問題児たちが異世界から来るそうですよ?~全裸王(ユウシャ)異世界に起つ (固竜)
しおりを挟む

~そこにおっぱいがあるなら・・・~

智樹の車窓から 完全見切り発車で参ります。そらおと×問題児のクロスという誰得ですし駄文なのでそれほど期待せずに見てください。


 放課後、季節外れのはっさくの実がなる頃の事。

 

~そこにおっぱいがあるなら・・・~

 

 学校、体育館にてその男は全力で走っていた。

 

「コラッー!待てートモちゃん」

 

 その男の名前は桜井 智樹、ちょっぴり性欲に正直な空美中学校2年C組である!

 

『呼んだ?呼んじまえよ』(ビリビリ)

 

 彼は今、良く斬れる無敵の殺人チョップを特技に持つ一人の少女に追いかけられている。そのチョップは簡単に人を斬れるほどなのだ・・・。

 

「きゃぁ!」 「ひゃん!」 「ちょっと!」

 

 ちなみに、先ほどから周りの女子生徒が叫び声をあげているのは智樹がすれ違いざまに胸・・・おっぱいを揉んでいるからであるのだ。

 

 尚、右から 89 85 90 何の数字かは語るに及ばず。水着を取っていかないのは彼なりの優しさなのだろう。

 

「ウヒョヒョヒョ!」

 

 殺人チョップの少女、見月 そはら(スリーサイズ現在 93‐59‐84 絶賛成長中)は身体のラインが良く見える旧式のスクール水着しか装備していなかった。

 

 

 

 事は、2時間ほど前に遡る。

 

「ドッチボールをするわよ~」

 

 空美中学校の生徒会長で―――道徳的に少し間違っている人で―――ある五月田根 美香子のこの提案が原因だった。

 

「(嫌な予感しかしない・・・)」

「優勝チームには賞金・・・100万円よ~」

「と、トモちゃん!100万円だよ!ドッチボールなら安全そうだし参加しようよ」

「イ、 イヤだ!俺は平和に家に帰るんだ!」

「第1回大ドッチボール大会の開始よ」

「ドッチボール・・・ご飯?やりますハイハイハーイ!」

 

 

こうして学校を巻き込んだ大ドッチボール大会が開幕した。

 

 

ルールは簡単、一グループ1~8人のチームを作ります。

 

トーナメント方式で各コートで2チームごとドッチボールの試合をします。

 

試合は10分間です、相手の残りメンバーの多いチームの勝ちになります。

(勝利チームは敗北チームに好きな水着を着せる事が出来る)

 

 

(オ、オヤオヤ・・・・・・。どうしていつも俺なんだ、たまには他の奴を)

 

 智樹は逃げ出さないように椅子に縛られている。そんな智樹に近づいてくる影が一つ。

 

「マスター、お茶です」

 

 白い天使の羽をもつ者、エンジェロイドのイカロスだ。彼女はマスターである智樹にお茶を持ってきたようだ。こけしは持って来ていないようだ。

 

「なにしてるのアルファー。そろそろ始まるから行きましょ」

 

 羽付きのツルペター少女にしてコンブが似合う、エンジェロイドのニンフが現れる。彼女はどうやら同じブロックのイカロスを探しに来たようだ。

 

 彼女達のチームは4人、会長とそはら、イカロスにミニイカロスことオレガノの4人だ。尚、ニンフはオレガノに本気で拒否されたので別チームである。

 

 ちなみに、智樹は一人だ。あと新大陸発見部の部長も一人である。よかったね。

 

 

 

~~~~~~若干の省略を挿んでお送りします~~~~~~

 

(ボールを当てるとおっぱいが揺れる・・・!!!)

 

『ボール遊びじゃ。おっぱいと言うボールを使ったボール遊びじゃよ』

 

(じ、じいちゃん!・・・そうか、俺やるよ。絶対に優勝してやる!)

 

「勝者、チーム桜井」

 

 

 

 

「ご飯!ご飯!ご飯!」

 

「オレガノ倒すオレガノ倒すオレガノ倒すオレ(ry)」

 

「し、勝者、チームコンブ!」

 

 

 

 

「イカロスちゃん、お願いね」

 

「はい」

 

「うわぁぁぁ!!!」 「ぎゃん!」  「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

「・・・え?」

 

「審判?」

 

「あ、はい。勝者、チーム会長!」

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「と言う訳で君も新大陸発見部に」

 

「勝者、チーム新大陸発見部」

 

 

 

 

「イカロスさん、あぶない!」

 

「aegis展開」

 

「ひゃん!(跳ね返ったボールが胸に当たって)」ボヨヨン

 

「勝者、チーム会長ォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

「勝者、チーム新大陸発見部」

 

「新大陸はいいぞ、君も新大陸発見部に入らないか」

 

「い、いえ。遠慮しておきます。それじゃあ!」

 

「勝者、チーム新大陸発見部!」

 

「いやいや、そんなこと言わずに入らないか」

 

「ひっ!」

 

「早く退場してください!」

 

 

 

【フレーフレー、コンブ!フレーフレー、コンブ!】

 

「ご飯!ご飯!ごは・・・何時の間にあんな看板が!?」

 

「・・・オス」

 

「あ、あのニンフ先輩?」

 

「オレガノタオス!マッテヤガレアンニャロー!!!」

 

「ニンフ先輩!?」

 

 

 

 

~~~~~~なんだかんだで準決勝~~~~~~

 

 

「先輩・・・俺は」

 

「行け智樹、新大陸を見るんだろう?」

 

「おう!」

 

「勝者、チーム桜井」

 

「イイハナシダナー」  「イイハナシカナー」  「オレガノ!オレガノ!」

 

 

 

 

「オレガノ・・・シュゥゥゥゥゥ!!!」

 

「かかってこいコンブ!」

 

「超々超音波・・・かっ!」

 

「顔面がガラ空きでした(ニヤ)」

 

「こ、この!」

 

「ニンフさん、アウトで 「きゃ!」 ・・・え?」

 

「まだまだ、ボールはありますよ」

 

「じ、上等!」

 

 

 

 

「さぁ、次に行くわよ~」

 

「だ、大丈夫?ニンフさん、オレガノさん」

 

「プシュー(頭から湯気が出てる音)」  「・・・b(親指を立てていたが倒れた)」

 

 

 

 

~~~~~~決勝戦~~~~~~

 

 

 

「後はイカロスさんだけ。頑張って!イカロスさん」

 

「マスター、行きます。空の女王モード起動」

 

(ボール遊びだけじゃ物足りない・・・!)

 

『おっぱいだけだからじゃね』

 

(じいちゃん!・・・おっぱいだけだから?)

 

『トモ坊、いいかよく聞け。おっぱいは揺れるだけで嬉しい』

 

(…そうか、そう言う事なんだねじいちゃん!)

 

「な、なんだ?智樹のトモキにスパークが」

 

「アルファーが投げたボールをトモキから出たエネルギーで押し返した!?」

 

「押し返した先は・・・イカロス先輩!」

 

「・・・さすがです、マイマスター」

 

 

「イカロスさん、アウト。試合終了!勝者は・・・チーム桜井!」

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!』

 

 

 

 こうして周りは全て水着という状況が出来あがったのだ。ある者は泣き、またある者は泣くこの場所はまさに天国と地獄と言えるものであった。そして唐突に天国が終わる事になる。そう、会長のさらなる一言で・・・。

 

 

 

 

 

「さぁ、決勝戦をするわよ~」

「ウヒョヒョ・・・え?」

 

 智樹の動きが止まった、いやそれ以外にも周りの全ての人の動きが止まったのだ。さんざん追いかけ回していた殺人チョップまでも止まってしまったのだ。なぜなら・・・。

 

「ドッチボールでも来るぜ、坊主」

 

 そこに現れたテキ屋のオヤジのせいだった・・・。

 

 

 

 

 その後の事は語るまでも無い、テキ屋のオヤジにフルボッコにされて水着女子たちにフルボッコにされて殺人チョップに斬られただけだ。その時に智樹にビキニを着させたりしていた事があったがあえて語る事はしないでおこう。

 

 その頃のイカロスは・・・

 

「あ、お手紙・・・マスター宛てだ」

 

取りに戻っていたマイスイカの上に置かれていた封書を見つける。イカロスがその封書を手に取って裏返して見ると達筆な文字でただ『桜井智樹殿へ』と書かれていた。

 

「スイカからの手紙・・・?」

 

 そんな事を考えながら封書をしまう。おそらくただの手紙で危険な物ではないと判断した。何はともかく後で智樹に届けなくてはと決めてマイスイカを撫でながら体育館へと戻っていった。

 

 

 

 桜井家、居間。今、ここにはイカロスとニンフ、アストレア。それと智樹しかいない。

 

「マスター」

「ん?どうしたイカロス」

「今日こんなものを見つけました」

 

 スイカの手紙(仮)を智樹に渡したイカロス。ニンフとアストレアも興味を示した。

 

「なんだこれ?手紙か?」

 

 とりあえず中身を確認するために封を切った。イカロスとニンフ、アストレアも智樹の後ろから手紙を見る。少しの沈黙の後、ニンフがその文章を読む。

 

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能を試す事を望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて、

 我らの“箱庭”に来られたし』

 

 

 

 

「へ?」

 

 突然目の前の景色が変わる。先ほどまで自分達の家の居間に居たはずの智樹達は空の上に投げ出されたのだ!その事にいち早く気が付いたイカロス達エンジェロイドは咄嗟に翼を広げ飛行する。智樹はイカロスが抱えているので落ちる心配はない。だが、本当に突然の事で動く事が出来なかった。故に周りに居た見知らぬ3人の少年少女を抱える事が出来なかった。4000mほどの高さから落ちたならば人間ではひとたまりも無い。絶望的だったがどうか無事にいてと祈りながら急いで降りていく4人は不意に飛んでいた鳥に釣られて目の前に広がる視界を確認した。

 

 目の前に広がるのは世界の果てを彷彿させる断崖絶壁。また見た事も無い巨大な未知の都市。智樹達が訪れてしまったのは―――完全無欠の異世界だったのだ!

 




見切り発車なのでまだ1話しか出来ていないという体たらく。正直エンジェロイド3人はやり過ぎた。


頑張っていきますので、誤字などあったら教えてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~揺れるお○ぱい、エロ本はベットの下に~

見切り発車←ここ重要

智樹の車窓から第2話の投稿です。


 

 

 地面に向かって真っ逆さまに落ちていった三人のほぼ絶望的な生存を確めるために智樹達は降りていく。はたして其処には驚くべき光景が広がっていた。確かに落ちていった三人がどこにも目立った怪我もなく無事だったのだ。ただし猫が一匹大変なことになってはいたが。

 

ニンフは辺りからこの状況を分析する。

 

「オーイ、大丈夫か?」

 

 イカロスに抱えられて上から声をかける智樹。彼らはどうやら全身ずぶ濡れという扱いにそれぞれ不満を漏らしているようだった。

 

(この三人が無事だったのは多分、湖の水が上手く緩衝材の役割を果たしたから。それにしても偶然に湖に落ちるなんて運が良かったのね)

 

 女の子達の服が濡れて肌に張り付いており、たいへんエロチックなのだが、流石に智樹は自分の中の男を押さえ込んでいた。普段二等身の状態ではエロい事を考えているような智樹だが我慢している。

 

 上からの声に反応して最初に猫の近くに居る女の子が智樹達の方を見て絶句した。その後、ヘッドフォンをしている男の子ともう一人の女の子が智樹達を見てまたもや絶句した。

 

(((二等身だ)))

 

 智樹の独特の大きさに正直に言うとイカロス達の背中の羽とかどうでもよくなる位に驚いていた。いくら問題児達といえども普段見慣れていなければ目の前に二等身の人間が現れたら驚いても仕方が無いと言えよう。三人は何かの見間違いだと目を擦る。だが、どんなにそれを受け入れる事が出来ずとも結果は変りはしない。智樹は相変わらず二等身だった・・・。

 

「此処・・・・どこだろう?」

 

 数瞬後、二等身の謎の解明を諦めた三人は空から降りてきた智樹達を加えて会話を始める。

 

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

 そう。先程見えた景色からおそらく此処は異世界だということに、智樹でさえ気が付いていた。なお、アストレアはよく分かっていないようだったが気にしないでおこう。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正して。----私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

「・・・・春日部耀。以下同文」

「そう。よろしく春日部さん。次に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴そうな逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろったダメ人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

 この三人、十六夜、飛鳥、耀を見て智樹は思った。これは関わってはいけない、関わったなら最後自分の平和は今以上に崩れ去ってしまうだろうと。エロい事など考えられない、今すぐこの場を離れなければ。智樹はそっと気が付かれないように離れようとした。

 

「最後に、そこの二等身の・・・(あら、三等身になってる) そこの空から降りてきた貴方達は?」

 

 だが、問題児からは逃げられない・・・。

 

「・・・・・・」

「マスター?」 「どうしたのトモキ?」 (お腹すいたな・・・夜ごはん)

 

 何故か無言の智樹、何処かを見ているようだ。智樹以外の皆が智樹の視線の先を見てみるとそこには。

 

「・・・不潔」

「あんな格好をして・・・不潔だわ」

 

 そこには『ぼよよん、揺れる揺れるおっぱい祭り!私達を脱がさないで~!in教室、運動会編』と書かれた本が落ちていた。何故こんなものが此処に落ちているのかはこの際気にしないように。よくあるだろう、学校の帰り道に落ちていたりする事って・・・ね。

 

「こんな危ないモノがあるなんて。しょうがないな、ボクがあとで処分しておく事にしよう。ん?ボクの名前は桜井智樹です」

「智樹、後で俺にもそのエロ本見せてくれ」

 

 例の本、つまりエロ本を懐にさも当然の様に仕舞った智樹。ケラケラと笑いながらさりげなく後で見せてもらおうとしている十六夜。「そう、彼らは変態ね」と呟き赤くなった顔を背けるのは飛鳥。イカロス達の背中の羽に興味を示し始めた耀。

 

「マスターが楽しそうで良かった」

「なによ、言ってくれたらいつでも・・・」

「このキノコ見た事無い!おいしそう、いただきまーす!」

 

 イカロスは智樹が楽しそうで自然な笑顔がこぼれ、ニンフは何やらブツブツと。アストレアに至ってはやっぱりビリビリ痺れていた。

 

 

 

 遠くからそんな彼らを観察していた者が一人。その者は頭にウサギ耳を生やした巨乳の女性。これから問題児に弄られていく可愛そうな箱庭の貴族(笑)の黒ウサギだった。彼女は植物の陰に身を隠し、彼らがどのような人物かを判断するはずだったのだ。だが、予想外な事にその近くにはエロ本が落ちていたり、それを拾って懐にしまってしまうような変態様が居たりで判断が出来ずにいた。

 

 そんな彼らについて黒ウサギはこう思う。

 

(うわぁ……なんか本当に問題児ばっかりみたいですね……)

 

 召喚しておいてアレなのだが、彼らが協力する姿は、客観的に想像できない。それに・・・

 

(ジン坊ちゃんや他の子供たちに悪い知識を与えそうな方が2人。黒ウサギの耳が言っているのですよ、あの二等身様は白夜叉様クラスの変態なのだと)

 

 黒ウサギは陰鬱そうに重く、そして深くため息を吐くのだった。




Q、あれ、なんでだ。本当なら2話で智樹がここ何処だ的な事を言ってオロオロしている所に黒ウサギが現れるって展開だったはずなのに。


A、だって仕方ないじゃない。適当に手に取ったそらおとのコミックを見たらエロ本が出てたんだから。

と言う訳で、さっそく出来た2話でした。相変わらずの駄文でしたが楽しんでいただけたら嬉しいです。3話はまだ出来ていませんし、カメ更新になるでしょうが見ていただけると最高です。

誤字などがあったら教えてください。



おまけ

イカロス「マスター、アストレアが」

智樹「おい、大丈夫か!?」

アストレア「・・・う~ん」

智樹「(大丈夫そうだな…それじゃあ) ウヒョヒョ」(モミモミモミ)

ニンフ「トモキやめなさ」 飛鳥「智樹君、今すぐやめなさい」

智樹「(な!?て、手が動かない!)ぐぬぬ!」

飛鳥「なんて事をしているの汚らわしい!」

ニンフ「(トモキが止まった!?この人間いったい何を…?)」


******

じいちゃん『桜井家の人間がその位で諦めるのか?』

智樹「でも、じいちゃん。手が動かないんだ、どんなに力んでも手が動かないんだ」

じいちゃん『また逃げるのか、「桜井」が…』

******

飛鳥「智樹君は動けないわ。大丈夫アストレアさひゃん!」

智樹「そうだねじいちゃん。目の前におっぱいが有るなら」(モミモミモミ)

飛鳥「ちょ・・・やめ(な、なぜ動けるの!?)」

智樹「ウオォォォォォ(ガシっと掴まれる頭)…え?」

耀「そう言うのはよくないと思う」(チョップ)




黒ウサギ「ど、どういう状況ですか!?」


十六夜「…俺の出番は無しか」


おわり




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~さらばエロ本よ、失ったエロ本(仲間)達~

テスト期間だったので投稿できませんでした。


 

 

 

黒ウサギが―――正確には彼女のウサギ耳だが―――言う通りコミュニティの子供たちに悪影響を与えそうな智樹を見て溜息を吐いた後、ほんの少しの間だけ彼らから目を離した。

 

「―――」

 

 本当に少しの間だけだった、少し目を離しただけで智樹がボロボロになっていた。それはもうフルボッコだった。パンツ一丁だった。

 

(しかし、何故あの変態様は服を脱いでいるんでしょうか?)

 

 この場合、脱いだというよりは何故か服が脱げていたと言うのが正しいのだが、事の詳細を知らない黒ウサギには智樹が脱いだと考えた。

 

(それにしても、頭が痛くなってくるのですよ)

 

 黒ウサギの頭痛の原因は一つ、少し目を離しただけで喧嘩が起こるのだ。これではコミュニティとしてきちんとやっていけるのか心配で頭痛は収まらない。だが幸いなことに、飛鳥(顔が赤い)と耀が先ほどよりも少しだが仲良くなっているように見受けられるのだ。

 

本当にあの少しの間に何があったのか黒ウサギには分からないが。「仕方ないですね」と気分を切り替える事にした。

 

 

 

 

この場所に来て幾分か経っているが何も変化はない。それぞれの自己紹介も既に済んだ。いいかげん十六夜は苛立たしげに言った。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

「・・・。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

(全くです)

 

黒ウサギも耀の言う事は全くその通りだと思った。特にあの変態様は来て早々エロ本を懐にしまうなど落ち着き過ぎている。(実際の所、智樹の思春期の性衝動が動揺をかき消してしまったのだが黒ウサギには分からない事である)

 

彼ら3人以外にも目を向けた。

 

イカロスと名乗る少女は何を思ったのかオロオロし始め、アストレアと名乗る少女は大分回復したようだが、いまだにキノコに苦しんでいた。ニンフと名乗った少女は羽をパタパタさせながら何かを調べているように黒ウサギには見えた。いったい何を調べているのか気になった黒ウサギだが一旦、心の片隅に置いておく。

 

そして最後に、あのフルボッコだった智樹は・・・。

 

(あ、あれ?あの変態様は?)

「―――仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも「きゃぁ!?」あ?」

 

黒ウサギの悲鳴が聞こえた。6人の視線が黒ウサギの方に集まる。そう、6人である。ではもう一人は?答えは簡単だ。

 

「あ、あなたはいったい何を考えているんですか、この変態様!」

 

桜井智樹その人は黒ウサギのスカートの中に頭を突っ込んでいた。これは比喩ではない、かつてアストレアのスカートに頭を突っ込んだ事があったがそれ以上に突っ込んでいた。

 

スパーン!とハリセンで叩いた時に出るいい音が何度も聞こえてきた。

 

 

「そう言えばさっき言っていたわね、貴方も気付いていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負け無しだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気付いていたんだろう?」

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

「・・・へえ?面白いなお前」

 

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。3人は黒ウサギに理不尽な召喚に対しての腹いせに殺気を籠めた冷ややかな視線を向ける。未だにハリセンからいい音を鳴らし続けていた黒ウサギが止まるほどには怯んだ。智樹を離す。イカロス達が駆け寄るが心配はないようだ。「マスター、め」と自分のマスターを戒めるイカロスだった。

さすがに動揺していたとはいえ黒ウサギも命までは取らない。そこはさすが箱庭の貴族と言ったところか・・・。何処かの殺人チョップとは大違いである。

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここはひとつ穏便にお話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

「却下」

「お断りします」

「ニンフ先輩!」

「なによ?」

「脆弱ってなんですか!」

 

 

「あっは、取り付くシマもないですね♪」

 

バンザーイ、と降参のポーズ取る黒ウサギ。だが、その眼は先ほどの動揺していた時とは違い冷静に彼らを値踏みしていた。智樹を決して視界から外さずにだ。

 

「脆弱って言うのは―――」

 

(肝っ玉は及第点。この状況でこれは買いです。とてつもなく扱いにくいのは難点ですけども)

 

黒ウサギはこれからどう接していくべきかを考えながらおどけている。そんな黒ウサギの隣に立った耀、彼女は不思議そうにしながら黒ウサギの黒いウサギ耳を鷲摑み、

 

「えい」

「フギャ!」

 

手加減しながらも力いっぱい引っ張った。ほんのちょっぴり『ブチ』っという音がウサギ耳の付け根の方から聞こえたがあえてスルーした。

 

「スルーしないでください!それよりも何よりも、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?ブチって言いました、ブチって言いましたよ!?」

「好奇心の為せる業」

「自由にも程があります」

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

「・・・。じゃあ私も」

「ちょ、ちょっと待―――!」

 

今度は飛鳥が左から。左右から力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、突如復活した智樹が近付いてくるのを見ていたので条件反射的にハリセンで撃退、その後声にならない悲鳴を上げる。その絶叫は近隣に木霊したのだった。

 

 

桜井智樹とは性欲が強すぎる変態中学生で、いつ誰に訴えられて逮捕されてもおかしくないような人間だ。最近では未確認生物にまで欲情するようにまでなった。自ら混沌と言う名の棺桶へ片足を突っ込んでいるような男だと思われても仕方がないだろう。

 

だが、本来の彼は平和を愛する若者である事を忘れてはならない。

 

新大陸発見部に入る位なら大丈夫、会長の気まぐれで変なお祭りに巻き込まれるのもまだ平気だ。だが、いきなり異世界に召喚はさすがの智樹でも簡単に受け入れるのは難しかったようだ。

 

智樹が空から真っ逆さまに落ちていった3人の無事を確認した後の行動はなんだっただろうか。智樹はエロ本を拾った、他にもいくつかの変態行動を取っている。その原因は全て異世界への恐怖を誤魔化すためなのだろう。

 

いざ、冷静になった後の智樹はとても大人しかった。しかも小刻みに体が震えていた。

 

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 「いいからさっさと進めろ」

 

 黒ウサギによるこの異世界『箱庭』についての説明が始まった。

 

 曰く、黒ウサギはギフトゲームの参加資格をプレゼントすると言う事

 曰く、ギフトゲームは特異な力“恩恵”を用いて競い争うためのゲームだと言う事

 曰く、コミュニティに所属しなければならない事

 

 黒ウサギの一言一言を記憶していくニンフ。アストレアにはチンプンカンプンだった…。

 

黒ウサギの説明が終わり質問タイム。飛鳥が何度か質問をした。黒ウサギはそれに答えた後、質問タイムを締めくくろうとする。その時、十六夜が待ったをかける。彼は質問した。

 

「この世界は・・・面白いか?」

 

それは何もかも見下すような視線でいった一言だった。

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて“箱庭”に来い』と書かれていた手紙。彼ら問題児3人にとって重要なのはそれだ。

 

(俺のエロ本コレクションが・・・)

 

それなのに・・・・・・桜井智樹が震えていた理由はエロ本が無くなったショックだったのだ。やはり智樹は智樹だったようだ。

 

 

「―――Yes。『ギフトゲーム』は人を越えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証します♪」

 




イカロスがオロオロしていたのはスイカが無いからだったりします。色々とダメなところが多いですがそれでもいいやって人はこれからも読んでくださったら嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~だって、お腹が空いちゃったんだもん~

何となく考えてた事


黒ウサギ「神々の王の慈悲を知れ。
     インドラよ、刮目しろ。
     絶滅とは是、この一刺。
     焼き尽くせ、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!!」

ペルセウスの騎士達「な・・・なんだ!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

黒ウサギ「ふ……是非もなし」



カルナさんがカッコイイからつい・・・。



 桜井智樹は戦略用エンジェロイドタイプαイカロスのマスターである。何を今更と思うかもしれないがこれはとても重要な事だ。

 

 

 

 イカロスはかつてシナプスで空の女王と言われて恐れられた、第一世代最強のエンジェロイドである。その性能はマッハ24での飛行が可能で圧壊深度3000m、無酸素活動時間連続720時間(約1ヶ月)という。

 また、彼女の武装も負けず劣らず凄まじい。

 トンデモ兵器と言われても仕方がないような性能をしているイカロス。彼女にとって人間を滅ぼす事などスイカ畑に湧いた害虫を駆除する位に容易い事だろう。

 

 もう一度言う、桜井智樹は戦略用エンジェロイドタイプαイカロスのマスターである。イカロスを使えば世界征服なんか簡単に出来るだろう。片手で?いや、片手すら使わずにただ言えばいい。”世界を俺の物にしろ“と言えばいいのだ。例えイカロスが心の中でどう思おうが関係ない。

 エンジェロイドにとってマスターの命令は絶対なのだから。

 

 そんな桜井智樹は今・・・。

 

 (や、ヤバイ・・・。俺達帰れないんじゃないか!?)

 「大きな白いウナギですよ!イカロス先輩!(食べれるかな?)」

 『誰がウナギだ、誰が!?』

 「よそ見してんじゃねえよ」

 『っ、舐めるな小僧!』

 

 やっと、やっと事の重大さに気が付いた智樹。あの手紙に書いてある事が本当ならば自分達は帰れない。その事に気が付いた智樹は一人恐怖した。だが、気が付くのがほんの少しばかり遅すぎた。智樹は今、アストレアに抱えられて激しい戦いを見ていたのだ。大河に住む大きな蛇と十六夜の冗談の様な戦いを。

 

 アストレアはとてもテンションが上がっていた。

 

 

 

 十六夜が黒ウサギに気付かれず世界の果てを見に行く時の事。あの金髪おっぱい・・・腹ペコ天使アストレアは空腹がすでに限界を迎えていた。

 

 今日、会長が始めた意味の分からないドッチボールで運動した彼女はお腹が空いていた。今日のイカロス先輩の作る夕ご飯はなんだろうとか、夕ご飯早く食べたいなとか、明日の朝ご飯はなんだろうとか考えていた。だが、イカロスの持ってきた封書を見てすぐ事態は最悪の方向へと向かう。

 アストレア達は異世界に居た。しかも高さ4000mの高さだった。夕ご飯前の事だった。そう、つまり・・・夕ご飯を食べそこなったと言う事!いつもならそれでも耐えられた、だが今日は耐えられなかった。だから、空から降りてくる時に見えた大河を思い出したアストレア。彼女は同じく何処かに行く十六夜に付いて行く事にしたのだ。

 河=釣り=魚と言う式が頭の中に出来上がったアストレア。式が出来ただけで驚愕に値するが・・・。近くに湖があった事を思い出さないあたりやはりアホの子なのだろうか?

 ニンフはもっと詳しい話が聞きたいと言って行かなかった。智樹はアストレアを一人にするのは不味いと思い付いて行く、イカロスはマスターの同行。

 腹ペコ系問題児が現れた、黒ウサギの苦労は増えるばかりである。

 

 

 “世界の果て”そう呼ばれる断崖絶壁がある、そこには箱庭の世界を8つに分かつ大河の終着点トリトニスの大滝がある。その近辺に住んでいる神格持ちの蛇神に智樹達が出会う頃。

 

 箱庭二一〇五三八〇外門、ペリベッド通り・噴水広場前。

 それほど人通りが多くないのが特徴のこの場所。それはやはり“世界の果て”と向かい合っているからだろう。

 

 そこで待っていたコミュニティのリーダー、ジン・ラッセルと黒ウサギたちが合流する。

 

 「・・・え、あれ?4人いませんでしたっけ?全身から俺問題児オーラを放ってる殿方と変態二等身様と天使のような女性が2人」

 「あぁ、十六夜君の事?彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!“と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」

 「トモキ達はお腹が空いたって言うデルタの付き添い。イザヨイの行く方に河があったはずだから一緒に行ったのよ」

 

 何故止めないと言う黒ウサギに自分勝手な答えで困らせる元祖問題児2人。ニンフは一言

 

 「アルファが居るから大丈夫よ」

 それだけだった。

 

 黒ウサギにはイカロスの実力が分からない。だが、この中で常識人のように見えるニンフが言うのなら強いのだろうと思った。しかし、それでもだ。

 

 「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」

 

 ジンが蒼白になって叫ぶ、そう、黒ウサギはそれが心配だった。ニンフが言った通りならあの問題児達はトリトニスの大滝の近くに居る事になる。もしかしたら神格持ちの龍や蛇神などと出会ってしまうかもしれない。そうなれば最悪、新しく呼んだ新たな人材を4人も同時に失うかもしれないのだ。

 ジンは幻獣の危険さや事の重大さを3人に訴えるが、ゲーム参加前にゲームオーバー?とか冗談を言って肩を竦めたり、アルファがトモキを守るに決まってるとか言うだけだ。

 

 黒ウサギは心の中でため息を吐きながら行動を開始する。

 

 「ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 「分かった、黒ウサギはどうする?」

 「ふっふっふ、“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやりますヨ!」

 

 語尾が強くなる黒ウサギにジンは思った。

 (今の黒ウサギに何を言っても怒らせそうだ。いったい何をされたんだろう?)

 

 黒ウサギの艶のある美しい黒髪が、怒りのオーラが全身から流れ出ると同時に淡い緋色に変わっていく。外門めがけて空中高く跳び上がり外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がる。そして外門の柱に水平に張り付いた黒ウサギは、

 

 「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」

 

 そう言って、全力で跳躍し弾丸のように飛び去った。

 

 

 黒ウサギが智樹達を探し始めて早くも半刻が過ぎようとしていた。上空4,000mから見れば“世界の果て”は彼らには大した距離に見えなかったのかと考える黒ウサギ。だが、実際は途方もなく遠いのだ。しかも、道中は森林を横断する事になるため初見で辿り着けるとは思えない。空を飛べるようなギフトがあればまた違ってくるのだが・・・。

そこまで考えて黒ウサギは思い出した。彼ら4人のうち2人は背中に羽が生えていなかったかと。

 

 「こ、これは本格的に不味いのでは!?」

 

 焦りを募らせ走る黒ウサギだったが、周囲の森林から聞こえる怪しい呻き声に足を止める。

 

 『・・・・・・今度は兎だ』『天使の次は兎が来たぞ』『この辺境に“月の兎”が来やがった』『飛んでいった小僧が言った通りだ』『足止めするか?』『ゲームを挑むか?』『“月の兎”を相手に?』『しかし何を挑む?』『力か?』『知恵か?』『それとも勇気か?』『ハッ!馬鹿な、何で挑んでも勝ち目などないぞ』

 

 箱庭の外に出る事が少ないウサギが現れたのだ。森の魑魅魍魎達が物珍しさに黒ウサギを一目見るため集まって来たのだろう。だが、黒ウサギは見世物として付き合ってやるような時間がない。それにそんな気分でもない。

 

 「あのー森の賢者様方。申し訳ありませんが黒ウサギは急いでおります。要件がないようですので先に行かせてもらいますね」

 『・・・・・・』『・・・・・・』『・・・・・・・・・』

 

 無視するのは簡単だがそれは箱庭の貴族として気分が悪い。一応断りを入れてからまた歩みを始める黒ウサギ。だが、それに待ったを入れる声が一つ。

 

 『待ってください、お嬢さん?』

 

 その声の主は茂みから聞こえる。魑魅魍魎とは違う、静かな声と蹄の音が響く。現れたのは艶のある青白い胴体と額に角を持つ馬。そう、幻獣のユニコーンだった。

 

 「こ、これはまた、ユニコーンと珍しいお方が!“一本角“のコミュニティは南側の筈ですけども?」

 『それはこちらの台詞です。箱庭の東側で兎を見る事など、コミュニティの公式ゲームの時ぐらいだと思っていましたよ―――と、お互いの詮索はさておき。貴方は誰かをお探しの様子。もしもそれが私の想像通りなら私の目指す方角と同じです。森の住人曰く、彼は水神の眷属にゲームを挑んだそうですから』

 「うわお」

 

 やはりと思った黒ウサギ。クラリと立ち眩み、そのままガックリと膝を折った。

 

 「本当に・・・・・・本当に・・・・・・なんでこんな問題児をぅ・・・・・・!」

 

 怒りを通り越して泣きたいと思う黒ウサギ、いやちょっぴり涙が出てきていたかもしれない・・・。ユニコーンが自分の背中に乗るように提案するが丁寧に断った。正直に言えば彼よりも黒ウサギの方が足が速いのだ。

 

 「…うぅ、それでは先に向かいますね」

 『そうですか、分かりました。ごぶうん―――おっと!』

 

 その時だった、突如、大地を揺らす地響きが森全体に広がった。すかさず大河の方角を見ると、彼方には肉眼で確認できるほどの巨大な水柱が幾つも立ち上がっている。

 

 「・・・・・・」

 

 思わず涙が引っ込んだ。黒ウサギは心の中で本日何度目かになるため息をする。ユニコーンは苦笑いしながら数歩下がる。

 

 『気を付けて。君の問題児にもよろしく』

 

 頷く黒ウサギは智樹達が居るであろうトリトニス大河を目指して走り出す。風を追い抜き、木々を撓らせ光の如く森を走り抜けていく。

 そんな黒ウサギを見て森の魑魅魍魎達は思うのだった。

 

 『やはり、あの天使と同じく勝ち目がなさそうだ』『あの首輪に見覚えがある』『あぁ、あれか』『あの時の天使とも実力差があったな』『・・・・・・帰ろう』

 

 

 

 




他にも考えていた事

ニンフ(そう言えば、黒ウサギの声って少し私に似てたわね。今度一緒に歌おうって誘ってみようかな)



なかなか話が進まないけれど、次はなんとか皆のアイドル白雪姫ちゃんの登場になると思います。

~6月3日~
少し付け加えました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~だって落としちゃったんだもん 白雪姫へん~

エロ本を見ただけで顔を赤くする白雪姫ちゃん見たかったんです・・・。まあ、蛇バージョンだった訳ですが。



 

 黒ウサギにバレずに“世界の果て”に向かう十六夜達。アストレアが智樹を抱いて飛んでしまったのでイカロスは十六夜を抱いて飛んでいた。

 

 「へぇ、エンジェロイドってのは随分早く飛べるんだな」

 「まだ早く出来ますがどうしますか?」

 「いや、いい。あんまり早かったらせっかくの楽しそうな所を見落としそうだからな」

 

 イカロス達は大体マッハ1で飛んでいる。これでも早いと思うのだが十六夜の動体視力があれば大抵の物は見落とす事はないらしい。

 

 「ヒィ!?木の上を飛べ!!!」

 「大丈夫よ!当たらないわよっと!?」

 「ギャァァァァァァ!?当たる!絶対当たる!?」

 「あははは!当たらないわよ。バーカ!バーカ!」

 「し、死ぬ!!!」

 

 「当たらないもんだな」

 

 イカロス&十六夜ペアは木々の上を、アストレア&智樹ペアは木々の間を飛んでいる。智樹は懐に入れたエロ本を思わず落としてしまいそうになるほど動揺していた。十六夜はそんな2人のやり取りを見てのんきに感想を言った。

 

 『ぴひょ、ぴひょぴひょ。ぴひょ~っ・・・!?』

 

 箱庭、世界の果て付近在住のいろんな事に慣れっ子の鳥達が驚き飛び去っていく。あぁ、今日も箱庭は平和です。

 

 

 やがて、彼らは森を抜けて大河の岸辺に出た。

 地面に足を付けるエンジェロイド達、智樹は先程までのアストレアの行動に怒り心頭といった所だ。だが、アストレアの顔には満面の笑み、それを見た智樹は怒る気が無くなってしまった。

 智樹は岸辺に転がっていた適当な石の上に座って釣りの準備をする。だが、肝心の釣り竿が無い事に気付いた智樹はアストレアに聞く。

 

 「で?どうすんだ?アストレア」

 「え?何が?」

 「釣り竿だよ。せっかくここまで来たのに釣り竿あるのか?」

 「・・・あ」

 「オイ・・・あ、じゃねえぞ!あんな思いさせて竿もってきてないってのか!?ばーか、ばーか!」

 「な、なによ!バカはアンタの方でしょ!気付いてたんならすぐに言いなさいよ!バーカ、バーカ!」

 「オレだって今気付いたんだよ!ヴァーカ!」

 

 結局は言い争いが始まってしまった。それから数分後、どちらも馬鹿だったということで落ち着いた二人。十六夜はその間1人で釣り竿を作っていた。材料はいったいどこからとかそんな事をつっこんではいけない。

 

 「お前ら出来たぞ」

 「「え?」」

 

 その釣り竿は至ってシンプルなものだった。

河釣りを始める3人。それを眺めていたイカロスはふと視界の端に映ったものが気になって横を向く。イカロスは大河の深い所に大きな影を見た。

 

 30分ほど過ぎた頃。

 

 「つ、釣れねー」

 「お腹・・・すいた」

 「マスター、あの」

 「ん?どうした?イカロス」

 「先ほど大きな影が水面に映りました」

 「お、来た来た。6匹目だぜ」

 「あー、もしかしたらこの河の主かもな」

 「へえ、そりゃあ面白そうだな」

 

 智樹の竿には一匹たりとも引っかからず、アストレアはほろりと涙を流す。その中で十六夜だけが釣れていた。主と聞こえた十六夜は次のエサを付けて次の獲物を釣ろうとしている。

 その時だった。智樹の竿が大きく曲がった。

 

 「ウォ!?き、来た。お、おも!?おい、イカロス手伝ってくれ!」

 「はい、マスター」

 「ご、ご飯!?」

 

 「こりゃデカい。もしかしたら本当に主かもな」

 

 智樹は予想を大きく上回った重さに驚きながらもすぐにイカロスに助けを請う。イカロスは智樹と共に釣り竿を握る。それを横目で見ていた十六夜はその魚の引き具合からとても大きなものがひっかったのだと予想した。

 

 「(マスターに喜んでもらいたい) アストレア!手伝って」

 「え、あ、はい!イカロス先輩」

 

 イカロスはこれは一人では釣り上げられないと思いアストレアを呼ぶ。智樹、イカロス、アストレアの3人が精一杯に引っ張ると少しずつ水面に影が浮かんでくる。あと少しだと思った3人は力を入れ直す。

 

 「いきます、マスター!」

 「絶対に釣り上げるんだから!」

 「おう!いっせーの!」

 

 『おぉ!?』

 

 タイミングを合わせ一気に引っ張った。

そして主はついにその姿を現した。太陽に照らされ白く光る体、身の丈30尺強は有りそうな胴体。その尋常じゃない姿に智樹達は思わず釣り竿を手離す。

 

 「な!なんだよあれ!?」

 「デカイ蛇だな」

 

 智樹は驚き、十六夜は冷静に答える。そう、彼らが釣り上げたのはまさしく蛇だった。しかもこの蛇ただの蛇に非ず。実はこの蛇、ここら一帯の大河を仕切る水神の眷族だったのだ。

 

 『い、一体何が起こった!?目の前に食べ物があったから口に入れたと言うのに。いきなり引っ張られるとは・・・いたた、口に何か刺さっておるのか?』

 

 釣り上げられ ズズズ と地面を滑った蛇は巨体を起こし喋った。痛がっているのはおそらく釣り竿の針が口に刺さってしまったからだろう。

すると蛇の口に何か小さいモノ達が集まってきた。

 

 『おぉ、お前達は水精群達。我の口から抜いてくれるのか。感謝する』

 

 水精群と呼ばれた者たちは蛇の口から釣り針を抜いてすぐに消えていってしまった。

 

 「大丈夫ですか、マスター」

 「・・・なぁ、イカロス」

 「はい?なんでしょうか」

 「あれはやっぱり蛇なのか?」

 「・・・・・・はい」

 「うわぁぁ!?俺は家に帰るんだ!」

 

 智樹はこの非現実を目の当たりにして取り乱した。対照的に十六夜は随分と落ち着いていた。

 

 「やっぱりこれ位ないと面白くないよな!」

 

 蛇神はそんな彼らを見て静かに言った。

 

 『貴様達が我を釣り上げたのか、小僧共』

 「ヒィ!?」

 『そうか・・・これは驚いた!いくら油断していたとはいえ人間に我が釣られてしまうとはな』

 

 蛇神の声には少しの羞恥心が含まれていた。たかが人間に釣られてしまったのだ。これが神格持ちの何者かならば分からなくもない。動揺し声だけでも落ち着いているように取り繕った結果、逆に少しの羞恥心が隠せなかったのだろう。結局、蛇神の中では自分を釣り上げたのは人間だという事実は変わらない。

 

 『それでは何かを与えなければな。よ、よし!この鱗をやろう』

 

 顔を近づけて自分の鱗を智樹に与えようとする蛇神、智樹はあまりの急展開に頭が付いて行かずビビりながら両手を伸ばし鱗を受け取る。その時、智樹の懐から何かが落ちた。

 

 『小僧、何かが落ちたぞ。何々・・・ぼよよん、揺れる揺れるおっぱい祭り!私達を脱がさないで~!in教室、運動会編・・・!な、なな、何を持っているのだ貴様は!こ、こんな卑猥な本を持ち歩いていて恥ずかしいと思わないのか!へ、変態!』

 「・・・・・・今、なんて言った?」

 『何度でも言う、この変態!』

 「違う!この本を卑猥な本といっただろう!」

 『な、何を言っている!こら、こっちに向けるな!』

 「これは卑猥な本じゃない。ここに来て初めての俺の友だ、それを卑猥な本扱いなんてお前の方がよっぽど変態だろ!」

 『な!?我は変態だったのか・・・・・・!って、そんな訳ないだろうが!』

 

 「結構、初心なんだなあの蛇」

 「あれはヘビ?それともうなぎ」

 

 顔の辺りを紅く染める蛇神、智樹は蛇神の顔にエロ本を近づけて更に顔を紅くさせる。ちなみにイカロスはいつでも蛇神を撃退できるように備えていた。

 数分の間、智樹と蛇神の言い合いだけが続いた。そして十六夜、イカロス、アストレアの3人は沈黙を保っていたのだった。

 

 

 『も、もういいわ!この話は終わりだ!』

 

 そう言って頭の熱を冷ますために蛇神は大河に潜っていく。だが、すぐに水面に顔を出した。

 

 『・・・こほん。さぁ小僧』

 「俺か?」

 『あの小僧の様に我に挑むのだろう。試練を選べ、知恵か?勇気か?力か?』

 

 少し落ち着いたのか、蛇神は十六夜に対して上からの物言いで喋りかける。その物言いに十六夜は楽しそうに答えた。

 

 「さっきまで情けなかったのによくそんな偉そうに出来るな。なかなか出来ない事だぜ、オマエ」

 『き、貴様!』

 「随分と上から目線で素敵な事を言ってくれるな。そんなに自信があるんなら試させてやるよ。俺を試せるのかどうかをな!」

 『ほう、よく言ったな、小僧ォ!!』

 

 相手が何かをしようとする前に、十六夜は地面を砕いて跳躍し蛇神を殴り飛ばした。蛇神は倒れ込み大河の水がその勢いで溢れだす。イカロスは智樹と空腹のアストレアを抱えて飛ぶ。

 

 「あぶね!あと少しでエロ本が濡れるとこだった。よくやったイカロス」

 「はい、マスター!」

 「おなか減って力が出ません、イカロス先輩」

 「お前はしっかりしろ、アストレア!」

 「なによ!私の気持ちも知らないで!晩ご飯食べてないからもうお腹が減って限界なのよ」

 「アストレア、しっかりして」

 「い、イカロス先輩!(目、目が赤くなってる!何か怒ってる!?)」

 「出来る?」

 「はい!できます」

 「そう(せっかくマスターが褒めてくれたのに怒らせたくない)」

 

 十六夜と蛇神の戦い、水と竜巻と拳が乱れ狂う。イカロスは一時的な加速では早いアストレアに智樹を託す。

 蛇神の起こした竜巻で何度か木が折れ飛んでくるがイカロス達は一度も当たらず避けた。十六夜は竜巻をものともせず、蛇神を殴り飛ばし蹴り飛ばす。蛇神が水面に落ちた衝撃で何度も水柱が出来た。

 正直に言って智樹にはこの出来事が何一つ信じられなかった。イカロス達と他のエンジェロイドが戦っているなら智樹もすぐに状況を受け入れる事が出来る。だが、十六夜は人間だ。普通、人間があんな戦いできる筈がない。先輩や会長にだって無理だと思う。・・・ムリだよな。

 智樹は何の前触れもなくあの手紙について思い出した。『己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて、我らの“箱庭”に来られたし』と書いてあった。これが本当ならば、

 

 (や、ヤバイ・・・。俺達帰れないんじゃないか!?)

 「大きな白いウナギですよ!イカロス先輩!(食べれるかな?)」

 『誰がウナギだ、誰が!?』

 「よそ見なんかしてんじゃねえよ」

 『っ、舐めるな小僧!』

 

 十六夜は目立った怪我は何もなくいい笑顔で暴れていた。蛇神はどんどんボロボロになっていき疲労が智樹達の眼にも見て取れた。誰の目から見ても勝敗は明らかだった。

 

 「―――え?」

 「智樹さん!アストレアさん!危ない!」

 

 アストレアがそれを見て安心したその時、先ほどとは比べ物にならない速さで轟音と共に木々が飛んできた。それと同時に黒ウサギが到着した。黒ウサギが叫ぶ、だがアストレアは一瞬の判断の遅れのせいで避けきれない。黒ウサギが駆け寄ろうとも間に合わない。アストレアは身を呈して智樹を守ろうとした。

 

 「うわああああ 「aegis(イージス)展開」 ああ・・・え」

 

 しかし、アストレア達に木が当たる事はなかった。イカロスのイージスが間に合ったからだ。

 

 「大丈夫ですか、マスター」

 「大丈夫かイカロス!怪我とかしてないか」

 「え、あ。大丈夫です」

 「・・・ふぅ、そっかよかった。ありがとな」

 「大丈夫ですか皆さん!?」

 「ウヒョ!おっぱい揉めれば大丈夫です」

 「ここに来て何を言っているんですかこの変態様!」

 

 相変わらずおっぱいにまっすぐな智樹。黒ウサギのハリセンが高速で智樹の頭を正確に狙って放たれた。

 

 一方、十六夜は戦いが落ち着いたらしく黒ウサギの方にやって来た。

 

 「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」

 「はぁ、はぁ・・・もう、一体どこまで来ているんですか!?」

 

 智樹をハリセンで倒した黒ウサギは息を切らしながら十六夜の方に振り向く。髪の色が変わっている事について尋ねられたが怒りのせいで答える気はなかった。その代わりに質問をする。

 

 「“世界の果て”まで来ているんですよ、っと。まあそんなに怒るなよ」

 

 また、怒りを強めるような答えを!と思った黒ウサギだったがその後の十六夜の足の速さを褒められて途端にいい気分になる。黒ウサギは“箱庭の貴族”と呼ばれる優秀な貴種なのだから当然と言うのも忘れない。だが、そこでふと思った。

 

 (半刻以上もの時間、追いつけなかった・・・・・・?)

 

 いろいろと不可解な事が起きた。“箱庭の貴族”であるウサギに気が付かれないで姿を消した事などを思い返してみると人間とは思えない身体能力だと思った。まあ、今は同士候補の無事が確認できただけで十分だと思うことにした。

 

 「ま、まあ、それはともかく!皆さんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」

 「水神?―――ああ、アレのことか?」

 

 十六夜が指さす方を見て硬直した、水面に白くて長い蛇がひっくり返って浮かんでいたからだ。もしかして死んでいるんじゃなかろうかと黒ウサギは思ったが、その気持ちに気が付いたのか十六夜は、

 

 「さすがに殺しちゃいねえよ」

 

 そう付け加えた。黒ウサギは安堵する。

 

 「それで十六夜さ 『まだ……まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!』 ・・・蛇神!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか!?」

 

 黒ウサギが話し始めようとすると蛇神はムクリと起き上り叫んだ。黒ウサギも同じく叫んだ。

 

 「へえ、まだ起き上れたのか?」

 『貴様・・・・・・付け上がるな人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』

 「皆さん下がって!」

 

 蛇神が甲高い咆哮をあげ、牙と瞳を光らせる。起こした竜巻が水柱を上げて立ち昇る。巻き込まれれば人間の胴体など容赦なく千切れ飛ぶだろう。黒ウサギは庇おうとする。だが、十六夜の鋭い視線はそれを許さない。

 

 「何言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」

 

 本気の殺意が籠った声音だった。黒ウサギはもう始まってしまったゲームに手出しできないと気付いてはがみする。イカロス達は黒ウサギと一緒に後ろに下がった。

 

 『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』

 「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」

 『フン―――その戯言が貴様の最期だ!』

 

 蛇神の雄叫びに応え、嵐の様な竜巻が河の水を巻き上げる。水を巻き上げた竜巻の大きさはゆうに蛇神を越える。それは何百トンを超えるだろう。竜巻の数は5つ、生き物のように唸り蛇の様に十六夜に襲いかかる。

 この力こそ“神格”のギフトを持つ者が使う事が出来る生態系を崩しかねない力だった。

 

 「十六夜さん!」

 「十六夜!」

 

 黒ウサギや智樹が叫ぶ。

 竜巻は十六夜の身体を飲み込み―――

 

 「―――ハッ、しゃらくせえ!!」

 

 十六夜は腕の一振りでそれらを全てなぎ払った!

 

 「嘘!?」

 『馬鹿な!?』

 「すげー!」

 

 黒ウサギと蛇神はあり得ないと思い、動揺を隠せない。蛇神の攻撃は決して手心を加えたようなものではなかった。全霊の一撃を放った筈なのだ。それをただの腕力だけで弾かれてしまった。とすれば、十六夜という人間はもはや人智を遥かに超越した力の持ち主であるということである。蛇神はあまりのショックに放心する。

 智樹はこの状況を何とか受け入れた。正確には理解する事を諦めて純粋に楽しんでいたのだが。だってそうだろう、突然異世界に呼ばれて怪物と戦って勝つなんてまるでアニメの話のような体験、なかなか出来る事じゃない。それを目の前で見せられては楽しむなという方が無理だろう。いつか自分もパンツロボと共に大活躍したいと思う智樹だった。

 

 十六夜は蛇神の隙を見逃さなかった。獰猛な笑いと共に着地した十六夜は、

 

 「ま、中々だったぜオマエ」

 

 大地を踏む砕くような爆音。胸元に飛び込み蛇神の胴体を蹴り上げた。蛇神の巨大な身体は空中高く打ち上げられ大河に落下した。その時の衝撃で大河が氾濫し水が森を浸水する。

全身を濡らしながらも十六夜は難なく神格を倒したのだった。

 

 

 「おい、大丈夫かお前」

 『・・・クッ!まさか我がこんな一方的に負けてしまうとは。頭がグラグラする』

 「お前ら凄かったぜ。な! イカロス、アストレア」

 「はい、マスター」

 「大きなうなぎ、食べちゃ駄目なの?」

 「ダメなの!っていうかうなぎじゃねえ!」

 「え!?」

 『た、食べるのか!?』

 「食べていいんですか!」

 「ダメに決まってんだろうがぁぁぁ―――っ!!」

 『た、食べれるキノコならあの辺りに生えていたはず』

 「わーい!ご飯だ!」

 「聞けえええ―――っ!」

 

 智樹は蛇神に近寄って安否を確認。アストレアがよだれを出しながら満身創痍の蛇神に近寄っていく。蛇神はその姿に恐怖した。しかし、咄嗟にキノコの事を思い出しアストレアに伝える。アストレアはキノコに釣られる、ファインプレイだと蛇神は思った。

 

 「・・・全く、あんまり遠くに行くなよ!」

 「分かってるわよ!・・・一緒に食べない?」

 「食べねえよ!一人で行って来い!」

 「・・・ばーか」

 

 『小僧、そう言えばあのひわ・・・お前の友をどこで手に入れた?』

 「え、あっちの方で拾ったけど」

 『・・・そうか(双女神の印があったような、まあいいか)』

 「・・・?」

 『最後の木々は我がやった訳ではないが大丈夫だったか?』

 「うん?・・・大丈夫だった」

 

 

 

 その後、蛇神は、話が終わったようで上に乗って来た黒ウサギに敗者として水樹の苗を渡した。

 




 そはらさんがいないので智樹が中々ボロボロにならないのが悩みの今日この頃。問題児キャラで下手に攻撃させるとシャレにならないから大変です(ギャグ回なら遠慮はいらないのですが)

 会長のイメージが…うーん。何故か、例えば一対一で対峙したら飛鳥のギフトが効かなくて耀が本能的に無条件降伏してしまいそうな気がする。しかも、白雪姫ちゃんも何とかしてしまいそう。

 最後は白雪姫ちゃんと智樹が話している間に黒ウサギたちの会話も終わってしまったと言う事にして欲しいです。

 なかなか進まないし中々全裸にならない智樹・・・いったいいつになったらトモ棒は暴れるのか!それは分からない…。と言う訳で今回はここまでです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~決心~

ニンフさん可愛い


 

 

 「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」

 

 そう言って跳び去って行ってしまった黒ウサギ。その姿はまるで弾丸の様であった。あっという間に残された者達の視界から消え去ってしまう。

 箱庭のウサギというのは随分と早く跳べるらしいと素直に感心するニンフだった。だが、それでも本気のアルファーには敵わないだろうと思ったが。

 

 ニンフ達は互いに自己紹介をした

 

 

 

 そして現在、ニンフたちはコミュニティのリーダーであるジン=ラッセルに連れられ箱庭の外門をくぐっていたのだった。

 

 ―――箱庭二一〇五三八〇外門・内壁

 

 ニンフ達四人と一匹はジンの案内の元、石造りの通路を通り箱庭の幕下に出た。その時ニンフ達に眩しいほどの光が降り注いだ。暗い所から急に明るい所に出るとよく起こる眩しい感覚がニンフ達を襲う。

 

 (なるほど、内側に入ると空が見えるようになっているのね)

 

 空が見える事に少し気分を良くしたニンフ。トモキと一緒にここでも空を飛びたいと思ったのは余談である。

 

「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族の為に設置されていますから」

 

 そう言うジンに飛鳥は青く広い空を見上げて皮肉そうに言った。

 

「それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」

 

 吸血鬼という言葉がなんとなく気になったニンフは無意識にジンの言葉に耳を傾ける。

 

「え、居ますけど」

「・・・・・・。そう」

 

 飛鳥はジンの即答とも言える答えに複雑そうな顔をしている。

 ニンフは実物の吸血鬼を見た事はないが元マスターがマスターだった時に話だけは聞いた事がある。なんでも、人間の血を吸う事で仲間を増やすとか、吸血鬼はニンニクが嫌いだとか・・・。

 

(あの男が酔ってる時に楽しそうに言ってたような。ここの吸血鬼が同じモノかは分からないけど)

 

 元マスターについて思い出していたニンフは不覚にも廃棄処分という言葉を思い出し身体がブルっと震えた。

 

 「あら、ニンフさん大丈夫?顔が青いけれど」

 「え、あ!だ、大丈夫よ。この空を(トモキと)飛んでみたいなって思ってただけだから」

 「それは良い考えね!その綺麗な翼で空を飛べるなんて羨ましいわ」

 

 飛鳥はニンフの虹の様な綺麗な翼を見て言う。後ろを振り向き大丈夫と伝えるニンフは何となく翼をパタパタとさせる。いつの間にかニンフの中から恐怖が消えていた。智樹の事を考えたからかもしれない。

 

 「うん。そうだね」

 「あら、何か言った?」

 「・・・・・・別に」

 

 にゃーにゃーいう猫が耀の腕の中から抜け出す。

 突然、喋り出した耀に飛鳥は声をかけるが相手にされない。飛鳥はそれ以上追及しなかった。

 さて、ニンフは改めて前を見た。賑わう噴水広場とその近くの清潔感の漂う洒落た感じのカフェテラスが幾つも目に入った。

 

 

 黒ウサギに段取りを任せていたがその黒ウサギが居ないので好きな所を選んで欲しいと言うジン。

 

 ニンフ達は身近にあった“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに座った。

 

 「いらっしゃいませー。御注文はどうしますか?」

 

 店の奥から注文を取るために素早く猫耳少女が現れる。最初、コスプレかと思ったニンフだが黒ウサギのウサギ耳が本物だったので彼女もそうなのだろうと考えた。

 

「えーと、紅茶を三つと緑茶を一つ。あと軽食にコレとコレとコレと」

『ネコマンマを!』

「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマですね」

 

 猫耳少女は注文を繰り返す。

 ちょっと注文が多かったような・・・?疑問に思うニンフと飛鳥とジンは不可解そうに首を傾げる。しかしそれ以上に驚いたのは春日部耀、信じられない物を見る様な眼で猫耳少女を問いださす。

 

「三毛猫の言葉、分かるの?」

「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー」

『ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘噛みしに行くわ』

「やだもーお客さんったらお上手なんだから♪」

 

 猫耳少女は鉤尻尾を振り振り揺らしながら店内へと戻っていった。

 

「・・・・・・箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」

『来てよかったなお嬢』

「ちょ、ちょっと待って。貴女もしかして猫と会話ができるの?」

 

 飛鳥の質問に耀は頷く、ニンフはその後の会話を静かに聞く。どうやらあの耀という少女はいろいろな種族と会話ができる能力―――この世界ではギフトか―――があるらしい。

 会話の最中、飛鳥はペンギンに過剰に反応していたが好きなのだろうかと思うニンフだった。

 

「久遠さんは」

「飛鳥でいいわ、よろしくね春日部さん」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私? 私の力は・・・・・・まあ、酷いものよ、だって」

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

 ピチピチのタキシードを着た大男が現れた。身長は2mを超えるんじゃないかというほど大きいその男は品の無い上品ぶった声でジンを呼ぶ。

 全く似合っていないタキシードを着た、まるで人間の真似をしているんじゃないかというその男は・・・・・・なんとジンの知った者だった。

 

「僕らのコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」

 

 どうやらこの会話中に割り込んでくる空気の読めない残念系大男エセ紳士はガルド=ガスパーという名前らしい。スガタやトモキとは違ったベクトルの残念さをガルドから感じたニンフは少し椅子を動かし距離を取った。

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなど出来たものだ―――そう思わないかい、お嬢様方」

 

 ピチピチタキシードは4人が座るテーブルの空席に勢いよく腰を下ろした。飛鳥と耀はピチピチタキシードの失礼極まりない態度に冷ややかな態度で返していた。

 

 

(トモキ、早く帰ってこないかな)

 

 そんな中、トモキへの好感度が軽く天元突破しているニンフはピチピチタキシードよりも、今この場に居ないトモキの方が気になっていた。

 やはり自分もトモキ達に付いて行くべきだったかと思ったり、トモキが拾ったエロ本を処理しておくべきだったとか思ったりしていた。ニンフはジン達の話を聞きながらトモキを思うのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 智樹がパンツロボと大活躍したいとか考えていた頃。

 

 ピチピチタキシードとの会話が一区切りついた。話しを要約すると、この箱庭の世界には魔王と呼ばれる特別な存在がいて、ジンや黒ウサギのコミュニティはその魔王の誰かに潰された・・・と言うことらしい。

 

「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。もしもこの時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

 

 

 ニンフは猫耳少女が運んできたケーキを食べながら今までの話を吟味する。

 

(ジンや黒ウサギのコミュニティに入ったとして無事に帰れる可能性は・・・)

 

 実はニンフ、まだ誰にも言っていないが空美町に4人で帰るつもりである。皆が居るあの場所へ必ず帰るのだと考えている。そのためには何をしなければならないか、考えるまでも無い、情報を集めるのだ。

 呼び出す事が出来るなら返す事もまた出来る筈だ、その方法を見つけて必ずあの町へ帰る。

 

(黒ウサギにその事を言ったら阻止される気がする・・・)

 

 同士が欲しい黒ウサギのコミュニティに帰りたいなんて言ったら阻止されるだろう。少なくとも私ならばそうする・・・そう考えるニンフ。なので、情報を集めるとしたらトモキとデルタ以外で行う事になる。

 

「彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 

 それなのに崖っぷちなコミュニティに入って自分達がボロボロにされるのはダメだ。

 

「もっと言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりでほとんどリーダーとして活動はしていません。コミュニティの再建を掲げてはいますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫」

 

 リーダーは頼りない子供、まともに機能するメンバーは黒ウサギのみ。そんなコミュニティでは帰る方法が見つかるのだろうか。まともに情報を得られる気もしない。

だが・・・。

 

「私は本当に黒ウサギが不憫でなりません。ウサギと言えば―――」

 

(この事をトモキが知ればどうするんだろう)

 

 誰に対しても優しい智樹はおそらく、しょうがねえなとか言って自分の身の危険を顧みずに助けるだろう。危険だと言われても鎖を切ってくれたあの時のように・・・。

 

「事情は分かったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」

 

 情報を集めるにはどうすればいいのか・・・

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

「私はジンのコミュニティにはいるわ」

「は?」

 

 ニンフは即答する、その顔には何も迷いはなかった。情報を集められないなら、集められるまで大きくすればいいのだ。アルファーやデルタが、そして何よりトモキが居るのだからそれくらいは出来る筈だ、そう結論付けたニンフだった。

 

 

 

 世界の果て付近、トリトニスの大滝。

 蛇神と別れ、世界の果てを見た帰り道。

 

「あの、智樹さんにも言っておかないといけない事が」

「イカロス達の力が必要なんだろ?」

「・・・っ!智樹さんも気付いていたんですか!?私達のコミュニティが崖っぷちだって」

「え?そうなの?」

「え?あれ?」

 

 今一つ噛み合わない黒ウサギと智樹の会話、智樹の後ろには大量のキノコを持ったアストレア。

 

「な、なんで智樹さんはそう思ったのですか?」

「えっと、なんていうか・・・さっきのお前さ、必死に見えたんだよ」

 

 そう言って、頭をかく智樹。黒ウサギは驚いた。

 

「申し訳ありません。それとありがとうございます」

「でもさ、あいつ等にあんまり戦ってくれとか言わないでくれよ。あいつ等にはやっぱ平和に暮らして欲しいんだ。だからさ」

 

(私は騙していたのに非難したりしない。この人は優しい人なんですね。・・・黒ウサギは申し訳ない気持ちでいっぱいなのですよ)

 

 黒ウサギはイカロスとアストレアを見る。そして言うのだった。

 

「同士の命は必ずこの黒ウサギが守ります。なので安心して欲しいです」

 

 

 

 その言葉を受けた智樹は3等身だった。

 

 

 

 




テスト前だけど頑張った。相変わらず残念な文章力ですネ。

 智樹の車窓から今回は、ニンフさんのおっぱい盛りお好み焼きを食べ…何言ってるんだろう?オイラは

テストがあるので頑張ってきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~そうだ、押し付けるだけじゃダメなんだ!~

ま、まさか一万文字を超えるなんて・・・。しかもこれ、あんまり話が進んでいなかったりする。・・・トモキの車窓からお届けします。


 

 日が暮れた頃、噴水広場で黒ウサギ達は別行動だったジン達と合流した。ジンから、なんとフォレス・ガロとゲームをする事になったと聞いた黒ウサギ。なんだか取れかかっている気がするウサ耳を思い切り逆立てて怒った。

 ちなみに問題児達の言い分はこうだ。

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

「黙らっしゃい!!!!」

 

 誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に、黒ウサギは脊髄反射レベルでつっこみ激怒した。

 黒ウサギは激怒した。黒ウサギには次に一息つける時間が何時出来るか分からぬ。だが、いつか彼の問題児達にきついお灸を据えなければならないと決意した。だが、この時黒ウサギは真に理解していなかった。

 この問題児達は黒ウサギの予想を遥かに超えていく最凶の問題児だと言う事に・・・。

 

 

 

 

 巨匠と服に書いていそうな智樹は黒ウサギ達とは少し離れた所でニンフと向かい合っていた。イカロスとアストレアは黒ウサギ達の方に居る。

 

「・・・・・・」

 

 何も言わずに無言な智樹は真っ直ぐにニンフを見つめている。

 

「あ、あのねトモキ!わたし」

「それは自分で決めたことなんだろ?」

「・・・え?」

 

 いきなり予想外の事を言い出した智樹に驚き戸惑うニンフ。智樹はなお続ける。

 

「その、ガルドって奴が許せなくて戦おうと思ったんだろ?」

「・・・えっと」

「自分から危ない事をしようとしてるのはダメだけどな。でも、それはニンフが自分で決めた事なんだろ。マスターの命令とかじゃなくて自分の意思で」

「う、うん」

 

 ニンフは智樹の真っ直ぐな言葉を受け入れる事ができず、気まずい気持ちでいっぱいだった。なぜ気まずいのか、その原因はガルドとのやり取りにあった。

 

 *

 

「私はジンのコミュニティにはいるわ」

 

 ガルドによる勧誘を迷いなく断ったニンフ。まさか即答されるとは思わなかったガルド(ピチピチタキシード)は一瞬何を言われたのか理解するのに時間がかかった。

 ニンフの即答に連鎖するかのように飛鳥と耀も言う。

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで私も間に合っているもの。春日部さんはどう思う?」

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」

「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの。ニンフさんも」

「・・・え、友だち・・・?」

「ええ、そう。友達よ」

 

 飛鳥の顔は赤く染まっている。友達になろう―――そう口にしておきながら気恥ずかしかったのだろう。自分の髪を触りながら耀とニンフに問う。

 ニンフは友達と言う言葉に戸惑う。どう答えるべきかを自慢の電算能力で考えるが答えは出ない。

 耀は無言でしばし考えた後、小さく笑って頷いた。

 

「・・・うん。飛鳥もニンフも私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」

『よかったなお嬢・・・お嬢に友達が出来てワシも涙が出るほど嬉しいわ』

 

 後はニンフだけだと、飛鳥と耀はニンフを見つめる。ニンフは顔を俯かせ小さな声で――うん――そう言った。

 

 3人の世界に入ってしまい全く相手にされないガルド。んん!っとわざとらしく咳払いしたガルドは顔をひきつらせたまま3人に問う

 

「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」

 

「どんなに紳士的な態度を取ったり親切な説明をしてくれたりしても、信用する事が出来ないのよ。トモキの安全を考えてもジンのコミュニティの方がいいわ。だから絶対に入らないの、ピチピチタキシード」

 

「私、久遠飛鳥は―――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士」

 

 ニンフと飛鳥はそれぞれの考えでガルドに言いきった。―ピチピチ!?― や ―エセ紳士!?― などと小さな声で驚くガルドは当然の様に怒りで身体を震わせる。自称紳士として怒りに身を任せるなどあるまじき行為だ、なので言葉を必死に選び言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、この小娘共がァァァァァァ!!」

 

 紳士もへったくれも無かった。

 

「何も知らねえだろうと思って下手に出て見ればなんなんだテメェらのその態度は!?本当なら黒ウサギだけで十分だってのによ!調子に乗ってんじゃねえぞ!?この『貧乳』のガキどもが!胸に全く栄養が行ってねえんじゃねえか、アァ!?」

「ガルド=ガスパー!なんて事をいうんですか!」

 

 ジンは感じた、このカフェテラス周辺の気温が少し変化したような感覚を。

 

「「「・・・・・・」」」

 

 3人娘は無言だった、その事に気分を良くしたガルドはさらに言った。

 

「事実だから何も言い返せねえのか?ハッ!悔しかったらその貧相な胸を大きくしてみ

「黙りなさい(・・・・・)」

「―――!?―――!」

 

 ガチン! とガルドの口は不自然な形で勢いよく閉じて黙りこんだ。

 3人娘の一人飛鳥は耀やニンフと比べれば胸は大きい。年齢のわりに発育が良いのだ。だが、そんな飛鳥は黒ウサギのエロッティックなボディを見た後だった。

 つまり何を言いたいかと言うと・・・3人娘は全員キレていたと言うことである。

 

 

 その後、飛鳥による逆らう事が出来ない尋問が行われ、ガルドの所業は明らかになった。酷い方法で相手を従わせ、数人の子供を人質を取り、逆らえないようにした。最後には子供達をただ五月蠅くてイライラしたという理由で全て殺してしまったと言う。

 まさに絵にかいたような外道がそこにいた。この外道は時間をかければ箱庭の法で裁ける。だが、裁かれる前に箱庭から逃げてしまえばこの外道は箱庭の法では裁けない。

 

「く・・・くそ・・・!」

 

 暴れようとした所を耀に組み伏せられるガルド。身動きはできず地面に伏せている。また、魔王という脅し文句も通用せずまさに手も足も出ない状況になっていた。

 ガルドの言葉にかなり機嫌を悪くしていたが、地べたを這う虫けらの様な情けない様子を見て飛鳥は機嫌を少しばかり取り戻した。

 足先でガルドの顎を持ち上げて悪戯っぽい笑顔で話を切り出そうとする飛鳥に、ガルドは一言、

 

「お嬢さん、パンツが見えていま

 

 わざと紳士っぽく言ったガルドの顔を、最後まで言わせる事無く飛鳥は踏み抜いた。耀は地味に関節技をかけ、ニンフも飛鳥のように踏み抜いた。

 

 

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と”ノーネーム“の誇りと魂を賭けて、ね」

 

 そしてギフトゲームをする事になったのだ。

 

 

 

 ニンフは確かにガルドの所業が許せないものだと思った。だが、貧乳と言われた怒りが許せないと思う気持ちよりも大きいのだ。なので、ニンフは智樹の真っ直ぐな言葉を受け入れる事ができず、気まずい気持ちでいっぱいだったのだ。

 

「さあ、戻るぞニンフ」

 

 そう言って話を切り上げてしまった智樹の裾を掴む。智樹は一瞬止まるが、その後、頭をかきながら少しゆっくりと歩くのだった。

 

 

 *

 

 ジンと別れた黒ウサギ達は超巨大商業コミュニティ“サウザンドアイズ”に訪れる事になった。最初こそ真面目にそれぞれ時間軸の違いなどに付いて話していたのだが・・・。

 

「ど、何処に行くんですか!?智樹さん」

「ウヒョヒョヒョ!」

「あ、スイカがありますよイカロス先輩」

「アストレアさんイカロスさん、勝手にはなれないでください!」

「なあ、なんであいつは2等身何だ?」

「トモキはいつもの事よ」

「お?いらっしゃい。いいパンツそろってるよ」

「ウヒョヒョヒョ!おっちゃん・・・やるな!」

「あたりめえよ!どうだい、いっちょ勝負してみるかい?」

「お姉さん、このスイカは売り物じゃないよ」

「いいぜおっちゃん。勝負し 「なんて物を売っているんですかあなたは!?」 ヒィッ!?」

「ちょ、箱庭の貴族様、その必勝の槍はやり過ぎでぃ!悔しいかな、ここは引くべきか」

「必勝の槍・・・ね」

「分かった、お姉さんのスイカへの情熱に負けたよ。ほら、タネだ持って行きな」

「・・・ありがとうございます」

「ま、まちなさい!下着泥棒」

「違うね!俺はパンツに込められた男の夢を追いかけているのさ!」

「こ、この!(速い!何ですかあの足の速さは!?)」

「このリンゴ飴美味しいわね、春日部さんニンフさん」

「・・・これはおいしい」

「うん、おいしい(今度トモキに買ってもらおう)」

 

 商店へ向かうペリベット通りはとてもカオスな状況になっていた。変態系問題児“智樹”の個人行動をきっかけとして問題児達は好き勝手な行動をし始めたのだ。しかもこの通りには箱庭の世界を回り女性のパンツを集めまくっている伝説のおっちゃん(人間)が露店をやっている。森の賢者さま御用達の露店なのである。

 

「もう、いい加減にしてください!」

 

 黒ウサギは道の真ん中で神々しい槍を片手に叫んだと言う。

 

 

 それから数分後、なんとか黒ウサギ一行はサウザンドアイズの店にたどり着く。割烹着の女性店員が看板を下げ終わった所であった。

 

「まっ」

「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 ・・・・・・ストップをかける事も出来なかった。咄嗟に時間を確認する黒ウサギ。

 

「だ、ダメでしょうか。閉店時間2分前ですが」

「例外はありません」

 

 流石は超大手の商業コミュニティ。押し入る客への返答に即答であった。

 

「そ、そこを何とかお願いできないでしょうか。・・・あと2分はあるのですよ」

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

キャーキャー喚く黒ウサギ。だが、店員は覚めた様な眼と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

「・・・・・・う」

 

 言葉に詰まってしまう黒ウサギ、しかし十六夜は何の躊躇いも無く名乗る。

 

「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

(あ、あの店員。分かっててやってやがる)

 

 女性店員の質問について、人生で一度も見た事の無い神秘的なパンツ達を見てすこぶる冷静になっていた智樹はそう思った。

 

「その・・・あの・・・私達に、旗はありま

 

 その時だった!空から白髪の女の子が!・・・・・・空からではなく店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女が現れ

 

「今度こそ!いぃぃぃやほぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィ!」

 

 なんとアストレアに抱き(もしくはフライングボディーアタック)つかれ、少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

「え、え、え!?きゃあ――――・・・・・・・・・!」

 

 遠くなる悲鳴と共に智樹はしっかりと見た。アストレアのおっぱいが少女によってしっかりと蹂躙されていた事に。

 名前を呼ばれた黒ウサギやその他十六夜達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

 

「だ、大丈夫ですか!?アストレアさん!!!」

 

 ハッ! としてアストレアの飛んで行った方へ駆けていく黒ウサギ。

 

「・・・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

 

 十六夜と女性店員、どちらも真剣な表情をしていた。2人とも割とマジだった。

 

 

 黒ウサギでは無くアストレアを強襲した白い髪の幼い少女は、アストレアの胸に埋めていた顔を上げた。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

「ハ!?あまりの大きさについ間違えてしまった」

 

 堂々と胸を撫でる白夜叉と呼ばれた少女、アストレアはあまりの衝撃で意識を失っていた。

 

「ズリィ!俺も!」

「ダメに決まってるでしょ!」

 

 今にでも駆けだそうな智樹を手を握る事で抑えるニンフ。イカロスはスイカの種が入った袋を見つめていた。

 

「フフ、フホホフホホ!黒ウサギとは違う触り心地だのう!これはこれで・・・なぜ?そんなの、そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!・・・では今度は黒ウサギの触り心地を」

 

 真面目な顔で黒ウサギの胸へと近付いてくる白夜叉さま。さりげなく丁寧にアストレアを横にして寝かしていたところからにじみ出る紳士さが窺えた。

 

「し、白夜叉様!こ、こっちに来ないでください!」

 

 白夜叉は黒ウサギに頭を掴まれ店に向かって投げられてしまう。ニンフはその姿に智樹のような奴だと思ったのだった。

 

 

 *

 

 

 アストレアが目を覚ました時、最初に目に入ったのは智樹の背中だった。おんぶされていた。

 

「ん?目が覚めたかな?先ほどはすまなかったのう、ついその胸が魅力的でな・・・」

 

 前方から先ほど突っ込んできた少女が話しかけてきた。それにより他の面々もアストレアが起きた事に気が付いた。

 

「大丈夫か、アストレア?」

「う、うん」

「歩けるか?」

「うん・・・あ」

「ん?どうした?」

「えっと、まだ歩けないかも」

「そうか、ならもう少し休んでろ」

「・・・うん」

 

 アストレアは降りない。いや、降りたくなかった。

 

 白夜叉に連れられて黒ウサギ一行は白夜叉の私室に案内された。個室というにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きな背伸びをしてから智樹達に振り返る。気が付けば、彼女の着物はいつの間にか乾ききっていた。

 アストレアの服もなんだかんだと乾いていた。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

 投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その声には少なからず疲れが見え隠れしていた。そんな黒ウサギの隣で耀が小首を傾げて問う。

 

「その外門、って何?」

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

十六夜、飛鳥、耀の3人の問題児達は黒ウサギによる箱庭についての説明を聞いている。そんな中、イカロスは何故か置いてあったこけしに夢中になりアストレアは未だに智樹の背中から降りずニンフはアストレアが羨ましいと睨みつけている。

そして智樹は静かに眼を瞑っていた。

 

「…………超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

(おっちゃんすげえよ!こっそりくれたこのブルマー。パンツじゃないからいらないっていったけど・・・パンツロボの新装備にピッタリだぜ!)

 

箱庭を食べ物に例える3人とポケットの中のブルマを握っている智樹。トモキの懐から何かが落ちてきた。

 

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ───その水樹の持ち主などな・・・て、おんし!それをどこで」

 

トリトニスの滝の蛇神について言っていたであろう白夜叉の顔が驚愕に染まる。白夜叉の視線の先は智樹の足もとだった。いや、より正確に言えばトモキの足もとに有るあのエロ本だ。

周りの視線がエロ本へと集まる。ある者は顔を赤くし、またある者は顔を赤くした。

『ぼよよん、揺れる揺れるおっぱい祭り!私達を脱がさないで~!in教室、運動会編』と書かれたエロ本には破損一つなかった。いや、見た所拾った時よりも綺麗に見える。それを見た白夜叉は少し安堵してトモキに問う

 

「そ、それは・・・私が数日前に買い物に出た時に無くしてしまった物だ (てっきりパンツ屋のオヤジにパクられたものかと思っておったのだが)」

「え?そうなの(これは返さないといけないのか!?)」

「これはとてつもなく大事なものでな。よくぞ、拾っておいてくれた。・・・おんし、名前は?」

「俺は桜井智樹(そんなに大切な物だったのかよ。それじゃあ返さないとな)」

 

その瞬間、白夜叉はその顔を先ほど以上に驚愕の表情に変えていた。それはもう、数十年ぶりに会えないはずの知人に再会したかのような顔だった。

 

「・・・『桜井』だと・・・!」

「ど、どうかしましたか白夜叉様?」

 

白夜叉が下を向き拳を握る。身体がプルプルと震え始めた。それを見た黒ウサギは心配になり話しかけるが反応はない。

それは数秒か、それとも数分か。この部屋を静寂が支配した。だが、その静寂は白夜叉によって破られる。

突然立ち上がった白夜叉は智樹の方をしっかりと見つめ問い始めた。

 

「お、おんしは『桜井智蔵』という名前を知っておるか」

「ん?じいちゃん。じいちゃんの事知ってんの?」

「ハ、ハハッ!そうか!あの小僧の子孫か!あの小僧と夫婦になろうと思う奴がおったのか!して、智蔵は健在か?」

「じいちゃんは結構前に・・・」

「・・・・・・そうか(あのゴキブリの様な生命力の持ち主が死んでしまったと言うのか)」

 

糸が切れたかのように座りこんでしまった白夜叉。相当ショックだったのか目を瞑り上を向く。そして、そのままの状態でこう言いだした。

 

「桜井家の人間よ。おんしはおっぱいが好きか?」

「え?いきなり何をい

「質問に応えよ!桜井!」

「ひ、ヒィ!?す、好きです!」

「そうか、なら女の子は好きか?」

「好きです」

「パンツは好きか?」

「大好きです!」

「そうか!では、着せ替え人形ごっこは好きか!」

「女の子の着せ替えなら大好きだ!」

「・・・やはり『桜井』だ。私が勝てなかった『桜井』はその意思を繋げたようだのう」

「へ?」

 

付いていけない黒ウサギ達はただただ静かに事の成り行きを見守っていた。

 

(おんしの魂はしっかりと受け継がれている様だな智蔵)

 

白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入った扇子を取り出し、満面の笑みで一言、

 

「桜井智樹よ、私とゲームをしよう」

 

刹那、この部屋の障子が開き大量の衣装が入って来た。

それは様々な種類の衣装だった。メイド服、ナース服、婦警服、セーラー服と機関銃、スクール水着、ビキニ、ヒモ、チャイナドレス、ドレスワンピース、魔法少女コス etc.・・・

智樹達はあまりの異常さに思わず息を呑んだ。

 

 

ゲーム名  “最高の一着”

プレイヤー  桜井智樹、白夜叉

クリア条件  相手に負けを認めさせる

クリア方法  いろいろな衣装を着せ替える

敗北条件   降参する

 

宣誓 上記を尊重し誇りと御旗の名の下、ギフトゲームを開催します

 

“サウザンドアイズ”印

 

「トォォォイウゥゥゥ訳で!始まりました。第21回着替え対決!! 実況は私 “サウザンドアイズ”臨時実況者と解説の飛鳥サンでお送りします」

「いったいどういう状況か分からないけれど一応頑張るわ」

 

衣装の中から突然現れる実況者、解説に飛鳥を選びサササッとゲームを開始してしまった。衣装を切る人形役は白夜叉には黒ウサギ、智樹にはアストレアである

 

「まずは小手調べと行こうか、10連早着替え!」

 

「まずは先攻、白夜叉様は・・・おっと!早い早い早い!10連ちゃん!しかも、一着一着の良さを引き立てる流れるような早着替えだ!」

「あれほど早いのに一着一着どの様な服を着たのかきちんと視認できるわ」

 

「やるな、でもそれくらい」

 

「対する智樹選手、白夜叉様と同じく10連早着替えを炸裂させた!!!」

「どちらも普段着の早着替えだわ。黒ウサギとアストレアさん、どちらも顔を真っ赤にしているわね」

 

「まあ、これくらいは当然だろうのう。では!」

 

「こ、これは!?普段着の組み合わせを変えて何種類もの衣装としている!!!な、なんと言う速さだ!これにはさすがの智樹選手も」

「いいえ、まだよ。智樹君はまだ諦めていないわ(そ、それにしてもいろいろと過激な物が多いわね。あのヒモの様な物はなんなのかしら)」

 

「いやあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!?!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?」

 

「智樹選手、白夜叉様の早着替えについてきています。しかし、人形役の2人の悲鳴が耳に響きますね」

「あれでは黒ウサギ達は何をされているのか理解さえ出来ていないと思うわ」

 

「これにも付いてくるとはのう。だが、息が上がっているようだな。それでは次は付いて来れはせんぞ」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ、く、くそ」

「降参かのう?」

「諦めてたまるか!」

「その心意気やよし。では、私も最後まで全力で行くぞ!」

「ウオォォオォォォォォォォォ!!!」

 

「ここからはそれほど速くはない着替えです!なので2人の衣装のセンスが問われます!」

「智樹君はセーラー服を取ったわ」

「白夜叉様は・・・何とスクールミズギィィィ!!!」

「白いわね」

 

「俺がただ単にセーラー服を着させると思うか」

 

「なんと!智樹選手、セーラー服のスカートを外した!そしてそこに広がっている光景はブルマーです!普通に体操服にブルマーではなくセーラー服にブルマーとは憎い。これは是が非でも体操服ブルマーの姿を見たくなりますね!」

「え、えっと。・・・ごめんなさい、わからないわ」

「いいえ、結構です。これは男子にしか分からないィィィ!しかも、アストレアさんのもじもじとしている動きが更に男子の欲望を活性化させる!」

 

「そうきたか、でもこちらは更にその先へ行く!」

 

「黒ウサギが来ているのはスクール水着ね、白いわ」

「旧スクだ!だが、これではインパクトが足りないような気がします」

 

「ここに黒いパーカーをはおらせる。そして!」

 

「み、水です!白夜叉様が水を霧状にして黒ウサギさんに吹き掛けました」

「黒ウサギの肌が透けて見えてくるわ!なんと言う卑猥な光景なの!?」

 

「き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?な、何をするんですか白夜叉様!?」

「フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギの肌は格別だのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

「や、やめて!見えちゃう、見えてしまいます!」

「フフフ、ジャッチメントですの!」

「それもダメです!?」

 

「いいぞけしからんもっとやれ!フォオオオオオオオオ!!!」

「実況が実況をしていないわ。ど、どうしましょう。足が地面に張り付いてその場から動けない黒ウサギとアストレアさんには同情するわ」

 

「まだまだいくぞ!」

「ハッハッハ、付いて来れるか?」

「とうとうとう!!」

「ウホホホホホホホ!!!」

「ウヒョヒョヒョ!!!!」

 

~~~省略~~~

 

「いったい何着の衣装を着せ替えさせたのか分かりません。両者一歩も譲らない激しい戦いでした。ですが永遠に行われるようなこの戦いも決着がつこうとしています」

「ここまでいくといっそ清々しいわね」

 

「・・・ふぅ、私とよくここまで争えたものだ。さすがは『桜井』か。だが、それもここまでだ。諦めろ、おんしでは私には勝てぬ」

「・・・・・・」

「童顔な黒ウサギの為の新しい審判服にしようと思っていた一着だぞ」

 

「あ、あれは!?胸を強調した黒いドレス。漆黒のウエディングドレスだ!大人びたこのドレスがウサギの魅力を大きく上昇させる!こ、これは強力だ。結婚生活13年目の私が心を揺さぶられるほど強力な一着だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あれは良い服ね。ああいうので赤い服があれば欲しいのだけれど」

 

(じいちゃん、オレ頑張ったよ。じいちゃんに教えられた全部を出し切ったんだ。でも、勝てない。じいちゃんは勝てたんだろ。オレにはいったい何が足りなかったのかな・・・)

 

「おっと、智樹選手動かない!これは降参か!?」

 

――――――――――――――――――――――

 

 

『一方的だからじゃね?』

 

じ、じいちゃん!?来てくれたのか!ありがとう。

でも、一方的って?

 

『押しつけるだけではどちらか一方だけしか楽しめん。そんな一方的なのは間違ってるんじゃね?』

 

じ、じいちゃん・・・じゃあどうすればいいんだ!どうすれば勝てるんだよ!?

 

『勝つとか負けるとか小さいな。トモ坊、いい女はセンスもいい。そしていい女とは支え合わなきゃ』

 

いい女はセンスが良い・・・支え合わないと・・・そっか。

わかったよじいちゃん。オレ、もう一回頑張るよ。

 

――――――――――――――――――――――

 

「おーい!アストレア」

「な、なによ」

「お前、どんな服着たい?」

「・・・え?」

「なにをしておる!?」

 

「ど、どういうことだ!智樹選手、普段着をアストレアさんの所へ持っていき選ばせた!?」

「今までずっと好き勝手していた智樹君がどうしていきなり」

 

「じ、じゃあこれ」

「これ?なんか地味だな。こんなのはどうだ?」

「これは少し大胆すぎると言うか」

「そうか?似合うと思ったけど」

「そ、そう?」

「ま、いやって言うなら間を取ってこんなのはどうだ?」

「あ、これはいいかも」

「そっか、よしじゃあ着替えてくれ」

「う、うん」

 

「どういうことなんでしょうか。あまりの変わりように私は小声で話をしてしまいます」

「何故か大声を出したら悪い雰囲気になってしまったわ」

 

「ごめんな、アストレア」

「え?」

「俺、分かったんだ。女の子の着替えなのに一方的に決めて嫌な思いをさせたらダメだって。せっかくのお着替えなのにどっちも楽しいと思えなければそれは、着せ替えの意味がないんじゃないかってさ」

「着替え、終わったよ」

「おぉ、似合ってるじゃん」

「あ、ありがと」

 

(どちらの意見も尊重し、どちらも着替えを楽しむ事ができなければ着せ替えの意味がない・・・か。認めたくはないが完敗だ。何処までも一方的だった私では絶対に勝てないな・・・)

 

「え?白夜叉様!?な、何故両手を上げているんです。いったいどういうことだ!?」

「つまり、白夜叉が負けを認めたということね。長かった戦いも終わりを迎えたと言う訳。おつかれさまでした」

 

「私の負けだ、智樹よ。今度こそ『桜井』に勝てると思ったのだがのう」

「俺一人だったら負けてたさ。でも、じいちゃんのアドバイスがあったから思い出せたんだ。着せ替え人形の楽しさが」

「ふ・・・そうか。では、勝者には相応の“ギフト”を与えよう。

 

 

 

 

 

「ふ・・・そうか。では、勝者には相応の“ギフト”を与えよう。

 

白夜叉はパンパンと拍手を2回打つ。すると後ろからエロ本が飛んできて白夜叉の手の中に収まった。

 

「実はこれ、どんなにボロボロになっても次の日には元に戻る。今回の事には関係がないのだがのう。これが渡すものだ、『桜井』には丁度良かろう」

 

白夜叉が渡してきた箱、開けてみるとそこには

 

「マント?」

「ただのマントでは無いぞ。神性をもつ桜の花びらを合成した特注品だぞ。炎にめっぽう強い」

 

智樹はそのマントを付けて見る。桜の花びらが描かれたマントである。

 

(コノハナノサクヤビメ・・・か?)

 

マントについてそう考えるのは十六夜だった。

 

 

この後、智樹のポケットの中にブルマーとパンツが入っていてニンフにパラダイス=ソングを喰らわされてボロボロになったのだが、それは後日。確かなのは、今日この日に白夜叉と智樹の間には固い友情が生まれたと言う事のみである。

 

 

 

 




う、うわああ!!!

 今回ほとんどが会話文しかないよ!見切り発車の地の文無しとか最悪だよ・・・。まあ、ガルドさんを変態にしたりで楽しかったけど。あと、智樹さんがボロボロになった、ワーイワーイ!

ちなみにじいちゃんは強かったよ、エロい事に関しては負け無しだった。なんて言ったって戦士だからね・・・違うか、『桜井』だからね。

今回は此処まで、また次回に智樹の車窓で


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~変身~

時間をかけてこの字数…いくら色々忙しかったと言っても言い逃れできないレベル。これだから見切り発車は。

お久しぶりです、やっと更新できました!


 

 

 

 

 フォレス・ガロのリーダーであるガルドは今日の一件をとても後悔していた。

 今日こそは黒ウサギという強力な駒を、最高の玩具を、最上の箔を手に入れる最大のチャンスだった。今まで何度もアプローチをしてきたが黒ウサギに鼻であしらわれてきた。しかし、“ノーネーム”の存亡を賭けた今回の召喚を行ったという今日こそは黒ウサギを手に入れるには最大のチャンスだったのだ。それだと言うのに・・・、

 

 「くそ・・・くそ、くそくそくそこのドチクショウガァ!」

 

 いったい何をどこでどう間違えたのか。”ノーネーム”が新たに召喚した人材に手も足も出ず、今までしてきた行いを全て吐かされ、勝てる見込みがないギフトゲームを断ることも出来なかった。情けない事この上ない。

 自分の屋敷で頭を抱えていたガルドは身近にあった執務机を持ち上げて窓の外に放り投げた。それはフォレス・ガロ結成当時のメンバーに言われ、ただ格好を付ける為に買って目立つように設置した形だけの執務机だった。とても大事な物だった、何があってもこの執務机を見れば短気なガルドが耐える事ができるほどだった気がする。

 だが、そんな執務机も数日後には不要になってしまうものである。

 

 「あの女のギフト・・・・・・精神に直接触れる類だ。あんなのがいたらどんなゲームを用意しても勝ち目なんてねえ。クソガァ!あの青臭え貧乳娘共!せめて黒ウサギならよかった!」

 

 本来であれば“主催者”であるガルドは領地内でギフトゲームを用意できるため、相当に有利なゲームを組めるはずである。だが、問題はそのゲームの挑戦者(断罪者)である。

 久遠飛鳥にガルドは逆らう事ができなかった。座れと言われれば座り、喋れと言われれば喋る。これはおそらく、久遠飛鳥のギフトが相手を自分の意のままに操る事が出来ると言うことだろう。

 久遠飛鳥がいる限り、生半可なギフトゲームでは絶対に勝つ事は出来ない。相応のギフトゲームを用意しなければ無様に負けることは確実だ。では、どうするか・・・。

 

 「失礼します、ガルド様。本日の子供を連れてきました」

 

 頭を左右に振りながら悩んでいるガルドの所に腹心の一人(クマである)が子供を連れて現れた。子供は随分と痩せこけていた、着ている服は白い体操服に皮のズボンだった。

 どうせ最近吸収したコミュニティから来た名だけの人質だろう。犬を思わせるような耳をした少年だった。

 腹心を下がらせる。

 

 「・・・・・・おじさんが僕を食べるの?」

 

 最初、少年は何も喋らずいた。なので、ガルドはこれからの事について必死に考えていた。ギフトゲームの事を考えると少年を食う事など考えられなかったからだ。

 しばらく経って少年がガルドに対して口を開いた。お前が自分を食べるのかと、そう聞いて来た。少年のその声には何か大事な物が足りないとガルドは感じた。その『大事な物』が何なのかは分からなかったのだが。そんなことよりも、ガルドは嫌だった事がある。それは少年の眼だった。

 

 「食べられたいって言うんなら食ってやるよ。何人か呼んで食ってやる・・・ああ、食う所がなさそうだがな!」

 

 ガルドが身体をワータイガーへと変化させ少年に近づく、だが少年は特に怯えた態度を見せずいた。ただただ、ガルドを見つめるだけだった。

 

 「チッ・・・気が変わった」

 「・・・?」

 

 普段ならこんな風に恐怖させるような行動はガキが泣いて騒ぐのでしないガルドだったが、今だけはそんな風に騒いで欲しかった。騒いでくれればガルドは少しでもギフトゲームについて考えないで済むと思ったからである。だが、この少年はそんなガルドの期待を裏切ってしまった。

 何を思ったのか、ガルドは少年の頭に手を乗せて笑顔で言った。

 

 「実は・・・相談があるんだが」

 

 

 

 辛くも、初めてのギブトゲーム(着せ替え)で勝利を収めた智樹。対戦相手だった最強の階層支配者の白夜叉(昔は箱庭で魔王と呼ばれていた)と謎の深く固い絆が生まれたのだった。これからも智樹の『漢』の為の戦いは続く…

 

 

 さて、コンブのパラダイス=ソングを受けてもなんとかブルマーだけは、貰ったマントに包み死守した智樹だったが、そのおかげで問題児な女性陣にゴミを見る様な眼で見られてしまったのだった。イカロスはそんな智樹を見てやはりこう思う。

 

 (笑っている。ああ、今日もマスターは元気だ)

 

 智樹は気絶した。限界が来たのだろう、仕方なしとイカロスより先にニンフが素早く膝枕をした。

 

 

 智樹が目覚めた時、周りの世界は爆発的に変化していた。それを智樹が例えるとするならば、“モテ男ジャミング”で世界一のモテモテになる位の変化だった。そう、智樹の眼に写ったのは白い雪原と凍る湖畔―――そして、水平に太陽が廻る世界だった!

 

 「・・・・・へ?」

 

 智樹には分からない事だが、この現象を引き起こしたのは白夜叉である。

 遠く薄明の空にある星、緩やかに世界を水平に廻る白い太陽が美しい。まるで星一つ、世界一つ創り出したかのような奇跡の顕現を言葉には出来ない。この現象、この世界こそが白夜叉と言う最強の階層支配者を表現していた。

 

 「起きた?トモキ」

 「大丈夫ですか?マスター」

 

 智樹が起きた事に気が付いたイカロスとニンフは、同時に智樹に声をかける。何が何だか分からない智樹は身体を起こして改めて2人を見た。

 

 「あれ?さっきまで部屋の中だったよな。・・・ブルマーは!?」

 「ここにあります、マスター」

 「トモキ・・・ほかにないの?」

 

 混乱はさておき、まずはブルマーの安否を確認。イカロスに手渡されたブルマーを握りしめ立ち上がる。その姿にニンフは呆れるだけだった。

 

 「他・・・?そういや、何があったんだ?」

 「マスター、実は―――」

 

 イカロスの説明を受け(所々、ニンフの補足があった)ほとんど分からなかったが、状況を理解した智樹。白夜叉が新たなギフトゲームを始めたらしい。なるほど、湖畔を見ると何かが飛んでいるのが分かった。上半身が鷲であり下半身が獅子である、そんな2種の王を兼ね備えたその姿は幻獣グリフォンだった。そしてその幻獣に跨っている者が一人、獣と言葉を交わすペッタン少女“春日部 耀”である。

 智樹がグリフォンの姿を眼で捉える事が出来たのは、離れた場所から全体を見ていたからだろう。それほど、グリフォンの移動速度は速かった。グリフォンが通れば大気が震えあがり、翼を羽ばたかせればその衝撃で氷河が崩れる。その衝撃を受けてなお、耀はグリフォンの背中から落ちはしなかった。グリフォンがどんなに旋回を繰り返しても耀は手綱から手を離しはしなかった。ゴールしたその瞬間まで・・・!

 

 無事、白夜叉のギフトゲームをクリアした問題児一行は眼を覚ました智樹を交え、白夜叉の所へ集まった。白夜叉はゲームの報酬になにか渡すようである。

 

 「ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう。智樹にもサービスだ」

 

 白夜叉がパンッ!パンッ!と柏手を打つ。すると4人の眼前に光り輝く4枚のカードが現れる。

 

 十六夜の前にはコバルトブルーのカード。ギフトネームは“正体不明”

 飛鳥の前にはワインレッドのカード。ギフトネームは“威光”

 耀の前にはパープルエメラルドのカード。ギフトネームは“生命の目録”“ノーフォーマー”

 智樹の前にはブラックのカード。ギフトネームは何も無・・・“呼んだ?”“智樹六道地獄”と、とても薄く書かれていた。これはおそらくバカにしか見えないだろう。

 

 「 ギフトカード! 」

 「お中元?」

 「お歳暮?」

 「お年玉?」

 「おっぱい」

 「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです!?それと、智樹さんはおバカ様です!・・・このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの“生命の目録”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

 つまり、レアな便利グッズである。その後も、なにかとギフトカードについて説明した黒ウサギだった。

 

 「そういや、智樹。お前が連れているその三人、エンジェロイドだったか?イカロス、ニンフ、アストレアといえば、ギリシャ神話だが」

 「ニンフさんの羽は虹色なのね、綺麗だわ」

 「イカロスとアストレアの羽も綺麗」

 「御三人様はやはり、空を飛ぶ事が出来るギフトをお持ちなんですか?」

 「おんしら2人は黒ウサギに勝るとも劣らない胸を持っているな。眼福眼福」

 「空から降ってきた未確認生物デス」

 「UMAってことか?俺が世界中を旅してた時はそんな生物見なかったが・・・」

 「私達はシナプスで作られたエンジェロイドです」

 「シナプスって?」

 「シナプスついては答えられません」

 「ふーん」

 「エンジェロイド・・・昔どこかで聞いた覚えが、どこであったかな」

 「ギフトとは少し違うと思うんだけど」

 「そうなのですか?ニンフさん」

 

 こんな風に会話を交わしながら9人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動した。

 

 「おかえりですか?」

 「うむ」

 「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 「あら、ダメよ春日部さん。次に挑戦する時は対等の条件で挑むのだもの」

 「ああ、吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 「じいちゃんの話を今度聞かせてくれ」

 「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。智蔵の話を沢山用意しておこう。・・・・・・ところで」

 

 白夜叉は先程までの楽しそうな顔をスッと真剣な顔にして智樹達を見た。

 

 「今更だが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているのか?」

 「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

 智樹はただでさえ崩れかかっている平和と言う名の柱が更に崩れる気がした。

 

 「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」

 「聞いてるわよ」

 「・・・。では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

 ニンフは顔を曇らせる。イカロスはそんなニンフの肩に手を置いた。

 

 「そうよ、打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

 「“カッコいい”で済む話ではないのだがの・・・・・・全く、若さゆえのものなのか。無謀と言うか、勇敢と言うか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰れば分かるだろ。それでも魔王と戦う事を望むと言うなら止めんが・・・・・・そこの娘二人よ、おんしらは確実に死ぬぞ」

 

 飛鳥と耀に放たれた白夜叉の予言に対して、2人は何も言い返す事をしなかった。元魔王の忠告は物を言わさぬ威圧感があったのだ。

 

 「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧はともかく、おんしらの力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様はいつ見ても悲しいものだ・・・それと桜井智樹。おんしはそれ以前の問題だ」

 「・・・ん?」

 

 たらりと、汗をかく智樹。まさか、自分に声がかかるとは思っていなかったのだろう。ブルマーを頭に被ろうか考えていた所を話しかけられたようだ・・・。

 

 「おんしのギフトカードを見たが何も書かれてはおらんかったぞ。一度、どうするか今一度よく考えよ」

 

 「・・・・・・」

 

 

 

 

 白夜叉と別れ“ノーネーム”のコミュニティ領地に辿り着いた一行。箱庭最悪の天災、魔王が残した傷跡を見る事になった。

 美しく整備されていたはずの白地の街路は砂に埋もれ、木造の建築物は軒並み腐って倒れ落ちている。要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折れ曲がり、街路樹は石碑のように薄白く枯れて放置されていた。まるで、何百年と言う時間経過で滅んだように崩れ去っていたのだ。

 だが―――黒ウサギの言葉を信じるとするならばこの光景は3年前からのモノである。

 

 皆が息を呑む中、十六夜だけはスッと眼を細め木造の廃墟にに歩み寄り囲いの残骸を手に取る。少し握っただけで木材は乾いた音を立てて崩れていった。

 

 「・・・断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方はあり得ない」

 

 ニンフは自分の選択を間違えてしまったのではないかと思った。そう、この壊れ方は物理的にあり得ない。膨大な時間をかけて自然崩壊したかのようなこの光景を魔王と呼ばれる存在は一瞬の内に作り上げてしまうのだと理解してしまったのだ。

 

 (どうしよう、アルファ・・・)

 

 ニンフは頼りなくイカロスに目線を向けるが、イカロスも眼を見開いて驚いていた。

 

 「よーし!行くぞ、イカロス!ニンフ!アストレア!」

 

 智樹は気にした様子も無く、走っていこうとし・・・、

 

 「あ、待ってください!そっちはこの間、子供達が掘った落とし穴が 「あれ?」 あ・・・」

 「うわああああああああああああ―――・・・!?」

 「智樹君!?」

 

 黒ウサギの忠告空しく、穴の中へ落ちていったそうな。ちなみにこの穴は、侵入者対策の穴だったりするのである。

 

 「魔王―――か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか・・・!」

 

 

 *

 

 さて、所変わって“ノーネーム”・居住区画、水門前。ここでは、先ほどの蛇神との勝負で貰った水樹の苗を、ジンとコミュニティの子供たちが掃除した貯水池へと設置したのだった。

 屋敷に着いた、もう夜中だった。来客用の貴賓室に皆集まっている。月明かりに照らされた本拠は少しばかり綺麗であった。

 

 

 水は用意できた。水といったらお湯、お湯といったら風呂、風呂といったら?

 

 「ゆ、湯殿の用意が出来ました!女性様方からどうぞ!」

 

 黒ウサギの声が響く。酷い状態らしい大浴場の掃除が終わったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、お風呂といったら女湯である・・・否!新大陸である!男性が女湯に入れるのはせいぜい10歳程度まで。それを過ぎた男性が女湯に入れる機会はもう二度と訪れない。女湯がどんな世界なのか、もはや我々に知る術はない!!

 

 「さあ!出番だ!“量子変換機”」

 

 さて、メタモルフォーゼして女湯へGO!新大陸を発見だ!

 

 




智樹にギフト?ある訳ないじゃない・・・どうしよ。

最初はイカロス達をギフト扱いにしようかと考えていましたが、ニンフルエンザに罹ったのかな。さすがにそれはどうなんだという気持ちが大きくなってしまいました。ちなみに”呼んだ?”というのはあれです。智樹がイージスを破った、股間から発射されたエネルギーですね。
可変ウィングのコアってギフトかな・・・?と思ったり思わなかったりな日々です。

あ、グリー・・・ごめんね、出番なかったわ。

今回は此処まで、次回は恒例のお風呂回?ではまた智樹の車窓で


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~さあ、君もメタモルフォーゼして新大陸で僕と握手!①~

認めたくない、見切り発車ゆえの亀ペース投稿というものを…!

しかも、この内容……どうしよう。お久しぶりです、やっと更新できました!


 

 (みなさんこんにちは 智樹です。唐突ですがみなさん、お風呂っていいですよね?無防備な姿をさらして裸の付き合いをしたり、その日一日の疲れや汚れなんかを流してしまったり)

 

 今回のあらすじ

 

 (『お父さんの後のお風呂なんて嫌だよ!先に入るからね!!』 みたいな❤)

 

 異世界に召喚されて、大混乱な桜井智樹が何をトチ狂ったのかある行動をします。

 

 (もしかしたら、先輩の探している新大陸はお風呂の奥深くにあるかも、県によって違いはあるが10歳を超えた位から男子が決して入浴する事を許されない場所! そこがどんな世界なのか、もはや我々男子に知る術はない!! そう、それこそが新大陸!!!)

 

 現在の智樹のいる場所には、脱いで丁寧に畳まれた服が置いてある。これの意味する事は―――

 

 (いったい何が言いたいのか、ええ、気持ちは分かります。

 

 

 

 

 

 ―――――あー・・・女湯入りてーっ!! )

 

 

 智樹が 女湯に入りたい。 ただそれだけ なので

 

 女湯に入りたい人はそのままGO!

 女湯に興味がない人は別の小説へGO-!

 

 

 

 イカロスを抜いた女性陣は、大欲情・・・大浴場で髪を洗っていた。このとても広い大浴場は本来、コミュニティーの沢山の仲間がいっぺんに入ったりしていたのだろう。それを思うと少しばかり今の状態は寂しいものがある。

 しばらくの間、まともに整備されていなかったにしては綺麗な大浴場だ。多分、黒ウサギの掃除スキルが高いのだろう。“箱庭の掃除屋”に二つ名を変えればいいのに・・・。

 天井を見ると、満天の星が輝く素敵な夜空が見える。これはおそらく、箱庭の天幕と同じなのだろう。天井は透けていた、湯気は透ける様子はないが・・・。

 

 

 やがて、女性陣みんなが次第に髪を洗い終わる。さて、ここで一つ質問である。お風呂に入る時に必ず使うものと言えば何だろう。せっけん?シャンプー?リンスー?確かにそうだろう。それらはお風呂に入るならば大多数が使用する物だ。必須アイテムだ。

 では、智樹はせっけんやシャンプー、リンスーに変身しているのだろうか。否、否、否!断じて否!

 

 「量子変換率100%稼働、変化安定オールグリーン」

 

 脱衣所にてインカムを付けたイカロスは機器を操る。その機器こそかの有名な“量子変換機”である。これを使うと、ある時はせっけんに変身したり、プールの水なんかにメタモルフォーゼしちゃったりできる (本来はもっと別の用法があったと思う) とっても羨ま・・・凄い道具なのだ!

 

 「どうですか、マスター?」

 

 智樹は今、とある物に変身している。それを言葉を並べて表わすとするならば、せっけんを泡立てる為にモミモミされる物、身体のあらゆる所に押し付けてゴシゴシする物!

 

 

 そう!桜井智樹が変身しているのはスポンジである!!!

 

 「(非常に良☆好です!!!)」

 

 そんな事とは露知らず、最初にそのスポンジに手を伸ばしたのは・・・気高き真紅い少女、久遠 飛鳥!

彼女の白く瑞々しい指先が智樹のスポンジ (以後、トモキスポンジとする) に触れた。

 

 「―――ッ!?」

 

 その時、智樹の脳内に電流が走る! 今まで感じた事の無い感覚が智樹の思考を染めた! 普段は女の子のおっぱいを揉んで喜びを感じる智樹はこの瞬間に理解した! 女の子の指とはこんなにも柔らかいモノだったのかと、女の子に揉まれると言うのはこんなにも気持ちの良い素敵な事だったのだと! 生まれ変わるならスポンジに成りたいとすら思えるほどの衝撃だった。

 だが、忘れるな。これはまだ序盤も序盤、ただ揉まれただけなのだ。本来のスポンジの使用方法にすら辿り着けてはいないのだ。そう、本来の使用方法とはつまり、身体のあらゆる所に押し付けてゴシゴシする事! トモキスポンジが次に体験するであろう事こそが、本番である。智樹は息をひそめる。

 飛鳥は特に迷うことなく、流れるようにせっけんを手に取りトモキスポンジに擦りつけ泡立てる。彼女の白く瑞々しい指が何度も何度もトモキスポンジを揉んでく。その度にトモキスポンジは形を変える。柔らかいその指の感触とせっけんのぬるぬるを全身で感じる。全身を好きなように弄ばれているような、快感を感じ―――気が付くとトモキスポンジは泡立っていた。

 

 (呼んだ?)

 「(こいつ直接、脳内に!)」

 (呼んだろ?呼んじまったろ~?)

 「(・・・・・・いいぜ、相棒。目指そうぜ、新大陸!)」

 

 

 さあ、ついに時は来たり。泡立ったトモキスポンジが飛鳥の白く瑞々しい肌に押し付けられる時が来た! まさに、全身で女の子を味わう時が来たのだ! 飛鳥の色っぽいうなじや手のひらサイズの美乳、綺麗にくびれている腰まわりに柔らかそうな尻、そして白く輝くような脚。トモキスポンジはこれよりその全てを味わう、なんと羨ましい光景だろうか・・・!

 

 それは正にパラダイスだった。せっけんでヌルヌルになっていく飛鳥の身体に感じる征服感。スポンジという手足動かぬ身であるものの、自分がこの少女を好き勝手にしているような感覚を智樹は感じていた。飛鳥の身体に押し付けられると柔らかいのに程良い弾力感があり、胸などは言葉に言い表せぬほどの衝撃だった。

 

 「(ゆ、指なんてまだまだだった。子供騙しだったよ、じいちゃん!)」

 

 先ほどの指など本当に序盤だったのだと智樹は思った! 自分で女の子のおっぱいを揉んだりしても決して分からなかった初体験だった。智樹はこの今こそ大人への階段を一歩踏み出したのだと実感した。

 そして、ふいにじいちゃんの言葉を思い出した―――

 

 

 

 『トモ坊、男はおっぱいがあったら揉んでしまうもんだ。でも、それじゃあ不公平じゃね?』

 

 『じゃからのう、トモ坊。女にも揉んでもらわないといけないんじゃね』

 

 『男がおっぱいを揉んだら男として成長するように、女も男を揉んだらいい女に成長する』

 

 

 

 

―――久しく忘れていた智樹の幼き日のじいちゃんの言葉だった。意味が分からん

 

 突然、柔らかく弾力のある素晴らしい感触が消えた。トモキスポンジが元あった場所へ返されたのだ。智樹が、先程まで自分を使っていた飛鳥を見るとシャワーを浴びていた。そう、トモキスポンジは使い終わったのだ。これはスポンジ本来の身体を綺麗にするという役割を全うしたならば当然の事である。それを理解した智樹はただ見る事しか出来なかった! 手も足も動かせぬスポンジの身ではそれしか出来なかったからだ! 

 

「(今までの人生で最高の時を味わっていたはずなのに)」

 

 飛鳥は湯船へと向かってしまう。

 

 「(そうだよ。スポンジだ、しょせん俺は今水を吸って重くなっただけのスポンジじゃないか。使われるのはお風呂限定じゃないか・・・!)」

 (あ、相棒。大丈夫か・・・)

 

 そこで智樹は本日、二度目の電流が智樹の脳内を駆け巡った!

 

 「(この世界ならではの不思議な事がお風呂で起ったって不思議じゃ・・・・・・ない!)」

 

 すぐ様、智樹はイカロスに次の行動を知らせた。

 




智樹の車窓から・・・今回はお風呂回①(①だからと言って②があるとは限らないと思う)

最初は、もっとGO-!GO-!という感じで4000文字書いていたのですが。出来上がりを読み返してみると…あれ?R18じゃね?…となったので時間がかかりました。



時間がかかった事に関してはただのいい訳です。ごめんなさい。
今回は此処まで、次回はもしかしたらお風呂回②かもしれません

(しかし、自分で書いておきながら 『一体何を書いているんだ』 ってなっている。豪デレ美少女 凪原そら を見てもっと精進しなければ…!」


おまけ
~女湯~

飛鳥「~~♪」
トモキスポンジ「(ウヒョヒョヒョ!)」

~脱衣所~

イカロス「ピコピコ」
三毛猫「にゃーにゃあー!(何しとるんや嬢ちゃん、なーなー?)」
イカロス「あ……(抱きかかえナデナデ)」
三毛猫「にゃ、にゃあ!?(何するんや!?)」
イカロス「なでなで」
三毛猫「にゃ、にゃあー(なんや、案外いい撫で方するんやな)」
イカロス「・・・・・・」
三毛猫「ぬにゃあー(お、いい笑顔)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~さあ、君もメタモルフォーゼして新大陸で僕と握手!②~

長い間、時間を開けてしまいました。カメ更新ならぬ超不定期更新ですが頑張ってます


さて、今回の智樹の車窓からは・・・あえて、あっちに目を向けてみました。


 前回、難なく飛鳥の身体を堪能しまくったトモキスポンジだったが自分が手足動かぬただのスポンジだと言う事に気が付いた。どんなに―――そう、どんなに女の子の指が柔らかろうがどんなに女の子の柔らかいお肌に押し当てられようが所詮はスポンジ。お風呂の時にしか出番がない究極のお留守番、最悪のお預け状態だと理解した。後、スポンジ故に水を吸い込んで体が重く感じた。これでは意味などない・・・!

 さて、果たして今回は桜井智樹はどんなモノに変身するのだろうか―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 「・・・んっ!・・・んぁっ・・・!」

 「・・・ひゃっ! や、やめっ・・!」

 「・・・あっ!・・・あぁっ・・・!」

 

 少女達の奏でる甘い声が女湯に響く・・・! その声は聴く者を惑わす魔力を持つような印象を抱かせた。

 浴槽のお湯が不自然に揺れ動く。

 

 

 

 

 

 

 どうしてそうなったかと言えば、つい先ほど5分くらい前の事でした―――

 

 

 「今日は本当に長い一日でした。まさか新しい同士を呼ぶのがこんなに大変とは、想像もしておりませんでしたから」

 

 今日一日の苦労を振り返るように両腕を上げて背伸びをした黒ウサギ。その時、腕を伝って落ちてくる滴は黒ウサギの大きなお胸に辿り着く。童顔にあの胸の大きさは恐ろしいほど黒ウサギの魅力を引き立てた。

 今、黒ウサギ達、女湯メンバーは湯船に浸かっていた。

 

 「それは私達に対する当て付けかしら?」

 「め、滅相もございません!」

 「ニンフ先輩と黒ウサギさんって似てますよね(声が)」

 「そ、そう? ありがとう(体型的な意味で) 」

 「 (ふにゃぁ~) 」

 

 むぅ、といった表情で飛鳥がからかう。それに対してパシャパシャと湯に波を立て、慌てて否定する黒ウサギ。ニンフとアストレアは互いに微妙にずれている会話を交わしいる。その横では耀がとってもふやけた様にウットリした顔で湯に浸かっている。誰一人として機嫌の悪そうな顔の者はいない。美少女達のお風呂とはとても美しいものなのだ

 耀がふやけたままの顔で呟いた。

 

 「このお湯・・・森林の中の匂いがして凄く落ち着く。三毛猫も入ればいいのに」

 「そうですねー。水樹から溢れた水をそのまま使っていますから三毛猫さんも気にいると思います。浄水ですからこのまま飲んでも問題ありませんし」

 「うん。・・・そう言えば黒ウサギも三毛猫の言葉が分かるの?」

 「YES♪ “審判権限”の特性上、よほどの特異な種で無い限り黒ウサギはコミュニケーション可能なのですよ」

 「ニンフ先輩!『じょうすい』ってなんですか?」

 「え?そうね、簡単に言えば綺麗になったお水の事よ」

 「(綺麗なお水・・・という事はおいしい!) 黒ウサギさん!美味しいんですか!」

 「はい!黒ウサギは美味しいと思いますよ」

 

 何故だろう、もの凄くブラックラビットイーターを突撃させくなるセリフである。

 その時、不意にお尻を撫でられたような感触が黒ウサギを襲った。

 

 「・・・ひゃっ!?」

 「あら、どうしたの黒ウサギ?」

 「い、いえ。なんでもないのですよ」

 

 思わず変な声が出てしまった黒ウサギは、怪訝な表情で訪ねてくる飛鳥を慌てて言い繕う。

 

 「・・・きゃっ!?」

 

 ふやけた顔を途端に驚きの顔に変えて湯船から跳び出たのは春日部 耀だった。

 

 「ど、どうしたの春日部さん!?」

 「どうかしましたか!?」

 「え、あ。・・・えっと」

 

 自らの奇行によって全員の視線を集めてしまった耀は、何を言おうか戸惑っていた。何が起きたかと言えばお腹を撫でられたような感触がしただけだ。しかし、それを説明するのは難しい。なぜなら、撫でた犯人を見つける事が出来なかったからだ。

 

 「(今のは、一体?)」

 「とりあえずお風呂に戻らない?風邪ひくわよ、ヨウ?」

 「う、うん」

 

 ニンフに言われて、湯船へ戻る耀。その時、お湯の中に何かいないかじっと見つめた。しかし、人間離れした五感を持つ耀であっても何も違和感を感じる事がなかった。

 

 (ウヒョ、ウヒョヒョ!)

 

 この時、この悪意あるエロ思考に気が付く者が居ればあんな事には成らなかったかもしれない。だが、悲しき事に量子変換機はあの黒ウサギの特性にさえ悟らせないほどに優秀だった。

 

 (異世界だもん、お湯が動いても不思議じゃないです!!)

 

 一人の男が、新大陸を目指す戦いへと挑んだのでした。

 

 

 

 *

 

 所変わって、女性陣が入浴を開始する40分くらい前の事。

 

 “ノーネーム”の敷地外にある森にてとある一団が居た。人数は9人ほど、うちの8人は黒い服を着ており目立たないようにしているのが分かる。だがよく見ると8人はそれぞれの容姿が、人間と一部がかけ離れていた。犬の耳を持つ者や大きくてごつい手足を持つ者、いろいろな生物を組み合わせたかのような者まで様々だった。

 

 「おぉい、お前ら。ガルド様の命令だ。いつも通りあそこから取ってこい・・・文句がある奴はいるか?いないよなぁ!いつもの事だもんなぁ!」

 

 そう言って声を上げたのは―――筋肉だった。極限まで鍛え上げられたかのような筋肉がそこには居た。この男は大きい瓶に入れられた酒を飲みながら筋トレをしていた。

 

 「さっさと終わらせて来い・・・すぐに終わらなかったり出来なかったら分かってるよなぁ!? 一緒に飯に行こうぜ!美味い肉を食わせてやるよぉ!」

 

 その男は笑顔だった。殺気でもなく、敵意でもない・・・・・・何かよく分からない圧迫感の様なものがその男から発せられた。

 

 「熊はよう、一度味を覚えると忘れられなくてよぉ!アハハハハ!」

 

 言い表わすとするならば狂気だった、この男は人間の思考回路など持ち合わせてはいないのだ。

 

 

 

 

 *犬の様な耳を持つ男side*

 

俺達は連絡を受け、この場所へと集まった。

今日行う仕事はあるコミュニティの子供の誘拐だ。

いつもの通り、同じ事をすればいい。

 

あの熊の様な男以外とは全くの初対面だった。

名前も顔も知らない彼らとの仕事に慣れ合うためのコミュニケーションなど必要ではない。

俺達はただ、与えられた仕事をするだけだ。

 

 

 

                        ―――――不意に考えてしまった。

俺は何時からこんな事をやり始めたんだったか。

                        ―――――やめろ

もう3年も前の事だった気がする。

                        ―――――思い出すな

俺が所属していたコミュニティはあの時、創立20年記念とか言って朝からとても小さなパーティーを開いていた。

                        ―――――何も考えるな

交流の有ったコミュニティとかも呼んで皆でどんちゃん騒ぎして、悪ガキどもの世話とかもして、ガキどもを寝かしつけようとしてたら “いっつもありがとう。これからも頑張ってね!アニキ” なんて言われて泣いちまったり、目が赤いとかで兄貴や姐さんにからかわれたりして・・・いつも通りの明日を迎えるはずだった。

                        ―――――・・・あぁ

いつも通りの明日を迎えているはずだったのに。

                        ―――――また、思い出してしまった・・・!

朝、目が覚めると子供達が居なくなっていた。

                        ―――――どうにかしないと・・・ドウニカシナイト!

 

 

 

俺はあと何度こんな事をすればいい?

なんでこんな風に顔も知らないような子供を攫って来なきゃいけない?

俺がなんでこんな屑の様な行為を犯さなきゃいけない?

こいつ等みたいな屑な連中と同じ仕事をしなけりゃならないんだ?

もしかして、俺は屑なのか?

こんな屑の様な行為を犯す俺はこいつらと同じ屑なのか?

いや、違う! そんなはずない、俺は悪くなんかない・・・!

悪いのは、屑なのは、フォレス・ガロだ。ガルドだ、周りのこいつらだ!

俺が悪い訳がない、俺は悪くない、悪くないんだ。

仕方がないんだ、子供達を人質に取られてるんだから。

言われたとおりにしないと人質は殺されてしまうんだ。

子供達を死なせないためには俺が頑張るしかないんだ。

子供達を無事助けるためには俺が頑張るしかないんだ。

だから、俺は悪くないし正しい。

俺はずっと正しい事をしているんだ。

周りのこいつらとは違って俺には明確な理由があるんだから!!!

 

                        ―――――心を乱すな

                        ―――――心を落ち着かせろ

                        ―――――仕事の事だけを考えろ

                        ―――――頼むから落ち着いてくれ

                        ―――――失敗は許されないのだから

                        ―――――覚悟は出来ているはずだ

                        ―――――俺達、大人の責任だ

                        ―――――子供に押し付ける訳にはいかない

                        ―――――・・・あぁ

 

何とか落ち着いた。

いつもの発作の様なものを乗り越えれば後は仕事をこなすだけだ。

何も考えずにいればいい。

これは何時もやっているただの作業なのだから。

辛いなどと思う訳がない。

 

 

 

 

「人質なんていなくなってしまえばい・・・・・・ッ!」

 

 

 

 

無意識に口から洩れた言葉を止めるため、急いで口を右手で抑えて左手で頬を殴った。

口の中を鉄の味が支配していく、それがとても気持ちが悪かった。

だが、そんなことは今どうでもいい。

俺は今何を言わんとした・・・?

心は落ち着いた筈だと言うのに、いったい何を考えてしまっている。

馬鹿な、俺がそんなこと思う訳がない。

子供達は俺達の大切な仲間なんだ、その仲間を。

仲間を居なくなってくれたらいいとなんて思う訳がない!

今日は疲れているんだ。そうだ、きっとそうに違いない。

この仕事が終わったら、すぐに帰ってシャワーを浴びて寝る事にしよう。

 

俺は樹の根に腰掛け、しばらく目を瞑っている事にした。

 

 

 

 

 

「な、なに!それは本当か!?」

「あ、あぁ。そうらしい。街を少し歩けば分かるが、噂にもなっている」

「ば、馬鹿な!あの蛇神をただの人間如きが打倒するなど!?」

「しかも、たった一発のパンチで倒してしまったそうです!」

「とても信じられる話ではないが・・・」

「だが、実際にあの蛇神は倒されている」

「相当の実力者が居ることは確か」

「ガルドの野郎をぶっ殺す事も出来そうだね!」

「でも、そんな人が私達の力になってくれるかしら」

「同じ、旗を奪われてしまったコミュニティ同士なのだから力を貸してくれるに決まっている!何を言っているか!?」

「そうだろうか、蛇神を倒すような者がそう簡単に力を貸してくれるだろうか」

「貸してくれなければ別の手段を探すしかないか・・・」

「それに仮に力を貸してもらえたとしても問題はあります!」

「“ノーネーム”所属の人間である事」

「私達は”ノーネーム”の傘下になるのかしら」

「そんなことあってたまるものか!?」

「でも、他に方法も無いね。ガルドの野郎をぶっ殺す方法はね!」

「我々には元から選択肢など無いも同然なのです!」

 

 

 

 

俺は眼をすぐに開いた。

数分だろう、どうやら寝てしまっていたようだ。

大分スッキリとした。

これならば、何も問題は無いだろう。

俺は立ち上がって最終確認を開始する。

侵入経路や子供部屋の場所をしっかりと確かめた。

 

あの熊の様な男は何処かに行ってしまったらしい。

これはいつもの事なので何も不思議ではない。

あれは何時も酒を飲むか筋トレだけして俺達の報告を待っている。

今はおそらく、新しい酒瓶でも買いに行ったのだろう。

不思議なのは、他の7人の奴らだ。

何やら、楽しそうに会話をしている。

今から、子供を攫おうと言うのにのんきな奴らだと思った。

俺の見立てでは、あの中の2人が今日初めての奴らだと思っていたというのに。

だが、あんなにのんきに話しているという事は違ったのだろう。

俺の見立ては当てにならないようだ。

これでは前回の予想も外れているのだろうか。

 

「少しよろしいですか?」

 

奴らを見ていると、うち一人がこちらに気が付いて話しかけられてた。

仕事の効率が悪くなると困るため、最低限のコミュニケーションは取る事にしている。

軽く頭を下げてそいつを見た。

いろいろな生物を組み合わせたかのような奴だった。

 

「実はですね。皆さんと先ほど話し合っていました。“ノーネーム”所属の人間の少年が神格持ちの蛇神を倒してしまったという噂についてです!」

「―――な!?そんなことがあり得るのか」

「しかもですね。その倒し方というのが―――

 

そう言って、そいつは俺に説明してきたのだ。

 

 

 

 

 

 

人間というものは単純だ。

目の前に救いの手が差し伸べられたならば迷う事無く掴んでしまう。

後先を考えずに目の前の希望だけを目指してしまう。

よく考えもせずに行動を起こしてしまうのだ。

その結果、自らに何をもたらすかなど知りもしないでだ。

例えるなら蜘蛛の糸に群がる亡者どもだろう。

悪人には決して救いなど与えられないのだと分からなければならなかった。

そうでなければ希望など簡単に絶望へと変ってしまうと言うのに・・・。

 

 

「おーい・・・・・・そろそろ決めてくれねえと、俺が風呂に入れねえだろうが」

 

今夜は十六夜の月だった。

”ノーネーム”の子供たちが眠っている館の周りを俺達は囲んでいた。

姿こそ、木々を使って隠してはいたが。

そして、そのままの状態で動けないでいた。

俺達は誰一人としてそこから動けなかったのだ。

ザァ、と風が木々を揺らした。

 

「ここを襲うのか?襲わねえのか?やるならいい加減出てきてかかってこいよ」

 

原因は目の前の少年だった。

ヘッドフォンをした少しばかり野蛮そうな少年だ。

そんなただの少年を視界に捉えた瞬間、俺達は動く事が出来なくなっていた。

と、そうはいっても別に石化された訳でも催眠術をかけられた訳でもない。

仮にも、俺達は数々のギフトゲームを経験してきた経験者だ。

フォレス・ガロに沢山の者を奪われたからといってもそれだけは変わらない。

ゲームによっては死ぬ一歩手前の経験をして生き残ったことだってあるだろう。

そんな俺達が身体を動かす事が出来ないほどの実力差をあの少年から感じていた・・・。

俺は戦慄した、こんな実力差はおそらく俺の一生をかけた所で少しも埋まる事は無いだろう。

これほどなのか、神格持ちを打倒する実力を持った者というのは・・・!

 

「―――よっ!」

「な―――!?」

 

痺れを切らしたのか、少年は石を拾って俺達の方へと投石した。

その石は少年の軽いフォームからは考えられない速度で接近し、広範囲に渡って木々を吹き飛ばした―――!

2人はそれに巻き込まれた、大地を揺らすようなデタラメな爆発音が響きわたる。

奇跡的に残った6人は様々な方向へと逃げる事で回避した。

だが、何処に避けようとも結局は無駄だった。

 

「ずッ―――!?」

 

少年は俺達が現れた瞬間、目の前へと迫りその圧倒的なパワーで空中高く蹴散らしてしまった。

少年の一撃は俺達の意識を容易に飛ばすほど強力なモノであり、結局俺達は誰一人受け身をする事無く大地とお見合いしてしまったのだ。

 

「ど、どうしたんですか!?」

「侵入者っぽいぞ。例の”フォレス・ガロ“の連中じゃねえか?」

 

地面との接触の痛みにより飛ばされていた意識が戻った。

なんとか立ち上がり、少年と新たに現れた子供を見る。

 

「こ、これほどまでにデタラメな力とは!?」

「蛇神を倒したと言う噂は本当なのだろう」

「ガルドより実力は上」

「比べる事もおこがましいです!」

「これならば余裕だろうが・・・」

「そうだね、ガルドの野郎をぶっ殺す事も出来るだろうね!」

「私達は解放されるのかしら」

 

後ろから7人の声が聴こえた。

俺と同じように意識は戻ったようだ。

意見交換をボソボソと行っている。

 

「なんだ、言いたい事があるならハッキリと言えよお前ら」

 

一斉に黙る。

 

「今度はだんまりかよ・・・で、何か話をしたくて襲わなかったんだろ?ほれ、さっさと話せ」

 

少年は最初面倒臭そうに、のちににこやかな笑顔で話しかけてきた。

だが、誰も喋らない。

まるで“誰かがやるのを期待している”状態だった。

誰かがやると思って自分ではやらないようでは育ちが知れると思った。

だが、そのままの状態が続いても話は終わらない。

だから、俺が言う事にした。

 

「恥を忍んで頼む!我々の・・・違う、魔王の傘下であるコミュニティ“フォレス・ガロ”を、二度と外も歩けなくなるほどに完膚なきまでに叩き潰してはいただけないでしょうかッ!!!」

 

あの獣共が二度と外に出る事も出来ないような恐怖を味あわせてやりたいと言う願いを包み隠す事無く発言した。

俺にとってそれは今まで憎しみを込めた決死の言葉だった。

希望を授けてくれる神のような存在を前にして告白したような俺の本心だった。

だが・・・

 

 

「嫌だね」

 

 

そんな俺の言葉は、少年のたった一言で一蹴された。

絶望した、というのはこんな時の言葉なのだと思い知らされた。

俺はたった今まで、断られるなどとは雀の涙ほども思ってはいなかったのだ。

希望を胸にして浮かれていたのだ。

これで、俺の苦しみは終わるのだと疑いもせずに思っていた。

                        ―――――あぁ、これ以上の苦しみは無いな

目の前が真っ暗になったかのように感じた。

倒れそうになった、がそれに気が付いたのか後ろから支えられた。

これ以上何も考えたくなどなかった。

 

「どうせお前らもガルドって奴に人質を取られてる連中だろ、命令されてガキを拉致しに来たってところか?」

「は、はい。まさかそこまでお見通しだとは露知らず失礼な真似を………我々も人質を取られている身分で、ガルドには逆らうことはできないです!」

 

あぁ、誰かが会話を引き継いだらしい。

だが、もう俺には別の事しか考えられなかった。

人質になっている子供たちの事だ。

俺達は今回、仕事を完遂する事が出来ずに失敗した。

俺に何か罰が下る事だろう、だがそれはいい。

問題なのは子供たちに何かするかもしれないと言う事だ。

あの獣共は人間の思考など持ち合わせてなどいない。

人間の、それもただの子供などに腹いせに何かするかもしれない。

人質なのだから殺される事は無いだろうが、一生残るトラウマを負ってしまうかもしれない。

そんな事になったら俺はいったいどうすればいい。

今までミスも無く頑張って来たのに、たった一回の失敗で子供達を傷つけたら俺はいったいどうやって責任をとればいいんだ。

そんな事になったら俺は、罪悪感で子供達の顔を見る事が出来なくなってしまう。

“ありがとう”なんて言ってくれた子供達にどう接したらいいっていうんだ。

兄貴や姐さんになんて報告すればいいっていうんだ。

ちくしょう・・・!ちくしょう・・・!なんでだよ!なんでなんだよ!

子供達がいったい何をしたって言うんだよ・・・!

確かに悪戯好きの悪ガキだっていたよ!何度行っても悪戯をやめない馬鹿だったよ!

反省しないとダメだ、お仕置きしなきゃなって思ったさ。

だからってさ、何もそこまでしなくたっていいだろ・・・!

ただの悪戯じゃないか、俺がした事に比べれば可愛いもんじゃねえかよ・・・!

なぁ、神様・・・頼むよ!

一生分のお願いだからさ!

俺の事なんかどうでもいいからさ、子供たちの事だけは守ってくれよ・・・!

兄貴、俺これからも頑張るからさ!

姐さん、俺なんだってするからさ!

誰でもいいからさ・・・子供たちの事だけは守ってくれよ・・・!

 

 

「ああ、その人質な。もうこの世にいねえから。はい、この話題終了」

「――――――…………なっ」

「・・・・・・え?」

「十六夜さん!!」

 

今、なんて言った。

俺には理解できなかったな。

異国の言葉かな。

どうしよう、もっと勉強してればよかったな

言葉が分からないんじゃ理解できないよな。

そうそう、そうだよ

そんな人質はもういないなんて意味な訳ないよ。

子供達が死んでるなんてそんなことある訳・・・はは。

 

「隠す必要あるかよ?お前らが明日のギフトゲームに勝ったら全部知れ渡るだろ?」

「そ、それにしたって言い方というものがあるでしょう!!」

「ハッ、気を使えってことか?冗談きついぞ御チビ様。よく考えてみろよ。殺された人質を攫ってきたのは誰だ?他でもないコイツらだろうが」

 

は・・はは・・・ははは。

そんな…そんな訳

子供達が・・・?もういない?

バカも休み休み言えってんだ。

それなら俺達の今までってなんだったんだ?

人質がいないってのに子供を攫ってたのか?

そんな・・・そんなこと。

 

俺は脳がその言葉を処理する事を拒む。

身体は支えを失い崩れ去る。

目からは大量に涙が溢れ、止める事が出来ずに咽び泣く。

 

これ以上の苦しみは無いだと・・・!

いくらでもあったじゃないか、いくらでもあったじゃないか!

なんだよこれ、なんだよこれはっ!

なんでなんだよ・・・・・・

俺は既にいない子供たちを助けるために、新たな子供を攫ってきたってのか!

しかもその子供も死んでるだと・・・そんなもん、俺が殺したようなもんじゃないか!

俺はいったい何のために・・・・・・

なんだよ、俺は分かってたんじゃねえか。

やっぱり俺は屑だったんじゃないか、は、はは

屑に人を救うなんて出来なかったんじゃないか。

 

 

人間というものは単純だ。

目の前に救いの手が差し伸べられたならば迷う事無く掴んでしまう。

後先を考えずに目の前の希望だけを目指してしまう。

よく考えもせずに行動を起こしてしまうのだ。

その結果、自らに何をもたらすかなど知りもしないでだ。

例えるなら蜘蛛の糸に群がる亡者どもだろう。

悪人には決して救いなど与えられないのだと分からなければならなかった。

そうでなければ希望など簡単に絶望へと変ってしまうと言うのに・・・。

そう、こんな風に。

 

俺は耐えられなくなって意識を手放した・・・。

 

 

 *犬の様な耳を持つ男sideout*

 

 

 「早すぎたんだ、新大陸は・・・!」

 

 桜井智樹に何があったのか、それを説明する事はとても簡単である。智樹はいつものように自らの内から湧きあがる性の波動に逆らう事無く暴走し、女性陣に正体がばれた。結果、ニンフの活躍によって“性の魔湯”智樹は撃退されたのだった。

 

 (だが、夢はでっかくだぜ。そうだろ、じいちゃん)

 

 智樹は女性陣にフルボッコにされてお風呂場に放置された。だが下水に流されなかっただけありがたいと思わないとならないだろう。この世界に来て僅か一日足らずで、ニンフやアストレア以外の女性陣の好感度が駄々下がりなのだから・・・。

 智樹の眼が覚めたのは女性陣が女湯を出ていった後だった。ちなみに、イカロスはニンフ達に連れていかれた。

 

 「なんだか、大切なシ―ンがカットされた気がする・・・まぁ、いっか」

 

 智樹の活躍についてはまたいつか、語るとして。今は、智樹のポケットの中身についてだ。

 

 「お!あったあった・・・じゃ、被ってとこれで安心だな!」

 

 ポケットを叩くとブルマーが一着ありました。それを当たり前の様に被って外に出ます。

 

 「うぅ、さすがにさむ」

 

 水場にいたので服が濡れてしまっているので風が吹くと外は寒かった。なので冷やしたらいけないのでブルマーを頭に被った智樹。今の彼はなんでもできそうだった。

 

 「とりあえず着替え取らねえと」

 

 智樹の部屋は子供たちと同じ館だった。それは智樹にうまく使えるようなギフトがなかったからだ。だから、ギフトゲームにも基本参加しない事となった。

 

 「案外遠いもんだな・・・畑、なんとかならないもんかね」

 

 駆け足で服を取りに向かう智樹、だが不幸な事にすぐに着替える事は出来ないだろう。なぜなら―――

 

 「おぉい、なんで誰も帰って来ねえんだぁ!逃げたか?しくじったか?・・・あぁ?なんだこのガキ」

 「え・・・え?」

 

 ―――智樹は筋肉クマに出会ったのだから。

 

 「なんだ、逃げたのかぁ!?美味い肉を食わせてやるって言ったのによぉ!」

 「あ・・・うぁ」

 「まあいいかぁ!美味そうな人の肉が手に入ったしよぉ!」

 「な、なにいって・・・」

 「んじゃあ、いただきまーす」

 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 クマの行動は速かった。智樹を視界に入れた瞬間から首根っこを掴んで捕獲していたのだから。長年の食人の経験が生かされた瞬間だった。そしてクマは、なんと智樹を丸呑みしようとしていた。

 

 「ん!?な、なんだこの光はぁ!?」

 

 そして、それと同じ瞬間に智樹が被っていたブルマーが七色に光った。伝説のおっちゃんより授かったブルマーが!!!

クマは智樹を手放す。お尻から落ちた智樹。光ったブルマーは智樹の頭を離れ“着地した”

 

 「な、なんだこりゃ!?」

 

 智樹、そしてクマは眼を見開いた。それは何故か、なんとブルマーは女の子になってしまったからだ。上半身は皮の服、下半身は先程までのブルマーを着た一人の犬耳少女になってしまったからだった。

 




あぁ、とうとう『そらのおとしもの』が完結してしまいましたね。後は番外編があるだけだとか・・・寂しくなります。藤原ここあ先生の漫画『妖狐×僕SS』も終わってしまうそうで・・・

色々なすばらしい作品が終わってしまうのは寂しい事ですね。ジャンプとかサンデーとかでもそろそろ何かしら終わったりするんだしょうか・・・ハンター?


最新刊の問題児の日常買ったけれど、表紙の黒ウサギがかわいいんじゃよ。かわいいなぁ

さて、今回出てきたブルマー系少女は一体何なんだ。パンツおじさん(伝説のおっちゃん)の差し金か、ブルマーなのに?とか考えます。これからですよ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~ブルマープリンセス~

カメより遅い更新ですね・・・いろいろとごめんなさい。


いろいろと忙しいのですがいい訳になりませんね。

智樹の車窓から乗車切符ぱんつを集めます


 

 

上半身は皮の服、下半身はブルマーを着た一人の犬耳少女になってしまったブルマー(仮)さん、身長は110cmほど。

少し小さめな女の子は、いまだ驚いたままのクマの元へ近づく。

 

「お、おい!あぶな 「あっかんべー!」 い、へ?」

 

智樹とクマはまたまた眼を見開いた。

いきなり現れた見ず知らずのブルマーな女の子がいきなり舌を出して“あっかんべー”をしたのだから仕方がないとも言えるのだが。

女の子は満足したかのように笑顔を浮かべ、智樹のそばへと寄って来た。

 

そして―――

 

「お兄ちゃん、行こう!」

「ひょ?!」

 

突然の行動に呆気に取られていた智樹の手を握って女の子はそう言った。

 

 

「・・・はっ!」

 

突然の事に動揺し、クマは智樹達の逃亡を許してしまった。

我に帰った時には既に智樹達を見失っていた。

いきなり現れたエサに舐めた事してくれたと、怒りを覚えた。

クマはすぐに追いかける事にしたのだった。

 

 

「大丈夫だった? お兄ちゃん」

「お、おう・・・」

 

智樹達は今、クマの追跡から逃れるために落とし穴の中に隠れていた。

コミュニティの子供達が掘ったと言う侵入者対策用の落とし穴だ。

なんでまたそんな所にと思うだろう、なんと女の子に手を引かれた智樹は運悪くこの落とし穴に落ちてしまったのだ。

女の子が通っても落とし穴は発動せずで油断していたのだ、結果的に女の子を巻き込む形で落っこちてしまったと言う訳である・・・。

 

「ここって意外と広いね」

「で、出れねえ・・・・・・」

 

落とし穴は広くて深かった。出る手段はなく、肩が触れ合うように座っている。

 

「お兄ちゃん、これからどうするの?」

「まぁ、まずはイカロス達に見つけてもらって・・・」

 

聞いて来たというのにもう興味の無い様子の女の子。どうやら随分と気まぐれな性格らしい。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

「な、なんだ、ちみっこ?」

「ありがとう、私を目覚めさせてくれて!」

「お、おう?」

 

女の子は無垢な笑顔を智樹へ向けた。

穢れを知らなそうなその笑顔、文句なしに可愛いモノだった。

 

「それにしても、とっても久しぶりだねお兄ちゃん。少し若返ったの?」

「えっと・・・・・・」

「知らなかったよ、お兄ちゃんが若くなってたなんて」

「なぁ、ちみっこ」

「なになに?」

「俺達ってさぁ、会った事あるのか?」

「・・・・・・え」

 

落とし穴の中にしばらくの沈黙が訪れた。それはほんの数秒だったが智樹にはそれ以上に感じられた。なにか大切なモノが熱を失い縮んだ気がした

そして、その沈黙は女の子によって破られる事になった。

 

「・・・・・・お兄ちゃんは」

 「・・・・・・なんだ?」

 「お兄ちゃんはえっちぃ事が好きなんだよね」

 「―――ん?」

 「お兄ちゃんはえっちぃ事が大好きなんだよね」

 「―――んん?」

 「お兄ちゃんは頭に帽子をかぶるように私を被るんだよね」

 「―――んんん!?」

 

 女の子は何度も確認するように、言ってきた。それは何処か、そうであって欲しいという気持ちが伝わってくるようだった。

 智樹は思った、何一つ否定できないと。そして、何一つ悪い事は無いと。

 

 「・・・・・・だからお兄ちゃんは―――――――――智蔵お兄ちゃんなんだよね」

 

 女の子は意を決したかのように最後にそう言った。

 

 

 

 

智樹の粛清後、イカロスを入れたガールズはもう一度、湯船に入りなおした。

そこではアストレアがお湯を呑み過ぎて愉快な事になったり、翼がお湯を吸ったのか深い所にいたイカロスが全身を湯の中に沈めて数分間ずっと沈んだままでいたり、黒ウサギと飛鳥がアストレアを心配して少しオロオロしていたり、ニンフは耀に翼を見られたり触られたり・・・色々あったお風呂(女湯)だった。

 

 「だ、大丈夫ですかアストレアさん?」

 「おなかすいてて・・・飲みすぎ・・・てぇ」

 「さぁ、もう少しよ。しっかり歩いてアストレアさん」

 「はいい・・・」

 

 お風呂から上がったガールズ達はパジャマ代わりに用意されていたネグリジェを着たまま、明日からの着替えを探すため黒ウサギの部屋へとやって来た。

 

 「馬鹿ね、デルタ。このあと夕ご飯だって言うのに」

 「うぅ・・・夕ご飯は夕ご飯で食べます。絶対にニンフ先輩にあげませんよ!」

 「な、別に私が食べるなんて言ってないわよ!」

 「うそだぁ!食べる気だったんでしょニンフ先輩!」

 「そ、そんな事無いって言ってるでしょう!」

 「2人とも、落ち着いて」

 

アストレアとニンフの口論が白熱しそうになるがイカロスがファインプレー。

そして―――

 

 「それでは一人ずつ決めていきましょう!」

 

  ―――間もなく黒ウサギによる洋服選びが始まった。

 

 

 

智樹は一人困惑していた。周りには自分しかいない穴の中、一枚のブルマーが落ちている。先程の女の子の姿は無かった。

 

「じいちゃん・・・・・・」

 

先程、犬耳少女のブルマーさん(仮)は智樹の事をじいちゃんと勘違いしていた。おそらくじいちゃんとこのブルマーさんは知り合いなのだろう。まさか、じいちゃんがこの世界で喋って女の子に変身するブルマーさんと知り合いであったとは思わなかった。

 

「俺のパンツロボのルーツは此処にあったんだ。じいちゃんスゲェよ、何もんだったんだよ!」

 

思わぬ所にパンツロボと関係がありそうな存在と出会ってしまった智樹は、自分もいつかパンツロボを立派な女の子に変身させたいと心の隅で思った。しかし、それは―――

 

「しっかし、どうやって出るんだ・・・」

 

この深い落とし穴を出る事が出来たらなのである。

ブルマーをポケットに押し込み、試しに壁を登ろうとする。しかし、なかなか掴むところが無く断念、仮にエロパワァがあったならば登れたのだろうが。

次に、助けを呼ぼうかと思ったがクマに発見されてしまう恐れがあったので同じく断念。

 

他にも色々な作戦を考えたが無駄に終わってしまった。

 

「どうすっかなぁ・・・」

 

 

 

 

本拠の最上階・大広間にて十六夜とジンはいた。先程までとあることで口論になっていたのだ。

最初、十六夜の勝手な行動にジンは怒り心頭だった。“打倒全ての魔王とその関係者”などと馬鹿げたことを言う十六夜にジンはコミュニティを滅亡に追いやる様な事をするつもりかと問い詰めるつもりだった。しかし、

 

「魔王とどうやって戦うつもりだ?」

 

そう言われる事になる。十六夜のその質問に、ジンは堅実にいく事を伝えた。コミュニティはギフトゲームを堅実にクリアしていけば必ず強くなるのだ。だが、それでは駄目だと十六夜は言う、それでは魔王には勝てぬというのだ。

 

「前のコミュニティはギフトゲームに参加して、力を付けていなかったのか?」

 

そう、前のコミュニティもギフトゲームをクリアし強くなっていた。だが、同じ事をして、同じように強くなったとしても意味は無いのだ。それでは魔王は打ち倒せない!

 

「―――お前は先代のコミュニティを超えなきゃいけないんだぜ?」

 「名も旗も無いとなると―――他にはもう、リーダーの名前を売り込むしかないよな?」

 

 ジンは自分がどれほど甘かったのかを理解してしまった。いや、正しくは目を逸らし続けていた事だろう。才も乏しく、身の上と成り行きだけでリーダーになったジンは“打倒魔王”という理想を語るだけの無能だったのだ。

 十六夜は先の事を考えて行動していたのだとジンは気が付いた。そして思う。自分では手に余る問題児、だがこれから協力出来れば心強い仲間になるだろう。だが、無能な上司には誰もついては来ない。ならば自分も彼くらい・・・いや、十六夜以上に頭が回る有能なリーダーにならなければならないと!

 

 

十六夜とジンの話し合いが終わった。ジンは早速、書庫に向かおうとする。何時までもものを知らぬままではいられない、知識を蓄えに行くのだ。十六夜は風呂に入るのだろう。

その時である、十六夜は何かを感じだ。

 

(これは・・・モールス信号?)

 

少し遠い所からそれは感じる事が出来た。目を閉じてモールス信号に集中する・・・。

 

「どうしました、十六夜さん?」

「静かに」

 

はたして、読み取れたのは―――

 

(あ・・・な・・・の・・・な・・・か・・・穴の中? ・・・『落とし穴』のことか)

 

十六夜は急いで窓の外を見た。先程落とし穴があった所を中心に何か変化は無いかと。するとどうだろう、なんと穴は二つあった。そしてその近くには見慣れぬクマがいた。

 

 

 

そこからはあっという間だった。十六夜の登場によってクマは逃亡し、智樹は穴の中から助けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おい。何をしているんだ」

「あ!?テメェ何もんだ・・・!」

「え―・・・・・・箱庭第六六六外門に本拠を持つ魔王の配下が“名無し”にギフトゲームを仕掛けると聞いて―――お前は何をしている」

「誰だか知らねえが、文句でもあんのか?明日のゲームの準備だ。邪魔するっていうなら容赦しねえぞ! えっと、此処に白旗と赤旗を飾ると・・・」

「ふふ、威勢が良いのは評価してやる。だが、獣からの成り上がり風情が“鬼種”の純潔である私に牙を・・・聞いてない」

「次に、いすを並べて・・・それから―――」

 

 

「・・・・・・ふふふ。さてさて、どう出る。新生“ノーネーム”」

「おい、邪魔だ。レーンが引けねえだろうが」

「あ、あぁすまない」

「おじさん、そこはもう少し右だよ」

「わーってるよ!・・・ここをこうして―――」

 

 

 

「(泣きたい)・・・く、来る所を間違えたな!」

 

華麗な金の髪を靡かせた少女は目に涙を浮かべて帰っていった。スル―は辛かったのだろう・・・。

 




クマさんは実力の差が分かるクマ・・・


トモキってスキルたくさん持ってるよね、モールス信号とか。


***


ディストピアの魔王「DNAの一片までも完全消滅するがいい!」 

パンツロボ「ここは、任せてもらおうか!」

十六夜「パンツロボ!」

パンツロボ「一度はユートピアを受け入れてしまった魂がここまでこれた。仮初の命がマスターの命の明日を守れるならば本望だ」

ディストピアの魔王「所詮は犬死だ。消えろォ!」

イカロス「パンツロボ量子分解します」

智樹「・・・・・・ッ!」

パンツロボ「それを、待っていた!」

(パンツロボがカードへと変化する)

ニンフ「あ、あれは!?」

十六夜「カード?」

パンツロボ「マスター、受け取ってくれぇぇぇ!」

智樹「バカヤロウ・・・バカヤロウ。一緒に行くぞ、パンツロボ!」

ディストピアの魔王「馬鹿な、自ら量子分解してカードに戻っただと!?」

飛鳥「パンツさん・・・!」

十六夜「そういうことか・・・いくぞ、智樹!」

智樹「・・・オゥ!」

ディストピアの魔王「させるかぁぁぁ!」

(智樹はカードをドリルに変化させ、十六夜が装備。十六夜は第4宇宙速度で殴りかかる)

ディストピアの魔王「何故だ・・・お前達の何処にこんな力が!?」

十六夜「ハッ!しゃらくせえ。ようは、今この時は俺達の思いがお前を上回ったって事だけだろ」

ディストピアの魔王「思いだと、それこそが滅びへの道。お前達の限界だと何故気付かん!」

智樹「それはお前の限界だ!こんな閉ざされた世界で王様気分でいたお前自身の限界にすぎないんだ!」

イカロス「マスター、そろそろカードの限界です」

智樹「俺のパンツは雲を晴らすパンツだ!」

(曇天が晴れていく、最初はパンツの形で)

ディストピアの魔王「・・・・・・ッ!?」

十六夜「うおぉぉぉぉらぁ!!!」

(十六夜のドリルは第4宇宙速度を超え、第5、第6・・・第7宇宙速度で殴りかかる)

黒ウサギ「貫けえええ―――!」

『いけえええ!!!』

(ラスト・エンブリオ《人類最終試練》 ディストピアの魔王撃破)

ディストピアの魔王「ならばこの世界、必ず守れよ・・・!」

***


すみません、【グレンラガン】を見て【そして、兎は煉獄へ】を読んだらなんか浮かびまして・・・智樹の車窓から見切り発車より


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~ベットの下に~

前回よりは早いと思います、更新です。
それなりに急いで書いたつもりなのですが1カ月も空いてしまったという事実に驚きを隠しきれません。
けして、「Fate面白いなーFFX面白いなーあ、朝だ。仕事行かなきゃ」とかで遅くなった訳ではありません!別に鉄心エンド何度も見てたわけじゃないのよ、本当だよ。

さて、智樹の車窓から見切り発車で参ります



―――“ノーネーム”智樹の部屋―――

 

どうしてだ!?いったい何があったんだ!?

 

 

桜井 智樹は非常に困惑していた。それは今現在、おそらく皆が寝静まった頃の事である。

 

智樹は白夜叉から貰ったギフトカードを取り出した。このカードには何でも入るというので智樹は、白夜叉にこっそり貰ったエロ本を貰って置いたのだ。恐ろしき白夜叉マジック、智樹は誰にも気が付かれる事無くエロ本を手に入れていた。白夜叉曰く―――人類史において、上位に君臨する巨乳本だぞ―――だそうだ。

 

「表紙には何も書かれてないんだな」

 

表紙は真っ白だった、カモフラージュなのだろうか。

智樹はゴクリと喉を鳴らせエロ本に手を伸ばす。期待おっぱい夢おっぱいでエロ本を開く。

智樹は今までに見た事のあるエロ本と比べても見劣りしない、いやそれ以上の友達を見つけた!だが・・・・・・

 

「な、なんで・・・」

 

あり得ない事が起きた、それは本来あり得る筈の無い現象。一種の奇跡とも言える新大陸、絶望の新境地。パンツが跳んだり、ロボに変身したり、広い宇宙から一枚のパンツを探し出したり、イカロスが智樹を嫌いになってしまったりする、そんな事が起きる可能性よりもさらに低い可能性の出来事―――!

智樹の相棒、生まれてからずっと一緒だった存在。トモ坊のトモ棒が一切の反応を見せなかった!

 

「お、おい!いつもみたいに 『呼んだ?』 って出てこいよ!なんで出てこねえんだよ!」

 

桜井 智樹は非常に困惑している。それはいきなり異世界に呼び出された事でも、ブルマーが女の子になった事でも、クマのような奴に食べられそうになった事でもない。智樹のトモ棒が静まってしまった事である! まるで、智樹のエロパワーだけが吸い取られたかのように。

 

 

少しして落ち着きを取り戻した智樹は―――まあ、そんな日もあるよな―――なんていって自分を納得させた。出していたトモ棒をしまい、ブルマーをギフトカードに入れた。もちろんエロ本はベットの下である。

気分転換に風にでも当たるかとドアノブに手をかけたその時、

 

「邪魔するぞ」

 

と、普通にドアを開けて十六夜が入って来た。

 

「十六夜?」

「まだ明かりが付いてたから来たぜ」

「マスター」

「イカロスも、か」

「そこの農園跡地の前でボーっと立ってたから連れて来たぜ」

「すみませんマスター」

「何やってたんだ、イカロス?」

「これを・・・」

 

イカロスは先程もらったスイカの種の入った袋を智樹に渡した。

 

「あー、あれじゃあ育てるのは無理だろう。なんだ、スイカ好きなのか?」

「す、き・・・・・・欲しいとは思っています」

「あぁ、イカロスは家でスイカ畑を作ってるくらい気に入ってるんだよ。・・・うーん、どうすっかな」

 

智樹はどうすればいいのか考える。イカロスにスイカを作らせてあげたいが、あの畑では育たないらしい。考えていると十六夜が言った。

 

「なら、外側で作ればいいんじゃねえか。あの蛇のいる所とかでな」

「・・・いいのか?」

「いいだろ、別に。というか、箱庭に来たって事はそのスイカ畑の世話はどうするんだ?手入れしてなかったら虫が湧いたりするだろ」

「 !!! 」

「ま、まあ先輩辺りが見てくれるだろ・・・(多分)」

 

イカロスを励ます智樹。先輩なら何とかしてくれるだろうという無意識の信頼だった。

 

「よし、少し落ち着いたら植えに行こうなイカロス」

「はい、マスター!」

 

 

その後

 

「パンツロボってのがあって―――」

「ヤハハ、なんだそれ!面白いな―――」

 

智樹と十六夜は話し込み、何時の間にやらイカロスはその場を移動した。

 

「それで先輩が―――」

「マジかよ!すげえな、オイ!」

 

話しは盛り上がっていった。

 

「それでふろおけが―――」

「それはフルオケだろ――」

 

「会長は―――」

「黒いお金―――」

 

「目の前に女子更衣室がありますどうしますか―――」

「そんなもん決まってんだろ!」

 

「エロ本はベットの下か?」

「ウオォイ!?」

「なんだよ。漁るのは常識、だろ!」

「な訳あるか―!」

 

そうしてオモシロオカシク? 時間は過ぎていった。

 

「面白かったぜ、じゃ、そろそろ寝るとするか」

「おう、また明日な」

 

長い時間話しこんでいた2人、そろそろお開きにしようと十六夜が部屋を出ていこうとする。だが、何を思ったのか直前で止まり智樹の方を振り向いた。

 

「そうだ、忘れてた。なあ、智樹」

「ンー?」

 

本来の目的を思い出した十六夜、そして彼は尋ねた。

 

「エンジェロイドって一体なんなんだ。さっきまで書庫で書籍を漁っていたが、エンジェロイドなんて影も形も無かった。強いてあげるなら天使か」

 

それは、単なる知的好奇心だった。エンジェロイドというものを作り上げる技術がどんなものかという。

 

「さあ?」

「さあ・・・ってな。気になったりしないのかよ」

「だって、未確認生物でもイカロス達はイカロス達だしな」

「ふーん。・・・・・・やっぱ、面白い奴だなお前」

 

そう言うと、おやすみといって十六夜は部屋を出ていった。

 

「・・・? なんだったんだ、いったい?」

 

智樹も寝る事にした、夜はそうして更けていく・・・・・・・・・

 

 

『・・・ザザ・・・ザザ・・・特定のエネルギー充填を確認、再起動を開始します。失敗しました、状態の欠落を確認、検索。欠落部分の活動を確認、モードブルマーを起動させ、欠落部分の捜索を最優先に設定します。・・・起動開始』

 

智樹のポケットに入っているギフトカードがピンクに光る。

 

 

 

どこかで平和が崩れる音がした。

 

 

 




今回、全くと言っていいほど進みが無かったですね。虎なんかさっさと終わらせろよ―って心の声が聞こえます

***

①とある飲食店にて

パンツロボ「もぐもぐもぐ・・・食うか(純白のパンツ)」

十六夜「食うか!」

智樹「いただきます」

十六夜「 !? 」


②殴り愛?

パンツロボ「、は―――」

黒ウサギ「―――ッ!パ、パンツのくせに、中国拳法、なんて」

パンツロボ「そうでもない。私のこれは真似事だ。パンツの履き主の女性の套路を真似ただけの、内に何も宿らぬ物だが―――箱庭の貴族の相手には十分のようだ」

黒ウサギ「・・・・・・っ!」

パンツロボ「叙事詩・マハーバーラタの紙片、黄金の鎧か。厄介な身体だな。打つ方がほつれていくとは」

黒ウサギ「(ま、まずい)」

パンツロボ「だがいい条件(ハンデ)だ。
      つまるところ、私とおまえの戦いは」

黒ウサギ「っ――――――」

パンツロボ「外敵との戦いではなく、自身を賭ける戦いという事だ----!」



③平和


飛鳥「あら?」

イカロス「lalaー♪」

ひよこ「ぴよぴよ!」

耀「わぁ、綺麗な声」

飛鳥「歌って欲しいわね」

ニンフ「私、歌えるわよ」

黒ウサギ「実は黒ウサギも最近練習しているのですヨ」

飛鳥「ぜひ聞かせて欲しいわ」

耀「わたしも」

ニンフ「いいわよ、黒ウサギあれね」

黒ウサギ「しょうがないですね、ふふふいいですよ」

ニンフ&黒ウサギ『せーの』

イカロス「あの」

飛鳥&耀「え?」

イカロス『超々超音波振動子(パラダイス=ソング) きます(イージス展開中)』

ニンフ&黒ウサギ『ホゲー!!!!!!』


有史以来の平和を獲得!!!

***









そらおとの20巻のカタカタ震えてるイカロスちゃん可愛い過ぎる。なんだあれ天使か、天使なのか、いや天使だったか。ヘタしたらニンフルエンザを完治してしまいそうなほど可愛いかった。イカロス可愛いよイカロス


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。