“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語 (飽きっぽいニート志望)
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墜ちた英雄

シリアスっぽいブラックコメディってのを書いてみたくなったので。
でもどんなノリにするべきが現在模索中なのでしばらくは色々安定しない可能性大。


なんか、ある日気付いたらマズいことになっていた。
俺が顔を隠してやっている悪事が正義の行動だかなんだか知らんが褒め称えられる形で新聞に乗ってしまったのだ。
これまでは誰も気にしないから堂々とやれたが、これでしばらくは手口を変える必要があるだろう……
というか、そもそもあまりに寂しくて悲しいからってイニシエーターでもなんでもなくて、親に捨てられたりなんだかんだで身寄りのなかったりそうでもなかったりする『呪われた子供たち』を回収しては精神がグズグズになるまで依存させて、人間として終わってると言ってもいいほど依存し合って生活しているのがそもそも間違ってるんだろうけどさ。
まぁ仕方ない。

かつては『英雄』『星墜とし』『雷神』とかなんだかんだ言われてた俺も気付けば17で、好きだった人もどこかへ消えて、家族以上に大切だった相棒も死んだ。
そして今じゃ預金生活状態、ねぇ。笑えねぇ冗談だぞコレ。
預金の桁が11桁くらいあるから使いきることは無いと思うが、英雄も墜ちたもんだと思う。
かつて相棒と共にゾディアックガストレアすら沈めた最強級のプロモーター、なんだけどねぇ。
今だってIISOさんの方から新たなイニシエーターとコンビを組み直さないかとお誘いが来るんだがどうにも気が乗らんし、そもそもガストレアをぶっ殺すことにすら情熱を抱けんようになってきた。

相棒を失ってすぐの頃、俺は荒れに荒れて……人間の暮らせるエリアを出て、ひたすらガストレアを殺して回っていたことがあった。
その時は半年ほど、1週間の内5日を外で暮らし、2日だけ休養と補給をして……という循環だったのは懐かしい思い出だ。
今となればあの頃は今よりかはまだマシだった気もするしな。
少なくとも被害者はあの頃の方が少ない。
でも良く考えれば色々な意味でまだ最近の方が心は安定しているし、なにより怒らなくなった。
他人に対して怒るという行動に虚無感を覚えるようになったとも言うが、怒らなくなった。
だってほら、今俺は……
「なぁティナ。流石に俺もこれまでに拾っていた人数が二桁を越えた辺りで流石に多いことは反省するけどさ……銃を向けるのだけはやめてくれるとありがたいのだけど」

銃を向けられちゃ居るけど、何も感じない。
恐怖を覚えないとかそういう話ではなく、恐怖も怒りも驚きも焦りも何もない。
ただこのまま撃たれたんじゃ死ぬんだろうなー。とかくらいしか思い浮かばない。
これが俺を蝕んでいる現状だ。
なんか恨みを抱えたは良いけど殺しすぎて自分が何やってんのか分からなくなって……で、気付けば色々虚無感が湧いてきて、でも寂しいから適当に浚っては精神を腐らせて依存させて、人間として終わったもの同士つまらない人生を過ごして時間を浪費している。
かつての俺からすれば考えられないに違いない。
あの時の荒れていた頃の俺も、かつて相棒や好きな人も生きていた頃の俺もきっとこう言うだろう『お前は里見蓮太郎じゃない』と。
里見蓮太郎は英雄だから皆を救ってしまえるし、実際に救う。
そして悪も正義も関係なく、守るんだ。
しかし今の俺はただ英雄として称えられていた時より異常に強くなった力で好きな奴だけを救うし、他は死のうが気にしない。
そして悪も正義も何もかも関係なく、気に入ったかどうかで守るかどうかを決定する。
まるで正反対だよ。別人のようだ。
「おにーさん。私は言いましたよね。おにーさんには私が居れば十分だって」
それにほら、今俺はこの子……ティナが何を言うのか、その言葉が何を意味するのか。そして彼女が何をやったのかを理解して尚、何も感じないんだ。
「ですから、私以外の『呪われた子供たち』は要りませんよね?なので皆殺してきました」

数にして総勢十人ほどの連続殺人。その言葉に多少背筋が冷えたりはするが、まぁ別になんとも思えない。
どうせこの子が殺してしまったのは俺が悪いんだろうし、何より他の子たちの存在を認めさせられなかった俺の落ち度だ。何故かそう冷静に考えている俺すら存在している。

そもそも、ティナは出自が特殊過ぎて馴染めなかったのかもしれないがな。
一人だけ体を改造されていて、BMIによるサポートも受ければ超人的な狙撃を行えるという能力の高さ。
そして四六時中俺から離れないくらいに依存しきっている精神。
確かにあまり多くの人間とは馴染めないだろうし、そもそも俺を独占したいティナからすれば周りの子たちは邪魔でしかなかっただろう。
……うわぁ、やはり当分他の子を拾ってくるのは自重した方が良いなこれは。
まぁ、一応ティナには注意しておかないと。殺人はよくない。
盗みも暴力も違法なこともなんでも許容出来てしまうほどにイカれきった俺ではあるが、殺人だけはダメだと思っている。
だからそれは伝えておこう。。
「なぁティナ?殺人は本当にダメと言っただろう?巷に溢れるクソヤロウどもに全員流して目も当てられない状態にする程度ならともかく、自分で殺しちゃうなんてよくない。人が人を殺すのは禁忌……とまでは言わないけどさ。してはならないことなんだよ」

「でも、そうしないとおにーさんは私のものにならないです」

「それなら、当分の間はティナとずっと一緒にいるよ。それでいいかい?」

俺は感情もなにも伴わないまま、若干義務的にティナの殺人を咎めた。
別に他人が殺人をするのはどうでも良いんだがね、身内と俺自身はダメだって自分で決めてるんだ。

理由か?まぁ簡単なことだ、相棒の遺言だよ。
相棒が死ぬ間際に、人を殺すことだけはするなって言ったんだよ。
だから俺は、人殺しだけは決してやらない。
どんなに怒ってても死ぬ直前のギリギリで生かす。それだけは俺の譲れないポリシーだ。
それがあるから、俺は身内が人間を殺すことが大嫌いだ。
いや、流石に目の前で知らんやつが同じく知らんやつを殺してるくらいじゃ反応はしないが……な?
今は誰よりも俺の近くにいて、その上誰よりも俺に依存してくれているティナが人を殺すのは少々個人的ポリシーに反する。
だから俺はティナが人を殺さないようにする必要がある。
つまりは要求の通り当分ベタベタにくっついて過ごさないといけないってことさ。
まぁ、苦痛じゃないんだが、そこまでいい気分ではないよ。ずっと一緒と言うのは多少なれどクるものがある。
「……じゃあ、絶対に離れないでくださいね?離れたら何をしてでも捕まえますから」

「了解……っていきなりだなこりゃ」

ティナは絶対に離れるなと事実上脅迫みたいなものを言うと、一秒と空けずに流れるような動作で俺の背中にしがみついた。
これは本当に離れそうにないだろう。
前にも同じことがあったのだが、その時は丸1日の間は俺が少しでも剥がそうとするとパニックを起こすような有り様だった。
どんな外道なことでも出来る自信がある俺とはいえ、身内の、それも女で、さらに子供が泣いてるとあっちゃ放っておけないんだわ。悲しいことに男の性ってやつでさ。
……なんだって?ロリコン?いやいや、そういうのとはまた違うさ。ただちょっと身内に甘いだけと言ってくれた方が助かるよ。
「おにーさん……」

それに、俺がもしロリコンなら……
ティナの所業は到底受け入れられなかったと思う。
なんたって、幼女ばかり10人近くを殺したんだから。
つまり俺はロリコンではない!ハイ論破!

……って、何してんだか。



補則……原作との相違点
・蟹座のゾディアックが欠番でなく討伐されている。
・延珠、木更死亡。
・蓮太郎大幅強化。
・ティナちゃんが最初から仲間。
ちなみに強化の内容は数話以内に明かす予定。


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元英雄の朝

俺の朝は不定期だ。
時々5時くらいに起きることもあるし、10時にようやく起きることもある。
しかしいつだって変わらないのは、どんな場合でも俺は一人では寝られないらしい、ということだ。
頑張って一人寝をしようとしても無意識に体が誰かの体温を求めるので、結局眠れない。
まぁ確かに、相棒を失う前は毎日一緒に寝てたからな。多分その頃が忘れられないんだろう。
しかもこの一人寝が出来ない症状が酷い時、妙なまでに自滅願望が湧いてくるもんだから大変だ。
ある時は聖居……この国でも最高峰のセキュリティを誇る施設……に人間爆弾テロを仕掛けそうになったし、またある時はうっかり何千匹かくらいのガストレアを消し飛ばしてしまったこともある。

それだけ俺は一人寝が出来ない訳だが……最近はそれが変に進化して、ティナを抱き締めていないと眠れない。
幸いにして特に出掛ける事もない隠居に近い生活をしているからティナと離れるなんてことは滅多にないんだが、それでもかなりキツいものがある。
いくら堕落したことを自覚していても、17にもなって幼女と一緒じゃなきゃ眠れないとかどんだけだよ、俺を英雄と信奉する奴等もドン引きだよ。

……で、どうしてそんな話をしているのかと言えば今が朝だからだ。
昨日も夜遅くまで意味もなく時間を無駄にしていたからかちょいと瞼が重いが、8時に起きるなんて最近じゃ珍しくなってしまったことだし、ここから二度寝する理由もあるまい。
だが起きようにもティナはまだ寝ているし、昨日当分はずっと一緒に居るって言った手前、こっちから離れるわけにもいかない。
かといって揺すり起こすのも……
「ん……おにーさん……」

というか起きていると時々怖いが寝ていればただただ可愛いティナを起こす理由がまったく見当たらないな。
どうせ二度寝したって損はしないから、この際二度寝してしまっても……
「……あ、おはようございます、おにーさん」

……起きちゃったか、残念。
二度寝はまたの機会にするとしよう。
どうせ二度寝したところで時間を浪費するだけだしな。
それよりも飯でも食った方がまだ生産的だ。
「約束、守ってくれてるんですね」

「そりゃまぁな。特に理由もなく嘘はつかんよ。多分」

ティナと何気ない会話を交わしながら、適当に置いておいたジャージに着替える。
この生活を始めた頃からの愛用の品であり、夏適度に涼しく冬そこそこ暖かい、万能衣服。それがジャージなのだ。
それにどうせ滅多に出掛けたりはしないのだから見た目に気を遣う必要はないと考えるようになってから、いつもいつもこの服ばかり何枚も買っている。
自分でもちょっとダメじゃないかと考えることはあるのだが、それでも実用を考えるとこれ1択となってしまうのだ。
服を選ぶのは面倒、そしてわざわざ買うときに悩むのも面倒、人前に出ないのに服にこだわる必要はない。だからこそ俺はジャージを着る。
ちなみに着替えている最中、同じ部屋に異性が(子供だが)いることを気にしたことはない。
別に見られたって減るもんじゃないよな。とか思うようになったのはちょっとだけ悪い傾向かもしれない。まぁ、良く考えりゃ二人揃って適当に着替え始めている辺り、もしかしたら見られたところで気にならない程度には親密な関係ってだけかもしれないがな。
そこについては正直なところ俺自身すら良く分かっとらん。
ただ、1つ確かなことは、お互いに色々と人として大事なところが欠落してるってことだな。
俺にせよティナにせよ、同じ部屋で着替えてたら、普通であればどっちかが恥ずかしがってもおかしくはないはずなんだ。
……いや、そもそもの前提としておかしい奴がそれを言ったところで信憑性はないよな。悪かった。



我が家の食事は、はっきり言ってショボい。
適当なトースト、適当に三分で作った料理、適当な付け合わせの三品で大抵は事足りるし、かつてのようにガストレアを乱獲したりしないのなら腹一杯に食って空腹で動けないようにならないよう対策をする必要はないからだ。
それに、俺もティナもどちらかと言えば生活リズムは夜型なので、朝はどうにもそこまての量を食べられない。
それゆえに、その生活リズムに適応するように食事はショボいのである。

別に、そこには不満なんてないんだけどな。
それに、毎朝何か凝ったもん作ってたりしたら時間がいくらあっても足りん。
一応昔はそこそこのモノを作っては居たが、今やそれよりグレードは下がっている。
いやむしろあの頃の節約に節約を重ね続けて極端に金の掛からない料理ばかり作っていた頃と比べればグレードは上なのか?
まぁいい、そんなことはどうでもいいのだ。
ひとまず卵をかき混ぜてフライパンで焼いてグチャグチャにするだけで出来上がるスクランブルエッグを小さめの容器に盛って、意味もなく黒コショウでも振って、食卓に並べる。
ちなみに我が家の食卓に大皿のモノを抜いて同時に五品以上並ぶことはない、というのがジンクスだ。
品数を増やそうと思ってもその辺りで疲れてきて、結局作れない。
料理は割と得意な筈なんだがなぁ……
「おにーさんが作ったと思うと、三分と掛からない程度の料理でもとても美味しく思えてきますね」

「そうかい」

あぁそうだ、思い出した。
相棒を亡くして以降、ガストレアに怒りを集中放火させてた時にほぼマトモな飯を作らなかったツケが回ってきてるんだな。納得納得……アホか。

それはあくまで質の問題で、品数はそこに関係無いだろう?
まったく、バカだよ俺は。
こういう時は、飯でも食って忘れるのが一番だ。
俺はケチャップを塗ってピザチーズを乗っけて焼いただけのトーストを頬張る。
我が家のトースターはこれでも去年最新式だったものなので、トーストを焼くのに最適な焼き加減を自動で見極めてくれる機能なんてものが付いているのだ。
便利だよ。本当に。
前使ってたトースターなんて、タイマー機能はぶっ壊れてるわトーストを焼くにも一度余熱を入れるために空のまま焼く必要があるわで……
「……?おにーさん、どうかしましたか?」

「いや、なんだよ急に」

「いえ、食事中に急に泣き出したので」

うげ、俺そんな酷い絵面?
いや確かに昔のことを思い出したりもしたけどさ、いくらなんでもトースターのことくらいで……

流石に泣いてないよな、的な確認のため頬に触れると、指に冷たい感触があった。
本当に俺は涙を流しているみたいだ。
びっくり仰天ってやつだな。1年経ってまだ引き摺って……は、良く考えると英雄なんて呼ばれながら隠居生活に甘んじている時点で引き摺ってない訳がないよな。
あーあ、今度はなんだか笑えてくら。
いっそこのなんとも言えない虚無感を八つ当たり気味にガストレア共にぶつけに行っても良いかもしれんな。
少なくともストレス解消も兼ねるから効果はあるだろう。
なに、ステージIVが100体揃い踏みでもしなきゃ俺は傷ひとつ付かないから……
「……おにーさん、今は食事だから仕方なく離れていますが、約束は忘れないでくださいね?」

……あぁ、そうだったか。
ちょっと変に流されて記憶からブッ飛んでたが、今日……と明日明後日くらい?はティナと一緒に居る約束だった。
一応は人類最強だと言うのに、情けない。
まぁ人類最強がなんだ、そもそも強さは感情を抑えたりするのに関係無いだろうって話にもなるだろうが……まぁ気分って奴だよ。
俺の今の精神的支柱は多分、殺人だけはしないという自分ルールと人類最強の自負、あとティナの3つだからな。俺が人類最強であることは大きいのだ。主に俺の精神的に。

「まったく……おにーさんは、私がちゃんと見ていないと危なっかしいですね?いっそのこと死ぬまで私が面倒を見ましょうか?」

「そりゃ遠慮しとくよ。流石にそこまでは面倒を掛けられない」

俺はティナがサラッと投げてくる地味に怖い言葉に冗談の成分が一片も含まれていないのを察し、多少背筋を冷やしつつも平常通りを装って答えた。
……まぁ、俺としても色々決着を付けた後ならお願いしたい物だけどな。
決着を、付けた後なら。
待っていやがれ……カニ野郎……



【最高機密文書】
【閲覧には権限レベル12が必要です】
【……認証完了】
【情報を開示します】

【ゾディアックガストレア・キャンサー】
【里見蓮太郎、藍原延珠ペア及び、天童木更の三名による討伐を確認済み。なおその際、里見蓮太郎以外の二人は死亡】
【キャンサーは、現状確認されているゾディアックガストレアの中で最も異端の種である】
【サイズはステージIとさほど変わらず、しかし左右に4つずつ存在する鋏の威力及びその破壊力は他のゾディアックガストレアをも凌ぐ】
【その上、甲殻の防御力はほとんどの攻撃を弾くため、通常兵器はおろかバラニウム製の400ミリ徹甲弾すら無効化し、強力無比なる物と思われていた】
【しかし、討伐後の研究によりその甲殻は金属に近い性質を持っていること、更に中への衝撃を完全に吸収するだけの能力を持つことが判明した】
【なお、甲殻とは裏腹に臓器はデリケートであり、なんらかのダメージを与えれば確実に破壊出来ることも証明されている】
【しかし、弱点と見ることが出来る臓器への攻撃は衝撃を吸収する甲殻によって守られているため、攻撃は不可能】
【そして甲殻が金属に近い性質を持つことから電気が通じるかと思われたが、少なくとも300億Vが必要なため、不可能とされている】


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英雄のネームバリュー

ティナちゃんは天使だけど、個人的にティナちゃんはお説教したあと、なんやかんやで甘やかしちゃうタイプな気がしてるんだ。
ちなみに浮気は(相手を)許さない系で。



隠居みたいなこの生活を始めてからつくづく思うんだが……英雄ってもんのネームバリューがマイナスに働くのは、基本的に表に出せる動きをするときだ。
買い物すれば人だかり、散歩をしても人だかり。
マトモに顔を出して歩けない。実はこれがいくつかある隠居の理由の1つだと言ってもきっと信じる人はいるだろう。
まぁ当然ながら隠居の理由は違うが。
で、表に出せないことをするなら英雄のネームバリューは最高の道具になる。
いくら顔が割れていようと、人類がどうやっても勝てないようなバケモノをぶっ殺した奴相手に戦おうなんてやつは居ないから、何をやろうとも誰一人止められない。
そして、脅迫の時に殺害をチラつかせるなら信憑性になるし、戦いの時相手の緊張を極限まで上げる要因になる。
しかし、英雄のネームバリューってものはやはり不便な面の方が大きい。
だから外出時には必ず変装するのだが……それでもある程度見られるとバレるし、今日なんてティナがずっと抱き付いてたりするから注目を集めてしまう。
俺は目立ちたくなんてないのに、俺の意思に関係無く目立ってしまう。
いっそ泣きたいくらいだ。このせいで何度外出時の行動を妨害されたか。

……と、いうわけで今日は1日家に引き込もっていようと思うんだ。
なに、俺もティナもその気になれば一週間くらい余裕で引き込もって(その間に連続では最高三回、合計七回ほど飯を食い忘れて終盤死にそうになるが)いられるからな。
別に好き好んで引きこもる訳じゃないけどさ。まぁいわゆる、ただなんとなく引きこもりたいから引きこもる的な矛盾を感じるよ。
「なぁティナ、今日は一日家に居ようと思うんだ」

「そうですか」

とりあえず手短に今日の予定を伝える。
ただ引きこもることを予定と言うのか、それともただの宣言というのかは定かでない所だ。
引き込もってるのはあまり体に良くなさそうだがな……いくらなんでもそれだけのために出掛けてもみくちゃにされるのだけはゴメンだ。
いやでもな?もみくちゃにされたところで実は周囲に不快指数を上げまくる類いの電波を出して差し上げれば別に問題はないのよ?
だがそこであえて引きこもるのは、不快電波を放つとティナを巻き込んでしまうからであって……要約すると、俺は悪くない。
強いて言うならティナが苦しんでしまうのを一切容認出来ない俺の気質が悪い。
あれ?これじゃ俺が悪いのと変わらなくないか?

……無視しよう。この世にはあえて無視した方が良いことだってたくさんあるはずだ。
例えば今ティナがソファに座った俺の腹に顔を埋めようとしていることとか、なんというか女の子っぽい香りがしてることとか、ね。
ただ個人的に言わせてもらうなら、俺ってそこそこに体を鍛えてるから、腹に顔埋めたら固くて顔痛めんじゃないか?という心配があるぞ。
「おにーさんの匂い、イイです……」

……そうだった、忘れていたな。この世で意図的に無視した方が良いことを1つ言ってなかった。
ティナの変態っぽい発言は全部聞かなかったことにした方が良い。
腹に顔を埋めてるのは匂いを嗅ぐためだという事実からは目を背け、ただただ甘えに来ていると思っていた方が精神衛生上良いんだよな。
俺はティナがいくら変態的でも構わんが、全部の行動を見ていたらとても精神が耐えられなさそうだ。
だからあえて、変態的なことをされている現実からは目を背けて逃避する。
「撫でてください……」

そうだ、変態的な発言は無視して、こういう可愛らしい発言だけをある程度記憶に残しておいた方が精神汚染が遅い……
ところでティナさんや?
君、頭を撫でようとした俺の手を何処に向けさせているんだね?
「撫でるのは、頭じゃなくてコッチでも……」

……ゴメン言わなくていいよ。
撫でてとか言われて頭かと思ったら位置を下にズラされるなんてねー。なんてこったー。ただ可愛いから許しちゃうぜー(もはや投げやり)
ただ、それでも幼女に手を出すような絵面はどうにも色んな意味でアウトになりそうなので、自重して撫でるのは頭にしておこう。
期待してたっぽいティナは少し不満気にしているが……まぁそこはあまり気にしない。
怒った顔も中々に可愛いし、それでも撫でられて気持ち良さそうにしているのは、中々にそそられる物があるな。
いや、俺がロリコンって訳じゃないぞ。だってティナは誰がどう見ても贔屓一切なしで可愛い。
美しい金髪も、碧色の眼も、ぷにぷにとした肌も、一切合財全部まとめて可愛い。そういうことなのだ。

……え?それがロリコンってことだ?
何言ってんだか。ロリコンってのは俺がつい数日前に殴ってタイーホさせたとあるおっさんのような奴を言うんだよ。
確かその日は、やたら特徴的な悲鳴があったんだよな。確かどんなんだっけ……
「ガンダァァァァム!」

あ、そうそうこんな感じ。なんか中身は違うが、とにかくこんな感じの……
って、ちょっと待てまさか来ちゃった!?
復活のFならぬ復活のロリコン!?
全然嬉しくない!むしろめんどくせぇ!
だけど俺のポリシーというかプライドが助けにいけと言っている!
正確には、なんか面白そうだから首を突っ込めってな!
窓を開け、自分の肉体を電気で強化しつつも飛び出す。
行き先は前回と同じく……隣の家。
「うぇ……?おにーさーん……」

あらやだ困惑したティナ可愛い……じゃない。
とにかく良く分からんが謎過ぎる正義感の元(理由など定まっていない)、罪を憎んで鉄拳制裁の精神に基づいて殴りにいくぞー!

ドカン。

しかし意気込んで空中へ飛び出した俺が見たのは、どういう訳かやたらデカい蝶もどきみたいなガストレアに襲われている幼女で……
つーか、なんでこんなに襲われる確率高いのよ君。なんか誘引フェロモンでも出してる?
まぁ、それはともかくとしてさっさとガストレアはお掃除しちゃいましょうかね。
全身を強化するために使っていた電力を、別の形で放出する。一応どっちも使うことは出来るけど、こっちの方が精度もコスパも良いんでね。
とにかくコストはある程度抑えておくとして、ここで手軽にやらせてもらいますかね。
「……磁力操作による理不尽な砂鉄アターック」

あまりにショボい技名だが気にするな。
やってることはそれなりにエグいんだからな。
蝶はその羽についた隣粉の模様で空気を捉えて上昇気流を起こし、飛ぶ。だからそこに砂鉄を撒き散らして模様を乱して差し上げれば飛べないというわけさ。
フハハハハ。褒めないで結構。このくらいの頭脳プレーは当然なんだぜ。

それに、蝶ならちょっと前に来てたからな。対策はすでに出来ているんだよ。
俺は飛べなくなったガストレアに追い討ちをするかの如く、ポケットから一発の銃弾を取り出し、人差し指に乗せて角度を調整する。
今はコイツがまだ動けないから良いが、動き出したら厄介だからな。
一撃で終わらせよう。
……そして銃弾を、電気と磁力をもって一気に音速以上の速度へ加速する。
速度はせいぜいが音速の5倍程度。
ソニックブームが出るには出るが、弾が小さいからそれもそこまで被害が大きくないし……この技、【超電磁砲】の厄介な副次効果に比べればまだマシだ。
うっかり地面に刺されば巨大なクレーターが出来てしまうという効果に比べれば、な。

ゆえにこの技は基本上に向かって撃つ訳だ。
今回はガストレアが虫系で触りたくなかったからちょい遠くから消し飛ばすやり方にしたが、本来であればこれは間の距離を0にしてから確実に当てる方が好ましい。
確実に当たるし、何よりガストレアを恐怖させられるってのもある。
何より、相手の体の真下から超電磁砲で撃ち抜けばカッコいいからな。
垂直にならばせいぜい200mほどしか飛ばせない超電磁砲だが、真下から真上に向かって撃てば天に向かって弾丸が登っていくことになる。
なんとも幻想的じゃないか。
だから俺は真下からガストレアを撃ち抜くのだ……

ドン。

超電磁砲が放たれ、射線上にあったフェンス(ギリギリ当たってしまった)など様々な物を貫いて直進していく。
その過程ではガストレアの体が射抜かれ、生き絶えているが……しかし超電磁砲は止まらず、そこそこ遠い地点で消滅した。
大気があるせいで、超電磁砲は空気摩擦などで弾丸が熱されて弾丸自体がその温度に耐えられなくなり燃え尽きてしまうのだ……
その点においては、バラニウムの融点が鉄よりは高いことだけが救いだな。
鉄並みだったら100mも飛ばんだろうし。
「……」

あー、ヤバい。
ついうっかりすぐそばに幼女が居たのを忘れてた。
どーしよーどーしよー。ガストレアに襲われちゃうなんてトラウマものの体験のあと、追撃のように超常現象なんて見ちゃったら心の傷になるよなー。
あーそうだー。俺が連れ帰って心のケアでもしよーかなー(棒読み)
俺は、内心この子をお持ち帰り、もとい保護する口実が出来たことに嬉しさを滲ませつつも、自然に手を取って声をかけようとする。
しかし、その少女はこちらを見た瞬間、何かを恐れるように逃げていってしまう。
えっちょ何よ?なんかあったの?
そんな疑問を抱えるも、まぁ俺が見れば分かるよな……とか思って後ろを確認する。
「おにーさん?」

……するとそこには、光を映さない眼で俺を見るティナの姿があった。
やばいな、これは反論の余地がないぞ。DOGEZAをかました所で無意味だろうし……どうすれば良いんだ!



次回はちょっとだけお説教タイム。
ただこの小説はティナちゃん可愛いが基本コンセプトのため、長くはならない予定です。



おまけ・蓮太郎くんの能力解説
【超電磁砲】
レールガン。とある的なそれよりちょっとだけ強いが、本物の兵器としてのレールガンよりかは弱く、音速の五倍程度。
しかし威力はステージIVであってもアルデバランみたいな回復力がなきゃ確実に死ぬ程なので、とりあえず頭おかしい。
欠点は地面に向かって撃てないし、水平にも撃てないこと。

なお蓮太郎くんの基本技であり、大抵のガストレアはこれにより一撃で葬られるのである。


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なんだかんだで

字数が少ないなーとか思いつつも、とりあえず投稿。
恐らくこれが今年最後になるかと思われます。
次回更新?
ハッ……1月になっちまうかもね……(ニヒルっぽく)


「うぇぁぁ……」

声になっていそうで意外と声になっていない声をあげながら、ティナに膝枕された状態で寝転がる。
さっきまで叱られていた筈なのに、なんでこうなってしまったのか本当に不思議で堪らない。
あれか、叱っていてもなんだかんだで許して甘やかしちゃう系のダメ女って奴か。
何それ可愛い一生添い遂げたい。とか思ったけど許されるだろうか。
まぁ許さないなら許さないで俺はそう言った奴をみんな消し飛ばして反対意見をなくすけども。
なんたってティナは誰よりも俺に尽くしてくれるし、誰よりも甘やかしてくれるし、誰よりも理解してくれている。
もう結婚しない理由が見当たらないくらいに完璧だ。

……って待て、俺は一体何を言っていたんだ?
なんか微妙に洗脳されていた感があるぞ……
こういう時はあれだ、一旦脳ミソを整理するんだ。
俺の脳細胞よ、記憶の海から思い出を探して整理したまえ……



「おにーさん、今日は私から離れないって言いましたよね?ね?」

「はい……」

「私、おにーさんに嘘を吐かれるなんて悲しいです」

「面目ないです……」

ティナによる説教中、なぜだか俺は自然に敬語を使っていた。
あれだ、逆らえないオーラ的なものがティナから発されているんだ。
普段ならなんてことないのに、今回は俺が悪いこともあってなんとも逆らえない。
というかこんな時は淡々と怒る相手が一番怖いんだよな。
ティナはいつだってこの口調だが、それがなおさらに恐怖を掻き立てる。
怒り心頭のはずなのに、それを制御して俺を淡々と叱り続けるティナが怖くて仕方ないよ俺は。
「おにーさんは、私のことそんなに軽く思ってるんですか?心外ですよ」

「すいません……」

「言葉だけじゃダメです。行動で示してください。具体的には……3日間絶対に離れないとか」

ってあれ?意外とお説教短かったな。まだ30分も経ってない。いつもなら一時間経ってしまってもおかしくないと言うのに……珍しいな。
それはそれで逆に怖いけどさ。

俺が予想以上に早くお説教が終わって何か怪しいと思っていると、ティナがこっちに寄って来て、隣に座って……おっと。
ティナが体を引っ張って寝転ばせて来た。
すると頭の方に柔らかい感触が伝わってくる……膝枕だな。
ティナの顔を見上げるとなんだか恍惚としているみたいだし、これがやりたかったりしたのかね?
まぁ、俺としても満更じゃないしこれでお説教が短めに終わってくれたのなら言うことなしなんだがね。
しかしそう油断していると、急にティナがこんなことを言ってきた。
「おにーさんは、3日間は絶対に私から離れちゃダメですからね?」

どうやら今度は本気の本気の本気で離れさせてくれないみたいだ。
こりゃ生死を分けた戦いの時でも絶対に離れてくれなさそうだな。
「分かった」

まぁもちろん、答えはイエスの即答だ。
ティナから離れないなんてことは罰にしても軽すぎる、いやむしろご褒美にされても悪くはないものだからな。断る理由なんて1つもないんだなこれが。
あるとしても、それは俺が端から見ればどう考えても完全かつパーフェクツに性犯罪者ということだけだ。
ならば問題は無いだろう。
何故なら今の俺に周りからの評価はまったく意味を為さないし、そもそも双方合意であれば性犯罪にはカウントされないはずだ。
されたとしても、国家権力程度力で抑え込めば良いから変わりはないのだが。

……つーかなんか緊張状態から一気に抜けたせいか体が重いわー。
あまりに体が重くてついうっかりティナのお腹に顔を埋めちゃうなー。でもうっかりだから仕方ないよなー。
俺はそんな事故弁護をしながらうつ伏せになり、ティナの腰に手を回して抱き締めた。
「もう、おにーさんは甘えん坊さんですねぇ」

「なんとでも言え……」

なんというか、この姿勢結構良いかなとか思えてきた。
面倒ごとから目を逸らしてただただティナだけを視界に納めるこのポーズ……名前を付けるとすれば、現実逃避のポーズとか言えるであろうこれは、かなりイイ。
正直なところ周りの些細なことなんてどうでも良くなるくらい、最高にイイ。
これこそ、ガストレアが現れる前に流行ったらしい、人類をダメにするポーズだったのかもな……
俺はそんなことを考えながら、意識の半分ほどを闇に沈めていくのであった……



……あぁ、そういえばこんな流れでこの状態になったんだったな。
結論を言うなら俺は完全にティナに洗脳的なことをされていただろうってところだが、やはりそれでもなんだかティナを憎めない辺り、俺の洗脳は深刻らしいな。
いやあるいは俺自身が自らを洗脳してしまっている、という可能性も……
そんな可能性を突き詰めていればキリがないのは分かっているが、それでもそんなことを考えてしまう。
俺はアホなのかもしれないな……
「なぁティナ」

「なんですか?」

「俺ってさ、どうしようもない馬鹿だと思うか?」

何故だか急に不安になってしまい、急にどうしたとでも言われそうな質問をした。
答えは恐らくイエスだろう。
俺だって分かってる。どうしようもないってのは嫌ってほど分かってる。

ただ、そこでティナに意見を聞くのは、多分俺の悪いクセだ。
「そうですね……おにーさんは確かにどうしようもないですよ。でもそれで私にもっともっと甘えてくれるなら、万歳です。もっとどうしようもないダメ男になっちゃってください」

……いや待て、なんか今俺よりもとんでもなくどうしようもないくらい残念な回答が来なかったか?俺の聞き間違いか?
いや、ティナが今の言葉を言ったのは現実だ。受け入れろ俺。
少なくともティナがちょっと残念で、ネジがぶっ飛んでいるのは知っているだろう。
むしろティナ検定8級のサービス問題級だぞこれは。

……しかし、ティナはやはりとんでもなく残念だと考えると、途端にティナが20倍くらい可愛く思えてきたな。
俺は心の求めるままに抱き締める力を強めた。
「おにーさん、今日は凄く積極的なんですね」

「……そりゃ、これから3日は離れないんだから、自重とかをする必要はないだろう?」

そして、ティナと軽く言葉を交わしたのち、自分意識を落とす。
自慢じゃあないが、こんなことが出来るのは相手がティナだからこそ、だと思うんだ。
普通のやつが相手なら、ここまで安心して眠ってしまうことは出来ないだろうよ……



この作品の基本姿勢は、『ティナちゃん可愛いよティナちゃん』である。
そんなわけでこんな話は結構挟まれてくるのだ……
でも、だからといって本編が進まない訳じゃない。
じっくりひっそり進むんだ。


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散歩中の喜劇

なんというか、今回は原作をマッハである程度消化してみますた。
というかね、戦闘にあまり時間をかけたくはないのよ。
グダグダした日常パートこそが本体なのよ。

そんなわけで影胤さんの扱いは必然的に悪くなりまする。


散歩ってもんは、結構いいものだと思うんだ。
自然に手を繋いで歩けるし、ボーッとしていられる。そして何より、ちょっとしたラッキーとかもあったりする。
今日みたいに。

俺は散歩の途中、不意に異音を耳にして電磁波で周囲を探っていたのだが、そこにある物が掛かった。
ガストレアだ。
しかしそいつの体の中にある“何か”をここで外に露出させてはいけない気がして、ここで超電磁砲による撃ち落としを行うことは出来なかったが、これは何か面白いことの予兆なんじゃないか、という気がした。
……それに、何やらマトモな人間のソレを逸脱した動きをしている奴が一人いるみたいだしな。
「ティナ、ちょっと掴まっててくれ」

「了解しました」

今度はうっかりティナを置き去りにしないよう、背中に背負ってから移動する。
筋肉に電気を流し、通常の人間のそれを大幅に上回る身体能力を得ると同時、別のとあるアプローチで自身を弾丸のように加速させた。
正に文字通りのロケットスタートと言える速度で加速した俺は、電磁波でキャッチしていた人間らしからぬ動きをする人間へ接近し、軽くスピードを100%乗せた肘鉄を打ち込む。
特に技名なんかは無いが、付けるとすれば【里見流戦闘術一の型全力ダッシュver一番、問答無用キラーエルボー】と言ったところだろうか。きっとこの名前は一生使わないだろうけどな。
「ボガァッ!?」

しかし、顔面に肘ブチ込んだは良いが、コイツはバラニウム製の仮面でも付けてんのか?ってくらいに硬い感触がした。
盛大に吹き飛ばしはしたが、これで倒れてはいないだろう。少なくともあれだけの身体能力に見合った防御力なら、だが。
そんな訳で盛大に追い打ってやろうじゃないか。
「並列エレキストライク!」

まずは俺の使う技の中でも多少異端と言える技で、意識を刈ろう。
並列シリーズは俺の体内で発生させた僅かな電気を細胞を通して増幅し、一定の形を与えてそこでループさせつつ、当たった対象にとんでもない電流を流し込む技だ。
余談だが、この並列シリーズともう1つのあるシリーズだけは電気に実体がある、という頭のおかしい特徴があったりするんだよな。訳わからん。
「グアッ!?」

俺は今更ながら自分の技のおかしさに疑問を抱きつつ、倒れていた男の首根っこを掴んで電流を流す。
その電圧は市販のスタンガン数個分になるし、すぐ気絶してくれるだ……チッ、気絶しろよ。
仮面か、仮面から電気が逃げているのか、ならば全体的に割って現代アートにしてやる。
俺は拳を握り直し、大きく振りかぶって叫ぶ。
「里見流(命名、ついさっき)現状最終究極奥義……それとなく凄い攻撃!」

史上最高に頭の悪い、しかし史上最高に威力の高い、悪夢のような一撃を。
この技は、わざわざ腕の筋肉に電気を流してからさらにもう1つのアプローチで強制加速しつつ、反射と同じ原理で無理矢理腕を動かして連打する、ただそれとなーく凄い感じのする攻撃なのだ。
ただ問題として、マトモに喰らうと生物の骨では耐えきれないのか相手の顔が死ぬんだけどな。
「ふんぐるいっ!?」

……いや、なんだコイツ。まだ気絶しねーぞ。俺がわざわざ二回も電撃技で気絶させようとしたのにいまだに無事だぞ。
なんだって言うんだ本当に。
あれか、こいつ実は改造人間だったりするのか(正解です)。悪の組織ジョッカーに改造された怪人なのか(違います)。
ならばあれだ。ある人間の言葉を借りてかっこよく殺してあげよう。

せめて……人として死んで逝け!

俺はそれとなく凄い攻撃を再び喰らわせる。
今度はようやく壊れて剥がれた仮面の下の顔面に向かって。
「パパをいじめるなぁっ!」

が、どうやら俺の攻撃は防がれてしまったみたいだな。
突然横から刀を挟まれたらそりゃ防がれるけど、やっぱ微妙にショック。
そんな防げるもんじゃないんだけどなぁ。少なくとも音速一歩手前(音速を超えると手を痛めるのだ)の速度だし。

俺は、攻撃を防いだ奴の方に向かっていたって普通の電撃を放つ。
ただ直進し、特徴的な動きはしない、ごく普通の電撃を。
「やあっ!」

……えー?マジでー?
電撃は、なんか都合よくゴムっぽい靴だったからか流れてくれなかったらしい。
当たったところで流れていく先がないんじゃ仕方ねーわ。原理的に言うと雀が感電しないそれに近いけど、面倒だわー。
そんなことを考えつつ、攻撃をやり過ごした……さっきコイツをパパと呼んでいたことから、不審者の娘ちゃんとする……が斬りに来たので笑顔で対応する。
具体的には磁力を操作することによる地面への縫い付け。
最悪でも武器は奪えるから、これでチェックメイトになるだろう。
俺は武器を確実に奪えることを確認すると、足に電気を流して強化、亜音速の蹴りを放った。



「ねぇおにーさん」

「皆まで言うな」

戦いを終えたあとの空間にて、俺はようやくあることに気付いた。
あれ?なんかガストレア落ちてね?ということに。
そして近付いてソイツを確認してみると、何やら体内から引き抜いた跡が……うぇ。
多分さっき物理法則を超越した速度で逃げていった親子が何かを盗んだのだろう。逞しいことだ。
まぁとりあえず、ここでこのガストレアの討伐は俺たちの功績ってことにさせてもらいますかね……と、思ったところで、付近から苦しむような声が聞こえてきたのだ。
「……おいオッサン」

それは、見知らぬおっさんであり、ガストレアにウィルスを注入され、人の姿を失いかけた被害者であった。
別にやってやる義理も無いが、民警の端くれとして聞くことだけは聞いてやろうと思う。
「ぐぁ……ヴぇゃ……?」

……おっと。なんという事だろう。
このおっさんはどうやら体より先に痛みで脳の思考能力の方をやられたらしい。

仕方ない、応急処置でも施すか。
俺はおっさんの顔に手を当て、ガストレアウィルスのみを焼き殺せる電圧を用いて侵食を止め、ついでに麻酔もどきみたいな物もかける。
これが俺から出来るせめてもの慈悲だが……
「オッサン、これは一度しか言わん。……何か、誰かに伝えたいことはあるか?」

民警として、最期の言葉くらいは伝えてやるとしよう。
「そうか……それなら、頼みごとになってしまうがね……あのビルの405号室は私の部屋なんだが、そこにある物をもらい受けてくれないか……?宝物なんだ……」

……あと、最期の最期に面識のない誰かさんが何故かくれたプレゼントくらいなら受け取ってやるとしよう。
「それじゃ……痛くないように頼………」

「了解だ。それじゃ死ね」

俺は、最期に贈られた贈り物をこっちが勝手に受け取ることを決めると、頭を掴んで電子レンジのそれに近い電磁波を脳に喰らわせ、焼き殺した。
……眠れ、オッサン。あんたの宝とやらは俺がもらってやる。



蛭子影胤
新人類創造計画、最強最悪の楯。
本人が元々圧倒的な防御力を誇っていたところに、斥力フィールドや様々な防御力アップの改造を施された結果、超電磁砲であっても数発は耐えるようになった。
しかし、原作の影胤より大きな弱点が1つだけ……



蓮太郎の技解説
並列エレキ○○系
とりあえず命名ルールが同じなのでまとめて。
蓮太郎の細胞は、実は1つ1つが電気を増幅できるスーパー細胞であり、それを通ると電気が実体を持つようになる。
つまりガストレアを斬る電撃も作れるということである。

電磁波
便利なウェーブ。
電子レンジのマイクロ波なんかは容器に入れた物を熱することも、頭蓋骨を容器に見立てて脳を文字通り沸かしてやることも出来る。
ちなみにソナーも出来る。


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そりゃこーなるわな(自嘲)

新年一発目。4000ちょいと言ういつもより僅かに多い文量で行ってみましょー!

ってな訳で、投稿ですわ。



「おにーさん……私……もうダメかもです……」

「耐えろ!あともうすぐだ!」

「私……おにーさんと居れて……よかっ……」

「高速化ァァァァッ!」

ある建物の中、俺に背負われたティナが顔を青くして、ぐったりとしていた。
まずい……今すぐあの場所に行かなければ、大惨事になってしまう!
そう判断して全身を強化して一気に階段を登っているが、このままではティナが限界を迎えるのが早いかもしれない……
クソが、なんてことだよ……なんでこうなったんだ……

……なんで、ティナが酔って吐きそうになってるんだ!?

あ、俺のせいか。そうだな俺のせいだ。
変なやつと戦闘した時にうっかり動きすぎたんだ。俺としたことが、しくじったよ。
自分で自分を責めながら一気に階段を登りきると、先程おっさんが指示していた部屋のドアを強引に破壊……ゲフンゲフン、開けて中に入る。
いや、別に破壊したわけじゃないぞ。ただちょっと、鍵の方を磁力で強引に回しただけだからさ、セーフセーフ。
つーわけで、このまま目的地へゴーだ………間に合え………!
俺は、部屋に入るなり電磁波サーチで確認したトイレまでティナを運び、即座にドアを閉めた。
………ん、中でちょい吐いてる感じの音がするな。まぁ一応間に合ったということで構わないだろう。
あーよかった。うっかり外で吐くなんてトラウマモノの重い出を作らずに済んだよ………

俺が一息つくと、中からティナが出てきた。
まだ顔色が悪いな………まぁ酔った時は結構辛いもんな。俺も昔はよく酔ったからその辛さは痛いほど理解できる。
具体的に言葉で表すなら、地獄の苦しみとしか言いようがないくらいにキツかった。
いや、その辺は個人差が激しいから一概には言えないだろうが、とにかく酔った時は本当に辛い。
その最たるものは吐いた時の胃のムカムカやら何やらだが、ひとまず物凄く辛い、とだけ覚えていてくれ。
「まだ微妙に気持ち悪いです………」
そうそう、どうでも良いことだがティナは結構酔いやすいタイプだってのは今日初めて知ったんだよな。可愛い。
俺は成長と共に酔わなくなったが、なんというかティナにはこのままであって欲しいかもしれない。
だって可愛いし………な?それ以外に理由は無いよ。
「おに―さん、何か失礼なこと考えてません?」
「考えてない。OK?」
おっと、考えることを読まれたか。流石はティナ。俺のことで理解できないことはほとんどない奴だ。
まぁ何も考えてないことにしておこう。さっきの思考はなかった。良いね?
理由は簡単。俺とティナの間に隠し事はないはずなんだからな………多分。

「そうですか。ならいいんです」
よし、ティナも信じてくれたようだし、ここからは探索の方に移っていきますかね………
何を、と思ったやつは先刻俺がガストレア化する直前に脳を焼いて殺したおっさんを思い出してもらいたい。
あの人は俺に宝物をもらい受けてくれと言ったんだ。
だからそれを回収しに来たというワケさ。別にやましい目的はないから安心しろよ。やるとしても俺よりも価値を理解できる奴に売り渡すだけだから。
別に金を稼ぐなんて目的は無く、ただただ俺よりも有効に使える奴の手元に置いてやるだけだよ。どうせ金なら文字通り腐るほどあるんだからな。
だから、俺はこの部屋にある宝物とかいう奴を手に入れる。それだけだ。
電磁波を起動し、部屋中をサーチする。
何か値打ちのありそうなものがあれば、それがきっとあのおっさんのお宝に違いないだろう。
そう勝手に決めつけながら、意識を集中して電磁波によるサーチ精度を高めようとしてみる。

………ん?なんじゃこりゃ。
部屋の中にサーチできない空間があるぞ?
まぁキッチンなら多少は納得できるんだがな………アルミホイルは電磁波を遮断するし。
だがそれが部屋中に散らばっているってのはおかしいだろう。というか普通部屋にアルミホイルなんて貼るか?
俺の知る人間の仲にも一人だけ部屋中に電磁波対策と言い張ってアルミホイルを貼ってるやつが居るにはいるが、そいつの部屋と違って個々のアルミホイルは局所的なそれだから、意味合いは違うのだろう。
「ティナ、俺でも探せないところがあるから手伝ってくれ」

俺は流石に電磁波だけでは探せないと理解したので、ティナの手を借りることにした。
俺みたいに頭のおかしい能力を持ってるわけじゃないが、普通に物探しをするならティナの方が上手いだろう。前から何か失くした時とか、大抵は見付けてくれるし。
「了解です」ガタン

ところでティナさんや、なんで今ビックリして物凄い動きで見ていたタンスを閉めたのは何だと言うのだね?ちょっと気になるんだが。
ティナが何を見ていたのか気になったので、少しタンスの中身を見てみることにした。
もちろん、電磁波で………!?
いやいや待て待て、なんだこれ。ただの本じゃないか。なんか不自然にカバーが掛かってるけどさ………
もしやこれはあれか?エロ本か?
そりゃ見てる最中に声かけられたらビックリしてタンス閉めるよな。

うん、なんというかゴメンよ、ティナ。タイミングが最悪だったな。
今度からはもうちょっと呼び掛けるタイミングも考えることとしよう。
「なんでしょう、ものすごい誤解を招いてる気がします」

……気のせいじゃないのか?
とか軽口を叩きながら、俺はアルミで電磁波を防がれ見ることの出来なかった場所の1つから、アルミホイルに包まれた箱のような物体を取り出す。
……だがなんかこれは変だ。やたらと言うかなんというか、非常に嫌な臭いがしているぞ。
なので俺はいつでもこれを処分出来るように窓の側に立ってから、アルミホイルを剥がした。
そして、すぐに後悔して外に投げた。
なんと、アルミホイルの中身は腐った弁当だったのだ。いや確かに弁当をアルミホイルで包むこともあるとはいえ、このタイミングで出会いたくはなかったなぁ。
そして腐ったものに触れてしまった気がしたので、ひとまず手を洗ってから捜索を再開した。
「あ、おにーさん、ちょっと来てください」

すると、再開して数秒と経たない内にティナが何か見付けたのか俺を呼んできた。
なんだなんだと近付いて、見付けたものを確認してみると……おぉ。
そこにあったのは、良く分からない箱だった。
しかしどことなくタイムカプセル感もするし、もしかしたらこの中に激レアビックリ○ンシールが入っていてもおかしくない。
ビックリマンシー○はガストレアに焼かれちまったせいで過去の物は絶対数が極端に減ってるからな。何かに貼られた状態であってもレアな物なら数10万とか、そういう相場になっているらしい。ちなみにソースは俺のスポンサーだった知り合いだ。

……お、入っているのはカードみたいだな。スリーブに入ってて裏も見えないが、見たところ10デッキ分はありそうだ。
そうそう、カードと言うと俺も暇潰しがてらいくつかのカードゲームをやってるんだが、前にカード屋で最初期の某青い眼のドラゴンのカードが30万円で取引されてるのを見て大笑いしたよなー。
流石にそんな骨董カードは見付からないだろうが、良いカードが入っていてほしいものだ。
俺はなんとなく上段の真ん中、良く分からんが直感で小5だと分かるキャラのスリーブのデッキを手に取り、内容を確認してみた。

えー、なになに……?【終焉の禁断 ドルマゲドンX】?
やたら金ピカだなこのカード。くらいの感想しか出なかった。
だがこれでどのカードゲームかは判明したから良いだろう。
それに何やらこのデッキはある程度値打ちのありそうなカードばかりだったから、売っても相当の値段になるに違いない。
「おにーさん、なんか箱の底に貼ってあるみたいですよ」

「ん?……あぁ、確かに貼ってあるな」

俺がこのデッキの処遇を悩んでいると、ティナが箱の底に何かが貼ってあるのを発見した。
これが実はタイムカプセルでしたー。とかだったら大笑いだな。
関係無い上にほぼ見知らぬ人物に時間ガン無視で開けられてんだから。
微妙に抑えきれていない笑いをある程度堪えながら、箱の底にあるものを回収する。

どれどれ……触った感じだとこの中にもカードが入ってる感じだな……だが1つだけサイズの違うのもあるっぽいし……これは手紙か?
他人の手紙を勝手に読むのも行儀が悪い行動ではあるが、少し中身を知ってみたくなったので読ませてもらうとしよう。
『ハッピーバースデー。13歳おめでとう。士郎。
お前の誕生日だから、今年も父さんからは昔やってたカードゲームのデッキを送らせてもらうよ。受け取ってもらえると嬉しい。
出来れば直接渡したかったんだが、仕事が忙しくて無理そうなんだ……スマン。
だけど次の誕生日こそは、父さんもお前に直接誕生日プレゼントを渡せることを祈ってるよ。
父より』

……マジか。あのおっさん子供も妻もいたのかよ。
そんなんが居たのなら、俺なんかに宝物を託さず普通に遺産として遺せば……あぁ、なるほど。
何故おっさんが俺に宝物を託した理由が分かった。
どうやらこの箱とその中身は、おっさんが自分の子供に届けようとして、不幸にもその誕生日当日に何かがあったのか、届かなくなってしまったもののようだ。
書いた日付が3年前のそれであることが証明してる。
「おにーさん……」

「分かってる」

きっとティナは、こう言いたいのだろう。
『流石にこういう物は、売らない方が……』と。
大丈夫。俺だって元々はマトモな人間なんだ。そんなクズい真似をするハズがないだろう?
「この感じだと、他の物も大体は同じ中身っぽいですね。全部売れるような物だと良いんですが……」

ありゃ?予想してた答えと違うな。
「なんですかその目は。別に見知らぬ人が見知らぬ子供のために送るはずだったカードくらい、どってことないでしょう?」

……いや確かに、言っちゃ難だけど俺も同意見だけどさ。
でも、別に金に困ってる訳じゃないし、むしろ腐るほどあるんだからこういう品を取っといても困ることはないと思うのよ。
「……まぁ、おにーさんがしたいようにしてくれれば私は構いません」

おう、ありがとなティナ。俺の意見に合わせてくれて。

……そんじゃ、ありがたく借りさせていただくとしますか!
期限は俺とティナが死ぬまででよろしく!



余談ですがね、半ニートは個人的に『頭がおかしいと言うかむしろ色々タブー的なそれに値する』って感じの伏線が大好きです。

あ、今回の話には関係ありませんよ?
これは半ニートの、ただの趣味です。



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権力なんかに屈しない(迫真)

なんか変に短くなってしまった。


人間、権力に負けて自分の意思を曲げたら色々と敗北だと思うんだよね。俺は。
だから絶対に、聖天子からの呼び出しは、応じない。
何がなんでも、応じてやらない。
正直そんなもんに応じてたらティナとの貴重な時間が減るじゃないか。誰がそんな呼び出しに応じると言うんだ。バカだろう。
それに今や我が家には一生働かず暮らせるだけの金があるんだからな。わざわざ働くこともあるまい。
「おにーさん、わざわざ国の最高権力者に直接呼び出されたんですから、一応行ってあげても良いんじゃないかと思うんですけど……」

ぬ、そういやティナは知らないのか、俺が絶対聖天子の呼び出しには応じないスタンスを取ってる理由。
まぁ教えたことないもんなぁ……かつての相棒が生きてた頃には聖天子から呼び出されるような用事なんてあんま無かったし。
多分当時のことを知らない人間でこれを話した相手はこの世とあの世含めていないだろうな。

まぁティナになら話しても良いんじゃないかと思う。
信用出来るし、相棒だし、ティナだし。
最後のは理由になっていない気もするが、俺としては相手がティナってだけで最大級の信用を置けるんだよ。
「……俺が絶対聖天子の呼び出しに応じないのには、理由があるんだ」

そして、わずかにやっぱどうしようかなとか悩んだあと、俺は自分が聖天子に呼び出されても応じない理由を話すことにした。
いや、正確には応じなくなった原因の出来事、だけども。



これは俺がまだ発電能力なんて持ってなくて、ティナとも出会っていなかったころの話だ。
ある日俺は、聖天子に名指しで、しかも相棒を連れず一人で来るように命じられた。
そんで、その頃の俺は当時切り札であった新人類創造計画……まぁ、ステージIVガストレアを一人で殺せることを念頭に作られた、実際のところ最高傑作の俺であればステージVにすら対抗出来たその力が必要な仕事かと思っていた。
もちろん、当時はまだまだ腹黒くてガストレアと呪われた子供たち絶対殺すマン状態だった、聖天子の側近である菊之丞のおっさんの策略ってのも警戒してたけどな。
まぁそんな訳でいつでも戦える用意をして聖居に向かった訳だが、その入り口でなんか見てはいけないモノを見たような、それでいて何か使命感に目覚めたような顔をしていた菊之丞のおっさんに出会った訳だ。

そこで、俺は今回呼ばれたのが少なくとも策略って訳じゃないと思い込んだ訳さ。
今思えば非常に愚かだった。
俺は少なくとも聖居の中に居る間は安心だなーとか思いつつ、中へ歩いていって、そこで罠に掛かってしまった。
……あ、でも別に落とし穴に落ちたとかじゃないぞ?
ただな……まだまだ純粋でマトモで聖天子を可愛いとか思っていた当時の俺はその罠に見事に引っ掛かってしまったんだよ。
そう、聖天子によるハニートラップという最悪の罠にな!
「……国の最高権力者がやっちゃって大丈夫なんですかそれ」

……知らん。
まぁとにかく、俺は当時まだ聖天子の本性を知らんかったからそのハニートラップにまんまと掛かってしまった訳だよ。
幸いにして偶然発生した、『俺に聞かれてはいけない内容の通信』が大音量で俺の耳に飛び込んで来たんだ。
内容は確か、相棒を始末するとかそんな話だったと思う。
んで、それを聞いて俺がブチギレ状態になり、脅迫してどうにか事なきを得たのだが……



まぁ、これで分かってもらえただろうか。俺が絶対に聖天子の呼び出しに応じないその理由が。
「とりあえず、今すぐ聖居まで行って軽くお話する必要はありそうですね」

「まぁな。だがあんなモノにわざわざ自分の手は汚したくないし、弾丸を消費するのももったいないだろう?」

俺としても本当なら今すぐ殺してやりたいくらいだよ。
しかし殺せば国中を敵に回すし、それをどうにかすることは出来てもその労力がもったいない。
そして時間ももったいない。そんなことに使うくらいなら、ティナに甘えていた方が数万倍は有意義に違いないしな。
俺は寝転がり、ティナに膝枕されている状態になる。
余談だが、そこそこ小柄なティナの膝くらいがちょうどいい高さなんだよな……枕として。
「ですよね」

というかティナ、お前もお前でなんだかんだアレにお話しに行くとか言いながら極自然に頭撫でる態勢じゃないか。
……まぁ、あれだ。
嫌いな奴への仕返しより何より日常のグダグダとした退廃的な時間が優先されるってのは、俺達の美徳だと思わなくもない。
誰も傷付かず、ただただ幸せな時間だけが過ぎていく。
これはきっととても良い事なんだ。俺を含めて誰も損しないし、俺自身はかなり得をする。
素晴らしいね。幸せだけが満ちて……ん?

なんか今、一応敵襲に備えて展開している電磁波のサーチ範囲に変な物が入ってきたな……
何やら金属っぽくて、巨大で……おい待てよ、これってまさか重機だったりしないよな?
しかもそれが結構な速度でこっちに近付いてきてるし……ぐぬぬ、電磁波だけじゃおおまかな形しか分からんから、本当に重機かどうかも分からん。
一度家の外に出て確かめてみるか?
いやしかしそんなことをしたらこの幸せな時間がおじゃんになる。
本当にヤバいならともかく、出来ればそれは避けたい。
それじゃどうする?

簡単だ。相手は鉄だから、磔にすればいい。
重機と思わしき物が移動する瞬間、そこにとてつもない磁力を発生させてやれば動けなくなるはずだ。
まぁこれまでは高速で移動させる使い方ばかりをしていたから、動けなくする使い方はあまり得意じゃないが、頑張って押さえつけてみるとしよ……

ぐしゃっ!

俺が磁力を発生させて重機を押さえつけようとすると、何やら潰れたような音がした。
まさかうっかり手加減しそびれて中の人ごと潰れたとかじゃないよな。
頼む、そうじゃないって言ってくれ。
「おにーさん、何か外からすごい音がしましたけど……何かしました?」

あ、ティナ察しが良いな。流石だぜ(現実逃避)。
まぁ、きっと何かが潰れたような音はしたけどそれはきっと重機だけの音のはずさ。
俺は、流石にちょっと外が気になってきたので窓を開けて音のしたほうを確認する。

するとそこには、何やら重機を多数組み合わせたような、多分ロボット的なもの、が完全にスクラップと化して転がっていたのであった。

……これ、どうしたものかな。
燃えないゴミに出すには大きすぎるし、しかし磁力で無理矢理小さくするとかするにしても面倒くさそうだぞこれ……
俺は、聖天子以外にまだ面倒事が増えてしまったと嘆いたのであった。



最近体調を崩し気味なせいかやたら投稿ペースがおかしくなっている気がする。
いつもなら産まれないはずの書き溜めが少しの間ながら産まれたりとか、1日に2000文字(しかしこの作品ではない)とか、投稿しないくせにやたら長い短編とか。
なんか変だなぁ……


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先生の発明は99.999%危険物

みんな大好き菫せんせーは大変なものを作ってしまったようです。
それと半ニートも何故かさほど日を空けずに投稿してしまったようです。
なぜこうなった……


俺とティナは今、とんでもないものを見付けてしまっていた。
それは磁力によって破壊されたロボットの中心部にあった、謎の装置。
そして、赤い癖字で注意書がされたそれの名は……
『GV除去装置』。多分グレートヴァンソウコウ除去装置、つまりは一切の痛みを伴わず絆創膏を剥がせる装置………じゃなくて、ガストレアウィルス除去装置だろう。

いまだにウィルスそのものへの抜本的対策のないガストレアウィルスを除去装置出来るとか、正に夢の発明だよな。
まぁぶっ壊れてるけど。
俺がついさきほどに磁力で押し潰して壊したんだけど。
で、その機械のおまけのようにそれによりかかっている変なヤツ、室戸(すみれ)。世界有数の天才であり、ガストレア研究の第一人者でもあり、そして現在の俺であっても頭が上がらない、数少ない人物の一人である。
だがしかし彼女はとんでもなく優秀な代わりに時々アホなことをするから手が付けられないという特徴があるのだが……今回もそれだろうな。この騒動の原因は。

まぁ多分今回については顔を真っ赤にして寝てるし、微妙にこの辺も酒っぽい匂いがしてるから、きっとガストレアウィルス除去装置を完成させて、完成したことが嬉しくて祝い酒を飲んで酔っ払って、変なロボットをノリで作って、自慢したくてウチにきた……ら、ロボット潰されるわガストレアウィルス除去装置壊れるわで散々な目に遭って気絶したってところだろう。
正直あまりにおかしすぎて笑えてくるけどな。
世界有数の天才が酒に酔って自分の発明を自分で破壊へ導くとか、どんだけアホなのよ。
「おにーさん、これって……」

………ティナ、それは言うな、いや言わんでやれ。
コイツが自分の凡ミスで世紀の大発明をぶっ壊してしまったとか、笑い話にもならないからやめてやってくれ。
特に自分のミスが原因で壊してしまったものが、実は発表すれば世界が変わってしまうようなレベルのとんでもないものだったんだから、尚更言わんでやれ。
「そうじゃなくてですね……よっと」

ティナは、菫先生の胸元からUSBのようなものを取り出して、俺に渡してきた。
………なんじゃねそれ。普段大抵のものは頭の中に記憶するか、あまりに汚いせいで本人以外には読めない謎言語で書いた書類に記憶しているはずなのに珍しい。
とりあえず先生が珍しい行動をしたということは何かしらとんでもないものを発明したという事なんじゃなかろうか。
まぁ、そうじゃない可能性を考えて電気を操る力の応用技を使って情報を読み取ってみるが……これは一体なんなんだ?
ガストレアウィルス除去装置について書いてあるのはまぁなんとなく理解できるが、これはまったくもって訳が分からんぞ。
『惚れ薬の製造法』『ノートパソコンを用いた的中率の高い未来予知法』『人間の感情への科学的介入法』とか、コイツは一体何を研究しているのやら。
………いやまぁ、少なくともマトモな目的では無いだろうけども。この先生サマは仮にも、マッドサイエンティストなんだしな。

たとえば惚れ薬だとしたら適当な奴に死体の良さを広めるとか言って死体に惚れさせそうだし、未来予知なら他人の家に行って『明日死ぬから死体をおくれ』とか言うだろう。
他人の感情に介入出来るようならきっと想像もつかないようなとんでもないことをやらかすだろうし……正直なところ、俺程度のアホな脳みそじゃ何をやるかは分からないがな。
しかしどう考えてもロクなことじゃあないのは確実だろうよ。
だからきっと、正義を重んじる一般人ならきっとこのUSBを破壊して菫先生に使えないようにするんじゃないかと思う。

だが俺は違う。
一般人とは違って、壊しはしない。ただ消すだけだ。
先生の技術力であれば粉々にしても復元されかねないので、それが不可能なレベルで、完膚なきまでに消し飛ばす。
それこそが最高の処分方法なんだ。多分。
「そーゆーわけでドーン」

そんな訳で、超電磁砲を弾丸の方に気を遣わず全力で発射する。弾はもちろんUSBでな。
……ちなみに俺の超電磁砲の威力について解説をさせてもらうと、超電磁砲の速度は常に全力全開よりはかなり抑えた感じにしていて、大体全力の二割くらいでやっている。
分かりやすく比較対象を作ると、いつもの超電磁砲は基本的に音と速さを比較できるが全力の超電磁砲じゃ音ではなく光と比べないといけないんだ。速すぎるから。
ただ、基本的に俺は全力で超電磁砲を使用したりはしない。
なぜかといえば、空気摩擦によって弾丸が燃え尽き、マトモに弾丸が飛んでいかないからだ。

ただまぁそれは、裏を返せば射程を求めさえしなければ全力で撃っても良いということにもなるんだが。
射程カッスカスだけど、当たればステージIVくらいは消し飛んでくれただろう、超電磁USB砲。
出来ることなら先生が起きているときにやって、ざまぁとでも言ってやりたかったくらいだ。
「……うーん……何をして…いたんだね私は……」

「チッ」

「酷いなケンシロウくん。いきなり舌打ちとは」

「殺しますよ?」

何故このタイミングで起きやがった先生。これはもうちょい空気を読んでUSBが消える瞬間を見るべきだっただろうに。
それとティナ、お前はナチュラルに銃を向けるな。人殺しだけはダメだと何度言えば良いんだ……いや正直なところコイツはマジで殺した方が世界の為なんじゃないかと薄々思わなくもないけどさ。
しかしこんなのを処分するためめティナの手をわざわざ汚す必要はないわけで……
「助けてくれ蓮…シンタローくん!」

……なんだろ、今ものすごく確信犯的に名前を間違えられた気がする。
一瞬正しく蓮太郎と呼び掛けてやめたよな?な?
よろしいならばテメェを今から人間として見ねぇ。そうすりゃ人間じゃないから人殺しにはならん。
さぁやろうぜティナ!
「えっちょっ蓮太郎くん!今のは軽いボケだよ!」

今更弁解したところで遅いぜ。
すでにお前には死刑判決が出ているんだ。今から焦っても意味はない。
「……今回はこれの他に、惚れ薬のサンプルを持ってきたんだ!君達みたいな人間で実験しようと思っごふっ」

テメーまだそんなもん隠しとったのかい。
今すぐ提出しろやそんな危険なもん。ボッシューじゃボッシュー。
お前に惚れ薬なんざ持たせたらロクなことにならんのは目に見えてるしよ………おっと。
受け取る瞬間にうっかりバランスを崩してしまったみたいだな。
危ない危ない、何が起こるか分からない薬品を使われてしまうところだった………セーフセーフ。

ん?なんだね先生。そうニヤニヤして何を企んでいるんですかねとりあえず今すぐ情報ゲロれやゴルァ。
「いやー、実はね……その蓋は遠隔で開けられるんだよ(キリッ」ポチッ

俺がよく分からんがとりあえずヤバいなとか思って騒動の原因である先生の首根っこを掴んでみるが、先生は慌てるそぶりも見せずにツメに偽装していたなんらかのボタンを押した。
すると持っていた惚れ薬サンプルの蓋が開き、良く分からんが気持ち悪いことだけは間違いない強烈な臭いを発し始めた。
「(キリッじゃねぇよとんでもな……」

そしてこれ……どう考えても違法だろ……と呟こうとして、自分の視界が狭まっていくことに気付いた。
いやなんでやねん……あぁ、なるほど薬の作用か。
意識も朦朧としているし、これは惚れ薬というよりいわゆるレイプドラッグとしての使い道の方で優秀そうだな……主に、嗅がせるだけで作用することとか、俺みたいな超人(少なくとも最近じゃガストレアと戦いすぎてトリヒュドラヒジン辺りよりかは弱い毒ならば完全に無効化出来るようになってきたしこう呼んでも問題無いだろう)にも効くこととかさ。
ただ、それを自分の友人で実験するなよ……やるならこの前言ってたチャーリーにやってやれやこのクソ野郎が……
俺は、朦朧とする意識の中ひとまず直感でなんとなく安全そうな方向に移動して倒れると同時、意識を手放したのであった……

先生め、覚悟してろよ……今度笑顔で先生のとこの記録媒体全部ぶっ壊しに行ってやる……



おまけ:蓮太郎式データ読み取り法。
1.記録媒体(人間の脳含む)に触れる。
2.微弱な電流を流す。
3.読み取ったデータを強引に変換し、脳内で閲覧する。

なお元ネタは禁書。どこぞの第三位も似たようなことやってたしね。


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自分が思っていたより人間のクズだったことに気付いたよ……

かれこれ1週間ぶりの投稿になりまする。
なんか投稿しようかなーとか思いつつササーッと次の話も書いてたらすでに投稿した気になっていて、投稿を忘れていますた。

やべーやべーと思いつつも、とりあえず1週間ぶりにレッツラゴー。



ぬ……なんか頭が痛い……
なんというか、物凄く深い眠りに落ちていた気がすると言うかなんと言うか、なぁ……
気付けば我が家のベッドの上だった。
時刻は6:55(午前であると信じたい)。つまり俺は1日近く眠っていたみたいだ……
一体何があったんだ?正直頭痛のせいで考え事は捗らんが、思い出してみよう。
たしか……そうだ、家に先生が来て、俺がUSBを自重なしの超電磁砲の弾にして消し飛ばしたんだ。
それで……なんか気絶して、それ以降の記憶がない。
とりあえず頭痛がするようなことがあったということは分からなくもないが、記憶がまったくない。思い出せない。

まぁ、もしかしたらずっと寝ていただけという可能性もないわけじゃないだろう。
何せ人類には目覚めず数日眠りこけるようなやつもいるんだ。あんな薬品で眠らされたら1日寝込んでいても……ん?
俺は体を起こそうとしたが、失敗してしまった。
体が重い、多分ティナがくっついてるんだろうが、なんかいつもより体が重い気がする。
思い込みか俺の調子が悪いだけかもしれんが体感で約二割ほどいつもより体が重くなっている。
それといつもより三割ほど腕の力が強い。
なんというか顔色も悪いし、悪い夢でも見ているのだろうか。
「……おにーさん……おにーさん……」


……いやー、なんかすげー魘されてるけどどんな夢を見ているんだろうな。はっきり言ってとても気になるよ。
建前を何か言うとしたら、夢って人の心理がよくよく反映されるから、それでティナのことを知れたら良いかもしれないってところだろうが……とりあえずティナの見たものを俺も見てみたい。
そうだ、起きたら聞いてみるか?
そんなことを検討するが、俺は一瞬でその考えを忘れることにした。
魘されるほど悪い夢なら、わざわざ思い出させてしまうのも酷な物だろうしな。

それに、今は俺も体が変に重いんだ。
わざわざ起きて労力を使うほどでも無いだろうよ。
時間はまだ七時前だし、二度寝するには最適な時間だろう。
……そういうことで、おやすみ。俺はもう一度眠らせてもらうよ。
まだ早いからティナを起こす気にはなれないし、かと言って一人で起きてるのもなんか微妙、となれば二度寝しか選択肢はないから当然の帰結みたいなもんだけど……まぁあれだな、魘されてるティナが可愛くて甘えたい気分なんだ。
だから寝る。異論は許さぬ。おやすみ。
朝6:50ごろ。俺は再び眠りについたのであった。
……実はこれがこのあと無駄に騒動と言うかトラブルを引き起こす種となることも知らずに。



『惚れ薬』
室戸菫製。副作用はないが感情の起伏が激しくなってしまうので注意。
なお、効果は“服用時に気絶したあと、次の睡眠から目覚めた時最初に見た相手”に対してしか発揮されない。
つまりは二回寝る必要がある。
なお効果時間は個人差が激しく、人体実験によれば最長で3週間から、最短では1日というものもある。



……何かどこかで誰かが俺を笑っているような気がして、目が覚めた。
なんだろうなこの感覚。非常に不愉快かつ殺意すら抱いてしまいそうだぜ。
まぁそれはともかくとして、今の時間を確認しよう。
俺は起き上がり、時計を見る。
AM10:26。完全に寝過ごしたと言っても過言ではない時間だろう。
少なくとも昔の俺ならこの時間にはとっくのとうにセールスしに行ってただろうなぁ……とか物思いに耽りつつも、ティナが腹減ったんじゃないかと思って少し心配になる。
ティナは料理も出来るには出来るんだが、こいつ朝は俺が起きるまでずっと待機してるんだよな。
俺はごくまれにとは言え大寝坊するってのに、それで大丈夫かと聞きたくなるくらいだ。
ただ、正直なところ朝起きてティナが居なかったら少しパニックになってしまう気がしなくもないので、物凄くありがたかったりするんだよなぁ……

朝起きてすぐそばにティナがいる。これ以上の安心はそうそうないね。
ほら、今だって足に(ただ、何故そこに移動したのかは理由が分からない)くっついて離れないから、安心感がすごいというか……
とりあえず要約すると、ティナ可愛い。そんだけだ。
ノロケとか言われても仕方がないと思うが、ティナは可愛い。それは間違いないし否定するような奴は片っ端から消し去る予定だから反対出来る奴は一人もいないはずだ。
「ん……」

お、どうやらティナも起きたな。
まぁ俺が起こしてしまったという可能性も高いが、とりあえず目が覚めたみたいだ。
「おはよう、ティナ」

「おはようございます……おにーさん……」

ティナは起き上がってもまだ少し気怠そうにしている。
……昨日、先生に惚れ薬盛られたせいで飯作れなかったもんなぁ……慣れない料理を自分でやったから、少し疲れてるのかもな……
迷惑を掛けたような気がして、少し申し訳なく思う。
しかし同時に全力で言い訳をしている部分も存在し、俺は自分の意思が統率されてないなーとおぼろげに考えるのであった。

いや、それはそれとしてだな。
今日こそはちゃんと飯を作らないといけないな。
昨日は薬のせいとはいえ飯も作らずに眠りこけてしまったんだ。
それを補うくらいに今日は頑張……いや、でもよく考えればまだティナと絶対離れないって約束は実行中なんだよな。
だったらあまり離れるべきではないだろうし、とりあえず料理と洗濯以外は後回しにした方が良いだろう。
その方が俺にとっても楽で良いからな。うん決定。

そうして今日の予定をかなりざっくりとだけ決めてベッドから降りる。
で、何事もないように着替える。
……ところで、今考えるのも難だがプロモーターと同じ部屋で着替えて平気なイニシエーターの割合ってどれくらいなんだろうな。
意外と多いのか、それとも少ないのか。
個人的には俺たちが普通であってくれた方が助かるっちゃ助かるんだけどな。
だって俺たちが普通ってことは、世界がティナみたいな『呪われた子供たち』を受け入れ始めていなくもないという事に繋がるだろう?
まぁそんなどうでも良いことはそこらの野良猫のエサにでもするとして、もっと重要なことを考えよう。
今日の朝食になにを作るか、だ。
ピザという一点を除きあらゆる料理でティナに勝っている俺は当然ながら今日も飯を作るのだが、何を作るべきか。
時間も半端だしあまりガッツリしたものより、軽めに作った方が良いだろうしな……中々に悩みどころだ。
かと言ってティナに何が良いか聞くと『おにーさんの料理なら、どんなものでも良いです』とか言いそう(以前本当に言った)だから意見を聞くに聞けないし……どうしたものか。
そして悩むこと数分。結局俺は冷蔵庫の中身に全てを委ねることにするのであった。


「やっぱり、おにーさんの作る料理が一番です」

食事中、ティナが不意にこんなことを呟いた。
ティナが俺の料理をベタ褒めするのはいつものことだが、やはり誰かに褒められるというのはなんというか……凄く気分がいい。
特にそれがティナだと、なおさらだ。
俺はとりあえずティナに礼を言うことにした。
日頃色々と世話になってるし、これからもよろしく的な意味をこめて。
それと、料理人冥利に尽きる的な意味も込めて。
「……ありがとな」

……まぁ俺は料理人じゃなくてただの人類最強だけどな。
というかむしろ人類最強である以前に一人のダメ人間だけど。
だってそうだろう?平日の真っ昼間から10歳の女児に甘えるような男子高校生(ただし元、が付く)がマトモな人間であるはずがない。
毎日毎日とんでもないケタ数を誇る預金で暮らし、時々思い出したようにストレス解消を兼ねてガストレアを駆逐する。
うわぁ自分で言っててもビックリするくらいクズだ。
そして自分言ってて難だけど気分が激しく悪い。

……これはもう、当分は考えない方が賢明だな。うん。



惚れ薬の効果……実は効いてる。しかしそもそもが全力で依存しちゃってるのでほとんど効果が出ていないように見える。

だなんてどうでもいいことを書きつつ、次回からは割と本格的に原作に突入して行こうかと……あれ?この台詞どこかですでに言ったような気が……
違う作品だよな。うん。


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人類最強の弱点

とりあえず個人的美学として最強キャラにはある程度弱点を作りたいのよね。
でも無双はさせたい。っつーことで原作的にも都合が良いからこうなりました。的な話です。


人類最強。
この言葉に何か深い意味を感じるか?
確か俺の知るヒーローは人類の中でもっとも重い責任を持つ者のことだ、とか言ってたっけ。
しかし俺が信じられる人間たちは口を揃えてこう言っていた。
『好きなところに雷落とせて磁力も操れてレールガンを振り回す上に速いとか、勝てるか!』と。
いやいや、お前ら諦めんの速すぎないか?
ゴムで全身を覆うことで電気を防ぎ、金属の一切ない場所で俺より生身で強いやつが戦えば多分殺せると思うぜ?
いやまぁ、ゴムなんか着てるじゃ動きにくいし、金属のない環境で戦うとしても俺がナイフや銃弾を持っていない時はないから、無駄なんだけどな。
それにそういう対策をしようとも電磁波で何をされているのか確認しておけばこっちから一方的に攻めることが出来るようになる。
……あれ?よく考えりゃ俺って普通に人類最強じゃね?
いや、それはよく考えなくても分かる事実なんだけどさ、少なくとも人類が星の入った玉を七つ集めると願いが叶う設定のあるマンガみたいに気やら何やらに目覚めなければ鉄やバラニウムを一切使わずに戦闘を行うのは難しいだろうし、金歯や銀歯から感電させることも実は意外と難しくない。
それに、さっき言ったみたいに最大限の対策をされた場合、空気穴から手を突っ込んで脳に電気を流し電子レンジの要領で熱してやれば簡単に死んでくれるだろう。
この世にジュール熱というものがあって良かったよ。
『電気抵抗があるもの』に電気を流せば熱することが出来る。それは素晴らしいことだ。
あれ?つまり俺は実のところ電気だけでなく熱も使えるということじゃないか!
何故今まで思い付かなかったんだろう、熱を使えるということに。
意外にも当然のように電子レンジと同じメカニズムで脳を焼く方法は何度も使ってきたというのに、いまだそれを他の攻撃に転用してなかったのか……
俺のここ3日で一番の不覚だ。

……あ、いや待て。ここ3日で一番の不覚は別の奴があったし、これは多分二番目くらいじゃないか?
だってもう片方のやつはこれとは比べ物にならないほどとんでもないミスなんだしさ……うん。
「里見さーん♪」

俺のここ3日で一番の不覚、それは聖天子から手紙が送られたのに警戒を怠ってしまったこと。
そのせいで、今なんと自分の家に侵入され、しかも重要な案件を伝えるとかいう名目で様々なセクハラをされているのである。
正直なところ嬉しくもなんともないし逆に気持ち悪いくらいだ。
……チクショウ、コイツが国家元首じゃなかったらすぐにでも殺してティナに甘えて気分を直しているはずなのに。
最悪の気分だ。
「里見さん、何かして欲しいことはありますか?」

「帰れ。そして二度と来んなブス」

「またまた、里見さんはツンデレですね」

ツンデレちゃうわ!
コイツもう殺しても良いかな。何かある度に押し掛けてきてセクハラしてきてしかも何を言っても効かない。
いかに罵ろうとツンデレと言われるわ『新鮮です……』と返されるわ散々な返しを喰らい、あえて普通の人間のようにへりくだって見損なわせようとしてもそれを利用され持ち帰られかけ、完全に無視しているとセクハラが酷くなる。
しかも相手は国家元首な上になんだかんだで悪意も(性的な意味のそれを除く)下心も恐怖もなく接してくる貴重な人間ということもあって下手に物理で傷付けたり殺したり出来んし……
なんというか、人類最強である俺に対してのみ強いって感じだな。
俺は人類でもっとも強いが、逆らえないという意味でティナに負け下手に殺せないという意味で聖天子に負ける……
最強の割に負けすぎだろ、俺。せめて負けるのはティナだけにしておけよ……ティナだったら完全に味方だし絶対に裏切らないから負けたところでなんの問題もないんだからさ。
聖天子の方は今はともかくとしてもいつ俺を切り捨てるかも分からない不安要素だし、出来れば早いとこコイツを安定してどうにかできる秘策でも考えないといけないよな。

俺はそんなことを考えつつ、どうにかしてコイツを引き剥がし、さらに退却させる方法を考える。
しかし考え始めた途端に、聖天子は思い出したかのように突然真剣な顔をすると、用件を話し始めた。
流石は国家元首だわ、人の言葉をさりげなく止めるのが上手い。
「里見さん、忘れていたのですが今回は……」

……で、一体なんだかね?
とりあえず下らないことだったら追い出そう。そうだそれがいい。
どうせコイツが来てるのはそれを『人類最強でありゾディアックガストレアを撃破した英雄』である俺に依頼するためだろうし、それさえ失敗すればコイツがここにいる理由は消え去るんだ。
あと少しの我慢だぞ俺。あと少しで、思う存分ティナに甘えて気分を完全にリフレッシュ出来るんだ。
「……ある封印指定物の回収をお願いしたいのです」

「封印指定物?」

なんじゃそりゃ。
字ヅラからしてなんとなく超ウルトラスーパーデンジャラスで今すぐなんとかしないといけない系のアイテムであることは分かるんだが……回収、とはねぇ。
今言うことじゃないんだが俺の能力は基本的に電気を用いるから回収対象機械系のアイテムの場合確実に壊れるんだ。
つまりこう見えて機械系アイテムの回収にはトコトン向いていないんだよ、俺は。
「それで?その封印指定物ってのは一体どんな代物で、どんな形をしているんだ?」

とりあえず先にどんな物なのかを聞いておくことにしよう。
最悪物品の種類によっては依頼を断らないといけないし、何よりそもそもの形を知らないと探すことも出来やしない。

俺の疑問に、聖天子は現在教えられる範囲でなら、と前置きしてからこう言った。
「えぇ、それはですね「七星の遺産。ゾディアックを呼び出すことが出来るアイテムであり……壊れた三輪車、だそうですね」……話に割り込まないで頂けますか?」

しかし、その説明が始まると思われた瞬間にティナが部屋(一応は客間である)に入ってきてサクッと説明してしまった。
七星の遺産?なんだねそりゃ。
名前から考えるのなら、七星さん(家あるいは人あるいは地名)が遺した何かしらのモノということになるが……
何故ゾディアックなんてものを引き寄せるんだ、三輪車よ。
しかもあれだぞ?俺の知る限りゾディアックなんて俺並みの規格外あるいは既知外の存在がいなけりゃ倒せないような奴等なんだぞ?
んなもんどうしてすぐ処分しねーんだよ……爆破しろ爆破。
俺としては、そんなものさっさと消してまえー。と思う他ないがねぇ。
そんなことを考えていると、聖天子が信じられないようなものを見る目でこっちを見ていることに気付いた。
「というか里見さん、一応IP序列は一位なんですから閲覧レベル12はあるでしょう?なぜ知らないのですか?」
……そーいや、あったな閲覧レベル12ってやつ。
正直なところレベル10以降は見てるだけで吐き気がするし自分関係のあることでも無いから見てなかったが……七星の遺産ってのもレベル12があればかなり知ることができたのかねぇ。
「……まぁ良いでしょう。それで里見さん、今回の依頼はその七星の遺産を奪っていったあるペアから回収してほしいのです」

物思いに耽りながらも、聖天子が渡してきた紙を受け取る。
そしてティナを手の動作だけで呼ぶと、一緒に内容を確認する。
『依頼内容
・『七星の遺産』の蛭子影胤&蛭子小比菜ペアからの奪還
・成功報酬:100億円
・なお七星の遺産は名前だけであっても機密レベル5なので情報の取り扱いには注意すること

追記
・なんらかの原因によって即時に敵に七星の遺産が使用される危険がある場合のみ、その破壊を許可する。

天童菊之丞』

……ふむ。
つまりは影胤とやらから七星の遺産を奪い取ってくるだけで100億貰えんのか。
ボロい仕事だなこりゃ……
少なくとも相手は恐らく一般的な(国相手にケンカ出来てるし大体序列は元100番台と言ったところだろうが)民警上がりだろうし、奪うことは難しくない。
何故ならあまねく民警はバラニウム製の装備を持っているため、俺の磁力を使えば武器を奪えるし、何より電気を使う俺ならば方法次第じゃいかに対策をされていても簡単に仕留めることができる便利なものだ。
対人戦という場面において電気より使いやすい攻撃を聞いたことはないしな。
相手が都合よく対俺専用の準備でもしてなきゃ大丈夫だろう。
よし受けた。
俺はティナにアイコンタクトで印鑑を持ってくるように伝える。
多分伝わるだろうな、ティナだし……
うん、予想通り持ってきたぞ。流石だ期待を裏切らねぇ。
「それで、依頼は受けようと思うんだが」

「はい。それではここにサインを……」

聖天子はそう言って紙を裏返し、そこに何故か用意されている欄に名前の記入と印鑑を押すように指示した。
なんでわざわざ裏にそんなもん用意したのかねぇ?
怪しさ満点だぜ。
俺は印鑑を捺すフリをして(インクを付いているように見せかけてスレスレのところで付けていないから捺しても問題ないが) 聖天子の反応を伺うことにした。
これでコイツが何かしら怪しい反応をしなければ問題はないだろう。

それとついでにハンドサインでティナにこの紙に変な所が無いか見てもらっておくか?
いや、そんな時間はないよな。
それに聖天子も何かしらの反応を示していたりはしないし、今回ばかりは……
しかし、いくらなんでもこんだけヤバい案件にまで私情を挟んだりはしないよな。と思って本当にインクを付けて捺印しようとしたところで、事件は発生した。
「……」ガチャッ

ティナぁぁぁぁぁ!?
ナチュラルにライフル取り出しちゃダメだって!
しかも相手は腐りに腐って色々な意味で終わってても最高権力者ではあるんだから、ダメだってば!
突如として怒りの形相でライフル構えたからには何かしら聖天子の方が許し難くえげつない細工をしていたのは分かったから!
「……東京エリアの存亡が掛かっていると言うのに、なんでロクでもない契約書の方にサインさせようとしてるんですか?え?」

「……」

……ん?
ロクでもない契約書って?え?
いやいやいや……これは至って普通だし、書いたのもあの菊之丞だからそんなもんがあるわけは……
そう信じつつも、ひとまず多少特殊な電磁波でスキャンを掛けてみる。

まず最初に見えてきたのは菊之丞が書いた部分……これを抜いて、他の情報だけを取り出す……よし。
トリックの隠し方はかなり上手いが、少なくともそれを見付ける方法が普通じゃありえないようなものだったからか簡単に見付かった。
なになに?
『契約書
里見蓮太郎(以下、甲とする)を、この契約書への双方の捺印を以て聖天子の所有物とする
甲は乙に対して危害を加えてはならない……』
から始まるこの契約書には、このあと32文にも渡って色々と書かれていた。
その内容は要約すれば結婚しろということになるな。結婚しろの中に俺を束縛しまくる部分があるのが戴けなさすぎるが。
まぁ……ここまでくれば答えは簡単だろうな。
「……おい聖天子」

「はい、なんでしょうか」

「今すぐ菊之丞を呼ぼうと思う」

「えっ」

菊之丞(保護者である)を呼ぼうじゃないか。
この東京エリアで唯一この聖天子を抑えられるあの男を……東京エリアオーバー20代部門最強のあの男を。

うん、だからほら……その、ティナ?
今は抑えてくれ。ちょっとそいつを殺しちゃうと外交問題とかが発生して俺たちが困るからやめてくれ。な?
「退いてくださいおにーさん、そいつを殺せないです」

殺しちゃダメなんだってば!



聖天子
実は原作よりスペックが高い。そして美少女力も高い。
その上決して弱くない。
だから聖居から抜け出したり抜け出る口実を用意しては蓮太郎のところに通っている……が、しかしいまだマトモに相手にされたことがない。
なお、原作より公私混同が激しいため、菊之丞さんからは『史上最高の名君と呼んで差し支えないがちょっと……』的な評価を受けている。


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