かてきょーリリカルREBORN (BREAKERZ)
しおりを挟む

プロローグ
大空と星光の出会い


どうもはじめまして、何番煎じか分かりませんが完結目指してがんばります。


D・スペードを倒し、再び平和を満喫していた気弱な少年沢田綱吉(通称ツナ)と見た目は赤ん坊でツナの家庭教師である世界最強のヒットマンであるリボーンは何故か彼等の住む並森町の隣町にある海鳴に来ていた。

 

ツナ「なんで並森から海鳴にきてんだ俺達ーーーー⁉」

 

バキッ‼

 

ツナ「アデッ!」

 

リボーン「うるせーぞダメツナ、来ちまったもんしょうがねえ徒歩で並森にかえるぞ。」

 

早速泣き言を言うツナの顎にリボーンのアッパーカットがクリティカルヒットする。

 

ツナ「痛いなぁ、大体リボーン!お前がランボを殴ったからランボの奴大泣きして手榴弾を俺に投げまくって爆発して偶然通りかかったトラックの荷台に落ちて気がついたら海鳴に来てたんじゃないか!しかもお前は爆発する直前一人だけ逃げて気絶している俺の隣でコーヒー飲んでたし!もうすっかり夜だし!なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ!」

 

リボーン「決まっているだろう、その方が面白そうだからだ。(キリッ)」

 

ツナ「キメ顔で言うな!!」

 

 

理不尽ドSの家庭教師に切れのあるツッコミを炸裂させるツナ。

 

リボーン「マフィアのボスになる男がこれぐらいで喚くな」

 

ツナ「何度も言っているだろ!俺はマフィアなんかにならないって!」

 

そうこの少年こそ世界最大と名高いマフィア、ボンゴレファミリー10代目ボスである。

 

リボーン「継承式はシモンの奴等が暴れたおかげでお流れになっちまったが、お前が10代目ボンゴレボスなのはもう周知の事実だろうが。」

 

ツナ「俺は継がないって言ってるの!」

 

リボーン「これじゃお前を立派なボスにするために家庭教師になった俺が可哀想と思わないのか?(ギリギリ)」

 

悲壮感ある声を出しながらツナの左腕に関節技をキメるリボーン。

 

ツナ「イデデデ!!ギブ!ギブ!!」

 

悲鳴を挙げるツナ、リボーンとの上下関係は永遠にこのままかも知れない。

 

リボーン「安心しろ、ママンにはさっき今日は俺の知り合いの家に泊まるからと連絡しておいた。」

 

関節技を解かれて左腕を擦るツナにリボーンは言う。

 

ツナ「海鳴にリボーンの知り合いがいるの?つかこんな夜中に行って怒られるんじゃ・・・」

 

リボーン「・・・まぁ何とかなるだろ」

 

ツナ「不安しかねぇぇ」

 

しかし他にいく宛もないのも事実、何かあっても多くの修羅場を文字通り『死ぬ気で』潜り抜けてきたツナなら危険が来ても大丈夫なのでとりあえずそのリボーンの知り合いの家に向かうことにした。

 

ツナ「ん」

 

リボーン「どうしたツナ・・・・何かいるな」

 

何かの気配を直感し二人は気配のする森の中へ行ってみた。

 

そこで二人が見たものは。

 

異形の怪物に襲われている少女とイタチのような動物だった!!

 

ツナ「な・・なんだあれリボーン!」

 

リボーン「分からねえ、だがあの娘がヤバいって事は確かだ」

 

ツナ「あ、あんな女の子がなんでこんなところに⁉」

 

リボーン「ツナ!今はそんなことどうでもいいだろ、女子供を守るのはマフィアの勤めだぞ」

 

ツナ「マフィアじゃないって!でもあの子を助けなきゃ(スッ)」

 

すかさず毛糸の手袋を着け丸い丸薬を飲むツナ、その瞬間ツナの額に夕焼けのようなオレンジの炎を灯り、手袋もオレンジ色のグローブへと変化し額と同じオレンジ色の炎を灯す、ツナの目はまるで全てを見透かすような澄んだ瞳へと変わり、頼りなさそうな顔付きは凛々しく変わった、これがボンゴレファミリー10代目ボス沢田綱吉の戦闘状態『超死ぬ気状態』である。

 

超ツナ「行くぞ」

 

『超死ぬ気状態』になると落ち着いているが力強い声色になったツナは 両手のグローブの炎をジェット噴射のようにして一瞬で怪物と少女の間に入る。

 

???「ふぇ?」

 

自分と怪物の間にいきなり現れた少年にその少女は軽く困惑する。

 

???「あ・・あなたは?」

 

超ツナ「もう大丈夫だ。」

 

怪物から目を離さず肩越しで少女を勇気づける超ツナ

 

超ツナ「君は安心して待ってろすぐに終わらせる、リボーン彼女を頼む」

 

リボーン「命令すんな」

 

???「え?え?赤ちゃん?」

 

少女の目の前に黒スーツを着た赤ん坊があらわれ更に困惑する少女、だが目の前に立つ少年の背中が『必ず自分を守る』という思いが伝わり少女はその背中をじっと見つめる。

 

???「(ドキっ)え?」

 

こんな異常事態なのに少女はその少年に不思議なトキメキを感じていた。

 

???「あ・・あなた達は?」

 

リボーン「なに、只の通りすがりだ。ところでお前みたいな子供がなんでこんなところにいるんだ?名前は言えるか?」

 

???「(私より小さい子というか赤ちゃんに子供扱いされたの!(ガーン))、わ私はなのは、高町なのはだよ。」

 

リボーン「何?高町?ということはお前まさか士郎と桃子の?」

 

なのは「え?君お父さんとお母さんのこと知ってるの?」

 

リボーン「(まさか今晩泊まる所の娘に出会うとはな)ああお前の親の事はよく知っている、安心しろあの怪物はツナが倒すからな」

 

なのは「ツナ?」

 

リボーン「目の前にいるアイツの事だぞ。沢田綱吉通称ツナだ」

 

なのは「沢田綱吉・・・・。」

 

これが後に「不屈のエースオブエース」と「天空の炎皇」と呼ばれる二人の出会いであった。




こんな駄文ですが、読んでくれたらいいなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大空と星光の出会いⅡ

注意:戦闘描写稚拙です。あとデバイスの声は日本国です。


異形の怪物はツナにむかって触手で攻撃するが。

 

超ツナ「行くぜ!」

 

超ツナはグローブの炎を噴射し、触手が届く前に怪物の懐に一瞬で近づき正拳突きを叩き込み怪物の身体を数メートルまでぶっ飛ばす。

 

超ツナ・リボーン以外『!?』

 

怪物もなのはもイタチも驚いた今目の前にいた少年が一瞬で怪物の懐に到達しオレンジ色の炎を纏ったグローブで攻撃し怪物をぶっ飛ばした出来事に。

 

『大空の7属性』の中でも最も推進力を誇る『大空』の炎ならこのぐらい当然だと、リボーンは考えているがその事を知らないなのは達は唖然としていた。

 

そして怪物も目の前にいる少年の認識を改めた、目の前にいるコイツは自分の縄張りに入った「獲物」ではなく、自分を倒す「敵」であると。

 

モゾモゾモゾモゾ・・・・ゴバッッ!!

 

超ツナ・なのは・リボーン・イタチ『!?』

 

突然触手の数をさっきの数倍にした怪物の姿に全員が驚くが、ツナとリボーンはすぐ冷静さを取り戻しツナは襲いくる触手をかわし、炎の手刀で切りながら炎を纏った拳を怪物の身体に連打・手刀・遠心力を乗せた蹴りで攻撃するが怪物は受けたダメージと焼き切られた触手を再生させて攻撃をする。なのはを守りながら怪物を観察し能力と攻撃パターンと弱点を分析していたリボーンは言う。

 

リボーン「これはヤベェな」

 

空中を縦横無尽に翔びオレンジ色の炎で舞うように戦う超ツナの姿に見惚れていたなのははリボーンの呟きを聞き我に返り問う。

 

なのは「ヤバいってどうゆうこと?えっと「リボーンだ」リボーン君?だってあの人すごく強いよ」

 

リボーン「アイツの再生能力が厄介だ、あのままじゃ先にツナのスタミナが切れちまう。」

 

そう単純な実力ならツナの圧勝だがどれだけダメージを与えても怪物はすぐに再生してしまうので時間をかけるとツナのスタミナがなくなりやられてしまう、その事に気づいたなのはも焦る。

 

なのは「じ、じゃどうすればいいの?」

 

リボーン「ヤツの再生が追い付けない程のダメージを一度に与えれば勝てるが・・・・。」

 

なのは「どうしたの?」

 

リボーン「その時はこの森が吹き飛ぶ。」

 

なのは「!?な、なんで!?」

 

イタチ?「!?」

 

リボーンの言葉に驚きを隠せないなのはとイタチ。

 

リボーン「ツナの持つ大技ならヤツに強力なダメージを与えられるが威力は大砲みたいなものだ、ヤツは倒せるかも知れねぇが、ヤツの後ろにある森やその向こうにある民家にも被害が出る、ツナもその事が分かってるから攻めきれないんだ。」

 

なのは「何か、何か森やお家の人達を舞い込まない方法はないの!?」

 

リボーン「ツナもその方法を考えているが、その方法を思い付くのが先か、ツナのスタミナが切れるのが先になるか分からねえな。」

 

リボーンの言葉に言葉をなくすなのは、その時なのはの足元から声が。

 

イタチ?「方法ならあります!」

 

リボーン・なのは「!?」

 

リボーンは少しだがなのはは突然イタチが喋ったことに驚いた。

 

なのは「フ、フェレットさんが喋ってるーーー⁉」

 

フェレット?「フェレットじゃありません!」

 

リボーン「じゃオコジョか?」

 

オコジョ?「オコジョでもありません!僕はユーノって名前があります!」

 

リボーン「じゃユーノその方法ってのはなんだ?」

 

すぐ冷静になったリボーンはユーノと名乗る動物に聞くがなのははまだ少し混乱中。

 

ユーノ「その方法をやるには彼女の力が必要です。」

 

なのはを見て呟く。

 

なのは「わ、私?」

 

ユーノ「今の僕ではアレをどうにかする事はできません、でも彼女の力ならそれができます!」

 

リボーン「フム、なのはお前はどうする?」

 

なのは「え?」

 

リボーン「恐らく、あの怪物をどうにかするにはお前の力が必要のようだ、だが力を手にするとお前はこちら側の世界に踏み込むことになる、その覚悟はあるか?」

 

なのは「!?」

 

リボーンのその小さな身体から想像できない威圧感と言葉の重さがなのはの心にズシンと響く。なのははそっと自分を守る為に戦うツナの姿を見つめる、そしてリボーンの目を見て答える。

 

なのは「覚悟とかよく分からないけど、でも私を守って戦ってくれている人の力になれるなら、私は戦います。」

 

その真っ直ぐな目をみたリボーンはその答えで十分と言わんばかりに微笑み、ユーノに言う。

 

リボーン「(良い目をしてやがるこうゆう所は両親の遺伝だな)ユーノはじめろ!ツナがスタミナ切れ起こす前にアイツを何とかするぞ!」

 

ユーノ「は、はい!」

 

なのは「待ってて、必ず助けるから。」

 

決意を込めた目をツナに向けながらなのはは呟く。

 

不屈の翼は今羽ばたく。

 

ーツナ視点ー

 

ツナは内心少し焦っていた、怪物の実力は大した事ないが再生能力が厄介だからだ。

 

超ツナ(このままではジリ貧だ、こうなったら「ナッツ」の能力でヤツを石化させるか、いや「ナッツ」でもコイツの全身を石にするには時間が掛かるし、「ナッツ」がヤツの標的にされかねない。)

 

一か八かヤツを空中まで運びそこで大技をやろうと考えたがあの大技は時間が掛かる上にヤツが大人しくしているはずもないのでできないと判断した、他に方法がないか考えながら怪物の攻撃をかわしていたツナだが突然。

 

超ツナ「!?」

 

リボーンと少女がいた所で桃色の光が輝いた!

 

超ツナ「なんだ?」

 

怪物「!?」

 

ツナも怪物も突然の光に驚き戦闘をストップし、光の地点を見るとそこには、白いドレスを纏い赤い宝石が付いた杖を持った少女がいた!

 

超ツナ「あの子は!?」

 

ツナは驚いたさっき怪物に襲われそうだった少女が突然変身したのだ。少女はツナに向かって叫ぶ。

 

なのは「あの怪物さんの動きを封じてくださーーい!」

 

超ツナ「何?」

 

なのは「あの怪物さんにはコアがあります!そのコアを封印すれば怪物さんを止められます!」

 

少女の言葉に嘘偽りがない事を「直感」したツナは静かに頷き、怪物の周辺を旋回する。

 

超ツナ「X(イクス)・ストリーム!」

 

オレンジ色の炎の竜巻を巻き起こし怪物の身体を焼き付くすツナ、竜巻が止むとボロボロの状態だが何とか再生しようとする怪物の姿があった、ツナはなのはのそばに着地すると静かに言う。

 

超ツナ「今だ」

 

炎の竜巻に見惚れていたなのははツナの言葉に我に返り杖を怪物に向け叫ぶ。

 

なのは「レイジング・ハート!!」

 

L・H「封印」

 

杖から電子声と光の魔方陣が現れるとピンクのりぼんが怪物にまとわりつき怪物の姿は消滅し、光る宝石だけが残り杖の中に吸い込まれていく。

 

L・H「封印完了」

 

杖の言葉と共になのはの姿は白いドレスから私服に変わった、なのははふーと息を吐いた。

 

なのは「良かった~、何とかなったの」

 

ツナ「君、大丈夫?どこか怪我してない?」

 

ツナは超状態を解除し、なのはに怪我はないか聞く。

 

なのは「あ、はい大丈夫です。・・・あの~さっきのお兄さんですよね?」

 

戦っていた時の凛々しい姿から気弱そうだが優しい顔をした少年になのはは同一人物なのか聞く。ツナは苦笑いを浮かべ。

 

ツナ「あぁ、オレ戦っている時、性格変わるんだ、自分では自覚ないけど。」

 

なのは「そうなんですか?」

 

リボーン「今のコイツの姿が本来のコイツだ、見るからにダメっぽさが出てるだろ。(ニヤニヤ)」

 

二人のそばまで歩いてきたリボーンとユーノ。

 

ツナ「なんだよリボーン!そんな言い方ないだろ!」

 

リボーンに怒るツナ、だがリボーンは何処吹く風の態度、ギャーギャー言い合う(ツナが一方的に)二人を見ながらなのはは思う。

 

なのは(さっきの姿はカッコ良かったけどなんか近寄りがたい雰囲気があったな~、こっちの優しそうな姿の方が、って私何考えてるの‼)

 

ユーノ「なのは、どうしたの?顔が赤いよ?」

 

なのは「な、何でもないの!ユーノ君!!」

 

そうと言うユーノだがツナが自分を凝視している姿が目にはいる。

 

ユーノ「何ですか?」

 

ワナワナと震えながらツナはユーノを指差し。

 

ツナ「イ、イ、イタチが喋ってるーーーーーーー!!!!!」

 

忘れていたがツナだけはユーノが喋る事に今気づいたのだ。だがユーノは別の部分をツッコム

 

ユーノ「イタチじゃありません!」

 

リボーン「やはりオコジョか」

 

ユーノ「オコジョでもありません!」

 

なのは「やっぱりフェレットさんなの!」

 

ユーノ「違うってもう!ん」

 

ツッコミ疲れたユーノは何かの音に気づく、他の三人もなんの音なのか聞き耳を立てるが。

 

なのは「あの~、この音って・・・。」

 

ツナ「パトカーのサイレンだよね?」

 

リボーン「そりゃ、あれだけ派手な音と炎の竜巻とピンクの光が起こればパトカー位くるな」

 

リボーン以外は顔を青ざめて慌てる、何しろこんな夜中に赤ん坊と小学生と中学生が歩いているのだ、補導されるのは間違い無し。

 

なのは「ど、ど、どうしよう⁉お巡りさんに捕まっちゃう‼」

 

ユーノ「お、お、落ち、落ち着いてなのは!!」

 

ツナ「リボーン!ど、どうすんだよ⁉」

 

リボーン「ツナ、ソイツ(なのは)の家に行くぞ、元々ソイツの家に行くつもりだったしな。」

 

ツナ「え?この子がリボーンの知り合い?」

 

リボーン「その知り合いの娘だ、ほらとっとと行くぞ、警察に捕まると面倒だ」

 

ユーノを抱き上げツナの肩に乗るリボーン。

 

ツナ「う、うん、よしじゃ行こう。」

 

なのは「ニャア!?」

 

いきなりなのはをお姫さま抱っこで走るツナ。

 

なのは「あ、あのあの!?(顔真っ赤)」

 

ツナ「道案内よろしくね、えっと「なのはです!高町なのはです!」なのはちゃん(ニコッ)」

 

なのは「は、はい~(ポ~)」

 

シュンと大人しくなるなのは、そのようすをニヤニヤ笑うリボーンとなのはの状態を見ていたユーノ。

 

リボーン(いきなりお姫さま抱っことはやるなツナ)

 

ユーノ(もしかしてなのはって)

 

なのはの家まで走って行くツナ達、その頭上にある夜空の星々は一段と美しく輝いていた。

 

この出会いを祝福するかのように。

 

 




思った以上に長文になったかも、だが悔いはない!

次回のなのは編を終わらせたら、フェイト編とはやて編をやりますからお楽しみに~。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大空と星光の出会いⅢ

ご都合設定&微ネタバレアリですがご了承ください。


なのはの案内で喫茶店“翠屋”に到着したツナ達。

 

ツナ「ここがなのはちゃんの両親が経営しているお店?(何処かで見たことあるような?)」

 

なのは「はい!近所でも結構有名なんですよ!」

 

リボーン「隠れた名店ってヤツだ(昔と変わってねぇな)。」

 

ユーノ「なのは、それで君の家は何処なの?」

 

「こっちなの」となのはに案内されながら実は家には剣術道場があること聞きながらツナはなのはに何故あそこにいたのかを聞いたが、なのはは「助けて」と声が聞こえその声の主を探してたら昼間怪我をしていたので動物病院に預けたユーノがいたと言う。ユーノ曰く魔力を持った人が感知できる念話《テレパシー》を発していてそれをなのはが感知したからと言う。

 

ツナ「此処に来るまでに聞いたけど、魔法なんて実際に見てなかったら信じられなかったよ。」

 

リボーン「何言ってんだツナ、俺達の周りも似たような能力を持った奴等が結構いるだろ。」

 

そうだけど、と苦笑い浮かべ呟くツナとどう言うこと?と聞きそうになったなのは&ユーノ、話を変えるように別の話題を出すリボーン。

 

リボーン「そんな事よりなのは、お前ちゃんと両親に外出する事を伝えておいたのか?何かお前の家らしい所で二人の男が怒った顔で待ち構えているぞ。」

 

なのは「にゃ!?お父さん!?お兄ちゃん!?」

 

お父さん若ッ!と叫ぶツナを尻目になのはは父と兄に事情説明(魔法の事と怪物の事は勿論秘密)する為に少し離れる、すると父と兄はなのはに家に入るように言ったようだがなのははツナの方を見て不安そうな顔をするがツナは安心してと言わんばかりの笑みを浮かべそれを確認するとなのはもホッとした笑顔になり家の中へ入っていく、なのはが家の中に入っていくのを確認した父と兄はツナ達の方へ歩いてきたが、突然リボーンが二人とツナの間に入り、二人に向かって口を開く。

 

リボーン「ちゃおっす、久しぶりだな、士郎、恭也」

 

士郎・恭也「リ、リボーン(さん)!?」

 

ツナ「え?」

 

驚くツナを尻目に士郎と呼ばれた男性はまるで十年来の友人に再会したかのような態度で恭也と呼ばれた青年はひきつった笑顔をした。

 

士郎「久しぶりだなぁリボーン、元気だったかい?」

 

リボーン「オレはいつでも元気だぞ士郎、レオンもな。」

 

リボーンの相棒でもある「形状記憶カメレオン」であるレオンも士郎に向けて会釈する。

 

恭也「オヒサシブリデスリボーンサン、オゲンキソウデナリヨリデス。」

 

ツナ(この人、目泳ぎまくりだ!)

 

リボーン「久しぶりだな恭也、鍛練は怠ってないか?なんならまたオレが鍛えてやろうか?(ニヤリ)」

 

恭也「い、いえ!大丈夫です!リボーンさんのお手を煩わせる事はありません!!」

 

必死に大丈夫をアピールする姿にツナは察した、この人もリボーンの被害者なんだ。と

 

リボーン「ツナ紹介するぞ、高町士郎とその息子の恭也だ。士郎、恭也紹介するぞ、コイツは家光とママンの出来の悪い息子の綱吉通称ツナだ。」

 

ツナ「出来の悪いは余計だ!」

 

ツッコムツナに士郎は友好的な態度、恭也は複雑な感じの態度をとる。

 

士郎「綱吉?そうか!何処かで見たことある子だと思ったら家光の息子さんの綱吉君か、大きくなったなぁ。」

 

恭也(奈々さんの息子さんか・・・。)

 

ツナ「あの~、父さんを知ってるんですか?」

 

士郎「昔の仕事仲間、と言うよりも腐れ縁の方がしっくりくるかなぁ?とりあえず上がりなさい、妻の桃子も君を見たら喜ぶぞ。」

 

ツナ「は、はい」

 

恭也「・・・」

 

高町家のリビングに上がると其処にはユーノの治療をしていた綺麗な女性がいた。

 

リボーン「高町桃子、なのはのママンだ」

 

お母さんも若ッッ!とまたもや驚くツナ、自分の母親の奈々も十分若く見えるのに。

 

桃子「お久しぶりねリボーンさん。」

 

リボーン「久しぶりだな桃子、相変わらず美人だな」

 

桃子「うふふ、綱吉君も久しぶりね、最後に来たのは何年も前だから覚えてないと思うけど。」

 

ツナ「は、はいすみません「コイツの記憶力がダメダメだからな」うるさいよリボーン‼」

 

和やか雰囲気が漂うがツナはなのはがいないことに気づく。

 

ツナ「あの桃子さん、なのはちゃんは?」

 

桃子「なのはは姉の美由紀とお風呂に入り直しているわ、ツナ君でいいかしら?二人共今日はもう遅いし、泊まっていきなさい。」

 

ツナ「あ、有難うございます。」

 

リボーン「世話になるぞ」

 

桃子「じゃ、ツナ君は奈々さんに連絡をいれないとね、あなた」

 

士郎「分かっているよ、ツナ君寝床は道場でもいいかい。」

 

ツナ「あぁ、大丈夫です。」

 

士郎「それじゃツナ君達の布団を敷いてくるよ、恭也手伝ってくれ。」

 

恭也「あぁ、うん。」

 

道場に向かう士郎と恭也を尻目に奈々に連絡しようとするがツナは桃子に聞いてみた。

 

ツナ「あの~、皆さんと父さん達ってどういう関係何ですか?」

 

桃子「あぁ、私達はね・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツナ「んなーーーーーーーーーー!!!!!母さん達の仲人ーーーーーーー!!!!!」

 

電話越しにいる奈々から驚愕の事実を聞かされた。

 

奈々「そうなのよ~、ちなみにお母さんが独身時代に働いていたお店が翠屋なの」

 

ツナ「んな!?」

 

奈々「お父さんと出会ったのも翠屋だったの」

 

ツナ「んな!?」

 

奈々「プロポーズされたのも翠屋よ」

 

ツナ「んなーーー!!!」

 

母から語られた驚愕の事実の連打に遂にフリーズ状態に陥ってしまったツナの変わりに桃子が連絡をやり、並中の方は創立記念日で明日は休みだから高町家に泊まる事が決まった。フリーズしたツナはリボーンの鉄拳で正気に戻ったのは割愛しておく。

 

お風呂から上がりパジャマに着替えたなのはとその姉美由紀がやって来た。

 

なのは「ツナさん!」

 

ツナ「なのはちゃん、今日は此処に泊まる事になったよ。」

 

なのは「本当ですか!?(パアッ)」

 

喜ぶなのはを尻目に美由紀はツナに挨拶する。

 

美由紀「久しぶり綱吉君、なのはのお姉ちゃんの美由紀でーす、昔一緒に遊んだんだよ。」

 

ツナ「え?そうだったの!?」

 

リボーン「久しぶりだな、美由紀」

 

美由紀「あ、リボーンくん久しぶり!相変わらずプリティーだねぇ。」

 

リボーンを抱き上げる美由紀、「マフィアモテモテ」と言わんばかりの態度のリボーンであった。布団が敷き終わった士郎と恭也もリビングに戻ってくる。

 

士郎「ツナ君、リボーン、布団は敷いておいたから今日は道場で寝るといいよ。」

 

ツナ「有難うございます。」

 

リボーン「サンキュー」

 

道場に向かうツナになのはが引き留めて耳打ちをする

 

なのは「ツナさん、私明日学校だから今日の事については・・・。」

 

ツナ「うん、学校から帰ってきてからだね。」

 

なのは「はい!じゃおやすみなさ~い。」

 

ユーノを連れて自室に戻っていくなのは。ツナは道場に向かい、既にお眠状態のリボーンの隣に敷かれた布団に入る、リボーンは暢気でいいなと思いながら眠りにつくツナ。だがリボーンは眠る直前まであることを考えていた。

 

リボーン(なのはのあの姿と杖、そしてあの魔方陣、まさかユーノは「あの組織」の者か?それともあの怪物は「あの組織」が関係してるのか?だとしたら面倒な事になるな、「あの組織」が「管理局」が関わってくるとなると面倒な事にな・・・る・・・ぞ・・・スピー。)

 

なのははあまり眠れなかった。ユーノは疲れが出たのかとっくに夢の中だが、なのははツナの事を考えると眠れなかった、眠ろうと目を閉じると戦ってたときの姿といつもの優しい笑顔がフラッシュバックして中々寝つけなかった。

 

なのは「あうぅぅ~、私どうしちゃったんだろう?」

 

これが人生初めての『恋』だということになのはは気付かない。

 

そしてなのはは知らない今日この日、後に自身の終生の親友になる二人の少女も自分の運命に大きく関わる少年との出逢いを果たしていることを。

 

その出逢いはお互いを「引き寄せ」。

 

???「君は?」

 

???「それをわたしに渡したください。」

 

少女達の運命を大きく変える、そうーーーそれはまるで

 

???「私の身体の事、気にしないん?」

 

???「興味ないな」

 

「浮雲」のようにーーーーーー。

 

 

 

 

 

 




なのは編はこれで終わり、次は雷光と大地が出会います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大地に抱かれる雷光

フェイト編始まります。戦闘描写アリ、ドタバタアリの展開で行こうと思います。


その日夕方の並森の河川敷に一人の少年が歩いてきた。

 

小柄な背丈に真紅の髪に紋章が彫られたような紅い瞳をしたこの少年は世界最大のマフィア ボンゴレファミリー創設にも関わったマフィア シモンファミリーのボス古里炎真、所々服がボロボロなのは持ち前の不運とおっちょこちょいによるものだが。

 

今日彼は河川敷に住む野良猫達にエサをあげるためにやって来た、最近乱暴者の野良猫がいるせいで河川敷にいる野良猫達の数が増えたようでいつもよりエサを多く持って来ていた。

 

炎真「チチチチチ」

 

猫達にエサの時間だよと教えるような声を出す炎真、すると野良猫達がやって来た、炎真はエサ用の皿を出しエサを入れて猫達に与えるがエサを食べようとした猫達は一方の方向に目を向ける。

 

炎真「?どうしたの、あっ!」

 

そこには乱暴者の猫が唸り声を挙げながら佇んでいた。だが次の瞬間、異変が起こった!

 

乱暴者の猫「ガルルルル、ガアァァァァーーーー!!!!」

 

炎真「な、何!?」

 

なんと!普通の猫より一回り大きい体型をしていた猫の身体が突然膨張し、巨大な象のような怪物に変化したのだ!怪物となった猫(略して怪猫)は炎真と猫達を「獲物」と定めたのか身体と同じように巨大になった手に爪を立てて炎真達に襲い掛かる!

 

炎真「!?」

 

猫達を守るためを盾になろうとする炎真、ヤられる‼っと衝撃に備えて目を閉じるが突然。

 

ダダダダッッ!

 

何かの炸裂音に目を開けると横から何かに攻撃されたように倒れそうになる怪猫、炎真はチャンスと考え猫達を逃がし攻撃があったであろう方向に目を向けると目を見開いた。

 

???「・・・。」

 

???「・・・。」

 

金色の髪をした黒い杖を持ち露出の高い黒衣を着た少女とオレンジ色の体毛をした大型犬が空中に佇んでいたのだ。

 

炎真(お、女の子と犬が空を飛んでる!?)

 

驚く炎真を尻目に少女と犬は怪猫に目を向ける。

 

犬「フェイト、あいつだよ。」

 

炎真「い、犬が喋った!!!!」

 

犬「あたしは狼だ!!!」

 

フェイト「ア、アルフ!そんな事よりあの猫さんが?」

 

アルフ「そんな事って・・・あぁアイツが持ってる、大方エサか何かと間違って喰っちまったんだろうね。」

 

フェイト「じゃあ始めよう、そこの人。」

 

炎真「え?僕?」

 

フェイト「直ぐに逃げてください、ここは「フェイト!!」!?」

 

怪猫「ガアァァァァ!!

 

怪猫はその体型から想像できない俊敏生で少女に近き攻撃しようとするが少女も物凄いスピードで交わす。

 

炎真(早い!ツナ君にも負けていない!)

 

炎真は無二の親友と同じぐらいのスピードで移動する少女に驚きを隠せない。アルフと呼ばれた犬は直ぐに少女の元に移動する。

 

アルフ「フェイト、アイツ見かけ以上に早いよ、どうする?」

 

フェイト「アルフが牽制して、私は隙をついて封印するから」

 

アルフ「了解」

 

アルフはそう返事をすると怪猫の方へ突っ込んだ!

 

炎真「危ない!え?」

 

思わず間抜けな声を出す炎真だが仕方ない、何故なら突っ込んだ犬の身体は突然光るとオレンジの髪をした女性に変身したのだ。

 

炎真「え?えぇーー!!犬が女の人になった!?」

 

アルフ「あたしは狼だ!!!!」

 

ドカッ!

 

炎真にツッコミをいれつつ怪猫の横面にパンチを叩き込むアルフ、怪猫は大きくふっ飛び、地面に激突する。

 

炎真「す、凄い。」

 

アルフ「良し!フェイト、もう良いよ!」

 

フェイト「うん、それじゃ」

 

にゃ~

 

炎真・フェイト・アルフ「ッッ!!??」

 

三人は怪猫の近くに目を向けるとそこには逃げ遅れた子猫がいた!

 

怪猫はギランと目を向けると子猫に食べようと口を開く!

 

アルフ「ヤバ!」

 

フェイト「危ない!」

 

急いで向かう二人だが間に合わない、子猫が食い殺される姿が二人の頭に浮かぶが怪猫の口は子猫に届かなかった。

 

ドカッッッ!!!

 

先程のアルフのパンチより凄い音が辺りに響くと二人の近くに怪猫がふっ飛んできた。

 

フェイト・アルフ「!!??」

 

二人はいきなり自分たちの近くに飛んできた怪猫よりも子猫がいた地点に目を向けるとそこに、先程の少年がいたが二人は少年の姿に驚いた、紅い手甲と紅い炎、そして少年の額にまるで角のように燃える真紅の炎を燃やしていた。これが古里炎真の戦闘状態である。

 

炎真「ここは危ない、すぐにお逃げ。」

 

子猫の方を顔を向け、子猫を逃がす炎真、炎真は両手の炎を噴射させフェイト達の近くに飛ぶ。フェイト達は突然変化した少年に警戒心を向ける。

 

フェイト「あなたは一体?」

 

アルフ「何だよお前!その姿は!?」

 

炎真「君達、アイツを倒すにはどうすれば良いの?」

 

炎真の言葉にフェイト達は軽く困惑し、フェイトは炎真に尋ねる。

 

フェイト「あ、あの、貴方は時空管理局の魔導師ですか?」

 

炎真「時空管理局?魔導師?いや、僕はそんなんじゃないけど」

 

アルフ「嘘つけ!だったらその姿は何だよ!魔導師じゃなかったらなんだつんだよ!」

 

アルフは喚くが怪猫が再び起き上がりそうになり三人は怪猫に目を向ける。

 

炎真「アイツを動けなくすれば良いんだね。」

 

フェイト「え?えぇ、動けなくすれば後は私があの子の中にあるものを封印します。」

 

炎真「分かった」

 

アルフ「分かったってどうすんだよ!お前!」

 

炎真「こうする!!」

 

炎真が怪猫に手を向けると手のひらから魔方陣みたいなのが手の周りには文字が浮かび上がった、すると。

 

ドカンッッ!!!

 

怪猫「グガアァァァァッッ!!!!」

 

フェイト・アルフ「!?」

 

突然何かに押し潰されるようにその場に倒れ伏す怪猫、そしてその現象に驚くフェイト達。

 

アルフ「な、何!?何が起こってんの!!」

 

フェイト「これは!」

 

炎真「大地の重力」

 

そうこれこそ「大空の7属性」と対となる「大地の7属性」の一つ「大地」の特性「重力操作」である。怪猫は必死に逃れようとするが全く身体は動かず唸り声を上げるのが精々だった。好機と見た炎真はフェイトに言う。

 

炎真「今だよ!」

 

フェイト「バルディッシュ!」

 

BD「封印」

 

黒い杖から電子音が聞こえる杖の先からと金色の魔方陣が浮かび、金色のリボンが怪猫を包み込みリボンを解くとそこに大柄な猫と宝石があった、炎真は猫の傍に行き戦闘状態を解除し猫の身体を揺すると猫は起き上がってきた。猫は何故自分はこんな所にいるんだと辺りをキョロキョロし炎真と目が合う。

 

炎真「良かった怪我はないようだね。」

 

猫「!!??」

 

どうやら猫は炎真に潰されかけた事を思い出したのか全身と毛を逆立たせた。

 

炎真「もう落ちてるものはあんまり食べないようにね、後他の猫達に乱暴しちゃダメだよ」

 

コクコクコクコク

 

首が千切れんばかりに縦にふるとすぐに逃げ出した。そして炎真は猫を怪物にした原因かもしれない宝石を持つが。

 

フェイト「それを渡してください」

 

フェイトは炎真の持つ宝石を渡せと炎真に近付く、アルフはいつの間にか犬いや狼の姿に戻り炎真に迫る。

 

炎真「え?君は」

 

フェイト「それは貴方が持っていても意味のないものです、私に渡してください。」

 

アルフ「さっさと渡しな(ザッ)」

 

炎真「え?えっと(ジリ)」

 

近付こうとするアルフ、後ずさる炎真。

 

アルフ「(ザッ)」

 

炎真「(ジリ)」

 

アルフ「(ザッザッ)」

 

炎真「(ジリジリ)」

 

アルフ「(ザッザッザッ)」

 

炎真「(ジリジリジリ)」

 

アルフ「ハッハッハッハッ」

 

フェイト「アルフ??」

 

炎真「!!」

 

アルフ「ワォ~~ン!!!!」

 

炎真「うわーーーーーー!!!!」

 

フェイト「え?ち、ちょっとえ?アルフ!?」

 

何故か突然雄叫びを上げて炎真に飛び掛かるアルフとそのアルフから逃げる炎真、相棒のいきなりの変貌に戸惑うフェイト

 

アルフ「ワンワンッッ!ワン!」

 

炎真「助けて~~‼」

 

フェイト「アルフ!え?ま、待って~~‼」

 

逃げる炎真とその炎真を追うアルフとそのアルフをさらに追いかけるフェイト(一目に触れそうなので黒衣から私服に変わった)。

 

フェイト《アルフ!どうしたの!?》

 

アルフ《わ、分からないよ、ででもコイツを見てると無性に追いかけたくなっちゃったんだ!!!あぁもう待て~~‼コイツ!!!》

 

フェイト「ええぇぇ!」

 

炎真「何でーーーーーーー!!??」

 

この奇妙な追いかけっこを黄昏時に輝く一番星が見つめていた。

 

後に「金色の閃光」と云われる少女と「大地の炎帝」と云われる少年の出逢いは奇妙な追いかけっこから始まった。

 

ーオマケー

 

追いかけっこの最中、炎真達は海鳴に向かうトラックとすれ違いその荷台には炎真の親友が目を回して気絶し、その隣に黒スーツを着た赤ん坊がまったりと寛いでいたのを炎真達もその親友達も知る由がなかった。

 

 




どうでしょう?次回はシモンファミリーとフェイト・アルフの会合です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大地に抱かれる雷光Ⅱ

フェイト編第二話です。


三人の追いかけっこは炎真達シモンファミリーが下宿している「なみもり民宿」の近くで終わった。下宿先近くまで逃げてきた炎真が何故か転び、その炎真に飛び掛かったアルフとそのアルフの首にフェイトがしがみつき大人しくさせた。

 

フェイト「ご、ごめんなさい、アルフがご迷惑を・・・。」

 

炎真「ゼェ、ゼェ、き、気にしないで、犬に追いかけられるのは慣れてるから」

 

人間体に変身したアルフ(人間体の時は炎真を追いかける衝動を押さえられるから)はアタシは犬じゃない!っとツッコミたかったがバツが悪いのか不貞腐れたような態度をとる。

 

アルフ「アタシ悪くないもん、コイツがさっさとジュエルシードを渡さばこんなことにならなかったもん「アルフ!」だってさフェイト~」

 

アルフの態度にちょっと怒った声色を出したフェイトは改めて炎真がずっと持っていた宝石に目を向けて炎真に告げる。

 

フェイト「改めて、ジュエルシードを渡してください」

 

炎真「ジュエルシードってこの宝石の事?」

 

自分の手の中にある宝石を彼女は求めている事を聞く炎真。

 

フェイト「そう、それを私に「きゅぅぅ~~」!!??」

 

シリアスな雰囲気をぶち壊すかのような気の抜けた音がフェイトのお腹から聞こえた。

 

フェイト「///(バッ!キョロキョロ)」

 

突然お腹を押さえ炎真とアルフを交互に見るフェイト。

 

炎真「え、え~と」

 

アルフ「・・・・・・」

 

炎真は少し戸惑い、アルフはあちゃ~と言わんばかりに右手で顔を被った。

 

フェイト「///////////!!!」

 

穴があったら入りたい心境なのか、ゆでダコのように顔を赤くするフェイト、すると今度は炎真とアルフからグゥー、クゥゥーと音がする。

 

炎真・アルフ「あ」

 

どうやら二人の腹の虫も空腹を訴えたようだ。

 

三人「・・・・・・・・・・・・」

 

何とも言えない雰囲気が辺りに漂いはじめ炎真が言う。

 

炎真「あ、あのさ、すぐ近くに僕の住んでる所があるからそこでご飯を食べてからで良い?」

 

フェイト「は、はい」

 

アルフ「あぁ」

 

二人は炎真に案内されちょっと古い建物に到着したが、炎真は玄関前に来て扉を開くのを少し躊躇った。

 

炎真(皆に何て話そう、少なくてもあの二人に見つかったら大騒ぎになっちゃうかもしれないし)

 

結局、結局うるさいメガネと軽薄メガネが頭によぎるが意を決して扉を開けてただいま~と言って中に入る炎真、玄関にはまだ誰も居ないことを確認するとフェイトとアルフを中に入れるがすると階段から件の軽薄メガネが降りてきた!

 

軽薄メガネ「おう、炎真おかえり・・・え?」

 

炎真「ジュ、ジュリー」

 

この軽薄メガネがシモンファミリー「砂漠」の守護者 加藤ジュリーである。ジュリーは炎真の後ろにいる金髪美少女と犬耳美女に目を向けると大慌てで居間に走り。

 

ジュリー「炎真が女の子二人連れてきたぞ!金髪美少女と犬耳カワイコちゃんだ!!」

 

すると黒髪の美女が物凄い勢いで走ってきた。

 

黒髪美女「炎真ーーーーーーー!!!!!」

 

この黒髪美女はシモンファミリーの大黒柱であり炎真の姉のような母親のような存在でありシモンファミリー「氷河」の守護者 鈴木アーデルハイト通称アーデルである。アーデルハイトは炎真の肩を掴むと物凄い勢いで詰め寄り揺さぶった。

 

アーデル「どういう事なの!?そちらのお嬢さん達は一体誰なの!!」

 

炎真「(ガクン!ガクン!ガクン!)お、おち、おちち、落ち着いてアーデル~~!」

 

フェイトとアルフは突然の展開に呆然としていたがアーデルのある一部分に目がいっていた。炎真の肩を揺さぶるたびにブルンっ!ブルンっ!とダイナミックに揺れる爆乳だ。

 

アルフ(ま、負けた!?)

 

フェイト(うわぁぁ、大きい、私もあの人位になったらあぁなるかな?)

 

アルフも小さいとゆう訳ではないが大きいとゆう訳ではなく適度に膨らみ形も綺麗な胸をしているがアーデルと比べると貧乳に思えてしまったのか落ち込んだ。フェイトは羨望の目線を送るが、安心して良いフェイト、十年後の君はアーデルにも負けず劣らずのナイスバディに成長するのだ。

 

閑話休題

 

何とかアーデルを落ち着かせ居間に向かいフェイトとアルフを紹介しようとするが三人の腹の虫が合唱してしまい。とりあえず晩御飯にしてからになった。以前民宿の管理人さんが急病で来れなくなり食事が出来ずドタバタ騒動が起こった事があったせいか、アーデルは食事を作れるようになった事は割愛しておく。

 

閑話休題

 

食後、改めてフェイト・アルフは炎真からシモンファミリーの紹介が始まった。

 

ナイスバディな黒髪美女の「鈴木アーデルハイト」

 

軽薄メガネの「加藤ジュリー」

 

緑の髪に知的な雰囲気があるが、その正体は結局が口癖のボクシングバカにしてシモンファミリー「森」の守護者「青葉紅葉」

 

巨体の太めな体型だが気は優しくて力持ちのシモンファミリー「山」の守護者 大山らうじ

 

レ○ィ・ガ○ばりの奇抜なファッションと言動が目立つのシモンファミリー「沼」の守護者 SHITT・P通称しとっぴちゃん

 

黄土色のリーゼントに強面の顔をして結構短気だが根は優しくシャイな性格をしたシモンファミリー「泉」の守護者 水野薫

 

炎真自身も自己紹介し、フェイトとアルフの番になりフェイトは自分を魔導師、アルフは犬いや狼の使い魔だと言い可哀想な子を見る目に晒されるがフェイトが魔導師の姿にアルフが犬いや狼の姿に変身した姿を見せ納得してもらった。因みにジュリーは露出の高いフェイトの魔導師モードにイヤらしい目をしアーデルに殴られたのは割愛しておく。

 

河川敷での騒動を話し、その原因が炎真が持っているジュエルシードだと言うことを聞き、自分はそのジュエルシードを集めている事を話した。アーデルは何故そんな危険な物を集めているのか聞くがフェイトは自分の母親が求めているからと言い、それ以上は言わなかった。更に聞こうとするアーデルにジュリーが待ったを掛けてそこまでになったが、炎真が突然言う。

 

炎真「フェイトちゃん、そのジュエルシード集め僕にも手伝わせて。」

 

アーデル「炎真!?」

 

炎真の言葉にアーデルや他の守護者とフェイト達も驚いた。

 

アーデル「炎真、話を聞いてたの?ジュエルシード集めはかなり危険なことなのよ。」

 

炎真「でもそんな危険な事をフェイトちゃん達みたいな女の子がだけにやらせるなんてできないよ。」

 

アーデル「でもね・・・「ボスがやるってンだら良いんじゃねぇの?」ジュリー!?」

 

ジュリー「それに俺ちゃんもこんなカワイコちゃんの手助けしたいしな~、アーデルだって本心ではそう思ってんだろ?」

 

アーデル「そ、それは」

 

アーデルは冷たい態度を取っ手いるが内面はファミリーの皆を大切に思う情熱的な性格をしているのだ。それ故に炎真を危険な事から遠ざけたいと思っているがフェイトをほっとけない気持ちもあった。

 

アルフは河川敷で炎真の能力を見ているので協力してくれるのはありがたいと思っているが、フェイトは。

 

フェイト「炎真さん「炎真で良いよ」・・・炎真の気持ちは嬉しいけどでも私は・・・」

 

何処か悲痛な表情のフェイトの姿に守護者達はかつて他のマフィアから迫害を受けてきた幼い頃の自分達の姿が

重なり。

 

紅葉「結局子供が無用な気遣いをするな!」

 

らうじ「甘えたい時は甘えて良いんだよ」

 

薫・しとっぴちゃん「(コクン)」

 

ジュリー「皆こう言ってるぜアーデル。」

 

アーデル「ふぅ、仕方ないわね」

 

アーデルも納得した。

 

フェイト「み、皆さん・・・」

 

アルフ「アンタら・・・」

 

炎真「フェイトちゃん、僕達は迷惑なんて思わないよ、僕達だって色々な苦楽を皆で乗り越えてきたんだ、フェイトちゃんの力になれるよ。フェイトちゃん僕達を頼って。」

 

アルフ「フェイト」

 

炎真の言葉に何故か暖かいものが込み上がってきたフェイト、アルフとずっと二人ぼっちで誰にも頼れずにいたフェイトにとって炎真の言葉はとても嬉しかった、思わず涙ぐむフェイトはシモンファミリーの皆に頭を下げてお願いする。

 

フェイト「皆さん、よろしくお願いします!」

 

こうしてフェイトとアルフはシモンファミリーと共にジュエルシード集めをするのである。

 

ーオマケー

 

アーデル「さぁ、今夜は遅いし、フェイトちゃんとアルフさんは泊まっていきなさい、寝床は「あ、あの、」なに?フェイトちゃん?」

 

フェイト「え、炎真と一緒じゃダメですか?」

 

フェイト以外「!!!!????」

 

フェイトの爆弾発言に大騒ぎになったのは言うまでもない。

 

ーオマケ2(ちょっとシリアス)ー

 

結局、フェイトとアルフは炎真の部屋で寝て炎真は紅葉の部屋で寝ることになった、他の皆が寝静まったあとアーデルとジュリーは居間で二人っきりで話をしていた。

 

ジュリー「いや~、炎真の奴も隅に置けねぇな~、あんなカワイコちゃんに気に入られるとは「ジュリー」あん?」

 

アーデル「面倒事を嫌う貴方がフェイトに協力しようとしたのはあの子が私達に似てたから?」

 

不真面目で軽薄で女好きだがその実仲間思いで仲間達の事を良く見てる恋人にアーデルは聞く。するとジュリーは少しシリアスになり。

 

ジュリー「まあな、俺らはファミリーがいたがアイツは頼れる人間も甘えられる人間もいないようだ、あれじゃいつか壊れちまうと思ってな。あの子不器用そうだし、お前と同じで。」

 

ジュリーの言葉に少し顔を赤くするアーデル。

 

ジュリー「まぁ炎真はちょっと違うようだが」

 

アーデル「違う?それって」

 

ジュリー「重ねちまってんじゃねぇのかな?妹ちゃんとフェイトをよ、生きてればフェイトと同い年だったからな」

 

アーデル「!?」

 

ジュリーの言葉にアーデルは思わず炎真が寝てるところを見る。

 

アーデル「炎真」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フェイト編はこれで終了です、次ははやて編ですがはやてはあの男とカップリングします、あの二人って対照的な所がありますよね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夜天に浮かぶ浮雲

サブタイで分かると思いますが、あの人です。



並森中学校(略して並中)の屋上に一人の生徒が昼寝していた。サラサラした黒髪に年齢不詳の整った顔だちをした男子生徒だ。

 

み~どりたなびく~、な~み~森の~、だ~いな~く少なく~、並がいい~。

 

男子生徒のポケットの中にある携帯から気の抜けた着信音が鳴り響く、少年は気だるそうに携帯を取り出し電話にでる、すると自分の副長からある情報を聞く。少年は情報を聞くと一方的に電話を切り、肉食動物のような猛禽類のような目付きを鋭くして笑う。

 

???「・・・・・・(にやっ)」

 

「笑うという行為は本来攻撃的な意味を持つ」という格言があるようにその少年の笑みがソレだった。

 

パタパタ

???「・・・」

 

少年の肩に黄色の鳥が乗り、少年は「風紀」と書かれた腕章を付けた学ランの上着を羽織り目的の「獲物」がいるところに向かう。海鳴へ。

 

夜の海鳴に車椅子に乗った一人の少女が数人の男達に絡まれていた。

 

少女「だから謝っとるやないですか。」

 

少女は今にも泣きそうなのを堪えて不良達に言う。

 

リーダー格「おいおい、何だよ?その態度?」

 

不良2「人にぶつかっといてごめんなさいで終わらせちゃダメでしょ?」

 

不良3「そうそう、君の車椅子にぶつかったせいで俺らのダチが足に怪我しちゃったんだYO!」

 

不良4「いてて、あぁ~、こりゃ折れてるかもよ絶対、お嬢ちゃんさ~慰謝料払ってくんない?軽く50万位さ~?」

 

少女「50万って!?自分達からぶつかっといて慰謝料も何もないやないですか!」

 

不良3「あぁ!人に怪我させといて何だよ!その態度はYO!」

 

不良5「こりゃ、年上のお兄さんとしてキチンと礼儀を教えてやんなきゃな~。」

 

不良6「でも俺ら、人に教えんの苦手ダゼ。」

 

リーダー格「じゃさぁ、身体で教えてやろうぜ(ニヤニヤ)」

 

不良3「うわ~、お前鬼畜~、でもこの子結構可愛いし悪くないかも。」

 

少女は自分の身体を抱き締めながら後悔していた、海鳴図書館からもっと早く帰宅してれば、近道だからってこんな人が余り通らない道に来なければこんな人達に会わなくてすんだのに。抵抗しようと大声を上げようとしたが、不良の一人が少女の口を塞ぎ下卑た笑みを浮かべ耳元で囁く。

 

リーダー格「大声上げたいなら上げていいけどさ~、俺らには仲間達がいてさ~、ちょっと俺らがお願いすれば君の友人やら、ご近所さんやらに何かあっちゃうかもよ?」

 

少女「!!??」

 

少女の脳裏に自分に親切にしてくれるご近所さんやお世話になっているお医者さんの姿が浮かび大人しくなった。

 

リーダー格「お利口さん、んじゃ行こうぜ、楽しい夜の始まりだ!」

 

不良共「いえぇぇぇい!」

 

リーダー格の号令の元、不良達は下品な歓声を上げた、不良の一人が少女の乗っていた車椅子を後ろから押す、少女はこれから起こることに只恐怖することしかできなかった。

 

???「ねぇ、君たち何群れてるの?」

 

低い声がその場に響く、少女と不良達は声がした方へ目を向けると学ランを羽織った少年がいた、不良達は自分達より身体が小さく見るからにカッコ付けな格好をしたヒョロそうな少年に馬鹿にしたような態度を取る。

 

不良2「おいおいボウヤどうしたの~?こんなところに来て正義の味方ごっこ?カッコいい~(ニヤニヤ)」

 

不良3「お兄さん達忙しいからさ~、消えてくんない(ニヤニヤ)」

 

他の不良達も少年に嘲笑を浮かべ、少女は不安そうな顔をする。

 

???「・・・・・・」

 

少年はなにも言わずただ不良達を見据えていた、怯えない態度にイラついたのか不良の一人が凄む。

 

不良5「鬱陶しいから消えろってんのが分からねえのか!?このガキ!!」

 

???「・・・」

 

凄まれてもどこ吹く風な態度に不良達はそろそろキレかかるが少女は少年に叫ぶ。

 

少女「逃げてください!この人達にひどい目に遭う前に逃げてください!」

 

少女は叫ぶが少年は少女をみて一言。

 

少年「僕は誰の命令にも従わない」

 

その一言に不良達は更に下品な笑い声を上げ、少女は絶望した顔をする。

 

不良2「じゃぁ死んどけ馬~鹿!」

 

と言って少年にメリケンサックを付けた手で殴ろうとする、少年の顔面が潰れると予感した不良達は歓声を上げ、少女は目をつぶる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボキッ!!!ドキャ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不良達「え?」

 

不良達の間抜け声に目を開ける少女、少女の目の前に広がった光景は・・・・・・。

 

メリケンを付けた腕が肘から逆方向に曲がり、顎を殴られたようなポーズで地面に仰向けで倒れる不良の姿と何かで殴ったようなポーズを取る少年だった。

 

ドスンと倒れた不良は白目を向き気絶していた、不良のリーダー格は目を前の現実が信じられないのか倒れた仲間に言う。

 

リーダー格「お、おいなにやってんだよ、冗談だろ?悪ふざけが過ぎるぜ?」

 

若干震えながら倒れた仲間に言うが仲間は完全に気絶していた。

 

リーダー格「おい!ふざけんなよ!あんなガキ相手に何やられたフリして「バキッ!グシャッ!ベキッ!ドゴッ!」

え?」

 

他の仲間達を見ると全員やられていた、一人は顔面から電柱にぶつかり血で汚し、一人はエビ反り状態で地面にキスをし、二人はテトリスのように重なって倒れていた。訳がわからないと言いたげな顔をし、少年を探そうとするが。

 

???「どこを見てるんだい」

 

何と少年は既に目の前にいた、そして両手には黒いトンファーが握られていた。リーダー格の男は思わず驚いて後ずさるがすぐに余裕顔になり少年に言う。

 

リーダー格「て、テメェやっちまったな、上等だよ!今すぐ俺らの仲間全員読んでテメェを袋にして海に沈めてやんよ!」ピップルル、プルル、プルル。

 

しかし呼び出しているのに一向に出ない、いよいよリーダー格の顔に余裕がなくなる。

 

リーダー格「クソ!どうなってん「君達の仲間って最近海鳴と並森で詐欺に窃盗や恐喝に誘拐を繰り返しているゴロツキ集団の「躯(むくろ)」の事かい?」!?な、何でテメェ知ってんだ!」

 

???「名前が不愉快でね、調べたんだ。まさか並森ではなく海鳴に本拠地があったとはね、お蔭で探すのに手間取った。君達の仲間なら、全員噛み殺した。」

 

リーダー格「な、何ぃぃぃ!!??」

 

???「最後に残ったのは君だけだ、並森の風紀を乱した君達に制裁を与える。」

 

トンファーを構える少年、リーダー格は後ろにいる少女の方へ逃げると少女を人質にする。

 

リーダー格「て、テメェちょっとでも近づいてみろこのガキの命がどうなっても良いのか!?あぁ!」

 

少女「・・・(ビクビク)」

 

少年「関係ないね。」

 

リーダー格・少女「!!??」

 

少年は少女の事なんかお構いなしな態度を取る。

 

リーダー格「テメェマジでいってんのか!?」

 

少年「誰かが助けてくれる事を期待して自分でどうにかしようとしない弱虫には興味ないな。」

 

少女「!?」

 

少女は少年に言われた言葉にショックを受けると同時に何かを決意したかのような目になる、それに気付いた少年は少し笑い。

 

少女「がぶっ!!!」

 

リーダー格「ぐあああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

少女は男の手にかぶり付き悲鳴を上げさせる、その一瞬の隙を少年は見逃さず一瞬で距離を詰めトンファーを男に叩きつける!

 

ドゴッ!バキッ!ボギッ!ゴギャッ!グシャッ!ドゴンッッ!!!

 

リーダー格の男は顔の原型が変わるほど殴られ虫の息状態になり気絶した。

 

少女「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、」

 

少女は緊張が解けたのか息切れを起こしていた、そんな少女に少年は呟く。

 

少年「君は只の弱虫じゃないようだね、少し興味が出たよ」

 

少女は少年に聞く。

 

少女「あ、貴方は誰なんですか?」

 

少女の言葉に少年は答える。

 

少年「人に名前を聞くなら自分からだよ。」

 

少女「わ、私ははやて、八神はやてです」

 

少年「並森中学風紀委員 委員長 雲雀恭弥。」

 

後に「夜天の主」となる少女と「管理局」すら警戒する巨大企業「HUHKI」の創設者である「紫雲の戦鬼」の出会いである。

 

この物騒な出会いを夜空の月が見守っていた。

 

ーオマケー

 

二人が出会った場所から100メートル程離れた所に気弱な少年と黒スーツの赤ん坊が途方にくれていた(少年の方が)、赤ん坊は少年の母親に連絡する際ニュースで海鳴と並森を騒がせたゴロツキ集団が全員逮捕され、その際構成員達が何者かに半殺しにされていた事を知るのであった。




はい、はやてのカップリング相手は雲雀です、自分なりに雲雀らしさを出したつもりです。はやて編はこれで終わります(はやっ)。次回は無印編スタートです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無印編
大空の約束


海鳴の朝の5時近く頃

 

ドガッ!

 

ツナ「あで!?」

 

リボーン「いつまで寝てやがるダメツナ、とっとと起きやがれ。」

 

寝ているツナの頭に容赦ない蹴りをお見舞いするリボーン。

 

ツナ「痛ぇぇ、リボーン!あれここは?・・・そうか俺達なのはちゃんの家の道場に泊まったんだっけ?」

 

リボーン「目が覚めたなら行くぞ。」

 

ツナ「行くってどこだよ?」

 

リボーン「決まってんだろ、泊めてもらったんだせめて家の前の掃除位はしておけ。」

 

ツナ「分かったよ、ん?ナッツ!?」

 

ツナの枕元に未来の科学の結晶「匣兵器《ボックスへいき》」(今はツナのボンゴレリング改めボンゴレ・ギアになってるが)の「天空ライオンverボンゴレ」の「ナッツ」が寝ころんでいた。

 

ナッツ「ZZZ」

 

リボーン「思わず出てきちまったんだな。しょうがねぇ、おいツナ、ナッツは取り敢えず畳んだ布団の上にでも置いておけ行くぞ」

 

ツナ「う、うん」

 

寝てるナッツを畳んだ布団の上に置いて掃除に向かうツナとリボーン。だが。

 

ナッツ「ガ?ガァァァウゥゥ~(のび~)」

 

丁度二人がいなくなってすぐナッツは目を覚ましツナを探して高町家を歩き回る。

 

ナッツ「ガゥ?」

 

ある部屋の前に着いたナッツはその中に入ってしまった。

 

朝6時過ぎ掃除を終えたツナとリボーンは道場に着くと士郎と恭也と美由紀と出会った。

 

士郎「やぁ、ツナ君リボーンおはよう、昨日はよく眠れたかい?」

 

恭也「おはよう」

 

美由紀「おはよう!ツナ君!リボーン君!」

 

ツナ「お早うございます、よく眠れました」

 

リボーン「ちゃおっす、士郎、恭也、美由紀、昨日は中々よく眠れたぞ」

 

士郎は紳士的に恭也は素っ気なく美由紀は元気に挨拶し、ツナとリボーンもそれに答える。

 

ツナ「士郎さん達は剣道をやってるんですか?」

 

士郎「まぁね、ツナ君達は朝早くから玄関前を掃除をしてたようだけど」

 

リボーン「まぁ、一宿の恩義って奴だ、次は一飯にもなりそうだしな。」

 

高町家の居間から美味しそうな匂いが漂う。

 

士郎「もうすぐ朝御飯かツナ君、悪いがなのはを起こしてきてくれないかい?」

 

ツナ「あ、はい分かり「にゃぁぁぁぁぁぁ!!!」!?なのはちゃん!?(ダッ)」

 

突然なのはの悲鳴が聞こえなのはの部屋に向かうツナ達、なのはの部屋に着いた一同が見たのは。

 

なのは「にゃぁ~、カワイイ~(スリスリ)」

 

ナッツ「ガァゥゥゥ~(スリスリ)」

 

ユーノ(何だアレ?)

 

リボーン「おぉ。」

 

士郎「何だ?あの動物は?」

 

恭也「猫か?」

 

美由紀「やだ!カワイイ!」

 

ツナ「な、ナッツ!?」

 

ナッツを抱き締めて蕩けた笑顔で頬擦りするなのはとなのはに甘えるナッツの姿だった。

 

ー高町家居間ー

 

士郎「ツナ君のペットのライオン?」

 

恭也「これがライオン?どう見てもライオンに見えないぞ?大体何時来たんだ?」

 

桃子「きっとツナ君が恋しくて並森から来たのね」

 

美由紀「ほらほら~おいで~、お姉さんが抱っこして上げるよ~」

 

なのは「お姉ちゃん、ナッツが怯えるからやめて」

 

ナッツ「(ブルブル)」なのはの後ろに隠れる

 

美由紀「何で!?」

 

リボーン「気にするな美由紀、ナッツはツナに似て臆病な所があるだけだ(モグモグ)」

 

ツナ「何でこんなことに・・・」

 

高町家で朝食を食べながら、ナッツの紹介し終えたが美由紀がツナに質問する。

 

美由紀「そういえばツナ君、昨日の夜どうしてなのはと一緒にいたの?並森に住んでる筈のツナ君が隣町の海鳴に来る用事でもあったの?」

 

ツナ「そ、それは「言わなくていいよツナ君」士郎さん?」

 

どう答えようか迷っていたツナに士郎と恭也は同情しきった目を向ける。

 

士郎「大方リボーンが何か無理難題な訓練かトラブルでもやらかして気がついたら海鳴に来ていたんだろ?」

 

ツナ「よく分かりましたね!?」

 

恭也「(やっぱり)俺も父さんもリボーンさんには散々な目に遭わされた経験があるからな、苦労しただろう。」

 

ツナ「えぇ、そりゃぁもう。(げっそり)」

 

渦潮に飲まれかけたり、鮫に襲われたり、巨大亀に襲われたり、マフィアの戦争に巻き込まれたりと散々な目にあった過去がフラッシュバックしたのか少しやつれるツナと何かを思い出したのか同じようにやつれる士郎と恭也。

 

なのは「ツナさん、何かげっそりしてるの」

 

桃子「お父さんに恭也もやつれてるはね~。」

 

美由紀「リボーン君、一体なにやったの?」

 

リボーン「大したことはしてねぇぞ(ニヤリ)」

 

ツ・士・恭(何が大したことないだ!こっちは何度も死にかけたわ!!)

 

ニヤリと笑うリボーンに三人の心のツッコミがシンクロする。

 

 

なのは「いってきま~す!」

 

ツナ「行ってらっしゃい!」

 

小学校に向かうなのはに向かって手を振るツナ、恭也も美由紀も学校に行き、士郎はリボーンと話があると言って道場に向かい。

 

ツナは桃子に翠屋での仕事を教えてもらってる(一飯の恩義を返すため)。

 

桃子はエプロンを付けてお店の掃除をするツナに言う。

 

桃子「ツナ君」

 

ツナ「は、はい」

 

桃子「なのはをお願いね」

 

ツナ「え?」

 

桃子「なのはが私達に何か隠しているわね、そしてそれをツナ君とリボーンさんは知っているでしょう?」

 

ツナ「(ギクッ)な、何で分かったんですか?」

 

桃子「うふふ、なんとなくね。あの子(なのは)は父親に似て辛いことや苦しいことを人に教えない水くさい所があるから。でもツナ君にはある程度甘えてるようだし、勝手を承知でお願いするわ、あの子の力になってほしいの。」

 

その真っ直ぐな目にツナは昨晩魔導師になったなのはの目が重なる。

 

ツナ「(あぁ、なのはちゃんはお母さん似だな)俺に何ができるか分かりませんけど、約束します。俺がなのはちゃんを守ります。」

 

その迷いない目に桃子は。

 

桃子「(あの目、家光さんによく似てるわ)よろしくお願いします(ぺこ)」

 

ツナ「か、顔を上げてください!?」

 

桃子「うふふ」

 

ツナ「ア、アハハ」

 

カランカラン

 

ツナ・桃子「あ、いらっしゃいませ!」

 

お客の来店に挨拶をするツナと桃子、そこには。

 

???「あら~、ツッ君ったら翠屋でアルバイト?」

 

???「十代目!貴方の右腕が馳せ参じました!」

 

???「よ!ツナ!」

 

???「極限だーーー!!」

 

???「ボス、エプロン似合う」

 

???「ガハハ!ランボさん参上だもんね!」

 

???「イーピンも参上!」

 

???「ツナ兄!」

 

???「以外に似合ってるわよエプロン」

 

???「はひ!ツナさんのエプロン姿です!」

 

???「ツナ君、似合ってるよ」

 

桃子「あらあら、千客万来ね♪」

 

ツナ「んなーーーー!!母さんに皆!?」

 

来店したのはツナの母親 沢田奈々

 

ツナの「嵐」の守護者 獄寺隼人

 

「雨」の守護者 山本武

 

「晴れ」の守護者 笹川了平

 

「霧」の守護者(代理?) クローム髑髏

 

「雷」の守護者 アホ牛ことランボ

 

将来有望の殺し屋 チャイナ娘のイーピン

 

「ランキングフウ太」ことフウ太

 

「毒蠍」と言われる殺し屋にして獄寺の姉のビアンキ

 

自称ツナの恋人候補の三浦ハル

 

了平の妹でツナの憧れの女の子 笹川京子

 

物語はここから始まる。

 

 

 




こんな駄文を見てくれる人達に最大級のありがとうございます!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ボンゴレを継ぐ少年

ー高町家道場ー

 

士郎「リボーン、聞きたいことがあるんだ。」

 

リボ子「ダメよ士郎。あなたには妻子がいるじゃない。あたし達もう終わった関係よ、今更ヨリを戻そうなんてなめないで」

 

士郎「いつの間にそんな関係になった?いつの間にリボ子になった?つーかそうじゃないんだよ、ツナ君の事だ!真面目に聞いてくれ!」

 

いつの間にかリボ子にコスプレしていたリボーンにツッコミを炸裂させる士郎。

 

リボーン「相変わらず冗談の通じない奴だ、少しはユーモアを覚えろ」

 

士郎「君と家光相手にユーモアやってたらきりないよ」

 

昔のやり取りを思い出したのか、二人はフッと笑った。そして改めてシリアスな顔になり。

 

士郎「リボーン、君はボンゴレ十代目の家庭教師をやってると聞いていたが。」

 

リボーン「あぁ、アイツがボンゴレ十代目だ、本人はマフィア何かやだと言ってるがな」

 

士郎「そうか。彼がボンゴレⅠ世の直径の子孫だとは知っていたが。家光は知っているな?門外顧問の親方もボンゴレの継承に関わっているからな。」

 

リボーン「あぁ」

 

士郎「僕の知っているツナ君は家光や美由紀に振り回されている気の弱い男の子だった。話を聞いた時はとても信じられなかったよ、彼があの『XANXAS』を倒しただなんてね」

 

ボンゴレ独立暗殺部隊『ヴァリアー』のボス『XANXAS』を士郎は遠目だが見たことがあった、初めて奴を見たとき、士郎は今にも爆発する爆弾か噴火する火山のような恐ろしさを感じた。故に信じられなかった、あの少年が『XANXAS』を倒しボンゴレのボスになった時は。

 

リボーン「まぁ、信じられねぇのも無理ねぇな、あんなへなちょこがボンゴレ十代目だなんてな、ただあいつは恵まれたんだ、仲間に、友達に、そして何よりかてきょー様にな」

 

士郎「結局お前か・・・あの子はボンゴレを継承すると思うかい」

 

リボーン「その為に俺がいるんだぞ。」

 

士郎「そうか・・・、リボーンなのはを頼めるかい?」

 

リボーン「そういうのは俺じゃなくてツナに言ったらどうだ?」

 

士郎「それは桃子がやるさ、僕だと変に威圧してしまうかもしれないし」

 

リボーン「親バカめ」

 

士郎「うるさいよ」

 

またもや笑い合う二人。

 

士郎「さて、桃子とツナ君に店番やらせて置くわけには行かないし、そろそろ僕達も戻るか。」

 

道場を出て店に向かう二人。

 

リボーン「士郎」

 

士郎「ん?」

 

リボーン「・・・・・・いや、なのはがツナにホの字になってることに気付いているかと思ってな」

 

士郎「あぁ、その事か(ず~ん)、何でなのははツナ君に惚れたんだ?」

 

リボーン「人が人を好きになるのは自然の摂理だぞ」

 

士郎「しかしツナ君と間違って結婚なんかしたらなのははゴッドマザーだぞ?」

 

リボーン「以外と似合うかも知れねえぞ?なのはは結構肝が座っているからな、桃子に似て。」

 

士郎「それは父親として喜んで良いのか?悲しんで良いのか・・・ん?何だか店が賑やかだな?」

 

リボーン「あぁ、俺が呼んだ追加のバイト達とお客さんだ」

 

士郎「リ、リボーンが呼んだ?(なにか嫌な予感が)」

 

店の中に入った士郎が見たのは。

 

ツナ「獄寺君!このケーキ、あっちのテーブルに!!」

 

獄寺「はい!十代目!」

 

山本「お待ちどうさまです!オレンジジュース持って来ました!」

 

了平「極限ありがとうございました!!!」

 

ランボ「ガハハ!桃子!このケーキ美味しいんだもんね!」

 

イーピン「激烈美味!」

 

桃子「うふふ、ランボ君もイーピンちゃんも翠屋のケーキを気に入ってくれて嬉しいわ」

 

フウ太「ハル姉、このケーキがこの店で一番美味しいよ」

 

ハル「はひ!そうなんですか?京子ちゃん次はこのケーキを・・・はひ!カワイイフェレットさんです!」

 

京子「さっきそこで見つけたの、凄くカワイイよ、ね!クロームちゃん。」(スリスリ)

 

クローム「うん、カワイイ」

 

ユーノ(はわ!はわわ!)(ポ~~!)

 

奈々「あらあら、すっかり賑やかになったわね。」

 

ビアンキ「いつもの事よ、ママン。」

 

士郎「・・・・・・リボーン、あれが君の呼んだバイトとお客さんかい?」

 

リボーン「あぁ、店が繁盛してるしツナを手伝うって事でタダで働くバイトもいるんだ、至れり尽くせりだろ?」

 

士郎「ハァ、まぁこんなに賑やかなのは久しぶりだし、まぁ良いか」

 

その日、喫茶店翠屋ではイケメンなバイトがいると言うことが広まり、若奥様や昼休みの大学生やOLのお姉さま方が大勢やって来て、昼だけで過去最大の売り上げを出したのだった。

 

 

 




次はなのはとフェイト出会います、そしてツナは・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光出会うⅠ

ー月村邸ー

 

美しく手入れされた月村邸の庭にかわいらしい三人の少女と場違いそうな少年と黒スーツの赤ん坊がいた。

 

リボーン「すずか、クッキーのおかわりを頼むぞ。」

 

すずか「あ、うん待っててねリボーンちゃん。」

 

アリサ「何であんたは人ん家で偉そうにしてんのよ!?すずかもおかわり持ってこない!」

 

なのは「まぁまぁアリサちゃん、リボーン君は赤ちゃん何だから」

 

リボーン「そうだぞ、こんなカワイイ赤ちゃん何だもん」

 

アリサ「こんな流暢に言葉喋る赤ちゃんがいるか!?てかあんたは自分で可愛いとか言うな!可愛い子ぶるな!」

 

リボーン「あんまり大きい声で怒鳴るとまたナッツが怯えるぞ」

 

ナッツ「ガゥゥ~・・・」(びくびく)

 

なのはの後ろに隠れるナッツ

 

アリサ「あぁナッツ違うから、ナッツに怒鳴ったわけじゃないから、そんなに怯えないで~」(オロオロ)

 

すずか「アリサちゃんもナッツちゃんには敵わないね」

 

なのは「にゃはは、カワイイは正義なの」

 

なのは達がいるところのすぐ隣を月村邸で飼っている猫達に追いかけられるユーノ

 

ユーノ「キュウ!キュウ!!」

 

ツナ「(なんで俺とリボーンはここにいるんだろう?)」

 

 

 

話は数時間前

 

学校から帰宅したなのはは翠屋が見知らぬバイト達で繁盛している所に出くわした。母・桃子に聞いてみると、ツナのお母さんとツナの家に居候している人達とツナのお友達がお客さんとアルバイトとして来た事を聞いた。ツナの母親奈々は大きくなったなのはに挨拶し、続いてツナの仲間達も自己紹介した。

 

そしてなのはは友達の家に行く用事が急にできてしまった、ツナは「友達との約束を優先」との事でなのはを行かせようとしたが桃子は友達の家にケーキを持っていかせようとしリボーンが、

 

リボーン「丁度良いから、俺とツナも行くぞ」

 

と言い、なし崩しになのはと一緒に行く事になった。獄寺も行くと言ったが、お客さんが大勢(殆どが獄寺と山本目当て)来たので行けなかった。

 

なのはとユーノと一緒になのはの友達の月村すずかの家に行く三人と一匹。月村邸に着き、使用人に案内され庭に着いた三人はそこで金髪の勝ち気そうな顔付きの少女「アリサ・バニングス」と紫色のロングヘアの大人しそうな少女「月村すずか」と出会った、お互い自己紹介が終わり(アリサ・すずかは悠長に言葉を喋るリボーンに戸惑いながら)、ユーノとナッツを紹介したがユーノはすぐに猫達に見つかり追いかけっこが始まったが、ナッツはなのはの後ろに隠れ怯えていた、怯えられた事でちょっぴりショックを受けた二人はなのはに協力してもらいながらナッツにお近づきになろうとしていた。

 

アリサ「それにしても今日なのはが授業中殆ど寝ていた原因が」(ニヤニヤ)

 

すずか「ここにいるツナさんとは」(ニヤニヤ)

 

ツナ「え?俺が原因ってどうゆうこと?」

 

なのは「な、何でもないの!!何でもないのツナさん!!//////」(顔真っ赤)

 

リボーン「見ましたか?アリサさん?すずかさん?あのなのはさんの狼狽えよう」(ニヤニヤ)

 

すずか「えぇ、見ましたわリボーンさん、あれは確実ですわね~」(ニヤニヤ)

 

アリサ「なのはちゃんったら年上が好きだったのですわね~」(ニヤニヤ)

 

なのは「すずかちゃんまで!?何で皆ニヤニヤ笑ってるの!?さっきまで漫才やってたリボーン君とアリサちゃんまで!違うんだってば~!/////」

 

ツナ(あぁ、平和だな~~)

 

姦ましい会話を聞き流していたツナは会話の内容が頭に入らなかった。

 

それから数分たってなのはは林のなかに入ったユーノを追ってツナとリボーンもなのはを追った(アリサとすずかには心配しないでと言って)。

 

ー月村邸の林の中ー

 

ツナ「なのはちゃん」

 

なのは「あ、ツナさんリボーン君」

 

リボーン「ジュエルシードの反応があったのか?」

 

なのは「うん、今ユーノ君が・・・」

 

ユーノ「いたよ、あそこだ」

 

ユーノが指し示した方向に巨大になった猫がいた!

 

ツ・な「デカっ(大きいの)!」

 

リボーン「ユーノ、コイツはすずかん家の猫だな」

 

ユーノ「えぇ、多分エサと間違えて食べてしまい、大きくなりたいと願ったからこんな姿に」

 

なのは「大きくなりすぎなの」

 

ツナ「なのはちゃん、すぐに封印してあげよう。」

 

なのは「あ、はいレイジングハート、セットアップ!」

 

LH「セットアップ」

 

魔導師状態であるバリアジャケットを纏い封印しようとするが・・・。

 

リボーン「おい、なにか来るぞ!」

 

ツ・な・ユ「え?」

 

ドドドドっ!!

 

ツ・な・ユ「!!??」

 

足元がいきなりなにかに撃たれたように土煙をあげ、全員が撃たれた方向に目を向けるとそこには金髪の美少女とツナと同じように額と両手に炎を灯した赤髪の少年がいた。

 

なのは「あ、あの子は?」

 

ツナ「!?炎真!!」

 

そうそこにいたのは少年はツナの親友である古里炎真だった。

 

炎真「ツナ君、何で此処に?」

 

ツナ「炎真、何で?」

 

超ツナ「何でここにいるんだ!?」

 

大空と大地が再びぶつかる!

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は此処までです。文才が欲しい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光出会うⅡ

 

ー月村邸 庭 林ー

 

なのはとフェイトは向かい合う少女の隣にいる少年に目を向けた。

 

な・フェ((ツナさん(炎真)と同じ!?))

 

片やオレンジの炎、片や深紅の炎だが自分の隣にいる少年と同じ状態になっている人物に驚いていた。

 

そしてリボーンは「何故炎真がここにいるのか?」と言う事より、これから起こることを予測し、隣にいるユーノに目線を向ける。

 

フェイトも何かが起こることを予感し、後ろに控えているアルフに念話を送る。

 

リボーン「ユーノ」

 

フェイト(アルフ)

 

『結界を最大にしろ(して!!)』

 

ユーノ・アルフ『!?』

 

ビュンッ!

 

ドガッッッ!!

 

な・フェ・ユ・ア『!?』

 

次の瞬間、四人は驚いた!一瞬の内に二人の少年が拳をぶつけ、その衝撃波が全員を襲った!

 

二人の少年は両手の炎をジェット噴射させ空を飛びそのまま戦いの場を空に移した。

 

超ツナ「炎真!何故ここにいるんだ!」

 

炎真「ツナ君!君こそどうして!」

 

超ツナ「俺はなのはと一緒にジュエルシードを回収している!」

 

炎真「僕もフェイトちゃんに協力しているだけだ!」

 

ビュンッ!ドガッ!バキッ!ドゴッ!ビュンッ!ドガンっ!!ドガンっっ!ドガンっっっ!!

 

二人の少年の戦いはスピードと熱を上げ、オレンジ色の閃光と深紅の閃光になって大空を縦横無尽に飛びながらぶつかっていく!

 

ユーノとアルフが結界を張っているので回りに気付かれずにすんでいるが、その戦いを地上から見ていた者達をリボーンは観察していた。

 

なのはは呆然としレイジングハートを落としていた。自分は魔法と言う力を得た、だが今空で戦っている二人を見て自分はツナの力になれると思っていた自分が思い上がっていた事に。

 

なのは(私はツナさんと一緒に戦う処か、足元にも及んでいないんだ・・・。)

 

なのはは二人の少年が自分より遥か彼方の「高み」にいるんだと、幼いながらもなのはは理解しただが。

 

なのは(今はまだ追い付けない、でもいつかきっとううん、絶対に追い付いて見せるの!)

 

なのはの目には決意と闘志に満ちた炎が宿っていた、リボーンは満足そうに見つめるが、他の三人は違った。

 

フェイトとアルフとユーノはツナと炎真を「魔法が使えない人間」で「自分達より弱い人間」と見ていた。今まで、魔法が使える自分達は強いと思っていた、だが空で戦っている二人の少年がそんな自分達の価値観が破壊した!

 

ユーノ(何なんだ、あの二人は!?あの強さ「管理局」の「執務官」クラスかそれ以上だ!?)

 

フェイト(炎真ってあんなに強かったの!?炎真と戦ってるあの人(ツナ)も私と同じ・・・いや私以上のスピードで戦っている!?それに同じスピードで戦っている炎真も凄すぎる)

 

アルフ(あ、アイツ(炎真)ってあんなに強いの!?炎真と戦ってるアイツ(ツナ)も半端なく強い!アイツらなら「あの女」からフェイトを・・・。)

 

三者三様に目の前で戦う少年達に目を奪われていた。

 

二人の戦いは一瞬、ツナがなのはの方に目を向けた隙に決まった。

 

炎真「大地の重力!!」

 

ドゴッ!

 

超ツナ「!?しまった!!!」

 

いきなり超重力がのし掛かり地面に激突したツナ、ツナの動きを封じた炎真はフェイトに向かって叫ぶ。

 

炎真「フェイトちゃん!!今だ!!」

 

フェイト「!?」

 

フェイトは二人の最初の拳のぶつかりで起こった衝撃波を浴びて気絶していた猫に目を向け。

 

フェイト「バルディッシュ!」

 

BD「封印」

 

金色のリボンが猫を包みジュエルシードと分離させ、回収した。

 

なのは「!?待って!!」

 

遅れてなのははフェイトに声をかけるがフェイトはなのはを一瞥すると、アルフと共に炎真の元に飛ぶ。

 

フェイト「炎真、回収終わったよ」

 

炎真「よし、すぐに撤退だ」

 

アルフ「え?何でだよ!アイツらをここで・・・」

 

炎真「僕達の目的はジュエルシード回収だ、長居は無用だよ」

 

フェイト「うん、アルフ」

 

アルフ「ちっ、分かったよ」

 

三人は明後日の方向に飛び、姿を消した。

 

炎真が離れ超重力が解除されたツナは三人を追うとしたが。

 

リボーン「やめろツナ、深追いはするな」

 

超ツナ「リボーン」

 

リボーン「何故炎真がジュエルシードを回収しているのかは分からねぇが今回は「本気の戦い」じゃなかっただろ?」

 

なのは「え?ツナさん達「本気」じゃなかったんですか!?」

 

シュ~。

 

ツナ「うん、炎真も本気を出してなかった、きっと炎真に何か事情があってあの子に協力しているんじゃないかな?」

 

ユーノ「でもジュエルシードはとても危険なんです!あれをどうしようとしているんでしょう?」

 

リボーン「考えても仕方ねぇ、今はアリサとすずかの所に戻るぞ」

 

ツ・な・ユ『うん((ハイ)なの)』

 

ユーノの結界のおかげで周辺に被害はなく、四人はそのままアリサとすずかの所に戻ろうとした、だがリボーンは三人から少し離れて黒い渦が渦巻いている方を睨んだ後三人の元に戻った、アリサとすずかの所に戻り少し談笑した後ツナ達は帰宅した。

 

ー翠屋近くー

 

なのは「ツナさん」

 

ツナ「ん?何?」

 

なのは「あの炎真って人は」

 

ツナ「あぁ、俺の友達だよ」

 

なのは「友達同士なのに戦ったんですか?」

 

ツナ「実はねなのはちゃん、俺と炎真は数日程前に「本気」で戦ったんだ」

 

なのは「え?」

 

ツナ「俺も炎真もお互いすれ違って誤解して、本気でぶつかり合った、でもその時の炎真と違って今の炎真の拳からは「憎しみ」とかの感情はなかった、きっと何かあるんじゃないかな」

 

なのは「・・・ツナさん、私あの黒衣の女の子の目を見たんですけど、凄く悲しそうな目をしていたの」

 

リボーン「それは俺も感じていた、おそらく炎真もあの娘に協力しているのもそれだろう。」

 

なのは「私、あの子とちゃんと話がしたいの、あの子の名前やなんでジュエルシードを回収しているのか、色々聞いてみたいの」

 

なのはの目に以前炎真と対立していた時、炎真とちゃんと話をしたいと言っていた自分と重なり。

 

ツナ「じゃあの子とまた会ったら、話をすれば良いよ」

 

リボーン「そのためにもまずは力をつけなくちゃな。ユーノ、なのはの先生役は任せるぞ」

 

ユーノ「はい、分かりました」

 

なのは「よろしくねユーノ君!」

 

翠屋の近くに着いた四人は翠屋が賑やかになっていることに気付く。

 

リボーン以外(何か嫌な予感が・・・)

 

店の外の窓から中の様子を伺うと。

 

獄寺「テメェ、年上だからって良い気になってんじゃねェぞ」

 

恭也「そっちこそ調子に乗らない方がいいぞ」

 

山本「ハハっ!何か火花散ってるっすね」

 

了平「タコヘッドは年上と見ると見境なく喧嘩売るからな」

 

美由紀「でね、その時ツナ君ったら野良猫ちゃんの尻尾踏んじゃっておもいっきり引っ掛かれて大泣きしてたのよ」

 

ハル「はひ!ツナさんのバイオレンスな過去を知りました!」

 

京子「ツナ君、大変だったんだね」

 

ランボ「ガハハ!このケーキランボさんのものだもんね!」

 

イーピン「ランボ返す!それイーピンの!」

 

フウ太「ランボダメだよ!」

 

クローム「イーピンちゃんに返してあげて」

 

奈々「あらあら、恭也君も美由紀ちゃんもすっかり仲良くなったわね~」

 

ビアンキ「隼人達もすっかり打ち解けてるわね」

 

士郎「全く、まだ仕事中なのに」

 

桃子「うふふ、でもこうゆうのもいいですよ」

 

結構カオスになったいた。

 

 

 

ツナ達『・・・・・・・・・』

 

 

 

リボーン「ツナ、行ってこい」

 

ツナ「やっぱり?」

 

なのは「にゃはは・・・ツナさん頑張って」

 

ユーノ「ご武運を祈ります。」

 

ハァ、とため息を着きながらも店に入るツナ、並森一同が帰路に着いたのは夕方6時を過ぎた頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーオマケ シモンのオカンー

 

フェイトが拠点としているマンションに着いた炎真達。

 

三人「ただいま~~」

 

アーデル「三人ともお帰り、もうすぐご飯の準備をするから手洗いとうがいをしてきなさい」

 

炎真・フェイト「うん(はい)」

 

アルフ「えぇ~、めんどくさ(ギロッ!)すぐやります!!」(ビシッ)

 

アーデルに睨まれ敬礼をするアルフ。

 

昼近くに海鳴にあるフェイトのマンションにやって来たシモンファミリーは(学校には合宿と言う名目で休学届けを出し)、フェイトが今まで冷凍食品でアルフに至ってはドックフードで食事をする食生活を知り苦笑い・呆れ顔を浮かべたが、二人の生活態度を見てアーデルの中の「オカン」と「粛清委員」に火が着き二人の生活習慣を改めさせ炊事に洗濯や掃除までした。

 

最初はアルフはブー垂れてたがアーデルに睨まれ野生の感が「この人に逆らうな!」と警鐘を鳴らしたのか今やすっかりアーデルに従順になった。

 

アーデルはフェイトには優しく接し、フェイト自身もアーデルを姉のように慕っていた。

 

フェイト「炎真」

 

炎真「ん?何?」

 

フェイト「私、こんなに楽しいの初めてだからその」

 

炎真「??」

 

フェイト「ありがとう」

 

自分にこんなに幸せな時をくれた人にそしてこの人に出会えた事にフェイトに心から感謝した。

 

 

 

 

 

 




此処までです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

温泉旅行序章

ー並森中 屋上ー

 

平日の並中の屋上でリボーンとツナは守護者である獄寺・山本・了平を呼びなのはの事、魔法の事、ジュエルシードの事、ジュエルシードを狙う少女(フェイト)の事、そして炎真がその少女に協力している事を話した、話終わった後獄寺が口を開く。

 

「炎真の野郎、また十代目の敵になるとは・・・」

 

「それは違うぞ獄寺、今回はファミリーがどうとか、因縁がどうとかってモンじゃねぇ」

 

「うん、炎真が協力している女の子は何か凄く悲しそうな目をしていたんだ、多分炎真は善意で協力してると思うよ」

 

「紅葉の奴め、ボクシング部に来なかったのはそういうことか」

 

「薫も朝練に来なかったし、何かあったのかと思ったぜ」

 

「鈴木・アーデルハイトもSHITT・Pも大山らうじも加藤ジュリーもいなかったぞ、調べてみたらシモンファミリーの奴等合宿とか言って全員休学届けを出したようだ」

 

「学校がよく許可しましたね」

 

「アーデルハイトの人徳だろうな」

 

(確かにアーデルさんっておっかないからな・・・)

 

「粛清委員会」を設立する為に全委員会からの許可(雲雀は面白そうだから容認した)を力らずくで取ってきたアーデルは教師達から雲雀と同じように畏れられているのだ。因みにツナ達も炎真達(ジュリーは除く)も知らないが一部の男子教師達からはその冷たい性格と中学生離れしたダイナマイトバディに鼻の下を伸ばしている教師もいてアーデルの命令を聞いているのだ。

 

「んでツナはどうすんだ?また炎真達と戦う事になるぜ?」

 

「・・・」

 

「十代目・・・」

 

「沢田・・・」

 

「・・・俺はなのはちゃん達に協力する、炎真達がなのはちゃん達の敵側にまわるならなのはちゃんの手助けをしたいんだ。」

 

「あの娘と使い魔の犬だけならなのはとユーノにやらせておくが、炎真達が関わるとなると分が悪すぎるからな」

 

「十代目ならそう言うと思ってました、勿論俺も協力します!」

 

「ま、女の子だけに危ない事をやらせるわけにはいかないからな」

 

「うむ、先輩として極限に俺達が力になってやらねばな!」

 

守護者達も協力する気満々だった

 

「皆・・・」

 

「ツナ、他の守護者達にも協力を頼むか?」

 

「う~ん、ランボを危ない目に会わせたくないし、クロームもこの間黒曜ランドを追い出されて転校してきたばかりで戦いなんてさせたくないし」

 

「アホ牛がいると邪魔になります、クロームも今は笹川達と過ごして落ち着いてますが」

 

「流石に戦いができる程じゃないな」

 

「雲雀が興味を持つとも思えんしな」

 

「俺達だけでやるしかないか・・・」

 

「んじゃ、今度の温泉旅行で改めてなのはに協力するぞ」

 

「「「「うん(はい)(あぁ)(うむ)」」」」

 

リボーンの言葉で会議終了になったがツナはリボーンの言った言葉に首をかしげた。

 

「ん?リボーン、温泉旅行って?」

 

「今朝ママンが言ってただろう?今度の休みに高町家とアリサとすずかと一緒に温泉旅行に行くって、当然ツナと獄寺達や京子達も一緒だ」

 

「んなーーーー!?何それーーーーー!!」

 

「温泉すか、あの野郎(恭也)今度こそ決着を・・・」

 

「温泉旅行かぁ、楽しみだな~」

 

「ぬおおおおおおお!温泉で極限に体を暖めるぞ!!!」

 

「皆行く気満々だーーーー!!」

 

こうしてツナ達は海鳴温泉旅行に出掛けるのであった。

 

 

 

ーなのはsideー

 

海鳴デパートのペットコーナーでユーノの籠やら運動道具とかを買い終わったなのは達は談笑していた、途中ユーノがなのはに念話で会話をし

 

『ごめんねなのは、わざわざ買い物をしてくれて』

 

『気にしないでユーノ君、私ペットが欲しかったし』

 

『あぁ、そう、ペットね』

 

なのはに悪気はないがペット発言に少なからず凹むユーノ、そんなユーノの事はお構いなしにアリサが喋る。

 

「そういえば今度の旅行にツナさんとリボーンも来るのよね?」

 

「うん、ツナさんのお友達も来るんだよ」

 

「ねぇなのはちゃん、ツナさんのお友達ってどんな人達?」

 

「えーと、不良っぽい人と爽やかな人と大声で話す人がいたよ」

 

「何かちぐはぐな友人なのね」

 

「にゃはは・・・」

 

「ま、なのはにとっちゃツナさんが来るならその友達はオマケみたいなモンでしょうけど」

 

「それもそうだね」

 

ニヤニヤと笑う親友二人になのはは顔を赤くした。

 

「ち、違うよ!ツナさんが来るのが楽しみじゃなくてツナさんのお友達に会うのが楽しみなんだよ!」

 

「おーおー照れちゃってまぁ」

 

「なのはちゃんってツナさんみたいな人が好みナンだね」

 

「だからー!」

 

ニヤニヤと笑い続ける親友達になのはは説得力皆無な弁解をする。

 

『大丈夫だよなのは、なのはとツナさんの年齢差なんてたった4~5歳位でしょ?社会に出ればそんなの問題じゃないし、僕の世界でも君達位の歳の差夫婦なんて結構いたよ』

 

『え?そうなの?って違うよ!ユーノ君まで!違うんだってば!!』

 

ペット扱いされた意趣返しか慌てふためくなのはをホクホクとした顔で見つめる二人と一匹だった。しかしユーノもツナの友達の中に気になる人がいた。

 

(ツナさん達が来るならあの人も来るかな?・・・京子さん)

 

ユーノは人知れず物思いに耽るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーオマケ 浮雲のマイブームー

 

並森風紀委員長 雲雀恭弥は海鳴のとある一軒家に立ち寄った。

 

ピッ ピンポーン!

 

呼び鈴を鳴らして少し経つと扉が開き中から車椅子に乗ったボブカットの少女 八神はやてが出てきた。

 

「雲雀さん、いらっしゃい!」

 

はやては突然やって来た雲雀に嫌な顔一つせずむしろ大歓迎な態度で迎えた。先日ゴロツキから助けられたお礼に夕食を雲雀にご馳走し、気に入ったのか雲雀はよくはやての家に食事を取りに来ていたのだ。

 

「はやて、はやて♪」

 

「クピー♪」

 

「あはは♪ヒバードもロールもいらっしゃいな♪」

 

雲雀のペットと匣兵器であるヒバードと「雲針ネズミ」のロールもはやてになついており、はやての肩や手のひらに乗りながらじゃれていた。

 

「・・・・・・」

 

雲雀はなにも言わずはやての家に入ると居間のソファーに我が物顔で寝そべっていた。

 

「雲雀さん、今日は何が食べたいですか?」

 

「・・・別に何でもいいよ」

 

「もー、そういうのが一番困るんやで」

 

「ZZZ ZZZ」

 

「ありゃ寝てもうた。しゃぁないなぁ、雲雀さん和食が好きそうやから今日は煮魚にするかな?」

 

「ピー、ピー♪」

 

「クピー♪」

 

「うん、ロール達にもちゃんとご飯作っとくで♪」

 

はやては雲雀が来るのがいつも楽しみだった。大抵の人は自分の状態に同情の目やかわいそうな目を向けるが雲雀はそんな目で見ない、自分を甘やかさないだがこうしてたまにだがやって来てヒバードとロールと遊ばせてくれるそんなぶっきらぼうだが優しい態度にはやては何処か惹かれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今年は此処まで、次の投稿は来年になります。皆さん、来年も気が向いたらこんな駄文小説を読んでください。ではよいお年を!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

温泉旅行Ⅰ

皆様、新年明けましておめでとうございます!

今年もこのような駄文に目を向けて頂き誠にありがとうございます。本年も「かてきょーリリカルREBORN」をよろしくお願いいたします。


ー温泉宿ー

 

海鳴の郊外の山にある温泉に旅行にやって来た高町家となのはの友達のアリサ&すずかそして恭也の恋人ですずかの姉の「月村忍」も同行し、一同は温泉宿に入ると先に来ていたツナ達ボンゴレファミリー+αと合流したが。

 

「ぐぴゃぁぁぁ~~!」

 

「ちょっとそこのあんた!何こんな小さい子を泣かせてんのよ!」

 

「そうですよ獄寺さん!ランボちゃんを泣かすなんてハルが許しません!」

 

「うるせぇ!せっかく十代目の為に買ってきた菓子類をこのアホ牛が盗み食いしたからだろうが!しかも完食しやがって!」

 

「ご、獄寺君落ち着いて、ランボだって悪気は・・・多分なかったと思うし」

 

「まぁまぁ獄寺」

 

「極限に落ち着かんか!」

 

「ハルちゃんも落ち着いて」

 

「アリサちゃん、抑えて抑えて」

 

(うわ~、大変な事に)

 

「どうどうアリサちゃん」

 

「どうどうってわたしゃ馬か!」

 

「牛の子大丈夫?」

 

「ランボも悪い!」

 

「ランボが皆のお菓子を食べちゃうからだよ」

 

着いた早々早速ランボが悪さをして獄寺からお仕置きをされたのだが、それを見たアリサがハルと一緒に獄寺を糾弾し売り言葉に買い言葉で獄寺と口喧嘩をはじめツナ・山本・了平は獄寺を抑え、京子はハルを抑え、アリサはすずかとなのはが抑えていた(ユーノはなのはの肩に乗っていた)、泣きじゃくるランボはクローム・イーピン・フウ太が宥めていた。

 

「やれやれ、着いた早々に賑やかになったな」

 

「まぁそう言ってやるな、アリサとすずかも結構打ち解けてるぞ」

 

「いつもこんなに賑やかなの?」

 

「えぇ、大概賑やかね」

 

「うふふ、皆すっかり仲良しね」

 

リボーンと保護者一同は呆れや微笑ましさで見つめていた。

 

「ふ~ん、あの人が恭也の初恋の人の「奈々」さんね」

 

「し、忍!何故その事を!?」

 

「美由紀ちゃんに教えてもらったの♪」

 

「美由紀~!」

 

「あ、あはは、ごめ~んつい口が」

 

ツナに素っ気ない態度を取っていた恭也の理由は初恋の人の息子に対する複雑な感情の裏返しだった。

 

お互いに自己紹介が終わり(獄寺とアリサは火花を散らせてたが)一同は早速温泉に入ろうとしたがユーノはツナ達と男湯に行こうとし、女性陣と一悶着があったがユーノはツナに必死に頼み込みツナとリボーンが女性陣を説得し男湯に行けるようになった。士郎と恭也を獄寺達と先に男湯に行かせながら(獄寺は今度は恭也と火花を散らせ)ユーノと小声で会話をしていた。

 

「ありがとうございますツナさん、リボーンさん、あのまま女湯に入ってたら僕は何か大切なものを失ってました」

 

「良いよユーノ、あんなに必死な目をされたらね」

 

「俺は女湯に行かせた方が面白いと思ったがな」

 

「リボーンさん勘弁してください」

 

「まぁこれで京子の裸を見ずにすんだな」

 

「(ぴく!)き、京子ちゃんの裸///」

 

「(ぴく!)き、京子さんの裸///」

 

顔を赤くしてオタオタする二人をリボーンはニヤニヤと笑うリボーンであった。

 

だが次の瞬間後ろから声が。

 

「ツナ君?」

 

聞き覚えのある声に振り向くツナが見たのは。

 

「え、炎真!」

 

なんとそこには現在敵の位置にいる炎真がいた。しかも浴衣姿で。

 

「来てたのか?」

 

「うん」

 

「他のファミリーの人達は?」

 

「今は皆で卓球大会してる」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

お互いに無言だが相手の目をしっかりと見つめるツナと炎真

 

(リ、リボーンさん)

 

(黙ってろユーノ、此処で騒ぎを起こすほど炎真はバカじゃないツナに任せておけ)

 

小声で話すリボーンとユーノ、そして炎真が口を開いた。

 

「あのさツナ君」

 

「何?炎真」

 

「僕はフェイトちゃんの力になりたい、フェイトちゃんはお母さんの為にジュエルシードを集めているんだ、僕はその手助けをしたいんだ。」

 

(そんな!ジュエルシードは危険なンギャ!)

 

(黙ってろ)

 

思わず声を出しそうになったユーノを押さえるリボーン、ツナも炎真に話す。

 

「俺もなのはちゃんの手助けをしたい、なのはちゃんは一人でもジュエルシードを集めようとしているんだ。炎真、君がフェイトっての力になりたいように俺もなのはちゃんの力になってあげたいんだ」

 

「うんでもこの前みたいに僕達が戦うとまた「奴等」が」

 

(確かにな前にコイツら戦っているとき「アイツら」が出てくる黒い渦が出ていた、あの時は戦いがすぐに終わったから「アイツら」もすぐに消えたが・・・)

 

リボーンも「奴等」の恐ろしさを知っているが故にまた以前のような事が起きないか警戒していた。

 

「だったらお前らが戦わないようにすりゃ良いじゃねえか?」

 

「リボーン?」

 

「確かにお前らが戦うと「アイツら」がしゃしゃり出てくる可能性が高い、只でさえジュエルシード集めは大変なのに「アイツら」まで関わってくると余計ややこしい事になるそこでだ。ツナ、炎真、お前らシモンファミリーとツナ達ボンゴレファミリーはなのはとフェイトって奴の手に負えなくなった事態にだけ手助けするようにしたらどうだ?」

 

「「え?」」

 

「ツナ、お前は炎真達がなのはを傷付けるのが心配だからなのはの手助けをするんだろう?」

 

「あ、あぁ」

 

「炎真、お前はフェイトが心配だから手助けするんだろう?」

 

「う、うん」

 

「だがお前らが戦うのは本意じゃない、ならお前らが手助けするのはあの二人の手に負えなくなる事態になった時だ。もしなのはとフェイトが戦う事になってもお前らは手助けなしだ」

 

「で、でもリボーン・・・」

 

「ツナ、なのはの言った言葉を思い出せ。」

 

「あ」

 

はじめてフェイト達と出会った日の帰り道でなのはの言葉を思い出すツナ。

 

『私、あの子とちゃんと話がしたいんです。』

 

その言葉を思い出したツナは何かを決めた顔になり炎真に向けて話す。

 

「炎真、俺もなのはちゃん達が戦ったら手出ししないようにしようと思う」

 

「ツナ君」

 

「なのはちゃんはフェイトって子とちゃんと話がしたいんだ。拳でも魔法でも何でもいい、お互いに本気でぶつからないと解り合えないんだ、俺達がそうだったように」

 

「!」

 

その言葉に炎真もハッとなった、自分達も誤解やすれ違いや「ある男」の陰謀でお互い敵同士になったが本気でぶつかり合って和解する事ができた。なら彼女達もと思い炎真は。

 

「できるかな?フェイトちゃんって不器用な所があるから」

 

「なのはちゃんも結構不器用だよ」

 

「なら大丈夫だな、アイツらはお前らよりしっかりしてるしな」

 

ハハッと少し笑いあった二人。

 

「炎真、君が此処にいるって事は」

 

「うん、ジュエルシードもこの近くにあるよ。今は皆で少しの間の旅行を楽しんでるところ」

 

「分かった、俺達も少ししたら捜索するよ」

 

「じゃ僕達はもう少し旅行を楽しむよ」

 

「うん、それじゃ」

 

「またね」

 

そしてお互いに背を向けて歩き出す二人だった。

 

「リボーン、これで良かったんだよな」

 

「さあな」

 

「さあなって」

 

「取り敢えず、炎真となのはが戦う事が回避されたことを喜んどけ、ユーノも納得しただろう?」

 

「はい、僕もあの人が強いと言う事は前に理解しましたから」(僕達の魔法を覆すほどの人達がいる世界、「管理局」はこの世界の事を知らないのか?)

 

風呂場に到着したツナ達、だがそこでは。

 

「ぐひゃはははは!ランボさんのシャンプー攻撃だもんね!」

 

「ランボ!やめてよ!」

 

「このアホ牛が!!」

 

「うわスゲェ!温泉が泡風呂になった!」

 

「これでは泳げんではないか!」

 

「イヤ、泳ぐなよ!どうするんだこれ!」

 

「皆!すぐに泡を掬い上げるんだ!」

 

カオスになっていた。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

「ツナ、逝ってこい」

 

「字が違うだろソレ!」

 

「ツナさん、グッドラックです」

 

「ウソ~ん」

 

温泉でリフレッシュするはずが逆に疲れてしまったツナであった。

 

 

 

 

 

ーオマケ シモンの卓球ー

 

「ただいま」

 

卓球場に戻った炎真はそこで見たものは

 

「結局お前のせいで負けたではないかジュリー!!」

 

「なにいってやがる、お前がアーデルの揺れる胸やフェイトちゃんのスリットに鼻血を出したからだろうがよ」

 

「二人とも喧嘩はだめだよ~」

 

「たくっコイツらはよ」

 

「次は私しとっぴちゃんとアルフのペアとアーデルとフェイトちゃんのペアで決勝♪勝ち上がったアルフを抱きしめスリスリ♪」

 

「ぎゃあ!やめろよしとっぴちゃん!」

 

「フェイトちゃん、今のスマッシュ悪くなかったわよ」

 

「あ、ありがとう、アーデルさん」

 

かなり楽しんでいた。さっきまでツナ達と結構シリアルしていた炎真も思わず笑ってしまった。

 

「あ、炎真!」

 

自分に気付き近づいてくる少女の笑顔を見ながら炎真は思う。

 

(必ず守るよフェイトちゃん、以前フェイトちゃん達が言っていた「管理局」が相手だろうと守って見せる「真美」の時見たいにはさせない!)

 

人知れず炎真は決意の炎を強くするのだった

 

 

 




今回此処まで。次回までの構想はできてるのだか文章に纏められるか不安です!文才please!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

温泉旅行Ⅱ

卓球勝負が終わり(優勝したのはフェイト&アーデル)、部屋に戻ったフェイト達、今彼等は男部屋で炎真からツナ達との協定を話した。

 

「つまり私達とボンゴレはフェイトちゃん達の手助けはある程度にし、フェイトちゃん達の手に負えない状況になった時は介入するということね」

 

アーデルが協定を簡潔に求める

 

「うん、ゴメン皆勝手なことして」

 

「良いんじゃねぇの?ボスは炎真なんだから、炎真がやりたいようにやれば」

 

「結局ボンゴレと俺達が戦うと厄介なことになるしな」

 

紅葉の言葉にシモンは頷き、フェイトとアルフは首を傾げた。

 

「炎真、炎真達とそのボンゴレって人達が戦うとどうなるの?」

 

フェイトの疑問にアーデルが答える

 

「フェイトちゃん、貴方達は知らないだろうけど私達シモンとボンゴレが戦うことはシモンとボンゴレの創始者達から禁止されてるのよ」

 

「何でさ?その創始者達の決まりを破ると何かあんの?」

 

「この決まりを破ると『復讐者<ヴィンディチェ>』が現れるの」

 

「「『復讐者』?」」

 

「『復讐者』は裏社会の法の番人、彼等の法を犯す者は彼等に捕まり極寒の監獄に連れていかれるのよ、しかも彼等は恐らく私達や炎真やボンゴレより強い」

 

「「!?」」

 

フェイトとアルフは驚いた、以前ツナと炎真が戦ったとき自分たちよりも圧倒的に格上の強者だと言う事を理解したがその二人より実力が上の人間がいることに。

 

「ゴメンねフェイトちゃん、手助けするって言っておいて・・・。」

 

「き、気にしないで炎真、私達も炎真を炎真のお友達と戦わせたくなかったし」

 

「それに裏を返せばフェイトちゃんがボンゴレと戦うことにならないようにしたんだから寧ろこっちの方が良かったわ」

 

アーデルの一言にフェイトとアルフは炎真と戦ってたツナの姿を思い浮かべ、ツナと戦うことにゾッとした。

 

話を変えようとアルフが口を開く。

 

「まぁ、向こうのツナって奴が出ないならこっちはあの弱っちそうな白いガキとイタチの使い魔が相手だし余裕余裕♪フェイトの相手じゃないって」

 

アルフの言葉にフェイトは頷く、アーデルは炎真に耳打ちする

 

(炎真、本当に良いの?ボンゴレとフェイトちゃんが戦うのは避けられたけどまだ「管理局」という組織が・・・。)

 

(大丈夫、その時は僕が戦うよ)

 

普段の頼りない炎真とは思えない決意に満ちた目にアーデルはいつの間にか逞しくなった弟か息子に複雑な感情の母親か姉の心境で見てた。

 

フェイトはジュエルシード集めをしようと考えたが、突然ジュリーが。

 

「よ~し、今度はトランプ対決だ~!」

 

「え?ジュリーさん!?」

 

「良いだろう!今度は結局僕が勝利して見せる!」

 

「こ、紅葉さん!?」

 

「たくっ、しゃあねえな」

 

「薫さんまで!?」

 

「フェイトちゃん、トランプ知ってるかい?」

 

「ら、らうじさん!?」

 

困惑するフェイトを背後から抱きしめるしとっぴちゃん。

 

「知らないならしとっぴちゃんがフェイトちゃんを抱っこしながら教えちゃう♪」

 

「しとっぴちゃん!?」

 

「ん~♪、アルフも抱き心地良かったけどフェイトちゃんもスベスベ気持ちいい♪」

 

「や、やめてしとっぴちゃん////」

 

アルフに助けを求めようとしたが。

 

「お、何そのトランプっての?炎真教えて」

 

「う、うんトランプってね・・・」

 

「アルフ!?炎真~!」

 

「皆何やってるの!ジュエルシードの捜索をしなくちゃダメでしょ!」

 

「ア、アーデルさん・・・」

 

ただ一人真面目なアーデルに感動するフェイトだが

 

「トランプ勝負はババ抜きと真剣衰弱を一回ずつ、終わったら捜索開始よ」

 

「アーデルさんまで~~!!」

 

結局今度は皆でトランプ対決が始まり、ババ抜きでは優勝はアーデルが真剣衰弱ではフェイトが以外な記憶力で勝利した。

 

 

ーボンゴレsideー

 

男湯の騒動が終わり、女湯から出た女性陣と合流し、宴会場で宴会を始めるツナ達、そしてリボーンはツナとユーノとランボとクロームを除く守護者達を連れてトイレに行くと言って別の部屋に行った。

 

「リボーン、どうしたんだよいきなり?」

 

「一つはっきりさせておきたい事があってな。」

 

シリアスモードのリボーンはユーノに質問する。

 

「ユーノ一つ聞きたい、お前は『時空管理局』の者か?」

 

時空管理局?と首を傾げるツナ達と対処的にユーノは驚いていた。

 

「リボーンさん、なぜ管理局の事を」

 

「質問を質問で返すな。今は俺の質問に答えろ、お前は管理局の回し者か?」

 

有無を言わせない迫力にツナ達は息をのみ、ユーノは答えた。

 

「いいえ、僕は管理局の者ではありません、ジュエルシードの事は僕の不注意で起こったことで管理局はまだ関与していません」

 

「そうか」

 

「リボーンさん、『時空管理局』とは何ですか?」

 

たまらず獄寺が聞きツナも続く

 

「うん、何かリボーンと関係ありそうだけど」

 

「俺というよりも俺達『アルコバレーノ』やお前ら『ボンゴレファミリー』とも関係ある組織だ」

 

「「え?」」 「ん?」 「ぬ?」

 

リボーンの言葉にツナ達は驚く。

 

「まず『時空管理局』というのは『異世界』にある『次元世界』の治安を守る警察組織みたいなものだ」

 

「『次元世界』とは、以前俺達が聞いた『並行世界<パラレルワールド>』と別物の世界ですか?」

 

こうゆう話が得意な理数系の獄寺だが、他三名はちんぷんかんぷんだった。

 

「あぁ、『次元世界』ってのはよくツナがやるRPG系のゲームによくある『異世界』を意味し、『パラレルワールド』は『もしも』という可能性で生まれた『枝分かれした世界』だ」

 

「えーと、よく分からないんだけど」

 

「俺も」

 

「極限に」

 

3馬鹿にユーノが分かりやすく説明する

 

「つ、つまり『パラレルワールド』が『枝』とするとその『枝』を形成する『細胞』が『ツナさん達の世界』と『管理局のある世界』ってことです。」

 

「う~ん、分かったような分からないような・・・でその『管理局』とボンゴレとアルコバレーノの

関係って?」

 

「・・・・・・『管理局』がボンゴレと関わりを持ったのは八代目や九代目の代だ」

 

「そんな昔から?管理局はどうしてボンゴレと?」

 

リボーンの言葉に耳を傾けるツナ達。

 

リボーンは意を決して話す。

 

「『管理局』は『ボンゴレリング』を自分達が管理すると言ってボンゴレと戦争が起こした」

 

「えぇ!!」

 

「「「「!!??」」」」

 

驚くツナ達を尻目にリボーンは続ける。

 

「『管理局』のもう一つの役割に『ロストロギア』と呼ばれる異世界の危険な技術や古代の超技術の結晶を『保管』、『管理』するという役目がある、この世界の要と言って良い『トリニセッテ』の一角である『ボンゴレリング』と『マーレリング』そして『アルコバレーノのおしゃぶり』を自分達が管理すると言って来たんだ。」

 

リボーンの言葉を遮るようにユーノが口を挟む。

 

「待ってください!管理局がロストロギアを回収するのは自分達が管理している世界からです!管理外世界であるこの世界のロストロギアに手を出したのですか!?」

 

「警察組織である奴等にとって裏社会の人間がロストロギアを所有するのは危険だと判断したからだろう」

 

「裏社会の人間?」

 

「ユーノ、この事はなのはにはまだ黙っておけよ。」

 

「え?」

 

「リボーンさん!」

 

リボーンが言おうととした言葉を獄寺は遮ろうとするが。

 

「大丈夫だよ獄寺君、ユーノ君は信頼できると思うから」

 

「十代目・・・。」

 

「ま、ツナが良いってんなら良いんじゃね?」

 

「おぉ、俺もユーノの事を信じるぞ!」

 

「~~!わかりました、おいユーノ!十代目の信頼を裏切るなよ!」

 

「え?あ、はい」

 

よく分からないがユーノ自信ツナ達が一体何者なのか知りたかった、自分達の魔法を覆すほどの力を持ち、魔法ではない炎を操る彼等の存在にユーノは疑問を持っていたのだ。

 

「良いかユーノ、俺達は『マフィア』だ」

 

リボーンは静かに告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は此処まで。

今さらですが、『お気に入り』登録50件越えしてた!!!!!!!

こんな駄文をお気に入りしてくれて感謝感激です!皆様ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

温泉旅行Ⅲ

少しスランプ状態なのでかなり雑になっています、すみません。


 

リボーン達との話の後、皆の所に戻ったツナ達だがユーノの心にはリボーンの言った言葉が頭に残っていた。

 

『俺達はマフィアだ』

 

(『マフィア』、以前美由紀さんが借りてきたスパイ映画に出てきた犯罪組織、僕達の世界でいうと『次元犯罪者』の組織、ツナさんのご先祖様がその組織の元となった『自警団』の創設者でツナさんは十代目ボス、だが当のツナさんは継ぎたくないと言っているか・・・。)

 

ふとユーノはワイワイ騒いでいる皆に振り回されるツナの方に目を向けると。

 

(うん、どう考えてもツナさんは『犯罪者』ってタイプじゃないな、どちらかと言うと『犯罪に巻き込まれるタイプ』だ)

 

短い間だがツナが犯罪を犯す人間じゃないと思ったユーノはマフィアだと言う事を気にしないようにした。そんなユーノの姿を怪訝に思ったのかなのはが念話をする。

 

(ユーノ君どうかしたの?)

 

(何でもないよなのは、それよりも今日皆が寝静まったらジュエルシードを探しにいこう、近くにある感じがするんだ)

 

(うん、分かったの)

 

 

そして夜、皆が寝静まりなのは・ユーノ・ツナ・リボーン・獄寺・山本・了平はジュエルシードのありそうな地点へ向かっていった。

 

なのはとユーノの後ろを歩きながらツナ達は小声で話す。

 

(リボーン、『管理局』って組織が関わってくると思う?)

 

(十中八九関わって来るだろう、ジュエルシードがロストロギアである以上『管理局』が黙っているとは思えねぇしな)

 

(しかし、『管理局』という組織は何故ボンゴレに戦いを挑んだのだ)

 

(話聞いてなかったのか芝生!『ボンゴレリング』を自分達が管理すると『管理局』が言ってきたからだろうが!)

 

(でもよ、わざわざ戦いなんかしなくても良かったんじゃねえか?)

 

(それには訳があったんだぞ)

 

((((訳?))))

 

(当時『時空管理局』は創設されてまだ若い組織でな、そういう組織の若い連中が「強硬派」になってロストロギアを節操なく管理しようとしたんだぞ。当然後から「穏健派」が間に入りボンゴレやトゥリニセッテを守護する者達と「不可侵条約」を結び今に至ったんだ)

 

((((へ~~))))

 

そんな会話をしてる内にユーノが声を掛けてきた。

 

「皆さん、誰かの話声が聞こえます。」

 

『!?』

 

ユーノの言葉になのはは緊張しツナ達は警戒態勢を取ったが。

 

「結局こんな夜遅くに外出することになったではないか!!」

 

「何言ってんだ、てめえとジュリーが何度もトランプ勝負を吹っ掛けるから遅くなったんだろうが」ピキピキ

 

「全くだよ、ババ抜きや神経衰弱で負けて悔しいって言って何度もやって結局負けて、今度は七並べや大貧民までやろうって言い出したのは紅葉の方だろう?」

 

「そういうアルフもかなり楽しんでた♪そして紅葉は負けまくり♪」

 

「まぁまぁ皆、ジュエルシードも回収したし早く帰ろうよ、留守番させてるアーデルとらうじとジュリーも待ちくたびれてると思うし」

 

「(汗)」オロオロ

 

聞いたことある声と見たことあるメガネとリーゼントと奇抜ファッションと赤毛にツナ達は緊張がおもいっきり抜け、なのはとユーノは言い争ってる連中の中にいる犬耳と宥めようとオロオロしている金髪に目が行った。

 

そして遠慮がちにツナが声をかけた。

 

「何やってるの?炎真」

 

「「「「「「!!??」」」」」」

 

ツナの声に炎真達は一斉に振り向く。

 

「ツ、ツナ君!?」

 

「さっきぶり炎真・・・」

 

「結局!了平ではないか!?」

 

「極限に紅葉ではないか!?」

 

「わ~お、獄寺君♪」

 

「げ!しとっぴちゃん」

 

「武・・・」

 

「よ!薫元気そうだな!」

 

ボンゴレとシモンは久しぶりの再会に挨拶を交わしたが、なのは&ユーノとフェイト&アルフはお互い緊張状態になった。

 

なのはが口を開く。

 

「はじめまして私はなのは、高町なのはだよ。あなたの名前は?」

 

以外な言葉に少し肩透かしを受けたフェイトは口を開く。

 

「フェイト、フェイト・テスタロッサ」

 

「君たちは何故ジュエルシードを集めているんだ、それが危険な物だと言うことがわからないのか!?」

 

ユーノが口を開くが。

 

「私にはこれが必要」

 

「どうして必要なの?言ってくれたら力になれると思うよ」

 

なのはは言葉を交わそうとするが。

 

「言う必要はない」

 

「どうして、私達は言葉を交わす事ができるんだよ!伝えたいことは言葉にしなきゃ伝わらないよ!」

 

「伝えた所で解り合えない!お互いに狙っている物があるならやることは一つ!」

 

フェイトはBJ<バリアジャケット>を纏いバルディッシュをなのはに向ける。

 

「賭けて、貴方の持っているジュエルシードと私の持っているジュエルシードを」

 

「・・・」

 

なのはは少し戸惑いふとツナを見上げる。

 

「(コク)」

 

ツナが頷くとなのはは決意してBJを纏いレイジングハートを構える。

 

二人はツナ達と炎真達を巻き込まないように上空へ飛ぶ。二人が飛んだのを見てリボーンはユーノに言う。

 

「ユーノ、今回お前は結界を張る役だ。あの二人がこっち(地上)を気にせず勝負に集中できるようにな」

 

「は、はい」

 

「おいそこの犬」

 

「誰が犬だ!あたしは狼だ!」

 

「いいからお前も結界を張れ」

 

「はぁ!なんであたしがあんたみたいな赤ん坊の言うことを」

 

(ギロっ!)

 

「(ビク!)そ、そんな目で睨んでも全然怖くないんだからな!ああんまり舐めた態度取るとがぶっとお仕置きしてやるぞ!」

 

「アルフ、そういうセリフは俺の背中に隠れてないで正面から言え」

 

リボーンに睨まれてすぐ薫の背中に隠れて強気なセリフを言うアルフ

 

「ア、アルフとりあえずフェイトちゃんが気兼ねなく戦えるように結界は張っておこう」

 

「まぁ、炎真に言われたらしょうがないな!仕方ない今回は結界役をやってやるよ!」

 

((((うわ~、めんどくさい性格))))

 

ほぼ全員から思われてると気付かないままアルフも結界を張る。

 

ーツナsideー

 

なのはとフェイトの勝負をツナ達は地上から観戦する。

 

「やっぱなのはの動きがぎこちないな」

 

「完全に相手のスピードに翻弄されてやがる」

 

「あれではサンドバッグも同然だ」

 

「少し前まで戦いなんか知らない普通の小学生だったからな、相手の方がはなのはより一日の長があるな」

 

「なのはちゃん・・・」

 

「情けねえ顔をするなツナ、なのはも馬鹿じゃない相手の方が自分より強いのは十分わかっている。だが本気でぶつからなければ自分の思いを伝えられない事を理解しているからこそ敢えて挑んだんだ。」

 

「うん、それは分かっているけど・・・。」

 

それでもツナはなのはに無理はしてほしくないと思うのだった。

 

 

ーなのはsideー

 

お互いのデバイスでつばぜり合いをしながらなのははフェイトに言う。

 

「私達は解り会うことができるはずだよ!」

 

「私と貴方は違う!解り会うことなんてできない!」

 

「そんなことないよ!ツナさんや貴方と一緒にいる炎真さんだってすれ違ったり、誤解したりしたけど友達になることができたんだよ!」

 

「!!炎真も?」

 

「そうだよ!だから・・・」

 

「それでも!それでも私はやらなくちゃいけないんだ!!」

 

一気に力をいれなのはを押し飛ばしたフェイトは杖の切っ先に魔力を込めた。

 

「バルディッシュ!!」

 

「イエスサー」

 

杖に貯めた魔力を一気に放出する。

 

「『サンダースマッシャー』!!!!」

 

ドカァァァァァァァアン!!

 

黄色の閃光がなのはに直撃する

 

ーツナsideー

 

「なのは!!!!」

 

超モードになったツナはすぐになのはの元に飛び落下途中だったなのはを抱き抱え了平の元に行く。

 

「了平!」

 

「極限任せろ!我流!」

 

『晴れのボンゴレギア』・『晴れのバンクルverX』に宿る匣兵器『晴れカンガルー』こと『漢我流』を呼び出し晴れの死ぬ気の炎をなのはに浴びせる。

 

『晴れの死ぬ気の炎』の特性は『活性』、戦闘に使えば筋肉を活性化させて戦闘力を上げることができるが怪我をした箇所に浴びせれば細胞を活性化させて傷を癒すことができるのだ。だがあまり大きな傷を癒そうとすると細胞を無理に活性させるため寿命を縮める危険性もある。

 

「了平、なのはは?」

 

「極限に大丈夫だ。子供は回復が早いからな、この程度の傷ならすぐによくなる」

 

ホッとするツナ達だがその近くにフェイトが降りてくる。

 

『!?』

 

一瞬警戒するツナ達だがフェイトの手にはジュエルシードが。

 

「あの一瞬、止めを指そうとした私から主を守るため自らジュエルシードを差し出すとは、主人思いのデバイスだね」

 

「おいフェイトっての」

 

リボーンが前に出る

 

「ジュエルシードは手に入ったんだ、これ以上は戦う理由はねぇだろ?」

 

リボーンの言葉にフェイトは一瞬沈黙し、チラッと炎真の方を見る

 

「(コク)」

 

炎真は頷くのを確認したフェイトはツナ達に言う。

 

「その子が起きたら伝えておいて、もうこれ以上関わらないでと」

 

そう言うとフェイトはツナ達に背を向けて炎真達の方へ歩いていく。

 

そのままフェイト達は夜の闇へ消えていった。

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

一同は沈黙していた。

 

 

それからすぐなのはは目を覚まし、自分が負けたことジュエルシードが奪われたことを聞き、まるでお通夜のような雰囲気で旅館に戻る一同。

 

ふいになのはが肩に乗るユーノに言う。

 

「ごめんねユーノ君、ジュエルシード取られちゃった」

 

「なのは」

 

「気にすることないぜ、なのは」

 

山本が口を開く。

 

「てめえ何言ってやがる!」

 

「だってよ、ジュエルシードはあの子が持ってったのだけじゃねえだろ?」

 

『!?』

 

山本の言葉にリボーン以外の全員がアッ!と言う顔になる。

 

「一点取られたんなら取り返せば良いだけだ」

 

「おお!そうだな!ポイントは取られてもそのあとKOしてしまえば逆転勝利だ!」

 

「野球でもボクシングでもねぇんだよ!この体育会系バカコンビ!」

 

ギャーギャー言い合う三人を尻目にリボーンはなのはに言う。

 

「良いかなのは、山本の言うとおりこれからだ、今回の負けに捕らわれずに次はどうするかを考えろ」

 

「次はどうするか・・・」

 

「ユーノ、他のジュエルシードは?」

 

「まだなんとも」

 

「なのはちゃん、まだまだこれからだよ。今はまだフェイトって子に勝てないだろうけど、次は今より強くなってあの子にぶつかっていけば良いよ」

 

「ツナさん・・・はい!私頑張ります!」

 

ようやく笑顔を見せたなのはにツナとリボーンとユーノは満足と安心しまだ言い合いを続けている三人を宥め旅館への帰路に着くのであった。

 

 

ツナ達は知らない、今夜最強の守護者とその守護者が興味を抱いた少女の前に少女を護る『騎士達』が現れたことを・・・。

 

山本は知らない、『騎士達』の中に後に自分の『剣友以上恋人未満』の『将』がいることに・・・。

 

雷の守護者ランボは知らない、後に獄寺と同じ自身の『天敵』になる『騎士』がいることに・・・。

 

ツナ達は知らない、後に『少女』と『騎士達』に出会うことをそして、『騎士達』と『ボンゴレ』の因縁を・・・・・・・・・・・・・・・今はまだ誰も知らない・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前書きでも書きましたが、只今少しスランプ状態です。

息抜きに『最強の守護者』と『騎士達』との出会いを書いた番外編書こうと思います。


以外なカップリングが見られるかも(ボソッ)


ではでは皆様、気が向いたら読んでください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

浮雲と夜天の騎士

少し早い気もしますが、スランプの気晴らしに。




その日、並盛中学風紀委員副会長 草壁哲矢は委員長である雲雀恭弥を迎えに海鳴市へと車を走らせていた。

 

 

普通は中学生が車の運転などできるはずがないのだが、以前シモンファミリーとの戦いに赴く雲雀をヘリコプターを運転して送り届けた草壁にとって、車の運転など造作もない事なのだ、草壁曰く。

 

「並盛風紀委員として車やバイク、ヘリに船の運転などできて当然」

 

 

とのことで並盛風紀委員は特例として車の運転を認められているのだ。そして彼は尊敬する委員長が最近夕食を御馳走になっている少女の家に着き、インターフォンを鳴らす。

 

ピッ! ピンポーン! ガチャッ

 

家の中から車椅子に乗ったボブカットヘアーの少女 八神はやてが出てくる。

 

 

「あっ草壁さん、こんばんは」

 

 

「こんばんははやて嬢ちゃん、委員長はいるかい?」

 

 

普段は強面の副委員長は、委員長が世話になっている少女に紳士的な態度で接している。

 

 

「うん、今起きたところや、待っといて」

 

 

はやては雲雀の様子を見に家の中に入り、草壁は玄関で雲雀を待ちながらはやてとの出会いを思い出していた。

 

 

はやてと草壁の関係は雲雀を通して始まった、最近雲雀が並盛だけではなく隣町の海鳴に足を運んでいる事を知った草壁は思いきって雲雀に聞いてみた、すると雲雀は草壁に車を出させこの少女の家に来た。

最初は委員長に年下の女が!?と思ったが、この八神はやてという少女、話を聞いてみるとお涙頂戴な人生を歩んでいた。

交通事故で両親と他界し、両の足が自由に動かず車椅子生活を強いられているというのだ。普通の女の子なら自らの人生に悲嘆し、絶望し、精神が狂っても可笑しくないのに、はやては周りの人達に心配を掛けないように明るく健気に生きているのだ。

そんなはやてに草壁は感動し、好感を持ち、雲雀の好物はハンバーグであることや、雲雀はヒバードやロールのような小動物に優しいということ等、雲雀が寝てる間に色んな話をしている内にいつの間にか自分もはやての家に来るようになっていたのだ。時にははやてが通院する病院に同行したり。

 

「(あの嬢ちゃんは人を引き寄せる才能があるな将来大物になりそうだ)」

 

「・・・・・・」

 

等と考えている内に、風紀委員長の雲雀が無言のままやって来た。

 

 

「委員長お疲れ様です」

 

「ご苦労・・・」

 

「もう雲雀さんあかんよ、お迎えに来てくれた人にはちゃんと労ってあげな~」

 

プウとした顔で雲雀に注意するはやて

 

「・・・・・・」

 

 

雲雀は無言のまま車に向かう。

 

「もう!雲雀さんたら!」

 

「嬢ちゃん気にしなくて良いぜ。それよりも今日は少し冷えるから、早めに寝床に着くんだぜ。じゃあな」

 

「うん、草壁さんありがとう。雲雀さんまたな~!」

 

「・・・・・・」

 

雲雀は無言のまま車に乗り、草壁も車に乗り走らせた。

 

 

***

 

 

八神家から少し離れて、雲雀がなにかを探す仕草をする

 

「・・・・・・・・・」

 

「委員長どうしました?」

 

「腕章・・・」

 

 

雲雀の学ランに着いている、『風紀委員長の腕章』がなくなっていた。

 

「あぁ多分はやて嬢ちゃん家で落としたんでしょう」

 

「草壁、戻れ」

 

「えぇっ!? し、しかし、はやて嬢ちゃんももう寝ていると思いますが・・・」

 

「あの子はすぐに寝ないよ、今頃は寝る前に図書館から借りてきた本を読んでいるところだろう」

 

なるほどと呟き、草壁は車をUターンさせて、はやての家に向かった。

はやての家に付くと雲雀は異変に気付く。なんとはやての部屋から目映い光が出てきた。

 

「恭さん!あそこは確か嬢ちゃんの・・・」

 

草壁が言い終わるより先に雲雀はすぐに家のドアを開けようとするが何かの『壁』みたいな物に弾かれた。

 

「!?」

 

「なんだこれは?壁か?」

 

「草壁、どけ」

 

ボウ!

 

雲雀はトンファーに紫色の炎をした『雲』の死ぬ気の炎を纏わせ『壁』に叩きつけた。

バリンとまるでガラスが割れたような音がしたのと同時に、ドアを吹き飛ばし、はやての部屋へ駆ける、はやての部屋からはやて以外の声が聞こえた。

 

『どうしたシャマル!?』

 

『分からないわ!突然私の結界が外から破られたの!』

 

『んだよそれ!どうゆうことだ!?』

 

『主を護れ!』

 

雲雀ははやての部屋のドアをぶち破った、其処に居たのは、見たことのない二人の女性と男性と少女がいた。四人は体のラインがはっきりわかるインナースーツを着ていた。

 

一人の女性は桃色の髪をポニーテールにし、アーデルハイト級のナイスバディと豊満な胸をし、目元は凛々しく武人のような気迫があった。

 

もう一人の女性は金色の髪を肩口まで伸ばし、穏やかな雰囲気を漂わせスタイルはもう一人の女性に負けていないが、もう一人の女性より豊満な胸をしていた。

 

少女の方は勝ち気そうな目付きをし、赤毛の髪を両サイドに三つ編みさせたはやてと同い年の少女だった。

 

男性の方は白髪の短髪を逆立たせ浅黒い肌をし、鍛えられているが無駄な筋肉のない引き締まった体格をしていた。

 

四人は突然やって来た少年に驚くが、この少年が侵入者だと理解すると警戒態勢を取る。

雲雀は四人の向かい側でベッドの上で気を失って、目を回しているはやてを見ると、鋭い目付きを更に鋭くさせて、臨戦態勢を取りながら四人に向けてトンファーを構えて口を開く。

 

「ねぇ君達、何群れてるの?それとその子に・・・何をした?」

 

「「「「!!!???」」」」

 

雲雀の殺気に当てられ四人は同時に臨戦態勢を取る。

 

「恭さん!」

 

「草壁、あの子は任せるよ」

 

そう言ってすぐ雲雀は、あの四人の中で一番強そうな者にトンファーを叩きつけた。桃色の髪をした女性だ。

 

「っ!? レヴァンティン!」

 

ガキン!と雲雀のトンファーと女性の手にいつの間にか現れた剣がぶつかる!

 

「「「シグナム!」」」

 

「ワオ!面白い手品だね・・・!?」

 

 

キュォォォ・・・・!

 

突然、雲雀の手首に装備されている『雲のブレスレットverX』が何かに共鳴した。思わず雲雀は間合いを開けたが、四人にも異変が起きた。

 

 

キーン

 

 

「「「「!?」」」」

 

雲雀と相対している四人の頭に、突然鋭い痛みが走り何かの記憶が頭に浮かんだ。

 

 

『君・・の・・・けは・・・・。・・・・、彼女・・・事・・・よ』

 

 

(何だ?今のは?)

 

(今のは記憶か?)

 

(何だよこれ?胸が切ない・・・)

 

(何かを、私達は何かを忘れてる?)

 

 

四人が混乱している側で、雲雀も怪訝そうに自身のボンゴレギアを見つめる。

 

「(今ボンゴレギアが何かに共鳴した?彼女達か?ま、僕にはどうでも良いことだけど)」

 

「恭さん!嬢ちゃんはどうしましょ!?」

 

四人が放心している間に、はやてを抱き抱えた草壁が雲雀に聞く。

 

「草壁、その子を病院に」

 

「はい!」

 

「!? 待て!貴様ら、主をどうするつもりだ!」

 

正気に戻った四人は、はやてを取り戻そうと草壁に迫るが雲雀が立ち塞がる。

 

「通さないよ、君達は今から僕の肉のサンドバッグだ」

 

「「「邪魔をするな!」」」

 

トンファーを構えた雲雀に、桃色の髪の女性は剣を、赤毛の少女はハンマーを、白髪の男性は拳で攻撃するが、雲雀は三人の攻撃を迎撃する。

 

「(恭さん、ご武運を・・・)」

 

「待ってください!」

 

「!?」

 

戦闘型ではなさそうな金髪の女性が草壁に近づく。

 

「主様をはな・・して・・・え?」

 

「え?・・・・・・」

 

その時二人はお互いを見つめると二人の間の時間が停止した。

 

そして二人の間に『雷のアルコバレーナ ヴェルデ』の幻影が現れ。

 

「『エレットリコ・サンダー』!」

 

ドカァァァァァァァアン!

 

二人の間に落雷が落ちてきた、そしてヴェルデの幻影を蹴飛ばして今度はリボーンの幻影が現れて。

 

「カオス・ショット」

 

ズキューン!×2♥

 

二人の心臓に弾丸が打ち込まれた。

 

「え!えっとあの!?//////」

 

「その・・・えっと・・・あの//////」

 

並盛風紀委員 副会長 草壁哲矢と『闇の書』の守護騎士『湖の騎士』シャマルはお互いに『強烈な一目惚れ』してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出会ってしまいましたか、ボンゴレと『闇の書』が・・・・・・今はまだ「その時」ではない・・・・・だが「その時」が来たときは必ず目覚めましょう・・・忌々しい守護騎士共・・・・・・お前達に安らぎなど・・・・・・安寧など・・・・・・お前達に与えられるのは・・・・・・永久の地獄のみ・・・必ず再び絶望を与えてましょう!・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヌフフフ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソレは闇のなかで胎動する。

 

 

 

 

 

 




はい、ヴォルケンリッターのドジっ子・爆乳・お姉さんキャラの美女シャマルさんの相方はNo.2の美学に生きる漢 草壁哲矢さんです!

次回にも続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

浮雲と夜天の騎士Ⅱ

草壁哲矢とシャマルは戸惑っていた。今目の前にいる人物に顔が赤くなり、胸の鼓動が激しく高鳴っている事に。

 

 

(ど、どうしたんだ俺は?この女性を見ていると胸が高鳴る・・・///////)

 

 

(ど、どうしたのかしら?この人を見てると顔が熱くなっちゃう・・・////////)

 

 

『シャマル!何をしている!』

 

 

突然の念話にはっ!となったシャマルは今現在雲雀と絶賛バトル中の三人の中にいる男性に目を向ける。

 

 

『ザ、ザフィーラどうしたの?』

 

 

『どうしたの?ではない!早く主を助けろ!この男<雲雀>とんでもない強者だ!シグナムとヴィータと俺の三人がかりでも防戦一方なのだ!』

 

 

ガキン!ガキン!ガキン!とトンファーと剣とハンマーと拳が入り乱れた戦闘風景にシャマルは正気に戻った。

 

 

『嘘!シグナムとザフィーラとヴィータちゃんが押されてるの!?』

 

 

『主に被害が及ぶから本気にはなれないが純粋な体術ではこの男の方が上だ!早く主を!』

 

 

『わ、分かったわ!』

 

 

すぐに草壁の方に目を向けるシャマルだが・・・。

 

 

「あ、あの・・・//////」

 

 

「な、なんでしょう?///////」

 

 

再び草壁に目を合わせるとまた顔が熱くなり胸の鼓動も激しくなり上手く会話ができなくなっていた(笑)

 

 

「そ、そのですね、その子は私達の主様なので、その、離していただけないでしょうか?///////」

 

 

(こ、この子が・・・はやて嬢ちゃんが主様って・・・)「あ、安心してください、俺は嬢ちゃんを医者のいるところに連れていくだけですから////////」

 

 

「え?お医者さんがいるところに?//////」

 

 

「そ、そうなんです。よ、良ければご一緒にどうですか?/////」

 

 

「!?は、はい!是非とも!喜んで!いえむしろご一緒させてください!///////」

 

 

すぐさま残りの三人に念話をするシャマル。

 

 

『皆!私今から主様をお医者さんのところに連れて行くからあとお願い!』

 

 

『はぁ!何を言ってるシャマル!」

 

 

『烈火の将 シグナム』はシャマルの突然の話に驚くが『鉄槌の騎士 ヴィータ』も念話の声を荒げる。

 

 

『んな変な髪した奴とっちめて主様を助けろよ!』

 

 

『(ピク)ヴィータちゃん?今なにか言った?なにかこの人<草壁>を貶す事言った?』ゴゴゴゴゴ

 

 

『(ビク!)い、いやなんでもねぇ』(こ、恐ぇ~!シャマルがなんかギガ恐ぇ~!)

 

 

シャマルは今度は『盾の守護獣 ザフィーラ』に目を向け。

 

 

『ザフィーラ、この家に結界を張っておいて、それならシグナムもヴィータちゃんも本気で戦えるから』

 

 

『は?結界を張ることなら俺よりもシャマルの方が・・・』

 

 

『良いから皆お願いね!!!!』(ギラン!!)

 

 

『『『(ビクン!)は、はい!承知しました!!!』』』

 

 

普段冷静に皆の参謀として後ろに控えるシャマルが、シグナム以上の迫力を出して威圧し、三人は思わず敬語になっていた。シャマルは再び草壁に目を向け。

 

 

「そ、それでは早く参りましょ、えっと・・・」

 

 

「あぁ、じ自分は草壁哲矢と言います。」

 

 

「わ、私はシャマルと言います。」

 

 

(シャマル?我が校の保険医に名が似てるな、まぁあっちは男で女好きでいい加減で軽薄で女尊男卑な飲んだくれのセクハラオヤジだが)

 

 

はやてを抱えシャマルを連れて車に向かう草壁、そんな二人(三人?)を見送ったシグナム達は。

 

 

『おいシグナムどうなってンだよ?シャマルの奴がギガスゲエ迫力出してたぞ』

 

 

『わ、分からん、シャマルに一体何が起こったのだザフィーラ?』

 

 

『お、俺にも分からんが・・・「ねぇ」!?』

 

 

今まで黙っていた雲雀が三人に声を掛けた。

 

 

「本気でやってくれる?手加減されて戦うのは嫌いなんだ」

 

 

『この男、我々が手加減していたことに気づいていたか、やはり只者ではない』

 

 

『んでどうするシグナム?主様もいなくなったしマジで行くか?私としちゃコイツおもいっきりぶっ飛ばしたいんだけど?』

 

 

『私とてこれ程の強者を相手に手加減して戦うのは本意ではない・・・・・・ザフィーラ、お前は結界を張っていろ。ヴィータ、手加減無しで行くぞ!』

 

 

『『おう!!』』

 

 

シグナムとヴィータの体が光り光が収まると騎士服の纏った剣士と赤いゴスロリ服を纏いハンマーを構える騎士がいた。

 

 

「ようやく本気になったね。それじゃ僕も少し本気になろう」

 

 

ボウと紫色の死ぬ気の炎『雲の死ぬ気の炎』を纏ったトンファーと『雲針ネズミ』のロールを肩に乗せ臨戦態勢に入る雲雀。

 

 

そしてザフィーラを除いた三人は窓を突き破り戦場を庭に移した。

 

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

 

静寂が三人を包み込む、結界を張りながら三人の様子を伺っていたザフィーラはガラスを踏み。

 

 

 

 

 

パリン!

 

 

 

 

 

 

「「「!」」」

 

 

 

 

 

 

それがゴングになった!

 

 

 

 

 

 

「紫龍一閃!!」

 

 

「ラケーテンハンマー!」

 

 

「噛み殺す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

第2ラウンドが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八神はやては夢を見ていた、雲雀との日々を・・・。

 

 

雲雀への最初の印象は『恐い人』だった、ゴロツキに絡まれていた自分を結果的に助けてくれた恩人ではあるがゴロツキ達を半殺しにしはやての事はどうでもいいと言う態度はあまりいい印象がなかった。だが自分を怪我人扱いしないで甘やかさない態度ははやてにとって何処かありがたかった。

 

 

お礼に食事をご馳走し気に入ってくれたのか気まぐれに来るようになりヒバードやロールと遊ばしてくれたりぶっきらぼうな態度だがはやては雲雀に引かれていった。そうこうしてる内に雲雀への印象は少しずつ変わっていった。自分の担当医に雲雀の事を話したら「野良猫みたいな子ね」と言われつい吹いてしまった記憶が新しい。

 

 

「君が新しい『・・・の書』の主だね」

 

 

「??」

 

 

夢の中で意識が少し目覚めたはやての目の前に誰かがいた。

 

 

「もう僕には関係ないことだけど一応言っておく、『彼女達』と『彼女』を任せる」

 

 

「え?」

 

 

「『彼女達』に安らぎを与えてやれ、それだけだ」

 

 

 

そして夢の世界を光が包んだ。

 

 

 

 

目を覚ましたはやてが見たのは心配そうに自分を見る担当医の石田先生と草壁と草壁の学ランを着たシャマルだった。草壁は石田先生にシャマルははやての遠縁の親戚であると言い、はやてもうんうんと言って事なきを得たが、雲雀とシグナム達が戦っている事を知って急いで帰路につき家に付くとそこには。

 

 

余裕顔で殆ど無傷の雲雀と手錠みたいな拘束具でガンジガラメにされたシグナムとヴィータであった。二人の武器は雲雀の足元でへし折られていた。

「おのれーー!」だの「外せコラーー!」だのとギャンギャン騒ぐ二人を無視し雲雀は犬いや狼状態のザフィーラと対峙していたがはやてが待ったを掛けて事なきを得たのであった。

 

 

余談 この一件でシグナムとヴィータは雲雀をライバル視し、ザフィーラは最初は警戒いていたが雲雀が昼寝するソファーの足元に狼状態で横になる事が多くなった。雲雀自身もザフィーラをそれなりに気に入っている。シャマルは草壁とはまだ友人と恋人の中間関係でありはやてやヴィータにニヤニヤされシグナムとザフィーラには祝福されていた。

 

 

 

 

 

 




息抜きの番外編をあともう一つ書いたら本編に戻ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達として

その日、高町なのははユーノが公園に張った結界の中でリボーンの指導の下、超モードのツナを相手に訓練していた。

 

 

「なのは狙いが甘いぞ、お前の戦闘スタイルは射撃がメインだ、自分より動きの早い奴を相手にするときは相手の動きを先読みするんだ」

 

 

「は、はい!」

 

 

リボーンに言われ縦横無尽に飛ぶツナに狙いを定めて魔力弾を射つが中々当たらない。

 

 

「うぅ~、当たらないの」

 

 

「なのはまずは落ち着け、冷静に相手の動きを見るんだ、フェイトと戦ってたときお前はフェイトの動きに翻弄され冷静さを欠いていった、落ち着いてよく見るんだ」

 

 

「は、はいツナさん」

 

 

再び飛ぶツナになのはは今度は落ち着いて狙いをつけ魔力弾を放った!

 

 

ビュン!カスっ!

 

 

魔力弾は今度はツナの服を掠めた。

 

 

「や、やった!当たった!」

 

 

「いい感じだなのは、そのタイミングを忘れるな」

 

 

はい!とツナに誉められやる気を出したなのはのを見ながらユーノはリボーンに声を掛ける。

 

 

「なのはの訓練は順調ですね。すみませんリボーンさん、なのはの戦闘訓練に付き合ってもらって」

 

 

「気にするなユーノ、本格的な戦闘訓練はお前も得意じゃねぇしな。それにツナの訓練にもなる」

 

 

「でもリボーンさんが指導してくれて助かってます」

 

 

「ツナはまだ誰かを指導する人間じゃねぇし、他の奴らときたら・・・・・・」

 

 

「アハハハ・・・・・・」

 

 

リボーンとユーノは先日行われた獄寺・山本・了平の指導を思い出していた。

 

 

 

ー獄寺の場合ー

 

 

「いいか高町、先ずお前の戦闘スタイルでの理論はウンタラカンタラウンタラカンタラウンタラカンタラウンタラカンタラ・・・・・・・・・」

 

 

「(プシュ~~~~~)」

 

 

「な、なのはちゃんしっかりして!耳から煙が!」

 

 

不良でアホで中二病なところがあるが獄寺はNASAからスカウトが来るほどの頭脳を持っているのだ。それゆえ授業中の態度が悪くても授業内容が解るので教師達から質の悪い不良として見られてる。だが超理論的に指導するので9歳児のなのはの頭脳が追い付けず知恵熱を出してしまって、失格!

 

 

 

ー山本の場合ー

 

 

「なのは、難しく考えなくていいから、こう相手がギューンと来たらシュバ!とやってグアッときてスバッとしたらドンだ」

 

 

「?????(プシュ~~!バフンッッ!!)」

 

 

「なのはちゃーーん!!」

 

 

持ち前の運動神経と本能で訓練してきた山本の感覚指導はなのはには理解できずまた知恵熱が出て更になのはの頭が遂にパンクしたので失格!

 

 

 

ー了平の場合ー

 

 

「うおおおおおぉぉぉ!なのは!余計な事は考えなくていい!要は気合と根性だ!極限に気合と根性で訓練すればなんとかなる!という訳で!今からローラーを漕ぎながらランニング10㎞だ!極限に行くぞおぉぉッ!!」

 

 

「にゃぁぁぁぁぁ!ツナさん助けてェーー!!」

 

 

「お兄さんだめですよ!なのはちゃんはまだ子供で女の子何ですから!」

 

 

常時死ぬ気の男である了平の指導ではなのはの身体が壊れるので失格!

 

 

 

ー現在ー

 

 

そして消去法でリボーンが指導することになった。因みに三人は後ろで『子供に変な指導しようとしました』と書かれたプラカードを首から下げながら正座していた。

 

 

「それにしてもツナさんのスピード、あのフェイトって子より早いような・・・」

 

 

「あぁツナにはなのはが少しでも攻撃が当たるようになったら少しずつスピードを上げろと言ってあるからな」

 

 

「えぇ!?」

 

 

「以前戦った時のスピードがフェイトのトップスピードとは限らねぇ、少しずつ自分よりスピードの早い奴との戦闘に慣れておけば今度フェイトと戦う時冷静に対処できるだろう」

 

 

「なるほど」

 

 

「それに少し攻撃が当たったからと言って調子に乗らないように適度に意地悪しとかないとな(ニヤリ)」

 

 

「(それが真の狙いですかーーー!)」

 

 

ドSな笑みを浮かべるリボーンにユーノは心のなかでツッコム。そしてまた攻撃が当たらなくなったなのははまた落ち込んだ。

 

 

 

 

ー喫茶店 翠屋ー

 

ここはなのはの実家の「喫茶店 翠屋」そこでなのはの親友であるアリサ&すずかは以前温泉旅行で仲良くなった了平の妹の京子とハルと偶然出会い二人にあることを相談していた。

 

 

「なのはちゃんが何か隠し事をしてるの?」

 

 

「はい、何かなのはがよそよそしい感じが出ていて聞いてみてもはぐらかされちゃって」

 

 

「ツナさん達なら何か知ってると思うんですけど京子さん達は何か聞いてないですか?」

 

 

二人はアリサとすずかの目に以前十年後の未来に行ってツナ達から「事実」を聞き出そうとしていた時を思いだした。

 

 

「ううん、私達も知らないな、でも多分なのはちゃんは二人に心配かけたくないから黙ってるんじゃないかな?」

 

 

「それは私達も分かってるんですけど、でも・・・」

 

 

なのはが心配かけたくないというのは分かるでも頭では分かっても心が納得できないのだ。そんな二人の心境を察知したのかハルが言う。

 

 

「アリサちゃん、すずかちゃん、ハル達も以前ツナさん達と喧嘩した時があったんです。」

 

 

「「え?」」

 

 

「その時のハル達はアリサちゃん達と同じ理由でツナさん達と喧嘩したんですが、ツナさん達の場合は男の意地って感じでハル達に何も教えてくれなかったんですけど

ツナさんが教えてくれた時、ハルはツナさん達がハル達の為に頑張ってくれているのに気付かないでワガママ言っていた自分がとても悔しかったです、でもハル達はツナさん達と一緒にできることがなくてだから決めたんです。」

 

 

ハルの言葉に京子も続く。

 

 

 

「私達は私達でツナくん達の力になってあげようって私達の為にツナくん達が頑張ってくれているなら私達もツナくん達が頑張れるように美味しいご飯を作ったり洗濯したりしてあげようって。」

 

 

アリサとすずかは京子とハルを凄いと思った。そしてなのははこんな凄い人達がライバルなんだとも思った。(以前の旅行でハルはツナにツナは京子に好意を抱いてるとビアンキから聞いておりなのはに危機感を抱くように言ったがなのはは頑なに自分の好意を認めずというより隠してるつもりなのだ。)

 

 

「アリサちゃんとすずかちゃんにも何かできることがあるはずです」

 

 

「あるかな?私達がなのはの力になれること」

 

 

「多分それは、なのはちゃんと友達でいることだと思うよ」

 

 

「「友達でいること?」」

 

 

「うん、なのはちゃんがどんなことがあっても友達で居続けてあげる事がなのはちゃんも頑張れると思う」

 

 

「昔お父さんが言ってたです、‘男は船、女は港'って帰るべき港があると男の人は頑張れるって意味です」

 

 

「ハルちゃん、なのはちゃんは女の子だよ?」

 

 

「はひ!そうでした!」

 

 

アハハハと笑い会う四人、そしてアリサとすずかは。

 

 

「ありがとうございました、京子さん、ハルさん、お陰で吹っ切れました」

 

 

「私達何があってもなのはちゃんの友達でいます、なのはちゃんの帰ってくる場所になります」

 

 

「うん!」

 

 

「ファイトです!アリサちゃん!すずかちゃん!」

 

 

「「はい!」」

 

 

その後、店の奥から話を聞いていた高町夫妻からサービスでケーキをご馳走になった4人であった。

 

 

 

ーオマケー

 

 

翌日、学校でアリサとすずかが。

 

 

「なのは!京子さんは凄い強敵よ!ウカウカしてるとツナさん取られるわよ!」

 

 

「なのはちゃん!ハルさんは凄いライバルだよ!このままじゃなのはちゃんが不利だよ!」

 

 

「え!?どう言うことなのアリサちゃん!すずかちゃん!って何で京子さんとハルさんがライバルになるの!?違うってば!わ私ツナさんの事は・・・//////」

 

 

「あ~もう!何暢気な事言ってるの!いい加減素直になりなさい!」

 

 

「なのはちゃん!私もアリサちゃんもなのはちゃんを応援するけどこのままじゃ本当にピンチなんだよ!」

 

 

ギャーギャーギャーギャーと姦ましい会話は先生が来ても続けられ一時間目は三人仲良く廊下に立っていた。

 

 

 

 

 

 

ちゃんちゃん

 

 

 

 

 

 

 




いつの間にか、いつの間にかこの小説のお気に入り数が100件越え!!!!????

皆様のご愛好に感謝感激です!これからも「かてきょーリリカルREBORN」をよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雷光の真実

「それじゃ炎真、私達お母さんに報告に行ってくるから」

 

その日フェイトとアルフはフェイトにジュエルシード集めをやらせている母親の所に定時報告に向かおうとしていた。

 

 

「フェイトちゃん、僕も一緒に行こうか?」

 

 

心配そうに言う炎真。

 

 

「大丈夫だよ炎真、すぐに帰ってくるから」

 

 

炎真達に心配をかけさせたくないのかフェイトは笑いながら言う。だがアルフの不安そうな顔を見ると炎真達もなにか起こるのではないかと不安になったが結局フェイト達を見送ることにした。

 

 

転移魔法で移動したフェイト達を見送った後、アーデルは買い物にらうじはその荷物持ちにSHITT・Pは遊びに紅葉はランニングに薫はバッティングセンターにジュリーはパチンコに行った。普通中学生が平日に学校に行かずにいるのは問題だが幸か不幸か炎真を除いたシモンは全員中学生離れしたルックスなので補導されることはなかった。

 

 

炎真はフェイト達の帰りを待つ留守番役を任され、一人テレビを見ていたが、全員が出掛けて十数分経った時、再びリビングに転移魔法の魔法陣が現れた炎真はフェイト達が帰ってきたのかな?と思ったが突然アルフが慌てて炎真に駆け寄った。

 

 

「炎真!すぐに来て!フェイトが・・・!このままじゃフェイトが!!」

 

 

「!!アルフ!フェイトちゃんに何かあったの!?」

 

 

泣きじゃくるアルフを宥めながら炎真はフェイトに異変が起こったことに気づく。

 

 

 

 

ーフェイトsideー

 

フェイトはバインドで貼り付けにあいながら母親から鞭打ちにされていた。黒い髪を腰まで伸ばし妙齢の美貌を狂気が滲ませた危険な雰囲気漂う美女がフェイトへ執拗に攻撃していた。

 

 

「まだたった4つしか集められないなんて、フェイト、あなたはお母さんを悲しませたいの?」

 

 

ビュン!バシっ!

 

 

「あなたは大魔導師プレシア・テスタロッサの娘なのよ?」

 

 

ビュン!バシっ!

 

 

「どうしてお母さんを悲しませるの!」

 

 

ビュン!バシっ!!

 

 

「ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい」

 

 

フェイトは耐えていた。以前のフェイトであれば母親からの折檻に悲鳴をあげ涙を流し泣きながら許しをこうていたが今は必死に耐え、母親の怒りが収まるのをじっと耐えていた。

 

 

(お母さんの怒りが収まるまで耐えるんだ。耐えて耐えてそしてあそこに帰るんだ。アーデルさんが・・・ジュリーが・・・紅葉が・・・らうじが・・・しとっぴちゃんが・・・薫が・・・アルフが・・・炎真がいる・・・皆がいるあそこに・・・帰るんだ!)

 

 

必死に耐えるフェイトの姿が癪に触ったのかプレシアは更に攻撃を強くしたがフェイトは涙を滲ませ痛みに耐えながら目をつぶる、だがその瞼の裏では『相棒』といつの間にか一緒にいるのが当たり前になった『ファミリー』の姿が浮かんだ。そうすると全身を襲う激痛と苦痛が和らいだ。

 

 

(傷だらけになっただろうな・・・終わったらきっとアルフは泣くだろうな・・・こんなに傷だらけで帰ったら皆驚くかな?・・・アーデルさん治療してくれるかな?・・・紅葉はきっと一番慌てるだろうな・・・らうじもいつも心配かけちゃってるからまた心配するかな?

・・・ジュリーもしとっぴちゃんも薫も慌てて・・・炎真は・・・心配してくれるかな?・・・それとも怒るかな?・・・・・・炎真・・・助けて・・・)

 

 

フェイトの目から一筋の涙が零れた。

 

 

ビュン!ガシッ!

 

 

痛みが襲ってこなくなり朦朧とする意識の中フェイトはうっすらと目を開けるとそこには見慣れた深紅の炎と背中が見えた。

 

 

「炎・・・真?」ガクっ

 

 

そこでフェイトの意識は暗闇に落ちた。

 

 

 

 

ー炎真sideー

 

 

「誰なの?あなた」

 

 

「・・・・・・」

 

 

目の前の黒髪の女性の鞭を握りしめながら炎真は無言だったが後ろにいる気絶したフェイトと涙を滲ませながらフェイトを担ぐアルフを一瞥すると。

 

 

「アルフ。フェイトを連れて行って」

 

 

「え?でも・・・」

 

 

「早くフェイトを家まで運んで、今頃アーデル達も帰ってくるだろうから」

 

 

感情を押し殺し低い声で話す炎真にアルフはフェイトを抱えて部屋からでる。プレシアも動こうとしたが目の前の少年に射竦められ動けなかった。

 

 

「あなたは、フェイトに何をした?」

 

 

低い声で聞く炎真にプレシアは若干震えながら言う。

 

 

「あの子が私の期待に沿わないから少々お仕置きしていただけよ」

 

 

「お仕置きだと?・・・・・・るな・・・・・・ふざけるな!!!!!!」

 

 

「!!??」

 

 

ゴォォウ!!!ジュワ!

 

 

炎を最大に燃やし、手に持っていた鞭を焼き尽くすと炎真は憤怒の表情でプレシアを睨んだ。

 

 

「あなたはフェイトの母親だろう!なぜこんな真似を!フェイトを苦しませる事をする!」

 

 

「(この子魔導師?いやこの子には魔力反応はない、じゃあの炎は一体?なんにしても捨て置けないわ)あなたには関係ないことです。すぐにここから消えなさい!」

 

 

プレシアは紫色の魔力弾を放つが炎真に当たる直前に魔力弾は真下に落ちていった。

 

 

「な!?く!」

 

 

次々と魔力弾を放つが全て床に叩きつけられてしまうがプレシアは冷静に炎真の能力を分析していった。

 

 

「なるほど、どうやらあなたは『重力を操る能力』を持っているのね」

 

 

「・・・」

 

 

炎真は無言だがそれを肯定ととったのかプレシアは更に言う・・・炎真の弱点を

 

 

ガキン!

 

 

「何!?」

 

 

突然炎真の両手が紫色のバインドに縛られてしまった!

 

 

「あなたは重力を操る時。両手の指を動かしていた、つまり両手を封印してしまえばあなたは重力操作ができなくなる!」

 

 

「く!何を!」

 

 

再びプレシアは魔力弾を放つが炎真は重力操作をしようとするが今度は下ではなく右へ左へ上へそして炎真自身に魔力弾が当たる。

 

 

「ぐぁ!」

 

 

「フフやはりね。あなた自分の能力を完全に使いこなせていないのよ。いかに強力な力を持っていても使う人間が二流じゃ宝の持ち腐れね」

 

 

このときの炎真は知らないが以前圧倒した相手に後にプレシアと同じようなやり方で窮地に立たされる事になる。その戦いでリボーンは炎真と共闘する事に微妙な反応したのは炎真にはまだ『実戦経験が浅い』事も理由になっていたのだ。

 

 

形勢は自分に向いていると確信したプレシアは止めを指そうと杖に魔力を込める。

 

 

「サンダー・スマッシャー!!」

 

 

紫色の雷電の奔流が炎真を襲うが炎真は当たる直前にバインドを引きちぎり重力操作をし、曲がった砲撃は壁に当たり隠し部屋が現れるとプレシアは狼狽した。

 

 

「あぁ!アリシア!」

 

 

「(アリシア?)」

 

 

炎真は隠し部屋に向かって飛びなかを調べると驚くべき光景を目の当たりにした。そこにはカプセルの中に入ったフェイトと瓜二つの少女がいた!

 

 

「こ、この子は!?」

 

 

「私のアリシアに触らないで!」

 

 

プレシアはまるで少女を守るように立ちはだかったが、炎真はアリシアと呼ばれた少女に目を向けていた。

 

 

「この子は一体誰なんだ?フェイトに似ているが・・・」

 

 

「フェイトと似ている?・・・・・・フフフフアハハハハハハハ!笑わせないで!あんな出来損ないとは違うわ!この子こそ私の最愛の娘アリシアよ!」

 

 

「どうゆうことだ?」

 

 

「教えてあげるわ、この子とあの出来損ないの真実を」

 

 

プレシアは炎真に淡々と話した、事故で最愛の娘アリシアを失ったこと。アリシアを取り戻そうとクローンを生み出しそのクローンがフェイトであること。ジュエルシードを集めゲートを開き失われた古代技術の都<アルハザード>に行きアリシアを生き返らせる事。

 

 

「じゃフェイトは、フェイトはどうなるんだ!」

 

 

「あんな出来損ないがどうなろうが知ったことじゃないわ、私にとってアリシアが全て!アリシアさえ生き返ってくれたら何がどうなろうが!誰がどうなろうが知ったことでは「バシっ!」!?」

 

 

プレシアの言葉遮るように炎真はプレシアの頬を叩いた。

 

 

「貴女は!貴女はただ死んでしまった人の亡霊に取りつかれているだけだ!取りつかれて今を見ていない!そんなんじゃ貴女は大切な物を失うだけだ!」

 

 

「あなたに!あなたに私の何が解ると!」

 

 

「解りますよ!僕も、僕も失ったから、父さんを母さんをたった一人の妹を失ったから」

 

 

「え?」

 

 

「僕も貴女と同じように大切な家族を失った、失って、なにも出来なくて、絶望して、諦めて、あの時僕に力があれば父さん達を守れたかもしれないのにって悲嘆に暮れる毎日だった。でもどんなに望んでももう失った家族は戻ってこないんだ!」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

苦しそうに話す炎真の姿なプレシアはなにも言えずただ黙って見てるしかできなかった。

 

 

「僕は貴女のように失った人への盲念に捕らわれた人を知っている。ソイツも貴女のように盲念に捕らわれ大切な仲間達を裏切り一人ぼっちになってしまった」

 

 

「!」

 

 

「(このままじゃこの人はあの頃の僕といやD・スペードと同じなる!)フェイトは貴女にとっては出来損ないの『クローン』かも知れないけど、アリシアにとっては『妹』のような存在なんじゃないのか!?」

 

 

「!?・・・・・・もう時間がないのよ」

 

 

「時間がないって「ゴホゴホ!」プレシア!」

 

 

突然プレシアは膝を折り咳き込み吐血した。

 

 

「プレシア!貴女はまさか」

 

 

「フフ大魔導師と言われたこの私も病魔には叶わないって事ね。もう長くないのよ、今更歩みを止められないのよ」

 

 

「・・・」

 

 

プレシアは立ち上がると炎真に背を向けた。

 

 

「行きなさい、しかしフェイトにこの事はけっして言わないように」

 

 

「でも・・・」

 

 

「貴方はフェイトのなんなの?」

 

 

「・・・協力者で仲間でファミリーのつもりです」

 

 

「そう・・・貴方の名前は?」

 

 

「炎真、シモンファミリーボス古里炎真」

 

 

「古里炎真、フェイトは貴方に任せます。」

 

 

「・・・はい・・・」

 

 

炎真はそれからなにも言わず去っていった。

 

 

「出来損ないの人形だと思っていたあの子をファミリーだと言う人達がいたなんてね・・・・・・・・・・・・ねぇアリシア?お母さん、何処を間違えちゃったのかな?」

 

 

アリシアを見上げるその目には大粒の涙が流れていた。

 

 

フェイトの部屋に戻った炎真は何があったのかと聞くファミリーを制してフェイトの元に行く、フェイトは身体中包帯まみれになり静かに寝息を立てている。アルフも付きっきりとの事で炎真はその場を後にし、少し考えを纏めると言って外に出た。

 

 

(どうしたらいいんだろう?フェイトちゃんの事は後でアーデル達に話すとしてもプレシアさんの体やアリシアちゃんの事はどうすれば、ツナくんに話そうか・・・ツナくん・・・山本くん・・・!?」

 

 

すぐに携帯でツナに連絡する炎真、連絡がつきツナとリボーンに事の表しを話す。イキナリの衝撃的事実に驚き混乱状態なったツナを無視してリボーンが相手になった。

 

 

「炎真、それでお前はプレシアの病気をどうしたいんだ?」

 

 

「プレシアさんの病気を直してあげたいんだ。Dr.シャマルさんならできるんじゃないのかな?」

 

 

「そのプレシアって女美人か?」

 

 

「え?う、うん、ちょっと危ない雰囲気があって多分30か40代位のシャマル先生より年上だと思うけど黒髪の綺麗な人だったよ」

 

 

「よし、相手が美女なら年上でも年下でもOKなアイツなら大丈夫だな。他にはあるか?」

 

 

「以前、薫が山本くんに瀕死の重傷を負わせたけどその傷を直した人がいるよね?その人の事はツナくんから聞いた。その人ならアリシアちゃんについて何か知ってると思うんだ」

 

 

「アイツか。だがそれは危険な賭けだぞ?ヤツはこの世界では最上級危険人物だからな」

 

 

「それは・・・『ピロロロ!ピロロロ!』?」

 

 

「俺のプライベート携帯だ。ちょっと待ってろ」

 

 

レオンを携帯電話に変身させ電話に出るリボーン、だが次第にシリアルモードになっていき。

 

 

「リボーン、どうしたんだよ?」

 

 

「どうやら向こうから連絡が来た」

 

 

「え!?」「??」

 

 

「炎真、お前と話がしたいそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『白蘭』がな」

 

 

 

 

 

 




困った時は白蘭さんに頼ろう♪


見返りが恐ろしいけど。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

管理局来る!序章

一ヶ月近く投稿出来ずスミマセン!

これから少しずつ投稿します。


 

プレシアからフェイトの真実を聞かされてから数日が経ちフェイトの怪我も順調に回復していた。炎真はフェイトが寝ているのを確認し自分のファミリーにフェイトの真実を話した。

 

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

炎真から聞かされた衝撃的な事実にアーデル達は驚きのあまり終始無言になっていたが、ジュリーが意を決して口を開く。

 

 

「んでよ炎真、お前これからどうすんのよ?」

 

 

「結局このままジュエルシードを集めきってしまえば、フェイトはお払い箱になってしまうではないか?」

 

 

「フェイトちゃんもきっと凄く傷つくだろうなぁ」

 

 

「なんとかしたくとも俺らで何ができんだ?」

 

 

「しとっぴちゃんはフェイトちゃんには笑顔いてほしいな」

 

 

「炎真、貴方はどうしたい?」

 

 

「その前に皆に一つ聞きたいことがあるんだ」

 

 

「「「「「「?」」」」」」

 

 

「僕はフェイトちゃんの事もアルフの事も大切な“ファミリー”だと思っている。皆はフェイトちゃんとアルフの事をどう思っているの?」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

炎真の質問をアーデル達は呆れ半分、怒った感じ半分になりそして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

ーフェイトの部屋前ー

 

コンコン

 

 

「フェイトちゃん、入るよ」

 

 

フェイトの部屋の前に着いた炎真はノックして部屋に入るとそこには。

 

 

「え炎真!?」

 

 

BJに着替えてジュエルシード集めに行こうとするフェイトとアルフがいた。

 

 

「ちょっ!フェイトちゃん何してるの!?まだ怪我もちゃんと治ってないのに!」

 

 

「だだだ大丈夫だよ炎真!もう動けるぐらいには回復したし、そろそろジュエルシード探索に行こうかと!」

 

 

「ダメに決まってるでしょ!アルフもちゃんとフェイトちゃんを止めなきゃダメでしょう!」

 

 

「いやあたしもやめといた方が良いって言ったんだけどね、フェイトが行くって聞いてくれなくてさ」

 

 

「ちょっ!アルフズルい!」

 

 

「あぁ~もう、フェイトちゃんったら・・・!!」

 

 

必死に言い訳するフェイトとアルフに炎真は呆れたが突然後ろから尋常じゃない怒気を感じて振り向くとそこには!

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「フェイト?アルフ?」

 

 

「「!!!!????」」

 

 

豊満な胸の前に腕組をし憤怒の表情で二人を見据えるアーデルの姿だった!

 

 

「アアアアアアアアアーデルさん!!ここれは!その!えっと!あの!」ガクガクガクガクガクガクガクガク!

 

 

「キャインキャインキャイン」ぶるぶるぶるぶるぶるぶる!

 

 

アーデルの半端ない威圧感にフェイトとアルフはお互い抱き合いながら生まれたてバンビのように震え上がっていた。炎真はササっと横に逃げた。

 

 

「何をしてるの二人とも!!!!!!大人しくしてなさーーーーーーい!!!!!!」

 

 

ドゴーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!

 

 

アーデルの怒りが噴火した。

 

 

「「ひええええええぇぇぇぇぇ!!!!」」

 

 

アーデルの怒りの咆哮が上がりすぐさまフェイトはパジャマに着替え布団の中に避難しアルフも思わずフェイトの布団に避難した。

 

 

フンスーーーーー!「まったく!目を離すとすぐこれなんだから!フェイトの怪我が完治するまで私達が二十四時間体制で監視と看護をしてあげるからね!」

 

 

フェイトは布団から首だけ出して。

 

 

「えぇぇ!そん「文句あるのフェイト!?」ありません!!」スポッ

 

 

すっかりアーデルに逆らえなくなるフェイトであった(笑)

 

 

その光景を呆れ笑いで見ていた炎真は数日前に電話した相手、そうシモンファミリーがシモンリングを手にする切っ掛けを半分作った男との会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

ー数日前ー

 

 

「やぁはじめましてかな?古里炎真くん、そしてこの時代でははじめましてだね綱吉くんにリボーンくん?電話越しでゴメンね♪」

 

 

「白蘭」

 

 

ハンズフリー状態の携帯から聞こえた白蘭の気さくな声に僅かに緊張したツナと炎真、そしてリボーンが口を開く。

 

 

「白蘭、要件はなんだ?世間話したくて連絡した訳じゃないだろう?」

 

 

「まぁね、綱吉くん達が高町なのはちゃん達と出会ったって聞いたから興味が出たんだ♪あぁついでに教えておくけど“あの十年後の未来”は綱吉くん達が高町なのはちゃん達と“出会わなかった未来”なんだ」

 

 

白蘭は“特殊能力 平行世界<パラレルワールド>にいる自分と知識を共有”を使ってボンゴレファミリーを壊滅寸前まで追い詰めた存在である、その能力ゆえに現在はボンゴレの厳重な監視下に置かれているのだ。

 

 

「それで白蘭、お前は管理局の存在を知っているのか?」

 

 

「当然だよ。僕はトゥリニセッテをコンプリートしようとしたからね、管理局が黙っておくはずないでしょう?まぁ管理局はとある次元犯罪者への対応でミルフィオーレと戦う余裕がなかったし(その犯罪者くんに秘密裏に技術と情報提供してたのも僕なんだけど♪)」

 

 

「それで白蘭さん」

 

 

「なんだい?炎真くん?」

 

 

「プレシアさんとアリシアちゃんの事ですが」

 

 

「あぁ、プレシア・テスタロッサの方はDr.シャマルに任せて大丈夫だよ♪でもアリシア・テスタロッサの方はちょっと難しいかな?」

 

 

「難しい?」

 

 

「いくら僕でも死んだ人間を生き返らせる事はできないよ」

 

 

「!そんな・・・」

 

 

「炎真・・・」

 

 

「でもアルハザードに行く方法なら知ってるけどね♪」

 

 

「「え!?」」

 

 

「でもかなり危険だよ、成功する確率は5%未満かな?」

 

 

「でもアルハザードに行くことが出来るんですよね?」

 

 

「炎真!」

 

 

「ごめんツナくん、でも僅かでも可能性があるなら僕は」

 

 

「・・・白蘭、炎真の安全は保証できるの?」

 

 

「う~ん、行く可能性は5%だけど安全は五分五分かな?でも方法を実現するためには管理局の技術が必要だよ」

 

 

「管理局の技術が?」

 

 

「うん、次元科学では管理局の方が地球より発展しているからね。彼等の技術が必要不可欠だよ。あぁついでに教えておくけど、次に高町なのはちゃんとフェイト・Tいやフェイト・テスタロッサちゃんの戦いに管理局が関わって来るから♪」

 

 

「「えぇぇ!?」」

 

 

「遂に管理局が関わって来るか。面倒な事になりそうだな。それにしても白蘭、何故俺達に手を貸す?」

 

 

「う~ん、高町なのはちゃん達の戦いに綱吉くん達ボンゴレが介入する事で何が起きるのか見てみたいから♪それに僕は管理局が好きじゃないから」

 

 

 

「何?」

 

 

「「??」」

 

 

「僕は管理なんでめんどくさい事はやらないけど“管理される”のは大嫌いなんだ。おそらくXANXASくんと骸くん、雲雀くんもおんなじだと思うよ。」

 

 

(確かにあの三人って誰かに“管理される”の毛嫌いそうだ!)

 

 

「という訳♪方法の方は管理局と接触してから詳しく話すよ、じゃあねバイバイ♪」

 

 

ピッ!ツーツーツー

 

 

 

「ま、なんとか目処がたったな」

 

 

 

「うん、アリシアちゃんを生き返らせる為にアルハザードに行く」

 

 

「その為には管理局と接触しなければならない」

 

 

「白蘭は次になのはとフェイトが戦いに管理局が介入してくると言っていた。」

 

 

「その時が」

 

 

「あぁ、その時がもうすぐ来る」

 

 

管理局とボンゴレファミリーとシモンファミリーの邂逅は間近に迫っていた。

 

 

 

 




今回は此処までです。つか此処までしかアイディアが思い浮かびませんでした。まったく、自分の文才の無さには目眩がするぜ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

管理局来る!Ⅰ

白蘭からの情報を聞いたツナとリボーンはフェイトの真実と管理局が介入する事を獄寺達にした。なのはとユーノには今は目の前のジュエルシード回収とフェイトとの勝負に集中してもらうために話さなかった。フェイトとの勝負に備え今日もなのはと特訓するためにに海浜公園に向かう一同、談笑するツナとなのはとユーノの後ろでリボーンは密かに獄寺達と打ち合わせをしていた。

 

「いいかお前ら、白蘭からの情報では次になのはとフェイトの勝負に管理局が介入してくる」

 

「そこで管理局の魔導師と接触して連中に協力を申し込むんだな」

 

「ですがリボーンさん、管理局がこちらの申し出を断ったら?」

 

「ま、そんときはその魔導師を締め上げて上司のところまで案内してもらうだけだぞ。炎真達とは打ち合わせは済ませてあるし、後は管理局が来るのを待つだけだ」

 

 

なんて物騒な作戦会議をする四人と談笑するツナとなのはにユーノが告げる。

 

「っ!なのは、ジュエルシードの反応だ、公園の方からだ」

 

『!?』

 

ユーノの言葉になのはは気を引き締め、ツナ達も管理局が介入してくるかもと予感し気を引き締めた。海浜公園の一角に到着した一同の前に“巨大な木”が動いていた。

 

「あれが?」

 

「うん、あの木にジュエルシードがあるよ」

 

「・・・」

 

まだ少し固さが残るなのはの肩にツナがソッと手を置き優しく微笑み。

 

「大丈夫だよなのはちゃん」

 

「十代目と特訓してきたんだから大丈夫だ」

 

「いざとなったら俺らが絶対に助けっからよ」

 

「極限に頑張ってこい!」

 

なんの根拠もない励ましだったが今日まで自分の特訓に付き合ってくれたツナ達の励ましは自然となのはの心に自信と勇気が湧いた。

 

「はい!いってきます!」

 

その笑顔を見た一同は満足そうに頷いたがリボーンだけは別の方角を見てユーノに指示を出す。

 

「ユーノ、お前は結界を張っておけ。他にも来たみたいだしな」

 

リボーンの見ている方向をみるとフェイトとアルフそしてシモンファミリーもやって来た。

 

「あっ!」

 

「・・・」

 

なのはとフェイトはお互い目があったがフェイトは直ぐに目線をジュエルシードを取り込んだ木に向け攻撃を始めた。

 

「フォトン・ランサー!」

 

金色の魔力弾を叩きつけ更に攻撃するために飛び上がった。なのはも遅れまいとBJを纏い魔力弾で攻撃する。

 

「アクセル・シューター!」

 

桃色の魔力弾を叩きこみ、木の周りを飛びながら攻撃をする。木も同じように巨大になった枝で二人をはたき倒そうとするがスピードに特化したフェイトとツナとの特訓で動体視力が鍛えられたなのはは難なくかわし、お互いの魔力弾を叩きこんだ、木もダメージが蓄積されたのか弱ってきたので二人は砲撃魔法をぶつける。

 

「ディバイン・バスター!!」

 

「サンダー・スマッシャー!!」

 

桃色と金色の砲撃は木を粉砕した。

 

「ジュエルシード!」

 

「シリアル7!」

 

「「封印!!」」

 

封印されたジュエルシードは地面に落ちた。そして二人はゆっくりと降りてきた。降りてきた二人にそれぞれのファミリーが祝福をする。

 

「やったねなのはちゃん」

 

「ま、十代目と特訓したんだから当然だな」

 

「頑張ったななのは」

 

「極限によくやったぞ!」

 

「皆さん、ありがとうございます!」

 

「もしも無様な姿をさらしたら特訓を3倍にしようと思ってたんだがな」

 

「にゃっ!勘弁してよリボーンくん!」

 

同じように炎真達からよくやった!や頑張ったな!と誉められはにかんだ笑顔を見せるフェイトだがなのはと目が合い真剣モードになりジュエルシードの落ちた場所に向かう。そしてなのはもジュエルシードのあるところまで歩きフェイトと向き合う。

 

「ジュエルシードをあなたに渡すわけにはいかない」

 

「うん、分かってるよ。だからフェイトちゃん、私ともう一度勝負して、そして私が勝ったら認めて欲しいの。私はフェイトちゃんの力になれるって」

 

「勝てたらね」

 

そして後ろにいる人達は・・・・。

 

「がんばれーなのは!」「負けんなフェイト!」と呑気に二人を応援していた。それぞれの応援団に微妙に恥ずかしいと思いながらも二人は構える。だが・・・。

 

「ストップだ」

 

突然の制止の声になのはとフェイトとユーノとアルフは戸惑い、ボンゴレとシモンは来た!とお互い身構える。

するとなのはとフェイトの間に黒いBJをきた黒髪の少年が現れた。

 

「時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ。速やかに戦闘を中止ぐわっ!」

 

ドゴンっ!

 

突然少年は地面に横たわった。クロノと名乗る少年が現れてすぐに戦闘モードになった炎真が『大地の重力』で押さえつけたのだ。

 

「炎真!」

 

「ここは僕が抑える!皆はフェイトとアルフと一緒に逃げて!」

 

「でも「行くわよフェイト」アーデルさん!?」

 

「炎真なら大丈夫だ、ほれアルフもとっととズラカるぞ」

 

「わっ!コラジュリー!どこ触ってんだよ!」

 

事前に打ち合わせした通り、フェイトとアルフを逃がすシモンファミリーだが炎真だけは留まった。

 

「ま、待て!おい君!どうゆうつもりだ!」

 

「すまないが、俺達の話を聞いてもらいたくてな。」

 

超モードになったツナと獄寺達がクロノを包囲した。突然の展開になのはとユーノは呆然としていた。

 

 

ー???ー

 

何処かの司令室でライトグリーンの長髪をポニーテールにした20代中盤の女性と茶髪のオペレーターの少女はモニターに映る地面に叩きつけられたクロノとその周りにいる少年達に驚きを隠せなかったが、女性は少女に言う。

 

「エイミィ、クロノに何が起こったの?」

 

「え~と・・・クロノくんの周りの重力が10倍になってます!」

 

「あの赤髪の男の子が原因ね、あの子に魔力反応は?」

 

「そ、それがあの赤髪の子やその周りの男の子達からは魔力反応が全くありません!それにあの子達の持っているアクセサリーから・・・・・・えっ!ウソ!」

 

「どうしたの?」

 

「あの男の子達のアクセサリーからロストロギア反応!しかも全てS+ランクです!」

 

「なんですって!?」

 

 

ーリボーンsideー

 

「おい、クロノと言ったな?安心しろ、俺達は別にお前をとって食おうってわけじゃねぇ」

 

「(あ赤ん坊?)じゃぁこの行動はなんだ!?」

 

「何簡単だ、お前の上官と少し話がしたいだけだ」

 

「なんだと!どうゆう事だ!何者なんだお前達は!?」

 

「俺達は“ボンゴレファミリー”だ」

 

 

ー???ー

 

「(“ボンゴレファミリー”ですって!?まさかトゥリニセッテの一角、ボンゴレリングを所有する組織。管理局が干渉してはならないと言われたあの!)」

 

女性はオペレーターの少女に指示を出す。

 

 

ーリボーンsideー

 

「ボンゴレ?なんの組織だか分からないが「そこまでよクロノ」っ!」

 

声が聞こえたと思ったら目の前に女性が現れた。

 

「立体映像か、お前がコイツの上官か?」

 

「えぇ、そうです、次元航行艦アースラ艦長リンディ・ハラオウンです。まさかボンゴレファミリーとこうして会うことになるとは思いもよりませんでしたわ。貴方は?」

 

「晴れのアルコバレーノ リボーン」

 

「(!?アルコバレーノ!)貴方達の目的は?」

 

「ちょいと話があるだけだ、お前達にとっても悪い話じゃねぇ」

 

「分かりました、貴方達とそちらのお嬢さんをアースラに案内します」

 

「かあさいえ艦長!こんな得たいの知れない奴等を」

 

「その得たいの知れない奴等にピンチにされてる癖によく言うぜ」

 

挑発する獄寺。

 

「クロノ、これは命令です。彼等を案内してあげなさい」

 

「・・・っ!・・・了解っ」

 

クロノの声を聞き重力を解除する炎真。クロノは炎真を睨み。

 

「この借りはいずれ返すぞ」

 

と言われ炎真は冷や汗を流しながらつい目をそらす。

 

「なぁリボーン、こんな事しなくても良かったんじゃないか?」

 

超モードを解除したツナが言う。

 

「これから俺達が行うのは交渉だ。変に舐められないようにしておくのは当然だぞ。それよりもツナ、なのはとユーノへのフォローをしておけ」

 

なのはとユーノは急展開のオンパレードに呆然としてい

た。

 

「なのはちゃんは俺達の事を聞いてなんて思うかな?」

 

「安心しろ、なのははああ見えて強い子だ。例え俺達が何であれ受け入れてくれる」

 

「うん、そうだね」

 

なのは達に事情説明の為に離れるツナの背中を見送ったリボーンは炎真の肩に乗り言う。

 

「炎真、ここが正面場だぞ」

 

「うん、分かってるよ」

 

「(必ず管理局の協力を得て見せる。フェイトの為にも)」

 

炎真は決意を燃やす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




言い訳はしない、リアルが忙しくさらに突然頭に浮かんだ新作の創作に走ったこと、大変申し訳ありません!

次からは、次からは!創作スピードを上げていきます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

管理局来る!Ⅱ

「ふええええぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

「んなあああぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

「えー・・・」

 

「マジかよ・・・」

 

「スゲーな・・・」

 

「極げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

「ウルッセーぞ芝生!何で極限って叫んでんだよ!」

 

「沢田となのはに対抗したのだ!」

 

「ユーノ、それがお前の正体ってワケか?」

 

クロノに(しぶしぶ)時空管理局巡航L級型戦艦「アースラ」に案内され、艦長室に向かう通路にいる一同の前に金髪のなのはと同い年の中性的な少年が立っていた。この少年こそなのはの相棒でペットのフェレットのユーノだったのだ。

 

「あ、はい。なのはには初めて会った時に正体を見せたと思うけど・・・」

 

「見てないよ!ずっとフェレットさんだったよ!大体私とユーノ君が会った日ツナさんとリボーン君も一緒だったでしょ!?」

 

「あ、そういえば・・・」

 

「おい、茶番はそこまでにしてさっさと来い」

 

やいのやいの騒ぐ一同にクロノが少々乱暴な口調で言う。いきなり地べたに這いつくばらされた事を根に持っているようだ。慌ててクロノの後に続く一同。リボーンはソッとユーノに言う。

 

「良かったなユーノ、もしも温泉旅行の時にこの事を知ってたら俺は喜んでお前を女湯に送っていたぞ・・・」

 

「え?」(ゾッ)

 

その時ユーノは「リボーンさんには逆らわないでおこう」と心の中で誓ったのは割愛する。

 

そして一同は艦長室に向かうがなのはは先程ツナに教えてもらった事を思い出す。

 

『なのはちゃん、俺達はボンゴレファミリーっていうマフィアなんだ』

 

「(ツナさん達がマフィア、悪い人達なのかな?)」

 

と思ったなのはだったが、付き合いは短いが今日まで一緒にいたツナ達が犯罪者だとは思えずツナ達の事を受け入れた。この生来の“お人好し”な性格がなのは長所でもあり短所でもあるのだが今回はソレが功をそうした。なのははふとツナを見上げる。

 

「ん、何なのはちゃん?」

 

「ツナさん、私ツナさん達を信じてますから」

 

「・・・・・・ありがとう」

 

一同は艦長室前に到着し、その扉が開いた。何が起こるか分からないので緊張する一同だがそこには。

 

棚に並べられた盆栽、立て掛けられた赤い和傘、敷かれた赤い絨毯、そこに置かれた茶道一式、舞い散る桜と正に日本庭園がそこにあった。

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」」」」」」」

 

「ほうほうこれは見事な日本庭園だな」

 

「あのクロノくんこれって・・・」

 

「・・・艦長の趣味だ・・・」

 

顔をそらしたクロノはそれ以上喋らなかった。ツナは思った。

 

(艦長さん、スパナと気が合いそうだな)

 

と日本文化を愛するメカニックを思い出していた。

 

「ようこそ、ボンゴレファミリーの皆さん、私が次元航行艦アースラの艦長リンディ・ハラオウンです」

 

ライトグリーンのポニーテールの美女が現れた。

 

「あ、どどうも、俺は一応ボンゴレの十代目 沢田綱吉です」

 

「ボンゴレ“嵐”の守護者 獄寺隼人だ」

 

「俺はボンゴレ“雨”の守護者 山本武ッス」

 

「ボンゴレ“晴れ”の守護者!笹川了平だ!座右の銘は極限だーーーーー!!」

 

「うるせぇ!」

 

「僕はシモンファミリーボス 古里炎真です」

 

「高町なのはです」(ペコッ)

 

「僕はユーノ・スクライアです」

 

「改めて“晴れ”のアルコバレーノ リボーンだ。ハラオウン艦長、そこにいるクロノ・ハラオウンとファミリーネームが同じだが?」

 

「えぇ、クロノは私の“息子”です」

 

『え?』

 

リンディの発言にえ?となる一同。

 

「あの“お姉さん”じゃなくて“お母さん”何ですか?」

 

ツナが聞く。

 

「あらあら、クロノと同い年位なのにこんなおばさんをナンパ?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・でええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

一同(リボーンは除く)は驚きの悲鳴を上げた、目の前にいる美女はどう見ても20代中盤か後半なのに一児の母親しかも同年代から見ると小柄なツナと炎真より小さいクロノが自分達と同い年だという事実に。

 

落ち着いたツナ達は絨毯にあがりお茶請けに出ていたようかんを食べた。

 

「ふ~む、悪くないが俺はエスプレッソが飲みたいぞ」

 

「「いきなりワガママ言うな」」

 

ツナとクロノのツッコミがシンクロする。

 

「待ってて、確かインスタントであったと思うけど」

 

「母さん・・・・・・」

 

マイペースコンビに呆れるクロノ。

 

「あんまり細かい事を言うなクロノ、背が伸びないぞ!」

 

「背は関係ないだろう!!」

 

「まあまあクロノ、これから牛乳をいっぱい飲んで運動すればきっと背は伸びるって」

 

「だから背の事を言うな!!」

 

「騒々しいヤロウだなてめえは、背に回る栄養が全部頭でっかちな脳みそに回ってんじゃねえのか?」

 

「よし!君たちが喧嘩を売ってることは分かった!この後訓練室に案内しよう!さっきの事<炎真に地べたを這いつくばらされた事>も含めて模擬戦で全員叩きのめす!!!」

 

「「(なんかいつの間に模擬戦する事になってるーーーー!?)」」

 

そんなアホ軍団を尻目にユーノはリンディにことの著しを説明していた。

 

自分の不注意でロストロギアのジュエルシードを地球に落としてしまったこと、負傷した自分の代わりに魔導師の才能があったなのはに回収を頼んだこと、ツナ達ボンゴレファミリーが協力者になったことを。そしてジュエルシードを狙うフェイトとその協力者であるシモンファミリーの事も。

 

全て話終えた後リンディは立派だわと言ったがクロノは無謀だと言った。ジュエルシードは次元干渉型のエレルギー結晶体で数個集めて特定の方法で起動させると空間内に次元震を引き起こし最悪次元断層を巻き起こす代物だと言われた。

 

「今回の一件は我々管理局が対処します。貴方達は手を引きなさい。古里炎真君、貴方が協力しているフェイトさんの所に案内して「それはできません」え?」

 

「君は自分が何を言っているか分かっているのか?管理局を敵に回すことになるぞ?」

 

クロノは睨むが炎真は決意と覚悟を宿した目てリンディとクロノを睨む。

 

「フェイトちゃんもアルフもは僕達シモンファミリーの一員だ。ファミリーを売るぐらいなら管理局と全面戦争も辞さない!これは僕達ファミリー全員の意思だ!!」

 

その嘘偽りのない言葉にクロノは息をのみリンディはたった13才の少年がこれ程の覚悟を持った目をすることに驚いたが直ぐに毅然とした態度になり炎真と向き合った。

 

「では何故、貴方はここにきたの?フェイトさんの事を守るんなら貴方は何故私達の所にきたの?」

 

「僕の目的のため貴方達管理局の技術が必要だからです」

 

「私達の技術が必要?でも私達に何の見返りがあるの?」

 

リンデにツナが言う。

 

「ここにいる俺達が貴方達管理局に協力します」

 

「「!?」」

 

「俺達はそのために来ました、炎真の目的は俺達も協力したいので」

 

「ふざけたことを大体君達がいなくても「戦力は多い方がいいだろう?」!?」

 

リボーンがクロノの言葉を遮る。

 

「見たところ戦闘力の高い魔導師はクロノしかいねえようだしな。それに管理局の魔導師は万年人材不足のようで人手が足りないんだろう?」

 

リボーンの言葉にリンディは僅かながら動揺する。

 

「何故その事を・・・」

 

「(フッ、白蘭の情報通りだな)」

 

実はリボーンはツナ達に内緒で白蘭と再び連絡をとり管理局の内部事情を聞いていたのだ、相手の弱味を握るのも交渉に必要な事なのだ。

 

「まぁ蛇の道は蛇ってヤツだ。どうだ?俺から見てもなのはは恐らく人材不足の管理局からすれば喉から手が出るほどの人材だと思うしここにいるツナ達もかなりの強者だぞ。少なくともクロノより強い」

 

「な!?」

 

リボーンの言葉にムッとなるクロノだがリンディはリボーンの提案に乗るか考えていた。

 

「(確かに私達は今人手不足だからなのはさんをこっちのペースに乗せて引き入れようと思ったのにこの赤ん坊、こっちの思惑は予測済みって訳ね。さてどうしたものか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・これしかないわね)」

 

リンディはツナ達を見据えて言う。

 

「綱吉君達が私達の戦力になるかクロノと模擬戦をしてもらいます」

 

『!?』

 

「クロノには綱吉君、獄寺君、山本君、笹川君の四人と戦い実力を試させていただきます。そして戦力にならないと判断したらこの一件からボンゴレは引いてもらいます。」

 

「母さん!いや艦長!そんな勝手に!」

 

「おもしろいじゃねえか」

 

獄寺は言う。

 

「あぁ、その方が手っ取り早いしな!」

 

山本が言う。

 

「極限に俺達の実力見せてやる!」

 

了平が吠える。

 

「(良し、予想通りだな)」

 

リボーンは笑顔のポーカーフェイスでほくそ笑み。

 

「分かりました、じゃ俺達が勝ったらこの一件に協力をお願いします」

 

ツナはリンディに言う。

 

「えぇ、分かりました。クロノという訳だからお願いね」

 

「ふ~、分かりました。彼等が僕より実力が上とはとても思えませんからね、格の違いを教える良い機会ですね」

 

自分が勝つことを確信しているクロノは自信満々に言う。

 

「ツナさん」

 

なのはは心配そうにツナの名を言う。

 

「安心しろなのは。お前は知らないだろうけどな、ツナの力はお前が思っている以上だぞ。獄寺達もな」

 

「え?」

 

リボーンの言葉になのはは首を傾げる。

 

そうなのはは知らない、ユーノもクロノもリンディも今目の前にいる少年達は管理局の魔導師では体験できない正に“死ぬ気”の戦いを経験してきた百戦錬磨の強者達である事に。

 

 

 

 




次回は皆さんお待ちかね(誰が待ってた?)の模擬戦です!クロノをかなり虐めます(^-^)v


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

管理局来る!Ⅲ

 

ーアースラ 医務室ー

 

「ッは!?・・・ここは?」

 

クロノ・ハラオウンは目を覚ますと白い天井が目に入った。朧気の意識が徐々に覚醒していきここはアースラの医務室のベッドだと理解する。そばには母親であるリンディとリボーンそしてツナと炎真がいた。

 

「目が覚めたクロノ?一時間近く気絶してたのよ」

 

「母さいえ艦長、僕は・・・彼等と模擬戦をして・・・負けたんですね」

 

「了平さんと山本君と獄寺君そしてツナ君と連戦したからね、体力的にもかなり無理をしてたと思うよ」

 

「高町なのはは?」

 

「なのはちゃんは帰ったよ、まだ管理局と協力するか考えたいって」

 

「クロノ、気絶する前の事覚えてる?」

 

「はい、僕は・・・」

 

クロノはボンゴレとの模擬戦を思い出していた。

 

 

 

ー数時間前 アースラ・訓練室ー

 

「模擬戦を始める前にリンディ、クロノ、なのは、ユーノ、エイミィ幾つか言っておく事があるぞ」

 

柔軟体操している了平と山本と獄寺を尻目にリボーンは言う。

 

「まずボンゴレが使う“力”の事はここにいる人間以外他言無用にするようにしておくことだ」

 

「リボーンさん、それは貴方達“裏の人間”の制約“沈黙の掟<オメルダ>”になるのかしら?」

 

「やはりリンディクラスの局員には知らされてるようだな」

 

「艦長、“沈黙の掟<オメルダ>”とは?」

 

「裏社会のマフィアが守らなければならない掟よ。これに違反すれば最悪復讐者<ヴィンディチェ>が現れるわ」

 

「復讐者<ヴィンディチェ>って何ですか?」

 

なのはがツナに聞く。

 

「え~と、簡単に言えば裏社会の法の番人かな?」

 

「その通りね、そして管理局にとって“最悪の存在”とまで言われているわ」

 

リンディは以前リボーンがユーノに言ったボンゴレと管理局の戦争を話した。管理局が設立されて間もない頃、自分達の使う魔法を過信した一部の局員達が節操なく力押しという乱暴なやり方でロストロギアを回収・管理しようと躍起になり遂には“管理外世界”である筈の地球にある“トゥリニセッテ”を回収しようとし“アルコバレーノのおしゃぶり”を守護する赤ん坊“アルコバレーノ”と“マーレリング”を守護する“ジッジョネロファミリー”と“ボンゴレリング”を守護する“ボンゴレファミリー”と小競り合いに近い戦争を起こした。当初は“最強の赤ん坊 アルコバレーノ”を除き二つのファミリーからリングを回収する寸前まで追い詰めたが復讐者<ヴィンディチェ>が現れ戦争に介入した。

 

「当時“トゥリニセッテ”の回収に向かった魔導師達は一人一人が執務官クラスの実力者ばかりだったわ。クロノ、貴方より戦闘能力の高い魔導師ばかりね」

 

「・・・それで、その人達は?」

 

「戻ってきたそうよ、たった『一人』だけね」

 

「『一人』だけ?」

 

「ええ、他の人達は『首だけの状態』だったのよ、しかも恐怖や苦悶に満ちた死に顔だったそうよ」

 

『!?』

 

リンディとリボーンを除いた全員が驚愕した。

 

「その残った一人も一番年若かったにも関わらずまるで何年も年を取ったかのように老け込み、髪の毛も真っ白になってたそうよ」

 

「え?そんな事ってあるんですか?」

 

「フランス革命時マリー・アントワネットはたった一日牢屋に入れられただけで金髪の髪の毛が真っ白になったって逸話がある、人間は過度なストレスを受けると実年齢より老け込む事があるらしい」

 

なのはの質問に獄寺が答える。

 

「恐らくソイツは“メッセンジャー”として生かされたんだな」

 

「そう、そして復讐者<ヴィンディチェ>のメッセージは」

 

『カンリキョクヨ、“トゥリニセッテ”ニテヲダスナ、モシテヲダシタトキハ、ツギハキサマラガコウナル』

 

「とメッセージを送った魔導師はそのまま発狂し死んだとの事よ、後でその事を知った“穏健派”の魔導師達がトゥリニセッテを守護する者達に不可侵条約を結び今に至ったのよ」

 

『・・・』

 

沈黙する一同にリボーンが言う。

 

「分かったか?これからツナ達が使う力は他言無用の物だって事がな」

 

「私は構わないわ。他のみんなも綱吉君達の力は他言無用にするのよ」

 

コクコクとなのは達が頷くのを確認したあと、リンディはクロノにまず了平との模擬戦を始めようとした。

 

「それじゃクロノまずは笹川君と模擬戦を・・・って笹川君達は何をしてるの?」

 

了平の方に顔向けるとボンゴレと炎真となのはとユーノが『円陣』を組んでいた。

 

「よ~し!極限に行くぞぉぉ!!!了平!!ファイ!」

 

「「オオォ!!「「「「「おォ~」」」」」」」

 

と了平と山本以外は気恥ずかしく言う。

 

「よぉぉし!極限力がみなぎってきたぞ!!では行ってくる!!!」

 

「先輩!ガンバっす!!」

 

「久しぶりに落ちるぜ・・・」

 

「お兄さん、また自分で了平って・・・」

 

「(紅葉がやりたがりそうだな~・・・)」

 

「(恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしいの!!)」

 

「(これが地球流?)」

 

約二名を除いた全員は気落ちしていた。

 

「「「・・・・・・」」」

 

管理局組は突然のアホ行動に唖然としていた。

 

「気にすんな、あれがアイツら流の気合いの入れ方だ」

 

「いや、気合いが入ったのは二人だけで後の人達は気落ちしてない?」

 

エイミィがリボーンにツッコム。とりあえずツナ達は無視し了平とクロノは向き合い、了平は左腕に装備した『晴れのバングル VerX』から黄色に輝く『晴れの死ぬ気の炎』を出す!

 

『!?』

 

ユーノは一度見たことがあるが、なのはは気絶していたので知らなかったが突然バングルから炎が灯り了平は相棒の名を叫ぶ!

 

「出でよ!ガリュー!!」

 

バングルから耳に晴れの死ぬ気を灯したカンガルーが現れた。

 

「ガァァ!」

 

「何!?」

 

「これは!?」

 

「嘘~」

 

「カンガルーさんなの!?」

 

「これが!漢の我が道をゆく俺の相棒!『漢我流』だ!!ガリュー行くぞ!」

 

ガリューは了平の言葉に答えるように吠えるとお腹のポケットから『晴れの死ぬ気の炎』が灯したグローブと同じく炎を灯した『F<フィアンマ>シューズ』を装備した。お互いに戦闘準備が整い向き合った。そして。

 

「二人共準備は良いわね。・・・・・・それでは模擬戦開始!」

 

リンディの号令を合図に二人は駆け出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが高町なのははあることに気付く。

 

「(あのカンガルーさん、お腹のポケットから武器を出したってことは『雌』のカンガルーさん!?名前“漢”我流なのに!?)」

 

それにツッコム人間はいなかった。




今回はここまでです。次回はトントン拍子に進めていくかもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

模擬戦

今回、模擬戦はかなりはしょります。


『死ぬ気の炎』

 

人間の生体エネルギーを圧縮し視認できるようにしたもの。指紋のように個々によって炎の色・形・強弱が異なり、炎の使い方は推進力のようにし宙に浮き自由に飛び回る事や武器や兵器の動力源にもなる。死ぬ気の炎はオーラを圧縮したもので熱は帯びても物を燃やせない(熱で融かす事はできる)。

 

『死ぬ気の炎』を灯すにはかつてマフィアが己の力の象徴として闇の力と契約した証である『リング』を嵌め生体エネルギーを波動にし『リング』を通して灯すのだ。だが『死ぬ気の炎』の強弱は『リング』を嵌めた人間の『覚悟』で決まるのだ。

 

そして『死ぬ気の炎』には『属性』がある。

 

『大空』『嵐』『雨』『晴れ』『雷』『雲』『霧』

 

これらの七つの『属性』は『大空の7属性』と言われている。そしてこの『7属性』と対となるのが。

 

『大地』『沼』『泉』『森』『山』『氷河』『砂漠』

 

といった『大地の7属性』であるがこれが使えるのは今の所シモンファミリーだけである。

 

1人の人間が複数の属性を持つ事もあるが波動の強い属性は一つのみで残りは微弱なのだ。

 

そして『大空の7属性』には『特性』がある。

 

環境に合わせる『調和』の『大空』、色は『オレンジ』

 

分子レベルまで『分解』する『嵐』、色は『赤』

 

相手を『鎮静』させる『雨』、色は『青』

 

細胞や筋肉を『活性』させる『晴れ』、色は『黄色』

 

人体や武器を『硬化』させる『雷』、色は『緑』

 

武器や関節を『増殖』させる『雲』、色は『紫』

 

幻を実物に『構築』させる『霧』、色は『藍色』

 

ツナ達『死ぬ気の炎』と『リング』を使って戦う者はこれ等の炎を使い戦っているのだ。

 

 

「とまぁ、コレがツナ達ボンゴレやシモン、というよりは今のマフィアの戦い方だな。何か質問はあるか?」

 

クロノと了平の模擬戦を横目に白衣を着たリボーンいやボリーン博士がなのは達に『死ぬ気の炎』を解説する。

 

「リボーン君いえボリーン博士、その『リング』があれば私達も『死ぬ気の炎』が使えるの?」

 

なのはが挙手して質問する。

 

「あぁ、『リング』があればお前達も炎を使うことができるぞ。だがお前達魔導師には『魔法』があるからな『死ぬ気の炎』は必要ねえだろ。そんな事より模擬戦がおもしろくなってきたぞ」

 

なのは達も視線を模擬戦に移した。最初こそ中・遠距離射撃で了平を翻弄していたクロノだが了平はクロノにぴったりと張り付き近距離戦闘に持ち込んだ事で流れが変わった。

 

「極限<マキシマム>コンビネーション!!」

 

「プロテクション!」

 

了平の息もくかせない連続ラッシュにクロノはバリアを張り防戦一方になったが・・・。

 

「ぬっ!何だこの鎖は!極限に邪魔だ!!」(ガシャン!)

 

「はぁ!?バインドを無理矢理引きちぎった!?」

 

クロノが仕掛けたトラップ式バインド(相手を捕縛する魔法)を力技で破りまるでラッセル車のように突進してくる了平。

 

「凄いわね了平君、彼の炎の色は『黄色』と言うことは『晴れ』の属性ね。なるほど、あの人間離れした高速ラッシュは筋肉を『活性』させたからこそできる芸当なのね」

 

「いいやリンディ、了平は通常の状態であれほどの動きができるんだぞ」

 

「え?(汗)」

 

リンディはリボーンの言葉を思わず聞き返した。魔法の強化もないのにあんな人間離れした動きができるのが信じられなかったからだ。

 

「だがアイツの『最大の武器』は『格闘技術』でも人間離れした『突進力』でもない、どんな逆境や敵にも恐れず真っ向から挑む『ど根性』だ!」

 

「うおおおおおおおおお!くらえ!『マキシマム・イングラム』!!」

 

いきなり了平の姿が三人に分身するとクロノのプロテクションに向かってストレートパンチをぶつける。クロノはダメージこそなかったが衝撃までは防げず壁まで吹っ飛ばされた。

 

「グハッ!?」

 

「うおおおおお!」

 

更にクロノに向かう了平!クロノに顔面パンチを叩き込もうとしたが直前にストップした。

 

「あれ?了平さんどうして止めたの?」

 

「なのは良く見ろ、クロノの奴了平の鳩尾に杖を突きつけてるだろ?」

 

クロノもまたカウンターの要領で魔力弾を了平に叩き込もうとしたのだ。

 

「(ニッ)極限にやるなクロノ」

 

「(フッ)君もな了平」

 

「勝負は引き分けだな」

 

「えぇそうね」

 

リボーンとリンディは引き分けと判断し模擬戦を終了させた。了平とクロノは友情が生まれたのか模擬戦終了時に握手をかわしていた。

 

 

ーVS獄寺ー

 

ボンゴレ嵐の守護者にしてツナの右腕(自称)の獄寺との勝負は射撃勝負だった。お互い中・遠距離射撃を得意とする二人はクロノは空中から獄寺は自身の武器、複数の属性の炎を使う匣兵器『SISTEMA C.A.I.』のホバリングで地上からお互い打ち合いを続けていた。

 

「シュート!」

 

「炎の矢<フレイムアロー>!」

 

ドン!ババババ!ドカン!

 

お互いに一進一退の射撃戦を繰り広げた。そして戦っているクロノと観戦していたなのはとユーノとリンディとエイミィは獄寺の黒い骸骨を組み合わせたような『SISTEMA C.A.I.』を見て思う。

 

「「「(趣味悪)」」」

 

「「(ちょっとカッコいいかも)」」

 

男の子二人は中二心を刺激され女性陣は引いていた。

 

「バスター!!」

 

「嵐+雷 フレイムサンダー!!」

 

お互い砲撃の放つ、お互いの砲撃は相殺され土煙が舞う。煙が晴れるとクロノと獄寺は杖と骸骨の銃口をお互いに向けたまま膠着した。

 

「こりゃまた引き分けだな」

 

「そうね」

 

リボーン達から引き分けを言い渡され武器を降ろす二人、だがその顔は満更でもない顔をしていた。

 

因みに獄寺の相棒『嵐ネコ』の『瓜』は模擬戦に参加せずリボーンの隣で観戦していた(エイミィが頭を撫でようと近づいたらおもいっきり引っ掻かれ、それを見たなのはも瓜には近づかなかった。引っ掻かれた傷は了平のガリューに治して貰った)。

 

 

ーVS山本ー

 

山本は二匹の相棒『雨燕』の『小次郎』と『雨犬』の『次郎』を呼び出したが小次郎だけつれていき次郎は置いていった。次郎はなのはになつきなのはも模擬戦そっちのけで次郎やナッツと戯れていた(エイミィが羨ましそうに見ていたが)。

 

小次郎を上空に上げ雨を降らせ山本は竹刀を構えるとなんと竹刀が日本刀に変わった!この刀こそ戦国の時代数多の人間を切り捨ててきた『完全無欠』『最強無敵』の剣術『時雨蒼燕流』の継承者に伝えられる刀『時雨金時』だ。

 

山本は上空を飛ぶクロノに次郎から貰った三本の小刀で空を飛びながら了平のように接近戦を挑んだ。クロノも同じ手に引っ掛かるかと距離を開けようとしたが徐々に謎の倦怠感が体を襲う。

 

「(何だ?体がダルい)」

 

「ワリイなクロノ、ちょっとズルい手を使わせて貰ったぜ」

 

山本の言葉でリンディは気付く。

 

「山本君の『属性』は『雨』、『雨』の『特性』は『鎮静』。あの燕が降らせた雨には鎮静効果があるのね」

 

「あぁ、今のクロノは鎮静剤漬けにされたも同然だ。それにどうやら魔力の流れも鎮静されてるようだ」

 

徐々にクロノの魔力弾の威力が弱くなり少しずつ飛行魔法が弱まり下へ降下していくのをを見てリボーンが呟く。魔導師は体内にある『リンカーコア』から魔力を生み出しているが『雨属性』の影響を受けてリンカーコアからの魔力の流れが鎮静したようだ。クロノは地面に降り同じように地面に降り自分に向かってくる山本に砲撃魔法をぶつけるが。

 

魔法を食らったのは山本の姿を写した水柱だった。面食らったクロノとリンディ達、慌てて山本を探すが山本は『時雨金時』をクロノの背後から突きつけた。

 

「(『時雨蒼燕流 攻式九の型 うつし雨』)どうする?クロノまだやるか?」

 

「(ふ~)降参だ」

 

両手を上げて降参のポーズを取るクロノ。

 

「リボーン君、ちょっとズルくない?」

 

「なに言ってんだ。模擬戦とはいえ実戦に卑怯もらっきょうもねえんだぞ」

 

模擬戦終了を言われ戻ろうとするが鎮静の効果がまだ効いてるのかクロノは山本に肩を借りながら戻っていった。

 

 

ーVSツナー

 

いよいよツナとの最終バトルだが連戦の疲労が残っているのかクロノの息が乱れていた。だがクロノにも執務官としての意地とプライドがあるので泣き言を言わず構える。

 

「ツナ」

 

「何だよリボーン?」

 

「クロノの奴疲労がピークだ『一瞬』で終わらせてこい」

 

「・・・ああ」

 

ツナもクロノが心配ゆえに時間を掻けず終わらせようと考えた。そしてクロノと向き合い『超<ハイパー>死ぬ気モード』になる。

 

「行くぞクロノ」

 

「「「(え?誰この人?)」」」

 

突然さっきまで気の弱そうな雰囲気から一変し静かにだが力強さに満ちた顔つきと声に変わったツナに管理局組は困惑しユーノは無理もないと言わんばかりの苦笑いを浮かべなのははツナの姿を見落とさないようにしっかりと見ていた。

 

ツナとクロノは空中で向かい合い構えた。リンディから模擬戦開始を告げられると同時に。

 

「・・・・・・・・・・・・」(ビュンっ)

 

ツナの姿が消え一瞬でクロノの背後に周り当て身をした。

 

「な・・・に?」

 

一瞬何が起こったかわからないままクロノの視界は闇に落ちた。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

一瞬、いくら了平・獄寺・山本と連戦して疲労していたとはいえクロノを一瞬で倒した。なのはもユーノもリンディもエイミィも何が起こったか理解できなかった、模擬戦が開始した直後ツナの姿が消えたと思えばクロノの背後にいて一撃で倒したのだ。その事実になのは達は呆然としていた。

 

クロノを担いで戻ってきたツナは戦闘時と違いいつもの気の弱そうな少年に戻っていた。

 

 




今回はここまで、次回はなのはにスポットライトを当てるかも?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強さの理由

今回ビアンキ姐さんが活躍?


 

クロノとの模擬戦も終わり、改めて協力関係を結んだリンディ達とツナ達。

 

「それで炎真君、私達に協力してほしい事って何かしら?」

 

艦長室に戻りお茶を濁していた一同にリンディが会話を始める。炎真はリボーンに目配りをしリボーンはレオンを携帯に変化させとある人物に連絡を取る。

 

「・・・・・・俺だ、上手くいったぞ。ここからはお前の情報が頼りだからな。しっかりやれよ」

 

ハンズフリー状態にした携帯を床に置く。

 

『やあ、はじめましてだね♪リンディ・ハラオウンさんにクロノ・ハラオウン君とユーノ・スクライア君♪僕の名は白蘭よろしくね♪』

 

「「「?」」」

 

『あぁ、“こっち”の君達とは初めて会うからね。気にしないで♪』

 

“こっち”の単語に引っ掛かるがリンディが口を開く。

 

「貴方は何者?ツナ君達の協力者なの?」

 

協力者の単語にツナと炎真と山本は苦笑いを浮かべ、獄寺と了平は露骨に嫌そうな顔をしリボーンは目元に影が射した。

 

「え?あら?なに?この空気?」

 

少し狼狽えたリンディに携帯越し白蘭が笑いながら答えた。

 

『ハハハハハ♪協力者って言うのは違うなぁ♪僕のちょっとした気まぐれで“手を組んだ”だけだからね♪さて、管理局との協力関係は一応結べたって事で良いんだね』

 

「うん、白蘭さん、教えて貰えますか?“アルハザードに行く方法”を」

 

「「「!?」」」

 

リンディ達は驚いた。当然だ。アルハザードに行くだなんて普通あり得ない、頭のおかしな人間の考える戯言だとしか思えないのだ。

 

『うん、良いよ♪アルハザードに行く為には“タイミング”と“道具”が必要なんだ♪先ずは“道具”を教えて上げる♪“小型時空転送装置”の作り方をね♪』

 

フェイトとプレセアとアリシアを救う作戦準備が始まった。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

高町なのはは悩んでいた。今回の模擬戦で今まで自分が見てきたツナ達の力は氷山の一角に過ぎなかった。

 

『あんなに強いツナさん達がいるなら私なんて必要無いんじゃないかな?』

 

そう思ったなのはは公園のブランコに座りながら考えていた。

 

「あらなのはじゃない」

 

突然声をかけられ顔を上げると薄紅色の長髪をした美女がいた。

 

「ビアンキさん」

 

「毒蠍」と呼ばれた殺し屋であると同時に獄寺の姉にしてリボーンの恋人?で現在沢田家に居候しているビアンキだ。

 

「どうしてこっちに?」

 

「ママンからのお使いがあったんだけど、並盛じゃ見つからなくてね。海鳴にきたのよ(本当はツナやリボーンから頼まれたんだけどね)」

 

アースラから帰るとき浮かない顔をしたなのはを心配したツナとリボーンから連絡を受け、買い物をした風に装いなのはの元にきたのだ。

 

「どうしたの?浮かない顔してるけど、お姉さんが聞いて上げるわよ」

 

「・・・・・・」

 

「当ててあげようか?ツナの事でしょう?」

 

「!?」

 

生来の責任感の強い性格なので人に頼る事が苦手ななのはは話しづらそうにしていたがそこはなのはより人生経験豊富なビアンキ。なのはの心情を察する。なのはは観念したのか淡々とビアンキに話した。

 

自分より圧倒的に強いツナ達がいるなら自分は必要無いんじゃないかと。ビアンキはなのはに優しく微笑みながら話す。

 

「ねえなのは、ツナがどうして強くなったのか分かる?」

 

「え?・・・わかりません」

 

「なのはから見てツナって“戦いを好む性格”に見える?」

 

「それは、見えません。ツナさん凄く優しくし獄寺さん達の事も大切な友達として見てますから」

 

「そうね、ツナは“戦いを好む性格”ではないわ。寧ろその逆、“戦いなんて大嫌いな性格”よ。でもツナの周りの状況がツナ達を“戦い”へと誘ったのよ」

 

「え?」

 

ビアンキは語る。ツナはマフィア何かになりたくてなったわけではない。他のボス候補者達がいなくなり創設者であるボンゴレⅠ世の子孫である事が理由でボスにされ、その首を狙って脱獄した死刑囚に狙われたり、他のボス候補者がリーダーを勤める暗殺部隊に狙われたり、敵対マフィアに自分だけではなく自分と関わりをもった人達が狙われるようになった。

 

ツナ本人は獄寺や山本や了平や京子やハルにランボやイーピンにフウ太といった仲間達と遊んだり花火見たり海に行ったりと言った、当たり前のようにある騒がしくも平凡な“日常”を愛していた。だが状況が許してくれなかった。戦わなければ自分だけではなく自分の大切な人達が危険に晒される。だからツナは強くなった。途中心が折れくじけそうになったが仲間達に支えられ励まされ共に強くなり困難を乗り越えてきた。

 

「・・・・・・」

 

なのはは唖然とした。ツナ達が強くなった理由がそんなにも過酷な事があったのだと実感したからだ。

 

「なのは、自分は必要無いだなんてそんなの自分が決めることじゃないわ。少なくともなのはには“戦う理由”があるんじゃないの?」

 

「あ!」

 

なのはは思い出した。自分は“あの子”と“フェイト”と解り合いたいからフェイトの力になりたいと思ったから強くなろうとした事を。再び顔を上げたなのはの目には強い“意思”が宿っていた。

 

「ビアンキさん、ありがとうございます!私頑張ります!」

 

「(グッ!)」

 

ビアンキはなにも言わずニヒルに笑いながらなのはに親指を立てる。意気揚々と走ろうとするなのはだがふとビアンキの方を振り向き。

 

「ビアンキさん、何で私にツナさん達の事を話したんですか?」

 

「私は“恋する女の子”の味方よ。京子やハルの方がリードしてたんじゃフェアじゃないからね」(パチクリ♪)

 

そう言われてなのははボンッ!と夕日より顔を赤くした。

 

「////ビアンキさんまで!?だだから!私はツナさんの事は////////」(モジモジモジモジ)

 

「フフフ頑張りなさい、乙女!」

 

そう言ってビアンキは帰っていった。最後は良いようにおちょくられた気がするがなのはは息を整え決意を新たにリンディ達に連絡する。

 

『リンディさん、私決めました』

 

不屈の翼は法の塔に向かう。

 

 

 

 

ー炎真sideー

 

リンディ達との会合も終わりフェイト達のマンションに向かう炎真(跡をつけないようにリンディ達に釘を射した)。

 

「ただいま」

 

扉を開けるとジュリーが待っていた。

 

「よう炎真、首尾は上々って所か?」

 

「うん、こっちは上手くいったよ。所でフェイトちゃんは?」

 

「炎真を助けに行くって暴れだして大変だったぜ。アーデルが(物理的に)大人しくさせて今部屋でアルフと一緒に寝てる(気絶してる)ぜ」

 

所々にノイズがあって聞き取れなかったがフェイトが無事のようなので安心した炎真、そしてジュリーが真面目モードで話を始める。

 

「んで決行は?」

 

「今から数日後、なのはちゃんとお互いが持っているジュエルシードを賭けて決闘を行うようだからその時だよ」

 

了解と返答したジュリーと一緒に居間に戻る炎真。アーデル達が声を出そうとするがジュリーがしーっとさせる。フェイトの部屋にそっと入る炎真は犬モードいや狼モードでフェイトのベッドの足下で寝ているアルフを起こさないようにしベッドであどけない表情で静かに寝ているフェイトの前髪をそっと撫でる。

 

「(フェイトちゃん、何があっても絶対に守って見せる)」

 

炎真は気づいていない。最初は“妹”のように思っていた少女に対して自分の抱いている感情に“変化”が起こっていることに。

 

 

 

 




今回はここまで中々ストーリー構成が上手くいかない(ToT)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光再び 『応援合戦』

今回短めです。


ーアースラ 艦長室ー

 

リンディ・ハラオウンは艦長室で調べ物をしていた。先日ボンゴレファミリーとの会話で『アルハザードに行く方法』を白蘭から教えられてから炎真が協力している少女 フェイトとアルハザードには何か関係があると考え、管理局のデータベースにアクセスし、最近行方不明になっている魔導師、もしくは次元科学者を調べれば何か解ると思ったからだ。そしてヒットした。

 

「プレシア・テスタロッサ。大魔導師と言われ次元科学者としても高名な魔導師、数年前に一人娘のアリシア・テスタロッサを亡くし以後は行方を眩ませる。行方不明になる以前に不正な研究を行っていた疑いアリか」

 

プロフィールの隅に置かれた顔写真には長い黒髪の若い女性が写っていた。リンディは管理局上層部にこの事を報告するか迷っていた。先日炎真から「フェイトに手を出したらシモンファミリーは管理局に戦争を挑む」と宣言されその『覚悟に満ちた瞳』に気圧されたと言えばそうなのだが、自分は組織の一員としてそして艦を任された艦長としての『責務』を果たそうと決めた。

 

 

 

 

ー数日後、とある次元世界ー

 

約束の日になり戦場になる海に沈んだビル群の屋上では高町なのはとフェイト・テスタロッサが向かい合っていた。お互いのジュエルシードを賭けての決闘が行われようとしているのに二人はBJを纏い空中に佇んだままお互いの顔を見ず両手で顔を覆い下を向いていた。その訳は。

 

 

なのはの後ろで。

 

「極限にッッ!!フレーッ!フレーッ!なッ!のッ!はッッ!!!」

 

『フレッ!フレッ!なのはッッ!!フレッ!フレッ!なのはッッ!!オオォォォォォーーーーー!!!!」

 

了平を筆頭に風紀委員のような長学ランに手袋と『必◯勝』と達筆で書かれた鉢巻をしたツナと獄寺と山本とチアガールにコスプレしたリボーンがいた。ツナと獄寺はヤケクソ状態。ナッツ達ボンゴレアニマルズも鉢巻を巻き『なのは●必勝』とこれまた達筆で書かれた団旗をガリューが振り回しそれに合わせて鳴くかジャンプしながらなのはを応援していた。

 

余談だがアースラでエイミィとモニターで観戦していたクロノと結界役で参加しなくてすんだユーノは心の底からホッとしていた(リンディとエイミィはクロノとユーノが参加できない事を残念そうにしていた)。

 

 

更にフェイトの後ろも。

 

「結局!行くぞッッ!!」

 

『ゴーッ!ファイッ!ウィンッ!ゴーッ!ファイッ!ウィンッ!オオォォォォッ!!フェイトッッ!!!!』

 

相手に負けてなるものかと紅葉を筆頭にチ◯男◯よろしくな格好で派手なジャンプやダンスと組体操で応援するシモンファミリー。『Fight☆Fate』と書かれた団旗をらうじが振っていた。結界役のアルフは参加できなかったがチアガールをやってみたかったと残念がっていた。

 

 

なんでこんな事になったかと言うと。なのはとフェイトの決闘が近づきなのはを応援しようと了平と山本が提案し、なのはの為になるかもと深く考えずにツナが了承し獄寺も渋々了承とここまでは良かったのだが、リボーンが悪ノリしこの事を炎真に連絡しそれを聞いた紅葉は「結局!負けるものか!」とフェイトを応援しようとしたらこうなってしまった。炎真達も「フェイトの為だ」と考え猛特訓の末にダンスを覚えた。そしてなのはがボンゴレとフェイトがシモンと『円陣』をし、二人がBJを纏って向かい合った瞬間に応援合戦が始まったと言う流れだ。

 

 

 

さて両陣営の応援を背中に浴びた二人の心境は。

 

「「(恥ずかしいーーーーーーーーーーーーーー/////////////////////!!!!!!!!)」」

 

もういっそ一思いに殺して!と言わんばかりに顔を紅くしていた(笑)。

 

これがアリサとかなら文句の1つや2つや3つは言っている所だが、そこは生来の『お人好し』のなのはちゃんとフェイトちゃん。自分達の事を思っての応援だと理解しているが故に何も言えなくなっていた。

 

「良ぉぉしッ!なのはの為にもう一度行くぞッッ!!」

 

「ムッ!ならばこちらも結局行くぞッッ!!」

 

「「(もうやめてーーーーーーーーーーーーーー///////////!!!!!!)」」

 

心の中で悲鳴を上げるなのは&フェイトだが悲しきかな、二人の思いは体育会系軍団とヤケクソ組と悪ノリ組には届くことがなかった。応援合戦をその後2回程やって二人が気持ちを切り替えて決闘を始めるまでかなり時間を喰ったのは言うまでもない。

 

クロノとユーノは心の底から思う。

 

「「(参加しなくて本ッッッッ当に良かった!)」」

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ひょっとしたら暫く「かてきょーリリカルREBORN」は休むかもしれません。こんな駄文を楽しみにしてくれている読者の皆様に今のうちに謝っておきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光再び Ⅱ

約半年ぶりの投稿です。自信を無くしてしまい休載をし、一時は『この小説消そうかな』と思いましたが、こんな駄文を楽しみにしてくださっている人達がいるのでまた投稿していこうと思います。

不定期更新になると思いますがご了承下さい。


ボンゴレとシモンの応援合戦が終わり、なのはとフェイトは近くの屋上庭園に降りる。

 

「高町とフェイトって奴は何で屋上庭園に降りたんでしょう?」

 

「多分、なのはちゃんは戦う前にフェイトちゃんに色々と話をしたいんだと思う」

 

「まぁ大丈夫なんじゃねぇか?」

 

「俺達にやれる事はやった!後は二人次第だな!」

 

「・・・・・・・・・」

 

リボーンとツナと獄寺、山本と了平はなのは達がいる屋上庭園を見つめる。向かいのビルにいる炎真達シモンファミリーも同様であった。だが、応援から離れていたユーノとアルフは遠い目をしながら別の事を考えていた。

 

「「(多分二人共、応援合戦でボロボロになったコンディションを整えようとしてるんだろうな・・・・)」」

 

 

ー屋上庭園内ー

 

その頃屋上庭園内になのはとフェイトは。ユーノとアルフの推察通り、応援合戦で出鼻を激しくくじかれたコンディションを整えようと勤しんでいた。

 

「「(恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしいの(よ)!!!)」」

 

共に後ろ向きで真っ赤になった顔を両の手の平で覆い隠しながら先程の応援合戦で起きた事を必死に消化しようとする。

ツナ達や炎真達に他意は無く純粋な善意(リボーンとジュリーは悪ノリ)で応援してくれたので文句を言いたくても言えないが、正直キツかった。

 

「ハア、ハア、ハア、ハア、あの、フェイトちゃん?」

 

「フウ、フウ、フウ、フウ、な、何?」

 

「落ち着いた?」

 

「フウ、フウ・・・フウ~~。何とかね。貴女は?」

 

「私も、落ち着いてきたの」

 

ようやくお互い気持ちが落ち着き、息を整えた所で改めてシリアスになり言葉を交わす。

 

「フェイトちゃんは立ち止まれないし、私はフェイトちゃんを止めたい」

 

フェイトはバルディッシュを大鎌の形《クレッセントフォーム》に変型させて構える。なのはレイジングハートを展開させる。

 

「きっかけはジュエルシード。だから賭けよう。お互いが持っている全部のジュエルシードを」

 

なのはは今まで集めて来たジュエルシードをレイジングハートから出す。

 

「それからだよ、全部それから。私達の全てはまだ始まってもいない」

 

レイジングハートを構えてフェイトに向き合う。

 

「だから。本当の自分を始めるために、始めよう。最初で最後の本気の勝負!」

 

真剣な瞳でフェイトを見据える。フェイトはなのはの瞳に僅かに気圧されながらもバルディッシュを構える。

 

星光の少女と雷光の少女がぶつかる!

 

 

 

場所は変わりアースラでクロノとエイミィが戦い始めたなのはとフェイトをモニターで見る。

 

「戦闘開始、かなぁ?」

 

「ああ、戦闘空間の固定は大丈夫か?」

 

「上空まで伸ばした二重結界に戦闘訓練用の建造物、誰にも見つからないし、どんだけ壊しても大丈夫。しかし、ちょっと珍しいね。クロノ君がこんなギャンブルを許可するなんて」

 

「なのはが勝つに越したことはないし、沢田達や古里にも頼まれたんでね。勝敗はどう転んでも関係ないしね」

 

「なのはちゃんが戦闘で時間を稼いでくれている内に、フェイトちゃんの帰還先追跡の準備っと」

 

クロノ達は勝敗に関係無く、フェイトを追跡する準備を進めていた。恐らくフェイトは勝っても負けてもプレシア・テスタロッサの元に帰還する。それを追跡して“主犯”である彼女を逮捕する腹積もりなのだ。

 

「頼りにしてるんだ。逃がさないでくれよ」

 

「了解♪・・・でも」

 

クロノに頼られて上機嫌で返事するエイミィだが直ぐに沈んだ顔になる。

 

「なのはちゃんに伝えなくていいの?プレシア・テスタロッサの“家族”と“あの事故”の事?」

 

「その事は沢田やリボーン、古里にも言うなと言われているんだ。なのはは優しすぎるから、その事<プレシア・テスタロッサの“事情”>を知れば、フェイトとの戦いに集中できなくなる。それに勝ってくれるに越したことはないんだ。今は、なのはを迷わせたくない」

 

そして再びなのはとフェイトの戦いに視線を戻すクロノとエイミィ。

 

 

 

だが彼らは知らない、今まさにこの戦いを、アースラのモニターで写している戦いの映像を見ているのが自分たちだけではない事に。

 

暗くコンピューターや色んな機械で埋め尽くされた研究室で一人の“赤ん坊”がアースラのコンピューターに密かにハッキングをして、なのは達の戦いの様子を盗み撮りしていることに。

 

「フフフフフフ。リボーンとボンゴレが最近、管理局と魔導師に関わりを持ったと聞いたので暇潰しに監視していたら面白い物が見れたな。なるほど。あれが管理局の使う魔法か、原理は恐らく我々の使うリングの炎と匣と同じだな。彼等<管理局>の次元科学には以前から興味があった。これは良い機会かもしれんな」

 

その“赤ん坊”はとても赤ん坊とは思えないほど流暢に言葉を喋り、不敵な笑みを浮かべながら眼鏡を掛け直す。

 

リボーンとは色が違う“緑色のおしゃぶり”を首から下げ、足元には小型のワニがいた。その“赤ん坊”

はこの映像をツナ達と因縁ある“奴等”に送信する。

 

 

 

ある城をアジトにする顔中傷だらけの男はタブレットに写し出されるなのは達を眺めていたが。

 

「・・・・・・フン」

 

くだらんと云わんばかりにタブレットを投げ捨てた。

 

 

 

あるメジャーランドの廃墟をアジトにする個性的な髪型をし、整った顔立ちに左右非対称<オッドアイ>の少年もタブレットを眺める。

 

「ほう、これが管理局の魔導師ですか。闇社会の噂程度には聞いていましたが、まさか沢田綱吉と関わりを持つとは。クフフフフ」

 

その少年はなのは達を、嫌なのは達の“魔法”を興味深そうに眺める。

 

 

 

ツナ達の通う並盛中学の応接室。現在は“ある少年”の仕事部屋になったその場所で一人の少年がタブレットに送られてきた映像を眺める。

 

「・・・・・・・・・」

 

その少年は、なのはとフェイトの目に最近興味を抱いた“少女”の姿が重なる。が、直ぐに興味を失いタブレットを置いてその“少女”の家に食事に行こうとする。最近“少女”の家に住むようになった“騎士達”が五月蝿い(主に剣士と赤毛の騎士)が適当にあしらえば良いだけなので気にしない。草壁に連絡を取り車を出させ、応接室を後にする。草壁自身も最近、金髪の騎士とモジモジしながらも仲良く談笑する姿を見かける。少年は青い犬嫌狼を気に入っており狼自身も彼になついている。少年にとってなのはとフェイトの真剣勝負なんかよりも“少女”の料理の方が重要なのだ。

 

 

その青年は楽しそうに鼻歌を歌う。

 

「♪~♪~♪~♪今頃は高町なのはちゃんとフェイト・テスタロッサちゃんの真剣勝負が始まった所かな♪楽しみだなぁ、彼女達と綱吉君がマッチングすると一体何が起こるのか♪」

 

その青年、“白蘭”はまるで子供のように純粋にこれから起こる“出来事”を楽しむ。

 

 

 

 

なのはもフェイトもクロノ達も知らない、ボンゴレと、ツナ達と関わりがある彼等といずれ出会う事に。

 

決して自分達と分かり合えない、本物の“悪<ワル>”を。

 

 

 




今回はここまでにします。

ふと思ったのですが、フェイトも守護騎士達も“アイツら”に比べたらカワイイ物ですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光再び Ⅲ

なのはとフェイトは空中戦を繰り広げていた。ユーノとアルフとボンゴレ&シモンはその戦いを見ていた。

 

桃色の光と金色の光が空中でぶつかるも桃色の光<なのは>は金色の光<フェイト>に押し負けてビルを突き破り海面まで吹き飛ぶ。

 

「「なのは(ちゃん)!!」」

 

ツナとユーノがなのはを心配するが、なのはは海面スレスレを滑空しながら飛ぶ。リボーンと獄寺と山本は密かに会話をしていた(了平はなのはの戦いに集中していた)。

 

「(なのはも大分動きが良くなってきたな)」

 

「(ま、十代目やリボーンさんに鍛えてもらったんだ。あれぐらいできて当然だろう)」

 

「(なぁ小僧、なのはとフェイトってどれぐらい強いんだ?)」

 

山本が『最強の赤ん坊 アルコバレーノ』の一角を担う一人にして、『世界最強のヒットマン』のリボーンに聞く。

 

「(そうだな、『リング争奪戦』の時のツナと手を抜いていたXANXAS位はあるかもな)」

 

リボーンが『百戦錬磨の強者の目』でなのはとフェイトの実力を冷静に述べる。

 

 

「《フォトンランサー》」

 

「ファイア!」

 

滑空するなのはを追いながらフェイトは魔力弾を放つ。フェイトの『フォトンランサー』をかわしながら上空に回り込み、今度はなのはがフェイトの後ろを捉え魔力弾を放つ。

 

「《ディバインシューター》」

 

「シュート!」

 

フェイトは魔力弾をかわすがなのはは魔力弾を操作して当てようとする。

 

「《サイス》」

 

フェイトはバルディッシュを《クレッセントフォーム》にしてなのはの魔力弾を打ち落とし、なのはに接近する。

 

「シュート!」

 

なのはは更に魔力弾を一発放つもフェイトにかわされ金色の大鎌が襲いかかるが。

 

「フッ!」

 

「ッ!」

 

ギリギリで障壁を張り防ぐ。攻撃をするフェイトと防ぐなのは、大鎌と障壁がぶつかり、火花が散るが先程フェイトがかわした魔力弾を操作して後方から攻撃するが。

 

「ファイア!」

 

「ああっ!?」

 

それに気づいたフェイトが片手を上げて至近距離から魔力弾を放ちなのはを引き剥がす。後方から来た魔力弾をソッとかわし、魔力弾はそのまま消えてしまい、吹き飛んだなのははビルを貫通して海に叩き落とされる。

 

フェイトはなのはがぶつかったビルと向かい側のビルの屋上の手摺に立つ。

 

「フゥ、ハァ、!?」

 

粉塵で何も見えなかったが、突如桃色の閃光がフェイトに向かって放たれる。

 

『フェイト(ちゃん)!?』

 

炎真達シモンファミリーが叫ぶが、ギリギリかわしたフェイトは空中に飛び上がり体制を整える。煙が晴れるとそこには肩で息しながらもレイジングハートをフェイトに向けて構えるなのはがいた。

 

「《やはり実力的には彼女の方が上です。簡単に勝てません》」

 

レイジングハートがなのはに進言するがなのはは毅然としてフェイトを見据える。

 

「知恵と戦術はフル回転中、“切り札”だって用意してきた。だから後は、“負けないって気持ち”で向かっていくだけ!でしょ?」

 

「《オーライ、マスター》」

 

なのはの言葉にレイジングハートが応える。そんななのはの姿を見たリボーンは思う。

 

「(なのはもなのはなりに“覚悟”を決めて戦ってるな。だが、どこか戦い方が“甘いな)」

 

そして再び空中戦を繰り広げるなのはとフェイト。フェイトを追いながらなのはは次々と魔力弾を展開する。元々スピード特化のフェイトに速さで追い付けないのはわかっているので“回り込み”や魔力弾で牽制しながらフェイトに近づくなのは、二人は空高く上昇する。フェイトは捻り込みでなのはの後ろを取り魔力弾を連射するも、なのはは雲に隠れて魔力弾をかわすも今度は雲の上を滑空する。フェイトはなのはに接近し近接戦闘を繰り広げる。二人は更に上昇しながらぶつかり合う。レイジングハートとバルディッシュがぶつかり火花が散る。その衝撃で後ろに下がる二人。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

「フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、(キッ)」

 

フェイトの脳裏に過去の記憶が浮かぶ、『苦悶の表情を浮かべて泣き崩れる母の姿』。

 

「私がここで負けたら、母さんを助けてあげられない」

 

更にフェイトの脳裏に『母さんとの思い出』が浮かぶ。『二人でピクニックに行った記憶』、『幸せそうに笑い合う母さんと自分』。

 

「あの頃に、戻れなくなる!」

 

足元に魔法陣を展開し戦おうとするフェイト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが『偽りの記憶』とも知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ープレシア・テスタロッサのアジトー

 

まるで王様の謁見場のような場所でフェイトの戦いを見ていたプレシア・テスタロッサは玉座の近くの小さな机に置かれた『写真』を見る。

 

「アリシア、私は酷いお母さんね?貴女だけではなくフェイトにまで辛い想いをさせてきて・・・本当に酷いお母さんよね・・・でも貴女は今でも世界中の誰よりも大切な私の宝物・・・だから私は・・・たとえどんな罪を犯す事になっても・・・たとえあの子<フェイト>に一生怨まれることになっても・・・」

 

プレシアの脳裏に過去の記憶が浮かんだ。仕事が忙しくアリシアにずっと寂しい想いをさせてきた。アリシアが学校に上がる前に二人でゆっくり過ごせるように頑張って来た。

 

だが、手柄を求める上層部の勝手な決定で全てを失った。『仕事が終われば一緒に過ごせる』とアリシアとの『約束』を果たせなかった。

 

「アリシア、私は貴女を取り戻したい・・・フェイトにはもう・・・私なんて必要無い・・・あの子にはあの子の事を“大切なファミリー”だと言ってくれる人達がいる・・・・でも私には・・・私にはアリシア、貴女しかいない・・・貴女しかいないのよ・・・・・・」

 

懺悔するように咽び泣くプレシアの嗚咽がプレシア以外誰もいない部屋に虚しく響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで、次の投稿は来年になるかもしれません。では皆様、良いお年を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光再び Ⅳ

皆様、明けましておめでとうごじゃいます!

今年も『かてきょーリリカルREBORN』をよろしくお願いします。


なのはとフェイトの戦いもいよいよ終盤に差し掛かってきた。空中で高速戦闘を繰り広げるなのはとフェイト、つばぜり合いを続けながらフェイトは追憶する。

 

「(我が儘を言って母さんを困らせてばかりだった)」

 

バルディッシュをハルバート形態にしてなのはに突っ込むもなのはは障壁を張り防ぐ。

 

「(あの日の・・・事故の直前までははっきり覚えているんだ)」

 

それは今よりも幼い頃の記憶、ベランダから母の仕事場を眺めていた時、夕焼けの世界で光が溢れた。

 

「(母さんのいる場所が、遠くで光った・・・・次に目が覚めたときに見たのは泣きながら私を見ている母さん・・・私はあの事故で怪我をしてずっと眠ってたんだって)」

 

仕事を気にすること無くこれからはプレシアと二人で幸せに暮らせるとフェイトはそう思って疑わなかった。だが・・・・・・。

 

『どう?《アリシア》、美味しい?』

 

自分の『名前』を呼んでくれなかった。戦いの最中にフェイトは思わず呟く。

 

「違うよ・・・母さん、私は《フェイト》だよ・・」

 

だが記憶の中の母は言う。

 

『ほら可愛いわ・・・《アリシア》』

 

母の口から放たれた言葉にフェイトは一瞬気をそらす。

その隙を見逃さずなのはは障壁を少しずらしてフェイトの攻撃をかわす。フェイトを頭を振る。

 

「(違う!・・・どっちでもいい!母さんが私をどう思っていようがどっちでもいいんだ!・・・この戦いに勝って、ジュエルシードを母さんに渡して・・・渡して・・・でも、そうしたら私は炎真達とお別れしないといけないの?)」

 

フェイトは炎真達のいるビルの方を見る。

 

心配そうに自分を見つめるアーデルが、ジュリーが、紅葉が、薫が、らうじが、しとぴっちゃんが、そして炎真の姿がフェイトの瞳に映った。この戦いに自分が勝てば母であるプレシアは喜んでくれるかもしれない。

 

だがそれは、フェイトが『地球にいる理由』が無くなる事を意味していた。

 

自分を本当の妹のように愛情を注いでくれるアーデル。

 

セクハラ紛いな事をされたが遊びを教えてくれたジュリー。

 

いつも騒がしいが不器用に優しい紅葉。

 

口下手だけど思いやりのある薫。

 

いつも自分を心配してくれるらうじ。

 

抱きつかれたりされるのは困るがそれでも自分を大好きと言ってくれるしとぴっちゃん。

 

そして、こんなに幸せな時間をくれた母親以外で大切だと言える人、炎真。

 

初めて炎真達とご飯を食べたとき幸せで胸がいっぱいになった、皆で大掃除したり、温泉に行ったり、買い物に行ったりとプレシアとの記憶に負けず劣らず光輝く『思い出』がフェイトの頭をよぎった。

 

「アクセルシューター!」

 

「!!!?」

 

気を反らしたフェイトになのはは魔力弾を放つ。フェイトは魔力弾を紙一重でかわす。

 

「(いけない。集中しなきゃ、今はこの勝負に勝つことだけを考えなきゃ・・・)」

 

自分の心に浮かんだ『迷い』は振り払うかのようにフェイトはなのはに向かった。

 

 

 

炎真達シモンファミリーはフェイトとなのはの戦いを見守る。アーデルが炎真に話しかける。

 

「炎真、白蘭から聞いた情報によるとこの戦いが終わればプレシア・テスタロッサが介入してくるらしいわね」

 

「うん、ツナ君達とも打ち合わせは済ませてある。プレシア・テスタロッサが何時仕掛けてもフェイトちゃん達を守れるように準備はしているよ」

 

炎真はいつでも戦闘状態になれるように身構え、向かいのビルにいるツナも手袋を嵌めて死ぬ気丸を持ちナッツも臨戦態勢でツナの肩に乗っていた。

 

「(準備はできている)」

 

「おい炎真、フェイトが決めるようだぜ」

 

ジュリーの言葉でフェイトの方を向く炎真。そこには設置型のバインドでなのはを拘束しいくつもの黄色い稲妻の玉を浮かばせたフェイトの姿があった。

 

 

フェイトはバルディッシュを構え、稲妻の玉から放たれる魔力弾をなのはにぶつける。その威力はなのはの後方のビルまで破壊する。なのはの姿が見えなくなる程の攻撃を与えるとダメ出しのように稲妻の玉を集めて黄色い槍のような攻撃を放つ。

 

「スターク・エンド」

 

放たれた槍は横切ったビルを破壊しながらなのはのいる地点に当たる。

 

ズバアアアアアアアアアンンン!!!!!!

 

攻撃が当たるとその衝撃でなのはがいる地点周辺のビルまで破壊する。

 

「・・・ハァ」

 

フェイトは渾身の攻撃を放ち力が抜く。バルディッシュも斧の形態に戻る。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・』

 

フェイトもツナ達も黙ってなのはのいる地点を見つめる。煙が舞いなのはの姿が確認できないが、煙が晴れるとそこには。

 

「なのはちゃん・・・・・・」

 

バリアジャケットが少し破け焦げ跡があるがなのはは毅然と立っていた。

 

「《いけますか?マスター》」

 

「いけるよ。レイジングハート」

 

なのははレイジングハートをフェイトに向ける。レイジングハートは杖の形からバスターモードに変形する。

 

「・・・!・・・」

 

「・・・・・・ウオオオオオオオオオオオ!!」

 

フェイトはなのはに向かおうとするが。

 

「!?」

 

今度はフェイトがなのはの設置型のバインドに動きを封じられる。なのははフェイトから攻撃を受けながらバインドを設置していた。

 

「ッ!?」

 

なのははレイジングハートを大砲のように構えて引き金を引く。

 

「『デイバイイイイイイイイング・バスター!!!!」

 

桃色の魔力の奔流『ディバイング・バスター』がフェイトを襲う。フェイトは障壁を張って防ごうとするが。

 

「グウウウウウウ!!・・・あの子だって、もう限界の筈・・・」

 

だがなのはは止まらない。フェイトのバリアジャケットのマントと手袋が破れて行き。

 

「た、耐えきれない!グウ!グウゥ!!ッ!?」

 

突如なのはの砲撃が終わった。防ぎきったと思って安堵するフェイトは自分のバリアジャケットや周りの魔力が遥か上空にいるなのはに集まっていくのを見た。それを見たリボーンが呟く。

 

「なのはの奴《切り札》を使う気だな」

 

「うん、俺達と考えたなのはちゃんオリジナルの《必殺技》」

 

「使いきれず、ばらまいちゃった魔力をもう一度自分の所に集める」

 

フェイトは呆然と呟く。

 

「収束・・・砲撃・・・」

 

「ツナさんやリボーン君、そしてレイジングハートと考えた、知恵と戦術、最期の《切り札》」

 

なのはの集めた魔力を収束して放つ《必殺技》。

 

「受けてみて!これが私の全力全開!」

 

「クッ!ウアアアアアアアアアアア!!」

 

フェイトも足掻くように稲妻を放つが。

 

「『スターライトォォ・ブレイカーーーーーーーーーーーーー』!!!!」

 

なのはの収束砲撃がフェイトを襲う!

 

「ッ!?」

 

フェイトは防ごうとするが桃色の魔力の激流に飲み込まれてしまった。

 

なのはの砲撃が弾けてしまいツナ達や炎真達のいるビルに襲いかかるが。

 

「ナッツ、防御形態」

 

「GAAAU!」

 

「『大地の重力』」

 

ツナは超モードになりナッツはその姿をマントに変えて余裕で防ぎ、炎真も戦闘状態になり重力球を出してなのはの砲撃を反らした。リボーンはなのはの『スターライト・ブレイカー』を観察し、ボンゴレ&シモンの守護者達は思った。

 

『「(なのは、結構エグいな・・・・・・)」』

 

「(やるななのはの奴。メローネ基地での完成型XBURNERクラスはあるな)」

 

「(なのははもしかすると下手をするとXANXASや骸に雲雀さんや白蘭と同タイプかも・・・・・・)」

 

「(敵対する者には容赦しない、あの子<なのは>D・スペードと同じタイプかも・・・・・・)」

 

動きを封じた相手に容赦しない砲撃をぶつけるなのはの姿勢にツナと炎真はなのはにちょっと恐怖を抱いた。

 

これが後に『管理局の白い魔王』とも『冥王』とも『悪魔』とも呼ばれる少女の、その片鱗をツナ達が見た瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なのはって一歩間違えればXANXAS達と同種になりそうですよね・・・・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決着、そして・・・

ー???ー

 

モニターや機材に囲まれた部屋で緑色のおしゃぶりをぶら下げた赤ん坊、ヴェルデはニッとした笑顔を浮かべた。

 

「ホウ、これが管理局の魔法か。私は魔法等非科学的な物は信じないが、管理局のソレは科学との融合で生まれた産物か、これは面白い。これなら以前から研究していた、“幻術”を“本物”にする装置の完成におおいに役立てる」

 

現在ヴェルデが研究している“装置”が後に起こる“戦い”に登場する事を今はまだ誰も知らない。

 

 

ー黒曜ランドー

 

「クフフフフフ、なるほど面白い。これが管理局の魔法嫌、あの少女<なのは>の力ですか、いずれ会ってみたい物ですね」

 

クフフと笑いながら、“六道骸”は席を立ち“ある場所”に向かった。

 

「さて、あの“馬鹿弟子”を迎えにいきますか。待っていなさい“フラン”!」

 

 

 

ーヴァリアーアジトー

 

「・・・・・・くだらん」

 

なのはとフェイトの戦いをその一言で片付け、タブレットを踏み潰した傷の男、“XANXAS”は自身の守護者から食事の用意ができたと聞き、食堂に赴いた。

 

 

ー海鳴 八神家前ー

 

雲雀恭也は八神はやての家のソファーで寛いでいた。

 

「雲雀さん♪今日は雲雀さんの好物のハンバーグやで♪」

 

車椅子の少女八神はやては愛想ゼロの雲雀に構うことなく明るく接していた。

 

「・・・・・・・・・」

 

雲雀は自分の足元にいる狼形態のザフィーラの頭をソッと撫でた。

 

「・・・・・・(パタ、パタ、パタ、パタ)」

 

撫でられたザフィーラは嫌がりもせず、静かに尻尾を振っていた。

 

「てめえ雲雀!はやてが話かけてんのに無視すんじゃねえ!今日と言う今日こそ息の根止めてやらぁ!」

 

バキッ!

 

「あああぁぁぁぁ~~・・・」

 

雲雀の態度に怒ったヴィータが雲雀に飛びかかるが、直ぐに返り討ちに合う。

 

「ヴィータも飽きん、なッ」

 

「これでざっと二十連敗ですか、なッ王手!」

 

「なっ!?草壁殿、その一手待った!」

 

「戦場に“待った”は無しですよ“烈火の将”殿」

 

「それは、そうなのですが・・・」

 

「哲矢さん、シグナム、もうすぐご飯ですから将棋はそこまでにしてください」

 

食器を並べていたシャマルに言われ片付けを始める草壁とシグナム。

 

後に八神はやてと守護騎士達の“盟友”となる少女達の戦いをその少女達と“腐れ縁”で結ばれる事になる雲雀も今は知らない。

 

 

ーなのはsideー

 

なのはの切り札『スターライト・ブレイカー』。周囲の魔力を自身に吸収・収束させ砲撃魔法として放つ強力な魔法だが。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

膨大な魔力は9歳の女の子の肉体に負担を掛けてしまう、レイジングハートが砲撃魔法を放った熱を噴射し、なのは自身も息切れをおこしていた。

 

「はぁ、はぁ、うっ!」

 

空中で倒れそうになるなのはを超モードのツナが抱き止める。

 

「ツナさん・・・・・・」

 

「よく頑張ったな、なのは」

 

抱き止めながらなのはの頭を優しく撫でるツナ、なのははとても安心しきったような笑みを浮かべる。

 

「あっ、フェイトちゃんは・・・?」

 

「大丈夫だ、ほら」

 

なのはの眼下で爆発の煙の中から落下する黄色い光<フェイト>に近づく紅い光<炎真>が見えた。炎真がフェイトを抱き止めて近くの瓦礫にソッと横たわらせる、炎真の耳の通信機からアーデルから連絡がくる。

 

「《炎真、フェイトは・・・?》」

 

「大丈夫。気を失ってるだけだよ」

 

炎真がそう言うと通信機越しからアーデルだけでなくジュリー達の安心した声が聞こえた。

 

「《炎真、白蘭からの情報だと・・・》」

 

「うん、ツナ君となのはちゃんもすぐ来るから皆も備えておいて」

 

了解とアーデルとの通信を切るとフェイトの意識が戻った。

 

「フェイトちゃん、大丈夫?」

 

「炎真・・・?」

 

「よかった、フェイトちゃんが無事で」

 

ソッと頬を撫でる炎真にフェイトは気持ち良さそうに目を細める。するとツナとなのはが降りてきた。フェイトはなのはを見ると警戒する。

 

「ッ!?」

 

「大丈夫?」

 

「フェイトちゃん、動ける?」

 

炎真に支えられながらフェイトは身体を動かして空に飛ぶ。

 

 

 

ー時の庭園ー

 

プレシア・テスタロッサはアジトである時の庭園からフェイトの様子を見て呟く。

 

「もういいわ、フェイト。私の為に戦わなくていい、貴女の“家族”を名乗る資格なんて私には無いわ。貴女の為に、そして貴女を大切に思う“家族”の為に、これから私がやる事をどうか、許さないで・・・!」

 

プレシアは魔法陣を展開させた。

 

 

ーアースラー

 

「ッ!?高次魔力確認!魔力波長は“プレシア・テスタロッサ”!戦闘空域に、次元跳躍攻撃!」

 

アースラで別次元からの攻撃魔法を検知したエイミィはリボーン達に連絡をする。

 

 

ーツナsideー

 

「《ツナ!空を見ろ!》」

 

エイミィから連絡を受けたリボーンは直ぐにツナに通信を送ると、空に紫色の雷が迸る暗雲が立ち込め始めた!

 

「(来た!)炎真!」

 

「(コクン!)」

 

紫色の雷は荒れ狂い、海に落ち瓦礫を破壊する。そしてフェイトの頭上の雲が渦を巻く。フェイトは唖然としながら呟く。

 

「母さん・・・!」

 

「ハッ!」

 

なのははフェイトに向かった飛ぶ。

 

「ナッツ!防御形態!!」

 

「フェイトッッッ!!」

 

ツナと炎真もワンテンポ遅れて飛ぶ。

 

「フェイトちゃーーーーーーーーーーん!!!」

 

なのははフェイトに手を伸ばすが直前にツナに救出され、フェイトの頭上の雲から極大な雷撃がフェイトを襲う!その直前、フェイトの頭上に巨大な黒い球体が現れると、極大の雷撃は急カーブを描きフェイトから反れる。

 

「・・・炎真・・・?」

 

「『大地の重力』!!」

 

この世の万物は大地の力、星の力である重力に逆らうことができない、嵐も雨も雷も霧も雲も太陽も、等しく大地の影響を受ける。唯一重力の影響を受けないのは“大空”のみーーーーーーー。

 

ーアースラー

 

その光景を見たクロノとエイミィは仰天した。次元跳躍するほどの極大魔法の軌道をずらした炎真の能力に驚いたのだ。

 

「ウソッ!あんな強力な極大魔法の軌道をずらすなんて!」

 

「・・・!エイミィ!それよりもあの魔法はどこから来ているんだ!」

 

「あぁ!すみません!・・・・魔力発射地点特定!空間座標確認!」

 

この情報をアースラの司令室にいるリンディ達に送る。

 

「突入部隊、転送ポートから出動!任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保です!」

 

リンディは転送ポートにいる魔導師達に指示を送る。

 

 

ー時の庭園ー

 

「《転送反応、庭園内に侵入者多数》」

 

防衛システムから侵入者が来たと報告を聞き、恐らく管理局の魔導師だろうとプレシアは推察するが突然血を吐きながら咳き込む。

 

「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!・・・まだ、終われないのよ・・・アリシアとの約束の為にも・・・フェイトが・・・私の事を“憎んでくれる”まで・・・!」

 

プレシアはフラフラになりながらも部屋を出て、侵入者の迎撃に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

残酷な真実

ーアースラブリッジー

 

時の庭園に転送された管理局の魔導師達はプレシア・テスタロッサの確保の為に行動していた。その光景をアースラで見ていたリンディがいるブリッジに誰かが入ってきた。

 

簡素な服に両手に手錠を付けたフェイトと炎真、ツナとなのはとリボーン、ユーノとアルフ、獄寺・山本・了平、シモンの守護者一同。

 

「・・・・・・」

 

顔を俯かせ沈んだ顔色のフェイトは、自分の手に握った傷だらけになった金色の逆三角形のペンダント、待機状態の己のデバイスであるバルディッシュを見つめた。

 

ー時の庭園・玉座の間ー

 

時の庭園に突入した魔導師達は玉座にたどり着いた。そこには気だるそうにプレシア・テスタロッサが玉座に座っていた。

 

「プレシア・テスタロッサ、“時空管理法違反”により、貴女を拘束します!」

 

魔導師達は杖型のデバイスの切っ先をプレシアに向ける。

 

「!」

 

何人かの魔導師が玉座の奥へ向かうのを眺めプレシアは目を見開き睨む。

 

ーアースラ・ブリッジー

 

玉座の奥の部屋が開き、その奥へ向かう映像はアースラにも配信された。炎真達とツナ達だけはその奥にいる“モノ”が何であるか知っている。

 

「(良いのか炎真?下手するとフェイトの心が壊れるぞ・・・)」

 

「(・・・・・・)」

 

ジュリーの耳打ちに炎真は顔を俯かせる。

 

「(リボーン・・・)」

 

「(情けねぇツラすんな、この状況じゃ遅かれ早かれだ・・・)」

 

ツナも炎真と同じ気持ちなのか、やりきれないと言わんばかりにモニターを見つめた。

 

そして、“それ”が姿を現す。カプセルに入った“フェイトそっくりの少女”、“アリシア・テスタロッサ”が眠っていた。

 

「えっ!?」

 

「・・・!」

 

「(あの子が・・・!)」

 

「(“アリシア・テスタロッサ”・・・フェイトの“オリジナル”か・・・!)」

 

アリシアの姿になのはとフェイトは驚愕を浮かべる。ある程度覚悟していたツナ達やアーデル達もやはり苦々しく顔色になった。

 

ー時の庭園・アリシアのいる区画ー

 

「これは・・・!?」

 

「私のアリシアに、近寄らないでっ!!」

 

驚愕する魔導師達の後ろから玉座にいた魔導師達の蹴散らしたプレシアが鬼の形相で襲いかかった。魔導師の一人な頭を掴み後ろに投げ飛ばす。残りの魔導師がデバイスを向けるが後ずさる。

 

「・・・・・・!!」

 

プレシアは手をかざすと紫色の雷電が区画を覆った!

 

ーアースラ・ブリッジー

 

次の瞬間、フェイト達の目に映ったのは、魔導師達の身体から黒い煙を上げながら倒れていた光景だった。

「・・・アリ、シア・・・?」

 

驚きと戸惑いが混じり呆然とするフェイト。プレシアは眠っているアリシアのカプセルにすがり付く。

 

「《たった9個のジュエルシードでは、辿り着けるか分からないけど・・・もう良いわ、終わりにする・・・この子を亡くしてからの時間も、この子の“身代わりの人形”を娘扱いするのも・・・!》」

 

『(ピクン!)』

 

プレシアの言葉に炎真達シモンファミリーが憤然とした態度になる。ツナ達も炎真達程ではないが驚愕と怒りが混ざった顔になる。そしてフェイトは。

 

「ッ!!??」

 

驚愕するフェイトの耳にプレシアの声が入った。

 

「《聴いていて?貴女の事よフェイト・・・折角アリシアの“記憶”を上げたのに、そっくりなのは見た目だけ、役立たずでちっとも使えない、私のお人形・・・!》」

 

その光景を管制室で聞いていたクロノは憤然とし、エイミィは顔を俯かせながら、アリシアについて話す。

 

「・・・最初の事故の時にね、プレシアは実の娘アリシア・テスタロッサを亡くしているの。安全管理企業で起きた“魔導炉の暴走事故”・・・アリシアはそれに巻き込まれて、その後プレシアが行っていた研究は、使い魔を越えた“人造生命の生成“」

 

 

ーアースラ・ブリッジー

 

通信でエイミィの話を聞いた一同は驚く。それは“神の領域”と言っても良い禁忌。

 

「《そして、“死者蘇生の技術”・・・》」

 

「《“記憶転写型特殊クローン技術”、“プロジェクトF<フェイト>・・・!》」

 

エイミィとクロノの言葉を肯定するかのようにプレシアは語り出す。

 

「《そうよ・・・その通り、でも失った物の代わりにはならなかった・・・作り物の命は、所詮作り物》」

 

見えているのかプレシアはフェイトに視線を向ける。

 

「《アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。我が儘も言ったけど、私の言う事をとても良く聞いてくれた、アリシアはいつでも私に優しかった・・・!》」

 

慈しむようにガラス越しのアリシアを撫でたプレシアは絶望するフェイトに侮蔑の視線を送る。

 

「《フェイト、貴女は私の娘じゃない。ただの“失敗作”。だから、貴女はもう要らないわ・・・何処へなりとも消えなさい!!》」

 

「ッ!?」

 

「(ギリッ)」

 

母親からの完全な拒絶、それは幼いフェイトにとってどれ程の絶望か。炎真は人知れず血が滴る程に拳をきつく握った。だがプレシアの瞳に一瞬侮蔑とは違う“別の光”が浮かんだが、約二名以外気づかなかった。

 

「《良いことを教えたあげるわフェイト、貴女を作り出してからずっとね・・・私は貴女が、“大嫌い”だったのよ・・・!》」

 

「ッ!!・・・」

 

フェイトの掌から力が抜けてデバイス状態のバルディッシュが静かに落ちて砕けた。それはまるでフェイトの“心”を現すかのように。

 

「ッ!フェイトちゃん・・・」

 

「フェイト・・・」

 

「フェイトちゃん・・・!」

 

『フェイト・・・・・!』

 

なのはとユーノ、炎真達シモンファミリーがフェイトに集まる。

 

『・・・・・・!』

 

獄寺と了平、普段は暢気な山本ですらプレシアに怒りを燃やすかのように睨む。だがリボーンとツナはプレシアの瞳に一瞬浮かんだ“違和感”を感じていた。すると突然管制室からエイミィから通信を送られる。

 

「《ちょっ、大変!見てください!屋敷内に魔力反応多数!》」

 

玉座の間に大量の魔方陣が展開され、その中から重厚な鎧騎士が大量に現れた。オペレーターが現れた騎士達の魔力反応を報告する。

 

「魔力反応、いずれもAクラス!総数60、は80まだ増えます!」

 

報告を聞いてリンディはプレシアに鋭い目線を送り。

 

「プレシア・テスタロッサ!一体何をするつもり!?」

 

「《私達は旅立つ、永遠の都“アルハザード”へ!!》」

 

プレシアが宣言するとアリシアのカプセルが外れ、二人は玉座の間に行く。プレシアはフェイトが今まで集めた9個のジュエルシードを眼前に浮かべ。

 

「《この力で旅立って、取り戻すのよ!全てを!!》」

 

プレシアの魔方陣を中心にジュエルシードが回り煌めく。すると次元空間に歪み生まれ、アースラは揺れ、警報がけたたましく鳴る。

 

「うわッ、次元進展数!」

 

「浸透防御!!」

 

「ジュエルシード発動!更に強くなります!」

 

「波動係数拡大!このままだと次元断層が!」

 

慌てるブリッジを見ながらなのはは瞳から光を失ったフェイトをソッと抱き締めた。

 

「(リボーン・・・!)」

 

「(あぁ、白蘭の情報通りならこのままではプレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサは“虚数空間”に消えて、フェイトの心に拭いきれない“傷”を残すと言っていた)」

 

「(させないよ・・・!)」

 

「(炎真・・・)」

 

「(このままフェイトの心に一生食い込む“傷”なんて残さない、残してたまるものか!)」

 

その時の炎真の瞳には強い“覚悟”が炎のように燃え上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

突入開始!

ーアースラ艦内通路ー

 

プレシアがジュエルシードを起動させ、アルハザードへの道を作り出そうとし、次元震を引き起こし、その影響でアースラ艦内は揺れと警報がけたたましく鳴っていた。アースラ艦内通路をクロノがブリッジに向かっていた。

 

「(“忘却の都アルハザード”・・・禁断の秘術が眠る土地、その秘術で無くした命を呼び戻そうとでも・・・?)」

 

クロノは走りながらカードの形の待機状態の自身のデバイスを起動させ杖にする。

 

ー時の庭園 プレシアの間ー

 

プレシアは光輝く魔方陣を眺めながら。過去を思い出していた。アリシアの記憶を持ったフェイトはアリシアとまるで違かった。利き腕、瞳の色、魔力資質、人格、どれも自分の愛娘のアリシアと違かった。その事実がプレシアの心を狂気に染めていった。

 

【この子はアリシアじゃない、ただの“失敗作”、アリシアの身体は、まだ綺麗なまま残っている。ただ命が抜け落ちているだけ、アリシアの命を取り戻す方法、それを探さないといけない、ここからは“禁忌の道”、外に出して働かせる“道具”がいる・・・・・・フ・・・アハハハハハそうだ!そうだわ!あの子をあの”偽者”を育て上げて、使えば良いのよ!】

 

そして、プレシアは教育係として拾った山猫を使い魔に改造し、“リニス”と名付けフェイトの教育係にした。

 

フェイトは使い魔のアルフと共に健やかに成長していったが、プレシアはアリシアの事しか見ておらず、フェイトの事をリニスに任せっきりにしていた。

 

リニスは何度もフェイトと一緒の時間をつくってほしいと言われるも、フェイトをもはや“道具”としか見ていないプレシアにとってどうでもいい存在になっていた、病魔に侵された我が身がその狂気を早まらせた。

 

「アリシアはもう戻って来ない」とリニスに言われたが、当時のプレシアにはアリシアに何もしてやらなかった後悔の念に捕らわれリニスの言葉を拒絶し、リニスの“生命”はフェイトが一人前の魔導師になったら消えるようにプログラムした。

 

「(私は本当に酷い母親・・・いや母親なんて名乗る資格すら無い、おこがましい女・・・!)」

 

リニスと同じ言葉を“あの少年”、“古里炎真”も言っていた。自分と同じように『“大切な家族”を失った者の瞳』をし、フェイトを家族と呼ぶ不思議な少年。

 

【フェイトは貴女にとっては出来損ないの『クローン』かも知れないけど、アリシアにとっては『妹』のような存在なんじゃないのか!?】

 

「もっと早く・・・・あの少年に出会っていれば、フェイトに少し、優しくなれたのかもしれないわね・・・・」

 

自嘲するように呟き、黄昏るプレシアはカプセルに入ったアリシアと共に、最深部へと降りていった。

 

 

 

ーアースラブリッジー

 

警報がけたたましく鳴り響くブリッジ。

 

「次元震増加中!」

 

オペレーターの報告を聞いてなのはは生気を失ったフェイトを一瞥すると決意を込めた瞳になり顔を上げる。

 

「ツナさん・・・!」

 

「うん・・・皆!」

 

「了解です10代目!」

 

「このまま大人しくなんてできねぇよな」

 

「極限に行くぞ!」

 

「炎真、お前らシモンファミリーはフェイトの傍にいてやれ」

 

「(コクン)・・・」

 

リボーンの言葉に頷く炎真と守護者(何人かは渋々だったが)。そしてブリッジにやって来たクロノと共にツナ達となのはとユーノは時の庭園に向かった。

 

アースラの管制室で解析していたエイミィから報告が挙がる。

 

「《庭園の駆動炉が異常稼働!駆動炉を暴走させて足りない出力を補おうとしている!?》」

 

「っ・・・!」

 

エイミィからの報告にリンディは息を飲む。

 

ー時の庭園内ー

 

転移されたツナ達(フル装備)はプレシアの間へと向かっていた。クロノは通路のあちこちから崩れている穴に目を向け。

 

「ユーノは知ってるな、この穴には気をつけろ!」

 

『?』

 

クロノの言葉にどういう意味だと言わんばかりの顔になるなのはとツナ達にユーノが説明する。

 

「“虚数空間”、魔法ができない空間だ!飛行魔法も発動しない、落ちたら重力のそこまでまっ逆さまだ!」

 

「つまり、魔導師にとっては鬼門って事か?」

 

「虚数空間の中を移動できるとしたら、ツナさん達のように魔法を使わない“炎使い”しか行動できないって事です」

 

「っ・・了解・・・!」

 

ユーノの言葉になのはは返答する。通路を突き進むなのは達は開けた場所に着いた。するとそこには、プレシアの魔導人形達が待ち構えていた。なのは達もツナ達も構え、クロノはその奥のプレシアの間へと目を向ける。

 

「二手に別れる、君たちはは最上階にある駆動炉の封印を!」

 

「クロノ君は?」

 

「プレシアを止めにいく!今道を作る!」

 

杖を構えて剣の形をした魔力弾を展開するクロノの横に並ぶ者達がいた。

 

「カッコつけんてじゃねえよ!」

 

「ここで活躍すんのが助っ人だろう?」

 

「俺達も共に戦うぞ!」

 

「君たち・・・!」

 

「三人共・・・!」

 

「10代目、こちらは俺達に任せてなのはとユーノと一緒に駆動炉の方を!」

 

「こっちは俺らだけで大丈夫だ!」

 

「極限に任しとけ!!」

 

「・・・分かった、なのは、ユーノ、リボーン、行こう」

 

「はいっ!」

 

「わかりました!」

 

「命令すんな」

 

ツナと共に駆動炉に向かうなのは達。それを見てクロノは三人に向けて口を開く。

 

「全く、本来は無関係な立場のマフィアが、管理局に協力するなんて・・・」

 

「そう言うなってクロノ、ダチの助けになんのは当然だろ?」

 

「拳を合わせた限り、俺達は極限に仲間だ!仲間の助けになるのにマフィアも管理局も極限に関係無い!」

 

「ま、俺は管理局なんてどうでもいいが、10代目が助けになるって言ったんだからな、助けるのが“右腕”の務めだからな」

 

「フッ・・・それじゃ行くぞ!隼人!武!了平!」

 

「「「応っ!!」」」

 

管理局とマフィアの垣根を越えた共闘戦線が今開かれた。

 

「ファイア!」

 

「嵐+雲、フレイムアロー!」

 

剣の魔力弾と枝分かれした紫色のレーザーが魔導人形を撃ち抜く!そして出鼻を挫かれた魔導人形達に山本と了平が突っ込む!

 

「時雨蒼燕流 攻式八の型『篠突く雨』・・・!」

 

「ウオオオオオオオ!!『マキシマムキャノン』!!」

 

山本の最も得意とする剣技と身体の細胞一つ一つが強靭なバネとしなやかさのパワーを乗せた拳を魔導人形達をぶつけると魔導人形達が次々と薙ぎ倒されていく!

 

 

ーアースラブリッジー

 

その戦闘光景を見ていたリンディは異常事態にあるにも関わらず、少し微笑んだ。

 

「(クロノったら、あんなに友達ができたのね)」

 

我が子の成長に少し喜ぶが直ぐに顔を引き締め。

 

「私も出るわ!庭園内で、次元震の進行を抑えます!」

 

それぞれが、それぞれの成すべき事を成す為に行動していた。

 

だが、金色の雷と紅蓮の大地は未だ戦場に訪れずにいた。

 




全然進まないや・・・・・・。

何か時々この小説消そうかなっと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大地と雷光の絆

またまた長~く投稿中止していました。応援してくれる人達がいるので頑張って見ます・・・不定期ですけど。



ーアースラ・医務室ー

 

「・・・・・・・・・」

 

「フェイトちゃん・・・」

 

プレシアから突き付けられた“残酷な真実”に生気を失った瞳でベッドに横たわるフェイトを炎真とシモンファミリーが付き添っていた。

 

「あの子達<なのは達>が心配だから、アタシもちょっと手伝ってくるね」

 

フェイトが横たわるベッドの隣のモニターでクロノと獄寺、山本と了平が人形兵との戦闘状況を見て、フェイトの使い魔のアルフがフェイトに語りかける。

 

「直ぐ、帰ってくるからね・・・」

 

フェイトの頭を撫でたアルフは炎真達に目を向け。

 

「(フェイトを頼んだよ・・・)」

 

『(コクン)』

 

本当は一緒に行きたい所だか、自分達はボンゴレと違って管理局(と言うよりリンディ)と契約していないので、本作戦に参加できない。アルフは、主犯の関係者だから、ギリギリ参加が認められている。そしてアルフとアーデル達守護者は、アルフを見送る為に部屋を出た。

 

「母さんは・・・・・・」

 

「フェイトちゃん・・・!?」

 

アルフ達が出て直ぐフェイトが呟く。

 

「母さんは・・・私の事なんか・・・一度も見てくれなかった・・・母さんが会いたかったのは、アリシアで・・・私は“失敗作”・・・!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「私・・・生まれてきちゃいけなかったのかな・・・?」

 

「そんな訳ないだろう!!」

 

「炎・・・真・・・?」

 

フェイトの言葉を否定するように、炎真が声を張り上げた。

 

「生まれてきちゃいけないだって? この世にそんな人間なんかいない! フェイトが生まれてきて良かったって思っている人間がここにいるのに、そんな事言わないでよ!」

 

「・・・・・・」

 

涙混じりに炎真はフェイトに語る。

 

「フェイト・・・僕はね、フェイトやアルフと出会って良かったって思っているよ・・・フェイトと出会って、一緒に過ごして、一緒に笑い合って、一緒に遊んで、一緒にご飯食べて、一緒に温泉行ったりして、本当に楽しかったんだ。フェイトと出会って本当に良かったって思っているんだよ・・・!」

 

「・・・・・・」

 

「僕だけじゃない! アーデルも、ジュリーも、紅葉も、らうじも、薫も、しとぴっちゃんも、皆フェイトと出会えて良かったって思っているんだ・・・! フェイトは一人じゃないよ・・・! アーデル達がいる、アルフがいる、あの子だって! フェイトがいてくれて良かったって思っているんだ・・・!」

 

炎真はモニターに映る皆の姿をフェイトに見せた。そこには、丁度アルフがツナとなのは、リボーンとユーノと合流していた。

 

「アルフ・・・あの子・・・何て名前だったけ? ちゃんと教えてくれた・・・!」

 

「フェイト・・・」

 

起き上がるフェイトを支える炎真。

 

「何度もぶつかって・・・私、酷い事したのに・・・話し掛けてくれて、私の名前を呼んでくれた・・・」

 

「・・・・・・」

 

少しずつ生気が戻るフェイトの瞳に涙が浮び、フェイトは炎真に寄り掛かる。

 

「何度も・・・何度も・・・呼んでくれた・・・!」

 

「これからもだよ・・・」

 

「炎真・・・」

 

「あの子だけじゃない、これからも色んな人達が君の名前を呼んでくれる。勿論僕だって・・・!」

 

「炎真・・・!」

 

フェイトは炎真の胸元に顔を埋めると炎真もフェイトを抱きしめる。

 

「炎真、名前を呼んで・・・私の名前を・・・!」

 

「フェイト・・・」

 

「もう一度、呼んで・・・!」

 

「フェイト・・・!」

 

「もっと・・・呼んで・・・!」

 

「フェイトっ!」

 

「もっと・・・もっと・・・!!」

 

「フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト!フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト! フェイト!!!」

 

「炎真、炎真ぁ・・・っ!!」

 

涙を流すフェイトは炎真に抱きつく。

 

キュウウウウウウン!!

 

ベッドの近くに置いてあった傷が入った待機状態のバルディッシュから光と音が鳴り響いた。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

それに気付いた炎真とフェイトは、バルディッシュの方へ歩く。

 

「バルディッシュ、私の・・・私達の全ては・・・まだ始まってもいない・・・?」

 

フェイトの声に答えるように杖状態で展開するバルディッシュ。だか、今にも砕けそうな程に皹だらけの姿だった。

 

ギギギギギギギギギギギギギギ・・・

 

バルディッシュは音を鳴らしながらもフェイトに向かって応える。

 

《ゲットレデイ!》

 

「っ!・・・」

 

応えてくれたバルディッシュにフェイトはすり寄る。

 

「そうだよね、バルディッシュも、ずっと私の傍にいてくれたんだものね・・・!」

 

フェイトの瞳から涙が流れた。

 

「お前も、このまま終わるのなんて、嫌だよね?」

 

《イエス・サー》

 

フェイトは正眼にバルディッシュを構えると、バルディッシュに魔力を流す。すると、皹だらけだったバルディッシュが元の姿に戻った。

 

《コンプリート》

 

「私達の全ては、まだ始まってもいない・・・!」

 

フェイトはBJ<バリアジャケット>を展開して、炎真に向き直る。

 

「フェイト・・・」

 

「炎真、私、上手く行くか分からないけど・・・私はバルディッシュと一緒に頑張る。でも・・・もしも迷惑じゃなかったら「はい駄目!」炎真・・・!?」

 

炎真の言葉に一瞬泣きそうになるフェイトだが、炎真は諭すようにフェイトに語る。

 

「“迷惑”とかそんな言葉は使わないで、僕達の間にそんな言葉なんかいらないでしょう?」

 

炎真の言葉にフェイトは涙混じりに笑顔で頷き。

 

「・・・・・・うん! 炎真! 私と一緒に来て!」

 

「うん!」

 

差し出されたフェイトの手を炎真は強く握った。すると部屋の扉が開いて、アーデル達守護者がやって来た。

 

「行くのねフェイト・・・」

 

「アーデルさん、皆・・・!」

 

「行ってきなさいフェイト。でも、ちゃんと帰ってくるのよ!」

 

「はい! アーデルさん!」

 

あくまでも姉のように諭すアーデルにフェイトは頷き。

 

「ま、やるだけやってみな!」

 

「ジュリー・・・」

 

「結局行って、結局決着を付けて来い!」

 

「紅葉・・・」

 

「でも、怪我だけはしないでね・・・」

 

「らうじ・・・」

 

「お前ならできるって、自分を信じてみな・・・」

 

「薫・・・」

 

「しとぴっちゃんも、フェイトちゃんが帰ってくるって祈ってる♪」

 

「しとぴっちゃん・・・」

 

守護者達からの激励にフェイトは、またも涙が浮きそうになるが、堪えて魔法陣を展開する。

 

「(本当の自分を始めるために・・・! 今までの自分を終わらせよう・・・!)」

 

フェイトは自分の手を握る炎真に目を向ける。炎真もフェイトの視線に気付いて笑顔を向ける。

 

「行こう、フェイト・・・!」

 

「(不思議・・・炎真と一緒だと、何も恐くない、何でもできるって気持ちになれる!) うん! 炎真!」

 

魔法陣から光が溢れ、光が二人を包むと、フェイトと炎真の姿が消えた。

 

『大地』と『雷光』は向かう。自分達の戦場にーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーオマケー

 

炎真とフェイトが消えた後、残った守護者達はモニターに目を向けるが。

 

「それにしても、結局部屋に入りづらかったな」

 

「まさか炎真があんなに大声をあげるとは思わなかったからね・・・」

 

「フェイトも泣いてるようだったしな・・・」

 

実は守護者達はアルフを見送って直ぐに戻って来ていたが、炎真の張り上げた声と雰囲気から空気を呼んで待っていた(紅葉としとぴっちゃんは入ろうとしたのを止められた)。

 

「フェイトちゃんが、炎真のお嫁さんになってくれたらしとぴっちゃんは嬉しいな♪」

 

「そうなるとめでてぇけどな。俺の勘だが、フェイトは十年後にはとんでもねぇ美人で、アーデルに負けず劣らずのおっぱいとプロポーションになってると思うぜ♪」

 

「・・・・・・・・・」

 

「アーデル・・・?」

 

「フェイト、必ず帰ってきなさい、貴女が炎真のお嫁さんになりたいなら、私が貴女をシモンファミリーボスの奥方にふさわしい女性に教育してあげるわ・・・!」

 

『(恐っ!!!!)』

 

フフフフと不気味に笑いながら、背中に不穏な炎を纏うアーデルに戦慄する紅葉達。

 

「(フェイト、お前はどうやら、義姉と姑を同時に得ることになるぜ・・・)」

 

これが、『シモン嫁入りの乱』として、シモンファミリーとボンゴレファミリーの歴史に刻まれるのは、これより何年か後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




不定期更新になりますが、作家として始めて書いた作品なので、続けて行こうと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

星光と雷光の共闘

ー時の庭園ー

 

大ホールの螺旋階段のような場所から最上階にある駆動炉に向かうツナとなのは、リボーンとユーノとアルフ。しかし、上空から魔導人形達が襲いかかる。

 

「邪魔だ・・・!」

 

『ッッッ!!!!』

 

一瞬でツナが魔導人形達の目の前に現れ、殴り飛ばす。飛ばされた人形は他の人形も巻き込んで吹き飛ぶ。

 

「GAaaaaaOOooooo!」

 

ツナの『匣アニマル 天空ライオンのナッツ』の雄叫びを浴びた人形達は次々と石となって落下していき。

 

「カオス・ショット!」

 

ユーノの肩に乗りながらリボーンは、相棒の『形状記憶カメレオンのレオン』を拳銃に変化させると、人形に向けて発砲する、黄色のオーラを纏った弾丸が人形達の身体を貫く。

 

「あ、あたしら殆ど出番無いね・・・・・・」

 

「ツナさんもリボーン君もナッツも凄いの・・・」

 

「(獄寺さん達もそうだけど、魔法を使わないで何でこの人達はあんなに強いんだろう・・・?)」

 

獅子奮迅の戦いを唖然となるなのはとユーノとアルフ(ちゃんと人形を破壊したり、拘束したりしている)。だが螺旋階段から一体の人形が、なのはに向けて槍を投げ飛ばす。

 

「なのはっ!」

 

「あっ!!」

 

ユーノの声になのはは自分に向かってくる槍に目を向けると眼前に槍が迫っていた。

 

《サンダー・レイジ》

 

「大地の重力ッ!」

 

すると、突然金色の雷撃がなのはに向かってくる槍を破壊し、次々と現れる人形達が黒い球体に引き寄せられ一塊になった。

 

「えっ・・・?」

 

「これは・・・」

 

なのはとツナが上空に目を向けると、金色の魔法陣を展開して雷撃を放つフェイトと、両腕に紅いプロテクターを装備し角の形をした深紅の炎を額に灯した炎真がそこにいた。

 

「サンダー・レイジッ!!」

 

フェイトが魔法陣の中心を自身のデバイスバルディッシュで突くと、雷撃は激しくなり、一塊になった人形達を破壊する。

 

「フェイト・・・炎真・・・!」

 

「あっ・・・!」

 

アルフとユーノは突然登場した二人に唖然とする。フェイトはなのはの傍まで飛ぶ。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

お互いに何を話したらいいのか悩む。

 

「あっ・・・「ドガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!」っ!?」

 

何か言おうとしたなのはを遮るように、螺旋階段の半分を覆うように背中のバックパックに小さな槍を、両腕に大型の突撃槍とサブアームに小さな槍を装備した巨大な魔導人形が現れた。

 

「大型だ、防御が硬い・・・!」

 

「うん・・・!」

 

「(なのは・・・!)」

 

「(フェイト・・・!)」

 

「待て、お前ら」

 

なのはとフェイトの元に飛ぼうとする二人をリボーンはユーノの肩に乗って二人の近くに行って待ったをかける。

 

「アレはなのはとフェイトに任せてみろ」

 

「リボーン・・・!」

 

「だけど、あの子もフェイトもぶっつけ本番の即席コンビだよ・・・」

 

「お前らだってぶっつけ本番で極悪な強敵と戦った事があんだろう? お前らに出来たんだ、あの二人にだって出来る」

 

確信を込めたリボーンの眼差しにツナと炎真はなのはとフェイトを見守った。

大型魔導人形は槍の矛先をなのは達に向けると魔力をチャージする。

 

「だけど、二人でなら・・・!」

 

「えっ?・・・うん、うん!うん!!」

 

フェイトからの共闘提案になのは嬉しそうに何度も頷いた。大型魔導人形は二人に向かって砲撃魔法を放つ。なのはとフェイトは余裕に回避すると、大型はバックパックの槍やサブアームの槍から魔力砲を連射する。

なのはとフェイトは網の目を潜るように魔力砲を回避する、砲撃を放つ大型の周りを桃色と金色の流星が翔る。

なのはは自分の周りに魔力弾を展開する。

 

「はああああああぁっ!!」

 

フェイトはバルディッシュをザンパーモードにして金色の斬撃を飛ばす。飛ばされた斬撃は縦に高速に回転し、丸鋸のような形となって大型の片腕に切り裂く。

すかさずなのはがもう片方の腕の槍に向かって魔力弾を放ち槍を破壊する。

 

「凄い・・・あの子<なのは>もフェイトも・・・」

 

「二人共、連携が取れてる・・・」

 

「本気で戦った者同士の間には、言葉なんて不要な程の連携が生まれるもんだ・・・!」

 

唖然となるアルフとユーノと別に、リボーンとツナと炎真は微笑ましそうになのは達を見ていた。

大型はサブアームとバックパックの槍から魔力砲を放とうとする。

 

「バルディッシュ・・・!」

 

《イエス・サー》

 

フェイトに答えてバルディッシュはザンパーモードから杖モードに変形する。

 

「レイジング・ハート!」

 

《スタンバイ》

 

なのはもレイジング・ハートを構えると杖モードからバスターモードになり、レイジング・ハートから魔力の翼が展開される。

大型のクリアカラーの魔力となのはとフェイトの足元に展開された桃色と金色の魔法陣が光輝く。

 

「サンダーーーーー・スマシャーーーーーッ!!」

 

フェイトの放つ金色の砲撃魔法が大型の身体にぶつかり装甲を削る。

 

「ディバイィン・バスターーーーーーーーーーーッッ!!」

 

追撃するようになのはの砲撃魔法が大型に放たれ大型の身体にぶつかる。

 

「「せーーーーーのっ!」」

 

呼吸を合わせた二人は大型に放たれた魔力を更に込めて上乗せした。すると、大型は膨大な二人の砲撃魔法に耐えられず大爆散した。

その砲撃は、壁を貫き、時の庭園の外にまで届いていた。

それぞれのデバイスから冷却の蒸気が噴出し、なのははフェイトの方へにこやかに顔を向ける。

 

「フェイトちゃん・・・・」

 

「・・・・・・」

 

フェイトもなのはに笑顔を向ける。

 

「フェイト、フェイト!」

 

二人に近づくツナ達、特にアルフは嬉しそうにフェイト抱きつき泣きじゃくる。

 

「あぁっ!ううっ、うっ!」

 

「アルフ、心配かけてゴメンね・・・!」

 

「うん! うん!!」

 

その様子をなのは達は微笑ましそうに見つていた。

 

 

ー時の庭・園最下層ー

 

なのはとフェイトの砲撃魔法で起こった振動が、プレシア・テスタロッサのいる最下層にまで届いていた。

 

「(この振動・・・もう時間は無いようね、でも・・・)後少し・・・」

 

急ぐプレシアの頭に、リンディの念話による勧告が入った

 

≪プレシア・テスタロッサ・・・!≫

 

「ッ!!」

 

≪終わりですよ、次元震は私が抑えています。駆動炉も時期封印、貴女の元には執務官が向かってます。“忘却の都 アルハザード”。彼の地に眠る秘術、そんなモノはとっくの昔に失われた筈よ!≫

 

「違うわ・・・アルハザードは今もある、失われた道も、次元の間に存在する・・・!」

 

≪仮にその道があったとして、貴女はそこに行って何をする?≫

 

「取り返すわ、私とアリシアの過去と未来を・・・取り戻すの・・・こんな筈じゃなかった、世界の全てを!!」

 

だか、最下層の天井を青い光と赤い炎が破壊し、ソコから魔導人形を山本と了平に任せて先行したクロノと獄寺が降りてきた、クロノはデバイスを獄寺はドクロの銃口をプレシアに向ける。

 

「知らない筈が無いだろう! どんな魔法を使っても、過去を取り戻す事なんか出来はしない!」

 

「テメェと娘だけが不幸だと思ってンのかよ! どんなに望んだって過去は戻ってこねぇんだ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人を一瞥するプレシアは足音に気付いてその方向へ目を向けると、駆動炉の封印の為にツナ達と別行動となった炎真とフェイトとアルフもやって来た。

 

「・・・・・・・・・」

 

「(フェイト・・・やはり、来てしまったのね・・・)」

 

 

 

雷光と大魔導師は、遂に対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決別と崩壊

ようやくここまで来られた・・・・(T^T)。


時の庭園・最深部ー

 

古里炎真とフェイト・テスタロッサとアルフ、クロノと獄寺が、プレシア・テスタロッサと対峙した。

 

「炎真! 十代目達はどうした!?」

 

「魔力を消耗したなのはちゃんとユーノを守りながら、動力炉に向かっている」

 

炎真はプレシアを真っ直ぐに見据えていた。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

フェイトとプレシアはお互いを見つめる。フェイトを見た瞬間、プレシアの目に悲痛な光が走ったが、すぐに目を鋭くする。が、突然プレシアが咳き込む。

 

「ゴホっ! ゴホっ!ゴホっ!ゴホっ!・・・・」

 

「っ! 母さん!!」

 

血を吐きながら咳き込むプレシアにフェイトは駆け寄ろうとするが、プレシアは鋭く睨む。

 

「何を、しに、来たの・・・・!」

 

「っ!・・・・」

 

「消えなさい・・・もう貴女に用は無いわ・・・」

 

「・・・・貴女に、言いたい事があって来ました」

 

炎真とアルフ、クロノと獄寺は静かに事のあらましを見守る。

 

「私は、只の“失敗作”で、“ニセモノ”なのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて、居なくなれって言うのなら、貴女から離れて私は・・・」

 

フェイトは振り向き炎真の方を見る。

 

「・・・・(コクン)」

 

炎真が頷くとフェイトは再びプレシアの方を見据える。

 

「私は、貴女に二度と会おうとしません。だけど、産み出して貰ってから今までずっと・・・今もきっと、母さんに笑って欲しい。幸せになって欲しいって気持ちだけは、本物です・・・・」

 

「・・・・!!」

 

フェイトはプレシアに手を差し出し。

 

「私の・・・フェイト・テスタロッサの本当の気持ちです・・・」

 

「・・・・くだらないわ・・・」

 

「・・・・・・・」

 

顔を伏せたプレシアをフェイトは悲しそうに見つめる。

 

「(フェイト、私の事なんて忘れなさい。こんな、貴女をずっと苦しめてきたこんな最低の母親の事なんてさっさと忘れて、貴女のファミリーの元へ帰りなさい・・・)」

 

顔を伏せたプレシアは持っていた杖のデバイスの柄で地面を叩くと、紫色の魔法陣が展開された。魔法陣に呼応するかのように、9つのジュエルシードが光り輝く。すると、時の庭園が鳴動する。

 

 

ーリンディsideー

 

「っ!」

 

時の庭園の突然の揺れにリンディはよろけ、リンディが立っていた床がひび割れた。

 

《艦長! ダメです! 庭園が崩れます!》

 

エイミィからの通信でリンディの顔に焦りが浮かぶ。

 

 

 

ー時の庭園・最深部ー

 

《クロノ君達も脱出して! 時の庭園崩壊までもう時間が無いよ!》

 

「了解した! フェイト・テスタロッサ! フェイト!」

 

「・・・・・・・」

 

クロノの呼び掛けにフェイトは無反応でプレシアを見つめる。プレシアはカプセルに入ったアリシアに寄り掛かる。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、私は行くわ。アリシアと一緒に・・・!」

 

「っ!・・・・母さん・・・・!」

 

「貴女は行きなさい、貴女の“帰る場所”に、貴女の帰りを“待っている人達”の所に・・・・!」

 

「母さん・・・?」

 

「さようなら、フェイト・・・!」

 

涙混じりに優しい笑顔を浮かべたプレシアとアリシアのいる場所が崩壊した。

 

「母さん! アリシア!」

 

フェイトがプレシア達に近付こうとするが、最後に見たのは、二人は虚数空間に飲まれていった。

 

「アリシア・・・」

 

プレシアはカプセルの中にいるアリシアを見ながらアリシアとの思い出が頭に浮かんだ。

 

『アリシア、お誕生日のプレゼント、何か欲しいモノがある?』

 

『う~んとね・・・あっ! 私、妹が欲しい!』

 

『っ! えっ?////』

 

『だって妹がいたら、お留守番も寂しくないし、ママのお手伝いもい~ぱい出来るよ』

 

『そ、それはそうなんだけど・・・/////』

 

『妹が良い! ママ、約束!』

 

『・・・ウフフフ』

 

そして、以前炎真に言われた言葉でその時の思い出が甦った。

 

『フェイトは貴女にとって出来損ないの”クローン“かもしれないけど、アリシアにとっては“妹”のような存在じゃないのか!?』

 

「(いつもそうね、いつも私は、気づくのが遅すぎる・・・)」

 

「プレシアーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

「(っ! 古里・・・炎真・・・!?)」

 

自分を呼ぶ声に目を向けると、虚数空間の中を真紅の炎が自分に向かって来た。

 

「プレシア! アリシア!」

 

炎真はプレシアの腰に左手を回し、アリシアを右腕で抱える。

 

「何をしているの古里炎真!? 貴女には・・・!!」

 

「こんなのダメだ!!」

 

「っ!?」

 

「こんな結末、こんな終わりなんて僕認めない!!(白蘭からの情報では、この奥に・・・!!)」

 

炎真は懐から、白蘭からの情報とリンディ達の技術で作られた“アル物”を取り出す。『小型時空転送装置』をーーーーーーー

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「アリシア! 母さん!! 炎真ーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

「フェイト!」

 

フェイトはプレシアとアリシアの元に飛んでいった炎真を追いかけようとするのをアルフが押さえた。

 

「放してアルフ! 炎真がぁ!! 炎真ーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

叫び声を上げるフェイト、するとオレンジの炎と桃色の光が最深部の天井を貫き、ツナとリボーンとなのはが現れた。山本と了平とユーノはリンディと合流し脱出準備をしていた。

 

「獄寺! アルフ!」

 

「フェイトちゃん! クロノ君!」

 

「十代目! 高町!」

 

「待って! 炎真が、炎真がぁ!「ペチン」っ!?」

 

錯乱しそうになるフェイトの頬をリボーンが軽くはたいた。

 

「錯乱してんじゃねぇ、炎真は大丈夫だ」

 

「・・・・・・・」

 

何の根拠の無い言葉だが、何故か目の前の赤ん坊の目を見た瞬間、フェイトは落ち着いた。

 

「クロノ!」

 

「(コクン)エイミィ、脱出ルートを!」

 

《了解!》

 

 

 

ーリンディsideー

 

一足先に、ユーノと山本と了平を連れて脱出したリンディはアースラのブリッジで時の庭園の様子を見ていた。

 

「庭園、崩壊・・・!」

 

「クロノ執務官初め、魔導師達と協力者達の帰還を確認。しかし、古里炎真の帰還を確認できず・・・!」

 

「・・・・」

 

オペレーターからの報告に頷くリンディ。

 

「(炎真君、上手く行くと良いけど・・・・)」

 

今度はエイミィからの報告がブリッジに流れた。

 

《時空震動停止! 断層発生、ありません!》

 

「フゥ、了解・・・・」

 

 

ーなのはsideー

 

別室で他の魔導師達の治療を尻目に、先に脱出したユーノと山本と了平、アースラにいたアーデル達シモン守護者と合流したなのは達。

 

「ボンゴレ、炎真は?」

 

「(フルフル)・・・・」

 

「そう・・・・」

 

「んな心配そうな顔すんなよアーデル・・・」

 

「ジュリー・・・」

 

「俺らのボスを信じよう・・・」

 

ジュリーの言葉に頷く守護者達。すると頭に包帯を巻いたクロノと付き添いのエイミィが入室してきた。

 

「クロノ君・・・・!?」

 

「どうかしたか?」

 

「フェイトちゃんとアルフさんは? それに炎真さんも・・・」

 

なのはの問いにエイミィはあぁとなり、クロノは目を伏せる。

 

「済まないな、彼女達はこの事件の重要参考人なんだ、二人共、隔離させてもらっている。面会は許可できない・・・!」

 

「結局っ!!」

 

「んだとぉっ!」

 

「ひぃいっ!」

 

紅葉と薫がクロノとエイミィにメンチ切り、脅えたエイミィがクロノの後ろに隠れる。

 

「そんなぁ・・・」

 

「しとぴっちゃん、フェイトちゃんに会いたい♪」

 

らうじとSHITT・Pも顔を沈め、アーデルとジュリーも渋い顔をする。

 

「と、とりあえずずっとこのままって事はないから、もうちょっと待って・・・・」

 

「・・・・はい・・・」

 

クロノの後ろに隠れながら弁解するエイミィ。顔をうつむかせるなのはの肩に、ツナがそっと手を置く。リボーンと獄寺達も了承し、アーデル達も渋々(本当に渋々)了承した。

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・(フェイト)」

 

ベッドに座りながら、炎真の事やプレシアとアリシアの事で沈んでいるフェイトをアルフが心配そうに見つめると。隔離されている部屋にリンディがサービスワゴンを引いてにこやかに入った来た。

 

「あの、炎真は・・・?」

 

フェイトの問いにリンディは困り顔を浮かべ。

 

「ごめんなさい、古里炎真君はまだ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

リンディの言葉に再び俯くフェイト。

 

「(これは重症ね、炎真君、早く戻って来て欲しいわね・・・・)お食事、持って来たわよ。一緒に食べましょう」

 

「「??」」

 

リンディからの言葉に唖然となるフェイトとアルフ。

 

 

 

ーなのはsideー

 

その頃、なのはとツナ達、リボーンとユーノ、シモン守護者は、クロノとエイミィと共に食堂でフェイトの今後を聞いていた。

 

「フェイトは、この事件の重要人物だし、このまま無罪放免と言う訳にも行かない、だけど彼女は真実を知らなかった。言い方は悪いが、“道具”として利用されていただけだ。情状酌量の余地はある。少なくとも執行猶予は取れるよう働きかけて見るよ」

 

「あ、ありがとう、クロノ君!」

 

「ただ、この手の裁判って長引くのよね~・・・」

 

「それで、炎真達の方はどうなんだ?」

 

リボーンの問いにクロノは渋い顔浮かべ。

 

「この世界のマフィア、それも管理局にとって“触れてはならないモノ”とも呼ばれているトゥリニセッテの一角の管理者、ボンゴレファミリーと友好関係にあるマフィアが関わっているとなると、管理局としては、マフィアが関わっていたこと事態を“無かった事”にするだろうね」

 

「そんな事が出来るの?」

 

「管理局は警察と軍隊が混ざった組織だからな、『マフィア<犯罪組織>と協力した』なんて、体裁悪いだろう」

 

「身も蓋もない事を言えばそうだな・・・」

 

ツナの疑問にリボーンとクロノが応えた。

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「そうね、最短でも“半年”、長ければ二・三年かそれ以上、まぁその間も“保護責任者”な元で“良い子”にしてれば、割りと普通の生活が出来るから・・・・」

 

「“保護責任者”って・・・・?」

 

「わ・た・し♪ アースラ艦長、リンディ・ハラオウンが貴女達の“保護責任者”、宜しくねフェイトさん、アルフ♪」

 

「あの、アーデルさん達は・・・・?」

 

フェイトの言葉にリンディは困った笑みを浮かべ。

 

「・・・・残念だけど、彼女達はまだ“未成年”だからね、法的にも貴女達の“保護責任者”をやらせる訳にはいかないの」

 

「そう、ですか・・・・」

 

「大丈夫、アーデルハイトさん達にもキチンと説明して納得して貰うから」

 

「ハイ・・・・」

 

リンディの言葉にフェイトは頷くしかなかった。

 

 

 

ー???sideー

 

「ここは!?」

 

「ここがそうなんだ・・・・」

 

何処か分からないその場所に少年と女性と少女が降り立った。

 

「行こう、プレシア。アリシアを“生き返らせる”為に・・・!」

 

その少年、古里炎真は、カプセルに入ったアリシア・テスタロッサを担ぎプレシア・テスタロッサを連れて、その都に向かう。

 

 

 

 

 

『忘却の都 アルハザード』へ・・・・・・・・・・。

 

 




次回で遂に無印編を完結させたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私の“友達”、私の“ファミリー”

やっとここまで来られた・・・!


後に『ジュエルシード事件』又の名を『プレシア・テスタロッサ<PT事件>』と呼ばれる管理局の歴史に残る事件は終結し、なのはとツナ達ボンゴレファミリーと炎真を欠いたシモンファミリーは海鳴に戻り、なのはは自分の家に、ツナ達は近くのホテルで休む事にし、翌日に並盛に帰る事になった。なのははツナ達(と言うよりもツナと)に自分の家に泊まっても良いと言ったが、ツナの説得で渋々了承した。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「十代目、そろそろですね・・・」

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「気もそぞろになってもしょうがねぇだろ? 宛にしようぜ」

 

ホテルの近くの公園で、ツナ達とアーデル達が“ある人物”のを待っていた。事前の打ち合わせの時間帯が間近になった事を獄寺が告げ、アーデルが不安そうにし、ジュリーがアーデルを宥めた。

 

そして、ツナ達のいる地点に魔法陣が現れ、魔法から光が溢れ、“三人”の男女が現れた、一人は“赤い髪の小柄な少年”、“黒髪の長髪の美女”と“金の長髪の九歳位の女の子”がいた。

 

 

 

ーなのはsideー

 

ピリリリリ! ピリリリリ! ピリリリリ!

翌日の早朝、なのはの携帯が鳴り、なのはが着信を見ると『時空管理局』と表示され、慌てて出ると。リンディの声が聴こえた。

 

「ハイ! もしもし!」

 

《あぁ、なのはさん? ごめんなさいね、朝早くに》

 

「いえっ!」

 

《フェイトさんの裁判の日程、来週から本局行きって決まったわ・・・》

 

「はい・・・」

 

《でね、その前に少しだけなんだけど・・・・》

 

リンディはフェイトがなのはに会いたいと言っているのを伝えた。

 

 

 

海鳴市の大橋にクロノとフェイトとアルフがそこにいた。

 

「フェイトちゃーーーーん!!」

 

『フェイトーーーー!!』

 

「っ・・・・(ニコ)」

 

なのはと同じようにリンディから連絡を受けたツナ達が走ってきた。なのはとフェイトは向き合い。

 

「俺らは向こうに行ってるぞ」

 

「ありがとう、リボーンくん」

 

「・・・・ありがとう」

 

空気を呼んだリボーンがツナ達とクロノとアルフを連れて離れる。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

二人っきりにされたなのはとフェイトはお互いを見ると微笑み合う。

 

「アハハハ、いっぱい話したい事あったのに、変だね、フェイトちゃんの顔見たら忘れちゃった・・・・」

 

「・・・・私は、そうだね、私も上手く言葉に出来ない・・・・だけど、嬉しかった・・・・」

 

「えっ?」

 

「真っ直ぐに向き合ってくれて・・・」

 

「うん♪ 友達になれたらいいなって思ったの。でも、今日もうこれから出掛けちゃうんだよね・・・」

 

にこやかだったなのはは顔を俯かせる。フェイトも俯かせ。

 

「・・・・そうだね、少し長い旅になる・・・」

 

「アーデルさん達には? ツナさん達と一緒じゃなかったから・・・」

 

「私が、リンディさんに言わないでって頼んだの、アーデルさん達の顔を見たら、決心が鈍っちゃうと思ったから・・・」

 

本当は行方不明の炎真の事が非常に気になる。しかし、償わなければならないと考えるフェイトはアーデル達には黙って行こうと考えていた。

 

「でも、また会えるんだよね・・・?」

 

「!・・・うん、少し悲しいけど、やっと本当の自分を始められるから・・・」

 

「うん・・・」

 

「来てもらったのは、返事をする為・・・」

 

「ん?」

 

「・・・・君が言ってくれた言葉、“友達になりたい”って・・・」

 

「あ、うん! うん!」

 

「私にできるなら、私で良いならって・・・だけど私、どうして良いか分からない・・・だから教えてほしいんだ、どうしたら友達になれるのか・・・」

 

俯くフェイトをなのははジッと見つめ。

 

「簡単だよ・・・」

 

「えっ?」

 

「友達になるの、凄く簡単♪」

 

「・・・・・・・・」

 

「名前を呼んで・・・初めはそれだけでいいの。“君”とか、“貴女”とかそう言うのじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、はっきり相手の名前を呼ぶの」

 

そして、なのはは名乗る、自分の名をーーーーーーー

 

「私、高町なのは! なのはだよ・・・」

 

「・・・なのは」

 

「うんそう!」

 

「・・・・なのは」

 

「うん!」

 

「なのは・・・・!」

 

「・・・うん」

 

なのははフェイトの手を取りお互い見つめる。

 

「ありがとう・・・なのは・・・」

 

「うん・・・」

 

「なのは・・・」

 

「・・・う、うん!」

 

泣きそうになるのを堪えて、なのはは笑顔で頷く。

 

「君の手は暖かいね、なのは・・・」

 

「・・・うっ、うぅ・・・!」

 

遂に堪えきれなくなったなのはの目に涙が浮かぶ。フェイトも笑みを浮かべ。

 

「少し、分かったことがある。友達が泣いているとおんなじように自分も悲しいんだ」

 

「っ! フェイトちゃん!」

 

思わずフェイトに抱きつくなのはをフェイトは優しく受け止め。

 

「ありがとう、なのは。今は離れてしまうかもしれないけど、きっとまた会える。そしたらまた君の名を呼んでも良い?」

 

「うん・・・うん!・・・」

 

「会いたくなったらまた名前を呼ぶ・・・」

 

「っ!」

 

「だからなのはも、私を呼んで・・・なのはに困った事があったら、今度はきっと私がなのはを助けるから・・・」

 

フェイトの頬に涙が流れる。

 

「うん・・・!」

 

嗚咽を漏らしながらなのははフェイトに抱きつき、フェイトもなのはを優しく抱き締めた。

 

 

 

ーツナsideー

 

泣き出すなのはをツナ達は遠巻きに見守っていた。獄寺はグシっと鼻を鳴らし、山本は涙混じりに見つめ、了平は声を押さえて大粒の涙を流し、ツナとリボーンとフェレットモードのユーノは優しく見つめる。涙を流すアルフが呟く。

 

「あんた達の子はさ・・・なのはは・・・本当にいい子だねぇ・・・! フェイトが・・・あんなに笑ってるよ・・・!」

 

涙でぐずぐずになったアルフをユーノが優しく慰めた。

 

「そろそろだな・・・」

 

『フェイトーーーーーーーーーーーー!!!』

 

リボーンの呟きと同時に、反対側の橋の向こうから、アーデル達が大急ぎで走ってきた。

 

 

 

ーフェイトsideー

 

『フェイトーーーーーーーーーーーー!!!』

 

「っ!?・・・あ・・・!」

 

その声を聴き、声の主達を見た瞬間、フェイトの中で堪えていたモノに皹が入る。

 

「アーデルさん・・・ジュリー・・・薫・・・紅葉・・・らうじ・・・しとぴっちゃん・・・!」

 

そして走って来るアーデル達の中に、今は会いたくなかった“人”が目に入り、フェイトの瞳が激しく揺れた。

 

「・・・炎・・・真・・・!!」

 

「・・・・」

 

なのはは微笑みながらフェイトから離れ、フェイトを駆け付けたシモンファミリーと向き合わせる。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、み、皆、早すぎ、だよ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

 

「結局お前が遅すぎるのだ! 結局少しは体力を付けろ!」

 

「お、おいらも少し脇腹痛い・・・」

 

「間に合った♪フェイトちゃん♪」

 

「たくっ、何も謂わずにフケる積もりだったのかよ・・・!」

 

「ちょい水臭いんじゃね?」

 

「ジュリー、薫、そこまでよ、炎真・・・」

 

「う、うん・・・フェイト・・・」

 

「炎、真・・・っ!」

 

昨日まで行方不明だった炎真が目の前に現れ、堪らず炎真の胸に飛び込んだフェイトは泣きじゃくる。

 

「炎真・・・! 炎真ぁ・・・!!」

 

「フェイト・・・」

 

「炎真ぁ・・・! 炎真ぁぁ・・・っ!!」

 

「うん、心配かけてゴメンね・・・・」

 

何故ここに炎真がいるのなんて関係無いと言わんばかりに、フェイトは炎真の存在を確かめるように名前を呼び、声を聴き漏らさず、全身で炎真の温もりを感じていた。

 

 

ーツナsideー

 

「アルフも行ったら?」

 

「で、でも・・・・」

 

「獄寺、山本、了平・・・・」

 

「「「了解(っす)(♪)(だ)」」」

 

「えっ? ち、ちょっと・・・!」

 

ツナにほだされ、リボーンの指示で獄寺達に連行されるアルフ。

 

「そろそろ時間なんだけど・・・・」

 

「空気を読めクロノ、ここは黙って見守ってろ」

 

「そもそも何でシモンファミリーが・・・連絡は言って無い筈なんだけどなぁ・・・」

 

ため息を付いたクロノは母親に延長の連絡を送った。実はこっそりリボーンがメールで連絡していたのだ。

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「う、うぅ・・・!」

 

泣き止んだフェイトは炎真と向き合う。

 

「フェイト・・・」

 

「炎真、私、管理局に行く・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・』

 

炎真とシモン守護者達は、フェイトの言葉を聞く。

 

「私、長い旅に出ちゃうの・・・・」

 

「うん・・・」

 

「帰ってくるのは、かなり遠くなるかもしれない・・・」

 

「うん・・・」

 

「もし・・・もしまた私が帰ってきたら・・・!」

 

「うん・・・」

 

「また私を・・・皆の中に・・・“ファミリー”の一員で良いですか・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

頷いていた炎真が黙り、フェイトの心に不安が満ちる、もしもここで炎真達に拒絶されれば、自分はもう絶対に立ち直れない。

 

「そんなの「結局くだらん事を言うな!!」紅葉・・・」

 

炎真とフェイトが目を向けると、紅葉が涙や鼻水で顔をグシャグシャにしていた。

 

「ブァミリーの一員<いぢいん>に決まっでいるだろうがっ!!!」

 

「確かに、下らねぇことだな・・・」

 

「フェイトちゃんもアルフも、おいら達のファミリーだよ・・・」

 

「しとぴっちゃんも、フェイトちゃんとアルフはファミリー♪」

 

薫とらうじとSHITT・Pも涙を瞳に涙を浮かべながら同意する。

 

「たくっ、しまんねぇな。ま、俺もおんなじだけどよ」

 

「とっくにフェイトもアルフも、私達のファミリーの一員よ」

 

「・・・・・・・」

 

「あんたら・・・・!」

 

ジュリーもアーデルも同意の意思を示すとフェイトとアルフの瞳にも涙がまた浮かぶ。

 

「フェイトちゃん、僕達は待ってるから、フェイトちゃんとアルフが帰ってくるのをずっと待っているから、だから安心して行っておいで・・・・」

 

「炎真・・・・!」

 

「例え何ヵ月、何年、何十年経っても、僕達は、フェイトちゃん達を待っているから・・・!」

 

「うん・・・! うん・・・!!」

 

「う、うぅ!うああああああああん!!」

 

涙を流すフェイトを炎真は優しく抱き締め、遂に大泣きしたアルフをジュリー達が慰めた。その光景をなのはも涙を拭いながら見つめ、ツナ達も静かに見守っていた。

 

 

 

 

それからしばらく経ち、クロノからそろそろ時間だと告げられ、炎真はフェイトをなのはの方へ向かせる。

 

「フェイトちゃん!」

 

なのはは自分のツインテールを結わえていた白いリボンをほどいてフェイトに差し出し。

 

「思い出にできるもの、こんなものしかないんだけど・・・」

 

「じゃぁ私も・・・」

 

今度はフェイトが自分の髪を結わえていた黒いリボンをなのはに差し出し、交換する。

 

「・・・・ありがとう・・・なのは・・・」

 

「うん、フェイトちゃん・・・!」

 

「きっとまた・・・」

 

「うん! きっとまた!」

 

それを見届けたアルフはユーノをなのはの肩に乗せる。

 

「ありがとう! アルフさんも元気でね!」

 

「あぁ、色々ありがとね。なのは、ユーノ、ボンゴレ」

 

「貴女も帰って来なさいよアルフ」

 

「オメェも俺らのファミリーなんだからな♪」

 

「あぁ、絶対に帰ってくるよ・・・!」

 

そして次はクロノが別れを告げる。

 

「それじゃ僕も」

 

「クロノ君もまたね♪」

 

「あぁ・・・」

 

「極限にまた勝負するぞクロノ!」

 

「次は俺が勝つがな!」

 

「俺も、今度はちゃんと勝負しような♪」

 

「勿論だ、了平、隼人、武」

 

「元気でね、クロノ君」

 

「リンディ達にも宜しく言っておけよ」

 

「ちゃんと伝えるよ、ツナ、リボーン」

 

地球でできた友人達にクロノはにこやかに応える。

 

そして、クロノ、フェイト、アルフの三人が並ぶと三人の足元に転送魔法陣が展開され、光に包まれる。そんな三人をなのはとユーノ、ツナ達ボンゴレファミリーと炎真達シモンファミリーが優しく見つめる。

 

「(バイバイ、またね。クロノ君、アルフさん、フェイトちゃん・・・!)」

 

「・・・・・・・」

 

フェイトはそっとなのはと炎真達に向け手を降ると、なのはも大きく手を振った。

 

「(バイバイ、私の友達、なのは。行ってきます、私のファミリー、炎真・・・!)」

 

『(いってらっしゃい、アルフ、フェイト・・・!)』

 

シモンファミリー全員が、フェイトとアルフに笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

光が一際輝くとそこには、フェイト達の姿がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

「なのはちゃん・・・・」

 

ツナがなのはの肩に手を置く。

 

「うん、平気♪ きっとまた直ぐに会えますから!」

 

晴れ晴れとした大空をなのは達は笑顔で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遂に、遂に・・・無印編終了!!! ここまで来るのにどれだけ挫折と迷走を繰り広げてきたか! 次の回はエピローグでエピローグを迎えて本当のラストです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ また会う日まで

なのは達の“最初の戦い”は終わったが、ツナ達は“最終決戦”へと赴く。


海鳴での事件が終わり、なのはは再びアリサとすずかと共に学校に通う日常に戻った。ユーノはなのはの魔法の先生として残り、フェイトはアルフと共に、リンディ達のアースラに乗り管理局の本局がある第1管理世界ミッドチルダへと向かった。フェイトの傍らには、炎真達シモンファミリーと共に楽しそうに笑いあった写真があった。

 

 

全ては終わったかのように思われたーーーーーー。

 

 

 

 

ー並盛診療所ー

 

そこはかつて、独立暗殺部隊『ヴァリアー』との『リング争奪戦』の折り、了平や獄寺や山本が治療してランボとクロームが入院した診療所の一室、黒髪の女性がベッドに横たわり、フェイトに良く似た金髪の少女がいた。フェイトに良く似た少女は瞳が“赤”ではなく“青”であった。

 

「ママ、具合はどう?」

 

「大丈夫よ、少しずつだけど治療は進んでいるから・・・」

 

心配そうに見つめる愛娘に黒髪の女性は安心させようと笑みを浮かべる。すると部屋のドアが開き、黒い短髪に白衣を来た締まりの無い顔の男性と茶髪に猫耳を付けた“女性”が入った来た。

 

「よぉ、“ミス・プレシア”に“アリシア”ちゃん♪ シャマル先生がやって来たよ~♪」

 

“トライデント・シャマル”、ツナ達の通う並盛中学の“一応”の保険医で(診るのは女の子だけで男は無視)、凄腕の暗殺者。なのだが、目の前の美女と美少女に完全に顔はにやけ、下心丸見えの笑みを浮かべていた。アリシアはそんなシャマルに構うことなく満面の笑みを浮かべ。

 

「こんにちは、シャマル先生」

 

「はい、アリシアちゃんこんにちは♪ いや~、今日も後10年後が非ッッ常に楽しみな可愛らしさだね~♪」

 

幼女と言っても良いアリシアに軟派な態度のドクターシャマルに猫耳の女性はジト目で睨む。

 

「ドクターシャマル、アリシアをナンパしていないで診断をお願いします・・・」

 

「喜んで“リニス”ちゃん♪ さて、アリシアちゃん、お小遣いあげるからちょっとリニスちゃんと自販機で飲み物買って来てね♪」

 

は~~いと言って退室するアリシアとリニスを見送って、シャマルはプレシアの診断を始める。

 

「・・・シモンのガキに感謝しているかい?」

 

診断中に途端にシリアスになったシャマルに面食らったが、プレシアも顔を少し下向きにして淡々と答える。

 

「正直、アリシアとリニスに関しては感謝しているわ、こうしてあの娘とまた過ごせるのだから・・・・」

 

虚数空間にアリシアと共に墜ちて行くプレシアを抱えた炎真は事前に白蘭からの情報からリンディ達が作り上げた『小型時空転送装置』を使って、『アルハザード』へと到達し、そこでアリシアを蘇生させ、当時死なせてしまった山猫の使い魔“リニス”も蘇生させ、プレシアをアリシアが生きていた当時の年齢にまで若返らせ再び『転送装置』で地球に帰還したのだ、ツナ達と再開した時リニスは山猫の姿でアリシアに抱えられていた。

 

「でも、アルハザードの“道”は閉ざされたわ・・・」

 

白蘭曰くーーーーーー

 

『プレシアが消える虚数空間の“場所”と“タイミング”、そして“装置”があったからアルハザードへ行けたんだ、また同じように行くのは不可能だろうね♪』

 

 

と言われ、事実上“アルハザードへの道”は閉ざされたが、リボーン曰く。

 

『管理局やマフィアがアルハザードへの道を知ればどんな手段を使ってもアルハザードへ向かおうとするだろう、“どんな手段”を使っても、な・・・・』

 

マフィアと管理局は“組織”としては表と裏の立場だが、本質は同じ、より強大な力が手に入るとなればどんな“犠牲”を払ってもアルハザードへ行く方法を手に入れようと考えると見込んだリボーンはリンディ達にもプレシアの事は死んだ事にした。

 

「ま、俺としてはこうして美女二人に美少女ちゃんとお近づきになれたから万々歳だけどな~♪」

 

「あのね・・・・」

 

あくまでも軟派なシャマルに呆れるプレシア。

 

「シモンのガキ共も、時々見舞いに来てくれるんだからありがたいじゃねぇの?」

 

「・・・・身体を若返らせても、病魔は取り除けなかったのね・・・」

 

「わざわざもう一人の“娘”に悪ぶった罰が当たったと考えるしかねぇわな・・・」

 

「こんな程度で、私がフェイトにしてきた事が赦されるだなんて欠片も思ってないわ・・・・」

 

炎真達シモンファミリーは殆ど毎日のようにプレシアの見舞いに来ては、アリシアと遊んだりリニスに『なみもり民宿』の掃除を手伝って貰ったりと大助かりなのだ。

 

「だが、しばらくシモンの連中は来れねぇかも知れねぇぜ・・・・」

 

「どう言う事・・・?」

 

シャマルの雰囲気が変わった事で緊張が走るプレシア。

 

「どうにもこの並盛にまたヤバい奴等が集まり始めてな、またぞろ何かデカイ騒動が起きそうなんだわ・・・」

 

「こんな平凡で平和な町で何が起きるの・・・?」

 

「一般人は知らねぇだけさ。実を言うと、この町では結構ヤバい事が起こるんだよな、主にボンゴレ関係で」

 

「ボンゴレが関わっていると言う事は、古里炎真達も巻き込まれるの?」

 

「少し違うな、ボンゴレが危機に陥ったら、シモンのガキ<炎真>は自分から友達であるボンゴレを助ける為に戦うぜ・・・・」

 

「そう・・・・」

 

「あの・・・・」

 

ちょうど診断が終わると部屋の扉が少し開き、第三者の声が響いた、扉から一人の少年が顔を出す、件の少年古里炎真がアリシアとリニスを連れて入室してきた。

 

「チッ、良いタイミングで来やがって・・・」

 

「古里炎真・・・」

 

「シャマル先生、プレシアの容体は?」

 

炎真に対してシャマルは気だるそうに応える。

 

「あぁ、大分安定してんよ、だがまだまだ静養は必要だな。このまま後半年位は安静にしていれば完治するぜ」

 

「そうですか、良かった・・・」

 

「古里炎真君・・・」

 

「は、はい?」

 

「一つ、貴方に言っておきたい事があります」

 

「??」

 

「私がこんな事を言う資格なんてありませんけど・・・フェイトを悲しませたら、承知しないわよ・・・!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「は、はいっ!!」

 

強烈な威圧感を出すプレシアに炎真は直立して頷き、アリシアとシャマルはケラケラ笑い、リニスは苦笑いを浮かべた。

 

それから他愛ない話をして炎真は河川敷の猫達にエサをやる為に向かった、炎真は出会う、(一応)最強の赤ん坊(紫)にーーーーーー。

 

 

 

ー雲雀sideー

 

雲雀は今日も八神家のソファーを我が物顔で寝そべり、そのソファーの足元で狼形態のザフィーラが自分の定位置のように寝そべり、そのザフィーラの身体の上にヒバードが座りロールがサラサラの毛皮を堪能していた。

 

「何か最近ザフィーラがよ、雲雀のペットになってんじゃねぇのかなって思うんだよな・・・」

 

「私も時々そう思う・・・」

 

最初こそ雲雀を監視する為にいたのに、最近雲雀がこの家にいるときははやての傍にいるよりも雲雀の傍にいることが多くなった盾の守護獣をヴィータとシグナムがジト目で見ていた。

 

「「ただいま~」」

 

すると、海鳴病院の検査から帰って来たはやてとシャマル(女)と草壁がリビングに入ってきた。雲雀はパチッと目を開き起き上がるのを確認した草壁は雲雀に耳打ちする。

 

「・・・・・・・・」

 

「雲雀さん帰るん?」

 

何も言わずに帰ろうとする雲雀をはやては不安そうに見つめる。

 

「・・・・・・・」

 

「オイコラ! はやてが聞いてんのに無視すんな!」

 

何も言わずに去ろうとする雲雀を張っ倒そうとヴィータが飛び上がりそうになったが、草壁が待ったをかけた。

 

「済まないなはやて嬢ちゃん、ちょいと並盛で“問題”があったらしくてな、風紀委員として直ぐに戻らなければならなくなったんだ」

 

「問題って何?」

 

「何、はやて嬢ちゃんが気にする事じゃないさ。問題が片付いたらまた来るから心配しないでくれ・・・・」

 

「う~~ん、分かった、ほんなら待ってるわ、雲雀さんまたな~♪ 今度来たら雲雀さんの好きなハンバーグ沢山作るからな~♪」

 

あくまでも明るく手を振るはやてを少しだけ手を上げて応えた雲雀。

 

「・・・・ザフィーラ」

 

「ワフッ!(ここに!)」

 

雲雀が囁くと狼形態のザフィーラは直ぐに雲雀の傍らにまでやった来た。

 

「「「(ホントにザフィーラ、雲雀(くん)のペットになったのか(かしら)?)」」」

 

「しばらく来られない、ここは任せる・・・」

 

「ワンッ!(御意!)」

 

雲雀の言葉にザフィーラは頭を垂れながら頷いた。そして草壁がシャマル(女)と少し話をして(お互い顔を少し赤らめながら)、雲雀と共に並盛に向かった。

 

そして雲雀も出会う、自分と似た容姿をした最強の赤ん坊(赤)にーーーーーー。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

その夜、帰宅したツナは海鳴にいるなのはと電話で話をしていた。

 

「なのはちゃん、俺達しばらく海鳴に行けそうにないんだ・・・」

 

《えっ!? どうしてなのツナさん?!》

 

「え、えっと・・・もうすぐテストがあるからさ、オレ達も勉強で忙しくなっちゃって・・・」

 

《何か考えながら話してないですか?》

 

「いや、そんな事はないよ! ホントに忙しくなるから行けなくなっただけだから!」

 

《フーーーーーーーン・・・・》

 

訝しそうに聴いてくるなのはに内心ヒヤヒヤのツナ。

 

《じゃあ分かりました、でもテストでもなんでも良いですけど、“忙しいの”が終わったらきっと来てくださいね!》

 

「うん、勿論、じゃあまた会おうね」

 

《はい、ツナさん、きっとですよ》

 

「うんきっと・・・」

 

そして通話を切ったツナは大きくため息を漏らし、それを見ていたリボーンがニヤニヤ笑みを浮かべて近づく。

 

「まるで女房に必死に言い訳した後の夫みたいだな♪」

 

「何言ってるんだよ! 今回は“お前の為”に忙しくなるんだから・・・!」

 

「フッ、じゃ細かい事は明日まで取っ手おくぞ、そろそろママンのご飯だ・・・」

 

「おい待てよリボーン!」

 

食卓に移動するリボーンの後を慌てて追いかける。

 

 

海鳴での騒動が終わり、ツナ達は新たな“戦い”に赴く、嘗ての強敵達、頼れる仲間、更に強大な敵達。この戦いが、リボーンを含む最強の赤ん坊、“アルコバレーノの秘密”と“トゥリニセッテの謎”に大きな関わりがあることを、そしてこの約数ヶ月後、海鳴に赴いたツナ達は再び魔導師の戦いに巻き込まれ、“守護騎士”と戦う事になることを・・・・・・・・今はまだ、誰も知らない・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと、やっと無印編が終わった・・・・A‘s編の前にツナ達は“虹の代理戦争”をやってもらい、その後にA‘s編へと行きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

A's編
再会、来る!


お久しぶりです。A's編もいよいよ開始します!


ーはやてsideー

 

半年前までは、いつも帰りは一人ぼっちだった、家に帰っても一人は変わらへんかった。“あの人”に会って、一緒にご飯食べたり、ペットの鳥さんやハリネズミさんと遊ばせてくれる。“あの人”に会ってから、図書館の本が増加されたり、病院の障害者用の設備が充実されるようになったし、人気の無い場所にもカメラが置かれたり、お巡りさんが巡回するようになって町の治安が良くなっていったりした・・・・・でも、それでもあの人が居なくなると私はやっぱり一人ぼっちだった・・・・・でも、あの日私は出会った、私の『家族』に・・・・・。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

AM6:30

 

ピピピピピピピピピ・・・・・

 

携帯のアラームが鳴り、止めたなのはに待機状態のデバイス、『レイジングハート』が話しかける。

 

[おはようございます。マスター]

 

「うん! おはよう、レイジングハート」

 

今年の春になのはは幾つかの“大切な出会い”をした。なのはの魔法の先生ユーノ・スクライアとの出会い、魔法との出会い、大切なパートナーであるレイジングハートとの出会い、生涯の友であるフェイトとの出会い、そして、裏社会最強のマフィア『ボンゴレファミリー』と、その十代目ボス『沢田綱吉(通称ツナ)』と、その先生である謎の赤ん坊『リボーン』との出会い。

 

「(フェイトちゃんとはビデオレターで連絡を取っているけど、ツナさん達とは余り連絡を取ってないなぁ・・・)」

 

次元世界『ミッドチルダ』にいるフェイトとは手紙やビデオレターで交流を続けているが、ツナとは以前の電話から全く連絡が取れない事になのはは少し気落ちしていた。栗色の髪をトレードマークのツインテールに結わえ、制服の上に冬用コートを着て外に出たなのはは公園まで走っていった。

 

「ハァ ハァ ハァ・・・」

 

顔を上げると其処には、長い金髪をツインテールにした赤い瞳の少女がいた。少女の方もなのはに気付いたのかなのはの方に振り向く。

 

「フェイトちゃん・・・」

 

「なのは・・・」

 

「フェイトちゃん!」

 

思わず走り出した二人はお互いを抱き締めた。

 

「おかえり、フェイトちゃん」

 

「ただいま、なのは」

 

お互いに見つめ合い再会を喜ぶなのはとフェイト。ふとなのはは辺りをキョロキョロする。

 

「炎真さん達は・・・?」

 

「うん、クロノがリボーンに連絡を入れておいた筈だからそろそろ来ると思う・・・」

 

「オラ急ぎやがれ、このダメダメへなちょこコンビ!」

 

「分かってるよ・・・!」

 

「ハァ ハァ ハァ・・・」

 

聞き覚えのある声になのはとフェイトが公園の入口を見ると、茶髪のツンツン頭の気弱そうな小柄な少年と真紅の髪に真紅の瞳に紋章が入った瞳をした同じく小柄な少年と、その二人を後ろから蹴りながら叱咤する黒いスーツにこれまた黒い中折れハットを被りハットの上に小さなコミカルなカメレオンを乗せた赤ん坊が公園の階段からやって来た。

 

「ツナさん・・・!」

 

「炎、真・・・!」

 

約半年ぶりの再会になのはとフェイトは走り出し。

 

「ツナさーーーーーーーーーーんっ!!!」

 

「炎真ーーーーーーーーーーっ!!!」

 

感極まったなのははツナに、フェイトは炎真に飛び付く。

 

「な、なのはちゃん! ンなっ!」

 

「フェイトっ! うわっ!」

 

丁度階段を登り終えたツナと炎真は抱き付いて来たなのはとフェイトの衝撃と、只でさえ体力の無い上に並盛から海鳴までリボーンに走らされてヘトヘトの状態の二人は、突然の衝撃にヘタリ、足が崩れ、そのまま階段から倒れるように落ちていった。

 

「んなああああああああああああああっ!!!???」

 

「うわああああああああああああああっ!!!???」

 

階段から落ちた四人は階段下まで倒れるが、ツナはなのはを、炎真はフェイトをちゃんと庇っていた。

 

「お星様がキラキラ~~・・・」

 

「小鳥さんピヨピヨ~~・・・」

 

「にゃああああっ!! ツナさん大丈夫ですか!?」

 

「え、炎真、しっかりして炎真ーーーーーーーーーー!!」

 

「やれやれ・・・・・」

 

目を回したツナと目がバッテンになった炎真に、なのはとフェイトはアワアワオロオロしながら介抱し、リボーンは平静に帽子を被り直しながら眺めていた。

 

 

 




プロローグはこんなもんです。次回は“代理戦争”の事をツナ達がなのは達に話します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虹の代理戦争

いつの間にかお気に入り200を越えてました! こんな駄作に本当にありがとうございます!




ー時空管理局・本局ー

刺々しい機械の柱がつらなった時空管理局・本局。そこに通路から見える、整備中のアースラを眺めながら、黒髪の少年クロノ・ハラオウンと茶髪の女性、エイミィが歩いていた。

 

「フェイトちゃんは今頃、感動の再会タイムかなぁ」

 

「そうだろうな」

 

 

ーフェイトsideー

 

ツナとなのは、リボーンと炎真と再会したフェイトは、なのはの通う『私立聖祥大学付属小学校』に転入し、なのはの家の近くのマンションに保護責任者であるリンディと狼の使い魔アルフと一緒に引っ越した。シモンファミリーにはなみもり民宿で泊まると通学に不便だからで納得してもらった。

 

「フェイト・テスタロッサです、よろしくお願いいたします・・・!」

 

顔を赤らめながら挨拶するフェイトに、なのはと友達のアリサとすずかを含んだクラスメート達から歓迎されていた。

 

 

ーリンディsideー

 

その頃、引っ越し作業を手伝っていたボンゴレとシモンはリビングで休憩に入った。ライトグリーンの長髪をポニーテールにした若い女性(年齢は不明)、リンディ・ハラオウンは息子のクロノとエイミィに連絡を取っていた。

 

「うん・・・引っ越し作業はもうだいたいおしまい」

 

《そうですか》

 

「綱吉君達や炎真君達、それにアルフも手伝ってくれて本当に助かったわ」

 

「あぁ、いやいや・・・/////」

 

「お礼ってんならリンディさんよ、いっちょサービスでも!」

 

ゴンッ!

 

手をワキワキさせたジュリーがリンディにダイブしようとするが、アーデルの拳骨で撃沈した。

 

《色々片付いて、艦長もゆっくりできますね~♪》

 

「そうね、でもどうやら私達が地球に来ない半年間の間に、ボンゴレやシモンの方で“事件”があったらしいわ」

 

《“事件”とは・・・?》

 

「どうやら、管理局にとって“触れてはならないロストロギア”、『トゥリニセッテ』に関わる事のようなの・・・」

 

《っ! 『トゥリニセッテ』、地球にある『Sランクロストロギア』、かつて回収に向かった管理局員が惨い死に様を晒し、“触れてはならないロストロギア”と断定されたアレですか・・・!》

 

「えぇ、私達が地球を離れてから僅か半年で、大きな動きがあったらしいわ、詳しい事はなのはちゃんとフェイトさんが帰ってきてからになるわね・・・」

 

《分かりました、僕達は仕事があるので後で聞かせてもらいますね・・・》

 

《アルフ、フェイトちゃんによろしくね》

 

「うん!」

 

そう言ってクロノとの通信を切ったリンディはお茶に大量の角砂糖を入れる。

 

「さてと、少し休憩が済んだら買い物に出掛けましょうか、私はまだこっちの世界に詳しくないから、色々教えてね」

 

「任せて!」

 

「二人が買い物に行ってる間は、俺とアーデルが仕切っとくぞ」

 

「お願いね、リボーン、アーデルさん」

 

「任せてください」

 

更にお茶にミルクを入れるリンディにツナ達は凝視した。

 

「あの・・・ええっと・・・リンディ提督」

 

「ん?」

 

「ありがとうね、フェイトの事をあれからずっと守ってくれていて・・・/////」

 

「アァラ、やぁね、何急に・・・!」

 

「クロノやエイミィもだけど、フェイトの資格試験とか、裁判の時も、何時も暖かくしてくれていた。炎真達やなのはの事とか、色々気を遣ってくれて・・・」

 

「あなた達の保護責任者ですもの、それくらい当たり前よ。でも、こっちの世界への移住と転入の話、フェイトさん、喜んでくれて良かったわ」

 

「話聞いたとき、フェイト、ホントに一晩中泣いてたんだよ。嬉しくて・・・楽しみで・・・」

 

「フェイトさんもあなたも、悲しい事件で大変だったけど、これからは自分の未来を選んでく自由があるんだから・・・」

 

リンディは優しく微笑む。

 

「あなたもフェイトさんもいい子だから大好きよ。この先何時まででも、一緒に居てくれたら嬉しいわ」

 

「ありがとう・・・/////」

 

リンディとアルフの会話を炎真達は嬉しく見ていた。

 

「おーおー、アルフってば顔紅くしやがって♪」

 

「やっぱコイツ狼って言うより犬っぽいな・・・」

 

「誰が犬だ!!」

 

茶化すジュリーと獄寺にアルフが飛び掛かり、そのまま喧嘩を始まり、リンディもツナ達も微笑ましそうに見つめた。

 

 

 

その日の夕方、なのはとフェイトが帰宅する。

 

『お帰り! フェイト!!』

 

「皆・・・!」

 

リビングに入ったフェイトにアーデル達が出迎えた。

 

「フェイト、元気そうで良かったわ」

 

「アーデルさん・・・!」

 

「少し背ェ伸びたか?」

 

「ジュリー・・・!」

 

「結局嬉しいぞーーーーーーーーーーー!!!」

 

「紅葉・・・!」

 

「新しい学校生活は大丈夫か?」

 

「薫・・・!」

 

「また会えてオイラ嬉しいよ」

 

「らうじ・・・!」

 

「ん~♪フェイトちゃん、相変わらずお肌スベスベ気持ちいい~♪」

 

「しとぴっちゃん・・・!」

 

前後からアーデルとSHITT・Pに抱き締められ、久しぶりにファミリーと再会したフェイトが涙ぐんで口を開く。

 

「た、ただいま・・・皆!」

 

涙混じりに言うフェイトをシモンファミリーは大喜びで歓迎した。

 

「ウオオオオオオオオオッ!! 極限にいい話だぞーーーーーーーーーーーッ!!」

 

「うるせぇよ! 芝生!」

 

「何だとタコヘッド!!」

 

「まぁまぁ二人共、お、なのは久しぶりだな♪」

 

「お久しぶりです! 山本さん、獄寺さん、了平さん!」

 

なのはも獄寺達との再会に花を咲かせた。

 

 

ー一時間後ー

 

「「「「『虹の代理戦争』・・・!」」」」

 

ツナ達やリボーンから聞かされたそれは、なのは達の想像を遥かに上回る物であった。

 

「“最強の赤ん坊 アルコバレーノ”の『呪い』を解く代わりにアルコバレーノそれぞれが代理人を決めて戦わせるバトル・ロワイアル・・・」

 

「だがそれは、オレを含んだ今のアルコバレーノのクビにし、新たなアルコバレーノを選定する儀式だったんだぞ・・・!」

 

「それで、ツナさん達がリボーン君の代理人として・・・」

 

「炎真達は、“紫<雲>のアルコバレーノ スカル”の代理人として参加した・・・!」

 

「他にも、“ボンゴレ独立暗殺部隊 ヴァリアー”や、“死刑囚 六道骸”の一派、“ボンゴレ門外顧問 チェデフ”、“ジッジョネロファミリーと白蘭率いる真・六道弔花の連合”等が参加したんだ・・・」

 

「名前だけ聞くと、相当厄介な人達と戦ったようね」

 

「あぁ、どいつもコイツも管理局の高ランク魔導師と互角以上の戦闘力を持っている・・・」

 

「そして、炎真達も半殺しにして、“裏社会の法の番人 ヴィンディチェ”が参戦した・・・!」

 

管理局が『トゥリニセッテ』に関するおぞましい記憶を刻んだ“ヴィンディチェ”が炎真達を半殺しにした事を聞いて、フェイトとアルフが思わず立ち上がってしまったが、炎真達が押さえた。

 

「その“ヴィンディチェ”と戦って勝って、ツナさん達は主催者である“チェッカーフェイス”って人から“アルコバレーノの秘密”を聞かされたんですね・・・」

 

「うん、詳しくは“沈黙の掟<オメルタ>”に引っ掛かるから言えないけど、とりあえずリボーン達はもうアルコバレーノじゃなくなったんだけどね・・・」

 

「アルコバレーノじゃなくなったってどういう事?」

 

「まぁ簡単に言うとな、俺達アルコバレーノは『呪い』のお陰でずっと赤ん坊の姿にされていたんだぞ」

 

「つまり、リボーン達はこれから普通に成長するって事なの?」

 

「そう言う事だぞ・・・」

 

「ツナさん・・・・・・!」

 

「な、何なのはちゃん・・・」

 

なのはがジト目で恨みがましく見つめるのを見てツナはタジタジになりながら応じる。

 

「何でそんな事が合ったのに、私に何にも言ってくれなかったんですか・・・!?」

 

「え、えぇっと、それは・・・」

 

「仕方ねぇだろうが、相手はガチモンの殺し屋集団だ、お前には荷が重すぎんだよ・・・!」

 

「ツナはなのはに危ない目に合って欲しくなかったんだよ・・・」

 

「沢田の気持ちも極限に汲んでやってくれ・・・」

 

「だからって・・・!」

 

「なのはさん、気持ちは分からなくもないけど、綱吉君の判断は正しいわ・・・」

 

「何しろ相手は“殺しの経験豊富な連中”だ。相手がガキだろうが容赦なく殺る奴等ばかりだからな・・・」

 

「ム~~~~!!!」

 

リンディとリボーンに諭されても、意外に負けず嫌いで頑固ななのはちゃんはむくれる。

 

ツナはそんななのはを、炎真は“ヴィンディチェ”に怒りを燃やすフェイトを宥めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。ヴォルケンリッターとの戦いを早く書きたいですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鉄槌、来る

ー時空管理局・本局ー

 

ツナ達がリンディ達の引っ越しを手伝っている頃。

 

本局の運用部に呼び出されたクロノとエイミィは待合室にやって来た藤色の長髪を後ろに結わえ、眼鏡を掛けた知的な雰囲気のあるリンディと同い年位の女性、リンディの同僚で時空管理局運用部の提督、『レティ・ロウラン』。クロノとエイミィは立ち上がり敬礼する。

 

「クロノ君、エイミィ、お久しぶり」

 

「レティ提督、お久しぶりです」

 

「ご無沙汰してます」

 

「フェイトちゃんは、もう?」

 

「現地入りしました。今頃は学校ですよ」

 

レティは、リンディが保護観察者になったフェイトとアルフとは面識があった。

 

「そう、リンディも一緒だし、しばらくゆっくりできるわね」

 

「はい」

 

クロノの言葉を聴くと、レティの顔付きが、“プライベートの顔”から“提督の顔”に変わり、クロノとエイミィも少々面食らうが気持ちを切り替えた。

 

「で、クロノ君にお願いしたい“事件”なんだけど・・・」

 

「はい」

 

レティが空中パネルを出して操作すると、部屋が暗くなり、幾つもの事件の現場映像が出てきた。その映像には傷だらけになって倒れる『大型魔導生物』と『魔導師』の姿が映っていた。

 

「“違法渡航者グループ”の追跡と確保。主な犯罪行為は、大型生物のハンティングと魔導師を狙っての略奪」

 

「略奪?」

 

「みんな襲われて、奪われているの。魔導師の魔力の源、“リンカーコア”を・・・」

 

「「っ!」」

 

レティが自身の胸元を親指で指差して告げた言葉にクロノとエイミィが驚く。“リンカーコア”が奪われたと言う事は、“魔導師として死”を意味していたからだ。

 

 

ーなのはsideー

 

ツナ達に送られ(帰り道もずっとぶーたれていた)、フェイト達のマンションから帰ってきたなのはは、部屋に戻り、魔法の先生であり、現在『次元世界 ミッドチルダ』の『無限書庫』で仕事に付いている『ユーノ・スクライア』と通信と言うより、ツナに対する愚痴を溢していた。

 

「ツナさんってば、私の事“足手まとい”だって思ってるんじゃないかな!?」

 

《なのは、確かになのはは強くなったけど聴くところによると、ツナさん達が相手にしていたのは本物の殺し屋軍団だそうじゃない? それになのはは一応管理局と関わりのある魔導師だしね、下手にマフィアの問題に関われば、管理局とマフィアの間にある“条約”に違反する事になるかも知れないよ》

 

「それはそうだけど・・・・・!」

 

納得出来ないと言わんばかりのなのはにユーノは苦笑いを浮かべて話を変える。

 

《ところでさ、フェイトと久しぶりに会えて、いっぱい話せた?》

 

「うん! ユーノ君はお仕事忙しい?」

 

《まぁそれなりに・・・かな。『無限書庫』はものすごく広くて深いから・・・・・》

 

「そっか。でもユーノ君だって“京子さん”に会いたいんじゃないの?」

 

ツナの憧れであり、了平の妹である“笹川京子”に恋慕の感情を抱いているユーノになのはは茶化す。

 

《ん・・・まぁ、確かにね・・・/////》

 

「ウフフフ、ユーノ君も早く来られると良いね♪」

 

《(ムッ)そう言うなのはも、“愛しいツナさん”と久しぶりに会えて嬉しいでしょ? もう告白した?》

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ボンッ!)/////////////////////」

 

ニヨニヨとイヤらしい笑みを浮かべるなのはにムッと来たユーノが仕返しをすると、なのはの頭と耳からボンッ!と湯気が出て、顔がトマトもポストも真っ青になる位に真っ赤になる。

 

「ユ、ユユユ、ユユユユユユユーノ君! な、何言ってるのっ!? 何言っちゃってるのっ!!?? 言ったでしょ!! なのははツナさんの事をそう言う風に見てないってッッ!!!////////////////////」

 

《ハァ、まだそれ言ってるの? いい加減に素直に認めなよ。もしかしてアリサやすずかにも同じ事を言われてるんじゃないの?》

 

「何で分かるのっ!!??」

 

《(やっぱり・・・)》

 

顔を真っ赤にして両サイドに結わえた髪をピンっと跳ね上げさせたなのはは相も変わらず説得力の欠片もない弁明をし、ユーノは呆れながらなのはの弁明を右耳から左耳へと聞き流していた。

 

 

 

 

ーフェイトsideー

 

そしてフェイトは、炎真達の住んでいる『なみもり民宿』にて転送ポータルを設置し、起動させようとしていた。

 

「それじゃ、行くよみんな」

 

『(コクンっ)・・・』

 

炎真達が頷くのを確認したフェイトは、ポータルを起動させると、フェイト達の周りを光が包むと、フェイト達はリンディとアルフがいるマンションに転送された。

 

「うおおおおおおおおっ!! 結局これが転送ポータルかぁッ!?」

 

「これでフェイト達とも直ぐに会えんな♪」

 

「成功してよかったわ」

 

初めて行った転送にはしゃぐシモンファミリー、炎真と紅葉とジュリーを残して、他の守護者達はポータルで民宿に戻った。すると炎真はリンディと一緒にいる筈のアルフが居ない事に気付くが。

 

「フェイト~、準備できたよ~」

 

「アッ」

 

「えぇっ!?」

 

「結局っ!?」

 

「ハァっ!?」

 

「あら、アルフ! どうしたの、縮んじゃって!」

 

そこには、大型犬イヤ、大型オオカミだったアルフが子犬もとい、子供オオカミの姿になっていた。

 

「オオカミ姿のままだと、目立っちゃいますので・・・」

 

「工夫してみた!」

 

「そう~」

 

「じゃお散歩、行って来ます」

 

「僕とジュリーも一緒に行きますから」

 

「よろしくね、炎真君、ジュリー君」

 

「紅葉、お前はアーデル達に伝えておけよ」

 

「何で俺では無くジュリーなのだ・・・?」

 

無駄に喧しい紅葉が一緒だと悪目立ちしてしまうので、見た目は中学生に見えないし口も達者なジュリーが選ばれた。ブチブチ文句を言う紅葉はポータルを使って民宿に帰って行った。

 

 

 

ー???sideー

 

そして、海鳴のビル街にあるビルの屋上で、一人の少女が黄昏ていた。赤い長髪を両サイドに三つ編みにさせたなのはやフェイトと同い年位の少女。その少女は“本”と“ハンマー”のような物を持ち、手のひらから魔法陣が描かれた球体を見つめていた。球体が何かの反応をキャッチした。

 

[大型魔力反応発見しました]

 

「おぉ・・・」

 

“ハンマー”から知らせに少女は立ち上がり、目を鋭くする。

 

「やるぞ、『グラーフアイゼン』」

 

[了解]

 

少女が“ハンマー”を振ると、“ハンマー”の中心部に付けられた宝石が光輝き、少女の足元に三角形の魔法陣が展開される。すると、四角錐の巨大な結界が少女のいる地点を中心に拡がった!

 

その結界に触れた車や人間達はその姿を消した。

 

 

ーツナsideー

 

並森に帰る為にバスに乗ろうとしたツナ達に結界が迫る!

 

「ツナっ!」

 

「なにこれっ!?」

 

ツナとリボーン、獄寺に山本に了平は咄嗟に防御しようとすると。

 

キュイイイイィィィィ・・・・

 

結界に触れた瞬間、『大空のリングverX』と『嵐のバックルverX』、『雨のペンダントverX』と『晴れのバングルverX』が何かに反応するかのように共鳴し、ツナ達を護った。

 

ツナ達と山本の肩に乗っていたリボーンが辺りを見渡すと、バスや人間達が消えてしまう光景を見た。

 

「リボーン、これって・・・」

 

「あぁ、魔導師が使う結界だな」

 

 

 

ーなのはsideー

 

[エマージェンシー]

 

「えっ!?」

 

レイジングハートからの警告に驚くなのはに結界に閉じ込められた。

 

「結界!」

 

[通信断絶、こちらに向かって何者かがちかづいてきます]

 

「っ!」

 

なのはは着替えて、レイジングハートを持って外に出る。

 

 

ーフェイトsideー

 

散歩していた炎真達も巨大な結界を目視した。

 

「フェイト! アルフ!」

 

「「うん!」」

 

フェイトは懐から待機状態のバルディッシュを取りだし、炎真は『大地のシモンリング』を指に嵌める。

 

「ジュリーはリンディさんにこの事を!」

 

「あいよ!」

 

 

ーツナsideー

 

「10代目!」

 

「ツナ!」

 

「沢田!」

 

「行くぞ!」

 

『超死ぬ気モード』になったツナは、持ち前の超直感に従って飛んで行った。

 

すると、近くのビルの屋上が砕け、そこからなのはが落下していた。

 

「なのは!?」

 

 

ーなのはsideー

 

ビルの屋上に来たなのはは突然“赤いゴスロリ”風のバリアジャケットを纏った少女に襲われ、少女の武器であるハンマーによって吹き飛ばされた。

 

「レイジングハート、お願い!」

 

「スタンバイレディ、セットアップ]

 

赤い少女は手から小さな鉄球を3つ取り出すと、なのはに向けてハンマーで鉄球3つを叩き飛ばす、なのはも防御しようとするが間に合わず、鉄球がなのはに迫る!

 

「ナッツ、防御形態!」

 

「GaaaaaaoooooOO!!」

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「何だぁ!?」

 

赤い髪の少女は戸惑いを浮かべた。バリアジャケットを纏ったなのはに向けて投げた鉄球が、突然現れたツナの纏うマントに触れた瞬間、“コンクリート”となって砕けたからだ。

 

「ツナさん! ナッツ!(パアッ)」

 

「無事のようだな、なのは」

 

「ガァウ♪」

 

『防御形態 Ⅰ世のマント』を纏ったツナは、微笑みながらなのはを見て、“形態変化”したナッツもなのはに向けて声をあげる。

 

 

ー???sideー

 

ツナはすぐになのはを襲った少女に目を向ける。“赤い髪の少女”は戸惑いを浮かべた。相棒であるデバイス、“グラーフアイゼン”が見つけた“大型魔力反応者”が“空戦魔導師”だったからでは無い。

 

「(アイツ・・・色は違うけど、“あの野郎”と同じ“炎使い”か・・・? でも、何だ・・・?)」

 

“少女”はツナを見ると、“主”がなついている(最近では仲間の守護獣も)“ムカつくあんちくしょう”と同じ感じのする炎を纏う少年に、妙な“既視感<デジャブ>”を感じていた。

 

「(何でだよ・・・? 何でアイツ<ツナ>を見ると、心がざわつくんだよ・・・!?)」

 

それは以前に、件の“ムカつくあんちきしょう”と初めて会った時に感じた頭痛と“心のざわつき”に良く似ていた。

 

「オイ・・・」

 

「ッッ!!??」

 

ツナに話しかけられ、漸く気を取り戻した“少女”は、ツナを睨む。

 

「お前は一体、何者だ・・・?」

 

「・・・・・“ヴィータ”、『紅の鉄騎 ヴィータ』とその相棒、『鉄の伯爵 グラーフアイゼン』だっ!!」

 

『鉄槌の騎士』と『不屈のエースオブエース』、『天空の炎皇』が邂逅した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護騎士、来る!

ー八神家ー

 

プルルルルルルッ、プルルルルルルッ・・・

 

「もうシグナム達ってば、電話に出んで何しとんのや? 折角久しぶりに雲雀さんがご飯食べに来てくれはったのに・・・!」

 

シグナム達に連絡を取っていた八神家の家主であるはやてはプウッと頬を膨らませる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんな家主をほっておいて、雲雀は『八神はやて特性ハンバーグ』を食べ終えてナプキンで口回りを拭いていた。

 

「委員長・・・・・」

 

雲雀の後ろに控え、シャマルに連絡していた草壁が雲雀に近づき耳打ちをする。

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀が立ち上がると家から出ようとする。

 

「あっ、雲雀さん何処行くの・・・?」

 

「食後の散歩」

 

そう言って雲雀は草壁を八神家に置いて出ていった。

 

 

 

ーツナsideー

 

「(何なんだ、この子は・・・?)」

 

キュオオオオオオオ・・・

 

「(っ!? ボンゴレギアが、“初めて炎真と出会った時”のように“共鳴”している?)」

 

『大空のリングverX』がヴィータに反応するかのように“共鳴”を起こし、ツナは怪訝そうにヴィータを見た。

 

「ツナさん・・・」

 

「なのは・・・?」

 

「あの子は、私が相手をします!!」

 

「オイ!」

 

ツナの制止を聴かず、ヴィータに迫るなのは。

 

「(私が“足手まとい”じゃないって、ツナさんに見せてやるの!!)」

 

“虹の代理戦争”で“除け者”にされた事がなのはの“頑固な負けず嫌い”を刺激したようで、なのはは自分が“足手まとい”ではないと見せつけるつもりでヴィータに挑む!

 

「っ!」

 

ヴィータもツナの事を気にしていたが、当初の標的だったなのはが飛び出してきたので迎撃する。

 

「貴女は一体ドコの子!? 何でこんなことを!」

 

ヴィータは小さな鉄球を指の間から出現させる。

 

「教えてくれなきゃ、分からないんだから!」

 

なのは魔力弾を放ちカーブさせると、ヴィータの側面を攻撃するが、ヴィータは障壁を張って防ぐも、背後から魔力弾をぶつけられる。

 

「のヤロウっ!!」

 

ヴィータは一直線になのはに向かうが、なのははレイジングハートをキャノンモードにして構える。

 

「話を」

 

[ディバイン・・・]

 

「聞いてってば!」

 

[バスター!]

 

桃色の砲撃魔法を放つ!

 

「うわっ!」

 

ヴィータは間一髪で回避するが、その際、被っていた帽子が離れ、ディバインバスターの奔流に呑まれ、焼き消えた。

 

「っ!」

 

それを見た瞬間、ヴィータの目に明らかな“殺意”が宿った!

 

「グラーフアイゼン! ロード、カートリッジ!」

 

[了解]

 

ヴィータが足元に魔法陣を展開させ、ハンマー型デバイス グラーフアイゼンを頭上に構えると、ハンマーから蒸気が噴出され、その型を変形させた。

 

ハンマーの鎚の片方から三つのバーニアが、もう片方からトンガリが飛び出した。

 

「あっ!?」

 

バーニア部分から蒸気が噴出された。

 

「避けろ、なのは!」

 

「ラケーテン!」

 

バーニアが火を吹き、なのはに迫るが、なのはは回避しようとするが、ヴィータは追撃する!

 

「テメェー!」

 

空中追撃戦を繰り広げるなのはとヴィータ。

 

「ハンマーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

「な・・・キャアアアアアアアアアアアっ!!」

 

シールドで防ごうとするが、ハンマーのトンガリがレイジングハートの杖部分とぶつかり、なのはを吹き飛ばした!

 

「なのはっ!!」

 

吹き飛んだなのはをツナが抱き止めるが、衝撃を止められず、そのまま二人とも地面に墜落した。

 

「デヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「『嵐+雷 フレイムサンダー』!!!」

 

「っ!? なんだァっ!!??」

 

追撃しようとするヴィータに“緑色の雷を纏った赤い炎”が迫った!

 

「クッソッ!」

 

ヴィータはシールドで防ぎきれず、吹き飛んでしまった。

 

「くっ・・・・・!」

 

「ツナさん!」

 

「なのはソコを退いてくれ、了平」

 

「極限任せろ! “我流”っ!!」

 

ツナの近くに来たリボーンがなのはを避けさせ、空かさず了平が“晴れカンガルーの漢我流”を呼び出すと、我流の口からキラキラ輝く黄色の炎、“晴れの死ぬ気の炎”をツナに向かって放射した。

 

「な、なのは・・・無事か・・・?」

 

「ツナさん!」

 

「スマン沢田、飛んでいるお前達を追うのに手間取ってしまった!」

 

「油断すンな、また来たぞ」

 

吹き飛んで行ったヴィータが戻ってきた。ツナ達とヴィータの間に“ドクロの銃口”を構えた獄寺と“刀”を構えた山本が割って入った。

 

「獄寺さん! 山本さん!」

 

「助っ人登場ってな!」

 

「このガキ、ウチのモンに手ぇあげるたぁ良い度胸じゃねぇか・・・!」

 

「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ・・・」

 

グラーフアイゼンを構えたヴィータだが、フレイムサンダーの攻撃を受けて赤いゴスロリ風のBJ<バリアジャケット>はボロボロの状態だった。

 

「アイゼン、BJを修復・・・」

 

[ヤー]

 

BJを修復したヴィータは目の前にいる獄寺と山本、そして了平を見ると。

 

キーーーーーン

 

「うあぁっ!(また・・・頭痛が・・・?!)」

 

キュオオオオオオオ・・・

 

「「「ッッッ!!!???」」」

 

そして獄寺達の方も、それぞれのボンゴレギアが共鳴を起こしていた。

 

「皆さん、どうしたの・・・?」

 

「獄寺達だけじゃねぇ、あの女の子も様子が変だぞ」

 

片手で頭を抑えるヴィータと、ボンゴレギアを見つめる獄寺達をリボーンとなのはは訝しそうに見ていた。

 

「《なのは、なのは、返事して!》」

 

「《っ! フェイトちゃん!》」

 

なのはにフェイトからの念話が入った。

 

 

ーフェイトsideー

 

「なのは! よかった、連絡がついた。一体何があったの?!」

 

「《それが、突然襲われて、ツナさんが私を庇って・・・!》」

 

「ツナさんに何かあったの?!」

 

「っ! (ツナくん・・・!)」

 

フェイトと平行し、アルフ(大人モード)を背負って飛んでいた炎真はスピードを上げた。

 

「なんなんだ、この嫌な感じ・・・!」

 

炎真の上に乗ったアルフは結界が展開された場所を睨む。

 

 

 

ーヴィータsideー

 

[高魔力反応、接近中]

 

「(ちっ、モタモタしている暇は無いか。だが・・・)」

 

ヴィータは頭痛が気になるが、なのはから“リンカーコアを蒐集”しなければならない。しかし、目の前にいる三人と後ろにいる赤ん坊は、只者ではないと“長年の経験”で直感したヴィータは攻めあぐねていた。

 

「(この三人、ガキだと思って油断すると痛い目に合いそうだぜ。それに、後ろにいる赤ん坊、あれ本当に赤ん坊か? 何か得たいの知れねぇぜ・・・!)」

 

「何をしている? ヴィータ・・・!」

 

「っ! シグナム達か!?」

 

ヴィータが空を見上げると、ピンク色のポニーテールにピンクと白の騎士風のBJを纏った凛々しい女性と若草色の看護師風のBJを纏った金色の髪を肩口にまで伸ばした穏やかそうな女性、浅黒い肌に鍛えられた肉体をした白髪の短髪に犬耳をした男性が降りてきた。

 

「どうしたのヴィータちゃん、高魔力反応を関知して駆けつけて見たら・・・っ!?」

 

「何やら得たいの知れん連中とこんな状態に・・・っ!?」

 

「シャマル? ザフィーラ? っ!?」

 

キーーーーーーーン

 

騎士風の女性シグナムは、看護師風の女性シャマルと犬耳の男性ザフィーラの目線を追って獄寺達を見ると、突然の頭痛に襲われた。

 

「(何だ!? 頭が、それに・・・!)」

 

「(なんなの? 胸が、心が、ざわつく・・・!)」

 

「(一体何者なのだ? あの者達は・・・!?)」

 

ヴィータと同じ頭痛と心のざわつきに襲われた。

 

 

ーツナsideー

 

なのは達も突然現れたシグナム達に警戒していると、ツナが立ち上がる。

 

「ツナさん!」

 

「大丈夫だなのは」

 

ツナは獄寺達と並ぶと上空からフェイトとアルフ、そして炎真がやって来た。

 

「ツナくん、大丈夫?」

 

「なのは、無事?」

 

「フェイトちゃん!」

 

「炎真・・・!」

 

全員が並び立ち、構えるのを見たヴィータ達は数の不利が否めない状態になった。

 

「《どうするシグナム、向こうの方が数的に有利になったぞ?》」

 

「《私達も何か変な感じよ、一時退却を考えるべきね・・・》」

 

「《何言ってんだよ! 高魔力の魔導師が二人もいるんだぞ! チャンスじゃねぇか!》」

 

「《確かになそれに・・・》」

 

「「「《それに?》」」」

 

シグナムの目線は“山本とフェイト”に向いていた。

 

「《あの者達と少々手合わせしてみたい・・・!》」

 

「「「(あ、悪い癖がでた・・・)」」」

 

実はバトルマニアなシグナムに内心呆れるヴィータ達。

 

「ねぇ君たち、何してるの? こんな所で・・・」

 

『っっ!!???』

 

突然両者が睨み合う場に静かに響いた声に一同はシグナム達の後ろを見ると。

 

「「げっ!!」」

 

「あら~・・・」

 

「(ザッ)・・・・・」

 

その声の主を見た瞬間、シグナムとヴィータは苦虫100匹は噛み潰した顔になり、シャマルは苦笑いを浮かべ、ザフィーラに至っては声の主に向かって片膝を付いて恭しく頭を垂れる。

 

黒い学ランを羽織り、左腕に『風紀』と印された腕章を付け、黒い髪、猛禽類のように鋭い瞳をした年齢不詳の少年に。

 

「「誰・・・・・?」」

 

「何・・・!?」

 

「あの人は・・・!?」

 

「マジ、かよ・・・!」

 

「こりゃヤベェな・・・」

 

「極限に厄介だぞ・・・!!」

 

「(ニッ、コイツはおもしろくなってきたぞ♪)」

 

フェイトとアルフはその人物に首を傾げ、ツナと炎真と獄寺達は驚愕を浮かべ、リボーンはほくそ笑む。

 

「あの、リボーン君、あの人って誰なの?」

 

「あぁ、アイツは、ツナ達の通う並森中学の『最強の風紀委員長』にして、『最凶の不良』。そして10代目ボンゴレファミリー『雲の守護者』、“雲雀恭弥”!」

 

『孤高の浮雲』が覚悟の炎と魔法が入り乱れる戦場に、遂に参戦した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、守護者と守護騎士が遂にぶつかる!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護騎士VS守護者

守護者と守護騎士がぶつかります!


ーなのはsideー

 

「あの人が、ツナさんの『雲の守護者』・・・(恭弥って、お兄ちゃんと同じ名前だなぁ・・・)」

 

「でも、あの人達<ヴィータ達>と知り合いのみたいだけど・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「アルフ・・・・・・?」

 

なのはとフェイトはツナの守護者の雲雀をマジマジと見ていたが、アルフだけは牙を剥き出して警戒していた。

 

「どうしたのアルフ?」

 

「気をつけてフェイト、なのは。アイツ<雲雀>多分、味方じゃない!」

 

アルフの“野生の勘”が、雲雀の危険性を察知し、なのはとフェイトがツナ達を見ると、ツナや炎真、獄寺達も警戒心を露にしていた。リボーンだけは面白そうに眺めていたが。

 

 

 

ー騎士sideー

 

「《なんでここにコイツ<雲雀>がいんだよっ!!》」

 

「《知るかっ! 私とてこの男<雲雀>がいるとは思わなかったのだ!》」

 

「《ちょっと二人共、念話で言い争っている場合じゃないでしょう!!》」

 

ヴィータとシグナムにとって雲雀は“何を考えているのか分からない得体の知れないヤツ”として認識している。“主”であるはやてがなついているが、それでも雲雀への警戒を解いてはいない。

 

シャマルはその雲雀の副官である草壁と懇意な関係である為、中立の立場にいる。因みに草壁に関してはヴィータとシグナムはソコまで警戒していない。それは以前シャマルの殺人級の手料理(ある意味ポイズンクッキングクラス)を気合いと根性と“シャマルへの愛”で食べきった雄姿を見て、むしろシグナムとザフィーラは草壁を“草壁殿”と呼んで敬意を持っているし、ヴィータもよくアイスを買ってくれる草壁を“哲兄ちゃん”と呼んで慕っているからだ。

 

「ザフィーラ」

 

「ハッ!」

 

「どういう状況?」

 

「ご説明いたします」

 

ただザフィーラだけはほとんど、イヤ完全に雲雀をはやてと同格と見ているのか、恭しく下げていた頭を上げて雲雀に状況説明をしていた。ザフィーラと草壁はお互いに通じるモノがあったのかすぐに意気投合し、時々二人で飲み(ザフィーラは嗜む程度で草壁は烏龍茶)に行く姿を見かける。

 

「現在我々は、あの栗色の少女<なのは>と金髪の少女<フェイト>からリンカーコアを蒐集しようとしていますが、ご覧の通り、何やら雲雀様と同じ“炎使い”が立ちはだかった状況です・・・!」

 

「ふ~~~ん・・・」

 

騎士達の中ではザフィーラを気に入っている雲雀は状況説明を聞き、ツナ達を見据える。

 

「あの炎使い達は、僕の学校の生徒達だ」

 

「雲雀様の? と言う事は並森生徒ですか・・・」

 

「ザフィーラ、あのボクサー<笹川了平>は任せる」

 

「承知!」

 

雲雀からの命令で直ぐ様ザフィーラは了平に向かった!

 

「ぬぅっ!」

 

「悪いが相手をしてもらうぞ! 拳闘士!!」

 

「極限に良かろう!!」

 

ザフィーラと了平はそのまま移動しながら戦闘を開始した。

 

「オイコラ、ザフィーラ!」

 

「貴様! 抜け駆けか!?」

 

「湖の君・・・」

 

「あ、ハイ」

 

「君達の獲物の女の子達の相手をしておいて」

 

「えっ!? でも私、戦闘系じゃ・・・」

 

シャマルの意見を無視して、雲雀はトンファーを構えてツナに襲いかかる!

 

ガキンっ!

 

「くっ・・・!」

 

「やっと君と戦えるね、小動物!」

 

雲雀は猛攻するが、ツナは空中に飛んで回避するが。

 

「ロール」

 

「キュッ!」

 

雲雀は『雲ハリネズミのロール』が自身を『雲の特性“増殖”』で生んだ、棘の生えた紫色の雲を足場にしてツナを追撃する。

 

「ツナさん! っ!?」

 

「何っ!?」

 

「うわっ!?」

 

「フェイト! アルフ! なのはちゃん!」

 

突如、なのは達の身体を緑色のワイヤーが絡まり、蜘蛛の巣にかかったようになり、レイジングハートとバルディッシュにワイヤーが絡み締め上げ、2機を破壊した!

 

「レイジングハート!!」

 

「バルディッシュ!!」

 

「ごめんなさい、少し大人しくしてもらいます」

 

シャマルが炎真を牽制するようになのは達を捕縛した。

 

「十代目っ!」

 

「テメェはアタシが相手してやるよ!」

 

獄寺にヴィータが迫り!

 

「っ!」

 

ガキンっ!

 

「私と手合わせしてもらうぞ、若き剣士よ・・・!」

 

山本とシグナムはつばぜり合いをし、距離を空けてお互いを見据える。

 

 

 

ー炎真sideー

 

「直ぐに助けるよ、フェイト」

 

炎真は拳を構えて、シャマルを睨むが。

 

「まぁ待て炎真」

 

「リボーン・・・」

 

「オイ、そこのレディ」

 

「えっ? 赤ちゃん? えぇっ!?」

 

突然現れた流暢に喋る赤ん坊にシャマルは面食らう。

 

「まぁそう警戒すンな、こっちとしてはお前らが何故こんな事をすンのか聴きてぇだけだからな」

 

「・・・・・・・・・」

 

「(ま、こう言われて直ぐに話す訳ねぇか・・・) 言いたくないなら別に構わねぇ。だが、なのは達に何かしようなら、ここにいる炎真が黙っちゃいねぇぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

シャマルがなのは達に何かしようなら相手になると、炎真から放たれる威圧感から察したシャマルも迂闊に行動出来ず、膠着状態になった。

 

 

 

 

ー獄寺VSヴィータsideー

 

ドカカカカカカカカカカカカカカカッッ!!!

 

ヴィータが次々と投げ飛ばす鉄球を『フレイムアロー』で撃ち落として行く獄寺。

 

「(ちっ、このままじゃこっちがジリ貧だぜ! かといって“今持っている手持ち”でこれ以上は・・・)」

 

「呆けてンじゃねぇぞ!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶって獄寺と肉薄する!

 

「ちっ・・・!」

 

グラーフアイゼンが当たるギリギリで獄寺が後方にステップして回避するとヴィータの目の前に“小さなダイナマイト”が。

 

「げっ! ダイナマイト!?」

 

「食らいな! “ミニボム”!!」

 

ボムッ!!

 

ヴィータは咄嗟にガードしたが獄寺は爆風を利用して距離を空けた。

 

「(コイツ、イカれてるぜ! 下手したら自分の武器にやられる所じゃねぇか!?)」

 

「けっ、ガキがハンマーなんて振り回してンじゃねぇぞ!」

 

「(ピクっ) ガキだと!?」

 

「ガキだろうが! どう見ても高町達と似たり寄ったりの背丈なんだからなぁ!!」

 

「それはアタシが“チッコイ”って言いたいのか!? この、“タコ頭”っっ!!!」

 

「(ピキッ!) 誰が“タコ頭”だ!? この、“エビ頭”っっ!!!」

 

「(プチッ!)エビ頭だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

 

“赤い三つ編み”、でヴィータをエビ頭と呼んだ獄寺に沸点の低いヴィータの頭が沸騰した。

 

「誰が“エビ頭”だっ! この“銀ダコ頭”っ!!」

 

「(ブチッ!) 言いやがったな! この“桜エビ”っ!!」

 

「タコ!!」「エビ!!」「タコ!!」「エビ!!」「タコ!!」「エビ!!」「銀ダコ!!」「桜エビ!!」

 

と、鉄球や炎の矢を放ちながら、後に『嵐の爆風』と『鉄槌の騎士』と呼ばれる二人は、低レベルの口喧嘩を繰り広げていた。

 

 

ー了平VSザフィーラsideー

 

「ぬおおおおおおおおおおッッ!!!」

 

「くううぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!」

 

晴れのグローブとF<フィアンマ>シューズを装備した了平がザフィーラと肉弾戦を繰り広げていた。

 

「喰らえっ! 『マキシマムキャノン』ッ!」

 

ドゴオオオオオオオオオオンンッッ!

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

ガードする事が出来たが、『マキシマムキャノン』の威力にザフィーラは戦慄する。

 

「(何と言う威力! マトモに食らい続ければ如何に俺のガードでも耐えられんっ!!)」

 

「(『マキシマムキャノン』をガードするとは、極限に見事だ!)」

 

お互いに相手の力量を認め合い始める了平とザフィーラ。

 

「(速さは互角、攻撃力は向こうが上・・・)」

 

「(フットワークはどっこいどっこい、防御力は向こうが上!)」

 

「(ならば! 俺の防御がヤツの攻撃を防ぎきるか!)」

 

「(俺の拳がヤツの防御を打ち破るか!) いざ極限にっ!」

 

「勝負だっ!」

 

再び、了平とザフィーラ、後に『晴天の拳闘士』と『盾の守護獣』の拳がぶつかった!

 

 

 

ー山本VSシグナムsideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

獄寺とヴィータが口喧嘩しながら喧しく戦い、了平とザフィーラが熱く拳をぶつけている頃、山本とシグナムはお互いの剣、“刀”と“レヴァンティン”を構えて、静かにお互いを見据えていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

見ている人間には分からないが、最初の一太刀から山本とシグナムはお互いの技量を察知し、闘気をぶつけ合いながらイメージの中で、何度もつばぜり合いを繰り広げていた。

 

「貴殿、名を何と言う?」

 

「山本武、アンタは?」

 

「烈火の将 シグナム。貴殿、剣を覚えて何年になる?」

 

「・・・・・・一年位、かな」

 

「そうか・・・」

 

素っ気ない返答だが、実はシグナムは内心歓喜していた。

 

「(素晴らしい! 僅か一年足らずでここまでの技量の剣士になったと言うのか!? 最初の一太刀で感じた確かな“才”! 更に“たゆまぬ努力”と“自身よりも格上の相手”との戦闘経験! それらがこの少年をここまでの剣士にしたのか?! いかんなぁ、鼓動が高まる!)」

 

そしてソレは山本も同じだった。

 

「(やっべぇ! この人すげぇ強ぇ! 多分剣士として力量は、“スクアーロ”や“幻騎士”と同等だ! やっべぇ、ワクワクしてきたぁ!!)」

 

お互い内心テンションがうなぎ登りになっていた。

 

「行くぜ!」

 

「来い!」

 

ザッ!

 

「(『時雨蒼燕流 攻式一の型 “車軸の雨”』!)」

 

「フッ!」

 

山本が繰り出す突きをかわすシグナム、かわされた山本は次の技を放つ。

 

「(『時雨蒼燕流 特式十一の型 燕の嘴<ペッカラ・ディ・ローンディネ> 』!!)」

 

「クッ!」

 

怒涛の突き攻撃に紙一重でかわす。

 

「ハアァッ!」

 

ガキン!

 

「おっ!」

 

「ツアァッ!」

 

力を込めた一刀で突き攻撃を無理矢理ストップさせ、攻撃に転じる!

 

「(『時雨蒼燕流 守式四の型 五風十雨』!)」

 

相手の呼吸に合わせて回避する山本はシグナムの懐に入り、片手で刀を振るう!

 

「クッ!」

 

スカ・・・

 

「何っ!?」

 

レヴァンティンで防御しようとしたが、振り上げた腕に刀はなく、空いたもう片方に刀が移っていた。

 

「(『時雨蒼燕流 攻式五の型 五月雨』!)」

 

「なめるなっ!」

 

ガキイィィィィィンン!!

 

そこから繰り出された二段目の攻撃をシグナムは鞘で防御した、が・・・。

 

「クッ、な、何だ!?」

 

再び攻撃しようするシグナムの身体が麻痺したように動かなくなる。

 

「(『鮫衝撃<アタッコ・ディ・スクアーロ>』)」

 

渾身の力を込めたその一撃は、鉄バットで殴られた衝撃が全身を走り、シグナムの全身が麻痺した。

 

「なめるなと言った!!」

 

しかしシグナムは、レヴァンティンを持った手を無理矢理に動かし、身体を殴り無理矢理に動かすと、再びレヴァンティンを振るう!

 

「うわっと!」

 

「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア・・・」

 

「へへへ、やるねぇ、鮫衝撃<アタッコ・ディ・スクアーロ>で麻痺した身体で動けるなんてさ・・・!」

 

「貴殿もな、先程の見事な二段攻撃を私が防御する事を見越して、衝撃剣を隠す為のカモフラージュにするとは、なかなか以外にしたたかだな・・・!」

 

「やべ、楽しくなってきた! こうなりゃ、トコトンやろうか!?」

 

「フッいかんなぁ、私も高ぶってきたぞ・・・!」

 

「行くぜ! シグナム!!」

 

「来い! 山本武!!」

 

『烈火の将』と『時雨の剣士』、後に名剣士コンビとなる二人は、静かにしかし熱く剣を交えていた。

 

 

『天空の守護者達』と『守護騎士』、最初のバトルがまだ、始まったばかり。

 

 

 

 

 

 




ツナ達はリング争奪戦からまだ一年も経っていない計算にしてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

浮雲VS大空

久しぶりに更新します。


ークロノsideー

 

ツナ達が交戦に入っている時、次元航行艦アースラにいるクロノ達にマンションから出たリンディから連絡を受けていた。

 

《えぇ、フェイトさんとアルフから連絡が合ったの》

 

「確認できました! “封絶型の捕獲結界”!」

 

エイミィがモニターに映すと、四角推の形を結界が海鳴のビル街の一角をおおっていた。

 

「ん、あれは・・・・・・綱吉??」

 

「えっ?」

 

クロノがモニターに映る結界の一角を指差し、エイミィがソコをズームアップさせると、結界内の空を飛ぶ“オレンジ色の炎”を両手から放出している超ツナと、結界の空を覆う“紫色の雲”に乗る学ランを羽織った少年<雲雀恭弥>と交戦している姿が映し出された。

 

 

 

ー雲雀VSツナー

 

並森中学風紀委員長 雲雀恭弥をどういう人間かと言うと『唯我独尊』。

誰とも群れず、誰ともつるまず、馴れ合うのが大嫌いな性格であるが、自分の母校と地元の並森を心から愛しており、母校と並森に害となるモノや群れる奴らを仕込みトンファーで叩きのめし、強者と戦い噛み殺すのが大好きな戦闘狂であり、『並森中“最強”の風紀委員長』にして『並森中“最凶”の不良』。

およそ社会適合性が全く無いと言っても良いが、雲雀には謎のカリスマ性と風紀委員の組織力を持って並森を裏から牛耳る“ギャング”的存在にまで成長させた。

 

そんな雲雀が出会ったのが“沢田綱吉”、最初は記憶にも残らない“存在”であったが、“強いのか弱い”のか良く分からない“小動物”だった。しかし“六道骸”、“XANXAS”、“白蘭”と言った強者達と戦い力を付けていった。

雲雀は待っていた、ツナが雲雀の“獲物”となる時を。

 

ガキン! ガキン! ガキン! ガキン! ガキン!!

 

空を飛翔する超ツナと“雲針ネズミverXのロール”の特性、“増殖”により生まれた針がついた紫色の雲を足場にした雲雀と接近戦を繰り広げた。

 

「雲雀、何故俺達が戦わないといけないんだ!?」

 

「“小動物”、僕はこの時を待っていたよ。」

 

「何・・・!?」

 

「君とこうして、戦える時をね・・・!」

 

口元に好戦的な笑みを浮かべる雲雀のトンファーがツナに迫るが、ツナはグローブの甲で防御する。

 

 

ーリボーンsideー

 

その頃リボーンは睨み合う炎真とシャマル、捕縛されたなのはとフェイトとアルフを尻目に形状記憶カメレオンのレオンを双眼鏡に変化させてツナと雲雀の戦いを眺めていた。

 

「フムフム・・・雲雀のヤツ“虹の代理戦争”での傷も完治したようだが。やはり入院していて少し鈍っているな、前より動きに僅かな鈍さがあるな・・・」

 

「ちょっとリボーン君!」

 

「観戦してる場合じゃないだろうが!」

 

「あの人<雲雀>ってツナ達の仲間なんでしょう? 止めなくて良いの?」

 

「まぁ確かに雲雀は“一応”守護者ではあるが、雲雀自身は気まぐれで味方になったり敵になったりするヤツだからな」

 

なのはとフェイトとアルフが暢気なリボーンにツッコムが、リボーンはどこ吹く風な態度を崩さなかった。

 

「敵になったりする人がツナさんの守護者なんですか!?」

 

「初代ボンゴレⅠ世<プリーモ>の守護者は多彩な人選だった。“貴族”、“異国人”、“領主”、“諜報員”、“聖職者”と初代は気に入ったヤツなら、どんなヤツでも守護者にしたらしいからな。雲雀みたいな“本気でツナを潰しに掛かってくれるヤツ”も必要なんだよ」

 

「「「えぇぇ~~~・・・」」」

 

リボーンの説明に“馴れ合い大好き”のなのは達は、何とも言えない顔になる。

 

「『ラケーテンハンマー』!!」

 

「『紫電一閃』!!」

 

ドカァァァン! ズガアアアン!

 

『っ!?』

 

炎真とシャマル、なのは達が突然の声と音がした方に目を向けると、街路樹に激突し倒れる獄寺と、ビルの壁に叩き付けられ、刀身がボロボロになった“刀”を落とした山本が目に映った!

 

「獄寺さん!」

 

「山本!」

 

「嘘だろ?! あの二人が!」

 

「(やはり“今の装備”で戦える奴らじゃ無かったか・・・)」

 

「く、くそっ・・・!」

 

「へへへ、強ぇなぁ・・・」

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・たくっ、手こずらせやがって・・・!」

 

「見事な、腕前だったが・・・“武器”に、恵まれなかったな・・・山本武・・・!」

 

辛くも勝利したと見てとれる程に疲弊し、ハンマー<グラーフアイゼン>から薬莢を射出させるヴィータと、長剣<レヴァンティン>から薬莢を射出させたシグナムが、肩で息をしながらシャマルと合流すると、今度はザフィーラがやって来た。

 

「こっちも、何とか終わらせてきたぞ・・・」

 

ザフィーラも戻ってきたが、身体の至るところに殴られた後であろう痣があり、了平との戦いが如何に熾烈だったのかが伺える。

 

「まさか・・・笹川先輩まで・・・!?」

 

驚く炎真となのは達を警戒しながらシグナム達は念話で会話する。

 

「《ザフィーラ、あの拳闘士はどうした?》」

 

「《近くで寝ている、正直あと少し戦っていたらこっちがやられていた・・・!》」

 

了平と互角の肉弾戦を繰り広げていたザフィーラは“永い年月”を戦い抜いてきたザフィーラの“経験”で『マキシマムキャノン』や『マキシマムイングラム』をいなしたりかわしたりして、隙を付いて気絶させてきた。

 

「《こっちも同じだ・・・それにどうやら今度はこの男<炎真>が相手のようだ》」

 

「《仕方ねぇなシャマル、コイツ<炎真>はアタシ達が相手するから蒐集は任せるぜ・・・!》」

 

「《ザフィーラはあの妙な赤ん坊を頼む!!》」

 

“何かの魔道書”を取り出したシグナムは“魔道書”をシャマルに預けてシグナムとヴィータが炎真と交戦を始め、ザフィーラは狼の姿に変身し、リボーンに襲い掛かる!

 

 

ー雲雀VSツナー

 

「くっ・・・! ナッツ!」

 

「ガゥッ!」

 

このままでは埒があかないと踏んだツナは“天空ライオンverX”のナッツを呼び出す。

 

「Gaaaaaaoooooッ!!」

 

ナッツの雄叫びで紫色の雲を“大空”の特性“調和”によりコンクリートとなり足場を崩した。

 

「フッ・・・!」

 

雲雀は焦ることなく更に足場の雲を作ると、ツナの腕に向けて“何か”を投げつけ、それがツナの両腕を拘束した。

 

ガシャンッ!

 

「これは、“アラウディの手錠”!?」

 

本来“形態変化<カンビオ・フォルマ>”しなければ現れない雲雀の武器がツナを拘束する。

 

「ロール・・・」

 

「キュアッ!」

 

雲雀が呼ぶと“増殖体のロール”が次々と手錠へ変化させツナの腕に嵌めると次々と手錠が“増殖”し、ツナの身体を拘束する。

 

「そうか、“本体のロール”ではなく“増殖体のロール”を形態変化<カンビオ・フォルマ>させる事で、手錠を作っていたのか!?」

 

「これで動けないね、小動物・・・」

 

ビルの屋上に手錠で出来た拘束具でがんじがらめされたツナを投げ捨て、トドメを刺そうとする雲雀だが。突如、ビルの下に目を向ける。

 

 

 

ー炎真VSシグナム&ヴィーター

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・!!」

 

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

炎真と交戦していたシグナムとヴィータだが、思いの外炎真は手強く、獄寺や山本との戦闘で疲弊した事もあり、呼吸が荒くなっていた、炎真そんな二人を平然と見据えていた。

 

「クッソッ!! アイゼン! カートリッジロード!」

 

「レヴァンティン! カートリッジロード!」

 

[[了解]]

 

ヴィータとシグナムのそれぞれのデバイスから薬莢が射出され、ヴィータのグラーフアイゼンが棘付きハンマーを、シグナムの長剣のレヴァンティンの刃に紫色の光を纏う!

 

「ラケーテン、ハンマーーーーーーーッ!」

 

「紫電一閃ッ!」

 

それぞれの得物を構えて、炎真に迫るが。

 

「『大地の重力』・・・!!」

 

ズガンッッ!!

 

「ぐあああああああああああッッ!!」

 

「おおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

大地の死ぬ気の炎の特性“重力操作”により、地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなり、更に重力に押し潰される。

 

「(ど、どうなってンだよ!?)」

 

「(重力を操っているのか!?)」

 

「君達の目的は何なのかは、ベッドの上で教えてもらうよ・・・!」

 

まるでツナ達と敵対していた時のような冷徹な目でシグナムとヴィータを見据える炎真。

 

 

 

ーリボーンVSザフィーラー

 

「ほ~ほ~、炎真のヤツも少しは腕を上げたな・・・」

 

「グァウッ!!」

 

狼形態のザフィーラが爪と牙を出してリボーンに襲い掛かるが、リボーンはヒラリヒラリと難なくかわす。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ・・・」

 

「なかなか、久しぶりの実戦で気分が乗るな♪」

 

「(何なのだこの赤子は!? 先程の拳闘士との戦闘で体力が削れているのを差し引いても・・・俺が万全の状態でも勝てるかわからん。とんでもない強者だ・・・!)」

 

ザフィーラ自身、まだまだリボーンは実力の半分も出していない事を見抜いており、内心かなり焦っていた。

 

「そろそろ管理局も動くぞ、名残惜しいがさっさと終わらせるか・・・」

 

リボーンは形状記憶カメレオンのレオンを拳銃の姿に変えて構える。

 

「ヴォンッ!!」

 

ザフィーラが飛びかかるが、リボーンはスライディング気味にザフィーラの下に滑り込み。

 

「『カオスショット』・・・!」

 

ダン! ダン! ダン! ダン!

 

黄色のオーラを纏った弾丸をザフィーラの腹部に撃ち込む!

 

「グガフっ!!」

 

防御力に優れたザフィーラだが威力を防ぎきれずダメージを受けた。

 

「グッ・・・ガフっ・・・!!」

 

 

 

 

ー炎真sideー

 

ゾクッ!

 

「っ!?」

 

炎真は殺気を感じて後ろに下がると、さっきまでいた地点に“球針体”となったロールが突撃してきた!

 

「くっ!?」

 

次々と襲い来るロールから避けると、“重力操作”を解いてしまった。

 

「しまった!? ぐあっ!」

 

シグナムとヴィータに目を向けてしまい一瞬の隙が生まれ、“球針体”に押し潰された。

 

「い、今のは・・・!」

 

「ロール・・・って事は雲雀のヤロウが・・・?」

 

シグナムとヴィータが上を見ると、雲雀が此方を見下ろした。

 

「シグナム・・・!」

 

「あぁ、ザフィーラの救援に向かうぞ・・・!」

 

 

ーリボーンsideー

 

「おっと・・・!」

 

ザフィーラに銃口を向けるリボーンにヴィータとシグナムの得物が襲うが、間一髪でかわした。

 

「一対一の戦いに割り込んで済まないが・・・!」

 

「今度はアタシらが相手だ!」

 

「コイツはちょいとやべぇな・・・」

 

基本的にフェミニストのリボーンにとってシグナムとヴィータの相手をするのは少し分が悪かった。

 

 

ーシャマルsideー

 

「“闇の書”・・・蒐集開始・・・!」

 

「うあっ・・・!」

 

「あぁっ・・・!」

 

シャマルの持つ“魔導書”が不気味なオーラを放つと、なのはとフェイトの胸元から“桃色の光”と“黄色の光”が漏れだし、“魔導書”に吸収される!?

 

「あ・・・あぁ・・・!」

 

「あぁ・・・!」

 

二人の胸元からそれぞれの魔力光の“リンカーコア”が現れた。

 

「なのは! フェイト!!」

 

「「あぁーーーーーーーーッッ!!」」

 

二人が悲痛の叫びをシャマルは申し訳無さそうに俯きながらボソッと呟いた。

 

「・・・・・・ごめんなさい・・・!」

 

 

 

ーツナsideー

 

「「あぁーーーーーーーーッッ!!」」

 

「フェイト・・・なのは・・・!」

 

なのはとフェイトの悲痛の叫びを聴いて、ツナは額の炎を強く灯した!

 

ギチギチギチギチギチギチッ!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

雄叫びを上げるツナと呼応するかのように炎が力強く燃え上がり。

 

ガシャーーーーーーンンッッ!!

 

「わお♪」

 

ロールの拘束具を破壊したツナに雲雀は感嘆の声を上げる。

 

「くっ・・・!」

 

「逃がさないよ、小動物・・・!」

 

ツナはなのは達の方へ向かおうとするが、雲雀が立ち塞がる!

 

「退けーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

「っっ!!??」

 

ドオオオオオンンッ!!

 

ツナの拳が雲雀を殴り、向かい側のビルのまで飛ばした。飛ばされた雲雀は窓を突き破り、フロアにあった机や椅子、書類などを巻き添えにして転がり込んだ。

 

「・・・・・・“オペレーションX<イクス>”っ!」

 

[了解しましたボス、“X BURNER<イクスバーナー>” 発射シークエンスを開始します]

 

ツナの耳に着けたヘッドフォンから声が響き、ツナの瞳に付けられたコンタクトディスプレイに、左右の手の炎出力が表示された。

 

「・・・・・・・・・」

 

ツナは左手の炎を後方へ噴射し、“支え”を作る。

 

 

ーリボーンsideー

 

ツナの炎の光は地上で戦っていたリボーン達にも届き、全員がツナの方に視線を集める!

 

「ツナのヤツ・・・“アレ”をやるつもりか・・・!」

 

「な、なんだよアレ!?」

 

「“砲撃魔法”の類いか?! しかも、空中で“支え”を作っただと・・・!」

 

「それほどの威力だと言うのか?! シャマル!」

 

「もう少し待って! もうすぐ終わるから・・・!」

 

「『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』っ!」

 

ロール増殖体に押し潰されていた炎真が“重力球を纏った拳”で増殖体を圧解し出てきた。

 

「フェイトから・・・離れろっ!!」

 

「キャッ!」

 

重力操作による斥力でシャマルをフェイト達から引き剥がす。

 

「炎真っ!」

 

「わかった! アルフ、なのはちゃんを頼む! 『大地の重力』!!」

 

リボーンは空かさず炎真の肩に乗り、炎真は“重力球”を作り出して獄寺達を回収し、フェイトを炎真が、なのはをアルフが抱き抱えて離脱した。

 

 

 

ーツナsideー

 

[ゲージシンメトリー、発射スタンバイ]

 

炎真が皆を連れて離脱するのと同時に、ヘッドフォンから発射準備完了がツナに届いた。

 

「くらえ、『XBURNER AIR<イクスバーナー エア>』っ!!」

 

ツナの右手から高純度の大空の死ぬ気の炎が発射された。

 

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!!

 

 

シグナム達が居た地点に、オレンジの炎が包み“封絶結界”が内側から溢れる炎エネルギーで破壊された!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』
重力球を拳に纏わせ、殴った瞬間に敵をブラックホールのような重力の渦で圧解する技。他にも引力を応用して敵を引き寄せたり、斥力を応用して殴った敵を更に遠くに殴り飛ばす事が出来る。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

反省会

ー雲雀sideー

 

現在雲雀は八神はやての家に戻っていた。

 

「・・・・・・・・・」むっす~~~~~!

 

「(ヒソヒソ)雲雀さんどないしたんや? 帰って来るなりむっす~っとして・・・?」

 

「(ヒソヒソ)さぁてねぇ・・・」

 

帰宅して直ぐに八神家のソファーに寝そべりながら仏頂面だが、全身からむっす~っと不機嫌オーラを出している雲雀を見ながら八神はやてと草壁哲矢はヒソヒソと会話をしていたが。

 

「・・・・・・・・・哲」

 

「ハッ」

 

雲雀に呼ばれて草壁は雲雀に近づき、2、3言会話すると草壁はリビングを出ようとした。

 

「どないしたん、草壁さん?」

 

「ちょいと買い物を頼まれてな。大丈夫、直ぐ戻るさ」

 

そう言って草壁は八神家を出ていく。

 

「・・・・・・シグナム達も帰ってこんし、どないしたんやろなぁ?」

 

「ピピっ」

 

「キュゥ」

 

首を傾げるはやての肩にいつの間にかヒバードとロールが乗り鳴き声を上げていた。

 

 

 

 

ーヴィータsideー

 

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・」

 

「ヴィータか・・・?」

 

夜の闇に包まれた公園にツナの放った『XBURNER AIR』から命からがら離脱し、悲鳴を上げる身体を引き摺りながら先に来ていたシグナム達と合流するヴィータ。

 

「シグナム、シャマル、ザフィーラ、皆大丈夫か・・・?」

 

しかし他のメンバーも同様で、シグナムはシャマルからの治療魔法を受けており、その隣で狼形態のザフィーラがヨロヨロと起き上がる。

 

「何とかな・・・ヴィータ、お前もシャマルから治療魔法を受けておけ・・・」

 

「アタシよりもザフィーラの方が重傷だろう・・・!」

 

了平の『マキシマムキャノン』と『マキシマムイングラム』を何発も食らい、更にリボーンから『カオスショット』を撃たれて、更に『XBURNER』から離脱する為に身体を酷使させてしまい、如何に防御力に優れたザフィーラでも出血などはしていなかったがダメージは大きく、一番重傷を負っていた。

 

「シグナムが来る前に少し治療をしてもらった。まだ痛むが少しは動ける・・・」

 

本当は身体を動かすだけでも激痛が走っているが、ザフィーラも意地で耐えている。

 

「シャマル、私はもういいヴィータの方を頼む」

 

「えぇ・・・」

 

シャマルはヴィータに治療魔法を掛けた。

 

「シャマル、蒐集の方は?」

 

「赤い髪の子<炎真>に邪魔されちゃったけど、概ね蒐集完了したわ」

 

「そうか・・・っ!」

 

「「「っ!」」」

 

安堵するヴィータ達の近くから誰かが近づいてくる気配を察知して警戒する。ほぼ満身創痍状態の今の自分たちでは管理局の低ランク魔導師にも遅れを取りかねない、暗がりからやって来たのは。

 

「ヴォルケンリッターの皆さん、お迎えに参りました」

 

「哲矢さん・・・!」

 

「「草壁殿・・・!」」

 

「哲にぃちゃん・・・!」

 

黒い長ランにリーゼントをした強面の少年、草壁哲矢だった。シグナム達は安堵のため息をついた。

 

 

 

ーリンディsideー

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

クロノ達やジュリーから連絡を受けて、リンディ・ハラオウンは息を切らしながらなのは達とツナ達が交戦を開始している封絶結界が発生した地点に向かっていた(ジュリーはアーデル達にも事態を知らせに転移装置でなみもり民宿に向かった)。

 

「あっ!」

 

暗がりからやって来る人達がリンディの目に入る。

 

「リンディさん・・・」

 

「綱吉君! 皆・・・!」

 

気絶したなのはとフェイトを背負うツナと炎真。ボロボロの身体を引き摺る獄寺と了平、子犬形態になっているアルフを抱いている山本、そしていつもの黒スーツを着用するリボーンだった。

 

 

 

 

ー時空管理局本局・医療セクションー

 

「えぇ、綱吉くんに炎真くん、山本くんと獄寺くん、笹川くんは負傷しているけど、そこまで深刻な怪我はしていないわ。なのはさんとフェイトさんとアルフも怪我はしていないわ、本当に眠っているだけ。ただ不審な点は2つ、“リンカーコアの異常な萎縮による一時的な魔力閉塞”、“綱吉くんの雲の守護者である雲雀恭弥が襲撃者達へ協力した”事・・・」

 

リンディは襲撃された状況を細かくクロノ達へと報告した。

 

 

 

 

 

ークロノsideー

 

リンディから報告を受けて、クロノはエイミィと共に今回の事件に対処するチームメンバーを集めた。

 

「そんな訳で、緊急事態に付き!」

 

「本日只今より、このチームにて、違法渡航者事件による捜査を始めます!」

 

『はいっ!』

 

「迅速な逮捕に向かって、頑張りましょう!」

 

『はい!!』

 

 

 

 

ー本局・デバイスメンテナンスルームー

 

「うん、コアと基本フレームは無事だね。大丈夫、これなら直ぐに直るよ」

 

技術師のマリーは破損したレイジングハートとバルディッシュのメンテナンスを行っていた。

 

 

 

ークロノsideー

 

「ん? それ現場写真?」

 

「綱吉達が交戦している間、レイジングハート達が保存しておいてくれた。貴重な資料だ・・・」

 

クロノは現場写真を空中ディスプレイで表示した。そこには、剣やハンマーから“薬莢”を飛ばすシグナムとヴィータ、シャマルが出した“魔導書”が現れた。

 

「クロノ君? その本、何か心当たり?」

 

「・・・・・・『ロストロギア 闇の書』、古代ベルカ発祥の“第一種危険指定遺産”」

 

「っ! “闇の書”って、まさか・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

驚くエイミィと共にクロノは深刻な表情で“闇の書”を睨んでいた。

 

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

しばらくしてなのはとフェイトとアルフが目を覚まし、ツナ達とリンディによる反省会を始めた。

 

「んじゃま。反省会と行くか、先ずは了平」

 

「ウム・・・俺はあのアルフと同じ獣の耳をした男と戦っていたのだ。途中までは俺の『マキシマムキャノン』や『マキシマムイングラム』を食らい続けていたのだが、徐々に俺の拳を交わしたりいなすようなりいつの間にか、俺の方がダメージを食らうようになった・・・!」

 

苦々しく顔を歪めながら了平は服を捲し上げるとその身体にザフィーラから受けた拳の跡が生々しく残っていた。

 

「了平、負けた理由は分かるか?」

 

「俺の根性と気合いが足りなかったからーーーー」

 

「それだけだと思うのか・・・?」

 

リボーンの無言から来る迫力にツナ達もなのは達も息を呑み、了平も観念したように呟く。

 

「・・・・・・・・・真っ正面からの接近戦に拘り過ぎた、フェイント等の技も使わず真っ向勝負に集中し過ぎて相手に動きを読まれてしまいこの体たらくだ・・・!」

 

了平の回答にリボーンは頷く。

 

「了平、オメェの真っ向勝負に拘るスタイルを悪いとは言わねぇ。だが、戦いの場では真っ向勝負だけが戦闘じゃねぇ、それはプロのボクシングの世界でも同じだ」

 

「ウム、インサイドだけでなくアウトサイドでの戦闘も視野に入れるべきか・・・!」

 

了平が唸りながら思考を巡らせているのを確認したリボーンは、今度は獄寺と山本の方を向いた。

 

「獄寺、山本、オメェらが負けた理由は言わなくても分かるな?」

 

「俺達が負けた理由は、“万全の装備”じゃない状態で対応できる相手じゃなかった事です・・・!」

 

「えっ? 隼人と武は“万全”じゃなかったの?」

 

「そう言えば獄寺さん、“SISTEMA C.A.I.”を出さなかったよね?」

 

フェイトとなのはが首を傾げると、山本はボロボロになった“バット”をだした。

 

「これって?」

 

「これは通称“山本のバット”ってな。ある特定の速度で振り抜くと刀に変化する“時雨金時”を持つ前に俺が使っていた武器だ」

 

「残念ながらこのバットでは“死ぬ気の炎”に対応出来ないし、今の山本の実力に釣り合う武器ではなくなっちまって、あくまで“護身用に所持”していたが。今回の相手の騎士<シグナム>がどうやら“スクアーロ”や“幻騎士”クラスの剣の腕前だったようでな。剣の方が先に駄目になっちまったようだぞ」

 

「ちょっと待って、何で獄寺くんも山本くんはそんな武器を?」

 

リンディの質問になのは達も頷き、ツナ達は苦々しい顔を浮かべる。

 

「“SISTEMA C.A.I.”も“時雨金時”も『虹の代理戦争』で復讐者<ヴィンディチェ>との戦闘で激しく損傷しちまってな、現在、ボンゴレの誇る科学班に預けて“修理中”なんだ・・・」

 

「成る程ね、だから“万全の装備”では無かったのね・・・」

 

「あぁ、今回の戦闘で今の装備でどうにかできる訳では無いからな。これから科学班に連絡して獄寺と山本の武器の修復を急がせるぞ。そしてなのは、フェイト、アルフ、お前らの反省は?」

 

リボーンの問いになのは達はバツが悪そうに顔を伏せながら答える。

 

「私は相手の女の子<ヴィータ>と自分の“実力差”を考えずに突っ込んでやられました・・・」

 

「・・・・・・私とアルフは油断してアッサリ敵に捕まって炎真の足枷になってしまいました」

 

「分かっているならそれで良い。ツナ、炎真、お前らは?」

 

「僕はあの女の人<シグナム>と女の子<ヴィータ>を拘束するのに気を捕られて雲雀さんの針ネズミの攻撃を防げませんでした・・・」

 

「俺も、雲雀さんが敵になって、少し戸惑ってしまった・・・」

 

「うんうん」

 

炎真とツナの答えにリボーンは満足そうに頷く。

 

「そもそも、あの人ってツナさんの守護者なんですよね? 何でツナさん達と敵対するのかな?」

 

「雲雀は群れるのも馴れ合うのも大っ嫌いな性格だからな・・・」

 

「前回の“虹の代理戦争”でも俺達と敵対する方に回った程だからな」

 

なのはの疑問に山本と了平は苦笑いを浮かべる。

 

「雲雀はずっと待っていたんだ。ツナと“全力で戦える時を”な」

 

「ツナさんと戦う為に?」

 

「そう言えば、“リング争奪戦”の時、雲雀の野郎・・・」

 

[この戦いが、あの小動物の成長に繋がるなら、何もしないよ]

 

「あぁ、雲雀は“強いヤツ”と戦い、叩きのめして地べたに這いつくばらせるのが大好きな性格だからな」

 

リボーンの雲雀と言う“戦闘狂”に対するコメントになのは達は何とも言えない顔になり、雲雀の性格を知るツナ達は苦笑いを浮かべる。

 

「今回の戦いは雲雀が敵対するなら、“アイツ”を呼ぶしかねぇぞ」

 

「えっ? あっ! “あの人”かっ!?」

 

「リボーンくん、“あの人”って?」

 

リンディの問いにリボーンは企んだ笑みを浮かべ。

 

「ツナの、“兄弟子”だ」

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

師匠、来る

ー八神家ー

 

なのは達がヴォルケンリッターに襲撃されて翌日の朝。時々食事を食べに来る雲雀の指定席になっている八神家のソファーに、スラリとした足を組んで眠っているヴォルケンリッター烈火の将シグナムと狼形態でソファーの足元で眠る盾の守護獣ザフィーラ。昨夜の戦闘での負傷は草壁の迎えの車の中や主が寝静まった後に施された。そして自室のベッドで“闇の書”を持って眠る湖の騎士シャマルは、治療でかなりの魔力を消費してしまい静かに眠っている。

 

だが、闇の書は妖しい魔力を放ちながらシャマルの手から宙に浮き、部屋から消えた。

 

そして闇の書は八神家の家主である八神はやてとそのハヤトと同じベッドに入りウサギのぬいぐるみを抱いている鉄槌の騎士ヴィータ(同じく治療済み)が眠る部屋に現れ、カーテンを開け放つ。

 

「ンン・・・」

 

八神はやてはカーテンが開いて差し込む日差しに目を開け、宙に浮いている闇の書を見て微笑む。

 

「闇の書、おはよう」

 

何も答えない魔法の書物に八神はやては挨拶をした。

 

 

 

ーなのはsideー

 

昨夜の襲撃での負傷も完治したなのはは一緒に学校へ行こうとフェイトを待っていた。

 

「なのは!」

 

「フェイトちゃん」

 

「おはようなのは、具合とかどう?」

 

「魔法はダメだけど体は全然」

 

「そう・・・私とアルフもおんなじ」

 

「そっか・・・そうだフェイトちゃん、私のこと、助けにきてくれたんだよね?」

 

なのはがフェイトの手を両手で包むように握る。

 

「ゴメンね、ありがとう!」

 

「ん~ん、助けたのはツナだし、結局何も出来なかった上に、炎真の足を引っ張ったから・・・」

 

「そんな事無いよ! ありがとうフェイトちゃん!」

 

「うん・・・」

 

気を落とすフェイトを励ますなのはにフェイトも頷き、そのままフェイトの手を引いて、なのはは学校へ向かう。

 

「フフフフフ♪」

 

「あの人達、何だったのかな?」

 

「うん、私も急に襲われたから・・・」

 

「あっでも、クロノ達が事件の担当だから、きっと大丈夫!」

 

「うん・・・そうだよね」

 

「うん」

 

「あっそうだフェイトちゃん。今日の放課後、大丈夫?」

 

「ん?」

 

「レイジングハートとバルディッシュのお見舞い、行きたいんだ・・・」

 

 

ーはやてsideー

 

トントントントン・・・

 

グツグツグツグツ・・・

 

八神家のリビングではやてが朝食を作る音が響く。

 

「ン・・・んん?」

 

はやてに毛布を掛けられたシグナムとザフィーラ、シグナムが目を覚ました。

 

「あっ・・・ごめんな~起こした?」

 

「あっ・・・いえ」

 

「ちゃんとベッドで寝なアカンよ、風邪ひくから」

 

「ああ・・・す・・・すみません・・・主、雲雀と草壁殿は?」

 

「あぁ、昨日の夜、シグナム達が帰って来て直ぐに行ってもうたわ。雲雀さん達学校の風紀委員やから忙しいんやて・・・」

 

ザフィーラを起こしながら毛布を畳みながら昨夜“借り”が出来てしまった雲雀と草壁の事を聞くシグナム(草壁は兎も角として、雲雀に“借り”が出来てしまった事が口惜しいのである)。狼形態のザフィーラもアクビをしながら起き上がる。

 

「夕べもまた夜更かしさん? あんまり雲雀さんや草壁さんに迷惑掛けたらアカンよ」

 

「雲雀は兎も角、草壁殿には確かにご迷惑をお掛けしたと思っています・・・」

 

「もう、シグナムもヴィータもまだ雲雀さんの事を嫌っとるの?」

 

「どうにもあの男は信用できないのです。ザフィーラは全幅的に信頼しているようですが・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ジト目でザフィーラを見据えるシグナムの視線から、ザフィーラはサッと目を反らして毛繕いをした。すると、リビングのドアが開き、シャマルが慌てて入ってくる。

 

「すみませ~ん! 寝坊しました!」

 

「おはようシャマル」

 

次に別のドアが開き、ウサギのぬいぐるみを持って寝惚けたヴィータが入ってくる。

 

「おはよ~・・・」

 

「おはよ~、ヴィータ」

 

「うん」

 

寝惚け眼を擦りながら、主のはやてににこやかに挨拶するヴィータ。

 

「ほら! ヴィータちゃん、顔洗ってらっしゃい!」

 

「シャマル、後で草壁さんに連絡して、昨日のお迎えのお礼を言わなあかんよ」

 

「は、はいそうですね・・・!」

 

「ついでに朝から草壁さんと“愛”を語らってもエエんやで~♪」(ニヨニヨ)

 

「えっ?! あっ・・・は、はやてちゃん! そんな、哲矢さんも風紀委員で忙しいんですから~/////////」

 

「「(ニヤニヤ、ニヨニヨ・・・)」」

 

紅くなった顔を両手で押さえて身悶えし、全身からハートマークを出しまくるシャマルを眺めながら、はやてとヴィータはニヨニヨと笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

あわただしくも、穏やかな日常の始まりをシグナムは微笑ましそうに、愛おしそうに見つめていた。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

その頃、ツナとリボーンは空港に赴き、今日来日する“兄弟子”を出迎えた。

 

フードにファールの付いた緑のモッズコートを着た黄色い髪に整った顔立ちの外国人の男性と、その男性に付き従う黒スーツの壮年の男性がツナとリボーンに近づく。

 

「“ディーノ”さん!」

 

「よぉツナ、久しぶりだな」

 

“跳ね馬ディーノ”、ツナ達ボンゴレファミリーの同盟ファミリーの一つ“キャバッローネファミリー”10代目ボス。ツナの前のリボーンの教え子で、かつてはツナと同じで気弱で臆病な“へなちょこディーノ”だったが、リボーンとの日々で今や立派なファミリーのボスとして、部下や住民達から慕われる“理想的マフィアのボス”になり、ツナにとっても“頼りになるカッコいい兄貴分”なのだ。

 

「ロマーリオ、ご苦労さんだな」

 

「ボスが日本に遊びに来るのは、もうウチのファミリーでは恒例行事ですからねぇ」

 

そしてディーノに追従してきた壮年の男性の名は“ロマーリオ”。ディーノの父親である先代ボスの代からキャバッローネファミリーの一員としており、今はディーノの右腕で頼りになる副官である。

 

「話はリボーンから聞いてるぜ。まさかお前が“虹の代理戦争”前に、時空管理局と繋がりが持っていたとはな」

 

「黙っていてごめんなさい。でも、ディーノさんも管理局を知ってたんですね」

 

「キャバッローネを継いで少しして、ボンゴレ9代目からある程度の事を教えてもらってたんでな。正直“魔法”なんてファンタジーの世界だろうと思ってたんだけどな」

 

「でもオレも実際に“魔法”や、それを使う“魔導師”と会っています。皆良い子達ですよ」

 

「ふーん、そりゃ会ってみるのが楽しみだな。それにしても、恭弥のヤツがまた“敵対”するとはな。代理戦争の時は自分で参加資格を破壊したり、本当にアイツの行動は先が読めねぇな・・・」

 

一応雲雀恭弥とは師弟の関係(雲雀はそんなつもりは一切無い)だがディーノにとっても今回の雲雀の行動は頭を抱える程の出来事だった。

 

「炎真達からの連絡じゃ、雲雀は学校には来ているようだが、今はこちらから接触させるのを止めている」

 

「賢明だな、下手に恭弥の逆鱗に触れるとこっちに被害が出るからな。所で、獄寺と山本はどうした?」

 

「アイツらと了平は、雲雀が協力している魔導師達との戦闘に敗北してな。今は再戦に備えて特訓中だぞ」

 

 

 

ー獄寺sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(カリカリカリカリ・・・)

 

獄寺隼人は現在学校を休み、マンションの自室でクロノから送られた“戦闘データ”から、ヴィータの戦術と武器の性能が映された映像から分析していた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(カリカリカリカリ・・・)

 

短気で喧嘩っ早く中二病な所が有るちょいアホだが、獄寺隼人は本来クレバーな“理論型”であり、特訓を始めるにしても先ず、ノートと鉛筆で自分の“武器の性能”と“理論”を頭に叩き込み、そこから“戦術”、“戦略”を組み立ててから特訓に移るタイプである。

 

現在はヴィータへのリベンジの為にクロノにレイジングハートとバルディッシュが記録していた戦闘映像を送ってもらい、そこからヴィータの戦術の分析を行っていた。

 

「フム、成る程な・・・」

 

しかし、眼鏡を掛けてノートと鉛筆でゴスロリ魔法少女の映像を分析する姿は、はっきり言ってドン引きモノでは有ったが・・・・・・。

 

「ニャオ~ン♪・・・」

 

因みに、“嵐ネコの瓜”はそんな主を無視して日向ぼっこを満喫していた。

 

 

 

ー山本sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして山本武も学校を休み、かつて『時雨蒼燕流』を学ぶ為に父と修行した“あさり組”と書かれた提灯が有る道場に来て、瞑想していた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

目を閉じて瞑想する山本の脳内では、昨夜の戦闘でのシグナムとの立ち合いの記憶から、イメージトレーニングでシグナムと剣を交えていた。

 

“理論型”の獄寺と違って、“感覚型”の山本は持ち前の集中力とシグナムとの戦闘経験から、シグナムとの戦闘をイメージする。

 

「(『時雨金時』が無かったのは言い訳に過ぎねぇ・・・あのシグナムってヤツは“剣士”としても“魔導師”としても一流だ。前回は“剣士”としての姿を見せたが、次は“魔導師”としての姿も見せるだろうな・・・)」

 

「ワン!」

 

「ピィ」

 

道場の外で主を見守る“雨犬の次郎”と“雨燕の小次郎”が心配するように声を上げると、山本はいつもの爽やかな笑顔を向ける。

 

「大丈夫だぜ、次郎、小次郎! 次は負けねぇよ! 『時雨蒼燕流』は、“完全無欠”、“最強無敵”たからな!」

 

意気揚々と、山本は再び瞑想を始めた。

 

 

ー了平sideー

 

「シッ! シッ! シッ! シッ! シッ! シッ!」

 

了平は『並森中学ボクシング部』の部室で、ボクシングミットを付けた“晴れカンガルー”の漢我流(通称ガリュー)とスパークリングしていた。

 

「(これだけではまだ極限に足りん! あの男<ザフィーラ>と再び拳を交える時、こんな状態ではこの間の二の舞だ!)「精が出るなコラ!」っ!? “コロネロ”師匠! それに紅葉ではないか?!」

 

部室の窓を見ると、シモンファミリー“森の守護者”青葉紅葉と、迷彩服を着用し、大きなファルコンに首根っこを掴まれて空を飛ぶ赤ん坊、リボーンと同じ“元呪われた赤ん坊アルコバレーノ”の1人、元イタリア海軍潜水奇襲部隊COMSUBIN<コムスビン>の隊員である“雨のアルコバレーノ コロネロ”だった。

 

「久しぶりだな! コラ!」

 

「師匠! 何故ここへ!? 紅葉も、雲雀の監視をしていたのではないのか!?」

 

「そうしていたのだが、結局いきなりやって来たこの赤ん坊に、結局無理矢理連れてこられたのだ!!」

 

憤慨する紅葉を無視して、コロネロは相棒のファルコにぶら下がりながら了平に近づく。

 

「リボーンから話は聞いたぜコラ! 時空管理局が関わってる事態に、お前らトゥリニセッテの一角、ボンゴレリングを持つ者が首を突っ込むのは感心しねぇが、借りを返す気概が無ければ、俺の弟子とは言えねぇなコラ!」

 

「おぉぉっ!! 師匠、修行を付けてくれるのか!?」

 

「当然だぜコラ! シモンの森の守護者も、一緒に面倒見てやるぜコラ!」

 

「結局良かろう! 了平だけ強くなるなど結局俺が許さん!!」

 

「うおぉぉぉっ! 極限に燃えてきたぞ!! コロネロ師匠!!!」

 

「良し! 先ずは死ぬ気の練習試合だぜコラ!」

 

了平と紅葉はコロネロの指導の元、暑苦しく修行に打ち込んだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会い 来る!

ー時空管理局本局・技術部セクションー

 

ここはデバイスの調整や強化等を行う本局の技術部、多くの職員が慌ただしく動き回る所に、自分たちの相棒である、レイジングハートとバルディッシュの強制部屋にお見舞いに来たなのはとフェイト。

 

「「こんにちは!」」

 

部屋の中には、管理局の制服の上に白衣を来た緑色の髪をした眼鏡の女性がいた。

 

「あぁフェイトちゃん! それからえっと、なのはちゃん?」

 

「はい!」

 

「技術部のマリエル・アテンザです。クロノ執務官とエイミィ先輩の後輩!」

 

「高町なのはです」

 

「お見舞いよね? 2機ともシステムチェック中だから、お話はできないんだけど・・・会ってあげて」

 

「「はい」」

 

システムチェックの機械の中には待機状態のレイジングハートとバルディッシュが浮いていた。

 

「ちょっと時間は掛かるけどちゃんと直るよ。心配しないで」

 

「「・・・・・・・・」」

 

守護騎士との戦闘で破損した相棒達の姿になのはとフェイトは沈んだ顔を浮かべる。

 

「でも、この2機がこんな風になるなんて、よっぽど凄い魔法だったのね・・・・」

 

「変わった魔法でした、魔方陣の形も違っていたし」

 

「あれは『ベルカ式』、それも本物の・・・」

 

フェイトの言葉にマリエルがシグナムとヴィータの戦闘映像を映し出す。

 

「『エンシェント・ベルカ』・・・遠い時代の純粋な戦闘魔法。一流の術者は、『騎士』って呼ばれる」

 

「じゃあ、デバイスの中で何か爆発させてたのは?」

 

なのはは、山本と獄寺との戦闘中にシグナムとヴィータが、剣やハンマーから“薬莢”を射出させる場面を指差して聞く。

 

「『魔力カートリッジシステム』ね。“圧縮魔力の弾丸”をデバイス内で作製させて、爆発的な破壊力を生むの。『頑丈な機体』と『優秀な術者』、その両方が揃わなきゃただの自爆装置になりかねない、危険で物騒なシステムなんだけど・・・」

 

[[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]]

 

その映像を待機状態のレイジングハートとバルディッシュが静かに眺めているようだった。

 

 

 

ーはやてsideー

 

その頃時間帯は夕暮れ、八神はやては『海鳴市立図書館』に赴いていた。最近『ある人物』によって増築され、本の数も増え、本棚の高さも低くされてはいたが、それでも車椅子に乗るはやての手では届かない本に懸命に手を伸ばそうと四苦八苦していた。

 

「あっ・・・」

 

「これですか?」

 

「はい、ありがとうございます~」

 

すると後ろから、はやてが取ろうとしていた本を取ってくれた人がいた。紫色の長髪を白いヘアバンドで止めた女の子、なのはのクラスメートで友達の『月村すずか』である。

すずかとはやては本棚から本を読むフロアに移動して会話に花を咲かせていた。

 

「そうか同い年なんだ」

 

「うん、時々ここで見かけてたんよ。“アアー同い年くらいの子や~”って」

 

「あっ、実は私も」

 

「「フフフッ」」

 

二人は可笑しくなって笑い合った。

 

「えっと、私月村すずか」

 

「すずかちゃん・・・私、八神はやて言います」

 

「はやてちゃん」

 

「「フフフッ」」

 

それからすずかとはやては楽しく談笑し、はやては迎えに来たシグナムとヴィータとシャマルと共にすずかに笑顔で手を振りながら図書館を後にし、今度は『海鳴大学付属病院』に赴き、主治医の石田先生と会った。

 

「ああ、いらっしゃい」

 

「石田先生」

 

「お世話になります」

 

「ええ、はやてちゃん調子はどう?」

 

「えぇっと、いつも通りです・・・」

 

「で・・・こないだの検査の結果が出たんだけど・・・今の治療、あんまり成果が出てないかもしれないのね、でももう少し続けて様子を見てみたいんだ。はやてちゃんどうかな?」

 

「ええっと・・・先生にお任せします」

 

「最近うちの病院、はやてちゃんのような身体障害者に対しての医療設備や治療方法が充実するようになったけど、検査とかお薬とかつらくない? 大丈夫?」

 

実は病院の設備と治療方法も図書館と同じように『ある人物』によるモノなのだが、それでもはやての“足の治療”は難しくなっているようだった。

 

「・・・・がんばります」

 

「・・・・・・・・」

 

無理に笑っているようなはやての笑顔をシャマルは辛そうに眺めていた。

 

 

 

ー雲雀sideー

 

並盛中学の応接室、風紀委員長雲雀恭弥の執務室であるこの場所に、雲雀恭弥が書類仕事をこなしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」(カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ)

 

『天上天下唯我独尊』、『暴虐不尽』、『我戦う、故に我有り』を地で行く『鬼の風紀委員長』だが、地元並盛と母校並盛中学を心から愛しており、地元と母校の風紀を取り締まり、更には病院から町の警察組織に役所にまでその影響を及ぼす雲雀は以外と多忙で、最近では隣町の海鳴にもその影響を伸ばしているので更に多忙になっている。常人なら手が足らなくなる所だが雲雀は自身の優秀さで余裕で仕事をこなしていた。

雲雀はふと立ち上がり、窓を開けると再び椅子に座り、執務机に向かう。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(スッ)」

 

ピュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・

 

雲雀は懐からいぬ笛を取りだし、鳴らすと人間の聴覚では聞き取れない2万ヘルツの音を吹き鳴らすと。

 

ザッ!

 

「お呼びですか、雲雀さま」

 

なんと、狼形態のザフィーラが窓からやって来て、執務机の隣にお座り状態で雲雀に向けて頭を垂れる。

 

「ザフィーラ、昨夜のアレは一体何だ・・・・?」

 

「っ!・・・・・・・・それは・・・・」

 

雲雀の質問にザフィーラは言い淀んだ。雲雀の性格上関わってくる事は守護騎士全員が分かっていたが、雲雀を警戒しているシグナムとヴィータは、“話さない”と言い、中立のシャマルも雲雀を巻き込みたくないから“話さない”と主張した。ザフィーラははやて同様、雲雀を全幅的に“信頼”しているが、その雲雀を巻き込みたくないと考えている。

だが、雲雀からの問いかけに無言を貫く事は“義”に厚いザフィーラの性格上かなり難しい。

 

「あの小動物<沢田綱吉>達が関わっているとなると、君達だけでは荷が重いよ」

 

「雲雀さまがそこまで言うほどの相手なのですか?」

 

「フッ・・・・」

 

ザフィーラの問いかけに雲雀は意味深な笑みを浮かべた。

 

 

 

ーツナsideー

 

ここはなのはの両親が経営している『喫茶店翠屋』、ここにキャバッローネファミリーボス、『跳ね馬ディーノ』が、魔導師であるなのは達に会いに来ていたのだが・・・。

 

「久しぶりだな、士郎さん・・・」

 

「立派になったね、ディーノくん。その腕の“痣”、キャバッローネファミリーのボスの“証”、良く似合っているよ。先代の親父さんも、きっと天国で喜んでくれているだろうね・・・」

 

「まだまだ親父には遠く及ばねぇけどな・・・」

 

「それはそうさ、親父さんくらいの立派なボスになるには、君はまだまだ若いんだからね・・・」

 

「へへへ、手厳しいな士郎さんもさ・・・!」

 

翠屋に赴いたツナとリボーンとロマーリオ、そして合流した炎真は、会話に花を咲かせているディーノと店主でありなのはの父親である高町士郎の様子を眺めていた。

 

「ディーノさんと士郎さんって、知り合いだったの?」

 

「ディーノの親父、先代キャバッローネファミリーのボスには、士郎のヤツはかなり世話になっていたからな。ガキの頃は何度か会った事が有ったらしいが、士郎が“裏の仕事”から足を洗ってからは疎遠になっていたみたいだゾ・・・・」

 

「それでも、士郎の旦那は先代からの恩を忘れた事は無いんですよ。先代の命日には毎年匿名で花束を贈ってくれてるんです・・・・」

 

「それにしても、“裏の仕事”って・・・・士郎さんも結構謎が多いなぁ・・・」

 

ツナとリボーンとロマーリオと炎真に桃子がケーキとコーヒーを持ってくる。

 

「はいツナ君と炎真君、ショートケーキとチーズケーキとホットココア。リボーンさんはチョコレートケーキとエスプレッソで、ロマーリオさんはキリマンジャロです」

 

「ありがとうございます桃子さん」

 

「どうもありがとう」

 

「サンキュー」

 

「すみませんね桃子さん、急に押し掛けてきて・・・」

 

「良いのよ。もうすぐなのはも帰ってくるから、もう少しだけ待っていてね♪」

 

そう言って桃子は厨房へと向かった。

 

「“なのは”って、リボーンさんが言っていた魔導師の女の子ですね?」(ヒソヒソ)

 

「はい、士郎さん達にはその事は秘密にしているんです」(ヒソヒソ)

 

「他にも“フェイト”って子もいるんですよ」(ヒソヒソ)

 

「あの二人ならディーノも気に入ると思うゾ」(ヒソヒソ)

 

桃子と士郎に聴かれないように会話する三人の耳に店のドアが開き、そこから女の子の声が聞こえた。

 

「ただいま~。あっ、ツナさんにリボーンくん♪」

 

「炎真、来てたんだ・・・・!」

 

「「「おかえり~」」」

 

元気良く挨拶するなのはとフェイトに手を上げて応える三人。

 

「あれ? 知らない人がいる・・・・」

 

「おいディーノ、待ち人が来たゾ」

 

「おっ! その子達か!」

 

ディーノは士郎との会話を切り上げると、なのはとフェイトに近づき、ロマーリオはディーノの後ろに控える。

 

「あの・・・・お兄さんは?」

 

「始めましてになるな。高町なのはちゃんに、フェイト・テスタロッサちゃんだな? 俺はディーノ。リボーンの元教え子で、ツナの兄弟子だ」

 

「ツナさんの・・・・」

 

「兄弟子・・・・」

 

「それと、コイツはロマーリオ。俺の部下だ」

 

「よろしくな。リトルレディ達」

 

これが“裏の世界”の凄腕のマフィアボスにして、『住民を大切にするマフィアランキング』でぶっちぎり1位の“跳ね馬ディーノ”との出会いであった。




中々ストーリーがまとまらない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

更に強く!

ディーノとロマーリオと出会い、二人は“寄るところ”が有ると言って別れ、着替えたなのはと一緒にツナとリボーンと炎真はフェイトが住むマンションのフェイトの部屋に来ていた。

 

「何となく、なんだけど。あの子達<ヴィータ達>とまた会う気がするの」

 

「うん・・・」

 

「昨日は話も聞けなかったけど・・・」

 

「“今度はきっと”・・・」

 

「うん!」

 

なのはの言おうとした言葉を引き継いだフェイトになのはも頷く。

 

「だが、正直今のお前達の力ではアイツ等に太刀打ち出来ねぇぞ?」

 

「わかってるのリボーンくん。だから今よりも強くならないと!」

 

「じゃあ今から?」

 

「うん、一緒に練習!」

 

ベランダに出たなのはとフェイトは棒を持って手合わせを始めた、フェイトは軽業師のような動きをし、なのはは実家が剣道道場である事から、正眼の構えで応戦する。

 

「(強くなろう)」

 

「(悲しい事を見過ごさずに済むように)」

 

「(もう誰も傷つかないで済むように!)」

 

「なのはちゃんもフェイトちゃんも頑張るなぁ」

 

「二人共、あの時何も出来なかったことを結構気にしているんだね」

 

ドカッ! バキッ!

 

「ンナッ!」

 

「アダッ!」

 

なのは達の訓練模様を呑気に見ていたツナと炎真の脳天にリボーンが鉄拳を落とした。

 

「何能天気してんだ、テメェ等も訓練しやがれ」

 

カチャッ プシュッ!

 

『形状記憶カメレオンのレオン』をサイレンサー付き拳銃に変化させたリボーンは、ツナに“小言弾”を撃ち込み、超<ハイパー>死ぬ気モードにした。

 

「なんのつもりだリボーン・・・?」

 

「今回の事件で雲雀は必ず俺達と敵対する事になる。そのときに備えてお前らも模擬戦をやっておけ。特に炎真」

 

「な、何・・・・?」

 

「聞いたぞ、お前“代理戦争”の時ヴァリアーの連中に危うく殺られそうになったそうじゃねぇか?」

 

「うっ!」

 

『虹の代理戦争』で“雲のアルコバレーノ スカル”の代理として最初は一人で戦っていた炎真は(他の守護者は乗り気で無いのとスカルの態度も悪くて協力しなかった)、“霧のアルコバレーノ マーモン(バイパー)”の代理として代理戦争に参加した『ボンゴレ独立暗殺部隊VARIA<ヴァリアー>』と交戦し(ボスのXANXASは不在)、そのときVARIAの幹部は炎真の弱点である『手を封じれば“重力操作”ができない弱点』を突かれ、危うく殺されそうになった。

 

「炎真、お前の実力はあくまでもシモンリング頼みだ。シモンリングが如何に強くてもお前自身の戦闘能力はそれほど高くない」

 

「ウゥッ・・・・!」

 

「お前は強力なシモンリングに頼りきりなんだ。“実戦経験”がお前には不足している」

 

実際、『PT事件』でプレシア・テスタロッサにもシモンリングを使いこなせていないと指南され、“実戦経験不足”がヴァリアーとの戦闘で窮地に立たされてしまった。

 

「お前自身の経験と力を高める為にも、ツナと模擬戦でもやってこい!」

 

前回の代理戦争や昨夜の戦闘での事も相まって、炎真も訓練をする気になり、『戦闘モード』になった。

 

「分かった。ツナ君、お願い出来るかな?」

 

「あぁ」

 

ツナと炎真はそれぞれオレンジの炎と真紅の炎を両手からバーニアのように噴射させて天空に飛んでいった。

 

「あれ? リボーンくん、ツナさんと炎真さんは?」

 

「アイツ等も特訓だ」

 

「特訓って、リボーンは行かくて良いの?」

 

「良いんだよ、アイツ等はアイツ等で強くなる。いちいち俺が口出しする事も無い」

 

「それってちょっと無責任なんじゃないかな?」

 

「無責任か?」

 

「そうだよ、ツナさん達が無茶してケガでもしたらどうするの?」

 

実家が剣道道場故に、稽古で無理をしてケガをする人達を見てきたなのはは苦い顔をしてリボーンに苦言を漏らすが。

 

「一から百までかてきょー様が口出ししてたら“生徒の自主性”が無くなっちまう。“指示待ち人間”よりも“自らどうするか考える”事も大事だ。“間違ったやり方”をして痛い思いをしたとしても、それは経験となり次に活かすことができる。最初っから“安全なやり方”を教えたって身に付かないぞ。それにな、生徒って言うのは師匠が見ていなくても“成長”しているモノだからな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「そうなのかな・・・?」

 

「さぁさ!お前らはお前らで特訓を続けろ」

 

パンパンと手を叩きながら、なのはとフェイトに訓練を続けるように促すリボーン。

 

「(やっぱりリボーンくんは少し無責任だと思う。“間違ったやり方”よりも“安全なやり方”が良いに決まっているの・・・!)」

 

フェイトは首を傾げたが、なのはは納得できないのか少し顔をしかめたが、直ぐに気持ちを切り替えて訓練を続けた。

 

このリボーンの“教育方針”が後になのはとぶつかる事になるのだが、それはまだまだ先の話。

 

 

 

ーツナ&炎真sideー

 

ツナと炎真は飛びながら、以前ツナがリング争奪戦で使った訓練場に付き、お互いに構えた。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

ザッ! ズガァァァァァァァァァァンンッ!!!

 

ぶつかったツナとリボーンはそのまま拳を振り抜いて、お互いの拳が頬を殴った!

 

「グゥゥゥゥ・・・・!!」

 

「ウォォォォ・・・・!!」

 

「ハアアアアァッ!」

 

「ぐあああああああっ!! くっ! ハアァッ!」

 

炎真が『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』でツナを吹き飛ばすが、空中で体制を整え、炎真に向かって高速で近づき、拳を振るうが、炎真は後方に引きてかわし、ツナの拳は地面を砕いた!

 

「『大地の重力』!!」

 

炎真は“手を使わず”に重力操作を使い、岩を動かそうとするが。

 

ズオンッ! ゴシャアアアアっ!!

 

岩はツナではなく、明後日の方向へ飛んでいった。

 

「クッ!」

 

「炎真、両手を使わずに重力操作をする気か?」

 

「うん。リボーンの言うとおり、僕の戦闘はほとんどシモンリング頼みだからね。それに“手を使いながら重力操作して戦う”のと、“手を使わず重力操作して戦う”とでは、戦闘の幅が広くなるからね」

 

徒手空拳で戦うツナと炎真にとって戦闘中に両手が封じられるのは危険性が高い。しかも今回の相手の守護騎士達はヴァリアー幹部クラス。そして雲雀恭弥はヴァリアーボスのXANXASクラスの実力者。両手を使わずに戦うにはリスクが高過ぎる故に、訓練を開始したのだ。

 

「良し、俺も付き合うぜ。とことんやろうぜ、炎真・・・!」

 

「ありがとう、ツナくん!」

 

ツナと炎真は訓練を開始した!

 

 

ー管理局本局・技術部デバイスルームー

 

[[・・・・・・・・・・・・・・・・]]

 

デバイスルームで調整を受けていたレイジングハートとバルディッシュは、前回の戦いでの敗北と、なのはとフェイトを上回る獄寺と山本との戦闘で見せたヴィータとシグナムの強さが主であるなのはとフェイトを上回っている事を理解していた。

 

【破損箇所システムチェック】

【問題なし】

 

【機能問題点・・・・】

【・・・・問題あり】

 

デバイス達もまた、自らの力不足を理解していた。

 

 

ー守護騎士sideー

 

その日の夜。はやての部屋で寝ていたヴィータが主のはやてを起こさないようにコッソリと抜け出し、先に来ていたシグナムとシャマルとザフィーラが待つビルの屋上に来ていた。

 

「来たか」

 

「ああ」

 

「管理局の動きも本格化してくるだろうから、今までのようには行かないわね・・・」

 

「なるべく、ここから離れた“世界”での“蒐集”をせねばな」

 

「今、何ページまで来てるっけ?」

 

ヴィータが問うと、シャマルは『闇の書』を取り出してページを捲る。

 

「290ページ・・・この間の子達<なのはとフェイト>でかなり稼いだわ」

 

「おし・・・もうすぐ半分だな、さっさと完成させよう。早く完成させて、ずっと静かに暮らすんだ・・・はやてと一緒に・・・!」

 

目を伏せながら呟くヴィータに他の守護騎士達も無言で頷く。

 

「ザフィーラ、雲雀君の方は何か言っていた?」

 

「あの橙色の炎の少年<ツナ>と真紅の炎を燃やす重力操作をする少年<炎真>と戦う時は呼べとの事だ。彼等は雲雀さまの獲物の様だからな・・・」

 

「雲雀がアタシ等に協力するなんて気持ち悪ぃな・・・」

 

「ヤツの目的は件の少年達との決闘だろうな。まぁこちらとしても、協力理由はともかくとしてヤツが協力すると言うならば利用するまでだ」

 

そう言ってシグナムとヴィータとシャマルはデバイスを起動させ、ザフィーラも人間形態となり、それぞれ紫と赤と若草色と水色の魔力を纏って、『地球』と違う『次元世界』へと飛び立った!

 

 

ーデバイスルームー

 

マリエル・アテンザは突然申告をしてきたレイジングハートとバルディッシュに困惑していた。

 

「確かにね、修理については全面的に任せるって言ってもらっている」

 

【機能に重要な問題点が発生しています。問題解決のための部品『CVK792』を含む、システムを組み込んでください】

 

「だけどこれは、いくらなんでも・・・」

 

マリエルは台に置かれた『カートリッジと弾丸』を見据える。

 

「『CVK792』・・・『ベルカ式カートリッジシステム』・・・・本気なの?」

 

マリエルは再度レイジングハートとバルディッシュに聞いたが、2機の回答は決まっていた。

 

【お願いします】

 

 

 

ー雲雀sideー

 

「よう恭弥・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「お久しぶりです。ディーノさん、ロマーリオさん・・・」

 

雲雀と副官の草壁が夜の並盛中学の校庭に居ると、自分たちに連絡を寄越した相手がやって来た。跳ね馬ディーノと副官ロマーリオだ。

 

「聞いたぜ、またツナ達と敵対するってな」

 

「僕とあの小動物は馴れ合った訳では無いけど」

 

「確かに馴れ合いなんてお前が最も毛嫌う事だからな。そんなお前だから、ツナの親父さんはお前を『雲の守護者』に選んだけどよ」

 

ヤレヤレと苦笑いを浮かべて肩を竦めるディーノだが、その手には“鞭”が握られていた。

 

「ま、それはそれとしてだ。お前が最近頻繁にメシを食わせてもらっている女の子と、ツナ達を襲った奴等の関係を聞かせてもらうぜ・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀は少し目を細くすると、仕込みトンファーを構える。

 

「マフィアを嘗めんなよ・・・・最近のお前の行動を少し調べれば、お前が海鳴での拠点を割り出すのは簡単なんだよ」

 

ディーノは雲雀がツナ達と敵対した時から、最近の雲雀の行動と海鳴での活動範囲から雲雀が拠点にしている場所<八神はやての家>を割り出したのだ。

 

「安心しな、この情報はまだ管理局やツナ達にも教えてねぇぜ・・・・」

 

「っ!」

 

ディーノが言い終わると、雲雀はトンファーで殴りかかるが、ディーノは鞭でその攻撃を防ぐ。

 

「お前の目的は、ツナや古里炎真との決闘か?」

 

「あの小動物もそろそろ噛み殺して良いかなと思ってね。それに古里炎真にはあの時<継承式>での借りを返してないからね・・・!」

 

「お前らしいな。んじゃ、交換条件だ・・・この勝負に俺が勝ったら、ツナ達を襲った魔導師達の目的を話してもらうぜ・・・!」

 

「前にも言ったけど、勝てたらね・・・!」

 

(一応)師弟関係の二人は夜の校庭で決闘を開始した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

NEWデバイス、来る

新年明けましておめでとうございます!今年も『かてきょーリリカルREBORN』を宜しくお願いします!

そして新年最初に活躍するのは、彼女です!


翌日、なのはとフェイトは私立聖祥大学付属小学校で勉強に励んでいる頃、リンディ・ハラオウンはリボーンが寄越した“護衛”と一緒にスーパーで買い物をしながら、クロノからの念話通信での報告を聞いていた。

 

「《犯人がコア収集をできるのはやはり、魔導師1人につき一度限りだそうです》」

 

「《そう、それならなのはさんとフェイトさんはもう、襲われる心配は無いのね?》」

 

「《ええ。ですが艦長ご自身が・・・・》」

 

「《そうね・・・まあ平気よ、リボーン君が“護衛”を付けてくれているし、私も自分の身を守るくらいなら。でも大変なら、休暇返上して手伝いましょうか?》」

 

「《っ! いえ・・・大丈夫です。ご心配無く》」

 

「《そう?》」

 

「《フェイトと一緒に、ゆっくりしていてください》」

 

「《はい、了解》」

 

念話通信を切ったリンディは“護衛”とスーパーを出ると、再び念話通信を送る。

 

「《レティ、今ちょっと良いかしら?》」

 

「《あらリンディ、どうしたの?》」

 

「《私達、古い付き合いよね?》」

 

「《まあ随分とね・・・なに? 急に》」

 

「《クロノが担当している事件って、『闇の書』関係だったりする?》」

 

「《っ・・・》」

 

クロノは隠していた様だが、母親にはお見通しであったようだ。

その後、マンションに戻り、家事をしながらレティとの通信でのやり取りを思い出していた。

 

「初めは、こっちでも認識できてなかったのよ。私達が知っていた『闇の書事件』とは、いろんな事が違っていたから。クロノ君には、他のチームに変わってもらうって言ったんだけど・・・」

 

「聞かなかったでしょう?」

 

「えぇ・・・自分が『闇の書事件』を担当している事、あなたには伝えないようにって」

 

「そう・・・・」

 

リンディは自室にある『自分と幼いクロノと、亡き夫クライド・ハラオウン』の写真を悲痛に見つめると、机の引き出しから手帳を取り出し開くと、『カード』が挟まれ、過去の情景が浮かんだ。

 

『けたたましく鳴り響く警報、逃げ惑う局員達、“黒い根”のようなモノが伸び、それに捕らわれた夫クライド、泣き叫ぶ自分』

 

そしてそれらを引き起こしたのが、件の『闇の書』。

 

リンディは挟まれていた“カード”、亡き夫であるクライド・ハラオウンの形見、『ストレージデバイス デュランダル』をポケットにしまった。

 

「さて、晩御飯の支度をしないとね・・・それじゃお手伝いヨロシクね、“クローム”ちゃん♪」

 

「はい・・・」

 

リンディはリボーンが“護衛”に寄越した、『ボンゴレ霧の守護者の“片割れ”』である、儚げな雰囲気を纏い、紫色の髪の毛をパイナップルヘアに結わえ、顔には眼帯を付けた少女、“クローム髑髏”と家事を始めた。

 

 

 

ーツナsideー

 

並盛中学の屋上に集まったツナとリボーン、獄寺と山本と了平、炎真が、なのは達を襲撃した騎士達と雲雀の繋がりを探っていたアーデル達シモンファミリー守護者(了平と特訓相手をしている紅葉は除く)から調査報告を聞いていた。並盛粛清委員会委員長の鈴木・アーデルハイトと一緒に調査していた加藤ジュリーが話し出す。

 

「雲雀恭弥の最近の動きを調査して見たんだけど、どうやら海鳴の方に何度か足を運んでいるわ」

 

「海鳴って事は、襲撃者はなのはちゃん達の地元に住んでいるって事なの?」

 

「そう言うこったな。さらに調べて見るとよ、雲雀が海鳴に行くようになったのは半年前・・・つまり俺らが『ジュエルシード事件』でバタバタやってる時に雲雀のヤロウも海鳴で何かやってたって事だな」

 

「その半年前から海鳴の図書館の本の増加や設備が整えられたり、海鳴総合病院では障害者用の医療設備やリハビリ設備が充実するようになったし、人目が入らない場所にも警察官が巡回するようになったり、街頭防犯カメラが設置され、海鳴を中心に裏で犯罪を起こしていた犯罪組織、暴力団や不良グループ等が壊滅させられたそうよ」

 

「明らかに雲雀の仕業っスね・・・・」

 

「雲雀の奴、並盛だけでなく海鳴まで自分の支配下に入れるつもりなのか?」

 

「ハハハッ、雲雀って仕事熱心なのな♪」

 

「山本、笑い事じゃないよ・・・・でも海鳴の裏でそんな物騒な人達がいたなんて・・・・」

 

「お前ら、なのはの友達のアリサとすずかは知ってるな」

 

リボーンの言葉に全員が当然のように頷く。

 

「アリサもすずかも日本でもかなり有数な大金持ちだからな、それ故に誘拐に合ったりしてるンだぞ」

 

おしとやかでお嬢様っぽいすずかは兎も角、獄寺とにらみ合いできる程の気の強いアリサがお嬢様だと言う事にツナ達は何とも言えない顔になった。

 

「それよりもさ! 本当にクロームにリンディさんの護衛を任せても良かったのかよリボーン?」

 

「大丈夫だろう、クロノに聞いた話じゃ今回の襲撃者達は魔導師の魔力を奪っているって話だ。前回魔力を奪われたなのはとフェイトを除いて、今俺達の周りで高い魔力を持っているのはリンディだぞ。クロームなら同じ女だし、いざ襲撃されれば“幻術”で対応できるしな」

 

「でも・・・・」

 

生来の心配症故にクロームとリンディの身を案じるが。

 

「心配しなくても大丈夫ッスよ十代目!」

 

「クロームだって俺らと一緒に色んな戦いを切り抜けて来たんだぜ!」

 

「ウム、極限にクロームも頼りになるボンゴレ守護者だからな!」

 

「ウーン・・・・大丈夫かなぁ? こうしてる間にも襲撃されていたりして・・・」

 

ツナの予想は、この数時間後に現実となることをツナ達は知る由もなかった。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

レイジングハートとバルディッシュのお見舞いで本局の技術セクションのデバイスルームに赴き、技術士官のマリエル・アテンザ(通称マリー)と対面する。

 

「ふぁあ~~・・・イヤ~何とか予定日に間に合って良かったよ・・・・」

 

「「ありがとうございます」」

 

「マリーさん・・・大丈夫ですか?」

 

「アハハッ平気平気・・・」

 

気丈に振る舞っているが、髪はボサボサ、目には大きな隈、白衣をヨレヨレ、見るからに疲労が溜まっていますと言わんばかりの姿であった。

 

「二人は大丈夫なの?」

 

「バッチリです!」

 

「前よりも魔力量が増えたくらいだって」

 

マリーの質問になのはとフェイトはグッと気力が充実しているのをアピールする。

 

「若さだね~~・・・さ、もう準備万端だから、会ってあげて、二人の新しいデバイス。『レイジングハート エクセリオン』と『バルディッシュアサルト』だよ!」

 

マリエルが、修理完了しただけでなく、形が変わったレイジングハートとバルディッシュを見せた。

 

レイジングハートは赤い宝玉がより輝き。

 

バルディッシュは逆三角形の形がさらに装飾が強くなっていた。

 

「アッ・・・」

 

[しばらくぶりです、マスター]

 

「レイジングハート、形が・・・」

 

[なかなかお洒落でしょう?]

 

「うん・・・かわいい!」

 

「バルディッシュも!」

 

[イエス・サー]

 

なのはとフェイトは久しぶりに再会し、新たな姿になった相棒を絶賛した。

 

「変更点については、本人たちから聞いた方がいいかな」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます」

 

《あっ! フェイト!》

 

デバイスルームにいるフェイト達に、アルフが空中ディスプレイを開けて通信を寄越した。

 

「アルフ、どうしたの?」

 

「《うん今日ね、リンディ提督やクロームと待ち合わせしてたんだけど、二人とも連絡が通じないんだ・・・フェイト、何か聞いてない?》」

 

「ううん、何も・・・」

 

「何か会ったのかなぁ? リンディさんにクロームさん・・・」

 

この数分後、なのは達はリンディとクロームに起こったことを知る。

 

 

 

ー作戦本部ー

 

ブゥゥゥゥン! ブゥゥゥゥン! ブゥゥゥゥン!

 

クロノのいる作戦本部に警報がけたたましく鳴り響く。

 

「観測地点にて、結界発生!」

 

「術式は・・・『エンシェントベルカ』!!」

 

古代ベルカ式の魔法、それはシグナム達が襲撃したことを知らせていた。

 

 

ー結界発生地点ー

 

結界が発生した地点では、管理局の魔導師数名が結界を破ろうとしていたが。

 

「現在滞在中の隊員4名で包囲! 結界の破壊工作中ですが!」

 

巨大な結界を4名の魔導師が破壊しようとしているが、所詮は低ランク魔導師、数が集まっても一流の魔導師が張った結界を破ることはできずにいた。

 

 

ーシャマルsideー

 

そして結界を張った張本人、『湖の騎士 シャマル』は結界から少し離れたビルの屋上から巨大な結界を展開維持しながら、管理局の魔導師の様子を伺った。

 

「《この結界、固い!》」

 

「フッ、当然よ。私と“クラールヴィント”の結界だもの。あのオレンジの炎の男の子<ツナ>の砲撃<XBURNER>クラスなら兎も角、あの程度の魔導師に破れるモノではないわ」

 

毒づく魔導師にシャマルは不敵な笑みを浮かべながら自分の人差し指も中指に嵌めた2つのリングのアームドデバイス『風のリング クラールヴィント』を撫でる。

 

「皆、そっちはどう?」

 

「《シャマルか?! こちらは奇妙な事が起こっている!》」

 

「ザフィーラ? どうしたの?」

 

念話で通信したザフィーラの焦った声に、シャマルも訝しそうに問う。

 

「《訳わかんねぇ! どうなってンだよこれっ!!》」

 

「ヴィータちゃん? 何かあったの、シグナム!」

 

「《分からんのだ! ターゲットの魔導師とその護衛のような少女を見つけたのだが・・・!》」

 

「本当に何が起こったの!?」

 

「《ターゲットの魔導師と少女が・・・・“大量に現れた”のだ!》」

 

「・・・・えぇっ!?」

 

シグナムの言った言葉が一瞬理解できず、シャマルはすっとんきょうな声を上げた。

 

 

『烈火の将 シグナム』、『鉄槌の騎士 ヴィータ』、『盾の守護獣 ザフィーラ』は今、『まやかしの幻影』に踊らされていた。




クロームの幻術は最早世界レベルと思います。リリカル側には骸やマーモン、幻騎士やトリカブト、クロームとフラン位の幻術使いは居ないと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幻惑の霧

『クローム・髑髏』。沢田綱吉の10代目改めネオボンゴレファミリーの霧の守護者の片割れ。

かつては『凪』と言う名の少女で、義理の父親は外資系の営業部長。母親は女優と裕福な家で生まれるが、両親は家庭を省みない事から、愛情は全く与えられずに、心を閉ざした人生を歩んだ。

しかし、車に轢かれそうになった一匹の猫を助けようとして交通事故に合った事で彼女の人生は大きく変わった。

腹部を車のタイヤに潰され、内臓が無くなり両親からも見捨てられ、死を待つだけだった彼女は当時裏社会の法の番人である『復讐者<ヴィンディチェ>』の地下牢獄で幽閉されていた、死刑囚である『六道骸』と精神の波長が合ったのか、骸の仮の依りしろとして骸の幻術により内臓を生み出されて生かされ、『クローム・髑髏』として生きていくことを選んだ。

リング争奪戦。未来での死闘。シモンファミリーとの激戦。ツナ達と共に戦い、幻術使いとして多くの経験を積んできた。

そして虹の代理戦争では骸に頼ることなく、自身の力で内臓を作り戦う事ができるほどに精神的な成長もした。

最初は骸と骸の仲間である『城島犬』と『柿本千種』以外に心を開かなかったが、今では綱吉達を仲間として、京子とハルとイーピンを友達として受け入れるようになり、『もう1人の霧の守護者』としてネオボンゴレファミリーの一員として戦ってきた。

 

「(って、リボーンから聞かされていたけど、まさかこれ程の幻術使いとはね。管理局には幻術を使う魔導師もいるけど、彼女に比べるとレベルが違いすぎるわ・・・・)」

 

「リンディさん、こっちです・・・・」

 

リンディはクロームに連れられながら、周囲にいる“自分たち”を見据える。周りは、クロームの幻術によって生まれたリンディとクロームが逃げ惑っていた。

 

街は湖の守護騎士シャマルによって張られた結界に閉じ込められ、一般人達も結界内部で消えており、今この街はリンディとクローム、そしてリンディの魔力を狙ってやって来た烈火の将シグナム、鉄槌の騎士ヴィータ、盾の守護獣ザフィーラしかいない空間だった。

 

「クロームさん、本当に私達の姿は見えていないのかしら?」

 

「(コクン)大丈夫。さっきもハンマーの女の子<ヴィータ>が近くを通りすぎても、気付いていなかったから・・・・」

 

クロームは自身の幻術と、藍色の霞のような炎をした、霧の死ぬ気の炎が灯ったリング(リボーンがくれたランクB級)で、霧の特性『構築』を用いて、よりリアリティーが高くなった幻覚で、偽のリンディとクロームを使い、シグナム達は翻弄されていた。

 

「これが霧の死ぬ気の炎の『構築』、幻術をよりリアルに作る事ができるのね?」

 

「はい。高度な幻術ならセンサーやレーダーのような光学兵器も欺けます。霧の死ぬ気の炎ならデバイスのセンサーですら欺くことができます。私ごときの幻術でも撹乱位なら・・・・」

 

「クロームさん、貴女の幻術も十分凄いわ。正直私の知る限り、管理局の魔導師でもここまでの幻術使いは見たことも無かったから」

 

「でも、骸様や霧の赤ん坊に比べたら私なんて・・・・」

 

「それでも今貴女のおかげで助かっているわ。ありがとう、クロームさん」

 

「・・・・ありがとうございます///」

 

照れ臭そうに頬を染めるクローム。

 

「それじゃ、ちょっと襲撃者の顔を見に行きましょうか?」

 

「はい・・・・」

 

「(クロームさんもかなりのレベルの幻術使いだけど、その彼女をも上回る幻術使いの『六道骸』と『霧のアルコバレーノ マーモン』。一体どれ程の使い手なのかしら?)」

 

クロームもリンディから見れば幻術使いとしてかなりの使い手だが、そのクロームよりも格上の使い手がいることに若干苦笑いを浮かべた。

 

 

 

ーシグナムsideー

 

「一体どうなっている!?」

 

烈火の将シグナムは困惑していた。自分たちは高魔力保持者<リンディ>から魔力を蒐集しようと結界に閉じ込め襲撃した。

しかし、ターゲットと一緒にいた少女が霞状の藍色の炎を出したと思ったら、突然ターゲットが複数になった。

 

「レヴァンティン! 本物はどれだ!?」

 

[申し訳ありません、こちらもどれが本物か分かりません]

 

「デバイスのセンサーも欺いているのか!?」

 

シグナムは急いで他の場所でリンディとクロームの幻を追っているヴィータとザフィーラに念話を飛ばした。

 

「ヴィータ! ザフィーラ! そっちはどうだ?!」

 

《チクショウ! コイツらも幻だ!》

 

《こちらもだ! どうなっている!? 匂いも気配も皆同じだ! まるで見分けがつかん!!》

 

鉄槌の騎士ヴィータも、盾の守護獣ザフィーラも、幻術によって生み出された偽物に完全に惑わされていた。

 

「これ程の幻術使いが管理局にいたと言うのか?」

 

「残念だけど、管理局の魔導師にもこれ程の幻術を使える魔導師はいないわ」

 

「っ!?」

 

シグナムが近くのビルの屋上から聞こえた声に振り向くと、ライトグリーンのポニーテールの女性と、紫色の髪をパイナップルのように結わえた眼帯を付けた少女がいた。女性、リンディが、待機状態の自分のデバイスを構える。

 

「貴女が彼女達のリーダーね? ちょっとお話良いかしら?」

 

「話?」

 

「“闇の書のシステムの一部”、自らの意思と実体を持った“無限再生プログラム”。『守護騎士 ヴォルケンリッター』」

 

「くっ!」

 

「ヴォルケンリッター・・・・?」

 

「貴女達は、闇の書をどうするつもりで蒐集を続けているの?」

 

「我らには我らの目的と理由があります。貴女に答える理由は無い」

 

シグナムは剣のデバイスであるレヴァンティンを抜刀する構えを取る。リンディは言葉を続ける。

 

「私が11年前、“暴走した闇の書に家族を殺された人間”だとしても?」

 

「あ・・・・!?」

 

リンディの言葉にシグナムの心が揺れた。

 

[ーーーーーーー!!]

 

「オオーーーーッ!!」

 

「なっ!」

 

シグナムがベルガ語の電子音が聞こえ目を向けると、ヴィータが鉄球をハンマー型デバイス グラーフアイゼンで叩き、叩かれた鉄球はリンディとクロームのいる地点に当たり、屋上を粉砕した。

 

「シグナム! 何ボーッとしてやがる!」

 

「っ! あぁすまない・・・・」

 

気を取り直したシグナムは、リンディ達のいたビルの向かい側のビルを見ると、藍色の霧から出てくるリンディとクロームがいた。

 

「ふっ!」

 

「ハッ!」

 

リンディが杖型デバイス デュランダルを、クロームが三又槍を構えると、上空に人間形態のザフィーラもやって来た。

 

「これはちょっとマズイかしら?」

 

「大丈夫、リンディさん」

 

「えっ?」

 

「必ずボス達が来てくれる。それまで私が守ります!」

 

クロームは怯む様子も無く、リンディの前に出て三又槍をシグナム達に向けて振り回す。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

《シグナム、あの少女が幻術使いか?》

 

《あぁ恐らくな》

 

《散々おちょくりやがって、ぶっ潰してやる!!》

 

《待てヴィータ!》

 

「うおおーーーーー!!」

 

先ほどまで自分たちを撹乱させたクロームに警戒していたシグナムとザフィーラだが、ヴィータはシグナムの静止を聞かずにクロームの眼前まで近づき、アイゼンを振りかぶる!

 

「ぶっ潰れろーーーーーーー!!」

 

「ハァッ!」

 

クロームが三又槍の柄で地面を叩くと、なんとヴィータの真下から、巨大な火柱が噴き出した!

 

「なんだと!? うわああああああああああああああああああっ!!!」

 

「「ヴィータ!?」」

 

シグナムとザフィーラが火柱に呑まれたヴィータを助けようと飛び出すが。

 

「フッ!」

 

「なんだこれは!?」

 

ザフィーラの身体を植物の茎のようなモノが絡み付き動きを封じた。

 

「ザフィーラ?! おのれ! 妙な幻術を使う前に斬り捨ててくれる!!」

 

シグナムが幻術を使われる前にクロームを倒そうとする。今この場で厄介なのは、リンディではなくクロームであると判断したからだ。

 

「ハァアッ!!」

 

シグナムのレヴァンティンの刃がクロームの身体を切り裂くが、クロームの身体は藍色の霧となって消えた。

 

「何!? これも幻術だと!?」

 

「私はここ・・・・」

 

「っ!?」

 

「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」「私はこっち・・・・」

 

「なっ!!??」

 

周りを見ると、何人ものクロームがシグナムを取り囲んでいた。

 

「くっ・・・・!」

 

シグナムは片っ端からクロームの幻を斬り捨てるが、次々と霧となって消えた。

 

「クソッ、一体本物は何処だ!?」

 

「グッ・・・・シグナム・・・・!!」

 

ザフィーラは自分に巻き付いた茎を引きちぎり、先ずは火柱に呑まれたヴィータを救出した。

 

「ヴィータ! しっかりしろ!」

 

「だ、大丈夫だザフィーラ・・・・」

 

「(何? あれほどの火柱に呑まれたのに火傷は軽微だと? やはりあの火柱も幻術。しかし、俺の身体に巻き付いた茎の感触も、火柱の熱も本物のようだった。一体・・・・?)」

 

「舐めやがって・・・・! おいザフィーラ、シグナムに加勢するぞ!」

 

「あ、あぁ・・・・」

 

負傷は軽微のヴィータは再び立ち上がり、シグナムに加勢する。それを見ていたリンディの頬に一筋の汗が流れる。

 

「(いくらクロームさんの幻術が優れているとはいえ、あの守護騎士達もかなりの実力者、このままではいずれクロームさんの方が・・・・)」

 

[転移魔法の反応を感知]

 

「えっ?」

 

デュランダルからの報告にリンディは目をパチクリさせる。

 

 

ーシャマルsideー

 

「っ!? 上空に転移反応?」

 

結界を張っていたシャマルもそれに気付き、上空を睨む。

 

 

ーなのはsideー

 

シャマルが張った結界上空に、なのはとフェイトが転移してきた。落下しながら待機状態のデバイスに話しかける。

 

「ごめんねレイジングハート! いきなり本番で!」

 

[オーライ。そのための私です]

 

「バルディッシュも!」

 

[ノープログレム]

 

[新システムの初起動です。新たな名で起動コールを]

 

「「うん!」」

 

なのはとフェイトがレイジングハートとバルディッシュを掴む!

 

「レイジングハート・エクセリオン!」

 

「バルディッシュ・アサルト!」

 

「「セット ア~ップ!」」

 

二人がデバイスを起動させると、レイジングハート・エクセリオンから桃色の魔力光が、バルディッシュ・アサルトから金色の魔力光が溢れ、なのはとフェイトの服が弾け、戦闘服BJ<バリアジャケット>が展開される。

 

なのはなBJは、聖祥大学付属小学校の制服をデザインされた姿に、レイジングハートの杖にはカートリッジシステムが搭載された。

 

フェイトは黒衣のBJとなり、斧杖のバルディッシュにリボルバー式のカートリッジが装備されていた。

 

桃色と金色の魔力光は流星のようにシャマルの結界を破り、戦場へと舞い降りた。

 

『っ!?』

 

[起動状態、異常なし]

 

[カートリッジユニット、動作正常]

 

新たな力を携え、二人の魔導師の少女は杖と斧杖を構えた。




お久しぶりです。新たに投稿している作品に夢中になっていました。令和初の『かてきょーリリカルREBORN』です。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔導師のリベンジ

「アイツら!」

 

ヴィータは以前倒した魔導師であるなのはとフェイトを鋭く睨む。なのはとフェイトはヴォルケンリッターを見据え、フェイトはリンディに念話を送る。

 

《リンディ提督、大丈夫ですか?》

 

《えぇ、クロームさんのおかげでね》

 

《良かった》

 

「クロームさん、ここはなのはさん達に任せて、貴女はさがって」

 

「分かりました。なのはちゃん、フェイトちゃん、気をつけて」

 

《はい!》

 

《了解!》

 

クロームの幻達は霧となって消え、本物のクロームはそのまま藍色の霧に包まれて消えたと思うと、リンディの近くにいた。

 

《チクショウ! あんなひ弱そうなパイナップル頭に虚仮にされるとはよ!》

 

《しかし正直助かった。あれほどの幻術使いとこれ以上戦っていたらどうなっていたか分からない》

 

《こういう手合の方がやり易いしな》

 

ヴィータはクロームにしてやられた事に空中で地団駄を踏み、シグナムは凄腕の幻術使いのクロームに戦慄した。そしてザフィーラが睨む先には、同じように結界内に入っていたアルフが空中に立っていた。シグナムは魔力を奪ったなのはとフェイトと新たになったデバイスを睨む。

 

「二人とももう魔力が戻ったか、呆れた回復速度だ。それにあのデバイス」

 

「なんだろうが関係ねぇ! 邪魔する気ならぶったたく!」

 

ヴィータはアイゼンを構える。

 

「フェイトちゃん!」

 

「うん!」

 

なのはとフェイトは足元に飛行魔法を展開して、なのははヴィータと、フェイトはシグナムと対決する!

 

 

ーなのはVSヴィーター

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

なのはとヴィータがお互いのデバイスをぶつけ、つばぜり合いをしながら火花が散る。

 

「私達、戦いに来た訳じゃないの! 話を聞きたいの!」

 

「笑わせんな! やる気の新型武装ぶら下げて言うことかよっ!?」

 

「こないだも今日も、いきなり襲いかかって来た子がそれを言うっ!?」

 

つばぜり合いをしていた二人はぶつかり合った衝撃で大きく後方に飛ぶ。

 

「こっちはもうてめぇに用はねぇんだ!」

 

[(グラーフアイゼン ベルガ語)]

 

アイゼンがベルガ語で喋りながら、形状を変えた。ハンマーが少し大きくなり、ハンマーの片方に突起物が出て、もう片方には三つのバーニアが展開して火を吹く。

 

「骨でも折って、しばらく寝てろーーーー!」

 

ヴィータは『ラケーテンハンマー』を繰り出して、ビルの屋上に着地したなのはに迫る。なのはも着地した地面に魔法陣を展開する。

 

「レイジングハート!」

 

[カートリッジロード、行きます]

 

ガシャン!

 

レイジングハートから薬莢が排出された。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「くぅっ!」

 

なのはが迫りくるヴィータに向けて手をかざし、魔力障壁でヴィータの攻撃を防いだ。

 

「くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

ヴィータの『ラケーテンハンマー』の威力に、なのはが押される。

 

「ぐぅっ!」

 

「ンンッ!」

 

「てめぇ!」

 

「簡単に倒されちゃうわけにはいかないから!」

 

「のやろー!」

 

「スマッシャー!」

 

苛立たし気にヴィータは片手から小さな鉄球を投げ、なのはは魔力障壁を破裂させ、その爆発でビルが少し崩れた。なのはとヴィータは再び戦場を空中に移す。

 

「アッ!」

 

「こんの~、ぶっ飛べーーーー!」

 

ヴィータは周りに幾つもの小さな鉄球を浮かせ、鉄球をなのはに向けてハンマーで叩き飛ばした。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

迫りくる幾つもの鉄球に対して、なのはは瞑目すると、レイジングハートから今度は2つ薬莢が排出された。

 

[(レイジングハート・エクセリオン ミッドチルダ語) アクセルシューター]

 

「アクセル・・・・シュートッ!!」

 

なのはも幾つもの魔力弾を鉄球に向けて放った。なのはの魔力弾とヴィータの鉄球が空中でぶつかり合い爆発し、爆風が辺りに広がる。

 

「なぁ!?」

 

自分の攻撃の相殺されたことにヴィータが驚く。

 

「ほんとに、お話を聞かせて欲しいだけなの」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「帽子のことも謝りたいって思ってたの!」

 

「(やりにくいヤツ、これならあのタコ頭<獄寺>の方がやり易いぜ・・・・)」

 

なのはの言葉に、ヴィータの顔に戸惑いが生まれる。

 

「ね、良い子だから・・・・」

 

「くっ・・・・うっせぇ、チビガキ! 邪魔するヤツはぶっ潰す!!」

 

「っ!」

 

ヴィータがアイゼンを肩に構えてなのはに迫り、なのはも構えた。

 

 

ーフェイトVSシグナムー

 

なのはとヴィータが空中戦を繰り広げているのと同じ頃、フェイトとシグナムが、ハルバードモードのバルディシュと刀型デバイス『レヴァンテイン』をぶつけ、火花を散らした。

 

「うっ! ハアアアアアアアッ!!」

 

ぶつけた衝撃でフェイトが後ろに飛ばされるが、直ぐに体制を整えてバルディシュを振るう。

 

「くっ! たあああああああっ!!」

 

シグナムもバルディシュをかわし応戦する。それぞれの攻撃が身体にあたる寸前、小さな障壁を展開して防いだ。

 

「クゥ!」

 

「ンン!」

 

二人は空中を飛びながら刃を交えた。

 

「ハァ!」

 

「クゥ!」

 

フェイトはシグナムに向かって魔力弾を放つが、シグナムは寸前でかわす。

 

[(レヴァンテイン ベルガ語)]

 

シグナムはレヴァンテインを鞘に納刀して抜刀すると、刀だったレヴァンテインが蛇復刀へとその形状を変化させた。

 

「フン!」

 

蛇復刀は縦横無尽に伸びながらフェイトに迫った。

 

「ウオーー!」

 

フェイトはバルディシュを大鎌の形態『クレッセントフォーム』へと変形させてシグナムに向かって振りかぶった。

 

「フッ!」

 

シグナムは片方の手で持っていた鞘でフェイトの攻撃を防いだ。

 

「くぅぅ!」

 

「ふんっ!」

 

「がはっ!」

 

シグナムはフェイトの腹部を蹴り飛ばし、フェイトとの距離を空けて、蛇復刀のレヴァンテインでフェイトに迫る。

 

「ハァっ!」

 

「ハッ!」

 

シグナムは紫色の魔力光を全身に纏いレヴァンテインを振り、フェイトも金色の魔力光を纏ってシグナムに向かってバルディシュを振りかぶる!

 

二人の技がぶつかると激しい爆発と衝撃が辺りに広がり、近くのビルが震え、窓ガラスが盛大に割れた。

 

煙が収まるとシグナムはほとんど無傷の身体だが、フェイトの稲妻が帯電していた。

 

「フム、あの山本武以外にもこれほどの使い手がいたとはな。素直に感服しよう」

 

「ありがとうございます。でも、私くらいで感服するようじゃ、炎真やツナには、とてもじゃないですが敵いませんよ・・・・」

 

「“炎真”と言うのはあの重力使いの少年で、“ツナ”と言うのは雲雀と互角に戦っていた橙色の炎の少年か?」

 

「そうです」

 

「確かにあの少年達の方が、ヘタをすれば我々よりも格上だった事は認めよう。あの雲雀と互角に戦える人間だからな」

 

「それからもう一つ、あの時の武が持っていた刀が、武の本来の武器ではないんですよ」

 

「やはりな」

 

「“やはり”?」

 

山本が本来の武器である『時雨金時』ではなく、あくまでも護身用として持っていた刀『山本のバット』である事を知らない筈のシグナムの言葉にフェイトは首を傾げる。

 

「刃を交えれば解る。山本武の剣士としての“才覚”は間違いなく天賦のモノがあった。そしてたゆまぬ努力と自分よりも格上の剣士との戦闘経験、それらの戦いで研かれた技を持った素晴らしい剣士だ。しかしヤツの振るっていた刀は余りにもお粗末だったからな。本来の刀ではないのかと思っていたのだ」

 

ほんの少し刃を交えただけで敵である山本の力量を見抜いていたシグナムにフェイトは驚いた。

 

「凄いですね、そこまで見抜いていただなんて・・・・」

 

「お前も中々の魔導師だ。全力を持って相手をするのが礼儀と考え相手をしよう。ヴォルケンリッターが将シグナムだ。お前は?」

 

「っ? フェイト・テスタロッサです」

 

「テスタロッサか。こんな状況でなければ、山本武の時と同じ、心踊る戦いだったろうが。今はそうも言ってられん。殺さずに済ませる自信は無い。この身の未熟を許してくれるか?」

 

「構いません。勝つの、私ですから」

 

レヴァンテインを構えたシグナムに、フェイトもバルディシュを構え不敵に微笑んだ。

 

 

ーアルフVSザフィーラー

 

アルフとザフィーラも、ビルの間を飛びながら、拳を交えていた。

 

「ヌオォー! テヤッ!」

 

「ウォーッ!」

 

お互いに魔力を込めた拳をぶつけ合わせ、爆発を巻き起こす。

 

「デカブツ! あんたも誰かの使い魔だろ!? ご主人様が悪いことや間違ったことしてんなら、止めなきゃダメじゃんかよ!?」

 

「我が主は、我らの所行については何もご存じない」

 

「っ!?」

 

「全ては、我ら四人の意思であり、我らの責だ」

 

「え?・・・・えぇっ?!」

 

ザフィーラは辛い気持ちを隠すように目を伏せた。

 

 

ーシャマルsideー

 

シャマルは結界の外で広域索敵で結界周辺に管理局の魔導師が結界に近づいていたのを確認していたが、その“増援の魔導師達の反応が次々と消えている事”に首を傾げていた。

 

「局の増援の魔導師の反応が次々と消えている・・・・これって一体?」

 

魔導師達の反応がある地点を見ると、“紫色の雲”が所々に現れていたのが見えた。

 

「あれって・・・・ロールちゃん??」

 

 

ークロノsideー

 

「くっ・・・・!」

 

なのは達のいる結界へ増援の魔導師を引き連れていたクロノは、突然の襲撃で既に増援の半分が撃墜されていた。

 

《うわああああああああっ!!!》

 

《なんだコイツは!?》

 

《ウ、ウソだ! 魔導師の俺達がこんなガキに!!!》

 

念話から聞こえてくる魔導師達の悲鳴を聴きながら、クロノは襲撃者がいるであろう“紫色の雲”に向かった。

 

「っ!」

 

そしてクロノの視線の先には、空中戦で攻めてくる魔導師達の魔力弾を紫色の雲に跳び移りながらかわし、“紫色の炎”を纏ったトンファーで的確に人体急所を攻撃して、魔導師達を叩きのめしていた襲撃者を確認した。

 

「ぐあっ!」

 

「ぎゃぁっ!」

 

「うぁあっ!」

 

魔導師達は障壁を張ったにも関わらず、トンファーは障壁を打ち破り魔導師達を撃墜した。

 

「雲雀、恭弥・・・・!」

 

クロノは魔導師達と交戦している学ランを羽織り猛禽類か肉食獣のような鋭い目をした黒髪の少年を睨む。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀はトンファーから鎖分銅を飛ばし、クロノの後ろにいた魔導師達の首に巻き付けると勢い良く鎖分銅を引っ張った。

 

「ぐえっ!」

 

「かぁっ!」

 

「げぇっ!」

 

「ごあっ!」

 

首を絞められた魔導師達はそのまま意識が落ちてしまい、雲雀はそのまま鎖を引っ張っり巻き付けた魔導師達をビルの屋上に叩き落とした。

 

「弱いな。数頼みで群れるばかりの軟弱な草食動物ほど、噛み殺したくなる」

 

「っ!」

 

クロノは若輩ながらこれまで多くの次元犯罪者と戦ってきた。しかし、目の前の襲撃かである少年、雲雀恭弥を見ると、これまでの犯罪者達が小物の雑魚と思わせんばかりの威圧感に息を呑むが、執務管としてのプライドで気持ちを立て直した。

 

「雲雀恭弥、“綱吉達の仲間”であるはずのキミが何故、ヴォルケンリッターに協力する?」

 

「(ピキッ)誰が、あの少動物の仲間だって・・・・?」

 

「えっ?・・・・・・・・」

 

ツナ達の仲間だと思っていた雲雀が突然声を低く冷たくして、鋭い目付きをさらに鋭くし、トンファーに纏わせていた“雲の死ぬ気の炎”が業火のように燃え上がった。

 

「少動物達が来るまでのウォーミングアップに使おうと思っていたけど・・・・君、噛み殺すよ」

 

「(あれ? もしかしてボクは、墓穴を掘ったのかな?)」

 

群れる事と馴れ合う事と束縛される事がこの世で何よりも大嫌いな雲雀にとって仲間扱いされるのは屈辱以外の何物でもない。クロノは知らず知らずに、『守護者最強』の逆鱗に触れてしまっていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

撤退

ーツナsideー

 

なのはとフェイトとアルフが守護騎士<ヴォルケンリッター>と交戦を始めてすぐ、ここ並森郊外の山の空で、オレンジと真紅の閃光が超高速で翔びながら何度か交差し、激しい激突音を響かせていた。

 

「フッ!」

 

「ハァッ!」

 

超ツナと炎真がフェイトを上回るハイスピードバトルの模擬戦を繰り広げていると。地上から二人の模擬戦をパラソルを広げ、横に置いたテーブルの上にエスプレッソコーヒーが入ったカップが置き、ビーチチェアに寝そべりながらレオンが変身した双眼鏡で暢気に眺めているリボーンがいた。

 

「ん?」

 

双眼鏡のレオンをテーブルに置いて、優雅にエスプレッソを飲むリボーンだが、レオンがいきなり携帯に変身するとジャズメロディーの着信音が流れ、リボーンはそれに出ると何度か相槌を打ちながら、少し顔に笑みを浮かべ携帯を切り、レオンを拡声器に変身させて模擬戦を繰り広げるツナ達に向けて声を上げる。

 

「おいツナ! 炎真! ちょっと降りてこい!!」

 

「「ん?」」

 

二人は突然呼ばれてリボーンの近くに降りていく。

 

「どうしたリボーン」

 

「何か有ったの?」

 

「今エイミィから連絡が有ってな。予想通りあの騎士達がリンディを狙って現れたようだぞ」

 

「っ! そうか。それでリンディと護衛として一緒にいる筈のクロームは?」

 

「あぁ、クロームが幻術で奴らを振り回したようでな。今は新調したデバイスを装備したなのはとフェイト、それとアルフのヤツが交戦しているみたいだ」

 

「フェイト達が!?」

 

「クロノはどうした?」

 

「今クロノが手勢の魔導師を連れて現場に急行しているみたいだが、恐らく雲雀が出てくるかもな」

 

「「(コクン)」」

 

ツナと炎真はお互いを見て頷き合い、リボーンはすかさずツナの肩に乗ると、ツナと炎真は両手の炎の吹かせて空を飛んでいった。

 

 

ークロノsideー

 

「クッ!」

 

クロノは迫り来るトンファーの攻撃を紙一重で回避する。時に障壁で防御しようとするが、煙のように燃え上がる紫色の死ぬ気の炎、『雲の死ぬ気の炎』を纏った鋼鉄製のトンファーが障壁を難なく砕き、クロノは空を飛べるアドバンテージを活用して回避していた。

 

「ふ~ん。君、それなりにやれるね」

 

猛禽類のような鋭い眼差しを好戦的に煌めかせ、自分の相棒である『雲針ネズミのロール』が作ったトゲ付の雲に乗りながら、雲の死ぬ気を纏ったトンファーを回転させる。

 

「(強い。今まで戦ってきた次元犯罪者達が束になっても敵わない程に・・・・!)」

 

クロノは内心焦っていた。現在結界内部では、母親であるリンディや、そのリンディを守るために守護騎士と交戦しているであろうなのはとフェイトとアルフの元へ行かねばならないが、目の前にいる少年の実力が自分の予想を大きく上回っていた。唯一の優位に立っているのは、彼は雲に乗らなければ空中を動けないが、自分は飛行魔法で自在に空を飛べる。このアドバンテージをどう活かせば勝てるか、クロノは雲雀と戦いながら思案していた。

 

「フッ!」

 

「チッ!シュート!!」

 

雲雀が雲を跳びながらクロノに接近するが、クロノは誘導魔力弾を放つ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

だが雲雀はトンファーを回転させると、トンファーから鎖分銅が飛び出して、『雲の死ぬ気の炎』の特性である『増殖』により鎖分銅は凄まじい勢いで伸びていき、それを雲雀が縦横無尽に振り回すと、誘導魔力弾を全て叩き落とした。

 

「なっ!?」

 

「・・・・!!」

 

一瞬唖然となったクロノの隙を狙って肉薄した雲雀が、トンファーを振りかざすと、クロノはすぐに切り替えるて障壁を貼り防御をするが、雲雀には何の意味もなく破壊され、クロノの左腕に雲雀のトンファーがめり込み、骨が砕ける音が響いた。

 

「ぐぅあっ!!」

 

一瞬悲鳴を上げるクロノにさらにトンファーで攻め立てる雲雀。

 

「くぅっ!」

 

トンファーがクロノの眼前にまで迫り、クロノは痛みと衝撃に備えて目を閉じる。

 

「・・・・・・・・???」

 

いつまで経っても衝撃が来ないことにクロノは戸惑いがちに目を開くと。

 

「やぁ小動物コンビに赤ん坊」

 

「ちゃおっス、雲雀」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「綱吉、炎真、リボーン!?」

 

雲雀のトンファーを手の甲で防いだ超ツナともう片方のトンファーを受け止める炎真、リボーンはツナの肩に座りながら雲雀に挨拶する。

 

「「ツアッ!!」」

 

「ワオ」

 

超ツナと炎真が力を込めて雲雀を押し飛ばし、雲雀はロールの作った雲に着地する。

 

「ツナ君、ここは僕に任せてクロノ君とフェイト達を!」

 

「わかった、気をつけろよ炎真」

 

超ツナは片腕が折れたクロノに手を貸しながら離れたビルの屋上に向かった。

 

「ふーん、君が相手になるのかい? 古里炎真?」

 

「『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』」

 

炎真は拳に重力球を纏い構える。

 

「そういえば、君にも借りがあったね」

 

雲雀がトンファーを構えると、炎真と雲雀はぶつかった。

 

 

ー超ツナsideー

 

雲雀と炎真が交戦する空域から離脱した超ツナとクロノは、ビルの屋上に着地し、リボーンがクロノの折れた左腕を応急措置をする。

 

「くっ・・・・すまない綱吉、おかげで助かった」

 

「気にするな。炎真が雲雀を引き受けてくれている」

 

「雲雀のヤツも継承式の時に炎真に完膚無く叩きのめされたからな。その時の借りを返すつもりなんだろう」

 

ツナがボンゴレファミリーを継承する(ように見せる芝居の)継承式でシモンリングの本来の力を取り戻した炎真によってボロボロに負かされた事が、プライドの高い雲雀にとって我慢ならない事だった。

 

「クロノ。なのは達は?」

 

「あぁ。なのはとフェイトとアルフに艦長とクロームは、現在あの隔絶結界の中で、前回交戦した襲撃者達と交戦中だ。結界を解く魔導師達は雲雀恭弥に全滅させられて、こちらから向こうに行けない状態だ・・・・」

 

「そうか」

 

ツナは街の一角を囲んだ結界を睨んで上空に飛び呟く。

 

「オペレーションX<イクス>」

 

[了解しましたボス]

 

「な! ま、まさか・・・・!?」

 

「『X BURNER<イクスバーナー>』で結界を破壊するつもりだな」

 

「待て待て! 待って!! 『X BURNER』って、聞いた所によると、なのはの砲撃魔法<スターライトブレイカー>級の技だよな?! あんな技を街中で使ったらどうなることかっ!? それよりも結界を張った魔導師を見つけた方が!」

 

「そんな悠長な事をやっている暇はねぇぞ。ツナ、構うことねぇやっちまえ!!」

 

「おいリボーーーーンっ!!」

 

などと喋っている内にツナが発射体制に入り、クロノはこの後の事後処理を考えて胃痛を感じていた。

 

 

 

ーシャマルsideー

 

「えっ? ウソ? あれってあの時の砲撃よね?? えっまさか撃つの! 撃っちゃうの?! 撃っちゃうつもりなの??!!」

 

シャマルは上空に移動したツナのモーションから、以前の襲撃で自分達が逃げるので精一杯だった砲撃を放とうとしていると理解し、玉のような汗が幾つも流れた。

 

「みんな急いで離脱してっ!!」

 

《シャマル?》

 

《なんだよ!? こっちは今忙しいんだよ!》

 

《何があった?》

 

「後で説明するから今は・・・・あっ・・・・」

 

()()()()

 

「遅かった・・・・」

 

シャマルの視線の先には、橙色の炎の奔流、『X BURNER AIR』を放つ超ツナがいた。

 

 

ーヴィータsideー

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!

 

ヴィータと交戦していたなのはは、突然結界の一角に亀裂が走り、そこから橙色の炎の奔流が流れ出した。

 

「にゃっ!? な、何! 何なの!?」

 

「んだこりゃあっ?!」

 

「えぇっ!?」

 

「何事・・・・?」

 

「うわわわっ!」

 

「こ、これは!?」

 

なのは達と守護騎士達が突然の異常事態に愕然となると、穴が開いた場所から橙色の炎を噴射させながら超ツナが入ってきた。

 

「ツナさん!」

 

「あの野郎!」

 

なのははツナが来た事に喜び、ヴィータは悪態をつく。そしてシグナム達にシャマルの念話が送られる。

 

《皆。直ぐにこの場を撤退して! 急いで!》

 

「やむを得んか」

 

「チッ!」

 

《ザフィーラは雲雀さんを連れ出して! 私達の中じゃ雲雀さんを連れ出せるのは貴方だけだから!》

 

「心得た」

 

未だ雲雀に不信感&敵意を持つシグナムとヴィータ。雲雀を強制的に連れ出せる戦闘力が無いシャマル。雲雀が守護騎士の中で気に入っている上に、雲雀との仲も良好なザフィーラに白羽の矢が立った。

 

《結界内に閃光弾を出すわ! その隙に!》

 

結界内部に緑に輝く魔力弾が現れる。

 

「あれは・・・・?」

 

「すまんテスタロッサ。この勝負預けた」

 

「シグナム!」

 

フェイトとの戦闘を中断し、撤退するシグナム。

 

「なのは、無事か?」

 

「うん!」

 

超ツナと合流するなのはに、ヴィータが声を上げる。

 

「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータだ!」

 

「あっ・・・・」

 

「そんなに話がしてぇならその内出向いてやる! だから、今は邪魔すんじゃねぇ!」

 

「あっ!」

 

ヴィータはなのはとツナを睨んで撤退した。シグナムとヴィータとザフィーラが撤退するのと同時に、緑の魔力弾が膨張し光輝く。

 

「くっ・・・・!」

 

「フェイト!」

 

「あぁ・・・・!」

 

「っ・・・・!」

 

アルフがフェイト庇い、ツナがなのはを庇う。そして光が収まると、隔絶結界は消え、通常空間に戻っていた。

 

 

 

ー炎真sideー

 

「ふっ!!」

 

「はぁあっ!!」

 

雲雀のトンファーと炎真の重力球を纏った拳がぶつかり、拳の斥力で雲雀を吹き飛ばすが、ロールの雲が移動してきて雲雀の足場になる。

 

「ロール」

 

「キュウッ!!」

 

ロールは特性の『増殖』でトゲ付の球体を作り出すと炎真に向かって攻撃した。

 

「っ!」

 

炎真は手を動かさずに重力操作をすると、球体は全て雲雀に戻りながら大きくカーブして、明後日の方向に飛んでいった。

 

「(雲雀さんの所に向かうように操作したのに、やっぱりまだ操作しきれていない・・・・!)」

 

「(ニヤリ)」

 

重力操作が上手くコントロールできない事に歯噛みする炎真だが、雲雀は炎真が噛み殺し概のある獲物になっているのを楽しそうにニヤリと笑みを浮かべるが。

 

「失礼いたします。雲雀様」

 

突然やって来たザフィーラが雲雀を羽交い締めする。

 

「何のつもりだいザフィーラ?」

 

「雲雀様、ここは一端退却を・・・・ぬおっ!?」

 

ザフィーラの拘束を無理矢理振りほどいた雲雀は、ザフィーラの顎にアッパーの要領でトンファーを振るうが、紙一重でザフィーラは回避した。

 

「ひ、雲雀様・・・・!」

 

「何人たりとも、僕の邪魔は許さない・・・・!」

 

雲雀がトンファーでザフィーラを攻撃するが、ザフィーラはトンファーを抑えて雲雀の押し合いを繰り広げる。

 

「雲雀様! こ、ここは拳イヤ、トンファーをお納め下さい!」

 

「噛み殺す!」

 

「(仕方ない! このまま転移魔法を使う!)」

 

ザフィーラは押し合いをする雲雀と雲雀の肩に乗ったロールごと、転移魔法で離脱した。

 

「(そう言えばツナ君に聞いたっけ? 雲雀さんは自分の戦い邪魔されるのが一番気に入らないって)」

 

雲雀恭弥。前回で起こった『虹の代理戦争』でも、『制限時間のルール』に縛られるのがイヤで、自ら参加資格を破壊した程の戦闘狂<バトルマニア>である。

 

 

 

ークロノsideー

 

エイミィ達オペレーターに追跡を任せたクロノは、ツナ達と合流した。

 

「クロノ、大丈夫?」

 

「あぁ大丈夫だフェイト。左腕を骨折したけど、リボーンの見立てでは、キレイに折られているから3日位には完治するそうだ」

 

ツナと炎真が駆けつけるまで、雲雀とガチの決闘をしていたクロノは、雲雀に折られた左腕をさする。正直純粋な戦闘能力では間違いなく、獄寺や山本や了平を上回っていた。

以前模擬戦で獄寺達と接戦し、ツナに完敗してからクロノは自分を鍛え直そうと訓練を積んでいなかったら、この程度の怪我で済まなかったとクロノは思った。

 

「他の本局の魔導師さん達は大丈夫なの?」

 

「あぁ、全員人体急所を攻撃されて一撃で気を失っただけだからね。すぐに復帰できるよ」

 

最も、魔導師である自分達が、魔法を使えない普通の人間(一応)である雲雀に手も足も出ずに瞬殺されただなんて、彼らのこれまで培ってきたプライドは、完膚無く粉々になったようなモノだが。

 

 

 

ーはやてsideー

 

ピンポーン

 

「ん? 誰やろ?」

 

「ピィッ?」

 

その頃。八神はやてと、はやてと一緒に留守番していたヒバードが突然のインターホンに首を傾げ、はやてが出る。

 

「はいはーい。ちょぉ待ってて!」

 

はやてが扉を開けると、そこに見知らぬ男性がいた。綺麗な黄色い髪に、フードにファールの付いた緑のモッズコートを着た整った顔立ちの外国人のお兄さんと、その男性に付き従う黒スーツの壮年のおじさんが立っていた。

 

「お邪魔するぜ。八神はやてちゃん」

 

「あのお兄さん誰?」

 

「おっと、コイツは悪いな。俺はディーノ、恭弥の家庭教師だぜ」

 

「えっ? 雲雀さんの??」

 

八神はやては、キャバッローネファミリーボス、跳ね馬ディーノと邂逅した。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

『闇の書』

ーツナsideー

 

クロノは腕の傷を応急措置で済ませ、比較的に軽傷の魔導師達を引き連れて逃げた守護騎士と雲雀恭弥の追跡に向かった。

 

そしてその夜。リンディ達のマンションに集まったツナとリボーンとなのは、炎真とフェイトとアルフ、リンディの護衛としているクローム、そしてツナの相棒の『天空ライオンのナッツ』が、リンディから襲撃者達の事を聞いていた。

ちなみにナッツはなのはの膝の上に座り、時々なのはが頭を撫でて気持ち良さそうにし、フェイトはナッツが気になるのか、チラチラとナッツを横目で見ていた。

リンディが『闇の書』の事を詳しく説明した。

 

「クロノが追いかけているのは、古いロストロギア、『闇の書』。古代ベルカの時代から四人の守護騎士とともに、さまざまな主の元を渡ってきたと言われてる」

 

「(『闇の書』・・・・。何処かで聞いたような・・・・?)」

 

リボーンが『闇の書』について考えていたが、リンディは構わず続ける。

 

「だけど、私の知ってる闇の書の情報と、あの騎士達の様子が一致しないの」

 

「フェイトちゃん、あの剣士の女の人とお話してたよね?」

 

「うん・・・・」

 

ナッツをちょっと意識していたフェイトが、気持ちを切り替える。

 

「仲間の為、主の為にやるべき事があるって・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

一同は守護騎士達の言葉の意味を考えるが、突然リンディが両膝を付いて、フェイトとアルフに手を合わせる。

 

「フェイトさん、アルフ、ごめん! 私、休暇を一旦返上して、お仕事復帰して良い?」

 

「はい。それは全然」

 

「なんだけど、できれば・・・・」

 

「私達も、協力させてほしいんです」

 

「俺達も、協力します」

 

「雲雀恭弥さんが関わっているなら、僕たちも黙っていられません」

 

「私も、出来ることなら・・・・」

 

「うぅ~~ん・・・・」

 

正式な管理局の魔導師ではないなのはとフェイトと使い魔のアルフ。

不可侵条約が結ばれているボンゴレファミリーのボスであるツナとクローム達守護者。ボンゴレと協力関係にあるシモンファミリーボスの炎真の介入に、リンディは渋面を作って悩むように唸る。

高ランク魔導師であるなのはとフェイトが参加してくれるのはありがたい。昼間の戦闘から見ても、雲雀恭弥の実力は管理局の魔導師では手に負えない。しかもリボーンから聞けば、雲雀はまだまだ実力を隠していると聞いているので、正直少なくともツナと炎真の協力は得たいと考えていた。

 

「ダメですか?」

 

「・・・・・・・・一緒にお願いしてみましょ」

 

「「っ・・・・はいっ!」」

 

「「よろしくお願いします」」

 

リンディの提案に、なのはとフェイトは笑顔を浮かべて頷き、ツナと炎真も頭を下げた。

 

 

ーはやてsideー

 

「へぇ~、ディーノさんって会社経営もしてはるんですか?」

 

「ああ、元々は俺の親父が経営していたんだが、俺が学生<ストデント>の頃に病死しちまってな。それからは俺が会社を継いで、経営しているんだよ」

 

「は~、ディーノさん立派なんやね」

 

八神はやては、ディーノと一緒に来ていた草壁哲矢から、ディーノとロマーリオの事を聞き、持ち前の人懐っこさを生かしてディーノとの会話に花を咲かせていた。

草壁はロマーリオと共に二人の会話を微笑ましく見ていた。

 

「機会が合ったら、はやてや家族のみんなをイタリアに招待するぜ」

 

「ホンマに?! でもパスポートとかがなぁ・・・・」

 

「何なら俺の方でパスポートを準備してやるよ」

 

会社経営はあくまでも“表の顔”、ディーノの本当の姿は、イタリアでも強い勢力を持つ『キャバッローネファミリーボス 跳ね馬ディーノ』。

その気になれば、はやてだけでなく、パスポートどころか戸籍も無い、シグナムとヴィータとシャマルのパスポートを準備する事などわけないのだ(ザフィーラはペットとして連れていけるが)。

 

「う~ん・・・・本場のピザやスパゲッティやジェラートも食べてみたいなぁ。・・・・でもそこまでして貰うのは、ディーノさんに悪いやろうし・・・・」

 

「気にするなって。後ピザはピッツァって言うんだぜ。俺のお勧めの店も紹介するし、ヴェネツィアやローマのコロッセオやトレヴィの泉、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に、イタリアファッションも見せてやるぜ♪」

 

「イタリアのコロッセオかぁ~、シグナムが好きそうやな。トレヴィの泉やサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂も本で読んだ事あるから見てみたいわ~」

 

等と会話に花を咲かせていると、はやての目の前に、『闇の書』が宙に浮きながら現れた。

 

「「っ・・・・!」」

 

ディーノとロマーリオの瞳に、一瞬警戒の光が走るが、草壁が視線で押さえ、はやてはディーノ達の様子に気づかず『闇の書』に目を向ける。

 

「ん・・・・『闇の書』、おかえり~」

 

『闇の書』はゆっくりとはやてに近づく。

 

「あれ? シャマルと一緒やなかったけ?・・・・まあええか。せっかく雲雀さんの先生のディーノさんが来てくはったのに、シグナム達が帰ってこんくてな。ディーノさんとお話してたんよ」

 

すると『闇の書』が宙を浮きながら、はやての頭にすり寄る。まるで慰めているように。

 

「ン・・・・アハハッ、平気やで。少しくらい離れててもウチら家族や。寂しいことないよ」

 

はやては優しく『闇の書』を撫でる。

端から見ると奇妙な光景だが、ディーノは『闇の書』に少し警戒しながらはやてに聞く。

 

「はやて。草壁から聞いてはいたが、これが『闇の書』ってヤツなのか?」

 

「うんそう。半年くらい前やったかな。雲雀さんがウチでご飯を食べて、哲矢さんが迎えに来た時やったけな・・・・」

 

はやては当時の事をディーノに話し始めた。

 

 

 

ークロノsideー

 

守護騎士の捜索をしていたクロノに、リンディからの連絡が入ってきた。

 

「戦力が増えるのはありがたいですし、艦長に復帰していただけるのも助かるのですが・・・・」

 

《ごめんなさいね、我が儘で》

 

《ごめんね、クロノ》

 

《ごめん》

 

《頼むよ、クロノ》

 

《雲雀さんが相手じゃ危険が高いしさ》

 

《今回はボンゴレではなく、沢田綱吉と古里炎真個人で協力するから、条約違反にはならねえぞ》

 

「ハァ。じゃ、艦長は明日から。なのはとフェイトは、嘱託魔導師として、綱吉と炎真、それとクローム達守護者のみんなには、民間協力者としてこちらからの協力要請に応じて貰う形で・・・・」

 

《ええ》

 

《ありがとうクロノ》

 

クロノはにこやかに笑みを浮かべた。

 

 

 

ーはやてsideー

 

「はやてちゃん! ごめんなさいすっかり遅くなっちゃって!」

 

「えぇ~、雲雀さんと山や海で実戦の特訓したん?」

 

「ああ、恭弥は人の教えを素直に聞くヤツじゃねえからな。自分と真剣勝負をしないと、教えを受けないって言うほど、プライドの高いヤツなんだよ」

 

「大変やったんやね~。あっ、シャマルおかえり~」

 

「おかえりなさい。シャマルさん」

 

「おっ? このレディがミス・シャマルか?」

 

「草壁、お前えらい別嬪さんの彼女ができたなぁ」

 

「・・・・・・・・あら?」

 

その頃。夜10時を回り、管理局の追跡を振り切るために地球と違う次元世界を経由して、夜遅くに八神家に慌てて戻ったシャマルは、待ちぼうけしているであろう、主はやてのいるリビングに入ると、その主と、自分と懇意な関係の少年(?)草壁哲矢が、見知らぬ金髪の男性と壮年の男性と、楽しく談笑しており、思わず間の抜けた声を上げた。

 

「えっと、ただいま、はやてちゃんに哲矢さん・・・・。あの、それでその人達は?」

 

「あっこのお兄さんはディーノさん。雲雀さんの家庭教師の先生、お師匠さんみたいな人なんやて。こっちのおじさんは、ディーノさんの部下で、ロマーリオさんや」

 

「えぇっ!? あ、あの雲雀さんの!?」

 

天上天下唯我独尊・傲慢不遜無礼千万を地で行くあの我が儘帝王の雲雀恭弥の家庭教師。

それだけでもシャマルにとっては仰天もの、おそらくここにいない守護騎士の仲間達も驚くと思う。

 

 

ーシグナムsideー

 

「何? あの雲雀の師匠筋の人間が来た?」

 

《ええ、お陰ではやてちゃんも寂しい思いをしないで、雲雀さんの話で盛り上がったらしいわ。でももう夜遅いからお帰りになったの。はやてちゃんも眠らせるわね。そっちはどう?》

 

「ああ。今ザフィーラが雲雀の相手をしている。私とヴィータは、この次元世界の魔法生物から魔力を蒐集しておく」

 

別の次元世界に来ていたシグナムとヴィータは、崖の上から、眼下で繰り広げられている雲雀VSザフィーラのバトルを見ていた。

 

「・・・・!」

 

「くっ!」

 

手加減一切無しに迫り来る、雲の死ぬ気の炎を纏った鋼鉄のトンファーの攻撃を、ザフィーラは寿命が縮む思いをしながら、必死に回避と防御をし、時に反撃しながら、雲雀と戦っていた。

 

「ふ~ん。流石に防御は上手いね、『盾の守護獣』」

 

「雲雀様こそ、以前よりも、技にキレが、増していますね。修行でも、なされて、いたのですか?」

 

全然余裕の雲雀と、雲雀の攻撃に神経をすり減らしているのか、汗まみれで呼吸も少し荒くなっているザフィーラ。

どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。

 

「雲雀の相手はザフィーラに任せるとして、雲雀の師匠の御仁には感謝せねばな。お陰で主も楽しい会話ができたそうだ」

 

「明日、帰ったらはやてに謝ろう」

 

「ああ」

 

「そういやぁよ」

 

「?」

 

「あん時<フェイトと交戦中>、何を話していた?」

 

「ああ、『闇の書』の事を聞かれた。我々は、『闇の書』の何を知っていて、何が目的なのか、と・・・・」

 

「ん? アタシ達は『闇の書』の騎士だ。主の為にページを集めるだけじゃねぇか」

 

「そうだな・・・・。だが、不思議と何かが引っ掛かってな」

 

眼下で火花を散らせながら戦う雲雀とザフィーラを眺めながら黄昏るシグナムとヴィータ。

ふと雲の死ぬ気の炎を見ていたヴィータが、以前か、気になっている事を話した。

 

「引っ掛かるって言えばよ。初めて雲雀の野郎や、あの『死ぬ気の炎』を使うガキ共<ツナ達>に初めて戦った時、変な頭痛があったよな?」

 

「そうだな。妙な感覚だが、『死ぬ気の炎』を見ていると、何かを思い出しそうで思い出せない。そんな感覚を感じる・・・・」

 

「たくっ・・・・何か気持ち悪いぜ・・・・!」

 

自分達は“何か”を忘れている。とても大切で、そして悲しい“何か”を、しかしその“何か”が分からず、シグナムとヴィータは頭を悩ませていた。

 

 

 

ーリボーンsideー

 

そして今日は解散となり、ツナはベッドにすでに夢の中に入っていたが、リボーンは屋根裏に作ったリボーン専用の書斎で、ある記述を読みながら、ある単語を口走った。

 

「フム・・・・『闇の書』か・・・・」

 

『闇の書』。リンディから聞かされたロストロギアが気になり、歴代ボンゴレの歴史が記載されていた書物を次々と読み漁っていると、1つの記録書を見つけて、本を開いた。

 

「・・・・これは、『初代ファミリー』の記述か・・・・ん?」

 

『初代ボンゴレファミリー』。元々町の自警団だったボンゴレⅠ世<プリーモ>ファミリーの記録が記載された書物に気になる単語が合った。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・『夜天の書』?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異変起きる

ーフェイトsideー

 

「クライド・ハラオウン提督」

 

「クロノくんの、お父さんなんですね?」

 

フェイトと炎真(転送装置があるからまだいた)はリンディから、『闇の書』に関する事を聞こうとしたら、故人となったクロノの父親、リンディの夫、クライド・ハラオウンの事を聞いた。

ちなみにアルフはとっくに夢の中。

 

「ン・・・・11年前、前回の『闇の書』事件の時に亡くなっちゃった。私の旦那さん。犯人と『闇の書』の護送中、魔導師四人がかりで封印した筈の『闇の書』が暴走して、あの人は『闇の書』を艦の外に出すために、小型艇で護送コンテナを運び出そうとして・・・・それでそのまま・・・・」

 

その先は聞かなくても分かった。その時に、クライド・ハラオウンは帰らぬ人となったのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「その・・・・クライド提督が亡くなった時、クロノって・・・・」

 

「クロノは、3歳だったわね。葬儀の時にね、あの子、泣かなかったの。あの日を助けられなかった私の事を責めたりもしなかった。それからもず~っと一度も。そんなあの子が、私は時々不安でね。でも、学校で友達になってくれたエイミィがね、クロノが言ってた事を教えてくれたの。【父さんと母さんの事を、誰よりも誇りに思っている。だから、自分も同じ仕事をしたいんだ】って」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

炎真とフェイトはリンディをジッと見つめていた。

 

「あっ・・・・アララ。ごめんなさいね、こっちの話ばっかりで!」

 

「あっ、いえ・・・・」

 

「凄くいい話でしたよ」

 

「・・・・私ね、炎真くんや綱吉くん達にも感謝しているのよ」

 

「えっ?」

 

「あの子、クロノは14歳で執務官になったから、同年代の男友達がいなくてね。エイミィが友達になってくれていたけど、やっぱり男の子には男友達がいてくれる方が良いのねって、炎真くん達と一緒にいるときのクロノの顔を見るといつもそう思うわ」

 

「そう、ですか?」

 

「ええ。貴方達と話しているときのクロノの顔、凄く楽しそうにしているからね。肩肘張らずに対等に話ができる同性の友達がいるのは、良いことだとつくづく思ったほどよ」

 

「////////」

 

「・・・・・・・・」

 

炎真は少し照れ臭そうに、頭をかき、フェイトは微笑ましそうに炎真を見た。

 

「じゃあ今度はフェイトさんの話ね」

 

「は、はい」

 

「前にも少し聞いたけど、お母さんの事、プレシアの事、今はどう?」

 

「(ドキッ!)」

 

「・・・・・・・・」

 

プレシア・テスタロッサ。フェイトの母親であり、『PT事件』の主犯。現在管理局からは死亡扱いされている。

炎真はドキリとなるが、フェイトは思案するように顎に手をおく。

 

「やっぱり、今も上手く説明できません。なのはに助けてもらって、炎真達に受け入れてもらえて、リンディ提督やクロノに温かくしてもらって、私は確かに、ここにいるんですけど・・・・」

 

うつむいたフェイトの脳裏に、虚数空間にのまれる直前のプレシアの言葉が浮かんだ。

 

『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、私は行くわ。アリシアと一緒に・・・!』

 

『っ!・・・・母さん・・・・!』

 

『貴女は行きなさい、貴女の“帰る場所”に、貴女の帰りを“待っている人達”の所に・・・・!』

 

『母さん・・・?』

 

『さようなら、フェイト・・・』

 

その時のプレシアの顔は、慚愧と悲しみ、そしてどこか慈しみに満ちた笑みだった。

 

「心のどこかが少しだけ、あの日で止まったままな感じがしています・・・・」

 

「フェイト・・・・」

 

炎真が心配そうにフェイトを見つめるが、フェイトは少し顔を上げて自嘲気味の笑みを作る。

 

「ダメだね、私・・・・」

 

炎真はフェイトのソッと抱きしめ、リンディは首を横に振る。

 

「そんな事ないわ、立派よ。これからもっと、色々お話しましょ。これまでの事も、これからの事も」

 

「はい、お願いします」

 

フェイトはリンディに目を向けると、炎真にすり寄るように身体を寄せた。

 

「(プレシアとアリシア、リニスに会わせるのは・・・・)」

 

「(もう少し、先になりそうね・・・・)」

 

フェイトに気づかれないように、炎真とリンディは目配せした。

 

 

 

ーなのはsideー

 

同じ頃、なのはは高町家の自分の部屋で、新たな力を得た『レイジングハート エクセリオン』から、自分の能力を詳しく説明された。

 

[形状変化は、私とバルディッシュ、共に3形態ずつ]

 

レイジングハートは空中ディスプレイで自分達の形態を説明する。

 

[バルディッシュのブローヴァとクレッセント。私はアクセルとバスターカノンは通常形態]

 

バルディッシュはハのルバード形態とデスサイズ形態。レイジングハートは杖形態と砲撃形態を表示した。

 

[そして三つ目は]

 

「フルドライブ・・・・エクセリオンモード」

 

[その通り]

 

なのははどちらかと言うと、獄寺と同じく武器の性能と能力と特性を見てから、訓練に入るタイプなので、夜遅くまでレイジングハートの説明を聞いていた。

 

 

ーシャマルsideー

 

翌日の7時前に帰宅したシグナムとヴィータ、それと雲雀の相手をしていて何処かボロボロの雰囲気になっている大型犬いや、狼形態のザフィーラを、シャマルが出迎えた。

ちなみに雲雀は地球に戻るとすぐに、学校があるので、並森へと帰っていった。

 

「おかえり、みんな」

 

「ああ」

 

「おう」

 

「結局、夜通しになっちゃったわね」

 

「その分、蒐集も進んだ。後で『闇の書』に」

 

「ええ」

 

シグナムとヴィータは靴を脱いで、ザフィーラは足の裏を拭いて、リビングに向かい、シャマルも続いた。

 

 

ーはやてsideー

 

「んん~~!! んっ!」

 

起きたはやては身体を伸ばすと、車椅子に向かおうとしたが。

 

ドクンッ!

 

「うっ、ああ・・・・」

 

はやての体内で、“何か”が胎動する。

 

「あっ・・・・ううっ・・・・ああっ・・・・!」

 

はやては胸を抑えて苦しむ。

 

「あっ・・・・あぁっ・・・・くっ・・・・!」

 

はやては車椅子に寄りかかるが、車椅子が音を立てて倒れ、はやても意識を失った。

 

「はやて!」

 

「はやてちゃん!」

 

車椅子が倒れる音が聞こえたのか、シグナム達が慌ててはやての部屋に入り、はやてを海鳴大学付属病院へ運んだ。

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・」

 

「はやて・・・・」

 

「ヴィータ・・・・みんな・・・・」

 

「心配したぜ、はやて」

 

「ディーノさん・・・・ロマーリオさん・・・・」

 

はやてが目を覚ますと、不安そうに自分を見つめるシグナムとヴィータとシャマル。シャマルから連絡を受けて駆けつけたディーノとロマーリオがいた。

 

「ロマーリオ。すぐにドクター石田を」

 

「あいよ」

 

ロマーリオが出て少しして、はやての担当医である石田先生が来て診察した。

 

「急な発作だったけど、今はもう大丈夫みたいね」

 

「もう、みんなが大げさにするから。ほんま、ご心配おかけしました」

 

「あのね、はやてちゃん」

 

「ん?」

 

はやては車椅子に乗り込もうとするが、石田先生が止め、しばらく入院する事になった。

ディーノとロマーリオははやての元気な姿を見届けて、部屋を後にした。

 

「しばらく入院とは、ショックや。それに、私が家を空けると、みんなや雲雀さんのご飯が心配や」

 

「それは、その・・・・」

 

「なんとかします。大丈夫です」

 

「お見舞い、毎日来るから!」

 

「ヴィータはええ子やな。そやけど平気やで」

 

はやてはヴィータの頭を撫でると、そのままヴィータに膝枕した。するとヴィータは安らいだような表情になった。

 

「そや、雲雀さんは来とらんの?」

 

「その・・・・一応連絡はしたのですが・・・・」

 

「哲矢さんから、風紀委員の仕事やらが貯まっていたみたいで、来られないそうです・・・・」

 

「あんな冷血野郎なんかほっとこうよはやて!」

 

ヴィータは雲雀に対して、相も変わらず毛嫌いするような態度をとっていた。

 

「そんな事言うたらアカンよヴィータ。雲雀さんも雲雀さんで忙しいんやから・・・・」

 

雲雀に悪態突くヴィータを諫めるはやて。

 

 

ー雲雀sideー

 

そして、はやてが入院している部屋のちょうど真上の屋上では、当の雲雀が手すりに寄りかかりながら夕日に背を向け。その隣に、草壁が直立不動の姿勢で、ザフィーラ(狼形態)が姿勢正しくお座りの体勢で控えていた。

ザフィーラはシャマルとの念話内容を雲雀に伝える。

 

「雲雀様。シャマルはこちらに残り、主のお世話と万が一に備えての護衛を。シグナム、ヴィータ、そして私は、お見舞い以外の時間を蒐集に当てる事となりました」

 

「そうか・・・・」

 

「では私も、蒐集に向かいます」

 

ザフィーラは雲雀に一礼すると、そのまま転移魔法を使って、その場から姿を消した。

 

「んで、お前はどうすんだ恭弥?」

 

すると、ディーノとロマーリオが、屋上に入ってきた。

 

「はやての症状は悪化している。このままでは手遅れになっちまうぜ?」

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀は何も言わず、ただ夕暮れの街を見つめていた。

 

 

 

ーリボーンsideー

 

リボーンとツナと炎真が、沢田家のツナの部屋でクロノからの連絡を受けていた。

 

「守護騎士達の動きが活発になった?」

 

《ああ、なのはとフェイトにはもう伝えているが、どうも行動方式を変えたようだ。君達の力を借りたい状況になったら、こちらから連絡する》

 

「ああ」

 

「うん」

 

「了解」

 

クロノ達との通信を終えると、ツナはリボーンに問う。

 

「リボーン。本当なのか? 『闇の書』の事?」

 

「ああ。昨夜見つけた記述に書かれた事が事実であればな」

 

「事実かどうか確かめるには・・・・」

 

「アイツに聞くのが一番だな」

 

リボーンはレオンを携帯電話に変身させると、ある人物にハンズフリーで連絡した。少ししてその人物が出た。

 

《やあリボーン君に綱吉君に炎真君♪ 守護騎士、ヴォルケンリッターと『闇の魔導書』に関してかな?》

 

「白蘭・・・・」

 

そう、『あらゆる平行世界の自分と知識を共有できる能力』を有する、白蘭だった。

『PT事件』でプレシアを救出した時にも彼の能力で、プレシアとアリシアとリニスを助ける事ができた。白蘭ならば、『闇の書』に関する知識が有るのではないかと、リボーンが連絡したのだ。

 

「白蘭、お前の事だ。こっちの状況は概ね理解しているんだろう?」

 

《まあね♪ 僕としては面倒だからなるべく管理局に関わり合いたく無いけど、綱吉君達には“借り”があるし、高町なのはちゃん達とのこれからの展開にも興味あるから、ある程度の協力はするよ♪》

 

白蘭の能力を管理局が知れば、“どんな手段を用いても”、白蘭を捕らえると考え、ツナ達は白蘭の能力を関してはリンディ達にも詳しく教えていない。

 

《『闇の書の呪い』を打ち破る方法はあるよ》

 

「本当っ!?」

 

《うん。でも、成功するかは分からないよ。それに、その方法の為には“2つ程の条件”をクリアしないとね》

 

「その方法は何だ? 白蘭?」

 

《そうだね・・・・先ずは、“彼ら”に交渉しないとね》

 

「“彼ら”・・・・?」

 

炎真とツナは固唾を飲み、リボーンは真剣な表情で白蘭の言葉を待つ。

白蘭を意を決して、言葉を紡ぐ。

 

《・・・・“復讐者<ヴィンディチェ>”だよ・・・・》

 

「「「っ!!?」」」

 

ツナ達は息を呑む、裏社会の法の番人、最強の赤ん坊アルコバレーノの成れの果て、『復讐者<ヴィンディチェ>』の名前が出てきたことに・・・・。

 

 

ー白蘭sideー

 

「(ま、と言っても。これで上手く行くかは分からないけどね。何しろこの世界の八神はやてちゃんは、『ギル・グレアム』と、その使い魔である『リーゼロッテとリーゼアリア』と接点が無いみたいだし・・・・)」

 

白蘭は、“自分の知る歴史と違う流れになったなのは達”に、興味を抱き始めた。

 

ちなみに、その『ギル・グレアム』は管理局を引退し、『リーゼ姉妹』と共に、グレアムの故郷のイギリスで悠々自適に晴耕雨読な生活をしていた。




この世界の白蘭が知っているのは、『テレビ版 リリカルなのはA's』なんです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去の記憶

ーシグナムsideー

 

シグナムは、他の次元世界にて、魔力を持つ生物達から魔力を蒐集していると、シャマルが、はやての容態を通信で報せていた。

その報告は、他の世界に行っているヴィータとザフィーラも聴いていた。

 

《『闇の書』がはやてちゃんを侵食する速度、段々上がってきてるわ。このままじゃ、もって一ヶ月・・・・ううん、もっと短いかも・・・・》

 

「案ずるな、大丈夫だ」

 

シャマルの方向を聞きながら、シグナムは過去の記憶を思い出していた。

古代ベルガの時代の記憶。

 

【一体誰が付け加えたものなのか、この呪いの鎖は、どうやっても私から外れん・・・・時に主やお前達すら危険にさらし、望まぬ無限転生の宿命を強いる】

 

守護騎士達に向けて、『長い銀髪の女性』が、悲痛な顔で懺悔するように告げる。

 

【お前達には、本当にすまない】

 

その記憶を思い返しながら、シグナムは『闇の書』を手に持つ。

 

「主はやて・・・・あの優しい主を、お前に殺させるような事はしない・・・・!」

 

 

ーヴィータsideー

 

降りしきる豪雨の中、ヴィータは殺した魔法生物に背を向けながら、グラーフアイゼンを引きずるように、弱々しく歩く。

 

「(痛くねぇ・・・・。こんなの、ちっとも痛くねぇ・・・・!)」

 

身体はボロボロ、顔に血を流すヴィータは、それでも歩みを止めない。

 

「(はやては、もっと痛いんだ・・・・)」

 

すると、ぬかるんだ地面に足を滑らせ、倒れる。

 

「(はやてもっと、ずっと苦しいんだ・・・・!)」

 

ヴィータは、次の魔法生物がいる沼にたどり着いた。

 

「(『闇の書』のほんとの主になったとして、はやてが嬉しいか分からねぇ・・・・。怒るかもしんない。アタシ達のこと、嫌いになるかもしんない)」

 

泣き出しそうな顔になるヴィータが、浮遊魔法で沼の真ん中まで飛ぶと、沼からミミズに大口に不揃いな歯を生やした異形の魔法生物が次々と、そのおぞましく醜悪な姿を現し、雄叫びを上げた。

 

「(優しいはやてが、痛いのも苦しいのも、嫌なんだ・・・・)」

 

顔を俯かせたヴィータが、泣き顔を浮かべながら顔を上げる。

 

「はやてが死んじゃうのなんて、絶対嫌だ! だから・・・・アイゼン!」

 

[分かっています]

 

グラーフアイゼンは、ヴィータの叫びに応えるように、薬莢を射出させると、その形態を巨体ハンマーに変形させた。

 

「ぶっ潰せーーーっ!!」

 

ヴィータは、魔法生物〈沼竜〉に向かって、グラーフアイゼンを振りかぶった。

 

 

ーはやてsideー

 

はやては石田先生から病気の経過を聞いていたが、その顔は晴れやかとはとても言えない状態だった。

 

 

ー雲雀sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀は並森中学の応接室、現在は風紀委員長の執務室になっているその部屋で、雲雀は全身から不機嫌オーラ全開で応接室のソファーに寝そべるが、苛立たしげに身体を揺する。

少しでも風紀を乱す者が現れれば、仕込みトンファーで半殺しにしたい心境だった。

 

コンコン。

 

「失礼しま~す。雲雀さん・・・・ひぃっ!!」

 

「あわわわわ」

 

「ちゃおっす雲雀」

 

応接室の扉が開くと、そこにツナと炎真とリボーンが入ってきた。ツナと炎真は雲雀の全身から放たれる不機嫌オーラに小さく悲鳴を上げるが、リボーンは気にすることなく雲雀の向かい側のソファーに腰かける。

 

「赤ん坊に小動物達かい? 僕は今機嫌が悪いんだ。・・・・噛み殺すよ」

 

起き上がった雲雀が仕込みトンファーを構えようとした。

 

「まぁ待て雲雀。先ずは俺達の話を聞け。『闇の書』に関する情報だぞ」

 

「・・・・・・・・」

 

リボーンの言った言葉に、雲雀はピクッと反応すると、トンファーを下ろしてソファーに再び腰かけた。

 

「どういう事だい」

 

ツナと炎真は恐る恐るリボーンの両隣に腰かける。

 

「お前も知っているだろう。白蘭の能力、『平行世界にいる自分と知識から共有できる能力』をな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そこから、リボーンは白蘭から聞いた『闇の書』の正式名称『夜天の書』の情報を聞いた。

 

『夜天の魔導書』。

各地の偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られ、主とともに旅をする魔導書だった。

しかし、歴代の持ち主の中の誰かがプログラムを改変してしまい、魔導書は狂ってしまった。

それによって『旅をする機能』、破損したデータを修復する『自動修復機能』が暴走を起こし、『主に対する性質の変化』が起こった。一定期間の蒐集が無ければ、持ち主の魔力を侵食して、完成すればその持ち主の魔力を使って破壊を呼び起こす。

 

原因は、改変で付け加えられた『自動防衛運営システム ナハトヴァール』。

 

それが主への侵食と、暴走の原因となっていた。『闇の書』には、『融合管制システム』、“『闇の書』の意思”とも言える管制人格が存在しているが、『闇の書』が完成すれば一定時間で自動防衛システムである『ナハトヴァール』が優先され、溜め込んだ魔力と主の命を全て使い尽くし、『闇の書』は次の主を求めて転生する。そうして、『闇の書』の主達は完成してすぐその命を『闇の書』、いや『ナハトヴァール』に食らいつくされた。

リンディの夫、クロノの父、クライド・ハラオウンも、その暴走の犠牲者だったのだ。

 

「ここまでの情報は、おそらく管理局の方も掴んでいるだろう」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀はリボーンの話を聞きながら、いつの間にか雲雀は、『雲のブレスレット Ver.X』から雲の死ぬ気の炎を燃え上がらせていた。

 

「「(ガクガクガクガクガクガクガクガク)」」

 

明らかに怒っている雲雀の様子に、ツナと炎真は戦々恐々だったが、リボーンは冷静に話を続ける。

 

「白蘭の話では、停止と封印は無いと言っても良いとの事だぞ」

 

「ーーーーーー!」

 

雲雀は目を、カッと開くと立ち上がる。

 

「ひ、雲雀さん、ど、どこに・・・・!」

 

「ま、まさか、『闇の書』を破壊するつもりですか?」

 

「君達には関係ない・・・・」

 

雲雀が応接室を出ようとするが、リボーンが待ったをかけた。

 

「落ち着け雲雀。停止と封印は出来ねえが、“別の方法”ならあるぞ」

 

リボーンの言葉に、応接室を出ようとした雲雀はピタっ、と止まった。

 

「“別の方法”・・・・?」

 

「あぁ、“停止と封印が出来ない”なら、“切り離しちまえば良い”って事だ」

 

「・・・・出来るのかい?」

 

「その為の手段として、お前の力も必要だぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「俺達と群れたくない気持ちは分かるが、急いだ方が良いぞ。管理局が“ヤバい物”を持ち出しそうだからな」

 

「“ヤバい物”?」

 

雲雀が聞き返すと、リボーンとツナと炎真も渋面を作る。

 

「あぁ、これも白蘭からの情報だが、管理局はアースラに、下手をすれば、『闇の書』だけじゃない、俺達の世界すら危険を及ぼす最終手段だ。・・・・その名を『対艦反応消滅砲 アルカンシェル』だ」

 

 

 

ーなのはsideー

 

翌日の朝、学校の教室でなのはとフェイトとアリサは、すずかから友達の事を聴いていた。

 

「友達が、入院?」

 

「うん、先週急に・・・・」

 

「“はやて”って、すずかが図書館で知り合った?」

 

「うん、クリスマスも病院なんだって・・・・」

 

「「ああ・・・・」」

 

せっかくの聖夜を病院で過ごさなければならなくなったすずかの友達に、なのはとフェイトは気の毒そうに顔を曇らせる。

 

「じゃあ、みんなでお見舞い行こうか」

 

アリサの提案に、なのはとフェイトは笑みを浮かべ、すずかも笑顔を浮かべる。

 

「いいの?」

 

「いいわよね?」

 

「「うん」」

 

「じゃあ、折角だからイブの日、クリスマスプレゼントとか持ってさ!」

 

「そうだね!」

 

「どうせならさ! ツナさん達も呼んで、みんなで楽しみましょう!」

 

「炎真達、来てくれるかな?」

 

「来てくれるよ! 絶対!」

 

アリサの提案に少女達は、来る聖夜を心待ちにしていた。

 

 

ーシグナムsideー

 

その頃シグナムは、渓谷のような次元世界にて、魔法生物の魔力を『闇の書』に蒐集し終えると、シャマルからの念話が届いた。

 

《ザフィーラがこっちに戻ってくれたから、交代で私が出るわね》

 

「ああ」

 

《そういえばはやてちゃんね、お友達がお見舞いに来てくれるんだって、すずかちゃん達》

 

「そうか」

 

《はやてちゃんも、イブの夕方から夜までは、外出許可をいただけたの。お見舞いのあと、みんなで食事でもしましょって》

 

「ああ、それがいい。その日には、私達も戻ろう」

 

《うん、じゃあまたあとで・・・・》

 

シャマルとの念話を切ると、シグナムは『闇の書』の残りページを確認した。

 

「残り、あと160ページ・・・・」

 

イブの日までに、残りページを埋められるか、シグナムの不安そうな呟きは、砂が混じった風に流された。

 

 

ーツナsideー

 

「うん、その日は俺達もみんなで集まろうって予定していたから・・・・うん、実は“海外にいる友達”もやって来るから、その友達も紹介するよ。・・・・じゃ、またね」

 

ツナはなのはからの連絡を受け取ると、集まっていた獄寺・山本・了平・クロームたち守護者、炎真達シモンファミリーと、ディーノとロマーリオを見据える。

 

「みんな。白蘭からの情報なら、イブの日が勝負だ。お願いね」

 

『(コクン)』

 

ツナの言葉に集まった一同が頷く。

 

聖夜の日、その日に全てに決着をつける。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12月24日 遭遇

そして迎えた運命の12月24日のクリスマス・イヴ。

時刻はまだ5時を廻っていないが、冬は陽が落ちるのが早く、海鳴市は街路樹に付けられたイルミネーションが光輝き、ビルの明かりや車のライトが光り、街を彩っていた。

 

 

ーはやてsideー

 

海鳴総合病院の個室の病室にて、ベッドの傍らの机の上に置かれた小さなクリスマスツリーを眺めていたはやては、コンコンっと、ノックの音が聞こえた。

 

「は~い」

 

「はやてちゃん、こんばんは」

 

病室の扉が開くと、先日友人となったすずかと、すずかの友達のアリサとなのはとフェイト、そしてなのは達の友人のツナと炎真、山本の肩に乗ったリボーン、獄寺と山本と了平が入ってきた。

 

「「「こんばんは!」」」

 

『(ペコッ)』

 

「あぁ、いらっしゃ~い!」

 

なのは達が元気に挨拶し、ツナ達もはやてに笑顔で会釈すると、はやてはパァッと笑顔を浮かべた。

 

「具合どう?」

 

「うう・・・・。退屈で別の病気になりそうや」

 

はやての言葉になのは達は笑みを浮かべる。

 

「あっ、紹介するね」

 

「高町なのはです」

 

「フェイト・テスタロッサです」

 

「沢田綱吉、ツナって呼んで良いよ」

 

「ちゃおっす。俺はリボーンだぞ」

 

「古里炎真だよ」

 

「獄寺隼人だ」

 

「俺は山本武、よろしくな!」

 

「俺は笹川了平! 座右の銘は!」

 

『病院では静かに!』

 

叫び声をあげそうになる了平にはやてを除いた全員が止めた。はやてはそんな一同をおかしそうに笑みを浮かべた。

 

「八神はやてです。よろしくな~」

 

「あっ、これお見舞いのお花と・・・・」

 

「クリスマスプレゼント!」

 

「わぁー・・・・!」

 

アリサとすずかが渡した小さな花束とプレゼントに、はやては嬉しそうに笑みを浮かべた。

それから皆で談笑しているうちにツナ達が雲雀が風紀委員長を務める並森中学の学生であると聞かされたはやては。

 

「あっ、綱吉さん達って並森中学って事は、雲雀さんの事知ってはるんですか?」

 

「う、うん。雲雀さんは俺達の学校の風紀委員長だからね・・・・」

 

はやてがツナ達が雲雀の事を知っているのかと思い聞いてみたら、ツナと炎真と山本は苦笑いを浮かべ、獄寺と了平は不満気な顔になった。

 

「えっと、どないしたんですか?」

 

「ふん。お前はあの野郎の風紀委員としての活動を知らねぇようだな!」

 

獄寺が不機嫌そうに吐き捨てる。

 

「どういう事ですん?」

 

はやてが聞くと、獄寺と了平が雲雀の風紀活動と言う名の暴挙の数々を教えた。

 

「あの野郎はな! 俺がちょっと学校に遅刻しただけで鋼鉄トンファーでタコ殴りにしやがる野郎だ!」

 

「と言っても、獄寺君が登校時間を一時間も過ぎて遅刻しちゃってさ。しかも悪びれ無しで欠伸かいて来るのを毎日のようにしていたからね。それで雲雀さんも怒って制裁をしたんだ・・・・」

 

「俺など、ちょっと廊下で極限にボクシングの鍛練をしていたら、トンファーで半殺しにされたりしたぞ!」

 

「それ、笹川先輩が加減抜きで暴れて、紅葉と殺意を持って野良試合やって壁に穴を開けたり、窓をブチ破ったり、ドアを破壊したりしたからなんじゃ・・・・」

 

「俺の場合は、野球の練習試合で並森の名を轟かせてやるぜって言ったら、雲雀が部員達を特別メニューで鍛えると言って、全員のしちまった事があったなぁ~」

 

「あの時は中々楽しかったぞ」

 

獄寺と了平の言い分にツナと炎真が白目でやんわりとツッコミを入れた。山本は呑気に思い出話をするように話し、リボーンもニヤリと笑みを浮かべた。

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

はやてもなのは達も、あまりの話の内容に何とも言えない顔となっていた。

 

「半殺しはやりすぎだと思うけど、ようはアンタが一時間も遅刻を連日でやったからでしょう? 自業自得じゃない」

 

「なんだとこのチンクシャ!」

 

「誰がチンクシャよ!」

 

「ア、アリサちゃん・・・・」

 

「了平。紅葉と一緒に学校を壊しちゃダメだと思うよ・・・・」

 

「極限に何を言うフェイト! 俺達は本気でぶつかり合っただけだ! それなのにドアや壁や窓が大げさに壊れただけだぞ!」

 

「山本さん。そんな事が起こったのに試合は大丈夫だったんですか?」

 

「おう! 何とか勝てたぜ!」

 

アリサが獄寺に呆れてそう言うと、獄寺とバチバチと火花が散るほどの睨み合いをはじめ、すずかが慌てて宥めようとし、フェイトがやんわり諌めようとするが了平は聞き入れず、なのはは野球部員の身を案じていた。

 

「アハハ。雲雀さん、結構大変なんやね」

 

「うん、まぁ、ね・・・・」

 

はやてはあまり風紀委員の活動のを聞いていないはやてにとって、新鮮なのか、楽しそうに聞いていた。

確かに雲雀自身、横暴な所は多々あるが、基本強い者や風紀を乱す者、学校や地元に害となるもの者以外には興味を示さないし、改めて聞いてみると、獄寺と了平の場合は完全に自業自得と言っても良い。

 

「(よく考えてみれば、雲雀さんが俺達を制裁するのも仕方ないかも、ある意味問題児集団だもんな俺達って・・・・)」

 

勉強も運動もダメダメな落第生徒、沢田綱吉と古里炎真。

勉学はできるが素行最悪の不良、獄寺隼人。

力加減なんて知った事じゃないと言わんばかりの生粋のボクシングバカ、笹川了平。

勉学以外は運動神経抜群で人徳もあるし、性格も明朗活発であるから問題無いように見えるが、前にクラスメートと遊びで野球をやって加減無しでボールを投げて窓をブチ破った事があった山本武。

リボーンが始めたドタバタやヴァリアーとのリング争奪戦で何度も校舎を破壊したり、並森の風紀を乱しまくっているから、町の裏の支配者とも言える雲雀率いる風紀委員から目をつけられるのも仕方ないと思った。

 

「(まあ雲雀さんも結構やりたい放題やってるけど・・・・)」

 

ツナが遠い目になっていたが、はやての枕元に置いてある『闇の書』と、病室の外からこちらに向かってくる複数の足音が聞こえ気持ちを切り替える。

 

『・・・・・・・・(コクン)』

 

炎真と守護者の皆を見ると、皆も分かっていると言わんばかりに頷いた。

 

コンコン・・・・。

 

「あっ、皆来たかな? どうぞ!」

 

病室のドアをノックする音を聞いて、はやてがそう言うと、扉が開かれ、彼女達が現れた。

 

「失礼します」

 

「「こんばんは~」」

 

入室してきたのは、シグナムとヴィータとシャマル。はやての守護騎士達だった。

 

「あぁ、すずかちゃん、アリサちゃん、こんばん・・・・っ!!」

 

「「っ!!」」

 

「「あぁ・・・・!」」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

守護騎士達はツナ達を見て驚愕し、なのはとフェイトも驚いたように固まるが、事前に知っていたツナ達は冷静に守護騎士達を見据えていた。

 

「っ!」

 

ヴィータはすぐさま、はやてのベッドに向かい、はやてを守るように手を広げ、威嚇するように唸る。

 

「うぅ~!」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

なのは達はヴィータの様子に唖然となるが、ツナ達は冷静だった。獄寺と山本はコッソリと、バックルに手をおき、肩にかけていた竹刀袋の紐を緩める。

 

「うぅーッ!!」

 

「こ~ら、ヴィータ!」

 

「あう!」

 

はやては丸めた雑誌でヴィータの頭を軽く叩いた。

 

「お見舞いに来てくれた皆にどういう対応や」

 

「はやて! でも・・・・!」

 

なのはがおずおずと前に出る。

 

「ええっと、あの・・・・はじめまして、ヴィータちゃん?」

 

「私達、なにもしてないよ、大丈夫・・・・ですよね?」

 

フェイトがシグナムとシャマルの方を見る。

 

「ええ」

 

「ああー皆、コートを預かるわ。ゆっくりしていってね」

 

「「は~い!」」

 

再び談笑を始めるなのは達だが、フェイトはコッソリクロノ達に念話で通信しようとするが。

 

「念話が使えない? 通信妨害を?」

 

「シャマルはバックアップが要だ。この距離なら造作ない」

 

ヒソヒソと会話をするフェイトたシグナム。

 

「うぅ~~っ!!」

 

「あの、そんなに睨まないで・・・・」

 

「睨んでぇです!」

 

敵意剥き出しのヴィータに、なのはは困ったような笑みを浮かべていた。

 

「もうヴィータ! 悪い子はあかんよ!」

 

「んんー」

 

はやてに鼻を摘ままれ引っ張られ、唸り声を上げるヴィータ。

 

「あっ、あの~、その・・・・そんな・・・・」

 

ヴィータの唸り声を聞きながらフェイトがコッソリとシグナムに話しかれる。

 

「ここに来たのは本当に偶然で・・・・お見舞い、続けても?」

 

「・・・・ああ。どのみち、ここでやり合う訳にはいかんからな。それに・・・・」

 

「それに?」

 

「本気で勝負を着けたい相手もいるのでな・・・・」

 

シグナムはチラッと横目で、山本を見据えると、談笑していた山本もその視線に気付き、静かに、そして力強い瞳で見据えていた。

 




今年でA'sを終わらせたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護騎士VS守護者 再び

ここからは少し原作と違うかもしれません。


はやての部屋を退室し、アリサとすずかが迎えの車に乗ったのを見送った一同は、海鳴総合病院の屋上に着いた。

屋上に着くと同時に、シャマルが結界を展開した。

なのはとツナとリボーン、炎真とフェイト、獄寺と山本がシグナムとシャマルと向き合う。

 

「はやてちゃんが、闇の書の主・・・・」

 

「悲願は、あと僅かに叶う」

 

「邪魔するなら、たとえはやてちゃんのお友達でも・・・・!」

 

「ちょっと待って! 話を聞いてください! ダメなんです! 闇の書が完成したら、はやてちゃんは・・・・!」

 

「デヤァー!」

 

なのはの言葉を遮るようにヴィータがアイゼンを振りかぶって、なのはに襲いかかる!

 

「なのはちゃん!!」

 

「っ!」

 

ツナがなのは庇うように抱き締めて転がり、ヴィータがアイゼンで屋上の床をぶち壊すと、衝撃波でなのはを抱き締めたツナが吹き飛び、フェンスに叩きつけられた。

 

「ぐぅっ!」

 

「ツナさん!」

 

「だ、大丈夫・・・・」

 

「10代目!」

 

「ツナ!」

 

「ツナくん!」

 

「なのは!」

 

「ハァー!」

 

ツナとなのはに気をとられた隙に、シグナムがレヴァンティンを展開して、フェイトに斬りかかる!

 

ガキンッ!

 

「おっと!」

 

「山本武っ!」

 

「よっと!」

 

「くっ!」

 

寸前で炎真がフェイトを庇い、山本が『時雨金時』でレヴァンティンを防ぎ、シグナムを押し飛ばす。

 

「・・・・以前とは格段に違う得物を得たようだな?」

 

「へへっ! まぁな!」

 

「管理局に、我らが主の事を伝えられては困るんだ」

 

「私の通信防御範囲から、出すわけにはいかない・・・・!」

 

シャマルが指に嵌めたクラールヴィントを見せた。

フェンスに叩きつけられ、ダメージを負ったツナを庇うように立つなのはに、ヴィータが前髪で目を隠したままゆっくりと近づく。

 

「ヴィータ、ちゃん・・・・!」

 

「邪魔をすんなよ。あと少しで、はやてが元気になって、私たちのとこに帰ってくるんだ」

 

バリアジャケットを展開したヴィータの頬に涙が流れる。

 

「必死に頑張ってきたんだ・・・・! もう、あとちょっとなんだから! 邪魔すんなーーー!!」

 

顔を上げたヴィータの顔には憤怒に染まり、アイゼンを振り上げる!

 

「『カオスショット』!」

 

ダンダンダンダンダンッ!

 

「っっ!!」

 

アイゼンに黄色く輝く弾丸が撃ち込まれ、ヴィータは体制を崩した。

 

「『2倍ボム』!!」

 

「チッ!」

 

すかさずヴィータの頭上に大量のダイナマイトが落ちてきた。

 

ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカっ!!

 

「ヴィータちゃん!」

 

「安心しろなのは。どうやら防いだらしい」

 

爆発の煙が晴れると、障壁を張って防いだヴィータの姿があった。

 

「けっ、まさか月村のお友達が、テメェらのご主人様だったとはよ・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

獄寺は威嚇するように睨みながら言うと、ヴィータも唸るように睨み返した。炎真達も合流する。

 

「獄寺さん待って! 戦う理由なんて無いよ!」

 

「ちゃんと話し合えば!」

 

「それは無理だぞ」

 

なのはとフェイトが止めようとするが、リボーンが無駄だと一蹴し、ヴィータとシグナムとシャマルを指差す。

 

「見ろアイツらの目を、アイツらは生半可な覚悟で戦っちゃいない」

 

ヴィータ達の目には、強い想いが宿っていた。それはどんな汚名を被っても守りたい主を守ると言う決意に満ちた瞳だった。

 

「でも! ちゃんと話を聞いて貰えば・・・・」

 

「ああいう腹を括っている目をした奴らに、お手軽で耳障りの良い小綺麗な理屈云々は通用しねぇぞ」

 

「そんな・・・・!」

 

「じゃどうするの!?」

 

「こっちの話を聞かせるためにも、一度叩きのめして大人しくさせるのが1番手っ取り早い」

 

「ちょうど良いっすね、俺もあのチビには借りがあるっすから」

 

「俺も、ちゃんとシグナムと勝負したかったところだしな」

 

獄寺と山本が前に出ると、ヴィータと合流したシグナムもバリアジャケットを展開して、山本に向かってレヴァンティンを構えた。

それを見て獄寺と山本は、それぞれのボンゴレギアを起動させる!

 

「瓜!」

 

「次郎! 小次郎!」

 

獄寺は『嵐のバックルVer.X』から頭にゴーグルをかけ、四足と身体にまばらにアーマーをつけた『嵐ネコの瓜』を。

山本は『雨のペンダントVer.X』から、瓜と同じようにアーマーをつけた『雨犬の次郎』と、頭にトサカのような冠をつけた『雨燕の小次郎』を呼び出した。

 

「犬に燕に・・・・?」

 

「ネコだぁ??」

 

《二人とも油断しないで、あの動物さん達の耳の炎、おそらくロールちゃんと同じだわ》

 

レヴァンティンとアイゼンを構えたシグナムとヴィータは、戦場に似つかわしくない動物達の登場に、間の抜けた声を漏らすが、シャマルからの念話で引き絞めた。

 

「なのは、あの子達が、隼人と武のアニマル達なの?」

 

「うん。私も瓜ちゃんと次郎ちゃんと小次郎ちゃんが戦うのは初めて見るの・・・・」

 

なのはが獄寺と山本の戦いを見たのは、クロノとの模擬戦と、時の庭園での戦いだけ、クロノとの模擬戦で小次郎が雨を降らせる能力は知っているが、瓜はリボーンと観戦していたし、次郎は自分と戯れていたから、今回が守護者達のアニマル兵器が戦う姿を始めて見るのだ。

 

「ウニャァ~~~~!!」

 

「痛てててっ! コラ瓜! 引っ掻くなよ!!」

 

「へへっ! 次郎! 小次郎! 宜しく頼むぜ!」

 

「ピュィー!」

 

「ヘッヘッヘッ、ワンッ!」

 

獄寺の肩に乗った瓜が獄寺の顔を引っ掻き、小次郎は山本の肩に乗り、山本は腰を下ろすと、次郎の頭を撫で回すと、次郎は尻尾をブンブン振って山本の頬を舐めた。

 

《遊んでんのかアイツら?》

 

《油断するなヴィータ。気を抜いて戦える相手ではない事は以前の戦いで痛感しているだろう》

 

突如現れた動物とじゃれあっている二人に、ヴィータは訝しそうに見るが、シグナムは前回の戦いで接戦をした相手故に、油断なく睨んでいた。

 

「なのは、大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫だと、思うけど・・・・ツナさん?」

 

「大丈夫だよ。獄寺くんも山本も、頼りになるから」

 

ツナも炎真もリボーンも、その顔には不安な顔色はまったく無かった。

 

「イテテテテ、たくっ、行くぜ瓜!」

 

「それじゃやるぜ次郎! 小次郎!」

 

「「形態変化<カンビオ・フォルマ>!!」」

 

「ウニャァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「ワオォオオオオオオオオオンンッッ!!」

 

「ピィィィィィィィィィィィィィッッ!!」

 

瓜の身体が激しく燃える赤い炎となり、次郎と小次郎の身体が水のようにたゆたうように燃える青い炎となって、獄寺と山本の頭上に飛び上がり、大きく弧を描きながら獄寺と山本の身体と重なった。

 

「えぇっ!?」

 

「まさかあれがっ!?」

 

「なんだぁっ!?」

 

「これはっ!?」

 

「一体なんなのっ!?」

 

なのはとフェイト、ヴィータとシグナムとシャマルが驚愕し、獄寺と山本の身体が赤と青の炎に包まれ、その身に鎧を纏った。

 

獄寺は瓜と同じゴーグルをかけ、口には煙草の形をした発火装置を口にくわえ、身体にダイナマイトが縦に連なったベルトを二本巻きつけ、腰にはボンボレの紋章をバックルに同じようにダイナマイトを巻きつけ、太腿にも巻きつけ、右手に籠手を装備し、足にもアーマーを装備し、SISTEMA C.A.I.が宙を浮き、左手にはドクロの砲台を新たに装備した『嵐の形態変化Ver.X』。

 

山本は剣道道着を身に付け、道着の胸元の素肌には黒いさらしが巻かれ、袴に鞘を差し込み、両手に刀と籠手を装備し、右手の刀には柄の下に燕が装飾された『小次郎』。左手の刀には柄の下に犬が装飾された刀を持った『雨の形態変化Ver.X』。

 

「ツナさん、まさかあれが・・・・?」

 

「うん。あれがボンゴレギアの形態変化だよ」

 

「前回は装備が不十分だったから使えなかったがな」

 

ツナとリボーンの説明を聞き、なのはとフェイトは見るからにフル装備となった獄寺と山本の姿に息を飲む。

 

「あれがアイツらの本気ってことかよ・・・・!」

 

「どうやら、これからが本当の戦いのようだな」

 

ヴィータが歯をギリッと噛みしめ、シグナムは静かに闘志を燃やしてレヴァンティンを正眼に構えた。

目の前の二人の少年は、以前戦った時は本気ではなかった。その事実を突き付けられて、二人のプライドは大きく傷つけられた。

騎士として、戦士として、全力で獄寺と山本を叩きのめすと、二人は闘志を燃やす。

 

「今度は手加減しねぇぞ、タコ頭っ!」

 

「ほざいていな、海老頭っ!」

 

ヴィータがアイゼンを振り上げて、獄寺に挑む!

 

「アイゼン! カートリッジロード!」

 

[ヤー!]

 

アイゼンから薬莢が射出されると、アイゼンのハンマーが大きくなり、ニードルが生えてきた。

 

「『ラケーテンハンマー』!!」

 

ハンマー後方のロケットが魔力が噴出し、ハンマー投げのように高速回転しながら獄寺に接近し振り下ろした!

 

「へっ・・・・!」

 

バシィィィィィィィィィンッ!!

 

ヴィータのハンマーが届く前に、獄寺の前に黒い骨で組み立てられた複数の輪が防いだ。

 

「んだとぉっ!?」

 

「ヴィータちゃんの攻撃が防がれた!?」

 

純粋なパワーと攻撃力なら守護騎士で1番と言ってもいいヴィータの一撃が防がれ、ヴィータとシャマルは驚愕する。

 

「果てさせてやるぜ! チビ騎士!」

 

「ぶっ潰れろ! 爆弾ダコ!!」

 

獄寺がボムを投げると同時に、ヴィータがアイゼンを振りかぶって突っ込んだ!

その横では、シグナムと山本も戦いを始めようとしていた。

 

「シグナム。ちゃんと決着つけようぜ?」

 

「・・・・良いだろう」

 

本来ならそんな事をしている場合ではないが、ひとかどの剣士として山本との勝負に受けてたった。

シグナムはレヴァンティンを鞘に納めて抜刀術のような腰を落として構えた。

 

「残念だ山本武。こんな出会いでなければ、お前とは良き好敵手となれただろうな」

 

「今からでも、遅くないぜ?」

 

「そう言う訳にはいかんのだ・・・・」

 

シグナムがレヴァンティンの柄を握る手を強くし、山本も二本の刀を構える。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

静かに闘志をぶつける二人は、お互いを鋭く睨み。

 

「「ッッ!!」」

 

ガキンッ!

 

レヴァンティンと二本の刀の刃が火花を散らせて、ぶつかった!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怒涛の嵐と鎮魂歌の雨

ー獄寺VSヴィータsideー

 

「デヤァアアアアッ!!!」

 

ヴィータが愛機であるグラーフ・アイゼンを振りかぶって獄寺の脳天を潰す勢いで振り下ろすが、獄寺の回りに浮遊する複数の輪、SISTEMA C.A.I.のシールドに阻まれた。

 

「ちくしょうっ! なんなんだよあの輪っかはっ!」

 

シールドの能力は、『嵐の分解』と『雨の鎮静』効果により、相手の攻撃は鎮静し分解され、さらに改修されて新たに『雷の硬化』を付与されるようになり、シールド自体の強度が上がり、グラーフアイゼンの破壊力を防いだのだ。

 

「へっ! 喰らいな! 『フレイム・サンダー』!!」

 

「チィッ! またこれかよっ!!」

 

獄寺の骸骨の砲台、『赤炎の矢<フレイムアロー>』から緑色の雷電を纏った炎の矢が放つが、ヴィータは寸前で避ける。

 

「まだまだ! 『ロケットボム』ッ!!」

 

すかさず獄寺は翼を付けた大量にダイナマイトを投げると、ダイナマイトの下から推進用のジェットが火を吹き、多角的にヴィータに襲いかかるが、間一髪で回避する。

 

「っ、舐めんなっ! 『シュワルベフリーゲン』っ!」

 

飛び道具主体の獄寺に対応するため、鉄球のような魔力弾を幾つもの精製したヴィータは、グラーフアイゼンで打ち付けて飛ばす!

鉄球はそれぞれぶつかり合いながら多角的に獄寺に向かう!

 

「獄寺さんっ!」

 

なのはが身を助けようと乗り出しそうになるが、ツナがなのはの肩に手を置いて止めた。

 

「安心して、なのはちゃん」

 

「アイツらも、曲がりなりにもネオ・ボンゴレ守護者だ。1度負けた相手にそう簡単にやられたりはしねぇぞ」

 

ツナもリボーンの顔には不安など欠片もなかった。

そして鉄球が襲いかかっているにも関わらず、獄寺の目には強気な光があった。

 

「余裕だぜ。『ロケットボム』!」

 

獄寺が放った『ロケットボム』がヴィータの『シュワルベフリーゲン』の鉄球を爆砕した。

 

「なんだとぉっ!?」

 

「はっ! んなゲートボールの球なんざ、ビリヤードの球に比べれば大したことねぇぜっ!!」

 

「クソっ、タコ頭っ!!」

 

「(へっ『γ<ガンマ>』。お前のビリヤードの方がもっと頑丈だったし、もっと早く鋭く、そして強烈だったぜ・・・・!)」

 

悔しそうに顔をしかめるヴィータに余裕の笑みを見せる獄寺の脳裏、もはや平行世界となった『10年後の未来』で戦った強敵、『ミルフィオーネファミリー・ブラックスペル』に所属していた『電光のγ<ガンマ>』の顔が浮かんだ。

彼の使う『エレットロ・ビリアルド』は『雷の硬化』とビリヤードの球による多角的な動き、そして『雷の死ぬ気の炎』を纏ったビリヤードで相手を囲み雷電を浴びせて黒焦げにする技。

これらの技巧で獄寺と山本に手痛い敗北を味わい、『10年後の了平』をも倒したその実力と覚悟の強さは、目の前のヴィータにも勝るとも劣らない。

 

「(もっとも、『現代のγ<ガンマ>』じゃなくて『10年後のγ<ガンマ>』だがなっ!)」

 

獄寺はさらにダイナマイトを取り出して、『ロケット・ボム』のようにヴィータに向けて放った!

 

「バカの一つ覚えがっ!!」

 

ヴィータが回避して、獄寺に接近すると、獄寺はニヤリと笑みを浮かべ、腰から弾丸を『赤炎の矢<フレイムアロー>』に装填しヴィータに放つと、紫のレーザーのような光線が放たれた!

 

「くっ!」

 

ヴィータは寸前で回避しようとすると、放たれたレーザーが複数に枝分かれして、ヴィータの回避コースを消した。

 

「なにぃ!? うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

紫のレーザーが直撃して、少し煙をあげるヴィータの身体がよろけ、それを獄寺は見逃さずにさらにダイナマイトを放った!

 

「『2倍ロケットボム』!」

 

「なっ!?」

 

先ほどよりも大量の『ロケットボム』がヴィータに襲いかかり爆裂する!

 

ボン!ボン!ボン!ボボボン!!

 

「くっ、くそった、なっ!!?」

 

「嵐+晴れ、『マシンガン・アロー』!!」

 

爆発から出てきたヴィータが獄寺に飛び込むが、獄寺は『赤炎の矢<フレイムアロー>』から『晴れの活性』が付与された矢のマシンガンがヴィータの身体に次々と被弾した!

 

「あぁああああああああああああああっ!!」

 

「『3倍ロケットボム』!」

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

「嵐の守護者の戦いを教えてやるぜ」

 

爆裂で怯むヴィータに獄寺は反撃の暇を与えない間髪入れない攻撃を繰り広げる!

 

「常に攻撃の核となり・・・・!」

 

『2倍ロケットボム』と『3倍ロケットボム』を合わせた『ボムスプリット』でヴィータ飛んで逃げる隙間を与えないほどのダイナマイトが降り注ぎ。

 

「休むことない・・・・!」

 

「ニャア~♪」

 

「なっ!? 猫だとぉっ!?」

 

しっぽが導火線になった瓜が、ヴィータの背中に張り付いて爆発した!

 

「どぁあああああああああっ!!」

 

「怒涛の嵐っ!!」

 

ダメ出しで『フレイム・サンダー』を放った!

 

「ぐぁああああああああああああああっ!!」

 

身体中から煙が上がり、バリア・ジャケットはほぼ焦げ破れ、ヴィータは膝をついて倒れた。

 

「は、やて・・・・あ・・・・!」

 

気を失ったヴィータに背を向ける獄寺。

 

 

ー山本VSシグナムsideー

 

ヴィータと獄寺が交戦しているのと時を同じく。

二刀の刀『霧雨と斬雨』を構える山本に、『レヴァンティン』を構えるシグナムはレヴァンティンを鞘に収めた状態でカートリッジを1つ使用し、薬莢を射出させて、魔力を刀身に集めると、繰り出すと同時に、鞘から出したレヴァンティンは連結刃へと展開して魔力を撃ち出す。

 

「『飛竜一閃』!」

 

向かってくる魔力に山本は臆すること無く雨の死ぬ気の炎を纏ってえぐるように突進した。

 

「『時雨蒼燕流 攻式 十の型 燕特攻<スコントロ・ディ・ローンディネ>』!」

 

紫色の魔力の斬撃と、青い炎の斬撃がぶつかり合い、相殺された。

山本は、その反動で後ろに跳ぶが、すぐに体制を整えようとするが、そのわずかな隙をシグナムは見逃さず、さらに技を繰り出した!

 

「もらったぞ! 山本武っ! 『紫電一閃』!!」

 

レヴァンティンからカートリッジを1つを射出させると、魔力を刀身に集め、シグナムとレヴァンティンか持つ『魔力の炎熱変換資質』を付与された炎の斬撃を繰り出す!

 

「武っ!」

 

「山本くん・・・・!」

 

フェイトと炎真が山本に向かって叫ぶが、山本の目には、静かに、そして熱い闘志がギラギラと燃えていた。

 

「シグナム。これで終わらせるぜ・・・・!」

 

山本を二刀を交差させてシグナムの『紫電一閃』を受け止めた。

 

「ハァアッ!!」

 

斬!

 

「なん、だと・・・・!」

 

「シグナムの斬撃を・・・・!」

 

「斬った・・・・!!」

 

二刀の刀身に纏った『雨の死ぬ気の炎』の特性である『鎮静』により、シグナムの斬撃の威力が鎮静され破られた。

そして山本は二刀流で、父から受け継いだ技をシグナムに繰り出した!

 

「『時雨蒼燕流 攻式 八の型 篠突く雨 二ノ太刀』!!」

 

「っっ!!!」

 

二刀を交差するように突き上げた刃を峰にし、シグナムの身体に叩き込んだ!

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

お互いに背を向ける山本とシグナム。

そのまま無言になるが、やがてシグナムが口を開く。

 

「なぜ、峰打ちにする・・・・?」

 

「俺達は、アンタ達を殺したい訳じゃない。それに、はやてみたいな良い子の家族を奪ったりはしねぇよ」

 

山本の言葉に、シグナムは口角を少し上げて笑みを浮かべる。

完全に敗北を悟った。高純度の『雨の鎮静』を浴びて、身体が鉛のように重くなり、もはや戦う事もできない。

 

「・・・・見事だ。山本武」

 

「へへっ、『時雨蒼燕流』は完全無欠、最強無敵だからな!」

 

「フッ。次に、合間見える、ときは・・・・私が、勝つ、ぞ・・・・!」

 

敗北の屈辱も、遺恨も感じない。見事と言い様のない剣技と、刃を交えた時に感じた淀みない覚悟と、確かな才覚、これほどの剣士と合間見える事が出来たことに、シグナムは騎士として、剣士として、充足感に満ちていた。

 

「(申し訳、ありません・・・・主、はやて・・・・)」

 

内心、はやてに謝意を述べたシグナムは、そのまま静かに倒れる。

そして、獄寺と山本は、倒れた相手に向けて、こう言った。

 

「これが、嵐の守護者の怒涛の攻めだ」

 

「これが、戦いで流れた血を洗い流す、鎮魂歌の雨だぜ」

 

「「ボンゴレ舐めんな・・・・!」」

 

 

 

ーなのはsideー

 

「す、すごい・・・・」

 

「あれが嵐と雨の守護者と雨の守護者の使命だ」

 

「嵐と雨の守護者の?」

 

「ボンゴレ守護者には、それぞれに使命を持っている。休むことのない怒涛の攻撃の嵐の守護者、戦いで遺恨を残さない雨の守護者の使命を、あの二人は見事に体現してやがった」

 

「これで、残っている守護騎士は・・・・」

 

「あの二人だけ・・・・!」

 

リボーンとツナと炎真の視線を追ったなのはもフェイトも、シグナムとヴィータが倒れた状況に唖然となったシャマルを見据えた。

 




今さらながら、お気に入り300を越えました。ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闇の書、起動

ーザフィーラsideー

 

ヴィータとシグナムが、獄寺と山本に倒されたと同時に、他の次元世界で魔力蒐集していたザフィーラが帰還し、海鳴市上空を飛行し、海鳴総合病院へと向かっていた。

 

「(誰にも通信が通らん。一体何があった・・・・!)」

 

 

ーシャマルsideー

 

「っ・・・・シグナム・・・・!ヴィータちゃん・・・・!」

 

シャマルは戦慄したように呟いた。シグナムにしろ、ヴィータにしろ、守護騎士の中では戦闘に特化した二人。共に数多の戦場を駆け抜けた歴戦の戦友達。

その二人が、はやての少し年上の少年達に敗北したことが、信じらなかった。

 

「おい、そこのレディ」

 

「っ!」

 

リボーンがシャマルに話しかけ、シャマルも正気に戻った。

 

「俺達の話を聞け。なのはとフェイトは兎も角、俺達は管理局の人間じゃねぇ。雲雀もこの件に詳細を知っている」

 

「・・・・・・・・」

 

状況は不利。今からザフィーラやって来ても勝てるか分からない。シャマルはどうするべきか決めあぐねていると、視界の端、ちょうどヴィータが倒れた場所が紫色の光が見えた。

 

「っ、ヴィータちゃん??」

 

『っ・・・・!』

 

シャマルの呟きと視線から、一同はヴィータを見ると、ヴィータの周りが紫色の球体に包まれ、ヴィータの頭上に黒く光る本が現れた。

 

「っ・・・・うぅ・・・・っ」

 

ボロボロの状態、バリアジャケットの帽子も吹き飛んでしまい、朦朧とする意識をしゃっきりさせようとかぶりを降ったヴィータは、頭上の光を見て呟く。

 

「『闇の、書』・・・・?」

 

ヴィータが呟いたその瞬間、『闇の書』に異変が起こった。

光り輝く『闇の書』から無数の黒い大蛇が現れて、『闇の書』を包み込み、大蛇が絡み巻き付いた玉のようになった。

 

「っ!」

 

「あれは・・・・!」

 

『っっ・・・・!』

 

ヴィータは『闇の書』の異常に驚き、シャマルになのはとフェイトも同様の様相を浮かべ、ツナ達は、始まったと言わんばかりに見据え、リボーンは“作戦開始”と、ここにはいない各員にメールで伝達する。

 

 

ー雲雀sideー

 

「うっ・・・・くっ・・・・ああ・・・・!」

 

はやての病室に来ていた雲雀は、窓から差し込む光よりも、ベッドの上で苦しそうに汗を浮かべ、胸を抑えているはやての側にいた。

 

「恭さん、始まりました」

 

「・・・・・・・・」

 

静かに病室に入ってきた草壁の言葉に、雲雀は目を鋭くする。

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナ達が見つめる中、『闇の書』は巻き付いた蛇がウネウネと動く。

 

「〈ナハトヴァール〉・・・・なぜ・・・・!?」

 

「まさか!」

 

意識が戻ったシグナムとシャマルも驚愕の様相を浮かべる。

 

[自動防衛運用システム〈ナハトヴァール〉起動]

 

「待て! 今は違う! 我らまだ、戦える・・・・!」

 

〈ナハトヴァール〉の声を聞いて、シグナムは重い身体を無理矢理起こして、止めようと呼び掛けるが、ヴィータは〈ナハトヴァール〉を呆然と見据え、目を鋭くする。

 

「コイツ・・・・そうだ・・・・コイツがいたから」

 

目の前に現れたこのシステムが、大好きなはやてを苦しめている元凶だと悟ったからだ。

 

[守護騎士システムの維持を破棄。闇の書〈ストレージ〉の完成を最優先。守護騎士システムは消去]

 

『っっ!?』

 

ベルガ語の意味を知るなのはとフェイト、白蘭から情報を聞いていたツナ達も、〈ナハトヴァール〉の言葉の意味を理解した。

つまり、〈ナハトヴァール〉は、守護騎士達を殺すつもりだと・・・・。

 

「ふざけんな・・・・ふざけんなーーーー!!」

 

ヴィータは悲鳴を上げる身体を無理矢理動かして、アイゼンを振りかぶるが、〈ナハトヴァール〉の大蛇の一匹が襲い掛かり、ヴィータは大蛇の身体をアイゼンで叩くが、アイゼンは呆気なく破壊され、ヴィータは吹き飛ぶ。

 

「ヴィータちゃん!」

 

「あ、なのは!」

 

なのはとフェイトはセットアップして、ヴィータの元へ向かった。

 

[敵対勢力排除、蒐集対象より、コアの蒐集]

 

『うぁっ!!』

 

〈ナハトヴァール〉の大蛇の口から黒い光が出ると、なのはとフェイト、守護騎士達の身体が黒いバインドに拘束され、〈ナハトヴァール〉の前に連れられ、大蛇の一匹の口の光を近づける。

 

[開始]

 

〈ナハトヴァール〉が告げると、シャマルの胸元から緑色の光のリンカーコアが、シグナムの胸元から紫色の光のリンカーコアが、ヴィータの胸元から赤い光のリンカーコアが出てきた。

 

「まずい! 炎真!!」

 

「うん!!」

 

[更なる敵対勢力を確認。排除行動に移る]

 

ツナと炎真は超モードになってなのは達の元へ向かおうとするが、〈ナハトヴァール〉の大蛇達が阻もうとするがーーーー。

 

「「ッ!」」

 

ツナと炎真は大空と大地の推進力で大蛇の動きを巧みに回避するが、大蛇達は襲い掛かる。

 

「うわぁーーっ!!」

 

「ああ・・・・!」

 

「シャマル! シグナム! ああーーー!!」

 

三人のリンカーコアが粒子状となって、〈ナハトヴァール〉に吸収される。

 

「うおぉーーーっ!!」

 

駆けつけたザフィーラが魔力を込めた拳を〈ナハトヴァール〉に叩きつけるが、〈ナハトヴァール〉の障壁に阻まれ、その拳から血飛沫が迸った。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

[残存システム確認]

 

それでも拳を引かないザフィーラからも〈ナハトヴァール〉はリンカーコアを蒐集を開始した。

ザフィーラの胸元から、青いリンカーコアが出てくる。

 

「ぐっ・・・・うあっ!」

 

弾き飛ばされたザフィーラはそれでも〈ナハトヴァール〉に拳を向けた。

が。

 

「(雲雀様・・・・主を、どうか・・・・!!)」

 

[蒐集]

 

〈ナハトヴァール〉の大蛇の一匹が口から黒い光を出し、障壁でザフィーラの拳を防ぐ。

激しいスパークが迸り、光が辺りを覆った。

 

 

 

ー雲雀sideー

 

「っ!」

 

「なっ!?」

 

雲雀は目を見開き、草壁も驚愕した。

たった今、はやての身体の下に魔法陣が出現し、はやてが病室から消えたのだから、当然とも言える。

 

「恭さん・・・・嬢ちゃんは・・・・!」

 

「・・・・」

 

雲雀は病室を飛び出ると、屋上へと向かった。

 

 

ーはやてsideー

 

「・・・・・・・・ぁ」

 

屋上に転移されたはやては弱々しく身体を起こして、顔を上げた瞬間、その絶望的な状況に目を見開いた。

だって、目の前にはーーー。

 

「ぁ・・・・・・・・!」

 

シグナムが、シャマルが、ヴィータが、狼形態になったザフィーラが、上空に幾重にも伸びた植物の蔦のような物に絡まれ、ピクリとも動かなくなっていた。

 

「はやて・・・・!」

 

「はやてちゃん・・・・!」

 

「クソ・・・・!」

 

「来ちまったか・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

ツナと炎真は絡まった蔦を焼き切り、同じように絡まったリボーンと獄寺と山本を救出させると、リボーン達をはやての元へ行かせた。

ツナと炎真は、蔦の先にどす黒い球体となり、周りの建物にまるで根を張ったように佇む繭のような球体へ向かった。

その球体に飲み込まれた、なのはとフェイトを救出する為だ。

 

「なのはっ!」

 

「フェイトっ!」

 

二人が球体の中をこじ開けようとするが、球体のびくともせず、はやての眼前に〈ナハトヴァール〉が近づき、獄寺がダイナマイトを、山本が二刀を構え、リボーンもレオンを拳銃に変態させて、銃口を向ける。

 

[守護騎士システムよりコアを還元]

 

〈ナハトヴァール〉は『闇の書』を排出すると、『闇の書』が開き、ページが独りでに捲れる。

 

[頁蒐集完成]

 

「何や? それ・・・・あんた、誰?」

 

[覚醒の時です。我が主]

 

聞いた事もない言語なのに、その意味が分かるが、はやては呆然と呟き、〈ナハトヴァール〉は静かに告げる。

 

「はやて! 耳を傾けんな!!」

 

「果てろ!」

 

リボーンと獄寺が攻撃するが、〈ナハトヴァール〉は大蛇の二匹を向かわせ、山本が二本を交差させて防ぐが、勢いに押され、後ろにいた獄寺ごと吹き飛んだ。

 

「「ぐあっ!!」」

 

「獄寺さん! 山本さん!」

 

[覚醒の時です。我が主]

 

「そんなんええねん! シグナム達になにした! みんなを下ろして! 返して!!」

 

[・・・・・・・・]

 

はやてが訴えると、〈ナハトヴァール〉は一瞬黙るが、上昇しながら再び声を響かせる。

 

[・・・・了解・・・・守護騎士システムを完全抹消。コアモードで主に還元します]

 

「なっ・・・・あかん、ちゃう、そんなんちゃう!!」

 

その言葉を聞いて、はやては止めようと声を張り上げようとするが、幾重にもある蔦から、四本の蔦が伸びて、その先端を守護騎士達に向けた。

 

「あかん、やめて、やめて、やめてぇ~!!」

 

「っ・・・・!」

 

[抹消]

 

はやてが叫び声を上げ、雲雀が屋上の扉を蹴破って来たが、蔦の先端は、守護騎士達の身体を無情に貫いたーーー。

 

「やっ・・・・」

 

「っ!」

 

その瞬間、守護騎士達はそれぞれの魔力色のなって消滅し、残されたのは、シグナム達が纏っていた衣服だけだったーーーー。

 

「・・・・・・・やっ・・・・・」

 

[覚醒の時です]

 

絶句するはやての足元に、黒い三角形の魔法陣が展開され、ドクン、ドクン、と、鼓動のような音が響く。

 

「あっ・・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!」

 

「っ・・・・はやてっ!!」

 

雲雀が慟哭を上げるはやての元へ走ると同時に、黒い魔力光が、天へと高く昇ったーーーー。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

融合騎、来る

ーツナsideー

 

「炎真! バラバラでは壊れない、合わせるぞ!」

 

「うん!」

 

ツナと炎真はタイミングを合わせて、『大空の炎』の拳と『大地の炎』の拳をドス黒い繭に叩き込んだ。

 

ビキビキビキビキビキビキ・・・・バリーーーンッ!! 

 

その瞬間、繭がひび割れて、力なく落ちるなのはとフェイトを回収した。

 

「っ・・・・ツナ、さん・・・・はやて、ちゃんは・・・・?」

 

「はや、て・・・・」

 

なのはとフェイトが顔を上げたその先には、黒い光の柱が、天高く伸びていた。

 

 

 

ーはやてsideー

 

その柱の中では、はやてが裸の姿で、意識があるのか無いのか分からない状態のまま、迸る黒い魔力の中にいた。

そして、『闇の書』、いや、『ナハトヴァール』がはやての前に現れた。

 

[管制ユニット。融合]

 

『ナハトヴァール』は、『黒いリンカーコア』をはやてに向けて射出すると、コアははやての胸元から、体内に入り込んだーーーー。

 

 

 

ーリボーンsideー

 

「これは、想像以上にヤベェな。獄寺、山本、此処は退くぞ。草壁、お前もだ!」

 

白蘭から情報を聞いていたが、想像以上の事態に、リボーンは危険を察して獄寺と山本に呼び掛け、山本の肩に乗ると、山本は『三本の小太刀』を取り出して飛翔し、獄寺は改良された『SISTEMAC.A.I.』のホバリングで空を飛び、草壁を連れて脱出したが、“雲雀の姿は無かった”。

 

「恭さん・・・・」

 

草壁が、“黒い光の柱に呑まれた雲雀”の名を呟くと同時に、黒い光の柱が弾けるように爆発した。

 

『っっ!!!』

 

爆風に吹き飛ばされないように踏ん張る一同。

爆発が止むと同時に、はやてがいた地点に、黒い三角錐の魔法陣の上に、1人の少女が立っていた。

 

風に靡く銀色の長髪。黒いバリアジャケット。肩と腰から生やした漆黒の翼。美麗な顔には血の亀裂ような痣が付いており、その閉じた瞼からは涙が零れていた。

 

「・・・・また、全てが終わってしまった・・・・」

 

その少女の瞼を開かれると、赤い瞳が露になった。

 

「はやてちゃん・・・・?」

 

「違う・・・・あの女の人が・・・・!」

 

「『闇の書の管制ユニット』って事か?」

 

ツナ達と合流したリボーン達も少女をまっすぐ見据えた。

 

「我は魔導書・・・・我の力の全ては・・・・忌まわしき敵を、打ち砕くために・・・・!」

 

少女はそう呟くと、顔を俯かせて、右手を天に向けて掲げる。

その両隣には、『闇の書』と『ナハトヴァール』が鎮座していた。が、『闇の書』が少女の動きに合わせて動きだす。

 

[ーーーーーーーー]

 

『闇の書』がベルガ語で呟くと、少女の掲げた手のひらから、黒い球体が出現し、徐々に膨張していった。

 

『っっ!!』

 

それを離れた上空から見ていたツナ達に、戦慄が走る。

 

「空間攻撃!」

 

「お前ら! 離れろ!!」

 

フェイトが魔法攻撃を見て呟き、リボーンが叫ぶと、一同は離脱する。

 

「闇に沈め・・・・」

 

少女がそう言うと、小さく縮小した黒い球体が、一気に膨張した。

 

その瞬間。少女を中心に周辺が黒い球体に呑み込まれた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そして少女の頬に、涙が一筋流れていたーーーー。

 

 

ーリンディsideー

 

アースラの管制室で状況を見ていたリンディも、現状に息を呑んだ。

 

「観測点に異常反応!」

 

「映像は来ますが、音声通信通りません! ですが、これは!」

 

オペレーター達も愕然となる。

 

《『闇の書』の、管制融合騎》

 

エイミィからの通信連絡で、リンディも事態の重さを感じなから冷静に務める。

 

「クロノと、“他の皆”は?」

 

「すでに現地に飛んでいます!」

 

クロノと、“リボーンが呼んだ協力者達”も、現地に向かっていた。

 

 

ー???sideー

 

管制融合騎の少女は光が収まると頬に伝っていた涙を拭って、『ナハトヴァール』に向けて唇を開く。

 

「自動防衛、一時停止。これより暫しは、私が主をお守りする。ナハト・・・・。ただの防衛プログラムであるお前を責めはしない。全ては、私に責がある」

 

融合騎は、『ナハトヴァール』に左手を伸ばし、中心部分を掴むと、『ナハトヴァール』の蛇がうねりながらその左腕に絡み付く。

 

「せめて後少し、大人しくしていろ・・・・」

 

融合騎の左腕に絡み付いた『ナハトヴァール』の蛇が、徐々にその姿形を、黒いパイルバンカーとなって、融合騎の左腕に装備された。

 

「我が主、どうかしばし、私の中でお休みください」

 

ソッと自分の胸元に手を置いた管制融合騎はボソッとそう言うと、再び顔を上げ、パイルバンカーを上に翳すと、黒い封絶結界が、まるで海鳴市を覆い尽くさんばかりに展開された。

 

 

ーなのはsideー

 

「みんな、無事か?」

 

遠くまで離脱した一同に、ツナが無事を確認すると、一同は無事であることを示すように頷くと、なのはが融合騎のいる地点を見据える。

 

「あの人、一体?」

 

「ベルカの融合騎。主と一体化して戦う、『人格型管制ユニット』」

 

「本来は主、つまりはやてに融合し、主であるはやてが表に出るが、ユニットの方が表に出ているって事は、はやては意識を失っている事だろう」

 

フェイトとリボーンの解説を聞いて、草壁は声を発する。

 

「・・・・リボーンさん。恭・・・・委員長は?」

 

「さぁな。雲雀も呑み込まれたなら、雲雀も彼女の中にいるんだろう」

 

「「助けるには?」」

 

リボーンがそう言った瞬間、ツナとなのはの言葉が重なり、一同は一瞬唖然となったが、すぐに気を引き締める。

 

「今はまだ分からん。だが・・・・」

 

リボーンがそう言うと、なのはが引き継ぐ。

 

「話してみるしか、無いよね?」

 

『(コクン)』

 

一同が頷くと、草壁を近くのビルの屋上に避難させて、管制ユニットに向かい、海鳴市を覆い尽くすほどの結界を展開し終えた融合騎に、なのはが話しかけた。

 

「あの・・・・『闇の書』さん!?」

 

融合騎が、なのは達に目を向ける。

 

「私達、はやてちゃんやヴィータちゃん達と「我が騎士達は」っ!」

 

なのはの言葉を遮り、融合騎が声を発する。

 

「お前達を打ち破り、ナハトの呪いを解き、主を救うと誓った。そして我が主は、目の前の絶望か悪い夢であって欲しいと願った。我はただ・・・・それを叶えるのみ」

 

そう言いながら、融合騎の顔は暗く、まるで苦しみを吐き出すように声を上げる。

 

「主には、穏やかな夢の内で、愛するお方と、永久の眠りを・・・・!」

 

『っっ!!』

 

「・・・・・・・・」

 

それは、『はやてと雲雀の死』。最も聞きたくなかった言葉を聞いて愕然となるリボーンを除く一同。

 

「そして、我らに仇なす者達には、永遠の闇を!」

 

融合騎が頭上に手を伸ばすと、黒い球体が現れ、周辺から、炎の柱がアスファルトを砕いて天に伸びる。

一同は伸びる火柱を回避しながら、管融合騎と交戦を始めた。

 

「キャアッ!!」

 

「なのはっ!」

 

なのはがパイルバンカーの攻撃を受けて落下すると、フェイトはバルディッシュをクレッセントモードに切り換えて、金色の斬撃を飛ばす。

 

「『クレッセントセイバー』!」

 

回転しながら向かってくる斬撃をパイルバンカーで防いだ融合騎の後ろに回り込んだフェイトが、バルディッシュを振るおうとするが、融合騎は防いでいた『クレッセントセイバー』をフェイトに返した。

 

「っ!」

 

自分の放った斬撃を防ぐフェイトに、融合騎はパイルバンカーから黒い稲妻の魔力弾を放つ。

 

「フェイトっ! ぐぁっ!」

 

「炎真!」

 

「僕に構わないで、相手に集中してフェイト!」

 

「っ!」

 

フェイトを庇って魔力弾を防ぐ炎真だが、あまりの威力に吹き飛び、斬撃を弾き飛ばしたフェイトが炎真に向かおうとするが、炎真に一喝されて、魔法陣を展開する。

 

「・・・・・・・・」

 

融合騎が下方を見ると、なのはが、前方を見ると獄寺が、砲撃体勢に入っていた。

 

「コンビネーション2、バスターシフト!」

 

「ロック!」

 

「っ!」

 

フェイトとなのはが、融合騎の両腕にバインドを仕掛けた。

 

「「シュートっ!」」

 

「『嵐+雷 フレイムサンダー』!!」

 

三方から放たれた桃色の光と金色の光と緑色の雷を纏った赤い炎が、融合騎に向かった。

 

「貫け」

 

が、融合騎はバインドを簡単に破壊し、三方の攻撃を魔法陣の障壁を展開して防ぐと、さらに赤いレーザーを幾つも障壁を外に出るように発射し、なのは達に襲い掛かった。

 

バヒュゥゥゥゥゥンン・・・・。

 

三方から爆裂が起きるが、爆発からなのはを連れてツナが、フェイトを連れて炎真が、『SISTEMA C.A.I.』の防御で防ぐが、攻撃の威力に吹き飛ぶ獄寺を山本が受け止めた。

 

「・・・・その炎は・・・・『死ぬ気の炎』か?」

 

融合騎は、ツナ達の『死ぬ気の炎』を見て呟く。

なのはとフェイトは、融合騎が『死ぬ気の炎』を知っている事に首を傾げるが、ツナ達は目を鋭くする。

 

「なるほど。我が騎士達が『失った記憶』・・・・。今の主と出逢う以前にあった、『幸福な時間』・・・・。まさか、それが遥か時を越えて、こうして合間見えるとは・・・・。運命とは、残酷だな・・・・」

 

自嘲するように呟く融合騎は『闇の書』を取りだし、ページが独りでに捲れると、魔法を発動させた。

 

ボンゴレファミリーと『闇の書』。果たして、この2つに何があったのか? その答えを知るための戦いが、今始まる。




いつの間にか、お気に入り300になってました! こんな駄文にありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

諦めたくないから

融合騎は『闇の書』を自分の前に出現させると、『闇の書』のページがパラパラと独りでに捲れる。

 

「・・・・!」

 

融合騎が両手を伸ばすと、魔法陣が展開され、そこから無数の鎖のバインドが出現し、全員を絡めとる。

 

『ああっ!!』

 

融合騎が力一杯両手を振り回すと、バインドに捕まった一同は、ビルの屋上に炎真と獄寺と山本が、ツナとリボーンとなのはとフェイトがアスファルトに叩きつけられた。

 

「・・・・・・・・」

 

さらにページが捲れると、一同を拘束していたバインドが桃色や金色に変わった。

 

「これ・・・・!」

 

「私やなのはの、魔法・・・・!」

 

「蒐集した魔法を、使えるのか・・・・!」

 

「これはかなり厄介だぞ・・・・!」

 

「私の騎士達が、身命を賭して集めた魔法だ」

 

融合騎を見上げると、前髪で目元は隠れていたが、その頬には涙が零れた。

 

「『闇の書』さん?」

 

「お前達に咎が無いことは、分からなくもない。だが、お前達さえいなければ、主と騎士達は心静かな聖夜を過ごすことができた。残り僅かな命の時を、暖かな気持ちで過ごせていた・・・・」

 

「はやてはまだ生きてる! シグナム達だって、まだ!」

 

「もう遅い。『闇の書』の主の宿命は、始まった時が終わりの時だ」

 

「終わりじゃない・・・・まだ終わらせたりしない!」

 

なのはは涙混じりにそう訴えるが、融合騎は左手のパイルバンカーの先端から、闇色の魔力砲を放った。

 

「くっ! ナッツ!!」

 

「ガァウッ!!」

 

ツナがナッツを召喚すると、ナッツは『大空の調和』の波動の咆哮で、ツナのバインドをコンクリートに変化させ、バインドを砕いたツナはナッツを『防御形態』に変化させ、砲撃を防いだ。

 

「ツナさん!」

 

「なのは! 伝えろ! お前の気持ちを!」

 

「っ! はい! 『闇の書』さん! 泣いているのは、悲しいからじゃないの!? 諦めなくないからじゃないの?! そうじゃなきゃおかしいよ! ホントに全部諦めてるんなら! 泣いたりなんか、しないよ!!」

 

涙を流しながら伝えるなのは。

しかし、融合騎は一筋の涙を溢し、パイルバンカーを再び構えて、砲撃魔法を放った。

 

「バリア・ジャケット、パージ!」

 

フェイトがそう叫ぶと同時に、砲撃魔法が炸裂し、闇色の爆発が起きた。

 

「ツナくん! フェイト!」

 

「リボーンさん!」

 

「なのは!」

 

炎真がバインドを引きちぎると、爆発の中から、リボーンを肩に乗せたツナと、なのはの手を掴んだフェイトが現れた。

フェイトのバリア・ジャケットはレオタードのみの姿であった。防御力をギリギリまで減らし、攻撃力の速力に特化させたフェイトの新たな姿、『真・ソニックフォーム』である。

炎真達はホッとしながら、上空に飛んで合流する。

炎真を一瞥したフェイトが、融合騎に向けて声を発する。

 

「伝わらないなら、伝わるまで、何度でも言う。助けたいんだ! 貴女の事も! はやての事も!」

 

なのはも、潤んだ瞳で融合騎を見つめる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しかし、融合騎は沈黙する。

その時ーーーー。

 

ドクン!

 

融合騎から、もといパイルバンカーへと変じた『ナハトヴァール』から、鼓動のような音が響くと、火柱が上がっていた町に、今度は水柱が天へと昇り、アスファルトの地面が砕け、周りのビルを押し退け、海からも、岩の柱が現れ天へと昇る。

 

『っっ!』

 

驚く一同を無視して、融合騎は口を開く。

 

「早いな、もう崩壊が始まったか。私も時期、意識を無くす。そうなればすぐにナハトが暴走を始める。意識がある内に、主と騎士達の望みを叶えたい!」

 

融合騎が『闇の書』を開くと、矢のような、槍のような魔力弾が幾つもの現れた。

 

「眠れ」

 

融合騎がそう呟くと、魔力弾が発射された。

 

「「っ!!」」

 

「この駄々っ子!!」

 

[ソニックドライブ]

 

ツナと炎真が持ち前の推進力で、フェイトは金色の魔力光を全身に纏うとスピードを上げて融合騎に迫る。

真紅と金色の閃光が、魔力弾を回避して、融合騎に迫る。

融合騎は手をつき出すと魔法陣を展開させた。

 

「ハァーーッ!!」

 

「ふっ!!」

 

フェイトと炎真が拳と魔力刃を魔法陣に叩き込むと、魔法陣から漆黒の闇が溢れ、炎真とフェイトを包んだ。

 

「「っっ!!?」」

 

「お前達にも、心の闇があろう・・・・」

 

「くっ・・・・」

 

「なっ・・・・」

 

闇に呑まれ、炎真とフェイトの身体が粒子状となって、『闇の書』に吸い込まれていくーーーー。

 

「炎真っ! くぅっ!!」

 

「フェイトちゃん!!」

 

魔力弾に阻まれ近づけないツナとなのはが声を上げるが、炎真とフェイトはそのまま『闇の書』に吸い込まれた。

 

[吸収]

 

二人を吸い込んだ『闇の書』が閉じて、二人を吸収したことを告げた。

 

「炎真さんっ! フェイトちゃーーーーん!!」

 

なのはが二人の名前を叫ぶ。

 

「我が主も、主の想い人も、“シモン=コザァートの子孫”も、あの子も、覚める事のない眠りの内に、終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢。それは永遠だ」

 

「・・・・永遠なんて、無いよ」

 

「(炎真。フェイト・・・・!)」

 

「(夢の中で安らいで死ぬか、それとも・・・・いずれにしても、二人の踏ん張りしだいだな)」

 

リボーンは帽子を被り直して、融合騎を鋭く睨んだ。

 

 

ーフェイトsideー

 

目を覚ましたフェイトは子犬形態のアルフ。死んだはずのアリシア、リニス、そしてプレシアと共に幸せで温かな日々を過ごしていた。

それが現実ではない事は、夢である事は分かっていた。しかし、あまりにも幸せ過ぎるその光景に、涙を流した。

 

 

 

ー炎真sideー

 

「・・・・・・・・ここは、何処なんだ?」

 

通常モードに戻った炎真が目を覚ますと、目の前に扉があり、その扉が開くとソコにはーーーー。

 

『炎真』

 

『炎真』

 

『炎真お兄ちゃん!』

 

「父さん・・・・! 母さん・・・・! 真美・・・・!!」

 

死んだはずの両親と妹の真美が笑顔で炎真に向かって手を伸ばした。

 

「また、四人で・・・・っ!?」

 

炎真もこれが夢である事は分かっていた。しかし、目の前の両親と妹に手を伸ばしそうになった。

その時、背後に誰かの気配を感じ、ゆっくり振り向くとーーーー。

 

『・・・・・・・・・・』

 

「ーーーーーーーーっ!」

 

真紅の死ぬ気の炎、『大地の死ぬ気の炎』を燃やした“戦闘モードの自分”が、静かに炎真を見据えていた。

 

 

ー雲雀sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そしてここに、はやてと同じく『闇の書』に取り込まれた雲雀恭也が、美しい日本庭園が見える和室で、愛らしい着物姿のはやてと庭園を見ていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀は静かに立ち上がると、和室から庭園に出る。

 

『雲雀さん? どこ行くん?』

 

着物姿のはやてが首を傾げて雲雀に尋ねると、雲雀はソッと振り向いて、口を開く。

 

「そろそろ飽きて来たから行く」

 

『ここに居ればええやんか? 静かで平和やで?』

 

「退屈は嫌いだよ」

 

『そうかぁ・・・・』

 

少し目を伏せて、寂しそうな声色のはやてに、雲雀はツナ達も聞いたことがない優しい声で呟いた。

 

「ここでの一時は悪くなかった。だけど、“本当の君”に、僕は“聞きたい事”があるからね。それを聞くために、行くよ」

 

『そっか・・・・“本物の私”を、よろしゅうな』

 

「ああ」

 

そう言って、雲雀は庭園をゆっくり歩くと、“幻影のはやて”と“夢の世界”が、静かに、ゆっくりと、消えていったーーーー。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

眠るのは・・・・

ーはやてsideー

 

「ん・・・・眠い・・・・」

 

『闇の書』の内部。暗闇に包まれた空間に、八神はやては眠そうに呟いた。

そしてその前には、融合騎の少女が優しく、静かにはやてを見つめ、ソッと呟く。

 

「そのままお休みを、我が主・・・・」

 

「ぁ・・・・・・・・」

 

「あなたの望みは、全て私が叶えます・・・・」

 

そんな二人に近づく影があることを、二人はまだ気づかない。

 

 

ーツナsideー

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

ツナと融合騎が、空中で激しく拳をぶつけ合い、海鳴町近海にまで飛んでいった。

時に融合騎が魔力弾を放つが、ツナは巧みな空中旋回で回避し、ガントレットから炎の放出技・『Xカノン』を放つ。

 

「ナハト、撃ち貫け」

 

「『Xカノン』!」

 

融合騎はそれを正面から受け止め、再び魔力弾をツナに放つが、ツナもXカノンで相殺し、海に隆起した岩がその余波で崩壊した。

 

「流石は、“ジョットの後継者”だな・・・・」

 

「“ジョット”・・・・! “初代<プリーモ>”の事か?」

 

「もはや、過ぎ去った思い出だ」

 

悲しそうにそう呟いた後、再び橙色と黒色の閃光が海鳴近海で激しくぶつかった。

 

「す、すごい・・・・!」

 

「呆けている場合じゃねぇぞ」

 

ツナと融合騎の戦いに圧巻されるなのはを肩に乗ったリボーンが正気に戻す。

 

「良いかなのは。タイミングを見逃すな。ツナがヤバくなったらお前が助けに回れ、気を抜くなよ?」

 

「う、うん・・・・! 頑張ろう、レイジングハート」

 

[了解です、マスター]

 

負傷した獄寺達は空に来られない為、なのははツナをサポートするタイミングを見定めていた。

 

 

 

ーはやてsideー

 

「私は、何を望んだっけ?」

 

「悲しい現実を、すべて消してしまいたいと・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

はやての脳裏に、一人の少年の言葉が過った。

 

【誰かが助けてくれる事を期待して、自分でどうにかしようとしない弱虫には興味ないな】

 

「(雲雀、さん・・・・)」

 

 

ーツナsideー

 

「っっ!!」

 

Xカノンと魔力弾のぶつかり合いで、一瞬視界が眩んだツナの眼前に、融合騎がナハトヴァールのパイルバンカーを叩きつけようとするーーーー。

 

「ツナさん!!」

 

しかし寸前で、なのはが魔力砲を放ち、融合騎は後方に回避し、なのははツナの隣に立つ。

 

「お前達も、もう眠れ」

 

「・・・・まだ眠れない。俺達は、まだ眠る訳には行かないんだ!」

 

「いつかは眠るよ。だけどそれは、今じゃない!」

 

「眠ればすべてが終わる訳じゃねぇ。どんな辛い事でも、目を開けて進む。それが生きるって事だぞ」

 

ツナとなのはとリボーンの言葉を聞いても、融合騎は態度を変えず、その頬には涙が流れていた。

 

「レイジングハート、エクセリオンモード」

 

なのはがそう言うと、レイジングハートは薬莢を射出しーーーー。

 

「ドライブ!」

 

[イグニッション]

 

なのはなBJがその姿が変わり、レイジングハートも杖からまるで、突撃槍のような形状に変形した。

 

「悲しみも悪い夢も、終わらせて見せる!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

なのはは新たな姿、『エクセリオンモード』へと姿を変えたのを見て、融合騎は片腕を横に振ると、海からマグマが噴出しーーーー。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

それを見て、ツナ達も改めて気を引き締めた。

 

 

ー炎真sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

炎真は、眼前に立っている戦闘形態の自分を見据えると、後ろにいる両親と妹の真美に振り向く。

 

「炎真、お兄ちゃん・・・・?」

 

炎真は首を傾げる真美に目線を合わせようと腰を下ろし、真美の頭を撫でた。

 

「ゴメンね、真美・・・・! 守れなくて、ゴメンね・・・・! 助けられなくて、本当にゴメンね・・・・!!」

 

炎真は涙を流しながら、真美に謝る。嫌、真美だけでなく、両親にもその謝意を持っていた。

 

「お兄ちゃん・・・・」

 

「でも、ゴメンね真美・・・・僕はまだ、そっちに行けないんだ・・・・」

 

炎真の後ろにいた戦闘状態の炎真が歩を進め、炎真と一体化すると、炎真の姿が、戦闘状態へと変わった。

 

「真美、父さん、母さん・・・・行ってくるね」

 

炎真は涙を流し、両親と真美も涙を流しながら頷いた。

それを見て、炎真は両手の炎を噴射して、空を飛んでいった。

 

 

 

ーフェイトsideー

 

フェイトはアリシアと共に、外で木漏れ日が漏れる大きな木の下でのんびりと遊んでいると、空に雨雲が立ち込め始め、フェイトとアリシアは家に戻らず、木で雨宿りをすると、ちょうど雨が降ってきた。

 

「ねえアリシア、これは夢なんだよね」

 

「・・・・フェイトは、変な事を言う子だね。夢な訳、ないじゃない」

 

沈黙が二人を包むが、フェイトが声を発する。

 

「アリシアと私は、同じ時間を生きられない。アリシアが生きてたら、私は生まれてないんだもの・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

あまりにも残酷な事を、フェイトは辛そうに言うが、アリシアは黙って耳を傾ける。

 

「母さんも、私には、あんな風には・・・・!」

 

「優しい人だったんだよ。だけどちょっと、一生懸命過ぎたの。死んじゃった私を、生き返らせる為に・・・・」

 

「うん・・・・」

 

「ねえフェイト、夢でも良いじゃない? ここに居よ、ずっと一緒に。私、ここでならフェイトのお姉ちゃんでいられる。ママやリニスだって、フェイトにうんと優しくしてくれる。家族みんなで、楽しい事いっぱいある」

 

「・・・・・・・・」

 

俯くフェイトの手に、アリシアは優しく握る。

 

「フェイトの欲しかった幸せ、全部あげられるよ?」

 

 

ーはやてsideー

 

「私が、欲しかった幸せ・・・・」

 

「健康な体。愛する者達との日々。眠ってください。そうすれば、夢の中で貴女はずっとそんな世界にいられます。誰も貴女を傷つけない。悲しみも痛みも何もない、そんな世界に・・・・」

 

「ぁ・・・・そんな、あったらええな・・・・」

 

再び眠りにつきそうになるはやて。しかし、暗闇の世界が戦闘の影響で激しく揺れた。

 

 

ーなのはsideー

 

ツナとなのはが連携で融合騎と戦闘し、なのはが砲撃魔法を繰り出すが、融合騎は難なく防ぐ。

 

「1つ覚えの砲撃。通ると思っているのか?」

 

「通す!!」

 

「ナッツ!」

 

『ガァウッ!!』

 

薬莢が噴出されると、レイジングハートに何枚もの翼が生え、ツナもナッツが『ガントレット』に変身した。

 

[スタンバイ]

 

「レイジングハートが力をくれてる。ツナさんが一緒にいる。泣いてる子を救ってて!」

 

レイジングハートの先端と翼から赤い刃が飛び出す。

 

「エクセリオンバスターA・C・S! ドライブ!!」

 

「『ビッグバンアクセル』!!」

 

なのはとツナが、融合騎に突っ込み、融合騎は障壁で防ぐが押され、隆起した岩を次々と粉砕していった。

 

「「はぁああああああああああっ!!」」

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

一際大きな岩に叩きつけられ、漸く止まった。

 

「くっ・・・・うっ・・・・」

 

「届いて! ブレイク・・・・!」

 

なのはが次々と薬莢を射出すると、レイジングハートの先端が障壁を僅かに貫く。

 

「まさか・・・・!」

 

「シュート!!」

 

爆発が起こり、岩柱が崩れ、離れた位置で腕を抑えるなのはをツナが支えた。

ほぼゼロ距離からの砲撃に、融合騎を止められたかと思ったが、融合騎は健在で、ツナとなのはは気を引き締めた。

 

 

ーはやてsideー

 

揺れる世界で、はやては目を冷ましそうになる。

 

「そや・・・・私はまだ・・・・ん?」

 

目を開けそうになったはやての眼に、涙を流す融合騎の顔が映った。

 

 

ーフェイトsideー

 

雨雲から雷が迸るのを見て、フェイトはアリシアから離れる。

 

「ありがとうアリシア、ゴメンね・・・・だけど私は、行かなくちゃ」

 

アリシアに振り向いたフェイトの目は潤んでいた。

 

「っ・・・・! ゴメンねは、私の方」

 

アリシアはフェイトに、待機状態のバルディッシュを差し出す。

 

「本当は分かってた。だけど少しでも、夢の中でも、一緒にいたかったの」

 

「っ・・・・!」

 

アリシアはフェイトの手にバルディッシュを握らせた。

フェイトはアリシアをぎゅっと抱き締めた。

 

「ゴメン・・・・! ゴメンね、アリシア・・・・!」

 

「いいよ。私はフェイトのお姉ちゃんだもん。待ってるんでしょ? 大事な人と、大切な友達と、優しい人達が」

 

「うん・・・・!」

 

「じゃ、いってらっしゃい。フェイト」

 

「ありがとう、お姉ちゃん、大好き・・・・!」

 

「私も、大好きだよ、フェイト。現実で私に会ったら、同じように、抱き締めて・・・・!」

 

「えっ・・・・?」

 

涙を流して笑みを浮かべるアリシアに、フェイトは少し戸惑うが、アリシアは光となって消えた。

 

「・・・・・・・・」

 

「フェイト・・・・」

 

フェイトの後ろに炎真が現れ、後ろからフェイトを抱き締めると、フェイトは炎真の手を握った。

 

「行こう」

 

「うん」

 

フェイトは『真・ソニックフォーム』へとセットアップすると、バルディッシュを大剣のザンバーフォームへと変形させ、炎真を拳に重力球を生み出し、上空へ投げる。

 

「行ってきます。私が今、いるべき場所へ! 疾風迅雷!!」

 

「超新星!!」

 

フェイトがザンバーフォームのバルディッシュを振り下ろし、炎真は重力球を爆裂させて、夢の世界を撃ち破った。

 

 

ーはやてsideー

 

眠りそうになるはやての耳に、聞き覚えのある声が響いた。

 

「・・・・君、いつまで寝ているんだい?」

 

「はっ!」

 

目を見開いたはやての目の前には、融合騎の少女の向こうに、学ランを羽織った黒髪の少年が立っていた。

 

ビキッ!!

 

その時、暗闇の世界に亀裂がはしったーーーー。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

全力全開の砲撃

今回で、少し後の展開のネタバレが・・・・。


ーはやてsideー

 

「・・・・君、いつまで寝ているんだい?」

 

「・・・・はっ!」

 

目を見開いたはやての目の前には、融合騎の少女の向こうに、学ランを羽織った黒髪の少年が立っていた。

 

ビキッ!!

 

その時、暗闇の世界に亀裂が走ったーーーー。

 

「・・・・・・・・」

 

「雲雀、さん・・・・?」

 

「っ!」

 

融合騎は、背後に現れた雲雀を見ると目を見開いて、その瞳から涙を流して思わず呟いた。

 

「・・・・主・・・・『アラウディ』・・・・!?」

 

 

ーツナsideー

 

「ふっ!」

 

「くっ!!」

 

ツナが拳を叩きつけるが、融合騎は障壁を展開して防ぎ、左腕に巻き付く蛇がツナを襲うが、間一髪で回避するツナ。

 

「シュートっ!!」

 

[アクセルシューター]

 

なのはが魔力弾を放つが、融合騎も魔力弾を放ちぶつかり合い、なのはが吹き飛び海面に落下しそうになる。

 

「ああっ・・・・!」

 

なのはが海面に叩きつけられる寸前、融合騎がなのはを蹴り飛ばし、なのはをバインドで縛り付け、隆起した岩に叩きつけまくる。

 

「ああっ!」

 

「なのはっ!」

 

「『カオスショット』っ!」

 

隆起した岩の1つに降りていたリボーンが、なのはの巻き付いたバインドの鎖を、『カオスショット』で撃ち抜き、ツナはなのはを抱える。

 

「・・・・・・・・」

 

融合騎は『闇の書』を出現させると、ページをパラパラと捲り、開かれたページから魔法を起動させると、上空の暗雲から黒い稲妻が迸り、そこから『穴』が開かれると、『何か』が降り立ってきた。

それは、漆黒で巨大な、螺旋状の形をした突撃槍だった。

 

「っ!」

 

「あれって・・・・!」

 

「コイツはやべぇな」

 

三人が戦慄したように呟くと、融合騎は突撃槍の柄を握るとーーーー。

なんとツナ達に向かって、巨大な突撃槍を投げ飛ばした。

 

「眠れっ!!!」

 

突撃槍はドリルのように回転しながら、ツナ達に向かった。

 

「っ! レイジングハート!」

 

[了解]

 

「『ディバインバスター』!!」

 

なのはが魔力砲を放つが、螺旋回転する突撃槍は魔力砲を削りながら突き進む。

 

「はっ!」

 

「なのは! 砲撃を止めろっ! ナッツ! 『攻撃形態』!!」

 

『Gau!』

 

なのはが驚愕した様相を浮かべ、ツナは攻撃形態のガントレットとなったナッツでそれを迎撃しようとし、突撃槍の切っ先にガントレットを叩き込んだ。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」

 

「ツナさんっ!!」

 

ガントレットと槍の激突で、盛大な火花が飛び散るが、ツナが押し負けそうになり、なのはが悲鳴を上げたその瞬間ーーーー。

 

「フェイトっ!」

 

「うんっ!」

 

『闇の書』の幻覚から脱出した炎真とフェイトが、突撃槍を横から斬り、重力を纏った拳で粉砕した。

粉砕された槍の残骸が海に落ちるのを見ると、リボーンを肩に乗せたツナとなのはが、戻ってきた炎真とフェイトと合流する。

 

「「「「「(コクン)」」」」」

 

言葉はいらないと、言わんばかりに頷きあった一同は、融合騎を見据える。

 

「くっ・・・・!」

 

融合騎は、そんな一同を見て歯噛みする。その時ーーーー。

 

「っ! ぐぅ!」

 

左腕に巻き付いた『ナハトヴァーム』がうねりだし、融合騎の身体に巻き付き初めた。

 

「リボーン・・・・」

 

「ああ。どうやら『最終段階』に入ったようだな」

 

 

ーはやてsideー

 

「思い出した。全部思い出した・・・・! 何があったか、なんでこんなことになってもうたか!」

 

「っ! どうか・・・・どうか再びお休みを、我が主」

 

目を覚ましたはやてに、融合騎は雲雀から目を離して、懇願するようにはやてを眠らせようとした。

 

「あと何分もしないうち、私は私の呪いで、あなたです殺してしまいます・・・・せめて心だけでも、幸せな、夢の中で・・・・!」

 

そんな融合騎を見て、はやては雲雀の方に視線を向けた。

 

「・・・・言った筈だよ。誰かが助けてくれる事を期待して、自分でどうにかしようとしない弱虫には興味ないってね。でも、君は只の弱虫じゃないって事は分かっているよ」

 

はやては雲雀の言葉に頷くと、融合騎の肩に手を置いて、優しい声で諭す。

 

「優しい気持ち、ありがとう。そやけど、それはあかん」

 

「え・・・・!」

 

「私らみんな、よう似てる。ずっと寂しい思い。悲しい思いしてきて、1人やったらできへん事ばっかりで・・・・」

 

「っ・・・・」

 

はやての言葉に、融合騎の少女が嗚咽を漏らす。

 

「そやけど、忘れたらあかん。あなたのマスターは今は私で、あなたは私の大事な子や」

 

「ですが・・・・。ナハトが止まりません!暴走も、もう・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

「(コクン)」

 

融合騎が涙を流すと、はやては雲雀に視線を向けると、雲雀は静かに首肯し、はやて目を瞑ると、足元に白い魔法陣が展開された。

 

「止まって」

 

はやてがそう命じると、空間が白い光に包まれた。

 

 

ーなのはsideー

 

「ウウ・・・・! アアッ・・・・!」

 

突如、融合騎の腕に巻き付いていたナハトヴァームが白い光を放ち、融合騎は顔を歪ませて悲鳴を上げた。

 

「アアーーーーーーーーーッ!」

 

《外で戦ってる方、すみません、協力してください!》

 

その時、全員の頭に、はやての念話が送られた。

 

「はやてちゃん?」

 

《この子に取りついている黒い塊を・・・・》

 

「ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

融合騎が悲鳴を上げると、なのは達の前に、空中ディスプレイが展開され、ノイズにまみれた画像にユーノの声が響いた。

 

《みんなッ!》

 

「ユーノ君!」

 

《フェイト、聞こえる?》

 

「アルフ!」

 

《十代目! リボーンさん! 聞こえますかッ!?》

 

「獄寺!」

 

「やっと来れるようだな?」

 

《炎真!》

 

「アーデル! みんな!」

 

画像が鮮明になると、空を飛行するユーノとアルフ。草壁が運転する輸送ヘリコプターに乗る獄寺達とアーデル達、守護者が映った。

 

《遅れて申し訳ありません。ディーノさん達がチャーターしてくれた輸送ヘリの起動に手間取りました!》

 

「草壁。輸送ヘリコプターの免許まで持っているのか?」

 

《並森風紀委員副委員長として当然です!》

 

中学生の風紀委員にそんな技能が必要なのかと言うツッコミは今は無しにする。

 

《融合状態で、主が意識を保っている! 今なら、防衛システムを融合騎から切り離せるかもしれない!》

 

「本当?」

 

「具体的に、どうすれば?」

 

《四人の最大砲撃で、その黒い塊をぶっ飛ばして! 全力全開! 手加減無し!!》

 

「さすがユーノ!」

 

「分かりやすい!」

 

[[全くです]]

 

なのはとフェイトの言葉に、デバイス達も同意し、なのはとフェイトは足元に魔法陣を展開した。

 

「オペレーションX<イクス>」

 

[了解しましたボス]

 

「ハァァァァァァァァァ・・・・!」

 

ツナは『X BURNER<イクスバーナー>』の発射体制に入り、炎真は『重力球体』を生み出し、高圧縮させる。

 

 

ーはやてsideー

 

「名前をあげる。『闇の書』とか、『呪われた魔導書』なんてもう呼ばせへん。私が言わせへん」

 

「ぁぁ・・・・」

 

「ずっと考えてた名前や。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール、『リインフォース』」

 

ビキビキビキビキビキビキ・・・・ガシャーーーーーーーーーンンッ!!

 

その瞬間、はやて達のいた空間が暗闇に包まれ、光のヒビが入り、砕け散ったーーーー。

 

 

ーツナsideー

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

悲鳴を上げて辺り構わず攻撃をする融合騎に、四人は砲口を向けた。

 

「N&F。中距離殲滅コンビネーション・・・・」

 

「ブラストカラミティー・・・・」

 

[ゲージシンメトリー、発射スタンバイ]

 

「『XBURNER AIR<イクスバーナー エア>』!!」

 

「超新星の閃光! 『スーペルノーヴァブリッツ』!!」

 

「「ファイアーーーーーーーー!!」」

 

ツナの放つ橙色の炎の柱が。

炎真の重力球体から一転集中で放たれる真紅の閃光が。

なのはとフェイトが放つ桃色と金色が混ざった魔力の砲撃が。

融合騎の身体を呑み込みーーーー。

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンッ!!

 

巨大な爆裂が、暗闇の海原に弾けたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、弾け散るナハトヴァームから、小さな声が響く。

 

『・・・・ん~~、ヌフフフ・・・・』

 

 

 




ー『超新星の閃光<スーペルノーヴァブリッツ>』ー

炎真専用のオリジナル技。
大地の重力で生み出した高重力球体を圧縮し、超新星の爆裂を重力操作で一転集中で砲撃する技。両手を使わない重力操作を身につけた炎真が生み出した技である。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夜天、目覚める

ーリンディsideー

 

アースラに戻っているリンディは、モニタに映し出された戦況を見据えながら、オペレーター達の報告に耳を傾けていた。

 

「防衛プログラム、管制融合騎との分離を確認!」

 

「よし!」

 

「まだ終わってはいないわ。『アルカンシェル』、発射待機」

 

「「はいっ!」」

 

リンディは、『対艦反応消滅砲 アルカンシェル』の発射準備を進めていた。

 

 

 

ークロノsideー

 

クロノは守護者達が乗るヘリコプターとともに現場に到着すると、新たに得たストレージデバイス、『デュランダル』を取り出した。

 

「デュランダル、少し力を借りる」

 

 

ー雲雀sideー

 

雲雀は真っ白い空間で、裸体を晒したはやてと、管制融合騎の少女を見据える。

 

「『夜天の魔導書』と、その『管制融合騎リインフォース』。この身の全て、御身をお守りいたします。ですが・・・・」

 

「ん・・・・?」

 

ボンヤリと目を開くはやてに、リインフォースはゆっくりと口を開く。

 

「『ナハトヴァール』の暴走は止まりません。切り離された膨大な力が、時機に暴れだします」

 

「んん・・・・まあ何とかしよ」

 

はやてが虚空に人差し指を立てると、そこから『闇の書』いや、『夜天の書』が現れた。

 

「わたし達だけやない。色んな人達が、力を貸してくれるから」

 

はやては雲雀に目を向けると、雲雀は仕方無さそうに目を閉じて頷いた。

 

「行こか、リインフォース」

 

「っ、・・・・はい! 我が主!」

 

そう言って光となろうとするリインフォースは、雲雀を見据える。

 

「貴方には面影がある。“かつての主”の面影が・・・・」

 

「生憎と、僕は“彼”とは違う」

 

「ですが、“あのお方”と同じ、誇り高い孤高の魂が貴方にも感じます。どうか、主の力になってください」

 

「・・・・ふん」

 

素っ気なく答える雲雀に笑みを浮かべたリインフォースは、そのまま消えるーーーー。

しかし次の瞬間、はやての身体に白い魔力光が集まっていった。

 

「雲雀さん・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

はやてが片方の手を出すと、雲雀は渋々といった態度で、その手を握り、はやても一瞬苦笑しながらキリッと顔を引き締め、『夜天の書』を起動させた。

 

「管理者権限、発動。リンカーコア復帰。『守護騎士システム』、破損回帰」

 

はやては独りでにパラパラと捲れ開かれた『夜天の書』のページを綴ると、はやての周りに、桃、赤、緑、青のリンカーコアと、頭上に紫色のリンカーコアが現れた。

 

「おいで、わたしの騎士達・・・・!」

 

すると、二人のいる空間が光に包まれーーーー。

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナ達は、海面に現れた巨大な“穴”から這い出ようとする異形を見据えていた。

 

「・・・・来たぞ」

 

リボーンの言葉に、一同が空を見ると、紫と赤と緑と青の魔法陣が、白い光を中心に展開され、白い光が柱のように天と海を貫いた。

そして光が収まるとそこにはーーーー。

 

白い光の玉を中心に展開された紫の魔法陣の上に立つは、『烈火の将 シグナム』。

 

赤の魔法陣の上に立つ、『鉄槌の騎士 ヴィータ』。

 

緑の魔法陣の上に立つ、『湖の騎士 シャマル』。

 

青の魔法陣の上に立つ、『盾の守護獣 ザフィーラ』。

 

主を守護する騎士達が、復活した。

 

そして、中心の光の玉が砕けると、融合騎と同じバリアジャケットを着て、十字架型のアームドデバイス『騎士杖 シュベルトクロイツ』を持ち、傍らに小さな光と『夜天の書』があり、シュベルトクロイツを握っていないもう片方の手を紫色の小さな雲、『雲針ネズミのロール』を足場に立つ雲雀恭弥と握った。八神はやての姿が現れた。

 

「はやてちゃん!」

 

「雲雀・・・・!」

 

なのはとツナが二人の名を叫び、はやてはにこやかな笑みを浮かべ、雲雀は「ムッス~!」とした顔となって、はやての手を離して、足場の雲を作って離れる。

雲雀が離れると、はやてはシュベルトクロイツを天に翳す。

 

「夜天の光に祝福を! リインフォース、ユニゾン・イン!」

 

すると、はやての傍らにあった小さな光がはやての身体に入り込むと、はやてのバリアジャケットに、白い上着と黒い籠手、金の装飾のスカート、白いベレー帽、そして背中と腰に黒い羽が6枚展開されると、なんとはやての茶色い髪が、プラチナブロンドとなり、瞳の色も青空のように澄んだ色へと変わった。

 

「・・・・・・・・」

 

「「「「・・・・っ!」」」」

 

岩柱に降り立った八神家一同。守護騎士達は変貌した主に驚く。

そんな騎士達の中で、ヴィータがはやてに近づく。

 

「はやて・・・・」

 

「んん・・・・」

 

泣きそうな顔たなるヴィータに、はやてはにこやかに頷いた。

 

「すみません・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「あの、はやてちゃん・・・・私達・・・・」

 

シグナムとザフィーラ、そしてシャマルも、主に内緒で犯してきた事を謝罪しようとするが、はやてはーーーー。

 

「ええよ。みんな分かっとる。リインフォースが教えたくれた。まぁ細かい事は後や。とりあえず今は・・・・おかえり、みんな」

 

はやては慈愛に満ちた笑顔で両手を広げる。

 

「あっ・・・・うっ、うう・・・・ううっ、うっ、うわぁぁぁぁぁぁ! はやてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

泣きじゃくりながら抱きつくヴィータを、はやては優しく受け止め、シグナム達も笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

すると、階段のような形となったロールの雲を伝って、岩柱に雲雀がやって来ると、ザフィーラとシャマルがソッと頭を下げ、シグナムも複雑そうな顔で頭を下げた。

続いて、ツナ達も降りてきた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「アハッ!」

 

はやてがそちらに顔を向けると、ツナとなのはは笑みを浮かべ、リボーンと炎真とフェイトも笑みを浮かべた。

 

「すまない! 水を差してしまうんだが!」

 

上空からクロノの声が聞こえ、一同がそちらを向くと、クロノとユーノとアルフ、そした草壁が操縦する守護者達を乗せたヘリコプターがやって来た。

 

「時空監理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間が無いので簡潔に、事態を確認したい。あそこの黒い淀み」

 

クロノが指差したのは、海面の穴から出ている触手だった。

 

「あれは、『闇の書』の防衛プログラムで、あと数分で暴走する、間違いないか?」

 

「うん。『自動防衛システム・ナハトヴァール』」

 

『暴走は周辺の物質を侵食し、ナハトの一部にしていく。臨界点が訪れなければ、この星の1つくらいは、呑み込んでしまう可能性がある』

 

はやての言葉を、小さい姿となったリインフォースが捕捉すると、一同は驚愕したような顔となる。

 

「停止のプランは用意してある。後は、こちらで何とかする。・・・・と言いたい所だが」

 

クロノは待機状態のデュランダルを起動させると、デュランダルは杖の形態となり、クロノの四方に剣が展開され、デュランダルを岩柱にドンっと、突き立てると、強烈な冷気が漏れた。

 

「協力者は多いほど良い。守護騎士の皆は『闇の書』の呪いを終わらせるため。なのはとフェイト達はこの街と、この世界を守るため。ボンゴレは『初代ファミリーが残した因縁』に決着を着けるため。協力してもらえるか?」

 

事前にリボーンから『因縁』について聞かされていたクロノがそう言うと、一同は了承するように頷き、リボーンが一同に向かって口を開く。

 

「良し。話は決まったな。それじゃ全員、『闇の書』の呪いと因縁を、死ぬ気で終わらせるぞ!」

 

『おうっ!』

 

『うんっ!』

 

リボーンの言葉に、全員が力強く声をあげた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決戦、来るⅠ

今回の話で、シモンファミリーにオリ技を書きます。


ーツナsideー

 

隆起した岩柱の上に立っている守護騎士達にユーノにアルフ、ヘリコプターから降りてきたボンゴレ&シモンの守護者達。

ツナとリボーンと炎真、なのはとフェイトとはやても近くの岩柱に乗る。が、群れるのが大っ嫌いな雲雀は草壁が運転するヘリコプターの中に戻っていった。

 

「あの雲雀さん! 手伝ってくれないんですか!?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「あの・・・・聞いてますか?」

 

なのはとフェイトが話しかけるが、雲雀はまったく相手にしなかった。

 

「なのはちゃん。フェイトちゃん。雲雀さんはあれでエエから、それよりも今は・・・・」

 

雲雀の我関せずの態度に戸惑う二人にはやてがそう言うと、海面に展開された黒い穴から現れる『ナハトヴァール』の触手のような異形を見据えると、なのはとフェイトを気持ちを切り換える。

 

「先ず、ナハトが展開する『多重防御』をみんなで破壊」

 

「本体にダメージを与えて、コアを露出」

 

「それから、ユーノ君たちの強制転移で、軌道上のアースラ前に運ぶ!」

 

「んで、強力な兵器『アルカンシェル』で砲撃して蒸発させるか。中々ハードだな」

 

《ええ。・・・・『アルカンシェル』、チャージ開始!》

 

通信越しから、リンディの声が響いた。

すると、はやてが何かに気づいたかのようにツナ達に声をかけた。

 

「あっ・・・・。なのはちゃん、フェイトちゃん、ツナさん、炎真さん、リボーン君」

 

「「「「「ん?」」」」」

 

「シャマル!」

 

「はい。皆さんを治療ですね」

 

呼ばれたシャマルがはやて達に近づくと、ニッコリと微笑みを浮かべて、治療魔法を展開させた。

 

「クラールヴィント、本領発揮よ」

 

[はい]

 

「風よ。癒しの恵みを運んで・・・・」

 

シャマルが魔法を発動させると、若草色の光がツナ達の身体を包み込み、若草のような光が周囲に舞うとツナ達の身体の傷が、なのはとフェイトもBJの損傷が治療されていった。

 

「『湖の騎士シャマル』と『風のリング・クラールヴィント』。癒しと補助が本領です♪」

 

「すごい・・・・!」

 

「ありがとうございます!」

 

『(・・・・・・・・同じ名前だけど、こっちのシャマル(先生)とは天と地ほどの違いがあるな・・・・)』

 

女神のように美しい微笑みを見せるシャマルになのはとフェイトがお礼を言うが、ボンゴレ&シモン連盟は、“シャマルと同じ名前の闇医者”とまったく正反対のシャマルに、ある種の感動を感じていた。

 

「ツナ! そろそろナハトが動くぜ!」

 

「ディーノ!」

 

「えっ? デ、ディーノさん?!」

 

声がした方に目を向けると、なんと雲雀の先生(雲雀は非公認)のディーノが、鬣がオレンジ色の炎の純白の馬、いや、背中にオレンジ色の炎の翼を展開させた伝馬、『天馬のスクーデリア』に乗ったディーノが現れた。

 

「積もる話は後回しにしようぜはやて」

 

「は、はい!」

 

「ディーノも来てくれたのか?」

 

「当たり前だろう? 可愛い妹分とその家族が気張ってんだからな。ロマーリオも来てるぜ!」

 

ディーノが親指で指差した方に目を向けると、草壁が運転するヘリコプターのパイロット席に草壁の隣で操縦するロマーリオが、草壁と一緒に親指を立てていた。

 

「よし。コア露出までのサポートを頼むぞ。了平。紅葉。ユーノ。ザフィーラ。アルフ」

 

「極限任せろ!」

 

「結局心得た!」

 

「はい」

 

「ああ」

 

「任せな!」

 

Fシューズを付けた了平と『森のシモンリング』を起動させた紅葉、ユーノとザフィーラとアルフが触手の周りに飛翔する。

 

ーーーードォンッ!!

 

すると突然、穴の周囲の海面から、黒いトゲのような物が伸びると、穴の中から闇色のエネルギー体が膨張するように出てくると、弾け飛び、その中から出現した。

 

「始まる・・・・!」

 

「『夜天の魔導書』を、呪われた『闇の書』と呼ばせたプログラム、ナハトヴァールの侵食暴走体、『闇の書の闇』・・・・」

 

その中から出てきたのは、

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

背中に円形の光輪を背負ったロボットのような上半身に、過半数はメカの怪物で、その下に無数の触手がウネウネと動いたおぞましい形態の怪物だった。

触手はウネリながら了平達に襲い掛かってきた。

 

「行くぞ我流! 形態変形<カンビオフォルマ>!!」

 

『ガァアアッ!!』

 

了平の『晴れのバングルVer.X』から、鎧を付けた『晴れカンガルーの我流』を呼び出すと、我流は煌めいた光を放つ黄色い炎となって、了平と一体化すると、了平の姿がヘッドギアにグローブを装着したボクシングスタイルへとなった。

 

「『ケイジング・サークル』!」

 

「『チェーン・バインド』!」

 

「『草のロープ<コールド・ブ・エルバ>』!!」

 

ユーノとアルフが拘束魔法を展開させ、紅葉は若草色の葉っぱの形をした炎を大量に生み出し、ナハトヴァールの身体を拘束した。

 

「行くぞ! 笹川了平!」

 

「こいザフィーラ!!」

 

その間になんと、ザフィーラが了平に向けて何発もの拳を叩きつけた。

その度に了平の左腕に巻かれたバングルに炎が灯り、それが日輪のように輝いた。

 

「よし! 囲え、『鋼の楔』!」

 

了平の状態に頷いたザフィーラは、ナハトヴァールに向けて白い楔を打ち込んだ。

 

『アアーー!!』

 

ナハトヴァールが悲鳴を上げると、上空に飛んだ了平が、ナハトヴァールの頭上に向けて、日輪のように輝く拳を振り下ろした。

 

「くらえっ! 極限<マキシマム>サンシャインストレートっっっ!!!!」

 

『アアァアアアアアアアアアア!!!』

 

その場に太陽が輝いたような光が照らし、ナハトヴァールは海面に倒れた。

 

『・・・・アアーーーーー!!!!』

 

ナハトヴァールは起き上がると、触手から黒い魔力砲を放って拘束魔法を破壊し、了平達は引いた。

 

「先陣突破! なのはちゃん! ヴィータちゃん! 獄寺くん! 大山くん!」

 

その瞬間にツナ達も飛び出し、なのはとヴィータ、獄寺と『山のシモンリング』を起動させ戦闘形態となったらうじが前に出た。

 

「おいらうじ! アホ牛の分まで働いて貰うからな!」

 

「分かったんだな! ぬぅぉおおおおおおっ!!」

 

らうじは『山の炎』の『特性 鉱物』を使用し、海底の地面や隆起した岩柱から鉱物を集めると、クワガタのような角を作り出した。

 

「らうじさん、スゴ~い・・・・!」

 

「おい! ボケてる場合じゃねぇぞ・・・・“高町なのは”!/////」

 

「あ、うん!」

 

照れ臭そうに言ったヴィータに、なのはは嬉しそうに頷いた。

 

「やるぞ! アイゼン!」

 

[ギガントシュラーク]

 

掲げたアイゼンが薬莢を射出すると、その形を巨大なハンマーとなって、らうじと一緒に突撃する。

 

「狙うぞ高町!」

 

「はい! アクセルシューター・バニシングシフト!」

 

[バニシングシフト]

 

獄寺がコンタクトレンズ型の照準機で、なのははレイジングハートが狙いをさだめた。

 

「果てろ! 『ロケットボム・Var.X』!!」

 

「シュート!!」

 

赤い嵐の炎を噴射させたダイナマイトと、桃色の魔力弾が、ヴィータとらうじにの進行方向にある触手を撃ち抜き、爆発していき、ヴィータとらうじはナハトヴァールの上に到達し、ヴィータは足元に魔法陣の足場を作り、らうじは紅葉が遠隔操作している森の炎を足場にする。

 

「行くぞデカいの!!」

 

「了解だヴィータちゃん!!」

 

「轟天爆砕!! 『ギガントシュラーク』!!」

 

「『山脈の牙<ザンナ・デラ・モンターニヤ>』!!」

 

ナハトヴァール級に巨大化させたグラーフアイゼンと鉱物で作られた牙が、ナハトヴァールの障壁を次々と粉砕していった。

 

「シグナム! フェイトちゃん! 山本くん! アーデルちゃん! 水野くん!」

 

すかさずシャマルが名を叫ぶと、山本達が飛び出し、触手の攻撃を回避しながら接近した。

 

「行くぞテスタロッサ」

 

「はいシグナム」

 

「山本! 薫!」

 

「おうよ!」

 

「ああ!」

 

「ハァアアアアッ!!」

 

「ハーーーッ!!」

 

山本と薫が左右に別れ、『氷河の炎』で海面を凍らせたアーデル、すかさずフェイトが魔力刃を飛ばし、ナハトヴァールに当てるとシグナムと対となる方向に回り込み、山本と薫も左右に回り、ナハトヴァールを四方から囲んだ。

 

[ボーゲンフォルム]

 

シグナムが『レヴァンティン』の形状を弓矢に変えて魔力光の弦を引き絞り、フェイトを大剣形態で構え、山本も二刀流を構えて『雨燕の小次郎』が山本の全面で『雨の炎』を展開すし、薫も『川の炎』を纏ったドリルのような鎧を付けた左腕が螺旋回転する。

 

「駆けよ、隼!」

 

[シュツルムファルケン]

 

「貫け、雷神!」

 

[ザンバー]

 

「『時雨蒼燕流 特式十の型 燕特攻<スコントロ・ディ・ローンディネ>』!!」

 

「『川の螺旋<スピラーレ・デル・フィウーメ>』!!」

 

烈火の炎を纏った隼が、金色の雷撃が、雨の燕が、水の螺旋が、最後の防御障壁を粉砕した。

が、ナハトヴァールは宙に浮きながら、再び防御障壁を展開させた。

 

「まだだ! 行くぞザフィーラ!!」

 

「おおおっ!!」

 

「『極限<マキシマム>サンシャインイングラム』!!」

 

「ツアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

分身した了平の三つの拳とザフィーラの渾身の拳が、ナハトヴァールの障壁を砕いたーーーー。




シモンファミリーの戦闘形態は、飛行能力を持っている設定にしました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決戦、来るⅡ

明けましておめでとうございます。『かてきょーリリカルREBORN』をよろしくお願いします。
今年中にA”s編を終えたいですね。
そして、今回でオリジナルが入ります。


了平とザフィーラの渾身の一撃により、ナハトヴァールを粉砕した。

 

『アアアアア!!』

 

ナハトヴァールが黒い魔力砲を二人に放つが回避した。

 

「ディーノ!!」

 

「応! 行くぜスクーデリア!!」

 

『ヒヒィーン!!』

 

ディーノが騎乗するスクーデリアが、ナハトヴァールの触手を大空の炎の翼で切り裂く。

 

「沢田くん! はやてちゃん!」

 

シャマルが上空で、肩にナッツを乗せたツナと魔法陣を展開しているはやてに声を上げる。

 

「ナッツ!」

 

『ガゥッ!!』

 

「彼方より来たれ宿り木の枝ーーーー」

 

『銀月の槍となりて打ち貫けーーーー』

 

ツナはナッツを全面に出させ、はやては融合しているリインフォースと呪文を紡ぐと、ナハトヴァールの頭上に黒い雲と白い三角形の魔法陣を中心に、白い光が幾つも現れる。

 

『「石化の槍、『ミストルティン』!!」』

 

『Gaaaaaaooooooooooooooooooooo!!』

 

白い光がナハトヴァールに降り注ぎ突き刺さり、ナッツの『調和の雄叫び』も浴びせると、刺さった箇所と浴びた箇所が石と化していった。

 

『アアアーーーー! アアーーーー! アァ・・・・グアーーーー!!』

 

「古里くん!」

 

徐々に石と化していくナハトヴァールを見据えて、今度は炎真を呼んだ。

 

「『大地の重力』!!」

 

重力に押されたナハトヴァールは海面に押し戻されるがーーーー。

 

『アアアアアアアアアアーーーー!!!』

 

すぐに石化を解いて重力から逃れようともがく。

 

《クロノくん! やっちゃえ!!》

 

「はぁ・・・・っ!」

 

エイミィからの檄で、魔法を展開させていたクロノが白い息を吐き、デュランダルを掲げて魔法を発動させる。

 

「凍てつけ!!」

 

デュランダルから青白い凍結魔法の砲撃が放たれると、その軌跡で海面が凍てつき、ナハトヴァールに当たると、その巨体を凍りつかせた。

 

『グァア・・・・・・・・!!』

 

「ツナ! なのは! 炎真! フェイト! はやて!」

 

ナハトヴァールが氷結するのを、ヘリから見たリボーンが、上空にいる五人に目を向けるとーーーー。

 

「ナッツ、形態変化<カンビオ・フォルマ>!」

 

『ガァオウウウウ!!』

 

ナッツの身体が鮮やかな橙色の大空の炎に包まれると、ツナのガントレットに融合し、噴射口のような手甲が装備され、両手をクロスに交差させて突き出す。

 

「オペレーション・XX<ダブルイクス>」

 

[了解シマシタ、ボス。XXBURNER<ダブルイクス バーナー>発射シークエンスに入ります]

 

ツナの耳に付けているが手甲から炎を噴射させると、炎真は『大地の重力』によって生み出した黒い重力球を圧縮させる。

 

「はぁああああああああああああああ!!」

 

ツナと炎真が最強技を放とうとする横で、なのはとフェイトとはやても、それぞれの最強技を放とうとしていた。

 

[スターライト・ブレイカー]

 

「全力全開! スターライト・・・・!」

 

なのはが周囲の魔力をレイジング・ハートに収束させるーーーー。

 

[プラズマ・ザンバー]

 

「雷光一閃、プラズマ・ザンバー・・・・」

 

フェイトが雷雲から落ちた稲妻を、ザンバーモードのバルディッシュに纏わせーーーー。

 

「・・・・・・・・ゴメンな、おやすみな・・・・っ!」

 

はやてはナハトヴァールを哀れむように謝意を呟くと、再び気を引き締めて、シュバルトクロイツを掲げると、白と黒の魔力が集まっていきーーーー。

 

「響け終焉の笛、ラグナロク・・・・!」

 

そして、五人の砲撃が放たれるーーーー。

 

[ゲージ、ダブルシンメトリー。発射スタンバイ]

 

「『XXBURNER AIR<ダブルイクス バーナーエア>』!!」

 

「『超新星の閃光<スーペルノヴァブリッツ>』!!」

 

「「「ブレイカー!!」」」

 

ナッツの姿をした橙色の炎がーーーー。

砕けた重力球から放たれる真紅の炎がーーーー。

桃色と金色と白色の魔法の光がーーーー。

 

漆黒の夜の海を目映い輝きで包み込んだーーーー。

 

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン!!!

 

『グァアアアア・・・・!!!』

 

ナハトヴァールは五つの光に包まれ、その身体が徐々に砕けていき、周囲の岩柱を砕けていく。

飛行能力のあるメンバーは空に退避し、他のメンバーは草壁とロマーリオが運転するヘリコプターに乗り込んでいた。

 

「つかまえた!!」

 

シャマルがそう言うと、崩れるナハトヴァールから、『コア』を転送魔法で摘出すると、ユーノとアルフも手を出し、『コア』を成層圏にいる『アルカンシェル』の発射準備を整えたアースラへと転送させた。

と、その時ーーーーツナの『超直感』が警鐘を鳴らした。

 

「っ! 待てリンディ! それはーーーー」

 

《『アルカンシェル』、発射!!》

 

が、ツナの声が届くよりも早く、『アルカンシェル』が『ナハトヴァールのコア』を包んだーーーー。

そして・・・・『コア』は消滅したーーーー。

 

「状況、終了だ」

 

エイミィから、『コア』の消滅の報告を聞いたクロノが、全員にそう言い、なのは達は顔を綻ばせようとした。

しかしーーーー。

 

「違う・・・・」

 

ツナは先ほどまで『ナハトヴァール』がいた地点を睨んで、拳を構えた。イヤ、ツナだけではない、リボーンも炎真もディーノも、守護者達も武装を解除しないでその地点を睨んだ。

 

「ツナさん・・・・?」

 

「どうしたの?」

 

ツナ達の並々ならぬ雰囲気に、なのは達も首を傾げたその瞬間ーーーー。

 

ーーーーザパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンン・・・・。

 

なんと、海面が盛り上がり、水柱を上げて現れたのはーーーー異形の肉塊となった『ナハトヴァール』だった。

 

「ば、バカな!? ナハトヴァールは今さっき・・・・!」

 

クロノはもちろん、なのは達も驚愕した表情を浮かべる。先ほど転送させ、アースラの『アルカンシェル』によって消滅させた筈のナハトヴァールが、今目の前に出現したのだから当然だ。おそらくこの状況をモニタリングしているエイミィやリンディ達も同じ表情をしている。

 

『グゥゥゥゥ・・・・グ、グフフ、ヌフフフフフ・・・・!』

 

再生を始めているナハトヴァールから、唸り声を上げていたが、徐々にくぐもった笑い声を上げていた。

 

「ナハトヴァールが笑ってる?」

 

なのはの言うとおり、“ナハトヴァールが笑っている”。

 

『ヌフフフ、あのテイドの“幻ジュツで、作られたニセ物”に欺かれるトハ、ジ空カン理、局とは随ブンと、杜サンな組織のヨウですネ・・・・』

 

「ナハトヴァールが、喋った?」

 

≪いえ我が主、アレはナハトではありません!≫

 

はやての疑問を、融合しているリインフォースが否定した。そしてヘリコプターから飛び降りてハングライダー(レオンが変身)で飛び、ツナの肩に乗り移ったリボーンがナハトヴァール?に向けて声を発した。

 

「なるほどな。さっきツナ達の砲撃を隠れ蓑にして、幻術で造り上げた偽物を転送させたって訳か。強力な幻術は人間の五感だけでなく、デバイスやアースラのシステムですら欺く事ができる。これほどの幻術使いなんて、世界でも10本の指に入るほどの手練れだな」

 

『ヌフフ・・・・まさカ、ボンゴレ、リングいや、ボンゴレギアでしたカ? それニ守護キ士共ガ接触した事により、かつて『闇の書』に施した呪印、いえシステムが起動できました」

 

グチュッ、グチュッ・・・・と、おぞましい巨大な肉塊だったナハトヴァール?が潰れるような音を立てながら縮小していき、遂に人間位の大きさとなり、さらにくぐもった声が良く通る男性の声となり、小さくなった肉塊から靴と服を着た足元が見え、徐々に人の形となっていった。

 

「アンタ、一体誰や・・・・?」

 

はやてが戦慄するように問いかけると、ナハトヴァール?は人間の胴体となり、ついには完全な人間の姿へと変貌した。

ディープブルーの髪をギザギザ2つに後頭部にクセ毛の髪型、顔つきは非常に整っており、服装は中世ヨーロッパの貴族のような衣装を着用し、あたかも貴族か王族のような気品があるが、その眼には恐ろしいまでの冷酷な光が宿り、背中に冷や汗が止まらなかった。

なのはもフェイトもはやてもユーノもアルフもーーーー。

執務官として次元犯罪者と相対してきたクロノやリンディ達もーーーー。

数々の戦場を駆け抜けてきた守護騎士達もーーーー。

蛇に睨まれた蛙のように身体が硬直してしまった。

いや、守護騎士達は何故か、その瞳から、涙が零れていた。

 

「ヌフフフフフフ。今の『闇の書』、いや『夜天の書』の主ですか? これはこれははじめまして。私の名はーーーー『D<デイモン>・スペード』。初代ボンゴレファミリー霧の守護者だった男です」

 

長い時を経て、夜天に眠っていた『悪魔<デイモン>』が、甦った。

 

 

 




はい。分かっていた人達には解っていたと思いますが、D・スペード登場です!
初代ファミリーと『夜天の書』の関係も段々分かってきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏切りの霧

『D<デイモン>・スペード』。

ツナの先祖である『ボンゴレ初代<プリーモ>・ジョット』を守護する『霧の守護者』。

元々はイタリア貴族でそれなりの地位を持った人物だったが、生まれや家柄を自慢し、自分の地位や権力だけしか興味が無く、安い自尊心しか持っていない堕落した貴族社会に嫌気を指していたが、『とある公爵令嬢』と出逢い恋に落ち、その令嬢の紹介でプリーモと出会った。

貧しい家で生まれながらも、生まれ育った町やそこに住む人々を心から愛していたプリーモは、幼なじみであり後の『初代嵐の守護者・G』と共に、自警団を設立しようとしていた。

出自に捕らわれず、人々を守ろうとするプリーモの清廉な人柄と意気投合したD・スペードも、プリーモの守護者となった。

しかし、突如としてD・スペードはプリーモを裏切り、炎真達の先祖・『シモン・コザァート』を謀殺しようとし、プリーモをボンゴレから排除しようとした。

その目論見が潰えるが、プリーモは自分のせいで争いが起こるなら、潔くボンゴレボスの座から降り、日本へと渡り『沢田家康』と言う名前となり、その血筋は沢田綱吉へと受け継がれた。

だが、D・スペードはプリーモを追放した後、2代目のボンゴレボスの霧の守護者として残り、それからボンゴレは自警団から、世界最強最悪のマフィアとして君臨した。

 

「とまぁ、これがD・スペードと言う裏切り者の守護者のプロフィールだな」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

リボーンがD・スペードの事を説明するが、なのはも、フェイトも、はやても、ユーノも、アルフも、クロノも、マトモに返答出来ず、恐怖か畏怖か、突如現れたD・スペードの迫力に、その場から倒れないように踏ん張るだけで精一杯だった。

そしてどうにか、はやてが重い口を開く。

 

「で、でもリボーンくん、初代って事は、D・スペードさんって、もうかなりのおじいちゃんって事やろ? あの人、見るからに20代くらいやし、それに、なんでナハトヴァールから現れたんや・・・・?」

 

「・・・・ヤツのボンゴレにかける執念は生半可じゃねえ、それこそ『術者としての禁忌』に触れる程にな」

 

「『術者としての禁忌』?」

 

「ああ。奴は、『肉体を捨て、魂だけとなって、他人の身体に乗り移ると言う術』を会得したんだ」

 

『っ!!』

 

「ば、馬鹿な! 肉体を捨てて魂だけの状態となり、他者の身体に乗り移るだなんて、そんな魔法、管理局にも存在しないぞ!」

 

クロノが恐怖に震える身体にムチを打つように、声高に叫ぶが仕方ない。

魂の状態になるだなんて、いくら人間の身体からフェレットに変身するミッドチルダの魔法でも見たことも聞いたこともない。それが管理外世界に存在していたとは、思いもしなかったからだ。

 

「だが、実際にヤツはそうして歴代のボンゴレボス達を影から常に監視し、遂にツナの代になって、炎真達シモンファミリーを利用し、ツナ達ボンゴレ十代目ファミリーを殲滅しようとしたんだぞ」

 

「炎真達が?」

 

「そう。ヤツは僕達シモンファミリーの初代ボス、『シモン・コザァート』を謀殺しようとし、僕達シモンファミリーをマフィア界で迫害を受けるように仕向け、シモン・コザァートは初代ボンゴレに裏切られて死んだと言う嘘を僕達に吹き込み、僕達にボンゴレファミリーへの憎しみを抱かせた。そして僕の両親と妹を惨殺し、それを行ったのは、“ツナ君のお父さんだと言って僕を騙し、ツナ君を憎むように仕向けたんだ”・・・・! 」

 

「っ!!」

 

『っ!!』

 

炎真の言葉にフェイトが、いや、フェイトだけでなくなのは達も、目の前にいるD・スペードに怒りの視線を向ける。

炎真達の先祖を謀殺し、炎真達シモンファミリーが迫害されるようにし、さらに炎真の家族を殺し、ツナの父親にその罪をなすり付け、ツナ達と戦うように仕向けた。

 

「なんで・・・・!」

 

なのはが怒りで恐怖を振り払って、スペードを睨ち、呼吸を深くし・・・・。

 

「なんでそんな事をしたの!? ツナさんのご先祖様や仲間達を裏切って! 炎真さんのご先祖様を殺そうとして! 炎真さん達に辛い思いをさせて! 炎真さんの家族まで殺して! ツナさん達と戦わせて、なんでそんな事をしたの!? なんで!!」

 

怒りを全てを吐き出すように叫ぶなのは。

しかし、D・スペードはなのはの怒りなど何処吹く風と言わんばかりに悠然と特徴的な含み笑いを上げて口を開く。

 

「ヌフフフフ・・・・決まってますよ。シモン・コザァートの存在は何かと目障りになりつつありましたからね。大空の七属性の亜種とも呼べる大地の七属性を有するシモンファミリーは、もしも最強最悪のマフィア、ボンゴレファミリーにとっての不穏分子、沢田綱吉達のような存在が現れた時のカウンターとして、存在して貰ったんですよ。古里炎真の家族に関しては・・・・“私の知った事ではありませんね”」

 

「っ、ふざけ・・・・!」

 

「フェイト」

 

「炎真・・・・!」

 

D・スペードに叫ぼうとするが、炎真が肩を掴んで押さえる。

 

「あれは、“D・スペードだけど、D・スペードじゃない”」

 

「えっ?」

 

「D・スペードは、“ツナ君に倒されたんだ”」

 

炎真の一言に、全員が驚いたように顔をする。

 

「な、何言ってんだよ炎真。ツナが倒したって、現にアイツは・・・・」

 

アルフが震える声でD・スペードを指差すが、野生の本能か、D・スペードの威圧感にしっぽを脚の間に巻き込み、小刻みに震えながらユーノの背中に隠れていた。

 

「ヌフフフフフフフフフフフフ」

 

D・スペードが特徴的な笑い声を上げる。

 

「なるほど。“私の本体”は倒されたのですか、なんとも、不穏分子に倒されるとは、“本体”なのに情けない限りですね」

 

「“本体”・・・・?」

 

「ええそうですよ。八神はやてさん、ですね。私はD・スペードであって、D・スペードではありません」

 

「どういう、事なの?」

 

D・スペードは笑みを浮かべながら淡々と話した。

 

「『術者としての禁術』によって、私の“本体”は『魂の状態となる禁術』の他に、『自分の魂の一部を切り離す禁術』も会得したのですよ」

 

『っ!』

 

D・スペードの言った言葉に、今度はなのは達だけでなく、ツナ達も驚いたように身体を震わせる。

『魂を切り離す禁術』。そんな人道に反した術が存在する事に驚愕したのだ。

そんな一同(通信越しで聞いていたリンディ達も含む)の中で、リボーンだけが冷静にD・スペードを見据えて口を開く。

 

「なるほどな。その禁術を用いて、お前の本体は『闇の書』、いや、『夜天の魔導書』に自分の魂を潜ませていたと言う訳か?」

 

「ええ。そうですよアルコバレーノ、いいえ、“元”アルコバレーノですかね」

 

「で、でも、何で『夜天の魔導書』にアンタの魂が入ってたんや!」

 

震える声ではやてが聞くと。

 

「ヌフフフフ・・・・。簡単ですよ。ねえ? 守護騎士ども?」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

D・スペードが守護騎士達に目を向けると、四人は愕然とした面持ちでD・スペードを見ていた。

 

「オヤオヤ。久しぶりに会ったと言うのに、話になりませんねぇ」

 

「み、みんな、どないしたん?」

 

「わ、わかり、ません・・・・」

 

「だ、だけど・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

シグナムもヴィータもシャマルもザフィーラも、D・スペードを見て、震えていた。

 

『私が話します。主』

 

「っ! リインフォース?」

 

はやての身体から、リインフォースが現れる。

D・スペードはリインフォースを見て目を細め、リインフォースは悲しい眼差しでD・スペードを見る。

 

「お久しぶりですね」

 

「まさか、このような禁術を用いて、『夜天の魔導書』に潜んでいたとはな・・・・」

 

「リインフォース、一体どういう事なん?」

 

「・・・・・・・・かつて、我々『夜天の魔導書』は、初代ボンゴレファミリーと繋がりがあったのです」

 

「なんやて・・・・!」

 

「主はやての前、クライド・ハラオウンの前、『闇の書』の主となった者・・・・その名は、『アラウディ』。“初代ボンゴレファミリー、『雲の守護者』だったお方です”!」

 

『っっ!!?』

 

リインフォースが告げた名前に、なのは達は驚愕した。

D・スペードは笑みを浮かべたまま、掌から『金時計』を取り出すと、『金時計』が光輝く。

 

「では、少しお見せしましょうか。守護騎士どもに封印されし、ボンゴレとの記憶を・・・・!」

 

『金時計』から幾つもの光が伸び、ツナ達や炎真達、なのは達の額に当たると、一同の脳裏に『過去の記録』が浮かび上がった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護騎士達の過去

今回でボンゴレと守護騎士達の過去が。


『初代雲の守護者・アラウディ』。

 

現在はツナの父・家光がボスを務める『ボンゴレ門外顧問・CEDEF』の創設者であり、某国の諜報機関のトップであった人物。

群れる事を嫌い、常に独断で行動し、あらゆる犯罪者を逮捕してきた凄腕の捜査官であり。自らの掲げる正義がプリーモと重なった時に手を貸し、誰よりも敵を倒し、誰よりも味方に優しかった人物。

そんなアラウディはイタリアのとある領地で『謎の失踪事件』が多発しているのを知った。

プリーモの自警団からの依頼で、その領地を調べてほしいと頼まれた。プリーモ達ではその領地を修める領主が頑なにその事を認めようとせず、領地に入る事ができず調査できなかったが、独自に調査をしたアラウディはある事実を掴んだ。

その領主が裏では『黒魔術』の収集家で研究もしており、領民を拉致し、魔術の研究と称して生け贄や人体実験をしている事を知った。

それを知ったアラウディはその領主を叩きのめし、監禁されていた領民達を救い、プリーモの自警団にその事を報告し、その領主は捕らえられた。

アラウディは証拠物として黒魔術の証拠品を押収する際、『一冊の鎖が巻き付いた本』を手に取った。

その時、本が光だし、その本から五人の男女が現れた。

『烈火の将シグナム』。

『鉄槌の騎士ヴィータ』。

『湖の騎士シャマル』。

『盾の守護獣ザフィーラ』。

そして、『融合管制騎の少女』。

五人はアラウディに、手に取った本こそ、『夜天の魔導書』と呼ばれる本である事を説明し、アラウディを『主』として忠誠を誓う。がーーーー。

 

【君達の助けは必要無いよ】

 

【【【【【えっっ!!!?】】】】】

 

元々群れるのが大嫌いなアラウディは五人の言葉を一蹴した。

しかし、シグナム達もそれでハイさよなら、となる訳にはいかず、何とかアラウディに付いていこうと食い下がっていった。

いい加減に鬱陶しくなったアラウディは、五人をそのまま『ボンゴレプリーモ・ジョット』に預けた。

 

【プリーモ。今回の事件の調査の借りとして、彼女達の事を任せるよ】

 

【ああ、分かった】

 

プリーモは守護騎士達を快く受け入れ、自警団の仲間として迎え入れた。

が、融合管制騎の少女だけは、アラウディの秘書として側に置いてほしいと頼まれ、ジョットからの口添えもあってアラウディも(かなり)渋々だが了承した。

 

【【【【・・・・・・・・】】】】

 

【不安を感じるのも仕方がないかも知れないが、安心してくれ。俺たちのファミリーの力になって欲しい】

 

【【【【ファミリー?】】】】

 

【そう。俺はこの町に生まれ育ち、この町を愛している。だが、この町にも何でもない日常を生きる人々を脅かす善からぬ輩がいる。だからこそ、そんな奴らから人々を守る為に、力になって欲しいんだ】

 

プリーモの瞳に宿る気高い志に、守護騎士達は協力を受け入れ、ボンゴレファミリーの一員として活動した。

シグナムはその容姿と人柄から、男女問わず(取り分け女性からの)人気があり慕われていた。

ヴィータは町の子供達の親分として君臨し、子供達の間の不穏な噂話や孤児院の経営状況などを聞いていたりし、老人達からも可愛がられていた。

シャマルは治療もできる故に、ボンゴレとは別に診療所で医学を勉強し、その穏やかさからか、男性から人気があった。

ザフィーラは動物の姿を利用しての諜報活動などを行い、戦闘力の高さもあって、ファミリーの構成員達の戦闘訓練の教官を勤めてくれていた。

守護騎士達はボンゴレファミリーにとって、掛け替えのない大切な仲間となっていった。

そんな中、四人に最も仲良くなった少女がいた。

『公爵令嬢のエレナ』だった。

“D・スペードの恋人”だった彼女は、四人の良き友人であり、あまり仲が良くなかった主・アラウディとの仲を彼女が取り持ってくれた。

 

【アラウディさんは、貴女達の事をどうでもいいだなんて思っていないわ】

 

【そう、なのか?】

 

【でもよ、アタシらをジョットに預けて融合騎だけ連れて行ったじゃねぇかよ?】

 

【それはね、アラウディさんは融合騎さんから聞いたようで、スペード達からも聞いたわ。貴女達が長い間ずっと、血生臭い戦場に立って戦っていたって。それで貴女達にはこれから、心穏やかに過ごして欲しいって思って、アラウディさんはプリーモに預けたのよ】

 

【そう、なのかしら・・・・?】

 

【きっとそうよ。信じてあげたら、貴女達の主様を】

 

【エレナ殿・・・・】

 

エレナのとても穏やかな優しさに四人は敬意をもった。

 

【・・・・・・・・】

 

主であるアラウディが所用でボンゴレに寄った際、プリーモから守護騎士達の活躍を聞かされ、

 

ポンッ、ポンッ、ポンッ、ポンッ。

 

【【【【~~~~~~~!!!//////】】】】

 

なんと、アラウディが守護騎士達の頭をポンポンし、守護騎士全員が顔を赤くして喜んだ。アラウディの近くに控える融合騎の少女も驚いた顔になっていた。

そして、主アラウディやプリーモとエレナだけでなく、他の守護者達とも交流を重ねた。

 

【ザフィーラ。ウチの連中を鍛えてくれてありがとな。礼をいうぜ】

 

【イヤ、我らもボンゴレファミリーの一員だ。これくらいは当然だ。『G』殿】

 

プリーモの幼なじみで、右腕にしてボンゴレNo.2でもある『初代嵐の守護者・G』。

 

【♪~♪~♪~♪~♪】

 

【素晴らしい演奏だな。『朝利雨月』】

 

【ありがとうでござるよ、シグナム殿】

 

遠い東の島国の音楽を愛する貴族であり、無双の剣士でもあった『初代雨の守護者・朝利雨月』。

 

【究極に祈りは済んだか、シャマル?】

 

【ありがとうございます。『ナックル』さん】

 

最強の拳闘士だったが、誤って命を奪ってしまった戒めとして、牧師となった『初代晴れの守護者・ナックル』。

 

【おら『ランポウ』! お前の土地で暴れているイノシシの退治に行くぞ!】

 

【俺さま領主様なんだものね。危ない事はしなくて良いんだものね】

 

【~~~~~!!】

 

ガンっ!

 

【グヒャン!】

 

【良いからさっさと行くぞ! このボンクラ領主!】

 

【いだだだだだ!! ヴィータ! アイゼンで叩くなものね! 引きずるなものね!】

 

領主の息子で臆病な性格をした最年少の守護者、『初代雷の守護者・ランポウ』。

守護騎士達は長い戦い日々の中で、これほど穏やかで幸せな時を過ごして来た事は無かった。

そして、エレナの恋人である『初代霧の守護者・D<ディモン>・スペード』とも・・・・。

 

【貴殿も変わっているなD・スペード。貴族の出自なのに自警団に参加するなど】

 

【ヌフフフフ。安い見栄や自尊心に、くだらない家柄自慢しかやることがない、腐敗した貴族社会で生きているより、力なき領民達の為に尽くす事こそ、高貴なる者の務めですよ。その為にも、ボンゴレはもっと勝ち続けなれば・・・・!】

 

【おいおいディモン。あんまり過激な事を考えるんじゃねぇよ】

 

【いいえ。ボンゴレは大きくなりました。大きくなった組織を疎んじる人間は多くいます。そんな人間達を黙らせる為には、ボンゴレをより強固に、より強大に、何者をも手出しができないくらいの“絶大な組織”にしなければならないのです】

 

【ディモンさん・・・・】

 

【あまり、思い詰めない方が良いぞ、スペード・・・・】

 

【・・・・・・・・これからプリーモと会議があります。私の考えを彼に伝えてきます】

 

時おりD・スペードが見せる危険性を、守護騎士達は不安そうに見ていた。

そして、プリーモはこれ以上の組織の拡大は、無用の争いを生み出すと考えD・スペードの意見を聞き入れなかった。D・スペードもエレナの口添えもあってその場を退いてくれたが・・・・。

平和路線に切り替え、戦力を縮小しようとするボンゴレの動きを狙って、敵対勢力が手薄になった縄張りにあるD・スペードの屋敷を襲撃した。

 

【手薄になった時を狙ったか! 舐めた真似をしてくれる!】

 

【負傷者もいる、シャマル! お前も来てくれ!】

 

【わ、分かったわ、でもエレナさんが・・・・】

 

【エレナにはディモンがついてるから大丈夫だろ!】

 

襲撃者達は、偶然遊びに来ていたシグナム達が全滅させた。

しかし、隙を見て逃げ出した襲撃者の1人が、D・スペードとエレナのいる部屋に爆弾を投げ込んだ。

 

ーーーードンッ!!

 

【【スペード! エレナッ!】】

 

【【ディモン(さん)! エレナ(さん)ッ!】】

 

ヴィータとシャマルが急いで屋敷に向かい、シグナムとザフィーラが逃げ出した構成員を始末し終えて、二人の部屋の前に着くと、茫然自失となったヴィータとシャマルを見て、血の気が失せた。そして、部屋はーーーー。

 

【エ、エレナ・・・・!】

 

爆発で焼け焦げた部屋に横たわる火傷だらけのエレナを抱き上げる、同じように火傷だらけのD・スペードだった。

 

【私のせいだ・・・・! 私が、あの時プリーモの考えをしっかりと正していれば・・・・強くなくては弱き者どころか、愛する女性一人救えないのだと・・・・】

 

【【ディモン(さん)・・・・】】

 

【【スペード・・・・】】

 

悲しみにくれるD・スペードを、守護騎士達は辛そうに見つめる。

 

【エレナ、見ていておくれ・・・・お前の愛したボンゴレは、もっと強くなる・・・・私が創ってみせる!! 名を聞いただけで震え上がる程のボンゴレを!!】

 

D・スペードの慟哭を聞いて、守護騎士達の耳にある音か聞こえた。この幸せな日々が、崩れていく音をーーーー。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

封印された記憶

かなり雑になったかもしれません。


エレナが亡くなってから、D・スペードは様子が変わった。規模を縮小しようとするプリーモの考えを否定し、さらに力を持つべきと進言した。

当然プリーモはこの考えを否定しようとしたが、プリーモ達が守る街に、敵対勢力が攻め入り、ボンゴレだけでなく、多くの一般人が被害を受けた。

それを聞いたプリーモは仕方なく、再びボンゴレの規模を大きくさせていった。

 

【これで、良いのかしら・・・・?】

 

【・・・・・・・・】

 

そんな中、ヴォルケンリッター達はD・スペードの本心に気づいていた。エレナを失ってから精力的にボンゴレの勢力拡大に尽力しているが、このままではプリーモ達とD・スペードの間に亀裂が生まれるのではないかと、シャマルとザフィーラは危惧していた。

 

【でもよ、デイモンの言うことも間違ってねぇよ。ジョットが規模を縮小したせいで、エレナは・・・・!】

 

【確かにな。反抗する勢力がいる限り、同じ事が繰り返される。スペードのやり方にも一理ある】

 

ヴィータとシグナムを危惧しているが、今は仕方ないんだと割り切り、ボンゴレの勢力拡大に協力した。

それが、主・アラウディの望みと違う事だと分かっていても・・・・。

 

 

 

 

それから徐々にD・スペードは、かつてアラウディが『夜天の魔導書』を発見する前に捕縛した黒魔術のコレクターであった領主が残した魔術書や禁術の類いの研究をするようになった。

プリーモや他の守護者達はD・スペードに不信感を持つようになっていき、敵対勢力との抗争が大きくなっていくとD・スペードがプリーモことジョットとGの旧友『シモンファミリーボス』、『シモン・コザァート』に救援要請を勝手に出した事を知り、それが『D・スペードの罠』であると知らず、シモン・コザァートは罠に嵌められた(しかしこの策略は、プリーモがD・スペードを除いた守護者達にシモン・コザァートを救出させた事で失敗した)。

さらに不穏な話が守護騎士達の耳に入った。D・スペードのプリーモをボンゴレから排除しようとする動きがあると聞き、段々狂っていくD・スペードを見て、説得しようとした。

 

【なぁ、デイモン、これはちょっと、いや完全にやり過ぎだろう?】

 

【このまま抗争を続ければ、ボンゴレと何の関係の無い数多の市民の命が危険にさらされるぞ】

 

【ヌフフフフ、それがどうしました?】

 

【どうしました、だと・・・・?】

 

【これからのボンゴレは更に強く、大きく、何者も逆らえない最強の組織となります。多少の犠牲など、ボンゴレの発展の為ならば“安い物”ではないですか?】

 

【デイモン・・・・貴様、本気でそう思っているのかっ!?】

 

ザフィーラが拳を握り、シグナムが鞘に納めたレイヴァティンの柄に手をかける。

 

【当然ですよ。全てはボンゴレが最強の組織となる為です】

 

【・・・・デイモンさん、そんな事を、力無い人達を犠牲にするようなこんなやり方! エレナさんが喜ぶ筈がありません!!】

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

【なぁデイモン、お前言ってたよな。『力なき領民達の為に尽くす事こそ、高貴なる者の務めですよ』って、それなのに、こんなの違うだろう。エレナだって弱い奴らを守るためにあるボンゴレが好きなんだよ、こんな事やってたら、エレナがきっと悲しんじゃうよ。だから【うな・・・・!】えっ?】

 

シャマルとヴィータが何とか説得しようとするが、D・スペードは顔を俯かせ、押し殺したような声を発し、顔を上げると、いつもの慇懃無礼な顔ではなく、憤怒に染まった怒りの表情だった。

 

【貴様らがエレナの思いの代弁者を気取るなど! 思い上がるなっ!!】

 

D・スペードはそう言うと、『D・スペードの魔レンズ』を使うと、守護騎士達の身体は金縛りにあったかのように動けなくなった。

 

【スペード、貴様!】

 

【どういうつもりだっ!?】

 

【以前から、あなた方を許せなかったんですよ。あの日、あなた方が襲撃者達をちゃんと始末出来ていたら、彼女は、エレナは! 死ぬ事は無かった!!】

 

【【【【っっ!!】】】】

 

D・スペードの言葉に、守護騎士達は息を呑み、そのまま守護騎士達のデバイスを奪った。

 

【待てっ!】

 

【おや、管制融合騎ではないですか?】

 

そこに融合騎(リインフォース)が駆けつけ、D・スペードから守護騎士達を守ろうと立ち塞がる。

 

【・・・・以前から、主アラウディはお前の動きを怪しんでいた。それがこんな事になるとはな】

 

リインフォースはシュバルトクロイツを取り出し、D・スペードを捕縛しようとするが、D・スペードも杖を取り出してリインフォースとぶつかり合った。

リインフォースは魔力弾等を放つが、D・スペードは幻術を駆使してリインフォースを翻弄し遂にーーーー。

 

【貰いましたよ。『夜天の魔導書』!】

 

【し、しまった!】

 

アラウディが持たないのでリインフォースが預かっていた『夜天の魔導書』を奪われた。

 

【エレナを救えなかった、守れなかったお前達が、穏やかな安らぎなど与えてなるものかっ!】

 

D・スペードは手のひらから黒い渦のような炎、『夜の死ぬ気の炎』を生み出した。

それを見てリインフォースの顔が驚愕に染まる。

 

【そ、その炎は、『夜の炎』!? D・スペード! 貴様まさか、復讐者<ヴィンディチェ>と、『バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン』と手を組んだのかっ!?】

 

【ヌフフフフ! その通り! この炎と『禁術』を使えば、私は永遠に生き続ける! そしてこれからも、ボンゴレを弱くする不穏分子を排除し続ける! その為にも、お前達は消え失せろっ!!】

 

D・スペードが手袋を脱ぎ捨て、指先を噛ると血が流れ、その血で『夜天の魔導書』に魔法陣を描くと、『夜の炎』を『夜天の魔導書』に叩きつけた。

『夜天の魔導書』はその魔法陣と『夜の炎』で黒く染まっていき、さらに鎖が巻き付いていった。そして、リインフォースや守護騎士達に異変が生じた。

 

【こ、これは・・・・!?】

 

【な、なんだよこれっ!?】

 

【記憶が、無くなっていく・・・・!?】

 

【主、アラウディの事も、エレナ殿の事も、ボンゴレの事も・・・・!?】

 

【デ、デイモン、スペード、貴様っ!】

 

【ヌフフフフ、ヌハハハハハハハハハハ!! これであなた方の記憶からボンゴレが消えるっ! そして『夜天の魔導書』とアラウディの繋がりを絶ち切らせて貰いましたよ! これであなた達は再び宛の無い流浪の旅に行くことになります! 全てはボンゴレの為に!!!】

 

高笑いをするD・スペードの目の前で『夜天の魔導書』が完全に鎖が巻き付くと、守護騎士達もリインフォースも、徐々にその姿が魔導書に吸い込まれていった。

 

【【【【【あ、主、アラウディ・・・・!!】】】】】

 

5人は吸収されると、D・スペードは『夜天の魔導書』を『夜の炎』で作った渦を作り出し、どこかへ放り投げようとしたその時、

 

バンッ!!!

 

【っ!】

 

D・スペードのいた部屋の扉を蹴破って現れたのは。

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

鋭い殺気を放つアラウディだった。

 

【ん~ヌフフフフフ。少し遅かったですねアラウディ】

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

アラウディは冷酷に微笑むD・スペードにゆっくりと近づきながら声を発する。

 

【D・スペード。その『魔導書』をこちらに渡して貰う】

 

【ヌフフフフ。あなたに渡して何になると? この『魔導書』は既にリセットされた。もはやあの守護騎士達を呼び出してもーーーー彼女達は、あなたの事を忘れてしまったんですよ】

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

アラウディの目がさらに鋭くなるが、突如『夜天の魔導書』は光り出し、空の彼方に飛んで行ってしまった。

 

【おやおや。取り戻そうとしていた魔導書が行ってしまいましたねぇ】

 

【・・・・・・・・D・スペード、君を逮捕する!】

 

【ヌフフフフ、やってみなさい!】

 

D・スペードとアラウディが死闘を開始したその瞬間、その世界は光に包まれたーーーー。




次回、裏切りの霧の模造と孤高の浮雲の最終決戦がはじまる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

霧の怨念

ーツナsideー

 

光が収まった時、なのは達は勿論、事前にリボーンから聞かされていたツナ達でも、あまりの出来事に驚いた。

守護騎士・ヴォルケンリッターの主だったアラウディ。

エレナの死から起こったD・スペードの凶行。

そして、そのD・スペードによってヴォルケンリッターはボンゴレに関わる記憶を全て失っていた事を。

 

「ヴ、ヴィータちゃん達が、ツナさんのご先祖様であるボンゴレの初代さんと守護者の人達と、こんな関わりがあったなんて・・・・」

 

「で、でも、私達の目の前にいる『D・スペードの影』を名乗っているあの男の人は、一体なんなの・・・・?」

 

フェイトの言葉に、D・スペードは笑いを押し殺したように声を発する。

 

「ん~、ヌフフフフフ。先ほどの記憶で見たでしょう? 私の本体のD・スペードが、血文字で魔法陣を『夜天の書』に描いたのを。あの魔法陣には、『ヴォルケンリッターの記憶を封じる』だけではなく、『自らの魂の一部も封じ込める術式』の魔法陣でもあったのですよ」

 

「そんな魔法が・・・・!」

 

管理局の魔法にも様々な魔法が存在するが、『魂の一部を封じる魔法』なんて禁術中の禁術である。

そんな魔法が管理外世界に存在している事に、ユーノは勿論、クロノやリンディ達も驚いていた。

そしてーーーー。

 

「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ・・・・」

 

はやてが家族である守護騎士達の名を呼ぶが、シグナム達はD・スペードを見つめて、涙を流していた。

 

「スペード、お前は、そんな禁忌の術にまで手を染めてしまったのか・・・・!」

 

「かつてのお前は、ノブレス・オブリージュ、高貴なる者としての誇りを持っていた気高い貴族だった・・・・!」

 

「でも、そんな、人の道を外れた禁術を使ってまで、ボンゴレを・・・・!」

 

「何でだよ・・・・! 何でそんなことになっちまったんだよ! デイモン!!」

 

記憶を取り戻した守護騎士達は、かつての盟友の変わり果てた姿を辛そうに見つめて叫んだ。

 

「ん~、ヌフフフフフ。簡単ですよ・・・・。エレナの想いの代弁者を気取るお前達が、ボンゴレに接触して不穏分子に協力させないように記憶を奪い、さらにお前達がボンゴレとまた絆を結ばせない為に、私と言う『影』を『夜天の書』のプログラム、ナハトヴァールに仕込んでおいたのですよ」

 

「ナハトヴァールに仕込んで置いたっ!? どうやってそんな事を!?」

 

クロノが聞くと、D・スペードはそれに答えた。

 

「ヌフフフフフ。知らなかったようですが、守護騎士達の元主、アラウディは彼女達に掛けられた“ナハトヴァールの呪いを解こうとしていたのですよ”。そうですよね、融合騎、いえ、祝福の風リインフォース?」

 

はやてに目を向けてD・スペードがそう言うと、はやての身体かうっすらと、リインフォースが幻影のように現れ口を開いた。

 

『その通りだ。主アラウディは私に掛けられた『ナハトの呪い』を解くために、秘密裏に魔術や錬金術の書を調べていた。その際に、D・スペードもその調査に協力していた。おそらくその時に、禁術を見つけたのだろう』

 

「主、アラウディが・・・・!」

 

「そんな素振り、主様は見せなかったぞ・・・・」

 

『主アラウディは馴れ合いが嫌いなお方だった。だが、お前達の事も、私の事も、必ず救って見せようと、ずっと調べていてくださっていたのだ』

 

「主、様・・・・」

 

「主アラウディ・・・・」

 

アラウディの隠された秘密を知って、守護騎士達は複雑な心境になった。

 

「ん~、ヌフフ。さて、思い出話はここまでにして・・・・」

 

言うとD・スペードの手から魔法陣が展開されると、ソコから飛び出た杖に一同は驚くーーーーD・スペードの手に収まったのは、“レイジングハート”だった。

 

「レイジングハートっ!?」

 

[私?]

 

なのはとレイジングハートが同時に驚きの声をあげると、D・スペードがレイジングハート(?)の切っ先をツナ達に向け砲撃モードに変形し。

 

「『ディバインバスター』」

 

D・スペードが言った瞬間、レイジングハート(?)から、藍色が混ざった桃色の光の砲撃が放たれたーーーー。

 

 

 

ーリンディsideー

 

「状況を報告!」

 

「現在、ハラオウン執務官達とボンゴレ・シモンファミリーが、『ナハトヴァール』いや、D・スペードが放った砲撃魔法を回避! D・スペードの持つレイジングハート(?)は、高町なのはさんが持つレイジングハートと同じ反応が出ており、砲撃魔法もまったくの同レベルです!」

 

「っまさか、『闇の書』、『夜天の書』が蒐集したなのはちゃんの魔法を使用できるのっ!?」

 

リンディは自分が建てた仮説を想像し、最悪な予感を感じたが、次の瞬間、モニターに映った戦闘状況を見て、顔を青くした。

 

 

 

ーツナsideー

 

D・スペードが放った『ディバインバスター』をギリギリで回避した一同は、レイジングハート(?)を構えるD・スペードを驚愕した目で見つめると、D・スペードはもう片方の手に、“クレッセントフォームのバルディッシュを召喚した”。

 

「バルディッシュっ!?」

 

[なんと・・・・!]

 

「『ソニックムーブ』」

 

フェイトとバルディッシュが驚くと同時に、D・スペードは一瞬でその姿が消えた。

 

「なのはっ!」

 

「フェイトっ!」

 

直ぐに隣あっているなのはとフェイトの前に飛んだツナと炎真の前に、レイジングハート(?)とバルディッシュ(?)を構えるD・スペードが現れーーーー。

 

「『アクセルシューター』、『フォトンランサー』」

 

「『大地の重力』!!」

 

藍色が混ざった桃色と金色の魔力弾が放たれるが、炎真が重力操作を行い、魔力弾は海へと叩き落とされた。

 

「ヌフフフ。良く回避できましたね」

 

「『フレイム・サンダー』!!」

 

「シュート!!」

 

獄寺とクロノが攻撃するが、なんと魔法陣の障壁で簡単に防がれてしまっていた。

 

「邪魔ですよ。『ケイジング・サークル』、『チェーン・バインド』」

 

『うわぁあっ!!』

 

『ああああっ!!』

 

D・スペードがそう言うと、全員の周りに魔法陣が展開され、ソコから大量の鎖が飛び出し、ツナ達、炎真達、なのは達を縛り上げた。

 

「こ、これって、アタシとユーノの魔法じゃないかっ!? なんでアイツがっ?」

 

「今のD・スペードは、ナハトヴァールと融合したような存在だ。ナハトヴァール、つまり『夜天の書』が集めたなのはとフェイト、そしてプログラムであるシグナム達ヴォルケンリッターだけじゃねぇ、さっきの戦いで他の皆の魔法や技をコピーしたんだろ。しかも、この拘束魔法、ユーノとアルフの魔法に奴がオリジナルの術式で構築されていやがる。脱出は困難だぞ」

 

驚く一同に、リボーンが冷静に解説した。ユーノとシャマルにデバイス達が術式を解除しようとするが、複雑な術式に難航している。

そんな一団を見て、D・スペードは笑みを深め、ツナに近づくとその頭を掴み上げ、その顔を見据える。

 

「なるほど、確かに子孫と言うだけありますね。その眼、プリーモに良く似ておりますよ。くだらない平和路線にボンゴレの道を歪めようとしたあの男にね! 『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』!!」

 

「かっはぁっ!!」

 

『ツナ(さん/くん/十代目)!!』

 

重力球を纏ったD・スペードの拳が、ツナの腹部に深く入り込み、ツナは吐血した。

 

「先ずはあなたを消滅させましょう。ボンゴレを汚そうとする不穏分子、沢田綱吉とその守護者。いずれ障害になるだろうキャバッローネとシモンファミリーもね。あぁ時空管理局の魔導師達もついでに始末しておきましょう。・・・・勿論、守護騎士共、お前達は念入りね!」

 

「ス、スペード、やめろ、もうやめてくれ!」

 

「アタシ達のせいで、こんな事をしてるなら、アタシ達だけを殺してよ!」

 

「他の皆さんを、はやてちゃん達を傷つけないで!」

 

「頼むスペード! これ以上の暴挙は!」

 

「うるさいですね。『ラグナロクブレイカー』」

 

「「「「うわあああああっ!!」」」」

 

シグナム達がD・スペードを止めようと叫ぶが、そんな彼女達を冷酷に一瞥すると、はやての砲撃魔法で四人を吹き飛ばす。

 

「シグナム! ヴィータ! シャマル! ザフィーラ!」

 

はやてが拘束された状態でも、吹き飛ばされた四人の元に飛ぶ。

 

「あ、主・・・・!」

 

「逃げて、はやてちゃん・・・・!」

 

「これは、我等の贖罪、かつての盟友の怨念が静まるならば・・・・!」

 

「そんなんアカン! 確かにこの人が苦しんでいたんわ分かる! でも、私の家族を死なせたりはせぇへん!!」

 

はやては本心ではD・スペードが怖い。しかし、それ以上に家族である守護騎士達を失いたくない想いが、幼い少女を支えていた。

 

「良いでしょう。ならば家族諸とも、消滅させてあげます!」

 

D・スペードはそう言うと、左右の掌から大空の炎と重力球を展開し、はやて達に向ける。

 

「ま、まさか、あれって・・・・!」

 

「炎真とツナの・・・・!」

 

「『XーBURNER』と『超新星の閃光<スーペル・ノヴァ・ブリッツ>』だな。やべぇぞ。あんな近距離から放たれたら、拘束魔法で防御魔法を展開できないはやてじゃ骨も残らず蒸発しちまう」

 

「くぅ・・・・っ!」

 

「このままじゃ・・・・!」

 

ツナと炎真が拘束魔法を力技で引きちぎろうとするが、それよりも早く、

 

「では、さようなら」

 

D・スペードの炎と閃光が放たれたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、ツナとリボーンの視界に、D・スペードに近づく“紫色の雲”を捉えた。

 




次回、裏切りの霧と孤高の浮雲が激突。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏切りの霧VS孤高の浮雲Ⅰ

ーリンディsideー

 

「皆っ!!」

 

アースラのブリッジで戦況を見ていたリンディは、思わず大声を上げる。

はやてと守護騎士達が、D・スペードが放つ『XーBURNER』と『超新星の閃光<スーペル・ノヴァ・ブリッツ>』の光に飲み込まれ、最悪の展開が頭を過り、茫然自失となり膝から崩れ落ちそうになった。

 

「し、司令! モニターを!!」

 

クルーの言葉でハッと正気に戻ったリンディの目に映ったのは、両手を上空に挙げて万歳しているD・スペードの姿だった。

なぜあんな格好をしているのか疑問に思うと、D・スペードの両腕に鎖が巻き付いているのが見えた。その鎖によって、両腕の方向を無理矢理変えられたようだ。そしてその鎖の先を見ると、D・スペードの後方ーーーー刺のついた紫色の雲に乗った、学ランを羽織い、両腕に鎖分銅を付けたトンファーを装備した、鋭い視線をした黒髪の少年がいた。

 

「雲雀、恭弥・・・・!」

 

十代目ボンゴレファミリー雲の守護者、雲雀恭弥であった。

 

 

 

ーはやてsideー

 

「ひ、雲雀さん・・・・!」

 

はやてが涙ぐんでその少年の名を呼んだ。

 

「ん~ヌフフ。まさか、あなたが助けに来るとは思いませんでしたよ。やはりお仲間の危機を見過ごせなかったのですか? 雲の守護者?」

 

「・・・・なんの事だい」

 

雲雀はD・スペードの両腕に巻き付けた鎖分銅をほどくと、トンファーに回収した。

 

「僕はただ、君を噛み殺したいだけだよ。前の時はつまらない方法で君の本体に逃げられたからね」

 

トンファーを構えた雲雀は、獲物を見つけた猛禽類のように、唯でさえ鋭い目をさらに鋭くして言った。

 

 

 

ーツナsideー

 

「ふんっ!」

 

「はっ!」

 

ツナと炎真がD・スペードがかけた拘束魔法を引きちぎり、はやてとヴォルケンリッターの拘束も、力技で引きちぎる。

 

「あ、ありがとうございます・・・・」

 

「す、すまない、その・・・・ボスの子孫殿」

 

「いや、それよりも。シグナム、お前達守護騎士は記憶が戻ったのか?」

 

「ええ。完全に戻りました。我らヴォルケンリッターが、貴方の御先祖、ボンゴレプリーモ・ジョット殿に、大変お世話になった事を・・・・!」

 

シグナムだけでなく、ヴィータとシャマルとザフィーラもツナに対して空中だが膝を付き、恭しく頭を垂れた。

 

「我らをファミリーに迎え入れ、仲間として扱ってくれた恩人でもあるジョット殿の子孫に対し、多大なる無礼を働きました。・・・・申し訳ありません」

 

「その、えっと、ご、ごめんなさい・・・・!」

 

「本当に、ジョットさんが私達の為にどれほどの幸せな時間をくれていたか・・・・!」

 

「その子孫である貴方様や、当代の守護者の方々、そして協力者でもある魔導師達にしてきた事、いくら詫びても足りませぬ・・・・!」

 

「あ、あの、綱吉さん、ウチの子達が凄いご迷惑をおかけしてもうたみたいやけど、皆わたしの為にしたんです。せやからと言う訳にはいかへんやろうけど、許してください!」

 

はやても守護騎士達のしてきた事を詫びる。

がーーーー。

 

「お前達が悪意を持ってやってきた訳ではないと分かっている。だが、謝罪も懺悔も後にしろ」

 

ツナがキッとD・スペードを睨み、Xグローブの炎を噴射させようとすると、眼前にロール(増殖体)が立ち塞がる。

 

「キュー!」

 

「っ! 雲雀の・・・・?」

 

「ロ、ロール、どないしたん?」

 

「キュッ! キュキュー、キュワー!」

 

ロールが何かを訴えようと声を張り上げるが、当然はやてにロールの、嫌、ハリネズミの言葉が分かる訳は無いが、何となくここから先に行ってはならないと教えているように聞こえた。

すると、狼形態となったザフィーラの背に乗ったリボーンがロールに近づくと、ロールが鳴き声を発し、リボーンとザフィーラ、後解放されたアルフもその鳴き声の意味を聞き取っていた。

 

「フムフム。成る程な」

 

「リボーン。何か分かったか?」

 

「ザフィーラ。ロールは何を言ったん?」

 

守護者達やなのは達を解放したツナが、リボーンに近づくと、口を開く。

 

「雲雀の奴、自分だけでD・スペードを始末するみてえだな」

 

「雲雀様は、お一人様でスペードを倒すみたいです」

 

『ええっ!?』

 

リボーンとザフィーラの解説に、なのは達は驚き、雲雀の性質を知っているボンゴレ&シモン、そしてディーノは、「やっぱり・・・・」、と云わんばかりに半眼になったり苦笑いを浮かべた。

 

「ひ、1人で戦うなんて・・・・!」

 

「危険過ぎる! あのD・スペードは、私達だけじゃなくて炎真達の能力も手にしているのに!」

 

「彼は状況が分かっているのかっ!?」

 

なのはとフェイト、クロノが雲雀とD・スペードの元へ行こうとするが、ロール(増殖体)が行く手を遮る。

 

「ハリネズミさん、お願い退いて!」

 

「キュワーーー!!」

 

なのはが退いてくれと頼むが、ロール(増殖体)が退かず、さらに増殖体を生み出して、球針体の壁を作った。

 

「どうして・・・・」

 

「無駄だなのは」

 

「ツナさん・・・・!」

 

自分の肩に手を置いて止めるツナを、なのはは見上げると、ザフィーラの背に乗ったままのリボーンが声を発する。

 

「雲雀が何が嫌いかと言われれば、『馴れ合う事』が嫌いだ。自分の戦いを邪魔されるのが何よりも嫌いな性格だからな。下手に手助けなんてしたら、逆にこっちに牙を剥いてくる。それが雲雀恭弥だ」

 

「でも! D・スペードは私達の魔法だけじゃなくて、炎真達の力も手にしているのに!」

 

「ディーノさん。止めなアカンのとちゃう?」

 

フェイトが言うように、今のD・スペードはツナ達の炎となのは達の魔法をコピーしている。雲雀だけで戦うのは危険過ぎると思うのは当然だ。はやても雲雀の師匠であるディーノに、雲雀の手助けをするべきではないかと問うが。

 

「いや、恭弥の性格上、それは逆効果だ」

 

「えっ?」

 

「アイツ、戦闘に関してはマジでプライドが高いからなぁ。恭弥のプライドの高さはお前らが考えている以上だ。もしも本当にヤバい時は手を貸すが、そうじゃないなら手出しはできねえよ」

 

「ま、雲雀がコテンコテンにのされるのも見物だけどな」

 

「大丈夫だろう。雲雀が負けるところなんてあんまし考えられねえしな」

 

「極限にアイツは強いからな」

 

「雲の人は大丈夫」

 

「アイツはツナの守護者で最強の守護者で、並盛中最凶の風紀委員長だからな」

 

他の守護者達やリボーンも、あんまり心配した様子ですなくそう言った。

 

「せやけど・・・・」

 

「やらせて見ましょう。主はやて」

 

「気に食わねえけど、アイツが半端なく強い事はアタシ達も知ってるしさ」

 

「はやてちゃん、雲雀さんなら大丈夫ですよ」

 

「主。雲雀様のご性格上、我らの助勢は不要でしょう」

 

『信じましょう主』

 

守護騎士だけでなく、リインフォースも雲雀がD・スペードと一対一の戦いをさせようと言い出した。

 

「はやて。良い女って言うのは、好きな男が『覚悟』を決めた戦いに挑んでいる時は、ドンッと腰を据えて見届けてやる物だぞ」

 

「いや、赤ちゃんで男の子のリボーンくんにそれ言われてもな・・・・」

 

はぁ、と溜息を吐くが意を決して、はやては両手で自分の両の頬をパンパンと叩くと、フンッと腕組みする。

 

「もう分かったわ。わたしも腹くくるわ。雲雀さんの戦い、見届けたる!」

 

『はやて(ちゃん)!?』

 

はやての宣言に、なのは達(守護騎士除く)が驚愕の声をあげる。

ツナ達はとっくに見届ける体制で雲雀とD・スペードの戦いを見据えていた。

 

 

 

ー雲雀sideー

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀はニヤリと笑みを浮かべながら、D・スペードを見据えると、ロール(本体)に向けて声を発する。

 

「ロール、形態変化<カンビオ・フォルマ>」

 

「キュワーーー!!」

 

ロールが叫び声をあげると、紫色の炎となって、雲雀の身体を包み込む。

炎が消えるとソコには、改造長学ランを纏い、トンファーを構え、頭がリーゼントとなったヒバードを連れた雲雀恭弥だった。

 

「ん~ヌフフフ、これは少し楽しめそうですね」

 

「噛み殺す!」

 

レイジングハートとバルディッシュを構えたD・スペードに、雲雀は小さな球針体を足場にして、向かっていったーーーー。

 




ついに始まった雲雀とD・スペードの一騎討ち。勝つのはどっちだ!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏切りの霧VS孤高の浮雲Ⅱ

すみません。かなり雑に書いたかもしれません。


ー雲雀sideー

 

「『アクセルシューター』。『フォトンランサー』」

 

レイジングハートとバルディッシュから、藍色が混じった桃色と金色の魔力弾を放つD・スペード。

 

「子供騙しだね」

 

が、球針態の上に立つ雲雀はトンファーを回転させて、魔力弾を全て弾き飛ばした。

 

「では、これではどうです? 『ソニックムーブ』」

 

一瞬で姿を消したD・スペードは、雲雀の背後に回り、砲撃モードのレイジングハートの砲口を雲雀の背後に突き付けーーーー。

 

「『ディバインバスター』」

 

ドォオオオオオオオオオンッ!

 

砲撃魔法が放たれる。

がーーーー。

 

「それがどうしたんだい?」

 

「ほぉ」

 

何と雲雀は、砲撃が放たれる一瞬で、レイジングハートの砲口を後ろ回し蹴りでずらした。

 

「ふっ!」

 

雲雀がトンファーを振るい、D・スペードがバルディッシュで防ごうとするが。

 

ーーーーガシャンンッ!!

 

「ほぉ」

 

雲雀のトンファーがバルディッシュを砕き、レイジングハートの砲口を再び向けようとするが、雲雀はそれよりも早くレイジングハートもトンファーで砕き、2つの杖の宝石部分が雲雀の足元に落ちる。

 

「これはこれは、やりますね・・・・!」

 

次にD・スペードは、レヴァンティンとグラーフ・アイゼンを生み出して、雲雀の近接戦闘を繰り広げる。

その際、雲雀は球針態の上に転がっているレイジングハートとバルディッシュの宝石部分を踏み潰したが、雲雀は気にも止めずにD・スペードと交戦する。

 

 

 

ーツナsideー

 

「うぅ、レイジングハート・・・・」

 

「バルディッシュ・・・・」

 

ツナと炎真の側にいるなのはとフェイトは、いくら偽物とは言え、相棒のデバイスが容赦なく破壊され、さらに踏み潰させる光景に、複雑な心境で辛そうに顔を歪め、ツナと炎真が優しく二人の頭を撫でた。

 

[本物である私であれば、あのようなトンファーごときで破壊されません]

 

[同じくです]

 

レイジングハートとバルディッシュが、心なしか不機嫌そうな声をあげていた。

 

「今度は、レヴァンティンか・・・・」

 

「アタシのアイゼンまで・・・・」

 

シグナムとヴィータも、長い時の中で数多の戦場を共に駆け抜けた相棒達の力を利用されている怒りと、今度は自分のデバイスが破壊される光景を見せられるのでは無いかと言う不安感で複雑な心境だった。

 

ーーーーグワシャンッ!!

 

と、そこで予想通り、根元まで刀身を粉々にされたレヴァンティンと、ハンマー部分を破壊されたアイゼンが、海へと落ちていき、シグナムとヴィータが渋面を作った。

 

「よ、容赦ないわね、雲雀さん・・・・」

 

「ウム・・・・」

 

「雲雀は戦闘において、慈悲や容赦なんて持ち合わせないタイプだからな」

 

何のためらいも躊躇もなく皆のデバイスを破壊する雲雀に、シャマルとザフィーラも頬をピクピクとさせ、リボーン達、雲雀を知る人間達は、雲雀なら当然だなと言わんばかりだった。

 

 

ー雲雀sideー

 

「ん~ヌフフフフ。いくら偽物とは言え、仲間の武器を容赦なく破壊する事に罪悪感を持たないとは、貴方はかなりの冷酷な人間のようですね!」

 

D・スペードが笑みを浮かべながら、今度は片手にツナのグローブを、もう片方に炎真のグローブの生み出し、拳で攻撃しながら雲雀を煽ろうとするがーーーー。

 

「仲間? 誰の事だい? それに偽物の玩具ごときを破壊する事に、何で罪悪感を持たないといけないんだい?」

 

まったく気にしていない雲雀は、小さな球針態を数個取り出すと、D・スペードに向けてトンファーで殴り飛ばす。

 

「おやおや」

 

が、D・スペードは後ろに黒い渦のような炎を展開させると、その中に飛び込み、球針体を回避する。

 

「っ・・・・」

 

雲雀は止まり、全身の感覚を研ぎ澄ませる。

 

 

 

ーはやてsideー

 

「な、何やあの真っ黒な炎はっ!?」

 

「ツナさん達の大空の七属性と違う・・・・!」

 

「炎真達の大地の七属性とも明らかに違う・・・・!」

 

「あれは『夜の炎』。復讐者<ヴィンディチェ>の頭目にして、かつては俺達と同じ最強の赤ん坊・アルコバレーノだった『バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン』が生み出した大空とも大地とも違う、まったくの異質な死ぬ気の炎だ。能力は『転移と加速』。D・スペードは過去に復讐者<ヴィンディチェ>と手を組んで得た炎だ」

 

なのは達も、守護騎士達の記憶から知った『夜の炎』を見て、リボーンが詳しく話した。

 

 

 

 

ー雲雀sideー

 

黒い渦の炎、『夜の炎』の恐ろしさは、前回の『虹の代理戦争』で経験済みだ。

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀は静かに待つと、右後ろから、黒い渦が現れたのを察知し、トンファーをまるでチェーンのようにしなやかに伸ばして、黒い渦の中に突き入れた。

 

「ぐはっ!!」

 

渦の中から声が聞こえ、雲雀がトンファーを思いっきり引っ張ると、そこから腹部にトンファーの先端が刺さったD・スペードが出てきた。

 

「ば、バカな・・・・! 夜の炎の中にいる私に気づくとは・・・・!」

 

「君と僕とじゃ、生き物としての性能が違う」

 

「がはっ!」

 

雲雀がトンファーを引っ張り引き抜くと、D・スペードはまるで吐血したかのように声を発する。

 

「くっ! 『大地の重力』!!」

 

「っ!」

 

重力で押し潰そうとするが、雲雀は球針態に向けてトンファーのチェーンを伸ばし巻き付け、その球針体に向かって飛んで、重力波から逃れる。

D・スペードは腹部を再生させるが、雲雀は手錠を投げ、D・スペードの手首にかけると、手首が増殖してD・スペードの首から下の身体を包んだ。

 

「っ! アラウディの手錠かっ!? ぐぉおああああああああああああああああああっ!!!」

 

抗おうとするD・スペードだが、手錠の内部からトゲが飛び出し、手錠の締め付けにより身体に深く突き刺さる。

 

「お、おのれぇ!」

 

余裕綽々だったD・スペードの顔が苦悶に歪むと、藍色の炎で全身を包むと、その姿を消した。

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀は死ぬ気の炎に視線を向けると、炎が僅かに不自然な揺らぎを見せーーーー。

 

「・・・・!!」

 

トンファーを振り抜くと、ガキンッ! と金属音が鳴り、ソコからD・スペードがグローブで防御していた。

 

「私の幻術まで・・・・!」

 

「幻術は嫌いなんだ。だから攻略法もすでに知っている」

 

完全に状況は雲雀が圧倒的に優勢であった。

 

 

 

ーツナsideー

 

「D・スペードって人が、追い詰められてる・・・・」

 

「デイモンは初代霧の守護者。“本物であればこうは簡単に行かない"」

 

「えっ? それって・・・・?」

 

なのは達は戦況に首を傾げるがツナ達は冷静であり、その事を聞くと、ツナが口を開いた。

 

「今あそこにいるのは、本物のD・スペードが『夜天の魔導書』にインプットした一部に過ぎない。本来のD・スペードの実力の半分と言った処だろう。それをナハトヴァールが蒐集した皆の力で補っているんだ。おそらくこれまでナハトヴァールに隠れて何もして来なかったのも、今の自分では俺達に敵わない事を見越していたからだ」

 

「が、所詮ナハトヴァールがコピーした偽物。偽物ごときじゃ雲雀は倒せねえ」

 

 

ー雲雀sideー

 

「さて、終わらせよう」

 

雲雀はチェーン状にしたトンファーを縦横無尽に振り回すと、紫の炎を纏った光の線が、D・スペードの身体を切り裂く。

 

「『積乱雲』」

 

「ぐぁああああああああああああああああっっ!!」

 

嵐のように激しく、雷のように鋭く、雨のように降り注ぎ、雹のように冷徹な攻撃。まさにそれら全ての始まりとなる、雲のような乱撃であった。

 

 

 

 

 

ーディーノsideー

 

それを見たディーノが、フッと笑みを浮かべる。

 

「恭弥の奴、あれは“10年後の俺"が編み出した『光速天翔<サルト・ヴォランテ・ヴェローチェ・コメ・ルーチェ>』と同じ技だな」

 

ディーノの言った『10年後の俺』と言う単語が一瞬気になったが、はやて達は再び雲雀の方に目を向けた。

 

 

ー雲雀sideー

 

「ぐうぅっ! ば、バカな、この、私、が・・・・!」

 

「本物の君なら、もっと噛み殺し甲斐があったよ」

 

『積乱雲』が終えると、身体がボロボロの状態となったD・スペードの眼前に、雲雀が最大出力の炎を放出したトンファーを叩き込んだ。

 

ーーーードンッ!!

 

海面に向かって急降下していくD・スペードの真下に、先ほど避けられた小さな球針態があり、それらが一気に膨張し、そのトゲにD・スペードの身体を貫いた。

 

「・・・・・・・・」

 

串刺しとなったD・スペードを見下ろす雲雀の姿に、はやても、守護騎士達も、なのは達も、リンディ達も息を呑んだ。

これこそ後に、時空監理局にその名を轟かせる『紫雲の戦鬼』の始まりだった。




次回で、D・スペードの怨霊と、リインフォースの問題を解決したいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虹、来る

ーツナsideー

 

戦闘が終わると、ツナ達となのは達は球針態の上に倒れ、ゆっくりと身体が崩壊しているD・スペードに近づく。

 

「デイモン・・・・」

 

「・・・・滑稽でしょうね。所詮は本体から切り離された、D・スペードの残りカスの悪足掻きですよ。まさか、ここまでできるようになっていたとは・・・・当代のボンゴレファミリーも、捨てた物では、無いですね」

 

「デイモン。お前の本体のD・スペードの最後の言葉を伝える」

 

【エレナ・・・・お前を、救えなかった私を・・・・許してくれ・・・・!!】

 

【お前のやり方を見せてもらいましょう沢田綱吉。ただし、名を汚すようなことがあれば許しませんよ。エレナの愛したボンゴレなのだから】

 

「そうですか・・・・今際の際に、エレナはこう言っていた・・・・」

 

【あなたは弱き者のため・・・・ボンゴレとともに・・・・D<デイモン>・・・・あなたなら・・・・できるわ・・・・】

 

「ああ。それも本体から聞いた。でも、エレナさんは、人を怖がらせたり、力やお金を使って支配することに、弱い人の気持ちなんて少しも入ってない。そんなボンゴレは、エレナさんが好きなボンゴレじゃない。でもエレナさんは、ずっと自分の事を忘れずにいてくれた、自分のために必死に生き続けてくれたデイモンに、“ありがとう”って、お前に感謝してくれているはずだ・・・・」

 

「そう、ですか・・・・私もこのまま消えたい所ですが、ナハトが間もなく修復を完了させてしまいます」

 

『っ!』

 

リインフォースに融合したナハトヴァールが再び起動する。全員に緊張が走った。

その時、空気がヒヤリと寒くなると、一同の目の前に、D・スペードが起こした『夜の炎』のような黒い渦が現れた。

 

「ツ、ツナさん、あれって・・・・!」

 

「アイツらが来たか・・・・!」

 

なのはがツナの裾を掴み、ツナが戦慄した顔になると、渦の中から現れなのはーーーー。

 

『・・・・・・・・』

 

黒いボロボロの外套に身を包み、黒いシルクハットを着けた、顔どころか全身に包帯を巻いた、異質な雰囲気のある、まるでそう、死神を彷彿させる集団が現れた。

 

『復讐者<ヴィンディチェ>・・・・!』

 

『っっ!!!?』

 

ツナ達の言葉を聞いて、なのは達は驚愕と戦慄が混ざった顔で彼らを見た。

『裏社会の法の番人』にして、炎真達シモンファミリーを半殺しにして『虹の代理戦争』に参戦し、ツナ達と死闘を繰り広げた相手である。

 

「ーーーー!!」

 

炎真達を、自分の家族<ファミリー>を傷付けた相手が現れ、フェイトはバルディッシュをクレッセントフォームにして、『復讐者<ヴィンディチェ>』を鋭く睨むが、震えるアルフがフェイトの肩に手を置いて止めた。

 

「フェイト・・・・駄目だよ、アイツら、危なすぎるよ・・・・!」

 

動物の本能か、アルフは復讐者<ヴィンディチェ>の危険性を敏感に感じとり、完全に戦う心が折れていた。

 

「・・・・・・・・」

 

「炎真・・・・」

 

炎真も、フェイトの前に手を出して止める。

 

「「「「・・・・・・・・!!」」」」

 

『主、お下がりください・・・・!』

 

「皆・・・・」

 

そしてヴォルケンリッターは、はやてを守るように立ち、融合しているリインフォースも戦慄した顔で警戒していた。ヴォルケンリッターは全員、頬に一筋の冷や汗を流しており、もし復讐者<ヴィンディチェ>がはやてに目を付ければ、命を捨てる覚悟ではやてを守るつもりだ。

 

「こ、この人達が、復讐者<ヴィンディチェ>なの?」

 

「・・・・・・・・」

 

脅えたような声を漏らすなのはを背中に隠すようにするツナ。

 

『久しぶりだね、沢田綱吉・・・・』

 

特に危険な威圧感を出す包帯の隙間から瞳と髪を出した復讐者<ヴィンディチェ>の肩の上に乗る、リボーンと同じくらいの背丈をした復讐者<ヴィンディチェ>が声を発した。

 

「『バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン』・・・・!」

 

「え、バミューダって・・・・」

 

「D・スペードが見せた記憶に出た、奴に『夜の炎』を与えた存在か・・・・!?」

 

「ああそうだ。そして今回、奴らには『ある物』を待ってきて貰ったんだ」

 

リボーンの言葉に続くように、復讐者<ヴィンディチェ>は外套の中から、橙、赤、青、緑、黄、紫、藍の炎が入った球体を取り出した。

 

「あれは・・・・?」

 

「あれは俺達アルコバレーノが守護していた『トゥリニセッテ』の一角、『アルコバレーノのおしゃぶり』の代わりとなった器だ」

 

「そしてそれの炎を扱う事ができるのは・・・・」

 

そこまで話していると、球針態に近づくヘリコプターが現れた。なのは達は警戒するが、ヘリコプターの中から、1人の女の子が現れた。

 

「ユニ!」

 

「お久しぶりです。沢田さん。リボーンおじ様!」

 

「えっ?! リボーンくんがおじ様っ!? どういう事なのっ!?」

 

「それはおいおい説明するぞ。彼女が俺達アルコバレーノのボス、橙色のおしゃべりのアルコバレーノ・ユニだ」

 

「はじめまして皆さん」

 

ニコッも微笑むユニのその笑みは、まさしく天使のような愛くるしさに満ちておりーーーー。

 

『(ポッ・・・・)』

 

ボンゴレ(雲雀は除く)とシモンの男達、クロノとユーノ、ザフィーラですら顔を赤くした。

 

ーーーーバキッ!

 

「ぎゃっ!」

 

ジュリーがアーデルに殴られ、

 

ーーーーぎゅぅぅぅぅっ!!×2

 

「なのは・・・・?」

 

「フェイト・・・・何で僕たちのお尻をつねるの?」

 

「・・・・何でもないの」

 

「む~~~~・・・・!」

 

頬を可愛く膨らませたなのはとフェイトが、ツナと炎真のお尻をつねっていた。

 

《クロノくん! 何見惚れているのっ!?》

 

「い、いや、別に見惚れてなんていない・・・・!」

 

エイミィが通信で怒声をあげると、クロノはハッと我にかえってしどろもどろに言い訳した。

それを見てリボーンはフッと笑みを浮かべると、

 

「ふっ・・・・他にも来てるぞ」

 

ヘリコプターの中からさらに、ウッドランド迷彩を着た赤ん坊。白衣を着てメガネを着用した赤ん坊。黒いマントを頭にまで被った赤ん坊。ライダーヘルメットを着けたライダースーツの赤ん坊。チャイナスーツを着た雲雀に良く似た赤ん坊が現れた。

 

「青のアルコバレーノ・コロネロ。緑のアルコバレーノ・ヴェルデ。藍のアルコバレーノ・バイパー、いや、マーモン。紫のアルコバレーノ・スカル。赤のアルコバレーノ・風<フォン>。『アルコバレーノのおしゃべり』を守護する『最強の赤ん坊』、アルコバレーノだ」

 

「こ、この赤ん坊達が、アルコバレーノ・・・・!」

 

クロノを初め、なのは達も驚愕したような顔となった。

そしてユニが宣言するように声を張り上げる。

 

「これより、初代ボンゴレファミリーボス・初代ボンゴレとの盟約に従い、アルコバレーノボスの名の元、トゥリニセッテの力を持って、“『夜天の魔導書』の呪いを解呪しますっ!!”」




次回で、『夜天の魔導書』の呪いを解呪できれば良いと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初代ボンゴレファミリーの願い

プリーモ達が守護騎士達に残したモノとは?


ーツナsideー

 

ユニが宣言したトゥリニセッテの盟約。それは、『夜天の魔導書の呪いを解呪する』事だった。

 

「ユニ、ボンゴレとの盟約って・・・・?」

 

炎が消えて通常に戻ったツナがユニに訊くと、ユニはゆっくりと口を開いた。

 

「私の先祖が、トゥリニセッテの一角である『ボンゴレリング』を初代ボンゴレ・プリーモに預かってもらう見返りとして、先祖はプリーモの願いを1つだけ叶えると言う盟約を出し、プリーモは長くその願いを沈黙していましたが、プリーモがボンゴレを去り、『ボンゴレリング』を『ハーフボンゴレリング』に形を変えた際、私の先祖に願いを言ったのです」

 

「願い?」

 

「はい。プリーモはこう願いましたーーーー」

 

【ボンゴレが再び『夜天の魔導書』と出会い、守護騎士達の『呪い』が消えていなかった時はーーーートゥリニセッテの力を持って、彼女達を『呪い』から解放してほしい。これは俺だけの意志じゃない、俺と俺の守護者達、俺達ファミリー全員の意志だ!】

 

『「「「「「・・・・・・・・!!!」」」」」』

 

それを聞いて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リインフォースは頬に涙が流れた。

『夜天の魔導書』がボンゴレと再び出会う確率など、絶望的なまでに低い、それこそ永遠にそんな日が訪れないと言っても良いくらいの望みだ。

だが、ボスは・・・・プリーモは・・・・ジョットは・・・・。守護者達は・・・・ファミリーの仲間達は・・・・。そんな一縷の望みにも満たない可能性にトゥリニセッテの願いを使ってくれた。

守護騎士達の為に、遥か時を越えてーーーー。

 

「ボ、ボス・・・・!! 皆・・・・!!」

 

「うっ、ぅう、うあああ・・・・!!」

 

「ああぁ・・・・!!」

 

「くぅ、ぅぅ・・・・!!」

 

『ボス・・・・主アラウディ・・・・G・・・・雨月・・・・ナックル・・・・ランポウ・・・・スペード・・・・! 信じて、くれていたのですね・・・・また、会えるって・・・・!!』

 

シグナムが片手で顔を覆い、ヴィータはクシャッと顔を歪ませ、涙を拭うが止まらなく、シャマルは両手で顔を覆い膝から崩れ、ザフィーラは瞼を閉じて顔を上にあげて涙を堪えようとするがそれでも流れてくる。融合したリインフォースも、涙を流して笑みを浮かべる。

守護騎士全員が涙が止めどなく溢れてきて、何度も拭うが、それでも涙は止まってくれず、嗚咽を漏らした。

はやても、ツナ達も、エンマ達も、勿論なのはもフェイトも、クロノ達も、何百年と時を越えたボンゴレと守護騎士達の友情の絆に涙を流した。

 

「しかし、本体のD・スペードも、それに同意していたのか? 『夜天の魔導書』に呪いをかけていたのに・・・・」

 

「・・・・心の何処かで、本体のD・スペードも望んでいたんだろう。自分とエレナの友人である守護騎士達が、『呪い』から解き放たれ、幸福に生きて欲しいってな・・・・」

 

「そうかも、知れませんね・・・・」

 

倒れているD・スペードの影が、それに同意した。

 

「本体が、『夜天の魔導書』に、呪いを流す時、守護騎士達に対する複雑な感情があったのは、間違いないでしょうね・・・・」

 

「デイモン・・・・」

 

「しかし、トゥリニセッテの力を使うって言うのは、具体的にどうするんだ?」

 

クロノがユニに話しかけると、ユニは穏やかな笑みを浮かべて口を開く。

 

「はい。『アルコバレーノの器』。『ボンゴレギア』。そして、『シモンリング』の力を使えば」

 

「えっ? 『シモンリング』??」

 

トゥリニセッテと関係がない筈の『シモンリング』が何故入るのか、疑問に思う一同にユニが説明する。

 

「ご存知の方もいますが、トゥリニセッテの一角である『マーレリング』は、“とある事情”で封印されることになりました」

 

その“とある事情”こそ、かつてツナ達が経験した『未来での激戦』が起因となっているのだが、それを知らないなのは達に教える事もない。

 

「それじゃ・・・・『マーレリング』が無いのに、どうやってトゥリニセッテの力を・・・・」

 

「忘れたかダメツナ。本来の力である『ニューボンゴレリング』となった『ボンゴレリング』を圧倒した『シモンリング』ならば、『マーレリング』の代わりができる筈だぞ」

 

「それに、マーレ、海の代わりができるのは、大地の『シモンリング』だけなんです」

 

「エンマ・・・・」

 

「うん」

 

フェイトに話しかけられ、エンマは力強く頷き、シモンファミリーに顔を向けた。

 

「皆・・・・」

 

「ええ」

 

「美少女・美女とオマケの為だな♪」

 

「結局それかお前は」

 

「やるよ」

 

「応」

 

「了解☆」

 

守護者達が頷いた。

リボーンはそれを見て頷くと、他の元アルコバレーノに向くと。

 

「よく来てくれたなヘボライバル~」

 

「来てやったぜクソライバル!」

 

ゴン!

 

「“ラル”との結婚が御破算になって泣いてるかと思ったぜ」

 

「生憎、“ラル”が素直じゃないのはとっくに分かってるぜコラ!」

 

雨のアルコバレーノ・コロネロと挨拶の頭突き合いをした。

 

「出た~、挨拶代わりの頭突き・・・・!」

 

「痛そうなの・・・・!」

 

次に嵐のアルコバレーノ・風<フォン>に話しかける。

 

「久しぶりだな風<フォン>。イーピンには挨拶してきたか?」

 

「ええ。相変わら健やかに育っているようで安心しました」

 

「あの赤ちゃん。雲雀さんに似てるけどご親戚なん?」

 

「知らないよ」

 

群れるの嫌いなので距離を取った雲雀にはやてが質問するが、雲雀は素っ気なく答えた。

リボーンは霧のアルコバレーノ・バイパーことマーモンに話しかける。

 

「マーモン。お前もよく来たな」

 

「ふん。こんな一銭にもならない仕事はやりたくないけど、沢田綱吉には借りがあるからね」

 

『ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー』に所属するマーモンは、無償で働く事を何よりも嫌う拝金主義者なのだが、悲願だったアルコバレーノの呪いを解いたツナにはある程度の借りを感じているのか、協力する気になったらしい。

 

「あれがクロームくんが言ってきた幻術士マーモンか」

 

「うん」

 

管理局基準で言えば高レベルの幻術使いを上回ると言っても良いクローム。その彼女をも上回る術士のマーモンに、クロノは警戒の色を持っていた。

次に、雷のアルコバレーノ・ヴェルデを向くリボーンの目に、静かな威圧感が放たれる。

 

「ヴェルデ。お前が来たのは、管理局の次元科学が目的か?」

 

「まぁな。私としても彼らの技術は大変興味深いからな」

 

「(この二人、何があったのっ!?)」

 

ニヤリと笑みを浮かべるヴェルデに、リボーンはとりあえずそれ以上言わず、コホンと咳払いをして。

 

「さて、これで全員だな」

 

「待てコラリボーン!!」

 

「ん? なんだスカル。お前も居たのか?」

 

「さっきから居ただろうが! 無視しやがって!!」

 

ヘルメットを被った赤ん坊、雲のアルコバレーノ・スカルである。

 

「パシリはパシリらしく邪魔にならないようにしろよ」

 

「誰がパシリだぁ!」

 

「はい?」

 

「あ、いえ! すみません!!」

 

「(相変わらずの関係性だ・・・・!)」

 

ニヤリと笑みを浮かべ、耳を当てるリボーンにビビるスカルにツナはツッコミを入ると、苦笑したエンマがフェイトとアルフを連れてスカルに話しかける。

 

「スカル。元気そうだね」

 

「おおエンマ! 俺がカルカッサファミリーに戻っている間に、新しい部下を入れたようだな! 俺の事はスカル様と呼べ!」

 

「え、えっと、スカル、様・・・・?」

 

「スカル。フェイトとアルフは僕達のファミリーだよ。部下じゃないよ」

 

「何か偉そうで煩そうなガキだね!」

 

「なんだとっ! アーデルハイトの半分もおっぱいが無い犬女めっ!」

 

「誰が犬だっ! それに(ギリギリだけど)半分くらいはあるわっ!」

 

スカルの言葉にアルフが犬耳としっぽを立てて怒鳴るが、双方エンマとフェイトに押さえられる。

そんな二人を無視してリボーンが話を続ける。

 

「さて、これで全員揃ったが、後は『霧のボンゴレギア』だな」

 

「えっ? 『霧のボンゴレギア』ってクロームさんが持っているんじゃないの?」

 

「『霧のイヤリングVer.X』は骸が・・・・「呼びましたか? 沢田綱吉」 んなっ!!」

 

ユニ達が出てきたヘリコプターから現れたのは、D・スペードと良く似ていたが、オッドアイの瞳に、髪型がパイナップルのようになっている少年『六道骸』だった。

 

「クフフ。お久しぶりですね」

 

「(コイツが、六道骸・・・・!!)」

 

そのオッドアイの瞳を見た瞬間、クロノが、守護騎士が、モニターで見ているリンディまでもが、骸に対して警戒心を持った。

クロノとリンディが今まで捕まえて来た次元犯罪者達が、そこらにいる有象無象の小悪党ばかりと思わせてしまう存在感。

守護騎士達も、D・スペードや雲雀とはまた異質な危険性を持った骸に警戒心を持った。

ツナも内心ビビりながらも、骸に話しかける。

 

「骸。手を貸してくれるのか・・・・?」

 

「クフフ。僕も以前から管理局には興味ありましたからね。それに、中々に面白い見せ物を見せてもらったお礼ですよ」

 

「なっ! テメエ! 見せてもらったって事は、俺らの戦い見物してやがったのかっ!? 何で手助けしなかった!」

 

「なにを勘違いしているのですか? 僕はマフィアと馴れ合うつもりはありませんよ。ボンゴレギアを預かっているのも、クロームが一応の世話になっているのでその借りの為です・・・・っ!」

 

骸に鎖分銅が投げつけられると、骸は三叉矛でそれを弾き飛ばす。鎖の先を見ると、雲雀が鎖分銅を投げていた。

 

「おやおや」

 

「鈍っていないようだね」

 

「雲雀さん、アカンよ。協力してくれる人に喧嘩腰になっちゃ・・・・」

 

火花を散らす雲雀と骸。二人の因縁を知らないはやてだが、今はそれどころではないと、雲雀をおさえる。リボーンもそれに続いた。

 

「その通りだ。そろそろナハトヴァールが再起動しそうだぞ」

 

『っ!!』

 

リボーンの言葉に、全員が倒れたD・スペードを見ると、D・スペードから、鼓動のような音が響いてくる。

 

「・・・・逃げないでね」

 

「・・・・クフフ」

 

「さて、それじゃ行くぞ。らうじ。アホ牛を起こしておけ」

 

「うん。ランボさん。起きてくれ」

 

「ぐぴゃ?」

 

これまで途中で寝て、起きるとナハトヴァールの異形さにビビって気絶していたランボがようやく起きた。

そして、『アルコバレーノの器』を持った元アルコバレーノ。『ボンゴレギア』を持ったボンゴレファミリー。『シモンリング』を持ったシモンファミリーが、はやてから分離したリインフォースと、D・スペードを囲むように並んだ。

 

「これより、トゥリニセッテの力を用いり、『夜天の魔導書の呪い』を解除します・・・・!」

 

ユニがそう言うと、アルコバレーノの器が光輝き、炎が灯る。

 

「皆・・・・行くぞ!」

 

『応!!』

 

ツナの号令で、全員がギアとリングに炎を灯した。

三つの七色に輝く虹のような炎が、リインフォースとデイモンを包み込む。

 

「・・・・スペード。すまなかった」

 

「・・・・エレナの分まで、幸せになりなさい。それが、貴女方ができる、ただ1つの、償いです・・・・」

 

ゆっくりと炎に包まれるデイモンは、リインフォースと守護騎士達を見て呟くと、温かな炎に包まれ、やすらいだ笑みを浮かべて、炎の中に消えていった。

炎が収まるとリインフォースが立ち、その手には、ベルカの十字架の形をしたペンダントが握られていた。

 

「リインフォース・・・・」

 

「ああ。ナハトは、浄化された」

 

リインフォースの言葉に、一同がフゥとようやく終わったと肩の力を抜くと、リインフォースははやて方に歩いていく。

 

「主・・・・・」

 

手に持ったペンダントをはやてに差し出した。それを見たはやては驚いた顔をする。

 

「リインフォース・・・・・・これ・・・・」

 

はやては、リインフォースの顔を見ると、リインフォースは頷く。

 

「ナハトを浄化した後に残ったようです」

 

そう言ったリインフォースの手からそれを受け取り、はやてはやては握り締める。

 

「ごめんな・・・・助けてあげられへんで・・・・本当にごめんな・・・・!」

 

はやては涙を流しながらそう呟く。

 

「我が主・・・・・」

 

リインフォースが呟く。

はやては、暫く俯いていたが、突然顔を上げ、

 

「決めたで!」

 

そう言った。

 

「この子を、生まれ変わらせる! そんでリインフォースの妹にするんや!」

 

はやてはそう宣言する。

 

「なるほど・・・・いい考えだな」

 

リボーンが同意するように頷き、ツナ達となのは達も頷く。

 

「それで私がこの子のお母さんや! それで雲雀さんがこの子のお父さんや!」

 

『・・・・・・・・んなぁぁぁぁあああああああっ!!!???』

 

はやてのアルカンシェル級の爆弾発言に、その場にいたほぼ全員が驚愕の叫びをあげ、当の雲雀はーーーー。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

目を見開いて硬直していた。

 




『マーレリング』の代理ができるのは、『シモンリング』だけだと思いまして、シモンファミリーに頑張ってもらいました。

ふと、なのはチームの戦闘力を、リボーンチームと比較してみました。作者の偏見があるのでご容赦を。

STSなのは単体(リミッター付き):キングモスカor死茎隊or10年後のγ級。

STSなのは単体(リミッター解除):幻騎士(ヘルリング&大戦装備<アルマメント・ダ・グエーラ>付き)級。

STS隊長陣(なのは・フェイト・はやて・シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ、リミッター解除状態):真・6弔花の桔梗・ザクロ・ブルーベル(修羅開匣状態)級。

Forceなのは単体:『ニューボンゴレリング』を付けたツナ級。

Force隊長陣:ツナかエンマ級。

と、こう判定しました。

次回で、A”sは終了します。
STS編は、ストーリーを区切りながら、短編にしながら書こうと思います。この作品を使って、別の作品を書きたくなってきたのです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ 未来へ

皆様の応援のお陰で、漸くA´sが終わります。最後に、STSでのボスキャラや、リリカルキャラの1人が以外な要素をいれます。


ーーーー『夜天の魔導書』によるこの事件は、『闇の書事件』として管理局の歴史に刻まれる事になり、実行犯である守護騎士達と彼女達の主である八神はやては、管理局の保護監視下に置かれ、後に管理局員となるのである。

この事件に『禁忌のロストロギア トゥリニセッテ』を守護するアルコバレーノとボンゴレファミリーとその協力者達の方は記されず、高町なのはやフェイト・テスタロッサ、クロノ・ハラオウン達によって解決された事にされた。

ツナ達の活躍を消された事になのは達は納得できない様子だったが、管理局がマフィアと結託しただなんてあまりにも管理局の組織としての体面が悪い処か、下手をすれば沽券や次元犯罪者達の付け入る隙を与える事になると考え、リンディ達が上層部にそう報告したのだ。

当のツナ達は気にしていないとなのは達を説得し、なのは達も納得はしていないが、取り敢えず理解した。

 

 

ーーーーそして、時は流れ、冬を越え、春となり、ツナと獄寺と山本、エンマとらうじと薫とSHITT・Pが中学三年生となり、了平と雲雀、アーデルハイドと紅葉とジュリーが卒業し、『並森高校』へと進学し、なのは達も小学四年生となり、漸く歩けるようになったはやてがなのは達の通う海鳴小学校に通えるようになった頃。

 

カキーーーーン・・・・!!

 

わぁああああああああああああ!!!

 

春の野球大会で見事なホームランを決めた山本に、観客が大歓声をあげ、同じく観客席で歓声をあげるツナ達とエンマ達に、ディーノとロマーリオ、そしてなのは達の姿もあった。

 

「やった! 山本がホームランだっ!!」

 

「薫に続いて連続だよ!」

 

「凄い凄い!」

 

「薫ーーーー! 武ーーーー! 頑張れーーーー!」

 

その観客席は盛り上がっていた。

良くも悪くも注目されているツナ達(雲雀は不参加)とエンマ達は勿論、なのはとフェイトとはやて、アリサとすずか、ヴィータも見目麗しい容姿をした女の子達と、モデルか芸能人と思わせるアルフとシグナムとシャマルとリインフォース改め、リインフォース・アインスとリンディ。・・・・そして、プレシアとアリシアとリニスがそこにいた。

 

 

 

* * *

 

 

時間は『闇の書事件』が終わってから1ヶ月後に遡りーーーー。

エンマ達はフェイトとなのはとアルフを連れて、『並盛診療所』へと向かった。

 

【エンマ。ここに何か用があるの?】

 

【うん・・・・ちょっと、ね】

 

診療所に入った一同の目の前に、1人の女の子がいた。

フェイトに良く似た、と言うよりも瓜二つと言っても良い容姿をしているが、フェイトよりも小柄な体型をしているその少女はーーーー。

 

【えっ? フェイトちゃん?】

 

【・・・・ウソ・・・・あの子って・・・・!】

 

【・・・・・・・・・・・・アリ、シア?】

 

なのはは首を傾げるが、フェイトとアルフは驚愕したような顔つきで、その少女、『アリシア・テスタロッサ』を見据えた。

 

【あっ!】

 

アリシアはフェイトを見ると、パァッと笑みを浮かべ、フェイトに駆け寄り、両手を広げて抱きついた。

 

【フェイト!!】

 

【ア、アリシア、どうして??】

 

戸惑うフェイトの耳に、さらに別の、そして懐かしい声が響いた。

 

【アリシア。どうしましたか?・・・・フェイト? アルフ?】

 

【リ、リニス!?】

 

【リニス!?】

 

灰色のボブカットヘアに猫耳を付けた女性が現れ、フェイトとアルフはさらに驚いた声をあげた。

さらにそこに、白衣を着た中年の男が現れた。

 

【おいおいシモンの坊主。いきなりアポなしでくるだなんてよ、少しはこっちの事情も考えな】

 

【すみません。ドクターシャマル】

 

【えっ? シャマル?】

 

【ああ。この人は私達の学校の一応保険医であるシャマルって言うの・・・・守護騎士のシャマルと同じ名前だけど、気にしないで】

 

【・・・・フェイ、ト??】

 

ドクターシャマルの後ろから、杖を付いて歩いてきた女性の声を聞いた瞬間ーーーーフェイトの心臓の鼓動が跳ね上がった。

その女性が前に現れた時、

 

【あ・・・・あぁ・・・・!!】

 

フェイトの顔は驚愕に染まった。

その女性は、アリシアとフェイトの母親である、『プレシア・テスタロッサ』だったのだ。

 

【な、な、何でこの女がっ!?】

 

叫んで威嚇しようとしたアルフの行動を予測していた紅葉と薫が、両脇からアルフを抑える。

 

【久し、ぶりね、フェイト・・・・少し、背が伸びた、かしら?】

 

プレシアは、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑んでフェイトに近づいていく。

フェイトは驚きのあまりまともな思考が出来ていない。

プレシアは、フェイトの目の前に歩くと立ち止まり、その目には、涙が滲んでいた。

 

【か・・・・母さ・・・・ん・・・・?】

 

フェイトは思わずそう呟く。

 

【私を・・・・まだ母と呼んでくれるのね・・・・】

 

そう呟き、プレシアは杖を離して膝立ちになり、フェイトを抱きしめた。

 

【ごめんなさい・・・・ごめんなさいフェイト・・・・私が愚かだったわ・・・・!】

 

プレシアがフェイトをしっかりと抱きしめ、涙を流し、嗚咽混じりに謝意を伝える。

プレシアに抱きしめられている事に気付いたフェイトの瞳からは、大粒の涙がボロボロと零れる。

 

【母・・・・さん・・・・・・・・母さんッッ!】

 

フェイトもプレシアを抱きしめた。

そんな様子を笑みを浮かべながら見ていた一同も、涙を流していた。

アルフも、最初はプレシアに対して警戒していたようだが、笑顔のフェイトを見て、

 

【・・・・アタシは、アイツの事を許さないよ】

 

良い雰囲気になっているが、プレシアがフェイトにしてきた仕打ちを思い返し、アルフはフェイトとプレシアに聞こえないように小さく呟くと、リニスが近づき、同じくらいの声で囁く。

 

【それで良いわアルフ。プレシアも、許してほしいとは思っていないから・・・・。でも、これから償っていくようだから、それだけは分かってあげて】

 

【・・・・・・・・分かったよ。リニス】

 

【はい?】

 

【おかえり・・・・】

 

【ええ。ただいま】

 

アルフとリニスはお互いに笑みを浮かべた。

 

 

* * *

 

それから、なのはの友達のアリサとすずかになのは達が魔導師である事や時空管理局の事を話し、なのはの両親や兄と姉に、なのはがこれから時空管理局で働きたいと言い、家族はそれを了承したり(ツナは渋面を作り、リボーンは無言で帽子のつばで目元を隠した)。

ボンゴレ式お正月で、なのはとフェイトとはやてがおみくじで、『恋愛運 今恋している人を逃せば一生恋愛経験0<ゼロ>の独り身になるから、死ぬ気で落とせ』と言うクジを引いたり。

ボンゴレ式雪合戦でクロノとユーノとアルフがビアンキに脅さーーーーお願いされて、ランボとイーピンと共に『毒牛中華飯』に入れられたりと、色々な出来事が起こり、そして現在ーーーー。

 

ガンッ! ゴンッ!

 

「な”っ!」

 

「の”っ!」

 

薫が打ったホームランボールがツナの脳天に落ち、ボールが跳ねて何故かエンマの横面に突き刺さって二人とも倒れた。

 

「にゃぁぁっ! ツナさんっ!」

 

「エンマ!!」

 

「器用な当たり方だな」

 

「「「「「10代目!!」」」」」

 

「おいツナにエンマ、大丈夫か?」

 

獄寺と一緒にツナの事を『10代目』と呼んだのは、すっかり初代ボンゴレファミリーとの記憶を取り戻した守護騎士のアインスとシグナムとシャマルとザフィーラであった。ヴィータだけはツナを名前で呼んでいる。

 

「野郎! 山本や水野薫ごときにホームランをボカスカ打たれるだけでなく、10代目をこんな目に合わせやがって・・・・!!!」

 

山本と薫の活躍をつまらなさそうに見ていた獄寺の顔が憤怒に染まり、

 

「テメエら!! 暴動起こすぞオラァッ!!!」

 

ダイナマイトを取り出して叫んだ。

 

「獄寺くん! ダイナマイトしまって!」

 

「なにしに来たのよアンタ!」

 

ツナとアリサがツッコミを炸裂させ、ザフィーラが羽交い締めして獄寺を止めると、シグナムが口を開く。

 

「まったくこんな事で騒ぐとは。・・・・獄寺よ。右腕を語るならば、10代目の面子に泥を塗るような真似は止めろ」

 

「んだとっ!」

 

「こう言えば良いのだ」

 

そう言うと、シグナムは大きく息を吸ってーーーー。

 

「山本ーーーー!! 野球よりも剣の道を進めーーーー!!!」

 

「それも違うでしょう!」

 

「なにしに来たんやシグナムも!」

 

今度はエンマとはやてがツッコミを炸裂させた。

実はあのクリスマスでの勝負以来、シグナムは暇さえあれば山本の元に行き、剣の修練を積んでいた。

その際に、山本を待つために放課後の並中の校門で待つシグナムの姿を多くの生徒が目撃された。

只でさえモデルのような高身長、グラビア顔負けの高プロポーション、宝塚に出れば一番の人気になるでろう麗人の美貌と、剣士特有の凛々しい雰囲気に、生徒達、特に女子生徒から注目され(中には『お姉様』と呟く女子もいた)、さらに野球部のエースにして正統派爽やかイケメンの山本と仲良さげにするものだから、

 

『山本(君)に年上で美人でナイスバディのお姉様な彼女がっ!!?』

 

と驚かれたが、シグナムの堅物そうな雰囲気と山本の能天気そうな雰囲気を見て、

 

『あれ、あの二人、以外に結構お似合いかも・・・・』

 

山本の人柄もあり、以外と受け入れられた。

そしてーーーー。

 

「ああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「っ! どないしたんヴィータ!?」

 

突然ヴィータが大声を上げて、一同が目を向けると、ランボの胸ぐらを掴んだヴィータがいた。

 

「この馬鹿牛! アタシのアイス食いやがった!!」

 

「ランボさん、アイスなんて食べてないもんね~」

 

「~~~~!!!」

 

口の周りにアイスの跡を付けても、鼻をほじりながら舌を出し、ふざけた顔で惚けるランボに、初めて会った時からまるで獄寺のように喧嘩し合う関係になっている上に、元々沸点の低いヴィータの頭に一気に血が昇りーーーー。

 

ボゴッ!!

 

「ぐびゃんっ!!」

 

ヴィータが若干魔力で身体能力を上げた拳を、ランボのモジャモジャアフロに振り下ろした。

 

「うわぁあああああんん!!」

 

「こらヴィータ! いくらなんでも小さい子どもに拳骨なんてアカンやろ!」

 

「だってはやて!!」

 

大声で泣くランボを見かねて、はやてがヴィータを叱る。この二人が会うと大体こんな展開が繰り広げられる。

そしてーーーー。

 

「ヴィータのバカバカ!! 『チビータ』の癖にっ!!」

 

ピキッ・・・・。

 

「・・・・・・・・」

 

泣きながらそう言ったランボに、ヴィータは頭に血管を浮き上がらせると、無言でアイゼンを取り出し、殺意を込めた視線でランボに向けて振り下ろそうとする。

 

「わぁああああああ!! ヴィータ! それは洒落にならないって!!」

 

「落ち着いてヴィータちゃん!」

 

「離せ! 今日と言う今日こそはこの馬鹿牛を!!」

 

「構わねえぞヴィータ」

 

「野球バカ達のように場外ホームランかましてやれ」

 

ヴィータを抑えるツナとらうじ。けしかけようとするリボーンと獄寺。そしてランボはーーーー。

 

「あああああああんん!」

 

モジャモジャアフロからピンク色のバズーカを取り出すと、それを自分に向けて発射した。

 

ドオオオオオオンン!

 

「あっ! 『10年バズーカ』!!」

 

『10年バズーカ』。

ランボが所属する中小マフィア・ボヴィーノファミリーが所持する、『10年後の自分と5分間入れ替わる事ができるバズーカ』。

これを聞いたとき管理局組は、「何そのロストロギア!?」と驚愕し、ボヴィーノファミリーを捜査しようかと思ったそうだ。

そして煙が晴れるとソコにはーーーー。

 

「やれやれ・・・・。“クラナガン”に戻る途中で10年前の世界に来るとは・・・・」

 

ソコにいたのは、牛柄のシャツに黒の革ジャンを着て、ジーパンを履いた伊達男だった。

 

「あっ、大人ランボ!」

 

そう、『10年バズーカ』で現れた15歳のランボだった。

ちなみに、初めて大人ランボを見た守護騎士達は揃って、

 

【【【【【ラ、ランポウ(くん)ッッ!!!???】】】】】

 

初代雷の守護者に似ていたので、少し騒ぎになったのは割愛する。

 

「どうも若きボンゴレ。それに、幼いなのはさん達も。それで、一体何が起きたんです?」

 

「いや、子供のランボがヴィータを怒らせちゃって・・・・」

 

「そうですか。ヴィータは昔から小さくてチャーミングですけど、少し短気な所が・・・・」

 

「誰が永遠の幼児体型だこの馬鹿牛ーーーー!!」

 

ドゴォン!!

 

「そこまで言ってないっ!!」

 

アイゼンで殴られ、地面に叩きのめされるランボ。

 

「ああランボ!」

 

「ヴィータ!!」

 

「だってはやて・・・・!」

 

「だってやあらへん! ごめんなランボくん、いや、今は年上やから、ランボさんかな?」

 

「ラ、ランボくんで良いですよ、幼いはやてさん。ヴィータがお転婆なのは昔から良く知っていますし。・・・・それと、謝らないでください幼いはやてさん。貴女に謝られるのは、正直後が恐い・・・・!」

 

「えっ?」

 

「(10年後のはやてちゃんって、どんな風になってるのっ!?)」

 

顔を青くしてはやてから目を逸らす大人ランボに、ツナははやての将来に若干恐怖した。

それから今度は、大人ランボを見てビアンキが昔殺した恋人のロメオと勘違いして暴走したり、ビアンキの姿を見て獄寺が失神したり、ジュリーが女性陣にセクハラしようとしてアーデルに殴られたり、SHITT・Pが珍行動を起こしたりと、ツナ達がいる観客席はカオスになっていた。

他の観客達は遠巻きでなんだなんだと見たり、選手達も珍しそうに見ていた。山本は「皆げんきだなぁ」と愉快そうに笑い、薫は恥ずかしそうに目を背けていた。

 

「・・・・にゃはははは」

 

「なのはちゃん?」

 

そんな騒動の中、なのはが楽しそうな笑みを浮かべ、ツナは首を傾げた。

 

「ツナさん。何か、楽しいね。私、凄く楽しいの。ずっと、このまま皆と一緒にいられると良いね」

 

「・・・・・・・・うん、そうだね」

 

騒がしくも、非日常的でも、楽しい日々。その日々の積み重ねが、未来へと紡がれていく。

 

「・・・・ん?」

 

そう実感し、ツナも笑みを浮かべた。その時、背後から物騒すぎる気配を感じて振り向くとーーーー。

 

「君達、何群れているだけでなく、風紀を乱しているの?」

 

「ひ、ひひひひひひ、雲雀さんんんんんんっ!!!」

 

鋭い視線でトンファーを構える雲雀がソコにいた。その後方では、草壁が苦笑いを浮かべていた。

 

「な、なな何でここにっ!!?」

 

「あ、ごめんなさい。私が呼んでいたんやったわ」

 

「はやてちゃんんんんんんっ!」

 

「噛み殺す!」

 

トンファーを振り回しながら迫ってくる鬼、いや、鬼神の風紀委員長から必死に逃げる一同(一部は面白がっているが)。

なのはを抱えて逃げるツナになのはが口を開く。

 

「ツナさん!」

 

「何っ!?」

 

「これからも、ずっと一緒だよ!」

 

「えっ? う、うん! そうだね!」

 

「んな事言ってる内に、雲雀がこっちに来てるぞ」

 

「んなーーーー!!!」

 

ツナの頭の上にに座るリボーンにそう言われて振り替えると、ツナに迫る雲雀が迫っていた。

 

* * *

 

夏になると、なのは達と一緒にマフィアランドに行き、なのはとフェイトとはやてが、裏マフィアランドで一生頭が上がらない『鬼教官(女性)』と出会う。

 

「高町! 貴様は自分のデバイスの能力に頼りすぎだ!」

 

「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!」

 

「テスタロッサ! 貴様は目の前に相手に集中し過ぎで周りへの警戒が疎かになりすぎだ!」

 

「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!」

 

「八神! 指揮官である貴様が前線に出過ぎてどうする!」

 

「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!」

 

「これから貴様らをたっぷり鍛えてやるっ! 拒否は許さん! 分かったかひよっこ共!!」

 

「「「イ、イエス、マム・・・・」」」

 

「声が小さすぎるわっ!!!!」

 

「「「ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!!!」」」

 

「分かったか! ひよっこ共っ!!」

 

「「「イエス、マムッ!!!」」」

 

と、帰ってきてからしばらく、訓練の恐怖で人格崩壊を起こしていたりした。

因みに、その訓練の一貫で、なのは達の『死ぬ気の炎』を調べてみると。

なのは・大空。

フェイト・雷。

はやて・雨。

アインス・雲。

シグナム・雨。

ヴィータ・嵐。

シャマル・晴れ。

ザフィーラ・雷。

クロノ・嵐。

ユーノ・晴れ。

アルフ・嵐。

リンディ・大空。

プレシア・雲。

アリシア・晴れ。

リニス・雨。

となっていた。

ボンゴレ式修学旅行でヴァリアーと出くわしたり。

 

「ヴぉおおおおおおおおおおおおおいいっ!!! 何だぁこのガキ共はぁああああっ!!?」

 

『み、耳が・・・・!!』

 

さらに先の未来で、アインスの妹であるツヴァイが生まれる。

 

「雲雀さ~ん! 大好きですぅ~!」

 

「・・・・・・・・」

 

なんと、一目で雲雀になつき、雲雀自身も可愛がっていた。

そんな少し先の未来に向かって、ツナは歩く。

これから先の未来に何が起こるか分からない。もしかしたら辛い事、苦しい事、悲しい事が待ち受けているのかもしれない。

それでも、歩いて行こう。友達と、仲間と、家庭教師と、少しずつ、一歩ずつ、望む未来に近づけるように、歩き続けていこう。

 

 

 

ー『かてきょーリリカルREBORN A's』・完ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「ふぅ~ん。“こっちの彼”は、彼女達と仲良しなんだね・・・・」

 

ツナ達がいる球場のーーーー“遥か上空の空に佇む、黒い翼を背中に広げた青年”が、ツナ達を見下ろしていた。

 

「さて、これから起こる『10年後の事件』に向けて、少し彼にも接触してこようかな☆ “彼も未来の記憶を持っているし、僕の事も知っているからね”。・・・・『雲の6弔花』にして、『GHOST<ゴースト>』の前の『雷の真6弔花』・・・・『ジェイル・スカリエッティ』!」

 

そう言って、青年は黒い翼を広げて、大空に羽ばたいていった。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「ん?」

 

雲雀をディーノとはやてに任せて、逃げ終えて一息ついたツナとなのはと余裕の態度のリボーン。

なのはが自販機を見つけて、飲み物を買おうと離れた。

ツナはふと、空を見上げたその時ーーーー1枚の黒い羽が、自分の目の前に落ちてくる。

 

「・・・・・・・・」

 

何故かツナはその羽が気になり、触れようとするがーーーー突然の風が吹いて、羽は何処かへ飛んでいってしまった。

 

「・・・・なぁ、リボーン」

 

「・・・・どうやら、何かが起きそうだな」

 

ツナは『超直感』から、リボーンは『膨大な経験からくる直感力』から、これから先のいつかの未来で、何かが起きる事を予感していた。

 

「ツナさーん! リボーンくーん!」

 

そんな二人に近づくなのはを見て、二人は笑みを浮かべて、なのはの元へ行ったーーーー。

 

「あっ!」

 

その途中、なのはがつまづき、転びそうになる。

 

「受け止めろダメツナ」

 

ゲシッ!

 

「うわっ!」

 

リボーンに蹴られ、なのはを受け止めたツナ。

 

「・・・・にゃはは」

 

「・・・・はははっ」

 

なのはとツナはお互いの顔を見ると、大空のように、晴れやかな笑みを浮かべるのであった。




リリカルキャラの属性は、作者の偏見によるものです。
STS編は短編で書いていくつもりです。因みに、その話に現れるツナ達は、“10年後のツナ達ではありません”。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オマケ 雲の置き土産

STSに入る前に、少しのオマケです。
かなり杜撰に書いてしまいました・・・・。


これはーーーー『闇の書事件』が終わりを迎えて暫く経ったある日の八神家。

その日、突然はやて達の家に、ツナとリボーン、そして、スーツ姿をした柔和な笑みが良く似合う品の良さそうな老人が訪ねてきた。

 

「ツナさん。このおじいちゃんは誰なんですぅ?」

 

「この人はーーーーボンゴレ9代目だよ」

 

「「「「「「っ!!?」」」」」」

 

ボンゴレ9代目。つまり、ツナの先代のボンゴレファミリーのボスである。

はやては驚愕し、守護騎士達は片膝を付いて頭を垂れた。

 

「そんなに畏まらなくて良いよ。八神はやてちゃんに、ヴォルケンリッターの皆さん。今日は、君達に渡したい物があるので、持って来たんだよ」

 

そう言って、9代目は懐から、古い大きめの木造の箱を取り出した。

 

「えっと・・・・9代目さん。これって何ですか?」

 

「初代雲の守護者アラウディが残した遺産だよ」

 

「初代雲の守護者さんの・・・・?」

 

 

 

 

 

 

リビングに行った一同は、テーブルの上に置かれた箱を見ながら、9代目が話を始めた。

 

「これは、初代雲の守護者が、もしボンゴレファミリーが『夜天の魔導書』と出会った時に開封するように伝えられていた物だよ。リボーンから報告を受けてね。君達に渡すために持ってきたんだ」

 

そう言って、9代目が箱の鍵を解錠すると、箱の中身が露になった。

ソコに入っていたのは、銀製の懐中時計が五個と一個の指輪が納められていた。

 

「これって・・・・?」

 

「懐中時計だな。初代<プリーモ>と守護者達が金の懐中電灯を持っていたが、お前らには銀の懐中時計か。これはどうやら、初代雲の守護者から、お前らへの贈り物のようだぞ」

 

リボーンの言葉が真実であるかのように、それぞれの懐中時計の蓋の表面には、守護騎士達の証のような模様が刻まれていた。

炎を纏った剣。大きなハンマー。ペンデュラム。狼。そして十字架。

間違いなく、これはリインフォースと守護騎士達への贈り物である事が分かった。

シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リインフォースは、それぞれの物らしき懐中時計を手に取り、蓋を開けた。

 

「「「「「ーーーー!!」」」」」

 

「???」

 

その時、五人の目が潤んだ。はやては首を傾げてリインフォースの持っていた懐中時計を見るとソコには。

アラウディと守護騎士達が写された、たった一枚の写真が納められていたのだ。

 

「・・・・皆、これって?」

 

「たった一度だけ、主アラウディがボスやエレナ殿に頼まれ、渋々ですが、私達と撮った写真です・・・・!」

 

その写真には、雲雀と瓜二つの容姿をし、金髪にコートを着たスーツ姿の男性が大きめの椅子に座り、その周りを、ボンゴレ伝統のスーツを着用したリインフォースとシグナムとヴィータとシャマルが立ち、椅子の傍らに狼形態のザフィーラが座っていた。

 

「この人がアラウディさんやな。ホンマ改め見てみると、雲雀さんや風<フォン>くんにそっくりやな~」

 

「ん? 懐中時計の裏に何か書かれてるよ?」

 

ツナに言われ時計の裏を見ると、確かに文字が刻まれていた。

 

「これは・・・・もしかしたら」

 

シャマルが全員の懐中時計を預り、テーブルの上に置き、文字を文章になるように並べるーーーーそして。

 

「これって、イタリア語?」

 

「「「「「っっっ!!!??」」」」」

 

その文章を読んだ瞬間、ヴォルケンリッター全員が、驚愕し、涙を流した。

 

「み、皆!?」

 

「どうしたの? なんて書いてあるの?」

 

「・・・・こう書かれてあるぞ。【我が最愛なる騎士達に、安らぎと幸福が訪れる事を願う。 元夜天の主・アラウディより】、ってな」

 

リボーンがそう説明すると、ツナとはやても肩を揺らし、少し涙ぐんでいた。

 

「その木箱と一緒に保管されていた記録によると、初代霧の守護者D・スペードが君達を封印し、アラウディと交戦した。辛くも勝利したアラウディは、そのままD・スペードを粛清しようとしたが、プリーモがそれを止めた。D・スペードはその時に、プリーモにボンゴレから身を引けと進言した。さもなければ、ボンゴレファミリーとD・スペードの間で内部抗争が発展する。このまま自分が居続ける事で無用な争いと血が流れる事を危惧したプリーモは、ボンゴレを引退し、初代雨の守護者朝利雨月からの勧めもあって日本へと行き、そこである藩主の娘と結婚し、『沢田家康』と名乗って生きていたのだ。そして、アラウディはそのまま門外顧問組織CEDEFを創設し、秘密裏にこの箱を隠してきたんだろう。いつか、君達とボンゴレが再び出逢う日を信じてね」

 

「「「「「・・・・!!!」」」」」

 

守護騎士達は泣いた。主アラウディは自分達の事をあまり気にていないとすら思っていた。

 

【アラウディさんは、貴女達の事をどうでもいいだなんて思っていないわ】

 

【そう、なのか?】

 

【でもよ、アタシらをジョットに預けて融合騎だけ連れて行ったじゃねぇかよ?】

 

【それはね、アラウディさんは融合騎さんから聞いたようで、スペード達からも聞いたわ。貴女達が長い間ずっと、血生臭い戦場に立って戦っていたって。それで貴女達にはこれから、心穏やかに過ごして欲しいって思って、アラウディさんはプリーモに預けたのよ】

 

【そう、なのかしら・・・・?】

 

【きっとそうよ。信じてあげたら、貴女達の主様を】

 

【エレナ殿・・・・】

 

エレナの言うとおり、主は自分達の事をちゃんと思っていてくれた。そして、また会えると信じてくれて、自分達との思い出の写真を添えて、遥か時を越えて贈り物をしてくれた。それが嬉しくて堪らなかった。

 

「皆、良かったな・・・・!」

 

「「「「「は、はい(うん)・・・・!!」」」」」

 

はやてが感動したように騎士達に声をかけると、涙混じりに守護騎士達が返事をした。

 

「八神はやてちゃん。そして、これを君に・・・・」

 

9代目がはやてに渡したのは、紫の宝石に十字架の紋章が連なった指輪だった。

 

「これって?」

 

「その銀時計がヴォルケンリッターへの贈り物なら、そのリングは現在の主への、アラウディからの感謝と騎士達を任せると言う贈り物だろうね」

 

そう言われ、はやてはリングを嵌めた時、一瞬だけ、声が聞こえた・・・・。

 

ーーーー彼女達を任せるよ。

 

「っ!」

 

そう、ほんの一瞬の時、アラウディからのメッセージが聞こえたのだ。

 

「はい・・・・この子達の事、私が守ります・・・・」

 

そう決意したはやての指に嵌めたリングから、僅かだが、『雲の死ぬ気の炎』が立ち上がっていたのを、ツナとリボーンと9代目は見逃さなかった。

 

「(リ、リボーン・・・・!)」

 

「(どうやらあのリングも、炎を発現するリングのようだな)」

 

「(か、回収する、訳にはいかないよな・・・・?)」

 

「(心配は要らないよ綱吉くん)」

 

「(9代目?)」

 

「(彼女は優しく、そして聡明なお嬢さんのようだ。リングの力を使おうとは思わないだろう)」

 

9代目がそう言って、ツナ達も黙る。

それから守護騎士達は、何処へ行くにもその銀時計を持って行き(ザフィーラは首輪のように首に下げていた)、はやてはリングをマモンチェーンでネックレスのように首に下げるようにした。

9代目はその後、アリサとすずか、リンディたち時空管理局員とお茶をしたり、翠屋に行くと、士郎と旧交を温めたりして、僅か数日だったが、充実した時間を送った。

 

 

 

 

そしてーーーー9代目が日本を発とうとする時、なのは達も見送りに来て、隠れている護衛に守られながらその場を去り、飛行機に乗ろうとした時に、幼い男の子がやって来た。

護衛が警戒したが、9代目が制した。

 

「あの、これ落としたよ」

 

男の子が渡したのは、9代目のハンカチだった。

 

「ああ、これはありがとう坊や。君の名前は?」

 

「うんっとね、『嵐山輝二<あらしやま こうじ>』、七歳です!」

 

「そうか、では輝二くんありがとう」

 

「うん! お父さんとお母さん、お兄ちゃんと妹が待ってるから、バイバイ!」

 

そう言って、男の子は少し離れた位置にいた家族の元に走っていった。

 

「・・・・・・・・」

 

9代目はハンカチを渡された時に、その男の子の中にーーーー『炎』が見えた。

 

「・・・・どうか、あの少年に幸があらん事を」

 

まさかこの偶然に出会った少年と、数年後に再会する事になるとは、9代目も、勿論その少年も、思いもしなかっただろう・・・・。




はやては雨属性だけでなく、雲の属性を持っています。
そして最後に現れた少年は、10年後くらいになのは達とも出会います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Strikers編
新たな始まり、来る


かなり雑に書き上げてしまいましたが、STS編、スタートです。


ーツナsideー

 

『闇の書事件』から2年後。

高校生となったツナ達ボンゴレファミリーと炎真達シモンファミリーに、さらなる脅威が現れた。

新たに台頭したマフィア。戦争を裏から操る『死の商人とも呼ばれる財団』。

800年前の錬金術によって生まれ、現代に甦った『欲望の怪物』。

ある学校で起こった『星座の力のスイッチ』の事件。

なのは達、〈時空管理局〉と違った法則の魔法でしか対抗できない『絶望の魔獣』。

ありとあらゆる暗黒街の闇の組織と、『協力者達』と共に戦っていたツナ達の元に、最悪の情報が送られた。

フェイトが執務官試験や、はやてが管理局魔導師として忙しくなり、なのはが皆の分まで頑張ろうとオーバーワークをしていた。

それを見たツナが、「無理をしないで」となのはにアドバイスしたり、なのはと一緒に武装隊の演習である異世界に行ったヴィータに「なのはちゃんが無理しないように見ていて」と助言したが、二人はそれをマトモに受け取ろうとしなかった。そして最悪の報せを受けた。

 

 

ーーーーなのはが、撃墜された。

 

 

何者かに襲撃された。泣きじゃくるヴィータの証言から、“何者かが伸ばした触手のようなモノが、なのはの身体を貫通したのだ”。

ヴィータはその触手の元を辿ろうとしたが、その先には誰もいなかった。

なのはは重体となり、過酷なリハビリをしても、魔導師として復帰できるか分からないと言われた。

ツナ達ボンゴレファミリーと、炎真達シモンファミリーが、なのはが入院している管理局の世界の病院に駆け込み、泣きじゃくるフェイト達を仲間達に任せ、ツナはなのはの病室に入っていった。

 

「なのはちゃん・・・・」

 

「ツナさん・・・・ごめんなさい。ツナさんの言うとおり、私、無理していたかも知れないの・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「で、でも大丈夫だよ! もうこんな無茶なんかしないし! リハビリも頑張れば、また魔導師として復帰できるから! だからツナさんも、心配しないで・・・・」

 

ーーーーギュッ。

 

見るからに無理して笑みを浮かべるなのはの小さな身体を、ツナは優しく抱き締めた。

 

「ツ、ツナ、さん・・・・?」

 

「なのはちゃん、泣いていいんだ・・・・」

 

「・・・・!」

 

「泣いて、良いんだよ・・・・」

 

ツナはそう言って、なのはの身体をさらに強く抱き締めた。そうされていると、なのはの心は、まるで大空に抱かれているような不思議な安心感と温かさに包まれていった。そしてーーーー。

 

「うっ、うぅっ、ツナ、さん・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

嗚咽を漏らすなのはが、ツナの身体にしがみつき、涙が止めどなく溢れてくる。

 

「私、もう飛べないのかな・・・・? もう・・・・っ、皆に・・・・必要と、されなく、なるのかな・・・・? 皆と、一緒に・・・・いられないの、かな・・・・?」

 

「そんな事無いよ・・・・。魔導師じゃなくなったくらいで、フェイトちゃんが、はやてちゃんが、シグナムが、ヴィータが、シャマルさんが、ザフィーラが、アインスやリィンが、ユーノやアルフや、クロノやリンディさんにエイミィが、なのはちゃんの事を、必要としない筈ないよ。友達をやめる筈なんて、絶対に無いよ」

 

「うぅっ、うわぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

ツナは優しい声で、なのはの頭を優しく撫でながらそう言うと、なのははさらに泣き出した。

なのははツナにしがみついて離れず泣き続け、ツナも嫌な顔一つしないで、なのはの頭を優しく撫でたり、背中をさすってやったり、優しく抱き締めてあげていた。

 

 

 

 

 

ー炎真sideー

 

なのはの泣き声は、病室の外にまで響き、フェイトが辛そうに顔を俯かせ、隣いた炎真が、フェイトを抱き寄せた。

 

「・・・・ぐすっ」

 

「・・・・・・・・」

 

涙を流すフェイトを、炎真は黙って身体を貸した。

 

「・・・・士郎。ちょっと来い」

 

「っ、リボーン? 何だい?」

 

「良いから来い」

 

リボーンが、先ほどまで「なのはを管理局にいれるんじゃなかった・・・・」と、泣き言を言っていた士郎に、帽子で目元を隠したまま、有無を言わせないと言わんばかりの迫力で連れ出した。その後を、桃子だけがついていった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数週間程が経ち、ツナは毎日のように管理局の病院に赴き、なのはのメンタルケアをするようになった。

しかしそんなある日に、リンディとクロノから、ある事を聞かされた。

管理局上層部に、なのは達がボンゴレファミリーと懇意な関係にある事が知られてしまったのだ。

唯でさえマフィアであり、管理局が禁忌のロスト・ロギア『トゥリニセッテ ボンゴレリング』を所持するボンゴレファミリーの事を危険視している管理局からすれば、看破できる物ではなかった。

それ故に、ボンゴレとボンゴレに関わる組織との接触を禁止とされた。

フェイトとはやて達八神一家は、管理局では少し肩身の狭い立場であるのに、自分達と関わるとさらに立場を悪くさせてしまう。

その事に悩んだツナと炎真とリボーンはーーーーシモンファミリーの聖地で暮らしている、『シモンファミリー チーフメカニック(予定)』のプレシア・テスタロッサに相談してみた。

 

「確かに、管理局の対応は当然ね。過去の遺恨がある以上、今後フェイト達とはあまり関わらない方が良いのかも知れないわ」

 

「やっぱり、そうですね・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

二人は顔を俯かせる。まだなのはの心は完全にケアもできていないし、執務管試験を控えているフェイトのサポート、これから後ろ指を刺されていくはやて達のフォロー、問題が山積みなのに、その途中で投げ出さねばならない状況に、渋面を作っていたのだ。

そんな中、アリシアとリニスが屋敷に戻ってきた。

 

「ただいま~! あっ、炎真にツナにリボーン!」

 

「アリシア。炎真様にはちゃんとボスと呼ばないといけませんよ」

 

「気にしなくて良いよリニス」

 

「炎真様。もう少しボスとしての上下関係はキチンとしておかないと・・・・」

 

リニスの小言が始まる前に、アリシアが手に持っていた宝石を皆に見せた。

 

「ママ。これさっきお屋敷の前で見つけたの」

 

「っ! これって、『レリック』・・・・!?」

 

「プレシア。『レリック』と言えば・・・・」

 

「ええ。ジュエルシードのようなロスト・ロギアよ。何故こんな物がーーーー」

 

と、ソコで突然、『レリック』が目映い光を放つ。

 

「「「っ!!」」」

 

「危ない!」

 

「くっ!」

 

「・・・・」

 

ツナがアリシアから『レリック』を取りアリシアを下がらせ、炎真がプレシアを、リボーンがリニスを引っ張って後ろに下がらせると、光はさらに強まり、その部屋を覆うように広がった。

 

「「「ーーーー!」」」

 

漸く光が収まり、プレシアとアリシアとリニスが目を開けると、ツナが、炎真が、リボーンが・・・・その姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん、んん・・・・?」

 

ツナが目を覚ますと、いつの間にか自分が地面に横たわっていた。

 

「こ、ここは・・・・? っ、リボーン! 炎真! プレシアさん! アリシア! リニス!」

 

ツナが周りを見渡すと森のような場所であった。近くに炎真が倒れており、リボーンやプレシア達の姿はなかった。

 

「炎真! 炎真!」

 

「・・・・っ、つ、ツナくん?」

 

炎真も起き上がると、周りを見渡し、首をかしげた。

 

「ここは・・・・一体?」

 

「分からない・・・・でも、ここは地球じゃない気がする・・・・」

 

ツナの超直感が、この場所は地球ではないと感じていた。

 

「「・・・・・・・・っ!」」

 

ツナと炎真は周りから妙な感覚を感じ、背中合わせに周りを見ると、森林の中から、赤い点が幾つも光っていた。

 

「・・・・これって」

 

「人間の気配がしない・・・・恐らく、『モスカ』のような無人機だと思う」

 

二人がそう言うと、赤い点から、放射線上の熱光線ーーーーレーザーが発射された。

 

「「っ!!」」

 

ドォオオオオオオオンン!!

 

二人がいた地点に爆発が起き、土煙が舞い上がる。

森林の中から、人間位の大きさをしたカプセル状のロボットが大軍で現れる。

ロボットは内部からアームケーブルを出し、ウネウネと動きながらツナと炎真のいた地点に向かおうとしたその時ーーーー。

 

ーーーーピピッ!

 

ロボット達のセンサーが何かを感知したように動きを止めると、土煙の中から、橙色と真紅の炎が燃え上がる。

 

「「ーーーー!!」」

 

「ガゥ!」

 

ハイパーモードのツナと戦闘形態となった炎真が無傷で佇み、ツナの肩にはナッツがいた。

 

「行くぞ。炎真」

 

「うん」

 

いきなり攻撃してきたロボット達を敵と判断した二人は一瞬で動くと、ロボットの大軍の半分を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「どうだい?」

 

ソコは薄暗い研究所のような部屋で、1人の青年が、空中ディスプレイに映されるロボット軍団とツナ達の戦いを眺めていた白衣の男性に話しかける。

 

「・・・・一応『ガジェットⅠ型』を1000機ほど向かわせましたが、やはりと言うか、僅か1分でもう半分以上が破壊されていますね。“私の知る未来の彼より強くなっています”」

 

「君の“娘さん達”を向かせなくて良かったでしょう?」

 

「ええ。間違いなく全員でかかっても、全滅していたでしょうね」

 

「うん♪ でも、だからこそ、面白くなりそうじゃない? 『スカリエッティくん』?」

 

「・・・・まぁ、そうですねーーーー管理局の魔導師、彼女達二人が向かっていますが、到着する頃には、『ガジェット』達は壊滅していますね」

 

「そうだねぇ、残念だね彼女達も。上層部の横やりが無ければ、あのまま彼らと共にいて、“僕や君の知る彼女達よりも強くなっていた筈なのに”」

 

「ええ。多分ですが、“デイジーかトリカブトくらい”はなれたと思いますがね。強くなれる機会を失うとは、彼女達も不運ですねぇ」

 

「ふふふっ♪」

 

二人の男性は、ツナ達の元へ向かう魔導師達に、嘲弄の笑みを浮かべながら、映像を眺めのであった。




STS編は少し短編風に書いていくと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大人となった魔導師

勢いがついて書き上げました。


ーツナsideー

 

「終わったな」

 

「うん」

 

「ガゥ」

 

ツナと炎真とナッツは、完全にスクラップにした機械達を見てそう言った。かなり戦闘能力を持った兵器で数が揃えば面倒な相手だ。が、単体での戦闘能力で言えば、正直かつて『十年後の未来』で戦った『キング・モスカ』の方が強かった。数で攻めてもきても、すでにこの二人の相手にすらならない。

 

「「っ!」」

 

ツナと炎真は、遠くから誰かが近づいている気配を感じ、瞬時に林の中に隠れ、気配を消した。

すると、森の上空から、二人の女性が下りてきた。その服装と手に持っている杖はに、奇妙な見覚えがあった。

 

「(あれって、魔導師の服と杖だね・・・・?)」

 

「(と言うことは、ここは管理局の世界か・・・・?)」

 

二人が若干警戒するが、あの服装、BJ<バリアジャケット>と杖に見覚えがあり、顔を見たくても曇り空のせいか見えず、訝しそうに見ていると、女性達が破壊された機械達に見ながら、話し声が聞こえた。

 

「ねえーーーーちゃん、ここだよね?」

 

「うん。ロングアーチの子達が言っていた地点はここだよ。ここに『ガジェット』が大量に現れた反応があった筈なのに」

 

「・・・・『ガジェット』が、全滅している」

 

「反応は1000体もいたのに、それが僅か数分で全滅したなんて・・・・!」

 

「見てこれ、まるで高熱で貫かれたり、切られたりしているよ」

 

ツナの拳で貫かれ、チョップで焼き切った残骸を指差し、

 

「こっちはまるで、強力な力で潰れたようだよ」

 

もう一人の女性は、エンマが重力で潰した残骸を指差した。

 

「彼女達は・・・・一体?」

 

「ガゥ?・・・・ッ、ガウッ!!」

 

「ナッツ!?」

 

首を傾げていたツナとエンマだが、ナッツはその女性達を見ると、パァッと顔を明るくし、ツナの肩から飛び下りると、その女性達の方へと走っていく。

 

「ガァゥ~~♪」

 

「「っ!!??」」

 

女性達はナッツの声に肩を揺らすと、ナッツの方へと視線どころか、身体全体を向けた。

 

「ガゥ! ガァウゥ~♪」

 

ナッツは走りながら鳴くと、女性達の片方、白いBJを纏う魔導師に抱きつこう跳ねると、その女性はナッツを抱き止めた。

 

「ーーーーウソ・・・・ナッツ、なの・・・・?」

 

「ガゥガゥ~♪」

 

その女性がナッツの名を呟くと、ナッツは肯定するように鳴き声をあげ、女性の大きな胸元に顔を埋め、甘えるような声を発した。

 

「・・・・行こう炎真」

 

「・・・・うん」

 

観念した二人が森から出ると、ちょうど雲が裂け、陽の光によって、魔導師の女性達の顔を照らし始め、

 

「「っっ!」」

 

「「っっ!?」」

 

ツナとエンマ、そして魔導師の二人も、同時に息を呑んだ。

栗色の長髪を白いリボンでツインテールに結わえ、紫色の瞳に、少女の可愛さと女性の美しさが見事に調和された女性。

もう片方の女性は、長く美しい金髪を黒いリボンでツインテールに結わえ、まるで芸術品のような凄まじい美貌を放つ女性。

二人共、ツナと炎真の記憶の中の少女達が、順調に成長したらこんな風になっているだろうと思うような女性達。

そして戦闘モードを解除したツナとエンマ、そして女性達は口を開いて、その名前を呟くーーーー。

 

「“なのは”、ちゃん・・・・?」

 

「ツ、ツナさん・・・・!」

 

「“フェイト”・・・・なの?」

 

「うん・・・・! フェイトだよ、エンマ・・・・!」

 

戸惑いながら名前を呟くツナとエンマ。栗色の女性、『高町なのは』と金髪の女性、『フェイト・T・ハラオウン』は目に涙を貯め、持っていた杖、デバイスの『レイジングハート』と『バルディッシュ』を握った手からゆっくりと力が抜け、デバイスが地面に落ちると同時に、ツナとエンマの元に駆け出し、なのははツナに、フェイトはエンマに抱きついた。

 

「わぷっ!」

 

「うぷっ!」

 

二人は大人になったなのはとフェイトに抱き締められ、すっかり身長差がついたせいか、ツナはなのはのビアンキとアーデルの中間くらいに成長した胸に、エンマはすっかりアーデル級に成長したフェイトの胸に、顔を埋める形になった。

 

「ツナさん・・・・! ツナさん・・・・!!」

 

「エンマ・・・・! 会いたかった、会いたかったよぉ・・・・!!」

 

嗚咽交じりに二人を力一杯に抱き締めるなのはとフェイト。

息ができず、ツナとエンマが腕をタップするまで続いた。

 

 

 

 

「「えぇっ!!? 『8年後の未来』っ!?」」

 

「「えぇっ!!? どうりで小さいと思ったら、『8年前の過去』からっ!?」」

 

漸く解放されたツナとエンマが聞くと、なのはの事件からざっと“8年後の未来”だと知った。

なのはとフェイト、はやて達八神一家も、現在は管理局の世界で住んでおり、なのはは一等空尉の教官に、フェイトを執務官に、はやては監察官として管理局に務めており、現在ははやてが新たに設立した『機動六課』に所属している事も聞いた。

 

「それで、ツナさんとエンマさんは、どうやって未来に来ちゃったの?」

 

「うん。俺とエンマ、それにリボーンは、プレシアさんの所に行っていたんだけど」

 

「えっ? 母さんの?」

 

「それでアリシアが拾ってきた『レリック』ってロストロギアが光り出して、気づいたらここに・・・・」

 

「『レリック』? 私達も今回収しているロストロギアなの」

 

「一体どうなってるだ・・・・?」

 

う~んと、四人が唸っていると、

 

「ガァ~ゥ」

 

炎が切れかかっているのか、なのはに抱かれているナッツが切なそうな声をする。

 

「あ、ナッツ、お腹空いちゃったの?」

 

「ここで考えても仕方ないし、エンマもツナも、私達機動六課の隊舎に来た方が良いよ」

 

「そうだね」

 

「じゃあお言葉に甘えようかな?」

 

すると突然、なのははツナを抱き抱え、フェイトがエンマを抱き抱えた。

 

「ちょっ、なのはちゃん!?」

 

「フェ、フェイトなにっ!?」

 

「この方が良いの!/////」

 

「そ、そうだよ!/////」

 

そう言って、なのはとフェイトが空高く飛び上がり、上空にいたヘリコプターの中に入っていった。

 

「あ、あのさ、なのはちゃん・・・・/////」

 

「フェ、フェイト・・・・ちょっと、くっつき過ぎじゃ、ないかな?/////」

 

「き、気にしないでツナさん/////」

 

「そ、そうだよ、ヘリの中って結構揺れるから/////」

 

ナッツを膝に座らせたなのはとフェイトは、ツナとエンマに片腕にガッシリと抱きつきながら顔を赤くする。まるで、二度と離れないと言わんばかりに。

そして、二人のすっかりご立派になった胸がそれはもうたっぷりと当り、15~6歳の青少年にはかなり毒だった。

それをヘリのコックピットで見ていた『ヴァイス・グランセリック』はこう語る。

 

「(ハラオウン執務官は前からそうじゃないかなと思ってたけど、高町空尉も年下好きだったのかっ!?)」

 

とーーーー。

 

 

 

 

 

 

それから少しして、六課隊舎に到着した四人に、思わぬ人物が出迎えてきてくれた。

茶髪のボブカットヘアにバッテンのヘアピンにした、記憶の少女が大人になり、茶色の制服を着た女性。背丈はなのはとフェイトより低いが、制服ごしでも、女性として十分成長したのが分かる。

さらにその後ろには、同じ制服を着た2人の女性と小さな女の子、妖精のように小さな身体の女の子、白衣を着た金髪の女性と、青い体毛の狼。

 

「「もしかして、はやて、ちゃん・・・・?」」

 

「せやで! 久しぶりやなツナさん♪ エンマさん♪」

 

「シグナムに、ヴィータに、シャマル・・・・!」

 

「ザフィーラに、アインスに、それに『リィン』・・・・!」

 

はやての後ろにいた女性達に向かって問いかけた。

桃色の長髪をポニーテールに結わえた凛々しい女性、烈火の将シグナム。

赤い髪を三つ編みにした小学生くらいの女の子、鉄槌の騎士ヴィータ。

白衣を着た穏やかそうな金髪の女性、湖の騎士シャマル。

青い体毛の狼、盾の守護獣ザフィーラ。

長い銀髪のクールな雰囲気の少女、夜天の書の融合騎、リインフォース・アインス。

そしてアインスの妹である、妖精のように小さい身体をした女の子が、『リインフォース・ツヴァイ』。愛称『リィン』だ。

 

「お久しぶりです10代目。息災で何よりだ古里殿」

 

「お前ら、本当にガキの頃の姿なんだな!」

 

「ヴィータちゃん、失礼よ。ごめんなさい10代目。エンマくん」

 

「災難でしたね、10代目。古里殿も無事で安心したぞ」

 

「10代目。古里殿。またお会いできて嬉しく思います」

 

「ツナさん! エンマさん! お久しぶりですぅ!」

 

「久しぶりって言われても・・・・」

 

「僕達にとっては昨日会ったばかりだし・・・・」

 

苦笑いを浮かべる二人に、はやてが顔を覗き込むように見る。

 

「はへぇ~。ホンマにあの頃のツナさんとエンマさんや。“聞いてはおったけど”、改めて見るとやっぱ驚くなぁ」

 

「えっ? はやてちゃん?」

 

「“聞いていた”って、私達まだエンマ達の事伝えてないけど?」

 

「ああ実はな。こっちにも“懐かしい人”が現れたんや」

 

「はやての頭の上に座るように着地したヤツがな」

 

「えっ、それって・・・・」

 

 

 

 

「当然。俺の事だぞ」

 

 

 

 

 

「「「「っ!!」」」」

 

騎士達の後ろから響いた声に、ツナとなのはとエンマとフェイトが視線を向けると、騎士達が横に避け、ソコに立っていたのは、黒服に黒い帽子に、帽子の上にコミカルなカメレオンを乗せた二歳くらいの幼子。

 

「「「「リボーン(くん)!!」」」」

 

「抱き締めて~」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「こっちよ」

 

「んなっ!」

 

「あ”ぉっ!」

 

目の前にリボーンに気を取られていたツナとエンマの後頭部に、“なのはのBJのコスプレをしたリボーン”が蹴りをおみまいした。ちなみにレイジングハートはレオンが変身していた。

 

「ツナさん!」

 

「エンマ!」

 

「隙ありだぞ」

 

「えっ、リボーンくん?」

 

「じゃシグナム達の後ろにいるのは・・・・」

 

向こうにいるリボーンの目を向けると、そのリボーンは張りぼてだった。

 

「目に映る物が全てじゃねえぞ。それにしても久しぶりだな、なのはにフェイト。すっかり美人になったな♪」

 

「久しぶりなのリボーンくん。・・・・でも、その格好はなんなのっ!?」

 

「久しぶりだからなのはのコスプレをしてみたの。にゃははは」

 

「相変わらずだねリボーンも・・・・」

 

「あいたたたたた・・・・」

 

「お前なぁ! こっちの心配を知らずに!」

 

「んん? お前が俺の心配をするだなんて随分と偉くなったなぁ?」

 

ーーーーギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ・・・・!!

 

「いだだだだだだだだだだ!! ギブギブゥ!!!」

 

リボーンがツナの腕を締め上げると、ツナは悲鳴をあげ、エンマは苦笑いを浮かべ、8年ぶりに見る二人のやり取りに、なのは達は懐かしさも混じって苦笑いを浮かべるのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機動六課にようこそ

ーツナsideー

 

時空管理局・機動六課隊舎にて、リボーンと合流したツナとエンマは、なのは達と共にはやての部隊長室に行き、執務机の椅子に座ったはやてが、ツナとリボーンとエンマに話しかける。ナッツはなのはに抱っこされていた。

 

「さて、ツナさん。エンマさん。状況はリボーンくんから聞いておるけど。正直な話、私ら管理局の技術じゃ三人を過去の世界に戻す事ができんのや」

 

「「ええっ!?」」

 

「管理局は次元科学は発展しているんやけど、時空移動に関する科学はあまり発展してへんのや」

 

「つまり、次元を移動する術はあるが、時間移動に関する術は無いって訳か」

 

「じゃぁ俺達どうやって元の時代に戻れば良いのっ!?」

 

「は、はやてちゃん! この時代のプレシアさんに聞く事はできる?」

 

リボーンが結論を出し、ツナとエンマはこの時代にいるプレシアなら、過去に起こった事を知っている筈だから、自分達の帰還方法も知っているのでは、と聞こうとした。

が、はやては渋面を作り、口を開く。

 

「一応極秘回線で呼び掛けて見たんやけど、プレシアさんもアリシアちゃんもリニスも、現在連絡が取れんのや」

 

「フェイト。アリシア達とは連絡を取り合っているんだね」

 

「うん。極秘回線を使って月に一度くらいでね」

 

「ま、とにかく俺達が過去に戻れるかは、プレシアからの連絡待ちだな」

 

「「そうだよなぁ~」」

 

リボーンがそう言うと、ツナとエンマは肩を落とす。そんな場の空気を察したのか、ザフィーラが声を発する。

 

「主。雲雀様に聞いてみるのはどうでしょう?」

 

「「えっ? 雲雀さん?」」

 

「せやけどなぁ、雲雀さんも今はこっちやなくて地球の方に行ってるから連絡が・・・・」

 

「ち、ちょっと待ってはやてちゃん!」

 

「雲雀さんと接触してるの!? 上層部から、ボンゴレと関わるなって言われているのに!?」

 

8年前、なのは達とボンゴレの関係について上層部が目を付けられていたので、ツナ達はなのは達と距離を置くようにしていたのだ。

 

「あぁ、それな。雲雀さん、【僕には関係ない】って言ってな。結構私らの家に来てはご飯食べたりノンビリしていたりしてたんや」

 

「「(ひ、雲雀さんなら言いそうだ・・・・!)」」

 

天上天下唯我独尊、我が道貫く我が儘風紀委員長らしいと言えばらしいのだが。

 

「後、ヴィータやシグナムと軽い模擬戦をやっていたですぅ! 二人とも2対1なのに雲雀さんには1勝もできていないモガッ!」

 

「「余計な事を言うなリィン!!」」

 

ヴィータとシグナムが、リィンの口を人差し指で塞ぐ。

 

「まぁそれでな。雲雀さんったらこのミッドチルダで事業を起こしたんや」

 

「「事業っ!!?」」

 

「ほぉ」

 

雲雀が事業を起こした事に驚愕するツナとエンマ。リボーンは興味深そうな顔になり、アインスがとある雑誌を持ってきて、あるページを捲るとそのページに、ミッドチルダの首都クラナガンで台頭してきた巨大企業『HUHKI』の事が載っていた。

 

「こ、コレって・・・・」

 

「『HUHKI』、『風紀』ってもしかして・・・・」

 

「せや、並森風紀委員会を発端とした企業なんや・・・・」

 

「中学の頃の委員会を巨大企業にするだなんて・・・・」

 

「凄い人が多いツナの守護者達の中でも、雲雀さんはかなり特殊な気がするよ・・・・」

 

はやてが半眼で苦笑いを浮かべ、なのはもフェイトも苦笑いを浮かべた。

 

「表の経営は影武者のような人を使ってな。雲雀さんはオーナーとして裏で会社を操っとる。私らの祖国、日本の文化の呉服や和雑貨を販売してるんや」

 

「リンディ母さんはその店の常連、いや、お得意様になってるし」

 

「「ああ~・・・・」」

 

何となく納得できる。日本文化大好きのリンディにとっては、魅力的な企業が出てきたのだろう。余談だが、同じく日本文化大好きの『ボンゴレメカニック・スパナ』と出会った時、一目でお互いに気が合い、そのまま日本文化の話で盛り上がり、一晩明けた程だ。

 

「そして裏では管理局とは違った警備会社を経営しているんです」

 

「何度かロスト・ロギアの警備。要人の警護。果てはそのロスト・ロギアや要人を狙う次元犯罪者や組織を捕縛したり壊滅したりして、管理局を出し抜いたりしています。裏では管理局よりも頼りになる警備会社として言われ、一部の上層部からは目の敵にされているのです」

 

シャマルとアインスが苦笑いを浮かべてそう言った。

 

「手広く商売しているみたいだね・・・・」

 

「雲雀の事だ。犯罪者や組織は自分1人で壊滅させているんだろうな」

 

「その度に、我が赴いて雲雀様がやり過ぎないように止めていたりしたのですよ」

 

「ザフィーラ。ご苦労様です」

「ええ、まあ・・・・」

 

視線を反らして苦笑いを浮かべるザフィーラ。その反応に、かなり苦労していたのが容易に想像できる。

 

「ま、まあ、雲雀さんに関しても、連絡待ちって事にして・・・・ツナさん達はこれからどないします? ミッドチルダに泊まる場所なんてあらへんし、なんやったら地球に戻りますか?」

 

「・・・・いや、それは危険かもしれねえ」

 

「あ? 何でだよリボーン?」

 

「同じ時間軸に、過去から来た俺達と、この時代の俺達が同時に同じ世界に出現すれば、時空が壊れて俺達が対消滅。最悪の場合、世界が消えてしまう可能性があるんだ」

 

「“粒子論”・・・・"タイムパラドックス"って事やな」

 

「じゃどうする?」

 

う~んと悩む一同に、はやてがピコーン! と、頭に電球を浮かべ明かりを灯した。

 

「ほんなら! ツナさん達はしばらく六課のお世話になればええやん! 立場的には『民間協力者』って事で!」

 

「えっ? でもはやてちゃん、ツナさん達は・・・・」

 

「上層部が黙っていないと思うよ・・・・」

 

「フフン! 安心しいや。例え上の連中が煩くしても、【ボンゴレボスとシモンボスは現在20代中盤ですぅ。ここにいる子達は10代中盤ですから無関係ですぅ。他人の空似ですぅ】って言えば、何とか誤魔化せるやろ。まぁ、流石にボンゴレギアやシモンリングは使わせる訳にはいかんけどな」

 

「フム。しばらくはそれで行くしかねえな」

 

「良いのかなぁ?」

 

「僕達がいて、フェイト達が迷惑なんじゃ」

 

『それだけは絶対にありません!』

 

ツナとエンマの言葉を遮るように、なのは達全員が迷いなくそう言った。

その迫力に、二人は黙り、リボーンはフッと笑みを浮かべて口を開く。

 

「んじゃ六課に世話になるとしても、俺達の寝床はどうするんだ? はやて(キラン)」

 

「(キラン) ソコは抜かりないで」

 

リボーンが目をキランと怪しく光らせると、その意図を察したはやても目を光らせて、声を発する。

 

「ツナさんはなのはちゃんと! エンマさんはフェイトちゃんと同室や!!」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっ!!!???」」」」

 

四人の驚愕の叫び声が、六課隊舎に響き渡っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八年の恋心

注意:今回の話で、なのはとフェイトがキャラ崩壊を起こします。


「ちょちょちょちょっとはやて!/////」

 

「にゃにゃにゃにゃにゃ、にゃに言ってるのっ!?/////」

 

フェイトとなのはがはやてを部隊長室の隅に連行すると、詰め寄るように真っ赤になった顔を近づけ、小声で怒鳴る。

が、はやてはそんな二人の剣幕に全く恐れず、冷静に対応した。

 

「ええか二人とも、今目の前にいるツナさんとエンマさんは、八年前からやって来てしまった二人や」

 

「うん」

 

「プレシアさんと連絡がついて帰る目処がたったら、二人は帰ってしまうんや」

 

「そうだよ」

 

「でも、や。もしここでなのはちゃんとフェイトちゃんとの仲が一気に深まれば、いずれは二人と結ばれる可能性が出てくるで」

 

「にゃ!/////」

 

「ふぇっ!/////」

 

はやての言葉に、なのはとフェイトはさらに顔を紅くする。

 

「唯でさえ八年ちゅう短いようで長い時間の間があるんや。ここは少しでも自分達の事を忘れられへんように手を打って置いたらどうや?」

 

「だ、だけど!/////」

 

「あぅぅぅぅ~!/////」

 

「二人かて、今まで会えなかった分、甘えたいって気持ちはあるやろ」

 

「「うぅぅ~!!/////」」

 

煮え切らない二人に、はやては半眼になって睨む。

 

「それに、この間ちょっと三人でお酒を飲んだ時の事、二人が酔って愚痴って暴れた事、私は忘れてへんで」

 

「「あう・・・・」」

 

その言葉に、なのはとフェイトは申し訳なさそうに顔を俯かせる。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

19歳となった時、ちょっと大人の気分を味わいたかった三人は、こっそりなのはとフェイトが同居しているマンションでお酒を飲んだのだ。

はやては、“女の子のおっぱいを揉みしだく趣味”に目覚めているので、酔った勢いでなのはとフェイトのおっぱいを堪能しようと悪巧みを考えていたが、酔っ払った二人を相手にそんな考えは何処かに消えてしまった。

 

【聞いてよ、はやてちゃん!!】

 

【聞いとる、聞いとるよなのはちゃん!】

 

【酷いよね!? 雲雀さんは今でもはやてちゃん達に会っているのに、ツナさん達は会いに来てくれないの!!】

 

【ああ、雲雀さんは少し常識から離れた所におるから・・・・】

 

【言い訳しないで!!!】

 

【は、はい!】

 

持っていたお酒の缶をダン! テーブルに叩きつけて叫ぶなのはに、はやては座ったまま気をつけする。

 

【ツナさんの周りの女の人達を知ってるでしょ?!】

 

【き、京子さんと、ハルさんの事やね・・・・】

 

【そうなの! 京子さんはツナさんの憧れだし! ハルさんはツナさんの事大好きだし!二人とも凄く素敵な人達だし! 今頃どちらかがツナさんにアタックしているかもしれないのっ!! それを考えただけで、私、わたしぃぃぃぃぃ~!】

 

【せ、せやから、いい加減素直になってツナさんに好きって伝えてれば良かったやないか、私もフェイトちゃんもアリサちゃんもすずかちゃんもユーノ君も、口を酸っぱくして言うてたやん】

 

はやてがそう言うと、なのはは目に涙を溜め込んで、グスングスンと嗚咽を漏らす。

 

【そうだよね、本当は私ツナさんの事大好きなのに、素直になれなくて、意固地になって、否定して、なんで、なんでもっと素直になれなかったのかな・・・・う、うぅ、うわぁああああああああああああんん!! ツナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんん!!!】

 

【あぁ、なのはちゃん、泣かんといて・・・・フェイトちゃん! フェイトちゃんも何とかうわぁっ!?】

 

遂に泣き出してしまったなのはを宥めようとするはやてが、フェイトに救援を要請するが、フェイトも全身から『ず~~~ん』と暗い雰囲気を纏ってお酒を飲んでいた。

 

【そうだよね・・・・何で私もエンマに好きだって伝えられなかったのかな・・・・】

 

【フ、フェイトちゃん、いや、フェイトさん?】

 

【何で言えなかったんだろう・・・・もしも言って、エンマに断られる事を考えたら、今の関係が壊れちゃうと思って伝えなかったけど・・・・でも、本当は私、クスン、エンマの事・・・・うぅっ、大好きなのに・・・・! うぅぅぅぅ! エンマァァァァァ・・・・! エンマァァァァァァァァァ・・・・!!】

 

【ツナさぁぁぁん・・・・!】

 

【エンマァァァァ・・・・!】

 

【な、なのはちゃん、落ち着いて、な。フェイトちゃんも、そない泣かんと、ね・・・・】

 

完全に泣き出してしまった二人に、はやてはオロオロとしながらも必死に宥めかしていた。

 

【もしもツナさんが京子さんかハルさんか、それとも別の誰かと結婚していたら・・・・!】

 

【もしもエンマが誰かと付き合って結婚なんてしたら・・・・!】

 

【【それを考えただけで!!】】

 

【ツナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんん!!!】

 

【エンマァァァァァァァァァァァァッッ!!!】

 

もう涙が滝のように流れ出したくらいだ。

 

【二人ともしっかりしぃや・・・・!】

 

【ツナさんが結婚していたら・・・・!】

 

【エンマが結婚していたら・・・・!】

 

【ど、どないするんや?】

 

とてつもなく嫌~な予感がするはやてが、頭に大きな汗を流して聞くと、なのはとフェイトは俯かせていた顔を上げてこう呟いた。

 

【ツナさんを殺して私も死ぬのぉぉぉぉぉ!!】

 

【エンマを殺して私も死んでやるからァァァァァ!!】

 

【あかんんんんんん!! 二人ともそれは絶対にあかんんんんんん!!!】

 

それから空が白くなるまで二人の相手をしたはやては、寝不足と精神的疲労で仕事を休み、なのはとフェイトも二日酔いで休んだのであった。

後日、飲酒について管理局の医務官であるシャマル先生から、数時間に及ぶありがた~いお説教をもらった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

「「あの時は、本当にごめんなさい」」

 

「ホンマやで」

 

後でデバイス達が録画していた自分達の醜態の数々を見せられたなのはとフェイトは、憮然として腕を前に組んだはやてに頭を下げた。

 

「と、話を戻すとな。二人もツナさんとエンマさんと一緒の部屋に住めるのは、二人にとってもプラスや」

 

「「・・・・でもでも~/////」」

 

顔を紅くしてモジモジする二人の後ろに回り込んだはやては両手を二人の肩に回し、二人を引き寄せ、首筋をツツ~となぞったり、ちゃっかり制服越しの二人の大きな胸を揉んだりして囁く。

 

「二人とも、もうビアンキさんやアーデルさん、シグナムやアインスやシャマル位のナイスバディになったんや。ここは1つ、大人のお姉さんの魅力で、二人を落として見たらどうや?」

 

「「~~~! お、落とす・・・・!/////」」

 

「そ、れ、に。一つ屋根の下で一緒に住んで、なのはちゃんがベッドの下に、フェイトちゃんが本棚の裏に隠した、ちょっとエッチな大人の保健体育の本のような、あ~んな事やこ~んな事やそ~んな事ができるんやでぇ~?」

 

「「あ~んにゃ事やこ~んにゃ事やそ~んにゃ事・・・・!!/////」」

 

何故はやてが二人のそんな本の事を知っているかと問い詰める事も忘れ、なのはとフェイトは何を想像したのか、顔が蕩けたように弛緩し、口元から涎を少し垂らし、若干鼻血まで流れていた。ちなみにはやても、机の二段目の引き出しの二重底に、そういう本を隠している。

 

「さぁ二人とも、どないするん?」

 

ツナとエンマは、同室なんて駄目だよと、異議を唱えるが、リボーンが物理的かつ強制的に黙らせていた。

 

「・・・・・・・・フェイトちゃん」

 

「・・・・・・・・なのは」

 

二人はお互いの顔を見ると力強く頷き、ツナとエンマに向き直ると、

 

「ツナさん!」

 

「エンマ!」

 

「「えっ?」」

 

「「一緒に住みましょう!!」」

 

「「なぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」」

 

二人の言葉にツナとエンマが叫び声を上げた。

 

「ちょっとなのはちゃん!」

 

「フ、フフ、フェイト!」

 

「「ダメ・・・・?」」

 

断られそうになり、なのはとフェイトが目を潤ませ、まるで捨てられる子猫か子犬のような雰囲気で二人に懇願した。

 

「「ううっ」」

 

ツナとエンマはその視線にたじろぎ、周りに味方してもらおうと視線を送るが、主犯のリボーンとはやてはニヤニヤと笑みを浮かべ、ヴォルケンリッターの皆は視線を反らした。どうやら味方はいないようだ。

 

「「~~~! お、お世話になります」」

 

観念した二人に、なのはとフェイトは、パァ! と、顔を輝かせるて、二人の手を取って部隊長室から出ようとした。

 

「それじゃ! すぐに家具とか衣服とか揃えないとなの!」

 

「今すぐ行こう! 車なら私のがあるし!」

 

「「うわぁああああああああ!!」」

 

ツナとエンマはそのまま連れて行かれるのであった。

 

「うまく行ったな」

 

「そやな。それで、リボーンくんはどないするん?」

 

「今日はザフィーラの部屋に住まわせて貰うぞ。ちょいとヴァイスから工具を借りてくる」

 

そう言って部隊長室から出ていくリボーン。

後日、はやて達はこう思った。

 

『あの時、リボーン(くん)を止めておけば良かった・・・・』

 

と。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紹介、フォワード陣

部隊長室を出た後、フェイトが運転するスポーツカーに乗った一同は、服や生活品やベッド等を買っていた。

衣服売場でなのは達と離れ、ツナとエンマは自分にピッタリの服を見つけた。なのはとフェイトはツナ達が服を選んでいる内に、何故か女性用下着売り場に来ていた。

 

「な、なのは、やっぱり勝負下着は、黒系かな・・・・?」

 

「く、黒系だったら、フェイトちゃんいつも着てるの・・・・」

 

「だ、だって、あれくらいしか、合うサイズ無いし・・・・」

 

「じ、じゃぁ、清楚な白系にして、こ、こう言う感じのデザインで、ガーターベルトとかは・・・・?」

 

「わ! わ! な、なのは、大胆・・・・!」

 

と、そんな会話をしている二人は知らないが、この時、ツナとエンマは背中に冷たい悪寒が走っていた。

次にミッドチルダの言語を勉強する為に、語学の本を買っているツナとエンマ。なのはとフェイトもこっそり、『年下男子を誘惑する方法』、『年下男子を大人の色気で手込めにする50の法』と言う本を購入しており、ツナとエンマはまたもや悪寒が凄まじい勢いで走った。

 

 

 

 

そしてその夜。なのはと一緒の部屋になったツナ。その隣の部屋でフェイトと一緒の部屋になったエンマは。

 

「「や、やややや、やっぱり遠慮しますっ!!///////」」

 

「「一緒に寝よう!」」

 

逃げようとするツナとエンマだが、なのはとフェイト(パジャマ姿)はその細腕から想像できないパワーで二人を引き込み、そしてなのははツナを、フェイトはエンマを抱き枕にして眠った。

ツナはなのはの大きなバストを押し付けられ、さらに肉付きの良い足も絡まれ、心臓がバクバクとし、顔も真っ赤にしていた。

エンマもフェイトのすっかりアーデル級に実ったバストを押し付けられ、スラッとした美脚を絡まれ、身体が硬直してしまっていた。

 

「「(ね、眠れない・・・・!!//////)」」

 

「「(お、襲うべきか・・・・! それとも待つべきか・・・・!///////)」」

 

ツナとエンマは眠れなくなり、なのはとフェイトも寝たフリをしながら、こちらから攻めるか、向こうから攻めて来るのを待つか決めあぐねていた。

 

 

 

 

そして朝ーーーー。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「おぉ~。皆寝不足って感じやな?」

 

結局朝まで寝付けなかった四人は目元に隈を作っており、はやてとリボーンがそれを見た。

 

「何だ? なのはとフェイトが美人な上にナイスバディに育ったから、遂に手を出したか?」

 

「「そ、そんな事する訳無いだろう!///////」」

 

「んじゃなのはとフェイトの方が襲ったのか?」

 

「「そ、そんな事ーーーーす、少ししか考えて無かったの(から)!///////」」

 

「「えっ?」」

 

リボーンの言葉にそう返すなのはとフェイトが、何やら不穏な台詞を言って、若干身の危険を感じるツナとエンマ。

 

「まぁええわ。それでな、ツナさんとエンマさん。新しく配属された新人魔導師達を紹介するで」

 

そして、ツナ達と同い年の女の子二人と、9歳くらいの男の子と女の子、そしてその女の子の肩に乗る小型化した竜を紹介された。

 

「『ティアナ・ランスター』二等陸士です」

 

「同じく、『スバル・ナカジマ』二等陸士です!」

 

オレンジ色の髪の毛をツインテールにした、勝ち気そうな目付きをした女の子と、青い髪を短髪にしたボーイッシュな女の子が挨拶した。

 

「この二人が『スターズ』っていうチームのメンバー。で、隊長はなのはちゃんで副隊長はヴィータや」

 

「えっ!? ヴィータが副隊長!?」

 

「大丈夫かな? ヴィータって結構短気だから・・・・」

 

「大丈夫だよツナさん、エンマさん。ヴィータちゃんもちゃんと副隊長やれているし」

 

いつもランボか獄寺(ランボをシバく時は共闘する)と喧嘩したり、最近では骸一味やヴァリアーとも喧嘩腰になるヴィータが管理職である副隊長をやる事に、若干不安そうになる二人に、なのはがそう言った。

 

「それでもう一つのチームが『ライトニング』で、フェイトちゃんが隊長で、シグナムが副隊長。そしてこの2人がメンバーや」

 

次に紹介したのは、幼い少年少女と小さな竜だ。

 

「初めまして沢田さん、古里さん。僕は『エリオ・モンディアル』三等陸士です」

 

「同じく、『キャロ・ル・ルシエ』三等陸士です。この子は私の友達の『フリード』です」

 

「キュル~♪」

 

「宜しくね。ティアナ。スバル。エリオ。キャロ。フリード。俺は沢田綱吉。気軽にツナって呼んで」

 

「僕は古里炎真。エンマで良いよ」

 

「俺はリボーンだ。ツナの家庭教師だ。今はエンマの教師もしている」

 

「今紹介した子達の教官をなのはちゃんがしてるんや。なのはちゃんは教官職に勤めてるんやで」

 

「「へぇ~」」

 

紹介を終えると、ツナとエンマとリボーンは、フェイトに連れられ六課隊舎の案内に、はやては部隊長の仕事に、なのははFW陣と共に、訓練施設へ向かった。

 

「・・・・リボーンくんって、どう見ても二歳位だよね? それなのに家庭教師って」

 

「子供に家庭教師されるって、情けない奴等じゃないの?」

 

ヒソヒソと話すティアナとスバルに、苦笑いを浮かべるツナとエンマと隊長陣。

二人は知らないのだ。ツナとエンマが、管理局三大美女とも呼ばれる隊長陣三人よりも圧倒的に強く、さらにリボーンが見た目通りの年齢ではない事を。

 

 

 

 

 

それからしばらく、途中でフェイトが道に迷い、何故かリボーンが案内している内に、訓練施設の方へ足を進めていると、訓練施設がある小島に繋がる橋が架けられてある場所に、ヴィータの姿があった。

 

「ん・・・・? おお、ツナにエンマにリボーン。訓練の様子でも見に来たのか?」

 

「うん、まあね。途中でリボーンが案内したんだけど」

 

「・・・・フェイト、お前な」

 

「うぅ~だって・・・・」

 

「つかリボーン。お前案内できるのか?」

 

「昨日の内に隊舎の構造は全て把握したからな。それにしても、小島にビル群が聳え立っているな」

 

ツナ達の視線の先には、小島に聳え立つ見慣れないビル群があった。まるで“別の未来の世界”で、『チョイス』のバトルフィールドになった小島のようだ。

 

「これは六課の技術陣が制作してくれたシミュレーターシステムだ。結構作りは精巧だぜ?」

 

「これって、ビル群以外にも作れるの?」

 

「まぁな。このコンソールから色々できるんだよ」

 

そう言いながら、ヴィータは自身の目の前に映し出されたディスプレイに視線を向ける。

その映像にはシミュレーターの中のなのはとFW陣の訓練模様が映し出されていた。映像を見る限り、今はどうやら、なのはの操る『アクセルシューター』を避けたり迎撃したりする訓練を行なっているようだ。

見る限り、スバルは了平や紅葉のような近接格闘を得意とするタイプ。ティアナは獄寺のように近・中距離射撃に、クロームのような幻術を使うタイプ。エリオはフェイトのように高速と槍を使った一撃離脱タイプ。キャロはフリードと共に後方支援タイプのようだ。

 

「へぇ、なのはちゃん、本当に先生やってるんだ」

 

「同じ先生としてどう思うリボーン?」

 

「・・・・基本に忠実だな。基礎的な動きを徹底させているようだ」

 

「・・・・・リボーンはどう見る? なのはの訓練」

 

ふとフェイトがそんな事を聞いてきた。リボーンは何気なく答えようとしたが、フェイトやヴィータの表情を見て、冗談抜きで真剣に口を開く。

 

「基礎がしっかりしているのと、してないのでは、戦闘での動きにかなりの違いが出てくるぞ。その分、無駄な怪我を負う可能性も低いからな。管理局のような“お利口さんばかりの組織”の奴等は、なのはの基礎に忠実な訓練の方向性は間違っちゃいねぇ。一時なのは達の教官を務めたラル・ミルチの訓練も、先ずは基本を徹底的に、最短で叩き込むやり方だ。ま、ラルのやり方の方が荒っぽくて厳しいがな」

 

「(ブルル・・・・!)」

 

「そうか・・・ならいいんだ。リボーンがそう言ってくれるとこっちも自信がつくってもんだ」

 

フェイトは『ラル・ミルチ』の名前を聞いた瞬間、数秒ほど顔が青ざめ、身体が震えたが、ヴィータは少し安堵したような顔になる。

 

「だが・・・・」

 

リボーンが続けて言う言葉に、フェイトとヴィータがピクッと反応する。

 

「少し、過保護過ぎると思うがな。あれじゃその内、生徒の中から、飽き始める奴が現れるぞ」

 

「???」

 

リボーンはそれだけ言うと、フェイトとツナとエンマを引き連れて、その場しのぎを去り、ヴィータはリボーンの言葉に首を傾げるであった。




お気に入り400越えました! 皆様に感謝が絶えません。
次回で、守護者達を参戦させたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護者、出動

ープレシアsideー

 

「10代目とリボーンさん! 後古里の野郎が消えただぁああああっ!?」

 

ツナ達が突如消えてしまって数時間後。

獄寺と山本と了平、それとアーデルにジュリーに紅葉、らうじに薫にSHITT・Pが、シモンの聖地にいるプレシア達の住む館に集まった。

 

「ごめんなさい・・・・! わたしが、レリックなんか、見つけなきゃ・・・・!」

 

三人が突然消えてからずっと泣いているアリシアを、リニスとアーデルが慰めていた。

 

「んで、プレシアさん。ツナ達は今どこにいんのか分かるのか?」

 

「・・・・それが、分からないのよ。何しろレリックよって引き起こされた現象だし、別の次元世界か平行世界か、はたまた過去か未来に飛ばされたのか、それすらも分からないわ」

 

プレシアの言葉に、全員が顔をしかめるが、どうしようもない状況だった。

と、ソコでーーーー。

 

「やぁ皆! お久しぶり~☆」

 

『っ!? び、白蘭っ!?』

 

一同の後ろから聞こえた声に振り向くと、白蘭がにこやかな笑みを浮かべ、背中に羽を生やして宙に浮いていた。

 

「白蘭テメエ! こんな時に何の用だっ!?」

 

「そんな邪険にしないでよ獄寺クン♪ 綱吉クンとエンマクンとリボーンクンの居場所を教えに来たんだからさ☆」

 

『っ!』

 

白蘭の言葉に、全員が肩を揺らした。

 

「極限に本当か白蘭!?」

 

「結局エンマ達は何処に行ってしまったのだぁ!?」

 

「ん~、簡単に言うと、今から『八年後のミッドチルダ』に行ってるよ~☆」

 

『は、『八年後のミッドチルダ』!?』

 

「そ♪ それでね、獄寺クンと山本クン、あと了平クンにはーーーー“これで”、綱吉クン達の所に行ってきて欲しいんだ☆」

 

白蘭が獄寺、山本、了平に“カード”を投げると、三人はそのカード、いや、“チケット”を手に取ると、ミッドチルダの年号と日付が記されていた。

 

「これは・・・・!」

 

「あぁ、『ーーーーーーのチケット』だな」

 

「これを使えと言う事なのか?」

 

「そそ♪ これで綱吉クン達の所に行けるよ☆ で・も、シモンの皆は行けないよぉ」

 

「っ! 何故なのっ!?」

 

白蘭の言葉に、アーデルが反応するが、白蘭は少し目を細めて、真面目な口調で話す。

 

「〈ユグトラシル・コーポレーション〉が動きを見せているよ」

 

「っ! 〈ユグトラシル〉がっ!?」

 

白蘭が言った〈ユグトラシル・コーポレーション〉。

『沢芽市』に支社を置く医療系・福祉系事業を手掛ける巨大企業。

だが裏では、小さな、それこそ管理局のレーダーにも引っかからない小規模の空間湾曲が街の所々に発生する不可思議な現象が起こっている『沢芽市』で、暗躍をしている組織なのだ。

以前から、沢芽市の異常な状況を察知していたボンゴレとシモンは、この街を秘密裏に調査していると、沢芽市内で勢力争いをしているダンスグループ、『ビートライダーズ』が『果物や木の実の錠前』を使って、『インベスゲーム』と言う謎のゲームをしており、以前その錠前の一つを手に入れ、プレシアや『ボンゴレメカニックチーム』に調査させていると、その錠前には、“別の次元から生物を召喚する機能”が付いていると分かり、警戒をしていたのだ。

 

「〈ユグトラシル〉はどうやら、“新しいシステム”を使って何かの実験を行うようだ。君達シモンの守護者達までいなくなれば、“脅威”が起こった時の防波堤がいなくなるよ」

 

「・・・・アーデル。ここは聞いておいた方がいいわ」

 

「プレシア・・・・」

 

「〈ユグトラシル〉が何を企んでいるのかは分からないけど、ボス達のいない上に、守護者達まで全員いなくなれば、沢芽市からの脅威に対抗できなくなる。アーデルなら、ボスの次に守護者のリーダーをやれるわ。それに連携力と団結力なら、我の強すぎる守護者が多いボンゴレよりも、シモンの守護者の皆の方が動きやすいのも利点よ」

 

「・・・・・・・・」

 

「まぁ、ボンゴレの守護者はまとまりって物がねえからなぁ」

 

「うるせえ! そのまとまりの無さの最たる原因が雲雀と骸なんだよっ!」

 

ジュリーの言葉に獄寺が反論するが、確かにツナやリボーンを欠いたボンゴレ守護者達に任せるよりも、まだ自分達の方が適任だ。

 

「・・・・・・・・エンマを、私達のボスをお願い」

 

『・・・・・・・・』

 

アーデルが頭を下げると、ジュリーとらうじ、紅葉に薫にSHITT・P、プレシアとアリシアとリニスも頭を下げた。

 

「「「(コクン!)」」」

 

「ーーーーそれじゃあ、早速出発だよ☆」

 

三人はコクリと頷くと、白蘭がいつもの調子に戻って館の外に出ると、一同もその後を追って外に出たその時、

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~!!

 

突然、音が鳴り響くと空に穴が開き、さらに宙に路線が展開され、その上を流線型の新幹線ーーーー『時の列車』が現れ、獄寺達の前に停車すると、列車の扉が開き、三人は列車に乗り込んだ。

 

「獄寺クン♪」

 

「あ?」

 

「これ、正チャンが綱吉クンへ、調整が済んだからついでに贈り物だよ☆」

 

白蘭が獄寺に投げ渡したのは、『オレンジ色の匣兵器』だった。

 

「コイツは・・・・。一応、礼を言っとくぜ白蘭」

 

そして三人を乗せた『時の列車』が、宙の路線を再び展開させ走り、時空間が開き、その中に入っていった。

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンン!!

 

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

時空間を抜けて、『時の列車』が暴れるように暴走していると、獄寺は宙に投げ出され、地面を転がった。

 

「あ、あ、あのバカ鬼に、エロ亀にボケ熊にクソガキ竜とアホ鳥めがっ!!」

 

ガバッと起き上がった獄寺が悪態を吐いた。ツナ達のいる時代に向かっている途中、『時の列車』に乗る『ドアホ軍団』の喧嘩に巻き込まれ列車が暴走し、何処か分からない時代に放り出されてしまったのだ。

 

「クソッ! 少し歩いて、情報を集めるか」

 

獄寺が起き上がり少し歩くと、運悪く雨が降り始め、さらにどうやら墓地に着いたようだ。

 

「ん?」

 

ふと、葬儀でもしているのか、礼服を着たオレンジ髪の小さな女の子とその後ろで、礼服を着た何人もの男性達がお墓の前にいた。

獄寺は自分に関係ないと思い、その一団の後ろを通りすぎようとした時ーーーー。

 

「妹を置いて死んだか・・・・」

 

「それよりも、犯人を捕らえずに逃がしてしまうとは」

 

「若いながらも優秀な魔導師と言われ、驕り高ぶった愚か者めが」

 

「管理局の面汚しめ」

 

亡くなった人間、おそらく同じ仕事をした仲間に対して侮蔑の言葉を発する奴等に、獄寺は少なからず嫌悪感を抱くと、人垣の隙間からお墓の前に立つ幼い女の子、おそらく亡くなった人の遺族の少女の背中が見えた。

そしてーーーー。

 

「・・・・・・・・」

 

「ぁ・・・・」

 

その少女の肩が、小刻みに、悔しさと悲しさで震えていたのを見抜いた。ーーーーそれはかつて、母親の死を知った時の自分と酷似しており。

 

「ーーーー!!」

 

バキッ!

 

「がぁっ!?」

 

「な、何だ君はっ!?」

 

獄寺は男達の1人を殴り飛ばすと、他の男達や女の子が、なんだなんだと獄寺の方を向く。

 

「死んだ仲間を侮蔑するだなんて、んなクソみてぇな口を俺の前で吐きやがったテメエらが悪いっ!」

 

「わ、我々を〈時空管理局〉の魔導師と知って・・・・!」

 

「(お、一応『ミッドチルダ』には来ていたのか)・・・・はっ! テメエらみてぇなゴミクズ共が入れるんだ、〈時空管理局〉も大した組織じゃねぇようだなぁ!?」

 

「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

礼服の男達がデバイスを取り出すが、その前に獄寺の鉄拳が繰り出された。

 

 

 

 

 

 

「ば、バカな・・・・管理局の、俺達が・・・・!」

 

僅か二分足らずで男達は獄寺に簡単に制圧され、気を失った。

 

「けっ、魔導師なんて魔法が使えなきゃソコらの雑魚と変わらねぇな。これならまだイーピン(七歳)の方がやるぜ」

 

獄寺は倒れ伏す男達に目もくれず、お墓の前で呆然と成り行きを見ていた少女に近づくと、ソッと頭を撫でた。

 

「ぁ」

 

「負けんなよ。強くなれ」

 

雨や曇り空で良く顔は見れなかったが、オレンジ色の髪だけは印象に残り、獄寺が少女から離れると、ちょうど『時の列車』が現れ獄寺を回収すると、再び時空間へと入っていった時、雨が止み、空の雲が割れ、日差しが射して、少女を照らした。

 

「・・・・・・・・強く、なる!」

 

その少女は獄寺から言われた言葉を胸に、顔を上げて、前へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに、倒れていた男達は後日風邪を拗らせ、一週間も仕事を休んだだけでなく、魔法を使わない一般人にボロ負けして、魔導師としてのプライドがズタズタになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

そしてその頃のツナとエンマは。

 

「ツナ兄ぃ!」

 

「エンマお兄さん!」

 

エリオとキャロになつかれていた。

そしてここにも、

 

「ナッツ~! 可愛い~! モフモフ~!」

 

「ガゥゥゥゥ~!!」

 

「キュゥ! キュゥ!」

 

スバルに抱き締められ、ナッツは苦しそうにうめき声をあげており、フリードが友達のナッツを離してと言わんばかりにスバルに鳴き声をあげた。

そしてなのは達はーーーー。

 

「リボーンくん! 何この隠し扉っ!?」

 

「ちょっと隊舎を俺専用に改造したぞ」

 

「勝手に改造しないで!」

 

「だって~仕方ないじゃな~い。隠し扉とかはロマンじゃな~い」

 

「可愛子ぶって誤魔化されへんからな!」

 

「んじゃ退散だぞ」

 

隊長陣が勝手に隊舎を改造していたリボーンに文句を言うが、リボーンの立っていた床が沈み、リボーンの姿が消えると、床が閉まった。

 

「「「だから勝手に改造しないで!!」」」

 

なのはとフェイトとはやてが逃げたリボーンを探しに隊舎を走り回っていた。

 

「・・・・・・・・何これ?」

 

ティアナは呆れながらその様子を眺めていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

FW<フォワード>陣、NEWデバイス

ーツナsideー

 

「うわぁ、これが・・・・!」

 

「私達の新デバイス・・・・ですか?」

 

「そうで~す! 設計主任アタシ! シャリオ・フィニーノ! 協力! なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリィン曹長!」

 

「はぁ・・・・」

 

機動六課のデバイスルームにやって来たツナとエンマとリボーン、そしてフォワード陣に楽しそうに説明する長い茶髪メガネをかけた管理局の濃い茶色の制服を着た女性は、メカニックの『シャリオ・フィニーノ一等陸士』こと、シャーリーである。

スバルとティアナの前に置かれている、青い宝石を模したペンダント上のデバイス『マッハキャリバー』と、白地に赤いXマークを円が囲み、中央に真っ直ぐ縦線が伸びているカード上のデバイス『クロスミラージュ』だった。

 

「『ストラーダ』と『ケリュケイオン』は変化無し・・・・かな?」

 

「うん、そうなのかな?」

 

エリオとキャロの前にあるのは二人のデバス、紫色の腕時計の『ストラーダ』と桃色の宝玉を模したブレスレットの『ケリュケイオン』。

 

「違いま~す!」

 

エリオとキャロが首を傾げていると、急にリィンが出てきて叫んだ。

 

「変化無しは外見だけですよ!」

 

「リィンさん!」

 

シャーリーの声かけに、リィンが合いの手で応える。

 

「はいです! 二人はちゃんとしたデバイスの使用経験は無かったですから、感触に慣れてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです!」

 

「あ、あれで最低限・・・・?」

 

「ホントに・・・・?」

 

「(ま、優等生のなのはの事だ。いきなり最大ではいかねえな。俺もツナを超ハイパーモードに馴らす為に通常死ぬ気モードで軽く修行させたもんだ)」

 

「(へぇ~そうなんだ。ツナくん?)」

 

「(アレの何処が軽くだ・・・・!)」

 

自分達がさっきまで使っていたデバイスが、最低限の機能しか持っていなかった事にキャロとエリオは驚き、こっそり話ながらリボーンは、かつての修行を感慨深く思い出し、エンマはナッツを肩に乗せて青ざめるツナに首を傾げる。

パンツ一丁の死ぬ気で崖を登り、落ちたら死ぬ気で休み、また登り、落ちたらまた休み、また登り、落ちたらまた休み、頂上に登りきるまで繰り返される拷問のような修行だったのだ。

 

「皆が使うことになる四機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが、技術と経験の粋を集めて作った最新型! 部隊の目的合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア、個性に合わせて作られた文句無しに最高の機体ですぅ!」

 

リィンがそう言うとデスクの上にある四機のデバイスがリィンの周りに集まり始めた。

 

「この子達は皆まだ生まれたばかりですが、色んな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したですぅ」

 

そしてリィンはティアナ達にそれぞれデバイスを渡す。

 

「だから唯の道具や武器と思わないで、大切に、だけど性能の限界まで思いっきり、全開まで使ってあげて欲しいです。丁度ツナさんとナッツみたいな感じですぅ」

 

「ガゥ?」

 

ナッツが首を傾げた。

 

「うん、この子達もね。きっとそれを望んでるから」

 

リィンとシャーリーが四人にデバイスを説明をしていた。

 

「やっぱりデバイスって凄いんだね」

 

「そうだな。丁度俺達の世界の匣兵器みたいな物だ。複数の匣を持たなくて良い分、管理局の方が技術的に上だがな」

 

「でも、結構スゴい技術をした物もあるけどね・・・・」

 

ツナの脳裏に、『フェイトのソニックフォームを上回る超加速装置』、『時の列車』、『地球のメモリ』、『欲望のメダル』、『宇宙エネルギーを宿すスイッチ』等が浮かんだ。

 

「ゴメンゴメン、お待たせ~」

 

すると、デバイスルームになのはが入って来た。

 

「なのはさ~ん!」

 

「ナイスタイミングです。丁度これから機能説明をしようかと」

 

「そう。もうすぐに使える状態なんだよね?」

 

「はい!」

 

なのはの問いにリインが元気よく答える。

 

「まず、その子達皆、何段階かに分けて出力リミッターを掛けてるのね。一番最初の段階だと、そんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないからまずはそれで扱いを覚えて行って」

 

「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから・・・・」

 

「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」

 

「あっ、出力リミッターって言うと、なのはさん達にも掛かってますよね?」

 

「あぁ~、私達はデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」

 

「「「えっ!?」」」

 

「リミッターが、ですか?」

 

「「???」」

 

「・・・・・・・・」

 

なのはの言葉を聞いて驚愕するフォワード陣。しかし、ツナとエンマは良く分からず首を傾げていた。リボーンは何の事か察しがついていたが。

 

「『能力限定』って言ってね。六課<ウチ>の隊長と副隊長は皆だよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長にヴィータ副隊長・・・・」

 

「はやてちゃんもですね」

 

「うん」

 

「えっと・・・・」

 

なのはが出力リミッターのかかっている魔導師達の名前を挙げていく。

ティアナはすぐにその理由を理解したのだが、その隣のスバル、エリオ、キャロの三人はまだ唸っていた。そこへシャーリーが追加の説明をする。

 

「ほら、部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってじゃない?」

 

「あ・・・・え・・・・そうですね・・・・」

 

「一つの部隊で優秀な魔導師を多く保有したい場合は、そこに上手く収まるよう魔力の出力リミッターをかけるんですよ」

 

「まぁ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」

 

「(つまる所の、他の部隊とのパワーバランスだな)」

 

「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長達は大体2ランクダウンかな」

 

「4つ!? 八神部隊長ってSSランクのはずだから・・・・」

 

「Aランクまで落としてるんですか」

 

「はやてちゃんも色々と苦労しているです」

 

エリオとキャロの言葉に、リィンが少し暗い声で言う。

 

「私は元々S+だったから、2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、一人で皆の相手をするのは辛くなってくるかな」

 

「隊長さん達ははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司の『カリム』さんか、部隊の監査役の『クロノ提督』の許可がないとリミッター解除が出来ないですし・・・・許可は滅多なことでは出せないそうです」

 

「・・・・そうだったんですね」

 

その話を聞いたメンバーは暗い表情をするが、ツナとエンマは相変わらず首を傾げていた。

 

「ねえリボーン、つまりどういう事なの?」

 

「つまりなのは達隊長陣は、上層部の意向で手加減させられて戦っているって事だぞ」

 

「それじゃ、もしなのはちゃん達より強い敵が現れたらどうするんだよ?」

 

ツナには経験がある。スクアーロ、γ、突然今の自分達よりも強敵と遭遇する状況を。

 

「もう! ツナくんは心配性だねぇ、なのはさん達隊長陣は管理局でも最強戦力だよ! その皆さんよりも強い相手なんて、そうそういる筈ないって!」

 

シャーリーがカラカラと笑い、フォワード陣も確かにと頷く。

 

《実は目の前のツナさん達の方がはやてちゃん達より強いって、皆知らないですからねぇ》

 

《・・・・リィン。目の前にいるのは“8年前のツナさん達”だよ。流石にもう私達の方が実力は上だよ》

 

リィンて念話をしながらなのははそう会話していた。

と、その時ーーーー。

 

ヴーーヴーーヴーー!

 

いきなり周りが赤く点滅し、警報が鳴り響いた。

 

「このアラートって・・・・」

 

「一級警戒態勢!?」

 

「グリフィスくん!!」

 

《はい! 教会本部から出動要請です!》

 

《なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君。こちらはやて!!》

 

デバイスルームにあるモニターで、指揮官補佐である『グリフィス・ロウラン』に連絡をいれると、反対側から、『ある教会』にいるはやてから連絡が入る。空間モニターでフェイトの顔も映し出された

 

《状況は?》

 

《教会調査団で追っていた『レリック』らしきものが見つかった。場所は、エイリム山岳丘陵地帯。対象は山岳リニアレールで移動中》

 

《移動中って・・・・!》

 

「まさか・・・・!」

 

《・・・・そのまさかや。内部に進入した『ガジェット』で、車両の制御が奪われてる》

 

「『ガジェット』?」

 

「お前ら二人が交戦したロボットの事だ」

 

リボーンがツナとエンマに説明した。

 

《リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型の未確認タイプも出ているかもしれへん。いきなりハードな初出動や・・・・なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?》

 

《私はいつでも!》

 

「私も!」

 

隊長の二人は頷く。

 

《スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ツナさん、エンマさん、皆もオッケーか?》

 

「「「「はい!!」」」」

 

《よーし、良い返事や。シフトはA-3。グリフィス君は隊舎での指揮。リィンは現場管制》

 

《はい!》

 

「はい!!」

 

《なのはちゃんとフェイトちゃんは現場指揮!!》

 

「うん!」

 

《ほんなら・・・・機動六課フォワード部隊、出動!》

 

「「「「「はい!」」」」」

 

《ツナさん! エンマさんは同行! 状況に応じて援護したって!》

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

《・・・・皆は先行して。私もすぐに追いかける!》

 

「うん!」

 

この会話を最後に、フェイトとはやてからの通信が切れる。

 

「さて、何が起こるか、少し楽しみだぞ♪」

 

リボーンは帽子を目深に被り、ニヤリと笑みを浮かべたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そしてここは何処かの研究所の一室。

その部屋の中央に空中ディスプレイが上がり、リニアレールの姿が映し出されていた。

その映像を二人の男性が眺めている。

一人は白衣を着た科学者。一人は黒衣の男性。

 

「そろそろ六課が来るね?」

 

「ええ。あの場に向かわせたのは『通常のガジェット』です。“管理局の魔導師ごときでも、在庫処理の相手くらいにはなるでしょう”」

 

「で・も♪ 彼らも来たらどうする?」

 

「その為に、『新型』も向かわせています」

 

科学者がそう言って、パチンっと、指を鳴らすと、空中ディスプレイの隣に新たなディスプレイが表示され、十数体のーーーー『藍色のガジェット』が向かっていた。

 

「あれ? でも良いのかな? 気取られるかもよ?」

 

「問題ありませんよ。“エネルギーはほんの少ししかない機体”ですしね」

 

「あっそ。じゃ僕は『娘さん達』の調子を眺めてくるよ」

 

「どんな案配ですか?」

 

「んー、漸く“γくんくらいには近づけたかな”?」

 

「『電光のγ』近く、ですか。では、まだまだ戦力としては頼りないですね」

 

「まあね♪」

 

二人は薄い笑みを浮かべながらこれから起こる、“自分達の知らない歴史が動くのを楽しみにしていた”。




なのは達はもう自分達はツナ達より上だと思っています。
そして、次回で守護者と合流です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ファースト・アラート、くる

ーツナsideー

 

ツナとエンマは、ヴァイスが運転するヘリコプターの中で、緊張しているFW陣の皆を元気付けていた。

因みにリボーンはロングアーチ達といる。

 

「エリオ? 緊張してる?」

 

「う、うん、少し・・・・。ツナ兄ぃは、こんな事、経験した事あるの?」

 

「ああ・・・・まぁ結構、な。どれだけ経験しても、これは慣れないな。でも、エリオ。皆がいるから。もしもの時は、俺も力になるから、だから頑張ろう」

 

「うん!」

 

「・・・・・・・・」

 

「キュル~・・・・」

 

「キャロ」

 

エンマがキャロの頭を撫でてあげた。

 

「エンマお兄さん・・・・」

 

「不安なのは分かるよ。でも、自分を信じて、仲間を信じれば、きっと大丈夫だよ」

 

「・・・・はい」

 

年少組はお兄さん二人の言葉に、安心したように笑みを浮かべた。

 

「エリオとキャロ、大丈夫みたいだね!」

 

「ええ。凄いわねあの二人。あっという間にエリオとキャロの緊張を解したわ・・・・」

 

「何か、安心感があるんだよねぇ。ツナとエンマって」

 

「で、アンタはいつまでナッツのお腹を撫でてんの?」

 

「ガゥゥゥゥ~・・・・!」

 

スバルはちゃっかりツナの肩に乗っていたナッツを捕まえ、お腹を撫で回して癒されており、ティアナは半眼で呆れていた。この二人も、緊張が解れたようだ。

それを見て、なのは達が声を発する。

 

「新デバイスでぶっつけ本番になっちゃったけど、練習通りで大丈夫だからね」

 

「はい」

 

「がんばります」

 

「エリオとキャロ、それにフリードもしっかりですよ!」

 

「「はい!!」」

 

「キュー!」

 

「危ない時は私やフェイト隊長、リィンがちゃんとフォローするから、おっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「ツナさんとエンマさんには、コレを渡しておくね」

 

そう言うと、なのははツナとエンマに、片耳に着けるマイク付きのイヤホンのようなものを渡した。

 

「なにこれ?」

 

「通信機だよ。これでロングアーチの人からの指示が送られるから、それに従ってね」

 

なのはが説明していると、ロングアーチから通信が入った。

 

《ガジェット反応! 空から!!》

 

《航空型、現地観測隊を補足!》

 

空間に浮かんだモニターに映し出されたのは、空から現場へ迫ってきている大量のガジェットの姿だった。

すると、ここでフェイトから通信が入る。

 

《こちらフェイト。グリフィス、こちらは現在パーキングに到着。車を止めて現場に向かうから、飛行許可をお願い・・・・》

 

《了解、市街地都市飛行。承認します》

 

それを聞いたなのはも行動を開始する。

 

「ヴァイス君、私も出るよ。フェイト隊長と二人で空を押さえる!!」

 

「ウッス、なのはさんお願いします!!」

 

ヴァイスはヘリの後部のハッチを開いた。

 

「じゃ、ちょっと出てくるけど、皆も頑張ってズバッとやっつけちゃおう!」

 

「「「「はい!」」」」

 

四人の返事を聞くと、なのはは開かれたハッチから飛び出し、バリアジャケットを身に纏い、ガジェットの元へと飛んで行った。

それを見送ったリィンが四人に任務の説明を始める。

 

「任務は二つ。ガジェットを逃走させずに全機破壊すること。そしてレリックを安全に確保する事」

 

モニターを表示し、確保対象であるレリックのある重要貨物室を映し出す。

 

「スターズ分隊、ライトニング分隊でガジェットを破壊しながら、車両前後から中央に向かうです。レリックはここ。7両目の重要貨物室。スターズかライトニングのどちらか先に付いた方が、レリックを確保するですよ」

 

「僕とツナくんはどうすればいいのリィン?」

 

「ツナさんとエンマさんは、ヘリで待機です! フォワードの皆が危ない時は援護に回ってください!(ーーーーボンゴレギアとシモンリングの出力は、管理局のレーダーに引っ掛からないレベルに抑えておいてくださいね)」

 

エンマの質問に、リィンがそう答え、二人の耳元に近づいて囁いた。

 

「「(コクン)」」

 

リィンの言葉にツナとエンマは静かに頷く。ボンゴレギアもシモンリングも、管理局にとっては〈ロストロギア〉であるから、探知されないようにして欲しいのだ。

そして、リィンが二人から離れ、改めて口を開く。

 

「で・・・・私も現場に降りて、管制を担当するです!」

 

リィンも服装を変え、準備をする。すると、ヴァイスから連絡が入る。

 

《さぁて新人ども。隊長さんたちが空を抑えてくれてるおかげで、安全無事に降下ポイントに到着だ。準備は良いか!?》

 

「「はい!」」

 

開いたハッチの近くに立っているスバルとティアナが返事をし、スバルはナッツをツナに返した。

 

「スターズ3。スバル・ナカジマ」

 

「スターズ4。ティアナ・ランスター」

 

「「行きます!!」」

 

そう言うと二人は勢いよくハッチから飛び降り、新デバイス、『マッハキャリバー』と『クロスミラージュ』をセットアップし、バリアジャケットを装着して降下して行った。

 

《次、ライトニング! チビ共、気ぃつけてな!》

 

「「はい!」」

 

スバルとティアナが降下したことで今度はライトニングであるエリオとキャロの番が来る。

キャロがまだ不安そうな顔をしている事に気がついたエリオが、キャロに手を差し伸べる。

 

「一緒に降りようか?」

 

「え?・・・・うん!」

 

そんなエリオの言葉にキャロは少し戸惑うが、エリオの真っ直ぐな目を見て、すぐにその手を取った。

 

「「エリオ。キャロ。フリード。気をつけて」」

 

「「うん!」」

 

「キュルー!」

 

ツナとエンマの応援に、エリオとキャロとフリードは笑顔で応えた。

 

「ライトニング3。エリオ・モンディアル!」

 

「ライトニング4。キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」

 

「キュルー!」

 

「「行きます!!」」

 

手を繋いで降下するエリオとキャロとフリード。

二人も新しくなったデバイス、『ストラーダ』と『ケリュケイオン』をセットアップし、バリアジャケットを装着して降下していく。

 

「大丈夫、だよね?」

 

「・・・・・・・・」

 

残されたツナとエンマは、何やら嫌な予感がしていた。

 

 

 

ーフォワード陣sideー

 

「あれ? ねぇ、このジャケットって・・・・」

 

「もしかして・・・・」

 

「デザインと性能は、各分隊の隊長さんたちのを参考にしてるですよ。ちょっと少し癖はありますが、高性能ですぅ」

 

四人は自分のバリアジャケットを見て驚いている。そんな四人に、いつの間にかエリオの肩に乗っていたリィンが答える。

 

「うわぁ・・・・」

 

四人の中で特にスバルは、憧れであるなのはとお揃いなバリアジャケットに感激していた。

 

「っ、スバル! 感激はあと!」

 

ティアナがそう言った瞬間ーーーー数体のガジェットが屋根を突き破ってきた。

それを見たティアナはすぐにクロスミラージュを構える。

 

「シュート!!」

 

魔力弾を放ち、ガジェットを破壊した。それがゴングとなり、フォワード陣がガジェットと交戦を開始した。

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

その頃、同時刻、機動六課のロングアーチ。

 

≪スターズF、4両目で合流。ライトニングF、10両目で戦闘中≫

 

「リボーンくん! スターズ1、ライトニング1、制空権を獲得しました!」

 

「リボーンくん! ガジェットⅡ型、散開開始! 追撃サポートに入ります!」

 

「順調、だな」

 

リインとの通信を開きながら状況をグリフィスへと報告していく通信士メンバーが、何故かリボーンにも報告していた。

すると、ちょうどそこへ、聖王教会から戻ってきたはやてが走って入ってきた。

 

「ごめんな、お待たせ」

 

「八神部隊長」

 

「おかえりなさい」

 

「ここまでは比較的順調です」

 

「うん。リボーンくん、代わりやってくれてありがとな」

 

「構わねえぞ」

 

報告を聞いたはやては少々安心し、代役をしてくれたリボーンに礼を言ってから椅子に座る。

 

「ライトニングF、8両目突入・・・・!」

 

と、シャーリーがそこまで言うと、彼女は何かに気がついた。

 

「エンカウント、新型です!!」

 

そう言うと、モニターには新型のガジェットが映し出される。しかし、シャーリーが気がついたのはコレだけではなかった。

 

「大変です! リニア上空に次元湾曲反応!」

 

『っ!!?』

 

この言葉にはやてとロングアーチ達に衝撃が走ったのだった。

そして、モニターに映し出されたのは、なのはとフェイトが交戦している空域のさらに上空から、白い『穴』が開き、そしてーーーー。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

ーーーーファァァァァァァァァン!!

 

「な、なんやあれぇっ!!?」

 

はやてが目を見開いて驚愕した。ロングアーチ達も同じような顔になったが仕方ない。何故なら、突然現れた『穴』から線路が伸び、その上を頭が赤い目のようになっている、流線型の新幹線が軽快なメロディを流し汽笛を鳴らしながら走ってきたのだ。

 

《え、ええっ!?》

 

《い、今の何っ!?》

 

なのはとフェイトの近くを通りすぎた新幹線を見て、二人も驚いた声を発し、

 

《な、何だありゃぁっ!?》

 

()()()()

 

「・・・・・・・・〈デンライナー〉か」

 

ヴァイスも驚いた声を出すが、ただ三人、ツナとエンマとリボーンだけが、その新幹線の事を知っており、リボーンは、はやて達に聞こえないように小さな声で呟いた。

空を走る新幹線は、リニアの真上に平行するように走行すると、新幹線の扉が開き、ソコから三人の少年が飛び出し、リニアの屋根に飛び移った。

 

一人は白い髪の短髪にした、手に包帯を巻き付けた少年がボストンバッグを抱え。

 

もう一人は黒髪の短髪に爽やかそうな風貌の少年は、手に竹刀を持っていた。

 

そして最後に、銀色の髪を肩口まで伸ばした不良っぽい少年が、鋭い目付きで周辺を睨む。

 

「あ、あの人達はっ!?」

 

はやての記憶から、八年前の思い出が鮮明に甦り、記憶の中の少年達と完全に一致している三人を見て、思わず口を開く。

 

「隼人さんっ!? 武さんっ!? 了平さんっ!?」

 

そう、ツナの守護者である。『嵐の守護者 獄寺隼人』。『雨の守護者 山本武』。『晴れの守護者 笹川了平』だったのだ。

三人はリニアの屋根から現れたガジェットを捉えると、即座に臨戦体制となり、交戦を開始した。

 

「(了平と山本、そして獄寺も『未来の世界』にやって来た。しかも、あのルールに厳しい『オーナー』が、〈デンライナー〉を使ってまで。・・・・どうやら、俺達がこの時代にやって来たのは、ただの偶然じゃぁねぇ見てぇだな)」

 

リボーンは、あっさりとガジェットを破壊していく三人を見て、そう考えていた。




次回、守護者達と合流するのと同時に、新型ガジェットと遭遇。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会の守護者と見えない敵

ー獄寺sideー

 

「『赤炎の矢<フレイムアロー>』!!」

 

「『時雨蒼燕流 攻式八の型 篠突く雨』!!」

 

「『マキシマム・コンビネーション』!!」

 

〈デンライナー〉を降りた獄寺と山本と了平は、上空から自分達に迫っていたガジェット達を瞬く間に破壊していった。

 

「たくっ、あのオーナーの野郎! 何だってこんな鉄場に下ろしやがったんだ!」

 

「まぁまぁ、ボヤいてもしゃあねぇだろ?」

 

「極限に! コヤツらを破壊だぁっ!」

 

何て無駄話をしながらも、着々とガジェットを撃破していく三人。

かなりの数を撃破していくとーーーー。

 

「き、極限にアレは何だーーーー!?」

 

「あ、あれゲームとかにでてくるっすね」

 

「ま、マジかよっ!?」

 

三人が驚愕の声があげる。なぜならそこには・・・・。

 

『グオォォォォォォォォォオオ!!』

 

白銀の翼をもつ巨大なドラゴンの姿があった。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ヴァイスが操縦するヘリから状況を見ていたツナとエンマは、そのドラゴンの姿に見覚えがあった。

 

「アレって・・・・!」

 

「まさか・・・・!?」

 

《せや! キャロの竜召喚・・・・フリードの本当の姿や!》

 

はやてが通信教育越しに伝えてくる。そのドラゴンはキャロの竜召喚により覚醒したフリードリヒの本当の姿なのだと。

そして、リボーンが通信を入れた。

 

《ツナ。エンマ。獄寺達と合流しろ。構わねぇなはやて?》

 

《あぁ、そやな。お二人さん、頼むわ》

 

「「了解」」

 

「いや、了解ってお前らーーーーえ?」

 

ツナとエンマを普通の一般人と思っているヴァイスが二人に顔を向けると、間の抜けた顔となる。

額と両手にオレンジ色の炎と真紅の炎を灯した2人の雰囲気が、先程とガラリと変わってしまったからだ。さらに言えば、ツナの肩に乗ったナッツまで、目付きがキリッとしている。

 

「ヴァイス。開けてくれ」

 

「り、了解っす・・・・!」

 

そのーーーー全てを見透すようなツナの瞳と、静かに、しかし言い様のない重さがある声に、思わず敬語になってしまったヴァイスがハッチを開くと、ツナとエンマはリニアへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

「皆!」

 

「っ! 10代目っ!!」

 

「ツナ! エンマ!」

 

「おお! 二人とも極限に無事だったかっ!?」

 

「獄寺くん達、どうして〈デンライナー〉に乗ってきたの?」

 

仲間達と再会したツナとエンマは、三人がどうして『時の列車』に乗ってきたのか聞こうとするが、それを遮るように、ツナとエンマの耳にはやての声が響く。

 

《ツナさん! エンマさん! 再会を喜んでるところ悪いんやけど、ティアナとスバルの方に新型のガジェットが現れたんや! フォローに行ったって!》

 

「分かったはやて」

 

「「「えっ? はやて?」」」

 

「詳しい話は後! 行こう!」

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

その頃スバルとティアナは、はやての報告通り、新型のガジェットに苦戦していた。

 

「どうしよう、ティア?」

 

「どうもこうも、援軍が来るまで持ちこたえるしかないでしょ!」

 

そう言うティアナだが、状況は最悪だった。二人とも先ほどまでのガジェットとの連戦でボロボロになっており、体力も魔力も尽きかけている。さらに新型ガジェットが発する広範囲のAMF<アンチ・マジック・フィールド>(魔力の出力を抑えるフィールド)の中にいる為、魔法も使えない状態だった。

 

「(くっ・・・・とは言ったものの、どうすれば・・・・!)」

 

ティアナは頭をフル回転させてどうやってこの状況を打破するか考え始める。だが彼女は気付かなかった。

足元にガジェットのコードのような触手がある事に・・・・。

 

「っ!? しまっ・・・・!」

 

気付いた時には既に遅く、そのままコードはティアナを拘束した。

 

「ティア! 今助け・・・・っ!?」

 

そんなティアナを助けようとしたスバルも一瞬の隙をつかれ、コードに捕まってしまった。

 

「くっ・・・・!」

 

ティアナは何とか抜け出そうとするが、コードはビクともしない。すると、ガジェットがティアナに向かって熱線を放とうとする。

 

「ティアーーーー!!」

 

「っ・・・・」

 

スバルの叫びが響き、ティアナが覚悟して目を閉じたその時ーーーー。

 

「『嵐+晴 フレイムランチャー』!!」

 

と、ソコでティアナの身体を拘束していたコードを、赤くメラメラとした炎と黄色いキラキラとした炎を纏った弾丸が、コードを次々と引きちぎった。

 

「こ、これって・・・・?」

 

「極限に青頭! そのままでいろ!」

 

「へ?」

 

「『極限太陽<マキシマム・キャノン>』!!」

 

今度はスバルを拘束していたコードを出していたガジェットが、拳で跡形もなく粉砕された。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「「!」」

 

「あらよっと!」

 

さらに、オレンジ色と真紅と青い炎が次々とガジェットを破壊した。

 

「スバル、ティアナ」

「二人とも、大丈夫?」

 

「助っ人登場ってな♪」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇっ!? つ、ツナ、エンマ、なの・・・・!?」

 

「うっそ・・・・!」

 

スバルとティアナは、突然現れ、雰囲気がまるで違うツナとエンマに仰天していた。

が、そんな二人を置いて、通信機からリボーンの声が響いた。

 

《ツナ。エンマ。ティアナとスバルは獄寺達に任せて、なのはとフェイトの方に行け。そっちにも新型ガジェットが現れたようで、二人が苦戦してやがる》

 

「分かった。ティアナ、スバル。彼らは俺の仲間だ。安心してくれ」

 

「つ、ツナの仲間?」

 

「この人達が?」

 

「ああ。二人はこのままレリックの回収に向かってくれ。獄寺、山本、了平。彼女達に協力してくれ」

 

「分かりました!」

 

「おう!」

 

「極限に任せろ!」

 

「(コクン) 行くぞエンマ」

 

「うん」

 

両手の炎を噴射させて、二人は空へと向かった。

 

「「えええええええええっ!?」」

 

ティアナとスバルがまた驚きの声をあげていた。

 

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「あぅっ!」

 

「きゃっ!」

 

なのはとフェイトは、危機的状況になっていた。数分前に突然目の前に空を駆ける新幹線が通りすぎ、はやてからの通信で、ソコから獄寺と山本と了平が現れたと聞かされてすぐーーーー突如自分達のBJにレーザーが当たった。

何事かと思って周りを見ても、ガジェットの姿が無く、空中からレーザーが発射され、自分達を攻撃してくる。

 

「れ、レイジングハート、敵は?」

 

[わ、分かりません。一体何が!?]

 

[こちらのセンサーにも探知できません!]

 

《こちらロングアーチ! 敵の姿が見つかりません!》

 

「バルディッシュやロングアーチのレーダーやセンサーでも探知できないなんて・・・・!」

 

なのはとフェイトは焦っていた。デバイス達も焦ったような声を漏らしていた。

と、ソコでさらに、複数のレーザーが、背中合わせになったなのはとフェイトに襲いくる。なのはがシールドを張ろうとするが間に合わない。BJの防御力が耐えられるか分からず、痛みに耐えようと目を瞑ろうとした瞬間ーーーー。

 

「ナッツ、防御形態」

 

「GAAAU!」

 

二人を守るように現れたツナが、『Ⅰ世のマント』でレーザーを防いだ。

 

「ツナさん!」

 

「『大地の重力』!」

 

「エンマ!」

 

次にエンマが上方に重力球を作り上げると、ソコから超重力が発生し、姿を消していたガジェット達が姿を現し、重力球から発生する引力に引き寄せられる。

 

ーーーーグワシャァァァァァァァンン!

 

集められた『藍色の装甲をしたガジェット』達は圧砕された。

 

「「・・・・・・・・!?」」

 

「ありがとうツナさん」

 

「助かったよエンマ」

 

「あ、ああ・・・・」

 

「うん・・・・」

 

「「?」」

 

ツナとエンマの様子に、なのはとフェイトは首を傾げたが、二人は圧砕したガジェット達を見据えていた。

 

「「(何故ガジェットに、『死ぬ気の炎』の反応が?)」」

 

コンタクトディスプレイが、『藍色のガジェット』から、『炎エネルギー』を探知していたのだ。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

大型モニターを映し出された機動六課のレリック回収作業を見つめる白衣の科学者がいた。

 

《『刻印ナンバーⅨ』、護送態勢に入りました》

 

「ま、流れの通りだね」

 

《追撃戦力を送りますか?》

 

「止めておこう。旧式ガジェットの在庫処理に新型のテストだけでも十分さ。それにしても、守護者達も来たか」

 

科学者の目の前のモニターに映し出されるのは獄寺達ボンゴレ守護者達であった。

すると、黒衣の青年が再び入室してきた。

 

「守護者くん達が来たって?」

 

「ええ。まさか彼らも来るとは思いませんでしたよ」

 

守護者達の戦いの様子を見て、白衣の科学者は興味深そうに笑みを浮かべる。

 

「こっちはどう?」

 

黒衣の青年が操作して、なのはとスバルとキャロの三人と、ガジェットが送ってきたフェイトとエリオの二人の映像が映し出される。

すると、科学者の笑みが薄まり、冷めた態度になる。

 

「あぁ、別に良いですよ。と言うよりも、最早『プロジェクトF』の残滓にも何の興味も抱いていません」

 

「あらら♪ つれない言い方。これじゃ“君を追っている『彼女』”が、可哀想だねぇ☆」

 

「と、言われましてもね。『彼女』の“逆恨み”に付き合う義理も暇もありませんよ。そんな下らない事よりも・・・・」

 

次にモニターに映し出されたのは、新型ガジェットの攻撃を防ぎ、一瞬で破壊したエンマの姿だった。

 

「『ボンゴレギア』と『シモンリング』。私達知らない歴史で生まれた新たなアイテム。興味深いですねぇ」

 

二人のアイテムを見て、科学者はまた笑みを浮かべるのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

守護者と魔導師の再会

ーツナsideー

 

機動六課の初出動の任務は、様々な失敗と思いもがけない事が連続であったが、無事に解決することが出来た。

そして事件が終わり、機動六課に到着すると、リボーンが出迎えて、獄寺達に話しかけた。

 

「獄寺。山本。了平」

 

「リボーンさん! ご無事で何よりです!」

 

「よっ! 小僧!」

 

「大丈夫そうだな!」

 

「まぁな。・・・・それよりも、何でお前ら〈デンライナー〉で来れたんだ?」

 

リボーンがツナとエンマになのは達の相手をさせている間に、獄寺達から時の列車〈デンライナー〉でこの八年後のミッドチルダに来たことを聞いた。

 

「はい。実はリボーンさん達が行方不明になってすぐ、白蘭の野郎が現れまして」

 

「白蘭が?」

 

「ああ。それで俺らに〈デンライナー〉のチケットをくれて、この時代に来たんだぜ」

 

「だが『オーナー』が言うには、俺達のチケットは片道乗車券で、帰りは別との事で下車されたのだ。ついでに、色々な道具が入ったバックも貰ったぞ」

 

「(あの時の運行に厳しい『オーナー』が、オレ達がこの時代のミッドチルダに留まるのを見逃した。それに白蘭も一枚噛んでるとすると・・・・どうやらこの状況、白蘭だけでなく、“誰かの意図が絡んでいるな”)」

 

リボーンはそう思考すると、この事をツナとエンマにも伝えるが、なのは達にはあまり詳しく教えないように守護者達に言った。

そしてーーーーツナ達は食堂にて、改めて大人になったなのは達やFW陣に獄寺達に紹介した。

 

「獄寺隼人。10代目である沢田綱吉さんの右腕だ。しばらく世話になる」

 

「おっす! 俺は山本武! よろしくな!」

 

「俺の名は並森高校二年! 笹川了平だぁっ!! 座右の銘は、極限だぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「うるせぇよ! 芝生頭! テメェは一々でかい声上げなきゃ死ぬ病気でも患ってんのかっ!?」

 

「何だとタコ頭! 気合いを込めただけではないかぁ!」

 

「まぁまぁ、獄寺も先輩も落ち着けって」

 

「獄寺くん、初めて会う人もいるんだから!」

 

「ここはおさえて!」

 

喧嘩を始めようとする獄寺と了平。それをおさえる山本とツナとエンマ。

なのは達にしてみれば昔懐かしい光景に思わず笑みを浮かべ、FW陣を含めた他の面子は唖然となった。

そして、成長したなのは達と会話を始めた。

 

「なのは! フェイト! すっかり身長高くなったなぁ!」

 

「おお! 俺達よりも大きくなったぞ!!」

 

「にゃはははは。八年も経っていますから」

 

「私達も大人になったんだよ」

 

山本や了平と朗らかな会話を繰り広げるなのはとフェイト。しかし、獄寺は意地の悪い笑みを浮かべながら、はやてとヴィータを見て口を開く。

 

「だが、はやて。お前はほぼ俺達と変わんねぇな? いや、下手すると俺達より低いんじゃねぇか?」

 

「やかましいわ! ああもう男の子はすぐニョキニョキと大きくなりおってからに!」

 

「ま。全く身の丈が変わってねえエビガキもいるけどなぁ?」

 

「あぁん? どういう意味だタコ頭!?」

 

「あん? 桜エビ、お前はむしろ縮んだか? その内リィンにも追い抜かれんじゃねぇかぁ?」

 

「ええ~、そうですかぁ?」

 

「(ブチッ)上等だよこの銀ダコ頭ぁ! 今すぐアイゼンでその頭ごと背丈を潰して! タコじゃなくてクラゲにしてやらぁっ!!」

 

照れるリィンだが、頭に♯マークを浮かべたヴィータはアイゼンをバトンのように振り回しながら、獄寺に飛びかかろうとするが、シグナムとアインスが抑えた。

 

「ははっ、ヴィータは相変わらず元気なのなぁ!」

 

「いや、これを元気の一言で片付けて良いのだろうか山本よ?」

 

「ヴィータ落ち着け」

 

「おおっ! ザフィーラにシャマルではないか! 二人とも元気そうではないか!」

 

「ええ。了平くんも変わらず元気ね」

 

「寧ろ有り余っているように見えるがな」

 

八年前の姿なのだから変わっていないと改めて認識した。

 

「ねえねえティア! 新しく来た人達も結構仲良くできそうだよ!」

 

「そうね。山本って人と笹川って人は、アンタと似た雰囲気だものね」

 

「え? そう?」

 

「ええ。体力自慢で運動馬鹿でお気楽お馬鹿な所が特にね」

 

「ヒドイよティアー! そんな事を言うなら、あの獄寺って人なんて、初めて会った時のティアにそっくりだよぉ?」

 

「一緒にしないで、私はあんなヤンキー野郎とは違うわよ」

 

「えぇ~。ツンツンしている所は似てると思うけどなぁ」

 

「・・・・・・・・」

 

「エリオくん嬉しそうだね」

 

「えっ、う、うん。やっぱり男の人が多いと少し安心できるんだ」

 

FW陣も守護者組と仲良くできそうな雰囲気だった。

 

 

 

 

 

ーFW陣sideー

 

それから数日後。

 

「極限だぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「極限だーーーーーーーーっっ!!」

 

了平とスバルが一緒になってランニングをしたり、

 

「おりゃっ!」

 

「うっ!」

 

「よぉしエリオ上手いぞ! 次は俺に投げてこい!」

 

「は、はい! えぇい!」

 

「エリオくん、頑張ってー!」

 

「エリオ、山本とキャッチボールしてる・・・・」

 

「野球では手加減知らずの山本くんと投げ合えるなんて・・・・」

 

「エリオも中々傑物だな」

 

エリオは野球では手加減できない山本とキャッチボールを楽しみ。キャロはそれを見てエリオを応援し、ツナとエンマとリボーンは、エリオの運動能力に目を見張った。

そしてーーーー。

 

「山本! モンディアルとのキャッチボールを終えたら、久しぶりに手合わせをしてくれ!」

 

「おう!」

 

ちゃっかりシグナムも山本との模擬戦を予約していた。

 

「(何かコイツ、何処かで会った気がするけど)・・・・アンタ、何ソレ?」

 

ティアナが獄寺を訝しそうに見ていると、獄寺の武器である、SISTEMA.C.A.Iの髑髏の砲台を磨いている獄寺に話しかけた。

 

「あん? 俺の武器だ。イカすだろう」

 

「髑髏の砲台って、趣味悪過ぎ・・・・」

 

「んだとぉっ!? このセンスが分からねえのかっ!?」

 

「そんなので喜ぶのはアンタくらいよ!」

 

と、ギャーギャー口喧嘩を繰り広げていた。

そして六課の中庭ではーーーー。

 

『ガァゥゥゥゥ~!』

 

『ニャァアアアッ!』

 

『ガ』

 

『ニャッ!? ニャァァァッ!』

 

『ガゥゥ・・・・!』

 

『ワゥン』

 

『ピィ』

 

『キュル~』

 

ナッツが瓜に攻撃され、見かねた我流が瓜の首根っこを掴んでナッツから離れさせ、次郎と小次郎、そしてフリードが、泣いているナッツを慰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

腕を鈍らせてはならないと思い、リボーンがツナ達に訓練をさせていた。

 

「はぁっ!」

 

「ふっ!」

 

「おらっ!」

 

「よっと!」

 

「極限!」

 

そして早速、シミュレーターでガジェットの大軍との戦闘を繰り広げていた。

ツナとエンマは、フェイトクラスの超スピードでガジェットを破壊していき、獄寺は髑髏の砲台から放たれる『嵐の死ぬ気の炎』で次々とガジェットを撃ち抜き、山本は時雨金時に『雨の死ぬ気の炎』を纏わせ、一刀両断していき、了平は『晴れの死ぬ気の炎』を纏ったグローブで破壊していく。

 

「シャーリー、次はガジェットの戦闘能力をギリギリまで上げていけ。そして最初は100機のガジェットを出せ。ツナ達が全滅させたら今度200機。また全滅させたら400機。次は800。さらに次は1600と順繰りに数を増やしていってくれ」

 

「リ、リボーンくん! 何その拷問染みた訓練!? そんなのやっちゃって良いのっ!?」

 

「構わねぇぞ、オレが許可する。“このくらい楽にこなせたいようじゃ話にならねえ”。それに、お前のシミュレーターで作ったガジェット達が何処までの戦闘能力か、実験してみるのも良いだろう」

 

「で、でも、ツナくん達、大丈夫なの?」

 

シャーリーは不安そうな顔をするが、リボーンは平然と答える。

 

「この程度で音を上げるようなら、オレが鉄拳をお見舞いしてやる。気にしないでやってくれ」

 

ゴキリ! ゴキリ! と、拳を鳴らしながらそう言うリボーンの言い様のない謎の迫力に、シャーリーは汗を垂らしながら、どうなっても知らないと言わんばかりにコンソールを操作した。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

そして、先に訓練を終わらせていたなのは達は、ツナ達の訓練の様子を眺めていた。

 

「凄~い! ツナ達もう1000機もガジェットやっつけちゃったよ!」

 

「す、スゴいです・・・・!」

 

『キュル~』

 

スバルとキャロ、そしてフリードは、ツナ達の戦い様に目を光らせる。

 

「「・・・・・・・・」」

 

ツナ達の戦い様を、エリオは真剣に目に焼き付けようとしているが、ティアナは何処か不機嫌そうな目で見ていて、それぞれ真逆の反応をしていた。

 

「・・・・皆。ツナさん達の訓練はとても無茶で危険だから、真似しないようにね」

 

なのはは10年前からリボーンのやり方に苦い顔をしていており、FW陣が真似しないように注意した。

そして、1万機を越えたほどで訓練を終えたツナ達に駆け寄るエリオ達。しかし、ティアナだけは素っ気ない態度を取っており、獄寺だけがその様子に目を細めていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホテル・アグスタⅠ

今回、オリジナル匣兵器が登場します。


ーツナsideー

 

とある日。六課食堂にて。

 

「10代目。入江から『コイツ』の調整が終わったと言われ、持ってきました」

 

「あっ! ありがとう獄寺くん!」

 

『ガゥ』

 

ツナが獄寺から『オレンジ色の匣兵器』を受け取った。ツナの隣に座り、ナッツを膝の上に乗せていたなのはが、首を傾げた。

 

「ツナさん。その匣って」

 

「あぁ。正一くんが作ってくれた。新しい相棒だよ。ちゃんと調整が終わるまで、八年前のなのはちゃん達にも紹介できなかったんだ」

 

ツナが笑みを浮かべながら、『大空のリングver.X』に炎を灯すと、匣の窪みに押し込むと、匣が開き中から『大空の死ぬ気の炎』の塊が飛び出す。塊はテーブルの上に乗って炎が弾け飛ぶと中からーーーー『ナッツと同じ大きさをしたメスの仔ライオン』が現れた。

 

「ナッツのパートナーで、俺の新しい相棒、『大空ライオン(♀)のココ』だよ」

 

『ガォ』

 

『可愛い~~~~!!』

 

なのはと近くいたフェイトとはやて、守護騎士達、FW陣(女子)もナッツと違って少々目付きが鋭い仔ライオン(♀)のココにメロメロになっていた。

 

『ガォ?・・・・・・・・』

 

が、ココはなのはの膝の上に乗っているナッツを見ると、眼を細めた。

それに気づかず、なのはは笑みを浮かべてココの頭を撫でようと手を伸ばしーーーー。

 

「ココちゃんって言うんだね! 私は高町なのはだよ。ヨロシク(ガブッ!)ガブ?」

 

なのはが手を見ると、ココが思いっきりなのはの手に噛みついていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

『ガゥ?』

 

なのはとココ、ツナ達に沈黙が広がる中、ナッツが声を発したその瞬間、

 

『(ガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブガブっ!)』

 

「~~~~~~~~~~!! にゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

ココが連続でなのはの手を噛み、なのはは手に激痛を感じて立ち上がって悲鳴を上げた。ココはスッポンのようになのはの手に噛みついて離れない。

 

「なぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ココやめろっ!!」

 

『ガゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』

 

ツナとナッツがココをなのはの手から離させようとする。エンマ達も一緒に四苦八苦するのであった。

幸いか、ココが手加減したのか、手には歯形が無数に付けられたが血は流れておらず、シャマルの回復魔法で回復する傷だった。

 

「ココ! 謝るんだ!」

 

『ガゥ!』

 

「テメェ! 何でなのはの手を噛みまくりやがった!」

 

ツナとナッツが怒り、ヴィータが掴み掛かろうとするが、シグナムが羽交い締めする。

 

『ガォ』

 

ココはソッポを向いて話を聞こうとしなかった。

 

「まぁまぁツナさん。ココちゃんは私がナッツと仲良ししていたのに怒っていたんだよ」

 

「えっ、そうなの?」

 

『ガゥ?』

 

『~~~~!//////』

 

ツナとナッツが首を傾げると、ココは顔を赤くした。

 

「ココちゃん。私はココちゃんとも仲良くしたいんだよ。ね、お友達になろう」

 

『(・・・・・・・・イラっ)』

 

なのはが笑みを浮かべてココに手を差し伸べた。

が、ココはそのなのはの微笑みに、不快感とムカつきを感じて。

 

『(ペシッ! プイッ)』

 

「あっ」

 

尻尾でなのはの手を弾いてソッポを向くと、匣に戻っていった。

 

「あっコラ、ココ! 出てこい!」

 

それからリングを押し込んでも、ココは匣から出てこず、訓練にも参加しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ち、『ミッドチルダ』・首都南東地区。

その上空を飛行する一台のヘリ。それに搭乗しているのはなのはとフェイトとはやての隊長陣。ツナとエンマ、獄寺と了平の民間協力者組。そしてスバルとティアナとエリオとキャロのFW陣。さらにはシャマルとザフィーラとリィンも乗っていた。

因みにリボーンとアインスは、六課でロングアーチに指示を出す隊長代理とその補佐の為に不在。

 

「ほんなら改めて、ここまでの流れと任務のおさらいや。これまで謎やったガジェットドローンの製作者及びレリックの収集者は現状ではこの男・・・・」

 

モニターには、一人の紫色の髪を肩口まで伸ばし、もみ上げが首に届くまで伸ばした白衣の男性の画像が映し出される。

 

「違法研究で広域指名手配されている次元犯罪者ーーーー『ジェイル・スカリエッティ』の線を中心に捜査を進める」

 

「こっちの捜査は主に私が進める事になるけど、皆も一応覚えておいてね」

 

「(ん?)」

 

「「「「はい」」」」

 

フェイトの言葉にFW陣は返事をする。エンマは人知れず少し首を傾げる。

 

「で、今日これから向かう先はここ、『ホテル・アグスタ』」

 

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」

 

「取引許可の出ている『ロストロギア』が幾つも出品されるので、その反応を『レリック』と誤認したガジェットが出て来てしまう可能性が高い。とのことで、私たちが警備に呼ばれたんです」

 

「この手の大型オークションだと密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、色々油断は禁物だよ」

 

「現場には昨夜からシグナム副隊長とヴィータ副隊長、武さんの他、数名の隊員が張ってくれてる」

 

モニターには警備をしているシグナムとヴィータ、山本が映し出される。

 

「私たちは建物の中の警備に回るから、前線は副隊長達の指示に従ってね」

 

「「「「はい!」」」」

 

なのはの指示に返事をする四人。

 

「ツナさん達もそれでええか?」

 

はやての質問に、山本を除いたボンゴレ&エンマが頷いた。

すると、キャロが手を上げて向かいに座っているシャマルに質問する。

 

「あの、シャマル先生。さっきから気になってたんですけど、その箱って・・・・?」

 

キャロはシャマルの足元にある箱を指差す。

 

 「ん? あぁ、これ? ふふっ・・・・隊長達と10代目とエンマくんと隼人くんのお仕事着♪」

 

「「えっ?」」

 

「は?」

 

シャマルは楽しそうに微笑みながら言うと、ツナとエンマが素っ頓狂な声を上げた。

 

「おい、なんだそりゃ? 俺らは聞いてねぇぞ」

 

「ふふっ、向こうに着くまでの秘密よ♪」

 

そう言ってシャマルはイタズラっぽい笑みを浮かべ、そのままホテル・アグスタに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタ。

そこの受付では長蛇の列が出来ており、オークション関係者がIDカードを提示しながら受付を済ませていく。

 

「あっ・・・・!」

 

すると、受付の男性が一枚のIDを見て小さく声を上げ、その人物達を見た。

 

「こんにちは、機動六課です」

 

ソコには綺麗なドレスと、少しの化粧で美しく着飾ったなのはとフェイトとはやて。そして黒いタキシードに身を包んだツナとエンマと獄寺だった。

受付を済ませた六人はなのはとツナ、はやてと獄寺、フェイトとエンマの三手に分かれ、オークション会場の警備の点検を始めた。

 

「緊張する・・・・!」

 

「ツナさん似合ってるよ。結構慣れた様子でタキシード着ていたね?」

 

「あ、う、うん。ボンゴレの流儀ってヤツで、ここ一番の戦いに赴く際にスーツで戦場に向かうってのがあって、スーツの着方を覚えたんだ」

 

「そうーーーーなんだ」

 

ツナの言葉になのはは少し沈んだような声を発した。ツナのそういう所を自分が知らない事に、疎外感を感じたからだ。

 

「なのはちゃん?」

 

「あ、何でもないの」

 

なのはの様子を少し訝しそうにするツナだが、なのはから言ってくれるのを待とうと思い、今は任務に集中した。

そしてーーーー。

 

「「え?」」

 

ツナとなのはは間の抜けた声を漏らした。オークション会場にいる他の女性達の格好を見て。

 

 

 

 

 

ーエンマsideー

 

「うぅっ。少し動き難いなぁ・・・・」

 

「ふふ、似合ってるよエンマ」

 

少し服に着られている感のあるエンマと素直に褒めるフェイト。

 

「・・・・そう言えばフェイトちゃん」

 

「ん? 何エンマ?」

 

「『ジェイル・スカリエッティ』って人の調査だけど、何かあったの?」

 

「えっ?」

 

フェイトが素っ頓狂な声を発した。

 

「フェイトちゃんがスカリエッティの事を話している時、何かいつもと違う風に見えたから」

 

「・・・・・・・・」

 

フェイトはエンマの言葉に、少し驚き、顔を俯かせる。

 

「・・・・エンマ。私もね、執務官になってからこの八年間、結構色々な事を知るようになったの」

 

「うん」

 

「少しだけ、待っていて。いずれエンマにもちゃんと話すから」

 

「・・・・分かった。フェイトちゃんが話したくなったら、いつでも言って」

 

「ありがとう」

 

そう会話をし終えると、オークション会場に赴いた二人は、

 

「「え?」」

 

会場の女性達の格好を見て、先に来ていたのだろうツナとなのはと同じ、間の抜けた声と顔になった。

 

 

 

ーはやてsideー

 

「おい八神、これはどうなってんだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ツナ達より先に来ていた獄寺とはやても、オークション会場の女性達の装いを見て、唖然となっていた。

何故なら、オークション会場にいた女性達が全員ーーーー和服を着ていたからだ。

洋風のドレスを着ているなのはとフェイトとはやては、この中では悪目立ちしている。

 

「これは多分、雲雀さんの会社、和雑貨企業『HUHKI』では、呉服とかを販売しててな。それを常連のリンディさんが和服でパーティーとかに出席してるって話を聞いた事があったわ・・・・」

 

「まさかそれで・・・・」

 

「ミッドチルダの女性達のパーティードレスになってもうたんやなぁ。いやぁ、私やシャマルやリインも和服のデザインとかやっとったから、少し鼻高いわぁ・・・・なんて・・・・」

 

渇いた笑みを浮かべるはやてに、獄寺が半眼で見据えた。この後すぐに合流したツナとなのは、エンマとフェイトも、獄寺と同じ目で見られるのであった。




『オリジナル匣兵器・天空ライオン(♀) ココ』

見た目:ナッツから鬣を外し、目をつり目にした姿。

性格:勝ち気で強気で気まぐれ。

好きな物:ツナ。魚。日向ぼっこ。・・・・・・・・後ナッツ。

嫌いな物:上から目線で薄っぺらで上っ面の良い言葉を吐くヤツ。

能力:ナッツと同じ咆哮を持ち、形態変化能力をもつ。




ココの能力はこれから明かされます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホテル・アグスタⅡ

ースカリエッティsideー

 

ここは機動六課が追っている次元犯罪者、『ジェイル・スカリエッティ』が作った洞窟のラボにある研究室では、ソファに座ったスカリエッティが空中に表示された大型モニターで、ガジェットから送られてくるホテル・アグスタの様子を見ていた。

と、ソコで研究室に入ってくる黒衣の男。

 

「新型ガジェットも投入するのかい?」

 

「ええ。前回は『霧の炎』によるステルス機能のテストでしたが、今回は『他の炎』を加えた機体を使っての実験です」

 

「その相手になるモルモットちゃんは?」

 

「八神はやての守護騎士達ですね」

 

「ふぅん。シグナムちゃんとヴィータちゃんはボケてるけど、ザフィーラくんは結構やるようになってるよ」

 

「それも想定通りですよ。ーーーーさて、“8年も『温室』の中でヌクヌクしていた者達に、現実を見せてあげましょう”」

 

スカリエッティは凄絶な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

その頃、外回りをしているスバルとティアナは別々の場所を警備しながら念話で会話していた。

 

《それにしても、今日は八神部隊長の守護騎士団、全員集合か~》

 

《そうね・・・・アンタは結構詳しいわよね? 八神部隊長とか副隊長たちのこと》

 

《うん。『父さん』や『ギン姉』から聞いた事くらいだけど、八神部隊長の使ってるデバイスが魔導書型で、それの名前が『夜天の書』っていう事。副隊長達と、シャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有してる特別戦力だって事。で、それにアインス曹長とリィン曹長を合わせて7人揃えば無敵の戦力って事》

 

スバルはちょうど近くで魔法陣を展開して警戒しているリィンを見ながらティアナに自分の知っていることを伝える。

 

《ま、八神部隊長達の詳しい出自とか能力の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけど・・・・》

 

《・・・・レアスキル持ちの人はみんなそうよね・・・・》

 

《ティア、何か気になるの?》

 

ティアナの言葉にスバルは首を傾げる。

 

《別に・・・・》

 

《そう? じゃあまた後でね》

 

そう言ってスバルは念話を切った。途端に、ティアナは表情を少し険しくさせた。

 

「(六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員が『オーバーSランク』・・・・副隊長でも『ニアSランク』・・・・他の隊員達だって前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。あの歳でもう『Bランク』を取ってるエリオと、レアで強力な『竜召喚士』のキャロは2人ともフェイトさんの秘蔵っ子。危なっかしくはあっても潜在能力と可能性の塊で優しい家族のバックアップもあるスバル。そしてーーーー謎の炎を使うツナ達・・・・)」

 

ティアナは、訓練で見せたツナ達の実力に焦燥感が生まれる。

 

「(まるでガジェット達の動きを予測しているような動きと、フェイト隊長クラスのスピードを出すツナ。そのツナと互角の戦闘力とスピードだけでなく、重力を自在に操るエンマ。趣味は悪いけど、あらゆる銃弾を戦況に応じて使い分ける獄寺。シグナム副隊長と互角の剣技を使う山本。スバル以上のタフネスと突進力を持った笹川。それに、ヴィータ副隊長曰く、ペットであるナッツ達も、強力な能力を隠しているって言っていた。それに、他にも三人の守護者がいて、中にはシグナム副隊長とヴィータ副隊長の二人を同時に相手をして互角以上に戦える人もいるって。・・・・どう見ても、私がこの部隊で一番の凡人だ・・・・)」

 

ティアナの心の中に劣等感が、まるで染み汚れように生まれ、徐々に広がる。

 

「(だけど、そんなの関係ない! 私は、立ち止まるわけにはいかないんだ!)」

 

ティアナは雑念を払うように頭を振ると、警備に戻った。

 

 

 

ー???sideー

 

少し時は遡り、ホテル・アグスタから数十キロも離れた森の中に、フード付きのコートを着た壮年の男性とエリオやキャロくらいの年齢の幼い少女の二人が手を握り、静かに立っていた。

 

「・・・・あそこか。お前の探し物はここにないのだろ? 何か気になるのか?」

 

「・・・・うん」

 

男の問いに少女は頷いた。

すると、少女の指に虫のような機械が止まり、何かを伝えようたしているかのように身体を動かすと、少女はそれを理解したのようで、男に伝える。

 

「ドクターの古いオモチャと『新作のオモチャ』が・・・・近付いて来てる、って」

 

 

 

ーシャマルsideー

 

そして、ホテルの屋上で警備をするシャマルの指に嵌められた指輪型デバイス『クラールヴィント』が光を発する。

 

「っ! クラールヴィントのセンサーに反応。シャーリー!」

 

《はい!・・・・来た来た・・・・来ましたよ!》

 

《ガジェットドローン陸戦Ⅰ型。機影30・・・・35

・・・・》

 

《陸戦Ⅲ型・・・・2、3、4・・・・》

 

徐々に、敵であるガジェットの数が増えていき、ロングアーチ達の声に緊迫感が現れる。

 

 

 

 

 

ーシグナムsideー

 

その連絡を受けたシグナムは一緒に居たエリオとキャロに指示を出す。

 

「エリオ、キャロ、お前達は上へあがれ。ランスターの指示で、ホテル前の防衛ラインを設置する」

 

「「はい!」」

 

「ザフィーラは私と迎撃に出るぞ」

 

「心得た」

 

ザフィーラがいきなり声を発した事に二人は驚く。

 

「ザフィーラって、喋れたの?」

 

「びっくり・・・・」

 

「守りの要はお前たちだ。頼むぞ・・・・」

 

「う、うん!」

 

「がんばる!」

 

ザフィーラにそう言われ、二人は緊張気味に答えた。

 

「シグナム。山本と笹川を呼ばんのか?」

 

「あの二人が来るまでもない。ガジェット程度なら我らで対処できる」

 

「・・・・しかし油断するな。前回高町とテスタロッサを襲った新型のガジェットも現れるかも知れん」

 

「分かっているさ」

 

そう話をして、二人はガジェットへと向かった。

 

 

 

ーティアナsideー

 

《前線各員へ。状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合回線と合わせて私、シャマルが現場指揮を行います!》

 

「スターズ3、了解!」

 

「ライトニングF、了解!」

 

「スターズ3、了解!」

 

各々が外へと向かっていく中、ティアナは魔力によるアンカーを使いシャマルの近くまで行って、前線のモニターを貰い戦闘に備える。

 

「シャマル先生! 私も状況を見たいんです! 前線のモニター、貰えませんか?」

 

《了解。クロスミラージュに直結するわ。クラールヴィント、お願いね》

 

[ヤー]

 

クラールヴィントにキスをすると、シャマルはバリアジャケットを展開し、シグナムとヴィータに念話を送る。

 

《シグナム。ヴィータちゃん。出撃よ》

 

《おう、スターズ2とライトニング2・・・・出るぞ!!》

 

シグナムとヴィータはバリアジャケットを展開し、ガジェットの迎撃へと向かった。

その様子を、スバルとティアナは空間モニターで見ていた。

ヴィータの鉄球が正確にガジェットを貫き、ザフィーラの堅い守りと鋭い攻撃で敵の行く手を阻み、シグナムの力強い一閃で斬り伏せていく。

 

「副隊長たちとザフィーラ、すごーい!」

 

スバルは素直に感心するが、ティアナだけが浮かない表情をしていた。

 

「これで、能力リミッター付き・・・・!」

 

副隊長達と自分との力の差を見せ付けられたティアナは拳を強く握った。

 

 

 

 

ー???sideー

 

 

その頃、戦場から離れた場所でシグナム達の戦いを静観してる壮年の男性と幼い少女の二人組の前に、空間モニターが出現すると、ジェイル・スカリエッティの姿が映し出された。

 

《ごきげんよう。『騎士ゼスト』、『ルーテシア』》

 

「・・・・ごきげんよう」

 

『・・・・何の用だ?』

 

少女、『ルーテシア・アルピーノ』は無表情で、壮年の男性、『ゼスト・グランガイツ』はあからさまに嫌な顔をしている。

 

《冷たいね。近くで状況を見ているんだろ? あのホテルに『レリック』はなさそうだったが、実験材料として興味深い骨董があるんだ。少し協力をしてはくれないかね? 君達なら、実に造作も無いはずなんだが・・・・》

 

「断る。『レリック』が絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めたはずだ」

 

ゼストはきっぱりと断るが、スカリエッティは交渉相手をルーテシアに変える。

 

《・・・・ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?』

 

「・・・・いいよ」

 

《優しいなぁ、ありがとう。今度ぜひお茶とお菓子を奢らせてくれ。君のデバイス『アスクレピオス』に私が欲しい物のデータを送るよ》

 

彼女の両手に嵌められている紫の宝玉が付いたグローブ型デバイス、『アスクレピオス』を一瞥して、再びスカリエッティに眼を合わせる。

 

《あぁそれと、現在機動六課の協力者達のデータも見せるよ》

 

スカリエッティの画面の横には、ツナ達の顔写真が表示された。

 

「このような少年達が、機動六課の協力者だと?」

 

「・・・・この子達に会ったら、どうすればいい?」

 

《逃げてくれ》

 

「「っ!」」

 

普段の人を食ったような態度のスカリエッティとは真逆の、神妙かつ真剣な眼と声に、二人は息を詰まらせた。

 

《彼らと遭遇したら、戦おうとせず逃げる事のみに専念してくれ》

 

「そんなに脅威となるような少年達には見えないが・・・・」

 

《・・・・もしそう見えるならば、騎士ゼスト。貴方の目は節穴か、耄碌していると言わざる得ないな》

 

「・・・・何だと?」

 

スカリエッティの言葉に、ゼストは怒気を含ませるが、スカリエッティはまるで臆せず断言するように言葉を続ける。

 

《彼らは強い。機動六課の高ランク魔導師処か、管理局の魔導師共などまるで足元にも及んでいない。君達は大切な協力者だ。彼らと戦って失う訳にはいかない。だから忠告をしているのだよ。分かったかね?》

 

「・・・・うん、分かった。じゃぁ、ごきげんよう、ドクター」

 

《あぁ、ごきげんよう。吉報を待っているよ》

 

空中モニターが消えて通信が終わると、ルーテシアはローブを脱いでゼストに渡すと、準備を始めた。

 

「いいのか?」

 

それを受け取りながらゼストは尋ねる。

 

「うん。ゼストや『アギト』はドクターを嫌うけど、私はドクターの事そんなに嫌いじゃないから」

 

「そうか・・・・」

 

会話が終ると、ルーテシアは魔法を行使し始める。デバイスの宝玉が輝き、足元には魔法陣が展開してーーーー。

 

「我は・・・・乞う」

 

詠唱を始めた。

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

 

「遠隔召喚、来ます!」

 

キャロが何かに気付き声を上げた瞬間、浮かび上がった4つの魔法陣から数体のガジェットが出現した。

 

「あ、あれって召喚魔法陣!?」

 

「召喚魔法ってこんな事も出来るの!?」

 

「優れた召喚士は転送魔法のエキスパートでもあるんです!」

 

スバルとエリオが驚き、キャロが詳しく説明した。

 

「何でもいいわ。迎撃行くわよ!」

 

「「「おう!」」」

 

ティアナの指示に三人が頷くと、ガジェットと交戦を始める。スバルが拳でガジェットを破壊し、キャロがフリードの炎で攻撃する。

そんな中、特に活躍しているのが、意外にもエリオだった。

 

「はぁあああああっ!!」

 

一体のガジェットを破壊したらすぐに他のガジェットに向かう、持ち前のスピードを生かしたヒット&ウェイ戦法を繰り広げた。

 

「エリオくんスゴい!」

 

「絶好調じゃん!」

 

「(まだだ! ツナ兄ぃ達はもっと速く! もっと鋭い!)」

 

スバルとキャロが驚嘆するが、エリオの脳裏には、ツナ達の訓練姿が思い上がり、まだソコに到達していない事とエリオは痛感していた。

少しでも兄貴分達のいる場所に届くように、動きに更なるキレを生み出していった。

 

「(何よ・・・・エリオのヤツが一番活躍しているじゃない・・・・!)」

 

ティアナは劣等感を感じ、クロスミラージュを強く握る。

 

「(今までと同じだ・・・・証明すればいい。自分の能力と勇気を証明する・・・・アタシはそれでいつだってやってきた!)」

 

心の中でそう決意したティアナは再びクロスミラージュを構えるのであった。

 

 

 

 

ー???sideー

 

その頃、ホテル・アグスタの地下駐車場にて。

 

「うぐっ・・・・!」

 

一つの『黒い影』が警備員を気絶させ、トラックの積荷の一つを持ち去ろうとしていた。

するとーーーー。

 

「おっと待った」

 

「極限に誰だ?」

 

『っ!?』

 

突如声が響いて『黒い影』がそちらを見ると、そこには、山本と了平が立っていた。

 

「リボーンの読み通りだったな」

 

「【敵が正面からやって来たならば、裏側の方を最も警戒しておけ】、ってな!」

 

『晴れグローブ』を叩き合わせたり、『時雨金時』を正眼に構えた。




次回、原作ではティアナが暴発してしまいますが、その他に、再び脅威が迫りくる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホテル・アグスタⅢ

明けましておめでとうございます!


ー山本sideー

 

山本と了平は『影』と向き合い、一触即発の雰囲気がその場を支配する。すると突然、『影』の周りに紫色の魔法陣が出現した。

 

「おっ?」

 

「何だぁ?」

 

山本と了平が首を傾げていると、魔法陣からガジェットの大群が出現した。

 

「ガジェット!? って事は」

 

「貴様! 『スカルエース』のものかっ!?」

 

「先輩。『スカイエイチ』っすよ」

 

スカリエッティである。が、『影』はそんなボケコンビにツッコミを入れず、ガジェットに後は任せたと云わんばかりに、その場から去ろうとした。

 

「おっと!」

 

「極限に逃がさん! 『マキシマムキャノン』!!」

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォォォォン!

 

『っ!?』

 

『影』は身体を硬直させた。了平が『晴れの死ぬ気の炎』を纏ったグローブで一体のガジェットを殴り飛ばすと、その拳の威力が凄まじかったのか、一直線に吹き飛ぶガジェットが、周りのガジェットも巻き込んで破壊されていき。

 

「『時雨蒼燕流 功式八の型 篠の突く雨』」

 

山本が時雨金時を取り出して、『雨の死ぬ気の炎』を纏わせ、ガジェットの間をすり抜けるように駆け抜け、ガジェット達を通り抜ける。

 

ーーーーシュピ・・・・ズガァァァァァァァンン!

 

その瞬間、ガジェット達に青い線が幾つも走り、その機械の身体が三つか五つに切り裂かれ、爆散した。

 

『っ!?』

 

『影』は驚愕したように身体を硬直させた。あれほどの大量のガジェットが行く手を阻んだにも関わらず、目の前の二人の少年は、一撃で、一瞬で全滅させたのだ。

 

「数がいてもそれほど驚異ではないな」

 

「ッスね」

 

『・・・・っ!』

 

しかも、その少年達は息一つ乱れていなかった。

『影』は構える。目の前の少年達をこの場で確実に仕留めておかねば、自身の『主』たる少女の強大な敵となると判断したからだ。

 

「んじゃ次は・・・・」

 

「アイツだな」

 

『ーーーー!!』

 

『影』はこちらを見る山本と了平に一瞬で近づくと、拳を振ろうとしたーーーーが。

 

「遅い」

 

「大人しくしろ」

 

ーーーーバキッ! 斬!

 

『ーーーーッッ!!』

 

了平がその拳を『晴れグローブ』で弾き、山本が『影』を斬った。勢い良く斬られた『影』は、天井に叩きつけられると、重力に従い地面に落下した。

 

「やったのか?」

 

「浅く斬ったッス。それに、手応えが分かったッスけど、コイツーーーー人間じゃないッスね」

 

『ーーーー!!』

 

『影』はガバッも起き上がると、後方にバク転し、距離をとった。斬られた傷は浅いが、目の前の二人との力の差を理解したのか、攻めてこようとしなかった。

 

「「・・・・・・・・」」

 

山本と了平が構え、『影』はどうやって離脱しようかと考えていると、紫色の魔法陣が展開され、ソコから二体のガジェットが現れた。

ザフィーラと同じ位の大きさに、ボールのような胴体に、センサーのようなカメラアイが付いており、二本の脚で立ち、頭の上に二門の砲台が乗っていた。

 

「これは・・・・!」

 

「増援って事ッスね」

 

二人がそう話していると、突然現れた新たなガジェットの脚から、驚く事が起こった。

 

『『・・・・!!』』

 

何と、二体のガジェットの脚に『オレンジ色の炎』が噴射され、凄まじいスピードで山本と了平の横に移動した。

 

「「なっ!?」」

 

驚く二人に向かって、ガジェット達は砲身に『緑色の雷』と、『赤い炎』が放たれたーーーー。

 

 

 

 

 

 

ースカリエッティsideー

 

空中モニタでホテル・アグスタの戦況を見ていたジェイル・スカリエッティは、自分のガジェット達が押されている状況であるにも関わらず、何処か達観としたような視線で眺めていた。

 

「さて、守護騎士達と遊んでいるガジェット達には、退場して貰おう」

 

そう呟いたスカリエッティが、指をパチン! と鳴らすと、モニタに映し出されていた、シグナムとザフィーラが相手していたガジェット達が突如ーーーー自爆したのだ。

 

「では、出番だ。精々派手に暴れてこい」

 

スカリエッティが呟くと、モニタに映された、FW陣の元に飛んでいるヴィータに異変が起こったーーーー。

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

その頃、ホテルの前でガジェットを迎撃していたティアナはガジェットに向かって魔力弾を放つが、ガジェットはそれを軽々と避ける。

 

「くっ・・・・!」

 

ティアナが悔しそうに毒づいていると、奥のガジェットがティアナに向かって小型ミサイルを発射する。ティアナは冷静にそれを魔力弾で相殺する。

 

「ティアナさん!!」

 

「っ!!」

 

キャロの叫びを聞いて振り返ると、数体のガジェットがティアナに向かって熱線を放とうとしていた。がその時。

ティアナとガジェットの間に骨組みの円が飛んできて、ガジェットの熱線を防ぐと、赤い炎の矢が、ガジェット達をまとめて貫通して破壊した。

 

「周りにもちゃんと目ぇ向けとけ」

 

声がした方を見ると、そこにはホテル内を警備している筈の獄寺が立っていた。

 

「隼人さん!? どうして!?」

 

「リボーンさんから指示が飛んできてな。【敵が馬鹿正直に正面から攻めてきた時は、かなりの数を有しているか、増援を準備しているか、別方向から攻める為の陽動の為だ】って言われてな。案の定、ホテルの裏口に怪しい奴が現れたんだよ。そっちは野球バカとボクシングバカが向かっている。それで俺は、こっちの助っ人に来たんだよ」

 

「えっ!? 裏口からも敵が!?」

 

「こんなの戦術の初歩中の初歩なんだよ(・・・・つか、なのは達も『ラル・ミルチ』に教えられていただろうに、何やってんだか・・・・!)」

 

獄寺は、リボーンからの指示が来るまで、呑気にパーティー会場の警備をしていたなのはとフェイトとはやてに呆れていたが、会場はツナと炎真がいればどうにかなる。

獄寺は少しため息を吐いてから、SISTEMA.C.A.Iの砲台を構えた。

 

「ま、つー訳で来てやったんだ! とっとと終わらせっぞ!」

 

そう言うと、獄寺は『フレイムアロー』を放ち、周りのガジェットを破壊し始める。

すると、ティアナ達FWメンバーにシャマルからの念話が入る。

 

《防衛ライン! もう少し持ちこたえてね! ヴィータ副隊長がすぐに戻ってくるから!》

 

その念話を聞いて、ティアナの表情が険しくなる。

 

「守ってばっかじゃ行き詰まります! ちゃんと全部倒します!」

 

《ちょっと・・・・ティアナ大丈夫? 無茶はしないで!》

 

「大丈夫です! 毎日朝晩、練習してきてんですから!」

 

そう言いながら、クロスミラージュを構え、エリオとキャロに顔を向けた。

 

「エリオ、キャロ! センターに下がって! 私とスバルのツートップでいく!」

 

「「は、はい!」」

 

言われた通り、エリオとキャロは下がった。

 

「スバル! 『クロスシフトA』、いくわよ!」

 

「おお!」

 

スバルは自分の魔力でできた道、『ウイングロード』を使って、ガジェットの注意を引き付ける。その隙にティアナは、カートリッジを四発もロードした。

 

「(証明するんだ。特別な才能や凄い魔力がなくたって・・・・どんなに危険な戦いだって・・・・)」

 

ティアナの周りに、複数のオレンジ色の魔力弾が展開される。

 

「私は・・・・ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

 

ティアナは、クロスミラージュを構える。

 

「・・・・・・・・」

 

獄寺は、ティアナの姿に、『リング争奪戦』が始まる前の自分と重なって見えた。

 

《ティアナ! 四発ロードなんて無茶よ! それじゃティアナもクロスミラージュも・・・・!》

 

「撃てます!!」

 

[Yes]

 

ティアナとクロスミラージュはそう答えた。

 

《あぁもう! ヴィータちゃん! 急いでーーーーヴィータちゃん!? どうしたの!?》 

 

シャマルが、何やら焦ったような狼狽の声を上げるが、ティアナは構う事なく、クロスミラージュの引き金を引いた。

 

「クロスファイヤー・・・・シュート!!」

 

オレンジ色の魔力弾が、一斉にガジェット達に迫る。次々とガジェット達に魔力弾が当たり倒していった。

だが・・・・。

 

「え? あっ・・・・!」

 

何と、その魔力弾の一発が逸れて、スバルに迫っていた。

 

「っ!!」

 

それを見たスバルは大きく目を見開く、ティアナの放った魔力弾が、スバルに当たるかと思われたその時・・・・。

 

ーーーードシュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

 

「・・・・え?」

 

気がつくと、魔力弾は真っ赤な炎に撃ち抜かれて消滅していた。

 

「今のって・・・・?」

 

「隼人さん!!」

 

戸惑うティアナとスバルの耳に、エリオの声が響くと、髑髏の砲身を構えた獄寺がいた。

 

「何似合わねえ戦い方してんだ? 中距離射撃の渋さを知らねぇのかテメェは?」

 

「くっ・・・・!」

 

魔法陣を展開させたままのティアナは、悔しそうに歯噛みした。

 

「あの、獄寺、今のは、その・・・・コンビネーションの内で・・・・」

 

「直撃コースだったろうが。たくっ、エリオ。ヴィータのドチビにコイツを任せるとーーーー」

 

ーーーーグシャァァァァァァァァンン!!

 

「あっ?」

 

「っ!?」

 

「何?」

 

「はっ!」

 

「えっ?」

 

ヴィータに連絡させようとした獄寺が言い終わる前に、一同の近くで何かが落下したような音が響くと、『赤い塊』が、地面を派手に転がりながら近づいてきて、失速して止まるとその『赤い塊』の正体が露になった。

 

「「「「ヴ、ヴィータ副隊長っ!?」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

それは、BJも所々が焼け焦げ、転がった最中に帽子も外れたヴィータが、声も上げず、力無く倒れていた。

 

「っ! 上だっ!」

 

獄寺が叫ぶと同時に、離れた地点に落ちていたヴィータの帽子のすぐ近くに、一体のガジェットが降り立った。

ザフィーラと同じ位の巨体でボールのような身体にセンサーのようなカメラアイ、その身体を支えるように二本の脚、ボールの上の部分に二門の砲台、ボールの下の部分にガトリング砲を二門も付けた、今まで確認された事のない新型のガジェットだった。

 

「コイツは・・・・」

 

「獄寺!」

 

「皆無事かっ!?」

 

と、ソコでシグナムとザフィーラも降りてきた。

 

「シグナム副隊長!」

 

「ザフィーラ・・・・!」

 

「い、一体何が・・・・!?」

 

「ヴィータ副隊長がっ!」

 

焦るFW陣に、シグナムとザフィーラが、新型ガジェットから目を離さず声を発する。

 

「あぁ。突然他のガジェットが自爆をしてな」

 

「シャマルからヴィータの異常を聞いて駆けつけたのだが・・・・!」

 

二人が新型ガジェットを睨むが、そのガジェットを何も言わなかった。

が、足元にあったヴィータの帽子をーーーー踏み潰した。

 

「っ! 貴様ぁっ!」

 

「許さん!」

 

ヴィータにとっての宝物を無情に踏み潰した新型ガジェットに、怒りを露にしたシグナムとザフィーラは、ダッと駆け出し、新型ガジェットに肉薄する。

シグナムはカートリッジを二発ロードし、ザフィーラも魔力を込めた拳を叩きつける。

 

「『紫電一閃』!!」

 

「はぁあっ!!」

 

二人の攻撃が新型ガジェットのボディを破壊したーーーーかに見えたが。

 

ーーーーガキンッ!

 

新型ガジェットのボディは傷一つついておらず、そのボディに触れたまま、シグナムのデバイス、レヴァンティンの刀身に纏った炎が消え、ザフィーラの拳の魔力も消えていた。

 

「なっ! これはまさか・・・・!」

 

「『AMF』っ!?」

 

『AMF』。『アンチマギリングフィールド』。魔法における魔力結合を解除して魔法を無効化する性質を持ったフィールド系魔法であり、これを使われると高ランク魔導師であるシグナム達も魔法の弱体化されてしまうのだ。

 

『ーーーー』

 

唖然とするシグナムのザフィーラに向けて、新型ガジェットは砲身を向けた。

 

「「はっ!」」

 

気づき、防御魔法を展開しようとするが一瞬遅く、『緑色の雷』が二人に放たれた。

 

ーーーーバシュウウウウウウウウウウ!!

 

「お前らっ!」

 

「「「「シグナム副隊長! ザフィーラ!」」」」

 

放電の光が辺りに広がり、獄寺もFW陣を目を守る。そして光が収まると、ヴィータと同じくボロボロになったシグナムとザフィーラが、白目を剥いて力無く倒れた。

 

「う、嘘だ・・・・!」

 

「高ランク魔導師が、こんなあっさりと・・・・!」

 

スバルとティアナは、いくらリミット付きとは言えシグナム達を一瞬で圧倒した新型ガジェットに、戦慄したように呟く。

 

『ーーーー』

 

新型ガジェットは倒した二人に興味ないと言わんばかりに、倒れた二人を踏みながら歩み、その砲身をーーーー獄寺へと向けた。

 

「・・・・どうやら、狙いは俺か」

 

獄寺がFW陣から離れながら、新型ガジェットと向き合う。

 

「隼人さん! 僕達も!」

 

「馬鹿言うな! お前らより格上のシグナム<騎士女>とザフィーラ<狼野郎>とヴィータ<桜エビ>がこの有り様だ! お前らじゃ死にに行くようなもんだろうが!」

 

「でも・・・・!」

 

「AMFがある以上、お前ら魔導師じゃ相性が悪すぎる! ここはーーーー俺がやる」

 

「「「「っ!」」」」

 

獄寺のその目を見た瞬間、FW陣は息を呑んだ。確固たる覚悟を秘めた、その目に。

 

「おいランスター」

 

「えっ?」

 

魔法陣を消したティアナが声を発する。

 

「良く見とけ」

 

そう言うと、獄寺は砲身を新型ガジェットに向け、新型ガジェットも、獄寺に全ての武装の照準を向けた。

 

「『フレイムアロー』!!」

 

『ーーーー!!』

 

獄寺の赤い炎と、新型ガジェットの赤い炎と緑色の雷と黄色い光の弾丸が放たれた。




次回、獄寺と新型ガジェットの激戦!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホテル・アグスタⅣ

今回、守護者登場。


ー???sideー

 

獄寺が新型ガジェットと交戦を始める前。

ホテル・アグスタから少し離れた場所で、小さな、それこそ管理局のセンサーでも感知されない程の小さな時空湾曲が発生した。そしてソコから三人の男女が現れる。

一人は、牛柄のフード付きパーカーに短パンを着用した幼い少年と、もう一人は学校の制服を着た高校生くらいの少女。そして、『赤いカブトムシのようなアーマーを纏った戦士』が現れた。

 

「ぐぴゃ? ここどこだもんね?」

 

「ここに、ボス達がいるの? でも、何処を探せば・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

[ハイパークロックアップ!]

 

「「あ!」」

 

不安そうに辺りを見回す少年と少女に、『カブトムシの戦士』は腰に巻いたベルトの左側にある、昆虫のような装置を起動させると、アーマーの随所が展開していき、昆虫の翅のような物が開かれていくと、再び小さな時空湾曲が発生し、戦士のその中に入っていく。

が、その時、置いていく二人に向かって、戦士は天を指差して声をあげる。

 

「・・・・おばあちゃんが言っていた。俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する。同じように、お前達が望みさえすれば、運命は味方してくれるかもな」

 

そう言い残すと、戦士は時空湾曲の中に消え、二人は途方に暮れそうになるが、近くで爆発音が聞こえ、ソコに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

そして時は戻る。

 

「・・・・シグナムとヴィータ、ザフィーラが、撃墜された・・・・?」

 

はやては、シャマルから届いた念話を聞くと、顔を青ざめ、オークション会場から飛び出しそうなる。

が。

 

「待ってはやてちゃん!」

 

「離したってツナさん!」

 

「落ち着いてはやてちゃん!」

 

ツナとエンマが引き止めるが、はやては会場から出ようとし、なのはとフェイトもFW陣が心配なのか、はやてについていこうとする。

 

「落ち着ける訳ないやろ! ヴィータが、シグナムが、ザフィーラがーーーー《・・・・狼狽えてんじゃねぇ、八神はやて部隊長。お前らも行くんじゃねぇ、スターズ隊長・高町なのは。ライトニング隊長・フェイト・T・ハラオウン》っ!」

 

「「っ!」」

 

と、その時、通信機からリボーンの声が、重く、静かに、そして有無を言わせない威圧感が放たれているのを通信機越しに感じて、三人は息を呑んだ。

おそらくリボーンのすぐ近くにいるアインスやロングアーチ達などは、完全に畏縮してしまっているだろう。

 

《はやて。指揮官であるお前が取り乱してどうする。指揮官はどんな状況に陥っても冷静さを忘れるな、とラル・ミルチはそう教えなかったか?》

 

「っ!」

 

はやてが息を詰まらせると、リボーンはなのはとフェイトに声をかける。

 

《なのは。フェイト。お前らもだ。自分の隊員達が心配なのは分かるが、今お前らの任務は、パーティー会場の警護だ。それを捨てて行こうとすんじゃねぇ!》

 

「で、でも・・・・!」

 

「あの子達は・・・・!」

 

《だから獄寺が向かったんだろうが。それに、山本と了平から、裏口でも敵のような存在が現れたと報告を受けている》

 

「「「う、裏口から敵っ!?」」」

 

三人が驚愕した声を発し、リボーンが続ける。

 

《(やっぱり気づいてなかったか)・・・・『敵が真っ正面から馬鹿正直に攻め込んで来た時は、増援、もしくは陽動である可能性があるので、人員を向かわせるべし』。これは戦術の初歩中の初歩だ。これもラルは教えなかったのか?》

 

「「「っっ!」」」

 

リボーンの言葉に、三人は息を詰まらせた。『闇の書事件』からほんの2~3回会って、地獄のような訓練を受けたラル・ミルチから、確かに教えられていた事だ。

 

《裏口の方は山本と了平が対処している。終わったら獄寺と合流する事になっている。だが、会場の方にも何が起こるか分からねえ。お前らはソコにいる客を守る事に集中しろ。唯でさえ和服の女性ばかりの会場で、洋風ドレスのお前ら三人がいなくなったら、それこそ悪目立ちだ。ソコで警護を続けろ》

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

三人は悔しそうに顔をしかめるが、ツナとエンマが声を発する。

 

「大丈夫だよ皆。確かにヴィータ達を撃墜させる程の相手を獄寺くん一人で相手するのは不安なのは分かるよ」

 

「でも、獄寺くんもボンゴレ守護者の一角だ。絶対にエリオ達を守ってくれる」

 

「「「ツナ(さん)・・・・エンマ(さん)・・・・」」」

 

二人の言葉に、なのは達は少し表情を和らげる。

 

《(さて、獄寺の今の状況はーーーーっと)》

 

そしてリボーンは、モニタから、戦況を見ていた。

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

「皆、無事!?」

 

「大丈夫ですかぁ!?」

 

「「「「し、シャマル先生・・・・! リィン曹長」」」」

 

漸く現場に到着したシャマルとリィンはFW陣と合流し、戦場に目を向けると、ボロボロになって気絶しているヴィータとシグナム、ザフィーラを見て絶句する。

 

「ヴィータちゃん! シグナム! ザフィーラ!」

 

「っ! なんて、事なの・・・・!」

 

「シャマル先生! 隼人さんが!」

 

「隼人くん!?」

 

シャマルとリィンが新型ガジェットと交戦する獄寺に目を向ける。

丁度最初の一撃を相殺した後のようだ。

 

「・・・・・・・・??」

 

獄寺は髑髏の砲台の砲口を新型ガジェットに向ける。が、新型ガジェットはピクリとも動かないでいた。それを不審に思い、訝しそうに睨む獄寺。

その時ーーーー。

 

ーーーーバシュゥゥゥン・・・・!

 

『っ!?』

 

一同が驚くと、新型ガジェットの背面から、直方体のフリードと同じ大きさの『匣』のような物が、煙をあげながら飛び出してきた。

 

「(あれは・・・・)」

 

獄寺はコンタクトディスプレイで調べようとするが、新型ガジェットが突如起動し、獄寺に緑色の電磁砲<レールガン>を放った。

 

「ちっ!」

 

獄寺は寸前で回避すると、『フレイムランチャー』を放ちながら移動する。

 

「(チラッ)」

 

「?」

 

《何ボカンとしてやがるシャマル》

 

「リボーンくん?」

 

と、その際、シャマルに目線を送ってきて、シャマルは首を傾げるが、リボーンから通信が入った。

 

《獄寺がガジェットを引き寄せてんだ。この隙にヴィータ達を助けろ》

 

「あっ、そ、そうね・・・・! 皆、ガジェットに気づかれないように、ヴィータちゃん達を助けましょう!」

 

『は、はい!』

 

 

 

ーリボーンsideー

 

モニタで戦況を見ていたリボーンが、小さく息を吐くと、アインスに目を向ける。

 

「アインス。守護騎士<ヴォルケンリッター>も、随分ぬるくなったものだな?」

 

「・・・・面目次第もありません」

 

リボーンの言葉に、アインスは申し訳なさそうな顔になる。

 

 

 

ー獄寺sideー

 

一瞬獄寺は、視界の端でヴィータ達を担いで離脱しようとするシャマル達を見て、すぐに新型ガジェットに意識を切り換えた。

 

「(コイツの戦法は俺のSISTEMA C.A.Iと同じだが、俺と違って弾の切り替えのない分厄介だな。だが、強敵とはいかねえな)」

 

手数が自分よりも上だが、使っている炎を見て、獄寺は『形態変化<カンピオ・フォルマ>』する必要もないと確信した。このまま『アレ』が再び射出されるのを待って見ようと思ったその瞬間。

 

ーーーーパキッ!

 

「っ!」

 

『!』

 

突然シャマル達の方から枝が折れる音が響き、獄寺と新型ガジェットの目が音の発生地に向けると、ヴィータを担ぐ大きくなったリィンとキャロ。シグナムを担ぐシャマルとエリオ。ザフィーラを支えるティアナとスバルだが、スバルが足元に落ちていた枝を踏んでしまったようだ。

スバル自身、やっちゃった、と云わんばかり顔を青くし、ティアナはすぐに新型ガジェットに目を向けると、新型ガジェットの砲身が、ティアナ達に向けられていた。

 

「野郎!」

 

獄寺が砲口を向けるが、ガジェットの機関銃で攻撃され、それから回避しておりできなかった。

そして、緑色の雷の電磁砲か、ティアナとスバルとザフィーラに向けて放たれた。

 

 

 

ーティアナsideー

 

「「あっ!!」」

 

『ティアナ(さん)! スバル(さん)!!』

 

電磁砲がティアナ達に迫り、ギュッと目を閉じそうになったその時。

 

ーーーーバリバリバリバリバリバリ・・・・!!

 

「ぐぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 牛丼! 防ぐもんねーーーー!!」

 

「頑張って、牛さん・・・・!」

 

と、ティアナ達の前に来て電磁砲を防ぐ、黒い大きな牛

と、その牛の背に乗る牛柄のパーカーの少年と、ティアナ達くらいの少女が現れた。

 

「えっ?」

 

「く、クロームちゃん!?」

 

「ランボくんですぅ!!」

 

そう、ツナの『霧の守護者の片割れ クローム・髑髏』と、『雷の守護者 ランボ』であった。

 

「お! クロームにランボか!?」

 

「極限に無事かお前達!」

 

と、ソコでさらにこの場に、山本と了平がやって来た。

 

「武さん! 了平さん!」

 

「アンタ達、どうして・・・・?」

 

「ん? 裏口にいた新型を片付けたから、こっちに助っ人に来たんだぜ」

 

「しかし、『襲撃してきたヤツ』には逃げられてしまったがな」

 

そう、山本と了平も新型と遭遇し、最初の一撃で倒されたーーーーかに見えたが、山本が『雨の死ぬ気の炎』をドーム状に放出して防ぎきり、一瞬で新型ガジェットを斬り捨て、拳で粉砕したのだ。

襲撃してきた『影』はすでに退散していたが。

 

 

 

ー獄寺sideー

 

「(アホ牛に、クローム・・・・!?)」

 

獄寺もランボとクロームの登場に面食らったが、すぐに気持ちを新型ガジェットに切り換える。

 

「獄寺! 手助けいるか!?」

 

「必要ねぇ!」

 

「だろうな!」

 

獄寺は手助けを必要ないと言い、新型ガジェットと交戦を再開する。

 

「ちょ、ちょっと良いの? 獄寺くん一人で《心配ねぇぞスバル》リボーンくん?」

 

スバルの言葉を遮るように、リボーンが通信を寄越した。

 

《獄寺はとっくに、ヤツを攻略している》

 

『えっ?』

 

山本と了平を除いた一同が、リボーンの言葉に目をパチクリさせた。

 

《黙ってみてろ》

 

リボーンがそう言い終わると、ティアナ達は、一見すると、防戦一方状態の獄寺を見据える。

が、その瞬間ーーーー。

 

ーーーーバシュゥゥゥン・・・・!

 

新型ガジェットの背面から、『匣』が射出された。その時。

 

「ーーーー果てな。『フレイムサンダー』!」

 

獄寺が『フレイムサンダー』を放つと、再起動した新型ガジェットは防御が間に合わず。その機械の体を貫通した。

 

ーーーージジジジ・・・・バチバチ・・・・! ズガァァァァァァァァァン!!

 

新型ガジェットはそのまま爆発した。

 

 

 

ーティアナsideー

 

「ど、どういう事?」

 

《分からねえのかお前ら》

 

「え?」

 

戸惑うシャマルとリィン、FW陣に、リボーンが声を発した。

 

《良いか。あのガジェットは一定の攻撃をした後、『匣』を射出してさらにおよそ数秒間後に再び起動する仕組みだ》

 

「???」

 

スバルは首を傾げるので、リボーンがさらに言葉を続ける。

 

《似てねえか? お前ら魔導師が使うカートリッジみたいな》

 

そこまで言われて、シャマルはハッとなる。

 

「つまり、あのガジェットは攻撃をし続けるとエネルギーが無くなってしまう。あの『匣』はバッテリーのような物って事なの!?」

 

「じゃぁ、射出した後すぐに動かなかったのは、エネルギーが充填するタイムラグだったですかぁ!?」

 

《そう言う事だぞ》

 

シャマルに続いてリィンがそう言うと、リボーンが肯定する。

 

《獄寺はヤツが『匣』を射出するのを見て、戦いながらヤツの分析をし、再充填する僅かな時間で決めたんだぞ》

 

「アイツ、戦いながらそんな事をしてたんだ・・・・」

 

ティアナにリボーンが声をかける。

 

《良いかティアナ。さっきの力任せなやり方はお前には不向きだぞ》

 

「え?」

 

《お前はどちらかと言うと相手の戦力と能力を分析し、的確な指示を出して戦うのに向いているぞ。あんなやり方は『猪娘』のスバルがやる事だぞ。そんなスバルの手綱を握ってやるのが、お前の役目だ》

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ティアナが言葉を失い、代わりにスバルが声を張り上げる。

 

「ちょっとリボーンくん! 『猪娘』って酷くない!?」

 

《おおすまねぇ。女の子のスバルに『猪娘』は酷いな》

 

「そうそう!」

 

《馬鹿正直なスバルは、『暴れ馬』がピッタリだな。お馬鹿なだけに》

 

「そうそう!・・・・って、リボーンくん酷いよぉーーーー!!」

 

涙目でスバルで叫ぶと、そのスバルをまるで新しい玩具で遊ぶようなリボーンに、山本と了平、ランボとクロームは笑い、シャマルにリィン、エリオとキャロは緊張感が解き放たれたように笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ただ、ティアナだけは獄寺を静かに見据えていた。

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

そして獄寺は、新型ガジェットが射出した『匣』を、コンタクトディスプレイで分析していた。

 

「(コイツは純度はかなり悪いがーーーー『死ぬ気の炎』の反応がある・・・・!!)」

 

以前、リニアでツナとエンマも、『死ぬ気の炎の反応を持ったガジェット』と交戦していたのを思いだし、獄寺は頬に一筋の汗を垂らしていた。




さて、ランボとクロームが参戦しました。ランボは七歳なので、服装は牛柄のフード付きパーカーに短パンです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホテル・アグスタⅤ

最近シリアスだったので、ギャグをいれます。


ーツナsideー

 

「えっ・・・・? もしかして、ツナさんに、エンマさん・・・・?」

 

「「ん?」」

 

オークション会場で漸くオークションが終わりを迎え、獄寺達がいる現場についたツナ達。ソコにはクロームとランボの二人もいて驚いた顔になった。

搬送されていくシグナムとヴィータとザフィーラを見送ると突然、ツナとエンマに話しかけた青年がいた。そしてその青年の隣にもう一人いる。

一人は高い背に淡い緑色の長髪を棚引かせ、白いスーツを完璧に着こなした青年。そしてツナ達に話しかけたのは、これまた長い茶髪を首の後ろで束ね、ダークグリーンのスーツを纏った優しい顔立ちの青年であった。

優しい顔立ちの眼鏡の青年が、二人の記憶から一人の少年を連想させた・・・・。

 

「も、もしかして・・・・?」

 

「ユーノくん・・・・? ユーノ・スクライアくん・・・・!?」

 

「はい! ユーノ・スクライアです!」

 

そう、なのはの魔法の先生ユーノ・スクライアであった。ユーノは八年ぶりに再会した二人に笑みを浮かべて近づき、ツナとエンマと握手した。

 

「なのは達から聞いていましたけど、本当に八年前の姿なんですね!」

 

「ユーノくん、今は何をやってるの?」

 

「今は〈無限書庫〉の司書長をしています。またお二人とこうして会えて嬉しいですよ!」

 

「おいおいスクライア司書長。僕も挨拶したいんだけどなぁ?」

 

「あぁすみません。アコース査察官」

 

緑髪の青年が前に出る。

 

「初めまして、といったところかな。僕は『ヴェロッサ・アコース』。時空管理局本局の査察官さ。君達の事はいつもはやてからよく聞いているよ。勿論、あの雲雀恭弥氏との関係もね」

 

雲雀の名を出して、何やら意味深な笑みを浮かべるヴェロッサに、ツナとエンマは苦笑いを浮かべると、今度はユーノがなのは達に向ける。

 

「八年間、ツナさん達に会えなくなって、なのはとフェイトが一時期荒れてた時があったんですが、これならもう大丈夫ですね」

 

「「ユ、ユーノ(くん)っ!!」」

 

いきなりのカミングアウトに、なのはとフェイトが顔を赤くして声を上げる。はやてやヴェロッサはあたふたする彼女達にニヤニヤと笑みを浮かべる。

その空気から逃げるように、なのはとフェイトはFW陣の方に向かい、なのははティアナと少し会話をすると、二人で皆から離れていった。その後を、獄寺だけがつけていく。

それを見て、ユーノはツナに近づき、真剣な表情を彼に向ける。

 

「ツナさん。エンマさん。リボーンさんにも伝えてほしいのですが、お願いしたい事があります」

 

静かに二人を見据えながらユーノは言った。

その声色に何かを感じ取ったのか、はやてとヴェロッサが黙り、ツナとエンマも、ユーノへと視線を向けた。

その目には一筋の光。少しの悲しさと悔しさーーーーそして強い想いを感じさせた。

いまだかつて見たことのない光をその目に宿らせたユーノに、ツナとエンマは見上げるようにして対峙する。

ユーノは一回軽く息を吸い込み、澄んだ目でまっすぐに二人を見ながら口を開いた。

 

「なのはとフェイトを・・・・この機動六課を守ってやって欲しいんです。管理局の関係者である僕が頼める事じゃないし、管理局からなのは達と引き離されたツナさん達に頼むなんて都合が良い事をと思っています。けど、それでも頼るしかなかった。皆を守ってあげて下さい。お願いします・・・・!」

 

「ユーノくん・・・・」

 

直立不動からキッチリと頭を下げ、ユーノは言葉を紡ぐ。

はやてはそれを僅かに潤んだ目で見つめていた。ツナとエンマは、そんなユーノから目を逸らさず。

ポンッ、とそれぞれがユーノの肩を優しく叩いて、一瞬だけだが、超死ぬ気モードと戦闘モードの姿に変わりーーーー。

 

「「必ず守る、ユーノ」」

 

と、小さく答えた。

 

「はい・・・・!」

 

ユーノは二人に向かって、涙を浮かべながら返事をした。

 

 

 

ー獄寺sideー

 

獄寺は、ミスショットをしたティアナに、なのはが『優しい言葉』をかけて慰めているのを、木陰に隠れながら聞いていた。

 

《・・・・安っぽく薄っぺらな慰めの言葉、だな》

 

「ですね」

 

コッソリ見ると、なのはは「これでティアナは分かったくれた」と言わんばかりに笑みを浮かべるが、その後ろのティアナ自身は、惨めな気持ちになっているのが分かる程、顔を俯かせていた。

通信機から聞こえるリボーンの言葉に、獄寺はフン、と鼻を鳴らした。 

 

 

 

 

 

 

 

ーゼストsideー

 

「ガリュー・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

《どうかね騎士ゼスト。彼らの実力は?》

 

ホテル・アグスタから離れていった位置にいたルーテシアとゼスト。ルーテシアはボロボロになって戻ってきた自身の使役する召喚獣・『ガリュー』を介抱し、ゼストはスカリエッティがガジェットのカメラで捉えた山本と了平の戦闘映像を見て、驚愕と戦慄が混ざった顔になって息を呑んでいた。

 

《騎士ゼスト。これでも彼らが脅威でないと言えるのかな? 捕捉しておくが、この二人はまだ実力の半分処か、三分の一も出していないのだよ》

 

「っっ!?」

 

さらに驚愕に顔を歪めるゼスト。先ほど、スカリエッティに、目が節穴か耄碌している、と言われた時は腹が立ったが、今なら確かに自分は耄碌し、節穴になっていると認めざる得なかった。

画面越しだが分かる。映像の中の少年達の力の凄まじさ。管理局の十把一絡げの有象無象の局員なんて、まるで足元にすら届いていない。

 

「こ、これほどの実力者達が、何故今まで表に出てこなかった!?」

 

《彼らは魔導師じゃないからね。管理局としても体面や体裁が危うくなるから隠していたのだよ》

 

「・・・・随分と落ち着いているな? お前なら勝てると言うのか?」

 

スカリエッティの妙な落ち着き様、いや、何処か達観とした様子に、ゼストは訝しそうに眉をひそめる。

 

《まぁマトモにやり合ったら勝てないね。管理局の基準で認められた『ストライカー』など、彼らと比較すれば『凡庸なエース』に過ぎない。彼らこそ間違いなく、『真のストライカー』と呼ばれるだろう。ーーーーならば、こちらは悪党らしく、セコい手段を使うまでさ》

 

スカリエッティはそう呟いて、唇の端を歪ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーヴィータsideー

 

ホテル・アグスタの事件から翌日。眠った状態のヴィータは、ある光景を見ていた。

 

【ヴィータ。なのはちゃんが無理しないように、見ていてくれないか?】

 

「(あん? ツナ・・・・? つか、この光景・・・・)」

 

【何だよツナ?】

 

「(あぁ、これは夢だな・・・・くそっ、よりにもよってあの時の夢かよ・・・・!)」

 

ヴィータは直感した、これは八年前の過去、ツナ達にとってはほんの2~3週間前の出来事だが。

 

【フェイトちゃんが執務官になるための勉強で忙しいし、はやてちゃんも管理局員としての勉強をしているからなのはちゃん、自分が皆の分まで頑張らなくっちゃって一人で抱え込んでいると思うんだ。そのせいか最近、ロクに休んでいないようだし。それにリボーン達も、最近なのはちゃんはカートリッジシステムを使いまくっているのが危険だって言ってたんだ。まだ子供の身体で反動も大きいカートリッジシステムを使い続けるのは身体への負担も大きいって危惧しているんだ。だからヴィータ、なのはちゃんが無理をしないように、ブレーキ役をやってくれないかな?】

 

【過保護だなぁツナは。大丈夫だろ、アイツはつえぇーから】

 

「(・・・・何であの時、ツナの言葉をちゃんと聞き入れ無かったんだよ・・・・!)」

 

今すぐ過去に戻れるなら、あの当時の自分をぶん殴ってやりたい。そんな思いすら抱いている。

そして見せられるのは、血塗れになったなのは。泣き崩れるなのはの家族達と仲間達、美由紀が自分を責めるがそれは当然だった。ツナが病室でなのはを慰め、なのはが大泣きし、リボーンがなのはの父・士郎を連れ出し、その後を母・桃子が追いかけていったその後、

 

【鉄槌の騎士。貴様は何を間違えていたか分かるか?】

 

なのはとフェイト、そしてはやてに臨時教官をしてくれている、『ラル・ミルチ』が声をかけてきた。

 

【ぐすっ・・・・分かんねぇ・・・・!】

 

【貴様は高町を特別視し過ぎて、ヤツをちゃんと見ていなかったのだ。『アイツは強いヤツだから大丈夫だ』。『アイツは凄いヤツだから心配しなくていい』。そんな盲目的な認識の甘さが、高町に依存している考え方が、このような結果を生んだのだ!】

 

【っ!】

 

「(チキショウ・・・・耳がイテェ・・・・!)」

 

ラル・ミルチの言葉が刃となって突き刺さる。

 

【起こってしまった事を嘆く暇があるなら、この事件を“糧”とし、“経験”とし、次は失敗しないように心がけておけ】

 

そう言って、ラル・ミルチはその場を去った。

 

「(・・・・アタシ、忘れてやがった・・・・)」

 

八年前、ラル・ミルチに言われた教訓を思い出し、ヴィータは自嘲するように笑みを浮かべ、八年前のツナ達に言った言葉も思い出す。

 

【お前ら、本当にガキの頃の姿なんだな!】

 

「(ガキの頃のまんまと思ったけど、アタシも全然成長してなかったんだな・・・・)」

 

八年間の自分を振り返ると、またもや自嘲してしまう、そして、夢の景色が、真っ白く染まっていきーーーー。

 

 

 

* * *

 

 

 

「ぅ・・・・ぁぁ・・・・!」

 

「ヴィータちゃん!?」

 

シャマルがヴィータの名を叫び、ヴィータは痛む身体と鉛のような倦怠感、霞む視界と微睡む意識の中、何が起こったのか思い出した。

FW陣の元へ向かう途中、突然謎の『新型ガジェット』に襲撃され、ほとんど手も足も出ずにボロ負けした。薄れいく意識の中、シグナムとザフィーラも『新型』に倒されたのを見て、さらに自分達が苦戦した『新型』を獄寺が圧勝した姿が脳裏に焼き付いていた。

 

「(くそっ・・・・不甲斐ねぇ・・・・!)」

 

過去の失敗と現代の敗北のダブルパンチに、ヴィータは泣きそうになる。

がーーーー。

 

「ぐぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ! ヴィータ泣いてるモンねぇ~! や~い泣き虫ヴィータ~!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

聞き覚えのあるその小憎たらしい声を聞いた瞬間、ヴィータの目から涙が引っ込み、身体の痛みと鉛の倦怠感が一瞬で霧散し、微睡んでいた意識と霞んでいた視界も一気にクリアになり、ベッドに横になる自分を見下ろしている、そのアホ面を晒した『アフロ頭の天敵』の姿を半眼になって捕らえた。

 

「ぐぴゃ?」

 

そう、八年前の姿をしたーーーー『雷の守護者 ランボ』の姿を・・・・。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナとエンマは、クロームとFW陣と一緒に、治療中のシグナムとザフィーラ、そしてヴィータのお見舞いに向かっていたその時ーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォン!!

 

『っ!!?』

 

突然、シャマルの医務室の扉がぶっ飛んだと思ったら、『雷牛 牛丼』が、ランボを背中に乗せて駆け出して来たのだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「ら、ランボ(ガン!)んなっ!?」

 

「(ドン!)のあっ!?」

 

「ボ、ボス・・・・! 古里くん・・・・!」

 

『ツ、ツナ(兄ぃ)!? エンマ(兄さん)!?』

 

牛丼にひかれ、床に倒れるツナとエンマ。と、ソコでさらに。

 

「まぁちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! この馬ぁ鹿牛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」

 

「「ギャンっ!?」」

 

「ヴ、ヴィータちゃん・・・・!?」

 

『ヴ、ヴィータ副隊長っ!?』

 

次に入院着のヴィータが鬼の形相でアイゼンをバトンのように振り回し、ドドドドドド!と、地響きを上げながら走って来て、倒れたツナとエンマを踏みつけていった。

FW陣が呼ぶが聞こえていない、今ヴィータの頭の中には、漸くやって来た『天敵』をぶちのめす事だけだった。医務室からシャマルが呆れたような怒ったような顔で出てくる。

 

「あぁもうヴィータちゃんったら! ランボくんを見た途端に元気になっちゃって!」

 

『し、シャマル先生・・・・』

 

「あら皆来てたの? 丁度良かったわ、10代目にエンマくんの治療と医務室の片付け手伝って」

 

「えっ? い、いいんですか? あの二人は??」

 

「良いのよ。あれはあの二人なりの再会の挨拶みたいな物だしね」

 

『(どんな再会の挨拶っ!?)』

 

「・・・・・・・・」

 

あまり心配していない様子のシャマルの言葉に、FW陣は心の中で一斉にシャウトし、クロームは苦笑した。

 

 

 

 

 

 

ーランボsideー

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「待ちやがれこのクソ馬鹿牛! 漸く来やがったな! テメエが来る日をずっと待ってたんだっ! 今日と言う今日こそテメエをぶっ潰して座布団にでもしてやらぁ!」

 

闘牛のような牛丼に乗ったランボを、ヴィータはとても怪我人とは思えない馬力で隊舎中を追いかけ回していた。

食堂にて。

 

「待てや馬鹿牛!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

「うぉっ! 極限になんだぁ!?」

 

「お、ヴィータ、元気になったみてぇだな!」

 

食事をしていた了平と山本は驚き。

廊下では。

 

「オラッ! オラッ! オラッ! オラッ!!」

 

「わっ! わっ! わっ! わっ!」

 

追い付いてきたヴィータがランボに向けてアイゼンをフルスイングするが、ランボは頭を引っ込めたり、牛丼の上で曲芸染みた動きで回避した。

 

「ち、ちょっとヴィータちゃん! ランボくん!」

 

「何やってるの二人共!」

 

なのはとフェイトが制止するように叫ぶが聞き耳もたず。

部隊長室にて。

 

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

「むぁてやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ちょ! 何やねんいきなりっ!?」

 

「ヴ、ヴィータ! お前は何をしているのだ!」

 

「怒ったもんね! 牛丼! 放電だもんね!」

 

「モゥゥゥゥゥ!」

 

「ラ、ランボくん! ここでやったらリイン達も!」

 

ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!

 

「うおっとぉっ!!」

 

「「「ぎゃああああああああああああああああああああああっっ!!!」」」

 

牛丼が放電をし、ヴィータは防御魔法で防いだが、はやてとアインスとリインは黒焦げになって倒れた。

 

「逃げるもんね!!」

 

「待てやコラーーーー!!」

 

「「「(ピクピクっ、ピクピクっ・・・・)」」」

 

はやて達を気にも止めず、再び追いかけっこを始めるランボとヴィータ。

そしてヘリポートにて、

 

「くんな! くんなだもんね!」

 

「オラ! 下りてこいやこの馬鹿牛!!」

 

ヘリコプターのプロペラの上に丸まっているランボ。ヴィータはアイゼンを片手に、ピョンピョンと跳ねながら下りてこいと騒いでいた。

因みにヴァイスはここに来た牛丼と正面衝突して、白目を剥いて口から魂的な物を出して倒れており、いつの間にか来ていたリボーンと足を止めた牛丼は、倒れるヴァイスの傍らで、仲良く喧嘩している二人の様子を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

この数分後、鬼の形相となったはやて達から二人仲良く隊舎の廊下で正座して、約3時間に渡ってお説教を受けたのは言うまでもない。




ヴィータとランボ♪ なかよくケンカしな♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

見えてない物と過去の姿

ーリボーンsideー

 

シグナム達が意識を取り戻したその翌日。

会議室にてツナ達とはやて達機動六課は、クロームとランボから、この時代のミッドチルダに来た経緯と、『新型ガジェット』についての話し合いを始めていた(ランボは床に寝そべりお絵かきをしていたが)。

 

「えっ? 『天道さん』が送ってくれたの?」

 

「うん。ボス達がいなくなったって聞いて、ランボくんと一緒にシモンの島に行こうとしたら突然に」

 

「あのツナさん、『天道さん』って誰なんですか?」

 

話を聞いていると、どうやらその人物が、クロームとランボの二人を連れてきたらしい。

が、ツナ達は苦笑するが、獄寺は心底気に入らない言わんばかりに顔を苦々しく歪めながら口を開く。

 

「雲雀の野郎ばりの、唯我独尊で自分勝手で自分はこの世で一番偉い人間だと豪語する俺様野郎だ」

 

『うっわ・・・・』

 

雲雀と同類の人間と言われ、なのは達はゲンナリとした顔になり(はやてとザフィーラとリィンは苦笑い)、それ以上は言わなかった。話を戻そうと、ツナが口を開く。

 

「ーーーークローム。雲雀さんと骸はどうしたの?」

 

「雲の人、関係無いって言って風紀委員の仕事をしているの。骸様は、最近〈黒の菩提樹〉って組織を調べているみたい」

 

「〈黒の菩提樹〉? あの『沢芽市』を中心に勢力を拡げているカルト集団か?」

 

『沢芽市』とは、なのは達の住む海鳴市から電車で七駅ほど離れた、土地開発がされた街であり、〈ユグドラシル・コーポレーション〉の『ユグドラシルタワー』がシンボルとなっている街である。

だが、八年前に大きなテロ事件が起きて街に甚大な被害が出た、と当時から管理局の仕事をしており地球にほとんど居ず、アリサとすずかから聞いていたの事を思い出すなのは達はーーーー否、アリサ達すらも知らなかっただろう。

その街でまさかーーーー“地球と人類の存亡の危機が訪れていた”、だなんて・・・・。

 

「ふむ。あの天道がわざわざそんな事をするのは考えられねぇな。それに、『デンライナー』の事もな」

 

「リボーン殿、その『デンライナー』と言うのは、山本達をこっちに連れてきた空飛ぶ電車の事か?」

 

リボーンの言葉に、シグナムが問いかけた。

 

「ああ。チケットさえあれば過去現在未来に行く事ができる、『電車のタイムマシン』とでも考えてくれ」

 

『で、電車のタイムマシン・・・・?』

 

「ちなみに天道ってヤツはある装置を使って、単独でタイムワープができるヤツだ」

 

『た、タイムワープ・・・・』

 

『ロストロギア』級の代物ばかりで、最早ツッコミが追い付かないなのは達は、これ以上聞くのをやめ、ホテル・アグスタでの事を話し始めた。

山本と了平が遭遇した虫のような怪人、その怪人を援護するように現れた『新型ガジェット』。そして獄寺がコンタクトディスプレイで映していた『新型ガジェット』。これらのガジェット達にはーーーー『死ぬ気の炎』が使われていた。

「このガジェットが使っている炎って、ツナ兄ぃ達が使っている炎と似てますよね?」

 

「これって、魔力とかじゃないですよね?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

FW陣達が首を傾げながら聞いてくると、はやては一瞬リボーンを一瞥する。

『死ぬ気の炎』についての情報を教える事は、裏社会の掟『沈黙の掟<オメルタ>』に引っ掛かる行為だ。もしもこれを破れば、『復讐者<ヴィンディチェ>』達がやって来る可能性があるのだ。その後にどうなってしまうのか想像もしたくない。

が、リボーンは事前に、【教えられる範囲は伝えておけ】と言っていたので、はやては口を開く。

 

「これはな、ツナさん達が使うのと同じ炎や。この炎の事は詳しく教える事はできへんけど、魔力とは違ったエネルギーやと思うて」

 

「魔力とは違うエネルギー?」

 

「大気中の魔力を体内に取り込んで蓄積し、外部に放出する機関であるリンカーコアから生まれるのが魔力。そして『死ぬ気の炎』ってのは、誰しもが持っている生命エネルギーの波動が炎の形になった物だ」

 

「どう違うの?」

 

「簡単に言うとだな。魔導師の魔力は水道水で、ツナ達の『死ぬ気の炎』は天然水だとでも思えばいい」

 

「う~ん、分かったような分からないような・・・・」

 

スバルはリボーンの解説に少し首を傾げながらと、納得した。

 

「問題は、ガジェットがこの『死ぬ気の炎』を使っていたって事だ」

 

「シャーリー。あのガジェットが射出したバッテリーのような物は?」

 

「あ、はい。リボーンくんやツナくん達に協力して貰いながら解析してみると、ツナくん達が使う『死ぬ気の炎』、と同じエネルギー反応がありました」

 

「だが、ツナ達と比べると質の悪い炎だったがな」

 

つまり、このガジェットに使われていたのは、“純度の低い『死ぬ気の炎』”だったと言う訳だと、ツナ達は理解した。

 

「いずれにしてもや。スカリエッティがどうやってこの炎を手にしたかをここで推察しても始まらん。このガジェットは今まで確認されたガジェット達とは性能も戦闘力も桁違いや。皆気をつけててな」

 

『はい!』

 

はやての言葉で会議を終えた。

そして、皆が会議室を出る中。

 

「おい、はやて」

 

「ん、何や?」

 

リボーンはティアナや他の皆が出るのを確認してから、口を開く。

 

「ーーーーティアナの事だが、ホテル・アグスタでの戦闘で、アイツらしくない戦い方をしたが、何かあったのか?」

 

それを聞いた獄寺とエンマも口を開いた。

 

「そいつはオレも気になっていた。普段のアイツなら、あんな凡ミスはしねぇからな」

 

「ティアナ、何かあったの?」

 

「・・・・・・・・」

 

少しの間の沈黙すると、はやては空間モニターで一人の男性の画像を出す。

 

「彼はティアナの兄、『ティーダ・ランスター』。当時の階級は一等空尉で執務官志望の魔導師。所属は首都航空隊で・・・・享年21歳」

 

「享年ってことは・・・・死んだの?」

 

ツナの言葉にはやては頷きながら話す。

 

「ティーダ一等空尉は逃走中の違法魔導師に手傷を負わせたんやけど、取り逃がしてもうたんや。任務自体は地上の陸士部隊に協力を仰いだおかげで解決したんやけど・・・・その件について、心無い上司が最低なコメントをして、一時期問題になったんや」

 

「コメント?」

 

山本の疑問の言葉の後、はやてはゆっくりと口を開いた。

 

「【犯人を追いつめておきながら取り逃がすなんて首都航空隊の魔導師としてあるまじき失態だ。たとえ死んでも取り押さえられるべきだった】とか・・・・さらに直球に【任務を失敗する役立たずは・・・・】とかな」

 

それを聞いたツナ達は怒りを露にする。

 

「酷い・・・・!」

 

「極限に許せんっ!!!」

 

「何でそんな事が言えるんだ・・・・!」

 

「必死で仕事をこなそうとした部下に、労いの言葉も無いなんてな・・・・!」

 

ツナと了平とエンマが怒り、普段は温厚な山本ですら不快感を露にした。

 

「・・・・なるほどな。ティアナは亡くなった兄の汚名を晴らす為に戦っていたのか」

 

「だから、テメェに似合わない戦法を使ってでも、手柄を立てようとしたって訳か・・・・」

 

「多分な・・・・」

 

リボーンと獄寺の指摘に、はやては肯定した。獄寺は何か気になった点があったのか、はやてにさらに話し出す。

 

「それで、そのティアナの兄貴を侮辱した奴らはどうした?」

 

「それがな、ティアナのお兄さんが亡くなってから、その上司やその部下の部隊、まるで運に見放されたように任務を失敗したり、問題行動を起こしたりで評価がダダ下がってな、遂には『ティーダ・ランスターがいなくなって無能になった部隊』と管理局内で後ろ指を指されながら笑われるようになったんや。・・・・噂では、ティーダ一等空尉の葬儀の時に、一般人で未成年のチンピラに半殺しにされたって話もあるで」

 

「何だ、極限にざまぁみろではないか!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

了平がそう言うが、獄寺は何か思い当たったように沈黙する。

 

「しかし、今のままじゃ、ティアナは間違ったやり方をで強くなろうとするな」

 

「せやな。ソコが心配やねん。なのはちゃんにそれとなく気にかけとってって言うたけど・・・・」

 

【大丈夫だよはやてちゃん。ティアナは頭の良い子だから、ちゃんと分かっているよ】

 

「てな」

 

「・・・・ツナ」

 

「う、うん」

 

リボーンが呆れたように肩をすくめ、ツナに目配せすると、ツナは頷いた。

そして、獄寺が部屋を出ようとする。

 

「獄寺くん・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「お願いできる?」

 

「お任せください」

 

ツナにそう応えて、獄寺は部屋を去った。

 

「あれ、隼人さん?」

 

「ティアナの方は獄寺に任せておけ。お前らよりも理解できるのは獄寺だ」

 

はやてに向けて、リボーンがそう言った。

 

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

 

そして獄寺が向かったのは、訓練場だった。

ソコでは他のFW陣と同じく、休息をしている筈のティアナが、その場から動かずに周囲に展開した光るマーカーに銃口を向ける自主練に励んでいた。

 

「ーーーー精が出るじゃねぇか」

 

「っ、獄寺・・・・」

 

「だがよ。そのやり方はテメェに向いていねぇな」

 

「・・・・何ですって?」

 

目をきつくするティアナ、いつもなら喧嘩腰になる獄寺だが冷静に語る。

 

「まぁ聞け。そんなガムシャラなやり方で強くなるのは、テメェの脳筋なスバル<相方>くらいだ。テメェには合ってねぇって話だ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ま、合った訓練を見つけても、今のテメェじゃ強くなれねぇがな」

 

「っ! どういう事よ?」

 

ティアナが聞き返すと、獄寺は短く答えた。

 

「昔ある所にな。テメェのように強くなりたくてチンピラに喧嘩を売って、少し傷を負いながらも勝ったガキがいた。そのガキは師匠の男に勝った事を自慢気に話し出したが、それ以降その師匠は、そのガキに教えるのを止めたんだ」

 

「・・・・どうしてよ?」

 

「“見えてねぇからだよ”」

 

「えっ?」

 

「そのガキも、今のテメェと同じように、“見えてなかった”。だから教えて貰えなくなっちまった」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「はやてにテメェの兄貴の事を聞いた。兄貴の汚名を晴らしたいってのは、ご立派な理由だ。だがな、それでテメェがボロボロになっちまったら、元も子もねぇだろ」

 

「アンタに何が分かるのよ!?」

 

思わず怒鳴り声をあげるティアナ。

 

「上官は皆エース処か“ストライカー”の魔導師! 周りの仲間は才能に恵まれている奴ら! そんな中、一人だけ凡人の私が強くなるにはこれしかーーーー」

 

「俺も、“頭が良いだけの凡人”だよ」

 

「えっ?」

 

ティアナに臆する事なく、獄寺は声を発した。

 

「俺には野球バカのような抜群過ぎる運動神経や剣の才能がねぇ。ボクシングバカのような耐久力も突進力も希有な細胞もムードメーカーな所もねぇ。クロームのような特殊な能力もなけりゃ、アホ牛のような才能もねぇ。他の奴らのような圧倒的な戦闘力がある訳でもねぇ。俺はただ、頭が良いだけの凡人なんだよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

何やら実感を込めて言う獄寺の言葉が、ティアナに刺さる。

 

「だがな、んな凡人の俺でも、十代目の力になりたいから、学んで、鍛えて、背伸びして、一人前の右腕になろうって、今でも努力してんだよ。お前が努力しているのは、短い付き合いだが分かってるつもりだ。だがな、お前は努力のやり方を間違ってンだよ」

 

「それでも・・・・それでも私は・・・・」

 

口ごもるティアナに、獄寺はソッと呟いた。

 

「“負けんなよ、強くなれ”」

 

「っ!?」

 

【“負けんなよ、強くなれ”】

 

その言葉は、兄の葬儀で兄を侮辱した人達を叩きのめしてくれた人の言葉だった。

 

「じゃあな」

 

「ご、獄寺・・・・っ!」

 

ティアナは去り行く獄寺の背中が、その人に瓜二つだった事に戸惑うのだった。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「な、なのはちゃん! また徹夜したの!?」

 

なのはに会いに行ったツナは、通路でなのはを見つけ、声をかけようとしたが、なのはがフラついているのを見て支えた。

 

「だ、大丈夫だよツナさん。ちょっと頭がボゥってなっちゃったから・・・・」

 

「この所ほとんど寝ていないのが祟ったんだよ!」

 

最近のなのはは深夜、それも日付も変わる時間帯になっても働いているのを知っていたが、もはやここまでとは。

 

「にゃははははは、FWの皆の訓練メニューを組んだり、皆の陣形のチェックとかしてて・・・・」

 

「それほとんど毎日のようにしているじゃないの! なのはちゃんがFWの教官だからって、無理しちゃ駄目だよ!」

 

「にゃはは・・・・ごめんなさい。でも大丈夫です! まだまだ働けます!」

 

「なのはちゃんが大丈夫って言っても、身体が大丈夫じゃないよ! こんな身体を酷使してたら前のーーーーいや、八年前と同じ事になるよ!」

 

そう言われた瞬間、なのはは一瞬顔を暗くしたが、すぐに笑顔を見せる。

 

「大丈夫ですって! それに今は、毎日が楽しいんです! 大切で優秀な教え子が四人もいて、皆が日に日に成長していくのを見守る毎日・・・・それがとても楽しいんです!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ツナさん?」

 

「だったら尚更自分の事を大切しなきゃ駄目でしょうっ!?」

 

「にゃっ!!」

 

突然のツッコミになのはは思わず可愛い悲鳴をあげた。

 

「その“大切な”、の中にちゃんと自分を入れないと駄目だよ! 休まなきゃ駄目だよなのはちゃん! 生徒達が大切なら自分の事も大切にしなきゃ!」

 

「・・・・大丈夫ですよ」

 

「いやでも「大丈夫です!!」っ!」

 

ツナが休むように言うが、なのはは声を荒げて言った。

 

「ご、ごめんなさい。ーーーーでも、もう私は子供じゃないんです。もうツナさんに心配されるような事はありませんから」

 

「なのはちゃん・・・・」

 

心配な顔になるツナに、なのはは何処か冷めた声を言う。

 

「私はもう、“ツナさんより強くなったんです”。だから私は、大丈夫ですから」

 

そう言って、なのはは去っていき、ツナはその背中を見送るしかできなかった。

 

「ーーーーすまねえな、ツナ」

 

「ヴィータ? リボーン?」

 

立ち尽くすツナに声をかけたのは、リボーンと並んで歩いてきたヴィータだった。

 

「なのはは良くも悪くも頑固な性格してるからな。それが良い方に動いているなら良いが、ありゃ完全に悪い方に動いてやがるな」

 

「ああなるとなのはの奴、言葉だけじゃ止まらねぇんだよなぁ」

 

リボーンとヴィータがやれやれと肩を落とす。

 

「どうすれば、良いかな?」

 

「ツナの言葉でも聞き耳持たないとなるとよ・・・・もう一発、ガツンとやっちまった方が良いな」

 

「えっ?」

 

ヴィータの言葉に、ツナは目が点になる。

 

「もうなのはも良い歳してんだ。口で言っても聞かない駄々っ子のままなら、千や万の言葉よりも、一発の拳骨の方が効果的だろ? それに、なのはの奴。自分はもう“ツナより上だ”って、思っちまってるからさ。いっぺんお調子に乗ってる鼻っ柱を、根元から思いっきりへし折ってやった方が目を覚ますだろうよ」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

ヴィータの言葉にツナもリボーンも意外そうな顔で聞いていた。

 

「何だよ?」

 

「いや、何て言うかさ・・・・ヴィータ、ちょっと変わった?」

 

「あん?」

 

「俺もそう思ったぞ。正直ヴィータはフェイトと同じくらいに、なのはの事を盲目的に信奉している所があったからな」

 

二人にそう言われ、ヴィータは後頭部をガシガシ掻いた。

 

「・・・・いつまでも、ガキのままじゃいられねぇからさ。あたしも、なのは達もさ・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

なのは達に比べて背丈は全く成長していないのに、ヴィータの方が、なのはとフェイトよりも大人になったように見えて、ツナは思わず頭を撫でた。

 

「・・・・・・・・」

 

「あ! ご、ごめんヴィータ」

 

「・・・・他の奴らがいる時にやったらぶっ飛ばすからな」

 

と言って、大人しく撫でられるヴィータであった。

 

「アホ牛にもソコまで寛大になれるか?」

 

「そら無理だ。あの馬鹿牛とはいずれ決着を着けてやる」

 

拳を握りながら凄絶な笑みを浮かべるヴィータは、ランボに対してだけは別のようで、ツナは苦笑いを浮かべるのであった。

 




次回、無茶を続ける新米に嵐が、天狗になった不屈に大空が。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マフィアVS魔導師、来る

遂にこの時が。


ーツナsideー

 

会議から数日後。エンマとツナ達は、なのはとFW陣による模擬戦を見に来た。

 

「さーて、じゃあ午前中のまとめ。二対一で模擬戦やるよ」

 

いつもと同じ訓練風景。ツナ達以外、否、ツナ達や“ヴィータ以外”は、今日もいつも通りだと思っていた。

 

「まずはスターズからやろうか。バリアジャケット、準備して」

 

「「はい!」」

 

「・・・・エリオとキャロはアタシ達と見学だ」

 

「「はい!」」

 

ツナ達は近くのビルの屋上へと上がり、模擬戦を見学する事になった。

 

「やるわよ、スバル!」

 

「うん!」

 

気合いが入っているティアナとスバル。ツナはそれを不安そうな表情で見ていた。

 

「獄寺くん。ティアナは?」

 

「あの後、また自主レンをしてやがりました。完全に意固地になっていやがりますね」

 

心配するツナに、獄寺は後頭部をガシガシと掻いて答えた。

すると、ビルの屋上にフェイトがやって来た。

 

「あっ、もう模擬戦始まっちゃってる?」

 

「あ、フェイトさん」

 

「私も手伝おうと思ったんだけど・・・・」

 

「今はスターズの番だぞ」

 

「本当はスターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね」

 

「なのはちゃん、部屋に戻ってからもずっとモニターに向かいっぱなしなんだよ。訓練メニュー作ったり、映像で皆の陣形をチェックしたりして、ね」

 

「なのはさん・・・・訓練中もいつも僕たちのこと見ててくれるんですよね」

 

「本当に、ずっと・・・・」

 

エリオとキャロがそう言うが、ツナ達は何とも言えない顔になる。

 

「生徒達を大事に思うのは良いけど。なのはちゃん、もう少し自分を省みて欲しいよ」

 

『えっ?』

 

ツナの言葉に、フェイトとエリオとキャロが首を傾げた。

 

「・・・・・・・・クロスシフトだな」

 

ツナの言いたい事を分かっているヴィータが、訓練を眺めながらそう呟くと、一同は下を見た。

そこにはティアナが幾つもの魔力弾を生成していた。

 

「クロスファイヤー・・・・シュート!!」

 

ティアナが放った幾つもの魔力弾がなのはに向かう。だが、それに違和感を感じる者がいた。

 

「ティアナの今の攻撃、極限に変ではないか?」

 

了平の疑問に、ヴィータが頭を掻きながら答える。

 

「・・・・あぁ、いつものキレがねえな」

 

「コントロールは良いみたいだけど・・・・」

 

「調子も何か悪そうに見えるぜ」

 

皆が口々に言い出していく。

 

「・・・・・・・・」

 

「獄寺くん・・・・」

 

それを見ているツナの胸に不安がよぎる。

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

そしてしばらくすると、スバルのウイングロードが出現し、スバルがなのはに向かって突撃していく。

 

「っ、フェイクじゃない! 本物!?」

 

目の前のスバルを本物だと判断したなのはは、スバルに向かって魔力弾を放つ。

 

「うぉおおおおおおおおおおお!!」

 

が、スバルはそれをバリアで防ぎ、なのはに向かってリボルバーナックルを構えた。

 

「うりゃぁあああああああああああああ!!」

 

「っ!!」

 

その攻撃をなのはは、魔力壁を張って防御する。

 

「くっ・・・・うぅ・・・・!」

 

「っ・・・・!!」

 

予想外の戦術になのはは顔をしかめ、スバルの攻撃を弾き飛ばした。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

弾き飛ばされたスバルは、何とかウィングロードに着地する。

 

「こらスバル! 危ないよそんな軌道!」

 

魔力弾を避けながらスバルに注意するなのは。

 

「すいません! でも、ちゃんと防ぎますから!」

 

ウイングロードに乗りながら謝るスバル。

 

「今のスバルとティアナがやろうとしている事、俺らもやったな獄寺?」

 

「ああ。実力が格上の相手に勝つには意表を突いた戦いをするしかねぇ。そう言うんなら、あの二人の連携は間違っちゃぁいねぇ」

 

『別の未来での戦い』で行った連携と似ている事に、少々懐かしさを感じる獄寺と山本。

が、なのはの纏う雰囲気が、徐々に刺々しくなっていく事に、フェイトとエリオとキャロ以外は察していた。

 

「っ、ティアナは?」

 

なのははティアナを探して辺りを見回す。すると、遠くのビルで砲撃を撃つ準備をしているティアナの姿があった。

 

「砲撃? ティアナが?」

 

「でりゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

そして一同がティアナに気を取られている隙に、スバルがウィングロードを走り、リボルバーナックルをなのはに叩き込む。

 

「っ!?」

 

が、魔力壁で防いだなのは。そしてティアナの方を見ると、砲撃の構えを取っていたティアナの姿が消える。

 

「あっちのティアナさんは幻影!?」

 

「本物は!?」

 

「あそこだよ」

 

とっくに気づいていたツナ達は目を向け、エンマが指差した方向には、なのはの頭上のウィングロードを走っているティアナの姿があった。

 

「一撃必殺! でえぇぇぇぇぇいっ!!」

 

クロスミラージュの銃口に魔力の刃を纏い、なのはに向かって突っ込むティアナ。

 

「レイジングハート・・・・モードリリース・・・・」

 

[All right]

 

なのはがそう呟いた瞬間、辺りに轟音が響く。

 

「なのは!」

 

「「スバルさん! ティアナさん!」」

 

「(チラッ)」

 

「「(コクン)」」

 

「(・・・・ペコッ)」

 

フェイトとエリオとキャロが三人の名前を叫ぶ。フェイト達の視線と意識がソッチに向いている内に、リボーンが“二人”に目配せすると、“二人”は頷き、ヴィータが「アイツらを頼む・・・・」と、言わんばかりに頭を下げた。

そうしていると、煙が徐々に晴れていき、そこにいたのはーーーー。

 

 

 

 

「おかしいな・・・・二人共どうしちゃたのかな?」

 

 

 

 

 

片手でスバルの拳、もう片手でティアナの刃を止めているなのはの姿があった。

 

「頑張っているのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ?」

 

なのはの声は今まで聞いた事がないほど無機質だった。

 

「ちゃんとさ、練習通りにやろうよ・・・・ねぇ?」

 

「あ、あの・・・・!」

 

スバルは恐怖で言葉が続かない。

 

「私の言ってる事、私の訓練・・・・そんなに間違ってる?」

 

「・・・・くっ!」

 

[Blade erase]

 

すると、ティアナは魔力刃を消し、後ろに飛んでなのはとの距離を取る。

 

「私は! もう、誰も傷付けたくないから! 無くしたくないから!!」

 

「ティア・・・・」

 

悲痛な叫びを上げながらクロスミラージュを構えるティアナ。

 

「だから! 強くなりたいんです!!」

 

ティアナの叫びを聞いたなのはの目に映るティアナの姿が、一瞬ーーーー重なった。ツナと出会う前、魔法に出会う前、アリサとすずかに出会う前ーーーー力が無くて、“一人公園で泣いていた幼い自分”、と・・・・。

 

「(・・・・違う、もう私は・・・・“あなた”じゃない・・・・!!)・・・・少し・・・・頭冷やそうか?」

 

無表情のまま人差し指をティアナに向けた。

 

「クロスファイアー・・・・」

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ファントム・ブレイーーーー」

 

「シュート」

 

なのはが放った六つの魔力弾は、容赦なく、ティアナに直撃した。

 

「ティア! っ・・・・バインド!?」

 

ティアナの元へ駆け寄ろうとしたスバルにはバインドが掛けられていた。

 

「じっとして。よく見てなさい」

 

そう言うなのはは再びティアナに向かって魔力弾を放とうとしていた。

 

「なのはさんっ!!」

 

スバルの必死の叫びも虚しく、なのははティアナに向かって砲撃魔法を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

なのはの砲撃魔法は、瞬時に石化して、石の柱となると、重力したがってまっ逆さまに落ちていった。

 

「「っ!?」」

 

突如、なのはとティアナの間に入るように現れたのは、超<ハイパー>モードのツナと、そのツナに肩を貸りて飛んでいる獄寺だった。

ツナにウィングロードの上に下ろされた獄寺はティアナに近づき、

 

「ご、獄で(パンっ)っ!?」

 

ヨロヨロになるティアナの頬に、獄寺は平手打ちをした。

 

「ティア!」

 

獄寺の行動に驚き、バインドで縛られながらもマッハキャリバーを使ってスバルが駆け寄ろうとしたが。

 

「大人しくしてろ」

 

獄寺はスバルの眼前にダイナマイトを投げ飛ばした。

 

「え・・・・」

 

ーーーードガドガドガドガドガドガーーーーンン!!

 

スバルは爆発に飲まれ、ウィングロードから落ちてしまった。目を回しながら落下するスバルをFシューズを履いた了平がキャッチした。

 

「スバルっ!」

 

「大丈夫だ! 気絶しているだけだ! おいタコ頭! スバルを吹き飛ばす必要は無いだろう!」

 

「ここまでやらなきゃ、ソイツは邪魔しそうだったからな。芝生、テメェはソイツを連れて下がれ」

 

「まったく・・・・!」

 

了平がリボーン達の元に戻るのを確認すると、ウィングロードが消えるが、ティアナを抱えてホバリングで着地する獄寺は、ティアナを放り投げた。

 

「きゃっ・・・・!」

 

「おいランスター。テメェはまだ見えていねぇようだな?」

 

「っ!」

 

怒気を孕んだ獄寺の声に、ティアナは息を呑んだ。獄寺はティアナの様子に構わず声を発する。

 

「そんなにいらねぇモンなら、俺が果てさせてやる」

 

ダイナマイトを構えた獄寺が、ティアナを睨んだ。

その視線から放たれる、『本気の殺気』に、ティアナはなのはとは違った恐怖を感じて、クロスミラージュを構えた。

 

「銃を向けた以上、『覚悟』しろや」

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「どういうつもりなの、ツナさん?」

 

「それはこっちの台詞だなのは」

 

表情から、声から、静かな怒りを滲ませるツナはなのはをその『全てを見透かすような瞳』で睨みつける。

 

「さっきの模擬戦・・・・確かにティアナとスバルは、お前の教えを無視して、『無茶』をした。だが、最後の攻撃は明らかにやり過ぎだ」

 

「私の教導に口出ししないでくれるかな?」

 

「ーーーーなのは。これがお前の教導だって言うのか? 自分の思い通りにならないからって、教え子を砲撃魔法で撃ち落とすなんて、リボーンもラル・ミルチもそんな事はしなかった。リボーン達のやり方は否定的だった癖に、お前はこんなやり方をするのか? それが、“高町なのはの教導”だって言うのかっ!?」

 

「っ・・・・!!」

 

なのははツナの言葉を聞くとピクリと眉を顰め、冷めた眼差しでツナを睨みながら、ゆっくりとレイジングハートを構える。

 

「・・・・ツナさんも少し、頭冷やそうか?」

 

「頭を冷やすのはお前の方だなのは。その思い上がった鼻っ柱諸とも、叩きのめす!」

 

そう言ってツナは炎の出力を上げて、なのはを真っ直ぐに見据える。

そして、そのツナの肩には、モフモフと動く生き物がいた。

 

「・・・・ココ、ちゃん・・・・?」

 

『ガベロロロロロロロ!』

 

なのはに向けて前足で器用にアッカンベーをする『天空ライオン(♀)のココ』だった。

その態度からーーーー。

 

『アンタなんか大っっ嫌いだ、バ~カっ!』

 

と、伝えているのがまる分かりだった。

 




次回、獄寺とティアナが戦います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

獄寺VSティアナ

連続投稿します。オリジナルが出ます。


ーエンマsideー

 

「何をしてるのツナは!? 早く止めないと!」

 

フェイトがバルディッシュを取りだし、セットアップしようとする。が、その手をエンマが握って止めた。

 

「フェイト。黙って見ててくれ」

 

「エンマ・・・・?」

 

エンマの静かな、しかし重い圧力<プレッシャー>を含ませた言葉に、フェイトは身体を硬直させると、スバルを抱えた了平が戻ってきた。

 

「「スバルさん!」」

 

「先輩。スバルは大丈夫っすか?」

 

「極限に大丈夫だ。スバルは頑丈だからな」

 

「はにゃひにゃふにゃへにゃほにゃ・・・・」

 

「うん。大丈夫だ」

 

目を渦巻きにしながら珍妙な言葉を漏らすスバル。ソレを見て山本も、安堵したように頷く。

 

「フェイト。邪魔してやるなよ」

 

「ヴィータ・・・・?」

 

フェイトは、いの一番に飛び出していきそうなヴィータが、驚くほど冷静である事に面食らった。ちなみに、ヴィータの両腕には、悲しそうに、辛そうになのはを見上げるナッツが抱っこされていた。

 

「なのはのヤツ。“自分の教導の意味を教えていなかった癖”に、ティアナが言う事を聞かないからって砲撃魔法なんて使いやがって・・・・ちょっと調子に乗りすぎだ」

 

「ああ。少しばかりお灸をすえてやらねぇとな」

 

ヴィータの言葉に、隣に立っていたリボーンが同意するように頷いた。

 

「なのはが調子に乗りすぎってーーーーなのはが間違っているって言うのヴィータ・・・・!」

 

フェイトが目を鋭くしながらヴィータを睨むが、ヴィータはエリオとキャロがビクッとなる程のフェイトの睨みを見ても、まったく動揺しなかった。

 

「少なくともーーーー今この時は、アタシはなのはを否定するよ。アイツ、“アタシ達に言ってきた事を忘れちまっているようだし、自分はもうツナ達より強い”って思い上がっちまってるからな」

 

「っ・・・・!」

 

ヴィータが動かないなら自分が、とエンマの手を振り払って動こうとするフェイト。

しかし。

 

ーーーーギュィィィィィィン!

 

「うあっ!!?」

 

突然フェイトが後ろに引っ張られたかのように引き寄せられる。後ろを振り向くと、フェイトの拳位の大きさの重力球があり、フェイトはソレの引力に引き寄せられたようだ。

 

「『大地の重力』・・・・!?」

 

「行くならフェイト。この重力から脱出してからにしなよ」

 

「っ・・・・!」

 

エンマが戦闘モードになると、その瞳から放たれる威圧感に、フェイトは萎縮してしまった。

 

「ぐぴゃ? タコ頭とティアナも、戦ってるもんね」

 

「牛くん。気を付けてね」

 

上空で戦うツナとなのはと同じように、地上で戦闘を始めた獄寺とティアナ、ランボが身を乗り出すが、クロームが抱きよせ、リボーン達も一端ソッチに目を向けた。

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

「おらよ」

 

「っ!」

 

ーーーーバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!!

 

ーーーードガドカドガドカーーーーンッ!!

 

獄寺が両手の指に挟めた八本のダイナマイトを投げるが、ティアナはクロスミラージュで全て撃ち破る。火薬を抑えられているのか、ダイナマイトの爆発も小さい。

 

「へっ、流石にこの程度のダイナマイトは撃ち落とせるか」

 

「と、当然、よ・・・・! アンタこそ、あの悪趣味な武器をさっさと出したら・・・・!」

 

先ほどまでなのはにビビっていたが、漸くそれが収まり、獄寺を挑発するように言う。

か、獄寺はソレをフンっと、鼻で笑った。

 

「『SISTEMA C.A.I』を使うまでもねえ。今のテメェなんざ、このダイナマイトで十分だ」

 

「~~~~~!! 舐めんじゃないわよっ!!」

 

ティアナがクロスミラージュを構えて乱射するが、獄寺はまるでドッチボールの玉でも避けるように、軽々と回避していく。

 

「何で!? 何で当たらないのよっ!!?」

 

「んな感情が剥き出しの攻撃なんて、銃口と引き金とテメェの視線の動きだけ見てりゃ、簡単に回避できんだよ」

 

年齢はティアナの方が上だし、管理局の士官学校や六課に配属されても鍛えてきたのだろうが、生憎『実戦経験』の差は天地と読んでも良いくらいの差がある。

自分の銃が、ランスターの銃弾が、いとも簡単に回避されるのに、ティアナの心は益々焦っていく。

 

「『二倍ボム』!」

 

獄寺が先ほどよりも大量のダイナマイトをティアナへと放り投げた。

 

「なっ!? くっ・・・・!!」

 

ティアナはクロスミラージュで再びダイナマイトを撃ち抜いていくが、流石に数が多く、何個かのダイナマイトが自分に向かってきて回避する。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・(な、何とか避けたけど、これ以上はーーーー)」

 

「『三倍ボム』」

 

「嘘でしょうっ!?」

 

ティアナの頭上を、さらに大量のダイナマイトが埋め尽くさんばかりに放たれ、ティアナはまた撃つが、半分以上が落ちてくる。

 

「ーーーーこうなったら!」

 

ティアナは真っ直ぐに獄寺に向かって走り、後ろで落ちたダイナマイトが爆発し、その爆風を利用してさらに加速する。

 

「その判断は間違っちゃねぇ。だがーーーー『ロケットボム』!」

 

獄寺がまたダイナマイトを投げる。

 

「馬鹿の一つ覚えね!!」

 

ダイナマイトをただ放り投げているだけなら、落ちて爆発するまでのタイムラグの間に獄寺に接近して、クロスミラージュの銃口を押し付ければ、自分の勝ちだ。

と、ティアナは考えたが、獄寺は再びフンっと、鼻で笑った。

 

「テメェの考えくらいーーーーお見通しだよ!」

 

ーーーーピュゥゥゥゥゥゥゥゥンンッ!!

 

「なっ!?」

 

なんと、ダイナマイトの底から推進用のロケットが噴射されると、ダイナマイトは真っ直ぐにティアナに向かった。

 

「くっ!!」

 

ティアナはクロスミラージュを構えて撃つ。

 

ーーーードガドカドガドカドガドカァァァァン!!

 

爆煙で視界が遮られると、爆煙の中から、さらにダイナマイトが魔力弾のように飛んできた。

 

「この・・・・!!」

 

推進用ロケットがついているとは言え、所詮は真っ直ぐに飛ぶしかできない。落ち着いて見れば大丈夫、と考えるティアナだが、何と今放たれたダイナマイトは推進用ロケットから小さなロケットが噴射され、ジグザグな動きでティアナに襲い来る。

 

「何よあれっ!?」

 

「『ロケットボム・改』。推進用ロケットの他に小さなロケットが次々と噴射する事で多角的な動きをする新しいボムだ」

 

驚くティアナに、獄寺が静かにそう教えた。

急いで迎撃するティアナだが、ロケットの不規則な動きに翻弄され、弾が当たらない。

 

「ど、どうして・・・・!?」

 

「焦って冷静さを欠いた銃なんざ怖くもなんともねえよ。今のテメェじゃーーーー『紙飛行機』だって撃ち落とせねえ!!」

 

獄寺がそう言うと、『ロケットボム・改』がティアナに当たる。

 

ーーーードガドカドガドカドガドカドガドカンン!!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

火薬は抑えられているが、BJを通して感じる衝撃と爆炎に、ティアナが悲鳴を上げる。

 

「テメェの『見えてねえモン』。良く見るんだな!」

 

「あ・・・・あぁ・・・・!」

 

ヨロヨロになるティアナに、さらにダイナマイトを放り投げ、爆発させる獄寺。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

爆煙の中から、ボロボロのBJのティアナが今にも気を失いそうな様子で、ヘタリと腰を落とした。クロスミラージュも度重なるダイナマイトの爆発を受けて、今にも砕けそうな程に破損していた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ダイナマイトを片手に持った獄寺が、ほぼ意識が飛んでいるティアナに近づき、ジッと見下ろす。

 

「(あっ・・・・死んだ・・・・)」

 

自分は死ぬ、殺されると、ティアナは直感した。だが、恐いとは思えなかった。

獄寺の目には、なのはのような昏く冷たい氷のような威圧感などなく、澄んだ泉のようで、それでいて炎のような熱さすら感じた。

 

「(・・・・私、死ぬんだ・・・・ごめんなさい、お兄ちゃん・・・・お兄ちゃんの汚名、晴らせなくて・・・・ゴメン、スバル・・・・こんな馬鹿に付き合わせちゃって・・・・皆、本当に・・・・ごめんなさい・・・・)」

 

ティアナは心の中で、皆に謝罪していく。

だがーーーー。

 

「言い残す事は、あるか?」

 

「・・・・・・・・死にたく、ない・・・・」

 

ティアナがそう呟くと、フッと意識を失ったーーーー。

 

「ふぅ・・・・」

 

獄寺はため息を吐くと、ダイナマイトを上空に投げ飛ばした。

 

ーーーーパァンッ!!

 

そのダイナマイトは、まるでクラッカーのような爆発を起こした。

 

「起きた時、また同じようになってたら、今度こそ本気で容赦しねえ」

 

そう言うと、獄寺は気を失ったティアナをおぶり、その場を離れようとする。

上空で、なのはの魔力弾を回避するツナを一瞥する。

 

「10代目、ソッチの馬鹿はお願いします」

 

獄寺は、その場を離れていった。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

なのはは苛立っていた。ツナはなのはが間違っていると言った。いつまでも自分を八年前の頃の自分と同じように見られて、見下されていると感じた。

ナッツがいないが、今まで訓練にも出てこなかったココが出てきたのは、大嫌いな自分を倒す為に来たんだなと言う事も分かっている。

自分だって八年前よりも成長している。ツナの弱点はとっくに見つけている。それはーーーー。

 

「・・・・・・・・魔力弾の包囲網か」

 

空中を飛ぶツナの回りに、幾つもの魔力弾が浮遊していた。なのははツナと戦いながら、魔力弾を生成し、ツナを包囲していたのだ。

 

「ココちゃんがどれだけ石化させても、ツナさんがどれだけ早く動けても、これじゃあ逃げられないよ。迎撃したくても、ツナさんの腕だけじゃ全て叩き落とす前に落下しちゃうからね」

 

そう。ツナの弱点とは、“空中戦では両手が使えない事”である。ツナの飛行は両手のグローブから死ぬ気の炎のバーニアで飛行する。

それ故、空中での相手からの攻撃はほとんど回避に専念するし、攻撃も蹴りや拳の一撃によるヒット&ウェイである。こうして空中で絶え間ない攻撃をすれば、ツナは両手が塞がり、攻撃を防ぐ為に両手を使っていれば自動落下してしまう。

さらにココが咆哮は、どうやらナッツに比べると範囲は広くないと言う事も、先ほどまでの戦闘で確認済みであり、X<イクス>ストリームで脱出しようとしても、バインドで拘束する準備も整っている。

なのはは勝利を確信し、ツナに冷笑を浮かべて口を開く。

 

「ツナさん、降参してよ。私は何も間違ってないって、間違っているのはツナさんだって認めてくれるなら、やめてあげるよ」

 

しかし、ツナはその瞳の闘志を欠片も消さず、少々呆れが混ざった声を発した。

 

「相手を倒したと確認も取らず、勝利を確信して舌舐めずりか。教導官としてだけでなく、魔導師としても『三流』に成り下がったようだな」

 

ツナの言葉に、なのはの頭にプチンっと、何かが切れた音が聞こえた。

 

「そうーーーーじゃぁ、頭を冷やしてね」

 

なのはが指を振るうと、魔力弾が一斉にツナに向かって飛んできた。

 

「ーーーーココ」

 

『ガォッ!』

 

しかし、ツナは冷静に、ココに呼び掛けると、それに応えるように、ココは力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

それを見上げていたリボーン達。

 

「その戦法は間違ってねぇぞなのは。確かにツナの両手を封じちまえば、お前にも勝機はある・・・・が、あくまでも“十年前のツナ”だったらの話だがな」

 

リボーンが不敵の笑みを浮かべてそう呟いた。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

リボーンが呟くと同時に、ツナはボソッと呟いた。

 

「ココ、形態変化 加速形態<カンビオ・フォルマ モード・アッチェレラツィオーネ>」

 

『Guaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

ココが雄叫びを上げて光に包まれると、魔力弾が迫りきってーーーー。

 

ーーーードガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガンンンッ!!!

 

 

 

ーなのはsideー

 

激しい爆裂が起こり、ツナの姿が見えなくなった。

 

「・・・・私の、勝ちなの・・・・!!」

 

ツナに勝った事をを確信し、ニヤリと唇の口角を上げるなのはは、ボロボロになっているであろうツナと、無茶をしたティアナにどうお説教をしようかと考えていると。

 

「ーーーー何処を見ている?」

 

「・・・・え?」

 

ーーーードンッ!!

 

突然後ろから声をかけられ、なのはが後ろを振り向くと、強烈な衝撃が横腹に襲い、なのはは流星のように近くのビルの屋上に落下した。

 

「かっは・・・・!!」

 

屋上の床に強かに叩きつけられ、一瞬呼吸困難になり、空気を吐き出し、なのはが上空を見上げるとーーーー無傷のツナが腕組みをして、蹴りを放ったポーズで空を飛んでいた。

 

「な、なんで・・・・!?」

 

両手を組んで飛行なんてできない筈なのに、混乱しそうになるなのはだが、ツナの靴から膝までを守っている、“炎を放出し、膝当てに『X』の文字が刻まれたオレンジ色のグリーブ”を装備しているのが見えた。

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

「おいリボーン、あれがツナの新しい装備か?」

 

驚くフェイト達とニヤリと笑みを浮かべるエンマ達。

ヴィータはリボーンに聞くと、リボーンはニッと笑みを浮かべて応える。

 

「そうだぞ。なのはの見つけた弱点なんて、十年前からとっくに分かっていたからな。それを補う為に正一とスパナが新しく作ったのがココだ。そして、あれがココが形態変化<カンビオ・フォルマ>した加速用の装備ーーーー『X<イクス>グリーブ』だ!」

 

リボーンが言い終わると同時に、ツナはX<イクス>グローブとX<イクス>グリーブから、純度の高い『大空の死ぬ気の炎』を噴射した。




次回、ツナとなのはが激戦!


『ロケットボム・改』
推進用ロケットの他に、小さな方向を変更するロケットを付けた新型ボム。投げ飛ばしたダイナマイトの弾道計算ができないとあらぬ方向に飛んでいくので、獄寺の明晰な頭脳があって始めて真価を発揮する。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激戦 不屈VS大空

注意:今回、なのはのキャラ崩壊とか色々となのはファンの皆様に不快を感じると思われますが、ご了承下さい。誹謗中傷はご勘弁を。

ツナにオリジナル技を出します。


ーフェイトsideー

 

「・・・・・・・・!!」

 

フェイトは驚愕し目を見開いた。周りのエリオとキャロも驚いていたが、おそらくこの場で一番愕然としているのは、間違いなくフェイトであろう。

 

「(何が、起こったの? いつの間にツナは、なのはの背後にいたの・・・・!?)」

 

今ツナの速さに、自分が全く反応できなかった事に。

ツナの包囲していた魔力弾が、一斉にツナに向かっていった。フェイトもこれでなのはの勝利だと確信していた。しかし、魔力弾の爆煙でツナの姿が見えず、なのはの方を見てみるとーーーーいつの間にかツナがなのはの後方にいたのだ。

が、周りを見ると、エンマとリボーン、山本と了平とクロームは平然とし、ヴィータも驚いた顔をしていたがすぐに平静になっていた。ランボはいつの間にか寝てるが。

 

「(移動したって言うの!? あんなほんの一瞬、刹那の間に!?)」

 

『管理局最速』・『金の閃光』とまで言われた自分がまるで反応できなかった。魔力弾の包囲網を打ち破られたなのはと同じように、フェイトの“八年間培ってきたプライド”が、人知れず大きく傷付けられたのだ。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

そしてツナの脱出は別に転移とかではない。自分の後方の魔力弾に炎の拳による拳圧『ジェットフィスト』で穴を開け、XグローブとXグリーブの超加速でその穴から脱出し、なのはの後方に移動しただけなのだ。

 

「(・・・・良い感じだ。感謝するぜ正一、スパナ)」

 

ツナは内心で、ココをここまで仕上げてくれた二人のメカニックに感謝した。

ココとココの『形態変化<カンビオ・フォルマ>』はシミュレーションで二・三度やった位で、実戦で使うのは今日はじめてで、まだ炎の出力調整が難しいが、すぐに馴れる。

ツナは視線をなのはに向け直すと、肩で荒い呼吸をしながら、自分を睨め上げているなのはの方を向いた。

 

「どうしたなのは? まだやるのか?」

 

「当たり、まえ、だよ・・・・! 私は、間違ってなんかないっ!!」

 

なのはが飛び出すと、再び魔力弾を大量に生成し、ツナに向けて放った。

 

「ディバインシューター・・・・シュート!!」

 

なのはが魔力弾をジグザグに飛ばしながらツナに向かわせる。

しかし、ツナはソレに怖気づくこともなく、冷静にXグリーブを噴射させると、一瞬でなのはの眼前に現れた。

 

「っ!・・・・くぅっ!」

 

高速で動く相手ならば、フェイトでの模擬戦で馴れている筈のなのはは一瞬驚き、後ろに後退するように上空に飛ぶが、ツナは手を伸ばすと、死ぬ気の炎を発射するが、なのははそれに対しバリアを張って防ぐが、炎の威力に顔をしかめ、押し出されるように上昇する。

炎を防ぎ終え、再びツナの方に視線を向けるが、すでにその姿はなかった。

 

「いない!? どこなのっ!?」

 

「こっちだ」

 

「っ!?」

 

声が聞こえた方に身体の向きを変えるとソコには、『XーBURNER』の構えを取ったツナがいた。

 

「くっ・・・・!」

 

それを見たなのはは、すぐにレイジングハートをツナに向ける。

そして・・・・。

 

「『XBURNER AIR』!」

 

「『ディバインバスター』ァァァァァッ!!」

 

ーーーードゴォォォォオオオンンンッ!!

 

ツナの放った炎の奔流が、なのはの砲撃魔法を呑み込み、なのはへと向かった。

 

「っ! ああああああああっ!!」

 

吹き飛ばされたなのはは、何とか態勢を整えるが、BJは所々に焼け焦げ、満身創痍となっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

息は激しく乱れているなのは。しかし、ツナは少しも息は乱れておらず、平然としていた。

 

「・・・・して・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

「どうして、私の邪魔をするの!?」

 

なのはは悲痛な叫びでそう問い掛ける。

 

「お前の教導が間違っているのを改めるまでな」

 

「私の事・・・・何も知らない癖に! あの時・・・・いなくなった癖に!!」

 

「俺達も、好きでいなくなった訳じゃない。それになのは、お前は俺の事を、何処まで理解しているんだ?」

 

「え・・・・?」

 

「お前と出会う前はどんなヤツだったのか。どんなに情けない姿を晒してきたのか、どんなにカッコ悪い姿を晒してきたのか、ソコまで言うのなら知っているんだろうな?」

 

「っ・・・・」

 

ツナの言葉に、なのはは息を呑んで押し黙る。

 

「何も知らないのはお互い様だ。もっとも、お前は教え子の事を何一つ知ろうとも、自分の伝えたい事を伝えようとすら、思っていなかったみたいだな」

 

「そんなことーーーー」

 

「ないって言うのか? 本気でそう言っているなら、お前は師匠を名乗る資格すらなくなるぞ」

 

「っ・・・・何も知らない、ツナさんに、どうしてそこまで言われなきゃいけないの!? 私があの事故からどれだけ努力してきたか、ツナさんは知ってるのっ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

なのはが悲痛の叫びでそう問い掛けると、ツナは一瞬何か考えるように瞑目した後、再び目を開いて言葉を口にした。

 

「確かに俺はあの事故からのお前の八年間は知らない。だけど、リハビリの為に、血の滲む努力をしてきた事くらいは分かるし、今のなのはが、なのはらしくないって事は分かる」

 

「っ!?」

 

ツナの言葉になのはは目を見開く。

 

「無茶をしてしまった教え子を、ただ頭ごなしに叱り付けて、力と恐怖で屈服させ、砲撃魔法まで使って言うことを聞かせる・・・・それがお前の、高町なのはの教導なのか? なのは、俺の目を見て答えろ!」

 

「・・・・・・・・」

 

その、全てを見透かされているような、澄んだ瞳に、なのはは一瞬目を逸らしそうになる。

が。

 

「・・・・たく、ない・・・・やりたくないよぉ・・・・!」

 

大粒の涙を流し、泣きながら答えるなのは。

 

「だけどやらなくちゃ、私と同じになっちゃう・・・・! 私はっ! ティアナにも、スバルにもエリオにもキャロにも・・・・! 誰にも傷ついて欲しくないの!! だから・・・・だからぁっ!」

 

涙を流して、悲痛な声で叫びながらツナに向かってレイジングハートを構えて魔力を集束させるなのは。

それを見たツナは、一瞬だけ目を伏せた後、両手の平で『菱形の穴』を作るように印を結んだ。

 

「ーーーーなのは。お前はその事を“ティアナ達にちゃんと伝えたのか?” 【ティアナは頭の良い子だから、言わなくても自分の教導の意味を分かってくれている】と、“お前が勝手に思い込んでいただけ”なんじゃないのか?」

 

「っ!」

 

ツナの言葉に、なのはは図星を突かれたかのように息を呑んだ。

 

「お前は生徒達に、自分のカッコ良い姿だけを見せてばかりで、自分は頼れる教官だとカッコつけた姿しか見せて来なかったんじゃないのか? 自分の事を相手に理解して欲しいならば、先ずは自分の方から、情けない姿や醜い姿を見せてやらなければ、思いや願いや欲を伝えなくては、分かり合う事なんてできない!」

 

印を構えたXグローブから、炎がノッキングする。

 

 

 

ーリボーンsideー

 

「なのはっ!!」

 

フェイトが必死に重力球から脱出しようとするが、まるで動けなかった。

そんなフェイトに目もくれず、ヴィータがリボーンに話しかけた。

 

「おいリボーン。ツナのアレ、なんかヤバそうだぜ?」

 

「ああ。おそらくツナが今この時に思い付いた技だろうな。本来なら警戒すべきなんだろうが、なのはのヤツ、完全に冷静さを失ってんな」

 

 

 

ーツナsideー

 

リボーンの言うとおり、ツナに連続で図星を突かれ、冷静さを完全に欠いたなのはは、魔力の収束を終え、最大の砲撃をツナへと放った。

 

「うあぁあああああああああああっっ!! 『ディバインバスター・フルパワー』ァァァァァァァァっ!!」

 

ツナに向かって放たれたその魔力の奔流、いや、大瀑布と言っても良い強大な砲撃。

しかし、その砲撃を見てもツナは少しも臆する事も、微動だにする事もせずーーーー。

 

ーーーードガァアアアアアアアアアアアアアアアンンッッ!!

 

そのまま砲撃に飲み込まれしまい、辺りに激しい轟音が響き渡ったのであった。

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・・!!」

 

ゆっくりと息を乱しながら着弾点から上がる煙を静かに見据えるなのは。

 

「・・・・やっぱり、私の方が正しかったの・・・・!」

 

先ほどツナに言われたのに、またも勝利を確信して、薄く笑みを浮かべて、舌舐めずりするように呟くなのは。

しかし・・・・。

 

ーーーービュォォォォォォォォォ・・・・!

 

「!?」

 

煙がまるで吸い込まれるように渦を巻いて、一ヶ所に集まっていく。それに驚くなのはが目にしたのは。 

 

「えっ!?」

 

何と、無傷のツナが煙を印を組んだ菱形の穴の中に吸い込み、収束していった。

 

「な、何で・・・・何でなのっ!?」

 

全く状況が分からず、混乱しそうになるなのはに、ツナは淡々と答える。

 

「お前の魔力を、“俺の力にさせて貰った”。これが俺の新技ーーーー『死ぬ気の零地点突破・改 REMIX<リミックス>』!」

 

印を解いたツナがXグローブとXグリーブから炎を放出する。それは、先ほどよりも純度も大きさも段違いで上がり、弱冠桃色が交ざったオレンジ色の炎であった。

 

 

 

 

ーエンマsideー

 

「い、今ツナは何をしたのっ!?」

 

「ツナくんは、なのはちゃんの砲撃魔法をーーーー“吸収したんだ”」

 

『えっ!?』

 

フェイトだけでなく、これにはヴィータもエリオもキャロも驚いたような声をあげる。他人の魔力を吸収するだなんて、そんな闇の書の蒐集能力のようなものをツナはやってのけたのだ。

 

「そ、そんなのあり得ないよ! だって、ツナ達の使う死ぬ気の炎と、私達の使う魔力は別物でしょう!? それを吸収するだなんて・・・・!」

 

「いや、ツナくんならできる」

 

狼狽するフェイトの言葉を、エンマが確信を込めて否定した。何故なら、エンマ自身がソレを目の当たりにしてきたからだ。

 

「確かに水で例えると、『死ぬ気の炎』は『天然水』で、『魔力』は『水道水』のような物だけど、ツナくんの『大空の炎』の特性は『調和』。だから本来ならば『異物』である筈のなのはちゃんの魔力ですら調和して、自分の炎エネルギーに変換したとしたら」

 

「なるほどな。それならなのはの魔力を吸収する事ができるな」

 

ヴィータが納得したように声をあげると、愕然となり、若干身体が震えているなのはを見た。

 

「プライド、ズタズタになったな。なのはのヤツ」

 

「決め技である砲撃魔法がツナには全く効果無し、イヤ寧ろ、パワーアップさせちまったんだ。しかも相手は、『この時代のツナ』ではなく、『八年前のツナ』だ。なのはのプライド処か、精神状態はもうボロボロだな」

 

管理局内では、〈不屈のエースオブエース〉などと呼ばれている高町なのはだが、リボーンの目にはその姿は、ライオンと対峙して脅えている、小さな猫にしか見えなかった。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

余りに異様な出来事に、なのははその場から動く事を忘れていた。否、動く事が出来なかった。

目の前にいるツナが、自分よりも圧倒的に大きな存在に見えて、今自分はまるで、子供の頃に絵本で読んだ、お釈迦様の手の平にいる孫悟空のような気持ちになってしまっていたのだ。

 

「あ・・・・あぁ・・・・」

 

目の前にいるのは、八年前のツナだ。つまり、もう自分の方が格上になっている筈の相手なのだ。それなのに、完全に自分が追い詰められている。なのはは培ってきた八年間のプライドが、今音を立てて砕けていっているのが分かった。

そしてツナは、悠然となのはの近くに迫ってきていた。

 

「ひっ!!」

 

「恐いか? なのは」

 

「ーーーー!!」

 

呼吸と動悸が激しくなる。完全に畏縮してしまっている自分に、なのはは気づいた。

 

「今お前が感じている恐怖こそ、ついさっきまで、お前がティアナに与えていた物だ」

 

「っ!」

 

ツナの言葉に、先ほどの脅えていたティアナの姿が脳裏に甦った。

ーーーーあの時ティアナの目には、自分はこんなに恐い存在に見えたのか?

と・・・・。

 

「っ!」

 

そしてなのはの目に、目の錯覚か、恐怖が生み出した幻影か、ツナの隣にーーーー“二人の少女の姿が見えた”。

一人は、幼くて泣いていた頃の自分。

もう一人は、魔法を手にした9歳の頃の自分。

 

ーーーー・・・・・・・・・・・・。

 

その二人は、泣きそうで、そして責めるような目で、なのはの事を見据えていた。

まるで、『今の自分』は間違っているーーーーと、訴えているように。

 

「ち、違う・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・違う! 違う違う!! 私は、私はぁっ!!ーーーーうわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

 

『過去の自分達』にも否定されたと思い、なのはは錯乱し、アクセルシューターとディバインシューターを乱雑に、ガムシャラに、滅茶苦茶に撃ちまくりながら、ツナを、そして“過去の自分達”を撃ち落とそうとする。

 

「あああああああああ!!!! うあああああああああああああああああっっ!!!!」

 

[マスター! 落ち着いてください! マスター!!]

 

流石にレイジングハートが落ち着くように声をあげるが、なのはは全く聞こえておらず、遮二無二に魔力弾を撃ちまくっていた。

 

 

 

 

ーエンマsideー

 

「なのは! なのは!!」

 

「「なのはさんっ!!」」

 

「あの馬鹿! 完全に逆上してやがる!!」

 

フェイトとエリオとキャロが叫ぶが、なのははまるで聞こえておらず、それどころか、魔力弾がこちらに向かってきた。

 

「っ!」

 

エンマが重力操作をして、魔力弾を明後日の方向に飛ばしていく。

 

「ツナ。もう手加減抜きだ。思いっきりやれ!」

 

リボーンがヒラヒラと魔力弾を避けるツナに向かってそう叫ぶ。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「っ!」

 

リボーンの声が聞こえたのか、ツナはXグローブとXグリーブから炎を噴射させると、一瞬でなのはの眼前にまで到達し、

 

「なのはーーーー」

 

「あぅっ!」

 

振り抜き際に拳を叩き込むと、なのはは空中で一回転する。

 

「お前のーーーー」 

 

「くぅっ!」

 

次に蹴りを叩き込み。

 

「暴走をーーーー」

 

「きゃぅっ!」

 

更に加速して連撃を叩き込む。

 

「止めなければーーーー」

 

「うあぁぁぁ・・・・!」

 

管理局最速のフェイトですら捉えられない速度で加速し、なのはに拳と蹴りを浴びせていく。

 

「死んでもーーーー」

 

「ぁ・・・・ぁぁ・・・・!」

 

既にBJもボロボロで、意識も朦朧とするなのはに、ダブルスレッジハンマーを振りおろし、

 

「死にきれねぇ!!」

 

ーーーードゴォォォォォォォンンッ!!

 

「きゃぁぁああああああああああああああ!!!」

 

なのはは流星のように地面へと落下すると、大きなクレーターを作り、その中心に倒れていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

[マスター! マスター!]

 

「・・・・レ、レイジング・・・・ハート・・・・」

 

漸く正気に戻ったなのはが、レイジングハートの言葉に応える。

 

「っーーーー私、何て事、しちゃったんだろう・・・・」

 

先ほどの暴走を思いだし、自虐的に呟くなのは。ヨロヨロと起き上がるが、最早立ち上がる気力も体力もないのか、その場で座り込んでしまう。

そして、ツナが降り立つと、ゆっくりとなのはに近づく。

 

「なのは・・・・」

 

「ツナさん・・・・私、何を何処で、間違えちゃったのかな・・・・?」

 

泣きそうな顔でそう問うてくるなのは。

超モードから通常モードに一瞬変わりながら、両手でなのはの肩に触れた。

 

「“伝えたい事は言葉にしないと伝わらない”、なのはちゃんが子供の頃に、皆に言っていた言葉じゃないか」

 

「っ!!!???」

 

ツナが言った言葉に、なのはは漸く思い出した。

それは自分が幼い頃、まだ敵同士だった親友<フェイト>に向かって自分が言ったーーーー大切な言葉だった。

 

 

 

 

ーヴィータsideー

 

「ぁ・・・・」

 

そして、片手にナッツを、もう片手にリボーンを抱えたヴィータがBJを纏って降りてくると、なのはを見下ろすツナの哀しみの顔が、『ある人物』に重なった。

 

「ボス・・・・?」

 

そう、大恩ある初代ボンゴレボス・ジョットの姿にーーーー。

 

 

 

ーツナsideー

 

「『死ぬ気の零地点突破・初代<ファースト>エディション REMIX』」

 

ツナがそう呟いた次の瞬間、ツナが触れた箇所から氷が立ち昇り、なのはの身体を包み込んでいった。

 

「・・・・・・・・」

 

なのはに恐怖は無かった。ただ、自分を見つめるツナの悲しそうな瞳が、先ほどの恐怖とは違った感情に埋め尽くされていった。

 

「・・・・・・・・ごめんなさい、ツナさん」

 

「少し、頭を冷やせ。なのは」

 

「・・・・うん」

 

静かに目を閉じたなのはの身体を氷が包み込んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ツナがなのはから離れると、氷付けになったなのは。

離れた所では、今にもツナに飛び掛かりそうになっているフェイトと、ソレを抑えるヴィータ。

エンマに抱きつき、ツナに完全に畏縮し、尻込みしているエリオとキャロ。

寝ているランボを背負うクローム。

気絶しているスバルを背負っている了平と、同じく気絶しているティアナを背負って来た獄寺に合流する山本。

上空から気配を感じて見上げると、リインとユニゾンしたはやて。はやてと同じBJを纏うアインス。BJを纏っているシグナムとシャマルと狼形態のザフィーラであった。おそらくシャーリー辺りが呼んだのだろう。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

はやては滅茶苦茶になった訓練場と、気絶しているティアナとスバル。氷付けになったなのは。そしてなのはを氷付けにしたツナを見渡すとーーーー。

 

「ーーーーはぁぁ~~・・・・」

 

ある程度状況を把握したのか、大きくため息を吐いて肩を落とした。

それは、無茶をやったティアナに対してか、派手に暴走したなのはに対してか、盛大に力を見せてしまったツナに対してか、この騒動の事後処理を考えてなのか、それとも全部か、それは当のはやて本人にしか分からなかったが。

アインス達もそんな主の内心を察し、苦笑するしかなかった。




ー『死ぬ気の零地点突破・改 REMIX<リミックス>』ー
魔力を吸収して自分の力に変える。吸収する魔力の質が高ければ、さらに強くなる。

ー『死ぬ気の零地点突破・初代<ファースト>エディション REMIX』ー
相手の魔力に同調し、氷らせる技。

と、こんな感じにしました。なのはをかなり弄りましたが、後悔はしていません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

向き合い、受け入れ、前に進め

注意:今度は文面ですけど、フェイトのキャラ崩壊があります。ご了承下さい。誹謗中傷はご勘弁を。


ーなのはsideー

 

「ん・・・・う、ん・・・・」

 

「あ、なのはちゃん、目が覚めた?」

 

「シャマル、さん・・・・私、一体・・・・」

 

ツナとなのはの戦いから数時間後の医務室、ベッドの上で眠っていたなのはが目を覚まし、そんな彼女の顔をシャマルが覗き込む。

 

「っ・・・・! わ、私・・・・! 私・・・・!!」

 

上体を起こしたなのはは、自分のやらかした事が次々と甦った。

ティアナが自分の『教導の意味』を理解していなかった事に頭にきて、撃墜しそうになった事。

八年前のツナに、まるで手も足も出ず完敗した事。

自分が間違っている事実を受け入れられず、盛大に暴走し、訓練場を滅茶苦茶にしてしまった事。

自分を責め苛み、羞恥と忸怩、そしてかつて無い挫折感と敗北感に討ちひしがれそうになるなのはの脳裏に、ティアナとスバルの事が頭に浮かんだ。

 

「っ、そうだ! スバルは!? ティアナは!?」

 

「シーっ、スバルちゃんとティアナちゃんなら、横のベッドで眠ってるわよ」

 

そう言ってシャマルはなのはのベッドの横で眠る、ティアナとスバルを指差す。ティアナは姿勢正しく眠っているが、スバルは寝相が悪く、毛布が下に落ちそうになったのをシャマルが直した。

 

「あ、ごめんなさい・・・・二人の容態は?」

 

「大丈夫よ。隼人くんも手加減してくれたみたいだから、二人とも軽傷で済んでいるわ。・・・・正直、なのはちゃんの方が重体に思えるわ。録に休んでいなかったんでしょう。身体に結構な疲労が貯まっていたわよ」

 

「うぅ・・・・」

 

シャマルが半眼でそう言うと、なのははばつの悪い顔で視線を反らした。シャマルはため息混じりに声を発する。

 

「リボーンさんから伝言よ。【なのは。お前、“八年前からまるで成長していないな”】」

 

「っ!」

 

「【あの事故は、なのはの自己管理不足と、フェイト達がなのはに頼りっきりになっていた事が最たる要因だ。頑張るのは良いが、自分の事もちゃんと大事にしやがれ】ーーーーですって」

 

頭を鈍器で殴られたかのような衝撃があるリボーンの伝言に、なのはは目を見開く。

 

「・・・・そう、ですね。私、何にも、成長していなかった・・・・」

 

目を潤わせ、涙を流しそうになるなのはに、シャマルは「嫌な役を押し付けられたなぁ」って気持ちになりながら続ける。

 

「・・・・あの後大変だったのよ。氷付けになったなのはちゃんをどうしようかと思っていたら、10代目達が死ぬ気の炎であっという間に溶かして、それからなのはちゃんは熟睡。もう二日も経ったんだから」

 

「二日も、ですか・・・・」

 

「その間、フェイトちゃんが10代目に果たし合いまでして」

 

「フェイトちゃんが!?」

 

親友のなのはが彼処までボロボロに叩きのめされ、更には氷付けにされたのだ。直情型のフェイトが大人しくしている筈がない。

 

「ええ。でも、エンマくんが代わりにフェイトちゃんの相手をする事になったのよ。リボーンさんの口八丁でね。意外だったのは、なのはちゃんが氷付けにされたのに、ヴィータちゃんが凄く落ち着いてて、しかもエンマくんに、【フェイトの奴も、結構天狗になって図に乗ってるから、下手な情けかけないで圧倒してやれ】って言い出しちゃって」

 

「ヴィータちゃんが? そ、それで・・・・フェイトちゃんとエンマさんの勝負は・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「シャマルさん?」

 

なのはの問いに、シャマルは言いづらそうに渋面を作るが、観念したよくに口を開く。

 

「開始0.7秒、空中で『大地の重力』を受けたフェイトちゃんが地面に一瞬で叩き落とされ、そのまま気絶。異例の惨敗だったわ」

 

「れ、0.7秒・・・・」

 

あまりにも刹那的な敗北になのはは頬をひきつらせた。

 

「リボーンさんがさらに追い討ちをかけるように、【流石は時空管理局最速の魔導師。敗北するのも最速だな♪】、ですって」

 

「うっわ~・・・・」

 

また強烈な皮肉になのははさらに頬をひきつらせる。

 

「そこまで言われて、当初の目的を忘れたフェイトちゃんがエンマくんに再戦を挑んだの。今度は空中ではなく地上でね。ーーーーでも、結局『大地の重力』でその場に倒れさせられ、魔力弾も重力の影響で撃っても地面に落ちるだけになって、さらに重力を強くして地面にめり込んでフェイトちゃんが気絶したの」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「涙目になったフェイトちゃんが、エンマくんに頭を下げて『大地の重力』無しで再戦を頼んでね・・・・」

 

遂にハンデまで要求したようだ。

 

「それでも重力操作で魔力弾を無力化させられて距離を空けようとしても、引力で引き寄せられ、拳を叩き込まれて敗北したの。フェイトちゃん、攻撃力とスピード重視だから防御力が弱いからね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「最後はフェイトちゃん、もう半泣き状態で【重力操作も抜きでお願いします・・・・!】って、エンマくんに土下座までしてまた再戦して貰ってね・・・・」

 

ソコまでハンデを懇願するとは、最早プライドの欠片も粉砕されてしまったフェイトに、なのはは憐憫の気持ちになる。

 

「それで漸く善戦できるようになったけど、結局三分後には敗北。しかもエンマくんはほぼ無傷でね。リミッター付きなんてまるで言い訳にもならない位に清々しい程だったわ」

 

「・・・・・・・・」

 

ついでに、最後の一戦でエンマがフェイトのスピードをすぐに見切ってしまい、何故こうも簡単に見切られたのか腑に落ちないフェイトがエンマに問うと。

 

【正直、ツナくんの方が速いから】

 

【ぐはっ!!!】

 

と言われ、唯でさえなのはとの戦いで気にしていたのもあり、フェイトはまるで、その豊満な胸にバルディッシュ・クレッセントフォームが深く突き刺さったような衝撃に身悶えた。

 

「・・・・さっきまで医務室の隅で体育座りで落ち込んでいたし。あ、一時間くらい前に出ていったけど」

 

「フェイトちゃん・・・・」

 

「唯一の救いは、エリオくんとキャロちゃんが見ていなかったって所ね。あの二人の前でそんな姿を晒していたら、きっとフェイトちゃん立ち直れなかったでしょう」

 

「・・・・それで、ツナさんは?」

 

自分と戦ったツナの身を案じるなのはに、シャマルは苦笑しながら答える。

 

「大丈夫よ。六課内で納められる問題だから。でも、なのはちゃんは訓練場を滅茶苦茶にした責任として、五日間の謹慎処分になっちゃったけどね」

 

「“五日の謹慎”・・・・」

 

酷く優しい処分だ。あんなに派手にやらかしたのだから本来ならばもっと重い罰則を課せられていても可笑しくないだろう。

 

「ヴィータちゃんが色々とフォローしてくれたのよ」

 

「ヴィータちゃん、が・・・・?」

 

あの短気なヴィータがそんな事をするだなんて、なのはは以外そうに目を見開いた。

 

「ええ。何かヴィータちゃん、ホテル・アグスタの一件から、妙に顔つきと言うか雰囲気が、何て言うかーーーー『大人』になったって感じがするわね・・・・」

 

と、その時、医務室の扉が開くと、リボーンが入ってきた。

 

「ちゃおっす。起きたようだな、なのは」

 

「っ、リ、リボーンくん・・・・」

 

先ほど伝言で手痛い説教を浴びた手前、気まずいなのは。リボーンはそんななのはの心情に構わず、なのはのベッドの側にあった椅子に腰かける。

 

「シャマル。悪いが、席を外してくれ。ザフィーラもな」

 

「ええ」

 

「うむ」

 

「っ・・・・!」

 

なのはは内心、行かないで! と叫ぶが、二人はご愁傷様と会釈して、部屋から去っていった。

二人が退室すると、リボーンが口を開く。

 

「さてなのは・・・・まさかと思うがオメエ、教導官をーーーーいや、『管理局を辞める』だなんて言うつもりじゃねえだろうな?」

 

「っっ!!」

 

なのははギクッ! と言わんはがりに身体を震わせた。リボーンはそれを見て、盛大にため息を吐いてから話を繋げる。

 

「全く、オメエは悪い所は父親である士郎譲りだな」

 

「えっ? お父さん?」

 

「ああ。不器用な所が特にな。ーーーー八年前、オメエが撃墜しちまって、士郎の奴、【なのはを管理局に入れるんじゃなかった・・・・】って、腑抜けた事を抜かしやがったからな。一発殴ってやったんだ」

 

「えっ!? 殴ったの!?」

 

「ああ。昔のアイツなら片手で余裕で止められる程度のパンチをな。あの腑抜けめ、間抜けヅラを晒して受けちまってな、地面をゴロゴロと転がって、それはもう情けない姿だったぞ。ーーーー犯罪者と戦う以上、管理局が安全な組織である筈がねえ。すっかり平和ボケしちまいやがってって、ラル・ミルチもコロネロも呆れ果てていやがったな」

 

「・・・・・・・・」

 

なのはは何とも言えない顔になる。

 

「士郎は昔、仕事で大怪我を負って、それが原因でお前に寂しい思いをさせちまった負い目から、お前の言う事は何でも聞くようにしていたな?」

 

「う、うん・・・・」

 

なのははその時、視界の端に『魔法と出会う前の幼い自分』の幻影が見えた。

 

「だがな、それはただお前と向き合う事から、“逃げていただけだ”」

 

「えっ・・・・?」

 

「本当にお前の事を思っているなら、ハイハイ言う事を聞くんじゃなくて、本気で向き合わなければならねえ。アイツはそれをしないでずっと逃げていたんだ。今のお前がやろうとしている事も同じだぞ」

 

「うっ」

 

リボーンの言葉に、なのはは息を詰まらせた。

 

「大方、『あんな事をした自分に教導官の資格なんてない~』。だの、『自分の初心を忘れて教え子を痛め付けようとした責任を取る~』。だの、それらを言い訳にして、逃げようとしているだけだろう?」

 

「ち、違っ・・・・・・・・うん。多分、そうなの」

 

否定しようとするが、リボーンの目に見据えられ、観念したように口を開いた。

 

「なのは。お前の悪い所は、自分で自分を勝手に評価する所だ。それがお前の一番の傲慢な所だ。資格がないだの、責任を取るだの、そんなカッコつけた言い訳して逃げようなんてするんじゃねえ。例え逃げたとしても、お前のそれからの人生は、ずっと後悔と罪悪感と自己嫌悪に苛まれる道だ」

 

「え・・・・」

 

「失敗して、敗北して、挫折した人間が逃げる事はある。だが、そうなったらもう二度と這い上がれねぇ。ソレらを受け入れて、這い上がっていけば、今よりも強くなれる筈だぞ。ーーーーなのは、逃げるな。這い上がれ。そしてFW陣の奴等をちゃんと教導してやれ。それが、『責任』を取るって事だ。自分の『失敗』と本気で向き合え。『敗北』を素直に受け入れろ。そこから『一歩』を踏み出して、『前』に進め!」

 

「・・・・でも・・・・」

 

向き合う勇気。受け入れる勇気。そして一歩を踏み出す勇気。それらが持てないなのはは、顔を俯かせた。

ーーーーその時、脳裏にツナの姿が浮かんだ。

 

「・・・・ツナさんに・・・・」

 

「ん?」

 

「ツナさんに、会いたい・・・・」

 

八年前、あの時も、うちひしがれそうになった自分を、ツナは暖かく抱き締めてくれた。あんな大喧嘩をした後にこんな事を言うのは都合が良すぎるのも十分に分かっている。

だが、それでも、頬に一筋の涙を流すなのはは、ツナに会いたいと言った。

リボーンはそんななのはに、小さく笑みを浮かべると。

 

「隊舎の屋上にいるぞ」

 

「えっ?」

 

「行ってこい」

 

「・・・・・・・・うん!」

 

なのははベッドから降りると、二日も寝ていて少し身体がふらつくが、それでも歩き出した。

 

 

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

なのはが部屋を出ていくと、次にシャマルとザフィーラが部屋に入ってきた。

 

「少し、厳しいんじゃないですか?」

 

「守護騎士<オメエら>やリンディやクロノ、八年間も周りが甘やかし過ぎたんだぞ。なのはだけでなく、フェイトやはやてもな」

 

「それを言われると・・・・」

 

渋面を作り、言い返せなくなったシャマルとザフィーラを尻目に、リボーンはティアナとスバルが寝ているベッドの間に行くと。

 

「さて、オメエらもーーーーいつまで狸寝入りしてやがる!」

 

ーーーースパン! スパン!

 

リボーンがレオンをハリセンに変えると、ティアナとスバルの頭を叩いた。

 

「きゃっ!」

 

「あうっ!」

 

叩かれた二人は飛び起きて、オデコを擦った。

 

「あいたたたた・・・・」

 

「あははは、バレてた?」

 

「途中から寝息が聞こえなかったからな。ーーーー何処から聞いてた?」

 

「・・・・なのはさんが教導官を、管理局を止めるって話が出た時に、ね」

 

「・・・・スバルが飛び起きそうになったのを、念話で止めたわ」

 

「ファインプレーだな、ティアナ。さて、お前も“話をしなくちゃいけないヤツ”がいるだろ?」

 

「・・・・ええ」

 

ティアナがリボーンの言葉に頷くと、倦怠感のある身体を動かして、『ソイツ』のいる場所へと向かおうとする。

 

「アイツは隊舎の庭だぞ」

 

「(コクン)」

 

そしてティアナは、ゆっくりと歩いていった。

 

「青春だな」

 

「青春ですねぇ」

 

リボーンとスバルが微笑ましく笑みを浮かべ、シャマルとザフィーラも笑みを浮かべていた。

 

「良いわね、若いって」

 

「シャマル先生、おばさん臭いですよ?」

 

「(グサッ!)うっ!」

 

スバルの悪意の無い言葉の刃が、シャマルの豊満な胸に突き刺さり、シャマルは膝を付けて呻いた。

しかし、考えて見てほしい。10年前にはやてによってこの世界現れたシャマルは二十代前半、あれから10年経っているので、シャマルの年齢は・・・・。

 

「(ギロリっ)それ以上言わないで・・・・!」

 

シャマルが、何処かに凄まじい圧力の視線を向けるのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

想いを伝える

ーツナsideー

 

「・・・・・・・・」

 

ツナは六課隊舎の屋上で、空を見上げながら物思いに耽っていた。

なのはがティアナにやろうとしている事を察し、思わず飛び出し、そしてなのはと戦う事になってしまった。ヴィータから、

 

【もうなのはも良い歳してんだ。口で言っても聞かない駄々っ子のままなら、千や万の言葉よりも、一発の拳骨の方が効果的だろ? それに、なのはの奴。自分はもう“ツナより上だ”って、思っちまってるからさ。いっぺんお調子に乗ってる鼻っ柱を、根元から思いっきりへし折ってやった方が目を覚ますだろうよ】

 

と、言われていたが、もっと他にやりようがあったのではないかと、考えてしまう。

 

「はぁ~・・・・」

 

『ガゥ・・・・』

 

『ガォガォ』

 

足元にいるナッツが、前足をツナの足に置いて、慰めるような声を上げる。ココはシャンとしなさいよ。と言いたげな声を上げていた。

 

「二人とも、ありがとな」

 

ツナは笑みを浮かべながら、なのはとの戦いの後に、リボーンに言われた事も脳裏に浮かんだ。

 

【なのはは話し合いであーだこーだ言った所で、自分の意見を簡単に曲げる性格じゃねぇ。大体フェイトの時もヴィータ達との時も、アイツは話し合いよりもどつき合いをやって来たんだから、殴り合いが一番なのはにとって効果的な方法だ】

 

と、言われ、確かになのはは話し合いよりも、殴り合いでフェイト達と分かり合って来たなぁ、と苦笑いをした。

 

『ガゥ!』

 

『(プイッ)』

 

と、その時、ナッツが屋上の扉の方を向いて、期待に目を輝かせ、ココはフンッとソッポを向いた。

 

ーーーーキィ・・・・。

 

扉が小さく音を立てると、なのはがオズオズと出てきた。

 

「なのはちゃん・・・・」

 

「ツナ、さん・・・・」

 

『ガゥ♪』

 

ナッツが嬉しそうになのはに近づこうとする。

が、

 

『ガォ』

 

『ガッ!?』

 

二人の間の空気を読んだのか、なのはに近づけたくなかったのか、ココがナッツの背中に乗って、ナッツを抑えた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

お互いに無言になってしまうツナとなのは。そして、なのはの方が口を開いた。

 

「ツナさん・・・・私、どうしたら、良いの・・・・?」

 

「っ」

 

頬に涙を垂らしながら、なのはが泣きそうな声でツナに問いかけた。

それを見て、ツナは察したようにゆっくりとなのはに近づく。なのはもツナの動きに合わさるように膝を床について座ると、ツナがなのはを抱き締め、なのはの頭を優しく撫でた。

まるで、迷子の女の子を優しく慰めるかのように。

 

「ツナさん・・・・?」

 

「なのはちゃん。間違った事をしたって分かっているんだよね?」

 

「・・・・うん」

 

「じゃぁ、謝らないとね。ティアナにだけじゃなくて、心配や面倒をかけたヴィータや皆にも、ね」

 

「でも・・・・」

 

自分の失敗や過去と向き合う勇気が持てないなのはは、自信なく声を発するが、ツナは優しく説いていく。

 

「俺もさ。良く初対面の人達に、【情けないやつ】とか、【頼りないやつ】とか、【本当にネオボンゴレボスなのか?】って言われてきたんだけど。それでも、この情けなさも、臆病なのも、ありのままの俺だから。出会った人達に俺って人間がどんなヤツなのか知って欲しいからさ。こんな自分で晒け出そうと思うんだ」

 

「・・・・ぁ」

 

なのはは、戦っていた時にツナに言われた事を思い出した。

 

【お前は生徒達に、自分のカッコ良い姿だけを見せてばかりで、自分は頼れる教官だとカッコつけた姿しか見せて来なかったんじゃないのか? 自分の事を相手に理解して欲しいならば、先ずは自分の方から、情けない姿や醜い姿を見せてやらなければ、思いや願いや欲を伝えなくては、分かり合う事なんてできない!】

 

「・・・・・・・・っ」

 

そしてなのはは再び、『魔法を手にする前の幼少期の自分』の幻影が現れた。

 

「(そうか・・・・そうだよね・・・・。あなたもーーーー私なんだよね・・・・)」

 

なのはは、自分に近づく幻影の自分を抱き締め、涙混じりに声を発した。

 

「(ゴメンね・・・・! ずっとあなたの事、見て見ぬふりして、拒絶して、本当にーーーーゴメンね・・・・!!)」

 

漸く過去の無力だった自分を受け入れたなのは。『魔法を手にする前の自分』と『魔法を手にしたばかりの自分』は笑みを浮かべて、なのはの中に溶け込むような消えると、なのははツナの身体を抱き締めていた。

 

「なのはちゃん。ちゃんと伝えよう? ティアナやスバル達に、それでもしあの子達に軽蔑されたとしても、何度でも向き合って、話し合おう。辛くなったら、なのはちゃんには皆がいるんだから、一人で抱え込まないで、皆に甘えたり頼ったりしよう。頼りあったり支えあったり補いあったりするのが、本当の仲間なんだから」

 

「うん・・・・! うん・・・・!!」

 

ツナの胸に顔を埋めて、嗚咽を漏らしながら、なのははツナに抱きついていた。

 

 

 

 

ーフェイトsideー

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

ツナとなのはの様子を、エンマとリボーンとヴィータに連れられたフェイトとはやて達が、隠れながら見ていると、フェイトが重く深いため息を吐いた。

 

「フェイトちゃん・・・・」

 

「私、なのはの事誰よりも理解しているって思ってた・・・・。でも、結局何にも理解してなかったんだなぁ」

 

「そら、私達も言えるわ・・・・」

 

なのはがあんなに辛そうにしていたのに、自分達はまるで気づかなかった。それがとてつもなく情けなく、そして恥ずかしかった。

 

「悔しいなぁ・・・・」

 

と、ソコでフェイトが吐き出すように言う。

 

「フェイトちゃん」

 

「エンマ達は、なのはが不調だって事、見抜いてたんだよね?」

 

「うん・・・・。アグスタの時から薄々ね」

 

「情けないなぁ・・・・。私の方が、ツナ達よりなのはと長くいたのに、ツナ達はアッサリ気づいて、私は今日までまるで気づいていなかったなんて・・・・」

 

誰よりも一番近くにいた自負があったのに、親友の不調に全く気づかなかった。自嘲するように呟くフェイトをエンマが優しく抱き締めると、フェイトはエンマに抱きつき、エンマは言葉を出す。

 

「僕達シモンファミリーも昔、ジュリーがD・スペードに取り憑かれている事に気づかず、彼の口車に乗せられて、ツナくん達と戦った。付き合いが長いから見えている物があれば、付き合いが長いから、目にフィルターみたいな物が貼ってしまって、見落としてしまう事もあるんだと思うよ」

 

「私らは、なのはちゃんを見る目にフィルターが掛かってもうたんやな。しかも、埃にまみれた・・・・」

 

「お前らは何処かなのはを『特別扱い』し過ぎていたんだ。それをなのはもある程度分かっていたから、「自分が皆の分まで頑張らなきゃ!」って、背負わなくて良い重圧を背負っちまったんだぞ」

 

「ーーーー申し開きも、言い訳もできません」

 

はやても自嘲気味に呟き、リボーンの言葉にアインスも悲痛な顔で応え、シグナムも同意するように頷いた。

 

「もう1度やり直すんだ。なのはちゃんの友達として、ね」

 

エンマの言葉に、フェイトは涙混じりに、はやて達も少しだけ笑みを浮かべて頷いた。

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

ティアナは六課の中庭で鍛練していた山本と了平から、獄寺は資料室にいると聞き、そこに着くと、

 

「おら瓜! さっさも戻りやがれ!」

 

『フニャァァァァァァッッ!!』

 

「ぎゃぁぁぁっっ!」

 

瓜をバックルに戻そうとするが、瓜が抵抗し、獄寺の顔を思いっきり引っ掻き回すと、逃げようとするが、少し呆れ目になっていたティアナの肩に乗っかった。

 

「あ? 何だお前かよ。何か用か?」

 

素っ気なく言葉を発する獄寺に、ティアナは意を決して声を発する。

 

「・・・・・・・・あの、さ。アンタに言われた事、少し分かったと思う」

 

「ふぅん」

 

「私が見えていなかったのってーーーー『自分の命』、よね」

 

ティアナが確信を込めて言うと、獄寺は小さく笑みを浮かべる。

 

「・・・・それが分かったんなら、お前はもう大丈夫だな」

 

『にゃぁ~』

 

瓜はティアナの顔に頬擦りし、ティアナも笑みを浮かべた。

 

「・・・・うん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

ースカリエッティsideー

 

そしてその頃。

 

「やぁやぁスカリエッティくん☆ 新型ガジェットは揃ってきたかい?」

 

スカリエッティの研究室に、黒髪の男が陽気に入ってくる。スカリエッティは馴れ馴れしい男に嫌悪感を出さず、にこやかに応答する。

 

「ええ、ご覧下さい」

 

スカリエッティがモニタを操作して画像を出すと、某所に向かって進撃している・・・・以前ホテル・アグスタでヴィータとシグナムとザフィーラを圧倒した新型ガジェット達十数体を見せた。

 

「今頃は機動六課はくだらない内輪揉めでゴタゴタ状態になっている頃でしょう。ここで新型ガジェット、嫌、『F<フィアンマ>ガジェット』で少し叩きのめしてあげますよ」

 

“六課の現状を知っている”スカリエッティがほくそ笑みを浮かべてモニタの映像を見ていたその時、『Fガジェット』達の前に、『灰色のオーロラ』が現れた。

 

「おぉ」

 

「わぉ」

 

そのオーロラが何を意味するのかを“知っている”二人は、『Fガジェット』達を停止させると、オーロラからーーーー“青いバーコード仮面をした戦士”と、“学ランを肩にかけた少年”が現れる。

 

「おや、あの『怪盗ライダー』ですか、しかも・・・・」

 

「うふふ、遂に『最強の守護者』が来たね☆」

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「おっと。ちょっと予定と違うけど、丁度良いかな」

 

「逃がさないよ」

 

学ランの少年が、戦士に向けてトンファーを振り抜くと、戦士は持っていた銃で防ぐ。

 

「僕の眠りを妨げたんだ。それ相応の報いとしてーーーー噛み殺す!」

 

戦士は少年が眠っている隙に、少年が身に付けている『ブレスレット』を盗もうとしたが、少年が起きて戦闘になり、『灰色のオーロラ』を使って“この時代の世界”に連れてきたのだ。

 

「んー。寝ている隙に極上の獲物を貰って置こうと思ったけど、やはり簡単じゃないか」

 

戦士は“カード”を五枚取り出すと、銃に装填した。

すると、銃から音声が流れる

 

[KAMENRIDE BURST!]

 

[KAMENRIDE PROTO・BURST!]

 

[KAMENRIDE METEO!]

 

[KAMENRIDE NADESIKO!]

 

[KAMENRIDE BEAST!]

 

「それじゃ、行きたまえ」

 

戦士が銃の引き金を引くと、カプセルを胸に付けた二人の戦士が、身体にキラキラとしたパーツを付けた戦士が、女性的な身体付きをした宇宙服のような戦士がと、金色のライオンを肩に付けた戦士が現れ、少年とFガジェットへと向かった。

 

「っ!」

 

少年が、トンファーを構えて、キラキラとしたパーツを付けた戦士が拳法を、金色のライオンを付けた戦士がサーベルを持って戦っている隙に、戦士『灰色のオーロラ』を展開して、この場からーーーー否、この世界から消えた。

 

「・・・・っ!!」

 

少年はトンファーに『紫色の炎』を燃やすと、二人の戦士を一瞬で叩きのめし、腕にロケットを装備して突っ込んでくる女性戦士も、一瞬で殴り飛ばした。

三人の戦士達はそのまま消えると、少年はつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん。所詮はコピーでしかない。“本物の彼ら”の方が噛み殺しがいがある」

 

そう呟くと、カプセルを付けた二人の戦士が銃の引き金を引くと、メダルが何発は射出され、Fガジェット立ち上がるもレーザーを少年へと放った。

 

「(ニヤリ)」

 

少年は小さく笑みを浮かべると、次の獲物へと向かった。

 

その少年の名はーーーー『雲雀恭弥』。ボンゴレファミリー最強の『雲の守護者』である。

 




次回、遂に最強の守護者が登場! 八年後のなのは達に、彼は失望するかも・・・・。
六課の内輪揉めも終わらせたいですね。
質問ですが、なのは達って、結構周りから甘やかされて来たと思いません?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最強の守護者、未来に来る

ーなのはsideー

 

なのはが漸く泣き止んだその時、ガジェットが出現したという報告が入り、ツナと一緒にヘリポートに行くと、フェイト達にFW陣も既に集合した。

 

「今回は空戦だから出撃は私とシグナム副隊長、ヴィータ副隊長の三人だよ」

 

「えっ、フェイトちゃん、私は・・・・」

 

「なのは。お前は五日間の謹慎処分中だろ。まだ二日しか経ってねぇんだ。今回はFWの奴らと一緒にお留守番だ」

 

「自業自得だぞ」

 

「うっ・・・・!」

 

ヴィータとリボーンの言葉に、なのはは何も返せず下がった。

 

「FW陣も、それでいいな?」

 

「「はい!」」

 

「「はい・・・・」」 

 

エリオとキャロは元気良く返すが、ティアナとスバルが少し元気なさげに返した。

と、その時、なのは達にはやてからの念話が、ツナ達のインカムからアインスの声が響いてきた。

 

《大変や皆! これ見たって!》

 

《10代目! 皆さん! 映像を送ります! ご覧ください!》

 

空中モニタが表示され、全員の目が集まると、モニタの中でホテル・アグスタでヴィータとシグナムとザフィーラを圧倒した“新型ガジェット”、しかも形状が異なっており、さらに改良されたのが分かる機体が十数機、内の三機がーーーー紫色のトゲ付きの雲に串刺しにされて爆発した。

 

『・・・・・・・・あっ!』

 

『・・・・・・・・げっ!』

 

「「「「???」」」」

 

その紫色の雲を見た瞬間、ツナ達の反応は、ガジェットと交戦しているのが誰なのか察して顔を青ざめたり苦笑する者達、苦虫を千匹ほど噛み潰したような渋面を作る者達と別れた。

FW陣が首を傾げていると、リインは念話と通信、どちらにも嬉しそうに弾ませた声を響かせる。

 

《雲雀さんですぅーーーー!!》

 

リインの声に続くように、モニタから胸にカプセルを着けた仮面の戦士二人と交戦している、『雲雀恭弥』が猛禽類の如く鋭い目付きと、ニヤリと冷笑を浮かべながらトンファーを振るって元気に戦っている姿が現れた。

 

「おっ、あれって『伊達さん』に『後藤さん』か?」

 

「いや良く見ろ」

 

山本が仮面の戦士達の名を呼ぶが、獄寺が指差すと、仮面の戦士二人が雲雀のトンファーに貫かれ、そのままデータのように消えてしまった。

 

「おおっ! 二人が消えてしまったぞ!」

 

「データのようになって消えた。・・・・『ディエンド』、いや、『海東』さんだね」

 

「あの『泥棒ライダー野郎』が雲雀を連れてきやがってって事だな」

 

何やらあの仮面の戦士の事を知っているような口振りのツナ達に、なのは達が首を傾げていると、リボーンが面白くなりそうだと含み笑みを交えて声を発する。

 

「ーーーー雲雀が戦い始めたら相手を殲滅するまで止まらねえからなぁ。ツナ、エンマ、空中戦になるならお前らが行け」

 

「「やっぱり俺(僕)達!?」」

 

「あの! 私達も!」

 

「アホか。お前らでどうにかできる相手じゃねえぞ雲雀は」

 

『うっ・・・・』

 

リボーンの言葉に、フェイトとシグナムとヴィータが口ごもる。ツナとエンマに手も足も出ずにボロ負けしたなのはとフェイトはもとより、二人とほぼ互角のシグナムとヴィータでは、雲雀の相手が務まるとは思えない。

 

「それと、はやて。リインとザフィーラも連れていくから許可をくれ。雲雀を宥められるのはアイツらくらいだ。後、こっちに来た雲雀にハンバーグでも作っておいてくれ」

 

《了解や。久しぶりに『はやてちゃん特性 スペシャルハンバーグ』の出番やなぁ! 腕が鳴るわ! んじゃリイン。ザフィーラにも連絡を《主。宜しいでしょうか?》 ありゃザフィーラ?》

 

はやてとの通信中に、ザフィーラが割り込んできた。どうやら司令室に入ってきたようだ。

 

《妙な感覚を感じたのですが、何か起こりましたか?》

 

《・・・・ツナさんばりの直感力しとんねんな。ほら、あの人や》

 

《っ! 雲雀様!?》

 

ザフィーラがモニタに映る雲雀を見て、思わず様付けで呼んだ。

 

《ザフィーラ。リィンを連れてツナさん達と一緒に雲雀さんを迎えに行って。私は特性ハンバーグ作っとくから》

 

《承知いたしました。行くぞリィン》

 

《はいですぅ!》

 

《じゃぁ皆、あとよろしくな》

 

そう言ってはやてからの念話と通信が切れた。

エリオが堪らずツナに話しかけた。

 

「ねえツナ兄ぃ、雲雀さんってツナ兄ぃ達の仲間、なんだよね?」

 

「う~ん・・・・」

 

ツナが困ったような笑みを浮かべ、他の人達も渋面を作った。リボーンがニヤニヤと笑みを浮かべながら話し出した。

 

「自分の掲げる『正義』を第一に考えて行動するヤツでな。さらに馴れ合うのと命令に束縛されるのが大嫌いな性格で、時には味方には敵にもなる。そんなヤツだぞ」

 

「・・・・どういうヤツなのよ」

 

「ムカつくが、俺ら守護者の中じゃかなり強い方だ。10代目と古里でも、野郎とタイマンするなら無事じゃすまねえ」

 

半眼になるティアナに、獄寺がため息混じりにそう言った。

と、そこで狼形態のザフィーラとその頭の上にリインがやや早歩きで向かってきた。

 

「お待たせしました10代目。すぐに参りましょう」

 

「雲雀さんをお迎えに行くですぅー!」

 

リインが雲雀に会える事を嬉しそうに言い、ザフィーラはキリッと真面目にしているが、尻尾がフリフリと振られており、喜びを隠しきれていないのが丸分かりである。

 

「お前らとはやてだけだよ、雲雀が来るのを歓迎しているのは・・・・」

 

呆れる獄寺を尻目に、ツナはなのはに耳打ちする。

 

「なのはちゃん。これを機に皆とちゃんと話し合うんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

不安そうになるなのはに、ツナが後ろを向かせるとソコには。

フェイトにヴィータ、シグナムが「私達がいるんですけど? 忘れてませんか? ツナ(10代目)に比べたら頼りないでしょうけど」と言いたげな目でなのはを半眼で見据えていた。

 

「・・・・にゃははは、皆、ありがとう・・・・」

 

なのはが小さく笑みを浮かべてフェイト達に感謝を言った。

 

「さて、俺らが行くぞ。獄寺、山本、了平。こっちは任せた」

 

「了解っす」

 

「おう」

 

「うむ!」

 

三人の返事を聞くと、ツナとリボーンとエンマ、ザフィーラとリイン。乗せ、ヘリは現場に向かって飛びだって行った。

 

「(ありがとう・・・・ツナさん・・・・)」

 

なのはは心の中でツナに感謝すると、FW陣に向き直った。

 

「ーーーー皆、話したい事があるの」

 

 

 

 

 

 

ー雲雀sideー

 

ーーーーグシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンッ!・・・・・・・・ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンッ!!

 

その頃、雲雀は仮面の戦士達の偽物達と死ぬ気の炎を使う機械の軍団を破壊し終えると、軽い運動をしたように少し伸びをすると、退屈そうに欠伸をした。

 

「ふわ~・・・・本物の方がもっと噛み殺しがいがあったな」

 

あれだけの軍団を相手にしても、雲雀はまるで余裕の態度を崩さなかった。

 

「・・・・ん?」

 

雲雀がふとヘリコプターのプロペラ音を聞いて顔を向けると、ヘリコプターがこちらに向かってきた。

機械の軍団の持ち主か、草壁が迎えに来たのかと思ったが、ヘリコプターから小さな影が飛び出し、こちらに向かって飛んで来た。敵かと思ったが、その思考は向かって来る影の正体が分かると、すぐにトンファーを袖口にしまった。

 

「雲雀さーーーーーーーーん!!」

 

そう、リインだった。

リインは雲雀の近くに来るとポンッ、と身体をヴィータくらいの年齢の子供のサイズになり、雲雀に抱きついた。

 

「雲雀さん! 雲雀さん! 雲雀さんですぅ!!」

 

抱きついたリインは激しく頬擦りしながら雲雀に甘えていた。リインを優しく受け止めた雲雀は、小さく笑みを浮かべ、リインの頭を撫でた。

雲雀恭弥と言う人間を知る人達が見たら、目をひんむきながら驚くだろう。

次にヘリコプターが地面に着地すると、トテトテと早歩きで狼形態のザフィーラがやって来て頭を垂れた。

 

「ーーーーザフィーラ」

 

「はっ!」

 

「これはどういう状況だい?」

 

「恐れながら、ここは雲雀様達がいた時代から、八年後の未来のミッドチルダです」

 

「ふぅん成る程。だから行方不明になっていた小動物達もいるんだ」

 

雲雀はリインは離させてザフィーラの背中に座らせると、超<ハイパー>モードのツナと戦闘形態のエンマに向けてトンファーを取り出した。

 

「やぁ元赤ん坊。君も元気そうだね」

 

「まぁな。所で雲雀、今からヘリに乗ってこの時代のはやて達が作った新部隊の隊舎に来るか?」

 

「・・・・彼女達、強くなった?」

 

「・・・・・・・・正直お前が見たら、“失望するレベル”だ」

 

「ふぅん・・・・」

 

リボーンがそう言うと、雲雀は少し落胆したように肩を落とすと、ツナとエンマに向けてトンファーを構える。

 

「少し運動不足でね。解消役、やってくれる?」

 

「構わねえぞ。ツナ。エンマ」

 

「「ああ」」

 

ツナとエンマが拳を構えて炎を放出すると、雲雀もその目を細めて、亀裂のように笑みを浮かべてトンファーを構え、『雲の死ぬ気の炎』を放出した。

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」」」

 

ツナとエンマ、雲雀がぶつかり合い、橙色と真紅と紫色の炎がその場に爆発したかのように弾けた。

 




雲雀が大人しくついていく性格ではないですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伝える想い

漸くSTS編の第一部が終わりそうです。


ーなのはsideー

 

ツナとエンマが雲雀と交戦を始めるのとほぼ同時に、会議室にてなのはがFW陣に8年前に自分の『無茶』を話した。

自分の才能と能力に傲り、自己管理を怠り、その結果大怪我を負って、家族や仲間達の心に大きな傷を作った事を・・・・。

 

「・・・・以上が、高町なのはの失敗談でした」

 

そう言って、なのはは話を聞いていたメンバーの方に顔を向ける。なのはによる昔話と、彼女の気持ちが語られた後、メンバーはずっと俯いていた。

 

「無理をし過ぎて、今後に支障を与えないように導く。これが教導官として一番大事な事なのに、話そうとは思っていたんだけど、正直この話をするのが怖かったの。それで先送りにして行った結果がこの有り様・・・・ツナさんやリボーンさんに言われて、ようやく決心がついたの」

 

ツナとの大喧嘩を見ていたエリオとキャロ、目が覚めてからのリボーンの説教を聞いていたティアナとスバルは、あえて口には出さなかった。

 

「導いていく筈の立場なのに、自分は何もしなかった癖に、頭ごなしに生徒に怒りを抱いて傷付けて・・・・生徒が気づいてくれているって勝手に決め付けて、勝手に暴走して・・・・こんなんじゃ私、教導官失格だよね」

 

「そんな事ありません!」

 

なのはの言葉に、今回の騒動で一番の被害を受けたティアナが力強く否定する。

 

「なのはさんは悪くありません! 全部私が悪いんです! 私が・・・・!」

 

ティアナは溢れ出てくる涙を拭おうともせず言葉を続けようとするが中々出てこない。

すると、なのはが口を開く。

 

「ありがとう、ティアナ。でもこれは、教導官としての、皆よりほんのちょっとだけ大人のつもりの、私なりのケジメだから、ちゃんと謝らせて」

 

「・・・・はい」

 

「後ね、ティアナが考えた事、間違ってはいないんだよね」

 

そう言うなのはの手にはいつの間にかクロスミラージュが握られていた。

 

「システムリミッター、テストモードリリース」

 

[Yes]

 

「命令してみて。『モード2』って」

 

なのははそう言ってティアナにクロスミラージュを渡す。ティアナは戸惑いながらもそれを構え・・・・。

 

「・・・・モードーーーー2」

 

とクロスミラージュに命令した。

 

[Set up. Dagger Form]

 

「っ! コレは・・・・!」

 

そしてティアナは、自分のデバイスに起こった事に驚愕に目を見開いた。

ーーーークロスミラージュから、魔力で造られた剣が出現したのだ。

 

「ティアナは執務官志望だもんね。此処を出て執務官を目指すようになったら、どうしても個人戦が多くなるし将来を考えて用意はしてたんだ」

 

「っ・・・・う、うわぁぁぁぁ・・・・!!」

 

なのはの想いに、ティアナは再び涙を流した。泣きじゃくる彼女を、なのはは優しく抱きしめたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「「た・・・・ただいま~・・・・」」

 

ティアナが泣き止んで眠るのと同時に、身体も衣服がボロボロになったツナとエンマがヨロヨロと会議室に入ってきた。

 

「おぉ沢田、古里、お疲れ様だ」

 

「こっちはどうなった?」

 

「おう。もう大丈夫だぜ」

 

了平が帰りを労い、リボーンの問いかけに山本が親指で指差すと、眠っているティアナを獄寺が背負っている姿があった。

 

「なんで俺がコイツを部屋に送るんだよ・・・・!」

 

「文句言わねぇで連れてってやれよ」

 

ブーたれる獄寺にヴィータがそう言うと、愚痴りながら部屋に送って行く。

 

「10代目、お疲れ様です。ちょっとティアナ<コイツ>を置いてきます」

 

「ああ、ゆっくりしてていいよ獄寺くん」

 

獄寺が会釈して部屋を出ようとすると、手前で数秒程立ち止まると、今度こそ部屋を出ていった。

そして、獄寺と入れ替わるように部屋に新たな人物が入ってきた。

 

『っっっ!!!???』

 

その人物ーーーー雲雀恭弥を見た瞬間、なのは達六課の人間達は蛇に睨まれた蛙ように動けなくなった。

雲雀の迫力に畏れたのか、スバルは了平の背後に隠れ、エリオはキャロを自分の後ろに下がらせると、一緒に山本の近くに移動した。すぐ近くにフェイトやシグナムがいたが、どうやらFW陣は最も安全な人間の近くに移動したようだ。

 

「皆さーん、ツナさんの最後の守護者、雲雀さんですー!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雲雀に肩車してもらっているリインが嬉しそうに元気に言うが、雲雀はその場にいたなのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、シャマルを順に見据えると・・・・。

 

「ーーーーーーーーはあぁぁ・・・・」

 

『うぅっ・・・・』

 

鋭い目を薄目にし、ガッカリしたような、落胆したような、失望したようなため息を吐いた。なのは達は、そのため息の真意に気づいた。

なのはとフェイトには、

 

「(ーーーー君達、あまり成長していないね。失望したよ)」

 

なのはとフェイトの素質と才能に、雲雀なりにそれなりの期待を寄せていたが、二人から発せられる気配を感じて落胆したため息を吐き。

そしてシグナムにヴィータにシャマルには、

 

「(ーーーー君達、完全に草食動物に染まりきっているね。ガッカリだよ)」

 

経験も豊富なヴォルケンリッター達が、すっかり腑抜けてしまった事に、失望のため息を吐いた。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

なのはとフェイトとシャマルはバツが悪そうに顔を俯かせ、シグナムは少し下唇を噛んで渋面を作り、ヴィータは肩を落としながら後頭部をガシガシと掻く。

全員、悔しそうに拳をきつく握り締めていた。

 

「・・・・雲雀様、主はやてがハンバーグを作っています。参りましょう」

 

「ーーーーふん」

 

人間の姿となり、雲雀の後ろに従者のように控えていたザフィーラが言うと、雲雀はなのは達に欠片も興味が無くなったように鼻を鳴らすと、食堂で料理を作っているはやて(ついでにアインス)の元に向かった。

 

「あ、あれが、話に聞いていた雲雀恭弥、さん・・・・!」

 

「な、何か、凄そうな人ですね・・・・」

 

「こ、怖かった、です・・・・」

 

「キュル~・・・・」

 

FW陣は雲雀の雰囲気に畏縮してしまったようだ。

そんな空気の中、なのははフェイト達を見回して声を発する。

 

「ーーーー皆、これから模擬戦をしよう」

 

『っ!』

 

なのはの目には、ハッキリとした闘争心が燃え上がっていた。

 

「私達が弱いって言うのは、もう言い様のない事実なの。でも、このままじゃ終われないの!」

 

「・・・・そうだね。もう八年間も培ってきたプライドなんてコナゴナになっちゃったけど!」

 

「我々にだって意地がある!」

 

「私は戦闘系じゃないけど、それでも騎士としての矜持は持っているわ!」

 

「んじゃ! 今から手加減抜きで模擬戦だな!」

 

なのはに言われ、フェイトとシグナムとシャマルとヴィータが同意すると、リボーンがニヤリと笑みを浮かべながら声を発した。

 

「んじゃ、俺らも協力するぞ」

 

「本当!?」

 

「ああ。どうせやるならお前ら六課の身内同士ではなく、ツナ達と模擬戦をすれば良い」

 

「ツナ達と・・・・」

 

「そうだ。同格と相手と戦うより、格上の相手と本気で戦えば、少しは昔のハングリーさが戻るんじゃねえか?」

 

リボーンに提案され、フェイトは先日完膚なく敗けたエンマはやめて了平と、シグナムは山本と、ヴィータがエンマと、シャマルはクロームと模擬戦をする事になった。スバルとエリオとキャロは、ランボの子守りをしながら模擬戦見学。

そして言い出しっぺのなのはだがーーーー。

 

「何で私だけお部屋でお休みなのっ!?」

 

「なのは、お前謹慎処分中の身だって事、忘れてねえか?」

 

「にゃっ!?」

 

そう。なのはは暴走して暴れた処分として、五日間の謹慎処分を言い渡されていた。本来なら部屋を出るのもダメなのに、特別として出ていたのだ。

 

「と言う訳でなのはは後二日はお休みだからな。ツナ、面倒を見てやれ」

 

「う、うん」

 

「フェイトちゃん! 皆!」

 

「ゴメンなのは、暫くお休みしていて」

 

「自業自得だ」

 

「身から出たサビだな」

 

「医務官として、休息を推奨します」

 

「そんなぁ~!!」

 

ツナに首根っこを引かれ、ズルズルと引きずられながら、なのはは情けない声をあげるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ~! 私だけ~!!」

 

「ほぉ~らなのはちゃ~ん、ナッツで落ち着こうね~」

 

『ガゥ!』

 

「(ポフッ)ーーーーす~は~、す~は~、す~は~、す~は~・・・・」

 

自分だけ謹慎してしまって癇癪を起こしそうになるなのはに、ツナはナッツのお腹の臭いを嗅がせると、なのははナッツのお腹に顔を埋めて気分が落ち着いていった。

 

『ガォ・・・・』

 

それを見てココは、『バッカみたい・・・・』と言いたげな目で呆れていた。

 

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

背中に眠っているティアナを背負い、廊下を歩く獄寺が愚痴っていた。

同じ部屋のスバルが運べばいいだろと言ったのだが、当のスバルがまだ獄寺に攻撃されたダメージが残っていて無理だからと言われたので、獄寺は少し怪しげに見ながらもそれ以上何もいえなかった。

しかも何故かあの場にいた全員からティアナを任せると言われ、渋々と獄寺が運ぶ事になったのだ。

 

「ん・・・・あれ?」

 

「たくっ、やっと起きたかランスター」

 

「獄寺・・・・? あれ?私・・・・」

 

「わんわん泣いた後、テメエが寝ちまって、何故かオレが運ぶ事になったんだよ」

 

「そうなんだ・・・・って、えぇっ!?」

 

その瞬間、ティアナは寝ぼけていた頭が一気に覚醒し、すっとんきょうな声を上げた。

 

「ちょっ、何で獄寺がっ!?///////」

 

「知るか! 俺だって不本意なんだよ!!」

 

「って言うか、降ろしなさいよ!///////」

 

「うるせー! 今下ろしてやるから暴れんなっ! 重いんだよっ!」

 

「お、重いってなによっ! 私、スバルよりは軽いのよっ!」

 

廊下で痴話喧嘩を繰り広げる二人を見かけた隊員達が、微笑ましげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

ー雲雀sideー

 

「(モグモグ・・・・)」

 

雲雀ははやての特性ハンバーグを食べていた。傍目からは気づかないが、はやてとアインス、リインとザフィーラは、雲雀が美味しそうに食べているのが分かっていた。

 

「(ゴクン・・・・)草食動物にはなったけど、料理の腕前は上がったね」

 

「せやろ」

 

「それでザフィーラ。この時代の僕が作った巨大企業『HUHKI』に案内して貰うよ」

 

「はっ!」

 

この時代の雲雀がミッドチルダでの拠点である和装雑貨店兼警備会社『HUHKI』では、以外と重役ポジションのザフィーラならばアポ無しで入れるのだ。

 

「ありゃ雲雀さん。こっちで暮らさへんの?」

 

「・・・・群れる気はない」

 

そのあまりにも雲雀らしい返事に、はやて達は苦笑するしかなかった。




次回、エピローグ兼第二部のプロローグになります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな流れ、くる

ースカリエッティsideー

 

雲雀が『未来のミッドチルダ』に来て、Fガジェットを殲滅したのをモニタ越しに見ていたスカリエッティと黒髪の男。

 

「う~ん、やっぱり雲雀くんの遊び相手にもならなかった、か・・・・」

 

黒髪の男がそう言うと、スカリエッティはやれやれと肩を落としながら応じる。

 

「まぁ、仕方ありませんね。本気ではないとは言え、『雲の守護者』の戦闘データが入っただけでも良しとしましょう。所でーーーー“彼らは来ましたか”?」

 

スカリエッティがチラッと目配せすると、黒髪の男はフフンと楽しそうに鼻を鳴らした。

 

「うん☆ 中にはちょっと渋ってた子もいたけど、快く来てくれたよ。今は君の『娘さん達』と交流を深めていっている所さ♪」

 

「フフフ・・・・血生臭い交流になっていそうですね」

 

スカリエッティがコンソールを操作して、アジトの訓練場をモニタに表示させるとーーーーボロボロにされている『娘達』と、その子達を無傷で見下ろす“数人の男女”がいた。

 

 

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

雲雀が合流し、なのはの謹慎処分が解除された日。

ツナ達ボンゴレとエンマ、六課隊長陣にFW陣は、この時代の雲雀が設立した和雑貨企業『HUHKI』に来ていた。

突然『HUHKI』から送迎車が何台も六課にやって来て、ツナ達はそれぞれ車に乗り込むと、首都『クラナガン』で堂々と聳え立つ『HUHKI』のビルに圧巻されながら入っていき、エレベーターで一番高いフロアに到着すると。

 

『うわぁぁぁぁぁぁ・・・・!』

 

その内装に驚いた。

フロアは和風になっており、まるで故郷の日本に帰って来たかと錯覚するような、見事な屋敷であった。玄関で圧巻されている一同に、黒スーツをキッチリと着こんだザフィーラが出迎えにやって来た。

 

「いらっしゃいませ皆様。お手数ではありますが、こちらのお召し物をご着用して下さい」

 

ザフィーラが手で示すと、左右から扉が開き、左の扉には男性の和服がズラリと並べられ、右の扉には女性着物がズラリと並べられていた。

 

「ザフィーラ、着替えなくちゃアカンの?」

 

「申し訳ありませんが主はやて。『郷に入れば郷に従え』と言う言葉があります。ここは雲雀様の居城。雲雀のルールにはある程度は従って貰います」

 

「ザフィーラ。時々、いや、毎回思うのだが・・・・」

 

「お前ってはやての守護獣なのか? 雲雀の従者なのか?」

 

「深く突っ込まないように」

 

シグナムとヴィータが訝しそうに眼を半眼にするが、ザフィーラは何処吹く風と言わんばかりに流した。

仕方ないので男性陣と女性陣に別れて着替える。

 

「よっと、わわわ・・・・!」

 

「き、着づらい・・・・!」

 

「ちゃっちゃと着替えろヘボコンビ」

 

「あの、武兄さん、帯の結び方ってこうですか?」

 

「ああ。でもちょっと上にいってんな」

 

「やはり日本人はこの衣服が極限にしっくりくるぞ!」

 

「たくっ、雲雀の野郎。こんな大会社をミッドチルダの拠点にしてやがったとは!」

 

「ぐぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ!」

 

「うるせーぞアホ牛!」

 

ツナとエンマは和服に着替えるのに手間取りリボーンに怒られ、エリオは山本に手を借りながら初めて着る和服に戸惑い、了平は和服を着崩しをし、獄寺はボスのツナに黙ってミッドチルダに拠点を作った雲雀に不満を漏らしながら、騒ぐランボに怒鳴っていた。

 

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「さぁさぁ皆! 私とシャマルとリインがデザインした着物や! 着替えてや! 髪型もセットしたるわ!」

 

「あ、皆、和装下着もあるからそっちにも着替えてね! ティアナちゃんにスバルちゃんにキャロちゃんに似合うのは」

 

「はやてちゃんとシャマルさん、イキイキしてるの・・・・」

 

「ちょっと、恐い感じがするね・・・・」

 

「前から主はお前達にも和服を着てほしそうだったからな・・・・」

 

「私達なんて毎度のようにモデル役をされたぞ・・・・」

 

「おかげで着替えるのが手慣れちまった・・・・」

 

なのはとフェイトははやてやシャマルから渡された着物を着ようとするが、慣れない着物に手間取り、アインスとシグナムが手伝っていた。

そして遂に、おっぱいソムリエであるはやての魔の手が、クロームとFW陣の二人に伸びた。

 

「うわぉっ! クロームさん、ええサイズに実ったなぁ!」

 

「は、はやてちゃん・・・・!//////」

 

「おおっ! ティアナは中々のサイズやなぁ! ウェストが細いから余計に大きく見えるわぁ!」

 

「ちょっ! はやて部隊長!//////」

 

「スバルも凄いわぁ! 15歳やのにもう私となのはちゃんの中間サイズやん!」

 

「や、やめて下さい~!//////」

 

「あわわ・・・・//////」

 

「キャロ。あんま見んじゃねえ」

 

キャロがセクハラを見て顔を赤らめるが、着替え終えたヴィータが眼を塞いだ。

 

「はやて。キャロにはセクハラしないでよ・・・・」

 

「何言うとんねんフェイトちゃん。子供のキャロにそないな事やったら、私完全に犯罪者やん」

 

『私達にしても犯罪だからね(ですからね)っ!!』

 

はやてが憮然とした顔で言うが、キャロとヴィータ以外の女性陣が血管浮かばせて怒鳴った。

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナ達がそれぞれの炎の色(エリオは魔力光)の着物を着て待っていると、女性陣が着物姿で現れた。

クロームは藍色に蓮の花の柄の着物。なのはは桃色の着物に桜の柄。フェイトは黒い着物に白い桔梗。はやては白い着物に朝顔。シグナムは紫の着物に鶴。シャマルは若草色の着物に扇子面。アインスははやてと同じ白に雪の結晶。ヴィータは赤い着物に松竹梅。ティアナは橙色の着物に蝶。スバルは青い着物に藤の花。キャロはなのはと同じ桃色の着物に鞠。

何処かの日本華族の令嬢と言われても納得する程の美しい姿であった。管理局の彼女達のファンならば、泣いて喜ぶ程だろう。

 

「み、皆、綺麗です・・・・/////」

 

顔を赤くするエリオだが、ツナ達はにこやかに笑っていた。

 

「うん。なのはちゃん達、良く似合ってるね」

 

「綺麗だよ」

 

「お姫様の集団だな!」

 

「極限に馬子にも衣装ではないか!」

 

「このボクシングバカ! それは褒め言葉じゃねえんだよ!」

 

『あ、あれ・・・・?』

 

何故か、ツナ達の反応はまるでーーーー“晴れ着を着た妹を見るような視線だった”。エリオのような可愛い反応を期待していたなのは達が首を傾げていると、黒い着物を着たリボーンが近づき、なのは達だけに聞こえるように呟く。

 

「ーーーーこの間の一件からツナ達はお前らの事を、“身体が大きくなっただけで中身は子供の頃のままの『妹分達』”、と言う印象が付いちまったようだな。もう『女』として見られなくなったかもな」

 

『ぐはぁっ!!』

 

なのは達はリボーンの言葉に吐血したように息を吐くと、そのまま胸を押さえて蹲っていた。

「どうしたの?」とツナ達が近づこうとするが、リボーンとヴィータが、「気にするな」と言って、ザフィーラに案内をされ、なのは達はトボトボと足取り重く付いていった。部屋を幾つか通りすぎると、紫色の雲が描かれた襖の前でザフィーラが正座すると、声を発した。

 

「雲雀様。皆様をお連れしました」

 

「ーーーー入って良い」

 

「はっ」

 

まるで任侠映画のワンシーンのようなやり取りをすると、ザフィーラが襖を開るとソコには大広間が広がっており、

 

「・・・・・・・・」

 

「雲雀さ~ん♪」

 

その奥で黒の着物を着て本を読んでいる雲雀の膝に座りながら、アインスと同じ着物を着たリインが甘えていた。

 

「・・・・ホントに雲雀の野郎はリインには甘いっすよね」

 

半ば呆れて呟く獄寺に、全員が苦笑した。

そして改めて、全員が大広間に座り、ザフィーラはリインを雲雀から離れさせると、雲雀の後方に控えるように座る。

 

「それでな雲雀さん、私ら六課に協力「イヤだ」ーーーーと言うと思っとったわ」

 

協力をして欲しいと言う前に、即座に断った雲雀にため息を吐いた。

まぁはやて自身、馴れ合い大っ嫌いな雲雀が協力してくれるなんて欠片も期待していなかったようだ。

 

「僕は死んでも君達と群れたり、一緒に戦ったりするつもりはないーーーー強いからね」

 

雲雀がそれだけ言うと、これ以上話す事はないと言わんばかりに黙った。

 

「なんか、『強いから』の一言だけなのに、あの人が言うと不思議と納得できるわね・・・・」

 

「謎に説得力があるよね・・・・」

 

初対面のティアナとスバルですら雲雀の言葉にそう感じ、ヒソヒソとそう話していると、雲雀はザフィーラに目配せをした。

 

「ーーーーザフィーラ」

 

「はっ」

 

「『アレ』を」

 

「承知しました」

 

雲雀の後方に控えていたザフィーラが中座して部屋から出て、少ししてから戻ってくると、その両手に大きな装置を持っていた。

 

「雲雀さん、これは?」

 

「設置型の転送装置。この基地にあるから、君達の隊舎の方に設置しておくように」

 

「これがアレば、雲雀様はいつでも六課隊舎に行けるので」

 

それを聞いて、ツナ達(リボーン以外)は。

 

『(雲雀(さん)・・・・! 群れる気はないって言ってたけど、やっぱり皆の事を心配して・・・・)』

 

「小動物達を噛み殺したくなったり、ハンバーグが食べたくなったらソッチに行くから設置しておいてよ」

 

『(ガクッ!)』

 

「それでこその雲雀だな」

 

雲雀の言葉に、リボーンとザフィーラとリイン以外がズッコケた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー黒い男sideー

 

「ふぅ~ん。やっと会えたねぇ」

 

黒い男はスカリエッティから、『その存在』のいる部屋に入る事を許可され、ソコに入るとーーーー“最早スカリエッティから見放されたも同然”の『存在』を見つけて話しかける。

 

「もうスカリエッティくんは君に興味がないからねぇ。このまま『もう一つの未来の世界』のように君が動くのも、少し味気ないなぁ」

 

バイオ液に満たされた大きなカプセルに体育座りで眠っているように浮遊している『存在』に、男は話を続ける。

『その存在』が男の言葉が聞こえているかは兎も角、男はコンソールを操作すると、カプセルの中の『存在』に、ある情報を刷り込ませる。

 

「見えるかい? その男の子がーーーー“君のパパになってくれかもよ”?」

 

『ーーーー』

 

男がそう言うと、『その存在』は、口を動かして男の言葉を復唱したようであった。

そうーーーー沢田綱吉の映像を見て。

 

「フフフ・・・・これから、面白くなるかもねぇ」

 

黒い男は、片手の手の平に乗せた“二枚のメダル”を弄び、もう片方の手を懐に入れてから、“赤いスイッチ”を取り出した。

 

「さぁ。もうすぐ君も出会えるよ。“ママ達”とーーーー“パパ”達とね・・・・『聖王』ちゃん♪」

 

カプセルの中にいる『存在』ーーーー否、『少女』が、口から小さく気泡をポコリと吹いた。




遂に次回で第二部が始まります! 私の『夢』が一つ叶います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Striker編 第二部
運命の休日、くるⅠ


遂に新章突入!


ーーーーあのなのはの暴走から数週間が経過していった。

雲雀は相も変わらず未来の自分が創った会社のプライベートフロアでのんびり過ごしていたり、なのは達隊長陣も、自分の未熟さを理解して、時々ツナ達とガチの模擬戦(リミッター解除で)を行ったりしていた。無論、リミッター付きよりちょっとマシになったレベルの戦い様で、勝敗は敗け続きだが。

そしてそんな中、FW陣はさらなるレベルアップをしていった。

先ずはティアナ。周りへのコンプレックスを解消したせいか、以前よりも視野が広くなって周りに目を向けられるようになり、仲間達との連携と言った戦略を考えたり、リボーンから射撃を、はやてから戦術の勉強を。管理局基準ではトップレベルの幻術使いであるクロームから師事を受け。さらには山本や了平から近接戦闘等を学び、自分の戦闘スタイルの幅を広げていった。

スバルも自分の戦闘スタイルが似ている了平から、近接戦を極めようと努力していた。だがまあ、了平の常時死ぬ気な戦闘訓練にボロボロになるのも常だが。人より頑丈にできてるスバルなら問題ないだろう。

キャロもそんな周りに感化されたのか、以前よりも体力作りや自分の力を引き出す訓練等を行うようになっていた。

そしてFW陣で誰よりも成長しているのは、エリオであろう。明確な目標となる『兄貴分』達の背中を見て、今まで以上に訓練に励み、その姿を雲雀に目撃されてしまったのが運の尽きなのか幸運なのか、雲雀はエリオの素質と才能を見抜き、模擬戦の相手をするようになった。勿論、エンマとザフィーラが見張り役をしている。さもなくば、エリオの保護者である過保護なフェイトが騒ぐからだ。

さらに、ツナ達はFW陣に、自分達が〈ネオ・ボンゴレファミリー〉と〈シモンファミリー〉と言う、地球のマフィア、つまり犯罪組織である事を知ったが、それよりも寧ろ、なのは達の故郷には、管理局の魔導師を遥かに凌ぐ強者達がいる事に驚いていた。

そんなある日。そして、この日ーーーー神様の悪戯か、悪魔の導きか、ツナはある『少女』と出会うのであった。

 

 

 

ーツナsideー

 

『休暇?』

 

食堂で昼食を取っていたツナ達ボンゴレファミリーとエンマは、はやてに告げられた言葉に首を傾げる。

 

「せや。今朝の訓練で、ティアナ達が第2段階の見極めテストに合格してな、今日一日お休みにしたんや。そこで、ツナさん達にも色々お世話になってるから、皆さんにもお休みをあげようと思うたんや」

 

『おおっ!』

 

「街にでも出かけて、遊んで来てエエよ」

 

『やったぁっ!!』

 

この『八年後のミッドチルダ』に来て以降、任務以外では機動六課の隊舎に缶詰めにされていたツナ達は、久しぶりに外に行けるのを喜んでいた。

が、しかし。

 

《・・・・当日は、首都防衛隊の代表レジアス・ゲイズ中将による管理局の防衛思想に関しての表明も行われました》

 

『・・・・?』

 

食堂のモニターに映っているニュースキャスターの言葉を聞いて、その場にいた全員がモニターを見た。

そこには、一人の壮年の男性がなにやら力説している場面が映し出されており。

 

《魔法と技術の進歩と進化は素晴らしいものである。が、しかし! それがゆえに我々を襲う危機や災害も十年前とは比べものにならないほどに危険度を増している!! 兵器運用の強化は進化する世界の平和を守るためである!!》

 

「誰だ? この厳ついオッサン?」

 

獄寺の疑問になのはが答える。

 

「彼は『レジアス・ゲイズ中将』。〈時空管理局地上本部〉の『総司令』だよ」

 

「総司令? そりゃまた随分と偉い人なんだな」

 

「まぁな。でもこのオッサンはまだこんな事を言ってるよ」

 

「レジアス中将は古くからの武統派だからな」

 

山本の言葉に、ヴィータはスープを飲みながら呆れてり、シグナムがレジアス中将を補足する。

 

「だが一理はあるぞ。この間の『新型ガジェット』が良い例だ。ヴィータやシグナムを圧倒するような奴らが現れるからな」

 

リボーンがエスプレッソを飲みながらそう言った。確かに、以前現れた『新型』は、リミッター付きとは言え副隊長達を倒したのだから。クロームはレジアスの隣にいる三人の老人達について尋ねる。

 

「あの中将さんの隣にいる、三人のおじいさんとおばあさんは誰なの?」

 

「右から『ミゼット提督』、『キール元帥』、『フィリス相談役』よ。『伝説の三提督』って言って、管理局の黎明期から今の形まで整えた偉大な方なんだよ」

 

それをフェイトが説明する。

 

「ふーん。あれ、と言う事は、あの人達は〈トゥリニセッテ〉の事とか知ってるのかな?」

 

「リンディ以上の権限を持っているからな。当然、知っているだろうな」

 

エンマの疑問に、リボーンが答えた。〈時空管理局〉にとって、触れてはならない禁忌のロストロギア〈トゥリニセッテ〉。三提督のような上層部なら知っているだろう。

 

「でもこうして見ると、普通の老人会だな」

 

「極限にそうだな」

 

そう言うヴィータと了平をフェイトが注意する。

 

「ダメだよヴィータ、了平、偉大な方たちなんだよ」

 

「おお、すまん」

 

「ま、あたしは好きだぞ。ばーちゃん達」

 

ヴィータがそう言うと、全員の視線が集中する。

 

「防衛任務を受け持った事があってな。ミゼット提督は主はやてやヴィータ達がお気に入りのようだ」

 

「あぁ、そっか」

 

「ヴィータって、ゲートボールのおじいさんやおばあさん達のアイドルだったね」

 

シグナムの言葉に全員が納得した。海鳴市でヴィータはゲートボールをしていた老人達と遊んでおり、すっかりアイドル扱いされていたのだ。

そして山本が思い出したように口を開いた。

 

「そう言えば、街にはどうやって行けばいいんだ?」

 

「あ、そっか。ツナさん達はこの辺の地理はほとんど知らないんだよね?」

 

「一応ここから街までは一本道やけど、歩きやと時間掛かるしなぁ・・・・ツナさん達、バイクとかは?」

 

「心配ねぇ。訓練済みだ」

 

「あっ、僕はバイクの運転できないよ・・・・」

 

ツナ達ボンゴレ(クロームとランボを除く)は『未来での戦い』でバイクの訓練をしていたが、エンマはまだしていなかった。最近、プレシアがファミリー全員用にバイクや車のシミュレーションを作っていた気がしていた。

 

「でも、俺達全員分のバイクって、そんな簡単にーーーー」

 

「ーーーー失礼します。10代目」

 

食堂に人間形態、しかも黒スーツのザフィーラが入ってきた。黒スーツと言う事は、『HUHKI』の重役としてやって来たと言う事を意味しているのだが。

 

「雲雀様から、皆様宛に荷物が来ております」

 

『???』

 

首を傾げる一同をザフィーラが案内すると、六課隊舎前に、運送用トラックが鎮座しており、荷台の側面が開くとソコには。

ーーーーそれぞれの死ぬ気の炎のカラーリングがされていた、〈ミッドチルダ〉製のバイクであった。

 

「ザフィーラ、これって・・・・?」

 

「この時代の10代目が、もしもの時に備えて、雲雀様に預けていたバイクです。雲雀様が、『邪魔だから返してこい』、と言ったので届けに来たようです」

 

「えっ? 俺が?」

 

「おぉおおおおおおおっ! ありがとうございます10代目! 俺の為にこんな素晴らしい贈り物を用意していただいて!」

 

「い、いや、獄寺くん。用意したのは『この時代の俺』だから・・・・!」

 

ザフィーラの言葉に、ツナが目をパチクリさせるが、獄寺は感激したように目を輝かせた。

そして、リボーンがカラーリング的にツナ用のバイクを点検すると。

 

「・・・・・・・・・・・・成る程な。見た目こそ〈ミッドチルダ〉のバイクだが、中身は『死ぬ気の炎』で動くボンゴレ特性バイクだな」

 

「はい。『入江正一』氏と『ジャンニーニ』氏と『スパナ』氏が改良した物です」

 

「フム。ツナ、少し吹かしてみろ」

 

「う、うん・・・・」

 

ツナが自分のバイクに近づくと、ザフィーラから『エネルギー補給用リング』を受け取り、『大空の死ぬ気の炎』を灯し、バイクの給油口になっている窪みにリングを押し付けると、バイクの燃料メーターが一気に『FULL』になった。

 

「あれ? あんまり注入していないのにもう満タン?」

 

「改良されておりますからね。少しの炎で満タンにすれば、ざっと一ヶ月近くは大丈夫との事です」

 

「流石は正一達だな」

 

ツナがバイクを吹かすと、以前は腹に響く程の凄まじい爆音が鳴っていたが、このバイクからは静かなエンジン音が鳴っていた。

 

「音も静かだ。でもさ、俺達免許がーーーー」

 

「あぁ、免許等もこの時代の雲雀様が準備しておいたそうです。交通ルールも地球とそんなに変わらないのでご安心を」

 

「あのザフィーラ、それ偽造ーーーー」

 

「細かい事は言いっこなしやで、フェイトちゃん」

 

汗を一筋垂らすフェイトにはやてが苦笑しながら止めた。雲雀と付き合うようになってから、はやても結構色々と『悪<ワル>』を覚えたようだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の休日、くるⅡ

やっと100話に到達した!


ー獄寺sideー

 

ツナとリボーンが雲雀の礼を言う為に、はやてと一緒にプライベート通信をする為に部隊長室に行き、なのは達もそれぞれ隊舎の中に戻り、山本と了平、そして獄寺は、全員分のバイクをトラックから卸して、六課の入り口前で点検と調整をしていると。

 

「あ! 了平さんに武に隼人だ!」

 

「よお! スバルにティアじゃねぇか」

 

スバルとティアナの二人にバッタリと出会った。

 

「三人もお出かけ?」

 

「おお。バイクの微調整を終えてから、コイツの試運転も含めて、クラナガンに行こうと思ってな」

 

獄寺がそう言うと、スバルは突然なにかを思いついた表情になり、口を開いた。

 

「それじゃあ、私達と一緒に行こうよ!」

 

「「「え?」」」

 

スバルの言葉に、全員が呆気に取られた。

 

「私達ならドコに何があるか知ってるし、何も分からないで回るよりか良いでしょ?」

 

「ふぅん、スバルにしては良い案じゃないの」

 

「酷いよティア~」

 

痛烈な相棒の言葉に、スバルが情けない顔になる。

 

「俺は全然イイぜ!」

 

「では、お言葉に甘えるとするか!」

 

「しゃあねえなぁ」

 

そう言って山本と良平と獄寺は頷きあう。

 

「良かったねティア~。隼人とお出かけが出来て」

 

「なっ!? なに言ってんのよ!?//////」

 

「あれティア~顔が赤いよ~?」

 

「うう・・・・うっさいバカスバル! アンタだって! 良平とお出かけできるでしょう!?」

 

「えっ!? あぁ、まぁ、ね//////」 

 

ティアナはスバルに怒鳴るが、当のスバルも顔をほんのり赤くした。

 

「「「???」」」 

 

が、そのやり取りを見ていた三人は、何やってんだコイツら? と、言わんばかりに首を傾げていた。

ティアナが獄寺のバイクの後ろに、スバルが良平の後ろに座りながら、バイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

ーフェイトsideー

 

そして、六課隊舎では、

 

「ハンカチ持ったね。IDカード忘れてない?」

 

「えっと・・・・大丈夫です」

 

これから街へ出かけるエリオに、フェイトが世話を焼いていた。

 

「あ、お小遣いは足りてる? もし足りなくなると大変だから・・・・」

 

「あの、フェイトさん! その、僕もちゃんとお給料をいただいてますから」

 

エリオはやや過保護気味なフェイトの言葉を遮って話す。

 

「あ・・・・そっか」

 

「大丈夫です! ありがとうございます!」

 

「とりあえず、エリオは男の子だし・・・・キャロをちゃんとエスコートしてあげるんだよ?」

 

「あ、はい!」

 

エリオの髪を撫でながら話すフェイトに、しっかり返事をするエリオ。 すると、そこへ支度を終えたキャロがエンマと手を繋いで走ってくる。

 

「ごめんなさい! お待たせしました!」

 

「どうかなフェイトちゃん。キャロちゃん可愛いでしょ?」

 

「あ! うん、キャロいいね。可愛いよ。よく似合ってる」

 

「ありがとうございます!」

 

白とピンクを基調にした、私服に身を包んだキャロをフェイトが褒める。

 

「サイズは・・・・大丈夫?」

 

「はい! すっごくピッタリです!」

 

フェイトの言葉に、その場で一回転して見せるキャロ。  

 

「うん・・・・よかった」

 

その後、子供二人は出かけるので、フェイトを見送る為に隊舎前へとやって来ると、そこでバイクの調整を終えた山本の他に、ツナやリボーンやなのはと出会った。

 

「「ツナ兄ぃ!」」

 

「あっ、エリオとキャロも出掛けるの?」

 

「「うん! 行ってきます!」」

 

すっかり兄として慕っているツナの言葉に、エリオとキャロは声を揃えて元気に答える。

 

「うん、気を付けろよ」

 

「エリオ。キャロをちゃんとエスコートしろよ」

 

「二人とも、車とかに気をつけてね」

 

「楽しんでこいよ」

 

「何かあったら連絡してね」

 

「あんまり遅くならない内に帰るんだよ? 夜の街は危ないからね・・・・」

 

「「はい!」」

 

笑顔で見送るツナ達と、やはり心配そうな様子のフェイト。 そしてエリオとキャロは、元気よく返事をして出発していった。

二人の姿が見えなくなるまで見送ると、今度はシグナムとヴィータがやって来た。

 

「シグナムにヴィータ。どうしたの?」

 

「外回りですか?」

 

「ああ、『108部隊』と『聖王教会に』な」

 

「『ナカジマ三佐』が合同捜査本部を作ってくれるんだってさ、その辺の打ち合わせ」

 

エンマとフェイトの質問にシグナムが答え、ヴィータが補足する。

 

「ヴィータちゃんも?」

 

捜査担当でないヴィータも、外回りに行く事を疑問に思ってなのはが訪ねる。

 

「私は向こうの魔道師の戦技指導。全く、教官資格なんて取るもんじゃねぇなぁ」

 

「にゃははは」

 

溜息をつきながらなのはに少しジト目を向けて話すヴィータに、なのはは苦笑いを浮かべる。

 

「捜査周りの事なら、私も行った方が・・・・」

 

「準備はこちらの仕事だ。お前は指揮官で、私はお前の副官なんだぞ」

 

フェイトの言葉に、シグナムは指揮官と副官の部分を強調して答える。

 

「う・・・・ありがとうございます・・・・で、いいんでしょうか?」

 

「・・・・好きにしろ」

 

申し訳なさそうに話すフェイトにシグナムは笑いながら答え、出口の方へ向って歩き始めたのだった。

 

「んじゃ行ってくんな」

 

「ヴィータ! シグナム! 気をつけてね!」

 

と、ソコでヴィータは何を思いついたのか、ツナ達に向けて首を向けてニヤニヤと笑みを浮かべつつ声を張り上げた。

 

「ーーーーあ、そうだ。なのは! フェイト! 偶にはお前らも休暇を楽しめよ!」

 

「えっ?」

 

「勿論だよ?」

 

「それならツナ! なのはを連れてクラナガンに行ってくれよ! ほっとくとまた休まないで仕事するからさ、ソコのワーカーホリックは!」

 

「にゃっ!? ヴィータちゃん!/////」

 

「エンマ! お前もちょっとクラナガンに行ってこいよ! 足ならフェイトの車でも使ってやれ!」

 

「ちょっ! ヴィータ!/////」

 

「じゃぁなぁ〜!」

 

顔を真っ赤にしたなのはとフェイトを無視して、ヴィータはヒラヒラと手を振りながら去っていった。

 

「(ナイスだぞ、ヴィータ)」

 

あのなのはの暴走事件から、なのはとフェイトに対するツナとエンマの態度が、完全に『身体が大きくなった妹』に接するようになり、このまま何の進展も無しになりそうだったので、ヴィータの助け舟はありがたかった。

 

「ほれお前ら、モタモタしてねえで早く動け」

 

リボーンがツナとエンマの尻を蹴り、なのはとフェイトの背中を押して、四人はそれぞれに動き出した。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナは獄寺達とは後で合流する事を伝え、バイクの準備をしていた。

 

「つ、ツナさん」

 

「あっ、なのはちゃん」

 

なのははバイクに乗りやすいようにジーパンにジャケットと、ちょっと露出の高いが、かっこいい系の服で現れた。

 

「どう、かな?」

 

「うん。似合ってるよ。ーーーーじゃ行こうか。二人乗りは経験無いから、快適な運転じゃないと思うけど」

 

「は、はい//////」

 

バイクに跨ったツナの後ろに座るなのはが、思いっきりツナに抱きつくと、フニュン♥と、すっかり見事に実ったなのはの胸部がツナの背中に押し付けられ形を変えた。

 

「んなっ!? な、なのはちゃん! ち、ちょっと離れて掴まってくれない!?/////」

 

「し、しっかり掴まっていないと、危ないと思うの!/////」

 

「う、うん! そ、そうだね!/////(なのはちゃんは妹分! なのはちゃんは妹さん! なのはちゃんは妹分!)」

 

ツナは内心、必死に自制心をフル活動させ、なのはも胸の動悸でいっぱいいっぱいになりそうなのを必死に隠しながら、二人は首都クラナガンへと向かった。

 

 

 

 

 

ーエンマsideー

 

「(ドキドキドキドキドキドキドキ!)//////」

 

そしてこちら、フェイトの車の助手席に座るエンマが、運転するフェイトにドキドキしながら頬を赤くした。

フェイトの格好は、露出の多いレザースーツで、スラリとした美脚を晒し、キュッとしたウェストも出て、豊かに実った胸元を強調しており、アーデルハイト並のグラマラスな肢体を晒していた。

 

「え、エンマ!/////」

 

「な、何?」

 

エンマと同じくらい顔を真っ赤にしているフェイトが、震える声で問いかけ、エンマも顔を赤くしたまま答える。

 

「き、今日は、ドコに行こうかな?」

 

「そ、そうだね、ちょっと服とかの買い置きとか、しておきたいなぁ!」

 

「う、うん! そうだね!」

 

本当は服の感想を聞きたいフェイトだが、フェイト自身、自分の過激格好が恥ずかしいのか、とても聞けなかった。『真モード』になればこれ以上に恥ずかしい格好をしているのに。

 

「え、エンマ・・・・」

 

「な、何?」

 

「わ、私はもう、大人なんだよ!」

 

「(た、確かに、身体は立派な大人だ・・・・!/////)」

 

昔ジュリーが、フェイトは将来とんでもない美人になる、と言っていたが、今なら同意できた。

 

 

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

「はてさて、ツナさんとエンマさんに、なのはちゃんとフェイトちゃんが、『大人の女の子』って刷り込みができるやろうかリボ子ちゃん?」

 

「所詮男なんて単純な生き物よ。ちょっとお色気で攻めれば、イチコロなのよ。ナメないで」

 

六課食堂で、なのはとフェイトの格好とアピールのアドバイスをしたはやてとリボーン、否、リボ子がニヤニヤと笑っていた。

なのはとフェイトは完全にツナとエンマに惚れているが、当の相手は二人を『妹』として認識してしまっている。これを覆す為の作戦だったのだ。

 

「ツナもエンマも、お兄ちゃんぶっていても中身は思春期のお子ちゃまなのよ。女の色気に弱いのよ」

 

「なのはちゃんもフェイトちゃんも、大人の女ぶっていても、中身は恋愛経験ゼロで恋愛に対する思考は中学生、嫌、下手したら小学生レベルやからなぁ」

 

リボ子とはやては、世話の焼ける教え子と親友達に、大きなため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

一方その頃、クラナガンのとあるトンネル内では、交通事故が起こっており、ソコに車で時空管理局の制服を着た、なのは達と同い年くらいの青い長髪をした女性と、その女性より少し年下の女の子か男の子なのか分からない、中性的な子供が下りてきた。

 

「陸士108部隊、『ギンガ・ナカジマ陸曹』です。現場検証のお手伝いに参りました。こちらの少年は、我が部隊で保護している少年で、私の助手のようなものです」

 

と、敬礼をしながら言う女性『ギンガ・ナカジマ』が、自分の後方に控えている少年の事も紹介すると、事故現場の状況を詳しく聞く。

 

「横転事故と聞きましたが・・・・?」

 

「ええ。ただ、事故の状況がどうも奇妙でして」

 

「運転手も混乱してるんですが、どうも何かに攻撃を受けて、荷物が勝手に爆発した、と言うんですが」

 

「運んでいた荷物は缶詰やペットボトル。爆発するようなモノじゃないですね」

 

「それと、下の方に妙な遺留品がありまして」

 

そう言って、ギンガ達が連れてこられた先にあったのは、ガジェットの残骸と中身の無い生体ポッドだった。

 

「気になるで御座るな、ギンガ殿」

 

「そうねーーーー『バジル』くん」

 

ギンガは自分と一緒にいる少年に向かってそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

ースカリエッティsideー

 

所変わって、スカリエッティの研究所では。

 

《レリック反応を追跡していたドローンⅠ型6機、すべて破壊されました》

 

「ほぉ。破壊したのは局の魔道士か、それとも『当たり』を引いたか」

 

《確定は出来ませんが、どうやら後者の様です》

 

「ふふ、これも"歴史通りか"。・・・・早速追跡を掛けるとしよう」

 

そんか会話をする二人に、一人の少女が歩み寄る。 スバルと似た貌と容姿をしているが、目つきが鋭く、髪の色が赤いと違いがあるが。

その少女は、指に嵌めたリングを眼前に持ち上げると、リングからーーーー『嵐の死ぬ気の炎』が放出された。

 

「ねぇドクター。それならあたしも出たいんだけど」

 

「『ノーヴェ』、君か」

 

《ダメよノーヴェ。あなたの武装も装備もまだ調整中なんだし》

 

「今回出てきたのが『当たり』なら、自分の目で見てみたい」

 

「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、此処にやって来る事になるわけだがね、ふふっ。まぁ、落ち着いて待っていて欲しいな。いいかい?」

 

「分かった・・・・」

 

ノーヴェと呼ばれる少女が、炎を消して引き下がる。

 

「それではーーーー」

 

「待てスカリエッティ。私に行かせろ」

 

「・・・・・・・・」

 

ノーヴェの前に出てきながら、馬上ムチをピシッピシッと鳴らしながら、ニンマリとした笑みを浮かべる一人の男を見て、スカリエッティは僅かに顔を顰めた。

 

「・・・・良いが。ルーテシアのサポートだけにしておいてくれよーーーー『グロ・キシニア』」

 

 

 

 

 

 

ースバルsideー

 

ツナがなのはと、エンマがフェイトと買い物に出掛けて二時間が経過した頃、

 

「う~ん・・・・次は何処に行こうかな~」

 

スバルとティアナ、獄寺と山本と了平は、アイスを食べたりスポーツショップ等と、クラナガンの街中を遊び歩いていおり、次に行く場所を話し合っていた。

すると、

 

ーーーーピピピ、ピピピ。

 

突然、スバルとティアナのデバイスから電子音が鳴り響いた。

 

「あれ? キャロから全体通信?」

 

「なんだろう?」

 

「「「???」」」

 

獄寺達も首を傾げながらも、二人はとりあえず通信を聴くことにした。

 

《こちらライトニング4。緊急事態につき、現場状況を報告します。『サードアベニューF-32』の路地裏にてレリックと思 おぼ しきケースを発見。ケースを持っていたらしい小さな女の子が一人!》

 

《女の子は意識不明です!》

 

『っ!!』

 

それを聞いた全員の顔付きが仕事モードへと変わるも同時に、なのはとフェイト、はやてからも通信が入った。

 

《みんな、お休みは一旦中断。すぐにエリオ達の所に向かって』》

 

《救急の手配はこっちでする。2人はそのままその子達とケースの保護。応急手当をしてあげて』》

 

《全員待機態勢。デッキを外してる子達は配置に戻ってな!安全確実に保護するんよ。レリックもその子もや》

 

『了解!/おう!』

 

こうして、楽しかった休日は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

エリオとキャロから緊急連絡を受けた一同は、『サードアベニューF-32』の路地裏に来ていた。

 

「エリオ! キャロ!」

 

スバルの呼び声に反応した二人は顔をそちらに向ける。

 

「皆さん!」

 

「連絡にあったのはこの娘か」

 

そう言って山本はしゃがみ込み、金髪の女の子の容態を見ると、獄寺と了平も覗いてくる。

 

「極限にボロボロではないか・・・・」

 

「後、若干服や髪が湿ってやがるな」

 

「地下水路を通って、かなり長い距離を歩いたんだと思います」

 

「まだこんなにちっちゃいのに・・・・」

 

「ケースの封印処理は?」

 

「キャロがしてくれました。ガジェットが見つかる心配はないと思います。それから、これ・・・・」

 

そう言ってエリオが掲げたケースには鎖が付いており、その先には他のケースが締められていたと思われる輪が出来ていた。

 

「こりゃあ、ケースがもう一つあったと見て、間違いないねえな」

 

「今ロングアーチに調べてもらっています」

 

「ツナとエンマ、リボーンと隊長達、シャマル先生とリィン曹長がこっちに向かってくれてるそうだし、とりあえず現状を確保しつつ、周辺警戒ね」

 

『うん/はい/おう!』

 

ティアナの指示に全員が返事を返した。

 

 

 

ーツナsideー

 

それから一時間後。駆けつけたシャマルが、少女の容態を診る。

 

「うん、バイタルは安定しているし、顔色も正常ね。心配無いと思いわ」

 

「よかった~」

 

シャマルとの診断結果に全員が胸を撫で下ろした。   

 

「ごめんね、みんな。お休みの最中だったのに」

 

「あ、いえ」

 

「平気です」   

 

「ケースと女の子はこのままヘリで搬送するね」

 

「ヘリにはツナとエンマが護衛に。他の奴らは現場調査だぞ」

 

『はい/おう!』

 

なのはとリボーンの指示に全員が返事を返すと、全員はすぐに行動を開始した。

 

「さて、皆! 短い休みは堪能したわね!」

 

「お仕事モードに切り替えてしっかり気合いを入れていこう!」

 

『了解!』

 

そう言うと、ティアナ達はバリアジャケットを身に纏った。

そして地下水道に降り立ち、レリックの捜索を開始した。

 

「ーーーー所でなのはにフェイト。お前ら何だそのエロい格好は?」

 

「「聞かないで下さい・・・・/////」」

 

真っ赤になった顔を両手で隠しながら、なのはとフェイトは身体全体を背けた。

 

「ツナ。その子をヘリに連れて行ってやれ」

 

「う、うん」

 

ツナが女の子をお姫様抱っこで持ち上げた瞬間、

 

「ーーーーう・・・・うぅ・・・・」

 

女の子がうっすらと目を開けた。

 

「(あっ、この頃、左右の目が・・・・)」

 

その両の瞳は緑と赤と左右の色が違うオッドアイとなっていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・パ、パ・・・・」

 

それだけ言うと、女の子は再び目を閉じた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何故だろうか、ツナは自分の事をパパと呼ぶ女の子に、奇妙な使命感が生まれた。

ーーーーこの子を、守らなければならないと。

 




漸く、あの子とツナが出会えました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の休日、くるⅢ

あけまして、おめでとうございます!


ーなのはsideー

 

《こちらロングアーチ。なのは隊長! フェイト隊長! ソチラに向かって新型ガジェットが旧型ガジェットと共に大軍で迫っています!》

 

保護した女の子を連れて、ツナとエンマとなのはとフェイトが乗るヘリに、旧型と新型ガジェットが迫っていると報告を受けた。

 

「フェイトちゃん!」

 

「うん! ツナ。エンマ。ガジェットは私達の任せて!」

 

「「(コクン)」」

 

「「セットアップ!」」

 

ツナとエンマが頷くと、二人はBJを纏うと、ヘリのハッチが開くと、空に飛び出した。

そして飛行していると、空を覆い尽くさんばりの大量のガジェットがいた。その中に、ヴィータ達の記録で見た機体に両手を装備した新型ガジェットが黄色い焔を纏うと、先陣を切って飛び出した。

 

『ーーーー!!』

 

「「なっ!?」」

 

新型ガジェットは、フェイトの『ソニックムーブ』並のスピードで接近すると、赤いレーザーを放った。

 

「『プロテクション』!」

 

「『ソニックムーブ』!」

 

フェイトはレーザーを回避し、なのはがレーザーを防ごうとするが。

 

[マスター! 駄目です! 破られます! 逃げて下さい!]

 

「えっ!?」

 

レイジングハートの言葉に一瞬気を取られたなのはに、『プロテクション』を分解して、レーザーが迫る。

 

「きゃっ!!」

 

回避が遅れ、なのはの右腕のBJにレーザーが掠ると、ソコから炎が燃え上がり、徐々にBJを燃やしていく。

 

「くっ! どうなっているの!? ただの炎じゃないの!?」

 

[マスター! このレーザーには、『嵐の死ぬ気の炎』を纏っています!]

 

レイジングハートからの報告を聞いて、なのはは『分解』されたと察した。

フェイトの方は新型ガジェットにクレッセントフォームのバルディッシュで斬りかかるが、緑の雷、『雷の死ぬ気の炎』を纏い、『硬化』によって防がれていた。

 

「もしかしてこのガジェット、死ぬ気の炎を使いこなしているのっ!?」

 

《なのはちゃん! フェイトちゃん! もう少し堪えてや! 私とアインスもソッチに駆けつける!》

 

はやてから念話が届くが、苦戦は免れないと、なのはは顔を顰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

ールーテシアsideー

 

獄寺達が行動を起こしているその頃、街のポールの上では一人の少女、ルーテシアが立っていた。

すると、彼女の側に女性の姿が映った空間モニターが出現する。

 

《ヘリに確保されたケースとマテリアルは、妹達が回収します。お嬢様は地下の方に』》

 

「・・・・うん」

 

《騎士ゼストと『アギトさん』は?》

 

「別行動」

 

《お一人ですか?》

 

「一人じゃない」

 

そう言うと、ルーテシアのデバイスの宝玉から小さな黒い塊が出現する。ルーテシアはそれを愛おしそうに両手で包み込む。

 

「私にはガリューがいる」

 

《失礼しました。それと、大変勝手ながら、協力者を一人そちらに寄越してあります》

 

「協力者?」

 

「私、私、わた〜しだ、小さな魔法使いのお嬢さん♪」

 

ルーテシアは声がした方に振り向くと、ニンマリとした気持ち悪い笑みを浮かべる男性が、馬上ムチを手のひらでペシペシと叩きながら近づいてきた。

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

「『フレイムアロー』!」

 

「『マキシマムキャノン』!!」

 

「『時雨蒼燕流攻式一の型 車軸の雨』!」

 

その頃、地下水道で調査をしていた獄寺達とFW陣は、襲い掛かってくる通常ガジェットを破壊しつつ、レリックを探していた。

 

「空の上は何だか大変みたいね」

 

「うん」

 

ロングアーチからの通信で、ツナとエンマ、そして保護して少女の乗るヘリに向かって新型ガジェットが大軍で攻めてきて、なのはとフェイト、そしてリミッター解除したはやてが応戦していると聞いて、隊長達の事が気がかりだが、自分の任務に集中する。

 

「ケースの推定位置まで、もうすぐです!」

 

「んじゃあ、さっさと済まして帰るぞ!」

 

「おい獄寺! 単独行動はいかんぞ!」

 

そう言って、獄寺と了平が歩き出そうとした瞬間ーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォン!!

 

「「なぁぁぁぁああ!?」」

 

『っ!』

 

突然壁が爆発し、近くにいた獄寺と了平は吹き飛ばされるのを見て、山本とティアナ達はその爆発に身構える、

すると、そこから現れたのは青い長い髪をした、何処かスバルと似た女性が現れた。

 

「『ギン姉』!」

 

「『ギンガさん』!?」

 

「スバル!? ティアナ!?」

 

『ギンガ』と呼ばれた女性の登場に歓喜の声を上げるスバルとティアナ。

 

「何だ? スバルとティアナの知り合いか?」

 

「ええ。ーーーー『ギンガ・ナカジマ』さん。スバルのお姉さんよ」

 

「えっ? スバルの姉ちゃん?」

 

それから、山本達の紹介を終えると、スバル達がここに来た理由を話した。ギンガもこの地下水道に来た理由を話した。

 

「つまり、その横転事故と、エリオ達が見つけた女の子と関係してそうですね」

 

「ええ。一緒にケースを探しましょう。ここまでのガジェットは殆ど叩いてきたと思うから」

 

「うん!」

 

ギンガの言葉に頷くスバル。ソコで山本も口を開く。

 

「ギンガさんは、一人で来たんすか?」

 

「ああいえ、実はもう一人協力してくれている、次元漂流者がいたんだけど、ガジェットの数が多くてはぐれてしまったの」

 

「えっ? その人大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫よ。その子、とても強くて、私以外の陸士108部隊の隊員達を総ナメにしちゃったの。私も本気にならないと相手にすらならないくらいにね」

 

「ええっ!? そんなに強いのその人っ!?」

 

「ええ。歳の位は、山本くんと同い年くらいかしら」

 

「とりあえず、その次元漂流者も探しながら、調査を続けましょう」

 

ティアナの言葉で、調査を再開しようとする。

 

「あの~・・・・」

 

すると、キャロが手を上げてティアナに話しかける。

 

「ん? どうしたのキャロ?」

 

「えっと・・・・さっきの爆発で、隼人お兄さんと了平お兄さんさんが・・・・」

 

「「え?」」

 

キャロの言葉を聞いたティアナとスバルはすぐさまナツとグレイが居る方角を見た。

そこにはーーーー。

 

「「・・・・・・・・」」

 

頭に大きなタンコブを生やし、うつ伏せに倒れ、ピクピクっと、動いて気絶している獄寺と了平の姿があった。

どうやら先ほどの爆発で吹き飛ばされた際に思いっきり頭を打ち付けたらしい。

 

「ちょっ、獄寺っ!? しっかりしなさいよ!」

 

「了平さん! 大丈夫ですか!?」

 

ティアナは獄寺を、スバルは了平の身体を揺さぶったり頬をペチペチと叩いたりしたが、起きる気配はなかった。

 

「・・・・ダメだな。完全に伸びてるぜ」

 

二人の容態を見た山本が苦笑し、ギンガがおずおずと声をかける。

 

「えっと、その人達は?」

 

「ほら、前にメールで話したでしょ? 民間協力者の人達」

 

「あぁ、その人達なのね」

 

スバルの説明に納得するギンガ。

 

「それでティア。この二人はどうする?」

 

「・・・・仕方ないわね。起きるまで待ってられないし、このまま放って行きましょう」

 

「え? 大丈夫なの?」

 

ティアナの判断にギンガは目を丸くする。

 

「大丈夫ですよ。この二人は簡単に死なないゴキブリ並のしぶとさと、スバル並の頑丈さを持っていますから」

 

「そ、そう・・・・?」

 

笑顔で言うティアナに顔を引きつらせるギンガ。 そして一同は本気で気絶した獄寺と了平をその場に取り残し、レリックの捜索を再開した。

 

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

それからティアナ達は、ガジェットと戦いつつも水路を進んで行き、やがていくつかの水路がまとまっている場所に出る。そこで各自散開してケースの捜索を行なっていると。

 

「ーーーーあっ、ありましたー!」

 

キャロがケースを見つけ、抱えてそう言った。目的の物を見つけた一同は安堵の息を吐く。

だがその時、

 

ーーーーズズズズズズズズズズズズ・・・・。

 

キャロのすぐ近くあった水路の水面から、水柱がせり上がりーーーー。

 

「ーーーーっ! キャロ! 危ねえっ!!」

 

「えっ?」

 

山本の叫びで振り向いたキャロに、水柱の先端が槍のように尖り、キャロへと迫る。

 

『キャロ!!』

 

エリオと山本が駆け出し、ティアナとスバルとギンガも、一拍子遅れて駆け出すが、水の槍がキャロに当たりそうになったその瞬間ーーーー。

 

ーーーーバシュゥゥゥゥ!!

 

「っ! 小次郎くん!?」

 

『ピィィッ!』

 

山本が『雨のネックレスver.X』から、『雨燕の小次郎』を召喚し、『雨の死ぬ気の炎』の防壁で、水の槍を防いだ。

 

「エリオ! キャロを助けろ!」

 

「はい!」

 

「行くぞ次郎!」

 

『ワンっ!』

 

エリオがキャロを連れ出し、山本が時雨金時を、『雨犬の次郎』が『雨の死ぬ気の炎』で刀身が伸びた小太刀を口に咥えて、水の槍を切り裂いた。

切り裂かれた水の槍の一部は地面に落ち、残った方は水路に引っ込み、切られた箇所から水が落ちると、その中身を露わにした。

それはーーーー。

 

「な、何これ!?」

 

「コイツはーーーー"イカの足”だ!」

 

『イカぁっ!?』

 

寿司屋の息子である山本の言葉に、FW陣とギンガが目を見開いて、素っ頓狂な叫びを上げたが、それも仕方ない。こんなクラナガンの大都会の水路で、巨大なイカの足が現れたのだから。

 

 

 

 

「あった、あった、あ〜った♪ ソコのお嬢さん。そのケースを私に渡しなさい♪」

 

 

 

 

『っ!』

 

突然水路に響いた声に全員が目を向けると、水路の奥から一人の男がやって来た。

黒い隊服の肩に羽に、黒いマントを靡かせ、乗馬ムチを持った長身に赤毛のボブカットヘアに眼鏡をかけ、歪んだ笑みを浮かべながらコチラを見下すような視線と、

 

「ほう、ほう、ほ〜う。中々ソソられる女性ばかりだなぁ」

 

『うぅっ!?』

 

女性陣を上から下へ舐るような視線を向け、ティアナとスバルとギンガは、自分の身体を隠すように両手で身体を抱きしめる。キャロはケースで自分の身体を隠す。

その男は女性陣の反応を面白げに頷く。

 

「やぁやぁ。ボンゴレファミリー・雨の守護者、山本武♪」

 

「・・・・っ! あっ・・・・!」

 

時雨金時を構えた山本はその男を見て、驚愕に目を見開く。

 

「あっ、あぁっ・・・・!」

 

震える声を発する山本に、男はまたもや満足げに微笑みながら頷く。

 

「驚くのも無理はない♪ 何しろ、あの『もう一つの未来』で戦った強敵が現れたのだからな♪」

 

『(『もう一つの未来』?)』

 

その男の言葉に、ティアナ達は首を傾げ、山本は震える声でその男に向けて発する。

 

「あっ・・・・あ、アンタは・・・・! ーーーー誰っすか?」

 

『だぁああっ!!!』

 

山本の言葉に、男だけでなく、ティアナ達まで盛大にズッコケた。

 

「き、貴様! この私の事を忘れたかっ!? 『ミルフィオーネファミリー』の『六弔花』の一人! 『雨の六弔花』である! この! 『グロ・キシニア』をっ!!」

 

ーーーーザパァァァァァァァァァンン!!

 

その男、『グロ・キシニア』が叫ぶと、水路から、『雨の死ぬ気の炎』を纏った巨大なイカが水飛沫を上げて現れた。

 

「ーーーースンマセン。全然覚えていないッス」

 

『どぉおおっ!!!』

 

呑気な笑みを浮かべて言う山本に、またもグロ・キシニアとティアナ達、そして巨大イカこと『雨巨大イカ』まで盛大にズッコケた。




今思ったんですか、山本ってグロ・キシニアと面識無かったですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の休日、くるⅣ

オリジナル匣‹ボックス›兵器が出ます。


ー山本sideー

 

「貴様! 貴様! 貴様ー! 山本武! この私をコケにするかぁっ!!」

 

「いや、何か悪ぃな。どうにも思い出せないんだよ・・・・」

 

「貴様ぁっ!! もう許さん! やれぇ! 雨巨大イカぁッ!!」

 

グロ・キシニアが血走った目を見開いて、馬上ムチて地面をピシャンッ! と叩き、雨巨大イカに命令すると、雨巨大イカは『雨の死ぬ気の炎』を燃え上がらせ、八本の足、否、触手と、『触腕』と呼ばれる二本の長い触手に水を纏い水柱、否、水の槍となり、山本とティアナ達FW陣とギンガに向けて攻撃する。

 

「よっと!」

 

「ワンっ!」

 

「ピィっ!」

 

『わわっ!』

 

山本と次郎と小次郎はヒラリと回避し、FW陣とギンガはグネグネと動く水の槍を危うげに回避する。

 

「山本! 一体誰よあの『変質者』はっ!?」

 

「悪い! やっぱ知らねぇんだ!」

 

「でも! あの『変質者』、山本くんの事を知ってるようだったよ!?」

 

ティアナとスバルは、先ほどの自分達を舐るように見ていたグロ・キシニアを『変質者』呼ばわりし、山本に声をかけるが、山本は分からないと言っている。

しかし、それも仕方ないとも言える。『もう一つの未来での戦い』で、ジャンニーニとラル・ミルチからの言葉と顔写真でしか知らず、実際にグロ・キシニアと戦闘をしたのはクロームだけである。それから数の多くのーーーーそれこそ凄まじいの一言では片づけられない死闘の数々があったのだ。山本が覚えていないのも仕方ないとも言える。

しかし、プライドの高いグロ・キシニアにとってはそんな事知った事ではない。自分の事を知らないと言われ、プライドを大きく傷つけられ怒っているのだ。

 

「うわっと! ギン姉気をつけて! この触手、っていうか水みたいなのに触れると動けなくなるよ!」

 

「ええ知ってるわ! 私の部隊で保護している子にも、"同じ能力の動物がいる"から!」

 

「?」

 

ギンガの言葉に山本が一瞬反応し、ギンガに視線を向けると、グロ・キシニアが馬上ムチに『雨の死ぬ気の炎』を纏わせると山本に迫り、馬上ムチを振る。

 

「ふんっ!」

 

「おっと!」

 

が、ソコは山本武。馬上ムチを時雨金時で受け止め流し、そのままグロ・キシニアに刃を振るう。

 

「『時雨蒼燕特式・十一の型 燕の嘴‹ベッカタ・ディ・ローンディネ›』!」

 

無数とも言える怒涛の突きを繰り出した。が・・・・。

 

「甘い! 甘い! あまーい!! 私の匣‹ボックス›兵器はこれだけではないのだぁ!!」

 

グロ・キシニアがそう言うと、雨巨大イカの隣から、さらに多くの触手が水の槍となって山本に襲い掛かる。

 

「っ! うおっとぉっ!!」

 

山本はすぐにグロ・キシニアから触手に変更して迎撃する。

 

「シャァッ!!」

 

「くっ!」

 

グロ・キシニアが馬上ムチで攻撃してくるが、山本は後方に下がる。

 

「うわぁっ! 触手が増えたっ!?」

 

「っ! イカの隣に何かいますっ!」

 

驚くスバルに、次郎と小次郎と共にキャロとケースを守っていたエリオが雨巨大イカの隣を見てそう言うと、

 

ーーーーザバァァァァァァァァンンッ!

 

何と、雨巨大イカの隣に、『雨の死ぬ気の炎』を纏った、巨大なタコが現れた。

 

「ありゃぁ、タコだっ!」

 

『タコォッ!?』

 

「その通ーり! これが私の新たな匣‹ボックス›兵器! 『大雨ダコ』! さぁさぁさぁ〜! どうする山本武! 貴様だけなら兎も角! ソコの小僧に小娘達に我が匣‹ボックス›兵器の触手を回避できるかなぁ!?」

 

グロ・キシニアが叫ぶと、雨巨大イカと大雨ダコの計十八本の雨の死ぬ気の炎を纏った触手が襲い掛かる。

 

「お前達! ソコの小娘を狙え!」

 

グロ・キシニアはレリックの入ったケースを抱えるキャロに狙いを定めると、触手がキャロに襲い掛かる。

 

「キャロ!」

 

「ピイっ!」

 

「ワン!」

 

「キュクゥー!」

 

が、迫り来る触手を小次郎が『雨の死ぬ気の炎』で防壁で、フリードが炎を吐いて防ぎ、エリオのストラーダで、次郎が小太刀で切り捨てていく。さらに山本も加わっていく。

 

「ふんふんふん。中々に良い動きをするなぁ、あの小僧?」

 

「キャロに目が行き過ぎよ!」

 

「スバル!」

 

「うん!」

 

エリオを興味深そうに見ていると、触手の攻撃が少なくなったのを好機ととらえ、ティアナがクロスミラージュの銃口を向け魔力弾を撃ち、ギンガとスバルがすぐに接近し拳を構えてグロ・キシニアに向かった。

だが、山本はグロ・キシニアの身体がーーーー"膜のようなものに包まれている"のを捉えた。

 

「(何だありゃ・・・・?)」

 

「バカめ、バカめ、バァカめ〜! まだ手の内を全て見せた訳ではないのだ!!」

 

何と、ティアナの魔力弾がツルッとグロ・キシニアの表面を滑り、床や壁にめり込んだ。

 

「なっ!?」

 

ティアナが目を見開くと、ギンガとスバルの拳がグロ・キシニアにめり込み・・・・。

 

ーーーーヌニュン・・・・♪

 

「「え?」」

 

まるで、ウォーターサンドバッグで殴ったような奇妙な感覚に、二人が目をパチクリとさせた次の瞬間ーーーー。

 

ーーーーチクッ!

 

「「うっっ!!!???」」

 

二人の腕に、何やら針が刺さったような痛みと共に、身体が痺れだし、さらに酷い倦怠感で膝から崩れ落ちた。

 

「ギンガさん! スバル!」

 

「ティアナ! 迂闊に近づくな! グロ・キシニアの身体を良く見ろ!」

 

ティアナが駆け寄ろうとするが、イカとタコの触手を全て斬り捨てた山本がティアナに駆け寄って止めて、グロ・キシニアの身体を指差すと、グロ・キシニアの身体を覆っていた膜が、まるで水風船のようなもの幾つも分裂し、グロ・キシニアの身体から離れていくと、フワフワと空中を浮遊し、さらにうっすらとではあるが、『雨の死ぬ気の炎』を纏っていた。

 

「あれってまさかーーーークラゲですかっ!?」

 

「その通り! これぞ私の三番目の匣‹ボックス›兵器、『雨クラゲ』だっ!」

 

「(一つの匣‹ボックス›に何匹もいるタイプの匣‹ボックス›兵器か・・・・!)」

 

エリオが目を見開いてその生物、『雨クラゲ』の群れを見て言うと、グロ・キシニアが匣‹ボックス›兵器であると告げた。

 

「フフフ、クラゲはそのフワフワと優雅に海中を泳ぐ姿から惑わされやすいが、実は強力な毒を持った海の暗殺者とも呼ばれているのだ! さらに、見た目が透明であるがゆえに、このように隠し武器としても使えるのだよ! 海の忍者とも呼ばれているイカとタコのコンビに、海の暗殺者であるクラゲの匣‹ボックス›兵器を携えたこの私に! 最早死角なし!」

 

グロ・キシニアがそう言うと、雨巨大イカと大雨ダコの切られた足が再び生えてきた。

 

「なっ!」

 

「タコとイカの触手はトカゲの自切した尻尾が再生するように再生できるのだ! そしてぇっ!!」

 

大雨ダコは触手を伸ばすと、動けなくなったギンガとスバルを捕らえた。

 

「くっ・・・・うぅっ・・・・!」

 

「こ、のぉ・・・・!」

 

ギンガとスバルが触手から逃れようと動こうとするが、身体が痺れて動けずにいた。

 

「どうしたのよスバル! アンタとギンガさんの馬鹿力ならそんなタコの締め付けなんか!」

 

「それが・・・・か、身体に、力が入らないよ・・・・!」

 

「っ! クラゲの毒か?」

 

「それだけではない! 雨クラゲの毒の他に私の『雨の死ぬ気の炎』を注入したのだ! 今はその二人は鎮静剤を打たれマトモに身体が動かない状態になったのだ!」

 

山本が渋面を作るが、グロ・キシニアは触手に締められ苦悶の表情を浮かべるギンガとスバルを見て、舐るように視線を這わせた。

 

「いいぞ、いいぞ、実にいい〜ぞ。その苦悶に満ちた表情、たまらないなぁ〜!」

 

「「あああぁぁぁ!!」」

 

「やめなさい!!」

 

グロ・キシニアが視線で雨大ダコに命令すると、大雨ダコは触手の締め付けをさらにキツくして、ギンガとスバルの口からさらに悲鳴や、ティアナの悲痛な叫びが地下水道に響く。

山本が駆けつけたくても、雨巨大イカの触手に再び襲われ、それの迎撃で動けなかった。

しかしグロ・キシニアは、それらの声を素晴らしい歌声に聴き惚れるかのように耳に入れると、キャロの方に視線を向けた。

 

「さてお嬢ちゃん。仲間を開放して欲しければケースをーーーーソコのお嬢さまに渡すのだな」

 

「えっ?」

 

グロ・キシニアが馬上ムチで示した方にキャロが目を向けると、別の通路から紫色の長髪に黒いリボンで長髪の左右に一房づつ結び、黒いBJを纏い両手に手袋を嵌め、無表情なエリオとキャロと同い年の少女であり、その隣には、ホテル・アグスタで山本と了平が交戦した『影』、否、まるで黒いトカゲの、ツナ達が時に一緒に戦っている『仮面の戦士達』が戦う異形の怪人のような存在がいた。

 

『ーーーーっ!!』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

怪人は山本の姿を見た瞬間、臨戦態勢を取るように身構え、少女の方も、その無表情の顔を僅かに顰め、山本に鋭い視線を送った。その怪人は、山本のコンタクトディスプレイに記憶されていた映像で、ティアナ達も知っている。

 

「アイツ、ホテル・アグスタでの・・・・!」

 

「って事は、アンタもスカリエッティの仲間、って事か?」

 

「クックックック。さて、さて、さぁてぇ、どうだろうなぁ? 御託は後にして早くそのケースを渡すんだな。さもなくばお前達の仲間がーーーー」

 

 

 

「ーーーーさせんでござるよ!」

 

 

 

「『赤炎の矢‹フレイムアロー›』!」

 

グロ・キシニアの声を遮るように声が響くと同時に、ギンガとスバルを拘束していた大雨ダコの触手が、赤い炎の矢で焼き切られた。

 

『っっ!?』

 

一同が驚くと、触手から開放されたギンガとスバルが重力に従って落下する。

が、

 

「極限!!」

 

Fシューズを纏った了平がスバルをお姫様抱っこで受け止め、ギンガの方は。

 

「キュゥゥ!」

 

『い、イルカァっっ!?』

 

何と、"空中を泳ぐように浮遊するイルカ"が、ギンガを背中に乗せて受け止めたのだ。巨大イカに巨大タコ、さらに空中を浮遊するクラゲの群れもきて、今度は空中を浮遊するイルカである。最早ティアナ達の頭にある常識が思いっきり砕かれていっている。

 

「あのイルカは・・・・!」

 

「・・・・あ、『アルフィン』・・・・?」

 

「キュゥゥゥゥッ!」

 

ギンガは自分を乗せたイルカの名を呟くと、イルカ、アルフィンは『雨の死ぬ気の炎』を放出し、炎が刃の形になり、グロ・キシニアに襲い掛かる。

 

「ちぃっ! 雨クラゲ!!」

 

グロ・キシニアが馬上ムチで空気を切ると、雨クラゲ達が防壁となり刃を防ぐが、何匹かが切られて地面に落ちた。さらに、別の通路から『雨の死ぬ気の炎』を纏った円型に回転した武器がグロ・キシニアに迫る。

 

「ぬうぅんんっ!!」

 

が、グロ・キシニアは馬上ムチに死ぬ気の炎を纏わせ、ソレを弾くと、弾かれたソレを通路から出た人影が掴むと、ソレは形を露わにしたーーーーブーメランだった。

 

「おっ! あれってまさか!」

 

山本が顔を喜色に染めると、ブーメランを掴んだ、『少年』に目を向け、少年はギンガを乗せたアルフィンの隣に降り立つ。

黒スーツを着用し碧眼に亜麻色の髪で前髪が長く、右目が見えたり隠れたりして襟足が結構長い髪をし、年齢は山本達と同い年の、女の子と見間違いそうな美少年だった。

 

「無事でござるか、ギンガ殿!」

 

「『バジル』、くん・・・・!」

 

ギンガが微かな笑みを浮かべながら呟いたその少年は、『ボンゴレファミリー門外顧問・CEDEF‹チェデフ›』のメンバー。

ーーーーコードネーム、『バジリコン』こと、『バジル』であった。




遂にバジルが参戦しました。


ー『大雨タコ』ー
雨巨大イカと同じ能力があるが、パワーが上であり、霧状の墨(雨の炎付き)を吐く。

ー『雨クラゲ』ー
『霧ウミウシ』や『嵐コウモリ』と同じく、一つの匣‹ボックス›に複数乃個体がいるタイプ。触れると毒と『鎮静』付きの針で刺し、さらに表面は弾丸や魔力弾を滑らせる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の休日、くるⅤ

ーバジルsideー

 

「ギンガ殿、動けますか?」

 

「ごめん、なさい・・・・身体が、言う事を聞かないの・・・・バジルくん、ここをお願い・・・・!」

 

「承知したでござる。アルフィン、ギンガ殿を安全な場に」

 

『キュルルルル!』

 

「我流、スバルも離れさせてくれ」

 

『ガァ』

 

「ご、ゴメンね、我流・・・・」

 

ギンガを乗せたアルフィンが宙を泳いで離れようとすると、了平はスバルを我流に渡すと、我流も続いた。

 

「ティアナ! テメェ! 俺と芝生頭を置いて行きやがって!」

 

「アンタ達が気絶したのが悪いんでしょう! ていうか、もっと早く来なさいよ!」

 

「芝生が勢い任せにアッチだ! コッチだ! って適当な路を走りやがったせいだよ!」

 

「なにぃ! そのお陰でガジェットと交戦していたバジルと再会できたではないか!」

 

「結果論だろうが! ちっとは考えて行動しやがれ! 手入れのいき届いてねぇ芝生頭は中身の手入れも必要だな!」

 

「なんだと! 向こうにいるタコよりも足の多いタコ頭!」

 

「貴様ら! 貴様ら!! 貴様らぁっ!!! この私を放って! 勝手に盛り上がるなぁっ!!!」

 

グロ・キシニアが馬上ムチをバシンっと弾くと、雨巨大イカと大雨タコが水柱の槍の触手を伸ばして攻撃してくる。

 

「はぁっ!」

 

「ふっ」

 

「きゃッ」

 

「よっと!」

 

「極限!」

 

「うわっ」

 

「あっ」

 

バジルが跳んで回避し、獄寺がホバリングでティアナについて抱えて回避し、山本がエリオを、了平がキャロとフリードを抱えて回避する。

少女も、黒い異形にお姫様抱っこされて回避する。

 

「ーーーー何であの野郎が、グロ・キシニアここにいやがる!?」

 

「/////」

 

獄寺がグロ・キシニアを見て舌打ち交じりに毒づき、抱えられたティアナが頬を赤くする。

 

「おっ、獄寺。アイツの事知ってんのか?」

 

「何言ってやがる! 『未来での戦い』で、“クロームに半殺しにされたヤツだろうが”!」

 

「「「えっ・・・・?」」」

 

「キュル?」

 

山本の疑問に怒鳴るように声を上げる獄寺の言葉に、ティアナとエリオとキャロが思わず目を丸くした。

『未来での戦い』というのは分からないが、目の前の男を、あの! おとなしめな性格をしたクロームが半殺しにしたと言うのだ。

クロームの名誉の為に補足するが、実際にグロ・キシニアを半殺しにしたのは『十年後の六道骸』である。

ティアナ達が唖然としていると。

 

「ちょうだい・・・・」

 

「えっ? あぁ!」

 

背後から声をかけられたキャロが後ろを振り向くと、そこにはケースを奪おうとする少女の姿があった。

 

「だ、ダメだよ!」

 

キャロはケースを渡すまいと、少女から離れようとする。

 

「・・・・邪魔」

 

「っ・・・・!」

 

が、少女はキャロに向かって砲撃を放った。キャロはそれをバリアで防ごうとするが、威力が大きくて防ぎきれず、後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

「きゃぁぁぁああ!!」

 

「キャロ! うわぁぁぁっ!!」

 

その後ろに居たエリオも巻き込まれ、二人は壁に叩きつけられた。

 

『エリオ! キャロ!』

 

獄寺達が駆け寄ろうとするが、雨巨大イカと大雨タコによって阻まれる。

 

「ガリュー・・・・」

 

少女に『ガリュー』と呼ばれた異形は、吹き飛ばされた拍子にキャロが落としたケースを持ってきた。

 

「お嬢さん、お嬢さん、お嬢〜さん♪ それとも、ル〜♪ ル〜♪ ルーテシア♪ さっさとそのケースを持って消えるのだな。私はまだコイツらに用がある!」

 

グロ・キシニアは自分に向かって飛んできたブーメランを馬上ムチで弾き飛ばすが、空中でブーメランをキャッチしたバジルが、グロ・キシニアを鋭く見据えていた。

 

「・・・・・・・・・・・・(コクン)」

 

グロ・キシニアの言葉に少女、ルーテシアは頷き、ガリューからケースを受け取りその場を去ろうとするが、突然その動きが止まった。

何故なら、幻術で姿を消していたティアナがルーテシアの背後に回り、首元にダガーモードにしたクロスミラージュを突きつけていた。

 

「ゴメンね、乱暴で。これは危ないモノなんだよ」

 

「っ・・・・」

 

無表情であるルーテシアが僅かに顔をしかめる。

 

『っ!』

 

「動くな」

 

ガリューが助けに行こうとするが、山本が時雨金時の刃を顎に当てて動きを封じた。

 

「我流! エリオとキャロを治療してくれ!」

 

『ガァァ!!』

 

大雨タコと交戦している了平が叫ぶと、ギンガとスバルをアルフィンに任せ、我流が倒れたエリオとキャロに駆け寄り、『晴れの死ぬ気の炎』による治療を行い、二人の傷が癒え、意識が戻った。

 

 

 

ールーテシアsideー

 

劣勢に立てられるルーテシア。

 

《ルー・・・・1、2、3で目ぇ瞑れ》

 

すると、誰かからの念話が入る。

 

《1、3・・・・》

 

「・・・・っ」

 

ルーテシアは念話に従って目を閉じる。そして・・・・。

 

「『スターレンゲホイル』!」

 

ーーーードゴォォォォォォォォン!

 

 

 

 

 

ーティアナsideー

 

その瞬間、辺りには赤い閃光と凄まじい爆発音が響いた。余りの轟音にルーテシア以外の全員が耳を塞ぐ。

そしてその隙に立ち去ろうとするルーテシアとガリュー。すると、いち早く復活したティアナがルーテシアに向かってクロスミラージュを構える。しかし・・・・。

 

「バカめ、バカめ、バ〜カめっ〜! 私を忘れたかぁ?」

 

グロ・キシニアがニンマリと笑みを濃くし、大雨タコの水柱の触手がティアナを襲う。

 

「おっと!」

 

が、獄寺がSISTEMA C.A.Iの盾で塞いでいく。

 

「油断すんじゃねぇティアナ! 何がいるぞ!」

 

ーーーーたくもぉ~。あたし達に黙って勝手に出かけちゃったりするからだぞ。ルールー!

 

『っっ!!』

 

その時、突然聞き慣れない声が響き、全員の視線がそちらに向く。そこには、『赤い髪の少女』がいた。

しかしその少女の身長は余りに小さく、リィンと同じ位である。

 

「むぅ? リィンとそんな変わらんのがいるぞ!」

 

「もしや、リィン殿と同じ融合騎なのでしょうか?」

 

リィンとも面識があるバジルが、目を鋭くしてその少女を見ると、ルーテシアと呼ばれた少女が、赤い髪の少女の名を呼ぶ。

 

「・・・・『アギト』」

 

『(ピクッ)・・・・『アギト』)』

 

ルーテシアが発した名に、一瞬反応を示す獄寺と山本と了平とバジル。

 

「おう! ソコの気持ち悪そうなお前!」

 

「誰が、誰が、だ〜れが! 気持ち悪いのだぁ!?」

 

アギトと呼ばれた少女はグロ・キシニアを指差し、そんな少女にグロ・キシニアは馬上ムチを振って怒鳴る。

 

「さっきルールーを守ってくれたみたいだが、何モンだ?」

 

アギトは警戒している目でグロ・キシニアを睨む。

が、グロ・キシニアはそんなアギトを見下したような目で薄く笑みを浮かべて応える。

 

「愚か、愚か、お〜ろか! この状況を見れば、貴様らの一応の味方だと察せんのかぁ?」

 

グロ・キシニアの態度に、アギトはムッとしたように目を細めるが、フゥと、落ち着くように息を吐くと、ルーテシアに向き直った。

 

「まぁ、もう大丈夫だぞ。何しろこのアタシ、『烈火の~剣精』! アギト様が来たからな!」

 

「・・・・・・・・」

 

「(・・・・ヴィータ副隊長とリィン曹長を足して二で割ったようなヤツね)」

 

『(融合騎って、ああいうタイプばかりか?)』

 

アギトがそう言うと、彼女の背後に小さな花火が咲き誇る。それをルーテシアは無表情、ティアナと獄寺達は呆れた表情で見ていた。

 

「アギト、帰ろう」

 

「ありゃ!?ーーーー何でだよルールー!」

 

が、ルーテシアが発した言葉に、アギトは空中でコケてそのまま落下するが、すぐにルーテシアの眼前に戻ると、アギトに聞こえる声量で話しかける。

 

「ゼストもドクターも言ってた。六課の魔導師はともかく、あの人達とは戦わず、逃げる事を優先しろーーーーって」

 

ルーテシアの視線の先には、雨巨大イカと大雨タコと雨クラゲの攻撃を回避している獄寺達に向けられていた。

 

「ーーーーそりゃ、旦那が言ったけどよ」

 

「ケースはゲットした。逃げよう」

 

「〜〜〜〜! わーったよ!」

 

ケースは抱えるルーテシアをガリューがお姫様抱っこし、さらにその肩にアギトが座り、その場を去ろうとする。

 

「おいティアナ。逃げられちまうぞ」

 

「任務はあくまでケースの確保よ。あのグロ・キシニア‹変質者›は獄寺と了平と他の奴に任せて、私達は追うわよ! すぐ近くまで来ているヴィータ副隊長とリィン曹長が来るまで、逃げられないようにするわよ!」

 

しかしその時、FW陣にヴィータからの念話が送られる。

 

《よし。中々悪くない判断だぞ、ティアナ》

 

《ヴィータ副隊長!?》

 

《リィンも一緒ですぅ! ティアナさん、状況をちゃんと良く見てナイス判断ですよ!》

 

《副隊長、リィン曹長。今どちらに?》

 

起き上がったエリオがそう尋ねると、逃げようとしていたアギトが何かに気がついたようだ。

 

「っ・・・・ルールー、何か近付いて来てる。魔力反応・・・・でけぇ!」

 

アギトがそう言った瞬間、天井が大きな轟音を立てて崩れ落ち、そこからヴィータとリィンが姿を現した。

そしてリィンはすぐにルーテシア達に向けて手を翳し、魔法陣を展開させた。

 

「捕らえよ、凍てつく足枷! 『フリール・フェッセルン』!!」

 

『「「っ!?」」』

 

その瞬間、ルーテシアとガリューとアギトの周囲に風が巻き起こり、一瞬で三人を氷の中に閉じ込めた。

 

「なぁにぃ〜!?」

 

この事態に獄寺達と戦っていたグロ・キシニアも、辺りを見回す。

すると、グロ・キシニアの懐にアイゼンを構えたヴィータが現れーーーー。

 

 

 

ーヴィータsideー

 

「ブッ飛べえぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!」

 

ヴィータは思いっきりアイゼンを振るい、グロ・キシニアを吹き飛ばそうとした。しかし・・・・。

 

ーーーーボニュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンン・・・・。

 

「あ?」

 

まるでウォーターサンドバッグを叩いたような感触に、ヴィータは訝しそうな顔をしたその瞬間、

 

「っっ!!」

 

突然身体に戦慄に走り、ヴィータはアイゼンを引っ込めると同時に、後方に飛び退いたその時、

 

ーーーーブクブクブクブクブク!

 

ヴィータが今し方までいた地点が、無数のクラゲに覆われていた。ここ最近、ツナにエンマ、獄寺に山本に了平にクローム・・・・後ときたまに雲雀とのリミッター抜きでの本気の模擬戦をしてきたおかげか、十年も錆び付かせていた『戦いの記憶』が、僅かに蘇ったので退けたのだ。

さもなくば今頃、あの無数のクラゲの針に刺されていただろう。敗北の数々も無駄ではなかったようだ。ーーーー少々情けないが。

 

「んだありゃぁ!?」

 

「ヴィータ殿! リィン殿!」

 

「ん?ーーーーおぉっ! お前、バジルか!?」

 

「あぁっ! バジルさんですぅ!」

 

かつての『夜天の書』の主にして、初代雲の守護者・アラウディが創設した〈CEDEF‹チェデフ›〉のメンバーであるバジルは、当然なのかヴォルケンリッターとも顔見知りなのだ。

 

「バジル! 何でお前ここに!」

 

「話は後でござる! 今はコヤツらを!」

 

「ーーーーふっ」

 

ーーーーパチンッ・・・・。

 

バジルがブーメランを構えるが、グロ・キシニアはニヤリと笑みを浮かべ指を鳴らすと、雨巨大イカと大雨タコが触手を激しく動かして水面を叩き、水飛沫をあげる。

 

「くっ! 目眩ましでござるか!?」

 

水飛沫の向こうから、グロ・キシニアの声が響いてくる。

 

ーーーー今日はここまでにしておこう! しかし、しかし、しかぁし! ボンゴレ共よ! 覚えておけ! 『我々』は必ず! あの『未来での戦い』での屈辱を晴らしてくれるっ!!

 

その声が響くのと同時に、水飛沫が収まると、雨巨大イカや大雨タコだけでなく、グロ・キシニアに雨クラゲ、さらにルーテシアにガリューとアギトも、その姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「・・・・・・・・・・・・!!」

 

そして少し先の話、超‹ハイパー›モードのツナは驚愕に目を見開いていた。

視線の先には、”ツナにやられて気を失った二人の少女"とーーーーその二人を足元に置いて自分を見据えてくる”一人の剣士”に・・・・。

 

「何故だ・・・・! 何故お前が、この次元世界にいるーーーー『幻騎士』っ!!」

 

「ーーーー久しぶり、否、初めましてになるな、沢田綱吉」

 

かつて死闘を繰り広げた強敵が、ソコに立っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命の休日、くるⅥ

謝罪。前回のラストでツナが幻騎士と遭遇の場面ですが、フライングしてしまったので、詳しく書きます。

あと、クアットロファンとディエチファンの方々、申し訳ありません。


ー???sideー

 

ヴィータ達が追跡を始めるのと同時刻。

クラナガンのとあるビルの屋上に、二つの人影があった。

1人は眼鏡をかけてケープを羽織った、髪を二つ結びにしているなのは達と同い年の女性。

もう片方はマントの様な物に身を包み、自分の身長ほどもある巨大な『何か』を持ち、首の後ろで髪を一つに纏めているティアナとスバルと同い年くらいの少女。

 

「『ディエチ』ちゃ~ん。ちゃんと見えてる?」

 

眼鏡をかけた女性は少女、否、『ディエチ』に声をかける。

 

「ああ。遮蔽物もないし、空気も澄んでる。・・・・よく見える」

 

そう言うディエチの視線の先には、獄寺達が保護した少女と、ツナとエンマとシャマルが乗っているヘリが存在していた。

 

「でもいいのか『クアットロ』撃っちゃって? ケースは残せるだろうけど、『マテリアル』の方は破壊しちゃう事になる。それに、ドクターが目をつけているボンゴレとシモンの二人にも」

 

ディエチの問いに眼鏡の女性、『クアットロ』は微笑しながら答える。

 

「うふふ。『ドクター』曰く、【それで死ぬなら所詮はその程度。問題はないよ】。『ウーノ姉さま』曰く、【あの『マテリアル』が当たりなら、・・・・本当に『聖王の器』なら、砲撃くらいでは死んだりしないから大丈夫】・・・・だそうよ?」

 

「ふぅん」

 

「ーーーーいつまでも"あんな奴ら"に、大きな顔をされてたまりますか・・・・!」

 

「・・・・それが本音っぽいね」

 

親指の爪先を齧りながら忌々しげに顔を歪めるクアットロに呆れながら、ディエチは持っていた巨大な物を包む布を外す。

すると、小柄な彼女に扱えるとは思えない程の巨大な砲身が姿を見せると、クアットロの横に空間モニタが出現し、一人の女性の姿を映し出した。

 

《クアットロ。ルーテシアお嬢様とアギト様、ついでにグロ・キシニアがケースを回収して撤退したわ》

 

「ちっ、お嬢様達は兎も角、あの腐れ変態下衆野郎は死んでれば良かったのに・・・・!」

 

さらに忌々しげに顔を歪めるクアットロ。

 

《今は『セイン』が様子を窺っているけど・・・・。あっ、グロ・キシニアがお嬢様達の氷を砕いたわ》

 

「フォローします?」

 

そう言ったクアットロの目には、惚けた口調とは裏腹に鋭い光があった。

 

《お願い》

 

女性がそう言うと、空間モニターが消える。それと同時にクアットロは『セイン』と呼ばれる仲間に念話を送った。

 

《セインちゃん》

 

《あいよー、クア姉》

 

《こっちから指示を出すわ。お姉様の言う通りに動いてね》

 

《ん〜、了解~》

 

セインからの返事を聞いたクアットロは次にルーテシアに念話を送った。   

 

《は~いお嬢様♪》

 

《クアットロ?》

 

《何やらピンチのようで。お邪魔でなければクアットロがお手伝い致します♪》

 

《・・・・お願い》

 

《は~い。ではお嬢様? クアットロが言う通りの場所へ向かって下さい》

 

そして、念話をしながらクアットロは、ディエチを一瞥すると、その視線の意味を理解しているディエチは、ハァ、と一度ため息を吐いてから、『一個のリング』を取り出し、左手中指に嵌めて力を込めると。

 

ーーーージジジジジジ・・・・!

 

何とーーーー『雷の死ぬ気の炎』が出現し、巨大な何か、否、『大砲』を両手で構え、『大砲』の一部にある小さな窪みに、リングの炎を押し込むと、『大砲』に緑のラインが走っていき、バチバチっと緑色のスパークが迸った。

 

 

 

 

 

 

 

ールーテシアsideー

 

その頃、地上に脱出し、クアットロの指示を受けたルーテシアは、アギトとグロ・キシニアを連れ、召喚した『黒い虫のような生物』が身体に電気を纏い、地下を揺らしていた。

 

「ダメだよルールー! これはマズいって! 追撃を阻止する為だからって、埋めるだなんて、 アイツらだって局員とはいえ、潰れて死んじゃうかもなんだぞ!」

 

どうやら、追跡してくるティアナ達と獄寺達を妨害しようと、かなり乱暴な手段に出たようだ。

そんなアギトを、グロ・キシニアはニンマリと笑みを浮かべる。

 

「甘い、甘い、あま〜い! 中途半端な考え方では先が思いやられるなぁ、融合騎よ」

 

「うん。管理局はともかく、あの人達は危険。少しでも足止めしないと・・・・」

 

グロ・キシニアの言葉に睨むが、ルーテシアはそう言うと、アギトは反論する。

 

「よくねーよルールー! あの『変態医師』とか『ナンバーズ連中』と関わっちゃダメだって! それに、こんな気持ち悪すぎる奴も怪し過ぎるだろ!?」

 

「確かに気持ち悪いけど・・・・」

 

「(ピクピクッ)」

 

アギトの言葉に同意するルーテシアに、グロ・キシニアは片眉をピクピクとさせる。

 

ーーーーグシャァァァァァンン・・・・!

 

そうこうしている内に、地下に通じる穴が崩壊した。ルーテシアはこれで獄寺達も追ってこれないと思い、黒い虫に視線を移す。

 

「『地雷王』、お疲れ・・・・っ!」

 

「「っ!?」」

 

『地雷王』と呼ばれる召喚獣を戻そうとしたその時、

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォォォンン!!

 

何と、地下から地面が吹き飛びその中からーーーー。

 

「極げーーーーんっ!!」

 

「オラァァァァァっ!!」

 

了平とヴィータが飛び出してきた。

 

「「「なっ!?」」」

 

ルーテシアとアギト、グロ・キシニアが驚愕すると、地雷王の足元に魔法陣が展開され、何本ものピンク色の鎖が地雷王を縛る。

ルーテシアとアギトは身構え、グロ・キシニアは再び匣兵器(雨クラゲ)を取り出す。

がーーーー。

 

ーーーーバシュン!

 

「グァっ!?」

 

グロ・キシニアの匣兵器が、何者かの狙撃で弾かれた。

グロ・キシニアがキッと狙撃地点を睨むと、少し離れたビルからティアナが狙っていることに気がついた。

 

「っ、狙われてるぞ! 散れ!」

 

「「っ!」」

 

グロ・キシニアの言葉を聞いた二人はティアナの砲撃を避ける。

 

「はぁぁぁっ!」

 

そしてすぐにアギトはティアナに向かって火炎弾を、ルーテシアは向かってくるヴィータ達に向けてクナイのようなダガーを発射した。

しかしそれは意味を成さず、アギトの炎は獄寺の『フレイムサンダー』で相殺し、ルーテシアの方はヴィータ達の勢いを止めることすら叶わなかった。

 

「くっ!」

 

それを見ながらルーテシアは近くの高架の手摺部分に着地、アギトはその近くに飛んできた。

 

「やぁぁっ!」

 

だがその瞬間、高速で移動していたエリオがルーテシアの胸元にストラーダを突きつけ、アギトの周りには氷で出来た無数のダガーが浮かぶ。

 

「くっ!」

 

「動くな」

 

グロ・キシニアが匣兵器を拾い、リングを押そうとするが、山本が首筋に刃を当てて止めた。

 

「貴様ら、どうやって・・・・!」

 

「俺の『マキシマム・キャノン』だ!」

 

グロ・キシニアが脱出方法を聞くと、了平が声を上げた。塞がれた通路を了平の必殺拳で吹き飛ばしたのだ。

ルーテシアからケースを取り返したエリオは、距離を開けるように離れ、代わりに了平と獄寺がルーテシアを見張り、ティアナとキャロがエリオに近づくと、そこへヴィータとリィンが降りてくる。

 

「子供を虐めてるみてぇで、いい気分はしねぇが。市街地での『危険魔法使用』に『公務執行妨害』、その他諸々で逮捕する」

 

掴まった三人にヴィータはそう言い放つ。そして、遅れて、アルフィンに乗ったギンカ、我流に運ばれたスバルも漸く毒が抜けていたのか、立てるまでは回復した。

と、ソコでルーテシアに、クアットロからの念話が入る。

 

《は~いお嬢様♪》

 

《クアットロ?》

 

《何やらピンチのようで。お邪魔でなければクアットロがお手伝い致します♪》

 

《・・・・お願い》

 

《は~い。ではお嬢様? クアットロが言う通りの言葉を、その赤い騎士に》

 

自分を見つめているヴィータを見つめ返し、ルーテシアはクアットロの言葉を待った。

 

 

 

 

 

 

ーエンマsideー

 

ルーテシア達が捕まる数分前。

なのはとフェイトとはやて(アインスとユニゾン状態でリミッター解除)が、『死ぬ気の炎』を出す新型ガジェットに苦戦を強いられているのを、ヘリの空中ディスプレイで見ていたツナとエンマとシャマル。

画面越しでも、新型ガジェットの数はおよそ8機、なのはとフェイトに二機ずつ、リミッターを解除しているはやてに四機と割り振られている。新型ガジェットの戦闘力は、なのは達を翻弄していた。

なのはの方は、得意とする砲撃や射撃に、『雷の死ぬ気の炎』を纏うガジェットが防ぎ、『嵐の死ぬ気の炎』を纏うガジェットが攻撃する。防御と砲撃と射撃のなのはの戦闘スタイルを封殺していた。

フェイトの方は、『晴れの死ぬ気の炎』で機動力が上がり、『管理局最速』のフェイトのスピードに追いつく、さらに新型にはフェイトに無い『雷の死ぬ気の炎』による防御力があり、少しずつだが、確実にフェイトを追い詰めていく。

はやての方は、新型達は常に散開して、『嵐の死ぬ気の炎』による攻撃が襲ってくる。はやてはなのは達ほど実戦になれておらず、さらに広範囲攻撃タイプ故に、距離を取られバラバラで動かれ、スピードで撹乱される攻撃には、対応するには経験不足であるようだ。

 

「なのはちゃん、フェイトちゃん、・・・・はやてちゃん」

 

「ーーーー手こずっているね」

 

「うん・・・・」

 

エンマが苦戦するなのは達を見ながら呟くと、ツナは保護した女の子を抱く手に力が入ってしまう。

 

「うぅ・・・・」

 

「ぁ・・・・」

 

女の子が苦しむ声が耳に入り、ツナはしまったと思いながら腕の力を緩めた。

するとーーーー。

 

《こちらロングアーチ! 高出力の魔力反応を検知しました!!》

 

耳に付けたツナ達専用の通信インカムから、いきなり大きな魔力反応が現れた。

そして次に、リボーンが通信を繋げる。

 

《ツナ。エンマ。反応元はここだ》

 

魔力反応の元を空中モニタで表示されると、ビルの屋上に二人の少女がおり、内ティアナとスバルと同い年の少女がビル構えたあの巨大な大砲からだった。

 

《砲撃のチャージ確認!! 物理破壊型、推定Sランク!!》

 

ロングアーチからの通信に、ツナとエンマとシャマルの顔に緊張が走った。

砲撃のターゲットは、このヘリだと分かったのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・エンマ」

 

「っ・・・・・・・・・・・・うん。分かったよ」

 

ツナは少女を一瞥してからエンマに視線を向けると、エンマはコクリと頷き、ツナは少女をエンマに託した。

 

「うっ、うぅっ・・・・!ーーーーふみゅぅ・・・・」

 

眠っていた少女は、ツナから離されてグズりそうになったが、エンマが抱きかかえると、安心しきったような笑みを浮かべた。

 

「ーーーーヴァイス。ハッチを開けてくれ」

 

「うす!」

 

超‹ハイパー›モードになったツナがそう言うと、ヴァイスはヘリのハッチを開ける。

 

「ーーーー十代目。お気をつけて」

 

シャマルが恭しく頭を下げると、ツナはコクンと頷いて返し、クラナガンの空へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ークアットロsideー

 

「『IS‹インヒューレントスキル›・ヘヴィバレル』、発動」

 

構えた砲身の砲口に、『雷の死ぬ気の炎』を纏った橙色の巨大な魔力の塊を浮かべ、ヘリに狙いを定めながらディエチが呟く。

それをディエチの後ろに立って眺めつつ、クアットロは楽しそうにヴィータへの伝言を、ルーテシアに伝える。

 

「逮捕は、いいけど・・・・」

 

 

 

 

 

 

ールーテシアsideー

 

 

「『大事なヘリは、放っておいていいの?』」

 

『っ!?』

 

突然ルーテシアが発した言葉を聞いて、一同に緊張が走る。

しかしルーテシアはそのまま言葉を続ける。

 

「『貴女はまた・・・・守れないかもね』」

 

「っ!!?」

 

その言葉にヴィータの目が大きく見開かれた。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「邪魔なの!」

 

「どいて!」

 

「このぉっ!!」

 

なのはとフェイトとはやて(アインスとユニゾン状態)は、いきなり大きな魔力反応が現れ、ソレがツナ達が乗っているヘリを狙っていると分かり、直ぐに急行したかったのだが、新型ガジェット達が連携して行く手を阻まれていたのだ。

 

《砲撃のチャージ確認!! 物理破壊型、推定Sランク!!》

 

ロングアーチからの通信に、三人の顔に緊張が走った。

 

 

 

 

 

ークアットロsideー

 

「・・・・発射!」

 

その言葉と同時に、ディエチが構えた砲身から凄まじい砲撃が放たれ、それは真っ直ぐにヘリへと向かい、 無情にも、放たれた砲撃が轟音と共に爆発した。

 

 

 

 

 

 

ールーテシアsideー

 

《砲撃・・・・ヘリに、直撃・・・・!》

 

《そんな筈ない! 状況確認!》

 

《ジャミングが酷い・・・・精査できません!》

 

ロングアーチからの言葉に獄寺達一同は愕然としていた。

 

「そんな・・・!」

 

「ヴァイス陸曹と、シャマル先生が・・・・!?」

 

「ウソ・・・・、あのヘリには、ツナ兄ぃやエンマ兄さんが・・・・!」

 

「っ・・・・テメェ!」

 

エリオとティアナとキャロが呟いた瞬間、獄寺がルーテシアに掴みかかる。

 

「落ち着けタコ頭!」

 

「うるせぇ!」

 

了平が落ち着くように言うが、獄寺は止まらない。

 

「仲間がいやがるのか!? どこに居やがる!? い「ガンッ!」 んごっ!?」

 

興奮した獄寺がルーテシアに問い詰めようとした瞬間、ヴィータがアイゼンで軽く叩き、獄寺は頭を抑える。

 

「落ち着けこの銀ダコ。『右腕』を気取るならすぐにカッとなるんじゃねぇよ」

 

「テメ! ヴィータ・・・・!」

 

「んな様じゃ、まだまだ『G』には届かねぇぞ」

 

「っ!」

 

初代嵐の守護者『G』の事を言われ、獄寺は息を詰まらせ、大人しくなった。

ルーテシアは、ヴィータが全く落ち着いているのに疑問を感じて見つめると、ヴィータはその視線に気づくと、ニッと笑みを浮かべた。

 

「アタシが動揺すると思ったか? 悪いな。ーーーーアタシ達守護騎士が認めたボスの正統な後継者であるアイツが、簡単にやられるかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ークアットロsideー

 

そして、その頃。

 

「うふふ~のふ~♪ どう? この完璧な計画♪」

 

「黙って。今命中の確認中・・・・」

 

クアットロを黙らせて砲撃が当たったかどうかを確認するディエチ。

 

《・・・・クアットロ》

 

《あらお嬢様。赤い騎士はどぉんな顔で悔しがっていますか♪》

 

ルーテシアからの念話に、クアットロは僅かに心を高揚させる。

 

《・・・・逃げた方がいいかも》

 

「えっ?」

 

ルーテシアの念話に、クアットロが間の抜けた声を発し、煙が徐々に晴れていくと、

 

「あれ? まだ飛んでる・・・!?」

 

「あら?」

 

なんとヘリはまだ飛行していた。そして煙が全て晴れ、そこに居たのは。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『ドクター』から説明された『危険人物の少年』が、マントとグリーブを付けて空を飛んでいた。

マントに、ディエチの砲撃のエネルギーの残滓が僅かに残っていたのを見て、ディエチは驚愕の声を上げる。

 

「まさか、私の砲撃を・・・・あのマントで防いだ!?」

 

「な、何言ってるのよディエチちゃん。フルパワーでなくとも、『雷の死ぬ気の炎』を纏ったあの砲撃は、『ドクター』や『お姉様』の計算では、“高町なのはの防御も貫通する威力よ”? あんなマントで「防げるんだよ」っっっ!!?」

 

「っっっ!!?」

 

ディエチが立ち上がり、クアットロと隣り合わせになった次の瞬間、先程まで空中にいた『危険人物』、『沢田綱吉』が、自分達の間に転送でもされたように現れると、

 

ーーーードゴォっ!!

 

「ぐっ!!!」

 

「げばあっ!!!」

 

二人の間をすり抜ける瞬間、『沢田綱吉』はダブルラリアットを二人の首に叩きつけ、ディエチが小さく、クアットロは潰れたカエルのような悲鳴を上げた。

 

「かはっ!」

 

「ごべえっ!」

 

ディエチとクアットロはその場で空中を数回程回転すると、屋上の床にディエチはうつ伏せに倒れ、クアットロはでんぐり返しの格好で倒れ、二人の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ヘリから飛んだツナは、砲撃がくる方向を超直感で察知し、ナッツとココを呼び出した。

 

「ナッツ、防御形態。ココ、加速形態」

 

『ガゥッ!』

 

『ガォッ!』

 

そして、砲撃が飛んできた瞬間、『Ⅰ世のマント』を構え、『Xグリーブ』で飛んで砲撃を防いだのだ。

 

「(ーーーー結構な威力だ。なのはのリミッター抜きの『スターライトブレイカー』に匹敵するな)」

 

そして、砲撃が来た地点のビルの屋上に、二人の少女の姿を捉えると、グローブとグリーブの炎を噴射させ、二人の少女に一瞬で近づき、ダブルラリアットを叩きつけてそのまま振り抜いた。

 

「(ジッ・・・・)」

 

ツナは何やらあらぬ方向を睨んでから二人の方を向くと、少女達は完全に気を失っていた。眼鏡の少女はでんぐり返しのような格好でお尻を晒し、さらに眼鏡はヒビ割れ、口から泡を吹いていた。見た目は知的な美人なのだが、何とも滑稽な姿である。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

とりあえず捕縛しようと近づくツナ。

その瞬間。

 

ーーーーサァァァ・・・・。

 

「っ!」

 

何と、二人の少女達の姿が、藍色の霧となって消えたのだ。

キッと視線を向けると、ツナから少し離れた位置で気を失った二人の少女を足元に置いて自分を見据えてくる一人の剣士がいた。

黒い髪のおかっぱ頭と麻呂眉、蛇のような黄色の瞳が特徴的で、その腰には四本の剣を携えており、ツナの記憶にある人物と合致した。

 

「何故だ・・・・! 何故お前が、この次元世界にいるーーーー『幻騎士』っ!!」

 

「ーーーー久しぶり、否、初めましてになるな、沢田綱吉」

 

かつて死闘を繰り広げた強敵、『元ミルフィオーネファミリー・霧の六弔花 幻騎士』が、ソコに立っていた。

 




改めて、次回幻騎士と遭遇したツナの運命は?


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。