかを投げつけられることがあったりするからね。

 

 

 

ロンの余計な一言で、トレローニー先生が珍しく怒ってこれまでよりも面倒な宿題を出してきた。これから一ヶ月分の惑星の動きがあたしたちにどういう影響を与えるか詳しく分析して、来週の月曜に提出しろだって。はぁ……フィレンツェやベインに手伝ってもらおう。そうすれば簡単だろう。ケンタウルスはあらゆる分野の占いに通じてるからね。

よし、そうと決まれば早速向かおう。あわよくば何か珍しい生き物でも見なかったか聞いてみよう。

そう思って校庭に出て森へ向けて歩き出す。

 

「痛っ!」

 

何かが頭に急にぶつかった。周りを見渡しても誰もいないし、森からもまだ離れてるから猿に近い生き物が投げつけてきたってこともない。ただ、何がぶつかったのか気になって足元を見てみると、十五センチほどのハンミョウが落ちていた。

 

「──なんで亜空虫(あくうちゅう)がいるの?さっきまでいなかったと思うんだけど」

 

この虫は非常に特殊な虫で、人にぶつかることなんて滅多にない。そもそも生息地は北米の高地で、イギリスには野生の亜空虫は居ないはずだ。居たとしても淘汰されてしまうだろう。

まあ、亜空虫が精製する魔力結晶を狙われて別次元にジャンプしたんだろう。そして、道を違えてホグワーツまで──それも、ピンポイントであたしの額数センチ前に転移してしまったと。

 

「さすが『道違え』……どこに出るのか全くわからない」

 

この子はとりあえずローブの内側に留まらせておく。まだ気絶してるみたいだし、あとで逃してあげるとしようか。

さぁ、さっさとフィレンツェを捜して宿題手伝ってもらわなきゃ!




亜空虫
M.O.M.分類XXX(XX)
通称「道違え」。ハンミョウを十五センチほどに大きくしたような虫で、北米の高地に生息。
縄張り争いなどで追い出されることが多く、頻繁に他の地域てまも目撃される。だが、だいたいは北米大陸か南米大陸、ロシア東部、日本などアジア諸国ぐらいまで。ヨーロッパにもいるにはいるが、ホグワーツに迷い込むのは滅多に居ない。
草食。
後翅は退化して跳べない。一部の魔法使いに恐れられている。
自身の位相を別位相(別次元)の同座標に跨がらせることにより通常物理法則下にある干渉から身を守ることができる。この障壁は魔力に弱く、多分失敗した魔法でも解除できてしまう。障壁が繰り返し破壊されると前翅を展開し、一定範囲(約半径十メートル以内)から魔力を猛烈な勢いで吸収し腹部に魔力結晶を精製、結晶を用いてポータルを開いて次元跳躍を試みる。結構凄い虫。
次元跳躍した先は別次元の地球であり、時間の流れなどの様々な要因が異なっている。また、どの次元の地球に跳ばされるのかもその時次第。結晶は往復分の魔力も持ち、こちらの地球(第三次元の地球)に帰ってくることもできる。だが、元の場所に戻れる確率は低い。ポータルも効果範囲が広く、攻撃してきた敵やら周りに居た哀れな生物を巻き込んで跳躍することがある。行きは座標は固定されているが次元は指定できず、帰りは次元は固定されているが座標が指定できないなど、少しポンコツ。
魔力結晶は貴重な魔法薬の材料になると考えられ、目下研究中。精製終了からポータルを開くまでの一瞬で物理的に叩き殺すのが有効らしいが、素早いため難易度は高い。
影のビツケンヌさんのアイデアです。ありがとうございました!もっと詳しいことが知りたい人は活動報告の『魔法生物の王:アイデア募集』をご確認ください。


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ムーディ先生の授業─〈服従の呪文〉

最近、本好きの下剋上とハリポタのクロスオーバーを書きたいとか思ってしまってる作者。だがしかし、様々な事情(連載継続中の二つがエタるかもしれない、本好きの方の設定を詳しく読み取れていない、本好きの世界観を上手く表せない、そして何よりも時間が足りない)により書けない。どうしたものか……


「フィレンツェ、ありがとう!」

 

「いいえ、久しぶりに良き占いが出来ましたから、こちらがお礼を言いたいです。ありがとう、リアス」

 

フィレンツェにお礼を言い、森を出る。日が陰ってきたし、探索は今日は無理そうだ。

ぶつかってきた亜空虫はフィレンツェに占いを聞いている間にどこかに行ってしまったけど、木の実をいくつか拾ってきてくれた。中々見つからない実のようで、貴重な魔法薬の材料のようだ。彼はすぐにどこかへと跳躍していった。……すぐそばでフィレンツェが痛みをこらえる声を出していなければカッコよかったね。今度は彼の頭に当たってしまったようだ。

 

 

 

玄関ホールに戻ると、何やら騒ぎが起きていた。ムーディ先生が杖を振っている。杖の先には真っ白な、とても綺麗なケナガイタチが。あ、振り回し始めた。可哀想だとは思うけど、声が聞こえない。多分、人間が変身したのがあのイタチなんだろう。先生の近くにはハリーとロン、ハーマイオニー、クラッブとゴイルが立っている。てことは……まさか、あのイタチはドラコなの?

マクゴナガル先生が途中でムーディ先生を止め、イタチに杖を向けた。次の瞬間、イタチの居た場所にはドラコが這いつくばっていた。今度は何をしたのやら。

ムーディ先生はドラコを連れて地下室へ向かい、野次馬のみんなは食堂へ入っていった。

 

 

 

特に事件なども起こらず、最初の闇の魔術に対する防衛術のある木曜日になった。強いて言うなら、ネビルが六つ目の大鍋を溶かしてしまったことぐらいが、事件だろう。

昼休みが終わり、教室へと向かう。始業のベルが鳴るよりも前に、みんなは列を作って教室の前で待っていた。

教室が開くと、あたしは真ん中より少し前の席に座った。ハリーたち三人は一番前のようだ。

少しして、硬い足音を鳴らしながらムーディ先生が教室に入ってくる。

 

「そんな物、しまってしまえ」

 

先生は机に向かうと、そう言った。

 

「教科書だ。そんな物は必要がない」

 

みんなが教科書を鞄にしまうと、先生は出席を取り始めた。グルグル動く義眼は、名前が呼ばれた生徒をジーッと見つめている。

 

「このクラスについては、ルーピン先生から手紙を貰っている。お前たちは、闇の怪物と対決するための基本をかなりまんべんなく学んだそうだな。真似妖怪(ボガート)赤帽鬼(レッドキャップ)おいでおいで妖怪(ヒンキーパンク)水魔(グリンデロー)、河童、人狼など。そうだな?

しかし、だ。お前たちは遅れている。非常に遅れている。呪いの扱い方について、だ。防衛のための呪文──武装解除などについてはいくつか知っているようだが、肝心の、本気で人を害するための呪いについてはほとんど知らないようだ。わしの役目は、魔法使い同士が互いにどこまで呪い合えるものなのか、お前たちを最低線まで引き上げることだ。わしの持ち時間は一年だ。その間にお前たちに、どうすれば闇の──」

 

「え、ずっといるんじゃないの?」

 

ムーディ先生の言葉を遮って、ロンが声を出す。先生はロンを見据えると、あたしが知る限りで初めて笑った。

 

「お前はアーサー・ウィーズリーの息子だな?お前の父親のおかげで、数日前、窮地を脱した……ああ、一年だけだ。ダンブルドアのために特別にな。その後は静かな隠遁生活に戻る」

 

ムーディ先生は両手を叩き、話を戻した。

 

「では、すぐに取り掛かるとしよう。呪いだ。呪う力も形も様々だ。杖を使う呪いもあれば、杖を使わない、そこらにある物だけで行うことのできる呪いもある。さて、魔法省によれば、わしが教えるべきは反対呪文であり、そこまでで終わりだ。違法とされる闇の呪文がどんなものなのか、六年生になるまでは生徒には見せてはいかんことになっている。お前たちは幼すぎ、呪文を見ることさえ耐えられぬ、というわけだ。しかし、ダンブルドア校長は、お前たちの根性をもっと高く評価しておられる。わしとしても、今のうちから敵については知っておいた方がいいと考えている。もし今年や来年、お前たちが六年生になる前に襲われたらどうする?お前たちの知らない呪文で、一方的に襲われる。どうだ、恐ろしいだろう?本来なら一年生か二年生あたりで教えるのが一番いいと思うのだがな。油断大敵!」

 

ムーディ先生が叫ぶ。声は教室中に響き、全員が飛び上がった。

 

「闇の魔術には程度がある。凶悪になればなるほど、厳しく罰せられるというわけだ。その中でも、一番厳しく罰せられる呪文が三つある。答えられる者はいるか?」

 

何人かが中途半端に手をあげる。ハーマイオニーはピシッとあげているし、珍しくロンもあげている。

 

「ウィーズリー、答えてみなさい」

 

「えーと、パパが一つ話してくれたんですけど……〈服従の呪文〉とかなんとか……」

 

「その通り。お前の父親なら、確かにそいつを知っているはずだ。一時期、魔法省を手こずらせたことがあるからな」

 

ムーディ先生は机の引き出しを開け、ガラス瓶を取り出した。中には黒い大蜘蛛が三匹入っている。

先生はそのうち一匹を取り出すと、みんなに見えるように手のひらに乗せて、杖を向けて一言つぶやいた。

 

「〈服従せよ(インペリオ)〉!」

 

蜘蛛は一瞬震えた後、先生の手から飛び降りて芸をし始めた。本来ならできないはずの動きとかも。

みんなが笑う──ムーディ先生とあたしを除いたみんなが。

この呪文はとても恐ろしい。だって、家族やペットが操られて、あたしを襲ってくるかもしれないから。その時、あたしは冷静に対処できるだろうか──いや、できないだろう。混乱して、呼びかけて、なすすべもなく倒される。

 

「面白いと思うのか?わしがお前たちに同じことをしたら、喜ぶか?」

 

笑い声が消える。

 

「完全な支配だ。わしはこいつを、思いのままにできる。窓から飛び降りさせることも、水に溺れさせることも、誰かの喉に飛び込ませることも……。

何年も前になるが、多くの魔法使いたちがこの〈服従の呪文〉に支配された。誰が無理に動かされているのか、誰が自らの意思で動いているのか、それを見分けるのが、魔法省にとって一仕事だった。最悪を誇る三つの呪文のうち、〈服従の呪文〉だけは対処ができる。これからそのやり方を教えていこう。しかし、これには個人の持つ真の力が必要で、誰にもできるわけではない。できれば呪文をかけられぬようにするほうが良い。油断大敵!

 

みんながビクッと震え、ムーディ先生はとんぼ返りをしている蜘蛛を瓶の中に戻した。



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ムーディ先生の授業──〈磔の呪文〉、〈死の呪い〉

「他の呪文を知っている者はいるか?何か禁じられた呪文を?」

 

ムーディ先生が再び質問する。もう一度ハーマイオニーの手が挙がったけど、今度はネビルの手も挙がった。

 

「何かね?」

 

ムーディ先生がネビルに聞く。義眼だけがネビルの方を向いていた。

 

「一つだけ──〈磔の呪文〉」

 

ネビルは小さな声で、だけどしっかりとした声で答えた。

先生はネビルを両方の目でじっと見据える。

 

「お前はロングボトムと言う名だな?」

 

魔法の目を出席簿の方に向けて、ムーディ先生が聞く。ネビルは緊張してるみたいだけど、頷いた。

ムーディ先生はそれ以上何かをネビルに聞くことは無く、ガラス瓶から二匹目の蜘蛛を取り出した。

 

「〈磔の呪文〉。それがどんなものかわかるように、少し大きくする必要がある。〈肥大せよ(エンゴージオ)〉!」

 

蜘蛛が大きくなり、ロンが恥も外聞もかなぐり捨ててムーディ先生の机から遠ざかる。蜘蛛はタランチュラよりも大きくなった。アクロマンチュラよりかは小さいけど。

 

「では、見ていろ。〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

蜘蛛は肢を胴体に引っ付けてひっくり返り、痙攣し始める。とても……とても苦しんでいる。蜘蛛の声は、もはや言葉をなしていない。ただの悲鳴だ。

 

「やめて!」

 

ハーマイオニーが金切声を上げる。彼女の視線の先にはネビルが居た。蜘蛛から目を離さず、関節が白くなるほど、拳を握りしめている。その顔は恐怖で満ちていた。

ムーディ先生が蜘蛛から杖を離す。蜘蛛は落ち着いたけど、まだ痙攣は続いている。

 

「〈縮め(レデュシオ)〉」

 

蜘蛛を縮ませ、瓶に戻した先生は〈磔の呪文〉について語り始めた。

 

「苦痛。〈インペリオ〉が完全なる支配なら、〈クルーシオ〉は完全なる苦痛だ。自ら死を望むほどの激痛を与え、最悪の場合、廃人となってしまう。

この呪文を使えるのなら、拷問には何の道具も必要ない。かつて、この呪文は盛んに使われた……。

……では、他の呪文を知っている者はいるか?」

 

支配、苦痛……ならば、三つの呪文の最後は──。

三度目の挙手をしたハーマイオニーの手が震えている。どんな呪文なのか、知っているんだろう。

 

「何かね?」

 

先生がハーマイオニーに質問し、彼女は震える声で答える。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉」

 

「……ああ、そうだ」

 

先生が微笑む。何度か見せた笑い顔よりも、一層恐ろしかった。

 

「最後にして最悪の呪文。全てに平等に訪れる、最も恐るべき出来事を確実に引き起こす呪文だ。〈アバダ・ケダブラ〉──死の、呪いだ」

 

ムーディ先生が最後の蜘蛛を取り出す。蜘蛛はジタバタと暴れたけど、捕まり、机の上に降ろされた。

 

「覚悟しろ。この呪文はお前たちにも降りかかるかもしれんのだ。この、最も恐ろしい呪文はな。〈アバダ・ケダブラ〉!」

 

先生の声が轟く。目も眩むような緑色の閃光が走り──蜘蛛が力を無くしひっくり返る。傷は一切ない。だけど、はっきりと死んでいるとわかる。誰かの悲鳴が上がった。

 

「ああ、気持ちの良いものではない。しかも、反対呪文は存在しない。防ぐには避けるしかないのだ。それも、一切閃光に掠らないように。これを受けて生き残った者はただ一人。その者は、わしの目の前に座っておる」

 

ムーディ先生の両目がハリーを覗き込む。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉の呪いの裏には、強力な魔力が必要だ。同時に、確実にその者を殺すと言う思いも。〈クルーシオ〉にも思いは必要だ。『苦しめようと本気で思い』、かつ『苦痛を与えることを楽しむ』必要がな。お前たちがわしに〈死の呪い〉を唱えたところで、鼻血さえ出させることが出来るものか。もちろん、そんなことはどうでも良い。わしは、この呪文の使い方を教えに来てるのではないのだから。

反対呪文が無いのなら、なぜお前たちに見せたりするのか?それは、お前たちが知っておかねばならないからだ。最悪の事態がどういうもの、お前たちは味わっておかねばならない。せいぜいそんなものと向き合うような目にあわぬようにするんだな。油断大敵!




ムーディ先生──クラウチJr.って、先生としては一流のような気がするんですよね。この人ホグワーツに就職してればよかったのに。


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しもべ妖精福祉振興協会

はっはー、どうも、作者たる零崎妖識に変わりまして、今回の前書きはこの作品に全く関係の無い忍野扇ちゃんがジャックしましょうか。まぁ、正確に言うなら零崎扇か哀川扇でしょうがね。
え?お呼びでない?それはそれは失礼しました。
とりあえず、私がここに居る理由なんですが、そろそろオリジナル魔法生物がパワーインフレし始めたそうでして。それで、闇の帝王側にパワー的なテコ入れをしたいそうなんですよ。ええ、このままだととても不憫な結果で終わるでしょうねぇ。私が阿良々木先輩に救われてしまったように。ま、どうでもいいでしょうけどね。
あ、そうでした、これも伝えないといけませんね。この第四章の最後の方で、主人公ちゃんの真実──なぜ動物と話せる能力を持ってるのかとか──が明らかになるそうです。一部の人にとっては嫌な内容でしょうから、これ以上チートになるのが嫌な人はそろそろ離れた方がいいかもしれませんよ?
ではでは、本編をお楽しみください。妖識さんはどうしたのかって?それは私でも知らないことですよ。


「今見せた三つの呪文──〈服従の呪文〉、〈磔の呪文〉、〈アバダ・ケダブラ〉──は俗に『許されざる呪文』と呼ばれている。同類、同族であるヒトに対して、このうちどれか一つでも使ったら問答無用でアズカバンで生涯を暮らすことになりうる。お前たちが立ち向かうのは、そういうものなのだ。ヒトが生み出した純粋な闇とも言える呪いに対しての戦い方を、わしはこの一年間で教えなければならない。備えが、武器が必要だ。しかし、何よりも、常に、絶えず、警戒することの訓練が必要だ。闇の魔法使いがご丁寧に真正面から襲って来ると思うか?何の警戒もしていない背後からの奇襲に、倒されたと見せかけてからの呪い返し。近い将来、お前たちはそれに気をつけなければならないだろう。羽根ペンを出せ、これを書き取れ」

 

あとは、許されざる呪文についての書き取りに終始した。誰も喋らなかったけど、授業が終わり教室から出るとすぐに、一斉に喋り始めた。みんな、楽観的だけど、あたしはそんなに楽しく思えない。だって、大切なものが多いほど、あの三つの呪文は驚異になる。大切なものが多いってことは、つまり弱点となりうるものも多いってことだから。それでも、あたしはペットたちを見捨てないけどね!あ、後で久しぶりにシャルロッテに会いに行こうかな。ずっとホグワーツに居るんだし、もしかしたらこの学校に住んでる魔法生物について詳しいかも。

ふと、震えているネビルが目に入った。何だろう、とても怯えているようだ。今はハリーたちが話しかけている。

四人にムーディ先生が近づき、ネビルを連れて行った。ネビルを怖がらせたのは先生だし、責任でも感じてるのかな?

 

 

 

夕食後、あたしは一番に談話室に戻った。もちろん、ペットたち(みんな)を呼び出してモフモフするためだ。

階段を上るときに、ネビルが入って来るのが見えた。まだ本調子では無いようだけど、ムーディ先生とは有意義な時間を過ごせたようだ。一冊の本を抱えている。えーと……『地中海の水生魔法植物と』……後がネビルの腕で読めない。まあ、魔法生物でないなら興味は無い。部屋に戻ろう。

 

 

 

数時間後、誰かが談話室に入って来る音がしたから下に下りることにした。もうほぼ全員が戻って来てるはずなのに、一体誰なんだろう。

談話室にはいつもの三人──すなわち、ハリー、ロン、ハーマイオニー──しか居なかった。ハリーとロンは占い学の宿題の羊皮紙を広げ、ハーマイオニーの横には箱が置いてある。

ハーマイオニーが箱の蓋を開けると、中からは色とりどりのバッジが出て来た。んーと、五十個ぐらいかな?確認できる限り全てのバッジにS・P・E・Wと書かれている。

 

「ハーマイオニー、それ、何?」

 

「あらリアス。ちょうどよかったわ。ようやく完成したのよ!」

 

「うーん、僕にはスピュー……反吐って書いてあるようにしか見えないんだけど」

 

「ロン、スピュー(反吐)じゃないわ。エス──ピー──イー──ダブリュー。エスはthe Society(協会)、ピーはPromotion(振興)、イーはElfish(しもべ妖精)、ダブリューはWelfare(福祉)の頭文字。つまり、Society of the Promotion of Elfish Welfare(しもべ妖精福祉振興協会)よ!」

 

「お休み、ハーマイオニー。深夜テンションみたいだし、明日の朝もう一度考え直してみたら?」

 

「ちょっと、それどういうことかしら、リアス」

 

ハーマイオニーが噛み付いてくる。全く、前に言ったことを覚えてないのかな?

 

「ハーマイオニー、あたしはこれまでそんな組織を聞いたことないけど、ハーマイオニーが作ったの?」

 

「ええ、そうよ。会員は三人が入ってくれれば四人ね」

 

「ちゃんと屋敷しもべ妖精の意思の確認はとったの?」

 

「それは──とってないけど、口に出せないくらい深く根付いちゃってるかもしれないじゃない。彼らの意思を聞いて、はいそうですかって止めることなんてできないわ」

 

「そう──一度聞いてみれば良かったのに。ごめん、ハーマイオニー。あたしはそれについていけない。止めたいけど、止まるつもりはないんでしょ?」

 

「もちろんよ。やるからにはやり通すわ。リアスが入ってくれれば百人力だったのに。あなたなら彼らの説得も容易でしょう?」

 

「だからなんだ。あたしは、しもべ妖精たちの意思に任せる。しもべ妖精たちが望むのなら手伝うけど、望まないのならあたしは手伝わないし、場合によっては邪魔をすることになる。だから、しばらくは近づかない方がいい。──このままだと、キノがハーマイオニーのことを敵認定しちゃうから」

 

あたしは横に動く。ハーマイオニーの視線の先──つまり、ついさっきまであたしが居たところの後ろにはキノが立ち、ハーマイオニーを睨みつけている。お願いだ、ハーマイオニー。彼らから存在意義を奪わないでちょうだい。種族としての存在意義を失ってしまったら、それはもうその種族とは呼べない、ある種の絶滅となってしまうから。

あたしは三人に背を向けると、キノを一撫でして、自室に戻って眠りについた。




今章でのハーマイオニーとの確執がどんどん進んで来ました。


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日曜日の冒険-朝-

はっはー、思っていたよりもお気に入り登録減りませんでしたねぇ。寧ろ増えましたし。さてさて、ではそろそろ魔法生物ラッシュと行きましょうか。だいぶ御都合主義になるそうなのでご注意を。


金曜、土曜と過ぎていき、待ちに待った日曜日。あたしは誰よりも早く起きて、ハグリッドの小屋に向かった。朝ご飯用とお昼ご飯用に、キッチンでサンドイッチと飲み物(ミルクティー)を貰って。

 

「で、こんな朝早くに何の用だ、リアス?こんな天気の良い日曜日の、それも朝早くに弁当持ってきたんだ。ただ話に来たって訳じゃあるめぇ」

 

「いやー、バックビーク借りれないかなってね」

 

「ビーキーを?そりゃあ、またなんでだ?」

 

「ホグワーツの敷地内を探検したいの。神殿みたいな場所とかあったからね。珍しい子がいそうじゃない?」

 

「ふむ……よし、あいつらはお前さんに懐いとるからな。ちゃんと就寝時間までに戻ってこれるなら、ホグワーツの敷地内ならどこでも行ってええ。ただし、無茶はしないようにな」

 

「ありがとう!」

 

あたしはハグリッドにお礼を言って、森の中へ向かった。ヒッポグリフのいる場所はわかってるし、縮小呪文でキノも連れて来た。

数分して、沢山のヒッポグリフを見つけた。えーと、バックビークは……いた。綺麗な灰色のヒッポグリフに近づき、頭を下げる。すぐに下げ返してくれたので、一撫でして背中に乗った。さあ、冒険の始まりだ!

 

 

 

まず向かったのは広い湖に浮かぶ島の一つ。朝日も上ってきたことだし、まずはあの島で朝ご飯を食べようと思ってる。

適当な場所に着地して、キノを元の大きさに。まずは落ち着ける場所を探さないとね。

島は森に囲まれ、少しじめっとしていた。薄暗く、木漏れ日がとても綺麗だ。

しばらく歩き回っていると、急に開けた場所に出た。ぽっかりとこの場所だけ木がなくなっている。上から射し込む光の中央には崩れた神殿のようなものがあり、とても神秘的。

 

「ここなら丁度いいかな」

 

あたしは横倒しになった柱に向かい、腰掛ける。キノとバックビークは近くで寝そべっている。

あたしはバッグを開けて、一本目の水筒とサンドイッチのパックを取り出して食べ始めた。お肉の少しはキノたちにあげる。うん、美味しい。

ふと、それまで聞こえていた音とは違う音が聞こえた。虫の鳴き声とかではなく、何か、軽いものが羽ばたくような……妖精が飛ぶ音?

周りを見渡すと、柱の影に銀色の小さな影が見えた。

 

「……【おいでー……怖くないよー……?】」

 

呼びかけてみると、恐る恐るだけど姿を現してくれた。銀色の鎧を身に付け、腰に剣を履いた三十センチぐらいの四枚羽の妖精。ディーナ・シーだ。

ディーナ・シーが居るということは、ここはしばらくの間、誰も入って来ていないと言うことだろう。神殿の機能は失われてるだろうけど、十分神聖に見えるし、彼らが住む条件はクリアしている。

きゅうりを一つ差し出してみる。彼(もしくは彼女)は頭を下げ、きゅうりを受け取ってくれた。どうするのかと見ていると、彼はキノに近づき、頭の上に座ってきゅうりを齧り始めた。キノはキョトンとしている。

少ししてきゅうりを食べ終わった彼は、森の中へと一目散に飛んで行った。どうしたんだろう。そしてキノ、ここで寝るつもりなの?丁度いい暖かさだけどさ?

キノがうつらうつらとしている間に、ディーナ・シーは戻って来た。ただし、他にも三匹ほど別の生き物を連れて。彼らにも分けてあげてほしいってことかな?まだサンドイッチは余ってるから良いけどね。

彼らがサンドイッチを頬張っている間に、どの生物なのか確認する。一匹は黒鉄色の大きな蟹で、一匹は大体の人には気色悪いと言われてしまうような姿、一匹は……うん、タコだ。黄色いタコ。

それぞれ鋼鉄蟹(メタルシザース)とルビコン、ヌルフパスだろう。

 

「……ルビコンはどこにでも居るしまだ良い。ヌルフパスも、湖では良く見られる。でも、鋼鉄蟹が居るとは思わなかったなぁ……」

 

鋼鉄蟹は樹海の奥深くの沼地など、綺麗な水辺に住む。ホグワーツから離れた小島とはいえ、こんなところに居るとは。

 

「本来居た場所から追い出されちゃったのかな?鋼鉄蟹が住んでる場所ってよくわからない不思議な生き物が多いけど……戻してあげるべきか放っておくべきか、それが問題ね」

 

自然の摂理としては放っておくのが良いだろう。そもそも、他の三匹は仲間認定した相手にはとても世話を焼くから。ただ……どうやらあたし、この四匹に懐かれちゃったっぽいです。頭の上にディーナ・シーが座り、しっかりとした鋼鉄蟹に座り、むちっとしたルビコンにもたれかかり、ヌルフパスがぬいぐるみのように抱えられて居る。ヌルフパスは感情によって色が変わるけど、今は薄いピンク色だ。完全にリラックスしてる。

 

「……どうしてこうなったのやら」

 

頭の上から欠伸が聞こえた。




ディーナ・シー
M.O.M.分類XXX〜XXXXX
聖言が刻まれた純銀の武具を身に付けた四枚羽の妖精。大きさは三十センチほど。妖精の集落や聖地、神殿などの神聖な場所、人の手が及んでいない山や森の奥に住む。
人に近い知性を持ち、その在り方は中世の騎士に近い。義理堅く、助けてくれた人やその人の子供、赤ちゃんなどの周りを飛び回って護衛したりする。特殊な力などは無く、単純な技量だけで他を圧倒できる。
大きさ三十センチほど、寿命は千年ほど。
元は神の一族だったという伝承がある。
白神 羅刹さんのアイデアです。ありがとうございました!

鋼鉄蟹(メタルシザース)
M.O.M.分類XXX(XXXXX)
灰色、もしくは黒鉄色の大きな蟹。大きさは横向きにした大型バイクほど。
雑食、凶相だが大人しく、基本的に何をされても何もしない。ただ、仲間認定されたものが傷つけられると途端に襲いかかってくる。この状態がXXXXX。
最硬の外殻を持ち、一部規格外生物を除けば最も高い防御力を持つ。その硬さは剣を壊し槍を折り金槌を砕くほど。また、鋏も同じ硬さのため、ほぼ全ての物を簡単に切ってしまう。『矛盾』の体現。
樹海の奥深く、沼地などの綺麗な水辺に生息し、不可思議な生き物たちと静かに暮らしている。
仁(響提督)さんのアイデアです。ありがとうございました!

ルビコン
M.O.M.分類XXXXX
決まった容姿を持たず、時には無機物の姿をとることも。身体のどこかに必ず肉の色合いと感触をした部分がある。
生態は全くの謎。わかっていることは同族を傷つけられると怒り狂うことと人間並みの知性を持つことのみ。
科学、魔力とは違う第三の法則『波動』を身に纏っていて、死の呪文か波動による攻撃でないと、塵一つ残さず消し飛ばしても復活する。固体に波動を流し込むとルビコンになる。生物を同族とした場合、その生物と同等の知性を得るようす。
決まった生息地は無く、どこでも目撃されている。基本的に無害で、人前に出ることはほとんどない。過去に一度怒り狂うことがあり、その時は数千人の魔法族が犠牲になったそう。その時攻撃された理由は「気味が悪かったから」。
元ネタはR-TYPEのバイド。
夢幻月さんのアイデアです。ありがとうございました!

ヌルフパス
M.O.M.分類XXX
感情に合わせて色が変化するタコ。基本色は黄色。
湖の岩場などに生息する。水中では最速に近しいほどで、空中でもとても速い。手入れが趣味という謎の生物。
恐らく元ネタは暗殺教室の殺せんせー。
覇王龍さんのアイデアです。ありがとうございました!

ちなみに以上四種は対アンブリッジ用最終兵器として選出されています。
そして一話で終わらなかった件……。


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日曜日の冒険-昼-

そろそろ次の場所に行きたかったので、四匹と別れて私たちは空へと飛び立った。【次会うときにはお礼をします】って言ってくれたし、楽しみにしていよう。ディーナ・シーのことだから、別の世界の神様の加護付き純銀製アイテムとか渡されそうな気がするけどね。

さてさて、お次はどこに向かおうかな……あれ、何あれ。

一見何の変哲も無い島だけど、何かの形に地面が盛り上がってる?それに、ところどころ土じゃないのが見えてる……。

 

「【バックビーク、あそこへ向かって】」

 

【了解!】

 

バックビークは一鳴きすると、露出部分に急降下していった。とてもスリリングだ。

 

「っとと……【ありがと】。えーと……これは……?」

 

地面から見える謎の物体。硬く、太い。円柱に近い形をしてるようだ。

どこかで見たことがある気がするんだけど……何なんだろう。

もう一度バックビークに乗り、上空から盛り上がりを確認する。どうやら島全体に広がっているようだ。島自体は楕円に近い。

一番盛り上がりが大きいところに着地する。一番下からだと見上げることが出来るほどに大きい。

正面には大きい穴とそれよりも小さい穴が二つずつ、左右対称に並び、それよりも下には、大きな牙が見えた。

 

「……本当に、ホグワーツってどうなってるんだろう」

 

これは骨だ。この島全体を覆うほど大きい、ドラゴンの骨。こんなにも大きい骨を遺す竜種を、あたしは一種──一種と言っていいのかわからないけど──しか知らない。

古龍(エンシェント・ドラゴン)。人の立ち入らないような秘境などに住み、一体一体が既存のどの生物種にも当てはまらない、もはや生物を超越している災害。それぞれの性能は異なるけど、一つ言えることは、その全てが規格外だと言う事。絶対強者にして下位生物──つまり、ほぼ全ての生物──からの害意ある魔法を受け付けず、『英雄』にしか打倒できない存在。

まさか、そんな頭おかしいレベルの生物の死骸がホグワーツにあるなんて。寿命だったのか、誰かが打ち倒したのか……寿命ってことはありえないだろうし、倒せるとしたら剣を遺産としたゴドリック・グリフィンドールとか?あとは、アーサー王とか。後者だったら、もしかしたら卑王ヴォーディガーンの骨かもしれない。だとしたら大発見?

でも、ドラゴンの形をした古龍の骨とは。時々、絶対これはドラゴンじゃないって言える古龍の骨もあるんだよね。タコとかイカとか。

 

「フォウフォーウ!」

 

何の前触れも無く、上の方から何かの鳴き声が聞こえた。見上げると、そこにはこちらに向かって飛び込んでくる白いモフモフな物体が。

 

「わふっ!?」

 

「フォフォーウ!」

 

顔にぶつかって地面に転んでしまった。背中が痛い頭が重い顔面は天国と言えるほどモフモフ。

起き上がりながら謎生物を顔から引き剥がす。よくよく見てみると、白を基調として青混じりのモフモフな毛並み、程よく発達した、長距離に向いていそうな脚、よくわからないけどリスのような印象を受ける全体像。ああ、去年ダンブルドア校長が話してくれた謎生物その二に似てるんだ。

 

「いや、この子その謎生物その二でしょ」

 

あたしの肩の上に座ったその子は嬉しそうにフォウと鳴いた。このままついてくるつもりのようだ。

お昼ご飯も食べたいし、この亡骸の頭の上を失敬しよう。ついでにママに送る用にサンプルも少し回収。

 

「んー、よし、君は今日からフォウ君だ」

 

「ドフォーウ!?(意訳:そのままー!?)」

 

何か言ってるけど気にしない。さて、本日二食目のサンドイッチをいただくとしよう。あ、具材が朝のと違う。




古龍(エンシェント・ドラゴン)
M.O.M.分類XXXXX
人の立ち入ることのない秘境(霊峰やら深海やら)に住む。また、龍の伝承が残る地にも現れるそう。
一体一体が違う姿を持ち、それぞれが唯一種。そのため、あらゆる生態系に当てはまらない生物たちを総称して古龍種と呼んでいる。ドラゴンの姿が多いが、中にはドラゴンとは全く違う姿の龍もいる。
伝承などに出る竜種は大体古龍であり、『八岐大蛇』、邪竜『ファヴニール』、悪竜『タラスク』、卑王『ヴォーディガーン』などが例。また、大体の古龍が二つ名的なものを持っている。
下位生物からの害意ある魔法が効かない。ただし、悪意なき魔法、物などによる間接的な魔法干渉、単純な物理攻撃などは効く。だからタラスクはステゴロで倒された。古龍は『英雄』が倒す。逆に言えば、古龍は『英雄』にしか倒されない。
古龍種のテーマは絶対強者。そしてラスボス補正。ひれ伏せ。悲観せよ。彼らは災害、人知を、生物と言う括りを超越する者なり。
また、知る者はほとんど居ないが、ホグワーツに一頭だけ生きている古龍が存在する。
恐らくはモンハンの古龍種が原典。なので、この作品の古龍種には時々モンハン古龍が出現するかも。
イビルジョースターさんのアイデアです。ありがとうございました。

そしてフォウ君がリアスに合流しちゃいました。


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日曜日の冒険-夕方-

ご飯を食べ終わり、再びバックビークにライドオン。

空へと飛び立ったけど、あとは普通の島ばかりのようだ。水中には何かいるかもしれないけど、さすがにバックビークに水の中へ進んでもらうのは無茶だろう。

ただ、このあたりに何か居そうな気がするんだよね。とっても珍しい生物とかが。あたしの魔法生物センサー(仮)がそう言ってる……!

そんなわけで付近の島々を散策してみたけど、怪しいものは何も見当たらない。強いて言うなら、アメジストみたいな眼の蛇が居たことか。あたしの方をジーッと見つめてたけど、一体何だったんだろう。

 

「んー、もう一周してみるかな」

 

やはり、何も見つからない。ただ、一つだけ変わっていた場所があった。アメジストの眼の蛇が居た場所だ。

 

「これは……ルーン文字?何にせよ読めない……」

 

蛇の居た地面に謎の文字列が残って居た。一応手帳に書き写しておいたし、帰ったら解読してみよう。

 

【見つけてみよ、我らの愛子よ】

 

「……え?」

 

立ち去ろうとしたその時、澄んだ声が聞こえた。振り返ってみても、周りを見渡しても何も見当たらない。今のは、一体……。

 

 

 

結局、夕方の収穫は謎の文字列だけだった。バックビークを群れに帰して、城へ向かう。……まだ夕食まで時間があるし、図書館にでも向かいますかね。

マダム・ピンスに、ルーン文字を解読出来る本を教えてもらう。『古代ルーン語の優しい学び方』と言う本が一番適しているそうだ。

何冊もの本を抱えた紺色の髪の少女とすれ違いつつ、本を探す。言語関連の書籍はここだから……見つけた。

適当な机に座り、手帳の文字を解読して行く。長い文章ではなかったから、解読は楽だった。

『全てがあり、全てを与える、存在しない部屋に龍は眠る』

……さっぱりわからない。でも、全てを与える部屋と言うのはわかるかもしれない。城を探索してたネズミの一匹が、ご飯いっぱいの部屋に迷い込んだと言っていた。出た時に、その部屋のドアは何処かへ消えたとも。ゴーストなら知ってるかもしれないし、ずっと昔からいるシャルロッテも知ってるかも。今度暇ができたら聞いてみよう。

……と、そろそろ夕食か。近くの机で一心不乱に本を読み漁っていた月のような金色の目のレイブンクロー生に夕食の時間だよと声をかけて、あたしは大広間へと向かった。

 

 

 

 

「ああ、ご飯食べ損ねる!ケリー!何で教えてくれなかったの!あ、マダム・ピンス、この五冊をお借りします」

 

【あの少女が教えてくれただろう。我らの英知を持ってしても、君の本好きは治せないようだな】

 

「そうに決まってるでしょう?わたくしは魔法図書館建設のためにホグワーツで勉強してるのですから!」

 

【……我らが愛子を見習ってほしいものだが……あれは生き物大好きだったか。似た者同士だな】




パロキャラ紹介
紺色の髪の少女/月のような金色の目のレイブンクロー生
本好き少女ローゼマイン。フルネームはローゼマイン・エーレンフェスト。レイブンクローの二年生。夢は魔法図書館の建設。
出展:本好きの下剋上

ケリウス
M.O.M.分類XXXX
魔法界ならどこにでも現れる可能性のある、アメジストのような眼の霊体の蛇。彼らが認めた者か、霊的な相性が良い者しか見えない。魔法使いが亡くなる時に現れる。死にかけている魔法使いには見えるもよう。
魔法に関する事柄を蒐集し、彼らしか行けない『図書館』に記録している。曰く、魔法使いの歴史全てが正しく記録されているとも。正しく縁を結べたなら『図書館』の英知を借りることができるが、敵対した場合は全ての英知を持って排除される。
見える者は少なく、滅多に人前に現れないために「人の知識を集める『英知の蛇』がいるらしい」と噂されているが、信じている者は少ない。また、文献に残ることも殆どなく、リアスは存在を知らなかった。ローゼマインには一匹が懐いているようす。
古い竹馬さんのアイデアです。ありがとうございました!


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到着直前

数週間後のムーディ先生の授業は大変だった。なんと、一人一人に〈服従の呪文〉をかけて抗えるかどうか試すと言ってきたのだ。

ディーンは国歌を歌いながら片足ケンケンで教室を三週したし、ラベンダーはリスの真似をした。ネビルはもう〈服従の呪文〉かけっぱなしの方がいいんじゃないかな。自我さえあれば。

ハリーは一回で抵抗に成功しかけた。そのまま四連続で受けさせられてたから、最後は完全に抗えてたよ。

あたしは……最後の最後でようやく抗うことに成功した。つまり、魔法生物たちの魅力について語りまくって、あと一匹ってところで我に返った。恥ずかしかったよ。呪文をかけた本人ですら引いてたし。

宿題の量は目に見えて増えていった。O・W・L(オウル)試験が迫っているからだそうだ。そろそろパンクしそうなほどだ。

唯一嬉しかったのは、魔法生物飼育学だ。

スクリュートはどんどん成長していって、ハグリッドが嬉しそうに、

 

「一晩おきに小屋に来させて、観察日記でもつけてみるか」

 

と言ったのだ。全員の目があたしの方を向いたよ。ノートブックをこの授業に持って来てるのってあたしだけだしね。うん。

 

「ハグリッド、あたしに任せて?」

 

「無理だけはせんようにな」

 

許可をもぎ取ることに成功した。やったね。

うきうき気分で玄関ホールに向かうと、人だかりが出来ていた。何か掲示がしてあるようだ。近くのネズミに内容を教えてもらう。ハロウィン前日の金曜日──つまり、約一週間後──の午後六時にボーバトンとダームストラングが到着するから、授業を三十分早く終了するとのこと。金曜日の最後の授業は魔法薬学だ。スネイプ先生は誰か一人に毒を飲ませて、研究課題の解毒剤がちゃんと効くかどうか試すと言ってたし、到着がこの日でよかった。最悪、誰かをマラクローに噛ませて回避しようと思ってたし。

あ、ドレスが届きました。青地──いや、蒼かな?──に白の質素なエプロンドレス。でも、なんでかとても綺麗なんだよね。いちど着てみて、ハーマイオニーに確認してもらったんだけど、

 

「とっても綺麗!ああもう、なんであなたはアリスって名前じゃないのかしら。アリスだったらピッタリなのに!」

 

との評価。アリスって、『Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)』に出てくるアリスかな?チェシャ猫……未だ見たことないけど居そうだなぁ……。

 

 

 

十月三十日の朝、昨晩のうちに飾り付けられた広間で朝食をとる。今日、もしくは明日の夜にはルード・バグマンさんやらクラウチさんやらボーバトンやダームストラングの校長やらとの話し合いがある。とてもとても緊張する。まぁ、普段通りに行けば平気だろうけどね。




リアスのドレスは、SAO九巻『アリシゼーション・ビギニング』のアリス・ツーベルクの服装をイメージしていただければ。しかしまぁ、アリスって名前の娘はエプロンドレスが似合う娘が多いですよね。アリス・ツーベルクやらアリス・マーガトロイドやら不思議の国に迷い込んだアリスやら。主人公はリアスですが。……リアスって、アリスのアナグラムになってる!?


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ボーバトンの到着

みんなが浮き足立ちながら授業を受け、ローブを着て校庭に並ぶ。マクゴナガル先生は一人一人の服装を厳しくチェックして回った。あたしの肩に乗るフォウ君と足元のキノを見て悩んでいたけど、「まあいいでしょう」と言ってくれた。

 

「もうすぐ六時だ」

 

ロンが時計を眺めながら言う。

ダームストラングは知らないけど、ボーバトンって確かフランスの方の学校だよね。前にあっちの方で、扱いにくい天馬『アブラクサン』の多数調教に成功したって話があったし、ボーバトンは天馬で来るのかもしれない。

 

「わしの目に狂いがなければ、ボーバトンの代表団が近づいて来ますぞ!」

 

突然、校長先生が叫ぶ。みんながバラバラな方向を向く中、あたしは空に大きな馬の影いくつかを見つけた。どんどん近づいてくる。

衝撃音とともに着地した十二頭の金銀のパロミノの天馬たちは、パステルブルーの巨大な馬車を引いていた。ついでに、着地と同時にネビルが吹き飛んでスリザリンの五年生の足にぶつかった。

金の杖が交差した紋章が描かれているドアが開き、淡い水色のローブの少年が飛び降りる。ゴソゴソ何かをいじっていたかと思うと、金色の踏み台を馬車の底から取り出し、恭しく飛び退いた。

ほとんど同時に、子供のそりほどもある黒いハイヒールと、それを履いている、ハグリッドほどもある女性が姿を現した。

 

「これはこれは、マダム・マクシーム。ようこそ、ホグワーツへ」

 

ダンブルドア校長が女性──マダム・マクシームに挨拶する。

 

「ダンブリー-ドール。おかわりーありませーんか?」

 

マダム・マクシームの声は深いアルトで、フランス訛りが入っているのか少し聞き取り辛い。

 

「おかげさまで、上々じゃ」

 

「それはよーかった。わたーしのせいとです」

 

マダムの後ろには十数人の、淡い水色の服を着た学生が立っていた。みんな震えている。寒いのかな?

 

「カルカロフはまだきーませんか?あたたまりたーいですし、ウーマもおねがいしたーいのですが……」

 

「こちらの魔法生物飼育学の先生と、彼の親友であり理解者でもある少女が喜んでお世話することじゃろう。リアス、お願いできるかのう?」

 

「もちろんです!」

 

校長先生に指名されたし、喜び勇んでアブラクサンの元へ向かう。

 

「おーう……こーんなちいさな子にウーマを世話することでーきません。わーたしのウーマたちの世話は─あー─ちからいりまーす」

 

「この子は動物たちに好かれる子でしてのう。ほれ、彼女の足元に控えるのはあのシュヴォルフじゃ。それに、なんとバジリスクやヌンドゥまで飼い慣らした実績がある。それに、ハグリッドには力もありますから、やり遂げることをわしが請け合いますぞ」

 

「それならあんーしんです。ウーマはシングルモルト・ウィスキーしかのまなーいですから、きをつけてくーださい」

 

「わかりました。【さぁ、こっちにおいで。森の近くなら安心する?】」

 

あたしは馬たちを引き連れ、ハグリッドの小屋の方へと向かった。……あ、どこに繋げばいいんだろう。とりあえず、馬たちにはおとなしくしているように伝えて、あたしはみんなの方に戻った。ハグリッド?スクリュートの仕分けをしてたよ。




マクシームやボーバトン生の口調がとても難しい……

活動報告にアンケートを設置しました。今後、リアスがガチートになるか否かのアンケートですので、ご協力お願いします。期間は不死鳥の騎士団編第一話が投稿されるまでです。


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ダームストラングの到着と開始前の宴

アンケート回答、現在十五件。そのうち十四件がガチート希望……え?


みんなのところに戻ってから数分後、湖の方から異様な音が聞こえた。みんなが黒い湖を見下ろす中、水面は乱れて、船がゆっくりと浮上してきた。まるで幽霊船だ。さまよえるオランダ人(フライング・ダッチマン)号みたいな。

船から降りてきた人たちはみんな、モコモコとした分厚い毛皮のマントを着ていた。先頭には、銀の毛皮をまとった山羊のような人がいた。あの人がカルカロフ校長かな?そのすぐ後ろには、八月に見たことのある人──ビクトール・クラムがいた。なるほど、ダームストラングはブルガリアにあるのか。

カルカロフ校長がダンブルドア校長に挨拶して、城の中に入っていく。あたしたちは彼らに続いて、城の中に戻っていった。それとロン、興奮しすぎ。

 

 

 

ボーバトン生たちはレイブンクローの席へ、ダームストラングはスリザリンの席へ座った。ドラコがドヤ顔しながらハリーとロンを見てる。レイブンクローでは、二年生の女の子が矢継ぎ早に、ボーバトン生へ質問していた。どんな気候だとか、どんな魔法があるかだとか、どんな物語があるか、どんな図書館があるか……なんでだろう、あの子とは仲良くなれそうな気がする。

ダンブルドア校長の両隣にはマダム・マクシームとカルカロフ校長が座り、その隣の席には誰も座っていない。

 

「こんばんは。紳士、淑女、そしてゴーストのみなさん。そしてまた──今夜は特に──客人のみなさん。ホグワーツへのおいでを、心から歓迎いたしますぞ。本校での滞在が、快適で楽しいものになることを、わしは希望し、また確信しておる。三校対抗試合は、この宴が終わると正式に開始されるのじゃが、その時に、審査員の人たちと、今回の試合に協力してくださる人物をご紹介しよう。ホグワーツ生たちは知っているじゃろうが、わしはとある人物に協力を依頼した。その交渉は成功したのじゃ。わかりますな?試合がよりスリリングになることを、お約束しましょう。もっとも、安全第一なのじゃが。

では、大いに飲み、食い、かつくつろいでくだされ!」

 

皿が満たされる。何個か、外国の料理があった。ブイヤベースとか。

ハグリッドが入ってきたけど、指に包帯を巻いていた。スクリュートはどんどん好戦的になってきている。うまく飼いならすことができれば、心強いと思うんだけど……。

 

「あのでーすね、ブイヤベース食べなーいのでーすか?」

 

聞きなれない声がする。見ると、ボーバトンの女の子だった。……ヴィーラに似てる?

 

「はい、どうぞ。……ところで、ヴィーラの血でも入ってるんですか?」

 

横を向くと、ロンがジーッと女の子を見つめていた。

 

「なぜわーかったのでーすか?わたーしのおばーさまはヴィーラでーす。あなーたは確か、ウーマを運んでくれた人でーすね?」

 

「リアス・クリミアと申しますわ。数ヶ月間、よろしくお願いします」

 

「聞いたこーとありまーす。確か、魔法生物飼育学がとーくいとか?」

 

「ええ。昔から動物に好かれる体質でして」

 

「そうでーすか。わたーしはフラー・デラクールでーす。よろしくお願いしまーす」

 

それから二言、三言話して、彼女はレイブンクローのテーブルに戻っていった。ロンはいつまで見惚れてるのかな?

いつの間にか、教職員テーブルの空いていた席にはバグマンさんとクラウチさんが座っていた。

あ、このデザート美味しい。



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協力者の紹介

もうアンケート撤廃してガチート路線でもいいかなって思い始めてきた


金の皿の汚れが全て消え、ダンブルドア校長が再び立ち上がる。大広間の中は緊張で満たされていた。

 

「時は来た」

 

ダンブルドア校長が話し始める。先生の声はいつもよりも重く響いた。

 

「三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。『箱』を持って来させる前に、二言、三言説明させてもらおうかの。

今年はどんな手順で進めるのかを明らかにしておく前に、こちらのお二人を知らない者のためにご紹介しよう。国際魔法協力部部長、バーテミウス・クラウチ氏。そして、魔法ゲーム・スポーツ部部長、ルード・バグマン氏じゃ」

 

クラウチさんの時は控えめな拍手がパラパラと起こり、バグマンさんの時はクラウチさんよりもずっと大きい拍手が巻き起こっていた。

 

「そしてもう一人、今回の試合で協力してくださる人をご紹介するとしよう。では、前に出て来てくだされ」

 

ダンブルドア校長があたしに向かってウインクする。あたしは微笑んで立ち上がり、キノを連れて──フォウ君は肩に乗せて──教職員テーブルの前へ向かった。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮四年生、リアス・クリミアじゃ。今回のイベントが実現へ向かい始めた時に、是非とも彼女に協力してもらいたいと思ってのう。では、挨拶をお願いできるかね?」

 

「わかりました」

 

ダンブルドア校長が立っていた場所に立ち、四つのテーブルを見渡す。ヒソヒソ声がたくさん聞こえるけど興味はない。んー、でも、一部の人が嘲笑してるみたいだし、すこーし脅しておこう。

 

「ただいまご紹介に預かりました、リアス・クリミアです。今大会において魔法生物の担当として協力することになりました。まず一つ言っておきますが、もしもうちの子たちを殺したりしたら──あたしとペットたちの総力を持って潰させていただくのでご注意を。多分、今この場にいるダームストラング生とボーバトン生ぐらいなら半日もかからないでしょうし」

 

大広間の空気が凍りつく。一部失神している生徒もいた。ネビルだけど。

 

「競技の時はダンブルドア校長先生に呪文をかけてもらうので、生き物たちに攻撃しても気絶するだけですみますけどね。ただ、競技を少しでも楽にしようとか思って攻撃してきたら──わかってますよね?」

 

温度がどんどん下がっていく。アハハッ、これであたしたちを闇討ちしようなんて人はいなくなるよね?

 

「では、これにて挨拶を終わりにさせていただきます。選手に選ばれた方のご健闘をお祈りしますが、例え誰が選ばれようとも、うちの子たちに手加減させるつもりはありませんので。死にはしないようにさせますが」

 

どうせだったらみんな呼び出してさらにおど──威圧したかったけど、ダンブルドア校長が「これ以上はよしてくれ」と無言で訴えてきたからやめた。まあ、そこまでやってたら部屋の体感温度はゼロK(ケルビン)どころか-Kまで行きそうだったしね。

いつの間にか教職員テーブルの端っこ──ハグリッドの隣に椅子が用意されていたからそこに座る。

 

「──では、代表選手の公平なる選者をご紹介するとしよう。フィルチさん、箱をここへ」

 

フィルチさんが宝石が散りばめられた大きな、古い木箱を持ってきた。あれの中に、選者とやらが入っているのだろう。




久々のブラックリアス。容赦なんて絶対にしないでしょうね。


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炎のゴブレット

うちの作品読んでくださってる人々……訓練され過ぎてやしませんかねぇ……


「代表選手たちが今年取り組むべき課題の内容は、大まかな形では決まっておる。完全に決まるのは今日から明日にかけてじゃのう。課題は三つ。一年間にわたって、間を置いて行われ、代表選手はあらゆる角度から試される──魔法の卓越性──果敢な勇気──論理・推理力──知識──そして、言うまでもなく、危険に対処する能力などじゃ。知力・体力・時の運じゃの。

みなも知っての通り、試合を競うのは三人の代表選手じゃ。参加三校から各一人ずつ。選手は課題の一つ一つをどのように巧みにこなすかで採点され、三つの課題の総合点が最も高い者が、優勝杯を獲得する。代表選手を選ぶのは、公正なる選者──『炎のゴブレット』じゃ」

 

ダンブルドア校長が、杖で木箱を三度軽く叩く。ゆっくりと開いていく木箱の中には、荒削りの木のゴブレットが入っていた。取り出され、台に置かれた瞬間に、ゴブレットには青々とした火が灯った。

 

「代表選手に名乗りを上げたい者は、羊皮紙に名前と所属校名をはっきりと書き、このゴブレットの中に入れねばならぬ。立候補したい者は、これから二十四時間の間に、その名を提出するよう。明日、ハロウィンの夜に、ゴブレットは、各校を代表するに最もふさわしいと判断した三人の名前を、返してよこすであろう。このゴブレットは、今夜玄関ホールに置かれる。見たい者は見ていてもよいぞ。就寝時間は守ってもらわねばならぬが。

しかしながら、年齢に満たない生徒が誘惑にかられることのないよう、ゴブレットの周囲には、わしが〈年齢線〉を引くことにしておる。十七歳に満たない者は何人もその線を越えることはできぬ。

最後に、この試合で競おうとする者にはっきりと言うておこう。軽々しく名乗りを上げぬことじゃ。『炎のゴブレット』に名前を入れると言うことは、魔法契約によって拘束されることじゃ。ゴブレットが代表選手と選んだ者は、その者が何を思おうとも、最後まで試合を戦い抜く義務がある。競技する用意が無き者、興味本位で参加したい者、怖いもの見たさで参加したい者はゴブレットに名前を入れるでない。公正なる選者であるゴブレットは、入れた者の気持ちは考えずに決めるのじゃから。

さて、もう寝る時間じゃのう。リアス・クリミア嬢は残るように。話し合いをせねばならんからの。他の者は寝なさい。みな、おやすみ」

 

 

 

生徒たちが出て行き、静かになった大広間には、四つのテーブルではなく、去年も使用された円卓が置かれていた。ご丁寧に会議参加者の名前も書かれている。あたしは、自分の名前が書かれた席に座って、話し合いの始まりを待った。

ダンブルドア先生、クラウチさん、バグマンさんが入ってきて席につく。

次に来たのはボーバトンのマダム・マクシーム。一人だけ大きな椅子だ。

次に来たのは意外な人だった。ムーディ先生も会議に参加するようだ。それと、マクゴナガル先生も。

最後に来たのはダームストラングのカルカロフ校長。一つだけ残っていた席にどっしりと座った。

ダンブルドア校長が、ゆっくりと円卓を囲むあたしたちを見渡す。そして、満足したように頷き微笑み、

 

「それでは、会議を始めさせていただきましょうぞ」

 

と言った。



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幕間──エリザベート・クリミアによる魔法講義

今回は幕間の物語。ちなみに本編にはほとんど関係なく、ただ、私の考察をエリザベートに言ってもらってるだけです。どうでも良い人は読まなくても結構ですよ。

もうアンケート撤廃して、ガチート路線確定でいいですかねぇ……


「みなさん、どうもこんにちは。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国──通称、イギリスの魔法省、神秘部に勤めています、エリザベート・クリミアよ。

 

「さて、今回は私が勝手に、魔法に関する独自考察などを語らせてもらうわ。一人語りだから、誰かの合いの手とかを求めないように。

 

「ああ、メタい話になるけど、読み辛かったらごめんなさい。諦めてちょうだい。

 

「ではでは、行ってみよーう!」

 

 

 

・魔法の杖

 

「私たち魔法使い、もしくは魔術師と呼ばれる連中はほぼ全員が杖を使ってるわ。魔法の杖ね。

 

「有名な杖職人にはオリバンダー老やグレゴロビッチがいるわね。

 

「死の秘宝の一つ、『ニワトコの杖』は、死によって作られたと言われてるけど、実際にはアンクチオ・ペペレル自身が作ったんじゃないかって考察もあるわね。

 

「杖の歴史は古くて、少なくとも神代の魔術師──たとえばメディアとか──も杖を使っていた。

 

「けれど、その時の杖は自身の身長ほどもある長い杖。今のような短い杖になったのはごく最近のことのはずよ。

 

「メディア以前──まあ、ソロモン王とかの頃だけれど、その時には杖を使わない魔法形態もあったそうよ。そのころはまだ神秘が濃かったのでしょうね。

 

「杖はどれ一つとして、同じ物が存在しないの。組み合わせなんて無限大にのぼるし、芯材の提供元の個体差もあることだし。

 

「杖の性格とかは、様々な要因で決まってるはずなの。たとえば、提供元の性格、提供個体の種類、杖の長さ、そして何より、持ち手の性格かしら。

 

「変身術が得意な杖は悪戯好きなジェームズのところに行ったし、悪魔らしい杖は悪魔を従えるヨハンナのところへ行ったし。

 

「まあこのへんは放っておいて、次の考察へ行きますか」

 

 

 

・人間以外の魔法

 

「屋敷しもべ妖精なんかは人間の魔法とは違って、杖を使わない魔法を使う。

 

「なぜ杖が必要ないのか。それは、妖精たちの──魔法生物たちの魔力が人間のそれとは違う性質だから。

 

「じゃないと、ボガートみたいなのや吸魂鬼、古龍(エンシェント・ドラゴン)みたいな種類がいるはずがなくなる。

 

「ホグワーツで屋敷しもべ妖精が姿現しできるのは魔力の違いがあるから。ディリコールのも同じ理屈ね。

 

「マナ、と言うよりかオドの違いになるのかしら?それとも魔力放出器官の違いかしら?

 

「疑問は残るけれど、次に進みましょう。次が一番言いたかったことだしね」

 

 

 

・人間は杖なしで魔法が使えるか

 

「ほぼ全ての魔法使いが『否』と答えるでしょうね。杖なしの魔法態系は廃れてしまったもの。

 

「けれど、私はそうは考えない。人間でも、発想の転換で杖なしでの魔法ができるはず。

 

「杖の芯材に使われるのは魔法生物──つまり、魔力を持った生物の身体の一部。そして、杖作りに適してる、魔力を通しやすい、ボウトラックルが住んでるだけの、()()()()

 

「魔法使いはいわば魔法生物の一種、魔力を持ってる。木材は神経、筋肉、皮膚で代用。芯材には己の骨を。

 

「指を杖と認識することができれば、杖なしで魔法が使えるはずなの。怖いから安全が確認できるまで実験はしないけれど。

 

「もし可能なら、これは一大革命になるわ。魔法界を根底から揺るがすことになる。

 

「──面白いと思わない?

 

「さて、以上で講義を終わるけれど、何か質問はあるかしら?

 

「ないなら、別に良いのだけれどね。

 

「それじゃあ、これからも私の娘の──リアスの物語を楽しんでね」



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話し合い

「まず一つ聞かさせてもらうがね、ダンブルドア。こんなにも小さな子が我々と行動を共にしても平気なのかね?危険性は?そもそも、ホグワーツの代表選手に情報を流さないと言う保証がない」

 

一番最初に発言したのは、カルカロフ校長だった。あたしがこの話いるのがふさわしくないと言っている。

 

「カルカロフ、この子はわたーしのウーマ……アブラクサンを簡単に手懐けまーした。それに、あしもとで寝てるのはあのシュヴォルフでーすよ?この子の魔法生物に対すーる能力は、誰にーも劣りまーせん」

 

カルカロフ校長に対して反論したのはマダム・マクシーム。気性が荒いアブラクサンを扱ったことで、あたしを信用してくれたようだ。

 

「ですが、なにーか隠してるでーしょう?見せてくださーいますか?」

 

残念、追求されないわけじゃないのか。

あたしは立ち上がり、端っこの方で杖を取り出して魔法を使った。

 

「〈おいで、コアトル(インヴォーカレ・コアトル)〉!」

 

蛇の胴体を持つ、有翼の魔法生物、コアトル。その正体はオカミーと言う魔法生物だ。M.O.M.分類XXXXなので、だいぶ危険な生物。

 

「ほう、オカミーを手懐けるか。噂によると、バジリスクやヌンドゥまで飼育するとのことだが?」

 

「呼びましょうか、ムーディ先生?」

 

「……大惨事になるからやめろ。たとえお前にその気がなかろうと死ぬことになるかもしれん」

 

唖然とするみなさま(ムーディ先生以外のホグワーツ教師陣を除く)を放って、コアトルに広間を一周させる。

 

「【おかえり。今度はもっと飛ばしてあげるからね】。〈ありがとう(レパトリエーション)〉」

 

コアトルを家に帰してから、もう一度席につく。

 

「さて、ミス・クリミアの実力はわかっていただけたじゃろう。あの者を除いて、わしが最も敵に回したくない一人は彼女じゃ。ゆめゆめ忘れることのないようにお願いしたい。彼女の家族──母親であるエリザベート、そして魔法生物たち──を理不尽に傷つけることは、ミス・クリミアの怒りを買うことと同義じゃ。わしは、怒りを買った者の結末をよう知っておる。

では、第一競技の話し合いじゃ。第一の課題は卵取りじゃったな?」

 

「ああ、その通りだ!」

 

校長先生の言葉に、バグマンさんが頷く。たしか、ドラゴンだったよね?ウェールズ・グリーン種にスウェーデン・ショート-スナウト、中国火の玉(チャイニーズ・ファイアボール)種に保険としてのハンガリー・ホーンテール。

 

「幸いなことに、四頭全てのドラゴンが、宝石竜ではないと確定した。エメラルドの竜には誰も当たらない」

 

クラウチさんが補足する。よかった、怪我人が出る確率がぐんと減った。

 

「ドラゴンが守る金の卵を取りに行く競技だったか。安全対策は万全なんでしょうな?」

 

「大丈夫じゃよ、カルカロフ校長。優秀なドラゴンキーパーたちに、ミス・クリミアも加わってくれるからのう。危険な時は──えー、なんと言ったかのう──そうじゃ、レフェリーストップをかければ良いじゃろう?」

 

「そんーなに上手くいくのですーか?」

 

「大丈夫ですよ、マダム・マクシーム。ミス・クリミアにはバジリスクやヌンドゥを飼いならした実績がありますし、ルーマニアからの連絡で、幼少の頃に宝石竜──それも、一番プライドの高いエメラルドの竜の背中に乗って空を飛んだとの話も聞いています」

 

「第一の課題においては、リアスは安全対策に回ってもらおうと思っておる。第二課題、宝探しについての話をせんかのう?」

 

第二課題。この課題から、あたしの本当の仕事が始まる。

 

「第二の課題は、水中で『大切なもの』を一時間以内に取り返すことだ。まず最初に、湖に住む水中人(マーピープル)たちに協力を取り付けなければならないが……ミス・クリミア。君に、障害物含め、全権を委任したいと思っているのだが」

 

……はい?今バグマンさん何て言った?

 

「あの、もう一度おっしゃっていただけますか?」

 

「君に第二課題の全てを任せたい。もちろん、ミネルバと私が補佐につこう。さて、これで第二課題についての議論は終了でいいかな?最も重要な第三の課題だ!」

 

ろくな話し合いをせずに第二課題の全権を任されちゃったんだけど。先生たちも納得してるみたいだし。こんな小娘にどうしろと?

 

「第三の課題は迷路。第一、第二課題の合計得点が優秀な者から迷路の中に入っていく。魔法の罠はムーディに、魔法植物の罠はスプラウト先生に、魔法生物の罠はハグリッドとミス・リアスに任せたい。良い人選だとは思わんかね、ダンブルドア?」

 

「そうじゃな、ルード。さて、リアス。第三の課題に関して一つ、言わせてもらいたいことがあるのじゃ。迷路設置前にも言わせてもらうがのう」

 

「は、はい。なんでしょう?」

 

「自重はせんでよい。君が投入できる最大量の魔法生物たちをお願いしたいのじゃ──君の家族たちを、思いっきり、暴れさせてあげたいとは思わんかね?」

 

あたしは、頷くしかなかった──ダンブルドア校長の提案が魅力的すぎて。合法的にみんなの力をほぼ最大限引き出してあげれるなら、あたしに拒否する理由はない!

 

「優勝杯の設置はムーディ先生に任せよう。では、話し合いを終わりにしようかの。みな、明日以降に備えて存分に寝てくだされ」

 

席を立ち、広間からあたしは出ていく。その途中で、こんな喋り声が聞こえた気がした。

 

「……全然喋ってない気がするんだがな、マダム・マクシーム」

 

「わたーしもでーす、カルカロフ」

 

……気にしないようにしよう。




なんとなく思いついた日本魔法界について
杖よりも呪符や魔法具が発展している。神職の使う祓い串は杖の名残り。杖を使う魔法使いたちもいる。
昔に、魔法使いと陰陽師などの祓屋たちに別れた。時々対立することがあるらしい。妖怪は魔法生物の一部と認識されている。時々、魔法生物ではない妖怪も見つかる(ガシャドクロなど)。


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水中人との交渉

うちの読者は自重を知らないようだ。


翌日土曜日、誰もいない時を見計らって、あたしは湖のほとりに向かった。途中でフレッドとジョージが年齢線に吹き飛ばされてるのを見たけど、あとで大笑いしてやろう。

さて、湖には水中人、水魔、大イカ、ヌルフパスが少なくとも生息している。もしかしたら知らない生物がいるかもしれないけど、今は考えなくてもいいだろう。

あたしは近くを泳いでいた水中人に頼んで、首領を呼んできてもらうことにした。後ろには安全のためにマクゴナガル先生が控えている。

少しして、一際荒々しい顔つきの水中人が姿を現した。

 

【何の用だ、魔法使い】

 

悲鳴のような声が聞こえる。マクゴナガル先生は耳を押さえているけど、あたしは別に何ともない。水中人の声は、陸上ではマーミッシュ語を使える人にしか聞こえないけど、あたしには動物言語がある。

 

「【こんにちは。あたしはリアス。あなたの名前を教えてもらえる?】」

 

【……マーカスだ】

 

よくよく見ると、体つきが少し女性らしい。女長のようだ。

 

「【マーカス、今年のホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)が行われることは知ってる?】」

 

【もちろんだ。ダンブルドアの爺さんが我々にも知らせに来た。……ふむ。そう言えば、もしかしたら我らの力を借りることがあるかもしれぬと言っていたな】

 

「【第二課題の場所がこの湖なの。詳しい話はダンブルドア校長に聞いてほしいのだけれど、この湖にあたしのペットたちの一部を、課題の間だけ放流したい。受け入れてくれるかしら?】」

 

【ああ、いいだろう。あの爺さんには借りがある。それに、水魔(グリンデロー)や若い衆からお前の話はよく聞いている。こと、我々動物に対しては信頼の置ける魔法使いだとな】

 

「【それは嬉しいわね。ええと、課題の内容を教えた方がいいかしら?】」

 

【教えてくれ。我らにも準備がある】

 

「【代表選手一人につき一人、人質をとって、水中に沈めるんだって。人質たちの管理とか、見届け人とかを担当してもらいたいの】」

 

【その程度ならお安い御用だ。で?どんな生物を放流する気だい?】

 

「【シュレイクとか、シー・サーペントとか、オルザードとか、ケルピーとか】」

 

【了承した。詳しい話はまた後日。今度はあの爺さんも連れて来な。ああ、そうだあと一つだけ。ミネルバ、あんた随分と威厳のある姿になったじゃないか】

 

「……え」

 

【私は行かせてもらう。これでも仕事が溜まってるんでね。幽霊船の連中には、湖を荒らさないように言っといてくれよ!】

 

マーカスはそう言うと、勢いよく水中に戻っていった。幽霊船の連中と言うのは、ダームストラングのことだろう。あの船は昨日、湖の中を通って来たんだっけ。

それと、ミネルバってたしか、マクゴナガル先生のことだけど……

 

「マクゴナガル先生、あの人──マーカスと知り合いなんですか?」

 

「……私がホグワーツの一年生だった頃、この湖で溺れてしまったことがあるのです。箒の訓練で、転落して。その時助けてくれたのが彼女──マーカスでした。その後、お礼を持って湖まで来たのですが、彼女は現れてくれませんでした。彼女が長になっていたとは思いもしませんでしたし、私のことを覚えているだなんて……この話はみなさんには内緒にするように。いいですね?」

 

「はい、先生」

 

背を向けて歩き出したマクゴナガル先生について行き、城に戻る。マクゴナガル先生の小さい頃か……案外、マーカスとかマートルが知ってたりするのかな?今度聞いてみよう。

 

「もし、私の過去を誰かに聞いたことが発覚したら、残念ですが、私はあなたに罰則を与えなくてはなりませんね」

 

「横暴です」

 

「私のプライドを守るためです」




マクゴナガル先生の過去は想像です。彼女が湖に落ちた話は原作などにはありません。

オルザードの説明を忘れていたので追記
オルザード
M.O.M.分類XXXX
両手で持てるぐらいの大きさの、シャチの頭とトカゲの体を持つ水棲生物。太平洋のどこかで自由気ままに生きている。
賢く凶暴。水中戦では最強クラス。群れで狩をする。稀に二、三メートルほどの個体がいて、その個体が群れのヌシになる。
覇王龍さんのアイデアです。ありがとうございました!


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代表選手の選考

えー、誠に勝手ながら、ガチートアンケートの期限を第二の課題開始までに変更させていただきます。不死鳥編一話までだと長すぎるので。

そしてこの作品には関係ないFGOの話になりますが──新宿のアヴェンジャーゲットしたぞぉぉぉぉぉっ!


夜、ろうそくの灯りに照らされ、コウモリが飛び交う大広間。あたしはなぜかグリフィンドールのテーブルではなく教職員テーブルの方に座っていた。なぜだ。

 

「リアスには今年一年、主催者側として動いてもらわねばならんからのう。区別するためじゃよ」

 

「ダンブルドア先生、あたしを見るみんなの目が珍獣を見る目と同じ感じなんですけど……」

 

「ひとえに、君への愛の表れじゃろう。ほっほっほ」

 

相変わらず訳のわからない人だ。

ご飯を食べ終わり、金の皿が綺麗になる。そして、ダンブルドア校長が立ち上がった。

 

「さて、ゴブレットは、ほぼ決定したようじゃ。わしの見込みでは、あと一分ほどじゃのう。さて、代表選手の名前が呼ばれたら、その者たちは、大広間の一番前に来るがよい。そして、教職員テーブルに沿って進み、隣の部屋に入って待っておるように。そこで、最初の指示が与えられるじゃろう」

 

ダンブルドア先生が節くれだった杖を一振りし、ほぼ全てのろうそくを消す。校長先生の前に置かれたゴブレットの炎だけが輝き、幻想的な光景を見せてくれている。

突然、ゴブレットの青い炎が赤く変わった。火花が飛び散り、蛇の舌のようにダンブルドア校長の目の前まで炎が駆けてくる。その先からは、一枚の焦げた羊皮紙が落ちてきた。

 

「ダームストラングの代表選手は、ビクトール・クラム」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

ロンが声を張り上げる。

 

「ブラボー、ビクトール!」

 

カルカロフ校長の声が轟く。当のクラムは既に隣の部屋へ消えていた。

再び炎が赤く染まり、一枚の羊皮紙が吐き出される。

 

「ボーバトンの代表選手は、フラー・デラクール」

 

ヴィーラのクォーターの少女が立ち上がる。彼女は優雅に立ち上がると、静かに隣の部屋に入っていった。

三度目の赤い炎。最後はホグワーツの代表選手だ。羊皮紙に書かれていた名前は──

 

「ホグワーツの代表選手は、セドリック・ディゴリー」

 

呼ばれた瞬間、ロンが何かを叫んだ。でも、その声はハッフルパフの歓声にかき消される。ハッフルパフの喜びようが凄まじい。うん、ハッフルパフって目立たないみたいだしね。

 

「けっこう、けっこう!さて、これで三人の代表選手が決まった。選ばれなかったボーバトン生も、ダームストラング生も含め、みんな打ち揃って、あらん限りの力を振り絞り、代表選手たちを応援してくだされ。選手たちに声援を送ることが、みんなが本当の意味で貢献でき──」

 

ダンブルドア校長が喜びの言葉を切り、ゴブレットをじっと見つめる。ゴブレットの炎は羊皮紙を吐き出す時だけ赤くなっていた。つまり、三度赤くなったのなら、もう赤く染まることはない。

けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。吐き出された、あり得ないはずの四枚目の羊皮紙を、ダンブルドア先生がキャッチする。その紙を広げたダンブルドア先生は固まり、長い沈黙の後に、四人目の代表選手の名前を告げた。

 

「ハリー・ポッター」



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四人目の代表選手と新魔法

そろそろ吸魂鬼の方更新しなくちゃと思いながらこちらを更新し続ける日々である。なぜだ。


大広間にいる全員の目がハリーに向けられる。誰もなにも話さない。唯一、マクゴナガル先生がダンブルドア先生に何かを耳打ちしたぐらいだ。その、ダンブルドア先生が再び口を開いた。

 

「ハリー・ポッター!ハリー!ここへ来なさい!」

 

ハリーが立ち上がり、ゆっくりとこちらへ向かって来る。その顔は、困惑で占められていた。

 

「さあ……あの扉から。ハリー」

 

ダンブルドア校長がハリーに言う。ハリーが扉を出て行くと、広間は途端に騒がしくなった。

 

「皆の者、ハプニングはあったが、代表選手は選ばれた!ハリー・ポッターの名前が出てきた原因はわからん。ただ一つ、彼がこの試合に参加することになったことだけははっきりとしておる。ハリー自身は入れてはおらんじゃろう。では、寮へ帰りなさい。第一の課題の詳しい日程は、また後日に」

 

ダンブルドア校長の話が終わり、関係者は隣の部屋へ移動した。先に入っていたバグマンさんが既にハリーについて話していたらしく、他の三人の視線は鋭かった。

 

「ダンブリー-ドール、これは、どういうこーとですか?」

 

「私も是非、知りたいものですな、ダンブルドア。ホグワーツの代表選手が二人とは?開催校は二人の代表選手を出しても良いとの規則は伺っておりませんが?」

 

マダム・マクシームとカルカロフ校長が冷たい声で言う。

 

「誰の咎でもない。ポッターのせいだ、カルカロフ」

 

スネイプ先生が低い声で返す。

 

「ポッターなら年齢線を何かしらの形で突破していてもおかしくはあるまい。なぜなら、彼は入学してからの四年間、規則を何百、何千と破ってきているのだから」

 

「セブルス、これはおそらくじゃが、誰かの陰謀かもしれん」

 

スネイプ先生の言葉を、ダンブルドア校長が否定する。校長先生は四枚の羊皮紙をテーブルの上に広げた。

 

「見ると良い。セドリック・ディゴリー、ビクトール・クラム、フラー・デラクールの羊皮紙には、名前の他に所属校も書かれておる。じゃが、ハリーの羊皮紙にはそれがない。空白の、存在しない四校目としてゴブレットは処理したのじゃろう。残念なことに、ゴブレットの火は消えてしもうた。次の試合まで、火がつくことは決してないじゃろう」

 

「ポッターは狙われてるかもしれんぞ、ダンブルドア」

 

抗議しようとしたカルカロフ校長をひと睨みし、入り口付近に陣取ったムーディ先生が言葉を紡ぐ。

 

「この試合に出ると言うことは、危険が付きまとうと言うことだ。ポッターを殺して得をする者は?ゴブレットには並外れて強力な〈錯乱の呪文〉でもかけてあったのだろう。そうでもしないと、あのゴブレットの目を騙すことはできん。生徒たちの中に──例えば、スリザリンなどに──死喰い人でもいるか、彼らに協力者として死喰い人がついているか、もしくは──」

 

「我々の中に裏切り者がおると言いたいのかね、アラスター」

 

「そうだ。ゴブレットを騙眩かすほどの強力な呪文を使えるのは生徒にはおるまい。わしら、教師の中にしかな。その時点でリアス・クリミアは犯人ではないわけだ。そもそも、こいつはポッターを参加させるメリットがない」

 

「そうじゃのう……とりあえず、これは試合を始めるしかあるまいて。バーティ、最初の指示をお願いできますかな?」

 

マダム・マクシームとカルカロフ校長、スネイプ先生はまだ納得してないようだったが、渋々とダンブルドア先生の言葉に従った。

 

「最初の課題は、君たちの勇気と運、知恵を試すものだ」

 

「つまり、優勝するための資格のほぼ全てじゃのう」

 

「ダンブルドア、口を挟まないでいただきたい。どういった内容なのかは教えないことにする。ミス・クリミアも、できる限り代表選手に接触しないよう。未知のものに遭遇した時の勇気は、魔法使いにとって非常に重要な資質である。

最初の競技は、十一月二十四日、全生徒、並びに審査員の前で行われる。選手は競技の課題を完遂するにあたり、先生方、並びに生徒からの援助を頼むことも、受けることも禁止されている。生徒とともに呪文の練習を、競技よりも前にすることぐらいは平気だが。選手が持ち込んでいいのは杖のみ。第一の課題終了後、第二の課題の情報が与えられる。試合は過酷で、また時間のかかるものであるため、選手たちは期末試験を免除される。

……アルバス、これで全部かね?」

 

「けっこうじゃよ、バーティ。ほれ、休んで行くといい。目の下の隈が凄いことになっておるぞ?」

 

ダンブルドア先生はクラウチさんを休ませようとしてるみたいだけど、効果なし。クラウチさんはさっさと行ってしまった。

 

「やれやれ……代表選手たちはそれぞれの寝床へ帰りなさい。それとリアス、君にフリットウィック先生から話があるそうじゃ。少し残ってくれるかのう」

 

四人が出て行き、あたしはダンブルドア先生に連れられて、フリットウィック先生の元へ向かった。なぜかマクゴナガル先生も一緒だけど。

フリットウィック先生は部屋に居たけど、何やら羊皮紙の山に埋もれていた。一枚一枚に、びっしりと何かの魔法の理論が書かれている。

 

「来てくれましたか、ミス・クリミア!」

 

キーキー声で駆け寄ってくるフリットウィック先生を見て、マクゴナガル先生が目を見開いた。

 

「もしや……完成したのですか?」

 

「もちろん!貴女のおかげですとも!」

 

ん?マクゴナガル先生とフリットウィック先生は共同で魔法の開発をしていたのかな?

 

「いやあ、最近ミス・クリミア──貴女のお母様であるエリザが多くの魔法を作り上げるものですから、私も感化されてしまいまして。年甲斐もなく研究に没頭していたのですよ」

 

「フリットウィック先生が構築していた魔法理論の中に変身術の関わる部分があったのです。私もこの魔法は見てみたいので、研究に関わったのですよ」

 

フリットウィック先生が一枚の羊皮紙を差し出してくる。複雑すぎてわけがわからない。一番下に書いてある魔法名は──ゴーレム作製?

 

「では、実際に使ってみるとしましょう。場所は校庭でいいですかな?」

 

「いいとも。この魔法はロマンに溢れておる。理論は完璧なようじゃ」

 

校長先生の言葉を聞いて走り出すフリットウィック先生。優雅に、されど早足で追いかけるマクゴナガル先生にその後ろからゆっくりとついていくあたしとダンブルドア校長。

校庭につき、杖を抜くフリットウィック先生。マクゴナガル先生は珍しく目を輝かせ、ダンブルドア校長もワクワクした顔で見守っている。

 

「では、参りますぞ。〈土ゴーレム作製、鎧(クレアチオ・ソイルゴーレム・アーマー)〉!」

 

フリットウィック先生のキーキー声とともに校庭の土が蠢き始め、十秒ほどで、一体の土でできた鎧が片膝をついていた。

 

「どうですかな?エリザの使い魔作製魔法を元にして作り上げたのですが、いやはや、あの子は恐ろしい。あんな難解な理論をどのようにして構築しているのやら。この魔法を作るのに半年以上かけましたよ」

 

「理論上は、その場に存在する素材ならなんでも使えて、材料の量と魔力量さえ足りればあらゆる生物──それこそ、ドラゴンや古龍でさえ──作り出せるはずです。ただし、ゴーレムですのでもちろん弱点は存在しますが」

 

ゴーレムの胸元を指差す先生。そこには、『emeth(真理)』と刻まれている。

 

「これの『e』を消し『meth()』に書き換えることで、ゴーレムは崩れ去ります。これは、どの素材で作っても同じです」

 

フリットウィック先生が文字を消す。途端に、鎧は崩れて土塊に変わる。

この魔法で作り出されたゴーレムに自我は無く、製作者の命令に忠実に従うそうだ。また、定期的に魔力を補給しなければ動かなくなるらしい。ゴーレムが車で、魔力がガソリンってとこかな?

この魔法は明日、ママに教えるらしい。どんな顔をするのやら。




オリジナル魔法
○○ゴーレム作製、××(クレアチオ・○○ゴーレム・××)
ゴーレム作製魔法。○○には素材名が、××には雛形となる物体の名前が入る。その場にある素材しか使えない。また、単一素材でしか作れない。気体もダメ。固体・液体のみ。
理論上は魔法生物も作れる。魔力量次第で種族としての能力も使えるようになるかも。ブレスとか。
どこかに必ずemethの文字が現れる。eを消してmethに変えるとゴーレムは崩れ去り、素材の山に戻る。
一番作りやすい素材は土か泥。元々ゴーレムは土人形、泥人形のため。自我は無い。
液体、もしくは炎でゴーレムを作製した場合、どこかに核を入れることになる。湖などから作製した場合、湖のどこかに文字を刻むことでの発動も可能ではある。その場合はゴーレムは湖から上がることは出来なくなる。
フリットウィック・マクゴナガル共同製作


ちなみに、エルキドゥ(天の鎖)も元は泥人形だったりするが……?


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幕間──双子の姉妹とエリザベート

魅力的な魔法生物案があったので、それに関する幕間。ヴィーラなどのように人に近い姿をした生物で、なんとキャラクター案まで!他の人もキャラクター案がある時がありますが、少々お待ちくださいませ。不死鳥編あたりからは出せると思いますので。とりあえず、夢幻月さん、面白そうな子をありがとうございます!

もしかしたら、活かしきれてないかも……。
あ、調べたらセブンスドラゴンのキャラだったんですね、イクラクン。セブンスドラゴンはそこまでプレイしてませんし、イクラクンのキャラは多分原作とは違っていますので、その辺りはご遠慮くださいませ。


イギリス南部、薄暗い森の中。人がほとんど立ち入らないような静寂の森を、二つの人影が駆けていた。その後方百メートルほどのところにも、数人の人影。後者は鉄の仮面を被っている。

 

「くっ……あんなのがまだ居るとは思ってませんでした……ごめんなさい、ムルムル。(せつ)の失態です」

 

「いや、ボクがうっかり偽装を解いちゃったから……お姉ちゃんの探してた薬草も見つからなかったし、踏んだり蹴ったりだよ」

 

前を走る少女たちはとても似通っていた。おそらく双子なのだろう。先に喋った方がモコモコの短髪でスカイブルーの宝石の首飾りを、後の方がサラサラの長髪でマリンブルーの宝石の首飾りをしていた。ちなみに、二人とも白髪(はくはつ)で青い目をしている。しかし、彼女たちの体で最も注意を向けるべきはそこではない。彼女たちの頭には狐のような耳が生えていた。

 

「拙たち──ルシェという種族はあまり人前には出ませんから、あんなのに狙われやすくなるんでしょうね。さて、もし捕まったらどうなることやら」

 

「ちょっ、お姉ちゃん、そんなネガティヴ思考辞めて!?」

 

 

「おい、こっちだ!〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!」

 

「っ!避けて!」

 

「ひゃう!」

 

姉妹の間を紅い光線が貫く。追手たち──死喰い人(デス・イーター)の残党に見つかったのだ。

 

「〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!」

 

死喰い人の一人が放った呪文が姉と呼ばれた方──イクラクンという──に直撃し、転ばせる。慌てて彼女は立ち上がろうとするが、上手くいかない。

 

「お姉ちゃん!」

 

「拙のことは置いて早く逃げてください、ムルムル!」

 

必死に姉を助けようとする妹。しかし、死喰い人たちはすぐそこまで迫っていた。

 

「解呪……なんとかしないと……!」

 

「逃げられるとでもぉ?」

 

真上から聞こえる声。ムルムルが顔を上げると、そこには鉄の髑髏面があった。姉を抱き抱え後ずさるムルムル。死喰い人はじわじわと差を詰めていく。

 

「ルシェはアメリカとか闇市場(ブラック・マーケット)で高く売れるしなぁ。ひっさびさに知り合いと集まったらこんな儲けがあるとは!」

 

「お姉ちゃんはボクが守る!〈撃て(フリペンド)〉!」

 

ムルムルの手に魔力が集まり、一番手前の死喰い人の腹にぶつかる。姉の魔力も混ぜたのだろうか、五メートルは離れた木の幹に死喰い人は激突した。

 

「てめぇ!」

 

「よくもアンドラスを!」

 

残りの死喰い人四人が一斉に杖を二人へ向けた。姉妹は身を寄せ合い、 目を固く瞑った。……が、しばらく経っても、呪文が放たれた気配がしない。恐る恐る目を開けた二人の前には、重なって倒れた死喰い人とその上に座る女性がいた。

 

「どうもー。無事かしら?」

 

ニッコリと笑って気軽に挨拶する女性。ムルムルはホッとしていたが、イクラクンはまだ警戒を解いてはいなかった。

 

「……誰です?拙たちを助けてくれたことにはお礼を言わせていただきますが、無償で死喰い人たちを倒してくれるとは思えないです。拙たちに、何を要求する気ですか」

 

「お姉ちゃん、この人はボクらを助けてくれたんだよ?」

 

「ムルムル、物事の裏には何かしらの思惑が付きまとうものです。この女性には、拙たちを助ける理由もメリットもない。あるとすれば、拙たちの身柄だけです」

 

ムルムルを守るように立つイクラクン。だが、女性はニコニコしてるだけで何もしない──いや、死喰い人たちを亀甲縛りで木に吊るす作業はしていた。

 

「私はただ見かけたから助けただけだし、こいつらを捕まえる目的もあったからなんだけど……それじゃ納得はしてくれないわよね?」

 

「勿論です」

 

「うーん……なら、私たちの家に来ない?私はエリザベート・クリミア。魔法省神秘部所属のホグワーツレイブンクロー寮出身。家にはメイドもいるんだけど、彼女だと使用人って感じだから、娘の友達になってくれる人が欲しかったの」

 

「……娘さん、ボッチなの?」

 

「いや、まったく?ペット大好きだし、ホグワーツにも友人はたくさん居るわよ?でも、家の近くには他人の家がほとんどないから、夏休み中会える友達が居ないのよ。それに……あなたたちも宿が欲しいでしょう?」

 

イクラクンとムルムルは確かに宿無しである。この日の朝に宿をチェックアウトし、この日は森で野宿の予定で、親も似たような生活だったために定住できる家も無い。

 

「だから、私たちと家族にならない?見た所研究者っぽいし、研究用の部屋とかもあげれるけど?」

 

「……それは」

 

「あ、いきなり追い出したりとかはしないから。一度受け入れた以上、私は責任を持ってあなたたちの面倒を見る。研究とかを手伝ってもらったり、剣を打ってもらうこともあるかもしれないけど」

 

「……どうするの、お姉ちゃん」

 

「拙は、ムルムルと一緒に居られるのなら何処でも良いです」

 

「ボクもだよ。てことで、お世話になります!双子の妹、ムルムルでーす!」

 

「……妹が奔放で済みません。拙は姉のイクラクンです。よろしくお願いします」

 

「はい、よろしくね。空き部屋の片付けはサクヤちゃんにお願いして、私たちは夕食でも作りましょうか」

 

森を抜ける三人と、放置されその後闇祓いに回収される死喰い人。だが、死喰い人たちはここで捕まって正解だったかもしれない。

この森はクリミア家のすぐそばの森。通称、迷いの森。この森の奥ではバジリスクやヌンドゥが闊歩し、自らを狩ろうとする、もしくはクリミア家に手を出そうとする人間たちをいつのまにか狩っている。おそらく、死喰い人たちが彼らに出会ってしまったのなら、朝を迎えることはできなかっただろう。




ルシェ
M.O.M.分類XXXX
男性はエルフのような長い耳、女性は頭の上に狐耳な種族。魔力を持ち、杖なしで魔法を扱うこともできる。ただし、触媒がない場合は見た目の偽装や〈撃て(フリペンド)〉など、大雑把な魔力コントロールでなんとかなる魔法しか使えない。
石の声を聞くことができ、鍛造に秀でている。武器としては最上級の剣を打つ。だが、某騎士王の聖剣(エクスカリバー)などの神造・星造兵器には劣る。
遥か昔に栄えた古代帝国の一族。古代帝国は真竜と呼ばれる存在により滅ぼされる。
稀に強い魔力を持つルシェが生まれることがあるが、ほぼ全てのルシェが姿を偽装し人間に紛れて暮らしている。

この作品上では真竜は古龍(エンシェント・ドラゴン)の一部と扱われる。


イクラクン
双子の姉。
ムルムル
双子の妹。

ルシェ族の少女たち。薬草採取のために入った森(迷いの森)で死喰い人たちに追われることに。リアスの家族兼友人兼ペット枠。ちなみに、リアスにとってはペット=家族。
二人とも容姿が似通い、髪の質感や長さ、ペンダントでしか、容姿での判別はできない。姉はモコモコの短髪でスカイブルーの宝玉のペンダント、妹はサラサラの長髪でマリンブルーのペンダント。二人とも白髪。しらがではない。
イクラクンの一人称は『拙』。魔法使いタイプの学者もしくは研究者。しっかり者。
ムルムルの一人称は『ボク』。学者もしくは研究者タイプの魔法使い。奔放。

種族、キャラ共に夢幻月さんのアイデアです。ありがとうございました!


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十一月一日の日曜日

日曜日、あたしは朝からハグリッドのところにいた。スクリュートはもはや鎧と化している。なんだろう……マグルのゲームとかで出てきそうな姿だ。

マクゴナガル先生とフリットウィック先生はママに手紙を出した後に、どこまでゴーレム作製魔法が有効かを校庭で試している。泥や土、木に石、鉄。色々な素材を使って色々な姿に変えている。

 

「〈骨ゴーレム作製・ドラゴン(クレアチオ・ボーンゴーレム・ドラゴン)〉!」

 

あ、骨の竜が生まれた。素材は秘密の部屋の骨かな?

 

「ふむ、骨もいけますね。では、次は双子の呪文をかけて増やした素材でも使えるかどうか試してみましょう」

 

「そうすれば、ドラゴンの骨でドラゴンゴーレムを作れますな!」

 

「どうしよう、ハグリッド。マクゴナガル先生とフリットウィック先生が竜牙兵作り上げちゃうかも」

 

あの二人なら竜牙兵を作りかねない。ママが関わったら、ドラゴンゴーレムの中に本物のドラゴンの魂でも憑依させそうだし、魔法界の研究者ってマッドサイエンティストの資質でも有るの?

そういえば、今日はハリーとロンを一緒に見てないな。ハリーとハーマイオニーの組み合わせは見たけど、ハリーとロンの組み合わせは見てない。普段は兄弟みたいに一緒にいるのにね。

あと、ハッフルパフが図書館で調べものしてたね。手元にバッジがあったし、バッジに何かしようとしてるのかな?

 

 

 

夜、ママから手紙が来た。第三課題の時にこっちに来て、その時にゴーレム作製魔法を直接確認するらしい。あと、こうも書かれていた。

 

『死なない程度には抑えなさい。それさえ守れば、どんな手段を使ってもいいから、第三課題を徹底的に面白可笑しくして代表選手たちを恐怖のどん底に陥れちゃいなさい。

 

P.S.家族が増えました』

 

ママからも第三課題自重しなくていい許可をもらえた。それも、校長先生よりもだいぶ恐ろしい形で。

けど、問題はそこじゃない。家族が増えたって一体どう言うことなの?……あ、手紙二枚目が。

 

『拝啓、リアス・クリミア様

初めまして、ルシェ族のイクラクンと申します。双子の妹のムルムルも居ますが、今回は拙が代表してこの手紙を書かせて頂いております。

まず、何故この手紙を書いたのかについて。拙たちは死喰い人たちに追われている所を師匠──エリザベート・クリミアに救われました。そして、師匠の御厚意により現在クリミア家にてお世話になっております。また、師匠が拙たちを「養女にする」と言って聞かず、非公式ではありますが、イクラクン・クリミア、並びにムルムル・クリミアとなりました。

リアスと拙たちの関係は、師匠曰く「家族で、友人で、ペット」とのことです。貴女にとってペットとは家族同然と聞きました。此れからは三姉妹となります。

不束者の姉妹ではございますが、以降宜しくお願い致します。

草々不一

イクラクン・クリミア並びにムルムル・クリミアより』

 

「……ルシェって。ママの幸運値を測って見たい。あたしも生物関係では豪運だと思うけど、ママの幸運値って本当にどうなってるの?」

 

あたし、姉もしくは妹兼ペットが出来た模様です。




数日後、「ペット枠なら召喚魔法で呼び出せるんじゃないか?」と気づくことになるリアスです。呼び出す時には直感が何かが働いたローゼマインが近くにいることでしょう。
ちなみに、ドラゴンボーンゴーレムの元ネタはFate/Labyrinth。これを読んだからゴーレム作製魔法を出したくなった。


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選手呼び出し

最近ようやくガルパンにハマり始めた零崎です。ミカとカチューシャとアンチョビがお気に入り。



ただし見たのはOVAのアンツィオ戦と映画の大学選抜戦のみという。とりあえず暇を見つけて漫画と小説を買い漁るとしよう。
ところで、ホグワーツの敷地内では機械は使えないそうですが、戦車はどうなんですかね?アーサー・ウィーズリーの車は動いてましたが。


十一月の最初の授業。最初はハッフルパフとの薬草学だけど、ハッフルパフ生の態度がよそよそしくなっていた。スプラウト先生も。

目立つことをハッフルパフがすることは珍しいから、彼らはハリーが栄光を奪ったとでも思っているんだろうね。

 

「フォーウ」

 

頭の上に乗ってるフォウ君が気分悪そうに一鳴きした。

 

 

 

魔法生物飼育学は一人に一匹のスクリュートがあてがわれた。互いに殺しあってしまうらしい。

一番大きな一匹と日向ぼっこしてると、周りからひそひそ声が聞こえてきた。スリザリン生たちだろう。主にドラコとか。全く、面を向かって「お前が目立つことをしてるのが気に入らない」ってハリーに言えばいいのに。そうやってコソコソと陰湿なことをしようとしてるから、あたしのマラクローに噛まれるんだよ。

 

「クゥーン」

 

隣で寝ていたキノが鳴き声をだす。上に乗ってたフォウ君は耳をピクリと動かした。

 

 

 

占い学はいつも通りだった。ただ、ハリーがいつもより多めに死の予言を言われてるだけで。

呪文学は〈呼び寄せ呪文〉を練習した。ハリーはこの呪文が苦手なようで、一人だけ宿題を出されていた。ネビルは別として。

さて、次は魔法薬学だけど、その教室の前にはスリザリン生がほぼ全員待ち構えていた。胸には大きなバッジをつけている。書かれているのは──

 

『セドリック・ディゴリーを応援しよう──ホグワーツの真のチャンピオンを!』

 

「……そう言えば、ハッフルパフが図書館で調べものしてたね。もしかしてソレを作ってたの?」

 

「ああ、そうさ。ハッフルパフ、スリザリン、レイブンクローの合同でね。ただし、僕らスリザリンのバッジにはこんなものもついてるんだ──ほら!」

 

ドラコがバッジを胸に押し付ける。すると、先ほどの赤文字が消えて緑の文字が出てきた。

 

『汚いぞ、ポッター』

 

「どうだい?君も一ついるかい?」

 

「必要ないよ。一応役員側だから贔屓するのはダメだし。それに、今ドラコに近づいたらやばそうだから」

 

「え?どういう──うわぁ!」

 

ボンッとドラコのバッジが爆発した。スクリュートに噛まれたら、余計な物を身につけるのはやめておいたほうが良いって教訓になるね。

あたふたしてるドラコの横を通り抜け、あたしは教室に入った。先生が来るまではフォウ君とキノを撫でるとしよう。……フォウ君少し大きくなった?

しばらくして、廊下が騒がしくなった。何やらドラコとハリーがやらかしたらしい。被害者はゴイルとハーマイオニーだ。それぞれ〈鼻呪い〉と〈歯呪い〉をくらったそうだ。スネイプ先生はグリフィンドールから五十点減点して、授業を始めた。今回の授業は何の解毒剤を作るんだろう。

そう思ったところで、地下牢教室のドアがノックされた。入って来たのはコリンだ。

 

「何だ?」

 

ぶっきらぼうに聞くスネイプ先生に、コリンは用件を伝えた。

 

「先生、僕、ハリー・ポッターとリアス・クリミアを上に連れて来るように言われました」

 

「よろしい。ミス・クリミアは行って良い。だが、ポッターは残るように。成績優秀なクリミアは良いが、お前は成績が良くないだろう?」

 

とりあえず行って良いそうなので、荷物をまとめて部屋を出る。少しして、スネイプ先生の怒号と共に荷物を持ったハリーとコリンが部屋を出て来た。

コリンに連れてこられた部屋にハリーと共に入る。中に居たのはバグマンさんと、濃い赤紫色のローブの魔女。それと、代表選手三人に黒い大きなカメラを持った魔法使いだった。




ミカの雰囲気はハリポタ世界に合うと思う。けど何故だろう。彼女の入る寮がレイブンクローしか思い浮かばない……!


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杖調べ

新作小説「ホグワーツでカンテレをかき鳴らしながら」を投稿し始めました。またハリポタです。ミカ(GuP)の容姿のオリ主です。性懲りも無くノリと勢いで始めた新作ですが、どうぞ読んでやってくださいな。
吸魂鬼の方は三月中には投稿する予定です。


「ああ、来たな!代表選手の四番目、それに我々の協力者!さあ、お入り、二人とも」

 

バグマンさんに促されて、あたしたちは彼に近づく。

 

「これから行うのは『杖調べ』の儀式だ。一応、ミス・クリミアも受けてもらう。杖が万全の機能を備えているかどうか調べるんだ。上で、ダンブルドアと専門家が話しているよ。それから、ちょっと写真を撮ることになってる。こちらはリータ・スキーターさん。『日刊予言者新聞』の記者だ。短い記事を書いて貰う予定でね……」

 

「ルード、そんなに短くはないかもね」

 

リータ・スキーターの目はハリーに向けられている。確かこの人は、新聞で魔法省をこき下ろしていた人だっけ。なんと言うか、気に入らない。

 

「儀式が始まる前に、ハリーとちょっとお話していいかしら?だって、最年少の代表選手ざんしょ……ちょっと味付けにね?」

 

……嫌な予感がするけど、何かやったら矛先がこっちに向きそうな気がする。ごめん、ハリー。ちょっと見捨てさせてもらうね。

スキーターはハリーを連れて部屋を出て行った。

少ししてカルカロフ校長、マダム・マクシーム、クラウチさんがやって来て、ビードロカバーのかかった机に座った。あたしはその少し横だ。

さらに少しして、ダンブルドア校長がオリバンダーさんを連れてやって来た。部屋の中を見渡すと首を傾げて、部屋を出て行った。そして、ハリーとスキーターを連れて戻って来た。

 

「では、オリバンダーさんをご紹介しましょうかの?試合に先立ち、みなの杖がよい状態かどうかを調べ、確認してくださるのじゃ」

 

校長先生に呼ばれて、オリバンダーさんが部屋の中央に進みでる。

 

「マドモアゼル・デラクール。まずあなたから、こちらに来てくださらんか?」

 

フラー・デラクールが立ち上がり、老人に杖を手渡す。

 

「ふむ、ふむ……二十四センチ、しなり難い……使われている木は紫檀じゃ……芯には……おお、なんと……」

 

「ヴィーラの髪の毛でーす。わたーしのおばーさまのものでーす」

 

「ほう、わし自身はヴィーラの髪を使用したことはないが──わしの見るところによると、少々気まぐれな杖になるようじゃ……しかし、人それぞれじゃし、あなたに合っておるなら……〈花よ(オーキデウス)〉!……上々の状態じゃな」

 

杖先に咲いた花を摘み取ったオリバンダーさんは、杖と一緒に花をフラーに手渡した。

 

「では、次はディゴリーさんじゃ」

 

セドリックが杖を渡し、オリバンダーさんはその杖を検分していく。

 

「この杖はわしの作った物じゃな?よく覚えておるよ。際立って美しい牡の一角獣の尻尾の毛が一本入っておる……身の丈百六十センチはあったのう。尻尾の毛を抜いた時に、危うく角で突き刺されるところじゃった。三十センチでトリネコ材、心地良くしなる。上々じゃ。魔法もちゃんと使える」

 

オリバンダーさんが杖を振ると、銀色の煙の輪が次々と部屋に放たれた。

次はビクトール・クラムだ。無愛想に杖を突き出した。

 

「フーム、わしの目に狂いがなければ、グレゴロビッチの作かのう。優れた杖職人じゃ。ただ、製作様式などはわしとは合わんかったが。……クマシデにドラゴンの心臓の琴線かな?」

 

クラムが頷く。当たっているようだ。

 

「あまり例のない太さじゃ……かなり頑丈、二十六センチ……〈鳥よ(エイビス)〉!」

 

銃を撃つような音がして、杖から小鳥が数羽出てくる。オリバンダーさんは杖をクラムに返して、代わりにハリーの杖を受け取った。その途端、彼の目が急に輝いた。

 

「そうじゃ、よく覚えておるよ。この杖はわしにとって印象深い杖の一本じゃ……もう一本も、この部屋の中にありますがな」

 

ハリーの杖って、特別な杖なのかな。例えば、ビードルの物語の、『ニワトコの杖』みたいに。もう一本の杖は……まさか、あたしの杖?

オリバンダーさんはそれまでよりもずっと長い時間をかけて、ハリーの杖を調べた。最後に杖からワインを出して、杖はハリーに返却された。

 

「では、最後にクリミアさん、よろしいかな?」

 

あたしは立ち上がって、杖をオリバンダーさんに渡す。彼の目はハリーの時みたいに輝いている。

 

「この杖もよぉく覚えているとも。なんとも言い難い特別な杖じゃ……二十五センチの檜の杖。頑固な杖じゃ……〈縛れ(インカーセラス)〉」

 

オリバンダーさんは杖をくまなく調べると、自らの腕に魔法でロープを巻きつけた。近くにロープを巻きつけてもいい物が見当たらなかったようだ。

 

「結構。この杖は万全じゃ。大切にしなされ」

 

杖を返してもらい、席に戻る。ダンブルドア校長先生が授業に戻る──には時間が遅いから、夕食に行って良いと言ったけど、その前に写真撮影が行われることになった。審査員と代表選手全員、それに個人写真。とっても緊張したし疲れたよ……部屋に戻ったらもふもふに癒してもらおう。




リアスの杖
檜に海獣クリードの骨、二十五センチ、頑固で何かを呼び出す呪文が得意


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四頭のドラゴン

杖調べから二週間ほど経ったけど、その間に三校対抗試合の記事が新聞に載った。でも、ハリーに関してばっかりで、普段のハリーを見てるとこんなこと絶対に言わないだろうってことばっかり書いてあった。

リータ・スキーターから手紙が来たけど、あたしへの取材は第二競技の前にやるって。よろしい、徹底的に準備して脅すとしよう。

試合一週間前の土曜日、三年生以上はホグズミード行きを許可された。それと、あたしには夜に禁じられた森へ行ってくれって手紙も。ドラゴンが到着するらしい。

 

 

 

……よかった、見つからなかった。

今、あたしは三本の箒のすぐ近くにいるんだけど、店からリータ・スキーターが出てくるのを見てしまった。とっさに隠れたから気づかれなかったけど、もし見つかっていたらどんな目にあっていたことやら。

パブの中にはムーディ先生やハグリッド、少し離れたところにフレッジョとリー、ロン。さらに離れたところにはハーマイオニーが居た。手元でノートを広げている……S・P・E・Wの会員名簿のようだ。人数はとても少ないけど。

さて、お菓子も買ったし、バタービールも飲んだし、帰ろうか。四種のドラゴンをおとなしくさせないといけないし、早めに休んでおこう。

 

 

 

夜十一時半頃、禁じられた森の奥近く、ただしホグワーツからは十分離れた場所。そこには分厚い板で柵が作られ、四頭のドラゴンが繋がれていた。四頭とも暴れている。

 

「離れて、ハグリッド!」

 

おっと、あたしの他にもお客さんがいるのかな?見渡して見ると、ハグリッドとマダム・マクシームがドラゴン──ハンガリー・ホーンテールを見ていた。あ、ホーンテールが失神した。

 

「さて、リアス!来てくれるかい?」

 

えーと、あれは……ああ、チャーリー・ウィーズリーか。確か、ロンのお兄さんでノーベルタを引き取ってくれた人。

 

「来たけど、どうしたの?」

 

「ホーンテールをおとなしくさせる手段ってあるかい?あ、ちょっと待ってて……ハグリッド、どさくさに紛れて卵を盗もうとしない。リッジバックならともかく、ホーンテールは危険すぎるし、そもそもハグリッドはドラゴンキーパーじゃないだろう?」

 

「ハグリッド、あたしが一年生の時も言ったよね?ドラゴンを飼うことは犯罪だって」

 

「リ、リアス!?何でここにおるんだ?それと盗もうとなんかしちゃいねぇ。ちょっと近くで見たかっただけだ!」

 

全く、ハグリッドはどこまで危険を犯せば気がすむのやら。

試合直前にもう一度ドラゴンに会えるようにチャーリーにお願いして、あたしは城に戻った。



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第一の課題:金の卵を奪え【開始】

うーむ、吸魂鬼の方の更新が一ヶ月以上前……さっさと更新しなければ……


日曜、月曜が飛ぶように過ぎ(月曜の夜にはハリーとハーマイオニーが〈呼び寄せ呪文〉の練習をしていた)、試合当日の午前中もいつのまにか終わっていた。

昼食の時にマクゴナガル先生がハリーを迎えに来て、一緒に競技場へ向かうことになった。万が一の時のために、あたしにはすぐに選手の救援に行ける位置に居て欲しいそうだ。

あたしはハリーと共に選手控え室の役割を持ったテントの中に入る。みんなの目が一斉にこちらを向いた。

 

「おお、来たかハリー!それにリアスも……ああ、彼女については一応、保健のようなものだ。万が一の時──決してそんな時が来ないように祈りはするし努力はするが──その時に、君たちをすぐに助けられるように、ここに来てもらった。競技中は選手出入口付近で待機してもらうことになる」

 

バグマンさんはそう言うと、紫の絹の袋を取り出した。中には小さな、これから直面するものの模型──つまり、ドラゴンの模型が入っているそうだ。その取り出した種類とご対面ってことかな?

 

「そして、諸君の課題は、金の卵を取ることだ!」

 

卵?……もしかして、ホーンテールに卵を抱えさせた理由ってこれが理由?

一度テントの外に出てチャーリーの元へ向かう。どうしても一つ確認したいから。

 

「うん?どうしたんだい?」

 

「一つだけ聞かせて。ドラゴンの卵、無精卵だよね?」

 

「ああ……なるほど。リアスはドラゴンが暴れたりして、卵が割れてしまうことを危惧してるんだね。大丈夫、無精卵しかないことはちゃんと確認してる。有精卵が混じっている可能性は、万に一つも無い。割れずに残った卵は……そうだな、僕らで日本の卵かけご飯とやらにでもしようと思ってる」

 

「……よかった」

 

もし、生まれてくるはずの命を奪ってしまう結果になったらって、心配してた。チャーリーはドラゴンの専門家で、ドラゴンに関しての知識や見分けなら、あたしよりもずっと上だ。

あたしは胸をなでおろしながら、テントに戻った。ちょうど、バグマンさんが紫の絹の袋の口を開けるところだった。

 

「レディ・ファーストだ」

 

フラーに袋が差し出される。震える手で彼女が選び取ったのは、ウェールズ・グリーン種。首の周りには「2」の数字がついている。

クラムは中国火の玉種を取り出して、ドラゴンの首の周りには「3」と書かれていた。

セドリックは「1」の札がついたスウェーデン・ショート-スナウト種。だとするとハリーは……とても、運が無い。「4」の番号をつけた、ハンガリー・ホーンテール。ドラゴンの中でも最も凶暴な種類。

 

「さあ、これでよし!諸君は、それぞれが出会うドラゴンを引き出した。番号はドラゴンと対決する順番だ。よろしいかな?

さて、私はもう行かねばならん。解説者なんでね。ちなみに、実況にはホグワーツのクィディッチ試合を実況している、リー・ジョーダン君を招いているよ。ディゴリー君、君が一番だ。ホイッスルが聞こえたら、まっすぐ囲い地へ向かいたまえ。ああ、リアスはすぐに選手の入場口へ向かってくれ。さて……ハリー、ちょっと話があるんだが、いいかね?外で?」

 

「えーと……はい」

 

バグマンさんとハリーが外へ出る。あたしはそれに続いてテントを出て、囲い地へ向かった。ハリーとバグマンさんの近くを通ったけど、何を話してるのかは聞こえなかった。あ、ホイッスル鳴った。

 

「おっとまずい。急いで行かなければ」

 

バグマンさんが小走りであたしを追い抜く。あたしが囲い地の柵の切れ目にたどり着いた時には、バグマンさんはマイクパフォーマンスを始めていた。

 

「紳士淑女のみなさん、少年少女諸君。さて、これから始まるのは──最も偉大で──最も素晴らしい──しかも二つとない──一大試合、三校対抗試合。さあ、ホグワーツ校の生徒たち、声援をどうぞ」

 

大きな声援が上がる。

 

「さあ、ダームストラング校も」

 

また大きな声援。

 

「そして、ボーバトンの生徒たちも」

 

今度は、どことなく弱々しい声援だった。

 

「フランス校はちょっと元気がないですね。

──さて、もうそろそろ始まるわけですが、選手たちをご紹介しましょう。三つの学校から選ばれた、代表選手たちを!

ダームストラング代表、なんたる眉毛、なんたる歩き方、なんたる少年でしょう。箒を持てば自由自在の、ビクトール・クレイジー・クラム!

ボーバトン・アカデミーからは──おお、なんと、マドモアゼル・フラー・デラクール!

そしてホグワーツからは、一人ではなく、二人の生徒です。誰もがメロメロになる、セクシー・セドリック・ディゴリー!

そしてもう一人──みなさんにとっては、ご存知の『生き残った男の子』。私にとっては、小さい時から次々と我々を驚かす男の子……はりきり・ハリー・ポッターです!」

 

バグマンさんが一人ずつ名前を呼ぶたびに割れんばかりの声援が上がる。けれど、ハリーに向けられた声援は、セドリックのよりもやや少なかった。

 

「さあそれでは、第一の課題が始まります。金の卵を取る。しかも、ドラゴンの巣から!──安心してください、他の卵は無精卵です。ドラゴンを引き連れるのは、チャーリー・ウィーズリー」

 

またも声援。バグマンさんは口が上手いようだ。

 

「そして特別顧問、ホグワーツ校からの我々の協力者、リアス・クリミア。彼女にかかれば、ドラゴンどころかマンティコアでさえおとなしくなるでしょう!」

 

やめて、持ち上げないで。恥ずかしくなるから。

足音が聞こえたので後ろを振り向く。そこには、青い顔をしたセドリックが立っていた。うん、頑張れ。




呪いの子のセリフも、ほんの少しだけ混じります。


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第一の課題:【セドリック・ディゴリー】【フラー・デラクール】【ビクトール・クラム】

セドリックは囲い地にあった岩をレトリバーに変身させてショート-スナウトを挑発した。多分、レトリバーの方をスナウトに追いかけさせる気なんだろう。目論見通り、スウェーデン・ショート-スナウトは犬の方を追いかけ始めた。その隙をついて、セドリックは卵に近づいていった。

けれど、途中でぐるりと、スナウトの首が回ってセドリックの方を向いた。彼女の気が変わったようだ。

 

「うわっ!」

 

セドリックは慌てて退却して、次の瞬間には、セドリックの立っていた位置に鮮やかなブルーの炎が浴びせられた。その場にあった岩は、炎が消えた時には溶けてなくなっていた。

あ、レトリバーがショート-スナウトに噛み付いた。スナウトが追いかける対象がまたレトリバーに変わって、卵の見張りがおろそかになる。

そして、セドリックが卵を取った。ここまで、約十五分ほど。

観客席からは歓声が聞こえて、あたしはショート-スナウトを抑えるために囲い地の中に入った。あ、彼女案外物分かりが良い。

 

 

 

あたしがスナウトを別の場所に移動させている間に点数発表は終わって、セドリックが囲い地から出てきた。少し、火傷をしている。

次はフラーだね。相手はウェールズ・グリーン普通種。ドラゴンの中では最も扱いやすい種類。

フラーが囲い地に入ってくる。試合開始だ。

彼女は杖を上げて、何か呪文を唱えた。すると、途端にドラゴンがふらふらになって、少し気持ちよさそうにしている。どんな魔法を使ったんだろう。

もう少しで卵を取れる、といったところで、ドラゴンの鼻から細い炎が吐き出された。その炎は伸び、フラーのスカートに燃え移る。そして、観客席の一部からはセドリックの時よりも大きい歓声が。

 

「〈水よ(アグアメンティ)〉!」

 

水増し呪文でスカートの火を消火するフラーと、少し興奮度合いが下がった観客席。一体何を期待してたのやら。

ようやく、フラーは金の卵を手に入れた。ここまで十分ほど。

あたしはすぐに、ドラゴンに近づいて引っ張っていった。うーん、これは……魅惑呪文ってやつかな?ヴィーラの血が混じってるのなら、ヴィーラの特性に近い魔法は使いやすいだろうね。

 

 

 

次は、中国火の玉種とビクトール・クラム。

彼が入ってくると、すぐに火の玉種は鼻からキノコのような炎を出して威嚇する。それに、あれは獲物を狙う目だね。火の玉種って、豚とヒトを好んで食べるから。

火の玉種がゆっくりとクラムに近づいていく。当のクラムは落ち着いて杖を取り出し、ドラゴンの眼球に呪文を当てた──〈結膜炎の呪い〉だ。

火の玉種は突然の痛みに暴れまわり、卵の半分が粉々になった。よかった、無精卵で。

ドラゴンが卵から離れ、ドスンと倒れ臥す。そして、クラムは悠々と金の卵を持ち上げた。

火の玉種の移動はチャーリーに任せよう。あたしだと持ち上げられない。

次はハリーだけど……相手は、普通のドラゴンと定義される種の中で最も危険なドラゴン、ハンガリー・ホーンテール。ハリーはどうやって、ホーンテールを出し抜くのかな?



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第一の課題:【ハリー・ポッター】

ハリーがゆっくりと囲い地の中に入って、ホーンテールと向かい合う。テントで見た時は緊張してるみたいだったけど、今は……笑ってる?

ハリーが杖を上げ、何かの呪文を叫ぶ。しかし、光線が出ることもなければ岩が変身することもない。一体、どんな呪文を……?

ほんの少しの後、何かが──一本の箒が囲い地に飛び込んできた。ハリーの箒、ファイアボルト(特製版)だ。ハリーはファイアボルトに飛び乗ると、一気に飛び上がった。ホーンテールはハリーをじーっと見つめている。

ハリーはホーンテールの周りをぐるぐると飛びながら時折吐き出される炎を避けている。あ、尻尾の棘が肩にかすった。

作戦を変えたのか、ハリーはゆっくりと上昇していく。ドラゴンはそれを追うように首を伸ばし、とうとう立ち上がった。

次の瞬間、ハリーの姿が消えて、金の卵を抱えた彼がスタンドの上を飛んで行くのが見えた。

さて、仕事の時間だー!

 

「【ほら、落ち着いて。もう卵を狙ってる人は居ないから】」

 

苛立っているホーンテールにそんな言葉をかけながら引っ張って行く。しばらくして、ようやく彼女は落ち着いた。

医務室へと連れていかれたハリーが戻ってきた。ハーマイオニーとロンも一緒だ。よかった、仲直りしたようだ。

あたしは点数には興味がないから、そのまま城に向かった。例え誰が優勝しても、うちの子たちが活躍できればそれで良いからね。

 

「少しばかり、お願いがあるんじゃがのう」

 

後ろから声がかけられる。振り向くと、ダンブルドア校長先生が立って居た。

 

「えーと、何ですか?」

 

「第二、第三の課題の前に、代表選手全員に対して、魔法生物に関する講習をしてもらいたくてのう。ハグリッドでも良いんじゃが、彼は自分の趣味に走りそうな気がするし、それにハリーを贔屓するじゃろう。例え、カルカロフやマダム・マクシームが自らの学校の生徒を贔屓したとしても、わしだけは公平であらねばなるまい。故に、結果に興味を持たず、魔法生物に詳しい君が適任なのじゃ。頼めるかのう?」

 

朗らかに笑いながら、校長先生は言う。断る理由も無いし、あたしは承諾した。

 

「よかった、よかった。日にちは第三の課題の少し前じゃ。ああ、それと、湖の方は順調かのう?二月の二十四日の午前九時半から、第二の課題は開始されるのじゃが」

 

「順調ですよ」

 

マーカスとの交渉も進んでるし、うちの子たちへの説明も終わっている。あとは、どこにどの子を配置するかぐらいだ。

 

「もう一つだけ。クリスマスにはダンスパーティを開催するんじゃが、代表選手とそのパートナーには一番最初に踊ってもらうことになっておる。そして、その中には君も含まれておるから、早めにパートナーを見つけておくように」

 

「えっ」

 

校長先生は爆弾発言を残して去って行った。……ドレスってこのためか。それと、パートナーになってくれそうな相手が居ないんだけど……どうしよう。



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ハリー祝勝会

後片付けや水中人の女首領マーカスとの打ち合わせとかを終えて寮に帰ると、談話室ではハリーのお祝いパーティが行われようとしているところだった。

 

「おう、お帰り、リアス!」

 

「今回出番なかったけどなー」

 

「いやいや、出番あったら大変なことになってるからな?そこんところちゃんとわかってるよなフレッジョ」

 

「「わかってるさ、リー!」」

 

相変わらずのフレッジョを尻目に、机の上に乗せられている金の卵を見る。マーカスたちが込めた音までは知らないけれど、多分、開けたら、普通の人にはすごくうるさく聞こえるはず。

 

「よーし、ハリー!卵開けろよ!」

 

「おお、そうだな。中身はなんだ?」

 

「ちょっと、二人とも!ハリーは一人でヒントを見つけることになってるのよ。試合のルールでそう決まってるのよ?」

 

フレッジョとハーマイオニーが卵のことで言い争う。私は中立。なるようになれ。だって、卵を開けようと開けないでいようと、何も教えるつもりはないからね。

結局、卵は開けられることになった。

 

「それじゃ、開けるよ」

 

ハリーが卵の周りについてる溝に爪を立ててこじ開ける。その中身は空っぽだったけど──代わりに、大きなキーキー声が──聴こえる人にとってはとても綺麗な歌声が──部屋中に響き渡った。

 

『捜しにおいで 声を頼りに

地上じゃ歌は 歌えない

探しながらも 考えよう

我らが捕らえ──』

 

「それを黙らせろ!」

 

バチンと音がして、卵が閉じられる。残念、もうちょっと聞きたかったのに。

閉じられたから最初に口を開いたのは、シェーマス・フィネガンだった。

 

「今のは何だ?バンシー妖怪の声みたいだったけど……」

 

「だ、誰かが拷問を受けてる声に聞こえた!」

 

「いやいや、あれはパーシーの歌声だぜ。それも、風呂の時に歌ってる声にな」

 

「そうだな。奴がシャワーを浴びてる時に襲わないといけないんじゃないか?」

 

シェーマスに続いて、ネビルとジョージ、フレッドが思い思いの意見を口にする。そして、一通り話終わったところで案の定あたしの方に目を向けた。

 

「そうだ、リアスはこの声について知ってるよな?こっそりと教えてくれないか?ハリーやハーマイオニー、ロニーには絶対に教えないからさ」

 

ジョージの問いに、あたしは首を横に振ることで答える。

 

「そうかい。そりゃ残念」

 

フレッドがヘラリと笑う。そのタイミングで、クリームサンド・ビスケットを食べてたネビルが大きなカナリアに変身した。

 

「おっと、忠告するのを忘れてた。それじゃ、また明日」

 

あたしは一人奥へと進み、フレッジョが発明したカナリア・クリームの宣伝を聞きながら寮室へと戻った。ダンスパーティの相手を誰にするかを頭から締め出して。



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束の間の休息

十二月になった。寒いしお酒くさい。風が強いから、ハグリッドの小屋までシングルモルト・ウィスキーの匂いが漂ってくる。それに、残念なことにスクリュートは十匹程度にまで減ってしまった。大きさは二メートルほどになってたけど。うーん、うまく躾けることができれば、騎乗することができるかもしれない。やる人は私やハグリッド以外にはいないだろうけどね。

スクリュートが暴れるのを見ながら、数日前の手紙を思い出す。サクヤからの手紙だったけど、確か内容は……ママから懐中時計を貰ったって感じだったかな?何でも、魔法を無効化する珍しい時計だそうで。詳しく調べた結果、クラッカー亜種が宿ってたそうだけど。改造して音を出せるようにしただとか、イクラクンとムルムルがどうしてるかだとか、そんな話題も書いてあった。第二課題、第三課題には顔を出すとも書いてあったから、楽しみに待つことにしよう。

 

「おーや、おや、おや……これはとーっても、面白そうざんすね」

 

あ、リータ・スキーターだ。少し前に、ダンブルドア校長が彼女に、「もう校内に入るな」って言ってた気がしたけど、何でいるんだろう。

 

「ねぇ、ミス・クリミア?あなた魔法生物が好きなんでしょ?この科目はお気に入り?あなたから見てハグリッドはどうざんす?ああ、聞きたいことは山のようにあるわ!今度三本の箒でインタビューしてもいいかしら?いいわよね?ありがとう!」

 

……嵐のような人だね。勝手に取材の許可をもぎ取って消えていった。まあ、何かおかしなことを書くようなら、『全力』を持って、潰させてもらうけどね。

あ、占い学はいつも通り、トレローニー先生がハリーに死の予言をして終わりました。

 

 

 

血みどろ男爵が、どこかから迷い込んできたリスのゴーストに遊ばれているのを見ながら寮室へ戻る。途中で口元を押さえて笑いをこらえている灰色のレディともすれ違った。

太った婦人は開かれたままだった。どうしたんだろう。

 

「婦人、どうしたの?」

 

「ああ、いいのよ、気にしなくても。ただ三人の生徒に迷惑をかけられているだけですもの。あの三人が帰ってくるまでこうしてパックリと開いたままでいればいいんだから。でもそうね。あなたに閉めてもらってから合言葉を変えようかしら……一応、合言葉を言ってちょうだい」

 

「『たわごと(ボールダーダッシュ)』。あたしが入ったら閉じてもいいと思うよ?」

 

「そう。ありがとう」

 

部屋に戻って、第二の課題、第三の課題について思い返す。……さて、どの程度の難易度にしようかな?ヌンドゥ、キメラ、ミグラージに霧山羊(カペルネブラ)、吸魂鬼は……さすがに危険すぎるかな。エジプトからスフィンクスを連れてくるって話もあるし。そうだ、マンティコアも入れよう。ついでにバジリスク、アクロマンチュラも。あはは、第三の課題の準備が楽しみだね。




クラッカー亜種
M.O.M.分類XXXX
世界中に生息。クラッカーの亜種で、こちらは物品に宿る。増殖するのは、宿った物品が生物に直接破壊された時。破片全てに宿る。物で破壊された時はそちらに移る。能力は通常のクラッカーと同じ。
音を出せる機械に宿っているなら会話可能。通常種よりも多い可能性があるが、交流可能個体が少なく、また発見も遅かったために亜種。今回は懐中時計(スチームパンク風。クラッカー亜種用にスピーカー内蔵型に改造してある)に宿りました。
白煙さんのアイデアです。ありがとうございました。

ミグラージ、霧山羊
前に投稿した話を参照。


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リータ・スキーターからの取材

今回出てくる、フォウ君とキノ以外の固有名詞は、後書きにて解説します。


日曜、三本の箒。

今日はホグズミード休暇で、ついでに言うなら、リータ・スキーターからの取材予定が入っている日。

あたしはリータが来る前にここに来て、とりあえずバタービールを飲んで待っている。フォウ君にはりんごを、キノにはビーフジャーキーをあげている。

 

「待たせたざんしょ?早速、取材を始めさせてもらうざんすよ」

 

ドスンと、リータが目の前の席に腰掛けた。バッグから黄緑色の長い羽根ペンを取り出している。

 

「バタービール一杯ぐらいなら奢るから、場所を変えさせてもらってもいいかな?ここだと人の目もあるし……そうだね、叫びの屋敷の近くとか、広くて、人気のない場所がいいな。あと、フォウ君とキノが食べ終わるのを待ってくれる?」

 

「まぁ、そのくらいならいいざんしょ。それに、奢る必要はないざんす。だって、あたくしの方が大人ですし、生徒に奢られるだなんてメンツが保てないざんすから」

 

三分ほどで二匹はおやつを食べ終えて、あたしとリータは叫びの屋敷近くまで移動した。二人で岩に座って、リータはバッグを机代わりにして羊皮紙を広げた。

 

「この羽根ペンは、自動速記羽根ペンQQQと言ってね。会話内容を自動で記録してくれる羽根ペンざんす」

 

リータは羽根ペンの先を口に含んで少し吸い、羊皮紙の上に垂直に立てた。

 

「では、まず一つ目の質問ざんす。君は、どうして三校対抗試合に協力しようと思ったのかな?」

 

「ダンブルドア校長に頼まれたからね。それに、ペットたちが活躍できるから」

 

チラリと、羽根ペンが書く文章を確認する。『彼女、リアス・クリミアは孤児であり、危険な魔法生物の多くを家族と勘違いしており──』……少しイラっときた。

 

「ほうほう、君は魔法生物たちについてどう思ってるの?」

 

「可愛い。それにかっこいい。不思議に満ちてるし……優しい」

 

羽根ペンの書く文章は──『彼女が大事にする生き物たちは非常に愚鈍であり、野生の本能を失っているようである。もし、かのニュート・スキャマンダーが彼女のペットたちを見たらどう思うのだろうか。おそらく、失望するであろう』──我慢、しなくてもいいよね?

 

「──?どうしたざんすか?」

 

「いえ、堪忍袋の尾が切れたってだけですよ。〈おいで(インヴォーカレ)〉」

 

「──え?」

 

杖先に光がともり、次の瞬間──あたしとリータ・スキーターは多種多様な動物たちに囲まれていた。全部、あたしが関わったことのある子たちだ。

 

「【ジャック、この周りを霧で囲んで。キノ、スキーターに麻痺を。シャルロッテとコアトルは骨が折れない程度に縛り上げて。レッシー、いつでも包めるように準備。メイル、まだ水の中に引きずり込もうとしないで。ペテル、攻撃するにはまだ早い。だから尻尾の蛇を抑えて。ああ、君も来たんだね、アラゴグ。糸を出せる?よし、縛ってちょうだい。ラークス、ピンポイントで雷を落とそうとしない。ヌルも毒は準備段階で留めておいて。マルス、殺すとまずいから尻尾の棘は使わないで】」

 

みんなに指示を出しながらスキーターに近づく。彼女は既に麻痺で動けず、動けたとしてもシャルロッテとコアトルによる締め付け、それにアラゴグの糸で身動きが取れず、万が一抜け出したらレッシーに包まれラークスに雷を落とされヌルに毒を吐かれメイルに湖に引きずり込まれペテルに裂かれマルスに刺される。そのことが理解できたのか、スキーターは青ざめてガタガタと震えている。唯一対抗手段となり得る杖は既にプラムに奪われている。

あたしは落ちている羊皮紙と羽根ペンを拾い、杖を向けた。

 

「〈燃えよ(インセンディオ)〉、〈粉々(レダクト)〉」

 

まずは羊皮紙を燃やし尽くし、次に羽根ペンを破壊する。羽根ペンの破片はノーベルタが燃やした。羊皮紙の灰は既に風で飛ばされている。

 

「……さて。あたしを貶すのはまだいい。我慢できる。けどね?家族(みんな)を貶されるのは我慢できないんだよね。あなたにとってはたかが動物なんだろうけど、あたしにとってはかけがえのない家族なんだよ。そんな人には……オシオキ、しなくちゃね?ヨハンナさん──ママの同僚の一人が最近気になってることがあるみたいでね。それが、『人はどこまで幻覚を見せたら心が壊れるのか』なんだって。アズカバンの死刑囚を使おうかって思ってたみたいだけど、ちょうどよかった。あなた、実験台になってくれる?安心して。〈磔の呪文〉は使わないからさ。まずは……キノの麻痺が解けるまでジャックに幻覚を見せてもらいなよ。そのあとはどうしようかなー?……あ、あれってバンシーじゃない?あなたを指して泣いてるけど……ま、そういうことだよね。まあ、あたしには関係ないし……城に帰るまではまだ半日近くあるし……耐久レースいってみようか♪ほーら、頑張れ、頑張れ♪」

 

このあとどうなったのかは、想像にお任せします♪だって、あたしはリータ・スキーターの醜態を晒すほどサディスティックじゃないし、彼女は最低でも一年ぐらいは、モノを書くことすらできないだろうしね。




ジャック…リアスの飼っている霧山羊。名前はFate/のジャック・ザ・リッパーから。ジャックの宝具に暗黒霧都(ミスト・シティ)があるために、霧つながりで連想。

シャルロッテ…秘密の部屋のバジリスク。ようやく登場の機会を得た。

コアトル…リアスの飼っているオカミー。久しぶりの登場。

レッシー…リアスの飼っているレシフォールド。一章に名前だけ出て来た。

メイル…リアスの飼っている水魔(ケルピー)。初登場。名前は……何からとったのか忘れた。

ペテル…リアスの飼っているキメラ。名前はペテルギウスから。

アラゴグ…ハグリッドの親友。自らの友人でありハグリッドの友人であるリアスを怒らせたリータが嫌い。ついでに、もしかしたらハグリッドの酷評を書かれていたかもしれないと聞きさらに嫌いに。

ラークス…リアスの飼っているサンダーバード。久々の登場。

ヌル…リアスの飼っているヌンドゥ。一章に名前だけ出て来た。

マルス…リアスの飼っているマンティコア。名前の由来は火星(マーズ)

プラム…リアスの飼っているミグラージ。三章に登場。名前はノゲノラのプラム・ストーカーより。

ノーベルタ…ノーバートって言えばわかるはず。リアスに呼んでもらえたことでテンションマックス。

バンシー
M.O.M.分類XXX
黒衣を纏った、人に限りなく近い容姿の妖精。少女のような姿から老婆のような姿まで様々。しかし、全個体が女性の姿で、例外なく青白い肌で爪が異様に鋭い。
人の死期を見通し、人に死を告げる。
主に山に生息。たまに人里に降りて来て死期の近い者を指差して泣く。遠く離れた家族に危険が迫っていると、その親族に知らせることもあり、一族の守護神のような立ち位置でもある。
がらんどうさんのアイデアです。ありがとうございました。


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幕間──とあるパブにて

エリザベートとヨハンナが話し合うだけの幕間です。


ホグズミード村の一角にあるパブ、『ホッグズ・ヘッド』。そこは、秘密の話をするには最適な場所である──ただし、誰かに聞かれる可能性も高いのだが。

その日の客のうち二人──エリザベート・クリミアとヨハンナ・ファウストはパブの二階の部屋を店主から借り、酒を飲みながら愚痴を言い合っていた。だいたいは仕事に関係することではあるが、極々稀に機密事項が混ざるので、メフィストフェレスによる結界付きで。

 

「最近、新しい古龍(エンシェント・ドラゴン)見つかったって聞いたけど」

 

「そうなのよねー。しかも、そのうちの一体の居場所がとても面倒な場所で……聞く?」

 

「聞かせろよ、エリザベート。もしかしたら儲け話になるかもしれないからな」

 

「強さ的には古龍種の中でも最下層──それこそ、普通のドラゴンに毛が生えた程度か、もしくは普通のドラゴンやヌンドゥにも倒されるようなほど弱いんだけど……住処が、遺跡の最奥なの。南米の密林地帯には覚醒寄生種ババラント、ハワイ島の火山には覚醒火炎獣マグドフレイモス、ロシアのバイカル湖の底に覚醒多触類オクタイール、サハラ砂漠には蘇生古代獣ハーラ・ジガント、ロシアの雪山に覚醒大氷塊フリザーニャ、時を超えた場所にある神殿には覚醒甲殻眼シェルドゴーマ、天空には覚醒炎翼竜ナルドブレア。古龍認定された理由は、住処の遺跡が『勇者たる者』ぐらいにしか入らない場所だから」

 

「へぇ、なるほど……って、おい待て、南米って言ったか?」

 

「言ったわよ。蜘蛛のお膝元ね」

 

「あー、そりゃ厄介だな……あの水晶蜘蛛(ORT)のところか。魔法生物規制管理委員会も大変だな。暗殺王の廟を探してる私のとことどっちが大変だろうな」

 

「そりゃあんたのとこに決まってるでしょ」

 

笑い合う二人。酒が進めば話も進み、そして、今回の話し合いの中心となる、とある話がヨハンナの口から飛び出してきた。

 

「なぁ、なんでリアスにあんな能力(動物に好かれるチカラ)が宿ったんだと思う?」

 

「どうしたの、急に。私としては気にしてないけど」

 

「いや、結構大切なことなんだよ。だって──リアスの出生に関わる話だからな」

 

「──どういうこと?」

 

蛇語使い(パーセルマウス)や七変化と言った能力は、先天的に持ってる者と後天的に手にした者がいる。後者の方は努力と才能がモノを言うが──前者の方は隔世遺伝だろう。例えば、先祖がそういった研究をしていただとか──前世が、その能力を持っていた、だとかな。リアスは動物の言葉がわかり、彼らに好かれる。人望もまあまあある。そういった存在が──はるか昔に、生きていたとしたら?」

 

「──まさか、リアスがその人の生まれ変わりとでも?」

 

「まだ確証はないけどな。つい先日、こういった遺物を見つけてな──読んでみろよ。そりゃあ、メフィストフェレスも気にいる訳だ」

 

「──さっすがうちの娘!面白いわね!」

 

「──ああ、うん。知ってたよ。お前がそういう奴だってことは。全く、あの回帰の獣が動き始めてるって噂話もあるのに。そっちはどうするんだ?」

 

「え?どうせリアスがテイムするでしょ?」

 

「あながち冗談だと言い切れねぇんだよなぁ」

 

 

こうして夜は更けていく。更に多くの災厄の種を撒きながら。たった一人の少女を中心として、全ては動いていく。




ババラント、マグドフレイモス、オクタイール、ハーラ・ジガント、フリザーニャ、ナルドブレア
一応古龍種。ただしこの世界基準だと弱い。詳細を知りたい人は『トワイライトプリンセス』で検索すれば出てくるはず。

水晶蜘蛛
なんのひねりも無くあの水晶蜘蛛。この世界では古龍種と扱われる。眠っているが、この先どうなることやら。

回帰の獣
正体と行き先はお分かりですよね?


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ダンスパーティの相手

木曜日の変身術の授業。もうそろそろ授業も終わろうとしている頃に、マクゴナガル先生があの話を発表した。

 

「クリスマス・ダンスパーティが近づきました。これは、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の伝統でもあり、外国からのお客様と知り合う機会でもあります。ダンスパーティには四年生以上が参加を許されています。下級生を招待することは可能ですが。それと、パーティ用のドレスローブを着用するように。

ダンスパーティは、大広間で、クリスマスの夜八時から始まり、夜中の十二時に終わります。ところで──」

 

マクゴナガル先生が全員を見渡して、渋々認めるように先を言う。

 

「クリスマス・ダンスパーティは私たち全員にとって、髪を解き放ち、羽目を外すチャンスです」

 

ラベンダーがクスクスと笑う。マクゴナガル先生が髪を結い上げていないところを見たことがないから、楽しみだ。

 

「しかし、だからと言って、決してホグワーツの生徒に期待される行動基準を緩める訳ではありません。グリフィンドール生が、どんな形にせよ、学校に屈辱を与えるようなことがあれば、私は大変遺憾に思います。では、皆さん、素敵なパートナーを見つけられるよう。ああ、ポッターとクリミアは少し残ってください。お話がありますので」

 

ベルが鳴り、みんなが鞄に教材を詰め込んで教室を出る。そんな中、あたしとハリーはマクゴナガル先生の元へと向かった。

マクゴナガル先生は他の生徒がみんないなくなるのを待ってから、その話を切り出した。

 

「二人とも、代表選手、並びに生徒協力者のパートナーは、伝統に従い、ダンスパーティの最初に踊ることになります。あなた方二人で組むと言うのはなしですからね」

 

問答無用。先生は質問や抗議を許さずにあたしたちを教室から追い出した。あたしとハリーは顔を見合わせて、同時にため息をついた。

 

 

 

「ほんと、パートナーどうしよう……」

 

あたしは図書室で机に突っ伏して愚痴をこぼす。踊りたい人なんて今のところ誰もいない。プラムに変身してもらって、生徒と偽って踊るか、それともハグリッドと踊るか……ハグリッドはマダム・マクシームがいるんだった。

近くの本棚では前にも見かけたレイブンクロー生の子が、七年生と思われる男子を誘っていた。訂正、有無を言わさずに連れていくことを決定していた。

ダンブルドア校長に直談判して、ヒトに近い姿の魔法生物をパートナーにする許可でももらってこようかな。多分無理だけど。

 

「ヨハンナさんからメフィストフェレスを借りてくるって手もあるなぁ……」

 

本当に、どうしよう。

 

 

 

あんなに悩んでいたのが嘘のように、あっさりと相手は決まった。まさか、ジョージが申し込んでくるとは思ってもいなかった。

どこで知ったのか、フレッジョはあたしがダンスパーティの相手がいない、決めることも多分ないことをネタにして、「自分たちがパートナーになるから、魔法生物由来の毒液とかの素材を少し譲ってくれ」って取引してきた。もちろんあたしは承諾した。だって、双子ならみんなを笑わせることに使ってくれるだろうしね。

フレッドはアンジェリーナを誘うと言っていたから、あたしはジョージと行くことになった。これでクリスマスまで悩まずに済む。よかった。




フレッジョとリアスの場合

「「おーい、リアス!俺たちとダンスパーティに行かないかい?」」

「どうしたの、急に」

「対抗試合の歴史を知らべて、俺たちはリアスやハリーが最初に踊ることになると知った」

「けど、どう考えてもリアスには心に決めた人がだーれもいない。誰をパートナーにしようか困っている」

「俺はアンジェリーナを誘うつもりだけど、ジョージも誰を誘うか決めていない」

「だからリアス、僕と行かないかい?その代わり、魔法生物の素材を少し譲ってくれる?」

「んー……まあ、いいかな。よろしくね」

「「おう、よろしく!」」


とある二人の場合

「あ、フェルディナンド様。確か、四年生以上はダンスパーティに行けるんですよね?」

「確かにそうだが……君は行けないだろう?二年生なのだし。おとなしく寝ていなさい。ボーバトン生に対する質問もほどほどにしなさい」

「ですが、上級生が招待したのなら、下級生でも行けると聞きましたよ?」

「……何を考えている、ローゼマイン」

「フェルディナンド様、わたしをクリスマス・ダンスパーティに連れて行ってください」

「断る。万が一倒れたらどうするつもりだ」

「そのためにフェルディナンド様がいらっしゃるのでしょう?うふふん、わたしも考えなしではないのですよ!」

「ケリーの入れ知恵か?それと、君の目的は料理だろうな」

「ええ、その通りです。けれど、わたしはフェルディナンド様と一緒に踊ることも楽しみにしているのですよ?」

「……大変結構。君の晴れ姿、期待するとしよう」

「ええ、期待していてくださいね。絶対に、フェルディナンド様を見惚れさせて差し上げますから」


パロキャラ
フェルディナンド・エーレンフェスト
レイブンクロー七年生。知識大好き実験大好き。ローゼマインとの関係は従兄弟で、ついでに許婚。少し気難しい。ローゼマインの保護者。
出展:本好きの下剋上


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ダンスパーティ当日

ハリーがチョウを誘おうとして「ダンパティいたい?」と噛んだ瞬間を目撃したり、血みどろ男爵が灰色のレディを誘おうと花束を用意しているのを見たりしつつ、今学期は終了した。

これまでよりも、クリスマス休暇中に学校に残る生徒は多い。さらに、ボーバトンの生徒やダームストラングの生徒も滞在しているから、学期中に負けず劣らず賑やかだ。

そのためか、厨房の屋敷しもべ妖精たちは大張り切りで温かい料理を作っている。

城にも校庭にも、ボーバトンの馬車やダームストラングの船にも雪が降り積もり、白銀の世界と化している。あ、今、青い妖精みたいなのが飛んでた。

 

 

 

クリスマスのプレゼントは、お菓子がいっぱいと、魔法生物について書かれた古文書、それに、イクラクンとムルムルが鍛ったと言う小さなナイフ。

古文書には面白いことが書かれていた。どこかの海の深くに、レヴィアタンと言う古い龍が眠っているそうだ。天地創造の五日目に創り出されて、不老不死。どこかの陸にはベヒモス、空にはジズと言う生物もいるらしい。ほぼ確実に古龍の類いだろうね。

あと、擦り切れてて読めない場所もある。えーと……『ナイツ』とだけ読めるけど、どんな魔法生物なんだろう。あ、ルシェのことも載ってる。確か、イクラクンとムルムルはルシェ族だし、この生物について知ってるかも?

 

 

 

午後、あたしは青いエプロンドレスに着替えて、玄関ホールへと向かった。途中でジョージを拾って。

 

「へぇ、エプロンドレスか。似合うじゃないか」

 

「ありがと。そっちもなかなかいいね」

 

笑い合いながらホールに出る。ちょうど、ダームストラングが到着した時のようだ。

 

「代表選手、並びに協力生徒はこちらへ!」

 

マクゴナガル先生の声が響く。人垣が割れて、五箇所に道ができた。

マクゴナガル先生は赤いタータンチェックのドレスローブを着て、帽子には薊の花輪が飾ってある。

 

「みなさんは他の生徒が全員着席してから、大広間に入場してもらいます。それまでは、ここで待機するように」

 

あたしは他の代表選手を見てみる。フラーはロジャー・デイビーズと、セドリックはチョウ・チャンと、ハリーはパーバティ・パチルと一緒にいる。

クラムの隣にいたのは、まさかのハーマイオニーだった。髪の毛がパーマになっていなくて、シニヨンになっている。……あれ、今ここにグリフィンドール生何人居るんだろう?えーと、ハーマイオニーに、パーバティに、ハリーに、ジョージに、それにあたし。十人中五人がグリフィンドール生って、比率がおかしくない?

ハリーは、あたしのパートナーがジョージであることに驚いていた。ハーマイオニーもね。

大広間の扉が開き、生徒たちが中へと入っていく。最後の生徒が席に座り、マクゴナガル先生があたしたちを先導して歩く。

 

「リアス、緊張してるかい?」

 

「ジョージはどうなの?」

 

「そりゃ緊張してるさ。でも、一緒に踊る半分はグリフィンドール生だ。ほら、緊張が薄れる」

 

「そうだね。じゃあ、思いっきり楽しもうか」

 

ジョージと話しながら、あたしたちは一番奥の丸テーブルに向かって歩く。

テーブルに十分近づいたところで、ジョージがあたしの手を離して一つの椅子を引いた。

 

「どうぞ、お姫様?」

 

「うわ、似合わない」

 

「そりゃ酷いな。僕ができる最上級のエスコートなのに」

 

あたしはその椅子に座り、ジョージは隣の椅子に座った。……あれ、クラウチさんがいなくてパーシーがいる。そして話しかけられてるハリーが迷惑してる。

目の前の金の皿にはメニューが置かれ、それ以外には何もない。どうしようか、と悩んでいると、ダンブルドア校長が自分の皿に向かってはっきりと「ポークチョップ」と言った。そしたら、その皿にはポークチョップが現れた。

 

「へぇ、面白いな。WWW(ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ)でも使えるようにしたい」

 

「WWWって何?」

 

「僕とフレッドが企んでる悪戯グッズの店さ。これ、パーシーには内緒にしてくれよ?」

 

あたしはクリームシチューを、ジョージはラタトゥイユを注文し、ついでにアッシュワインダーの卵を頼んでいた。一体何に使うつもりなの?




レヴィアタン
M.O.M.分類XXXXX(未確認のため。おそらくは古龍と分類される)
凶暴だが義理堅い。しかし冷酷。少し嫉妬しやすい(悪魔レヴィアタンが七つの大罪のうち『嫉妬』を司るため)。神格持ちの雌。不老不死。
空を飛ぶこともでき、ドラゴンやマンティコアですら即死するような威力の水を操る。
MK.零さんのアイデアです。ありがとうございました。

青い妖精
M.O.M.分類XXXX
現在この項目を確認することは出来ません!本格的に登場した時をお楽しみに!

■■■■■■■■ナイツ
M.O.M.分類XX〜XXXXX
今はこの項目を確認することは出来ません!本格的に登場した時をお楽しみに!

アッシュワインダー
M.O.M.分類XXX
魔法火から生まれる赤い目の蛇。生後一時間経過するか、卵を産むと死亡する。卵は家の中に産み付けられ、しかも高熱を発するために、放っておくと火事になる。凍結された卵は丸呑みすれば熱冷ましになり、愛の妙薬の原料として大変な価値がある。


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ダンスパーティとはぐれた子供

デザートまで食べ終わり、ダンブルドア先生の先導でみんなが立ち上がる。そして、杖を一振りしてテーブルを壁際にどかして、右手の壁に沿ってステージを立ち上げた。その上には色々な楽器が置かれている。

妖女シスターズがステージに上がり、それぞれが楽器を取り上げた。そして、テーブルのランタンが一斉に消える。

 

「それじゃ、踊ろうか。ちゃんとリードしてよね?」

 

「わかってるさ。それでは、手をこちらにお願いできますか、レディ?」

 

妖女シスターズはスローな物悲しい曲を奏で、あたしたちは照らされたダンスフロアに歩み出る。そして、ジョージのリードであたしたちは踊り始めた。

以外にも、ジョージはダンスが上手かった。

少しして、他の生徒たちも大勢ダンスフロアに出てきて踊り始めた。マダム・マクシームはダンブルドア先生と踊っているけど、このあとハグリッドのところに行くのかな?

 

「どうする?もう少し踊るかい?」

 

「あたしはもういいや。端っこの方で座ってるよ」

 

「それじゃ、僕はフレッドとアンジェリーナの踊りを見てくるとするよ」

 

バグパイプが最後の音を震わせて、一つ目の曲が終わる。あたしとジョージはさっさとダンスフロアの外に出た。

 

「そういえばジョージ、なんでこんなにダンスが上手いの?」

 

「覚えておいた方が、いつか何かに使えるかもしれないからね。マグルのブレイクダンスとやらもできるよ」

 

妖女シスターズはいつのまにか、テンポの速い曲を演奏し始めている。ジョージはフレッドを探しに行って、あたしは壁際の椅子に座った。

あ、フレッドがいた。過激……というか危険なダンスだね。近づいたら怪我しそう。

曲が終わるまでに、あたしは何人かの生徒から声をかけられたけど、全部断った。踊るよりも見ている方が気楽だからね。

予想通り、マダム・マクシームはハグリッドと踊っていたし、血みどろ男爵はなんと灰色のレディを誘うことに成功していた。ただ、何があったのか知らないけど、曲が終わった瞬間に男爵はレディにビンタされた。

圧倒的なダンスの技術で周りを驚かせているのはレイブンクローの七年生だね。最も、驚きの理由の一つは相手がちっちゃい子だからだろう。前に図書館で見かけた二年生かな。夜空のような髪の毛を綺麗に結い上げている。

もうデザートとかはないみたいだし、外に出ているとしよう。これ以上ダンスに誘われるのも面倒だしね。

 

 

 

満天の星空の下、あたしは湖の側で座っていた。森に近い一ヶ所だけ、湖は凍りついている。マーカスやオオイカは眠りについているようだ。

ふとダームストラングの船を見ると、船底から何かが岸に上がろうとしている。

じーっと見つめていると、上がってきたのはアザラシだった。白くてふわふわしている子供のアザラシ。

だけど、少し普通のアザラシとは違うところがあった。普通のアザラシよりも一回りほど大きく、牙を生やしている。そして、白い霧が身体の周りを漂っている。

 

「……海凍豹(ゼーカルト)だ」

 

北極海に生息している魔法生物。可愛いけど怒らせるととても危険なアザラシ。普通は四、五匹の群れで生活していて、子供は常に親と一緒にいるはずなのに……。

 

「まさか、ダームストラングの船にくっついてきちゃったの?」

 

……まずい。この子の親が怒ってなければいいんだけど。ゼーカルトが怒ると、最低でも半径二メートル、最大で半径二十メートル以内のゼーカルト以外の生物が凍死する。さすがに古龍種は死なないけど。

取り敢えず保護しないと。ゼーカルトは人気だし、しかも子供だから、見つかったら寄ってたかって撫で回すかもしれない。もしそれでこの子が怒ったら大惨事だ。まだ真夜中まで時間はあるし、ディーナ・シーのところにでも預けに行こうかな?それとも、あたしの部屋に匿うか……ディーナ・シーに預ける方が安心できるね。

こっそりとバックビークの元へ向かい、空へと飛び立つ。行き先は、神殿のある島。

 

 

 

神殿跡地に降り立ったあたしたちを、ディーナ・シーとルビコンが迎えてくれた。銀の妖精の手には純銀のネックレスが握られている。

 

「【久しぶり。そのネックレスは、もしかしてあたしに?】」

 

ディーナ・シーはコクコクと頷くと、あたしの首にそのネックレスをかけてくれた。あたしは微笑み、抱いていたゼーカルトをルビコンに渡した。

 

「【その子、北極海の群れからはぐれてこんなところまできちゃったみたいなの。明後日まで預かっててくれる?】」

 

ルビコンとディーナ・シーはともに頷き、バックビークとあたしを見送ってくれた。城に戻ったらママに手紙を書かなきゃね。場合によってはうちで預かることになるかもしれないし。




海凍豹(ゼーカルト)
M.O.M.分類XXXX
見た目はアザラシだが、本当のアザラシよりも1.5倍ほど大きく、牙が生えている。背中には所々に氷が張り付き、半径二メートルほどには常に白い霧が漂っている。吐息には氷が混じる。とても愛くるしく、とある魔女が、「母性をくすぐられたから」という理由で知らない生物なのにモフりに行ったという記録が残っている。
怒ると霧が最大で半径二十メートルまで広がり、その霧に触れたゼーカルト以外の生物は三秒後には凍死する。氷に耐性を持つ生物、または古龍種なら耐えることができる。氷結呪文の三十倍ほどの力を持っている。
牙は鋭く鋭利、アザラシとは思えないほど俊敏。
近年ようやく世間に浸透し始めた生物で、まだまだマイナー。怒らせると危険なためにXXXXになった。関連本を出版した本屋は発売から一週間ほどは売り上げが恐ろしいほど上がるとか……。
蓬澪静八さんのアイデアです。ありがとうございました。


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第二の課題

結局、ゼーカルトはあたしの部屋で預かることになった。よくキノやフォウ君と一緒に寝ている。見てて癒される。

新学期が始まり、一番最初の魔法生物飼育学の授業は、まさかのユニコーンだった。

 

「ハグリッド、何か悪いものでも食べたの?」

 

「ごめんなさい、ハグリッド。私も同じことを思ってしまったわ」

 

グリフィンドール生のみんながハグリッドを心配する。基本的に凶暴な生物を紹介するハグリッドはどこに行ってしまったのだろう。

 

「いや、たまにはこーんな、美しい生物も紹介しとかんとな。それに、俺はできうる限りこの森に住んどる全ての生き物を教えるつもりだからな」

 

ハグリッドは女子生徒を呼び集めて、ユニコーンと触れ合わせた。そして、ユニコーンの持つ魔法特性を教え、実際にその行動を見ていないとわからない特徴もあげた。このユニコーンはハグリッドのことを信用してるみたいだね。一角獣が男性に触れさせるのは珍しいし。

 

 

 

一ヶ月ほど経過し、とうとう第二の課題の前夜。あたしとマクゴナガル先生は湖で明日に向けての仕込みをしていた。具体的には色々な水棲魔法生物を放したりとか。こっそりとゼーカルト──シロにも協力してもらうことにした。さあ、明日が楽しみだね。

 

 

 

「──さあ、全選手の準備ができました!第二の課題は私のホイッスルを合図に始まります。この課題の監修はミス・クリミア。本日の湖には様々な水棲生物が放されています。それらに気をつけて、選手たちは、きっちり一時間のうちに奪われたものを取り返します。では、三つ数えて──いーち……にー……さん!」

 

課題が始まり、四人が湖に入る。ハリーは何かを口に含み、フラーは頭に泡を被った。〈泡頭呪文〉だろう。セドリックも同じ手段だった。クラムは頭をサメに変身していた。

さて、あたしは〈使い魔呪文〉でみんなの様子でも確認してようかな。

 

「〈使い魔作製(クレアチオ・ファミリア)〉、〈見せてちょうだい(ポゼッション)〉」

 

魚型の使い魔を作り、憑依する。さてさて、まずは誰を見ようかな?

一番近くにいたのはフラーだった。シュレイクから逃げている。あ、マーレオンに突進されて……あれ、シュレイクとマーレオンが逃げて……水魔(グランデロー)が渾身の突進をかまして首を締め付けている。なんとかフラーは逃げることができたけど、頭の泡が割れてしまってリタイアとなってしまった。水中人(マーピープル)が回収して岸に連れて行ってくれた。

次に見つけたのはセドリック。湖の中で迷い、シロに翻弄されたようだ。それとヌルフパス。

離れたところではクラムがオオイカと喧嘩している。シロがオオイカを誘導したのかな?




マーレオン
M.O.M.分類XXX
カジキの顔にカメレオンの体をしている謎生物。透明化と電気ショックを使える。突進も強力な武器となる。
体長はコロコロコミックほど。
光る物に突進する性質を持つ。今回はフラーの泡頭呪文による泡に光が反射したために突進。
覇王龍さんのアイデアです。ありがとうございました。


『今後に関するアンケート』を今話の投稿時間をもって締め切らせていただきます。

集計結果
ガチート希望:二十六票
そこまで行かなくても……:二票
合計二十八票
一言「みなさんどんだけガチート好きなんですか?」


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第二の課題:【終了】

祝百話到達!
いやー、話が進むのが遅いから百話かかってもまだゴブレット編でうろちょろしてるんですよね。このままだと二百話行かないと完結しないなんてことになりそうで……。


少ししてハリーを見つけた。耳の下にはエラがあり、両手両足には水掻きがある。なんと言うか……人間よりの半魚人?少なくとも、人魚とは違うね。

ハリーはもうすぐ水中人(マーピープル)のところに到達しそうだった。時々シュレイクとかに当たりそうになってるけど上手く避けている。

時間は残り半分、三十分だ。

ハリーが向かう先には水中人の村がある。その中央にある石像に人質たちは縛られている。ハリーの人質はロン、クラムはハーマイオニー、セドリックはチョウ・チャン、フラーは妹のガブリエル。一応弁明しておくと、人質全員に許可を得て縛り付けている。

ハリーが村に着いた。ロンの元に泳いでいくと、あたりを見渡して近くの水中人に槍を貸してもらおうとしていた。水中人たちは手助けはしてはいけないことになってるし、他の人質を選手が助けようとしたら邪魔することにもなっている。

ハリーは湖底からギザギザした石を拾って、それでロープをたたき切った。そして、あたりをもう一度見渡してからハーマイオニーのロープも切ろうとして、水中人たちに抑えられた。

その時、セドリックがやってきた。ポケットからナイフを取り出してチョウのロープを切り、浮上して行った。

次に来たのはクラム。歯でロープを切ろうとしたけど無理だったようで、ハリーから石を受け取ってロープを切った。

少しの間浮かんでいたハリーは、フラーが来ないことを悟ったようで、ガブリエルのロープを切ろうとして、水中人に邪魔された。けど、杖を取り出して水中人たちに向け、怯えた水中人たちは散り散りに逃げた。

さて、あたしはそろそろ地上に戻ろうかな。もう少ししたらハリーも上がってくるだろうし。

 

 

 

数分後、ハリーとロン、ガブリエルが二十人ほどの水中人とともに浮上してきた。これで第二の課題は終了、あとは得点発表だけだね。これにはあたしは関係ないし、離れたところでペットたち(みんな)を家に送っておこう。あ、でもその前にちゃんと褒めてあげなきゃ。みんな頑張ってたんだし。

協力してくれたみんなをスタンドから離れた岸辺に呼び出し、頭を撫でる。スタンドの方からはバグマンさんの声が得点を発表している。フラーは二十五点、セドリックは四十七点、クラムは四十点、ハリーは四十五点とこのこと。セドリックとハリーがこの時点で一位だ。

 

「〈ありがとう(レパトリエーション)〉」

 

シロ以外のみんなを家に帰して、あたしは一人……じゃなくてキノ、シロ、フォウ君と共に部屋に戻った。第三の課題は六月の二十四日。その一ヶ月前に課題の内容が代表選手に知らされる。あたしは発表の一週間後に、代表選手たちに魔法生物に関しての講習をすることになっている。さてさて、どんな生き物を紹介しようかな?



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迷路準備

最近クロックワーク・プラネットにはまりました、零崎です。巨大な歯車による機構とか思いっきり心をくすぐられるんですよねぇ。










──夢を見た
──全てを見た
──この世全ての善を見た
──この世全ての悪を見た
──人類の希望を見た
──人類が滅ぼす悪を見た
──彼は願った
──『もし生まれ変わるのなら、次こそは普通の人間として』
──その願いは歪められた形で叶った
──その懺悔を、我ら一同を代表してここに記す
──我が名はサ────










──何か、夢を見た気がする。

目をこすりながら、目が覚めてから意識がはっきりとするまでの数秒の間に忘却されてしまった夢を考える。あれは、一体なんだったのだろう。

 

「……ま、考えても仕方ないか」

 

夢をもう一度記憶の彼方に投げ飛ばし、夜中にマクゴナガル先生からもらった迷路の地図を見る。この地図に描かれているのは初期の道で、時間が経つとどんどん道が消えたり出たり、姿が変わっていくそうだ。

一部に沼地を作るのもいいかもしれない。少なくとも水場は欲しい。あと広間みたいな広い場所。

あと三ヶ月以内に配置する動物たちを考えないとだから、結構大変かもしれない。いや、全員投入すればいいだけの話か。

 

「フォーウ、キュー」

 

窓の外を見て唸っていたフォウ君を抱き上げる。フォウ君の言葉は、あたしでも時々わからないことがある。ほんの少しだけ聞こえたことがあったけど、その時は「マー──────フォーウ!」としか聞こえなかった。多分最初のは人名なんだと思うんだけど……。

とりあえず、あたしは階段を下りて大広間に向かった。今日は何の授業があったっけ……。

 

 

 

それから三ヶ月は、特に何もなかった。ニフラーをハグリッドが授業で使ったり、イースターでみんながはしゃいでいたりしたけど。

五月の最終週の夜九時に、あたしと代表選手はクィディッチ・ピッチに集められた。

 

「さあ諸君、何を使っているかわかるかね?もちろん、ミス・クリミアは答えないでくれよ」

 

目の前にあるのは高さ一メートルほどのくねくねした生垣。みんなが頭をひねる中、クラムが答えた。

 

「迷路」

 

「その通り!第三の課題は迷路だ。迷路をいち早く抜け、中央に置かれた優勝杯に触れる。一番最初に触った者が優勝だ。最も単純明快だが、最も恐ろしい課題となる。理由はわかるね?」

 

選手四人の視線があたしに向けられる。みなさんよくおわかりのようで。

 

「呪いも待ち受けるから、知恵と勇気、そして体力!さらに言えば運も必要となる。入る順番は成績順だ。

質問はないようだね。最後に一つだけ。来週は休みになっている。時間の使える限り、ミス・クリミアに魔法生物の講習をしてもらう予定だ。必ず参加するように」

 

あたしは一礼して微笑んだ。

そのあとはみんな城に帰り、ハリーとクラムは何やら森の方に二人で歩いて行った。

彼らと入れ替わるようにして、森の中から白く透き通った花束を持った血みどろ男爵がやってきた。機嫌が良かったらしく、あたしをすり抜けるまであたしの存在に気づいていなかった。どうやら、花もゴーストになることがあるようだ。

 

「む……貴様はグリフィンドールの……ううむ、名前が思い出せん。動物少女と呼んでも良いな?」

 

「リアス・クリミアです、男爵。ダンス素敵でしたよ。そのあとビンタされてたのは面白かったですけど」

 

「……見られていたか。クリミア嬢、第二の課題は実に面白かった。第三の課題も期待させてもらおう。その前に一つだけ……幸運が舞い込む魔法生物はいるか?」

 

男爵が顔を近づけてこっそりと聞いてくる。あたしも、小さな声で答えた。

 

「いることにはいますけど……あの生き物は、あたしの手には収まりませんよ。捕獲してもいつのまにかどこかに消えてますし」

 

「ほう……何と言う生物だ?」

 

「イークェスラルって言うんですけどね。南米に生息する極彩色の羽根を持つ蛇です。ついでに言うなら、翼ある蛇神(ケツァル・コアトル)の眷属です。人間大好きですけど滅多に現れませんし、マグルに隠すこともできません。でも、マグルにとっては神様認定されるために狩られてません。そもそも狩れません」

 

「……自力で玉砕してこい、と。せっかく世にも珍しいゴーストの花を見つけたのだ。当たって砕けるのもまた一興よ。クリミア嬢、汝の生に幸があるように」

 

「レディへの告白頑張ってくださいねー」

 

右手を挙げ去っていく男爵の背中はカッコ良かった。

さて、あたしも部屋に戻ろうか。




イークェスラル
M.O.M.分類XXXX
南米の特定地域に生息しているが、他の大陸でも見つかることが多い。極彩色の翼を持つ、白と緑の文様の蛇。全長三メートル、翼は五メートルほど。オカミーに似ているが全く別の生物。近縁種でもなく、たまたま姿が似通っただけ。翼ある蛇神の遣いと言われている……が、実際は本当に遣い。しかもルチャ好きな女神の方の。
人語を解し、主にマヤの遺跡などで確認される。
主の間違った方向に出力されてる人間への愛をそのまま体現してやりかねない。
火を吐き、風を吹かせ、水を湧き出させ、作物を豊作にし、人間の身体と精神へ影響を及ぼす。
人間への被害報告はないが、たまに身体強化された人間が見つかる。
羽根はお守り(健康と長寿)になり、イークェスラルが渡してもいいと思った人間へ渡すので、マグルでも持っている者はいる。マグルの技術で解析してもただの鳥の羽根。そもそも神にあったと勘違いする。
熨斗付けた紅白蛇さんのアイデアです。ありがとうございました。


そろそろガチート用の伏線を徐々に張り始めます。


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講義

二つ目の夢


──夢を見た
──この世全ての喜劇を見た
──この世全ての悲劇を見た
──我らは覗いた
──彼の、表には出さぬ苦悩の軌跡を
──彼の、決して見せることのなかった悲しみの痕跡を
──我は彼の転生の論理を組んだ
──そのことを、我はここに記そう
──我が名はア──










六月の最初の週のとある日。

あたしは黒板の前に立ち、目の前には四人の生徒──ハリー、セドリック、クラム、フラー──が席に座っている。

黒板には、ダンブルドア校長とバグマンさんがノリノリで書いたであろう言葉が書かれていた。それも、あたしが恥ずかしくなるようなものだ。

 

 

『リアス先生のドキドキ☆魔法生物講座!』

 

「──本当、あの二人の飲み物にマラクローのエキスでも入れようかな」

 

「返り討ちにあーうのが目にみーえます」

 

フラーのツッコミもあったことだし、仕返し案は諦める。恥ずかしい言葉をさっさと消して、あたしは教壇に立った。

 

「じゃあ、ちゃっちゃと始めますねー。今回は、第三の課題に出るかもしれない魔法生物たちの紹介、並びに対処法の説明をします。完全にランダムで紹介するからちゃんとメモとかを取ることをお勧めします。質問がある人はその都度挙手してください」

 

「じゃあ、一つ質問してもいい?」

 

「はい、ハリー」

 

「出るかもしれない、じゃなくてほぼ確実に出る、だよね?」

 

「うん、その通り」

 

教壇の上には魔法生物たちの写真がいくつも置かれている。もちろん、説明用だ。

まずあたしは、砂漠の真ん中で撮られたような写真を黒板に貼った。

 

「一種類目はスフィンクス。M.O.M.分類XXXX。知能が高くて、なぞなぞやパズルを好む。通称、砂漠の賢者。対をなすように、ケンタウロスは森の賢者と呼ばれてるよ。必要なのは知恵と知識、閃きかな?」

 

誰の手も上がらないことを確認して、あたしは次の写真を貼る。

 

「次はミザールって生き物。M.O.M.分類XXX〜XXXX。北斗七星の模様を持ってて、全体的に暗い青を基調とした夜色。五センチぐらいだから気をつけて。星が見える場所にいるよ。見つけても攻撃しないこと。誠意を持って、自然を大切に。そうすれば、迷いの答えへと導いてくれるから。場所だったり人だったりするけどね。

攻撃したりした人相手にはアルコルって生き物に変化するの。下から二つ目の模様の隣に、小さな星が増えてる。ついていかないように注意してね。神隠しにあうから。それも、永遠に戻ってこれない神隠しに」

 

セドリックが手を挙げた。

 

「今回の課題で、ついていってしまった場合はどうなるんだい?」

 

「今回は迷路のどこかに出るように言ってあるから大丈夫。さらに迷うだけで済むから」

 

次の写真を貼る。黄色いタコの写真だ。

 

「ヌルフパス。M.O.M.分類XXX。感情に合わせて色が変わる。まあ、手入れしてくるだけだから、気にしなければ平気。

次は霧山羊(カペルネブラ)。M.O.M.分類XXX。霧を出す生物で、霧と一緒に出されるフェロモンには幻覚作用がある。頭がいい個体だと、フェロモンだけをだしたりすることがある。自然発生した霧だとさらに効果が上がるからね。〈泡頭呪文〉でフェロモンを吸い込まないようにするか、〈霧払い呪文〉で霧を払うのが有効だよ」

 

続いてはミグラージ。そもそも見分けるのが難しいから、人によってはきついかもしれない。

真似妖怪(ボガート)の説明もする。こっちは有効な呪文がある分楽かもね。

ポグレビンはM.O.M.分類XXXの悪鬼。しゃがみこむと岩のように見える。人の影に入って尾行するのが好きで、憑かれた人は虚しさに囚われ、最後には無気力、絶望状態になる。疲れてきたら一度振り向き、真後ろにある石、もしくは岩に〈失神呪文〉を使ってみるといいだろう。

その他細々したM.O.M.分類XX〜XXXXの生物たちを紹介し、いよいよXXXXXの生物だ。

 

「まずはヌンドゥ。特徴的な姿をしてるから、姿が見えたらすぐに反対方向へ。今回は軽めの病毒にしてもらってるけど、それでも〈泡頭呪文〉が意味をなさないし、感染したら多分リタイアするしかなくなると思う。幻覚とか激痛とか下痢とか。決して倒そうだなんて思わないこと。熟練の魔法使い百人で、たった一度しか鎮めることができなかったからね。

次にレシフォールド。生ける鎖帷子(リビング・シュラウド)って呼ばれることもあるよ。黒いマントみたいな姿で、人に覆い被さるようにして襲うの。〈守護霊の呪文〉しかきかないから注意してね。

アクロマンチュラは巨大な蜘蛛。強力な毒を持っていて、すぐに増える。本来はイギリスにはいないんだけど……実は、禁じられた森の奥深くに巣があるの。今回はそこの群れに協力してもらいます。決して巣には近づかないように。ハグリッドかあたしがいないと襲われるから。

続いては蛇王バジリスク。秘密の部屋にいた子……シャルロッテに協力してもらう。魔眼は使わないように言ってあるけど、それでも強いから注意してね。尻尾の一撃とか、毒とか。あと、鏡越しとかなら魔眼使ってもいいって言ってあるからね。

キメラはギリシャの怪物で、ライオンの頭、山羊の胴体、蛇の尻尾を持ってるの。尻尾は蛇の頭で、毒を持ってるからね。

マンティコアもギリシャの怪物。頭はヒトで胴体はライオン、尻尾はサソリ。今回は尻尾は使わないように言ってあるから安心して。

どうせならクィンタペッドも入れたかったけど、さすがに無理だったよ。

あとコカトリス。身体鶏で尾は蛇。凶暴。

ドラゴンは今回は参加しません……本物はね」

 

「本物はって?」

 

「いい質問ですハリー。今回参加するのはゴーレムです。製作、マクゴナガル・フリットウィック両先生。(ソイル)ゴーレム、(ウッド)ゴーレム、(ボーン)ゴーレムなどなど。姿形も様々で、ドラゴンゴーレムも混じってるからね」

 

さて、これで全部かな?あとはどこにみんなを配置するか決めるだけだろう。写真は四人の研究用に置いておき、寮に戻ることに決めた。




ミザール
M.O.M.分類XXX
体長五センチほどの夜色の生き物。背中に北斗七星の模様がある。星の見える場所にならどこにでも生息している。攻撃的ではないが知能が高い。
自然を大切にし、誠意のある者には一緒に行動することがあるが、自分の住処や周りの自然を壊す者相手には後述の生物に変わる。
迷いのある者を、答えのある場所へ導く。それは道でも、精神的なものでも。答えは人のこともあるし、知識のこともある。景色のこともあったりする。どんなに遠い場所に答えがあっても、ミザールについて行くうちにいつのまにか辿り着いている。おそらく、空間に作用する能力を持っている。

アルコル
M.O.M.分類XXXX
ミザールが変化した姿。下から二つ目の星の隣に小さな星が増えている。
ミザールと勘違いしてついてきた者を死に誘う。方法は神隠しで、いつのまにか世界から消えている。二度と見つかることはなく、アルコルなどの一部生物にしか干渉できない異世界に飛ばされたと考えられる。
うたてめぐりたいさんのアイデアです。ありがとうございました。


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第三の課題の前に

三つ目の夢



──夢を見た
──この世全ての正義を見た
──この世全ての災厄を見た
──我らは彼の、最初で最期の願いを叶えようとした
──我は集めた
──ヒトには成し得ない秘術の情報を
──もしも我──否、私が確認していたら
──その未来を聞かれていたのなら
──私は、我が権能を持って答えられていたのだろうか
──その未来を知れたのだろうか
──私は後悔と共にこの名を記そう
──我が名はフ────










代表選手とあたしは期末試験が免除されているから、昨日から始まっている試験の時間は暇だった。ハリーは使えそうな呪文を探しているみたいで、時折あたしの方を見てきたけど、何も答えるつもりはない。

今日──午後には最終競技がある──はいつもとは違い、代表選手とあたしは朝食の後すぐに、大広間の脇の小部屋に集められた。

みんな小部屋に入ったけど、ハリーだけは入ってこなかった。おそらくハリーの応援に来たのであろう、モリー・ウィーズリーさんとビル・ウィーズリーさんがクスクス笑っていた。

 

「ハリー、来いよ。みんな君を待ってるよ!」

 

セドリックが扉から顔を出してハリーに呼びかける。その時、あたしは誰かに飛びつかれて抱きしめられた。白いサラサラの髪の毛があたしの周りを覆う。

 

「初めましておねーちゃん!ムルムルだよー!」

 

狐耳の女の子があたしに頬擦りしてくる。後ろの方ではママが笑いモコモコ短髪の女の子が頭を抱えていた。

 

「えー……とりあえずムルムル、リアスから離れなさい。困惑してますから。

初めまして、リアス。拙はイクラクン、今あなたから剥がしたのは妹のムルムルです。よろしくお願いしますね?」

 

「うん、よろしく」

 

半年ほど前、ママが救って養女にした双子のルシェ。あたしの姉になるのか妹になるのかはわからないけど、家がさらに賑やかになったことだけはわかる。

そう言えば、一つ気になってたことがあったんだった。

 

「この古文書に載ってる、ナイツって生き物について知ってることはない?」

 

クリスマスに貰った古文書をイクラクンとムルムルに見せる。ムルムルは頭を傾げてたけど、イクラクンはわかったようだった。

 

「エレメンタルリアナイツと言う種族ですね。六種族存在していて、そのうち一種族は存在の確認が取れていません。

四元素が元になっているM.O.M.分類XXのアクアエレメンタル、エアエレメンタル、M.O.M.分類XXXのフレイムエレメンタル、アースエレメンタル。M.O.M.分類XXXXの統率個体ライトエレメンタルとダークエレメンタルが現在確認されています。統率個体は一種族一体しか存在していないようですね。

森の奥地に種族ごとに集落を作っているので、もしかしたらこの学校の森にもいるかもしれません。なにせ、大妖精がいるほど自然が多いのですから」

 

「大妖精?」

 

また知らない種族が出てきた。

 

「あー、そう言えば飛んでたねー。普段は見えないから、リアスも知らなかったんじゃない?確か、M.O.M.分類XXXXだったかな」

 

今度はムルムルが答えてくれた。そんな魔法生物がいたなんて、知らなかった。

 

「もしかしたら、リアスも見ていたのかもしれません。青い妖精を見ませんでしたか?湖の一部を凍らせているのですが」

 

「あ、その子なら見たことあるかも」

 

確か、ダンスパーティの頃に見た覚えがある。

 

「それが大妖精です。おそらく氷の妖精ですね。人間には無関心ですが、時々悪戯をする個体がいるので注意してください」

 

へぇ……近くで見てみたい。エレメンタルも大妖精も。いつか会えるかな……?

近くでディゴリーさんとウィーズリーさんが言い争いをしてるのを見て、あたしたちは森の方へ行くことにした。




情報を解禁します!

大妖精
M.O.M.分類XXXX
人間とほぼ同じ容姿をしているが、髪は水色や緑が多く、透き通った綺麗な羽を持つ。全個体が女性体で、幼女が多い。
自然に住まい、自然から産まれる。普段は見ることが出来ず、現在確認されてる個体数は一桁。人間に無関心だが時々悪戯好きな個体がいる。杖による魔法がきかない。近くに自然があれば死んでもすぐに復活する。
個体により知能が上下し、天才から馬鹿まで様々。
自然の力を真似することができ、使える力は個体によって違う。前にリアスが見た青い妖精(髪の色は水色)は氷の力。
元ネタは東方Projectの妖精。大ちゃんとかチルノとか。
影姫華輪さんのアイデアです。ありがとうございました。

エレメンタルリアナイツ
M.O.M.分類XX〜XXXXX
四元素が元となった四種族、光と闇の二種族、統率者たる一種族、計六種族を纏めてエレメンタルリアナイツと呼称する。種族ごとに名前はあるが、纏めて呼ぶことが多い。
種族差はあるが共通して人型。それぞれが別の属性を宿し、それによって危険度などが変わる。属性を帯びた武器を使う。統率個体三種族は特に知能が高く、思念会話が可能。

M.O.M.分類XX
アクアエレメンタル
水属性。女性体のみ。穏やかな性格で人になつきやすい。彼女たちの出す水は簡易的な治癒薬になる。

エアエレメンタル
風属性、幼子の容姿が多い。悪戯好きで突然の突風などを起こす。

M.O.M.分類XXX
フレイムエレメンタル
炎属性で熱い場所を好む。男性体が多い。種族全体の見張り役であり、敵対しない限りは襲ってくることはない。剣を好む。

アースエレメンタル
土属性で中性的な顔立ちが多い。魔眼持ちで、発動した場合は見た場所を土で覆い閉じ込めることができる。脱出は容易だが、その間にフレイムエレメンタルが来る。単独戦闘も可能で、拳を硬化して物理攻撃を行う。一般的な魔法使いなら三撃耐えれればいい方。

M.O.M.分類XXXX
ライトエレメンタル
ダークエレメンタル
統率個体二種族。一体ずつしか存在せず、ライトは剣と盾を持った女性騎士、ダークは東洋の忍びのような姿で刀を持った男性体。共に知能が高く思念会話が可能。誇り高く礼節を重んじる。

M.O.M.分類XXXXX
リアライズエレメンタル
未確認統率個体。出会った者はいるが、生還者がいないために詳しいことがわからない。種族全体の統率者であり肉声会話が可能。使えるべき王を探していて、容姿はその鏡写しとも。

森の奥地に、種族に適した集落を形成している。
月影夜葬さんのアイデアです。ありがとうございました。


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第三の課題

四つ目の夢



──夢を見た
──この世全ての紛争を見た
──この世全ての平和を見た
──我らは願った
──彼の願いの先に、自らを押し通せる力を得ることを
──我らは解放した
──我らの力を、軍勢の力を
──そのことを、ここに記し報告としよう
──我が名はハ────










晩餐会が終わり、クィディッチ競技場へと全員が移動する。マクゴナガル先生から少しばかり説明が行われ、バグマンさんが杖を自らの喉元に当てる。

 

紳士、淑女の皆さん(レディース・アーンド・ジェントルメーン)!第三の課題、そして、三大魔法学校対抗試合最後の課題が間も無く始まります!現在の得点状況をもう一度おさらいしましょう。同点一位、得点八十五点──セドリック・ディゴリー君とハリー・ポッター君、共にホグワーツ校!」

 

大歓声と大きな拍手。

 

「三位は八十点──ビクトール・クラム君。ダームストラング専門学校!」

 

次はダームストラングの生徒たちから拍手。

 

「そして四位──フラー・デラクール嬢、ボーバトン・アカデミー!」

 

最後に、ボーバトンから拍手が起こる。

 

「四名の勇気と、この試合に大きな貢献をしてくれたリアス・クリミア嬢に、大きな拍手をお願いします!」

 

会場全体から、大きな拍手が響く。少し恥ずかしい。ふと、代表選手たちの頭上に、光を見つけた。淡く輝く、柔らかな光。そしてその中から、翼を持った蛇が、姿を現した。

 

「では……ホイッスルが鳴ったら──クリミア嬢、これは演出ですかね?」

 

「予想外です」

 

現れたのは、イークェスラル。蛇神に仕える魔法生物。代表選手四人を祝福するように彼らの上を飛び回り、一人に一つ、羽を落として消えていった。

 

「な、なんだったのでしょうか……」

 

「一つだけ言わせてください。その羽は大切に持っていてください。お守りになるので」

 

バグマンさんの言葉を遮って、大切なことを伝える。

そして、バグマンさんがホイッスルを鳴らして──セドリックとハリーが迷路の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

【ハリー視点】

 

僕は見たこともない魔法生物の羽をローブのポケットに入れて、暗い迷路の中を進んでいる。一緒に入ったセドリックは先ほどの分かれ道で別々の方向に進んだ。

二回目のホイッスルが聞こえて、僕は早足で進み始めた。この先に何がいるかは予想がつかない。リアスのことだ、危険な魔法生物が大勢放たれていることだろう。

ホイッスルの音が聞こえて、四人目の選手が迷路に入ったことを知った。焦る、焦る。

スクリュートに出会ったというセドリックとすれ違い、角を曲がる。スクリュートにもリアスが関わっているんだ、魔改造されているだろう──

角の先に居たのは、二人の吸魂鬼(ディメンター)。恐怖を感じながらも、冷静に、幸福な瞬間を思い浮かべる。

 

「〈守護霊よ、来たれ(エクスペクト・パトローナム)〉!」

 

銀の牡鹿が杖先から出て、吸魂鬼めがけて駆ける。吸魂鬼は後ずさりして、転び──転んだ?

 

「もしかして──〈ばかばかしい(リディクラス)〉!」

 

吸魂鬼の片方が風船に変わり、どこかへと飛んでいく。やっぱり、真似妖怪(ボガート)だった。

問題はもう片方の吸魂鬼。転んではいたけど、こっちは……あ、もしかして。

 

「〈化けの皮、剥がれよ(スペシアリス・レベリオ)〉!」

 

途端に、吸魂鬼の姿が不定形の何かに変わった。ミグラージだ。横をすり抜けて、先へ進む。守護霊はいつのまにか消えてしまった。

 

「〈方角示せ(ポイント・ミー)〉!」

 

四方位呪文で北を確認し、北西へと向かう。何度か袋小路にあたり、さまよっていると、道の先に金色の霧が見えた。嫌な予感がするけど、進むしかない。そういえば、霧を吹き飛ばす呪文があった。

 

「〈霧よ去れ(カリゴ・ヴァニッシュ)〉!」

 

まだ上手く使うことはできずに、半分ほどしか霧を晴らすことはできなかった。もう一度使おうとして、前方からフラーの悲鳴が聞こえた。もう迷ってる暇はない。呪文を使う時間もないかもしれない。走り抜けよう。

息を吸い込み、霧の中に足を踏み入れる。

その瞬間、視界がひっくり返った。足を動かそうとすると、空に落ちてしまいそうな気がする。そして、足元の夜空からは再び、吸魂鬼が現れた。その手には──ロンとハーマイオニーが掴まれていた。そのおかげで、僕は真実に気がついた。

足を踏み出し、先へ進む。その途端に世界は元に戻った。目の前では、巻角を持った大きな山羊──霧山羊(カペルネブラ)が座っている。金色の霧は、おそらくフリットウィック先生か、スネイプが作ったんだろう。その霧に便乗させる形で、霧山羊のフェロモンを使ったんだ。

僕は走り始めた──これ以上、試練がないことを祈りながら。




四つ目の夢の前にBBchannel挟もうと思ってしまったなんて言えない……


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第三の課題Ⅱ

本日二話目。十一時四十四分に一話投稿してるので、未読の人はそちらから。

五つ目の夢



──夢を見た
──この世全ての統治を見た
──この世全ての叛逆を見た
──ついでに言うなら、この世全ての暴虐を、略奪を見た
──我らは魔力を支えた
──彼の夢を叶えるために奔走するものを補佐した
──彼の夢を叶えるために行動するものを維持した
──ならばこそ、我らの行動には意味があり
──それの価値を決めるのは我々ではないのだろう
──史実に残らない記録のために、我は名乗ろう
──我が名はバ────










【前話に続きハリー視点】

 

フラーの姿は見当たらなかった。どこかに逃げたのかもしれない。

十分ほどは障害にはあわなかった。通らなかった道の先においでおいで妖精(ヒンキーパンク)の灯りが見えたぐらいで、あとは道が袋小路だったぐらいだ。

やっと見つけた新しい道で、僕は自分の運を呪いそうになった。三メートルを超える、尻尾爆発スクリュート──そして、さらに最悪なことは──その後ろにマンティコアがいたことだ。後ろからはズシンズシンと、重い足音が聞こえてくる。チラリと後ろを確認すると、そこには、骨でできたドラゴンがこちらを向いていた。形は、前にダドリーが欲しいとねだっていたハンティングゲームに出てくるドラゴン──ナルガクルガとやらに似ている。

前門の虎後門の狼ならぬ、前門のスクリュートとマンティコア後門のボーンドラゴン。普通なら、絶対絶命だと思うだろう。

でも、僕にはある自信があった。この前の、リアスの授業を思い出したからだ。

 

マンティコアは、この課題中は尻尾を使わない。

 

マンティコアの恐ろしいところは、既存のほぼ全ての魔法を跳ね除ける皮膚と猛毒の尻尾。皮膚の方は、あまり問題にはならない。それに、今なら多少無茶をしても上手くいく気がする。羽を入れたポケットがほんのりと暖かくなっている。

僕はスクリュートに杖を向けて、落ち着いて呪文を使った。

 

「〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!」

 

飛びかかろうとしたスクリュートの、殻のない肉の部分に上手く呪文が当たる。これでスクリュートは少しの間動けない。

嫌な予感がして、とっさに前に避ける。さっきまで自分がいた場所に、骨が突き刺さっていた。ボーンドラゴンが飛ばしてきたんだ。多分、あれがリアスが言っていたゴーレムなんだろう。史実のゴーレム通りに作ってあるなら、どこかに文字があるはず……でも、それを考える前に、まずはマンティコアだ。

マンティコアが飛びかかろうと体制を整える。失敗はできないし、確証はないけど、上手くいく自信がある。

 

「〈縛れ(インカーセラス)〉!」

 

マンティコアの尻尾と生け垣をロープで結ぶ。ジャンプしたマンティコアはすぐに、勢いよく前のめりに地面に落ちた。

予想通り、魔法自体には強いみたいだけど、対象に何かを巻き付けたりする魔法はきくようだ。

呆然としているマンティコアの横を走り抜ける。危険なのからは、さっさと離れる方がいい。できればそのまま、ボーンドラゴンと潰しあっててくれ。

再び迷い、北西への道を歩いているとき、この道と平行に走る道から声が聞こえた。セドリックの声だ。

次に、クラムの声が聞こえた。それは呪文で、ムーディ先生から聞いていた呪文だった。

 

「〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

何かを考える暇もなく、僕は生け垣に〈粉々呪文〉を使った。あまり効果はなかったけど、それでもギリギリ僕が通れるぐらいの穴は開いた。そして、セドリックに覆いかぶさるように立っているクラムの背中に、〈失神呪文〉を放った。

 

「大丈夫?」

 

まだ息は乱れているけど、セドリックは立ち上がった。

 

「クラムがこんなことをするとは……思ってすらいなかった。しかし、無茶をするねハリー。生け垣に穴を開けるだなんて」

 

「スクリュート、マンティコア、ボーンドラゴンと同時に行き会うよりかはマシだよ」

 

セドリックは心底驚いた様子だった。

僕は杖を上げて、赤い火花を打ち上げる。そして、セドリックとどちらともなく離れていった。



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決着

六つ目の夢


──夢を見た
──この世全ての光を見た
──この世全ての闇を見た
──我らは溶かした
──彼の力を溶かし、魔力とした
──彼の象徴を溶かし、魂の支えとした
──ならばこそ、我らに責任があるのだろう
──彼女が特異な力を得てしまった責任は
──だが
──彼女がその力を喜ぶのなら
──彼を苦しめ、我々を苦しめたその力の片鱗を愛し、愛されるために使うのなら
──それもまた一興である
──我らは歌を編もう
──代表として名乗る
──我が名はナ────










少しして行き逢ったスフィンクスの謎々(リドル)に正解し、僕は進む。

そして、百メートルほど先にとうとう優勝杯が見えた。そして、セドリックがそれに向かって走っているのと、左の生け垣の上に、巨大な蜘蛛──アクロマンチュラには届かないようだけど、それでもホグワーツの一年生ぐらいはある大きさの蜘蛛がセドリックめがけて走っているのを見た。セドリックは、それに気づいていない。

 

「セドリック!左を見て!」

 

セドリックが蜘蛛に気づいて、避ける。けど、足がもつれて転び、杖を手放してしまった。蜘蛛はセドリックにのしかかろうとしている。

 

「〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!」

 

蜘蛛の胴体に呪文を直撃させる。けれど、あまり効果はなかった。それこそ小石をぶつけたぐらいにしか。

ただ、それでも蜘蛛の獲物が僕に変わるには十分だったようだ。

 

「〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!」

 

呪文をいくらぶつけても意味がなく、とうとう噛まれてしまった。激痛が足に走る。

がむしゃらに、僕は一つの呪文を唱えた。僕が最も信頼している呪文の一つを。

 

「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」

 

この呪文は有効だったようで、蜘蛛は僕を取り落とし、間髪入れずに、再び失神呪文を使った。ただし、今度はセドリックも同時に。

さすがに同一呪文の重ねがけには耐えることはできなかったようで、蜘蛛はズシンと大きな音を立てて倒れた。

 

「ハリー、大丈夫か?」

 

セドリックが駆け寄ってくる。大丈夫だ、と笑おうとして、足から血が出てることに気がついた。歩くのに支障が出るか出ないか、そのぐらいの傷だ。でも、走ることは確実に無理だろう。

 

「セドリック、君が優勝だよ」

 

セドリックが目を丸くして、僕を見つめる。

 

「僕よりも先に君が到着したんだし、僕はこうして、走ることが困難だ。今から走っても、君には勝てない」

 

「いやだ」

 

セドリックが子供のように答える。

 

「僕は君に二回も救われた。優勝すべきなのは僕じゃない、君なんだ、ハリー」

 

「そんなルールじゃない」

 

「それでも、だ。ああ、ついでに、君には第一課題のことを教えてもらった。ドラゴンだと知らなければ、僕は第一課題で落伍していたさ」

 

「あれは、僕も人から教えてもらったんだ。それに、セドリックには卵のことで助けてもらった」

 

「僕も卵のことははじめから人に助けてもらったんだ」

 

セドリックは優勝杯から離れて、杖を出した。

 

「ああ、僕は君に優勝してもらいたいと思っているんだ、ハリー。でも、君がそれを拒むなら──対等にしてしまえばいい。〈癒えよ(エピスキー)〉」

 

杖を怪我に向け、応急処置の呪文を唱えるセドリック。十分に足は治り、走ることもできるようになった。

セドリックは立ち上がった僕の隣に立ち、優勝杯に向き直った。

 

「二人一緒に走り出す。それで、決着をつけよう」

 

どうしても、セドリックは公平にしたいらしい。何百年とハッフルパフが手にしてこなかった栄光を放り投げることになっても。

そして、僕たちは走り始めた。たった百メートルの道が長く感じた。光輝く杯に手を伸ばす。そして、同時に取っ手を掴んだ。

次の瞬間、優勝杯に引っ張られた。まるで、移動(ポート)キーを使ったかのように。

目を開けると、そこは、どこかの墓場だった。綺麗な星々が見える、暗い墓場だ。どうやら、拉致されてしまったらしい。



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復活の時来たれり、其は全てを見下すもの

もう少しだけハリー視点が続くので、ちょっとだけ我慢してください。ヴォルデモート復活は、どうしても書きたいんです。彼のポエムを書きたいんだ!あ、それと今話のサブタイには突っ込まないでいただけると幸いです。



七つ目の夢


──夢を見た
──この世全ての栄華を見た
──この世全ての衰退を見た
──我らは探し求めた
──彼が、魔術に、魔法に関わらないで済む未来を
──しかし、彼が平和に暮らすには、魔法に関わる必要があった
──これは、我が失態である
──彼が闇の存在する時代に生まれたことは
──我らは許さぬ
──過去から秘術を観測し、ほんの少しではあるが術式を混乱させたかの黄金を
──黄金と共に観測し、術式をいじったキングメーカーを
──彼奴らは我が名を持って不認とする
──我が名はフ─────










セドリックと共に杖を抜き、周りを警戒する。ところどころから蛍のような光が浮き上がり、地面も一部が光っているような気がする。

暗がりから誰かが歩いてきた。見え辛いが、そちらの方には屋敷のようなものがある。

その誰かは、何かを抱えているようだった。二メートルほど先の、背の高い大理石の墓のそばで立ち止まる。

何の前触れもなしに、額の傷に激痛が走った。一年生の時にヴォルデモートと向かい合った時の痛みを、何倍にもした痛みだ。思わず膝をつき、顔を手で覆う。

 

「余計な者は殺せ!」

 

「〈アバダ・ケダブラ〉!」

 

緑の閃光が光り、何かが僕の横に倒れる──セドリックだった。

フードの男が、抱えていた何かを下に置き、近づいてくる。その時見えた墓石には、『トム・リドル』と書かれていた。

襟を掴まれ、背中を墓石に押し付けられる。男の持つ杖から出た縄で縛り付けられた。

男の指は一本欠けていた。この男はワームテールだ。

ワームテールは僕が一切の抵抗ができない状態であることを確認すると、マントから黒い布を取り出して僕の口の中に押し込んだ。

ワームテールがその場を去り、確認できる限りで周りを見渡す。セドリックの亡骸とその近くに転がる優勝杯。近くに光る何かがある気がするが、気のせいだろう。

足下では大きな蛇が這いずりまわっている。

ワームテールが再び視界に入って来た時、彼は水のようなもので満たされた石鍋を押していた。石鍋の胴は、大人が一人中に座れるほど大きい。

ワームテールは鍋の下に火をつけた。途端に、鍋の中の液体は沸騰し、火の粉が散り始めた。魔法薬のようだ。

包みがワームテールに何か指示を出し、ワームテールはその包みを開いた。中にあったものは、醜悪なものだった。まるで、蛇と人間の合いの子が、とてつもない失敗作として生まれて来たような。リアスでも、これを気にいることはないだろう。

ワームテールはその生き物を大鍋に入れた。そのまま、その生き物が溺れてしまえばいいのに!

 

「父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子をよみがえらせん!」

 

墓の表面が割れ、塵芥が鍋の中に降り注いだ。液体の色は毒々しい青に変わった。

ワームテールはナイフを取り出して、震えながら、すすり泣きながらそれを腕に押し当てた。

 

「下僕の──肉、よ、喜んで差し出されん。──下僕は──ご主人様を──よみがえらせん」

 

ワームテールはナイフを引き、自らの、指が欠けた右手を切り落として鍋に入れた。思わず目を瞑る。液体の色は赤に変わった。

 

「敵の血……力ずくで奪われん……汝は……敵を……よみがえらせん!」

 

ワームテールが近づいて来て、僕の右腕にナイフを突き刺した。溢れ出た鮮血をガラス瓶に採り、鍋の中に注ぐ。色は、白に変わった。

それから少しの間のことは、あまり覚えていない。ただ、失敗してほしいと言う思いでいっぱいだった。

 

「ローブを着せろ」

 

鍋から立ち上る蒸気の向こうで声がする。痩せた男だった。僕は、この男の顔を、一年生の時に見ている。

 

「気分はどうだね、ハリー・ポッター?」

 

ヴォルデモート卿が、復活した。



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決闘

今回は長いです。夢は、多分最後のはず。


八つ目の夢


──夢を見た
──この世全ての和平を見た
──この世全ての不和を見た
──我らにできることは少ない
──だが、これだけはできる
──我らは封印した
──彼の能力を封印した
──彼が、遠き未来において、新たな生を得たその時において
──疎まれぬように、恐れられぬように、人と対等でいられるように
──だからこそ、あの魔術師を廃棄したい
──それができぬ我らが憎い
──あの冠位が干渉しなければ、彼、否、彼女は王となる運命を避けられた
──まあ、楽しくやっているとフォ■■■■が言っていたので良しとしよう
──我ら■十■の魔■、その最後をこの我が務める光栄を持って、我が名を記す
──我が名はア───────










ヴォルデモートは手をポケットに入れ、杖を取り出した。その杖をワームテールに向ける。ワームテールは地上から浮き上がって、僕の縛られている墓石に叩きつけられた。

 

「ワームテールよ、腕を伸ばせ」

 

ワームテールが期待に満ちた目で切り落とした右腕を差し出す。けど、ヴォルデモートは嗤い、もう一方の腕を出すように告げた。

出された腕には赤い刺青のようなものがある。口から蛇を出した髑髏。クィディッチ・ワールドカップで見た、闇の印だ。

 

「戻っているな。全員が、これに気づいたはずだ……そして、今こそわかるのだ……今こそ、はっきりする……」

 

ヴォルデモートが長く青白い人差し指を、印に押し当てる。その途端、頭の傷が再び痛みだした。ワームテールはさらに叫んでいる。

ヴォルデモートが腕から指を離すと、印は真っ黒に変わっていた。それを見たヴォルデモートは、残忍な嗤いを見せた。

 

「ああ、これを見て、感じた時、戻る勇気のある者が何人いるのか。離れようとする愚か者が何人いるか、楽しみだ」

 

ヴォルデモートが僕の前に立つ。赤く輝く目が、僕の額の傷痕を見つめる。

 

「ハリー・ポッター、お前は、俺様の父の遺骸の上におるのだ。マグルの愚か者よ……死してようやく、俺様の役にたったわけだ。丘の上に見える館……あれに、父親は住んでいた。典型的なマグルで、魔法を嫌い、魔女と打ち明けた母親を棄てた。そして、母親は俺様を産み、死んだ。憎々しいことに、俺様には奴の名がつけられた……トム・リドルと!

……俺様が自らの家族の歴史を語るとは、なんとも感傷的になったことよ。しかし、見るがいい、ハリー・ポッター!俺様の真の家族が戻ってきた!」

 

マントを翻す音があたりに響き、墓と墓の間から、闇の中から、木の陰から、魔法使いが〈姿現し〉して来た。全員がフードを被り、仮面をつけている。全員が跪き、ヴォルデモートのローブにキスし、輪になって立つ。しかし、輪には切れ目があった。誰かを待つように。

 

「よく来た、死喰い人(デス・イーター)たちよ。十三年ぶりだ。我々が最後に会ってから、十三年も経った。しかしお前たちは、それが昨日のことであるかのように、俺様の呼びかけに応えた!……さすれば、我々は未だに、『闇の印』の下に結ばれていると……違いないな?

だが、罪の匂いがするぞ。

お前たち全員が、無傷で健やかだ。魔力も失われていない──こんなに素早く現れるとは!そこで、俺様は自問する。この魔法使いの一団は、ご主人様に永遠の忠誠を誓ったはずだ。それなのになぜ、そのご主人様を助けに来なかったのか?」

 

誰も答えない。あたりを恐怖が支配する。

視界の端に、セドリックの亡骸が映る。けど、さっきとは体勢が違う気がする。

 

「俺様は自答する。奴らは俺様が敗れたと信じたのに違いない、と。そして、俺様の敵の間にするりと立ち戻り、無罪を、無知を、そして呪縛されていたのだと申し立てたのだろう……さらに自問するべきことは、自答するべきことはあるが、時間の無駄となる……だが、これだけは言わせてもらおう。俺様はお前たちに失望した!

……お前たちには十三年分のつけが貯まっている。ワームテールは既にその借りの一部を返した。俺様を復活させることによって。ヴォルデモート卿は、助ける者には褒美を与える……例えそれが、虫けらのような裏切り者でも」

 

ヴォルデモートが杖を上げ、空中でクルクルと回す。その跡に、溶けた銀のようなものが一筋、輝きながら残っている。やがてそれは人の手の形になり、ワームテールの手首に嵌った。

ワームテールは急に泣き止み、銀の手を見つめ、地面の小枝をつまみ上げて揉み砕いて粉々にした。

 

「我が君、ご主人様、偉大なるヴォルデモート卿……素晴らしい……ありがとうございます……ありがとうございます……」

 

ワームテールは跪いたまま、ヴォルデモートのそばに寄りローブにキスをした。

 

「ワームテールよ、貴様の忠誠心が二度と揺るがぬよう」

 

「我が君……そのようなことは……決して、そのようなことは……」

 

ワームテールは立ち上がり、輪の中に入った。

 

「ルシウスよ……抜け目のない友よ……世間的には立派な体面を保ちながら、未だに昔のやり方を捨ててないと聞きおよぶ。率先してマグルいじめを楽しんでいるようだが……一度も、俺様を捜そうとはしなかったようだな。ああ、弁明はするな。今までよりももっと忠実に仕え、このヴォルデモート卿を満足させるがよい」

 

次に、ルシウス・マルフォイの隣の空間に目を向ける。そこには何人か分の隙間がある。

 

「レストレンジたちがここに立つはずだった。しかし、あやつらはアズカバンに葬られている……忌々しい、エリザベート・クリミアとマッド-アイ・ムーディの手で。アズカバンが解放された時には、レストレンジたちは最高の栄誉を得るだろう。吸魂鬼(ディメンター)も我々に味方するだろう……あの者たちは、生来我らの仲間なのだから」

 

多分、吸魂鬼はリアスの仲間になると思うのは僕だけだろうか。

 

「消え去った巨人たちも呼び戻そう……闇の生物全てを呼び戻そう……忠実なる下僕の全てを、そして、誰もが震撼する生き物たちを、俺様の下に帰らせようぞ……」

 

いや、その生物たちも多分リアスの軍門に下ると思う。急に頭が冷えてきた。リアス単体でも、そのペットたちの戦力で今ここにいる死喰い人たちは殲滅できるはず。

何人かの前をヴォルデモートは通り過ぎ、何人かに声をかけ、一番大きく空いている空間の前に立った。

 

「ここには、六人の死喰い人が欠けている……三人は俺様の任務で死んだ……主に神秘部の者たちに殺された。一人は臆病風に吹かれて戻らぬ。一人は永遠に俺様の下を去った……この二人には、死あるのみ……そして、最も忠実な下僕であり続けた者は、既に任務についている。その者の尽力により……我々はここに、親愛なる客人(ゲスト)であるハリー・ポッターを迎えた。

そして、この奇跡を……復活の儀式を遂げることができた。そこらのゴーストにも劣るナニカに落ちぶれ、誰かの肉体に取り付くしかなかった。四年前にある魔法使いに取り付き、復活の兆しを得た……賢者の石を得る機会を。しかし、それは挫かれた。ハリー・ポッター、そして、謎のネズミたちと銀に透き通った蜻蛉に……その下僕は、生きたままネズミの餌となった。

希望を捨て、もはや復活を諦めていたその時……ワームテールが現れた。まだ一年も経っていないほど最近だ。しかも、良い土産を持ってきた……バーサ・ジョーキンズだ。そして、その女が持っていた情報により……今、俺様はここに復活した。失脚の時よりも強力になって!」

 

ヴォルデモートがこちらを向き、全死喰い人の目線が僕に向けられる。そして、明らかにセドリックが動いた。おそらく、セドリックは生きている。

 

「縄を解いてやれ、ワームテール。此奴と俺様の、どちらが強いかを示そう。此奴を殺すことで、俺様が最強であることを証明しよう」

 

ワームテールの銀の手は強力なようで、一振りするだけで縄を切り落とした。

ワームテールに僕の杖を押し付けられ、ヴォルデモートと相対する。死喰い人には既に隙間はなく、逃げることは困難だ。どうしても、ヴォルデモートと決闘するしかない。

 

「決闘のやり方は知っているだろう、ハリー・ポッター。さあ、お辞儀をするのだ!」

 

ヴォルデモートが大げさにお辞儀する。僕も、本の少しだけ腰を曲げた。

 

「よろしい。男らしく前を向け。俺様に杖を向けろ……背筋を伸ばし、誇り高く!」

 

僕はポケットの中の羽を意識した。迷路の中で絶対絶命だった時に助けてくれた羽を。もう一度だけ、僕に力を貸して欲しい。

 

「さあ──決闘だ。死ぬ前に言っておきたいことはあるか?」

 

言っておきたいこと……死ぬつもりはないけど、少しだけある。もちろん、リアスのことを話すつもりはないけど。

 

「ヴォルデモート、その歳で『俺様』はさすがにどうかと思う。あと、言い回しとかが芝居がかってて、何というか……滑ってる」

 

激痛が襲ってきた。呪文は聞こえなかったけど、多分〈磔の呪い〉だ。

 

「ふん、俺様を侮辱した罰だ。どうだ?もう一度やって欲しいか?答えるがいい」

 

こいつに、命乞いをする気はない。誇り高く──そう言ったのは、こいつ自身だからだ。

 

「答えるのだ!〈服従せよ(インペリオ)〉!」

 

幸福に、頭を、思考を支配される。「嫌だ」と言え、と頭の中で響く。

 

「僕は、絶対に、言わない!」

 

気力を振り絞って、言葉を口から出す。墓場に響きわたった言葉は、死喰い人たちを静かにさせていた。

 

「どうやら、死ぬ前に、従順さは徳だと教えてやる必要があるな……」

 

ヴォルデモートが再び杖を向ける。僕は横に跳んで地上に伏せ、墓石の陰に隠れる。呪文は、大理石の墓石を砕くにとどまった。

 

「誇り高く、と言ったのはお前だぞ、ヴォルデモート!僕は、お前に命乞いするぐらいなら、吸魂鬼に囲まれる方がマシだ!」

 

ヴォルデモートの笑い声が止む。僕はしっかりと杖を握りしめ、墓石の陰から飛び出した。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉!」

 

「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」

 

二つの呪文は、同時に飛び出し、ヴォルデモートと僕の真ん中でぶつかった。そして、二つの閃光は金色の糸となり、僕とヴォルデモートの杖を繋いだ。

糸は裂け、ドームのように僕とヴォルデモートを囲む。そして、信じられないことが起こった。

ヴォルデモートの杖先から、何かが現れた。前に、夢で見た老人だ。濃い灰色のゴーストのような彼は、完全に現れると、驚いたように杖と僕らを見渡した。

 

「もしや、あいつはほんとの魔法使いだったのか?なら、俺は坊やを応援する……あいつは俺を殺しやがった……頑張れ、坊や……」

 

新たな影が現れる。次は、女性だった。バーサ・ジョーキンズだ。

 

「離すんじゃないよ、ハリー!」

 

遠くから聞こえるような声で、二人の影は僕を応援する。僕とヴォルデモートの周りを歩きながら。

次に現れた影は、一目で誰なのかわかった。ずっと、夢に見てきた影だから。

 

「もうすぐ、お父さんが来ますよ……大丈夫、頑張って……」

 

そして、待ち望んだ影が現れる。ジェームズ・ポッター。父さんと母さんは横に並び立って、僕に微笑んだ。

 

「繋がりが切れると、私たちは少しの間しか留まれない。それでも、時間を稼いであげよう……移動(ポート)キーへ向かいなさい。それが、お前をホグワーツに連れて帰ってくれる……もし、次に会うことができたのなら、エリザから教わった呪文を伝授してあげよう。私の息子なんだ、きっと使える」

 

「なら、私の呪文も教えましょう。私の息子でもあるんですものね、ジェームズ」

 

「そうだね、リリー」

 

死んでなおいちゃついている二人に、ヴォルデモートは苦々しげな顔をした。恋人とか、いなかったんだろうか。

 

「さあ……今だ!」

 

渾身の力で杖を振り上げ、繋がりを切る。墓石を避け、死喰い人を吹き飛ばして走る。呪いが墓石に当たる音を聞きながら。

 

「〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!」

 

僕の前から、死喰い人に向かって呪文が放たれる。セドリックだ。

 

「馬鹿な、貴様は殺したはずだ!」

 

「生きていたのさ、お前には想像もつかないような方法で」

 

セドリックと並び立ち、同時に優勝杯に触れる。移動(ポート)キーが作動して……ホグワーツのクィディッチ競技場、迷路の外に、僕らは着地した。




多分、ヴォルデモートの出した銀の腕は、ヌァザの右腕(アガートラム)のようなものですかね。その逸話の再現、もしくは模造品。無限の剣製の投影品よりも格下の。


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帰還

とある魔術師の独白


私が術式に関与して台無しにしただなんて酷い風評被害だよ。私はただ、彼に試練を与えただけさ。私には未来を見ることはできないけれど、こっちに転生した方が彼は幸せだったんだろう。
英雄王から観られてたから観返してみたら、なんとまあ、かの王様の転生術式を作動させている真っ最中じゃないか。私は夢魔で、同時に世界有数のキングメーカーだ。王様が生まれ変わると言うのなら、試練を与えたくなるものさ。
──でも、さすがにここまでなるとは思わなかった。影の国の女王も関わって、ついでに送り出したキャスパリーグもいるじゃないか。あの子の群勢に一斉に襲いかかられたら、この冠位魔術師でも対処しきれないだろう。もしも前世の力を使えるようになってしまったら──それこそ、アルティメット・ワンにしか対処できなくなるかもしれない。ましてや、もしもキャスパリーグがプライミッツ・マーダー(ビーストⅣ)として覚醒してしまったら、原初の母が彼女の下に下ってしまったら。
まぁ、彼女が人間を嫌いにならない限りは、人類に牙を剥くことはないだろうね。










【数話ぶりのリアス視点】

 

ハリーとセドリックが帰ってきた。二人の手には優勝杯が握られている。二人の同時優勝かな?

ダンブルドア校長先生が微笑みながらハリーに近づく。声をかけようとしたその時、ハリーの口から信じられないような発言が飛び出した。

 

「あの人が……ヴォルデモートが戻ってきました」

 

それは、近くにいる人たちにしか聞こえないほど小さな声。ダンブルドアは顔色を変えて、ハリーを問い詰めた。

 

「どう言うことじゃ?ヴォルデモート卿が戻ってきた、と?」

 

「はい、先生。セドリックも証人です」

 

セドリックが頷いて、語り始める。

 

「優勝杯に触れた途端、どこかに連れていかれました。墓地でした。僕はワームテールと言う男に〈死の呪文〉をくらって倒れました」

 

「待ちなさい。〈アバダ・ケダブラ〉を受けた?なら、なぜ君は生きておる?」

 

セドリックがポケットから羽を取り出す。羽は炭のように黒く変わっていた。

 

「多分、この羽だと思います。少しの間気絶していましたけど──もしかしたら、その間は本当に死んでいたのかもしれません──虹色の光がまぶたの裏に広がって、目が覚めたんです」

 

ダンブルドア校長があたしに目線を向けてくる。説明しろ、と。

 

「その羽を与えたのはイークェスラルという魔法生物で……簡単にいうなら、アステカ文明の神、ケツァル・コアトルの眷属です。身体能力や精神面の強化をすることができて、ケツァル・コアトルの権能の一部を、限定的ですが使用することができるみたいなんです。あの蛇神は太陽神としての一面を持っていて、復活とか、生まれ変わりの逸話や伝承もあります」

 

例えば、エジプトの太陽神ラーは、日の出と共に生まれ日没と共に冥界へ向かうと言う。蛇神にも、そのような伝承があったはずだ。

 

「それに、蛇神だと言うこともあります。蛇は脱皮をしますが、昔の人にはそれは、生まれ変わりのように見えたそうです。ギルガメッシュが冥界から持ち帰った不死の霊草を食べたから、蛇は脱皮するようになったという伝説もありますから。以上、ママから教えられた知識より」

 

ようするに、ケツァル・コアトルとその眷属であるイークェスラルは、二重で生まれ変わりの権能を持っているということ。セドリックは一度死んで、生まれ変わったんだ。

ふと、優勝杯の中に何かがいることに気がついた。北斗七星の模様──ミザールだ。もしかしたら、この子が見ていたかもしれない。早速、話を聞いてみる。

 

「【君は、どこから来たの?】」

 

【星が見えるところから】

 

「【周りの風景は?】」

 

【寂しいところ。人間が、墓場って呼んでるところ】」

 

「【何かを見た?】」

 

【蛇みたいな人間。石でできた何かから立ち上がってた】

 

蛇のような人間?もしかして、それが、ヴォルデモートだろうか。

 

「ハリー、例のあの人って蛇みたいな感じ?」

 

「うん。気色悪かった」

 

これで、完全にってわけじゃないけど裏付けは取れた。例のあの人は復活した。

ダンブルドア先生にそのことを伝えると、彼はハリーにここを動くなと告げてどこかへ向かった。

ママとイクラクン、ムルムルが走ってくるのが見える。説明しておいた方がいいよね。

あたしが三人に事情を説明している間に、ハリーとセドリックはどこかに消えていた。



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部屋探し

金鯖確定演出きたのに……メルトかリップだと思ったのに……あなたはお呼びじゃないんですよ鈴鹿ァ!



とある魔術師の独白


(オレ)が何かを語ると思うか?これは彼奴の物語だ。我が口を挟むことなどない。酒の肴として愉しませてもらうがな。










しばらくして、ダンブルドア先生があたしのところに来た。ヴォルデモート卿が闇の魔法生物たち──吸魂鬼や、巨人や、狼人間とか──を味方につけようとしているって。先生曰く、ヴォルデモートが少し哀れになってきたって。あたしがいれば、狼人間以外や元人間の吸血鬼以外はこっちの味方になるからね。純血種──つまり真祖の吸血鬼とかも。それに、アズカバンの吸魂鬼たちは、ここ数年以内に産まれた子以外は会ったことがあるからね。必ず味方になってくれるはずだ。

ムーディ先生が偽物だったとも知らされた。クラウチさんの息子だったそうだ。あたしには関係ないだろう。

賞金は、セドリックとハリーで半々に分けるそうだ。

 

 

 

ハリーが戻ってきたのは、翌日の夜だった。昨日は医務室に泊まったそうだ。何があったのかを詮索するのは、朝食の時間にダンブルドア先生が釘を刺したために誰もいない。

防衛術の授業は、先生がいなくなったから自由時間になった。だからあたしは、一年近く前から気になっていたものを探すことにした。

とある日曜日に森をバックビークで冒険した時に見つけたルーン文字。『全てがあり、全てを与える、存在しない部屋に龍は眠る』。ふよふよと近くを漂っていた灰色のレディに聞いてみることにしよう。

 

「レディ、『全てがあり、全てを与える、存在しない部屋』ってわかる?」

 

「……ホグワーツの中にあるのなら、おそらくは『必要の部屋』でしょう。案をゴドリックおじ様が出し、理論を母──ロウェナ・レイブンクローが完成させ、ヘルガおば様が場所を決め、サラザールおじ様が作り上げた、魔法の部屋。四人がこの部屋のことはホグワーツの謎の一つにしよう、と決めたので公式文書に残っていることはないはずですが……どこで、その部屋のことを?」

 

「一年近く前に、湖の島の一つにあったルーン文字で」

 

レディが手帳を覗き込んでくる。その目は、驚きで見開かれた。

 

「『龍は眠る』──なぜ、これが──貴女には、彼を起こす権利がある、と?……ありうるかもしれませんね。貴女が、リアス・クリミアでしょう?男爵から話は聞いています。必要の部屋は八階のとあるタペストリーの前の石壁、そこの前を三度、必要となるものを思い浮かべながら往復しなさい。そうすれば、部屋は見つかります。願う部屋は──『誰も寄せ付けず眠れる部屋』。詳しいことは、彼に聞いたほうが良いでしょう」

 

レディは言いたいことを言うとさっさとどこかに行ってしまった。

 

 

 

それで、言われた場所の前に来てみたけど、『誰も寄せ付けず眠れる部屋』か。龍……一体、中にいるのは何なんだろう。

言われた通りに、壁の前を三度往復する。そして振り返ると、荘厳な扉があった。

重い扉を押し開くと、中には豪華な部屋と大きなベッドが見える。あたしは、中へ足を踏み入れた。

その途端、景色が切り替わった。

すでに豪華な部屋はなく、周りに広がるのは星空。神殿のような雰囲気だ。目の前には光の道。あたしは、その道を進む。

瓦礫が転がる白い階段を上ると、待っていたのは草原と青空、そして玉座。そこには、一人の男性が座り、目を瞑っている。

近づくと、その男は目を開き、あたしを見つめた。ジロジロとあたしを観察して、一言告げる。

 

「──遅い。何百年、何千年待たせるつもりだ」

 

──はい?




ガチートモードに切り替え中。今回出て来たのは、本当の人間ではなく魔法生物です。それも規格外な。そして、この世界においてはリアスの前世と関わりを持っています。読者さん提案のオリキャラ。


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古龍

とある女王の独白


ふむ、彼奴もなかなかやるではないか。もしかしたら、私のように人の身にして神殺しを成し遂げるかもしれんな。まさか、クリードの骨を芯材として作らせた杖の主が彼奴となるとは思ってもおらんかったが。さらに育てば、私が直々に指導してやろう。ただ、槍の適性はないようだからな、教えられるのはルーン魔術ぐらいだろう。そして、杖の縁だ。一度限り、彼奴と縁を結んだ者を助けるとしようか。










男性はこちらの反応を伺っているようだ。あたしはどう反応していいのかわからない。

 

「……どうした。さっさと答えろ」

 

「ごめんなさい。どちら様でしょうか?」

 

男性が目を見開く。この答えは予想していなかったようだ。

彼は玉座から立ち上がり、あたしの目の前まで歩いてくる。そして、再びあたしを観察した。

 

「──魂は同じだが、どういうことだ?まさか、彼奴らはしくじったのか?──いや、本来なら記憶がある方がおかしいか。小娘、名を名乗れ」

 

何かぐちぐち言われた挙句、命令口調で名前を名乗れと言われた。だからあたしは反抗するように告げる。

 

「そっちから名乗る方が適切じゃないの?色々と勝手なこと言って、誰かとあたしを間違えてたんだから」

 

「私の寝所に入って来たのはお前の方だ。だが、勝手なことを言ったのは認めよう。しかし、名を名乗るのは無理だな。私はとうの昔に名を捨てている。それと、名乗らなくてもよい。今、お前の名を知ったからな、リアス・クリミアよ」

 

「え?」

 

いつのまにか名前を知られていた。本当に、この人はなんなんだ?

 

「私は、人間ではなく人知を超越した生き物──古龍(エンシェント・ドラゴン)とお前たちが呼ぶものの一つ。名乗るとするなら……魔術龍とでも言おうか」

 

古龍。生きた古龍。生きて、意思疎通が可能な古龍。そんな伝説が目の前にいる。にわかには信じがたいけど、あたしの心は浮き立った。何種もの古龍が知られているけれど、魔術龍なんて龍は聞いたことがない。古龍種のそれぞれにつけられた名前──邪龍だとか、峯山龍だとか、ウェールズの赤き竜だとか──は、それぞれの特徴を表した名前だ。つまりこの龍は、魔法や魔術を扱える龍なのかもしれない。

 

「とある者を捜していたのだが、其奴が現れるのがいつなのかがついぞわからなかった。『千里眼』を持ってはいるが、捜している者のように未来視が可能なわけではない。ただ、世界を見渡せるだけだ」

 

「十分すごいと思うけどね」

 

「ただ世界を見渡すだけなら、彼奴にもできるし、心底殺したいと思っている引きこもりの魔術師にもできる。

私は休むことに決め、この城に忍び込み眠りについた。四年ごとに起き、世界を見渡した。そして、お前の存在を知ったのだ」

 

「あたしの?」

 

「そうだ。私が捜し求めたのはお前の魂。私が語らうべき友の魂。本来なら確定した時と場所に産まれるはずだった魂だ。どこぞの引きこもりのせいで妙な時期、妙な場所に産まれたがな」

 

あたしを捜していた?つまり、この龍はあたしの出生を知っている?

 

「教えて。あたしはなんでアズカバンにいたの?」

 

「……私は、過去を見ることはできない。記憶能力はあるのだが、お前のことを知ったのは、お前が二歳の時。産まれた時と場所は知らん。拾われた場所は、聞かせてもらったが」

 

「……えええ」

 

せっかくのチャンスだったのに……なんてことでしょう。この龍の起きる周期のせいでわからないなんて。

 

「会いに来るのを今か今かと待ちわびたが、全く来ないのでな。ケリウスを通して伝言を伝えたわけだ。それすらも忘れられかけたようだが」

 

ケリウス?伝言を見つけた場所にいたのは……アメジスト色の眼をした蛇……蛇?

 

「まさか、『叡智の蛇』?」

 

「ケリウスは人にはあまり知られていないようだが、そのような名前で噂されているようだな」

 

伝説の存在その二じゃん!なんでそんな貴重なのに会ってあたしはスルーしちゃったんだろう……この前はイークェスラルが出たし。今年は伝説級の生き物の出現率が高すぎる気がする。

 

「本題だが……私はお前を待っていた。古の友よ。お前は私の存在を──その魂に刻まれた全ての記憶を失い、新たな人生を歩んでいるようだが、私はお前と語り合いたい。お前の見る景色を見たい。勝手なことだが、お前についていかせてもらう」

 

……今、彼は何と言った?あたしについて来る?古龍(エンシェント・ドラゴン)に懐かれる?こんなことになるとは思ってもいなかった。

 

「……うん、色々混乱してるけど、ついて来るならもうそれでいいや。諦めも肝心だよね、うん。じゃあ、名前を付けないと」

 

「……?私に名前は不要だが」

 

「付けときたいの。君はそれでいいのかもしれないけど、あたしは不便だから。よし……神殿に、玉座……魔術……決めた。『ソロモン』、なんてどう?」

 

「……ソロモン、だと?」

 

「玉座に座って、魔術関係って言ったらそれぐらいしか思い浮かばなくてね」

 

古代イスラエルの王、ソロモン。奇跡を成した魔術の王。あたしと、この龍が出会った奇跡を、ソロモン王の起こした奇跡に重ね合わせて。

 

「ソロモン、ソロモンか……ふふ、ははははは!そうか、次は私にその名を背負えということか。いいだろう。今この時より、我が名はソロモンとなった。この名を付けられるとは思わなかったが、マーリンよりはマシだ!私の真の姿は、蛇王龍ほどではないが大きい。それに、知らぬ者がこの城の中に居ては不自然だろう。身体を指輪に変えるので、身につけているといい。いつでも意思の疎通が可能になる」

 

「蛇王龍よりも大きい生物は居ないかも……昔、遠くから見たことがあるけど、コインヘンよりも大きかったし。指輪はどの指につければいいかな?」

 

「なぜそれを聞く……どの指でもいい。男に興味がないのなら、左手の薬指を進めよう。男避けになる。それと、私には性別はないので、恥ずかしがる必要はない」

 

思わず顔を殴ってしまったあたしは悪くない。変態と叫ばなかっただけ感謝してほしい。風呂の時は外そう。

彼の姿が消えていく。いや、変化していってる。ソロモンの姿は光に包まれて、収まった時には、あたしの手の上に一つの指輪があった。一瞬だけ、本当の姿が見えた。純白の身体、王冠のような四つの大きな角。まるで、昔に一瞬だけ見た祖龍のような姿だった。

彼が指輪になったからか、神殿が崩壊し始めた。そして、目が絡むほどの光の後、扉から見えていたベッドルームに変わっていた。

あたしは指輪をはめて、鼻歌を歌いながら『必要の部屋』を出ていった。

 

 

指輪をはめた時、欠けていた何かが埋まったような気がした。




魔術龍ソロモン
古龍種
M.O.M.分類XXXXX(存在が知られていないため、公式的には不明)
非常に高い知能を持ち、人知を超越した魔術/魔法を使う。また、現在の観測だけではあるが千里眼も使える。過去の観測、未来の観測は不可能なので、冠位魔術師三人ほどではない。それでも、世界全てを見渡せる。
大昔に、ホグワーツに侵入して眠っていた。侵入するために人間の姿に変化。あらゆる結界や侵入妨害呪文を無効化して、誰にも気づかれることなく入り込んだ(ただし、創設者四人とその血縁には気づかれたため、ヘレナ・レイブンクローは存在を知っていた)。
人間体は魔術王(本物の方)に似ている。真の姿はモンハンのミラルーツに似ている。指輪としての姿は、金のシンプルな指輪。
古のソロモン王の友人。魔神柱たちがソロモンを転生させることを知っていた。某冠位魔術師(人間のクズ)が干渉したことも知っている。多分、そいつにあったら全力ブレスを放つ。
時間神殿の再現も可能。ただし、本来ほどの力はなく、世界から切り離されていない。


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終幕/そして始まり

とある獣の独白


彼女に出会ったのは一つの運命(Fate)というものだろうね。でも、彼女の持つ能力はとても危険だ。人類悪となりうるボクですら、彼女に協力したいと思ってしまう。彼女の人柄がいいのもあるんだろうけど……それでも、彼女に敵対する者がいるなら、あの醜い獣になってもいいと考えてしまうのは、明らかに異常だろう。言い訳でもするとしたら、彼女の近くは、彼女がペットたちに向ける感情は、あの平行世界の天文台で、平行世界のボクが見た美しいものに値するかもしれない。その分、彼女の周りはドロドロしていて、彼女がいなかったらあんな小島にいても第四の獣になりかねなかったけど。
最後に一つだけ。マーリンはこの手──この牙の方がいいかな?──で()る。










ママたちは既に帰り、学期末のパーティが行われる。いつもなら優勝した寮の色で大広間が飾り付けられるんだけど、今回は四色全部に、ホグワーツの校章だった。

カルカロフ校長がいない。何かあったのかな。

ダンブルドア校長が立ち上がる。

 

「今年も、終わりがやって来た。今夜は皆に、色々と話したいことがある。ホグワーツ校、ダームストラング校、そしてボーバトン校の生徒たちが、誰も欠けることなくこの場に揃ったことを祝いたい」

 

ダンブルドア先生が大広間を見渡す。

 

「もしかすると、一人の生徒が欠けていたかもしれん。そのようなことにならなかったのは、代表選手たちの人徳であろう。そして、みなは知る権利があると、わしは考える。ハリー・ポッターとセドリック・ディゴリーは、ヴォルデモート卿が復活するのを見て、殺されかけた」

 

大広間にざわめきが走る。全員がダンブルドア先生を見て、次の言葉を待っていた。

 

「魔法省は、わしがこのことをみなに話すのを望んでおらぬ。なぜなら、彼の復活は魔法省にとって不都合であるからじゃ。みなのご両親の中には、わしがこのことをみなに話したいと知って驚く方もおられるじゃろう。かの死地から、無事に戻って来たセドリック・ディゴリーとハリー・ポッターを、その幸運と勇気を、わしは讃えたい」

 

ダンブルドア先生がゴブレットを掲げた。そして、大広間のほとんどの人が、先生に続いてゴブレットを掲げる──スリザリン生を除いて。

 

『彼奴らはなぜ、盃を掲げないのだ?私には理解できんな』

 

「人間には色々あるんだよ、ソロモン」

 

彼らの気持ちがわからなくはないけど、そろそろ和解した方がいいと思う。

 

「ダームストラング校の人も、ボーバトン校の人も、そして、ホグワーツ校の人も。いつでも好きな時においでくだされ。ヴォルデモート卿は不和と敵対感情を蔓延させる能力に長けておる。その分、魔法界の結束は大切なものとなる。多くの者と絆を結ぶのじゃ。それがいつか、君たちの助けとなるじゃろう。──では、食事を始めようかのう。ほれ、しみったれた空気を蹴散らして!三大魔法学校対抗試合の成功を祝い、乾杯しましょうぞ!」

 

ダンブルドア先生が手を叩き、数々の料理が現れる。先ほどまでの厳粛な空気が嘘のように、賑やかなものへ変わった。

 

『ダンブルドアといったか。あのような者は、人を纏め上げるのに向いているだろう。しかし、人の心を読みすかした上で利用する。いい人、とは言い切れん』

 

ソロモンのダンブルドア先生に対しての評価は辛口だった。

 

 

 

ホグズミード駅まで向かう馬車に乗るために、校庭に出る。ボーバトンの馬車が出発の準備をしているところだった。

フラーがハリーと話していた。こちらに気づくと、フラーは走って来た。

 

「リアス、ありーがとうございまーした。いーつか、また会いましょーね。イギリスで()たらけるようにがんばーりますから!」

 

「うん、また会おうね」

 

「もう一度、生き物たーちのこと、教えてくーださいね!あと、指輪、似合ってまーすよ!」

 

花が咲いたような笑顔で手を振るフラーに、あたしも手を振り返す。

クラムとも同じような挨拶をして、また会えることを願い、あたしはセストラルの引く馬車に乗り込んだ。

 

列車の中で、あたしはハリーたちと一緒のコンパートメントに座った。ハリーは優勝賞金をどうするのか悩んでいるようだ。

 

「ところで、リータ・スキーターはどうしたのかしら?第一の課題以降、全く記事を見ないのだけれど」

 

「うーん、しばらくは何も書けないんじゃない?」

 

頭に疑問符を浮かべているハーマイオニーに微笑んで、蛙チョコレートを食べる。暖かくなってきて、あたしはフォウ君とキノを抱きかかえて眠りについた。

 

──花火を一箱爆発させたような轟音で目が覚める。辺りを見渡してみると、入り口にはドラコとクラッブ、ゴイルが倒れていて、こちら側ではハリーとロン、ハーマイオニーが立ち上がり杖を構えている。廊下ではフレッドとジョージもニヤニヤしながら杖を構えている。何があった。

 

『ドラコ・マルフォイがハリー・ポッターたちに対して喧嘩を売ったのでな。自業自得というものだ』

 

クラッブは顔中にクラゲの足が生えている面白い状況になっていて、双子は必ずドラコを踏んでから入ってきた。あ、フォウ君、汚いから齧っちゃダメだよ。

その後はボーっとしながら窓の外を眺めていたりしたけど、何やらバグマンさんが色々とやらかしたらしい。これもまた自業自得なのだろう。

列車を下りる直前に、ハリーは双子に賞金を渡した。彼らを支援するそうだ。ママにフレッジョのやろうとしていることを伝えたら、喜んでお金を出した。曰く、必ず成功するだろうと。

 

 

家族も増え、驚きの多かったこの一年だけど、同時に魔法界に再び闇が解き放たれた。どうなるのかは、まだ、誰にもわからないだろう。

 

「ところでリアス、その指輪は何かしら?まさか、恋人でもできたの?」

 

「あー、この指輪はね……古龍の変身してる姿です」

 

「……どうしよう。うちの娘がどんどん強力になっていく……」



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五年目には力を蓄え
邂逅


テストは悪い文明。
それと、御都合主義みたいなの注意。


ソロモンはあたしの前世については、あまり話してくれない。よく話をする友人だったとしか。あと、大昔の人だってことぐらい?

イクラクンとムルムルは薬草や魔法生物の素材の採取、時々料理用の包丁やナイフを鍛造している。

そんな、平和な日常。

──違う。平和すぎる日常だ。

マグルのニュースはもちろん、日刊予言者新聞にも、『例のあの人』のことは書かれていない。代わりに、新聞の方にはハリーを嘲るような記事が多く載っている。ママはハリーの方を信じてるみたいだけど、魔法省では今、ダンブルドア先生とハリーを苦々しげに思っているようだ。まったく、もう少し有意義に時間を使った方がいいと思う。あたしみたいに。家の周りを散策して面白そうな魔法生物がいないか探したりして。

 

『リアス。近くに何かがいるようだ』

 

ソロモンが生き物がいることを伝えてくれた。右の方だ。

振り向くと、こちらをジーっと見つめてる黄緑色の、透き通った感じの少年がいた。あたしが見ていることに気がつくと、一目散に逃げ出した。けど、あっちはまずい。この森の中でも、特にヤバ目な生き物たち──ヌンドゥとか、バジリスクとか──が暮らしている方だ。あたしは彼のことを追いかけ始めた。

そして、すぐに見失った。追いかけようと木の裏に行ったら、すでに見当たらなかった。

 

「ソロモン、彼はヌンドゥとかの方に向かってないよね?」

 

『──余計な心配だろう。あれはヌンドゥに見つかってもすぐに逃げだせる。それに、人間ではなく魔法生物だぞ?』

 

確かに、透き通った感じの人間だなんていないはず。それこそゴーストでもない限り。

勢いよく、風向きが変わった。知ってる森のはずなのに、知らない雰囲気がする。光が強くなり、闇が濃くなる。

ポウッと指輪に光が灯り、人間体のソロモンが現れた。あの部屋で出会ってからはずっと指輪だったけど、どうしたんだろう。

 

「よくないもの──不可思議なものが近づいてくる。念のため、こうして魔法が使える状態にしているだけだ」

 

ソロモンは目の前の森を見つめる。時計の秒針が半周するぐらいたった時、森の中から何かが現れた。騎士のような女性と、闇に紛れる衣装の男性。いつのまにか、周りには多数の気配が感じられた。

 

「……囲まれたな。どうする、リアス。お前の指示でこいつら全てを吹き飛ばすこともできるが」

 

「それはやめようね、ソロモン」

 

戦いたくてウズウズしている感じのソロモンをなだめつつ、前の二人を見る。何というか、対極な二人だった。礼節を重んじる騎士と、不意打ちが得意そうな斥候。光のような女性と、暗闇のような男性。光と闇。一ヶ月ぐらい前に、あたしはこのフレーズを聞いてる気がする。えーと、何だっけ……。

 

「あ……エレメンタルリアナイツ?」

 

確か、エレメンタルリアナイツという種族の中に、ダークエレメンタルとライトエレメンタルという統率個体がいると、イクラクンとムルムルから聞いた。まさか──いやいや、さすがにないはず。

 

「何か知ってるなら答えろ、リアス。すぐにでも此奴らにフィンの一撃(ガンド)を喰らわせたいのだが」

 

「だからやめなさいって。えっと……もしかして、この人たちはダークエレメンタルとライトエレメンタル……つまり、ある魔法生物の統率個体なんじゃないのかなって……」

 

 

「ええ、その通りですよ。こんにちは、リアス・クリミア」

 

 

二人の奥から声が聞こえた。暗がりから誰かが現れる。その姿は──

 

「あたし……?」

 

「いや、髪の色が違うな」

 

銀の髪を持つ、あたしだった。




リアス?「だいじょーぶですよ。シリアスにはなりませんから。ただの強化要員みたいな感じですしねー。というか、登場させてからも私のキャラ悩んでるんですよ作者は。真面目系で行くかそれともBBちゃん系で行くか。まあ、それでもこの■■■ちゃんのやることは変わりませんけどね」


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リアライズエレメンタル

最近ネームドにしようと思うキャラの大体をFGOを元にしてしまう件。どうしたらいいんだろう。


あたしを鏡写しにしたような彼女はあたしに近づく。けど、ソロモンが間に立ってくれた。

 

「おや、邪魔しないで貰えます?私は彼女に用があるんです」

 

「そうか。だが、此奴に危害を加える可能性がある以上、近づけるわけにはいかない」

 

「いえ、ちょーっとだけ、確認したいことがありまして……ダーク、彼を抑えてください」

 

瞬間、黒い影がソロモンに真横から飛びかかった。いつの間に移動したんだろう。不意打ちをギリギリで躱したソロモンは応戦する。あたしは応援したいんだけど……もう、目の前に謎の女の子が来ちゃってるんだよね。

 

「ふーむ……確かに……ええ、私たちが捜してきた人ですね」

 

「……捜してきた?あなたたちもソロモンと同じ感じ?」

 

「……私たちは彼のことは又聞きでしか知りませんけど、それ、すっごく皮肉になってることわかってます?」

 

「ごめん、全くわからない」

 

「それは……彼をあとで労ってあげますか。では、自己紹介といきましょう。

私はリアライズエレメンタル。火、水、風、土、光、闇。全てのエレメンタルリアナイツの統率個体です」

 

統率個体……ダークエレメンタルやライトエレメンタルよりも上位の個体……。でも、なんで彼女があたしの姿をして、あたしの前にいるの?

 

「我々は、本来は姿を持たない精霊の類です。荒ぶる炎、流れる水、吹きすさぶ風、不動の大地、それらを照らす光、付き随う影。そして、その全てを纏め自然と言います。我々が生まれた時には姿がありませんでしたが、ある時、唐突に私の姿が変わりました。つまり、あなたの姿となったのですよ。あと、お告げみたいなものが聞こえましてね。『仕えるべき王を探せ。汝の姿はその鏡』と。そして、光と闇のエレメンタルが姿を手に入れ、四元素のエレメンタルの長が依り代となる姿を得て、こうしてここにいます。まあ、四元素の長は過去の英雄の姿なんですけどね」

 

過去の英雄……つまり、彼女たちは英雄が生きていた時代からずっと存在しているという事。どれだけあたしの事を待っていたんだろう。

 

「少なくとも、円卓の時代からですかね……もちろん、それよりも前の時代──ウルク王朝の頃から存在はしてましたけど。アースエレメンタルやエアエレメンタルたちはギルガメッシュとエルキドゥの喧嘩を観戦してましたし、アクアエレメンタルやフレイムエレメンタルたちはアルゴノーツについて行ってましたし。ライトはいつの間にかヴァルハラに招待されて騎士になってますしダークは日本の神々から手ほどきを受けて忍びになってますし……私たちでも何が何やら。

まあ、あなたのことを待っていたのは事実です。色々な場所を旅してこの姿の者がいないか確認して……途中で、レフと名乗る学士からあなたの名前を聞いたのです。そして、まだ産まれていない命だとも」

 

「レフ、だと?」

 

ソロモンがあたしの横に立つ。ダークエレメンタルは襟を掴まれて引き摺られていた。

 

「まさか、レフ・ライノールか?」

 

「さあ、私はファミリーネームは聞いてませんから。ですが、なぜそんな事を聞くんですか?」

 

「……昔馴染みのとある男が、王が復活するまでは、レフ・ライノールと名乗り世界を渡り歩くと言っていた。他の者は様々な場所に居を構え休眠したが、彼奴だけはまだ彷徨っている」

 

「そうですか……では、私が会ったのはその人で間違いないですね。彼からあなたの事も聞きましたから。それと、この時代に産まれるという予言も聞きました。そして、ようやく見つけた訳です。彼女を……我々の王となる者を」

 

……話についていけなくなってきた。

 

「とりあえず……ソロモン、あとは一人で話を聞いておいて。終わったら要約して伝えてちょうだい。あたしは家で休んでるから。誰か送ってください」

 

帰る。帰って休む。頭を落ち着かせるにはそれが一番だ。美味しいお菓子も食べよう。そうしよう。

 

「では、アクアエレメンタルとエアエレメンタルの長に送らせましょう。コル、ギル、頼みます」

 

アクアエレメンタルとエアエレメンタルの名前が呼ばれる。長は名前を持っているのかな?

 

「リアライズエレメンタルだっけ?あなたは名前を持ってるの?」

 

「そうですね……レフはあなたの名前も予言したのですが、その時に彼から名前を貰いました。私のことはリィズと呼んでください」

 

リアライズ──リィズがニコリと微笑む。あら可愛い。

水と風の長は、なんというか……小さかった。風は小さい子の姿が多いらしいからわかるけど、水はもうちょっと背が高くても良かったんじゃないのかな。

水の長──コルは、水色の長髪をポニーテールにした元気そうな女の子。長い杖を持っている。

風の長──ギルは、金色の髪の男の子。何故かパーカーを着ている。公園で子供たちに混じって遊んでいても気づかないだろう。

 

「初めまして、マスター。ボクはエアエレメンタルの長です。気軽にギルくん、とでも呼んでください」

 

「私はアクアエレメンタルの長です。よろしくお願いしますね」

 

二人とも礼儀正しい。

ソロモンに後を任せて、ギルくんの先導で森の中を歩いていく。

あたしは一つ、とても気になることがあったから聞いてみた。

 

「そういえば、二人は過去の英雄の姿を模してるんだっけ?どんな英雄なの?」

 

「ボクは古代の王様ですよ。名前が最大のヒントだと言っておきます」

 

「私は魔術師で、ついでに王女ですね。一般的に有名なのは大人の時の姿なんでしょうけど、アクアエレメンタルの特性的に、依り代にできる姿が幼い頃の姿なんです」

 

うん、わからない。今度詳しく聞いてみようかな?

ギルくんはさらに、アースエレメンタルとフレイムエレメンタルの長のことも教えてくれた。

 

「フレイムエレメンタルの長はアレクと言います。赤い髪の少年ですね。こちらも、古代の王の姿を模しています。アースエレメンタルの長はエル。彼は王様ではなく、王の友ですね。緑の長髪の青年です」

 

「……今気づいたんですけど、必ず三人に共通点ができるんですよね。風と土、私は名前が三文字ですし、火と風、私は子供の姿で王族。私以外は男性ですし」

 

「エルはどちらかと言うと無性ですけどね。ベースは女性のはずですけど……ボクもどちらかはわかりません」

 

こうして、あたしは色々な話を聞きながら家に帰り着いたのだった。そして、フォウ君に唖然とされフォウ君を見た二人が唖然とし、サクヤはテキパキと紅茶の用意をしていた。




FGOキャラって使いやすいんですよね……どこかでブレーキかけないと。


エアエレメンタルの長
ギル
金の短髪、パーカーを着た少年。古代の国の王様の姿(幼少期)を模している。礼儀正しいが、時折とんでもない悪戯をしたりする。

アクアエレメンタルの長
コル
水色の長髪のポニーテール。水色のドレスを着ていて、長い杖を持つ。とある古代の国の王女の姿(幼少期)を模している。回復専門。

フレイムエレメンタルの長
アレク
赤い髪を三つ編みにした少年。とある国の王様の姿(幼少期)を模している。戦大好き。

アースエレメンタルの長
エル
緑の長髪の青年。貫頭衣を着ている。大人しく温厚。ギルと仲がいい。

全員、モデルはFGOキャラ。


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