小説でわかる幕間の物語 (ニコ・トスカーニ)
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オルレアンの大英雄

秘剣○○返し!!


 フランス救国の救世主の話をしよう。

 

 数合わせで選ばれた穴埋めマスターの俺が

 人理救済などという大それた任務について2つ目の特異点。

 かの侍はそこで伝説となった。

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××

 

 第1の聖杯、オルレアン。

 

 復讐者として闇に落ちて召喚された聖処女ジャンヌ・ダルクは自分を裏切った祖国を滅ぼすべく大量の竜種を召喚してかの地を蹂躙していた。

 

 冬木の特異点の後、召喚に応じてくれたキャスター、クー・フー・リンにとって

ワイバーンを始めとする竜種は相性の悪い敵であり苦戦を強いられていた。

 だが、俺たちはその時まだ知らなかった。

 後にオルレアンの救世主として語られることになる雅な侍がワイバーン達の天敵であることを。

 

「アンサズ!」

 

 何度目かになるキャスターの炎のルーンがワイバーンを包む。

 しかし、竜の固い鱗に覆われた皮膚を傷つけることはできない。

 

「ルーンだけってのもやっかいなもんだな。槍さえあればどうにかなるんだが」

 槍兵への未練を口にしながら詠唱を続けるがこのままではジリ貧なのは間違いない。

 

 盾となり竜種達の強力な攻撃から皆を守っているマシュもこの様子ではそう長く持たないだろう。

 

 どうすれば…。

 次の手を考えあぐねている俺の眼前で彼は素早く動いた。

 

 後列から飛び出してきた紫を基調にした羽織の剣士は鋭く正確に竜達の鱗の隙間を断ち切り、次々と撫で切りにしていく。

 

「ふ、遅いな」

 

 彼はそう言いつつ敵をあざ笑うかのように爪による攻撃をただの鋼にすぎない得物でいなし、消耗を最小限に抑えながら敵陣深くに切り込んでいく。

 

「…すごい」

 

 マシュがそう感嘆の声を上げた時には

 地平を覆い尽くさんばかりにいた竜たちは皆完全に沈黙していた。

 

「マスター、ここはあらかた片付けたようだな」

 あれほどの激戦の後にも関わらず、アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎はいつもの飄々とした口調で俺に言った。

 

 俺がああ、と肯定の返事を返そうとした瞬間マシュの切迫した一言が俺の耳に入った。

 

「先輩!巨大竜種接近、ファブニールです!」

 

 マシュの声の方向に視線をやる。

 そこには空を覆い尽くすような巨大な竜種が立ちふさがっていた。

 

 傍らの侍が動く。

 

「ふむ、あれが奴らの親玉といったところか」

 

いつもと変りのないトーンで無形の位のまま敵へと歩みを進める。

間合いまで3歩、2歩、1歩。

 

「さて、ここが勝負どころよな」

無形の位から刀を振り上げ独特の構えをとる。

「秘剣『燕返し』!」

3つの斬劇を同時に放つ回避不能の魔剣がファブニールを襲う。

 

「ファブニール、完全に沈黙しました」

マシュの告げた事実に対して小次郎はいつもの調子でこう言った。

 

「図体だけで存外にあっけない相手であったな。

……やれやれ、あの日の燕に匹敵する難敵にはいつ出会えるものやら」

 

 その後、カルデアとの通信で全員から『お前の切った燕は一体どこの幻想種だ』というツッコミが入ったのは言うまでもない。

 

 




『Fate/Grand Order』のプレイヤーの間では
オルレアンでわんさかでてきた竜系の敵を
小次郎が撫で切りにしていく光景がおなじみの物でした。

実際のところストーリー上では彼は全く出てこないのですが
もしストーリー上にいたらこんな感じだったのかなと。

キャスター兄貴が出てくるのは、兄貴が冬木クリア後に
必ず加入するからです。


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星1同盟の絆

ぐだ男とぐだ子が両方存在している時空の設定ですが基本、視点はぐだ男です。



 人理修復の戦いを続ける狭間、時折現れるイレギュラーな特異点がある。

 モノによってひずみの大きさはまちまちで重要度も違う。

 だけどひずみがあるなら正さなければならない。

 

 ある日小さなひずみのイレギュラーな特異点に俺は

6人のサーヴァントを伴って行った。

 

 反逆の闘士、スパルタクス

 雷光の怪物、アステリオス

 近代最高のスパイ、マタ・ハリ

 神童、アマデウス

 大英雄、アーラシュ

 オルレアンの救世主、佐々木小次郎

 の6人だ。

 

 目的はこの地に現れた聖杯のようなものを手にする事。

 その目的を果たすべくひずみの中心地に向かって歩みを進めた。

 

 道中、ワイバーンの群れやデーモンといった強力な敵たちに

消耗しながらもひずみに向かって行進を続ける。

 

「ここが拙者達の目的地のようだな。この巨人が門番というわけか」

 

 小次郎は眼前の巨大な敵、魔獣バイコーンを前にそう呟いた。

 

 その台詞を合図に闘いの火ぶたが切って落とされた。

 

 彼ら6人にとってあまり相性の良くない相手だ。

 アマデウスとマタ・ハリの妨害も効果は薄く。

 小次郎の剣技もアーラシュの浴びせる矢もその肉体を貫くには足りない。

 スパルタクスとアステリオスの強靭な膂力による一撃は少しずつ

相手の身を削っているように見えたがこのパーティーに長期戦は厳しい物がある。

 

 勝つためにはアステリオスのあれを使うしかない。

 念話でスパルタクスに語りかける。

 スパルタクスは既にその考えに至っていたらしい。

 

「アステリオスの宝具開放に時間を稼がなければ。

 ――壁が必要だな」

 

 一同がそれに同意する。

 

「まず私ね」「次は僕だな」「その次が拙者か」「次が私だ」「最後が俺だな。とっておきの1発をお見舞いしてやる」

もはや言葉は不要だ。

 

 打ち合わせはせずとも各々やるべきことは分かっている。

 

 マタ・ハリとアマデウスが出来うる限りの妨害で時間稼ぎをし、小次郎とスパルタクスも肉体を盾にアステリオスを守る。

ステラ(流星一条)!」

アーラシュの大地を割る一矢が炸裂するも未だ敵は健在だ。

 

 次々に散っていく仲間たち。

 

「ぼくひとりになっちゃった」

 

 そう呟くアステリオスの脳内に言葉が飛び込んでくる。

 

「案ずるなアステリオス、この私がついている。共に圧制者に愛を」

「俺も付いてるぜ」「拙者もついているぞ」「おっと、僕を忘れないでくれよ」「私も付いてるわよ」

 

 カルデアに召喚されたサーヴァントの霊基の大本はカルデアに保存されている。

 それ故にレイシフト先での消滅は完全な消滅を意味するのではなく

時間がたてばカルデアで再召喚が可能となる。

 

 彼らはカルデアからロマンの助けでアステリオスの脳内に直接激励を送っているのだ。

 

「スパさん…こじろうさん…ステラさん…へんたいかめん…ママ」

 

「お前いい加減俺の名前覚えろや」「概ね合っておる」

といったツッコミを背に勝負にでる。

 

 彼らが盾になって稼いだ時間でアステリオスは宝具の開放が可能になった。

 さらに俺は礼装の力でありったけの強化をその身に与える。

 

「さあ、行くぞ。アステリオスお前の迷宮を見せてやれ」

 

「いく…ぞ」

 

 その一言と共に展開された万古不易の迷宮がバイコーンを覆った。

 

 

 

 




『Fate/Grand Order』でわずか6人しか実装されていない
最低レアリティの星1ですが、この6人だけであらゆる難易度のクエストに
挑戦しているプレイ動画を見て書いてみました。
なんかこの6人絆強そうじゃないですか?
あとアステリオスが可愛い。
ちなみにバイコーンにしたのはバイコーンが星1パーティーの天敵、
槍属性のエネミーだからです。


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汝はG

カルデアに地上最強の生物が現れます。


「ゲオル先生……」

「おや?どうなされました。マスター」

「出たんだ。ヤツが……」

 

 食堂で腹ごしらえをしていた俺は「ヤツ」を目撃してしまった。

 カサカサと動く黒光りする「ヤツ」だ。

 「ヤツ」を目撃してしまったのだ。よりにもよって食堂で。

 

 俺は食事を途中で切り上げると近くの席で食後の紅茶を楽しんでいた聖人ゲオルギウスに助けを求めた。

 

 俺は「ヤツ」の出現したテーブルの下の一画を呼び指す。

 

「……これは驚きました」

 

 と言ってドラゴン殺しの聖人は目を見開いた。

 

「私の知る限りチャバネゴキブリは摂氏0℃以下では生きられないはずですが。

どうやって雪山の中にあるこのカルデアまでやって来たのでしょう?」

「詳しいですね。先生」

「興味深い。一枚撮っておきましょう」

 

 この聖人は現代に召喚されてからカメラを気に入っている。

 最初は俺が渡したコンパクトデジタルカメラを使っていたが今ではハイエンドのデジタル一眼レフに望遠、標準、広角とレンズを一通り揃え最近では構図にも凝っているという。

 ……じゃなかった。

 

「先生!いいから倒してください」

「おっと!これは失礼しました。汝はG!罪ありき!アスカロン!」

 

 ドラゴン殺しの聖剣がまばゆい光を放ち、「ヤツ」を直撃する。

 光に包まれた「ヤツ」は――委細構わずゲオルギウスの顔面めがけて飛び込んで来た。

 

「……まさか。この私が倒されるとは……。マスター、どうかご無事で」

 

 ゲオルギウスの倒れる音が食堂に響き渡る。

 ただ事では無い。その音で判断にしたに違いない。

 食堂に居合わせたサーヴァントたちが俺の元に集まって来た。

 

 彼らの視線が一点に向かう。

 その視線の先には――黒光りする「ヤツ」がいた。

 

「どっせい!」

 

 まず真っ先に反応したのは弁慶だった。

 マスターである俺を守らんと「ヤツ」の前に立つはだかる。

 「ヤツ」は飛翔すると弁慶の顔面に停まった。

 

 弁慶が硬直する。

 10秒……20秒……30秒。

 弁慶から反応が消えた。

 ――まさか。

 恐る恐る弁慶の顔を見る。

 

「死んでる……」

 

「これが……スパルタだぁあ!!」

 

 次に動いたのはレオニダスだった。

 レオニダスは俺を守らんと300人のスパルタ兵を召喚し壁を作る。

 しかし「ヤツ」は委細構わず突っ込んでくる。

 スパルタ兵が1人、また1人と散っていく。

 殿のレオニダスが一人奮戦するも敵は強力過ぎた。

 

「計算違いか……申し訳ありませんごぶぁ…」

 

「一体何の騒ぎだ」

 そう言って厨房からエミヤが現れた。

 彼はサーヴァントながらおかん体質で非戦闘時は主に厨房でその腕を揮っている。

 

 エミヤの千里眼が「ヤツ」を捕らえる。

 その頬を一筋の汗が伝う。

 

「マスター……私の心眼が告げている。そいつには勝てない」

 

 ブーンという音と共に奴が飛翔する。

 エミヤは回避行動をとったが――間に合わなかった。

 

「深手を負ったか……」

 

 明らかにただ事ではない。

 歴戦の英霊を次々と屠っていくG。

 いったいこのG何者なんだ?

 

「ぐだ夫くん!聞こえるかい?」

 

 切迫した声でドクター・ロマンのアナウンスが聞こえる。

 

「とんでもないことが分かったぞ!シバがそのGから凄まじい魔力を観測した!

それはただのチャバネゴキブリじゃない!幻想種に転生したチャバネゴキブリだ!

だから雪山の中でも生き延びられたんだ!」

 

 ドクターから告げられたのは恐るべき事実だった。

 Gはすでに俺の眼前間近まで迫っている。

 1歩……2歩……。

 その距離がじりじりと詰まっていく。

 

 サーヴァントを呼ぶにはもう令呪を使うしかない。

 そう決意したその瞬間、食堂の扉が開いた。

 

「何やってるんですか?先輩」

 

 マシュは食堂に横たわるサーヴァントたちの死体の山を不思議そうな顔で見ていたが

やがて俺の眼前に迫った「ヤツ」の存在に気付いた。

 彼女は死屍累々の屍の山をまたぐと近くにあった新聞紙を丸め――「ヤツ」に向かって振り下ろした。

 「ヤツ」は乾坤一擲の一撃の前に活動を停止した。

 

「……ありがとう。やっぱり君は最高だよ。マシュ」

 

 マシュはにっこり笑って言った。

 

「お役に立てて何よりです。先輩」

 

 

 




家でアースレッドをたいたときに思いつきました。
ただそれだけです。


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ぐだ子の秘密

ぐだ子とぐだ男が両方存在してます。
語りはぐだ男視点です。
この時空のぐだ子はアレな趣味です。
下ネタ注意。


「留守か」

 

 今日、ドクターからイレギュラーな特異点が同時に2つ発生したことを知らされた。

 俺はパーティーの編成等戦略上の相談のためもう一人のマスターであるぐだ子の部屋を訪れていたが、生憎彼女は席を外していた。

 

 カルデアに来て以来、この部屋には何度が入っているが簡素な部屋だ。

 本棚を見ても神話や英雄譚、魔導書などマスターとしての任務に関連するものばかりだ。

 ふと一冊のノートが分厚い魔導書の間に挟まっているのに気付いた。

 なぜこんなところにノートなんか挟んでいるのだろうか。

 何気なく手に取ってみると 「見るな!」と赤字で書いてある。

 恥ずかしい日記か何かだろうか。

 俺の心にムクムクとイタズラ心が湧き上がってきた。

 

 ごめん、ぐだ子。

 俺も男の子なんだ。見るよ。

 

 中身は意外なことに漫画だった。

 それもかなり本格的な漫画だった。

 

 そういえば最近、黒髭とぐだ子が話しているのを何度か見かけたが黒髭コレクションの漫画でも借りていたのだろうか。

 

 ぐだ子はかわいい。

 黒髭などぐだ子に話しかけられると気持ち悪い笑顔をいつも以上に気持ち悪くして

デュフデュフ言って喜んでいる。

 

 黒髭を召喚したその時、同席していたぐだ子を見た黒髭の第一声は「ところでそちらの美しい三次元の方はどなたでござるか?」だった。

 

 ああ、そういえばダヴィンチちゃんにも何か相談してたな。

 画材の調達でも相談してたんだろうか。

 

 そんなことに思いを巡らせながらページをめくる。

 舞台は中世初期と思われるどこかの城だった。

 

 そして漫画には俺も知っている人物、円卓の騎士ランスロットとガウェインが……

そうとした思えない人物が描かれていた。

 

「いけません。ランスロット卿。この転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)は

王の聖剣の姉妹剣……そして王に捧げたもの。そのようなことはなりません……」

 

 え?どういう意味だ?

 そしてなぜ、この漫画のガウェインは頬を赤らめているんだ?

 

「ガウェイン卿。ならば私の無毀なる湖光を貴公に捧げよう。

この剣は我が王のもの……そして貴公のもの。これでおあいこだ。

「ランスロット卿……」

「ガウェイン卿……」

 

 すると2人は顔を近づけ……

 バタン!

 思わず俺はその薄い本を閉じた。

 

「……腐ってやがる」

 

 見てはいけない。否!見なければいけない!

 俺は仲間としてぐだ子のすべてを受け入れる。

 

 ページを進めるランスロットとガウェインの睦みあいはさらに続いていた。

 ランスロットがガウェインの股間のガウェインに触りながら『卿の堅物ぶりは時に

困るが、堅いのは性格だけだはないのだな』と言ってみたり、ガウェインがランスロットの股間のランスロットをムグムグしたりと作者の闇の深さを感じさせるものだった。

 

 トリスタンも出てきた。

 トリスタンは「二人だけで快楽に耽るとは――私は悲しい」と言うと

その先は三人でくんずほぐれつ×××なことをし始めた。

 

 もうわけがわからないよ……

 

 ページを更に進める。

 今度は日本の武家屋敷風の建物で2人の男が肩を寄せ合っていた。

 

 こちらも俺の知っている人物。

 アーチャーのエミヤとアサシンのエミヤだ。

 

 アサシンのエミヤを召喚した時、あのクールなエミヤが珍しく取り乱していた。

 そのあとぐだ子と2人がかりでエミヤから聞き出したがあの2人は平行世界では親子だったらしい。

 

「いけない。キリツグ……平行世界での話とは言え我々は親子。

そしてマスターにこの身をささげた剣だ」

「分かっているよ、士郎。

でもね、僕はもう親子の関係じゃ我慢できないんだ……」

「じいさん……わかった。このことはアイリスフィールとイリヤスフィールには内緒だ」

「ああ……僕らだけの秘密だ」

 

 すると2人は服を脱ぎ■自主規制■な状態になった。

 その先はアサシンのエミヤとアーチャーのエミヤの濃厚な絡み合いだった。

 

「シロウ、大きくなったのは体だけじゃないんだね……」

 

 アサシンのエミヤがアーチャーのエミヤの股間のエミヤを触りながら言う。

 

「――あなたは変わらないな」

「ああ、うれしいよシロウ。君とこんな関係になれる日がくるなんて……」

 

 ガタッと背後で音がする。

 振り返ると俺の背後でぐだ子が顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。

 

「み、見たな……」

 

 ぐだ子は俺の手から秘蔵のノートをひったくるとそのままベッドに飛び込み

悶絶しながらのたうちまわたった。

 

「いやー!殺して!いっそ殺して!」

 

 言うまでもないがそのあと幾らか冷静さを取り戻したぐだ子にこっぴどく叱られた。

 俺はただ平謝りするだけだった。

 「必ず復讐してやる!」という怨嗟の言葉を残し俺は部屋から追い出された。

 

 それから数日。

 サーヴァントたち、特に男のサーヴァントが俺と話すとき妙に距離を置いていることに気付いた。

 

 こういう時に影にいるのが誰か大体想像がつく。

 

 俺はモゴモゴと口ごもる黒髭を問いただすと俺と男サーヴァントが■アーン♡■なことをしているモノをぐだ子と制作してこっそり流布させたと白状した。

 

 おかげで俺がホ●だという噂が流れている。

 

 ぐだ子。これが君なりの仕返しなんだな……

 

 マシュに包み隠さずすべてを話し相談すると

「それは先輩が悪いです。罰だと思って我慢して下さい」と言われてしまった。

 

 がんばれ、俺。

 人のうわさも75日。

 あと70日ぐらいの辛抱だ。




ご覧の通りぐだーずが2人とも存在してます。
2人は同時に存在してたらきっと仲良し。
兄妹とか兄妹同然に育った幼馴染的な関係だと思う。


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サーヴァントの相性

こいつら仲良さそう。こいつら仲悪そうという勝手なイメージ。


 人理修復の戦いを続ける狭間

 時折現れるイレギュラーな特異点がある。

 物によってひずみの大きさはまちまちで重要度も違う

 だけどひずみがあるなら正さなければならない。

 

 今回はその小さな特異点が2つ同時に発生した。

 この世界に残った最後のマスターである俺とぐだ子はそれぞれにパーティを編成して

レイシフトする準備を整えていた。

 

 俺の率いるパーティーはセイバークラスのサーヴァントたちだ。

 理由はセイバークラスにとって相性のいいエネミーが多数観測されているためだ。

 

 ローマの軍師、ユリウス・カエサル

 ケルトの戦士、フェルグス・マック・ロイ

 フランス元帥、ジル・ド・レェ

 円卓の騎士、ベディヴィエール

 

 彼らでパーティーを組んだ理由はたまたま他のセイバーがオーバーワーク気味で魔力不足だったからだ。

 とはいえ彼らも強力とまでは言えずともそれなりに格の高いサーヴァントたちだ。

 戦力的には問題ないだろう。

 だが、レイシフト前から俺は不安いっぱいだった。

 

 なぜなら

 

「最適な人材の運用とは呼べんなこれは」

「マスター!酒と女はまだか!?」

「おお……ジャンヌ……ジャンヌ……」

「あの……作戦は?ブリーフィングとかしなくていいんでしょうか?」

 

 誰も一切、会話をしようとしない。

 最近召喚に応じたベディヴィエールはただオロオロするだけだ。

 

 大きくため息をつく。

 こっちのパーティーを率いることになったのはぐだ子に負い目があるからだ。※

 自業自得とはいえこれは堪える。

 

 もう一方のパーティーをみる。

 

 反逆の闘士、スパルタクス

 雷光の怪物、アステリオス

 近代最高のスパイ、マタ・ハリ

 神童、アマデウス

 大英雄、アーラシュ

 オルレアンの救世主、佐々木小次郎

 の6人だ。

 

「アステリオス、クッキー焼いたの。食べる?」

「……うん。ありがとう。ママ」

「スパ殿。レイシフト前に手合わせ願いたいのだが」

「おお!小次郎!君も反逆者であったか!」

「ははは。相変わらず話の通じぬ御仁だ。しかし、それもまた良し」

「アーラシュ。新しい曲を思いついたんだ。タイトルは『僕のケツにイボ痔ができた』だ」

「お前は本当に下品だな!アマデウス」

 

 こちらのパーティを率いるぐだ子はというと……まるで保護者のようなほんわかした目で彼らを見ていた。

 

 そこにサーヴァントに転身したマシュが戻って来た。

 

「先輩。レイシフトの準備が完了しました」

「……ああ、ありがとう。……マシュ」

 

 セイバー軍団は相変わらず目も合わせようとしない。

 あ、ヤバい。

 胃がキリキリしてきた。

 

 マシュは俺と俺の率いるパーティーを見て言った。

 

「先輩、心中お察しします。

あの、私も同行しますので……」

 

 ああ、ありがとう。俺の後輩ちゃん……

 あと、ごめんねベディヴィエール。

 次は円卓組と組ませるから……

 

「じゃあ、みんな行きましょう」

 

 レイシフトの準備完了の報を聞いたぐだ子が向こうのパーティーに号令をかけた。

 思い思いに過ごしていた彼らだが号令がかかると誰からともなく作戦会議を始めた。

 

「では、いつも通り切り札はアステリオスの迷宮だな。

私は宝具展開までの時間を稼ぐ盾になろう」

「じゃあ、私とアマデウスは妨害ね」

「拙者は撹乱しながらの露払いだな」

「じゃあ俺は一発こっきりの取って置きをお見舞いしてやる。

最後は任せたぜ!アステリオス」

「うん……ありがとう、ステラさん」

「お前、言い加減俺の名前覚えろや」

 

 アーラシュの発言に対し「大体合ってるじゃないか」というアマデウスのツッコミが入る。

 パーティーを率いるぐだ子は笑顔でそのやりとりを見ていた。

 

 それを見ていたマシュが一言、感想を漏らした。

 

「先輩、サーヴァントの相性って不思議ですね……」

 

※エピソード「ぐだ子の秘密」をご参照ください。




6章の師子王を星3サーヴァントセイバー中心に戦った時に思いつきました。
なんかなんとなく星3セイバー軍団相性悪そうなので。

ちなみにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが下品だったのは史実。
『俺の尻を舐めろ』というタイトルの歌曲を書いていますし、
姉のマリア・アンナ・(ナンネル)・モーツァルトに充てた手紙に「う●こ」という単語を多数使用していたことが確認されています。


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レオニダスVS大自然

これが……スパルタだぁあああ!!!!


「あったらしい朝が来た!希望の朝が!!

マスター!!!おはようございます!!!!実に気持ちのいい朝ですね!!!!!」

 

 暑苦しい声で目が覚めた。

 目を覚ますと半裸の筋骨隆々とした男が立っていた。

 

 カルデアに常駐するサーヴァントの一人、スパルタ王レオニダスだ。

 

「レオニダス……朝4時だよ?」

「唐突ですがサバイバルに行きましょう!

レッツサバイバル!」

 

 説明になっていない。

 

「待って。いったん落ち着こう。とりあえず話を聞くから何がしたいか説明してもらえるかな?」

「ですから!サバイバルです!サバイバル!!レッツサバイバル!!!」

 

 やっぱり説明になっていない。

 興奮して300人のスパルタ精鋭を呼び出したレオニダスを令呪1画を使ってどうにか宥めると

レオニダスの言葉にならない言葉から俺はどうにかこの筋肉密度の高い暴挙の理由を拾い上げた。

 

 レオニダスの言い分をまとめると下記の通りだ。

 

 特異点では何が起きるかわからない。

 カルデアからの通信が途絶える可能性もある。

 

 思わぬバカンスとなったあの時はスカサハ師匠の知恵で生き延びたが

師匠が常に同行しているわけではない。

 だからカルデアのシュミレーターを使いサバイバル技術を身に着けるトレーニングをしましょう。

 とのことだった。

 まあ理屈はわからないでもない。

 

 だが、レオニダスにサバイバル技術と言われても嫌な予感しかしない。

 本人は認めたがらないがレオニダスは脳筋だ。

 しかも彼の行動は全てがスパルタ基準だ。

 とても真似できる気がしない。

 

 しかしいったんこの手の主張を始めたレオニダスを止める手段を俺は知らない。

 

「わかった。ドクターとダヴィンチちゃんに相談してみるよ……」

 

 俺はただ溜息交じりにそう答えるしかなかった。

 

×××××

 

 まず、ダヴィンチちゃんとドクターロマンに事情を説明した。

 意外にも2人は乗り気だった。

 

「あまり無茶はしないでね」

 

 という言葉ともにサバイバルに適したシュミレーション環境を用意してくれるとのことだった。

 

 では、次は道連れだ。

 

 何人かの手隙のサーヴァントに声をかけた。

 結果は全員ノーだった。

 

 アンデルセンなど俺とレオニダスの姿を見た瞬間に光の速さでどこかに行ってしまった。

 

 こうなったら頼れるのはあの2人だ。

 

「へえ……そんなんだ。頑張って」

 

 まずもう一人のマスター、ぐだ子を誘った。

 

 すると彼女はただ一言そう言って白目を剥いた。

 どうやら俺と同じ目にすでに遭っていたらしい。

 ご愁傷様だ。

 当然、返事はノーだった。

 

 俺たち3人の運命共同体のもう1人、マシュは首を縦に振ってくれた。

 ああ、ありがとう俺の後輩ちゃん。

 君は最高だ。

 臆面もなく感謝の言葉を述べると

「いえ……先輩のお役に立ててうれしいです」とちょっと照れていた。 

 ナイス後輩力。

 

 準備は整った。

 というか整ってしまった。

 

「さあ!では行きましょう!!レッツマッスル!!!」

  

 

 まず着いたのは平原だった。

 サバイバルという事で無難にそれらしいマップが選ばれたらしい。

 

「さて!マスター!!問題です!!!

人はどのくらい飲まず食わずでも生きていられると思いますか!!!!!?」

 

 レオニダスのテンションは高い。

 

「さあ?2、3日かな?」

 

 俺の大雑把な回答にマシュが補足を加える。

 

「そうですね。1週間生き延びた例はありますが、何も口にしないと1日ごとに人は衰弱します。

災害などで生き埋めになった場合72時間が救出までの一般的なタイムリミットなので

大体そのぐらいが限界と思われます」

 

 ナイス後輩力だ。

 そしてレオニダスは相変わらずテンションが高い。

 

「はい!マシュ殿!!パーフェクトアンサーです!!

つまり!サバイバルの上で食料の確保は急務!!!急務です!!!!

……おや?あんなところに美味しそうな食料があるではありませんか」

 

 レオニダスの目線の先を見る。

 嫌な予感しかしない。

 

「あの、レオニダス。それバイコーン……」

「いただきマッスル!!!!!!」

 

 やはりテンションの高いレオニダスは俺とマシュが静止するのも聞かず

雄たけびを上げてバイコーンにとびかかった。

 数分後、バイコーンは大雑把な焼肉になっていた。

 

 気の進まない食事を終えるとさらに歩く。

 今度は森林に入った。

 

 1本の木の根元でレオニダスが足を止めた。

 

「マスター!キノコです!!キノコ!!!

ベジタブルです!!!!ヘルシーです!!!!!」

 

 テンション高い。

 

「キノコは低カロリーで高たんぱくな食品です。

食べられるキノコならば大きな収穫ですね」

 

 マシュがフォローを入れる。

 ありがとう、マシュ。

 

「ところで、マスター!食べられるキノコと毒キノコの見分け方をご存知ですか!!!?」

「さあ?見た目とか?」

 

 無知な俺に変わりマシュのフォローが入る。

 

「見た目で判断するのは危険ですね。

ニセクロハツは見た目はシイタケそっくりですが猛毒ですし

タマゴタケは見た目はグロテスクですが高級食材です。

小さく裂いて舌の上に30分ほどのせて

何も体に異常がなければ食用キノコと判断できると聞いたことがありますが

安全な方法とは……」

「なぜそのようなまどろっこし真似をするのですか?」

 

 レオニダスはポカンとしていた。

 

「え?じゃあどうやって見分けるの?」

 

 嫌な予感しかしない……

 

 レオニダスは部厚い胸板を張って言った。

 

「簡単ですよ!食べてみればいいのです!

食べて平気ならば食用キノコ!

体調を崩したら毒キノコです!

人間には自然治癒能力というものがあります。

スパルタ兵は皆これで判別しておりました!

さあ!レッツマッスル!!!」

 

 結局キノコの見分けはマシュの必死の説得で取りやめになった。

 ありがとう。俺の後輩ちゃん。

 レオニダスはあまり納得していない様子だったが引き下がり

今度は水辺を目指した。

 

 水辺を目指し歩き続けると体よく川にたどり着いた。

 中々きれいな水に見える。

 

「マスター!!我々は食料の確保に成功しました!!!

しかし!!!人間の体は60パーセントが水分!!!!

水を飲まねば衰弱し!!!トレーニングができなくなります!!!!

つまぁり!!!!!!水の確保は死活問題ということになります!!!!!」

 

 なぜトレーニングできるかどうかを基準にするのかはわからないが確かに水の確保は大事だ。

 

「さて!我がマスターよ!!ここで問題です!!!!

水分の確保はどのように行うか!!!!考えてください!!!!!

シンキングタイム!!!!!レッツマッスル!!!!!!」

 

 暑苦しい……

 

「そうだな。川とか飲める水がある場所を探すことかな?」

「そうですね。

沼や池など水が滞留しているところはいけません。

ボツリヌス菌が発生している可能性が高いです。

流れのある場所、特に水が地面から湧き出しているところがいいです。

土壌の成分で水が濾過されている可能性が高いので。

煮沸できればより安全いいですね」

 

 ナイスだマシュ。

 これならパーフェクトアンサーだろう。

 

 レオニダスを見る。

 彼はポカンとしていた。

 

「なぜそのようなまどろっこしい真似をするのですか?」

 

 え?違うの?

 もう嫌な予感以外何もしない。

 「え?じゃあレオニダスはどうするの?」と恐る恐る聞くと予想の斜め上をいく答えが返って来た。

 

「飲尿です!

排出したての尿は無菌で飲んでも安全!!

さらにぃ!!!

自分の体から出た水分を補給しまた排出する!!!!

これぞ永久機関!!!!!

すばらしい!計算通りです!!!」

 

 これがスパルタクオリティか……

 

 今度はマシュが絶句した。

 ここは俺がしっかりしないと。 

 ここはレオニダスの人格にかけよう。

 

「あの、レオニダス……引いてる、マシュが引いてるよ」

 

 レオニダスは申し訳なさそうな顔をして引き下がった。

 

 良かったレオニダス。脳筋だけど紳士だ……

 

「さて!サバイバルの仕上げです!!いかに屈強な肉体を持とうと

文明のない場所でそう人間は長く生きられません。

つまぁりぃ!!!!人の住んでいるところを探さなければいけません!!!」

 

「はい。そうですね。ですが、レオニダスさん。人の住んでいる場所をどうやって探すのでしょうか?

私にも想像がつきません……」

 

 マシュが申し訳なさそうにそう答える。

 レオニダスは立派な大胸筋を張り上げて言った。

 

「すべての道はローマに通じるという諺をご存じでしょうか!?」

 

 え?まさか……

 

「ローマ……文明……すなわち人が住んでいる場所!

全ての道は人の住んでいる場所に通じているのです!!

ならば!!!ひたすら歩けばたどり着く!!!!

すばらしい!!!!!計算通りです!!!!!!」

 

××××

 

 レオニダスのサバイバルトレーニングはあまりにも無茶過ぎたため

ドクターとダヴィンチちゃんから物言いが入り中止となった。

 

 レオニダスは渋々従った。

 

 カルデアに戻り、マシュに「ありがとう」と「お疲れ様」を言うと俺は疲れきってベッドに潜り込んだ。

 

 睡魔にかき消される意識の端っこで

 スパルタってすごい。

 俺は心からそう思った。

 




史実を紐解くとレオニダス一世がただの脳筋でないことはよくわかります。
スパルタではびこっていた不正を一掃した賢王だったそうです。
でもfateではこういうキャラなので。


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黒髭、完

タイトル通り黒髭メイン。
ぐだ男とぐだ子が両方出てきます。
下ネタ注意。


 俺とぐだ子のマスター陣は俺の部屋で打ち合わせをしていた。

 正確には打ち合わせ兼雑談だ。

 あの爆発の日以来運命共同体になった彼女とは親友以上の仲良しだ。

 打ち合わせもするがだらだら過ごしている時の方が多い

 

「失礼します。マスター」

 

 インターフォン越しに声が聞こえた。

 

 俺たちマスターの部屋は厳重なセキュリティで守られている。

 サーヴァントには困った行動をとる者も残念ながら少なくないからだ。

 

 勝手にベッドに入ってくるきよひーとか。

 勝手にベッドに入ってくる静謐ちゃんとか。

 勝手にベッドに入ってくる頼光さんとか。

 性欲魔人のフェルグス伯父貴とか。

 

 そのため俺たちマスター陣はサーヴァントの入室許可を三つのレベルに分けた。

 

 マシュ、エミヤ、ハサン先生、アーラシュのような危険性ナシと判断されたサーヴァントはセキュリティコードを渡し入室自由。

 注意が必要と判断されたサーヴァントは事前許可制。

 危険サーヴァントたちは入室禁止だ。

 

 ドア口から聞こえるのは事前許可が必要なサーヴァントの声だった。

 知ってる声だが誰かが偽っている可能性もある。

 俺は合言葉を口にした。

 

「ぺったんは?」

「ニッチではありませんぞ」

「よし。入れ」

「デュフフwww失礼しますぞwwwマスターwww」

 

 黒髭ことエドワード・ティーチはにゅるにゅると軟体動物のような動きで入ってきた。

 ――呼んだのはこっちだが呼んだのを後悔していることに気付いた。

 

 気持ち悪い。とにかくキモい。何かがキモいのではなくただひたすらにキモい。

 ベオウルフがグレンデルの事を「ただひたすらに邪悪な存在だった」と語っていたが

グレンデルが「邪悪」の実例なら黒髭は「キモい」の実例だろう。

 

 ぐだ子は隣で軽く表情を歪めていた。

 二人は共通の趣味のおかげで割と仲は良いがそれでも気持ち悪いものは気持ち悪いらしい。

 

 おっと。あまりのキモさに危うく本題を忘れるところだった。

 

「黒髭氏。お願いしてた宝物庫のQP集めは?」

「それがですな……」

 

 俺が戦果の報告を求めると黒髭が真剣な表情で黙りこんだ。何かあったのか?

 

「ぐだ子氏の部屋からパクったエロ同人読んでてすーっかり忘れておりました!

てへぺろ☆」

 

 沈黙――であるか。

 ノッブならきっとそう言っただろう。

 

 ぐだ子の同人――うっかり読んでしまったことがある。

 あれは――確か。※

 

「……え?黒髭氏、そういう趣味なの?う!お尻の穴がムズムズしてきた」

 

 黒髭は全力でかぶりをふった。

 

「いえいえ!違いますぞぐだ男氏!腐向けではありませんぞ!NLのヤツですぞ!

かわいらしいおにゃのこがイケメンに顎クイとか壁ドンとかされて終いにはアーン♡なことしちゃうヤツですぞ?

デュフフwwwぐだ子氏なかなか乙女チックな趣味をお持ちですな!デュフフwwwだから気に入った!!」

 

 ぐだ子がBL趣味なのは知っていたが乙女ゲー的なNLも趣味だったらしい。

 そんなこと知りたくなかったが――。

 

 趣味を暴露されたぐだ子は――怒りと羞恥で真っ赤になってプルプル震えていた。

 

 黒髭はキモいとしか形容しようのない笑顔を更にキモくして続けた。

 

「あ、ぐだ男氏の部屋からパクった『血の繋がらないお兄ちゃん大好き妹コレクション お兄ちゃんのことを思うとおまたがジュンジュンしちゃうの』もなかなかwwwデュフフwwwマスターたちは良い趣味をしておられますなwww

拙者、マスターに恵まれて嬉しいでござるwwwデュフフwwwオゥフwww」

 

――ついでに俺の趣味まで暴露しやがった。

 ――こいつ。どうしてくれようか。

 っていうかどうやって忍び込んだ?お前、ライダーなのに気配遮断スキル持ちか?

 

「エミヤ、ハサン先生」

 

 俺が有罪判決を下そうと思った矢先。

 ぐだ子が先に動いた。

 俺たちマスターとサーヴァントはレイラインで繋がっており念話ができる。

 ぐだ子がサーヴァントに呼びかければもう一人のマスターである俺はもちろん。

 複数人のサーヴァントと会話が可能だ。

 様子から察するに黒髭にも聞こえているらしい。

 

「どうした、ぐだ子」

「どうなされたぐだ子殿」

 

 念話の相手はカルデアが誇る主夫二人組だった。

 エミヤと呪腕のハサンは見た目は正反対だが、どちらもお人好しで常識人で家事が得意と人格的には共通点が多い。

 

 カルデアのサーヴァントでも古参で元祖アサシンとも呼べる存在である呪腕のハサンは他のアサシンたちから慕われており、いつしかハサン先生と呼ばれるようになっている。

 

 色々振りきれてしまっているサーヴァントたちとの付き合いはそれ自体が激務だが、常識人で気の利くハサン先生との時間は癒しだ。

 

 そんなハサン先生の属性は実は「悪」らしい。

 悪の定義って一体何なんだろう?

 

「黒髭が今すぐ部屋を掃除してほしいって。ベッドの下の物は全部燃やして欲しいってさ」

「ノーーー!ストップ!ストッププリーズ!!」

 

 黒髭のキモい笑顔が必死の形相に変わった。

 

「じゃあ今すぐQP集めに行く?」

「行きます!行かせていただきます!!百万でも二百万で集めてきます!!!」

 

 黒髭は必死な顔もキモかった。

 すでに冷静さを取り戻していたぐだ子は冷たく言い放った。

 

「ふぅん。……だが断る。エミヤ、ハサン先生。終わった?」

「エミヤ殿のブロークンファンタズムで塵に返しました」

 

 黒髭は今度はニヤニヤしていた。

 今では全方位オタだが、元は大海賊。

 姦計には長けている。

 さては秘密の隠しスペースでもつくったな。

 

「ふっ、甘いな。海賊たるこの黒髭に抜かりはない。ベッドの下を片付けても第二第三の……」

「ベッドの下に隠しスペースを見つけたのでそちらも焼却しておきました」

「流石です。ハサン先生」

「ふふふ。アサシンの技を侮らないで頂きたいですな。では、またご用命があれば」

 

 山の翁の方が一枚上手だった。

 黒髭はこの世の終わりでも来たような顔でシクシク泣き始めた。

 

「ああ……拙者がせっせと集めてきたお宝写真が……ジャンヌ氏の揺れる聖パイが……メアリー氏のちっぱいが……ぐだ子氏のポロリが……」

 

 黒髭うっかりだった。

 「あ、しまった」と呟いたがもう遅い。

 

「お前……そんなものいつ撮った」

 

 彼女は怒っていた。誰がどう見てもそうとわかるぐらいに。

 ゴゴゴゴゴと背景音でも聞こえそうな勢いだ。

 

「無人島の時、つい。出来心で。反省はしている。だが後悔はない」

 

 黒髭。堂々と答える。

 すごい。さすが大海賊。こんな状況でも動じない。

そこにシビれないし憧れないが。

 

 ――それに対してぐだ子は。

 ――にっこり笑って右手を持ち上げた。

 サーヴァントに対する絶対命令権。令呪が刻まれた手だ。

 

「令呪を以って命ずる――」

「ちょ、ちょっと何する気ですか?ぐだ子氏?ぐだ子氏?」

 

 令呪による魔力の奔流と共にぐだ子の口から紡がれたのは無慈悲な命令だった。

 あまりの無慈悲さに俺も口を開けなかった。

 唖然とする黒髭にぐだ子は止めをさした。

 

「次にお前は『やめて――それだけはやめて!』と言う」

「やめて!それだけはやめて!!……ッハ!!!」

 

××××××

 

「これが……スパルタだぁああああああああああ!!!!!」

「ローマ!ローマ!!ローマ!!!」

「わが愛を受け取りたまえ!愛!!愛!!!」

「ムハハハハハ!血ダ!!血ダ!!血ダァァァァ!!!」

 

 右も左も筋肉ならば前も後ろも筋肉。

 筋肉と筋肉がひしめき合い、汗で汗を洗う漢の聖域。

 それがカルデアのトレーニングルームだ。

 

 それから一週間。黒髭は令呪の強制力でレイシフト時以外は常にトレーニングルームに縛り付けられていた。

 今はレオニダスの先導でマッチョマンたちとクレイジープッシュアップ中だ。

 

レオニダスの指導で俺の腹筋はすでにバッキバキだ。

 ぐだ子も十代女子としてはありえないぐらいバッキバキだ。

 彼女は「シェイプアップのエクササイズのはずがビルドアップさせられてた。何を言ってるかわからねーと思うが私もわからない」と嘆いていた。

 

「ひどぅい……ぐだ子氏、御慈悲を」

「マシュ。許してあげていいと思う?」

「ぐだ子先輩。……さすがにもういいのでは?」

 

 事情を聞いて様子を見に来たマシュは慈悲を示した。

 俺の後輩ちゃんマジ天使だ。

 

「マシュのフィギュア作ってキャストオフしてたらしいよ」

「反省の色が見えませんね。もう一週間延長にしましょう」

 

 黒髭の余罪が発覚してマシュはあっさり翻意した。

 天使の慈悲もこのキショい生き物は対象外らしい。

 

 黒髭は泣きながらマッチョマンたちとプッシュアップしている。

 

「確かに撮ったのは拙者ですが、ぐだ男氏も回覧してましたぞ!

ぐだ子氏のポロリもガン見してたし、マシュ殿のマシュマロとかアン氏の揺れるメロンとかも凝視してましたぞ!

なのにどうして拙者だけこんな目に?あぁんまりだぁぁ!」

 

 黒髭め。ゲロしやがって。鋼鉄の掟を破ったな。

 

「ぐだ男?」

「はい……」

 

 ぐだ子はかわいいが怒るとちょっと怖い。

 

「見たの?」

「……はい。見ました。ごめんなさい」

「マシュのも見た?」

「……はい。見ました。ごめんなさい」

 

 「変態」「先輩最低です」

「美少女二人からの罵倒とかwwwご褒美ktkr!!!」

 

 罵倒と羨望の言葉が返ってきた。

 ぐだ子ごめん。マシュ、俺は最低です。軽蔑してください。

 黒髭。お前は黙ってろ。

 

「反省してる?」

「……反省してます。ごめんなさい」

「じゃあ許す。マシュ、いいよね?」

「はい。真剣に反省しているようですので、情状酌量の余地があると思います。

謝罪もしているのでそれで十分かと」

 

 あっさり許された。

 

 ありがとう。黒髭。君はいい友達だったよ。

 そしてさようなら。

 

「ちょ、ちょっと何ですかそれ?主人公補正?エロゲ主人公ですか?

かぁぁぁぁあ!!!裏山死ぃぃぃぃ!!!!」

「うるさい。もともと普段から行いに問題があるからこうなるんでしょ?

はい。一週間延長決定!」

「ノオオオオオオオ!!!!」

 

 黒髭の悲痛な叫びは筋肉の饗宴でかき消された。

 

「黒髭殿!プッシュアップが止まっていますぞ!!さあ!!!レッツマッスル!!!!」

「 ■■■■■■■■■■■ーーー!!」

「イスカンダルゥゥゥ!!!」

「ネロォォォォォォォ!!!」

「オラオラオラ!どうしたどうした!!」

「クール!ゴールデンなマッスルじゃねえか!」

「いやああああ!増えてるぅ!!!」

 

 

 増えていくマッチョマンたちの気合ヴォイスと黒髭の悲鳴がこだましていた。

 

 今日もカルデアは平和だ。

 




『カルデア男子たちの日常』に触発されて書きました。
黒髭とエミヤは使い勝手良すぎです。
描き分けしやすいようにぐだ男とぐだ子に色々独自設定を追加してます。
ゲーム制作の都合上仕方ないと理解してはいますが性別の違いでシナリオにほとんど差異がないのが不満で。
なら勝手に作ってしまえと。
今後もこの二人の絡みはちょいちょい書きます。


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今日のすまない

すいません。
下書きを間違って予約投稿していました。
ちゃんと一エピソードにまとめたやつを投下します。
本当にすまない……


「じゃあステンノさんは神性持ちパーティーの起爆剤として起用ということでよろしいですか?」

「異議なし」

「異議なし」

 

合議に至った印としてマシュがホワイトボードに線を引く。

 線が引かれたのはゴルゴン三姉妹の長姉ステンノの名の部分だ。

 

 ステンノは正真正銘の神霊だが本来戦闘能力を持たないため直接的な攻撃力が低い。

 戦力として運用するには編成を考える必要がある。

 うんうん悩んだ挙句「神性もちにのみ最大効力を発揮するカリスマのようなスキル」を最大活用する

編成で運用しようという結論に至った。

 

 ここはカルデアのフリースペースの一つだ。

 俺たち三人――俺ともう一人のマスターであるぐだ子、初期からサポートをしてくれているデミサーヴァントでカルデア職員のマシュ――

はホワイトボードを持ち出して仮の会議室を設え増えてきた戦力をどう運用していくかの話し合いの席を設けていた。

 

 ステンノの起用方法は悩ましい問題であったため後回しにしていたがこれでようやく片付いた。

 残るは一人だ。

 

「では最後の議題ですが……」

 

 書記役のマシュがホワイトボードの最下部に書かれた名前を視認し言い辛そうに――とても言い辛そうに

その名を読み上げた。 

 

「ジークフリートさん……」

 

 最後まで避けてきた議題だが触れざるを得ない。

 

 ジークフリートは叙事詩『ニーベリンゲンの歌』の主人公で欧州の伝承でも有数の格を誇る英雄だ。 

 ワーグナーの楽劇『ニーベリングの指輪』をはじめ多くの芸術作品で取り上げられた

西欧世界では極めて名高い英雄でありカルデアでも強力な戦力になっている――と言いたいところなのだが……

 

「まず火力の面だけど。

――ぶっちゃけ弱い……よね」

 

 人は触れたくない問題に触れられると当然だが口を噤む。

 俺たち三人が気まずく沈黙する中、もう一人のマスターのぐだ子がまず 

言い辛いことを言ってくれた。

 

「ぐだ男とマシュが別の特異点に行ってた時にさ、ちょうど小規模な特異点が発生してね、

槍属性の相手が多く観測されてるってロマニから聞いたから

その時丁度待機中だったジークフリートに来てもらったんだ」

 

 その話は初耳だ。

 

「そこの一番の大物がバイコーンで

DEBUのスキルとマスタースキルで攻撃力を上げてジークフリートの宝具を解放したんだけどね……」

 

 ああ、なんか結末が読めたぞ。

 

「……倒しきれなかったんだよね。

で『面倒だ』とか言いながら結局DEBUが倒したんだけど

宝具で削りきれなかったときのあのジークフリートの悲しそうな顔……

あれ見たらいたたまれなくってさ……

DEBUが『有利属性の相手を宝具で倒しきれぬとはさすがは大英雄(笑)』って煽りまくってたから

とりあえずDEBUに令呪でお仕置きして

帰ってからしばらく『私の起用法が悪かった』って謝り続けたよ……」

 

 ぐだ子は頭を抱えた。

 そう。これが困りどころだ。

 ジークフリートは戦力としてちょっと困ったちゃんなのも問題なのだが

それ以上にその人柄が問題なのだ。

 

 性格も困ったちゃんならば常時ベンチウォーマーにしてもさほど呵責を感じることもないのだろうが

あの控えめな大英雄の悲しむ顔はチクチクと良心に訴えかけてくるのだ。

 

「カエサルさんは直接戦闘能力はともかくサポート能力は優秀ですからね。

ぐだ子先輩のマスタースキルを併用しても大型エネミーを倒しきれないとなると……

単純な攻撃要員としては使い辛いですね。

――では。撃たれ強さという観点ではどうですか」

 

 マシュが上手くまとめてくれた。

 今度は俺の番か。

 

「……えっとね。微妙」

 

 事実とは言えこういうことを言うのは悲しい。

 

「ステータスは耐久寄りだけどね。

なんていうか色々ちぐはぐなんだよね。

三騎士クラスなのになぜか対魔力持ってないし。

本当ならばあの悪竜の血を浴びたって伝承で不死身の肉体の筈なんだけど

それも無いし」

「あ。そういえば。どうして無いの?ぐだ男知ってるの?」

「『……うっかり英霊の座に忘れてきてしまった。すまない』だって。

聞いたらそう言われちゃってさ。あんな悲しそうな顔されたらもうそれ以上聞けないよ」

 

 ぐだ子は俺の回答に対しうんうんと頷いた。

 

「ま、だからまとめるとさ。

耐久力って面で考えるとクラス相性無視でもクーフーリン兄貴のほうがしぶといし

クラス相性考えるとネロちゃまが圧倒的だからさ。継戦能力って面で考えてもジークフリートちょっとアレなんだよね……」

 

 ちなみこのネロちゃまという相性だが当初は陛下とか赤セイバーとか呼んでいたがどちらもしっくり来ず

 ぐだ子が何気なくネロちゃまと呼んだのがきっかけだ。

「ネロちゃまか。うむ。なかなか愛い響きだ。良い。今後は余のことをネロちゃまと呼び一番に頼るがよい」

 と本人がムッフーしていたのでそのまま定着した。

 

「そうだね。獅子王との戦いの時も止め刺したのはベディだけど粘って戦線を維持してくれたのはネロちゃまとマシュだから」

「ああ。あれね。俺もホント頼りになると思ったよ。後で滅茶苦茶褒めたら『そうであろうそうであろう』ってムッフーしてたし」

「余を呼んだか?」

 

 そう話していたら当の本人が現れた。

 赤い装束に身を包んだ男装の麗人ネロ・クラウディウスだ。

 現代の感覚ではどう見ての女性の装束を着た女性だがズボンをはく習慣がなかったローマの時代では一応これが男装で通ったらしい。

 

「いや。名前は呼んだけど……」

 

 ネロの様子を窺う。

 なんかそわそわしている。

 

「そうか。余を褒め称えているのが聞こえた故。またそなた達が余を頼っているのかと思ってな」

「ネロちゃま。暇なの?」

 

 ぐだ子はいつもストレートだ。

 それで嫌味が無いのは彼女の人柄ゆえだろう。

 

「暇ではない。待機に飽きたのだ。我がマスターたちよ。

つまりだな

――構え。余に構え。寂しいではないか……」

 

 ぐだ子と俺は顔を見あわせた。

 こういうときのネロの扱い方は心得ている。

 「どうぞ」とぐだ子が言ったので俺が口を開いた。

 

「エミヤの発案でね。来週あたり古代ローマの料理を再現しようと思ってるんだ」

「何!真か?」

「そう。だから後で一緒にメニューを考えてくれないかな?」

 

 ネロは目をキラキラさせている。

 教科書に載っている暴君のイメージは何処へやら。

 完全に人懐っこいワンコだ。

 

「では余にアイディアを出してほしいのだな?余を頼りたいのだな?余を頼っちゃうのだな?

うむうむ。余に助力を求めるとはやはりそなたたちは違いの分かる魔術師よな!愛い奴らめ」

「じゃああとでね。ネロちゃま。会議終わったらすぐに行くよ」

「余は待っているぞ!待っているからな」

 

 ネロは去っていった。

 後姿に尻尾を幻視しそうなほどのワンコっぷりだった。

 

「先輩。さすがです。扱いに慣れてらっしゃいますね。

アイコンタクトだけで今の作戦を思いついたのですか?」

 

 マシュが目を見開いて言った。

 

「今のはネロちゃまを追い払う方便じゃなくってね。

特異点に行ってからローマにずっと興味があって。

エミヤに色々調べてもらってたんだ。

パルティアン・チキンとかハーブとチーズを使ったサラダとか。

研究中のを試食させてもらったけど結構おいしかったよ」

 

 実はこれはぐだ子の発案だ。

 俺もずっとアイディアを練っていた。

 

「それだけじゃなくて当時の習慣も再現しようと思ってるんだ。

ローマの頃って皆寝台の上でうつぶせになって食べていたそうだよ」

「はい。そうですね。寝そべって食事をとるのはギリシャを起源とする習慣ですが

ローマではあおむけではなくうつぶせになって食べる形にアレンジされていたそうです。

それが消化に良い食べ方だと考えられていたためですね」

 

 さすが本の虫のマシュ。

 やはり知っていたようだ。

 

「……で、すみません。

空気を読めなくて本当にすみませんが

そのジークフリートさんの起用法なんですけど。

竜殺しのスキルに特化した起用というのはどうでしょうか?」

 

 また気まずい沈黙が訪れた。

 みんなあまり言いたくないのだ。

 

「うーん。それもちょっとなあ……」

 

 言い辛いことだがまたしてもぐだ子が口火を切ってくれた。

 

「ジークフリートの竜殺しって常時発動型のスキルじゃなくて

効果の継続とリチャージが必要な固有スキルじゃない?

だから竜属性相手に無双しててもスキル効果の切れ目の瞬間に

いつものすまないジークフリートに戻っちゃうんだよね……」

「あーそうそう……

獅子王と戦った時も結局効果の切れ目でやられちゃったんだよね……

あの『すまない』って言いながら戦闘不能になった時のジークフリートの悲しそうな顔……」

 

 「うーん」と全員が一気に黙り込む。

 沈黙が気まずい。

 

「……この会話ジークフリートには聞かせられないな」

 

 俺は沈黙に耐え兼ねそう呟いた。

 

 その時。

 

 ガタッと背後で不穏な音がした。

 

 まさか……

 

 まさか……

 

「じ、ジークフリート……いたの?」

 

 竜殺しの英雄ジークフリートが全身から哀愁を漂わせながら立っていた。

 

「……すまない」

 

 ああ。なんて悲しい……

 

「……気を使わせてしまってすまない。

……いっそ工房にくべてほしい……」

 

「そ、そんなことないよ!!ジークフリートは大事な仲間だよ!!!」

 

 このあと三人がかりで滅茶苦茶慰めたのは言うまでもない。

 




獅子王には実際ネロちゃまで粘り勝ち増した。
本当はNPCのベディで倒したかったのですが一ターン分生存方法が足りませんでした。

ではまた。
次はシリアスなやつで行こうと思います。


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三騎士の絆

とってつけたようなシリアス。
fate/stay nightの三騎士がメインです。
小説情報にも書いてますがぐだ男とぐだ子が両方存在してます。


 カルデアにはすでに相当数の英霊が常駐しているが、それでも戦力の補強はまだまだ必要だ。

 俺ともう一人のマスターぐだ子は定期的に行っている英霊召喚の儀式を執り行っていた。

 

 サークルが回転する。

 光が放たれる。

 黄金の光だ。しかも今までに例がないほどの強力な魔力を発している。

 相当の大物を引き当てたらしい。

 

 回転が止まり光が消えると――優美なドレスに白銀の甲冑を着た一人の小柄な女性が立っていた。

 

「問おう。貴方が私のマスターか」

 

××××××××××××

 

「まさか、アーサー王とはね……」

「しかも女性だったとは……」

 

 アーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンを連れてカルデア内を歩いていた。

 館内の案内をするためだ。

 

 呼び出した英霊は何とアーサー王だった。

 しかもアーサー王は女性だった。

 

 召喚が成功するとすぐに彼女は自らの素性をすべて明かし、人理焼却を阻止するために呼び声に応えたと語った。

 彼女はその場にいるだけで背筋が伸びるような威厳を持ってはいるが礼儀正しく,

すぐに俺たちの間には和やかな空気が漂っていた。

 

「新しいサーヴァントを呼び出したと聞いたがまさか君とはな。セイバー」

 

 アルトリアを案内していると一人のサーヴァントに出くわした。

 古参のサーヴァントの一人で弓使いの英霊だ。

 彼女は鈴を鳴らすような凛とした声で答えた。

 

「真名で構いませんよ。英霊エミヤ。仲間に真名を隠しても意味がありませんから」

「……ではアルトリア。この名で君のことを呼ぶ日が来るとは。喜ばしいことだ」

 

 アルトリアはちょっぴり頬を紅くしていた。

 この天然タラシめ。

 

 「二人は知り合いなの?」と聞くと「色々とあった仲で」とのことだった。

 もっとも因縁があるのは覚えているがその辺の詳細は記憶が曖昧らしい。

 

 そういえばクーフーリンの兄貴もエミヤと何か因縁があったらしい。

 エミヤ、顔広いんだな。

 

 アルトリアとエミヤと別れぐだ子と二人になる。

 二人になると自然と作戦の話になる。

 作戦以外の話も良くするが、特に今はサーヴァントを引きあてた直後で

しかも突発的な特異点発生の情報が入っていたため作戦の話に熱が入っていた。

 

「ねえ。ぐだ男。私、一個思いついたことがあるんだけど」

 

 彼女の提案には大賛成だった。

 

××××××××××××

 

「ゲッ!こいつかよ!」

「マスター……金色のアーチャーと青いランサーとは相性が悪いと話したはずだが……」

 

 数日後。

 俺たちマスターと三騎のサーヴァントが管制室に集まっていた。

 

 アルトリアとクーフーリンとエミヤだ。

 クーフーリンとエミヤはお互いの顔を確認した途端表情を歪めた、

 

 この三人を集めた理由は一つ

 彼らには因縁があるらしいが

 できれば今後はわだかまりは捨てて戦ってほしいからだ。

 

 特にエミヤとクーフーリンはいがみ合っているが本当に相性が悪いとは思えない。

 

 俺とぐだ子は話し合って彼らを組ませることにした。

 

 当の彼らは尚もいがみ合っている。

 「ねえ。アルトリア。何か言ってあげてよ」とぐだ子が一計案じて提案すると「そうですね……」と僅かに逡巡した後

アルトリアが言った。

 

「私はあなたたちと共に戦えて嬉しいですよ」

 

 アルトリアのその一言でエミヤとクーフーリンは渋々といった様子からまんざらでもない態度に変わっていた。

 さすがはカリスマBだ。

 

「先輩。レイシフトの準備が出来ました」

 

 準備を終えてきたマシュの一言で俺たちはレイシフト先に向かった。

 

××××××××××××

 

 まさに一騎当千の戦いだった。

 何の指示も出していなかったにも関わらず彼らは己が役割を理解していた。

 近接戦闘に優れるアルトリアとクーフーリンが前に出て敵を砕き、近接戦闘と遠距離攻撃の

両方が可能なエミヤが後方から二人のうち漏らした敵を排除していく。

 

 レイシフト先で待っていたのはキメラとゴーレムの大群だったが

剣が、槍が、弓が、次々とエネミーを打ち砕いていく。

 

 いつもは攻撃も視野に入れながら防御するマシュだが今日はぐだ子と俺の守りに徹していた。

 

「すごい……。これが一流のサーヴァントなんですね」

 

 サーヴァントは戦闘のプロであり、本来俺のような素人が戦闘に口出ししない方が良い。

 俺が指揮をとるようになったのはそもそも当初は実戦経験の無いマシュしかサーヴァントがいなかったからで

本来はこの形の方が正しいのだ。

 

 彼らは危なげなく敵を打ち砕いていった。

 それは順調に見えた――

 

 ――見えたが問題があった。

 敵の数が多すぎたことだ。

 

「ぐだ男、ぐだ子。聞こえますか?」

 

 アルトリアが念話で語り掛ける。

 

「このままでは埒があきません。宝具解放の許可を」

「マスター。私も同意見だ。この場に必要なのは対人宝具でも対軍宝具でもない。対城宝具だ」

「俺はマスターには従うぜ。アルスターの流儀だからな」

 

 エミヤとクーフーリンがそれに賛同する。

 今日初めての指示らしい指示を出した。

 

「兄貴は前に出て応戦!エミヤは後方から援護!アルトリアの宝具解放の時間を稼いでくれ」

 

 俺よりも魔力の扱いが上手いぐだ子は前線に近い位置でサーヴァントたちに強化や回復を施す。

 俺は後方でサーヴァントへの指示と魔力の供給に徹するいつもの布陣だ。

 

 マシュとぐだ子は運命共同体。

 三騎士は一流の戦士たち。全員が作戦意図を理解していた。

 

「マシュ、ぐだ男をお願い!」

「了解です。ぐだ子先輩。お気を付けて」

 

 それに反応したエミヤが言う。

 

「ぐだ子。君は私の後ろにいろ」

 

 クーフーリンが放たれた弾丸のように飛び出す。

 

「そんじゃ、前の阿呆どもは俺に任せろ!」

 

 後方でマシュが俺の防御を担い、より前線に近い位置でサーヴァントをサポートするぐだ子をエミヤが守りながら

前線のクーフーリンを援護する。

 アルトリアは聖剣による一撃に備え魔力を充填する。

 

「応!かかってきな」

 

 クーフーリン。

 この英霊の戦う姿はまさに獣のそれだ。

 獣のごとき敏捷性から繰り出す槍は目にもとまらぬ速さでキメラをゴーレムを砕いていく。

 

 うち漏らした敵もエミヤの矢が砕いていく。

 

 背後ではアルトリアの聖剣に魔力が充填されていくのが感じられる。

 

 が、時間の経過とともに戦況は思わしくないものに変わり始めていた。

 敵の数があまりにも多すぎた。

 一騎当千のクーフーリンも押されはじめている。

 戦上手なエミヤもぐだ子を守りながらでは十分な戦闘が出来ないようだ。

 

「マシュ」

「はい」

「前に出て二人を援護してくれ。

魔術でアルトリアの宝具解放を促進する。もう少しだけ前線の二人を粘らせくれ」

「ですが」

「少しぐらいなら自分の身は守れるさ。それよりも今は前線を崩壊させない方が重要だ」

「はい。先輩、ご無事で」

 

 マシュが前線に飛び出す。 

 

「――これはすべての疵、すべての怨恨を癒す我らの故郷。

顕現せよ。『いまは遥か理想の城』(ロード・キャメロット)!」

 

 詠唱と共に白亜の城が現れる。

 魔力を防御力に変換する絶対の守りだ。

 

「ありがとよ。盾の嬢ちゃん」

 マシュの宝具で二人は再び勢いを取り戻す。

 膨大な魔力の奔流。その時が近づいていることが解る。

 よし。もう一押し。

 

「アルトリア!受け取ってくれ!」

 

 消費された令呪一画は莫大な魔力となり騎士王に送られる。

 

「マスター。ありがとうございます」

「ぐだ子!アルトリアに強化!」

「もうやってる」

 

 聖剣が解放される。

 名前を聞けば誰もがその名に畏敬を覚えるかの聖剣が。

 

「二人とも。ありがとうございます。下がってください!」

 

 その一言で前線の仲間たちが飛び退く。

 道は出来た。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるがいい!『 約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」

 

 

 それは巨大の光だった。

 何もかもを吹き飛ばす大津波のように強大で――そして暖かな。

 

 光が通り過ぎた後。すべての敵は跡形もなく消え去っていた。

 

××××××××××××

 

 突発特異点の原因は後片付けをしなかった傍迷惑な魔術師によるものだった。

 魔術に長けるクーフーリンとエミヤがその魔術師が放棄した工房を解体してこの事件は終結した。

 二人はとても息のあったコンビに見えた。

 

 ぐだ子が「二人は仲良しだね」というと同時に全力で否定していたが。

 

 アーサー王のような第一線の英霊を間近で、しかも味方として見た俺たちは興奮しっぱなしだったが

 それ以上に一緒に戦った三人が嬉しそうだった。

 

「あなた達と共に戦えることをうれしく思います。どうかこれからもよろしくお願いします」

 

 特にアルトリアはそう素直に心情を述べていた。

 

「何だ、あの三人相性いいじゃない」

 

 ぐだ子がそう呟いた。

 




最近ピックアップすりぬけでアルトリアが来ました。
これで自軍にエミヤと兄貴とアルトリアがそろったので度々組ませてます。
こんなやりとりがあったらいいなという妄想。
ぐだ男とぐだ子は両方存在してたら絶対仲良しだと思います。
こんなやりとりがあったらいいな。

気の迷いでシリアスを書いてしまいましたが次回はまたギャグに戻ります。
今のところシリアスをまたやる予定はありません。


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ぐだ男の悩み

前回、気の迷いでシリアスしてしまいましたがいつもの調子に戻ります。
今回は下ネタ満載です。
苦手な方はブラウザバックしてください。


「兄貴。相談があるんですが……」

 

 ここはカルデアの厨房。

 俺はある深刻な問題を相談すべく兄貴ことアイルランドの大英雄クーフーリンを呼び出していた。

 なぜここにしたかというとここは出入りする人物が限られているからだ。

 秘密の話をするのであればむしろ自分の部屋より都合がいい。

 

 厨房で兄貴と落ち合うと厨房の常連であるエミヤも居た。

 エミヤなら信用できる。

 エミヤにも話を聞いてもらうことにした。 

 

「誰にも見られてないですよね?」

 

 話す前にまず確認だ。何かしら策を講じないと安心できない。

 

「何だ?何にビビッてるのかわからねえがそんなに気になるなら探知のルーンでも使うか?」

「ええ。お願いします」

 

 兄貴は快く応じてくれた。

 この英霊は面倒見が良い。兄貴にしたい英霊ランキングがあったら間違いなく上位に食い込むだろう。

 

 探知のルーンの結果。今、厨房にいるのは俺と兄貴とエミヤの三人だけという事が分かった。

 

「それで?相談というのは?」

 

 エミヤはニヒルな雰囲気を醸し出しているがお人好しで世話好きのおかん体質だ。

 色黒ガチムチのおかんなどジャックちゃんでもノーサンキューだろうが気遣いはありがたかった。

 

「えっとですね……」

 

 全員が固唾をのむ。

 

「溜まってるんですよ。オ●ニーできなくて」

 

 全員が固まった。

 兄貴が聞き返した。 

 

「え?何て?」

「溜まってるんですよ。オ●ニーできなくて」

「……お前、そんなの部屋で好きなだけ出来るだろ」

「これでもですか?」

 

 俺は端末を取り出した。

 

 プレーヤーの「再生」をタップする。

 これは部屋に仕掛けたカメラの録画映像だ。

 まず俺が部屋から出ていくところが映し出された。

 

「少し早送りします」

 

 早送りをタップし数秒後。

 部屋の中で異常な出来事が展開されていた。

 

 一体いつ隠れたのだろうか――部屋のクローゼットから――黒い長髪を振り乱した女性がウゾウゾと這い出してきた。

 黒髪のグラマラスな女性、源頼光は俺のベッドに潜りこむとシーツに頬ずりをし始めた。

 

 ――くーるーきっとくるー

 

「「きゃああああああああああああああ!!!!!!!」」

 

 兄貴とエミヤは同時に悲鳴を発して飛び退いた。 

 

「おい!お前!同じ日本人だろ!何とかしろよ!」

「無理無理無理!私は筋力Dだぞ!殺す気か!」

「映像はこれで終わりじゃなくて……頼光さんの後にきよひーと静謐ちゃんも映ってました。

いつもちゃんと鍵かけてるのに……一週間ぐらい前から変な気配を感じてて。

おかげでずっとオナ禁です。オナキン・スカイウォーカーですよ。

早くダークサイドに堕ちたいんですよ。俺は」

 

 エミヤは「うわー」という声にならない声をひねり出すとしばし考えてから言った。

 

「わかったまずはダヴィンチ女史に相談だな。侵入できないようセキュリティを強化してもらおう。

その上で警戒を強化しよう。私と呪腕のハサンの巡回では不十分だったな。体制を見直す」

「そういう事なら俺も加わるぜ。いたいけな十代の坊主の私生活だからな」

「――お願いします。俺のリビドーはもうメルトダウン寸前なんですよ。

特にいつも近くにいる二人のせいで」

「マシュとぐだ子か?

――だろうと思ったがやはりそういう目で見ていたのか」

 

 エミヤはやれやれと肩をすくめた。

 

「ホントそうですよ!あのぐだ子の制服!

何なんですかあの乳ベルト?なんで絶妙にバストのトップとアンダーの部分にくっついてるんですか!

あのベルトのせいで強調されるんですよ!物理的に!プルプルと!しかも地味にスカート短いし!

あのデザイン、どこのエロジジイが考えたんですかね!ありがとうございます!!

アトラス院の礼装着た時も……」

「あの下半身部分の肌色が多いデザインの代物か。君には目に毒だろうな」

「オヤジくせ。お前幾つだよ」

「うるさい」

 

 この二人は自称犬猿の仲だが、喧嘩するほど仲が良いの関係にしか見えない。

 仲いいっすねと言ったらほぼ同時に全力で否定された。

 やっぱり仲良しだ。

 

「『なんか変な視線を感じるんだけど』って言われたから

『それは俺の視線だね。性的な目で見てるYO。太もものあたりを重点的に』って正直に答えたら『変態』って言われちゃったよ。

……ちょっと気持ち良かった」

「お前凄いな。伯父貴かよ」

「そうかな?ランスロットに「俺は変態ですか?」て聞いたら「マスター。女性を窃視するのは仕方のないことです。私も常に王のことを窃視しておりますので」って言ってたよ?」

「君は意見を求める相手をもう少し選べ」

 

 俺は思春期まっ只中だ。

 動くモノはなんでもエロく見えるがいつも近くに美少女二人がいるとキツい。

 おかげでレイシフト中はほぼ常に半勃ちの前かがみ状態だ。

 俺は迸しるリビドーを躊躇うことなく二人に吐き出した。

 

「もっとヤバいのがマシュですよ!マシュのあの格好!アレ、ヤバいですって!

何なのあの格好?大事なところが一か所も隠れてないし!オカズにしてくださいっていってるようなもんじゃないですか!

ていうかギャラハッドって童貞だったはずですよね?妄想力の産物ですかアレ?ありがとうギャラハッド卿!

カルデアの制服もアレはアレで何か隠れた部分が妄想力を駆り立てるし。

地味にスカート短いし……

最初の特異点をクリアした時は辛くてつい枕を濡らしたけど……実はティッシュも一杯濡らしてました……えへ☆」

 

 兄貴とエミヤは困り始めていた。

 もちろんそのぐらいで思春期男子のリビドーは止まらない。

 

「極めつけは無人島の時ですね。みんな水着だったじゃないですか。動きが激しくて……その、してたんですよ。何人か中身がポロリと。

その瞬間を偶然、偶然ですよ?黒髭氏が撮っててですね……」

「ん?おい。あの時は俺もいたけどよ、あいつ初期の方で退場してなかったか?」

「怨念になった黒髭氏が念写したんです」

「何だよ!その無駄に高え能力!戦闘に使えよ!」

「その写真をありがたくお借りしてですね……下品な話なんですけど……思わずフル勃起して……自家発電……してしまいました。

百回ぐらい……主にマシュとぐだ子で」

 

 二人は仲良く深く溜息をついた、

 さすがに真剣に呆れ始めたらしい。

 

「お前。罪悪感とかないの?」

「ありますよそりゃ。

――でも気持ちよかった!!」

「割と最低だな。お前」

「ある意味正常だな君は。欲求を我慢するよりよほど健全だ。思春期だしな」

 

 兄貴は割と普通に呆れ、エミヤはフォローしてくれた。

 それでも立ち去らないあたりやっぱり面倒見が良い。 

 

「まあ、それでよ……お前さんの性欲発散の問題だけど。

当面は俺たちが見回りしてどうにかするにしても

この戦いだってまだ当分は続くわけだし他の方法考えるのもアリなんじゃねえか?

例えばよ。流石に特定の相手つくればあの竜の嬢ちゃんなんかも諦めるだろ?

アテの一つや二つお前だって心当たりあるだろ?」

「そうだな。誰とは言わないが」

「マシュのことですか?」

 

 二人は一様に驚いた。割と意外な答えだったらしい。

 

「安心したよ。君は朴念仁ではないんだな」

「エミヤ。俺はエミヤみたいにモテないけど……

でもね。彼女の好意ぐらい気付いてるよ。ていうかアレで気付かなかったもうニブいの通り越して

障害の疑いありでしょ。

メドゥーサさんとデートした時なんてどう見てもヤキモチ妬いてるし!

この間も『外は寒いですが、先輩といると暖かく感じます。これもヒートアイランド現象でしょうか?』

とか真顔で言うんですよ!かわいい!!マジかわいい!!!マシュのマシュマロマシュマシュしたい!!!!」

 

 俺はゴロゴロもんどり打って悶絶した。

 「お前、今、割と悲惨な絵面になってるぞ」と兄貴に言われたがそんなことは気にしない。

 マシュの尊さについて語るなら俺は千の言葉も惜しくない。

 

「じゃあお前さんと盾の嬢ちゃんは相思相愛ってわけだ。

なら何が問題なんだよ?お前、あの大人しい嬢ちゃんを口説けない程ヘタレってわけじゃないだろ?」

「それはですね……」

 

 真剣な問題だ。俺は自然と表情がこわばった。

 呆れていたクーフーリン兄貴の表情も真剣なそれになっていた。

 

「避妊できる自信がないからです。

もしその状況になったら興奮のあまり避妊の手間を惜しまない自信がありません。

今だって甲冑の隙間から見えるマシュのマシュマロに飛び込むのを戦闘中だからと自分に言い聞かせてギリギリ我慢してるんです!

考えてもみてくださいよ。マシュは大事な戦力ですよ?

そんな事態になったらマズいでしょう」

 

 兄貴は今度は呆れと感心が同居したような表情になっていた。

 エミヤの表情も同じようなそれになっていた。

 やっぱりこの二人仲良いだろ。 

 

「……そうだな。女性は妊娠によって行動が大きく制限されるからな。君の懸念は尤もだ」

「まあ、そうだな。お前さんも何だかんだ良くやってるし。そういう理由ならお前の悩みもわからねえでもねえな……」

「この戦いの結末がどうなるかわからないけど俺は皆で生き残って終わりたい。

他の選択肢なんて眼中にない。それが俺のケジメです」

「……そうだな。あと、いい話風になってるけどお前の株、いま爆下がり中だからな」

「話は聞かせてもらったよ」

 

 「誰だ!」とお決まりのセリフと共に振り返る。

 

「見た目は美少女中身は男。シャルルマーニュ十二勇士アストルフォ参上!」

 

 男の娘十二勇士アストルフォは可愛らしくぴょんと飛び跳ねると

 女の子じゃないのに女の子以上に女の子らしい女の子走りで駆け寄って来た。

 ところでキミ、どっから現れたの?

 探知のルーンすり抜けてきたの?

 

「ぐだ男はえっちなことがしたいけどデキちゃったら困るって言ってるんだよね?」

「ああ」

「……じゃあ。ボクじゃだめかな?」

 

 クリクリとした瞳が上目遣いで俺を見る。

 

 う……かわいい。

 一瞬「それもいいかも」と思ってしまった。

 

 ……ああ!違う違う!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!

 俺はありったけのオカズを思い浮かべて防壁を張る。

 マシュのマシュマロ、ぐだ子のおっぱい。

 マシュの太もも、マシュのプリケツ。マシュの腋。マシュの……

 

「マシュが女の子だからダメなんだよね?でも大丈夫!ボクは男だから!」

「あのさ、でも君、一応男じゃん?俺も男だし……そういうのはちょっとさ……」

 

 ぐすん、と可愛いく啜りあげる音が聞こえた。

 チクリと心が痛む。

 

「……ぐだ男はボクのこと嫌いなの?」

「いや。アストルフォのことは嫌いじゃない。好き。好きだよ。でもそれはさ……」

「ホント?ボクもぐだ男のこと大好き!」

 

 そう言ってアストルフォは飛びついて来た。

 あ……すごく良い匂いがする。

 いやいや!だが男だ!

 こいつは男こいつは男こいつは男……

 

「ぐだ男はボクが男だから駄目なの?ボクが男なのが悪いの?」

 

 上目遣いで潤んだ瞳で見つめられている。

 駄目だ!駄目だ!駄目だ!

 ――ああ、でもやっぱりかわいい。

 

「ハッハッハ!ついにお前も目覚めたか!」

 

 もう誰も「誰だ」とは言わない。

 兄貴とエミヤはツッコミ疲れたらしい。

 

「ついているかついていないかなど些細な問題だ!前の穴も後ろの穴も楽しめてこそ真の益荒男よ!

衆道は罪ではない!新たな世界への扉だ!」

 

 性欲魔人のフェルグスさんはそう豪快に笑った。

 あなたどっから現れたんですかという疑問が頭をよぎったがもうどうでも良かった。

 

「……アストルフォ」

「……ぐだ男」

 

 アストルフォと見つめあう。

 なんて穏やかな気分なんだろう。

 そうだ。俺がその道に堕ちればきよひーも静謐ちゃんも諦めるだろう。

 最初からこうすれば良かったんだ。

 

「兄貴。エミヤ」

 

 ペコリと頭を下げて――

 

 ――はっきりと迷いのない声で言った。

 

「俺――

 ――もうホ●でいいや」

 

「待て待て待て!戻ってこーい!!」「よせ!その先は地獄だぞ!」

 どこか遠くで二人が叫んでいた気がする。

 

 男の娘って本当にいいものですね。

 俺は心からそう思った。

 




まだまだなんとなく続きます。
あ、みなさまコメント、ブクマありがとうございます。

一応報告。
『ぐだ男の悩み』の後日談を書きました。

表に載せるほどのものとも思えない(短いので)
ので活動報告に掲載しました。

もちろん下ネタ注意ですので気を付けてご覧ください。


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英雄王の恐れるもの

タイトル通りギルガメッシュとエルキドゥがメインです。
話の出典はギルガメッシュ叙事詩ですが、このシリーズはギャグ時空なので
大幅に私の創作が混ざっています。
今回は下ネタはありません。
ではどうぞ。


「エルキドゥがいるのか?」

 

 第七特異点を修復した後。

 ほどなくして縁のできたエルキドゥが召喚に応じてくれた。

 呼び出したその英霊はエルキドゥであってエルキドゥではない第七特異点のあの存在とは違うどこまでも穏やかな物腰だった。

 

 俺とぐだ子とマシュは召喚を終えるとまずは報告すべき相手――その無二の親友である英雄王ギルガメッシュの元に報告に向かった。

  

 ギルガメッシュは最初の頃は話しかけると「不敬だ」とツンツンしていたが

「英雄王の!ちょっといいとこ見てみたーい!」

 とぐだ子と二人で頑張っておだてたら

「ふ!仕方のない雑種だ。どれ、宝物庫の鍵を開けてやろう」

 と本気になってくれた。

 意外とチョロかった。

 

 今も変わらず上から目線ではあるが話しかけても「不敬だ」とは言わなくなった。

 

 後になって召喚されたアルトリアはギルガメッシュと因縁があったらしい。

 

「あの英雄王を従えるなんて。貴方たちは一体どういう魔術を使ったのですか!?」

 と驚いていたが「おだてただけだよ」と言ったら更に驚いていた。

 

「――そうか。彼奴を呼び出してしまったか」

 

 意外なことにギルガメッシュの反応は鈍かった。

 エルキドゥはギルガメッシュが唯一友と認めた相手だったはずだ。

「嬉しくないの?ギル」とぐだ子が聞くと

 

「――いや。友とまた轡を並べられるのは喜ばしいことだ。

我にとってそれに値するのはエルキドゥ唯一人だからな」

 

 そう言って渋い顔をした。

 そしてさらに続けた。

 

「だが気をつけろ。

奴はその……マジキチだ。

我が言うのだから間違いない」

 

 「あの?マジキチとはどういうことでしょうか?」と純朴なマシュが尋ねる。

 ギルガメッシュは頬を引きつらせながら言った。

 

「いいか。心して聞け。雑種ども。

奴を怒らせるとマジ怖いぞ。

我が唯一マジ怖いのはこの地上にあってあいつだけだ。

――特別に話してやる。エルキドゥと共に琥珀の森の番人の討伐に赴いた時の事だ……」

 

 琥珀の森の番人、フワワ(あるいはフンババ)を討伐したエピソードはギルガメッシュ叙事詩でも最も重要な箇所の一つだ。

 フワワはニップルの守護神でありメソポタミアの最高権力者であるエンリルの使いで

 そのフワワを討伐したことで神の怒りをかい、元々神に作られた存在であるエルキドゥは泥に還された。

 

 それが英雄王ギルガメッシュのその後を左右することになる。

 

 世界最古の物語の一つであるギルガメッシュ叙事詩をその当事者本人から聞くことが出来る。

 俺は正直興奮したし、マシュもぐだ子も目が期待で光っていた。

 

 そしてギルガメッシュは話し始めた。

 だいぶ期待とは違う内容だったけど……

 

 

××××××××××××

 

 この地上はすべて余さず我の庭だ。

 それに琥珀の森の恵みは木材に恵まれぬウルクにとって貴重なものだった。

 

 琥珀の森のフワワを退治しに行く。

 

 その提案にエルキドゥは渋っていた。

 

 曰く「あの森は一万ベールも広がっている」※1ベール=凡そ十km

 曰く「フワワは口から死と炎を吐き出す」

 曰く「あの怪物は神の加護を受け六十ベール離れた先も見渡す」

 

 そう理由を並べ立てて渋ったが

 「勇を示すもまた王の努めよ」との我の言葉についにエルキドゥも折れた。

 

 琥珀の森にたどり着いた我はまず木を切り倒した。

 フワワの注意をこちらに引くためだ。

 その間に下々の物が木材を切り出してウルクに持ち帰る手はずだったのでな。

 

 フワワの奴めすぐにこちらの動向に気付いた。

 そして彼奴は現れた。

 

 ――それは我の想像すら上回る代物だった。

 その叫び声は洪水のごとき勢いで荒れ狂いその体躯は巨神の如きものだった。

 

 本来の目的はフワワの森から木材を切り出すことだ。

 我がフワワの眼を逸らし時間は稼いだ。

 

 実際その間に既に配下の者たちが森から木を伐りだしていたしな。

 

 我は神に造られた全能たる存在だが

 無益な争いは望むところではない。

 

 我は友に撤退を促した。

 

「目的は果たした。引くぞ。エルキドゥ」 

「え?どうしてだい?」

 

 彼奴はそう言って穏やかに笑っていた。

 だが目が笑っていなかった。

 

「いや……アイツ、一応エンリルの使いだし……あんまり怒らせない方がいいかなって……」

 

 ヤバい。我はそう直感してとりあえず下手に出てみた。

 

「ハハハ!なに言ってるんだい?ギル。僕らはもうアイツのこと思いっきり挑発しちゃってるんだよ?

怒ってるに決まってるじゃないか?もうここまで来たら僕らがフワワに殺されるか

僕らがフワワをブッ殺すか。そのどちらかだよ!さて!どこを切り落とそうか!?」

 

 ――我はエルキドゥの性格を忘れていた。

 カラオケで最初のうちは「聞く方に専念します」と言っているくせに最後にはマイクを握りしめている輩がいるだろう?

 奴はそれと同じタイプだ。

 

「あの……エルキドゥさん。……ひょっとして怒ってらっしゃる?」

「ん?どうしてだい?どうして僕が君に怒るんだい?

――でも、そう見えたのなら……ひょっとしたら怒ってるのかもしれないね(満面の笑顔)」

 

 ――全能の我でも怖いものぐらいはある。

 神獣クラスの相手はさすがに無傷では済まないからな。

 

 だがその時はフワワ以上にエルキドゥがマジで怖かった。

 

 「それでだな、友よ……」

 

 我は尚もエルキドゥを宥めようとしたのだが……

 

「ギル……まさかとは思うけどこういうことかい?

君から誘っておきながら怖いから引き返したいってひょっとしてそう言ってるのかい?」

 

 エルキドゥはあまり表情変えることがない。

 元々そういう存在だったからな。

 

 ――その時のエルキドゥは静かに笑っていた。

 その静けさは嵐の前の凪を思わせるものだった。

 

 我は内心ビビりまくっていたが「デスヨネー」などと言って引き下がるわけにはいかない。

 尚も宥めようと試みた。

 

「――い、いや!違うぞ!友よ!そ、その引き返すのも可能性としてアリカナーって我は言っているだけで……」

「ん!?自分から誘っておいてぇ!?え!?『やっぱビビッたからトンズラここうぜダチ公よ』ってそう言ってるのかい?

ん!?そういうことなのかな!?ギル!!?(ピキピキ!)」

 

 雑種。貴様らはまだ知らぬだろうがマジギレしたエルキドゥの恐ろしさは言語を絶する。

 顔面は蒼白になり、足腰が笑い始める。

 奴がここまでマジギレしたら取れる手は一つしかない。

 

「……じょ、ジョークだ。ジョーク。英雄王ジョークだ。友よ……」

「そうか。ジョークか。安心したよ。

……全然面白くないから本気かと思っちゃったじゃないか」

 

 こうなった以上もうエルキドゥを止める術はない。

 その先はもうヤケクソだ。

 我はエルキドゥに引きずられるがままにフワワを討伐し、さらには琥珀の森の手下どもも残らず制圧した。

 

 奴は「大変なことになってしまったよ。ハハハ」と嘯いていたが明らかにノリノリだった。

 フワワなど「助けてください!お願いします!どうか命だけは!」と必死で命乞いをしていたが「え?なになに?きこえなーい!?」とエルキドゥは文字通り聞く耳持たずだったからな。

 

 「ねえ?それよりどこを切り落としてほしいんだい?」と言われた時のフワワは、我にはライオンに狙われる子ウサギのように見えた。

 

 あの時ほど恐ろしいと思ったことは後にも先にも無い。

 

××××××××××××

 

「その先は貴様らの知る通りだ。

神々の怒りを買ったエルキドゥは泥に還り、死を恐れた我は不老不死の草を探す旅に出た」

 

 皆、何も言えなかった。

 ギルガメッシュ不老不死の旅のきっかけは友人のマジギレだったなんて誰が想像しただろうか?

 

 何か気付いたらしい。

 皆に先んじてマシュが口を開いた。

 

「あの……フワワの首はエルキドゥさんが一人で落としたというパターンとギルガメッシュ王の二人で落としたというパターンがありますが

やはり……」

「ああ。フワワの首を落としたのはエルキドゥだ。

『僕だってやりたくないんだよ。でもこれは必要なことなんだ。

僕だってやりたくないんだけどね。僕だってやりたくないんだけどね

大事なことだから二度言ったよ?』

そう嘯いていたが明らかに奴はノリノリだった。

こればかりは我は冤罪だ」

 

 さらにギルガメッシュは続けた。

 

「不老不死の草を見つけた我が泉で身を清めている隙に蛇めにそれを喰われてしまった話は貴様らも知るところだろう。

我は絶望したが――その時、脳裏に浮かんだのはマジギレした友の引き攣った笑顔だった。

マジギレしたエルキドゥに比べれば死の恐怖など取るに足らぬもの。

そう悟った我はウルクに戻る決意をした」

 

 傲岸不遜なギルガメッシュが本気でビビッている様は驚き以外何物でもなかった。

 ギルガメッシュは尚も恐怖に頬を引きつらせながら言った。

 

「……雑種。このことはエルキドゥには言うなよ。絶対だぞ?フリなどではないからな?いいか?フリではないからな!?」

「僕がどうしたって?」

 

 当の本人がいた。

 神造兵器エルキドゥは穏やかな笑顔でポンとギルガメッシュの肩を叩いた。

 

「……と、友よ。また会えて嬉しいぞ。だが残念だ。王となった我にはもはやお前と語り合う自由はない。

さらばだ」

「そうだね。語り合う自由はないよね。でも……殴り合う自由ならあるよね?

さあ。あの時みたいにお互いの性能を競い合おうか……」

「――雑種。貴様らに我を助ける栄誉を与えてやろう。(意訳・助けてください。お願いします)」

 

 俺にはギルガメッシュの語った意味がその瞬間嫌といういうほどよくわかった。

 エルキドゥの整った顔が作り出す穏やかな笑顔は――恐怖しか想起させなかった。

 

「さあ行こうか。ギル。言葉は不要だ。だって僕らには語り合う自由はないんだからね?」

「ま、待て!友よ!話せばわかる!話せばわかる!」

 

 尚もギルガメッシュは「話せばわかる」を連呼していたがそのままエルキドゥに引きずられて行った。

 

「嫌な事件だったね…・・」

 

 引き摺られていくギルガメッシュの後姿を見て。

 俺はただ、そう呟いた。




まだまだ続きます。


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マスター最後の切り札

最終戦でついに禁断の手を使ってしまうマスターたち。
序盤シリアスっぽく見えますがいつも通りのギャグ時空です。

※最終章のネタばれが含まれているのでこれからプレイする方はご注意ください。


 ――光が収まった後、そこには主を失った盾だけが残っていた。

 

 この一年、七つの特異点を周り苦楽を共にした相棒はこの世界から蒸発してしまった。

 自分の喉からは何か音にならない音が発されていた。

 立ちふさがる人類悪ゲーティアが何か言っているらしいことは分かったが

 全く耳には入らなかった。

 

 どれほどの時間そうしていたのか。

 涙を拭い愛しい相棒を亡き者にした巨悪を見上げる俺と彼女(ぐだ男とぐだ子)の脳内はたった1つの目的に支配されていた。

 

「――お前だけは絶対に倒す!例えどんな手を使ってでも!」

「矮小な人間と凡百な英霊ごときに何ができる」

 

 いいだろう。ならば見せてやる。矮小な人間の力を!

 

「令呪3画全てを持って命じる!倒れるな!」

 

 やるべきことは分かっている。

 ぐだ子も同じ思いだった。

 俺より一呼吸早く動いた彼女の腕から3画の令呪が消失し魔力の奔流となって迸った。

 

 開幕無敵貫通全体宝具即ぶっぱという反則技に孔明・マーリンが落とされ

 戦闘続行で生き残ったヘラクレスが最後まで粘ったがその膂力をもってしても落とすには至らなかった。

 消滅の瞬間出ずっぱりで過労死寸前の孔明・マーリンが安堵の表情を浮かべていた気がしたがきっと気のせいだ。

 

 令呪のバックアップを得て、立ちあがった2人はヘラクレスにありったけの支援を送った後

 魔神の一撃に沈む、またしても1人になったギリシャの大英雄は荒れ狂う暴風となって敵に襲い掛かかる。

 

 ――が、もう1歩が届かない。

 その命は風前の灯だ。

 

「カルデアの。どうやら手が尽きたようだな」

 

 勝ちを確信したのか敵は確実な一手のためにスキルを連打してきた。

 

「「それはどうかな」」

 

 俺とぐだ子は懐から聖晶石を取り出した。

 

「それがどうした?石1つで戦況は覆るまい」

「――いつから1つだと錯覚していた?こいつを見てみろ!」

「何!?」

 

 俺たちの足元には価値を失い紙切れとなった大量のi○unes Card と5万円分の石が転がっていた。

 

「言ったでしょ?『どんな手を使ってでも』って」

「行くぞ人類悪。――たった150万程度のHPで足りるかな?」

「貴様ら、まさか……。そんな……コンテのためだけに5万も課金を!?

しかもしれっと今まで作者が避けてきたメタ発言をしたな!」

 

聖晶石(切り札)の力によって我らが大英雄が標的に襲いかかる。

 

――これはマシュに使った種火の分!

――これは塵の分!

――これは牙の分!

――これは証の分!

――これは歯車の分!

――そしてこれが――伝承結晶の分だ!!

 

 なんだか最後に弱くなって3回目の戦いがあった気がするが

 相手が自爆したのでどうでも良い。

 

「お前は強敵だったよ。5万円も使ったのはジャンヌオルタのピックアップの時以来だ。

結局邪ンヌは来なかったけどな」

 

 特異点の崩壊によって神殿が崩れる。

 

「ぐだ男!行こう」

 

 ぐだ子の号令で我に返りカルデアに向かって必死で走るが

 バルバトスを殴るために大量に食べたリンゴのせいで2人とも胃がタプタプで上手く動けない。

 ついにはその場に崩れおちてしまった。

 

「もう一歩だったのにな……」

「こんなことならもっとこまめにリンゴ消化しておけば良かったね……」

 

 もはや俺もぐだ子も一歩も動けなかった。

 素材欲しさに欲を出し過ぎたツケだ。

 だが後悔はなかった。

 

「でもマシュの敵は取ったし……」

「人理も救済できたしね……」

 

 そう。これで終わりも悪くない。 

 

「今までありがとう。ぐだ子。楽しかったよ」

 

 共に駆け抜けてきたもう一人の相棒にそう心から感謝を述べた。

 

「ありがとう。ぐだ男。私も楽しかったよ」

 

 彼女は悔いのない笑顔でそう言った。

 

 崩落が迫ってくる――

 

 ――その時だった。 

 

「先輩……手を」

 

 ――そこにはあり得ない人がいた。

 俺は思わず一番目立った胸部に手を伸ばし――

 

「……先輩にはそこが私の手に見えるんですか?それとぐだ子先輩が掴んでいるのは私のお尻です」

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

 人理が修復され目的が無くなったサーヴァントの皆さんは座に帰って行きました。

 以前からカルデアにいたダヴィンチちゃんと私、それに先輩達のことを放っておけない一部を除いて。

 

「エミヤ!兄貴!残ってくれたんだね!」

「以前にも言ったが気に入った相手に肩入れし過ぎてしてしまうのは性分でね。気が済むまで付き合わせてくれ」

「俺も付き合うぜ。もともと見るに見かねてお節介を焼いてやろうと出しゃばって来た身分だからな」

 

 「やっぱり二人は仲良しだね」とぐだ子先輩が言うとエミヤ先輩とクーフーリンさんはほぼ同時に全力で否定しました。

 やっぱりお二人は仲良しです。

 それを見たぐだ子先輩は「弓槍本……アリだと思います」と舌なめずりしていましたがどういう意味なのでしょうか?

 

「そうそう。お節介焼きは俺たちだけじゃないぜ」

 

 クーフーリンさんがそう言うと岩のような体躯の英霊がぐだ男先輩の元に駆け寄ってきました。

 

「ヘラクレス。残ってくれたんだね」

「■■■■■■■■■■■―!(勿論です。あなたの事を置いて座には戻れませんから)」

「そうか。ありがとう」

「■■■■■■■■■■■――!(当然です。私はあなたのサーヴァントですから)」

「凄い…。先輩とヘラクレスさん会話が成立してる…」

 

 ヘラクレスさんは強敵との戦いの度に殿から飛び出してきて窮地を救ってくれました。

 先輩曰く絆レベルが8を超えたあたりから意思疎通が可能になったとか。

 

「先輩、そろそろ行きましょう」

 

 私とぐだ男先輩はダヴィンチちゃんからお使いに行く途中だったのです。

 

 ぐだ男先輩はぐだ子先輩と何か目くばせをしました。

 ぐだ子先輩はそれに対してうんうんと頷くとぐだ男先輩に対して親指を立てました。

 どういう意味なのでしょうか?

 

 次にぐだ男先輩はヘラクレスさんを見上げて何か意味ありげな視線を送りました。

 

「■■■■■■■■■■■―――!(私はここに残ります。このヘラクレスお二人の邪魔は致しませんとも)」

 

 ヘラクレスさんは何を言ったのでしょう?

 先輩は少し俯いた後、私に手を差し出して言いました。

 

「マシュ一緒に行こう」

「はい」

 

 その手を強く握り返して私はそう答えました。

 

 

 

 




ゲーティア本当強敵でしたね。
絆ヘラクレスがいなかったらノーコン無理でした…。
1日でヘラクレスと意思疎通可能なくらいに絆上がった気がします。
ヘラクレスさんの口調はタイころ準拠です。

そしてマシュの圧倒的ヒロイン感。
良かったマシュ…本当良かった。
マシュの笑顔尊い。

終局特異点まで話がたどり着いてしまいましたがまだ終わりません。
だってギャグ時空だから。

そういえば日付上今年最後の日ですね。
皆様、良いお年を。


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ぐだ男はいつも前かがみ

あけましておめでとうございます。
新年一発目です。
タイトルから想像がつく通りすっごい下ネタ満載です。
苦手な方はブラウザバックしてください。
時系列的にはまだ序盤の方と思ってください。


「戦闘終了。ご無事ですか、先輩。

……あの、なぜ前かがみに?」

 

 ある日。突発的に発生した特異点で。

 何時ものように俺は任務をこなしていた。

 

 マシュが守りの要。他のサーヴァントが攻撃。

 いつもの布陣だ。 

 戦闘は難なく片付いた。

 

 ただ一つ問題があった。

 

 戦闘中にフルbokkiしてしまったのだ。

 

 剥き出しになったマシュのプリプリと動くお尻をガン見していたせいだ。

 いつもマシュを窃視しているとぐだ子に鬼の形相で睨まれるが今日彼女は別の特異点にレイシフトしている。

 そのせいで調子に乗った。

 完全に自業自得だ。

 

 ああ、そういえば向こうはどうなっているだろう?

 まあ、ヘラクレスと兄貴がいるから大丈夫だろうが。

 絆が深まってきたおかげかぐだ子は今ではヘラクレスの言っている事の七割ぐらいはわかるらしい。

 

 ――思えばこれまでのオーダーは常に自分との戦いだった。

 

 ――思いがけない初任務の時。

 

 黒化したアルトリアの宝具をマシュが防いだ時だ。

 

 他のマスター候補が危篤状態に陥ったことで最後のマスターとなってしまった俺とぐだ子は

マシュに精一杯の援護を送るために意を決してマシュのすぐ後ろに飛び込み彼女を支えた。

 

 その時、気づいてしまった。

 

 マシュのもともと露出度の高い衣装が臀部に食い込み肉付きのいいそれがプルプルと震えていることに。

 

 俺は思わず前かがみになった。

 

 そして思考を巡らせた。

 戦闘中にさすがにこれはまずい。

 

 少しでも意識を逸らそうと今度は隣にいるぐだ子を見た。

 

 彼女の方は地味に短いスカートが衝撃で揺れて中身がチラチラ見えていた。

 

 ――その時点でもう戦闘のことはどうでも良くなった。

 

 目の前にいる後輩ちゃんの肉付きの良いお尻か。

 隣にいる同僚のスカートの中身か。

 

 迷った末に俺は両方を交互に見ることにした。

 

 戦闘の苛烈さは増し、動くたびにマシュの服がどんどん食い込んでいく。

 終いにはもう半ケツどころか全ケツ状態になっていた。

 戦闘を放棄して思い切り撫でまわしたかったがその衝動だけはどうにか我慢した。

 

 隣を見るとぐだ子のスカートは大胆に捲れ上がってパンチラどころかパンモロ状態になっていた。

 布面積の小さいかなり際どい代物だった。

 

 今は亡きオルガマリー所長に生ごみでも見るような目で見られていたのに気づき途中から自粛したが。

 

 ――ありがとう。

 ――誰かわからないが、この事態を引き起こした誰かに俺は心の中で感謝を述べた。

 

 最初の特異点を復元した後。

 

 冬木で縁のできたクーフーリンの召喚に成功した。

 これからのことを最後のマスターになってしまった俺たち二人で話し合っていた。

 まずごく実用的な話を終えた。すると

 

「ところで戦闘中に変な視線を感じたんだけど何を見てたのかな?」とぐだ子に引き攣った笑顔で聞かれた。

 

 正直に話して許してもらおうと思い。

 

「マシュのお尻!すっごいプルプル震えてた!」と答えたら

「アホか!」と言われて思い切り殴られた。

 

 正直さが足りなかったのだろうか?

 

 なので。

 

「あとお前、戦闘中に思い切りパンツ見えてたぞ。結構大胆なの履いてるんだな。ありがとう」と言ったら今度は助走付きで殴られた。

 

「お前……正直に言えばいいってもんじゃねえぞ……」と近くで聞いていたクーフーリン兄貴にありがたい忠告をもらったので

それからはガン見からチラ見に変えようと決意した。

 

 以降、レイシフト先での戦いは敵との戦いであると同時に己(の煩悩)との戦いだった。

 

 いつもはマシュの肉付きのいい臀部や驚異的破壊力の胸部をチラ見しているとぐだ子にヘドロでも見るような目で見られるので

自粛していたが、今日はそのお目付け役がいないので調子に乗ってマシュのお尻をガン見していた。

 

 その結果が動くのも困難な前かがみ状態だ。

 

 マシュは心配そうに俺を見ている。

 この前かがみの理由をどう説明しようか。

 正直に言うのはさすがにナシだと俺も学んでいたので

「ああ、ちょっと熱が(下半身の特定箇所に)あってね」

 と事実を微妙にボカして答えた。

 

「大変です!早くドクターに診てもらわないと!」

 

 びっくりするぐらい天然なマシュは本気で俺の体調を心配してくれた。

 

「いいんだ。マシュ。病気じゃないんだ。これは何て言うか……俺自身の問題だから。だから自分で何とかするよ」

 

 体温を測ろうと密着してきたマシュの胸部の柔らかさに下半身を更に危険な状態にしてしまった俺は可能な限り平静を装いながら

彼女から離れた。

 

 マシュは心配と不思議な感情がないまぜになったような目で俺を見ていた。

 

「わかりました。何か異常があればすぐに教えてください」

 

 そう言ってその日は野営することになった。

 

 一応オンラインでDrロマンからメディカルチェックを受けたがもちろん健康そのものだった。

 

「思春期の男の子だから仕方ないけど……まあ、気を付けてね。ぐだ男くん」

 

 とドクターは俺を気遣ってくれた。

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

 その日は野営した。

 その特異点は発生理由がはっきりしないため偵察能力に長けたサーヴァントを連れて行っていた。

 

 ハサン先生と百貌さんが偵察に。

 アサシンのくせに直接戦闘が得意な小次郎と防衛戦が得意なエミヤが野営地に残った。

 

 ハサン先生は

 

「魔術師殿。貯め過ぎは良くありませんぞ。このハサン・サッバーハ、魔術師殿の邪魔をするような無粋な真似は致しませぬ故」

 

 と言って俺に箱ティッシュを預けて偵察に出て行った。

 

 この人、気遣い出来過ぎだろ。

 どこが悪なんだ? 

 

 よし、気遣いはありがたく受け取っておこう。

 

「先輩。どちらへ?」

「……ちょっとお花摘みに」

 

 「ちょっと君のことをオカズにオ●ニーしてくる。恥ずかしいから来ないでね?」と言うわけにはいかない。

 とりあえず上品に変換した言い方で「用を足してくる」とマシュに告げた。

 

 マシュは少し頬を紅くして「お気をつけて」と言ってくれた。

 

 野営地から離れ、まずは人除けの結界を張る。

 木陰に隠れ下半身を剥き出しにする。

 

「石火春雷……一刀にて証を示す」

 

 精神を統一し竿に手を添える。

 思い浮かべるのはマシュのプリプリと動くお尻、たわわに実ったおっぱいだ。

 

「ハァハァ……マシュ……マシュ」

 

 声が出てしまうのは俺の癖だ。

 我ながら最低だと思うが止められない。

 

「……駄目だよマシュ。そんな姿見せられたら出ちゃう!んほぉお!!クリティカルスターいっぱい出ちゃうぅぅぅ!!!」

 

 ……ふぅ。

 

 自分でも引くぐらい一杯出た。

 俺の後輩ちゃんの威力ハンパないな。

 

 しかもまだ収まらない。

 よし。じゃあ二回戦行くか。

 

 と思ったところでふと気配を感じた。

 

 カルデアでは多くのサーヴァントと共同生活を送っているので自然とプライバシーに敏感になる。

 今では人間としては高ランクな気配探知が可能だと自負している。 

 

 背後を振り返ると――

 ――アサシンのサーヴァント佐々木小次郎が涼やかな微笑みを浮かべて立っていた。

 

 おかしい。人除けの結界を張っていたのに。

 は!しまった。気配遮断スキルか!

 

 いや、だがまだ現場を押さえられたとは限らない。

 すでに後処理は済ませて服は着ている。

 

 二回戦に挑むかどうか少し迷っていたおかげだ。

 

「やあ。小次郎。見回りかい?精が出るね」

 

 何事もなかったようにさりげなく声をかける。

 

「主殿も精が出ているようだな。文字通りに。

……ふ、我ながら上手いことを言ってしまった」

 

 元気だったジュニアがシュンとなった。

 一気に冷静になった。

 

「……小次郎さん。いつからいたんですか?」

「『石火春雷……一刀にて証を示す』の辺りから」

 

 殆ど最初からじゃないですか……

 

「……小次郎殿……介錯してください。お願いします」

「賢者モードというやつだな」

 

 一気に冷静になった俺は小次郎に連れられて野営地に戻った。

 小次郎はマシュをオカズにしていたこともレイシフト先でオ●ニーしていたことを黙っていてくれた。

 

「何、主殿は多感な時期故。拙者も男子ではあるからな。そなたの気持ちは分かる。

こちらこそ恥ずかしい場面に遭遇してしまい相済まなかった。

――しかし、主殿。カルデアには女性のサーヴァントも多い。好感度を下げる行為にはお気をつけ召されよ」

 

 さらにそんなありがたいアドバイスも送ってくれた。

 

 以降、俺がオ●ニーの際により慎重になったことは言うまでもあるまい。

 




お後がよろしいようで。
まだまだ続きます。


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巌窟王の真実

監獄塔イベントの復刻で唐突に思いついたネタ。
所々シリアスっぽく見えますがいつもと同じギャグ時空です。
今回は長めです。
ではどうぞ。


 魔術王の企みは崩壊した。

 俺とぐだ子が召喚したサーヴァントたちは目的を果たし英霊の座へと帰って行った。

 

 が、ダヴィンチちゃん曰く「ぐだ男くんとぐだ子ちゃんのことが放っておけない物好きたち」はカルデアに留まってくれた。

 有難いことに残ったサーヴァントの数は結構なものだった。

 おかげで良くも悪くもカルデアは賑やかだ。

 

 ソロモンの宮殿から帰還を果たした後。

 俺たちは誰が残ったのかを把握するために残ったサーヴァントを集めた。

 

 最初期から戦闘、非戦闘時に関わりなく力を貸してくれたエミヤやクーフーリン兄貴、常に殿でその力を振るってくれたヘラクレス。

 頼んでもいないのに肉体改造を施してくれたレオニダス、魔術を教えてくれたメディアさん。よく部屋を掃除してくれるハサン先生。

 王でありながら仕える身に徹し絶大な力を振るってくれたアルトリア、反逆の騎士の二つ名を持っているのに悪い子とは思えないモードレッド。

 何度爆散させてもいつも「まあ仕方ねえか」と許してくれるアーラシュ……

 

 他にも結構な数が残ってくれた。

 

 だが、彼らが残ってくれたのは嬉しかったが意外ではなかった。

 

 意外だったのは常に邪気眼オーラを漂わせている巌窟王エドモン・ダンテスが残っていたことだった。

 「エドモン!残ってくれたんだね!真っ先に帰るかと思ったのに!」とぐだ子が言うとエドモンは

 

「魔術王の企みは崩壊したがこれですべてが終わったとはオレには思えぬ。

それにお前たちの行く末には想像を絶する艱難辛苦が待っているであろう。

オレが残ったのは其れを見届けるため。オレにとっては浮世の娯楽ともいえるものだ」

 

 いつもの邪気眼丸出しでそう言ったが「かーらーのー?」とぐだ子が言うと

「お前たちのことが放っておけぬからだ」

 

 と思わず本音が漏れた。

 はいはいツンデレ乙。

 

 それから一か月近くが経った。

 

 戦いは終わったが相変わらずカルデアは慌ただしい。

 何しろ過去一年、カルデア以外の全人類の人生がまるっきり空白の状態だったのだ。

 カルデアには次から次へと魔術関係者が調査のために来訪し俺とぐだ子とマシュは対応に追われていた。

 

 ある日。

 ようやくその日の聴取を終え俺たち三人――俺とマシュとぐだ子――は明日のミーティングがてら食堂で休んでいた。

 今日の聴取の内容をせっせとまとめるマシュに「マシュ。疲れてない?」と聞くと。

 

 「いえ。私がいることで先輩の負担が少しでも減るのならば本望です。私は先輩に助けられてばかりでしたから」

 

 と言われた。

 何この子。超かわいい。

 

「クハハハハ!言ったであろう!『想像を絶する艱難辛苦が待っていると!』」

 

 誰かが会話に割り込んできた。

 この少年ジャンプを読み過ぎた中学二年生みたいな笑い声。

 間違いなくアイツだ。

 

 予想通りそこにはアヴェンジャーのサーヴァント巌窟王エドモン・ダンテスが立っていた。

 「あのさ、エドモン。疲れてるんだけど……」と言おうとしたがその前にぐだ子が言った。

 

「ねえエドモン。ファリア神拳教えてよー」

 

 お前。そのネタ振りは止めろ。

 エドモン間違いなく乗ってくるぞ。

 

「この痴れ者が!ファリア神拳は生半可な覚悟で習得できるものではない!

お前は真の絶望を知っているか?地獄を見たことはあるか?

ファリア神拳の極致はその果てにこそあるものだ!」

 

 ああもう……残ってくれたのは嬉しいけどコイツやっぱめんどくせ。

 

「あ、じゃあ面倒くさいからいいです。この話お終いで」

 

 ぐだ子も振ったはいいが予想以上に面倒くさい反応で気力が失せたらしい。

 素っ気なくそう言った。

 が相手の反応は予想の斜め上を行っていた。

 

「フ!そこまで言うのならば仕方あるまい!教えてやろう。

オレがいかな艱難辛苦の果てにファリア神拳を身に着けたのかをな!」

 

 あ、これ絶対話したいだけだ。

 

「いや……エドモン。振っといて悪いんだけどマジでいいから。ほら、もう夜も遅いし」

「長い話になる!ギャルソン(ウェイター)!コーヒーを」

 

 運悪くそこに居合わせた我らがオカン、エミヤはいつもの渋い表情をいつも以上に渋くしていた。

 

「私はウェイターではないのだが……」

「オカン?」

「オカンでもない。コーヒー四つだな?何か茶菓子も用意しよう」

 

 エミヤは常識人だ。

 止めに入って止められる相手ならば止めてくれる。

 最初期からカルデアにいるエミヤは説得が通じない相手を把握している。

 

 駄目だ、これもう止められないわ。

 

 「ぐだ男、マシュ。マジごめん……」

 

 ぐだ子が小声でそう言った。

 

 十分後。

 フレンチプレスに入った濃くて旨いコーヒーとガレットブルトンヌが用意されていた。

 ガレットブルトンヌはエミヤのお手製らしい。

 ホント器用だなこのおかん。

 

「あの日……オレが謀の末シャトーディフに収監された日……」

 

 エドモンが語り始めた。

 面倒くさいがフィクションだと思っていた『モンテ・クリスト伯』の真実の物語を聞くことができる。

 悪い経験ではない。

 俺も子供の頃ダイジェスト版なら読んだことあるし。

 

「あの日はエドモン・ダンテスという一人の男の死であり、巌窟王の生まれた日だった」

 

×××××××××××××

 

 知っての通り、オレはもともとマルセイユに暮らす航海士だった。

 船長への昇進の話。恋人メルセデスとの婚約。

 二十歳の青年だったオレの前途は洋々たるものだった。

 ――あの日までは。

 

 ――あの日。

 メルセデスとの婚約パーティーの日。

 突如オレの人生は暗転した。

 

 ナポレオン・ポナパルトへの不正連絡を仲介した廉でオレは逮捕された。

 大逆罪。

 重罪だ。

 全く身に覚えのない話だった。

 

 オレはわけもわからぬまま弁明の暇もなく連行され、煉獄が如きシャトー・ディフに収監された。

 冷たく不潔な牢獄の中でオレは天に問いかけた。

 神に試されたヨブがごとくオレは問い続けた「何故!何故!」と。

 

 だが神は沈黙した。

 オレに答えを教える者は誰も居なかった。

 

 シャトー・ディフの日々は無為なものだった。

 釈放される当てもないオレは餓死を試みた。

 

 そんなある日だ。

 

 飢餓で朦朧とする頭に声が響いた。

 

「止せ。隣人よ。神は自死をお認めにはならぬ。更なる罪を重ねるつもりか?」

 

 オレはついに自分がおかしくなったのかと思った。

 その声は文字通り頭の中に直接響いて来たのだ。

 

「誰だ。お前は」

 

 オレの問いに頭の中の声は答えた。

 

「私はお前の隣人だ。精神的な意味では良き隣人でありたいと願う者。

物理的な意味では隣の独房にいる者だ。名をファリア神父という」

「嘘だ。現世の者が頭の中になど語りかけるはずもない。

お前はオレが生み出した幻覚だ。さもなければ亡霊の類だ」

「良い答えだ。すべての答えは疑問から始まる。では、まず私の実在を証明しよう。

これから独房の壁を三度ノックする。それをもって私の実在の証左としてほしい」

 

 その言葉通り。

 隣の独房の壁が三度ノックされた。

 

 それが尊きファリア神父との出会いだった。

 

 ファリア神父は賢人だった。

 学のないオレに学を授け知恵を与えた。

 

 そしてオレはその知恵によって事の真相へとたどり着いた。

 

 ファリア神父は言った。

 

「エドモンよ。私は以前お前に『更なる罪を重ねるな』と言ったな?」

「ああ。言った。だがオレは無罪だ」

「知っているとも、お前の言葉に嘘はない。大逆罪など大嘘だ。

お前は謀られたに過ぎぬ。

お前の真の罪は『無知』だ」

「……どういうことだ?」

「考えてみよ。隣人エドモン・ダンテスよ。お前がこうして収監されることで誰が得をする?

得をする人間で人に罪を着せることが出来る力を持った人間は誰だ?

考えろ。自ずと答えは見えてくるはずだ」

 

 オレはその一言で答えに至った。

 フェルナン、ダングラール、ヴィルフォール……

 そう。

 考えれば簡単なことだった。

 オレはどうしようもない無知だった。

 どうしようもない無垢だった。

 

 オレの腹の中で憎悪が黒炎となり燃え盛った。

 

「エドモン・ダンテスよ。お前が何を考えているかはわかる。

復讐……それは已むべからざる感情だ。

私は神に仕える身。憤怒に身を晒せとは言えぬ。

だがお前のその感情はこの穴倉を出なければ寛容にも不寛容に至れね。

よって私はお前に力を授けよう。

何にも勝る力――我が秘儀の最奥――ファリア神拳を」

 

 次の瞬間。

 オレはシャトーディフではないどこか別の場所にいた。

 話に聞く古代ローマのコロッセオのような。

 それでいて華美さの欠片も感じられない実用的な空間だった。

 

 オレの前には瘦身で高齢の僧衣を来た男が立っていた。

 

「ここは?」

「精神の宮殿。私とお前の魔力が作り出した精神世界だ。

そしてこれからはお前の修行の場となる」

 

 それがそれまで独房の壁越しに見ることの敵わなかったファリア神父の姿を初めて目の当たりにした時だった。

 彼はまさに「賢人」と形容すべき姿だった。

 ほっそりとした体躯に思慮を感じさせる顔立ち。

 言葉を発さずともその全身から知性が靄となって漂っているような人物だった。

 

「エドモン・ダンテスよ。問おう。汝は力を欲するか?」

 

 かの賢人は問いかけた。

 オレの答えは言うまでもないだろう。

 

 その日から修業が始まった。

 ファリア神拳は肉体的頑強さ以上に精神力と魔力を重んじる。

 オレは精神の宮殿でファリア神父から魔力の扱い方と戦闘時における心の在り方を叩き込まれ、

精神の宮殿から独房に戻ると独房で出来る思いつく限りの筋力トレーニングを行った。

 

 それは過酷なものだった。

 一日は二十四時間だが精神の宮殿では時の流れが違う。

 

 一日三十六時間という常軌を逸したハードワークはオレの肉体と精神を徐々に疲弊させていった。

 だがオレは止まらなかった。

 

 疲弊を恩讐の情念へと昇華させ自らを奮い立たせ続けた。

 

「エドモンよ。実に見事だ」

 

 四年の月日が流れた。

 ファリア神拳の最後の基本型を習得した時ファリア神父は目を見開いた。

 

「基本の型の習得に七、八年はかかる見積もりだったのだがな。

私の見込んだ通り。お前には素質があるようだ。

年老いて体は衰えようとも我が(まなこ)はまだ健在のようであったな。

よってお前に第一の秘儀を授けよう。

――エドモンよ。これからお前めがけて一撃を放つ。

躱してみせよ」

 

 この賢人らしからぬあまりにも単調な攻撃だった。

 オレは神父の放った拳の一撃を難なく躱した。

 完全に。一部の隙も無く躱した。

 

 が、その次の瞬間。

 ファリア神父の拳は俺の顔面に直撃していた。

 

 オレには訳が分からなかった。

 確実に躱したはずの一撃が直撃していたのだからな。

 何を言っているのかわからぬと思うがオレも何をされたのかわからなかった。

 猛スピードだとかそんなチャチなものではない。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。

 

「……ファリア神拳第一の秘儀。『鋼鉄の決意』」

 

 混乱するオレに対しいつものようにファリア神父は泰然自若としていた。

 

「ファリア神拳の最奥に至る入り口となる秘儀だ。

まずはこれをモノにせよ。

その時お前はファリア神拳の極致に至る権利を手に入れる。

覚悟は良いな?」

 

 その日より修業はさらに苛烈さを増した。

 一日三十六時間のトレーニングは終いには四十八時間にまで増えていた。

 

 ――何時しか、さらに十年の月日が流れていた。

 

「良いぞ。エドモンよ。これが第三の秘儀『窮地の智慧』だ。

相手の攻撃を受け流しつつその攻撃を自分の力として利用し、さらに自らの力を載せて打ち出す

究極のカウンター技。使いどころを誤るなよ」 

「はい。神父」

「見事。実に見事だ。エドモン。

これでもうお前に教えることは無い」

 

 ついに修業は終わりを見た。

 十四年。

 十四年の間、オレの心は復讐の情念に満たされ続けていた。

 

 おそらくファリア神拳の基本を覚えた時点で脱獄は出来ただろう。

 だがしなかった?

 

 何故か?

 我が力を完全なモノとするためだ。

 

 そのために耐えて耐えて耐え続けた。

 

「ではオレはこの穴倉を去ろう。感謝するファリア神父。 

そしてアデュー(さようなら)

 

 ついに時は満ちた。

 オレは脱獄を実行に移すため精神の宮殿から独房に戻った。

 

 

「待て。エドモンよ。もう教えることは無いと言ったが……その言葉には続きがある。

『一つを除いては』という続きがな」

 

 独房に戻ったオレの脳内に隣人の声が入って来た。

 そう。説明を忘れていたが精神の共有はファリア神拳の基本動作の一つだ。

 精神の共有により聴覚を使わずに会話を行うことができる。

 

「お前に最終奥義を授ける。

最終奥義は精神と魔力を肉体以上に重んじるファリア神拳の極致と呼ぶべきものだ。

超高速思考を行いそれを強引に肉体に反映することで、主観的には時間停止を行使しているにも等しい超高速行動を実現する。

それがファリア神拳最終奥義『虎よ、煌々と燃え盛れ(ティーガー・ブリュレ・クレール)』だ」

 

 修業は終わりではなかった。

 オレは落胆した。

 一体これからあと何年かかるのだ?

 

「気を落とすなエドモンよ。奥義習得の方法は恐ろしく簡単だ。ほんの一刻で済む」

「その方法とは?」

「これから私がお前に対して最終奥義を放つ。お前はそれを相殺せよ。

最終奥義を双方が放てば必ずどちらかが死ぬが――私が死んだとしてもそれを決して気に病むな。

なぜならばそれがファリア神拳継承者の運命(さだめ)だからだ……」

「な!無茶にも程がある!賢人の看板はどうした!一部の隙も無い脳筋戦法ではないか!

そもそもオレとあなたの間には分厚い壁が横たわっている!どうするつもりだ!」

「むんっ!!!!!!!!!!!」

 

 島中に響き渡るような凄まじい声と共に壁が崩れ去った。

 

「やれやれ……私も衰えたものだ。

全盛期であればこのような脆弱な壁、指一本で崩せたのだがな」

 

 崩れた壁の向こうから現れたのは

――銀髪に髭面で身の丈二メートルはあろうかというゴリゴリマッチョの大男だった。

 

「誰だ……お前は?」

「何を言っている。この身はお前が最も良く知る人物であろう……」

「あなたがファリア神父だと!?嘘をつけ!東方●敗の間違いだろ!

精神の宮殿で見た姿と何一つ一致していないではないか!!

それにいつも身に着けている僧衣はどうした!!?」

「……これのことか?」

 

 ゴリゴリマッチョの大男の手から衣服らしきものが衣服が立ててはいけないような重い音をたてて落下した。

 

「……重さ百キロの肩当てと筋肉を逆さに吊るバネが仕込まれている。

ファリア神拳継承者は全力を振るうと最後の審判の前にこの世を亡ぼしてしまいかねない。

よって平時はその力を抑えている……

ぜぇえああっ!!!!!!」

 

 ファリア神父は拳を突き出した。

 拳は音速の壁を突き破り、風切り音が轟音となって鳴り響いた。

 

「……お望みとあらばこのシャトーディフを五分で平らにしてみせよう」

「……一体どうしてあなたはこの牢獄に囚われているのだ?」

「自分の力が恐ろしいからだ。私は幾十年にも渡り人ならざる闇の力と戦い続けてきた。

幾つもの戦場を経て――私は強くなり過ぎた。

もはや外の世界に私の生きる場所はない。

悟った私は自ら囚われの身となった。

この姿を晒すのは百と五十年ぶりだ。光栄に思うがよい、エドモンよ。

この姿を見せたのはお前がそれに値する存在と認めたからだ」

 

 オレはその時十四年ぶりに恩讐以外の感情が自らの胸中に芽生えているのを感じた。

 ――恐怖だ。

 ――賢人ファリア神父の姿はオレに恐怖以外の何も想起させなかった。

 

「さあ!死にたくなければ我が屍を乗り越えて征くが良い!

我が隣人、そして最愛の弟子エドモン・ダンテスよ!

ハァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 神父の魔力が解放され奔流となって空間を震わせた。

 空間が震えるといわれてもピンと来ぬと思うが、一度体験すれば嫌というほど意味がわかる。

 オレはもう二度と体験したくないがな。

 

 オレはどうにかファリア神父を宥めようとしたが神父は聞く耳を持たずだった。

 やむを得ぬ。

 どうにかしてこの一撃を躱そう。

 オレはそう考えた。

 

「全拘束制御術式解除……加減は無しだ。絶望に打ち克ってみせよ!!

ファリア神拳最終奥義!!!

虎よ、煌々と燃え盛れ(ティーガー・ブリュレ・クレール)』!!!!!!」

 

 オレは全力で回避体制に移行した。

 神父は鋼鉄の決意を併用していたが理屈が分かっているば躱せないことはない。

 躱せる。

 オレはそう確信した。

 

 ――が、オレの脳内にファリア神父と共に過ごした十四年が突如去来した。

 ――神父の教えは時に厳しく、時に苛烈で、時に壮絶だった。

 

 オレは師の最終試験をボイコットしようというのか?

 命を賭した最終試験を?

 

 ――否!!

 

 ――これを躱せばオレは二度とこの人のことを師とは呼べぬ!!!

 

「おおおおおおおおおおおっ!」

 

 魔力と魔力がぶつかり合い、閃光となって広がった。

 

 閃光が止み、いつもの薄暗い牢獄が戻って来た。

 

 一人の男が膝をついた。

 膝をついたのはゴリゴリマッチョの大男だった。

 男の口から鮮血が迸り、やがてその五体は力なく崩れ落ちた。

 

「見事だ……エドモンよ」

 

 ファリア神父は最後の力を振り絞って言った。

 最後の交流になる。そう確信した。

 

 オレは最愛なる師の前に膝まずき続きの言葉を待った。

 

「……お前に二つ伝えることがある。

ティレニア海に浮かぶモンテクリスト島という島がある。

ここを出たらそこに行け」

「そこに何がある?」

「私のかつての仕事場だ。

かつて私は聖堂教会からの依頼で多くの異端を狩って来た。

その仕事をしていた時の武器、装備一式と得た報酬一切がある。

私の全財産だ。派手に散財しても簡単には使い切れぬほどのな。

私の独房に地図がある。持って行くがよい」

「もう一つは?」

 

 ファリア神父の声はさらに弱々しくなっていた。

 次に交わすやり取りが最後になるだろう。

 オレはそう確信した。

 

「最終奥義『虎よ、煌々と燃え盛れ』には継承者が好きにルビを振る権利がある。

良き名を考えろ。その名はお前の体であり心であり――お前そのものだ」

「……では『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)』と」

「何それ……超カッコいい。

お前、センス良いな」

 

 それが師の最後の言葉だった。

 

 オレはシャトーディフを脱出すると一路モンテクリスト島に向かった。

 そして武力と財力とほんの申し訳程度の知略で復讐を敢行した。

 

××××××××××××

 

 エドモンの長い話が終わった。

 ガレットブルトンヌの載った皿は空になり、フレンチプレスになみなみと注がれていたコーヒーは底に僅かになっていた。

 

 ――なんて少年ジャンプだよ。これ。

 

 なんか色々混ざってるぞ。『るろうに●心』とか『ダ●の大冒険』とか『ジョ●ョの奇妙な冒険』とか。

 少年ジャンプの起源は十九世紀のフランスだったのか?

 

「あの……私の知っている『モンテ・クリスト伯』と何一つ一致していないのですが……」

 

 マシュは本の虫だ。

 俺と違ってダイジェスト版ではない『モンテ・クリスト伯』も読んでいるだろう。

 納得いかないのは当たり前だろう。

 ダイジェスト版しか読んだことのない俺でも納得いかないんだから。

 

「そんなものあの作家の脚色に決まっているだろう?あの作家め。聞きたいというから話してやったら

『なにそれ。嘘くせ。少年ジャンプの読みすぎ。もっとリアリティーある方向に書き直すからね?』

などと抜かしやがった」

 

 尚も納得のいかない様子のマシュはさらに質問を続けた。

 

「大デュマの小説では巌窟王は病死したファリア神父の遺体とすり替わって脱出したと記述されていましたが……」

「そんなわけがあるか。あの頑強な肉体の持ち主が病気程度で死ぬわけがないだろう。

後になって気づいたことだが最期のあの時もあの方は手を抜いていた。

あの方が本気で最終奥義を放っていたらオレは五体不満足どころか塵すら残っていなかっただろう」

「あの……では実際はどうやってシャトーディフを脱出したのですか?」

「力技に決まっているだろう。

フッ!やはりあの方には敵わぬな。ファリア神父ならば五分でシャトーディフを平らにしていただろう。

オレが出来たのは十分でシャトーディフを半壊させる程度だ」

 

 ぐだ子も納得いかないらしい。

 

「え?さすがに全部本当じゃないよね?エドモンもつい調子にのって脚色しちゃった的なところあるよね?

ほら、今日のエドモンすごく楽しそうだったし。そうでしょ?」

「くどいな。お前たちは。ああ、だがそうだな。さすがに『東●不敗の間違いだろ!』は脚色だ。

オレも興が乗ってついいらぬ嘘をついてしまった。

それ以外は偽りなき真実だ」

 

 フッと小さく笑うとエドモンは立ち上がった。

 

「さて。さすがに長く引き留めすぎたな。精神の宮殿と違いこの不便な世界では常に一日は二十四時間だ。

明日も予定が詰まっているのだろう?せいぜいその脆弱な肉体を労われ」

 

 エドモンは高笑いをあげて去って行った。

 

「サーヴァントの皆さんから話を聞けるのは嬉しいのですが……」

 

 マシュが言った。

 

「巌窟王の真実は知りたくなかったです……」

 

 なぜだろう。

 俺の胸中にも言いしれない残念な感情が渦巻いていた。




色々と補足。
最初の方に挙げた残ったサーヴァントたちは登場済み、もしくはこれから出す予定のサーヴァントたちです。

「虎よ、煌々と燃え盛れ」のルビはまんまフランス語翻訳。
より正確に言うと引用元となったウィリアム・ブレイクの詩の一節"tyger tyger burning bright"を英語からフランス語にグーグル翻訳した結果です。
(ファリア神父はイタリア人ですがフランスが舞台なので)

巌窟王の宝具名の由来ですがおそらくアルフレッド・ベスターの名作SF『虎よ、虎よ!』
でしょう。
『虎よ、虎よ!』は『モンテ・クリスト伯』を下敷きにしており、さらに作品冒頭で前述の
ブレイクの詩が引用されています。
そういう繋がりから宝具名に繋がったものかと。

作者ですが実は『モンテ・クリスト伯』はちゃんと読んだことがありません。
私の知識は岩浪少年文庫のダイジェスト版とフランスのテレビドラマに由来するものです。
『モンテ・クリスト伯』は純然たる文学というより大衆的なウケを狙って書かれたものでサスペンスとして普通に楽しめます。
が滅茶苦茶長い(文庫で前七冊)です。

私のお勧めは前述のフランスのテレビドラマです。
ジョゼ・ダヤンが演出でジュラール・ド・パルデューが主演。
全五時間四十分という超大作です。
がとてもとても面白いです。
私がだいぶ昔にVHSで見ましたが日本版のディスクが今は出ていますので手にいれられるかたはぜひ見てみてください。
結末が原作と違いますが概ね原作にも忠実です。

なんか後書きがすごく長くなりましたがこの辺で。
今回もお読みいただきありがとうございました。


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アーラシュの受難

ステラァァァァァァァァ!!!!!


流星一条(ステラ)!」

 

 大地を割り国境を作った究極の一矢が炸裂する。

 

「お前は間違っちゃいない……」

 

 その一言と共に東方の大英雄・アーラシュはマドハン……じゃなかった

 黎明の神腕を道連れにして消滅した。

 

 ここは通称「種火狩り」と呼ばれるカルデアゲートから常時開放されている特殊なレイシフト先だ。

 カルデアの召喚システムではサーヴァントを召喚する際、あえて成長の余地を残した状態で現界させる。

 

 なんでそんな事になっているのかというと成長させる手間がないとゲーム的にすぐにやることなくなってしまうから……

 じゃなかった。

 俺にもよくわからない。

 

 とにかくそんなわけで召喚された彼らには成長のために大量の魔力を与える必要がある。

 この腕たちは内に大量の魔力を抱えており消滅させると大容量の魔力を吐き出す。

 つまり餌としてこのなんかでっかい腕をたくさん狩る必要があるわけだ。

 

 この場所に通い始めた当初俺達は普通に広範囲を攻撃できる攻撃宝具の持ち主を集めて定期的に狩りに行っていた。

 

 しかし、カルデアが抱える多数のサーヴァントの成長のためには相当数の出撃が必要となりこのミッションの効率化は当初から大きな課題だった。

 

 そんなある日だった。

 

 ――ぐだ子が悪魔のごとき発想に至ったのは。

 

「ステラっちゃえばいいんだよ」

「……え、なんて?」

 

 その日20体目の腕を消滅させた直後唐突に彼女は言い放った。

 

「考えてみたらさ、宝具を打った後に魔力を充填し直さなきゃいけないんだから

打ったらすぐに宝具解放が近い後衛と交代すればいいんだ。

ステラっちゃえば嫌でも前に出るしかないから完璧じゃん。

後は孔明酷使すれば……」

「ちょ、ちょっと待て!お前自分が何言ってるかわかってるのか?」

 

 ぐだ子の言い分は理解できる。

 それにアーラシュが宝具を打って消滅しても霊基の大元がカルデアに残っている以上時が経てば再召喚は可能だ。

 

 これまで闘いの中で流星一条(ステラ)を解放させたことも一度や二度ではないが

それはそれだけの厳しい戦いだったからだ。

 

 しかもアーラシュは本当に気持ちの良い好人物。

 こんな使い方をするのは良心が……。

 

「周回は効率が命だ。いいからやるんだよ」

 

 ぐだ子の頭身が縮み顔に如何とも形容しがたい平坦な笑顔が浮かんだ。

 

 ……これはいけない。

 

 人間が何故こんな変化を遂げるのか全く原理は不明だがこうなったぐだ子は誰にも止められない。

 人間要塞ジャンヌ・ダルクをワンパンで血の海に沈め、ロンドンに現れたソロモン王をネックハンギングツリーで

半泣きにさせた通称リヨ形態ぐだ子は人知を超えた存在だ。

 誰も彼女には逆らえない。

 

「あ、はい」

 

 その迫力に押され俺は大英雄の宝具解放を指示した。

 

 アーラシュは俺に従うとばかりに真名開帳の口上を始めた。

 

「陽のいと聖なる主よ。

あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ。

我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ。

さあ、月と星を創りしものよ。

我が行い、我が最期、我が成しうる“聖なる献身(スプンタ・アールマティ)”を見よ──」

 

「長い。早く行け」

 

 イラついたぐだ子が彼の背中を蹴り飛ばす。

 それを切っ掛けに、かの大英雄は文字通り流星となって爆散した。

 

 ごめんアーラシュ……。

 

 カルデアに「孔明ステラシステム」という外道ユニットが誕生した瞬間だった。

 

 種火と同じく、カルデアでは定期的に修練場と呼ばれる各クラスごとの戦闘トレーニングが行われる。

 毎週一度、剣の修練場ではアルトリア(アーサー王)が訓練の相手を努めてくれるが

そこでもアーラシュは引っ張りだこだ。

 

 騎士王と弓兵の代名詞とも呼べる東西屈指の大英雄の戦い。

 

マーリンが

「さあ、アーラシュくん。逝ってきたまえ!」

孔明が

「その……いつも大変だな……。正直君には同情の念を禁じえない」

シェイクスピアが

「さあ存分に力を振るってきてください!あなたの勇姿は吾輩がしかと書きとめますぞ!」

 

 大英雄に可能な限りの支援を与える。

 最大強化を施された魂と引き換えの壊れた幻想(ブロークンファンタズム)が騎士王を襲う。

 

「やってやるさ!存分に!流星一条(ステラ)!」

 

大質量の一撃を前にして尚も彼女は踏みとどまろうとする。

 

「ぐっ!この程度で!……すいませんやっぱり無理でした」

 

 アルトリアの霊基がダメージに耐えきれず薄れていく。

 

「……ところで私なんか影薄くありませ」

 

 本編での自身の立ち位置について思うところがあったのだろうか。

 

 しかしその言葉を最後まで言い切ることなくこの修練場から彼女は消滅した。

 そう言えば彼女は常々

「貴方の指示は気持ちがいい。不思議と暖かな気持ちになります」

と俺の事を評してくれているがそれに続けて

「その……アーラシュのあれを除いてはですが…」

とも言っていた。

 

 ほぼ同時にアーラシュの体も薄れていく。

 

「これは……仕方ねぇか」

 

 ぐだ子は表情ひとつ変えずにそれを見ていた。

 

 その後もぐだ子の発案で様々な外道戦法が生み出された。

 

 爆散しつつ味方を癒す癒しのステラ。

 爆散しつつ敵に呪いを付与する妄執ステラ。

 爆散しつつ味方の宝具解放を促進させる慈悲なきステラ。

 そして、パラケルススとアイリさんでアーラシュを踏みとどませながら

何度も爆散させる無限ステラ。

 

「ねえ、アーラシュ」

 

 ある日、仮想訓練で野営中に2人で焚火を囲んだ時思い切って俺は訊ねてみた。

 

「なんだ?」

「その、いつも本当にごめん。こんな扱いされて怒ってるよね?」

 

 彼は笑みを浮かべると俺の頭に「ポン」ッと手を置き答えた。

 

「俺がアレをやれば他の連中の成長が早まる。延いては俺のためにもなるってもんだ。

ぐだ男、お前は気持ちの良い奴だ。やはり俺はマスター運ってやつがいいらしい。

俺自身が善性に導かれる英霊なのかもな」

 

 この人良い人すぎだろ。

 

 誰か悪い奴に騙されたりしてないだろうか?

 具体的にはカエサルとかパラケルススとか。

 

 と案ずる俺に今回は管制室で留守番のマシュから通信が入った。

 

「ぐだ男先輩。お休みのところすいません。敵襲です」

 

アーラシュは勢いよく立ち上がるとさっそくいつもの体制に入った。

 

「さあ、行こうぜ。マスター。いっちょ世界救ってやろうや。

行くぜぇ!流星一条(ステラ)!」

 

 孤独な戦士、獅子のごとく勇敢な彼。

 絵に描いたような正統派英雄の快男児は今日も元気に爆散する。

 

 

 




ギャグ時空なので時間軸とかあんまり気にしてないんですが七章手前当たりの時系列のつもりで書きました。

個人的FGO三大兄貴は槍兄貴、ベオウルフ、そして大英雄なんですが
アーラシュさん、正統派の英雄って感じで本当に格好いいですよね。
実は私、彼に聖杯捧げてしまいました。
好きなもので。そして毎日のように爆散していただいてます。

ちょっと短いですが今回はこれで。
明日、明後日あたりに短い奴をもう一本投稿します。


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エミヤと奇妙な関係者たち

二日連続更新。

ちなみに活動報告に『巌窟王の真実』のオマケを掲載しました。
よろしければ併せてどうぞ。




 カルデアにはまだ多くのサーヴァントが残っている。

 そして彼らの中には生前面識のあった者たちも少なくない。

 

 例えばヘラクレス。

 同じアルゴー船の乗組員だったメディアさんとアタランテは知己の中だ。

 最も残念なことに三人ともその頃の記憶は曖昧ということだそうだが。

 

 俺とぐだ子、それにマシュといういつもの三人で今日は

ダヴィンチちゃんのおつかいのために件の大英雄ヘラクレスを連れて出かけるところだった。

 

 廊下を歩いていると向こうから銀髪に赤目が特徴的な大小2人組と出くわした。

 

 アイリさんとイリヤちゃんだ。

 

 二人を見つけるとヘラクレスはその巌のような体躯を折り曲げて恭しくお辞儀した。

 

「あ!おはようございます。ヘラクレスさん」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!(おはようございます。お嬢様。今日も実に可憐ですね。

このような無機質な空間に不釣り合いな貴女の姿は……そう、まるで荒野に咲く一輪の百合の花のようです)」

「あはは…。その、ありがとうございます」

 

 イリヤちゃんは俺とぐだ子が絆レベル8に到達するまで理解できなかった

狂化している彼の言葉が何故か最初から理解できた。

ヘラクレス曰く「何かこちらのお嬢様とは強い縁を感じます」

とのことだったが全く違う時代に生きた二人にどんな縁があったのか俺には想像もつかない。

 

「おはよう。バサカちゃん」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!(おはようございます。奥様。今日も実に麗しいですね。

お嬢様が荒野に咲く花なら貴女は……漆黒の空を照らす月といったところでしょうか)」

「もう。バサカちゃんったら」

 

 アイリさんも何故か最初からヘラクレスの唸り声が理解できた。

 そして何故彼女が真名を隠す必要のないカルデアで彼をクラス名で呼ぶのかも不明だ。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!(ではお二人ともごきげん麗しゅう)」

挨拶を済ませると彼は見た目に全くそぐわない紳士的な物腰で二人に一時の別れを告げた。

 

××××××××××××××××××××××××

 

 生前に全く縁のありそうになかった人物と何故か知己。

 その点で最も不思議なのはエミヤだ。

 

 エミヤは自身を現代の英霊と言っていた。

 なのに槍兄貴と英雄王とは犬猿の仲。

 

 ヘラクレスさんの事も知っていたし

 アルトリア(アーサー王)とも深い縁があるようだった。

 

彼女にエミヤのことを聞いた時など

「彼とともに戦う時が来るとは、嬉しくもあり、悲しくもあります」

などと言いながら頬を赤らめていた。

 

 いったい過去に何があったんだ。

 この一級フラグ建築士め。

 

 対するエミヤの反応だが、犬猿の仲である兄貴とガメッシュさん以外の知り合いが召喚された時には

いつも曖昧な表情をして沈黙するばかりだった。

 

 これまた複雑な縁のあるアサシンエミヤが来た時もイリヤちゃんが来た時も

ジャガーマンが来た時もひたすらに曖昧な表情を浮かべて効きもしない胃薬を飲むばかりだった

ガングロおかんだがついにその鋼鉄の忍耐を破る存在が現れた。

 

「女神イシュタル、召喚に応じ参上したわ」

 

 夥しい数のi○unesカードを犠牲にし、ウルクで縁を結んだ女神の召喚に成功したその場に

彼も立ち合っていた。

 その姿はついにエミヤの鋼鉄の忍耐を打ち破ったようだった。

 

「信じられん……。以前から災難体質だと思っていたが……まさか、女神に取り憑かれるとは!」

 

 しかしすぐにその表情は平静を保ったものに変化していく。

 

「いや…デミサーヴァントとは言え人格は女神の物。彼女とは別の存在か」

 

 その様子を観察していたイシュタルは召喚陣から降りるとエミヤに近づいて行った。

 曖昧な表情を浮かべて沈黙している彼を彼女はしげしげと眺め観察し始めた。

 しばらく経つとその女神は悪戯な笑顔を浮かべてこう言った。

 

「そう、そういうことね。()()()()()

 

 その言葉を聞いたエミヤの表情に再び驚きの色が混じっていく。

 

「この人格は(イシュタル)と憑代の彼女が混ざったもの。当然あなたの事も良く知ってるわよ。

どう、本当の女神になった私と再会した気分は?」

 

 その言葉に何を思ったか、ニヒルな笑顔を浮かべてエミヤは答えた。

 

「全く。何を言い出すかと思えば。

――君は昔からずっと私の女神だっただろう?」

 

 この答えは女神の意表をも突いたらしい。

 

「な……何言ってるんだか!」

 

 はいはい。ツンデレ乙。

 エミヤの一級フラグ建築士ぶりは女神にも有効なようだった。

 




エミヤとイシュタルの2人。
マイルームに特殊会話があるのですが私こういうの期待してました。
ちなみのこの話はFGOの公式絵師でもあるCrazy Clover Club(城爪草先生)
の同人の一節を元に膨らませたものです。
弓凛いいですよね。
私はFate/stay nightのカップリングではエミヤと凛の組み合わせが一番好きです。


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ぐだ子の豹変

FGOオフィシャルのメタネタです。


 カルデアにおいて俺と対をなすもう一人のマスター、それがぐだ子だ。

 彼女は腐女子ではあるが基本常識人でサーヴァントとの関係も相手を尊重し対話をかかさないように心掛けている好人物だと思う。

 俺がセクハラ発言しても大抵二、三発殴ったら許してくれるし。

 

 食後の一幕、彼女は今日食事を作ってくれたタマモキャットの毛づくろいをしていた。

 

「キャットは毛並みがアップ!」

 

 キャットはとても気持ちよさそうにしていた。

 微笑ましい光景だ。

 

 そんな心優しいぐだ子だが時折豹変することがある。

 

 例えば種火狩りのとき。

 

 ある日、いつものメンバーであるアーラシュ、キャット、エイリーク、孔明、マーリンで腕狩りをしていた。

 

「陽のいと聖なる主よ。

あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ。

我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ。

さあ、月と星を創りしものよ。

我が行い、我が最期、我が成しうる“聖なる献身(スプンタ・アールマティ)”を見よ──」

「口上が長い。早く行け」

 

 ちゅどーん。

 

 ぐだ子の背後からの一撃により有無を言わせず大英雄は爆散させられた。

 

 

「お前は間違っちゃいない……」

 

 金腕を吹き飛ばして消滅していくアーラシュを見るぐだ子の顔に浮かぶ表情

――虚ろな笑顔と逝っちゃってる目――それはとても正義の主人公がしていいものと思えない代物だった。

 

 これはまずい。

 

 前衛と交代したキャットはその姿を見て青ざめた顔で言った。

 

「ご…ご主人、キャットはなんだかちょっとお腹が痛くなってきたのだな」

 

 低ランクながらキャットには狂化が施されている。

 しかし野生の本能で今の主人の姿に危険を感じ取ったらしい。

 

 これは生物の逃走本能だ。

 

 ぐだ子はなんの感情もこもらない声で返した。

 

「そうか、それは大変だ。ならば休むか?……永遠に」

 

 俺の背筋に強烈な悪寒が走った。

 彼女の顔は明らかに真剣そのものだった。

 

「ご……ご主人、急に調子が良くなってきたのだな!いつでもいけるのだな!」

「ならさっさと行け。手間かけさせんなボケ。周回は効率が命だ。私をイラつかせるな」

 

 ぐだ子の頭身が縮まり、リヨ形態に変化し始めた。

 拙い。今の彼女は人類悪以上の災厄だ。

 

 この形態の彼女はソロモン王をワンパンで沈め、魔人柱を素手で薙ぎ払う制御不能の暴力の権化だ。

 

 危機を感じたキャットは即座に宝具を解放する。

 

「うん……というわけで皆殺しだワン!『燦々日光午睡宮酒池肉林』!」

 

 生命の危機を力に変換したキャットの宝具が腕を一掃した。

 

「よし、キャット、良くやった。次のウェーブに行くぞ」

 

 ぐだ子は敵を一掃したキャットにねぎらいの言葉をかけるために近づいていく。

 

「うーん、グッモーニン」

 

 だがキャットは宝具後の回復でお休み中だ。

 

「チ、スタンしやがった」

 

 その姿を見てぐだ子は行動不能のキャットをどこかの木陰に引きずって行った。

 2人の姿が俺たちの視界から消えた直後、遠くから彼女たちの声が聞こえてきた。

 

「な、何をするのだご主人!」

「動けない者は私の部下に必要ない……」

「ごはははははっ!」

 

 グシャア!!という肉が潰れたような音がした後ぐだ子が一人で戻ってきた。

 

 彼女は全身血にまみれた異様な姿で、そして宝箱を1つ抱えていた。

 

「あの…ぐだ子さん?その血はどうしたの?」

「ああ、これ?ちょっとトマトジュースこぼしちゃってさ…」

「そ、そうなんだ。それとさ、キャットどうしたのかな?」

「ああ、調子が悪いって言って……帰ったよ」

「ふ、ふーん」

 

 ウソだ!絶対殺してる!

 なぜなら俺はぐだ子が抱えてきた宝箱の中を見て呟いた一言を聞き逃さなかったからだ。

 

「チ、レアプリ1個か。運営め出し渋りやがって…」

 

 狂気にのまれた者でもこの恐怖は本能的に分かるらしい。

 エイリークが青ざめた顔で絶叫した。

 

「血ダァ……血ダァ……血ダァァアアアア!!

(ぐだ男!令呪でもなんでも使って早く私の宝具を解放しろ!グンヒルドがぐだ子の姿にドン引きして助けてくれんのだ!)」

「孔明!頼んだ!」

「ふむ、ではこうしよう」

 

 孔明の支援を受けた血斧王の斧が唸りを上げる。

 

「ヌゥワワワワワワ!! ブルゥララララララ……」

 

 残った腕を一掃したエイリークにぐだ子もご満悦だ。

 

「よし、良くやった。宝具演出も短いし最適な人材だな。もう一周いくぞ」

「いやあ、では私は遠慮しようかな。役立たずだしさ…」

 

 過労死コンビの1人、マーリンが逃げを打とうと画策する。

 

「そうか、ならば私の部下には必要ないな……。役立たずの芽は早目に摘んでおかないと……」

 

 ぐだ子の目が再び狂気を帯びた物に変化していく。

 

「あはははは。じょ、ジョークだよジョーク。円卓ジョーク」

「なんだ!ジョークだったんだ!…少しも面白くないから本気かと思っちゃったよ?」

 

 マーリン、脱出に失敗。

 

「さあ、お前ら。すぐに行くぞ。キャットの犠牲を無駄にするな」

 

 彼女はそう言ってその逞しい背中と狂気に満ちた目で俺たちを鼓舞する。

 ん?今犠牲って言わなかったか?

 

 

 またある時、証を求めてマルセイユを脳死周回中の事だ。

 

「うん……というわけで皆殺しだワン!『燦々日光午睡宮酒池肉林』!うーん、グッモーニン」

 

 キャットが吹き飛ばした剣ゾンビたちの跡に戦果を探す。

 

「ち、またスキル石1個か!運営めドロップ絞りやがって!奴らは私にストレスしか与えられないのか?」

 

 すでにこのクエストを今日だけで20周以上している。

 AP消費が少ないのとドロップが渋いのが合わさって周回数は増す一方だ。

 三十周し、四十周し…ぐだ子はついに石を割ると言い始めた。

 

 同行していたギルガメッシュも狂気に満ちた彼女の姿に若干引き気味だ。

 

「ざ、雑種。…少し落ち着け」

「b;t@6azeweo;.t!cmcm6j5t@qel)4i3tdh4toq@\4t@!

(これが落ち着いていられるか!そもそもお前が大量に証食うからだろうが!)」

「お、落ちつけ雑種。ラフム語になっているぞ…」

「ギル。あんたの宝物庫に証ないの?」

「フ!勘違いするなよ、雑種。以前にも言ったが我が貴様に仕えているのではない。貴様が我を盛りたてているのだ。

我のマスターであるのなら我への貢物は貴様自らで手に入れてこい」

「チ、しけてやがるな。そんなんだから慢心王@微課金勢とか言われるんだよ…」

 

 ぐだ子の姿に若干引き気味だった英雄王だが流石にこの言葉には怒ったらしい。

 

「貴様、この我を侮辱するか!刎頚に値するぞ!」

 

 背後の空間が歪み最古の宝物の数々が頭を覗かせる。

 

 しかし彼女の目には今、証をドロップするエネミーの姿しか見えていない。

 

「見てろ慢心王、財宝っていうのはこうやって使うんだよ……」

 

 どうやって持ってきたのか、彼女はジャンヌ・オルタ召喚爆死の際に副産物として得た大量の宝石剣とヒュドラ・ダガー

を素手で掴むと雨あられと敵に投擲し、あっという間に沈黙させてしまった。

 

 人間とは思えない膂力で残党を鎮圧させたその姿にさしもの英雄王も怖気づいたようだ。

 しかし震え声になりながらも英雄王のプライドが引き下がるのを許さない。

 

「きききき貴様!きき聞いているのか!ざ、雑種!」

 

 敵エネミーが何もドロップしなかったのを虚ろな目で見ていた彼女だが

傍らにある物に気が付き、それに向かってノーリアクションで拳を振り上げた。

 

「ごはははははっ!」

 

 ぐだ子の拳による一撃が未だ宝具後のおやすみ中だった、キャットの霊基を破壊する。

 彼女は血だまりの中から宝箱を拾い上げると振り返り、爆発寸前の英雄王に言った。

 

「ごめん……。なんの話だっけ?

えっと……そうだ、誰が何に値するんだっけ?」

「お、おう……。さて何の話だったかな……」

 

 レイシフトから戻った後ギルガメッシュは語った。

 

「我も割と残忍な事はしてきたが、流石にあれは引く」

 

 素材のドロップに不満なぐだ子は周回のために石に手を付けようとし始めていた。

 拙い、次のイベント礼装のために節約しないと……

 

「先輩!お願いですから落ちついてください!」

 

 マシュが前に出た。

 彼女はカルデア一の災厄を止める最後の砦だ。

 

 もうマシュの後輩力しか彼女を止められない。

 しかし、後輩力満点の懇願も今の心を失った状態のぐだ子には効かない。

 マシュはぐだ子の心を取り戻すため、そして平和を守るため必死に懇願を続けた。

 

「お願いです!()()()()()()()()()()

 

 ぐだ子の動きが止まった。

 

「ん、今なんでもするっていったよね?」

 

 恐怖に震えながらマシュが答える。

 

「は、はい」

 

 ぐだ子は満面の笑顔を浮かべるとマシュの手を取って木陰へと引っ張り始めた。

 

「あの…先輩?どこへ?」

 

 2人の姿が視界から消えてからしばらくして声だけが風に乗って聞こえてきた。

 

「体は正直ね、うふふ…」

「駄目です先輩オフィシャルじゃ!」

「さあ、早くHなCGを開帳しなさい……」

「アッーーーーーー!」

 

 ありがとうマシュ、君の尊い犠牲で世界は救われたよ…。




「もっとマンガで分かる!Fate/Grand Order」を読んでいない方にはさっぱりだったでしょうね。
ごめんなさい。
まだまだ続きます。


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命がけのバレンタインデー

アッー!

下ネタです。
注意して読み進めてください。


 俺は今、瀬戸際に立たされている。

 

 簡単に状況を説明すると半裸の筋骨隆々とした英霊に迫られている。

 

 性的な意味で。 

 

 説明が足りないようなので補足するが俺は男だ。

 その性的な意味で迫ってきている半裸の筋骨隆々とした英霊も男だ。

 

 そして俺はノンケだ。

 

 これ以上の危機があるだろうか?

 

 ――意味が解らないと思うので少し時間を巻き戻そう。

 

××××××××××××

 

 今日は二月の十四日。

 バレンタインデーと呼ばれるイベントで世間は賑わう。

 

 この雪に閉ざされたカルデアでもそれは変わらない。

 ことこの習慣は俺の生まれ故郷である日本でイベントとして盛り上がるが偶然にも、もう一人のマスターのぐだ子も日本人だ。

 

 なので自然、恋人同士だけでなく友達や同僚とも盛り上がれる日本式のバレンタインデーになった。

 

 俺は女性陣から貰う立場に。

 ぐだ子は「日頃の感謝を込めて」男性のサーヴァントたちに一人ひとりチョコを渡していた。

 

 ぐだ子は男性サーヴァントたちから絶大な人気を誇っている。

 

 アンデルセンやギルガメッシュのように素直でないながらも礼を言う連中、

円卓勢のように恭しく受けとる連中、クーフーリン兄貴のように素直に喜んでくれる連中。

 

 反応は様々だったが皆、一様に嬉しそうな様子だった。

 

 特に黒髭など大粒の涙を流して喜んでいた。

 予想通りの反応ありがとう。

 

「ぐだ男。お願いがあるんだけど」

 

 あらかた渡し終えて残る男性サーヴァントは一人となった。

 その時点でぐだ子はとても申し訳なさそうに切り出した。

 

「わかってるよ。伯父貴でしょ?」

「そう。それなんだけど……」

 

 伯父貴ことケルトの戦士、フェルグス・マック・ロイは一言でいうと性欲魔人だ。

 しかもそれを少しも隠そうとしない清々しいもといちょっと困った人だ。

 

 ぐだ子曰く「目に見える範囲内にいるだけで身の危険を感じる」らしい。

 

「流石に渡さないっていうのは不味いからさ。ぐだ男から渡しておいてくれない?

日頃の感謝を込めてっていうことでさ。伯父貴も嫌だとは言わないと思うし」

 

 ごもっとも。

 そんな人物にバレンタインデーのチョコなど渡したらナニが起きるかわからない。

 義理チョコを男から男に渡してはいけないというルールがあるわけでもない。

 「いいよ」と俺は軽く請け負った。

 

 報酬というわけではないだろうがぐだ子からチョコ貰ったし。

 まあこのくらいはいいだろう。

 

 ――という俺の判断は大いなる誤りだった。

 

××××××××××××

 

「ほう。お前から俺にか?」

 

 俺がフェルグスの伯父貴にチョコを渡すと

渡された本人はその甘い菓子の入った小さな箱をしげしげと眺めた。

 

「そうですよ。いつもありがとうってことでね」

「うむ。そうか」

 

 やはり男から渡されたのが不満だったのかいつも豪放磊落、快活な伯父貴は黙り込んだ。

 

 そして――

 

「よし!お前の気持ちはよく分かった!」

 

 ――服を脱ぎ始めた。

 

 ――何を言っているのかわからないと思うが俺にもわからない。

 ぐだ男、混乱状態。

 

「あ、あの……フェルグスさん。どうして服を?」

「ん?言っただろう。『お前の気持ちはよく分かったと』

俺は経験豊富だ。優しくしてやるから安心しろ」

 

 いやいや意味わからないです!

 

「え?え??え???

あのほんと意味わかんないです。

どうして?どうして?」

「どうして?決まっているだろう。

――お前を抱くためだぁ!!!!!!!」

 

 …………

 

 え?

 えーーーーーーー!!!!!!???????

 

「ふふふ。あまりに嬉しくて言葉も出ぬか!」

「いやいや!待ってくださいよ!フェルグスさん!

前、『女が好きだ!』って言ってたじゃないですか!

俺、男!俺、男ですよ!?」

「ん?俺はそのようなことは言っておらぬぞ?

俺は『()()女が好きだ!』と言ったのだ」

「あの……つまり?」

「場合によっては……男も好きだぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 ヤバい!

 

 ほぼ全裸になった伯父貴はじわりじわりと近寄ってくる!!

 

 このままでは!!!

 このままではぁぁぁ!!!!

 

「ふふふ。ぐだ子のことはいつも堂々と視姦していたが実はお前のことも密かに性的な目で見ていたのだ!

レオニダスのトレーニングの成果か?なかなか締まった良い尻をしているとな!

喜べ!ぐだ男!最高の初体験にしてやる!!」

「いやいやいや!!!俺はノンケですから!!!!ノンケですから!!!!

やめて!!!!!まじでやめてぇぇぇぇぇl!!!!!」

「ハッハッハ!!!!

抵抗ならば構わんぞ!!!!

俺もタダで綺麗な尻穴が手に入るとは思っておらん!!!!!

安心しろ!痛いのは最初のうちだけだ!!!!!!!

お前は最後には腰を抜かすぞ!!!!!!!!」

 

 ――俺の脳裏を様々な出来事が走馬燈のように駆け巡った。

 

 マシュと初めて手を繋いだ時のこと。

 ソロモンの神殿から帰ってきてマシュと抱きあって喜びを分かち合ったこと。。

 マシュと一緒にあの青空を見た時のこと。

 

 麗しの風貌を使ったデオンの横顔を見て「綺麗な人だなぁ」と思った時のこと。

 飛びついてきたアストルフォからこの世のものとは思えないような良い匂いがしてときめいたこと。

 ベディヴィエールを見て「美人だな」と思ったこと。

 子ギルに「ここがこんなに居心地いいからいけないんですよ?」と言われてキュンとしたこと。

 ナイチンゲールさんに抱きかかえられるラーマを見て「か、かわいい……」と思ったこと。

 

 ……待て待て待て!

 

 全員男じゃないか!!

 

 俺はノンケ、俺はノンケ!!

 

 そうだ。

 まだマシュからチョコを貰ってない。

 

 俺はマシュからチョコを貰わなければいけないのに死んでは義務が果たせない。

 

 ――こんなところで死んでたまるか。

 ――平気で人を組み敷こうとする――お前なんかに!!!

 

「令呪三画すべてを以って命ずる!

誰でもいい!!アーチャー、来てくれ!!!」

 

 令呪が焼失し魔力の奔流となって迸った。

 そして令呪の強制力によって三騎の弓兵が召喚されていた。

 

「令呪まで使って一体何の用だ?」

 

 召喚されるや否や我らが世話好きおかん、エミヤが口を開きそして絶句した。

 

 腰を抜かしている俺。

 ほぼ全らの筋骨隆々とした大男。

 この光景をみたら妥当な反応だと思う。

 

 しばらく沈黙が続いて

 三人の弓兵は順々に口を開いた。

 

「……これは……たまげたなぁ。

その、なんだ。終わったらまた呼んでくれ」

「マスター……オタク、やっぱりそういう趣味があったワケで?」

「うーん。僕もちょっとこれは無理かな」

 

 これはまずい。

 呼び出された三人の弓兵、エミヤ、ロビン・フッド、ダビデは一様に状況を勘違いしている様子だった。

 

「違うよ!助けて!!

タ・ス・ケ・テ!!!」

 

 俺の必死の叫びに「ああ……」とエミヤは大きく首を縦に振った。

 ロビンとダビデさんもようやく納得がいった様子だった。

 良かった……助かった。

 

「つまり……我々にも混ざれということか。

しかしそれには些か覚悟が足りないな。

せめて令呪をもう一画使ってくれれば不承不承ながらもなんとかなるかもしれないが……」

「マスター。俺はこれでもアンタには感謝してるから頼みなら聞いてやりたいんだけど

俺、そっちの方面はちょっと……」

「僕は地味に欲に塗れてるけど……うーん……ちょっとむずかしいなぁ……」

 

 助かってなかった!

 

「違うよ!エミヤもロビンもダビデさんも普段は物わかりいいのにどうしていきなり難聴系になるの!

マジで助けて!!犯される!!!」

 

 その間にもほぼ全裸のフェルグスさんは迫ってくる。

 

「ハッハッハ!天は俺に味方したようだな!

安心しろぐだ男!男とか女とかそんなことは些細な問題だ!

お前には新しい世界を見せてやる!

これが……ケルトだぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!!!」

 

 アッー! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

××××××××××××

 

 結論から言うと。

 俺は間一髪のところで難を逃れた。

 

 主人公で良かった……

 

 俺とぐだ子はサーヴァントを通じてレイラインで繋がっている。

 

 有難いことに彼女が危機を察してくれたのだ。

 

 駆け付けたぐだ子は――もはやマシュ以外誰もが知っているが彼女はほんのり腐っている――くそみそな状況に軽くよだれを垂らしながらも

令呪でフェルグスさんを止めてくれた。

 

 その後フェルグスさんはスカサハ師匠からお仕置きを受けたが

お仕置き(物理)を受けているフェルグスさんは嬉しそうにしか見えなかった。

 

 絶対この人懲りてない……

 

 俺は間一髪のところで処女を死守できた。

 しかし心の傷は癒えない。

 

 以前にぐだ子が流布させた俺と男サーヴァントたちのホ●同人のせいで俺には常に●モ疑惑が付きまとっている。

 それが今回の一件で再燃してしまった。

 

 マシュからは無事にチョコを貰えた。

 「先輩……元気出してください」と言われたが。

 あまりにもショックは大きすぎた。

 

 ケルトまじ怖い。

 俺は心からそう思った。

  




くそみそですいません。


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命がけのバレンタイン - 異聞

前回の別パターンです。
唐突に思い付いて書いてしまいました。
なんかバトルしますがド下ネタです。
引かないでください。



 

 俺は今、瀬戸際に立たされている。

 

 簡単に状況を説明すると全裸の筋骨隆々とした英霊に迫られている。

 

 性的な意味で。 

 

 説明が足りないようなので補足するが俺は男だ。

 その性的な意味で迫ってきている半裸の筋骨隆々とした英霊も男だ。

 

 そして俺はノンケだ。

 

 これ以上の危機があるだろうか?

 

 ――意味が解らないと思うので更に補足しよう。

 

 今日はバレンタインデーだ。

 

 男サーヴァントたちから絶大な人気を誇るもう一人のマスター、ぐだ子は男サーヴァントたちに日頃の感謝をこめて

一人一人チョコを渡していた。

 

 一人を除いて。

 

 その一人が性欲魔人、ケルトの戦士フェルグスさんだ。

 

「伯父貴に渡したら絶対にR18展開になる。年齢規制はまずいからぐだ男が渡してくれない?」

 

 とぐだ子に頼まれた俺は「いいよ」と請け合った。

 

 別に男から男に義理チョコを渡してはいけないルールがあるわけでもない。

 報酬というわけではないだろうがぐだ子からチョコ貰ったし。

 まあこのくらいはいいだろう。

 

 さすがにフェルグスさんも男は襲わないだろうし。

 

 ――そう思った俺はどうしようもないアホだった。

 

 俺がチョコを渡すとフェルグスさんは「返礼をしなくてはならんな」と言って

 ――おもむろに服を脱ぎはじめた。

 

 何を言っているかわからないと思うが俺もわからない。

 

「ふふふ。ぐだ子のことは常時視姦していたが実はお前のことも密かに性的な目で見ていたのだ!

レオニダスのトレーニングの成果か?なかなか締まった良い尻をしているとな!

喜べ!ぐだ男!最高の初体験にしてやる!!」

 

 ――あ、これアカンやつや。

 

 ――俺の脳裏を様々な出来事が走馬燈のように駆け巡った。

 

 マシュと初めて手を繋いだ時のこと。

 ソロモンの神殿から帰ってきてマシュと抱きあって喜びを分かち合ったこと。

 マシュと一緒にあの青空を見た時のこと。

 

 いい人生だったかもしれない。

 

 

 ……………………

 

 

 いや、まだだ。

 まだマシュからチョコを貰ってない。

 

 俺はマシュからチョコを貰わなければいけないのに死んでは義務が果たせない。

 

 ――こんなところで死んでたまるか。

 ――平気で人を組み敷こうとする――お前なんかに!!!

 

「令呪三画すべてを以って命ずる!

誰でもいい!!アーチャー、来てくれ!!!」

 

 令呪が焼失し魔力の奔流となって迸った。

 そして令呪の強制力によって三騎の弓兵が召喚されていた。

 

「令呪まで使って一体何の用だ?」

 

 召喚されるや否や我らが世話好きおかん、エミヤが口を開きそして絶句した。

 

 腰を抜かしている俺。

 ほぼ全らの筋骨隆々とした大男。

 この光景をみたら妥当な反応だと思う。

 

 しばらく沈黙が続いて

 三人の弓兵は順々に口を開いた。

 

「……これは……たまげたなぁ。

その、なんだ。終わったらまた呼んでくれ」

「マスター……オタク、やっぱりそういう趣味があったワケで?」

「うーん。僕もちょっとこれは無理かな」

 

 これはまずい。

 呼び出された三人の弓兵、エミヤ、ロビン・フッド、ダビデは一様に状況を勘違いしている様子だった。

 

「違うよ!助けて!!

タ・ス・ケ・テ!!!」

 

 おかんは渋い顔している。

 駄目だこれ。

 絶対伝わってない。

 

「……助けて(混ざって)?」

「違うよ!なんで普段は物わかりいいのにどうしていきなりエロゲ主人公みたいになるの!?

どんなレベルの難聴だよ!」

「いや。私はもともとエロゲ主人公だし」

「そういうメタネタはいいから!助けて!

()()()()()

 

 俺の必死の叫びに「ああ……」とエミヤは大きく首を縦に振った。

 ロビンとダビデさんもようやく納得がいった様子だった。

 

「よいしょっと」

 

 まず最初に動いたのはダビデさんだった。

 治癒の竪琴のスキルにより俺に守りの加護が付与される。

 

「いやあ。ごめんねぐだ男くん。

僕はてっきり君はガチムチが好きなのかと思ってたよ」

「いやいや!どうしてそんなことになってるんですか?

俺言いましたよね?『おっぱいが好きだ』って」

「ごめんごめん。『雄っぱいが好き』なのかと思ってたよ」

「どうして裏をかくような解釈するんですか!?」

 

 ああ、もう。

 どうしてこんな誤解が?

 いや待てよ、ひょっとして……

 

「ロビンもそう思ってたの?」

「マスター。悪い。俺もてっきりオタク、実はガチムチが好きなんじゃないかと思ってわ。

でもこの様子をみるとマジに必死みたいだから。誤解して悪かったな」

「誤解?一体何を誤解してたの?」

「『雄っぱいが好き』って言ってたから……」

「なんで同じ解釈間違いするの!?正面から解釈してよ」

 

 なんてこった。

 まさか 

 

「え?ひょっとしてエミヤも?」

「マスター。すまない。私も君を誤解していた。

マシュのことが好きだと言っていたが一周半して実はカモフラージュなのだと思っていた」

「なんで?」

「敵を欺くにはまず味方からと言うだろう?すまない。

……とにかくこれで心の迷いは晴れた。ケルトの勇者フェルグスよ。

マスターの貞操を守るのもサーヴァントの重要な役目だ。押し通るというならば覚悟してもらおう」

 

 三騎の弓兵はそろって臨戦態勢に移った。

 フェルグスさんは心変わりする様子なし。

 

 相変わらず全裸のまま――その手にはカラドボルグが握られていた。

 

「良かろう。血を流したいと見える。

――尻穴からな」

 

 全員の顔から揃って血の気が引いた。

 

 駄目だこの人。全員相手にする気だ。

 

 性的な意味で。

 

「おい。ダビデのおっさん。今日はサボるなよ」

「わかっているよ無名くん。僕だって処女を失うのはご免だ。

無銘くん。前衛は任せたよ」

「請け負った。サポートを頼む」

 

 いつも凸凹な三人だが、この瞬間彼らは戦友となった。

 

 

××××××××××××

 

 三人の連携は見事だった。

 

 エミヤが前衛で戦い、ダビデさんがサポートし、ロビンが妨害する。

 戦局を優位に進めていた。

 

 だが何かがおかしい。

 嵐のような攻撃を受けながらもフェルグスさんには少しも効いていないように見える。

 

 俺も可能な限りの支援をしたが次第に押され始めていた。

 

 明らかにおかしい。

 今日のフェルグスさんは強すぎる。

 こんな姿は見たことがない。

 

 一体どうしたんだ?

 俺はマスターに与えられたスキルを使いフェルグスさんのステータスを確認した。

 

 すると。

 全てのステータスがEXランクになっていた。

 

 え?

 どういうこと?

 

「気づいたようだなぐだ男よ」

 

 フェルグスさんは攻防を繰り返しながら俺に語り掛けた。

 

「え?どういうことですかこれ?」

「簡単なことだ。ケルトの戦士は唯煩悩によって最大の力を発揮することが出来る。

――つまり。今の俺は最強ということだ」

「いや、それディルムッドも兄貴も全力で否定すると思いますよ……」

「ハッハッハ!細かいことは気にするな!

現に俺は男とか女とか細かいことは気にせんぞ!

お望みとあらばお前とぐだ子を同時に相手しても構わんぞ!」

「やめて!マジでやめてください!」

 

 変わらず攻防は続いている。

 だが戦局は明らかに不利な方向に傾きつつあった。

 

 このままでは『Fate/Grand Order』が『Fate/くそみ●テクニック』になってしまう。

 

 こうなったら最終兵器だ。

 彼女を呼ぶしかない。

 

 俺は必死に考えを巡らせ、対男性サーヴァントの最終兵器女神エウリュアレに加勢を頼むことにした。

 まず戦う三人に念話で「もう少しだけ持ちこたえて欲しい」と告げ最後の一手に動いた。

 

「アステリオス、聞こえる?」

「うん。きこえるよ。ぐだお」

 

 気まぐれな女神さまに物を頼むのは難しい。

 しかもこんなくそみそな状況を知ったら嫌がるに決まっている。

 

 あ、そういえばどうしてわざわざさっきは令呪なんか使ったんだろう。

 普通に念話で呼べばよかった。

 

 いや、過ぎたことはもういい。

 とにかく今は女神の助成だ。

 

 気まぐれなエウリュアレでもアステリオスの言う事ならば聞いてくれる可能性がある。

 俺は状況を簡単に説明したうえで視覚をアステリオスと共有し今の現場を見せた。

 

 全裸で三人を相手にするフェルグスさんをみてアステリオスはまず言った。

 

「……すごく。おおきいです」

「いい反応ありがとう!とにかくエウリュアレを説得して!」

「わかった。ぼくがんばってみる」

 

 レイラインを通して二人のやり取りが聞こえてくる。

 

「嫌よ」

 

 女神さまはくそみそな状況をしって当然ながら拒否した。

 

「どうしてもだめ?」

「嫌よ」

「ますたーがあぶない……」

「知っているわ。でも他の英霊が戦っているのでしょう?

知っていると思うけれど私、戦闘向けじゃないの。任せておけばいいじゃない」

「ますたーはえうりゅあれにたすけてほしいっていってる」

「あのねえ、アステリオス。私は女神なの。穢れてはいけない存在なのよ?

あんな汚らわしいものに宝具を使ったら無垢でなくなってしまうわ」

 

 それでもアステリオスは食い下がる。

 

「どうしてもだめ?」

「駄目なものは駄目。この話はお終い」

 

 取り付く島無しだった。

 アステリオスが落胆する様子がレイラインを通じて伝わってくる。

 

「……わかった」

「そう。わかればいいのよ」

「じゃあぼくひとりでいく。

ぐだお、いいひと。ぼく、ぐだおのことまもりたい」

 

 ほんとこの子けなげだなぁ……

 

「あらそう。ならば頑張ってね」

「うん。わかった。えうりゅあれ、へんなことたのんでごめんね。

……いままでありがとう」

 

 説得は失敗だったがアステリオスが助けに来てくれた。

 アステリオスの迷宮による妨害で戦局は一時的に良くなった。

 

 だがやはり敵は強力過ぎた。

 

 もう四人とも限界だ。

 このままではくそみそな展開になってしまう。

 

「良い準備運動になったぞ。

括約筋の状態は万全か?」

 

 駄目か……

 ちくしょう。あと少しだったのにな

 

「さあ行くぞ!真の虹霓をご覧に入れよう!」

 

 ああ。終わった。

 ぐだ子、あとの事は頼んだ……

 

 マシュ。

 いままでありがとう。

 不甲斐ないマスターでごめん……

 

女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)!」

 

 その時。

 一筋の光が横切り性欲魔人の股間を直撃した。

 

 性欲魔人フェルグスさんはその一撃になす術なく崩れ落ちた。

 

「……志半ばで倒れるか。これもまた戦士の宿命か」

 

 まさかの女神さまが助けに来てくれた。

 

 エウリュアレは半死半生の俺たちを産業廃棄物でも見るような目で見降ろしていた。

 

「どうして助けに来てくれたの?」

 

 俺が問うと彼女は答えた。

 

「アステリオスを傷つけた。それが理由よ」

 




 くそみそですいません。
 活動報告にオマケを書きました。

 マシュといちゃいちゃします。
 でもギャグです。
 しかも下ネタです。
 許容できる方はご覧ください。


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円卓のマゾたち

久しぶり投稿です。
プレー動画を見てて思い付きました。
内容はタイトル通りです。


「我が王に誓って!」

「黙れ」

「……はい」

 

 今日は週一回の恒例行事。

 槍の修練場だ。

 新たな特異点、亜種特異点の発生により戦いはまだ終わっていないことが分かった。

 現有戦力は底上げしておく必要があるため修練場を交代で回っている。

 ぐだ子は種火狩りに行き、俺はマシュをつれて修練場に来ていた。

 

 今回のメンバーは円卓最強の騎士ランスロットとオルタの方のアルトリア。

 二人とも強烈な火力を持っているためサクサクと進んでいた。

 

 ランスロットは終始オルタに罵倒されていた。

 オルタの性格とランスロットとの生前の関係を考えればそれもやむ無しだろう。

 ランスロットには悪いことしちゃったな。

 後で謝っておこう。

 

「王よ。不躾を承知でお願いがあります」

 

 修練場のクライマックス。

 担当のエリザベートを前にしたところ今まで寡黙に振舞っていたランスロットが突然言った。

 

「何だ?言ってみろ」

 

 オルタが冷たく言い放った。

 ランスロットもさすがにちょっと堪えてるのかな。

 性格的に言って抗議するようなことはしないだろうけど。

 

「……もっと罵ってはいただけないでしょうか?」

 

 斜め上の反応だった。

 ああ、そういえば罵られるたびにちょっと嬉しそうな顔をしていたような……

 

「ランスロット卿」

 

 彼女は深くため息をついた。

 

「はい」

 

 オルタが残飯で見るような目でランスロットをにらみつけて

 

「お前。気持ち悪いな」

「……はい。私は気持ち悪いです」

 

 ランスロットの表情は恍惚に満ちていた。

 

「何だ?罵られて喜んでいるのか?この変態め。

女好きでヒトヅマニアな上にマゾか。

どうしようもない奴だな。この穀潰しめ」

「……はい。私はマゾで変態で穀潰しです」

「貴公に比べれば生ごみのほうがまだ利用価値がある。

ゴミは焼却すればエネルギーになるからな。

貴公は地上で最下等の生物だ。汚染物質をかき集めた塊よりも価値がない。

呼吸をしているだけで目障りだ」

「……はい。生きていて申し訳ありません。我が王よ」

 

 ランスロットは完全にアッチの世界にトリップしていた。

 円卓最強の騎士が台無しだ……

 

「お父さん。気持ち悪いです……」

 

 マシュはドン引きしていた。

 

「マシュ……」

 

 マシュのきつい一言でランスロットがアッチの世界から帰ってきた。

 息子兼娘に言われるのはさすがにキツかったのだろうか。

 マシュは

 

「あ……すいません。さすがに言いすぎました」

 

 と謝罪したが返って来たのは斜め上の反応だった。

 

「……もっと罵ってくれないか?」

 

 Oh……

 

「もっと罵ってくれ!頼む!私は罵ってもらうことでしか己を保てないのだ!

どうか頼む!」

「やめて!近寄らないで!先輩!助けてください!」

「マスター!あなたにもお願いしたい!私を罵ってください!

あなたに罵られるのであれば本望です!」

 

 俺は興奮したランスロットを令呪で宥めた。

 ランスロットは罵倒されることで凄まじい力を発揮した。

 普段からカルデアにいるセイバーでも最強クラスの実力者だが今日のランスロットは凶悪な強さだった。

 なんのサポートもなく一発でエリザベートを沈めた。

 

「マスター。我を失い面目次第もございません」

 

 戦闘後。ランスロットは礼儀正しく謝罪に来た。

 

「私はずっと王にこの身を罰してほしいと願っていました。

ですがどうやら私は真の願いを自分自身が理解していなかったようです。

私は……王に罵って欲しかったのです」

 

 ランスロットの顔は晴れやかだった。

 

 その時の俺はまだ知らなかった。

 

 これが円卓の性癖の一端でしかないことを。

 

 剣の修練場の日。

 今日はトリスタンの担当だった。

 本来ならばアーチャークラスで固めるところだがトリスタンのリクエストでアルトリア・オルタが同行した。

 

 嫌な予感がしたが意図的に嫌な予感を無視して俺は修練場に向かった。 

 

 修練場の担当は黒化していない方のアルトリアだ。

 

「本気で行きましょう。トリスタン卿」

 

 いつもならばちょっと申し訳なさそうに戦うトリスタンだったがこの日は様子が違った。

 トリスタンはアルトリアをガン無視するとオルタの方を向いて言った。

 

「王よ」

「どうした?トリスタン卿」

「ランスロット卿から聞きました。あなたにたっぷりと罵られたと……

私は羨ましい。私のことも罵ってはいただけないでしょうか?」

 

 オルタがトリスタンを見る目は集積場の生ごみを見るのとまったく同じものだった。

 彼女は深くため息をつき

 

「貴公など罵る価値もない。捨てゼリフを吐いてキャメロットを去った恥知らずめ」

「……はい。私は恥知らずです。如何様な申し開きもできません」

「誰が返事をしていいと言った?その声が私の鼓膜を震わせるだけで不快だ」

「はい。申し訳ありません。王よ」

「誰が謝罪していいと言った?

貴公に謝罪などされては余計に不快だ。寿命が縮みそうなレベルでな。

今、貴公の謝罪のせいで私の寿命が数年縮んだぞ、どうしてくれるのだ?トリスタン卿」

 

 罵る価値もないと言いながらよくここまで罵倒の言葉が出てくるな……

 実はオルタもノリノリなんじゃないか?

 

「私にできることでしたらなんでも……」

 

 トリスタンは興奮で体を震わせていた。

 マシュとぐだ子が同行してなくて良かった。

 とても見せられない。

 

「では呼吸をするな。

二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出せ。

役立たずなりに地球に貢献してみせろ」

「はい。努力します。王よ」

「誰の許可を得て人並みに人語を話している?貴公はブタだろう?ならば鳴き声で返事をしてはどうだ?」

「はい」

「はい?」

「……ブヒ……ブヒ」

 

 トリスタンがブヒブヒと言うたびに魔力が充填されていくのを感じた。

 これが円卓の真の力か……

 こんなこと知りたくなかった。

 

 ブヒブヒという鳴き声を発すると真名の開放もなしで宝具が解放された。

 凄まじい威力の一撃に修練場担当のアルトリアは撃沈した。

 

「あの……私なんか影薄くありませんか?」

 

 無念の一言とともにアルトリアは沈んだ。 

 

 一周巡って次の週の槍の修練場。

 今度はガウェインが出陣していた。

 彼の希望でアルトリア・オルタが同行した。

 もう嫌な予感しかしない。

 

「……どうした。ガウェイン卿」

 

 ガウェインは終始落ち着かない様子だった。

 その様子からアルトリア・オルタは察したらしい。

 うんざりした様子でガウェインに問いかけた。

 カウェインはいつもの爽やかなイケボで最低なことを言った。

 

「私の事も罵っていただけないでしょうか?」

 

 オルタは深くため息をつくとゴキブリでも見るような目でガウェインを見て

 

「まったく。バスターで殴るしかない脳の無い脳筋ゴリラめ。

貴公よりレオニダスの方が百倍は賢いぞ」

 

 

 後日、円卓唯一の良心ベディヴィエールにその話をすると彼は頭を抱えた。

 

「以前から彼らにはその傾向がありました。あの頃は王に怒られたことを密かに喜ぶ程度だったのですが……

そこまでこじらせていたとは……」

 

 円卓は元々マゾ集団だったらしい。

 そんなこと知りたくなかった……

 

×××××××××××××

 

「僕はセイバー。君を守り、世界を守る───サーヴァントだ」

 

 夥しい数のiTu●eカードを犠牲にその英霊は爽やかに召喚に応じた。

 彼の名前はアーサー・ペンドラゴン。

 名高いアーサー王伝説の核を成す最高クラスの英霊だ。

 

 彼は特殊な事情で縁がつながった平行世界の英雄だ。

 こちらの世界のアーサー王は金髪碧眼の美少女。

 平行世界のアーサー王はピカピカのイケメン。

 憎たらしいほどのハンサムという表現があるが、彼は憎たらしさすら感じないほどのイケメンだった。

 

 きっと女湯を覗きにいったのがばれても「もう……エッチなんだから♡」と許されてしまうに違いない。

 

 アーラシュとは別世界の聖杯戦争でかかわりがあったらしい。

 二人は敵同士でありながらお互いを善きものとして認め合っていたらしい。

 再会を喜んでいた。

 若い方のクー・フーリンとも関係があったらしい。

 ぐだ子は再会を喜ぶ二人の姿を見てよだれを垂らしていた。

 

「ピカピカのハンサムな騎士と精悍なアーラシュのカップリング……いい。とてもいい」

 

 彼女が腐っているのはもはや公然の事実だった。

 今や気づいていないのはマシュぐらいだ。

 

 召喚に成功した俺とぐだ子はアーサーを連れてカルデアを案内していた。

 彼が歩くだけ花が咲き、甘い匂いが粒子になって舞い上がっていた。

 すれ違うたびにカルデアの女性職員が気絶していた。

 一定以上の魔力抵抗が無いと耐えられないらしい。

 これはまずい。

 マーリンかダヴィンチちゃんかホームズかその辺に相談しておこう。

 

「おい……テメエ」

 

 彼を連れていると一人の英霊がこちらに寄ってきた。

 円卓の騎士、モードレッドだ。

 アーサーの話ではどうもマーリンとモードレッドはこっちの世界とあちらの世界で性別が異なるらしい。

 

 モードレッドにしてもアーサーにしても初対面の筈だがどうやら彼女は直感で何かを感じ取ったらしい。

 モードレッドはアーサーに詰め寄ると

 

「テメエ、何で父上と同じ気配を発してんだ!?」

 

 ぐだ子が「あの……モーさん、説明するからちょっと落ち着いて」と宥めようとする。

 驚きで黙っていたアーサーだったがその表情はすぐに落ちついたものになっていた。

 彼は説明を始めたぐだ子を「任せて」と下がらせると

 

「この世界のモードレッドは可愛らしいね」

 

 という反則技を繰り出した。

 モードレッドは瞬時に真っ赤になって

 

「か、かわいくねーし///」

 

 と悪態をついた。

 セリフの後ろに///が見える。

 反逆の騎士がもはやただのツンデレっ子だ。

 

「ははは。何だい反抗期か?そういうの大歓迎だよ」

「う、うるせー///」

 

 モードレッドが落ち着いたのを確認して俺とぐだ子は交互に事情を説明した。

 これでいてモーさんは素直な子だ。

 説明を聞くと割とあっさり納得した。

 

「……おい、テメエ」

 

 説明を聞き終えるとモードレッドはもじもじし始めた。

 

「テメエ?……その呼び方はちょっと傷つくな」

「あ……ごめん」

 

 あの乱暴なモーさんが完全に手懐けられてる。

 

「……えっと……ち、父上///」

「何だい?モードレッド」

 

 アーサーが爽やかに言うと

 

「……さっきのもう一度言ってくれねーか?」

 

 モードレッド完全に真っ赤。

 こんな姿を見る日が来るとは思わなかった。

 アーサーは真剣なまなざしになりモードレッドのすぐ眼前まで近づいてまっすぐ彼女を見据えた。

 

「モードレッド」

「は……はい///」

「僕の知っているとモードレッドは君ではないモードレッドだが別人であると同時に同一人物でもあるらしい。

だから今、この場では君と僕の知っているモードレッドは同一だという前提で君に向き合いたい。

構わないかい?」

「は……はい///」

 

 アーサーは深く息を吸い込むともはや憎たらしさすら感じられないほどのイケボで続けた。

 

「……僕は予言に従い君を唾棄した。それが王の責務だと思ったからだ。

今更だが僕は間違っていたよ。どのような国も亡ぶのが定めだ。

高貴な選択をしたつもりだったが最低の人間で最低の父親だな。僕は」

「い、いや……いいって。オレもその……悪いところはあったわけだし///」

 

 モーさん完全に陥落。

 完璧すぎて反抗する気すら起きないパパと娘にしか見えない。

 そしてアーサーは止めに移った。

 

「だから君が望むのならば何度でも言おう。

……僕の可愛いモードレッド」

 

 キラキラという擬音語とともにバラの花が咲き誇り、香水のような甘い匂いが光の粒子になって舞い上がった。

 

「はわわわわ……ち、父上///」

 

 ブバっと勢いよく鼻血を噴出してモーさんは気絶した。

 

「きゅう……」

 

 これが……イケメン無罪。

 

「おや!大変だ。医務室はどこだい?」

 

 彼の一言で我に返った。

 

「あ……こっちです///」

「あ……案内します///」

 

 俺とぐだ子はしどろもどろになりながら何とか返答した。

 

「よし!行こう!これは世界を救う戦いだ!」

 

 アーサーはモーさんをお姫様抱っこすると俺たちの先導で医務室に向かった。

 

 モードレッドを医務室まで送り届けると俺とぐだ子は案内を続行した。

 アーサーはモーさんが気絶した理由が皆目見当つかないらしい。

 クソッ!イケメンの上に天然かよ。

 

「モードレッドがいるということは他の円卓の騎士もいるんだね?

ということはこちらの世界の僕もいるのか。いつか会ってみたいな」

 

 一通り案内を終えるとアーサーは言った。

 

「え……あの、今はやめておいた方が」

「どうしてだい?」

 

 俺が言葉を濁すと不思議そうに尋ねた。

 すると最悪のバッドタイミングで彼らがやってきた。

 

 アルトリア・オルタと円卓の騎士たち。

 具体的にはランスロットとトリスタンとガウェインが。

 

「疲れたな。誰か椅子を持て」

 

 オルタの言葉に三人が鋭く反応した。

 

「私が椅子になります!」

「……抜け駆けはいけませんよ、ランスロット卿。椅子になるのは私です」

「私です!椅子になるのはバスターゴリラの私の役目です!」

 

 三人の騎士たちは王の人間椅子の座を巡って争い始めた。

 オルタの彼らを見る目は人がヘドロを見た時と同じものだった。

 

 それを見ていたアーサーはにっこり笑って言った。

 

「ここに円卓の騎士はいないみたいだね。残念だ」




プロトタイプセイバーの性格はドラマCDと断片的なプロトタイプの情報から。
『蒼銀のフラグメンツ』は読んでません。すいません。
オマケとして制作されたプロトタイプのダイジェストは見ました。
そのためほとんどが私の妄想です。
プロトセイバー、イケメンですね。
ちょっと欲しくなっちゃいました。

ところでバレンタインでモーさんから食べかけのチョコもらって
「か、間接キス……」
と思った人。
(そっと手を挙げる私)

ついでにこっそり宣伝。
新宿の最終戦をスパルタ王メインで戦ってみました。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm30771726

よろしければどうぞ。


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ハサン・サッバーハ(秩序・善)

タイトルそのまんまの内容です。


 

「先輩。朝ですよ。起きてください」

 

 カルデア職員でデミサーヴァントのマシュ・キリエライトは毎朝俺のことを起こしに来てくれる。

 美少女の後輩ちゃんが起こしに来てくれるのはエロゲとラノベの主人公の特権だ。

 

「うーん。まぢむり……」

 

 ゲーティアを打倒した後にやってきた調査団はあわただしく作業するとあわただしく去っていった。

 拘束される時間は思ったほど長くなかったが連日の聴取で疲れが溜まっていた。

 

「駄目です。マイルームを掃除する約束ですよ」

「マシュが膝枕してくれたら起きる」

 

 駄々をこねてみた。

 

「仕方ないですね……」

 

 マシュはベッドに腰かけると膝の上に俺の頭を載せた。

 ……はふぅ。

 ……柔らかい。

 ……良い匂い。

 香水もハンドクリームもつけていないはずの彼女からどうしてこんなに良い匂いがするのだろう。

 きっとマシュは良い匂いがする物質で出来ているのだろう。

 

「あの……もういいですか?さすがにそろそろ恥ずかしいというか……」

 

 そういわれて止められる筈がない。

 美少女の後輩ちゃんに膝枕してもらえるのはエロゲとラノベの主人公の特権だ。

 俺は思い切り調子に乗った。

 

「まだむり。マシュがおっぱい枕してくれたら起き」

「いいから起きろ」

「痛い!痛い!ごめんなさい!調子に乗りました!宝石剣で殴らないで!多次元屈折現象おこしちゃぅぅぅぅ!!!」

 

 お目付け役が一緒だった。

 マシュと一緒に来ていたぐだ子に宝石剣と黒鍵で殴打された俺はその勢いのまま飛び上がったのだった。

 

「マシュはぐだ男を甘やかさない」

 

 ぐだ子にありがたいお説教をされて俺は渋々準備した。

 

×××××××××××××

 

「さて。ここが勝負所よな……」

 

 とりあえず掃除は終わった。

 ここから――女子二人が出て行ってからが俺の本番だ。

 

 ベッドの下にそれはある。

 盟友・黒髭と共に集めたお宝写真の数々が。

 

 これは誰にも手伝わせるわけにはいかない。

 黒髭に手伝ってもらうのも無理だ。

 黒髭に手伝ってもらったら片づけるふりをしてパクっていきそうだから。

 

 ベッドの下から夥しい収蔵品をだして。

 ふむ。我ながら素晴らしいコレクションだ。

 ……片づける前に一回ぐらいオ●ニーしてもいいよね?

 

「……さて。果たし合おうぞ」

 

×××××××××××××

 

 結局夜遅くまでかかってしまった。

 やっぱり日頃から整理整頓は大事だね……

 

 わき目もふらずにやっていたせいで夕飯食べるのも忘れていた。

 十時過ぎか。

 エミヤに頼めばなんか作ってくれるだろけどちょっと気が引けるな。

 

 自分で調達しようか。

 と思ったところで来訪者があった。

 

 開けるとゴリゴリマッチョの半裸の大男が立っていた。

 

「おう。ちょいといいか?」

「ベオさん。どうしたんですか?」

 

 訪問者はベオウルフさんだった。

 ベオウルフさんは北欧の伝承に登場する王様で巨悪から民を守ってきた大英雄だ。

 ステゴロ戦法で上半身裸。いかにも粗暴そうだが伝承では賢王だったと語られている通り実際には面倒見のいい兄貴分だ。

 アーラシュ、クーフーリン、ベオウルフはカルデアにいる三大兄貴だと思う。

 

 ソロモンの神殿から帰った時ベオウルフさんの姿を見つけた俺が「どうして残ってくれたんですか?」と聞くと

「あん?そんなの決まってんだろ。テメエのことが放っておけねえからだよ。言わせんな。恥ずかしい!」

 

 とバンバン背中を叩かれた。

 

 部屋にやってきたベオウルフさんは手に何か持っていた。

 

「エミヤのあんちゃんから聞いたぜ。晩メシ食い損ねたんだろ。そら、くれてやるよ」

「あの、これ……」

 

 すごいいい匂いがする。 

 これたしか……

 

「竜のステーキだ。前に旨そうに食ってたからな。修練場行くついでに狩っといたぞ」

「ありがとうございます。あの俺……」

「ああ、言わねえでいい。マシュとぐだ子に見せられないもんでも整理してて夢中になってたんだろ?

何かは聞かねえよ。悪いことする時は目瞑ってやるって約束だからな。まあ!この生臭え匂いでバレバレだけどな!」

 

 やっぱり生前は王様。

 俺の考えてることなんてお見通しらしい。

 

「育ち盛りなんだからしっかり喰えよ!いいな!」

 

 良い人だ……

 肉汁滴るステーキを一口食べてみる。

 

「旨い……ベオさんありがとう……」

 

 

 ちょうど食べ終わる頃合いになってまた訪問者があった。

 

「闇に潜むは我らが得手なり」

 

 アサシン軍団の最古参、ハサン先生こと呪腕のハサンだった。

 

「ベオウルフ殿から聞きました。そろそろ食事を終える頃合いかと思いまして片づけに参りました。

あとこちらをどうぞ。そろそろ切れる頃合いかと」

 

 ハサン先生からティッシュを渡された。 

 

「片づけの方もお手伝いしようか迷いましたが魔術師殿のプライバシーを優先しました」

「いつもありがとうございます」

 

 一番見た目とのギャップが激しいのがこの人だ。

 見た目は悪党にしか見えないが今では善人にしか見えない。

 属性・悪だと知ったときは驚いた。

 あれほど驚いたのはアストルフォが男だと知ったときぐらいだ。

 

 属性・悪ということが信じられず以前に質問したことがある。

 

「ハサン先生。嫌いなものってなんですか?」

「仁義に悖る行為など義憤に駆られますな」

 

 悪?

 

「あの……でもハサン先生、キャメロットで砂漠の人たちを助けてましたよね?」

「私は無辜の民を救うためとはいえ多くの者を手に掛けました。

それが悪でなくて何が悪でしょうか?」

 

 いや……それ普通に善人のやることじゃ。

 

「あ。そうそう。ジャックちゃんとか静謐ちゃんが悪いことしたら叱ってくれてますよね?それは?」

「静謐のやジャックを諫めている時。私は心を鬼にしております。

それが悪でなくて何が悪でしょうか?」

 

 いや……それただのいい大人じゃないですか。

 

「あの……やっぱりハサン先生、いい人にしか思えないんですけど」

「魔術師殿。私は悪です」

 

 今目の前で甲斐甲斐しく片づけをしてくれている姿もやっぱりいい人にしか見えない。

 

「どうなされました?魔術師殿?」

 

 よほど不思議な目でハサン先生のことを見ていたらしい。

 

「あ……いえ。ハサン先生。悪って何なんでしょうね?」

「魔術師殿。悪について考えたいのであれば私を想像してください。私は悪です」

 

×××××××××××××

 

「背中を押せ……もう少し下……下……そこだ」

「初代様?ここ?」

 

 翌日。遅めに起きた俺は遅い昼食をとるためマシュと一緒にカルデアの廊下を歩いていた。

 子供サーヴァントたちのために作った仮のプレイルームの前を通りかかると初代様こと山の翁がぐだ子に背中のツボを押してもらっていた。

 

 その隣でジャックちゃんとナーサリーちゃんがもじもじしている。

 ジャックちゃんとナーサリーちゃんはぐだ子に懐きまくっている。

 構ってもらおうとしているがぐだ子が初代様の背中のツボを押しているので手が空くのを待っているらしい。

 

「契約者よ……感謝するぞ」

 

 満足した初代様は去ろうとして、ジャックちゃんとナーサリーちゃんに気づいた。

 

「待たせて済まぬな。小さき者たち。これは我からの詫びだ」

 

 初代様は二人にポチ袋を渡した。

 二人は渡されたポチ袋を不思議そうな表情で見ていた。

 

「お小遣いだ。無駄遣いするなよ……」

 

 ジャックちゃんとナーサリーちゃんはポカンとしていたが

 

「ありがとう。髑髏のおじいちゃん」

「ありがとうなの!髑髏のおじいちゃん!」

 

 と笑顔になった。

 が、これはちょっとまずい。

 初代様に「髑髏のおじいちゃん」なんていったら「首を出せ!」されかねない。

 俺とマシュはとっさに初代様を宥めようと走った。

 ぐだ子も心得ているようだ。

 青ざめた顔で弁明を必死に考えているようだった。

 

「……『髑髏の』を取って呼んでみてはもらえぬか?」

「……え?初代様?」

 

 ぐだ子は意外な反応に硬直していた。

 ジャックちゃんとナーサリーちゃんはポカンとしながら

 

「おじいちゃん?」

「おじいちゃん?……なの?」

 

 カーン……

 カーン……

 どこかで晩鐘の鳴り響く音がした。

 

「……これは良いな」

 

 翌日。

 いつもの三人。俺とマシュとぐだ子は久しぶりの完全オフをだらだら過ごしていた。

 「温泉でも行きたいね」などと取り留めのない話をしているとプレイルームに彼らの姿を見つけた。

 

 そこには「じいじ!」と呼ばれてジャックちゃんとナーサリーちゃんと戯れる初代様の姿があった。

 

「……ジャック、ナーサリー。きのこの山とたけのこの里。どちらが好みだ?」

「たけのこの里!」

「きのこの山!」

「選んだな。受け取るが良い……」

 

 今日はハサン先生も一緒だった。

 ジャックちゃんとナーサリーちゃんはハサン先生にも懐いている。

 ハサン先生が

 

「ジャック、ナーサリー。ちゃんと初代様にお礼を言うのだぞ」

 

 と言うと

 

「ありがとう!じいじ!」

「ありがとうなの!じいじ!」

 

 と元気いっぱいに二人はお礼を言った。

 この人も属性は悪らしいが

 その姿からはどうやっても「悪」という言葉は連想できなかった。

 

「……先輩。『悪』って何なんでしょうね?」

 

 納得いかなそうにマシュがつぶやいた。

 




ハサン先生ほんと好き。


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ネバーエンディングストーカー

いつも読んでくださっている皆さん、お久しぶりです。
他のものを書いていたら一か月以上空いてしまいました。
今回はタイトル通りの内容です。
ちょっぴり下ネタも混ざっています。
よろしければどうぞ。


「えっとね、きよひー。きよひーみたいに人のあとをこっそり付け回す人のことをなんて言うか知ってるかな?」

 

 カルデアには大勢のサーヴァントが常駐しているが残念ながら困った行為に及ぶサーヴァントもいる。

 特に困った三人の一人。

 それが彼女、清姫だ。

 

 清姫はなぜか俺とぐだ子が安珍の生まれ変わりだと信じている。

 

 ダ・ヴィンチちゃんの話だと俺とぐだ子は魂の形が似ているらしい。

 彼女とは血縁上の関係はないが、前世で双子レベルの近親者か、あるいは同一の存在が分裂したぐらいの深い縁があるはずというのがダ・ヴィンチちゃんの見解だ。

 彼女とは出会ってすぐに仲良くなったがそれも当然の結果なのだろう。

 ぐだ男とぐだ子という呼び名も二人とも本名が偶然にも藤丸立香であるため紛らわしいから便宜上つけた呼び名だ。

 

 どこで聞いていたのか知らないがそれをきよひーは聞いていたらしい。

 ダ・ヴィンチちゃんの考察を聞いた後日

 

「嗚呼!安珍さまが二人に分裂するなんて!安珍さまはそれ程までに私のことを思ってくださっていたのですね!」

 

 と目を血走らせて歓喜していた。

 正直その発想はなかった。

 

 安珍・清姫伝説に伝わっているそのままに彼女の思い込みの力はすさまじく、俺たちのプライバシーは常に危険に晒されている。

 エミヤと兄貴とハサン先生に見回りをしてもらい、ダ・ヴィンチちゃんに部屋を強化してもらってもどうやってだか部屋に忍び込んでくる。

 

 ダ・ヴィンチちゃんの俺とぐだ子に関する考察は清姫の思い込みを更に加速させていた。

 もはや看過できないレベルのプライバシーの危機だった。

 

 半ば無駄であるとわかっていたが俺とぐだ子は清姫を呼び出して彼女の説得にあたっていた。

 俺はまず、清姫に自分の行為を自覚させるため彼女に質問をぶつけた。

 清姫はにっこり笑って答えた。

 

「うふふ。旦那様、私をからかってらっしゃるのですか?ストーカーです」

「うん、そうか認めちゃったか。でね、きよひー。ストーキングっていうのはさ、人のプライバシーを侵害する行為だからね?犯罪になっちゃうよ」

「私と旦那様たちは前世から相思相愛の仲です。愛し合う仲ならば冥府の果てまで共にいるべきではありませんか?この清姫間違ったことは何一つしておりません。

むしろ夫婦の仲を裂こうとする法律の方が間違っています」

「うん。予想通りの反応ありがとう。ある意味安心したよ。あと、俺たちときよひーって結婚してたんだ。衝撃の事実だね」

「何をいまさら仰られているのですか。私と旦那様たちは主従として契約で結ばれています。それは婚姻したのと同じことではないですか?」

「うわあ、そう来たか。弁護士もびっくりの解釈だね。きよひーの発想力はすごいなあ」

「うふふ。ありがとうございます」

 

 なんだこれ。もう無理ゲーだよ。

 でも何もしないわけにはいかない。プライバシーがかかっている。

 

 上杉鷹山は言った「成せばなる。成さねばならぬ何事も」と。

 昔の人は立派なことを言う。

 

 が、上杉鷹山でも清姫を説得しろと言われたら「ごめん、無理」と言うに違いあるまい。

 

 俺は九割がたの絶望的な気持ちで彼女の行為が正直迷惑であることできるだけ言葉を選びながら説明した。

 俺が疲れるとぐだ子が、ぐだ子が疲れると俺が交互に話した。

 説得は一時間にも及んだ。

 思い付く限りのことを話すと清姫がゆっくりと沈痛な面持ちで口を開いた。 

 ひょっとして解ってくれたのか?

 

「……まさか!夫婦の愛を受け入れられない程に世を儚んでいるなんて!承知いたしました。この清姫、冥府にお供いたします。

さあ、一緒に辞世の句を詠みましょう。お墓の手配をして参ります!」

 

 駄目だ。やっぱりわかってねえ……

 頭を抱える俺に代わりぐだ子が口を開いた。

 

「待って待ってきよひー。私たちきよひーのこと嫌いなんて一言も言ってないよ?」

「ではやはり愛してくださっているのですね」

「うん、そのゼロかイチのデジタル思考をやめようか?玉藻にも言われたよね。

伝わってないみたいだからもう一度言うけど、私たちはプライバシーを守って欲しいって言ってるだけだからね?」

「はい。承知いたしました。旦那様に存在を感づかれてしまうとは私もまだまだのようです。これからは旦那様たちの生活を邪魔しないようにこっそりストーキングできる腕を磨かせていただきます」

 

××××××××××××

 

「あのね、頼光さん。部屋にこっそり入ってくるのやめてくれないかなー……なんて」

 

 ぐだ子と話し合った結果、結局「清姫の説得は無理」という結論に達した。

 そもそもバーサーカーと話し合いとか無理ゲーだった。

 狂化ランクの低い金時とベオウルフさんは普通に話が通じるし、アステリオスなんてむしろ素直ないい子なのだがきよひーの説得はあまりにも難易度が高すぎた。

 なので今度は源頼光を呼び出していた。

 この人は基本、世話好きないい人なのだが(おっぱい大きいし)「母の愛」が突き抜けたレベルに達しているため困った行為に及んでしまう人でもある。

 

 会議室に呼び出した頼光さんにぐだ子はためらいがちに話を切り出した。

 頼光さんは大きく目を見開いて

 

「なぜでしょうか?……まさか!母のことが疎ましくなったのですか!?反抗期なのですか!?」

 

 やばい。初っ端から前途多難の匂いがプンプンするよ。

 

「私もぐだ男もプライバシーとかあるし、それにここはカルデアの施設だけどさ、あそこ私たちの部屋だから、不法侵入になっちゃうよ?」

「不法侵入……!」

 

 頼光さんは明らかにショックを受けていた。

 ああ、良かった解ってくれたか。

 

「何ということでしょう!私はただ子供たちを見守っていただけなのに!母と子の愛を断絶するなんて!

法律とは人を守るためのものではないのですか!ああ!なんと世は無慈悲なのでしょう!」

 

 ……わかってなかった。

 

「頼光さん。世の理不尽を嘆いてるところ悪いんですけど、俺もぐだ子も頼光さんの子供じゃないから……金時はまあ、育ての親みたいなものだから

まだわかるけどさ……」

「……私の子ではない無い?」

「うん。驚いているところすいませんが、俺もぐだ子も頼光さんのことは好きだけど、子供になった覚えはないからね」

 

 厳しいことを言うようで少し気が引けるが仕方ない。

 色々気を使ってくれるのは嬉しいが頼光さんのは明らかに行き過ぎだ。

 

 またしても頼光さんはショックを受けていた。

 よし。今度こそわかってくれたか。

 

「……誰がそのような根も葉も無いことを吹き込んだのですか!?」

 

 よし。やっぱり通じてなかった!

 ある意味安心したよ!

 

「……ひょっとしてあの虫たちですか?うふふ、やはり鬼などと一緒にいるのはいけませんね。少々お待ちを。ただ今『ぷち』っとして来ます」

「うん、えっと思い込み中すいませんけど、酒呑ちゃんも茨木ちゃんもそんなこと言ってませんから」

「まあ!虫たちに脅されているのですね!いけません、今すぐ楽にしてあげます!」

 

 童子切安綱を持ち出した頼光さんをぐだ子がとっさに使った令呪で何とか鎮まらせた。

 俺とぐだ子は交互に辛抱強く、「プライバシーの侵害」を訴え続けた。

 話し合いは一時間にも及んだが、頼光さんは何が嫌がられているのか明らかに分かっていなかった。

 しまいには彼女はこう言った。

 

「よく解りました。あなたたちに『子供ではない』などと言われてしまうとは、私の愛もまだまだ浅かったのですね……申し訳ありません。

これからは今まで以上の慈愛を以ってあなたたちに接するとしましょう」

 

 話通じねえ……

 やっぱりバーサーカーだわ……

 俺とぐだ子は頭を抱えた。

 

「それはそうと、ぐだ男。手淫は男の子ですから仕方ありませんが、『マシュ、マシュ!』と絶叫するのはいかがなものかと思いますよ。

ここの防音は完ぺきとは言え、近所迷惑になってしまうかもしれません」

 

 一体、いつ見られたんだ……

 心当たりがありすぎて見当もつかない……

 「……あの、一体いつそれを?」と俺が聞くと

 

「うふふ。母はなんでもお見通しなのですよ」

 

 と頼光さんは答えた。

 はい。ストーキングしたんですね。

 ぐだ子は「うわ、ひくわー。マシュに言いつけちゃおうかな」と俺に冷たい視線を向けていた。

 

「ぐだ子も衆道は程々に。私の時代も僧侶たちの間では度々そのような行為が行われいたと聞き及んでいましたが、あまり人に見せる趣味ではありませんよ。

うふふ。でも、あなたは大丈夫ですね。えっと『おとめげえ』でしたか?ちゃんと女の子らしい趣味も持っているのですね」

 

××××××××××××

 

「ねえ、静謐ちゃんの説得どうしようか?」

 

 徒労に終わった説得の後、二人きりになった会議室で俺は言った。

 

 静謐のハサンは清姫、頼光さんと並ぶ困ったサーヴァントの一人だ。

 何度言ってもどう対策をうっても部屋に忍び込んでくる。

 だが、もう説得しようという気力はなかった。

 

 ぐだ子は項垂れて答えた。

 

「うん、諦めた」




最後までお読みいただきありがとうございます。
最近、映画サイトに連載を持ち始めました。
ここで書くようなことでもないので活動報告かtwitterをご覧ください。

次回はしょうもない下ネタ連発の話にする予定です。
少々お待ちを。


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わしって天才だから是非もないヨネ

「なに?わしに戦術を教わりたいとな?うっはっはっは!良い心がけじゃ!うむ、まずは座るがよい!わし自ら茶をたててやろう!」

 

 俺はノッブこと織田信長の部屋を訪れていた。

 部屋に入るとノッブは沖田さんと戦国無双4に興じていた。

 どんだけ世俗に塗れてるんだよ。

 あとこの二人ほんとは仲いいだろ?

 

 織田信長は史実とは違い女の子だ。沖田総司も女の子だ。

 この世界、大丈夫か?

 

 俺はぐだ子と共同でマスターを務めているが戦術は俺の担当だ。

 強化や回復は主にぐだ子が担当。

 今のところそれでかなり上手くいっている。

 

 戦術についてはカエサルにも教わりに行ったことがある。

 カエサルは最初真面目に話をしていたが、話はどこかからかネズミ講の話になっていた。

 危うく身ぐるみはがされるところだった。

 

 レオニダスにも教わりに行ったことがあるが気付いたらインナーマッスルの鍛え方の話になっていた。

 

 イスカンダルの話は興味深かったが、彼の軍はイスカンダル自身が先陣を切ることで戦意を高揚させていたらしい。

 マスターは後方支援が前提なので真似できない。

 

 アルトリアにも話を聞いたが彼女の戦いは円卓の騎士という一騎当千の存在があって成り立つものだし、そもそもアルトリア自身が最高ランクの英霊なのでやはり真似するのは厳しいものがあった。

 

 その点、ノッブは割といいお手本かもしれない。

 実際、ノッブ自身のステータスはそれほど高くない。

 軍師としても数多くの功績のある人物だからいいんじゃないかと思った。

 

 俺はまず、長篠の戦いで行われたとする三段撃ちについて聞いてみた。

 

「三段撃ち?あんなんフィクションに決まっとるじゃろ。大体じゃな、ものの本ではわしが三千丁鉄砲用意したことになっとるらしいけど、鉄砲三千丁とか無理ゲーじゃろ。あの宝具、わしも気に入っとるからええんじゃが実際はあんなに上手くいかんて」

 

 まあそうなんだろうとは思っていた。

 歴史家の間でも疑問視されていると聞いたことがある。

 

「仮に三段撃ちをするとしてじゃな」

 

 お、きたきた。

 織田信長が三段撃ちを本当にやるならどうするか、それが聞きたかったんだ。

 

「そもそも火縄銃というやつはのう、湿気に弱くよく不発になるんじゃ。日ノ本は湿気の多い土地じゃからの」

「うん。それで?」

「その不発に終わった隙間を何で埋めるか?ここが肝要なところじゃ。ぐだ男、お主どうすればいいと思う?」

「一般的な戦法だと防ぎ矢か槍で突進を食い止めるかだね」

「古いのう。つまらんのう。そんな方法では敵の意表は突けんぞ」

 

「じゃあノッブならどうするんですか?」と沖田さんが聞くと、斜め上の回答が帰ってきた。

 

「糞を投げつけるんじゃ」

 

 ……おいおいちょっと待てよ。

 

「……ノッブ。これ、fateだよ?ドリ●ターズじゃないからね」

「細けえことはいいんじゃよ。これ同人なんじゃから」

「あ、同人って言っちゃったよ。でもそういえば何でも許されるわけじゃないからね?」

 

 俺の突っ込み対してノッブは笑って誤魔化すとさらに続けた。

 

「ここで敢えて弓矢ではなく糞を投げつけることには大事な意味があるのじゃ。

まず、意表を突ける」

「うん。そうだね。う●こを武器にするなんて明らかに正気じゃないもんね」

「それに臭さで敵のもらいゲロを誘発できる。糞をぶつけられた上にもらいゲロまでしたらテンションがた落ちじゃ。もうこれで勝ったも同然じゃよ」

「うわーすごい戦略。カエサルあたりが全力で否定しそうなパーフェクトな作戦だね」

 

 ノッブはちょっとご機嫌斜めになったらしい。

 口元を歪ませるとその表情が真剣なものになった。

 

「ぐだ男。お主は糞の凄さがよくわかっとらんようじゃな。よいか。糞は万能なのじゃ」

 

 いやいや、真剣な顔して何言ってんですかあんた。

 

「まず、糞は簡単に手に入る。厠から集めてきても良いし、農家から買ってくる手もある。糞はありふれた物質じゃからの、補給も簡単じゃ」

「うん、なんかもっともらしくなってきたね」

「それで使い方じゃがまず肥やしになる。これが一番一般的な使い方じゃな」

「というか他に使い方があることが驚きだよ」

「矢じりに塗ると毒代わりになる。糞は雑菌の塊じゃからな。破傷風を誘発することができるというわけじゃ。それから」

「まだあるの?」

「火薬の原料になる。硝石が鉱床として手近なところにない場合は作るしかないからの。その時に必要なのが木炭、硫黄、それと糞じゃ。

それを混ぜ合わせれば黒色火薬の完成よ」

 

 あれ、おかしいな。それこの間マンガで読んだぞ。

 

「ノッブ、私からも言いますけどこれfateですからね?ド●フターズじゃないですよ」

 

 沖田さん、何でドリフ●ーズ知ってるの?

 どんだか世俗に塗れてるんだよ。

 

「だから細けえことはいいんじゃよ。これ同人なんじゃから」

「いやいや同人にしても世界観いい加減すぎるでしょ。コハエースでももうちょっとマシですよ?」

「それだけではないぞ。糞は城攻めにも使えるのじゃ。例えば、大きな堀に囲まれた城に敵が籠城したとするの。その時にはな……」

 

 あ、これ絶対アレだ。

 

「堀に糞を投げ込むのじゃ。臭くてたまらんからの。城の中じゃもらいゲロの連鎖で阿鼻叫喚の地獄絵図じゃ。たまらず籠城をやめる。どうじゃ!完璧じゃろ!」

「いやいやノッブ、その作戦グズグズじゃないですか。そもそも堀にう●こ投げ込んでる間に攻撃されたらどうするんですか?」

「何言っとるか!おき……弱小人斬りサークルのメンバーめ!そんなの糞を投げ返して反撃するに決まっとるじゃろ!」

「そこは普通に攻撃しましょうよ!火縄とか長弓とか投石とか他にもっといい手段あるでしょう。あと、何でわざわざ間違った方に言い直したんですか」

「なんじゃそのつまらん戦法!ひょっとしてお主ら人斬りサークルは糞を使わんかったのか?そんなんじゃから戦に負けたんじゃよ」

「それ、土方さんが聞いたら激怒しますよ」

 

 そこまで言ったところでノッブは何かに気づいたらしい。

 「あ、そうじゃそういえば……」と言うと続けた。

 

「今思うとあれが良くなかったのかのう……」

 

 あ、絶対これう●こ絡みだ。

 もう答えは見えたけど一応聞いてみた。

 

「ミッチーに褒賞としてお気に入りの肥溜めを進呈したことがあるのじゃが。

そういえばあれ、本能寺の少し前じゃったの。今思えばあれが良くなかったのかのう」

「え?ノッブに『褒賞に肥溜めあげる』って言われて明智光秀はなんて言ったの?」

「ミッチーの奴、曖昧な笑顔で『ありがたく頂戴いたします……』と言っとったからてっきり喜んでるかと思ったわ。

そういえばあんまり嬉しそうじゃなかったのう。嫌がってるとは夢にも思わなかったわ」

「間違いなく謀反の原因それだよ」

 

 ノッブは無念そうに俯いた。それもうちょっと早く気付こうよ。

 が、横で沖田さんが呆れながら「何で明智光秀が肥溜めもらって喜ぶと思ったんですか?」と聞くとまたしてもムキになった。

 

「何を言うか沖田……病弱クソステセイバーめ!茶々は糞の話で大喜びしとったし、信勝もわしに肥溜めに落とされて『姉上!もっと下さい!』と言って歓喜しとったぞ!

それにサルもじゃ。彼奴は糞の重要性をちゃんと理解しとったぞ!わしが褒美に肥溜めをくれてやろうとしたら『それは良い考えですが、今回は殿の脱ぎたての草履を所望します。hshs』と言って喜んとったぞ!」

「いやいや、秀吉、結局肥溜め拒否してるじゃないですか。あとさらりと流されましたけど秀吉変態ですね」

 

 結局、ノッブの戦術はそのことごとくがう●こ絡みだった。

 しかも彼女が語るときの表情は真剣そのものだった。

 沖田さんは完全に呆れてしまい、途中からツッコミすらやめていた。

 

「このようにじゃな、糞は大抵の問題を解決するのじゃ」

 

 散々語り終えるとノッブは満面の笑みを浮かべた。

 あんた一体どんだけう●こ好きなんですか……

 

 もうどうでもよかったが大事なことがある。

 これだけは締めくくりに言っておかないと。

 

「でもノッブ、糞が原因で謀反起こされたんだよね?」

 

 彼女は確信を突かれて唖然とすると……にっこり笑って誤魔化した。

 

「……是非もないヨネ!」

 




上品ですいません。


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男たちの絆 前編

久しぶり更新です。
基本、下ネタです。
つまりいつも通り。
よろしければどうぞ。


「あー女湯覗きたいなぁ」

 

 部屋で一緒にギャルゲーに興じていたオリオンは俺の一言をあからさまに無視した。

 

 俺とオリオンは定期的にギャルゲーをプレーする同好の士だ。

 先ほどまで俺は真面目で世話好きな後輩ちゃんルートを攻略していた。

 もう何回も攻略しているが素晴らしい。

 オリオンに「なんかこの子、マシュちゃんに似てないか?お前どんだけマシュちゃんのこと好きなんだよ」

 と聞かれたので「マシュのことを考えると思わず股間がふっくらしてくるぐらい好き」と答えたらオリオンは明らかに呆れていた。

 オリオンに呆れられるなんて俺ってちょっとすごいかも。

 

「誰かトラップを躱す技術持ってそうな狩人はいないかな。具体的に言うとオリオンとか」

 

 オリオンは俺の一言を無視したが俺は挫けることなく改めて言った。

 やはりオリオンは無反応だった。

 

「誰かトラップを躱す技術持ってそうな狩人はいないかな。具体的に言うとオリオンとか。チラッチラッ」

 

 諦めたらしい。

 ようやくオリオンが反応を返した。 

 

「……協力しないからな。後のこと考えると怖すぎる。アルテミスとか。アルテミスとか」

 

 最近、ローマの特異点で微小な異常が見つかり調査をしていた。

 その時、いい感じの温泉が湧いているのを見つけたのだ。

 

 ダヴィンチちゃんの説明によるとイタリアは火山国なので温泉の湧いている場所は珍しくないらしい。

 レイシフトをするのは今では国連の許可が必要だが折角だから慰労としてみんなで温泉なんてどうだろうという話になった。

 

 温泉が湧いていたのがかなりの僻地であったため、人目に付く可能性も低い。

 無断レイシフトの隠蔽はダヴィンチちゃんとホームズに任せて行ってみようかということになった。

 

 温泉。

 

 もう覗きしかない。

 

 思春期の俺がそう思うのは仕方ない。

 俺は悪くない。

 

「ぐだ男」

「はい」

 

 一緒に話を聞いていたぐだ子は俺の悪心を悟ったらしい(勘のいいやつめ)

 

「覗いたら殺す」

 

 鬼の形相だった。

 こういう時はこう言うに限る。

 

「わかってるよ……その代わり今夜お前でいっぱいオ●ニーしてやる!

……痛い!痛い!ごめんなさい!ヒュドラダガーで殴らないで!死んじゃう!」

 

 俺たちのやり取りをマシュは困り顔で見ていた。

 俺がどうにかしてぐだ子にヒュドラダガーを収めさせると

 

「私は先輩になら見られてもいいんですが……は!やっぱり駄目です!エッチなのはいけないと思います!」

 

 マシュかわいい……

 思わず股間がふっくらしてしまったのは秘密だ。

 

 カルデアには魅力的な女性が大勢いる。

 一番かわいいのはマシュだ。異論は認めない。

 

 それ以外なら……回答にはさんざん悩むが俺はぐだ子の名前を挙げたい。

 初めて出会ったとき彼女は俺と同じように数合わせで選ばれた何も知らない迷い猫のような存在だった。

 

 俺がカルデアで最初に出会ったのは廊下で寝ていた俺を起こしたマシュだったが、次に出会ったのが同じく廊下で寝ていたぐだ子だった。

 静かに寝息を立てている彼女を発見した時。俺はまず「かわいい子だな」と思ったがその次におっぱいを見た。

 あのどこのエロジジイが考えたのかわからない(考案したどこかの誰かありがとう)乳ベルトに挟まれた立派な山が寝息に合わせて上下していた。

 目を覚ました彼女に俺はとりあえず一発殴られた。

 「どこ見てるの?」と聞かれたので「おっぱい!」と答えたのがいけなかったのだろうが、それからすぐに仲良くなれたのは正直に答えたおかげだと思っている。

 時々リヨ形態に変化した時の彼女は手の付けられない暴力の化身になるが普段は至って気のいい人物だ。

 キモオタな黒髭氏にさえ普通に接している。

 彼女は男の英霊たちから絶大な人気を誇っているが当然の結果だろう。

 

 それにマシュだ。

 俺はマシュに初めて出会ったとき「……か、かわいい」と思ったが今では「かわいすぎて死ねる」と思っている。

 最初に出会ったとき、彼女は地味なカルデアの制服姿で眼鏡をかけていたが、その素材の素晴らしさに俺は気づいていた。

 冬木で突然の戦闘になったとき、マシュはあのやたら露出度の高いサーヴァントの格好に転身したわけだが

「これは……大量破壊兵器だ」と俺は思った。

 そして前かがみになった。俺はおっぱい星人なのでまずパッツンパッツンに張ったおっぱいを見たが、あの肉付きの良いお尻も素晴らしい。

 おっぱい星人の俺がお尻星人にもなれることを彼女は証明してくれた。

 戦闘しながら絶えずガン見していたらオルガマリー所長とぐだ子に思い切り睨まれたのは今ではいい思い出だ。

 どうにか冬木を生き延びた後、帰ってオ●ニーしたのは言うまでもあるまい。

 子供の方の英雄王が「彼女は隠れわがままボディと見ました」と言っていたが、さすがは英雄王、慧眼だ。

 あのあとこっそりと彼と固い握手を交した。

 

「つまりだな……」

 

 俺の長い話が終わるころ、オリオンは完全に呆れていた。

 オリオンに呆れられるとはやはり俺もなかなかのものらしい。

 

「見たいんだ。すっごく!ものすごく見たいんだ!」

「手伝わないぞ!手伝わないからな!」

 

 オリオンは全力で否定した。

 俺の熱意は伝わらなかったようだ。

 では仕方ない。

 この手は使いたくなかったが

 

「仕方ない。もうアルテミスにチクるしかないか……」

「いや、アルテミスにチクったらお前の好感度が下がるだけだろ」

「ん?何言ってるんだい?オリオン。誘ったのはオリオンじゃないか」

「いやいや!誘ったお前だろ!……ッハ!お前まさか!!」

「俺の言うこととオリオンの言うこと。アルテミスはどっちを信じるかなぁ?」

「ちょおま!何だそれ!俺もうデスオアダイじゃねえか!」

 

 効果覿面だった。

 オリオンは渋々俺に従った。

 

 原始的な自然に湧いている温泉であるため、仕切りも脱衣所もない。

 温泉には男女交互に入ることになっていた。

 つまり覗くには静かに待っているように見せかけてやるしかない。

 

 俺はオリオンと一緒に地図と睨みあい入念に策を練った。

 ――夢中になりすぎていたせいか……いつの間にか部屋に入ってきている人物がいた。

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

 第三者の声が聞こえた。

 異世界の騎士王アーサーだった。

 アーサーはイケメンをいつも以上にイケメンにして真剣な面持ちで俺たちを見ていた。

 

 ノックをしたが在室中の筈なのにいつまでたっても出てこないから不安になり勝手に入ったそうだ。

 クソ!なんて気の利くやつ!

 このイケメンめ!

 

 やばい。絶対怒られる……

 

 俺はそう覚悟したのだが……

 

「覗きかい?ではお供しよう」

 

 ……え?

 ……何言ってんの?

 

「だから覗きだろう?お供するとも」

 

「いや、でも覗きだよ?」俺が言うとアーサーはより真剣な面差しになって

 

「ぐだ男。マシュの――好きな子の裸を見たいというのは当然の願望だ。

犯罪ではあるかもしれないけど、君は人として、男としては間違っていない。

どう言い繕おうとも僕らサーヴァントは破壊兵器だ。

女湯の壁など切り伏せてみせるさ!」

 

 アーサー……

 

 このイケメンめ!!!

 

 「ありがとう」という俺の言葉に対し、彼は答えた。

 

「僕だけじゃない。彼らも同じ気持ちのようだよ」

「彼ら?」

 

 「彼ら」が――「男たち」がいつの間にかそこに在った。

 

「共に戦えるのがこれほど嬉しいとは。マスター。御身は私がお守りします」

 

 ランスロット……

 

「我々はただ女性の裸が見たいだけなのに……それが『犯罪』と謗られてしまうとは。私は悲しい。共にこの理不尽を嘆きましょう」

 

 トリスタン……

 

「太陽の騎士、ガウェイン!ここに!いざ、すべて(裸)を白日の下に!」

 

 ガウェイン……

 

「あっちには師匠もいるんだぜ?探知のルーン。誰が対処するんだ?」

 

 兄貴……

 

「悪いことするときは目瞑ってやるって言っただろ?任せとけ。お前のことは俺が守ってやるよ」

 

 ベオさん……

 

「覗き!犯罪!つまり――反逆!行くぞ!わが愛は爆発する!!」

 

 スパさん……

 

「すでに海上から最短ルートを探索済みですぞwwwこの黒髭に慢心はないと思っていただきたい!」

 

 黒髭氏……

 

「拙者はそなたの守り刀だ。道具故、存分に振るってくれ」

 

 小次郎……

 

「ぐだ男くん。この覗きはきっと多くの困難を伴うだろう。でもね、苦難のない覗きなんてただのタスクだ。

私は君を支えよう。なに、最悪の場合、夢の世界に逃げ込めばいいさ」

 

 マーリン……

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!」

 

 ヘラクレス……

 

「■■■■■■■■ーーー」

 

 え?メディアさんが?

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!■■■■■■■■■■■……」

 

 え?そんなことしてたの?

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!!!!!」

 

 うん、嫌なもの見ちゃったね……

 

 

 俺たちは顔を見合わせ、そして静かに頷いた。

 もう言葉は必要なかった。

 

 こうして勇者たちが揃った。

 俺たちの戦いは――これからだ!!!

 




後編に続きます。


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男たちの絆 後編

後編です。


 数日後。

 決戦の時が来た。

 

 俺たち男衆は予定通り先に入浴を済ませた。

 覗きのことで頭が一杯だった俺は思わず股間をふっくらさせており、兄貴と黒髭氏にさんざんからかわれた。

 

 入浴を終えた俺たちはほかの男衆(エミヤのおかんとか明らかに止める側に回りそうな連中)に気づかれぬよう闇夜に紛れて合流し、最後の打ち合わせをしていた。

 

「よし!行こう!あの先に僕らのアヴァロンが待っている!」

 

 騎士王アーサーの力強い言葉で全員(とばっちりのオリオン以外)は力強く立ち上がった。

 ついでで下半身も立ち上がっていた俺は思わず前かがみになってしまったのは内緒だ。

 

 その時だった。

 

「まったく。男衆がコソコソ何かしていると思ったら……予想通り過ぎてなんと言っていいか反応に困っているところだ」

 

 やたらとよく響く声のガングロおかんが俺たちの前に立ちはだかっていた。

 

 エミヤ……

 やっぱりただでは行かせてくれないんだな。

 

 全員に緊張が走る。

 

「主殿。拙者の後ろに」

 

 小次郎の一言で俺は後退した。

 

「どけ。侍。私はぐだ男に教育的指導をしなければならない。君たちももちろんお説教だ」

「それはできぬ相談だな。ここを通りたくば……押し通れ」

 

 小次郎がゆっくりと鯉口を切る。

 エミヤがいつもの双剣を握る。

 全員に緊張が走り、臨戦態勢となった。

 

「あくまでも抗戦するつもりか。……では仕方ないな」

 

 あちら側の男たちが――強敵たちが立ちはだかっていた。

 

「契約者よ……首を出せい!」

 

 初代様……

 

「マスター。あなたは尊敬に値する人物ですが、正すべき事はあります。嘘や不誠実、無責任な行い。そういったものは、あなたの為になりません。覗きなど言語道断です」

 

 ゲオル先生……

 なんという聖人オーラ……

 

 聖人と言えばジャンヌのおっぱいは一級品だと思う。

 一番好きなのはもちろんマシュだが聖女様のパイオツ、つまり聖パイもすばらしい。

 ……しまった。想像したらまた股間がふっくらしてきてしまった。

 

 平常心、平常心……

 今は危機なのだから……

 

「すまない……すまない……のだが、覗きはよくないと思う。本当に……すまない」

 

 ジークフリート……

 一体どこまで謙虚なんだ……

 

 やたらと腰の低い竜殺しは「君が謝る必要は全くないぞ」とエミヤに諭されてまたしても「すまない」を連呼していた。

 どこまで謙虚なんだこの人。

 

「ドワァァァォォォォ!ダダダダダダダダ!!(すまない。ぐだ男。君に加担したらグンヒルドに何をされるかわからないのだ!)」

 

 エイリーク……

 やっぱり大変なんだね……

 

「ランスロット卿、トリスタン卿、ガウェイン卿……もともと困った人たちだと思っていましたが、見下げ果てました!」

 

 ベディヴィエール……

 やっぱり君、苦労人なんだね……

 

「ベディヴィエール……一人だけ好感度アップ狙いですか?ずるいですよ」

「どこまで下種な発想なのですか!違います!」

 

 トリスタンに下種な勘繰りをされてベディヴィエールは力強く否定した。

 きっと生前からこんなんだったんだろうな……

 そりゃブリテンも亡ぶわ……

 

「それにあちらの世界の我が王まで!一緒になって何をやっているのですか!」

 

 ベディヴィエールのツッコミはもっともだ。

 俺だって良いことをしてるとは思ってないし。

 

「ベディヴィエール……君は、僕が間違っていると、言うのかい?」

「え……あの……それは……間違ってます!あまりにも堂々とされているのであらぬ回答をすることろでした!」

 

 うん。なんかごめんね。ベディヴィエール。

 

「俺のマスターなら善を成せって言ったよな?……これはアウトだろ」

 

 アーラシュ……

 

「お前には流星を見せてやらなきゃならないようだな」

 

 え?ここでぶっぱなすつもりか?

 いやいやヤバイヤバイ!

 

「アーラシュ、早まるな!自爆を安売りするんじゃない!」

「おっといけねえ。最近じゃ金腕を見るだけでステラしたくなる始末だ。ありがとよ。エミヤの兄さん」

 

 エミヤの一言でアーラシュは踏みとどまった。

 

「ぐだお……のぞき……よくない……ぐだこおこるよ……ましゅもさすがにおこるよ」

 

 アステリオス……

 

「やめてアステリオス。そんな純真な目で見ないで。良心にチクチクくるから」

「う……ごめんなさい」

 

 アステリオスは素直ないい子だ。

 うまくすれば懐柔できそうだ。

 

「アステリオス。謝る必要はないぞ」とエミヤに諭されたアステリオスは我に返ったが、もうひと押しすればいけそうだ。

 

「う……そうだった……。わるいことするなら……くっちまうぞ」

「えーたべられちゃうのか」

「う……」

 

 よし!効いてる。あと一押しだ。

 

「食べられちゃったらもうアステリオスとお話できなくなっちゃうな。

寂しいな……」

「う……ぼくも……さびしい」

「止めろ!アステリオス!耳を貸すんじゃない!」

 

 またしてもエミヤの邪魔が入った。

 ッチ!あと一歩だったのに!

 

 ……あれ?

 

「あの、フェルグスさん?なんでそっちにいるの?明らかにこっちでしょ?キャラ的に」

「ぐだ男。お前の願望は至極当然のものだ。俺も主に女の裸が好きだ。お前は間違ってない。だがな」

「だが?」

「覗きなどというセコい真似が許せんのだ!!!!」

 

 なんという豪傑……

 ん?

 

「……フェルグスさん。なんか足元透けてません?」

「ハッハッハ!正面突破を試みたところ集中攻撃を受けてしまってな!もはや虫の息だ!

おまけに湯気でよく見えなかった!!お前たち、湯気対策はちゃんとしておよ!!!!」

 

 フェルグスさん……

 

「いいか!俺の犠牲を無駄にするなよ!!」

 

 シュウウウウウウ……

 

 ありがとう……フェルグスさん……

 

 これで両軍が揃った。

 こちらは引く気はない。

 向こうも引く気はなさそうだ。

 

 ――ならば。

 ――戦わなければ進めないなら蹴散らすまで!

 

「みんな!俺に力を貸してくれ!」

 

 男たちが力強く頷く。

 

「勝って一緒に……皆で一緒におっぱいを見よう!!」

 

 カルデア男子たち最大の戦いが、ここに始まった。

 

××××××××××××

 

「これは一体……?」

 

 マシュの声で目が覚めた。

 そして俺は事の顛末を思いだした。

 

 アーラシュがステラったのだ。

 死者こそ出ていなかったが(アーラシュ以外)両軍が等しく戦闘不能状態になっていた。

 

 マシュは訳が分からないようだった。

 女性サーヴァントたちの反応は様々で、すでに状況を悟っている者もいれば、混乱している者もいた。

 

 ぐだ子は明らかに悟っている側だった。

 表情が怒りと呆れで引きつっていた。

 

「で?もう大体わかってるけど、ぐだ男たちは何をしようとしてたのかな?」

 

 駄目だ。

 隠せない。

 

「覗き!」

 

 とりあえず勢いよく言ってみた。

 

 ぐだ子の等身が縮みリヨ形態に変化し始めた。

 

「『覗いたら殺す』って言ったよね?」

「待った待った!まだ見てない!見ようとしただけだ!」

 

 彼女の怒りに油を注いだだけだった。

 

「マシュ!助けて!」

「先輩……今回は擁護できません。最低です」

 

 マシュは怒ってそっぽを向いてしまった。

 ……なんてこった。最悪だ。

 ……でも、怒った顔のマシュもかわいい。

 

 「マシュ、ごめん。でも、怒った顔もかわいいね」と言ったら「だ、駄目なものは駄目です!今回は擁護しませんからね!」

と言って顔を赤くしていた。彼女は「もう。先輩のバカ///」と言ってそのまま立ち去ってしまった。

それを見ていた黒髭氏は「ぐだ男氏すごい。エロゲ主人公みたい」と感心していた。

 

 もちろん、ぐだ子の怒りは収まらない。

 あと俺にできることは……ハラを決めるしかなかった。

 

「俺が一人で画策して、皆を強引に誘ったんだ。マスター命令だって言ってね。

皆には手を出さないでほしい。俺一人が罰を受ければ十分だろ?」

「ほう?いい覚悟だ。じゃあ、覚悟してもらおうか……」

 

 暴力の権化、リヨぐだ子がユラリと俺の前に進んできた。

 みんな、今までありがとう……

 

 俺は死を覚悟した。

 その時だった。

 

「僕が誘ったんだ!」

 

 ……アーサー

 

「僕が!強引に!ぐだ男を誘ったんだ!聖剣で脅して従わせたんだ!彼は悪くない!僕を罰してくれ!」

 

 ……アーサー

 ……このイケメンめ!

 

 アーサーの勇気ある行動をきっかけに次々と男たちが立ち上がった。

 

「いいえ。誘ったのは私です。私がアロンダイトでマスターを脅したのです。ぐだ男は悪くありません。罰するなら私を罰してください」

 

 ……ランスロット

 

「いいえ。私です。私が琴の妙なる響きでぐだ男を勾引かしたのです」

 

 ……トリスタン

 

「いいえ!私がバスターで殴ると脅したので!悪いのは私です!」

 

 ……ガウェイン

 

「違えよ。俺がゲッシュで脅したんだ。ぐだ男は逆らえねえんだから仕方ねえだろ?」

 

 ……兄貴

 

「私がスパルタクスだ!行くぞ!圧政には反逆だ!!」

 

 ……スパさん?

 

 男たちは次々と立ち上がり、自分が主犯だと主張した。

 マーリンは気づいたら逃げていた。

 種火刈りで酷使してやる……

 

 黒髭氏は「キモオタの拙者がソロでやったことでござる。拙者ぼっちですから、イケメンたちとか知らないでーす」と主張したが

あまりにも供述が真に迫っていたため、アンとメアリーにどこかに連れていかれた。

 黒髭氏の犠牲は忘れない。

 

「いいだろう。まとめて相手をしてやる……」

 

 暴力の権化、リヨぐだ子はすでに戦闘態勢に入っていた。

 俺たちは最期を覚悟した。

 

 だが皆(とばっちりのオリオン以外)満足げだった。

 当然だろう。

 最高の男たちと一緒に死ねるのだから。

 

「ありがとう」

 

 俺の感謝の言葉に男たちは最高の笑顔で応えてくれた。




戦士たちに……敬礼


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王の話をするとしよう 前編

いつもお読みいただきありがとうございます。
タイトル通り王様たちの話です。
いつもどおりギャグです。


 偉大な王の条件って何だろう?

 

 ある日の夜中、俺は突然思い立った。

 カルデアには生前、王位にあったサーヴァントが数多くいる。

 話を聞いてみようと思った。

 

「雑種か。少し待っていろ」

 

 翌日。俺はいつもの三人。俺とマシュとぐだ子で英雄王ギルガメッシュの部屋を訪れていた。

 

 ギルガメッシュはメソポタミアの神話に登場する伝説的な王様だ。

 バビロニアの特異点でのあの王気にあふれた姿を俺は忘れない。

 まず話を聞くならガメッシュさんに決まりだと思った。

 

 「いいぞ。入れ。雑種」というありがたい上から目線の言葉を受けて俺たちはガメッシュさんの部屋に立ち入った。

 

「入りますよ。ガメッシュさん

……って何で全裸なんですか!!?」

 

 ガメッシュさんは全裸だった。一糸まとわないマッパ。キャストオフ状態だった。

 肉体は均整の取れた細マッチョボディーで、股間には原初のTNKがそそり立っていた。

 エリちゃんが「あの裸族!」とガメッシュさんのことを言っていたが、マジにガメッシュさんは裸族だった。

 

 マシュは真っ赤になって後ろを向き、ぐだ子は「きゃあ(棒読み)」と叫んで手で顔を隠していたが明らかに指の隙間から見ていた。

 ……コイツ、BL本のネタにするつもりだな。(カップリングはエルキドゥだろうか)

 

 動揺する俺たちの姿を見て、ガメッシュさんは高笑いを上げつつ言い放った。

 

「フハハハハ!我の玉体に怖れ慄いたか!いいぞ!目を背ける不敬を許す!」

「ギルガメッシュ王……恐れながら申し上げますが……服を着てください」

 

 マシュが顔を背けながら恐る恐る言った。

 もちろんガメッシュさんがそんなことを聞くはずもない。

 

「断る!我の玉体に隠すべきところなど何一つない!」

 

 予想通りの反応が返って来た。

 

「ガメッシュさん。服を着てください……」

 

 この人のTNKを見ていたら自信を喪失しそうだ。

 恐る恐る俺もお願いした。

 

「断る!人は生まれてきたとき全裸だ。ならば全裸でいるべきだ!」

「令呪をもって命ずる。服を着てください、ギル」

 

 さすがにマシュが可哀そうになったのか、ぐだ子が令呪を切った。

 

 「おのれおのれおのおのれ!」と絶叫しながらガメッシュさんは服を着た。

 

 

「ガメッシュさん。ところで俺たちが部屋の外で待っている間、何してたんですか?」

 

 ようやく落ち着いたガメッシュさん俺の問いに頬を赤らめながら釈明した。

 

「……日記を書いていてな。恥ずかしいから見るなよ///」

 

 日記って……女子中学生かよ。

 

 俺はさっそく本題を切り出した。

 英雄王ギルガメッシュの君主論だ。

 

「我の君主としての哲学か?いいぞ、我が雑種共よ。特別に教えてやる。それはな……」

 

 どんな答えが返ってくるのだろうか?

 

「『我のものは我のもの!お前のものも我のもの』だ!」

 

 原初の英雄王は原初のジャイアンだった。

 

××××××××××××

 

「良き王の条件ですか。簡単です!計算ができることです!」

 

 今度はスパルタ王レオニダスの元を訪れていた。

 予想通りの不安な答えが返って来た。

 

 ぐだ子は俺の隣で曖昧な表情をして黙っていた。

 レオニダスのことを尊敬しているマシュは目を輝かせて聞いていた。

 

 レオニダスを信奉しているマシュは以前、毎日のようにレオニダスのマッスル強化塾に参加していた。

 ある日、彼女は突然、俺とぐだ子を呼び出し

 

「先輩!見てくださいこの筋肉!カッチカチです!」

 

 と言って十代の女の子が持っていてはいけないような上腕二頭筋を見せつけた。

 

 俺とぐだ子は必死の思いでマシュを説得して過度なトレーニングをやめさせた。

 

 だが、今でもマシュはレオニダスのことを尊敬している。

 

 暑苦しいレオニダスの君主論はさらに暑苦しく加熱した。 

 

「数が数えられなければ味方の戦力が把握できません!味方の数が把握できなければ作戦も立てられません!

数が数えられなければ適切な負荷をかけられません!100キロのベンチプレスと200キロのベンチプレスは全く違います!」

 

 予想通り脳筋な回答だった。

 いや、わかってたんだけどね……

 

「つまり良き王の条件とはトレーニングです!さあ!!ともにパーフェクトマッスルを目指しましょう!!!」

 

××××××××××××

 

「王の条件?妻と財産は多ければ多いほどいいと思うよ」

「マシュ、ぐだ子、撤退」

「はい。人選を間違ったようですね」

「あ、待っておくれよ!」

 

 ダビデ王は四十年にわたってイスラエルを統治し、イスラム教においても預言者の一人に位置づけられている偉人だ。

 オケアノスで縁を結んだ彼が召喚に応じたのはありがたかった。

 だが、偉大なるダビデのイメージはいともたやすく瓦解した。

 

 「おかしいなあ。僕けっこういいこと言ったと思うんだけどなぁ……」

 

 ダビデさんは俺たちの反応に対して首を傾げていた。

 

 とはいえ、この人は本物の偉人だ。

 イスラエルに繁栄を築いたダビデ王がどんな君主論をもっているのか、興味深かった。 

 俺は君主論に関する問いをダビデさんに再びぶつけてみた。

 するとダビデさんは爽やかな笑顔と爽やかな口調で言った。

 

「ところでいい儲け話があるんだけど、君たちも一口乗らないかい?」

「ぐだ男、マシュ、やっぱり撤退しよう」

「はい。時間の無駄でしたね」

「ああ、待っておくれよ!」

 

 一連のやり取りで人選ミスの疑いは極めて濃厚だったがもう少し話を聞いてみることにした。

 

「うーん。でも改めて王様としての在り方を問われると少し困るな。今の僕は君たちに仕える身だし、今の僕は若年の頃の姿だからね。

どちらかというと羊飼いだった頃の精神が前に出ているようなんだ」

 

 なるほどと俺は思った。

 

 ダビデさんはセコいし、コスいが決して権威を笠に着るようなことはしない。

 生前は偉大な王様なのに偉ぶったところがない。

 そういえばダビデさんが即位したのは30歳の頃のことだと言われている。

 きっと今のダビデさんはそれより若いころの姿なのだろう。

 

「ダビデさん、私からも質問していいですか?」

「うん。何だい言ってごらん?」

 

 マシュが話を始めた。

 ユダヤの経典、タルムードに乗っている話らしい。

 

 寒い冬、人間が道を歩いている途中で、寒さに凍って死にそうなヘビを見かけた。

 やさしい人間は蛇を哀れに思って慎重に自分の懐の中に入れ、体温で暖めたが気力を回復したヘビは男を殺そうとした。

 

 人間とヘビは口論したが、他の仲裁者によって解決することにして調停者の牛に会った。

 ヘビは「聖書には、ヘビと人間は敵と書いてあるので、私は当然のことをしただけだ」と主張した。

 普段から人間に苦しめられていた牛はヘビの肩を持った。

 人間は不服としては今度は狼に調停を求めたが狼もヘビの味方をした。

 

 人間は今度も不服を申し立て公平な仲裁をしてくれると期待できるダビデ王に調停を求めた。

 しかしダビデ王は「ヘビの言葉通り、聖書を踏まえてヘビが人を殺すのは仕方ないことだ」と結論を下した。

 

 絶望した人間はその場から退いて、ダビデの子ソロモンを訪ねた。

 

 ソロモンは「なぜあなたは命を救ってくれた人間を傷つけようとしているのか?」とヘビに問うた。

 ヘビは「聖書にそう書かれてあるからです」と答えた。

 

 ソロモンは裁定を下した。

 

「聖書には、『人間はヘビの頭を砕いた』と記録されているので、命じるところに従いなさい」

 

 人間は裁定通りヘビの頭を砕いた。

 

 なんか身も蓋もない話だ。

 

「ダビデさんはなぜあのような身も蓋もない裁定を下されたのでしょうか?なぜご自身ではなくソロモン王のところに行かせたのですか?」

 

 マシュの問いにダビデさんは爽やかに笑って答えた。

 

「ああ、あの時ね。ちょっと違うなあ、実際はこう言ったんだ」

 

 今、タルムードの真実が明らかになる。

 

「『うーん、聖書にもそう書いてあるし、君が蛇に食べられちゃうのは仕方ないんじゃないかな?』ってね。

納得しなかったから『そうだ。ソロモンに聞いてみたら?あいつ千里眼持ってるし、僕よりよっぽど役に立つと思うよ。いやあ、我ながら効率的なアドバイスだな』って言ったんだ」

 

 予想以上にヒドい真実だった……

 

「いやあ、あの時は僕も大変でね。牧場経営で大損したばかりで損失の補てんで頭が一杯だったんだ。ファイナンシャル・プランナーと会う約束もあったし、むしろ僕が相談に乗ってほしいぐらいだったんだよ。

アビシャグとも喧嘩しててね。あの時はどうしてアビシャグが怒ってたのかわからなかったけど、今思うとほかの若い子とゲイシャガールごっこしたのがよくなかったのかもね」

 

 マシュは呆気にとられ、ぐだ子はこれ以上ないあきれ顔で大きくため息をついた。

 

「ダビデさん、ガチでクズですね……」

 

 ぐだ子のどストレートな感想にダビデさんはまたしても爽やかに笑って答えた。

 

「そうだね、こうして客観的に見ると僕って結構クズだね。我ながらちょっと引くなあ。

でも、大丈夫。僕は君たちの命になら真摯に向き合うつもりだよ。君たちの破産は僕の破産でもあるからね。

あーでも、僕の破産は僕だけのものだから、その時は縁をきっぱり切ってくれ。

あ、でもちょっと損失を補てんしてくれると嬉しいかな」

 




後編に続きます。


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王の話をするとしよう 後編

昨日の続き。
マーリンのターンです


「王の話をするとしよう」

 

 花の魔術師がそう口上を述べると地には花が、空からは暖かな日差しが差し込みかの大魔術師が幽閉されていたアヴァロンの塔が再現される。

 

「星の内海。物見の台。楽園の端から君に聞かせよう。君たちの物語は祝福に満ちていると。

罪無き者のみ通るが良い。『永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン!)』」

 

 もはや強敵との戦いではマシュの築城コンボ(ロード・キャメロット)と並ぶ定番となった光景だ。

 

「お任せを。夢のように片付けよう」

 

 これも定番となっている雪の城(ヘラクレス絆10)に英雄作成でさらなる力を送り込む。

 

「■■■■■■■。■■■■■■■■!!(では参りましょう。速やかに殲滅します!)」

 

 ギリシャの大英雄の膂力を活かした高速の斬撃が目標を完全に沈黙させた。

 

××××××××××××××××

 

「そういえばさ、実際王の話を聞いた事無いよね?」

 

 イベントを完走しきった数日後、日課の種火狩りから帰ってきた俺とぐだ子はマイルームでぐだぐだと過ごしていた。

 

「マーリンの?」

 

 ぐだ子は黙って相槌を打つ。

 

 言うまでもなくマーリンの意味する王とはかのアーサー王(アルトリア)の事だ。

 カルデアにはアルトリアも召喚されているが、彼女はあまり自分の話をしたがらない。

 あの有名なアーサー王伝説をマーリンの口から聞ける。

 

 これって相当に豪華なことじゃないだろうか。

 今まで王様たちから直接話を聞こうとしていたが、なんでその発想に至らなかったのだろう?

 

 あの宝具の口上聞き飽きたから耳が拒否反応を起こしてたんだろうか?

 俺とぐだ子はマシュを連れて早速マーリンを訊ねることにした。

 

「ふむ、私の口からアルトリアの話を聞きたいとね。いいとも!お望みのままにお聞かせしよう」

 

 俺たちの「アーサー王の話が聞きたい」というお願いをマーリンはそう言って2つ返事で引き受けた。

 

 そして幼年時代からの長いマーリンの語りが始まった。

 

「王は5歳のころから剣を含めた英才教育を受けていた。

彼女は始めから全てを持ち王となるべくして生まれてきたのだからね」

 

 話は選定の剣を引きぬく15歳ごろまでのことから始まった。

 今の凛とした王気に溢れた彼女とは違う、まだ素朴な子供らしさが残っていた時代のアルトリア。

 

 マーリンの口から語られる彼女の話には新鮮な驚きがあった。

 そして話は運命の日からアーサー王伝説と円卓の騎士の黄金期へと進んでいく。

 

「私は言ったんだ。

『それを手にする前に、きちんと考えたほうがいい。それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ』とね。

しかし彼女は辛い道を選んだ。なんて言ってみたけど内心彼女の選択が波乱に満ちたものになることに心躍らせていたのは内緒だ」

 

 選定の剣(カリバーン)を引き抜いたアルトリアはブリテンと統べる王となり、卑王ヴォーディガーン率いるサクソン人とピクト人などのBANZOKUを退けた。

 それから10年は安定した統治が続いた。

 

「でもねブリテンの滅びは覆せないものだったんだ」

 

 その後ブリテンは凶作が続き、ヴォーディガーンさえいなくなれば飢えは無くなると考えた民の人心も離れ、それでも正しくあろうとした王は孤立して

カムランの丘での滅びの時が訪れた。

 

「王の最後の時には幽閉されていたのだけど、私は知っての通り千里眼持ちだからね。

見えてしまったんだ。王がブリテンの救済を求めてしまったことを。

故に、彼女はあの丘に留まり、死の淵であらゆる時代に召還され、幾度と無く聖杯を求めることとなった。

英霊になって聖杯を手に入れるのではなく、聖杯を手に入れる為に抑止力への前借りをしての戦いをね。

私はそれはそれで構わないと思ったんだよ?その決断も彼女の勝手だからね。

でもその結果を得るための方法……選定のやり直しという自己否定だけは認められなかった」

 

 そこで疑問に思った俺は口をはさんだ。

 

「え、でも前聞いた時アルトリアは聖杯への望みを持ってないみたいだったよ?

『悪しきものであるのなら、正すまでです』って……」

 

 マーリンは俺の疑問に対していつもの悪戯っぽい微笑を浮かべ、答えた。

 

「ふむ、この話には続きがあるんだ。私は滅びを待つだけしかないのを知っていながら彼女の探索を続けた。

そしてある時、彼女がブリテンの結末を受け入れ選定のやり直しを求めることを誤りとしたことに気が付いた。

私の千里眼は現在しか見通せないからね。いったい彼女が参戦した21世紀の聖杯戦争でどんな出会いがあったのか知る由もなかった。

その時はね。でもこう思ったよ『美しい!なんて奇跡だ!まさかこんな結末があるなんて!』ってね。さてここからが大事なんだけど」

 

 マーリンはそれからおよそ1500年後に知った事実。

 二度の聖杯戦争に参戦した彼女の話を始めた。

 

 どちらも俺の知っている世界とは違う正規に行われた冬木の聖杯戦争の話だった。

 一度目はマスターと分かりあえず、自らの手で聖杯を破壊した彼女は絶望をより深いものとした。

 そして二度目。彼女は運命に出会った。

 

「アルトリアの二人目のマスター。

彼は朴訥な青年だけど……異常者だった。自分の命がとても軽い。他者のためになることでしか自分の生存する理由を見つけられない。

アルトリアとそっくりな頑固者だ。頑固者通しぶつかり合いながら彼らは絆を深めていった。

そしてバーサーカーとして召喚されたかのギリシャの大英雄との戦いの際、枯渇していた彼女に魔力を供給するため、森にある廃屋でアーチャーのマスターである少女を交えて……

3人で×××(自主規制)したんだ。つまり今度は裸でぶつかり合いしたわけだ。……我ながらうまい事を言ったね」

 

 あまりの唐突な展開に俺もぐだ子もマシュ理解が追いつかない。

 

「「「え?え!?」」」

 

「だから○○〇(自主規制)したんだよ。三人で。体液の交換は古典的な魔力供給の手段だからね。

しかし初体験が3Pだなんて私も流石に驚いたなあ。それと英雄王との最後の戦いの前にも〇○○(自主規制)したんだけど。

その時には緊張して××ちゃった彼の○○〇(自主規制)を『……かわいい。すぐ、大きくしてあげないと』などと言って

口で彼の×××を○○〇〇〇(自主規制)してたけど『殿方の悦ばせ方は知っています』ってやはり魔術で○○〇(自主規制)を生やした経験が活きたのかな?

ほら、彼女は生前、表向きは男性として振舞っていたからね。私のファインプレーだね!」

 

 その後マーリンの口から次々に生々しいアルトリアの○○〇(自主規制)話が飛び出してきた。

 

「……いやあ、まさかアルトリアがあんな女の表情を見せるなんて!長生きはするものだね。

ああ、そうそう。それにあらゆる可能性を内包した4日間では風呂場で○○〇(自主規制)してたなあ。

最初は湯船の中で、その後湯船から出て壁に手をついてだね、後ろからこう……。おや?誰か来たようだ?」

 

 何かに気付いたマーリンが入口に目をやる。

 つられて俺たちも同じ方向に目を向けた。

 

 次の瞬間だった。

 

「マーリン!マーリンはどこですか!!あの不届き者め!!!我が剣の錆にしてくれます!!!」

 

 顔を真っ赤に上気させた件の人物、騎士王アルトリアが聖剣エクスカリバーを手に飛び込んできた。

 

「マーリンならすぐそこに…」

 

 と言いかけて振り返ると、先ほどまで彼がいた場所には空白が広がっていた。

 

 ……幻術使ったな。

 

「おのれ!マーリンめ!こうなったらアヴァロンまで直接行って本体を斬り伏せてやりますとも!!徒歩で!!」

 

 その後、エミヤが宥めに入るまでアルトリアの怒りは収まらず、ランスロットとトリスタンとガウェインが巻き添えで犠牲となった。

 ちなみに3人ともアルトリアに八つ当たりされてほんのり嬉しそうだったことを付け加えておく。

 

 王様って大変なんだな。

 俺は心からそう思った。




結局下ネタでした。
すいません……

ついでで、アーサー王伝説と言えば最近こんな記事を寄稿しました。
ついででどうぞ。

https://oriver.style/cinema/arthur-media/


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オルタちゃんは乙女かわいい

タイトルどおり


 ……そろそろか。

 

 俺とぐだ子はある事態に対処するため揃ってマイルームで待機していた。

 

 ノックも無く勢いよくドアが開く。

 想定通りだ。

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 

 アヴェンジャーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルク・オルタが怒りで顔を真っ赤に上気させて立っていた。

 

「あんたたち……やってくれたわね!!!」

 

 彼女は怒りのあまり声が半ば裏返っていた。

 必死すぎて逆にかわいい。

 

 「えーなんのことかわからないなぁ!?ぐだ子困惑」とぐだ子は思い切りすっとぼけた。

 

 オルタちゃんことジャンヌ・ダルク・オルタは怒りのあまり声にならない声を発しながら事の顛末を話し始めた。

 

 

「オルタ。ちょっといいですか?」

 

 ジルの部屋に行こうとしていたオルタちゃんを白い方のジャンヌが呼び止めた。

 オルタちゃんはジャンヌのことを嫌っているが、ジャンヌはオルタちゃんと仲良くするための努力を怠らない。

 「どうしたらオルタは仲良くしてくれるのでしょうか?」とマスターの俺たちにジャンヌは度々相談に来る。

 

 ジャンヌはその日、俺たちから受けた相談を愚直に実行した。

 

「失礼します!」

 

 ジャンヌはオルタちゃんを壁際まで押し込めると、そのまま壁に手をついた。

 オルタちゃんは完全に呆気に取られていた。

 ジャンヌは真剣極まりない表情で壁ドン状態を維持していた。

 

「あ……あんた何してんの?」

 

 やっとのことでオルタちゃんが疑問をぶつけると

 

「壁ドンです!」

 

 とジャンヌは真剣そのもののまま答えた。

 真面目なジャンヌは俺たちのアドバイス(笑)を鵜吞みにしたわけだ。 

 

 オルタちゃんが呆気に取られているのでジャンヌも不審に思ったらしい。

 

「……おかしいですね。こうすればあなたが喜ぶと聞いたのですが」

 

 と首を傾げた。

 

「……誰からの入れ知恵よ。それ」

 

 やっとの思いでオルタちゃんが言うと

 

「ぐだ子からです!あなたたちは仲良しですね。私、とてもうらやましいです!

あ、あとぐだ男が『顎クイ』なるものをするとあなたが喜ぶと言っていたのですが、『顎クイ』とは何ですか?」

「殺す!焼き殺す!」

 

 

 そしてここに至る。

 

「あんたたち!何、簡単に人の好みバラしてるのよ!トップシークレットって言ったでしょ!」

「トップシークレット(笑)」

「トップシークレット(笑)」

 

 オルタちゃんはぐだ子から与えられた乙女ゲーと少女漫画にハマっている。

 本人は「馬鹿じゃないの!」と吐き捨てていたが、俺たちは彼女が徹夜して『アオハ●イド』と『君に●け』と『ハチミツとク●ーバー』を読破していたことを知っている。

 

「……あんたたち。他にも私の秘密バラしてないでしょうね!?」

「もちろん秘密は守るよ。オラオラ系も行けるけど、『360°マテ●アル』の滝くんみたいな文系男子も好きとか口が裂けても言えないわー。

サンタ・リリィにもジルにもジャンヌにもそんな話はしてないよー」

「殺す!焼き殺す!こんがり丸焼きにしてやる!」

 

 ぐだ子の故意に不用意な発言がオルタちゃんの怒りに火をつけた。

 よし。頃合いだ。

 

 ぐだ子が一転して真剣な表情になった。

 

「オルタちゃん。エミヤお手製のマドレーヌ、ジャンヌの分まで食べたでしょ?

しかもジャンヌ本人の前で」

 

 オルタちゃんの手が止まった。

 反転しているとはいえ、元は聖女。

 バツが悪いらしい。

 計算通りだ。

 

 俺が畳みかける。

 

「そういうの良くないと思うよ。ジャンヌのことが嫌なのは仕方無いにしても嫌がらせとかよくないと思うよ」

 

 オルタちゃんが「ぐぬぬ」と唸って止まった。

 

「罰とは言え、呪わしい魔女に、あまりちょっかいをかけるものではありません。共に炎で焼かれますよ」

 

 ようやく少し落ち着いたオルタちゃんは怒りで顔を引きつらせながら呪詛の言葉(笑)を吐いた。

 こういう時、なんと言えばいいか。

 俺たちは勿論わかっている。

 

「だってオルタちゃんからかうと面白いんだもん」

「だってオルタちゃんからかうと面白いんだもん」

「殺す!焼き殺す!あんたたち殺して私も死ぬ!」

 

××××××××××××

 

 また、別の日。

 ……そろそろか。

 

 俺とぐだ子はある事態に対処するため揃ってマイルームで待機していた。

 

 ノックも無く勢いよくドアが開く。

 想定通りだ。

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 

 アヴェンジャーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルク・オルタが怒りで顔を真っ赤に上気させて立っていた。

 

「あんたたち……やってくれたわね!!!」

 

 彼女は怒りのあまり声が半ば裏返っていた。

 必死すぎて逆にかわいい。

 

 「えーなんのことかわからないなぁ!?ぐだ子困惑」とぐだ子は思い切りすっとぼけた。

 

 オルタちゃんことジャンヌ・ダルク・オルタは怒りのあまり声にならない声を発しながら事の顛末を話し始めた。

 

 

「オルタ、『ヘタレ攻め』『誘い受け』とは何ですか?」

 

 ジルの部屋に行こうとしていたオルタちゃんを白い方のジャンヌが呼び止めた。

 オルタちゃんはジャンヌのことを嫌っているが、ジャンヌはオルタちゃんと仲良くするための努力を怠らない。

 「どうしたらオルタは仲良くしてくれるのでしょうか?」とマスターの俺たちにジャンヌは度々相談に来る。

 

 真面目なジャンヌは俺たちのアドバイス(笑)を鵜吞みにしたわけだ。 

 オルタちゃんが呆気に取られているのでジャンヌも不審に思ったらしい。

 

「……おかしいですね。この質問をすればあなたが喜んで答えてくれると聞いたのですが」

「……誰に唆されたの?」

「ぐだ子です!あなたたちは仲良しですね。私、とてもうらやましいです!

あ、あとぐだ男が『肩ズン』なるものをするとあなたが喜ぶと言っていたのですが、『肩ズン』とは何ですか?」

「殺す!焼き殺す!」

 

 そしてここに至る。

 

「あんたたち!何、簡単に人の好みバラしてるのよ!トップシークレットって言ったでしょ!」

「トップシークレット(笑)」

「トップシークレット(笑)」

 

 オルタちゃんはぐだ子から与えられた乙女ゲーと少女漫画にハマっている。

 本人は「馬鹿じゃないの!」と吐き捨てていたが、俺たちは彼女が徹夜して『緋●の欠片』をクリアしたことを知っている。

 ハマりすぎて最近では、腐っている方の薄い本にまで手を出している。

 

「もちろん秘密は守るよ。『薄●鬼』の土方さんと沖田さんがオルタちゃんを取り合う二次創作書いてるとか口が裂けて言えないわー。

サンタ・リリィにもジルにもジャンヌにもそんな話はしてないよー」

 

 ぐだ子の故意に不用意な発言がオルタちゃんの怒りに火をつけた。

 よし。頃合いだ。

 

 ぐだ子が一転して真剣な表情になった。

 

「オルタちゃん。エミヤお手製のガレット、ジャンヌの分まで食べたでしょ?

しかもジャンヌ本人の前で」

 

 オルタちゃんの手が止まった。

 反転しているとはいえ、元は聖女。

 バツが悪いらしい。

 計算通りだ。

 

 俺が畳みかける。

 

「そういうの良くないと思うよ。ジャンヌのことが嫌なのは仕方無いにしても嫌がらせとかよくないと思うよ」

 

 オルタちゃんが「ぐぬぬ」と唸って止まった。

 

「罰とは言え、呪わしい魔女に、あまりちょっかいをかけるものではありません。共に炎で焼かれますよ」

 

 ようやく少し落ち着いたオルタちゃんは怒りで顔を引きつらせながら呪詛の言葉(笑)を吐いた。

 こういう時、なんと言えばいいか。

 俺たちは勿論わかっている。

 

「だってオルタちゃんからかうと面白いんだもん」

「だってオルタちゃんからかうと面白いんだもん」

「殺す!焼き殺す!あんたたち殺して私も死ぬ!英霊の座まで秘密持ち帰ってやる!」

 

×××××××××××××

 

「オルタ。オトメイトとネオロマンスならどちらがおすすめですか?」

 

 ジルの部屋に行こうとしていたオルタちゃんを白い方のジャンヌが呼び止めた。

 オルタちゃんはジャンヌのことを嫌っているが、ジャンヌはオルタちゃんと仲良くしようと努力を惜しまない。

 「どうしたらオルタは仲良くしてくれるのでしょうか?」とマスターの俺たちにジャンヌは度々相談に来る。

 

 真面目なジャンヌは俺たちのアドバイス(笑)を鵜吞みにしたわけだ。 

 オルタちゃんが呆気に取られているのでジャンヌも不審に思ったらしい。

 

「……おかしいですね。この質問をすればあなたが喜んで答えてくれると聞いたのですが」

「……誰に吹き込まれたの!?」

「ぐだ子です!あなたたちは仲良しですね。私、とてもうらやましいです!

あ、あとぐだ男が『耳つぶ』なるものをするとあなたが喜ぶと言っていたのですが、『耳つぶ』とは何ですか?」

「あんた、ちょっとは人を疑うことを覚えなさいよ!」

 

 この子、ホントいつも必死だな。

 そんなオルタちゃんは戦場ではとても強力なアタッカーだ。

 からかった分は今度、ご褒美で埋め合わせよう。

 オルタちゃんから逃走しながら俺とぐだ子はそんな話をするのだった。




オルタちゃんはポンコツかわいい


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Black Samurai

唐突に思い付いたネタ。
織田信長に関する史実がもとになっていますがもちろんギャグです。


 人理焼却の阻止に成功してからしばらくして起きた新宿の一件からまだ戦いは終わっていない事が分かった。

 今後のためにも戦力の増強は必要だ。

 新宿での戦いの後、縁をつないだ黒い方のエミヤ・オルタが召喚に応じてくれた。

 

 召喚した後さっそく俺とぐだ子、それにマシュのいつもの三人で彼にカルデア内を案内することにした。

 管制室や霊気保管庫などの重要施設を案内し終わり、続けて俺たちは食堂にやってきた。

 

 有事でなければいつも誰かがいるこの場所だが今日はノッブこと信長と沖田さん、それに茶々の三人がぐだぐだ空間を形成していた。

 ノッブと沖田さんは常日頃からいがみ合っているがなぜかいつも一緒にいる。

 本当は仲良いだろ。

 

 今日は沖田さんがノッブに憤っていた。

 どうも話を聞いていると沖田さんは初プレイの『戦●BASARAX』でノッブに嵌められて伊達政宗(最弱農民)でノッブの

毛利元就(存在自体がバグ)にオーモーイーガーされたようだ。

 

「ノッブ!なんですかあれ!おかしいでしょあのキャラ!格ゲーじゃなくてSTGやってるのかと思いましたよ!」

「うっはははははははぁ!甘いのう、沖田。勝負の前から戦いは始まっておるのじゃ!情報戦というなあ!」

 

 沖田さんを一方的に蹂躙できたからかノッブは物凄く嬉しそうだ。

 あのバランス崩壊ゲーで毛利使って勝つのがそんなに楽しいのかはさておきとにかく上機嫌だった。

 

 俺たちが入ってきたのに気付いた彼女は

 

「おお!マスターたちか!近うよれ!お主たちにもわしに毛利で乱入対戦される権利をくれてやろ……」

 

 そこまで言いかけるとノッブと隣の茶々は俺の傍らにいる人物―エミヤ・オルタを見て驚愕の表情を浮かべた。

 

 時間が静止したかのような沈黙がしばし続いた後、二人は興奮した様子で言った。

 

「弥助!弥助ではないか!?」

「弥助!弥助じゃな!?」

 

 織田家の関係者だろうか?俺の知らない人物だ。

 どうやら件の人物に心当たりのある様子の沖田さんが盛大に吹き出した。

 続けて俺の様子に気が付いたマシュがささやくように教えてくれた。

 

「先輩、弥助というのは信長公に仕えた黒人の小姓です。元はポルトガルの宣教師が連れてきた奴隷だったと聞いています」

 

 ナイスアシスト。

 お礼を言うと「お役に立てて嬉しいです」といってマシュは控えめに笑った。

 かわいい……。ちょっとふっくらしてしまった。

 

 興奮冷めやらぬ様子のノッブと茶々がエミヤに駆け寄る。

 困惑した表情のエミヤを差し置いて(一方的に)再会を喜びノッブと茶々がまくしたてる。

 そしてその内容は俺の想像の斜め上を行っていた。

 

「弥助!わしを忘れたか?そなたのそうるめいとの"くーるはんど・のっぶ"じゃよ!」

「茶々、弥助の即興らっぷだーい好き!狸爺(家康)のことでぃすってでぃすってえ!」

 

 おいおい。ラップとかソウルメイトとか時代設定おかしいだろ。

 それに"クールハンド・ノッブ"ってすごい名前だな。付けた奴赤面してただろ。

 

「弥助はモザンビーク出身で英語は全く分からなかったはずなのですが…」

 

 困惑しながらマシュが教えてくれた。

 

「いや、だから俺は弥助ではないのだが…」

「なに!?弥助、そなたひょっとして記憶がないのか?

初対面の際、"LL・クール・Y"とそうるねえむを名乗って思わず赤面したことも忘れてしまったのか?」

「確かに記憶は摩耗しているが俺は現代の英霊。少なくとも織田信長の家臣だった記憶はない」

「そうか!ではわしと"ばっどぼーいずつーばっど"ごっこでもしたら思い出すかのう!

今日は特別にそなたがうぃる・すみすをやってよいぞ!今日はわしがまーてぃん・ろーれんすをやってやろう!」

「だからノッブ、その人弥助じゃないですって!」

 

 明らかに困惑した表情のエミヤを見て沖田さんがノッブを窘める。

 

「いいや!黒い肌、タラコ唇、剃りこみの入った髪型、6尺2寸はあろう身の丈!間違いなくこやつは弥助じゃ!

あ、これならどうじゃ!そなたの大好きならっぷじゃ!しばしここで待っておれ!」

 

 そう言うとノッブは小走りでどこかに行き、スピーカーと音楽プレーヤーを持ってきた。

 

「ほれほれこれを聞いて思い出せ!えみねむの"かあてんこおる"じゃ!

『オレの認める白人はエミネムだけだ』そう申しておったな!じぇい・じーとかにえ・うえすともあるぞ!

でとろいと生まれひっぷほっぷ育ちの血が熱くならぬか?」

 

 なんだこれ。カニエ・ウェストとかジェイ・Zとか時代設定おかしいだろ。

 今度は『信長協●曲』にでも影響されたのか?

 

「ノッブ、この人は新しくカルデアに加わるエミヤ・オルタ。クラスはアーチャーでラッパーじゃないし日本人だよ」

「なるほど、そなたアーチャーの適正があったか。うむ!たしかにそなたの即興らっぷ、そのくりだされるりりっくの数々は矢のごとしであったのう!」

 

 新宿の時はいつも皮肉気な表情を浮かべていたエミヤだがノッブ達の斜め上すぎる言動にただ困惑するしかない様子だ。

 ノッブの暴走は全く止まる様子がない。

 

「そなたとヴァリニャーノ神父の島原でのらっぷばとるは伝説になっておるぞ!

最初そなたが『ラップのためならジーザス・クライストだってdisってみせる』と言ったら神父が激怒しておったな!

最後に認め合ったそなたが『俺には今まで認める白人が二人だけいた。ジーザス・クライストとエミネムだ。あんたが三人目になったぜパードレ・ヴァリニャーノ』

と言った時はわしは心の底から震えたぞい!」

「おかしいですね…。弥助はイスラム教徒だったはずなのですが」

 

 困惑しながらマシュが教えてくれた。

 

「そうじゃそうじゃ。イエズス会の宣教師連合軍と織田家での長篠のべえすぼおる決戦でもそなたは大活躍じゃったのう!

打っては長篠城の本丸を直撃する特大ほおむらん、投げては90まいるだいのふぁすとぼーるにはーどすらいだあで三振の山を築いておったのう!

あの試合ミッチーのえらあとサルのばんと失敗がなければわしらの物だったのに実に惜しかった!」

「おかしいですね…。野球という競技が成立したのは18世紀中ごろだったはずなのですが」

 

 困惑しながらマシュが教えてくれた。

 

「ご免!」

 

 ノッブと茶々に沖田さんの鋭い鞘でのツッコミの一撃が入る。

 悶絶して倒れた二人を引きずりながら沖田さんは言った。

 

「ほらほらノッブ、だからこの人弥助じゃないですって。マスターも言ってるじゃないですか。もう行きますよ。今度は私が毛利使いますからね」

「嫌じゃあ!わしは弥助と遊ぶんじゃあ!」

「嫌あ!茶々、弥助と伯母上とらっぷばとるするの!」

 

 沖田さんに引きづられてぐだぐた三人組は食堂から出ていった。

 いったいどうなっているんだろう。この世界の戦国時代は。

 その場に残った皆がただただ困惑していた。

 

「オレの中の黒い悪魔がヒップホップで食っていけと囁いている……」

 

 そしてその後しばらくの間、エミヤ・オルタがちょっとおかしくなった。

 

 




弥助はモザンビーク島の生まれで、ノッブに武士としての身分を与えられて正式に仕えた人物です。生年は不詳ですが、来日当時は20代半ばぐらいだたっと言われています。
ノッブの元に居たのは一年ちょっとで本能寺の変の時もその場にいたとの記録がありますが、なぜか明智光秀に赦免されその後は南蛮寺に送られたといわれています。
よってこの物語はフィクションです。


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セクハラしたいお年頃 前編

タイトル通りのまんま下ネタです。
苦手な方はブラウザバックしてください。


 恥の多い人生を送ってきました。

 

 実は俺、セクハラ魔なんです。

 

 反省はしてるけど止められない。

 

 だって気持ちいいから!!!!!

 

 

 ある日、俺とぐだ子はちょっとしたお使いを頼まれていた。

 切れた蛍光灯の交換だ。

 たまたま資材スタッフの近くに俺たちが居たのでついでで引き受けたわけだ。

 交換するには脚立に乗る必要がある。

 

「じゃあ俺が抑えるからぐだ子登って」

「やだよ」

 

 当然の反応が返って来た。

 もちろんこのぐだ男、この程度では止まらない。

 

「なんで?」

「スカートの中覗く気だろ。この変態」

 

 まったく。人を変態扱いして。

 いや、そうだけどさ。

 

「何言ってんだよ。俺の方が体格いいんだから俺が抑えたほうがいいに決まってるじゃん。

お前は安全に作業できて俺はオカズが手に入るし、ウィンウィンだろ?ふふふ……今日はどんなパンツ履いてるのかな?

……痛い!痛い!ごめんなさい!調子にのりました!黒鍵で殴らないで!死んじゃう!死んじゃう!

僕が脚立に登りますぅぅぅぅ!!!」

 

 いつものやり取りだ。

 

 話変わるが。今年バレンタインデーで女性サーヴァントたちからチョコをもらった。

 俺も上げたし、お返しもした。

 

 みんな用意してくれていたが、モーさんこと円卓の騎士モードレッドだけは用意してなかった。

 彼女は少し考えると「食いかけだけどこれやるよ」と食べかけのブラック●ンダーをくれた。

 「一目で義理とわかるチョコです」のアレだ。

 

 モーさんの食べかけ……俺が何を考えたか、男性諸氏なら容易に想像がつくことだろう。 

 

「……間接キス」

 

 真顔でモーさんの顔を見つめながら俺はぬるっとした勢いでモーさん食べかけのブ●ックサンダーを齧った。

 モーさんは唖然として俺を見ていた。

 

「ふう……モーさんの唾液おいしいなあ」

 

 勘違いの無いように言っておくが、俺とモーさんは良好な関係を築いている。

 「オレの剣を預け、名誉を預け、命を捧げる」と言ってくれたぐらいだ。

 モーさんは女扱いされると怒るし、男扱いしても怒るので褒めるときは「モーさん、かっこかわいい」と言って褒めている。

 この褒め方気に入ってくれたらしい。

 だからこれはじゃれあいなのだ。ちょっとしたじゃれあいなのだ。

 ホントだよ。

 

「……痛い!痛い!ごめんなさい!調子に乗りました!

素手で殴ってくれる優しさは嬉しいけど普通に痛いよ!!モーさん!!!!」

「優しさじゃねえ!お前みたいな変態殴ったらクラレントが汚れるだろうが!」

 

 

 話は変わるがカルデアには魅力的な女性が多くいる。

 でも一番かわいいのはマシュ。

 異論は認めない。

 

 俺は一日一回マシュでオ●ニーしないと体調が悪くなる。

 羅生門の時などビーストと化したマシュのおかげでテクノブレイク寸前になったぐらいだ。

 同行した金時に本気で心配されるぐらいやばい状態だった。

 

 懲りない俺は「マシュ!マシュ!」と絶叫しながらある日も日課をこなしていた。

 だが、どうも施錠が緩かったらしく部屋の外に声が漏れていたらしい。

 通りすがりのアステリオスに声を聞かれてしまった。

 

「ぐだお……いき、あらいけどだいじょうぶ?……ましゅにきてほしいの?ましゅならさっきぐだこといっしょにいたよ?」

 

 心配されてしまった。

 アステリオスいい子すぎ。

 

「ゆ……夢だよ。怖い夢を見たんだ。おどかしてごめんね、アステリオス」

 

 と俺は誤魔化した。

 

「ぐだお……ごめん、ぼくゆめのなかじゃぐだおのことまもれない……う……」

 

 なんだこの子。天使か?

 

 ある日。

 ダヴィンチちゃんに呼ばれて、俺とぐだ子はブリーフィングをしていた。

 その帰り、廊下でマシュとすれ違った。

 

 マシュは俺たちに気づき、気を取られてしまったのだろう。

 「あっ」と短く叫んで、手から書類がこぼれた。

 彼女が屈んで資料を拾い始めたので俺たちも屈んで手伝ったのだが……

 

「お、おおう……」

 

 知っての通り、カルデアの制服は地味にスカートが短い。

 何が起きたかは言うまでもないだろう。

 屈んだままの姿勢でよかった。前かがみ状態を不審がられるところだった。

 

「ありがとうございます」

「水玉……かわいいの履いてるんだね。ごちそうさまでした(マシュ、大丈夫?運ぶならいつでも手伝うからね)」

 

 しまった。本音と建て前逆だった。

 

「……痛い!痛い!ぐだ子さん!ツッコミの度に新しい礼装試すの止めて!それ、マルタさんのホーリー・ナックル!!

死んじゃう!!!死んじゃうよ!!!」

 

 マシュは……俺たちのやり取りを見ながら顔を真っ赤にして

 

「……粗末なものをお見せしてすいません」

 

 と言っていた。

 マシュかわいい。

 

 

 俺たちはサーヴァントとこまめにコミュニケーションを取っている。

 マイルームの呼び出しは日替わりで、今日はジャンヌの番だった。

 

 ジャンヌは聖人だ。精神的、完全に本物の聖人だ。

 敵の命か自分の命。どちらかしか助からないなら迷うことなく自分の命を捨てる。

 狂気とも言えるけど、そんな彼女に俺は最大限の敬意を払っている。

 もちろん、ぐだ子もマシュも。

 

 でも、イタズラしたくなるが俺の悪い癖。

 

「ジャンヌが異端審問にかけられた本当の理由、俺わかったよ。

――それだ」

 

 俺が指さした先には、聖女の聖パイがあった。

 

「胸……ですか?」

 

 ジャンヌは真剣な眼差しで聞いている。

 マシュは困った顔をしている。

 ぐだ子がパーフェクトに呆れている。

 そろそろぐだ子のツッコミが飛んでくるかもしれないがその程度でこのぐだ男が止まるはずもない。

 

「ジャンヌ。そんなおっぱい持ってたらそれ自体が罪だよ。

『なんとけしからんおっぱいだ!』ってサムエル記にも書いてあるでしょ?」

「そんな記述は知りませんが……成程。それは盲点でした。

よくわかりませんが、分かりました」

 

 ジャンヌは真面目だ。

 真面目すぎてよく騙される。

 ある時など、俺たちのやり取りをたまたま聞いていた天草が思わず「ブフォ!」と勢いよく吹き出していた。

 

「ガウェインも『あの清廉な佇まいと対照的に豊かに実った果実!あれはまさに犯罪です!』って言ってたよ」

 

 ジャンヌは変わらず真面目に聞いている。

 ついにマシュの倫理コードに引っかかった。

 

「はい。私もよくわかりました。ぐだ男先輩とガウェインさんには後でお話があります」

「俺もマシュに話がある。マシュ、デートしようよ」

「え……そ、それは嬉しいですが///今は関係ありません!もう!先輩のバカ!」

 

 ああマシュかわいいよ……

 

「マシュ、ぐだ男には私からよく言い聞かせておくから。物理で」

「はい。お願いします」

 

 というぐだ子とマシュの不穏なやり取りがあったがきっと冗談だろう。

 

 ジャンヌは不思議そうに俺たちのやり取りを聞いていたが、彼女の方も聞きたいことがあったようだ。

 礼儀正しく挙手して発言した。

 

「オルタが相変わらず私を避けているのですが、どうしたら仲良くできるでしょうか?」

 

 オルタちゃんことジャンヌ・ダルク・オルタはその出自故にジャンヌのことを嫌っているが、ジャンヌはオルタちゃんと仲良くしたがっている。

 オルタちゃんはからかうと面白い。

そういえば昨日、エミヤお手製のカヌレ、オルタちゃんがジャンヌの分までもしゃもしゃ食べてたな。

 

 よろしい、ではこれはイタズラではなく誅罰だ。

 俺とぐだ子はニヤリと笑って顔を見合わせた。

 

「そうだね。『刀剣●舞』の兼定と国広はどっちが攻めでどっちが受けか聞いてごらん」

 

 ぐだ子は真剣を精一杯繕いながら最低のアドバイス(笑)をした。

 

「攻めと受け?攻めの反対は守りではないのですか?」

 

 俺は勿論、援護射撃だ。

 

「攻めと受けでいいんだよ。そう言えばオルタちゃんには通じるから。あと『袖くる』してあげると喜ぶよ」

 

 ジャンヌは邪心の欠片もない満面の笑顔で礼を返した。

 

「よくわかりませんがわかりました!ありがとうございます!」

 

 後日、もちろんオルタちゃんと追いかけっこする羽目になった。

 

 




このぐだ男最低だなwww
後編に続きます。


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セクハラしたいお年頃 後編

わざわざ分けるまでもない長さでした。
後編です。
今回は微下ネタです。


 またしても亜種の特異点発生が確認された。

 サーヴァントお休み中のマシュをカルデアに置いて俺とぐだ子は特異点に向かった。

 ミスター・ムニエルの助力で紛れ込んだデオンとアストルフォがお供だ。

 どうやったらこれがあの性欲魔人になってしまうのか理解に苦しむ少年時代のフェルグスさんも合流した。

 

 イースと呼ばれるこの特異点の国の一つ。

 俺たちは謎の幼女(後にサーヴァントと判明)の案内で女王の居城への近道を急いでいた。

 

「じゃあ、ぐだ子が先頭。デオンはぐだ子をフォローしてあげて。俺はアストルフォの後ろに回るからフェルグスさんは最後尾で警戒しながら前進」

 

 人が一人しか通れない狭い道を行くため、俺たちは順番を決めて進むことにした。

 俺がぐだ子の後ろを取らなかったことを彼女は不振がっていた。

 この状況ならぐだ子のスカートの中を覗こうとするのが自然な行動だからだ。

 もっともそのたびに鉄拳制裁を食らっていたので実現したことはない。

 

 だがこれでいい……

 俺の望みはこれで叶うのだ……

 マシュは通信を切っている。今しかない。

 

「ひゃっっ!」

 

 前方を進むアストルフォが変な声をあげた。

 

「どうしたの、アストルフォ!?」と先行するぐだ子がアストルフォを気遣ったが。

 ふふふ……

 

「ぐだ男がお尻さわったー」

 

 俺にはミスター・ムニエルの気持ちがよくわかる。

 アストルフォは男だ。

 男だ。

 でも、かわいい!!!

 

「ん?何言ってるんだよ。アストルフォ……。なかなか進まないから押してあげたんじゃないか」

「うそー、触りかたがやらしいー」

 

 きっとぐだ子は壁の向こうで俺にヘドロでも見るような視線を向けているのだろう。

 だが、この行為には何の問題もない。

 俺たち男同士なんだから……

 じゃれてるだけなんだから……

 ホントだよ。

 

「ほーら早く行かないとスカートめくっちゃうぞー終いにはスカート脱がせちゃうぞー」

「もー!ぐだ男のえっちー」

「ふふふ。アストルフォはかわいいなぁ……」

「先輩……」

 

 聞こえてはいけない第三者の声が聞こえた。

 マシュ……通信切ってたんじゃ……

 

「ち、違うんだ!マシュ!こ、これは……男同士のじゃれあい……だよ」

「そうですか。とても楽しそうで何よりですね。先輩」

「た……楽しいよ。だって男同士のじゃれあい……だもん」

「うそーぐだ男手つきがやらしいー」

 

 とりあえずマシュに弁明してその場は切り抜けた。

 危ない危ない。時と状況に気を付けないと。

 俺の目的はまだ果たされていない。

 もう一つどうしてもやらねければならないことがある。

 散っていったミスター・ムニエルのためにも。

 

「な……何だこれは!?」

 

 不夜城に潜入した際。

 デオンとアストルフォはデオンが盗み出してきた服に着替えて変装をすることになった。

 デオンが民家から盗んできたモノは……セーラー服とメイド服だった。

 

 デオンはこんなものが民家のタンスに入っていたことに困惑していたが、そんなマニアックな服が民家のタンスに偶然入っているはずもない。

 これは出発前にミスター・ムニエルから受け取った彼の魂だ。 デオンが盗んできた服をこっそりすり替えておいたのだ。

 

「かわいいー。二人とも超似合ってるー」

 

 俺がカメラを向けるとセーラー服を着たアストルフォはノリノリでポーズを取り、メイド服を着たデオンは顔を真っ赤にしながらアストルフォに引っ張られていた。

 

「止めて!止めてくれ!マスター!それとさりげなく私の臀部を撫でまわさないでくれ!」

 

 デオンに抗議されたが、俺はありったけの連射機能を使い、撮った先から写真をカルデアのサーバーにアップロードした。

 回線の向こうからミスター・ムニエルの「ありがとう……ありがとう……」という感謝の言葉が聞こえてきた。

 

 ……ミスター・ムニエル。あなたの望みは叶いました……

 

「ぐだ子先輩!ぐだ男先輩が自由すぎます!なんとかしてください!」

 

 叱られるの確定だが俺の望みは叶った。もう悔いはない。

 マシュの懇願を受けたぐだ子の報を見た。鉄拳制裁ぐらいは覚悟している。

 が、いつもは常識的な言動のぐだ子が完全にイってしまった目をしていた。

 

「こ……これは……この快感は……積極的なアストルフォと恥じらうデオン。

これは……これは……百合なのか?……菊なのか?どっちだ?どっちなんだ!?」

 

 カルデアに帰った後仲良くマシュに叱られました。

 




ぐへへ。。アストルフォきゅん……デオンきゅん


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イスラエルの王

ダビデの幕間の物語良かったですね。
思わず書いてしまいました。

注・このエピソードにはダビデさんの幕間の物語と終局特異点のネタバレが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


 あれは確か、第六特異点を修復して間もないころだったと思う。

 アーチャーのサーヴァント、イスラエル王ダビデが突如「気になることがある」と言い出し、修復の完了した第六特異点にレイシフトすることになった。

 

 ダビデさんはいつもの調子だった。

 「神殿を建てる」などと言って俺たちを惑わしていた。

 この人はいつもこの調子だ。

 

 同行した俺とマシュとぐだ子はダビデさんの困った人ぶりに頭を悩ませながら彼の話を聞いていた。

 神殿の話が終わるとダビデさんは突然、マシュの顔を凝視し始めた。

 マシュが「あの……?」と困惑していると

 

「もしかして、と思ったけど確信に変わったよ。きみはアビシャグ、そう、アビシャグじゃないか!」

 

 この人はまた訳の分からないことを。

 注釈するとアビシャグとは老年の頃のダビデさんが連れていた美少女のことらしい。

 

「髪型とか体型とかぜんぜん違うけど、それはそれだ。どこからどう見てもアビシャグだ!」 

「ダビデさーん、そろそろ怒りますよ?」

 

 マシュが困っているので俺は割って入った。

 

「む?彼女はぐだ男の佳い人か。悲しいな……ではアビシャグではないのか……

アビシャグだと思ったんだけどな」

 

 この人は天然なのか計算なのかどっちなのだろうか……

 残念そうにしていたのも束の間。

 ダビデさんは今度はぐだ子の顔を凝視していた。

 

「もしかして、と思ったけど確信に変わったよ。きみはアビシャグ、そう、アビシャグじゃないか!」

 

 ぐだ子は心底から呆れかえった顔でダビデさんを見返していた。

 

「髪型とか体型とかぜんぜん違うけど、それはそれだ。どこからどう見てもアビシャグだ!」

「ダビデさーん。記憶喪失ですか?彼女はマスターのぐだ子ですよ」

「ううん。見た目は全然似てないけど、間違いない。アビシャグだ」

 

 ぐだ子は心底から深くため息をついた。

 

「ダビデさーん。私たち召喚のとき一緒でしたよね?おじいちゃん、ボケちゃったのかな?」

「む……確かに君とは契約のつながりを感じるな。悲しいな……ではアビシャグではないのか……

アビシャグだと思ったんだけどな」

 

 ……ひょっとして、アビシャグは固有名詞ではなく何らかの一般的な単語なのだろうか?

 

「ダビデ王。用もないのに現界したのなら帰還してもらえるかな。このレイシフト一回で職員の日給が消えるんですからね」

 

 回線の向こうからドクター・ロマンが話しかけてきた。

 遠い昔に思えるがドクターはまだこの頃カルデアの一員だった。

 

 ドクターの突っ込みにダビデさんはいつものように意味深な微笑を浮かべた。

 

「いや、用はあるとも。ドクターくん。では行こうか」

 

 ダビデさんはレイシフトの目的を巨人ゴリアテだと言っていた。

 実際出てきたのはでっかいスプリガンとでっかい幽霊とでっかい猪だった。

 

「おや?巨人かな?」

「どう見ても巨人ですよ?」

「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。

巨人に見えるけど、もし違っていたら?非効率的だと思わないかい?」

 

 その場にいたダビデさん以外の三人、そして回線の向こうにいるドクターはその時間違いなく同じことを考えていた。

 「……こいつ、めんどくせえ」と。

 

「ぐだ男くん、ぐだ子ちゃん。そのおっさんの言うことは聞かなくていいぞ」

「おっさんとは失礼だな。お兄さん、もしくはおじいさんと呼んでくれたまえ」

「はいはい。お兄さん。言動にもう少し若者らしさを持ってくださいね」

「いいとも。ドクターくん」

 

 回線の向こうのドクターのツッコミはダビデさんの面倒くさい言動で軽くいなされた。

 

「うーん。そうだ。ぐだ男、ぐだ子。あれが巨人か巨人でないか議論して決めないかい?」

 

 隣のぐだ子が「ハァ……」と深くため息をつき……等身が縮んでリヨ形態に変化し始めた。

 

「ダビデさん。

……そろそろ殴るぞ。グーで」

 

 彼女の静かな狂気にダビデさんは一気に顔面が蒼白になった。

 

「あ、ごめんなさい」

 

 ダビデさんはこんなのだが最高ランクの英霊だ。

 レアリティは星3だが……いや、何でもない。とにかく強い。

 

 ダビデさんが宝具にまで昇華させた投石は一撃で巨大エネミーを沈めた。

 

「なんだか今回はいつもより疲れた気がする。主にダビデ王のせいで」

 

 俺たちがレイシフトから帰還する旨をドクターに伝えるとドクターは回線の向こうでぼやいた。

 きっといつもの困り顔をしているのだろう。

 

「そうだね。疲れたねえ。では、神殿の建造はまたにして帰還するとしよう。今回は僕のかっこいいところを見せるのが目的だったからね」

 

 ダビデさんそう言ってはいつもの涼やかな笑みを浮かべていた。

 

 こうしていつもの微小な特異点の修復は終わった。

 ダビデさんの最後の発言が少し引っかかったが、ダビデさんのことだし特に意味は無いのだろうとその時は思っていた。

 

×××××××××××××

 

 あれは度々ある微小特異点修復の一つだった。

 ダビデさんはいつもの調子で、ドクターもいつもの調子だった。

 でも、今改めて思い出すとこれは大事な一時だった。

 必死に思い出してみたがドクター・ロマンとダビデさんがまともに会話したの見たのはこの時だけだった気がする。

 

 ソロモンの宮殿での戦いが終わった後もダビデさんは残ってくれた。

 

 「僕は君たちに『もういい』と言われるまではいるつもりだよ。僕は君たちのサーヴァントだからね」

 

 ダビデさんはそう言ってくれた。これだからこの人のことは嫌いになれない。

 

 今日は非戦闘時にはいつもやっているサーヴァントとの面談だ。

 今日はダビデさんの番だった。

 マシュはダ・ヴィンチちゃんのお使いで手が空かず、俺とぐだ子だけで面談した。

 

 俺たちは思い切って「ロマニの正体に気づいていたのか」を改めて問いただしてみた。

 ダビデさんは以前、同じことをマシュに問われて「僕はぜんぜん気づいていなかった」と言っていたがどうにもそれが本当だと思えなかった。

 

「君たちの執念も中々だね。そんなに僕のことが気になるのかい?」

「気になりますよ。だって俺たちはダビデさんのマスターですから」

「うん、そうかい。嬉しいな、ぐだ男、アビシャグ」

「ダビデさーん。私、アビシャグじゃないですよ」

 

 ダビデさんの爽やかな笑顔が少しだけ真剣さを帯びたように感じた。

 

「そうだね。そこまで言われては仕方ない。でも、今から言うことは聞いたらすぐに忘れてくれ。

――僕はね」

 

 イスラエルの王、ソロモンの父、ダビデ王は言った。

 

「息子にかっこいいところを見せたかったんだよ」

 

 ダビデさんはいつもの胡散臭い爽やかな笑顔に戻っていた。

 

 この人は……

 だから憎めないんだ。

 

 聞いてしまったものは忘れられないけど、誰にも言わないでおこう。

 俺たちはそう誓ったのだった。




ダビデさんの幕間の物語良かったですね。
こういう原作再構成は好きじゃないんですが、思わず書いてしまいました。


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カルデアの一日 前編

思い付いたネタを片っ端から繋ぎました。
長めなので二回に分けます。


「……静謐ちゃん。部屋に入ってくるときはちゃんと許可を取ってからにしようね……」

 

 朝、起きたら静謐のハサンが俺の枕もとにいた。

 比喩表現ではない。

 

「……ん?どうしてそこで不思議そうな顔をするのかな?」

 

 静謐ちゃんは不思議そうに小首を傾げた。

 きよひーも頼光さんも静謐ちゃんも何度言ってもどう対策を立ててもなぜか部屋に侵入してくる。

 

「わかりました。では、ぐだ子の部屋に行ってきます」

「止めてあげて。普通に迷惑だからね?」

「……はい。迷惑にならないように潜入してきます」

 

 駄目だ。この子、絶対わかってない。

 小さくため息をついて俺は起き上がるのだった。

 

××××××××××××

 

「朝起きたら、静謐ちゃんが私の枕もとでBL本読んでた……。本棚の奥の方に隠しておいたのに……。

静謐ちゃんに純真な目で『……こ、こういうのがお好きなんでしょうか?私、理解できるように頑張ります』って言われた。

死にたい……いや、いっそ殺して……」

 

 いつもはマシュが起こしてくれるが、マシュは夕方までメディカルチェックらしい。だが、静謐ちゃんのせい……おかげでいつもより早く起きた俺は

同じく静謐ちゃんのおかげで早起きしたぐだ子と合流し食堂で朝食をとっていた。

 

「大丈夫だ。俺も朝起きたら、静謐ちゃんが俺のPCでエロゲのCG見てたことがあるから。

『……わ、私も「ふええ」と言ってドジっ子すれば気に入っていただけるのでしょうか?』って言われたよ。

死にたいと思ったけど3日くらいで立ち直ったから大丈夫だ」

 

 話し込んでいると配膳にエミヤがやってきた。

 ニヒルなこの弓兵だが、見かけによらずオカン体質なので彼は色々世話を焼いてくれる。

 

「また侵入されたのか……そろそろ警備体制を見直す頃か。私とクー・フーリンと呪腕のハサンでは不十分か。

希望なら見回りを増員するが、誰がいいか希望はあるか?」

 

 俺たちは顔を見合わせ、何人かの名前を挙げた。 

 

「アルトリア、アーラシュ、マルタさんあたりかな。この辺は大丈夫だと思う」

「私たちから頼んでおくよ」

「そうか。ではそうしてくれ。君たちの精神衛生は大事な問題だからな」

 

 そう言うとエミヤは厨房に戻った。

 

××××××××××××

 

「師匠、お願いします。これじゃ安心してオ●ニーできないです」

「師匠、お願いします。これじゃ安心して薄い本が書けないです」

 

 いままでこういう問題が起きるとダ・ヴィンチちゃんに相談していたが、そういえばダ・ヴィンチちゃん並みの万能な人が居るのを忘れていた。

 俺たちはスカサハ師匠の元を訪問していた。

 今日まで師匠に相談しなかったのはケルト流なバトルマニア的要求をされる可能性が怖ったからではない。

 断じて違う。

 ホントだよ。

 

「……お前たち、私に打ち明ける勇気はあるのに自慰行為を見られる勇気とホ●同人の執筆を見られる勇気はないのか?」

 

 師匠は顔色一つ変えずに言った。

 顔色一つ変えずに「自慰」とか「●モ」とか、さすが師匠だわ。

 

「はい。それとこれとは別問題なので」

「はい。それとこれとは別問題なので」

 

 俺たちは力強く即答した。いつも思うが息ピッタリだ。

 俺たちの言葉に師匠の目が光った。

 

「うむ。なんかわからんが、その意気や良し!私が策を考えよう」

 

 スカサハ師匠は力強く答えてくれた。

 さすが師匠。男前だ。

 ちゃんとお礼を言わなければ、

 

「ありがとうございます。今夜は師匠をオカズにします!」

「ありがとうございます。兄貴×フェルグスさんの薄い本書きますけど、読みますか!?」

 

 今まで顔色一つ変えなかった師匠がちょっと呆れていた。

 

「そんな返礼はいらん」

 

××××××××××××

 

 師匠の部屋を出て、トレーニングルームの前を通る。

 いつものようにカルデアが誇るマッチョ集団がレオニダスの号令で筋トレに励んでいた。

 暑苦しい……

 

 トレーニングルームを通り過ぎ、子供サーヴァントたちのプレールームとなっているスペースを通ると

ジャックちゃんとナーサリーちゃんが初代様こと山の翁と遊んでいた。

 

「ジャック……ナーサリー、今日は何をして遊ぼうか?」

「かくれんぼ!」

「かくれんぼするの!」

「……選んだな。では、十数える。隠れるがいい」

 

 初代様の号令でジャックちゃんとナーサリーちゃんが駆け出した。

 

「逃げろー!妖怪首を出せがくるー!」

「きゃー!首を取られてしまうわー!」

 

 初代様は十数え終わるとゆっくりと立ち上がった。 

 

「……どこだ。……どこだ!?」

 

××××××××××××

 

「オルタ!あなたの書いた『ハチミツとク●ーバー フューチャリング・ジャンヌ・オルタ』とても面白かったです!」

 

 カレデアのスタッフたちと世間話をしているとちょうどいい時間になったので昼食を取りに食堂向かった。

 食堂に行くとジャンヌがオルタちゃんことジャンヌ・オルタにとんでもない話題をブッこんでいた。

 ジャンヌはオルタちゃんとどうにか仲良くしたいらしく、いつも話題探しをしている。

 結果は常に逆効果だったが、今日もどうやらそのパターンになりそうだ。

 

 オルタちゃんはあまりのことに絶句していた。

 近くでたまたま聞いていた天草はプルプルと震えながら必死に笑いをかみ殺していた。

 ジャンヌの隣にいるサンタ・リリィは開いた口がふさがらなかった。

 

 ところで、オルタちゃんのトップシークレット(笑)を一体誰が漏洩したのだろうか。

 少なくとも(今回は)俺ではない。

 ぐだ子でもない。

 

 一体誰が……と思って食堂を見渡すと、少し離れた席で黒髭がキショイ笑顔を浮かべてオルタちゃんの方を見ていた。

 俺たちは全てを悟った。

 黒髭氏の口から微かに「デュフフフフwwwかわいいなーwwwかわいいなーwww」という碌でもない感想が漏れていた。

 

「原作の根幹は片思いなのに、全員がオルタのことが好きという大胆なアレンジ!とてもいいと思います!」

 

 オルタちゃんの反応を見て何を思ったのかわからないがジャンヌはさらに畳みかけた。

 オルタちゃんは顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。

 サンタ・リリィは「痛いです暑いです寒いです!」と絶叫しながらゴロゴロ転がって悶絶し、天草は思わず「ブフォ!」と噴き出した。

 

「天草四郎!何がおかしいのですか!?」

 

 天草の分かりやすすぎるリアクションにジャンヌが鋭く反応した。

 

「いえ、聖女ジャンヌ・ダルク。私はおかしくなど……」

 

 天草は弁明しようとしたようだが、思い出し笑いがこみあげてきたらしく再び「ブフォ!」と噴き出した。

 これはいけない。ジャンヌは真面目な性格で歯止めが利かない。

 きっとますます悪い方向に行く。

 俺とぐだ子は青ざめた。

 

「天草四郎!いいですか、オルタは本気なのです!本気で愛されたいと思っているのです!愛とは本来、恥ずかしいものです!

何人たりともそれを笑うことはできません!黒髭さんの妄想がどんなに気持ち悪くても、オルタの同人誌がどんなに乙女趣味でも

彼らは本気なのですよ!それを笑うとは何事ですか!?」

 

 離れた位置で黒髭がニヤニヤしている。

 とりあえず令呪でキモ髭を黙らせると、俺たちは全力でジャンヌに駆け寄った。

 

「ジャンヌ!もう止めてあげて!時に善意は人を傷つけるんだよ!さりげなく黒髭氏ディスるのも止めて!」

「ジャンヌ!もう止めてあげて!オルタちゃんのライフはゼロよ!」

 

×××××××××××××

 

 どうにかジャンヌとオルタちゃんを宥めた俺たちは黒髭氏に一週間のレオニダス・ブートキャンプ強制参加の罰を宣言すると食堂を後にした。

 

 会議室として使っているフリースペースに向かうとエウリュアレとアステリオスとドレイク姉さんが何か話していた。

 「冒険が」どうという話だった。

 またアステリオスの迷宮の探検でもするのだろうか。

 

「あ、ますたあ」

 

 アステリオスがこっちに気づいて話しかけていた。

 アステリオスは俺たちが手に持っている短冊を見て「それなに?」と問いかけた。

 

「たなばた?」

 

 ぐだ子が答えた。

 

「そうだよ。この短冊に願い事を書いて葉竹にかけるんだ」

 

 そろそろ七夕の時期だったのでダ・ヴィンチちゃんに頼んで模造の葉竹を会議室に設えてもらっていた。

 アステリオスが興味を示したのでアステリオスにも余っていた短冊をあげた。

 俺は「嫌なら言わなくてもいいけど」と注釈した上でアステリオスに願い事を聞いた。

 

 アステリオスは少し照れながら教えてくれた。

 

「……もっとこのじかんがつづくといいな……って」

 

 アステリオスの素朴な一言は俺たちのハートにクリティカルヒットした。

 

「……どうしたの、ぐだお、ぐだこ?おなかでもいたいの?」

「いや、尊くて……」

「ごめん、尊くて……」

 

 ただ、そうとしか言えなかった。

 

 横で見ていたドレイク姉さんが背を向けたまま呟いた。

 

「煙が目に沁みちまったよ……」

 

 今日もカルデアはにぎやかだ。




次回に続きます。


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カルデアの一日 後編

後編です。


 夕方になり、定例のメディカルチェックが終わったマシュが合流した。

 

「アルトリアさんが呼んでます」

「どんな要件」

「よくわからないのですが

――円卓会議に立ち会って欲しいとか」

 

 会議室にアルトリアとアルトリア・オルタ、アルトリア・リリィ(アルトリア増えすぎ)にアーサーが。

 それに円卓の騎士たち――ランスロットとトリスタンとガウェインとベディヴィエールがいた。

 

 ベディヴィエール以外の三人は日本式に正座させられていた。

 絶対に碌な理由じゃない。俺は直感的に悟った。

 

「さて、卿たちは結託して女湯を覗こうとしていたそうですが……何か申し開きはありますか?」

 

 う……耳が痛い。俺、主犯だし。

 

 アルトリアに対し、ランスロット、トリスタン、ガウェインの三人は目をギラギラさせて主張した。

 

「ありません。叱責してください」

「……ありません。……詰ってください」

「ありません!折檻してください!」

 

 彼らの表情はとても叱られる前の人間がするものとは思えないような恍惚に満ちていた。

 

 マシュがあまりの光景に顔を歪ませた。

 

「お父さんきもちわる……むぐ!」

「マシュ、気持ちは分かるけど言わない方がいいよ。逆効果だからね」

 

 ぐだ子がマシュの口を塞いだ。

 

「せんぱい……くるしいです」

「んー。マシュのほっぺやわらかいねー」

「遊ばないでくださいよ。先輩」

 

 円卓勢の斜め上な反応にアルトリアは困惑していた。

 

「……どうしましょう、ベディヴィエール。私には彼らが嬉しそうにしか見えないのですが、気のせい……ですよね?」

「恐れながら王よ。気のせいではありません」

 

 アルトリアは円卓たちの真正マゾぶりに若干引き気味だった。

 

「叱責して下さらないのですか!?お預けなのですか!?」

「……詰ってください……焦らさないで……どうか詰ってください」

「このガウェイン!全身どこでも折檻される準備はできております!さあ!どうぞ!どこでも好きなところを聖剣でぶっ叩いてください!できれば臀部を所望します!」

 

 全員、目がやばい……

 

「……どうしましょう、ベディヴィエール。円卓が気持ち悪いです……」

「王よ。残念ながら、彼らは生前からこんな感じでした」

「……そうでした。ああ、ここにアグラヴェインがいれば

……あ!待ちなさい!リリィ!その変態たちに近づいてはいけません!」

 

 子供の方の騎士王がへんた……円卓の騎士たちの前に歩み出た。

 アルトリア・リリィは深く息を吸い込むと控えめに言った。

 

「みなさんがしっかりしてくれないと……私、悲しいです」

 

 キラキラキラという擬音語を幻聴しそうな純真な一言が……変態たちの魂を浄化した。

 彼らの顔からは一切の悩み、煩悩が消え失せていた。

 彼らは何も言わなかったが、きっとこんなことを考えていたに違いない。

 

「(尊い)」

「(……尊い……ですね)」

「(尊い!)」

 

 円卓の変態たちの心が浄化され、霊基が粒子になって消えようとしている。

 

「おい。何を勝手に座に帰ろうとしている、豚どもめ」

 

 アルトリア・オルタの一言で彼らは踏みとどまった。

 

「はい……ランスロット豚、ここに」

「はい……トリス豚、ここに」

「はい!ガウェイン豚、ここに!」

 

 駄目だ、これ。もう収拾つかなくなってきてる……

 

 アルトリアはさんざん困った末に隣のアーサーに助けを求めた。

 

「アーサー、あなたも何か言ってあげてください」

 

 あれ?アーサーも覗きの時一緒にいなかったっけ?

 

「何を言うのですか、ぐだ男。彼は平行世界の私ですよ?間違ったことなどするはずがないではありませんか」

「その通り。僕は間違ったことなど何一つしていないよ」

 

 これがイケメン無罪……

 アーサーはキラキラという擬音語を幻聴しそうな爽やかな笑みを浮かべて円卓たちの前に歩み出た。

 ……そして

 

「向こうでもこっちでも……君たちは本当にどうしようもない変態だな。

君たちのことを産業廃棄物と呼んでもいいかい?」

 

 ゾクゾクゾク、と彼らの体が震えるのを感じた。

 

「はい。私は産業廃棄物です」

「はい。……私は生ごみ以下です」

「はい!私は燃えないゴミ以下です!」

 

 彼らは新しい性癖に目覚めたようだった。 

 

××××××××××××

 

 円卓会議が収拾つかなくなったので俺たちは会議室を後にした。

 プレールームの前を通るとナーサリーちゃんは遊び疲れて寝ていた。

 ジャックちゃんはまだ元気に初代様と遊んでいた。

 

「……ジャック、次は何をして遊ぼうか?」

 

 初代様に問われると、ジャックちゃんは「うーん」と少し考えて元気よく答えた。

 

「解体ごっこ!」

 

 初代様は(多分)髑髏の面の下で困り顔を浮かべて答えた。

 

「……他の遊びにしなさい」

 

××××××××××××

 

 結局、遅めの夕食になってしまった。

 

 すでにほかのサーヴァントたちの姿はなく、食堂は俺たちのほぼ貸し切り状態だった。

 食事当番はサーヴァントの有志達が交代で務めている。

 エミヤ、ブーディカさん、ロビン、玉藻が登板することが多いが、今日はネロだった。

 

 ネロはあれでいて器用だ。

 彼女が当番になると材料費がかさむという問題はあるが、楽しみにしている者も多い。

 

 今日は古代ローマのケーナの習慣に基づいた豪勢なコースだった。

 

 食事を終える頃合いになってネロが感想を聞きに来た。

 「とてもおいしかった」と素直に感想を述べると彼女は「そうであろう!そうであろう!」と大喜びしていた。

 

「そなたたちは実に自然に寄り添っているな」

 

 セプテムで縁を結んだネロは初期の頃に召喚に応じてくれた。

 見かけによらず耐久力に長けた彼女は戦線の維持に多大に貢献してくれた。

 もう長い付き合いなのでお互いのことはよく知っている。

 

「ぐだ男とぐだ子は……うむ、なんというか近しい親戚のようだな。そなたたち、本当に血縁はないのか?」

 

 俺は以前にダ・ヴィンチちゃんから聞いた考察を教えた。

 ダ・ヴィンチちゃん曰く、俺たちは前世で双子か同一人物並みの縁があったはずと考察していた。

 

「そうであったか。ではこれも縁というものか」

 

 ネロは「うむうむ」と頷いた。

 

「私と先輩たちはどう見えるのですか?」

 

 控えめなマシュが珍しく切り込んできた。

 

「そなたとマスターたちか?そなたとぐだ子は余には姉妹のように見えるな。微笑ましくて良いぞ。とても良い。

そなたたちはそろって美少女だしな。余のハーレムに加えたいほどだ」

 

 ぐだ子とマシュは新宿の亜種特異点修復後に一緒に買い物したらしい。

 新宿のア●タとマ●イでマシュの着せ替えして楽しんだそうだ。

 後で写真を見せてもらった。

 うらやましい。

 

「姉妹か。じゃあネロちゃまも加わて三人姉妹でどう?」

「余もか?良いぞ!では、余がお姉ちゃんだな!」

 

 この英霊は人懐っこい。

 現代では暴君と言われているが、それは彼女がキリスト教を弾圧したからだ。

 セプテムでの名君ぶりを俺は忘れない。

 

「そなたとぐだ男は……うむ、当世風にいえば彼氏彼女というやつか?」

 

 油断していたらとんでもない燃料を投下されてしまった。

 隣のマシュを見ると、彼女は目を見開いて、そのあと瞬間的に真っ赤になった。

 「そなたたち、余のドレスよりも真っ赤だぞ!」と言われて俺は自分も真っ赤になっていることに気づいた。

 

「え……そ、それは照れるよ。ネロ」

「え……そ、そんな!まだ新婚旅行の行先も決めてません!」

「うむうむ。実に仲が良いな。こう言うのを日本語では夫唱婦随というのだろう?」

 

 ネロはからからと笑い、そして意味深なことを言った。

 

「……余も奏者にまた会いたいものだ。

白野……」

 

 

 ネロの意味深な一言が気になり、そのまま結局夜遅くまで話し込んでしまった。

 

 カルデアは今日もにぎやかだ。




次回。いつもの調子に戻ります。
いや、今回もいつもと大差ないですけどね。


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誰よりもすまない英雄

※この話には『Fate/Apocrypha』のネタばれが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


 フランス・オルレアンの特異点でのことだ。

 

 黒い方のジャンヌが呼び出した大量のワイバーン達の対抗策としてかの地に呼び出されていたはぐれサーヴァント。

 舞い降りし最強の魔竜ことすまな……ジークフリートと介護役のゲオル先生を伴って、俺たちはドンレミからリヨンを経由してオルレアンまでの各地を転戦した。

 

 そして、邪ンヌまであと1歩と迫ったオルレアンでついにすまn……ジークフリートの宿敵ファブニールが現れた。

 

「ジークフリート頼んだ!伝説のドラゴンスレイヤ―の復活だ!」

 

 俺はこの強敵に対し令呪を切って宝具を解放させた。

 

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク )』!」

 

 ドラゴン殺しの魔剣がファブニールを襲う。

 

 魔力の奔流に飲まれた邪竜の姿が視界から消える。

 

 そしてそれが収まったあと……わりと元気そうな姿のファブニールが現れた。

 

「あ…あー、ジ、ジークフリートちょっと残っちゃったね。」

「すまない……。竜相手なのにすまない火力ですまない」

 

 哀愁を帯びたジークフリートの後ろ姿が切ない。

 

「そ、そんなことないよ!ジ、ジークフリートすごーい!う、うわー大ダメージだ!」

 

 ぐだ子も必死で慰めの言葉をかける。

 

「すまない……。気を使わせてしまってすまない……。それと、すまない……のだが竜殺しの効果も切れてしまったようだ」

 

 しまった。相性が関係ないから竜殺しが切れたら、ジークフリートがますますすまなくなってしまう。

 

「小次郎!頼んだ!時間を稼いで!」

「心得た。だが、時間を稼ぐのはいいが――

別に、あれを倒してしまっても構わぬのであろう?」

「やめて!エミヤの黒歴史を抉らないで!」

「ええー?ほんとにござるかぁ?――秘剣『燕返し』」

 

 極東のドラゴンスレイヤーの放った対竜魔剣は一撃で邪竜を完全に沈黙させた。

 

「すごいな、新たなドラゴンスレイヤ―の誕生だ」

 

 そう呟いたジークフリートの大きな背中は少し小さく見えた。

 

××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参上した。命令を。

それとすまない…。ピックアップすり抜けで来てしまってすまない…」

 

 オルレアンで縁をつないだ後、暫くして沖田さんのピックアップすり抜けでジークフリートが来やが……来てくれた。

 最終的に沖田さんが来る前にジークフリートが3人来た。

 

 沖田さんを迎えるのに結局4万円弱のi○uneカードを失ったが、毎回申し訳なさそうな表情をして現れる大英雄の姿は良心にチクチクささる。

 誰にも文句を言うつもりにもなれなかった。

 

 ジークフリートとほぼ時を同じくオルレアンで共に戦った白い方のジャンヌも来てくれた。

 ジャンヌ曰く、オルレアン以前にも2人は縁があったらしく

「初対面のようなものだけど良く知っている」というなんとも言い難い表現で彼のことを話してくれた。

 

 さらにその後、アストルフォくんちゃんが来てくれた。

 彼らもまた以前から縁があったらしくジークフリートは控えめに再会を喜んでいた。

 

「黒のライダー、きみも来ていたのか。

そうだ、すまないのだが次から誰かを助けるときは、オレにも声をかけてほしい。

大丈夫だ、オレはもう迷わない。すまない」

「や、やだなあ。セイバー、なんで謝るの?キミは何も悪い事をしてないじゃないか!」

「あ、そ…そうだったな。すまない」

「だから謝らなくていいって!」

 

 それにしてもジークフリートの発言が気になる。

 いったい、二人の間に何があったのだろうか。

『誰かを助けるときは』か。

 謙虚を通り越して自己評価マイナスのジークフリートに聞いても答えて答えてくれなそうだな。

 

「うん!いいよ!」

 

 アストルフォは理性が蒸発している。

 俺とぐだ子が尋ねると全部素直にそのことを話してくれた。

 曰く、ジークフリートはホムンクルスの少年の命を繋ぐために

 自分の心臓を分け与えて聖杯対戦から自ら降りたとのことだった。

 

「その時はどんな感じだったの?」

「えっとね『すまない。本当にすまないのだがこのホムンクルスを助けるつもりはないのだろうか?』

ってセイバーのマスターに聞いたんだけど答えなかったから『すまない』っていってマスターに腹パンして黙らせたんだ。

そうそう、その時も終始『すまない…腹パンしてしまってすまない…』って言ってたね。

それで、自分の心臓を与えるときも『すまない…俺の心臓で助けてしまってすまない…』って言ってたね!

今日会って思ったけど相変わらずだね!セイバーは!もっと自信持てばいいのに!」

「そうだね。あの背中を見ると切なくなってくるもんね」

「うん!ところでどうしてぐだ男はずっとボクのお尻を撫でまわしてるの?」

「それはね、触りたいからだよ!」

「そっか!じゃあ仕方ないね!」

 

 そのあとしばらくぐだ子にゴミを見るような目で見られた上、俺がフェルグスさんの尻の穴を狙っているガチ●モだという噂を流されたのも今では良い思い出だ。

 

 オケアノス、ロンドン、北米を経てキャメロットへ至った俺達はついにジークフリートの最大の見せ場を作る場所を得た。

 まず今回は敵にまわったロンドンの時とは別人のモーさんことモードレッド。

 

 竜属性の彼女の対策として俺たちはジークフリートを連れて前線に赴いた。

 モーさんとジークフリートもまた聖杯対戦で直接ではないけど縁深いという複雑な仲らしくその姿をみた彼女はいきなりクラレントをぶっぱしてきた。

 しかし今回はそう簡単にはすまなくならない。

 オルレアンの後、アーラシュを爆散させまくって手に入れた種火と素材を注ぎ込んで、俺たちは限界までジークフリートの力を取り戻させることに成功した。

 竜殺しの効果で大英雄は宝具の一撃に耐える。

 

「行け!ジークフリート!」

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク )』!」

 

 ドラゴン殺しの魔剣が反逆の騎士を襲う。

 

 魔力の奔流に飲まれ彼女の姿が視界から消える。

 

 そしてそれが収まったあと……わりと元気そうな姿のモーさんが現れた。

 

「へっ!竜属性相手にそんなもんか?竜殺しは名前だけかよお前?」

 

 暴走のギフトによってモーさんの体に魔力が充填されていく。

 まずい!2射目が来る!

 全体対策に連れてきたダビデさんとジャンヌを呼び出そうとしたらその前に介護役のゲオル先生が食い気味に出てきた。

 

「誰ですか!ジークフリート殿のことをクソ弱いなどと言ったのは!」

 

 いや、ゲオル先生、言ってない。誰もそんなこと言ってないよ……

 

「弱いのはジークフリート殿ではありません!ちゃんと介護をしない我々が悪いのです!

我々がちゃんとしていればジークフリート殿は弱くなどありません!」

 

 ジークフリートは擁護されたせいで余計に気まずくなったらしく「すまない……すまない……」とうわ言のように呟いている。

 

「ぐだ男、やばいよ……このままだとジークフリートが自害しちゃうよ……」とぐだ子が俺に囁く。

「先輩……ジークフリートさんのライフはもうゼロです……」マシュも俺に耳打ちする。

 

 まずい。ゲオル先生は融通の利かない生真面目な人物だが、このパーティーには同等のレベルで生真面目なサーヴァントがいる。

 

「そうです!なんですか!その言い草は!私はジークフリートほど高潔で優しい英雄を知りません!」

 

 案の定、今度は後方からジャンヌが飛び出してきた。 

 

「確かに性能がニッチでピンポイントすぎてマスターたちを悩ませたりはしていますが、そんな分かりやすい性能だけが強さではないのです!

彼のことをクソ弱いなどと言うのは卑怯者の行いです!彼は弱くなどありません!」

「ゲオル先生!悪意が無いのは分かるけど慰めになってないよ!」

「やめて!ジャンヌ!やめてあげて!時に優しさは人を傷つけるんだよ!!」

 

 ゲオル先生とジャンヌの悪意のない言葉がジークフリートを襲う。

 

「すまない…やはり気を使わせていたのか。悩ませるくらいならいっそ工房にくべて欲しい…。本当にすまない…」

「お、おう…。実は今の少しだけ効いたぞ。…その、自信持てよお前」

 

 ジークフリートの哀愁漂う姿はモーさんの良心に突き刺さったらしい。

 

 ちなみにモーさんはダビデさんが石を投げて倒した。

 

 そして俺たちは最後の獅子王の玉座。

 女神ロンゴミニアドに辿り着いた。

 彼女は竜属性のランサー、これだ!この時を待っていたんだ!

 

「少しは見所があるようだな」

 

 ジークフリートの攻撃についに獅子王が神霊と化した真の姿を見せた。

 竜殺しの効果の隙間にゲオル先生とレオニダスとデオンが攻撃を引きつけそれでも補えない時間はマシュとべディヴィエールの防御サポートで耐え抜く。

 竜属性のランサーという最高の相性の相手に対して、その霊基をジークフリートの一撃が確実に削っていく。

 

 勝てる!勝てるんだ!!

 

「ジークフリート!あとひと押しだ!宝具の解放を!」

「了解した」

 

ゲオル先生が粘りジークフリートの溜めの時間を稼ぐ。

 

「聖槍圧縮。我が手に収まる時だ」

「あ、やべ」

 

 追いつめられた獅子王がチャージを連打してきた。

 

「マシュ!防御!」

「駄目です!間に合いません!」

 

 不意の聖槍の一撃がジークフリートを襲う。

 

「地に増え、都市を作り、海を渡り、空を割いた。何の、為に……?聖槍よ、果てを語れ!

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド )』!!」

「すまない…」

哀愁を漂わせながら竜殺しの大英雄は戦闘不能となった。

 

「うむ。余の見せ場だな」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!(ジークフリート殿!後はお任せを)」

 

 獅子王はネロと雪の城ヘラクレスで粘り勝った。

 

×××××××××××××××××××××

 

竜殺しのスキルが強化されたあと喜んで

ダブルマシュとゲオル先生、スパルタ王にガッツ礼装のフル介護で

獅子王をジークフリートさんで倒したのはいい思い出です。

宝具レベル上げたいのでApocryphaピックアップ是非お願いします。

今はバビロニアでムシュフシュ狩ってもらってます。

 




みんな大好きジークフリート。
君のことをレアプリになんかしないとも。


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シャーロック・ホームズの奇妙な冒険

いつも読んでくださっている皆さん。
コメントくださっている皆さん。お久しぶりです。
今回はホームズ実装されたのでホームズを主役に。

注・新宿のアーチャーの真名ネタバレが含まれています。
  それでもイイゾイイゾな方は進んでください。


 なんかわからないがいつの間にかシャーロック・ホームズと正式契約してた。

 「君たちと縁を結んだ」とホームズはしれっと言っていたが、しれっとクラスチェンジしてキャスターからルーラーになっていた。

 

 シャーロック・ホームズ・シリーズの大ファンのマシュは大喜びして彼との正式契約を祝ってくれた。

 俺にしても悪い気分じゃない。なんといってもホームズは男の子の憧れだし、ダヴィンチちゃんの負担軽減にもなる。

 マシュほどではないが、ぐだ子も彼との契約を喜んでいた。

 

 正式に契約を結んだことでもあるし。俺たちはホームズと面談の機会を持つことにした。

 

「あの、いくつか質問してもよろしいでしょうか?ミスター・ホームズ」

 

 いつもは控えめなマシュだが、憧れの人が目の前にいるのだ。

 珍しく、積極的に彼女が話をした。

 

「いいとも、ミス・キリエライト」

 

「私たちはシャーロック・ホームズをサー・アーサー・コナン・ドイルが創造した架空の人物と考えていました。

あなたは、私たちの問いをはぐらかしましたが、実際のところコナン・ドイルの小説と実際の事件はどの程度の違いがあるのでしょうか?」

 

 マシュの問いにホームズは「ふぅむ」といつものように涼しげな顔でどうともとれる曖昧な態度を示した。

 彼はしばらく黙っていたが「それ、私もすごい気になる」「俺もすごく気になる」と俺とぐだ子が畳みかけるとホームズはゆっくりと口を開いた。

 

「いいだろう。ミス・キリエライトは良き読者だし、マスターたちは良き助手になりそうだ。今後の君たちとの関係の発展を考え、

少し話をするとしよう」

 

 ホームズは淡々と語った。

 マシュは目を輝かせていた。

 

「では、まず最初の事件のことを話そう。私とワトソンが出会って初めての事件だ。確か『緋色の習作』と題していたね。

カルデアのアーカイブから現代に伝わっているものを見たがあれには些かの脚色が加わっているな」

「やはり、そうなのですね!では、グレグスン警部に呼びだされたあなたは、実際にどのような現場を見たのですか!?」

「私はグレグスンに呼び出され、ブリクストン通りの屋敷でイノック・ドレッパーの遺体に相対した。

検視官が到着する前に、ワトソン遺体を検分したのだが、彼の所見を聞いてすぐに犯人がわかったよ」

 

 ……あれ、そんな展開だったかな?

 俺は熱心なファンじゃないが、なんかおかしい気がする。

 

「あなたがドレッパーの屋敷を去った後にしたのはクリーヴランドの警察署長に電報を打ったことでは?」

 

 マシュが首を傾げながら尋ねた。

 

「違うとも、ミス・キリエライト。そんな必要はない。なにせあの遺体の状況は異常だったからね」

「私の知っている話とだいぶ違いますね。……では、実際はどうだったのですか?」

 

 おかしい、なんか微妙に嫌な予感がする……

 

「ドレッパーは一切の外傷なく、心臓だけを潰されていた。そんな芸当が可能なのは妄想心音(ザバーニーヤ)の習得者だけだ。

つまり犯人はハサン・サッバ……」

「「「ストップストップ!」」」

 

 俺たち三人は一斉に叫んだ。

 

「ん?どうしたんだい。外傷をつけずに心臓だけを潰すなど、他に方法があるまい」

 

 ホームズは変わらず涼し気な表情のままだった。

 

「あの……すごく嫌な予感がするのですが、どうやって事件の決着をつけたのですか?」

 

 巌窟王の件がトラウマになっているらしくマシュは表情を曇らせた。

 

「彼らの廟に乗り込んで決着をつけた。ドレッパーは敬虔なモルモン教徒でムスリムたちを目の敵にしていた。

それで彼らの怒りを買ったのだ。私はワトソンを伴い、彼らと拳で語り合った。そして和解した。

ワトソンを助手にしようと決めたのはその時だ。あれには驚いた、なにせ彼もバリツの使い手だったのだからね」

 

 やっぱりホームズは顔色一つ変えなかった。

 

「……ホームズ、冗談だよね?少年サ●デーみたいな展開になってない」

 

 聞き役に徹していたぐだ子が口をはさんだ。

 

「ハハハ!面白いことを言うね、ぐだ子君。現代日本のポップカルチャーは大変面白い。

私の時代にもウィルキー・コリンズのような大変楽しい通俗作家はいたが、現代の通俗文学はより洗練されているな」

 

 ホームズは笑って聞き流した。

 

「ひょっとして他の事件も小説とは違うの?例えば『バスカヴィル家の犬』とか」

 

 今度は俺が尋ねた。

 

「あの事件か。あれも一瞥して犯人が分かったよ。チャールズ・バスカヴィル卿は全身から夥しい出血、現場には獣の足跡。

つまり犯人は……」

 

 全員が息を呑んだ。

 

「ものすごく頭のいい獣だ」

 

 全員が唖然とした。

 

「……ホームズ、それは推理したことになるの?」

 

 俺が聞くとやはりホームズは涼し気な表情のまま答えた。 

 

「ぐだ男君。不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実だ。実際に犯人はものすごく頭のいい獣だった。

ワトソンが素因数分解の競争をして敗れたぐらいだからね」

「あの、そもそもそんなに頭の良い獣が存在するとどうして確信できたのでしょうか?」

「ミス・キリエライト、君は『ウォレスとグルミット』を知っているかい?

グルミットはビーグル犬だが、車を運転できるしパンも焼ける。主人のウォレスよりも賢い。

ならばもっと大型の賢い獣が居ても不思議ではあるまい」

 

 世紀末の大英帝国ハンパねえ……

 

「あ、そうだ!では『赤毛連盟』はどうですか?」

 

 マシュの問いに、ホームズの涼し気な顔が一気に強張った。

 

「ああ、彼らは強敵だった」

 

 なんか小説から一切連想不可能なワードが飛び出してきたんだが……

 

「彼らは赤毛の優性遺伝子を持った特殊な一族で、垂直飛びで五十フィート跳躍し、ホワイトスタッコの壁を指一本で粉々にした。

奴らを一網打尽にするまで、ワトソンはあばらを五本折り、あのマイクロフトが掠り傷を負った。

マイクロフトに掠り傷を負わせた人物など他に覚えがない」

 

 おかしい……小説と何一つ一致してない。

 

「おかしいですね……小説ではあなたのお兄様、マイクロフト・ホームズは政府そのものと呼ばれる存在だったはずですが」

 

 マシュの疑問は当然だ。誰だってそう思うし俺だってそう思う。

 

「マイクロフトが政府そのものと言われた理由は簡単さ。マイクロフトは人知を超えたレベルで腕っぷしが強かったんだ。

ビッグベンが微かに傾いているのは知っていると思うが、その原因は酔っぱらったマイクロフトがビッグベンにお見舞いした右ストレートだ。

力こそパワー。基本的なことだよ」

 

 マジかよ。ホームズ兄弟ハンパねえ

 

「もの凄く嫌な予感がするのですが……」

 

 ここまで来たらとことんということだろう。

 マシュが別の質問をぶつけた。

 

「ライヘンバッハの滝での出来事は『バリツでモリアーティ教授を投げ飛ばした』とごく簡単に説明されていましたが、

実際はどうだったのですか?」

 

 ホームズ

 

「……少し長い話になる。構わないかい?」

 

××××××××××××

 

 私は長年追いかけてきた犯罪王モリアーティ、あのライヘンバッハの滝で相対した。

 さしもの犯罪王も智謀は底をつき、残すは己が肉体のみとなった。

 何が起きたのか。君たちにも想像に難くないだろう。

 

「よろしい!ではこの先は拳で語り合うとしよう!行くぞ!シャーロック・ホームズ!」

「来い。犯罪王モリアーティ」

 

 彼は「WRYYYYY!!!」と奇声を発しながら飛び込んできた。

 

 ――速い。

 

 私はそう思った。

 

 それは常軌を逸したレベルの早さだった。 

 

北斗有●破顔拳!(カタストロフ・クライム!)

 

 犯罪王の一撃に私は崩れ落ちた。

 

 勝利を確信し、モリアーティは高笑いを上げた。

 

「敗れたり!シャーロック・ホームズ!これで我が野望の障害は無くなった!

待っていろ、イングランドよ!取りに足りぬ愚民どもめ!支配してやるぞ!このモリアーティの知と力の前にひれ伏すがいいぞ!」

 

 瀑布の音とモリアーティの高笑いが響き渡っていた。

 そして、モリアーティの声が突如止んだ。

 

「何だ……足が……私の足が、勝手に動いている。

足が!私の足が勝手に滝つぼの方へ!!」

 

 想像力豊かな諸君ならもうお分かりだろう。

 

「特殊なツボを突いた。

……キス・オブ・ザ・ドラゴン。このツボを突かれたものは自傷行為へと駆り立てられる」

「馬鹿な!なぜ生きている!シャーロック・ホームズ!」

「君ともあろうものが調べが足りなかったようだな。バリツを極めた者は時を止めることができる。一瞬だがな。そして脱出できた。

私には十分な時間だ。君の注意を逸らし、ツボを突くのにな。基本的なことさ」

 

 彼は自身の体を取り戻そうとあがいた。

 だが、キス・オブ・ザ・ドラゴンはバリツ最大の禁じ手だ。

 即席で解けるような技ではない。

 

「フフフ……どうやら私の命はここまでのようだな」

 

 彼の最期は犯罪界のナポレオンと呼ぶにふさわしいものだった。

 

「だがしかし!私は負けたのではない!自ら命を絶つのだ!

引かぬ!媚びぬ!省みぬ!犯罪王モリアーティに敗北などないのだ!」

 

××××××××××××

 

「「「いやいやいやいやいやいやいや!!!」」」

 

 俺たちは三人同時にツッコんだ。

 ホームズ涼し気な顔のままだった。

 そして

 

「君も聞いていたのだろう?」

 

 と、背後に声をかけた。

 案の定、なぜかアーチャーとして召喚された当のモリアーティがいた。

 

「さすがに嘘ですよね?」

 

 とマシュはモリアーティに聞いたが

 

「いいや、概ね合っているネ」

 

 と彼はあっさり否定した。

 

「しかし、君、脚色は良くない。私は『WRYYYYY』などとは言っていないよ」

「ハハハ、それは悪かった。私も少々興が乗ってしまってね。ついワトソンの真似をしてしまった。

やはり私は語り手には向いていないようだ」

 

 世紀末の大英帝国ハンパねえ。

 俺たちはそう思ったのだった。

 




ホームズ出ました。宝具3になりました。
実は、私そこそこのホームズシリーズのファンで、ロンドンのシャーロック・ホームズ博物館にも行ったことがあります。


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あの子が真面目すぎる件について

さりげなくシリーズのタイトルを『小説でわかる幕間の物語』に変更しました。
リヨ先生の漫画のもじりです。

ネタはあったんですが、更新サボってましたすいません。
今回、誰が主役かはタイトルからお察しください。


「自分に惚れちまいそう……ポッ」

「うわ……キモ(うわ……キモ)」

「うわ……キモ(うわ……キモ)」

 

 新たに出現した特異点、「亜種特異点」に対応するため、カルデアのマスターである俺とぐだ子は既存の戦力たちの底上げをしていた。

 今まで後回しにしていた低コストで動いてくれるサーヴァントたちの強化だ。

 今日は、能力的な優秀さは認めていたがあまりに気持ち悪くて故意に後回しにしていた黒髭ことエドワード・ティーチをようやく再臨させていた。

 

 再臨することを決めたのは俺たちだが、再臨させた黒髭が予想を超えて気持ち悪かったため俺たちはつい建前すら考えてしまうことを放棄していた。

 

「ちょっとぉ!マスターたち、本音と建前が一緒!でも、そんな正直なアナタたちが好き!はぁと」

 

 思わず本音と建前が同時に飛び出してしまった俺とぐだ子に黒髭はさらに気持ち悪く絡んできた。

 さすがに俺たちも今度はもう少しオブラートに包んだ表現を考えることにした。

 

「うわ……キモ(いや、黒髭氏。気持ちは嬉しく無く無く無くもないんだけど、黒髭氏はキモいっていうか、無理っていうか……)」

「うわ……キモ(ごめん、黒髭氏。気持ちは嬉しく無く無く無くもないんだけど、黒髭氏はキモいっていうか、生理的に受けつ受けないっていうか……)」

 

 しまった。あまりの気持ち悪さに本音と建前が逆転してた。

 

「ちょっとぉ!今度は本音と建前が逆!しかも建前も普通にヒドい!もう!そんなこと言われたら、拙者、ソウルジェムが濁って堕天しちゃいますぞ!」

 

 いやいや、お前のソウルジェムとっくに濁りきってドロドロだろ。

 いつもなら適当なところでマシュが仲裁してくれるのだが、マシュは別の仕事で手が空かない。

 どうやってうまい具合にあしらおうか。

 そう思っていると

 

「ぐだ男!ぐだ子!」

 

 名前を呼ばれた。

 初期のころからカルデアにいるよく知った英霊の声だ。

 

 振り返ると、やはりそこにはルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクが居た。

 

 彼女は強力な戦力で清廉な人格者だ。

 そして美少女でおっぱいが大きい。

 つまり完璧だ。

 が、一つ欠点がある。

 それは度を超えたレベルで真面目なことだ。

 

 下手な対応をすると長時間のお説教になりかねない。

 

「あ……そうだね、ジャンヌ。黒髭氏はキモくなんてないよね」

「あ……ちょっと私たちも言い過ぎたかな。ごめんね、黒髭氏。黒髭氏はキモくなんてないよね」

 

 俺たちはジャンヌの扱いを心得ている。

 とりあえず素直に謝っておくことにした。

 黒髭は「ッハ!まさかジャンヌ氏、拙者のことを?フラグが立つ予感!」とキモい以外の形容のしようがない反応をした。

 

 それに対してジャンヌは……

 

「二人とも何を言っているのですか?黒髭さんは気持ち悪いです。それは間違いありません」

 

 斜め上の対応をしてきた。

 

「んん?ジャンヌ?そこは『黒髭さんは気持ち悪くなどありません』っていうところじゃないの……?」

 

 俺の疑問に対してジャンヌはさらに言った。

 

「いいえ。そのような思ってもいないことは言えません。私も黒髭さんは気持ち悪いと思います。川底に溜まったヘドロの方がまだマシだと思うぐらいです」

 

 ぐだ子が「ん?ん?……ジャ、ジャンヌ?私たちよりヒドいこと言ってない?」と困惑している。

 黒髭は呆然としている。

 

「ですが、どんなに気持ち悪くて、産業廃棄物以下の汚物でも、立派な主の創造物なのです!慈しみを受ける権利があるのです!

何人たりともその存在を否定する権利はありません!」

「やめて!ジャンヌ、もう止めて!俺たちが悪かったよ!これ以上、黒髭氏の傷をえぐらないで!」

「ジャンヌ!もう止めてあげて!私たちが悪かったよ!もう黒髭氏、真っ白だよ!このままじゃ白髭氏になっちゃうよ!」

 

××××××××××××××××××××××××

 

「我が憎しみ、我が恨み、思い知ってもらいましょ」

「論理的です!」

 

 数日後。

 ジャンヌとジャンヌ・オルタとジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィのジャンヌ三姉妹(仮)パーティーでクエストに向かっていた。

 このパーティにしたのに特に理由はない。たまたま手の空いてるサーヴァントを集めたらこうなっただけだ。

 オルタちゃんことジャンヌ・オルタは他のジャンヌたちのことが苦手でいつも遠ざけようとしている。

 俺もぐだ子もそのことは知っている。けっしてこれはオルタちゃんをからかうための遊びではない。

 断じて違う。本当だよ。

 

「ちょっと!最後まで言わせなさいよ!」

「はいはい。かっこいいですね、成長した私」

 

 オルタちゃんの怨嗟の言葉(笑)をリリィが途中で遮った。

 恥ずかしくて聞いていられなかったに違いない。

 別の存在扱いではあるけど、根本は一緒なので当然の反応だろう。

 

 オルタちゃんとリリィはなおも言い争っていた。

 やばい、このままだと面倒くさいことになる。

 俺とぐだ子はとっさに止めに入ろうとした。

 

「オルタ!リリィ!」

 

 一呼吸遅かった。

 ジャンヌがスケルトンを旗の物理攻撃で蹴散らしてこちらに向かってきた。

 

「はいはい、私が悪かったです。聖女様」

 

 オルタちゃんは元々同一存在なので、ジャンヌの真面目さはよくわかっている。

 面倒なことになるのは分かっているのでとりあえず謝っておくことにしたようだ。

 それに対してジャンヌはより真剣な表情になり、

 

「いいえ、オルタ。あなたは悪くありません。あなたです、リリィ」

 

 オルタちゃんもリリィも元はジャンヌと同一の存在だ。

 それゆえ、ジャンヌのことはよくわかっているはず。

 だが、それでもこの展開は意外だったらしい。二人ともポカンとしていた。

 

「オルタは真剣にかっこいいと思っているのです。……それを否定することは何人たりともできません!」

 

 オルタちゃんとリリィは呆然としていた。

 

「あの……本来の私、それ、お互いにブーメランなので止めませんか……」

 

 オルタちゃんより先に我に返ったリリィが言った。

 しかし、ジャンヌは収まるどころか加熱した。

 

「いいえ!止めません!彼を見なさい!」

 

 彼、とは手が空いていたので同行してもらった巌窟王、エドモン・ダンテスだった。

 協調性ゼロのエドモンはジャンヌ姉妹と連携する気が一切ない様子で、一人で勝手に戦っていた。

 

「おまえは……地獄を見たことがあるか?

……クハハハハ!

……我が征くは恩讐の彼方───」

 

 ……傍から見るとめっちゃ恥ずかしい。

 

「どうですか?いい年して、少年ジャ●プを読みすぎた中学二年生のようなあの言動!人はあのように自由に生きていいのです!

リリィ……素直な気持ちを言うのです。本当はオルタの言動をどう思ったのですか?」

 

 リリィは「うう……」と小さく唸って白状した。

 

「すみません、本来の私。……成長した私を見て……ちょっとかっこいいと思ってしまいました……」

 

 それを聞いてジャンヌはにっこりと笑った。

 

「はい。実は私もです。これでお互いに痛み分けですね」

「はい……自分を繕っていました。ごめんなさい、本来の私」

 

 ……アア、イイハナシダナー

 

「ちょっと!あんたたち何、二人で勝手に分かり合ってるのよ!私が馬鹿みたいじゃない!」

 

 先ほどまで呆然としてプルプル震えていたオルタちゃんがようやく我に返ったようだ。

 顔を真っ赤にしてプルプル震えながら叫んだ。

 

「はい!私たちはそろって馬鹿です。うふふ……意見が合いましたね、オルタ」

 

 本家のジャンヌの方はにっこりと穏やかに微笑んでいた。

 

「やめて!やめなさい!いい話風にしたら余計に恥ずかしいでしょ!?」

「はい。そうですね。自分に素直になるとは思いの他、恥ずかしいものですね!」

 

 相変わらずジャンヌは穏やかに笑顔を浮かべ、オルタちゃんは真っ赤になってプルプル震えている。

 そし、天然生真面目なジャンヌはオルタちゃんに止めを刺しに入った。

 

「あ、ですのでオルタ、その改造コスチュームの作り方教えてください。私も試してみたいです!」

 

 あ、やばい。

 ジャンヌの天然発言がオルタちゃんにクリティカルヒットした。

 

「あ……あんた、何で私がコスチューム自作してるの知ってるの?」

 

 オルタちゃんは真っ赤になってプルプル震えている。

 ジャンヌは追い打ちをかけた。

 

「ぐだ子からです!あなたとぐだ子はとても仲が良いのですね。私、羨ましいです!

あ、ぐだ男があなたの夢は『池とツーショットで囲みされる事』だと言っていましたが、『池とツーショットで囲みされる』とはどういう意味ですか?」

 

 オルタちゃんの反応を待たず、俺とぐだ子は彼女の眼前から逃亡した。

 

××××××××××××××××××××××××

 

 また、後日。

 俺とぐだ子とマシュ。

 つまりいつもの三人は遅い昼食を終えて、業務に戻るところだった。

 レクリエーションルームの前を通ると、ジャンヌとオルタちゃんが一緒にゲームをしていた。

 

 マシュが「珍しい組み合わせですね」と言ったが全く同意見だった。

 どうやら二人は乙女ゲーに興じているらしい。

 乙女ゲーにハマりまくっているオルタちゃんはともかく、ジャンヌも一緒、しかもオルタちゃんはジャンヌのことを避けている。

 本当に意外な組み合わせだった。

 しかし、穏やかに仲良くゲームとはいかないようだ。

 

 二人の言い争う声が聞こえてきた。

 

「はぁ!?主人公はプレーヤーの分身なのよ?だったら自分の名前を設定するべきでしょ!?」

「いいえ!ゲームはゲーム!フィクションはフィクションです!自分の世界との線引きはあってしかるべきです!

デフォルトネームで進めるべきです!」

 

 ……やっぱりこの二人、根は同じなんだな。

 乙女ゲーでそこまで熱く言い争える姿に、やっぱりジャンヌはジャンヌなんだなと思うのだった。




というわけでジャンヌ三姉妹を出しました。
次回は筋肉密度の高いやつにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。


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からかってはいけない

ハロウィンイベント中に唐突に思い付いたネタです。

※新宿のアサシンと不夜城のキャスターの真名ネタバレが含まれています。


「ニトちゃん、強い。かわいい。シコい」

 

 イエスは「右の頬を打たれたら左の頬を差し出しなさい」と言われたらしいが、

 俺がそう発言した直後、右の頬をマシュにビンタで、左の頬をぐだ子にグーで殴られた。

 

 キミたち、息ピッタリダネ。

 

 非戦闘時にサーヴァントたち定期的に行っている面談。

 今日はエジプト第6王朝最後のファラオ、ニトクリスを呼び出していた。

 俺はその面談の最中に突如ゲス発言を放ったのだった。

 

「もう!私というものがありながら!もう!もう!」

 

 マシュが顔を真っ赤にしながら俺に迫ってくる。

 

「いや違うんだよ、マシュ!俺の主食はマシュだよ!昨日もマシュで二回自家発電したよ!」

「そういうことじゃないです!もう!もう!」

 

「二人とも、変な方向に話逸れてるよ?」というぐだ子のツッコミが入ったところでニトクリスの反応を確認すると、彼女はポカンとしていた。

 

「同盟者ぐだ男、『しこい』とは、なんですか?聖杯の知識にない言葉なのですが」

 

 二人からツッコミが入る前に俺はニトクリスの疑問に即座に反応した。

 

「それはね。最高のオナ●ーのオカズっていうことだよ。言い換えるとめっちゃエロい」

 

 ニトクリスは神代の魔術を扱う彼女は強力なサーヴァントだ。

 そして生前ファラオという人を導く立場であったため、いつも威厳を保とうと努力をしている。

 だが……

 

「ふ……ふふふふふふふ、ふけ、ふけい、不敬!不敬です!」

 

 俺の限りなく上品な言葉にニトクリスは顔を真っ赤に上気させてカクカクと震えていた。

 彼女はいつも威厳を保とうとしているが根っこの人の良さのせいか威厳を保てない。

 そして勘違いと早とちりの達人で、よくうっかりをやらかすそこはかとないポンコツ臭を漂わせている。

 

「ふふふふふ不敬です!不敬です!不敬です!不敬です!フケツです!不敬です!

ふぁ、ファラオたる私を見てそのような破廉恥なことを……はわわわわわ……」

 

 なのでからかうと面白い。

 

 からかうと面白い子は他にもいるが、オルタちゃんとニトちゃんは格別だ。

 俺は「かわいいwww」と思いつつゲス顔でニトちゃんの反応を楽しむのだった。 

 

 

 成り行きでぐだ子と共同マスターになってもう二年以上になる。

 からかうのもコミュニケーションの一つなので「大丈夫そう」と判断した場合はこういうこともやる。

 もちろん、危険のブラックリストに入っているサーヴァントもいる。

 

 

 今年もハロウィンの季節がやってきた。

 ハロウィンといえば、エリザベート・バートリことエリちゃんが中心というのがお決まりのパターンだ。

 今年は成り行きで燕青と武則天とカーミラさんがお供だった。

 

 カーミラさんは武則天のことを「ふーやーちゃん」と呼んでいた。

 当初「不夜城のアサシン」と通称されていたから「ふーやーちゃん」らしい。

 それを聞いたぐだ子は思わず口を滑らせた。

 

「『ふーやーちゃん』って……やっぱりカーミラさん、どことなくネーミングセンスがエリちゃ……」

 

 「ガシャン!」という壮絶な金属音がぐだ子の鼻先をかすめて通り抜けていった。

 

「あら、ごめんなさん。鉄の処女(アイアン・メイデン)が滑ったわ」

 

 カーミラさんはいつもの鉄面皮(仮面してるので文字通り)だった。

 

 ぐだ子は恐怖に顔面を引きつらせながら絞りだした。

 

「ご……拷問器具って滑るんですね。シラナカッタナー」

 

 ついうっかりしていた。

 エリちゃんをからかうのはOKだが、カーミラさんはからかうとこういうことになる。

 カーミラさんはエリちゃんの後年の同一存在だがアーチャーのガメッシュさんとキャスターのガメッシュさんみたいに基本的なところが一緒の英霊とは違う。

 ぐだ子は勿論心得ているが、気の緩みでエリちゃんに接するときのノリで行ってしまったのだった。

 

「ところで、さっきなんと言おうとしたのかしら?年を取ると耳が遠くて。もう一度言って下さる?」

 

 そしてカーミラさんは結構執念深い……

 

「いえいえ!私のような下民の言葉、カーミラさんのお耳に入れるまでもないです!!!」

 

 ぐだ子は必死で命乞いした。

 俺は彼女と一緒に土下座し、どうにか許しを得たのだった。

 

××××××××××××

 

「いいハーブが手に入ったの。お茶を淹れるけど、飲んでいく?」

 

 今日はぐだ子と一緒にメディアさんの部屋に魔術を教わりに来ていた。

 召喚した当初、メディアさんの態度はつれないものだったが長い時間を過ごすうちに普通に仲良くなった。

 

 メディアさんが召喚に応じてくれたの初期の頃だったのでカルデアにいる英霊たちなの中でも古参の部類に入る、

 裏切りの魔女などと言われているが、少なくとも俺とぐだ子はメディアさんのことを育ちのいい優しいお嬢様だと思っている。

 以前に素直にそう言ったらメディアさんは割と普通に喜んでいた。

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 メディアさんのお茶の誘いに俺たちはありがたく応じることにした。

 メディアさんは部屋(工房と言うべきだろうか)の奥に引っ込んでいった。

 

「ん……?なんだろ、この薄い本?」

 

 いつも整頓されたメディアさんの部屋だが、部屋の片隅に無造作に薄い本が一冊おかれていることに俺は気づいた。

 

「メディアさん、あれで普通にイケメン好きそうだから、なんかそういう系統のNL本じゃない?

メディアさん中身はちゃんと乙女だから」

 

 ぐだ子は腐っているが乙女ゲーと少女漫画も好物だ。

 彼女曰く、メディアさんに以前そういうものを貸したら「まったく。お子様ね、あなた」と言いながら結構熱心に読んでいたそうだ。

 

「こっそり見てみようか?」

 

 俺たちはイタズラ心を起こし、薄い本を開いた。

 

 そして俺たちは、それが見てはならないものだったとすぐに悟った。

 

 本は二章立てで一章はベディヴィエールが満員電車で痴漢されているというもの。

 二章はラーマがバスで集団痴漢にあっている内容だった。

 

 しかも痴漢役は一章がフェルグスさんで、二章はベオさんとスパさんとイスカンダルだった。

 

 ……なんだこの絶妙な配役。

 ……メディアさんの心の闇は俺たちが思った以上に深かった。

 

 

 そしてお決まりのパターンで、「ガシャン」と何かが砕ける音がした。

 メディアさんがショックのあまりポットを床に落としたのだった。

 

 メディアさんは顔面を蒼白にしてカタカタ震えていた。

 

「「メディアさん……」」

 

 俺たちは膝を折り、床に頭をこすりつけた。

 

「「ごめんなさい」」

 

 心の底からそう思った。

 

「やめて!やめなさい!丁重に謝罪しないで!余計に痛いでしょ!

いっそ殺して!楽にして!」

 

 この世にはからかってはならないものもある。

 俺たちは学んだのだった。




三騎ともうちのカルデアの大事な戦力です。
メディアさんには聖杯2つ捧げてしまいました。


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聖夜の泥酔

2016年のクリスマス復刻をやってて思い付きました。
短いですが、よろしければどうぞ


「荊軻さん……また飲んでるんですか?」

 

 去年のクリスマスの事だ。

 ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(通称ジャンタちゃん)をサンタ役に、俺とぐだ子はトナカイ役としてジャンタちゃんに付き添った。

 最初のプレゼント届け先では女子会という名の飲み会が行われていた。

 俺たちが到着した時マタ・ハリは既に泥酔して意識喪失、牛若丸は泥酔して正体不明になり唯一素面のマルタさんが、「タラスクを鍋にしよう」と主張する牛若ちゃんを必死に止めていた。

 

「ぐだ男、ぐだ子、よく来た」

 

 俺たちがやってきたことに気づき、そこに居たもう一人が近づいた来た。

 その英霊、荊軻さん――この中で一番酒癖が悪い――は明らかに泥酔しており、凄まじいアルコールの匂いを垂れ流しにしていた。

 

「今年のサンタか。ずいぶん小型化したな」

 

 荊軻さんは俺たちの前に歩み寄ると今年のサンタ役、ジャンタちゃんの前に屈みこんだ。

 

「こう見えても私は子供好きでな。どれ、飴をあげよう」

 

 そう荊軻さんが口を開けた瞬間、「……プゥーン」という擬音語を幻聴しそうな勢いで酒の匂いが漂ってきた。

 

「うぅ!お酒くさいです!」

 

 ジャンタちゃんは強烈な酒気に表情をゆがめた。

 

「ハハハ!酒臭いのは私もよくわかっている!よし、酔い覚ましにジュースでも飲むか!

君たちもどうだ!」

 

 そう言って荊軻さんはグラスに瓶から何かを注ぎ、ジャンタちゃんに差し出した。

 

「あ、ありがとうございます。……これお酒じゃないですか!」

「何を言っている。これは酒ではない。アルコール入りのブドウジュースだ」

「だからお酒じゃないですか!」

「む!そうだな!そうとも言えるな!ハッハッハ!」

 

 そう言った荊軻さんは心の底から楽しそうに笑った。

 

「トナカイさん……この人、成長した私と違う方向性の駄目な大人です……」

 

 ジャンタちゃんを若干引き気味にさせながら、荊軻さんはさらに酒を飲み始めた。

 駄目だこの人、早くなんとかしないと。

 

「ジャンタちゃん、とりあえずプレゼント渡そうか?マタハリは潰れてるし、牛若ちゃんは正体不明だし、マルタさんは介護で手一杯みたいだから

荊軻さんだけにでも渡しておこう」

 

 ぐだ子がジャンタちゃんを促し、ジャンタちゃんは「論理的です」と言って袋から何かを取り出して荊軻さん差し出した。

 荊軻さんは相変わらず笑いながらジャンタちゃんが差し出したものを検めた。

 

「……『絶対に禁酒に成功する本』か。うむ。絶対に失敗する自信があるが貰えるものはもらっておこう」

 

 荊軻さんの傍若無人すぎる発言に俺はツッこんだ。

 

「荊軻さん……子供の前なんだから、口先だけでも『よし、禁酒しよう』っていうところじゃないんですか、ここは」

「何を言うか。私は酒をやめる気は毛頭ない。君は私に子供の前で嘘をつけと言うのか?」

「いやいや、ここはせめて『努力する』ぐらいは言っておきましょうよ……」

 

 俺がそう言うと、荊軻さんは突然、不敵に微笑んだ。

 

「え?どうしたんですか?急に何かを悟ったような顔して……」

「違う。ぐだ男。私は悟ったのでは無い。……諦めたのだ」

 

 そう言い終わるや否や「オロロロロロロロロ!」と 荊軻さんは勢いよくリバースした。

 

「うわ!荊軻さんがリアルに吐く人に!水!水!」

 

 ぐだ子はマルタさんに水をもらいに走った。

 

「英霊になっても泥酔すると吐くのだな!ハッハッハ!これは良い勉強になった!

お!この吐しゃ物、四川省の形に似ていないか?何?似て無い!?

うむ、確かによく見ると全然似ていないな!ハッハッハ!」

 

 荊軻さんは思いきりリバースしたが、まったく意に介さない様子で意味不明なことを口走っていた。

 そしてひとしきり爆笑するとぐだ子が持ってきた水を一服含み、そして突然真剣な面差しになった。

 

「泥酔すると思い出すのだ。生前の、あの時のことを」

「それって、始皇帝にあと一歩届かなかった時の……」

 

 俺の中で「泥酔」と「暗殺」というキーワードが結びついた。

 

「荊軻さん……まさか」

「ぐだ男、君は勘がいいな。そう、お察しの通りだ。始皇帝の玉座に向かったのあの日だが、私は前の晩しこたま酒を飲んでいてな。

酷い二日酔いで歩くのもおぼつかない状態だったが根性で玉座の前に辿り着いたのだ。

……ところが、玉座手前でリバースしてしまったのだ」

 

 マジですか……あんた、どんだけ酒癖悪いんですか。

 

「始皇帝は私を哀れに思ったのか、自ら玉座から降りて来た。

そして、私の吐しゃ物で思い切り滑って転んだのだ!

だが、私の方はもはや一歩も動けない状態でな。おかげで絶好の機会を逃した。

ハッハッハ!あれは実に惜しかった!」

 

 始皇帝暗殺未遂の残念な真実が明らかになった。

 荊軻さんは思っていた以上に悪質な酔っ払いだった。

 

「成長した私とは違う方向性の駄目な大人です……」

 

 それからというもの、ジャンタちゃんのオルタちゃんへの態度がちょっとだけ丸くなったのだった。




お酒は楽しく、ほどほどに。
ところで最近、こんな活動をしてました。

https://sorekara.wixsite.com/nov19

fate全然関係ないですが後書きついでに書いておきます。
では、また。


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キング・オブ・キングス

もはや『小説でわかる幕間の物語』というタイトルが完全にタイトル詐欺なこのシリーズですが、今回は珍しく本当に絆クエストのシナリオが元ネタです。
持ってる方はご存知と思いますが、モーさんの幕間の物語のタイトルそのまま。
その改変バージョンです。
アポクリファのアニメが佳境なのでこのチョイスにしてみました。



「おう、ぐだ男、ぐだ子。暇か?

暇ならちょいと付き合ってくれ。忙しかったら、その用事をキャンセルしてくれ」

 

大分前のことだ。

 その日。いつもの3人、俺とマシュとぐだ子がマイルームで無駄話をしていると、乱暴な感じで訪問者があった。

 円卓の騎士の1人、モーさんことモードレッドだった。

 ロンディニウムの特異点で縁を結んだ彼女は、その後まもなく召喚に応じてくれた。

 まだこの頃は人理償却の阻止どころか最後の特異点すら特定できていないような状態だったがすでにモーさんは古参の部類だった。

 

 モーさんとは良好な関係を築くことが出来ていた。

 俺はモーさんの訪問の理由を俺にとって不都合な事実がバレたことだと早とちりし、「俺とモーさんの仲だし、許してくれるだろう」と意を決して正直に告白することにした。

 

「……ひょっとしてモーさんが食べかけで放置したス●ッカーズを『モーさんの唾液おいしいなぁ……』ってちゅぱちゅぱしながら食べたこと……怒ってる?」

 

 隣のぐだ子にゴミでも見るような目で睨まれた。

 マシュの視線も冷たい。

 

 そして、当のモーさんは

 

「……おい。その話、詳しく聞かせろ」

 

 額の筋肉をピクピクさせていた。

 俺は墓穴掘った事に気づいた。

 

 こういう時に動揺を見せると逆効果だ。

 俺は慌てず騒がず、動ずることなく言った。

 

「モーさんが俺の目の前で食べかけを放置したからネタ振りだと思った。正直スマン。

……痛い!痛い!モーさん、グーは止めて!グーは止めて!普通に痛い!普通に痛いよ!」

 

 

 俺がしこたまモーさんにグーで殴られ、マシュが宥めてようやく事態が収まるとモーさんは訪問の理由を話し始めた。

 なんでもロンドンで微小特異点が発生したのを感じたとの事だった。

 モーさんは「オレはロンディニウムで召喚されたせいか、異変があると頭にビビっと来る」のだそうだ。

 モーさんは高ランクの直感を持っている。

 俺たちはその直感を信じることにした。

 

「あ、そうだ。モーさん、見て見て!」

 

 実務的な話を終えるとぐだ子が引き出しから何かを取り出した。

 ぐだ子はその何かを持ってモーさんに駆け寄った。

 彼女の手からはドロドロに変化した名状しがたいナニカが出てきた。

 

「……バレンタインにモーさんからもらった食べかけのブラッ●サンダー、大事にとっておいたんだ。

これからもずっと大事にするからね……」

 

 モーさんは当然の反応をした。

 

「止めろ!そんなもん取っておくんじゃねえ!さっさと捨てろ!」

 

××××××××××××

 

「まったく!バカマスターめ!オレがついてないとどうしようもないじゃないか。まったく!まったく!」

 

 モーさんといつもの調子でレイシフト先に行き、すぐにロンドンで何かが起こっていることが明らかになった。

 彼女の直感は正しかった。

 敵は大したものではなく、モーさんは最強クラスのサーヴァントだ。

 事態はあっさり解決した。

 

 マシュの考察によると特異点の元凶は「王であるという自我によって彷徨っていた亡霊」らしい。

 

 モーさんは王に反逆して最期をとげた英霊だ。きっと思うところはあったのだろう。

 亡霊のシャドウサーヴァンをあっさり一蹴し、彼女は屈託なく笑っていたが「じゃあ帰ろうぜ」と言って俺に背を向けたとき、モーさんの横顔には微かな陰が差していたように感じた。

 

×××××××××××××

 

 その翌日。

 誰かが俺の部屋をノックした。

 部屋を訪ねてくるのはマシュかぐだ子のどちらかだ。

 ぐだ子はたった今、俺の横でコーラを飲みながら一緒に無駄話しているところなので俺はインターホン越しに「マシュ?」と訪問者に問いかけた。

 

「違ぇよ、バカ。オレだ、オレ」

「カタカナ表記で一人称がオレ?……中二病から目覚めたエミヤ?」

「違ぇよ!お前にはオレの声はあんなに野太く聞こえるのか!?似ても似つかねえだろ!」

 

 彼女は乱暴だが素直な性格だ。

 からかっても普通に乗ってくれる。

 隣で静観していたぐだ子は俺たちのやり取りを聞いて調子に乗ったらしく、続けた。

 

「え……?じゃあ、意表をついてジークフリート?」

「お前らわかってやってるだろ!?オレだよ!いいから開けろ!」

 

 少しからかい過ぎたか。

 俺がドアを開けるとやっぱり訪問者はモーさんだった。

 

「悪ィ。ちっと勝手に喋るから。そっちは適当に答えてくれ」

 

 いつもの通り彼女は乱暴に訪問してきて乱暴に話し始めた。

 

 内容は彼女の昔話だった。

 

 円卓の騎士、アーサー王の不義の息子、モードレッドはアーサー王を元に生み出されたホムンクルスだ。

 その出自からモーさんは自身が王に相応しいと思っていたが、いざその問いを投げかけるとアーサー王は「貴公には。王としての器が無い」と否定した。

 モーさんはその呪われた出自からアーサー王が自分を憎んでそんな回答をしたのだと思い、死後、英霊になってからも王になることを諦めなかった。

 だが色々あって(詳しく知らないけど、別の聖杯戦争で何かあったんだろう)それを諦めた。

 

 そこまで一気に話し終えると、モーさんは一度、深く息をついた。

 そして、いつもと違う、らしくない沈痛な面持ちになった。

 

「王になるやつの動機は色々だ。権力欲に駆られる奴もいるし物欲に駆られる奴もいる。……でも、アーサー王は多くの人が笑うため、その身命を捧げた。オレは、どんな王よりも騎士王の志を尊いと思うし、正しいと思う。

……だから、魔術王なんて名乗るような連中に負けやしねえ。絶対にだ」

 

 前々から思っていたことだが、モーさんは――円卓の騎士モードレッドは時として悪として語られるが、俺はモーさんのことを「悪」だと思ったことは一度もない。

 乱暴だし粗野だし、強引だけど行動を共にするたび、やっぱり正しく英雄なんだなと思う。 

 

 ひとしきり話終わったモーさんは俺をしっかり見据えていた。

 彼女の目には確かな英雄の意志が宿っていた。

 

 しばらくそうして見合っていたが、モーさんは真っ赤になって後ろを向いて最後に付け加えた。

 

「ああ、クソ!勢いで恥ずかしいこと口走っちまった!オレがこんな話してたなんて、絶対に触れ回るなよ!特に他の円卓の奴らの前では絶対に言うなよ!」

 

 モーさんは「反逆の騎士」なんていう物騒な称号と裏腹に素直な性格だ。

 それでもここまで自分の裡にあったものを吐き出してくれるなんて、それこそ信頼がなければ無理な話だろう。

 俺はそれが嬉しかった。

 

「モーさん」

 

 なので、部屋を出ていこうとする彼女を呼び止めた。

 

「じゃあ俺も勝手にしゃべるから。興味がないなら聞き流してくれていいよ」

 

 モーさんはドアの前で後ろを向いたまま立ち止まった。

 

「大分前に聞いたんだけど、アルトリア(アーサー王)は選定のやり直しを願ってたそうだよ」

 

 後姿の彼女の頭がピクリと動いた。

 素直な性格のモーさんだし、穏やかではいられないんだろう。

 

「色々あって、結局アルトリアは選定のやり直しを願うのは間違いだったって悟ったらしいんだけどね。

それで、ここから先は俺の解釈なんだけど――アルトリアは王様だった頃から心のどこかで『自分は本当に王に相応しいのか?』って思ってたんじゃないかな?

モーさんはアルトリアに似せて作られた存在なんでしょ。

だから、モーさんに『王としての器が無い』なんて言ったんじゃないかな」

 

 モーさんは一度も振り返ることなく、相槌を打つこともなくただ聞いていた。

 

「独り言、終わり」

 

 しばらく何の反応も返ってこなかった。

 ……余計なことを言ったかな?

 

「……マスター」

 

 モーさんは静かに口を開いた。

 

「……ありがとよ」

 

 そう言ってモーさんは、こちらに顔を見せることなく扉を開けて出て行った。




珍しくシリアスになってしまった。
反省です。
次回はまたホームズが主役の予定です。
ちなみに、最近、課外活動の映像制作を行いました。
ここに書くようなことでもないので、チラリとで興味を持った方は活動報告かツイッターをご覧ください(ツイッターのアカウントはプロフィールを参照ください)


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施しの英雄

別のものを書くつもりだったのですが、アポクリファのカルナが格好良すぎて。
タイトル通り、カルナさんが主役です。


「へいよーかるでらっくす。マスター、オレに用があると聞いて赴いた」

 

 いつものようにマイルームでいつもの3人でぐだぐだしていた俺の元にジークフリートと並ぶ控えめな大英雄――太陽神スーリヤの息子――カルナさんが訪れた。

 理由は俺とぐだ子が呼びたてたからなのだが、ちょっとどうしても彼に言わなくてはならないことがあったからだ。

 

「ああ、カルナさん。……ちょっと言いづらいんだけどさ」

 

 先日、いつものように種火狩りの周回をしていた際のことだ。

 その日は弓の種火の日だったので、たまには孔明・マーリンの過労死コンビを休ませようとチャージスキル持ちのカルナさんについて来てもらったのだが……この選択が失敗だった。

 いつものように開幕即ステラで焼き払った後、カレスコお爺ちゃんを持たせたカルナさんに即チャージからの宝具を発動させた。

 

「命令とあらば」

 

 神を焼き払う伝説の槍が真名解放され、凄まじい爆風とともにその姿を露わにする。

 露わに……え、ちょっと待って。

 

「神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは是、この一刺」

 

 しまった、忘れていた。この生真面目ド天然な大英雄は加減を知らない、ちょっと引くぐらいいつでも全力な人だった。

 

「カルナさん!ちょっと待って!そんな全力で撃ったら種火ごと燃え尽きちゃうよ!!」

「灼き尽くせ、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!!」

 

 ……遅かった。

 雷光でできた必滅の槍の一撃は文字どおり跡形もなく腕を焼き払った。

 

「カルナさん。今度からは腕相手にする時はもう少し加減して撃ってね」

「――そうだったのか……。オレは命じられるままにいつも通り全力だったのだが、まさかそれがお前たちにとっては逆に不利益になっていたとは。謝罪する」

 

 カルナさんは心底申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。

 そのあまりに控えめな姿は逆に俺たちの良心にチクチクと刺さる。

 俺とぐだ子はむしろお使いクエストに慣れないスケールの大きすぎるインド神話の英雄を連れて行ったことを謝罪しその話は終わった。

 

「ところでオレもお前たちに問いたいことがあるのだが、構わないか?」

 

 この大抵の事を良しとし受け入れる彼には珍しい事だった。

 その質問にぐだ子が答えた。

 

「いいけど、何?」

「先日、エミヤがぐだ子の部屋を掃除していた時、オレも立ち会っていたのだが。お前の部屋に置いてあった薄い冊子の中にオレとアルジュナが全裸で昂め合っている本を見つけた。あれはお前の趣味か?」

「え?え!?」

 

 ぐだ子……お前インド兄弟までネタにしてたのか。

 動揺を隠せないぐだ子に対してカルナさんが続けて話す。

 

「いや、それは構わない。衆道は罪ではないからだ。お前がそれを趣味とするのならばオレはそれはそれとして受け入れよう。それよりもオレが気になっているはその時エミヤが言った『アルジュナが攻めでカルナが受けなのか』という言葉だ。

これはどういう意味なのか問いたい。攻めの反対は守りではないのか?エミヤにも同じ問いを投げたが彼はただ無言で曖昧な表情をするだけだった。この問いは彼が答えに窮するほどに深遠な問いなのだろうか?」

 

 動揺するぐだ子を尻目に心底不思議そうな表情でカルナさんは訪ねた。

 この純粋すぎる問いかけに対して欲望にまみれた作者(ぐだ子)は赤面しながら受けと攻めについて答えた。

 

「なるほど、つまり交わる際の役割を示した比喩的表現だったのだな。回答に感謝する。……この間、オレはぐだ男が黒のライダーの臀部を撫で回しているのを見た。お前にも同じ趣味があるということか。つまりお前たちは同好の士という事だな。相性が良いのも頷ける」

 

 とんでもないところから飛び火して来た。

 

「……先輩、最低です」

 

 マシュとぐだ子が俺の事をゴミを見るような目で見てくる。

 

「マママママシュ!誤解だよ!ちょっとスキンシップ取ろうとしただけだって!」

「そうか。あのような手つきで撫で回すのもスキンシップの一環ということか。オレも機会があれば試してみるとしよう」

「カルナさん!もう余計に話がこじれるから少し黙っててくださいよ!――あれ?なんかカルナさん手震えてません?」

 

 今まで気がつかなかったが、カルナさんの手が明らかに異常なレベルで小刻みに震えているのに気が付いた。

 

「これか?オレにも原因が皆目検討つかない。今朝パラケルススから『健康になる薬だ』と言って手渡されたモノを飲んでからずっとこうなのだが」

「絶対それが原因ですよ!」

「しかし彼は健康になる薬だと言っていた。お前たちも知っての通りオレはあらゆる虚言を見破る。彼の言葉に偽りはなかったからそれが原因ではないのだろう」

 

 後に問いただした俺にパラケルススはこう言った。

 

「申し訳ありません。副作用が出る可能性について(意図的に)伝えるのを忘れていました」

 

 カルナさんに俺たちが震えの問題について対処することを告げるとカルナさんはさらに隠された問題をサラリと口にした。

 

「そういえば、カエサルから英雄の証は倍になって帰って来ただろうか?」

「え?なんの話」

「聞いていないのか?カエサルが大きな利子を付けて返済すると言っていたので彼に素材を渡したのだが。オレはあの素材を大量に消費する。お前たちの負担を和らげるためにもあの判断は間違いではないと思っているのだが」

 

 そういうとカルナさんはカエサル商会との取引のあらましを話し始めた。

 

 ――絶対に騙されている。

 それは大事な部分を巧みに隠しながら身ぐるみを剥がす悪徳業者のやり方そのものだった。

 

「――あの言い難いんですけど、それ多分騙されて……」

「しかしオレは納得して素材を受け渡した。これは騙されたことになるのだろうか?」

「少しは人を疑いましょうよ!世の中には嘘をつかないで人を騙せる人もいるんですよ!」

 

××××××××××××××××××××××××××××××××

 

 後日、いつもの種火集めから帰って来た俺の元にマシュが血相を変えて走り寄って来た。

 

「先輩!すぐに購買に来てください!カルナさんとジークフリートさんが!」

 

 マシュに連れられて購買に行くと件の2人、カルナさんとすまないさんことジークフリートが明らかに剣呑な空気で対峙していた。

 これはただ事ではない。

 召喚された際二人は以前から縁があったらしく、互いを最大の好敵手と認め再会を喜び合っていた。

 しかも2人ともカルデアきっての謙虚な性格の持ち主だ。

 一体何が彼らをこうさせたのか……

 

「黒のセイバー、その手を離してもらおう」

「いいや、手を離すのは貴公の方だ赤のランサー」

 

 二人は何かを手にするために対峙しているようだった。

 あの無視無欲を絵に描いたような2人の大英雄にそこまでさせるなんて一体……。

 

「その焼きそばパンから手を離してもらおうか。黒のセイバー」

「いいや、この焼きそばパンを手にするのは俺だ。赤のランサー」

 

 想像以上に下らない理由だった。

 二人は購買の最後の一つの焼きそばパンを巡って争っていた。

 ……嘘だろ?

 

「二人とも先輩から頼まれたと仰っていて…」

 

 そういえば出撃前にカルナさんにお使い頼んだような。

 

「いや、ごめん。ジークフリートには私が頼んだんだけどまさかこんなことになるなんて」

 

 いつの間にか傍にいたぐだ子が言った。

 

「施しの英雄よ。衆生からの願いに応えるのが貴公の在り方のはず。であればこれを俺に譲るのが貴公の正しいあり方なのではないのか?」

「それはできない。なぜならこれはオレの望みではなくマスターであるぐだ男の望みであるからだ。生前から人々の願望器として生きたお前の方こそ手を引きべきとオレは考える」

「それはできない。自分のためではなく、自分の意思で誰かの望みを叶える。俺はずっとそう望んできた。傲慢で浅はかな望みだとは思うがぐだ子が焼きそばパンを望んだ以上、俺はネーデルランドの竜騎士としてこの焼きそばパンを持ち帰る義務がある」

「黒のセイバー、ジークフリートよ。お前らしい清廉で高潔な願いだ。しかし、この焼きそばパンをぐだ男の元に持ち帰るのはオレのクシャトリアとしての義務。命に代えても守らなければならない戦士としての約定だ」

「やはり、引くことはできないのか?」

「無論だ。お前が引かない以上、オレは戦士としてお前を討ち、この焼きそばパンを持ち帰る」

「受けて立とう」

 

 洋の東西を代表する大英雄2人の魔力が高まりその伝説の武具に魔力が充溢して行く。

 やばい、カルデアが崩壊してしまう。

 

「カルナさん!そこまでして焼きそばパン食べたくないし、いいって!」

「ジークフリート!私も他のパンでいいから!」

 

 俺たちの呼びかけに対峙する大英雄が答える。

 

「ぐだ男、お前が嘘を言っていないのはわかる。しかしそれではお前の焼きそばパンが食べたいという本来の望みを果たすことができない。お前に我慢を強いるのはオレの望むところではない」

「ぐだ子、俺は誰のためでもない。お前の望みのためにここに立っている。俺に自由なる勝利の輝き(焼きそばパン)を!」

 

 もう!

 いつも控えめなのになんでこんな時だけ物分かり悪いんだよ二人とも!!

 

「このような形とはいえ、お前のような強者と立ち会えることを誇りに思う。我が第二の生における最大最強の好敵手よ!」

「こちらにとっても貴公のような強者と刃を交えることは至上の喜びだ」

「お前のような強者を打ち倒すため、絶対破壊の一撃がオレには必要だ」

「推して参る」

「神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは是、この一刺。『 日輪よ、」

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす。『幻想大剣」

 

 その瞬間、凄まじい殺気を2人ではなく隣から感じた。

 

「マシュ、ちょっと盾借して」

 

 そこにはマシュから借りた大楯を持ったリヨ形態ぐだ子が立っていた。

 暴力の権化と化したぐだ子は楯でカルナさんとジークフリートを殴り倒すと静かに言った。

 

「……お前ら、いい加減にしろよ」

 

こうしてカルデア崩壊の危機は収束した。

真面目すぎるのって怖い。

俺は心底そう思った。

 




お目汚しすいません。
だいぶネタが溜まってるのでまた来週、お会いしましょう。


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メリークリスマス聖女様

クリスマス直前なのでくりすますにかこつけたネタになりました。
タイトル通りジャンヌが出てきますが、ほかにもいろいろ出てきます。


「できればチビっ子たちにも何かプレゼントをと思っているのですが、これは異教の祭り故、下手をすると首を出せ案件になってしまうかと……」

 

 今年という一年が終わりに近づいている。

 年末も近くなるとあのイベントがやってくる。

 イエス様の誕生日、キリスト教の祭日、クリスマスだ。

 

 思わぬ騒動が終着した後、カルデアにはバビロニアで縁を結んだ冥界の主エレシュキガルが新たに召喚され、無事にクリスマスを迎えることが出来そうだった。

 俺たちいつもの三人はサーヴァント達からクリスマスの要望を聞いているわけだが、カルデアきっての常識人、ハサン先生こと呪腕のハサンは

そう、控えめに要望を述べた。

 

 どう見ても悪党にしか見えないハサン先生だが、この人は子煩悩でお人好しな常識人だ。

 イスラムの信仰とキリスト教のイベントの間で葛藤していた。

 

「うーん、そうですね。ハサン先生が何かやってくれると子供サーヴァントも喜ぶと思うんですけどねぇ……」と俺がおざなりな意見を述べると、

ハサン先生の視線が突如、あらぬ方向に逸れた。

 

 ハサン先生の視線の先を見ると――「サンタ!」と無理やり主張するように赤い衣装を纏った巨大な体躯があった。

 

「しょ、初代様……?……その恰好は!?」ハサン先生は驚きと恐怖に腰を引かせながら呟いた。

 

「……我はそのような者ではない。通りすがりのサンタさんだ……」

 

 「妖怪首を出せ」「初代様」こと、山の翁、はノリノリだった。

 

××××××××××××

 

「拙者!世話好きで!おっぱいが大きくて!彼氏無しの!拙者の事が大好きな美少女幼馴染が欲しいでごじゃる!」

 

 俺たちいつもの三人は引き続きサーヴァント達にクリスマスの要望を聞いていた。

 黒髭ことエドワード・ティーチの答えは予想の範疇内だった。

 

 黒髭氏の予想通りの回答に――俺たちの間に虚無も空間が広がった。

 ――果てしない虚無だった。

 

 ぐだ子は感情をどこかに置き忘れた表情をし、マシュはただ無表情で虚空を見つめていた。

 時が止まった。

 

 止まった時の中で――俺は黒髭の肩に優しく触れた。

 

「――夢から覚めたか。海賊王」

「――ごめん。ぐだ男氏。拙者どうかしてたよ」

 

 海賊王、黒髭は語り始めた。

 

「ぐだ男氏、ぐだ子氏、マシュ氏

――拙者は

――海賊王になりたかったのでござる。

――少年誌の海賊王みたいになって、あわよくばヒロインとキャッキャウフフしたかったのござる……」

 

「なりたかったって――諦めたのかよ、黒髭氏……」ぐだ子が憧憬を込めてそう問い返した。

 

「――でも、海賊王は子供の頃限定で、拙者の英雄譚、モロにR18だから――少年誌には掲載できないんだよね……

そんなこと、もっと早くに気付くんだったよ」

 

 ……そうか、じゃあ仕方ない。

 ……でも

 

「安心しろって。黒髭氏、黒髭氏の夢は俺たちが必ず……」

 

 俺の言葉に黒髭氏は満足げに項垂れた。

 最後の時が近づいていた。

 

「マシュ、最後だから。黒髭氏に言ってあげて」

 

「……はい」とマシュは沈痛な面持ちで頷き

 

「見ているのですか、黒髭氏。 夢の、続きを――」

 

 黒髭氏は真っ白に燃え尽きた。

 

××××××××××××

 

「私は過去の影、あなたたちの背中を押すのが私の務めで、私の望みです」

 

 ルーラーのサーヴァント、聖女ジャンヌ・ダルクの要望は「何もいらない」だった。

 無私無欲な彼女らしい答えだ。

 

 無私無欲と言えば、自己評価マイナスなジークフリートの要望は「他のサーヴァントのピックアップ時にすり抜けで召喚されてマスターを悲しませないこと」だった。

 俺たちはジークフリートの健気さに涙した。

 贔屓は良くないのだろうが、ジャンヌは初期からの戦力で大事な仲間だ。

 長くいるから情も写るし、何度彼女に助けられたかわからない。

 だから、食い下がった。

 

「いいえ、私は誰かから施しを受けるような存在ではありません。一方的に施しをし、見返りを求めない。それでいいのです。

理解できないかもしれません。ですが、私はそういう存在なのです。聖人とはそういうものなのですよ」

 

 という訳で、ジャンヌは物の施しは拒否した。

 だが、何もしないのは気が収まらない。

 なので、俺とぐだ子は一計を案じることにした。

 マシュにそのアイディアを話すと「手放しでは賛成できませんが……先輩らしくていいと思います」と答えてくれた。

 「ありがとう、マシュ。大好きだよ」と言うと「……私もです。えへへ」と彼女は控えめに笑顔を見せた。

 

××××××××××××

 

「やりません。どうせ碌でもないことを企んでいるのでしょう。お見通しです」

 

 ジャンヌの別側面、ジャンヌ・ダルク・オルタに「オルタちゃん。トランプしようよ」と誘ったがにべも無くもなく断られた。

 こういう時のオルタちゃんの扱いをもちろん、俺たちはよく知っている。

 

「すごい!さっすがオルタちゃん!いやーオルタちゃん賢いなぁ!オルタちゃんには敵わないなぁ!」

「そうだよ、ぐだ男。オルタちゃんは無敵なんだよ!『PS●CHO-PASS』の同人で、オルタちゃんは監視官で免罪体質の無敵キャラだもん。当たり前じゃん!」

「殺す!焼き殺す!」

 

 オルタちゃんの御し方――それはとにかくオルタちゃんを怒らせることだ。

 怒らせて冷静さ(笑)を失わせればもうこちらは勝ったも同然だ。

 

「……そうか。そうだよね。オルタちゃんはカードゲームなんてバカバカしくて出来ないよね。

ビリーくんと兄貴に良いようにやられて悔しかったからやらないわけじゃないよね……」

 

 俺がさらに一押しすると、オルタちゃんは容易く挑発に乗った。

 

 ちなみにオルタちゃんには『or●nge』と『ストロボ・●ッジ』の全巻をプレゼントするつもりだ。

 「バ、バカじゃないの!フン!でも、どうしても渡したいというならば受け取ってあげないこともないです」とオルタちゃんは言ったが、

きっといざ渡したら夢中になって読破することだろう。

 実際、オルタちゃんは言葉と裏腹にアホ毛をピコピコ揺らして喜んでいた(かわいい)

 

××××××××××××

 

「あ……あんたたち、悪魔?そんなこと出来るわけないでしょ!」

 

 オルタちゃんと大貧民をして、俺たちはボロ負けしたオルタちゃんに罰ゲームを命じた。

勝負の前に俺たちは「負けた方は勝った方の言うことをなんでも一つ聞く」という約束をした。

 

「フン!ボロ負けしてほえ面かくんじゃないわよ!」とオルタちゃんはフンフン鼻を鳴らしていたが(かわいい)、結果はオルタちゃんのボロ負けだった。

 

 ルールは三回勝負して、一度でもオルタちゃんが平民か大富豪でアガリになれば勝ちというものだったが

オルタちゃんは三回とも大貧民だった。

 念のために言っておくと、俺たちはイカサマの類は一切やっていない。

 勝てた理由はただ単純にオルタちゃんの持ち札が表情でバレバレで信じられないぐらい弱いからだ。

 

「嫌です!絶対に嫌です!そんなことをするぐらいなら死んだ方がマシです!」

 

「でも約束したよね?」とぐだ子は言ったが、なおもオルタちゃんは食い下がった。

 

 そうか、では仕方ない……

 

「じゃあ、代わりにオルタちゃんのトップシークレット(笑)を10位から順々に公開するよ?」

「ハァ!?フン!面白いじゃない!やってみなさいよ!」

 

 俺たちはニヤリと笑って見合った。

 そして

 

「じゃあ、まず俺から行くね。オルタちゃんのトップシークレット第10位!

オルタちゃんが、ヴラドさんに、こっそり裁縫を習って……」

 

 オルタちゃんが一瞬で必死の形相になった。

 

「わかった!わかったわよ!やればいいんでしょ!」

 

××××××××××××

 

 クリスマス当日。

 サーヴァントが増えた今年はさらに賑やかな様相になっていた。

 エミヤは新しい圧力鍋(俺たちのプレゼント)で新しい煮込み料理を試し、アルトリアが片っ端からそれをつまみ食いし、

黒髭氏は刑部ちゃんと炬燵で同人造りに精を出し、初代様とハサン先生は子供たちと戯れていた。

 

 エルキドゥはイシュタルにえげつない奇襲を仕掛けて間一髪それを躱されていた。

 

「あんた、私を殺す気か!」

「何言ってるんだい、殺す気でやったんだから当たり前じゃないか。躱すなんて空気が読めない駄女神だなぁ」

 

 という物騒な会話が交わされていた。

 ガメッシュさんとエレシュキガルはエルキドゥの隣で青ざめて引き攣った笑いを浮かべていた。

 

 ジャンヌはクリスマスを楽しむ面々を少し離れた位置から微笑を浮かべて見ていた。

 

「オルタちゃん」

 

 俺たちは嫌がるオルタちゃんを促し、ジャンヌの元に赴いた。

 しかし、この子、嫌がってるけどいつも最後には言うこと聞くんだよな……

 やっぱり根はジャンヌなんだな……

 

「ぐだ男、ぐだ子……それにオルタ?」

 

 オルタちゃんが自らジャンヌの元を訪れたことに彼女は驚いていた。

 

 召喚の時以来、オルタちゃんはずっとジャンヌの事を避けている。

 クーフーリン兄貴たちのように自身の別側面同士でも特に諍いなく過ごしているサーヴァントもいるが、別側面のサーヴァント同士は上手くいくときもあれば行かない時もある。

 エリちゃんとカーミラさんは犬猿の仲だし、エミヤとエミヤ・オルタも友好とは言えない。

 

××××××××××××

 

「フフッ、そんなに固くならなくてもいいじゃない、下らない聖女様? 私はお前を無視するし、お前も私も無いものとして扱う。それでいいのよ」

 

 召喚当初、オルタちゃんはジャンヌに怨嗟の言葉(笑)を吐いた。

 

「そうですか……私は貴方にそのような評価を受けているのですね」

「フン。分かれば結構。これが最初で最後の会話です。ごきげんよう」

 

 しかし、ジャンヌはそれを斜め上から受け止めた。

 

「いいえ。それはお断りします。――だって寂しいではありませんか!」

 

「ハァ!?」オルタちゃんは開いた口が塞がらなかった。

 

「おかしいかもしれませんが……妹が出来たみたいで嬉しいんです!

なので、どうやったらその『下らない聖女様』という評価は覆るか教えてください!」

「ちょ、ちょっと!グイグイ来るんじゃないわよ!裁判所に接近禁止令を申請するわよ!」

「まぁ!読み書きが出来るだけではなく、そんな難しいことも知っているのですね!あなたは頑張り屋さんなんですね!オルタ」

 

××××××××××××

 

 回想終了。

 

「ほら、オルタちゃん。言ってあげなよ?」

 

 オルタちゃんは「ぐぬぬ……」と唸った。

 

 そして

 

「お、おね……」

 

 ジャンヌは「おね?」と小首を傾げている。

 

「お……お姉ちゃん」

 

 パァァ!

 ジャンヌの顔に光が差した。

 

「はい!お姉ちゃんです!」

 

××××××××××××

 

 そしてさらに後日。

 

「おはようございます。リリィ」

「はい。おはようごさいます。本来の私」

「違いますよ、リリィ。そうではないですよね?」

「――そうでした。ごめんなさい、本来の私……ではなくて……ジャンヌお姉ちゃん」

「はい!よくできました!貴女は立派なサンタで立派なサーヴァントです!私も鼻が高いです!」

「はい。ありがとうございます。ジャンヌお姉ちゃん」

「うふふ。リリィはかわいいですね」

 

 すっかり「お姉ちゃん」呼びに愉悦を得てしまったジャンヌは今度はジャンタちゃんにもそれを要求していた。

 ジャンタちゃんはオルタちゃんと違い素直な性格なので、特にためらいなくお姉ちゃん呼びに従っていた。

 

 二人は傍らで知らんふりをしようとしているオルタちゃんの事をチラチラ見ていた。

 

「絶対に呼ばないわよ!絶対に呼ばないからね!」

「もう、オルタは素直じゃないですね。うふふ、でもそんなところもかわいいと思います!」

「成長した私、ツンデレですか?流行りじゃないですよ。黒歴史です」

「うっさいわね!燃やすわよ!」

 

 そう言いながらもオルタちゃんがそんなに嫌がっているようには見えなかった。

 彼女たち三人の姿を俺とぐだ子とマシュと、そしていつの間にか現れたジル・ド・レの旦那は生暖かい笑顔で眺めていた。

 

 怒るオルタちゃんをジャンヌとジャンタちゃんが宥めながら――その最中、ジャンヌがこちらに顔を向けた。

 ジャンヌは小さく口を動かした。

 

「ありがとうございます」と言ったように俺には見えた。

 

 メリークリスマス。聖女様。




実は結構前からジャンヌ、自分のカルデアにいるので愛着があって。
本当に宝具のスタン、解除されてよかったです。
アポクリファのアニメが佳境なので、また近くジャンヌのネタになるかもしれません。


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もう一つの円卓

あけましておめでとうございます。
新年一発目は原作設定から大きく逸脱した悪ふざけです。
年末にやっていた短編アニメとガイ・リッチー監督の『キング・アーサー』を見て思い付きました。
いつも以上に下ネタ連発なので下品なのが苦手な方はブラウザバックしてください。
(良いですか?警告しましたからね?)
前述通り、原作無視の悪ふざけですがオチもつけたので勘弁してください。
では、どうぞ



「僕が彼らと出会ったのは――ロンディニウムのストリートだった!」

 

 あまりに意外過ぎる回答でどうしたらいいかわからない。

 そんなことが時々ある。

 何かの流れで、平行世界のアーサー王、アーサー・ペンドラゴンと雑談していた。

 俺だったかマシュだったか、ぐだ子だったか。

 誰がその話の流れに持って行ったのか思いだせないが、誰かが「平行世界の円卓の騎士」の話を聞きたがった。

 その好奇心がもたらした回答はあまりに意外だった。

 

「「「え?え!?え!!?」」

 

 俺たちいつもの三人はただ狼狽えた。

 

「ヴォーティガンのクソッタレ……失礼、卑王ヴォーティガンの奸計に嵌り、僕の父ユーサー王は命を落とした。

最後の力を振り絞って父は僕を船に乗せて、魔術で川に進水させた。その船が辿り着いた先は、ロンディニウムのスラムだった。

スラムの売春宿に拾われた僕は、ケイ兄さんに育てられた」

 

 アーサーの口調は熱っぽかった。

 

「ケイ兄さんはストリートでも名うてのポン引きで、ケイ兄さんの客引きに釣られたスケベ野郎たちはことごとく尻の毛まで引っこ抜かれていた。

サイド・ビジネスで大麻の栽培もやっていたけど、ケイ兄さんの大麻は絶品だった!」

 

 呆気にとられる俺たちにさらに彼は畳みかけた。

 

「そうそう。ぐだ子、君はなかなかいいセン言っていると思うよ!ケイ兄さんだったら一発ガリア銀貨一枚で売り出していただろうね!

マシュは実にスケベな体つきをしているね!ぐだ男、正直辛抱たまらないだろう。彼女とは何発ぐらいカマしたんだい!?」

 

 爽やかにゲス発言を繰り出した。

 ゲス発言なのに「キラキラ」という擬音語が聞こえそうなぐらい爽やかなのはやはり「イケメン無罪」だからだろうか……

 

「そんなストリート生活を通じて出会ったのが、円卓の騎士たち……ベディヴィエール、ランスロット、ガウェイン。トリスタンだ」

 

 アーサーの話はさらに続いた。

 現時点であまりにも相違点が多すぎて困惑し通しだったが、その先はもっとトンデモだった。

 

×××××××××××× 

 

 僕はロンディニウムのストリートで最強を誇っていた。

 男らしく腕を競い合い、その中の幾人かとは絆を築くことになった。

 それが後の円卓の騎士たちだ。 

  

 僕らはストリートで腕を磨き、ストリートで戦いのルールを築き上げた。

 だから僕らには戦の前の独自の儀式があったんだ。

 

 押し寄せて来た蛮族の軍勢と正面から睨みあったとき。

 先陣を切るのはベディヴィエールだ。

 

「陛下、お任せを。奴らにリリックの矢を浴びせてやります」

 

 まず、ベディヴィエールが敵軍の前に進み出て、相手の大将をラップでディスる。

 

××××××××××××

 

「「「いやいやいやいや!」」」

 

 俺たちは三人同時にツッコんだ。

 ノッブと言い、アーサーと言い、ラップ万能すぎるだろ。

 一体いつの時代からラップ存在してるんだよ。 

 

「ああ、言い忘れていたけど、僕の知っているベディヴィエールは黒人なんだ。

こっちのベディヴィエールは白いから驚いたよ。いつも『ヨー、ニグロ』って挨拶してたんだけどこっちのベディはニグロじゃないから

出来ないね。とても残念だよ」

 

××××××××××××

 

 ベディヴィエールがリリックの矢で敵をディスる。

 戦の前に即興ラップを披露するのなんて当時は僕らの軍ぐらいだったからね。

 この時点で敵は唖然だ。

 そこに今度はランスロットとガウェインが進み出る。

 

「陛下、お任せを。奴らに目にものを見せてやります」

「陛下!格の違いを見せてやります!」

 

 続いて、ランスロットとガウェインが敵軍に前に進み出て――公開オ●ニーをぶちかます!

 ランスロットとガウェインはこの世のものとは思えないサイズのデカ●ンだったから、気の弱い兵士はこの時点で戦意喪失だ。

 

××××××××××××

 

「「「いやいやいやいや!!!」」」

 

 またしても俺たちは一斉にツッコんだ。

 

「ああ、下品でごめん!ストリート育ちだからつい、癖が出てしまうんだ!

彼らは戦力としても最強クラスだったからね。生き残った敵兵はしばらくの間『デ●チン怖い』とうなされたそうだよ!」

 

 またしてもアーサーは爽やかに平然としていた。

 

 「中世のスコットランド軍には戦の前にキルトをめくりあげて下半身を露出させる儀式があったらしいです」とマシュが

赤面しながら(かわいい)説明してくれたが、明らかに時代がおかしいとのことだった。

 

××××××××××××

 

 仕上げはトリスタンだ、

 

「陛下、お任せを。大物をお見舞いしてやります」

 

 とどめにトリスタンが――敵軍の前で脱糞する!!!

 彼には便意をコントロールする加護が湖の乙女から与えられていた。

 いつでも好きな時に脱糞できるんだ。

 

「行くぞ!野郎ども!キャメロットで酒と女と大麻が僕らを待っている!

これは世界を救う戦いだ!」

 

 敵がトリスタンの変態行為で呆気に取られているとろを別動隊が背後から挟撃してタコ殴りにする。

 卑怯だと思うかもしれないが、卑怯も武のうちだ。

 なので、別動隊には精鋭をそろえていた。

 本隊が手薄になるのは好ましくないので、ベディヴィエール、ランスロット、ガウェイン、トリスタンは本隊に配置していたが、

それ以外の主戦力は別動隊に配置していた。

 ペリノア、モードレッド、ガレス、ベイリン、パロミデス、ラモラック、エクター、パーシヴァル、ボールス、ギャラハッド……いずれ劣らぬ精鋭たちだ。

 その別動隊を束ねるのがサー・ジョージだ。

 

××××××××××××

 

「私の知らない名前ですね。サー・ジョージ?」

 

 マシュが首を傾げた。

 マシュが知らないのであれば、俺が分かるわけもない。

 ぐだ子も隣で首を傾げていた。

 

「そうか……こちらの世界にジョージはいないのか」

 

 アーサーは残念そうにつぶやいた。

 そして――

 

「サー・ジョージは――カンフー・ジョージは――中国生まれのカンフーマスターで円卓最強の男だ!」

 

 俺たちはいっせいにツッコんだ。

 

「「「いやいやいやいや!」」」

「カンフー・ジョージほどヤバい奴を僕は見たことが無い。

僕は奇襲と目つぶしと金的でロンディニウムのストリートで150連勝を飾ったが、151連勝を阻んだのがカンフー・ジョージだった。

ジョージは僕の目つぶしをモロに受けたのに微動だにせず、金的を特殊な腹筋の操作で無効化した。

逆に全力の崩拳を食らってしこたまゲロを吐くハメになったよ!

エクスカリバーは一振りで960人を薙ぎ払ったが、カンフー・ジョージは素手で武装した1000人の兵士を制圧した。

アイツはマジでヤバいやつだったよ!」

 

 熱っぽく語るアーサーの話はキャメロット城での日々の話になった。

 

××××××××××××

 

 こんなロクデナシの集まりだったからキャメロットは常にカオス状態だった。

 パーシヴァルお手製のエールで泥酔してるか、ケイ兄さんの栽培した大麻でラリってるかのどちらかだったからね。

 あれは酷いものだった。廊下を歩くと必ずどこかにゲロがあるから常に足元には気を付けていたよ。

 

 円卓の騎士たちは酒癖も言葉遣いも悪かったが下半身も乱暴だった。

 ランスロットは「デ●チンでヤリ●ン」という最悪な称号を頂いていた。

 ガウェインは見境なしで「穴さえあればポストとでもヤッて見せます!」と豪語し、実際に老婆の姿のラグネルと一晩で七発カマすという偉業を成し遂げた。

 ラグネルの呪いが解けて、若い姿に戻った後はところ構わずヤりまくっていた。

 トリスタンとパロミデスはイゾルデを巡って争ったが、仲良くイゾルデから性病を移されてからは友好関係を結んだ。

 

 そんな状況でもストッパーはいた。

 執政官のアグラヴェインだ。

 僕は彼にお小言を頂戴するたびに言ったものだ。

 

「アグラヴェイン。君は本当にお堅いな。硬いのはチ●ポだけにしとけって!」

 

 そう言うたびにアグラヴェインは胃を押さえながら曖昧な表情をして呟いた、

 

「陛下、そういったお言葉は控えていただきたく……」

 

 ギャラハッドも数少ないストッパー役だった。

 でも、彼はストッパー役以上にいじられ役だった。

 こちらの伝承でもそうらしいけど、彼はガチガチの拗らせ童貞でね。

 円卓ジョークでもギャラハッドの童貞ネタは鉄板だった。

 僕の世界ではマーリンは女性だったと話したけど、彼女の下ネタは円卓の誰にも劣らないぐらいえげつなかった。

 彼女、面白がって事あるごとにギャラハッドの童貞を奪おうとしていたけど、

「中古品で童貞捨てるとか無理です!」って必死の形相で断ってたな。

 

 ブリテンは栄華を極めた。

 あの日々は本当に楽しかった。

 

 君たちも知っての通り終わりはやってきた。

 そのきっけかとなったのがランスロットの不義だ。

 

 アグラヴェインからの進言によりランスロットがグィネビアと一発カマした……失礼、不義の仲となったことを知った僕は彼を呼び出し、問い詰めた。

 

「人の女房をコマしておいて、タダで済むと思ってるのかい?このチ●ポ吸い野郎!」

 

 彼はあっさり不義を認めた。

 そしてとんでもないことをカミングアウトした。

 

「私は確かにお妃さまをコマしました。ですが、私の本来の目的は――あなたなのです。

私はあなたの事を尊敬しております。ですが、甥であるガウェインのように血縁があるわけではありません。

貴方の親族に女性が居ない以上、義兄弟にもなれません。

――なので――なのでせめて

――穴兄弟になりたかったのです!!!」

 

 僕は思わず答えていたよ。

 

「なんて狂った変態野郎だ!ムカついてるけど、面白いから許す!

下痢するまで酒飲んで、ポルノでも見ようぜ!!!」

 

 僕らは行きつけの酒場「カムラン」でしこたま酒を飲んだ。

 そして泥酔したところを腐れチ●ポ……失礼、モードレッドにまんまと隙を突かれた。

 

 それが僕の世界の円卓の物語。

 後は大体こっちの世界と一緒だ。

 

 

××××××××××××

 

 目が覚めると倉庫に居た。

 周りを見渡し、状況を確認する。

 

 そうだ、確か……査問の前に片づけしてて思わず寝落ちしたんだった。

 

 何かすっごい変な夢見たな……

 

「先輩」

 

 馴染みのある声がした。

 ドアを開けて声の主、マシュ・キリエライトが入ってきた。

 

「よかった。ぐだ子先輩と手分けして探していて、全然見つからないので何かあったのかと思いました」

 

 ぐだ子と合流した俺たちは片づけに戻ったのだった。

 カルデアの倉庫の片隅に奇妙な世界に繋がる空間があるということを知ったのは後のことだった。




上品でほんとごめんなさい


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体育会系には敵わない

前回ですが酷いド下ネタだったのに結構コメントがあって驚きました。
実は皆さん下ネタお好きなんですかね……
今回は今更ながらアポクリファのネタです。
何気にシェイクスピアが初登場です。


「つまり、ジャンヌの記憶を元につくった世界でジャンヌに精神攻撃を仕掛けたと?」

「はい!実に簡潔な説明!しがない一流作家の吾輩も感服です!」

 

 いつもの皮肉な笑顔を浮かべてキャスターのサーヴァント、ウィリアム・シェイクスピアは肩をすくめた。

 

「シェイクスピア、今度私に宝具を使ったら、出るとこに出てもらいましょうね! 私にも、限界がありますから!」

 シェイクスピアが召喚された当初、過去の聖杯戦争で縁があったというジャンヌ・ダルクは彼に嚙みついた。

 今日、こうしてシェイクスピアを呼び出し俺たちいつもの三人、マシュとぐだ子と俺が話をしているのはその意味をいまさらながら確認しようと思ったからだ。

 

 あの温厚なジャンヌを怒らせたのだから相当なことをしたのだとは思っていたがやはりだった。

 なんでもシェイクスピアの宝具は「劇団」と呼ばれる幻影を呼び出す魔術を操り、対象を混乱させるものらしい。

 

 サーヴァントとしての直接戦闘能力はゼロに近いシェイクスピアはジャンヌと真っ向から戦っても敵うはずがないとよくわかっていた。

 それで早い話が精神攻撃に出た訳だ。

 それを聞いた俺たち三人は一様に同じような感想を述べた。

 

「最低ですね」

「お前、最低だな」

「お前、クズだな」

「んー!なんと衒いのない低評価!マスターの吾輩への信頼がよくわかりますな!」

 

 俺たちの罵詈雑言にシェイクスピアは肩をすくめた。

 ちなみにジャンヌ曰く、シェイクスピアの宝具で心折られかけたところをある人が助けに来てくれたらしい。

 その「ある人」の話をするときジャンヌはほんのり頬を赤らめていた。

 なので、それ以上聞くのはヤボだと思ったのでそれ以上のことは聞かなかった。

 

 そのことを話すとシェイクスピアは「んーそれ、だいぶ端折った説明になってますな」と首を傾げた。

 

 なので「何か弁明ですか?クズ」とぐだ子が問いかけるとシェイクスピアは事の真相を勝手に話し始めた。

 

××××××××××××

 

 吾輩の策略はマスターたちにもお話したとおり。

 あの聖女の心を折ることでした。

 より具体的には彼女が大事に思うものをほかならぬ彼女が死に導いたと思わせること――あのホムンクルスの少年を死地に追い込んだのが自身だと

思わせることでした。

 そのために吾輩がキャスティングしたのがジル・ド・レ元帥でした。

 

 ホムンクルスの少年の首を持ったジル元帥の姿……それはマクベスを角躱す3人の魔女のように聖女を惑わしました。

 あとは一押しです。

 吾輩は言葉のナイフを以って彼女の肺腑を抉りました。

 

「貴女は、彼を利用せざるを得なかった。

何故なら、彼のサーヴァントとしての力こそが、我々に対抗するのに必要だったからだ!

そう、あのホムンクルスを此処に辿り着かせたのは彼の選択ではない!

貴女が選択したのだ、貴女が彼を殺すのだ!」 

 

 ジャンヌ・ダルクは吾輩の言葉に膝を折りました。

 

「ジル……」

 

 彼女は俯き、力なくジル元帥の名を呼びます。

 

「はい。何でしょうかジャンヌ?」

 

 それにこたえるジル元帥。

 ――そして

 

「はっ!!!!!!」

 

 意外!それは目つぶしッ!

 ジャンヌ・ダルクが突き出した二本の指は墓穴よりも深く、ジル・ド・レの飛び出しがちな目玉を貫いていたのです!

 

「ンギモッヂィイイ!!!」

 

 ジル元帥は転がりながら悶絶!

 吾輩は狼狽!

 

「タンマ、タンマ!吾輩の筋書きと違……」

「覇ッッッ!!」

「オワッ!」

 

 「ビリビリ!」という擬音語を幻聴しそうな莫大な声量が、今度は吾輩の鼓膜をクリティカルヒット!

 

「私を見くびりましたね!この程度の精神攻撃がこのジャンヌ・ダルクに通じると思いましたかッッ!

……ウィリアム・シェイクスピア。私は慈悲を以って言葉であなたを制しようと思いましたが、どうやら無駄だったようですね!

ここからは憤怒を以って肉体言語であなたを制します!」

 

 左様!聖女ジャンヌ・ダルクは……吾輩の予想をはるかに上回る、ウルトラ体育会系だったのですッ!

 

「覚悟なさい!あなたの血は何色ですかーーーッ!」

 

 ヤバイ、殺られる。

 吾輩の人間観察から得た直感を如実に彼女の殺意を感じ取っていました。

 

「下がっていなさい。キャスター」

「マスター!?」

 

 その時、吾輩にも援軍がありました。

 吾輩の当時のマスターだった天草四郎時貞殿です。

 

「江戸幕府への憎悪の念に駆られたまま冥府魔道を彷徨っていた我が魂は、禍々しき暗黒神・アンブロジァの手により、その使徒としてこの世に復活しました」

 

 吾輩も初耳の設定を話し始める我がマスター。

 吾輩またもや困惑。

 

「マスター、それ『サムライ●ピリッツ』……」

「ですが、私に憤怒の情はありません。聖女、ジャンヌ・ダルク、あなたが俺の願望を否定するというのであれば……秘宝パレンケストーンより得たこの力によってその身を亡ぼすまで!」

 

 吾輩、引き続き困惑!

 

「いや、ですからそれ、『サ●ライスピリッツ』……」

「いいでしょう!では、こちらも相応のものを以ってあなたを迎えましょう!貴方の罪を数えなさい!」

 

 賢明なマスターはお気づきでしょう。

 そう、天草殿はバリバリの現役中二病だったのです!

 

紅蓮の聖女!(ラ・ピュセル)

汝、暗●入滅せよ!(ツインアームビッグクランチ)

 

 こうしてジャンヌ殿と天草殿は必殺技の名前を絶叫しあいながらただひたすらに正面からド突きあいました。

 ちなみにその「ある人」が駆け付けたのは天草殿とジャンヌ殿が散々ド突きあって半死半生状態になった後でした。




こんなのでごめんさい。
明日、もっと短いのを投稿する予定です。
では、また。


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争いは同じレベルでしか起きない

今回は短いやつの二本立てです。
本分に書くには短すぎるので後書きに二本目を書きました。



……そろそろか。

 

 俺とぐだ子はある事態に対処するため揃ってマイルームで待機していた。

 

 ノックも無く勢いよくドアが開く。

 想定通りだ。

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 

 アヴェンジャーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルク・オルタが怒りで顔を真っ赤に上気させて立っていた。

 

「あんたたち……やってくれたわね!!!」

 

 彼女は怒りのあまり声が半ば裏返っていた。

 必死すぎて逆にかわいい。

 

 「えーなんのことかわからないなぁ!?ぐだ子困惑」とぐだ子は思い切りすっとぼけた。

 

 オルタちゃんことジャンヌ・ダルク・オルタは怒りのあまり声にならない声を発しながら事の顛末を話し始めた。

 

 

「成長した私、聞きたいことがあるのですがちょっといいですか?」

 

 ジルの部屋に行こうとしたオルタちゃんをジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(通称ジャンタちゃん)が呼び止めた。

 オルタちゃんとジャンタちゃんは根っこは同一の存在だがオルタちゃんは悪(笑)属性、ジャンタちゃんは本家ジャンヌ寄りの真面目っ子だ。

 なので二人はいつもいがみ合っている。

 オルタちゃんからしてジャンタちゃんに呼び止められ、何かを聞かれるのは意外だった。

 

「メアリー・スーとは誰ですか?」

 

 ジャンタちゃんはとんでもない質問をブッこんだ。 

 オルタちゃんは呆気にとられた。

 

「おかしいですね……成長した私ならこの質問に答えられると聞いたのですが……」

 

 ジャンタちゃんはオルタちゃんの反応に首を傾げた。

 ジャンタちゃんは真面目で素直なので人を疑うことを知らない。

 

「……誰に唆されたの?」

 

 オルタちゃんは怒りに震えながら問いかけた。

 

「トナカイさんたちです!トナカイさんたちはとっても物知りですね!メアリー・スーは奇跡を起こす人だと言っていました。つまりは聖人のようなものですよね!」

「……なんでそれを私に聞くわけ?」

「トナカイさんたちが、成長した私がメアリー・スーに関する本を書いていると教えてくれました!」

「殺す!焼き殺す」

「あ!待ってください、成長した私!私もそのメアリー・スーという人の事を知りたいです!ずるいですー!」

 

 そしてここに至る。

 

「え?でも実際、オルタちゃん、よくメアリー・スーの本書いてるじゃん」

「そうそう。『監視官ジャンヌ・オルタ』面白かったよ!監視官で免罪体質とかマジで無敵キャラだね!」

「殺す!焼き殺す!」

 

 俺たちの発言がオルタちゃんの怒りの火に油を注いだ。

 よし。頃合いだ。

 

 ぐだ子が一転して真剣な表情になった。

 

「オルタちゃん。エミヤお手製のガレット、ジャンヌとジャンタちゃんの分まで食べたでしょ?しかも本人の前で」

 

 オルタちゃんの手が止まった。

 反転しているとはいえ、元は聖女。

 バツが悪いらしい。

 計算通りだ。

 

 俺が畳みかける。

 

「そういうの良くないと思うよ。二人のことが嫌なのは仕方無いにしても嫌がらせはよくないと思うよ」

 

 オルタちゃんが「ぐぬぬ」と唸って止まった。

 

 そこへ「バン!」と音がして扉が開いた。

 

「もう!トナカイさんたち、酷いです!」

 

 顔を真っ赤にしてジャンタちゃんが飛び込んできた。

 

「お師匠さんからメアリー・スーの意味を聞きました!恥ずかしいです!黒歴史です!

騙すなんて酷いです!」

 

 そのまま俺の懐まで踏み込んできたジャンタちゃんは俺の胸元で手を振り回してポカポカし始めた。

 かわいいなー癒されるなーでも5発に1発ぐらいかなりいいのが混ざってるのはなんでかなー 

 

「もう!酷いです!嘘つきです!」

「でもねジャンタちゃん」

 

 俺の一言にジャンタちゃんは我に返った。

 

「オルタちゃんがメアリー・スーの本、書いてるのは本当だよね?」

「……確かにその通りです。論理的です。論破されてしまいました……」

 

××××××××××××

 

「成長した私、触らないでください!中二病がうつります!」

「このクソガキ!これでも喰らいなさい!」

 

 ある日の光景。

 いつものようにオルタちゃんとジャンタちゃんが何か廊下でいがみ合っていた。

 何が口論のきっかけか知らないが口論はいつの間にかただの姉妹喧嘩に変化していた。

 

「触らないでって言ったじゃないですか!バリア!バリア!」

「残念でした!バリアを突き抜ける攻撃!」

「あー!ズルいですー!」

 

 ホント、争いって同じレベルでしか起きないんだな……。

 俺はそう思ったのだった。




オマケです。


淫獣
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「フォウ!フォウ!」
「フォウさん!?またついて来てしまったのですか?」

 マシュと戯れているモフモフした毛並みとネコのような肉球を持ったその小動物はカルデア内を闊歩する謎の生き物だ。
 通称はフォウくん。
 性別はどうやらオスらしいが、誰もその正体を知らない。
 カルデアにいつの間にか定住していたフォウくんはマスコット的な存在になっている。

 いつも気づくとレイシフトにいつの間にかついて来ているのだが、ある時、俺は気づいていしまった。
 それはフォウくんが隠れている場所のパターンだ。

 マシュの胸元。
 ぐだ子のスカートの中。

 気のせいではなく、毎回必ずこのうちのどちらかから出現する。

「フォウ!フォウ!」
「アハハ!フォウさんくすぐったいです」

 一見、じゃれているように見える今も――フォウ君の両足は確実にマシュのおっぱいを捉えている。

「フォウ!フォウ!」

 ポヨン。ポヨン。
 クソ、羨ましい!

 その時、フォウくんと目が合った。

「フォウ!フォウ!(ニヤリ)」

 俺にはフォウくんがニヤリと笑ったように見えた。
 コイツ……やはり知性があるな。

「あ、コラ!フォウ、スカートの中入っちゃダメだってば!」
「フォウさん、そこは駄目ですよ!あ、もう悪戯っ子ですね!」

 こ……この淫獣め!
 マシュとぐだ子は小動物と戯れているだけのつもりのようだが、俺だけは絶対に騙されない。
 そう誓ったのだった。

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お後がよろしいようで。


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事実は小説より奇なり

今回はヴォイスドラマ風です。
地の文=ぐだ男
「」書き=セリフ
で脳内変換してください。
すいません、何か普通に小説形式だと書きづらくて・・・
邪道ですがご容赦を。


 いつもの事だが、ダ・ヴィンチちゃんがまた唐突に発明した。

発明の内容はメモリースクープ、対象者の記憶を抽出して映像化するシステムだ。

もうSFなのかファンタジーなのかよくわからない。

でもせっかくの発明なので使ってみることにした。

 

フランちゃん「ゥァゥ……ゥゥ……(いいよ)」

ジキル「……お役に立てるなら」

ホームズ「構わないがね」

 

 

 この三人を選択したのは、世間ではこの三人は創作上の人物だと思われてるからだ。

小説で描かれているのと実際と、どのくらい違うのか知りたかった。俺とマシュとぐだ子、いつもの三人はダ・ヴィンチちゃん立ち合いで

メモリースクープを試した。まずは最初に手を挙げたフランちゃんからだ

 

ダ・ヴィンチちゃん「それじゃあ始めようか。どうかなー?どんなので出るかなー?」

 

 フランちゃんに送信機となるヘッドセットを装着し、ダヴィンチちゃんが器機を操作するとモニターに二人の人物が映し出された。

 

××××××

 

?「我がスイスの科学力は世界一ィィィ!

できんことはないイイィーーーーーーッ!! 」

 

フラン「ゥァゥ……ゥゥ……」

 

?「いいぞ!我が至高の生命体よ。

お前のことをサンタn……フランケンシュタインと名付けよう!」

 

××××××

 

マシュ「ちょっと一回止まりましょうか」

 

フラン「ゥァゥ……ゥゥ……?(どうしたの?)」

 

マシュ「すいません。今のサイボーグっぽいパーツを身に着けた軍人風の方はどなたですか?」

 

フラン「ゥァゥ……ゥゥ……?(ヴィクター・フランケンシュタイン博士だけど?」)

 

ぐだ子「あのさ、ごめんね、フランちゃん。思い切り言ってたよね?サン●ナって言ってたよね?

サ●タナっていってたよね!?」

 

ぐだ男「フランちゃん……すっごい言い辛いんだけど……これ、シュ●ロハイムだよね?

もう9割9分シュトロハ●ムだよね!?」

 

フラン「ゥァゥ……ゥゥ……?(二人とも何言ってるの?ぜんぜんわからない)」

 

 その他は特に変なところはなかった。

 いや、もう初めの部分が思い切り変な部分なのだが過去を振り返るは止めよう。

 

ジキル「お役に立てるといいけど……」

 

 二番目はジキルだ。

 ジキルにヘッドセットを装着し、ダヴィンチちゃんが器機を操作した。

 

ダヴィンチ「どうかなー?何が出るかなー?」

 

 モニターには二人の人物の姿が映し出された。

 

××××××

 

?「ジキル……いい子ぶってるんじゃねえよ。

お前、無理してるんだろ?」

 

ジキル「違う……違う……僕は」

 

?「ベロン。この味は!...ウソをついてる『味』だぜ...ヘンリー・ジキル!」

 

××××××

 

マシュ「すいません。一旦止めていただけますか」

 

ジキル「どうしたんだい?」

 

マシュ「すいません。今の妙に濃い顔でおかっぱ頭の方はどなたですか?」

 

ジキル「……ハイドだけど?」

 

ぐだ男「待って待って。ハイドなら知っているけどさ、全然風貌違くない?」

 

ぐだ子「ねえ、って言うか今のブ●ャラティだよね?ブチャラ●ィそのものだよね!?」

 

ジキル「……ごめん、君たちの言ってることが全然わからない。確かにあの頃のハイドは今よりもイキってたから

ちょっと風貌は違うかもしれないけど、そんなに違うかな?」

 

 その他は特に変なところはなかった。

 いや、もう初めの部分が思い切り変な部分なのだが過去を振り返るは止めよう。

 

 最後はホームズさんだ。

 

ホームズ「始めるとしよう」

 

 ホームズさんにヘッドセットを装着し、ダヴィンチちゃんが器機を操作した。

 

ダヴィンチ「どうかなー?何が出るかなー?」

 

 モニターに一人の青年の姿が映し出された。

 

××××××

 

?「君がシャーロック・ホームズだね?

僕はジョン・H・ワトソン。みんなからは『ジョ●ョ』って呼ばれてるよ!」

 

×××××××

 

ぐだ男・ぐだ子・マシュ「いやいやいやいやいや!!!」

 

ホームズ「どうしたんだい、君たち?」

 

マシュ「ホームズさん。まず、確認しますね?今の筋骨隆々とした爽やかそうな紳士はドクター・ワトソンですか?」

 

ホームズ「私の記憶によほどの誤りがなければそうだね」

 

ぐだ子「いやいや。おかしいでしょ?なんでジョンの愛称が●ョジョになるんですか?」

 

ぐだ男「っていうか、今のジョナサン・ジョー●ターですよね?初代ジ●ジョですよね?」

 

ホームズ「君の言う、ジョナサン・●ョースターなる人物が何者か知らないが、今のは私の盟友、ワトソンだ。

ジョンだからジョ●ョだ。まったくナチュラルじゃないか。それより続きは見なくていいのかい?」

 

 ホームズは再びヘッドセットを装着し、続きが投影された。

 今度は違う人物が映し出された。

 

××××××

 

?「ホームズの旦那!

あいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーー」

 

××××××

 

ぐだ男「すいません。今の……何て言うスピー●ワゴンですか?」

 

ホームズ「何を言っているんだい?ウィギンズだよ。ベイカー・ストリート・イレギュラーズの。

先ほどのはモリアーティについて調べさせた時の報告だな」

 

マシュ「ホームズさん、ちょっと確認しますね。ベイカー・ストリート・イレギュラーズはあなたが個人的に情報収集を任せていた

ロンドンのストリートチルドレンですよね?」

 

ホームズ「そうだが?」

 

マシュ「今の方はどう見ても成人にしか見えなかったのですが」

 

ホームズ「何を言っているんだい?ウィギンズは確かに年の割に大人びていたが、あれでも十代の少年だ。個人差の範囲内だと思うがね。

それより続きはいいのかい?」

 

 ホームズは再びヘッドセットを装着し、続きが投影された。

 今度は違う人物が映し出された。

 

××××××

 

?「チャンスをやろう。自らの手で、ドクター・ワトソンを殺せ」

 

ホームズ「……なぜだ?そのような行為に何の意味がある?」

 

?「意味なんかねェーーー!スカッとするからに決まってんだろこのボケー!!!」」

 

?「そうだ。意味などない。敢えて言うならば、君に屈辱を与える為だ、ディティクティブ」

 

ホームズ「ワトソンを差し出せば……ほ……本当に……私の『命』は……助けてくれるのか?」

 

?「ああ、君の尊厳と引き換えのギブアンドテイクだ。

……さあ、やれ。早くやれ」

 

ホームズ「だが断る」

 

?「ナニッ!?」

 

ホームズ「このシャーロック・ホームズが最も好きなことのひとつは……自分で強いと思っているやつにノーと断ってやることだ。

逃げろ!ワトソン!こっちに来るんじゃあない!この阿呆が!」

 

××××××

 

マシュ「すみません。状況が全く呑み込めないんですか……」

 

ホームズ「確かに今のは説明が必要だな。

先ほどのは赤毛連盟と戦闘になったときのものだ。以前、君たちに話したが、赤毛連盟の連中、

特にダンカン・ロスとジョン・クレイは私の捜査史上において、モリアーティと並ぶ使い手だった。※

結末をお見せしよう」

 

××××××

 

ロス「……な、何だ……この凄まじい魔力は!」

クレイ「大地が……魔力で大地が震えている!」

 

?「ニィ。邪魔するぜ」

 

××××××

 

ぐだ男「これ……ジョ●ョ縛りじゃなかったんですか?」

 

ぐだ子「ごめん……ホームズさん、マジでわかんないんだけど、

今のゴリゴリマッチョで『地上最強の生物』とか『オーガ』とか呼ばれてそうなのはどなた?」

 

ホームズ「マイクロフトだ」

 

ぐだ男・ぐだ子・マシュ「「「いやいやいやいやいや!」」」

 

ぐだ子「なんでマイクロフト・ホームズがカンフー着でカンフーシューズ履いてるんですか!!」

 

ぐだ男「っていうか今の範●勇次郎!今のは範馬勇●郎!!」

 

ホームズ「おかしなことを言うな君たちは。確かにマイクロフトは『地上最強の生物』とは言われていたが断じて範馬●次郎なる人物ではないよ」

 

 その先もどう見てもエ●ヤ婆にしか見えないハドソン夫人やどう見ても空条●倫にしか見えないアイリーン・アドラーが出てきたが

ツッコミ疲れてツッコむ気力も失せていた俺たちは何も言わなかった。

 「事実は小説より奇なり」と言うけど、事実は本当にどこまで奇妙な冒険だった。

 

※エピソード『シャーロック・ホームズの奇妙な冒険』をご参照ください。




オマケ

沖田さん「私が知っている最強の剣士ですか?そうですね……新選組をはじめ見回り組や御庭番衆にはかなりの使い手がいましたが、
新政府側も無視できない存在がいました。……そう、特に『彼』は……」

××××××

沖田さん「我々は京を守る治安部隊。立会いの前に名乗りを上げるなどガラではありませんが……
新選組一番隊組長、沖田総司。推して参ります」

?「長州派維新志士、緋村抜刀s……」

××××××

ぐだ男「沖田さん!今のアウト!ギリギリアウト!」

沖田さん「あれ?おかしいですね。幕末の剣客で一番有名な一人の筈なんですけどね……」

ぐだ子「聞き間違いかもしれないから、もう一回聞くね?
さっきの赤毛に単身痩躯で、頬に十字傷のある方はどなたですか?」

沖田さん「え?ですから、緋村抜刀s……」

ぐだ男「その先を言っちゃいけない!それ、コラボしちゃいけないやつ!コラボしちゃいけない奴だよ!」


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乙女ですから

久しぶり投稿です。
今更ながらバレンタインネタ。
セミ様はじめapocrypha勢が出てきます。


「サーヴァント、アサシン。セミラミスだ。さて……まずは玉座を用意せよ。話はそれからだ。無いのであれば仕方ない、汝が椅子になるが良い」

 

 バレンタインで色々あった後、アッシリアの女帝、セミ様ことセミラミスが召喚に応じてくれた。

 逸話の通り、セミ様は高飛車な態度で召喚早々いつもの三人、俺とぐだ子とマシュになんか色々と命じた。

 

 カレデアに居る古参のサーヴァント達の中には別の聖杯戦争でセミ様と縁があったのが何人かいるらしい。

 まずはカルデア内を案内したが、カルデア内で遭遇したサーヴァントの中で最初に反応したのがモーさんだった。

 

 「ッゲ!カメムシ女じゃねえか!あいつをオレに近づけるなよ!フリじゃねえからな」

 

 モーさんは俺たちと一緒にセミ様がいるのを見ると、そう言って逃げるようにその場を立ち去った。

 

「セミラミス。マスターたちの召喚に応じたのですね。また会えて嬉しいですよ」

 

 次に反応を示したのは天草四郎だった。

 天草も別の聖杯戦争でセミ様と縁があったらしい。

 

「我は汝など知らぬ。少なくともこの我はな。その顔を見ても何の感慨も湧かぬわ」

 

 セミ様は高飛車に答えたが、天草はそれに対してただ笑顔を浮かべるだけだった。

 

「最古の毒殺者とどういう関係だったか、ですか? 残念ながらそれは……秘密です。ふふ」

 

 後になって天草に聞いてみたが、彼は穏やかな笑みを浮かべて俺たちの質問を躱した。

 

 〇

 

「セミラミスも一緒か、

丁度いい。お前に問いたいことがあったのだ」

 

 カルデア内を周り、俺たちは食堂に向かっていた。

 食堂についたところでカルナさんが話しかけてきた。

 カルナさんも別の聖杯戦争でセミ様と縁があったらしい。

 

「何だ?申してみよ。答える保証はせぬがな」

 

 セミ様は高飛車な感じで答えた。

 

 カルナさんは何事にも動じない。

 なぜならカルナさんはド天然だからだ。

 ド天然なカルナさんはド天然に生真面目な口調で尋ねた。

 

「教えてくれ。鳩とは赤子のような口調で話すものなのか?」

 

 斜め上の方向の質問が飛んできて、俺とぐだ子は顔を見合わせた。

 マシュはポカンとしている。

 

 そして、セミ様の方を見ると……

 

「ききききさまななななにをいっている」

 

 セミ様は完全に目が泳いでいた。

 ……嘘へたくそかよこの人。

 

 生真面目ド天然で常にマジレスなカルナさんはいつもの感じでマジレスした。

 

「お前こそ何を言っている?オレの言葉の意味が通じなかったのか?鳩とはお前の使い魔たちのことだ。庭園で垣間見ただけだが、使い魔の鳩に話しかけていたではないか」

 

 以下、カルナさんの証言に基づく構成。

 

 〇

 

「お前たちはよく働くな。褒美に我手ずから名前を付けてやろう」

 

 くるっぽー

 

「ふむ……お前は四郎……お前は時貞だ」

 

 くるっぽー

 

「そうでちゅか、気に入りまちたでちゅかー」

 

 くるっぽー

 

「うれしいか?うれちいでちゅかー。そうでちゅかーお前たちは愛い奴でちゅねー。四郎、時貞」

 

 くるっぽー

 

 〇

 

「まず偶然とは言え覗き見のような真似をしたことを謝罪する。オレも用があってあの場にいたのでな」

 

 セミ様は真っ赤になって口をパクパクさせている。

 カルナさんはド天然だが、ありとあらゆる嘘を見抜くスキルを持っている。

 嘘が通じないことをセミ様は知っているので言い訳しようがないのだ。

 

「それで疑問だが……神代を生きた魔術師であるお前がわざわざ赤子のような言葉を使っていたのだ。

それには何か意味があるのだろう?教えてくれ。今後の戦闘において重要な問題だ」

 

 セミ様は真っ赤になって口をパクパクさせている。

 

「なぜ口ごもる?オレの問いは答えに窮するような深遠な問いなのか?」

 

 注釈しておくが、カルナさんに悪気は全く無い。

 ただド天然なだけだ。

 

 セミ様は相変わらず真っ赤になって口をパクパクさせている。

 

「……カルナさん」

 

 可哀そうになったのか、マシュがカルナさんに耳打ちした。

 

「何?ただの趣味だと」

 

 カルナさんは驚愕して、マシュのせっかくの耳打ち(配慮)を台無しにした。

 

「それならばそうと言えば良いだろう。どのような趣味であれ、オレはそういうものとしてただ受け入れるだけだ。

そのような単純な答えになぜ窮するのだ?」

 

 セミ様は何も答えなかった。

 そして、ド天然カルナさんはまたしても爆弾を投下した。

 

「そうか。では、もう一つ疑問がある。

天草四郎にチョコを渡したとき『拾った』などと虚言を弄したのは何故だ?」

 

 セミ様の口から意味を成さない音が漏れた。

 

「ば、ばばばばばばばば……」

 

 俺とぐだ子はニヤリとして見合った。

 

「「カルナさん……それ、詳しく聞かせて」」

「命令とあらば」

 

 以下、カルナさんの証言に基づく構成。

 

 〇

 

「まったく我を待たせるとは何事だ。早々に現れぬか(モジモジ)」

「おや、セミラミス。奇遇ですね」

「……汝か。奇遇だな(キョロキョロ)

「誰か待っているのですか?」

「だ、誰も待ってなどおらぬ!ましてや汝のことなど待っておらぬのだからね!(モジモジ)」

「そうですか、ではごきげんよう。セミラミス」

「ま、待て」

「これは?」

「そこで拾ったのだ。通りがかったのだから汝が責任をもって処理するがよい(モジモジ)」

「そうですか。それは責任重大ですね。では、私が処理させてもらいましょう(ニコニコ)」

「フ、フン!では、さっさと行くがいい。我は後処理で忙しいのだ(モジモジ)」

 

 〇

 

「まず偶然とは言え覗き見のような真似をしたことを謝罪する。オレも後処理であの場にいたのでな。

――それで、疑問だがなぜおまえは『拾った』などという虚言を弄したのだ?お前は一刻以上前からあの場にいたし、チョコレートも事前に準備していたではないか。天草四郎があの場を通るのも計算の内だろう。

あのような明らかな虚言を弄したのはどういうことだ?何か魔術的な意味があるのか?」

 

 繰り返すがカルナさんはマジだ。

 ただ天然なだけで悪気は一切無い。

 

「は、はわわわわわわわわわわ……」

 

 セミ様は真っ赤になって口から意味不明な音節を垂れ流している。

 

「……カルナさん」

 

 さすがに可哀そうになったのか、マシュがカルナさんに耳打ちした。

 

「何?素直で無い――俗に言う『ツンデレ』だと?」

 

 カルナさんは驚愕して、マシュのせっかくの耳打ち(配慮)を台無しにした。

 

「それならばそうと言えば良いだろう。どのような趣味であれ、オレはそういうものとしてただ受け入れるだけだ。

そのような単純な答えになぜ窮するのだ?」

 

 セミ様は相変わらず意味不明な音を口から発している。

 

「は、はわわわわわわわわわ……」

 

 俺とぐだ子はニヤリと笑って見合った。

 俺たちは――新しいおもちゃが手に入ったことに気付いた。

 

 そしてセミ様に静かに近づいて耳打ちした。

 

「……もう、セミ様ってば、オ・ト・メ」

「……やだーセミちゃんかわいいー」

 

 〇

 

「「ジャンヌーーーーー!たぁぁすけてぇぇぇぇ!!!!」」

 

 俺たちはセミ様が(照れ隠しに)召喚した魔物から全速力で逃走し、ジャンヌ・ダルクに助けを求めた。

 ジャンヌはとっさに俺たちの前に立った。

 

「待ちなさい!セミラミス!何があったか知りませんが、彼らは私たちのマスターですよ!」

 

 ジャンヌは旗で魔物を打ち払うと、筋力Bでセミ様を羽交い絞めにした。

 セミ様は真っ赤になりながら必死でもがいて叫んだ。

 

「離せ!離さぬか忌々しいルーラーめ!殺す!殺す!!こやつらを殺す!!!

こやつらを殺して我も死ぬ!!!」

 

 セミ様は何とかジャンヌが宥めたが、そのあとしばらくセミ様は口をきいてくれなかった。

 乙女心って繊細だな、と俺は思った。




最後までお読みいただきありがとうございます。
では、また


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星1コモンの絆再び

第二部開幕しましたね。
気が付けばこっちの更新、一か月以上放棄してました。
二部でネタもできたので、とりあえずまず一本。

※なので今回の話には2部1章のネタバレが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


※今回の話には2部1章のネタバレが含まれています。

それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。

 

 突然の襲撃によってカルデアは崩壊し、全く裏表のない人物な新所長を迎えて虚数潜航による異聞帯切除の新たな旅が始まった。

 

 歴史上のifの出来事があったまま進んでしまった正史とは別のロシアで新たな任務が始まる。

 

 〇

 

「ヒヒ…クッテヤル。クッテヤル」

 

 それは衝撃的な光景だった。

 

 怪物ミノタウロスを名乗っていたからわかってはいたことだったがそれでも衝撃だった。

 

「先輩!ショックはわかりますがしっかりしてください!」

 

 後衛に周ったマシュが通信で語りかけてくる。

 それは遠く、物理的な距離以上に遠くに感じた。

 

 あの純真無垢でバーサーかわいいを地でいくみんなのマスコットが……

 その変わりように俺もぐだ子もただひとこと絞り出すのが精いっぱいだった。

 

「あわわわわわ……」

「アステリオスが悪い子になっちゃった…」

 

 怪物ミノタウロスに俺たちの言葉は届かない。

 

「イマ…ハライッパイ。アトニシヨウ」

 

 そう言うと俺たちを迷宮に残したまま悪い子のアステリオスは去っていった。

 

 その後パツシイとビリー君、くっころファッションの武蔵ちゃんの助けで

迷宮を無事に脱出した俺たちだったがいずれあの子との再戦が避けれない

ことはわかっていた。

 

「迷宮に取り込まれた状態であのミノタウロスと戦えば必死だ。どうするマスター?」

 

 どうにか出口に辿り着くとビリー君が問いかけた。

 ビリー君の言葉に俺とぐだ子はお互いを見合った。

 言葉はいらない。

 「彼ら」で戦う。

 俺たちに迷いは無かった。

 

 

 〇

 

 

 そして皇帝を目前に再び悪い子になったアステリオスと相見えた。

 

「ヒヒ…コワイカ。コワイヨナ。クワレルモンナア!」

 

 許せない……

 バーサーかわいいアステリオスをこんな悪い子にするなんて!

 

「アステリオス!そんな言葉つかっちゃいけません!」

「今、目を覚まさせてあげるからね!みんなお願い!」

 

 俺たちの号令で最初に飛び出したのは和装に身を包み太刀を持った剣士だった。

 

「承知」

 

 伝説のサムライ、オルレアン救国のドラゴンスレイヤー小次郎だ。

 

「アステリオス。思い出すのだ我ら星1コモン同盟結束の強さを!」

 

 小次郎は俊敏な動きでアステリオスを翻弄する。

 

「そなたの曇った眼、覚まさせてくれよう!『秘剣・燕返し』!」

 

 小次郎の太刀がミノタウロスに突き刺さる。

 それは頑強な肉体を貫くには足りなかった。

 だが、確実に「何か」が突き刺さっていた。

 

「ウ…ウ…。コジロウサン…」

 

 続いて反逆のマッスルがアステリオスに全力のぶちかましをお見舞いする。

 

「アステリオス。今の君は圧制者だ!圧制には愛を、圧制には反逆を!」

 

 いつも暑苦しいスパさんだが今日はいつもにも増して暑苦しい。

 

「アステリオス!おぉ!!アステリオス!!!!わが友よ!!!!私の顔を忘れたのか!!!!!私だ!!!!!!スパルタクスだ!!!!!!!君の友、スパルタクスだ!!!!!!!!」

 

 スパさんの頑強な肉体がミノタウロスの頑強な肉体に突き刺さる。

 しかし、まだ足りない。

 それでもやはりスパさんのぶちかましはミノタウロスの「何か」に突き刺さっていた。

 

「ウ……ウ……。スパサン……」

 

 さらにマタハリの魅了とアマデウスの音楽魔術による妨害がアステリオスの足を止める。

 

「アステリオス。クッキー焼いてきたの。あとで一緒に食べましょ?」

「アステリオス。さあ聞かせてあげよう。僕の新曲だよ。タイトルは『俺の尻をなめろ(Leck mich im Arsch) 』だ!」

 

 二人の妨害がミノタウロスの足を止める。

 

「ウ……ウ……。ママ……ヘンタイカメン……」

 

 巨人サイズになったバニヤンが追い打ちをかける。

 

「アステリオス。パンケーキだよ。一緒に食べよう?」

「ウ……ウ……。バニヤン……」

 

 そして、最後に……

 いつもこのパーティーを献身的に支えてきた英雄。

 わが身と引き換えに争いを終わらせた無私無欲の英雄が進み出た。

 

「アステリオス。俺たちは仲間だ。だからよ……お前が悪い子になったなら叱ってやらないとな」

 

 ペルシャの大英雄が矢を番える。

 

「お前にゃ1発きりのとっておきを見せてやる。だからそんな奴らとは手を切れ。

……俺がステラったの見てまだそんな調子だったら恨むぜ」

「ウ…ウ…。ステラサン…」

 

 大英雄の大地を割り国境を築いた究極の一矢がさく裂する。

 

「おしおきだ。きついのいくから、歯を食いしばれ。『流星一条(ステラ)』!」

 

 アーラシュの霊基そのものを使った2重の壊れた幻想が、アステリオスの強靭な肉体に致命的な打撃を与えた。

 

「こじろうさん、すぱさん、まま、へんたいかめん、ばにやん、すてらさん……ぐだお、ぐだこ。

みんな……ごめん……なさい」

 

 その体が光の粒子に包まれて薄れていく。

 

「いいんだよ」

「また会おうね。アステリオス」

 

 小さく頷くその顔にはかすかに微笑みが浮かんでいた。

 

 〇

 

 後日。

 もともとの縁のおかげで無事アステリオスが再召喚された。

 

 そこに早速星1コモンが駆け付けた。

 

 最初に口を開いたのはスパさんだった。

 

「アステリオス。私を殴れ。力一杯殴るのだ」

「……すぱさん?……どうして?」

「君の目を覚まさせるためとはいえ、私は君を殴った。君に殴ってもらわなければ私は君の友でいる資格がない!」

「すぱさん……いく……ぞ!」

 

 こうしてスパさんとアステリオスは健全に殴り合いを始めた。

 

「うふふ……男の子ね」

 

 マタハリがそれを笑って見ていた。

 小次郎とアマデウスは距離を取って見ていた。

 

「私も混ざる!」

 

 巨大化したバニヤンが健全な殴り合いに参加する。

 今日も種火でステラったアーラシュもきっとどこかで見ているのだろう。

 

 

 




というわけで二部ネタでした。
明日二部の題一章ネタでもう一本行きます。


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えげつない勝利

またしても第二部ネタです。
カドック君×アナスタシアさま編です。



※ゲームの仕様上ありえない描写がありますが、演出としてご容赦ください。

 

「そう、ここまで辿り着いたのね。ならば私とヴィイも全力よ。さあマスター回路を回しなさい」

 

 遂に皇帝を打倒した俺たちの前に立ちはだかったのはこの異聞帯のクリプター、カドックとアナスタシアのコンビだった。

 

「僕はお前たちを倒して証明して見せる。僕にもやれるってことを」

 

 いつもの猫背で寝不足そうな顔に精いっぱいの力を込めてカドック君は言った。

 

 正直アナスタシアとカドック君のコンビはエモいのであまり進んで戦いたくはないがこれもゲームの進行的に仕方ないことか。

 

「おひゃっー!シルバーブロンドの色白美少女ktkr!これで勝つる!」

 

 そんなシリアスな雰囲気を台無しにする人物が現れた。

 ライダーのサーヴァント、黒髭ことエドワード・ティーチだ。

 いや現れたっていうか相性いいから連れてきたのでいるのは当然なんだけど

 

 連れてきたのはいいけど後悔してきた……

 キモい。マジでキモい。

 キモいとしか言いようのないぐらい気持ち悪い。

 髭面のフケツ全開な顔面で鼻息をhshsさせている。

 

「ハァハァ……シルバーブロンド美少女の匂い成分が含有された空気……。

閃いた!この空気を缶詰にしてアキバの自販機で売る!

帰ったらダビデ氏と早速商談でござる!」

 

 新しい霊衣を纏ったマシュが真っ青になって俺の後ろに隠れた。

 その表情は「先輩、黒髭氏がいつもにも増して気持ち悪いです」と語っている。

 ぐだ子は部屋の掃除中に現れたゴキブリでも見るかのような目で黒髭を見ている。 

 

「スーハースーハー……拙者その匂いを鼻腔いっぱいに堪能中!パワーアップ120パーセント充填!

拙者いつでもルパンダイブする準備はできているでおじゃる。ねぇねぇぐだ男氏、拙者もうパンツ脱いでいいよね!?」

 

 カドック君とアナスタシアが仲良く体をブルっと震わせた。

 気持ちは分かる。

 ……黒髭氏って気持ち悪いよね。

 

「マスター。カドック……。私なんだか寒気がいたしますの。おかしいわね、サーヴァントは風邪をひくことは無いはずなのに。

その……雌雄を決するのはまたの機会にというわけにはいかないのかしら?」

 

 その言葉は黒髭氏のハートを燃え尽きるほどヒートさせた。

 

「デュフフフフフフハハハハ……ジュルリ……。そんな恥じらいの姿も拙者の心にクリティカルヒット!

待っててね!アナスタシアたーん!今いくでござ……」

「令呪をもって命じる。自害しろ黒髭」

「あふゥン」

 

 ぐだ子の無慈悲な令呪が黒髭を襲う。

 しかしゴキブリ並みの生命力を発揮し踏みとどまるオタク髭。

 

「味方から強烈な一撃!くろひげにつうこんのいちげき!拙者ガッツで復活。でもHP残り1!マスター回復してほしいでおじゃる。

具体的にはメディアリリィたそに『痛いの痛いの飛んでけ』してもらいたいでござる。あ、ぐだ子氏かマシュ氏がナデナデしてくれても良くってよ……」

「重ねて令呪をもって命じる。自害しろ黒髭」

「ンギモッヂイイ!」

 

 ぐだ子が二画目の令呪を切った。

 

「シリアスな場面台無しにしやがって。お前は帰ったらスパルタ式トレーニング72時間だ。汗と一緒に煩悩洗い流してこい」

 

 ぐだ子が何の感情も籠っていない声で言い放った。

 

「う~~うううあんまりだ……HEEEEYYYYあァァァんまりだァァアァ!!」

 

 怨嗟の声とともに黒髭は光の粒子となった。

 

「お前たち正気か?こんな命令に令呪2画も使うなんて……」

 

 黒髭の返り血を浴びたぐだ子がゆらりと言った。

 

「うん。待たせてごめんね。さあ殺ろっか」

 

 カドックくんの困惑をよそにゲオル先生は写真を撮っている。 

 

「これはひどい。一枚撮っておきましょう」

 

 さてそろそろシリアスに戻るか。

 

「ゲオル先生。お願いします」

「これは失礼しました。では参りましょう。速やかに殲滅します」

 

 カドック君はこちらのメンバーを見てほくそ笑む。

 

「聖ゲオルギウスに竜騎士ジークフリート、それに予言者マーリンか。

藤丸、お前はやっぱり素人だよ。そいつらは強力なサーヴァントかもしれないけど戦いには相性ってものがあることを教えてやる。

令呪をもって命じる。キャスター敵を凍えさせろ!」

 

 ゲオル先生が相手の動きに素早く反応する。

 

「これでどうかな」

 

 アナスタシアのスタン追加効果を高ランクの対魔力で弾くとカレイドスコープからの冤罪剣を発動させる。

 

「これこそがアスカロンの真実! 汝は竜、罪ありき! 『 力屠る祝福の剣 (アスカロン)』!

さあジークフリート!竜認定しました!お早く。私があなたを介護できる間に決めてください!」

「お任せを。夢のように片付けよう」

 

 ゲオル先生とマーリンのバックアップを受けたジークフリートがピンポイント特攻の宝具を開放する。

 

「う……すまない。邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク) 』!」

 

 強化された魔剣の一撃がアナスタシアを襲う。

「きゃあーっ!」

 

 2重の加護を受けたすまなくない一太刀によって大打撃を受けた様子を見たカドック君はすかさず2画目の令呪を切る。

 

「令呪をもって命じる。キャスター、宝具を開放しろ!」

「ヴィイ、全てを見なさい。全てを射抜きなさい。我が霧氷に、その大いなる力を手向けなさい。『疾走・精霊眼球(ヴィイ)』!」

「お任せを。夢のように片付けよう」

 

 いつもの幻術でマーリンが全体宝具をそらし王の話を始める。

 

「それでアルトリアは言ったんだ。『殿方の悦ばせ方は知っています 』ってね」

「マーリン!その話だめ!このゲーム全年齢向けだから」

 

 王の話と被弾によるマゾチャージで2発目のバルムンクが発動しさらにアナスタシアを追い詰めていく。

 ここが勝負どころだ。

 

 集中狙いで落ちたゲオル先生に代わり前衛にはシェイクスピアが出てきていた。

 出てくるなり、シェイクスピアは怪訝な表情をした。

 

「んーマスター、吾輩にターゲット集中がついているのは気のせいですかな?」

「やだなぁ、俺たちに言わせるつもり?そんなのシェイクスピアが捨て駒だからに決まってるじゃないか」

「ほら、スキル使ってさっさと落ちろ」

 

 俺たちの無慈悲な言葉にシェイクスピアは叫んだ。

 

「なんという外道戦法!これにはイアーゴもリチャード三世もドン引き!」

 

 スキルを使ってジークフリートにバフがけし、看板娘のターゲット集中でシェイクスピアが落ちる。 

 

 俺は目でぐだ子に合図を送った。

 

「令呪をもって命じる。ジークフリート、宝具を開放しろ!」

 

 ぐだ子の手から3画目の令呪が消失する。

 

「すまない。効果が3ターンしか持続しなくてすまない……。邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク) 』!」

「令呪をもって命じる。キャスター、皇帝になれ!」

 

 カドック君の最後の令呪によって尚も踏みとどまるアナスタシア。

 まずい、宝具が飛んでくる。

 幻術も間に合わず飛んできた2発目の宝具にジークフリートとマーリンは倒れた。

 

 勝利を確信したカドック君が口を開く。

 

「僕の勝利だ。令呪を使い果たしたお前に今のキャスターを打倒する手段はもうないだろう。

 後衛に誰が残っているか知らないけど、前衛以上の火力はもう……え!?」

 

 そこまで言って目の前の光景に驚愕したカドック君の言葉が途切れる。

 

「戦闘か。なるべくは避けたい行為だが、仕方あるまい」

「一気呵成に滅ぼしてくれよう。やるぞ、マスター!」

 

 そこにいたのは自前孔明とフレンド孔明の殺意200%コンビだった。

 

「ちょ、ちょっと待て!お前のところなんで全く同じサーヴァントが2基いるんだ?」

「え?大体フレンドから借りるのって孔明かマーリンじゃないの?」

「……何言ってるんだお前たち?」

 

 呆然とするカドック君とアナスタシア。

 すまない。卑怯も武の内よ……

 

「じゃあ殺ろっか。先生お願いします」

「くだらん」

「ふむ、ではこうしよう」

 

 ダブル孔明がスキルを全開放しもう一人の後衛、限突黒聖杯ライダー金時に力を送り込む。

 

「そんじゃカッ飛ばそうか! ベアハウリング! 『 夜狼死九 (ゴールデンドライブ)』! ……『 黄金疾走 (グッナイト)』!」

 

 こうしてベアー号のひき逃げアタックにより勝敗は決した。




大変失礼しました。
またお会いしましょう。


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トロイア戦争再び

アキレウス、ようやく実装されましたね。
というわけで温めてていたネタです。
どうぞ


※微妙に二部のネタバレが含まれています。イイゾイイゾでない方はブラウザバックしてください。

 

「いいサーヴァントを引き当てたぜ、アンタ! ってな訳でライダーのサーヴァント、アキレウスだ」

 

 というわけで〇万円でアキレウスが来てくれた。

 ギリシャ神話の英雄とかいわれてもピンとこない日本でも名前くらいならみんな知ってるヘラクレスと肩を並べる大英雄だ。

 

 そんなアキレウスの姿を遠巻きに見ている人物の姿がいた。

 無精ひげでいつも眠たそうな顔のランサー、ヘクトールおじさんだ。

 

 アキレウスとヘクトールさんの生前の遺恨は知っている。

 でもペンテシレイアさんと違って味方なら性格的に問題ないかなと思ったので特に召喚チャレンジの間も要注意対象にはしていなかった。

 

 ヘクトールさんは遠巻きに宿敵の姿を確認すると何も言わずにそっと去っていった。

 

 ……やっぱり大丈夫だったか。よかった大人で。

 

 生涯最大の宿敵の姿にアキレウスも当然気が付いていた。

 

「ヘクトールか…。いや、味方ならいいんだ。敵に回すと厄介だからな」

 

 オケアノスの戦いで敵に回ったおじさんの厄介さは理解していたのでその場は適当に相槌をうつに留めたが、それからしばらくして俺は敵に回したヘクトールさんの

本当の厄介さを思い知ることになる。

 

  〇

 

 アキレウスを召喚して少し経ったある日。

 ぐだ子とマシュがお出かけ中だったのでイベント周回中後回しにしていた

 

 シャドウボーダー内の案内に彼と回っていた。

 最重要施設の司令部や召喚室を回った後、食堂に続く廊下を歩いていると向こうから緑とピンクの二人が現れた。

 

 ギリシャ神話の英雄・麗しのアタランテとシャルルマーニュ12勇士の一人アストルフォだ。

 アキレウスはその姿を認めると

 

「お!姐さん!」

 

 と言いながら小走りで近寄って行った。

 そういえばアキレウスとこの2人、別の聖杯戦争で縁があったと言ってたな。

 特に同郷のアタランテさんと仲が良かったとか。

 しかし二人のやりとり…というかアタランテさんの表情を見て俺が読み取った感情は「嫌悪感」だった。

 

 アキレウスもそれに気が付いたのか彼女に問いかけた。

 

「おいおい、なんだよ姐さん!そんな顔してなにかあったのか?」

 

 しばしの沈黙のあと、彼女から返ってきた答えは想像の斜め上のものだった。

 

「ライダー…汝はその…男色の趣味があるのか?」

「…は?」

「いや…その汝の趣味をとやかくいうつもりはないのだが

私に粉をかけるようなそぶりを見せていたのはカモフラージュだったのだな」

「姐さん。ちょっと姐さん何言ってんの?姐さん?」

「その…男色の趣味はいいとしても流石に汝の性癖は特殊すぎる。

…すまないのだがしばらく私に話しかけないでもらえるだろうか…」

 

 そういうと全く事態を呑み込めない俺たちを置いてアタランテさんは足早に去っていった。

 

「姐さん!姐さーん!!」

 

 アキレウスの悲痛な叫びが木霊する。

 そんなアキレウスの背にアストルフォが冷たく言い放った。

 

「ちょっと、君ボクのことイヤらしい目で見てるだろ」

「見てねえっての!黒のライダー、そもそもお前男だろうが!!」

「ええ?だってキミはガチホモなんだろ?ならボクみたいな可愛いコを放っておくわけないじゃないか。

ひょっとしてあの時僕に盾を貸してくれたのもそれが理由?」

「違うっての!何一人で納得してんだよお前は!」

「えーでもキミはあんまりボクのタイプじゃないんだよなぁ。しかもすごいヘンタイみたいだし。

あ!でもどうしてもっていうなら手くらいならつないであげてもいいよ!」

「いらねえよ!しかもなんで俺が振られたみたいになってんだ!そもそも俺にそんな趣味は無え!少しは人の話聞けよお前!!」

「ムリムリ。だってボク理性蒸発してるし。あ、もういかなきゃ。じゃーねバイバーイ」

 

 そう言うと事態を一片たりとも理解できていない俺たち二人を置いてアストルフォは去っていった。

 

「クソ。一体なにがどうなっていやがる!」

 

 アキレウスのホモ疑惑は置いておいて、とりあえず次の場所、食堂を目指して俺たちは歩き始めた。

 何が起きているのか俺にもまだ見当がつかないが

 

「こうして案内を続けつつ歩き回って情報を集めよう」

 

 という俺の提案に彼は頷いてくれた。

 

  〇

 

 食堂のドアが開くと、そこには両手で余る程度のサーヴァントがいた。

 そしてアキレウスの姿を認めるとざわつきだし、彼を避けるように食堂から出ていった。

 

 基本的に素直そのものなモードレッドは一緒にいたフランちゃんの目を塞ぐと

 

「げ!ガチホモ変態野郎が来た!見るな、フラン!目が爛れるぞ!」

 

 と思いっきり言い放った。

 

「ウァ……ウウ……(ガチホモ……ドヘンタイ……普通に引く)」

「おい!何言ってるわかんねぇが、今、無茶苦茶失礼なこと言っただろ!」

 

 二人はすさまじい勢いで部屋を出て行った。

 

 3人の人物を残して全員が居なくなった。

 残ったのは別の聖杯戦争で縁があったというスパさんことスパルタクス、インド神話の大英雄・カルナさん、

 アキレウスの師として知られる賢人・ケイローン先生だった。

 

 その姿を認めるとかつての師に彼は問いかけた。

 

「先生、いったいなにが起きてるんです?俺がなにをやっちまったんでしょうか?」

 

 その問いに賢人は静かに答えた。

 

「アキレウス…。まさかあなたがあそこまで特殊な趣味…もとい深い闇を抱えていたとは。

師としてそれに気が付くことができなかった自身の不見識を恥じるばかりです…」

「先生?なに言ってんですか先生?」

「あなたがヘラクレスに憧れているのは知っていましたが、まさかそういう意味で憧れていたとは…。

ここに来てから妙に彼と戦いたがるのはそういうことだったのですね…」

「先生?だからなに言ってんですか先生?」

「ライダー、オレからも問いたい」

 

 アキレウスの困惑をよそにケイローン先生が口を閉ざした代わりにカルナさんが口を開いた。

 

「おまえの性癖はあまりにも特殊すぎる。異様にしか感じない。

なぜおまえがそんな行いをするのか、なぜ男の肛門にそこまで執着するのかは全くわからんが一つだけ問いたい。…そんなに気持ち良かったのか?」

「だ・か・ら!俺はそもそもホモじゃねえ!ランサーお前なら俺が嘘ついてねえことぐらいわかるだろ!」

「確かにお前は虚言を吐いてはいない。…しかしこの場合周囲の反応を見るにおまえの自己認識が誤っているのではないか?」

「…この野郎正論で返しやがって!返す言葉が無いじゃねえか!!」

 

 じっと黙っていたスパさんが口を開いた。

 

「変態は圧政!……いや、むしろ反逆か?

……友よ」

「止めろ!勝手に共感するな!」

 

 その時食堂の扉が開き混沌を極めるこの状況にさらに二人の人物が追加された。

 入口に立つその人物、セミさまことセミラミスと、天草四郎の二人だ。

 

 そういえばセミ様は以前天草くんのこと「知らない」とか言ってけど一緒にいること多いな。

 ほんと乙女なんだから。

 

 そんなセミ様はアキレウスの姿を認めると顔面蒼白になり「ひっ!」と小さな叫び声をあげた。

 冷血無慈悲を自称するくせに素の反応がいちいち乙女だ。

 顔面蒼白なセミさまにアキレウスが聞いた。

 

「アサシン、お前もか!?何がどうなってやがる!」

「ライダー…お主どこまで鬼畜なのだ?流石の我でもあんな毒の使い方思いつきもしなかったぞ。

…思い出したら寒気がしてきたわ。ゆくぞシロウ、あの汚物を視界に入れたくない」

 

 そう言うとセミ様は天草君を連れて去っていった。

 天草君は去るまでずっと曖昧な表情でやりとりを見ていた。

 

 ……これまでのことで俺にはなんとなくいろんなことがわかってきた。

 

 まず行くのはそれを「作った」人のところだ。

 俺は困惑するアキレウスの肩を叩いて言った。

 

「行こう、アキレウス。事態がなんとなくわかった。まずは作った人のところだ」

 

  〇

 

「いやはやその様子ですと吾輩たちの創作物大いに楽しんでいただけたようですな!」

 

 やっぱりこいつか。俺たちが訪れたのは作家部屋。

 そこにいた作家コンビの片割れ世界最高の劇作家シェイクスピアは全く悪びれなく答えた。

 

「おい。アキレウ…変態ウス、お前どこまでぶっとんだ変態だ?流石の俺でもお前の変態性には脱帽したぞ」

「変なあだ名つけてんじゃねえ!」

 

 もう一人のこの部屋の主、童話作家アンデルセンはいつもの毒舌を彼に向けた。

 そして俺とアキレウスはこの部屋で発見してしまった。

 『大英雄アキレウスの生涯』と題された薄くない薄い本を。

 ちょっと内容は…ごめんなさい下品すぎて紹介できないです。

 これでネタはあがった。あとは確認だけだ。

 

「ねえクズたち。ちょっと聞いてもいい?」

「うーん実に辛辣な呼び名!そして問いはなんでしょうな我がマスターよ?」

「これは二人の完全創作?」

「いえいえ!事実は小説より奇なりと申しましょう!

これはある人物から聞いたアキレウス殿の話を吾輩2人で脚色したものです!

いやあ実に素晴らしいネタをお持ちでした!薄い本も厚くなるというものです!」

 

「ちなみにその人物の名は?」

 

 シェイクスピアの口から予想通りの名が発せられると同時に

 ギリシャ神話最速の英雄はその人物のもとに風となって走り出した。

 数秒後、遠くから件の人物たちのやりとりが風に乗って聞こえてくる。

 

「ヘクトぉーール!!てめえやりやがったなぁ!!」

「やっべ!変態ウスだ!にっげろー」

「変なあだ名つけてんじゃねえ!…痛って!石投げやがったなお前!」

「そらァ! おかわり要るかい!」

「…痛って!いくつ石持ってやがるてめえ!待ちやがれ!!」

「マスター助けてー。次のページで犯されるー」

「止めろ!誤解を上塗りするんじゃねぇ!」

「……コロス……コロス、コロス……ッ!!ウアアアァァッ、ァアアアアッ!!……ッ、アキレウスゥゥウウッ!!」

「ペンテシレイア!ヘクトぉーール!!てめえ汚ねえぞ!!」

 

 英雄って大変なんだな。

 俺は心底そう思いつつ、カルデア内で起ころうとしているトロイア戦争に収拾をつけるため必要な人材を呼び出すため行動し始めた。

 

  〇

 

「そうですか。……あなたにはそのような性癖があったのですね」

 

 俺は裁定者のクラスを担うジャンヌ・ダルクを呼び出していた。

 長女気質の彼女は最近召喚されたジーク君の面倒を引き受けており、今日も彼と一緒だった。

 

「いや、だから違うからな!?」

 

 アキレウスは否定したが……ジャンヌは頑固だった。

 

「いいえ、誤魔化さずとも良いのです。主はすべてを慈しみ尊びます。

たとえあなたが変質者と謗られようとも、いつか誰かがあなたを理解してくれるでしょう」

「お前も人の話聞かない系かよ!だから、違うって言ってんだろうが!!」

 

 ジャンヌは微笑むとジーク君の手を引いておずおずと立ち上がった。

 

「ジーク君。行きましょう。あまり彼に近づいては行けませんよ」

「……なんのことかよくわからないが、あなたがそう言うなら善処しよう」

「だーかーらー!!!違うって言ってんだろうが!!!」

 

 アキレウスの悲痛な叫びがシャドウボーダーに木霊していた。

 がんばれアキレウス。

 人のうわさも75日。

 あと70日ぐらいの辛抱だ。

 




上品でごめんなさいね。


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これも戦略です

どうもお久しぶりです。
気付けば前の投稿から二か月とか。
ブクマしてくれてる皆様、いつもありがとうございます。
短いの一本+もっと短いオマケ一本です。
次回も短いやつになると思いますが、次はもっと短い感覚で投稿します。


 俺とぐだ子はケイローン先生に呼び出された。

 会議スペースに赴くとケイローン先生はヘラクレスと何か談笑をしていた。

 

「■■■■■ーーー」

「おや?質問ですか?ヘラクレス」

「■■■■■■■■■■ーーー!」

「いえ、そのような都合のいい洗剤は存在しないと思います」

「■■■■■■■■■■■■■■■ーーー!!」

「そうですね。それが藤田ニコルちゃんの人気の秘訣かと」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーー!!!」

「はは。おだてても何もでませんよ」

 

 一体何の話をしているのだろう?

 ヘラクレスは古代ギリシャ語(狂戦士訛り)らしく、何を言ってるのかわからなかった。

 

 いつものように日本語(狂戦士訛り)ならわかるんだけど。

 

「ぐだ男、ぐだ子。お呼び立てして申し訳ありません」

 

 俺たちが来たことを確認し、ケイローン先生は恭しく頭を下げた。

 アキレウスが言うにはケイローン先生は「超体育会系」らしいが、とてもそうは思えない。

 大英雄なのに尊大な態度を見せたことは一度も無く、誰に対しても丁寧だ。

 

「イアソンが以前、良いことを言っていたそうですね。

『1を10にするより、10を100にするべきだ』と」

 

 そういえば前に話したな。

 ソロモンの神殿での戦いのことだ。

 

「そこで私から一計です。ヘラクレスは強力な戦力ですが、彼を最大限生かす――10を100にするにはどのような方法を取るべきでしょうか?」

 

  〇

 

 という訳で、さっそくシュミレーター起動となった。

 条件は二つある。

 

 一つは最後までヘラクレスを活かしきること。

 もう一つは諸葛孔明、マーリンは使用禁止。

 

 その条件で高いHPのデーモンを相手にすることだ。

 

 こうなると取れる戦略は一つだ。

 俺とぐだ子は打ち合わせし、二人ともほぼ同じ結論に到達した。

 

「アマデウス、シェイクスピア、アンデルセン。順々に盾になれ」

 

 看板娘を付けて前に出された文化サーヴァント三人が抗議の声を上げる。

 

「僕たちを選ぶあたり、悪意しか感じないのはどうしてかな!?」

「おお!なんという開き直った外道戦法!」

「止めろ!俺を巻き込むんじゃない!」

 

 作戦はシンプルだ。

 彼らのスキルを使い捨ててヘラクレスにバフをかけ、スキルを使ったらさっさと沈んでもらうことだ。

 

「やだなー。悪意何か無いよー。ぐだ男嘘つかない(棒読み)」

「やだなー。私はみんなのこと大好きだよー。ぐだ子嘘つかない(棒読み)」

 

 もちろん抗議など受け付けない。

 

「大体、盾にするならゲオルギウスかレオニダスを使えばいいだろ!

俺たちみたいなクソ弱いサーヴァントを盾にする必要無いだろ!」

 

 アンデルセンがごもっともなことを言ったが勿論、考えた上での策だ。

 

「えー、だってーゲオル先生もレオニダスさんも人格者じゃん?それにあの二人よりーキミタチの方がーバフ要員としてー有能っていうかー」

「そうそう。それにキミタチはクズだから盾にしても良心が痛まないし?カンペキ!!」

 

 俺とぐだ子はぐっと親指を立てた。

 

「ワオ!君たちの日頃の評価がよくわかる!なんてことだ!」

「おい!それが悪意以外の何なんだ!止めろ!俺は降りる!降ろせ!」

「何と!全く改悛の情すら示さない外道っぷり!ケイローン殿、教師として見過ごすべきなのでしょうかな!?」

 

 シェイクスピアが抗議の声を上げた。

 

「これは……私情を捨てて策に徹するとは。大変興味深い。あなた達には将としての素質が見えます」

 

 ケイローン先生はゴーサインを出した。

 

 アマデウスがケツから星を出し、心眼と勇猛で自己強化したヘラクレスが鬼クリティカルを連打してデーモンを殴る。

 シェイクスピアの国王一座とエンチャントで強化したヘラクレスがバスターチェインを連打してデーモンを殴る。

 アンデルセンの宝具と人間観察で威力を強化し、無辜の怪物で供給したスターで鬼クリティカルを連打してデーモンを殴る。

 

 三人そろって貧弱なクソステなのでデーモンの攻撃で次々と沈んでいく。

 しかし、ヘラクレスの猛攻でデーモンももはや虫の息だった。

 これでももう一手だ。 

 

「マシュ」

「はい!頑張ります!」

 

 最後のとっておき、可愛い後輩ちゃんマシュを出した。

 

「よし、マシュ。ヘラクレスに無敵とNP付与。あと、ごめん。デーモンのチャージ溜まっちゃったから盾になって」

「はい!頑張ります!」

「ありがとう。私のかわいいナスビちゃん。君の犠牲は無駄にはしないよ」

 

 マシュはデーモンのチャージ攻撃で沈んだ。

 マシュの犠牲で無傷で生き残ったヘラクレスはデーモンに止めをさした。

 

「ああ……ヒロインなのにこの雑な扱い。悔しいのに嬉しい」

 

 マシュがビクンビクンと震えている。

 それを見てケイローン先生が言った。

 

「本人が幸せなようですし。良しとしましょうか」

 

××××××××××××××××××××××××××××××

 

オマケ

 

■セミ様は乙女

 

「マスター……我にはどうでもいいことだが……」

 

 マイルームに突然やってきたセミ様ことセミラミス様はそわそわしながら切り出した。

 

「あの、シロウに頻繁に共しているルーラーによく似た童女は何者だ」

 

 どうでもいいと言いながら、声が上ずっている。

 本当に乙女だ。

 

 俺とぐだ子はセミ様に見えないようにニヤリと見合うと告げた。

 

「ああ、ジャンタちゃん(ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ)のことですか?」

「何を隠そう、あの子はジャンヌと天草君の娘……」

「何?」

 

 セミ様は思い切り目を見開いた。

 俺とぐだ子は我慢できず、思わずニヤリと笑った。

 セミ様はさすがに悟ったらしい。

 怒りでプルプル震えていた。

 

 やばい。

 宥めないと。

 俺たちはフランクな感じでセミ様の肩をポンポン叩いた。

 

「……な訳ないじゃないですかー。ジョークっすよ、ジョーク!マスタージョーク!!」

「驚かせてごめんなさい!サーヴァントの間に子供は出来ないですってばー!ジョーク、ジョークですよ!」

 

  〇

 

「「ジャンヌー!!!たああすけてええええええええ!!!!!!」」

 

 この光景はデジャヴか?

 助けを求められたジャンヌが颯爽と現れセミ様を羽交い絞めにした。

 

「止めなさい!彼らは私たちのマスターですよ!」

「離せ!離さぬか!

許さぬぞ!!乙女の純情を弄びおって!!!!」

 

 やっぱりセミ様は乙女なのでした。




後書き代わりに色々。
他の書いてました。

不定期投稿してる映画の記事
https://theriver.jp/author/scriptum8412/
https://kaigai-drama-board.com/posts/author/21421

最近書き始めた自作。普通にシリアスです。
https://ncode.syosetu.com/n9384es/

次回投稿は今、書いてます。
明後日ぐらいには更新できると思います。
では、また。


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ジャンヌ姉妹は仲良し

タイトルそのままです。



「ぐだ男、ぐだ子。度々申し訳ありません」

 

 マイルームにやってきたルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクは本当に申し訳なさそうに切り出した。

 俺はペコリと頭を下げたジャンヌのおっぱいが揺れたのを思わず凝視した。

 ぐだ子に思い切りゲンコツを食らった。

 

「……あの?取り込み中でしょうか?」

「ううん。大丈夫だよ。ちょっと不埒物を成敗してただけだから」

 

 ジャンヌ(天然)が不思議そうに首を傾げたのでぐだ子そう答えた。

 

 相談の内容は何か既視感のする内容だった。

 本拠地が手狭なため英霊部屋を相部屋にしているのだが、ジャンヌとジャンヌ・オルタ(オルタちゃん)とジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ(ジャンタちゃん)

は相部屋にしている。

 

 同じ英霊同士なら仲良くやっていけるだろうという独断だ。

 実際、増えまくるクー・フーリンともっといっぱい増えてるアルトリアたちは上手くやっている。

 別に他意とかは無い。

 本当に無い。

 

 無い……のだが、ジャンヌ達の間では姉妹喧嘩が絶えない。

 特に……

 

  〇

 

「だーかーらー!!!それだからあなたは中二病で根暗で嫌味で性根が腐ってるって言ってるんですーー!少しは大人になったらどうなんですか!?」

「このクソガキ!ガキのあんたに言われたくないわよ!」

 

 英霊部屋に行くとオルタちゃんとジャンタちゃんがとてもレベルの高い口論を繰り広げていた。

 

「いつもこの調子で……長女としてお恥ずかしい限りです」

 

 見るも無残な光景に暫定長女のジャンヌが項垂れた。

 仲裁に入ろうと思ったが、もう少し見守ることにした。

 決して面白から静観してるとかではない。

 断じて違う。

 

「ならば私があなたより大人じゃないところを挙げてみたらどうなんですか?挙げられるんですか?はい、論破!」

 

 ジャンタちゃんがえっへんと胸を張った。

 かわいい。

 

 それを聞いたオルタちゃんがニヤリと笑った。

 

「ふぅん。私がアンタより大人なところね。言っていいのかしらね?」

 

 思わぬ高レベルな反撃を受けてジャンタちゃんがたじろいだ。

 

「な、何をですか?」

「あら?後ろめたいことでもあるのかしら?」

「あ、ありません!サンタに後ろめたいことなんかありません!」

 

 オルタちゃんがニヤリと笑った。

 

「へえ、じゃあアンタが今朝、濡れたシーツこっそり洗濯し……」

「わー!!!わー!!!!わーーーー!!!!!!」

 

 ジャンタちゃんは不自然な大声でかき消そうとしたが時遅しだった。

 俺とぐだ子は笑いをかみ殺すのに必死だった。

 ジャンヌはニコニコ笑ってやり取りを聞いていた。

 

「ちちちちち違います!あ、あれは世界地図書いてたんです!サンタはおねしょなんかしないんです!」

「へえ?世界地図。フン、じゃあ洗濯したら消えちゃうじゃない?それって意味無く無い?はい、論破」

 

 「ぐぬぬ」と唸ってジャンタちゃんは黙り込んだ。

 オルタちゃんはフンフン鼻を鳴らしながら得意げにしている。

 

「どう?論破してやったわ!勝った!初めて勝った!」

 

 ……なんてレベルの高い争いだ。

 

「……トナカイさん。成長した私がイジメますー」

 

 口論に負けてしまったジャンタちゃんは俺たちに救いを求めた。

 うーん。ジャンタちゃんはお子様だしなぁ。

 しょうがない助けるか。

 

「ジャンタちゃん。許してあげてよ。オルタちゃんはね、悪い子じゃないんだよ。ちょっと虫の居所が悪いだけなんだ」

「そうそう。書いてた小説、ジルにマジレスされ……」

「あー!!!あー!!!!あーーーー!!!!!!」

 

 オルタちゃんは不自然な大声でかき消そうとしたが時遅しだった。

 俺とぐだ子は笑いをかみ殺すのに必死だった。

 ジャンヌはニコニコ笑ってやり取りを聞いていた。

 

 以下、ジルから聞いた回想。

 

  〇

 

「ジャンヌ、異世界転生チートハーレムには鮮度と言うものがあります」

「ハ、ハァ?アンタ、何の話してるわけ!?」

「ジャンヌ。私にとってジャンヌの言葉すべては恵みです。私に正しき信仰があれば福音と呼ぶべきでしょうか」

「……そ、それで。その誰かの書いた小説がなんだっていうのよ?」

「ジャンヌ、異世界転生チートハーレムは定型化されたジャンルですが、さすがにニコポナデポに俺Tueeeは手垢が付きすぎかと」

「……」

「この不詳ジル・ド・レェ、ジャンヌの小説にコメントを付け、レビューも記載いたしました。恐悦至極……」

「やけにコメント寄こす奴がいると思ったらアンタかーーーーーー!!!!!」

 

  〇

 

「あー!あー!!聞こえない!何も聞こえません!」

「うう……成長した私、痛いです暑いです寒いです……」

「うっさいわね!痛いのはどっちよ!このおねしょ魔!」

「あー!言いましたね!いい年した中二病よりはマシですー!」

 

 いかん。宥めようとしたら逆に収集つかなくなった。

 ああ、もういいや。

 ほっとけばそのうち疲れて口論止めるだろう。

 

 次女と三女のなおも続く口論を聞きながら、ジャンヌは言った。

 

「うふふ。二人とも仲良しですね」




二本立てにするつもりだったのですが、思ったよりボリュームがあったので一本にしました。
次回はもっと短い二本にします。


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ジーク君と俺

またしても私です。
2部2章開幕しましたね。
今回は一本にするには短すぎた小ネタを三本ひとまとめにしました。
普通に下ネタなので苦手な方はブラウザバックしてください。


まず一本目です

 

 

■ジークくんと俺

 

 カルデアには多くのサーヴァントが居る。

 英霊によって性格は様々だが純真素直なツートップと言えばアステリオスと、ちょっと特殊な召喚をされたジーク君だろう。

 

 ジーク君は年頃の少年の風貌をしているが、もとはホムンクルスで鋳造されてから一年も人生経験がない。

 だから純朴でとっても素直だ。

 

 縁を結んでサーヴァントして契約したジーク君とはすぐに仲良くなった。

 

「ぐだ男、その……俺と、友達になってくれると嬉しい。こういう誘い方をするものなのかどうかは分からないが……いや、やっぱり忘れてくれ。照れくさい」

 

 ジーク君……

 

 俺は感激のあまり、グッとジーク君の手を握った。

 

「ジーク君。俺もジーク君と友達になりたいよ。いや、なろう」

 

  〇

 

「ジーク君、俺たち友達だからね。一緒に女湯を覗こう」

「?それは犯罪ではないのか?」

「うん。犯罪だよ。でもね、本当の友達は一緒に罪を犯すものなんだ」

「そうなのか?」

「うん。だから、俺、覗くからジーク君見張りね」

「了解だ」

「うん。あと、見つかっちゃったらジーク君が俺のことを強引に誘ったって言ってね?」

「了解だ」

 

 手狭な今の本拠地だが一応入浴施設がある。

 今はマシュとぐだ子が一緒に入ってるはずだ。

 ほんのついさっき、「お風呂一緒に入ろう」と言う会話を耳にしたばかりだ。

 まだ脱衣所かもしれないがそれはそれでナイスだ。

 

 さて、覗きポイントにゴーするか。

 

「ぐだ男。どこに行くつもりですか?」 

 

 振り返るとジャンヌとマシュとぐだ子が腕組みして立っていた。

 ジーク君が三人の前に正座させられていた。

 

「すまない。ぐだ男。問い詰められて白状してしまった」

 

 完全に人選ミスだった。

 素直なジーク君が問い詰められたら吐くに決まっている。

 ああ、俺のバカ……

 

「ルーラー。ぐだ男は悪くない。俺が強引に誘ったんだ」

 

 ジーク君……

 役目は忘れてなかったんだね。

 

「そうなのですか?」

 

 ジャンヌはジーク君に負けず劣らず素直な性格だ。

 言われればとりあえず信じるに決まっている。

 後の二人をどうにか騙す……説得する必要は残っているがこれで少しだけ勝機が見えてきた。

 

「ぐだ男、これで良いのだろうか?俺は約束を果たせているか?」

 

 ジーク君の瞳はキラキラという擬音語発しそうなぐらい純真そのものだった。

 どう見ても悪気ゼロだった。

 ああ。もう。俺のバカ…… 

 俺を囲む三人の、ジャンヌとマシュとぐだ子の目つきが一段、鋭くなった。

 

「ぐだ男?ジーク君に何を吹き込んだのですか?じっくり聞かせていただきましょうか」

「もう!私は先輩になら見られてもいいのに!……じゃなくて、先輩、最低です!」

「あれ?……前に言わなかったっけ?……覗いたら殺すって」

 

俺は激しい後悔と共に思った。

 次は小太郎君を見張りにしよう。

 

××××××××××××××××××××××××××××××

 

二本目

 

■英霊たちとなぞなぞ

 

 唐突だが暇を持て余した俺はアストルフォに「なぞなぞをしよう」と提案した。

 

「うん。いいよー!」

 

 アストルフォは即答した。

 いや、でもよく考えたこの子理性蒸発してるんだった。

 なぞなぞの意味わかってるのかな?

 

「Hになればなるほど硬くなるものなーんだ?」

「おちん●ん!」

「なぞなぞだよ!?」

「え?チ●コ以外に何があるわけ?」

「メイヴちゃん?どっから出てきたの?」

「チン●ンじゃろ!?チ●チン!チンチ●!知っとるか?信勝の●ンチン、すっごく小っちゃいんじゃぞ!」

「ノッブ、連呼するの止めなさい!」

「私、様々な可能性を鑑みたのですが、それはやはり摩羅ではないかと。隠微な気分で硬く屹立する摩羅……たまりません」

「キアラさん!せめて伏字使って!」

「なに?俺のモノが見たいのか?(ボロン)」

「フェルグスさんは見せたいだけでしょ!」

 

  〇

 

「Hになればなるほど硬くなるもの、ですか?

……あ、わかりました!鉛筆ですね」

「マシュ……君はそのままでいてね」

 

××××××××××××××××××××××××××××××

 

三本目

 

 

■ときめきオルタ倶楽部(ジークフリートルート)

 

「やっばーい遅刻遅刻!食パン加えてダッシュしてる私はジャンヌ・オルタ。

今日から高校一年生。始業式なのに寝坊して大ピンチ!きゃっ」

 

 ドシン

 

「痛たた……ちょっとどこ見て歩いてんのよ!」

「……すまない」

「(あ、ジークフリート!クラスで偶然隣になった気さくなアイドルだわ!ドキドキ)」

「すまない……俺のせいで転ばせてしまって済まない、お詫びにこれを受け取ってもらえないだろうか」

「何、コレ?」

「俺の心臓だ。これでその擦りむいた傷も治るだろう」

「ちょ、ちょっと!謝罪の品が過剰すぎるわよ!」

「……すまない。では、悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)はどうだ?それとも俺の死因になった背中の菩提樹の葉の方がいいだろうか?」

「なんで謝罪の品がことごとく重いのよ!!!」

「……すまない」

 

 



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これが……愛……

皆様お久しぶりです。
完全に私事なんですが、海外に行っていたため更新どころか執筆すらさぼってました。
というわけで取り合えず再開一発目です。

※以下の文章には2部2章のネタバレが含まれています。
それでもクク…オフェリア…な方はどうぞ。


 ロシアの異聞帯切除の直後。

 時速90キロでロケラン担いで走行する外道神父の襲撃にあった俺たちは息つく暇もなく2つ目の異聞帯・北欧へと赴くことになった。

 

 到着早々にホームズが戦線離脱したり、迫りくる巨人相手に北斎さんが富嶽三十六景したり孔明先生とマーリンが過労死寸前だったりしながら味方になったブリュンヒルデさんのシグルド困りますヤンデレアタックで封印を解かれた破壊の化身スルトと俺たちは対峙していた。

 

 オフェリアさんが命を懸けて託してくれた戦いだ。

 絶対に負けられない。

 

 ……でもなんかこの人様子がおかしいぞ。

 

「何故……だ……? オフェリア……オフェリア、オフェリアあああああああああ!!」

 

 行動の度に息を吐くようにオフェリアを連呼してくるその様はストーカーそのものだ。

 ちょっとカマをかけてみよう。

 

「おい!スルト!言っとくけどオフェリアさんお前のこと多分嫌ってるぞ」

 

 まずは様子見だ。

 ストーカー行為を止めさせるためには自分がストーカーであることを自覚してもらうのが重要だと聞いたことがある。(きよひーと頼光さんには失敗したけど)

 

 しかしスルトの反応は俺の予想外のものだった。

 

「クク。そんなはずがあるか人間。俺はオフェリアに嫌われるような行動をとった覚えはない。むしろ好かれているはずだ」

 

 そしてスルトは語りだした。

 

  〇

 

「クク……オフェリア。調子が悪そうだな……今日の水泳の授業は見学か?

(注・意訳:調子悪そうだけど大丈夫?薬買ってこようか?)」

 

「クク……オフェリア。今日は随分大胆な下着を履いているな……。誰に見せるつもりだ?

(注・意訳:そんな布面積小さい下着で風邪ひかない?)」

 

「クク……オフェリア。冷蔵庫のプリン賞味期限が近かったから食べておいたぞ…。

(注・意訳:だから新しいの買って入れておいたよ。)」

 

「クク……オフェリア。いつもとシャンプーの匂いが違うな……。昨日は誰とお泊りだったんだ?

(注・意訳:トリートメントもしないとキューティクルが傷むよ。)」

 

「クク……オフェリア。お前のリップクリーム残り少なかったから使っておいたぞ。

(注・意訳:クク……オフェリア。ついでに食べて始末しておいたぞ)」

 

 〇

 

 その場にいた誰もが唖然としていた。

 時間にしたらほんの一瞬だったのかもしれない

 

 しかし体感的には何時間も時間が静止したかのように感じた。

 最初に沈黙を破ったのはぐだ子だった。

 

「へ…へ…へ……」

「クク、どうした人間。この俺に恐れ慄いたか」

「変態!変態!!変たーい!!!お巡りさんこっちです!お巡りさんこいつです!

オフェリアさんの貞操が危ない!助けて!助けておまわりさーん!!」

 

 ぐだ子の発言は当然だ。

 気遣いの気持ちは分からなくなくなくも(最後の以外)ないがこの巨人、言葉選びのセンスが絶望的に悪すぎる。

 

「おい!スルト!言っとくけどお前やっぱり間違いなくオフェリアさんに嫌われてるぞ」

「クク、そんなはずがあるか」

 

 駄目だ。この人デリカシーが漂白されてる。

 男の俺で駄目なら女性の口からだ。

 俺はその場にそろった女性陣に感想を求めた。

 

「はい。じゃあまずぐだ子さん」

「どう見ても変質者です。本当にありがとうございました」

「はい。マシュ」

「その……気持ち悪い……です」

「はい。エウリュアレさん」

「その汚物を私の視界に入れないでちょうだい」

「はい。アルテミスさん」

「最低。ダーリン以下」

 

「ちょっと!俺のことさりげなくディスらないでもらえますかね!」とばっちりをくらったオリオンがさらに続けて言う。

 

「おい!お前イアソン以下だぞ」

「クク、誰だそれは。汎人類史の英雄の名など知るか」

 

 オリオンが『お前の知り合いの中で最低の人間を思い浮かべてみろ』と促すとスルトは『クク……したぞ』と素直に従った。

 なんで妙なところが律儀なんだ。

 オリオンはさらに続けて言った。

 スルトも律儀に答える。

 

「それを10倍してみろ」

「クク…したぞ」

「それがイアソン。お前はそれ以下だ!」

 

 数秒遅れてスルトの体に異変が起きた。

 ……あれ?動揺してないかあの人?

 

「何故…だ…この俺が? オフェリア…オフェリア、オフェリアあああああああああ!!」

女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ) !』

月女神の愛矢恋矢 (トライスター・アモーレ・ミオ)! 』

「ンギモヂイイイイ!!おお…… オフェリア……オフェリア、オフェリアあああああああああ!!」

 

 ピンポイント男性特攻の連続攻撃によりスルトは消滅した。

 オフェリアさんのストーカーで変質者という汚名だけを残して。

 

 先ほどまで巨人が存在していた虚空にマシュのつぶやきが浮かびそして風に乗って消えていく。

 

「オフェリアさん。敵は取りましたよ…」

「いや、マシュ。違うからね」

 

×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   

 

「お主たちが背負う数十億数百億の命のためにこの世界を漂白するのなら、私は私が背負う1万の民のためお主たちを殺すまで。負けるわけには…ゆかぬのだ!」

 

 変態王スルトを打倒した俺たちはついにこの世界の王、スカサハ=スカディと対峙することになった。

 一時的とは言え共に戦った中だ。

 正直戦うのは心苦しい、でも仕方ない。だってそういうゲームシステムだし。

 

 俺とぐだ子はキャスター対策に連れてきた黒髭氏を鼓舞するために口を開いた。

 

「うっわ…キモ…スルトは確かに変態だったけどピュアだった分黒髭氏よりは救いようがあったよね…。

(さあ行こう黒髭氏。俺たちにも負けらない事情がある。力を貸してくれ!)」

「ちょっとぐだ男氏!本音と建前逆!逆!!」

「ひどいよぐだ男!いくら黒髭氏が気持ち悪いからってその言い方はないでしょ!

…うっわ…キモ…。ごめんやっぱムリ」

「ちょっとぐだ子氏!全然フォローになってない!」

 

 黒髭氏が涙目になりながら抗議する。

 ていうか涙目の黒髭氏もキモ…うわキッつ。やっぱムリ。

 ん?そういえばこの人もなんか様子がおかしいな。

 いや、おかしいのはいつもなんだけど。

 スカディ様みたいな美女が敵なのに妙にテンション低いというか。

 ぐだ子も黒髭氏の異変に気が付いたのか率直に尋ねた。

 

「ねえ黒髭氏。なんかテンション低くない?スカディ様みたいな美女が相手なのに。

いつもだったら真っ先にルパンダイブするじゃん」

「いや、ぐだ子氏。流石の拙者も3000年間未開通の行き遅れBBAは守備範囲外っていうか…」

 

 ……その瞬間時が止まった。

 時間にしたらほんの一瞬だったのかもしれない

 しかし体感的には何時間も時間が静止したかのように感じた。

 

「……うう……酷いぞ」

 

 そう呟いたスカディ様の目には『ウルウル』という擬音語が聞こえてきそうな勢いで涙が溢れ出していた。

 まずい。スカディ様が泣いちゃう。

 

「謝れ黒髭氏!スカディ様に謝れ!!」

「ええ!?拙者味方なのに怒られてる?」

 

 慌ててぐだ子がフォローにはいる。

 

「す、スカディ様すごーい!3000年間も操を守り通すなんて乙女の鑑ですよお!ぐだ子尊敬しちゃうー」

 ぐだ子のフォローを聞くと今度はスカディ様の顔に『ぱあっ』という擬声語が聞こえそうな勢いで笑顔が浮かんだ。

 

「うむうむ。そう思うか!お主はなかなか見どころがあるな!何か褒美を取らせてやろう。

……( ゚д゚)ハッ!いかんいかんお主今は敵ではなかったか!」

 

 この人必死で王としての威厳を保とうとしてるけど……相当チョロいな。

 エリちゃんとかニトクリスさんと同じ匂いがする。

 さあ、心苦しいけどそろそろ戦うか。

 でもその前に。

 考えていたことはぐだ子も同じだった。

 

「エミヤ」

「やれやれ。また汚れ仕事か」

ぐだ子がエミヤ(アサシン)を呼び出し黒髭氏にターゲットを押し付ける。

 

「さ、スカディさま。謝罪の代わりにこの髭を殺ってください。それから戦いましょう」

「HEEEEYYYYあァァァんまりだァァアァ!!AHYYYAHYYYAHYWHOOOOOOOHHHHHHHH!!」

 

 氷雪の大地に黒髭氏の悲鳴が木霊する。

 お前は英霊の座に戻ってシグルドさんからデリカシーの何たるかを学んで来い。

 

 あとスカディ様はファラオがピラミッド投げて倒した。




2部2章は「ああ!ナポレオーン!!」てなってから「ああ…スルト。お前…」
ってなって「オフェリア・・・オフェリア、オフェリアあああああああああ!!」ってなりました。
私もスルトとあんまり変わらないかも。
スカディさま250連で来てくれました。
危うく爆死するところだった。『250連は爆死では?』って。(∩゚д゚)アーアーきこえなーい。

久しぶりに動画投稿しました。黒髭氏を思いっきりフィーチャーしてます。
よろしければご覧ください。
【FGO】スカディvs半裸男パ【彼こそが海賊】
www.nicovideo.jp/watch/sm33642015

このシリーズ含めた二次創作、一時創作、映像制作、メディアへの寄稿など更新情報はtwitterでも流してますのでこちらもどうぞ。

@FuttariHaretari

ではまたお会いしましょう。


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夏の秘め事……

皆様お久しぶりです。
Fate/in UK はちょいちょい更新してたんですが、書く気が起きなくてこっちは放置してました。
年末年始いかがお過ごしですか?
私は映画見たり薄い本読んだりして忙しく過ごしてました。
5か月ぶりぐらいの投稿ですか。ではどうぞ。


 今年も夏イベントの時期が来た。

 やたら過酷な環境だった過去二年と違い、今回は常夏のリゾートアイランド、ハワイが舞台だと告げられた。

 俺たちはウキウキ気分で(目隠しはされてたけど)飛行機に乗ったがそのたどり着いた先はBBちゃんが何かやらかしてハワイとホノルルが合体したルルハワになっており、どう見てもコ●ックマーケットにしか見えないサバフェス(サーヴァントサマーフェスティバル)が開催されていた。

 BBちゃんから告げられたのは「サバフェスで一位を取るまで一週間がループする」「ロビンが豚になる」という残酷な事実だった。

 

 同行した全員、マシュ、ロビン、牛若丸は動揺していた。

 サバフェスで一位を取るということは同人誌を作って売り上げ一位にならなければいけないということだ。

 いくら英霊でも同人誌制作の心得なんてあるはずもない。

 

 その中にあってオルタちゃんことジャンヌ・オルタだけが冷静を保っていた。

 ああ、そういえばこの子はそういう子だった。

 

  〇

 

 一度、オルタちゃんの霊基が消滅しかけたことがある。

 ゲーティアを倒し、カルデアの引き渡しが完了する前のことだ。

 

 ダヴィンチちゃんの説明だとオルタちゃんはジャンヌ・ダルクの影から生じた不安定な存在で、人理の危機という特殊な状況がどうにかその存在を固定していた。

 人理の修復によって存在意義が揺らいでいる。

 それで消滅しかかっている、ということだった。

 

「「ふーん(ホジホジ)」」

 

 俺とぐだ子は鼻をほじりながらダヴィンチちゃんの話を聞いていた。

 態度が不真面目すぎてさすがに怒られた。

 

 そんな態度だった理由だが、俺たちには策があった。

 オルタちゃんのことはよくわかっている。

 

 気配を感じたのか、話を聞いていたのか。

 カルデアにいる英霊の一騎が施設の外に飛び出したという緊急連絡が入った。

 

 俺とぐだ子はその英霊を追って外に飛び出した。

 

 視線の先。

 吹雪く大地と対称するように黒を基調にした衣装を纏った彼女の姿が見えた。

 その黒を基調にした衣装はヴラドさんからこっそり裁縫を習って自作した改造コスだということは誰もが知っている彼女の秘密だった。

 俺たちは吹雪の音に負けないように声を張上げて言った。

 

「うわ!寒!戻ろうよ、オルタちゃん」

「そうそう。帰ってコタツ入ってゲームしようよ」

 

 黒を基調にした改造コスを自作した英霊、ジャンヌ・ダルク・オルタは振り返った。

 

「アンタたち!私、消えかけてるのよ!何でそんなに軽いノリなのよ!!」

 

 彼女の眼には涙が光っていた。

 俺とぐだ子は互いに視線を交わすとニヤリとした。

 

 こんな時、何を言えばいいかよくわかっている。

 

「「ときめきオルタ倶楽部……」」

 

 オルタちゃんの顔面が一瞬で引きつった。

 ぐだ子が畳みかける。

 

「引き出しの中にそっとしまったときめきオルタ倶楽部」

 

 オルタちゃんは動揺のあまりアホ毛が激しく揺れている。

 

「……は、ハァ!!何の話よ?」

 

 俺たちはさらに畳みかけた。

 

「すまない。君を好きですまない……」

「オルタちゃん……絵も練習してたんだね……とっても上手だと思うよ」

 

 オルタちゃんのアホ毛が激しく揺れる。

 もはや千切れそうなぐらいに激しく揺れている。

 

「オルタちゃんが消えちゃったら悲しすぎて……俺たち、皆にオルタちゃんの創作ノート……公開しちゃうかも」

「ごめん……オルタちゃん。私、実はオルタちゃんのパソコンのパスワード、知ってるんだ。ぐだ子、自分の生まれた年をパスワードにするの、危ないと思うの」

 

 曖昧だったオルタちゃんの霊基がはっきりしてくるのがわかった。

 

「あーーー!!あーーーーー!!アーーーーーーー!!!」

 

 俺たちの煽り作戦は大成功だった。

 二度とオルタちゃんの霊基が不安定になることはなかった。

 

  〇

 

 そんなわけでオルタちゃんにはすでに心得があった。

 時間がなかったため最初の一回はコピー本でお茶を濁さざるを得なかったが繰り返すごとに同人のグレードは上がっていった。

 オルタちゃんだけでなく、ぐだ子も同人(腐ったやつ)を自作しているので心得がありロビンと牛若ちゃんとマシュのサポートもあって確実に俺たちは進歩していた。

 

  〇

 

「差し入れです」

 

 ループが七回目を迎えたころ。

 連日の徹夜で疲労困憊状態だった俺たちの元にホテルからの差し入れがあった。

 マシュが厨房からもらってきた差し入れは鍋だった。

 常夏のルルハワで鍋って……

 

「ねえ、マシュ。これ、何の肉なの?」

「ラッコの肉だとか。精力が付くのでどうぞと、エミヤ先輩から」

 

 なんか嫌な予感がする。

 ぐだ子も違和感に気づいたらしく疑問を呈した。

 

「え、ごめん。マシュ、常夏のルルハワでラッコが捕れるの?」

「はい。私にも大いに疑問ですが、クーフーリンさんが釣りをしていてたまたま釣ったそうです」

「……もう何でもありだね」

 

 というわけで部屋にラッコ鍋が運び込まれた。

 

「すみません。私は買い出しに行ってきますので」

 

 マシュは買い出しに行き、俺とぐだ子、オルタちゃん、ロビン、牛若ちゃんが残った。

 運び込まれたポータブルのコンロでラッコ鍋はグツグツと音を立て、何か妖艶なにおいを漂わせていた。

 深夜で小腹もすいており、その鍋は妙に美味そうに見えた。

 俺たちは不可解さを感じつつも箸をつけた。

 

 特に警戒心の強いロビンはただ一人口をつけなかった。

 そのことが後に事件へと発展する。

 

  〇

 

 オルタちゃんが主に手を動かし、俺とぐだ子と牛若ちゃんがアシスタントをしてロビンが制作の手伝いをする。

 ラッコ鍋の効果か妙に体が熱く、力が漲っている感じがした。

 

 オルタちゃんの筆のノリもいいようだ。

 

 暫くは順調だった。

 異変が起きた。

 

「頭がクラクラします」

 

 手を動かしていた牛若ちゃんが頭を抱えて倒れた。

 俺とぐだ子は駆け寄った。

 

「牛若ちゃん!大丈夫?」

「上を脱がせろ!下もだ!全部脱がせ……もともと裸と大差なかった……」

 

 牛若ちゃんは完全にダウンした。

 まずい。デスマーチ状態がますます悪化する。

 

 それにしてもこの匂いはどうだろう。

 マシュの分を残しておいたラッコ鍋から強烈な何かが発生している。

 「ムッワァァァァ」というオノマトペを幻視しそうな匂いだ。

 

 ん……?

 あれ?

 おかしいな……

 

「どう見ても……ロビンが色っぽい」

 

 全員が一斉の俺を見る。

 

「……あはは、マスター、冗談きついっすわー。あんま近寄んないでもらえますかね?」

 

 ロビンは表情が引き攣っていた。

 変なことを言っているのはわかっている。

 でも俺にはこの気持ちが止められなかった。

 

「……ううん。ロビン。冗談じゃないよ。……ロビンはとってもセクシーだと思うよ」

 

 ロビンは一瞬で表情が青ざめ、後ずさった。

 

「おいおい、止せよぐだ男。オタク、マシュが好きなんだろ?俺なんかに構ってたら嫉妬されちまいますよ」

「……違うんだよ、ロビン。マシュのことは好きだけど……ロビンへの気持ちも本物なんだ」

「大体なんでオレなんだよ!ぐだ子もジャンヌ・オルタもいるのに!」

「……ううん。違うんだ。相手が男か女かの問題じゃないんだ。俺は……ロビンが……いいんだ……」

 

 ロビンがさらに一歩引く。

 

「オタクらもなんか言えよ!ぐだ男、明らかにおかしいぞ!」

 

 ぐだ子とオルタちゃんはロビンを見た。

 二人とも目が血走っていた。

 

「ロビン……男の子同士の恋愛、アリだと思うの。私たちのことは気にしなくていいから、シタいことシテもいいんだよ」

「い、いいからヤルならさっさと始めなさいよ!デッサンできないじゃないの!」

「駄目だ!コイツら腐ってやがる!!」

 

  〇

 

 結論から言うと、俺とロビンは一線を越えずに済んだ。

 ロビンの悲鳴を聞いたマシュがダッシュで戻ってきて、マシュのSOSで駆け付けたマルタさんに弱体解除されて俺たちは正気を取り戻した。

 この事件が尾を引いて結局またループすることになったが、おかげで俺たちは大事なものを失わずに済んだ。

 

 正気を取り戻した俺はロビンに謝罪し、全員と口裏を合わせた。

 

「このことは、俺たちだけの秘密ね……」

 

 全員が静かに頷いた。




また何か思いついたら書きますね。
では。
無いと思いますがリクエストなどありましらどうぞ。


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それぞれの優しさ

一発ギャグみたいのを二本思いつきました。
まず一本目。
二本目は近日公開。
下ネタなので苦手な方はブラウザバックしてください。


 というわけで彷徨海にカルデアベースが出来た。

 俺は久しぶりに個室を手に入れた。

 個室を手に入れたらやることは一つしかない。

 

 オ●ニーだ。

 

 狭いシャドウボーダーでの生活で俺のリビドーは爆発寸前だった。

 

 とはいえ、静謐ちゃんやきよひーや頼光さんが侵入してくるかもしれない。

 不安なので交代で見張りを立てることにした。

 

  〇

 

「あれ、ロビンくん?」

「ブーディカの姉さん」

「マスターの部屋の前で何してるの?」

「そうですね。見張りってやつですかね」

「見張りって何の?」

「ああ、あの……アレっすよ。アレ」

「アレ?」

「……ほら、思春期特有の……わかるでしょ?」

「ああ。そういうこと(うふふ。男の子ね)」

「……ってわけで、そっとしておいてもらえませんかね」

「うん。わかった。夕飯の準備出来たから声かけておいてね」

「はいよ」

 

  〇

 

「……ってことがありましたよ」

 

 ロビンから報告を聞いた俺は思わず赤面した。

 でも目撃されるよりはマシだろう。

 俺は次も見張りを立てることにした。

 

  〇

 

「呪腕殿」

「これは、エミヤ殿」

「ぐだ男の部屋の前で何を?」

「私は見張りです」

「見張り?」

「はい」

「見張りとは何の?」

「魔術師殿は只今、己が内の黒き欲望を吐き出しているところです」

「……ああ(察し)」

「どうか魔術師殿が安寧のうちに内なる戦いを終えられるようそっとしておいていただきだい」

「そうだな。では、夕食の支度が出来たので良きところで声をかけていただきたい(思春期だな)」

「承知」

 

  〇

 

「……ということがありました」

 

 ハサン先生から報告を聞いた俺は思わず赤面した。

 でも目撃されるよりはマシだろう。

 俺は次も見張りを立てることにした。

 

  〇

 

「カルナさん?」

「マシュか」

「先輩の部屋の前でどうしたんですか?」

「オレは見張りだ」

「見張り?」

「ああ」

「何の見張りでしょうか?私ではお役に立てませんか?」

「お前では不適切だ」

「不適切……あの、どのような事態が先輩の部屋で起きているのでしょうか?カルナさんは一線の英霊ですが、一人で大丈夫な問題なのでしょうか?応援は必要ないのでしょうか?」

「必要ない」

「……そうですか」

「ああ。ぐだ男は自慰行為(オ●ニー)の真っ最中だ。応援は不要。どうかそっとしておいてやって欲しい」

「……え?」

「今日はお前のことを考えながら行為に耽るので、特にお前には知られたくないそうだ」

「ちょっとおおおおお!!!!!!!!!」

「どうした、ぐだ男、もういいのか?今日は百回ぐらい4545するのではないのか?」

「あーーー!!!!あーーーー!!!!アーーーー!!!」

「もー先輩///」

 

  〇

 

 カルナさんは真面目過ぎた。

 人選ミスだった。




ほんと上品でごめんなさいね。
ちなみに劇場版fate見ました。
感想はこんなところに書くことでもないので興味のある方は活動報告をご覧ください。


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ぐだぐだ日本史

一発ネタ二本目です


 新年が明けて、思わぬ形でまたレイシフトをすることになった。

 温泉に入ってリゾートホテルでリラックスするだけとダヴィンチちゃんもシオンも言っていたが、ドジっ子ゴルドさんがやらかしてしまい、千と●尋の神隠しみたいな旅館で働くことになった。

 

「失礼しまーす」

 

 感謝の気持ちを集めるために、閻魔亭には新カルデアから英霊たちを呼び寄せていた。

 旅館の従業員になった俺とぐだ子とマシュは新規で入ったある団体客の部屋を訪れていた。

 

「ノッブ!なんですかあれ!おかしいでしょあのキャラ!格ゲーじゃなくてSTGやってるのかと思いましたよ!」

 

 沖田さんがノッブに憤っていた。

 どうも話を聞いていると沖田さんは初プレイの『北●の拳 ~審判の双蒼星 拳豪列伝~』でノッブに嵌められてハート様を使わさせられ、ノッブのトキに蹂躙されたらしい。

 

「うっはははははははぁ!甘いのう、沖田。勝負の前から戦いは始まっておるのじゃ!情報戦というなあ!」

 

 沖田さんを一方的に蹂躙できたからかノッブは物凄く嬉しそうだ。

 あのバランス崩壊ゲーでトキを使って勝つのがそんなに楽しいのかはさておき、とにかく上機嫌だった。

 

 閻魔亭の日本英霊部屋はぐだぐだ空間を形成していた。

 ノッブは沖田さんを蹂躙するのに飽きたらしく(皆が忘れていたせいで)遅れてやってきた以蔵さんに標的を変えていた。

 

 

「ダーオカ、そなた童貞じゃろ」

 

 以蔵さん、わかりやすく動揺する。

 

「ど、どどどどど童貞ちゃうわ!」

 

 動揺が判り易すぎる。

 わかり易すぎる以蔵さんの動揺に沖田さん、茶々さん、土方さん、お竜さんが乗っかる。

 

「え?ダーオカさん、童貞なんですか?」

「ダーオカ、童貞なの?」

「なんだ、お前、童貞なのか」

「クソザコナメクジ、お前やっぱり童貞なのか」

 

 龍馬さんは「以蔵さんは剣の道に生涯をささげた人だから……」とフォローしたが誰も聞いていない。

 魔人さんはポカンとしている。

 

「茶々様、童貞って何だ?」

「沖田ちゃんは童貞にはならないから心配しなくていいのねん」

「そうなのか。つまり童貞とは悪いものなのだな。一つ利口になったぞ。嬉しみ」

 

 豆腐メンタルな以蔵さんのダメージは計り知れない。

 

「姉上……僕も童貞なのですが……ハァハァ」

「お前はセンズリでも扱いとれ!」

「ハァハァ……姉上……姉上……」

「アホか!人前でやるでない!せめて厠でやらんか!」

 

 ぐだぐだだ。

 あれ?信勝くん、何で普通にいるの?

 

  〇

 

「ああ、寺田屋ね」

 

 酒宴をはじめ、やたらと強いノッブと龍馬さん以外全員が潰れた。

 せっかくの機会なので有名な日本史のエピソードを本人から聞いてみようと思ったのだ。

 

「ええ、そうです。あのお竜さんがお風呂場から走って知らせたっていうやつです」

 

 日本人の俺とぐだ子にとってはすごく興味のある話だ。

 竜馬さんは苦笑いしながら答えた。

 

「あれね……何でああ伝わっちゃったのかな」

 

  〇

 

「龍馬。見ろ、カエルがいっぱい取れたぞ」

「うん。よかったね。お竜さん。悪いけど後にしてね。今、話し合いの最中だから」

「そうか。がっかり。……ああ、そうだ。どうでもいいけど、なんか下に槍持った奴がいっぱい遊びに来てたぞ」

「え?」

「龍馬は友達多いんだな。お竜さん、ちょっとジェラシーだぞ」

「違うよ!お竜さん!それ、奉行所だよ!」

「そうなのか?」

「そうだよ!友達は槍持って遊びに来ないよ!」

「そうか。友達ならカエル持って遊びに来るもんな。わかりみ」

 

  〇

 

「三吉さん※の日記だけど、お竜さんをそのまま出すわけにもいかないからさ。

脚色してくれって頼んだんだ。僕もどう脚色したかは知らなくてさ」

 

 寺田屋事件はぐだぐだだったらしい。

 何か思うところがあるのか、今度はノッブが口を開いた。

 

「わし、ミッチーの謀反の理由、わかったかもしれん…・・」

 

 ノッブは言った。

 

「当時、尾張ではあーけーどげえむがほっとな遊びでな。織田の家中でも流行っておったんじゃが、わしは最強、ミッチーは最弱じゃった。その日も戦国BAS●RA Xでわしの毛利がミッチーの伊達を蹂躙しておった」

 

  〇

 

 オーモーイーガー

 BASARA KO

 

「うっはっはっはっは!!また儂の勝ちじゃな!」

「……」

「わしに勝ちたくば寺でも焼き討ちするんじゃな!」

「……なるほど」

 

  〇

 

「ミッチーの奴、まさか本気にしとるとは思わんかったわ」

 

 日本史はぐだぐだだった。

 

 

※三吉さん=三吉慎蔵。詳しくはwikiでも読んでください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%90%89%E6%85%8E%E8%94%B5




短いのでオマケ

お題は「桜のサーヴァントがメドゥーサさんではなく黒髭氏だったら」
 

黒髭「ドュフフフフwww黒髭、参上ですぞ。緑は敵ですぞ」

桜「……」

ゾウケン「……」

黒髭「おひゃーーーーーー!!!薄幸系巨乳美少女ktkr!!!!!」

桜「……」

ゾウケン「……」

黒髭「おっと急に眩暈が……マスター、拙者魔力不足で今にも消滅しそうでござる。
魔力供給プリーズ」


ゾウケン「……桜よ。どうやら召喚に失敗したようじゃな」

桜「そうですね。行きましょうか、お爺様」

黒髭「ちょっと!!!無視はやめて無視は!傷つくから!!!」


 続かない


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魔法少女XX

いまさらプリヤコラボ復刻で思い付きました。



 カルデアでは時々、頻繁に変な事件が起こる。

 今回の一件はファーストレディが収める魔法の国の事件だった。

 イリヤちゃんと美遊ちゃんとクロの魔法少女を姿を見て「やっぱり魔法少女はローティーンに限るよな」と

当初は思っていた俺だが、別の考えも浮かんだ。

 ……魔法少女コスはローティーンが最高かもしれないけど、ローティーン以外がしても結構イケるんじゃないか?

 俺はマスターで従えるサーヴァントが大勢いる。

 試さない理由が無い。

 

  〇

 

「私が魔法少女に?」

 

 最初に話をしたのはマシュだった。

 

「そうだよ」

 

 俺はヴラドさんに頼んで作ってもらったマシュサイズの美遊ちゃんバージョンコスを差し出した。

 

「私が、それを着るのですか?」

 

 マシュは戸惑った。

 俺は土下座して懇願した。

 

「わ、わかりました。少し恥ずかしいですが……」

 

 マシュは赤面しながらも着替えてくれた。

 

「……ど、どうでしょうか?」

 

 ……お、おおう。

 予想以上の破壊力だった。

 未遊ちゃんが着ても可愛いの範囲で済んだが、マシュだと色々育ち過ぎてエロ過ぎる。

 俺は前かがみになりながら涙を流してマシュにただひたすら「……ありがとう」と言い続けた。

 

 これでわかった。

 魔法少女コスはローティーンに限らない。

 早速他のターゲットを探すことにした。

 

  〇

 

「オレにそのフリフリの格好をしろって?」

 

 モーさんことモードレッドは怒りで顔面を引き攣らせていた。

 だが、俺はこの程度では動じない。

 

「そうだ」

「……オレが喜んで着ると思ってんのか?」

「まさか。その反応は予想済みだ。だが着てもらうぞ、モーさん」

 

 空気が変わった。

 これは……戦いの空気だ。

 

「力ずくか」

「ああ。抵抗を許す。そのほうが燃えるというものよ」

「面白え!やってみやがれ!」

 

 モーさんが武装を解いた。

 暴力に訴えるつもりなのだろうが、殴る前に武装を解いてくれるところが微妙に優しい。

 しかし、こちらには端から腕力で競うつもりはない。

 

「令呪を以って命ずる!魔法少女になれ、モードレッド!」

「なめんなコノヤロー!オレの対魔力が令呪一画程度で破れると思ってんのか!」

 

 高ランクの対魔力のことはもちろん忘れていない。

 

「ふ、甘いぜ、モーさん」

「何!?」

 

 俺は自分の思い付いたことの恐ろしさに思わずニヤリと笑った。

 

「今、日付が変わったのに気づいたか?」

「日付がどうしたってんだよ……ハッ!まさか!」

「残った二画と日付が変わって回復した一画を以って命ずる!魔法少女になれ、モードレッド!」

「テメエ!!!!」

 

 こうして俺はブラドさんに作ってもらった赤を基調にしたフリフリな魔法少女コスをモーさんに着せることに成功した。

 着替えたモーさんに「魔法少女☆プリズマスカーレット」を名乗らせると令呪の強制力でポージングをさせて写真を撮りまくり、令呪の効果が切れる前に逃走した。

 

  〇

 

 次に俺はスカサハ師匠とスカサハ=スカディ様の元に赴いた。

 この二人は見た目はそっくりだが中身は対称的だ。

 フリフリの魔法少女コスを見たスカディ様は思い切り赤面した。

 

「わ、私にそれを着ろと言うのか!ははははははは破廉恥な!」

 

 真っ赤になってプルプル震えている。

 この人はいちいち可愛いな。

 

 逆にスカサハ師匠はノリノリだった。

 

「私に魔法少女の素質が?」

 

 弟子たちからツッコミが入った。

 

「あるわけねーだろ。年考えろよ」

 

 まず最初にツッコミを入れたのはランサーのクーフーリン兄貴だった。

 するとクラス違いの別バージョン兄貴たちが悪ノリしはじめた。

 

「魔法老女の間違いだろ!」

「おいおい、キャスターのオレ!まんまじゃねーか!もうちょっと捻れよ!」

 

 ランサーの兄貴とキャスターの兄貴とプロトタイプの兄貴は全く同じノリでデリカシー無い感じでゲラゲラ笑い始めた。

 

「おーい、マスター気をつけろよ!そのバアさんに毒リンゴ盛られるぞ!」

 

 その後、槍の雨が降ったのは言うまでもあるまい。

 

  〇

 

「ほう……我にその恰好をしろと?」

 

 次に行ったのはセミ様ことセミラミスのところだった。

 

「そうです」

 

 ヴラドさんに作ってもらったイリヤちゃん風の魔法少女コスを見たセミ様はどうも一瞬で怒りが沸点に達したようだった。 

 

「よほど命が要らぬと見えるな……」

 

 こんな時に何と言えばいいか、俺は心得ている。

 

「天草くんの趣味ですよ?」

 

 セミ様の耳がピクっと動いた。

 

「フン。我にそのようなことは微塵も関係ないが……少しだけ考慮してやる」

 

  〇

 

「おや、セミラミス。そのような趣味があったのですか?とてもよく似合っていますよ。ふふ」

 

  〇

 

「ジャンヌーーーーー!たぁぁすけてぇぇぇぇ!!!!」

 

 俺はセミ様が召喚した魔物から全速力で逃走し、ジャンヌ・ダルクに助けを求めた。

 ジャンヌはとっさに俺の前に立った。

 

「待ちなさい!セミラミス!何があったか知りませんが、彼は私たちのマスターですよ!」

 

 ジャンヌは旗で魔物を打ち払うと、筋力Bでセミ様を羽交い絞めにした。

 セミ様は真っ赤になりながら必死でもがいて叫んだ。

 

「離さぬか忌々しいルーラーめ!またしても我を謀りおって!此度こそ許さぬ!

殺す!!こやつを殺して我も死ぬ!!!」




こんなのですいません。


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もう一つの虚月館殺人事件

ご無沙汰です。
3月初頭に撮影してた影響でバタバタしてて久振りの投稿です。
今更ネタですが、アラフィフのホワイトデーイベントをやってて思い付きました。
短めですが、どうぞ。


 内容がよく思い出せないが変な夢を見ていた気がする。

 多くのサーヴァントと契約している身なのでよくあることだ。

 

 もやもやした半覚醒状態から目を覚ますと自分が見慣れない部屋にいることに気づいた。

 洋風の、少し古風なつくりの一軒家だった。

 さっきまでカルデアベースの自室で寝ていたはずなのに、しっかり着替えたうえでちゃんと二本の足で立っていた。

 ああ、またあのパターンだ。

 マシュは「レムレムしてる」って言ってたっけ。

 

「目が覚めたようだね」

 

 すぐ隣に立っていた人物が覚えのある声で呼びかけてきた。

 

「ホームズさん?」

 

 世界で最も有名な探偵、ルーラーのサーヴァント、シャーロック・ホームズだった。

 隣を見るともう一人のマスター、ぐだ子もいた。

 これは、やっぱりあのパターンらしい。

 

「さて、早速だが探偵の出番だ。ワトソンはこの空間にはいないらしい。今は君たちが僕のボズウェルだ」

 

  〇

 

 まったく事情が飲み込めないでいる俺たちにホームズは簡単に説明してくれた。

 これは虚月館殺人の時のようにリアルタイムで起きている事件らしい。

 それも少し時間軸がズレた並行世界の出来事のことのようだ。

 

「これは密室殺人だ」

 

 ホームズは言った。

 

「ぐだ男くん、ぐだ子くん。まだ半覚醒状態のようなので気づいていないかもしれないが、この部屋では正常な生活空間にあってはならないものが存在している。私と君たちはこの館内で唯一の完全な部外者だ。それで調査役に選ばれた」

 

 ホームズは部屋の一端を指さした。

 真っ黒に炭化した人型のモノが倒れていた。

 近づいてよく観察する。

 

「完全に炭化している」

 

 ホームズは言った。

 

「身長はおおよそ6フィート1インチというところかな。がっしりした体格だったようだ。

体重は250ポンド弱というところだろうか」

 

 鎮火はしているらしい。焦げ臭いにおいは残っていたが火の気は見えなかった。

 

「我々が入るまでドアは施錠されていた。内開き式だから蝶番を壊して侵入するのも不可能。

窓は嵌め殺しで開閉自体が不可能。破壊された形跡もない。

……つまり、これは密室殺人だ」

 

 おお、なんか本格推理ものっぽいぞ。

 不謹慎だけどマシュが居たら喜んだかもしれない。

 

 ホームズは死体のそばにかがみこんでじっくり検分している。

 検分して、なにか気づいたらしい。

 

「ぐだ男君、ぐだ子君、気づいたかい?」

 

 俺たちは二人とも首を横に振った。

 

「人体が焼けこげる匂いとは別に、この部屋に在っては不自然な匂いがする」

 

 匂い?

 あ、そういえば……

 

「そういえばちょっと香ばしい匂いがするかも」

「うん。なんていうか、スパイシーな感じの匂い」

 

 俺たちは口々に答えた。ホームズはその回答を気に入ったようだった。

 

「そう。この匂いは君たち日本人にとっても英国人の私にとっても馴染みの深い匂いだ。

成分はターメリック、コリアンダー、クミン、クローブ、カルダモン、カイエンペッパー……」

 

 それって……

 

「ひょっとしてカレー粉?」

「素晴らしい!これは推理の大きな助けになるだろう。では、次は事情聴取といこう」

 

  〇

 

 ホームズの呼びかけで館のダイニングルームに滞在者が集められることとなった。

 俺たちは先んじてダイニングルームに着き、滞在者たちを待っていた。

 

「そういえば、私としたことが大事なことを言い忘れていた。

被害者の名前はベガ氏だ」

 

 ベガ?

 変わった名前だな。

 どこの国の人なんだろう。

 

「ベガ氏は犯罪者だ。シャドルーという犯罪組織の元締めで、裏社会では知らぬものは居ない大物だ。

つまり多くの人物から恨まれている」

 

 ……ん?

 今、シャドルーって言ったか?

 

「この館はストリートファイト大会の出場者が滞在している。我々は通りすがりで、他に宿を見つけられずここに滞在することになった」

 

 こうして館の滞在者がぞろぞろとダイニングルームに集まってきた。

 滞在者は全部で7人だった。

 

「お手数ですが、自己紹介をお願いできますか?」

 

 ホームズの呼びかけでそれぞれが口を開いた。

 

「リュウだ。格闘家をしている。得意技は波動拳」

「ケン・マスターズ。富豪だ。得意技は昇竜拳」

「春麗よ。インターポール捜査官をしてるわ。得意技は気功拳とスピニングバードキック」

「ガイルだ。軍人をやっている。ソニックブームとサマーソルトキックが得意だ」

「ザンギエフ。ロシアでレスラーをしている。得意技はスクリューパイルドライバーだ」

「エドモンド本田でごわす。関取でごわす。得意技は張り手と頭突きと百貫落としでごわす」

「私はダルシム。ヨガマスターだ。手足が伸ばせる」

 

 おいおいマジかよ……

 いつからこのゲーム、CAPC●Mとコラボしたんだ……

 

「ホームズさん……俺、犯人分かっちゃったかも」

「私もわかったかも……」

 

 俺たちはホームズにこっそり犯人の名前を耳打ちした。

 

「素晴らしい!私の推理も今、確信に至った。あとは犯人の自白を待つだけだね」

 

 ホームズの発言に部屋がざわついた。

 

「お一人ずつ『ヨガファイア』と言っていただけますか?」

 

 彼らは面食らいながら口々に答えた。

 

「波動拳!」

「昇竜拳!」

「スピニングバードキック!」

「ソニックブーム!」

「スクリューパイルドライバー!」

「どすこい!」

「ヨガファイア!……ッハ!!!」

 

 部屋に静寂が訪れた。

 そして、全員の視線が一点にに集まった。

 

「犯人は貴方ですね。ダルシムさん」

 

 あーそうなっちゃったかー。

 わかってたけどさー。

 

「貴方は自己紹介の時、『手足が伸ばせる』とは言ったが『ヨガファイア』と『ヨガフレイム』について言及しなかった」

 

 ホームズはダルシムさんの席に歩みよった。

 

「私は以前、インドに長期間滞在したことがありましてね。ヨガの極意にスパイスの辛さで口から火を噴くヨガファイアとヨガフレイムがあることを知っています。カレーの辛さで火神アグニの権能を再現する奥義だ。

……つまりあなたは意図的に情報を隠蔽した」

 

 ダルシムさんは反論した。

 

「部屋は完全な密室だったはずだ」

 

 まあ、そうだよね。

 

「その通り。部屋は密室でした。だが、ヨガマスターの貴方であれば密室に侵入することは造作もないはずだ。

そう、ヨガの極意。ヨガテレポートを使えばね。世界7大ヨガマスターの一人、ジャグジートが最も得意とする技だが貴方にも可能なはずだ」

 

 ……いや、そりゃテレポート使えば侵入できるだろうけど。

 

「私の推理はこうです。貴方はまず、ヨガテレポートで部屋に侵入した。

貴方はベガ氏の至近距離からカレー粉の刺激でヨガファイアを放ち、ベガ氏を焼き殺した。

虚を突かれたベガ氏は得意のサイコクラッシャーアタックを放つ暇もなく焼き殺された」

 

 再び部屋を沈黙が包んだ。

 誰も何も言えなかった。

 俺とぐだ子はツッコミが追い付かなかった。

 

「――違う」

 

 ダルシムさんが重々しく口を開いた。

 

「――私が放ったのはヨガファイヤではない。

ヨガの最奥、ヨガインフェルノだ」

 

 ダルシムさんは落ちた。

 明確な自白に部屋がざわつく。

 百戦錬磨のストリートファイターたちが動揺していた。

 俺とぐだ子はツッコミを入れるのを諦めた。

 

 ホームズは一人落ち着いていた。

 

「しかし、わからないのは動機です。ベガ氏は誰から恨みを買ってもおかしくないが、貴方のバックグラウンドを調べても殺意にまで至るような理由が思い当たらない。一体、何がヨガマスターの貴方を殺意に駆り立てたのです?」

 

 ダルシムさんは答えた。

 

「甘口カレーだ」

 

 え?何て?

 

「あの男は、夕食に甘口カレーを出させた。あんなものはカレーではない。

……どうしても許せなかった」

 




こんなのですいません。

ちなみに、ほぼ私事ですが、私が脚本・制作で参加した映画が単館上映ですが商業作品として上映されることが決まりました。
東京・池袋の劇場で5月11日から5月17まで限定でレイトショー上映されます。

公式サイト
https://sorekara.wixsite.com/nov19

映画.comにも情報載りました
https://eiga.com/movie/90916/

filmarksにも情報載りました
https://filmarks.com/movies/83376

また、ちょっと忙しくなりますがそう遠くないうちに投稿しますので引き続きよろしくお願いします。


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エリンの守護者フィンと巨人の道

お久しぶりです。実はアイルランドが好きで既に二回行きました。
今回は北部アイルランドの名所がFGOのサーヴァントと関係あることから。
どうぞ。


 「汎人類史を取り戻したらどうしようか?」

 

 いつもの三人、俺とマシュとぐだ子はカルデアベースの食堂で他愛もない会話をしていた。

 今日のメニューはブーディカさんお手製のアイリッシュシチューだった。

 素朴で美味しい。日本の肉じゃがを思わせるような料理だった。

 

 まず出てきたのは「実家に帰りたい」とか「遊びに行きたいところがある」とか俺とぐだ子の小市民的欲望だったが、それを聞いてマシュは少し寂しそうだった。

 ごめん、マシュ。マシュは実家無いんだったね。

 慌ててカバーしようと話題を変えた。

 

「マシュはどこか行きたいところある?」

 

 マシュは「そうですね……」とためらいながら答えた。

 

「私、レジャーというものに縁が無かったので……先輩たちと旅行してみたいです」

 

 と言いながら「なんて……贅沢ですよね、すいません」と頬を赤らめた。

 俺とぐだ子の脳裏には同じ言葉が浮かんだに違いない。

 

「かわいい」 

「かわいい」

 

 近くで聞いていたブーディカさんがものすごい勢いでよだれを垂らしている。

 仲の良いマタハリさんがブーディカさんに「よだれ出てるわよ」と忠告していたがマタハリさんも盛大によだれを垂らしていた。

 

 俺たちの身体にも異常が発生していた。

 

「おい、ぐだ子。お前、鼻血出てるぞ」

「そういう自分こそ。出血多量で死ぬよ?」

 

 後輩かわいすぎる。

 

  〇

 

「ハッハッハ!エリンの守護者たる私の話を所望か!いいとも!喜んで聞かせよう!」

 

 駄弁っていた俺たちはそのままアーカイブで世界中の観光地の画像を見ていた。

 その中で目に留まったのが北部アイルランドにあるジャイアンツ・コーズウェーだ。

 

 ジャイアンツ・コーズウェーはコーズウェー海岸にある奇岩群で、ダヴィンチちゃんいわく科学的には柱状節理と呼ばれる現象で出来た地形らしい。

 この場所にはカルデアと契約している英霊と深いつながりがある。

 今、やたらと良く響く声で胸を張りあげているフィオナ騎士団の長、フィン・マックールだ。

 フィンは相当に格の高い英霊だが、女癖が悪いことと(マシュを口説こうとしたのは絶許)、反応に困るオヤジギャグを言うことと、ディルムッドが反応に困るブラックジョークを言うことを除けば基本的に好人物だ。

 フィンを出撃させると性能の都合上自動的に孔明先生と玉藻を出撃させなければならないのは頭が痛いが、そのことは黙っておこう。

 

 フィンには巨人としての伝承が存在し、この地形はフィンが歩いて出来たという伝承がある。

 

 フィン・マックールがスコットランドの女性に恋をしてスコットランドに渡った時に出来た道というパターンもあるらしいが、どうやらこの世界線はフィンとスコットランドの巨人ベナンドナーが戦う時に道が出来たパターンらしい。

 

 進んで話を聞かせて欲しいと言われたフィンはいつも以上に雄弁だった。

 その隣で生前部下だったディルムッドが「流石です!王よ」と相槌を入れている。

 

「では、ジャイアンツ・コーズウェーの成り立ちについてだな。よろしい、聞かせよう。私とベナンドナーの死闘をな!」

 

 フィンは自信満々にペラペラと話し始めた。

 

  〇

 

 私とベナンドナーはアイルランドとスコットランドの遠く離れた対岸同士で口論を繰り広げていた。

 それが争いに発展するのはごく自然な流れだ。

 

「いいとも、かかってくるがよい!ハギス臭いスコットランド野郎め!」

「首洗って待ってやがれ!アイルランドのジャガイモ野郎!」

 

 こうして私とベナンドナーは互いの住処から中間地点に向け一歩ずつ近づいて行くこととなった。

 この時、ジャイアンツ・コーズウェーとフィンガルの洞窟が形作られたわけだ。

 私とベナンドナー、接敵するのは時間の問題だったが我が千里眼は一足早く奴の姿を視認していた。

 

「な、何だ!あのデカさは!」

 

 ベナンドナーはとてつもなく巨大だったのだ。

 

「おいおい!冗談はよしこさんだろう!」

 

 私は怖気づいて逃げ帰……戦略的撤退を決めた。

 その時、あまりに私の逃げ足……撤退速度が速かったため、ブーツが片方脱げてしまった。

 それが今、巨人のブーツと呼ばれていることはアーカイブを見た君たちならば知っていることだろう。

 

 私が帰宅すると、私は妻に問い詰められた。

 我が妻ウナに撤退の理由を問われた私はベナンドナーの常軌を逸した巨大さを伝えた。

 

「あなた、私に考えがあります」

 

 ウナは頷きながら私の話を聞くと提案をよこした。

 

「おいおい!冗談はよしこさんだろう!そんな策が通じる筈がなかろう!」

 

 私は戦略的に問題がありすぎたため難色を示したが、妻が別居をチラつかせた為、従うことにした。

 

  〇

 

「バブー(CV・三木眞一郎)」

「な、何だこりゃあ!!!」

 

 妻の提案は私に赤子の格好をさせることだった。

 私は涎掛けをかけて毛布に包まり、親指をしゃぶった。

 

「バブー(CV・三木眞一郎)」

 

 「そんなバカな策が通じる筈がない」君たちもそう思うだろう。

 ところが、実際は違ったのだ。

 

「アイルランドの巨人は赤ん坊でもこんなにでけえのか!なら、フィン・マックールてのはとんでもねえデカブツに違いねえに、逃げるしかねえだ!!」

 

 ベナンドナーは巨体を揺らして逃げ帰った。

 

「ホッ(……バカで良かった)」

 

 後で知ったことだがスコットランドの巨人族は10まで数を数えられると世紀の天才と言われるほどの教育水準だったらしい。我が妻ウナはそのことを知っていたようで、おかげで私は命拾いしたわけだ。

 

 

  〇

 

「おかげでそれ以降、親指を噛むのが癖になってしまった」

「え?知恵の鮭の脂が親指に付いたからじゃなくて?」

「ああ、それかい。それは順番が違う。私の親指噛む噛む知恵もりもり(フィンタン・フィネガス)の癖は赤ちゃんプレーに興じ過ぎた後遺症だ。鮭の脂が付いたのはその後だよ」

 

 俺たちは小声で囁きあった。

 

「(この人、残念過ぎる……)」

「(嘘、この人、残念過ぎ……)」

「(残念過ぎですね……)」

 

 ディルムッドはただ一人「流石です!我が王よ!赤ちゃんプレイという意表を突いた頭脳プレーとは!」と持ち上げている。

 

「ハッハッハ!ディルムッド、後で便所の裏な」

「なんと!」

 

 そういえば、アーカイブで他にも伝承を読んだのを思い出した。

 

 フィン・マックールが作った岩に文句をつけてばかりだったフィンの祖母が岩に変えられてしまったというものだ。

 今でもジャイアンツ・コーズウェーにはその岩があるとか。

 

 それを聞くとフィンはまたしても自信満々に話し始めた。

 

  〇

 

「フィン!アンタ、またエッチな形の岩作ったのかい!!」

「ばあちゃん、違うよ!これは女体を通して人体の研究をしていたのだ!」

「嘘おっしゃい!あんたがベッドの下に置いてたエッチな本、机の上に並べておいたからね!」

「ありがた迷惑だよ!ばあちゃん!(まずい、この婆ちゃん。早く岩にしてしまわなければ……)

 

  〇

 

「どうだったかな?私の武勇伝は?ジャイアンツ・コーズウェーへの関心も否応なしに増したのではないかね?」

 

 俺たちは答えた。

 

「台無しだよ!」

「台無しだよ!」

「台無しです!」




巨人フィン・マックール=フィオナ騎士団のフィン・マックールなのかはっきりしないのですが、同一存在として扱いました。
ジャイアンツ・コーズウェーは実際に行ったことがあるんですが、あそこの景観は本当に凄い。絶景です。
ビジターセンターでオーディオガイドも借りられますが日本語版もあるので興味のある方はぜひ一度どうぞ。
次はアラン諸島とか行ってみたい。


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死せる孔明生けるマスターを周回に走らす

イベント良かったですね。
ウチのカルデアにライネスは来ませんでした。
というわけでイベント関連です。


「孔明先生…。あわわわわわわ」

 

 イベント空間で、師匠を名乗る金髪少女に連れられて来たフラットの部屋で俺たちが目にしたのはロン毛の長身男性の死体と『M』のアルファベットのダイイングメッセージだった。

 その瞬間、急激に失っていた記憶の一部が戻って来た。

 

『M』の一言でわかった。

 いつもならアラフィフおじさんが容疑者候補筆頭に上がるが今回は違う。

隣を見ると青ざめた表情のぐだ子が視界に映った。

 それでわかった。二人とも同じ結論に至ったと。

 

「(絶対過労死だ。俺のせいだ)」

「(絶対過労死だ。私のせいだ)」

 

 そう『M』。

 それはマスター(Master)のM。

 周回で酷使していたのはわかっていたけどまさか本当に過労死しちゃうなんて……。

 

「兄上…。一体誰が」

 

 困惑するライネスさんに俺は冷や汗をかきながら言った。

 

「いや、すごい言いづらいんですけど犯人は誰もいないっていうか……あえて言うなら俺たちが犯人……みたいな」

「はあ、何を言ってるんだ君は?大体君達ずっと私と一緒にいたじゃないか」

 

 ライネスさんの発言にぐだ子が答える。

 

「うーんとこれは今までの積み重ねっていうか、蓄積疲労って言うか過労死しちゃった……的な」

「だから何を言ってるんだ君達は、あんなに外傷があって死因が過労なわけないだろう!それより来るぞ戦闘だ!」

 

 あ、そうか。よかった過労死じゃなくて。それよりなんか人形が襲って来たの忘れてた。

 

 

  〇

 

「危なかったな…その記憶を回収しきったら、一巻の終わりだったぞ」

 

 最後の紙片を回収しようとしたその瞬間、俺たちの目の前にありえない人物が現れた。

 序章からずっと相手がライダークラスだろうとなんだろうとずっと一緒だった絆11のベストパートナーが。

 

「君達…そこまで兄上の事を…」

 

 ライネス師匠の発言で気がついた、俺が泣いていたことを。

 同じようにぐだ子の目にも涙が光っていた。

 そういえばライネスさん『兄上が死んだと思って超ショックだった。また会えて本当嬉しい。兄上には内緒だぞ(超意訳)』って言ってたな。

 後で先生に教えてあげよっと。

 

「良かった孔明先生…。先生がいなくなったら周回どうしようかと思ってました!」

「良かった!また会えて良かった!本当に過労死したのかと思いました!!」

 

 俺たちの発言に苦虫を噛みつぶしたような表情で件の人物が言う。

 

「自覚があったとは意外だ」

 

 孔明先生は記憶紙片の回収が罠だったことと共に衝撃の事実『M』が誰を示していたかを語った。

 

「君らが通信しているマシュは、偽物だ」

 

 なんだって?

しかしホログラムに映るマシュの表情はその発言が事実であることを雄弁に物語っていた。

 確かめないと……。

 

「ねえ、ちょっとそのマシュ後ろ向いてみて貰えない?」

 

 偽マシュは怪訝な表情をしながらも律儀に後ろ姿を見せてくれた。

 その後ろ姿は表情以上にその事実を雄弁に俺に語りかけていた。

 

「……本当だ」

 

 皆の視線が俺に集まる。

 

「マシュのおしりは横幅が2.1センチ広いし、アンダーの部分がキュッと1.5センチ上がってる。マシュのおしりマイスターの俺にはわかる!つまりお前は偽物だ!」

「アホか!」

 

 ぐだ子に宝石剣ゼルリッチでしこたま殴られ、俺は昏倒した。

 

 気がつくとバベッジさんの城にいて、なんか時計塔も偽物で本当は偽ロンゴミニアドで

そこに乗り込んで黒幕を倒しに行くことになっていた。

 途中で合流した孔明先生の内弟子というグレイさんのロンゴミニアドで偽ロンゴミニアドに干渉し出来上がった塔への階段の途中俺たちは運命に出会ってしまった。

 

「バルバトスくん…」

 

 呟く俺の隣でライネスさんがバルバトスくんが再現された説明をしているが全く耳に入ってこない。

 バルバトスくん、享年12時間。落とす素材が美味しすぎたせいで朝日を見ることもできずに散った儚い命。

 まさかまた会える日が来るなんて。

 

「一体どんな戦い方をしてきたんだ君たち!サーヴァントだけで打倒できるような相手じゃないぞ!」

 

 そう、わかっている。リンゴでお腹をタプタプにしながら皆で走り抜けたあの日を。

 隣のぐだ子に目をやる。

 そこにいたのは、いっちゃってる目の三頭身のサムシング(リヨぐだ子)だった。

 

 彼女は孔明としての力の大半を失っているにもかかわらず強引に連れてきた孔明先生と

フレンド孔明先生のW孔明をいつの間にか呼び出していた。

 

「私は不死身ダ。我々は無尽蔵ダ。この空間すべてガ我々……(ジャーンジャーン)げえっ!ダブル孔明!!」

 

 口上を口にしていた途中でバルバトスくんがボスらしからぬ横山三国志顔で驚愕する。

彼女たちの姿はバルバトスくんのDNAに深く刻まれたトラウマを呼び起こさせたらしい。

 

「バールーバートースくん…あーそぼ…」

「来るな…!来るな……!!来ないで下さい!!!」

「ヒャッハー!塵だ証だ歯車だQPだ!!吐き出せ!もっと吐き出せ!!」

 

 限突黒聖杯イリヤちゃんとダブル孔明先生による一方的な殺戮劇はその後3日間続いた。

 

 

  〇

 

 

 特異点解決後、ゴルドルフ所長のふわとろパンケーキ目当てに食堂に向かった俺たち3人。俺とぐだ子とマシュは先客の姿を目にした。

 

 

 ●万円できてくれた司馬懿先生ことライネスさん、諸葛孔明ことエルメロイ先生の兄妹

それにもう一人、朕こと始皇帝の3人だ。

 同じ中華系だからだろうか、何か面白そうな話をしていたので同席して聞かせてもらうことにした。

 

 自分より前の時代の中華統一の覇者が相手ということなのか

 憑依した英霊の影響もあってエルメロイ先生もライネスさんも恐縮しているようだった。

 

 

「この方たちが扇子から備位務(ビーム)を出せると聞いてな(わくわく)」

 

 その発言に俺は思いっきり吹き出した。

 

「始皇帝陛下、何か熱心にお話を聞かれていましたがお二人に何を聞かれていたのでしょうか?」

 

 というマシュの質問に対する答えがそれだったのがそれに対する回答はさらに俺を困惑させた。

 

「もちろん出せるとも」

 

 先に答えたのは司馬懿先生だった。

 司馬懿先生は基本的に憑依しているライネスさんに肉体の主導権を委ねているが孔明先生と違ってちょいちょい表に出て来る。

 エルメロイ先生は少し間を置いてから言った。

 どうも自身の中にいる孔明先生に確認をとっているらしい。

 

「私の中の諸葛孔明も言っている『もちろん出せる』と」

「…あの、これfateですよ?三国●双じゃないですからね」

「それについては俺から説明してやろう」

 

 そして司馬懿先生は語り出した、およそ1800年前の直接対決の話を。

 

 時は西暦231年。

 諸葛孔明率いる蜀軍は4度目の北伐を決行した。

 

「それに対して俺は自軍を二手に分け、自分の率いる本体を諸葛孔明へと向けることにした。局地戦では敗れはしたが、悪天候が続き物量で劣る蜀は兵站の補給に問題が生じ撤退し始めた。当然俺は追撃することにした。

その途中だ、追撃を命じた張郃が討ち取られたとの知らせを聞いたのは」

 

「張郃というのは魏軍の武将で歴戦の勇者と言われた人物です」

 そっとマシュが耳打ちして教えてくれた。かわいい。

 

「歴戦の勇者を失った魏軍は悲しみにくれたが、俺は考えた『張郃ほどの男を屠ったのはどのような人物か』と。

そして俺と諸葛亮は出会うこととなった。それが五丈原の戦いだ」

 

 次を孔明先生が引き取って言った。

 

「渭水の南に陣を敷いていた司馬仲達に私は挑発を繰り返したが相対してすぐに気づいたよ『こいつはマジやばい』と」

「それは俺のセリフだ。何せこの男は相対すると――いきなり目から備位務を撃ってきたんだからな。あの時とっさに地盤をひっくり返して防御したが、全くなんて男だ」

 

 俺たち3人は困惑とともに言った。

 

「え?」「え?」「え?」

 

 それとなんか孔明先生中の人表に出てきてないか?よほど興奮してるのかな。

 

「何を驚いている、あの乱世の時代、目から備位務くらい撃てなくてどうする」

 

 孔明先生の発言に深く頷き司馬懿先生も同意する。

 

  〇

 

石兵八陣(なんかすごいビーム!)

混元一陣(なんかすごいバリア!)

 

 二人の三国超人対決は、両軍の兵に多大な巻き添えを食わせ激しいビームの応酬で

地形を変えながら数時間に及んで続いた。

 

「諸葛孔明殿、どうやらもう魔力も尽きたようだな」

「それはそちらも同じことでは司馬仲達殿」

 

 司馬懿先生の肩から「ドシン」という重たい音がして何かが落ちた。

 司馬懿先生は平時、力を押さえるために重さ100貫に及ぶ肩当付けていたのだ。

 

 それが合図だった。

 

 続いて孔明先生の足から「ドシン」という重たい音がして何かが落ちた。

 孔明先生は平時、力を押さえるために重さ100貫の靴を履いていたのだ。

 

 二人の超人が相対する。

 

「(あれは……龍の構え)」

「(あれは……虎の構え)」

 

 無風の筈の大地に風が巻き起こり、それはやがて嵐になる。

 

「来いよ孔明!武器なんか捨ててかかって来い!」

「応!」

 

 一撃必殺の剛体術を使う司馬仲達の拳を諸葛孔明は流水の動きでいなし続ける。

 しかし中国大陸で最も苛烈な剛の拳と最も華麗な柔の拳の対照的な二人の肉弾戦は思わぬ形で終わりを告げた。

 孔明先生が吐血したからだ。

 

「諸葛孔明殿、貴殿まさか病を…?」

「見られてしまったか…しかし加減は無用。私はまだ貴殿を葬る程度の力は残しているつもりだ」

 

 その言葉に司馬懿先生は拳を下ろして言った。

 

「いいや、やめよう。貴殿ほどの強者とは万全の状態で戦いたい」

 

 しかしそれは叶うことは無かった。なぜなら戦い自体が孔明先生の過労死という形で幕を閉じたからだ。

 

  〇

 

 ……これなんて北●の拳だよ。

 二人が語り終えるとマシュは困惑しながら言った。

 

「五丈原の戦いは挑発を繰り返す蜀に対して魏が乗らず、持久戦に持ち込んだ結果蜀軍が敗北する結果となったはずなのですが…。

そもそも諸葛孔明と司馬仲達が直接対決したなどという話は聞いたことがありません」

 

 二人の超人は平然と答えた。

 

「何を言っている、相手は目から備位務を撃ってくる怪物だぞ。魏の軍内で対抗できるのが俺以外にいなかったのだから直接殴りあうのは必然だろう」

「私の中の諸葛孔明も深く同意している。……しかしこれで何故私が依り代に選ばれたのかよく分かったよ。やはり三●無双をプレイ中に寝落ちしたのが理由だったか」

 

 三国時代半端ない。俺はそう思った。

 あと朕は凄く満足そうだった。




こんなのですいません。

ちなみに、ほぼ私事ですが、お知らせしてる通り私が脚本・制作で参加した映画が単館上映ですが商業作品として上映されることが決まりました。
東京・池袋の劇場で5月11日から5月17まで限定でレイトショー上映(20:45開始)されます。

公式サイト
https://sorekara.wixsite.com/nov19

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