MrサタンZ 真の英雄 (寅好き)
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プロローグ

大体5~10話位で終わります。短い話ですがよろしくお願いします。


「わしは、わしはなんてことを~。」

ベッドで横たわりながら悩み苦しむ老齢の男性。我らがサタンである。しかしそのサタンも歳には勝てず、若い頃の筋骨隆々であった体も痩せこけ、自慢のアフロヘアーも見る影もなくなっていた。

また、見た目だけではなく、年により気が弱くなり日毎にサタンの悩み事は深くなっていた。

「ハア~わしは…。」

今日これで何回目のため息だろうか、2桁いや3桁であろう、それが吐き出された瞬間誰かが部屋に入ってきた。

「サタン大丈夫か?」

大きな体と大きな腹をして、人間とは思えないピンク色の肌、頭には触角を生やし男?ミスターブウがやって来た。

「サタンが元気ないとみんな心配していた。俺も心配だ。何でも言え。俺がなんとかしてやる。」

「ブウさ~~ん。」

ブウの温かみのある言葉にサタンは感激の涙を流しながら、悩みをブウに明かすことにした。

「実は………」――――

「なんだそんなことに悩んでいたのか。」

「そんなことってのはないでしょブウさん。」

涙を流し、言葉をつまらせながら話した話を〈そんなこと〉で切り捨てられたサタンはブウに文句を言う。

「俺に任せておけ。」

ブウは自信に満ちた表情で胸を拳で叩き、サタンにそういうや否やベランダに通じる窓を突き破り空の彼方に飛翔して行った。

サタンは割れた窓ガラスを茫然と見ているしかなかった。

――――

「パパ気分はどう?」

「義父さん御加減はいかがですか?」

「おじいちゃん体は大丈夫?」召し使いからサタンがこの頃元気がなく、窶れたという連絡がきたことにより、娘のビーデルが夫の悟飯と娘のパンを連れて見舞にやって来た。

「おおビーデル、悟飯君それにパンちゃんも、皆の顔を見たら元気が出てきたぞ。」

口ではそう言ってはいるが、明らかに弱っていることが分かり、皆は一同に胸を痛めた。

ただサタンが自分達を気遣ってくれとの行動であることは明白であるので、サタンに付き合うことにした。

二時間程楽しく話をしたあとにビーデルが気付いたことをサタンに聞く。

「そういえば今日はブウさんはいないの?」

いつもならばサタンと一緒にいることが多いブウがいないことを不思議に思ってのことである。

「ああ、ブウさんはちょっと外出していてな…」

明らかに口ごもる「サタンに喧嘩でもしたのかしら」と思いながら、突っ込んではならないと感じそれ以上は聞くことはなかった。

その後にも長い間歓談しビーデル達はサタンに「泊まっていったらどうだ?」と言われながらも、明日も仕事や学校があるからと言ってすまなそうに「また近いうちに来ます。」と言って帰っていった。その日は食事の時間になってもブウは帰ってくることはなかったのでサタンは「ブウさんなら大丈夫。」とは思いながらも、不安な夜を過ごした。

――――

翌日早朝少し汚れながらもブウは何かを持って帰ってきた。

「サタン帰ってきたぞ。」

「ブウさん心配してたんですよ。どこに行っていたんですか?えっとそれは?」

捲し立てるサタンにブウは持っていた物を自慢気に見せる。

「ドラゴンボールだ。」

 




すいません、プロローグとしてのきりは悪いですがここまでにさせてもらいます。


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ドラゴンボールに願いを

「どうやってドラゴンボールを集めたんですか?」

ドラゴンボールは世界中に散らばっているために集めるのが大変なことはサタンでも知っていた。だからこそ聞きたかった。

「ブルマの所でレーダーを借りて捜したんだぞ。エッヘン。」

ブウは胸を張って誇らしげに語っている。

「わしのためにそんなに汚れてまで集めてくれたんですか?」

「違うぞそれはな………」

――――

「あそこがたしかカプセルコーポレーションだったな。」

ブウはサタンのもとから飛び立ちブルマのいるカプセルコーポレーションに来ていた。

「おーい。だれかいないのかー。」

「誰よ。ああブウじゃない、久しぶりね。何かよう?」

ブウはブルマとはベジータの代わりに買い物に付き合ったりしていたので面識があった。

「………」

「なによ。」

じ~っとブルマを見つめるブウに対して何かと問う

「老けたな。」

「うるさいわよ。あんたらと違って私は人間なのよ。神龍に頼もうかしら。」

神龍という言葉を聞き、ここに来た理由を思い出すブウ。

「ドラゴンレーダーを貸してくれ。」

「いきなりなによ。どういうこと理由を言いなさい。」

ブウの口からまさか出るとは思わなかったドラゴンレーダーという言葉を聞き、ブルマは少し焦りながら聞き返す。

ブルマはブウが悪いやつではないことは十分に分かっていたが、ドラゴンボールの力をよく知っているからこそ聞きたかった。

「それはな………。」

「あんたいいやつじゃない。待ってて今探してくるから。」

ブルマはブウの話を聞き感動してドラゴンレーダーを貸すことにした。

ただ長い間使われていないのでどこにあるかが分からない状態だということで探しに行った。その間ブウは菓子とジュースを飲んで待っていた。

「なんだブウじゃねえか。」

ブウを見てやって来たのはベジータである。

「うちになんのようだ?」

「それはな………。」

「ほうまあ俺には関係ないな。だが暇をしているようだな。少し俺に付き合え。体が鈍っていたところだ。」夫婦そろって全く違った対応である。

ブウは菓子を食べたいと言ったがベジータは聞く耳を持たず、ブウを引き摺って重力室に入っていった。

「ブウ、見つけたわよっていない。どこ行ったのかしら?」

行き違いになったブルマとブウであった。

ブウが帰ってきたのは2時間後であった。

「いったいどこへ行ってたのよ。」

「ベジータと遊んでた。」

ブルマは鬼のような形相で怒っていたがよくよく話を聞き、服が汚れていたことから合点がいった。

「そうだったの、家のベジータが。ありがとう面倒みてもらって。」

まるで子供をあやしてもらった母親のように礼を言うブルマに、「俺も楽しかった。」と言ってカプセルコーポレーションを出ていった。

「久しぶりに楽しめたぜ。」

重力室ではボロボロになりながらも本当に楽しかったとしみじみ呟いているベジータがあった。

――――

「そんなことがあったんですか。そのあとに世界中を飛び回ってありがとうございますブウさん。」

「俺も楽しかったし、それになドラゴンボールは簡単に集まったぞ。なんかな、中華料理の名前みたいな奴らがドラゴンボールを集めててな、交換してもらおうとそこにあった岩をお菓子にしたら青い顔をしてすぐに渡してくれたぞ。」

「そ、それはよかったですね。」

サタンはその状況が簡単に想像でき、ドラゴンボールを渡してくれたものたちに手をあわせることしかできなかった。

「じゃあ行くぞ。」

「ああ、ブウさん。」

サタンを連れてブウは外に出た。

ブウは鼓動を刻むように光ながら脈動するドラゴンボールを前にして、メモを手に取り読み上げる。因に棒読みで。

「出でよ神龍!!そして願いを叶えたまえ!!」

ブウが読み上げた瞬間、晴れていた空が一転して夜が来たように暗くなり、いっそう輝きを増したドラゴンボールから神龍が現れる。

その姿にサタンは声が出ない。一度や二度見たぐらいでは慣れるものではなかった。

「さあ、願いを言え、どんな願いでも二つだけ叶えてやろう。」

ブウは怖じ気づくことなどなく、淡々と答えた。

「一つ目の願いは第24回天下一武道大会の一日前までサタンを戻してほしい。」

「今のサタンを記憶を持った状態でその時に戻せばよいのだな。」

「そうだ。」

神龍に理解してもらえたので嬉しそうにブウは答える。

「容易いことだ。」

神龍の目が赤く光ると同時にサタンの姿は露のように消え失せた。

「一つ目の願いは叶えてやった。二つ目の願いを言え。」

「俺もサタンが行った世界に送ってくれ。」

ブウが二つ目の願いをいうと今度はブウの姿が消えた。

「願いは叶えてやったさらばだ。」

誰も聞いている者がいないが、いつも通りにお決まりの言葉を言うとドラゴンボールは再び世界に飛び散って行った。



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ブウの真意

「ああブウさんも来てくれたんですね。寂しかったですよ~。」

「俺が来ないとサタンの悩みも解決できないだろ。」

さてサタンの悩みとはなんだろう。まあ皆さんは分かると思いますがあれしかないです。

「わしの悩み、セルを倒したのは悟空さんや悟飯君なのに、わしがその手柄を奪ってしまった。地球中の人をわしは騙している。それだけじゃない、歴史に残ったことで未来の人々をも欺くことになってしまう。わしは良心の呵責に耐えられない。なんとかしてわしが、わしがセルに。」

以上がブウのおかげで綺麗になったサタンの独白です。

「でもブウさんなんでセルゲームの前ではなく、第24回天下一武道会の前日なんですか。」

サタンは疑問に思っていたことを正直にブウに尋ねる。

「セルゲームの前にいって俺がサタンの弟子と言ってセルを倒してもいいけど、全く認知されていない俺が倒しても本当にサタンの弟子かとなるし、サタンが霞む。それならば第24回天下一武道会にサタンの弟子として出てサタンの弟子と認知され、決勝でサタンが勝てば俺よりサタンが強いとなって、俺がセルを倒しても問題なくなるってことだ。」

「……」

あのブウが正論を切々と語っている。それもサタンよりも先を読んで。

サタンはそれを嬉しくも思いながらも寂しくも思っていた。

サタンがブウと合ったときにはブウは子供のようであった。それがもう一人前の大人の考えである。自分の子供が自分から離れていってしまうような寂しさを感じていた。

「そこまで考えてくれてありがとうございます。じゃあ大会にエントリーしにいきませんか?」

サタンは目を潤ませながら感謝の意を示し、大会出場のエントリーをしに行こうと提案するが、

「まだだぞ。俺は顔と服と体格を変えて、肌の色も変えたいぞ。」

「え?」

ブウの発言にまたもや悩まされるサタン。その真意とはサタンが尋ねる。

「これは過去だ。この先に前の俺が復活して暴れまわる。サタンの弟子と同じやつが暴れまわったらサタンは悪者になっちゃうぞ。それじゃあ嫌だ。ということで顔、体格、服、肌の色を変えたいんだ。」

さらに先を読んでいるブウ。感心するしかなかった。

「サタンに頼みがある。服を買ってくれ、サタンと同じのがいいぞ。」

「ブウさん…。」

ブウの発言にまたもやうるうるさせられるサタンであった。

サタンとブウは家に帰ってきた。ただ家の前には数多くの記者が集まっていた。

「サタンさん、明日の天下一武道会への意気込みをお願いします。」

「こちらにも。」

「サタンさんお願いします。」サタンはあっという間に記者に囲まれて、マイクを数多く突きつけられる。しかし、サタンはあの時のサタンではなかった。ブウと同じく大人になっていたのである。

「皆の期待に答えられるように頑張るよ。それと私の隣にいる者は私の弟子で明日の天下一武道会でデビューする。皆応援してやってくれ。」

『……。』

それまでうるさいほどだった記者達は一様に静かになっていた。

あのいつも強気のサタンが殊勝な態度で答えたからである。

皆珍しい物を見たように驚いている所をサタンはブウとともに過ぎ去り、家に入っていった。サタンの家はとても広く豪華なホテルのように部屋が多く、赤い絨毯が敷き詰められている。

「パパー。」

家の奥からビーデルが走ってくる。

「あ、あの娘がビーデルなのか。かわいすぎるーー!!」

音速を遥かに越えたスピードでビーデルに近づき抱きつき、頬擦りをする。

「やめてよパパー。くすぐったいよ。」

やめてよと言いながらも嫌がってはいなかった。まだこのときのサタンはビーデルにはあきれられてはいずに、よい父親であった。

「パパ、隣の人は誰?」

ビーデルは初めて見るブウが誰かと聞く。

「ああ、この人はブ、いやカーシさんという人でわしの新しい弟子だ。とても強いんだぞ。」

サタンは紹介する。ブウと言う名はやめようとブウと話し合い、菓子が好きだからということでカーシという名であることにしたためである。

「カーシさん。私明日の天下一武道会に出るから少し練習に付き合ってくれませんか。」

「ビーデル父さんが今日は練習に付き合ってやるぞ。」

「え、本当に。」

ビーデルはサタンは忙しいと思い気を使ってブウに話をしたのだが、予期していなかったサタンの提案に喜び勇んで道場に向かった。

「サタンいいのか、俺が付き合ってやってもいいんだぞ。」

「明日の試合の対戦相手については分かっているし、ビーデルに父親らしくしてやらないとな。」

綺麗なサタンは伊達ではなかった。

その後サタンはビーデルの相手をし、大会にエントリーし、ブウにあうサイズの服がなかったので、服屋を呼んでオーダーメイドの胴着をつくってもらうなどの充実した時間を送り、次の日の天下一武道会を迎えた。

 



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ビーデル大怪我フラグを叩き折れ

『サタン様、ビーデル御嬢様行ってらっしゃいませ。』

「ああ、行ってくる。」

「みんな行ってくるね。」

サタンとビーデルは家の前に並んだ門弟たちに見送られ天下一武道会に向かった。

天下一武道会はパパイヤ島の武道寺で行われる世界一の武道会である。第21回までは5年おきに、22回からは3年おきに行われてきた。しかし23回に何らかの事故があり武道会が行われた町まるまる一つ破壊されそれにより武道会が行われることはなくなっていた。

今回は武道会場が新設されたことにより再開されることになった。そして再開されるにいたって目玉選手として、無差別級格闘技の王者ミスターサタンが参加することになった。

「おい、ミスターサタンがやって来たぞ。見に行こう。」

サタンが会場に到着すると同時に人だかりができる。

観客であったり、報道陣であったりだ。

「ミスターサタン今日の意気込みをお願いします。」

報道陣の問いかけと共に、なん十本ものマイクがサタンに向けられる。

「皆さんが熱狂できる戦いをお見せしよう。」

『ウオーーーサタン、サタン、サタン。』

サタンが若干押さえぎみに話すだけでもどこからともなくサタンコールが沸き起こる。サタンが天狗になるのも頷ける状態である。

「私はこれから準備があるのでな、インタビューはここまでだ。サインなら私が優勝したあとに皆にしてあげよう。さらばだ。」

サタンがそう言い、去っていく。報道陣は追おうとするが係りの僧に止められその場は収まった。

その後はつつがなく進んでいった。

サタンがパンチングマシンで139を記録し本選出場が決まった。(ブウは触れるだけで500を記録したが壊れているということで記録にはならず)

 

その後行われた少年の部でもビーデルが優勝した。

「パパ、カーシさん見ててくれた。私優勝したよ。」

ビーデルは満面の笑みを浮かべてサタンとカーシの元に走ってきた。

「よくやったぞビーデル。さすがわしの娘だ。わしもこれ以上ないくらい嬉しいぞ。今度はわしの番だ、応援頼んだぞビーデル。」

「ほんとによくやったぞビーデル。」

サタンはビーデルをべた褒めし、頬擦りをし、カーシは頭を撫でている。

「パパ優勝してね。カーシさんが二位でね。」「わかった任せてくれ。行ってくる。」

「任せておけ。」

サタンとカーシは本選会場に向かった。

――――

「第24回天下一武道会を始めたいと思います。」

天下一武道会といったらこの人、サングラスをかけ、背広を着たアナウンサーが開会の挨拶をする。

「新しい会場の幕開けに館長から一言挨拶をお願い致します。」

台に乗る犬の館長。緊張感により会場が静寂に包まれる。

館長がゆっくりと口を開く。会場の観客が固唾を飲んで見つめる。

「ワン」

「ありがとうございました。」

観客すべてが転けた。お決まりのイベントがあり、本選の幕が降ろされた。

 

「本選出場者は16名、事前に行われた籤引きで対戦相手は決まっております。」

アナウンサーが対戦表が用意されたことを確認し、読み上げる。

「第一回戦ミスターサタンVSスポポビッチ。」

「いきなりサタンかよ。すげえな。」

サタンの名がでた瞬間会場はヒートアップする。

アナウンサーの声がかきけされるほどだ。

「第8回戦カーシVSヤムチャ」

「悟空がいない天下一武道会なんて楽勝だぜ。毎回一回戦敗退なんてことはもうない。1000万ゼニーもいただきだぜ。」

意気込むヤムチャは勿論あとで地獄を見ることになる。

この対戦相手は全てカーシが超能力で決めたものである。サタンがスポポビッチと戦いたいと言ったことと、サタンとは決勝までカーシと当たらないようにしたこと、飛び抜けた強さを持つヤムチャを即敗退させる等の思惑が存分に込められた物となった。

(これからスポポビッチとの戦いか。前までであればビーデルの仇としてスポポビッチを還付なきまでに叩きのめしていただろう。しかしわしは晩年になり気づいたのだ。わしがスポポビッチを簡単に倒したあとヤツをさらに言葉で傷つけてしまった。それによりヤツは強さを求め非道の道を進んだのだ。わしはここでビーデルが傷つく未来をなくして見せる。)

ミスターサタンは覚悟を決めて武舞台にあがった。

会場は沸き上がっているが、サタンは全く気を許していなかった。

「スポポビッチ君、お互いの全力で良い試合にしよう。」

「あ、ああ。(サタンは驕り高ぶったヤツだと思っていたが、イイヤツみたいだな。)」

サタンへの印象が上がり掴みは成功した。

太鼓がならされ始めた。

「第一回戦始めてください。」アナウンサーの声とともにドラが響き渡った。

「はっ。」

サタンは構えをとる、いたって真剣な。以前の戦いではバカに仕切った態度で、力の差を見せつけるようにおちょくりながら倒したのだが今回は違った。

(サタンは真剣だ。俺にたいして全力できてくれる。俺もそれに答えねば。)

スポポビッチはすでにサタンとの間には天と地との差があることは悟っていた。しかしそんななかでも本気できてくれるサタンに感謝しながら答えなくてはならないと思い始めていた。

「うおおーー!!」

スポポビッチはサタンに突進する。大きさではスポポビッチのほうが遥かにデカイがスポポビッチにはサタンがとてつもなく大きく見えていた。

サタンも避けることなく真正面から相手をする。

「ふん。」

スポポビッチの突進を両手で受け止める。

「素晴らしい突進だ、こちらもいかせてもらうぞ。」

サタンの渾身の正拳突きがスポポビッチの腹にめり込んだ。

スポポビッチの体が崩れ落ちる。すでに意識がとんでいた。

「スポポビッチ選手戦闘不能、ミスターサタンの勝ちです。」サタンの勝ちが宣言されると会場は沸き上がりサタンコールが鳴り響く。

その横でスポポビッチが担架によって運ばれていった。

スポポビッチは後に目を覚まし、自分が負けたことを知ったが顔には悔しさなど微塵もなく、満足仕切った顔であった。

会場を去るときにも清々しい顔をしてサタンのサインを買って帰っていったという。

ビーデル大怪我フラグはサタンによって処理され、スポポビッチも死ぬことはなくなった。

サタンの戦いは清々しいものであったが、そうでないものもあった。

そう第8回線である。

この時点の悟空を遥かに越えた力を持つカーシとあたってしまった(目をつけられ仕組まれてはいたが)のが運の付きであった。

「変な気をしているが俺の敵じゃないな。狼牙風々拳。」

常人では消えたと思うほどのスピードでカーシに向かっていく。

「ハイ、ハイ、オー。」

ヤムチャの拳がカーシの体にめり込む。カーシはサタンと同じ胴着であるのでヤムチャの拳がめり込んでいるのは見えていないが、ヤムチャは確かに手応えを感じていた。

「万年一回戦敗退とはもう言わせないぜ。」

ヤムチャは興奮して拳をふるい続けた。

「ハア~ア。ほい。」

「ぶあ~~~ぁぁぁ………」

大きなアクビをし、伸びをし、カーシはヤムチャに楽しそうにデコピンをした。その途端とてつもない速さでヤムチャは遥か彼方に飛んでいった。

「あ…。えーと、ヤムチャ選手はふっとんでしまいましたが。私の記憶ではヤムチャ選手は空を飛べますので帰ってくるかもしれません。ということで少しヤムチャ選手を待ってみましょう。」

アナウンサーが制限時間の30分をまったが当然ヤムチャが帰ってくることはなかった。




24回の天下一武道会はスポポビッチ、プンター、ジュエールしかいなかったのでヤムチャ特別参戦です。ひどい扱いですが、私はヤムチャは好きですよ。


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天下一武道会優勝とサタンの決意

サタンは一回戦スポポビッチを倒し一回戦を突破しその後も順調に勝ち進み、準決勝もジュエールと戦い勝利し決勝に進出した。

準決勝のジュエール戦では、ジュエールにあまりにも多くの女性ファンがついていたことに、サタンが少々嫉妬し、スポポビッチとの戦いのような紳士的なものではない戦いであったということもあった。

カーシも勿論決勝に進出した。対戦相手は息を吹くだけでぶっ飛ぶといった、過去のジャッキーチュンがヤムチャに勝った時のような試合であった。

この会場でその試合のことが頭に浮かんだのはアナウンサーだけであったというのも時代の移り変わりなのかもしれない。

そして、サタン対カーシ決勝戦が始まる。

「第24回天下一武道会決勝戦大変なことになりました。

皆さんの予想の通り格闘技世界チャンピオンのサタン選手が勝ち上がったのは当然といたしましても、なんと圧倒的な力で勝ち進んできたカーシ選手はサタン選手の愛弟子だそうです。」

「えっマジかよ。」

「強いはずだ。」

「くぅ~。見に来て良かったぜ。」

アナウンサーの発言に会場も沸き立ってきた。これによりカーシがサタンの愛弟子ということを周知徹底することに成功する。

あとはサタン>カーシという構図が出来上がれば今回の天下一武道会は、サタンとカーシにとっては大成功ということになる。

アナウンサーがサタンとカーシについての説明が終わると、太鼓がならされ始める。会場もそれにあわせて今か今かとソワソワし始める。

「決勝戦はーじめてくださーい!!」

アナウンサーが今大会で一番の声で宣言すると、サタンとカーシがぶつかりあう。

目にも見えない拳の打ち合いが始まる。

当然であるが綿密な打ち合わせ道理の動きである。

もう何度もサタンとカーシは八百長試合を続けていたので阿吽の呼吸であり、共に魅せる試合というものを熟知していた。

サタンは華麗にカーシの攻撃を避け続け、逆にサタンが放つ攻撃は的確にカーシを捉え、押していく、ように観客には見えている。

もしここにZ戦士の元魔王や王子がいたら、「くだらん」、「低レベルな八百長試合だ」と一蹴されるであろう試合である。しかし、観客にはそうは見えずハラハラ、ドキドキの素晴らしい戦いであると思われ会場は興奮の坩堝と化していた。

長い攻防が続き、サタンとカーシが手を合わせ、力比べの体制に入る。

そこでサタンがカーシにウィンクをし、カーシは頷く。

サタンは力を抜き、カーシの体勢を崩し、揺らいだ体に、渾身の力で正拳突きを打ち込んだ。そしてその強烈な打撃によりカーシは吹っ飛び、場外の壁に叩きつけられた。

そのあまりにも凄まじい終わりかたに一瞬会場内も静まりかえる。

「カーシ選手場外よって、サタン選手が第24回天下一武道会の優勝者になりました!」

アナウンサーが静寂を振り払うように、声高らかに発表すると、一斉に観客の声援が飛び交い、サタンコールが鳴り響いた。それはとどまることを知らず、サタンの優勝者インタビューが始まるまでおさまることはなかった。

この戦いは後世語り継がれる者となり、全世界で80%以上の視聴率を得たということでも語り草となるものであった。

その後、サタンは大々的な優勝パレードを行い、祝勝会、テレビ番組出演と忙しく動き回り、1週間が過ぎた。

仕事が一段落就いた夜、サタンはカーシの元にやって来ていた。

それはいつものことではあるが、普段とは全く一線を画したものでもあった。

サタンの表情が真剣であったからである。

いつものおちゃらけた雰囲気など微塵もないことから、カーシも何かを感じとり尋ねる。

「どうしたんだサタン?いつもと違うぞ。」

 

カーシの問いかけに、サタンは神妙な面持ちで話始める。

「カーシさんに頼みがあるんです。」

「なんだ。俺とサタンの仲じゃないか、何でも言え。」

カーシに掛けられた温かい言葉によって、サタンは覚悟を決める。

「わしを強くしてください。」

サタンは土下座をしてカーシに頼み始める。

「どうしたんだサタン。セルは俺が倒すからサタンは安心していいんだぞ。」

いつもと違うサタンにさすがのカーシもとまどりながらも、サタンを気遣い話をし、落ち着かせようと試みる。

「その件についてはカーシさんを全面に信頼してるからいいんです。問題が一つあるんです。」

「問題?」

サタンの言う問題とやらに全く検討もつかないカーシは聞き返す。

「セルゲームが始まる前に、悟空さんや、報道陣の前で瓦割りをしたんです。あの時は見せてやったと自信満々だったんですが、悟空さん達の力を知った今になって考えると恥ずかしくて恥ずかしくて。悟空さんが見ても、恥ずかしくないパフォーマンスをしたいんです。」

サタンは思いの丈の全てをカーシに包み隠さず打ち明けた。

「よし、明日からサタンを強くしてやるぞ。

セルとか言うやつにはかなわないが、クリリンやヤムチャぐらいになるぐらい鍛えてやるぞ。」

「本当ですか?」

カーシの提案に喜びを隠せずに聞き返した。

「うん。」

カーシは子供のような笑みを浮かべ、頷いた。

サタンはこの世界の修行というものを甘く見ていた。そしてクリリンやヤムチャがどれ程の苦行を乗り越えた末にあの力を手に入れたのであるかということを見にしみて味わうことになるのであった。




次はいっきにセルゲームまで話がとびます。
第24回天下一武道会があったのがエイジ767年、またセルゲームが行われたのも同エイジ767年ということで、セルゲームまでサタンは修行に明け暮れていたと思ってください。


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サタン唯一の見せ場、ついに始まるかセルゲーム

ドラゴンボールあるあるとして強くなるとおとなしくなるというか、冷静になるというか、クリリン風に言うと暗くなるというのがあります。今回だけはサタンはそんな感じです。


サタンがどこぞで必死にカーシとともに修行していた時に、セルがテレビ局を乗っ取りセルゲームの開催を宣言したり、防衛軍がセルに傷つけることすらできずに全滅させられるという、全人類を震撼させるできごとが起こっていた。

そんななかで人類は最後の希望の光として世界最強の男ミスターサタンに全ての望みをかけることにしたのだった。

サタンの修行もセルゲームの前日に無事終えることになった。

「どうだサタン。」

「ああ…、今までとは世界が変わって見えるな。」

サタンは落ち着き払って辺りを見回した。

サタン修行を終えることで、実力だけでなく、風格も身に付けていた。

「パパーお帰りなさい。報道局の人達が来てるよ。」

1人娘のビーデルが花が咲くような満面の笑みを浮かべてサタンのもとにやって来た。

「そうか。ご苦労だったなビーデル。少し話をしてくる。」

サタンは報道局の面々と話すべく去っていった。

「ねえカーシさん。パパなんか変わっちゃってない?」

ビーデルは悲しそうにカーシに聞く。サタンのあまりの変わりように動揺と悲しさがビーデルのなかでごちゃ混ぜになっていた。

「大丈夫だビーデル。サタンはセルゲームの前で緊張しているだけだ。少したてば戻る。(悟空なんていつもそうだしな)」

カーシとしてももう家族そのものであるビーデルが悲しんでいるのは、見ていて胸が痛むので安心するように優しく諭した。「そうだといいな。」

ビーデルはぽつりぽつりとこぼした。

だがビーデルの悩みなど関係ないように時間は過ぎセルゲーム当日がやって来た。

「ミスターサタン。お迎えにやって来ました。今日1日英雄サタン密着24時、お願いします。」

「ああ、だが昨日言ったように私が危ないと言ったら直ぐに退くんだぞ。」

「は、はい。」

サタンの有無を言わせぬ雰囲気に報道陣は頷くことしかできなかった。

サタンが家の外に出ると門弟だけでなく、多くの人が集まっていた。

サタンが姿を見せた瞬間どこからともなく沸き起こるサタンコール。その様子だけでも人類がどれだけセルを恐れ、サタンに期待しているかが伺えた。

「皆集まってくれてありがとう。では行ってくる。」

以前のサタンであればマイクパフォーマンスの1つでもやったはずであるが、今回のサタンはそのようなことはせずに、冷静に感謝の意と行ってくるとだけ簡潔に言い、報道局が用意した車に乗り込んだ。

いつも饒舌なサタンが車内でも沈黙を貫いていたので、報道陣はサタンでも緊張しているのかなと簡単に思っていた。だがサタンが黙っていたのは全く違うものであることなどいつも一緒にいたカーシでもわからないものであった。

車で移動してかれこれ3時間、荒れ果てた岩場に場違いで大きな武舞台が見えてきた。

「あれか…」

「そうですあれがセルゲーム会場です。カメラさんとってとって。」

「はい。」

武舞台が見えてきたことで報道陣も慌ただしく動き始めた。

近づく度に武舞台の大きさが実感された。

(悟空さんはあの広い武舞台をも狭苦しそうに移動していたな。わしなんかとは次元が違うということか)

武舞台を見て苦笑いを浮かべたのを見逃さなかったカーシがサタンに呟く。

「安心しろ、大丈夫だ。おれが直ぐに終わらせてやるから。」

「ああ」

サタンは素っ気なく返したが、心の中では本当にカーシに感謝していた。

サタンはついに決戦の地に降り立った。まあ戦うのはカーシなのだが。

「うっ!!」

降り立つと同時にサタンに戦慄が走る。

修行によって気を感じられるようになったが故にセルの力が桁違いだということがわかったからである。

(なんてことだ。わしはこんな化け物にあんな風に喧嘩を売っていたのか。無知とは恐ろしいものだ。

ずっと悩んでいたのだが、カーシは大丈夫なんだろうか。セルの恐ろしさは分かるが、カーシからはこれほどの気を感じたことはない。わしはカーシに傷ついて欲しくはない。)

サタンが黙っていたのはカーシの心配をしてのことだった。気を感じれるからこその悩みである。

悟空やベジータさえも復活したブウの気は不思議とは感じてもあまり驚異に感じていなかった。

そうブウも極限までに気を押さえていたからだ。

「あれれ、なんか来ますよ。」報道陣が指差す方向を見るとベジータが舞空術でやって来たところであった。

「空からやって来た気がしましたが、まあいいか、観客かもしれないので忠告してあげましょう。」

「や、やめておけベジータさんは冗談はつうじないんだ。」

ベジータとも付き合いがあったために性格は熟知しており、恐ろしさは分かっていた。

そして段々元に戻り始めるサタン。

そして後れ馳せながらやって来るZ戦士一向。「あ悟空さんだ。カーシさんちょっと挨拶してくるよ。」

「サタン」

カーシの制止も聞かずに悟空のところに向かう。

「悟空さんお久しぶりです。」

「ん、誰だオメエ、オラのことしってんのか?」

(しまった)

サタンと悟空は親戚関係であり仲良くしていたのでつい以前のように挨拶に来たのだが。

過去であることをついつい忘れていたのだ。

「すまん人違いだった。」

そそくさと戻っていくサタン。

(悟空さんの姿がまったく変わらないから過去ということ忘れていたよ。それよりなんで見た目が全く変わっていないんだ。)

サタンは新たな疑問をもったのだった。

そんななか報道陣がサタンにある意味の無茶ぶりをかける。

「ミスターサタン、セルやアイツらにひびらせるためと、視聴者の皆さんのためになんか見せてくれませんか。」

ついにきたこのふり、以前のサタンはここで振られることなく自分から瓦を取り出して場を白けさせたのだが、今回は違った。

「よしやってやるか。」

サタンは覚悟を決めて武舞台に上がる。

「おいおい、あいつなんかする気だぜ。」

クリリンが疲れたように肩を落とし首を振りながら悟空に話しかける。

クリリンだけでなく他のZ戦士も怪訝な顔をして見ている。

「はああぁぁっ」

サタンは周りの視線を無視し、手を合わせ精神を集中する。

サタンの手と手の間に丸い光の玉が現れる。

「おいおい、あいつ気を扱ってるぞ。」

「マジかよ、なかなか強い気だぞ。」

「ふん」

クリリンとヤムチャは驚きの声をあげ、ベジータはつまらなそうに、悟空はそんなベジータを見て苦笑いをしている。

「はあっ、サタンスーパーアタック。」

サタンは出来上がった気弾を前方に打ち出す。

サタンの放った気弾はフヨフヨと亀が歩むぐらいのスピードで飛んで行く。

『プッ驚いて損したぜ。』

クリリンとヤムチャはそれをみて腹を抱えて笑っている。

しかしそれも直ぐにやむことになる。サタンの気弾が約2~30メートル程の岩に当たった瞬間凄まじい爆音と爆風が巻き起こり岩が消し飛んでいた。

Z戦士主にクリリンとヤムチャは驚愕の表情、悟空は楽しそうに見ている。

ピッコロ、ベジータは興味なさそうと、反応は多種多様だが、以前のようにしらけることはなかった。

「………あっ、アナウンサーである私としたことが驚きで何も話せなくなるとは、申し訳ありません。皆さーんミスターサタンが驚愕の力を見せてくださいました。安心してください。もうサタンに勝てる者はいないと確信しました。ではそろそろセルゲームスタートの時間です。ミスターサタンよろしくお願いします。」

アナウンサーが時計を見てそろそろだとサタンに振る、しかしそこで待ったがかかった。

「師匠のサタンの手を煩わす必要はない。おれが戦う。」

カーシが手に隠したメモをチラチラ見ながら棒読みで宣言した。




次回からセルゲームですが、直ぐに終わりそうなので、アニメ版よろしく少し引き延ばすかもしれません。


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魔人VS究極生命体 新旧ボス対決

ナレーションはもちろん八奈見乗児さんで

ついにセルゲーム当日になった。いち早く会場にたどり着いたのはサタンとカーシ、そしてZ戦士も続々と集結。ついにサタン対セルかと思われた時に割って入ってくる者がいた。


「師匠のサタンの手を煩わす必要はない。俺が相手をする。」

辺りに大きな少し違和感が混じった声が響き渡った。

周りの報道陣だけでなく、Z戦士達も声の主に視線を送った。

声の主は上下をサタンと同じ胴着を見に着け、顔は元のブウの顔をかなり整えたもの(町を襲っていた時に女性に顔を整えて俺ってカッコイイ?といったときのもの)

体型は胴着で隠されておりそこまでの肥満体とは思われないぐらいの姿であった。

その姿を見て青ざめる者が1人そうヤムチャである。

「おっどうしたんだヤムチャ顔色がわりぃぞ。あいつ知ってんのか?」

ヤムチャがどうも挙動不審になっているので、悟空が心配になり尋ねる。

「ああ、あいつとは前に手合わせしたことがあってな。」

ヤムチャはどこか遠くを見ているような目をして話始めた。

「少し気晴らしで出た天下一武道会で対決してな…。(あのあとは大変だった。頭蓋骨陥没で仙豆を使うことになったし。)」

ヤムチャはぽつりぽつりと話している。

「エッヤムチャさん天下一武道会出たんですか。じゃあもちろん優勝を?」

金髪の少年悟飯に率直に聞かれ言葉を詰まらせながらヤムチャは話す。

「ああ、あと少しってところで油断した所をやられてな、ハハハハハ。」

「そうか残念でしたね。」

悟飯の聞いては不味かったというような対応は余計にヤムチャの心をえぐったのであった。悟飯がしっかりしているが故のことである。

「え~と、でもヤムチャと同じってのはスゲエな」

見た目にも明らかに落ち込むヤムチャを立ち直らせるためにも珍しく悟空が気を回しフォローする。

「ああ~、中途半端に力を得ちゃったからいい気になってセルゲームに出てきたのか。」

クリリンが思ったことを率直に言ったことにより、悟空のフォローも吹っ飛びヤムチャはKOされた。

そんな時であった。

Z戦士達にサタンが話かけた。

「すまないが、我が弟子を先に戦わせてもらってもよいか?」

かなり丁寧にサタンが頼んできたので悟空も笑顔で「いいぞ」と了承する。

しかしそれに反対するものも、

「やめろ、あの程度の力では殺されるぞ。」

 

戦闘力を図る能力を持っているからこそそう話す、大柄の男16号である。

「16号でえじゅうぶだ。セルゲームが天下一武道会と同じルールなら殺されることはねえ。もし殺されそうだったらおらが助けるし、それに…」

「お父さん?」

急に言葉を止める悟空に不審に思い話しかける悟飯に

「いやなんでもねえ。」

「そう。」

親子で話しているとそれに割ってはいる16号

「お前には聞いていない。」

「まあまあ、抑さえて。」

語気を強くして話す16号をクリリンが押さえる。明らかに仲が悪いのが伺えた。

「どうでもいい早くしやがれ。ぶっ殺すぞ。」

後ろから青タイツの男ベジータが怒鳴った。

「そう怒るなってベジータ。そう言うことだいいぞ。」

少し置いてきぼりを食らったようになっていたサタンは悟空に了承をもらい戻っていった。

「なんと、ミスターサタンの愛弟子で、以前の天下一武道会準優勝のカーシさんがミスターサタンの代わりに戦うようです。」

サタンが戻ってくると、鼻息を荒げてアナウンサーがカメラに向かって話している。

(じゃあカーシさん頼みました。)

(任せとけ。)

目と目でサタンとカーシが合図を交わしあった。

「なんだ貴様は、私は孫悟空と少しでも早く戦いたいんだがな。」

口調は穏やかだがその言葉には少しばかり怒気が含まれていた。

「クソッセルの野郎カカロットしか眼中にないだと。ふざけやがって。」

ベジータに対して言った言葉ではないがいち早く腹をたてていた。

「ん、どういうことだ?」

カーシは子供のような感じでセルに尋ねた。

「頭の悪いやつだ。それはな…」ピーー

セルが話そうとした瞬間であった。

カーシの頭から蒸気が吹き出した。

「俺の頭が悪いだと。お前生意気だぞ。」

「フンヤカンだったか。」

だんだんと一触即発の状態になってきた。

「直ぐに倒してやろうと思っていたがやめた。少し遊んでやろっ。」

カーシも善であるが元は魔人である。いつぞやと同じ獰猛な笑みを浮かべていた。

「フッフフ、フッフフ。」

カーシがいきなり鼻歌を歌いながらスキップをしてセルに近づいていく。

「ウォーミングアップにもならんな。すぐに終わらせてやる。」

セルが言い終わるか終わらないかという時に姿が消えた。

「は、速い!!」

悟空や悟飯以外のZ戦士が驚愕の声をあげた。それほどまでにセルの動きが速かったのだ。

姿が現れたと思われた時には、セルの腕がカーシの腹部に深々と刺さっていた。

「セルめやりやがった。」

クリリンやヤムチャ、天津飯は目を逸らすが

「いややっちゃいねえ。」

悟空のやけに冷静な声が上がる。

「な、なんだこれは抜けんぞ。」

嫌な笑いを浮かべていたセルがもがき出した。

「ん、どうしたんだ?お前なにがしたいんだ?」

カーシがセルを嘲笑うように話しかける。いやもとからこうなのかもしれないが。

「貴様、放せ。」

セルが押そうが引こうが腕が抜けずもがいている。かなり滑稽な姿である。

「離れたいんだな。わかったぞ。ぶう。」

「ぶるああぁぁ!!」

カーシが刺さっているセルの腕に手刀を軽く放つとセルの腕が切り取られた。

セルは紫色の血を撒き散らしながら断末魔をあげた。

これにはZ戦士も声すら出すことができなかった。

「ぽいっ」

カーシはセルの腕を放り投げだ。

セルの腕は雲を砕きながら天高く舞い上がりお星さまになったとさ。

「おのれ、ふん」

セルが力をいれると緑色の体液を撒き散らしながら腕が再生される。

「面白いなお前。」

カーシは笑いながら手を叩いている。その姿は子供のようでもあり、子供特有の残酷さをも秘めたものであったが、セルは怒りで取り乱し始めていた。

「おのれ、おのれ、おーのーれー!!ぶっ殺してやる。」

セルは完全に怒りで我を忘れていた。

セルが声をあげるとセルが黄金色に輝き出し、爆風のような突風を撒き散らした。

「ぶっ殺してやる。本気で行くぞ。」



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地球消滅の危機

「ハアアァァァーッッ」

セルが力をいれる度に黄金の気の輝きが増し、地響き、地割れがそこらじゅうに起きている。

「なんという気だ地球そのものが揺れているぞ。」

「セルの気がどんどん膨れ上がっていったいどこまで大きくなるんだ。」

ビッコロやクリリンは素直に嘆くが、他の声を発していないZ戦士も一様に同じことを思っていた。

「悟空さん。あのカーシという人物は勝てると思いますか?」

「セルもあのカーシってやつもオラの想像を遥かに越えてっから分からねえな」

トランクスの問いかけに頭を掻きながら答え、続けて満面の笑顔で

「なんかワクワクしてくっぞ。」

と答える。

とてつもない力が目の前で見せられているのにこのような答えができる悟空に対してトランクスは「本当に悟空さんは凄いな」と感心するのであった。

「行くぞーーッ」

セルは怒鳴り駆け出した。

なにかが破壊されるような音と、その衝撃波が巻き怒るとカーシの頭が原型をとどめていなかった。

「おい悟空なにがあったんだ。」

その光景を見てなにがあったのかと悟空に問いかけるビッコロ。すでにビッコロが目視できるスピードを遥かに越えていた。

「おらにも全てが見えていたわけじゃねえが、セルの膝がもろにあのカーシってやつの顔面に突き刺さったところだけは見えた。ヤベエかも知れねえな。」

もうすでに悟空であっても駒送りのようにしか見えない戦いになっていた。

しかしそれで終わりではなかった。

「これで終わりだと思うな。お前は絶対に許さんぞ。」

どこからともなくセルの声が辺りに響き渡る。

その後もセルの姿は依然として見えないが、爆音のような打撃音と衝撃波が巻き起こり続けカーシの体は揺れ続ける、そして顔だけでなく、体までもが徐々に原型をとどめなくなってきた。

「クソッなんて戦いしてやがるんだ。」

「まったく見えません。」

ベジータ親子もその戦いを驚愕の表情で見つめるしかなかった。

「肉塊と化せいッ」

セルの声が天から聞こえてきたと皆が天を見上げた、その時にはすでにセルの膝がカーシの頭を破壊していた。

 

「!!」

「カーシ」

「ギャーー」

「写すな報道コードを遥かに越えている。」

 

驚き、嘆き、恐怖全ての負の感情が場を支配していた。

肉塊と化したカーシがその場に横たわった。

「ハアハア、フン俺を怒らせたことを地獄で後悔するんだな。さあ、孫悟空来い。舞台に上がってこい。」

息をきらせながらも、満足した表情で悟空を呼び寄せた。

しかし悟空はその肉塊を見つめてポツリと呟いた。「まだ気が残ってらあ」とその時であった。肉塊と化していたカーシが立ち上がった?肉塊なので立ち上がったという表現が正しいかどうかは分からないが。

スウーッという空気を吸う音がし、

「ブウ」

という声がした時にはカーシが元の姿に戻っていた。

「ば、ばかな」

「あいつはいったいなにもんなんだ。」

「おもしれぇやつだな、もうおらはワクワクしっぱなしだぞ。」

唖然とするセル、ついにカーシの正体に疑問を持つビッコロ、嬉しくてたまらなそうな悟空と皆が十人十色の表情を浮かべている。

「今度は俺から行くぞ。」

カーシのその声はセルのすぐ後ろから聞こえた。

セルだけでなく、Z戦士いやその場にいるもの誰もがカーシの動きをとらえていなかった。

「お前も舞空術使えるだろ、これ要らないんじゃないか。えい。」

「ぶるああぁ」

二度目の断末魔。カーシは子供のような笑顔でセルの黒光りする羽をもぎ取っていた。

あたかも子供がその残酷さを発揮して虫の羽や足をもいでいくように。

「ぷっ、かっこ悪くなっちゃったぞ。戻してやるな。」

カーシはセルの羽を剣のように持ち突き刺した。

「―――」

自らの羽を突き刺されてもうすでに声すらも発することができないセル、Z戦士も騒然としている。

セルはおもむろに突き刺さる羽を抜き、「ハアッ」と力を入れ羽を再生させる。

「チクショウ、チクショウチクショウ、チックショーーー!!」

セルの怒りにうち震えた怒声がこだまする。

「もう許さんぞ。武道会などどうでもいい。この地球ごと消し去ってくれるわー。」

セルは空に舞い上がった。

「ハアアァァッ」

さらに気を高めるセル、もうその気は大気を震わせていた。

セルは気を極限まで高めると。腰をおろし、両手を合わせ、腰のところにまで引いた。そして

「かーめーはーめー

「セルは本気だ来るぞお。」

波ーーーッ」

悟空が皆に檄をとばした時には既に時は遅し、セルの手のひらから青白い目映い光が地上のカーシに向けて放たれた。



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セルゲーム決着

「フハハハハハ、地球とともに宇宙の塵となるがいい。」

理不尽なほどの力が収束したかめはめ波がカーシだけでなく地球に迫っていた。

「なんて気だ。」

「もうだめだ。おしまいだ。」

「この世界も救えないというのか。」

迫り来る巨大なかめはめ波にピッコロは驚き戸惑い、ベジータは恐れおののき、トランクスは嘆き悲しんでいる。

「天国には可愛い娘いるかなあ。」

「結婚したかった。」

地球人の二人ヤムチャは現実逃避し、クリリンは訪れることはないのであろう未来に思いを馳せていた。

だがそれの標的となっているはずのカーシはまったく違っていた。

「悟空と同じ技が美味しそうだな。」

と言うと口を大きく開き空気を凄まじい勢いで吸い込み始めた。

まるでダイ〇ンの掃除機のように。

『うわー』

とてつもない吸引力によりZ戦士達は吸い込まれないようにじっと耐え、報道陣やサタンは16号によって守られていた。

その光景を見てカーシは安心して全力で吸引を開始する。すると迫り来ていたかめはめ波はカーシの口に引き寄せられ、みるみるうちにカーシに飲み込まれ始めた。

まるで極太うどんの麺でもすするかのように。

「な、なんだと。」

セルはもう目の前で起こっていることを認めることはできなかった。

かめはめ波を飲み込み続けるカーシはついに全てのかめはめ波を飲み干してしまった。

「ゲプッ、ああ旨かった。かめはめ波は飲み物だったんだな。」

カーシは満足気に腹をさすっていた。

「腹八分目ってところかな。」

その場にいる全てのものがもうなにがなんだか分からなくなっていた。

「もう満足したぞ。じゃあもう死んじゃっていいぞ。」

その言葉はセルの耳元で聞こえていた。

セルが振り向こうとした時にはすでにセルは舞台の床にめり込んでいた。

「よいしょ。」

カーシはめり込んだセルの頭を掴んで持ち上げる。

「き…貴様は…何者な…んだ。」

もう満足に喋れる状況ではないセル。

カーシはその問い掛けにまったく答えるそぶりも見せない。

なぜかというと、自分の正体がバレる訳にはいかないなどというわけではない、カーシはサタンにもらったメモを読んでいるからだ。

「え~と、次にするのは。」

「き、貴様ー―ッ」

カーシの様子を見て激怒するセル、カーシはけして怒らせようとしているわけではない、至って真面目である。

しかし堪忍袋のおが切れたセルは体が筋肉で膨れ上がる。

「ふざけるなー。」

カーシに頭を掴まれたまま蹴りやパンチを打ち込む。

「そうか次にすることがわかったぞ。」

セルの攻撃にまったく動じることがないカーシ。それだけでなく、次にすることが分かって喜んでいる。

「少し強めに腹に一撃入れればいいんだな。ブウ。」

カーシの右ストレートがセルの腹に打ち込まれた。

「ぐおっ、こ、この俺がたった一発のパンチで。」

カーシがセルを放したためにセルは膝をつき悶絶する。

そして、異変が生じる。

セルの顔色が変わり始める。

そして嗚咽を漏らし始め、遂に口から何かを吐き出した。

「あ、あれは18号」

クリリンが歓喜の声をあげる。セルは吸収していたはずの18号を吐き出したのだった。

サタンは過去にあったセルと悟飯の戦いを見ており、18号が助けられていたところも見ていた。

さらに、サタンは18号に天下一武道会での恩義があったので、18号を助けるために、カーシにセルを倒す前に腹に一発のパンチを入れるようにとメモに書き頼んでいたための行動であった。

「よしもう死んでもいいぞ。」

カーシは楽しげに歪んだ笑みを浮かべ、発光しだしたセルを気にすることなく天高く放り投げた。

そして、カーシは胸の前で腕を交差し、気をあげる。

カーシを中心にして巨大なクレーターが出来上がる。深さは底無しといっていいほどのものだ。セルの気などと比べるのも恥ずかしい程の巨大な気をカーシが発する。

「……俺は夢でも見ているのか…」

「ピッコロさんしっかりしてください。」

ピッコロでさえも現実逃避をしだす始末。

愛する悟飯の呼び掛けにすら答えることができない。

「メチャクチャだな。宇宙も脈動してるぞ。とんでもねえやつだな。」

悟空も感心するほかなかった。

「お前なんか死んじゃえー。」

カーシは投げたセルに向かいとてつもない量の気で作られた気弾を放った。

カーシが放った気弾は空間を歪めながら、いや空間を破壊しながらセルに向かい、遂にはセルを飲み込む、

「この最強の生命体の俺が、得たいの知れないやつにやられる……」

セルは最後まで言葉を発することなく、気弾に体を消滅させられながら宇宙空間をどこまでも突き進んでいった。

「終わったぞ、サタン」

カーシは今まで見せていた獰猛で残酷な笑みではなく、無邪気で子供のような弾ける笑顔でサタンに話しかけている。

それは今までの戦いなどなかったような穏やかさでもあった。

「みなさーん。なんとミスターサタンが出るまでもなく、愛弟子のカーシさんがセルを瞬殺してしまいました。私たちは助かったのです。」

アナウンサーが涙を流しながら興奮してカメラに向かって宣言していた。

「なあ悟空よ。いつものお前ならやつと戦いたいというと思ったんだがな。なぜ言わないんだ。」

「ああ、あそこまで力の差を見せられちまったらとても戦いたいなんていえやしねえぞ。

でもいつか追い付いてやっぞ。なあピッコロおらや悟飯とこれからも修行しねえか。」

悟空は新たな目標を見つけて、さらに強くなるのを決意したようであった。

「チチが許してくれたらな。」

「……ああそうだったな。」

ピッコロの一言ですぐにも決意が鈍る悟空であった。

名実と共にサタンとカーシは英雄になった。

しかしサタンやカーシの戦いはまだ終わらない。

カーシが放った巨大な気弾が引き金となりあらたな驚異が地球にやって来ることになるからだ。




本当ならこれで話は終わるはずだったんですが、今度は新たに新章に入ります。またよろしくお願いいたします。


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セルゲームのその後

まだ新章には入りません。
申し訳ありませんが次回までお待ちください。


セルゲームが終わりZ戦士はそれぞれの生活に戻っていった。今回はどのように過ごしているのか見ていきたい。

まずは、悟空であるが、いつも通りの通常運転、カーシを目指して修行に明け暮れていた。

「なあ、チチ悟飯とも修行してえんだが。」

「なにいってるだ悟空さ。セルとの戦いが終わったら悟飯ちゃんは学者目指して勉強ささせるって約束したべ。悟空さもしかして忘れただか?」

「はい。忘れていません。」

チチのあまりにも鬼気迫る恐ろしい表情と威圧により悟空は逆らうことができず、今日も一人でパオズ山で修行をするのであった。

もう一人のサイヤ人ベジータはというと、重力制御室に引きこもり悟空を目指してこちらも苛酷な修行に明け暮れていた。

「なあブルマ重力を上げることはできんのか。」

「あんた働きもせずよく言えたものね。掃除でもしてくれない?」

「サイヤ人の王子の俺に掃除をしろだと。」

「ご飯いらないの。」

「ふざけやがって」

ベジータはそう吐き捨てるとおもむろに掃除機を取りだし掃除を始めた。

というふうに両サイヤ人は妻に尻にしかれていた。

最強の民族も妻には勝てないようだ。

ヤムチャは野球選手のアルバイトをこなしながら、様々な女性と交遊関係を広げていた。ある意味一番のリア充である。

クリリンはカメハウスに居候しているようだ。仕事もしているようだが何をしているのかは不明、また休日は何かを求めるように街に行き続けている。

ピッコロは天界に住、たまに下界に行き悟飯に会いに行ったり、ついでに悟空と手合わせをしている。

セルゲームから見事生還した16号は、カプセルコーポレーションに住み込んで、ブリーフ博士のペットを面倒を見ている。

ペットの世話をしている16号は本当にいい顔をしており、天職のようであるらしい。

17号はドラゴンボールでいい者と認められ生き返り、今でも自由に狩人などをし生活をしているらしい。

18号は不明。何年後にかはクリリンの妻になっているわけだが。

そして我らがサタンやカーシはというと、セルゲーム直後は至るところで引っ張りだこであり、睡眠すらも取れない状態であったが。約2ヶ月ほど経過して落ち着いてきた為に修行をしていた。サタンは武道家を志した時の想いを再び思いだし、修行も熱心に行っていた。「おーい。サタンー修行に行くぞー。」

「はーい、少し待っていてくださーい。」

「ほーい、わかったぞー。」

とより仲睦まじい関係を深めていた。

そしてサタンとカーシは修行の場に訪れる。

赤い壁に囲まれたあまりにも広い部屋に、急に現れる修行相手。

かなりガタイがよく、どこかで見たような山吹色の胴着、何か刺さりそうな地面につくほどの黄金の髪、眉のない顔、体全体から溢れでる、とてつもない質量の黄金のオーラ、という人物である。

「いつ見ても怖い顔だな。」

「……」

噛み合うどころか、話になることもない。まあ理由があるのだが、そして始まる超絶バトル、拳と拳がぶつかり合うたびに、巻き起こる突風、気弾と気弾がぶつかり合えば歪みができる空間と壁、互角の戦いで、約二時間ほど経過した。

「ふう、いい戦いだったな。そろそろおやつの時間だな。」

カーシが呟くと対戦相手はケーキに変わる。

「カーシさんー。修行相手の天津飯さんがドーナッツに。」

となりの部屋からサタンの声が聞こえる。サタンも壁を隔てた場で修行を行っているのだ。

「おーい。サタンー。おやつの時間だよー。」

「ああ、そういえば今日のおやつはケーキみたいですよー。」

サタンの声にカーシは喜色満面に顔を緩めて喜びを表す。

そしてサタンはカーシに急かされながら帰途についた。

「ふうおっやつだおっやつだ。」

カーシは部屋を出ていく。

カーシは戻ってきたというより目を覚ましたというほうが正しい。

サタンとカーシの修行の場はなんとカーシの体内である。

カーシの体内には、今までカーシが戦ったことのある者がそのままの力で現れるという、修行にもってこいの場所なのだ。しかもいくら暴れてもOK。

カーシは悪のブウに囚われていた時の記憶も残っており、そのために修行相手には事欠かない状況である。

超3悟空以外にも、超3ゴテンクス、アルティメット悟飯、果てはベジットとそうそうたるメンバーである。

サタンの相手の天津飯は、カーシが天下一武道会の唯一残っていた映像を見たことにより生み出すことができた相手である。

第二十二回時点の天津飯である。

というように皆各々が充実した日々を送っていた。

しかしその日々を脅かす者達がこの地球に迫っていることに気付く者はまだいなかった。



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新章突入!天下一大武道大会だ

ここからはまだ構想が出来きっていないので、今までより少し更新速度は緩やかになると思いますが、勘弁してください。


「カーシさん、パパどこにいるか知らない?今日は朝から稽古つけてくれるって言ってたのに、もう。」

サタンの溺愛するビーデルが頬を膨らませ可愛らしく怒りながらケーキを鷲掴みにして食べているカーシに尋ねていた。

この頃はよりサタンとカーシの蜜月ぶりに拍車がかかっていたため、カーシならば知っていると思い尋ねたのだった。

「サタンならいまギョーザマネーとかいうやつと話してるぞ。」

「ギョーザマネー?」

そう今サタンは新たに開催される天下一大武道大会の打ち合わせを行っていたのだ。

正確に言えば『ギョーサンマネー』という世界的な大富豪が、サタンの大ファンの息子の為にサタンを呼んで大会を開こうとしたのがことの始まりであった。

(忘れていたが、そういえばこの大会中にも大変なことが起こったんだよな、それも悟飯君達が何とかしてくれて、いつも通りわしが讃えられると。今回も良い機会だからカーシと話して、何とかしよう)

「どうしましたミスターサタン?」

「いやなんでもない。」

サタンは過去を回想し決心をつけた。セルゲームに続き天下一大武道大会でも皆をカーシと共に救うと。

ということで前回は金持ちの道楽かぐらいにしか考えていなかった天下一大武道大会を開くことに大いに賛同し、話を進めることになった。

――――

「こんちはー、悟空いるか?」

「ん、クリリンじゃねえか、久しぶりだな入れよ。」

時は経って約1週間、久々にクリリンがパオズ山の悟空の家に訪ねて来ていた。

「どうしたんだクリリン?」

「ああいい話があってよ、また天下一大武道大会とかいうのが開かれるんだってよ。」

「大?」

クリリンの口から出てきたのは聞いて久しい天下一武道大会であった。ただ中央に『大』という語が入っているが。それに悟空も気付き声に出したのだ。

「まあ主催者が違うってだけだよ。天下一武道大会と同じように考えてもいいと思うぜ。

久しぶりに開かれるっていうんでお前たち親子にも教えてやりたくてな。もちろん出るよな。」

「ああ、出てえのはやまやまなんだがな、チチが……」

悟空は言葉を濁し悩ましげな表情を浮かべる。

「ははは、そういうと思ったぜ。それにはいい案がある任せとけって。」

クリリンはそう自信ありげに胸を張ってチチの所に向かう。

「クリリンやめろ。殺されっぞ。」

悟空の制止の声も間に合わずクリリンは悟飯の部屋にいるチチに会いにいった。

悟空は中の声を聞くために耳を傾けた。

「ああクリリンじゃねえべか、久しぶりだなあ、どうしたんだ?」

「クリリンさんこんにちは。」

悟空と同じ対応のチチを見てクリリンは夫婦だな、いいなあと思いながらも、本題に入る。

「ダメだ。悟飯ちゃんの時間は無限にある訳じゃないんだ。諦めてくんろ。」

「あちゃ~。」部屋の中から怒鳴り声が聞こえたことにより、やはりなと悟空は諦めかけていた。

しかし、クリリンには必殺技があった。

「ちょっと耳を貸してください。実は……一億………温泉……」

「ほんとけ?」

「ええ」

なにか端々しか聞こえなかったが、チチが喜び出したのは分かった。

その時であった。

「悟空さ」

「うぎゃ」

「そんな壁にめり込んで何してるだ?」

急に力強く開け放たれるドアに、サイヤ人の反射神経を持ってしても避けられない悟空。凄い妻である。

「まあいい。悟空さ、悟飯ちゃんと天下一大武道大会にでるだ。」

「おおいいのか。」

「ああいいだ。悟飯ちゃんも勉強ばかりあきちまう。ただし、絶対に優勝と準優勝をするだ。分かったな。」

チチのお許しが出たことで「ヒャッホウありがとなチチ」と喜ぶ悟空。伝えに来てよかったなと思いながらも、少し後悔するクリリンであった。

「じゃあおらがベジータにも知らせてやっかな。」

「ベジータまで」

すっと立ち上がる悟空に驚きの声をあげるクリリン、まあ予想はしていたがという表情でもある。

「ああそうだぞ、じゃあ行ってくる。」

悟空は眉間に人指し指と中指を当て、瞬間移動の体勢に入る。「いた」という言葉を残し悟空は消えた。

「じゃあ僕はピッコロさんに行ってきますね。」

嬉しそうに飛んでいく悟飯を見て肩を落とし「しくじった。」とより後悔するクリリンであった。

 

――――

所変わってカプセルコーポレーション

「オッス」

「うわ孫君いきなりあんた現れるわね。」

いきなり現れる悟空に少し驚きながらも、慣れた感じでさらりと流すブルマ、なれたものである。

「カカロット、貴様なんのようだ。」

「いきなり喧嘩腰だなベジータ。いい話を持ってきてやったのに。」

いきなり突っかかるベジータこれもお決まりなので、今回は悟空が上手く流す。

「お久しぶりです、悟空さん」

ベジータの後ろから現れたのは大人トランクスであった。

「おお久しぶりだな。お前の気があったんで勘違いかと思ったんだがやはりいたんだな。どうしたんだ。」

「未来の人造人間を倒したのでその報告を。」

「やったな」

我が事のように喜ぶ悟空を見て伝えに来てよかったとより実感するトランクスであった。

「カカロット、いい話とはなんだ言え」

「せっかちだなおめえは。まあいいか」

そう言うと悟空はクリリンから教わったことをベジータ達に伝えた。

「ほお、カカロットお前ももちろん出るんだろうな。」

「あったりめえだろ。」

悟空の言葉に嬉しさを隠せないベジータ。

「嬉しそうね、ベジータ。」

「う、うるさい。」

茶々を入れるブルマ、仲よく夫婦をやっていると垣間見えるやりとりである。

「もういい、トランクスお前も出ろ。」

「え、俺も出ていいんですか。」

まさか出るとは思わなかった言葉がベジータから出たことに驚きを隠せないトランクス。その様子を笑顔で見ているブルマ、関係は良いようだ。

「当然だ。カカロットの息子に負けたら承知せんぞ。」

「はい。」

トランクスは本当に嬉しそうに返事をした。

「今から重力室に入る、お前も来いトランクス、鍛えあげてやる。」

「はい、父さん」

感激で今にも泣き出しそうなほど喜んでいるトランクスは「失礼します」と悟空に言いベジータに続いて出ていった。

――――

「ということなんです。」

天界についた悟飯もピッコロに話を伝えていた。

「ピッコロさんも出てくれますよね。」

「もちろんだ。お前の成長を見るためにもな。」

「やったあ。」

ピッコロが快諾したために大喜びする悟飯だった。

ということでZ戦士は皆出場することになった。

『俺達は?』

もちろん天津飯、ヤムチャも出ます。




劇場番とは大部変わりましたし、これからも変わりますがお許しください。


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天下一大武道大会に向けて、動き出す者達

「たたたたたあっ」

「遅いぞ悟飯。」

拳の連打を難なく避けた悟空は瞬時に悟飯の後ろに回り込む、

「そら」

「うわー」

そして流れるような体裁きで裏拳を悟飯の背に打ち込む、悟飯は避けることも叶わず、裏拳をまともに受け地上に落下した。

「いてててて。」

「でえ丈夫か悟飯。」

「はい、大丈夫です。」

空から降りてきた悟空は悟飯に声をかける。声をかけられた悟飯は恥ずかしそうに頭を掻きながら苦笑いを浮かべてばつが悪そうに答えた。

「おめえやっぱり体が相当鈍ってるぞ。」

「はい、自分でもそう思います。体が重く感じるんです。」

今天下一大武道大会目指して悟空と悟飯は組み手を行っていた。しかしながら、悟飯はセルゲーム以降、勉強、勉強、また勉強と勉強漬けであり、まったくといっていいほど体を動かしていなかった。そのつけが回ってきた状態である。

「まだ1週間あるぞ、少しずつ勘を取り返していくか。」

「はい。」

「じゃあそろそろ再開すっぞ。」

悟空と悟飯は空に舞い上がり再び戦い始める。

これから1週間パオズ山にはけたたましい戦闘音が鳴り響くのだった。

――――

パオズ山から遠く離れた西の都、カプセルコーポレーションでは…

「どうしたお前の力はこんなものか?」

「まだまだ、ハアッ」

重力室300Gの超重力のなかでありながらも、高速でぶつかり合うベジータとトランクス、その戦いは若干ベジータが押しているようだ。

「甘いぞ。たあっ」

「ぐはぁ。」

ベジータの情け容赦ない右ストレートがトランクスの腹をとらえていた。

「ふん、以前よりは強くはなっているがまだまだだな。」

「はあはあ(やはり父さんは強い)」

息を切らし話ができる状態ではないトランクスは再度自分の父の偉大さを身を持って感じていた。

ベジータとの修行は度を越した過酷さであり、誰が見ても地獄と形容するであろうものであった。

しかしトランクスにとってはそのような時間であっても、大変満たされ、幸せを噛み締めていた。これはトランクスがMだからというわけではない。

未来のトランクスは物心がつく頃にはベジータは亡くなっており、稽古をつけてもらったことなどなかった。

そのため、父と稽古をすることに大層な憧れがあった。それが今実現していることに、喜びを感じていたのだ。

「どうしたトランクス、もうギブアップか?」

「いえ、まだです。俺はサイヤ人の王子ベジータの息子ですから。」

トランクスは自信を持っていい放つ、言われたベジータも満更ではない表情を浮かべ、再び超重力下での戦闘が再開された。

どちらのサイヤ人の父親も戦闘に関しては容赦なかった。

――――

天界の一角では陽炎のように空間が揺らいでいた。

「す、すごいやピッコロさん。」

「ん、悟飯が伝えに来てからずっとこの状態。日に日に気強くなってく。」

ミスターポポが言っているように悟飯が天下一大武道大会の話をし、ピッコロも出場を決めてから、ピッコロは宙で座禅を組み、気を放出し続けていた。

それだけでなく、その放出される気が日を追うごとに強くなっていた。

これもピッコロも悟空や悟飯、ベジータにトランクスの出場する天下一大武道大会を待ち望んでいることが顕著に現れた結果である。

――――

またまたところかわってサタンシティーサタン邸

「で当日のことなんですが。」

「ん」

サタンとカーシが綿密に計画をたてていた。

「わしの四人の弟子を配置していた所に乱入したとてつもなく強い奴らがいまして、今回はそいつらをカーシさんに退治してほしいんですが。カーシさんは1人しかいないどうすればいいんだ。」

ここに来て計画は頓挫しそうになっていた。

しかし

「大丈夫だサタン、俺に策がある。任せとけ。」

カーシは自信ありげに胸をはり、拳で胸を叩いた。

「カーシさんがそこまで自信があるならお任せします。

ついでといっちゃ何ですけど挑戦者達も退けてくれたら嬉しいんですが。」

「いいぞ、ただ悟空はかなりきつそうだけどな」

サタンの無茶な要求にもカーシは笑って了解していた。

「パパ」

サタンとカーシが密談している場にビーデルが入ってきた。

「どうしたんだビーデル?」

「ねえパパ、私も天下一大武道大会に出ちゃだめ。」

まさかのビーデルの発言に絶句するサタン、そして瞬時に却下した。

普段であればどんなに無茶な要求にもできるだけ答えていたサタンだが、これだけは認めることはできなかった。

「え、どうして?」

まさか拒否されるとは思っていなかったビーデルは目を潤ませながら、サタンに詰め寄る。

(ああビーデル可愛すぎるしかし、この戦いは危険すぎる認めるわけには)

サタンが思案にくれていると、隣からビーデルに助け舟を出す者が。

「いいんじゃないかサタン、ビーデルには俺がついてるぞ。」

「え、でもカーシさんにはあの作戦が。」

「全て俺に任せておけ。」

かなり自信に溢れたカーシに少し不安を感じながらも認めることにしたサタンであった。

「ありがとう。カーシさん。」

「うん、だが俺から絶対に離れるなよ。」

「うん。」

ていうわけでビーデルも天下一大武道大会に参加することになった。

 

おまけ

「ヤムチャ様修行はしなくていいんですか。」

「悟空達が出ないんだ、修行しなくても俺が楽に優勝するからいいんだよ。」

悟空達が出ることに気づいていないヤムチャであった。



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天下一大武道大会開幕

今回の戦いの組み合わせは劇場番とは全くの別物になります。


「やっとこの日がきたな。おらもう朝からワクワクしっぱなしだぞ。」

「悟空さもうちょっと落ち着くだ。」

なにやらソワソワと挙動不審の行動を会場の門の前でする悟空をたしなめるチチ。

ワクワクする悟空に朝早くから起こされ瞬間移動で会場にやってきた悟空一家。ただ開門5時間前ということで人もまばらにしかいない状態である。

「起こされた俺の身にもなってくれよ。」

クリリンの気を経由して会場に行くことにしたために二次被害的に朝早く起こされ引きづられるように会場に連れてこられたのである。

「チッもう来てやがるとはな、俺が1番のりだと思ったんだがな。」

「悟空さん、悟飯さん、チチさん、クリリンさん。おはようございます。」

ベジータとともにやってきたトランクスが律儀に場にいる全ての者に挨拶をしている。悪態をつくベジータとトランクスは全く親子とは思えない状態である。

「もう待ってよベジータ。あ孫君にみんなおはよう。」

ベジータが現れてから数分経ちエアカーで現れるブルマ。

「もう聞いてよ孫君、ベジータったら昨日からソワソワしっぱなしで今日なんて一睡もしてないのよ。」

ブルマは開口一番ベジータの悪口を同意してほしくて悟空に伝えるブルマ。

「フン、サイヤ人なら皆そうなる。ならない方がおかしいんだ。」

ベジータはさも当然のようにいい放つ。

((僕(俺)はそうではなかったけど))

半サイヤ人のトランクスと悟飯はそんなことなかったと心の中で思うのだった。

そんなこんなでもうすでに半数以上のZ戦士が会場5時間前という時間であるのに集まってしまったのだ。

――――

所変わって壊れることにはならなかった界王星

「北の界王起きろ大変なことになったぞ。」

「なんだ五月蝿いな今何時だと思ってるんだ。」

朝早くに北の界王の元にやってきた南の界王。その焦りようは普通ではないために北の界王も嫌々目を覚ました。

「早く言え南の界王。」

「気をしっかり持って聞けよ。なんとあのヘラー一族の封印が解けたんだ。」

南の界王の言葉に北の界王は絶句した。

「ウホッウホッ。」

バブルス君は平常運転であるが。

「なんであの封印が解けたんだ。まだまだ解ける時ではないだろう。」

気を取り直した北の界王は南の界王の肩を揺さぶりながら尋ねる。

北の界王も南の界王の焦りが伝播したように顔を青くしながら焦っている。

「落ち着け、なんでもな、約二ヶ月ほど前に突如とてつもない気弾が我々が封印した星の近くを通り過ぎた。その時に結界が破壊されたんだ。

そしてその気の発信源はなんと、お前の管轄のである地球だったんだ。そういうことで責任とれよ北の界王。」

呆然とし、身動き一つしない北の界王を尻目に南の界王は去っていった。

そう今回の騒動はセルを消し去る時にカーシが放った気弾の影響であった。

サタンはどうあってもボージャック一味に合う運命にあったのだ。

――――

ボージャック一味はすでに地球にたどり着いていた。

そんなことはつゆとも知らず天下一大武道大会は始まるのであった。

会場が開いた時にはピッコロや天津飯、そして観戦にきた亀仙人、チャオズ、ウーロン悟空達一向にも加わっていた。

ヤムチャはまだ加わっていなかった。

「ついに俺の時代がやってきたな。一億も温泉巡りも俺のものだ。」

悟空達がいることには気づいていないがヤムチャもしっかりとエントリーしていた。

――――

「カーシさん、お願いします。ビーデルのことも」

「ああ分かったぞ。」

サタンの控え室ではサタン、カーシ、ビーデルが集まっていた。

「じゃあいくぞ。」

カーシは何かの構えをとる、そして

「四身の拳」

カーシが呟くとカーシが四人に増殖していた。

「へっ?」

「幻覚?」

サタンとビーデルの目の前で増えたカーシ、カーシが行ったのは天津飯が天下一武道会でおこなった四身の拳であり、映像を見て得た技であった。

「起きろサタン、これでもう大丈夫だぞ。あとは」

カーシは急に腹の肉を一摘まみ手に取る。

するとその肉はプルプルと動きだし10センチメートルほどのカーシとなる。

「ビーデルこいつを肌身離さず持っていろ。小さいが色々助けてくれるからな。」

カーシは小さなカーシを笑顔でビーデルに手渡す。

「わあ、可愛い。うんしっかり持ってるね。」

カーシは満足げにビーデルの行動を見てから、「行ってくる」と一言(四人いるので四言といっても言いが)

いうと所定のステージに向かっていった。

 

悟空一向、サタン一向共に準備が整った。

ついに天下一大武道大会が開催される。

第一ステージ、約二百人の腕自慢の猛者達を八つの舞台に分けてのバトルロイヤルとなった。

第一ステージ 悟空

 

第二ステージ

ベジータ

 

第三ステージ

ピッコロ

 

第四ステージ

悟飯

 

第5ステージ

トランクス

 

第6ステージ

クリリン

 

第7ステージ

天津飯

 

第8ステージ

ヤムチャ

ビーデル+小さなカーシ

 

上手く分かれたとZ戦士は喜んでいたが、全てはカーシの能力で振り分けられたものであった。

おまけ

「どういうことだよ。なんで悟空達がいるんだ。」

頭を抱えてヤムチャはしばし悶絶していたが決心した。

「悟空達がいないのは幸先いいぞ。もう素人にも手加減なんかしないぞ。俺の幸せのためにも。」

次回

ヤムチャ対ビーデル



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激闘!? ヤムチャVSビーデル

8つのステージに別れて行われる第一ステージ、どのステージもZ戦士が勝つことは当然であるが、ステージごとにZ戦士の戦い方の違いがよく分かるものであった。

第一ステージの悟空は戦闘能力に天と地以上に差があるのでウォーミングアップとして軽くいなしながら淡々と対戦相手を場外負けにさせている。

「おらこんな戦い初めてだけど、結構おもしれえな。」

どんな戦いであろうとも、戦い自体が好きな悟空であった。

 

第二ステージのベジータはというと、

「フン、くだらん、早くカカロットとやらせろ。ハアッ!」

詰まらない戦いだと憤りながら、気を解放し全ての対戦相手を場外に弾き出していた。

地球暮らしで丸くなっているのがわかる戦いである。

以前の地球来襲時であれば全ての対戦相手は粉微塵になっていただろう。

 

 

第三ステージはピッコロ。

「フン。」

ベジータと同様にくだらなそうな表情で宙に浮いて成り行きを見守っている。

またピッコロの気迫や威圧感が別格な為に好き好んでピッコロに襲い掛かる者もいなかったので、対戦相手同士での潰しあいを見ているという状況だ。

そして最後に残った者を潰す、まさに利にかなった戦いである。

 

 

第四ステージ、第五ステージのサイヤ人の息子悟飯とトランクスは似たような戦いである。

力を隠しながら、来るものだけを倒し自ら攻めることはしないといった感じである。

戦い方が似ているのは、大人トランクスの武術の師匠が悟飯であったためでもある。

 

因に、トランクスの師匠が悟飯、悟飯の師匠がピッコロ、並べるとピッコロ→悟飯→トランクスという感じであり、トランクスはピッコロの孫弟子といってもよい関係である。

 

 

第六ステージのクリリンは、皆と同じZ戦士であるが他のステージとは違い少し苦戦していた。

クリリンの多人数相手をする戦いはサイバイマン戦以来であるからだ。

といいながらも、クリリンも戦闘能力だけならフリーザ第一段階程の力があるので当然勝ち上がるのだが。

 

 

第七ステージ、天津飯は今までチャオズとのみの修行で他の者との手合わせはなかったために、体をならすことを第一に戦っている。来る本番の第二回戦の為に。先を見据えた戦いである。

 

第八ステージ、激闘が繰り広げられている。

「はい、はい、おー。」

「グハァ」

「どわぁ」

「ヘギャア」

戦闘力6位の相手に戦闘力6桁越えが手加減なしに、猛威をふるう。

全く大人気ない戦いである。

しかし、本人はその戦いを楽しんでいた。

(俺が無双している、なんて楽しいんだ、今の俺なら悟空達にも勝てそうだぜ。)

大いなる勘違いをしていた。

同ステージではビーデルも頑張っていた。

「ハアッ、ハアッ。」

常にサタン道場で大人を相手にしているために、戦いなれてはいるが、多人数相手は初めてなので少しぎこちなさは出ている。

しかしながらまだ小さなカーシの手助けを必要としない程の戦いをしているのは見事である。

「はあ、はあ、まだこんなにいるの。」

まだ子供といってもいいビーデルなので体力的にはきつくなっていた。

しかし、そんなビーデルであっても次々と大人が襲い掛かる。

普通の少女であればそのようなことはないが、ビーデルがミスターサタンの娘だということが知れ渡っており、少女であっても倒せば名が売れると思ってのことだろう。

 

「ビーデルちゃん頑張ってー。」

「こらー。ビーデルちゃんばっかり狙うなんてどこまで最悪なのよ。」

「くたばれ男ども」

「ビーデル、ビーデル。」

観客は全て健気なビーデルの応援に周り、相手は全て嫌悪すべき敵である。

「んなの関係ない。」

1人の巨漢がブーイングをものともせずにビーデルに襲い掛かる。

すでに二人を相手にしているビーデルには反応することさえもできない。

(や、やられる)

ビーデルが目をつぶる。

しかし痛みがビーデルを襲うことはなかった。

「貴様ら、こんな少女に手をあげるなんて、同じ男と恥ずかしくなるな。俺にぶっ飛ばされたくなかったら、消えろ。」

ビーデルのピンチを救ったのはヤムチャであった。

今までに見たことがないほどの勇姿であった。

これが後に災いするのであるが。

(俺今最高に輝いているぜ。ここでこの少女を救えば客の好感度も上がるし、美しい女性客を敵にはしたくないしな)

助けた理由は最悪であるが観客はヤムチャコールである。

「あ、あの、ありがとうございます。」

少し顔を赤らめながらビーデルがお礼をヤムチャに述べる。

「俺は女性の味方だ気にするな。(おいおい俺はこんな少女をも惚れさせちまった。俺の生まれ持ったかっこよさは罪作りだな)」

ヤムチャがキザに決める。

ビーデルの頬が赤くなっているのは今まで戦っていたためであり、決してヤムチャに惚れたわけではない。

 

「じゃあな俺は行くぜ。お嬢ちゃんがまだ残っていたらお手柔らかに頼むぜ。」

ヤムチャは片手を上げ挨拶したあと、再び他の敵を駆逐し始めた。

「私も頑張らなくちゃ。」

少しの休憩で体が休まったことで再びビーデルも戦いに戻る。そして10分後ステージに残っていたのはヤムチャとビーデルである。

「お、お嬢ちゃんも残ったか。」

「さっきは言いませんでしたけど、私はお嬢ちゃんじゃありません。ビーデルです。先程はありがとうございました。でも今回は手加減しないでくださいね。」

「ああ、いいぜ。どんとお兄ちゃんにかかってきな。」

「はい。」

もうすでにお兄ちゃんよりもおじさんの方に年齢は近いが。

ビーデルは先手必勝とヤムチャに向かって拳をつきだした。

「ハアッハアッ、ハアッ」

幾度もビーデルは拳をつきだすが当たることはない。紙一重でかわしている。このかわしかたが後々に問題となる。

「(おっこの子なかなかやるな。他の相手よりはかなり強いな。まあここは紳士的に…)

グホァ」

ヤムチャがビーデルの倒し方を考えている時に突如として激痛がヤムチャを襲った。

ヤムチャが腹を見ると、ビーデルの拳は紙一重で避けているが、ビーデルの拳に乗った小さなカーシがヤムチャの横っ腹に拳を叩きこんでいた。

ヤムチャは(またコイツか。助けなければよかったぜ。)と後悔しながら意識を失った。

「全てのステージで戦いが終わりました。激闘を勝ち抜いたのはこの八人だ。第一ステージ、悟空選手。

第二ステージ、ベジータ選手。

第三ステージ、ピッコロ選手。

第四ステージ、悟飯選手。

 

第五ステージ、トランクス選手。

 

第六ステージ、クリリン選手。

第七ステージ、天津飯選手。

 

第八ステージ、ビーデル選手。

以上の選手が勝ち上がりました。

次は第二回戦になります。

この八人が一対一での戦いになります。

では第二回戦の対戦相手を発表します。」

会場は対戦相手を聞くために静まり返る。

(カカロット、カカロット、カカロット)

(天津飯かこのビーデルって娘ぐらいしか勝てそうにないな)

ベジータやクリリンは祈るように聞き耳をたてる。

そしてついに対戦相手がアナウンサーによって告げられる。

「第一試合

ピッコロ選手VS悟飯選手」

「えっ」

「…悟飯か」

悟飯とピッコロが驚きの表情を浮かべる。悟飯には困惑の色も混じっている。だがそんなことは関係なしに発表が続く。

「第二試合

天津飯選手VSビーデル選手」

天津飯もビーデルも表情を変えない。

「第三試合

悟空選手VSトランクス選手」

「な゛、なんだと!!」

「おおっトランクスかよろしくな。」

「悟空さん、は、はい…お願いします。」

 

ベジータは落胆しながらも何かを考え始め、悟空はワクワクした表情になる。

トランクスも戸惑っているが、意を決したようだ。

この試合の発表は別の所にも火種を産んだ。

「トランクスは残念だな。おらの悟空さと戦うなんて。」

チチは自信満々にいい放つ。

「な、なによ、孫君だって強くなったトランクスなら危ないわよ。」

ブルマが言い返す。

「むっ」

「フン。」

『ひ、ひえぇ』

火花を散らすチチとブルマ。近くのウーロンと亀仙人は怯えている。

 

「第四試合

ベジータ選手VSクリリン選手」

「終わった…」

クリリンの悲痛な呟きをこぼした。

ベジータは第三試合のことで何か考えているのか、反応はなかった。

 

次回

師弟対決 ピッコロVS悟飯




悟飯の相手は最初はサイヤ人の息子同士のトランクスとも考えていましたが、私の独断でピッコロにさせてもらいました。


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ピッコロVS悟飯 師弟対決〈前編〉

第二回戦が始まるまで休憩時間が取られた。

「おら腹減っちまったぞ、みんな飯食いにいかねえか。」

怪獣の鳴き声のような大きな音が悟空から聞こえ、それと共に悟空がお決まりのことを言い出す。

「いつも思うが、よく戦いの前に食べれるな。ほんとお前の腹には感心するぜ。」

クリリンは呆れながら悟空に話す。

「さっさと行くぞ。」

「父さん待ってください。」

食堂に向かっていくベジータを追ってトランクスもついていく。

「おベジータは行っちまったぞ。クリリン、悟飯、ピッコロ、天津飯も行こうぜ。」

「あ、僕はいいです。」

「俺は水だけでいい。」

「孫先に行っていてくれ。

チャオズや武天老師様やヤムチャも連れてくる。」

それぞれがそう答え、各々食堂に向かっていった。

「なあ悟空、やっぱり悟飯とピッコロピリピリしてるな。なんたって師弟対決だもんな。戦いづらいだろうな。」

クリリンが少し哀れみの隠った感じで悟空に話す。

しかし悟空は

「でえじょうぶだ。悟飯もピッコロも戦いになればそんなことも気にならなくなる。

それに、悟飯は戦いづらそうだが、ピッコロは嬉しそうだぞ。」

「ええっ、そうか。かなり険しい顔してるぞ。」

「おらには分かるメチャクチャワクワクしてるぞ。」

ピッコロの心中はピッコロにしか分かることはない。だが長い付き合いの悟空には何かしら感じるものがあるらしい。

そして、第二回戦の前に食堂でサイヤ人達が、大激闘を繰り広げるのだった。そしてあっという間に第一回戦が始まる時間が訪れた。

既に舞台で悟飯とピッコロが向き合っていた。

共に険しい表情をしているようにも思われる。

「第一回戦、ピッコロ選手VS悟飯選手、始めてください。」

アナウンサーの声で戦いの火蓋が切って落とされた。はずだった。

「悟飯よ。」

「はい、ピッコロさん。」

戦いの前に始まる会話、しかしながら会場の誰にも聞かれることはない。

騒がしいからではない、念話であるからだ。

会場の者には黙って見つめあっているようにしか見えない。

「俺は成長したお前の力を身を持って知る機会を与えられたことを感謝している。

お前は戦いはあまり好まないから嫌かも知れないが、俺は全力のお前と戦いたい。弟子が師匠を越える所を見せてくれ。」

「はい。僕はピッコロさんが対戦相手だと決まった時はどうしようかと、ずっと悩んでいました。ですがピッコロさんの話を聞いて僕も自分の成長した姿をピッコロさんに見てほしい。

だから全力でいきます。」

念話が終わるとピッコロと悟飯は共に清々しい笑顔になる。

ピッコロはターバンとマントを脱ぎ投げ捨てる。

地面にめり込む様子を見て観客達が騒然となる。

「はああああっ」

悟飯が気合いと共に力をいれる。

悟飯身体から黄金のオーラが溢れだし、髪が金髪に、そして瞳は碧に染まる。

それでも悟飯は気を上げることをやめない。

次第に会場が地震でもあるかのように揺れ始める。

観客が慌て始めるが、悟飯は気にする様子もない。

「行きますピッコロさん。」

「こい、悟飯。」

その会話が終るときには共に姿が消えていた。――――

会場のVIPルームではビーデルがその戦いを真剣に見つめていた。

自分と同年代の少年がどのような戦いをするのか興味津々だったからだ。

そして少年の変化によってより引き付けられることになる。

悟飯が超化し、金髪になった時である。

「あの子、どっかで見たような。思い出せない。」

最初に悟飯に対して思ったのはこれであった。

後に高校で合う前にこの大会でビーデルと悟飯が仲良くなるのはまたさらに後の話になる。

――――

「わたわたわたわたーっ」

「だだだだだあっ」

ピッコロと悟飯が点滅を繰り返しながら攻防している。

ピッコロが拳をつき出せば、悟飯が腕でガードし、次の瞬間には、悟飯が膝蹴りを行いピッコロがそれを腕でガードする。まさに攻撃と防御が目まぐるしく変わる戦いである。

「うわっ、すげえ戦いだな。」

「まだまだ二人ともあんなもんじゃねえぞ。」

クリリンが二人の戦いに驚いているが、悟空はさも当然といった様子で見ていてまだまだ二人とも本気ではないという。

つくづく力の差を見せつけられることになったクリリンであった。

しばらくは、轟音と衝撃波が会場に轟きながらも、互角の戦いをしていた二人であるが、少しずつ戦況が変わってくる。

「くっ」

「わたーっ、わたたたーっ」

ピッコロの連打が悟飯に掠り始める。

悟飯はピッコロの一方的な攻撃を掻い潜り攻勢に出る。

しかしピッコロには既に読まれていた。

悟飯の拳に合わせピッコロがカウンターを放つ。

当然リードに大きな差があるためにピッコロの拳が悟飯の顔面に深く捉えていた。

その衝撃はとてつもないもので、悟飯は耐らされず落下し、床にめり込み砂煙が巻き上がる。

「はあはあ(ピッコロさん強い。)」

悟飯はピッコロの強さに驚く。

ピッコロがゆっくりと舞台に降りてくる。

その表情は冷めきったものであった。

戦いの前には嬉々としたものがあったが、今は失せて対極のものが表情に表れていた。

「かなり鈍ったな悟飯。攻撃にきれが全くないぞ。はっきり言ってガッカリだ。

セルゲームの時のお前の方が断然強かったぞ。」

悟飯は悟空と1週間に渡って修行を続けていたが。感覚を取り返すことはできなかった。

気の大きさはさほど変わりはないが、実践勘というものをほとんど失っていたのだ。

「悟空のことだ、かなり甘い修行だったのだろう。

すぐに俺が勝ってしまっても面白くない。久々に稽古をつけてやろう。」

「えっ」

ピッコロは楽しそうに歪んだ笑みを浮かべる。

悟飯は本能的に、今までのピッコロとの修行を思いだし、背筋に冷たいものを感じ身構えるが遅かった。

ピッコロの扱きという名の地獄が悟飯を襲うのだった。

 

 

 

 




劇場番ではいつも悟飯に甘々のピッコロさんですが、今回と次回は違うのかなということになります。


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ピッコロVS悟飯 〈後編〉

「わたたた、わたーっ」

「うわーっ!」

ピッコロの熾烈な実戦稽古が始まった。

ただし、始めてこの師弟の稽古を見たものにしたら、一方的な蹂躙、もしくは強き者が弱き者を弄んでいるようにも見えるだろう。

「あちゃー、ピッコロやりすぎだろ。ガーリックジュニアの時のことを思い出すな。」

「そうか、おらはガーリックジュニアの時のことは知らねえが、やり過ぎだとは思わねえぞ。」

クリリンは相変わらずのスパルタ指導のピッコロに少々苦言を呈すかのように悟空に話すが、悟空にしたらそのようには見えていないらしい。

サイヤ人と地球人の戦闘への考え方の違いが如実に現れた場面である。

「どうした悟飯、お前の力はこんな物なのか。もうやめるか。」

「まだお願いします。」

ピッコロは悟飯の「まだいける」という宣言を聞くと口元を緩め、

「少しあげていくぞ。」

と声高に声をあげ悟飯に再度向かっていった。

「わた、わたーっ」

「くっ、くっ」再び始まる戦いでも、ピッコロが攻撃側、悟飯が防御側の構図は変わらなかった。

そのため観客達も目を背け出す者も出始めた。

Z戦士にすれば悟飯も立派な戦士であるが、初めて見る者にしたら、まだ年端もいかない少年だからである。

「ねえ、すこし酷すぎない。あの緑の人。」

「大人げないな。あんな小さな少年に大の大人がむきになって」

等の意見が大半である。

そしてここにも、

「ピッコロのやつ、おらの悟飯ちゃんになんの恨みがあるんだ。

もうやめてけろ。

悟空さもなぜ止めねえんだ。」

チチは悲痛の声をあげていた。

チチも悟飯とピッコロの修行を見たことがないためである。

別の所では。

「なんなのこの戦い。」

ビーデルがピッコロと悟飯の戦いのレベルの高さに唖然としていた。

とZ戦士以外のこの戦いの見方はこんな感じである。

だがこの戦いがすこしずつ変わりだしていた。

「わたーっ」

「見えた。」

ピッコロの横凪ぎの手刀を最小限の動きでかわし、

「いきます。魔閃光」

「ぬわっ」

隙ができたピッコロに悟飯渾身の魔閃光が炸裂した。

「はあはあ、やったのかな、でもピッコロさんはこんな攻撃じゃあ。」

巻き上がる煙を見ながら悟飯は呟く。

「ああ、これぐらいではな。」

煙が晴れてくると、少し傷付いたピッコロが現れるが、その表情には喜びが込められていた。

「段々調子を取り戻してきたんじゃないのか。」

今までとはうって変わって優しげな声で語りかけるピッコロ。

(そういえば、段々体の重さも取れてきたし、以前のように戦いの勘が戻ってきている。)

悟飯もそう考え出した。

「(やっぱりピッコロさんは僕のことを考えて)

ありがとうございます、ピッコロさん。

鈍っている僕を鍛え直してくれて。」

「フン、弱いお前に腹がたち、少しいたぶってやっただけだ。」

悟飯の感謝の言葉に、ピッコロは毅然とした態度で痛烈に返すが、悟飯には照れ隠しであり、素直になれないピッコロなりの返し方であることは分かっていた。

「本当に僕はピッコロさんの弟子でよかったです。

ピッコロさんのことは大好きです。」

「やめろ戦いの最中だぞ。」

悟飯の素直な心中の吐露にピッコロは焦りながらも返すが、動揺が目に見えるものとなっていた。

「次は僕からいきますね。はああああっ」

(な、なぜだ、悟飯が二人、いや三人に見えるぞ、残像拳か)

迫り来る悟飯、動揺し、汗?で視界がボヤけ、戦闘体制がととのっていないピッコロ。

勝負はもう決していた。

「はあっ」

「ぐはっ(お前の拳利いたぜ。)」

ピッコロは海上に落ち、悟飯の勝利となった。

「勝者悟飯選手。」

「ピッコロさん。」

アナウンサーの悟飯の勝ち名乗りと、どっと沸く観客達をも気にせず悟飯は一直線にピッコロの元に向かおうとしたが、

(よくやった悟飯よ。次の試合も頑張れよ。俺に構わず先にいけ。)

というピッコロの念話に押し止められて、寂しさと嬉しさがない交ぜになった状態で、悟飯は皆の元に帰っていった。

「悟飯やったな。」

「ああ、さすがは孫の息子だ。」

クリリン、天津飯は帰ってきた悟飯を讃えるが、悟飯は

「いや、あれはピッコロさんが…。」

と言葉を濁すだけだった。

「よくやったぞ悟飯。ピッコロも喜んでると思うぞ。」

悟空が悟飯の頭に手をおきながら、そう悟飯にいうと少しばかり悟飯は気が楽になったようである。

天下一大武道大会は続いていく。

「第二回戦。天津飯選手とビーデル選手は武舞台にお上がりください。」

アナウンサーの声がかかり、ビーデルと天津飯が武舞台に上がる。しかし天津飯の表情は固かった。

アナウンサーはビーデルの説明をするたびに歓声が上がるがそれさえも天津飯には聞こえていないようである。

「天さん…」

心配そうにチャオズも成り行きを見守るしかなかった。

「では第二回戦始めてください。」

「お願いします。」

アナウンサーの声が上がると、ビーデルは天津飯に礼をし、構えをとる、しかし天津飯は微動だにしない。

そしてしばらくたつと、急に天津飯は口を開いた。

「すまんが、棄権する。」

「えっ…。どうして?」

天津飯の棄権という声にアナウンサー、観客、ビーデルそしてZ戦士も驚きを隠せないでいる。

天津飯はビーデルの問いに答える。

「以前の俺ならば相手が少女であろうが子供であろうが、倒すことも、殺すことも躊躇しなかただろう。

しかし今は違う。

確かに俺は高みを目指しているが、いたいけな少女を倒してまで高みを目指そうとは思わん。」

それだけをいい終えると天津飯は舞台を降りて行った。

少し間があいた後にアナウンサーがビーデルを勝者と名乗りをあげた。

第一回戦と第二回戦が終了した。




色々な意見があると思いますが、私の中では殺し屋を諦めた天津飯は紳士であると思っているのでこのようにさせてもらいました。


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激戦 悟空VSトランクス

「よっよっ。」

山吹色の胴着を着た悟空が試合前のお決まりの柔軟体操を入念に行っている。

「ああー。ワクワクすっな。」

悟空は満面の笑みを浮かべ来るべきトランクスの試合を心待ちにしている。

それに比べて悟空の対戦相手のトランクスは…緊張していた。

「まさか、あの悟空さんと戦うことになろうとは。」

トランクスの体内にも流れている半分のサイヤ人の血が騒ぐこともあるのだが、それ以上にトランクスの背後からかかる、彼の父親の猛烈な期待と羨望の眼差しが大いなるプレッシャーとなってトランクスにかかっていた。

(父さんの期待を裏切らないためにも頑張らなくては。)

ただしそのプレッシャーを力に変えることも幾多の戦いを潜り抜けてきて、成長した彼には可能であった。

そしてついに激闘の幕が切って落とされる。

 

「第三回戦、悟空選手とトランクス選手は武舞台にお上がりください。」

アナウンサーが今回の主役である二人に告げる。

「おっし、行くぞ、トランクス。」

「は、はい。では行ってきます。父さん。」

「ふん、早く行け。」

 

トランクスは素っ気ないベジータの態度に少しガッカリしながら悟空の後に続いていった。

 

「本当に素直じゃないな、ベジータは。トランクスがメチャクチャ心配なのによ。」

「う、うるさいぞ、ぶっ殺されたいのか。」

 

ヤムチャが笑いながら行ったことに顔を赤くしながらベジータは反発したが、その顔の紅潮が怒りからではなく、照れからくるものだと言うのはこの場にいる全てのZ戦士が分かっていた。

 

(そう言えば悟空さんと手合わせするのは未来から過去に始めて来た時にしたあれ以来かな。)

トランクスは未来から来た時のことを思い返していた。

あの時のトランクスでは絶対に考えられるはずもない、平和な世の中になってからの悟空との戦い。

トランクスは感傷に浸っていると。

「どうしたんだトランクス?」

トランクスに違和感を感じた悟空が心配して話しかける。

「いえ大丈夫です。」

「そうかそれならよかったぞ。

トランクス全力でかかってこいよ。

おらも全力でいくからな。」

 

共に全力を出して戦うことを約束しあう二人。果たして会場は、いや地球は大丈夫なのか。

 

「第三回戦、始めてください。」

 

「行くぞ、ハアアアアア。」

悟空は肩幅に足を広げて気を高める。

そして迸る黄金のオーラ。

会場が鳴動し始める。

しかし、

「まだだ、ハアアアアアッ。」

さらに高まる悟空の気、黄金のオーラが膨れ上がるだけではなく、ついには黄金のオーラを取り巻くようにスパークも走り始める。

「さあ、これが俺の全力だ。

お前も力を解き放て。」

先程ののんびりして、全てを温かく照らすような感じとは全くの逆の、威圧感を溢れさせる悟空。

「はい。俺も全力を出します。ハアアアアアッ。」

トランクスもまた黄金のオーラを迸らせる。

悟空とは違いトランクスは黄金のオーラが増大するのと同時に体が筋肉で肥大化する。

「これが今の俺の全力です。行きます悟空さん。」

「こい、トランクスッ」

悟空とトランクスがぶつかり会うたびに巻き起こる衝撃波で会場内が破損する。

「トランクス、ここでは被害が出る、もっと上空へ行くぞ。」

「はい。」

二人は上空へ舞い上がる。

「おいおい、二人とも見えなくなっちまったぜ。

気で探りながら見守るしかないのか。

おいベジータどこいくんだよ。」

クリリンが舞い上がり二人を見ながらどうしようかと皆に相談しようとするとベジータもかなりの速度で二人を追うように上空へ舞い上がった。

二人が見えなくなった、いや、いなくなった会場は混乱していた。

だがそんな混乱などものともせずに上空では苛烈な戦いが再開されていた。

共に相手の力をその身をもって確かめるべく避けることはしない。

「ぐっ、だあああ。」

「がはっ、まだまだあああ」

互いの拳が互いの体に打ち込まれ続ける。

もうすでに何十、いや何百発と拳を打ち込み、打ち込まれた。

「ふっ、さすがだなトランクス、以前とはまるで別人だ。」

「父さんに鍛えてもらいましたから。」

口に付いた血を拭いながら笑顔で話す悟空。

それを受け素直にベジータのお陰だと笑顔で返すトランクス。

(トランクス……。カカロットを俺の代わりに…)

少し離れた場所ではその戦いをまるで自分が戦っているかのように食い入るように見ている。

「トランクスお前もそろそろ体が暖まってきたんじゃないか。」

「はい。だんだん熱くなってきました。俺もやっぱりサイヤ人みたいです。」

あの戦いはまだ序の口だったらしい。二人とも共に口許にはうっすらと血が滲んでいるが、息は乱れていない。

「おもしれえ戦いはもっとしていたいが、後が控えているからな。これで終わりにする。お前も出しきれ。」「はい。」

 

悟空は両手を合わせ、腰元まで引き付け構えをとる。

「かーめーはーめー」

そう悟空といえばあの技といえるほどの技。それで戦いを決めるつもりらしい。

トランクスも両手を前につきだし合わせる。

「ファイナル」

(あ、あの技は、俺の…)

 

「波ーーーーっ」

「フラッシュッ」

 

巨大な気と気がぶつかりあう。

少し悟空の方押している。

気の総量の違いからくるものである。

 

「どうしたこんなもんか。波ー」

「くっ(強い、さすが悟空さんだ)」

トランクスの心に諦めが生まれたからか、一気にトランクスのファイナルフラッシュが押され始める。

「トランクスッ。俺の技で負けていいと思っているのか――。カカロットを殺すつもりで力を出しきれ。」

 

ついに我慢できずにベジータがトランクスに檄をとばす。

「父さん…。そうだ、俺は誇り高き父さんの息子だ。負けるわけにはいかないんだーーーー」

ベジータの檄を受け、トランクスが盛り返す。

「へっ、ベジータ来てやがったか。戦いを盛り上げてくれるぜ。」

悟空はトランクスが盛り返したのを喜んでいた。

「波ーーーーっ」

「はあああああ」

強烈な閃光を辺りに撒き散らし空間に穴が空くような、宇宙が誕生するもとになったような爆発が起こる。

そして雲のような煙が巻き起こる。数刻たち煙から逃れるかのように二つの影が地上に向けて落下していった。



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イケメン戦士花畑に散る

「おーっと、空高く舞い上がっていた悟空選手とトランクス選手が共に落ちてきます。」

双眼鏡を片手に空の戦況を見守っていたアナウンサーがマイク片手に実況を再開する。

しばらくすると落ちてくる悟空とトランクスが目視できる位置にまで落下してきていた。

「悟空さ!!」

「トランクス!!」

 

落ちてきた二人を見て青ざめて叫ぶチチとブルマ、しかしその叫びも届いていないのか二人は微動だにしない。

舞台に落下する寸前であった、宙で体を反転させ、かなりの着地の際に大きな音をたてながらも不時着することに成功する悟空。

舞台はその着地の凄さを物語るように足を着いた広範囲がヒビが入ったり、砕けていたりする。

「ふぃ~、危なかったなあ。

トランクス相当強くなってんなあ。」

「ご、悟空さ、安心しただ。」

すでに超化も解けいつも通りの悟空。それを見て安堵するチチであった。

トランクスはというと、落ちてきた体勢そのままで落下し、大きなクレーターを作り横たえていた。

「トランクスー!!」

その姿を見て気が気でないブルマ。抱いている赤ん坊のトランクスも泣き出している状態だ。

「勝者悟空選手。すぐにタンカーをお願いします。」

悟空を勝者と名乗った後に焦って係りの者にタンカーを持ってくるよう指示するアナウンサー。それほどまでトランクスは酷い状態であった。

「でえじょうぶかトランクス。」

「近寄るなカカロット!! 」

 

トランクスに近づく悟空を上空から制止させる怒声がなり響いた。

上空から舞い降りるベジータ。

「勝者が敗者に送る言葉などない。」

一言だけ悟空に告げると、トランクスを抱えあげた。

「いやちげえんだよ―

「黙れカカロット。」

何かを告げようとする悟空だが全く聞き入れようとしないベジータ。

「救護室はどこだ。

クソッタレ、こんな時に仙豆があれば。」

「ここにあるぞ。」

ベジータの口からでるドラゴンボール世界の万能薬。

そして差し出される仙豆。

「カカロット!お前持っていたのかなぜはやくださん。」

「おらがトランクスにやろうとしたのを止めたんはおめえだぞベジータ。」

言い合いを始める悟空とベジータ。

その様子を見ていた、クリリンが呆れながら言い合いを続ける二人はを尻目に悟空の持っていた仙豆をトランクスに与える。

キュウリかなんかを丸かじりするような音が辺りに響く、すると先ほどまで酷い怪我をしていたトランクスの傷がみるみるうちに癒された。

「あれ、俺は…、と、父さん。」

「ん?トランクス?お前こんな所でなにをしている!降りろ。」

目覚めたトランクスはベジータにおぶわれている状態であり、ベジータはそれが恥ずかしくなりすぐに降りろという始末。

照れながらも若干嬉しそうなトランクスとそっぽを向きながら「クソッタレ、クソッタレ、クソッタレ」

と呟くベジータ。

回りに集まっていたZ戦士の笑いに包まれていた。

「大きく舞台が破損してしまったので少々時間をいただきます。」

第一回戦の途中で休憩の時間がとられた。

「父さんすいません。父さんの技まで使いながら負けてしまって。」

「フン、当然だ。ただお前が弱いだけだ。」

悟空に負けたことを謝罪するトランクスに当然のようにベジータのキツい言葉が容赦なく浴びせられる。

さすがのトランクスも少し落ち込んでいたが、

「帰ったら、また特訓だ。覚悟しとけ。」

という言葉が続き途端に喜びの表情に変わるトランクス、そして影でそれを聞いていた、駆けつけてきたブルマも笑顔で微笑んでいた。

 

――――

「う~~ん?誰も来ないぞ。」

四人のカーシの内の一人が小さな小川が流れ、そばにはお花畑が広がる天国のようなのどかな所で暇そうに転がっていた。

「暇だな、暇だな。」

ゴロゴロ転がるカーシ、退屈が極まった時であった。

青色の肌を持ち、オレンジの髪を持ったかなりのイケメンが突然現れていた。

「お前は何もんだ。」

カーシは以前横になったまま問いかける。

「俺は、イケメン剣士と戦う気がしていたんだがな。あてがはずれたか。」

カーシの問いかけなどなかったように呟く男。

「そうか、俺はイケメンだが剣士じゃない、だから落ち込んでいるのか。」

手をポンと叩いたカーシは、起き上がると懐をまさぐり出した。

しばらくすると、カーシが袋から秘密道具を取り出した猫型ロボットのように何かを腹から取り出し天に突き上げ、

「ダーブラの剣」

テテテテッテテー。

という効果音でもつきそうな感じで見せつけた。

驚く男にカーシは

「これでイケメン剣士になったぞ。遊ぼ。」

子供のように無邪気な笑顔でいいはなった。

「バカにしやがって、このゴクア様の相手がこんな不細工なやろうとは。」

吐き捨てるようにいうゴクア。

「俺はイケメンだ。」

頭から蒸気を吹き出すカーシ。

「お前嫌いだ。死んじゃえー。」

カーシが話しているときには戦いは始まっていた。

ゴクアの剣がカーシを袈裟懸けに切りつけていた。

「お前なにしているんだ?」

なにもなかったかのように喋るカーシ、口許にはうっすらと笑みが浮かんでいる。けっして先ほどのような無邪気な笑みではない。

これから虫でも殺すかのような極悪な笑みである。

「えい。」

「ぐあっ」

カーシが軽い感じで剣の柄でゴクアをつく。

ゴクアはそのまま吹き飛びもぐらが荒らしたような後を花畑に残し遥か後方に横たわっていた。

「つまらないな。早く悟空たち来ないかな。」

カーシは飽きたような感じで呟く。

「貴様ー」

その様を見たゴクアは怒りに包まれる。

剣を鞘に収めると、イヤリングとペンダントが光出す。

それと同時にゴクアの筋肉が肥大化し、青い肌は薄緑に、オレンジの髪は赤くそまっていた。

「死ねー」

変化を遂げたゴクアは先ほどとは違う威圧感を持って怒気を撒き散らしながらカーシに向かう。

しかしゴクアが気づいた時には視界が失われていた。

なにがあったと思った後に突如ゴクアを襲う目の痛み。

カーシが目潰しをしたのだった。

「ぐわー目が、目が」

「お前この剣持ってたダーブラより弱い。

つまらない。」

カーシは剣を振り上げる、そして降り下ろす。のんびりしたような動きではあるがすきがなく、流れるような動きである。

素人目にはいや、ゴクアの視界がハッキリしていても目視は不可能であったろうカーシの斬激により、トランクスによって微塵切りにされた某宇宙の帝王のような最後をゴクアは迎えた。

ボージャック一味(ボージャック除いて)あと三人。




すいません、ボージャック一味の口調は違っているかもしれませんがご容赦いただきたい。


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カーシ(4分の1)が囚われた。ボージャック一味の特別な力

「おいクリリン、本当に俺とやりあう気か?

今の俺はカカロットと殺りあいたくてしょうがないから、手加減してやれんぞ。」

「マジかよ…」

すっかりと綺麗に修復された舞台の上でベジータとクリリンが向かい合っている。

しかしもうすでに勝負は決まっているのかもしれない。

クリリンは蛇に睨まれた蛙のようになっている。

「クソッ俺はどうすれば。」

ついには頭を抱えて悩みだすクリリン、その時だった、ベジータから妥協案が出された。

 

「俺は早くカカロットと戦えればそれでいい。お前が今棄権をして、俺がカカロットを倒して優勝したら賞金はお前にやる。どうだ悪い話ではないだろう。」

さすがはサイヤ人の王子、強きものであり、最大のライバルである悟空とすぐにでも戦えれば金などどうでもいいというのだ。

といっても世界的な大富豪のブルマの夫であるから金が要らないということもできるだろう。

「!!」

ベジータの提案に驚くクリリン。

「よっしゃあ当然棄権だな。しかし少し悩んだふりをするか。(俺も武道家だ。そんな誘惑には負けんぞ。)」

あまりの同様に心の声と言うべき言葉が逆になっているクリリンであった。

というように円満に解決した。

ただそれに納得できない者が4名ほどいた。

時給850円ていう安さであるのにこきつかわれて舞台を綺麗にした係員だ。

『俺達の仕事が無駄になった…』というように。

まあ係員の悲哀は置いといて、ついに決勝戦進出の4人が決定した。

――――

決勝戦の会場ではまだ戦いが終わっていない所もあった。

順に見ていこう。

そこには赤き溶岩がそこらかしこにある、煮えたぎる溶岩エリアである。

その場には、オレンジ色の長いカールした髪を持ち、鋭い目つきをし、薄緑色の肌を持った女性である。

その美貌はサイヤ人や魔人といった一部の例外を除けば皆が見惚れるといった位の女性である。

そしてカーシはその女性の周りをジロジロと熱心に観察しながら歩き回っていた。

「なんなんだお前は。」

「う~ん、お前どっかで見たことある気がする。」

女性の問い掛けにもカーシは答えることなくマイペースで行動している。

 

「あっそうだ思い出したぞ。サタンの元秘書だ。」

カーシの頭に浮かんだのはセルゲームの時までいた女性秘書である。

その秘書は有能であったが一身上の都合でサタンの元から去っていた。

なのでこの天下一大武道大会の打ち合わせなどもサタンが1人で行っていたのだ。

秘書が辞めてからは、サタンは時々寂しそうであり、逆に仕事は増えていた。

そんなサタンを見ていたからこそカーシは言った。

「お前俺達の仲間になれ、死にたくなかったらな。」

カーシはにこやかではあるが、後半の言葉には残虐さが感じられ、決して嘘とは思えない。

「バカを言うな。誰がお前の仲間になんぞなるか。

お前などボージャック様の敵ではない。すぐにボージャック様に殺されるだろうしな。」

女の言葉に少し思案するカーシ。

そして

「そうか、俺がそのボージャックってやつを倒せばいいんだな。元々するつもりだったしな。

じゃあお前は俺が倒す所を見せないといけないから拘束するな。」

そういうとカーシは腹の肉をひとつまみちぎり長く伸ばし、グルグルと回し女に投げつけた。

「な、なんなんだこれは。」

「ギュッ」

カーシの肉は女に巻き付き拘束した。

溶岩地帯の戦いは終わりを告げた。

 

――――

陽炎渦巻く砂漠エリアでは、突如砂の中から現れた男ビドーによりカーシは首を絞められていた。

「死ぬがいい。」

力一杯にカーシの首を締め付けるビドー。もしこれが太った相撲取りであれば死んでいただろう。

しかしカーシが相手では話が違う。

ぐぅ~~、そんな中かすっとんきょうな音がカーシの腹から聞こえた。

「あーあ、腹減ったな。お前はクッキーと飴玉どちらが好きだ。」

「貴様なにを言っているんだ。」

いきなりのカーシの場違いな問いかけに聞き返すビドー当然の行動ではあるが、その行動はカーシには受け入れられることはなかった。

「まあいいか。クッキーになっちゃえ。」

「な゛なんなん――」

ビドーはすべてを言い終わることはなく巨大なクッキーと化していた。

カーシの非道な攻撃によりビドークッキーができあがった。砂漠エリアでの戦いも終わりを迎えた。

 

――――

最後はおもちゃが所狭しと転がっているおもちゃの国である。

ここでは、紫色のダーバンをかぶり、高貴さを醸し出す小さな男である。

しかし、すでにこの男はカーシに追い詰められていた。

「なんで俺の超能力が効かないんだ。」

「もう面白いことはできないのか。

じゃあ死ぬか。」

カーシが下す死の宣告。

カーシは男に手を向ける。

手にしだいにとんでもない気が集まり、収縮する。

星一つでも簡単に消し去るほどの黄色い気集まっている。

「腹減ったな。これが終わったらサタンからお菓子をもらおっと。」

「なに。」

カーシの発した呟きをたしかに男は聞き逃さなかった。

「しめた、はあ」

男が手を振り上げるとおもちゃの国ががらっと姿を変え始める。

「おおっ」

現れた世界にカーシは気を霧散させるほど驚き、歓喜の声をあげた。

現れたのはお菓子の国であった。

「なあ、このお菓子全て俺が食っていいのか。」

「ああいいぜ。(死ぬまで食い続けな)」

男の了承を得た瞬間カーシはお菓子に飛び付き傍若無人に菓子を食べまくっている。

「菓子に囲まれて死ぬがいい。」

それを傍目に男はその世界から脱出するとともにその世界の唯一の出入り口を閉ざした。完全に世界が隔絶された。

 

次回 決勝戦開始



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決勝戦始まる

「な、なんだとーーーー!!!」

今大会で一番の大きさの怒声が会場だけでなく、その会場が位置するエリア全域に轟いた。

「貴様もう一回言ってみろ。」

「ええですから。」

アナウンサーは戸惑いながらももう一度先ほどと同様に説明する。

ベジータが怒声をあげたのは決勝戦の説明を受けた時である。

その説明は簡潔にまとめると、4つのエリアに分かれそこのエリアボスを倒す。

その時間を競うというものであった。

ベジータは残った者達でのトーナメントと思い込んでいたためである。

「貴様ー、この俺を本気で怒らせたいみたいだな。」

「まあ落ち着けよベジータ。」

怒りにより超化し黄金のオーラを撒き散らしながらアナウンサーに詰め寄ろうとするベジータと、必死になってなだめようとする悟空である。

「おめえが戦いたい時に戦ってやっから落ち着けよ。」

「黙れカカロット、俺はお前と戦うためにこんなくだらん大会に出てやったんだぞ。」

ベジータの怒りは治まりそうにないなと皆が思っていた、しかし急にベジータは黙りなにかを考え出す。

ろくなことじゃないなとベジータをしる者は皆一様に思ったが静かなほうがいいやとほうっておいた。

これが後々問題を引き起こすことになるのだが。

「おい、貴様ちょっと来い。」

「はいなんですか。」

ベジータの無礼な態度には腹がたつが、断れない力が声から感じとりアナウンサーはベジータに近づく。

「おい決勝戦では……は認められているのか。」

「ええ、構わないと思いますが、無理だと思いますよ。

エリアの広さを考えると。」

 

アナウンサーの返事を聞くベジータ。

聞き終わった瞬間である。

「フハハハハハ、命拾いしたなお前」

大口を開けて笑いだす。

キレたり笑ったり本当にせわしないベジータであるが、これこそがベジータである。

 

ベジータ、悟空、アナウンサーで話している時に別の所でも話をしているものがいた。

「ねえ、あなた。何者なの?」

「え、僕?」

ビーデルが寄ってきて悟飯に尋ねる。

急に声を掛けられた悟飯は本当に自分のことかと自分に指をさして尋ねる悟飯。

「そうよ、あなたよ、私と同じ位の年なのにあの以上な強さ、気になっちゃったのよ。」

「え、そうかな。あれぐらいなら普通だと思うけど。

それに、君だってヤムチャさんを倒すなんてすごいと思うけどな。」

ヤムチャを倒したと言うことを聞いていた悟飯は話を変えるためにもビーデルを褒めることにした。

しかしそれがいけなかった。

「そうかしら、私の強さなんてあなたに比べたらたいしたことないと思うけど。

それにあれは私の力じゃないしね、今はもうないわよ。」

ビーデルは小さいカーシに助けられて勝ちを治めたことに納得がいかずすでに小さいカーシを返していた。

「え、そうかな。」

「そうよ。どうしたらあんなに強くなれるのか、あなたの本気はどれくらいか教えてほしいのだけど。」

唐突に要求するビーデルと、困惑する悟飯。

「なんか嫌そうね。もういいわ決勝戦はあなたにどこまでもついていくから。」

「えーーー!!」

という訳で悟飯についていくことを強硬に決めたビーデルであった。

このころからすでに戦闘力以外の上下関係が決まっていたのかもしれない。

「では、みなさん。

好きなコースターにお乗りください。」

話を仕切り直し前に進め始めた。

「よし、おらはこれにしよ。」

「フン。」

「少し詰めてよ。」

「え、無理だよ。これ1人用だよ。」

「私たちは小さいから大丈夫よ。」

となんだかんだありながら悟空、ベジータ、悟飯&ビーデルは決勝戦行きのコースターに乗り込んだ。

動き出したコースターは一直線に決勝戦の場に戦士達を導いた。

「あっちいな~。」

悟空がついたのは陽炎渦巻く砂漠であった。

「よっ、よく来たな悟空。」

「ん?」

悟空は突如何者かに声を掛けられた。

振り返る悟空が見たのは、巨大なクッキーを持って片手を上げ挨拶するカーシであった。

「よっ、カーシだったっけか。やっぱりおめえだったか。」

「うん、そうだぞ。」

ともに笑みを浮かべている。

すぐにでも激闘が始まるのかと思われたが始まらなかった。

「おらはもうおめえと戦いたくて仕方ねえんだがよ。

その前になに持ってるんだ?」

「んこれか。」

カーシの持った巨大なクッキーを指差す悟空。

まああれほど巨大なクッキーなど見たことないだろうからしょうがない疑問であろう。

「これはな俺が(ビームで)作ったビドークッキーだ。」

「おっすげえな。おめえが(料理で)作ったのか。」

「そうだぞ。エヘン」

噛み合っているようで実際は噛み合っていない会話。

しかし会話は滞りなく続き胸を張り、鼻高々なカーシ。

そしてカーシは徐に抱えたビドークッキーを手に持ち半分に割る。

そして悟空に差し出す。

「やる、食え。」

「おっいいのか?わりいな。」

悟空はカーシから半分に割られたビドークッキーを受け取った。

戦いではなくカーシと悟空は共に仲良くビドークッキーを食べ始めた。

「おっうめえな。」

「そうだろ。」

カーシと悟空のお茶会はしばらく続くのであった。



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現れる強敵、悟飯ビーデルを護れるか!!

陽炎渦巻く砂漠地帯では場違いな光景が存在していた。

サタンの胴着を着た大きな男と、山吹色の胴着を着た男、そして青タイツを着た少しM型の男の三人が黙々と大きなクッキーを食べていた。

なぜ戦闘ではなくこのような光景になっているのか、それは約10分前に時を遡ることになる。

――――

カーシと悟空が仲良くビドークッキーをわけあって食べ始めた時であった。

「カカロットー!!」

どこかで聞いたことがある声が聞こえてきた。

声が聞こえてきたところにはすでにサイヤ人の王子ベジータの姿が、

「んお、へひーはひゃえか。ほうひはんは。」

「悟空口の中の物を食ってからいったほうがいいぞ。俺もよくサタンに叱られてるからな。」

悟空はカーシに言われた通りによく噛んで、ゴクリと飲み込んだ。

そして、仕切り直し。

「よっ、ベジータ何でここにいるんだ。

もうエリアのボスっちゅうやつは倒したんか?」

「ボスなど俺にはどうでもいい。

俺はお前を妨害しに来たんだからな。」

そうベジータはが試合前にアナウンサーに確認したのは他選手の妨害についてであった。

大会開催側は、決勝戦が行われる会場の広さは広大であるのでまず選手同士がかち合うことはあり得ないと思い了承したのであるが、このサイヤ人の王子には広さなどあってないようなものであった。

「勝負しろカカロット!!」

妨害しに来たと言いながらすでに勝負しろと詰め寄るベジータ、しかしそこに入ってくる者がいた。

「落ち着けベジータ。

お前もこれ食え。」

「貴様は確かカーシとかいったな。

お前にも聞きたいことは山ほどある。

話してもらうぞ。」

それだけベジータがいうとその場にどかりと胡座をかき、

「さっさとよこせ」

と食欲に負けていた。

「ほれ。」

カーシはビドークッキーの頭の部分を割ベジータに手渡す。

「なに、俺はたったこれだけだと!!カカロットお前のほうが大きいだと、卑怯だぞ。」

ベジータはカーシからもらった部分て悟空が持っている食べかけの部分を見て不平を言う。

「わかったよ、ベジータ。怒るなって、これやるから。」

「フン、それでいいんだ。」

悟空が自分の持っているビドークッキーの足の部分を割与えることによりベジータは落ち着いた。

とまあこんな事があり、この光景が広がることになっていた。

――――

別のエリア、悟飯とビーデルはオモチャの国に降り立っていた。

「結構広いのね。

ねえ、さっさと行きましょ。エリアボスは誰かは分かっているからその人と戦ってもらってあなたの力を見せてもらうわ。」

「待ってよビーデルさん。」

少年と少女の時でも同じようにビーデルに主導権を取られ、ひっばり回される悟飯であった。

「あれどこにもカーシさんいないわね。

あ、あれは。」しばらくビーデルと悟飯は歩き周りエリアボスを探したが一向に見つかることはなかった。

そうこの場のカーシは隔絶されたお菓子の世界に自ら留まると言うか、封印されているからだ。

しかし、ビーデルは何かを見つけていた。

「悟飯君行こう。

あそこに人影があるわ、多分カーシさんだと思うわ。」

「え、カーシさん。あビーデルさんちょっと待ってよ。」

先に走っていくビーデルを追う悟飯。

しかし、悟飯はある違いに気づくのだった。

(あれ、カーシさんっていったら前にセルゲームでセルを倒した人だったけど。

あそこから感じる気はカーシさんじゃない。

カーシさんの気からは悪い感じはしなかったけど、あの気からは邪悪な感じがする。まずい。)

「ビーデルさんだめだ。」

悟飯が気づいた時には、その邪悪な気から気弾が放たれていた。

「え、きゃあ。」

迫りくる気弾に悲鳴を上げるビーデル。

しかし、その気弾はビーデルに着弾する前に、ビーデルの前に立ちはだかった悟飯によって遥か彼方に弾き飛ばされていた。

「大丈夫ビーデルさん。」

「あれ、悟飯君。私を助けてくれたの?」

少しぽーっとしながら悟飯を見上げながらビーデルは問いかける。

「うん、そうだよ。

ビーデルさん、ここは少し危なくなるから離れてくれる。」

「うん。」

ビーデルに語りかける悟飯の口調には優しさが感じられたが、悟飯が気弾を放った人物を見ながら言った「離れてくれる。」には普段の悟飯からは到底感じられない、有無を言わせぬ気迫を感じたのでビーデルは素直に言うことを聞き、離れていった。

ビーデルが離れて行くのを確認したのちに、悟飯は厳しい視線を男に向けた。「お前は何者だ?いきなり気弾を放つなんて。」

「俺はブージン。死んでもらう。」

悟飯の問いかけに紫色のダーバンを巻いた男は名を名乗り、いきなり襲いかかった。

「はあ。」

迎え打つ悟飯、互いに拳を打ち合う、ブージンは小柄ではあるがかなり強く悟飯を押し始める。

(こいつ強い。このままじゃ。)

「はあ。」

気弾を放つが避けられ、気弾を放つことによりできた隙に鳩尾に一撃をくらい、動きが止まったところに背に強烈な肘うちを浴びせる。

「うわーっ」

悟飯は地面に叩きつけられた。

「たいしたことなかったな。」

ブージンは砂煙が舞い上がった場を見て勝ち誇ったように呟くが、次の瞬間には驚きの表情に変わる。

砂煙が晴れるとそこには、黄金のオーラを纏い、碧眼をした悟飯が先程とは全く違い好戦的な笑みを浮かべながら立っていた。

「本気で行くぞ。」

超化した悟飯とブージンの第二ラウンドが始まる。

 



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オヤジたちの戦いと悟飯の危機

「ふぃ~、食った、食った。

まあ腹八分にもなんねえが美味かったからいいや。

あんがとなカーシ。」

クッキーのかすを口元につけながら満面の笑みを浮かべ悟空はカーシに感謝の意を再度告げていた。

ビドークッキーは悟空には大ウケだったらしい。

「さあ、さっさと準備をしろカカロット!」

悟空より早くにビドークッキーを食べ終わったベジータは悟空との戦いを待ち望んでいたために急かし始める。

「分かった、分かった。

なあカーシ、ベジータと戦い終わったらおらと相手してくれよ。」

「ああ分かった。お前たちの戦い見せてもらうぞ。」

悟空はすかさずカーシとの対戦の約束も取り付けていた。

さすがに戦闘狂のサイヤ人である。

またカーシ自体も戦いは好きであるので問題なく約束が結ばれた。

「ハアーーーッ」

ベジータが構えを取り気を高める。

まずは黄金のオーラを纏い、金髪、碧眼となる。

しかし、まだベジータは気を高めることを緩めることはない。

更に高め続ける。

黄金のオーラが膨れあがると同時に大地も鳴動しだす。

「ハアーーーッ!!」

ベジータが雄叫びをあげると、爆風のような突風がベジータから巻き起こる。

すると、悟空が第一回戦のトランクス戦で見せたと同じように、黄金のオーラの周りを取り巻くように、スパークを纏っている。

「おっ、 ベジータおめえも超サイヤ人の壁を越えたんか。」

「当然だ。お前に出来て俺に出来んはずがないだろう。」

 

驚く悟空にさも当然だというように答えるベジータ、共にワクワクしたような顔をしているのは、根っからのサイヤ人であるためか。

「さあ、カカロット、貴様も見せてみろ。」

ベジータは悟空に超(2)化を促す。

「おっし、おらも全開でいくぞ。」

悟空もベジータと同様に黄金のオーラの上にスパークを纏った状態、超サイヤ人の壁を越えた超サイヤ人2へと変貌を遂げた、ついに今大会屈指のオヤジ同士の戦いが始まろうとしていた。

 

――――

 

悟空たちより先に戦い始めていた悟飯の戦いは、先程とは打って変わって攻守が一変していた。

「だりゃあ。」

「!」

超化したことにより遥かに強くなった悟飯がブージンを圧倒しだしたのだ、悟飯の連打を捌き続けるブージンであったが、段々そのスピードに対応できなくなり始めていた。

(なんなんだコイツは、以前とは別人ではないか。)

すでにブージンは焦りが頂点に達していた。

先程までは優勢にことを進めていたのが全くの逆になってしまったのだから仕方ないことではあるのだが。

 

「だだだだだだりゃあっ」

「しまった。」

悟飯の連打にきをとられるあまりに最後の強力な一撃でガードを抉じ開けられたブージン。

そして、

「くらえっ!」

悟飯の強烈な右ストレートががら空きとなったブージンの腹にクリーンヒットした。

その衝撃によりブージンは落下し、砂煙を巻き上げ地上に打ち付けられた状態となった。

しかし、悟飯の猛攻は終らない。

「だだだだだ。」

砂煙が上がったところに気弾を連続で打ち込む、サイヤ人の王子が得意とする連続エネルギー弾である。

「終わりだ。」

連続エネルギー弾を打ち込んだ後に止めだと言わんばかりに、集束した気功波を打ち込む。

着弾と同時に先程巻き上がっていた砂煙を簡単には吹き飛ばすような爆発が起こり、一帯に砂煙が立ち込める状態と化していた。

「ふう、終ったか。

ビーデルさん大丈夫かな。」

彼の師匠が見たら説教ものでろう。

すでに悟飯は戦闘は終わったと思いビーデルに気をかけていた。

確かに心優しさは悟飯の長所でもあるが、戦闘においては短所にもなる。

戦闘技術についてはピッコロとの試合で勘を取り戻していたが、このようなところにまだ実戦から離れていた落とし穴があった。

「な、なに」

依然として巻き上がる砂煙の中から突如として現れた一本の糸が悟飯を捕らえて縛りあげる。

「だあーっ」

悟飯が全力で引きちぎろうとしてもびくともしない。

砂煙が晴れ、視界がよくなると、大きなクレーターの中心にいるボロボロになったブージンの掌から糸が出ているのが見て取れた。

「はあはあ、さっきのは効いたぜ、あばらが二、三本と内臓、右腕がやられちまった。

だがお前が油断してくれたおかげでもう俺の勝ちは決まったようなもんだぜ。」

ブージンは不適な笑みを浮かべ悟飯に語りかける。

ヘラー一族は、戦闘力こそ違うが、ナメック星人と同じように分類できる。

物理特化の近接戦闘型と超能力型である。

ブージンは超能力型である為に出来た芸当である。

「く、くそー。」

「へっ、俺の糸は切れないぜ。さあ、さっきの借りを返させてもらおうか。」

ブージンはそう言い残虐な笑みを浮かべるとそのまま悟飯に向かい、先程のうさをはらすかのように悟飯に攻撃を続ける。

もう一方的な戦い、いやすでに戦いではない。一方的な暴力である。

動く左腕と、左右の足による蹴りが終わることなく悟飯に降り注ぐ。

「ぐはっ」

「もうお仕舞いか。」

吐血した悟飯の髪を掴み、悟飯に話しかけるブージン。

「もう俺のうさも晴れたし終わりにしてやるか。」

ブージンは悟飯を地面に叩き落とす。

そして、左の手のひらを悟飯に向ける。

集束されるエネルギーを見て悟飯は死を予感しだしていた。

「終わりだ。」

ブージンが歪んだ笑みを浮かべ死の宣告をした時であった。

「ワタアッ!!」

突如現れた何者かによって、気功波を放とうとしていたブージンに蹴りが叩き込まれた。

そのままブージンは遥か彼方に吹き飛び悟飯は危機を逃れた。



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怒りのピッコロ、悟飯の無念を晴らせるか。

「ミスターサタン決勝戦の舞台で何かあったらしいです。

カメラも全て壊れており、係の者をやったんですが連絡もこなくなってしまいました。

申し訳ないのですが、決勝戦の場にご足労お願いできませんか。」

サタンの休憩室に息をきらしながらやって来た係の者はサタンに頭を下げて切に頼んだ。

「よかろう。わし専用のコースターを用意してくれ。」

サタンは堂々と係の者に話係の者は安堵しながら「すぐに用意します。」といい走って会場に戻っていった。

サタンは係の者が去って行くのを確認し

「もうそろそろカーシさんが終わらしてくれただろうから前のような危険な目にはあわんだろう。」

と呟き準備をするのであった。

――――

白いマントをはためかせた人物が悟飯を救った。

「ピッコロさん!!」

悟飯はその人物を見ると花開くような満面の笑顔になる。

「大丈夫か悟飯。」

ピッコロは空から降りてくると悟飯に駆け寄り、悟飯を拘束する念能力でできた糸を切ろうとする。

「くっ、特別な力で作られた糸か。面倒な。やつを始末しないといけないようだな。」

ピッコロですら糸を切ることができず、糸を作り出した者を倒すべきだという結論に至る。

 

「悟飯ここで待っていろ、今からやつを始末してくる。」

ピッコロはそう悟飯に宣言すると、蹴り飛ばしたブージンが吹っ飛んでいった方向へ向かって飛んでいった。

「悟飯君大丈夫?」

悟飯に言われた通り離れた所で隠れていたビーデルではあるが、先ほどあった壮絶な戦闘音を聞き、悟飯が心配になり出てきた、そして糸で拘束された悟飯を見て急いで走りよってきた。

「ええ、大丈夫ですよ。」

悟飯は心配かけないように笑顔でビーデルに話しかけるが、すでにブージンの攻撃によりボロボロであり、かつ糸で締め付けられている状態でありそれを見て「大丈夫」という言葉を信用しろというほうが無理な話であった。

またそれだけですむ話ではなかった。

悟飯とビーデルは自分たちに強大で邪悪な力を持った男がすぐ側に来ていることに気づいてはいなかった。

――――

「ちっ飛ばし過ぎたか。」

ピッコロはブージンが飛んできた辺りを探していたが未だに見つけることができていなかった。

「貴様よくもこの俺をこのような目に合わせてくれたな命は無いものと思え。」

気を消していたのかブージンはピッコロのすぐ後ろに現れていた。

そして繰り出された蹴りであるが、ピッコロは難なくその足を受け止める。

「探す手間が省けたな。

可愛い悟飯を傷つけた報い死をもって償ってもらうぞ。」

ピッコロはそのままブージンを地面に叩き落とした。

ブージンは地面スレスレで舞空術を駆使して踏みとどまる。

「なにやつはどこだ。」

ブージンが投げ下ろされた場を見るがすでにピッコロの姿はない。

「後ろだ。」

「何!!」

声を便りに振り向いたブージンの顔面に形が変わるほどのピッコロの強打が打ち込まれた。

「グハァ。」

再び空に打ち上げられるブージン、

「お、おのれコイツハはさっきの餓鬼より強い。

こうなれば超能力で。」

ブージンは超能力を掛けるべくピッコロを視界にいれようと向き直るが、やはりピッコロを視界に入れることは出来なかった。

「貴様は視界に入った者に超能力を掛けるようだが俺はそんなへまはせん。」

再び自分の後ろから聞こえる声にブージンは生きた心地がしない。

「ワタタタタタ、ワタァッ。」

ピッコロの連打が悉くブージンに炸裂する。

そして

「これが悟飯の分だー!!」

ピッコロはそのように叫び渾身の一撃を見舞った。

「俺は甘くないぞ。」

ピッコロは二本の指を額に当て気をため始める。

ピッコロの人差し指と中指が輝き始め、スパークが迸る。

「死ね。魔貫光殺砲!!」

ピッコロの二本の指から一本の光線とそれを取り巻くように螺旋を描く光線がブージンに襲いかかり、苦もなく貫きそれだけでは満足できないように、地面に地獄まで続いているのではないかと思われるほどの底が見えない穴を開けていた。

ピッコロが腹に大きな風穴が空いたブージンを見下ろすと既に息はなかった。

ピッコロはブージンの死を確認するともう振り向くこともなく帰途につく。

――――

ピッコロが悟飯のためにブージンと戦っているとき、悟空とベジータは激闘を繰り広げていた。

打ち付けられる拳と拳、ぶつかる度に地上にクレーターが出来上がる。

「これじゃあ会場は持たないな。」

カーシは悟空達の戦いを見ながらそう呟くと、腰をあげる。

「おーい、悟空とベジータこれじゃあ会場もたないから俺が別の場所に連れてってやるぞ。」

カーシは二人に提案する。

ドラゴンボールによくある

「ここじゃ町に被害がでる、場所を変えるぞ。」

である。

「もう少し待ってくれカーシ、今いいところなんだ。」

と悟空が言えば

「うるさい黙っていろ。俺たちの邪魔をするな。」

とベジータ。

再び戦い始める悟空とベジータ。

「強引だがしょうがない。」

カーシは呟くと自分の腹から2つの肉を取り二人に投げつける。

2つの肉の塊は悟空とベジータを覆い包みこむとカーシの体に戻っていった。

「よしこれで会場が壊れることもないしサタンも大丈夫だな。」

そう言うとカーシは意識を自分の体内に持っていった。

 




ピッコロ強すぎないかという意見がありそうですが、ブージンはダメージを受けていたことと、セルゲーム以降もピッコロは修行を続けていたということで。
悟飯の成長を見ていないピッコロなら修行を続けるだろうと思いますし。


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遂にあらわる諸悪の根元

「あれ、糸が解けた!ピッコロさんが倒してくれたんだ。」

「よかったね悟飯君。」

悟飯を拘束していた糸が急にほどけ、霧散したことに悟飯とビーデルは喜び、悟飯は改めてピッコロに感謝し、尊敬の念を深めていた。

しかし、その喜びも長くは続かない。

サイヤ人の宿命なのであろうか、新たな戦いがすぐ間近まで迫っていた。

そうすぐ後ろまで。

悟飯は突然後ろに現れた影に脅威を覚えた。

確かに気を抜いていたが、戦いの場であり、先ほどの戦いでの不覚があったので最大限に気を探りながら危険がないことを察知していた。

しかし、その察知をも掻い潜り悟飯のすぐ後ろまで何者かが迫っていたのだ。

「何者だ。」

瞬時に振り返り身構えビーデルを庇うように前に立ち戦闘体制をとりながら悟飯は声をあげる。

悟飯のすぐ後ろまで迫っていた男は、橙色の長髪をし、濃い青色の肌を持ち、どこか海賊のような出で立ちをするかなりガタイの良い大男であった。

ここまでなら、ドラゴンボールの世界では存在していても別に不思議ではない男である。

しかし、普通とはかけ離れた物をこの男は持っていた。いや、醸し出していた。

『悪』一文字で言えばこれほど当てはまる言葉はない。

一点の曇りもない『悪』、今まで悟飯は数限りない敵と戦ってきた。

そのなかでも三本指に入るであろう、圧倒的に禍々しく、歪んだ悪の気をその男から感じ取った。

もちろん戦闘力がとてつもないことも気から探ることはできていた。

(なんでこんなヤツが近づいてきていることに気づかなかったんだ。)

悟飯は自分の不甲斐なさを嘆くのであったがすでに後の祭りである。

「俺の名はボージャック。

この世を恐怖と殺戮で支配する男だ。」

ボージャックと名乗る男は口許に歪んだ笑みを浮かべ悟飯にいい放つ。

その威圧感でビーデルは放心状態、修羅場を数多く乗り越えてきた悟飯出さえも気圧され、背には冷や汗が止まらない状態である。

「俺の手下達が随分と世話になったようだな。礼をさせてもらうぞ。」

淡々とボージャックが宣言したと同時に悟飯の腹に深々とボージャックの拳がめり込んでいた。

――――

「こ、これは!!」

「おいどういうことなんだよ。」

「俺に聞くなよ。」

それまで歓談していたトランクス、天津飯、ヤムチャがボージャックの悪意に満ちたとてつもない気を感じとり、パニックになりながらも判断に迫られていた。

「これは決勝戦の会場からです。

決勝戦の会場には父さんや悟空さん、悟飯さんそして、先ほどまでピッコロさんがいたようですが、父さんと悟空さんの気が突然消えました。

大丈夫だとは思いますが心配です。

俺が見てきます。」

トランクスがいてもたってもいられず決勝戦の場に走る。

「まて、俺達じゃあ力不足かもしれんが何かの役にはたつかもしれん。」

「ああ、俺達も行くぜ。」

天津飯とヤムチャもトランクスと共に決勝戦の場に向かうとトランクスに伝える。

「ありがとうございます。

とても心強いです。」

トランクスも笑顔で感謝の意を伝え、三人はボージャックがいる決勝戦の場に向かった。

――――

そしてもう一人絶望感に襲われる者が会場内に1人、そう我らがミスターサタンである。

カーシとの修行により気を感じ取ることができるようになっていたためである。

(おいおい、カーシさんが倒してくれたはずじゃあ。どうしてこんなヤツがいきなり現れたんだ。)

サタンは頭を抱えてVIPルームをウロウロし始める。

カーシが近くにいたのならば覚悟を決めていたこともあり平常心を保つことができ、また安心していられたのであろうが、今は違う。元来気が弱いサタンは気が気でない。

そして、死刑宣告とも言える執行人がやって来る。

「ミスターサタン、準備ができました。」

「!!!!!」

ドアがノックされ、係員が決勝戦の場に向かうコースターの準備が整ったことを伝えに来た。

「ミスターサタン?」

中から全く返事が聞こえないことに疑問を持ち係員がソロッと中に入る。

そして、目が合い時間がとまったかのようになる室内。

「ミスターサタンいらっしゃったのですか?

準備が整いましたよ。」

係員の言葉がサタンの脳内を駆け巡る。

(準備が整いましたよ。準備が整いましたよ。準備が整いましたよ。→ 死刑の準備が整いましたよ。)

「ハアーッ!!あたたたた、急に腹が、なんという激痛だ。トイレにいってくるので少し待っていてくれ。」

そこからのサタンの動きは機敏であった。

無駄の全くない動きでトイレに入り鍵を閉めた。

「カーシさんが倒すまで長期戦に持ち込むしかない。」

サタンVS係員も幕を開けた。



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決戦ボージャック!Z戦士必死の抵抗

ビーデルの真横をとてつもない速さで何かが飛んでいった。

その何かは遮るもの全てを破壊しながら減速することなく後方へ吹き飛んでいく。

ビーデルの頭の中ではその何かがなんなのかは理解している。しかし、現実ではあり得ないことであるので本能的に分かりたくない、分からないほうが良いと判断したのだろう。

「俺の部下はこんな雑魚に殺られたのか。

使えんゴミどもだ。」

ボージャックは感情が全くないよう能面のような表情でそう吐き捨てる。

そしてボージャックの魔の手がビーデルに延びようとしていた。

「小娘次はお前だ。」

「ひっ!!」

今まで感じたことがない恐怖、今まで考えたこともない『死』が逃れられないものであると理解したのであろうか、逃げようにも体が震えてなにもできない状態である。

ボージャックの手が近づくたびにサタンやカーシ、そして先ほどまで体を張って守ってくれていた悟飯の顔が脳裏によぎる。

これでおしまいかと思った時だった。

「ビーデルさんに手を出すな!!」

怒声と共に現れた黄金の戦士がボージャックを殴り飛ばし、今度はボージャックがあらゆるものを破壊しながら吹きとぶこととなった。

「はあはあはあ、大丈夫ビーデルさん。」

「え、あ、ご、悟飯君!?大丈夫というかあなたこそ大丈夫なの。」

ボロボロになりながらもビーデルを気遣う心優しい悟飯に驚きながらも嬉しくなるビーデル。顔を赤らめながら「ありがとう」と言いなかなか良い感じではあるが状況がそれを許してはくれない。

「小僧なかなかいい攻撃だったぞ。」

遥か後方に飛んでいったはずであったボージャックがいつの間にかすぐ前に立っている、しかもたいしてダメージがあったようにも思えない。

見るに耐えない嫌らしい笑顔さえ浮かべている。

「来いよ、小僧。」

「ビーデルさん、逃げてコイツは僕がなんとかするから。」

そう言うと悟飯はボージャックに飛びかかった。

ビーデルは「逃げて」と言われたが逃げることはできなかった。

恐怖で足がすくんだからではない、先ほども悟飯に助けられ逃げそして悟飯はブージンによってボロボロにされた。

自分が足手まといであることは分かっていたが悟飯を残して逃げることはできなかった。

「だりゃあ、だだだだだだあっ」

悟飯は猛烈な勢いでラッシュをかけるがボージャックはそれを避けることもしない。

笑いながら全ての攻撃を体で受け止めた。

「こんなものか。攻撃とはこういうものを言うんだよ。」

ボージャックの右の拳が唸りをあげて悟飯を襲う。

「―――」

悟飯は声さえもあげることはできなかった、しかし辺りには打撃音だけでなくバキッと何かが折れるような音が鳴り響いた。

「さあ、天国へ送ってやるぜ。」

「やめてーーっ」

ビーデルの悲鳴がこだまするがボージャックはとまらなかった。

もう意識がなく、ボージャックのパンチで宙に浮く悟飯に無情の肘うちが舞い降りた。

悟飯は悲鳴もあげることはなく、そのまま肘うちをまともに受け地面に叩きつけられた。

「悟飯君!!」

ビーデルが駆け寄ったが悟飯はピクリとも反応しない。動くのは悟飯の口から流れ落ちる血液だけであった。

「いやーーー、悟飯君死んじゃいやーー!!」

「大丈夫だ小娘お前もすぐにコイツの後を追わせてやる。」

 

悟飯に泣きつくビーデルにボージャックは歪んだ笑みを浮かべながら気功波を放つ。

地面を揺るがす爆発が起こり、突風が巻き起こり、砂煙が巻き起こる。

しかし、ボージャックの表情は冴えない。

先ほどまでは愉悦を感じた笑みを浮かべていたのだが、その顔は再び表情がなくなっていた。ボージャックが向ける視線の先にその理由があった。

「大丈夫ですか、悟飯さん。」

悟飯とビーデルを下ろし、悟飯に声を掛けているのはトランクスであった。

ボージャックが撃った気功波が当たる直前に二人をすんでのところで救出したのだった。

「どうだトランクス、悟飯の容態は。」

天津飯が悟飯に声をかけるトランクスに心配そうに問いかける。

「相当酷いですがかろうじて息はあります。

早く仙豆を与えるか、治療を施さなくては危ないです。」

トランクスは淡々と天津飯の問い掛けに答えるがその表情には悲壮感と底知れぬ怒りが現れていた。

未来の世界の悟飯は自分のために亡くなった。優しくも厳しい兄のような師匠だった。

しかし今のトランクスにはその悟飯を救う力がある。

(絶対に悟飯さんは死なせはしない。)

トランクスは決意を決めて立ち上がる。

「お前がどんなやつでも関係ない。

倒すだけだ。」

トランクスは怒りの眼差しをボージャックに向ける。

それと同時にトランクスの気は爆発的にはねあがった。

一緒に来た天津飯とヤムチャも今まで見たことがないほどの怒りを表しているトランクスに驚きが隠せない。

「天津飯、俺は悟飯とこの子を連れて上に戻るがお前はどうする。」

「俺は残る。何もできないかもしれないがな。」

ヤムチャは天津飯の答えを聞くと二人を抱えようとする。

「逃がすと思ったか。」

ボージャックはヤムチャに気弾を放つ。

「お前の相手は俺だと言ったはずだ。」

巨大な気弾を手刀で弾き、トランクスはボージャックに向かって、光すらも越えるような速さでぶつかっていった。

「ほう、凄まじいパワーだ。だが動きが鈍いぞ。」

トランクスは筋肉で膨れあがり、パワーはとてつもなく上がっていたが、やはりセル戦の時と同様にスピードの面を克服できてはいなかった。

トランクスの攻撃をことごとく避け、一撃いれ、怯んだ所で後方で悟飯とビーデルを抱えて飛ぼうとしているヤムチャに気弾を放つ。

「しまった。」

トランクスが身構えた時には遅かった。

巨大な気弾がヤムチャ達に向かっていた。

天津飯が必死でその気弾を相殺しようとしたが、その気はとてつもなく相殺すること叶わずヤムチャに着弾した。

「ヤムチャー。」

天津飯の目の前で焼けただれたヤムチャが落下して、地面に横たわる。

しかし、焼けただれたのはヤムチャだけであった。

ヤムチャは身をもってビーデルと悟飯を気弾からは守ったのだった。

「ヤムチャ大丈夫か。」

「役たたずの俺でもこれぐらいはしないとな…」

駆け寄る天津飯に弱々しくも答えるヤムチャであったが、天津飯にはヤムチャが眩しく見えた。



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弟子(師匠)の仇を打つのは俺達だ。新たなる師弟コンビ誕生!!

「ハアッ。」

トランクスが怒涛の攻撃をボージャックに続けていた。

一発一発の威力も凄まじいのはパンチの風圧で辺りの地形が変わってきていることからも明らかである。

しかし、そんな戦いではあるが、追い詰められているのはトランクスであった。

「フッ」

「がはっ」

トランクスの怒涛のラッシュをことごとく避け、合間合間に的確にボージャックはトランクスに打撃を加えていた。

(はあはあ、なぜ当たらないんだ。)

さすがにトランクスが焦り始める。

攻めているのはトランクスであるのに、傷ついているのもトランクスであるからだ。

この場に某親バカ王子がいたならば「バカめが、まだ弱点をわかっていないのか」ぐらい苦言は当然呈したであろう。

そうパワーばかりが膨れ上がり、スピードが明らかに落ちているからだ。

「クッソー。」

「いかん」

トランクスが焦りに刈られ大振りの一撃を繰り出す。

それを見た天津飯が危機感を感じ声をあげる。

「終わりにするか。」

トランクスの大振りの一撃を軽く身をよじり紙一重の所でかわす、そして口許を歪めていい放った。

悟飯を葬った強烈な一撃がトランクスを襲う、トランクス自信や天津飯もそう思った、その時であった

「魔貫光殺砲」

その声と同時に螺旋を描くエネルギーを纏った一本の極太エネルギー波がボージャックに襲いかかる。

そのスピードは一般的なエネルギー波を遥かに越えているために既にボージャックの間際に迫っていた。

「ちっ」

避けることが不可能ということを悟ったボージャックは攻撃を中断し、魔貫光殺砲を片手ではね除けた。

「いまだ、トランクス!!」

その光景を予期していたかのように声が辺りに響く。

「はい。ハアアアア、ハアッ」

トランクスがボージャックを見ると魔貫光殺砲をはね除け、隙ができていた。すかさず指示通りに渾身の一撃をボージャックに放つ。

「グホァ。」

「まだだ。」

ここぞとばかりにトランクスは以前にも増したラッシュをかける。

一撃一撃が必殺といってもいい威力の連打がことごとくボージャックを捕らえる。

それだけではなかった、降りてきた声の主、ピッコロも参戦する。

トランクスは前方から、そしてピッコロは後方から連打を浴びせる。

ボージャックは逃げることができない。

それは挟まれているからでもあるのだが、トランクスとピッコロの息があった攻撃がそれを許さないからだ。

なぜこれほど息があった攻撃ができるのか?

それはトランクスの師匠が影響している。

この世界のトランクスであればベジータ存命のためベジータと修行をし、ベジータの戦いかたが身に付くが、未来ではトランクスが大きくなった時にはベジータは亡くなっており、悟飯に戦いを教わったからだ。

その悟飯はピッコロから戦いを教わりピッコロの戦いが身に付いている。

それをそのままトランクスに伝授したため、実質ピッコロと同じ戦いかたであった。

そのために息があった攻撃ができたのだ。

「ハアアアア。」

「ワタア、ワタタタ、ワタアッ。」

依然として二人の攻撃が前後から襲いかかる、「グハッ」

「いまだ、いくぞ。」

「はい。」

ボージャックの体が揺らいだのを見逃さなかったピッコロがトランクスに指示を出す。

そして

『ハアッッッ!!』

二人の強打が前後の違いがあるが全く同じ位置にめり込む。

「ゴハァッ」

同じ位置ということで内臓が破損したのだろう、ボージャックは多量の血液を吐き出す。

拳を引き抜くとその勢いから流れるような動きから二人同時にハイキックを見舞う。

バキッと何がが折れるような音が鳴り響く。

二人の足が今度は左右から頭を挟むようにヒットした。

共に足を振り抜くとボージャックはまるでタケトンボのように螺旋を描いて滑空する。

トランクスとピッコロは飛び上がりボージャックを抜き上空で待ち構える。

『愛弟子(師匠)の仇だ!!』

共に組み合わせた両手を叩きつける。

ハンマー打ちが決まりボージャックは地面に叩きつけられた。

「やりましたね。ピッコロさん。」

安堵した表情でピッコロに話かけるトランクスだがピッコロはまだ厳しい表情をし、トランクスに告げる。

「甘いぞトランクス。まだだ一気に止めを指すぞ。」

そういうとピッコロは両手を交差させつき出す。

「爆力魔波」

ピッコロの両てのひらが光と同時にボージャックが伏していたところがとてつもない爆発を起こす。

そしてトランクスも遅れてはならないと両手をむけ、

「ファイナルフラッシュ。」

と準決勝第一回戦悟空戦の時に見せた技を使った。

ピッコロに引き起こされた爆発が更に巨大になった。

「あいつら無茶しやがるぜ。」

少し離れたところでヤムチャと悟飯、ビーデルを抱えた天津飯が身震いをしながらその壮絶な光景を見ていた。

舞い上がった砂煙が晴れる頃には辺り一体が底無しの穴が広がっていた。

――――

 

遠く離れた地ではその光景を遠隔透視し小躍りする男がいた。

そう北の界王である。

「やったぞ、やったぞ、ピッコロとトランクスがやりおったわい。

悟空がどこかに消えて焦っておったが焦り損だったな。本当によくやったぞ。」

 

果たしてこれで地球は救われたのであろうか?

その時地上ではサタンに恐ろしい魔の手?が迫っていた。

 



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全てを絶望に、フルパワーボージャックあらわる!!

(おっ、静かになったぞ。やっと諦めたか、このままカーシさんが倒すまで待っているか。)

ボージャックがトランクスとピッコロと激闘を行っていた時、サタンもトイレに籠り、籠城して我慢比べをしていた。

やっと係員も諦めたのかトイレの外が静かになったために、張りつめていた緊張が抜けかけた時だった。

「ミスターサタン、もう大丈夫ですよ。この大会のために来てくれていたドクターの専門が内科だったようです。

どんな腹痛も治してくれるそうです。

さあ出てきてください。」

 

先ほどまでサタンと根比べをしていた係員がなんと助っ人として大会の主治医を連れてきていた。

(なんで格闘技の大会の医師が内科なんだよ!)

とサタンは内心ツッコミを入れながらも、

 

「イタタタタタ、腹痛がひどすぎて扉を開けることができんのだ~。」

と(これなら大丈夫だろ)と用意していた万全の返答をした。

しかし、それを聞いた係員はうっすらと笑みを浮かべた。

 

「ではお助けしますミスターサタン。」

係員は待っていましたとばかりに宣言すると、なにかゴソゴソと慌ただしく動き回っている音がする。

(いったいこいつはなにをする気なんだ?)

サタンは係員の言葉に困惑しながらも、なにをするのかが気になり耳をすます。

するとなぜか扉の鍵が解錠にむけて動き出した。

「な、なにー!!いったいなにをしているんだ~!?」

焦るサタンに係員はまるで笑顔が見えるかのような爽やかな声で答えた。

「趣味がピッキングなんです。」

答えを聞き呆然としたサタンであるがすぐに気を取り直し(鍵を開けさせてたまるか)と今度は鍵を巡っての攻防戦となる。

これからかという時だった。

地面を揺るがすほどの爆音と、かなりの規模と思われる地震が起こる。

「次から次へとなんなんだ~?」

パニクりながらも冷静になるように努める。

すると今まで感じていた邪悪で巨大な気がほとんど感じられなくなったことに気づく。

そしてそれだけではなく、自分が溺愛する愛娘のビーデルの気が近くにあったことに気づく。

今まではボージャックの巨大すぎる気によって影に隠れるような状態になっていたことと、サタンの気を探る能力がまだ低いことから分からなかったことだった。

「ビーデル―今パパが助けに行くぞー!!」

サタンはドアを思いきり開け放つ、係員はいきなり開け放たれたドアに頭を打ち付けて気絶、猪のようにコースターに向かって走り、行く手を塞ぐものを弾き飛ばしながら走っていった。

腹痛と聞かされていた医師は呆然とするしかなかった。

 

――――

 

「やつの気は感じられなくなったか。

悟飯が心配だ。戻るぞトランクス。」

「はい。ピッコロさん。」

ピッコロとトランクスは大穴に背を向け去ろうとした時であった。

漆黒の闇に包まれている底無しとも思われる大穴から、禍々しく歪んだ光が溢れてきた。

その次の瞬間だった。

背筋が凍りつくほどの巨大で邪悪な気が大穴から這い上がってくるような不気味な感覚をその場にいる全員が感じた。

 

「今のはなんなんだ。

な、なんだと!!」

「どうして!?」

大穴に目を向けたピッコロとトランクスの表情が驚愕と絶望の色に染まった。

大穴からゆっくりと上がってくる影があった。そう倒したと思っていたボージャックであった。

「やつは倒したはずだ。

なぜ生きている。」

ピッコロが誰に聞くともなく、呆然と呟いている。

「ああ、お前たちのお陰で死にかけたが、押さえていた力を解放することで傷も全て癒えたわ。」

ボージャックの答えに辺り一帯が絶望に包まれる。

ボージャックは歪んだ笑みを浮かべて続ける、

「礼をせんとな。」

ピッコロとトランクスの真後ろから突如聞こえた邪悪な声。

聞き終える前にピッコロとトランクスの二人は焼け焦げて光なき大穴に吸い込まれるように落ちていった。

「フッ、やつらは自分の墓穴を掘っていたようだな。」

ピッコロとトランクスが反応することもできずに呆気なくやられたのは、天津飯に恐怖と絶望しか与えなかった。

しかし、天津飯は強靭な精神で踏ん張りボージャックに立ち向かう。

「真気功砲!!」

命をかけての真気功砲、しかしボージャックの服すら傷つくことはなかった。

ボージャックの体から溢れ出る気がバリアとなり全身を覆っていたからである。

「死に損ないがまだいたか。死ね。」

ボージャックが一瞬で作り上げた気弾を発する前に天津飯は力尽き大穴に落ちていった。

「つまらんな、そういえば、あの小僧はまだ生きていたな。

よい声で鳴いてくれると嬉しいが。」

見るもの全てがぞっとするような表情でゆっくりと悟飯にボージャックは近づいていく。

ボージャックが悟飯の前に降り立った時だった。

「…………」

なにも言わずいや、言えずに悟飯の前に守るようにビーデルが立ちはだかった。

目からは恐怖のためか涙が溢れ、足は震え続け今にも崩れそうになっている。

「小娘お前が先に死にたいのか。」

ボージャックの問いかけにも声を出すことすらできない。

「しゃべることもできんのか。では声が出るように今まで味わったことのないほどの苦痛を与えてやるか。」

ボージャックは丸太のような腕をビーデルに伸ばす、それに比べると風に吹かれるだけでも折れてしまいそうな細い首にボージャックの手がかかる、寸前だった。

「どうなってるんだ~!?」

上空から叫び声と共に誰かがボージャックの上に降り注いだ。

「ぱ、パパ……」

ビーデルの目には恐怖ではなく喜びの涙が溢れていた。

ついに英雄サタンが戦いの場に舞い降りた。



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サタンVSボージャック。お前の相手は俺がする!!

「あたたたた、おーイタ~。」

なぜか突如空から降ってきてボージャックに強烈な先制攻撃を決めたサタンが打ち付けた頭を抱えながら唸っていた。

頭には大きなこぶが出来上がっており、ある意味ギャグキャラ的なダメージの受け方である。

そのこぶをビーデルが撫でながら聞く。

「パパどうして空から降ってきてたの?」

 

当然の疑問であろう。

そのビーデルに説明するために、まだ残る痛みに堪えながらビーデルに話す。

「パパはビーデルのことが心配で、急いでコースターに乗り込んだんだが急ぎすぎていてシートベルトをしていなくてな、ハハハハハ。」

 

サタンは照れながらビーデルに話す。

そのサタンのいつも通りの光景に今までの恐怖が緩和されるビーデルであった。

ある意味場を和ませ、安心感を与えるという面では悟空と似ているのかもしれない。

だが、すぐにサタンは真剣な表情に変わる。

 

「ビーデル、ここは危険だ、悟飯君を連れて早く逃げるんだ。」

 

今までのほとんど見たことがない程の真剣な表情と、語り口調にビーデルもここが戦場であることを再認識する。

「でもパパ、私はパパのことが心配だよ。

一緒に逃げようよ。」

ビーデルは瞼に涙をため、今にも涙を流しそうになりながらサタンに懇願する。

それは当然であろう。

とんでもない力を持っていたZ戦士をも赤子の手を捻るが如くほふってきた化け物を、自分の父のサタンが1人で相手をするというのだ。

心配にならないはずがない。

 

そんなビーデルの頭に手を乗せ腰を下ろし目線をビーデルにあわせ、落ち着かせるように笑顔で話かける。

 

「大丈夫だ、パパは世界チャンピオンなんだぞ。

誰にも負けはしないさ。

それにパパはお前の花嫁姿を見るまでは死ぬつもりもないからな。

安心して悟飯君を連れて行きなさい。」

 

サタンの語りかけにビーデルは静かに頷くのであった。

 

「あっ、パパ。

このヤムチャさんはどうしよう。」

逃げようとしたビーデルが突如止まり、ヤムチャに視線を向けながらサタンに問いかける。

 

「この人はパパがあとで連れていくからビーデルは気にせず悟飯君を連れて行きなさい。」

 

再度ビーデルは頷くと、振り返り振り返りしながらも悟飯を抱えて戦場を離脱していった。

 

「さあ、いったか。

私の娘を逃がしてくれたことには感謝をしよう。」

 

サタンは睨み付けるようにボージャックに視線を向ける。

そこには恐れも何もない英雄サタンの姿があった。

「どうせこの星の人間たちは遅かれ早かれ死ぬことになる。

それに今はこの俺に膝を付かせたお前を殺したくて仕方がないからな。」

 

ボージャックは身も凍るような残忍な表情で怒りを露にしている。

 

「いいだろう。

この世界チャンピオンのミスターサタンが相手になろう。」

 

サタンは構えをとり、真剣な眼差しでボージャックを見据える。

「雑魚が楽には死なせんぞ。

ハアアアア!!」

 

ボージャックは溢れる気を解放する。

その体から暴風のような突風が辺りに巻き起こり、大地は揺れ、地面には亀裂が入る。

しかし、まだまだそれは序章であった。

次々と亀裂が入った地面から破片が浮き出す、大小に関わらず。

(しまったついついやつがビーデルを傷つけそうになったことに怒り、後先考えずに行動したらこんなふうに戦う状況になってしまったが。

どうしよう、このまま戦ったらわし死ぬかも、カーシさん早くきてくれ~。)

 

サタンはすでに涙目である。

今までの英雄の姿は微塵もなく、足はガタガタと震え、辛うじて立っているという状況である。

 

「おい、お前。わしは本当に強いぞ、今謝るならまだ許してやる。いや、許しちゃおうかな~。」

サタンは後退りしながらボージャックに語りかける。

「行くぞ。」

ボージャックは強烈な踏み込みからサタンめがけて襲いかかり、悟飯やトランクスを葬ってきた拳をつき出す。

「ご、ごめんなさい~。」

その拳はサタンに見事にかわされる、サタンが土下座をし、頭が下がった時にちょうど上空を通過した。

しかしこれがボージャックの怒りに火を注いだ。

「ふざけるな!!」

サタンが土下座から顔を上げた瞬間にボージャックの拳がサタンの顔面を直撃し、サタンは後方の岩にまで吹き飛び叩きつけられた。

 

「しまった。弄んでやるつもりがついつい力が入ってしまい殺してしまったか。」

ボージャックは吹き飛んだサタンはもう死んだて判断したのか背を向けて去ろうとした時だった。

 

「イタタタタタ、お~イッテ~。」

死んだと思っていた、サタンが顔に手を当てて地面を転がりのたうち回っていた。

「は、鼻血がこんなにも。

手加減なしだもんな~。」

垂れ下がる鼻血を袖で拭いながらサタンはたちあがった。

 

「な、なぜだ。あの小僧を葬った一撃より遥かに強かったはずだ。

なぜ死んでいない。」

ボージャックは驚愕し、表情を歪ませる。

そう今は悟飯を相手にしたときより遥かに強いフルパワー状態である。

その攻撃すら「イッタ~」と鼻血で済ませてしまうサタンに驚きが隠せないボージャックである。

サタンはサタンで

「悪くてちっこかったブウのパンチのほうが痛かったな。」

と界王神界で受けた純粋悪のブウのパンチを思い浮かべ身を震わせていた。

「貴様絶対に許さん。

この世から消し去ってくれる!!」

プライドを傷つけられたボージャックは怒りに燃え上がり再度サタンに襲い掛かり豪雨のような攻撃をサタンに開始した。

 

――――

 

「でりゃあ!!」

「効くかっ。喰らえハアッ!!」

「おーー。すごいぞ二人とも。」

赤いなにやら肉のような壁に囲まれただだっ広い空間で、黄金のオーラを撒き散らしながら、とてつもない戦いを悟空とベジータは繰り広げ、カーシはそれを手を叩きながら喜んで観戦していた。

だが喜びも束の間、カーシを衝撃が襲う。

カーシの開けているのか、閉じているのかわからない棒のような目が開かれた。

「な、なんでだ。少し離れたところにサタンの気がある。

その気が少しずつ小さくなっていく!!サタン今行くぞ、死なないでくれ。」

サタンの気を感じ取ったカーシは意識を本体に戻し、サタンを救出に向かう。

他のカーシはというと、煮えたぎる溶岩エリアのカーシはグルグル撒きになったザンギャを抱え向かう、また別のおもちゃの国改め、お菓子の国のカーシはというと、大好きなお菓子を食べるのを止める、しかし空間が閉鎖されているため出口がない。しかしこのような状況は一度悪に吸収されている時に体験しているため、その経験を生かし、「サタンー!!」という大声で空間に穴を開け脱出し、サタンの気に向かって飛び立った。親友兼家族のサタンを救出すべく4人のカーシが戦場に集結しようとしていた。



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サタン死す!?物語は主人公を失い最終回を迎えるのか!?

更新遅れてすいません。
試験やら試験勉強やらで忙しくて…。


カーシがサタンの気に向かって全速力で飛行している時だった。

とてつもない轟音が辺りに鳴り響くと同時に、爆風と熱気がまさに眼前で爆発が起こったのではないかと思える位にカーシに降りかかる、それをもものともせずにカーシは突き進むがそこでカーシを絶望が襲う。

爆心地に光の柱が上がると共に存在していたサタンの気が消失したのだ。

焦り、絶望というものを純粋悪のブウとの戦いでも少ししか感じることがなかったカーシであるが、今回はサタンが絡んでいるために、焦り、絶望、不安、恐怖という負の感情に苛まれる。

しかし、カーシは歩みを止めずにサタンの気が先ほどまで感じられた所に向かった。

――――

一方爆心地辺りの上空では息を切らしたボージャックが

大きなクレーターが出来上がった爆心地に視線を送り、歪んだ笑みを浮かべていた。

どうしてこのような結末になったのか、少し時を遡り、前回の続きから見てみたいと思う。

 

――――

 

怒り狂うボージャックはサタンに鬼の形相で襲い掛かり、拳を浴びせ続ける。それは豪雨のように降りかかっている。

「グホッ、ウゲ、グハアッ!!」

サタンの口からも止めどなく悲鳴が漏れる。

「消し飛べーー!!」

その数、数百、いや数千か数万かもしれないが、ボージャックがサタンに打ち込んだ後に、そう叫び、ボージャック渾身の力を込めた一撃がサタンの顔面を抉るようにとらえた。

「ーーーー」

サタンは何も言葉を発せず遥か遠方にボールが飛んでいくかのように吹き飛んでいった。

「ちっ手こずらせやがって。」

ボージャックは吐き捨てるように言うが、先ほどのことが脳裏に浮かんだのでサタンの死を確認すべく転がっているだろう所に向かった。

 

そしてそこでボージャックが目撃したのは、恐怖すら覚える光景であった。

今までボージャックが戦った者であればフルパワー状態でなくても一撃でも見舞えば、相手はバラバラになるか、攻撃を受けた部分が血飛沫を撒き散らしながら吹き飛ぶなどしていた。

しかし、サタンは今まで戦ってきたもの達の中でも最弱の部類に入るはずなのに、体が完全な状態で残っているどころか、

「ウウウウ~、痛いよ~、痛いよ~。」

と水道の蛇口をひねったかのように流れる鼻血を押さえながら揉んどりうっていた。

ボージャックは衝撃を受けるどころの騒ぎではない。

サタン対して恐怖さえも覚えはじめていた。

 

「こうなれば、辺りの一帯を焦土と化してもやつを魂ごとこの世から消し去ってくれるわ!」

ボージャックはいまだに痛みに揉んどりうっているサタンに手のひらを向ける。

するとボージャックの手のひらに気弾が出来上がる。

気弾は最初は直径1メートルほどであったが、2、3、4、5、と大きさを増し、約10メートルほどの大きさに到達する。

「この星を破壊するにも余りあるこの攻撃を受けられることを感謝するのだな。

安心しろ。この星を俺は気に入っている。だから、この気弾の威力が全てお前に訪れるように調節してやろう。死ねえーーー!!」

ボージャックの絶叫が轟き、巨大な気弾は放たれた。

地球の英雄サタンを消し去るがために。

気弾はゆっくりと進んでくるが、その迫力、威圧感は形容しがたいものがある。

サタンは回避することができない完全なる『死』を実感していた。

「ビーデル約束を守れなくてごめんな。

悟飯君と仲良くするんだぞ。

そしてカーシさん、いやブウさん、何度もワシを助けてくれてありがとう、今まで本当に楽しかった、本当にありがとう……」

 

サタン涙を、そして鼻血を流しながら、消え入りそうな声でビーデルやカーシを思い浮かべながら呟いた。

その数秒後に気弾はサタンに着弾し巨大な宇宙空間にまでとどろく光の柱を作り上げた。

 

――――

 

といういきさつがあったのだった。

ボージャックの歪に歪んだ狂気の笑みはなぜかなくなっていた。

大きなクレーターの中心地にあったのは、いや本当は何もないはずであるのに、何かが存在していた。

サタンを覆い隠すようにピンク色の幕が張られていた。

その肉の幕が固まり元の姿に戻る。

ウネウネ、グニュグニュ動き、形をなし、人形になるとその場にカーシが現れた。

先ほどの視点はサタンの所から一番離れていたカーシのものであり(仮にカーシAとする)、サタンを護ったのはサタンが戦っていた場所から一番近くにいたカーシ(カーシB)であった。

サタンの気が消えたように思われたのはカーシBが包みこんだためである。

カーシの肉体は気をも通さず、界王神でさえも見透すことができないものであるがためである。

また、カーシの肉体から分かれた分身体ではなく四身の拳により分かれたものであるためにカーシAは状況が掴めなかったのである。

「大丈夫かサタン。今回復してやるからな。」

カーシBはサタンに微笑みかけ両手をサタンに向けると温かい光がサタンを包みこみみるみる内にサタンの傷が回復していく。

「カーシさん…ありがどう…」

サタンはカーシがきた安心感と嬉しさで涙と鼻水を流しながら感謝を述べると、今までの疲れと、緊張感が解かれたからか、そのまま気を失ってしまった。

「サタンゆっくり休め、あとはおれが終わらしてやる。」

サタンには太陽のように全てを照らすような優しい笑顔を向けていたが、視線を上空のボージャックに向けると表情はガラリと変わる。

『怒り』ただその一言で表せるものである。

ボージャックは怒りの表情をした他のカーシ(カーシA、カーシC、カーシD)に囲まれていた。

 

 

 




次回も試験が続いているため遅れるかもしれません。申し訳ありません。


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決着、ボージャック編

大変ながらくお待たせしました。


「うっ!」

鬼の形相で迫り来るカーシの迫力と、漏れ出る桁外れの気に圧倒され、後退りをしそうになるが三方から迫られているためにどこにも行きようがない。

『お前はサタンをいじめて怪我させた。絶対に許さないぞ!!』

ボージャックに向けていた歩みを止めたカーシA、C、Dは声をダブらせて宣言する。

頭からは蒸気が吹き出し続け、体からは膨れ上がり続ける気が大気を、そして大地を揺るがし始めていた。

以前のカーシであれば苦しみ始めガリガリが既に現れていてもなんにもおかしくない憤りようである。

(なぜこの俺が、ヘラー一族最強の俺が…)

「こんなヤツに恐れを感じるんだ!!ふざけるんじゃ―グゲァッ!?」

ボージャックが怖じ気づいていた自分に腹をたて、怒りからカーシAに飛び掛かった時には既に、カーシの拳が深々とボージャックの顔面を抉っていた。

そのあまりにも強烈な余波により、目にも見えない速さで鮮血を撒き散らしながらボージャックは吹き飛んだ。

そのまま吹き飛び岩や岩盤に打ち付けられたならばどれだけ幸福であっただろうか…。

ボージャックが吹き飛んだ先にいたのはカーシC先程のでジャブのようにすうっと放たれたカーシCの拳が再びボージャックを襲う。

飛んできた勢いとカーシCのストレートが合わさりとてつもない破壊力になり、再び吹き飛ぶボージャック。そしてお決まりのように吹き飛んだ先にはカーシD…同じことが再びボージャックに起こる。

エンドレスリンチ。

三人のカーシがまるでキャッチボールをしているようである。

凄まじさからいったらカーシAが打ったボールをそのままカーシCが打ち、それをカーシDが打つといったまさに曲芸である。

だが、その光景も端から見たら三人のカーシが拳を付きだし突風を巻き起こしているようにしか見えない。

吹き飛ぶボージャックは既に目視できるスピードを遥かに越えていた。

Z戦士でも目視はキツく、気で探らなくてはならない状況である。

それが永遠に続くと思われた時であった。

「俺にもパスくれー。」

三人のカーシがいる更に上空からまるで戦場であるかを疑いたくなるぐらいののんびりした声が聞こえてきた。

「いくぞ~。トス。」

ちょうど声と同時にボージャックが飛んできたカーシAが両手でボージャックをトス、上空に舞い上がったボージャックにカーシBが

「アターーック!!」

と強烈なスパイクを見舞う。

ボージャックはそのまま超高速で地面に落下し打ち付けられた。

そのさまは、天津飯が嘗て悟空におみまいした配球拳や、ゴテンクスが魔人ブウ(悪)にピッコロとともにみまい、天界を粉々に破壊した技と酷似していた。

威力は段違いではあるが。

だが、ボージャックの地獄が終わることはない。

既に地上で待っていたカーシCDがボージャックが落ちて砂埃が舞うなかに入っていき、何かをし始めた。

中からは

『ブウブウブウブウブウブウブウブウブウブウ。』

という声と、打撃音が鳴り響く。

想像に難くない、カーシCDが二人でボージャックを袋叩きにしているようである。

それはまさにあるガキ大将が弱い者を砂煙を舞わせながらいじめているのと同意である。

それが延々と続き一時間が経過した…

『あ~あ…、やり過ぎちゃったな…、見ることは勿論、言葉に表すこともできない状態になっちゃったぞ。』

四人のカーシが嘗てボージャックであった物を囲んで見ている。

一様に冷や汗を流し不味かったなという顔をしている。

怒りに任せた結果がこれである。

既に放送コードを遥かに越えていて、モザイク必須な惨状である。

『ウ~ン、さすがにこれは御菓子にしても食べたくないぞ。』

四人のカーシは腕を組悩んでいると。

突然カーシAの腹が眩く光始める。

「おっ、ちょうどよかったぞ。」

膨らみ光る腹を持つカーシがポンと両手を叩いて笑顔になる。

「それ」

カーシAが掛け声をあげると腹に穴があき、中から

「ハアーーーッ!!!」

「勝つのは俺だーー!!!」

という叫び声とともに眩い黄色と青色が混じる気功波が飛び出したかと思うと、その気功波が見事に元ボージャックだった物を見事に消し去ったのだった。

そして地球の危機は再びカーシとサタンの活躍によりさることとなった。

しかし、問題はまだ残っていた。

「カーシ~。いいとこだったのによー。邪魔すんなよな。」

不機嫌な表情で文句をいう悟空と。

「貴様どういうつもりだ!!あのまま戦っていれば俺の勝ちだったんだぞ!!」

怒り狂うベジータである。

先程かめはめ波とファイナルフラッシュを撃ち合っていた時に突然壁に穴があきかめはめ波とファイナルフラッシュが吸い出され、勝負がうやむやになっていたことに対して両者は怒り心頭だったのだ。

「まあまあ、また全力で戦っても大丈夫な所を貸すし、俺も一緒に修行してやるから勘弁してくれ。」

とカーシが頭を下げて謝罪したことにより、悟空を味方につけ、二人でなんとかベジータを納めて場を終結させた。

事故が起こったとなっては色々と面倒なのでカーシが全ての挑戦者を倒し、優勝者なしとなった。

ただし裏では悟空とベジータに優勝賞金の半額が渡されたのであるが、それは知る人ぞ知る極秘の内容となった。

ボージャックの残骸処理費と戦いを妨害した慰謝料である。




次回はまだブウ編には入らずセル編後のようにその後の話をいれようと思います。
ビーデルと悟飯や3とか。
いったら時間稼ぎですが…。


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天下一大武道会後

終業式終わったー。
夏休みだー。ということでこんな時間に更新です。


天下一大武道会そして、地球に訪れていた危機も去り、また平和な日常が戻っていた。

今回もその後の平和な一幕を見ていくことになる。

――――

「ハァハァ…」

サタンが息をきらして疲労困憊の様子で延びていた。

天下一大武道会が終わった後にもブウ編に向けて修行かといえばそうではない。

「サタン様、これぐらいで疲れてもらっては困ります。

まだ目を通してもらわなくてはならない書類が山のようにあるのですから。

まったくこれだから地球人は…」

サタンの横にいるのは優しいカーシではない。

カーシがサタンの秘書にと捕らえたザンギャであった。

最初に連れてきた時には、ボージャックが容易く退治されたのを目の当たりにし、恐れおののきしぶしぶ言われた仕事を嫌々行っていたのだが、仕事をしてみると意外と面白く、仕事の虜となり、敏腕秘書となっていたのだ。

「あのぉ、ザンギャさん、少し休憩が欲しいかなあと…」

サタンは恐る恐る自分の望みを切々と訴える。

「何かおっしゃいましたか?サ·タ·ン·様」

それに対してザンギャはとびきりの笑顔でそうかえす。その笑顔は誰もが魅了されるほどのものであるが、その笑顔の裏に隠されたなにやら恐ろしいものを第六感でサタンは感じたのか

「ヒィッ、いえ、仕事は楽しいなあ。」

と素直に仕事に戻るのだった。ザンギャはかなりのドSであったとさ。

 

――――

「ねえ、カーシさん、今度はいつ悟飯君の家に連れていってくれるの?」

 

ビーデルはあれから悟飯の家によく遊びに行く仲になっていた。

そしてビーデルと共にカーシもついていき、悟空と修行をするというのが習慣となっていた。

以前のサタンであれば「パパより強いやつじゃないとダメだー!!」と猛烈に反対していたのだろうが、すでに未来でのビーデルと悟飯の仲睦まじい姿を見ていたので、許していた。

ただし、何かあってはいけないとカーシにはついていくようにお願いはしていたが。

以前一度仕事をサボってビーデルについていき、その後ザンギャに地獄を見せられたので自重するようになっていた。

 

「来週行こうな。

今悟空達は温泉旅行に行っているからな。」

カーシが優しくビーデルを慰める。

「うん、そうだったね。

じゃあカーシさん、舞空術の練習に付き合ってよ。」

「ああいいぞ。」

すでにカーシがビーデルの師匠となり修行をつけるのも日課になっていた。

数年後いや、下手すると一年以内にはサタンを越えるのではないかとカーシが感じ始めるほどに、ビーデルは素質に溢れていた。

 

――――

 

「おっうめえなあ。

悟飯おめえももっと食えよ。」

「はっ、はい…///」

 

「………」

集中して食べ物を掻き込むベジータ。

すでに戦場である。

豪華温泉旅館の厨房VSサイヤ人二人という様相である。

大会の副賞であった温泉旅行もこっそりもらっていたために悟空一家とベジータ一家が共に旅行に来ていた。

あのベジータがあり得ない。と思うだろうが。

「温泉で戦ってやっから」

という悟空と、

「あんた一人で留守番できるの?

食事とかも。」

と有無も言わせぬブルマに押されてついてきたのである。

 

「お客様申し訳ありません。

食材がきれてしまいましたので、もうお出しできません。」

厨房から支配人が泣きながらやってきて謝罪し始める。

「なんだと、俺はまだ腹八分目にも至らんぞ。ふざけやがって!」

「お父さん押さえて押さえて。」

怒り心頭のベジータをトランクスが押さえる。

「まあいいじゃねえかベジータ。

おらもまだ腹いっぺえじゃねえがうまかったしよお。」

悟空もベジータをなだめ始める。

そして

「よっし、温泉に行くぞ。」

さっさと納めて温泉に向かう一行。

支配人達はほっと胸を撫で下ろすが、サイヤ人達が、悟空とベジータが共に行ってなにも起こらないはずはなかった。

 

「カカロット!!俺はお前と戦えるというから来てやったんだぞ。

のんびりと温泉なんかに入っていられるか!!」

「分かったってベジータ。

風呂入る前に一汗かくか。」

「それでこそ戦闘民族サイヤ人だ。」

何を思ったか二人は浴衣のまま戦闘を始めようとする。

「悟空さ!!」

「ベジータ!!」

 

『戦うなら外でやりなさい。』

二人に一喝されて静かに外に出て戦闘を始めたが、二人の戦闘は激しく、温泉街は大惨事になった。

1ヶ月分の食材はなくなり、温泉街は大惨事。世界旅行のはずが、一泊半で終えることとなった。

その大惨事の傷痕と観光客の記憶は後に神龍によって丸く納められました。

チチとブルマは疲れを癒すはずが、余計に疲れることとなった。

 

 




次回は批判殺到するかもしれない3についての話にしたいと思います。
怖いが避けては通れない道ですので。


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目覚めた力、超3覚醒!

なかなか案がまとまらなくて更新遅れました、申し訳ないです。


「こんにちは、悟空さん、悟飯君。」

カーシの背に乗りやって来たビーデルが挨拶する。

「おう、ビーデルとカーシじゃねえか、オッス」

「こんにちは、ビーデルさん、カーシさん。」

親子二人でビーデルとカーシに挨拶するが、ここまでかけはなれた挨拶をする親子もないだろう。

最初はビーデルもこのように挨拶され戸惑っていたが、慣れとは大したものでもう全く気にならなくなっていた。

「悟飯君、今日は一緒に勉強することになっていたわよね、行きましょ。」

ビーデルはビーデルの元にやって来た悟飯の手を取り宙に浮く。

「えっ!ビーデルさん舞空術使えたの?」

驚く悟飯にしてやったりという顔をしてビーデルは嬉しそうに答える。

「どう驚いた?カーシさんに教えてもらったんだ。

なんたって私はミスターサタンの娘なんですからね。」

自信満々に話すビーデルには悪いと思いながらも、悟飯は聞いてしまった。

「サタンさんは、舞空術使えたっけ?」

そう今までサタンが舞空術を使った所など誰も見たことがなかった。

悟飯は意識を失っていたがボージャック戦でも空から落ちてきたということもあった。

「あはは、カーシさんが言うにはパパは気のコントロールが雑だがらできないんだって。」

ビーデルは苦笑いしながら続けて話す。

「それに今は修行どころじゃないの。

仕事に目覚めたザンギャさんに仕事場に監禁されちゃって……」

「あはは…、そうなんだ。」

ザンギャに監禁されるサタンの姿が容易に想像できて悟飯も苦笑いするしかなかった。

ドラゴンボールの世界の女性はチチにしろ、ブルマにしろ、18号にしろ、皆総じて強かった…宇宙最強の戦闘民族サイヤ人を越えるほどに…

と話ながら悟飯とビーデルは家に向かって行った。

 

「カーシ今日も頼むぞ。」

「おう、いくぞ。」

二人は上空へあがっていく。

悟空は超2になり、黄金のオーラにスパークを纏わせた状態になり、カーシは気を解放した。

「いくぞカーシ!」

 

「来い悟空!」

上空で二人はぶつかりあった。

武道会以来、ビーデルとカーシはたびたび悟空一家の元を訪れ、ビーデルは悟飯と、カーシは悟空とといったように親交を深めていっていた。

 

一時間後

 

「おらワクワクしっぱなしだぞ、こんなつええヤツと全力で戦えてよお。

もう嬉しくてたまんねえんだ。」

悟空は満面の笑顔でカーシに心境を吐露する。「でもよ、カーシおめえまだまだ力はそんなもんじゃねえだろ?

拳をあわせっから分かるんだ。」

悟空に図星を当てられカーシは肯定も否定もしなかった。

「おらもカーシの本気と戦ってみてえな、もっとわくわくすんだろうな。」

悟空は少し悔しそうな顔をすると、再度気をあげ始める。

しかし、先ほどとは違った現象が起き始めた。

悟空の気がとてつもない速度で上がり始めたのだ、そしてそれだけではない、黄金のオーラが激しくなり、ツンツンと尖った髪が伸び始め、まるで針ネズミのように、そして眉がなくなっていた。

「お、おらはどうしちまったんだ?」

その変化に一番驚いていたのは本人であった。カーシは(おっついに3になったか)と冷静にその状況を見つめていた。

サイヤ人として戦うことへの喜び、力への渇望この二点が悟空を超3へ導いたのだ。

ただし、超3へ至るために越えるべき戦闘力を悟空が備えていたことが前提条件となっていたが。

「ヒャッホウ!!やったぞ、おらはまた壁をのりこえたぞ。

超化をさらに越えた超化を更に越えたぞ!!」

悟空があの極悪面で喜び勇む姿をカーシは

「やっぱり怖いかおだ、喜んでいるようにも思えない。」

と苦笑いを浮かべて見ていた。

悟空だけでなく、もう一人驚愕しているものがいた。

そう西の都のカプセルコーポレーションに居を構える男ベジータだ。

「ど、どういうことだ。

バカデカイ気が突如現れたと思ったら、カカロットの気じゃねえか。

なぜここまでの気をやつが持っているんだ。

大会ではほぼ互角、いや俺の方が少し勝っていたのに。

クソッタレ!確かめにいくしかねえ!!」

いてもたってもいられずベジータは悟空の元に飛び出していった。

――――

「よおし、だんだんこの形態にもなれてきたぞ。

もう一回戦いくぞカーシ」

悟空が普段通りの準備運動をし、練習再開をカーシに告げる。

しかし、カーシは首を振り、視線を更に上空に向けた。

その視線の先には額に青筋を浮かべたベジータが怒りの形相で佇んでいた。

突如ベジータが怒鳴った。

「カカロット、貴様その姿はどういうことだ!!」

悟空に対して凄まじい勢いで怒鳴り続けるベジータ、

「おい、ベジータ落ち着けって。

全て話してやっからよ。」

悟空はまあまあとベジータを宥めようとするがまるで効果はない、いやさらにベジータを激昂させた。

「落ち着いていられるか!!

どうしてお前はそんなに力をつけたんだ!

なぜこの俺より一歩先には進むんだ!」

ベジータの心からの叫びであった。

悟空はそのベジータの嘆きを黙って受け止めていたが、ついに口を開いた。

「おっし、ベジータおらと戦わねえか。」

 

悟空からのいきなりの提案にベジータは少し驚くが、すぐに了承する。

「ああいいぜ、ぶっ殺してやる。」

怒気を孕ませ話すベジータに悟空は更なる提案をする。

「ちょっと待てよ。

殺し合いじゃねえぞ。

サイヤ人らしく戦いを楽しもうじゃねえか。

今までの戦いは殺るか、殺られるかだったが、今回は楽しもうってことだ。」

サイヤ人の原点に帰り戦おう。サイヤ人の王子であるベジータに悟空は語りかけた。

「いいだろう。今回だけはお前の提案に乗ってやろう。」

渋々ながらベジータは認めた。

そして、超3悟空と超2ベジータのサイヤ人の原点である戦いを楽しむ戦いが始まった。

力の差はあったが共に全力を出しきった。

「はあはあ、久しぶりに戦ったが、やはり戦いはいいもんだ。」

戦う前は不満を述べ続けていたベジータであったが、やはり純粋なサイヤ人である。

戦いが始まるとその戦いを楽しんでいた。

「だが、俺もお前と同じいや、サイヤ人の王子としてお前を越えなくてはならん。

どうすれば俺は強くなれるんだ。」

ベジータの独白を聞いていた悟空は密かに笑みを浮かべ、ベジータにいい放った。

「ベジータ力を解放しろ!!」

「なんだか分からんが、やってやるぜ、ハアアアッッ!!」

あの時の、目覚めた時の悟空のように、ベジータの気は限界を遥かに越えて高まり続ける。

それと同時に黄金のオーラが輝き、髪が伸び始め、眉が抜け落ちた。

「こ、これは!?」

呆然と自分の変化に驚いているベジータに悟空が話しかける。

「それが限界を更に越えた姿、超3だ。

おめえも戦いに喜びを感じて、力を欲したからサイヤ人の眠っていた部分が起こされたんだ。」

悟空がベジータに言うがベジータは全く聞いていなかった。

「ハハハハハ。俺は最強の力を手にいれたんだ!

いくぞカカロットーー!!」

「しょうがねえな。こいベジーターー!!」

悟空とベジータはその後も喜びを感じながら戦い続けた。

しかし、その代償は大きく、パオズ山の大部分が戦いの余波で消失していた。




最初は悲しみから超3へとしようと思ったんですが、超1が負の感情である怒り、超2がどちらにも位置しない平常心ときたのでならば超3は正の感情の喜と楽にしました。
ドラゴンボールのファンの人や豊富な知識を保有した方には大変な不満や反論を持たれるかもしれませんが、何卒寛容にお願いします。


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番外編 超3は地球を救うが、宇宙を狂わす

本編とは全くかかわり合いはありません。
したがって繋がりもありません。
ので昨日の超3化の考えも使われておりません。


「よし、最後の一つだ。

これで願いが叶えられる。」

悟空が岩の間からドラゴンボールを取りだし嬉しそうに呟いた。

なぜまたもやドラゴンボールを集めることとなったのか?

それは約半日前になる。

 

――――

 

「おお!やったな悟飯、この年で超3になれるなんてさすがおらの息子だ。」

悟空の目の前には地面につくほどの金髪、そして眉をなくした極悪顔の悟飯が立っている。

「これで僕もお父さんに近づけたかな?」

少し照れながら悟飯は悟空に聞く。

「おお、もちろんだぞ。

ああそれと、チチにもこのこと知らせてやらねえとな。

おら先にいってっからな。」

「ちょっと待ってよおとう……」

悟飯が止めるのも聞かずに悟空は飛び立っていった。

「いいのかなあ?」

悟飯は以前超化したのを見た時の自分の母親のことを思いだし、心配にはなったが、そのままにするわけにもいかず、悟空の後を追った。

「悟空さ、何がそんなにめでてえだか?」

チチが悟空がいきなり帰ってきてめでたいことが起こったというのだが、何が起こったのか詳しく教えてはもらえてはいないので、悟空に尋ねる。

「もうすぐ分かるって。

おっ帰ってきたようだ。

悟飯入れよ。

チチ驚くなよ。」

悟飯は悟空に促されそっとドアを開け、その姿をチチに見せた。

その時時間は止まった。

「…………」

「どうしたんだチチ?

めでてえだろ?」

いきなり黙りこんだチチの顔を覗きこみチチに話す。

その時だった。

「どうなってるだーーー!!!おらの可愛い悟飯ちゃが超ド不良になっちまっただーーー!!!

金髪なだけでなく、長髪でしかも眉まで剃っちまってーーー!!」

取り乱して泣き叫ぶチチに悟空が空気を読まない一言を容赦なく叩きこんだ。

「すげえだろ!」

「悟空さのバカヤローー!!!」

チチの渾身の一撃が悟空の顔面に叩き込まれる。

「ぶわー!!」

悟空はとんでもない速さで空に舞い上がりお星さまになったとさ。

「いちちちちっ、カーシのパンチより痛かったぞ。なんでチチは怒ったんだ。」

どうやら怒りと力が何倍にもなるという悟飯の特性はチチから受け継いだようだ。

「お父さーん」

遅れてやってきた悟飯は首を傾げている悟空に分かりやすく説明した。

「そういうことだったんか。

じゃあよ、まずは超3化を解かないとな。」

悟空は悟飯に指示する。

しかし悟飯は困った顔をして

「解けないんです。

どうしたらいいんですか。」

と絶望的な答えを悟空に言う。

「ドヒャー!まさか、解けなくなっちまったのか?」

驚く悟空に対し悟飯は首を縦にふる。

「しょうがねえな。困った時のドラゴンボール頼みだ。」

悟空が解決法を言った時だった。

「待て悟空!ドラゴンボールにはリスクはないが、お前達ばかりが使いすぎた。

俺がチチを説得して解決してやる。」

突如現れたピッコロは意気揚々と飛び立ち、家に着き、入って行く。自信満々に。

「そうかわかっただ。

可愛い悟飯ちゃが眉をそったのは、ピッコロおめえの真似をしたからだな。

悪い影響を与えるおめえは家に来るのも、悟飯ちゃに近づくのも禁止だ。

出て行けー!!」

追い出されたピッコロは空に向かい叫ぶ。

「俺は悟飯に会えなくなったら、何を楽しみに生きて行けばいいんだーー!!」

大声で叫んだ後に悟空と悟飯が降り立つ。

「どうだったピッコロ?上手く―」

「悟空、皆を集めろ!ドラゴンボール探しだ!!」

――――

ということがあったのだ。

「出でよ神龍!!そして願いを叶えたまえ!!」

空が曇り、七つのドラゴンボールが共鳴するかのように光った後に、巨大な神龍が現れた。

「さあ、願いを言え、どんな願いも可能な限り二つだけ叶えてやる。」

いつも通りの口上。

続いて悟空が臆せず願いを述べる。

「悟飯を元の状態に戻してくれ。」

悟空が悟飯を見るがいっこうに変わらない。

「その願いは叶えることはできない。

私の力を遥かに越えた物だからだ。

さあ、別の願いを言え!!」

悟空達は暗礁に乗り上げた。

しばし考えこんだ後悟空に妙案が浮かんだ。

「いいこと思い付いたぞ。

神龍、ビックゲテスターを蘇らせてくれ。」

『!!!』

その場にいる全ての仲間が言葉を失った。

ビックゲテスターとはメタルクウラを作り出し、ナメック星を滅ぼそうとした存在である。

それをということである。

「容易いことだ。」

その一言の後に神龍の目が赤く光り、

「叶えてやった次の願いを言え。」

叶えられてしまった。

皆の顔から驚愕の色が消えないうちに悟空は「じゃあ行って来るぞ。」とだけ言い悟飯を連れて瞬間移動で消えていった。

 

―20分後―

 

「行って来たぞ。」

悟空が帰ってきた、そして悟飯も変わらず超3の姿で帰ってきた。

「悟空一応聞いておくが、どうしたんだ?」

ピッコロの問いかけに悟空は平然と答える。

「ああ、ビックゲテスターに悟飯の気を吸いとらせて元に戻そうとしたんだがよ、ビックゲテスターもたいしたことなくてよ、すぐに破裂しちまった。

まいったぞ。」

頭を掻きながら苦笑いを浮かべる悟空を見て、皆言葉が出なかった。

「しょうがない、もうこうなったらかめはめ波で消費するしかないな。」

「そうだな。」

ピッコロの提案に悟空ものり、悟飯に本気のかめはめ波を宇宙に向けて打つことになった。

「まだだ。おめえの本気はそんなもんじゃねえはずだ。

全力で解放しろ!」

「はい!お父さん!」

増加、圧縮、増加、圧縮を繰り返し、とてつもないかめはめ波が作り出された。

そしてそんなとてつもなく危険な物が宇宙に放たれた。

他銀河が一つなくなり、新たなブラックホールが出来上がった。

後に悟空が界王に叱られることになるのは当然のことであった。

そして残りの願いでチチの超3についての記憶を消してもらい、全ては丸く治まった。

それ以来悟飯は二度と超3化することはなかった。



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最終章へのプロローグ 狂い出す運命という名の歯車

またもや更新が遅れました。
そして、プロローグなので短いです。
本当に申し訳ないです。


辺り一面は空が雲で覆い尽くされているために、暗闇に支配されている。

そんな中でひときわ明るく輝いている所が存在している。

荒野のど真ん中、よく戦闘が行われるような所だ。

そんな所に二人の男、カーシとサタンがいる。カーシとサタンの前には、透明の中心に赤い星が浮かんでいる、オレンジ色の玉が、そしてその七つの玉から巨大な龍が現れている。

「その願いは叶えることができない。」

「!!!」

神龍は重々しく、威厳がある声で、カーシとサタンの願いを粉々に打ち砕いた。

まさかの神龍の答えに、カーシとサタンは茫然自失といった様で立ち尽くしている。

呆気に取られた後に、神龍の言った答えを頭の中で反芻したサタンの顔には絶望の色が色濃く現れている。

カーシもまたどうしたらという困惑の表情を浮かべている。

だがこのまま黙って手をこまねいていても埒が開かないと思ったカーシが神龍に尋ねる。

「なぜサタンは元の未来に戻れないんだ?」

そうカーシとサタンの願いは、サタンの憂いが無くなり悔いがなくなったために元の未来に戻り、それと同時にこの世界のサタンをここに呼び出し、カーシが裏で手を回しながら元の未来と同じようにサタンとブウが仲良く、そして問題を起こさないように収めようと考えていたのだ。

「簡単なことだ。この世界はお前のいた未来の世界とは別の未来を歩み始めているからだ。

例をあげると、この世界では孫悟空が死ぬことはなく存在し、ベジータは覚醒し、この両者共に未来とは違い計り知れない程の力を持っている。

これらがお前のいた未来の世界との大きな異なりだ。

その為にお前は元の世界に戻ることはできないのだ。」

神龍は淡々とサタンが未来に戻ることが出来なくなった理由を説明した。

「そうか……」

「どうしようカーシさん?」

カーシはなにかを考え込むように俯いて沈黙し、サタンはうろたえるしかなかった。

二人はその状態のまま何も手につかず、ただただその場にたたずむしかなかった。

「あのう、他の願いは?ずっと待っているんだけど…」

途方にくれる二人の前で、他の願いが言われないことで神龍も二人と同じように途方にくれていた。

 

◇◆◇◆

ということで最終章のプロローグです。

ここで物語は大きく分岐します。

本当は片方だけを書くつもりだったんですが、未来はいくつもあるんだということで両方を書くつもりです。

で内容なんですが、

1、この物語の主人公であるカーシが一人でことを運び、物語を完結させた上に、とんでもないパワーアップをして完結。

 

2、この物語だろうと、原作はドラゴンボールだろということで、せっかくパワーアップをした悟空とベジータを使わないわけにわいかない。ということでこの二人が大暴れして物語が進み完結する。

 

という二つの構想があります。

どちらを先にすればよいか、または1、2どちらかいらんだろ等々意見を頂けたら嬉しいです。



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天下一武道会に向けて

皆さんご意見ありがとうございました。
皆さんの言う通りドラゴンボールといったら、悟空とベジータですね。
ということで、悟空とベジータが魔人ブウと戦うということで、原作とは大きく変わりますが、最初は原作沿いで進んでいきます。
カーシの主役編もいいなと言ってくださるありがたい意見もあったので、本編が終わったらパラレルワールドとして簡単に描かせてもらいます。


 神龍に願いを断られてから約1週間、カーシとサタンもショックから立ち直り、先を見据えて修行に励んでいた。

 そうサタンにとっては、プライドがガタガタにされ、現実を痛いほど知らしめられた、天下一武道会、そして、カーシにとっては、今だこの世には復活していないが、なんとかしなくてはいけない、もう一人の自分ブウのためにだ。

 セルゲームから約5年、カーシはアルティメット悟飯に少し劣るか、同等程度までと急激に力をつけ、サタンも仕事に追われながらも、サイヤ人編のヤムチャクラスまでは昇りつめていた。

「カーシさん、今日もいい汗かきましたね」

サタンはタオルで汗を拭いながら、笑顔でカーシに話かける。

「そうだな、俺も相当力が上がったぞ。今ならアルティメット悟飯にも負けないぐらいになった。ベジット以外には怖いものはないぞ」

カーシも順調にきている修行に満足し、安堵の笑みを浮かべている。

「じゃあ、お菓子を食べたらまた再開しましょうか」

「サタン様!」

笑顔でカーシに提案していたサタンであるが、突如として現れた、天敵いや、恐怖の対象により凍りつく。

「サタン様、御仕事の時間です。ご準備を。」

「ヒッ!ザ、ザンギャさん、もうそろそろ天下一武道会ですし、チャンピオンとしてね面目もありますので、もうちょっと時間がゴニョゴニョ。」

ザンギャの気迫に押されながらもなんとか言い切るサタン、修行により戦闘力を上げたことが、こんなところにも表れていた。

「関係ありません!!そんなに修行をお望みなら、わ·た·し·がお相手しましょうか?」

「ヒ~ッ!!」

それまで鉄仮面のように表情がなかったザンギャが満面の笑みを浮かべてサタンに提案する。

サタンはその底知れね笑顔に脅え、動くことすら儘ならない。

そう、ドラゴンボールの世界では戦闘力が第一なのだ、サタンは強くなったといえども、たかだか戦闘力4桁、ザンギャに至っては億越え確定である。

サイヤ人編のヤムチャがセル第二形態に挑むようなものである。

 しかし、サタンは果敢に立ち向かった、カーシの後ろに隠れながら。

「カーシさんからもザンギャさんに言ってやってくださいよ。」

そうサタンの一番の親友にして、今や世界一の戦闘力を誇り、このザンギャを秘書へと捕まえたカーシである。

「任せろサタン!ザンギャ…」

「何ですか、カーシさん!!」

カーシの言葉を鮮やかに遮り、周囲を凍りつかせる程の威圧を込めた声で聞き返す。

まるで反論など許さないと言うように。

「サタン、がんばれ!」

「そ、そんな~」

くるっとサタンに向き直ったカーシは、冷や汗を流しながら、サタンにエールを贈った。

「さあ、行きますよ。サタン様」

「い~や~だ~」

笑顔のザンギャは有無を言わさずサタンの襟首を掴んで引き摺っていった。

「あー、怖かったぞ…。ごめんなサタン」

この世は戦闘力だけではなかった。そうドラゴンボールの世界は、女性が強いのだ。

 こうして、サタンは修行と仕事を両立し、カーシは修行に明け暮れて来る天下一武道会、来るバビディ、魔人ブウに備えた。

 

――――

 

 その頃、パオズ山では、

「いいぞ、悟天!」

「行くよお父さん!!」

死ぬことがなく、存命中の悟空と、父の愛を受けながら育った悟天が修行を行っていた。

「ふぃー、強くなったな、悟天。まさか超化できるとはおら、おったまげたぞ。」

先ほど見せられた、驚愕の真実、悟天の超化について話す悟空。その顔は驚きだけではなく、喜びも含められていた。

「エヘヘ、すごいでしょ!

でもね、トランクス君もできるんだよ!」

「ほんとけ、まさかこの年で超化できるとはな。

悟飯もうかうかしてられねえぞ」

嬉しそうに話す悟天に何度も驚かされた悟空であったが、このうえなく嬉しそうな悟空であった。

そして、また別の所でも驚愕の事実に驚かされた人物が、そうブルマとは結婚はしていないので、同棲中と言うのが適切であろう、ベジータである。

「ま、まさか…!!超化できるとは…」

目の前で見せられた驚愕の事実。

自分の愛する息子トランクスが超化したのだ。

未来トランクスではなく、セルゲーム時に赤ん坊であったあのトランクスである。

「でもね、パパ、悟天君もできるんだよ」

「な、なに!!超サイヤ人のバーゲンセールだな…」

ベジータの名言がでた所でこの親子も重力室で、超重力化で修行を再開し、この後、遊園地に連れていくとベジータは約束させられていた。

――――

 

「悟飯君、今日も一緒にしよ」

「いいですよ。何回でも付き合いますよ」

「今日こそは、悟飯君を驚かせるわよ」

端から見れば、よからね妄想が掻き立てられる会話である。

そして、ビーデルはかなりもてるほうなので、この二人の会話に聞き耳をたてている者達(主にシャプナー等)も歯軋りをしている状態だ。

 しかし、そのような甘いものではない。

あの天下一大武道大会後にすっかり仲良くなった二人は今でもともに修行をしていたのだ。

素質あるビーデルの伸びは凄まじく、サタンは言うまでもなく、現地球人最強のクリリンさえもうかうかしていられない状態である。

 で、認識のことであるが、ビーデルは悟飯を異性として意識しているが、悟飯はよい修行仲間兼、親友と両者でだいぶ認識のズレがある。 悟飯が鈍いのか、はたまたサイヤ人の血が悪いのか。

 

――――

 

とまあ、主要人物はこんな形で天下一武道会まで過ごしていった。




最終章に入りながらも、ベジータとトランクスの遊園地の模様を書きたいななどと余分なことを考えています。


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天下一武道会前夜の出来事

 天下一武道会前日の夜であった。サタンはカーシに話があると呼び出された。その場にはザンギャも同席していた。

「サタンごめんな。用事ができてしまったから、明日の天下一武道会には出られなくなった」

「!!」

 サタンには悪そうな顔で謝るカーシでありカーシ自身も残念そうな表情であったが、サタンにはそれ以上にショックなことで言葉を失っていた。

「…そうですか。残念なことですが、カーシさんの大事な用事なら、わしの大事な用事といっても過言ではない。安心して行ってきていいですよ」

サタンは本当に申し訳なさそうな顔をするカーシを見ていると、自分まで悲しくなってきてしまったので、覚悟して笑顔で送り出すことにした。

「ありがとなサタン。それとな、天下一武道会のことなんだが、俺の変わりにザンギャが出てくれることになったぞ」

カーシは一応話で今回の天下一武道会ではサタンが優勝することになるということは聞いていたが、話によるとなんとも情けない勝ち方であり、不審に思われるかもしれないということで、サタンを引き立てるための自分の代理を見つけてたてたのだ。

「ええ、あまり気乗りはしませんが、サタン様の秘書として頑張らせてもらいます」

ザンギャは言葉では、そう言っているが、目の奥で何かが光った感じがしたのをサタンは敏感に察知していた。

「じゃあ、ザンギャさんよろしくお願いします」

口ではこういうサタンであったが、心のなかでは(手加減なしのドSなザンギャさんじゃあ死人がでるかも)と一抹の不安を抱えていた。

「じゃあサタン、行ってくる」

カーシは真剣な顔になるとサタンに挨拶をして、出ていった。

その姿はサタンになにか底知れない不安を与える姿であった。

(カーシさんならきっと大丈夫だ。)

もう姿は見えなくなってはいるが、カーシが出ていったほうを見ながら、そう自分に言い聞かせていると、サタンにやはりと言うほどの声が掛けられた。

「ではサタン様参りましょう。」

「えっ何ですかザンギャさん?」

全く言っていることが分からないという顔で問い返すサタンにザンギャはいつもどおりの秘書の顔になり説明を始める。

「サタン様だけでなく、私も参加するとなると、仕事が滞ってしまいます。なので今日中に出来る限りの仕事をサタン様には片付けてもらいます。今日は徹夜ですよ。寝させてあげませんからね」

茶目っ気を出したのか、最後の所でウィンクをしたザンギャ、普通の男であればイチコロであるが、サタンには某ワ〇ピースのおかま王のデスウィ〇クを受けたように強烈なダメージを物理的にも、精神的にも受けていた。

「…はい…」

逆らっても意味はなく、余計に大変なことになるということをサタンは身をもってこれまで味わってきたので、元気なく頷いて渋々仕事部屋に向かうのであった。

 しかし、サタンの悲劇はこれからが本番であった。

「こんなに朝までじゃあ終わらないよ~」

「黙って手を動かしてくださいね」

目の前にうず高く積まれた書類の山を見て泣き言をいうサタンに、ザンギャは冷たく言いはなつ。

 サタンは大きくため息を吐くといそいそと仕事に取りかかっるのであった。

 二人が仕事をしていると、なにやら玄関のほうで言い争うような怒鳴り声と、爆発音、悲鳴が順に聞こえてくる。

「なにごとだ!」

「私が見て参りますので、サタン様はお仕事を続けてください」

驚くサタンに冷静にザンギャは告げて、サタンの静止もきかずに、ザンギャは出ていった。

 やはり心配になるサタンであったが、ザンギャの強さ、有能さ、そして、サタンだけでなく、使用人全てから絶大な信頼をおかれているザンギャを信用して仕事を続けるサタンであった。

 音のあった現場にザンギャがたどり着くと大変な状態が広がっていた。

 壊れた壁、燃える絨毯、辺りには破壊された調度品などがところ畝ましと転がっている。

 怪我した使用人たちも蹲ったり、倒れていたりする。

「なんなの、何があったの?」

先に異常に気付きここに来ていたビーデルが倒れた使用人に事情を聞いているようである。

 ザンギャも同様に聞こうとした時である、

「地球最強というサタンとはどいつだ?」

と聞いたことがない声が玄関内に響きわたる。

声のした方へザンギャとビーデルが視線を送ると、人間ではないエイリアンのような異形の生物がその場に立っていた。

「あなたがこのようなことをしたのですか?そしてなにかようがあるのですか?」

淡々と聞くザンギャであったが、ビーデルにはその声の端々に怒りが隠しきれていないと感じていた。

「ああ、これは俺様がやった。なんだ女お前サタンとかいうやつを知っているのか?」

 ザンギャはなにも答えないのでビーデルが問い掛ける。

「パパになんのようがあるの?」

異形の男はにやりとほくそ笑むと話し出す。

「娘かいいやつを見つけた。まあ捕らえるまえに教えてやろう。俺様はチチン、バビディ様の配下だ。魔人ブウを復活させるためにバビディ様にエネルギーを集めて来いと言われてな。今ではバラバラになっていきてはいないが、近くで聞いたヤツが地球最強の男はサタンというといったので、ここにエネルギーをもらいに来た。この程度の星では必要はないと思うが、念のためだ人質になってもらうぞ!」

言い終わると同時にチチンの姿は消え、すでにビーデルの目の前に迫っていた。

「容易いな…!!」

チチンが気づいた時には、ビーデルに伸ばした手は青い手によって捕まれていた。

「そんなことのためにここまで来たのか。サタン様の仕事の邪魔をし、このように仕事を増やして……。処刑ですね。少し遊んだあとにね」

ザンギャに狂気の笑みが浮かんだ。それを見て本能的に危機を察したチチンであったが、ザンギャの握力たるやまるで万力で締め付けるような強さで、いくら力をいれてもザンギャはびくともせず、振り払うことすらできない。

「は、放せ!」

「お外であそびましゅうね」ザンギャがチチンを軽く放り投げると壁を突き抜けて飛んでいった。

「おあそびの時間です」

楽しそうに呟くと、ザンギャもそれを追って外に出ていった。

 

――――

 

「ザンギャさん遅いな。どうしたんだろ」

サタンが帰りが遅いザンギャを心配していると、外から笑い声と断末魔が幾度となく響き渡り、最後に「シュートブラスター!」というザンギャの声がすると目映い光が辺りを照らし、巨大な気弾が空に向かって飛んでいった。

 その後、楽しそうに笑顔で帰ってきたザンギャはなにもなかったように仕事をこなし始めたのだった。




敵キャラチチンはオリキャラです。
魔法チチンプイプイのプイプイがあるならチチンでもいいだろうと。
次回から第二十五回天下一武道会が始まります。


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第二十五回天下一武道会開幕、そしてその裏で…

「ザンギャさん秘書モードもいいんですが、武道会場ではもう少し明るく…」

「出番ですよ」

「チャンピオンのミスターサタンであーる!サインは一人一枚までだぞ」

 

以前であれば表裏全く変わりがなかったサタンであったが、今では全てを知り、表と裏での使い分けをするようになっていた。

そしてサタンが天下一武道会会場でパフォーマンスをしていた時、会場前のエントリーコーナーにZ戦士が集まっていた。

「オッスみんなもう集まってたんか?」

「孫君が時間にルーズなだけよ」

いつもののんきな悟空の挨拶にこれまた慣れた感じでつっこみを入れるブルマである。

 過去の世界では悟飯、悟天、チチを迎えにきて皆で向かった天下一武道会であったが、今回は悟空存命なので瞬間移動でやって来た悟空一家である。

「カカロットよ、今回はお前達一家には負けんからな!!」

「そうよ孫君、簡単に優勝できるとは思わないでね!」

ベジータとブルマの夫婦が堂々と宣戦布告した。

 しかしこちらにも黙ってそれを受け止めない者が

「馬鹿いうでねえだ、悟空さや悟飯ちゃ、悟天ちゃには家の家計のために勝ってもらわなきゃならねえだ。死活問題だべ」

必死の形相である。

それもそうだ、悟飯、悟天はサイヤ人と地球人のハーフであり、食欲もある程度は抑えられるが、純粋なサイヤ人な悟空はそうではない。

働かない、稼がないの悟空のお陰で悟空一家の経済事情は破綻しかけていたなだ。

「お兄ちゃん、押されてたら挨拶できないよ。ほら」

「ああ、いつもながらすごくて押されちゃったよ、ありがとうトランクス君、お久しぶりです。悟空さん」

トランクスが影に隠れていた人物の手を引いてやって来た。そこにいたのは、未来のトランクスである。

「おっ久しぶりだな。未来は大丈夫なんか」

笑顔で話しかける悟空。以前あったのは天下一大武道会なのでかれこれ5年程たっている。

「はい。未来の復興も大分進んだので、母さんが未来で父さんに鍛えてもらってきたらといったので、それに自分の小さい時も見て見たくて」

トランクスは少年のトランクスの頭に手を置いて話す。少年のトランクスも満更ではない様子である。

「そういうことだ。トランクスも悟飯同様かなり鈍っていたが、鍛え直してやりかなり強くなったぞ。俺とトランクス二人で上位は総取りだ。フハハハハ」満足そうにそう宣言すると会場内に入っていった。

「トランクスが帰ってきてからずっと上機嫌なのよ。それに家のトランクスもお兄ちゃんができたって嬉しそうでね。ずっとお兄さんがいる悟天君のことを羨ましがっていたのよ」

悟空に小さく耳打ちすると、ブルマもベジータを追って会場内に入っていった。

「お兄ちゃん、それに悟天行こうぜ」

「そうだね行こうか」

「待ってよトランクス君」

少年トランクスと未来トランクス、そして悟天も続いて入っていく。

「お久しぶりです。ピッコロさん」

「悟飯か。大きくなったな。…悟飯その格好ででるのか?」

「格好いいでしょピッコロさん」

「…ああ」

悟飯とピッコロが談笑をし、

「オメエクリリンか!?髪あったんか!?それに18号と結婚したんか、ヒヤーおったまげたぞ」

「俺は剃ってただけだ、たまには遊びに来いよな」

「フン」

悟空、クリリン、18号も話始める。

「おいお前達。まだエントリー済ませてないだろ。早く済ませろよ!」

当事者ではないが焦ったヤムチャが声を掛けたことで皆我に帰りエントリーする運びとなった。

そしてそこで、少年の部ができたことを知り、大人の部がいいと駄々をこねるトランクスと悟天であったが、なんとか宥めてエントリーは済まされた。

 

――――

 

時間は流れて予選会場

 

「今回の予選はパンチングマシンで数値が高かった上位16名が本線会場に出ることになります。まずは参考として最高数値の記録139点を持ちます前回チャンピオンのミスターサタンにデモンストレーションをしてもらいます」

「ああ、任せておけ」

アナウンサーに促され堂々と威厳を漂わせながら現れるサタン。

「頑張れよーサタン」

「ご、悟空さん、やっぱりいるのね……」

悟空に声を掛けられ、小さくなるサタンである。

「とりゃあー!」

気を取り直したサタンがパンチを打ち込む、しかしここで意外なことが起こった。

サタンの腕が巨大な破壊音とともにパンチングマシンにめり込んだのだ。

「あれ~」

『…………』

サタン自身が驚きの声をあげ、会場は静まり返った。

「おっとサタン選手のパンチが凄すぎてパンチングマシンを破壊してしまいました。これは恐ろしい殺人パンチだ!」

サタンも修行をしていたので自身でも気づかないうちにかなりの力をつけていたのだった。

 そして、このサタンのデモンストレーションを見た挑戦者達は恐れおののきかなりの数が減ったのだった。 そして、その後にパンチングマシンを粉々に破壊したベジータによってほとんどの挑戦者が棄権をし、予選はすんなり終わったのだった。

――――

 

同時刻

「なかなか見つからないな」

 昨夜に用事があると言って飛び出したカーシが何かを探して飛び回っていた。

「ここら辺だと思ったんだがな」

いつもと違い少し焦りながらの捜索であった。




未来トランクスを介入させました。
皆さんはもうお気づきの方も多くいらっしゃると思いますが、このことが物語に大きな影響を与えます。



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各々の思惑

夏休みの宿題やらなんやらで更新がかなり延びました、申し訳ないです。


「悟天選手場外!よってトランクス選手の優勝です!!」

 少年の部での悟天とトランクスの激闘が終わり、高らかにアナウンサーがトランクスを優勝と発表した。

「ハッハッハッハ、俺の息子のほうが血統が良かったようだな」

「ああ、そうみたいだな」

ベジータはドヤ顔で悟空に話しかけている。

その嬉しそうな表情は今までベジータが見せたことが無いほどのものである。

そのベジータの様子を見て青年トランクスもこの時代の自分がベジータに深く愛されていることを再確認し、心の中は嬉しさで満たされていた。

ただ、この未来のトランクスに少し羨望の思いがあるのも事実である。

(この時代の俺は幸せだな。競いあい、高めあう親友がいて、深い愛をくれる父親がいる)

そのようにぼんやりと少年トランクスを眺めていると

「トランクス行くぞ。次は俺達の番だ!」

大人の部へ早々と向かおうとするベジータに声を掛けられた。

「え、父さん、ミスターサタンとの戦いは見なくていいのですか?」

「トランクスが負けるはずがない。行くぞ!」

それだけ言うとベジータは足早に去っていった。

「そうだな、俺たちも行こうぜ」

「ああ、そうだな」

クリリンに促され悟空、ピッコロが続いていった。

「悟飯君、たしかにトランクス君は強いけどあれはないんじゃない」

「ご、ごめんなさいビーデルさん」

皆の態度に憤るビーデルを宥めるのに悟飯はその後苦労をしたという。

 その後のミスターサタンVSトランクスはミスターサタンがトランクスに殴られわざと倒れてトランクスに勝ちを譲ったらしい。

驚くことにミスターサタンは無傷であった。

前の世界では純粋悪のブウに顔面を殴られ、この世界ではボージャックの全力のパンチ、他にも数百のパンチを浴びた。そのためただでさえ凄かった打たれ強さに磨きがかかっていたためである。

 悟空一向が武道会会場で、なにやらにやついたモヒカンで青い小さな男と、無表情な赤くデカイ男となにやら話をしたのだがそれはどうでもいい話である。

 

――――

 

 その頃、カーシは遂に目的を見つけ出していた。

「よし、見つけたぞ。中に入るか」

カーシはそう呟くと目の前の扉を軽く破壊した。

そこから入り地下に降りていく。

少し広い所に出ると、そこには宇宙人のような男が待ち構えていた。

「貴様何者だ!ここがバビディ様―」

「うるさい邪魔だ!」

セリフをすべてしゃべる前に宇宙人プイプイはカーシのパンチ一発で消し飛んだ。

 その様子を見て恐怖に震える者がいた。

「なんなんだいアイツは」

その宇宙船の主で小さくしわしわの男バビディは、恐怖に戸惑いながら、隣の男ダーブラに問い掛けるが、答えはない。

この世界では敵になるものなどいないので思い付かないのも当然である。

「ご安心くださいバビディ様。次にいるヤコンならば恐れることは―」

「グギャーーッッ!!」

『……………』水晶玉にはまたもや何もできずに、一発の気弾で断末魔をあげながら消し飛ぶヤコンの姿が浮かんでいた。

「わ、私が参りますのでご安心ください」

「た、頼んだよダーブラ」

青ざめるダーブラと涙目のバビディであった。

 

――――

 

天下一武道会会場では本選の対戦相手がアナウンサーによって読み上げられていた。

「第一試合

クリリン選手VSプンター選手

第二試合

マジュニア選手VSシン選手

 

第三試合

スポポビッチ選手VSビーデル選手

 

第四試合

グレートサイヤマン選手VSキビト選手

 

第五試合

18号選手VSザンギャ選手

 

第六試合

悟空選手VSベジータ選手

 

第七試合

マイティマスク選手VSトランクス選手

 

第八試合

ヤムー選手VSミスターサタン選手

以上のようになりました。

五分後に第一試合に入ります。皆さんもうしばらくお待ちください」

アナウンサーが話終わると会場は大いに沸き立っていた。

 しかし、観客以上に舞台裏は熱気に包まれ、そして恐ろしいことが起こった。

「よーーーーし!!やるぞカカロット!!!」

「待てってベジータ、試合になったらやってやっから」

喜びからすでに超3化するベジータをなんとか宥める悟空、その時だった、ヤムーと呼ばれていた男が狂気の笑みを浮かべてベジータになにやらポットのような物を持ち襲いかかった。

「そのエネルギー頂いた!!」

「なんだ俺の邪魔をするつもりか貴様、死にたいのか?」

「!!」

ベジータの一睨みでヤムーは腰を抜かしていた。

(や、ヤバイぞアイツは他のヤツにしよい…)

這いつくばって逃げていくヤムーを見て、シンと呼ばれていた男もホッと胸を撫で下ろしていた。

「俺はあんなやつか(18号の相手はかなりの美人だな)」

クリリンは自分の相手を一瞥すると18号の相手のザンギャに視線を送る。

「あら、私に何か御用かしら?」

クリリンの視線に気づいたザンギャが試合を目前に控え、頬を紅潮させながらウットリした表情でやって来た。

「い、い、い、いや、美人だなーと思って」

かなり吃りながら返すクリリン

「あら、ありがとう」

「あんた!!!」

ザンギャのウィンクを受ける前にクリリンとザンギャの間に18号が乱入した。

「クリリンあんたのお仕置きは大会が終わった後だ。

うちのクリリンに色目使うとはいい根性してるわね。お前は試合で始末してやるよ」

「楽しみにしてますわ」

腰を抜かしてガタガタ震えるクリリンの前で18号とザンギャは火花を散らしていた。

 

 会場の隅ではマイティーマスクと呼ばれていた男がモゾモゾと蠢いていた。「おいヤバイぞ悟天、俺達の相手は兄ちゃんだ。メチャクチャ強いぞ!!」

「どうしようトランクス君」

「まあ、兄ちゃんは優しいから手は抜いてもらえるとは思うから、少し戦って降参するか」

「そうだねトランクス君」

マイティーマスクこと悟天とトランクスも覚悟を決めたようである。

 悟飯とビーデルが話をしているところに大男がやって来た。

「ビーデルさん、よろしくお願いします」

「あなたはたしか、スポポビッチさん?」

大男に向かってビーデルは笑顔で答える。

「はい、ミスターサタンに前回は負けてしまいましたが、今回こそはと修行をつんできました。ミスターサタンの娘さんなので挨拶をしたくて」

スポポビッチも笑顔で答える。

「試合では全力でいきますね。よろしくお願いしますスポポビッチさん」

「こちらこそよろしくお願いします」

ビーデルとスポポビッチは握手をしてお互いの健闘を誓いあった。

 ついに天下一武道会の幕が上がる。



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暗黒魔界の王VS魔人

「バビディ様、私はこれから瞑想をして気を高めて参ります」

「ああ、頼むよダーブラ」

うやうやしくダーブラはバビディに頭を下げると瞑想室に向かっていった。

「ヒヒヒヒヒ、ダーブラが気を高めればあんなやつすぐに倒しちゃうもんね。まあ魔人ブウの肥やしにしてやるのもいいかもねヒヒヒヒヒ」

 

「俺がなんだって?」

「!!!」

バビディは青ざめながらもソロリソロリと後ろを伺う。

「な、なんでお前が扉には魔術で鍵を掛けておいたのに!?」

明らかに驚き戸惑うバビディの後ろには笑顔のカーシが立っていた。

「魔術なんてなかったぞ。で、俺がなんだって?」

再度問いかけるカーシの声にはかなりの威圧感が込められている。

「ヒ~~~ッダーブラでてこ~い、僕を助けろ~」

バビディは腰を抜かしたまま這って後退りしダーブラが入っている瞑想室の扉を叩く。

無言でバビディに迫るカーシ。

「バ、バリアー」

バビディの回りに薄い膜のようなバリアが表れる。

「ヒヒヒヒヒ、僕だってこれぐらいできるんだよ」

カーシはなおも無言で迫る。

一歩一歩、確実にバビディに歩みよる、死をもたらすために。

「と、とまれよ~。パッパラパ、グゲアーッッ!!」

カーシはバリアごとバビディを踏抜いた。

「俺はお前が嫌いだ!」

カーシは無表情で呟いた。

「あとは、こいつだけか、おーいもういいかい?」

「まーだだよ」

魔人と魔王との声の掛け合いとも思われないやり取りである。

カーシはしばらく待つと再び。

「もういいかい?」

「もういいよ」

プシューっという音と煙とともに扉が開き、目視できるほどの迸る気を纏ったダーブラが現れた。

「待たせたな」

「もうお前の主人はいないぞ。その肉の塊がそうだぞ。それでも戦うのか?」

カーシは元バビディの肉塊を指差しダーブラに尋ねる。

カーシはこの後に本番が迫っているのでできれば戦いたくない、ということでダーブラに提案したのだ。

「そうであってもお前は私の主を殺したことにはかわりない。死んでもらうぞ!!」

ダーブラの体から強大な気と、爆風のような突風が吹き荒れる。

「俺はプイプイやヤコンのようにはいかんぞ!!」

「ごめんな」

「!!」

ダーブラの目の前にはいつの間にかカーシが迫っていた。

ダーブラにはカーシの動きが全く見えていなかった。

それも仕方がないことではある。

復活したての魔人ブウの動きでさえ、捕らえられないダーブラであるうえに、今ではその戦闘力はアルティメット悟飯に勝るとも劣らないほどにまで成長しているのだ。

ということで、カーシが繰り出すショートアッパーを見切ることさえできずにまともにくらい、宙に浮いた所に放たれた右ストレートが腹を抉った。

「グホアッッ」

ダーブラはピンポン玉のように凄まじい勢いで飛ばされ壁に叩きつけられ、倒れ伏した所に崩れ落ちた壁に埋もれもう出てくることはなかった。

「二度もお菓子にするのは可哀想だしな」

カーシはそう言うと気を引き締め直し当初の目的の物に向かった。

「あった、これだ」

カーシの前には脈動する丸い肉の塊のような物があった。

 

――――

「き、棄権する!」

「な、なに!!」

「ピ、ピッコロさんなんで…」

天下一武道会はすでに二回戦まで進んでいた。

二回戦ではマジュニアことピッコロが得たいの知れないシンと呼ばれる相手と相対していた。

しかし、拳を交えることもなく、ピッコロは棄権したのだ。

シンの力を知ることができると思っていたベジータと、師匠の突然の棄権発言に驚いた悟飯が声をあげたのだ。

ピッコロは白いマントを翻し武舞台を降りると、何か考え込むように無言で舞台裏に帰っていった。

 

次の対戦相手となるクリリンがピッコロに尋ねると「次元が違う」とだけピッコロが呟いて去っていったので、シンについての謎だけが更に深まる結果となった。

「じゃあ次は私の出番ね!悟飯君私の強くなったところ見ててね」

「はい。ここで見てますよ」

ビーデルは意気揚々と武舞台に上がっていった。

その瞬間観客は総立ちとなってビーデルコールを送っていた。

少し遅れて気まずそうな表情でスポポビッチも武舞台に上がった。

「第三回戦始めてください!」

アナウンサーの掛け声と同時にビーデルとスポポビッチは「行きます」といい中央でぶつかり合った。

しかし、その勝負は一瞬で決まった。

スポポビッチのエルボーを避けることをせず、腕でガードし、スポポビッチの動きが止まったところに一撃をいれ戦いを終わらせた。

観客は誰もがその一連の流れを追いきれず、何が起こったのかわからずに静寂に包まれる。

「悟飯おめえの彼女やるじゃねえか」

「マジかよ。俺ともいい勝負できそうじゃねえか」

「低レベルな戦いだ」

悟空、クリリンはビーデルの強さを素直に称賛し、ベジータはつまらなそうに吐き捨てた。

しかし、そのように言いながらも戦いを見ていたのはベジータの成長かもしれない。

しばらくの沈黙の後観客は再び総立ちとなり、大いに沸き立った。

その武舞台の中心では、ビーデルが起き上がろうとするスポポビッチに手をさしのべ、スポポビッチもそれを笑顔で受けるという清々しい光景があった。

その過去とは変わった様子を遠く離れた所から笑顔で見ていたサタンであったが、次の瞬間にはなにかを思い詰めた暗い表情に変わっていた。

 

 



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カーシを目指して、立ち上がるZ戦士!

「今出してやるぞ」

カーシはそのように呟くと、徐に大きな肉の塊のような玉に手をつける。

そして

「ふっ!!」

カーシは瞬時に気を高める。

カーシを中心に巨大なクレーターが出来上がり、それと同時に宇宙船が崩れ始めた。

しかしながらカーシは全く動揺することもなく、高めた気を玉に送り続ける。

 宇宙船は完全に崩れ去る、しかしカーシの気が全てを弾き飛ばし玉と共に露出した状態になっている。

「ふう、たったこれだけの気で復活するか…」

カーシの目の前で玉が光だし、玉が二つに割れた。

玉の中からはピンクの煙が立ち上ぼり、集まり形をなしていく。

「ぶうーっっ!!」

無邪気な魔人ブウが声をあげ復活した。

 

――――

 

第四回戦の始まる前であった。

「悟空さん。頼みがあるんです」

サタンが神妙な表情で悟空に話かけてきた。

いつものおちゃらけた様子など微塵も感じられないので、悟空も真面目に返す。

 

「よっサタン!頼みってなんだ?」

悟空のフレンドリーな感じがサタンを和らげる。

「実はわしをカーシさんの元へ送って欲しいんです」

「どういうことだ?」

サタンはそれまでの経緯を全て悟空に包み隠さず話す。

天下一武道会が始まる前に出ていったこと。

深刻な表情であったこと。

そして、嫌な予感がすることを。

「そんなことがあったんか。よし任せろカーシにはおらも世話になってっからな」

悟空が笑顔で承諾したが、納得していない者が二人。

「どういうことだカカロット。俺との戦いはどうするつもりだ!!」

恐ろしい剣幕でベジータが悟空にくってかかる。

「ベジータおめえも感じてんじゃねえか?たいしたこたあねえが、不思議な気があることに。そしてそこにカーシの気があることに。」

悟空が真剣な口調でベジータに語りかけるように説得を試みる。

「フン、そんなの俺には関係ない!!」

「なら行った先で戦わねえか。どうせここじゃ本気でやれねえしよ」

「……勝手にしやがれ!」

ベジータは悟空の説得についに折れた。

 

「お待ち下さい。あなたたちにはしてもらいたいことがあるのです」

シンと呼ばれていた男が突如悟空達の会話に入ってきた。

「??」

皆がポカンとするなか、シンは続けて話をしようと口を開きかけた時であった。

 

「界王神様にも関係があることなんです。つまり魔人ブウに関係することなんです」

サタンが口を開いた。

その話の内容は悟空達には全く分からないことであるが、それを言われたシンは愕然とした表情である。

「なぜあなたがそれを」

先ほどまでの余裕の笑みは消え失せている。

「目的地についたら説明します」

サタンはそれだけ言うと口をつぐんだ。

「……。分かりました。では私達も同行します。行きますよキビト」

「はい、界王神様」

キビトと呼ばれた赤くデカイ男がいつのまにかシンの背後に現れ返事をした。

「お父さん僕も連れてってください!」

 

「俺もお願いします!」

同行を志願する者が二人。

悟飯とトランクスである。

「おめえ達も行きたいんか。おう来てくれ心強いぞ!」

悟飯とトランクスは笑顔になる。

「どこいくの悟飯君?」

先ほどまでの話を聞いていたのであろう。ビーデルが悟飯に問いかける。

当然のことである。ビーデルはこの日を、天下一武道会で悟飯と戦うのを夢にまで見ているほど楽しみにしていたのだ。

 

「えっ、そ、それは…」

困り果てた表情でしどろもどろになる悟飯に助け船が出される。

「このメンバーなら時間はかからねえ。少しだけ待っててくれ」

「はい」

ビーデルも悟空にそう言われたら何も言うことはできなかった。

「クリリンとピッコロはどうする?」

悟空がクリリンとピッコロに問い掛ける。

「俺はいいよ。さすがについていけねえし、賞金も大事だからな」

とクリリンがすまないなという感じで悟空に告げる。

「悟空、俺も連れていってくれ。界王神様がここへ来られた理由を知りたい」

ピッコロも同行を願い出た。

界王神に視線を送りながら。

「じゃあ、おら、ベジータ、悟飯、トランクス、えっと界王神様」

「シンでいいですよ」

「じゃあシンとそこのデカイオッチャン」

キビトに指をさしていう悟空。悪気は全くないのである。

「プフッ」

「界王神様なにも笑われなくても。あと私はキビトだ」

キビトは言うが話を聞かずに悟空は続ける。

「このメンバーでいくがそれでいいかサタン?」

「はい」

サタンはそれまでの深刻そうな表情とは打って変わって嬉しそうにしている。

「サタンとシンには後で事情を話してもらうからな。じゃあ皆おらに触れてくれ」

皆が悟空に触れると、悟空は人差し指と中指を額にあて、カーシの気を探った。

「よし行くぞ!!」

 

その声だけを残し悟空達は姿を消した。

 

「悟飯君気を付けてね」

手をあわせて願うように言うビーデル。

 

「なあ悟天聞いたか?」

「うん、聞いたよトランクス君!」

モゾモゾしながらマイティマスク内部で二人が相談する。

「あっちの方が楽しそうだな。行くぞ悟天!!」

「うん。行こうトランクス君」

マイティマスクことトランクスと悟天もマスクを脱ぎ捨て悟空達の気を探り飛び去った。



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カーシの信念、そして流れは狂い出す

「ブウブウ!!」という掛け声と共に辺り一面に響き渡る轟音と、辺りを砕く衝撃波が撒き散らされる。

 見た目の違いは服装だけの二人が戦いを繰り広げている。

いや、もう戦いではない、片方が一方的に攻撃を加えており、もう片方が無防備に攻撃を受け入れていると言っても過言ではない戦いである。

 攻撃を加えているものは、狂喜の笑みを湛え、目に見えない速度で攻撃を打ち込み続ける。

何かが潰れる音、それと共にピンク色の肉が飛び散る、それを長時間に渡って繰り返しているのであろう。攻撃を受け入れている者はすでにその原型をとどめていない。

 頭があったであろう部分は潰れた肉が置かれているような状態であり、あるはずの腕も根元から引きちぎられたのか、存在していない。

 攻撃を加えている者は、両手を前に付きだし、

「死んじゃえー!!」

という声を上げると、目映い閃光のもと気功波が放たれる。

気功波はすでに肉塊と化したものを包みこむように焼き尽くした。

 目の前で煙を上げ焼け焦げた肉塊が落下する。

しかし、それだけでは満足しきれないのか、両手を組み合わせ、降り下ろす。

叩き込まれたハンマー打ち、肉塊は焼けた焦げた肉片を撒き散らしながら地面に打ち付けられた。

 

「ホッホホー、やったー、やったー」

まるで子供が喜ぶように、今まで残虐な攻撃を加えていた者が空中で無邪気に喜んでいる。そこには子供ならではの残酷さ、残虐さが表れている。

喜んでいた者が地面に降り立つと、プスプスと音を立てて、未だに燃えている肉塊から声がする。

「満足したか?」

「うん満足したぞ」

その問い掛けに笑顔で答える。

「そうか」

直後に、焦げた肉塊がグニュグニュと蠢き始める。

内部から現れた、焦げていないピンクの部分が人形を形成する。

「ブウッ!!」

サタンの胴着を着たカーシが起き上がった。

「次はこれだな」

笑顔の魔人ブウを一目見た後、頭の先にある触角から辺り構わずビームを放つ。

拡散されたビームが当たった物は全てお菓子となっている。

 

ケーキ、チョコレート、ワタアメ、飴玉、等々山のようにお菓子が現れた。

「ヒャッホー、お菓子だーお菓子だー!」

魔人ブウは山に突っ込んで食べ始める。

その様子を見ながらカーシはなにやら考え始める。

(これは自己満足なのか、違う。少しでもこの後の自責の念を和らげるためだな。今後の事を悪いことだと自覚しているからだ。だけど、止める訳にはいかないんだ。俺は、俺は……)

「おーい、おーい」

思考の中から呼び覚ます声。

カーシが気付き声をかけられた方へ視線を送ると、膨れ上がったお腹を擦り、満足げな顔をした魔人ブウが寝転がりながら、カーシに声を掛けていた。

「どうだ、満足したか?」

「おう、大満足だ」

カーシの問いに満面の笑顔で答える魔人ブウ。その笑顔を見て、少し戸惑いと、苦悶の表情を見せたカーシであるが、すぐに元に戻し、

「……じゃあもう思い残すことはないな……」

「??」

言われた言葉の意味も真意も分からない魔人ブウは首を傾げる。

 しかし、カーシはそんな魔人ブウに気を遣うこともなく、一言呟いた

「ごめん」

と、それが合図であった。

魔人ブウの回りからピンク色をした肉片が突如飛び出し、魔人ブウを覆い包みこんだ。

「なんだこれは」

もがく魔人ブウだが、もがけばもがくほど肉は魔人ブウをさらに包み込んでいく。

「…………クッ…」

 

その様子を苦悶の表情で見つめるカーシ。

そうカーシの作戦はこの魔人ブウが暴れまわる前に自分に取り込むことであった。

地球に被害を出さないために。

しかし、それがカーシの本意ではない。

 この世界には魔人ブウが二人存在する。自然の摂理からしてもどちらか1人しか存在してはならない。

そしてそれは間違いなくこの世界の魔人ブウであろう。

しかし、カーシはそれを認めることはできなかった。

カーシは見つけたからだ、かけがえのないものを。

そうサタン、そして仲間達。

「俺であっても、サタンのそばにいるのは俺じゃなくちゃ嫌なんだ!!」

そうそれがカーシが魔人ブウを取り込む本当の意味であった。

今のカーシには良心がある。そのためにエゴの塊の考えに対して嫌悪を感じ、悩んでいたのだ。

 魔人ブウを包み込んでいる肉塊が動かなくなる。

それを見たカーシが、人差し指をクイックイッとすると、その肉塊が浮かび、カーシに飛び込む。

肉塊がカーシに馴染んでいく。

順調であった、最初は…。

 しばらくすると突如カーシがグラリと揺らめく。

カーシの体から、体の内部から爆発的に気が溢れ出したのだ。

「クッ、治まらない」

溢れ出した気はその場を、地球を支配する。

空間は嫌な音を立てて軋み初め、地球は悲鳴をあげる。

前代未聞のことが起こり初めていた。

 カーシにも完璧に予定外のことである。

 なぜこのようなことになったのか。

カーシ(魔人ブウ)の吸収が鍵を握っている。

カーシの吸収は相手の戦闘力をそのままプラスするものである。

 例えば、カーシを100とし、吸収するゴテンクス3を50とする。

そのゴテンクス3を吸収すると100+50で150ということになる。

また、これがアルティメット悟飯であっても、アルティメット悟飯が100であれば、吸収すればカーシの元の戦闘力100+アルティメット悟飯の戦闘力100で200になる。

 

 しかし、今回はそれに当てはまらない。

カーシと吸収した魔人ブウは全くの同一体である。たった一点を除いて。

その為、ただの吸収ではなくなった。

ある意味ナメック星人の同化と同じであるといっても過言ではない。

カーシの戦闘力が数倍に羽上がったのだ。

ただでさえ、カーシは修行を重ね、限界を越えた力を手に入れていた。

その力が数倍に羽上がった。

当然制御することなど容易なことではない。

それをカーシは必死に苦しみでのたうち回りながらも押さえ込もうとしているのである。

 その時、天下一武道会から瞬間移動を行った悟空達がその場に現れた。




かなり無理矢理な話になりましたが許してください。
これからの戦いを演出するうえでも重要なパワーアップなので。


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回避不能!!絶望の始まり

『…………』

絶句するその場に現れた悟空達。

その場には、いやこの場だけではない、もう既に地球上、宇宙空間、異次元にまでその気の強大さは伝わっているのだろう。

 そのように沈黙が支配する場でやはりこの男悟空が口を開く。

「どうなってるんだ。あのとんでもねえ気はたしかにカーシから感じるんだが。あそこまででかくなかったし、それだけじゃねえ、あんなに純粋な気だったカーシの気が……」

悟空は顔をしかめ最後までは言わなかった。

ただし、この場にいるシン、キビト以外は悟空がいいよどんだことを理解していた。

「うっ」

「くっ」

「……」

その場に悟飯、トランクス、ピッコロは膝をつく。

悟空、ベジータは辛うじて立っている状態であるが、二人以外はその強大な気にあてられた為である。

「あれはカーシさん。苦しんでいるぞ。どうしたんだカーシさん!!」

そんな中その気をものともせず心配からカーシに向かって走り出すサタン。

だが、気にあてられただけでなく、サタンとカーシの仲の良さを知っている皆は止めることはできなかった。

そんな中ご存知の通りあの人は

「ア、ア、ア、ア、あれは、あれは魔人ブウだ……姿は変わっているが間違いない」

と腰を抜かしてヘタレている。

 サタンはカーシに向かって一心不乱に走っている。

以前爆発的に強大な気が空間を揺るがし、突風を撒き散らしているが、それでも諦めることはしなかった。

サタンの頭の中では後悔が渦巻いている。

あの時、カーシが飛び出す時に止めることができれば、止められなくても力になることならできたのではないかと。

「(カーシさん!カーシさん!カーシさん!)カーーーーシ!!!」

サタンの悲痛な叫びが辺りにこだまする。

その声がついにカーシに届いた。

「ううぅぅ…サ、サタンがいるのか…」

体が張り裂けるような痛みに耐えながらも(張り裂けても再生しますが…)声のしたほうに辛うじて視線を向ける。

目の前には唯一の親友であり家族であるサタンがこちらに向かって涙を流しながら走っている。

その姿を見たカーシに変化が起こる、

(サタンには危険な目には合わせない!!)

溢れだし迸る気が抑えられてくる。

空間の軋む音は小さくなり、地球の揺れも少なくなる。

あと10メートル、9、8、7、6、5、あと一歩となった時である。

崩れ去っていた宇宙船の残骸が爆発を起こしたように吹き飛ぶ、

「俺をこんな目に逢わせやがって、一矢報いてやる。死ねーーーーー!!!」

血を撒き散らしながら現れた魔王ダーブラがカーシに向かって剣を投擲する。

たしかにその剣はカーシに向かって放たれた。

しかし、その剣はカーシに刺さることはなかった。

「ガハッ!!」

「サ、サタン?サターン!!」

剣はサタンの体とカーシの心をもいとも容易く貫く。

心臓を貫いたのか、血液が広範囲に撒き散らされカーシはサタンが壁のように立ちはだかっているので、その血液を浴びることになる。

サタンの血液を浴び茫然となるカーシの前には、笑顔のサタンが。

「やっと…カーシさんの…役に…」

サタンの体はグラリと揺れ、膝をつき前のめりに倒れる。

「サ、サタン…サタン…」

サタンを抱き起こし声をかけるが、ぴくりとも動かない。

気を抑えこんでいるために、まともに気を操れないカーシはサタンの怪我を癒すこともできない。

「う、う、う、うわーーー!!」

サタンの体が冷えていくのを感じながらカーシは叫んだ。

直後カーシの体から黒い湯気のような物が吹き出す。

その勢いは衰えることはない。

辺り一帯を埋め尽くす程の黒い湯気に包まれる。

「と、とんでもねえ気があの黒い煙から感じんぞ。それに悪意しか感じねえ」

場に満たされた煙について悟空が呟く。

『…………』

誰もが動けない。体は本能的に逃げろといっているのだが、恐怖で体は言うことを聞かない。

立ち尽くす皆の前で、黒い煙が集まりだす。

集まった黒い煙が圧縮され、少しずつ何かが形作られる。

驚きの表情でZ戦士はそれを見つめ、シンとキビトは頭を抱え震え、カーシは苦々しげにサタンを抱き抱えながら睨みつけている。

「まさか、こんなことになるなんて…」

 

カーシは力なく呟く。

しかし、事態は悪くなるばかりである。

ついに黒い煙は姿を表した。

黒い肌、ガリガリの体を持ち、素肌にポンチョを来て、紫のマントをつけている。

悪の魔人ブウが姿を表す。

その力もカーシの力を、さらに最悪なのは魔人ブウを取り入れた時のパワーアップ分もそのままもっていったために、絶望的な状況になっている。

悪の塊の魔人ブウは首を180度回し、何者かに視線を向ける。

ターゲットが決まったのか、魔人ブウは口許を醜く歪め微笑を浮かべる。

「ヒヒヒ」

腕をユラリと上げ、手のひらをターゲットに向ける。

その動きは鈍重であり、まるでスローモーションのようではあるが、底知れぬ恐怖と威圧感をまざまざと感じさせる。

「ヒー」

口許が三日月のようになった時には約10センチにも満たない光の塊がターゲット、ダーブラに向かって放たれた。

赤黒い光の玉がダーブラに襲いかかる。

 

「こんなもので俺を殺せると思っているのか!馬鹿にするなーーーー!!」

 

ダーブラは腕を振り抜き弾き返そうとした。

 しかし、振り抜いたはずの腕が消し飛び、そして赤黒い光は爆発を巻き起こした。

広範囲の爆発ではなく、天に伸びる柱が出来上がった。

爆発が終わると、その場には何もなくなっていた。

その場の空間さえもなくなったのだ。

黒い何もない闇の柱が出来上がっていた。

最悪の恐怖がついに目覚めてしまった。




残酷な描写は描かないつもりだったんですが、鼻血ではインパクトどころかギャグになってしまうのでしぶしぶ描くことになりました。
ということで残酷な描写のタグを追加させてもらいます。

あと一つ意見を聞きたいのですが、ここから先代界王神などが登場する話と、悪の塊の今回現れたブウを倒して終わりという話があるんですがどちらがいいでしょうか?
ガリガリこそが悪の源であるとも思っていたので。
感想では規定違反であるようなのでメッセージで送ってくれたら嬉しいです。


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覚悟を決めた界王神

体調不良で学校を欠席したのに更新をしている。
なぜこうなった……


カーシ、サタンそしてZ戦士の前に絶望的な状態が広がっている。

 敵はたった一人だけである、ナメック星では多人数(ザーボンさん、ドドリアさん、ギニュー特戦隊、フリーザ)と戦ったこともある。

そこから考えると絶望的?となるかもしれない。

 しかし、今回は違う!敵の力とこちらの力が桁違いなのだ。

 たしかに今までであっても、大きく力の差が離れた戦いもあった。

だが今回はその差が越えられない壁が幾重にも重なっているほどのものなのだ。

「へへへ、いつものならあんなにつええのが敵ならワクワクすんだが、今回はワクワクすらしねえ。こんな感覚はブロリーと戦った時いらいかもしんねえな」

普段の姿とはかけ離れた悲壮感を湛えた表情でポツリと呟いた。

「クソッ、この俺がヤツの気に押されて動くことさえままならんとは、ふざけやがって!」

ベジータは怒気をはらんだ声でそう吐き捨てるが、その言葉の奥底には恐怖も含まれている。

ブロリーの時と違って自暴自棄になっていないのは救いではある。

「すまん悟空。あんなヤツを出しちゃって…もう出すつもりはなかったんだが」

 

サタンの傷を必死に癒しながら悟空に、いや地球上の生物全てに謝罪するように呟いた。

「わりいのはサタンを殺しかけた変なヤツだけだ。気にするな」

悟空が視線は全く悪の魔人ブウから外さず、しかしカーシを気遣い励ます。

悟空の戦いの中でも優しさがなくならない人格者の一面が見られる場面である。

「悟空お前たちはそこで腰を抜かしている界王神の正気を取り戻させて、界王神界へ逃げろ。逃げる時間ぐらいなら俺が稼ぐ。罪滅ぼしにすらならないが」

息を吹き返したサタンを安堵した表情で見届けると、一度「もうだめだ。終わりだ…」とガタガタ震え、焦点の定まらない目をした界王神を一瞥した後に、悪の魔人ブウを睨み付けた。

「へっ、みずくせえこと言うなよ。おらをこの姿に導いてくれた大事な仲間を置いていけるかよ!!」

隣には既に黄金のオーラを纏い、長髪を風に靡かせ、眉のない極悪顔の悟空が臨戦体勢で佇んでいた。

「カカロットを倒すのは俺だ。俺もヤツを倒すのに手を貸してやる」

悟空の横にも悟空同様超3化したベジータが並んでいる。

「心強いな…」

嬉しそうに二人を笑顔で見やった後に、覚悟を決めた瞳で再度魔人ブウを睨み付けた。

「悟飯シンを正気にさせろ、トランクスサタンを頼んだ」

手短に指示をとばすとそれが戦いの始まりの狼煙となる。

 気を極限まで高めた三人が魔人ブウに襲い掛かる。

踏み込みで起こる凄まじい爆音が響くと同時に、悟空、ベジータ、カーシが前と左右から魔人ブウを取り囲み連打を加えていた。

「だだだただりゃあ!!」

「ハアッッッ!!」

「ブウッ!!」

目視も気で捕らえることすら難しい戦い。

 しかし、魔人ブウはあくびをしながら右手で悟空の攻撃を、左手でベジータの攻撃を、右足でカーシの攻撃を、全て無力化している。

「嘗めやがって!くらえ!!」

ベジータは怒りから大振りになる。

「ヒヒ」

嫌らしく歪んだ笑みを口元に浮かべた魔人ブウはパンチを避けると過ぎ去っていく手首を両手で軽々と掴み、ジャイアントスイングの要領でそのベジータの勢いのままに前方のカーシ、右方の悟空を巻き込んで凪ぎ払った。

「ガハッ!!」

「クッ!」

悟空、カーシが先に吹き飛び、ベジータはそのまま何度かジャイアントスイングをされた後悟空とカーシが叩きつけられた岩場に投げつけた。

ベジータが悟空とカーシがめり込むその上に叩きつけられると、巨大な岩が崩落した。

「ヒヒヒヒ!」

魔人ブウはその様を見て下卑た笑い声を響かせている。

「なんなんだ。父さんと悟空さんとカーシさん三人がかりなのに赤子の手を捻るように戦っている」

 

「いやヤツにとってはこれは戦いですらない。遊んでいるようなものだろう。小さい子供が蟻を潰すようにな…」

トランクスの言葉を、苦々しそうな表情で訂正するピッコロ。

二人にはどのように戦っているのかさえ分からない戦いではあるが、三人が全く手も足も出ていないことだけは分かっていた。

「シンさん、正気に戻ってください」

悟飯は悟空に言われた通りにシンを揺さぶり正気を取り戻させようとするが「もうダメだ、おしまいだ…」と壊れたラジオのように繰り返すシン。

 

 たしかにヘタレてもしょうがない状況ではあるが、世界の頂点に立つ界王神としてはあまりにも情けない姿である。

 

「すいません。許してください」

そう悟飯が言うとシンに対して往復ビンタをなん十発と叩きこむ。

「貴様界王神様になんてことを!!」

「悟飯ーーーー!!

(そこまでにいてくれー)」

主人より一足先に立ち直ったキビトとピッコロによって止められた悟飯であるが。

ビンタの効果があったのか界王神は正気を取り戻していた。

「みなさん。ここは。あ、今の状況を教えてください」

立ち直った界王神は今までの説明を求める。このような時にも前方から打撃音と爆音が響き渡っている。

「ここは俺が説明する」

ピッコロが一歩前に出て、魔人ブウの復活後のことを苦々しく、また絶望感をはらんだ表情でかくかくしかじかと事細かに説明した。

その様子には世界の頂点に君臨する界王神に助けを求めるようにも見えた。

「そんなことが。あの三人でも歯が立たないとは……」

界王神はしばらく沈黙した後に、覚悟を決めたように言った。

「状況が状況です。それにあなた方なら希望を託せられる。界王神界に参りましょう!!」

 



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いざ、界王神界へ!!

「界王神界へお連れします!」

界王神は覚悟を決めた表情でそう言いはなった。

 悟飯、トランクスは界王神界自体を知らないのでリアクションに困っているが、ピッコロは茫然自失となり口をパクパクと動かすのみ、キビトは驚愕の表情で青ざめ、ワナワナと震えている。

「界王神様いけません。界王神界は大界王でさえ入ることができない神域ですぞ。そのような所に人間達を連れていくとは!」

キビトは立ち直ると、猛烈な勢いで界王神を諫め始める。

「先ほども言いましたが、状況が状況です。それに皆さんは一握りの希望なのです。その希望をここで失う訳にはいかないのです」

界王神は真剣な表情でキビトを一蹴する。

キビトももう界王神の心は動かないと察したのか口をつぐむのだった。

「しかし、問題があります」

界王神は悟飯達の方へ向き直ると険しい表情で口を開いた。

「なんなんですか?」

悟飯は皆を代表して問う。

「はい、問題というのは、界王神界へ行くのには悟空さんの瞬間移動のように私の体に触れていてもらわないといけないのです…」

界王神は苦々しげに話す。

「つまり、父さんやベジータさん、カーシさんもここまで来て界王神様に触れないといけないと。しかし父さん達は魔人ブウと戦っていてここに来ることができないということですね」

悟飯が界王神が思っていることを読み取りまとめる。

「はい…」とだけ言う界王神を見て、皆が一様に表情を曇らせた。

 悟空達が全力で、しかも三人がかりでさえも一蹴する魔人ブウから、一時でさえも時間を作るのはとてつもなく至難の業であるからだ。

「悟飯さん、悩んでいてもしょうがありません。出来るだけのことはしましょう!」

トランクスが悟飯に声をかける。

トランクスは未来で仲間を失う辛さを痛いほど分かっている。

自分の力ではどうにもならないと分かっていても、いてもたってもいられなくなったのだ。

「分かった。やろう!」

悟飯は力強く頷くと、トランクスと共に気を高め始めた。

 

▽▼▽▼▽

「お前なんか嫌いだ!死んじゃえー!!」

カーシは瓦礫を跳ね上げ、立ち上がると、大声でそう叫び、胸の前で交差させた両腕から巨大な球体の気弾を放った。

光にも迫る速さで空間を切り裂くように迫る気弾だが、ブウは微動だにせず軽く右腕で虫でも払うように振りぬくと、気弾は簡単に天に高く昇っていった。

 しかし、その様子を見てもカーシは予想通りとでも言うかのように笑っていた。

 気弾が払われた瞬間に悟空が飛び出した。

「!!」

「くらえーーー!!」

驚きの表情を浮かべた魔人ブウに対して、悟空はあらん限りの力で拳を魔人ブウに叩きこむ。

 カーシの気弾の後ろに隠れていたために、存在に気づかず、気弾を払い気を緩めた魔人ブウにやっと渾身の一撃を叩きこむことができたのだ。

悟空の一撃により破壊された顔の破片を散らしながら吹き飛んだ。

「ベジータ行ったぞ!!」

魔人ブウの吹っ飛んだ先に先回りしているベジータに悟空は声を張り上げる。

「分かっている。くらいやがれ!!」

ベジータも渾身の力を込めてハンマー打ちを魔人ブウの腹に打ち込む。

グチャッという肉の潰れる音と共に魔人ブウは地面に落下し砂煙を巻き上げる。

 

「まだだ、だだだだだだだだ!!」

砂煙が巻き上がった場所にベジータお得意の連続エネルギー弾が豪雨のように降り注ぐ。

 砂煙が辺り一面に広がろうとも構うことなく、ベジータは放ち続ける。

 総勢数百とも数千とも言えるエネルギー弾を放ちベジータは手を止めた。

「やったか」

 しかし、巻き上がる砂煙の中から突如として腕が現れ、ベジータが気づいた時には胸ぐらを捕まれていた。

「しまった!!」

「ベジーターー!!なに!?」

悟空がベジータに気を取られたほんの僅かな隙に、悟空も砂煙から現れた腕に捕まれていた。

 砂煙が晴れると、そこには体をグニャグニャと動かし再生する魔人ブウが、歪んだ笑みをたたえ立っていた。

「ヒーーーッ!!」

魔人ブウは悟空とベジータを掴んだまま腕を振り回し、地面や岩山に叩きつける。

「グハッ!!」

「ガッ!!」

魔人ブウは悟空達の断末魔が聞こえれば、聞こえるほど口元を緩め愉快そうに叩きつけるスピードを上げていく。

「悟空、ベジータ!!」

窮地に立つ悟空達を助けようと頭から突進したカーシも魔人ブウは簡単に、まるでボールでも蹴るかの様に蹴り上げた。

「ヒヒッ!」

叩きつけるのに飽きたのか腕を縮め始めた魔人ブウは縮む勢いに任せて、悟空とベジータを叩きつけた。

「ガハッ!!」

ぶつかりあった悟空とベジータは血液を撒き散らしながら苦痛に満ちた声を上げる。

「ホイッ」

魔人ブウは悟空とベジータを空中にほうり投げる。

力なく重力通りに落ちてきた二人に、

「ヒィッッ!」

という言葉と共に拳が深々と腹を抉っていた。

「…………」

壮絶な痛みが悟空達を襲う。

体はその痛みは死をももたらしかねないと判断したのか、悟空とベジータは意識を失った。

 燃え盛るような黄金の気は消え、また長く伸びた髪も元の長さに戻り、色も黒に、意識を失い虚ろな瞳も碧眼から黒い瞳に戻っていた。

 二人の腹から腕を引き抜くとそのまま、二人の顔面を鷲掴みにする。

 そして、魔人ブウは赤黒い気を悟空達の顔面を掴みながら、手のひらに集束させ始める。

「ヒャハハハハハ!!」

歪んだ笑みがこれ以上ないほどに歪み、愉悦に満ちた声を張り上げて笑い始める魔人ブウ。

「ま、まずいぞ!!このまま悟空とベジータを殺すつもりだ!!」

ピッコロが声を張り上げる。

「行きましょう悟飯さん!!」

既にスパークを纏い超2化したトランクスが声を上げた時だった。

 何かが悟飯とトランクスの横をかなりのスピードで通り過ぎた。

「パパ(お父さん)をはなせーー!!」

突如現れた小さな影が殺すことに集中し、隙だらけになった魔人ブウを蹴り飛ばした。

魔人ブウは悟空とベジータを手放し、岩山を幾重にも貫通し破壊しながら吹き飛んだ。

「いくよトランクスさん!」

「はい、悟飯さん!」

超2化を終えた二人は魔人ブウが吹き飛んだ場所に手を向ける、そして

「かめはめ波ーーー!!」

「ファイナルフラーーッシュ!!」

二人のかめはめ波とファイナルフラッシュが交じりあい、巨大な気功波となり魔人ブウを襲った。

「悟天、トランクス、父さん達とカーシさんを連れてピッコロさんの所へ急げ、これでもほんの少しの足止めにしかならない。行けーー!!」

今まで見たことがないほどの緊迫感と焦りが交じった悟飯の怒声に驚きながらも、悟飯の指示通り、トランクスと悟天は意識を失いボロボロになった悟空とベジータを抱え、蹴りで砕かれた体を再生中のカーシを連れて界王神の傍らにいるピッコロの元に降り立った。

「よくやった、トランクス、悟天!!悟飯、トランクスもういいぞ、急げ」

ピッコロはトランクスと悟天を褒め、すぐに悟飯とトランクスに戻るように指示を出す。

 すぐに悟飯とトランクスは攻撃を切り上げ界王神の元に辿り着く。

「皆さん、私に触れていてください。行きますよ。界々!!」

その場にいた、Z戦士、サタン、カーシ、界王神、その付き人キビトの姿は地上にはなく、遥か彼方、次元をいくつも越えた先、大界王さえ足を踏み入れたことのない、聖域『界王神界』に舞い降りていた。



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最後の希望Zソードを引き抜け!!

「さあ、皆さん見えてきましたよ、あれです」

界王神が指差す方向に塔のように一本だけそびえ立つ岩山が見えてきた。

頂上付近からはなにやら神々しい輝きが辺りに広がっている。

 今Z戦士+サタン、カーシは界王神の提案にのり最後の希望がある場へと向かっていた。

 界王神界に到着した当初は魔人ブウにより瀕死の重傷を負っていた悟空、ベジータ、カーシも、界王神の付き人のキビトの能力によって完全に癒されていた。

 界王神、キビトはカーシを回復させることには否定的ではあったが、悟空とサタンの必死の訴えに心を打たれて折れた形になったのだった。

 ただブウ同士の戦いの為に負った傷は治れども、失った力は返ってくることはなく、パワーアップ前のアルティメット悟飯に勝るとも劣らない程の戦闘力のままであった。

 すなわち、地球に存在する悪の魔人ブウがパワーアップ後の力のほとんどを所持しているということになる。

 その力に騒然となりながらも、界王神がわざわざ界王神界まで悟空を連れてきた理由となる『最後の希望』の元へ向かっていたのだ。

「ここです」

界王神がそう言うと舞空術をといて降り立つ。

続くようにZ戦士、カーシ、カーシの背にしがみついたサタンも降り立つが、何分メンバー全員が降り立つには場が狭すぎるために、自重して遠慮した、悟飯、トランクス、ピッコロ、カーシ、サタンは再び空に戻る。

「皆さん最後の希望というのはこの『Zソード』のことです!!」

誇らしげにドヤ顔を浮かべる界王神が指差す先には、神々しい輝きを放つ剣が深々と突き刺さっていた。

「お、なんか凄そうな剣だな!これで魔人ブウに勝てるんか?」

悟空がしゃがみこみ剣を見つめて界王神に問いかける。

「はい、もちろんです!!これこそ界王神界の宝なんですから。ただ…」

「ただ?」

誇らしげに語っていた界王神が表情を曇らせ、言い淀むので少し皆も不安になりながらも先を促す。

「抜けないんです」

 

「…………」

絶句する仲間達。

「皆さんそんな顔をしないでくださいよ。このZソードを抜いてもらうために皆さんを呼んだのですから」

少し憮然とした感じで界王神が話すと、それまで腕を組んで偉そうに場を占領しながら黙って話を聞いていたあの男が口を開いた。

「分かった抜いてやる。トランクス抜け」

「え!俺が抜くんですか!!」

いきなり名を呼ばれたトランクスは驚きながらも聞き返す。

「当たり前だ!剣といったらお前だろ。この中で剣を扱えるのはお前だけだからな」

ベジータはそう言い放つと場を開けるように空に舞い上がる。

「悟空さん俺でいいのでしょうか?」

「ん、いいんじゃねえか」

あっけらかんとして答える悟空を見てトランクスは苦笑しながら先ほどまでベジータが立っていた場に降り立つ。

「界王神様僭越ながら俺が抜かせてもらいます」

界王神をトランクスが見ると、笑顔で頷き「お願いします」と笑顔で返してきた。

「トランクスさん頑張れ」

「お兄ちゃんならやれるよガンバレー」

悟飯や少年トランクスの声援を受けて剣に手を掛ける。

 皆が固唾を飲んで見つめる中トランクスは力を込める。

「……!!……」

「?」

トランクスの表情に驚愕の色が浮かぶ。

皆は何があったのかと問い掛けたいが声を出せる雰囲気ではないために自重する。

 しかし、空気を読めない男が一人…。

 

「どうしたトランクスまだ抜けんのか!」

「はい、想像以上に重く」

それだけ答えると、ついにトランクスが本気になった。

「はああぁぁあっっ!!」

神が逆立ち黄金の光を纏う。

次第にその輝きは増し、スパークを発しながら、地面を揺るがす。

(父さんの期待に答えるんだ!!)

その一心で力を込め続ける。

「…………」

トランクスの必死さに祈るように見守ることしかできない仲間達。

皆が手に汗を握り見つめていた。

「抜くんだーーーっっ!!」

トランクスの叫びが天に轟いた時、それまで微動だにしなかった剣が僅かに動き始める。

「動きましたよ!動きました!あとすこしです!!」

感極まった界王神が我慢しきれず興奮しながらトランクスに声援を飛ばす。

「しーー」

騒ぎだす界王神を悟飯、トランクス、悟天が制する。

「あ、すいません」

再び静寂が戻り皆が見守る。

一ミリづつ剣が浮かび上がる。

「はああああっ抜けてくれーーっっ!!」

最後の力というかのように全力で背を反らすように引き抜く、大地が轟くなか、強靭な筋肉が生み出す力がついに界王神界の宝『Zソード』を大地から抜き放った。

「やった。え、えーー!?」

抜けたことに喜んだのも束の間、気が抜けたわけではないのだが、その重さが尋常なものではなく、今までその剣の言わば台座となっていた岩場が重さに耐えきれず崩れていき、トランクスもまた握った剣が落ちていくことを止めることが出来ずに共に落下していった。

 皆はその様子をただただ茫然と見守るしかできなかった。




剣と言ったらトランクスということで悟飯ではなくトランクスにその役目を任せました。


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老界王神復活

 界王神界に風を切る音が響き渡る、研ぎ澄まされた剣閃が舞うように空気を切り裂いていく。

 以前は軽く振ることさえ困難であったZソードを、剣の達人のトランクスはもうすでに物にしていた。

 確かにZソードは今でも重く感じるのは変わらないのだが、トランクスはそのZソードの重ささえも剣技に利用しているのだ。

「本当にてえしたもんだ」

と悟空が讃えれば。

「当然だ。俺の息子なのだからな」

とベジータが返すのが通例になっていた。

 悟空、ベジータ、悟飯、少年トランクス、悟天、ピッコロ、そしてカーシもトランクスに負けず劣らず打倒魔人ブウを目標に大変な修行を行っていた。

 悟空、ベジータ、悟飯、カーシが順番に組み手をし、少年トランクスと悟天をピッコロが相手をするといった感じである。

 そんな組み手をしているときでさえも、トランクスの剣の美しさは皆の目を惹き付けるものがあった。

 そして、今回は今までの成果を試すことになっていた。

「すでにトランクスさんはZソードをものにしています。魔人ブウと戦う前に試し切りをしてもらいたいと思います」

界王神が切り出す。

「そりゃあいいな。で何を切るんだ?」

「これです」

悟空の問に界王神は答えるように腕を天に向けて翳すと、立方体の黒い金属が現れる。

「これは宇宙で一番固いカッチン鉱です。トランクスさんにはZソードでこれを切ってもらいます」

 

「おお、本当にかてえな。こりゃあ試し切りにうってつけだ!」

悟空は現れたカッチン鉱を軽く拳で叩くと、そう感想をもらす。

 そして、ここで動いたのはベジータだった。

 カッチン鉱を持ち上げて離れていく。

「父さん、どうしたんですか?」

「知れたこと、俺がお前にこれを投げてやるから、お前はそれを切れ」

トランクスの問いかけにベジータは短く答えるとカッチン鉱を抱えたままさらに遠ざかっていった。

 ベジータが配置に着くと、トランクスもZソードを構える。

 皆は声援をかけようとするが、トランクスの剣を構える姿が、そして、その緊張感がそれを許さない。

 ゴクリ、誰かの唾を飲む音が静寂に満たされた空間に鳴り響いた時であった。

「でりゃあっ!!」

掛け声とともにベジータが大きく振りかぶりカッチン鉱をトランクスに向けて投擲する。

 カッチン鉱はその重さもかなりのものであるが、そんなことは感じさせないような速度でトランクスに向かって飛んでくる。

 音速など遥かに及ばない速度で迫るカッチン鉱をトランクスは静に見据える。

 その様子は、水面に映った月のように静かで荒々しさなど一辺も感じさせない姿である。

 カッチン鉱がトランクスの剣の間合いに入った時、その静寂は断たれた。

「はあっ!!」

静から動へ、一寸の乱れもない剣閃は、紫電の輝きを一本残して過ぎ去った。

 カッチン鉱は何事もなかったかのように遠く離れた所に着弾した。

「どうなったんだ?」

悟空さえもトランクスが振り抜いたZソードとカッチン鉱の勝負の行方を見切れてはいなかった。

 それほどまでにトランクスの剣の振りが早かったとも言える。

「み、見に行きましょう」

界王神の声に皆頷き、戻ってきたベジータも交えてカッチン鉱を見に行く。

 カッチン鉱は何一つ傷が無いように見えた。

 しかし、悟空が指で軽く押してみると、カッチン鉱でさえ今切られたことに気づいたかのように、するすると上部が斜めに滑り落ちた。

「すっげえさずが兄ちゃん!!」

「本当に凄いよトランクスさん」

「お見事です」

少年トランクス、悟飯、界王神がそれぞれ賛辞を送る。

「あ、ありがとうございます」

照れながらもトランクスが賛辞に答えた時であった。

 なんとZソードが神々しく輝き始めた。

 その輝きに皆が耐えられなくなり、目を閉じしばらくたち、目を開けた時だった。

「ハロー」

しわくちゃの界王神もどきがその場に突然現れていた。

 突然の登場に驚きを隠せない一同を尻目にしわくちゃ界王神もどきが口を開いた。

「わしをこっちの方法で封印を解くとは本当にたいしたもんじゃ」

なにか、感慨深げに頷きながら話している老人に界王神が一同を代表して問いかける。

「あのう、貴方はいったい?」

「情けないのう、御先祖様の顔すら分からんとは。わしはずっとず~~と前の界王神じゃ」

「えーーーーっ!!」

皆が驚きの声をあげるのを老界王神はしてやったりといった感じで笑みを浮かべ喜んでいる。

「ご、御先祖様はいったいどうやってここへ?」

「なんじゃそんなことも知らなかったのか嘆かわしい。わしは剣にされ封印されとったんじゃ。そしてその封印が解かれたからわしがこうやって元に戻れたということじゃ」

老界王神の突飛な話に皆が呆然とする。

「なんじゃ、お前らわしの話が信じられんのか。お前さんがわしの封印を解いたんじゃろ」

老界王神はトランクスに指を指してそう言う。

「えっ俺ですか」

「そうじゃお前さんじゃ。わしの封印を解く方法は二つ。一つ目が剣を折ること。そして二つ目が宇宙一固い金属を切ること。どちらもほぼ不可能な為にわしを剣にしたものが作った制約なんじゃ。そしてその二つのなかでもより難しく、最高難易度のものをお前さんはクリアしたということなんじゃ」

老界王神の話に皆驚き、尊敬の眼差しをトランクスに向ける。

「で、なんでじっちゃんは封印されたんだ?」

悟空が問いかける。

「聞きたいか?聞きたいか?」

「ああ教えてくれ」

「それはなあ……」

 そこからは、老界王神の自慢交じりの話が永遠のように続いたので簡潔に纏めると、潜在能力を限界以上に引き出す能力ということであるみたいだ。

 ナメック星の長老の能力の上位互換能力と言ってもいい。

「で、じっちゃんの能力があれば魔人ブウに勝てるんか?」

延々と自慢話を聞かされて疲れきっている皆に変わって悟空が本題を切り出す。

 

「たぶん無理じゃ」

 

場の空気が凍りつき、絶望が舞い降りた。




原作を大幅に変えさせてもらいました。
原作をこよなく愛するファンの皆さんには申し訳ないです。


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いざ地球へ、最終決戦へ

 更新またもや遅れました。
 魔人ブウより厄介な中間試験がありまして…。
 申し訳ない。


 今界王神界では4つのグループに分かれている。

 一つ目は、老界王神とトランクスと悟飯。

 老界王神は、限界を越えた力をつけても今の魔人ブウには敵わないと言ったが、それでもしないよりはと説得されて封印を解いたトランクスと潜在能力がとてつもない悟飯の二人の力をまとめて引き出しているところである。

 ちなみに魔人ブウが予想以上の力を持っていたため、余裕がなくエロイことを要求されることなく願いが叶えられるようになった。

 さらにちなみにこの場でエロイことを要求して史実のようになったら、悟空、老界王神がただですむことはなかっただろう。

 二つ目のグループは、一つ目のグループを見守るグループである。

 メンバーは、界王神、キビト、ピッコロ、少年トランクス、悟天である。

 界王神、キビト、ピッコロは老界王神を尊敬の眼差しで見つめ、少年トランクス、悟天はワクワクしながら待っている。

 三つ目のグループは、そう戦闘狂の二人、言うまでもない悟空、ベジータである。

 来るべき再戦に向けて修行をしているのだ。

 修行という範囲を遥かに越えた戦いでもあるのだが。

 四つ目のグループは、サタンとカーシである。

 この二人は今、今後の話し合いをしているのだ。

「多分だが、老界王神はポタラを渡して『ベジット』に全てをかけると思う。だけどな、『ベジット』ならばいい戦いはできるが勝つことはできない可能性もある。あの魔人ブウは未来の知識を持っているからな。でここからが重要な話だ。サタン耳を貸せ」

というと、耳を寄せたサタンにコソコソと話をする。

 誰にも聞かれないように。

「………で………を………する」

「えっ、本当にするんですか。」

カーシの話を聞き、本当にするのかと聞くサタンに。

「それなら勝てる。それにそれしか方法はない!」

自信を持って断言する。

 という四つのグループに分かれているのだ。

 そして、約一日が経過した。

「おお!二人とも格段に力上がってんなあ!」

老界王神の能力で強くなった二人を見て悟空は簡単の声を上げた。

「フン!たしかに強くはなったがまだこれではヤツには勝てん」

ベジータも強くなったことには悟空と同様に頷いた、がしかし、一度魔人ブウと戦ったことがあるベジータは断言した。

「だからワシは言ったんじゃ、勝てんとな。で、もう一つこちらが本当の希望じゃ」

そう言うと老界王神は自分の耳につけている黄色いピアスを外す。

「これは界王神の秘宝『ポタラ』という。これを二人が一つずつ逆の耳につける。するととてつもない力を持った一人の戦士が誕生するんじゃ」

「ええっ、このピアスにはそんな力が!!」

「そんことも知らんとは嘆かわしい」

初めて知った真実に驚く界王神に苦言を呈する老界王神。

 すると、「キビトは右耳のポタラを外しなさい。私は左耳のポタラを外します」

と言い、二人が外した時だった。

 二人の体が引き付けられ、そしてぶつかると誰もが思った時だった。

 二人は光に包まれ、その光が止んだ時には、一人の男が立っているだけであった。

 『キビト界王神』の誕生の瞬間である。

「これは凄いですよ。もうなにも恐いものはないぐらいです。でご先祖様どうすれば元の二人に戻れるのですか?」

「戻れんぞ」

老界王神のその一言でキビト界王神は言葉を発することなく項垂れ、ベジータは

 

「ふ、ふざけるな。なぜ俺とカカロットが合体するだけでも耐えられんのに、その上合体したら元に戻れんだと!!」

怒り狂いポタラを突っ返そうとするベジータに

「だから言ったんじゃ。最後の手段だと。パワーアップした二人が勝てなかったときに使えということでな。使わなければそれでいい。一応持っていけ」

と言うとベジータのポタラは受け取らずそっぽを向いてしまった。

「で、では悟空さん地球に行きましょう。メンバーは、悟空さん、ベジータさん、トランクスさん、悟飯さんでいいですか」

「えっ、カーシは行かねえんか?」

悟空がカーシの名前がないことに気づき問いかける。

「俺は少し準備することがあってな準備ができたら向かうぞ」

「そうか、分かった」

と言うと、他からも声が上がる。

「俺たちも連れていってよ!」

そう少年トランクスと悟天である。

「連れていってやりてえんだが、今回は無理だ。ここで待ってるんだ!」

優しさもあるのだが、有無を言わせない力強さを持った声にそれ以上言えなくなる少年トランクスと悟天。

「気を付けろよ。そして頼んだぞ!」

そう言うピッコロに悟空は「おう」と答え、悟飯とトランクスは「はい」と答える。

「では行きますよ。界々」

キビト界王神に連れられて、悟空、ベジータ、悟飯、トランクスは再び戦場となる地球に戻っていった。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

地球にたどり着いた五人は絶句した。

 目の前には、荒れ果て瓦礫が散らばる阿鼻叫喚の世界が広がっていた。

 悟空達が離れていたこの二、三日で地球は魔人ブウによってまるで地獄のような世界に変えられていた。

「キャーーーッ誰か助け……」

そのような中女性の叫び声が瓦礫と化した街中に響き渡る。

「行くぞ!」

悟空達が叫び声が上がった場所にたどり着くと、腹を貫かれた女性とただただ無表情で返り血を浴びた魔人ブウが。

 崩れ落ちる女性を見ながらベジータが驚くべきことを呟いた。

「いったいどうなっていやがる、ただでさえバカでかかったヤツの気が更に強くなっていやがる…」

と。



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魔人ブウの脅威。二人を襲う恐怖のあの技

独自設定をさらに追加します。
本当にドラゴンボールファンには申し訳ないです。


「ヒャハハハハーーー!!」

人を貫き血塗れになる魔人ブウが突如歓喜に溺れた声をあげる。

 その声が振動となり、辺りの建物のガラスを砕き、一面にガラスの雨を降らせる。

 ガラスの雨はキラキラと輝き美しい幻想的な情景を作り出すが、魔人ブウのおぞましさがそれを遥かに上回り悟空達は声を発することもできなかった。

 しばらく呆けて見ていると、魔人ブウに付着した血液と、貫いている女性の亡骸が魔人ブウの体内に飲み込まれていく。

 その時だった、魔人ブウの気が再び膨れ上がった。

 目の前で起こる異常な事態に困惑を隠せない仲間たち。

 そんな中で震えながらキビト界王神が重たい口を開いた。

 

「魔人ブウは人が死を前にして、また死を体感することによって生み出される、負の感情、恐怖、悲しみ、怒り、無念を人の亡骸とともに自分の体内に吸収することによって自分をさらに強化しているのです…」

絶望的な結論。

 ただでさえ桁外れの力を持っていた化け物がこの二、三日でさらに力をあげていたのだ。

 皆が底知れぬ恐怖に顔を歪めていると、魔人ブウが悟空達を見てにやついているのに気づく。

 しかし、そんな恐怖を振り払うかのように二人の戦士、悟飯とトランクスが前に出て、気を解放する。

 二人を中心にし吹き荒れる突風、そして、地球自体も鳴動し始める。

 辺りのビル群も次々と崩れ去っていく。

「父さん行ってきます」

「ああ、無理すんなよ」

悟空と悟飯が言葉を交わす。

 すでに悟飯は普段の好青年の優しい容貌ではなく、戦士のそれになっている。

「行ってきます」

「ああ」

ベジータ親子もたった一言だが言葉を交わす。

 この親子だからこそ、そのたった一言であっても言葉にださやなくても伝え会う何かがあった。

 二人は視線がを交わし、頷き合うと爆風のような衝撃波を撒き散らしながら魔人ブウに襲いかかる。

 魔人ブウはそんな二人に視線を向けながらも構えすらとる素振りすら見せない。

 魔人ブウの目の前で急加速し、姿を消した悟飯が死角となる背後に現れ頭部目掛けてハイキックを繰り出す。

 呼応するようにトランクスは懐に潜り込み正拳を叩き込む。

 しかし、二人の同時攻撃も造作もなく魔人ブウは受け止める。

 そのまま悟飯の足とトランクスの拳を掴んだまま、体をひねり、振り回し始める。

 次第に腕が延び先程の悟飯達の気に耐え残ったビルに、そしてガラスの破片で埋め尽くされている地面に叩きつけはじめる。

「ぐはっ!」

「がっ!」

たったそれだけの攻防でも明確に力の差が見えていた。

 そのまま地面に二人は投げつけられ、地面に大きなクレーターを作り二人は横たわっていた。

 魔人ブウは大きく息をすう。

 ガリガリの胸と腹が膨れ上がる。

 極限まで膨れ上がった腹と胸から息を吐き出すと口から風船ガムのような白い何かが無数に排出される。

 すう十個の白い何かが魔人ブウの前に整列するように並ぶ。

 それは足がなく、よくイラストでかかれる幽霊そのもので魔人ブウの姿をしているものだった。

 そう、正史でゴテンクスが見せた『スーパーゴースト神風アタック』が再現されたのだ、青年となった二人に。

 魔人ブウが地に伏せる二人に指を指すと、無数のゴーストが突撃を開始する。

「あれはヤバイぞ、ベジータ撃ち落とすぞ!」

「言われんでも分かっている!」

本能で初見の『スーパーゴースト神風アタック』の危険性を察知した悟空とベジータは連続エネルギー弾で撃ち落とそうとする。

 だが、幾多の弾幕も掻い潜りながらゴーストは突き進む。

「なめるなー!!」

連続エネルギー弾職人のベジータは照射スピードをあげる。

 そのスピードに次第に対応できなくなりゴーストは次々と爆発していく。

 しかし、難を逃れた一つのゴーストがトランクスに直撃した。

「――――」

声にならない断末魔を上げてトランクスは爆発に巻き込まれた。

「トランクス―――――!!」

ベジータの叫びが辺りに木霊した。

 血液を撒き散らしながら吹き飛ぶトランクスを追い、ベジータが飛び出した。

「悟空さんここはお任せします」

それだけ言うとキビト界王神もトランクスを助けるべくベジータの後を追い飛び出した。

「しまった!!悟飯逃げろーーー!!」

トランクスに気をとられ視線を外していたその時に魔人ブウは赤黒い禍々しい気弾を用意していた。

 それをなんの躊躇もなく悟飯に放つ。

 悟空は一歩出遅れた。

 瞬間移動も間に合わない。

 悟飯は迫り来る気弾を虚ろな目で見ているしかなかった。

 迫り来る『死』を間近に感じながら。

(来る)

覚悟を決めた時だった。

 悟飯の前に何かが立ちはだかった。

 悟飯を守るように。

 悟飯の脳内にはあの時、同じように自分を命をかけて護ってくれたピッコロの姿がフラッシュバックしていた。

 しかし、それはピッコロではなかった。

 その人物は振り返り、

「悟飯君、お帰りなさい。頑張ってね」

 

と涙を流しながら必死の笑顔を浮かべているビーデルであった。

「ビ、ビーデルさーーーーーーーーん!!!」

悟飯の叫びなど無視するかのように非情の気弾がビーデルを飲み込んだ。



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「許さんぞ!!」怒りの悟飯猛反撃

 瓦礫と化していたビル群は吹き飛び、辺り一面は更地になっていた。

 しかし、そんな中でも悟飯は無傷で茫然自失の状態で佇んでいる。

 悟飯の頭の中では、『なぜビーデルさんがここへ』

『守ると言ったのに逆に守られてしまった』

『なぜ僕はこんなに無力なんだ』

という思いが頭の中を占領していた。

 しかし、そのような思いを簡単に払いきってしまうある思いが心の中から沸き上がってくる。

「ビーデルさん、ビーデルさん、ビーデルさん、うわーーーーーっっっ!!よくも、よくも、よくもビーデルさんを!!絶対に許さんぞーーーー!!!」

悟飯が叫ぶと同時に巨大で桁違いな気が悟飯の体から溢れ出る。

「悟飯が怒ったこれなら……」

悟飯の体から吹き荒れる気と爆風のような突風に耐えながら悟空は呟いた。

 だが、そんな悟空の目には未だに拭いきれない考えがあった。

 悟飯は先ほどまで立っていた場に抉ったような跡を残して衝撃波を撒き散らしながら魔人ブウに怒りの形相で突っ込んでいく。

「ハーーッッ!!」

突っ込んだ勢いのままに拳を魔人ブウに叩き込む。

 グチャッという肉を潰したような音と共に拳が過ぎた頭部が破片を撒き散らし消し飛ぶ。

「まだだーーっっ!!」

悟飯は怒りに任せて連打を叩き込む。

 左右のパンチ、左右のキック、吹き荒れる嵐のように、叩きき付ける豪雨のように、爆発音のような音と、辺りを破壊するような衝撃波を撒き散らしながら止むことのない攻撃を加える。

「お前なんかお前なんかお前なんか!!」

怒りの形相ながら涙を流しながら攻撃を加え続ける悟飯の姿は大変痛ましい。

 この姿をピッコロが見ていたら、

「悟ハーーーン!」

と叫び出してしまうだろう、そのような姿である。

「最後だ。かーめーはーめー波ーーーー!!!」

肉片と化した魔人ブウを消し去るほどの巨大な気のかめはめ波を放つ。

 かめはめ波の目映い閃光の中で魔人ブウの肉片は消えていった。

「はあはあはあはあ…やったか…」

全力の攻撃を絶え間なく繰り出した挙げ句に渾身の力を込めたかめはめ波。

 すでに悟飯の体力は限界に達していた。

「カカロット何があったんだ」

驚いた表情でベジータがやって来る。

「ベジータ、トランクスはでえじょうぶか?」

「ああ界王神の野郎が回復させた。それより何があった」

「ビーデルが悟飯を庇って……死んだ…それを見た悟飯が怒って魔人ブウを…」

「なに。悟飯が魔人ブウを」

聞き返すベジータに悟空は静かに頷いた。

 しかし、悟空はそれに続ける。

「ああ、ただあまりにも呆気なかった。たしかに悟飯の攻撃は凄まじかった。だが魔人ブウがあの攻撃を避けられないとは考えられねえ…」

不安げな表情で呟くように話す悟空。

「フンッ、カカロット、お前は考え――――な、何!?」

突然ベジータの表情に驚きと恐怖が走る。

 それは悟空も、そして息を切らせている悟飯も同様だった。

 空中に塵になったような細かい粉塵が集まり、纏まり、膨らみ、再び形をなし始める。

「殺ったんじゃなかったのかカカロット!!」

「殺ったはずだった…だがヤツの気は全く変わってねえ。悟飯の攻撃は全くの無駄だったんだ」

悟空は苦虫を噛み潰したような表情で呟く。

 そして、悟空は最後の手段をベジータに提案する。

「ベジータ、界王神のじっちゃんからもらった『ポタラ』を使うしかねえ」

「なんだと!俺がカカロットお前と合体するだと!死んでもごめんだ!!」

ベジータは頑なに拒否する。

 いくら強くなるためとはいえ悟空との合体などベジータのプライドが許さなかったのだ。

「ベジータ、おらたちが死ぬのは構わねえ。だがな、おらたちが死んだら次は、ブルマやトランクスが死ぬんだぞ。それを防げるのはおらたちしかいねえんだぞ」

悟空が真剣な表情で強い口調ながら説得するようにベジータに告げる。

「ブルマ……トランクス……クソッタレーーーー!!カカロット『ポタラ』を寄越せ!!」

「ああ、ベジータこれだ」

ベジータに『ポタラ』を渡した瞬間魔人ブウは元のガリガリの黒い体色の姿に戻っていた。

 魔人ブウは悟空が持つ『ポタラ』を見た瞬間表情が緊迫したものに変わる。

 そして間も開けず悟空達に突っ込む。

 『ポタラ』をつけるのを阻止するために……。

「ヒィアアァァア!!」

「速え!!」

すでに目前に迫っている魔人ブウ。

 そんな時であった。

「父さんの邪魔はさせない!!」

悟空に迫っていた魔人ブウが横から攻撃を受け吹き飛ぶ。

「今です悟空さん、父さん」

キビト界王神により回復させてもらったトランクスであった。

「すまねえトランクス」

「……よくやったトランクス……」

二人はそれぞれ違いはあるが礼を述べ、悟空は右耳に、ベジータは左耳に『ポタラ』をつける。

 着けた直後二人の体はまるで磁石のN極とS極のように引っ付く。

 普段であれば絶対に見られない光景である。

 そして、ベジータが「ひっつくなカカロット!!気色悪い」などと言う暇も与えず目映い閃光を放ち始める。

 閃光が止んだ時には、その場には悟空、ベジータはいなく、一人の戦士ベジットが誕生していた。

 魔人ブウは苦々しげにその姿を睨み付けていた。



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ベジットVS魔人ブウ 極限の戦い

 中に浮く悟空とベジータがポタラにより融合したことにより誕生したベジット。

 新しい体を確かめるかのように手を握ったり、開いたり、空に向かって拳をつきだしたりしている。

 拳がつきだされる度に爆風のような衝撃波が巻き起こり遠く離れた山が粉々に吹き飛ぶのだが、ベジットは気にも止めていない。

 一通りの動きを試すと動きを止め感嘆の声を上げた。

「フハハハハハ!もう怖いものなぞありはしない。とっととかかってこい魔人ブウ!」

ベジットは視線を下に向ける。

 視線の先には今まで見せたことのないような焦りの表情を浮かべた魔人ブウが。

「どうした、何をビビっているかかってこないのなら俺から行くぞ!」

そうベジットが宣言した時には、ベジットの拳が魔人ブウの腹部を深々と抉っていた。

「ゴハッ」

いきなりの先制攻撃をまともに受けた魔人ブウは動きが完全に止まる。

「どうした、どうした、今までの余裕は何処にいったんだ」

余裕綽々の表情で魔人ブウに話しかけながら恐ろしいスピードでラッシュをかける。

「拍子抜けだぜ。終わりだ」

全ての攻撃が今までではあり得ないように魔人ブウを捉え、圧倒的に優位にたっていることからベジットはベジータの性格からくる慢心が顕著に現れていた。

 終わりだとばかりに大きく振りかぶり渾身の力を込めて拳を叩きつける―――はずであった。

 地球さえも楽々破壊するのではないかとも思われた拳であったが、魔人ブウを捉えることはなかった。

 魔人ブウの眼前で拳が止まっているのだ。

「えっ!?」

終わったとたかをくくくっていたベジットに現実を叩きつける。

 ベジットの手首を魔人ブウが掴んでいたのだ。

 先程のラッシュにより歪んでいた魔人ブウの顔面がみるみるうちに再生する。

「こ、こいつ!」

どんなに引いても押しても微動だにしないので焦れたベジットは空いている左手を魔人ブウに叩き込む。

 しかし、左拳も不発に終わる。

 完全に再生しきった魔人ブウが顔をあげる。

 先程の焦りの表情など微塵も感じられない。

 今は下卑た歪んだ笑みを浮かべてベジットを真正面から見据える。

「オマエヨワクナッタナ」

初めて魔人ブウが人の言葉を話す。

 しかし、それ以上にベジットを困惑させ怒らせたのは、ここまで強くなった自分を弱くなったと言ったことであった。

「バカにす――ガハッ!?」

怒りに任せて頭突きをしようとしたベジットの腹に魔人ブウの膝が深々と刺さる。

 あまりの痛みにベジットは悶絶する。

「ホラナ、マエニオレガタタカッタオマエハホントウニツヨカッタ」

片言で喋りながら膝を幾度となくベジットに容赦なく叩き込む。

「ガハッ、グハッ」

膝が入る度ベジットの苦悶に満ちた声が響き渡る。

「ヒヒヒヒヒ、ホラナ。オマエガヨワクナッタンジャナイ。オレガツヨクナリスギタンダ!」

勝ち誇ったようにベジットに告げる魔人ブウ、その時だった。

「ふざけるなーーー!!」

ベジットの体から黄金の気が溢れだす。

 あまりの圧力に魔人ブウの両手の拘束が緩んだとき、ベジットはそれを見逃さなかった。

「返すぜ!」

先程のまでのお返しだと言わんばかりに今度はベジットが膝を叩き込む。

「ガッ!」

怯み両手を手放されたことにより自由になったベジットは、腹を押さえて前屈みになっている魔人ブウに両手を組み合わせて降り下ろす。

 がら空きとなった背にハンマー打ちをまともに受けた魔人ブウは凄まじいスピードで地面に突き刺さる。

 地面に打ち付けられてもスピードは衰えずそのままに穴を掘るかのように地中深くまで潜っていく。

「野郎、なめやがってーー!!」

 怒りが全く治まることはないベジットが怒りに任せて黄金の気を撒き散らす。

 超サイヤ人に姿を変えたのだ。

「出てこいよ魔人ブウ!俺をこけにしてこれで済むと思うなよ」

黄金の髪を逆立てて、碧眼の瞳で魔人ブウが沈んでいる穴を睨み付けながらベジットは大声を上げる。

 その声が魔人ブウに届いたのだろう。

 穴の中からおぞましい身も凍るような禍々しい雄叫びが聞こえてくる。

 そして、穴から赤黒い禍々しい光が放たれた時だった。

 凄まじい轟音を轟かせ地面が爆発し、大きく抉れあがる。

「ハアハア…」

肩で息をする魔人ブウがその穴の中心部に浮いている。

「まだピンピンしてるじゃねえか!」

ベジットは魔人ブウを見てニヤリと笑う。

「第二ラウンド行くぜ!!」

ベジットが突っ込もうとした時だった。

〈待て、待つんじゃー!!〉

ベジットの頭の中に切羽詰まった声が響く。

「なんだ界王神のジジイ。今いいところなんだ。つまらんことを抜かすとぶっ殺すぞ」

明らかに苛立った声で話すベジットだが、魔人ブウへ突っ込むのを止め話は聞くようだ。

〈お前達がこのまま戦えば地球がもたんぞ、ただでさえ戦いや気の余波で地球の周りや遠く離れた星でも被害が出たりしているんじゃぞ!〉

 

老界王神が念話で捲し立てるように話す。

 宇宙の摂理を守る界王神なのでストップを当然だろう。「じゃあどうすればいいんだ!!」

ベジットの怒声がこだまする。

〈そう大声を出さんでも聞こえているわい。しょうがないヤツを連れて来て界王神界で戦え。この星ならちょっとやそっとの攻撃じゃびくともせんし、隔絶された世界じゃから他に迷惑がかかることもない。……うるさいぞ黙っとれ!ああすまんのキビト界王神がゴチャゴチャと念話で五月蝿く茶々を入れてきたんでの〉

それだけ言うと老界王神の念話は途切れた。

「界王神聞こえているか。俺はコイツを連れて先に界王神界 に行く。お前は悟飯、トランクスを連れてこい」

そう言うと、瞬間移動で魔人ブウの背後をとり、拳を深々と背中に捩じ込みながら、額に人差し指と中指を当ててカーシの気を探り瞬間移動を実行した。

「はあ御先祖様もむちゃくちゃ言うんだから…。悟飯さん、トランクスさん行きますよ。界々」

愚痴を残してキビト界王神と悟飯、トランクスの姿も地球上から消えた。



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戦いは界王神界へ

 戦禍に巻き込まれる前の界王神界は平和であった。

 その場に居るのはカーシ、サタン、ピッコロ、悟天、トランクス、そして老界王神である。

 老界王神は丁度ベジットに念話で指示を、ピッコロは水晶玉に写しだされた映像を手にあせ握り観戦している。

 そんな最中、カーシ、サタン、悟天、トランクスは離れた場所で密談中である。

「でな、今おれが言ったことをして欲しいんだ」

「うん分かった」

「パパや兄ちゃんのためになるなら」

カーシの作戦に悟天とトランクスは素直に頷いている。

「これなら勝てますね」

サタンは口ではそう言ってはいるが心配そうである。

「大丈―――」

カーシがサタンに答えようとした時だった。

 突然、二人が、ベジットと魔人ブウがなんの前触れもなくカーシの背後に現れた。

「ついたな。だりゃあ!」

ベジットは周りを見回し、界王神界にたどり着いたことを確認すると、右腕に刺さっている魔人ブウの顔面に左ストレートを叩き込む。

「グワッ!」

魔人ブウは遥か彼方に吹き飛び岩山に突っ込み、崩れた瓦礫に飲み込まれた。

「おっ、悟空…じゃなく、ベジットか」

「ああそうだ。界王神のじいさんにこのまま戦ったら地球が壊れるって言われたから、こちらに来たんだ。確かにこの星は頑丈だな。今魔人ブウが吹っ飛んだが、岩山が崩れただけだったからな」

カーシに答えながら、魔人ブウが吹っ飛んだ先に視線を送る。

「カーシ、悟天とトランクスを連れて離れていてくれ。今からここはとんでもない戦いの戦場となる」

「ああ、分かった」

ベジットは信頼した眼差しでカーシを見て頼むとカーシも了承する。

「ねえ、いいの僕たち離れても?」

悟天がカーシに首を傾げながら問いかける。

 先ほど話し合っていた作戦について言っているのだろう。

「ああ、おれたちの作戦はもう少し先に必ず必要になる。それまで待っていてくれ」

「うん」

カーシはそう答え、悟天が納得して答えたので、ベジットに言われた通りにカーシは悟天、トランクスを抱え、サタンを背中に乗せ舞空術でかろうじて戦いを観戦できる場所に移動した。

 カーシが降り立った所にキビト界王神がベジットから少し遅れて悟飯と青年トランクスを連れて界王神界に戻ってきた。

「よっ」

「あっ兄ちゃん!!」

カーシは三人に手を上げ挨拶し、悟天は悟飯に、トランクスは青年トランクスに飛び付き喜んでいる。

「どうですベジットさんは?」

「今から戦いが始まるところだ」

キビト界王神がカーシに尋ねる。

 もうすっかり打ち解けている。

「そうですか。では私は御先祖様の所に―――」

「その必要はないぞ」

キビト界王神が話している腰を折るように、声がかけられる。

 声がする方を見るとピッコロが老界王神を連れてその場にやって来ていた。

「御先祖様」

「無事だったようじゃな」

キビト界王神は老界王神と言葉を交わし、

「二人とも怪我は大丈夫か?」

「ええ、界王神様に助けて頂いたので、ただ悟飯さんはまだ心に……」

ピッコロの問いに青年トランクスが沈痛な表情で答える。

「ご、悟飯……」

「ピッコロさん…僕は大丈夫です。ビーデルさんもドラゴンボールがあれば大丈夫ですから…」

「そうだな」

気丈に悟飯はピッコロに心配をかけさせないために答えるが、やはりまだ立ち直りきってはいないようだ。

「帰ってきてすぐで悪いんだが。悟飯、トランクス少しこっちに来てくれ。悟天と小さいトランクスには伝えてあるが、作戦があるから伝えたい」

カーシは三人が話を終えると、そう告げた。

「はい」

二人は答え、カーシの元に向かった。

◇◆◇◆◇◆

 

 ベジットが舞空術で宙に浮いていると、瓦礫が弾けとび、魔人ブウが戻ってくる。

「まだ大丈夫だよな。楽しませてもらうぜ!」

「ウガー!」

ベジットは黄金の気を撒き散らしながら、魔人ブウは邪悪な気を撒き散らしながらぶつかり合う。

 二人の姿は消え、爆音のような打撃音と、地を抉る衝撃波が辺りに撒き散らされる。

 もうその場にいる二人、ベジットと魔人ブウ以外には、不可視の世界である。

 気を探ろうとそれは同じでもう誰もがついていけない戦いになっていた。

 なりやまない打撃音、終わることのない辺りの崩落。

 戦いが桁違いであることだけはその場にいる誰もが分かっていた。

「ここまでやれるとはな。正直予想外だ」

「ヒヒヒ」

両手を組合力比べのようそうになる。

「ハアーーー!!」

「ヒャハハハハ」

二人を中心に地面がクレーター状に抉れ始める。

 力は全くの均衡状態、共にピクリとも動かない。

「フッ」

ベジットが口角を少し上げ笑いを溢す。

 その瞬間、力を抜き、両手を引き、体を反らす。

 魔人ブウはいきなり力を抜かれたことに対処できず前のめりになる。

「ハアッ!!」

ベジットはがら空きの魔人ブウの腹部を蹴り上げる。

「くらえー。ハアハアハアハアハア」

蹴り上げた魔人ブウに連続エネルギー弾を撃ち込む。

 空中に巨大な爆発が起きる。

「フッやったか」

「ばあ」

ベジットが呟いた時だった。

 魔人ブウが背後を取り、ベジットの背中に赤黒い禍々しさ溢れる巨大な気弾を撃ち込んだ。

「ガハッ」

ベジットは気弾に飲み込まれるようにそのまま気弾と共に地面に叩きつけられ、爆発した。

 星全体に衝撃波が撒き散らされる。

 その衝撃波により、岩山が砕け、地面が抉れ、木々が消し飛ぶ。

 頑丈な界王神界であっても想定外の被害にさらされた。

 爆発と粉塵が収まったその場には、底が見えない漆黒の大穴が出来上がっていた。



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伝説の究極戦士

 ラストスパートなので展開が一気に変わります。


 界王神界に穿たれた巨大な大穴を前に魔人ブウは口角をあげて嫌らしい笑みを浮かべていた。

 それとは逆に戦いを見守っていたZ戦士には絶望が走る。

 大穴を占める闇と同等の不安と恐怖という闇が心に現れかけていた。

 その時、魔人ブウの表情が曇り、逆にZ戦士の心の闇は払われ、表情は晴れ渡る。

「かなり強いなお前」

服は破け身体中に数えきれないほどの怪我を負ったベジットが現れたのだ。

「イキテイタカ」

腹立たしげに声を荒げて魔人ブウは言う。

「ああなんとかな。お前を全力を出さずに倒そうとしたことが間違いだった。次は全力でやらせてもらうぜ。超サイヤ人3のベジットでな!」

そう宣言をするとベジットは足を肩幅に広げ腕を腰のあたりまであげ気を爆発させる。

 黄金の気が吹き荒ぶ、まるで嵐のようだ。

 界王神界を丸々呑み込むと言っても過言ではない。

 グングンと際限なく爆発的に膨れ上がるベジットの気。

 スパークがともない始め、これから3へと差し掛かった時だった。

 魔人ブウが舞い上がる。

 そしてガリガリだった体が風呂敷を広げたように広がった。

 皮しかないためこのようになったのだろう。

 そのまま黒い皮は気を溜めるために無防備になっているベジットに襲い掛かりまとわりついた。

「なんだこれは、離れやがれ!」

ベジットがもがけばもがくほど飲み込まれていく。

 そして、ついにベジットは魔人ブウに呑み込まれた。

 この攻防は長いようで短い数瞬の出来事であり、Z戦士も手を出すことができなかった。

 呑み込まれた二人が目覚めたのは以前に一度訪れたことのある肉でできた壁で囲まれている空間であった。

「どひゃあどうなってんだこりゃあ!!」

そのような空間に悟空の叫び声が広がる。

「五月蝿いぞカカロット!」

隣からはいつものつんけんした口調でベジータが文句を飛ばす。

「だってよお、合体が解けちまってるんだぞ!」

「フンッ、大方取り込まれてここに来た時に解けたんだろう。また戻れば元に戻るだろう」

落ち着き払った表情でベジータは語る。

 冷静に分析するあたりは、さすがに戦いに慣れたサイヤ人の王子である。

「じゃあこっから出りゃあいいんだな」

「ああ、口かけつどちらかからな」

「オラは口がいいぞ」

「フン、俺もだ」

久々に意見が合った二人が舞い上がろうとしたとき、肉の壁が競り上がり、何かが這えてきた。

 先ほどまで戦っていた魔人ブウの上半身である。

「フヒヒヒヒ、モドッタモドッタ」

空間に響き渡り、不快な笑い声。

「分かっていたような話ぶりだな」

ベジータが苛立ちを隠さずに怒鳴る。

「アア」

簡潔に一言で魔人ブウは答える。

 カーシが恐れていたのはこのことであった。

 前回の戦いの知識を有しているためにベジットの解除法を知っていたのだ。

「ここから出しやがれ!」

悟空が叫ぶ。

「アアイイゾ。タダシ……」

魔人ブウは人差し指を悟空とベジータに向け気を放った。

 見た目はドドンパしかし、威力は遥かに違う。

 放たれた一本の光線は悟空とベジータの耳に光るポタラを撃ち抜き破壊した。

「ヒャハハハハハハ!ノゾミドオリダシテヤル」

魔人ブウは再び壁の中に戻り、空間が歪み始める。

「やべえぞ。ポタラが壊されちまった」

「このままでやるだけだ」

二人は壁に呑み込まれ、そして外に排出された。

 二人が再び外に出た時だった。

「悟空、ベジータ早く仲間の元へ行け!!」

緊迫した声が飛ぶ。

 声がした方を見ると魔人ブウをカーシが羽交い締めにして拘束していた。

「お前たちが揃った時最後の希望になるんだ。やり方は皆に伝えてある早く!!」

「ああ、行くぞベジータ!」

「指図するなカカロット!」

悟空とベジータはカーシの拘束も長くはもたないことを察して仲間の元に向かった。

 悟飯、青年トランクス、少年トランクス、悟天がすでに待っていた。

「悟飯おらたちはどうすりゃあいいんだ」

「カーシさんが言うには、父さんがここに立って、僕とトランクスさんと、トランクスと悟天、そしてベジータさんで父さんを囲みます」

言われた通りに皆は行動をするが、ベジータは従わない。

「なぜ俺が――」

「父さん!」

「パパ!」

二人のトランクスの声。

「チッ。クソッタレ!今回だけだぞ!」

ベジータも悪態をつきながら渋々輪に加わる。

「で、こっからどうするんだ?」

「はい、皆の気を父さんに注ぎ込むらしいです」

「仕方ない、いくぞカカロット!」

「いきます」

「悟空さん」

「お父さん」

「おじさん」

ベジータ、悟飯、トランクス、悟天、トランクス、の5人のサイヤ人が悟空に一斉に気を注ぎ込む。

「やったぞ………」

その様子を見て安心したように腕がちぎれたカーシは、焼け焦げて黒い煙をあげながら落下していった。

 サイヤ人のが注ぎ込まれた悟空が光出す。

 その光がなくなった時には、皆の中心に立つ悟空は、金色の気が少し混じった赤い気を纏い、瞳は碧眼から黒い瞳に、体は一切の無駄を削ぎ落とされたようなスリムな体型の悟空が。

 神の領域に足を踏み入れた悟空がいた。

 あれはそう。

「伝説の超サイヤ人ゴッドじゃ!!」

老界王神が驚愕した表情でそう言った。

 ついに史上最強の戦士、超サイヤ人ゴッドが現れた。



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超絶なる神の力

更新が滞ってしまって大変申し訳ありません。
期末試験と試験勉強に追われていまして。
物語もラストまであと一、二話、です。
お付き合いお願いします。


 燃えるように逆立つ赤い髪、穏やかな漆黒を湛える瞳、体はほっそりと全ての無駄が取り除かれた感じの均整が取れた肉体。

 今までの悟空とは似て非なるものがそこにいた。

「どういうことだカカロット!全く強さを感じないぞ!」

気を悟空に送ったためにフラフラになりながら詰め寄るベジータ。

「父さん、僕も父さんの気が全く感じられません。まるで人造人間のように…」

悟飯も悟空の変わりように同様が隠せない。

 当の悟空は穏やかな瞳で二人を見つめるばかりである。

 そんな皆の所に老界王神がやって来る。

「これでいいんじゃよ。まあ文句を言わずに見ておれ。とんでもない強さを見られるぞ。さあ悟空お前の『神』の力を見せてやれ」

飄々とした表情で老界王神は悟空を送り出そうとする。

「ああ行ってくる」

悟空もそう返すと、言葉を残して姿が消える。

 まるでそこには何もなかったかのように。

 水面であっても波紋すら起きることはないであろう動きで。

 皆と共にいるサタンの元へボロボロになりながらもなんとか体を再生させたブウが戻ってくる。

「カーシさん心配しましたよ。もう大丈夫なんですか?」

サタンは急いでカーシの元へ寄る。

「大丈夫とは言えないが、万全を期したいサタン協力してくれ」

「はい?」

いきなり協力を求められるサタンはカーシの真意が分からないながらも一応了承する。

 二人は準備に向かった。

◆◇◆◇◆◇

 

空気を揺らすことも、衝撃波を撒き散らすこともなく、また気を放つこともなく現れた悟空に対して驚きが隠せない魔人ブウ。

 しばらくたじろいでいたが、ベジータや悟飯のように気を感じられないことと、痩せ細ったような体をしている悟空を見て気を抜き始める。

 それが今の悟空に対しての行動の命取りとなる。

 魔人ブウの目の前にいたはずの悟空がいなくなっている。

 まばたきすらしていないことから、言い知れない恐怖を魔人ブウは感じる。

「よっ」

「!!!」

突然背後から叩かれる肩。

冷や汗が絶え間なく流れ落ちるのが感じられる魔人ブウ。

 恐れおののきながら振り返ると、穏やかな表情の悟空が。

 そして、その悟空の口元が緩んだ時だった。

「グワァアアァー!?」

悟空が手を置いていた魔人ブウの肩が消し飛んだ。

 塵一つ残すことなく。

 痛みと底知れない恐怖に表情を歪めながらも悟空から距離を取り、消し飛ばされた肩の再生を行おうとするブウ。

「!!??」

 しかし、顔面蒼白になりガタガタと震え出す魔人ブウ。

 それもそのはず、全く再生することができなかったからだ。

 遠くから戦いに見いっている仲間たちも何がなんだが分からない。

 戦いと言える代物ではもうないからだ。

 そして、どんなに痛手を与えても下卑た笑顔で再生していた魔人ブウが恐れの表情を浮かべて、再生できないのだから当然だ。

 そんな中で、老界王神が微笑みながら呟く。

「当然の結果じゃな。今の悟空は『気』ではなく『神』の力を操っておる。『神』の力はあらゆる邪悪なものを払う力。今の悪意の塊の魔人ブウには逆立ちしても抗えん力じゃ。当然浄化された箇所も再生することは不可能じゃ」

ついに悟空が戦闘民族ね神になった瞬間だった。

 魔人ブウはいてもたってもいられない状態に陥っていた。

 今までの完全に優位な状態は儚く壊れ、もう奇跡が起ころうともどうにもならない窮地にたたされていたからだ。

 そして魔人ブウがとった行動は――逃走だった。

 魔人ブウは悟空に背を向けると、とんでもないスピードで天に向かって飛び去ったのだ。

 混乱しながらも宇宙空間にまでは追っては来られないだろうと判断したのだろう。

 コンマ一秒にも満たない中で悟空の姿が見えない所にまで舞い上がっていた。

 魔人ブウに安堵の表情が浮かんだ時だった。

「遅かったな」

「ヒィッッ!!」

悟空が目の前にいた。

 さっきまで地上にいたはずの悟空が、すでに大気圏まで達しているのに。

 魔人ブウは恐怖に顔を歪めながらも再び向きをかえて逃げようとした時だった。

 振り返った所に悟空がいて、手をおかれるもう片方の肩。

「グワォオアァオ!!」

悟空の腕から「神」の力が発せられる。

 万全だったもう一方の肩も消し飛び浄化された。

 両肩を失った魔人ブウの戦意はもうすでに枯れ果てていた。

 死んだ魚のような虚ろな瞳、逃げようが、戦おうがもうどうにもならないという現実を受け入れるしかない。

 少しずつ近づいてくる穏やかな瞳の悟空が魔人ブウには破壊神のように感じる。

 避けられない絶対の『死』をもたらしに、完全なる恐怖が迫ってくる。

 今までは万物に対して真逆の立場であった魔人ブウがだ。

 眼前まで歩みよった悟空が『神性』に満ちた腕を魔人ブウに伸ばす。

 あらゆる邪悪を払う悟空の手が近づく。

 魔人ブウには駒送りのように見え『死』までカウントダウンに入った時だった。

 あと一センチ、いや一センチないかというところで悟空の手が止まった。

「あ、あと一歩ってところで…」

悟空の燃えるように逆立った赤い髪が、黒く戻り、穏やかな瞳も以前の優しさを感じさせる瞳に、無駄が一切ない体も以前の筋肉隆々なものに戻り大気圏から落下していった。

 超サイヤ人ゴッドの際限のない力には制限時間があり、それがきれた時だった。

 




かなり独自設定的なところもありましたがお許しください。


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決着

大変遅れて申し訳ありません。



 目の前で弱体化し、落下しみるみるうちに小さくなっていく悟空を呆気にとられて呆然と見つめていた魔人ブウであるが、次第に口角が上がり安堵とともに大声を上げて笑い出す。

「ヒャハハハハハハハハ!!」

先ほどまではゴッド化した悟空の前で死んだ魚のような目をしていた魔人ブウが、水を得た魚のように力を取り戻し、けたたましく笑い始めたのだ。

 死を免れ、さらに悟空は弱体化した、もう自分を脅かす者はいない、誰も自分に叶うものはいないと認識したことによる。

 その笑い声はしばらく止むことはなかった。

 落下する悟空は意識が朦朧としながらも、悔しさでいっぱいであった。

 後僅かに一センチ拳を伸ばしていれば、即戦いは終わっていた。

 なぜその一センチ伸ばすことができなかったのか。

 自分が未熟でなければ、ゴッドを維持できたのではないかという悔しさである。

 地上で戦いを見守っていたベジータ、悟飯、トランクス、少年トランクス、悟天も何が起こっているのか分からず困惑した状態である。

「どういうことだ界王神?カカロットはどうしたんだ」

老界王神に声を震わせながら詰め寄るベジータ。

 そんなベジータに臆することなく老界王神は呟くように話し出した。

「神の力は強大でな時間制限があるんじゃ。今の悟空ではあれが限界だったんじゃ」

「な、なんだと…」

老界王神の話す現実は皆を打ちのめした。

 もう打つ手はないのかと。

「界王神様。父さんの力が大きくなっているように感じるのですが?」

そんな中で悟飯が口を開く。

「神になった者は副作用的なもので戦闘力が限界を越えて引き出されるのだ。その効果で悟空は強くなったそれだけじゃ」

「そ、それなら――」

希望が見えたと悟飯が口に出そうとしたのを、再び老界王神が遮る。

「無理じゃよ。ゴッドが解けた悟空は大きすぎる力を使ったために体はボロボロじゃすでに戦える状態ではない!」

再び訪れる絶望。

 そこへ、明るい声が響く。

「私が悟空さんを回復させれば」

キビト界王神が名乗り出る。

 しかし、そこでも老界王神は首を横に降る。

「回復させる時間をやつが与えるわけがなかろう」

老界王神が視線を送った先には、口が張り裂けんほどの笑みを浮かべた魔人ブウが巨大な、この界王神界すらも破壊しかねないほどの赤黒く、禍々しい輝きを放つ星一つあるほどの気弾を頭の触覚から作り出していた。

「もうおしまいだ……」

あのベジータが力なく膝をつく。

 その姿を見た仲間達は次々と絶望に襲われ動きを止める。

「おれが責任をとって終わらせる!」

皆の絶望を振り払うかのような声が響き渡る。

 皆が先ほどの魔人ブウの如く、死んだ魚の目のような生気が感じられない目で力なく振り向く。

「!!」

「!!」

「!!」

「!!」

「!!」

皆の表情が驚愕に染まる。

 視線の先には、青く清らかな輝きを放つ巨大な気の塊、『元気玉』を宙に浮かべたカーシがいた。

「なぜ元気玉が!?」

ベジータが皆を代表するように問いかける。

「念には念をいれてな。サタンとキビト界王神そして生き残った地球人全てに協力してもらって作り出した。一人の力では勝てなくても、皆の力を合わせれば勝てる。これで魔人ブウに引導を渡す」

カーシは力強くそう宣言すると巨大な元気玉を魔人ブウに向けて放った。

 上空では魔人ブウの笑みがひきつったものに変わっていた。

 すでに自分を脅かすものは存在しないと思っていたところに急に放たれた元気玉。

 再び自分を脅かすものに沸き上がる怒り。

 魔人ブウは怒りに任せて、仰け反り、勢いをつけて触角の先にある巨大な禍々しい気弾を放つ。

 全くの対照的なエネルギーで構成された気弾がぶつかりあう。

 その途端に巻き起こるとてつもない衝撃波。

 界王神界の空間を大気を、地面と存在するもの全てを揺るがせる。

 ぶつかりあっている接地面では空間が悲鳴に似た軋む音を響かせ、宙に亀裂が入っている。

 まるで新たな宇宙が誕生するかのように。

 最初は拮抗していた両者であるが、段々と元気玉が押され始める。

 力を入れるカーシの表情にも苦悶の色が表れる。

 上空の魔人ブウには対照的に余裕の色が表情に表れる。

 少しずつ一歩一歩押される元気玉。

 皆は声援を送るしかできない。

 すでに五人のサイヤ人は悟空をゴッドにするために力を使い果たしていた。

 だがその場にはまだ余力を残したものが三人ほどいた。

「ええーい。お前らー、魔人ブウの気をそらすぐらいしてこんかい!!」

その三人に気づいた老界王神の怒号が飛ぶ。

 その三人とはキビト界王神、ピッコロ、サタンであった。

「行ってきます!!」

上司の命令に逆らえない二人と何とかして援護したいと考えていたサタンは行動に移す。

 キビト界王神とピッコロは舞空術を使い上空に飛翔し、攻撃を開始する。

「魔貫光殺法!!」

「はあっ!!」

ピッコロは螺旋を描きながら放たれる魔貫光殺法を、キビト界王神は気功波を放つが、魔人ブウの体から放たれる気が強すぎてすんでの所で動きを止められている。

サタンは手を三角に組み合わせ照準を魔人ブウに向ける。

「わしの命をかける。気功法!!」

サタンはカーシの体内で修行相手としていた天津飯もどきから気功法を習い習得していたのだった。

 サタンの命をかけた気功法が放たれた。

 一発の気功波でダメなら二発、三発合わせればよい。

 一本の矢でためなら三本の矢を合わせる。

 願いが通じたのかほんの僅かな気が魔人ブウの頬に傷をつけた。

 そのほんの僅かな攻撃が魔人ブウの気をひく。

「今ですカーシさん!!」

サタンの叫びがカーシに伝わる。

「いけーーー!!」

僅かな隙に乗じて限界以上の力を込める。

 元気玉は禍々しい気弾を浄化し始める。

 ジワジワと元気玉に禍々しい気弾は食われ、ついに消え去った。

「グワアオォオオ!」

勢いを増した元気玉は腕を失い止める術を持たない魔人ブウを飲み込む。

 魔人ブウはこの世のものとも思われないほどのおぞましい断末魔を残し塵も残さず浄化された。



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英雄 ミスターサタン

 悪の化身の魔人ブウとの死闘の後に、ドラゴンボールにより、地球での戦いの傷痕、そして、魔人ブウによって死亡したもの、負傷したものを善人のみ、復活、治癒された。

 ミスターサタンも『気功砲』を放ち、亡くなっていた為に、この時復活を果たした。

 地球では、なぜかミスターサタンが皆を蘇らせてくれた。

 閻魔を倒して、皆を連れ帰ってくれたと騒いだほどであった。

 その後も、武道に目覚めたミスターサタンは、鍛練を欠かさず、世界チャンピオンを護りきり、殿堂入りを果たし、チャンピオンを魔人ブウの生まれ変わりのウーブに託し、引退した。

 激闘から数十年、ジャネンバ復活、破壊神降臨など幾度も地球の危機が訪れたが、そこにはZ戦士と共に勇ましく戦うミスターサタンとカーシの姿があったことは言うまでもない。

 そしてエイジ836年、遂に英雄の最期の時が来ていた。

「カーシさんのおかげで、何も思い残すことなく旅立てます。ただ心残りは、ビーデルや可愛いパンちゃんのこれからを見ていけないことだけです…」

ミスターサタンはベッドに横たわりながら、憔悴しきった状態でポツリポツリと心情を吐露する。

「おじいちゃんそんなこと言わないでよ…もっと長生きしてよ…」

「パパ……」

「義父さん…」

集まっていたミスターサタンの溺愛する孫パン、娘のビーデル、悟飯とミスターサタンの最期を覚悟し、パンは悲痛の声を、ビーデル、悟飯は声を圧し殺していた。

 ただ、親友であり家族であったカーシは無言を貫き、そこにたっていた。

 ただ表情にはその悲しみのほどが浮かんでいた。

「パンちゃんそんな顔しないで…おじいちゃん笑っていて欲しいな…」

気丈にも笑顔で話すサタンに更なる悲しみが皆に襲いかかるが、サタンの意を汲んで必死に耐えている。

 笑顔であったサタンは、一転して真剣な表情になる。

「カーシさん…本当に感謝しても、しきれません。カーシさんに頼りきっての人生だった…そこでわしの最期の頼みを聞いてもらいたいんですが…」

「なんだ…なんでも言え」

「これからもビーデルやパンちゃんを見守っていてあげてほしい…そして、地球をお願いします…」

「ああ…約束してやる」

カーシの頬にも一筋の涙がこぼれ落ちる。

「そして悟飯君にも二人のことを頼みたい」

「もちろんです。義父さん…」

サタンは二人の言葉を聞き、頬を緩める。

「ああ…これで安心だ…仕事はザンギャさんに任せて…ビーデルやパンちゃんのことも…カーシさん、悟飯君に頼めた…これで旅立てます。…ああ…ご先祖様やベエも迎えに来たようだ…。あの世でまた……あ………い…………ま――――」

「おじいちゃんっ、おじいちゃん…目を開けてよ!おじいちゃーーーん!」

「パン……」

ビーデル、パンは抱き合いながら涙を流し、

「義父さん……」

悟飯は静かに涙を流し、

「……俺に任せろ……サタン…」

 

エイジ836年享年100歳、本名マーク、通称ミスターサタンは皆に見送られながらこの世を去った。

 翌翌日には、ミスターサタンの葬儀が国葬として行われ、涙を流さないものはいなかった。

 そして、皆の記憶に英雄ミスターサタンの雄姿が刻み込まれたのだった。

 

◇◆◇◆◇◆

「あれ、わしは死んだんじゃ?それに若くなっとる!?」

次にサタンが目を覚ました時には、若くはつらつとした姿で、雲のような地面、巨大な和風の神社のような建物の前に来ていた。

「何しているおに、しっかり列に並んで欲しいんだおに」

「おーにーー!?」

「!!いきなり叫ばないで欲しいおに」

目の前にいきなり現れた、赤鬼青鬼に叫び声をあげるサタン。

「す、すいません。並びます」

しかし、破壊神をも目の前で見てきたサタンは、すぐに順応し、列に並んだ。

(いったいここはどこなんだ?)

サタンはあっちこっち挙動不審に見回していると、

「マークさーん」

サタンの本名マークを呼ぶ声が。

(慣れないなー)

と思いながらも返事をし、建物に入っていく。

「!!!…あわあわ!!」

「何を驚いている」

「大きい…閻魔大王…舌を抜かれるーー」

閻魔を見て逃げ出そうとするサタン、しかし、ラディッツをも簡単に押さえ込んだ人物である。

サタンも押さえ込まれる。

「すいません、すいません、腹痛を装おってすいませーーん」

土下座を繰り返すサタンに、閻魔はため息をつきながら、諭すように声を掛ける。

「そんなことは気にするな。お主は魔人ブウを倒すのに貢献した。全宇宙を救ったのだ。お前がいなかったら。全宇宙、そしてこの世も滅んでいた。従って体を与え、大界王星送りとする」

「えっ!」

「こっちおに」

「えっ!」

「乗るおに」

「えっ!」

「次は大界王星ー、大界王星ー」

ミスターサタンが目をぱちくりして驚いている間にことは進み、大界王星についていた。

 そして、いつの間にかある人物の前にたどり着いていた。

 黒い触覚、サングラスを掛け、界王と書かれた黒い服を着る、ずんぐりむっくりした人物。

「…コオロギ?まさかゴキブ――」

「無礼者ー。誰がゴキ〇リじゃー!まったく今時の若いもんは――」

「すいません」

この世に来て何度目のすいませんなんだろう、とサタンは思いながらも頭を下げる。

 そこには、以前の傲慢だったサタンの姿は微塵もなかった。

「まあいい。ついてこい」

ゴキブ〇もとい、界王の後を渋々着いていくサタン。

「お前ら、集まれー」

「なんだ?新入りか?」

そこらじゅうから、集まってくる人外の生命体、ムキムキのマッチョの天使だったり、虫人間だったり。

 しかし、我らがサタンは順応し、驚くことはない。

「これからお前たちと一緒に修行していく地球出身の通称サタンだ。オリブーは先輩だからな面倒を見てやってくれ」

「はい。よろしくなサタン」

ムキムキマッチョの天使オリブーが前に進みでて手を差し出す。

デカイ!地球には天使なんていないけどなーと疑問に思いながらも、サタンも手を出し

「サタンです。よろしくお願いします」

と挨拶を交わした。

 大界王星での修行が幕を開けた。

 

◇◆◇◆◇◆

大界王星でサタンが修行を始めて数十年が経過した。

「どりゃあー」

「まだまだ」

サタンはみるみるうちに強くなり、パラレルワールドのヤムチャ同様オリブーには劣るものの、遜色のない力をつけていた。

「集まれー」

そんな時だった。

北の界王が久しぶりに皆の元を訪れた。

「どうしたんですか界王様?」

一同整列し、代表でオリブーが尋ねる。

「ああ、大界王様の突然の思いつきでな、あの世一武道会が開催されることとなった」

「ウオーーー!!」

一同から地鳴りのような歓声が上がる。

その中にはサタンの姿も。

 サタンも常々オリブーからあの世にも武道会があり、東西南北の強者が一同に介すものだと言うことを知っていたからだ。

「で北の代表を発表する。まずはオリブーそしてもう一人は―――」

しかし、サタンは呼ばれることはなかった。

(まあしょうがないよな。ここには数百年、数千年修行している人が殆どだ。わしは新入りだしな)

少々残念に思っていた時だった。

「サタンちょっとこい」

なんだろう?と思いながらもサタンは返事をし、走っていく。

「なんですか界王様?」

「お前はあの世一武道会特別推薦枠での出場が決まったぞ」

「えっ、特別推薦枠?」

「ああ、大界王様より遥か上におられる御方からの推薦らしい。感謝して頑張るようにな」

「あ、あ、あ、ありがとうございます」

深々と頭を下げるサタンの脳裏に、あの若者と御老体の姿が浮かんだのは言うまでもない。

◇◆◇◆◇◆

 あの世一武道会当日。

 サタンはオリブーと共に会場にやって来ていた。

 あの世中から観客が集まり、その盛況ぶりは凄まじいものであり、サタンもその光景を見て、天下一武道会を思い浮かべ、心を踊らせながらも、いつも共に出場し、支えてくれたカーシのことを思い浮かべていた。

(カーシさん…今頃何をしているのかな)

郷愁の念に駈られていると、心配したオリブーが話し掛けてきた。

「大丈夫かサタン?なにかあったのか?」

「いえ何でもないです。元気ですよ」

「そうか。俺はお前とは別のブロックだ決勝で会おう」

「はい」

サタンとオリブーは拳を合わせ、会場に向かった。

――――

「対戦相手のキャタピー選手は繭にこもってしまったのでサタン選手の勝利です」

「えっ!」

――――

「対戦相手のタカピー選手息切れのため、サタン選手の勝利です」

「えっ!」

 やる気がみなぎっていたサタンであったが、優勝候補のオリブーやパイクーハンと当たることもなく、トントン拍子で来ていた。

 わくわくしていたサタンにとっては拍子抜けであったが。

 ついに準決勝。

「相手を圧倒してきた特別推薦枠。北の代表ミスターサタン対、相手に触れることも、触れられることもなく圧勝してきた、同じく特別推薦枠ミスターK」

武舞台に上がったサタンの前に、ずんぐりとしたポッチャリ体型のマスクを被った対戦相手が現れる。

(つ、強い!)

 いつぞやのサタンならば、その風体を見て弱いと決めつけていただろう。

 しかし、今のサタンは気で相手の強さを測ることができるまでになっていた。

「よっ」

「へ?」

対戦相手がてをあげて挨拶してくる。

「まだ分からないか。しょうがない」

対戦相手は徐にマスクを脱ぐ。

「えっ!!!」

対戦相手の素顔を見てサタンは絶句する。

「久しぶりにだな。サタン」

「カーシさん…夢じゃないんですか」

何度思い出しただろう、何度会いたいと思っただろう。

 カーシが目の前に現れたのだ。

「な、なぜカーシさんがここに?」

目を潤ませ、声をつまらせながら問いかける。

「ビーデルも悟飯も見送って寂しくなって、サタンに会いたくなったから瞬間移動できたんだ」

胸をはり、鼻を高くして自慢気に話すカーシ。

「サタンお前強くなったな。天下一武道会の時と違っていい戦いができそうだ。来いサタン」

「はい。いきます!」

サタンは涙を拭い走り出した。

 自分の成長を、再開できたことへの喜びを拳に込めて。

 




長らくの御愛好誠にありがとうございました。
 皆さんのお陰で書ききることができました。
 読んでくださった皆さんの、感想を書いてくださった皆さん。
 本当にありがとうございました。


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