宇宙難民地球人 (藤種沟)
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エピローグ
地球「AI」化


エピローグはとてつもなくシリアスです。

でも二話目以降はこれより少しは軽い感じにしようと思いますので、最後までお付き合いください。(まあおそらくギャグを織り交ぜたストーリー系になると思われる)


ここは2XXX年、とある国。

 

もはや人間の残っていないこの国は、かつて世界一栄えた国であった。今でもその頃の高層ビルや、道路などは残っているが、人は住んでいない。そこにあるのは忙しく働くAIのみであった。

 

 

 

 

 

かつてこの国は、少子高齢化が社会問題になっていた。

 

医療の進歩で、寿命が延び、老人の人口もどんどん増えていた。しかし、その反面働く人口はどんどん減っていき、とても増え続ける老人を支えるだけの働き手がいなくなっていた。そして同時に、税金を納められる人間がどんどん減っていた。

 

そこで人々が希望を見いだしたのはAI…いわゆる人工知能の存在だった。税収の減少に困り果てていた政府は、減り続ける働き手の代わりにAIを用いることを奨励し、国の政策として、AIの普及に取り組んだ。

 

するとどうだろう。AI関連の企業の株の値はどんどん上がり、さらに、AIの素晴らしい性能で業績を上げた企業が出始めると、他の企業も次々にAIを導入し、業績が上がって、株価は上がり、そして景気が良くなっていった。

 

より速く、より的確に働くAIは、長らく不況であったこの国を見事に活気づけたのである。

 

さらに発展途上国への支援もAIが行うようになり、より速く、より的確な支援を行えるようになった。道路や橋の建設も、新しくできた施設で働くのも全てAI。発展途上国の人々が今まで職としてきた農業などもAIが行うようになり、結果的に発展途上国は短期間で見事な発展を遂げた。

 

 

 

 

 

 

しかし、国内では困った現象が起きた。

 

AIが人間のほとんどの仕事を行うようになってしまい、失業者が急激に増えてしまったのだ。

例えば医療の現場にAIが導入され、人間の医者が必要なくなり、大学の医学部卒の学生が就職できない、などという事態が発生したのだ。

 

医者だけではない。その頃には、AIを監督するAIが開発されていた為、企業は労働者だけではなく、管理職までもAIを導入した。AIには人件費がかからないし、燃料をきちんと補給すれば24時間365日働けるため、日に日にAIの需要が増えていった。

 

そうなると、AI関係の企業の株の値段はどんどん上がっていった。そして、他の企業はその株で儲けようと企みはじめ、だんだん株ばかりをやって本業をおろそかにする企業が増えていった。

 

その影で、AIに職を奪われた人々は確実に増えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

失業者の増加や、本業をおろそかにする企業を何とかしようとした政府は、AIの規制を呼びかけ始めた。今までAIを奨励してきた政府は一転してAIに厳しい規制をかけ始めたのだ

すると投資家たちはAI産業に見切りをつけはじめ、株価が下がっていった。

そのスピードは政府の予想より、はるかに早く下がって行き、AI関連の企業の株で儲けようとした人々は大損し、さらに今まで本業をおろそかにしていた企業は、経営状態がどんどん悪くなっていった。

 

さらにその影響はAIを職場に取り入れた他の種の企業にもおよび、この国の企業のほとんどの株価が下がり、この国の景気が悪くなっていった。

 

そうした企業は、いまさらAIからわざわざ人件費のかかる人間を雇う余裕も無く、銀行もそうした企業に対してお金を貸すのを渋りはじめ、経済は停滞。

この政府の政策は、景気が悪くなるばかりで失業者が減らすことはできなかった。

 

 

 

こうした問題は先進国全ての問題であった。

 

先進国の間で、AIの共同開発の推進の条約が締結されると、前述したような問題が先進国全てで発生。少子化で働き手が少ないと嘆いていた時代は終わり、働き手が世界的に余る時代に突入したのだ。

 

先進国だけではない。

AIによる支援を受けた発展途上国では、インフラの整備は実現したものの、そこで働くのはほとんどAIで、それまでの生活基盤であった農業にもAIが導入され、結果的にその国の雇用を奪う結果になってしまった。

奇しくもそれは発展途上国の人口爆発と重なり、自国で職に就くのは難しくなっていった。

 

こうした発展途上国の人々は、職を求めて先進国に不法に移民するようになり、ただえさえ職の少ない先進国では、職の競争がますます激しくなっていった。

 

 

 

さらに、軍事面でもAIが導入されるようになった。

 

物資の輸送も、偵察機も、戦車も、戦艦も、そして兵士までもがAI化した。こうなると、戦争は全てAIがするようになる為、人間が死ぬことは無くなっていった。

 

これだけ聞くと良いことのように聞こえるが、こういう状況になって、戦争が起こりやすくなった。人間が死なないのだから、いくら戦争をしたって大丈夫だ、ということだ。

戦争は、武器をつくる企業や、戦場で戦うAIをつくる企業などの雇用を生み出すので、各国政府はテロの撲滅を目的とする形をとって、こぞって戦争をするようになった。

 

しかし、戦争が頻発することによって、攻撃をうける国は大きな損害をうけ、さらなる難民を生み出す結果となった。

 

AIに要するエネルギーの生産に使う資源の取り合いによる戦争も始まり、各国間はこうした戦争での環境破壊で進む地球温暖化にどう協力して対処していくかをも話し合えなくなってしまったのだ。

 

隣国とは資源の取れる領土を取り合い、国境には不法に入ってくる移民や難民を防ぐために壁をつくる。

もはや、話し合いどころではなくなってしまったのだ。

 

EU、ASEAN、国際連合なども解体し、人間は果てしない憎しみの時代に突入していった。

 

 

食料もどんどん少なくなっていった。

これ以上地球温暖化を促進させないようにとAIの燃料に選ばれるようになったのはバイオ燃料だった。AIによって穀物の生産高も上がり、バイオ燃料が安く手に入るようになったのだ。

 

しかし、穀物がバイオ燃料ばかりにまわるようになり、家畜はおろか人間さえも穀物を食べるのが難しくなっていった。

 

 

やがて地球温暖化の進行でAIでも食料をつくることが難しくなり、魚などの野生の食料もとれなくなり、人間は徐々に衰退していった。

 

ただ一つ地球が温暖化して、気候が変動しても手に入るエネルギー、太陽光によって動くAIだけが、地球で生きることを許されたのであった。

 

 

 

 

国際連合が解体して、数十年、世界の人間の人口が十億にも満たなくなった時、やっと戦争どころではないと気づいた各国は、この状況の打破のために会議を行うようになった。

 

 

 

 

 

 

交渉は難航したが、とりあえず人間に職を与えよう、という話で各国は合意した。それも、もうボロボロの地球を出て、宇宙のどこかの星を、一から開墾してやり直そう、ということであった。

 

他のどこかの星で、「開墾」という仕事に従事し、もう地球で起きた歴史のようにはしない、という決意のもとでの合意であった。

 

その移住する星を探すのも、AIの探査機であった。もはや人間は、地球にいる限り、人間の衰退の原因であるAIなしでは生きていけなくなっていたのだ。

 

 

 

 

 

それからまた数十年後、AIの探査機は地球に戻ってきた。どうやらその探査機は人間の住める星を見つけてきたらしい。

 

その星は「Hope・Star」と名付けられた。Hope・Starには地球と同じような大気が存在し、水もあり、人間が生活するにはとても適した場所であった。

 

さらにその星には先住民、いわゆる宇宙人が生息しており、この探査機にはその宇宙人のメッセージがインプットされていた。かなり高度な文明がHope・Starには存在しているらしい。

 

そのメッセージは「私たちはあなたたち地球人を歓迎します」というものだった。

 

早速各国ではロケットの製造に着手。当時はもう人間の人口は五億をきっていたが、五億人の人間と、生き残っている家畜やペット、少ない食料などを載せるロケットをつくるのには長い時間を要した。

ロケットが完成し、地球を出発する頃にはあの合意から約百年が経過していた。

 

 

 

 

 

 

 

かくして地球上で一番栄えた生物、ヒトは、自ら開発した「AI」によって、地球をでていく羽目になってしまった。

 

果てしない、宇宙の果てに。

 

 

 

 




二話目は本編‼︎

宇宙船でのひと騒動。お楽しみに‼︎

ここで一言言わせてください。

二話目からは本当に軽いからね⁉︎本当だよ⁉︎(注意)


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宇宙出立の衝撃
地球出立


本編スタートです‼︎

テスト週間なのに小説書いてていいものなのか…………

ま、心配無いさ!
↑そしてテストが返ってきて泣く僕。


俺は大堀 光(おおほり ひかる)。今から地球を出る手続きをする。何でも地球人はいち早くこの星からでなければならないんだそうだ。全く迷惑な話だ。

 

「光、宇宙というのはどんなものだろうね〜」

 

おばあちゃんがのんきに話す。多分この手続きに来ている人々の中で、のんきに話してられるのはおばあちゃんくらいなものだ。皆、地球を出て、宇宙に移住する、ということへの不安を募らせているのだ。

 

「次の方どうぞ〜‼︎」

 

俺たちの番だ。受付に行く。

 

「お名前は?」

 

「大堀 桜です。」

 

おばあちゃんがゆっくりとにこやかに答える。

 

「ご家族は?」

 

「孫だけです。」

 

おばあちゃんはまたゆっくりと答える。

 

俺はおばあちゃんと二人で暮らしている。元々俺は一人っ子で、母さんは病気で死に、父さんは政府の高官だったらしいが、暗殺されてしまった。父さんも一人っ子だったので、いとこもいない。

 

「お孫さんのお名前は?」

 

「大堀 光です。」

 

「歳は?」

 

「私が87で、孫が15です。」

 

「宇宙船に持っていくものは?」

 

「えーと…………そおねぇ…………」

 

作業が着々と進んでいくのを横目に、俺は宇宙についてボンヤリと考えていた。

 

その昔、宇宙飛行士になるのが夢だったので、宇宙や、宇宙人には興味がある。ただ、なんだか…………宇宙に移住となるとなんとも言えない不安が頭を覆うのだ。

 

 

 

 

 

「さあ、行くよ。」

 

「うん。」

 

おばあちゃんと家に帰る時もボンヤリと空を眺めて歩いた。

俺は地球にはなんの未練もなかった。父さんが殺されて、憎しみのはびこる世界に対して怒りを覚えたことがある。それが原因で、母さんも病気になって死んだ。

この物騒な状況が変わるのなら、宇宙だろうがどこだろうが行く。ただ、その宇宙にいくのを決めたのも、物騒な世の中をつくった、あの自分勝手な権力者たちだ。だからこそ不安であり、なんだか癪なのであった。

 

 

 

 

 

その夜も、おばあちゃんと一緒に、二人で食事をする。

 

「あと一週間で宇宙だねぇ。」

 

「うん…………」

 

おばあちゃんはプラス思考なのかのんきなのか分からないところがある。

 

「おばあちゃんが子供の頃は、宇宙に行けるのは一握りの人だけだったのよ。」

 

「うん…………」

 

「そりゃ、この家を離れるのはいやだわ。おじいちゃんや、あなたのお父さんのお仏壇も持っていけないから、もう会えないしね。でも、私の若い頃にお偉いさんたちが決めたことだからねぇ。仕方ないのかしらねぇ。」

 

おばあちゃんの独特な話かたは、俺は好きだ。

俺くらいの年頃になると反抗期とかいうものになるらしいが、俺にとって唯一の支えに、反抗することなんてできない。友達が親の愚痴を言っているのは、どうも理解できなかったのだ。

唯一の支えであるからこそ、宇宙に言って大丈夫なのか、という心配も起きるのだ。

年老いたおばあちゃんが、本当に宇宙にいって大丈夫なのだろうか。

 

「私も八十何年生きてるけど、ここまで興奮するのは初めてよ。」

 

俺のそんな心配をよそに、おばあちゃんは期待を膨らませていた。

はたして、おばあちゃんが無理に明るく繕っているのか、本当に興奮しているのか、俺には分からなかった。

ただ、分かるのは、おばあちゃんはどことなく寂しげであった。

 

「私、その宇宙人のいるところに着くまでに生きてるかしらねぇ。」

 

おばあちゃんが少し、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

それからあっという間に一週間が過ぎた。

 

一週間何するでもなく、学校いって、ご飯食べて…………

 

ただ、学校の友達とは、お別れ会みたいなものをした。

乗る宇宙船は、ランダムだから、違う宇宙船に乗ると、あっちに着くまでもう会えないのだ。

 

「同じ宇宙船になるといいな。」

 

「ずっと友達でいような。」

 

「むこうに着いたらまた遊ぼうぜ。」

 

…………

 

…………

ワイワイ皆で騒いでいたが、やはり皆寂しげだ。

なんだか、皆が遠くにいってしまうような気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

宇宙船に乗る日がやって来た。

 

何でも、自国の宇宙船に乗り切れなかった外国人も、日本の宇宙船に乗ってくるらしいから、グローバルな旅になりそうだ。

 

「はい、大堀さんですね。えーと大堀さんは…………ああ、そうだ、大堀さんは五番の船に乗って下さい。」

 

宇宙船に乗ると、何と外国人の多いこと。

 

そしてもっと驚いたのが、学校の友達とは、誰も一緒の船にならなかったことである。

 

「大堀さんはこの707号室を使ってください。」

 

どうやらその707号室に俺とおばあちゃんは住むらしい。

中は割と広く、二人で住むにはあまるくらいだ。

 

「光、フカフカなベットよ!おばあちゃん嬉しいわぁ。」

 

おばあちゃんが部屋を散策している。

 

「まあ、台所もあるのね!」

「こんなに大きい冷蔵庫!」

 

「テレビも見れるなんて!」

 

おばあちゃんが珍しくはしゃいでいる。まあ、とくに悪いってわけじゃないけど…………

 

 

 

 

 

どうやら全員宇宙船への搭乗を終えたらしい。

 

テレビに総理大臣が映った。

 

「皆さん、こんにちは、総理大臣の桂 取太(かつら とれた)であります。日本の宇宙船、七機全ての搭乗が完了致しましたので、早速飛び立ちたいと思います。少々最初は揺れることがあるそうであります。しかと捕まって怪我のないようお願いいたします。

もう既にイギリスや、オーストラリアなどの国は出発しております。日本は、十二カ国目の出発となります。

では船長、発射ボタンを。」

 

テレビに、船長が発射ボタンを押す姿が映し出された。

すると、いきなり船が揺れ始める。

 

「光!どこかに捕まるのよ!」

 

おばあちゃんが叫ぶ。

俺はとっさにどこかに捕まると、窓を見た。

一体、宇宙へ飛び立つ時はどのように飛ぶのだろうか。

 

 

見ると、もう雲の上まで飛んでいた。

そう思うともう宇宙空間に到達し、火星、木星と過ぎていった。

 

「皆さん、もう大丈夫です。ロケットは何とか軌道に乗りました。これで総理大臣のテレビ放送は終わります。」

 

総理大臣が頭を下げて、頭から何かが落ちる瞬間にテレビが切れた。

 

 

 

 

 

 

その頃、宇宙空間…………

 

「将軍!地球からまた何か宇宙船が!」

 

「ふむ…………あれは日本という地域のものじゃろう。」

 

「いかがいたしますか⁉︎」

 

「…………まあ捨て置け。我々が狙うのは地球で一番強い国…………」

 

「分かりました!攻撃隊!その宇宙船団は無視しろ!」

 

 

「ふふふふ…………これでやっと…………奴らに復讐することができる…………」

 

 

 

 

新たな新天地へ飛び立った地球人たちに、大いなる敵が現れようとしていた。

 

 




推薦、感想、評価、お気に入り待ってま〜す♪


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宇宙人の襲撃

どうも‼︎満員電車の中でこの小説を投稿している手羽先ちゃんです‼︎

満員電車の窮屈なこと‼︎全く大変ですよ〜…………

頑張って書いた小説、お楽しみください。

(第三話は少し軽めに書いたつもり)


「行ってきま〜す。」

 

俺はおばあちゃん一人を残して部屋を出る。

一人兵士として駆り出されるとか、家出、とかそういう深い意味はない。ただ学校に行くのだ。

 

この宇宙船には即席の学校がある。

 

勉強嫌いの俺からすると迷惑な話だ。

 

学校はこの船の一番下にある。

今日、船に乗って最初の学校なので、クラスが新しい。

ま、前の学校で仲の良かった友達が誰も俺と同じ船に乗らなかったから、友達をつくるっちゅう面では学校も良いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

教室の中は、だいぶ想像と違った。

この宇宙船には外国人が多く乗っているとは聞いてはいたが、クラスメートの3分の2以上が外国人とは驚きだ。

 

とりあえず自分の席に座る。一番窓側の、一番奥の席だ。

地球の学校なら、窓からの温かい日差しで、眠るのにぴったりの席だが、あいにくにも、窓から見えるのは星や星雲ばかり。まあ、それはそれで良いんだけどね。綺麗で。

 

 

 

「コンニチハ!」

 

ぎこちない日本語で挨拶され、振り向くと、女の子が笑っていた。

 

「私…ショウ・ロンポウと言いマ〜ス‼︎アナタと席トナリ!コレからヨロシク頼みマス!」

 

ぱっと見日本人だが、ぎこちない日本語と、彼女のTシャツにプリントされている文字からすると中国人だろうか。

 

ぎこちない日本語はしょうがないとしても…………なんかテンションが高い。

 

「I like you(あなたが好きだ)‼︎」

 

いや、初対面で「あなたが好きだ」って言われても…………困るんですが…………(笑)

 

「Hello‼︎」

 

今度は金髪の男子だ。

背が高いな〜。とても同い年とは思えない。

 

「My name is Charles(私の名前はチャールズ)‼︎ I'm French(私はフランス人です)‼︎」

 

あ〜フランス人の方ですか。

 

こいつもテンションが高かったから、

 

「アイアム ア エイリアン‼︎」

 

とジョークをかましたらそいつ急に黙りやがった。さっきの女の子も黙った。悪かったな‼︎つまらなくて‼︎

 

「Hey‼︎」

 

今度もまた背が高い。

さっきのフランス人よりもさらにでかい黒人だ。同い年……だよね?

 

「I'm a alien(私はエイリアン)‼︎ Yeah‼︎」

 

「Yeah‼︎アハハハハ‼︎」

 

何で俺がエイリアンというとしらけるのに彼がエイリアンというとうけるんだよ〜‼︎

 

「ハハハハハ、冗談はこれくらいにしよう。僕の名前はジョーダン。よろしく‼︎」

 

さらりと流暢な日本語喋るのね。

 

「ねえ。私も話にまぜて!」

 

今度はアラブ人だ。彼女も日本語が話せるらしい。

 

「私はマリアム‼︎よろしくね‼︎」

 

これまた流暢な日本語だ。

しばらく俺とショウちゃんとチャールズとジョーダンとマリアムで話していたが会話のほとんどが英語…………本当に国際色豊かな教室だ。皆さまざまな国籍の人で、英語話して通じ合ってるみたいだけど俺全くついてけてないからね⁉︎どーしてくれんのよ⁉︎

 

…………

 

 

 

とまあ今までとは違う異色な友達ができ、普通に授業して普通に学校は終わった。

 

「皆で一緒に帰ろうぜ‼︎」

 

ジョーダンがそう話しかけてきたので一緒に帰ったが、なんか横で一緒に歩いているとジョーダンの背が高くて俺がとても小さく見える。しかもジョーダンは雰囲気がカッコ良いから余計俺がみずぼらしく見える。

 

さらにジョーダンがチャールズに英語で話しかけている。そしてチャールズを連れてきた。

でかい人に挟まれてみずぼらしく歩く俺。

 

 

 

 

チャールズとジョーダンの会話に、持てるだけの英語の知識とジョーダンの通訳でなんとか会話しながら、宇宙船の広場についた。

 

広場にはショウちゃんとマリアムちゃんが二人で話していたが、そこにチャールズとジョーダンが近づく。そしてなんか四人で英語で話している。どうもチャールズとジョーダンは二人を口説いているようにも見える。

 

もしかして宇宙に出て俺が一番困るのは通じない言葉と癖の強い友達なのではないか?

そんなことを思いながら四人の会話に日本人の意地でつっこみ、談笑していた。

 

今、宇宙でとんでもないことが起きているとは、この若い四人には分からなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜地球人宇宙移住計画対策本部〜

 

「アメリカ船、応答せよ‼︎アメリカ船船長‼︎」

 

「…………アメリカ船から対策本部へ…………今宇宙人に襲撃を受けている……‼︎………もうじきこの船長室も落ちる………ここには傷ついた兵士でいっぱいだ………もうこの船はダメだ………」

 

「対策本部からアメリカ船へ‼︎希望を捨てるな‼︎脱出用ボートはどうした⁉︎」

 

「………アメリカ船から対策本部へ…………ボートは皆発車した…………ボートに乗る人々をかばうようにして…兵士や船員が宇宙人と戦ったから………我々はもう…ウワー‼︎」

 

「アメリカ船⁉︎どうした⁉︎」

 

「エイリアンが………我々はもう…ギヤー‼︎………ブツッ(通信の切れる音)」

 

「一体アメリカ船では何が………」

 

ダダダダダッ‼︎

 

「何だ今の銃声は⁉︎」

 

「エイリアンだー‼︎逃げろ〜‼︎」

 

「死ね地球人ども‼︎」

 

ダダダダダッ‼︎……………………

 

 

 

 

 

 

 

「司令官‼︎地球のリーダー、アメリカの船と、地球人の移住の対策本部を襲撃し、征圧しました‼︎」

 

「ご苦労‼︎では片っ端から地球人の船を襲撃しろ…………歯向かう者は殺せ‼︎降伏した者は本部へ連れてこい‼︎ぬかりなきようにな。」

 

「はっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、俺は普通にまた学校へ行った。

学校で午前中の授業が終わり、昼休みに入っていた。

 

「ふぅ〜…………言葉が通じないってのも厄介だな〜」

 

俺は窓から宇宙の星々を見ながらそう呟いた。

すると…………

 

何やら宇宙船のようなものがこちらに近づいてくる。それもかなりの数だ。そしてそこから何かが降りてくる。人間だろうか。

ぼんやりその様子を見つめていると、なんとその人間たちが俺らの乗る宇宙船の壁を銃のようなものでつき破り、中に入ってきたではないか‼︎

 

ブーブーブー‼︎

 

警報が鳴り響く。昼休みでのんびりしていたクラスメートたちがどよめく。廊下が何やら慌ただしい。

 

俺はこの瞬間、すべてを悟った。

 

 

 

 

 

 

宇宙人の襲撃だ。

 

 

 

 

 

 

俺はとっさに教室を出て、様子を見に行く。

 

学校のある階から出て、皆のいる広場へ。

そして広場に入ろうとした時、誰かに腕を掴まれた。

 

「やめとけ。今その広場には宇宙人うじゃうじゃいるぞ。」

 

声をひそめて話しかけてきたのは俺と同じくらいの歳の学生だ。胸につけてる校章を見ると同じ学校だ。まあ、この宇宙船には学校は一つしかないけど…………

 

「君は?」

 

俺はとっさに聞いた。するとそいつは

 

「俺は福川 康裕。宇宙船内臨時中学校三年。君は?」

 

「俺は大堀 光。俺も臨時中学の三年だ。」

 

「よろしく…………おっと、のんびり自己紹介してる場合じゃないんだ。俺もさっき広場に様子を見に来たんだけど宇宙人に見つかっちゃってさ。今逃げてるんだ。」

 

「ふ〜ん………今逃走中か…………ん?待てよ。ってことは…………」

 

「そう、今後ろから宇宙人が銃持って追っかけてきてる。」

 

「くぉら待て〜‼︎」

 

確かに後ろを向くと銃持って武装し、足が四本くらいあるどでかい怪物が追っかけてきていた。

 

「それをもっと早く言え〜‼︎」

 

俺は叫びながら走り出した。康裕も俺と同じ方向に逃げるから当然宇宙人も同じ方向に追っかけてくる。

 

「ついてくんなよ‼︎」

 

「だってとりあえず学校に戻るんだい‼︎」

 

「俺も学校に戻るんだよ‼︎」

 

「死ぬ時は一緒だぜ、相棒‼︎」

 

「勝手に殺すな〜‼︎」

 

宇宙人はでっかい図体してるくせして足が速い。

 

「このままじゃ追いつかれる‼︎ここから近い校長室に逃げ込もう‼︎」

 

校長室に逃げ込むと、すぐにドアに机やら椅子やらよく分からん置物やらを置いてバリケードをつくった。

 

ドンドン‼︎

 

あの宇宙人がドアを叩く。

 

「これでしばらくはあいつ入ってこないぞ。」ドンドン‼︎

 

「でもすぐにドアとバリケードを破ってくるぞ。」ドンドン‼︎

 

「…………」

 

校長室には校長もいなかったし、電話もなかった。

「電話があれば応援を頼めたのにな…………」ドンドン‼︎

 

「校長がいればおとりにして逃げれたのにな…………」ドンドン‼︎

 

ゴソッ…………

 

「ん?校長か?」

 

音のする方を見ると、そこには人がいた。

 

「ショウちゃん‼︎」

 

「ヒカル…………?」

 

中国語っぽいなまりで俺の名前を呼んだ彼女は、いきなり俺に飛びついてきた。

 

「何ガ起こってルンだ‼︎言え‼︎ホラ早く‼︎このヤロ‼︎」

 

言葉が乱暴なのは単純に日本語の単語をよく知らないからなのか単純に気が動転しているのか…………

ただ分かるのはその様子を康裕が警戒していることだった。はたから見れば新たな敵が現れたと思う…………だろうか?

 

ドンドン‼︎バキ…………

 

「やばい…………ドアが崩れかかっている。」

 

おっと余計なこと考えている暇なかった。

 

「むむむむ…………何か武器があればなぁ…………」

 

校長室に武器になりそうなものなどあるだろうか?宇宙人にも対抗できる武器…………

 

俺がふと校長室に飾ってある骨董品に目を向けた。壺、皿、瓶、刀…………

む?日本刀が二本あるぞ…………

 

…………

 

「康裕、」

 

「どうした光?」

 

「刀で宇宙人に対抗できるかな…………」

 

「…………何?」

 

俺は校長室の刀二本のうき一本を自分の右手、一本を康裕に差し出した。

 

「おい、おまえ…………」

 

「これは賭けだ。」

 

ドンドン‼︎バギィッ‼︎

 

ドアにひびが入る音。もうすぐドアは破れ、バリケードも崩されるだろう。

 

「俺たちが助かる道はただ一つ。」

 

そういうと、康裕は黙って頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次話、光と康裕が日本刀で宇宙人に立ち向かう‼︎

乞うご期待‼︎


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宇宙船崩落直前

だいぶ投稿が遅れました。年末忙しかったもんで………

でも今年中にあと一話くらいは投稿したいな………f^_^;)

とにかく小説お楽しみください‼︎


俺と康裕は刀を握りしめる。

 

ドンドン‼︎バギィ……バギ‼︎

 

ドアはもうもたない。

 

「ショウちゃんはさっきのところに隠れてて。」

 

そういうと、ショウちゃんは黙って隠れた。

 

準備はできた。来るなら来い‼︎…………あまり来てほしくないけど…………

 

ドンドン…………バギィ‼︎ガン‼︎グシャバキ‼︎

 

あの大きな宇宙人がドアを突き破り、バリケードを突破した。

 

「…………小僧ども…………観念しろ‼︎」

 

宇宙人がそう叫ぶのと同時に俺と康裕がどでかい怪物に飛び込む。

 

実を言うと俺は地球で剣道をやっていたので剣には自信がある。

 

「でぇぇい‼︎」

 

「ちぇすとぉぉ‼︎」

 

俺と康裕は刀で宇宙人を斬る。

しかしその怪物は皮膚がとても硬く、刀で叩いているといった方が良い。しかも全然攻撃が効いてない。ただカンカンと刀が弾かれる音だけが聞こえるのみである。

 

「光…………全く効かないぞ…………」

 

「…………くそっ‼︎」

 

カン‼︎カン‼︎

 

「ええいうっとうしい‼︎」

 

そうこうしているうちに俺たちは宇宙人にいとも簡単に弾き飛ばされてしまった。

 

「ふっ地球人はそんな原始的な武器しか持っておらんのか?弱い種族だな、フハハハハハハハ‼︎」

 

「ハァハァハァ…………くそっ‼︎もっと人数がいれば‼︎」

 

「くそっ‼︎最新式の銃があれば‼︎」

 

悔やんでもどうしようもない。ここには、二本の刀しかないのだ。

 

「では…………そろそろ死ぬか?」

 

その怪物はその手に持つ大きな銃をそちらに向ける。

もう本格的に終わりだ。

 

「くそー‼︎無念だ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「Wait‼︎ alien‼︎」

 

声と共に部屋の外から弾丸が飛び、声の方に振り向いた怪物の頭を貫通した。

 

「グワァ‼︎」

 

その巨体がばたりと崩れ落ちた。血が校長室に広がる。

 

「Hikaru‼︎」

 

あっけにとられていた俺は、その声の主に目を向けた。

 

「チ、チャールズ⁉︎」

 

そこには、ついこないだ友達になったフランス人、チャールズがこの怪物の銃と同じくらいの大きさの銃を抱えて立っていた。

 

「Hikaru‼︎Are you okey?」

 

「アー…オーケーオーケー。」

 

「Oh……Nice!」

 

チャールズはいささか安堵したようだ。

しかしなぜチャールズがここに……

 

「アタシが呼びマシタ‼︎」

 

ショウちゃんが自慢げにスマホを見せる。ショウちゃんがスマホで連絡したらしい。

 

「でもオカシイな……ジョーダンにも連絡したハズなのに……」

 

そう言ってショウちゃんはチャールズと英語で聞く。例によって呆然とする俺。どうやら康裕も英語が分からないらしく、目が点になっている。

 

「おまえ、英語分かんないのにあいつらと友達なのか……?」

 

「いや……よく分からんけど…ノリで…………」

 

康裕がますます目を丸くする。

 

しばらくショウちゃんとチャールズのやりとりが続いた後、ショウちゃんがくるりと振り向き、叫んだ。

 

「タイヘン‼︎マリアムが他の宇宙ジンにツカマテ(注:捕まって)ソレをジョーダンが助けに行テルって‼︎ハヤク助けに行かなきゃ‼︎」

 

「何⁉︎マリアムが⁉︎チャールズ、どこでジョーダンは戦ってるんだ⁉︎」

 

俺の言葉をショウちゃんが通訳し、チャールズの言葉もショウちゃんが訳す。

 

「教室ダッテ‼︎ハヤク行こう‼︎」

 

俺と康裕とショウちゃんとチャールズは駆け足で教室に行く。

そこでは、さっきの怪物よりもさらにでかい宇宙人がその触手でマリアムを抱えて立っていた。

 

「Help me‼︎」

 

マリアムが懸命に叫んでいる。そして、触手を叩いたりして抵抗しているが、怪物は全く動じていない。

 

ジョーダンは、一人でその怪物に立ち向かうが、全く相手にならない。

 

「ジョーダン‼︎手を貸すぞ‼︎」

 

俺は刀を持ってその怪物に立ち向かう。俺は結構無鉄砲なほうだから、刀じゃ敵わないと分かっていても突っ込んでしまう。そして当然のごとく跳ね返される。

 

「光、駄目だ。刀じゃ相手にならん。」

 

康裕はそう言ってチャールズにさっきの銃を撃つようジェスチャーで伝える。チャールズも理解して、銃を怪物に構え、さっきよりも威力を強めて撃った。

 

ズドーン…………

 

 

 

 

 

しかし、その銃弾は触手に跳ね返されてしまった。ただ、煙を教室に広げるのみであった。

 

「Why⁉︎」

 

チャールズが思わず叫ぶ。あの俺たちを襲った怪物をいとも簡単に倒した銃弾が、あいつには効かない…………。

 

「くそ‼︎どうする⁉︎」

 

状況はどう考えても絶望的だ。

 

 

 

 

 

 

 

ドォーン‼︎

 

さらに、宇宙人の猛攻によって崩れかけている船のどこかが爆発する音が聞こえる。この教室が崩れるのも時間の問題である。

 

どうすれば…………

 

俺は、こういう時に役に立たない自分の頭を心底恨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光‼︎」

 

ガラガラと船が崩れる音の中で、誰かが俺を呼んでいる。

 

「光‼︎おばあちゃんだよ‼︎」

 

ああ、おばあちゃんか…………へ⁉︎おばあちゃん⁉︎

 

「光〜弁当忘れてったでしょ。」

 

「おばあちゃん‼︎近づいちゃだめだ‼︎」

 

叫んだ時にはもう遅く、怪物の触手がおばあちゃんに伸びる。

 

「おばあちゃん‼︎危ない‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの一瞬の出来事だった。俺が「危ない」と叫ぶのと同時に怪物は教室の床に倒れていた。

 

「空手三段、柔道五段のあたしをなめないでほしいね。」

 

おばあちゃんのドヤ顔。

空いた口がふさがらない友達たち。

 

しばらく俺たちは唖然としていたが、宇宙船の崩れる音を聞いて我に返った。

 

「は‼︎………早くこの船から出よう‼︎もうすぐ崩れるぞ‼︎」

 

「お、おう‼︎」

 

俺は、空手三段、柔道五段の元気なおばあちゃんと刀を持って緊急脱出用ボートの方向に走った。

 

「おばあちゃんあんなに強かったの?」

 

「何あんな弱っちいのちょろいわ。」

 

あんな弱っちいのね…はははは………

 

 

 

脱出用ボートの乗り場に着くと、そこにはたくさんの人で溢れかえっていた。

 

「俺を先に乗せろ‼︎」

 

「金なら出す‼︎だから先に乗せてくれ‼︎」

 

皆必死だ。

どうやら、警備兵によってなんとか宇宙人たちは撃退したらしいが、この宇宙船が壊れるのも時間の問題。こんなところにずっと居ては宇宙船と運命を共にしなければならない。

おそらく、宇宙人たちもそれを危惧して撤退したのだろう。

 

「皆さん落ち着いてください‼︎とりあえずまず病気の方、小さな子供さん、妊婦さん、ご老人を優先してボートに乗っていただきます‼︎」

 

職員らしき人がそう叫ぶ。

日本人はさすがである。こんな混乱の中でもきちんと指示を聞いて優先されるべき人々に道を開ける。

 

「ほらおばあちゃん。先にボートに乗ってください。」

 

職員の人が俺の背中に収まるおばあちゃんに声をかける。

するとおばあちゃんは静かに頷き、

 

「光、私も行くわね。」

 

と俺にそう囁いた。

 

「さ、おばあちゃん。私の背中に。」

 

「あら、私まだ歩けますわ。あの子におぶってもらったのはあの子たちが走るからだったのよ。」

 

おばあちゃんはサバイバルにはうってつけの人材なのかもしれない。

 

 

 

光はそうしか思っていなかった。

 

また自分もボートに乗ればすぐにおばあちゃんに会える。

 

そう軽く考えていた。

 

光は、この後唯一の保護者であるこの老婆に何日間も会うことができないとは、まだ思いもよらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




では皆さん、よいお年を‼︎


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おばあちゃんが誘拐された‼︎

前話の投稿からとても間が空いてしまいました………

今度からはもう少し間を縮めようと思います。

いい加減な作者ですが、この小説、どうぞよろしくお願いします‼︎


しばらくすると、俺たちも脱出用ボートに乗ることができた。

しかし、先にボートに乗ったおばあちゃんとは、違うボートである。

 

「大丈夫かな………」

 

と思ったが、脱出用ボートの即席テレビで、総理大臣が会見し、このボートはひとまずどこかの星に不時着します、急いでボートに乗って家族と離れ離れになった方もいらっしゃると思いますが、すぐに会えます、と言ったのでひとまず安心した。

 

 

 

 

 

 

「なあ、ちょっといいかな………」

 

ジョーダンがおもむろに口を開く。

 

「俺、マリアムを助けにいく途中で、エイリアンたちの部隊の隊長みたいなの見かけたんだ。」

 

「隊長………?」

 

俺はジョーダンに聞き返す。

 

「ああ、その隊長はどうも他の奴とは違うんだ………その………ロボット…みたいな………」

 

「ロボット?」

 

「そう。そして、胸に『KOKURYU』って書いてあったんだ。」

 

「黒龍⁉︎」

 

マリアムがその言葉に反応する。

 

「ど、どうしたのマリアム?」

 

あまりにいきなり叫ぶもんだから、思わず俺は飛び上がってしまった。

 

「あなた知らないの?黒龍重工。日本の大手AI企業よ。あたしのお父さんの会社も、黒龍重工のAI使ってた。」

 

「何⁉︎ってことはあの襲撃してきたエイリアンを指揮してたのは地球のAIだったのか⁉︎」

 

さっきまで横で寝ていた康裕が飛び起きてそう叫ぶ。

 

「それはナイと思イマスよ。」

 

ショウちゃんが口を挟む。

 

「その黒龍重工はズット前、ツブレタもの。」

 

「え?なんでそれを?」

 

「え………ソレは………その………ス、スマホで調べマシタ‼︎」

 

ショウちゃんは手に持ってたスマホを高らかと掲げる。

ショウちゃんは汗をダアダアと流している。

 

「ア、アタシも黒龍の文字見たカラ調べたンダけど、やっぱり見間違えたのカナ?ハハハ‼︎」

 

「………」

 

康裕が俺のところに寄ってきて言う。

 

「なんか怪しいぜ、ショウ・ロンポウとかいうあの子………」

 

「え?そ、そうかな〜」

 

俺もなんか怪しいな、とは思ったけど、どうも素直に疑えない。

なんか特別な感情を抱いているような………

 

 

 

 

 

 

 

 

〜脱出用ボート内、桂首相の部屋〜

 

コンコン

 

「桂君、入るよ。」

 

「ああ、どうぞ。」

 

カチャ………

 

「よう、桂君、無事かい。」

 

「ああ東園寺君か。君も無事で何よりだ。」

 

東園寺 公麿《ひがしそのでら きみまろ》。桂と共に、元老党のトップに君臨する政界のドンである。今は日本の外務大臣を務めている。

 

「どうした桂君、元気がないな。自慢のカツラをエイリアンどもに光線銃で撃たれたか。」

 

「カツラなら被っとるわ!………そんなことじゃない。少し、話を聞いてくれないか。」

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

 

「………で、君はエイリアンのトップが、その黒龍重工のAIだ、と言いたいのか?」

 

「ああ。私がこの脱出用ボートにくる途中、偶然エイリアンどもの隊長らしきものを見てな。そいつの胸に黒龍重工のエンブレムがあったんだ。」

 

「でも黒龍重工っつったらずいぶん前に倒産したじゃあないか。」

 

「だから余計引っかかるんだ。」

 

「桂君、君少し疲れてたんじゃないか?」

 

「いや、そんなことはない。………東園寺君、君、あのエイリアンたちの会話を聞いたか?」

 

「ああ。聞いたとも。あっちに地球人がいるだのおまえはあっちに行けだの………」

 

「何語で話してた?」

 

「そりゃ、私が分かったんなら日本語…………………⁉︎」

 

東園寺は桂の言わんとすることが全て理解できた。

 

「そうだ。やつらは宇宙人のはずなのに日本語を話してたんだ。」

 

「………………」

 

東園寺もなにか考え込んでいる。

 

しばらく黙っていた後、

 

「これからどうするつもりだね?」

 

と聞いた。

 

「先ほど、我々よりも先に襲撃されたアメリカと電話で会談してね、一旦どこかの星に不時着することになった。」

 

「そうか………他に襲撃された国はあるのか。」

 

「まだ情報はきていない。」

 

「不時着した後は?」

 

「どうやらその星で各国の首脳が集まって今後の事を話し合うそうだ。」

 

「そうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”もうすぐ不時着します。降りる準備をして下さい。”

 

アナウンスが聞こえ、しばらくすると、とある惑星についた。

 

皆、脱出用ボートを降りていく。今日はひとまずここで野宿するらしい。

 

俺はボートから降りると、他のボートから出る人の波からおばあちゃんを探していた。

 

しかしおばあちゃんは見つからない。

 

「なあ康裕、」

 

「どうした光。」

 

「爆発寸前の船から脱出した脱出用ボートって何台あったっけ?」

 

「え………さあなぁ………」

 

「Ten.」

 

チャールズが後ろで俺に教えてくれた。

さらにチャールズは、

 

「There are nine boat here.(ここには九台のボートしかない)」

 

と言った。

 

「何ぃ⁉︎一体どういうことだよチャールズ‼︎おばあちゃんの乗ったボートはどこ行ったんだよ‼︎」

 

俺はチャールズの胸ぐらをつかんでゆさゆさとゆする。

 

「お、落ち着けよ光‼︎」

 

康裕が止めに入る。

 

「なんだなんだどうした光‼︎」

 

ジョーダンも止めに入る。

 

康裕が俺を押さえ、ジョーダンがチャールズと俺の通訳になる。

 

「本当は九台しかなかったんじゃないかとチャールズに言ってくれ。」

 

ペラペラペラペラ

 

「いや、チャールズは確かに十台あったと言ってる。俺もたしか十台あったと思うがな………」

 

「十台よ。」

 

横からマリアムが口を挟む。

 

「一台の宇宙船にはきちんと十台の脱出用ボートがないとだめだという国際的な取り決めがあるわ。間違いない。」

 

そう言われたら頷くしかない。

 

「じゃあ俺のおばあちゃんはどこに行ったんだ?」

 

周りを見ると俺たちと同じような会話をしている人達がいる。

 

「おい、脱出用ボート一台なくね?」

 

「本当だ‼︎一台到着してないわ‼︎」

 

「どういうことだ‼︎一緒に飛んでたんじゃないのか⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

「桂君、どうしたことだ⁉︎脱出用ボートがまだ一台到着してない‼︎」

 

「ああ、分かってる。」

 

即席で張られた政府要人のテントは大騒ぎだ。

 

するとしばらくして大慌てで一人の男がテントに入って来た。

 

「総理‼︎日本船団を襲った集団の犯人と名乗る人物が電話をかけてきました‼︎」

 

「何ぃ⁉︎」

 

「どうやら、現在行方不明の脱出用ボート一台についても何か話しているようです‼︎」

 

「分かった‼︎すぐに出よう‼︎」

 

 

 

 

桂は、即席テントに設置された電話で話をする。

 

「私が日本国総理大臣桂取太だ。」

 

「私が君たち日本船団およびその他のアメリカ船団などを襲った犯人だ。」

 

その犯人は、変声機を使ったような変な声をしている。

 

「君たちは脱出用ボートが一台来なくてたいそう心配しているだろうな。」

 

「なんだ‼︎なにか知っているのか⁉︎」

 

「ああ。なにしろ我々は、その脱出用ボートをそっくりそのまま誘拐したんだからな。」

 

「何ぃ⁉︎」

 

「安心しろ。殺すつもりはない。彼らは大切なお客様だからな。」

 

「………我々を襲って、どうしようと言うのかね。」

 

「ふふふ、さあな。自分の頭で考えるんだな。」

 

「誘拐したのはその脱出用ボートだけか⁉︎」

 

「ああ。日本船団七台。その船に搭載されている脱出用ボート合計七十台のうち、誘拐したのは五番の船の脱出用ボート一台だけだ。」

 

「なぜその一台を誘拐した⁉︎」

 

「誘拐しやすかったんでね。」

 

「こんな真似が許されると思っているのか⁉︎」

 

「ふん。おまえら地球人どもが私にした仕打ちに比べればこれくらい………」

 

「人質を解放しろ‼︎金なら払う‼︎」

 

「ふ、最後は金か。しょせん人間は金の奴隷。そんなはした金もらう筋合いはないね。」

 

「ならば何が目的なんだ‼︎」

 

「ふ………さっきも理由を聞かれたな。そこまで聞きたいなら教えてやるよ。そうだな………地球人への復讐ってところかな。ま、とにかく言いたかったのは誘拐したぞ、てことだけだ。電話を切るぞ。」

 

「待て‼︎おまえは………もしかしたら地球の黒龍重工の関係者か………?」

 

「………………電話を切るぞ………ガチャ‼︎ツーツーツー…」

 

「むむむむむ………」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、残りの日本船団の脱出用ボートが次々と到着した。

しかし、おばあちゃんの乗った船はない。

 

混乱を招くから、と政府はあまり情報を公開しない。

 

秘密にしないといけないくらい、おばあちゃんは大変なことになっているのだ。

 

聞くところによると、アメリカはじめ、他の襲撃された国からは、誘拐された船はないという。

 

ただ、アメリカ船では移民や黒人などがボートに乗れず、船と運命を共にした人々が大勢いたという。

 

それを聞いた黒人のジョーダンはとても、憤っていた。

 

 

 

 

 

他の、襲撃を免れた国の船もこの星に到着した。各国の首脳の会議に出席するためだという。

 

〜各国首脳会議〜

 

各国首脳会議は、ひときわ大きなテントで行われた。

 

「とりあえず………今後の事についてだが………」

 

「また襲撃を受けてはたまったもんじゃないですからなぁ。」

 

「ここはHope Starの人々に連絡して迎えに来てもらったら………」

 

「そのHope Starの船が襲われたらどうするのだ?それに、我々はここに何日もとどまることはできません。そんな迎えが来るまで待つことはできません。」

 

「やはり襲撃を受けた国の国民は襲撃を免れた国の船に乗せてもらってこのまま進むしかないですな。」

 

 

 

 

 

 

この会議の後、桂首相は、外務大臣東園寺を連れて、中国の首脳のいるテントへ向かった。

 

「桂君、なぜ中国のところへ?」

 

「我々は、中国の船に乗せてもらう。」

 

「何⁉︎」

 

「アメリカも襲撃されて日本どころじゃないからね。七万人もいる日本国民を保護できるのは中国だけだ。」

 

「しかし………その昔日本と中国ではいざこざがあった………大丈夫か………」

 

「………」

 

 

 

 

〜中国のテント〜

 

「………ということなのです。どうか我々日本国民を中国の船に乗せてくれないだろうか。」

 

「………」

 

中国国家主席、王華満は厳しい顔をしている。

 

「話は分かります。先の会議で、『襲撃を受けた国は襲撃を免れた国の船に乗せてもらう』と決まりましたから、あなたたちが我々の船に乗りたい、というのは十分分かる。だが………」

 

王は一息おいて、

 

「かつて中国とアメリカが戦争になった時、日本は集団的自衛権を行使して我が国と戦った。それを忘れたとは言わせませんぞ。」

 

「………」

 

「確かに日本国民七万人を受け入れられるのは我が国だけだ。しかし国民感情的に受け入れられるかというと………」

 

「それでは………」

 

桂が何かを言おうとしたのを押さえてさらに王は続けた。

 

「まあただ、今は中国人だ日本人だと対立している場合ではない。『地球人』として、今我々は危機なのだから。同じ兄弟を受け入れない訳がない。日本人は我々が最後までHope Starまで乗せる。安心してください。」

 

そう言うと王はにこやかに笑った。

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

 

桂は深々と頭を下げた。

 

「………我々は、こうして地球を出なければならなくなる状況になる前に、こうして協力するべきだったのだ。」

 

 

 

 

 

 

 

〜地球人のテントが張ってある場所の郊外〜

 

「なんだあれは………」

 

「なぜいきなりこんなところにテントが………」

 

「我々の星に勝手に入ってくるとは‼︎」

 

「よし‼︎女王に報告だ‼︎追っ払ってくれる‼︎」

 

ガササッ………

 

 

その草の茂みが少し揺れたのに、気づいた人間はいなかった。

 

 

 

 

 




評価、感想、推薦、お気に入りよろしくお願いします♪


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動物の星

学級閉鎖になってしまいました‼︎

我がクラスが学級閉鎖‼︎

なんてこった‼︎

オオオオオオオオオオノオオオオオオオオオオ‼︎

(皆さんもインフルエンザには気をつけましょう)


「何?宇宙から何者かがやってきた?」

 

「はい‼︎勝手にテントを張り、野営しています‼︎」

 

「………ふん。また汚らわしいのが入ってきたね。………全くしょうがないね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはいつものように、政府が張った即席テントで固まって喋っていた。

 

この星に来てもうすぐ一ヶ月経つ。

世界の首脳たちは、未だ今後のことを決めあぐねているらしい。

 

まあそんな難しい話はせず、たわいもないことを話していると、テントの中に犬が入ってきた。

 

可愛いトイプードルである。どんぐりみたいな目が可愛らしい。

 

「わぁ可愛い‼︎」

 

「わあ、フサフサしてる〜」

 

「クゥ〜ン…………」

 

元気がない。

一体どうしたのだろうか。

 

「多分………飼い主と離れ離れになっちゃったんじゃないか?この騒ぎで。」

 

ジョーダンが犬の頭をなでながら言う。

 

首輪がついているから、飼い主がいたことは間違いない。

 

「よし、じゃあこういう動物を扱っている機関があるテントに、この子を連れて行こう。」

 

俺がそう提案すると、皆賛同してくれたので、出かける準備をする。

 

「首輪ノ裏トカに飼い主の名前カイテないかナ〜………?」

 

ショウちゃんが首輪の裏を見る。

 

「…………‼︎」

 

その途端、ショウちゃんの顔の表情が真剣なものになる。

 

「どうしたの?ショウ?」

 

マリアムが尋ねる。

 

「エ?う、ううん…なんでもないよ………」

 

皆の視線がショウちゃんに集まる。

必死に笑顔をつくろっているが、絶対なにかを隠している。

 

するとショウちゃんは、

 

「そ、そうだ‼︎この子アタシが預かりマス‼︎そ、ソ〜ネェ〜…な、名前はチロ‼︎ど、どう?イイ名前デショ?」

 

「…………は?」

 

皆そう思った。

何をぬかしてるんだこの人。

 

「やっぱ怪しいぜ。この子………」

 

康裕が俺の耳元で囁く。

 

すると………

 

「ワンワン‼︎」

 

チロが大きな声で吠え始めた。

 

その直後、ドウッと何かが倒れる音がする。

 

「どうしたんだ⁉︎」

 

皆、音のする方に視線を向ける。

 

 

 

 

 

「Hey‼︎Charles‼︎Aer you OK?」

 

「チャールズ、だ、大丈夫⁉︎」

 

そこには、青い顔をして倒れる、チャールズの姿があった。

 

「チャールズ‼︎しっかりせい‼︎俺はここにおるぞ‼︎」

 

康裕がチャールズのほっぺたをバチバチと叩く音が聞こえる。

 

「チャールズ‼︎」

 

俺は、少ししか英語は話せないものの、心の広いチャールズはその片言英語を噛み砕いてくれ、今では俺とも仲が良い。

 

「おい‼︎チャールズ‼︎」

 

俺もとりあえず康裕と一緒にチャールズのほっぺたを叩く。

 

「ドイテ‼︎」

 

ショウちゃんは大きなバケツを持ってきた。

 

バシャッ‼︎

 

チャールズが一瞬でビチャビチャになる。

 

すると………

 

 

 

 

 

 

「おお、起きたか。チャールズ‼︎」

 

「大丈夫か?」

 

「Charles‼︎Are you all right now?」

 

「………………」

 

チャールズはむくりと起きたものの、眉間にしわを寄せ、険しい顔つきで黙っている。

 

「Ah………Ah………‼︎‼︎」

 

「待て‼︎何か変だぞ‼︎」

 

しばらくうなっていたチャールズはいきなり暴れだした。

 

「Je m'appelle Charles‼︎Ou sont les chateau‼︎」

 

「⁉︎」

 

「何だ⁉︎何て言った?」

 

「ジョーダン‼︎今なんて?」

 

俺と康裕はジョーダンに目を向ける。

しかし、ジョーダンは首を横に振っていた。

 

「わ、分からない。た、多分英語じゃない。」

 

俺と康裕はマリアムやショウちゃんにも目を向けたが困惑した表情であった。

 

「多分これフランス語だと思うわ。ほら、チャールズってフランス人だから………。それにお父さんの取引相手のフランス人がこんな言葉喋ってた。」

 

マリアムは、すぐに冷静さを取り戻し、そう呟いた。

 

「Ou sont les chateau⁉︎」

 

そう叫びながら、チャールズはテントを飛び出し、なんと宙に浮いたではないか⁉︎

 

「な⁉︎」

 

「チャールズ‼︎降りてこい‼︎」

 

「一体どういうことだ⁉︎」

 

「Ou est chateau‼︎」

 

チャールズは不気味に叫びながら空を飛ぶ。

というより空中で何かの力に引っ張られているような感じだ。

 

「ああ、待てチャールズ‼︎」

 

「追いかけよう‼︎」

 

チャールズは、ぐんぐんと引っ張られていく。

 

「待て〜‼︎」

 

空中だから誰もチャールズを止めることはできず、ただただ追いかけることしかできなかった。

 

「ワンワン‼︎」

 

「チロ‼︎ちょっと待ってて‼︎すぐ戻ってくるから‼︎」

 

「クゥ〜ン…………」

 

 

 

 

山を越え、小川をとび越え、原っぱを駆け………

 

「ふぅふぅ………空を引っ張られてるチャールズは良いけど………はぁはぁ…走ってる俺らは大変だよな………はぁはぁ…」

 

全くである。

 

 

 

しばらく走っていると、何やら町のようなものが見えてきた。

 

「見て‼︎町よ‼︎」

 

この星にも町があるのか、と思いつつそこに向かうチャールズを追いかける。

 

「待て〜‼︎あの町へ何しに行く気だ⁉︎」

 

「¥%$÷#〒€〆…*°+々@”&………(とにかく何かをぶつぶつ言っている)」

 

駄目だ。チャールズには聞こえていない。

 

そうこうしているうちに町に入る。

 

そこは見た感じ普通の町である。しかし………

 

「ワンワン、キャンキャン♪」

 

「ニャーオ、ニャオニャオ。」

 

「………ねぇ…なんかわんちゃんが屋台出してるわよ………」

 

 

 

 

 

 

市場を越え、大通りを越え、チャールズはやっと止まった。

 

「はぁはぁ…やっと止まった………」

 

そこは大きな城である。

 

中世ヨーロッパ式のその城は、四方を堀に囲まれ、入り口の門に一本の橋が架かるのみであった。

 

しかも、その門で、甲冑を身にまとった犬が門番をしていた。

 

犬の門番がこちらに気づき、近づいてくる。

 

「ワンワン‼︎ウゥ〜ワンワン‼︎」

 

とりあえず事情を説明する。

 

「いや、僕たちはただ友達を追いかけてきただけ………」

 

「バウバウ‼︎ウゥ〜………」

 

通じていない。

 

「アタシのスマホに『ペットと会話アプリ』ってノガありますケド使ウ?」

 

なんだそのアプリ。

 

ショウちゃんはスマホでその謎のアプリを開くとその犬の門番にスマホを向けた。

 

「ウゥ〜バウバウ‼︎ワン‼︎」

 

→なんだ貴様ら‼︎ここは女王様の宮殿だぞ‼︎貴様らのような猿のできそこないみたいなのが来る場所じゃない‼︎とっとと立ち去れぃ‼︎

 

スマホにそのような文字が表示される。

猿のできそこないって………

 

「ワンワン‼︎」

 

→とっとと立ち去れぃ‼︎

 

 

 

 

 

 

「いいよ、入らせておやり。そいつらはあたしが呼んだんだ。クロ‼︎入れておやり。」

 

「⁉︎」

 

どこからか声が聞こえる。しわがれたおばあさんの声だ。

 

「ク〜ン………キャウ〜ン………」

 

「まあそう言わないでおくれよ。あたしだって好きでやってるんじゃないんだから。」

 

門番の犬が渋々門を開ける。

ギギギと大きな門が開かれる。

 

チャールズは高度を下げると門の中に引っ張られる。

 

「あ‼︎待て‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

城の中にはたくさんの部屋があったが、チャールズは迷わず飛んでいく。あっちへ行ったりこっちへ行ったり………。やはり、何ものかに引っ張られているのだろうか。

さらに驚くのは、チャールズの飛ぶところは、勝手に扉が開き、道を開けてくれるのだ‼︎

魔法にでもかかっているのか。

 

 

 

 

しばらく進むとまた大きな扉の前に出る。

 

キィ〜………

 

その扉も、勝手にゆっくりと開かれる。

 

チャールズは、その中に吸い込まれるように進んでいく。

 

「あら。なんだ地球人かい。」

 

扉の中には縦にも横にも大きな二頭身くらいのおばあさんが椅子にふんぞり返りながら座っていた。

 

「Ah………Ah………‼︎」

 

うなるチャールズにその謎の老婆は手のひらを向ける。

 

「いつまで魔法にかかってんだいこのマヌケ‼︎」

 

そうおばあさんが叫ぶと、宙に浮いていたチャールズはどさっと落ちた。

 

「大丈夫か⁉︎」

 

仰向けに倒れたチャールズは、いつもの普通の目つきに戻っている。

 

「………What………Where are we?」

 

「………Well…Do you remember?」

 

「………No…」

 

俺にはチャールズとジョーダンとマリアムとショウちゃんの英語の会話は全く分からないが、どうやら今までの事情を説明しているらしい。時折、チャールズは驚いた、というような表情を見せる。

 

「もう終わったかい?」

 

大きな老婆が低い声で話しかける。

言葉が通じるのだろうか。

 

「あんたたちの耳に魔法をかけてあたしの言葉が通じるようにしてあるのさ。多分あんたたちの母国語が聞こえると思うけどね。」

 

なるほど………。

この老人はそんなことまでできるのか⁉︎

 

背筋に緊張が走る。

 

魔法使いというものに、俺は恐怖を感じる。

 

「やいでっかいおばさん‼︎なんでチャールズにあんな事したんだ‼︎」

 

康裕がいきなり叫ぶ。

なんと無鉄砲な事だろうか。

 

「でっかいおばさんじゃない‼︎あたしの名前はオウナ。この星の支配者さ。

なんでその子に魔法をかけたかって?あんたたちをこっちに呼ぶためさ。」

 

オウナは淡々と質問に答える。

 

「なんでそんなことをする⁉︎」

 

康裕はチャールズに変な魔法をかけられた怒りからか語気が荒い。

 

「あんたたちが何者か知りたかったからさ。いきなり人の星にやってきてテント張るなんて無礼な民族はどこの誰かってね。」

 

オウナはいたって冷静である。

 

「よりによって地球人なんかが来るとはね。………けがらわしい。」

 

オウナは鼻をつまむような仕草をする。

 

「なぜチャールズを選んだ‼︎地球人なんかたくさんいたろう⁉︎」

 

「一番マヌケそうで引っかかりそうだったからさ。案の定あんなにまんまと引っかかる奴は五百年生きてて生まれて初めて見たよ。」

 

「‼︎」

 

チャールズがオウナに飛びかかろうとする。

ジョーダンがそれを必死に抑えているが、チャールズも康裕に負けず劣らず無鉄砲なようである。

 

「あの…なんでこの星には地球の動物たちが文明を持って生活してるんですか?」

 

マリアムがおそるおそる尋ねる。

 

確かに俺も疑問に思った。

ここに来る途中、市場や町を通ったが、そこにいたのは服を着、車を運転する動物たちだったのだ。

 

オウナはマリアムをジロジロと観察してから言った。

 

「あたしが地球から連れてきたんだ。人間の勝手で死んでいった動物たちを魔法で蘇らせてこの星に連れてきたんだ。

 

ペットとして飼われていたのに捨てられて、さまよった挙句餓死した子。

 

ペットショップで売れ残り、挙句の果てに殺処分された子。

 

人間同士の戦争に巻き込まれて、爆撃とかで死んだ子。

 

食物連鎖の頂点に立つ人間に捕まって、料理はされたのに食べてもらえず残飯として処理されてしまった子。

 

例を挙げたらキリがない。

ここの子たちは人間の犯した過ちをよく分かってる。

 

だから文明を持っても滅びることなくこうしてうまくやってけてるんだ。

 

自分で自分の星をメチャクチャにしたどっかの民族とは違ってね。」

 

オウナは眼光を鋭くして言った。

 

「今度はこちらが質問する番だね。…………なんで地球人がこんなところに居るんだい。しかもさしあたり全人類が宇宙に来たみたいだね。なぜだい?」

 

オウナは立ち上がると、ゆっくりと俺の頭に手を置いた。

 

しばらく目を閉じて、何か考える素振りをした後、手を外す。

 

「ふん‼︎地球人が自分の星をメチャクチャにしてるとは聞いていたけどまさかそれで地球を出るとはねぇ‼︎動物たちの犠牲の上に成り立っていた文明もついに終わったかい‼︎今度は宇宙を破壊しにやってきたのかい?」

 

「⁉︎」

 

オウナは頭に手を置いただけでそれまでの経緯まで分かるのか⁉︎

 

「…………はっきり言っておくけどね。ここの動物たちは人間をとても憎んでるからね。地球人がテント張って野営してるなんて知れたらボコボコにやられるだろうね。」

 

「何⁉︎」

 

それは大変なことである。

 

「オウナさん、どうにかなりませんか?」

 

マリアムが必死に懇願する。

 

それを見て、オウナは「フン!」と鼻で笑った後こう言った。

 

「安心しな。勝手に地球人を襲わせたりはしないさ。」

 

さっきまで地球人のことをギャーギャー言っていたが、さすがに星の支配者とあって秩序は守るらしい。

 

皆ホッと胸をなでおろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

喜べたのは束の間であった。

 

「だがあたしの命令のもとで地球人を襲わせることは可能さ。」

 

「…………‼︎」

 

オウナの言葉に皆固まる。

 

「エレ将軍‼︎いるかい⁉︎」

 

「はっ‼︎ここに‼︎」

 

オウナが叫ぶと、甲冑に身を包んだ象がやってきた。

 

「エレ将軍、今から動物兵を率いて地球人のところへ行き、奴らを皆殺しにしてらっしゃい‼︎」

 

「御意。」

 

象が一礼して行こうとした瞬間、

 

「もう我慢できん‼︎」

 

「Me too‼︎」

 

と康裕とチャールズがオウナに向かって突進した。

 

しかしオウナは余裕の表情である。

 

「バッ‼︎」

 

オウナが両手を広げて叫ぶ。

 

そう思った瞬間、俺の頬の横を、康裕とチャールズが飛んでいった。

 

「痛っ…………‼︎」

 

二人は壁に叩きつけられたようだ。

 

オウナは、その両手から何かのエネルギーを出し、二人を吹き飛ばしたのか⁉︎

 

「あんたらにあたしの子供たちの苦しみが分かるんかい‼︎虐げられ、忌み嫌われ、追い詰められ、無念の最期を迎えたあの子たちの苦しみが‼︎それでまだ自分たちの命が惜しいんかい‼︎散々動物の命を奪い、自然を壊したくせに‼︎」

 

オウナの毛が逆立つ。

目を大きく見開き、その怒りにとらわれた眼球をこちらにむける。

 

オウナはエレ将軍に早く行け、というジェスチャーをすると、エレ将軍が部屋を出ようとする。

 

しばらく、目の前で起こる事に唖然としていた俺は、とっさにそのエレ将軍とやらの前に立つ。

 

自分でも、何か考えてそうした訳じゃないが、とにかく部屋のドアの前に立つ。

 

「やめろ‼︎もし行くんなら俺を倒してから行け‼︎」

俺はとっさに自分の刀を抜く。

 

するとジョーダンも持っていた銃をエレ将軍の背中に構え、その巨体を威嚇する。

 

「ええいまどろっこしい‼︎みんな‼︎こいつらを抑えるんだよ‼︎」

 

オウナが大声を出すと、城中にいた犬の衛兵たちが部屋にやってくる。

 

「ワンワン‼︎」

 

犬の衛兵たちは、まず壁のところで倒れている康裕とチャールズに襲いかかる。

 

「ワンワン‼︎」

 

「あ‼︎チャールズを離せ‼︎」

 

「ウ〜バウバウ‼︎」

 

「Dhaaaaa‼︎」

 

危険を察知したのか、二人はピョンと起き上がり、犬の衛兵たちを追い払う。

 

「ええい何してるんだい‼︎そこで縮こまってる二人を先に始末しな‼︎そうすりゃ他のもおとなしくなるよ‼︎」

 

そう怒鳴られた衛兵たちは康裕とチャールズから離れ、隅の方で怯えているマリアムとショウちゃんの方に矛先を向ける。

 

「あぁ‼︎ショウちゃん‼︎」

 

俺はとっさに女子二人のところに駆けつける。

 

「おら犬ども‼︎この子たちに指一本触れてみろ‼︎切り捨ててやる‼︎」

 

幸い、相手も槍しか持っていない。

刀でも十分相手できるだろう。

 

「こらあんたたち‼︎頭悪いね‼︎皆その女子んとこ行ってどうすんだい‼︎エレ将軍の援護もするんだよ‼︎」

 

オウナは本当に犬たちを可愛がっているのだろうか。

 

そんなことは気にも留めず、衛兵たちはジョーダンのところへ向かう。

 

エレ将軍も剣を抜いており、ジョーダン一人じゃ対処できそうもない。チャールズと康裕が援護にまわっているが、三人でも対処できないだろう。

 

かと言って俺もここから動くと女子二人は捕まってしまう。

 

当然ながら、女子二人は武器など持っていない。

 

このままでは全滅だ。

 

このまま人類がやられるのを止められず終わってしまうのか。

 

「さあ‼︎やっておしまい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワンワン‼︎」

 

それは突然のことだった。

 

「チ、チロ⁉︎」

 

「ワン‼︎」

 

チロが部屋の中を駆け回り、ショウちゃんのところで落ち着く。

 

あまりに突然のことで、部屋の中は、しんと静まり返る。

 

犬の番兵たちは同じ犬同士だからか、チロに手を出さない。

 

「なんだいこの子は?」

 

オウナも不思議そうな目で見つめている。

 

当のショウちゃんも驚いているのだから、オウナが疑問を持っても無理はない。ショウちゃんを追いかけてこの城へやってきたのだろうか。

 

「こら待て‼︎ここは女王の城だぞ‼︎」

 

先程の門の番をしていた犬がチロを追いかけ部屋に入ってくる。

 

「す、すいません。こいつ入るなというのに城に入っちゃて…………」

 

「クゥ〜ン…………」

 

オウナに必死に弁明する門番をよそに、チロは飼い主の顔をペロペロとなめる。

 

「チロ‼︎ヤメテ‼︎アハハ‼︎」

 

ショウちゃんはなんか楽しそうにチロと戯れているが、今の状況を忘れてはいないだろうか。

 

犬の衛兵たちはしばらく呆然としていたが、とっさに我に返り、槍をこちらに向けてくる。

 

「ウゥ〜バウバウ‼︎」

 

チロがショウちゃんのひざから抜け、衛兵たちに吠える。

 

しかし、いかつい犬の衛兵たちに、可愛いトイプードルが勝てるとは思えない。

 

チロが吠えたのに反応したのか、衛兵たちがいっせいに襲いかかってくる。

 

「バウバウバウバウ‼︎」

 

「ワンワンワンワン‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで‼︎」

 

いきなり叫んだオウナに、皆の視線が向けられる。

 

「もういい。エレ将軍も自分の持ち場に戻んな。地球人狩りはなしだ。」

 

「…………⁉︎」

 

「あんたたちも自分の持ち場に帰んな‼︎この人間どもも帰してやるんだよ‼︎」

 

オウナが犬の衛兵たちに指示する。

 

「ワンワン‼︎」

 

「バウバウ‼︎」

 

衛兵たちがオウナに抗議をしている。

 

こちらも疑問だ。

なぜいきなり自分たちを解放する気になったのだろうか。

 

「馬鹿だねあんたたちは。あの地球人どもの船にも動物たちは乗ってるんだよ。このチロとかいう子みたいにね。その状況で地球人狩りなんかしたら宇宙船の中の子達の飼い主がいなくなっちゃうよ。

飼い主がいなくなって苦労したあんたたちなら分かるだろう?

それに…………このチロとかいう子の飼い主を目の前で殺したくはなかった…………」

 

オウナは衛兵たちの頭をなでながら諭している。

 

どうやら、オウナはショウちゃんをチロの飼い主だと感違いしているらしい。

 

そして、チロの方へ駆け寄り、

 

「飼い主思いのわんちゃん。これからも人間と仲良く暮らすんだよ。」

 

と頭をなでた。

 

そして俺たちの方を向き、

 

「今回はこの子に免じて許してやるよ。でもまた人間たちが動物を不幸にする文明をつくりあげたら承知しないよ‼︎」

 

と言い放った。

 

「ほら、分かったらさっさと消えな。」

 

オウナは手で俺たちを追い払うジェスチャーをする。

 

俺たちはオウナに一礼すると、部屋を後にした。

 

 

 

 

「いやぁ、しかしオウナがショウちゃんをチロの飼い主だと感違いしてくれて助かったな。」

 

「全くだな。………で、結局このわんちゃんどうすんだ?」

 

「え………あ、アタシが飼うノ‼︎」

 

彼らはまだ気づいていなかった。

この星に迫る、大いなる脅威に。

 

 

 




チャールズの英語のセリフを見た英語話せる友達が

「この英語おかしいwww」

とぬかしてきました。

まあ僕の英語が燃えるゴミレベルということもあるのですが、登場人物にはイギリス人もアメリカ人もいません。
つまり母国語が英語の人物がいないのです。
(チャールズ:フランス人、ジョーダン:イタリア人、ショウ・ロンポウ:中国人、マリアム:アラブ首長国連邦人)

ですのでたとえ彼らの英語がおかしくても目をつむってください(-_-)


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黒龍再び

どうも‼︎部活の試合は近いわ生徒会の選挙は近いわでいろいろ忙しい牛風です‼︎

とにかくここでグダグダ書いてもしょうがないんで小説、どうぞ‼︎


俺らはチャールズを追いかけてきた道を進み、地球人のテントへ帰るところであった。

 

「いや〜どうなることかと思ったよ。」

 

「ほんとほんと‼︎でもあのでっかい婆さんの気が変わる前にこの星でた方が良さそうだ。」

 

「うん………皆に伝えないと………」

 

俺たちは、助かったという安心感とオウナの気が変わらないか、という不安の念から、少々急ぎ足でテントに向かっていた。

 

動物たちの町を出て、草原を抜け、この丘を越えれば地球人のテントだ。

 

「よいしょっと………」

 

丘の頂上に着いた時、背筋が凍りついたのを俺はよく覚えている。

 

 

 

 

 

立ちのぼる煙。

地球人のテントが燃えている。

 

各国の首脳が集まるテントの横に大きな宇宙戦艦。

 

その戦艦には「黒龍重工」の文字が入っている。

 

逃げ回る地球人。

そして、それを追いかけ銃を乱射するエイリアン。

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ………これ………」

 

康裕が声にもならない声を発している。

 

俺も状況が飲み込めないでいる。しばらく、呆然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

どれほど唖然としていただろうか。

ふと、俺たちの横を風が横切る。

 

「何事だい⁉︎これは⁉︎」

 

オウナの声。

 

「全く少しは運動しないとダメだね。城からここまで来るのにこんなに時間がかかっちゃったよ。速さも風速くらいしか出なくなっちゃったよ。全く………」

 

ぶつぶつ言ってるオウナの後に、武装した動物兵たちが続々とついてきた。

 

「ワンワン‼︎」

 

「ガオガオ‼︎」

 

「パォー‼︎」

 

小さな犬から肉食獣まで様々な動物たちがやってくる。

 

その様子を見ていち早く我に返ったジョーダンとチャールズはオウナに突っかかる。

 

「おい‼︎どういうことだ‼︎地球人狩りは無くなったんじやないのか⁉︎」

 

「そんなこと言われたってあたしは知らないよ。あんな『黒龍重工』とかいう軍隊なんか見たこともないね。」

 

オウナもよく状況が飲み込めていないらしい。

 

「ただ地球人が『黒龍重工』とかいうのに襲われてるのは確かだね。」

 

オウナの言葉に俺たちは凍りつく。

 

そんな俺たちには気にもとめず、オウナは動物兵たちに号令をかける。

 

「さあ皆‼︎あたしたちの星で勝手に戦をしている黒龍重工とやらを追い出すんだ‼︎そして地球人の船に乗ってる動物たちとその飼い主たちを助けるんだ‼︎さあ行け‼︎」

 

「ワアアアアアア‼︎」

 

動物兵たちが一斉に丘を駆け下りる。

 

あっという間に戦場に着き、黒龍重工のエイリアンたちを蹴散らしていた。

 

「………俺たちもこんなところでぼーっとしてる場合じゃないぞ。」

 

康裕がぼそり呟く。

 

「Come on‼︎Everybody‼︎」

 

康裕の呟きと同時にチャールズが丘を駆け下りる。

 

「あ、待てチャールズ‼︎…………くそ‼︎遅れをとるな‼︎光‼︎ジョーダン‼︎行くぞ‼︎」

 

康裕が俺とジョーダンの腕を引っ張り丘を駆け下りる。

 

「はわわわわ、ちょ、まて、」

 

「チャールズが一人で行っちゃったんだから見捨てるわけにはいかないだろ⁉︎」

 

「いやでもなんの作戦もなしに突っ込むっちゅうのは………痛‼︎」

 

走りながら喋るので舌を噛んでしまった。

 

「康裕、気持ちは分かるが無謀だ。同じ突っ込むでも作戦を立ててから………痛‼︎」

 

ジョーダンが俺の言わんとするところを言おうとしていたが同じく舌を噛んだらしい。

 

そして、康裕は丘を駆け下りた後両脇に抱えていた俺とジョーダンを放り出し、持ってた愛刀を抜いて突っ込んでいってしまった。

 

「ああ、待て‼︎」

 

もはや丘の上には戻れない。

 

「我々も突っ込むしかないですな。」

 

ジョーダンは顔をこちらに向け、コクリと頷くと一人突っ込んでしまった。

 

「ちょ、ま‼︎」

 

俺の手元には日本刀一本。

 

エイリアンたちはなんかものすごい銃。

 

どうすんだよ………………

 

 

 

「何ヤッテルノ⁉︎ボサッとしちゃダメヨ‼︎」

 

声のする方を向くと、丘の上の方からショウちゃんが走ってくる。

そして、その手には小銃を握っている。

 

「アブナイ‼︎伏セテ‼︎」

 

ダダダダダッ‼︎

 

振り向くとエイリアンたちがバタバタと倒れる。

 

「ボサっとシテたらヤラレちゃいますヨ‼︎」

 

ショウちゃんが俺の前に降り立つと、耳元で囁く。

 

「アタシが撃つからアナタは後ろカラの敵をお願い。」

 

「で、でも武器が………」

 

「刀アルでしょ?」

 

それだけ言うと、ショウちゃんはまた銃を乱射する。

驚くことに、それが全部命中している。

 

「ウガー‼︎」

 

ショウちゃんの方をジッと見ていた俺の前にエイリアンがやってくる。

 

それを俺はすかさず刀で斬ろうとする。

 

しかしエイリアンはそれを受け止め、ドヤ顔をする。

 

「はっはっはっはっ‼︎効かぬわそんな攻撃‼︎」

 

そのドヤ顔があまりにもウザいので俺はついにキレた。

 

「はぁ?おまえなめてんのか⁉︎俺この小説の主人公なんだぞ‼︎ここで活躍しないと主人公失格だろうが‼︎

この前作者の友達が『光っておばあちゃん誘拐されただけのつまらない主人公だよね〜(笑)』とか言ってたって聞いてすごい傷ついてるんだよ‼︎ここでおまえが倒れてくれないと俺の立場ないの‼︎分かる?」

 

無鉄砲な俺はエイリアンに説教を始める。

 

「なんなんだよおまえエイリアンとか‼︎なんで言葉通じんの⁉︎黒龍重工の罠か‼︎そうなのかそうなんだな‼︎許さん‼︎いい加減な設定にしやがって‼︎作者を殺してやる‼︎」

 

俺はエイリアンを刀で斬る(叩くといった方がいいのか)

 

「痛い‼︎痛い‼︎……グスン…………俺この小説の設定一切関わってないのに…………」

 

「黙れエイリアン‼︎これでもかこれでもか‼︎あのなぁ、この小説エピローグがすっごいシリアスだったろ⁉︎それでその後俺は主人公としてシリアスな感じでやった方がいいのかな〜とか思ってかれこれ七話頑張ったんだよ‼︎

それなのに作者の友達から『一話目がシリアスだったのにその後から急にシリアスじゃなくなったよねwww』とか言われたんだよ‼︎

おまえのせいだ‼︎約束として五百円払え‼︎」

「ちょ、ま、そんな約束してな…………痛‼︎」

「黙れこのクソ野郎‼︎」

「うううう…………これじゃどっちがエイリアンかわかんねぇじゃないかよ〜」

 

エイリアンが泣きだした。

 

俺の後ろでは、ショウちゃんが小銃一つでエイリアンどもを駆逐している。

向こうの方ではチャールズやジョーダンも銃でエイリアンと戦闘中。

康裕も、刀一つで動物兵たちと共闘している。

 

本来は主人公である俺が活躍すべきではないのか?

 

ええい腹立たしい‼︎

 

「やいこらエイリアン‼︎おまえ役職はなんだ‼︎」

 

「はい。一応参謀をしております。」

 

いつの間にか敬語になっている。

ていうか参謀がこんなとこうろついてて良いのか?

くそっ‼︎余計に腹立たしい‼︎

 

「参謀だったらとっとと大将かなんかに兵をまとめて引き上げろと進言しろ‼︎もうこれ以上脇役たちが活躍されちゃたまらん‼︎」

 

「え、しかし…………」

 

「さっさとする‼︎」

 

「は、はい‼︎」

 

エイリアンが涙ぐみながら帰っていく。

 

「ふ、刀一つで参謀の相手してやったぜ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「駄目でした☆」

 

エイリアンが心なしか嬉しそうに帰ってきた。

 

「あ〜よかった。軍の参謀が地球人にズタズタに言われて兵をまとめて引き上げるなんて聞いたことないもん。大将が拒否して本当良かった〜」

 

「…………」

 

これは…………

 

「さ、今までこの参謀様をズタズタに言った報いを受けてもらおうか…………」

 

エイリアンが銃を構える。

 

「死ねぇ‼︎」

 

「ギャー‼︎」

 

 

 

 

 

 

プス…………

 

その何かが刺さる音と共にエイリアンが倒れる。

 

「ムニャ…………」

 

ドサ…………

 

そこには、マリアムが銃を構えて立っている。

 

「この麻酔銃よく効くのね…………オウナさんにもらったやつすごいなぁ…………」

 

どうやらマリアムがこいつを眠らせたようである。

 

どうして俺にはこういう活躍の場がないのかしら。

 

「ショウ‼︎」

 

「マリアム‼︎」

 

二人は何か英語で話している。

 

雰囲気が、洋画のヒーローもんの女戦士のようだ。

 

俺がこんなカッコ良い主人公になるのは許されてないのだろうか。

 

「そんなとこにいたのかい⁉︎」

 

俺たちのところに、オウナが走ってやってくる。

 

エイリアンの大軍の間を、縫うようにしてものすごいスピードでこっちにくる。

 

一瞬で俺たちの目の前に現れたかと思うと、

 

「さあ三人あたしにつかまりな‼︎」

 

と言って俺たちを連れてまたものすごいスピードで移動する。

 

しかし驚く事に、俺たちの体にはそこまで負担がかからなかった。

オウナの魔法であろうか。

 

「これで全員だね⁉︎」

 

オウナが止まったその場所に、ジョーダン、チャールズ、康裕の三人がいた。

 

「チロは⁉︎」

 

ショウちゃんが叫ぶとオウナの服のポケットからチロが顔を出す。

 

オウナは動物には本当に親切だ。

 

「さ、あんたたちちょっと来な‼︎」

 

オウナが俺たち全員を抱え、敵のエイリアンがあまりいない茂みの中に入った。

 

「ここなら安全に話ができるね…………あんたたちよくお聞き‼︎」

 

オウナが俺たちに何かを指示するように話しかける。

 

「あのエイリアンたちの首元にはこういうチップがついてる。」

 

オウナはその大きな手にのっている、小さなチップを見せてきた。

 

「これは倒したエイリアンの首元からとってきたものだよ。多分エイリアン全員にこのチップがついてると思うんだけどこれはなんだと思う?そう。このチップでエイリアンたちを操っていたんだよ、黒龍重工とやらは。

多分このチップは人工頭脳、いわゆるAIだね。これでエイリアンどもの頭脳を操作してたんだ。」

 

人工頭脳が操作してたにもかかわらず俺にズタズタに言われてたのか。

 

「つまりね。このチップの人工頭脳をダメにしちまえば黒龍重工とやらはもうダメになる。あたしが捕まえたエイリアンの話だと黒龍重工の兵士の大半はこのチップで操られてるエイリアンかそのチップと同じ型のAI搭載の兵士らしいのよ。だからAIを使い物にならなくすれば、黒龍重工は壊滅という訳さ。」

 

俺は、黒龍重工がAIを製造するもののメインにしていたことを思い出す。

 

「これを見てごらん。」

 

オウナは皆に、一枚ずつ紙を渡す。何かの設計図のようだ。

 

「これは黒龍重工のAIの機能を全部ダメにすることのできる装置の設計図さ。これが完成すれば宇宙に散らばる黒龍重工のAIを全て止めることができる。」

 

俺は設計図に目を落とす。

 

その装置の材料は、なんとか星の草だとか、なんたら星の石だとか宇宙でしかとれないものばかりである。

 

つくるのが大変そうだ。

 

しかしよくこんな詳しい設計図がつくれたものである。

 

「あたしも黒龍重工の事はよく知らないけどあたしのひいひいおばあさんが書いた予言書に黒龍重工の事とかAIの事とか書いてあったからその設計図も正確なはずだよ。」

 

口ではそう言っているが、顔が疑念に満ちている。

 

「な、なんでその装置をつくるのを俺たちに頼むんだ?他のもうちょっと使える奴に頼んだほうが………」

 

オウナは少し不機嫌そうな顔をして言う。

 

「地球人で知ってるのはあんたたちだけだろ?あたしはこの星を長くは開けてられないし、動物兵たちもこの星の警護だけで手一杯だ。

あんたたちしか黒龍重工を止められないんだよ‼︎」

 

オウナはそれぞれに指を指しながら言う。

 

しかしこんな広大な宇宙の中、どうやってこの装置の材料のある星を見つけ、そしてどうやってその材料を星の中で見つければいいのだろうか。

 

「チロ‼︎ちょっとおいでな。」

 

オウナがチロを手招きする。

オウナがチロの頭の上に手を置き、そして何か呪文のようなものを唱え始める。

 

しばらくして、オウナはこちらを見て言った。

 

「この子に詳しい材料の位置とかの情報を吹き込んでおいたから、あとはこの子に聞きな。まあもっとも、この情報もひいひいおばあさんの予言書の情報だから確かかどうかは知らないけど。」

 

「なんでよりによって犬に⁉︎どうせなら情報を説明できる人間にその情報を………」

 

「仕方ないだろ。犬は鼻が良いからね。材料の匂いも頭にインプットさしてやれば早く見つかるだろ?」

 

オウナはチロから手を離すと今度は「バッ‼︎」と叫んだ。

 

その瞬間目の前に砂ぼこりが舞い、その中から宇宙船のようなものが現れた。

 

船体は赤く、横の方に出入り口がついている。見ると、SFなんかで出てきそうな銃が前の方についている。

 

「これに乗っていきな。これで宇宙を旅して材料を探し出すんだ‼︎いいね?」

 

「あ、あの、他の地球人たちはどうするんですか?」

 

マリアムが宇宙船に驚きながら、我に返って質問する。

 

「安心しな。この星から奴らを追い出してからなんとかHope starに連れてくよ。まぁ、数は減ってるだろうけど………」

 

しばらくの沈黙の後、

 

「なんだ今の砂ぼこりは⁉︎そこに誰かいるのか‼︎」

 

とエイリアンたちの声が聞こえた。

 

「ち、見つかっちまったね。………もう行きな‼︎ぐずぐずしてる暇はないよ‼︎」

 

オウナはそう言うと俺たちを宇宙船に押し込む。

 

「いいかい、あんたたちにかかってるからね‼︎装置必ず完成させるんだよ‼︎」

 

そう言うとオウナは宇宙船のドアを閉める。

 

俺たちはしばらくあっけにとらわれていたが、

 

「い、急げ‼︎早くしないとエイリアンたちにこの宇宙船もやられちまう‼︎早く出発するんだ‼︎」

 

と操縦室へ駆け込む。

 

宇宙船の前の方に操縦室がついており、そこは結構な広さがある。しかし、電気がついていないのか、薄暗い。

全員が入ったものの、操縦席は一つしかなかった。

 

「お、おい、どうやって操縦するんだ⁉︎」

 

その操縦席の前にはたくさんのボタンがついていたが、何が何だか分からない。

 

ガン‼︎ガン‼︎

 

宇宙船が叩かれる音がする。

 

おそらく、エイリアンたちが宇宙船に乗り込もうとしているのだろう。

 

「早く‼︎エイリアンたちが‼︎」

 

「分かってるよ‼︎でもどれがどのボタンか分かんないんだよ‼︎なんかこの部屋暗いし‼︎」

 

俺とチャールズとジョーダンと康裕とショウちゃんでポチポチボタンを押しているが、ピクリとも動かない。

 

「くそ‼︎電気のスイッチがどれかも分からない‼︎」

 

「もう‼︎どいて‼︎」

 

マリアムが皆を払いのけると、手前のレバーをひいた。

 

ブルルルルン‼︎

 

車のエンジンのような音がする。

 

そして、部屋に電気がつき、いっきに部屋が明るくなった。

 

マリアムは操縦席に座り、なんかボタンをパソコンのキーボードのようにうっていく。

 

「発車するわよ‼︎何かにつかまって‼︎」

 

マリアムはそう叫ぶが早いか、

 

「発車‼︎」

 

と言って発車ボタンを押す。

 

「ちょ、ま、」

 

ゴー………

 

エンジンが点火する音。

 

それがしたかと思うと宇宙船全体が揺れ始める。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ………

 

操縦室の窓のカーテンを開け、外を見ると宇宙船は既に宇宙へ出ていた。なんというスピードだろうか。

 

「ふぅ、もう大丈夫。無重力対応システムを稼働させたから普通に歩けるはずよ。」

 

マリアムはやりきったような顔でこちらを向く。

 

「な、なぁ、な、なんでマリアム操縦できんの?」

 

康裕が素朴な疑問をぶつける。

 

「え?」

 

「いやだからなんでマリアム操縦できたの?」

 

全くその通りである。他のやつら四人がかりでもどうにもならなかった操縦ボタンを一人で解決してしまったのだから。

 

「ああ、あたしのお父さん地球人が地球から出る時の宇宙船をつくる会社の株主だったから。株主優待であたしちょっと宇宙船操縦したことあるんだ。

オウナさんは優しいわ。わざわざ地球の宇宙船と同じ型の宇宙船を出してくれたんだから。」

 

マリアムは笑顔でなんかとんでもないことを言ってる。

ていうかあんたのおとんは何者やねん………

 

まあしかし何はともあれ宇宙に出たのである。

 

俺たちは黒龍重工のAIを止める装置をつくらなければいけない。

 

一体、どんな旅が待っているのだろうか。

 

俺は、不安と興奮の念で押し潰されそうであった。

 

 

 

 

 

 




お気に入り、感想、推薦、評価待ってま〜す♪


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宇宙を転々と
惑星ホウアシゲン


どうも‼︎牛風です‼︎

ここ最近テストやらなんやらで大分投稿遅れました。

今回のテストは小説書く間も削って勉強したのに成績めっちゃ悪かった………

ま、勉強捨てて小説書くか‼︎(爆笑)
↑ものすごくダメな学生


宇宙に出て早三日。

 

俺たちは黒龍重工のAIを止める装置をつくる為に、こうして旅をしている。

 

チームとしての目標はそれだけだが、俺にはもう一つの目標がある。

 

さらわれたおばあちゃんの救出である。

 

宇宙船の窓から見えるこの星々のどこかに、黒龍重工のアジトがあり、そこにおばあちゃんはさらわれているのだ。

 

なんとしてでも黒龍重工のAIを止める装置を完成させ、黒龍重工に乗り込み、おばあちゃんを救出しなければならないのだ。

 

ならないのだが………

 

「まずはどこへ行けば良いんだ?」

 

「ええ〜と………この設計図によれば………○✖️星にある△□山のなんたらかんたらを手に入れないといけないからなんから星のなんとか云々………」

 

ジョーダンに聞かれた俺はとっさに設計図を読み上げる。

 

「で、どこだ?」

 

「………さあ?」

 

宇宙の星々のことはよく分からない。

 

だって宇宙初めてなんだもん。

 

俺は操縦席に座っているマリアムに設計図を見せて叫ぶ。

 

「なあ、ここに書いてあるなんたら星ってどこにあるんだ?この宇宙船には地図機能はないの?」

 

「ないわ。地図機能なんて。車の地図ならいざ知らずこの広大な宇宙のマップなんかつくれるわけないじゃない。」

 

そりゃそうか。

 

「はあ………チロおまえなんかオウナにされてたけどなんか知らないかい?」

 

そう言って俺はチロを抱き上げ頭をなでてやる。

 

「カァ‼︎やっと頭触ってくれたのかい⁉︎」

 

⁉︎

 

思わずチロから手を離す。

 

オウナの声が聞こえたような………?

 

気のせいかな。

 

もう一度チロの頭をなでる。

 

「今から話しようと思ったんだから手を離さないでおくれよ。手をこの子の頭に置いてないとあんたはあたしの声が聞こえないんだから。」

 

⁉︎⁉︎⁉︎

 

「ち、ちょっと皆来て‼︎」

 

俺が大声で皆に呼びかける。

 

「今それどころじゃない‼︎今こっちはチェックメイト寸前なんだよ‼︎」

 

康裕がなんか叫んでる。

 

チャールズとチェスなんかやってやがる。

 

地球人の未来と俺のおばあちゃんの命がかかってるっていう重要な時に何やってんだ。

 

「俺も今パス。これからの目的地についてマリアムと話さないといけないから。」

 

なんだよ。どうせ分かんないんだからオウナの話聞けって。

 

ケッ、俺の言う事はそんなに信用ならんのかい。

 

「ナンカアッたですか?」

 

さっきまでシャワーを浴びていたショウちゃんがタオル一枚で戻ってきて俺のところに来る。

どうやら俺の呼びかけに慌ててとんできたらしい。

 

君だけだ。俺を信じてくれるのは。

 

チェスの盤とにらめっこしている康裕とチャールズとは大違いだ。

 

「ああ、負けた〜‼︎」

 

ざま〜康裕。

 

そしてなぜチャールズはショウちゃんのタオルをまるで獲物を見るような目で見つめてるの?

 

それはさておき、ショウちゃんは、チロの頭に手を乗せると、表情が一変した。どうやら、俺が聞こえた声が彼女にも聞こえたらしい。

 

「ミンナ‼︎こっち来てみテ‼︎ナンカ聞こえるヨ‼︎」

 

「何?」

 

「そっか、チロはオウナからなんかしてもらってたもんね‼︎」

 

俺敢へて問ふ。何故俺が呼びかけた時は誰も見向きもしなかつたのにショウちゃんが叫んだ時は皆興味を示すのか。

 

皆がチロの頭に手を置くと皆本当に驚いている。

 

俺が発見したのに何故ショウちゃんばっかり尊敬の眼差しを向けられるのか。

 

「皆手を置いたかい。全くこの三日間誰もこの子の頭なでないんだから驚いたよ。」

 

チロの頭に置いた手から、オウナの声が伝わる。

 

「あたしはね、チロに何をインプットしたかと言うとね、この声のメッセージさ。この子の頭に手を置くとあたしの声が聞こえるようになってる。行くべき星とかその星のどのへんに材料があるかも全部これで分かる。

そこに着いたらチロが多分勝手に鼻で見つけると思うけど。」

 

まどろっこしい‼︎

 

俺は即座にそう思った。

 

なんでそういう情報を犬にインプットしたんだろう。

 

人間に言えばいい話。口ではとても言い切れない膨大な量の情報だったら、チロにやったみたいに人間にインプットすれば、わざわざメッセージを使わなくても言葉で説明を………。

 

「バカだね。あんたらに宇宙の事が説明できるんかい‼︎こうしてメッセージ使わないと説明できない事たくさんあるんだ‼︎」

 

こ、こいつ、メッセージのくせに心を読みやがった‼︎

 

「あんたら人間にメッセージをインプットしようと思ったらまず女子じゃないといけない。これは魔法解剖学で決まってるんだ。しかもそのメッセージを見るには、その女子のへその下、足の付け根くらいに触れないとダメなんだ。」

 

犬は頭なのに人間はへその下、足の付け根だと?

 

女子二人が目を丸くしてお互いを見つめる。

 

その様子を見ていたチャールズが、

 

「チェッ‼︎」

 

と舌打ち。

 

ヘイ、一体何を思ってその舌打ちをしたのかね?

 

「ほら変な妄想してないでとっとと材料の話しちゃうよ‼︎このメッセージだってチロの体力すごい消耗するんだから。

 

今あんたたちは………ショーク・ザマ星雲近辺を通ってるんだね。だから一番近い材料は………惑星ホウアシゲンの鉄だね。

 

惑星ホウアシゲンで加工された鉄は性能が良いからね、装置の骨組みやら外装やらつくるのにはぴったりの鉄なんだ。

 

まずはそこに行きな。そこで鉄をたくさん手に入れるんだ‼︎

 

場所はそこから光速ワープ10回して………」

 

そこからは専門用語(宇宙船に関する)ばかりで何を言っているか分からなかったが、オウナが全て話し終わった後マリアムはコクリと頷いて操縦席に座る。

 

「さあ行き方はその子に伝えたからあとはホウアシゲンに行くだけだ‼︎必ずそこの鉄をもらってくるんだよ‼︎いいね⁉︎」

 

「おう‼︎」

 

俺たちは、チロの頭に手を置きながら掛け声を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

あれから30分あまり。

 

「着いたわ‼︎ここが惑星ホウアシゲンよ‼︎」

 

マリアムがそう言うと、皆窓からそのホウアシゲンとやらを見る。

 

地球よりも少し小さめだが、見た感じ海も雲も陸もある。

ここなら生物が生息していてもおかしくはない。

 

「着陸するわ‼︎どこかに捕まって‼︎」

 

そう言うとマリアムはいっきに宇宙船の高度を下げる。

 

「あわわわわ、ちょ、ま、あ、圧がかかるぅぅぅぅぅぅ‼︎」

 

そんな叫びもマリアムには届かず。

 

「あと少しで着陸よ‼︎あたしも宇宙船の着陸初めてだから命の保証はできないけど。」

 

「はぁ⁉︎ま、待て‼︎着陸ちょっと思いとどまれ‼︎」

 

康裕がこの圧の中舌を噛まずにマリアムに叫ぶ。

 

「ダメよ‼︎もうここまで来たら上昇できないわ‼︎」

 

「なんで着陸一回もした事ないのにハンドル握ってんだよおまえは‼︎」

 

「しょーがないでしょ‼︎多少なりとも操縦できんのあたしだけなんだから‼︎だったら康裕が運転しなさいよ‼︎」

 

「出来るわけねーだろ‼︎くそ‼︎やっぱり中学生が宇宙船を運転だなんて無理だったんだ‼︎」

 

「安心して。これでも小さい頃お父さんの事業の関係で宇宙船にいっぱい関わってきたから‼︎」

 

なんか二人で言い合ってるけど横から見るとすごいイチャイチャしてる様にしか見えぬ。

 

マリアムさんはよそ見せずに着陸に集中してください。

 

 

 

 

ドォーン………

 

いきなり響いた地鳴り。

 

そうこうしている内に着陸できたらしい。

 

外からは何も聞こえない。

 

「ち、着陸できたわ‼︎」

 

マリアムが叫ぶ。

 

「ね?中学生でもちゃあんと着陸できたわ。どう?見直した?」

 

マリアムが康裕に対してピースサインをする。

 

おい、なんだあの怪しい雰囲気は。

 

なんか二人和気あいあいと肩をたたきあったりしてるぞ。

後で殴ってやる。

 

「おい、とにかく外に出よう。はやくその装置に使う鉄を手に入れないと。」

 

よく言ったジョーダン。今はいちゃいちゃしておる場合ではないのだ。

 

するとチャールズがジョーダンやマリアムに英語でなにかを主張している。

 

康裕が分かったような顔でチャールズの話聞いてるけど分かってないだろ絶対。

 

よし。俺も分かったような顔で話を聞こう。

 

「ペラペラペラペラ」

 

「ペラペラペラペラ」

 

………………

 

ははーん分かったぞ。今夜の夕食について話してるんだな。

 

「違うよ。この惑星の大気とか気圧とかは大丈夫かな?って話してるのよ。外に出て窒息しちゃ洒落にならないわ。」

 

あ、そういう話でしたか。

 

「えぇ⁉︎チロがこの宇宙船のどこかにウンコしたってそういう話じゃなかったのぉ⁉︎」

 

よし。康裕を殴る回数を倍にしよう。(チロが康裕の足を噛んでいる。いいぞチロ‼︎)

 

「でも………ショウちゃん先に外出てっちゃったよ。」

 

「………………はぁ?」

 

この宇宙船にはまともな人間乗ってないのか。

 

「と、とにかくショウの後を追いかけよう‼︎もしかしたら窒息してるかも。」

 

「オーイ‼︎外トッテモ空気オイシイよ‼︎ナンで皆宇宙船にこもっテルの?」

 

外から先にいった気狂いが叫んでる。

 

「と、とにかく外は大丈夫らしいね………」

 

俺たちはなかば唖然としながら外に出た。

 

 

 

 

 

 

「うあー………」

 

着陸した場所は崖の上であった。

 

しかも、崖から見下ろすかぎり、惑星全てが森に囲まれていた。

 

「ま、まるで木の惑星ね………」

 

見た感じでは日本の山奥とあまり変わらないような風景だが、アラブで育ったマリアムには不思議な光景なのだろう。

 

「船は小サクしなくてイイのデスカ?」

 

ショウちゃんがマリアムに言う。

 

小さくする………?

 

「ああそうか、小さくしないと………」

 

マリアムが宇宙船の入り口の扉の横のボタンを押す。

 

ポチッ………

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ………‼︎

 

ボタンを押した途端、宇宙船がみるみるうちに小さくなってゆく。

 

「こうして小さくして持ち歩いてれば私たちが留守の間に乗っ取られることもないしもしもの時はいつでも大きくして脱出できるのよ。」

 

ヘェ〜便利なもんだ。

 

 

 

 

「誰だ‼︎」

 

宇宙船が小さくなってゆく様をまじまじと見ていたその時、後ろから何か野太い声が聞こえた。

 

「貴様ら一体何者だ‼︎」

 

見ると背後の森の中から戦国時代の甲冑のような格好のおっさん達が出てきていた。

 

「ここは進入禁止のエリアだぞ‼︎とりあえずこやつらをひっ捕らえよ‼︎」

 

「は‼︎」

 

「何⁉︎」

俺たちは、早くもこの星に来て早速危機に見舞われた。

 




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早速逮捕

もう春ですね〜。

桜の咲く季節………

………っておい‼︎どんだけ投稿遅れてんだ‼︎頭おかしいだろ‼︎

どうもすみませんでした。とても遅れちゃいまして………

こんな作者ですが今後ともよろしくお願いします。


「だからあたしたちは『地球』という星からホウアシゲンの鉄を求めてここに来ただけです‼︎なんで捕まらないといけないの⁉︎」

 

マリアムが物凄い剣幕でホウアシゲンの警備兵に突っかかる。

 

そう。俺たちはあの後あっけなく甲冑姿の警備兵に捕まってしまい、今事情聴取されているところなのである。

 

「我々にもよく分からんが………地球という星の人間は捕らえよ、と上から命令が下ってるんだ。おとなしく牢屋につながれてることだな。」

 

「ハァ⁉︎冗談じゃねぇぜおっさん‼︎なんで何もしてねぇ俺たちが牢屋につながれてないといけないんだよぉ⁉︎」

 

いい加減なことを言う警備兵に康裕がどなる。

それに続いてチャールズもなんか英語かフランス語かよく分かんない言葉で警備兵に突っかかる。

いつもは冷静なジョーダンまでいろいろギャーギャー言い始めた。

 

当たり前である。「地球人だから」という理由で連行されるなんてどんな無法地帯であろうか。

 

「そうだそうだ‼︎いくらストーリー系の小説だからって無理にこういう迷惑な山場つくるんじゃねぇ‼︎」

 

俺もすかさず相手に文句を言う。

 

しかし、

 

「そもそも進入禁止エリアに入ってきたお前らが悪いんだ‼︎地球人と聞けばなおさら釈放する訳にはいかん‼︎」

 

と警備兵の隊長っぽい人がそう怒鳴り返してくる。

 

「ワタシたちは進入禁止エリアだっテ知ラズに入ってきたんデス。その事は謝るカラ何とか釈放してくれませんカ?」

 

ショウちゃんも必死に懇願する。

 

「チッ‼︎………とりあえず面倒くさいから牢に連れて行け。」

 

「はっ‼︎」

 

隊長らしき人が否応なしに部下にそう命じる。

 

「さあ来い‼︎」

 

俺たちは警備兵に抵抗を抑えられながら牢に連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

「さあ入れ‼︎」

 

ガラガラガラ‼︎

 

勢いよく扉が閉まる音。

 

その後、鍵をカチャカチャかける音がした。

 

「お前たちと一緒にいた犬(チロ)はこっちで保護しておくから安心することだな‼︎沙汰があるまでここでじっとしてな‼︎」

 

扉の向こうで警備兵がそう叫ぶ。

 

「ちょっと開けなさいよ‼︎なんで全員同じ牢屋なのよ‼︎せめて男女分けなさいよ‼︎トイレもままならないじゃない‼︎」

 

マリアムがその警備兵の言葉に重ねる感じで扉をガンガン叩きながら叫んだ。

 

しかし、鉄の分厚い扉は、どんなに叩いてもビクともしない。

地球の鉄でさえ叩いたってどうしようもないのに、オウナが材料に選ぶくらい頑丈なこの星の鉄なんて、どうもする訳がない。

 

扉が閉められた牢屋の中は薄暗く、狭い。六人で精一杯である。

 

マリアムのいうとおり、トイレは牢屋の隅っこに便器がポツンと据え付けてあるのみ。

 

もっとひどかったのは、布団が学校の修学旅行のように、牢屋いっぱいに敷き詰めてある状態であることだった。

 

「あ〜あ、これじゃあ別の意味で犯罪者出すかもね。」

 

マリアムがなんか興奮しているチャールズを睨みながら呟く。

 

「こっちにあるのは小さくした宇宙船のみ。でもこんな狭いところじゃ大きくできないわ。あ〜あ………」

 

マリアムが珍しくため息をつく。

 

「なんでこんなことに………」

 

全くである。こんなのまるで人種差別のようなもんじゃないか。

 

「まあまあ、とりあえず今はこれからどうするかを考えよう。」

 

ジョーダンはあくまで冷静である。

 

この男女共用の薄暗い牢屋に興奮している誰それ何某君よりよっぽどマシだ。

 

「そうソウ‼︎とりあえず寝テ頭整理シマショ‼︎」

 

ギュウギュウに敷き詰めてある布団に構わず寝るショウ・ロンポウ氏。

よく寝てられるよな。こんな状況で。

 

そしていそいそと横で寝ようとするなチャールなんとか君。

 

しかしこんな牢屋では寝ることしかできないかもしれない。

 

ここにあるのは敷き詰められてる布団と小さくした宇宙船のみ。

こんなところじゃ宇宙船も大きくできない。

 

第一、まずはこの星で鉄を手に入れなければならないのだから、宇宙船を大きくできたところで目的を果たすまでこの星からは出られない。

 

「ここ壁まで鉄で出来てるぜ。随分分厚そうな鉄で………」

 

康裕が壁を叩きながら呟く。

 

「銃かなんかあればこれも壊せるかもな。光線銃みたいなの。」

 

「でもそんなもの持ってないわ。まさか宇宙船出た瞬間に捕まるなんて思いもよらなかったから全部宇宙船に置いてきたのよ。だから武器は全部宇宙船と一緒に小さくなってる。宇宙船を大きくできないことには武器なんか取り出せないわ。」

 

「………」

 

万事休すか。

 

俺たちは宇宙をあまく見過ぎたようだ………。

 

「銃が必要デスか?」

 

話を聞いたショウちゃんが布団からむくりと起きる。

 

「ああ。光線銃さえあれば鉄の壁を溶かす事が………」

 

ピルルルルル‼︎

 

………チュドーン‼︎

 

康裕が言いかけた途端、牢屋の分厚い壁が光線で溶けていく。

「コレでOK‼︎」

 

片手に銃を持ったショウちゃんが何事もなかったかのようにまた寝だす。

 

「………」

 

「………」

 

誰もが唖然とするなか、扉の向こうから騒ぐ声がする。

 

「なんだ今の銃声は‼︎」

 

「この牢屋からのようです‼︎」

 

「ぬううう地球人どもめ‼︎叩っ斬ってやる‼︎」

 

カチャカチャ………

 

「み、皆‼︎とりあえず鍵をかけられる前にここを出よう‼︎」

 

幸い、この牢屋は地上で、建物の隅っこにあったから、壁一つ壊せば外である。ここで逃げ出さない手はない。

 

俺たちは、警備兵が牢屋の鍵を開けるのと同時に牢屋を飛び出した。

 

「あぁ‼︎待て‼︎皆の者‼︎であえであえ‼︎」

 

甲冑姿にふさわしく、警備兵たちは刀を持って追いかけてくる。月の光によって、その刃が怪しく光っている。

 

「あれじゃ俺らと同じだぜ………」

 

「全くだ。」

 

康裕と俺がそんな警備兵を見て苦笑する。

 

 

 

 

 

「だめだ‼︎その先は壁だ‼︎」

 

少し走るとジョーダンが叫んだ。

この建物はどうやら本格的な牢屋らしく、高く、分厚い、鉄筋コンクリートの壁が周りにそびえ立っていた。

 

「くそっ‼︎こんな壁登れねぇよ………」

 

康裕が壁を叩く。

 

「ちくしょお‼︎」

 

康裕やチャールズが必死に壁をよじ登ろうとするが、なにせ掴まれるようなものもないつるんつるんの壁である。

 

登れるはずがない。

 

「奴らは壁のところにいるぞ‼︎はやく捕まえろ‼︎」

 

そうこうしている間に警備兵が追いついてくる。

 

「くそっ‼︎」

 

俺も無我夢中で壁に飛びつく。

少しでも逃げ切れる可能性があるなら何回でも飛びつく。

 

たとえ無理でも何もせずに捕まるよりはマシだ。

 

 

 

 

 

 

「ジョーダン‼︎コノ銃で警備兵たちを撃ッテ‼︎」

 

「………⁉︎」

 

唯一壁に飛びつかず呆然としていたジョーダンは、ショウちゃんの声と共に大きな銃を渡される。

 

「………………へ?」

 

「アタシこのバズーカで壁をぶち壊すカラその間時間稼いで‼︎」

 

ショウちゃんはどこから持ってきたか分からない大きなバズーカを片手にとんでもないことを平気な顔で言う。

 

「早く警備兵を撃ってよ‼︎このバズーカエネルギーためるのに時間カカル‼︎警備兵をかわしナガラじゃバズーカに時間カカル‼︎」

 

確かに、警備兵もさすが戦闘のプロである。ショウちゃんの異様な行動に勘付いたのかショウちゃんに集中攻撃を加えようとする。

 

「ええいもうどうにでもなれぇ‼︎」

 

ジョーダンは渡された銃でがむしゃらに警備兵たちを撃つ。

 

いつの間にか警備兵たちはあたり一面を埋め尽くしていたから、がむしゃらに撃っても誰かにはあたる。

 

しかし次から次へとやってくる警備兵たちはジョーダンの攻撃程度ではひるまない。

 

「………康裕、俺たちもやるか?」

 

俺はジョーダンが一人で警備兵たちと戦う様子を見て小声で言った。

 

「………武器は?」

 

「決まってんだろ。」

 

「だな‼︎」

 

でえええええええい‼︎

 

康裕と俺は日本刀片手に警備兵に突っ込む。

 

戦は装備の差だけで勝敗が決するわけじゃない。

 

士気も勝敗を決する上で重要な要素である。

 

 

おばあちゃんを助ける為にもここで捕まる訳にはいかない。

 

 

 

その思いが俺を突き動かす。

 

警備兵たちは「仕事」として俺たちを追いかけている。

 

 

 

 

 

 

 

「もう撃テル‼︎皆アタシから離レテ‼︎」

 

ショウちゃんが叫ぶ。

 

見るとショウちゃんの手にあるバズーカが異様な光を放っていた。

 

この異様な光に、警備兵たちも動揺している。

 

「な、なんじゃこりゃ………」

 

「何をぼけっとしている‼︎早くあのバズーカを止めんか‼︎」

 

警備兵たちがショウちゃんに飛びかかる。

 

 

しかし、もう遅かった。

 

 

 

 

ドオオオオオオオオ‼︎

 

 

 

 

 

一瞬の閃光。

 

分厚くそびえていた壁が崩れる音。

 

それによる衝撃で吹き飛ばされる警備兵たち。

 

俺は思わず目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

目を開けた。

 

そこにはバズーカを持ち、ドヤ顔で立つショウちゃんがいた。

 

俺は横になっていた。俺も吹き飛ばされたらしい。

 

見ると壁の向こうにあったらしき森も焦土と化していた。

 

「さっ‼︎早クここカラ逃げマショウ‼︎」

 

俺はしばらく唖然としていたがショウちゃんに引っ張られるような感じで出た。

 

ショウちゃんは終始笑顔である。

 

振り返ると他の皆もついてきていたが、やはり顔には戸惑いの色が滲み出ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の頭には疑問しかない。

 

そもそも、なぜこの星では地球人が問答無用で捕まるのか。

 

そして、このショウちゃんは一体何者なのか。

 

まるで、宇宙での戦闘に慣れているような武器の扱い。

 

片言の日本語で話す彼女の笑顔に、俺はなんとも言えない恐怖感を感じる。

 

黒龍重工のAIを止める装置の材料を探す旅を、俺はあまりにも甘く見過ぎだのかもしれない。

 

 

 




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宇宙での苦悩

ひっさびさの投稿です。

やっと投稿できるようになってホッとしてます。

今後ともよろしくお願いします‼︎


「ハァ…ハァ…ハァ………」

 

俺たちはひたすら森を走っていた。

 

しばらくは警備兵たちが追いかけてきたがうまく撒いたらしい。

 

「案外いい加減な警備兵だな……」

 

「ちょっとここで休憩しましょ……」

 

俺たちが立ち止まったそこは鬱蒼とした木々の中であった。

 

ショウちゃんが撃ったバズーカでその射程範囲内が焦土と化したのを考えると大分森の奥の方へ逃げてきたらしい。

 

「ハァ〜……なんであたしたちこんな目に合うの……」

 

マリアムが崩れるようにうずくまる。

 

全くその通りである。思えば政府の意向で宇宙に放り出され、黒龍重工なる謎の組織に襲われ、よく状況が飲み込めないまま黒龍重工のAIをとめる装置の材料探しに出て、その瞬間に地球人というだけで見知らぬ星で逮捕され、何がなんだか分からぬまま牢屋を脱出し、今鬱蒼とした森の奥である。

風にどよめく木々がまるで俺たちを嘲笑っているようだ。

 

空を見上げれば綺麗な月が出ている。もうすっかり日も暮れたらしい。

「まあ今日はここで野宿だな。暗い中森をさまようのも危険だ。」

 

「ええ〜‼︎……こんなとこで寝るの⁉︎もうやだ……」

 

めずらしくマリアムが弱音をはく。

 

マリアムだけではない。他のみんなも疲れ切っていて、口々に不平不満をぼやく。

 

俺も泣き出しそうだ。

 

追ってくる警備兵と刀でやりあい、日が暮れるまで走り続け、ハエのブンブン飛ぶ森の中。おまけに宇宙のハエは地球のより一回り大きく、一つ目で気持ち悪い。おまけにブンブン音が地球のより大きい。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は何をやってるんだろう……

 

黒龍重工のAIを止める為の装置をつくり、おばあちゃんを助けるために俺はここにいるんじゃないのか……

 

こんな森の中で何もできないこのなんともいえない無力感……

 

装置をつくるためのパーツを一つ集めるのにこんな追い回されるようでは命がいくつあっても足りない。地球人というだけでここまでやられては身がもたない。

 

寝転がると頭の上には綺麗に星が輝いている。

 

その夜の空を埋め尽くすような星々を見ていると急に涙がこみあげくる。

 

この星々の輝きのどこかでおばあちゃんが捕まっている。それを助けるためならとこの大いなる宇宙に勇んで飛び出したものだ。

 

それが今ではこの様だ。もしかすると俺は明日にでも地球人だから、という理不尽な理由で死んでしまうかもしれない。

 

ああ、地球が懐かしい。幼い頃走り回った故郷。

 

この星空のどこかにあるのだ。

 

自ら光を出してはいないが、確実にこの星空の中に我が故郷があるのだ。

 

人はどうしても綺麗なものを見ると色々考えてしまうものだ。

 

様々なことが頭をよぎる中、俺は深い眠りの底についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし‼︎出発デース‼︎」

 

ショウちゃんの元気な声で目がさめる。

 

木漏れ日がまぶしい。この星は昼や夜が地球と同じように来るらしい。

 

それにしてもなぜショウちゃんはこんなに元気なのだろう。

 

皆昨日の疲れもとれず訳のわからない状況下で不安の念に潰されそうだというのに。

 

「どこに行くんだよ……これから……」

 

康裕が怒ったような口調で呟く。

 

「どこってホウアシゲンの鉄探すデスヨ?」

 

ショウちゃんがニコニコしながら言う。

 

「あのなぁ……地球人というだけでこんなに大変な目にあってんだぞ?それなのにこの星の人に『僕ら地球人です。鉄くれませんか?』なんて頼むのか?」

 

「ダイジョウブです‼︎ホウアシゲンの人はもともとそんなに凶暴チガウから‼︎」

 

ショウちゃんの笑顔はこんな状況でも崩れない。

 

「なんでそう言い切れるんだよ?」

 

「アタシの経験‼︎」

 

ショウちゃんはピースしてそれを天につきあげた。

 

「経験て……」

 

なんの経験かはなはだ疑問である。

 

「ダイジョウブ‼︎アタシについてきて‼︎」

 

人間不安になると藁にでもすがりたくなるものである。藁よりかましだと渋々ショウちゃんについていくことにした。

 

その経験とやらを信じて……

 

 

 

 

 

 

しばらく鬱蒼とした森の中を歩いた。

 

ショウちゃんが迷わず進むので向かっている何かがどこにあるかは分かって歩いているらしい。ただどこに向かっているのか分からないまま歩くというのも気味の悪いものである。

 

「Hey,……Where will we go?」

 

チャールズがぼやく。

 

「あたしたちどこに向かってるの?……ショウ……?」

 

マリアムも歩くのに疲れたのか愚痴をこぼす。

 

「ショウちゃん?」

 

俺もショウちゃんにどこに向かってるかだけは聞きたかった。地球の森でさえあてもなく歩き回っては危険である。ましてはこんな異星ではもっと危険かもしれない。

 

「まあまあ……ここはショウちゃんを信じてみようよ。他にあてはないんだし……」

 

ジョーダンが二人をさとす。

 

「でもどこに向かってるのかくらい教えてくれたって……」

 

「集落よ。」

 

ショウちゃんがポツリと言う。

 

「し、集落?」

 

「ホウアシゲン、各地に集落点在してル。ホウアシゲンの一般人、地球のこと知らないカラ追い回されることもないバズ。その集落のどこかには鉄の工場かなんかあるバズよ。そこを目指すの……」

 

「で、でもなんでそんなこと分かるんだよ?」

 

「チロに聞いたのよ。」

 

そういうとショウちゃんはポケットから小さな箱を取り出し、その箱のボタンを押した。

 

するとこの箱はみるみるうちに大きくなり、その中からなんとチロが飛び出してきた‼︎

 

「チ、チロ⁉︎」

 

一同が目を丸くしてその様子を見つめる。

 

「この箱便利デスヨ‼︎捕まった時、とっさにコレに入れた‼︎」

 

なるほど……

 

「夜の間チロ出して道聞きマシタ‼︎」

 

そういえばチロはオウナに何かインプットされてたっけ。

 

「なんでもっと早くチロがいるって言わなかったんだよ⁉︎」

 

「忘れてマシタ‼︎」

 

ひでぇ。てか結局経験ってなんだったんだよ。

 

「ま、まあでもチロされいれば材料の場所とか分かるしなんとかなるよ‼︎」

 

「お、おう‼︎」

 

まあ、とにかくなんとなくではあるが希望が見えてきた。

 

チロをもとに進めばなんとかなるかもしれない。

 

とっとと材料見つけて、そしてとっととこんな訳の分からない星から脱出するのだ‼︎

 

「さあチロ‼︎あたしたちを装置の材料まで案内してちょうだい‼︎」

 

「ワン‼︎」

 

チロが走り出そうとした瞬間、

 

 

 

 

ガサガサ……

 

 

 

草が揺れる音。

 

動物だろうか。

 

「ウ〜……ワンワン‼︎」

 

チロが吠える。

 

音はどんどんこちらに近づいてくる。

 

 

ガササ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ‼︎」

 

そこにいたのは独特の格好をした少女だった。

 

 

 




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