龍の乗り心地 (パリの民)
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一(はじめ)召喚される。

今回の主人公、一(はじめ)の一人称は自分です。

追記、知り合いに、改行が少なくて読みにくいと言われたので、現在修正中です。


彼の名前は斎藤一(さいとうはじめ)、一般的な家庭に生まれた。訳あって、親戚の家に引き取られたが、その話はまたいずれしよう。彼の年齢は15歳だ。そして、彼は今異世界に来ていた。

 

それも、白銀の龍の背中にいた。真っ白というか、銀色の大きさ100mはこえているほどの龍だ。その龍は飛行機などより遥かに早いスピードで飛んでいた。

 

 

「すみません、エイルさんもうちょいスピード落とせますか?自分このままだと吐いてしまいます」

 

 

「ぬ、人間は本当に脆弱だな」

 

 

無理もない。飛行機の3倍以上のスピードで飛び、その風圧などを直に受けているのだ。むしろ一が人間離れしている。まあ、比べる対象が龍なので仕方ないかもしれない。

 

すると龍は魔法を使い、一の周りの空気などを調節し、衝撃を和らげ、さらに気圧も地上と同じくらいにした。龍の姿は幻影魔法によって見えなくなっている。

 

一は自分が、この様な状況になった理由を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

一は、普通の中学生とは、少し違っていた。

 

彼には両親がいなかったのだ。彼は普通の家庭に生まれたが、事が起きたのは小学生5年生の夏のことだった。小学生だが、彼はしっかりしていたので、家の鍵を親から持たされていた。友達と遊び疲れ、家に帰った。

 

二階建ての一軒家だった家のリビングには誰もいなかった。母なら夕食を作るためにいるだろうし、父だって今日は早く帰ると言っていたから、家にいるはずだった。だが、家はいたって静かだった。

 

彼は二階にある自分の部屋へ向かおうとしたところ、階段にある足跡に気づいた。彼は子供特有の好奇心で、その足跡の向かう先へと行った。足跡はキッチンの隣にある窓まで続いて、その窓は、窓を開閉する所の付近だけ割れていた。きっと、足跡の人はここに向かったのだろう。足跡が来た方向の二階に行くと、廊下で父、寝室で母が血を流して死んでいた。心臓が止まっているとか確かめてないが、一目見て死んでるとわかった。

 

普段のならここでパニックになりかねない状況だが、一は怖いくらいに冷静だった。現実逃避をしているわけでもない。自分の親が殺されたと理解している上で、冷静だった。

 

ここで一は自分が少し他の人とずれてるのではと思い始めた。

 

そのあと学校の訓練などの時に教えてもらった警察の番号、110番に電話した。見たままの状況を教えて、数分後には警察が到着した。その後警察署まで連れていかれ、色々聞かれた後、この事件は強盗によるものとなった。

 

その後一は親の親戚の家に引き取ってもらった。この時の警察は一をこう言っていた。「とても冷静だった。冷静すぎて気持ち悪いくらいに」これは親戚達も同じだった。自分の親が殺されたのにも関わらず、まるで他人事の様に生活をしている一を見て、気持ち悪いと思っていた。だから、一は色んな親戚の間を行ったり来たりしていた。

 

そんな生活を3年ぐらい続け、一は中学2年になっていた。いつもの様に、特に挨拶もされずに家を出た。転校の回数はもう二桁に上っていた。彼はある決心をした。

 

自分は冷たい。でもそれはしょうがない。でもせめて、自分にとっての大切な人を見つけ、その人の為に生きようと。だが、これからだという時に、彼は死んでしまった。飲酒運転をしたトラックによって引かれたのだ。

 

そして、彼が気がつくと、真っ白、いや銀色の大きな壁の前にいた。なんなのだろうかと思い、突っついていると、声がした。

 

やけに高く、可愛い声だが、とても迫力があり、威圧的な喋り方だった。声は上の方から聞こえていたので、上を見上げると、とても大きなトカゲの様な顔があった。

 

まあ、トカゲよりも絶対かっこいいのだが。

 

 

「なんだ?人間か?」

 

「おお、でけー。ドラゴンですか?」

 

 

元々感情が薄いので、一はそこまで驚かない。

 

 

「ぬ、我を見ても驚かないとは、中々に興味深い人間だな」

 

「いや、これでも驚いでる方なんですがね」

 

「まあ、いい。お前を呼んだのは我だ。封印を解いてもらいたくてな」

 

「へー、封印されてたという事は、何か悪さでもしたんですか」

 

 

と言いつつ、一は迷わず白銀の壁に巻かれている鎖を取ろうとする。

 

 

「これは無理かもしれないですね。自分にはデカすぎます」

 

 

どこまでも気楽な感じに聞いて来る一に、流石の龍も呆れて来る。

 

 

「なぜ我の封印を解く事に躊躇しないのだ。確かにその為に呼んだが、封印を解かれたらお前を殺すかもしれないぞ?」

 

「自分としては、一度死んだ身として、死ぬ事に対する恐怖は、不思議とありませんね」

 

「ほう、自分が死んでもいいと?」

 

「そう言う訳ではないんですがね。死ぬのが怖くないと、死にたいは、別のものですから」

 

「まあ、お主がいるなら否定せん。あと封印を解く方法だが、そこの台座にある刀を抜いてくれ。一応抜く素質のある者を召喚したから、大丈夫なはずだ」

 

「ああ、これですか。よし、よいしょっ!」

 

 

剣は簡単に抜けた。その刀は真っ黒で、とても綺麗な物だったが、一は興味がないのか、その辺に捨てた。

 

 

「おいおい、お主。その刀は仮にも我を封印した物だぞ?かなりの技物だから、お主が持っていると良い。確か、名前は「鎖(くさり)」だったな」

 

「ん、そうなのですか?んじゃもらっときます」

 

 

真っ黒な刀、鎖の刺さっていた台座のすぐ近くに鞘が置いてあった。こちらも真っ黒だった。よくよく見ると、刀は完全に真っ黒という訳でもなく、所々に金色の模様が入っている。そこには花や鳥などの模様があった。鳥は炎に包まれていたので、鳳凰だろうか。

 

 

「それで、自分を殺すのですか?」

 

「いや、殺さんよ。そもそも、お主と我は魂が繋がってしまったからな。お主を殺すと我まで死んでしまう」

 

 

これには一も流石に驚く。

 

 

「...いいのか?」

 

「何がだ?」

 

「自分が死んだら、貴方も死ぬんですよ?貴方は強いから死ぬ事はないと思いますが、自分は一般人ですよ?それと一緒に貴方も死んでしまうかもしれないんですよ。何してるんですか」

 

「まあ、そうなったら受け入れよう。我は一瞬で死ぬより、ずっと封印されている方が嫌だと思うがな。なに、お主も普通の人間に比べたら強くなってる筈だ。そんなすぐには死なないだろう」

 

 

一は少し悩み、やがて決断する。

 

 

「うん、いいですね。決めました」

 

「何をだ?」

 

「自分にとっての大切な物を、貴方に決めました。これからは、貴方が死なないよう、つまり自分が死なないように努力して行こうと思います」

 

「フハハハッ、何を決めたかと思えば、そんな事か」

 

「むー、自分にとっては大事な事ですよ」

 

「ふむ、まあ、いいだろう。じゃ、その為の作戦を練ろうじゃないか」

 

 

すると、高さ100m以上はあるだろう巨大な白銀の龍は、光に包まれてみるみる小さくなり、やがて銀髪のロングヘアーの12、3歳くらいのとても可愛いらしい少女になった。一は、またもや驚かされる。

 

 

「そう言えば、我の名前を言っていなかったな。我の名はエルサイル。気軽にエイルと呼ぶがいい。因みに龍神だ」

 

「ほえー、龍神でしたか。え?なんで龍神が封印されるんですか?」

 

「邪龍イースト、奴が魔王4人と力を合わせ、我を討伐しようとしたのだ。因みにそこに人間が召喚した勇者30人も加わった。まあ、理由はわからんがどうせ、口車に乗せられたのだろう。だが、奴らは結局我を討伐できなかったのだ。そこで、勇者の中にいた武器生成の能力を持った者に全員分の魔力を集め、我を封印するための剣を作ったのだ。因みに、その剣を作る際にその勇者は死んだ。そして、我はこうして地下深くに封印されたのだ。で、その剣がお主の持ってる奴だ」

 

「え?あーはい。全然分かりませんが、分かりました。え?ちょっと待って、地下深く?ここめっちゃ明るいじゃないですか」

 

 

そう、ここは上に太陽があるのではと思えるくらいに明るい。確かに目を凝らしてみると、龍の立っているたところのやや上に天井らしきな物があった。龍自体が40階建てのビル相当なので、天井には気づかなかった。

 

「あれは、我の魔力を吸って魔石となったんだろう。「鎖」は封印した相手の魔力を空気中に分散するからな。だからこの空間は魔力だらけだ。その上、我の魔力は回復したので、魔力が行き場を失い漂っている」

 

「あの魔石を僕の強化に使えないですかね」

 

「一か八かやってみるのもいいかもな。魔石を全て取り込むんだ。お主に才能があれば生きる。才能がなければ死ぬ。どうだ、簡単だろ?」

 

 

エイルに説明されたものは、ようは自体の命をかけたギャンブル。しかも、話によると確率は0.01%未満。普通なら自体の命を棒に振るう行為であり、断るだろう。

 

 

「いいよ、何事も挑戦だよね」

 

 

呆れるほどに、軽い。

 

まあ、結果は成功した。吐血なり、嘔吐なり色々したが、結局は成功した。彼の才能なのだろうか。

 

 

「よかった。お主が死ななくて」

 

「ゲホッ、オエッ...まあ、結構苦しかったかがな」

 

 

するとエイルは一に抱きつく。一は感情が薄いが、それでも年頃の男子中学生だ。この行動に戸惑ったが、エイルが泣いている事に気づき、そっと抱きしめた。

 

 

「我は嬉しいぞ、お前が来てくれた事が。封印されてからどれだけの年月が流れた事か、封印を解けるほどの才能を持つ者をどれだけ待ち望んでいたか。我にはどうする事もできなかった。ただただ待つしか出来なかった!そもそも、なぜだ!私は人間の為に戦い、魔王や邪竜を討ち取ろうとした。なのに...なのになぜ!奴らは我を封じた!なぜそんな簡単に邪竜の言葉を信じれた!私の力は恐ろしいものだと言って封印したんだぞ!恐らく数100年は経っただろう。我はこんな地下深くで、ずっと1人で、寂しかった...。このまま、ずっと1人でいるのではと思うと、我は...」

 

「寂しかった、怖かった、辛かった、貴女の気持ちはよくわかります...などと言うと思います?自分には少々、その気持ちがわかりません。自分は小さい頃、と言っても今も小さいですが。その頃に親が二人とも死に、自分は1人になりました。親戚に引き取られましたが、みんな自分を気味悪がって、僕とは接しませんでした。家に帰っても自分は1人でした。食事は残り物が部屋にあり、トイレをする以外の理由で部屋から出して貰えませんでした。世間の目も有りますし、一応学校は行かせて貰っていましたが、そこでも僕は常に1人でした。でも、不思議と寂しいという感情が湧いてきませんでした。何故だかは分かりませんが、自分は親戚や友達、そして自分の親にも一切関心が有りませんでした。例え彼らが死んでも、一切興味ありませんでした。だから、自分は自分にとっての大切な人を1人決めて、その人について行こう。その人を守ってあげよう。ずっと傍にいてあげようと思ったのです。ちなみに、1人だという理由は、それ以上は自分には無理そうだからと思ったのです。そして、その1人が貴女です」

 

「我で、いいのか?」

 

「逆に聞きますが、自分が貴女について行っても、宜しいですか?」

 

「ああ、ああ!当たり前だ!!」

 

 

こうして、一は生涯のパートナーを決めた。この先どんな事があろうと、ついて行こうと一決心した。暫くすると、エイルが泣きやみ、これからの方針を決めることになった。

 

 

「まずはお主を強くする必要がある。人間よりも遥かに強くするには、魔物などを倒すのが一番だろう。では我の背中に乗れ。転移魔法で外に出るぞ。」

 

「はい、自分を頼みます。エイルさん」

 

「エイルでよい。生涯を共にするのだからな」

 

 

そして、冒頭に至る。




暇があれば次話も投稿します。


ハジメは小学生で自分の世間とのズレに対して、異常に対して気づいたが、道徳の教科書のおかげですかね。道徳は社会における常識を知るには一番です。従う華道家は別だが。


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一(はじめ)スリをされる

どうも、暇人です。




一とエイルの2人は初まりの森に来ていた。

 

ここは外と違い中にいる生物が以上な発達をしている。それは、この森にあるきの殆どが、ユグドラシルという大木で、神々が作った森とされている。

 

初まりの森という名前がついたのも、この木のせいである。だが、実際はエイルが作った森なのだ。その森は、エイルが枯れないようにと木々に異常な魔力を込めてしまったため、一本一本が、数100mという異常な高さを誇り、硬さも異常な物が出来上がっていた。

 

木々に大量の魔力があるため、そこの付近に住んでいる魔物はかなりの強さになっていて、人間どころか魔族すら近づきたくない場所が出来上がってしまった。

 

そこにいる生物たちは、勿論腕力が強い魔物もいるが、基本はみな馬鹿デカイ魔力を所持している。だから、こいつらを使って一を強化しようとエイルは考えている。いくら強くなろうが、結局エイル程の個体が現れるわけもない。

 

この世界にステータスと言う概念はない。

 

確かに魔物を殺すと多少は強くなるが、それは悪魔で実戦の経験を積んだからであって、経験値を得てレベルアップしたというわけではない。だから、強くなる方法はひたすら訓練、修行、実戦をするとかしかなく、この世界の住民は生まれ持った才能などによって強さが決まる。

 

その才能とは、魔法適正だ。生まれた時から大量の魔力を持った者もいるが、多くは一度に使う魔力量を減らす工夫をする。勿論、魔力を大量に持ってても、魔力なしに負けることもある。それは詠唱などに時間がかかって、その間にやられたりするからだ。

 

魔力量が強さを左右する世界、それがこの世界と言ってもいい。だから、この世界での強さは、生まれた時から決まっている。そこで、生まれた時に魔力量を測る風習もある。

 

一は魔力一般人と比べると、多い方だが、それでも強い人に会うと簡単に殺される。だから、初まりの森で、エイルが魔物をある程度弱らせ、とどめを一がさす事をする。

 

 

 

先ほども言った通り、この世界にレベルアップのシステムはない。

 

ではなぜ、こんな事をするのか、それは一の持っている刀「鎖」の能力を活用した結果だ。「鎖」の能力は、与えたダメージの分、相手から魔力を奪う能力、対象者の魔力量を利用して、相手を封じる能力、の2つだが、それはあくまで一時的に所有権を経た勇者が使った結果であり、「鎖」に選ばれた一が使うとまだ能力が追加される。

 

エイルはそこまで詳しくないため、彼女が知っている能力は1つだけだ。その1つが、殺した相手の能力を自分に上乗せする事だ。

 

これは与えたダメージなど関係なく、ただ単にとどめを刺せば発動する。この能力を利用して、一を強化するとエイルは言っている。因みに、エイルによると能力は後数個あるが、彼女の持っている鑑定のような能力でも分からないと言う。

 

彼女の持っている鑑定のような能力は、賢知の目というもので、見ている物のある程度の知識を得られる。例えば、刀を見るとこうなっている。

 

名「鎖」...勇者、魔王、邪龍の合作で、封印するために作られた物。

 

能力 魔力吸収、封印、魂の吸収

 

因みに、更にそれぞれの詳細も見れる。

 

例えば、封印の詳細は、対象者の魔力を利用し、可視の鎖を使い封印する。対象者の魔力が大きいほど、封印は強力な物になる。と書かれている。

 

因みにこの賢知の目は一も使える。

 

この目は生物を見るとその生物の保持する魔力量を見る事ができる。一般人の平均が、5000で、100万で王国の最強魔道士ぐらいである。

 

魔法は火、水、風、土、光、闇、無の7つの属性がある。これにも適正などがあり、王国最強となると、4つは持っていて普通である。

 

因みに一の魔力量は約1万、一般人より多いが、100万と比べると弱く感じてしまう。歴代のエイルを封印した勇者たちの平均は2000万、化物である。因みに魔王が、14億、邪龍が20億ぐらいである。

 

気になるエイルの魔力量は、8兆だ。一般人16億人分の魔力量を聞いた一は「エイルさんはすごいなー」と思うだけだった。

 

また、賢知の目は自分を見る事が出来なく、これは魔力量を見るのも同じである。魔力を使いすぎると魔力切れを起こし、気絶すると言うのが一般常識だ。

 

だが、一は森の魔物と戦う時は魔力切れ状態を維持しているよう、エイルに言われている。この世界の住民の殆どに出来ない事だが、何事にも例外がいる。

 

それがエイルで、彼女は魔力切れを起こしても平気だと一に会った事により、気付いた。なぜなら一が魔力のない世界の住民だったからだ。一がなぜこちらに来て魔力を持っていたのかは知らないが、来る前は少なくとも魔力がなかった。

 

だから、彼女は自分の勘を信じ、意図的に魔力切れを引き起こした。方法は簡単で、自分の魔力を使って自分にリミッターをかけるのだ。そのリミッターで魔力量を0にする。リミッターは最大自分の魔力を0までに出来る。

 

エイルが魔力切れを起こしてもなんら問題なかった。なので、一に魔力切れの状態で戦うように指示したのだ。いわゆる手加減だ。

 

改めて、初まりの森にある魔物を見て行こう。ここで住む魔物は、魔力により突然変異を起こし、一番弱い者でも魔力が100万以上はあった。邪龍以上の個体も複数生息している。ここの魔物はここが気に入っていて、皆外に出ようとしないため、外の世界は無事ですんでいる。ここで、一はひたすら魔物を殺し、強くなっていった。

 

 

 

 

一がエイルと出会ってから、約一年がすぎたころ、一は初まりの森でひたすら魔物を殺した結果、その森にいる魔物は全滅した。この森は魔物が絶滅しようと、また外から入ってくるため、特に影響はない。

 

 

「いやー、自分結構強くなったと思うんですよね。エイルに比べるとまだまだですけどね」

 

「うむ、まあ、そうだろう」

 

「にしても、絶滅させて本当に大丈夫でしょうか?」

 

「何、一週間もすれば元に戻る。人間がここにくると魔力過多でしぬが、魔物の適応力は半端でないからな。我も驚かされた」

 

 

2人は巨大な木に作った家で昼食をとっていた。肉や野菜は勿論ここで採れた物だ。家はかなり広く、一が自分で作ったキッチンなどもあり、森の中だとは思えない空間が広がっている。料理を作るのは基本一だ。

 

 

「じゃあ、また魔物が来るまで待ちますか。のんびりと」

 

「なあ、一よ。お主、人間の住む街に行かないのか?」

 

「え、なんで行くんですか?」

 

「うーむ、お主も人と触れ合いをだな。うーん」

 

「ああ、なるほど。人々の様子をしっかり知っておかないと、また昔みたいにエイルが封印されるかもしれないから、って事ですよね。じゃあ、2人で人の街に行きましょうか」

 

「まあ、そうだな。行くか」

 

 

エイルは、ため息をつく。自分は自分以上の化物を生んでしまったのだと思うと、龍なのに胃が痛くなる。いや、龍にも胃はあるが。エイルが見た一の魔力量は約20兆、自分の魔力量を遥かに超えている。

 

最初の方はエイルが敵を弱めてから、一がとどめを刺していたが、4ヶ月ぐらい経った頃だろうか?そこから一は自分で出かけて狩をするようになり、今では2週に一度は森の魔物を絶滅させている。その結果、20兆という脅威の魔力量を叩き出したのだ。

 

一はエイルと共に空を飛んで移動している。

 

「一よ、お主、リミッターを自分につけた方が良いと思うぞ」

 

「わかりました。じゃあ、魔力量が1万になったら言ってください。あと、一旦降りましょうか」

 

一は地面に降り立つ。降りた所は砂漠の上だった。

 

「うむ、今一万になったぞ。じゃ、ここからは我の上に乗るといい」

 

最初はエイルに乗ると酔っていた一だが、今ではすっかり慣れてしまった。エイルの飛ぶ速さはかなりの物で、1時間くらいで街の近くの森についた。エイルは龍の姿から可愛いらしい銀髪少女の姿に戻り、透明になる魔法を解き、一と一緒に門まで歩いていった。

 

一は中性的な顔をしており、女性と言われればそう思える程だ。いわゆる男の娘だ。だが、身長は男にしては低くても、エイルよりは頭1つ分くらい高いので、門番から見れば可愛らしい姉妹が来たとなるだろう。

 

「お嬢さんたち、身分証明証とかは持っている?」

 

お嬢さんと言われて、訂正しようとしたが、面倒なので放っておく。因みに、一は最初に召喚された時は中学の学ランを着ていて、ずっとそのままだ。

 

肩にかけるタイプの鞄ももっていて、中にはこの街に来る途中で倒して魔物の魔石が入っている。因みにエイルは真っ白なワンピースだ。

 

門番は一の服を珍しい服だと思ったが、特に気にも止めなかった。

 

 

「いえ、この子と一緒に田舎から来たもので、持っていないです。これからギルドで発行する予定です」

 

 

一は、どうせあるだろうと思い、ギルドの名を出す。

 

 

「わかった。ギルドはあっちの大きな看板がある所だ。それにしても、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ、自分、魔法は得意なんで」

 

「人は見かけによらないって事か、頑張れよ。通行料は特別に、免除して置いてやるよ。と言うか、変な剣持ってるのに魔法か?面白い嬢ちゃんだな」

 

「そうですか?ありがとうございます」「ありがとう」

 

 

2人はギルドに向かって歩いた。

 

 

「やっぱり、その喋り方は難しいですか?」

 

「ああ、我には使いづらいな。やっぱり、自分に合ったものが一番だ」

 

「まあ、無理しないで下さいね」

 

 

2人は一緒にギルドまで歩いて行った。その途中で、スリにあった。男の子がぶつかったと同時に、一の持っていた鞄を奪っていった。

 

 

「あの人の子、いい度胸をしている」

 

「はは、まさか街に来て一番最初がスリですか」

 

「どうするのだ?奪い返して、兵隊にでも渡すのか?」

 

「いやだな、エイルさん。自分がそんな酷い事する訳がないじゃないですか。あの子兵隊に捕まったら、牢屋に閉じ込められ、酷い生活をするに決まってます。なので」

 

「なので?」

 

 

一は、なんの躊躇いも無く、言った。

 

 

「殺しましょう」

 

 

 

 

その男の子は、この頃よくスリをしていた。狙いは基本、街に入って来たばかりの隙だらけの人たちだ。なぜそんな事をしていたのか。それは彼の母親が病気にかかり、治療の為にお金が必要だったからだ。

 

彼の家は貧乏で、ロクに薬も買えなかった。だから、彼は今回のスリの結果に喜んでいた。見た事ない鞄の中には、大きな魔石が3つ入っていた。なんの魔石かは知らないが、これ程大きな物だ、きっと高値で売れる。

 

これでやっと、母の病気を治す事が出来る。そう思っていた。

 

事が起きたのは、彼が街の外れにある自分の家に帰る途中の事だった。自分がスリをした2人姉妹が、目の前に立っていた。

 

その2人を見た瞬間、彼は後方に向かって逃げた。

 

 

「ッ!?なんで、あいつら!」

 

 

男の子は必死に逃げた。捕まったら間違いなく、兵隊に渡され、自分は牢屋行きだと思ったからだ。だが、彼が後ろを振り向くと、姉妹の姉の方が剣を抜いて、自分に斬りかかってきた。

 

 

「なっ!?」

 

 

まさか、子供を躊躇無く斬りに来るとは思っていなかった。死んだと思い、自然と目を瞑った。

 

 

 

キン!

 

 

 

金属と金属が衝突する音と共に、少年は目を開けた。目の前に、金髪の青年がいて、彼が姉の剣を受け止めてくれていた。

 

 

「...」

 

「子供に何してるんだ!」

 

 

金髪は大きな声で言った。

 

 

「僕はアスフェル帝国の勇者!ユウキだ。名乗れ!」

 

「...何をしたも何も、スリにあったから、奪い返しに来ただけだ」

 

 

男の子はとっさに自分の生きる道を見つけた。

 

 

「違うよ!そのお姉さんが僕を騙したんだ!この魔石で売った金を使って親を助けるんだと言って、これを僕にくれたんだ!そして僕が貰ったらスリだと言って襲って来たんだ!」

 

「なんだと!?とんだ外道だな!僕が相手する!」

 

 

本来なら勇者は姉妹の姉の服に疑問を持ち、すぐに自分と同じとこから来たと分かるだろうが、この時はそんな事などこれぽっちも考えてなかった。

 

 

「っく、仕方ない。覚えてろよー!」

 

 

姉は妹を担いで、街の方に逃げていった。

 

 

「あの、助けてくれてありがとうございました」

 

「いや、いいんだ。これも勇者の仕事だしね」

 

「じゃあ、僕はお母さんの所に戻りますね」

 

「うん、気おつけてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、さっきのは」

 

「ん、何がです?」

 

「殺しましょうとかお主言ってなかったか?」

 

「ああ、その事ですか。まあ、魔石は魔物倒せばいいし、それにあの子はもうすぐに死にますよ、絶対ね」

 

「ほう、あれを使うとはお主も悪よのう」

 

「突っ込んだ方がいいのかな。んじゃ、ここら辺で魔物倒して魔石手に入れますか」

 

 

エイルは一に手を伸ばし、2人は手を繋いで門番に挨拶してから門を出て、街への道の横に広がる森に入って行った。

 

 

 

 

男の子が家に帰る途中で死に絶えていた。街の中だが、そこそこの草原が広がる場所の上でだ。死因は心肺停止だった。これは一が刀「鎖」で彼の心臓などを封印して、動けなくしたからだ。

 

心臓が止まれば死ぬ。アンデット以外の全生物が共通することだ。もちろん、エイルという例外の事を考えてはいけない。そして、男の子の母も、男の子が死んでから、それを追うように死んだ。

 

勇者カズマ・ユウキはこの事を知らない。

 

また、男の子の死体が発見されたが、特に事件にはならなかった。スリをしていた事はよく知っているし、そのスリで返り討ちにあったのだろうと、誰も気にしなかった。

 

 




うーん、エイルの喋り方がよくわからん。追記:勇者の名前と苗字が逆になってたので、直しました。


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一(はじめ)ギルマスにあう。

レディファーストって、随分とご都合主義ですよね。


アスフェル帝国の領土の北東にある町、名前はアルトレア。この世界には大きな国が5つある。エルフの国、コートル。獣人の国、スレイ。後は人の国である。アスフェルとマートン。

 

最後にどの種族でも受け入れる国、サリエル。この国はどの種族でも受け入れる国だが、王が人間なので、一応人の国と分類される。大陸などの話はまた今度にしよう。

 

 

一達はアルトレアの北門から出て、すぐの場所に広がる森でゴブリンを狩っていた。一の予想どうりなら、冒険者になるには登録料が必要になる。

 

用心に越した事はないので、ゴブリンを狩り、魔石を売ってお金にしようと思っている。魔物を殺すと、魔物の中にあった魔力が行き場を失い、固まって結晶になる。それを魔石と呼び、魔力が少ない人でも多くの魔力を扱えるようにするために重宝される。

 

もちろん、魔力は大きければ大きいほどいい。それは数百年前とは変わらないだろうとエイルは言う。魔石は万能ではなく、あくまで他人の魔力なので自分の中に入る事はない。せいぜい、魔法を使う時に消費するだけだ。

 

魔物の遺体は魔石とは別でまた売れる。まあ、ゴブリンの遺体は売れないのだが、強い魔物の遺体は相当な価値になる。例えば、始まりの森にいた魔物達だ。一番弱いゴブリンでも、ゴブリンエンペラーというゴブリンキングの上位しか存在しない森だ。

 

一は一応遺体を全て無限収納(インベントリ)に入れてるので、それを売れば、余裕で国家予算を上回る。

 

 

「まあ、そんなことすれば狙われるのは目に見えてるので、しませんがね」

 

「お主は誰と話してるんだ?」

 

「いえ、なんでもないです。魔石はこれだけあれば足りると思いますので、帰りましょう」

 

 

門番にまたあったが、魔石を換金してからお金を渡すという事になった。集まった魔石は全部で18個。冒険者ギルドに行って2人は魔石を換金する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドに入った一は、一番近くにいた接客嬢のところへいく。その後ろに、一のブレザーの袖を掴みながら、エイルが付いてくる。

 

青く長い髪のツインテールの可愛らしい女の子だ。体も出るとこしっかり出ている。が、一は特に興味を示す事もなく言う。

 

 

「すみません、魔石を換金したいのですが」

 

「冒険者カードを出してください」

 

「あ、自分持ってないです。魔石換金して、そのお金で登録しようと思っています」

 

「はい、では此方に魔石を出してください。それと、あなたに関する情報を書けるだけでいいので、こちらの板に書いてください」

 

 

木製の板で、紙はないのだろうか。一は年齢、性別、名前、魔力量、ここに来る前どこにいたかを書いた。それと、エイルの分も書いた。年齢は一が15で、エイルが見た目からして、11歳だ。

 

一の髪は黒髪で男にしてはやや長い。まあ、前の世界でろくに散髪にも行かせてもらえず、自分で切っていたので、少々雑な髪型だ。傍から見ればただのショートなのだが。ちなみにエイルは銀髪の長髪だが、基本彼女は髪を切らない。

 

一が魔石を出すと、後ろにいた男達から笑い声が聞こえてくる。この世界の魔石はある程度特徴があり、魔石を見ればどんな魔物の物かわかってしまう。

 

恐らく、ゴブリンの魔石を出した上に、冒険者カードもないから、田舎物だと思われてるのだろう。だが、一次にが出した魔石に声が驚愕のものへと変わる。

 

一が出したのは、ワイバーンの魔石。ゴブリン狩りの帰りに、襲われた結果だ。

 

ギルドの受付嬢は一たちを待たせ、すぐに受付の奥に入っていった。そして慌ただしく出てきて、一たちが奥へ入るように言う。

 

 

「ぎ、ギルドマスターの所へ案内します、こちらへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一は吃驚していた。まさか、たかだかトカゲのような鳥を倒したらテンプレが起きるとは。一は小説などで異世界転生ものは読んだが、少しである。

 

ワイバーンという竜を知らない。その上ワイバーンはかなり弱く、始まりの森にいたゴブリンよりも弱い。ちなみに、始まりの森で一番強い生物はスライムだ。一番適応能力が高く、その上魔力さえあれば、ドラゴンよりも強くなる。

 

おまけにスライムは魔力を吸収しやすい性質がある。

 

奥へ案内され、受付嬢がドアをノックする。

 

 

「入れ」

 

『どうしましょう!エイルさん、早速ピンチです。というか、魔石見ただけでなんの種族か大体わかるとかチートじゃないですか!?自分の目にはどれも無駄に輝く石なんですが!?あれただでかいだけの鳥ですよね!もう訳わかんないですよ!こうなるんだったら、もうちょっと異世界について勉強しとくんだった!トラン〇スルーの動画なんか見てる場合じゃないよね!』

 

 

慌てすぎて、念話を使う始末の一。だが、顔に変化は一切見られない。流石としか言いようがない。

 

 

『う、うむ。お主取り敢えず落ち着け、まあ、なるようになるだろ。それに、お主その頃まだこうなると知らなかっただろう。』

 

 

エイルも一と一年一緒に過ごしたが、ここまで焦った一は見たことない。だが、エイルに言われ、一はすぐに落ち着く。見た目に変化はないが。

 

どうやら、一は念話だと性格が変わるらしい。というか、彼は演じて見ただけなのだ。これといった感情がないので、感情豊かな人を演じた。心の中でも。

 

 

「君がハジメくんか。それと、エイルちゃんだな。全く、こんな見た目でどうして男なんだ。そっちに座ってくれ。私の名前はハネスだ」

 

 

ギルドマスターは、自分の向かいにあるソファーを指す。一は執事のように、ソファーの隣に周り、エイルを座らせ、自分はその側に立った。

 

学校の制服のままなので、意外と様になってる。まあ、顔はショトヘアーの女の子で、男装してる様に見えるが、そこは触れないでおこう。

 

ちなみに、一は今まで服の洗濯は始まりの森にある川で洗濯し、そこで体も洗っている。後は魔法、【浄化】を使えば、服は綺麗になり、さらに服についていた水分まで吹っ飛ぶ。一が最も気に入った魔法だ。

 

 

「ワイバーンの魔石があるということは、ワイバーンを倒したんだな。死体はどうしたんだ?」

 

「我は、ワイバーンの遺体は食べるからな。取っておいている」

 

「できれば革とか売って欲しいのだがな。どうだろうか?」

 

 

ワイバーンだけではないが、竜や龍の肉はかなり美味い。

 

 

「値段によりますね」

 

 

エイルの隣にいた一が口を開く。

 

 

「ワイバーン討伐の値段が、金貨十枚だが、残念ながら今回の討伐はギルドを通してない。よって、討伐報酬は出ない。それと、倉庫に行こう。ワイバーンの遺体はそこで見せてくれ」

 

 

一達は移動しながら念話をする。倉庫はギルドの裏にかなり大きいものがあるらしい。

 

 

『一、どうする。金をもらえないぞ』

 

『まあ、ギルドで依頼受けてないし、報酬がないのも当然ですよ。むしろ営業妨害とか言われなくて助かったかな?それより、この人嘘をつく可能性があるので、鎌をかけますか』

 

『なぜわかるのだ?それと、営業妨害?』

 

『もしかしたら、自分たちが倒したワイバーンの依頼があって、それを受けた人はその依頼受けられないじゃないですか。すると、依頼失敗になり、無駄足どころか、マイナスになる人もいるかもしれません。まあ、バレなきゃ犯罪じゃないってどっかの宇宙人が言ってましたしね。大丈夫でしょう。それと、自分割と嘘を見破ることは割と得意ですよ』

 

『...』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一達は、ギルドの裏手にある巨大な倉庫にやってきた。地下にも倉庫が伸びてるので、見た目よりかなりでかい。

 

アイテムボックスは在り来りな魔法だ。見た目は無限収納(インベントリ)と同じだが、多くの物を入れるには、多くの魔力を使う。だから、皆がアイテムボックスに入れるのは貴重品だけで、冒険者は討伐した魔物を馬車などに乗せて運ぶ。ワイバーンほどの大きな物を入れれるアイテムボックス持ちの"エイル"にハネスは驚いた。

 

まあ、エイルが使ってる無限収納は、魔力を消費しないのだが。

 

アイテムボックスは魔力を使うが、インベントリは魔力を消費しない。アイテムボックスの容量は限界があり、何より時間経過する。だから、時間経過がない、インベントリの方がいいのだ。

 

ちなみに、一の魔力は1万しかないので、現在の魔力量は約50万のエイルに物をもたせている。男なのに情けないと思ってはダメだぞ。

 

 

「...鱗、血、爪、目、牙、火属性の魔石か」

 

 

ワイバーンは首と体が離れていて、他に外傷はなく、とても綺麗な状態だ。

 

魔石は大きさだけでなく、色によっても種類は変わる。それぞれの生物の得意だった属性の魔石が生成されることが多い。

 

属性がないものよりも、属性つきの方が遥かに値がはる。ましてやこれだけ大きいのだ。流石のギルドマスターも欲が出てしまう。

 

属性は全部で、火、水、風、土、光、闇、無の7つだ。アイテムボックスは闇属性で、無限収納は無属性だ。無属性を持ってる人はかなり少ないく、無属性は基本的に魔力を消費しない。

 

ユニークスキルと言えば分かりやすいか。エイルはもともと無限収納を持っていたが、どうしてか一も使える。

 

 

「これだけいいものだ、金貨13はするが、特別に、15で買わせてもらおう。肉も売るなら、18だ」

 

「その値段じゃあ、売れませんね。少なくとも、35枚はほしい」

 

 

実はこれでも安いのだ。魔石も含めれば、60は行く代物なのだ。だが、ハネスは自分の提案を断った一に対し、怒りを露わにする。

 

 

「う、うるさい!!私が18枚と言ったんだ!!大人しく従え!」

 

「交渉決裂ですね。じゃあ、また、会わないことを願いましょう。行きますよ、エイルさん」

 

 

あの態度はどう考えても正当な価格で取引していない。今日は野宿でもするかと考えるながら、エイルを連れ倉庫から出て行く。

 

 

「覚えておけよ、俺に逆らった事に後悔させてやる...」

 

 

その言葉を聞いた一の横顔は、どこか嬉しそうだった。

 

 

 




危険な森の中

女「ひっ、こ、怖い。男くん先に行って」

そんな時はこう返す。

男「お先どうぞ、レディファーストですので」



女死亡、的な?


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一(はじめ)は一般人だ。

...


この世界には大きな国が5つある。

 

 

エルフの国、コートル王国。

 

中央の大陸の西にある大きな島が、そのままが彼らの領土だ。その島にはほぼ中央に巨木であるユグドラシルが生えていて、彼らはその木を御神木のように崇めてる。そう、あのユグドラシルだ。エイルの育てたユグドラシルと同じ種類で、小さいものでも500mを越える。大きいものでは1km以上もある。非常にプライドが高いため、あまり他国との"表向き"の貿易は行われていない。プライドが高いのは、ある男の方が傾向が強く、男性至上主義の国だ。そのため、女のエルフが国から逃げ出すことが希にある。

 

 

獣人の国、スレイ王国。

 

領土の北側に世界最大の鉱山がある。ちなみに、この世界にもオリハルコンはあるのだが、加工できる人は極々僅かだ。オリハルコンは世界一硬い鉱物で、融点は10万度ぐらいで、とても加工しずらいのだ。加工の仕方は科学が発展しない世界では魔法しかないのだ。加工するならせめて魔力量が100万以上あり、その上で鍛冶師をしている人なんて、限りなくいないに等しい。そのため、オリハルコンはそこまで値が高くない。それでもダイヤよりは高いが。また、この国は島国なのだが、アスフェル帝国の領土に非常に近くに、1本の巨大な橋によって繋がっている。

 

 

人の国である、アスフェル帝国。

 

現在一とエイルがいる国である。帝都付近にある巨大なダンジョンを中心に発展した国である。流石に帝都の中にダンジョンがあると、強力な魔物が出てきた時の被害が大きいので、帝都の中ではなく、ダンジョンのすぐ横に帝都を置いたのだ。帝都から北東にある町、アルトレアに一達は滞在中だ。なぜ、この国は王国ではなく、帝国なのかと言うと、この国の王がほかよりも上だとわからせるために、王が自らを皇帝と名乗ったからである。この国は、全ての国の中で最大の領土を誇っている。

 

 

マートン王国。

 

アスフェル帝国の傍に位置する王国で、よく戦争するのだが、今は平和条約を結んでいる。

 

 

サリエル王国。

 

昔に、召喚された勇者、いや英雄によって作られた国だ。魔族も含む全ての種族を受け入れる国として有名で、その理由もあってか、人間の国に嫌われている。今も国のトップは、その英雄の子孫である。この国は基本どの種族も受け入れるが、知性がある事が条件だ。そして、王が人間なので、一応人の国と分類される。

 

 

地図作ってみました。

 

 

【挿絵表示】

 

 

砂漠の中心付近にある●が、エイルの封印されていた場所です。

 

また、地図中の草原でも砂漠でもないところは、森と考えて構いません。帝都を除いて。

 

 

 

 

斉藤 一 (さいとう はじめ)

 

身長 178cm

 

体重 58kg

 

魔力量 約20兆

 

...魔力を見る魔法は自分を見ることは出来ない。鏡を見たとしても、それは厳密には自分ではないので、自分の魔力量を見る方法はない。

 

容姿

 

黒髪が肩よりも長くなっている。元はそこまででもなかったが、森の中で一年過ごし、女の子並の長さになっている。そのため、見た目は顔が中性的なこともあり、背の高い女性にしか見えない。

 

性格

 

基本無表情で、自己中心的と言うか、エイル中心的だ。感情がところどころ欠如している。特に、人を殺すこと、死ぬことに対しては。前世では基本部屋の中にいた。

 

 

過去

 

 

小学5年のとき、帰宅すると、両親が死んでいた。だが、特に何も思うことなく、そのせいで皆から気味悪いと思われる。後に親戚に引き取られるが、特に関わることもなく、一は家にいる時は殆ど自分の部屋にいた。学校には普通に行っていて、いじめもなかったが、関わろうとする人もいなく、常に1人だった。

 

中2(14さい)のときに召喚され、エイルによって作られた、始まりの森で一年過ごした後、人が住む街に行った。

 

 

使用武器、封刀(「鎖」)

 

...この世界にレベルアップシステムはないので、この刀の能力 (相手の力を奪う能力) が唯一強くなる手っ取り早い手段だ。ちなみに、一は刀を腰にさすこともあるが、基本は手で持っている。どこに刀があろうが、一が考えただけで、刀は現れる。また、他人が使うと、使用者は死ぬ。

 

 

お金

 

銅貨、銀貨、金貨、白金貨、聖金貨があり、ぞれぞれ100枚ごとに硬貨が変わる。昔は硬貨がバラバラだったのだが、貿易のことも考え、全て統一した。ちなみに、貿易していないコートル王国は硬貨の統一をしていない。

 

 

 

 

エイルは一と一緒に宿を探していた。割と広い道は、夜だが人が多かった。

 

一とエイルは、北門からギルドに伸びる大きな道を歩いていた。周りには露店などが多い。一は鍛冶屋に行き、そこで魔物の素材やらを売るつもりだった。特にワイバーンなどの竜の鱗などは防具などに使えるので、かなりの値段になるはずだ。勿論誰かに聞くなどということはせず、あくまで推測だが、恐らく当たってるだろう。

 

「うむ、ではお金はどうする?」

 

「すみません、エイルさん。スラム街の付近で野宿することになるかもしれません」

 

「まあ、気にするな。と言うか、お主なら家程度すぐに作れるんじゃないのか?私はそこまでこだわりはないぞ?」

 

「そうですね…そう言ってもらえると嬉しいです」

 

そんな話を道の中歩きながらしていたせいか、偶然にもそれを聞いていた人がいた。

 

「その話、聞かせてもらったわ!あなた達、特に姉の方は服がかなり上質なものだから、それを売ってもらえれば、私が宿を紹介するわ!」

 

通りかかった店、恐らく服屋の前で仁王立ちしている態度だけでかいお嬢様のような赤髪のショートの女の子が一たちに言った。

 

「いいですよ?その代わり、自分の新しい衣装を同じものを5着、彼女が好きな服を5着、と言うことにしましょう。それと1週間の宿代です」

 

「はあ!?流石に多すぎない!?」

 

「いえいえ、妥当だと思いますよ?よく見てください、この繊維のきめ細かさ、引っ張ってもそう簡単には破けない頑丈さ。更に言うと...エイルさん。自分に小規模の水魔法を当ててください」

 

「うむ、承知した」

 

手のひらサイズの水の玉ができ、一の服にぶつかる。これには女の子も驚く。せっかく買おうとしていた服が濡れ、汚れてしまったからだ。いや、乾かせば大丈夫だろうと自分を落ち着かせる。

 

「実はこれ、水を弾きます」

 

「な!?」

 

彼女は慌てて水に濡れるはずだった部分を見るが、少しも濡れていなかった。そう、一の学校の制服は防水性に優れている。だが、この程度の技術実はこの世界にもある。ただ、珍しいだけだ。そして、そう言った物は帰属らによく売れる。まあ、この世界の防水加工といえば植物の特性を利用したもので、科学的なものではないのだが。

 

「わかったわ、交渉成立よ。私はステラ。それと、服はそこまで高いのを買わないでね」

 

 

「ああ、よろしくお願いします。ステラさん自分は一と言い、こちらはエイルさんです」

 

今日は一もエイルも色々疲れたし、服を買うのは明日になった。

 

 

 

 

一たちが泊まることになった宿は、街にある二つの門から伸びた道の交差する場所にある寄り道亭と言う宿屋だった。ゲームで見た事のある宿屋にそっくりだった。これなら自分が作った家の方がマシだったと後悔する一だった。エイルはたまにはこう言うのもいいかと納得していたので、一は特に気にしなかった。

 

宿屋で出迎えてくれたのは、どうやら看板娘らしい。水色の腰まで伸びる可愛らしい女の子だった。特徴と言えば、大きいと言うぐらいか。身長は160前後だが、胸がかなり大きい。まあ、ステラが小さいと言うか無いので、それと比べてしまったせいで大きく感じるだけかもしれない。ステラの胸は、見た目が10歳ぐらいとエイルほどの大きさしかない。貧乳というやつだろう。

 

「なるほど、これが格差社会ですか」

 

「なんで私の胸を見ていうのよ!第一に、あんたも私よりでかいのに、胸同じくらいじゃない!」

 

「何言ってるんです?自分は男ですよ?」

 

「は?何言ってんの?」

 

「いいですよ、信じなくて。信じられた試してが無いので慣れました」

 

「その顔で信じろという方が無理であろうが」

 

一は1年森の中にいて、髪を切っていないのでもうどこから見ても女の子だ。

 

「全く、エイルさんまで...まあ、何にせよ。すみません。ここの宿1週間分お願いします。宿代はそっちの貧相な赤毛が」

 

「え?あ、はい!では中に」

 

「私のどこが貧相なのよ!胸か!胸なのか!?」

 

一達は宿で出された食事をし、濡れたタオルで体をふきベットにダイブした。ちなみに、一とエイルは同じベットで寝ている。男女が一緒のベットなので卑猥な雰囲気があっても良さそうだが、どう見ても姉妹が一緒に寝てるとしか思えない。

 

 

一達は次の日、ステラの店に来ていた。

 

「はい、好きなの持って行きなさい」

 

ステラは親が帝都にいて、彼女1人ここに来て、わずか17歳で自分の店を持っている。準備には親が手伝ってくれたが、その後は自分1人でなんとかやっているすごい子だ。たまに親が訪ねて来るらしい。まあ、一は特に興味がない話だが、エイルは割と感動してたりする。

 

一よりもよっぽどエイルの方が人間らしい性格をしている。

 

「んー、エイルさんの執事的な存在さしなー、自分。燕尾服とか良いかも」

 

「我はこう言うのがよくわからんな。着ればいいだろうが、なんでも」

 

「エイルちゃん!あなたそんなに可愛いんだから!もういいわ、私が選んであげる。それとハジメは男なら、男だと思われるような服装にしなさい」

 

ステラはエイルを店の奥に連れていく。エイルの位置は気配で一は把握してるので、万が一の時でも対応できるだろう。

 

「うーん、自分の制服でも男物なのに、なんでそう見えないんだろう?ああ、なるほど、顔ですか。だから、周りから見て男装してるとしか見えないんですね。ならば...」

 

一の服装選びは、10分もかからなかった。と言うか、ほとんど欲しいものを探す時間に使われてたのでもっと早くも終われたのだ。一が選び終わってから更に30分後に、やっとエイルとステラがやってくる。一の性格上、よく待ってあげた方である。これがエイルを待つのでなければ、一は少したりとも待たなかっただろう。

 

「じゃーん!どう?可愛いでしょ?なんだか妹ができた見たい。まあ、妹は本当にいるけどね」

 

エイルの腰まで伸びた銀髪をまとめあげ、ポニーテールにし、麦わら帽子を被らせ、白いワンピースを着せている。時間がかかったのは髪の毛のせいだろうと予想がつく。

 

「流石エイルさん、可愛いですね」

 

「お、お主にそう言ってもらえると嬉しいな」

 

一とて、一般的な男子高校生(笑)なので、そういうことにも興味が無いわけでなない。ただ、それを押さえつける理性が強すぎるのだ。

 

「ではステラさん、自分の服はここに置いていきますよ。1年間なら汚れると勝手に綺麗になるサービスつきです」

 

一は既に選んだ燕尾服に着替えている。燕尾服は黒の割合が多いやつを選んでいる。

 

「あんたそれでも女の子に見えるわよ?」

 

「ええ、だからこれを顔につけ、髪を後ろでまとめ、黒いローブを着ます」

 

言葉通りに実行していく一。仮面は店に飾ってあった不気味な微笑みをしている仮面をつけた。更に黒いローブを着て、これで鎌でも持てば死神だろう。

 

「あ、その仮面一つしかないからごめんねー。燕尾服は5着持って行っていいわよ。どうせあんた服は全部同じでいいとか思ってるでしょ。でもエイルちゃんは私が選んだのを持っていってね」

 

そして彼らはここで別れ、一達はギルドへと向かった。2人とも冒険者らしくない格好だと言うことは間違いないだろう。何一つ防具をつけてないのだから。武器を持っているのは一だけで、しかも今はそれをしまっているので、冒険者には見えないだろう

 

と言うか、一が完璧に変な人だ。白いワンピースを着た可愛い少女につきまとう黒いローブの仮面の人と言う構造なのだから。




眠い。


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一(はじめ)依頼をされる

少佐かっこいいー!



一達がギルドにやってきたのは、夕べだった。本来ならもっと早く来れたが、街を見て回っていたのでこの時間となった。ちなみに、デートだ。

 

ギルドの冒険者達は、普段街から出て魔物を狩って、夜もしくは夕べくらいにギルドに帰ってくる。まあ、以来によっては数週間帰らないこともあるが、そう言う理由で、今の時間帯はとても賑わう。

 

ギルドは酒場のようなこともやっている。大きい所ではそう言うことはないが、珍しいという訳でもない。

 

「全く、いつになったら一は我の婿になるのやら。あまり乙女を待たすでない」

 

「え、自分ら夫婦じゃなかったんですか?」

 

彼らは一年でかなり仲良くなった。

 

「え、え!?夫婦だったのか?でも結婚式もあげてないし...」

 

「何言ってるんですか?お互いに認識すればいいんですよ。そもそもそんな宗教的な行事に従う必要なんてないんですよ。常識なんて、この人間社会に溶け込む以外使う理由がありませんね」

 

彼は、法には従うつもりだが、それが彼らにとって不都合なら、いつで罪を犯す。たとえそれが、全世界の生物を敵に回そうが、彼は気にしないだろう。

 

「うん?やけにギルドが静かな」

 

時間帯故の騒がしさが、ない。

 

「何かあったのでしょうか?」

 

 

 

 

この街、アルトレアの冒険者ギルドのギルドマスターであるハネスは命の危機にあっていた。それは、1人の男が来たことが原因だ。

 

男の名前は、ギース。帝都にあるこの国最大のギルドのギルドマスターにして、一般的には知られていない闇ギルドの創設者である。

 

冒険者はランクがあり、下はGランク、上はSSランクまである。現在、Sランクの人は3人しかいなく、SSランクは誰もいない。正確には昔いたが、死んでしまったのだ。

 

SランクとAランクの差は激しく、Sはもれなく化物だと言われている。

 

このギースと言う男はAランクであり、かなりの実力者でもある。

 

そんな大物がなぜここに来たかと言うと、旅行がてら脱税してると言われている男を捕まえに来たのだ。今回、彼は、ハネスが抵抗したら殺すつもりでいる。そのためにも、騎士を5人連れて来たのだから。

 

「帝都のギルドマスターのギースだ、脱税している容疑で貴様を連行する。何、事情を聞くだけだ。くれぐれも抵抗するなよ」

 

「あ、な?な...」

 

ギースとハネスは受付台越しに話をしているが、ハネスの動揺はとてもわかりやすかった。

 

一たちも騒ぎ(と言っても誰1人喋っていないが)を聞きつけ、やってきた。ギルドの外で中を見ていた中年男性に話を聞いて、状況を把握した。

 

「ここだけの話、実は闇ギルドって言う殺し屋が雇えるギルドがあって、あのギースってのがそこの創設者っていう噂もあるんだぜ?」

 

「へー、なるほど」

 

恐らく、その噂は本当で、人員募集のためにわざと流したのだろう。

 

「ふ、ふ...ふざけるな!」

 

ハネスは受付台を叩いて言う。

 

「私はそんなことなどしていない!」

 

「疑うなら証拠を出せ!ないならとっとと帰れ!私はこれでも忙しいのだ!」

 

ギースは懐に手を入れ。

 

「証拠ならあるぜ、目撃証言を頼りに探したものだ。これは、あんたが燃やしたこの書類だ」

 

「な、なんだそれは!」

 

「残念だったな、この書類はこういう時のために無属性魔法がかかっていて、燃えない紙になっていてな。見つかるのは時間の問題なんだよ」

 

それが実施されたのは、数年前で、あまり知れ渡っていない。そもそも、誰も燃やそうとしないからだ。魔法の解除ができるのは、Sランク冒険者の人で、この魔法を与えた張本人であるノワールと言う賢者のお爺さんのみだ。

 

「な、なん...…だと…?」

 

ハネスの顔はみるみる青くなり、一と接していた時の余裕は微塵もなかった。

 

「くっ!」

 

ハネスは振り返って、逃げようとする。

 

だが、彼は地面に転んでしまう。

 

「な!?なんで...なんで!あ、足が!」

 

彼が逃げようとした瞬間、彼は足を切られた。

 

 

 

 

ハネスは足を切られた痛みで気を失い、一緒に来た騎士に運ばれて行った。

 

一はまた近くの男に聞く。

 

「脱税ってそんな重い罪なんですか?」

 

「いや、良くて牢屋、悪くて奴隷だが、足を切られるほどではない。あいつの場合抵抗したから、それを止めるためだろう」

 

「なるほど、エイルさん行きますよ。稼ぎ口を見つけたかも知れません」

 

一はエイルを連れて、ギルドの中にいるギースの所まで歩いていく。

 

ギースは自分に近づく可愛らしい女子と、それと歩く黒いローブに怪しい仮面をつけた男を不思議に思う。

 

「俺になんか用か?」

 

「何言ってるんですか?あなた人員募集してますよね。雇う方も"雇われる方"も」

 

会えて後ろを強調する。

 

「ほう、その歳でなりたいのか。よし、ここで話すのもなんだ。ついてこい」

 

こうして、一は自分の職業を見つけるのであった。

 

 

...暗殺者と言う職業を。

 

 

 

 

時は流れ、一年後、一は16歳になった。

 

彼は冒険者ギルドでは「鎌鼬」と言う異名で冒険者をしていた。

 

ランクは約半年でSランクにまで上り詰め、世間では英雄と呼ばれていた。

 

主な原因は、帝都がレッドドラゴンの襲撃にあった時に、彼によって撃退されたからだ。ちなみに、その時他のSランクはテレサ以外誰も来てなかった。

 

一が英雄と呼ばれた理由は、もう一つある。彼の魔力量が1万だからだ。要は、魔力量が少なくても強くなれるの代表例で、皆の憧れの的だったからだ。

 

ちなみにマスクは不気味な笑を浮かべたものを複数作らせ、未だに同じやつを使っている。

 

Sランク冒険者は現在、

 

「賢者」ノワール 男、103歳 魔力量500万

 

「風神」クリード 男、37歳 魔力量250万

 

「雷帝」テレサ 女、15歳 魔力量150万

 

「鎌鼬」ハジメ 男、16歳 魔力量1万

 

の4人だ。

 

勇者1行は一番ランク高いので、一と剣を交えた結城で、Aランクだ。

 

そして、一のもう一つの顔が、闇ギルドでの1面だ。彼は闇ギルドでの名を馳せ、「死神」と呼ばれた。刀は強すぎると言うことで、彼は鎌を使い、それたす黒いローブに怪しげなうさぎの仮面のせいで、死神のように見えることからつけられた名前だ。

 

うさぎの仮面は関係無いと思うかもしれないが、殺した時の返り血がついていると、かなり怖いのである。

 

そんな死神に噂がないはずも無く

 

曰く、死神はギルドマスターの懐刀だと。

 

曰く、依頼で失敗したことが無いと。

 

曰く、依頼量が高額なため、死神の気まぐれでないと雇うのは困難だと。

 

曰く、SSランクに最も近い男だと。

 

曰く、仮面の下は絶世の美男子だと。

 

曰く、何故か暗殺関係ない仕事もやると。

 

曰く、たまに一緒にいる可愛いらしい女の子は、彼の妻だと。

 

割とあっているかもしれない内容だ。

 

一は帝都に自分の家を持ち、妻であるエイルと楽しく暮らしていた。

 

ちなみに、エイルも一応、冒険者登録をしている。冒険者登録のカードは身分証の効果もあるので、仕事をこなさないと解雇されることはない。

 

エイルはBランク冒険者で、殆どの仕事は一がやり、エイルは夫の帰りを待つと言う感じで、エイルのランクはそこまで上がっていない。

 

 

 

エイルと一は、ギースに呼ばれ、闇ギルドに来ていた。場所は、帝都のギルドの地下に位置するが、入口は十数個もある。

 

「おい、あの仮面って、死神じゃないか?」

 

狐の仮面は有名だ。

 

「まじかよ!でも鎌もってないし偽物って可能性は?」

 

「んなわけあるか、大きすぎて仕舞ってるんだよきっと。それに、偽物は以前ならいたが、そいつらが現れる度に本物に殺されたって話だぞ?そんな勇気あるやつ今更いるかよ」

 

「だな。いるならとんだ死にたがりだろう」

 

「それに、一緒に妻もいるだろう」

 

エイルは妻と言われどこか嬉しそうだ。

 

一は特に気にしていない。

 

死神と鎌鼬が同一人物だと闇ギルドの人間なら殆ど知ってるだろうが、表の人間はそもそも闇ギルドの存在をあまり知らないので、死神ももちろん知らないだろう。

 

彼らはギルドの奥に通され、ギルドマスターであるギースの部屋に来ていた。

 

「やあ、久しぶりだな。元気にしてたか?」

 

「はいはい、お陰様お陰様」

 

「ギルドマスターに失礼だろう」

 

「で、我らを呼んだのはなんのためだ?」

 

「まあ、エイルさんや。そう焦るな、そういえば、この前の依頼ありがとうな」

 

闇ギルドの依頼は暗殺か情報収集が殆どで、情報収集も暗殺に関してのものなので、殆どが物騒なものだ。だが、その中でも普通の依頼はある。それらがこのギースが出したものだ。例として言うならば、ギースが出した「〇〇屋のうどんの味を調べてこい」と言うものだったりする。闇ギルドにいる人間がそんなものを受けるはずも無く、暇な時に一が受けている。

 

一般ギルドも闇ギルドも、強制依頼と言うものもは"ない"のだ。理由は様々だが、基本依頼は断れる。だが、依頼の途中で放棄すると、冒険者の資格は剥奪され、依頼量を罰金される。ちなみに、自分が受けた依頼を他の人がこなしても、依頼を引き受けた者の手柄となる。

 

一のワイバーンの時の場合は、まだ誰も受けていなかったので、手柄を奪われることはなかった。

 

ギルドマスターであるギースの発言権は高く、貴族に匹敵する。

 

そんなギースの直接依頼はなかなか断れるものではない。

 

 

 

「お前、学校に行かないか?」

 

「行きたくないです」

 

 

即答であった。




シュレディンガー准尉も好きだな。


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一(はじめ)依頼をこなす。

休みって宿題やら、やる事多いはずなのに、暇ですよね。


二人が闇ギルドに呼ばれた理由、それは学園に通えと言う命令だった。

 

「え?学園ですか?自分が?」

 

これは流石に、一も予想できなかった。てっきり、またSランクのクエストが来たのだと思っていたが、そうではないらしい。

 

「そうだ」

 

だが、冷静に考えれば、自然とギースの考えれが分かる。ギースの考えと言うか、この国の皇帝の考えだろうか。

 

「あれですか?学園行ったことによって、この国に情でも湧いて、この国を裏切らない様にするためですか?それとも、友達と言う名の人質のためですか?」

 

ギースは嫌な汗をかく。だが、ここで本当のことを言わないと殺される可能性もある。確かに彼は一に仕事を紹介した恩人だが、その程度では一なら迷わず殺せると言うことはこの一年でわかっている。

 

「はー、だから嫌だったんだ。この仕事。お前の言ってることは大体あっている」

 

「ほう、大体...ですか」

 

「大体あってるな。確かにお前がこの国を裏切らないようにするためだが、どうせお前の事だ、その気になれば、いつでも裏切るだろ?」

 

「まあ、自分はエイル以外どうでもいいので」

 

「そこでだ、これはエイルの提案でもある」

 

「え?」

 

自然と、視線はエイルに向けられる。

 

「うむ。お主、聞けばまともに学園生活を送っていないらしいな。だから、お主に行って欲しいのだ。我を理由に行かないのは許さないぞ」

 

一としては、別に学校に行きたいとは思っていない。人間とそこまで深く関わるつもりもないし、彼の性格上"無理"なのだ。

 

だが、エイルがそうしろと言うなら、彼は従う。

 

「じゃあ、エイルさん、一緒に行きますか」

 

「うむ、もとからそのつもりだ」

 

それを聞いて、ギースは肩の力を抜いた。

 

「ああ、それと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事だぞ」

 

 

 

 

今回の仕事も、相も変わらず暗殺だ。闇ギルドの暗殺の対象になる人物の多くが、悪事を働いているが、権力を持っているために、手がでない人が多い。だが、それらの仕事が回ってくるのはごく1部なのだ。

 

では、その他の人はどんな仕事が回ってくるのか、その殆どが、護衛だったりする。

 

普通のギルドでも、護衛をする仕事はあるが、その人たちとは何から守るかが違う。

 

魔物から商人などを護衛するのが、冒険者で、表ギルドがやっているものだ。

 

人、もしくは暗殺者から商人やお偉いさんを護衛するのが、闇ギルドだ。

 

どちらからも護ればいいじゃないかと思うかもしれないが、適材適所というかものだ。魔物に知性はないので、知性がある人間と戦う場合は、全然異なる結果をもたらすかもしれない。魔物には冒険者をぶつけ、人間には闇ギルドの連中、暗殺者をぶつける。

 

そう言った仕事が多い。

 

だから、同じ闇ギルドでも、選んだ仕事によって仲間だった人が、敵に回ることも数多くある。ちなみに、闇ギルド自体は複数存在する。そして、ギースが作った闇ギルド、グリモアは、かなり大きい方であるが、最大ではない。世界最大の闇ギルドは、アルカディアと言う名前だが、拠点がどこにあるかは定かではない。ただ、存在すると言うことしか分からないので、一種の都市伝説のようになっている。その為、正しいか分からない噂が飛び交う。構成員は全員古代兵器だとか。

 

そのギルドが存在するかすら不明なので、実質グリモアが世界最大と言えるだろう。

 

閑話休題

 

仕事の内容は、とある貴族の暗殺だ。ちなみに、一には拒否権がある。これも、彼だからの融通だろう。彼には強制依頼が存在しない。

 

「分かりました。では、資料をもらえます?」

 

「クロネコに用意してもらえ、じゃあ俺は忙しいから、帰れ」

 

「仕事しすぎると、禿げますよ」

 

「うるせぇ!お前も将来禿げるかもしれないだろ!お前も男...男だよな?」

 

ギースはまだ、一の素顔を見たことがない。常に狐の仮面をつけているからだ。最初は外すよう言ったが、今は慣れた。今のところ、彼の素顔を知るものはエイルを除いて、最初のアルトレアの町のギルドマスターやそこにいた連中、そしてステラとかだろう。特に、テレサは狐の仮面と、微笑みの仮面を用意した張本人なので、知ってても当然だろう。

 

「失礼な、自分は男ですよ」

 

そう言って、一は部屋から出ていく。

 

「一が男じゃないと、我が結婚出来ないだろうが!しっかり考えろ!」

 

エイルに怒られたギースだった。

 

「あ、ハジメ!ちょっと待ってくれ!」

 

ひょっこりとドアから顔を出す一。勿論、仮面のままだ。

 

「表のギルドでも、学園行くのは依頼になってるからな。あと、学園では正体バレてもいいが、自分から言うなよ」

 

「はい、はい。まあ、自分が言う訳ないですが」

 

 

 

 

闇ギルドから出て、エイルと一緒に一は自分の家に向かう。仕事の話は、毎回そこでするからだ。

 

一の家は、帝都にあるのだが、貴族に匹敵するぐらいの豪邸、と言う訳でもないが、やや大きい一軒家と想像してもらおう。

 

庭は、家と同じくらいあり、倉庫はない。全て【無限収納】に入れているからだ。

 

一はエイルとともに帰ってきた。すると、玄関まで2人いや、1人と1匹が迎えに来た。

 

「一(はじめ)さん、エイルさんお帰りなさーい!」

 

「ええ、ただいま帰りました」

 

「留守番ご苦労だ、さくら」

 

「いえいえ、とんでもないです!」

 

黒い髪のショートで、グレーの可愛らしいスカートに、黄色のTシャツ、頭の左側に小さな赤のリボンがされている少女が一を出迎える。

 

それと一緒に、ぽよんぽよん跳ねるコーヒーゼルーみたいなスライムも出迎える。

 

「一は私の命の恩人ですから!」

 

「利用価値があったから"買い取った"までですよ。それに、あなたが命の危機に晒されても、自分は助けないのでご注意を」

 

「何言ってるんですか!それだけで私は満足ですよ!あと、助ける必要もないです!そういう契約ですよ!」

 

この娘、話す事度にビックリマークがついて元気極まりない18歳だ。だが、彼女には一にとってかなり使いがいのある無の属性の魔法、スキルを持っている。それは【等価交換(トレード)】だ。

 

 

彼女が一と出会うまでについて話そう。

 

 

 

 

彼女は17歳の時に、この帝国に勇者として召喚された。召喚された人数は"わからない"。当然だ。王は素質のないものを育てるほど、金が有り余っている訳ではないので、召喚された勇者を全員別々の場所で、それぞれの素質、つまり魔力量や、保有スキルについて測った。そして、使えないと判断した者を奴隷に落とし、彼らが召喚されてなかった事にしたのだ。

 

その奴隷にされた人の中に、彼女、浅倉 桜がいた。彼女は保有魔力量が、常人よりは多い4万ぐらいだったが、他の勇者の平均が30万だとすれば、かなり少ないだろう。まあ、それでも常人の8人分の魔力を持っている。なので、これだけでは彼女が奴隷落ちする理由にはならない。

 

彼女が奴隷になった最大の理由は、適正の属性がなかった、いや無だったからだ。

 

無の属性の魔法は重宝されるが、彼らが見た魔法についての説明文が、彼らには理解されなかったのだ。

 

【等価交換(トレード)】

 

《魔力量を同じ価値のものと交換できる》

 

 

と言う説明文だった。ちなみに、異世界に限る。

 

そして、王、いや帝王はこの文を勘違いした。魔力を金に変える魔法だと思った。だから、"この世界"で一番価値の高い金属であるオリハルコンを作らせた。

 

そして、彼女にやらせた。やらなければ、殺されるかもしれない恐怖とともに、彼女は必死に何度もやったが、成功しなかった。

 

その後、金でやって見るも、それも失敗に終わった。魔力量が足りないと考えに至った時に、王は絶望した。他人に魔力を与える魔法など、知る由もないからだ。

 

そして、彼女は無能と判断され、奴隷に落ちた。現代日本人からして、奴隷の生活は、厳しいものだった。パンは硬すぎて食えたものじゃないし、水も濁っている。そして何よ酷いのが、衛生面だった。様々な薬品で消毒されてやっと飲める水になる日本の水とは違い、ここの水は地下水をそのまま引いてきている。当然、奴隷用の水で綺麗な水を使うわけもなく、何度も腹を下し、病に倒れた

 

オークションに出される仲間の目はどれも死んでいた。たまに優しい人に買われた人もいたが、それは極々少数だ。女性の奴隷なんて殆どが性奴隷用として買われた。

 

次は自分の番だと思うと寒気がして眠れない。乙女としてはせめて、かっこいい人に犯されたい。汚い豚のような男にやられるよりましだ。

 

彼女も心のどこかで、助けが来ると思っていた。自分と同じく召喚された勇者なら、奴隷を認めないだろうと。

 

そしてある日、助けは来た。

 

「みんな!助けに来たぞ!」

 

そんな声と共に、勇者ユウキと呼ばれる男性が奴隷商人と警備の人を倒せし、奴隷全員を開放した。これで自由の身だ。私は助かった。そう思った自分がどれほど甘かったか。

 

彼女は開放されたが、行く場所も帰る場所もない。そして助けた勇者ユウキは、奴隷を開放だけして、去っていった。

 

元奴隷だった人らが主人もいないのに、街を歩けば変な目で見られるのは当然だ。主人を殺した疑いがあるのだ。そしてそんな元奴隷を雇ってくれる人なんているわけもなく、開放されたはずの奴隷は、次々と死に、彼女が最後となってしまった。

 

そして、餓死しそうなほど腹が減った時に、助けてくれたのが、奴隷商人だった。

 

彼は単に顔のいい奴隷を手に入れ、金儲けをしたかったのだ。皮肉な事に、誰かを助けようとした勇者は結果、死人を大量に出し、金儲けをしようと私欲に動いた奴隷商人が、結果的に彼女を助けたのだ。

 

 

それから数週間後、その奴隷商人に1人の男が訪ねた。身長は158の彼女からしたら大きいが、この世界の男にしては中の下の身長だった。なぜ身長の話をするかと言うと、他に特徴があるとすれば仮面だけだった。

 

商人がやけに緊張していた。

 

無理もない、最近有名になったばかりのSランク冒険者の「鎌鼬」だからだ。奴隷にもちゃんと情報は入るのだ。望めば新聞もくれる。

 

どうやら、それなりに強い(魔力量が多い)人で、家政婦、メイドをやってくれる奴隷を探しているらしい。雇えばいいと思うが、それでは信用できないらしい。

 

商人は何人かの候補を連れてくる。そして、その中に彼女もいた。

 

 

 

 

(え?私を見てる?見てるのは...胸!?)

 

鎌鼬に自分の胸の当たりをじっくり見られている事に気づいた彼女は、腕でそっと自分の胸を抱きしめる。

 

そして、よく見れば、彼が見ているのは胸じゃない事がわかった。

 

(違う、もっと深くだ...この感じ、私のスキルを見ている。間違いない)

 

「お見事、正解です」

 

「へ?」

 

「自分はあなたのスキルについて見ていました」

 

「えーと...」

 

「すみません、少し外してもらいますか?彼女のスキルについて話すので」

 

「ああ、わかった。ドアの前で待ってる」

 

『念のため、念話で話しましょう!念話だけに!なんちゃって』

 

ビックリした。さっきまでの雰囲気がまるでない。だが、彼の表情は変わっていない。

 

『ああ、ごめんね?自分念話すると性格変わっちゃうんだよ!それと、君は念話のスキルないから、喋らないでね。頷いたりしてくれるだけでいいから』

 

頷く。

 

『よし、じゃあ取り敢えず、君って勇者だよね?元だけど』

 

一瞬驚くが、頷く。

 

『まあ、それはどうでもいいけど。君のスキル、【等価交換】についてだ。それは、魔力を同じ価値のものと交換するでいいんだよね?』

 

頷く。

 

あの王が言っていた内容と同じだ。

 

『なら大丈夫だ、使い方を知らなくて奴隷になったんだろうから、使い方は今度教えるよ』

 

頷く。

 

「じゃあ、最後に君が殺されそうになった時、基本自分はよほど余裕がある時でない限り、助けないからね。それでもいいかい?」

 

「はい、いいです」

 

むしろ助けられた結果が、死にかけたんだ。今更そんなもの要求しない。

 

「3食寝床つきならば」

 

「大丈夫だよ、ただし君には、家政婦のようなことをしてもらうね」

 

 

こうして、桜は一の奴隷(メイド)、いやメイド(奴隷)になったのだ。

 

 

 

 

ペットであるコーヒーゼリーのようなスライム、スラちゃんについても語ろう。と言うほどに、語る量は多くない。

 

彼、いや彼女はエイルの作った森で生まれたのだ。勿論、彼女も一の殺傷対処の一つだったのだが、彼女は一と互角だった。と言っても、一は魔力を全て封印して、魔力0の状態、つまり身体能力のみで彼女と戦っていたのだが、それでも彼女は引き分けた。そして、一が魔力を開放して倒そうとしたとき、彼女、ナイトメアスライムは一に懐いてしまった。一だけなら倒したのだが、エイルが可愛いと言って倒すのを拒んだのだ。

 

それをきっかけに、彼女をペットとして飼い始めた。飼い始めたのは、桜がメイドになったあとだ。一はたまにエイルと一緒に始まりの森に行き、数日で帰ってくるのだが、その時に一緒に連れて帰った。

 

ちょうど、地球産のゴミの捨て場がなかったので、雑食でなんでも食べて魔力に変換してしまうスライムに食べさせた。

 

このスライム、見た目は可愛いが、魔力量は邪神に匹敵どころか上回っている。

 

 

 

 

一が1階のソファーに座り、その向かいにスラちゃんを抱いたエイルが座っている。

 

桜は一の膝の上だ。

 

そんな光景、妻のエイルが許さないと思うかもしれないが、エイルは自分の夫がモテていることに誇らしく感じている。

 

一としても、桜がどこに座ろうが気にしない。

 

「さて、家についたことだし、クロネコ」

 

「はい、はーい!呼べれて参上!クロちゃんだよ!」

 

クロネコと名乗る黒い服装の彼女だが、実は

「雷帝」テレサである。得意な魔法が勿論のこと雷と、瞬間移動だ。特に瞬間移動は情報収集にはうってつけで、闇ギルドの上位にいる人たちのための情報収集係をやっている。

 

「むー、サクラちゃんそこ変わって!」

 

と言う感じでよく桜と喧嘩になる。勿論、本気で戦えば、テレサが勝つのだが。

 

「今日は私の番です!」

 

「なら仕方ない」

 

今回はテレサが折れた。

 

それから数十分、ターゲットの情報を聞いた。ターゲットは、貴族の当主とその妻だ。市民を適当に用意した罪状で捕まえ、実験用具として扱っているらしい。

 

「酷い事するよねー」

 

「どうでもいいです。なんの罪をだろうが、罪がなかったとしても、仕事ですから、関係ありません」

 

「相変わらずだね」

 

「クロネコさんの監視では、そいつのは寝るとき護衛をつけないんですね?」

 

「うん!まあ私が見た数日が、偶然いなかったってこともあるかもだけどね!」

 

「じゃあ、エイルさん。行ってきます。桜さん、どいて下さい」

 

一が立とうとすると、桜が立ち上がる。一は座られることはどうも思わないが、邪魔をされたら許さない。下手したら、殺すかもしれない。

 

だから、たとえもっと座りたかったとしても、殺されないために桜はどくしかない。

 

「一はマントの服装から、真っ黒の服装に着替え、仮面を深く被り、ロングコートじゃなくて、普通の長さのコートのフードを深くかぶる。暗殺者が暗殺をする時、顔を見られないように顔を隠す者がほとんどだ。

 

まあ、テレサと言う例外もいるが。

 

 

 

 

とある帝都の近くにある貴族の屋敷、門番や警備の者が数人行き交っている。

 

その2階のベットで、3人が寝ていた。ターゲットである両親と、その娘だった。

 

一は窓から音もなく入り、3人のベットの前に立ち、彼らが声を上げる暇もなく殺した。

 

「んー?なんの音...ヒィィ!?」

 

どうやら、両親が倒れた音で娘が起きたらしい。

 

「あなたが、お父さんとお母さんを殺したの?」

 

一は暫く黙っていると、ポツリと言った。

 

「お前はターゲットじゃない

 

そう言って、一は去ろうとする。

 

「絶対に、復讐してやる!これから強くなって!必ず、お父さんお母さんの仇を取ってやる!」

 

そんなおかしな生き甲斐でも、生き甲斐が無くなり、死ぬよりましかもしれない。お前は俺を生きて恨め。そして、強く生きろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな言葉を一が言うわけもなく、娘はあっけなく殺された。

 

こうして一の任務は、いつものように終わった。

 

(にしても、あの娘まさか自殺志願者だったとは思いませんでした。死にたくないなら、クローゼットにでも隠れてればいいものを、復讐してやるなんて言われれば、殺すしかないじゃないですか)

 

 

この性格を少しでも、普通の人間に近づけるために、エイルは彼を学園に入学させたのかもしれない。

 

 




なんか、依頼が微妙だな。次回は学園だと思います。

ちなみに、桜がヒロインになるかは不明です。コメントによって変わるかも?


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一(はじめ)入学する。

なんかこれから、ハーレムの予感。でも性格上、ないかな?


帝都の街にある、とある一般的な家。と言っても、ここ帝都にいるのはある程度金持ちの連中なのだが、帝都だけに。すみません、謝ります許して...

 

 

その家が、一たちが住んでいる家だ。家の周りには簡易的な数10cmの柵しかなく、盗人がいれば簡単に盗める無防備な家だ。だが、そんな命知らずはあいにく帝都にはいない。「鎌鼬」が住んでるって事は、かなり知れ渡っているからだ。一が広めた訳では無いが、特に隠してもいないので、噂が噂を呼び、見に来る人も出てきた。だが、一達は特に気にしていなかった。だが、敷地内に入るのは別だ。一歩でも入れば、一の殺気をぶつけられる事になるだろう。また、エイルや桜が出ていく時に邪魔になったら、それもまた一の殺気をぶつけられる行為になる。それ以来、一の家を訪れる者は、命知らずか、一の知りあいだけになった。まあ、一としては邪魔なのだから殺そうと何度も思ったが、エイルによって止められた。この街で仕事以外で一による殺人が起きないのは、エイルのおかげと言ってもいいだろう。だが、よそから来た者達がそんな事を知る由もない。特にこの世界の冒険者は、街を魔物から守っているのは自分らと言う事実を振りかざし、好き放題する者が多い。そんな馬鹿を減らすために、冒険者育成学園、アポカリプス学園だ。そんな馬鹿を減らすために作られた学園に通わず、呑気に生きている輩は、ここ帝都にもいる。

 

「おお、お嬢ちゃん可愛いね。俺らと気持ちいことしようよ!」

 

「そうだぜ、俺らこれでもCランクの冒険者なんだぜ!すごいだろ!」

 

桜はエイルたちのために食材の買い出しに来ていた。その帰り、2人の冒険者にナンパされた。片方が、桜の腕を掴んでくる。

 

(えー、この手の輩、この世界にも絶えないですね。日本となんにも変わらないです。男なんてみんな考えることが同じなんですね。...1人例外がいるけど)

 

「あの、離してください。これから、夕飯を作りに帰るんです」

 

「そんなことより、俺らとヤろうぜ」

 

桜の見た目はかなりいい方で、以前奴隷だった頃はなぜ性奴隷にされなかったか不思議なくらいだ。まあ、性奴隷になるには本人の承諾が必要なのだが。

 

桜がどうしたもんか悩んでいた時に、一がやってきた。

 

「君たち、退いてくれますか?」

 

「なんだこいつ、そんな仮面してるからってビビると思ってんのか!」

 

鎌鼬の微笑みの仮面は、バカ売れしている。その殆どが、ステラの店で作られている。なにせ、鎌鼬が買った場所を聞かれた時にそこだと言ったからだ。だから、鎌鼬に憧れる者や、その地位を悪用しようとするものまでその仮面を買い、偽物が大量に現れた。闇ギルドで死神の仮面をつけたら殺されたのは、ギースがそう言う依頼を出したからで、別に一の意思ではない。だから、依頼がないので微笑みの仮面をつける奴を特に殺したりはしていない。

 

彼らから見れば、一はただの龍殺しの英雄に憧れる少年なのだろう。

 

一が本物だと知っている市場にいた者の殆どが、青い顔をした。

 

「おい、やばいぞ。あの人鎌鼬に殺されるかもしれない...」

 

殺人をすれば犯罪だが、一を知るものは決して一を捕えない。なぜなら、一は何かされない限り絶対に反撃しないからだ。と言うより、一が鎌鼬の時はあまり殺しをしないのも原因だが。

 

だが、エイルに手を出して殺された輩は何人もいる。

 

一は男の間をすり抜け、桜の荷物を持つ。

 

「これは自分が持って帰りますから、桜は1度ギルドに行って自分の学園の制服をとって来てください。後、夕飯は自分が作りますよ」

 

「わかりました!すぐに帰ります!」

 

去ろうとした一の肩を、大きい方の男が掴む。

 

「おい待て、お前あの嬢ちゃんとどう言う関係だ?答えろ!」

 

「主従関係ですが、何か?」

 

「これはいいこと聞いたな!アニキ」

 

「俺らに奴隷譲れよ」

 

その発言に、桜がビクリと反応する。

 

「いいですよ?」

 

 

 

 

 

(ああ、やっぱりこうなるか)

 

「その代わり」

 

桜でも予想しなかった言葉が出てきて、桜は一をじっと見守る。桜は救ってくれるなら、徹底的に救わなきゃ意味がないと思っている。これは自分が勇者に助けられた時もそうだが、その前にも同じ事を体験した。いや、あくまで自分は遠くから見ていただけなのだが。

 

以前、彼女がまだ日本にいた時、学校でいじめを受けていた男の子がいた。彼女は可哀想とは思ったが、助けようとはしなかった。自分もああなりたくないからだ。だから、男の子が助けてと言う眼差しを向けて来ても、彼女はあえて無視した。そして、どの学校にも正義の味方のようなイケメンはいて、その子を助けた。助けたと言っても、彼がやったのはその場しのぎに過ぎなかった。いじめをしていた連中を暴力で抑えて、その内1人は病院送りにもなった。

 

そして、それから間もなく、いじめられていた子は、とある倉庫に連れていかれた。桜はそのイケメンと隣だったので、携帯を見て慌てて出ていったのが気になり、後をつけた。

 

桜が男の足に追いつく筈もなく、彼女が到着した時には全て終わっていた。倉庫の影から見たのは、何人もの人に鉄の棒状のもので殴られていたイケメンだった。流石に、数十人の人間には勝てなく、イケメンは負けた。彼女は取り敢えず、通報した。今出ていくのが怖かった。自分もああなるのが目に見えている。

 

男達は警察が来たのを見て慌てて逃げたが、後日には全員捕まっていた。ちなみに、イケメンは出血多量で死んだ。いじめをしていた連中と、その上司のような関係の人らの殆どが刑務所に行ったが、釈放されるのは数年後だ。そう、彼らは未成年だったから、こんなに早く釈放されたのだ。早いものでは、数ヶ月しか入っていない。

 

人間と言う物は、1度殺したあと、その行為があまり重い罪じゃないと知ると、復讐を考える。だから、刑務所から出た人達は、通報したと"思われる"いじめられていた子のとこに行き、腹いせに暴力を振るい、病院送りにした。そしてまた刑務所に戻っていき、釈放までは数年だった。

 

誰か助ける行為は、それこそ世界を敵に回す事を覚悟してやらなきゃダメなのかもしれない。ほんの出来心で助けた結果、その人を不幸にする事の方が、多いのだ。いじめられていた子を助けようとするならば、まずいじめしている連中を倒さなくてはならない。そして、二度としないためにはどうすればいい。交渉なんて意味は無い。出来る連中ならそもそもいじめなんてしない。逆にいじめが酷くなるだけだ。では、二度といじめができないように体の自由を奪うしかない。ようは殺せばいい。だが、殺してもその周り、例えば彼らの両親の恨みを買うことになる。ではそいつらも殺せばいい。それを繰り返した結果、日本を、世界を敵に回すことになる。

 

日本の法律と言う物は面白いものだ。誰かに襲われて、それの仕返しとして怪我を負わせても正当防衛になる。だが、殺すと過剰防衛になる。日本国民はこれが当たり前と思っている。何も殺すまではしなくていいだろう。怪我させる程度でいいじゃないか。だが、それは相手が殺しに来ているのにそう言えるのか。被害者じゃなければ、言えるだろう。やりすぎだと。だが、被害者から言わせれば、それは自分に死ねと言われているようなものだ。1歩間違えれば自分が死んでいたのに、今更何を言うのだろう。世間から見れば、その殺した人は正気の沙汰じゃないと思うが、被害者からすれば、正気じゃないのは世間の方だ。確かに、法律からすれば、彼は狂気だ。だが、その法律、世界の皆様を守る法律が正気だと、一体誰が保証する?一体誰が出来る?

 

ガンになった我が子を助けようと、本人の意思なんて無視して抗がん剤治療をした結果、ただ子を苦しませてるだけなのに、誰1人気づかない。

 

生きていたい、まだ生きたいと思う人はどこかにまだ希望を残している人だけだ。絶望だらけの人を無理に生かしたって、苦しめてるだけだ。世の中には、死んだ方が救いになる事だって沢山あるのだ。確かに、いじめられていた子は確かに助けて欲しいと望んでいた。だが、助ける方法は一つではない。もしかしたら、彼は殺されると言う救いを求めていたのではないのだろうか。

 

「あんたらが、桜並の利用価値のある物を持ってこれたらですがね」

 

「はぁ、坊主。俺らも冒険者だ、幾ら払えばいい?」

 

「金なんて俺には沢山ある。それに交渉の余地もない。お前らに利用価値なんて、端からない」

 

いつもの呑気な声ではなく、殺気を含む低い声が響きわたる。

 

「ほう、やろうってのか!上等だ!」

 

「おうよ!決闘だ!」

 

2人の男が言った決闘とは、お互いに戦い、勝敗をわけて行う賭け事だ。武器はなんでもありで、勝敗は、敗北宣言と戦闘不能、そして"死亡"すると敗北する。賭け事なので、賭ける物はあらかじめ決める。お互いに欲しいものを言い、それを賭けて戦うのだ。人を殺しては行けない法律でも、この決闘のみ殺しても構わない事になってる。

 

「はぁ、いいでしょう。時間が少ないので、すぐに(あなた方の生涯を)終わらせましょう」

 

 

普段ならこの場にいる人たちが、一緒に賭けをやるのだが、この勝負は勝敗が明確すぎる故に、誰もやろうとしない。

 

「どうやら、街の奴らも勝敗はわかってるみたいだな!」

 

「じゃあ、俺らの要求は、その子を俺らの奴隷にすることだ!でいいですよね、アニキ」

 

「ああ」

 

桜は一の後ろに隠れる。

 

「すみません、一様、私のせいで」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。可愛い先輩に物事を教えるだけです。お題は命ですが」

 

「自分が要求するものは、お前らの命だ」

 

丁寧な口調も辞め、笑っていることが、仮面の上からでもわかってしまう。

 

「は、はぁ?何言ってんだ!」

 

「そうだ!こっちはその子が欲しいだけなのに、釣り合わないだろ!」

 

「おいおい、闘争の本質を分かってないな。どっかの少佐も言ってたぞ、誰かを殺ろうとしてるんだ、殺られる覚悟はしておけよ」

 

「上等だ!殺してやる!」

 

「じゃあ、決闘成立でいいんだな」

 

「ああ!」

 

それを言った瞬間、2人は宙を舞っていた。そして、地面に落ちたと同時に、グシャと人が立ててはいけない音が響き渡る。片方は腕が折れたのか、腕を抑えて喚いている。もう片方は、落ちた所が悪かったのか、首が折れて窒息死した。

 

「じゃあ、自分は帰りますね」

 

「はい!」

 

(捨てられなくてよかったぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

桜がギルドにやってきた。

 

「すみませ〜ん!リアさんいますか?」

 

「待って下さいね、お嬢ちゃん。今呼んで来るから」

 

桜の身長は158cmで、15くらいの子どもに見える。まあ、そこまで低いと言う訳でもないが。彼女の声に答えてくれたのは、リリィと言う可愛らしい獣人だ。桜としては自分より年下の子にお嬢ちゃん呼ばわりされてるので、やや不機嫌だ。なんせ自分より3つ年下で、さらに自分より身長が低い女の子に言われたのだから。そこはせめて、お嬢さんだろうと思う。

 

「はぁ〜い、あら?サクラちゃんじゃない?どうしたの?」

 

「いえ、ちゃんはやめて下さい。同い年ですよね?18だし」

 

「そうだねぇ、そういえば」

 

「あれ来てます?ギースさんから」

 

「えぇ、来てるわよ?はい」

 

そう言って、大きな袋に入れられた物を桜にわたし、桜は帰っていった。

 

「あの、リア姉さん。あの人とギルドマスターってどんな関係なんですか?」

 

帝都のギルドマスターに合えるのは、それなりの人だと決まっている。まあ、ギースとしては恐れられてるみたいで悲しいのだが。

 

「あなた、鎌鼬って知ってる?」

 

「はい!あのSランク4人のうちの1人ですよね!その人に会いたいためにここに来ました!ほら、仮面だって持ってますよ!」

 

リリィは微笑みの仮面をバッグから出す。自分は彼の大ファンだと言う。なんでも、魔力量が少なく落ちこぼれと言われていた時、彼の存在が勇気を分けてくれたとか。その鎌鼬が誰よりも魔力量が多いと知れば落ち込むだろう。

 

「えぇ、その鎌鼬のメイドさんよ〜。よく、鎌鼬の代わりに来ることがあるの」

 

「な、なななな、なんだってー!」

 

頭を抱えて驚く、リリィの姿が可愛らしく、リアは口を抑えてうふふと笑う。

 

「と言う事は、彼女を尾行すれば鎌鼬が住む家に!行ってきます!」

 

「やめときなさい」

 

「なんでですか?」

 

「盗人と思われて殺されるのがオチよ。その内、紹介してあげるから、大人しくしなさい」

 

「はい!」

 

「あ、そうだわぁ、あなた学園に通ったら?アポカリプス学園に」

 

「ま、まさか先所どの制服は!」

 

「うふふ」

 

「頑張ってお金を稼ぎます!」

 

鎌鼬の話ですっかり興奮して、先ほどの接客の落ち着いた態度は全く感じられないリリィだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一の家では、一と桜によって作られた様々な料理がテーブルに置かれていた。一は家にいる時は、仮面を取っている。外でつけているのは、単に女と思われるのを避けるためである。

 

「うむ、すまないな。我は料理なんてできないのだ。2人は料理が美味くて助かる」

 

「はは、自分は桜には及ばないですがね」

 

「ささ!食べましょう!スラちゃんもおいでー」

 

食事した後、思い出したように桜が言う。

 

「そういえば、一さん!持って来ましたよ。ギルドから」

 

「私も混ぜて〜!」

 

「なんでいるんです。クロネコ、いやテレサ」

 

「そうそう、テレサって呼んでね!いや〜、美味しそうな匂いに釣られてねー!」

 

「エイルさん、制服来ましたよ。着てみます?」

 

「おお、我はいい。ハジメの着てるの見せてくれれば満足だ」

 

「了解、自分、着替えて来ますね」

 

一は2階にある自分の部屋に来る。

 

「いや、隠れきれてないですよ。2人とも」

 

ドアの隙間から、テレサと桜が見ていた。

 

「お構いなくー!」

 

「構うよ。まあ、いいや」

 

そう言って、てきぱき一は着替えていく。燕尾服と黒いコート、黒い手袋を脱ぎ、制服に着替える。制服は青と白をベースにしたもので、日本の制服とよく似ている。そしてその上に、白いコートを羽織る。赤と黒で、背中にアポカリプス学園のマークが小さく書かれている。さらに、それとは別に一は赤い文字で魔法陣が書かれた白い手袋をはめる。

 

「そういえば、なんでハジメは仕事の時は黒い手袋なの?」

 

「ああ、単純に返り血で汚れないためですよ。黒いコートもそれです。この手袋は、自分の身体能力を抑える役割があります」

 

本来なら、力が急に変われば人は対応できないが、あいにく一は良くも悪くも天才だ。人間に限らず、強さを手に入れる為にはやはり才能が必要だ。努力99%なんて言ってる人だって、努力する天才とも言える。それに、99%と言う事は、常人じゃ天才には1%絶対に追いつかないと言っているようなものだ。

 

「まあ、かっこいい物に憧れるのもありますが」

 

特に彼のような見た目が女の子の場合は、その傾向が激しいことが多い。

 

「それにしても、女の子にしか見えないね!」

 

「テレサさん失礼ですよ!」

 

「はは、よく言われます」

 

その後、制服姿をエイルに披露して、テレサは帰って行った。

 

「そういえば、ハジメ。我にブラッシングしてくれないか?」

 

「お安い御用ですよ。じゃあ"地下"に行きましょう。そちらの方が、広い」

 

一の家は大きくないが、地下は高さ250mぐらいある。さらに、その広場を進んだ先に、一の刀が大事に保管されている。一にとって、刀は過剰戦力なのだ。だから、彼は鎌や投げナイフを使っている。秘密の逃げ道も作ったりしている。3mほどの通路を数週間歩けば、この帝国の外に出れる。ちなみに、今まで使ったことはない。

 

広場でエイルは龍に戻り、そこで寝転がった。250の広場が、やや小さく感じてしまうのは、仕方ない事だ。

 

一はどこで買ったのやら、10m以上はある巨大ブラシを持って来た。持つ部分は折れないようにオリハルコンをふんだんに使っている。

 

「じゃあ、一さん、私は石鹸出したら上行ってますね!」

 

桜は魔力量がそこまで多くないので、足りない分は一から貰っていく。そう言う魔法を知ってるからこそ、出来る芸当だ。

 

「では、エイルさん始めますよ」

 

そうして、週一で行われるブラッシングが始まった。エイルほど巨大な体を洗うのに、さすがの一でも20分はかかった。

 

 

 

 

 

 

 

「エイルさん行きますか」

 

「うむ、我の魔力量はどうする?」

 

「いつも通り、50万で、自分は一万にします」

 

アポカリプス学園、その校門前に試験に来てる人が何人も来ている。日本では春に学校が始まるが、ここでは夏に始まる。よって、この時期は受験生が受験をしに来ている。受験と言っても、戦闘能力を測るだけである。知識は学校で学べばいいので、今欲しいのは人材だと言う学園の考えで、試験は擬似戦闘のみだ。面接はあるが殆ど意味がない。性格もここで道徳を学ばせて、変えるつもりだろう。

 

だから、数千人の受験生でも、1日で終わってしまうのだ。

 

「へぇ、大きいな」

 

帝都の4分の1の大きさなのだ、無理もない。泊まる寮まで完備してくれている。

 

「ですね!」

 

「うむ」

 

「どうだい!テレサちゃんの胸並に大きいだろ!驚いたか!」

 

「自分はなんであんたらがいるのかと言う事に驚いてます。自分とエイルさんだけじゃないんですか?入学するのって」

 

「何言ってるんですか?私の分の制服も入ってたじゃないですか」

 

「私はあのハゲにお願い(物理)して来た!」

 

「ギース死んだのか、ご愁傷様」

 

校門は、日本の高速道路のような入り口になっており、あらかじめ配られた学生証明カードを使って中に入れる。カードの登録は、一たちの血を使うので、ギルドカードとシステムはそこまで変わらない。

 

「そう言えばですが、テレサってステラと名前似ていますよね。なにか関係あったり?」

 

「私の姉だよ?」

 

「え?」

 

一は心の中で思った。似てなさすぎだろ。いや、中身は結構似てるか。

 

 

 

そして、試験は始まった。

 




次回は試験ですね。


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一(はじめ)受験する。

勉強が忙しいはずなんだがな。


試験内容、試験官との戦闘。より確実な合格方法は、試験官の打倒だ。だが、別に打倒しなくとも、合格出来る可能性はある。

 

まず、様々な測定を通して、それに合った試験官をつけ、戦闘する。なお、試験中に死人を出すことは、認められていない。

 

「受験番号、5024番!ハジメさん!魔力量を測定しますよ」

 

「はい」

 

仮面をつけているが、試験官の女性は特に気にしてない様子だ。ほかの生徒では、所々笑い声が聞こえてくる。

 

「魔力量、1万です」

 

「「「ぷっ、ハハハハ!」」」

 

魔力量を聞いて、多くの者が一気に笑い出す。

 

だが、ここで笑っていた者らは、次の試験で唖然することになる。

 

測定内容、鉄球投げ。

 

ドゴォォォォン!!!

 

「え、えーと測定不能」

 

当然だ。10kgの鉄球を投げて、かなり広いグランドの端から、グランドの柵にあたって止まったのだ。威力から考えれば、まだ飛ぶだろう。

 

この学園のグランドは、全長2kmはある。つまり、一が投げた球は視認し難い距離まで飛んでいったのだ。

 

元々、身体能力が高い獣人でも通えるようにした結果だ。ちなみに、この学校では差別は許されていないが、帝国全体から考えれば差別の対象になる。受付嬢のリリィのように、獣人なのに表舞台に立ててるのは珍しいのだ。この国にいる獣人は、冒険者か奴隷が殆どだろう。

 

鉄球投げでは、施設破壊。

 

200m走では、1秒台。

武器の投与では、最高点。

弓などの射撃でも最高点。

魔法はあまり出せないが、百発百中。

試験官には余裕を残して勝った。

こうして、一は誰が見ても合格確定だった。

 

 

エイルは、魔力量測定では、50万と勇者並の数字を出したため、羨望の眼差しを向けられた。そして、その小さな体のどこから出ているのか、一と同様、鉄球は柵まで飛び、200m走は1秒台、武器の投与は残念な点だったが、その他は完璧だった。特に魔法はやはり魔力量が多いからか、とても大きなものを出し、他生徒を圧倒した。試験官には勿論勝った。

 

 

「うぅ、この中で1番弱いのが私だよぉ。しかも最年長だし、お姉さんもう泣きたい」

 

桜の魔力量は4万、身体能力測定でも、平均よりも下の成績を残した。ここの生徒の魔力量の平均が5万なので、その他の成績も良くない彼女は、ある意味落ちこぼれだった。さらに見た目がいいので、かなりの人に目をつけられただろう。彼女にとっての唯一の救いは、一のメイドっていう事だと彼女はまだ知らない。ちなみに、試験官には負けた。一応傷を負わすことができたが、擦り傷に過ぎない。まあ、彼女としてはその傷も意味無い事だと思っている。なぜなら、彼女は銃を使ったからだ。懐からこの世界では見たことの無い銃と言う物を取り出し、発砲した結果、掠っただけで、それを危険と判断した試験官によって取り押さえられたのだ。

 

 

ちなみに、今回の魔力量測定の1位は、試験を受けに来ていた結城だった。あの勇者ユウキの妹らしい。魔力量は200万だ。身体能力はかなり高いが、一にはやや劣る。勇者ユウキの魔力量は300万だが、彼はまだSランクになっていない。それは妹も同様で、2人ともギルドの依頼より国からの依頼で忙しく、なかなかランクが上がらないのだ。国からの依頼は主に、魔王退治だ。

 

魔王と言っても、あくまで魔物の強さ"魔王級"が現れたら倒しに行くだけだが。魔物には強さによって階級があり、魔王級ともなれば勇者じゃなきゃ倒せない。冒険者を呼んでもいいが、それでは多額のお金がかかってしまう。勇者にも報酬を出してるがSランク冒険者に対する出費を考えれば、まだマシな方である。

 

ちなみに、テレサは150万で、2位だ。身体能力は一とほぼ同じくらいで、武器の扱いも最高点をたたき出し、一と並んだ。テレサと一は、同じ闇ギルドで、それもかなり上位どころか、1位、2位だから、武器の扱いはかなりのものだ。闇ギルドはある程度の武器の扱いができないと生きていけない業界なので、当然の事だ。特に遠距離系の武器が得意だ。勿論、彼女も試験官を倒している。

 

 

「今回は期待の大きい新入生が沢山いてボクも嬉しいよ。特に、鎌鼬と雷帝、さらに勇者ユウキの妹もね」

 

 

一とテレサの正体を当然のようにこの幼女は知っている。彼女こそがアポカリプス学園の学園長にして理事長、クリシャナだ。

 

 

「何やら楽しそうですけ。クリちゃん」

 

「その名で呼ぶな!!!」

 

通称クリちゃんである。

 

 

 

 

 

 

一は、鎌鼬として、緊急依頼をされた。勿論拒否権もあるが、家に帰る途中だったので、丁度いいと思いギルドに向かっている。ちなみに、しらせてくれたのは、リリィと言う女の子だった。丁度同じ学校で、試験が終わり帰ろうとした時、彼女が声をかけて来たのだ。まさか初日でバレるとは思わなかった。よく考えたら、彼は微笑みの仮面のままだった。それが原因だろうか。そして、今彼女と一緒にギルドに向かっている。

 

「私!鎌鼬さんの大ファンなんです!この仮面にサインお願いします!」

 

一は別に女に弱い訳ではないが、彼女の行動は妨害に入らない絶妙なラインを狙って来ているために、どうにもできないでいる。

 

「この仮面にサインお願いします!勿論歩きながらでいいです!歩くのに手は使いません!」

 

と言った具合だ。

 

一としては別にサインしてもいいのだが、自分のサインなんて考えたら事がないし、考えるつもりもない。だから、無視した。

 

「あの!あの!サインだけでいいんです!」

 

「サインなんてありません」

 

「じゃあ、なんかあなただとわかる物を何か!」

 

「仕方ないですね。じゃあ、この鎌をあげましょう。自分が使っている物と同じで、魔力を流すことで大きくなります。普段は3cmぐらいですが」

 

「イヤっほぉぉぉぉぉ!!!」

 

次はない。次は殺す、必ず殺す。そう決めた一だった。ギルドに近づくにつれ、不穏な空気を一は感じた。

 

「リリィちゃん、なんかいるな。この感じ、敵意丸出しだな」

 

一たちが目にしたのは、何人もの死体と、何人かの重症の男たち。そして、怯えきった表情をするギルドマスターであるギース。受付嬢や市民らも怯えた表情だった。

 

「だからさ、俺が欲しいのは謝罪なんだよ。俺を不快にさせた罰、迷惑料を払って欲しいの。何、馬鹿なの?死ぬの?俺はさっさと帰りたいのにあんたらが止めるからこうなったんだろう?」

 

そして、主犯と思われる男と、その眷族であるだろう、蝙蝠人間数百体。眷族が蝙蝠と言う事は、吸血鬼だろうか?

 

この状況、市民が動ける訳もない。どうやら来ていた警備隊までやられたらしい。

 

「ハジメくん!助けてくれ!」

 

「あん?」

 

「いや、自分でどうにかして下さい。自分は別にあんたがどうなろうと関係ないので」

 

これには、その場の全員が固まる。まさか、そんな即決で決めるとは思わなかった。だが、ギースは言ってから気づいていた。言う相手を間違えたと。少なくとも、この男にとって、自分が助けるほどの人材ではないと知っていた。

 

だが、鎌鼬のそんな性格を知りもしない市民は唖然するしかなかった。

 

そして、何故かリリィが目を輝かせて一を見ていた。だが、戦う理由がないと知りしょんぼりする。彼女はただ鎌鼬の戦う所が見たいだけなのかもしれない。

 

「そう言う事だ、残念なことにお前を助けるやつはいない。さっさと謝罪しろよ。勿論土下座じゃあ、足りない。金貨1000枚持ってこい。でないとお前の大切な人たちがどうなるか知らんぞ?」

 

「妻と娘には手を出すな!わかった、金は今すぐ用意できないが、明日までに用意する!だから、お前の眷族をしまってくれ!」

 

それでは、自分の大切な人自白してるだけと、一はそう見えた。まあ、恐らく、妻も子供もいなかったら、彼の標的はこの街の人間になるだろう。

 

「おいおい、こいつらが俺の眷族だと言う証拠はあるのかよ?これはまた、冤罪で金を多くしなきゃならないかもな」

 

「あ、そうだ!」

 

どうやら、一の隣で見ていたリリィが、いい事を思いついたらしい。だが、ギースを含める多くの人が禄な考えではないと悟った。

 

「あ、あの!あなたの言い方だと、この眷族達はあなたの物じゃないんですよね!」

 

「まあ、そうなるね」

 

「じゃあ、鎌鼬さん。こいつら殺った方がいいんじゃないかな?」

 

「ほう、なんでですか?」

 

「だって、このまま放置してたら、この街を襲うかもしれないですよ!」

 

「自分には関係ないです」

 

リリィはその返答を待ってましたと言わんばかりに、食いつく。

 

「でも、鎌鼬さんの家も襲われますよ?」

 

「なるほど、そう言うことですね。君案外頭いいね。ただの鬱陶しいファンかと思えば...じゃあ、蝙蝠さんたち、聞きます。この街を襲いますか?正直に答えてください。喋れないなら、頷くなり意思表示しても構いません。ただ、沈黙は是なりと言うことを知っておいてください」

 

蝙蝠らは、動かない。まるで、主の支持を待っているかのように。

 

そして、いつの間にか、その場にいた蝙蝠人間は全員、真っ二つになり、崩れて灰になった。数百はいた奴ら、全員だ。

 

そして、それを見た主犯である男が怒りを露わにする。

 

「おい!せっかく俺が大事なポイント使って紹介した眷族を...!?」

 

自分の眷族と認めたんだ、一の敵に回ったも同然だろう。男は一に腕を鎌で切り落とされた。

 

「自分の眷族だと認めましたね」

 

「だが、先にやってきたのはそっちだろ!」

 

ここで、ギースも先ほどのまでの怯えた表情を捨て、笑い出す。

 

「ハハハハッ、まさかリリィと言う受付嬢に負けるとはな。だが、そうだ。一の扱い方は俺が誰よりも詳しい。鎌鼬!ギルドから依頼だ。金貨1000枚で、その男の討伐依頼だ!」

 

「1000枚...」

 

「はぁ?ギルドではそんな依頼もあんのかよ!」

 

その言葉が、戦いの始まりの合図だった。

 

一は周りの人など気にせず、全速力で鎌の間合いに男を入れ、すかさず振るう。一の2倍以上はある鎌を重さを感じないように軽やかに振る。男は躱さなかったのか、躱せなかったのか、魔力障壁で防御する。一の鎌は魔力が込められていた、ドラゴンでも切れた切れ味だ。それが、魔力障壁の前では無力だった。

 

ギースはこのままでは街がダメになると判断し、クロネコに依頼して、2人とも帝国の外に転移させた。クロネコはそこまで転移魔法が得意な訳では無いので、成功したのは一のサポートのお陰だろう。戦闘中でも転移魔法のサポートができるほど、余裕なのかもしれない。一としても、あのまま殺っていたら家に被害が出るのでそれを避けたかった。

 

「お前、なかなかやるな。俺の仲間にならないか?同じ日本人だろ?」

 

「あなたも日本人だったんですか?」

 

「ああ、こんななりしてるのは、自分のステータスを設定したからだ。名前は神鳴(カナル)だ」

 

仮面で顔は見えないが、恐らく少し出ている黒髪で判断したのだろう。彼は自分が転生者だと主張する。種族は始祖吸血鬼で、お前では勝てないからやめておけとのこと。

 

「知ってるぜ?お前、鎌鼬って通称で、魔力量が1万しかないんだろ?700万の俺に勝てるわけないだろ?」

 

魔力量は今見たのだろう。知ってることも出任せだろう。出なきゃ、まるで魔力量が低いから勝てないぞと言ってるような物言いはしないだろう。

 

700万はこの世界のSランク冒険者では、ぶっちぎりの1位だ。さらにそこに始祖吸血鬼が入るのだ。流石の一でも、冷や汗をかく。

 

「魔力量なんて関係ありません!」

 

ひょっこり一の後ろから、リリィが顔を出す。

 

「「は?」」

 

一と神鳴の声が重なる。

 

何故いる。そう2人は心で思ったが、一はすぐさま戦闘モードに切り替える。

 

「待て、幼女をいたぶる趣味は俺にはない」

 

そう言って、彼はリリィに魔力障壁を貼ろうとする。その隙を狙い、一が刀を刺す。封刀「鎖」だ。普段は家の地下に保管しているが、一が呼べばいつでも現れる。その刀がいつの間にか、神鳴の胸から生えていた。ちなみに、もう少しずれていれば、リリィにも刺さっただろう。

 

一としては、リリィがどうなろうと知ったことではない。今はこの最強の吸血鬼を倒すことで頭がいっぱいだ。魔力のリミッターも全て解除して、10億の状態だ。リリィが尻餅をつく。

 

「てめぇ...」

 

すかさず一は、刀を振るい、心臓から脳まで真っ二つにする。そして、後ろに跳んで油断なく構える。

 

「はぁ、はぁ」

 

一は、神鳴の復活を待っているのだ。だが、10分待っても復活しない。

 

「え?弱くないですか?」

 

「鎌鼬さん!かっこよかったです!もう少しで私死んでましたが、それならそれで本望です!」

 

無理もない。一はHELL〇INGのアニメの吸血鬼の始祖、アーカ〇ドをイメージして戦ったのだ。もし刀が通じないならすぐに銀の装備を買いに行く予定だった。だが、アー〇ードと比べると、この男はあまりにも弱すぎた。魔力量は高いが、一つしか命がないのだ。数百万の命を持っているアーカー〇と比べる方がどうかしてたのかもしれない。その考えに至り、やっと一は力を抜いた。

 

「さて、帰りますか…」

 

「私も一緒に帰ります!」

 

 

 

おまけ

 

 

 

1方その頃、エイル達は...

 

「まずいぞ、サクラ!あの一がリミッターを全て解除した!」

 

「ええ!!!それ程の敵が現れたのですか!?」

 

「恐らくそうだろう。地下室の刀も消えていた」

 

「そんな敵が現れるって、どうすればいいのでしょうか!?」

 

「落ち着け、サクラ。そんな敵が現れたら、我らではひとたまりもないだろう」

 

「なるほど、開き直るんですね!」

 

「うむ、最後の晩餐といこうではないか」

 

一としては、もっと心配してもいいのではと思っていた。




もうすぐ学校が始まるから、投稿できなくなるかも知れません。ハジメの扱いが一番方が一番わかってるのは誰でしょうね。エイルさんだと思いますが、そのうちリリィに抜かされそうです。始祖吸血鬼を出したのは、最近ほかの小説見て「あれ?始祖吸血鬼ってこんな弱かったの?アー〇ードの足元にも及ばないじゃん」って思って出しました。



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一(はじめ)はよく遅刻する

進学とともに、席替え、最後尾以外選択肢はない(`・ω・´)キリッ


一たちは、まだ戻って来ていない。転移魔法を使えば一瞬だが、どうやら一は徒歩でこちらに向かっているみたいだ。護衛するためにすぐ近くにいた方がいいと思うかもしれないが、一はエイルに危機が迫るとすぐに転移してくるので、その心配はいらない。

 

アポカリプス学園、その学園の生徒は、約2万。3年制で、上に行けば行くほど強いが、それはあくまで学園で学んだことが多いためであり、1年でも3年に勝つことは稀にある。だが、生憎、この学園では学年が上の方が強いと言うのが常識になっている。そのせいで差別が後を絶たない。例えそれが、校則に反していてもだ。ちなみに、この学校には留年も退学もある。では、そこまでして通うメリットは何か?それは上級冒険者になるために必要だ。ランクとは関係なく、上級冒険者になるのは誰でもできる。金をだし、この学校を卒業することが条件だ。上級冒険者になると、同じ依頼でも依頼料は2倍になる。要は、より教育が行き届いている連中を雇うことができるのだ。日本の就職で、例え能力が同じでも、大卒と高卒では、働いた時の貰えるお金が変動するのと大体同じだ。ようは、もっと稼ぎたいからこの学園に来る。ちなみに、Sランク冒険者でこの学園を卒業している者は、まだ1人もいない。この学園はどの年齢でも通えるが、入試を受ける金額は金貨10枚とかなり高いし、入試に落ちてしまえば意味無いし、学園での死者も後を絶たない。他にも様々な理由があり、入学の時は数万人が来るが、卒業できるのはわずか100人程度。それ程までに厳しいのだ。金貨10枚は一にとっては少ないが、それが毎年数万人受けに来るのだ。50万もの金貨が集まる。まあ、50万と言う金額でも、数年もすれば一1人で稼げるのだが。

 

この学園は実力主義で、弱いといじめの対象になることが多い。桜もその例外ではなかった。彼女は呼び出しをくらい、今校舎裏で女性5名に囲まれている。最も、彼女が呼び出され、いじめを受ける原因は彼女が男子にモテ、告白をされそれを断り、それらがあって嫉妬されたのだ。彼女は入学してから、1週間も経ってないのに、3回も告白されたのだ。まあ、中には私の物になれと言う者もいて、それを言ったのがこの学園でモテモテの貴族様と来たら、嫉妬の的だろう。

 

「あんた、弱いくせになんでこの学園に来てんのよ?どうせ卑怯なことしたんでしょう?」

 

「ち、違います!そんなことしてません!」

 

「私知ってるよ。この子、武器が強かっただけで、本人の力じゃないんだって」

 

「へー、最低じゃん。武器に頼るなんて」

 

「武器だって持ってる私の実力に入るんですよ?知らないんですか?」

 

だが、彼女だって元奴隷だ。この程度恐れるに足りないのだ。彼女は懐から白い銃を取り出し、迷いもなく撃った。今更、人を殺そうがなんとも思わないだろう。だが、生憎彼女の射撃の腕はかなり低い。数mしか離れて無いのに外してしまった。だから、彼女は脅すことにする。

 

「次は当てますよ?」

 

「「「「「ヒィ!!」」」」」

 

銃と言うのは、不思議なものだ。持っている者に勇気と言う名の"ゴミ"を与えてくれる。

 

「なんだ、我が出るまでもなかったな」

 

「行きましょう。エイルさん。もうすぐ授業です」

 

 

彼女らのクラスはバラバラだ。エイルがSクラスで、桜はFクラスだ。単純に魔力量で順位別けしている。差別と言う訳では無い、それそれに合った教育をしているのだ。A〜Eクラスの連中の魔力は殆ど変わらない。低くて5万、高くて20万だ。勿論、一と桜を抜いた数字である。ちなみに、桜は銃がないと一切戦力にならない。魔力はあるが、無属性以外使えないのだ。エイルがSクラスに入れたのも、割とギリギリだったのだ。まあ、Sクラス内の格差を気にする者は少なく、Sに入れただけで尊敬の的になる。

 

放課後、エイルと桜は勇者ユウキの妹である、結城ゆなに呼ばれた。と言ってもメモを渡されのだが。彼女は兄とは違い、白髪だ。アルビノと言うのだろうか。肌や髪の色素が足りていない。ゆなは漢字ではないのは、親がテストで書きやすいようにと思いを込めて考えたらしい。ゆなは無口だ。喋るのが苦手なのではなく、大声を出すのが苦手なだけだ。そして、小声で喋っても聞こえないのでは意味無いに等しいので、彼女はメモに喋ることを書いている。紙が勿体無いと思い節約していたが、何故か日本から持ってきたメモは使っても使っても使い切れないので、彼女は気にせず使い続けた。

 

《部活を新しく作ったの、はいる?》

 

「入っても良いが、活動内容はなんだ?」

 

「私運動無理ですよ」

 

《幽霊部》

 

「「は?」」

 

《幽霊、ゴースト、それらを探そう!ただの私の趣味》

 

《本命は、実力を隠している人を集める部活。そっちの女の子は違うけど、あなたは隠してるでしょう?》

 

「ほう、お主もリミッターを使えるのか?」

 

《ううん》

 

《使えない。でも、本来の強さが"見える"》

 

そう言って、メモを見せては捨てている。彼女の持っているポーチは恐らくメモの紙でいっぱいなのだろう。

 

「我の魔力は?」

 

《????どうやら、1億以上は見れないみたい》

 

本来ならその数字に恐怖するかもしれないが、彼女はかなりのポーカーフェイスのようだ。

 

《すごい、多い!》

 

文章では驚いてるが。

 

「まあ、いいだろう。ただし、入るなら我の家族たちもだぞ」

 

《(´・ω`・ )エッ?元よりそのつもりだけど?》

 

顔文字を使い出すゆな。それを表情一つ変えずにやるのだから、笑える。

 

「ぷはは、なんだそれは」

 

「流石の日本人、いや2ちゃん民なのでは?」

 

その数日後、入学式から今まで1度も来てない2人の新入生が、初めて登校した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長兼理事長室、クリシュナと言う緑色の髪をしたエルフがいる部屋に、一とリリィは通されていた。元Aランク冒険者で、今は実力的にはSにも匹敵すると言われる女だ。身長は149のリリィにも"ある意味"負けず、146だ。しかも、エルフだからだろうか、巨乳である。要するにロリ巨乳なのだ。さらに、白黒のゴスロリの衣装を着ている。まあ、巨乳のせいでエルフのお姉さんを胸を変えずに小さくした感じだ。故に彼女は生徒(主に男子)に人気が高い。魔力量は60万である。そして、この見た目だが彼女は700歳を超えている。

 

「なんで呼び出しされたんですか?」

 

「ああ、お前に私の護衛をしてほしいんだよ。報酬は、1万でどうだ?」

 

彼女が言っているのは金貨1万枚の事だろう。かなりの大金だ。

 

「少ないと思うかもしれないが、お前は何か起こったら駆けつけるだけでいい。別に四六時中一緒にいろとは言わない。それとも、その方がよかった?」

 

「鎌鼬さんに色仕掛けはやめて下さい!」

 

「お前は呼んでないぞ?小娘」

 

「つまり、護衛や用心棒と言うより、ただ単に自分に味方になれと言うことですか?」

 

「理解が早くて助かる。敵に回したくない人第1位だからな。他のSランクよりも」

 

この言葉に、護衛の賢者ノワールがピクリと反応する。

 

「では、断らせて頂きます」

 

「え、な、ななんで!?」

 

「誰かの味方になるのは嫌です。自分はエイルの味方なんで、万が一エイルが敵に回ったら対象できないじゃないですか」

 

「うーん、そうかー。でも大丈夫だよ、私は別に龍神の敵にはならないから」

 

学園長には賢者であるノワールがすぐ側で護衛していたにも関わらず、いつの間にか首に刀が突きつけられていた。この速さに反応できた者は、少なくともこの場にはいない。しかも、ノワールは見えない魔力障壁を貼っていたのに、まるでシャボン玉を刺すように障壁は簡単に貫かれた。

 

「な!?は、速い!」

 

刀を取り出し、抜刀、そして静止。その動きにコンマ1秒もかけていない。これには流石の賢者も驚く。だが、これくらい出来て当然だ。一は身体能力だけでSランクまで上り詰めたのだから。

 

「やはり、強いな。お前は...龍神の護衛をしているだけある」

 

「何故知っている?まさかエイルを封印...」

 

「勘違いしてもらっては困る。私は確かにその時生きていたが、討伐作戦には参加していない。私は、待っていたのだ。あの子が自分に相応しいパートナーを見つけるのを。はぁ、これでようやく、楽になれる。昔から私が彼女の面倒をよく見たものだよ」

 

まるでこれから、死ぬとでも言っているような物言いだった。

 

「エイルに聞くといい。私のことをな。私の本名は、クリシャだ」

 

「それにしても、これでは護衛も意味無いな。ノワールの爺さん、もういいよ」

 

「全く、お前に護衛をしろと言われたから、なんとなく嫌な予感はしてたからのう」

 

「Sランクで最強って、やっぱり鎌鼬さんなんですか!?賢者さん!」

 

「ほっほっほ、お嬢さん。それはわしらに対して失礼じゃないかのう?」

 

ノワールの殺気が、部屋に充満する。

 

「でも、事実ですよね!」

 

伊達に一を扱っていない。精神が常人と比べて明らかにおかしい娘だ、とノワールは思う。

 

「ほっほっほ、元気がいいキチg...小娘だ」

 

((今キチ〇イって言おうとした))

 

クリシュナと一の思っていることが重なった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

Sクラスでは、魔法陣に関する授業が終わり、休憩時間となった。

 

一はEクラスの授業が終わり、桜と一緒にエイルのSクラスに向かっていた。ちなみに、校舎が違い、かなり歩く必要があるが、一は転移でSクラスの前にすぐについた。

 

Eクラスの設備はまるで寺子屋のような感じだったが、Sクラスは全く別次元だった。バカ〇スでも、成績によっていい設備をもらっていたが、そんなシステムなのだろう。魔法具なのだろうか、それぞれの生徒の広々とした机にスクリーンらしきものが有り、一番前には演説をするような空間があった。恐らく、あそこで先生が授業をするのだろう。豪華ではあるが、勉強に関係ない物は恐らくないだろう。

 

そんな神聖すら感じる空間に、Eクラス、つまり魔力量最底辺の連中が来たら、誰でも違和感を感じるだろう。ちなみに、制服の胸ら辺にクラスがわかるように刺繍が施されている。その上、学園の生徒手帳を持っていれば、頭の上にクラスと魔力量が現れる。何が目的かは知らないが、これではいじめに繋がるのではないのだろうか。まあ、そんなもの一には関係ないのだが。同クラスの連中にいじめられても動じない彼女だが、ここは流石に怖気づいた。

 

「は、一さん。大丈夫でしょうか?めっちゃ睨まれてますよ...」

 

その言葉を無視し、一はエイルのいる所へ向かおうとする。

 

「おいおい、ここはお前みたいなカスが来ていい場所じゃないんだぜ?」

 

そう言って一の前に立ち塞がるのは、金髪のオールバックの髪型をしたイケメンだった。名前はテッド・ノワール。賢者の孫にあたる人物である。そして、彼が桜に自分の物になれと言った張本人である。唯一の幸いな点は、彼はエイルには何も言ってない点だろう。もしエイルに言っていたら、死にたくなるような苦痛を一によって、味合わされるだろう。一の後ろにいる桜から「うへぇ」と嫌そうな声が聞こえてくるが、無視だ。

 

「残念なことに、他のクラスに入っては行けないルールはこの学園にはありません。自分は妻に会いに来ただけですので」

 

「はぁ?妻?誰が」

 

彼がそう言ったとき、一に対してクロネコが盛大に飛び込んでくる。

 

「ハッジメェェェ!!!会いたかったよー」

 

姉とは違って、大きな谷間を持ったテレサが一に飛び込んで、抱きつく。

 

その瞬間、Sクラスの男子全員から嫉妬、敵意、挙句の果てには殺意まで向けられた。テレサは美少女で、巨乳で、成績優秀で、魔力量も150万と2位で、巨乳だ。それ故に、男子から絶大の人気を誇っている。そして、雷帝だと言うことも知られている。この学園では魔力量が高い人ほど尊敬されやすい。1位のゆなも人気はあるが、流石に12歳の子供に好意を抱く者は少ない。極一部の変態(ロリコン)らが、ファンクラブを開いている程度で、それに比べ16歳の美少女なら、注目の的になるのも必然なのだろう。まあ、単純に男共が巨乳好きなだけなのだが。

 

人間1人に抱きつかれると言う事は、体当たりされたようなもので、ある程度体重差や力がないと後ろに倒れてしまう。だが、一はびくともせず、腰にいるテレサを引きずりながら、エイルの席へと向かう。これには、テッドを含めるその場にいた全員が唖然として見ていた。桜とエイルは見慣れた光景なので無視した。

 

「どうした?ハジメ、何か用事か?」

 

「ええ、聞きたい事があるんです。エイルさん、クリシャと言う方を知りませんか?」

 

途端、エイルは昔の事を思い出したのか、ぷるぷると震え出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪神クリシャ、そう言えばお主にも分かるだろう?」

 

一は久しぶりに、驚いた表情をした。




まさか学園長がエイルを封印した人のうちの1人とはね〜


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一(はじめ)は意外と優しい?

↑そんな訳ないだろ。


「邪神クリシャ、そう言えばお主にも分かるだろう?」

 

息が止まりそうだった。いや、一が今自分が息をしているかと言うことすらわからなかった。そんな事は今は"どうでもいい"。どうやら、敵を見つけたみたいだ。まさかこんな身近にいたとは、知らなかった。いや、ここ1年で慢心していたのかもしれない。浅はかだったのかもしれない。だが、悔やんでいたって意味はない。そんな物は後から幾らでもできる。今は目の前の出来事に目を向けよう。例え失敗したって、それでもいい。どこか誤ってエイルが死んだとしても、納得して一緒に死のう。自分のミスを受け入れよう。何、いつかは死ぬんだ。それが早くなっただけ、死が眼前まで迫っていたなら、できる限り足掻こう。そう、エイルに出会って、一は誓った。死ぬのはいいが、犬死だけはダメだ。誰かに殺されたならば、その人を道連れにしてやる。自然に死んだなら、誰かを道連れにするのも悪くない。だが、その前に、自分の妻に意見を聞こう。

 

「エイルさん、エイルに聞きますが、もしその邪神が今は争うつもりはないと言って来たら、あなたはどうしますか?」

 

「我は...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一は再び、学園長室に来ていた。王城のような豪華すぎる内装の部屋だ。

 

「全く、エイルさんも甘いね。エイルさんの命令なら全部従うと思ってた?エイルは向かって来ない限り放置すると言っていましたが、自分はそうは思いません。向かって来てからでは遅いのです。ですが、敵対するつもりが無いなら、見逃してあげましょう。では、聞きます。貴方は、自分らに敵対するつもりがこれからありますか?無いなら、服従契約を結びましょう」

 

この服従契約は、奴隷契約の弱体版だ。と言っても、内容は命令への絶対服従で同じなのだが、違う点と言えば、抵抗(レジスト)するに必要な魔力が変わらない事だろうか。

 

奴隷契約の魔法をレジストするには、主の魔力量の1000分の1が必要になる。だから、主がある程度強くないと奴隷を持つことすら出来ないのだ。そして、主従契約のレジストに必要な魔力は同じで、主と同じ魔力量を誇っていればできる。その為、使い魔との契約では、主の力を示さなく手はならない。勿論、使い魔が認めれば、そもそもレジストなんてしようとしないのだが。

 

「全く、さっき賢者(護衛)を帰らせたばかりに来たと思えば、そう言うことか?」

 

「私としては全然いいよ?」

 

彼女は特に深く考えていなかった。たった1万の魔力しかないのに、主従契約だなんて、あとからいくらでもレジスト出来ると考えていた。だが、世の中そこまでは甘くなかった。一の本来の魔力量は、10兆、レジスト出来るわけがない。

 

そして、契約魔法が終わり、一が無表情で部屋から出て暫くすると。

 

「全く、でも疑うのもあながち間違いでもないんだよね。だって、ボクはあの龍神ほど力を持った存在が許せないからね。それにしても、契約魔法なんてすぐにレジストできるのに、なんでそんなものしたんだろう?まあ、いいや!とりあえず、レジストしておこう!それにしても、私って言う一人称はやっぱり慣れないなー。学園長として示しがつかないからやっているが…」

 

そう言いながら、彼女はレジストをしようとしたが、出来なかった。

 

「え、なんでレジスト出来ないの?ボクの魔力量は少なくとも2億はあるんだよ!え、ちょっとまって、レジストできなきゃ、私の野望も何もかも無理じゃん!!え、どうしたらぁぁぁ!!!」

 

誰もいない部屋で、学園長の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の授業で、一が参加できたのは3時間目からだ。サボっていた訳ではないが、それでも自分の授業に来なかった生徒を、先生があまり良く思っていなかった。

 

「ハジメ!遅刻か!?」

 

「ええ、そうですね」

 

「なんだその態度は!まあ、いい。そこに座れ!」

 

 

教室は、日本にある学校の設備を全て木で作ったような感じだ。そして、かなり古く、体が大きい生徒が座って壊したこともあった。

 

 

「では、3時限目の授業は、体育だ。E-4クラスとA-2クラスでの合同授業だ、全員グランドに出ろ!」

 

この学校の制服は、動きにくいものだ。だが、日本のような体操服もないので、それぞれの動きやすい服装で体育を行う。

 

着替えは、グランド入口にある、更衣室で行う。まあ、多くの者が魔法で一瞬で着替えられるので、使う者は少ないが、Eクラスは下の下の成績の生徒が集まるので、そういった魔法もろくに出来ない人が多い。

 

Eクラスは魔法5万以下が集まるクラスだ。

 

自分の席にいた一も、グランドに行こうと立ち上がる。

 

「お前がハジメかー?結構噂になってるぜ?魔力最低なのに、身体能力は1位だって。それにしても、いつも仮面つけてるのか?」

 

そんなことを言って来たのは、金髪のサラサラヘアーのイケメンだった。一より高いので、少なくとも1、8m以上だろう。

 

「いつもですよ。貴方は?」

 

「俺はザックだ!」

 

「なるほど、ざっくりした性格だから、ザックですか、いい名前ですね」

 

「てめぇ喧嘩売ってるだろ!まあ、いいや。着替え一緒に行こうぜ」

 

「え?自分はいいですよ」

 

そう言って、一は青色を多用した制服姿から、黒い長ズボン、黒い半袖、更に赤と黒のコートを着た姿に変わる。半袖だとわかるのは、コートの前のボタンが開いているからだ。仮面もつけたままなので、不審者にも見えなくもないが、彼のつけた仮面は「微笑みの仮面」鎌鼬本人か、もしくは英雄に憧れた餓鬼かのどちらかだろう。

 

「お前って本当に、鎌鼬が好きなんだな」

 

「...行きましょう」

 

 

 

 

そう言って、二人はグランドに向かった。

 

「なんで友達を待ってあげないんだよ!」

 

「え?友達だったんですか?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「ま、まあ、いいや。早く行こうぜ」

 

「はい」

 

 

 

体育の内容は、戦闘訓練だ。内容は主に筋トレとかだ。勿論、魔法の訓練もあるが、それは体育には含まれていない。

 

「ね、ねぇ。リリィちゃん。僕リリィちゃんと一緒に訓練したいんだよね」

 

そう言って、数人の男子が、彼女の所に集まる。リリィの魔力量は18万で、その見た目故に、男子に人気があり、桜とは違い女子の嫉妬を買っていない。女子も一緒に可愛いと言ってくることもあるかだ。体育の訓練の内容で、4〜5人組を作らなくてはならないのだ。冒険者は基本的に、その人数で狩りを行うからだ。

 

 

「い、いえ。リリィは.......!あ、あの人としますので、お気になさらず」

 

「あの仮面の人?英雄に憧れてる餓鬼ねー。ぷふっ、笑える」

 

「じゃあ、私は(その英雄本人ですよ)」

 

ザックが言ってた一が有名なのは、半ば嘘である。ようは、あの場で見ていた数十人にのみ有名なだけで、その数人も勇者ユウキやテレサを見て一のことは忘れていた。

 

トコトコとリリィがやってきた頃には、丁度桜も一の所にやって来た。

 

「「一緒にやりましょう!(やります!)」」

 

「なぁ、一って結構モテたりするのか?」

 

先程リリィの周りにいた男子だけでなく、クラス中の男子が彼に敵意の目線を向けていた。当の一は気にしていないようだ。

 

「へぇ、ハジメさんって言うんですか!」

 

「あんた知らないで一緒にやろうって誘ってたの!?」

 

「何言ってるんですかザックさん。私はあの人らと一緒じゃなきゃ誰でもいいんですよ」

 

「リリィ、なんか慣れてるな」

 

「これでも私、ギルド職員やってますから」

 

えっへんとない胸をはるリリィ。

 

「では、4人組も作れたな!これより、その4人の中で2人組に別れ、各自筋トレをしてもらう。その後、その4人で模擬戦だ!人が余るかもしれないから、余ったやつがいたら入れてやれよ!」

 

「「「はーい」」」

 

こいつら、年齢的には殆どが高校生だよな...ガキみたいと思った一だが、心の中にしまった。ちなみに、本当のガキもいる。実際ゆなもそうだが、彼女の場合飛び級のようなものだから、他はそうそういない。

 

余っている人はいたが、一はわざわざ入れてやるほどお人好しではない。

 

「じゃあ、筋トレは女子同士でやった方がいいだろ?俺はハジメとやるよ」

 

「えぇー、私ハジメさんとやりたかった…」

 

「私もハジメ様とやりたいです!」

 

「身長合わないですよ」

 

170台のハジメとは流石に無理だろう。ザックは180台なので、男同士でやった方がいいと一は言っている。一は別に鈍感主人公ではないので、彼女らの気持ちはなんとなく察してるが、眼中に無い。排除対象にも入ってないので、放置だ。

 

「よし!筋トレも終わった事だし、模擬戦だ!先生と戦いたい者は、先生のところへ、その他は各自でやれ!」

 

「あの人誰です?」

 

「体育教師のドルフ先生だよ、自己紹介してたろ始業式で」

 

「いませんでしたので」

 

「俺は、あの先生と戦ってくるわ!」

 

先生の所へ向かおうとしたザックの腕を、一の細い腕がつかむ。

 

「お前どっからそんな力出てるんだよ!嫌だ!お前とやったら、絶対殺される!」

 

ザックは見た目に似合わず涙を流す。

 

「大丈夫ですよ、痛くしません」

 

「ほ、本当か?」

 

「はい、痛みを感じる前に気絶させます」

 

「意味無いだろ!」

 

「ハジメさん!私とヤりませんか?私強くなりたいので、私を鍛えてください!」

 

「殺ります?」

 

「おいコラ、お前ら両方とも字が違うぞ」

 

教えるのは授業の間のみという事になった。

 

あたりでは、小さいが所々で魔法によるものだろうか、爆破が起きている。いくら弱くても、この学校の生徒はある程度の戦力を持っている。爆破の爆風や音をもろともしない2人が、見つめあっていた。猫耳、いや狐耳をした可愛いらしい幼女と相対しているのは、仮面をつけた黒のコートを着ている男だ。一の身長は高い方ではないが、リリィの前に立つと高く見える。

 

「行きます!」

 

リリィは喋ると同時に、詠唱を始める。魔法陣からして、ファイアーボールだろうか。火属性という事ぐらいしかわからない。だが、一のやることは同じだ。

 

リリィとの距離を、一気に詰める。

 

「魔法使いが気をつけなければならない弱点その1、詠唱中は何も出来ないので、隙だらけな事です。無詠唱を習得するのもいいですが、一番簡単な対処法は、短刀などの武器を使う事です。ですが、魔法使いの多くは魔法にばかり専念していたので、筋力が弱く、接近戦を得意としていません。そこで、相手に悟られる前に魔法を放つ必要があります。始める合図や、打つ合図なんていりません」

 

目の前まで接近した一は腰から抜いたナイフで、リリィに切りかかる。

 

「はい!」

 

リリィは詠唱を無理矢理中断して、その攻撃を躱す。

 

「そうです。1個の詠唱に頼ってはいけません。次の手を、次の次の手を考え、失敗すればすぐに切り替えます。でなければ、死ぬだけです」

 

リリィはすぐに体制を立て直し、一に魔法を向けようとする。

 

「無駄が多いです。今の場合、跳んでから地面につくまでの時間の間ならば、あなたの詠唱は終わっていたはずです。魔法使いならば、いつどんな状況でも詠唱できるようにすることが、重要です。そういう訓練も必要ですね」

 

魔法陣に一の手が触れただけで、魔法陣は乱され、発動しなくなった。

 

「このように、自分の魔力を指に込めて魔法陣に触れることで、魔法陣の魔力の流れを乱すことができます。乱されたくないならば、紙に描いた魔法陣を使うといいでしょう。まあ、魔法陣を乱す事ができる人はかなり限られている高等技術ですので、この国でできる人は自分も含めて2人しかいませんが」

 

そもそも、魔法を使う時の魔力の消費は無意識のうちに行われるが、それを意識して動かす事ができる人は殆どいない。人体で言うと、感覚の伝達を意識的に中断するようなものだ。もっと簡単にいえば、意識して心臓を止めるようなものだ。

 

「ならば!」

 

すると、一の足下を中心に火柱が上がる。数メートルほどの火柱は勿論、リリィの魔力量で出せる量じゃない。だが、彼女は火柱の真ん中を空洞にする事で、巨大な火柱を作り、さらにそれを檻としても運用した。

 

「なるほど、こう来ますか」

 

リリィは土魔法を使って一の足元の土をどけ、落とし穴を作ろうとしている。

 

「ですが、陣を乱せばいいだけです」

 

だが、魔法陣は乱れない。恐らく、魔力によって空中に描いたものでなく、直接土に書いてるのだろう。先程の詠唱は地面に魔法陣を描くためのものだった。

 

「これは参りましたね。まさか、魔法陣を描くために魔法を使うとは」

 

そして、一は穴に落ちて、火柱も追い打ちをかけた。魔力を使い切ったリリィは倒れた。

 

「リリィさん!」

 

「桜、自分が彼女を保健室に運びますので、後は頼みます。ザックもです」

 

いつの間にか上がってきた一が、リリィをおんぶして保険室に向かった。

 

「後は任せるってどう言う事だ?」

 

「馬鹿ですか?この穴埋める以外にあります?」

 

「あ、お、おう」

 

一エイルの前では、毒舌な桜だった。ザックはまた泣きそうな顔で穴を埋めていた。ちなみに、桜は土魔法が使えないので、無属性魔法で土を購入して埋めていた。

 

 

 

 

 

2人は気づいていなかったが、周りの生徒は唖然として見ていた。

 




宿題終わらない、どうしよ


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一(はじめ)は主人公。

外食したいなー


先生に報告してから、一は保健室に来た。

 

保険室にしては、やけにでかかった。病棟の1室ほどだった。いや、部屋によっては普通の保険室と同じところもあるが。具体的に言うと、ベットが20ぐらいあった。設備は病院ほど良くないが、日本にある救急車のように最低限の設備が各ベットにあった。

 

「すみません、魔力切れでこの子が倒れたんですが。誰かいますか?」

 

部屋には誰もいなかった。

 

「はぁ、仕方ないですね。何すればいいか分からないので、適当にベットに寝かせときますか」

 

一はある程度、生き物の気配を感じる事ができる。恐らく、いや間違いなく森での生活が原因であり、ここ数ヶ月ずっと暗殺の仕事をしていたので、その能力はさらに上がった。

 

気絶した者の看病の仕方なんて分からないし、ここに捨てておいてもいいが、滅多にないサボれるチャンスを活用しない訳が無い。

 

「起きるまで、本でも読んでますか」

 

そう言って、どこから出したのか、いつの間にか本を持って、ベッドの横に置かれている椅子に座り、本を読み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

..........幸せだった。幸せな日常は、たった1匹の怪物によって壊された。

 

 

帝国は昔、隣の国と同じで人類至上主義だったので、ずっと獣人は迫害や差別などを受けていたが、帝国の王が変わり、その意識も薄まった。だが、それでも獣人の殆どが奴隷で、リリィのお母さんのように、人間と結婚して子をなした獣人はかなり少数だろう。

 

最初は見下す者もいたが、なんとかやってこれた。自分たちの家もそこそこ大きいし、金には少々困っていたが、幸せな家庭だった。

 

そんな家庭が、たった1晩で消え去った。

 

飛龍、帝国の北の山に住んでいたと言うレッドドラゴン、6匹いる最強の龍が、帝国を襲ったのだ。そして、運悪く、リリィたちの住んでいた家は、その龍が帝国に向かう道中にあった。最強の勇者ユウキはこの時、魔物の退治でいなかった。それが、この龍の侵入を許した原因だろうか。

 

そして、リリィの住んでた家が焼かれた。

 

街もろとも、何もかも、一切合切焼かれた。たかが通過したときに、火を吐いただけで、炎が街を包んだ。お母さんが自分だけを、家の地下の貯蔵庫に逃がしてくれたから、彼女は助かった。本当はお母さんも入ろうとしたが、間に合わず、お父さんと一緒に死んだ。

 

そして、リリィはいつかレッドドラゴンに復讐しようと胸に誓い、貯蔵庫から出た。街で生き残っていたのは、リリィだけだった。

 

 

 

どうやって復讐するか。それが問題だ。リリィは通常の人間よりも強い、だがそれでもレッドドラゴンには到底及ばないだろう。ならば、冒険者だ。勇者を動かせるのは帝国の王のみなので、頼りにならない。だが、冒険者ならば金を出せば誰かがやってくれる。つまり、今一番必要なのは、お金なのだ。

 

そう考え、リリィは貯蔵庫にあった食料を魔法でできるだけ収納し、残りはカバンに入れ、14歳の足で、帝都に向かって歩き始めた。ちなみに、彼女は、学校に行った時は桜と同い年なのだが、見た目がアレなので10歳くらいだと思われていた。それが彼女のコンプレックスでもある。

 

体長が20mを超えるレッドドラゴンが進んでいった道は、街や城壁がこと如く破壊され、リリィの歩を止めるものがなかったのは幸いだろう。本来ならば、入門許可など色々面倒があるが、リリィはすんなり王都に入れた。そして、そこで見たのは、門を入って間もない所に落ちている首と胴体が分かれ、その他にも何度も切り傷があるレッドドラゴンの死体だった。

 

「すごいよねー、あれを倒すだなんて」

 

門付近で唖然としていた時に声をかけてくれたのが、リアだった。その後、彼女の助けの下、リリィは受付嬢になった。

 

後から聞かされた内容だが、レッドドラゴン討伐のために出た勇者は、まだ小さいと言う理由で出撃しなかった勇者ユウキの妹のゆなら数人以外、出撃した勇者の殆どが殺された。そして、そんな凶悪なレッドドラゴンを討伐したのが、Sランクの冒険者「鎌鼬」だと。ちなみに、鎌鼬と言う名は、レッドドラゴン討伐した後に、呼ばれ始めたのだ。レッドドラゴンの首を大きな鎌で狩ったのが原因だろう。

 

他の冒険者も駆けつけたが、力になれず、結局一1人で倒した。

 

Sランクの頂点、鎌鼬。

 

彼女は彼に憧れを抱いた。まあ、彼なのか彼女なのかは知らないが、この英雄を目指そうと思った。そして、彼女は受付嬢として活用しながら、鎌鼬の情報を色々聞いた。どうやら、彼はリミッターを五段階かけていて、そのうち2つを解放してレッドドラゴンを倒したらしい。ちなみに、この噂の出どころはギースで、後に一に殺されかけた。他にも、本来の武器は刀で、鎌を使っているのは手加減らしい。本当かどうか知らないが、それほどまでに鎌鼬が強い事を知れて、恐怖を抱く者もいたが、それでも彼女は尊敬の思いを強めただけだった。

 

それと同時に、ある男への復讐の思いも強まっていった。男の名前は、松下通(まつしたとおる)。勇者ユウキと一緒に紹介された勇者約30名のうちの、1人にして、レッドドラゴン討伐で唯一生き残った者だ。彼は民家などを背に、逃げ隠れしながら生き延びた。その後、彼は帝王にやった罪がバレて、国外追放となった。

 

彼がやったのは、勇者たちで遠征をしていた時、レッドドラゴンのタマゴを持ち帰った事だ。恐らく、孵化させて、自分の使い魔にしようとしたのだろう。だが、その結果が帝国の帝都を含める幾つかの街の半壊、もしくは壊滅だ。王は彼を処刑しようとしたが、勇者ユウキに止められ、国外追放だけで済んだ。

 

 

 

今でもたまに思い出す。

 

 

貯蔵庫から出て最初に見た、両親の遺体。真っ黒になっていて誰か分からないが、母の焼け爛れた狐耳は、実にわかりやすく、彼女に現実だと教えてくれた。

 

また吐きそうになる。

 

優しかった父が、誰かわからないくらいに黒焦げになっている。

 

 

「リリィ...おいで...」

 

昔、よくそう言われて、父に抱きついた。そして、撫でて貰った。だが、待っていたのは撫でてくれた父の暖かくて、大きな手ではなく、硬いもので殴られた衝撃だった。

 

「え?お父さん?」

 

「誰がお父さんです、誰が。起きて早々抱きつかないで下さい、鼻水がついてしまう」

 

「あ、すみませんかm...ハジメさん」

 

リリィは慌ててベッドに戻り、着崩れた体操服のようなものを着直し、一を見る。恐らく、彼の手にある辞書のような本に殴られたのだろう。

 

「お二人とも、熱々だねぇ〜」

 

「そんな...わ、私は!?」

 

「では、先生も来たことだし、自分は教室に戻りますね」

 

「はぁーい」

 

一が去った保健室。

 

「彼氏さん?」

 

「いえいえ!何方かと言えば、神様だと思ってます!」

 

「そ、そうなの~?」

 

「はい!」

 

「それにしても、仮面つけてて怖い人だと思ってたけど、優しい人ね〜」

 

「はい!神様ですから!」

 

彼女の名前は、上崎愛(かみざきめぐみ)。立派な勇者の1人だが、今はこの学校の保健室の先生をしている。前世でも先生をしていた。彼女も、レッドドラゴン討伐に参加しなかった勇者の1人だ。戦闘は出来なく、回復魔法にのみ長けていたので、彼女は残って負傷者の手当をしていた。

 

レッドドラゴン討伐に参加しなかった者は、勇者ユウキと勇者ゆなと、愛だけだ。つまり、勇者召喚で呼ばれた30以上いた者のうち、4人と桜のように無能として排除された者を除いて全員死んだのだ。これは、帝国にとって大きな損害となった。そして、噂ではもうすぐまた勇者召喚を行うらしい。

 

愛は暫く、リリィを可哀想な子を見る目線で見ていた。そして、心の中で呟いた。「ダメだこいつ、早く何とかしないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、アスフェル帝国の北にある小さな島の上だ。始まりの森の真西を海を渡ればつけるだろう。

 

一たちが平凡な学園生活を過ごしている中、でとある者によっての陰謀が始まろうとしていた。果たして、それは一たちを巻き込む物なのか、はたまたそうではないのか。

 

 

「ふふふ........後少しで全てが整う。ここに生贄を投入し、そいつの全てを吸い尽くしてやろう。何、痛くはない。ただ、私のためのエネルギーとして、永遠に働いてもらうぞ!フハハハハハハッハ、ゲホッ、ゲホッゲホッ」

 

「こらぁ!!!!」

 

「げぇ!?」

 

いかにもお母さんと言う雰囲気が漂う銀髪美女が現れる。それに対して、身長の割には大きな和服を着ている銀髪ショートの幼女が、心底嫌そうな顔を向ける。この広い部屋にいるのは、この2人だけだ。

 

「お前は一体何度私を邪魔すれば気が済むんだ!このババァ!」

 

「お前が人が折角作ってあげたゼリーを、まーた変な事言いながら、口で吸い込んで!その食べ方ヤメロと何度いえばわかるんだ!」

 

「うるせぇ!私がどんな食べ方しようが勝手だろうが!」チュウチュウ

 

「また吸ってる!...はぁ、もういい」

 

ふざけた顔から、幼女は一気に引き締めた。

 

「あっちの方は順調か?」

 

「ああ、大方予定どうりだ。"鎌鼬"って言う想定外もいるが、後はクリシャ次第だろう。大丈夫、こと誘導、人身把握、騙しなどにおいては、彼女が"我々の中"で一番だ」

 

「久しぶりに連絡してみるか」

 

彼女らがここにいる理由は、異世界へと繋がるための場所は、ここが最適だったからだ。理由は300年に1度起こる試練が原因だろう。ここの世界では300年に1度、この世界に外敵、つまり異世界からの侵略が行われるのだ。なぜその周期なのかは、この世界にある魔力量が関係したりする。

 

異世界から来れるのだ、侵略ばかりされずにこちらからも侵略しようと考えたのが、邪神たちだ。そして、その為には兵力が必要だ。兵力を最も簡単に増やす方法が、ゴーレムだ。魔物を使ってもいいが、知性がないので殆ど頼りにならないので、ゴーレムだ。

 

ゴーレムを大量に量産するには、魔力が必要、それも並の魔力で作ったゴーレムの強さならば、簡単に倒されてしまう。

 

そこで、目をつけたのがかつて封印したエイルだった。かつて彼女らは、邪竜イーストの命に従い、死力を尽くしてエイルを封印した。そんなエイルの協力を得られれば、確実に彼女の戦力は大幅にアップするだろう。そして、何より重要なことだが、彼女らはもう2度と邪竜の下につきたくないのだ。今はエイル封印の後遺症のようなもので寝ているが、起きたらどうなるか分からない。かと言ってエイルが一緒に倒してくれるとも限らないので、エイルを利用し、自分たちで倒そうと決めたのだ。

 

邪神が邪竜を倒す為に、龍神の力を借りる。滑稽な話だ。邪竜は人間が嫌いで、人間の姿をした彼女も嫌った。そして、人間を滅ぼそうとしてもエイルに邪魔されるので、その鬱憤を全て4人の邪神たちにぶつけていた。ようは喧嘩に負けた子供が、親に八つ当たりするアレに似ているが、内容がかなり外道なので、そうとも言い難い。

 

そんな扱いをしてきた主に不満がないわけも無く、彼女らは静かに機を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!服従契約を結ばされた!?抵抗(レジスト)すればいいだけの話だろ!...なに!?レジストできないだと?そもそもなんでそんな契約したんだよ!馬鹿かお前は!」

 

「何言ってるんだ、あの子は私たちの中で魔力量は一番だが、それと同時に最大のどじっ子だろうが」

 

「普通ここまでだと思うか!?」

 

「ま、まぁ。見ず知らずの人といきなり服従契約は...ちょっと...かなり...ダメだこいつ」

 

「全く、誘導とかって頭脳使うはずなのにな。たまにドジになるのは辞めてくれ...」

 

好きにしろとだけ言って、水晶の光は消えた。

 

「あいつも心配になってきた…一応連絡しておいた方が良さそうだ」

 

「そうだな」

 

「.........なんだ?今暇なんだから、通話して来んなよ。わかるだろ?」

 

「分かんねーよ!逆だろ普通!」

 

「神様やるのも面倒なの。少しは休ませろ」

 

「あんたここ数ヶ月働いてないだろ」

 

「勇者召喚だって体力使うんだぞ」

 

彼女がやっているのは、神様の真似事だ。勇者を召喚し、彼らに無属性魔法と言う名の恩恵をランダムに貸し、そして、勇者から魔力を4分の1もらう。そして、勇者が死んだら恩恵を回収する。それを繰り返して、彼女は自分の魔力量を増やしていた。勇者はこの世界に来た瞬間に魔力を持ち、それは個人差があるものの誰もが大量に持っている。例外はいるが。

 

「まあ、いいや。後はクリシャ頼みになるか」

 

 

 

 

 

彼女らの計画は、想定外が多少あれど、確実に実行されていった。

 

 

 

 

 




学校の文化祭の劇の内容こんど考えよう


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一(はじめ)は虫嫌い。

暇で暇で暇で仕方が無い。


「今日からいつもの授業とは違って、学年合同授業だ。何人でもいいから、グループを作って置くように。そして、そのグループで今日はダンジョンに入っての実戦訓練だ。なお、死亡した場合は自己責任だ。だから、強い奴と組むと死ぬ確率が下がるぞ。ちなみに、お互いに許可しなければ組むことはできない。ダンジョンに潜る時間は、3日間だ。捜索隊もでないし、助けも来ない。一番大切なのは生きて帰る事だ。ダンジョンの魔物については、授業で習った通りだ。なお、2日より早くダンジョンから出ることは許されない。そして、これが一番重要だが、ダンジョン内での犯罪は多発している。だが、安心しろ。例え捕まり犯されても、仇は闇ギルドの連中が取ってくれる」

 

対化物は、表ギルドで、

対人間は、闇ギルドの仕事だ。

 

「それはさておき!今回の実戦は、持って帰った魔石の量で成績が決まる。全力でやるように!」

 

ダンジョンの付近で、説明を終え、みんながグループを作り始めた。

 

「ハジメさん!同じグループに......いない!?」

 

「一様なら、エイル様のところに行ったハズですよ。せっかく同じグループになれるチャンス、見逃すわけないですね」

 

「なぁ、これハジメについて行ったら、勝ちゲーじゃないのか?」

 

「いえ、それはないでしょう。一様ならば、かなり深くまで潜るので、かえって危険です」

 

「よし、俺もどっかと組んでくる」

 

「全く、弱い男ですね」

 

そう言うや否や、リリィは桜の腕を掴み、一がいるであろう方向に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキカキ

《私思う。今こそ部活メンバーで集まる時だと》

 

幽霊部の部員、つまり幽霊部員は一、エイル、桜、リリィ、テレサ、ゆなの6人だ。学園の中でも顔が上位の女の子が集まる部活故に、入部希望者が後を絶たない。特に男子の。そこで、年に1度だけ男子部員交代のチャンスを設けた。

 

トーナメント方式の、個人戦。

 

それが行われるのは、実は僅か数週間後だったりする。

 

「そうだな。どうせハジメの事だ。我と一緒に入りたがろうとするだろう」

 

《あなたと一さんってどんな関係なんですか?》

 

「あいつは我の夫だ」

 

「!?」

 

ゆなは一瞬驚くが、昔見たブラックなんたらのアニメでも、ヒロインが好きな主人公の事を勝手に自分の夫だと言っていたのを思い出し、恐らく彼女もそんな感じだろうと思った。だが、2人が本当に夫婦だと後ほど知る事になるだろう。

 

《あ、噂をすればです》

 

人波を避け、一がマントのように黒のコートをなびかせて、やってくる。

 

「エイルさん、一緒に入りましょう。久しぶりの狩りです」

 

「まぁまぁ、焦るな。今回は部活メンバー全員で入るってうちの部長が言ってるぞ」

 

「なるほど、わかりました。待つのもなんだし、連れてきますね」

 

そう言うや否や、一は2人の前から消えた。

 

《魔力量が????.....また億越えか....》

 

ゆなはメモに書いてから、それを捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンは、入口が大きな門があり、そこから階段が下に続いている。現在、最も深くまで潜った事があるのが、風神クリード率いるパーティが行った、21層である。そもそも、レベルアップがないこの世界に、ダンジョンに潜る理由はあるのだろうか?利点は沢山ある。まず、訓練より実戦の方が力がつくので、訓練目的で来る人もいる。更に、ダンジョンのモンスターの死体は、特定の物をドロップする。それもかなり有用だ。そして、ダンジョンではたまに宝箱が現れる。勿論トラップもあるが、本物があれば、中身は金銀財宝、たまに王宮で用意される物ほど、もしくはそれ以上に美味しい物が入ってる事もある。

 

「なんで当たり前のように未踏の地に来ているんですか?おかしいでしょ」

 

桜からその言葉が出たのも、無理はない。彼らが今いるのは、23階層である。

 

《さ、流石にここの魔物は勝てるのは1匹もいなさそうです》

 

「足でまといは後ろにいましょう」

 

一とエイルの後ろにいるのは、テレサ、ゆな、リリィ、桜である。このメンツでは、テレサもゆなも足でまといに入るのだ。

 

バキンと言う音と共に、一の使っていた鎌が壊れた。折れたと言った方がいいだろう。

 

「おおお、鎌が折れたと言うことは、まさか!あの刀が!?」

 

「何を言っておる。ハジメは武器が壊れたら拳で戦うのだ。というより、そっちの方が、得意だ」

 

「いえいえ、ここのボスならだ、まだ鎌で行ける範囲にいます」

 

そう言って、服の袖から鎌が出てくる。6つ出てきた。一はそれを片手で五つ持ち、もう片方で一つ持っている。そして、壊れる度に持ち替えて、壊れたのは全て収納されていく。

 

ガキィィン!ガキィィン!キン!ガキィィン!

 

炎はエイルが打ち消し、打撃、斬撃、噛みつき、尻尾による追撃まで全て躱す。ちなみに、この階層のボスは、胴体が長い蜥蜴が、二本足で立ったような感じだ。まあ、蜥蜴より圧倒的に尻尾は長いし、およそ胴体の3倍はあるだろう。身長も4m近くあり、尻尾は10mはあるだろう。

 

そして、攻撃を躱して一は蜥蜴の顎を全力で何度も何度も鎌を使い叩く。本来鎌は切るものだが、あいにく切れないので、ひたすら叩いくことしかできない。いくら装甲が厚くても、衝撃は幾分か伝わるのだ。あわよくば、脳震盪を引き起こせるかもしれない。

 

そして、何度も叩いてる内に、蜥蜴の意識が朦朧として来たのだろう。そして、何度も向かってくる一に僅かに恐怖を抱き、それを紛らわすため、逃げるために大きく吠える。

 

「GYAAAAAA!!!!」

 

「生憎、その威嚇が愚行なんですよね」

 

そう言って一は空いた口に鎌を2つ突っ込み、両側に大きく開き、蜥蜴は口からお腹まで引き裂かれた。いくら表面を硬い皮膚が覆っていても、口の中はどうにもできない。だから、そこを突いての作戦だった。最も、作戦なんてはなから無いが。

 

そして魔物が倒れた。

 

「あぁー、もう一度刀見たかったな〜?今まで勇者の剣を遠目で見たことがありますが、それよりも圧倒的に綺麗でした!」

 

「もっと褒めるがよい」

 

えっへんと桜が我がもの顔でドヤ顔する。

 

「次の行きますよー」

 

「いやー、やっぱハジメは強いなー!」

 

どうやらこのメンツには、一の強さに恐れを抱く者はいないようだ。ただ1人を除いて。

 

《危険......ですね》

 

またも書いて、丸めて捨てた。ちなみに、捨てているように見えるが、全て収納して、後ほど燃やされる。

 

 

 

 

 

25階層

 

「もうこれ外と同じじゃないですか!」

 

「ハジメさんがいなければ、知ることのない世界ですねー」

 

《3日もうすぎたんじゃない?》

 

「いえいえ、部長。まだ過ぎてないですよ」

 

《ん?もう3回は寝てるぞ》

 

「無属性魔法、無限収納の中では時間が流れません。故にそこで寝た部長らは、そう感じているだけです」

 

「そう言えばハジメ、お主寝なくて良いのか?丸1日どころか、丸二日寝てないぞ」

 

「そうですね…ではこうしましょう。引き返しますか」

 

「えー!私もっとハジメさんの戦ってる所見たかったですよ!」

 

「五月蝿い小娘、あんたの意見は聞いてないです。どうします?エイル、部長」

 

《時間が時間ですし、帰りましょう》

 

「ここまで来たんだ、ボスを倒して行ったらどうだ?」

 

「そうですね」

 

外とあまり変わらない明るさで、外だと思わせる広さを有する25階層、その真ん中、森を抜けた先に、巨大な城壁があった。高さは30m以上、全て様々な形をした石で積み上げられている。日本にあるお城のような感じだろうか。

 

その近くまで、一たちは来ていた。

 

知性を持っている者がいるかもしれない。

 

「村と言うより、小さな帝都みたいな感じですね。真ん中にお城ありますし」

 

「そうだね、自分が見てきます。何があるかわからないですので」

 

「我も行こうか?」

 

「皆さんはこちらで待っていてください」

 

そして、一が1人で森から抜け、城に近づいていく。城の門に入ろうとすると声が聞こえた。

 

『それ以上入ると、侵入者として排除します。何者ですか?』

 

「森から城が見えたので、来ました。敵対するつもりはありません。そちらが敵対しない限り」

 

『......やってみますか?』

 

両者一気即発である。そして、その空気は簡単に壊される。

 

『待ちたまえ、メイド!久しい人間だ』

 

『マスター、威厳か消し飛んでしまうので引っ込んでいてくれます?』

 

『気にするな』

 

「じゃあ、様子見したので帰りますね」

 

『まあ、待て。お茶でも飲んで行くといい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《もう時間無いんで早く帰りたいんですが?》

 

「急ぎの用事でもあるのか?」

 

そう言ってるのは、黒のTシャツにグレーのズボンを着た男だ。ちなみに、転生者らしい。顔は中の上程度だろうか。それなりのイケメンだ。歳は20歳後半だろう。名前は不動 皆木(ふどう みなき)。

彼が転生者と言うこともあったので、一は自分もそうだと伝えた。別に隠す必要も無い。

 

《授業でここまで来ているので、後1日以内で帰らなきてはいけません》

 

「ほう、なるほどな、まあ、帰りは私が送っていくから、タイムラグの無いようにな。だから、ギリギリまでここにいるといい。私はそこの転生者に用があるのだよ」

 

「いいですけど、何か話すならエイルさんも一緒に聞いて貰います」

 

「む、別に我は聞かなくとも...」

 

「その方がいいと思いますよ。自分はエイルさんの命で動くので、頼み事ならエイルにした方がいいです」

 

「なぜ頼み事だとわかった?」

 

皆木の声のトーンが先程の軽いものから一変する。

 

「勘です」

 

「それを信じているのか?お前は」

 

「どこかの誰かに教えられた情報よりも、自分の勘を信じますね」

 

まあいいと言って、皆木はエイルとハジメを連れて別室に向かう。ちなみに桜もついて行ったが、転生者だと言われて承諾された。

 

「メイドさん、お茶でも出してあげて」

 

「了解しましたマスター」

 

 

 

 

 

 

「まずは、俺の目的を言おうか。俺の最終目標は、奴隷制度の廃止だ」

 

「.....」

 

「私がここに来たとき、あのメイドさんも一緒にいた。誰かに召喚された訳でもなく、気づいたらメイドと一緒に草原にいた。そして、この国に来た時、奴隷がいることで興奮したよ。これで俺も童貞卒業出来るとな。だが、この国の奴隷に対する差別は酷かった」

 

桜が昔受けていた扱いは、まだマシな方だ。酷い所では、本当に物のように扱われている。性処理道具として扱われたり、人体実験、魔法の被検体、餌、娯楽などなど。様々な扱いを受けていた。まあ、今はそれはややマシになったのだが。原因は主に、アポカリプス学園だ。差別なく実力者を受け入れる制度は、奴隷達にとっては一筋の光で、民には考えを改める者も現れた。だが、それは僅かな数である。今でも人間とは思えない扱いを受けている者も数多くいる。その結果が、勇者ユウキによる奴隷商襲撃事件だ。だが、彼がやったのは僅かな数で、しかも彼は持ち前の優しさで奴隷商たちを1人も殺していない。結果、また奴隷商は増える。さらに、そのことを王に文句が来て、数年収容となった。ちなみに、今も収容中で、魔王級以上の魔物が出現した時以外出れなくなっている。

 

「転生者なら、ゆなも転生者ですよ?」

 

「それは私も知ってる。だがあいつは、勇者だろ?勇者召喚されたんだろ?つまり神に会っている。そこが面倒なのだ」

 

「あー、なるほど、つまりそういうことですか。ですがそれは桜も同じじゃないんですか?」

 

「そいつはお前の奴隷なんだろう?紋章があるぞ?」

 

奴隷は誰しも紋章がある。見えずらい首の後ろにあるのだが、どうやら彼には見えたらしい。

 

「え?状況が把握できないんですが…」

 

「我もイマイチだ」

 

「つまりですね。自分のように直接ここに来た者と、桜のように何者かによる仲介を得てこちらに来た者を区別しているんですよ。仲介がどこの誰か知らない人は信用できないと思っているのでしょう。ですがそれだと、自分も信用できないと思うんですが?」

 

「君も言っているだろ、自分の勘を信じると。まあ、私の場合、別の所から信頼を得ているが」

 

「と言うと?」

 

「それだよ」

 

そう言って皆木は一の胸元にあるアクセサリーを指さす。それは小さな真っ黒な鎌だった。そうこれこそが鎌鼬の武器だ。他にもロングコートの下に数十とある。

 

「「鎌鼬」と言う冒険者を信用していると?」

 

「あぁ、そうだ。他は知らんが、少なくとこお前はお金さえ出せば、裏切らんのだろう?」

 

「エイルさんに危害が無ければ」

 

「そこでだ、君を雇いたい」

 

「もう一つ、あなたはこんな所に城を建てている。それ程の実力があるのに、なぜ自分を雇うんですか?」

 

「私に実力なんてない。全てメイドさんのお陰だよ。本当、恩だらけだ」

 

「で、そのメイドさんにやらせないで、自分を雇った理由は?」

 

「何を言っている。メイドさんよりも強いからだろう。私たちが君の、君達の実力に気づいていないとでも?」

 

「そんな量の情報、一体どこから?」

 

「なに、そう言うスキルだと思ってくれ、メイドさんの。説明するのも面倒だ。1度訪れた場所に監視カメラのように自分の視線と共有できるようになるのだ。では、改めて聞こう。私と協力するか?一緒に戦い、正し、進み、より良い国を作るために私と来るか?」

 

簡単にいえば、私に雇われろ...だ。

 

一は特に考えもせず、さも当たり前のように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断る」

 

 

 




作者「やあ、白夜!私と戦争しよう!」

白夜「戦争ってあの?」

作者「多分違うと思うぞ、ほら、あの小学校でよくやる手を叩き合うやつ」

一「ああ、それなら自分も知ってます」

白夜「ああ、あのジャンケンみたいなのして、勝ったら相手の手を叩くやつか」

作者「そうそう、それそれ」

白夜「いいぜ、やろう」

2人は握手した。

数秒後.......

作者「ギャゃゃゃ!!手が折れたァァァ!!付け根から、ポッキリと!」

一「一般人が申し込んでいい相手じゃないと思うんですが…」

白夜「じゃあ、一やろうぜ」

一「上等です。殺る気で行きます」

そして白夜がジャンケンで勝ち、一の手を叩く。

ぽふっ、そんな音が響きそうなくらい軽かった。

作者「ちょっと!その差はなんですか!?」

白夜「仕方ないだろ、見た目が女の子だもん」

そして、次は一が勝った。

バンッ....プシャー....

一と白夜の手が、二人とも千切れて、宙を舞っていた。そしてゴトという音を立て、地に落ちた。

一「まあ、これぐらいは当然ですね」

白夜「流石にビックリしたな」

作者「なんで2人とももう治ってるんですか!?」

一「そんなことは些細な事です」

白夜「そうそう、大事なのはこの戦争でいかに生き残るかだ」


その後、当たりを消すほどの戦争が始まった。


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一(はじめ)の見た目は美少女。

文字数少なくてすみません。


 

 

「断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、やけに部屋に響いた。

 

「理由は?」

 

「自分の予想が正しければ、その方法は....」

 

「あの、奴隷解放して終わりじゃないですよね?」

 

一の言葉を遮ってまで桜が聞く。

 

「まあ、桜。この人に限ってそのような事はないと思います」

 

「え?」

 

「今から説明してくれるでしょう」

 

「あぁ、そのつもりは無い」

 

一が足を組みかえて、ソファーに座り直す。その右にエイル、そしてソファーの近くに立っているのが桜だ。

 

「解放してからが一番問題だ。手っ取り早く反対派の連中を消しますか?」

 

一が皆木に問いかける。

 

「Noだ、この国の法律で許されているんだ。そんなことしてたらキリがないし、恐怖政治になってしまう」

 

「では、演説などをして、民衆を掻き立てる」

 

「Noだ、成功する可能性が低いし、理解してくれない。法律とは常識であり、常識を覆すのはとても難しいことだ。例えその時ついてきたとしても、後から裏切られる運命は目に見えてる」

 

「では、法律を変えるのはどうでしょう?」

 

「Noだ、今の法律を決めた帝王が聞いてくれないだろう。力ずくというのもありだが、それでは恐怖政治、独裁政治と同じだ。いずれ崩れる」

 

「その王や、民を説得する」

 

「Noだ意見の違いならばそれでどうにかなるかもしれないが、思想、思考の違いはいくら言った所では理解して貰えないし、分かり合えない」

 

「では、思想を変える」

 

「法律改変と同じ結果になるのが目に見えてる。当然、Noだ」

 

そして一はわかっていたように言った。

 

「ならもう方法は一つしかないですね」

 

「「奴隷を集めて新たに国を作る」」

 

2人の声が重なる。

 

「わかってるなら、なぜ断る?どこに不満があるんだね?」

 

「だって、国を作った後雇うということは、国の護衛を一時的にやるとかですよね?」

 

「そうなるな。できたばかりの国にそれ程の武力があるわけがないし、ある程度手に入るまで協力してもらう」

 

「それって数日では無く、下手したら数年ですよね?」

 

「そうなるな、で?」

 

「昔なら承諾しましたが」

 

一はもう一度足を組み直し、言った。

 

「自分今学生やってるんですよ?」

 

「あ、忘れてたよ」

 

皆木はふふふと笑い、そして少し間を置いてから言った。

 

「じゃあ、それが終わるまで作戦は保留だ。元々まだ色々準備が必要なのでな」

 

そう言って、彼は金貨が大量に入った袋を出す。

 

「1万枚だ。とりあえずこれで君を学校行っている間雇う」

 

「その間は無理なんですが?」

 

「万が一我々が何かやった時、それに干渉しないための金だ。それに予約金も入ってる。我々が君を雇うまでの間、ほかの人に雇われて我々を攻撃されたら元も子もないからな」

 

「ようは、裏切るなと言う事ですね」

 

「そういうことになるな」

 

「では、絶対に裏切らないようにしましょう。ただし、エイルさんに命令された場合は別です。不干渉と行きましょう。国づくりの手伝いは、お金が手に入るならばやりましょう。ただし、エイルさんが反対すれば自分はそれに従うつもりです」

 

「我は反対しないぞ?」

 

「では、決まりだな。上に戻る時はメイドさんに言うといい。魔法陣を使って送らせよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆木の所で一日寝て、彼らはダンジョンから出た。見つからないように、転移先はダンジョンの入口から少し離れた所にある森の中だ。

 

《素材を換金しに行く》

 

ゆなはかなり疲れているようで、書くのも面倒になって来たのか、段々片言になってきていた。疲れが見えるのは、桜とリリィとゆなだけだ。彼女らの身体能力からすれば、当たり前だろう。一とエイルとテレサがおかしいだけである。

 

ゆなはなんとか魔力を無座使いして保っているが、魔力も少ない2人には無理な話だ。そこでエイルが桜かリリィのどちらかをおんぶして変えろうとしたところ、一が自分がやりますと言って、2人とも今は白夜にしがみついている。リリィをおんぶし、桜をお姫様抱っこしながら、ダンジョン内を数十km歩いた。

 

エイルがいなければ、彼女らは置き去りにされただろう。

 

 

 

「いやー、まさかあのナルシがこんなに凄かったとはね!あいつがいた層、私全然ダメだったよ!多分、あそこで放置されたら10分で死ぬよ!」

 

「風神は対人ではそこまで強くないですが、対魔物ならば最強ですからね」

 

「まあ、それもハジメさんを抜いたらですがね!鎌鼬ですから!」

 

「元気なら、降りますか?」

 

ちなみに桜はぐっすり寝ている。

 

「いえ、結構です!」

 

《ただいま戻りました》

 

「どうする?このまま変えるか?もう夕方だぞ?」

 

この授業は終わった者から帰っていい事になっている。

 

《じゃあ、ここで解散としましょうか》

 

 

 

 

 

 

 

次の日からは、普通の授業に戻った。今回のダンジョン授業での死者は、二桁に登り、皆その覚悟で来ているので授業に支障を出すものは少ないが、それでも怖くなり、学園から去っていく者が数十人現れ、学園の生徒は百以上減ってしまった。だが、これこそがこの学園の本質。ありとあらゆる場所から集められた冒険家達を選りすぐり、彼らを数年通して自分らに、帝国に都合の良いように教育するために。

 

「魔法とはかつて、何にでも変換可能な小さな粒だったという説がありましたが、それでは光属性と闇属性、そして無属性の説明がつかないので今は無くなり、未だに魔法がなんなのかは分かっていません。ですから…」

 

女の教師が黒板に文字を書きながら授業を進める。書きずらそうなノートで、ノートを取っている人もいれば、お金がないせいか頑張って内容を頭に詰め込もうとする人もいる。そして、寝ている人もいる。一はボーッとしているように見えるが、全て頭に詰め込もうとしている。そして、前の席にいた桜が一に話しかける。ちなみに、先生は寝ていようとも生徒を咎めたりしない。進学に落ちて退学になるのは、自己責任なのだから。

 

「一さん、あなたはどう思いますか?この魔法理論」

 

一に桜が話しかける。

 

「簡単な事です。こう考えれば楽だ。闇属性魔法も光属性魔法も無属性魔法も、"魔法では無い"のだと思います。光属性は祝福、闇属性は呪いの類い、そして、無属性はスキルとしましょう。祝福は人を癒し、悪を苦しめる。呪いは何もかも一切合切苦しめる。そして、無属性は理不尽だ。魔力と言う代償を必要としないのだ」

 

「へー、それなら辻褄が合いますね」

 

「まあ、自分独自の考えですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日

 

帝都にある城、そこには王がいる。このアスフェル帝国を収める者だ。会見の間で、王女や姫を含めた重要人物がいる所へ、衛兵がノックもせずに駆け込む。この王は、鍛え抜かれた身体が衣装の上からでもわかるほど強い人だ。

 

「すみません!王!アスフェル王!」

 

「無礼者!ノックぐらいしろ!」

 

大臣が怒鳴りつける。そして、豪華な椅子に座っている人物こそが、グルッツ・ヴァン・アスフェル、この国の王である。

 

「で、ですが至急お聞きになって欲しい事が...」

 

「なんだ」

 

「魔王級の魔物が、現れましたが....」

 

「それならもう知っている」

 

「それが!北に魔王級の魔物を倒しに行った勇者ユウキを含める勇者一行が、1人を残して全滅しました!どうやら知らせる為だけに、転移を使える魔法使いだけを逃がしたようです!」

 

「な、なんだと!?」

 

部屋の中の音が消えた。

 

「ま、まずいです王!これで勇者は1人もいません!ゆなは戦うにしてはまだ歳が小さすぎます。後頼りになるのは…冒険者のみです」

 

「しかし、冒険者に強制依頼はできませんよ」

 

「それだけが問題だな...」

 

貴族の話し合いに王も参加する。

 

「だが、我々だけではどうにもならん。本人を呼ぶとしよう。恐らく1人以外は応じるだろう。そして、その1人も最悪の場合、切り札を取っておいてある。ギース」

 

「はい、いかがなさいましたか?王」

 

「ほざけ、聞いていたのだろう。で、あやつを学園に送り込んだ成果は?」

 

「まだ1月もたっていませんので」

 

「やはりダメか」

 

「ただ、彼の使い方をよく知っていそうな人なら知っています」

 

「ほう、ではそいつが最終手段だ」

 

「了解しました」

 

「そして、今日Sランク冒険者を含めた緊急会議を開始する」

 

「金で雇う事になるが…出来るだけ少なく収めなくてはならない」

 

Sランク冒険者を雇う料金は、Aランクを雇った場合の5倍である。勿論、本人が認めればタダでも雇う事が出来るのだが。この価格は当然の事なのだ。Sランク冒険者1人で、Aランクの5人分どころか、50人分もの力を持っている。Aランクを5人雇う料金で、50人Aランク雇えるような物だ。むしろ格安である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼らはまだ来ないのか!?」

 

そう声を荒らげるのは、オールスと言う男だ。彼は軍師はできず、政治もできず、財政にも疎い。何もできずの無能として知られている。まさに家柄だけで今の役職にいるような人だ。

 

「落ち着け、オールス。まだ約束の時間まで時間があるぞ」

 

「ち、違うのだよ。私は彼が遅刻しないか心配なんだ」

 

彼に声をかけたのは、隣に座るベアードと言う者だ。広い部屋の真ん中に10m以上はある長い楕円形のテーブルのお誕生日席に座っているのが、王で、その右から順にベアード、オールスだ。広いテーブルの割には席が少ないので、席と席の間はかなり空いている。

 

貴族は他にもいるが、ここに来ているのはこの二人だけである。オールスは貴族にも、兵士にも人気がない。いや、彼をよく知る人にはかなり人望があるが、彼を知らない兵士や貴族になりたての者から見れば、家柄だけで出世した男は目障りだろう。何故来ているのが2人だけかと言うと、貴族たちが家に帰り、逃亡の準備を始めているのだ。それほどの緊急事態なのである。魔力量300万の勇者を殺った化物が現れたのだ。逃げるのも当然である。

 

そして、数少ないが、ベアードを信頼していない貴族もいる。別に彼らなら倒してくれると考えていない。ベアードがいれば、自分らがいる意味はないような物なのだから。ベアードはかなり優秀な軍師であり、彼自身もかなりの実力者だ。実力でいえば、Bランクあたりだろう。貴族は自分たちの兵を持っているが、彼はその能力を王に買われ、帝国の軍の隊長以上の権限を与えられている。要は帝国軍の最高司令官だ。

 

「(何が心配だよ。お前が心配してるのは、自分の地位とプライドだろ、無能が)」

 

ドアにいる衛兵の1人が小さく言った。

 

「聞こえたぞ!貴様!」

 

「ひぃぃ!」

 

ベアードが席から立って、衛兵に詰め寄る。地獄耳だ。とんだ地獄耳だ。

 

「まぁ、まぁ、ベアード君。本当の事なんだ。私が無能だと言うのは私が一番知っている」

 

「だが!」

 

「いいんだよ…」

 

「だが俺は満足しない!お前!名前は?」

 

「は、はい!アルフレッドです!」

 

「これが終わったらオールスの衛兵になれ、そこでこの男について学んでこい!」

 

「え...」

 

「返事は?」

 

「はい!」

 

こうして、一がまだ来てない間に、とある衛兵の未来が決まってしまった。

 

その数秒後、席についたベアードが静かに言った。

 

「時間だ」

 

その瞬間、当たりに光の粒子が溢れ、入口近くに集まり、4人の人形を形成する。

 

「ん?遅れたかね?」

 

「いえ、時間通りのはずです」

 

「ハジメが時間間違えるわけがないよ!あなたとは違ってね、ナルシ」

 

「ほっほっほ、その通りじゃな」

 

「なんだと、デカぱい!」

 

「何んだと〜!お前も本当はこのおっぱいを好きにしたいんだろ?ほれほれ」

 

「王の前です」

 

ベアードの声で静かになった。最も、彼女と彼はまだ睨み合っているが。

 

その少し後、4人が席についたと同時に、ギースとリリィが入ってくる。

 

「げ、キチ〇イじゃ、キ〇ガイが何故ここに」

 

「私が呼んだんだ。鎌鼬の扱いが一番うまいのがこいつだと聞いてな」

 

「なんですか?それ」

 

「ハジメさん!私エイルさんに鎌鼬の面倒見るように言われました!」

 

「自分は子供ですか?あ、子供でした」

 

「エイルより伝言です。「今回は危険かもしれないと言って連れ出さなかったのはお前だ。だが、我がいないとお前がまた何かやらかすかもしれない。リリィならば信頼できるだろう。我の勘だ。しばらくはリリィの言う事を出来るだけ聞くんだぞ」と言ってました。証拠として彼女の指輪を持っていけと言ってました」

 

「確かにこれは自分があげたもので間違え無いです。では、今からあなたの下につきましょう"出来る限り"ね」

 

「取り敢えず、ハジメ。王の前ですよ」

 

「了解」

 

彼は席に戻り、全員が席につくのを待ってから王は喋った。ちなみに、ギースは用無しなので帰らせた。

 

「では、よく集まってくれた。風神、雷神、賢者、そして、鎌鼬」

 

「ハジメさん、王の前なので、流石に仮面はダメです」

 

「むー、やむを得ないですね」

 

一は静かに仮面を外す。実は、この場にいる人の中で一の素顔を見た者はまだいない。

 

誰もがゴクリとつばを飲む。そして、命令したリリィも同じくつばを飲む。彼女は適当に理由をつけて一の素顔が見たいだけである。ある意味計画的犯罪だろうか。

 

「これでいいですか?」

 

「「「え?」」」

 

「あ、あのー、ハジメさんって女の子だったんですか?でも確かに声は高いし、でも喋り方は」

 

「男ですが?」

 

「「「え!?」」」

 

仮面の中に隠れていたのは、誰が見ても美少女と答えるであろう顔だった。おまけに黒髪も長いので、女の子にしか見えない。

 

「私に相応しい顔の持ち主が、まさか男とは...いや、男でも行ける!」

 

変な趣味に目覚めた雷神だった。

 




今思いましたが、展開早くね:


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一(はじめ)はイカが好き。

タイトルと内容全く関係ないよ!


「単刀直入に行こう。君たちには依頼をこなしてもらいたい。強制依頼だ」

 

「強制依頼はないんじゃないですか?」

 

「いや、確かに強制依頼はないということになってるが、魔王級以上が出た場合は別だ。下手したら国がいくつも滅ぶからな」

 

「魔王級以上...?」

 

さきほど、一の顔を見て一目惚れしていたナルシストが蘇った。

 

「なんじゃと…?正しい情報か...?」

 

「ちょ、まずくないですか!」

 

「うるさい、おっぱいはダメってろ」

 

「何おぉ!!」

 

「ちょっと、テレサうるさいですよ」

 

「え.......すみません...」

 

流石のテレサも一に言われるとは思っていなかった模様だ。テレサが黙ったのを見て、王がまた話し始める。

 

「勇者のパーティで悠一助かった魔法使いの話によれば、勇者の魔法石は魔物によって取り込まれていたらしい」

 

魔法を使う際に魔石にある魔力を使ってもできるので、魔力量が少なくても大きな魔法を使ったりできる。だが、魔物にとって魔石を使う機会ないのだ。使う脳がないのだが、たまに、ごく稀に魔石を使う魔物が現れる。使うというより、取り込む魔物が現れるのだ。使われない魔石が放置され続けると、どうなるのか?簡単に言うと、ダンジョンが出来上がる。魔石の量にもよるが、たくさん魔石があるとより大きなダンジョンができる。だから、ギルドではたまに魔石回収の依頼も出される。魔石は収納に入れるとダンジョンを防げたりする。

 

帝都の近くには、世界最大の巨大なダンジョンがある。何故これまでに大きなダンジョンがあるのか?答えは簡単で、ここで一の持ってる刀「鎖」が作られたのだ。昔の勇者、英雄達は多いものでは邪竜に匹敵する数十億の魔力量を保有する者もいたのだ。少なくても数億。エイルは知らないが、刀を作った本人だけでなく、魔力をあげた勇者は全員死に、邪竜もエイルを封印した後、眠り続けている。

 

勇者らが消え、国を守る戦力も減りそこの国は魔物により1度滅んだ。そして、そこに残された魔石は長年放置され、今のダンジョンと成り果てた。

 

「つまり、悪夢(ナイトメア)が出たんですね?」

 

魔石を取り込む魔物は、悪夢『ナイトメア』と呼ばれている。

 

「そうだ」

 

「「「...!?」」」

 

悪夢は強さ関わらず、魔王級以上とされている。後に必ず強くなるからだ。魔物には知性など無く、本能で行動するので、魔物同士での抗争が無いはずが無い。そして、悪夢が最も厄介な点は、その抗争で敗れた魔物の魔石、つまり本来冒険者が回収する筈の魔石をも取り込めるのだ。だから、どんなに個体が弱くとも、大きな魔石に出会えば凶悪な魔物と成り果てる。

 

「ハジメさん、どうします?」

 

保護者のはずが、結局リリィは一の意見に従う。いや、これもある意味保護者か。

 

「これは.......」

 

「ちなみに、君が受けてくれれば、ギルドの私自らSSランクの制定を持ちかける」

 

Sランクの4人は人にして、人にあらずと言われる程に強力な力を持っている。だが、彼らにそこまでの権力はない。せいぜい没落貴族と同じくらいだろうか。だが、もし一がこの依頼を受けてくれたならば、王はSSランクを設けようと考えている。SSランク冒険者は、王に続いて、2番目の発言権を有する設定だ。最も、ギルドの本部があるのはこの国では無いので、その国に交渉する必要もあるのだが。

 

「と言う事で、君が受けてくれればSSランク冒険者を設け、君をそのSSランクにしようと思う。無論、貴族と同じか、やや上の権力があるのでそれなりの領地をあげるつもりだ」

 

「僕は納得が行きません!何故こいつだけSSランクにするんです!?」

 

「ハジメさん、下から上を見上げる感じで、クリードさんを見てください」

 

「......?」

 

取り敢えず、リリィの言う通りする一。

 

「...!SSランクになるのはハジメちゃ...くんが相応しいと思います!考えたら、SSランク出来てから僕もなればいいだけだ!」

 

「やっぱり、キチ〇イじゃ...」

 

「なんですか?」

 

「なんでもないんじゃ。(この子怖い)」

 

「(こいつ連れて来るんじゃなかった…なんだかんだで、Sランク全員従えてる…。と言うより、鎌鼬1人抑えたら、S全員抑えたらも同じじゃん)」

 

自分の愚行を悔やむ王だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元々、断る理由がありませんしね」

 

一がこの依頼を受け、その他のSランクも全員受けた。そもそも、この中で一番悪夢を恐れているのが、一である。彼は知っている。彼の家で飼っている魔力量400億のスラちゃんも、悪夢であり、そしてある意味、彼自身も悪夢なのだ。他人の能力を取り組んで、己が力にする。その点では一も同じである。そう、彼が危惧しているのは、自分らを殺しきる魔物の出現だ。彼と彼女は、いくら頑張っても人間と同じ寿命しか生き残れない。だから、一はエイルと残りの人生ぎりぎりまで過ごそうと思っている。彼は永遠を望まない。そして、その一生を邪魔する者は、誰であろうと許すつもりは無い。

 

「では、報告と行こうか。ベアード」

 

「我々が今得ている情報をまとめると、悪夢は現在、勇者らの魔石を魔法使いのを除いた全てを取り込んでいる。敵の魔力量は少なくとも、2000万で、放置時間がながければ長いほど強くなるだろう。いずれ、億に行くだろう。姿は、ドラゴンのようだったらしい」

 

「速やかに討伐する必要があるのだが、国々の協定により、これより君らには各国を回ってもらいSランク冒険者、もしくはそれ相当の実力者を集めて貰わなければならない。万が一それでも負けたら、我々は滅びを待つしかないのだ。遅くとも一年いないに準備を整えるのだ」

 

悪夢にとって、半端な戦力は餌でしか無い。過剰戦力でちょうど良いくらいだ。戦ってる途中で、仲間1人でも取り込まれたら、戦線は崩壊する。

 

「誰が行くんです?」

 

「鎌鼬が決めて構わん。足で纏いと思ったら連れていなかんくて結構だ」

 

「ほ、本当に大丈夫なのかね?」

 

「オールス、ここは覚悟を決めなくてはならないのだぞ。残念なことに、我々にできることはこれぐらいだけだ」

 

「ハジメくん、万が一の時は王だけでも助けてくれるか…?」

 

「王国とは民あっての物だ。私は民と心中するよ」

 

王の発言に、ベアードも頷く。だが、オールスだけは納得しない。

 

「王国とは王あっての物だよ。民がいた所で、後に他国へと逃げるだけだ。だが、あなたは王だ。例え他国に逃げたとしても、あなたさえ生きていれば、必ずまた建国ができる。民は確かに必要だが、それは後からでも招き入れられる。だが、それを束ねるリーダーがいなくては、何一つ始まらないのだよ…。王、民の命を無下にしろとは言わない。だが、民の命を無駄にするな。何度国が滅んでも、死にものぐるいで国を作り直す。それが王の務めだと私は思っている」

 

「全く、お前は無能の癖に、理念と信念だけは一丁前なんだから…」

 

「私が死んだとしても、国が滅んだら必ず、建国し直すと約束しよう」

 

 

 

 

 

 

そして、一たちの全ての国を巡る旅が、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、エイルさん、行ってきます」

 

「おう、我は桜と学校行ってるからな。ゆなはいるが、兄を失ってるから、部活は難しいか。まあ、気にせず行ってこい」

 

「エイルさんと一年ぐらい会えないのですか…まあ、人生80年、それから考えたら少ないですね」

 

「行ってらっしゃい、ハジメ」

 

「行ってきます。エイル」

 

 

 

 

 

 

一達は取り敢えず、王城に集まった。先日会議を開いた場所に当たり前のように入っている。

 

「ではまず、行くメンツを決めます」

 

「はい!はい!私行きたい!」

 

「じゃあ、僕も行こう」

 

「私はハジメさんの保護者ですので」

 

「じゃあ、ワシは行くのはやめよう。キ〇ガイと一緒とか死んでも嫌じゃ」

 

「では決まりですね。行くのは、テレサさん、クリードさん、キチ〇イさんで」

 

「ハジメさんにキ〇ガイって言われた!?」

 

「あれ?そういう名前じゃなかったですかね?」

 

「もう、それでいいです…」

 

リリィは一に慰めてもらうシーンを想像して、涙を流したが、当の本人には無視された。

 

「では、行く国はまずはマートンに行くことにしましょう。そこから、時計回りで行きます」

 

一はテーブルに地図を出して、指を指す。悪夢が現れたのは、始まりの森付近だ。だから、この道のりで順番通りになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車で移動しながら、一達は国境を目指す。

 

いつものように、テレサは一の膝の上に座っているが、その席をリリィと取り合いしていた。

 

「なんであなたがハジメさんの上に座ってるんです!私に変わってください!」

 

「じゃあ、ハジメに聞いてみなよ!」

 

「ハジメさん!」

 

「...zzzzZZZ」

 

「これはダメですね…?」

 

「おっぱいとキチ狐、煩いぞ」

 

「う、す、すみません」

 

リリィは思うところがあったのか、渋々引き下がる。それを見てテレサが誇らしげな顔で言う。

 

「ふん、その程度のようね!」

 

そう言って、テレサは馬車の上で立ち上がる。この馬車は貴族用のかなり豪華なもので、馬車が個室を運んでるような感じの物だ。

 

「ナルシが調子こいてんじゃない!煩いと思うなら降りればいいのよ!このハゲ!ロリコン!ショタコン!ホモ!...!?」

 

「zzzZZ...?」

 

そして、その音で一が目を覚ました。

 

「え、えっとごめんなさい。すみません、すみませんでした。もうしないので、その手を離してください。話せばわかります。離せばわかります」

 

一は馬車の扉を開け、そこからテレサをぽいっと外に投げた。

 

馬車は意外と早く走っていて、テレサはゴロゴロと転がって暫くしてようやく止まり、涙を流しながら走って馬車を追いかけた。馬車の後ろの窓から見ると、涙で顔がぐしゃぐしゃになりながらも、必死に馬車を追いかけるテレサがいた。

 

「うわぁ、あれは流石に酷いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マートン王国、それはアスフェル帝国の隣にある王国だ。人間の王国であり、アスフェルと同じく奴隷制度が取り入れられている。違う点といえば、ギルドが小さい事ぐらいだろうか。

 

一達はその国境に来ていた。馬車による移動で、およそ2週間移動した。国境ではもらったバッジのおかげですんなり通れた。通行書よりこちらの方が便利である。そして、その1週間後一達は王の元にまで案内された。そして、王の提案により、一達はパーティに案内された。この国のギルドはそこまで力がなく、冒険者が弱い。そのため、一たちにここで大切な人を作ってもらい、ここの国に情を持たせ、利用しようと考えていたりする。

 

当然その意を汲んで、貴族も沢山来ている。ただし、魔力量の少ない一とリリィは見下される羽目になる。当然の結果だ、Sランク冒険者が来ると聞いて、媚を売るつもりが、十数万程度の魔力量のガキと、一万しかないガキがいるんだ。おまけに一万のガキは仮面をつけていてふざけてるとしか思えない。そして、とうとう誰かが動いた。

 

「あなたは...ハジメさんですね?無礼なので、仮面を外してくれると有難いです」

 

「ハジメさん、外した方がいいですよ」

 

「仕方ないですねー」

 

一は仮面を外した。

 

「女…だと…?ハハハ!魔力量が少なくて、しかも見た目も弱いガキがなんでここにいるんだよ!付き添いか?」

 

「付き添いは私です」

 

「お、おう。そうなのか…」

 

「あいつ、あんな弱いのにSランクなのか?あの国はどうなってるんだ?もう攻め落としてもいいんじゃないのか?」

 

散々罵倒されるが、一の表情はビクともしない。流石に痺れを切らした男が、怒りを露わにした。

 

「なんか言ったらどうなんだ!貴族には敬意を払えと言わればかったのか!」

 

そう言って、一にビンタをしようとする。

 

そして、気づいた時には男に腕は無かった。そして、床にボトっと落ちた。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

「何をしている!貴様ら!」

 

流石に王も立ち上がる。

 

「自分らは、Sランク冒険者相当の人を集めるために来ました。いるなら紹介して、いないなら報告しなさい。自分の責務も全う出来ないなら、ちゃっちゃと死ね」

 

一はどこから取り出したのか、握っている鎌を王に突きつける。今にも首を狩りそうな状態だ。

 

「わ、わかった。我が国のSランクを連れてこよう」

 

そして、一達は競技場のような場所に案内され、ステージに一が上がり、もう片方に大きな男が現れる。3mぐらいありそうだ。そして、一目で鍛えている事がわかるほどの筋肉量。

 

「うわぁ、流石にあの筋肉には発情しないですね」

 

「何を言っている。あのような肉、重たいだけだ。邪魔にしかならん」

 

二人がステージに上がった瞬間、歓声が巻き起こる。

 

「魔力量はたったの一万...弱すぎる」

 

魔力量も少なく、見た目も弱ければもう救いようは無いのだが、相手は一だ。

 

歓声が響いてから数秒、いつの間にか大男の首と体が分かれていた。

 

しばしの沈黙。

 

「全く、魔力量100万しかなく、これといった得意分野もなく、今の攻撃も気づかないようでは、足でまといになります」

 

「では、テレサさん、次の国に行きましょう」

 

彼がやった事により、国の国力が衰え、やがて滅びるなんてことは無い。冒険者とはそもそも、国にはこだわりを持っていない。だから、他国でも冒険者を雇えば来てくれるのだ。最も、来るかどうかは冒険者の自由だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たちの冒険は、まだ始まったばかりだ!完!」

 

「何を勝手に終わらせてるんですかねー、テレサさぁーん!」

 

「いえ...あの...テへッ」

 

ゴキッ

 

「ぎゃぁぁぁぁあああ!!」

 

最も、これは彼にとっての冗談のようなものなのだが、冗談で済んでいないのが難点である。




一って行った場所で問題起こさないと気が済まないのでしょうか?


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一(はじめ)は綺麗好き。

お久しぶりです


邪神たちが集う、アスフェル帝国の北にある小さな島。そこには大量のゴーレムや、様々な魔族が1万以上も集まっていた。魔族に現在王はいない。だが、彼らはここに集まっている。その理由の殆どが、これから人類に対する戦争をする事だ。票的となるのは、アスフェル帝国と、マートン王国だ。彼らがいる島はそこそこの大きさだが、魔族約1万が入る程ではない。詰めれば入るかもしれないが、彼らとて生きているのだ。自分らの住む場所が欲しい。よって、この島は単なる入口になった。魔族による国への。島の森の中に、10m以上の大きさの門がある。そこが、いわゆる魔界への入口なのだ。彼らはそこで暮らし、農業などもし、生活して、着々と戦争の準備を進めていた。彼らと人間の因縁は、遥か昔に遡る事になるので、話すのはまた今度にしよう。

 

その魔界に入ると、まず目に入るのが大きな城である。アスフェル帝国の王城以上に豪華で、大きな城の中には、屈強な魔族がわんさかいて、そこの頂点が、4人の邪神である。と言っても、現在ここにいるのは、その内の2人だけだが。

 

魔族は着々と、対人間の戦争準備を進めていた。

 

だが、彼女らはとある問題を抱えていた。

 

「おいおい、まさか邪神様が、こんなガキとはな...」

 

「ガキの下につくのは嫌だぞ」

 

「おままごとでもやってろ」

 

王城に集まった魔族に、散々に言われる邪神2人。少し大人っぽいのが、ミネ。それより小さいのが、クロンだ。そして、バーロイデが現在転生者の管理をしていて、クリシュナがアポカリプス学園の学園長だ。アポカリプス学園の経営は、単なる資金稼ぎだ。

 

王の座に座っているクロンが立ち上がり、その短い金色の髪を揺らしながら、魔族の前まで歩いてくる。まじかまで来ると、もはや上目使いのようになるが、彼女の目は殺意がこもっていた。

 

「ここは我らが用意した土地であり、戦力の殆ども我らが用意したゴーレムだ」

 

「何が言いたい」

 

「不満があるなら、ここから立ち去れ!我らは人類と戦争するためにここに集った。だが、別にそれに君たちは必要ない。戦争が好きでしている訳では無い。我らは我らの野望の為だけに、戦争をしているのだ。だが、この戦争では、人類を殲滅することもできるかもしれない。だから、それをしたいのならば、我らと手を組めと言っただろう?それが嫌なら、自分で戦争を勝手に初めてろ、ガキ」

 

「な、なんだと!」

 

魔族が彼女に殴りかかろうとするが、ミネの近くに立っていた男らしき姿に止められる。

 

「これが...ゴーレム…だと…?」

 

そのゴーレムは見た目が、人間の青年にしか見えなく、魔力量は驚異の12億。彼女らの最高傑作と言ってもいい。

 

「その行為は、反逆とみなす。1分以内にこの地を門よりでなければ、待つのは死のみだ」

 

「くそ!」

 

男は慌てて逃げていった。

 

「ぁあー、疲れた。なんなのよあいつ!来たのはあっちなのに、私ら見たら不満あるとか。頭おかしいんじゃねーの?あぁん?お前らまだいたのか、出ていくならさっさとしろ。人様と戦いたいなら、軍のところに行け」

 

「お疲れ、クロン。はい、メロンパフェよ」

 

と、ミネがパフェを持ってくる。彼女は喋り方や態度がお姉さんと言った感じだが、身長は150とそこまで大きくない。まぁ、その代わり胸は大きいが。ちなみに、クロンは142と、小学生並みの身長だ。そして、わーいと喜びながらパフェを食べる姿を見ても、子供にしか見えない。700歳をゆうに上回る年齢なのだが。

 

 

魔族と人間の戦争が起こるのは、もうじきのことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一たちが今いる場所は、港である。マートン王国から直接海からスレイ王国に行くつもりである。

 

マートン王国は、自分らの最高戦力を殺され、挙句の果てに船を用意しろとまで言われ、鬱憤が溜まっているが、彼らには従うしか方法が無い。いくらムカついても、力は本物なのだ。ナイトメア討伐は、もはや彼らしか頼れない。

 

それが王らの考えだったが、国民はもっと楽観的な考えで、悪くいえば馬鹿だった。最高戦力を殺されたにも関わらず、憎むどころか、むしろ讃えていた。何しろ、彼らはある意味勇者と同じなのだ。金を払っているのは国であり、彼らでは無いので、国の苦しみなんて全く関係ないように振舞っている。実際そうなのだろう。

 

「アルバの皆さん、頑張ってください!」

 

「アルバのお兄ちゃん、お姉ちゃん。絶対勝ってね!」

 

悪夢(ナイトメア)から覚めるのは、日の出と共に。そういった意味が込められて、夜明けの意味をもつ言葉が、彼らのパーティー名である。それが、対悪夢専用冒険者団、Alba。

 

「はい!余裕で勝手来ますよ!私、帰ったら結婚しますので!」

 

「おい、テレサ。それフラグだぞ」

 

「うっさい!今すぐにフラグをへし折るフラグ建てればいいでしょう!」

 

「なるほど...。俺らが倒す前に、他の人に倒されなければいいのにな(棒)」

 

「ぷははは!カッコ棒って、自分で言うとか、さすがナルシだね!」

 

船はかなりの大きさだが、一般乗客もいる。王としては、唯一嬉しい点は、今回の船旅に護衛がいらない事だろうか。海には勿論魔物がいるし、むしろ陸より戦いずらいこともあり、護衛料が高くなる。だが、彼らがいれば問題ないだろう。と言うか、これから悪夢を倒しに行くのに途中の連中に倒されるようじゃ、もはや世界の終わりである。

 

まさか、Sランク3人のうち2人が船酔いで倒れるとは王も思っていなかったのだろう。

 

「おrrrr.......な、なんだこれ、私、無理おろrrrr」

 

「まさか、美しい僕がこんな醜態をおrrrr」

 

2人のSランク冒険者が、海に色々な物をプライドと一緒にぶちまけていた。

 

「へ、へへ...プライドないのか…おっぱいは...間違えた、お前は」

 

「へっ、なんです?それ食えるんですか?」

 

実は彼女、見かけによらず暴食である。それはもう、どこに入るのかと疑うほど、食べる。その代わり、大量に食べた次の日から数日、あるいは数週間食べなくても平気でいられる。彼女の体は、かなり謎である。

 

2人は船にあるベットで寝ていた。船は魔力を動力にした船で、かなり大きい。100人程度の乗客を余裕で載せられるのだから。

 

ある日の夜、いつも通りの船内。外は雨のせいで音が聞こえにくく、見通しも悪い。

 

船内の一番豪華な部屋に4人が寝ていた。ハジメ、リリィ、テレサ、クリード。その4人が、それぞれのベットで寝ている。ちなみに、賢者ノワールはリリィがいるから来たくないと言って来てないが、彼とはサリエル王国で合流するつもりである。

 

既にほとんどの者が寝静まり、起きているのは船の操縦者くらいだろう。そんな中、4人のうち3人の意識が覚醒する。

 

「!?」

 

「起きたか、おっぱい」

 

「ええ、この気配...魔物?」

 

「...」

 

ハジメはコクリと頷く。

 

「仕方ない、レディーたちに睡眠は欠かせないものだ。僕が行こう」

 

「じゃあ、自分も」

 

「いや、あんたは寝てろ」

 

「?」

 

「あー、ハジメさん、寝ましょう」

 

クリードはテキパキと寝間着の姿から、普段の冒険者としての姿に戻る。Sランク冒険者の殆どが、ソロで活動している。クリードの場合は珍しいのだ。理由は単純で、パーティメンバーがついてこれる人がいないのである。故にSランクは孤独である。それはクリードとて例外ではないが、彼は家族と遊び感覚でダンジョンに潜っている。ちなみに、独身(37)である。

 

今まさに、船に襲いかかる脅威の前に、前人未到のダンジョンの階層に、家族という拘束具付きで潜った超人が立ちはだかる。

 

その名は、風神。風を司る、神とまで崇められた風魔法使いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船の周辺は、天気が荒れていた。雨はやがて嵐になる。見通しはますます見えなくなるが、それでも船長の目にはそれがはっきり見えた。理由は単純で、大きすぎたのだ。山と思うぐらいの巨大な影が、嵐の雲の中にそびえ立っていた。高さは、40mはあるだろうか、遠くでは岩に見えたが、今となっては山にしか見えない。

 

「な、なんですか!あれは!」

 

「わ、わからん!とにかく右に旋回しろ!このままだとぶつかるぞ!」

 

「無理です、あれ、動いてます!」

 

「なんだと!?」

 

「魔物だと思われます!」

 

「一旦錨を下ろして船を止めろ!」

 

嵐の中で船を止めるのは、危険である。大きま波が来れば、避けられないからである。だが、今回ばかりは、船長の判断はあっていた。彼の判断に驚く船員もいたが、彼を信頼して指示に従う。彼が船を止めた理由は至って単純。魔物と交戦するためである。そして、運のいいことに、この船には最高の護衛がついている。だが、陸の冒険者が戦うのには、海上で上下に激しく動く船という足場は明らかに不利。だから、彼は船を錨で無理やり止めて、魔物と交戦する足場を提供したのだ。そして、噂をすればなんとやらで、甲板には緑色の長髪を後ろで束ね、茶色いマントのようなコートを靡かせる20代にしか見えない青年がいた。最も、本人は既に30後半なのだが。

 

「雨は嫌いじゃない。髪の毛がいい感じに濡れて、カッコイイからな。そして、嵐はマントがいい感じに靡く」

 

茶色いコート(本人はマントだとしている)は防水加工がしてあるのか、雨で濡れて張り付く事なく靡き、コートにはフードがあるが、彼は被っていないので、彼の緑色の長髪も風に乗る。髪は背中までの長さがある。

 

「.............」

 

海に浮かぶ山が、動きその山から赤い目が見えた。どうやら、山と思っていたものは、単なる頭部に過ぎないらしい。

 

「随分とデカく成長した"カメ"だな。スッポン鍋何杯分だ?最も、あのおっぱいならこの程度、一週間もあれば1人で完食するだろう。と言っても、その後数年は、食事を必要としなくなるのだろうがな…」

 

「.........」

 

カメは何も声を出さない。両者は睨み合う。

 

カメ、シーキング・タートル(海王亀)とは、一体誰が名付けたのやら。

 

先に動いたのは、カメの方だった。クリードを強敵と判断したタートルは、1度船から離れる。勿論、全速力だ。

 

「な、なんだ?」

 

「Sランク冒険者を見て逃げたのか?」

 

「「「おおお!!」」」

 

「いや、これは恐らく....」

 

納得していないのは、船長とクリードだけである。

 

「ま、まずい!逃げた時に生じた波が来るぞ!」

 

「す、数十mはあるぞ!避けられない!」

 

亀の頭よりも高い波が、船を襲う。だが、その波は、まるで上空から"強風"に吹かれたように押しつぶされた。

 

 

 

 

もはや、驚くことしかできない。それが船の操縦室にいる面々の感想だった。

 

「これが、我々人類の希望の1人か...」

 

「なんて力だ...」

 

 

そして、先ほど遠くに行ったカメが、大きいくカーブしたのをクリードが感知する。彼は空気の流れ、つまり風の流れを感じ、物体の位置を大まかに把握する。一定範囲内を常時警戒しているが、大まかなので詳しくはわからない。具体的にいうと、遠くにある物体が動いたり、どの方向に行ったりとかは感知できるが、その物体の形や細やかな大きさはわからない。まぁ、一点集中すればわかるのだが。

 

魔法の発動に、本来詠唱はいらない。想像してる物を一瞬で連想させるために、詠唱があるのだが、Sランクにもなって今更詠唱してる者などいない。

 

「これは...!体当たりする気か!」

 

 

 

 

船内の船長らがいる場所に、クリードの声が響く。魔法を使ってそこの場所の空気を震わせて、声を生み出しているので、声はクリードとはやや違っていたりする。

 

「カメが体当たりしてくるぞ!避けられるか!?」

 

「む、無理だ!お前が戦い安いように足場を固定した!」

 

「わかった、なんとかする...!」

 

 

 

 

全長150m程のカメが、音速以上のスピードでソニックブームを出しながら突進してくる。防御障壁をかければ、こちらが吹き飛ぶのは目に見えている。いくら錨が頑丈だろうが、持っていかれるだろう。ならば、力を逃がすしかない。

 

「...........!!」

 

もう少しで船に当たろうとした時、急に甲に下からの大きな衝撃を食らった。それにより巨体は浮き、猛スピードで突進していたことにより、カメは斜め上に打ち出された。

 

風とは、空気の循環であり、空気そのものである。つまり、風魔法とは空気を操る魔法である。風属性が気体であり、水属性が液体であり、土属性が個体の制御である。そして、火属性は物体自体の運動の強さやその向きの調節だ。

 

そして、先ほどの下からの"爆発"は、水を気体に変えた水蒸気爆発である。何100倍にも体積が膨れたことにより起こる爆発は、カメの巨体を浮かす。本来は、膨大な熱量を持った物が水中に入った時に起こるものだが、彼は熱を使わずそれを起こして見せた。簡単そうに見えるが、魔力はかなり消耗し、おまけに、想像できなければできない。彼は昔、お湯を沸かしていた時に見た、水(液体)が水蒸気(気体)になる現象が、彼の魔法の幅を広げたのだろう。少なくとも彼には、液体が気体になることはわかっている。しかも、それが温度の変化によるものだと言うこともだ。

 

この科学の代わりに魔法が発達した世界では、彼が第一発見者なのかもしれない。普段の何気ない事からでも、魔法の発展にへと繋がる事は沢山あるのだ。

 

「........!?」

 

鳴き声一つ出さずに、カメが船の上を通過する。後からやってきた波は、壁に阻まれたようになにかにぶつかり、相殺される。

 

「次がくるな...」

 

クリードの発言通り、亀はまたこちらに向かってくる。今度は吹き飛ばされないために、なにか仕掛けると思ったが、魔物にそんな思考がある訳もなく、真っ直ぐに突っ込んでくる。

 

「このまま逸らし続けても、やがて魔力量がそこをつくだけか…。というか、先ほどのあれで結構持っていかれた。どんだけ重いんだよ…。仕方ない、まあ、カメは食料だし丁度いいか」

 

亀が船に近づくと、またもや空中に上げられる。だが、先ほどと違う点が一つ。クリードの上を通った亀は左右に真っ二つなって、海に沈んでいった。

 

これには、船内にいた人たちが、先ほど以上の驚いていた。寝ていた筈の人たちも、船の不自然な揺れに起きて見に来ている。今寝ているのは、ハジメら3人だけだろう。

 

ウォーターカッターと言う物がある。と言っても、それを使ってこの芸当をしろと言われれば、無理な話だ。ウォーターカッターは確かにダイヤモンドを砕けるが、それは別に水が凄いのではない。水はあくまでも、熱の発生を防ぐのと、水の中に含まれる石の破片が飛び散るのを防ぐためである。液体や柔らかい物体でも、気体でも、物にぶつかり変形するまでには時間がかかる。その変形するまでの時間を利用し、変形する前に相手を破壊するだけのスピードを持たせれば、なんでもダイヤモンドを砕ける。例えば、柔らかい尖った山のような形をしたグミがある。それにスイカを載せると、当然グミは潰れる。叩きつけても、グミは潰れ、スイカは無傷だろう。だが、スイカを思いっきり叩きつける、グミが変形するよりも早く。するとどうだろうか、確かにグミは潰れたが、スイカには穴が一つ空くだろう。

 

家庭でやるなら、粘土などもオススメだ。

 

彼がやったのは、単純で、自分の上に数mmの幅を上がり続ける風を送っただけだ。しかし、そのスピードが尋常ではない。音速の100倍程の早さ、光速の8分の1程の速さで、空気中にある様々な物質を送り込む。幅数mmしかないが、それに切れないものは、あるのだろうか。そして、そこを通過したカメは、言うまでもない。

 

「さしずめ、風神の剣(エアカッター)だろうか?と言っても、僕には名付けのセンスがないので、どうかは知らないが。て言うか、あれは周りが僕のセンスを理解できないだけだろう」

 

彼の魔力は、もう殆ど残っていない。

 

クリードは自室に帰ると共に、見に来ていた人達にカメが浮いている海面を指して言った。

 

「あれはお前らにあげよう。好きにしろ」

 

 

こうして、風神と怪物の戦いは幕を下ろした。

 




風神つっよ。


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一(はじめ)出番減る。

最近書く時間が無くなってきた。原因は間違いなくマイクラ


 

一が起きていた頃には、既に朝ご飯の用意が出来ていた。

 

船は、どうやらどこかの無人島に駐留しているらしい。そして、孤島には大きな亀が沖合に置いてあり、どうやら海水を使って洗浄しているのか、亀の周りの海は真っ赤になっていた。

 

もったいないかもしれないが、仕方ない。

 

そして、船では、乗客らが広い甲板の上に集まり、宴会のような物をやっていた。

 

野菜ももちろんあるが、殆どが肉料理だ。おそらくは、昨日の魔物の肉が使われているのだろう。

 

ちなみに、魔石は、クリードが回収した。

 

 

「あ、ハジメさん!こっちですよ!」

 

「昨日襲ってきた魔物は、随分と大物だったみたいですね。素晴らしい」

 

「いや、お前の方が僕より大きいの仕留めてるだろう。火龍(レッド・ドラゴン)見たぞ」

 

「せっかく自分が褒めたと言うのに...」

 

「そ、それより、仮面はどうした?」

 

 

今、一は仮面をつけていない。だからなのか、クリードの顔も赤い。

 

 

「いやね。テレサさんによると、仮面は厄介事を避ける為の筈なのに、結局巻き込まれてるから、関係なくない?らしいです。なので、視界が狭まる仮面はつけてません」

 

「そういうものなのか…で?当の本人、おっぱいは?まだ寝てるのか?もうすぐ昼だぞ」

 

「寝てますねー。そういう事が起きればすぐに起きるのですが、平和な時の彼女はぐうたらです」

 

「ささ、ハジメさん。クリードさんが倒した魔物の肉を美味しくいただけましょう!」

 

 

そう言って、リリィに席に連れていかれる。宴会の主役と言うことで、クリードらは一番大きなテーブルに座らされた。

 

 

「これは、舌ですかな?随分と大量だ」

 

「ああ、元が大きいもんでな?しかも大きすぎて切るのに苦労したぜ。そこの兄ちゃんが手伝ってくれたおかげだぜ!」

 

 

どうやら、この船のコック代表である。びしっとクリードに指さして、彼は言った。昨晩、クリードに倒された亀を錨を使って引きずって、この島に来たのだと。

 

その後、クリードの協力の元、亀を美味しく料理できたらしい。そして、亀の素材は、この船や乗客で買いたいものだけ買うつもりらしい。肉は彼らへのプレゼント兼乗船料である。

 

買うことに関しては、すべてクリードが対応してくれるらしい。

 

 

「どうでもいいですが、早く次の国に行って頂けるとありがたいです」

 

 

一は空気を読まない。そして、人の心もだ。読めない訳ではなく、読まない。必要がないのだ。彼はエイル意外の考えている事や企んでいる事に興味はない。

 

敵対したら殺す、それしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外と長かったですね。船で、約1ヶ月、依頼を受けてから、約1ヶ月半ですか。これで半分となりますね」

 

 

彼らは、アルバ。世界を救う為に作られた少数精鋭で、それなりに人気があった。

 

前にいた国の港では、街の人々が送ってくれた。だが、この国は歓迎するどころか、敵意を向けてくる人もいる。

 

理由は簡単で、この国は人間にいい印象を持っていないのは当然だ。人間は彼らの同法、特に多くの獣人を奴隷にしたのだから。

 

男らは農奴に、女は性処理用に連れていかれた。もちろん、この国の中にいれば安全だが、出て人間の国に入って、奴隷を免れるのは奇跡に近い。

 

そして、人間がこの国に入った時の扱いも似たようなものだ。

 

お前らがそうするなら、俺らもする。それだけだと言わんばかりに、この国には奴隷制度がある。

 

船に乗ってきた人の殆どが、商人だったりする。亀の死体の買取ができたのは、商人が殆どだったからだろう。

 

「やはり、あまりいいように見られませんね」

 

「そうですね。自分らはわかりますが、リリィまでそう見られるのは...?」

 

「ハジメさん。多分、裏切り物だと思われてるんですよ、私」

 

「それ言ったら、商人たちと取り引きしてる奴らも、裏切り者でしょうが...」

 

「今はそんな事どうでもいいだろう。僕らには僕らの使命があるのだ」

 

「僕の氏名は言いやすいですね」

 

「漢字が違う!...行くぞ」

 

4人は船がまだ港にも着いていないのに、船から飛び、数100m飛んで港に入った。ちなみに、リリィは獣人で、運動神経はかなりいいのだが、流石の彼女でも無理だったので、一に襟を掴まれて、一緒に飛んでいく。

 

「なぜ飛ぶ必要があるのですかァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一が学園に来なくなってから、数週間がたった。彼がアルバとして旅をしている事は、学園ではかなり有名な話だ。

 

ギースや国は、彼が学園にいることを隠したかったが、流石に限界だったみたいだ。

 

 

「桜!今日も部活行くぞ!」

 

 

エイルは人間の生活が好きだ。彼女は元は人間だったのだ。もう千年以上も昔の話になるのだが。

 

 

「エイル様、元気ですね」

 

「夫の帰りを待つのは、妻の役目!」

 

「ですね!いや〜、羨ましい」

 

「お主もぷろぽーずとやらをやったらどうだ?ハジメが我にしたように」

 

「私がした所で、彼は見向きもしませんよ…」

 

「まぁ、そうだな…」

 

「せめて否定して欲しかった!?」

 

「無茶言うな、メイド殿」

 

「そういえば、部長長い間来てませんが、どうしたんでしょう…?」

 

部長、ゆなは勇者ユウキが死んでから、自分の家からあまり出ていない。当然、学校にも行っていない。

 

「やはり、兄が死んだから、落ち込んでいるのだろう」

 

「そうですね、見に行きましょうか!」

 

「家知ってるのか?」

 

「前に聞きました」

 

そんな話を廊下でしている時に、気づいたら大勢の人に2人は囲まれていた。

 

男性、女性色々いるが、皆ソワソワしている。そして、暫くすると、人波が割れていき、中からノワールの息子、テッドが出てくる。

 

 

「君は、僕の妻にならないかい?」

 

 

そう言って、彼は桜に花束をあげる。テッドは金髪のオールバックのイケメンだ。性格がややクリードよりな点があるが、クリードの方が圧倒的に女性を気づかえる。

 

テッドがお坊っちゃまイケメンだとすると、クリードは紳士なナルシイケメンなのだ。

 

ちなみに、クリードはテレサだけ女として見ていない。化け物と思っている。

 

賢者ノワール、彼の年齢は100を超えているが、見た目は白髪ショタである。そして、彼は見かけによらず、妻が二桁もいるのだ。

 

そう、男が誰もが夢見るハーレムを、彼が実現しているのだ。

 

それは、息子も遺伝子を引いていたらしく、テッドも6人の妻がいる。彼は彼女1人1人に愛情をあげているのではなく、どちらかと言えば、物のように扱うこともある。

 

簡単にいえば、欲望発散に"使うのだ"

 

そして、男たちにとって、一番腹立たしいのは女たちがその扱いで、満足している点である。満足しているからこそ彼女をやっていると思うかもしれないが、彼は可愛いと思った子を、片端から自分の妻にしているのだ。

 

見た目もかっこよく、家柄もよく、実力もある。そんな男に言い寄られたら、生物として、雌としても断りが痛い。

 

 

「お断りします」

 

 

ただし、彼よりも魅力がある人を知らない場合に限る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽霊部部長、結城 ゆな。彼女は勇者ユウキ、自分の兄である結城正人(ゆうきまさと)が死んだことによるショックで、学校に来れなくなり、家に閉じこもっている

 

 

 

 

 

 

と言う噂だった。

 

だが、当の本人はかなり忙しかった。

 

その証拠に、お見舞いにきたエイルと桜だったが、留守だった。

 

 

「いませんね。と言うか、でかく無いですか?この家、私たちより立派です」

 

「少なくとも、我らの家の地下室の数倍はあるな、羨ましくはないが...む?」

 

 

《私に何かよう?》

 

 

エイルが振り向くと、メモ張も見せてくる、自分と同じぐらいのゆながいた。ややゆなの方が大きいが。

 

 

「あれ、ゆなさん!学校に来なくて心配していたんですよ?」

 

 

《一がいなくなって、暗殺の仕事がこっちに回ってきた》

 

 

「お主も闇ギルドに?」

 

 

ゆなはコクリと頷く。

 

彼女は兄の事を残念だと思っているが、それだけである。

 

この世界に来てから数年、いつかはこの日がくると知っていた。

 

思うところがあるが、それだけだ。

 

こんな危険な世界に来たのだ、家族が1人死ぬことぐらい想定しているし、割り切れる。

 

むしろ、魔物を狩る事を生業にし、その中でも危険な魔王級を相手しているのだ。そもそも、殺しに行っているのに、なぜ自分が死ぬと思えないのかが理解できない。

 

だから、兄の為に落ち込んでいる魔法使いの子には、嬉しい感情と、意味不明な物を見る感情が入り混じっていた。

 

彼女は、ゆなは兄とは違っていた。兄妹でここまで違うのかと思うぐらい、違っていた。

 

兄は物語の主人公のような人生を歩み、自分はヒロイン候補のような物だった。

 

何をやっても成功する兄は羨ましいが、嫉妬は生まれなかった。だが、何もかも成功したからこそ、兄は世界を甘く見ていた。

 

その価値観が、考えが、嫌いだった。

 

彼は幼馴染みや、自分がこの世界に来たばかりの時に、落ち着かせる為に、こう言った。

 

『ゲームのような世界に来てしまったら、仕方ない。僕が君たちを守り、この世界を攻略しよう』

 

彼は、この世界をゲームとしか捉えていなかった。それは、ゲームのような世界に来たのが原因ではないと思う。

 

彼女の兄は、この世界に来る前、つまり元の世界すらも、ゲームと見ていた。

 

別に、ゲームとして見るはいい。だが、ゲーム自体を舐めるのは可笑しい。ゲームのように思っているなら、ゲームを真面目にやって欲しい。

 

攻略する気は、あるのだろうか。

 

ゆなが喋らなくて、友達がいなく、家でゲームばかりしていたから、こう思ったのかもしれない。

 

だが、彼女はどうしてかわからないが、自分に兄をかなり嫌っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アポカリプス学園、邪神が作った学園は、今大きな事件が起きていた。

 

生徒2人の死亡。

 

これは別に大した問題ではない。なぜなら、魔物と戦う上で、実戦で二桁は毎回死ぬのだ。それと比べると、安いものだ。

 

問題はそこではない。

 

この死亡した生徒は、明らかに人間によって殺されたのである。

 

この学園の理事長であり、校長でもあるクリシュナ。見た目は小さなエルフだが、彼女はれっきとした邪神である。

 

邪神である彼女にも、こう言った事案は回ってくる。

 

 

「なんでだよ。なんでボクにこんな面倒な仕事が回ってくる」

 

 

この学園を開いたのは、資金集めである。そして、資金はまだ足りてない。だから、学園が崩壊しかねない内容の事件は、しっかり解決しなくては行けない。

 

学園に殺人鬼がいるとなったら、来る人は大幅に減るだろう。

 

そうならないように、今回の事件はサボる訳には行かない。

 

 

「仕方が無い、ボクは彼女らに頼るか」

 

 

この学園の幽霊部は、どちらかと言えば、何でも屋に近い。

 

心霊スポットを探しては、現地に遊びに行く活動もあるが、なにせ幽霊部にはこの学園の最高戦力が備わっているのだ。

 

と言っても、現在いるのはエイルと桜だけなのだが、エイルを知るクリシュナからすると、彼女ほどの戦力は無い。

 

「ほう、で我の所に来たと」

 

「うん、ボクだけ間に合わないからね。今回の事件の犯人とっとと捕まえて欲しいんだ」

 

「まあ、我も暇だしな。いいだろう」

 

エイルは龍神だが、元人間だ。まだ人間だった頃の性格が残っており、優しい面もそうだろう。

 

「エイル様がやるなら、私もやります!」

 

「うーん、ボクは邪魔だと思うけど」

 

「酷い!戦力外って言うんですか!?」

 

「うん」

 

 

ガクリと桜は地面にへたり込む。

 

 

「と言っても、我は何をすればいいのか分からんのだがな」

 

「大丈夫です!犯人は私が見つけるので、それをエイル様がやっつけて下さい!」

 

 

桜はいきなり立ち上がる。

 

 

「うむ、承知した」

 

「そうと決まれば、まずは現場検証と、被害者の情報集めです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、一のいない所で、事件解決に向けて2人は進み出した。




次回は、登場人物(主要)をまとめたいです。


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一(はじめ)の出番が減る。

今回は登場人物をまとめた内容になっております。

ちなみに、おまけもありますので、ぜひ読んでください。

後、登場人物をまとめた理由は、これから書くにあたって、書きやすいようにしたかったからです。


この世界には魔法があり、魔力量が戦闘力の殆どを決める。

 

人それぞれに適性があり、魔法の属性は全部で『火、水、風、土、光、闇、無』の七つである。それぞれの属性は更に細かくなっていて、例えば影は闇属性の一つだったり、雷は光属性の一つだったりする。

 

レベルアップと言ったシステムが存在しないので、戦闘したところで増えるのは経験だけである。

 

よって、魔力量と適性魔法で強さの殆どが決まる。

 

魔法とは想像力であり、魔力を利用してそれを具現化させる。だが、万能という訳でもない。まだ発見されてない魔法もあるかもしれないが、それでも魔法のできる事は限られている。

 

魔法の中で、無属性魔法のみが例外である。

 

区分として魔法と呼ばれているが、あれは魔法などでは説明できない。いわゆる、超能力、スキル、異能の類である。

 

ちなみに、魔法は維持するのに大量の魔力を必要とするが、出してすぐに消せばそこまで消費しなく、時間が経てば消費した魔力も戻る。

 

例えば、土魔法で岩を作り出し、それで壁を作ると魔力切れと同時に消滅する。だが、土魔法で元々ある土を操って、壁を作っても、魔力は動かした分だけ消費される。

 

また、魔物は魔力が溜まると産まれ、魔石が放置されるとダンジョンが出来上がる。

 

 

 

 

魔力量■

 

一般人の平均、5000

 

王国の騎士団長、約100万

 

邪神達、2億程度。

 

邪竜、20億。

 

などの事を踏まえて見てください。

 

 

名前▼クリケット・ノワール

 

身長▼174(老人の時)、157(ショタの時)

 

容姿▼老人の時は、白い髪のしわくちゃ爺さん、髭はない。子供姿の時は、赤髪のショタ。

 

魔力量▼500万

 

魔法適性▼全属性適性だが、主に火と水を使う。無属性は無い。

 

種族 ▼人間

 

通称▼「賢者」

 

所属▼冒険者ギルド(表のみ)、Sランク(最高峰)

 

年齢▼103

 

作者から一言■ 男ならば誰でも望む、ハーレムを体現した人。妻が16人で、年の割には心身とアソコが元気。妻と接する時は、若くなるが、大魔法を使う時は老人になる。ちなみに、貴族。テッドの父。

 

本人から一言■ キチ〇イ嫌いじゃ

 

 

 

 

 

名前▼テッド・ノワール

 

身長▼182

 

容姿▼赤髪のオールバックで、かなりのイケメン

 

魔力量▼100万

 

魔法適性▼火(爆炎)

 

種族▼人間とエルフのハーフ

 

通称▼不明

 

所属▼冒険者ギルド、Aランク

 

年齢▼17

 

作者から一言■ イケメン死ね。兄や姉が沢山。父親譲りか、彼女が7人。リア充死ね。クリケットの息子の1人。

 

本人から一言■ そんなに嫌いなら、なぜ俺みたいなキャラ作った…

 

 

 

 

 

名前▼クリード

 

身長▼180

 

容姿▼エメラルドグリーンの髪が肩にかかるぐらいまである。テッド以上のイケメンで、多分この作品の中で一番のイケメン。エルフ以上。

 

魔力量▼250万

 

魔法適性▼風全般

 

種族▼人間

 

通称▼「風神」

 

所属▼冒険者ギルド、Sランク。

 

年齢37

 

作者から一言■ 紳士で女性に対する気遣いなどは完璧だが、テレサには差別する。女性として見ていない。自分に相応しい顔の女性を探す重度のナルシで、独身。

 

本人から一言■ ハジメちゃんきゃわいい

 

 

 

 

 

名前▼テレサ

 

身長▼158

 

容姿▼おっぱいが大きな美少女。ピンクのツインテールだ。

 

魔力量▼150万

 

魔法適性▼光(雷)、闇(影)

 

種族▼人間

 

通称▼「雷帝」「黒猫」「チェシャ猫」

 

所属▼冒険者ギルド、Sランク。闇ギルド、Aランク。

 

年齢▼15

 

作者から一言■ 電気を使いこなして戦うが、気配を消すのも得意である。神出鬼没することが頻繁なので、チェシャ猫や黒猫などと言われる。めっちゃ食べる。ステラの妹。

 

本人から一言■ なんか私ビッチ見たいだけど、処女だからね!(必死)

 

 

 

 

 

名前▼ステラ

 

身長▼156

 

容姿▼色々小さく、妹に負けてる。赤毛のショートで可愛らしい女の子である。

 

魔力量▼不明だが、恐らくハジメとか同等かそれ以下。

 

魔法適性▼火(不明)

 

種族▼人間

 

通称▼「仮面のあの人」

 

所属▼洋服屋さん

 

年齢▼永遠の16歳(21)

 

作者から一言■ 貧乳派です。

 

本人から一言■ お前の趣味聞いてないよ!ハジメありがとう、仮面めっちゃ売れた。何故か狐の方が...。それはさておき、貧乳って言うな!ちっぱいって言うな!

 

 

 

 

 

名前▼浅倉 桜(あさくらさくら)

 

身長▼153

 

容姿▼やや小さい女の子、黒髪ショートで、髪にある小さなリボンが目立つ。胸は意外とあるが、巨乳組と比べるとない。

 

魔力量▼4万

 

魔法適性▼無(等価交換「トレード」)

 

種族▼人間

 

通称▼なし

 

所属▼ハジメ家、メイド。

 

年齢▼18

 

作者から一言▼18歳ってなんだっけ。

 

本人から一言▼ちっちゃいって言われるの、慣れました。

 

 

 

 

 

名前▼エルサイル

 

身長▼142

 

容姿▼銀髪小学生。

 

魔力量▼50万だが、リミッター解除すると3兆。

 

魔法適性▼全属性適性、無属性は大量に持っていて、今まで使われた物は、制限「リミッター」、無限収納「インベントリ」、本編では出てないが、一に翻訳魔法をかけている。

 

種族▼龍神

 

通称▼エイル

 

所属▼ハジメの妻

 

年齢▼不明、少なくとも千は超えている。

 

作者から一言■ 妻って所属だろうか...書けって本人に言われたからいいか。

 

本人から一言■ 目立つからな。我がハジメの妻である。我の容姿のせいでハジメを変態のように見る奴らが多いので変わろうとしたが、ハジメが他人の事を気にする事はないと言ったのでやめた。ちなみに!ハジメの告白はこんな感じだったぞ。

 

「自分は他人を幸せにできるかは、わかりませんし、多分無理です」

 

「他人を理解するのも難しいし、それはエイルさんも同じです」

 

「でも、君を不幸にはさせないと誓うよ」

 

エイル「我の事も理解できないのか?少々落ち込むぞ」

 

「ええ、ですから、自分にあなたの事をもっと知らせてください。その手段として......"俺"と結婚するのなんて、どうだ?」

 

いやぁー、いいな!ハジメになら色々あげられる!

 

 

 

 

 

名前▼斉藤 一(さいとうはじめ)

 

身長▼177

 

容姿▼身長高いが、どこから見ても女の子で、おまけにめっちゃ可愛い。よく女の子と勘違いされるのが面倒でよく仮面をつけている。普段や仕事の時は微笑みの仮面だが、闇ギルドの仕事の時は狐に変える。ま、様々な魔物の身体能力を取り込みすぎた結果、力が強すぎるので、常に白か黒の魔法陣が書かれた手袋をしている。していないと、寝返りを打つだけで宿屋半壊させてしまう。手袋はそれぞれ10以上所持している。

 

魔力量▼1万だが、リミッター解除すると20兆。

 

適性魔法▼全属性適性だが、基本魔法は使わない。彼は気づいていないが、彼の無属性は、学習「データベース」である。この魔法は1度見た"無属性魔法"は自分も使えるようになる。

 

種族▼人間

 

通称▼「鎌鼬」「死神」「エルコン」←作者がそう呼んでるだけ

 

所属▼冒険者ギルド、Sランク。闇ギルド、Sランク。

 

年齢▼16

 

作者から一言■ どう言い訳しようが、ロリコンです、はい。あと念話と言う魔法を使うとすごいテンションがオタクになるが、本人は気にしていない模様。後々に黒歴史になることを期待する。

 

性格は、どう考えても狂人ですねありがとうございます。と言っても、人類みな彼のような考えは持っているし、むしろ彼より酷い性格の人の方が、多いですがね。それが、彼がモテている原因でしょうか。

 

自己中心的な考えは良くないと言われるが、それが常識であり、誰しもそう思っている。みな認めたくないだけである。その点、彼はエイル中心的だから、いい方でしょう。妻1人のためならば、世界をも相手に出来るほどです。

 

それと、なんとビックリ、ハジメは桜の魔法を見た時点で、彼女は用済みとなっていたのだ!

 

本人から一言■ なんでどこかの誰かもわからない人の事を最優先しなきゃならんのです?エイルさんのためならば、なんだってします。

 

 

 

 

 

名前▼リリィ

 

身長▼149

 

容姿▼狐の獣人なので、金色のショートの髪から可愛らしい狐耳が出てるのがトレードマーク。胸はない。

 

魔力量▼18万

 

適性魔法▼火と土

 

種族▼狐の獣人

 

通称▼キチ〇イ(呼んでるのはノワールだけ)

 

所属▼冒険者ギルド、受付。

 

年齢▼14

 

作者から一言■ リリィは学園ではやや人気がある。きっとロリコンが集まったのだろう。

 

本人から一言■ ハジメさん....

 

 

 

 

 

名前▼ザック

 

.......モブ。

 

能力▼モブ故に、全て不明。リリィをナンパしてたモブよりもモブしている人物です。

 

作者から一言■ そんなことより、おうどん食べたい。

 

本人から一言■ 死のっかな…

 

 

 

 

 

名前▼スラちゃん

 

身長▼26cm

 

容姿▼コーヒーゼリー

 

魔力量▼50億

 

種族▼ナイトメアスライム

 

通称▼スラちゃん

 

所属▼ハジメ家のペット

 

年齢▼1

 

作者から一言▼スライムは弱いが、彼女のように、ナイトメアの性質を持っていればここまで成長できます。ナイトメアはまさに悪夢だ。

 

本人から一言▼プルプル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆おまけ、合法ショタ、ノワールの一人旅(一人とは言っていない)☆

 

 

 

 

一らが出発してから数週間後、彼は自分の妻全員に別れを告げて旅に出た。アルバの一員として。

 

「よし、行くぞ!」

 

彼の見た目は女性受けがいい、よって街中歩いていると女性が集まり出す。

 

「きゃー!可愛い!ノワール様だわ!」

 

そして、よく覚えられる。

 

「ノワール様!まだ妻の空きはありますか?」

 

「わしは歓迎するが、妻達が反対しそうじゃな、すまんのう」

 

20歳をすぎたぐらいの女性が群衆の前に出て、話す。

 

それを聞いた他の女性達がヒソヒソ話し始める。

 

「ねぇ、ノワールの妻になったらなんかいいことあるの?」

 

「なんで?」

 

「だって、100歳超えた老人と結婚したいって、そういう...」

 

その言葉を聞いたのか、聞いてないのか。

 

「ハハッ、君を夢の世界へ連れて行ってあげよう!」

 

「ノワール様落ち着いて下さい」

 

「僕ミッk「言わせねーよ」」

 

「お、きたのか」

 

「お前が呼んだんだろ…」

 

ここにやってきた赤毛の少年、テッド。彼は普段学校では偉そうにしているが、実は父親に憧れている可愛い一面も持っている。

 

「お主を呼んで来たのは他でもない。Sランクの戦いぶりを見せたかったのじゃ」

 

「わかったよ、父さん」

 

学校の生徒が彼を見れば、他人だと勘違いするだろう。

 

「わしは火を主に使うからお主と同じじゃし、おまけにいつでも見せられる。じゃが、その他のは滅多に見せられん。特に、あの娘、雷帝のな」

 

1,8m級の巨人と、150cm程度の奇妙な親子である。

 

「さて、旅に行く前に必要な物を取りに行くぞ」

 

「何が必要なの?」

 

いや、本当にお前誰だよ。あ、失敬、つい作者もツッコミを。

 

「わしの属性は火、となれば必要なのは、一つ」

 

「ファイヤーなフラワー取りに行くぞい」

 

「いやだから、ダメだって!」

 

「なぜじゃ」

 

「消されるぞ!」

 

「仕方ないのう、では行くかのう」

 

「はぁ、だから来たくなかったんだ、ツッコミ面倒」

 

二人は現在馬車に乗っている。冒険者が使うには少々どころかかなり豪華だが、貴族だからだろうか。

 

「そういや、お主には彼女が7人いたそうじゃのう」

 

「まぁね、みんな従順でいい子だよ」

 

「1人くれないか?」

 

「なんでだよ!お前母さん達でまだ満足できんのか!どんだけ精力ありあまあってるんだよ!」

 

流石にその発言で、彼の喋り方も学園にいた時に戻る。

 

「そうじゃ、その喋り方の方がわしわ好きじゃ。無理せんでもいいぞ」

 

「はぁ、父さんには敵わんな」

 

「ホッホッホ、当然じゃ」

 

草原を抜けた時は、魔物の強さはそこまで強いのはいなかった。と言っても、二人の基準である。

 

馬車はテッドの仕事で、狩りはクリケットの仕事である。そして、それは交代で行われた。

 

だが、砂漠に入ってから、魔物の強さが大きく変わった。

 

だが、それでもこの二人にはさほど関係なかった…はずだった。

 

 

 

 

 

「テッド!今すぐ馬車を置いて逃げるのじゃ!足から火を噴出させて、飛ぶのじゃ、全速力で」

 

「無理に決まってるだろ!んなことできんのお前だけだわ!」

 

「仕方ないのう、わしがお前を持ってやるわい」

 

クリケット・ノワール。彼がやろうとしている事は、原理はロケットと殆ど同じである。

 

鉄腕ア〇ムになろうとしているのだ。もちろん、バランス取りずらいし、バランス崩したら死ぬ。一歩間違えれば衝突してミンチ。そして、通常の人間には彼ほどの火力は出せないのである。テッドならば行けるが、操作できないのだ。

 

「行くぞい」

 

クリケットはテッドをおんぶして、足に魔力を集中し、一気に飛び上がる。

 

「全く、鎌鼬の魔力量で使えたから、てっきり他の人にも使えるのかと思うとったのに、残念じゃ」

 

呑気に話しているが、事態はかなり危ない方向へと向かっている。

 

彼らが飛び去った直後、彼らのいたところに大きな岩が降ってくる。

 

土魔法によるものだろう。

 

「あれは...まさか!?」

 

「どうやら、一番遭遇したくなかったやつに出会ったのう」

 

魔物とナイトメアの区別は、殺すまで無理である。だが、それでもわかる程に、この魔物は強くなりすぎたのだ。大きさは、そこまででもない。約4m、人間に比べると、大きいが、数百mの亀もいるのだ。まだ小さい方である。

 

問題は、魔力量。8000万だ

 

「うそ...だろ!?」

 

1ヶ月しか経ってないのに、ここまで成長すれば誰でもわかる。

 

だが、いくら成長が早くとも、食い止めるために戦っては成長を早めるだけである。

 

なので、逃げるしかない。

 

「テッド、捕まっておれ!」

 

空中に浮いていたクリケットは、素早く方向転換し、サリエル王国に向かった。足元を爆発させて加速し、スピードは音速の3倍は出ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが....

 

 

 

 

 

「モォー!!」

 

牛のような鳴き方だが、かなり凶悪な声だ。

 

マッハ3で飛んでいたクリケットが振り向くと、岩が迫って来ていた。

 

テッドよりも大きな岩が、自分よりも早いスピードでぶつかってくる。

 

とても避けられるものでは無い。

 

今で全速力だ。

 

クリケット・ノワールは、最善かどうかわからないが、何人もの妻を持ちながら、その全員を愛した彼らしい、家族一人一人を大事にした彼らしい行動をした。

 

例えそれが、己の身を滅ぼし、誰かを悲しませることになろうとも、彼の判断が間違っていようとも、彼は、クリケット・ノワールは、その判断が、行動が、彼そのものだったのだろうか。

 

「テッド...は...いい...生...だっ...ぞ」

 

「あぁ!?聞こえねーよ!」

 

「........から...」

 

突風のせいで殆ど聞き取れないが、一言だけしっかり聞き取れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ワシの息子として生まれて来てくれて、ありがとう...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリケットは持てる力を全て使い、テッドをサリエルの方向に向かって全力投与した。

 

 

 

 

「おい、じじぃぃぃ!!!」




クリケットから一言。

「おまけで殺すな!」


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一(はじめ)は知らない。

ノワールさんが文句言ってきたので、もう少し彼を書きました。すごく短いです。


魔法という物は、維持するのに大量の魔力を消費するが、操作する魔法はそこまで魔力を消費しない。

 

例えば、召喚魔法。境界門と呼ばれる異世界を通過する時に通る門を出しっぱなしにすると膨大な魔力を消費するが、一瞬だけ開いて、すぐ閉じれば魔力はそこまで消費しない。

 

と言っても、出しっぱなしに比べて少ないだけであり、それでも大量の魔力が必要になるのだが。

 

さらに、それを詠唱を用いて消費を減らし、さらに魔法陣を書いて減らしてようやく勇者召喚となる。

 

実は、勇者召喚は一種のリサイクルである。取れすぎて、余り誰も使わなくなった魔石。放っておくと、ダンジョンができるので、きっちり消費しなくてはならない。

 

戦争が起きれば、魔法兵器に搭載するが、戦争のない時の使い道は限られている。

 

国にある言語を統一する魔法陣を維持するのに使っても、余りは多少は出る。なので、それを貯めて勇者召喚するのだ。

 

これが、勇者召喚が定期的に行われる理由である。

 

使わないゴミどころか、余ったそれはただの有害物質。それを使い、勇者を召喚し己の国の戦力として保持できる。勿論、とんでもない性格や能力の持ち主を呼ぶこともあるが、それでもダンジョンができるリスクよりはましである。

 

召喚魔法について話していたが、召喚魔法はかなり珍しい物だ。

 

もっと、簡単な魔法で説明しよう。

 

例えば、土魔法。

 

土の壁を作る時は、多くの人が地面の土を利用している。だから、地面が石の場合、石の壁が出来上がる。

 

この場合、魔力を使う場面は土を動かしている時のみである。

 

それとは別に、土の壁を無から作ることもできる。

 

これには、作る時には勿論魔力が必要だし、何より維持するのに魔力が必要なのだ。

 

空気を燃やすより、何も無いところに炎を出す方が。

 

風を作るより、空気を作る方が。

 

雲の静電気によって生まれた雷を使うより、雷を生み出す方が。

 

影を操るより、影の面積を増やす方が。

 

人間誰しも持っている自己再生能力を促進するより、腕を生み出す方が。

 

などなど。

 

魔法は出すよりも、利用する方が賢い魔法の使い方である。

 

 

 

勿論、その事を彼が知らない訳がない。

 

クリケット・ノワール。賢者と呼ばれ、魔法を知り尽くした男とも呼ばれる男だ。

 

 

 

「グハッ...!」

 

 

 

息子を逃がす為、生き延びさせる為、何より報告の為に。飛んできた岩を自らの身体で受け、彼は墜落した。

 

砂漠の中に。

 

あたりは、岩だらけ。

 

恐らく、生み出した岩ではなく、これを飛ばしたのだろう。

 

巨大な牛のような悪夢は、森で見た時は黒かったが、日の下に出れば濃い青色だった。

 

ノワールはもう動けないだろう。

 

岩を受けた時に何枚も障壁を張り、自分を強化し、耐性もつけてなお、このザマである。

 

 

「はぁ、長生きするのも、良くないもんじゃなー」

 

 

ドスンドスン

 

近づいてくる巨大な真っ黒な牛は、まさに悪夢そのもの。

 

 

「色々、思い出ができすぎたのう」

 

 

何人もの妻に囲まれたハーレム生活。彼がハーレムを望んだ訳では無いが、断って美しい女性を傷つける方が、嫌だと思った結果だ。

 

彼の妻に立候補する者は大量にいる。実はその殆どが現妻に消されている。

 

物理的には消していないので安心して欲しい。

 

 

「息子や娘を残し、先に逝くのは大人の特権かのう?」

 

ドスンドスン

 

「ブモォ...」

 

 

ノワールの近くの巨大な岩が、何十と浮き始める。

 

 

「.......?」

 

 

この絶望的な状況下で、彼は立ち上がった。

 

牛から見れば、瀕死の状態で立ち上がった彼は馬鹿に思えたのだろうか。何もしなければ、楽に死ねたのにも関わらず。

 

子供にしか見えない体を、杖を使いなんとか持ち上げる。

 

 

「沢山の妻を持ち、子も沢山持ち、自慢じゃがわしは幸せじゃった」

 

 

右足はもはや使えそうになく、

 

 

クリケット・ノワール。彼は様々な魔法の開発に取り組んだが、蘇生や不老不死だけは研究しなかった。

 

他の研究者によれば、彼ならば作れたのかもしれない。

 

だが、彼は人の一生を、大事にした。永遠よりも、一瞬を望んだのだ。テッドがなぜかと聞けば、彼はこう答えた

 

 

『人間は死があるからこそ、守る者がいるからこそ、輝ける』

 

『何かに一生懸命になれる人間は美しく、尊敬に値する』

 

 

実は彼は既に不死の研究を終えていたのだ。いや、まだ未完成なのだが、彼は自分に試してみた。その結果が魔力を利用した若返りであった。

 

彼は全力で魔法を使う時、全盛期である11歳の時に体を若返らせる。

 

つまり、現在子供の姿の彼は、全力で戦闘する証である。

 

 

 

「わしは、わしに出来る事をしようかのう...」

 

腕の片方があらぬ方向に曲がり、足ももはや片方は使えない。顔にも血が流れている。

 

今の自分の全力を使えば逃げ切れるだろう。残りの魔力を回復に当てて、すぐに飛び立てば。

 

だがそれでは、怪物、悪夢が息子の方に行ってしまう。

 

元々そちらに向かって進んでたのだ。

 

ならば、自分に出来るのは命を燃やしての足止め。

 

 

途端、当たり一面に端まで見えない程の魔法陣が展開される。

 

 

『我が求むるのは、破壊。

 

爆裂と破壊を用いて、対象を撲滅せよ。

 

ただ一片の肉片を残さず。

 

ただただ、破壊し、溶かし、

 

求めるは、対象の死のみ』

 

 

悪夢には多少の知性があった。彼は、ノワールが何ができるのか見てみたくなった。

 

故に、動かない。

 

強者の余裕だろうか。

 

 

『植物が築いた大自然も、

 

動物が築いた営みも、

 

人間が築いた文明も、

 

全てを無に返そう。

 

膨大な熱量を伴い、

 

膨大な光を伴い、

 

膨大な突風を伴い、

 

全てを消滅させよう。

 

 

『太陽の落下(ヘリオス・ダウン)』」

 

 

悪夢を前にしたショタは、たった状態で急激に老化を始めた。

 

女が羨むほどのキメの細かい肌に、シワが大量に入り、あっという間に彼はおじいさんと成り果てて、なって果ててしまった。

 

そして、その場に静かに倒れた。

 

 

 

 

 

 

「妻たちには悪いことしたのぉ...」

 

「じゃが、わしの人生は実に、天晴れじゃった...」

 

 

悪夢は不思議そうに見ていたが、ふと上を見上げるとそれに気づいた。

 

 

太陽が2つあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、帝国の北東に位置する砂漠に、太陽が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、大きさは本物と比べるとかなり小さいく、わずか10mに過ぎない。が、その威力は相当だった。

 

魔法を超巨大な魔法陣を用いて、さらにかなり長い詠唱も行い、自慢の高級な杖を使って発動した、ただの暴力の塊の魔法。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、砂漠が半径数kmの円状にくり抜かれ、文字通り"消滅"した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一たちが街を歩いていると、やはりと言うべきか、軽蔑と言うか、敵視と言うか、そう言った目線が向けられる。

 

だが、それらを一が気にするかと問われれば、気にしない。

 

彼はそういう人だ。

 

何かされない限り、無視をするが、された場合、されそうになった場合、彼は容赦なく立ち向かうだろう。いや、殺すだろう。

 

 

 

 

 

 

 

それが原因かどうかは知らないが、結果としてリリィが攫われて、別れ離れになってしまった。

 

そして、攫われたリリィに対する対応は、当然のように無視となった。

 

と言うより、リリィが買い物に行くと言い、その後一らを案内していた団長の団員の兵士たちが担がれて行ったところを目撃し、一らに知らせたのだ。

 

相手はかなりの実力者らしく、追いつくのも無理だったらしい。

 

 

「すみません、私たちのせいで...」

 

「予定通りに行きます。この国で最も強い人に会い、強ければ勧誘、弱ければ次の国へと向かいます」

 

「そうですか」

 

 

一の決定に、テレサは特に否定しなかった。

 

危険な旅だと知っていたし、今更知人が捕まった所で、どうにも思わない。

 

彼らは所詮、その程度の関係なのだ。

 

だが、彼だけは違ったようだ

 

 

「済まない、ハジメ君。僕には無理なようだ。か弱い女性が攫われたのを平然と見ているのは」

 

「だとしても、悪夢を倒すのが先ではないんですか?」

 

「だとしてもだ!例え彼女が戦力にならなくとも、切り捨てるべき対象だとしても、僕にはそれができない!それをしてしまっては、僕は僕では無くなる!」

 

「ではこうしましょう。自分らがアルバに相応しい人を探しに行きます。一応、1週間ここに滞在した後に、出発します。それまで彼女を連れて帰って来てください。遅れれば、自分らは出発しますので」

 

「あ、あぁ!」

 

 

あまりにもあっさり許されたので、少し驚いたが、彼はすぐに出発した。

 

1人の小さな女性を救うために、最強の一角、Sランクの冒険者が動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、彼は路地裏で遺体として発見された。

 

街で暴れ回った跡がどこにも無いため、相手は一瞬で彼を殺したのか、もしくは空で戦ってたのかは知らないが、彼の顔は驚愕と絶望で染まっていた。

 

それ程までに、実力が開いてたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事を、一が知ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円形の巨大なクレーターの中心には、真っ赤になった牛型の物体だけがあった。

 

人形のはなく、ノワールは蒸発したのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ピキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤になった皮膚はもはや原型を留めていなく、ただの焦げた肉塊となっていたが、それが割れて中から別の個体が"無傷"で出てきた。

 

 

 

 

 

悪夢(ナイトメア)である。

 

 

 

 

 

砂漠そのものを消しそうな程の攻撃をくらい、それでも生きていたのだ。それはまさに、悪夢であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言っても、彼はかなりのダメージを喰らっている。彼は自分の取り込んだ個体を何個も捨てて、身代わりとして生き残ったのだ。

 

 

 

中から出てきたのは、青年だった。

 

 

 

その姿は、勇者そのものだった。

 

 

 

彼は取り込んだ個体を身代わりにしたので、かなり弱体化した。

 

現在の魔力量は、僅か800万。

 

約10分の1になったのだ。

 

 

ノワールがした事は、決して無駄には終わらなかった。

 

彼が元の魔力量までに戻るのにはかなりの時間が必要となるだろう。

 

勇者ユウキの姿をした悪夢は森へと戻り、再び狩りを始めた。

 

 

 

 




今回、クリ之内死す。


クリードもっと短ぇ...


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