鉄血の魔法少女オルフェンズ育成計画 (露湖ろこ)
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夢と魔法と鉄と血の世界にようこそ!

前述した通りこの話は作者のふとした思いつきです。
本当に目茶苦茶かもしれません。
てか、文章の確認なんてろくにしてません。
そんなでもいい人はこの先もどうぞ
OK?(メアリ風)


 ここは名深市にあるごく普通の民間警備会社「鉄華団」の本部の一室である。

その部屋には向き合うようにソファーが配置されており、そのソファーに男性が二人向き合って座っている。

「ねぇオルガ、次は何をすればいい?」

「そうだなミカ、久々の休みだ。二人でゲームでもしてみないか?」

そう言ってオルガと呼ばれた男性はミカと呼ばれた男性、三日月にタブレットを手渡す。

「これをやればいいの?」

「あぁミカ、巷で話題の魔法少女育成計画ってやつだ」

三日月は無言でタブレットを操作して自分のキャラクターを作る。

癖のあるセミロングの黒髪にアホ毛。瞳は青く、黒いセーラー服を着ている。

そしてその手にはメイスが握られている。

「おいミカこれって・・・」

オルガが何か言おうとした瞬間三日月が遮るように言う。

「気にしちゃダメだよオルガ。それにこれが一番作者からしたらしっくりくるんだ」

「おいミカ作者って・・・」

「もういいよ喋らなくて」

「すまねぇなミカ・・・」

オルガは謝り、三日月は無言でタブレットと向き合っている。

 部屋にはゲームの音以外何も聞こえる音は無く、気まずい空気がしばらく続いていたが。

しかし突然その沈黙を破るようにゲーム内からある音声が聞こえてきた。

「おめでとうポン!」

タブレットの液晶画面にはゲームのマスコットキャラクターであるファブが映し出されている。

そしてそのファブが三日月に話しかけているのだ。

「なにこれ?」

三日月は疑問に思い言った。

「こんにちはファブだポン」

「知ってるよ」

「あなたは本物の魔法少女に選ばれたポン!」

「は?」

「三日月・オーガスあなたの行動、性格、知力全てにおいて魔法少女の適性があるとファブは判断したポン!」

「なにこれ?」

三日月は疑問に思いオルガに尋ねる。

するとオルガはこう言った。

「これってあれじゃねぇのか?最近噂の何万人かに一人が本物の魔法少女になれるってやつじゃねぇのか?」

「へぇ、面白そうじゃん。オルガどうしたらいい?」

「決まってるじゃねぇか・・・」

三日月の問いにオルガが途中まで言ったところで少し溜め込むように口を閉じる。

そして息を吸い込み、ドヤ顔で言う。

「魔法少女をやっちまうのさ」

「うん、わかった」

三日月は迷うことなくポチッと画面をタップした。

すると三日月の体は光に包まれ、光が止んだ頃。

そこには先程までの三日月の姿は無かった。

「なにこれ?」

再び三日月そう言った。

髪質や色等は先程から変わらないが、明らかに長くなっており、肉付きが良く力強かった体は細く華奢な体になっている。

服も鉄華団マークがプリントされたのコートから黒いセーラー服にかわり、声も女子の可愛らしい声になっていた。

「どうしようオルガ。多分これ本当に女の体だ。」

「マジかよ・・・」

「そうだポン」

ファブが平然と言い、続けた。

「男が魔法少女になることはとても稀でレアだポン!」

「ねぇオルガこれからどうしたらいい?」

「あぁ少し待ってくれ・・・頭の整理が追いつかねぇ」

「ダメだよオルガ、目をそらしちゃ。これは大事な話なんだ」

室内はまた先程のように重っ苦しい風陰気に包まれる。

「今日から魔法少女ムーンライトバルバトスとして活躍するポン!」

「それでいいの?オルガ」

「あぁそうだなうん・・・うん?ムーンライトバルバトスってなんだ?」

「気にしちゃダメだよオルガ」

「そ、そうか」

「話はもう済んだのかポン?なら手を出すポン!」

ファブが言ったので三日月は手を前に出すと、三日月の手の上に卵方の物体が現れる。

「魔法の端末マジカルフォンだポン!これを使えば魔法少女としての基本的なチュートリアルを学べるポン!他の魔法少女と連絡も取れたりするポン!」

「へぇそうなんだ。便利だね」

「魔法少女はそれぞれ一つずつ特別な能力があるポン。ムーンライトバルバトスの能力はメイスを叩きつければなんでも壊せる能力だポン」

ファブは一旦休憩するように黙って、また続けた。

「魔法少女の目的は人助けをしてマジカルキャンディーを集めることだポン!」

「んじゃあいつも通り仕事してればいいの?」

「ムーンライトバルバトスならそれでもいいポン。自分が望まない限り接触した人間の記憶は曖昧になるし、写真や映像に取られてもぼやけるから安心して活躍するポン!」

「そっか。じゃあオルガ初めては何をすればいい?」

「そうだな、初めは景気よくパッーといきてぇからなぁ」

そう言ってオルガは室内にあったテレビを付ける。

テレビを付けると目に飛び込んできたのは銀行の立て篭もり事件だった。

「こいつらをやればいいの?」

「あぁそうだな。やっちまえ」

わかったと三日月は言って部屋の窓を開け、飛び出して行った。

 

 

 鉄華団の本部を後にした三日月はビルとビルの間を跳ねるように進みながら立て篭もり犯の居る銀行へ向かう。

銀行までの道の最後のビルから飛んだとき、真下には警察と野次馬の群れ。

「ファブは人前に出ても大丈夫って言ってたっけ?」

三日月はそう言って重心を下に向け、一気に降下する。

煙と瓦礫が宙を飛び、マスコミがシャッターを熱心に光らせる。

警察も何か騒いでいるか全て無視だ。

三日月が目指すのはただ銀行の中の立て篭もり犯だけだ。

扉を開こうとするも固く閉ざされている。

「使ってみるか」と言って三日月はメイスを扉に叩きつける。

銀行の中から人質達の悲鳴とかが聞こえる。

「なんだてめぇ!」

「うるさいなぁ・・・」

煩わしそうに三日月は立て篭もり犯の一人を真下からメイスで顔を殴り上げる。

何かの砕ける音の後に血飛沫が舞い、立て篭もり犯の一人は天井に突き刺さる。

「悪魔め!こっちは銃を持ってるんだぞ!」

もう一人が何か言っているのに気づき三日月は振り向く。

「状況を考えろ。銃をを持ってるのは私だ」

「それが?」とだけ言って三日月はもう一人の立て篭もり犯にメイスを振り上げる。

鈍い感触と鈍い音を響かせて人間が潰れる。

立て篭もり犯を片付け終わり、三日月は振り向き人質達に言った。

「もういいよ。さっさと出て」

三日月の言葉に人質達は逃げるように銀行を出て行った。

それに続くように三日月も真正面から堂々と銀行を出て近くのビルの屋上まで飛んだ。

 ビルの屋上には二人の少女が居た。

白い学生服姿の少女と竜騎士姿の少女だった。

しばらくの間見つめ合っていると竜騎士の少女が言った。

「君も魔法少女だよね。私はラ・ピュセルだ」

ラ・ピュセルと名乗る少女に続いて白い学生服姿の少女も言う。

「私スノーホワイトです」

三日月は「そう」と一言だけ言ってその場を立ち去ろうとしたがラ・ピュセルに引き止められた。

「君名前は?」

三日月は面倒そうに頭を掻いてから言った。

「みか・・・ムーンライトバルバトス。でいいんだったけ」

そして三日月はビルを飛び、鉄華団の本部まで帰っていく。

「ムーンライトバルバトス・・・」

その場に取り残されたラ・ピュセルとスノーホワイトは三日月のどんどんと遠ざかっていく三日月の背中を見つめていた。




この話を思いついた経緯はまほいくオープニングの叫べを聞いてたら鉄血の2クール目オープニングの叫ぶところを思いついたことから始まりました。
なんで思いついたんだすかね?
今回この話後半がかなりヤケクソだった気がします。
誤字脱字修正点やアドバイス、感想などがあればよろしくお願いします。


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バルバトスのフレンドを増やそう!

三日月と別れた後のスノーホワイトとラ・ピュセルが追いかけて鉄華団のビルに入って行いを注意したあとに仲間になろうっていう話です。
サブタイトルはそのまんまの意味です。


 鉄華団の本部への帰り道、三日月は恐らく学校帰りであろう少女二人が黒塗りの高級車に引かれそうになっていることに気がついた。

横断歩道の信号はもうすでに赤に変わっていてそこを走り抜けようとしていたのだ。

車はブレーキをしているようだが、止まる気配は無かった。

しかたなく三日月は黒塗りの高級車の後部へ降下してメイスを叩きつけた。

凹み宙に浮き上がる車体。

間一髪二人の少女を助けることが出来た。

「おいゴラァ!逃げんな!」

三日月は二人の少女をまるで米俵のように肩に抱え飛び去った。

先程の場所から少し離れた場所に二人の少女を降ろしてまた帰路に着く。

「少し見てみるか」

そう言ってマジカルフォンを懐から取り出す。

画面に表示された数字を見ると、もうすでにキャンディーの数は1000を超えていた。

「やっぱり銀行ののが得点高い。もうちょっとやるか」

三日月はその後も物を壊しながら人助けをし、キャンディーを稼いだ。

 

 

「あれが今日増えた魔法少女だポン」

ファブは今出会った魔法少女ムーンライトバルバトスのことをそう言った。

二人はもうちょっと話がしたいと思い、ムーンライトバルバトスの後を追いかけた。

その途中二人が見たのは破壊なのか人助けなのかものすごく曖昧なムーンライトバルバトスの行動だった。

黒塗りの高級車に引かれそうになった少女二人を助けるために高級車を破壊し、木の上の猫を助けるために木を薙ぎ倒し、スピード違反をした車を前から無理矢理押し止め凹ませる。

「こんなの無茶苦茶だよ。こんなの絶対おかしいよ!」

「スノーホワイトの言うことは私にもよくわかる」

「ねぇ、ちょっとやめさせようよ」

そうこう話している間にムーンライトバルバトスはまた別の場所へ向かう。

「追いかけよう!」

また二人はムーンライトバルバトスの後を追いかける。

 ムーンライトバルバトスが足を止めたのはここ最近業績を上げている民間警備会社「鉄華団」の本部があるビルだった。

「ここって確か鉄華団のビルだよね?」

「あぁ間違いない」

「確かにここに入っていったよね」

「あぁ入ってみよう」

ラ・ピュセルはそう言ってビルに入っていき、スノーホワイトもそれを追うようにビルへ入っていった。

ビルに入ってすぐの人気のないエントランスで二人はムーンライトバルバトスを見つけた。

階段を上がっていく彼女を見てラ・ピュセルが「追いかけよう」と言い、二人も後から階段を昇っていく。

フロア3階分階段を上がりムーンライトバルバトスは廊下へ出て真っすぐ歩いていく。

2、3部屋通りすぎてとある部屋の前で立ち止まり、磨りガラスの扉を開けて中に入る。

ラ・ピュセルとスノーホワイトの二人は壁に張り付き中の会話を聞くことにした。

ムーンライトバルバトスは部屋の奥の方にいるのか言葉があまり上手く聞き取れない。

だけど部屋にはもう一人居るらしく、言葉を聞き取ることができた。

「なぁミカ、あれは流石にやりすぎじゃねぇのか?」

声の主はテレビで聞いたこのある鉄華団の社長、オルガ・イツカの声だった。

オルガの呼んだ名前ミカはムーンライトバルバトスと出会った時に最初に言った名前だった。

「ミカちゃんでいいみたいだね」

スノーホワイトが言った。

「テレビの映像ではぼやけてたけどよ、堂々と映りすぎじゃねぇか?それとこれだ」

先程の銀行立て篭もり事件はテレビで中継されていてスノーホワイトもこれで事件を知った。

それにムーンライトバルバトスは堂々と映っていたらしい。

そしてオルガはそのことを注意したあと、何かを手渡した。

「お前いろいろとやってるらしいな。もうまとめサイト出来てるぞ」

魔法少女の活躍はまとめサイトで記事が作られているが、デビューした初日でもうまとめサイトが出来ているらしい。

「そりゃ堂々とメディアの前に現れて立て篭もり犯を撲殺、その後も無茶苦茶やってるらしいな」

スノーホワイトはムーンライトバルバトスが立て篭もり犯を殺したと聞いてその場を逃げ出したくなったが、足がすくんで動けなかった。

突然部屋の中から声がかかる。

「ねぇ、そこで聞いてないで入ってきたら?」

ムーンライトバルバトスの声だった。

スノーホワイトは恐怖に耐え切れなくなりそうだった。

自分達じゃムーンライトバルバトスに勝てるわけがないと直感していた。

「あぁすまなかった」

そう言ってラ・ピュセルは磨りガラスの扉を開けて部屋の中に入る。

攻撃は無かったがスノーホワイトは自分で部屋に入ることができず、ラ・ピュセルに引っ張られて部屋に入った。

「で、何?」

「ごめんなさい!私もう少しお話がしたくて」

「わかった。で、何?」

「単刀直入に言わせてもらうが君の行動は少し無茶がすぎるんじゃないか?」

「うん、反省してる。オルガにも言われた」

「それとだ、よかったら一緒に活動しないか?」

ラ・ピュセルの一言に表情にはあまり出ていないが驚いているようだ。

スノーホワイトも驚いている。

ムーンライトバルバトスは少しオルガと話してから快く快諾してくれた。

ムーンライトバルバトスの返答にスノーホワイトとラ・ピュセルの二人は少しほっとした。

「じゃあもういい?」

「うん、ごめんね」

「チャットでまた会おう」

二人はそう言ってビルから出た。 




次回3話はのサブタイトルはマジカルキャンディーを集めよう!に散華を組み合わせるつもりですけど、どう合わせたらいいんですかね?
この話の目標は一応原作キャラ生存なんで、ねむりんを生存させるために18人目の魔法少女作って殺します(真顔)
三日月増えたから17人で半分が面倒だっていうのもあります。


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散華しないためにマジカルキャンディーを集めよう!

直球タイトルそのまんまです。
ねむりん生きろ。
この世界の三日月は完全に文字が読めます。
そういえばがんだむふらうろすくんはのおなまえはりゅうせいごうになってていろもげひんないろになってましたね(思考停止)
イオク様カラーのフラウロス見てみたいなぁ~
あ、そうだ。
今回オリジナルキャラが出て今回死にます。


 今は夜、ラ・ピュセルが別れ際にチャットで会おうと言っていたので、三日月はチャットを開いてみる。

チャットルームにはもうすでに何人かが居て話をしている。

『やぁ来たね。今君の話をしていたんだ』

ラ・ピュセルのアバターの上に文字が表示される。

「えっとこれでいいのか?」

指でタッチパネルを操作して文字を打つ。

『何の話してたの』

『とりあえず自己紹介からしねぇか?』

黒い魔女格好をした少女のアバターが言った。

『そうか。ムーンライトバルバトス』

三日月が自己紹介すると他の魔法少女達も自己紹介をした。

さっき会ったばかりのスノーホワイトとラ・ピュセル。

魔女の格好と忍者の格好がトップスピードとリップル。

中性的なのとシスターがヴェス・ウィンタープリズンとシスターナナ。

パジャマ姿のがねむりんでバイオリンを弾いてるのが森の音楽家クラムベリー。

後は双子の天使が居たが、三日月はどちらが姉と妹かを覚えることができなかった。

「これよりもっと居るのか。覚えきれないな」 

魔法少女はこれよりも多いらしく三日月は不安を感じ呟いた。

チャットルームに居た全員が自己紹介を終えると双子の天使の姉の方だったかが話しかけてきた。

『そういえば、凄い暴れてるらしいわね』

『でも順調にキャンディーも貯まってる』

暴れてるといえばと思い出したようにトップスピードが言った。

『そういえばスピード違反した車を前から無理矢理押し止めて凹ませたんだっけ?』

『そうだよ』

三日月の文章が単調な物なのはまだチャットに慣れていないからである。

だが、三日月はチャットに慣れないながらもその後は他の魔法少女達との交流を深めた。

 突然、チャットルームにファブと数人の魔法少女が現れる。

どうやら残りの魔法少女が全員やってきたらしい。

「みんな集まったポン。今回は重大なお知らせがあるポン」

ファブの重大なお知らせとい言葉に場は静まり返った。

『魔法少女の数を半分に減らすことにしたポン!』

「は?」

あまりのことに三日月は現実でつい口に漏らした。

チャット内でも魔法少女を増やしたのはファブじゃないかなど先程の沈黙と真逆の状態になっている。

それでもファブは話を続けた。

ファブの話はこうだった。

まずは18人と増えすぎた魔法少女を半分の9人にすること。

そして魔法少女は一週間に一人マジカルキャンディーの数が少なかった者から脱落すること。

魔法少女達は自分の生き残りを賭けて他の魔法少女よりも多くのキャンディーを集めなければならない。

ファブの話が終わった後、チャットはお開きになりった。

だが三日月はチャットルームに残りファブに聞いた。

『脱落したらどうなるの?』

ファブの回答は意外なものだった。

 チャットがお開きになった後、三日月はラ・ピュセルに呼び出されて鉄塔へ向かった。

「やぁ、来てくれたか」

鉄塔から町を見下ろしていたラ・ピュセルは背後から来た三日月に気づき、町に背向け三日月の方へ向く。

隣にはスノーホワイトも居た。

「えっと、そういえばなんて呼べばいいかな?」

スノーホワイトは言った。

これに三日月は「ミカでいいよ」と言う。

「ミカって本名じゃないのか?」

ラ・ピュセルが疑問に思い尋ねる。

「違うよ、まぁだからいいでしょ」

三日月は二人を納得させ、何故呼び出したのか尋ねた。

「あぁそうだ。ファブの言ったことだが、君のキャンディーはいくつある?」

三日月はマジカルフォンを取り出し、キャンディーの数を見せる。

「君は大丈夫みたいだね」

「ねぇラ・ピュセルは脱落したらどうなると思うの?」

三日月はふと尋ねる。

「魔法少女の力を失うだけじゃないのか?」

「ファブから聞いたんだ。脱落した者は死ぬってことを」

「え、死ぬって・・・」

スノーホワイトの声からは少なからず恐怖が感じられた。

「どうにか全員助けられないのか?」

ラ・ピュセルは言った。

しかし、誰もその答えを持っていない。

「とりあえず、今日は帰ろう」

「そうしよう。じゃあ一度帰って何か対策を考えることにしよう」

ラ・ピュセルはそう言って鉄塔を離れていき、スノーホワイトもそれについていく。

二人が完全に鉄塔から離れた事を確認すると、三日月は背後の物陰に声をかける。

「でさ、そこで何してんの?」

「あちゃ、ばれてたか」

気の抜けた笑い声を上げて出てきたのはさっきチャットルームで出会ったトップスピード、そしてその後ろにはリップルがいた。

「脱落したら死ぬって本当か?」

トップスピードが三日月に尋ねる。

「うん。ファブが言ってた」

三日月が言うとトップスピードの後ろでリップルが舌打ちをした。

「で、何で隠れてたの?」

「いや、それはなんか隠れてた方が良さそうな風陰気だったから、かな?」

「そう。それでどうすんの?」

「どうするって何がさ?」

「死ぬってやつ」

「あぁえっと、とりあえずキャンディーを集めないとな!」

そう言うとトップスピードはリップルを箒に乗せて飛んで言った。

「俺もオルガの所に帰るか」

三日月は携帯を取り出し、時間を見る。

そうするとメールが届いた。

『テイワズからの依頼だ。すぐに出るぞ』

三日月は急いで鉄華団に戻った。

 

 

 私の父は所謂ヤクザだった。

お金も結構あって生活に困った事は無い。

学校ではあまり友達はいなくて寂しかったけれど最近はずっとゲームをしているから寂しくない、けれどつまらなかった。

そのゲームをしていた時、私の人生は一瞬で姿を変えた。

「おめでとうポン!谷岡香苗、あなたは本当の魔法少女に選ばれたポン!」

ゲームのマスコットキャラクターのファブが現れて私にそう告げた。

スマートフォンには画面中央をタッチする指示が出ていた。

私はそのボタンを押した。

自分の体が光に包まれ、ゲームのアバターと同じ姿になる。

「あなたは今日から魔法少女グレイズとして人助けをしてキャンディーを集めるポン!」

本当の魔法少女になれるならグレイズとかよりもカッコイイ名前にすれば良かったとか思いもした。

今は順調にキャンディーを集められている。

 今日ファブから魔法少女を半分に減らすことにしたと言われた。

自分で増やしといてそれは無いと思う。

魔法少女をやめたらまたあのつまらない生活に戻らなければいけないのだろうか。

私はベットの上でスマートフォンの画面に映る自分のアバター、グレイズを見つめる。

 突然、居間の方から銃声がした。

煙の臭いもする。

私はリビングに向かった。

リビングの扉は半開きになっていて、私は物陰から中の様子を伺う。

男の人が二人、父の前に立っている。

鉄華団のジャケットを着ていた。

背の低い男が懐から銃を取りだし、パンパンパンと発砲する。

私は恐ろしくなって、ただ一心に廊下を走った。

廊下から階段を上り、目指すは2階の自室。

自室に着くと、扉の鍵を閉め窓から逃げる準備をし始める。

 

 

三日月が銃を撃つと、廊下の方から足音がドタドタと聞こえた。

「ちょっと行ってくる」

そうとだけ言って三日月は足音を追いかけていった。

廊下を駆けていった足音は階段を上り2階へ向かった。

三日月は逃げた人物と同じ道を行き、一つの部屋にたどり着いた。

部屋の扉は鍵が掛かっている。

どうやら当たりのようだ。

三日月は部屋の扉は木製だったので、蹴り突き破り中に入る。

「こっちによって来るな!」

拳銃を握った少女が三日月に向かって吠える。

「めんどくさいなぁ」

三日月は手に握っていた銃を目の前の少女に突きつける。

そうするとその少女は徐に何かを取り出した。

「それって・・・」

三日月が全て言い終える前にその少女はマジカルフォンで魔法少女に変身していた。

「私の能力はどんなものでも必ず当てるわ!」

その少女、谷岡香苗が変身した魔法少女グレイズの能力は名前の通りかするだけでも命中した判定になるため、少々危険である。

三日月は面倒だと頭を掻きマジカルフォンを取り出し、ムーンライトバルバトスに変身する。

「あなたは!?」

グレイズは瞬時に勝てないと直感した。

「全員殺せって言われてるんだ」

そうとだけ言って三日月は、一気に間合いを詰めメイスで顎から上に殴り上げた。

普通の人間ならこれで死んでいたが、相手は魔法少女だ。

グレイズはよろけながらもその場に立っていた。

三日月はすかさずメイスに内蔵されたパイルバンカーでグレイズの腹部を貫く。

腹部を貫かれその場に倒れ込むグレイズ、しかしまだ息はあった。

「まだ生きてるのか」

倒れたグレイズを見下ろしながら三日月は銃を握り、彼女にその銃口を向ける。

そしてパンパンパンと3発の弾丸を撃ち込む。

そうするとグレイズは動かなくなった。

三日月は部屋を後にし、リビングへ戻る。

仕事は終わった、後は帰るだけだ。

ふとマジカルフォンを見るとキャンディーが貯まっている。

「こういうのでも一応ありなのか」

そうとだけ言うと三日月は返信を解き仲間と合流する。




すげぇよミカがしたかった。
18人の魔法少女の内今回で1人死んだので、この週のねむりん死亡は回避されました。
次回はもっとちゃんとマジカルキャンディーを集めたいなと思っています。


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新しい血を求めバージョンアップのお知らせ!

前回唐突に登場させて唐突に殺された魔法少女のおかげでねむりんは一週間を安全に過ごすことができるようになりました。
今回は三日月がなんとか全員生存できるように考えてそれを実行するお話です。
マジカルキャンディーの譲渡する機能が追加される話です。
後ルーラは鉄華団側に付きます。
いろいろおかしいような所があると思いますが、許してください。
この世界では一般人に正体が知られても全然問題ない世界です。


 テイワズからの仕事を終え一日が経った。

三日月は今鉄華団の本部のビルに居てオルガと話をしていた。

「昨日スノーホワイトとラ・ピュセルと話したんだ。どうにか全員助けられないのかって」

今生存している魔法少女は三日月を含め17人。

ファブの話によると一週間に一人脱落するらしいが今週はもう一人死に、脱落者は出ない。

「そうだな・・・キャンディーの数が一番少ないやつから脱落するなら、全員同じ数にすればいいんじゃないか?」

「そうだねオルガ。でもどうやって全員のキャンディーの数を同じにするの?」

そうだなとオルガが頭を抱えるとファブから連絡があった。

連絡の内容はマジカルフォン同士でのキャンディーの譲渡機能が追加されたというものだった。

この仕様変更が皆で助け合えというものなのか、キャンディーを奪い合えという事なのかはわからないが、ちょうど良いタイミングだった。

この仕様変更で閃いた三日月は他の魔法少女達全員に鉄華団のビルの屋上に集まるようにメッセージを送信した。

 三日月のメッセージで集まった魔法少女は全員ではなかった。

スノーホワイトとラ・ピュセル、トップスピードとリップル、ヴェス・ウィンタープリズンとシスターナナ、ハードゴア・アリスとねむりん、そしてルーラ組だ。

「こんな時に呼び出して何の用?」

ルーラが三日月に尋ねた。

「えぇ私も気になりますムーンライトバルバトス」

ルーラに続きシスターナナも言うと、他の魔法少女達も口々に言い出した。

三日月はその彼女達を黙らせ呼び出した理由を説明する。

「まず一つ言うけど、脱落したら死ぬ。これを回避するために昨日スノーホワイト達と話した。どうやったら全員助けられるのか?って、それで考えたんだ」

死という言葉に一瞬ざわついたが三日月が続けるとまた静まり返った。 

「キャンディーの数を全員同じにする。ちょうど良いタイミングで機能も追加された」

「そ、そうですね。同じ魔法少女同士助け合いましょう」

「あぁ馬鹿馬鹿しい。これはキャンディーを奪い合えって運営からのメッセージでしょ」

助け合おうと言ったシスターナナに対してルーラは呆れたように言った。

だが、ほぼ全員の魔法少女が三日月の提案に賛成した。

ルーラ組のたまとミナエル、ユナエルもこれに賛成している。

ルーラは呆れたように腕を組むただ立っていた。

「あぁじゃあ入ってきて」

そう言って三日月が言うと階段の方から3人の大人が屋上にやって来た。

そして3人は順番に自己紹介をした。

金髪の女性がメリビット・ステープルトン、眼鏡をかけた男性がデクスター・キュラスター、いたって平凡な男性がラディーチェ・リロトだ。

「では皆さんマジカルフォンでしたっけ?それを私達に預けてください」

デクスターがそう言うと魔法少女達は3人にマジカルフォンを預けた。

「これはどういうこと?」

ルーラが三日月に尋ねた。

「一人だけキャンディーを全部貰うつもりが無いって言いたかったから」

そういう三日月の言葉にルーラは仕方なくマジカルフォンを預けた。

マジカルフォンを預かった3人は素早くキャンディーの数を把握し、そして全員が同じ数のなるようにキャンディーを分け始める。

「では皆さん少々時間がかかるのでこちらへ」

そう言ってメリビットはビルの中の休憩室に案内する。

休憩室までの道でルーラは自分が勤めていた会社よりも鉄華団のビルは綺麗だと思った。

また社員の意見等を募集している箱も見受けられる。

そして社内全体に生き生きとした風陰気を感じられる。

「ここいい所でしょ」

三日月は歩きながらルーラに話しかけた。

「えぇ悪くないわね」

「ここではみんなが互いに認め合って仕事してるんだ」

三日月の一言に「そう」と呟いたルーラは憂いを帯びた顔をしていた。

「でも友達や仲間なんていい加減な関係じゃダメね」

「ふーん。そういえばもう仕事とかはしてるの?」

「いえ別に」

「そっかじゃあくる?」

ルーラは何も答えなかった。

会話をしていると時間は早く立つように感じられ、いつの間にか休憩室に着いた。

休憩室は広く、円形のテーブルがたくさんあり、その周りに椅子が並べてある。

室内に入った魔法少女達はテーブルの周りに並べられた椅子に座る。

三日月が椅子に座ると二人の男が歩み寄って来た。

昭弘・アルトランドとノルバ・シノだ。

「あぁ昭弘とシノか」

「ははミカ、その姿だとまだ慣れねぇな」

「俺もまだ慣れないな」

「そっか」

三日月と昭弘とシノの会話を見ていた他の魔法少女達は先程のメリビット、デクスター、ラディーチェもそうだが皆魔法少女の事をさも当たり前かのように振る舞っていて、三日月は鉄華団に自分が魔法少女だと明かしているのだろうかと思った。

「なぁムーンライトバルバトス、ここでは自分が魔法少女だって明かしてるのか?」

トップスピードが三日月に尋ねた。

うんと頷き三日月は「鉄華団のみんなは家族だからね」と答えた。

それにトップスピードは笑い「家族か、なんかいいな!」と言った。

二人の会話を聞いていたルーラは家族という単語がひっかかった。

しばらく魔法少女達はキャンディーを分ける作業が終わるのを待っていた。

そしてその作業が終わりメリビットとデクスターとラディーチェがマジカルフォンを持って魔法少女達のもとへやって来た。

鉄華団の社長オルガ・イツカもいる。

オルガは魔法少女達に「今日はわざわざ来てくれありがとう」と言った。

その後三日月が「まだ残ってる魔法少女の説得もするからもしかしたらまた呼ぶかもしれない」と言った。

するとルーラが突然席を立ち、オルガに話したいことがあると言った。

そして二人は別の場所に移動した。

またしばらくした後オルガとルーラは帰ってきた。

ルーラは何かを考えているような表情だった。

全員が揃ってからまた少し話後に、この日は解散した。

また後日三日月はマジカロイド44の説得に成功した。

だがカラミティ・メアリには断られ、森の音楽家クラムベリーとは話すことができなかった。

そして日曜日、ファブから告げられたのはグレイズが事件に巻き込まれ死亡したためこの週の脱落者は0人ということだった。

 そして、次の週の月曜日になりルーラこと木王早苗は鉄華団に来ていた。

魔法少女となり仕事を辞めていたがまた就職するためだ。

先週オルガと話し早苗は鉄華団に就職しようと思った。

今は面接の順番を待っている。

自分の一つ前の三条合歓が面接を終え退室した。

早苗の番だ。

扉をノックし一声かけてから入室する。

面接官は社長のオルガ・イツカとメリビット・ステープルトン、そして三日月・オーガスだ。

三日月が早苗を一目見た瞬間言った。

「来たんだ、ルーラ」




よし、とりあえずこれでルーラの安全は確保されたな。
これからまたオリジナル魔法少女を登場させて流れを変えていこうと思います。
オリジナル魔法少女は鉄血キャラで出そうと思います。


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妬心の渦中でルール変更のお知らせ

ルーラが好きです。
ルーラとスイムスイムのキャラソンのためだけにCD買いました。
あと16人の日常も買いました。
やっぱりルーラが好きです。
だけど今回の話はけっこうねむりんメインな感じがします。
あれれ~?おかしいな?なんでだろう?
でもねむりんも好きだからこれでいいかって感じですね、はい。



 木王早苗は鉄華団に何故入ろうと思ったのか?

それは自分の価値が解る人間のいる場所だと知ったからだ。

初めてこの会社にやって来てオルガ・イツカと話をした時、ここは自分のことを田舎の名物社員として、イベントの時にだけ頼りにするような場所ではないと確信できた。

そして、初めてこの会社に来た時から二日ほど後にもう一度ここを訪れた時に一つ問題点を見つけ改善策をオルガに提案をした。

するとオルガは早苗の言葉にしっかりと耳を貸し、改善しようと言った。

オルガの話によればここでは会社に貢献すればするほど、それに見合った報酬が与えられる。

家族のために頑張っているのならそれなりの報酬がないといけないと言っていた。

オルガの言う家族がどんなものなのか理解はできなかったが、ここでなら自分を生かすことができる。

そして早苗は鉄華団の面接を受けた。

面接から三日後、鉄華団から採用の通知が届いた。

来週の月曜日から自分の新しい生活が始まり、やっと認められる。

自分一人しかいない部屋の中でそう思いながら早苗はマジカルフォンを取り出すとチャットルームに集合しろとファブからのメッセージが届いていた。

 

 

 

 今日ファブが言ったことによれば、18人いた魔法少女の内、グレイズという魔法少女が事件に巻き込まれ死亡しこの週の脱落者はでなかった。

あのままのランキングでいくのなら最下位は自分で脱落するのは自分だったと少し安心しながらも複雑な気持ちに三条合歓はなっていた。

だか明日、合歓はついに就職することを決意し現在急成長中の鉄華団の面接を受けることにした。

止まっていた時計がまた動き出すように合歓の人生もまた動き出す。

そうすれば今までのような生活には戻れなくなるかもしれない。

合歓の母が部屋に入って来て言った。

「合歓、まだ起きてるの?明日面接でしょ?早く寝なさい」

合歓は軽く返事をし母が部屋から出た後、手元に置いていたマジカルフォンを掴み、魔法少女に変身をする。

「ニート辞める前に最後に仕事をしておこうかな?」

そう言って合歓が変身した魔法少女、ねむりんは様々な夢の中から面白そうな夢を探す。

一人の少女がお姫様を見つめている夢だった。

その少女はお姫様の従者になりたいと言っていたが、ねむりんはあなたがお姫様になればいいと言った。

その言葉に私がお姫様になれるのか?と言う返事を少女はした。

ねむりんはその少女に「女の子は誰でもお姫様候補なのさ」と言った。

とてもいいことをした、そう思いねむりんはそろそろ自分も寝ようと思いその少女の夢から出て変身を解き就寝する。

 次の日の月曜日、合歓は魔法少女の姿ではなく人間の姿でこの鉄華団のビルにやって来た。

自分の面接の順番を待っている時、隣に居た木王早苗と話した。

「面接ってなんだか緊張しますね」

「そうですか?」

「なんだか学校で自分のテストの成績を見る前の時みたいに緊張します」

「ごめんなさい。私それはちょっとわからないです」

「勉強とかはお得意なんですか?」

「まぁ一応」

「いいですね羨ましいです」

「そうでか」

合歓と早苗は面接の順番が回ってくるまでそんなたわいもない話をした。

合歓が今回初めての面接だということ、早苗は前一流企業に勤めていたこと、魔法少女育成計画をやっているということ、色々な話をした。

そんな話をしながら楽しいと感じ合歓はこんな人と一緒に仕事が出来たらいいなと思う。

そして、自分の一つ前のハッシュ・ミディが面接を終えて扉を開けて退室するのを見ると合歓は「じゃあ私面接受けてきますね」と言って席を立ち面接に挑む。

 それから三日後に採用の通知が届いた。

その喜びに浸りながらふとマジカルフォンを取り出すとファブからチャットルームに集合しろとメッセージが届いていた。

 

 

ここはとある森の廃屋の中。

森の音楽家クラムベリーはピアノを弾きながらファブと話している。

「なぁどうする?ポン。やつら協力して全員生き残ろうとしてるぜ?ポン。こんなんじゃ面白くねぇ・・・ポン」

普段の口調とは全く違う話し方で語尾のポンは完全に添えるだけとなっている。

「そうですね。これでは面白くありませんね」

クラムベリーはそう言ってから少し考えてまた言った。

「ではギャラルホルンを吹きラグナロクを始めましょう。今いる魔法少女と戦わせるための魔法少女を集めましょう」

「わかったポン。何でも構わないポン!目茶苦茶にしてくれれば!ポン」

そう言ってファブは姿を消す。

クラムベリーはピアノを弾き終わりふと窓の外に目を向ける。

そしてふふと笑い「面白くなりそうですね」と呟いた。

 

 

「なぁガエリオ、鉄華団がテイワズと繋がっているという話しについてどう思う?」

現場に向かうパトカーの中警察官であるマクギリス・ファリドは同僚であり親友のガエリオ・ボードウィンに尋ねた。

「あぁ俺も鉄華団とテイワズは繋がっていると思う。鉄華団を支援しているエウロ・エレクトロニクス社は裏でテイワズと繋がっているらしいからな」

「やはり君もそう思うか。ではエウロ・エレクトロニクス社と同じく鉄華団を支援しているアドモス商会もテイワズと繋がっているのだろうか?」

「さぁな?だが一時期アドモス商会と協力関係にあったテラ・リベリオニスはテロ組織夜明けの地平線団と繋がっていたそうじゃないか」

「まったく社会の腐敗ここに極まりだな」

「あぁ全くだ」

「本件の被害者はどうやらテイワズと対立をしていた組だったらしいな」

マクギリスとガエリオが話をしていると被害者の谷岡の家に到着した。

現場には先に何人かの警官が到着していた。

その中には親友の一人カルタ・イシューもいる。

「来たわねマクギリス、それと」

カルタが途中まで言いかけたところでガエリオが「あぁ被害者はどんな感じだ?」と質問した。

「被害者は谷岡純一と娘の谷岡香苗、それと数人の男性。娘の谷岡香苗は何か鈍器のような物で殴られた後に銃を3発撃たれ死亡しているわ。だけど不可解なのは谷岡香苗だけ鈍器で殴られているということよ」

カルタは被害者について説明した後に自身が不可解に思ったことについても話した。

「よくもまぁこんな真夜中に銃なんか撃てたな」

「だが、犯人は自分達に関する証拠を全く残していない。カルタ谷岡香苗の遺体の場所まで案内してけれないか?」

マクギリスはカルタに谷岡香苗の遺体の場所まで案内を頼んだ。

遺体の元へたどり着いたマクギリスはふと何かを感じた。

それは鈍器で殴られた跡が今日の昼、銀行立て篭もり事件の犯人達と同じような跡だということだった。

「まさかこれは魔法少女がやったって言うんじゃないだろうな?」

マクギリスの顔を見て何かを感じとったガエリオが少し呆れた様子でマクギリスに尋ねた。

「そのまさかだ」

ガエリオは額に手を当てやれやれだという風に首を振った。

 その後事件の犯人についての証拠を掴むことができずに捜査は行き詰まっていた。

そんな時休憩室で今人気の魔法少女育成計画をしながら駄弁っていたマクギリス、ガエリオ、カルタの三人の前に突然ファブが現れて本物の魔法少女に選ばれたと言った。

「最近は魔法少女達が魔力を使いすぎてどんどんとこの土地が蝕まれていってるポン。中では悪事をはたらく者もいて困ってるポン。だから魔法少女達を懲らしめてほしいポン!よろしくだポン、グリムゲルデ、キマリス、リッター」

三人は魔法少女になった、今も平和のために警察官として働いているが、これからは平和のために魔法少女としても活動することになった。

 

 

ファブに呼び出され三日月達、魔法少女はチャットルームに集まっていた。

「大変だポン!魔法少女を襲う魔法少女が現れたポン!みんなで協力してなんとか悪の魔法少女を懲らしめるポン!」

ファブのあまりに唐突な言葉に一同騒然とする。

チャットルームを解散した後に三日月とスノーホワイト、そしてラ・ピュセルはいつもの鉄塔に集まった。

そして先程のことについて話し合っている3人に一つの影が忍び寄る。

「お前達が、魔法少女か」




ここに来て現在の流れを完全に変更して(前からやってるような気もするが)戦闘路線にしていきます。
なんだかギャグ要素いれるつもりがあまり入っていなかったと思っていたのでファブに財団のあのセリフを喋らせました。


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命の値段の激レアアイテムをゲットしよう!

鉄血キャラの年齢設定ガバガバですけど許してください。
次の話からは多分レンチメイス君が登場します。
あとギャグ要素も多分入れられたと思います。


 「お前達が、魔法少女か」

そう言って現れたのは緑色の鎧に身を包んみ、長い前髪で目を隠した魔法少女だった。

「君も魔法少女じゃないのか?」

ラ・ピュセルが目の前のイレギュラー魔法少女に尋ねた。

「そうだ。だがここを蝕む悪とは違う!」

緑のイレギュラー魔法少女は長い前髪を後ろに流し、金色に輝く瞳を現した。

そしてイレギュラー魔法少女は腰にマウントしていたバトルアックスを握り三日月に斬りかかる。

三日月はぐっとメイスでバトルアックスの一撃を防ぐ。

ラ・ピュセルは「ムーンライトバルバトス!」と名を呼びイレギュラー魔法少女に斬りかかるが、何者かによって道を阻まれた。

「誰だ!」

ラ・ピュセルの目の前には今三日月が戦っているイレギュラー魔法少女と酷似したもう一人のイレギュラー魔法少女の姿があった。

緑の鎧と髪型は同一だが武装はバトルアックスとシールド、そして赤いマントを身につけている。

「オーリス!黒い奴は頼んだ、私はこの騎士をやる!」

「クランクわかった!」

二人の魔法少女は三日月とラ・ピュセルのそれぞれを相手にする。

戦闘能力の無いスノーホワイトはこの事態に困り果てていた。

そんな時、スノーホワイトの足元に上空から3発の弾丸が撃ち込まれた。

スノーホワイトは「誰!?」と上空を見上げると、そこには二人のイレギュラー魔法少女によく似た紫色の鎧と機械的なスラスターを身につけたもう一人の魔法少女がいた。

その魔法少女は他の二人と同じバトルアックスの他にライフルとワイヤークローを装備していた。

「クランクさん、こいつは私がやります!」

そう言って紫色のイレギュラー魔法少女はワイヤークローをスノーホワイトに向かって放つ。

ただ呆然のしていたスノーホワイトは紫色のイレギュラー魔法少女に簡単に捕縛されてしまった。

そして上空に引き上げ振り回した。

上空で振り回されたスノーホワイトは悲鳴を上げる。

「スノーホワイト!・・・っ小雪!」

上空で振り回される彼女の名を叫び、助けに向かおうとするがクランクが行く手を阻む。

「貴様の相手は私だ。アインには向かわせはしないぞ」

クランクはラ・ピュセルに強い一撃を与えた。

「ここでお前は終わりだ!」

オーリスは三日月を蹴り飛ばし体勢を崩しとどめとばかりにバトルアックスを振り下ろす。

三日月はこれを紙一重で回避し跳躍、アインをメイスで殴りつけ鉄塔の足場まで叩き下ろす。

これによりスノーホワイトはワイヤークローの拘束から解き放たれた。

そしてよろよろと立ち上がり三日月の方へ視線を向けた。

三日月はすぐにオーリスとの戦闘を再開していた。

相手のバトルアックスの攻撃を全て回避し的確にメイスで殴る。

そしてオーリスが完全に体勢を崩し無防備になったその刹那、三日月は能力を使用してメイスをオーリスの頭頂部に叩きつける。

血飛沫がまるで真紅の雪のように舞い、その下で戦う三日月はスノーホワイトの目にはまるで修羅のように映った。

「オーリスさんを!」

アインはバトルアックスで三日月に斬りかかるが回避され腹部にメイスの一撃。

そしてアインの体は宙に浮く。

クランクはラ・ピュセルから瞬時に離れて宙に浮かんだアインを回収して鉄塔から離れていく。

「逃がすわけないだろぉ?」

「いや、追撃はやめておこう」

クランクとアインを追撃しようとした三日月をラ・ピュセルが引き止めた。

「どうしてとめるの?」

「このことを一度他の魔法少女達にも伝えて対策を考えよう」

「仕方ないか、分かったよ」

そう言って三日月は手に持っていたメイスを地面に置き、ナッツを取り出して食べはじめる。

 三日月達がファブの言っていた魔法少女を襲うイレギュラー魔法少女に襲われた後、魔法少女達はチャットルームに集まった。 

「なぁスノーホワイト達が知らない魔法少女に襲われたってそれマジか?」

トップスピードがスノーホワイトに尋ねた。

「はい・・・とても怖かったです」

スノーホワイトは自身が襲われたことに恐怖したが、イレギュラー魔法少女の一人を始末した三日月の修羅のような姿にも恐怖していた。

今や三日月が発言するたびに体を強張らせる。

「そいつらの一人は俺が始末した」

「始末したってどういう・・・?」

始末という言葉がひっかかったヴェス・ウィンタープリズンが三日月に尋ねた。

「そのままの意味だよ。あいつらは俺達を殺しに来る。死なないためには殺すしかない」

「殺すって戦わなきゃいけないってことなの?」

たまが三日月に怯えたように言うと三日月は静かに頷いた。

リップルは面倒なことになったとでも言うように舌打ちした。

「戦わなきゃいけないって力の無い魔法少女はどうしたらいいの?私とか」

ねむりんが言ったことに誰も答えることはできなかった。

先程襲われたスノーホワイト自身、力が無くただ成す統べなくやられていただけだった。

そしてチャットでの話し合いは今のところ戦闘能力を持つ魔法少女が非戦闘能力を持つ魔法少女を守るというかたちに落ち着いた。

 

 

 男子中学生の岸辺颯太は憧れていた戦いを強いられ複雑な気持ちになりながら学校での生活を送っていた。

戦闘能力を持つ自分が戦闘能力を持たないスノーホワイトを守らなければならない。

しかしイレギュラー魔法少女であるクランクと戦った時、明らかに自分は圧倒されていた。

ムーンライトバルバトスはあんなにも簡単にイレギュラー魔法少女のオーリスを圧倒し倒したのだ。

だが自分は相手を圧倒することができず、攻撃から身を守るだけだった。

こんな自分ではスノーホワイトを守ることができない。

いっそのことムーンライトバルバトスに全て任せて自分も守ってもらおうか?

そんな甘い考えが颯太の頭の中を巣くった。

それではだめだ、自分は彼女の剣となることを誓ったではないか。

そんなことで悩んでいては駄目だ。

そうとは分かっていても自分では何もすることができなかった。

こうして休み時間をただほうっと過ごしているとクラスメイトの男子が掴みあって一人が颯太の机を倒した。

倒れた颯太の机の中身はは教室の床にばらまかれた。

颯太は慌てて魔法少女の本を探したがそれはどこにも見当たらなかった。

「探してるのってもしかしてこれ?」

「そうそう、ありがとうね。・・・え?」

その本を渡してくれたのはクラスメイトの女子、アトラ・ミクスタだ。

決して誰にも知られたくなかった秘密がばれた。

しかも、女子に。

颯太の頭の中は真っ白になった。

先程まで思い詰めていたことはもう颯太の頭の中には無い。

「お願いします!そのことは秘密にしていてください!」

颯太の体は考える前に眼の前のアトラに土下座をしていた。

アトラは困ったような表情で「いいよいいよ」と言っている。

「実は私もこれ好きなんだ」

「え?」となった颯太は顔を上げる。

視界に真っ先に入るのはアトラの天使のような笑顔だ。

ピーキーエンジェルズ達のような天使と意味ではない。

それはまさしくなにもかもを包み込んでくれる優しい表情だった。

 その後アトラと颯太は打ち解け魔法少女の話ができる友達となった。

名深市の魔法少女達についてまとめたサイトをよく見ているようで、一番のお気に入りは竜騎士の姿の魔法少女と言っていた。

颯太は何だか恥ずかしくなった。

そしてその週の日曜日、颯太はアトラと小雪の3人で遊びに行くことになった。

3人で遊んでいる時はとても楽しく、時間は早く過ぎていった。

帰り道、3人は鉄華団を見かけた。

鉄華団の中にアトラは見覚えのある人物を見付けたらしく「三日月ー!」と手を振って駆け寄っていき、颯太と小雪の二人もアトラについていった。

「あれ?ラ・ピュセルとスノーホワイトじゃん。何でアトラと一緒にいんの?」

三日月と呼ばれた男性の言葉に颯太と小雪は凍りつく。

「あれ?三日月二人のこと知ってるの?」

「うん。一緒に活動してる魔法少女の二人」

颯太と小雪は冷や汗が止まらなくなり、颯太は今度こそ終わったと覚悟した。

そして三日月の言葉から察するにこの男があのムーンライトバルバトスなのだろう。

小雪は傍から見てもわかるほど頭の中がすーっと真っ白になっているようだ。

スノーホワイトだけに。

「それってとても凄いことじゃん!」

アトラは興奮しなが二人の手を握り、「ねぇ魔法少女の姿を見せてくれない?」と言った。

二人は仕方なく路地裏で魔法少女に変身し、アトラに見せた。

「わぁ!本物の竜騎士の魔法少女だ!」

そう言ってアトラはラ・ピュセルに抱き着いた。

ラ・ピュセルは困ったなぁと頭を掻く。

ラ・ピュセルの考えていることはスノーホワイトに筒抜けであった。

 

 

三日月達が初めてイレギュラー魔法少女達に襲われてからはそのようなことは一度も無かった。

そしてある日3人がいつもの鉄塔にいるとファブが現れ新アイテムの追加が発表された。

そのアイテムのラインナップはとても良さそうな物ばかりだったが、そのアイテムを購入するには寿命を支払う必要があった。

まさしく命の値段である。

しかしその中で比較的安価な武装があった。

バナナ型マガジンのザブマシンガン、シールドとアックスを一体にしたシールドアックス、武器の両端に装備された推進機でインパクト時の衝撃を強くするブーストハンマー、チェーンソーとメイスを一体にしたレンチメイス、物理攻撃以外を無効化するナノラミネートアーマー等と様々である。

三日月はレンチメイス、ラ・ピュセルはシールドアックス、スノーホワイトは最も安価な白のナノラミネートアーマーを購入した。

そしてラ・ピュセルはスノーホワイトにシールドアックスを渡した。

「これってラ・ピュセルの・・・」

「いいんだ。君は武器がないからね」

スノーホワイトはラ・ピュセルの名を呼び抱き着いた。

「だけど君のことは私が絶対に守るよ」

「そうちゃん大好き!」

「小雪、絶対に守るからね」

スノーホワイトとラ・ピュセルのこのやり取りを三日月はナッツを食べながら静観していた。




眠い目をこすって書いた最後の文章、小雪と颯太を強引にくっつけていくスタイル。
ラ・ピュセルは中身男だからGLありってつける必要ないかな?
だけどナナとヴェスの存在だけで付けなければいけない気がしてきた。
どうしたらいいでしょうか?
アドバイスお願いします。


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寄り添うかたち、親密度を上げよう!

シノが出ます。
シノのバイク流星号の解説の時に出てくるバイクの名前はネタです。
16人の日常を読んでたらたまがすっごい可愛かった。


 採用の通知受け新たな職場での新たな仕事が始まる月曜日となった。

木王早苗は鉄華団のビルにやってきた。

ビルの入り口まで行くと見覚えのある人物を見かけた。

「早苗さん、お久しぶりです」

そう言って早苗に手を振っていた面接の時に出会った三条合歓だった。

早苗は合歓の下まで行くとお辞儀をして挨拶をした。

そして二人はビルの中へ入っていく。

ビルの中には新入社員の説明会会場への指示があり、二人はそこへ向かう。

そこで説明会の話聞き終えた後、今度は事務室へ向かった。

扉を開け室内に入り、自分の部署へ向かう。

そこには数人の社員がいた。

早苗と合歓の二人は並んで自己紹介をする。

「木王早苗です。よろしくお願いします」

「三条合歓です。これからよろしくお願いします」

早苗の淡々とした自己紹介と合歓のおっとりとした自己紹介の後、他の4人が立ち上がり自己紹介をする。

見覚えのあるメリビット・ステープルトンとデクスター・キュラスター、ラディーチェ・リロトそして最後にもう一人ダンテ・モグロだ。

ダンテは普段実働部隊の一人だが、事務が忙しい時は手伝いに来るらしい。

「ごめんなさい。来ていきなりで悪いんだけど早速仕事をお願いできる?」

早苗と合歓に近づいてきたメリビットが優しい口調で言った。

二人は「わかりました」と返事をして自分の席と言われた場所に座りパソコンを起動した。

そしてメリビットに教えてもらった通りに仕事を始める。

早苗は途中何度か合歓にやり方を教えもした。

そうして時間は過ぎていき無事に仕事を終え帰宅しようとした時に早苗は合歓に呼び止められた。

「番号交換しませんか?連絡とかできたら便利ですし」

「あ、うん」

二人は互いに連絡先をスマホに登録した。

そうすると合歓は満足そうにして事務室を後にした。

早苗は今日一日を終えてこれじゃあ前の会社とあまり変わらないような気もしたが、とりあえず一日目ということで気にせず事務室を出て廊下を歩いていると、突然誰かに呼び止められた。

「ねぇルーラ、今から始めるの?」

三日月だ。その隣には合歓もいる。

「まさか早苗さんも魔法少女なの?」と驚きつつ合歓は早苗に尋ねた。

三日月はムーンライトバルバトスとは分かっているが、合歓の一言に違和感を感じた。

「もしかしてあなたも魔法少女なの?」

早苗は恐る恐る合歓に尋ねた。

そうすると合歓は頷きスマホを取り出して魔法少女育成計画を起動、そしてその画像を早苗に見せた。

「え、うそでしょ?」

相手の正体が早苗には信じられなかった。

合歓のスマホに映っているのは紛れも無いねむりんそのままの姿なのである。

「早苗さんも見せてよ」

「あぁうん、ちょっとまってて」

早苗もスマホを取り出して魔法少女育成計画を起動し、画面を見せる。

「驚いたなぁ。まさかルーラだったなんて」

「私も驚いてるわよ」

「まぁチャットではあまり話せてなかったけど、これからもよろしくね」

そう言って合歓は手を差し出す。

握手だ。早苗は「あ、うん」と言って合歓の手を掴んだ。

 

 

 「へぇ・・・やっと仕事が終わったぜ」

疲れ気味に呟きシノは名前まで付けて大切にしているピンク色のバイクに跨がり、自宅までバイクを走らせる。

シノのバイク流星号はギャラルホルン社のEB-06tcをベースにエウロ・エレクトロニクス社のSTH-05の一部外装を取り付けた改造バイクである。

シノは流星号に乗って機嫌良さそうに「おう流星号お前なんか調子良さそうだな」や「ここで最高速度出せるなら記録更新できんのにな」等と言っている。

先程までの仕事疲れはどこかへ消えてしまっている。

しばらく静かな道をエンジンの音響かせ走っていると隣に黒塗りの高級車が寄ってきた。

流星号と同じ速度で隣を走る高級車を不審に思いシノは流星号の速度を制限ギリギリまで上げる。

すると高級車も速度を上げ流星号の隣を張り付くように走る。

高級車の窓が開かれ一人の男が話しかけてきた。

「おう、お前鉄華団の奴だろ?鉄輪会に手ぇ出してくるとはいい度胸じゃねぇか?」

最初はピンと来なかったが、ふとこの間のテイワズからの依頼を思い出した。

あの時かちこんだ所が鉄輪会だったらしい。

車の中の男はシノに拳銃を向けた。

「俺らは依頼があってやってんだよ!」

「んじゃあ依頼主のこと吐けや!」

「うっせぇ!今疲れてんだよ!」

「んなこたぁこっちは知らねぇんだよ!」

シノと車の中の男が言い合いをしていると突然流星号が何も操作をしていないのに速度が急上昇する。

そして驚いてる暇もなくシノの流星号は空を飛んだ。

「ったく危なっかしいじゃねぇか!」

シノが後ろを振り向くと魔女のような一人の少女が箒に跨がって流星号を掴んでいる。

そしてその少女の後ろにいたもう一人の忍者のような少女が黒塗りの高級車めがけて手裏剣を投げる。

「あ!お前この前鉄華団に来てた魔法少女か!」

シノはこの前鉄華団にやって来た魔法少女のことを思い出し叫んだ。

「トップスピードだよ。んで後ろのやつがリップル」

魔女のような少女、トップスピードと忍者のような少女、リップルにシノは助けられた。

「はは、ありがとよ」

シノが二人に礼を言うとトップスピードの後ろでリップルが舌打ちをした。

「あぁ気にすんな、こいつツンデレなんだよ」

「はは、ツンデレか。面白いやつだな!」

リップルはまた舌打ちをする。

「そういえばあんた家は?」

「あぁこの辺だな」

「わかった、じゃあそろそろ降りるか」

トップスピードはラピットスワローを地面に向けて急降下させる。

かなり荒々しくリップルはトップスピードにしがみついていたがシノは「本当に流星みたいだ」とはしゃいでいた。

地面スレスレでラピットスワローは停止しシノと流星号は降ろされた。

「あぁ俺ノルバ・シノな。今日はありがとよ」

「これからはあんなのには気をつけるんだぞ」

「わかってるよ」

シノは自宅までの道をもう一度流星号を走らせ、トップスピードとリップルからどんどんと離れていく。

「なぁリップル、あのシノのバイクすっげぇカッコ良くね?」

トップスピードの問い掛けにリップルは舌打ちをして「ダサイ」と答えた。




一応鉄華団メインの話だったと思います。
近々三日月とカラミティ・メアリの戦いがあると思います。
あと今鉄華団にいる魔法少女、三日月はもちろんバルバトス、ルーラはグシオンリベイク、ねむりんは流星号な感じがするなぁと思いました。
フラウロスが動いている所を早く見てみたいです。


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出世の引き金、ゲリライベント発生中!

鉄華団がかちこまれて魔法少女同士の戦闘あります。
レンチメイス君大活躍!(?)
後声優ネタもあります。
すげぇよミカは


 ここは鉄輪会のアジトの一つで、数人の男がテーブルを囲んで話をしている。

「なぁ兄貴、鉄華団のやつらどうします?」

「やつらは依頼が無ければ動けねぇ。必ず何かが裏にいるはずだ」

「テイワズですかね?」

「分からねぇが直接乗り込もうじゃねぇか」

「鉄華団に乗り込むんですか?なんでもあいつら魔法少女達とつるんでるらしいじゃないですか」

「よし、姐さんを呼べ」

一人の男がどこかへ電話をかける。

「もしもし姐さんですか?お願いしたいことがありまして、よろしいですか?はい、お願いします」

電話を終えた男はリーダーの男の目を見て頷く。

「よし、明日の朝に乗り込むぞ!」

 

 

早苗が鉄華団に就職して少しが過ぎた。

短い時間でも早苗の活躍は社内で認められていき、満足を感じはじめている。

そしていつものように朝早く家を出て出勤する。

鉄華団のビルに到着すると足早に事務室へ向かう。

扉を開け事務室に入ろうとするとそこには明らかに自分達は反社会的集団だということを隠していない装いの男達がメリビットを問い詰めている。

「ここ最近の鉄華団の依頼を全部見せろ。それと社長のオルガ・イツカはどこだ?」

早苗は走ってその場から立ち去る。

事務室の中から早苗を呼び止める声が聞こえたが無視して走った。

途中エレベーターの前で合歓と出会い、彼女を引きずって階段まで向かう。

「ねぇ早苗さん、そんなに急いでどうしたの?」

「事務室に反社会的集団がいるのよ!」

「えっそれって」

「だからさっさと変身しなさいよ!」

「でも私戦えないと思うけど」

「変身したら普通の人間より強くなるんだから早く」

「あぁうん」

二人が変身し終えるのとほぼ同じタイミングで早苗を追いかけていた男が現れた。

ルーラはその男に強烈なキックをかますと、男はたまらず後ろに倒れ込んだ。

ルーラとねむりんは事務室へ向かう。

事務室の扉を蹴破り勢いよく入ると、中にはもう反社会的集団はいなかった。

「メリビットさん、あいつらは?」

「社長室へ向かったわ」

二人は「ありがとう」とメリビットに礼を言ってオルガの居る社長室へ向かう。

社長室までたどり着くと中ではもう反社会的集団とオルガが話をしているようだ。

ルーラは社長室の中の会話を聞こうと聞き耳を立てた。

「カラミティ・メアリに逆らうな。煩わせるな。ムカつかせるな。オーケイ?」

「は?何それ。アンタ何言ってんの?」

「ガキは黙っときな」

「何で黙らなきゃいけないの?」

「私はムカつかせるなって言ってんだろ」

「あぁもういいよ。喋らなくて」

「なんだガキの癖に偉そうに。そんなに死にたいか?」

「うるさいなぁ、オルガの声が聞こえないだろ」

どうやら社長室では三日月とカラミティ・メアリが口論をしているようだ。

━━━━ちょっと何でカラミティ・メアリがいるのよ!

「あぁもうウザいから消えてくんない?」

「調子に乗ってんじゃねぇぞガキの癖に」

「あぁもう本当にいいから」

三日月がそう言った後、突然ビルが揺れた。

ルーラとねむりんは何事だと思い社長室に乗り込んだ。

室内を見渡すと椅子に座っているオルガに目の前の出来事に唖然としている反社会的集団、三日月のレンチメイスによって肉塊となっているのも反社会的集団の一人だ。

さっきの攻撃はカラミティ・メアリへのものだったらしく、メアリは攻撃を回避した姿勢だ。

「あぁルーラとねむりん、こいつは俺がやるから他のやつらお願いね」と三日月は言ってメアリにつかみ掛かり窓の外へ身を投げ出す。

窓から身を投げ出した三日月はメアリを屋上まで投げ飛ばし、自分も壁を蹴って屋上へ跳ぶ。

「へぇこんな広い場所で正々堂々戦うつもりかい?」

「狭いから戦いにくいだけだよ」

三日月はレンチメイスを振りかぶりメアリめがけて振りかざす。

メアリは紙一重でレンチメイスの一撃を避けてトカレフを三日月に向けて発砲する。

この射撃を三日月は軽々と避けまたもう一度レンチメイスで殴りつける。

メアリにレンチメイスの一撃が直撃し体が数メートル後ろにはじき飛ばされる。

「死になさい!」

そう言ってメアリは対物ライフルを取り出し、三日月へ向けて放つ。

スコープで相手の姿を捉えるまでもない距離、外すはずない。

「マズいかっ!」

その時、空から何かが降ってきた。

「サーフボード!?」

屋上にサーフボードが衝突し三日月とメアリの二人の視線はそこへ集中した。

メアリの対物ライフルに何かが突き刺さり爆発する。

メアリはすかさずトカレフを掴み突き刺さったものに数発の弾丸を放つ。

それは蛇行して後ろに下がり、二人の視界に入る場所へと移動した。

そのものとは青色の鎧を纏った魔法少女で、肩の長い装甲が特徴的だ。

足を肩幅まで開き白い長髪を風になびかせ、剣を地面に突き刺し手を置いた。

そして堂々と言う。

「私の名はリッター。ファブの命を受けこの地を蝕む貴様ら魔法少女を討伐するために参った」

リッターは地面から剣を抜きメアリ目掛けて突進する。

メアリはトカレフを撃つが剣で弾かれ肉薄される。

この距離では銃を使うには難しい、そう判断して剣を取り出す。

リッターはメアリに向かって斬りかかり、メアリは剣でこれを受ける。

「正々堂々と戦おうということか!」

「アンタは何故だか他人のような気がしないね」

「私もそんな気がするわ!」

二人の魔法少女の激しい剣と剣のぶつかり合い、金属と金属のぶつかり合う音が響く。

この二人の戦いを傍から見ていた三日月はメアリの背後に回り込み、走って距離をつめて殴る。

メアリは右側から強く殴られ屋上からはじき飛ばされる。

続けてレンチメイスがまるで恐竜の口のように開きチェーンソーが展開し三日月はリッターの肩装甲を挟み刃で削り始める。

金属の装甲を挟んでガリガリとチェーンソーの刃が音を立てる。

「離しなさい!」

「何で離さなきゃいけないのさ」

「いいから離しなさい!」

三日月は「しょうがないなぁ」と吐き捨ててリッターを屋上から放り投げる。

リッターは何か叫び声を上げながら高層ビルのジャングルの中にその姿は消えていった。

三日月はやれやれという表情でナッツを2、3個食べてからオルガの下へ戻る。

 オルガの下へ戻るとそこには拘束された反社会的集団の男達がいた。

「これねむりん達がやったんだよぉ」

部屋の中に入った三日月にねむりんは言った。

「私の魔法が無かったら何もできなかったじゃない」

ルーラは疲れたと愚痴りソファにドスンと座る。

「でもねむりんが縛らなかったらルーラはただ突っ立ってるだけだったでしょ?それにオルガ社長にも手伝ってもらったし」

ルーラはぐぬぬと唸った。

その後もねむりんの怒涛の言葉責めに反論できずに悔しがってるルーラを見て可愛いと三日月は思ったのと同時に以前テイワズの名瀬がキスをしていた時に可愛いと思ったからと言っていたのを思い出した。

三日月はルーラに歩み寄りキスをする。

場の空気が凍りついた。

━━━━え、ええぇぇぇぇぇぇええ!?

ルーラは困惑し、ねむりんとオルガは思考停止する。

三日月はというとまたナッツを食べて窓の外を見ている。




ラストのシーン、一応拘束された反社会的集団の男達が見ている状況です。
そんな中でキスを躊躇わずするすげぇよミカさんな話でした。
この後の話はルーラについてやるか、たまについてやるか悩んでいます。
感想やアドバイスなどがあればよろしくお願いします。


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普段ないこともたまにある-前編-

今回のサブタイトルはいいものが思いつきませんでした。
こっからたまの強化イベントにする予定です。
11話理不尽すぎやって………


 鉄華団での朝の騒がしい騒動から打って変わってここは真夜中の静まり返った王結寺。ルーラが複数の魔法少女を従え拠点として使用している廃寺である。

普通なら明かりが灯るはずの無い場所だが今は明かりが灯っている。それは今まさに寺の中に魔法少女が居るからだ。白いスクール水着のスイムスイム、犬のような服装をしているたま、双子の天使ミナエルとユナエルだ。

そこへリーダーであるルーラがやって来た。

いつも自身満々の顔で堂々と寺の中へと入って来るルーラだが今日はその顔にいつものような表情は無かった。その表情は困惑などが見受けられる。

「あれ?ルーラ何だかいつもと違くない?」

「あれ、そう?それに気付くとかお姉ちゃんマジクール」

ミナエルとユナエルの会話を耳にしたルーラが彼女達の前で歩みを止め睨みつけた。

二人は一瞬怯んだが「でも何だかおかしい」と思いきって言った。

ルーラは何か言おうとしたが口篭る。

二人はいつもの鬱憤を晴らすチャンスだとばかりにルーラの頭上を回転しながら騒ぎはじめた。

「ルーラがこんなになるなんて珍しいね」

「そうそう!自身満々のお姫様がね」

「はは!自身満々のお姫様とか的確過ぎお姉ちゃんマジクール!」

「ねぇねぇルーラどんなことがあったのよ?」

「そうよ、教えてくれてもいいじゃない」

「ああぁ、二人ともやめなよぉ………」

騒ぐ二人に対してたまが止めようとするも上手く止めることができずにオロオロとしている。

ルーラは「ムーンライトバルバトスにキスされたのよ」とボソりと呟いた。

鉄華団にてムーンライトバルバトスがルーラにキスをした時と同じように場が凍りついた。

「え、何それ?」

「それマジ?」

「そうよキスされたのよ。された後聞いてみたら可愛いと思ったのからって言われたわ」

また場が凍りついた。

「前から他のやつとは違うぞって思ってたけどここまでとはね・・・」

「バルバトスマジクレイジー・・・」

一連の会話を聞いてたまは今日の昼からの出来事を思い出した。

 

 

 今はちょうど昼休みで犬吠埼珠は自分の机で窓の外を見つめてぼうっとしていた。

先生やクラスメイト、この学校に居る全ての人間が自分に声をかけることなどない。そう珠は思っていた。そう誰も話しかけるはずないのだ。しかし、彼は話しかけてきた。

彼が二度三度と珠の名前を呼ぶが珠はすぐに応えることができなかった。

「あ、あの犬吠埼ちょっといいか?」

彼の後ろで4人の男子生徒が何かを話している。今珠の目の前に居る彼といつも話していたりサッカーをしている男子生徒達だ。

「え、あぁうん。えっと」

珠は自分の状況を理解できずしどろもどろに応えた。

その後少し沈黙があった。話がなかなか進まない。

「と、とりあえず来てくれ」

「あぇ、うんいいよ」

珠の声はとても小さかったがそれを聞き取った彼が「付いてきて」と言って廊下へ向かって歩き出し、珠も遅れて彼の後ろに付いていく。

クラスの視線が目の前の彼に向けられる。彼の後ろ姿はとても恥ずかしそうだ。

あの4人の男子生徒がクスクス笑っている。

教室を出て廊下を歩き、あまり使われていない教室の前を曲がり人のいない階段の前で止まった。

彼が何かを言おうとしているがなかなか言い出さない。珠はぽかんと彼を見つめて、目があうと彼はすぐにまた目をそらす。

彼は何かを決心して珠に言い出した。

あまりにも信じることができず珠の耳から彼の言葉が入ってきてまた抜けていく。

だけど一つだけの言葉、彼が言い放った第一声。

「お前のことが好きだ」

ただそれだけ珠の耳に残り、それがトンネルの中で反響するように響く。

彼の話の途中、珠はまた「えぇ」とか「あぁ」とか「うん」と曖昧な返事しかすることができなかった。

「ま、まぁよく考えといてくれ」

「あぁうん」

また曖昧な返事だ。

彼は珠に背を向け教室に向かって走り出すが、珠はただ突っ立っているだけだった。

五時間目の予鈴が鳴った。昼休みがもうすぐ終わる。

「戻らなきゃ」と言って珠は教室へ歩き出した。

教室へ戻った後、珠はしばしば彼の方へ視線をやる。授業中、休み時間、彼のことが気になる。彼はまたいつものように過ごしている。

そして学校が終わる。

生徒達は部活がある者は部活の活動場所へ、何も無い者は自宅もしくは何か店などに寄り道をしていた。

珠は帰宅の途中公園に立ち寄った。

夕陽に照らされた公園のベンチに座りスマホを取り出して魔法少女育成計画を起動しようとするが、日の光で照らされて画面が見にくい。珠は画面の明るさを調整した。

魔法少女育成計画をプレイしながら昼休み中のことを考えた。

答えは━━━まだわからない。

ふと自分の後ろに誰かがいて自分もしくは自分のスマホの画面を見つめていることに気付いた。

深い緑色と紺色の映画やドラマでよく見るような特殊部隊のような装備をして、その上から黒いコートを羽織っている女性。

「君は確かたまだったね」

珠の目の前の女性が自分の名前を呼んだ。本名なのか魔法少女としての名前なのかはわからないが多分魔法少女としての名前で目の前の女性も魔法少女なのだろう。

しかし、こんな魔法少女は今まで見たことがない。

もしやと思い珠は少し身構えた。

「そう身構えることは無い。今日は君にお願いがあって来たんだ」

「お願いって、それよりもあなたは誰なの?」

「あぁすまない。ゲイレールとでも呼んでくれ」

「あぁはい」

「話を戻そう。そのお願いというのが、魔法少女ムーンライトバルバトスを倒すことを手伝ってくれ」

ゲイレールが言った名前に聞き覚えがある。

ムーンライトバルバトスはキャンディー集めの脱落者は死ぬということを教えてくれたし、みんなが生き残る方法も考えてくれた。そんな彼女をどうして倒さなければならないのだろうか。

「奴は人を殺す。お前達の仲間の魔法少女だったグレイズを殺したのも奴だ」

グレイズはあまりチャットにも参加せず他の魔法少女とも顔を合わせないので彼女のことをあまり知らなかったが、彼女を殺したのがムーンライトバルバトスと聞いて珠は困惑した。

「どうやら奴はお前達の仲間のリーダーと今日の朝一緒にいたらしいな」

ルーラがムーンライトバルバトスと一緒にいたと聞いて珠はルーラの身に何かあってはいけないと思った。

「わ、わかりました。私手伝います」

「ありがとう。手伝ってほしい時は私から君へ伝える」

ゲイレールは公園の茂みの中へ入っていった。

珠はスマホの時計を見た。

「早く帰らなきゃ」

珠は公園を出てまた帰路についた。




次回の後編は今回珠に告白した男子生徒の話とたまがゲイレールの手伝いをする話です。
ムーンライトバルバトス相手にたまは生き残ることができるのか!?


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普段ないこともたまにある-後編-

今回は前回の予告通りの内容となっています。
そうそうついこの前人生で初のカラオケボックスに行ってきました。けっこう面白いものですね。
それと今回から場面の切替時に誰の視点か書くことにしました。
さらに今回はだいぶ長くなっています。過去最多となっています。
恋愛経験の無い人間が眠気と格闘しながら書いた恋愛パートがあります。注意してください。



 

◆ゲイレール

 

 ここは名深市のはとある工事の倉庫。倉庫の中は薄暗く静まり返っている。そんな倉庫の中でただ一つだけ例外的に光のある場所があった。そこは倉庫の中の一番東側に面した角で

木箱の上に置かれたオイルランプが光を灯している。その光に当てられているのは魔法少女ゲイレール。

オイルランプの隣に置いたマジカルフォンから現れたファブの立体映像とゲイレールは会話をしていた。

「ファブ、ターゲットの魔法少女達の情報をありがとう」

「いえいえ、どういたしましてだぽん」

「ムーンライトバルバトスが最も驚異となるかと思ったが、奴は仲間を大切にしているらしいな。その中から裏切られた時はどうなるのやら」

「発想はいいと思うけどたまはちょっとどうかと思うぽん」

「いや、あいつが一番だ。犬は手なずけやすいのが最も良い。そして魔法、あいつの魔法は面白いな」

「たまの魔法のどこが面白いぽん?」

「あいつの魔法、かすり傷でも穴と認識できて広げられるそうじゃないか」

「そうぽん」

「ならあいつを充分殺せる魔法だ」

「なるほどぽん。ムーンライトバルバトスを倒した後はどうするぽん?」

「ムーンライトバルバトスを殺した後に一番の驚異になるのはカラミティ・メアリか。考えておくよ」

「わかったぽん。それじゃあシーユーぽん」

そう言ってすぐにファブの立体映像は消えた。

倉庫にはゲイレール一人が残された。

「ファブから聞いた話によれば今はムーンライトバルバトスとルーラが王結寺に向かっているらしいな」

と言ってからゲイレールはマジカルフォンを掴みたまへメッセージを送った。

━━━頼みたいことがある。すぐに指定の場所まで来てくれ。

 

◆たま

 

ゲイレールから連絡があった。たまは今彼女に指定された場所へ向かっている。

そこは王結寺のすぐ近くの民家の壁の内側だ。

「あ、あのここって」

「気にするな。それより作戦を説明する」

「は、はい」

「私が入手した情報によればムーンライトバルバトスは高確率でこの道を通る。だから私が合図したらここから攻撃してくれ」

「もし当たらなかったら?」

「かするだけでもいい、君の魔法ならかすり傷でも穴を広げて一瞬で奴を倒すことができる。攻撃が当たったらすぐに反対側の壁に移動するんだ。私は反対側にいる」

「わかりました」

「ではよろしく頼むぞ」と言ってゲイレールは反対側の壁の内側へと移った。たまは合図があるまでじっと見をひそめることにした。

 どれくらいの時間が経ったのだろう。そろそろ待っているだけも疲れはじめた頃、道路で煙幕が発生した。多分これがゲイレールの言っていた合図だろう。たまは壁から飛び出し煙の中に見える人影に飛びつこうとした。

「バルバトス危ない!」

ルーラの声だった気がする。そしてたまの視界からムーンライトバルバトスの影と思われる物が消えて代わりに別の人影が現れた。たまの一撃は運悪く直撃した。悲鳴が聞こえる。たまはわけがわからなくなって急いで反対側の壁に移る。

「わ、私今誰に当てたの?」

たまの声はとても震えている。それもそのはずだ。煙でよくは見えなかったが影のシルエットや声、それは間違いなくルーラのものだったからだ。ルーラを守りたいと思ってたまはゲイレールに協力しているのだ。しかしその一撃はルーラに当たった。

「たま、すぐここから離れるぞ!」

ゲイレールはそう言ってたまを掴んで跳躍しその場を離れた。

 たまを掴んでゲイレールはとある倉庫にたどり着き、倉庫の扉の前にたまを座らせた。たまは溢れんばかりの涙を流している。ルーラを傷つけてしまったことと無事に目的を果たすことができなかった二つのことにたいして泣いているのだ。

「泣くなたま。お前はよくやってくれた。全てはムーンライトバルバトスか悪いのだ」

「でも私・・・」

「ルーラがあいつに関わらなければあんな傷を負うことにはならなかった。あいつと関わり続ければまたあんな傷を負うかもしれない」

たまは「はい」と言って頷く。ゲイレールはそれを見て満足したような表情を一瞬した。

「それを防ぐためにも早くあいつを倒さなければいけない。たま、やってくれるな?」

さっきよりも大きな声でたまは「はい」言う。たまの目には強い決意が宿っていた。

 

◆アストン

 

 今は調度昼休みで教室では何人もの生徒が自分達の仲良しグループの友達と話をしている。そしてその一つである男子のグループでは思春期真っ盛りのアストン、昌弘、ビトー、デルマ、ペドロの5人が恋愛について話をしている。始めはそれぞれの好みのタイプの女子やこの学年で誰が可愛いかだったが、その話は次第にそれぞれの好きな人は誰かという話になった。

「なぁアストンお前は誰が好きなんだ?」

「は?いねぇよ」

「いやいや、言えよ。俺もペドロもデルマも言ってんだからさ」

「じゃあ先昌弘言えよ。俺後で言うから」

「俺?考えたこと無かったわ」

「お前もかよぉ。んじゃ昌弘言ったからアストンな」

「俺もちょっとアストンが誰好きなのか気になるかも」

「デルマもかよ・・・ったく面倒だな」

アストンは頭を掻く。他のやつらみんながアストンに言え言えコールをしてくる。アストンはヤケクソ気味に言った。

「犬吠埼だよ。犬吠埼珠」

アストンは顔を赤面させ「ああぁぁぁあ!!」と頭を抱えて叫ぶ。賑やかな教室でアストンの咆哮を気にする者はいない。

「お前マジで言ってんの?あの犬吠埼か?」

「そうだよ」と言ってアストンは左頬の絆創膏を指差す。

「お前がこの前の体育のサッカーで顔面から派手にズッコケた時のだっけ?」

「そうそう。それで犬吠埼がこれくれたんだよ」

「あいつにしては珍しいよな。ああゆう時はいっつもオロオロしてんのにな」

「んでアストンは犬吠埼のこと好きになったのか」

「青春してんだなアストン」

犬吠埼珠は今自分の席でぼうっとしている。ビトー、デルマ、ペドロ、昌弘の全員がコクれコクれとアストンに言う。

前から告白はしてみようと思っていた。だが恋愛経験の無いアストンは余計なことを考えてそれを躊躇っていた。友人全員に言われてアストンは何だか吹っ切れたような気がする。よし告白してやろうと決意してアストンは席を立つ。昼休みの時間はまだ充分ある。

犬吠埼珠の席の前まで行き彼女の名前を呼ぶ。が、反応はない。アストンはもう何度か名前を呼んだらやっとこちらに気付いた。

「あ、あの犬吠埼ちょっといいか?」

「え、あぁうん。えっと」

珠は自分の状況を理解できずしどろもどろに応えた。

その後少し沈黙があった。話がなかなか進まない。

「と、とりあえず来てくれ」

「あぇ、うんいいよ」

珠の声はとても小さかったがそれを聞き取った彼が「付いてきて」と言って廊下へ向かって歩き出し、珠も遅れて彼の後ろに付いていく。

クラスの視線が自分に向けられる。ビトー達は何やら笑っている。

教室を出て廊下を歩き、あまり使われていない教室の前を曲がり人のいない階段の前で止まった。

アストンは告白しようとするがなかなか言い出せない。珠はぽかんとアストンをを見つめていて、何度か目が合うがすぐに恥ずかしくなり目をそらす。

駄目だ。恥ずかしがって黙っていても自分の思いを伝えることはできない。アストンはついに決心し口を開く。

「えっと、犬吠埼。俺は、あぁ俺は・・・」

駄目だ。肝心な部分が言えない。これでは何も話をしていないのと同じだ。アストンは手を握りしめ目をぎゅっと瞑って思いきって喉の奥で留まっている言葉を言い放つ。

「お前のことが好きだ!」

とてもシンプルで、だけど一番伝えたいことを自分の目の前の珠に言うことができた。好きだと自分の思いを伝えてからはだいぶ楽になり、色々な言葉が頭に浮かぶ。アストンは思いつく限りの言葉全て使って珠にアタックした。珠は「えぇ」とか「あぁ」とか「うん」としか言わなかった。失敗したかもしれない。

最後に「ま、まぁよく考えといてくれ」と言ってアストンは教室へ戻る。これにも珠は「あぁうん」と曖昧な返事でアストンは今度こそ失敗したと確信した。

 それから数日後、この日は珍しく部活が休みで暇をしていたアストン達は公園に行ってサッカーをすることにした。

公園でサッカーをしているとアストン達はサッカーを通じて知り合った友人、岸辺颯太をみつけた。岸辺颯太の隣には何やらもう一人少女がいて、アストン達が二人のことを見ていると颯太はアストン達に気付いたようでこちらへ向かってきた。

「やぁ5人とも」

「やぁ颯太、こんなところで何してんだ?」

「ちょっと用事があったんだよ」

「隣の子は?彼女?」

「ちっ違ぇよ!ただの友達だよ」

「颯太君の彼女は小雪ちゃんだもんね」

「ばっ馬鹿、違うっていつも言ってるだろ」

颯太が恥ずかしそうに言うと隣の少女が自己紹介をした。名前はアトラ・ミクスタというらしい。共通の趣味で仲良くなったそうだ。だが、アストン達には颯太とアトラの共通の趣味というものがわからなかった。

「へぇ小雪ちゃんね。颯太も彼女とかできたんだな」

「デルマからかわないでよ」

「そういやアストンも今日告白したんだぜ」

「マジ?」

「これマジだよ。ホントホント」

「あぁビトーやめてくれよ」

「で、アストンどうだったの?」

「颯太まで・・・」とアストンは頭を抱えて「多分駄目だと思う」と言った。

「まぁいきなり言っても駄目だろうな共通の趣味がないと」

昌弘の一言にアストン以外の全員が「それだ!」と言う。こういうのは何か共通の話題とか何かがあればいいと思う。

早速全員で珠の好きなことは何か考えることにした。話し合いの中では様々な意見が上がった。穴掘りや読書、ゲームに洋服などだ。その中で最も珠が好きなこととして有力だったのは穴掘りとゲームだった。

「なぁあいつがしてそうなゲームって何がある?」

「まほいくだろ?ほら最近の流行りの」

「何それ。俺知らねぇよ?」

「んじゃ俺が詳しく教えてやるよ」と言ってペドロは鞄の中からスマホを取りだしゲームのアプリを起動した。そのゲームのタイトルは魔法少女育成計画。アストンはなんでペドロはこんなことをしているんだと心の中で呆れたように言った。ペドロはなんだか熱心にゲームの解説をしている。

「まぁ犬吠埼もやってるだろ」

「な、だからお前もやってみろよ」

ペドロがいつの間にかアストンの鞄からスマホを取りだしアプリのダウンロードを始めていた。

「あ、お前勝手にダウンロードすんなって!」

 アストンがスマホを奪還した時にはアプリのダウンロードが終わっていた。もうここまで来たらやるしかないだろう。アストンはアプリを起動する。

スタート画面のスタートのボタンをタップすると読み込みが始まり、チュートリアルや豆知識的な事が書かれたテキストが表示される。そして読み込みが終わると画面にマスコットキャラクターのようなものが現れた。ファブと名乗るそのマスコットキャラクターはアストンが以前チラッと見たアニメか何かに出てきた鬼畜熊を思い出す配色に幼い時に見たハムスターのアニメの主人公のような声をしていた。多分声優が同じなんだろう。

そのマスコットキャラクターがゲームの概要を説明し終えるとキャラクターエディットの画面に移った。

「んじゃあ自分のキャラ作ってみてくれよ」と言われたがアストンはこういうものにはあまり詳しくない。キャラは可愛い系がいいのか、カッコイイ系がいいのかアストンにはさっぱりわからない。だからアストンは自分が飼っている蛙をモチーフにすることにした。

そして出来上がったキャラの見た目はというと、黒い短髪に緑色の目、幼い体形の体を包み込むようなオレンジ色の蛙の顔のような装飾が付いたフードのあるポンチョを身に纏い、大きめの長靴を履いている。一見可愛いらしい見た目だがその目つきは鋭く左頬にはワイルドな傷がある。名前は適当にパッと思いついたローディーだ。

「こんな感じでいいのか?」

アストンはスマホの画面を目の前の友人に見せた。友人達の反応は二つに別れた。昌弘、ビトー、デルマの三人は「まぁいいんじゃん?」とそっけない反応。颯太、ペドロ、アトラの三人はやや食い気味で様々な感想を言ってくる。今日この短時間でアストンは颯太とペドロの印象がガラっと変わった。

その後チュートリアルの戦闘となった。チュートリアルの戦闘では最初にゲストとして他のプレイヤーのキャラを選ぶことができた。

ズラリと並ぶリストを流し見ているとペドロが「ストップ!」と言った。

「このたまって魔法少女にしておけ」

「なんで?」

「レベルの横の魔方陣のマークあるだろ?これカンストしてるマーク」

そう言われてステータスを見ると可愛いらしいキャラの見た目に反してステータスはゴツいことになっている。

颯太は見覚えのある魔法少女だったが何も言わなかった。

アストンはたまを連れてチュートリアルの戦闘をした。たまの力はチュートリアルにしては過剰戦力な気がしたが、戦闘終了後に『フレンド申請をしますか?』というテキストが現れた。どうやらカンストしてるキャラを選べとはこういうことだったらしい。

その後すぐにOKの返事が来た。とても運が良かった。

「なぁなんかメッセージ送ってみろよ」

「何の?」

「ほら挨拶とか」

「あぁうん。わかった」と言ってアストンはたまに挨拶のメッセージを送った。

すると隣で「あ、メッセージが来た」と聞き覚えのある声が右側のベンチから聞こえた。

全員視線を右側へ向ける。

「あれ、犬吠埼?」

「アストン行ってこいよ」

「えぇなんで」

「まほいくやってるかもしれないだろ」

「わかったよ」

言われた通りにアストンは珠の下へ向かった。

珠の座っているベンチまで行き隣に座る。やり過ぎたかもしれない。

「なぁ珠、何してるんだ?」

珠に話しかけると少し驚いたような声を上げてからアストンの顔を見るもすぐに目を離しスマホの画面を見て「魔法少女育成計画だけど」と言った。

「魔法少女育成計画か。実は俺もさっき友達から進められて始めたんだ」

「えっとそうなの?」

「うん。だからさ、お前が良かったらフレンド登録してくれないか?」

「あぁうん。えっと、いいよ」

二人はスマホの画面を見せあった。その画面にはさっきフレンド登録をしたばかりのキャラクターの姿があった。

「えっとアストン君。もうフレンド登録してたね」

「あぁうん。なぁ犬吠埼はどうしてそんなステータスカンストできたんだ?」

「えっと、いっぱいやったからかな?」

「へぇ、凄いな。俺にもできると思う?」

「頑張ればできると思うよ」

「犬吠埼も手伝ってくれるか?」

「いいよ。それじゃあ私そろそろ帰るね」

「あぁ、気をつけて帰れよ」と言ってアストンは手を振って見送った。珠も笑顔で手を振ってくれた。

「で、なんでお前らは隠れてんだ?」

アストンは茂に視線をやり言った。すると茂はもぞもぞと揺れて隠れていた友人達が姿を現した。みな笑っている。

「はは、良かったじゃんかアストン」

「なんだよ、笑うなよ」

みな何か満足したかのように「んじゃ俺達もう帰るわ」や「時間ヤバいしな。俺も帰るわ」などと言って帰っていく。

アストンは一人公園に取り残された。時計を見るとかなり遅い時間となっていた。

この時期帰り道は暗く寒い、さっき公園を出た友人達も公園を出てすぐの歩道にはいない。アストンはあいつら速すぎだろと思いつつ帰宅した。

 帰宅すると家には親がおらずリビングのテーブルの上に「今日は帰らない」という書き置きがある。公園に行く前にも一度家には帰ってきているがその時この書き置きには気付かなかった。

アストンは「飯買いに行くか」と呟き、スマホと財布だけを持ってコンビニへ向かった。

すっかり日は落ちて暗い夜道を歩いているとアストンは公園の前で誰かがいるのに気がついた。

「あれって例の魔法少女か?」

アストンの視線の先にはなんだか物騒な鈍器を持っている黒いセーラー服の少女と離れた場所に大きめの黒いコートを着た女性、そして見覚えのある服装の魔法少女が一人いた。

「あれって珠か?」

多分魔法少女の容姿はプレイヤーの好みの物になると思う。だから多少は似たようなコスチュームのプレイヤーはいるはずだ。

だが、あの佇まいは間違いなく珠のものと一致している。

最近は魔法少女のコスプレをしている人も増えているらしいからきっとそんなグループなんだろう。でも珠がコスプレしてるなんて驚いたな、などと思いつつアストンは少し面白そうだからそのまましばらく3人を見ていることにした。

 

◆たま

 

「ゲイレールさんから聞いたの。あなたは危ない人だって」

「は?」

「だからみんなのために、死んでください!」

たまはムーンライトバルバトスに飛び掛かりひっかこうとするが避けられ、たまはそのまま地面をひっかき穴を空ける。

「あれに当たったら一瞬で死にそうだ」

そう言ってムーンライトバルバトスはたまに向かって走り、メイスを振りかざす。

たまは「ひぃ」と声を上げ体をそらす、するとメイスの打突部が公園の土に減り込み物凄い煙りを上げる。

たまはメイスが地面に減り込んでいるその隙に立ち上がってからおもいっきり走ってムーンライトバルバトスとの距離を開く。

するとムーンライトバルバトスは大きく舌打ちをしてメイスを地面から引き抜きたま目掛けて投擲する。

これをたまは自分の真下の地面に穴を掘り避ける。するとメイスはそのままの勢いで公園から飛び出していき駐車してはいけない路上に違反駐車ていた車を無惨な姿へと変える。

すると車は大きな音でアラートを鳴らしはじめた。

「たま人が来るぞ!今日は撤退だ!」

「嫌です!なんとかしないと」

「犬は飼い主の言うことだけを聞いとけばいいんだよ!」

ゲイレールの言葉はたまの耳には届かず、穴から這い出てムーンライトバルバトスへ向かおうとするが先程の場所にその姿は無い。

たまが上を見上げるとムーンライトバルバトスは短くなるようにへし折った電柱を振りかざしている。

間一髪ギリギリでそれを回避するとさらに続けて下から腹に向かってもう一撃。たまじゃ避けられない。

「犬吠埼!」

誰かが叫びたまの体が右へと飛ばされた。

ムーンライトバルバトスが驚きの表情を見せる。折れた電柱の打突部の先には口から血へどを吐き悶えるアストンの姿があった。

たまは何故アストンが自分を庇い、本名で名前を叫んだのかが分からなかったが少し前の公園での事を思い出す。

「私、あの時・・・」

そうだ、彼に魔法少女育成計画の画面を見せていたのだ。それで自分が魔法少女だということがバレたんだろう。

たまは恐る恐るアストンに歩み寄る。

「ねぇ・・・アストン君・・・?」

アストンは地面に仰向けに倒れているがたまの声がする方向に視線を向けている。

「ねぇ何で私を庇ったの・・・?」

アストンは苦しそうに笑いこう言った。

「この前学校で言ったじゃん。お前のことが好きだって・・・」

「でも私違う人かもしれなかったんだよ?」

たまはもう涙をボロボロと流している。

「だって見せてくれたじゃん・・・」

そこでゲイレールは舌打ちをしてその場から逃げようとした。たまはもう使えないと諦めたのだろう。

「逃がすわけないだろぉ!?」

ムーンライトバルバトスは物凄い険相でゲイレールに電柱を叩きつけようとしたが逃げられた。

「お前のこと好きにならなきゃ良かったかもな・・・それなら犬吠埼を泣かせることも無かったしこんな悲しい気持ちで死ぬことも無かったんだろうな」

「そんなことないよ、私嬉しかった。あんなこと誰にも言ってもらえないから」

涙はまるで一文字一文字声に出して言うたびに溢れ出てくるようだった。

「最後にさ、あの時の答え聞かせてくれないか?あと最期に顔を見せてほしいんだ」

たまは涙を拭うも涙はまだ零れてきそうで涙目になりながらあの時の答を言おうとした。

「今まで見たことないくらい一番綺麗な顔だ・・・」

そう言ってアストンはその目を閉じた。

たまは声にならない叫びを上げる。

ムーンライトバルバトスはそれを見て仕方ないなというように二人を持ち上げ一番近くの病院まで跳ぶ。

「ねぇたま。変身は解除しときな」

たまは何も言わず変身を解いた。

 病院に着いた。ムーンライトバルバトスは病院自動ドアが開く前に蹴破り中へ入る。

そして受付に「急患」とだけ言ってアストンを引き渡す。

医者が来たときに患者を連れて来た魔法少女に驚きながらもすぐにアストンに蘇生措置を施して素早く入院の準備をしてくれた。

珠は待合席で俯いて泣いていた。すると看護婦がやってきて言った。

「あの子彼氏でしょ?こんなことになっちゃって大変だったわね。でも大丈夫よ、絶対良くなるわ」

多分慰めてくれているんだと珠は思う。

看護婦の言った彼氏という言葉、珠はあの時ちゃんと言えなかったが後でちゃんと言えるだろうか。

その後アストンの状態は安定していると医者から告げられもう遅いから帰りなさいと促されて珠は家へ帰った。

 




これなら中編、後編に別ければよかったかもしれない。
でもまぁクリスマス(3日前)スペシャルということで許してください。
この次の話で珠が覚醒してケジメをつけに行きます。
後まほいく原作を全巻購入したんですが読んでたらもうこの話完全に設定が目茶苦茶になっててどうしようかと焦っています。


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変わるって決めたんだ

新年明けましておめでとうごさいます(激遅)
今回はたまがけじめを付けに行きます。
鉄血39話では1期で的だったスピナ・ロディが凄い動いててジルダを圧倒してましたね。
ロディ・フレーム採用MS好き


◆たま

 

 病院から家に帰った珠は暗い顔をして自室へ入って寝床に着いた。

珠かどんな顔をしていようが気にする者は無かった。

今日はもう疲れた。何もする気が起きない。

寝床に着いてから球の意識はすぐに深い眠りの中へと吸い込まれていった。

 カーテンが閉められているが今は夜なのか月明かりがカーテンの隙間から差し込んでやや薄暗くなっているこの部屋はベッドが左右に二つずつ並んでいて他にも備付けられている物を見るに恐らく病院の大部屋だろう。

珠はその部屋の入り口辺りに立っていた。

そこからは部屋全体を見渡すことが出来る。

部屋を見渡していると球は部屋の右奥のベッドに人影を見つけた。

顔は良く見えないがあれが誰か球にはあれが誰だか良く分かった。

歩み寄ろうとしたが初めの一歩で足が止まる。

すると不意に後ろから声が聞こえた。

「ねえ、どうして行かないの?」

珠は慌てて振り返るとそこには上も下もパジャマの魔法少女ねむりんがいた。

「そこの人は?」

「ええええっと私にも良く分からない」

「本当?じゃあ確かめに行こうよ」

「いや、私には無理だよ・・・」

「どうして?」

「だって私のせいだもん・・・」

珠は俯いて泣きそうな声で「こんな私じゃやっぱり何も言えないよ」と言った。

するとねむりんは笑顔を球に向けて言った。

「だったら変わればいいと思うな」

「変わるって?」

「何が言えないのかは私には分からないけど、それだったら変わればいいと思うの」

「どんなに頑張っても変わんないこともあるよ・・・」

「それは本当に変わろうと思って頑張ったの?本当はどこかで諦めてたんじゃないの?」

「諦めてなんか・・・」

珠は諦めてなんかないと言おうとしたが自信を持てず言うことを諦めた。

「変わらないものなんて無いよ。私だってニートしてたけど今は立派な社会人だよ」

「ねむりんが変われても私には無理だよ・・・」

「それに今の仕事場でも初めは良く怒ってたりもしたけど最近は優しくなってきてるよ」

ねむりんの話を聞いてそういえば最近ルーラが怒鳴ったり罵倒することが減ってきていることを思い出した。

「まずは少し頑張ってみようよ」

珠はねむりんを見つめながら頷いて「頑張ってみる」と言い部屋の右奥のベッドまで歩みを進め、そのベッドで眠る人物の顔を覗き込む。

 目を覚ますと日はもう昇っていて鳥のさえずりが聞こえる。

珠は夢を見ていた気がするがどんな夢だったか思い出せない。

だが、何だか勇気が出る夢だった。

 

 今日は学校が休みだったので珠は病院へ行くことにした。

受付でアストンは大部屋に入院しているというこ聞き、その部屋へ向かう。

大部屋に着くとそこは見覚えがあるようなベッドの配置だった。

左見右見でアストンの姿を探す。

部屋の一番奥の右側にあるベッドにアストンの姿を認めた。

彼はどこか上の空で窓の外を見つめている。

珠が近づいて声をかけるとアストンは少し驚きながら「犬吠埼が一番最初に見舞いに来るとは思わなかった」と言って笑った。

球はそれを見て元気そうでよかったと安心した。

「昨日はありがとうね」

「実は遠くから見てたんだけどさ、危なくなってた時に考える前に体が動いてたんだ」

「ごめんね……」

球は泣きながら何度も謝りはじめた。

「あぁ泣くなよ」

「うんごめんね」

涙を拭って球はまた謝った。

「まだあの時の答え言ってなかったね」

「うん」

「いいよ」

「マジ?」

珠はそう言うとアストンにじゃあねと手を振り病院の大部屋から出た。

大部屋から廊下へ出ると見覚えのある少女がいた。

忘れるはずがない。

その少女はくせ毛の長い黒髪に服装は黒いセーラー服を着ていて全身が黒で統一されていてまるで悪魔と呼ぶに相応しいような風陰気を周囲に発している。

魔法少女ムーンライトバルバトスだ。

珠はその姿を見て後ずさりをするとムーンライトバルバトスがこちらへ歩いてきた。

体が凍ってしまったように動かなくなる。

ムーンライトバルバトスは珠の肩に手を置いた。

まるで内気な少女を不良少女がカツアゲしているようでもある。

「ちょっと来て」

そう言われて珠はムーンライトバルバトスの後をついていいった。

 連れて来られた場所は人気の全く無い建物の裏だった。

本当にカツアゲのようである。

「たま、昨日俺達にある倉庫の警備の依頼が入った」

「うん」

「なんとなくわかるんだけど多分この前のやつだ」

「この前のやつ?」

「たまが一緒にいたやつ」

「えぇとゲイレールさんか」

ムーンライトバルバトスは小さく頷いた。

この小さな動作ですら恐ろしく見える程威圧感がある。

「たまはどうする?」

「どうするって何を?」

「ゲイレールと戦うか戦わないか」

「俺にはわかる。たまはあいつと戦える。でもそれを決めるのはたま自身なんだ」

「何でそんなことがわかるの?」

「いいから答えて」

ここで戦わないって言ったらどうなるのだろうか。

ムーンライトバルバトスに殴られるのだろうか、それともそのまま去っていくのだろうか。

様々な考えが浮かんで来る何だか恐ろしい。

「ねぇ早くしてよ」

ゲイレールに言われて今目の前にいるムーンライトバルバトスを襲った。

━━その結果はどうだった?

結果は魔法少女の耐久力というものは凄いがなんとか守りたいと思っていたルーラを傷付け、関係の無いアストンに大怪我を負わせる事になった。

━━じゃあどうしたらよかった?

キャンディーの数が一番少なかった者が脱落する。その脱落が死でそこをなんとか全員生き残らせようとしてくれたのはムーンライトバルバトスだった。結果的にイレギュラー魔法少女が現れてそれは無かったことになったが、それでもムーンライトバルバトスは自分達のことを考えてくれていたんだ。そんな彼女をイレギュラー魔法少女であるゲイレールに言われたことを信じて襲った。それでは駄目だ。

━━じゃあどうしたらいい?

今朝見た夢を思い出した。

自分は変わらなければいけないのだ。

━━ならどうする?

答えはもう決まっている。

「わかったよバルバトスちゃん。私ゲイレールさんと戦う」

「じゃあ後で魔法の端末に送っておくからその場所に来て」

そう言ってムーンライトバルバトスは珠に背を向けて歩いていく。

「あ、そうだ。バルバトスじゃなくてミカでいいよ」

「わかったミカちゃん」

珠はムーンライトバルバトスに手を振った。

 

 夜になった。魔法の端末にはムーンライトバルバトスから倉庫の場所が送られてきている。

珠は魔法少女たまに変身してその倉庫へ向かった。

 倉庫へ到着するとそこには屈強な男達がいてその中に一人だけ黒いセーラー服を着た少女がいる。

その少女は打突部が四方向に広がっている真っ黒なメイスを持っている。

たまがムーンライトバルバトスの下へ行くとそれとは違う肉食恐竜のようなメイスを渡された。

準備は整った。

鉄華団と魔法少女二人の不審者捜索が始まった。

 不審者捜索を始めてから50分でその不審者は発見された。

暗い倉庫の奥に黒いコートを着た女性がいる。ゲイレールだ。

「待っていたぞムーンライトバルバトス」

「そう。待ってたんだ」

「あぁ待っていたさ」

「だけどお前と戦うのはお前じゃないんだ」

そう言ってムーンライトバルバトスは視線を後ろのたまへ向けた。

「ほう死んでるかと思ってたよ」

「私は死んでないにゃ」

「てっきりムーンライトバルバトスに殺されたかと思っていたのさ」

「ミカちゃんはそんなことしないにゃ!」

「ほう面白い!」

ゲイレールは右手にアックスを構えてたまへ向かって突撃した。

たまはこれをムーンライトバルバトスから借りたレンチメイスで受けた。

金属が激しくぶつかり合い倉庫内に耳障りな音が響く。

たまはゲイレールをレンチメイスで突き飛ばし距離を取る。

しかしゲイレールはまた接近してアックスを振りかざす。

それをまたレンチメイスで受けて押し返す。これを何度も繰り返して埒が開かない。

この戦いにムーンライトバルバトスが介入することは無い。

たま一人でなんとかしなければいけない。

「どうしたぁ!そんなものか?」

「どうしよう・・・歯が立たない」

「そういえばあの時のガキはどおしたぁ?」

「アストン君は関係無いにゃ!」

「あのガキはあきらかに勝てっこない相手に突っ込んでいってお笑いだったよ!」

「うるさいにゃ!」

たまがレンチメイスを頭上に掲げゲイレールへ振りかざしたがゲイレールはヒョイと体を反らして避けた。

「あのガキもお前がもっとちゃんと出来てたらどうにもならなかったんじやないのか?」

「だからアストン君は関係無いって言ってるにゃ!」

「そういやあのガキはお前に惚れてるみたいだったなぁ!」

そう言ったゲイレールの蹴りがたまの腹部に直撃してそのまま壁に減り込んだ。

ゲイレールはそんなたまにジリジリと近寄って来る。

「これで終いだ!」

ゲイレールはアックスを振り下ろそうとしていてたまは死を覚悟した。

目をつぶってその時を待っていた。だがその時は来なかった。

変わりに拳で何かを殴る音が聞こえて目を開いた。

 目の前には鉄華団のジャケットを着たガッチリとした体型の男性がいる。

「わりぃな、割り込んじまって。弟の友達の事を言ってたからな」

そう言った男性は拳でゲイレールを殴り飛ばしていて、ゲイレールは少し離れた場所に倒れている。

「このまま決めろ」

「あ、ありがとうにゃ」

そう言ってたまは立ち上がった。

倒れているゲイレールにレンチメイスで畳み掛ける。

一発、ニ発、三発と次々に攻撃が決まっていく。

「くそ!単純なパワーだが、さっきまでのこいつにこんなパワーがあったのか?」

たまの次の攻撃をゲイレールはアックスで防いだ。

するとレンチメイスが恐竜の口のように開き獣が咆哮を上げるようにチェーンソーが音を鳴らしはじめる。

レンチメイスがゲイレールのアックスをくわえるとギリギリと音を鳴らし削っていく。

ゲイレールはアックスを諦めその場を離れた。

たまはレンチメイスを置いてゲイレールに接近して右頬を狙って拳を放つ。

ゲイレールはそれを顔の前に腕で十字を作って防いだ。

拳は防がれたがたまの狙い通りになった。

たまは「えぇい!」という声と共に爪で十字にクロスされた腕を引っ掻いた。

「しまった!」

ゲイレールの腕に傷をつけることに成功したたまは自身の魔法を発動した。

するとゲイレールの右腕が完全に消滅した。

ゲイレールは迷うことなくたまに飛びついた。

以前右腕の付いていた場所の断面から血が飛びたまの衣装を染めた。

たまは「離して!」と叫びゲイレールをはじき飛ばした。

はじかれたゲイレールはしりもちをついた。

一度置いたレンチメイスを持ち上げたまはゲイレールへ向かって歩きはじめた。

華奢な少女の体に似合わない巨大な鈍器を持った影がゲイレールにかかる。

レンチメイスが開きそれは今目の前に倒れている相手の腹部を固定した。

「あなたは私が今まで駄目だった何よりの証拠・・」

「私もここらで潮時らしいな」

「私は変わる。そのためにも・・・」

一雫の涙が頬を流れた。

やはり自分では人を殺すことはできないのだろうか。

「何を躊躇している。とどめを刺せ」

ゲイレールは目をつぶり、たまは涙を拭いた。

「ありがとうにゃ」

たまは目をつぶった足元の相手に笑ってみせた。

チェーンソーの音が倉庫内に響き、それと同時に肉が潰れる音がした。

切断が終わった。ゲイレールはもう元の人の姿に戻っているだろう。

しかしその姿を見ることはできなかった。

ここでそれを見てしまったら決意が折れてしまいもう戻れなくなるような気がしたからだ。

たまはムーンライトバルバトスの下まで行って呟いた。

「ミカちゃん、本当にこれでよかったのかな?」

ムーンライトバルバトスはそれに答えるように小さく頷いた。

「よかったにゃ」

たまはそのまま倉庫から出て、ムーンライトバルバトスは「片付けとくよ」と言ってゲイレールの遺体の下へと歩いていった。

 




あぁ・・・1月に投稿するつもりが、2月になってしまった。
次回は自分ですら忘れかけてた伏線回収みたいなのを予定してます。
こんなに投稿が遅くなってしまいましたがまだ読んでくれてる人がいたら教えてほしいです。
今度は頑張って2月中に投稿したいです。遅かったら3月の始めかもしれません。
ではまた次回。


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