【凍結】Fate/Grand Order 特異点X 東方戦国魔城 日本 〜戦国の三英傑〜 (餌屋)
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プロローグ
詳しくは小説情報をご覧ください。
儂は願っていた。
『未来』を。
儂は願っていた。
『繁栄』を。
儂は願っていた。
『天下』を。
だから儂は…
***
そこは『戦場』だった。
だがそこは血風吹く荒野でもなければ、砲撃飛び交う大海原でもない。
伝統的な日本家屋が立ち並ぶ、江戸の城下町だった。
***
「家康様!敵勢、江戸各所を次々と制圧!守備隊も壊滅し城をどんどん包囲されております!」
江戸城内、大広間。
ここには甲冑を身にまとった武士達が忙しなく走り回っていた。
その中心には、他と比べて派手目な甲冑の狸顔な年配男性が一人。
彼が、江戸幕府将軍『徳川家康』その人である。
「おのれ…このような失態…一体どこの阿呆が攻めてきたのだ!まだ分からんのか!」
関ケ原決戦を制し、首尾よく征夷大将軍の地位を手に入れ幕府を開設。
ようやく自らの天下を手にした矢先、突如江戸が襲撃された。
しかも敵勢がどこの軍か未だに分からず、戦力も心もとないまま劣勢に追いやられている現状に家康は焦りを隠せないでいた。
そして将の焦りは勿論兵の焦りにもつながる。
まさしく今江戸城内は大混乱に陥り、もはや落城も現実味を帯びたものになってきていた。
「それが…敵勢は旗も上げず進軍しておりまして、非常に統率のとれた部隊であることは間違いないのですが…」
傍に付く軍師の一人が歯切れ悪くそう報告するが今の家康には自分の機嫌を更に損ねる要因にしかならない。
「おのれ…徳川の狙うとは豊臣か?それとも…真田もあり得るか…?ええい…どうすれば…」
「ご報告します!城を完全に包囲されました!敵勢開城を迫っております!」
「何!?もう包囲されただと!?……おのれええええ!」
「ご報告します!敵勢旗を掲げ始めました!…はあ?」
外を見ていた一人の兵がそのまま言葉を失い、釣られて外を見た周りの者も困惑した顔を浮かべる。
「何だ?何が起こっておるんだ!ええい…一体どこのどいつが…」
そして、家康も外を見て同じく困惑する事となる。
「バカな…あれは木瓜の家紋…まさか織田家の手勢だとでも言うのか…!?」
***
「お館様、江戸城包囲完了しました。徳川勢、未だ開城に応じておりません」
「…ならば手筈通り、総攻撃を許可する。ただし、家康は生かして捕らえよ。少々用がある。良いな?絶対に自刃もさせるな」
「畏まりました。伝令!各武将方に攻撃開始を伝えよ!」
江戸城下から少し離れた場所。
そこには江戸襲撃を行った手勢の本陣が敷かれていた。
陣に座するは優雅に髑髏型の杯で酒を呑む『男性』が一人。
「さあ家康…悪いが太平の世は早々に終わりだ…ここからはこの儂、『織田信長』の天下とさせて貰う…クックック…」
***
ここは人類保証期間カルデア。
焼失した人類史復活の為、歴史に現れた7つの大特異点と不定期に現れる特殊な特異点の復元を現在の任務とする、その名の通り『人類最後の砦』である。
そして今、新たな任務が発せられようとしていた。
***
「それでドクター、一体何があったの?」
「それに招集を受けた先輩と私以外に、沖田さんと信長さんがいるのは一体?」
第七特異点突入を間近に控えた束の間の休憩中、突如緊急招集が発せられた俺、藤丸翔太は今作戦指令室に集まっていた。
物々しい空気が漂う司令室にはマシュ、Dr.ロマン、ダヴィンチちゃん…それに何故か沖田とノッブがいた。
「実はね…新たな特異点が発見されたんだ」
「新たな特異点…ですか?」
「ああ、しかもあまり放っておけそうに無い規模のね」
「まさか…第八特異点?」
「いや、流石にそこまで大きいものではないよ。第七特異点を攻略していない段階で魔術王が突然動くとは考えにくいしね」
そうドクターは言うけれど表情は硬いまま。
事態は相当深刻なようだ。
「だけど関わりが無いとは言い切れないのも事実。それに、今回観測された特異点はどんどん時代の歪みが大きくなってきているんだ。時代的にも人類史にとっては重要な時期だしね、正直放置しておくには危険度は高い」
「そこまで深刻ですか…」
「うん、第七特異点突入までまだ少し猶予はあるからね。何とか一頑張りしてほしい」
「ねえドクター、人類史にとって重要な時期って?」
「翔太君には馴染みが深いだろうけど…1603年の日本。ちょうど江戸時代、戦国武将徳川家康が当時の政府である江戸幕府を開いてすぐの頃だ」
江戸時代…確かに何か起きれば十分特異点になり得るな。
ああ、なるほど。だからか。
「なるほど、ですから比較的近い時代の英霊である沖田さんと信長さんがここにいるのですね」
「その通りなのじゃ!」
「ノッブはこう見えて江戸幕府初代将軍、徳川家康公と肩を並べる戦国三英傑の一人、私は後年、幕府側として働いていましたから」
「『こう見えて』?今『こう見えて』って言ったかの?」
「…あなた自分の所業思い返してみてください」
沖田がノッブに白い眼を向ける。
確かにノッブはカルデアに来てからというもの、色々騒動を巻き起こし、出番欲しさに色んな特異点に現れてるからな。
…だが沖田、お前も結構ノッブと一緒にぐだる原因作っていると思うぞ?
「ぐ…」
「ノッブ、是非もないネ!」
「あ!それ儂のセリフじゃぞ!」
「先輩、信長さん、少々静かにして頂いてもいいですか?」
「アッハイ」
ノッブの所為でマシュに怒られた、訴訟。
「まあ、そんな訳でして私もノッブも何かあったとなれば気が気じゃないので…」
「という訳じゃ藤丸よ」
「?」
「今回は儂ら2人も同行させて貰うぞ」
……同行?
「……えー」
「何じゃ微妙な間からの『えー』とは!良いじゃろ別に!役に立つぞ~日本の知名度補正が掛かって強いぞ~」
俺の期待していない事丸わかりな返事に怒るノッブ。
いや…ノッブも強いけどさ…
「沖田は分かるけどアーチャーなら他に候補いるしなあ…」
「酷っ!?」
「というかカルデアで知名度補正って関係ありましたっけ?」
そういやその辺りどうなっているのか気にしたことなかったな。
「…ふっふっふ、儂にそんな口の利き方をして良いのか?藤丸よ」
「…何だと?」
と考えているとノッブが悪い笑みを浮かべてそう聞いてくる。
「具体的な強さでいうとクエスト中特攻+100%は付くぞ?イベントアイテム増加スキルも付くぞ?今回はページ交換用のアイテムじゃぞ?儂を連れて行かなくて本当に良いのか?」
「信長さん…何を訳の分からない事を言って…」
「よーしノッブ!頑張って特異点を修復しに行くぞー!」
「先輩!?」
丁度邪ンヌのスキル上げ困ってたんだよなー!!
「よーし!それでこそ藤丸じゃ!さあいざ行かん江戸へ!!」
「おー!」
「ドクター…何でしょう…このミッションとてもぐだぐだしそうで不安です…」
「マシュもかい?…僕もだよ」
こうして江戸時代へのレイシフトが決まった。
でも。
まさかあんなに壮絶な戦いになるなんて。
この時の俺達は想像もしていなかった。
Fate/Grand Order
人理定礎値EX
特異点X 東方戦国魔城 江戸
戦国の三英傑
ノッブ「ところで第七特異点もう実装されたんじゃが…」
作者「多分第七特異点の話を反映させたらこの創作成り立たなくなりそうで…」
おき太「でもネタ帳見る限り結構設定ガバってますよね」
ノッブ「独自設定の癖にwww設定きちんと考えてないからとかいって最初短編で上げた癖にwww」
作者「やめろ!!しかし実際見向きされないと思ったら一日で意外と見てくださっていてちょっと真剣に書き始めました」
ちゃりん娘「ていうか二次創作でもこの部分あるんですか。そして私もここで出てくるんですか」
作者「某EXP氏へのリスペクトです」
ちゃりん娘「本当にリスペクトしてるならこの創作書かない方が…」
作者「頑張りますので応援お願いします(震声」
という訳で以前短編で投稿させていただきましたFGO二次創作を本格的に書き始めました。
電車の中とかでコツコツ書いていたら溜まりだしたので連載始めさせていただきます。
稚拙な文章等、色々力不足な部分あるかと思いますが、是非応援よろしくお願いいたします。
…え?連載途中のISの方どうなってるんだ?連載掛け持ちする事無いって言ってただろ?
………書きたかったんです是非もない。
そちらも執筆中ではあるのですが、どうにもモチベーションが上がらないんですね。どうしましょう。
以上、イシュタルピックアップ100連爆死しました餌屋でした。
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第1節 混迷の江戸
ガチャ引いてますかー!
自分はクリア後鯖追加考慮して10連1回だけ回したらギルが2体きました。やったぜ。しばらく金鯖当たる気がしません。
そして今日は龍が如く6発売。
切実に休みをください。
もう何度目か分からないレイシフトの光が収まるとそこは森の中だった。
側にはマシュを始めとする今回の突入メンバーが揃っている。
ちなみに今回のメンバーはこんなメンバーだ。
シールダー:マシュ・キリエライト
セイバー:沖田総司
アーチャー:織田信長
キャスター:諸葛孔明(エルメロイ二世)
バーサーカー:源頼光
以上の5名。
…何だかんだでバランス良いな。
「レイシフト終了しました、座標時間確認…はい、問題ありません。1603年の日本、現在地は江戸近くの山中です。」
「んー!久しぶりな日本の空気ですねー!」
「ええ、気分が良くなる気がします♪」
沖田と頼光母さんの嬉しそうな雰囲気に俺も気分が良くなるのを感じる。
「全く…私に休みはないのか…」
「はは…毎度助かります先生」
諸葛孔明の力を借り受けている疑似サーヴァント、ロードエルメロイ二世、通称先生がいつもの通り眉間に皺を寄せながらぼやくのに苦笑いで返すことしかできない。
カルデアの戦力でもあり、過労死枠でもある先生がいると安心できるのだ。メンバー入りは仕方ない。
まあ先生も理解してくれているからキチンと良好な関係を続けられているが。
「んー…匂うのう」
そしてノッブの方を向くと、いつも以上に真剣な顔を一方に向けている。
「どうしたんだノッブ」
「これは血のにおいじゃな」
「!」
その言葉に他のメンバーも警戒を始める。
「…確かに血のにおいがしますね。しかもこれは近づいてきています」
「殺気もないのに良く気付いたな」
「まあこれでも乱世に生きておったからな。この程度は造作もない」
とここでカルデアから通信が入る。
『皆!早速で悪いけど君たちに接近する反応が多数!サーヴァント反応はないけど警戒するんだ!』
「ドクター…」
ドクター…もうこっちで先に気づいているんだなこれが!
何でいつも後出しになっちゃうかなあ!
「何ださっきの光は…!貴様たち!一体何者だ!」
そして現れたのは返り血を浴びた鎧姿の侍達だった。
「現地人のようだが、あの返り血は良くないな」
「突然すみません…あの少しお話を…」
「まさかお主らも魔王配下の超人達か!ええい挟み撃ちとは…仕方あるまい!皆!かかるぞ!」
と、先頭の侍はこちらの話を聞かず刀を抜き、他の侍と一緒に俺たちへ襲い掛かってきた。
「ちょ、ちょっと!?」
「ダメです先輩!皆さん興奮して正常な判断力があるように見えません!応戦します!」
「くっ…一体何なんだ!」
「ハエどもが…私の息子に刃を向けるとは…」
「戦闘ですね?斬れるんですね?やったー!」
「何じゃ何じゃ!儂に歯向かうとは余程命を捨てたいらしいのう!」
ダメだ、三名ほど侍達を殺す気満々だ。
「皆!相手を殺さず無力化するんだ!まずは話を聞いてもらいたい!」
「「「えー…」」」
「えーじゃない!」
そして俺もカルデアでの自由時間に武闘派系サーヴァントに指南を受けた護身の格闘術で応戦する。
乱戦ではあるが、サーヴァント達は勿論の事俺自身も英霊による個人教授を受けたため、並の人間相手に後れを取ることは今は無くなった。
また侍達も刀や槍を持ってはいるが、大体が大ぶりの予測ができる攻撃しかして来ない。
まあ要するに。
「…くっ…ここまでとは…」
特に苦戦することもなく俺達は十数名の侍達を無力化することに成功した。
「はぁ…少しは落ち着きました?」
俺は地面に座り込むリーダー格と見えた初老の男性と目線を合わせ、なるべく柔らかく話しかける。
「…儂らを殺さないのか?」
「何で俺たちがあなた方を殺さなければならないんです?」
「…お主らは、魔王の手の者では?」
「魔王というのが何を指しているのかは分かりませんが、少なくとも今皆さんを害する理由が無いと言い切れます」
「そうか…ではお主らは一体?見たところ日本人と南蛮人に妖術使いまで混ざっているようだが…」
「俺たちはカルデアという集団に所属する者です。名前は藤丸翔太。遠い国からこの日本で異変が起こっていると聞き、調査に来ました」
俺はなるべく彼に理解できるよう言葉を選んで素性をある程度明かす。
「はあ…藤丸殿というのか。儂は平助と申す。よろしく頼むぞ」
「こちらこそ。それで?その返り血は一体何があったんです?今は戦国の世も終わって徳川様が太平の世を敷かれていると聞いていますが…」
「……あんたら、本当に何も知らずにここまで来たんだな」
「え?」
ようやく話が聞ける雰囲気になったので事情を聞こうと踏み込んで見ると、突然平助さんは曇った顔をしだす。
「…そこのすぐ先の開けた場所から江戸が見える。まずは自分の目で見ると良いだろう」
俺達は要領を得ないながらも只ならぬ状況を察し、平助さんが示した方向に走って向かう。
そこで目に飛び込んできたのは
「まさか!?」
「特異点というからよもやと思っておったが...」
「…酷いな」
「ええ…」
「先輩…!」
「あれが…江戸…?」
焼けて荒れ果てた江戸の城下町と、黒い霧に包まれた江戸城だった。
第2節へ続く
重課金兵作者「ところでぐだぐだイベント再実装まだですかね?」
おき太「この作者、前回の本能寺イベでガチャは爆死するわノッブの再臨素材は集めきらないわ等大ポカやらかしてるんですよ」
ノッブ「とにかく作者も反省しとるからせめて再臨素材再配布しとくれ!」
マシュマロ「しかしコハエースGO発売されましたが全くイベントの気配がないですね…って何ですかこの名前!デミ・サーヴァントです!」
重課金兵作者「話は変わるけどマシュケベやばかったですね」
ちゃりん娘「なお限凸出来なかった模様(失笑」
第1節でした。
プロローグで大体予想できたかとは思いますが早速とんでもない状況となっています。
一体何が起きたのか。
そういえば実はプロローグ少し変わっているのお気づきでしょうか?
第七特異点進めております。
書いている時点では第9節到着しています。
ネタバレなしで感想言うと、何でしょうね相手の強大さへの絶望感。
本当に最終決戦始まるまでにクリア出来るのだろうか...
それでは第2節をお楽しみに。
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第2節 歩き巫女<1>
身が引き締まる思いです。
お…お手柔らかに…
※12/11誤字脱字等修正
一週間前の事だ。徳川幕府が開かれ治世に期待が高まっていた頃、突然江戸が襲撃された。
襲撃してきたのは鬼の面を被った武士達。数はそこまで多くはなかったんだがその面の通り鬼のような強さだった。
そして瞬く間に精鋭揃いの守備隊を壊滅させそのまま江戸城を攻め落としよった。
「お主が『徳川家康』か…何とも落ちぶれたものだな」
「の…信長公…バカな…」
儂は城門前に集められた徳川配下の生き残りだった。
儂らの他にも武将方や家康様も引きずり出されたが、その前にあの男『織田信長』が現れたんだ。
「お…織田信長…」
「信長公だと…!?」
「死んだはずでは…」
「というより、全盛期のお姿のままとはどういう…」
信長を目の当たりにすると周りの仲間たちがだんだん騒ぎ出した。
そりゃそうだ。
例え密かに生きていたとしてもここまで若さを保つなどあり得ない。
「黄泉の国より今帰還した…第六天魔としてな」
第六天魔。
その名は当時の話を知る誰もが恐れる名だった。
そして皆、徐々に理解した。
『織田信長』が真に『第六天魔』として蘇ったと。
そして信長が家康様に何やら話しかけた。
「さて…『家康』よ…一つだけ聞きたい事がある」
「な、何かな?」
「『徳川の秘宝』はどこだ?」
「…!!何故それを…」
「ふん、何故儂が知っているかなどどうでも良い。答えは?」
「…知らんな」
「そうか」
そこからは瞬く間だった…
信長の腕が動いたかと思うと一刀にして家康様の首が…
そこからはまた荒れた…
徳川兵たちが騒ぎ出し信長の鬼面達に襲い掛かり、返り討ちにされていき…
その中で武将のお一方が、儂を含めた何名かに声をかけ…そのお方の導きで何とか逃げ延びた、という訳だ。
***
「これが儂の知っている顛末だ」
平助さんが事情を説明してくれるのを最後まで聞いた俺達だったが、結果得たのは声も出ない位の驚きだけだった。
「つまり…徳川家康は既に殺された…?」
「家康公が…織田信長に?」
「嘘じゃろ…」
「最悪だな…」
「…」
『なんてこった…この時点で徳川家康が死亡すれば、その後の歴史に重大な齟齬が生まれてしまう!そうか、だから急激に特異点化が進んでいたのか!』
ドクターが通信先で狼狽えた声を上げている。
その通り、ここで徳川家康が死ぬと後の大坂冬の陣、夏の陣の史実に影響を及ぼすし、それ以前に江戸幕府という政府機構が無くなると歴史が完全に狂う事になる。
この深刻さはもはや洒落になってない。通常特異点と同レベルの深刻さだ。
いったん落ち着こう。俺達は一体どう動けばいい…
俺は混乱する思考を何とか落ち着かせ、整理する。
そしてまず確認しなければならない事があった。
「平助さん、その魔王『織田信長』は男性だったんですね?」
その質問に仲間たちがハッとする。
「ああ、当たり前じゃ。信長公はれっきとした男よ。がっしりとした体つきでな。昔は何だかんだ憧れていた兵も多かったと聞く。だが…あの時見た信長公は、人ではない…それこそ魔王の雰囲気が漂っていた」
「念のため聞きますが、彼女に似ていたりは?」
「はぁ?」
そうノッブを示しながら問う俺に平助さんは怪訝な顔を浮かべる。
これで一つはっきりした。
「魔王信長は…ノッブとは別人?」
「ええ、そして一度死んだはずという事は恐らくサーヴァントなのでしょう」
「平助氏らが件の男を『織田信長』と認識している事を考えれば、別側面、別可能性のサーヴァント『織田信長』である可能性が高いな」
「何だ、またノッブが何かやらかした訳じゃないんですね」
「うおい沖田!儂はそんなホイホイ事件など起こさんぞ!」
「どの口が…」
「なあ、あんたらが今言った『サーヴァント』って、超人たちの事か?」
俺達が若干話題がそれつつも話を整理している中、平助さんがそんな質問をした。
「サーヴァントの事を知っているんですか?」
「儂らは『超人』と呼んでいるがな。奴らは一人一人がとんでもない強さで、しかも皆死んだはずの人間なんだ」
「なるほど、確かに俺達がサーヴァントと呼んでいる存在と同じみたいですね」
「しかも今、儂らを指揮している方々も超人なんだよ」
ん、どういう事だ?
「魔王が復活してからというもの江戸周辺では超人となった死んだはずの武将方が何名も現れてな。今やここら一帯は魔王とそれ以外の二つに分かれた戦場となっているんだ。そして儂らは落ち延びて以来、その打倒魔王を掲げた武将方の軍に入っているのさ」
「サーヴァント達は、全員武将なんですか」
「いや、まあ皆という訳じゃないんだが。名の知れた方である事は間違いない」
「そして、信長様に敵対する陣営の名はその名の通り『反信長同盟』。でしたね?」
「くそっ!追いつかれたか!」
「何っ!?」
突然声が聞こえてきた事に驚きつつ警戒を強めると、周りを巫女服姿の女性たちが包囲しているのに気が付いた。
彼女たちから俺達に浴びせられるのは、純粋な殺気。
「…ドクター、今の今まで分からなかったのって」
『ああ、高ランクの『気配遮断』が働いていたと考えてまず間違いない!それに彼女たちからはサーヴァント反応が出ている!』
「お初にお目にかかります。未来からやって来た魔術師どの。私はサーヴァントアサシン、真名を望月千代女と申します」
望月千代女、巫女たちから一歩前にでてきた女性がそう名乗る。
黒髪をポニーテールに纏め凛とした顔を浮かべる綺麗な人だった。
『望月千代女…?もしかして武田信玄に仕えたという!』
「ロマンも良く知っとるのう。その通り、あ奴は武田の忍びじゃ」
望月千代女。
甲賀流上忍の出身で、武田信玄に仕え「歩き巫女」というくノ一衆を育成したとされている。
「江戸周辺警戒でそこの兵達をわざと泳がしてみれば…とんでもない大物が釣れました。感謝しますよ」
「…まさか、儂らから死人が出なかったのは…」
「当たり前でしょう?我々が何の力のない人間を、万が一にも取り逃がすわけがないでしょう」
なるほど、どうやら平助さんの返り血は彼女たちとの戦闘によるものだったようだ。
わざわざそこまでの出血をさせてまで騙したというのか。
「いやそんなんで騙される訳ないでしょ…」
沖田余計な事は言うな!
しかし先ほどの千代女の発言。俺を未来から来た魔術師と言った。
つまりこっちの事はお見通し、自分たちが人理崩壊の手助けをしているというのは理解しているという事か?
「ふふっ」
「何がおかしい?」
「いえ、とんでもない。嬉しいのですよ。たった少しの発言で様々な事実まで思考が行くその洞察力と、あなたを信じ独断で動かず指示があるまで手を出そうとしないお連れのサーヴァントの方々…正直予想以上のお方でして」
「あんた…」
「……さて、それではあなた方を信長公のお連れしましょうか。といってもこの時代の歪みを直しに来た方々ですからね…歪みを作った原因である私たちの願いに素直に応じてはくれないでしょう」
「良く俺達の事がわかっているようだな」
「ええ。あなた方の事は信長公から良く聞いております。なので…」
「危険な芽はここで摘み取るとしましょう」
そして千代女の殺気が一段と強まる。
「平助さん!皆さんを連れて下がっていてください!」
「す、すまん助かる!」
ここからはただの一般人の平助さん達には危険すぎる。
『アサシン望月千代女と他巫女サーヴァント達戦闘態勢に入った!状況は完全に包囲されている!気を付けるんだ!』
「マスター、斬っていいですよね?ね?」
「ふん、忍風情が儂によう歯向かうわ」
「何人たりとも、私の息子に手出しはさせません…!」
「マスター、指示を!」
皆が戦闘態勢に入り俺の指示を待ってくれる。
「よし…早速だけどこの時代最初のサーヴァント戦だ。何とか切り抜けて状況を打破するぞ!」
『応!』
「さあ、では始めましょうか。歩き巫女と言えど一人前の忍。我らの神髄、とく味わっていただきましょう」
作者「第七特異点クリアしたぞー!面白かった!それしか言えない!」
ちゃりん娘「色々言いたい事はあるのですが完全なネタバレですしね」
作者「まだ第七特異点到達していない方はぜひ急いで!」
おき太「ところでノッブ。ノッブを使用した際の致命的な進行不能バグについて一言」
ノッブ「儂が何をしたんじゃああああああああああああ!!!!」
作者「詫びぐだイベ待ったなし」
初めて不具合報告見た時、目を疑いました。
今は修正されたようですが。
本家EXP様の方でもネタにされそうです。
第七特異点は非常に楽しめました。
バトルは結構面倒だった印象←
まだクリアしてない方に一つだけ言うならラスト近くはなるべく???のゲストサーヴァント使うと良いと思います。
取りあえず鯖育成と絆上げを最終決戦実装まで頑張ります。
俺に歯車をくれ。
それではまた次回。
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第2節 歩き巫女<2>
今回よりガバ設定が火を噴きだします。
どうかご注意を。
森に叫び声と戦闘音が響き渡る。
アサシン・望月千代女率いる謎のくノ一集団と俺達カルデア勢の戦い。
そして俺達は、今確かに苦戦していた。
決して負けそうという訳ではない。
くノ一達は確かにサーヴァント反応が出ているが、一人一人の強さは非常に低く、脅威ではない。
しかし、彼女たちは4人一組で俺達一人一人と戦っており、更に特殊な能力によって俺達を手こずらせていた。
「ちいっ!何なんですかこの人達は!斬っても斬っても死なないんですけど!」
「手ごたえは確かにあるのに…まるで傷を負っていないなんてっ」
「ええい…これではじり貧だな」
前衛を担当する沖田と頼光母さん、そして後方支援に回る先生がそうぼやく。
確かにこちらの攻撃は通っているはずだ。
相手はひるむし、吹き飛ばすこともできるし。
しかし傷がつかないのだ。
まるでゾンビ。いやゾンビの方がよっぽど攻撃が効いてくれるだろう。
「どうなってんだ?まさか、これがアサシンの?」
そして俺は一つの可能性にたどり着く。
この戦闘中の巫女たちは千代女の宝具による何らかの効果を受けているのか。
「いや待てよ…」
ウチのカルデアには百貌のハサンというアサシンがいる。
彼女、いや彼女たちの宝具は、多重人格という特性を活かした群体分裂。
もし彼女たちが百貌と似たように千代女の宝具から生まれた存在だとしたら?
「ふふっ、もうたどり着いたようですね」
俺が推理していると急にすぐ真後ろから千代女の声が響いた。
慌てて目をやると目の前には小刀を俺に向けて振るわんとする千代女の姿。
「バカな、さっきまで向こうに!」
「いかん!藤丸!」
「マスター!?」
直撃コースだ。
幾ら鍛えたからといってサーヴァントに勝てるほどの力はないし、避けるにしても完全に反応が遅れた。
俺は振るわれるその刀を見つめ、
「先輩!!」
マシュがガードに入ってくれるのを待った。
「ナイスだマシュ」
「ご無事で何よりです!」
マシュが大盾を千代女に振り下ろす。
しかし、千代女の敏捷値もかなり高いのだろう。難なく攻撃をかわし距離を取られた。
「ふっ、棒立ちとは…サーヴァントが必ず助けてくれると信じていたかのように見えましたね」
「ああ、ウチのマシュは優秀だからな」
嘘です結構びびってました。
本当マシュ間に合ってくれて良かった。
「しかしそのおかげで何となくあんたの能力が想像ついたよ」
「ほう?」
「あんたの能力、いや宝具か…それは、固有結界だ」
俺の推理に千代女は感心したような顔をする。
「せ、先輩?固有結界とは、どういう事ですか?」
「まあ正確には違うだろうけどな。恐らく、一定範囲内に幻影のくノ一達を召喚、そのくノ一達を地点指定してそこと交換転移可能ってとこか?」
「素晴らしい、良く見破りました!」
千代女は満面の笑みを浮かべて推理が正解であることを示し拍手する。
「私は生前、自分の教え子たちを『望月千代女』を再現するように育てました。そう、『望月千代女』は個にして全。それが宝具となり教え子たちを『望月千代女』として一定範囲に召喚できるようになりました。本体以外は幻影である為私が健在な限り半永久に自立行動ができるのです」
「なんて強力な」
「更に彼女たちは『望月千代女』であるがゆえに私がそこにいるという事実を生み出します。これを利用した疑似的な空間転移が可能なのですよ」
「『空間転移』だって!?疑似的で制限があるとはいえ魔法の域にある技術だぞ!」
「チートじゃな」
確かに、幾ら宝具と言えどあまりに強い。
しかしそれほど便利な宝具でもなさそうだが。
「その宝具、維持魔力がトンでもなさそうだな」
「ええ、まあ。流石に普段では中々使いづらいものがありますね。範囲指定があるので諜報活動にも使えないですし」
しかしそれでも破格の宝具だろう。
アサシンの持つ気配遮断スキルと合わせると、幻影体さえ配置できれば完全な死角から本体の膂力で奇襲が可能なんだ。
「ですがご心配なく」
「?」
「我々には魔力に不安が残らない位のバックアップをしれくれるものがあるのですよ」
そういった千代女はこれまで以上に殺気と闘気を放つ。
『そうか!この時代を特異点化させる原因となっているのは信長軍。なら織田信長が聖杯を持っていてもおかしくない!』
「聖杯の魔力バックアップが働いているのか!」
となるとまずい。千代女の宝具に対する対策が無い以上これはただの消耗戦だ。
しかもこっちが一方的に魔力を使い続けるだけの。
勝てない。
今すぐ離脱して態勢を立て直す必要があるが、この包囲網を平助さんら保護対象を抱えて逃げるには無理がある。
「それではそろそろ終わりにしましょう。盾持ちのお嬢さん、マスターを果たして守り切れますか?」
そう言い放ち、千代女は今度こそ終わりだとばかりに刀を構える。
「そこまでだ!」
すると突如、馬に乗った騎兵たちが森の中を駆けて千代女の包囲網を突入してきた。
「おおっ!来てくださったのか!」
平助さんが騎兵たちを見て喜びの声を上げる。
「皆!急いで我らに乗れ!撤退するぞ!」
「応!さ、藤丸殿や他の皆様も行きますぞ!」
「え!?え!?!?」
「マシュ!行くぞ!」
「は、はい!」
この機を逃すわけにはいかない。
俺はマシュに声を駆けると皆にも視線をやって撤退の指示をだす。
「むっ同盟の増援か、しかし逃がしはしません!」
「いや!撤退させてもらう!」
俺達が騎兵たちと共にその場を離脱する中、追撃しようとする千代女達の前にクリーム色の馬に乗った一人の少女が立ちはだかるのが見えた。
「ん!彼女は!?」
「安心せえ藤丸殿。あの方は見た目はああだが名将と謳われた方よ!」
名将…え、彼女武将なのか!?
「そこをどけえええ!」
「宝具開放…『小豆長光八閃(あずきながみつはっせん)』!!」
彼女が宝具を開放すると、一筋の光が煌めき、轟音とともに千代女は吹き飛ばされた。
あまりにもの衝撃だったからか、宝具の維持が出来なくなったのだろう。他の千代女達が消えていく。
注目すべきは宝具の真名とうっすらと『8本の刀が切りかかったか』のように見えたことだ。
「小豆長光、か…」
そして俺達はそのままその場を離脱した。
***
どれくらい走っただろうか。
既に山中を抜け、野原に出てきた。
しかしのどかな所は言い難い。
少し周りに目をやれば、戦闘の余波が辺りに散らかっているのがわかる。
要するに野ざらしの死体があるのだ。
「これは…」
「まあ、戦国の世なぞこの位珍しくなかったからのう。本当に戦が起こっているようじゃな…」
なるほど、戦国武将であったノッブは見慣れているのか。
他のメンバーも大なり小なり慣れているのだろう。先生は多少眉間の皺が深くなったかな?
だが俺やマシュは幾つもの特異点を渡り歩いたといっても流石にまだ慣れない。
「この辺りまでくれば安全でしょう…あなた方は未来から来たという方ですね…?」
と、後ろから追いかけてきた先ほど千代女を撃退した女の子が俺に声を駆けてくる。
ストレートの黒髪に頭にカチューシャを付け、白い透き通った肌をした少女。
彼女が本当に『あの』武将なのか…まあノッブ等前例もあるからなあ。
「あなたは…ありがとうございます。助かりました」
「いえ…指示通りの事をしただけです…」
しかし先ほど戦闘中はキリッとした感じだったが、今はとても寡黙な様子だ。
戦っている時だけ性格が変わるというやつなのだろうか。
「色々聞きたいところでしょうが…取りあえず我々同盟の本拠地にお連れします…あなた方を待っている人もいるので…」
「待っている人?」
「…『同盟』の代表、豊臣秀吉です」
***
江戸城、天守。
そこは新たな城主となった『織田信長』の本拠であり、司令室でもあった。
「そして、ボロボロの状態で帰って来たという事か、千代女」
「…申し訳ありません」
椅子に腰かけ優雅に酒を呑む信長の前に、何とか城にたどり着いた千代女が土下座の状態で報告を行っていた。
「それで?魔術師とサーヴァント達は『同盟』の元に向かったのか?」
「恐らく。既に兵を動かし逃走方向の索敵を行わせております」
「よい」
「は?」
「よいと言ったのだ。奴らは泳がせておけ。それより同盟とは関係なく各地で抵抗を続けている武将たちはどうなった?」
「…鬼兵隊達の物量に敵軍なすすべなく追い込まれている模様。しばらくすれば各地より制圧の報が入るでしょう」
「そうか。もうよい。ご苦労だったな千代女、下がってよいぞ」
「…」
その信長による赦免の言葉に千代女は驚いた様子を見せる。
「信長様…私に罰をお与えにはならないのですか…?」
「ふん、バカを言え。貴様は忍だ。忍が敵の戦力を確認してくるという仕事をこなしたというのに罰を与える阿呆がどこにいる」
「…はあ」
「よいではないか。信長はお主を褒めておるのだ。ありがたく受け取っておけ」
「え、お、お館様!お戻りでしたか!」
千代女に背後から声が掛けられる。
大柄なその男を見るに千代女は信長以上に恭しく頭を下げる。
「おお、帰ったか。して、首尾は?」
「うむ。とうに死んでおるのははっきりした。んがやはりここに来ているかは分からんのう」
「変質しているとはいえ、枠は必ず割り当てられているはずだ。不確定要素は手元に置いておきたい。何としても探し出せ、『虎』よ」
「応ともよ。千代女は借りていくぞ」
そういって『虎』と呼ばれた男は千代女を連れてその場を後にする。
「さあ、人類最後のマスターよ。貴様の手腕、とく期待しているぞ」
第3節へ続く
おき太「私のセリフが一言だけについて」
ノッブ「千代女の宝具がトンデモ設定な事について」
作者「ぼくのかんがえたさいきょーのサーヴァント」
ノッブ「おいこら。取りあえずもう一度宝具の能力を教えてくれんか」
作者「要は一定の範囲内に限り、魔力が続く限り実体を持った幻影を召喚でき、更にその範囲内で自分と幻影の位置を入れ替える能力です」
おき太「望月千代女は個であり全とかは…」
作者「独自設定です。調べた際の情報量が少なくかなり独自設定多めになってしまいました」
ちゃりん娘「実際空間転移は第五次キャスターのメディアだから使用可能なほどの大魔術なはずですが本当に可能なんですか?」
作者「正直ただの意識転移みたいな事も考えたけど宝具にしてはしょーもないなと。その代わりと言っちゃなんですが、燃費の悪さや幻影体を配置しているところじゃないと移動できないという制限を加えました」
おき太「でも燃費は聖杯のバックアップがあるから問題なしみたいですけど」
作者「ぐっ」
ちゃりん娘「何はともあれ読者の皆様は本作中気になる設定が多々あるかと思われますが、お手柔らかにエンタメとしてどうかお楽しみくださいね」
第二節でした。
いかがでしたでしょうか…
次回はついに真打登場です。
お楽しみに。
感想評価等お待ちしております。
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第3節 反信長同盟
ついにウチのカルデア、QPの底がつきました。
深刻な財政難。
明日木曜は宝物庫荒らしに明け暮れることになりそうです。
更に二時間ほど歩き進むと、次第に山間の小さな村が見えてきた。
いや村ではない、殆どが木造ではあるがもはや要塞並みの設備だった。
「あそこが本拠地になります…廃村を改装して再利用しました…」
先導してくれる武将の『彼女』がそう教えてくれる。
なるほど、実際の距離的にはそこまでではないが、江戸と山を一個挟んだ場所だ。
中々敵もこちらまで偵察も来ることはないのだろう。
本拠地に近づくと、思った以上に鎧姿の兵達や逃げ延びてきたのか、女性や子供たちの姿があった。
「…なんか、すごく賑わっていますね」
「まあ…暗いばかりでは息苦しいと秀吉が率先して盛り上げているので…」
「あーサルは相変わらずのようじゃの、『龍』よ」
ノッブがそう言うと、『彼女』は驚いたのかビクッと身を強張らせ、ジト目でノッブを見た。
「っ…やはり気づいていましたか…魔王」
「そりゃあの宝具を見れば誰だって気づくじゃろ。現に藤丸も気づいておったろ?」
「まあ、な。『小豆長光』を持つ武将って言えば一人しか思いつかないし」
「むっ…魔術師さんまで…」
「え、先輩。彼女の真名をご存じなんですか?」
『彼女』が俺にまでジト目を向けだす。
何か悪い事してしまった気分だ。解せない。
俺は気を取り直して、マシュの質問に首を縦に振って答える。
「ああ、名刀『小豆長光』の所有者として有名で、クリーム色の馬に乗る武将と言えば…越後の龍、上杉謙信くらいだろ」
その言葉に、ノッブを除いた他のメンバーが驚きの声を上げる。
『僕もまさかとは思ってたけど、本当にあの上杉謙信なのか!?女性というのにも驚いたがまさかこんな…その…可愛い女の子だとは!』
「ドクター?」
上手い言葉が見つからなかったんだろうな…
「歴史家達が知れば発狂物だろうな…」
「でも男として伝わったけど実は女って英雄、ホント良く多いですね~」
「ホントですね~」
「沖田さんと頼光さんは他の方の事言えないと思うのですが…」
騎士王しかりローマ皇帝しかり伝説の海賊船長しかり…
実はソロモンあんななりして女でしたとか言われてももう驚かないな。
いやそれは驚くか。
「まあ…どうせお話しするつもりでしたし…もう良いです」
上杉謙信はそう言うとそっぽを向いてしまった。
何だ、ちょっと可愛いな。なんで怒ってるのか全く分からないが。
「そ、そういえば上杉公」
「謙信で良いです」
「へ?」
「呼び捨てで構いません。敬語もいりません。この身はサーヴァント…別にあなたが私の配下という訳ではないですし…その代り私も呼び捨てにさせてもらいます…」
「ああ、了解。それで謙信、君は彼女が織田信長だと分かるのか?」
「ええ…今の私は彼女と直接面識がある訳ではありませんが…何となく雰囲気で分かりました」
「なるほど…それにしては友好的に思えるんだけど」
「まあ…私たちが生きていた頃は対立もしましたし、江戸を襲撃したのも『織田信長』ですが…同盟の兵を守ってくださったのですから私に信用しない理由はもはやありません…」
「そうか、ありがとう」
「ですが」
「ん?」
「他の武将達はどうか保証しかねます」
そんな事言われると怖いんだけど。
ノッブとか冷や汗ダラダラだし。
俺達大丈夫かなホントに?
「着きました。どうぞお入りください」
そうしている内に俺達は村の中でも特に大きな屋敷にたどり着いた。
謙信に導かれるままに中に入ると、広間に一人の青年が座っていた。
何となく後ろから光が差し込んで輝いているように見える。
「おお!起こしになったか!ささ、カルデアの方々どうぞ座りなされ!」
「失礼します。あなたが…」
「おお!サルではないか!!」
と、俺が話を聞こうとしたがノッブが横から興奮気味に話しだす。
ノッブに『サル』と呼ばれた青年…豊臣秀吉はノッブを見て呆然とした顔を見せる。
「…まさか、ノブナガ様?」
「おお!儂の事がわかるようじゃの!久しいなあ!」
「ノ…ノブナガ様ですな確かに!分かりますぞ!何を隠そう今の儂はあなたに仕えた記憶があるのです!」
***
「なるほど、今のあなたには二つの可能性に分かれた生前の記憶が両方ともあるのですね」
「そうじゃ。この時代の儂は、現江戸城主である信長様に、別の時代の儂は今目の前にいるノブナガ様にお仕えした。その両方を知っております」
ようやく場が落ち着き、ゆっくり豊臣秀吉から話を聞いてみた。
「儂が知っている限りこの時代の信長様は、何者かによって聖杯の力で召喚され人理崩壊の手助けをしているようじゃ」
「それでは魔王信長はただ操られているだけと?」
「そこまでは分からん。忍びが集めてきた噂を聞くに、どうやら信長様には人理崩壊以外に何やら目的があるようじゃが…」
「目的?」
「うむ、とにかく放っておくわけにはいかん。例え操られていたとしても今の信長様は無差別に悪意を振りまく魔王。倒さねば人理崩壊はもはや免れぬ」
「そうですね」
「儂や皆様を連れてきた上杉殿は信長様が召喚したサーヴァント達へのカウンターとして聖杯に召喚されましてな。他にも三騎、同盟に参加してくれたサーヴァントがおります」
なるほど、同盟側は合計五騎か。
俺達合わせても十騎。敵に聖杯があるとしても十分な戦力だろう。
「ところでカルデアの事や人理崩壊の事はどこで?」
「む…まあ、儂にも優秀な情報源がいると言っておきましょう」
…はぐらかされたか。
少し気になるが、まあ今はそこまで重要じゃないだろう。
「…俺達はここまでに敵のサーヴァント・アサシン望月千代女と交戦しました。更に魔王信長がサーヴァントとして向こうにいるとすると…他に真名がわかっている相手は?」
「一応全員。とはいえ信長様の事じゃ、隠し玉があるやも知れぬが」
全員、と来たか。
「…既にこの一週間で部隊同士で何度も戦闘が起きていましてな。先日も大きな衝突があってこちらの兵力が大きく下がってしまった。もう一刻の猶予もないのです」
「なるほど…それで、俺達に何を求めるんです?」
「…ぜひ、同盟に協力していただきたい。一緒に信長様を倒し、人理崩壊を食い止めましょう」
ま、そうだろうな。
こちらとしても受けないという選択肢はない。
しかし…
「先輩、ここは協力する他無いと思われます」
「ええ、幾ら私たちでも大軍を相手に戦うのは危険と思います」
マシュと沖田が誘いを受けるよう促す。
いや、分かるんだ。だがどうしても一つだけ懸念事項がある。
「…藤丸」
先生が、念話をつかって俺に話かけてくる。
「お前の考えていることは何となく想像がつく。私も少し違和感があるからな。だがここは受けておく方が良い」
やはり先生もそうだったか。
うん。証拠はない。言ってしまえば勘だけだ。
だが、恐らく秀吉は何か隠している。いや、何か知っていて言おうとしない。
それだけがどうしても不安なのだ。
「…ま、ええじゃろ藤丸。儂も協力に賛成じゃ」
「ノッブ…分かった。豊臣殿、人類保証機関カルデア所属、藤丸翔太以下サーヴァント5名。反信長同盟と協力体制を」
「ちょ~っと待った」
と、俺が申し出を受けようとするがそれを遮る声が聞こえてくる。
ふすまを開け現れたのは緑色の甲冑に身を包み、何丁もの火縄銃を腰に下げる飄々とした男。
そして黒の甲冑に槍を携えた大柄の男だった。
「秀吉~そういう大事な話は他の幹部にも話を通してからじゃなきゃダメだろ」
「孫市…帰ってきておったのか。忠勝殿も」
「孫市に忠勝…って、まさか雑賀孫市に本田忠勝!?」
「うおい!?何でお主らがここにおるんじゃ!?」
これには流石のノッブも驚いたようだ。
戦国時代の傭兵団『雑賀衆』頭領、雑賀孫市は実在するのか怪しまれた事もある人物だし、本田忠勝に至っては…
『二人からサーヴァント反応が出ているが…バカな!戦国最強と謳われた本田忠勝は史実じゃまだ生存しているはずだ!』
「まさか…」
と、俺が一つの可能性にたどり着くと、察した本田忠勝が口を開く。
「その通りだ、人類最後のマスターよ。お主らが助けた平助達は儂が江戸城から抜け出す手助けをした者達だ」
「じゃあ、平助さんが言っていた武将の方というのは…」
「儂だ。しかし致命傷を負ってな。逃げ切った後息絶えてしもうたが…何の因果かサーヴァントとして即召喚されたのだ」
「そうでしたか…」
特異点は何でもありかよ。
そんな事を少し思ってしまう。
「ところで孫市、お主は藤丸殿たちとの協力関係に反対だと?」
「当たり前よ!確かにお前さんから教えてもらった事や聖杯からの知識で事情は理解してるぜ?だからといってこいつらをそのまま信じる訳にゃあいかねえなあ。それに…そいつらの仲間には『織田信長』がいるんだぜ?」
孫市はこちらに喧嘩を売るように…いや実際売る気満々の目と口調で口元をニヤッとさせながら俺達を睨み付ける。
控えめに表現しても不快な態度だ。
しかし…弱ったな。予想はしていたもののこんな所でノッブの素性に突っ込みが入るとは。
「お主も分かっておるじゃろ!ノブナガ様は儂らの敵である信長様と全くの…」
「別側面だって言うんだろ?だがそれでも『俺が生前敵対した』信長には違いねえさ」
「そんな事を言うたら儂だって同じじゃろ!!」
「お前さんはもう認めたから良いんだよ。とにかく!俺は誇り高い雑賀衆頭領!仕事相手は自分で判断したいんでねえ」
「むむむ…忠勝殿も反対なのですかな?」
「ああ。理屈では信長と目の前にいるノブナガは別人と分かっていても…感情はどうにもならん。信に値する確証が欲しい」
「なら…どうすれば信じてもらえます?」
俺はこちらも挑戦的な目で二人に問う。
それを見た孫市は更に口元をニヤッとさせた。
「そりゃあこういう時はいっちょ喧嘩で分かりあうしかねーだろ」
作者「ピックアップ2の告知が来たぞ~!」
おき太「でも去年の年末年始の事を考えると極悪ピックアップ来そうですよね」
ノッブ「しかも最終決戦イベントでガチャ来ない訳ないじゃろ?お財布に良くないのう」
作者「吐きそう。コアトルも欲しいしゴルゴーンも欲しいし、でもピックアップで弓ギルやら7章ゲストが出たらそっちも欲しいし」
ちゃりん娘「皆さんは計画的にガチャ引きましょうね」
作者「石の貯蔵は十分か」
ちゃりん娘(この人また絶対課金するな…)
第3節でした。
外見に関して、秀吉はコハエースでも登場した豊臣秀吉より少し大人になった感じのイメージ。
雑賀孫市は戦国大戦の声優:杉田智和verまんまのイメージ。
本田忠勝は外見だけですが、大河ドラマ真田丸で藤岡弘、氏が演じられた本田忠勝を想像していただければ。
ちなみに前回登場の望月千代女は犬夜叉の珊瑚がポニテ姿で巫女服着ているイメージです。
若干無理くり感は否めない。
絵が描ければなあ…うまい事このイメージを伝えられると思うんですが。
ちなみにイメージボイスも考えてはいます。
次回は戦闘回。お楽しみに。
感想評価お待ちしております。
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第4節 戦国最強は八咫烏と共に<1>
「おっしゃ~んじゃ始めっか!」
俺達は孫市に連れられて屋外の広い空き地にやってきた。
ここはどうやら訓練場として使っているようだ。
辺りで兵達が訓練に勤しんでいる。
孫市はその中でもひと際屈強な一団に近づき声をかけていた。
一言二言話すと、彼らを引き連れて戻ってくる。
「よし、折角だしきっちりすっぞ」
「え、その方々は…」
マシュが戸惑った声を上げる。
孫市の後ろに控える兵達が皆普通の人間という事が気になるのだろう。
「なるほど、こちらの戦力はサーヴァントのみだ。これからの事を考えて少しでも戦えるよう経験を積ませるという事か」
「お、良く分かってんじゃねーか。ルールは簡単だ。お前らは俺達含めた全員を戦闘不能、もしくは降参させれば勝ち。俺達はその逆。勿論お互い殺しは無しだ、流石にな」
「分かった」
(…えー斬っちゃダメなんですか)
(おいこら)
近藤さん…沖田総司が見境なさすぎます…
会った事も無い新撰組局長に対し思わずぼやく。
お互い、戦闘のために十分距離を開ける。
いよいよだ。ここで勝てば、信用を得られ強力な味方が増えるだろう。
秀吉に対する懸念はこれから払拭していけば良い。
「さて、忠勝のおやっさんは準備良いですかい?」
「ああ、構わん」
「んじゃあ早速…てめえら、手加減はいらねえ!本気で行くぞ!」
「「「応!」」」
「敵一団、戦闘態勢に入りました!」
「槍兵が前衛、後衛に鉄砲隊…そして最後にサーヴァント2体ですか」
「よし、それじゃあ沖田、頼光母さん先頭に一般兵を最速で無力化。サーヴァント戦になったら雑賀孫市を先に攻める」
「「「了解!」」」
お互い戦闘態勢を整える。
一瞬の静寂。
先に動いたのは勿論こちらだ。
まずは沖田だ。
「前衛は槍兵。という事はセイバーである私の出番ですね!」
ヒロインXみたいな事言うな。
「…行きます。はっ!」
掛け声と共に沖田がそのA+という敏捷値を持って飛び出し、槍兵達の懐へ潜り込む。
「うおっ!は、早い!?」
「あなた方は遅いです!」
そして沖田は一太刀、一人目の腹に向けて浴びせ…おいおいちゃんと峰打ちだろうな!?
「ぐぅ…強すぎる…」
良かった。血を流さずに気絶してくれたようだ。
しかしあんな振り方、刀が折れないか不安になるな…
そうハラハラ見守っていると沖田は早速二人目を沈めていた。
「くっ…やられっぱなしでいられるかあ!」
最後に残った槍兵が沖田に向けて槍を突き出し突進してくる。
それを見た沖田は刀を構えなおし、一呼吸…おい、あいつまさか。
いやな予感がした俺だったが、もう止めるには遅かった。
「…一歩音超え、二歩無間…」
その神速を持って沖田は瞬間移動と見間違うかの如く駆けだす。
そして。
「…三歩絶刀!」
次の瞬間、沖田は突進する三人目の目の前に躍り出ていた。
「うおっ!?更に早い!?」
「『無明三段突き』!」
沖田が刀を突き出すと、轟音が響き三人目の槍兵が吹き飛ばされる。
これが、沖田の持つ対人魔剣。一度目の突きに二度目と三度目の突きを内包させ、『一度に三回突いた』という事象飽和をも起こす秘剣。
「おいお前殺し無しだって言ったよなあ!!!」
と孫市が最後尾から焦った顔で叫び声をあげる。
「安心してください!衝撃で吹き飛ばしただけです!」
グシャッ
「おいいいい!?吹き飛ばしたウチの兵が地面に落ちて出しちゃいけねえ音出してっけどおおお!?」
「死んでいません!」
俺は冷や汗が噴き出るのを感じずにはいられなかった。
次は鉄砲隊。
既に彼らはこちらに向けて射撃を開始している。
ノッブの宝具もそうだが、なるほど。確かに火縄銃の一斉斉射は厄介な代物だ。
ウチの前衛は何なくよけてしまっているが。
そして沖田の次に飛び出した頼光母さんが、装備している概念礼装『カレイドスコープ』の力を使い一瞬で魔力を貯めて宝具を発動する。
「え、ちょっと母さんタンマ…」
「来れい我が忠臣…我が手足、我が具足…」
「あ、ダメだありゃ」
その言葉と共に駆ける頼光母さんの周りへ、頼光四天王の魂を象る武具を片手に分身体である牛鬼達が集まってくる。
「いざっ、むん!」
そして掛け声と共に分身たちが先行し鉄砲隊を薙ぎ払う。
「『牛王招雷、天網恢々』!」
そして最後に雷の一撃で鉄砲隊の兵達は吹き飛ばされる。
「「「うわあああああ!!!」」」
「流石バーサーカー…」
「お二人とも…」
俺の側で護衛に付くマシュが複雑そうな様子でため息を吐く。
「だからお前も殺してないよなあああああ!?」
「うふふっ♪」
「その笑顔こええよ!!坊主よくこいつらのマスターできてるなあ!?」
ハハッ、コノ程度、モウ慣レタヨ。
「…さあ、サーヴァント戦だ。行くぞ!」
「「「応!」」」
「…ふん、まあ良いさ。俺たちはそう簡単にいかねえって事思い知らせてやる」
ラスト、サーヴァント二騎。
沖田と頼光母さんが孫市に向けて突っ込んでいくが、その前に本田忠勝が立ちはだかった。
「ま、そりゃそうですよねー」
「簡単に孫市の所へ行かせはせん。摂津源氏の祖と後世の英雄よ、この戦国最強がお相手させて頂く」
忠勝は自身の得物である槍を構え、その体つきからは考えられないスピードで沖田と頼光母さんへ肉薄する。
その速度を見て俺は即座に作戦を変える。
「二人とも!協力して先に忠勝を!一人で止められるような相手じゃない!」
どのようなスキル、宝具を持っているかは不明だがあのスピードと俺でも感じるこの凄まじい気迫。
戦国最強の名が真であることを既に思い知らされている気分だ。
「ノッブ、先生。孫市の足止めを。ノッブが前衛だ」
「「了解(じゃ)」」
俺の指示に二人も前へ出る。
さてこれでどこまでやれるか…
ノッブが、沖田たちが戦う横を通り孫市へ刀を向ける。
「おっと、俺の相手は魔王様か。上等だ、ここで生前の決着つけてみるか?」
「ほざけ!また儂が大勝利で決まりじゃ!」
「ばーか、あの時はただ軍勢同士の戦いがメインってだけだろ。八咫烏の真髄…とくと見やがれ!」
作者「遂に後1時間で終局特異点突入だな」
ノッブ「メンテちゃんと終わればじゃが」
ちゃりん娘「やめなさい」
沖田「メンテ明け重いんですかねえ」
ちゃりん娘「やめなさいと言っているでしょう。運営の方々もしっかり準備してくださっているに違いないですよ」
作者「なおウチのカルデア全く終局用の準備できていない模様」
ノッブ「ここに来てスキル上げやら絆上げサボってきたツケが出てきたのう」
沖田「そういえばマーリンガチャは引くんですか?」
作者「10連一回は引くと思うけど年末年始の記念ガチャが気になって仕方ないから大量に引くのは悩ましい…」
ノッブ「ぐだイベ再実装もあるかも知れんしな!(チラッ」
沖田「私の再ピックアップもあるかも知れませんしね!(チラッ」
作者「ていうかキング・譲治・ハサンガチャ実装まだ?」
更新遅くなりました。
遂にまもなく終局特異点。
まあ、自分は現在進行形で仕事中なのでプレイお預けなんですけどね!
予約投稿って便利。
今自分が心配なのは、終局特異点攻略後のマシュの安否。
大丈夫…だよね??
さて今年中にもう一本は上げたいなと思っていますが、終局特異点攻略で中々時間取れるか微妙なところ。
頑張ってみたいとは思っています。多分。MayBe。
それでは皆さま、制圧戦よろしくお願いします。
感想評価どしどしお待ちしております。
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