【IS】 転生したので普通に働こうかと思う (伝説の類人猿)
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一学期
オープニング


息抜きに作りました。


ぱんぱかぱーん

景気よくラッパが鳴るとともにいつの間にか俺は真っ白な空間にいた。

 

「えっ・・・どこ・・・!?」

 

まってまっておかしいよね。

なんで俺こんなところにいるの!?

俺は確かGEOに行く途中だったよね?

おかしくない?

なに、GEO模様替えしたの?

ずいぶんと真っ白になりましたね(白目)。

 

「あー、おめでと」

 

なんかいきなりどこからともなくやつれた爺さんが現れた。

死ぬ寸前かな?誰か救急車呼んでやれよ。

 

「な!?失礼な奴じゃな!わしはこの世を総べる神であるぞ!」

 

あ、違った。これ頭がパーンのやつだわ。

まいったなぁ。せっかくそういうのが無いって聞いて引っ越したのに。

 

「むむむ。こんなに失礼な奴は初めて・・・でもないな」

 

あぁー。と息を吐きながら頭を抱える神?だっけ。何かあったのだろうか。

 

「聞いてくれるか・・・?あとわしは本当に神じゃ。さっきからやっている通り心を読んでいるじゃろう」

 

確かに。なら神なんだろうなぁ。それで何があったのさ?

 

「おぬしは神様転生というものを知っているかの?」

 

ああ、知ってる知ってる。俺TUEEEだろ。

 

「そうそう。その通りじゃ。実は今わしらの世界でそれが流行っておっての、おぬしを呼んだのはその一環なのじゃ」

 

一環ということは他にも・・・。

 

「いる。それとおぬしに謝らなければならないのだが・・・」

 

ひょっとして、死んじゃった?

 

「・・・すまん。わしのせいでこんな目に・・・」

 

それってあんたが転生をさせたかったの?

 

「!?とんでもない!!わしは断固として反対じゃ!!第一な転生なんぞそうそう簡単にできるものではないんじゃ!!それをうちの上司たちはなんもわかっとらん!!口を開けばやれ早く転生させろとばっかり・・・」

 

そこまで言うと長い灰色の髭のお爺さんは頭にてを当てながら深く息を吸った。

 

「・・・とにかくおぬしをここに呼んだのはわしじゃ。本当にすまんかった」

 

どうかこれでとお爺さんは土下座した。

 

「ちょ、ちょっとちょっと。そこまでしなくていいからさ。第一呼んだのはあんたかもしれないけどやれと言ったのはあんたの上司なんだろ。ならあんたには責任はないよ」

 

さすがに土下座をされたは困る。

とりあえずはお爺さんを起き上がらせる。

とにかく心配なのはこれからどうするかだ。

 

「転生ということはどこかに行くんだよな。どこに行くんだ?」

 

「・・・わしを許してくれるのか?」

 

「まぁ、人間いつかは死ぬもんさ。両親が気がかりだけど事故だったと割り切るしかないよ」

 

今更ここで騒いでも生き返るわけでもないし。

 

「そうか、ありがとうな。君は強い人間じゃな」

 

「気にスンナ。これぐらい誰だっていつかはできるさ」

 

「そうか。・・・と、転生の話じゃったな。長くなるから心して聞くのじゃぞ」

 

そう断ってからお爺さんは話し始める。

 

「まず、これからおぬしに行ってもらう世界にはすでに何人かの転生者たちがおる。こいつらがのう・・・。いやそれは置いといてじゃが、おぬしにはいくつかの特典を選んでもらう。ここまでは良いか?」

 

「ちょっとまった。俺はどこの世界に行くんだ」

 

さすがに世紀末はいやだぞ。

 

「まぁ、世紀末よりかはマシじゃぞ。おぬしのいく世界はISの世界じゃ」

 

「ISか・・・」

 

あれって結構な女尊男卑なんだよな。大丈夫かな。

 

「そのあたりはわしがうまくやっておくから安心せい」

 

あっそうなの。なら安心だわ。

 

「それで肝心の特典なのじゃが・・・」

 

他の人たちはどんなのにしたのさ?

 

「聞いてくれるか!?いやはやまったくもう、あ奴らときたら・・・」

 

そこから若干暴走気味に話してくれたのだがなんでもその人たちは全員十代の若者だったらしくて特典の内容も・・・まぁ、わかるだろ。

 

「Isに乗らせろ」だったり「○○の弟にしろ、兄にしろ」だったり「ハーレム作らせろ」だったり「魔法使わせろ」とか。所謂無茶ぶりである。まぁできたらしいが。

 

ちなみに転生者にの中では俺が一番年上だった。

・・・おじさんじゃない・・・はず。

 

「それで、おぬしは何を望むのじゃ?」

 

特典ねぇ。う~ん、何にしよう。

 

「じゃぁ、食べ物の好き嫌いをなくしてほしいのとそれなりに安定した暮らしを保証してほしい」

 

「・・・ほぇ!?そんなのでよいのか!?」

 

「あっ、あとサバイバル技術を身につけさせてくれない?」

 

「サバイバルか・・・山暮らしでもするのか?」

 

「いや、世界一周旅行するときに便利かなって」

 

「・・・」

 

駄目だったかな?ほかの人たちに比べれば簡単な願いだと思うんだけど・・・。

 

「」

 

そんなことを思っていたらお爺さんはがいきなり泣き始めた。

 

「お、おい大丈夫かよ!?」

 

「う・・・ひぐ・・・。すまん、あまりにも普通なのが久々に来たものだからのぉ」

 

「・・・苦労したんだな」

 

この爺さんとは仲良くなれるかもしれない。

 

「ちなみに容姿はどうするかの?」

 

「できればこのままで。親からの贈り物だから・・・」

 

「そうか・・・」

 

どんなにかっこよくなくったって、やっぱり俺はこの太っちょな体のほうが好きなのだ。

まぁイケメンにはなってみたいが・・・。

はら、よく言うだろ。ブスは慣れる。美人は飽きるって。

 

*****

 

「それじゃぁの。これがわしのメールアドレスじゃ」

 

転生するのは本当に大変らしく少し待たなければならなかった。

ちなみにその間に神のお爺さんと仲良くなった俺は電話番号を交換した。

きっといい愚痴友達になるだろう。

 

「じゃ、行ってくるよ」

 

こうして転生者なのにISの適性を持たない俺はISの世界に旅立つのだった。

 




続く?のかな・・・。
まぁ、たまに更新します。
ちなみに転生者の選び方はくじ引きです。

追記
誤字が酷すぎる。
例 生き返る→行き会える
誤字ばっかでごめんなさい


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春のある日

基本こんな感じで短く一話読みきりで進みます。


「あー、やっと着いたぁー」

 

 電車とバスに揺られて一時間。長かった。いや、本当に長かった。

二十五歳になった俺が来ているのはなんとあのIS学園である。

ん?なぜ適性のない俺がIS学園にこれたのかって?

実はな・・・。俺、ここの清掃員になったのだよ。

どうだ驚いたか、俺もだよ・・・。

一体全体何が悲しくて清掃員にならなければならないのか。

これには日本海溝よりは浅くオーストラリアの半分くらいの広さの理由があるんだわ。

あの、俺のメル友の神のお爺さん曰く、

 

「せっかく転生させたんだからIS学園に行かせろよ」

 

っていう風なことを上司の神から言われたんだってさ。

ただ、俺はISの適性も何もないからどうしようかと思い悩んだ結果・・・。

 

「こうなったと」

 

 麗らかな春のある日。桜が散るのを尻目に俺は教室にワックスをかけるのだった。

ちなみにお爺さんからはものすごーく謝られた。まぁ、いいけどさ。

ちなみに俺の両親(IS世界)は全然女尊男卑にならなかった。

きっとあのお爺さんの計らいだろう。ありがたい。

そんなことを考えていると隣の教室から男が来た。

 

「そっち終わったか?」

 

「いんや、まだ」

 

今のは俺の同僚だ。なんでも彼は男ではあるもののISの魅力にひかれどうにかしてISを近くで見れないかと思い考えていたところにこの清掃員の仕事が目に入りこの仕事を受けたのだという。

 

「早くISを見たいよなぁ」

 

「お前はいつもそれだよなぁ」

 

ちなみに思っていたよりかは簡単に仕事をやれることになった。

面接とかも五分ぐらいで終わったし。

そのあたりを考えると案外更識の連中が事前調査とかをしているのかもしれない。

まぁ、それはともかく。

 

「けったいな教室だよなぁ」

 

この学園の教室はどうも好きになれない。

ここの教室は基本的に机は電子机で椅子は学校のパソコン室にあるような奴だ。

おそらく外国人にも配慮してのことだろう。

机には本格的な翻訳装置まで付いているのだ。

 

「おまえはいつもそれだよなぁ」

 

む、そうは言われても何かこう「温かみ」が感じられにくいのだ。

なんか、さっぱりしている?感じがする。

やはり個人的には学校の机と椅子それと床は木製でないと落ち着かない。

そんなことを考えてしまうあたり古い人間なのだろう。

が、しかし

 

「やっぱりこの部屋は少し寂しいんだよなぁ」

 

少なくとも俺はこんなメカメカしい教室で勉強はしたくないなぁ。

そんなことを思っていると、

 

「お前はさ、いつもこの部屋が寂しいって言うけどよ俺にとっちゃ憧れるぞ。なんかこうハイッテックでさ、少なくとも俺の通っていた学校はどれも田舎の学校だったからここがうらやましいよ。ていうかお前はこの教室にいつも文句を言うけどここで何かあったのか?」

 

何かねぇ・・・。

まぁ、俺がこの教室を嫌うのには理由がある。

下らないけど・・・。

 

「電子机じゃ机に落書きができないんだよなぁ・・・」

 

俺がそう言うと同僚はそれは気付かなかったと言って大笑いした。

春、誰もいない教室の中で俺たちはワックスをかけながら気が済むまで笑うのだった。




次は何の話にしようかな・・・。


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番外 彼こそがヒーロー(読み飛ばして結構です)

えっ、何でこんなに評価がついているの!?(驚愕)
コメントありがとうございます。すべて読んでいます。
今回の話は実在する人物とは一切関係がないのを断っておきます。


春というのは出会いと別れの季節だと昔から言われている。

どうやらそれは現代においても変わりないらしい。

今年、世間はとんでもないものと出会うのだった。

 

「男性のIS操縦者発見される!」

 

テレビや新聞、ありとあらゆるところでそのことは話題になった。

まぁ、予想はしていたので俺は驚かないが。

 

「しかも五人!!」

 

訂正、驚いた。

 

*****

 

「え~っと。どこだったかなぁ」

 

いま俺が来ているのは近所のGEOだった。

もっとも俺がGEOに来るのは割と珍しい。いやね、なかなか清掃員って休みが取れないのよ・・・。

この間だって家に帰ったのは・・・まぁいいか。

そんな細かいことを気にしていたら頭皮とか髪の毛とかによくない。

これでも俺は健康には気を付けているつもりだ。

もっとも自分の腹回りを見ると悲しくなってしまうが。

あ、そうそう特典のおかげで生のトマトを食べられるようになりました。それだけ。

 

ともかく今回貴重な休みを使ってまでGEOに来たのには訳がある。

今年の初めに発見されたISの男性操縦者たちだ。

別に見つかるのは構わないんだよ。うん。

でもね世間はちょっと騒ぎすぎだと思うの。

 

特番とかね。もうねテレビはね全部がね操縦者たちの特番をしているんだよ。

そう、全部。この意味わかる?

 

「普通の番組がね・・・無いの・・・」

 

ならネットに逃げればいいだろうって思うでしょ。

ネットもねそのこと一色なのよ・・・。

しかも操縦者たちがイケメン揃い。

あほかっていうぐらいイケメン揃いなんだわ。

 

そのせいでネットはまさしくクリスマス。

女子たちはキャーキャー言って男たちは呪詛を呟く阿鼻叫喚の地獄絵図。

これが修羅か。

 

まぁ、そのせいで俺は暇なんだわ。

漫画とかも家にあるのは全部読んじゃったし。

というわけでDVDでも借りようかと思ったわけ。

 

「なに借りようかなぁ」

 

アニメか洋画か邦画・・・はないな。却下。ダウト。

邦画なんて無かったんだ(錯乱)

そんなこんなで店内をぶらぶらしているといつの間にか特撮のコーナーに来ていた。

 

「うわっ、懐かしいなぁこれ。こっちにもあったのか」

 

その中でも俺は一つの作品に目が入った。

 

「ウルトラマンか・・・」

 

この作品には思い出がある。

 

*****

 

あれは俺が転生する前のことだった。

ちょうど七歳くらいかな。その頃俺は特撮にはまっていたんだわ。

悪い怪人や怪獣をやっつけるヒーロー。

その姿が当時の俺にはものすごくかっこよく見えたんだ。

 

で、俺はそれを真似したんだよ。

要はごっこ遊びだな。

でもそういうのってヒーローだけだと成り立たないだろ。

ヒーローには必ず悪役が必要だったんだ。

そしてその役だったのがヒロちゃんっていう子だったんだ。

 

ヒロちゃんはその年の子供にしては小さい体つきのやつだったんだ。

だからよく虐められた。

その度にヒロちゃんは泣いた。

ヒロちゃんの家と隣同士だった俺は自然と仲良くなっていったんだ。

で、一緒に遊ぶようになったんだ。

 

一緒に遊んでいたある日俺は前々から考えていたウルトラマンごっこをやろうって言ったんだ。

ヒロちゃんはちょっと考えてから「うん」ってちっちゃな声で答えたんだわ。

そこで問題になるのはどっちが怪獣になるのかだった。

ウルトラマンごっこの時ヒロちゃんはいつも怪獣役をかってでた。

そしてバカな俺はその時のヒロちゃんの顔も見ずにただただウルトラマンになれると喜んでいた。

 

その時のヒロちゃんの顔はすこし悲しそうだった。

 

そんなこんなである日俺はヒロちゃん以外のやつとウルトラマンごっこをする時があったんだ

その時俺は初めて怪獣の役をやった。

・・・酷かったよ。ウルトラマン役のやつらはみんなで一斉に怪獣の俺をたたき始めたんだ。

こっちが何度「やめて」って言ってもやめなかったんだ。

その日俺は初めて怪獣の気持ちを知ったんだ。

みんなに殴られながら俺は心の中でヒロちゃんに謝っていた。

 

ようやくごっこ遊びが終わりウルトラマン役のやつらは帰って行った。

残された俺は体中ボロボロだったけどヒロちゃんの家を目指した。

謝りたかったんだ。「今までごめん」って。

そしてどうしてもヒロちゃんにウルトラマンの役をさせたかったんだ。

そうしなきゃ俺の気が済まなかった。

 

ヒロちゃんはいた。その日もいつものように家に居たんだ。

ヒロちゃんはボロボロの俺を見てびっくりしていたよ。「なにがあったの!?」って聞いてきた。

でも俺はそれを無視してヒロちゃんを強引に外に連れ出した。目的地はいつもごっこ遊びをしていた広場だ。

 

「ヒロちゃん・・・今までごめん」

 

俺はヒロちゃんに広場で謝った。今日怪獣の役をしたことや初めてそのつらさを分かったことなんか。

最後は泣きじゃくりながら言葉にならない言葉で謝った。

でも、

 

「ありがとう」

 

ヒロちゃんはどうしようもないくらいバカな俺を許したのだった。

結局ヒロちゃんは最後までウルトラマンの役をやらなかった。

 

最初に行ったように春というのは出会いと別れの季節である。

全国のちびっこどもを熱中させたウルトラマンも例外ではない。

運命の日。一九六七年四月九日、ついに無敵のウルトラマンがある怪獣に倒されるのだった。

その怪獣の名はゼットン。宇宙恐竜ゼットンだったのだ。

そしてそのウルトラマンの後を追うようにヒロちゃんも引っ越していくのだった。

 

これはヒロちゃんが引っ越す前に教えてくれたことなのだが、ヒロちゃんのお父さんはスーツアクターだったらしい。それも怪獣役の。

ヒロちゃんは怪獣の中身が自分のお父さんであることを知っていたのだった。

 

「僕ねお父さんに憧れているんだ」

 

曰く、スーツアクターの仕事はとても危険なことなのだけれども子供たちの笑顔を見れるのならとヒロちゃんのお父さんは積極的にそういう仕事を引き受けていったらしい。

 

「僕ね一度お父さんの仕事を見に行ったんだ。すごかったよ」

 

何度やっても撮り直し。おまけにスーツは熱いうえに臭くて体力も使う。

火薬や爆竹なんかもたくさん使ってとても危なくきつい仕事なのだが、

 

「僕のお父さんは誰よりも輝いていた!」

 

つらいはずなのに、きついはずなのに、自分の姿がテレビに映ることなんて全くないのに、ヒロちゃんのお父さんはスタジオの誰よりも笑顔で一生懸命だったという。

だから、

 

「そんなお父さんがやっている怪獣を憎めるわけないんだよ」

 

そう言ったヒロちゃんの顔は眩しいぐらい輝いていた。

それを見て俺は痛感した。ヒロちゃんこそ真の正義のヒーローだったのだ。

 

*****

 

「きっとあのとき悲しそうな顔をしたのは友達の俺も怪獣よりウルトラマンのほうを選んだからだろうな」

 

今ならヒロちゃんの気持ちが想像できる。

きっとあの時ヒロちゃんはどこか心の奥で俺が怪獣を選んでくれるんじゃないかと期待したのではないだろうか。

 

「・・・悪かったなヒロ。やっぱお前はヒーローだわ」

 

何を持ってヒーローと言うのかは分からない。

でも、間違いなくヒロちゃんはヒーローだったと思う。

だって

 

「ヒロは俺に大事なことを教えてくれたから」

 

”人を見かけで判断するな”すごく簡単なことだけど難しいこと。

それの大切さをヒロちゃんは教えてくれたのだから。

 

「帰るか・・・」

 

ヒロちゃんが最後にやった怪獣はゼットンだった。

そう、最後の最後にヒロちゃんはウルトラマンに勝ったのだった。

ヒロちゃんとの出会いから数十年、果たして俺は真のヒーローになれたのだろうか。

ヒロちゃんのような人物に近ずけたのだろうか。

 

まだ寒さが幾分か残る春。俺はそんなことを思いながらフルハウスのDVDを片手に家に帰るのだった。

 




フ ル ハ ウ ス
フルハウスでお話を書いてみました。
今回の話は主人公の過去の話でした。


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迷宮学園

お気に入りの数を見てうれしくて泣いてしまいました類人猿です。
応援アリガトウー!(チャー研)
最近寒いので皆さん風邪をひかないように気を付けてくださいね。


IS学園に実際に行ってみて気付いたことがある。

この学園かなり変わっている。

 

第一に学園があるのは巨大な島の上でここに来るには船かモノレールぐらいしかない。

一応道路もあるのだがそこを使っているのは配達業者ぐらいだろう。

第二に非常に個性的な建物たちである。

 

実を言うと俺の原作知識はネット小説のものでしかなく原作もアニメも見ていない。

そのため俺の原作知識にはかなりの偏りがある。

そのためここで個性的なのは島の中央にあるというタワーぐらいだろうと思っていたのだが・・・。

 

「なんだこれは。たまげたなぁ」

 

目の前にあるのは・・・おそらく二次創作でよくアリーナと言われているところなのだろう。

だが、

 

「アリーナっていうぐらいだから野球ドームみたいな所かと思っていたんだけどなぁ・・・」

 

目の前にあるアリーナは・・・その、非常に独創的です。

 

「どっからどう見てもサイヤ人の肩当やん・・・」

 

完全な一致というのはこのことを言うのだろう。アリーナと呼ばれているこの建物はその形から色合いまですべてがサイヤ人の肩当にそっくりだった。

どんなISの二次創作でもアリーナの見た目を書かれることはなかったのだがなるほどこんな見た目なら誰だって書かないだろう。

というかふつうこんな形だなんて思わないだろう。

 

「やっぱけったいな所だわ。こんな所で青春を過ごすなんてかわいそうに・・・」

 

思わず同情の気持ちが出てきてしまう。

まぁ生徒たちの気持ちがどうなのかは知らないが少なくとも俺はこんなところで勉強したくはない。

だってこんなの絶対に飲み会の時にネタにされるし・・・。

飲み会を侮ることなかれ。あれは一種の拷問なのだ。

一度でもネタになりそうなことが聞き出されてしまえば最後、酔いつぶれるまでおちょくられ続けるのだ。

人生は過酷である。

 

「というかほんとにどんな作りをしているんだここは・・・」

 

最初に言ったようにここは非常に変わっている場所である。

目の前にあるサイヤ人や中央のグネグネまがった塔もそうなのだがそれ以外もなかなかにおかしい。

普通ビルとかは平地に建てるものだと思うのだが・・・。

なんでか知らんがここでは山の斜面に建っていたりする。

しかも建物は、特に島なら港に集中するものなのだが全然そんなことなんてない。

島のあちこちに好き勝手にばらばらになって立っている。お前らもうちょっと統一しようぜ。

第一こんなにばらばらに立っていられては道が分からなくなってしまうじゃないか。

つまりだな何が言いたいのかというと、

 

「ここどこ・・・?」

 

迷った。

足りない分のワックスを取りに来たはずなのにいつの間にかアリーナに来ちゃってるし・・・。

さてはてどうしたものか・・・。

そう考えていると幸運なことにアリーナの入り口で突っ立っているISの登場人物の一人、山田先生って言ったかな、その人を見つけた。

これは運がいい。なぜなら彼女は物語の登場人物の一人である。

きっと彼女ならば学園のことを知り尽くしているに違いない。

そう思って声を掛けるために歩き出そうとしたのだが、彼女のほうからこちらにやってきた。

ひょっとして俺が迷っているって連絡を受けていたのだろうか、だとしたらありがたい。

ようやく坂道とおさらばできる。

いやね、ここ坂が多いんだわ。

太っちょの私にはイヤーきついっす。

 

こちらへやって来た山田さんは少し慌てていた。

え、ひょっとして俺怒られちゃう?まぁ、迷っちゃったわけだししょうがないか。

若干息を切らしながら彼女は言った。

 

「あの・・・清掃員の方ですよね?すみません迷ってしまいまして。事務室の場所・・・わかりますか?」

 

オーマイゴット。神よ我を助けたまえ。

なんとなくノリでそう思った瞬間あの神のお爺さんからメールが来た。

 

『ファイト!(^^)』

 

決めた。後であの爺さんぶん殴る。

 

「あの・・・」

 

駄目でしょうかという顔でこちらを見てくる山田さん。そこで俺はこう言った。

 

「ファイト!(^^)」

 

この後二人で仲良く学園内で遭難して三日後に救出されるのはまた別のお話。

まさかここでサバイバル術を使うとは思わなかったよ・・・。

ちなみに山田さんにサバイバル術を褒められた。うれしい。

 

そんなこんなで山田さんと二人で仲良く職員室で怒られているのを傍らに窓の外では桜の花が風に乗ってキラキラと舞っていた。

春、入学式までもうすぐである。




IS学園の見た目が予想の斜め上を言っていたので書きました。
あとオータムさんってめっちゃ美人やないですか!誰だおばさんとか言ったやつ。
息抜きの作品なので皆さん緩い感じで見てくださいね・・・。


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意外な一面

調子がいいのでもう一本。
無理なく更新したいな・・・。


毎度まいどどこかしらの場所を掃除するたびにこの学園の異常性が分かってくる。

たとえばトイレ。

IS学園は世界各国の技術の粋を集めて作られた場所で当然のことながらその技術はどれも最先端のものばかりである。

その法則はたとえトイレであっても例外ではない。

 

なんとこの学園のトイレ、非常時には水飲み場になるのだ!

いや誰が飲むんだよ!

絶対に誰も飲まないから。

 

そう思って山田さんに聞いてみたのだが、

 

「さすがにトイレの水は誰も飲みたくないですよね~」

 

「えっそうですか?非常時ならばみんな飲むと思うんですけど・・・」

 

うん。多分きっとその時の俺の目はかわいそうなものを見ている目だったのだろう。

いや、さすがにそれはないよ山田さん・・・。

ちなみに山田さんとは学園で一緒に遭難して以来仲良くなった。

仲間意識ってやつだろう。俺も山田さんもともに地獄のような説教という名の戦場を潜り抜けたいわば戦友なのだ。

 

まぁ、本当にみんながトイレの水を飲めるのかは横においとくとしてだこのように何かしらこの学園は常識とかけ離れているところがある。

その中でも顕著なものが髪の色だろう。

今回は髪についてのお話だ。

 

*****

 

あれはつい先日のことだった。

実は昨日入学式が行われたのである。

 

普段はあまり表に出てこない俺たち清掃員もこの時ばかりは後ろのほうだが入学式に出席する。その理由としてはまぁ、顔合わせだ。

あなたたちの学校がきれいなのはこの人たちのおかげなんですよ~だから感謝してくださいね~というのを暗に伝えるためだ。

こうでもしないとそこらじゅうを考えなしに汚されまくってたまったもんじゃないのだ。

まったく、清掃員はつらいよ。給料安いし・・・。

 

ちなみに清掃員の中に男がいるのは生徒に自分は女子であるということを自覚させるためらしい。こうすることによって完全な女子高化を止めれるんだとか。

 

女子高は・・・まぁ男どもの想像とはかけ離れている。一言で表すと「世紀末」。

言っとくけどこの話又聞きだからね?俺の考えじゃないよ。

 

でだ、今年は女子しかいない学園に男子が入ったことがかなり騒がれていたが俺にとってはそんなのは些細な問題でしかない。

だって男が来ることを原作知識で知っていたし・・・。

それよりもアンビリーバボーなことはここの生徒の髪の色である。

 

ざっと見渡しただけでも赤に緑に青に黄色に・・・。

 

「色の玉手箱やぁ~」

 

・・・おっといかん。誰か別の人間になった気がする。

びしりと頬を叩いて気持ちを正す。

とにかくこの学園の生徒や先生はおよそ人間らしくない髪の色をしている。

いや、まぁ黄色は普通に外国に行けばいるけどさ。

というか緑とか青の色をしている人なんて初めて見た。

あれは地毛なのだろうか。

 

「これが普通の高校だったらまず間違いなく退学だな」

 

まぁ、地毛だったら仕方がないよね。

一応ここって異世界なんだから髪の色が違うことぐらいナンクルナイサー。

でも俺は知っている。

この中に(少なくとも)一人髪の色を偽っている奴がいることを!

 

ん?誰かって?

実はな、生徒会長の更識楯無なんだよ。

入学式が始まる二日前に生徒会室の前の廊下を掃除していたんだけどさ、その時生徒会室のドアが少しあいていたんだわ。で、そこから声が少し聞こえたんだ。

その時の声が、

 

「はぁ、みんな私が生徒会長だということを知らないのよね・・・。なんでだろう私影が薄いのかな・・・。イメチェンしてみようか・・・な・・・?」

 

まずは髪の色かしらとか言いながら青色のカツラを取り出すのを見て俺は

 

『現実に負けるなよ』

 

と心の中で応援しながらこっそりとドアを閉めるのであった。

 

どんなに完璧に見える人でも悩みはあったりするものである。

そんなことを考えながら俺は新入生の前でおもいっきりはっちゃけている生徒会長の姿をとそれに着いていけなくて固まっている新入生の様子を眺めているのだった。

 




果たして生徒会長が報われる日は来るのだろうか。いや来ない(反語)
会長さんはわたわたしているのが似合うと思う。
IS学園って学園自体もそうですけど髪の色もなかなかですよね。

誤字訂正 盾無→楯無
何やってんだ私は・・・。継承者さん御指摘ありがとうございます。


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春の一日

毛虫って気持ち悪いですよね。


騒がしい入学式も終わりいよいよ新学期が始まったこの頃。

新学期が始まったのでようやく生徒たちもおとなしくなるかと思ったのだがそんなことはなかったようである。

むしろ新生活に余裕が出てきたのか入学式の時よりも騒がしくなっている。

もっとも騒がしくなっているのは今年入ってきた男性操縦者たちが原因なのだが。

 

しかしながら騒がしくなっているのは人間だけではない。

動物や昆虫たちも春の到来に合わせて騒がしく夏に向けた準備を始めている。

準備をするのは構わないのだがどうせやるなら人のいないところでやってくれと思ってしまうのは人のサガである。

 

「なんでこんなにいるのかねぇ・・・」

 

日本の花と言ったら何を思い浮かべるだろうか。

おそらく大多数の人が菊や桜というだろう。

その中でも特に庶民になじみ深いのは桜だろう。

春と言ったら花見である。

桜の花びらが散っていくのを眺めながらお弁当や酒を飲む。

文字にすればただそれだけなのだがその時の記憶はいつまでたっても色あせることはない。

友と共に飲み食いした記憶は長い年月を経て思い出に代わるのだ。

”あの時は楽しかったなぁ”なんていう風に思い返せればいいのだが残念ながら俺の思い出はそうはいかない。どう頑張って美化しようとしても”毛虫がやばかったなぁ”という風に思い返されてしまうはずだ。それぐらい、

 

「毛虫が多すぎる」

 

おそらく花見という記憶のほうが強いので思い出すのに時間がかかるとは思うが桜と聞いて思い出すのはまず一番に花見が来て二番目に毛虫が来るのではないだろうか。

 

毛虫というのは基本的に蝶の幼虫と同じく葉っぱを食べて成長する。

これは蝶と蛾の祖先が同じだったことが関係している。

実は蝶というのは夜行性の蛾が昼間にも活動できるように進化したものなのだ。

そのため蝶と蛾の共通点は多い。

外国なんかではいちいち区別はせずひとくくりにバタフライ(英語)やパピヨン(フランス語)などと呼ぶ。

蝶や蛾などといちいち区別して呼んでいるのは実は日本人だけなのだ。

だがどっからどう見てもこいつらが同じだとは見えない。

 

ただ、細かく見れば違いがある。

たとえば幼虫期の食事だ。

アゲハチョウやモンシロチョウは金柑の葉やキャベツの葉を好んで食べるが蛾の幼虫は若い桜の葉などを食べる。

蛾の幼虫が増える時期は六月から八月の間だ。

ちょうど桜の葉が生い茂っているときである。

花が散った後の桜の木に毛虫がいるのはこのような理由なのだ。

 

しかも困ったことに毛虫の中には毒をもつ者がいる。

見た目のインパクトもさることながらこいつらは毒まで持っているのである。

おまけに今年は非常に暖かい春で例年より早く桜の花が散ってしまったためそれに合わせて毛虫も早めに出てきているのだ。

 

「今年はドクガもいるからねぇ」

 

今しゃべったのはこの学園の用務員をしている(おそらく最高齢者の)轡木(くつわぎ)さんだ。

この人はこの学園のこまごまなことを扱っている人で仕事も多い。

がしかし、身体的なこともあってこうしてしばしば俺たち清掃員や教師などが手伝だっている。

 

「悪いねぇこんなことにつき合わせちゃって」

 

「いえいえ、轡木さん一人では大変でしょうし何より駆除しないと桜の木がダメになって桜の花が見れなくなってしまいますしね」

 

「そう言ってくれると私の気持ちも晴れるよ」

 

桜は日本人の心だからねぇなどと言いながら轡木さんは毛虫をつまむ。

本当は殺虫剤でも撒きたいのだが撒きすぎると木が枯れてしまう上に毛虫の中には死んだ後も毒が残る者もいるのだ。

殺虫スプレーのせいでそんな死骸が広がってしまっては生徒が危ない。

そのためこうして一匹一匹割り箸でつまんで取っているのだ。

 

「特にこの木は弱っちゃっているからねぇ」

 

今毛虫を取っているこの木は日当たりの悪い校舎裏にあるためにあまり元気がない。

しかしながら毎年非常にきれいな花を咲かせておりそれを楽しみにする者も少なくない。

かくいう俺もその一人なのだ。

だから時たまこのようにして有志の人たちが毛虫の駆除をしているのだがいつの間にか毛虫が復活している。

 

「多いっすね・・・」

 

いくらとっても終わらない。取れば取るほど出てきている気がする。

たたけば叩くほど出てくるってホコリかお前らは。

しかしながらどんなものにも終わりはあるもので・・・。

 

「あぁ~。ようやく終わった・・・」

 

時間にしておよそ四十分。

確認しながらの作業だったので時間がかかってしまった。

 

「・・・学園にはまだまだたくさんの木がありますからね?」

 

「あっ・・・」

 

流石は我らがIS学園。ヨッ日本一!(白目)

果たして俺は後何匹の毛虫をつまめばいいのだろうか。

すっかりあったかくなった日差しの下、俺はそんなことを考えながら轡木さんと一緒に毛虫を取るのだった。




轡木さんの画像を検索したんですけど出てこなかった・・・。
いったいいつになったらほかの転生者を出せるのだろうかと思うこの頃。
なるべく早めに出せるよう頑張ります・・・。
皆さんも毛虫やムカデなどの毒虫には気を付けてくださいね。


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番外 神様の受難

他の転生者の設定が全出来上がってない・・・。
誰か助けて(切実)

タイトル付け忘れていた(アホ)


こう見えても神様というのは大変だと思う今日この頃。

神様といえどもやはり人間と同じように階級があるし能力にも差がある。

しかも上司が部下に無茶ぶりしてくるところまでそっくりだ。

わしとしてはここも人間界と同じように厚生労働省みたいなところが欲しいと思う。(切実)

そうしたらパワハラなんかで訴えることができるのに・・・。

まぁ、そんなことしたら再就職するのにかなり時間をかけてしまうしこの年で再就職はきつい。

最近はどこもかわいい神を優遇する節がある。

こんな髭の長い古典的な神様など今では”古い”と一括されて見向きもされないのだ。

 

これも時代なのじゃろうなぁ・・・。

 

これでも神様の中では珍しい転生能力が扱えるのじゃが・・・。

意外と珍しいんじゃぞ。この能力。

大体十一人に一人くらい。えっ、微妙じゃと!?

いやしかし、この能力のおかげで食っていけているのは確かなんじゃ。

もっともそのせいで今のような状態になっているのじゃが・・・。

 

「はっ?転生ですと・・・?」

 

「そう、転生。やって、早く」

 

何を言っているんじゃこの上司(あほ)は。

転生じゃと?その意味を分かって言うておるのか。

そもそも転生というのは難しいうえに大変なのじゃ。

 

転生というのは本来の”輪廻”から外れた行為を魂に行わせるのだ。

そのため転生というのは魂を輪廻から取り出すのに近い。

では、魂の抜けた後はどうなるのか?

魂の抜けた部分を輪廻は他のもので補おうとして塞いでしまう。

そのため一度輪廻から外れてしまった魂は二度と元の輪廻に戻すことはできないのだ。

だからこそ行う上には多大な責任が発生するし取り出した魂の一生を保証する義務があるのだ。

なのでおいそれとしていいようなものではない。

なのに、

 

「う~ん、十人ぐらいでよろしく」

 

「じゅ、十人ですとぉぉぉ!?」

 

バカか!?バカなのか!?一人でも大変なのにそれを十人もだと!?

この上司(ばか)はものを分かって言っておるのか!?

 

「いやあ、最近人間界のほうで転生小説というのが流行っているって聞いてさ。それを上位神(みんな)で見てみたんだよ。そしたらそれがおもしろくってさ。で、せっかくだし本物の神様である俺たちで本当に転生をさせてみようって話になったんだよ」

 

「そ、それで何故に十人なのでしょうか・・・」

 

「いやね、この小説のパターンがかなりあってね。とりあえずISの世界にすることは決まったんだけどどんな転生者にするかでみんなもめちゃってね。だから間を取っていっそのこと全部のパターンをやってみようじゃんってなったわけさ」

 

どのあたりが間を取ったのかさっぱりわからない。

正直言って十人も転生なんてさせたくないししたくない。

魂の人生を狂わせることに対する罪悪感もあるが主に身体的な面できついのだ。

 

人間ならもう年金受給者なんじゃよなぁ・・・。

 

でも人間界じゃないから年金なんて制度存在しない。

よってこの年になっても体にムチ打って働くしかないのだ。

早く人間になりたぁ~い!

 

「なってもいいけどまずは転生させてからね」

 

「本気なのですか・・・」

 

「無理なら七、八人ぐらいでいいよぉ。最低でも五人以上ね。あ、あと転生者のほうはこっちで用意しとくから」

 

出来れば全員転生してあげてね。でないとみんなそのまま消えちゃうから。

と言って上司は去って行った。

 

て、あれ?最後にとんでもないこと言って帰ったような気がするんじゃが。

 

気のせいであってほしいと思いながら全員転生させてやらなければと考え頭を抱えるお爺さんであった。

 

なお、上位神たちの用意した転生者たちがろくでもない奴らばかりでお爺さんがまた頭を抱えてしまうのは別のお話。

 

「せめて、最後に!最後にはおとなしい奴をぉ!!」

 

最後に出てきた転生者の俺を見て爺さんがうれし泣きをしてしまったのはまた別のお話。

 

 

 




4Kのクリアな映像よりもブラウン管の暖かい映像のほうが好きな類人猿です。
アリス&ありすさん六話の誤字の指摘ありがとうございました。
なんやねん・・・気が枯れるって。
これからも誤字や脱字があると思うので注意して読んでくださいね。
ちなみに転生者は合計で七人か八人ぐらいにするつもりです。(多分)


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春ー海辺にて

今日「海賊と呼ばれた男」を見に行きました。
国岡商店に石油を売ったイランの政権のその後に泣いてしまいました。
モデルは日章丸事件なんですね。

追記 みなさん誤字報告ありがとうございました。
   本当に私は何をやっているのやら・・・。


釣りというのは非常に実用的な趣味だと思う。

釣った魚は晩のおかずになるし釣ってる間はいい気分転換になる。

まさしく最高の趣味に入るだろう。

 

そんなことを考えながら俺はぼーっと釣り糸を垂らしていた。

IS学園の立地は以前話しただろうが島の上に建っている。

また意外と手つかずの自然も多くて魚を含めた生き物たちがかなりいる。

例の毛虫もその中の一つだろうな・・・。

 

まぁ、それは置いといてこの学園にはあちこちにいい釣り場があるのだ。

しかもIS学園なんてまず普通の人なんて来ないからまったく荒らされていない。

 

まさか糸を垂らして一秒後にかかるとは思わなんだな。

まったく人が荒らしに来なかったのかさっきから入れ食い状態だ。

すでに横にある魚入れの中には立派なカサゴが六匹も入っていた。

立派すぎて魚入れの中から尻尾がはみ出しているくらいだ。

 

「どうですかな、釣れましたか?」

 

「あ、轡木さん。えぇもうこの通りですよ」

 

人が荒らしに来ていないといってもやはり釣れる場所とつれない場所はある。

いま俺が来ている場所は轡木さんから教えてもらった場所だ。

なんでもこの間の毛虫取りのお礼らしい。

 

「でも本当によかったんですかこんないい場所教えちゃって?」

 

「構いませんよ。それに今までここで釣りをたしなんできたのは私だけでしたし」

 

む、それは何とももったいない。

素人目だがそれでも一目でわかるくらいここの魚は良い。

どんな魚もしっかりとした筋肉がついているし明らかに市販の魚と比べても色がいい。

多分築地でもなかなか見かけないのではないだろうか。

こんなにいいものがすぐ近くにあるのになんで誰も釣ろうとしないのだろうか」。

 

「みなさんお忙しいようですし、何より学園には学食がありますから」

 

「なんともまぁ・・・もったいない」

 

ちなみに今の俺は本当なら他のみなと同じく仕事をしていなければならないのだが毛虫取りの疲れを取ってこいとかで今日一日休みとなった。

そんな大げさなって思うだろ?

でもな俺と轡木さんのたった二人だけで学園中の桜の木の毛虫取りをやったんだぜ。

いやね、毛虫取りってコツをつかめば簡単なのよ。

最後のほうは桜の木一本に対して十分ぐらいのペースで毛虫取りをやって言ったし。

ちなみに轡木さんに「君には才能が有るね!用務員にならないかい?」って言われた。

 

「学食と言えばそろそろお昼にしたらどうかね?」

 

「あっ、もうそんな時間ですか」

 

魚というのは朝と夕方が最も釣れる。

そのため今日は朝早めからここにきて釣っていたのだがほとんど意味はなかった。

だって時間に関係なく釣れるんだもの。

釣れすぎたので今魚入れに入っている六匹以外はすべて海に帰した。

欲張りすぎるのはいかんしね。

キャッチ&リリースの精神は大事。

 

「じゃぁ、釣れたてでもいただきますか」

 

「そう言うと思って、ほら片栗粉と油と鍋を持ってきたよ」

 

「お!じゃぁから揚げと刺身にしますか!!」

 

これはありがたい。

カサゴは刺身もうまいのだが俺としてはから揚げのほうがどちらかと言えば好きなのだ。

しかも普通の魚と違ってカサゴはじっくりと揚げれば骨まで無駄なく食べることができてごみを出しにくいのだ。

おまけに分かっているのか轡木さんの持ってきた鍋ならこの立派なカサゴだってから揚げにできる。

 

「ここのカサゴは大きいですからねぇ。このくらいの鍋なら入るでしょ」

 

「さすが轡木さん。では俺はとりあえず火のほうを起こしておきますね」

 

そういって俺はてきぱきと持っていたマッチを使って火を起こす。

 

「山田君の言うとおり君はほんとに便利だねぇ・・・」

 

若干呆れながら轡木さんは言った。

あまり表には出てこないが俺の特典はサバイバル技術と食べ物の好き嫌いをなくすというものである。

その特典のおかげか普段からサバイバル道具を持つようになってしまった。

あのお爺さん曰く核戦争後の世界でも生きていけるとのこと。

何そのチート。

あ、いや特典ってチートだったな。忘れてたわ。

 

「じゃあ、ここで二匹食べて残りは用務員室で夜に煮つけと塩焼きにしていただきますか」

 

「そうだねぇ。せっかくだしまた泊まっていくかい?」

 

「お、じゃあ今日は飲みますか!」

 

毛虫取り以来俺は轡木さんと仲良くなりちょくちょく用務員室で飲むことがった。

IS学園って意外とそのあたりうるさいんだわ。

別に飲むなとは言っていないんだけど周り(学生)から白い目で見られるから落ち着いて飲めないんだよね・・・。

そのためここで心置きなく飲めるところは中心部からちょっと離れたところにある用務員室ぐらいしかない。

 

しかも轡木さんの持ってるお酒のうまいことうまいこと。

いやぁあれを言葉にすることは不可能だね。

しかも最新技術で作られた超強力酔い覚ましがあるからアフターケアも万全!

夜が楽しみだ。

 

「ハハハ。今日の夜もそうですがまずは今日の昼ですよ」

 

期待していますからね。と言いながら轡木さんははっはっはと笑った。

ちなみに俺の料理スキルはかなり高い。これもサバイバル技術の一つらしい。

ともかくまずはから揚げから作らねば!

今日は風も穏やかだし外で料理をするにはぴったりだ。

 

そんなことを考えながら俺は轡木さんと共に下準備をするのだった。

ちなみにどこから嗅ぎつけたのか夜の酒盛りに山田さんと織斑さんが飛び入り参加してきたのは別のお話。

俺の煮つけを織斑さんにすべて食べられるのも別のお話。畜生・・・。

 

 

 




カサゴは煮つけも好きなんですけどからげも好きです。
そして気づいたらお気に入りの数が百五十を超えているという・・・(@_@;)
みなさんありがとうございます。こんな拙い文章ですがこれからも読んでいただければ幸いです。


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五人だけの秘密

まさかのお気に入り数二百!?
皆様いつもお読みいただき本当にありがとうございます。
なお今回のお話はいつもより長いのでご注意ください。


「秘密基地・・・ですか?」

 

「ええそうなんです。駄目でしょうか?」

 

ここは最近俺の中でなじみの場所になりつつある用務員室だ。

今ここにいるのは俺と以前共にワックスがけをした同僚とここの主である轡木さんの三人だ。

 

「それで・・・なぜ秘密基地なのでしょうかな?」

 

そう轡木さんが言う。

俺たちが秘密基地を作ろうと思い立ったのは今日の朝までさかのぼる。

 

*****

 

「こんちわー」

 

清掃員の朝はそれなりに早い。これは清掃道具のチェックをしなければならないからだ。

だが、清掃道具のチェックとはいっても簡単に見るだけなのですぐに終わってしまう。

どちらかというと朝早めに集まるようになっているのは清掃場所の順路を頭の中に叩き込むためだったりする。

時間は朝の六時。仕事が始まる一時間前だ。

 

「えぇと今日の清掃場所は・・・ここか」

 

来てさっそく俺は軽く掃除道具の確認をした後に清掃場所の順路を紙に書き写し始める。

本当なら紙に書かないで頭の中に叩き込んでおくのだけれど俺は覚えきれないのでこうして書き写している。

見栄なんていらんとです。偉い人にはそれがわからんとです。

実際清掃場所は広範囲にわたるので何かに順路を書き写していないといちいち順路の書かれた場所まで戻ってこなければいけなく面倒だったりする。

 

「よお調子はどうよ」

 

俺がいつものように清掃場所を紙に書いているとIS好きの同僚が話しかけてきた。

 

「まずまずってとこ。今日の清掃場所は前に行ったところばっかだから助かったよ。」

 

「へぇ運がいいな。俺なんて悲惨だぞ。今日はあのへんな形の塔をしなけりゃいけないし・・・」

 

「何ともまた・・・。あれって掃除しにくいよな」

 

島の中央にあるうねうねまがった塔はその形のせいですごく掃除しにくいのだ。

 

「まぁあきらめてるよ。それよりもさ、これ見てみろよ」

 

そういいながら同僚は俺にスマホを近づけてくる。

 

「なんだいったい・・・大人の秘密基地?」

 

「そそ、ガキの頃に作ったやつとは違ってしっかりとした本格的な作りの秘密基地なんだよ」

 

みればスマホの画面にはツリーハウスのようなものが映っている。

なるほど壁や屋根などは段ボールではなく丸太でできているし窓とベランダまで付いている。

 

「確かに本格的だな。でもこれがどうかしたのか?」

 

確かにすごいがそれまでだ。

そもそも日本ではこんな立派なのは作れない。

日本の国土のほとんどは個人のものか国のものかのどっちかだ。

勝手に作っても撤去されてしまうのがおちである。

 

「わかってねぇな。作るんだよこいつを!!」

 

と言いながら顔をキラキラさせている同僚とは別に俺は

 

「は?」

 

とぽかんとした顔で言っていた。

 

*****

 

「なるほど・・・確かにこの場所はいかなる国も介入できない場所とはうたっておりますが・・・」

 

IS学園というはどこの国にも属さない場所として設立された。

これはISという今までにないまったく未知の存在を研究するにあたって国家という縛りをなくすためである。

国家を超えた研究を行う場所、それがここIS学園なのである。

で、どこにも所属しないというところに同僚(こいつ)は目を付けたんだと。

”ここでなら小学生どもが一度は考えたであろう夢である秘密基地を建てられる!!”て言っていた。あほか。

作ったとしても国じゃなくて多分学園側が撤去するだけだとと思う。

同僚にそう伝えたんだがやってみなくちゃわからない!と言って無理やり用務員室まで連れてこられた。

俺まだ順路を紙に書いてる途中なのに・・・。

 

「駄目ですか・・・?」

 

心配そうに同僚は轡木さんに尋ねる。

いや、この人に聞いても・・・そういやこの人の権力って結構強いって設定だったかな。

ならあながちこの人に聞いたのは間違いではないのかも。

 

「うーん・・・」

 

しばし悩みながら轡木さんは口を開いた。

 

「邪魔にならないところならいいですよ」

 

えっマジで!?

 

*****

 

さてはてまさかのOKが出てから数日。とうとう休日がやって来た。

ちなみに休日は最低でも一週間に一日は保証されている。

 

必要な材料を買って同僚はこの日を今か今かと待っていた。

子供かお前は。あっでも案外当たりかも。

ISとか秘密基地とかいうあたりが特に。

 

そしてナチュラルにメンバーとして数えられていた俺。

今日は家でゆっくりしたかったのに・・・。

なお材料を含めたその他もろもろはすべて轡木さんがスポンサーとなって払ってくれた。

本人曰くどうせやるなら本格的にとのこと。

多分この人がいなかったら秘密基地は作れなかったと思う。

だってお金が圧倒的に足りないし。

ちなみに秘密基地完成後は私にも使わせてほしいとのこと。

同僚は”もちろんです!!”と元気よく言っていた。

そんなこと言って作れなかったらどうするんだ。第一俺たち二人じゃ何日かかるかわからんぞ。

 

以前に秘密基地の設計図とか言って見せられたのだがそこに書かれていたのはどう見てもログハウス。

こりゃ無理だなって思っていたんだが・・・。

 

「ふむ、ログハウスを作るのか。この大きさなら五人で酒盛りしても十分な広さがあるな」

 

「ログハウスですか~いいですねぇ。私小さいころ憧れていたんですよねぇ」

 

なんで織斑さんと山田さんがいるんでしょうか。しかも山田さんはISを装備しているし。

 

「轡木さんに手伝うように頼まれたのだ。その代り完成したらお前に酒のつまみを作ってもらうからな」

 

そう織斑さんは言う。

えっなんでそんなことをしなきゃいけないのさ。

というか何それ聞いていない。

 

「あの時のカサゴはおいしかったですよ。今回も期待してますからね!」

 

山田さんまで何を言って・・・というか期待されても困ります。

俺が何か言う暇もなく三人は図面を見ながら秘密基地の制作に移って行った。

織斑さんとかはどうせならもっと大きいキッチンにしたほうがもっといろいろ食べられるとか言っていた。

絶対に自分で料理しないでしょあなた!だってこっち向きながら言ってますもん!

 

「はぁ・・・」

 

そんな三人を見て俺はため息をするしかなかった。

 

*****

 

朝早くから始めて夕方になるころに秘密基地は完成した。

俺?魚釣って来いって言われた。今日の酒の肴にするんだと。

誰が肴を作るかって?俺だよ。

 

しっかし驚いた。

完成したという連絡を受けて俺が見に行ってみるとうっそうとしていた林の中に見事なログハウスができていた。

しかも部屋もかなり広い。

ざっと見て大人十人は入るんじゃないだろうか。

ログハウスの中は居間とダイニングキッチンとに分かれていた。

キッチンが最新のIHだったのを見て笑ってしまった。

その他も電子レンジや冷蔵庫おまけに食器洗い機まで付いている。

どうやってここまで電気と水道を持ってきたのだろうか。

 

「よくこんなのを作れたなぁ。すげぇや」

 

俺が感心していると山田さんが口を開いた。

 

「ふふ、これも全部みんなで酒盛りをするために作ったんですよ」

 

聞くとこれまでに何度か俺たちは酒盛りを用務員室でしてきたのだがその度にうるさいという苦情が入っていたらしい。

そこでどこか別の場所はないかと考えたところ同僚の秘密基地の話が入って来たとか。

で、ちょうどいいのでその案を採用して同僚を巻き込んでまで作ったのがこのログハウスなんだと。

ちなみにこのログハウス、地下にワイン蔵まであるんだとか。

完全に酒場だここ。

 

「苦情が入ってしまってな。どうしようかと思っていたところに今回の話が入ってきたのだ。お前の同僚には感謝しないとな」

 

そういいながらさっそく織斑さんは部屋から持ってきたのであろう缶ビールをあける。

教師なのにいいのかな・・・。

 

「安心しろ、今日は私も休みだ」

 

そっすか。

 

「でも俺魚釣りしかやっていないんですけどここ使っちゃっていいんですかね・・・」

 

ろくに力仕事もしていない俺がここを使うのははばかられる。

そう思いながら俺が言うとみんな一斉にきょとんとした顔をした後に一斉に笑い出した。

なんだ俺何か面白いこと言ったか。

 

「くくく、話を聞いていなかったのかここは酒盛りするための場所だぞ。いくら酒を飲める場所と酒があっても肴がなければ話にならんだろうが」

 

「まったくですよ清掃員さん。確かにここを作ったのは私たちですが清掃員さんの作るおいしいおつまみがないと完成しないんですから」

 

織斑さんと山田さんはそういいながら笑う。

同僚も、

 

「俺もこの二人の絶賛するお前の料理を食べてみたいからな。働かなかった分料理で貢献しろよ」

 

にやにやと笑いながらそう言った。

 

「はぁ、まったく」

 

しょうがない。みんなが働いたのだから俺も同じくらい働かなければ不公平だろう。

 

「言っておくが私たちは昼飯も食べずに働いたからな。おなかにたまるものを作ってくれ」

 

喉をごくごくと言わせながら缶ビールを飲む織斑さんがそういう。

そういえば俺も昼飯食べてなかったな。

俺も私もと残りの二人が織斑さんに同意する。

 

「なら今日は鍋にでもしますかね。春とはいえまだまだ夜は冷えますし」

 

新鮮な魚もたくさん手に入ったことだしじゃっぱ鍋でも作ろうか。

ちなみにじゃっぱ鍋とは青森の郷土料理でじゃっぱは雑把(ざっぱ)が濁ったものだ。

簡単に言うと寄せ鍋だな。ただし魚が多いが。

さてととりあえず作るものが決まったものだし魚を釣り場から持ってこなければ。

俺がそんな風に考えていると、

 

「おっ!これはまた立派なものが出来ましたねぇ」

 

「あっ轡木さん!今日はお鍋らしいですよ!」

 

予想以上だったのだろう感心しながらログハウスに入ってきた轡木さんに山田さんが今回の料理を教える。

 

「鍋ですか。いいですねぇ。まだまだ夜は冷えますし。ちなみに何鍋ですかな?」

 

轡木さんが聞いてくる。

 

「あっはい今日はじゃっぱ鍋にしようかと」

 

「じゃっぱ鍋ですか、これはまた楽しみですねぇ。青森で食べて以来ですよ。おいしいのを頼みますよ」

 

「もちろんですとも!」

 

さてと皆もおなかを空かせているし俺だって腹ペコだ。急いで鍋を作らなければ。

 

「じゃ、ちょっと魚取りに戻りますね」

 

そう告げてから俺は釣り場まで走りながら向かうのだった。

 

時刻は夕方も終わりを告げようとしている頃。

すでにあたりは寒くなり始めていたが、この時ばかりはこの寒さが心地よかった。

少し息を切らしながら俺は魚を取りに走る。

春も半ば、この日俺たちは俺たちだけの秘密の酒場を手に入れたのだった。




秘密基地って憧れますよね。
私も小学生のころ友人たちと一緒に段ボールで作ったのですが雨に降られて駄目になりました。防水加工は大事。
なおいまだに他の転生者は出てこない模様。
もう出さんでもいいんじゃ・・・冗談です。

(ちなみに今回初めてISが出てきました)


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番外 友達

本当は今回は他の転生者を出そうと思ったのですがぽたぽた焼きを食べてたらこの話が思いついたのでこっちを書きました。

追記 番外編にいたしました。その他いくつかの変更を行っております。


「・・・♪」

 

「お!うまかったか」

 

さてとご機嫌麗しゅう諸君。

俺は今黒髪ロングヘアーの幼女におせんべいをあげている真っ最中だ。

目の前の幼女は白色のワンピースを着ていてそのワンピースにはどこか高級感がある。

結構高そうなのだが幼女はおせんべいのかすが服に付くのにも構わずに俺のあげたぽたぽた焼きを幸せそうにほおばっている。

 

「・・・(;_:)」

 

幼女はおせんべいを食べ終えた後悲しそうな顔をした。

多分全部食べてしまったことに気づいてなかったのだろう。

しゅんとした表情でさっきまでおせんべいがあった手をじっと見ている。

なにこれかわいい。

 

「すまんな、ぽたぽた焼きはもうないんだ」

 

「・・・(>_<)」

 

やだやだもっと食べたいって言っているのだろうか幼女は手足をバタバタさせている。

しかしないものはないのだ。それにここで甘やかしてしまったら後々どんな大人になってしまうか・・・。

こういうのは小さいころからのしつけが大事なのだ。

もっとも俺この子の親じゃないけど・・・。

 

「(’・―・”)」

 

やめろ!そんな目で見るんじゃない!そんな顔して「駄目?」って聞くんじゃない!

いや実際には聞いてないけど。

ともかくそんな顔したって・・・。

 

「・・・チロルチョコならあるよ」

 

幼女には勝てないもんだね。

 

*****

 

さてはてなぜ俺が幼女に対しておせんべいをあげているのか。

それはこの子と会うちょっと前までさかのぼる。

 

*****

 

「あれ・・・迷ったか・・・」

 

IS学園というのはかなり広い。しかも作りが複雑だから慣れてない人は高確率で迷う。

だが世の中いつだって例外はいるものだ。

例としては男性のIS操縦者がそうであろう。

まぁ、そういう感じでこの世の中何かしらの例外はあるものだと思う。

他に例を挙げるなら清掃員なのに清掃場所の地図を把握していなかったり。

そう俺のことだよ。

 

「おっかしいなぁ、確かにこっちだったのに・・・」

 

今日は東区の清掃をするはずだったのだがいつの間にか未来的なビルは消えており代わりにうっそうとした森が広がっていた。

 

「冗談じゃねえぞ・・・」

 

さすがに二度も遭難するのは避けたい。

いや仮に遭難しても特典のおかげで生き残れはするのだが精神的によろしくない。

さすがに生き残るためにまた虫の幼虫を食べるのは嫌だ。

しかも調理器具なんてないから生なんだわ・・・。

あれのせいでキャラメルコーンがしばらく食べれなくなった。

あれって完全に幼虫だよね。

 

「あれここって(ほこら)なんてあったのか」

 

森の中を歩いているといつの間にか小さな祠にたどり着いた。

その祠はコケだらけではあったがしっかりとしたつくりらしく壊れてはいなかった。

俺がしばらくその祠を眺めていると、

 

「・・・ん」

 

いつの間にいたのか白いワンピースをきた小さな女の子が俺の服の袖口を掴んでいた。

 

「あん?どこから来たんだ?」

 

おかしい先まではこんな子供はいなかったはず・・・。

だとすれば、もしかして・・・。

俺が冷や汗を流そうとしたその時、

 

”ぐぅぅぅ~”

 

かわいらしい腹の虫の音とともに俺の中でこの女の子に対する緊張感は溶けて行った。

 

「なんかあったかな・・・」

 

残念なことに今は仕事中だったのでそんなに食べ物は持っていない。

ポケットに飴でもあったかなと思い探ってみると、

 

「あっ轡木さんからもらったせんべいがあった」

 

以前用務員室でもらっていたぽたぽた焼きがそのまま入れっぱなしになっていた。

 

「これ、いるか?」

 

俺がそう聞くと女の子は

 

「・・・うん!」

 

元気よくうなずいた。

 

*****

 

にしてもかわいいもんだ。いや、別に俺はロリコンではないがその俺から見てもこの子はかわいかった。

今だって幸せの真っただ中です!って顔をしながらチロルチョコを食べてる。

その顔を見ているとこっちまで笑顔になってしまう。

こうしていつまでもこの子の笑顔を見ていたい気もするがそれはそれだ。

俺の中にはある確信があった。

 

「君が俺をここまで連れてきたんだね?」

 

なんとなくではあるが俺はひょっとしてこの子がここまで俺を連れてきたのではないだろうかと思っていた。

これで外れてたらどうしよう・・・。

だが俺の心配は外れていたようで、

 

「・・・うん」

 

と女の子は答えた。

 

「なんで連れてきたんだい?」

 

なるべく優しく俺はこの子に聞く。

 

「・・・友達が欲しかったから」

 

聞くところによるとこの子は以前も俺のような感じで他の人間を連れてきて姿を見せたのだがみんな悲鳴をあげながら逃げてしまったらしい。

まぁこんなところに小さな女の子がいるはずもないしな、驚くのも無理はない。

事実俺も冷や汗をかいていたし。

 

「あなた、友達になってくれる・・・?」

 

”足のない”女の子はそう言って俺に問いかけた。

きっと友達になってくれるか心配なのだろうなのだろう。その表情は不安そうだった。

心配スンナって。

 

「オフコースだよ」

 

「おふこうす?」

 

「もちろんってこと」

 

「(゜o゜)」

 

一瞬ぽかんとした表情になった後女の子は、

 

「ありがとう!!」

 

と言いながらものすごくいい笑顔をしながら俺の脚に抱き着いてきた。

いやほら、身長差がね・・・。

 

「んじゃ、そろそろ元の場所に帰してもらえる?」

 

俺がそういうと女の子は心配そうな表情で、

 

「また・・・来てくれる?」

 

と聞いてきた。

安心しろ。俺は約束を守る男で有名になりたかった奴だぞ。

 

「もちろんさ!だってもう友達だからな」

 

「本当!!」

 

「そう、約束。またきっと来るよ。だからさ、元の道に帰してくれるかい?」

 

俺の問いかけに女の子は元気な笑顔でこう言った。

 

「おふこうす!!!」

 

この日俺に小さな幽霊の友達ができたのだった。

 

次はおなかにたまるものでも持ってきてやるか。

そんなことを考えながら俺は山道を下るのだった。

なおこの後道に迷って本当に遭難してしまって怒られてしまうのは別のお話。

だってこの学園の作りって複雑なんだもの・・・。




ぽたぽた焼きから始まる新たな出会い。
どうも最近皆様から届けられる感想が何よりの暖房器具となっております類人猿です。
息抜きで始めたこの作品なのですが思った以上に伸びていてびっくりしています。
この話を書いているときも思ったのですがこれってISである必要があるのかどうか・・・。
いや、次はISがバリバリ出ちゃうはずなので期待せずに待っていてください。



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強くなるために

今回は時間がかかりました・・・。


「それでだなぁ、いちかはなぁー」

 

俺たち、もとい俺以外のみんなで作ったこの秘密基地は完成後週一ぐらいの割合いで酒盛りをやっていた。

もっともそれぞれが忙しいのでなかなか皆で集まって飲むということはなかったが。

今だってここにいるのは織斑さんと俺の二人だけだ。

 

轡木さんは歳が理由で同僚は明日は朝から仕事があるので、山田さんは・・・織斑さんの分まで働いている。

なんか織斑さん自分の仕事をほっぽり出してここに来たらしい。

さっさと職員室に送り返そうとしたのだが山田さんから、

 

「いつも忙しく働いている人なのでたまには休ませてあげてください。織斑さんの仕事は私がかたづけておきますから」

 

っていう連絡が来たのでそのままにしている。

ここって固定電話あったんだなってこの時初めて気付いた。

俺?俺も明日は仕事があるんだけど午後からだからそこまで問題でもない。

それにここに来た理由もなんとなくだし。誰かいたら一緒に飲もうくらいの気持ちだったのだが・・・。

 

「おぃ、わらしのはなひをきぃてるのかぁ!・・・ヒック」

 

すっかり織斑さんの愚痴を聞く羽目になってしまった。

 

「・・・おかわりぃ」

 

グビグビと缶ビールを流し込みながら織斑さんはおつまみの要求をする。

ちなみにおつまみは炒り豆腐だ。

豆腐を細かく刻んだニンジンや玉ねぎなんかと一緒に焼いてなんでもいいので出汁を入れて煮て作る簡単料理だ。

いろいろなアレンジがきく料理なのでつまみに困ったらこれを出しとけば何とかなる。

 

「あんまり飲みすぎると毒ですよ」

 

「うるさぁい!これがのまずにいられりゅかぁ」

 

酔っぱらいの相手するのはなかなかに大変だ。

そのため酔っぱらいの相手をするときは適当に返事をすれば大体は満足してくれるのだが今回は話の内容もあってまじめに聞いている。

 

「それで、結局決闘はどうなったんですか?」

 

「めんどくさかったから、生き残り形式のばとるろわいありゅにした・・・」

 

なんでも原作通り入学式のすぐあとにクラスの代表(いわゆる学級委員)を決めたらしいのだが多数決を取って決めることにしたらしい。

が、ここで一悶着が起きる。

 

多数決の時クラスの大半が面白がって男子生徒たちを推薦したのだがそのような決め方に納得のいかないイギリス代表が反発。

で、口論になって決闘になったという大体原作通りの展開になったらしい。

 

もっとも原作では男子は一人だったが・・・。

それよりも問題だったのが決闘のほうだ。

さっきも言っていたが織斑さんはめんどくさがってバトルロワイアルにしたのだが蓋を開けてみたらあらびっくり。

それぞれの機体の性能があほみたいに高くてこのままではアリーナが崩壊してしまうというところまで行ったのだ。

ちなみにその機体は転生の時の特典としてあの爺さんに用意させたらしい。

そらそんなのがぶつかり合えばそうなるわな。

 

「それで・・・ヒック。わらひがバカ者どもをとめにはいったのだがにゃ・・・ヒック」

 

「入ったのだが?」

 

「ヒック・・・とめりゅことはできた。ただ、試合が始まってまっさきに落ちたのが私の弟でな・・・」

 

「あぁ・・・」

 

それは何ともご愁傷様である。まぁ神様が作ったISだし当然と言えば当然か。

 

「なさけないと思っていたのだが、そりぇはまちがいだったんだ」

 

一呼吸おいてから織斑さんはしゃべりだす。

 

「あいつりゃはたしかに強かった。異常なくらいの強さだった。あいつら自身もISもな・・・。事実わらひでも止めるのに苦労したからな・・・」

 

よほど悔しかったのだろう織斑さんは顔をしかめた。

が、すぐにそれはさわやかな笑顔になる。

 

「あいつらと戦って分かったのだ。この私もまだまだ未熟者だったとな」

 

私もまだまだだな。と言いながら織斑さんは新しく用意したおつまみを口に運ぶ。

 

多分新しい壁ができたことがうれしいのだろう。

なぜなら現状この人は世界最強の称号を持っているからだ。

その圧倒的な強さを称えてということで送られた称号なのだが本人曰くあまり気分のいいものではないらしい。

そういうの嫌いそうだよねこの人。

 

「だから決めたのだ。私は弟と共に強くなろうと。そのために・・・」

 

「そのために?」

 

「弟、一夏はクラス代表にした。そのほうが強敵と出会いやすいだろう。あいつはそれで強くなるはずさ。むろん私も鍛錬を行うが」

 

あっ、結局そうなるのね。これが歴史の修正力か・・・恐ろしい。

俺が一人歴史の修正能力に驚く中からからと笑いながら織斑さんは缶ビールを飲むのだった。

 

夜は深まるばかりである。

 




ISがバリバリ出る(大嘘)
これでようやく時間を進めることができる・・・。


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十人十色

間違えて中途半端なのを投稿しちゃった・・・。
今回はプールの話です。キャッキャウフフです。


「こっち点検終わりました」

 

「あっ、じゃあこっちよろしく頼むよ」

 

「了解です」

 

春も終わりを迎えてきているのだろう、ここ最近はどこかじめじめとしている。

今日だって入学式のころに比べると湿気が高い気がする。

まぁ気がするだけなんだけど。

 

「うわっちょっと錆びてるし・・・」

 

「ん、どれどれ・・・あぁ~交換かなぁ・・・。また書類作らなきゃ・・・」

 

そういいながらため息を吐くのは俺より少し上の用務員さん。

名前を水野元 水道橋(みずのもと すいどうばし)という人である。

すごいだろ?これ本名なんだぜ。

水野元さんの実家はポンプを作っている会社でこの人で四代目なんだそうな。

水野元さんのところは二人兄弟で実家のほうは弟の水素(すいそ)さんに任しているんだとか。

 

何とも水に関係のありそうな名前なことで。

 

水野元さんの仕事は少し変わっていてこの人は学園の水道設備のあれこれを専門としている。

いわば水回りのプロフェッショナルだ。

そして今俺と水野元さんがやっているのはプールの清掃である。

 

「しっかし最近はプールロボットなんてのがあるんですね」

 

もっともやっている内容はプールの底をごしごしと洗うものではなくパイプの中の掃除やろ過機の点検などだが。

今はプールロボットというプール専用の掃除ロボットの点検をやっている。

 

「こいつは便利だよ。こいつのおかげでいちいち水を抜いて底を洗う必要がなくなったんだから」

 

プールロボットとはプールの底の部分を掃除してくれるロボットである。

台形の形をしていて地面と密着するように回転するブラシが取り付けられてある。

まぁ詳しくは個人で調べてくれ。

ともかくこのブラシの部分を使ってプール底を掃除するのだ。

 

「やっぱりドルフィンはすごいよ」

 

そういいながら水野元さんは手元のロボットを眺める。

 

このお掃除ロボット、ドルフィンというのだがこれは世界的に人気なプールロボットである。

イスラエルで開発されたこいつは世界で最も売れているプールロボットで日本国内の販売台数も同型のロボットの中で一番という非常にパワフルなロボットだ。

俺は知らなかったのだがイスラエルはテクノロジーの分野で世界トップクラスの位置にいるんだとか。

そういや原作ではアメリカと一緒にシルバー何とかも作ってたな。

 

「やっぱり世界的に人気のところとかですか?」

 

俺がそう聞くと水野元さんは、

 

「ううん、そこもだけどさやっぱり発想だよ。うちの会社はいかにしてゴミをできる限りろ過できるかを目標にポンプを作っていたんだけどさこいつは違う。ロボットていう新しい分野を積極的に取り込んでるんだよ。うちはポンプを作ることはできるけどロボットを作ることはできないからね」

 

「でもプールロボットなんて限定的なものだと売れにくいんじゃないですか?」

 

「そこじゃないのさ。いいかいものづくりで一番重要なことは柔軟な発想と未知へのチャレンジなんだよ。まったくもって正反対なもの同士を組み合わせることから開発は始まるのさ」

 

もっともこんなことを言うのは現場の技術者なんだけどねと言いながら水野元さんは頭をかく。

 

確かに水野元さんは長男であるので立場的に今の社長が引退したら次の社長になるのはこの人の可能性が高い。

そんな立場になるかもしれない人が利益を無視した話をするのはまずいのだろう。

もっとも俺はそんな立場にないからよくはわからんが。

でも、

 

「いいんじゃないですか、そりゃいつかは社長になるかもしれないですけど今はここの用務員なんですし。・・・いや、今のは無責任っすね。すいません今のは忘れてください」

 

さすがに今のは無責任すぎたななんて俺が反省していると、

 

「・・・いや、今の言葉は覚えておくよ。そうか・・・うん確かに今の僕はここの用務員だったね。ありがとう気分が晴れたよ」

 

そういいながら水野元さんはニッと笑う。

その顔はすっきりしていた。

本人も思うところはあったのかもしれない。

 

「そういえばなんで水野元さんは用務員になったんですか?」

 

個人的にすごく気になる。なんでこの人は家を弟にまで任せてここに来たのだろう。

 

「だってここって世界レベルのポンプが使われているんだよ?そんなのをまじかで見ることができるんだぞ。見なきゃ損だよ!!」

 

同じ場所に来ていてもそこに来た理由は人それぞれなものである。

俺は一人ポンプで盛り上がっている水野元さんを見ながらそう思うのだった。

やっぱりこの人は経営者に向いていないのかもしれない。




プールの話はいつかまたやりたいな・・・。
ちなみにプールロボットが導入されているのは日本だと神奈川の防衛大とかだそうです。


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番外 山田真耶の悩み

遅くなりました。申し訳ありません。
なお今回の話は長めです。


「・・・ヒック」

 

「あの・・・本当に大丈夫ですか?顔真っ赤ですけど」

 

「がははは、もーまんたいアルヨ。んで、山田さんのほうは最近どうなんアルカ?」

 

どうもこんにちは、山田真耶(やまだ まや)です。

今は夜の十時です。本当ならまだ仕事をしなければならないのですが先ほど織斑先生が私の下にやってきて

「今日は私が山田君の分までやろう。なに以前君には私の分をやってもらったからな。今日はそのお礼だ。久しぶりにあの秘密基地に行ってきたらどうだ面白いものが見れるぞ」

と言われましたのでここに来ました。別にそんなって断ろうとしたのですが織斑先生が私の席に座って仕事をし始めましたのであきらめてここに来ました。

ここに来るのは久しぶりですし何より面白いものがなんなのか興味が湧きましたからね。

 

それでここにやって来たのですが・・・。

 

「まぁまぁ、どうです一杯。嫌なことはここで吐き出しちゃいましょうよ・・・ヒック」

 

そこにいたのは酔っぱらった清掃員さんでした。

 

*****

 

「実は最近の授業なんですが・・・」

 

結局清掃員さんに押し切られる形で席に着くことになりました。

それで今は清掃員さんに私の愚痴を聞いてもらっているところです。

 

「というと、男子生徒かな?」

 

「はい・・・今年はみんな例年に比べて浮ついているんです」

 

「それはISに関してかい?それとも色恋沙汰?」

 

「い!?ち、違いますよ!ISに関してです」

 

確かに恋愛のことでも浮ついていますが・・・。

 

「私たちの授業をみんなまじめには聞いてくれているんです。でも、あんまり現実を見ていないというかいまいちISに対する扱いが軽いと言いますか・・・ああもう!そのなんかこうもやもやするんです!」

 

どこがどうとかという話ではない。

私はまだここにきてからの日は浅いがそれでも感じれるぐらい今年の一年生の空気は軽い。

確かに授業中は真剣に聞いてくれているのだがどうにも教えたという感触がつかめないのである。

 

「こういってはなんですがやっぱり男性操縦者がいるのが原因かなって・・・」

 

およそ自分らしくはない意見だがやはり今年見つかった男性操縦者が原因なのではないかと思ってしまう。

彼らは全員これでもかってぐらいの美形で教師の私でもキュンとしてしまうぐらいだ。

大人の私でこうなのだから学生のみんなはもっとだろう。

みんな恋をするのに夢中になっているのが感触を掴めない原因になっているのではないだろうか。

 

「・・・ふうん。・・・ヒック」

 

「清掃員さんはどう思います?」

 

せっかくなのだからこの人からでも何か意見を得られればと思う。

何事も第三者の意見は大切である。

 

「要は教えたっていう感触がつかめないんだよね?それは多分山田さんたち教師のほうに問題があるんじゃないかな」

 

「!?いったいそれはどういうことですか?」

 

はたしてなにか私たちに問題でもあっただろうか?確かにここ最近はいろいろとごたごたしていたがそこまでのミスは起こしていないはずだ。

私がそう考えていると、

 

「ようはさ、山田さん生徒のことを高校生として接しているでしょ」

 

「それのどこに問題が?彼らは高校生ですよ?」

 

「いや、だからさ高校生なのは間違っていないんだよ。でもそれってさあくまでもIS以外のことだけでしょ。確かにここの生徒さんはみんな小っちゃいころから算数とか漢字とか習っているけどさISに関することはまったく習っていないでしょ」

 

そこでいったん話すのをやめてビールを一杯飲んでから清掃員さんは続けた。

 

「じゃあさ、ISについては高校生のレベルにあるわけ?」

 

「っ!!」

 

「IS以外なら高校生なのかもしれないけどさ、ISに関しては彼らは小学生なわけでしょ。だったらそれ相応に扱うべきなんじゃないのかなって」

 

ちゃんとそういう風に見てる?と言いながら清掃員さんは私の目をまっすぐ見てくる。

 

「わ、私は・・・高校生として扱っていました・・・」

 

「正直でよろしい・・・ヒック。」

 

それがわかれば十分でしょと言いながら清掃員さんはビールを飲む。

でも・・・。

 

「教えてください!彼らにはどう教えればいいんですかっ?」

 

答えを教えてほしい。きっと私ではたどり着けないはずだから。

 

「どうって、俺教師じゃないよ?」

 

「構いません!」

 

多分あなたは私以上に教師に向いています!

 

「ん~・・・ならまずは作文を書かせてみなよ。ISの利用方法について」

 

「作文ですか?」

 

「そ、作文。ISを将来どのように使いたいですかって。まずはそこからだよ」

 

小学生のころを思い出しなよと言いながら清掃員さんは続ける。

 

「ISの操縦方法なんて説明書さえあれば男女関係なく教えられるでしょ。それならさこんな学校なんていらないじゃん。じゃぁなんでこんな学校があるんだと思う?この学校で生徒が学ばなきゃいけないのはなんだと思う?」

 

「ISの・・・使い道?」

 

「そ、使い道。ようは夢を見つけるんだよ。ISまたはISに使われている技術をどのように使いたいのかね」

 

そういいながら清掃員さんはビールから手を放して体ごとこちらを向く。

 

「ISは宇宙で活動するために作られたものでしょ。でもさその気になれば宇宙じゃなくて深海にだっていけるし物体を粒子化する技術を使えば一度にたくさんの救援物資を運べるでしょ。そういう幅広い見方ができるようにさせるのがこの学校なんじゃないかな。今のままの教え方ならきっと彼らはISの操縦方法しか覚えないよ」

 

「・・・!」

 

それでいいの?と清掃員さんは聞いてくる。

 

「私は・・・彼らをそんな風にしたくはありません。でも、私が教えれるのは兵器としてのISだけです・・・」

 

私は教師失格だ。

そう思いながら顔を下に向けたその時、

 

「ならさ、一緒に考えればいいんじゃないの。ISをどうやって使っていくべきか。だって学校って答えのない問題の答えを教師も生徒も自分なりに探す場所でしょ」

 

「・・・ぁ、あぁ」

 

気が付けば私は泣いていた。

 

「きっとISの正しい使い道を知っている人なんて誰もいないと思うよ。たとえそれがISの開発者であっても」

 

そういいながら清掃員さんは私の頭を撫でてくる。酔っているせいなのだろう手つきがどこかおぼつかないが今の私にはそれが心地良かった。

 

「まずはみんながISをどう思っているかを知らないとね」

 

「・・・あぃ」

 

そう答えた私の声は涙で震えていた。

 

*****

 

「ほら」

 

そういいながら織斑先生は私にハンカチを渡してくる。

 

「・・・ありがとうございます」

 

「その顔からしてすっきりしたようだな」

 

「ありがとうございました」

 

あれからしばらくして私たちは秘密基地を出て行った。

私はその足でもう織斑先生しかいない職員室へ来たのだ。

 

「それでどうするつもりだ?」

 

「どうする」か・・・。織斑先生はそう問いかけてきた。

大丈夫もう私の答えは決まっている。

 

「生徒たちと共にISの新しい使い道を見つけて行こうと思います。そのためにもまずはみんなに作文を書いてもらおうと思います」

 

そうかと一言だけ言って織斑先生は私にコーヒーを持ってきてくれた。

 

「今日は本当にありがとうございました。あれって織斑先生の仕業ですよね?」

 

私がそういうと織斑先生はくっくっくと笑いながらこう言った。

 

「なんのことかな、私はあいつと飲み比べをして愚痴を聞く約束を取り付けただけだぞ。そこにたまたま山田君が行ったというだけだ」

 

まったくもう、この人は。

 

「ありがとうございました織斑先生。それに清掃員さんも・・・」

 

あの人には本当に感謝しないといけない。

あの人のおかげでもう一度頑張れそうだからだ。

 

「それで、明日からもまた頑張れそうか?」

 

「はいっ!もちろんです!」

 

織斑さんの問いに対して私はそう元気に答えるのだった。

 

 

 




皆さんならISをどのように使いたいでしょうか?
ちなみに私ならISを使って海に潜って宝探しをしたいです。
財宝って・・・いいよね(恍惚の表情)


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温泉

ヤバイ遅れすぎた。
メリークリスマスです皆さん。

追記 タイトル付け忘れてました・・・(二度目)


「いぃっ湯っだなぁ、バ、ババン。いぃっ湯っだなぁ~」

 

やあこんにちわ諸君。

ドウモ、セイソウ=インデス。

実は今休暇中なんだよね。

昨日もいつも通りに仕事をしていたらいきなり織斑さんがやってきて

「日ごろからお前には世話になっているからな、私からの感謝の気持ちだ」

って言って旅館のチケットをくれた。

いいんですかって聞いたら

「実はその旅館は臨海学校の時にいつもお世話になっている旅館でな今年も下見という名目でチケットを用意したのだがまぁ・・・いろいろと忙しくてな」

と苦笑しながら言っていた。

 

嗚呼今年は男性操縦者がいるからなぁ。

しかもそのほとんどが転生者だし大変なんだろうな。

 

そんなことを思いながら俺は喜んでそのチケットを受け取った。

こういう好意は受け取らないと失礼だもんね。

 

で、どうやらチケットは織斑さんの分だけじゃなくて山田さんの分もあったらしく二枚あったので秘密基地建築の許可を出してくれたお礼として轡木さんを誘った。

同僚?あいつは温泉よりISのほうがいいんだと。

ともかく俺と轡木さんは今絶賛温泉旅館を満喫中なのだ。

 

「本当にいい湯ですねぇ。それに空もきれいですし」

 

そう言いながら轡木さんは空を見上げる。

今俺たちが入っているのは露天風呂だ。

この旅館の周りには建物がほとんどない。

そのため夜空の星も町の明かりに邪魔されることもなくキラキラと自然な輝きを放っている。

簡単に言うとめっちゃ綺麗だ。

 

「本当に綺麗ですね。織斑さんたちには感謝しないとなぁ・・・」

 

もっとも感謝されるようなことなどはおつまみを作った記憶しかないが。

後なぜか織斑さんと飲み比べした後の記憶が飛んでるし山田さんには尊敬の目で見られながら教師にならないかって誘われるしあの日俺は何をしたんだ・・・。

 

「あっそうだレポートのほうも書いておかないと・・・めんどくさいなぁ」

 

実は織斑さんから旅館のレポートを書くように頼まれている。

まぁ下見のためのチケットなわけだし当然か。

むしろ書かないと問題になる。

 

「それなら私にいい考えがありますよ。これならレポートを書く必要がなくなりますよ」

 

「ぇ、本当ですか?」

 

「えぇ、せっかくの温泉なのにレポートで楽しめなくなるのは嫌ですしね。せっかくこんないいところへ連れてきてくれたんですからそのお礼です」

 

もっとも老人の悪知恵ですけどねと言いながら轡木さんはからからと笑った。

 

ありがたい。別に文字を書くのは嫌いではないがどうせならそんなことせずしっかりと骨の髄までここの温泉を堪能しておきたい。

人間はいつだって怠けていたいのだ。

 

「それで何をするんですか?」

 

「ふっふっふ。じゃあまずは仲居さんを呼びましょうかね」

 

そう言った時の轡木さんの顔はとっても楽しそうだった。

 

*****

 

「まったく・・・」

 

織斑千冬は苦笑しながら手元にある書類を眺めていた。

その書類には旅館調査書と書かれていた。

林間学校で止まる旅館の調査書類だ。

今年はお礼もかねてあの清掃員に行ってもらったのだが提出された書類には何も書かれていなかった。

どういうことかと思い書類を見ていたのだが最後のページで納得した。

 

「何かあったんですか?」

 

「ああ、実は例の二人に調査書類を書いてもらったんだがな・・・」

 

そういいながら山田君に書類を渡した。

 

「え!?何も書いてな・・・ふふ。これじゃあ怒れないですね」

 

「まったくだ・・・ふふ」

 

そう言いながら笑う二人の見る書類にはたったの一枚だけ写真が張り付けられていた。

 

「本当にいい笑顔ですね」

 

「だな」

 

何も書かれていない書類には気持ちよさそうに温泉に浸かる二人の写真が貼ってあったのだった。

 

「じゃあ今年もここですね♪」

 

「そうだな。今年もお世話になるかな」

 

織斑千冬と山田真耶は二人で笑いながらその書類に確認済みの判を押すのだった。

 




思うにこの物語のヒロインは轡木さんだと思うの(^_^ )
所で皆さんクリスマスに御予定はおありですか?(震え声)
私は特にありません・・・畜生。


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教師

十時かと思ったら十二時だった(・.・;)
な、なにを(ry
単純に時計がずれてただけでした。
ちなみに今回長めです。


その日もいつものように掃除をしていたわけなんだが、

 

「おい、そこの凡人」

 

「・・・あん?」

 

なんか金髪の男子生徒(くそがき)がつっかかてきた。

男だから多分転生者なんだろうな。

 

「おい、聞いているのかね君!!」

 

にしてもこの態度のデカさ。いったいどういう教育をしたらこんな風になるのだろうか。

あの爺さんが苦労するのもよく分かる。

こんなのがISを持つなんてこの世界の行く末が非常に心配でしょうがない。

そんなことを思いながら俺が未来の心配をしているとしびれを切らしたのか金髪がついにしゃべり始めた。

 

「この僕を愚弄するつもりか!この泥棒が!!」

 

「あ?」

 

いきなり俺を泥棒呼ばわりしてきた。

いや俺なんも盗んでいないんだけど。

 

「ちょっとはなんか言ったらどうなのかねきみぃ!!」

 

これはあれだ。ほっておくのが一番な奴だ。

というわけで無視して掃除をしようとしたのだがなんか周りを目がハートの女子生徒たちに囲まれている。

なにこれすごい怖い。しかもみんな俺のことを睨んでいるし。

俺の驚きに気づいたのか金髪がふっと鼻で笑いながらその理由を説明してくれた。

 

「僕はちょっと特別でね。僕の魅力にみんなメロメロなのさ」

 

どうも説明ご苦労さん。ってことはこいつがハーレムにしてくれって頼んだ奴か。

あの爺さんすごい苦労したって言っていた。

なんか人の心を操るのはすごい大変なんだとか。

というかハーレムってこんなのだっけ。これってどう見ても操ってるような。

これって道徳的にどうなのさ。

 

「この僕の魅力に魅了されない人間なんていなかったのさ。たった一人を除いてね」

 

わー誰だろうねぇ。興味ないネー。

掃除の邪魔すんなし。

掃除しなかったら給料が減るんだぞ。

そんな俺の思いとは別に金髪は語り続ける。

 

「僕は驚いたよ。この僕ナ・ルイシストの魅力になびかない人間がいるなんて」

 

俺は君の名前に驚きだよ。決めたお前のあだ名はナルシストだ。

うんすごいしっくりくる。

 

「その人こそ僕にとっての女神、妻にふさわしい人物。その名を織斑千冬!!」

 

「うわっ・・・」

 

「な、なんだその”うわっ”は!!」

 

いやだってねぇ・・・。こういうタイプって織斑さん一番嫌いなやつだよ。

傲慢で自分の力に圧倒的な自信があり他者を見下している。

こりゃぁ・・・無理だな(・×・)

 

「諦めんしゃいな。この世は広いんだから多分他にいい人が見つかるぞ」

 

「う、五月蝿い!大体人の妻を勝手に奪っておいてなんて言い草だ!!」

 

いや妻ってなんだよ。妻って。

いつから織斑さんは結婚したんだ。びっくりだよ。

てか、

 

「奪った?」

 

「そうだ!!僕は知っているんだぞ!デブのお前が僕の千冬と夜中にあっていることを!」

 

いや確かに夜中に会ってるけどさぁ・・・。飲み会だよ。

それも俺がずっと料理を作り続けるやつ。

酷い時には一杯も飲めなかったりする。

たまには俺もゆっくり飲みたいなぁなんて考えていると周りの女子から、

 

「サイテー!」「女の敵!」「ルイシスト様の妻を返しなさい!!」「キモデブ!!」「ちくわ大明神」

 

などという罵詈雑言が飛びかかってきた。てかおい最後のやつ誰だ。

いやまぁ所詮は子供の言うこと。

こんな挑発には・・・。

 

「おっ喧嘩かな?おし警察呼ぶか」

 

乗るしかないじゃない!!

えっ俺が戦うんじゃないのかって?

あほかこういうのは自分よりもっと大きな権力の持ち主に出てきてもらうんだよ。

もっともIS学園には警察はないが。

でも・・・。

 

「何度もこの僕をバカにし・・・「てかお前らいいのか?」・・・へ?」

 

見てろよガキども。これが大人の喧嘩だ。

 

「あと一分で午後の授業が始まっちゃうぞ♪」

 

「「はっ!?」」

 

「ほう・・・いないと思ったらこんなところにいたのかお前たち」

 

この学校には確かに警察なんてない。

が、しかしそれに類ずるものはいる。

先ほどまでの威勢はどこえやら。ぶるぶると震えながら織斑さんの姿を見る生徒たちの様子を見ながら俺は一人くすくすと笑うのであった。

 

「言っておくが私はまだ誰とも結婚していないからな」

 

そう織斑さんが言うと生徒たちはますます青くなるのだった。

 

*****

 

「・・・すまないな」

 

「いえいえ別に構いませんよ」

 

実のところかなり早い段階で織斑さんは俺たちのいる場所に来ていた。

もっとも俺がそれに気づいたのはナルシストの妻のくだりからだが。

 

「これで彼らも更生するんじゃないですかね」

 

あの後こってりと織斑さんに叱られた彼らは非常にやつれてた。

いったいどんな叱り方をしたんだろうな・・・。

それはともかくなぜ最後のほうになって出てきたのか。

 

「あいつ等はここの連中の中でもかなりの問題児でな。叱る機会を伺っていたのだが・・・」

 

「証拠がなかったと」

 

「うむ。それでどうするかと思ったのだが・・・」

 

「炙り出すためにわざと火種を作ったと」

 

ここ最近やたら織斑さんが飲みに誘っていたのはそういういうわけだったのか。

確かにあの金髪は織斑さんにぞっこんだったみたいだし織斑さんの周りに男がいたら絶対に食いつくだろうしな。

 

「こんなことに利用して済まないっ!」

 

そういいながら織斑さんは俺にお頭を下げた。

まぁ、別にいいんだけどさ。

 

「子供を正しい道に案内してあげるのが俺たち大人の役目ですよ。それができたんだから良しとしようじゃないかい」

 

多分これに懲りてあの生徒たちは二度とこういうことをしないと思う。

少なくともやろうとしたら今日のことがフラッシュバックするだろうし。

ただ、

 

「次は俺が飲む番ですからね?」

 

そこは譲れない。本当におつまみとかを作るの大変だったんだよ・・・。

俺がそう言うと織斑さんは少し笑いながら、

 

「あぁ、そうだな。しかし残念だ。お前の肴は結構気に入ってるんだがな」

 

と言った。

 

「なに今回だけですよ。次は作ってあげますから」

 

「そうか・・・」

 

俺の言葉に対して一言だけ反応した後織斑さんはこう言った。

 

「なあ、今私たちがやったことは本当に正しい道に導く行為だったと思うか?そもそも正しい道なんてあると思うか?」

 

その顔は世界最強でもなんでもなくどこまでもただただ教え子たちの未来を案ずる教師の顔だった。

そんな顔の織斑さんに俺はこう答えるしかなかった。

 

「さぁね。何が正しいのか正しくないのかそれを考えるのが俺たち大人の役目ってもんですよ。それに・・・学校っていうのはそういう答えのない正解を見つけるところなんですし、織斑さんも探したらどうですか?」

 

「山田君に言ったのと同じことを言うのだな。だが、確かにそうだな・・・。うむそうだな私もここで答えを探してみるか」

 

そう言った時の織斑さんの顔はどこまでも教師の顔だった。

 

ぴゅうと風が巻き起こる。

その風はいくつかのちりと共に空へと舞っていった。

俺は不思議とその風がちりと共に織斑さんの悩みまで吹き飛ばしていくように感じたのだった。




ようやく出てきた他の転生者。
ちなみにいつか他の転生者での視点の話も書くつもりです。
所でサンタさんって何歳まで有効ですかね?
待てど暮らせどサンタさんに頼んだ美少女の彼女が来ないんですよね不思議(^_^ )


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遅れすぎた(@_@;)
今回は駄文注意です。主人公が謎理論を振り回します。


 

シリアスというのは物語において重要なスパイスになると思う。

テレビや映画、漫画など多くのサブカルチャーで取り入れられているのはやはり見ていてハラハラして面白いからだ。

でもそれってあくまでも第三者からの視点であって自分がその場にいないから言えることだと思うの。

実際にその場面に出くわしてしまったらそんなことは言えんよ。

なんでこんな話しをしているかっていうとね、

 

「なんでわからないんだ一夏っ!!」

 

「箒こそなんでそんなこと言うんだよ!!」

 

出くわしちゃったからだよ!

 

いや君たちなんでこんなところで喧嘩しているのさ。

ここってアリーナの出入り口だよ?

他の人のことも考えてやろうよ。

ちなみに俺はさっきまでアリーナの清掃をやっていた。

今日はクラス対抗戦ってのがあったんだわ。

え?無人機?そういやそんなんあったな、来てないよ。

これも俺たち転生者の影響なんだろうなぁ・・・。

そんなことを俺が考えていると、

 

「っっ!?一夏の馬鹿者が!!」

 

あ~あ、箒ちゃん泣きながらどっか行っちゃったよどうすんのさ主人公よ。

 

「なんだよ箒のやつ・・・」

 

おう、追いかけないのかよ主人公。

やべえなこれ。思った以上に深刻そうだ。

どうしようか。

なんか一夏君下向いたままちょっと泣いてるし・・・。

しゃあなし。カウンセリングと行きますか。

このままほっておくのも目覚めが悪いし。

 

「大丈夫かい?」

 

さあてひと肌脱ぎますか。

 

*****

 

「・・・大丈夫です」

 

俺の問いかけにぼそりと小さな声で答える。

うん大丈夫じゃないね。顔色がものすごく悪いよ。

 

「別に深くは聞かんよ。安心しな先生たちにも言わんから」

 

深くは聞かない。なぜならこういう問題の辛さや痛みはその人自身にしかわからないからだ。

俺はその人には絶対になれない。故に俺にできることはせいぜい涙を拭くためのハンカチを渡すことだけである。

 

「・・・ありがとう」

 

俺がハンカチを渡すと一夏君は小さな声でお礼を言った。

 

「感心感心。お礼は大事だからね」

 

最近はこういうことを言う子供も少なくなったからなぁ。

 

「さて少年よ。このお兄さんから一つアドバイスを授けてやろうではないか」

 

「・・・」

 

う、無反応は寂しいなぁ。

まぁいいけどさ。

 

「俺が言うのはただ一つ。辛いときは旅をしろ」

 

「・・・旅?」

 

そう旅。トラベル。

 

「そ、旅。辛くなったら旅をするのさ。旅は良いぞお!俺は辛いときとかケンカしたときとかはよく旅をしてたよ」

 

「なんで旅なんですか?」

 

おっ乗って来たねぇ。

 

「旅をすることでいろいろなものを見つけなおせるからさ。なに旅と言ってもそんな大層なもんじゃないさ。そこら辺を散歩するだけでもいいんだよ」

 

「はあ・・・」

 

一夏君は俺の言葉に分かったようなわからないような感じで返事する。

多分、分かってねえな。

 

「そうだな、まあものは試しだ。よし、この時間だと・・・うんあそこがいいな」

 

こういうのは言葉でいうより体でわからせるのが手っ取り早い。

俺はついて来いと言って一夏君の手を掴む。

突然の行動に驚く一夏君を尻目に俺は学園の中央にある塔を目指すのだった。

 

*****

 

「・・・凄い」

 

時刻は夕暮れ時。学園で一番高いこの塔からは西に沈む太陽がしっかりと見えた。

太陽の光が海に反射することによって学園の周りにはすごく幻想的な光景が出来上がっていた。

その光景に圧倒されたのだろう一夏君は目を見開いていた。

 

「凄いだろ。こういう景色を見に行くのが旅なんだよ」

 

ISを使えば簡単にこの景色も見れるであろう。

だがISの使用はアリーナの中のみと限られている。

そのため高い場所から、しかも画面越しではない状態で外の景色を見ることはなかなかないだろう。

おまけにこの塔って展望台なんてないから作業員通路に命綱をつけた状態で見るという素敵なおまけつき。

さっきから風が顔にあたって痛い。

が、そんなこともお構いなしに目の前の少年は興奮していた。

 

「すっげぇ・・・。俺こんなの初めてですよ!!」

 

「そいつはぁ良かった。ここに連れてきたかいがあったってもんよ」

 

ここまで元気になったのならもう大丈夫だろう。

 

「それで旅はどうだったか?もっとも俺が強制的に連れてきたわけだが」

 

俺がそう尋ねると一夏君は満足した表情で、

 

「めっちゃ楽しかったです!まさかIS学園にこんな所があるなんて知りませんでした。これが見つめなおすっていうことなんですね!」

 

「そ、これが見つめなおすってことよ。今お前さんはIS学園の美しさを見つめなおしたってわけさ」

 

そう言いながら俺は通路にある手すりに手を掛ける。

一夏君も同じようにしながらしばらく景色を見た後にこう言った。

 

「・・・なんかこの光景を見てたらさっきまでの辛い気持ちがなくなりました」

 

おう、そこまで良かったかこの光景。

まぁなんにせよ気持ちも晴れたみたいだしよかった。

 

「それでさっきの子と仲直りできそうかい?」

 

俺の問いかけに一夏君はすっきりした笑顔で、

 

「はいっ!!!」

 

と答えるのだった。

 

太陽がチラチラと光った。その光はどこまでもまっすぐとしていて迷いがない光だった。

どうやら日没まであと少しのようである。

 




正直言って主人公の名前って決めてないんですよね・・・。
いやこれには水たまり並みの深い事情が存在していて。
とにかくアレなんですよアレ。アレじゃあね、仕方ないよね。

誤字報告感謝しています。皆様本当にありがとうございました。
お手数ですがこれからも誤字がありましたらご報告のほうお願いします・・・(^_^;)


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体の管理は大切に

作中に出てくる東京国際ロボットフェステバルは私がとっさに考えたものなので多分この世には存在しません。
ちなみにクラタスって公道を走れるそうです。


ちっす清掃員です。

なんか最近みんなからカウンセラーさんって呼ばれています。

まあ最近それっぽいことばかりやってたけどさ・・・。

そのせいか最近は掃除をしていると学生さんがやってきて相談事をされる始末。

言っとくけど俺清掃員だからね?カウンセラーじゃないよ?

みんなわかってる?・・・わかってないな絶対。

 

まあそんなわけで最近はちょっと疲れがたまっていたんだよね。

そこでちょっと有給休暇とりました。

ストレス発散は大事。

で、今どこにいるかというと、

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!こ、これがクラタス!!」

 

東京国際ロボットフェスティバル、通称東京ロボフェスにやってきている。

ちなみにクラタスってのは水道橋重工という会社が作った本当に人の乗れる四輪のロボットだ。

全長四メートル。重量四トン。

右手のガトリングガンからBB弾を撃つことができる「トイロボット」だ。

すげえだろ?こいつっておもちゃに含まれるんだぞ。

実際に東京おもちゃショー2015で赤色のクラタスが出展されていたりする。

 

制作者の倉田光吾郎さんによるとイメージとしては量産機を目指したんだとか。

いやもうね量産機というのが分かっていらっしゃる。

確かにワンオフの主人公機体も好きだけどさやっぱり個人的には量産機のほうが好きなんだよね。

ジムとかザクとか好きよ俺。あの雑魚っぽさが最高なんだわ。

 

クラタスの見た目はとにかく無骨。

ザ・重機っていう感じがしてすごくわくわくする。

まるでパトレイバーに出てきそうなロボットだ。

え?パトレイバー知らない?・・・まじか。

これも時代かなあ。面白いから一度漫画でもアニメでも見てみなよ。

実写?そんなものは無かったイイネ?

 

まあそれは置いとくとして何より重要なのが、「個人で買うことができる」この一言に尽きるだろう。

お値段なんとたったの一億二千万!!

・・・うん高いな。でもこの大きさのロボットの値段でこれは安いと思う。

 

しかし少なくとも今の俺の稼ぎじゃあなぁ・・・。

ジョブチェンジすればあるいは・・・。

 

しかーし!手は届かないのだが座ることはできるのだ!

そうなんとこの東京ロボフェスでは実際に乗ることができるのだあ!!

ふっふっふ。そう俺がわざわざ休みを取ったのはこのためだったのだよ明智君。

 

朝四時から会場前でスタンバイしてた俺に抜かりはないぜ!

この日のためにサバイバル術をフルに使って夜なべして作り上げたクラタススーツと専用のヘルメットを用意した。

 

知ってるか?裁縫もサバイバル術の中に入るんだぜ。

 

さあ準備はできた。後は乗り込むだけだ!

目の前にはクラタス!そして俺はすでに専用スーツに着替え済み。

周りの連中が俺のスーツを見て「おお!」と感動している。

舞台は整った。いざゆかん我にとってのエデンへと。

 

アムロ行きます!!

 

「あれ?」

 

「どうかしましたか?」

 

係りの人が聞いてくるんだけど・・これは。

 

「座席が・・・ちょっと小さい・・・」

 

その日ロボフェスの会場ではあちゃーという顔をする係りの人と燃え尽きてしまったような顔でいつまでもちょっと座席に入りきらない自分の尻を見続ける太っちょの男の人が見られましたとさ。

人間何事もほどほどが一番である。

 

この日を境にクラタスの座席はちょっと広くなったそうな。

------------------------------------------------------------------

《注意》 実際のクラタスの座席は大人の男性でも問題なく乗れますのでご安心を。

 




個人的にはISよりクラタスみたいなロボットのほうが好きです。
一番好きなロボットアニメはパトレイバーだったりします。(どうでもいいか)


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ゴミ掃除

お気に入りの数がとんでもないことになっている・・・(@_@;)

ちなみにゴミの焼却所の数は日本が世界一のようです。


「凄い量ですね・・・」

 

「というか何でこんなところに捨ててあるのかねぇ・・・」

 

やあみんな。清掃員だ。

俺は今IS学園の敷地内に有るとある山の中に来ている。

俺と一緒にいるのは俺より三歳年下の下町 三郎(したまち さぶろう)だ。

なかなか昭和チックな名前だが本人はバリバリの現代っ子である。

 

それで今は何をしているのかというと、

 

「しゃあなし、運べるだけ運ぶぞ」

 

「うぇ~い・・・」

 

不法投棄されていたゴミの片付けだ。

 

「ていうか何でこんなところにゴミがあるんですかね?」

 

三郎が不思議そうな顔で俺に聞いてきた。

そんなの知らんがな。

 

「大体なんでゴミを勝手に捨てるんですかね?いらないならゴミ捨て場に持っていけばいいんじゃないすか?」

 

いや疑問に思うのはいいけどさ手を動かせ手を。

いちいち質問するたびに手を止めるんじゃない。

 

「わかったからまずは手を動かせ手を。・・・でだな、うん。お前は誰がここに捨てたと思う?」

 

よしせっかくだし無言で作業するのもつまらないからこいつの話に乗ってやるか。

 

「誰なんですか?」

 

「ちょっとは考えろよ・・・。まあいいや。まぁ全員が全員というわけではないが主にリサイクル業者が捨ててるんだよ」

 

「え!?リサイクル業者がですか?」

 

「そ、リサイクルってのは本来捨てるはずだったものを集めて修理して売ってるわけだろ?そうなると回収した物の中には売り物にならないものだってあるわけだ。だってもともと捨てるはずのものだったんだからな」

 

俺の言葉をふむふむとうなづきながら三郎は聞いている。

ここまで真剣に聞いてくれると話す側も気分がいい。

 

「そこで問題になってくるのが売り物にならない物たちの処分だ。ゴミの日まで待ってもいいがリサイクルショップってのは毎日何かしらのゴミを回収しているわけだし基本的に大型の粗大ごみをに集めてるから捨てる時にいくらかのお金がかかるんだよ」

 

売れないものを置いておくスペースもないし捨てるにしたってお金がかかってしまう。

業者のほうだって慈善事業をやってるんじゃないからそんなものは早くどうにかして処分してしまいたいのだ。

 

俺の言葉を聞いて三郎は「ああ!」とした顔になる。

 

「つまりお金を払いたくないから山奥にまでやって来てゴミを捨ててるんですね!」

 

一応深いところまで話していくとゴミの埋め立て地の受け入れれる量に限界が来はじめていたり個人のゴミに対する意識の低さなんかも関わってくるが面倒だし省いてもいいか。

なんか昔そういうのをテーマにした話が旧ドラえもんであったと思うからそいつを見とけ。

 

ゴムカムカンデーだったかななんかそんな感じの秘密道具が出てきたと思う。

 

「けどリサイクルを専門にやってる人たちがゴミを捨てるなんて本末転倒ですよね。しかも勝手によその土地に捨てるなんてその土地に住む人がかわいそうですよ」

 

三郎はちょっと怒ったような声でそう言った。

確かにその考えは間違っていないと思う。

でもな三郎よ、

 

「けどよ三郎、一番かわいそうなのは捨てられたこいつらなんじゃねえのか?こいつらは人間の役に立つために生まれてきたんだぞ。それなのに古くなったから、新しいのが出たからって言って捨てられるのはちょっと酷くないか?」

 

確かに不法投棄は他の人や自然に悪影響を与える。

でも不法投棄されたゴミたちだって元は人の役に立つために作られたものたちだ。

 

「別に新しいのを買うなってことじゃないさ。大量生産と大量消費は生活が豊かな証だしそれで今の世の中は回っているからな」

 

でも、

 

「そういうのってものを大切に扱えることが前提条件だと思うんだよ。そいつが出来て初めてそれは出来るんだとだと俺は思ってる」

 

人が酸素がないと長く生きられないのと同様にもの達だって大事に使われないと長くは持たない。

しかしどんなに優れたものであってもいつかは壊れてしまう。

けどそこで持ち主が捨てるのではなく修理することを選ぶことによってそれは思い出の品や家宝になりより一層それを大事にしようという気持ちが生まれてくるんだと思う。

 

まったくもってくだらない考えではあるがそれが俺のものに対する信念だ。

きっとそれはこれからも変わることはないと思う。

 

「いつか・・・いつかはきっと山の中や海の上からからゴミが無くなる日が来ますかね?」

 

「それは俺たち次第だろうよ」

 

三郎の質問に俺はそう答えるしかなかった。

 

果たして本当に三郎の言ったような日が来るのだろうか、今の世の中を見ているとその可能性はすごく低いように見えてしまう。

そんなことを考えながら俺は三郎と共にゴミの片づけをするのだった。

 

ISの技術開発に明け暮れるよりも前に人類にはやらなきゃいけないことがあるんじゃないかなと思う。

 




ものは大切に。
海外だと事前にゴミを出さないようにする法律とかを整備しているんだとか。
ちなみに私は旧ドラえもんのほうが好きです。

あと・・・27日って私の誕生日なんです(小声)


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番外 ラウラ・ボーデウィッヒ(読み飛ばして大丈夫です)

誕生日コメントに泣きました。皆さん本当ににありがとうございます(;ワ:)
そして今回は遅くなりすぎた・・・。
次回はもうちょっと早く投稿できると思います・・・(多分)
 
あと駄文注意です。読み飛ばして、お願い(切実)


この世界は俺たち転生者のいるせいで原作とは違う部分が結構ある。

例えば、織斑さん。

あの人って世界最強って言われてるけど結構な苦労人だったりする。

この間酒の席で教えてくれたんだけど胃薬をよく飲んでるんだとか。

本人曰くストレスがきついらしい。俺が持ってた頭痛薬をあげたら結構喜んでた。

なんでも世界最強の称号のせいであまり皆の前で愚痴をこぼせないんだとか。

あの人そのうち禿るかも。

 

他には我らが主人公一夏君。

最初は転生者たちと仲良くしようとしたらしいんだけど、どっこい転生者(あいつら)みんなして一夏アンチだったらしい。

おい誰か一人ぐらい仲良くしてあげろよ。

で、そいつらに「何がみんなを守るだ」とか「そんなんだから弱いんだよ」とか言われまくったらしい。

それでも不登校にならない一夏君には割とまじで尊敬した。

そんなわけで俺でもいいならとたまに一夏君とは色々と話したりしている。

 

そのことを一夏君が織斑さんに話したらしく織斑さんが物凄く体を縮ませながらお礼を言ってきた。

別に構わないんだけどな。

俺の勝手にやってることなんだし。

 

まあ後は山田さんがちょっと怖いくらいの勢いで俺に教職を進めてきているぐらいか・・・。

でもね山田さん、さすがに勤め先にIS学園を勧めてくるのはどうなのさ。

俺は男だよ?IS乗れないよ?いや乗れる奴らもおるけどさ。

え?根性で?無茶言うなし。

 

あ、その山田さんだけど原作とは違って生徒からかなり尊敬されているんだとか。

 

まぁそんな訳で結構この世界は原作と違っているところがある。

だから他の原作キャラも多少は変わっているんだろうなと思っていたんだけど・・・。

 

「あなたが例の清掃員さんですか!?」

 

ちょっと変わりすぎじゃない?ラウラ・ボーデウィッヒさん。

 

「ぜひとも一度あなたに御会いしたかったのです!」

 

まず最初に言いたいのは眼帯は?眼帯が無いんですけどいいんですか?

次に驚いたのは髪の毛。

凄い髪が手入れされてて見ただけどもわかる。

あの髪さらっさらや。

服は・・・さすがに元のままか。なんか安心した。

で、なんだって?

 

「会いたかった?」

 

「はい!」

 

なんか言葉づかいも女の子っぽいような。

あ、でもよく見たら腰に軍用ナイフがしっかりとつけられてる。

やっぱりこの少女はラウラ・ボーデウィッヒで間違いないな。

 

「ええと、何で?」

 

「お礼を言いたくて」

 

「お、お礼?」

 

はて俺って何かしただろうか?しかもドイツ関連で。

・・・あかん。なにも思い出せない。

敢えて言うならウィンナーを食べたぐらいだ。

 

「あなたは先生を救ってくださいました!」

 

「先生?」

 

「織斑先生です!!」

 

え、先生って呼んでるの?教官じゃないのか・・・。

てか救った?織斑さんを?

 

俺が不思議な顔をしながら考えている姿を見てラウラちゃんは説明を始めた。

 

「先生は・・・何年か前にドイツ軍で教官をしていたんです。その時に私はISに関わることを色々と教えてもらったのですがその頃の先生はいつも辛そうで、悲しそうな顔をしていられました」

 

へぇ、あの織斑さんがねぇ・・・。

 

「私は先生のそのような姿を見ていつもどうにかしてあげれないかと考えていました。でも・・・何かしようとするといつも失敗しちゃって・・・。でも私が失敗してしまったときは必ず先生は優しい顔で頭を撫でながら大丈夫だありがとうなって言うんです。でも、そんな顔を見てしまってはますますなんとかしたくなって・・・」

 

ラウラちゃんは続ける。

 

「そんなことをしている間に先生は日本へ帰ってしまったんです・・・。結局私は先生に何もしてあげられなかったんです・・・」

 

そう言いながらラウラちゃんはものすごく悲しそうな顔をする。

俺?ものすごく泣きそう。ラウラちゃんが良い子過ぎて泣きそう。

 

「ここに来てから聞いたのですが先生は、自身が私たちに教えていることが本当に正しいことなのかをすごく悩んでいらしたんです。教えたことのせいで私たちを危険な目に合わせてしまうのではないかと」

 

確か原作だと誘拐事件のお礼でドイツ軍にISに関することを教えていたんだっけかな。ここでもそうだったんかな?

俺がそんなことを思っている間にもラウラちゃんは続ける。

 

「でも私がそのことを聞かされたとき先生は笑っていたんです。そして先生は”悩みはもう解決した”と言っていました!そこで私は先生に誰が解決してくれたのか聞いたのです!」

 

「で、俺のことを言ったと?」

 

はい!と言いながらラウラちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねた。

何この生き物かわいい。

 

「けど別に俺は何もしていないんだがなぁ・・・」

 

精々相手の愚痴を聞いてあげただけだよ。

それ以外は・・・あ、料理も作ったな。

 

「そんなはずはありません!だって事実先生は笑顔になったのですから!」

 

ラウラちゃんはものすごく自信たっぷりにそう言った。

いや、でもなぁ・・・。

 

「たとえそうだとしても君がお礼を言う必要はないんじゃないの?むしろ言うとしたらそれは織斑さんじゃない?」

 

俺がそう聞くとラウラちゃんは、

 

「もちろんわかっています。私が言う立場ではないことも。ですが日本ではあらゆるものに感謝をすることが習わしだと聞いています。それにあなたのおかげで私は笑顔の先生とおしゃべりをすることができるようになりました。だから言わせてください。・・・清掃員さん、先生を笑顔にしてくれてありがとう!!」

 

ラウラちゃんは心底うれしそうな顔でそう言うのだった。

 

*****

 

「へぇお兄ちゃんがいるのか」

 

「はい!兄様も先生も私の大好きな人なんです!」

 

あれからちょっとして俺たちは近くにあったベンチまで移動した。

まぁいつまでも立ちっぱなしで話すのもアレだったし。

てかお兄ちゃんか・・・確か原作にはそんなキャラはいないよな。

なら転生者ってことか。

 

「兄様はいつも私に言っていたんです。どんな時でも笑顔が一番だって。だから笑顔じゃない人を見ると悲しくなって・・・」

 

「だから織斑さんをほっとけなかったと」

 

「はい!」

 

俺が聞いていた限りだと転生者ってのはろくな奴がいなかったらしいが全員がそうでもないのかもな。

そう考えるとすごく気分が楽になる。

心なしか俺の心も軽くなった気がした。

 

「そうか・・・いいお兄ちゃんを持ったな」

 

俺がそういうと、

 

「はい!!」

 

と嬉しそうにラウラちゃんは答えるのだった。

 




もしかしなくても駄文。
今回はネタが思いつかなかったんや・・・。
ちなみにラウラの兄は実は・・・おや?こんな時間に誰かが来たようだ。
しょうがない。この話はまた後で。


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ラジオ

十九話で学んだこと。
眠い頭で小説を書くもんじゃない。


「ラジオを直せるかだって?」

 

俺が掃除をしていたら同僚がやって来た。

しかもなんかケースを抱えてるし。

なんか真面目そうな顔をしているなぁと思っていたらいきなりラジオを直せるかって聞いてきた。

いきなりなんなんだこいつは。

 

「実はな昨日実家のほうに里帰りしたんだけどよ、その時についでに婆ちゃんの所にも寄ったんだよ。その時に婆ちゃんからラジオの修理を頼まれて・・・」

 

「なら業者の人間に頼めばいいんじゃないのか?」

 

「代金は俺もちなんだよ・・・」

 

まったくちゃっかりしてるよ婆ちゃんはと言いながら同僚は頭をかく。

本当にちゃっかりしてるな。

 

「でもよ、ラジオの修理にそんなに金は掛からんだろ?払ってやりゃあいいんじゃないか?」

 

「ところがそうはいかないんだよ・・・」

 

そう言いながら同僚は持っていたケースを開けた。

それラジオだったんかい、手際いいなおい。

 

「これなんだよ」

 

そう言いながら取り出したラジオは、

 

「真空管ラジオかよ。しかも木製だし」

 

古い木で出来た真空管ラジオだった。

 

「でもよそれなら直せないことないだろ。確かに普通のラジオより金は掛かるけど・・・」

 

「今ちょっと金欠で・・・」

 

「アホか」

 

呆れた。金がないから俺に頼んだのかよ。

俺が呆れていると、

 

「頼む。これ爺ちゃんの形見の品なんだ」

 

そう言って真剣な顔で頼み込んできた。

そんな顔で言われてもなぁ・・・。

第一俺がやる理由もないし。

 

「まぁ見るだけなら・・・」

 

俺ってかなり甘い奴なんだろうな、なんて思いながら俺は同僚の頼みを承諾するのだった。

ま、やる理由もなければ断る理由も特にないしな。

しょうがないお前のお爺さんに免じてここは引き受けようではないか。

まぁ直せるかどうかはわからんが。

 

「本当か!?」

 

いやこれで直る!なんて顔すんなし。

まだ見るとしか言ってないからな?

 

*****

 

「~~♪」

 

やや雑音を混じらせながらラジオが鳴った。

その様子を見て同僚が「おぉ!」と声をあげる。

 

「すげぇな、助かったわ!」

 

「なに、運が良かっただけだよ」

 

結論から言うと同僚のラジオは本当に真空管しか壊れていなかった。

別に同僚の言うことを信用していなかったわけじゃないよ。

ともかく真空管を新しいのに変えるだけでよかったから本当によかった。

これでもし他の部分も壊れていたのなら多分俺の手におえなかったと思う。

だって俺真空管ラジオにそこまで詳しくないもん。

 

「しっかしこんなのも売られているんだなぁ・・・」

 

同僚がまじまじと見ているのは「大人の科学 真空管ラジオ」である。

「大人の科学」というのは学習研究社の販売している工作キットと雑誌が一緒になった本である。

これは他にもシリーズがありプラネタリウムや卓上お掃除ロボットなんかもあって色々な種類がある。

またキットの精度も高いうえに雑誌の中身も面白いので人気がある。

 

「やってみようって言った俺が言うのもなんだがまさか本当にぴったり合うとは・・・」

 

「なんだろうと無事に直ってよかったよ」

 

そう今回は本当に運が良かったのだ。

俺はこのラジオキットの真空管を同僚のラジオに使っちまおうと思いついたのだ。

ちなみにこのキットは昔俺が作ろうと思って買って結局うまく作れなかった奴の余りだったりする。

どうでもいいか。

 

実際の所このキットの真空管が合うかどうかは運頼みだったりする。

これで駄目だったら俺は同僚を笑顔で修理業者の所に送り出していたと思う。

でも残念なことに・・・ゲフン、運のいいことにちょうどぴったり真空管が当てはまったのだ。

 

「しっかし爺ちゃんの形見とはいえこんなに古かったら直したところで何も聞けないだろうに・・・」

 

そんなことを言いながら同僚はラジオを見る。

 

「いや仮にもお前のお爺さんの形見なんだろ・・・さすがにその言い草はお爺さんがかわいそうだぞ」

 

「そうだけどなぁ・・・」

 

「それに、何も聞けないってのは間違いだぞ」

 

そう言いながら俺はラジオのスイッチを入れ周波数を調整する。

 

「あっ!前前前世じゃんか!?」

 

「どうだ驚いたか?」

 

ラジオからは人気の曲が流れ出す。

うん、ちゃんと直っているみたいだ。

 

「どうやったんだ!?」

 

「ははは、秘密はこいつだよ」

 

俺はそう言いながら小さな機械を見せる。

 

「これは・・・IPODか?」

 

「そ、IPOD。こいつをラジオのピックアップ端子につないでやればIPOD内の曲を真空管ラジオで聞くことができるんだよ。もちろん普通のAMラジオだって聞くことはできるぞ。もともとラジオは周波数があってればどんなものだって聞くことができるからな」

 

そう言いながらラジオからIPODを引き抜きまた周波数を調整する。

 

「~~♪」

 

すると今度はNHKの放送が聞こえ出した。

 

「おお!!」

 

「ラジオってのは部品さえそろっていれば聞けるからな。しかもテレビと比べて比較的安く作ることができるから戦前や戦後のものの足りなかったころにはテレビの代わりによく使われていたんだよ」

 

「へぇ」

 

「でも、復興が進みテレビやパソコンが家庭に普及していくとラジオはその姿を消していった。復興して豊かになった日本にラジオはいらなかったんだよ」

 

俺は続ける。

 

「だが近年再びラジオが評価されるようになった。阪神淡路大震災なんかの大きな災害が起こった時に他の機械に比べ頑丈で壊れにくいラジオが役に立ったんだ。そしてそれに後押しされるように再びラジオは身近な存在になって来たんだよ」

 

そう言いながら俺は同僚にスマホの画面を見せる。

 

「今はラジコっていうサービスもある。こいつがあればスマホやパソコンでラジオを聴くことが出来るんだよ」

 

「そんなのもあるのか」

 

同僚は感心しながらスマホを見る。

さてと話も長くなっちゃったしそろそろ終わるとするか。

 

「今も昔もラジオは俺たちを見守っているんだよ。その形を変えながらな」

 

「そうだったのか・・・」

 

「お前の持ってきたラジオだってかなり手入れがされてたぞ。多分お前のお婆さんがお爺さんのなくなった後もずっと手入れしていたんじゃないのか?」

 

「え!?そうなのか!!」

 

「ああ。中を見たときに気づいたんだが所どころはんだごてで直してあった部分があったぞ。多分残されたお婆さんにとってこのラジオはお爺さんの代わりだったんじゃないかな。だから今まで壊れたら自分で直してきた。でも真空管が壊れてとうとう自分で直せなくなったから孫のお前に頼んだってところだと思うぞ」

 

「婆ちゃん・・・」

 

同僚はそのまま黙る。

きっとこいつも色々と思うことがあるんだろうな。

しばらく黙った後に同僚はこう言った。

 

「婆ちゃんは寂しかったのかな・・・?爺ちゃんに先立たれて」

 

その問いに対しては俺はこう答えるしかない。

 

「さあな。でも多分お前がこの直ったラジオを持っていったら寂しくなくなると思うぞ」

 

「・・・そうだな。わかった。俺明日もう一度婆ちゃんのとこに行ってくるわ」

 

ただし、と同僚は付け加える。

 

「今度は爺ちゃんを連れてな!」

 

元気よく同僚はそう言うのだった。

 

ラジオの金属の部分が太陽の光に反射してきらりと光った。

その様子が俺にはラジオが同僚の言葉に対して返事をしているように見えるのだった。

 




薄型テレビもいいけどブラウン管テレビもいいと思うの。


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秘境

いまいち面白くないお話になってしまった・・・。
誰か私に文才をください(;_:)


「世界の秘境か・・・」

 

どうも清掃員です。今秘密基地の掃除をやっています。

定期的にやっとかないと汚れちゃうからね。

ちなみに俺以外に山田さんもいる。

 

「旅行とかに興味があるんですか?」

 

「ええ」

 

そう言いながら俺は手元の本を眺める。

掃除していたら「世界の秘境たち」という旅行ガイドブックが出てきたのだ。

表紙には広大な自然の中にポツンとある村の写真が使われている。

 

「いつかはこういうところに行ってみたいと思ってるんですよ」

 

実は世界一周旅行が俺の夢だったりする。それも転生する前からの。

特典だってそれ用にもらったようなものだし。

 

「旅行かぁ。私一度でいいからニューヨークに行ってみたいんですよ」

 

山田さんは楽しそうに言う。

ニューヨークかぁ・・・。

 

「確かにニューヨークみたいな都市にも行ってみたいんですけどね、俺としてはやっぱりこういう自然豊かな場所に行ってみたいですね」

 

もちろんネオンの輝く大都市にも行ってみたい。

だが俺としては一度でいいからグランドキャニオンみたいな広大な自然ってのを見てみたい。

どこまでも広がる台地。周りには何もないからきっと星がよく見えるだろう。

そんな星たちの下でテントを張ってたき火をしながら料理を食べる。

最高ではないかね?え、そんなことないって?悲しいなぁ。

 

「でもそれ以上に世界中の色々な人たちと会ってみたいんですよね」

 

世界は広い。それ故に色々な人たちがいる。

俺はぜひともそんな人たちと会って話をしてみたいのだ。

 

「ああ確かに、現地の人たちと仲良くなれたら楽しそうですよね」

 

「でしょ?それにきっとそういう人たちはその人たちしか持っていない知識や伝統を持っていると思うんですよ」

 

きっとこの世界にはまだまだ知られていないことがたくさんあるに違いない。

その場所でしか見れない特別なものを見に行きたいのだ。

 

「そんなのを直接見に行くのが俺の夢なんです」

 

「ふふふ、素敵な夢ですね」

 

山田さんは笑いながらそう言う。

 

「まぁそのためにもまずはたくさん働かないといけないんですけどね」

 

夢を語るのはいいのだがやはり現実は厳しい。

飛行機のチケットの代金とか現地人のガイドに払うお金・・・お金って大事だね・・・。

いかんお金のことを考えると頭が痛くなる。

 

「ははは・・・先立つものはお金ですね・・・」

 

「まったくもってその通りなんですよ山田さん・・・」

 

これでもちょっとづつ貯金はしているのだがなかなか貯まらない。

やっぱりこの仕事だとなぁ・・・。

清掃員じゃきついかなぁ。

 

「!?そ、それならここで教師になってはど、どうですか!?」

 

「気持ちはありがたいんですけどねぇ・・・」

 

山田さんの気持ちはうれしいのだが・・・。

 

「教師だと授業中に落書きをする場所が黒板しかなくて不便なんですよね。知ってます?黒板に落書きをするのって意外と腕が疲れるんですよ」

 

そこですか!?と驚く山田さんを見ながら俺はくっくっくと笑うのであった。

ま、もし本当になれるんだったらなってもいいかもな。

そんなことを思いながら俺は掃除を続けるのだった。

 

 




なお主人公は山田先生の言葉を冗談だと思っています。


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番外 大晦日

なんとか大晦日のうちに投稿できた・・・。
ちなみに話の中に出てくる轡木さん関連のお話はそのうちに投稿をいたします。


「---!」

 

テレビからは人気歌手の曲が流れている。

時は大晦日。ここは今年の春に同僚たちが作った秘密基地である。

ここって本当に何でもあるんだな。

アンテナのチューニングとか誰がやったんだろうな。

 

「いやぁ、冷えますね」

 

お隣いいですか?と言いながら轡木さんが俺の横に座る。

もちろんですとも。

 

「はぁ・・・今年ももう終わりですねぇ。・・・今年は色々ありましたねぇ」

 

はぁ、息をつきながら轡木さんは

 

「いやはやその節は本当に申し訳ない次第です・・・」

 

「ははは、別に怒っていませんよ。むしろこんなにわくわくした一年は初めてです」

 

そう言いながら轡木さんは楽しそうに笑う。

いやしかし本当にこの人には迷惑をかけてしまった・・・。

本当によくもまぁ色々な無茶に付き合ってくれたなぁ。

 

「ただし、来年はもう少し考えて行動してくださいね」

 

「善処します」

 

轡木さんに釘を刺されてしまった。

まぁ俺自身は心がけようと思うんだけど・・・。

他の人たちがなぁ・・・。

主に同僚とか織斑さんとか山田さんとか、うんこりゃ来年も迷惑を掛けちゃうな。間違いない。

 

「ははは、ま、私も覚悟はしていますから安心してください」

 

「お見通しですか・・・。まぁその、来年も苦労をお掛けします」

 

「ええ、もちろんです。どんと来いってやつですよ」

 

「ははは・・・」

 

そう轡木さんは言ってくれるのだが俺は苦笑いをするしかない。

そんな俺の様子を見たのか轡木さんが話を変えてきた。

 

「ところで異性との付き合いとかはどうなんですか?」

 

「!?!?」

 

いや他の話にしてももっと何か他の話があるでしょ!

なに、何でよりによってそんな話を振ってくるんですか轡木さん!!

 

「で、どうなんですか?山田さんですか?それとも織斑さんですか?いやまさか両方とか?いやぁ若いっていですねぇ」

 

にやにやしながら轡木さんがそう言ってくる。

待って待ってなんでその二人?なんで限定しちゃうのさ!?

ほ・・・他の人も・・・いないよ!デブの俺に女性の知り合いなんてほとんどいないよ!

いたとしても平均年齢が五十越えだよ!

 

「いや・・・その・・・こんな俺に付き合いなんてあるわけありませんよ」

 

「おやぁ、その割には山田さんとかとはよく一緒にいるじゃないですか。ほらほらどうなんです?今年は私にいっぱい迷惑かけたんですからこれぐらいは聞かせてもらわないと」

 

「いや、そう言われましても・・・」

 

「じゃぁ付き合うならどっちのほうなんですか?」

 

「えぇ!?」

 

何言ってんだこの人は。ひょっとしてもう酔っているのか?

そうだよなそうなんですよね!?

 

「まだ酔ってませんよ。一杯も飲んでいないですからね。で、どうなんですか?どっちと付き合いたいんですか?」

 

さあさあと轡木さんが迫ってくる。

いやいや、こんな俺が付き合えるわけないですし。

 

「だから仮定の話なんですよ。安心してください。この私あなたの答えは墓まで持っていきますよ。なぁにもうすぐのお話ですし」

 

で、でたー老人特有の笑えない冗談。

いやでもなぁ・・・。

 

「その本当に誰にも言いませんか?」

 

「ええ、もちろんですよ。さあさあ行って御覧なさい」

 

「あくまでも仮定の話ですからね?」

 

「ええ、もちろん分かっていますよ」

 

ううん・・・。しょうがない。ここは言うしかないか。

 

「そうですねぇ、付き合えるんなら・・・」

 

その瞬間ドアが開いて、

 

「入るぞ」

 

「こんばんわぁ~」

 

山田さんと織斑さんが入ってきた。

 

「!?・・・ぐへっ!」

 

いかん、びっくりしてむせてしまった。

てかなんでちょっと残念そうな顔をしているんですか轡木さん!

 

「ふぇぇ!?だ、大丈夫ですか!?」

 

心配そうに山田さんが駆け寄ってくる。

うん、大丈夫大丈夫。モーマンタイ。

 

「まったく、焦りすぎだ。ほら年越し蕎麦を持ってきたからみんなで食べるぞ」

 

そう言いながら織斑さんは手に持っていたビニール袋から蕎麦を取り出す。

 

「あ、そういやまだ年越し蕎麦を食べていなかったな・・・」

 

忙しくて忘れてた。

うん、やはりこれがなきゃ年は越せないよな。

 

「おお、これはまた何ともおいしそうなお蕎麦ですね」

 

轡木さんは蕎麦を見て嬉しそうに言う。

この人も蕎麦を食べてなかったのかな?

 

「えへへ、頑張って私たちで作ったんですよ!ちょっと失敗して麺の長さがばらばらになってしまったんですがね・・・」

 

「すみません、その麺を作ったのは私なんです・・・」

 

そう言いながら織斑さんは申し訳なさそうに轡木さんに謝る。

あれ、俺には?ねぇ俺には謝らないの?

 

「なぁに、構いませんよ。ですよね?」

 

「あ、はい。俺も別に気にしませんよ」

 

別に食べれるのなら特に気にしないのが俺の主義だ。

俺たちの言葉を聞いて「そうか・・・」と一言だけ織斑さんは反応するのだった。

それはいいんだけどさ、

 

「早く食べないと今年が終わっちゃいますよ?」

 

時が立つのは早いもので今年が終わるまであと十分だ。

時間がたつのは早いな。

俺の言った言葉に山田さんが慌てふためく。

 

「た、大変。さあさあ早く食べちゃいましょう!このままだと本当に年越し蕎麦になっちゃいます!」

 

「お、おう!?」

 

慌てる山田さんに急かされながら俺たちは蕎麦を啜るのだった。

急いで食べる麺の不揃いな蕎麦は普通の蕎麦よりもはるかにうまく感じたのだった。

時刻は間もなく深夜零時。今年が終わるまでもうすぐである。

 

なお蕎麦を食べ終わった後に轡木さんと織斑さんから年越し蕎麦は大晦日のうちに食べなくてもよいものだと聞かされて山田さんが「えぇ!?」と驚くのは別のお話である。




皆さんは年越し蕎麦は食べましたか?
今年はざる蕎麦を食べました。
それではまた来年に会いましょうね!!


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番外 宝探し

キャラ崩壊注意です。


「まったく、何でゴミが増えてるんだ・・・」

 

「そんなこと俺が知るかよ・・・」

 

やあみんな。清掃員だ。

今は以前に三郎と共に掃除した例のゴミ山に来ている。

しかしながら三郎と共にかなりの量のゴミを片付けたはずなのだがなぜかゴミが増えているという・・・。

いったい誰が捨ててるんだよ。

おかげさまでまたここを掃除する羽目になってしまった。

ちなみに今回は同僚と一緒だ。

 

「あ~ぁ、どうせなら宝の地図でも出てこないかなぁ」

 

なんか同僚がまた変なことを言っている。

あほか、こんなゴミ山の中にそんなものがあるはずないだろうが。

 

「そんなん無いから・・・「あった」・・・へ?」

 

見ると同僚は何か小汚い紙を手に持っていた。

 

「ほらほらこれ見ろよ!!」

 

同僚が俺に押し付けてきた紙を見ると「たからのちず(はぁと)」と書いてある。

いやなんだよ(はぁと)って。

てか宝の地図ぐらいちゃんと漢字で書けよ。

 

「いや絶対それ偽物だろ・・・」

 

うさんくさすぎる。

まぁさすがのこいつもこんなものは信じないはず・・・。

 

「よっしゃ宝探しじゃい!」

 

「いや信じるんかい!?」

 

ああ駄目だこの目は。

すっごい純粋な子供の目をしてる。

俺この目を知ってるよ、秘密基地の時に見たよ。

 

「さあ行くぞ!」

 

そう言いながら同僚は俺を引っ張って行った。

いや、

 

「だから俺を勝手に巻き込むんじゃねぇ!?」

 

*****

 

「てなわけで結局来てしまった・・・」

 

ハローみんな、私清掃員。今海の上にいるの。

 

「ふむ、ここに宝は眠っているのか」

 

「みたいですね」

 

そして俺の前で真剣な顔で話し合う二人。

いやさなんでここにいるのさ織斑さんと山田さん。

 

「きっと皆さんストレスが溜まっていたんじゃないですかねぇ」

 

「いやそれ以前に同僚を止めてくださいよ轡木さん・・・」

 

いいじゃないですか、と笑いながら船を操縦する轡木さん。

絶対この人この状況を楽しんでるよな。

それはともかく、実は今回も以前の秘密基地同様真っ先に同僚が向かったのがこの人の所だった。

同僚曰くこの人なら何とかなるんじゃないかって思ったそうな。

いやその考えはおかし・・・くもないか。

実際に何とかなったし。

 

ちなみにたからのちず(はぁと)によれば宝は崖の下の洞窟の中にあるそうな。

ほんまかいな・・・。

 

なおその場所は海からでしか行けなかったので轡木さんの所有するクルーザーで行くことになった。

轡木さんってドラえもんかなにかですか?

轡木さんはチート(確信)。

 

「よし!探検隊しゅっぱぁ~つ!!」

 

「「おお!」」

 

同僚の掛け声とともに俺たちの宝探しは始まるのだった。

俺?掛け声なんてやらずにため息を漏らしてたよ。

いってなかったが今回も休日の日にやってるからね?

俺の貴重な休みの日が潰れたんだからね?

 

*****

 

「うわ、滑りやすい・・・」

 

洞窟の中はコケみたいなのが生えててすごく滑りやすかった。

さっきから何度転んだことか・・・。

 

「そこは滑りやすいので気を付けてくださいね」

 

俺の少し先を行く山田さんが危ない場所を言ってくれる。

この人のおかげで滑る回数がかなり減った。

 

「了解しまし・・・たあっ!?」

 

減るだけだけどね・・・。

 

「まったくそんなことでは一人前のトレジャーハンターになれないぞ?」

 

やれやれと言いながら肩をすくめる同僚。

うるせぇもとはと言えばお前のせいなんだぞお前の!。

 

「あいててて・・・。そういやなんで織斑さんと山田さんまで来ているんですか?」

 

今更だけどなんでこの人たちはここにいるんだろうか。

ちなみにここにいるのはこの二人と同僚と俺の合計四人である。

轡木さんは船でお留守番中だ。まぁあの人ももういい年だもんな。

 

「まぁ・・・その、息抜きですよ。はは」

 

山田さんが苦笑いしながら答える。

 

「学年別トーナメントでバカ者どもが騒いでな・・・そのせいでストレスが溜まっていたんだ」

 

山田さんに続いて織斑さんも答える。

 

「ああ・・・納得」

 

昨日学年別トーナメントのあったアリーナを見に行くことがあったんだけどものの見事にアリーナが消滅してた。

何があったんだろうな・・・。

 

「残念ながらそのことに関してはドイツの極秘情報が含まれるから教えることは出来ん」

 

険しい顔をしながら織斑さんが答える。

ああドイツか。なんかわかったわ。

大方ラウラちゃんのISでも暴走したんだろうな。

で、それを止めるために他の転生者たちが・・・って所か。

流石は神様特製のIS。アリーナを跡形もなく消すなんてすげぇわ。

 

「お!ここみたいだぞ」

 

銭湯にいた同僚が何か見つけたようだ。

 

「まじであったのかよ・・・」

 

見ると俺たちの目の前には巨大な石の扉があった。

相当古いものなのだろうなんかもう神々しさというか神秘的な何かをまとってた。

ただ、

 

「なんだよ・・・『あけちゃだめよん♪』って・・・」

 

扉にほられている文字のせいで神々しさもなんもあったもんじゃないがな!

 

「よし、開けるぞっ・・・!」

 

「「ごくり・・・」」

 

いやあんた等無視ですか、文字のほうは無視なんですか!?

 

「「おおぅ」」

 

扉を開けるとその奥には台座のようなものがあった。

そしてその台座の上には赤色の大きな宝石が置かれてあった。

え?この宝の地図ってマジもんだったのかよ!?

 

「お宝だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その宝石を見るや否や同僚が叫びながら走っていく・・・。

おい待てなんだこのフラグの予感は。

 

「アウチっ!」

 

宝石まであと一歩の所で天井から石の壁が落ちてきた。

あ~ぁ、やっぱり罠だったよ。

 

「な、なんだよこの壁!」

 

「み、見てください!後ろにも壁が!」

 

山田さんが言うとおり前だけではなく後ろにも壁が降ってきた。

 

「閉じ込められたな。・・・ふっ」

 

いや織斑さんはなんでそんなに余裕そうなんですか?今の状態ってかなりやばい奴ですよ?

 

「これしきの壁が壊せずして何が世界最強かっ!!」

 

そう言いながら織斑さんが素手で壁を壊そうとする。

いやいやさすがに無理でしょ。

 

”ボゴンっ!!”

 

と音を立てながら壁が崩れていく。前の壁をぶち壊した勢いのまま後ろの壁も壊す織斑さん。

すげぇ・・・。

 

「さあさっさと宝を取って帰るぞ!」

 

ヤバイ、織斑さんがカッコイイ。

今度から姉御って呼ぼうかな。

 

「ほう、そんなことを言ったらどうなるかわかっているんだろうな・・・?」

 

「止めときます・・・」

 

やばかった。今目が完全に笑ってなかったよ・・・。

 

「よっしゃぁ、これで俺も億万長者!!」

 

そんなことをしている間に同僚が宝石を手に入れたようだ。

よし、今回は早かったな。まだ始めてから一時間しかたっていないぞ。

これなら家に帰ってゆっくりできるな。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」

 

「お、オオダコだぁ!!」

 

・・・フラグ立てなきゃよかった。

 

宝を取られたことで怒ったのか全長十メートルはあろうかという巨大なタコが台座の奥からこちらへ迫ってきた。

 

「どどど、どうしましょう!?」

 

「落ち着いてください山田さん。俺たちには織斑さんという心強い味方が・・・」

 

「た、タコだけは駄目だ・・・うーん、バタン」

 

「織斑さぁぁぁぁんっ!?」

 

待って待ってなんでこのタイミングで倒れるのさ!?

あれか!俺がフラグを立てたからか!?

とにかくやべぇ!織斑さんが使えない以上俺たちにできるのは・・・、

 

「に、逃げろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「ま、待ってくださ~い!」

 

「あ、おいみんな待ってくれぇ!」

 

その日洞窟の中では巨大なタコに追いかけられる世界最強を背負った太った男と胸を盛大に揺らしながら逃げるメガネの女性と赤い宝石を抱えて走る男の姿が見えたという。

 

*****

 

やあみんな。清掃員だ。

あの後俺たちは無我夢中で走って逃げた。

今回の出来事で学んだのは怪しいものには手を出さないことその一転に限るだろう。

しかしながら人間というものは欲が強い生き物だ。

果たして次にかような出来事があった時俺たちは自分の好奇心に打ち勝つことはできるのだろうか?

いや、そんなことを考える必要はないのかもしれない。

だって、

 

「や、山田さんそっち押さえて!!このままだと壁が破られる!!」

 

「は、はい!!」

 

「うーん、タコは、タコはぁっ!!」

 

「もう駄目だぁ・・・お終いだぁ・・・」

 

洞窟の中に入ってからすでに八時間、俺たちは未だに洞窟の中にいるのだから。




まんまパトレイバーのワニ回のお話でしたね・・・。
ぱ、パクリじゃないですよ!オマージュですよ!この話をどうしても書きたかったんです!
次回は原作でいうところの臨海学校のお話の予定です。
多分次でアニメの一期分が終わるんじゃないかなぁ・・・。
ひょっとしたら次で一区切りつかせるかもしれません(・ー・ )


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番外 山田真耶の悩み2

まさかの番外三連続。
お正月だからね仕方ないね。
そして久々の十一時投稿。


「「作文!?」」

 

「はい♪」

 

こんにちわ皆さん、山田真耶です。

清掃員さんに言われたアドバイスを今日になってやっと実行することが出来ます!

いや~この時間を作るのがどれだけ大変なことだったか・・・。

あらかじめ決まってあるカリキュラムを変えるのってすごく大変なんです。

いったい何人の先生方に頭を下げたことか・・・。

ともかくなんとか時間を作ることが出来たのでよかったです。

ですが、

 

「作文かぁ・・・」

 

「なんかダサいよねw」

 

「センセー!あたしたちはもう高校生ですよ。今更作文を書くんですか?」

 

「作文とか・・・ダリィ」

 

生徒の反応がまったくもってよくありません。

どうしましょう・・・。

 

「み、みなさん。作文だからと言ってバカにしてはいけませんよ?」

 

せっかく頑張って時間を作ったんです。

こんなところで心が折れてはいけません!

 

「作文とかw山ちゃん俺を何歳だと思ってんの?」

 

私のことを山ちゃんと言ってくるのは一番後ろの窓側の席に座る男子生徒。

晴男 ハレオ(はれおとこ はれお)君です。

うう、私この子苦手なんですよね・・・なんか見た目がヤンキーみたいでおっかないんです。

でも不思議なことにこの子ってすごくモテるんですよね。

こう言ってはなんですが私としてはこの手の男の人よりも清掃員さんみたいな人のほうがずっといいと思います。

誠実そうですし。

 

「ヤマダセンセイヲイジメルヨクナイ」

 

片言でしゃべるのはナ・ルイシスト君です。

以前はもっとこうお坊ちゃんな感じだったんですけどいつの間にか片言でしゃべるようになっていました。

なにかあったんじゃないかと思って本人に聞いてみたんですけど「ワタシガワルイノデス。アナタワルクナイ」との一点張りで・・・。

というか心なしかちょっと退化しているような・・・。

 

「ふむ、兄様よ作文というのはなんだ?」

 

「作文はね愛しい妹のかわいい場所を書き連ねていくものなんだよハアハア」

 

「違いますからねエメリッヒ君!?」

 

ラウラちゃんに対して危ない息遣いをしているのはラウラさんのお兄さん?にあたるエメリッヒ・バルクホルン君です。

彼を一言で説明するのなら男版織斑さんです。

 

「はぁ・・・まぁたまには作文を書くのもいいかもねぇ・・・ほわぁ・・・」

 

「心構えは結構なんですけどね授業中に眠らないでくださいね青磁(せいじ)君?」

 

グースカピーと寝ているのは篠ノ之 青磁君です。

この子ってすごく頭がいいんですけど授業中によく寝るんですよね・・・。

いつも目の下にクマを作っているんですけど体のほうは大丈夫なんでしょうかすごく心配です。

 

「このバカ兄が!授業中に眠るんじゃない!!」

 

「うぇ~だって昨日は遅くまで束姉に付き合わされたんだよぉ・・」

 

箒ちゃんが頑張って起こしてくれようとしているのですが青磁君はびくともしません。

ちなみに青磁君って他のみんなよりも二歳年上なんです。

しかもなんとあの篠ノ之 束と結婚しているそうなんですよ!!

一応戸籍上は結婚できる年齢なんですけど道徳的にどうなんでしょうかね・・・?

 

「それで何の作文を書くんですか?」

 

「聞いてくれましたか織斑君!!」

 

ようやく、ようやくこの質問が来ました!

ありがとう織斑君!!その質問を待っていたんです!!

 

「作文のテーマはずばり、『ISを使ってどんなことをしたいか』です!!」

 

「「どんなことをしたいか?」」

 

「はい!あなたたち一人一人が専用のISを持っていると仮定します。そのときのあなたたちは何の権力にも縛られていない自由な状態です。そのような状態の時にISを使ってどんなことをしたいのかまたはどんなことをするのかを書いてください」

 

「せんせー質問。ISは打鉄?」

 

「ISの種類はどんなのでも構いませんよ。それではみなさん書き始めてください」

 

「「はーい」」

 

ふう、何とかみんな書き始めてくれました。

良かった良かった・・・。

 

*****

 

「・・・」

 

「何々、ISを使ってしたいこと。世界征服、宇宙遊泳、火星まで行って火星人を捕まえる、アポロ十一号の横にお菓子のアポロを置きに行く、ISをかわいくファンシーにメイクアップさせる、ハイパーセンサーを使って盗撮する・・・大変だったな山田君・・・・」

 

どうしてこうなった!?

 

「うぅ・・・私って教師に向いてないんでしょうか・・・?」

 

「そ、そんなことはないぞ山田君っ!!君は立派に教職を務めてくれたのだ。今回のことはISというものをろくに理解していないあいつらのほうが悪いのだ!!」

 

「でも、青磁君の作文を見てくださいよ・・・」

 

「なになに・・・『雲の上で寝る』・・・あのバカが・・・」

 

まったく、と言いながら織斑先生が頭を抱える。

ちなみに青磁君って束博士と共同でISを作ったそうです。

はぁ・・・。

 

「いや・・・その・・・悪かった・・・」

 

「いえいいんです・・・。だってまだ始めたばかりですからね」

 

そう、まだ私の戦いは始まったばかりなのだ。

たとえ今回がうまくいかなかったとしても次を重ねていくごとにきっとみんなのISに対するイメージが、考え方が、幅広く、そして変わっていくはずだ。

そしていつのかISを軍事以外のことで使おうと考えるようになってくれるはずだ。

だからその日が来るまで私は絶対に負けないし泣かない!

 

「ちょっと今日は秘密基地のほうに行ってきますね・・・」

 

「ああ、君の分の仕事は私がやっておこう」

 

「ありがとうございます織斑先生・・・」

 

「気にするな。存分に愚痴をあいつに吐いて来い」

 

でも、今日ぐらいは泣いてもいいですよね?

 

「それじゃぁさっそく清掃員さんに連絡しとかないと♪」

 

そう言いながら私はケータイを取り出す。

多分あの人のことだからよほどのことでもない限り断ることはないだろう。

さっそく今日の夜に飲みませんかとメールを送る。

 

「あ、返信来ました!OKだそうです!」

 

「そうか。良かったな」

 

えへへ、さあて今日は思う存分にカウンセリングをしてもらうぞー!

今日の夜が楽しみだなぁ。

清掃員さんと話すとすごくすっきりした気分になるんですよね。

あの人ってすごい聞き上手なんですよね。

しかもアドバイスまでくれるし。

本当にあの人には感謝しないといけませんね。

 

時刻はお昼。まだまだ時間は残ってるなぁ、なんてことを私は冷房の効いた職員室で考えるのでした。




このシリーズはどこまでやるべきか・・・。
一応もうすぐでアニメ一期の分が終わる予定なんですよね。
二期までやるべきか否か・・・。どうしようかなぁ・・・。
一応次の作品のネタとしてFateの二次創作を考えているんですけどね。


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テレビ

騙された大賞は面白かったと思う(小並感)
作中に出てくるドッキリ番組は架空のものですので現実のものとは一切の関係がないことをここに明記しておきます。


「そういや昨日のドッキリのやつ見たか?アレ酷かったよなぁ」

 

「ドッキリ大賞だったか?少ししか見てないが最悪だったな」

 

やあ、清掃員だ。今日もまた同僚と共に掃除をしている最中だ。

 

「いやしかしあのドッキリはないよな」

 

さっきから同僚が行っているドッキリ番組は「ドッキリ大賞」という大手テレビ局のやっているドッキリ番組だ。

最近始まった番組なのだが視聴率が良くないのか回を重ねるごとにやることが極端になってきている。

確か昨日やってたドッキリは某大物女芸人を怒らせたっていうやつだったかな。

 

「まぁ世の中やっていいことと悪いことはあるからな」

 

ちなみにそのドッキリを仕掛けられた芸人さんは本当に顔を青くしていたらしい。

 

「けどよぉ、何であんなのが受けると思って番組側は作ったんだろうな?正直言ってあんまりおもしろくなかったな」

 

同僚が不思議そうな顔をしながら俺に聞く。

 

「それはスポンサーの問題だな」

 

「スポンサー?」

 

「そ、スポンサー。今のテレビって大体に複数のスポンサーがついてるんだよ。でだ、やっぱりスポンサーと言ってもビール作っている所だったり車作っている所だったりといろいろあるわけよ。そうなるとこの番組のスポンサーになってよかったかどうかの判断材料もそれぞれで違ってきちまうんだよ」

 

「それがどうして面白くない番組につながるんだよ?」

 

「テレビ局側もスポンサー側も判断材料が異なったら大変だろうが。だから全員が共通してわかるようなシステムを作ったんだよ。それが視聴率だ」

 

「あっ!なるほど。だから番組はいつも視聴率を気にしているのか」

 

同僚は納得した表情で手をポンとたたく。

 

「でもそれでも面白い番組は作れるんじゃないのか?」

 

「そうともいかんのよ。やっぱり番組側としてはスポンサーの機嫌は損ねたくないわけであってそうなると安定した視聴率を求めてくるわけ」

 

多分最近のテレビが面白くないなぁと感じるのはこのあたりが原因なのではないだろうか。

 

「で、安定した視聴率を得るにはどうするべきか?答えは簡単。一度受けたネタを使えばいいわけよ。たとえば必ず一定の視聴者がいるであろう食べ物系の番組とかな」

 

「ああ!だからどれもこれも前に見たような内容になるのか・・・」

 

「その通り。言っちまえば使いまわしだからな。だから同じような番組ばっかりできてマンネリ化してつまらなくなる。食べ物だけじゃないぞ。バラエティだってそうだぞ。やたら人気の某男性アイドルグループとかを使いたがるのは一定のファンが必ず見てくれるからだぞ。テレビだけじゃないぞ。ラジオだって映画だって似たようなもんだ」

 

「同じような芸人ばっかり出るのはそんな理由だったのか・・・」

 

まぁ他にも色々と大人の事情とかがあるのだろうが。

しかしながら大まかにいうならこんなものではないだろうか。

 

「細かく言っていくときりがないからこのあたりでやめておくがやっぱりスポンサーに配慮しないといけないから自由な番組作りが出来ないんだろうな。特に多くの人が見るバラエティではな」

 

実を言うとテレビ番組の中で最も人気の高いものはドキュメンタリーだったりする。

多分あらかじめ内容がしっかりと定まっていることとたくさんの予算と取材を重ねることが出来るからではないだろうか。

もっとも俺の勝手な推測ではあるが・・・。

 

「なるほどなぁ。最近のテレビが面白くないのはスポンサーのせいなのか」

 

「まぁ・・・そうとも言えるな。ただやっぱりテレビはスポンサーあってのものだからな。しょうがないと言えばしょうがない」

 

「でもちょっとスポンサーを意識しすぎなんじゃないのか?」

 

同僚は未だに納得しない顔で言う。

規模がデカいからないまいち実感がわかないか。よし同僚にもわかるように言ってやろうじゃないか。

 

「テレビ局は平社員でスポンサーがそいつの務めている会社な。で、スポンサーの出すお金がそいつのお給料だ。その給料はそいつが仕事でミスをすると減ってしまう。だからそいつは給料を減らしたくないために絶対にミスをしたくない。そのためミスの起きない仕事ばかりするようになる。これで理解したか?」

 

「凄く納得したわ・・・」

 

物凄く苦い顔をしながら同僚は言うのだった。

その顔からして似たようなことをしたんだろうなぁ・・・。

 

「俺ちょっとテレビ局の気持ちがわかったわ・・・」

 

この日以降同僚はテレビに対してちょっとだけシンパシーを感じるようになったそうだがそれはまた別のお話である。




ドラマだったら昔でNHKやっていた「ドクター・フー」がすごく好きでした。
他にも「フルハウス」なんかもやっていましたよね。
またNHKでやらないかなぁと思っているんですけどいまだにやってくれないという・・。


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ゴンザレス

ゴンザレスさんの服のセンスはボロボロ。
今回の話は調子が悪くて・・・スルーしてもらえるとうれしいなぁって。


「モ、モシモシチョトイイデスカ?」

 

「はいっ?」

 

ご機嫌麗しゅうみんな。俺だ清掃員だ。

俺が掃除をしていたらなんかすごく怪しい金髪の外国人が話しかけてきた。

なんかちょっと緊張してるようだ。

 

「あの、それで俺に何か用ですか?」

 

「オ、オーシツ、レイ。セッシャハゴンザレス石壁トイイマスゥ・・・」

 

「ご、ゴンザレス石壁・・・?」

 

なんだよその怪しさ満点の名前は。

あれか芸名か。

 

「ワ、ワタシコノガッコノセンセイ。ミチニマヨッテシマタノデス。ミチオ、オ、オシエテクダサイ」

 

「道にねぇ・・・本当にこの学校の先生なんですか?」

 

どっからどう見ても怪しい人物にしか見えない。

仮にハーフだったとしても石壁なんて言う名前は聞いたことがない。

そんな名前があったとしても見た目が怪しくてアウトだな。

 

ゴンザレスと名乗った男の格好はなんというか数十年前のアメリカ人をそのまま持ってきたような感じだ。

それもステレオタイプの。

なんか赤と白のシルクハット?をかぶっていてサーカスの団長が着ているような服を着ている。

そして極めつけにステッキを持っている。

 

うん、怪しい。教師かどうか非常に疑わしい。

 

俺が怪しむようにしてゴンザレスを見ると、

 

「ソ、ソーイエバキ、キョウハイイテンキデスネ。トコロデアナタハカミヲシンジマスカ?」

 

なんかすごく露骨に話を変えてきた。

しかもものすごい量のあせもかいているし。

 

「神は都合のいい時だけ信じてるよ。で、あんた誰だよ。少なくともこの学校の教師じゃないだろ。今ならまだ見逃してやるからさっさと帰った方がいいぞ」

 

割とこの学校は不法侵入者に対して厳しい。

この間も「お、織斑様のファンなんですぅ・・・ふひっ」って言ってこの学園に乗り込もうとした奴がいたのだがそいつは問答無用でスタンガンを浴びせられて気絶してた。

 

さすがに何の警告もなしにそんなことをするのはどうかと思うんだがなぁ。

そいつはスタンガンを浴びた瞬間白目をむきながらオウオウと音を出してのたうちまわっていた。

えぐすぎやしませんかねぇIS学園さん。絶対あれ人に流していい電気の量じゃなかったでしょ。髪の毛が少し焼けてたし。

ま、自業自得ではあるが。

 

そんなことより今は目の前のこの怪しい外国人である。

俺としてはこの外国人に同じ目にあってもらいたくないから今の言葉を言ったのだが、

 

「ソ、ソンナコトナイヨ!ワタシホントニココノキョウシ!シンジテ!!」

 

「いや、でもなぁ・・・」

 

「あ!ここにいたんですかゴンザレスさん!!」

 

山田さんが息を切らしながら俺たちの間に割り込んできた。

え?本当に教師なの?

 

「すみませんご迷惑を掛けちゃって」

 

山田さんが頭を下げてくる。

 

「それは構いませんけどひょっとしてゴンザレスさんって本当にここの教師なんですか?」

 

「はい、今月来たばかりの人なんです。今日が初めての授業だったんですが・・・ゴンザレスさんは極度の人見知りでして・・・授業中に逃げ出したところを追いかけてきたんですよ」

 

「スミマセン・・・ミンナノシセンガチョット・・・ソノハズカシクテ」

 

若干照れながらゴンザレスは言う。

いやしかし正直言って驚いた。

少なくとも俺の目には教師には見えなかったからなぁ。

 

「ゴンザレスさんにはとんだ失礼をしてしまって・・・すいません」

 

「イ、イエ。ヒトト・・・ハナシナレテナイワタスガワルイデス」

 

そう言いながらゴンザレスさんは少しだけ笑う。

まぁ悪い人ではないのだろうな。多分だけども。

しかしながら人は見かけによらないものである。

今度からは見かけで判断しないようにしなければ・・・。

 

ゴンザレスを見ながら俺はそんなことを考えるのだった。

 

*****

 

「ところで山田さん。ゴンザレスさんの担当教科ってなんなんですか?」

 

「あぁ、古典ですよ」

 

「へ?」

 

まったくもって人は見かけによらないものである。

 




次と次のお話でアニメ一期分を終わらせたいなぁと思っています。
一応二期のほうまでやるつもりです。(・ー・ )


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自動運転

次回と次々回でIS一期分は終わるといったな、あれは嘘だ。
自動運転の車、早く出ないかなぁ~。


「うおお、すげぇ・・・デカいな・・・」

 

ブォオンと大きなエンジン音を立てながらダンプトラックが俺たちのそばの道路を走っていく。

その巨体はまさに現代の恐竜と言えるだろう。

巨大な体を震わしながら土を運んでいく姿を同僚はあっけにとられた様子で眺めている。

 

「あれはコマツの無人ダンプトラックだな」

 

「えっ!?アレ無人なのか?」

 

俺の言葉に驚きながら同僚が反応する。

 

「ああ、ちなみにあのダンプカーはコマツの誇る世界最大のトラック「930E-4」だな」

 

なおダンプカーでもダンプトラックでも意味はほとんど同じだ。

どっちを使ってもいい・・・と思う。多分な。

ダンプは確か巨大って言う感じの意味だったかな。

 

「でもあんなデカいのをどうやって無人で動かしているんだ?あらかじめプログラムでも作っているのか?」

 

「まさか、「フロントランナー」を使ってるんだよ」

 

「フロントランナー?」

 

「フロントランナーっつうのはコマツが作った無人運行システムのことだよ。高精度GPS位置情報システムとか光ファイバージャイロとかのまぁ最先端技術を使った高性能なシステムで単に土砂を運ぶだけじゃなくて積むことだって可能なんだぞ。しかも走行中に目の前に障害物があったら自動で避ける優れモノなんだよ」

 

「へぇ、勝手に避けてくれるのか。でもなんかメリットはあるのか?別に人間が運転しても問題ないだろ」

 

「ところがそうでもない。ダンプカーって一般の車に比べてとにかくデカい。だから普通運転するときは運転席に一人。前にあるベランダみたいなところからあたりに障害物がないかを見渡すのに二人。そいつらとは別に駐車するときに誘導するのに二人。合計で四、五人は人間が必要なんだわ」

 

「うわっ・・・さすがダンプ。けた違いだな・・・」

 

「こんなのが鉱山では何台も動いているんだぞ、人件費だってバカにならないんだよ。でもフロントランナーを使えば人件費は一切かからないからな。その分の金をよそに回せる」

 

「な、なるほど・・・・」

 

同僚はダンプのけた違いのスケールの大きさに驚いているようだ。

まぁ無理もないか。

 

「ちなみにこのシステムはすでにチリとオーストラリアの鉱山で実際に導入されている。確かチリのほうはもう本格的な導入を始めていたはずだぞ」

 

「もう使われてるのか」

 

「ああ、それに基本的にダンプカーの使われる場所は砂漠や山なんかの過酷な環境下の場所が多い。だから鉱山開発は人材の集まりにくい。だがこのシステムがあれば・・・」

 

「その心配もないってことか」

 

その通りである。

またこのシステムはすでにダンプカー以外の重機にも使われている。

それらの重機たちも随時現場に導入していくそうだ。

 

「今の建設業は不景気の影響で伸び悩んでいる。けどこの技術を発展していけば近い将来過酷すぎて開拓されてこなかった荒れ地の開拓もできるようになるかもしれん」

 

そうなれば日本のメーカーにとって荒れ地開拓は新たなビジネスになるかもしれない。

この技術は日本の建設業の関係者にとっての追い風になるかもしれないのだ。

 

「それにダンプだけじゃないぞ。今大手メーカーが競い合いながら開発を進めている自動運転の技術にも応用できるかもしれないからな。このフロントランナーはその先駆けだよ」

 

そんなことを話している間にもう一台ダンプカーが走っていく。

そのダンプカーの姿を見ながら同僚は言う。

 

「自動運転の車かぁ・・・俺の免許も無駄になっちまうな」

 

「だな」

 

そんなくだらないことを言いながら俺たちは笑いあう。

俺たちのそばをまたダンプカーが通った。

無人のダンプカーの出すエンジン音が俺たちには未来に向かう音に聞こえたのだった。

自動運転の車が出るまであと少しなのかもしれない。




ダンプカーが通れる道路なんてIS学園にないと思ったあなた。
どうかその思いは胸の内にとどめておいてください。

実際にダンプカーを動かすには四、五人は必要なのはわかっているのですがいまいち誰がどんなことをやっているのかまではわかりませんでした・・・。
話しの中に出てくる役割は私の想像ですので実際とは異なると思います。


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清掃員教師になる [前篇]

間違えて途中で投稿してしまった・・・。

コメントなどでありましたが皆様の意見はほどほどに取り入れていく次第です。
なお今後この物語はIS要素が増える予定ですが具体的にどれくらい増えるのかと言いますと今の状態が無糖ブラックのコーヒーだとすると今後は微糖のコーヒーになる予定です。


「お、帰って来たな」

 

俺が駅近くの場所を掃除していると駅から大量の学生が出てきた。

おそらく臨海学校から帰ってきたのだろう。

 

みんな疲れているのか一言もしゃべらずに寮のある方向へ歩いていく。

うんうん、やっぱりこういうのの最終日ってみんな疲れるもんだよな。

もっともみんな心の底から疲れているような顔をしているけど。

特にひどいのは男子生徒たちだな。

男子生徒はみんな何かしらのけがを負っているようだ。なんか腕に包帯とかを巻いている。

 

おそらくはシルバニオ・ゴスベル?だったか。

・・・シルバニアだっけ・・・いかん度忘れしたな。

まぁ多分暴走したISと戦ったんじゃないかな原作みたいに。

 

一番怪我が酷いのはいかにもなヤンキーの男でその次が我らが主人公の一夏君。

ヤンキー君のほうは・・・確か凰鈴音(ふぁん・りんいん)って言ったかな、ツインテールの女の子が体を支えてあげながら一緒に歩いてあげている。

一方の一夏君は箒ちゃんが体を支えてあげている。

 

男子以外の専用機もちたちも大なり小なり何かしらのけがをしているようだ。

あれ、そんなにゴスベルって強かったのか?

小説とか読む限りはめんどくさい相手っていう感じの印象しかなかったが。

 

そんなことを俺が考えているとものすっごくやつれた様子の織斑さんが俺に気づいたのかこっちへやって来た。

 

「・・・ちょうどよかった。お前に一つ頼みがあるのだが・・・聞いてもらえるか?」

 

「へ?・・・まぁ構いませんけど」

 

「助かる・・・はぁ・・・」

 

ここじゃなんだからと言って俺は織斑さんに連れられて例の秘密基地へと向かうのだった。

 

*****

 

「・・・ということがあってな」

 

「それはまた・・・大変でしたね・・・」

 

あの後秘密基地で織斑さんは俺に臨海学校で起こった出来事について話してくれた。

 

で、その内容をかいつまんで話すと、

 

まず臨海学校二日目にISの生みの親である篠ノ之 束(しののの たばね)が夫の篠ノ之 青磁に会うためにいきなり空から降って来たらしい。

 

・・・うん、どういうこっちゃねん。ちなみに青磁君は束さんの実の弟なんだそうで。

これがブラコンか・・・。恐ろしいな。

 

で、束さんは箒ちゃんに新しいISを渡したらしい。

本人の言っていたことによると第六世代に当たるんだとか。

 

その後某超大国と某中東の技術大国がタッグを組んで作ったISがいきなり暴走。

まっすぐIS学園が使っていた旅館のほうに向かってきていたので専用機持ちたちを集めて迎撃しようとしたらしい。

一応織斑さんはどこの国が作ったISかは言わなかったけど大体想像はつくよなこの言い方だと。ま、大人の事情ってやつかな。

俺はただの一般人だしな、余計なこと聞いてしまって監視が付かないための処置かな。

 

それで山田さんの制止も聞かずに勝手に一部の専用機持ちたちがゴスベルを仕留めるべくさっさと出撃。

それを追って残りの専用機持ちたちも出撃。

これにより作戦もなんも立てれずに戦いが始まってしまったらしい。

 

大丈夫なのかと思うのだが、あっさりと第一形態のゴスペルを撃破・・・したのはいいのだがなんか第一形態のゴスペルを倒したあたりで専用機持ちたちの意見の違い(要はただの喧嘩)が起こり専用機持ち同士の戦闘が勃発。

 

なおこの戦闘は原作ヒロインたちも参加したそうな。

なにそれ凄いカオス。

束さん?夫と共に戦ったらしいよ。

 

正直言って転生者たちのISって頭がいかれてるんじゃないのかってぐらい性能とか武器の威力とかがぶっ飛んでるっぽい。

この間あった学年別トーナメントだってこいつらの戦いのせいでアリーナが消滅し巨大なクレーターが出来たぐらいだからな。

今この学園をダンプカーが走っているのはそのクレーターを埋めるためだったりする。

多分もうあと何日かで全部埋め終えるんじゃないかな。

 

っと話がそれたな。

それで肝心のゴスペルなんだけど一応第二形態に移行していたらしい。

らしいってのは転生者同士の戦いのさなかに一度だけゴスペルらしき反応があったもののいつの間にか撃破されていたようらしくいつ撃破されたかまったくの不明なんだとか。

 

で、転生者同士の戦いは加熱しなぜか海の上で殺りあっていたのがいつの間にか旅館近くの海岸でバトルすることに。

織斑さんが旅館の作業員や他の生徒たちを守るべく打鉄をまとって出撃。

がんばれ僕らの織斑マン!!

 

織斑さんが死力を尽くしてなんとか専用機持ちたちを全員撃破。その後は五時間にわたるお説教。しかもまだ終わっていないらしくIS学園でも続けるとか。

 

そんな感じでもはや原作のかけらもないくらいに変貌したゴスペル戦だったのだけど問題なのはそこではない。

今回のことで織斑さんが頭を悩ませているのは別の所にある。

 

「あのバカどもが旅館の近くで戦ったせいで他の生徒たちが大混乱に陥ってな・・・。あまりのパニックのせいでまともに避難も行えなかった」

 

物凄く深いため息を出しながら織斑さんは続ける。

 

「正直言っていつまたこのようなことが起きるとも限らん。それにここの専用機持ちたちならまだ私たち教師でなんとかできる。だが、もしもこの学校を狙っているテロリストなんかが襲ってきた場合・・・とてもじゃないが教師だけでは対処できん。もちろん学園内にいる特殊部隊に頼んでもいい。だが・・・」

 

「そのテロリストが万が一ISを持っていた場合・・・教師か専用機持ちたちが出ることになる・・・と?」

 

「まぁ、そんな事態が起こることはほぼないだろうがな。しかしながら可能性はゼロとは言えん。もしもまたあのバカどもが戦いに出るようなことがあれば・・・おそらくだがまた専用機持ち同士で戦うと思う・・・」

 

「ははは・・・確かに・・」

 

実際にほぼ全部の戦いで何かしらの衝突を起こしているっぽいしな。

綺麗に消し飛んだアリーナがいい例だろうな。

 

「だが私たち教師は仮に政府から専用機持ちを全員出撃させろという要請が来た場合、状況にもよるがそのほとんどを拒否することは出来んのだ。詳しくは言えんがそういう取り決めがあってな・・・」

 

「はぁ・・・」

 

「そこでどうせ専用機持ちたちの出撃を止められないのならせめて無関係な他の生徒たちが怪我を負わないようにしてやりたいと思ったのだ」

 

なるほど、確かにそれはいい考えである。

現に駅から出てきた生徒たちの中にも包帯とかを巻いている人はいた。

そのような生徒を増やしたくないのは教師として当然だろう。

・・・いや教師でなくてもそう思うか。

 

「いい考えですね。いいんじゃないですか」

 

俺がそう言うとそうだろうそうだろうと言いながら織斑さんは軽くうなずく。

そしてうなずいた後に織斑さんはこう言った。

 

「そこでだ、お前に相談がある。特別教師としてお前のサバイバル術をこの学校の生徒たちに教えてくれないか?お前のサバイバル術の高さはすでに山田君から聞いている。なに教師と言っても三日限りの臨時アルバイトみたいなものだ。もちろんその間の清掃員としての給料も払われるから安心してくれ」

 

「・・・・・・へ?」

 

いやいきなりそんなことを言われてもなぁ・・・。

 

「ちなみに特別教師に払われる臨時の給料なのだが、合計で二十万・・・」

 

「さぁて!!そのアルバイトはいつやるんですか、明日?明後日?明々後日?」

 

「・・・今月の二十六日だ。それまでに面倒だとは思うが生徒に教える詳しい内容なんかを考えておいてくれ。詳しい書類は明日ここで渡そう」

 

「イエス、マアム!きっとすんばらすぃ授業にしてあげましょう!!」

 

「・・・ふふっ、まったく。ま、頼んだぞ」

 

金に釣られた俺の姿を見ながら織斑さんは苦笑しつつそう言うのだった。




(一時的に)教師になる。

今後のことですが雑学がふんだんに盛り込まれたパターンのお話(ダンプカーとか)はこれからもちょいちょい入れたいなぁって思ってます。
もともと息抜きで書いた話だし多少はね・・・?

まぁIS小説には不適切だという意見が多ければオリジナルとして新たにその手の話をまとめたシリーズを投稿するかも・・・。(多分ない)

あぁ~^Fate x トランスフォーマーの話を書きたいんじゃぁ^~
でも時間が足りないなぁ・・・。


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清掃員教師になる [中編] (ほぼ番外)

まさかの中編。どうしてこうなった・・。
次回で教師編は最後です。

なお中編とか言ってるけど中身は別物の模様。読み飛ばしても全然問題ないですよ。
むしろ読み飛ばして、お願い。(切実)

追記 国家代表→国家代表候補生 勘違いさせてすみませんm(_ _)m


ここは体育館。大勢の生徒・・・と言っても一年生だけだが体育座りでこれから行われる講演の始まりを待っている。

 

みんなやる気がないのかあくびをしたり友達とぺちゃくちゃと話していて非常に騒がしい。それは男子生徒たちも同じのようで彼らもまた仲の良い友達とおしゃべりをしている。

 

「あぁ・・・糞が。あの糞教師話がなげぇんだよ」

 

「さっきからぶつぶつうるさいわね。もとはと言えばあんたが一夏と戦ったのが原因でしょうが」

 

「だってあいつうぜぇもん・・・」

 

はぁ、と深いため息を吐きながら鈴は隣の男をじっと見る。

彼の名前は晴男 ハレオ。筋金入りのヤンキーだ。

性格は乱暴でいつだって自分優先、周りなんて知ったことかとでも言うようにいつもふるまっている。

鈴とハレオの出会いは非常に衝撃的なものだった。

 

鈴とハレオが出会ったのは中学生のころ。しかもちょうど鈴の父と母の中が急速に悪くなっていった時だ。

父と母の喧嘩に嫌気がさし鈴が体一つで家出した・・・のはいいのだが何も持っていなかった鈴は何もすることもできずただただ道端で泣いていた。

そんな鈴に手を差し伸べてくれたのが彼だった。

 

名前も知らない赤の他人を家に入れてくれただけでなくご飯までふるまってくれたのが。

仏頂面で手にたくさんの絆創膏を貼った彼が出した肉じゃがは一夏の料理ほどうまくはなかった。

だがその時のご飯の味はいつまでも忘れないだろう。

 

決して美味くはなかったがそれ以上に彼の料理にはしばらく鈴が感じていなかった愛情がたくさん入っていた。

 

人のためを思って作る料理には自然と愛情が入る。

これは鈴の父から教えられたものだ。が、最近の鈴の家では以前のように手の込んだ料理は出ずに簡単なものかカップ麺ばかり出ていたのだ。

 

彼の料理を食べた後お礼を言って鈴は家に帰った。

一日足らずの短い家出だったが両親は心配していたらしく鈴が家に帰ると父は怒りながら、母は泣きながら鈴を出迎えてくれた。

 

それからしばらくのことである鈴の両親が離婚したのは。

 

しかしながら離婚する直前の両親はまるで仲が悪くなる以前の状態にでも戻ったかのように暮らしていた。

あの時はただ仲直りしたのだろうと思っていたのだが後から母が話してくれたところあの時の両親は鈴が家出をしたことによりこのままでは鈴に対して良くないと考えたらしい。

 

そこで二人は離婚を決めた。だがせめて鈴のためにも離婚するまでの間だけでも以前のような状態で暮らしていくことに決めたのだという。

 

そして鈴の両親の離婚により鈴は母と共に中国の母の実家に行くことになった。

鈴が中国に帰る日一夏たちは泣きながら鈴を見送ってくれた。

そのことがすごく鈴にとってはうれしかった。

今まではそんなことがなかったからだ。

 

だが、それ以上に鈴にとっては家出したときに世話になった彼に何一つとしてお返しが出来なかったことが悩みの種だった。

鈴にとって彼は意図してやったことではないだろうが両親を一時的ではあるが仲直りさせてまた以前のような暮らしをさせてくれた恩人なのだ。

 

(多分あの時彼が手を差し伸べてくれなかったら今の私はなかったわね・・・)

 

ひょっとしたら怪しい大人にでも拾われて水商売みたいなことでもやらされていたかもしれない。

 

それからである。世にも珍しいISの男性操縦者として彼がテレビで放送されたのは。

 

これで彼にまた会える!そう考えた鈴は気合と根性で見事国家代表候補生になってIS学園に中国代表として通うことになったのだ。

 

(もっともいくらお返しをしようとしてもあいつは一向にそれを受け取らないんだけどね)

 

IS学園に通うことになってからすぐに鈴はハレオの下に行ってあの時のお返しをしようとしたのだがハレオはそんなものいらんの一点張りで受け取ろうとしなかった。

 

そうなってくると鈴のほうも何が何でもお礼を受け取らないと引き下がれない。

もともと鈴は借りを作りたがらない性格なのだ。

 

(いったいあいつはいつになったら私のお礼を受け取ってくれるのかしらね)

 

だが鈴はハレオがお礼を受け取らない理由を知ることはないだろう。

きっと夢にも思っていないはずだ。

 

鈴がお礼として送ろうとしている酢豚を彼が嫌っていることを。

 

(今日こそはあいつに私の酢豚を食べさせるんだから!)

 

そんなこんなで今日も今日とて勘違いをしたまままた鈴はハレオに酢豚を食べさせようとするのである。

 

人間何かしら嫌いなものの一つや二つ・・・『バンッ!!』

 

いきなり大きな音がしたかと思うといきなり体育館が大きく揺れだした。

 

「キャーっ!!」

 

「地震よぉ!!」

 

「で・・・電気が!!」

 

突然の揺れに驚く生徒たちだが追い打ちをかけるがごとく体育館の照明が消える。

それによりさらに生徒たちはパニックになってしまった。

 

「ゆ、揺れが収まった・・・?」

 

「急いでここから逃げないと!!」

 

「あ、ちょっとあたしを押さないでよ!!」

 

「あんた邪魔よ!そこをどきなさい!!」

 

揺れが収まると生徒たちは体育館から出ようとして出口へと押しかけた。

が、出口は開かない。

 

それどころか一斉に出入り口に向かったせいで出入り口のあたりは大混雑となった。

 

と、突如として消えていた体育館の電気がつく。

そして、

 

『大きな自然災害や事故、事件が起こってもそれに直接の関係を持たない人は自分なら大丈夫、や、私には関係ないなどと言った感情ー心理学用語で正常性バイアスと言いますがそのような感情を持ってしまいがちです。そのため実際に事が起こると正常な判断が出来ず今みたいにパニックに陥ってしまうのです』

 

マイクを手に持ってそう言うのはIS学園特別臨時教師ー通称清掃員である。

 

『というわけで今回の特別授業では事件、事故、それに自然災害に会った時の正しい対処法について教えたいと思います』

 

よろしくお願いしますといった彼の姿を生徒たちはぽかんとした目で見つめ続けるのだった。




とっとと終わらせて雑学回を書きたいなぁ・・・。
ま、どのみち次回は雑学回なんですけどね。

なお晴男は純粋にただの力を求めるヤンキーです。敵はすべてやっつける、が彼のもっとうなので敵に情けを掛けようとする一夏が大っ嫌いなのです。ただただデストロイヤーなのです。ナスは嫌いなのです。

彼が鈴を助けたのはなんとなくで特に理由はないです。人を助けるのに理由はいらないのです。決して助けた理由が思いつかなかったとかそんなことではないのです。


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清掃員教師になる [後編]

ようやく教師編が終わった・・・。
やっぱり長いストーリーを書くのは苦手です。
色々と矛盾が生まれてしまいますしね・・・。


やあみんな。清掃員だ。

・・・おっといかん。今は特別教師だったな。

で、今まさに授業の真っ最中なのだが生徒のみんなはきちんと聞いてくれている。

どうやら計画は大成功のようである。

 

織斑さんに渡された書類を読んでみたのだが、授業をする場所は体育館。ここに各学年を別々で集めて授業をするものだった。

 

要は学年集会みたいなもんだな。

で、内容から察するに「あぁ、これは薬物は駄目ですよぉ~っていうやつと同じか」と考えたわけよ。

 

ほら小学校とか中学校とかでたまにあったあれ。

あれってすごい退屈だったんだよなぁ・・・。しかも必ず授業の後にアンケートとか感想とか書かされたし。

 

それで多分ここの学生たちも似たような気持ちなんだろうなぁと考えたわけよ。

おそらく学生たちは真面目に話を聞こうとしないはず。

ならどうやって真面目に話を聞かせるか?

答えは簡単。実際に体験させるのだ。サバイバルが必要な状況を。

 

「サバイバルと聞くと皆さんは無人島で三日間暮らす奴を思い浮かべるかもしれませんがそうではありません。たとえばさっきはできませんでしたが避難だって立派なサバイバルなのです」

 

「「・・・」」

 

効果はてきめんだったらしくみんな静かに話を聞いている。

どうやらこういうことの重要性をよく分かってもらったようだ。

もっともさっきの自分の行いが恥ずかしくて何もしゃべれない人もいるようだが。

 

「先ほどの揺れは今回の授業のために特別に業者さんのほうに頼んで体育館に地震体験装置のほうを取り付けてもらいました。今さっきの揺れは震度五弱の地震を再現しました」

 

いやしかし大変だったよ。この企画。

最初織斑さんにこの企画の話をしたら正気か?っていう顔をされた。

まぁ当然だわな。でもちゃんと許可してくれた織斑さんマジ女神。

もっともあまりにも大規模な地震装置だったためどうしても機械を動かしたときに爆発みたいな音がしてしまったのが残念だが。

 

こういうのは静かにやるのがベストなのだよ。

 

「さて皆さんの暮らすIS学園ですがここはおよそ普通の場所ではありません。ここには世界最高峰の兵器であるISが数多くあり当然のことながらそれを狙って多くのテロリストたちがやってくることは十分に考えられます」

 

ちょっと一息ついてから再び俺はしゃべる。

 

「またここで暮らしている多くの人は学生です。そのため万が一火事や地震が起こった時あなたたちの周りには大人が付いていない場合があることも予想されます。そんなときあなたたちだけで生き延びられるようにさせるのが今回の授業です」

 

さてと前置きはこれぐらいにしようかな。

 

「さぁてこれから皆さんに教えるのは『テロに遭った時の対処法』と『地震が起こった時の正しい避難の仕方』、『火事が起こった時の対処法』の三本です!」

 

来週もまた見てねぇ、ジャンケンポン!って言いたくなるのをぐっとこらえて俺は授業を始めるのだった。

 

*****

 

「・・・というわけで白木屋火事の例のようにならないためにも万が一の時には恥を捨てることが大事なのです」

 

さてと、ようやく授業が終わった。いやぁ一時間たちっぱなしってのもきついものだね。ちょっと先生たちを見直したわ。

 

いやしかし学生の集中力をなめてたわ。

俺の授業をしっかり一時間集中して聞いてくれたんだから凄いとしか言いようがない。

 

「ではこれで授業を終わりますが何か質問のある人はいますか?」

 

「せんせーしつもーん。センセーって清掃員さんだよね?私校内新聞でセンセーの記事読んだよ」

 

「え、俺の記事?」

 

「あっそれ私も知ってる。確か見出しはこうだったよね」

 

「学園に謎のカウンセラー現る!だったっけ?」

 

「そうそう。確か悩み事をなんでも解決してくれるんだよね」

 

「えっマジで?センセー後で私の相談にのってほしいんですけど!!」

 

「あ、ずる~い。先生私も!!」

 

「ん、今なんでもって言ったよね?」

 

先生、先生とみんなが俺に詰め寄ってくる。

え、なにこれ。なに俺の記事って。そんなの知らないんですけど・・・。

あと最後のやつ誰だ。

 

「先生知らないの?新聞部の出す新聞で先生のことが書かれてたんだよ?あの織斑さんや山田さんの悩みも解決した凄腕のカウンセラーだって紹介されてたよ」

 

親切にも生徒の一人が俺に教えてくれる。

教えてくれてどうもありがとう。

 

「「それじゃぁ先生、私たちの相談にのってくださ~い!」」

 

「あ、あのね。俺清掃員だからね?臨時で教師をしただけだからね?これから清掃の仕事が・・・」

 

「え~でもぉ、先生私たちに酷いことしたよね?」

 

「純情な乙女の心をもてあそぶなんてサイテー」

 

「二年生、三年生にも私たちにやったことと同じことをするつもりなんだよね?いいのかな、ここで私たちの言うこと聞かないと私たち先輩に今日あったこと言っちゃっうよ?」

 

む、それはまずい・・・。今回やった偽の地震はその学年がきちんと万が一の時に正しい対処が出来るかどうかの一種の判断テストなのだ。

 

そのテストの結果によってどんなサバイバル術を教えるか決めるのだ。

しかしながらそのテストの内容がばれてしまっては生の反応が得られない。

 

後お前ら、その言い方やめろ。

まるで俺が悪いことでもしたような言い方じゃないか。

 

・・・はぁ、しょうがない。

 

「・・・じゃぁ放課後で・・」

 

「「やったぁ!!」」

 

この後の一週間俺はずっと生徒たちから愚痴や悩みを聞かされることになるのだった。

なおその中身の大半が恋愛関係だった。

というか俺に恋愛相談すんなし。俺だって・・・そんな経験はほぼ無いんだぞ・・・。

 

色々と心に傷を負った特別教師だったのである。




これだけIS要素を入れたんだからしばらくはIS要素が無くてもばれへんやろ(無能)
多分もう二度と教師編をやることはないと思う。(確信)
あとゴスペルとの戦闘ですがそのうち一夏視点か他の転生者視点で書きたいと思います。


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電卓

今回の話はIS要素が非常に薄い話です。そういうのが苦手な方はご注意ください。
あと結構長いです。



「・・・じつはちょっと相談事があるんですけど」

 

やあ清掃員だ。最近初めの挨拶が思いつかなくて若干困っているぞ。

まぁそんなことはともかくとして今山田さんから相談を受けている真っ最中だ。

 

場所はいつもの秘密基地。若干酔っぱらい気味の山田さんはちょっと呂律が回っていないが割かし真剣な悩みなのか目が真面目だ。

 

「・・・その、私の横の席の人が机に私物を置いてるんです。自分の机だけならまだしも、その私物が私の席まで広がりかけてて・・・」

 

「あぁ・・・自分の机自体にはまだ広がってないからあんまり強くは言えないと?」

 

「・・・ん、ぷはぁ。・・・はい。しかもその人が男の先生なんですよ・・・」

 

コップの中のお酒を飲みほしてから山田さんは言う。

なるほど事情は分かった。

 

「要は男の人が相手だから片付けてって言いにくい、しかもまだ自分の机にはその人の私物があふれてないから強くは言えないと?」

 

「はぃ・・・。それであのぉ・・・すみません、私の代わりにその人に片付けてくださいって言ってもらえないでしょうか・・・?」

 

山田さんは体をちじこませながら小さな声で言う。

 

「まぁ、それも一種の掃除ですしね・・・いいですよ。明日職員室のエアコンの掃除があるのでそれが終わった後にでも注意してきますよ」

 

「・・・すみません。本当は私が言わなきゃならないのに・・・」

 

「ま、言いづらいのもわかりますし別に俺にとっては掃除する場所が一つ増えるだけですしそんなに気にしなくても大丈夫ですよ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

そう言いながら山田さんはお酒を飲むのだった。

 

*****

 

「なんだこれは、たまげたなぁ・・・」

 

場所は職員室。山田さんとの約束を果たすために問題の机にやって来たのだが・・・。

 

「ものすごいゴミの量だな・・」

 

なんかよく分からない機械が山のように積み重なっている。

 

「ゴミとは失敬な!!君にはこの山の価値がわからないのかね!?」

 

「うわっ!?誰だあんた!」

 

いきなり髭の生えた中年のおっさんが現れた。

ひょっとしてこの人が・・・。

 

「いかにもこの私がここの机の所有者であり同時にIS学園数学科担当の電 卓夫(でん たくお)だ!!」

 

またなんか変なのが出てきたよ・・・。

 

「いいかね君!ここにあるのは決してゴミなんかじゃない!ここにあるの全て私が集めた電卓たちなのだ!」

 

「電卓・・・?」

 

確かによくよく見てみるとここにあるのはすべて電卓のようだ。

 

「・・・ってなんでこんなに電卓があるんだよ!こんなにあっても邪魔だろ!」

 

「ここにある電卓はただの電卓ではない。これを見てみろ」

 

そう言って卓夫が山の中から取り出したのは何やら大きな機械である。

フレームの色はクリーム色をしていてたくさんのボタンが付いている。

 

「これが世界最初の電卓だ」

 

「げ!?世界最初!?」

 

とてもじゃないが電卓には見えない代物だ。

 

「イギリスのBell Punch社から発売された電卓で名前はANITA MK8。各桁ごとに一から九までのボタンが付いている。重さがなんと約十四キロもある」

 

「十四キロ!?」

 

持ってみるかと言われたので持たせてもらったのだが、これは本当に重い。

これが世界最初の電卓か・・・。

 

「まだまだあるぞ。こっちは日本最初の電卓CS-10A。シャープ(当時の早川電気工業)から発売された。重さは二十五キロ。値段は五十三万五千円。当時はこの値段で乗用車が買えたぞ」

 

「そんなに高かったのかよ!?」

 

「このころの電卓は個人に向けたものではなく企業に向けたものだったからな。一般人はまず手は出せなかったぞ」

 

う~む・・・そんなに高かったのか・・・。

それが今じゃコンビニで千円以内で買えるんだから安くなったんだなぁ。

 

「しかし二十五キロとは・・・軽々と持ち運べる重さじゃないぞ・・・」

 

「当時はまだ電卓=小型ではなかったからな。どちらかというと電卓は据え置きなのが普通だった」

 

そう言いながら卓夫はさらに電卓の山をあさり始める。

まだあるのか・・・。

 

「他にはこんなのもある」

 

そう言って見せてきたのは割と普通な大きさの電卓だ。

ん?何か変わったところでもあるのか?

 

「これはSL-800。カシオより発売された電卓だ。厚さはわずか0.8mm、重さはわずか十二グラム。世界で最も薄いフィルムカード電卓だ」

 

「0.8mmだと!?・・・本当だ、凄い薄い。クレジットカードの中に紛れれるなこれは・・・。というかさっきのやつと差がありすぎだろ!」

 

「これが技術の進歩というものだな。他にもまだまだ変わった電卓はたくさんあるぞ」

 

「もういいよ・・・」

 

俺の言葉を無視して次に持ってきたのは、

 

「リモコン・・?」

 

「こいつも電卓だ。名前はSovereign。Sinclair社が作った電卓だ。多分イギリス製だな」

 

「絶対使いづらいなこれ・・・」

 

「あとはボタンのない電卓もある」

 

「何!?」

 

そう言って卓夫が取り出したのは、

 

「DigitalⅢ。製造コストを少しでも下げるためにボタンの部分をなくして金属を丸出しにした。電気の流れる特殊なペンが備え付けられてて実際に使うときはこのペンを金属の部分にあてる」

 

「凄い発想だな・・・」

 

感電しそうなのだがそのあたりは大丈夫なのだろうか?

 

「当時はすさまじい価格競争が行われてたからな。どこの会社もできる限り他社よりも安く電卓を売りたがったんだ。そして極めつけはこれだぞ」

 

そう言って何やらアタッシュケースを取り出してきた。

まさかかもしれないのだが・・・。

 

「ひょっとしてこれも・・・電卓なのか?」

 

「いかにも。これはCL-110R。クラウンが発売した複合電卓で他にテープレコーダ、AM/FMラジオが付いている」

 

「こ、これを野外で使っている姿は完全にジェームズボンドだぞ・・・」

 

「うむ、北朝鮮に行ったときにそれを一緒に持って行ったのだがスパイとして捕まってしまってな」

 

「こんなものを持ってそんなところに行くんじゃない!!」

 

大体なんでそんなところに行ったんだ・・・。

 

「そう言えば昔電卓とゲームを組み合わせたやつが売られていたような?」

 

「カシオのBB-10なんかがそうだな。残念ながらゲーム自体は壊れて動かないが電卓のほうは今でも使えるぞ」

 

「本当にあったのか・・・デマかと思ってた・・・」

 

「この発想のおかげで文房具屋だけでなくおもちゃ売り場にも置くことが出来たからな。いいCMにはなっただろうな」

 

BB-10と呼ばれた電卓はポータブルゲーム機のような見た目・・・というかほとんどそれである。

これじゃぁ電卓のほうがおまけみたいだな・・・。

まぁそれはともかくとして俺は今日はこんな話を聞くためにここに来たのではない。

 

「・・・凄いのは十分に分かった、だけどあんたこれちゃんと全部使っているのか?」

 

まさか集めるだけ集めといてまったく使ってないとかないよな?

そんなんだったらこいつら全部即刻ゴミ箱行きだぞ。

 

俺のこの問いに卓夫は、

 

「えっ!!!?・・・も、もちろんではないかね!ちゃ、ちゃんと使っているさ!」

 

汗をかきながらそう答えるのだった。

 

*****

 

「・・・てことがあったんだよ」

 

昼下がりそこら辺にあった自販機で買った缶コーヒーを飲みながら俺は同僚に三日前にあったことを話す。

うんやっぱり缶コーヒーはBoSSに限る。

 

「ハハハ、それは良かったな。俺も見てみたかったぜその世界初の電卓ってのを」

 

「電卓を集めるのはいいんだがそれをまったく使ってなかったんだぞ、本人曰く電気が切れた時の非常用らしい。アホかって」

 

「へぇ、非常用ねぇ。それでその電卓たちはどうしたんだ?本当に捨てちゃったのか?」

 

「いやさすがにかわいそうだったから今回だけは見逃した。その代りその日のうちに電卓を全部家に持って帰らせたけどな」

 

重たい重たいと言って泣きながら電卓を運んでいたけど本来なら不要物として処分するところを見逃してあげたんだから感謝してほしいところだ。

 

「二十五キロを運ぶのはなかなかに大変だったらしくて電卓を集めるのはもう懲りたって言っていたらしいから多分もうこんなことは起きないと思う」

 

「じゃあこれで一件落着ってわけか。山田さんもこれでようやく落ち着けそうだな」

 

そう言いながら同僚は笑う。

まったく今回は疲れたよ。

もっとも何かを収集したくなるその気持ち自体は共感できるがな。

ほら人間何かしらのものは集めてるもんだろう?カードとか切手とか。

 

「ま、もう二度と机の上に私物を持ってくることはないんじゃないかな」

 

「あのぉ・・・そうでもないんですぅ・・・」

 

困った顔をしながら山田さんがやって来た・・・のはいいんだが、なんだって?

 

「また私物を持って来ていて・・・」

 

*****

 

「いったい今度は何を持ってきたんだ・・・」

 

ここは職員室。まさかこんな短期間にまたここに来るとは思わなかった。

 

「あれです・・・」

 

そう言って山田さんが顔を向けた先にあったのは、

 

「おお!誰かと思えば清掃員君じゃないか!いやぁ君のおかげで電卓を集めるのはきっぱり辞めたんだ。その代り今度はそろばんを集めるようになってな!これなら実用的だからな、こうして生徒に貸しているのだよ!どうだ実用的だろう!!」

 

「電卓の次はそろばんかよ!めげない奴だな!?」

 

「卓夫センセー、これ使いづらいよう・・・」

 

「なんで電卓じゃなくてそろばんを使わなきゃならないのよぉ・・・」

 

「英語の答えを教えてもらいに来たのになんでこんなことに・・・」

 

そこには生徒たちにそろばんを使わせている電 卓夫の姿があったのだった。

なんか今度は計算尺でも集めそうだなぁ・・・と思いながら俺は山田さんと共に頭を抱えるのだった。




参考文献 大崎 眞一郎 『電卓のデザイン』太田出版 より。
今回出てきた電卓以外にもたくさんの電卓が載っていますよ!面白いのでできれば読んでみてください(^_^.)
ちなみに電 卓夫とか水道橋とかは一発キャラなので再び出てくることはほぼ無いです。


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低燃費

遅くなって申し訳ございません。
明日は・・・投稿できるかなぁ・・・?


「タンカーってでっかいよなぁ・・・」

 

同僚がそんなことを言いながら海の方を見る。

ここは学園内の港。

俺たちは今日搬入される予定の掃除道具を待っている。

トラックに乗ってやって来たのはいいんだがいまだに荷物が届かない。

あ、そうそうトラックの運転をしたのは俺ね。

同僚は荷物の詰め込みとかをするために来ている。

 

「しっかしおっそいなぁ・・・。もう一時間ぐらいたってるぞ」

 

俺はそう言いながらため息を吐く、がしかし、いくら俺がため息を吐こうが届かないものは届かない。

 

「さっき連絡が来ただろう?なんかエンジントラブルで遅れるって。ため息を吐くよりもタンカー見ようぜ、タンカー」

 

「そういやお前って機械全般も好きなんだったな・・・」

 

まぁため息を吐くのもいい加減飽きたしここはひとつ同僚の提案通りタンカーでも眺めるか。

 

ちょうど石油を運んできたらしく甲板では作業員たちがあわただしく作業をやっている。

うん、ここから見るのもなかなか迫力があっていいものだ。

 

車を止めてる場所は貨物置き場と駐車場を兼ねている場所だが今日はまだ貨物を入れてないのかあたりには車しかなく特に景色を遮るものは無い。

よってタンカーや貨物船なんかがしっかりと見えるのだ。

 

「しかしよお、あんなデカい船を動かすんだからガソリン代も大変なんだろうなぁ」

 

「まぁそうだな。一般的に輸送船一隻を動かすのに使われる運行費用のうちの約半分、五割くらいは燃料代に消えてるからな」

 

「すげぇな・・・。よくそんなんで儲かるよな」

 

「まぁ会社だってタンカーとかを買うときは何十年働けばどれくらいのもうけが出るかを考えてから買ってるからな。そうそう赤字にはならんだろうよ」

 

何十年はさすがに言いすぎかもしれないがそれにしたって何年も動かしてようやくいくらかの利益なんだから気の長い話である。

 

「でも最近は車なんかで低燃費が流行ってるだろ?アレの流れが船の方にも来てるんだよ」

 

「て言うと?」

 

「具体的に言えば日本郵船と三菱重工がやってる空気循環システムがそうだな」

 

他の会社もいろいろやっているがタイムリー?なのはここの二社だろう。

 

「なんだ空気循環システムって?船の中の風通しでもよくすんのか?」

 

「ちげぇよ。空気循環システムってのは船底に空気を送り込んで海水と船底の摩擦を減らす機械のことだよ。海水と船底との摩擦が減ることで船が進みやすくなんのさ。しかもこの空気はエンジンを動かす時に必要な燃料を圧縮するための空気だからこのシステムを乗っけようとしたとき既存の船でも大幅な改良は必要なくて経済的ってわけ」

 

「お財布にも地球にも優しいってわけか」

 

「そゆこと。低燃費だからな。排気ガスも従来のに比べれば低く抑えられてる」

 

まさに一石二鳥ってわけだ。

 

「で、どんぐらいの効果があんのさ?」

 

「今までの船に比べてCO2が約五パーセントぐらい抑えられるな」

 

「・・・なんか微妙」

 

「いやお前・・・。ほらよく言うだろ。ちりも積もれば山となるって。長期的に見たら今までの船とは比べ物になんないくらい燃費が良くなる・・・はずだ多分」

 

多分なるんじゃないかな、実感が湧きにくいけど。

 

「ふうん、まぁ俺には実感が湧きにくいけどな。まあいいや。お前の話面白かったぞ。さてと雑談もこれぐらいにしてそろそろ働きますか」

 

「・・・はぁ、ようやく来たか」

 

ブぉ~という汽笛をあげながら一隻の船が入港してくる。

間違いない。船体に書かれた名前からしてあの船こそが俺たちの待っていた船だ。

 

「よぉし!とっとと荷物を積み込むぞ!野郎ども船に乗り込めぇ!!」

 

「元気だなぁお前・・・」

 

若干騒ぎながら車を降り、船に向かう同僚。

どうやらあいつもあいつなりに待ち時間でのストレスが溜まっていたようだ。

そんな同僚を追いかけるべく俺も車から降り走り出すのだった。

 




低燃費って大事だと思う。でも燃料バカ食いなアメ車とかもそれはそれでロマンがあると思う(小学生並の感想)


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お酒

「あっおい地球をまっもっるためぇ~E・D・Fのしゅつどおだぁ~」
『よんてん、いっちはてごわいぞぉ~』
「どうくつくらすぎわっらっえない!!」

「てぇきがおおはばきょうかされぇ~」
『ひっとっりもいきてはかえれないっ!!』

ヘクトルさん強すぎです・・・。


「はぁ・・・最近肩がこっちゃって・・・」

 

「また何か問題でもあったんですか?」

 

皆の者わたしだ。清掃員だ。

例によってここは秘密基地。今日も今日とてここでお酒を飲んでいる。

一緒に飲んでいるのは山田さん。

ちなみに俺も山田さんも酒は弱い。

もっともさっき飲み始めたばかりだから俺も山田さんも全然酔ってないのだが。

弱いのに酒なんかを飲むのかって?

まぁあれだよ、雰囲気作りだよ。

 

「う~ん・・・まぁその・・・生徒たちの人間関係?で」

 

「なんで疑問形なんですか・・・。まぁいいや。それでなんかあったんですか?」

 

まぁそれなりに難しい問題が・・・、と言いながら山田さんはため息を吐く。

 

「教師と生徒の関係は特に問題はないんですけどね。ただ生徒同士の関係がなかなか・・・。特に宗教関係のものが多くて・・・」

 

「あぁ・・・イスラム教とかキリスト教とかですか?」

 

「はい。代表候補生たちは特に問題ないんですけどそれ以外の留学生たちがなんとも。・・・いや普段はみんないい子たちなんですよ!ただちょっと喧嘩とかになると宗教の違いなんかを持ち出すんです。もっともただの罵倒でそんなに深い意味はないんでしょうけど・・・それに喧嘩だってすごく軽いものだし・・・」

 

そう言う光景なら前に一度見たことある。最初はちょっとした注意だったのだが相手がそれに反発して・・・あとは売り言葉に買い言葉。双方ともに罵倒を言いあう。

その罵倒の中に宗教の話が出てきた。

ちなみにその罵倒は「は、これだから○○教は」とかそんな感じだった。

 

それを聞いた相手はさらに強い罵倒を言う。もう完全に最初の目的を忘れてたなあの様子は。

二人の間に割って入って俺が直々に説教したよ。

いくら頭に来たからと言って文化の悪口を言ってはいけませんって。

まぁ叱ったと言っても十分にも満たないが。

 

もともとその喧嘩してた子たちは仲がいいからね。しょっちゅう一緒にいるのを見かけてたし。多分喧嘩するほど仲が良いってやつなんじゃないかな。

 

「ただ生徒のことにまで教師が口を出すとなるとなると・・・しかも宗教関係のことですからね・・・」

 

「まぁどちらにしろ一筋縄ではいかないでしょうね。なんせ文化の違いですし、おいそれと他者が口を出せるものじゃないですね。それにそこまで大きな衝突は起こってないんでしょう?なら精々仲良くしなさいって注意することしかできませんしねぇ・・・」

 

「そうなんですよぉ・・・。私としてはみんなで仲良く三年間を過ごして欲しいのですが・・」

 

そう言いながら山田さんは考え込む。

 

「う~ん・・・親睦会でも開いたらどうです?ほらよく言うじゃないですか、”うまいものに国境はない”って。おいしいご飯でも作ってみんなで食べたら仲良く・・・なるかなぁ・・・」

 

いかん、自分で言ってて自信がなくなってしまった。

ていうかそんなことで仲良くなれたら外交術なんて必要ないものなぁ・・・。

第一そんなんで喧嘩してた人間がいきなり仲良くなれるとも思わないし。

 

「うぇ~ん・・・どうしましょう・・・。どうしたらみんな仲良くなるんですかぁ~」

 

「そういう人たちはごく少数だと割り切って・・・割り切れそうにもありませんねその顔は」

 

捨てられた子犬みたいな顔で山田さんが俺を見てくる。

なんだあれか、俺に助言してほしいのか?

『みんなで幸せになろうよ』って言うその考えは素敵だと思うが俺宗教なんてよく知らんもんなぁ。

 

「・・・やっぱ飯ですかね。さっきは無いなって思いましたけど、全人類がほぼ共通した意識を持ってるのは食か金かぐらいですし。あぁでもなぁ・・・」

 

いかん、こんなんじゃ堂々巡りになってしまう。

あぁ、もういいや。

 

「山田さん!!」

 

「は、はい!?」

 

「飲もう!!」

 

そう言いながら俺は酒瓶を手に持って掲げる。

うん、こういう時は飲むのに限る。

大体宗教がなんだってんだ。そんなことでごたごたぬかすような奴には「聖☆おにいさん」を読ませてやる。

日本人なめんなよ、こちとら正月あってクリスマスあってお盆があるんやぞ。

もう色々ありすぎて凄いカオスになってる気がする。

 

「時には酒に溺れることも大切です!!」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「そうなんです!」

 

そんなことを言いながら俺と山田さんは酒を飲みかわすのだった。

 

・・・もっともすぐに限界が来たのだが。

 

人間ときには深く考えず浅く生きることも大切である。そんなことを考える清掃員だった。

 




時には逃げるのも必要だと思います(小並感)。


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ホームシック

なんか微妙な話になってしまった・・・。


「明日は確か休日だっただろ?」

 

「はい、そうですけど何かありましたか?」

 

秘密基地でいつものように愚痴をこぼして酒を軽く飲む。これがIS学園での俺の日課みたいなものだ。

もっとも俺が愚痴をこぼすことよりも山田さんとか織斑さんとかが愚痴をこぼすことの方が圧倒的に多いのだが。

 

それで今日もいつものように酒を飲んで帰ろうとしたところで織斑さんに引き留められた。

明日なんかあるのかな?

 

「あぁ、明日もちょっと学園の方に来てもらえるか。場所はここだ。時間は朝の十時だ」

 

「・・・ずいぶんとまた山の中ですね」

 

「まぁちょっとな」

 

「・・・まぁ構いませんよ。どうせ休みの日にすることなんてほとんどありませんし」

 

若干言葉を濁したことが気にはなるがまぁ変なことをするつもりはないだろう。

それにどうせ明日やることだって寝ることぐらいだし。

 

織斑さんとそんな会話をして俺は帰宅するのだった。

 

*****

 

「もっとしっかり空気を入れてくださぁい!」

 

「まったくこのぐらいもできないのか」

 

「つ・・・疲れた・・・」

 

「駄目だぞそんなんじゃ!そんなことでは世界一位はねらえないぞ!!」

 

「はっはっは、若いというのはいいものですなぁ」

 

やあみんな、清掃員だ。

今何をやっているのかというとペットボトルロケットの打ち上げ準備をしている所だ。

材料は各自で家から持ち寄った。

 

ロケットの本体はペットボトル、羽は牛乳パック、あとはロケットの鼻先に重石代わりの新聞紙を詰め込む。

接着剤は使わず粘着テープで全部くっつける・・・と非常にエコロジーだ。

ちなみに重石を乗っけておかないとうまく飛ぶことが出来ない。

 

ちなみにペットボトルロケットで重要なのが発射台だ。

こいつが無きゃロケットは打ちあがらないからな。

これを自作しようとすると結構手間がかかってしまう・・・が最近はペットボトルロケットの工作キットなんかが出てるから千円ぐらい出せば手に入ると思う。

 

ちなみに俺たちは後者の方を選んだ。

と言っても買ったのは同僚なのだが。

 

さてといい加減今の状態を説明しようか。

翌日になって俺は時間通りに指定された場所へ来たのだが、そこにいたのは織斑さんと山田さんと轡木さんと同僚の四人だった。

 

で、同僚が若干興奮気に俺に説明してくれたのだがなんでもペットボトルロケットを打ち上げるそうで、それに俺も参加しろと。

しかも各自でオリジナルのロケットを作って誰が一番とんだかを競い合うらしい。

 

それで材料一式を渡されたのだが、これがなかなか。

意外とロケットを作るのが楽しいんだわ。

いやぁかなり熱中してしまった。

あんまりにも熱中しすぎてみんなから温かい目で見られたのは今すぐにでも消し去りたい思い出です。いや本当に。

 

なんか周りが静かだなぁと思って見回したらみんな温かい目で見ていたんだもの。

非常に恥ずかしかったとです。

まぁでも最近あんまりこういう事してなかったから新鮮だった。

 

織斑さん、山田さん、轡木さんの順にロケットを打ち上げて今は俺の番だ。

現在の所一位は織斑さんの百九十三メートル。

ちなみに飛距離の計算は山田さんの持ってきたISで図っているからほとんど間違いはないはずだ。

 

「じゃぁ準備はいいですかな?三、二、一っ!」

 

轡木さんの合図とともに俺のロケットが打ちあがる。

飛距離は百五十メートル。

ぜんぜんだったな。

 

「あちゃぁ~一位は無理だったかぁ」

 

「残念でしたねぇ~。ラストは同僚さんですよ!」

 

ファイト!と山田さんに励まされながら同僚がロケットに空気を入れ始める。

その様子を眺めている俺に織斑さんが近づいてきた。

 

「その様子だと楽しかったようだな」

 

「あ、織斑さん。えぇおかげさまで、すっかり子供になってしまいました」

 

たまには何かに打ち込むことも大事だなぁって思った。

ここんところ何もしていなかったからなぁ。

 

「そうか、それは良かった。・・・実はなお前のことを心配していたんだぞ」

 

「え?」

 

「ここ最近のお前は何か元気がなかったではないか。仕事が終わった後はぼーっとしていたり、何か思いつめたような顔をしていたりして、心配していたんだぞ」

 

そんな風になっていたのか・・・気づかなかった。

 

「別に何があったかは聞かん。ただあんまりにもお前の元気がなかったからな、気分転換でもさせてあげようと思ってこの企画を考えたのだが・・・予想以上にいい気分転換になったようだな。もうすっかり元の状態だぞ」

 

「そうだったんですか・・・。すみません迷惑掛けちゃって・・・」

 

「馬鹿者、お前にはいつも世話になっているからな。これはその分のお返しだ。それとこういう時にはありがとうと返事をしろ」

 

「ははは、おっしゃる通りで。・・・本当にありがとうございます。まぁその・・・元気がなかったのはちょっとしたホームシックにかかっちゃって・・・」

 

まぁあれだ、俺は転生してもう二十五年になるわけだがやっぱり時たま前世のことが恋しくなっちゃうんだよ。

不思議なもんであれだけ「消費税が値上がりするぞ」とか「若者が少ない」とか「不景気だぁ」とか騒がれていたとてもじゃないが良い環境とは言えないあの世界でも恋しくなっちゃうんだよなぁ。

 

ここ最近は特に前世の親父たちのことを考えてた。

俺の前の親父はものすごい飲んだくれで給料の三分の一ぐらいが酒代に使われて、母さんはものすごい節約化で穴の開いた靴下だっていつまでも履かせられて、いろいろ両親とは喧嘩したけれどやっぱり親なんだよなぁ。

いざあえなくなると途端に会いたくなってきちまう・・・。

 

前世では正月くらいにしか会いに行ってなかったのにな・・・。

本当不思議なもんだよ。

 

今の俺の両親はとてもいい人だ。俺のことを心から愛してくれたしな。

もっともそんなのは親だったら当たり前か。

今の親にはいろいろ感謝してるよ。もっともやっぱり何かと喧嘩はしたけど・・・。

 

「上がったぞぉ!!飛べぇっハクオウ!!!」

 

と、そんなことを考えている間にとうとう同僚のロケットが打ちあがったようだ。

 

「織斑さん、本当に今日はありがとうございます。気分が晴れました。もう大丈夫です」

 

ペットボトルロケットはかなりの気分転換になった。

ロケットづくりに集中したことでどうやら俺のホームシックはどっかへ行ってしまったようだ。

 

「なに礼なら私ではなく山田君に言いたまえ。彼女が一番お前のことを心配していたんだぞ。ちなみに気分転換をさせようっていだしたのは彼女だ」

 

もっともペットボトルロケットを飛ばそうって言い出したのはお前の同僚だがな、と言って織斑さんはくっくっくと笑う。

 

「それってあいつがただ単にそれをやりたかっただけなんじゃ・・・。まぁ結果的にいい気分転換になったので別に何も言いませんけど」

 

「そうだな。・・・どうやら結果が出たようだ。一位は私だな」

 

「なら優勝記念に素麺でも作りますか」

 

それはいいなと言いながら織斑さんはうなづく。

よし、ならば今から材料を調達しなければ。

 

「それなら天ぷらもだな!」

 

「うぇ!?いつの間に来たんだよお前」

 

織斑さんと話していたら同僚が割り込んできた。

 

「天ぷらもあるならご飯も必要ですなぁ」

 

「あ、それいいですね!から揚げでも用意しましょうか」

 

「もちろんビールもあるんだろうな?」

 

あ~あ、他の人まで来ちゃったし。

 

「言っときますけど作るのは俺一人じゃなくてみんなでですからね?」

 

さすがに俺一人で作るのはきつい。

よってここはみんなにも参加してもらおう。

おい同僚、いやそうな顔をするんじゃない。

 

「じゃ、材料を調達しましょうか」

 

「「おぉ~!」」

 

俺の言葉にみんなは元気よく答えるのだった。

 

季節は夏。蝉の声がわんわん響く森の中で俺たちは昼飯を作るためにあれこれと準備を始めるのだった。




明日の投稿はお休みします。


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エレクトロ

次回はISがメインのお話になる予定です。
また、話の中に出てくる情報が間違っていたら教えてもらえるとありがたいです。


「あれ、珍しいですね。山田さんがここにいるのは」

 

今日は港の倉庫街の掃除をしていたのだが、珍しいことに山田さんがいた。

山田さんは基本的に一年一組につきっきりだからめったにこういうところには来ないのだ。

俺はこれでもIS学園の色々な場所を掃除しているのだが山田さんは職員室以外で見ることはほとんどない。

 

まぁそれに一組には世にも珍しい男性適合者がいっぱいいるしな。

多分国からなんかいろいろと言われていて目を離せないんじゃないかな、と俺は勝手に予想している。

 

「あ、清掃員さんじゃないですか。お仕事ご苦労様です」

 

「いえいえ、これが本業ですから。・・・ところでこんなところで何をしているんですか?」

 

今は夏真っ盛りなので倉庫街はものすごく暑い。正直言ってこんなところに長居はしたくないな。

まだ掃除を始めて三十分もたっていないのに俺はもう汗びっしょりだ。

 

「実は今日研修会があるんですよ」

 

「研修会?」

 

「ええ。IS学園はその名前の通りISに関する技術や知識を学ぶための場所ですが必ずしもそこに通う生徒がみんなISに関係する職に就くわけではありません。やっぱりキャリアウーマンになる生徒もいればお医者さんになる生徒もいるわけなんです」

 

「まぁ確かにそうですね」

 

必ずしも蛙の子が蛙になるわけではないっていうことだな。

 

「そこでIS学園は様々な企業に頼んで年に数回ここで研修会を開いてもらっているんです。実際に普段の仕事の一部を体験させてもらったり講義をしてもらっているんです」

 

本当は私たちの方からお邪魔しないといけないんですけどね、と言いながら山田さんは苦笑する。

まぁ色々と問題があるんだろうなぁ。

俺はあんまり感じることはないが一応ここってISという超兵器が数十台もあるところだし生徒の警備の問題なんかもあるんだろうな。

 

「今日は日産さんの方たちが来てくれることになっているんです。あ、船が来ましたね。なんでも今日は座学だけでなく実技の方もしてくれるみたいです。内容は確か・・・エコカーに関するお話だったはずです」

 

山田さんの向いている方向を見ると一隻の船が港に入港してきた。

 

「あ、積み荷を降ろし始めましたね。それじゃぁ私はこれで。これから社員さんたちに色々と説明をしなければならないので」

 

「あ、はい。お仕事がんばってくださいね」

 

はい!と元気よく返事をしながら山田さんは船の方へと向かっていった。

 

しっかし企業自ら教えに来るのかぁ・・・。

やっぱり整備課の生徒たちを取り込みたいんだろうなぁ。

なんか技術力高そうだし。

 

よほど力を入れているのだろう船からは社員だけでなく車まで降ろされてきた。

と、その中の一台に気になるものを見つけた。

 

「あれは・・・」

 

白と肌色のちょう度中間のような色をした軽自動車ほどの大きさの車が船から降ろされていた。

 

「・・・”たま”か」

 

その自動車は終戦直後に生産された電気自動車である「たま電気自動車」であった。

 

*****

 

一九四五年八月十五日昭和二十年の昼、約三年ほど続いた太平洋戦争(大東亜戦争ともいう)は終わりを迎えた。

 

それは同時に連合国軍と枢軸国軍の戦いの終わりも意味しており、また同時に新時代への移り変わりも意味していた。

 

終戦後日本にアメリカを主軸とする連合国軍が上陸。

GHQの監視下の徹底的な日本の軍事力の解体が進められた。

武器、兵器に関する工場などはすべて連合国によって接収、事実上そこで働く人々は解雇となった。

当然のことながらそれには航空機産業も含まれる。

 

立川飛行機もそれに含まれていた。

立川飛行機は終戦まで活躍していた飛行機会社である。

赤とんぼで知られる九五式一型練習機や隼などを手掛けた会社だった。

 

工場を接収され働き口を失った立川飛行機の社員たちは各自で新しい働き口を探すしかなかった。

 

そんな中、外山保試作工場長や田中次郎技師らが中心となって設立した会社が「東京電気自動車」だったのだ。

 

ブリヂストンや日立の協力を得て一九四七年四月、紆余曲折を経て記念すべき第一号となる「たま」号を発表する。

車種は乗用車型とトラック型のツータイプがあった。

 

「たま」が作られた背景には当時の日本のエネルギー事情があった。

終戦直後の日本には民間に供給できるほどの石油がなく、ガソリン自動車の代わりに木炭自動車がのろのろと道路を闊歩していたのである。

 

が、しかし石油はなかったがかわりに山間部のダムから発電されている電気はかなりの量があった。

戦後の日本ではガスや石油がなかったため代わりに電気を使った調理器具などが広く普及することになる。

ある意味これが後の電化製品の発展につながったのかもしれない。

ともかくこのことに目を付けた東京電気自動車は「たま」の開発を進めたのである。

 

当時は「たま」以外の電気自動車も存在していたが「たま」は他の電気自動車に比べ抜きんでていた。

 

最高速度は三十五キロ、航続距離は六十五キロ。

当時としては非常に優秀な記録だった。

 

そしていよいよ「たま」電気自動車が発売されることになった。

価格は四十五万ほどとなかなかに高額ではあったがガソリンを使わず、性能も良いことからかなりの数が売れたのである。

こうして電気自動車が主流になるかと思われたのだが、一九五〇年「朝鮮戦争」の始まりと共に軍需資材の高騰が始まりバッテリーを作るのに必要な鉛の価格が約一〇倍近くにまで上がり利益を出すことが難しくなっていった。

 

また、アメリカからの石油が解禁されるとともにガソリン自動車が息を吹き返し始めますます電気自動車は競争力をなくしていくのである。

そうして徐々に電気自動車はその姿を消したのだった。

 

東京電気自動車は、たま電気自動車へと社名を変更。

さらにプリンス自動車工業へと社名を変えその後も様々な自動車を作り上げていったのだがコストを無視した開発重視の姿勢により長く経営難になり一九六六年、日産と合併しその歴史を終えたのだった。

 

*****

 

「あんなにかわいい車にそんな歴史があったんですね・・・」

 

「俺のお爺ちゃんがよく「たま」の話を聞かせてくれたんです」

 

もっとも前世のお爺ちゃんだが。

なんでも曾爺ちゃんとの思い出の車だったらしい。

モノクロの写真を見せながら熱心に俺に「たま」の話をしてくれた。

 

「それで準備の方は終わりそうなんですか?」

 

場所は港の倉庫街。

山田さんが社員の人たちに説明をしに行ってからもうすぐ一時間は経とうとしている。

なんでも生徒たちに見せるために持ってきた自動車が夏の暑さに負けてエンジントラブルを起こしたらしい。

 

「もうすぐだって言っていたんですけどね・・・もうちょっとかかりそうですね」

 

山田さんは苦笑しながら積み荷の運ばれた倉庫の方を見る。

まだ工具の音がしているのを考えると直っていないらしい。

 

「まぁ研修が始まる時間まであと一時間はありますしまだ余裕はありますけどね」

 

「早めに来てもらってよかったですね」

 

あと一時間もあるのなら多分何とかなるんじゃないかな。

それに最悪直らなかったらその車は出さないで研修を行えばいいんだし。

ちなみに山田さんは特に手伝えることがなかったのでおとなしく俺と雑談をしているのである。

もちろん日陰で。

だって日なたは熱いし。

 

「それにしても終戦直後にはもう電気自動車があったんですね」

 

感慨深げに山田さんは呟く。

 

「”たま”は今の日本の電気自動車の基礎を築いたと言っても過言ではないでしょうね」

 

きっとそれらの技術はどこかで確実に受け継がれているのだろう。

ひょっとしたら身近なものにその技術は使われているのかもしれない。

 

「あ、直ったみたいです!」

 

「故障したのはアレだったのかぁ。どうりで修理に時間がかかるわけだ」

 

倉庫から社員さんたちの歓声と共に静かに出てきた車は今しがたまで話していた自動車、たま電気自動車であった。

 

夏の強い日差しを受けながら音もなくスムーズに走るその姿は俺の心に強く残るのだった。




さてはて次の投稿はいつのなってしまうのやら・・・。
なるべく早く投稿しますね・・・。
あ、そう言えばISの生みの親がいまだに出てきていない・・・。


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ISの可能性

遅くなりました・・・。


「ISについて教えてほしい?」

 

「・・・まぁ・・・な」

 

こんにちは、山田真耶です。

先ほど午後のホームルームを終えて職員室へ戻ろうとしていたのですがその途中で声を掛けられました。

私に声をかけてきたのは蝶部 理場(ちょうべ りば)さんです。

 

蝶部さんはどんな子なのかというとナウでヤングなイケイケ女子です。

入学式の時にはとても苦労しました・・・。

彼女髪を金髪に染めて学校に来たのです。

IS学園はそのような行為を禁止していますからとりあえず生徒指導室の方へ連れて行って事情を聴いたのですが・・・髪を染めてきた理由が、

 

「だってそっちの方が男子に受けるもん」

 

来週は肌を黒くするつもりだとまで言い出しちゃって・・・その後織斑さんに来てもらって指導してもらいそれらの行為をしないと約束してもらったんです。

もっとも言葉づかいまでは直そうとはしませんでしたが。

 

彼女がここにこれたのはISへの適性がAもあったからで本人の意思で来たのではないんです。

日本ではIS適性がA以上あるとよほどの事情がない限りここに来るようになっているのです。

やはりISの適性というのはある程度までなら努力でどうにかできるのですが、適性Dの人がどれだけ頑張っても適性がAの人が努力をすればそれに追いつくことはほぼ不可能なんです。

適性というのは一種の才能なんです。

 

そして適性がAの人は世界的に見ても非常に珍しく下手をすればテロリストに狙われかねないのです。

 

これはなぜかと言いますとISの適性は=ISの稼働率を表しているのです。

つまり適性がDの人はISの持っている力のごく一部分しか使えず、この適性が上位であればあるほどIS本来の力を使えるようになるのです。

 

なぜ條ノ之博士がこのような特徴を持たせたのかは謎ですがこのことが分かってからはどの国も上位の適性者の囲い込みに力を入れています。

そして時には合法に、不可能ならば力ずくで・・・ありとあらゆる組織が手段をえらばず上位の適性者を狙っているのです。

 

そのような組織から狙われにくくするために日本では上位の適性者はほぼ強制的にIS学園に通わせているのです。

 

もっとも今年は男性操縦者が発見されたのでほぼすべての視線がそちらの方に向いてますからこのような人たちが狙われる可能性は低くなっていますが・・・。

 

ともかくそのような背景があったのです。

 

そして彼女は適性はありましたがそれを伸ばそう、使おうという意思はありませんでした・・・。

 

もちろんそのような道もあるとは思うのですがさすがにIS以外の教科でも同じなのは困るのです。

 

何度注意しても「あー」とか「うー」としか言わずに話を聞き流し、まったく勉強をしようとしなかった蝶部さんがISに興味を持つなんて・・・私感激です!!

 

「もちろんいいですよ!!ようやく勉強をしようという気になったんですね!!?」

 

「あ・・・いや、まぁ・・・教えてほしいのはISだけなんだけどさ・・・」

 

何か言っていますがそんなの無視です!せっかく勉強をする気になったのです、ここが人生のターニングポイントになるようにするのが教師の役目です!

 

と、大事なことを忘れていました。

まずはなんでそのような気になったのか理由を聞かないと。

 

「それで何でISについて勉強しようと思ったのですか?」

 

「・・・実はな・・・」

 

暗い顔をしながら蝶部さんは私に理由を教えてくれました。

 

*****

 

「ふうん、整備課希望ですか・・・」

 

ここはいつも私が通っている秘密基地。

私は今日のことを清掃員さんに話しました。

 

「ええ・・」

 

蝶部さんのやる気が出たのは教師として非常に喜ばしいことなのですがあんな原因でやる気が出てほしくはありませんでした・・・。

 

「弟が交通事故で足を切断・・・か。まだ小三だったんでしたっけ?」

 

「そうなんです。それで義足をつけてもらったらしいのですが・・・あんまり馴染めていないそうです」

 

「ISって元は宇宙で活動するためのパワードスーツなんでしたっけ?」

 

「はい。なので搭乗者の体に負担を掛けないように常に体調管理を行っているんです。また、ISを展開することは擬似的な体を作り出すのに近く感覚もそれに似たものになっていて・・・」

 

「義手や義足にはもってこいだと。考えたねぇ・・・」

 

蝶部さんのアイデァは本当にすごいと思います。

しかもその発想の原因となったのが以前に私が行った作文なのですから教師としてこれ以上嬉しいことはありません。

ですが・・・。

 

「ISは女にしか反応しない。山田さんが悩んでいるのはそこですか?」

 

「・・・はい」

 

確かに蝶部さんのアイデァはいいものです。

しかしながらそこには「ただし」がついてしまいます。

 

現状例外はあるとしてもほぼすべての男性がISの適性を持ってはいません。

もともとISはなぜか女性にしか反応しなかったのです。

 

「・・・」

 

ふむ、と考えてから清掃員さんは私にこう言いました。

 

「それって不可能なんですか?」

 

「いえ、理論上は男性にも微量の適性はありますが・・・」

 

が、あくまでも微量であって起動もできない量なのだ。

とてもじゃないが男性がISを使うことなど・・・。

 

「だったらISについて伸ばしてやらんね!!弟さんを救おうと考えて教えてもらいに来たんやろ!!それなのに教師がそんな態度でどうするんか!!」

 

「!?」

 

「・・・山田さん、生徒はどうして教師に教えてもらっていると思いますか?」

 

清掃員さんは真剣な顔で私に問いかけてくる。

教師に教えてもらう理由?

え、えっと・・・。

 

「生徒はみんな自信がないんですよ。このままの状態で社会に出る自信がない。だから学校に行って色々なことを教えてもらって自信をつける。これならもう世の中に出ても大丈夫って思えるようになるまで何年もかけてじっくりと自信を作り上げるんです。そして生徒に自信をつけさせるのが教師の仕事なんです。」

 

清掃員さんは私の目をじっくりと見て諭すように言いました。

 

「それなのに教師が自信を無くしていたらいかんでしょ?」

 

その言葉は私の胸に深く、深く染み込んでいきました。

 

*****

 

「あなたが怒るところは初めて見ましたよ」

 

「あ、轡木さん。見ていらしたんですか」

 

ええ、と言いながら轡木さんは俺の横の席に座る。

もちろんお酒を持って。

 

「怒りすぎちゃいましたかね・・・」

 

あの後かなりきついことを山田さんに言ってしまった。

山田さんは俺の言葉を全て聞き終えてから席を立っていったのだ。

・・・涙を流しながら。

 

「ええ、それはもう。外まで怒鳴り声が聞こえてきましたよ」

 

「冗談きついですよ轡木さん・・・」

 

かっかっかと笑いながら轡木さんは酒をコップに注ぐ。

 

「でも、外ですれ違った彼女の目。とてもいい目をしておりましたなぁ。あれなら大丈夫でしょう」

 

あの子はきっと伸びますよ、と言いながら轡木さんは俺のコップにも酒を注いでくる。

 

「だといいんですけどね・・・」

 

怒るというのはきついことなんだなぁと思いながら俺は注がれた酒を一気に飲むのだった。

 

なおこれより数年後ISの技術を応用した男女両方使用可能な義手・義足が世に登場することになる。

その開発者の名前は蝶部というのだがこれはまた別のお話である。




地球防衛軍4.1が面白すぎて話を書く暇がない・・・(・ー・;)
ところでこんな物語を読むのはよほどの暇人か物好きだと思うんですけどどうなんでしょうね?
IS要素とかほとんどないし・・・。


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クレーム君

長くなっちゃいました・・・。


クレーム、それはいかなる組織でも一定数存在するものでその内容は多岐にわたる。

例えばこちら側の不手際で起こってしまった純粋なクレーム、相手がストレスを発散するためだけに行う言いがかり型のクレーム、もっとその製品もしくは組織をよくして欲しいという要望型のクレームなど様々だ。

 

そしてここIS学園でもそれは日常的に起こっている。

 

*****

 

「そんなにクレームが来るんですか?」

 

いつもの秘密基地にて今日も織斑さんや山田さんの愚痴とか悩みとかを聞いていたのだがその中で気になる話が出てきた。

 

「それはもう・・・ほぼ毎日来ますね。きちんと・・・という言い方はあれですけどちゃんとした内容のクレームもあればほとんど言いがかりみたいなクレームもありまして・・・」

 

でもたとえそれがどんな内容であっても一度は必ず話を聞かないといけないんですけどね、と苦笑いしながら山田さんが教えてくれる。

 

「私の所にも結構来るな」

 

「織斑さんにも来るんですか!?」

 

なんか意外だな・・・。あんまりそういうののイメージが無かったし。

 

「まぁISのせいで男の立場が小さくなってしまったからな・・・。ISが認められたきっかけも作ったのは私のようなものだしな」

 

「初代モントグロッソでの試合の技術がすごかったですもんねぇ~。あんな軌道も出来るのかッ!?って思いながら見ていましたよ」

 

「見ていたのか山田君・・・」

 

何やら二人だけで会話が盛り上がっているようだが、なるほど立場の弱くなった男たちからの熱いラブコールがきているのか。

世界最強も大変だな。

 

「やっぱり真夜中とか早朝とかに来たりしたんですか?」

 

「まあな。だが今はそんなことはないぞ」

 

へえ、なんかしたのかな?

 

「処理部の人たちのおかげでかなり楽になりましたようねぇ~」

 

山田さんが物凄く助かったって言う顔をしながら言うのだが、なんだ?

 

「処理部ってなんですか?」

 

*****

 

「ようこそいらっしゃいましたIS学園総合クレーム処理部へ。私はここの部長をやっております呉無 処理太郎(くれむ しょりたろう)です。以後お見知りおきを」

 

髭の生えた四十代ほどのスーツを着た男性が丁寧にあいさつをしてくる。

 

「これはどうもご丁寧に・・・。私は・・・」

 

「すでに山田様から聞いております。本日はここの見学をしたいということで。失礼ながら私めが案内の方をさせていただきます」

 

ここはIS学園総合クレーム処理部。

昨日の織斑さんと山田さんの話の中に出てきた組織だ。

今回はクレーム処理部がどんなものなのか気になったので山田さんに頼んで見学させてもらっているのだ。

 

え?仕事はどうしたかだって?もちろんするよ。

今回の見学は掃除も兼ねているからな。ちゃんと掃除道具を持って清掃員の制服を着ている。

 

しかしながらここ部と名前に付いてはいるものの規模がデカい。

一棟まるまる使っているのだから驚きだ。

 

「ここがクレーム処理室です」

 

「おお!・・・広い」

 

呉無さんに案内されたのはとても広い部屋だ。

どんな感じの部屋かというと・・・会社のオフィスだな。

パソコンが大量に並べられていて各机に二台の電話が備え付けられている。

 

今まさにクレームの対処をしているのであろう忙しそうにここで働いている人たちが電話と向かい合っている。

 

「なんで電話が二台あるんですか?」

 

「一台はクレーム対処用でもう一台は部内電話です。基本はそのデスクのものがクレームの対応をするのですが一人では難しいクレームの場合は専門の人間か上司にバトンタッチをしてもらうのです。その時に部内電話を使います」

 

「なるほど・・・」

 

「このクレームの対処なんですがコツがあるんです」

 

「コツ?」

 

オホンと軽く咳払いをしてから呉無さんはコツを教えてくれる。

 

「まずクレームの対応でしてはいけないことは三つあります。まず一つ目、お客様の困っていることに対してお詫びが出来ないこと。二つ目、クレームの内容を最後まで聞かずに言い訳をしてしまう事。そして最後に、事実の確認ができないことの三つです」

 

「謝ったら裁判とかになるんじゃないんですか?」

 

「それは間違いです。基本的に裁判になったとしても相手に具体的な損害が無ければ負けることはありません。第一に実際に裁判を起こそうとしてもお金がかかりますからまずしません」

 

なるほど・・・。まぁ確かに裁判をすると色々とお金がかかるもんな。

 

「それでこの中で一番重要なのが最後の事実の確認なんです。たとえばラーメン屋があったとします。従業員のミスで頼んだ出前がいつまで待っても来ません。そこで早く出前を持ってきてくれとクレームが来ます」

 

「それで?」

 

「従業員は分かりましたと言ってすぐに出前を持ってきます。しかしながら持ってきたおかもちの中にはラーメンではなくチャーハンだけが入っていました。お客様はラーメンじゃないじゃないかと怒ってしまい二重クレームが起きてしまうのです。これは従業員が事実確認、どの商品を持ってくるのかちゃんと聞いていなかったから余計にクレームが発生したのです。このようなことを避けるためにも事実の確認は重要なんです」

 

「な、なるほど。慌ててはいけないということですか」

 

「その通りです。慌てたところでいいこと無し。焦らず冷静でいることが重要なのです」

 

うわぁ・・・俺には絶対無理だな。慌てやすいいし・・・。

 

「ちなみに基本的にこの棟の中の部屋は一部休憩室などを除いてほとんどがこの部屋のような作りです」

 

「え!?そんなにクレームが来るんですか?」

 

「もちろんですとも!!」

 

呉無さんが顔をグイッと近づけながらそう言う。

 

「ここはなんでもありのIS学園です。男性が低めにみられている今の世の中へのうっぷんが溜まった男たちからのやつあたりなクレームからISの情報、特に男性操縦者の情報を欲しがる一国の大統領まで幅広いですよ」

 

「そ、そんなに・・・」

 

「もちろん中にはまともなクレームもありますよ。もっと子供に会え易くして欲しいなど。もっとも割合的には全体の四割弱ぐらいですが」

 

割と少ないんだなぁ・・・。そういうのを全部相手しなくちゃいけないんだから大変だな。

 

「多いときにはクレームが一日で千件以上もありますからね。我々もそんなに多くのクレームをさばきたくはないのである程度はマニュアル化しています」

 

「マニュアル化?」

 

「そうです。コンピュータを使っていくつかのタイプにクレーマーを分類しているのです」

 

「まてまてまて!?そんな簡単に分類できるのか!?」

 

俺がそう言うと得意げに、

 

「出来ますとも」

 

と言った。

 

「こちらをご覧ください」

 

そう言いながら呉無さんは俺にデスク上の電話の通話機を見せてくれる。

 

「ここに本体につながっているコードとは別にもう一つコードが付いているでしょう。ここのコードはパソコンの本体と繋がっていてここからAIがどんなタイプのクレームかを声色や鼻息、言葉の間隔などから予測します。すると・・・」

 

「あ、画面になんか出てきた」

 

呉無さんがキーボードを触るとモニターに一つの画面が映し出される。

 

「このように画面の方に可能性の高いタイプが映し出されます。これらの予測に従って応対者はAIと共にどのようなタイプのクレーマーか判断していくのです。」

 

「凄い技術だ・・・」

 

「製作に百億以上かかりましたからね」

 

「おい!?」

 

絶対それクレームの火種になるぞ。一応IS学園は日本政府、つまり日本人の税金で成り立っている場所だ。

もしもそんなことが世に知られたらもっとクレームが来るんじゃないか?

「俺たちの税金を無駄にするんじゃない!!」って言う感じで。

 

「安心してください。もうすでに来ました」

 

「ばれてんじゃないか!!」

 

「安心してください。そのような問題を解決するのが私たちの仕事です」

 

「解決者が問題を起こすのは本末転倒だぞ・・・」

 

まったく・・・とんでもないところだな。

 

「実はそのことが上の方に知られてしまって今年の予算が・・・ちょっと厳しい・・・」

 

「自業自得だ!!」

 

「まぁクレームが起きないようにするのが一番なんですがね。ともかく最近はAIに頼らずにクレームを処理できる人材を育成している所です」

 

なんかいいことを言っている風に話しているけど説得力がまったくないからな?

 

「そしてこれがわが部で開発された人材育成マシーン、『クレーマー君』です!!」

 

そう言いながら新たに出された機械は・・・なんだこれ。冷蔵庫よりも少し小さいぐらいの大きさの何かが出てきた。

 

黒色の長方形で真ん中にはモニターが付いている。さらにモニターの横にはスピーカーがある。

 

「このモニターはタッチパネル式になっていてここでシミュレーションする相手を作ることが出来ます」

 

「なんと!?」

 

それは凄いな!!

 

「このように年齢や性別はもちろん。信仰している宗教や電話をした時の状況まで設定できます。そして会話をするときはこのモニターに相手の顔を表示することもできます」

 

「そんなに細かいところまでできるのか!!」

 

「習うより慣れろですからね。なかなかクレームの対応をする機会はありませんし慣れる暇もありませんから」

 

「その点これならいくらでも出来ると」

 

凄い発想だなぁ・・。

 

「ただ・・・」

 

「ただ?」

 

何やら渋い顔をしながら呉無さんは頭を抱える。

 

「これ一台の生産に十億ぐらいかかってしまって・・・量産が・・・」

 

「こらこらこら!?結局駄目じゃねえか!!」

 

「で、ですがこれは有名な芸人やアイドル、歴史上の人物まで幅広く再現が可能なんですよ!!」

 

「そんな余計な機能を付けるからコストがバカ高くなるんだろうが!!」

 

まったく・・・。なんでそんな無駄な機能を付けたのやら。

 

「量産しようにもコストばかりかかるからと言って上が量産の許可を出してくれないんですよ・・・。このままだと人材の育成が遅れてしまって・・・」

 

本気で困っているのかとうとう呉無さんは体操座りをし始めた。

・・・この様子だと真面目に困っているみたいだな。

 

「・・・要は作ってプラスになればいいんだよな?」

 

「え?」

 

しょうがない。面白いもの見れたしここはひとつ恩返しをしますか。

 

「私にいい考えがある!!」

 

・・・別にどこぞの司令官じゃないし失敗とかはないよ。多分。

 

*****

 

『さて皆様今日の特集は、今話題沸騰中のアングリーダイエットです!!』

 

テレビカメラが映す先には例の育成装置がある。それも何台もだ。

そしてそれぞれに人がいてみんな受話器に向かって怒鳴り散らしている。

 

「あんたなんか大っ嫌いよ!!」

 

「うっせぇ!!この糞上司。てめえなんか怖くないぜ!!」

 

「最後に殺すといったな。・・・あれは嘘だ」

 

「うっさい!ふぁいっきらいだ!!たんあいたんのヴぁーかっ!!」

 

『おやおや皆様怒鳴っていますねぇ。それではここでちょっと皆さんに聞いてみましょうか。・・・すみませーんどんな感じですか?』

 

『ふう、ふう・・・あっはい。いやぁいい汗かきますねこれ。私ここにきてまだ一週間もたってないんですけどもう五キロも痩せたんですよ!!』

 

『いやぁ・・・いいですよこれ。健康に良いだけじゃなくて日ごろのうっぷんも晴らせますしね。普段は言えない不満をここで発散して帰るのが最近の日課ですよ』

 

『・・・皆様大いにアングリーダイエットを楽しんでいるようですね!テレビの前の皆さんもぜひ一度やってみてはいかがでしょうか。それではリポートの方終わりまぁ~す!!』

 

スタジオの司会にバトンタッチして特集は終わった。

 

「すごいアイデアだな・・・。まさかここまで当たるとは・・・」

 

テレビを見て呉無さんが初めに言った言葉は感嘆だった。

 

「全国のマダム達に大うけですからね。一台数百万と高めですけど効果は絶対。しかも疲れたら今まで画面越しでしか出会えなかったアイドルたちとやろうと思えば会話が出来る。もうバカ売れですよ」

 

俺がやったのは簡単。あの機械を使ってストレスの発散をさせるのだ。

どうせ相手は架空の存在。ならば別にどれだけ当り散らしても現実に影響はない。

まさに現代日本人にピッタリなストレス発散装置だ。

 

それに設定をいじくれば普通に対人用のシミュレーターになるからまともな会話も可能なのだ。

 

「まずはジムの方から始めてその後リピーターになったお客に自費でこれを買うことを進める・・・そうすることによって確実に機械は売れる」

 

むっふっふ。まさに完璧。

しかもこの機械、無駄に全世界の言葉に対応しているので販売も世界規模で行える。

 

「そして今の世の中にうんざりしている男たちもストレス発散のためにこの機械を買う・・・うははは、素晴らしい、素晴らしいぞ!!」

 

「・・・うーむしかしクレーマー君にこんな使い道があるとは・・・。ありがとう君のおかげで助かったよ。おかげで量産の許可も下りたし君には感謝してもしきれないな」

 

そう言いながら呉無さんは俺に頭を下げてくる。

 

「いいですよ別に。案内のお礼ですから」

 

なんにせよ一件落着。めでたしめでたしってやつだな。

 

「た、大変です!!学園の方に大量のクレームが!!」

 

「「なに!?」」

 

俺たちが安心しきっている所へ山田さんが何やら慌てた様子でやって来た。

 

「こ、これを見てください!!」

 

そう言って山田さんは手元のタブレットを見せる。

 

「なになに・・・あ、これって2525動画じゃないですか。えぇっと、『クレーム君で喘がせてみた』『Hな会話をしてみた』『あのアイドルが○○を!?INクレーム君』・・・・・・」

 

ワアオ。

 

「「な、なんじゃこりゃぁー!?」」

 

俺と呉無さんは声をそろえてそう大声を上げるのだった。

オタクって凄い、そう感じた出来事でした。




もうちょっと投稿のスピードあげなきゃなぁ・・・。


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宿題

すみません・・・風が思ったよりも長引いちゃって・・・。
手洗いうがいは大事ですね。皆さんも風邪をひかないように気を付けてくださいね。


たくさんの学生が駅に向かって歩いていく。

その顔はどれもこれからの予定が楽しみなのか笑顔だ。

 

「おお、おお・・・。果たしてあの顔もいつまで持つかな」

 

国立IS学園は今日から本格的な夏休みだ。

いや正確にはもうすでに夏休みだったのだが昨日まで夏の課外が行われていてほとんどいつもと変わらなかったのだ。

 

そしてその課外も昨日で終わり。

これから二週間が本格的な夏休みになるのだ。

 

外国の学生も日本の学生も、みんな年齢国籍関係なく久々の大型の休みに心を躍らせているのだ。

 

だが!!忘れてはならない。

・・・八月三十一日の悪魔を・・・。

”だ い ま お う は ち か ら を た め て い る”

い、いかん!?このままでは大魔王が目覚めてしまうぞ!!

勇者よ、目覚めよ。目覚めるのだ!!今こそこの国を、世界を守るのだ!!

 

「なぁ~にをバカなことをやっているのだお前は」

 

「あ、織斑さん。こんにちわです。今ちょっと俺の右手が疼いて・・・冗談ですよ。織斑さんも帰省ですか?」

 

俺が箒を片手にRPGの最初の方でよく出てくる大賢者の真似をしていると織斑さんがやって来た。

スーツケースを持っているということはおそらく家の方に帰るのだろう。

IS学園はこの時期に関しては教師も学生もゆっくりと休める。

もっとも教師たちが休めるのは一週間ほどだがそれでも社会人としてはかなり休めているのではなかろうか。

 

・・・ちなみに清掃員は夏休みの間もしっかりと掃除を行って学園をきれいに保っておかないといけない。

まぁその代り毎週一日は休みが確保されているからいいんだけども。

 

「まぁそんなものだ。それでお前は今日も仕事か?」

 

「ええまぁそんなところです。ま、いつも通りってとこですね」

 

「そうか。・・・実家に帰ったりはしないのか?」

 

「まぁ近いうちに行くつもりですよ。ただ、実家が福岡なのでなかなか費用が・・・。ま、帰省ラッシュが終わってからになりますかね」

 

「福岡とは・・大変だな」

 

実際問題大変である。

飛行機のチケット代とかもあるし・・・最近は新幹線もあるがあれはあれで大変だ。

東京から福岡まで新幹線で行くと五時間ぐらいかかるからもう本当に疲れる。

新幹線は大阪までが限界だな。

 

よって必然的に一時間ほどで行ける飛行機で行くことになる。

・・・お金はかかるが。

まぁ最近は格安のチケットもあるし多少は財布に優しくなったかな?

 

「それでもやっぱりたまには親に顔を見せなきゃいけないですしね。これも子供の義務ってやつですよ」

 

それにいつ会えなくなるかも分からないからな。

だから会えるうちに会っておく。後悔をしないように。

これは前世から学んだ知識だ。

 

「・・・義務・・・か」

 

俺の話を聞きどこか遠くを見つめながら織斑さんはそうつぶやく。

 

・・・っていうかそういえば織斑家って両親が消えたんだっけ。

・・・やばい、すっかり忘れてた。この手の話をするべきではなかったなぁ・・・。

 

「あの・・・すみません。嫌なことを思い出させたようで・・・」

 

「いやなに、昔を思い出していただけだ。なぁに気にするな。特にそう言ったものではない」

 

そう言って織斑さんはほほ笑む。

 

「・・・なぁもしも親にもう二度と会えなくなったってしまったとき、どうしてももう一度親に会いたくなってしまったらお前ならどうする?」

 

そう織斑さんは俺に聞いてくる。

 

「そうですねぇ・・・タイムマシンでも作りましょうか。なるべく燃費のいいものを。ガソリン代がかかりすぎるのも問題ですしね」

 

「クッハハハ、そうかそうか。なるほどな、タイムマシン、しかも燃費のいいものか。ああ、確かにタイムマシンがあってもバカみたいに燃料費がかかってしまったらどのみち使えないものな」

 

俺がほとんど冗談で言ったことに織斑さんは大笑いする。

あ、何でほとんどかっていうと燃費に関してはそういう考えだから。

だってねぇ・・・タイムマシンがあってもその燃料がドラゴンボールとかだったらどうするよ?

まず普通の人間なら集めれないぜ。

 

つまりどんなにすごい機械であってもそれの燃料は一般的なものでないとただの珍品になってしまうというわけだ。

 

「もっとも織斑さんなら世界最強なんですし多分気合と根性で親と会えるんじゃないんですかね?」

 

「ほう?つまり私が脳筋だとでも言いたいのか?力だけで物事を解決する脳筋だと?」

 

痛い痛い痛い!!やめてアッパー掛けないで!!

死ぬ、死んじゃう!!あかんこれじゃ主人公がしぬぅ!!

 

「まったく・・・。今度からは言葉に気をつけろ」

 

「うへぇ・・・了解しました・・・」

 

いやしかし思った以上にあの技は効いた。

はぁ・・・。

 

「・・・まぁでもそんなに深く考える必要はないんじゃないですかね?どんなことがあったのかはわかりませんけど少なくとも織斑さんのご両親はこの世に存在しているんでしょう?そりゃ別次元に飛ばされてしまったとかならもう絶望的ですけど少なくともこの世界にいるのならいつか会えますよ。あ、いやまぁ会うことが出来ないと仮定したときの話ですよ?」

 

「・・・そうだな。確かにその通りだ。この世界にいるのだから必ず会えるに違いない。うん、すまないなこんな話に付き合わせてしまって」

 

そう言って織斑さんは頭を下げる。

 

「織斑さん、ここはそうじゃないでしょ」

 

「え?」

 

不思議そうな顔で織斑さんは俺を見てくる。

 

「こういう時はすみませんじゃなくてありがとうですよ」

 

「・・・ッ!?・・・ああ、ありがとう。助かったよ」

 

ハッと気づいた表情をして、織斑さんは改めて俺に言葉を投げかけてきた。

うんうん、それでよろしい。こういう時の言葉は素直に感謝の気持ちを伝えるもんだよ。

 

「どういたしまして」

 

織斑さんの言葉に俺は笑顔でそう返事をするのだった。

 

蝉の声が青空に響き、どこまでもはっきりとした気持ちのよさそうな白い雲が漂う夏の空。

ありがとうと言った織斑さんの表情は向日葵のようだった。

 




今週と来週がちょっと個人的なことでいろいろとごたごたするので更新が不定期になります。再来週からは通常通りに投稿できると思いますのでなにとぞご勘弁をお願いします・・・。


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二学期
二学期


復☆活☆!!


「あ、お爺さん久しぶりだな」

 

 学生たちの夏休みも終わりIS学園は今二学期を迎えている。もっとも学生ではない俺にとっちゃ何の関係もないが。

 

 また色々な所が汚れるなぁと思いながら今日も掃除をしていたのだが珍しいことにあの時の神のお爺さんが俺の目の前に現れた。珍しい。

 

「おぬしが元気にしているようで何よりじゃ。所で今回わしが来たのは他でもない。この世界の流れがアニメで言うところの二期に来たことを伝えるためなんじゃ」

 

「うんまぁなんとなくは分かってたよ。それで、そういう感じで他の転生者の所にも伝えに言ってるのか?」

 

 だとしたらご苦労なことである。

 

「まさか、あ奴らは伝える必要もないからの。各々で好きにやっておるじゃろう。それでおぬしの下にわしが来た理由なのじゃが・・・」

 

「なのじゃが?」

 

 おっほんと一息入れてからお爺さんは話し始める。

 

「おぬしには無理やりここに来てもらったじゃろ?それに関係する話じゃ」

 

「ああ、せっかくだからっていうやつか・・・。それで?」

 

 何か困ったことでも起こったのだろうか?ほかの転生者が世界の理念を歪めてしまった~みたいな。

 

「そんな大層なもんじゃない。おぬしが一体いつまでここにいればよいかの話じゃ」

 

「この時期ってことは・・・」

 

 わざわざこの時期に来たのならばもう答えは出ているようなものだ。

 

「さよう、おぬしはISの二期にあたる時間が終わるまではここにいてもらいたい。そういう取り決めなのじゃ・・・すまんな」

 

 申し訳なさそうな顔をしながらお爺さんは言う。まぁ過去のことをいつまでも言ったところで過去は過去だ。それよりも未来をどう過ごすかだよな。

 

「ま、それは過ぎたことだしな。それよりもそうかぁ・・・二期までかぁ。ならそろそろ就職の方を考えておこうかなぁ」

 

 あ、でも世界一周旅行にも行ってみたいなぁ。確かピースボートとかいう世界一周旅行が楽しめる客船があった気がする。

 ・・・だけどあれって検索すると宗教やらなんやらの関連用語が出てくるんだよなぁ。乗ってみたいけどかなり不安だ。

 やはりここは多少言葉の壁があろうとも海外のその手のツアーにするべきか否か迷う。・・・。

 

 そんな風に俺が考え込んでいるとお爺さんは呆れたように言う。

 

「・・・一応じゃがサバイバル技術の中には話術も入っておるからの。大概の言葉・・・まぁ失われた言葉なんかはさすがに対応しきれてはおらんが大体は話せるし聞き取れるようになっておるぞ」

 

「へぇ、便利」

 

 それは知らなかった。というかそもそもの話サバイバルと言ってもどこまでがサバイバルなのかの定義すらないもんなぁ。なにが使えて何が使えないのかを一度しっかりと確認した方がいいかも・・・いや無理だなこりゃ。

 確認するにしたって確認する項目が多すぎるし多分覚えきれない。

 

「まぁとにかくおぬしはこの学園の二学期が終われば晴れて自由の身じゃ。そのままこの職を続けるもよし。別の職に就くもよし。最初におぬしが望んだように安定した暮らしは保証するからあとはおぬしの自由じゃ。それじゃぁまたいつか会おうぞ」

 

「あ、うん。それじゃぁまたいつか」

 

 お爺さんはそう言い終わると何やら神々しい光と共に空へと昇っていった。多分あの光が天国と繋がっているんだろうなぁ。

 

 それはともかく本当にこれからの生き方を考えないとなぁ。しかし、いざ何でもしていいよと言われると何をしていいか困っちゃうよね。本当にどうしようか。

 

 実際この仕事はそれなりの給料も出るし安定している。なにより週一の休みがもらえるし・・・。

 

「・・・こりゃぁもうしばらくはこのままの状態だな」

 

 もし他にここより給料が良くて休みが必ずとれる職場があったらそっちへの転職も考えるかも。

 ま、いずれにしても、

 

「二学期まではこのままかぁ・・・。まぁとにかくまずは掃除をしよう。やっとかないと怒られるし給料がちぃっと引かれるし」

 

 遠くまで良く響く音を出しながら授業開始のチャイムが鳴った。その音は徐々に徐々に蝉たちの声に消されて混ざり合っていく。

 九月、依然として夏の暑さが残る中清掃員は今日もIS学園の掃除を始めるのであった。

 

 IS学園二学期が始まった。




遅くなって申し訳ございません類人猿です。これからのこの物語の流れなのですがストーリー内の時間でIS学園三学期まで言ったらそこで終わりにしようかと思います。
 …つまりは物語内で一年間の時が過ぎればそこで終わりとなります。色々と原作から離れてしまっていますが必ず完結させるつもりですのでもうしばらくはお付き合いください…。


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番外 同僚の悩み(IS要素が無いので飛ばしてもらって構いません)

一応このお話の中の時間は二〇一六年となっております。
所で皆さん、Z級映画はどのようにして楽しんでいますか?私はいつもパッケージだけ見て満足しております。


「きた!きた!きたぁー!!」

 

 やあみんな俺だ。清掃員だ。なんというかこの挨拶をするのもすごく久々に思える。

 それで今何で叫んでいるのかというと凄い情報が入って来たんだよ。

 

「パイレーツ・オブ・カリビアンにキングコング、おまけに猿の惑星の新作が来るだと!?」

 

 なんとなしに休憩時間中にスマホでネットサーフィンをしていたのだがその中の映画情報の中で気になる記事を見つけたのだ。

 

「へぇ・・・。お前って意外と映画好きだったんだな」

 

 なんか同僚が呆れながら言っているが気にしない。それよりも問題なのは映画だよ。映画!!

 

 さらにだね!!キングコングの新作に関しては後にコングVSゴジラの作品にもかかわってくるんだってよ!!これはもう期待するしかない。

 

 ただ一つ気がかりなのはコングとゴジラ果たしてどちらが勝つのかだ。今回の映画はハリウットが手掛けるのでやはりオリジナルの日本版とは異なるエンディングを迎えるのだろうか?

 

「映画の話に興奮するのもいいがそろそろ休憩時間が終わるぞ」

 

「あ、ほんとだ。う~ん、しかしながら凄いな二〇一七年。神ってるよ」

 

 そうこれらの映画はすべて二〇一七年公開予定である。今から来年が楽しみだ。

 ふと気になったが同僚(こいつ)は映画なんかは見に行ったりしているのだろうか。

 

「 そういやお前って映画とか見に行ったりしないのか?」

 

「映画かぁ・・・。そういや最近は観に言ってないなぁ。ぶっちゃけネットがあれば映画館まで見に行く必要もないし、それに内容も分かるし」

 

「そんなものなのか」

 

 まぁそうだよな。情報技術の発展した今日じゃぁわざわざ映画館まで足を運ぶのはそれらの類に慣れていない人かよほどのファンぐらいだろう。俺だってホラー映画とかは見らずにネットであらすじだけ見て満足しているし。

 

 ビビりなだけだろって?・・・いやだって怖いじゃん。でも見たいって言う気持ちがあるじゃん?だから怖い思いをせずに内容を知るためにネットを使っているんだよ。わからないかなぁこの気持ち。怖いもの見たさ的な?

 

「いやしかし凄いよ二〇一七年。ここまでのビックタイトルが並ぶなんて・・・アンビリーばぼーだよ」

 

「そんなにか?俺としちゃぁそのうちテレビでやるだろうしそんなに興奮はしないが」

 

「そんなこと言うなよ・・・。そりゃぁそうだけどさ」

 

 古い映画に関してはスカパーと契約しておけば色々と見れるもんなぁ・・・。便利な時代だよほんと。

 ひょっとしたらもう映画館までわざわざ映画を見に行くのは時代遅れなのかもなぁ・・・。

 

なんかそんなことを考えていると先ほどまでの興奮も収まって来たな。まぁあんまり期待しすぎるのもあれだししばらくは様子見かなぁ。

 

「・・・まぁいいや。それよりも掃除だな。ええと確か今からは一号棟だったな」

 

「おう、さっさと掃除を終わらせようぜ」

 

「あ、ちょっと待った。スマホの電源切ってなかった。・・・て、うん?記事が更新されている」

 

 どうやらついさっき新しく記事が更新されたようだ。ええと何々・・・。

 

「グレートデスチキンVSメガメカシャークだとおぉぉ!!?これは借りるしかねぇ!!」

 

 よしさっそく今日の帰りにGEOに寄ろう。そうしよう!!

 

「・・・はぁ。早くいくぞぉ」

 

 俺が新たな映画情報に興奮する様子を見て同僚は一人ため息を吐くのだった。

 




猿の惑星とキングコングのPVが公開されましたね。どっちも見てみたのですが非常におもしろそうでした!コングの方が三月中に公開されますし待ち遠しいです。(^_^.)


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フラグ?

あぁーーー………。(なんかもう何にも言えない)


「はぁ…」

 

織斑一夏はため息を吐きながら荷物を運んでいた。

彼は今文化祭の準備をしているのだ。

 

「持ってきたぞぉ~」

 

「あ、はーい。そっちにおいといてもらえるかな」

 

「おいしょっと」

 

今年の文化祭で一年一組が出すのは喫茶店である。

そしてその喫茶店こそが彼のため息の原因となっていた。

 

「なんでメニューに俺の名前が入っているんだよ…」

 

そう。なぜかは知らないがいつの間にか喫茶店で出すメニューの中に自分の名前が入っていたのだ。

それも『織斑一夏のXX』といった具合の。

 

しかもそれらの内容がなかなかに恥ずかしい。正直言ってこんなのをやっている所を友人にでも見られたら恥ずかしすぎて死にそうだ。

 

「まぁ俺だけじゃないんだけどさ」

 

実はこれらのメニューになっているのは一夏だけではない。その他の男子生徒全員がもれなくその餌食となっている。

 

その話を聞いてほっとしてしまったのはしょうがないと思う。

 

それで彼らの反応であるが…。

 

ハレオは「ふざけんな!?なんで俺がそんなことをしないといけないんだよっ!!」

 

ルイシストは「…ワカッタ」

 

バルクホルンは「さぁ妹よ!!今すぐ共にメイド服に着替えるぞ!!」「気が早いですよエメリッヒ君!?」

 

青磁は「……(絶対束来るなぁ)」

 

とそれぞれの反応を見せていた。

なお彼らの中には抵抗を見せたものもいたがそれらはすべてクラスの女子によって鎮圧されている。

 

「てか俺には他にも心配なことがあるんだよなぁ…」

 

もちろん文化祭のことも重要な案件なのだがそれ以外にも一夏の頭を悩ませていることがあった。

 

「それで、お前は結局部活を選ぶことはできないのか?」

 

一夏が少し休憩を取っていると箒が話しかけてきた。

 

「ああ。やっぱり俺の扱いは景品なんだと。おまけにあの日以来楯無さんとの鍛錬も始まってるしなぁ…。おまけに文化祭の準備もしないといけないから結構しんどい」

 

「それはまた…大変だな」

 

あの日というのは二学期の始業式のことで、その時に文化祭の優勝賞品として一夏が発表されたのだ。

もともとIS学園の文化祭には優勝というものがあってやって来たお客さんからアンケートを取りもっとも票の多かった部活には何かしらの景品が支給されるのである。

 

そして今回はまだどこの部活にも所属していない一夏が、優勝した部活に配属されるというわけである。

 

なおこのアンケートにはクラスの出し物は含まれていない。

 

「しかしこのままではお前が剣道部に来ないではないか……」

 

「ん?なんか言ったか箒?」

 

「な!?なんでもない!!良いからお前はとっとと準備をしろ!!」

 

そのまま箒は顔を赤くしながらどこかへと去ってしまった。

 

「何怒ってんだあいつ…?」

 

その時の一夏の表情は何とも言えないものだった。

鈍感もここまで来るとそれはもう相手の怒りを買う原因にしかならない。

 

*****

 

「はぁ…」

 

「大丈夫ですか会長?」

 

ここ生徒会室でも一人ため息を吐く者がいた。

もっともその理由は先ほどの彼とは比べ物にもならないが。

 

「大丈夫じゃないわよ嘘ちゃん…」

 

「お嬢様、字が違います。私の名前は虚です」

 

「変換が出来ないのよ!」

 

「『うろ』とか『きょ』とかで出てきますよ」

 

「あ、ほんとだ…」

 

オホンと赤くなった顔を扇子で隠しているのはこの学園の生徒会長である更識楯無である。

その横でまったくもうという顔をしているのは布仏 虚(のほとけ うつほ)である。

彼女もまた生徒会のメンバーで会計をやっている。

 

さてそれでなぜ楯無がため息を吐いているのかだが。

 

「虚ちゃん…私は非常に一夏君の将来が不安なの」

 

「彼の将来ですか?」

 

「そうよ」と言って楯無は真剣な表情をする。

 

「彼はいわば正義の味方よ。それも一か十かのどちらかを助けろって言ったら迷まず両方を助けようとするタイプ」

 

確かに両方とも助けられるのならそれに越したことはない。

だがそんなことが出来るのはアニメや漫画の中だけだ。

 

あ、そういえば…簪ちゃんの持ってるアニメでもそんなことを言っていた気がするわね。

 

ともかくとして、現実的に言って何かを助けるには何かを捨てる必要があるのだ。

もちろん精いっぱい努力して両方を助けようとするその意志は重要だ。

 

だが、そんなにうまく努力が実るとは限らない。

努力は実を結ぶというが実らない努力だってあるのだ。

 

「このままだといつか…いえ、必ず彼は大事な人を失う羽目になるわ…」

 

「確かに彼はまだ自分の立場をよく理解していない節がありますしね…」

 

これには虚を同意する。

 

はたして彼は分かっているのだろうか。

『男がISを動かせる事の重要性』を。

 

「ですが彼は去年までは中学生だったわけですしそのような知識は私たちのような先輩が教えるべきかと」

 

もちろん彼自身が自分でその意味を理解してくれればそれに越したことはないのだが。

 

そこまで虚が言うとその言葉に楯無は勢いよく飛びついた。

 

「そう、それよ!!その通りよ!私たち先輩が率先して教えていくべきなのよ!!」

 

さ、虚ちゃんの言質も取れた「ですが」…あ。

 

「だからと言って今すぐというわけではありませんよ。お・じょ・お・さ・ま」

 

「あ…あぁ。ちょ、ちょっと怖いわよ虚ちゃん。そ、そりゃぁ確かにここ一週間あなたに仕事を全部丸投げしていたのは事実だけど…」

 

「事実だけど?」

 

「う…………ごめんなさい」

 

こうして楯無は大量の書類をさばくのであった。

次の日にIS学園七不思議に生徒会室から聞こえるうめき声というのが追加されたそうな。

 

*****

 

「ところでお嬢様」

 

ニコッと綺麗な笑顔を見せながら虚は楯無に声をかける。

 

「な、何かしら虚ちゃん…」

 

その顔を見て楯無は内心焦りまくりだった。

大体にしてこんな表情をする時の彼女はやばいのだ。

 

「一か十かではなく一か九かではございませんか盾無さん?」

 

「うぐぅ……ええ、そうですよそうでしょうよ。確かにその通りですよーだ!一と九ですよ!!言い間違いましたそれが何か!?」

 

「うふふ…。すごくまじめに言っておられましたね盾無さん」

 

「うわーん虚ちゃんが私をいじめるぅ…。というかあなたさっきからわざと私の名前を間違えているでしょ!!?」

 

「なんのことでしょうか盾無さん?」

 

「そのきょとんとした表情が溜まらなくかわいい……じゃなかったわ。妬ましい!!私の名前は楯無よ!楯無!!」

 

「はい盾無さん♪」

 

「アアアアアアアアァァァァァァァァァモウゥゥゥゥゥぅ!!!!!」

 

いつもお仕事を丸投げされているんですしたまには楽しまないと♪

そんなことを思いながら虚は楯無をいじるのであった。

 

 




遅くなってすいません。お詫びにいつもよりもちょっと長めのお話にしました。
はたしてこのフラグが回収される日は来るのでしょうか。いや来ない(反語)
…ちゃんと完結はさせる予定です。

追記 誤字報告をしてくださった皆さん本当にありがとうございます。皆様のおかげでこの物語はなりたっています。これからも誤字があるでしょうがその都度教えてくだされば幸いです…。本当にありがとうございます…。


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亡国企業の学園祭

ポット思いついたので書きました。
勘違いものって面白いよね。


「くそがっ!!あいつめ長々と説教をしやがって!!おかげで間に合いそうにねぇじゃねぇかよ!!」

 

亡国企業…ファントムタスクという裏の業界での仕事をもっぱらの専門としている組織を知っているだろうか。

 

銃の引き金を引けば百中。計画はいつだって完璧。組織に所属するメンバーの素性は一切不明であるとされている。

そんな霞のような組織のメンバーの一人であるオータムは焦っていた。

 

もちろんこれまでだって必ずしも当初のように計画が稼働したというわけではない。

時には何らかのミスだってあった。計画がずれることなんて当たり前でもあるのだ。

 

しかしながらそれでも計画が完璧だと言われる所以。

それはバックアップ用の計画ですべて解決できたからでありどんなミッションだって最終的にはすべてうまくいったのだ。

 

この間のイギリスの新型ISを盗む計画だってうまくいったしそれ以前だってうまくいっていた。

 

だが!!今回の任務である白式のISコア並びに可能であればその搭乗者の拉致はどうであろうか!!

 

今回の作戦は近々学園で行われる文化祭という祭りに乗じて行う予定であった。

まず最初にこの私が企業の人間に変装しその状態でターゲットに接触。

そのまま人気のないところにターゲットを誘導し拉致する予定であった。

 

が、しかし。ここで最初の問題が発生する。

 

「あんな野郎に居場所を聞いたのが間違いだったぜ…!」

 

組織からの報告によればこの学園にいる太った清掃員がターゲットと親しくまた学園の地理に明るいためそいつと接触した方が早くターゲットと接触できるという話だった。

 

「いいやあいつは絶対表の人間じゃねぇ。あれは確実に裏の人間だ」

 

そいつはあろうことか初対面の私の変装を見抜いたのだ。

しかし何より悔しいのはその後のそいつの行動であった。

 

「まさか変装にダメ出しをした挙句正しい変装の仕方まで教えてくれるとはな…!」

 

正体がばれた時点でオータムはそいつを殺そうとしたのだがそいつはあろうことかこの私にいかにして一般人に紛れ込むかの技術を教えたのだ。

それも余裕そうに。普段ならそんな話は聞かずにさっさと殺すのがオータムのやり方だ。が、清掃員の目を見て気分が変わったのだ。

 

彼の瞳に映っていたのは果てしない悲しみと確固たる意志。

間違いない。彼は以前は裏の世界でその名をとどろかせていたのだ。

だがあるとき任務に失敗してしまいそれ以降は隠れるような生活を強いられてきた。

きっと失敗した原因が変装だったのだろう。

 

そんな自分の過去とこの私の姿が重なったに違いない。だからあいつはこの私に自分と同じ道を歩ませないようにするためにわざと自分の持つ技術を与えた…!

 

「けどよお…さすがに話が長すぎるっつーのッ!!」

 

もちろんこれはただのやつあたりだと理解している。

予定時刻よりも大幅に遅れたのも私があいつに頼んで他の技術も教えてもらっていたからだ。

もっとも技術と一緒に説教もついてきてしまったが。

けど…!!

 

「それもこれもすべてはあんなにおもしろい技術を持っているあいつが悪いんだ!くはは。もしもこの仕事がうまくいかなかったらアイツに責任を取らせてやる!!」

 

案外あいつをまた裏の世界に連れ戻すのもありかもしれない。

 

「…いずれにせよアイツとはもう一度会う必要があるな。くはは!!」

 

そんなことを考えながらオータムは一人任務を遂行するために一人ターゲットのいるアリーナへと乗り込むのだった。

 

*****

 

ーこれはIS学園内に存在するログハウスの中での会話の一つである。ー

 

「…とぉ、そういえば山田さん。今日凄い人と会ったんですよ」

 

「凄い人…ですか?…ひょっとして俳優とかですか!!良いなぁサインとかもらったんですか!?」

 

「…いやそっちの方の凄い人じゃなくて悪い方の凄い人です」

 

「あっ…。それでどんな人だったんですか?」

 

「見た目二十歳ぐらいでう~ん新卒?ぐらいのOLだったんですけどその人髪を金髪に染めていたんですよ。いやそりゃぁファッションとしてはいいかもしれませんけどね。でもその人は営業の人間だったんですよ。いやぁ…少なくとも営業の人間が髪を染めたらいかんでしょと…」

 

「あぁ…確かに営業でその髪はまずいですよね。あんまりいい印象をもたれないでしょうし」

 

「まぁ運よく俺に話しかけてきたのでついでにそのことも含め色々と注意したんでもう大丈夫だとは思いますけどね」

 

「ウフフ。それならもう安心ですね♪」

 

「…ところで山田さんの髪は「地毛です」えっでも「地毛です」そんn「地毛です」まだ言い切っていな「地毛です」…ルパンのあいぼ「次元です」さいですか…」

 

 




多分学園祭編は今までの中で一番長くなるかも。
所でIS本編では「学園祭」と「文化祭」どっちで呼ばれてましたっけ?(汗)


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篠ノ之箒と学園祭

ウナギのゼリー寄せ(ウナギのゼリーよせ、英:Jellied eels )またはウナギの煮こごり(ウナギのにこごり)は、18世紀に生まれた伝統的なイギリス料理である。特にロンドンのイーストエンドの名物として知られる。ぶつ切りにしたウナギを煮込んでから冷やしてゼリー状に固めたもので、温かくしても冷たいままでも食べられる。
wikiより出典。

…投稿が遅れてしまって申し訳ございません。


「…あいつは楽しいのだろうか」

 

篠ノ之箒はそんなことを考えていた。

箒のいる一年一組は他の暮らすよりも忙しかった。

その原因はやはりIS学園にわずかしかいない男子生徒がいたせいなのだろう。

もう一つの理由として織斑千冬がいたからなのかもしれない。

 

箒のクラスが今年の学園祭で行ったのは喫茶店だった。

それもいわゆるメイド喫茶。

 

ただし世間一般のそれとは違ってメインとなるのは男子生徒である。イケメンの。

IS学園の男女比率は非常に極端である。まぁその理由は男にはISが動かせないからなのだけれども。

それゆえ生徒たちは基本的に男と関わる機会がほとんどなかった。

 

が、時期的に言えば花の高校生である。思春期の真っただ中なのだ。異性に興味のない人間などほぼいまい。

そう、一夏たちが入学した当初の彼らの目はまさに野獣のそれであった。

あの時ほど一夏が鈍感で助かったと思ったことは無かっただろうと箒は思う。

まぁそのせいで自分も苦労しているのだが…。

 

ともかくとしてきっとあの鈍感具合ならばすぐに周りは一夏を攻略することをあきらめるだろうと箒は思っていた。思っていたのだが…。

 

「一夏さ~ん。こちらがイギリス名物のウナギゼリーですわ!!」

 

「ちょ、ちょっと待てセシリア!モザイク!モザイクかかっているぞそれ!!」

 

「なんだあの物体は…」

 

未だに一人、一夏を攻略することをあきらめようとしないものがいた。

セシリア・オルコットだ。

彼女はなぜかクラス代表選をした後に一夏にすり寄って来たのだ。

その理由は未だに不明だ。

 

彼女のルックスは同じ女である箒の目から見てもなかなかだと思っていた。

出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。

そして何よりもすごかったのが金髪である。自分にはないそれを箒はとてもうらやましく思っていた。

 

「ああすみません。私としたことが。これの正式名称はジェリードイールですわ!」

 

「違うよね?訂正すべき点はそこじゃないよね?」

 

「骨に気を付けて食べてくださいまし!」

 

こんな時に長考してしまったなと思い箒がとりあえずセシリアから一夏を取り戻そうと顔をあげたところ一夏が何かモザイクのかかったぐちょぐちょしたものを口に含まされていた。

 

「いい加減にしろ!大体なんなのだお前は!私と一夏の間にいきなり割り込んできて何のつもりだ!」

 

「あら箒さん。大和撫子というのはあなたのように怒りをストレートに相手にぶつける方のことを言いますのね。勉強になりましたわ☆」

 

「うるさい!大和撫子なんてとうの昔に絶滅したわ!私が聞いているのはなぜ教室で働いているはずのお前がこんなところにいるのだ!お前の休みはもっと後だろう!」

 

「あまりにもお客さんが来るのでもう材料の在庫が切れてしまいましたの。ですのでもうお店はお開きですわ。今頃は他の皆様も思い思いに過ごしていると思いますわ。わたくしはそのことを知らないであろうあなたたちにそれを伝えに来ましたの」

 

「そ、そうだったのか…。すまないな怒鳴ってしまって…」

 

「いえいえ私の本来の目的は一夏さんと学園祭を二人で楽しむことですから。それでは私たちはこれでおさらばしますわ」

 

「ああ、それじゃあ…ってそんなことさせるかア!一夏は私と回っていたのだぞ!!」

 

「ど、どうでもいいから誰か水を持ってきてく…れ…なまぐ…さい…うえぇ…」

 

はたから見たときのこの光景はとてもカオスだったという。

 

*****

 

「幼馴染失格だな…いや、人としても失格しているのだろうな私は…」

 

あの後もしばらくの間箒とセシリアはお互いに言いあいを続けていた。…一夏を無視して。

水を飲んで何とか復活した一夏は別にいいさと私たちを許してくれた。

 

だがどんな状況であれども一夏を無視していたという事実は変わらない。

箒は当人を無視して勝手に一夏の所有権をセシリアと言い争っていたのだ。

 

「ふっ、何が私と回っていた…だ。結局は私に仕方なく一夏が付き合ってくれただけではないか…。それなのに私はあいつのことをいつも無視して…自分の考えていたようにうまくいかなかったら癇癪を起こして…。いつもだ…いつも。なんで素直になれないのだろうな…私は…わたしは…わた…し…は…」

 

私はバカだ。どうしようもないほどの大馬鹿だ。いつだって一夏は私と一緒だなんて思っていて…そんなことあるはずないのに。

いつも私は一夏と同じ土俵に立っていなければ満足できなかった。剣道だってそうだ。私は引っ越しをした後も一夏は剣道を続けていると思っていた。

私と一夏は同じ土俵に立っていると思っていた。

 

でも実際はどうだった?一夏は家庭のためにアルバイトをしていて部活をする暇なんて無かった。

当たり前だ。一夏の家の経済事情が苦しいのは私だって知っていたのに…。それで癇癪を起こして…ISの操縦もろくに教えずに私と同じ土俵に立ってほしくてずっと剣道を教えて…。

 

「おかしいよな私は…。挙句の果てに一夏と同じように専用機が欲しくて…家族を使って手に入れて…それでどうなった?幸せになったのか?多くの人に迷惑をかけたのにか?間違いなくアメリカのISの暴走を起こしたのは姉の仕業だ。私に経験を積ませるために暴走させたんだ。それで?パイロットが死にかけて…」

 

どんどんどんどん思考が暗くなっていく。

でも実際にそれを私はしたのだ。

 

「恥ずかしくなったらすぐに暴力に出て…痛かったよな一夏。当然だろうな…木刀も持ち出していたしな…」

 

何でこんな凶暴な女に一夏がついてきてくれると思うのだろうか。

すぐに殴ってくる女。常人なら耐えられないだろうにあいつはなんで…。

 

「なんで怒ってくれないのだ一夏ぁ…!」

 

泣いた。

 

*****

 

箒は本来ならば生徒会主催のシンデレラ…「新訳:灰被り姫」に出るはずであったがどうにも気分が乗らず土壇場で参加を拒否した。

ああまた人に迷惑をかけたなぁと思いながらも箒としてはとにかく今は一人でいたかったのだ。

 

時刻はすでに夜へと移っていた。もう他のクラスも出し物を終えてみんな生徒会主催の最後の出し物を見に行っていた。

そんなか箒は島の中央にある奇怪な形をした塔に来ていた。

 

さすがに塔には登れないがその周りにはちょっとした原っぱがありそこからはIS学園を一望することが出来、箒のお気に入りの場所であった。

この場所を教えてくれたあの清掃員には感謝しなければなと思っていた。

 

「はぁ…」

 

この場所にはベンチなんてものは無い。箒は服が汚れることも気にせずに地面に座った。

 

そこから見えたIS学園は眩しかった。特にアリーナのあたりはひときわ眩しかった。

 

「今頃はあそこで一夏が逃げ回っているのだろうな…」

 

必死に女子生徒から逃げる一夏の姿を想像すると思わずくすっと笑ってしまった。

 

「…………」

 

あのあとは結局、箒と一夏とセシリアの三人で一緒に学園祭を楽しむことにしたのだがその途中でも何かとセシリアと箒で張り合ったりして一夏には多大な迷惑をかけてしまっていた…と思う。

 

箒は箒であって一夏ではないのだからあの間の一夏が何を考えていたかなんてわかりはしない。

でもその時の状況を聞けば十人中十人が迷惑だと答えるような行動をしたと言えるだろう。

 

「嫌われて……はないのだろうなぁ…。ああ、きっとあいつのことだ何事も無かったかのように明日もあってくれるに違いない…」

 

箒はそのことがうれしくも思ったが同時に悲しくも思った。

嫌われたくないという気持ちと怒ってほしいという気持ちが二つぐちゃぐちゃに混ざってしまって箒自身ももうどうしてほしいのかよく分からなかった。

 

「あいつのいいところは優しいところだ…でも、あいつは優しすぎる…。どんなにひどいことをしてしまっても絶対に許してくれる…。それじゃあ、それじゃ駄目なんだよ…一夏。そんなんじゃ、そんなんじゃ…そんなんだから私は……お前に甘えてしまうんだぁ…!」

 

泣く。-どうしようも出来なくて泣く。

 

泣く。-こんな自分が嫌で。

 

泣く。-寂しくて泣く。

 

泣く。-誰にも近寄ってほしくないから。

 

「うぅ…うぁああん…ひぐっ…うぅ…いやだよぉ…いやだよぉ…あぁぁ…ぐすっ…」

 

何が悲しくて泣いているのかなんて泣いている本人ですらわからない。

でも、なぜか急にとても泣きたくなって、悲しくなって。

 

何がいやなのだろうかと箒は泣きながら妙に冷静な頭で考えていた。

 

いやなのはいつまでも変わらない自分か?

 

いやなのは思い通りに回ってくれないこの世界か?

 

いやなのは私を許し続ける一夏か?

 

そのどれも違うのかもしれない。どれも当てはまっているのかもしれない。

ひょっとしたら理由はないのかもしれない。

でもこれだけは分かる。

 

「………一夏と一緒に居たい」

 

依存しているのかもなと箒は自嘲した。今だってそうだ。

こんなに悲しいのに一夏に会えばすぐにうれしくなってしまうのだろうと心の奥で確信している。

 

「私は大馬鹿だな…」

 

どうしようもないくらいの大馬鹿者で短気ですぐに殴ってお礼の一つも言わない。

 

「人間として必要なものが何もないのだな私は」

 

でも私は言葉を知っている。感謝の気持ちを伝える方法を知っている。心というものを持っている。

 

「今すぐは無理かもしれない。一生変わらないのかもしれない。でも」

 

一回だけでも…いや、本当は何回でも言いたい。伝えたい。

でもそれをする勇気はまだ無いから。

 

「いつもありがとう………一夏」

 

今はここからで勘弁してほしい。絶対にいつか隣で言うから。

その時が来るまで。

 

「一緒にいてくれ。一夏」

 

そう言った箒の顔にはもはや悲しみなんて存在していなかった。

 

 

 

 

 

その時だった。

 

「!!?」

 

アリーナが光り爆発音が届いたのは。

 

そしてその時だった。

 

「!!!!!?」

 

『ウオオーン!!』

 

「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「右だ!右!右にまがれぇぇぇ!!!」

 

恐竜のような姿をしたロボットに追いかけられている二人組の清掃員の姿を見たのは。

 

…せっかくのシリアスが台無しである。




実を言うとほとんど書く気が失せていました(小声)。
ただ、久々に小説情報を見たら評価で十が付けられているし、お気に入り登録が増えているし…これは投稿せないかんでしょと思い投稿いたしました。

評価をくれた皆様本当にありがとうございます。次回の投稿がいつになるかは不明ですが近いうちに投稿いたします。

次回『ロボタン現る』シリアスなんてありませんでしたとさ。


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学園祭(裏) 前篇

…なんかいろいろなモノの伸びが凄い。
…これがメインヒロインの力か……っ!!

注意として今回のお話は主人公がメインです。ISキャラは……後編は出てきます。


清掃員の仕事は時期によってその忙しさが変わってくる。

これはどこの組織においてもいえることではあるがやはり大きなイベントがあるとそれに比例して忙しくなる。

つまり何が言いたいのかというと現在進行形で俺たち清掃員は忙しいのだ。

 

「いくら掃除をしても終わりが来ない…」

 

学園祭に限った話ではないがないか比較的ゴミが道端に捨てられることがないIS学園にしても学園外から人を招き入れる時にはその分ポイ捨てされるゴミの量も増える。

一応は目の前でポイ捨てがあった時は捨てた本人に注意をしてはいるのだが…。

 

「ポイ捨てをしないでください」

 

「……」

 

こんな風に堂々と無視をする人もいる。

しかもそれをしているのが大人だからたちが悪い…。

いや、むしろここまで堂々と無視をされると怒る気も起きなくはなるのだが…。

こんなんだからいくら掃除をしても終わりが来ないんだまったく。

 

「あ、そこの掃除が終わったら次は山の方を頼むよ」

 

「分かりました副長」

 

おそらくIS学園の清掃員にとって一番忙しい時期がこの学園祭なのではなかろうか。

通常の学校だったら臨時の人間を雇うのだがここはISがある故に早々簡単には学園外の人間を雇うことなんてできない。

つまりどうなるかというと通常の人数で普段の倍以上の量の仕事を捌かなければならないのだ。

…赤色の服でも来たら三倍の速さで仕事を片付けられるだろうか?

 

「おい、お前も山掃除なんだろ?俺もそっちだから一緒に行こうぜ」

 

「おう分かった。ちょっと待っておいてくれ」

 

IS学園の清掃員は総勢二百四十名いる。

学園の大きさに少々見合ってないかもしれないが基本的に学園内の掃除は落ち葉だったりゴミ箱のゴミの回収だったりとそこまで多くはない。

さらに言えばこの学校は生徒の道徳を育むため(人はそれを経費削減ともいう)校内と生徒の使っている寮の部屋に関しては生徒自身に毎日掃除させている。

だからまぁそこまで苦じゃないんだよ本当に。

 

ただしなんにしても例外はある。それが今やっている学園祭だ。

学園祭が行われている間は生徒は掃除が不可能で、おまけに普段と違いえらい勢いでゴミが増える。

そのためその時に関しては生徒の代わりに俺たちが掃除を行うのだ。

もっともそのためにいるようなものなのだが…。

 

「いやあ話には聞いていたが本当に三班全部がフルタイムで出てるんだな」

 

不法投棄された粗大ごみの回収に向かうために俺と同僚は軽トラックに乗り学園内に有る山まで向かう途中そんなことを同僚は呟いた。

今日の担当箇所はあの奇怪な形をした塔のある山だった。

 

基本的に清掃は八十人で一つの班を三つ作りそれを毎日交代で回していた。

ちなみに各班にはそれぞれ副長と班長がいる。まぁ責任者だな。

 

とにかく今日ばかりは三班すべてが仕事をしていた。

理由は単純、人手が足らないのだ。

学園祭をやっているうちは普段の仕事プラス生徒の分の掃除までやらなければならず一人が複数の仕事を掛け持ちしていることなんてこの日ばかりはざらである。

かくいう俺もここに来る前は寮の掃除と教室の掃除、廊下の掃除とグラウンドの掃除をやって来た。

唯一の救いなのは今日の俺の仕事はこの粗大ごみの回収で最後なことだろう。…終わる気がしないが。

まぁともかく。

 

「よし着いた。さぁ最後の仕事だがんばるぞぉ…」

 

「…疲れた」

 

…俺たちの士気はがたがたである。

 

*****

 

「えっさーほいさー…」

 

「……」

 

男二人で山の中に不法投棄された廃材を軽トラに詰め込み焼却所に運ぶ。

まぁできない仕事ではない。…ただし廃材の量が多くて夜中までかかりそうだが。

 

「んしょっとこらっせ」

 

「気を付けて持てよ」

 

どんどん廃材を積み込む。最初に来た時と比べれば幾分かはゴミの山は小さくなったようである。

軽トラを使っているのはゴミが捨ててあるこの場所に来るためには細い山道を使わなければならないからだ。

さらに言えば俺と同僚。どちらも大型車の免許を持っていない。

 

「……」

 

何だろうかこの空しさは。

そう、この感じ。たとえるならばクリスマスイブに家で一人で昨日作った料理の残りを温めなおして食べているような…。さらに言えばテレビではイブの夜の特集が流れていて…いやこれ以上は危険である。

ともかくとして要は空しいのだ。せっかく学園では祭りをやっているのに参加も出来ず人目のない場所でせっせと廃材を片付ける。

それが仕事なので当たり前なのだがなんだかハブられているような気が…いやまあ俺の気持ちの問題なのだが。

 

「…なあ。なんで俺たちこんなところでこんなことをしているんだろうな?」

 

どうやら空しいと思ったのは俺だけではなかったようだ。

同僚も手こそ動かしているものの何とも言えない顔で俺にそう言ってきた。

 

「大体このゴミ山も全然減らないし…」

 

時刻はすでに午後五時。ここに来たのが午後の一時だったのでかれこれもう四時間はゴミを撤去し続けている。

しかしながら依然として目の前にあるゴミ山が減っている様子はない。…むしろ増えてないか?

 

「ああ!もうやってられるかよ!!きりがないぞこの仕事!!」

 

思わずそう叫んでしまった自分は悪くないと思う。実際にゴミ山は小さくなっていないし。

 

「お前もそう思うか…」

 

同僚もそう思ったようで何か決心した目でこちらを見てきた。

 

「なあこのままじゃいつまでたってもここの掃除は終わりはしない。もう四時間だ。四時間。それだけの間俺たちはずっとここのゴミを運び出していた。だがどうだった!?ゴミは減るどころかむしろ増えてやがる!!俺はもう限界だ…。お前もそうだろう?」

 

「ああ。さすがにこれは限界だ…」

 

始める前は新品だったはずの軍手はボロボロに変わっていた。

昨日洗ったはずのくつには穴が開いていた。…もう俺の体力も服も限界だった。

 

「…………もし、もしも。この地獄を終わらせれるとしたらどうする?」

 

…今にして思えばそれは悪魔の囁きだったんだと思う。

 

*****

 

俺は同僚に連れられて港にある倉庫街までやって来ていた。

なんでも倉庫の中に欲しているものがあるんだとか。

 

「R計画って知ってる?昔クリーンセンター(うち)で持ち上がった計画なんだけどさ、要は学園の掃除を全て人間じゃなくてロボットにさせようとしていたのよ。IS学園は機密の塊みたいなところだからその手の情報が俺たち経由から外部に漏れることを上は危惧したってわけ。で、全部ロボットにやらせようとしたんだけどもいざやってみたら維持費や修理費で帳簿がまっかっか。結局上は普通に人間を雇うことにしたってぇわけよ」

 

クリーンセンターというのはその名の通り学園内の清掃に関するすべてを統括する場所である。

IS学園の清掃員はすべてここに所属しているのだ。

 

「でもねやっぱりさぁ~大きなゴミを運ぶのって大変ジャン?それに普通のゴミ袋だって中身があったら意外と重たいわけであって少しでもその作業を楽にしたかったのよ。いやぁ人間考えることは皆同じだねぇ~」

 

そう言いながらクッヒッヒと笑うのは昼に俺に山の掃除に行くように伝えに来た副長だった。

副長は鍵の束を持っておりどうやらその中のどれかが目的の倉庫の鍵になっているようだ。

 

「でだ、先輩方はR計画を聞いてヤッター!って思ったわけよ。ロボットがあれば重たい荷物を自分たちで運ばないで済むからね。所がその計画がとん挫しちまってさあ大変!どうにかして楽をしようと思っていた先輩たちは自分たちでそういう事をしてくれるロボットを作ったわけ」

 

ここだここと言いながら副長が歩みを止めたのは倉庫街の中でも一番隅の方。若干古びた倉庫だった。

 

「えぇっと鍵はぁ………お!ドンピシャリ!!運がいいなぁ」

 

そのまま副長がカギを回す。

 

「ほらほらなあにぼさっと見てんのさぁ。若いもんは働く働く。ほら倉庫の扉を開けちゃって。これって意外と重いのよ」

 

慌てて俺たちは扉を開けにかかる。扉は鉄製だったので確かに重たかった。

 

「でだね、とりあえず先輩たちはロボットの開発には成功したんだけど結局上が新しく人を雇ったからこいつを使うことはなくなったていうわけ」

 

倉庫の中には防水シートがかけられた軽自動車よりも二回りほど大きな物体が置かれていた。

副長はかぶせられていた防水シートを取り外す。

 

「見よオ!これこそ我らが清掃員が誇る世界最高のお掃除ロボット…その名も『ロボタン』ダア!」

 

「「おおう!」」

 

防水シートの下に眠っていたのは恐竜のような形をした一つ目のロボットだった。

 

 

 

「じゃあとりあえずこいつを運ぼうか」

 

「えっと…どうやってですか?」

 

見たところロボタンはそのままの状態で地面に置かれている。

せめてキャスターの着いた台なんかに乗っかっていればまだ楽に運べたのだが…。

 

そう思った俺が副長に聞くと。

 

「ファイト♪」

 

…副長、いい笑顔っすね。俺は涙が出そうです。

 

「…楽するって難しいな」

 

「…ああ、だな」

 

「ああ、そうそうあいにくだけどこいつの重さは三トンだからね。まず軽トラの荷台じゃ運べないよ。頑張って引っ張るんだね」

 

「「……」」

 

ノーリスクハイリターンなんて存在しないんだな。

そう悟った清掃員であった。

 

*****

 

「つ、疲れた…」

 

「言い出しっぺの俺が言ったらいけないとは思うが…まともに掃除をした方が早く終われたかもな」

 

「いやあ、噂には聞いていたけどここが賽の河原かぁ…」

 

紆余曲折あったが何とか俺たちはロボタンをここまで運んで来ることに成功した。

もっともキャスターの着いた台に載せて引っ張って来たから予想よりは早くここまで来れたのだが。

 

…台に載せるまでが大変だったが。

 

さすがにもう軽トラで三トンの物を運びたくはないな。ちょっと走っただけですぐに道からそれてしまうのでうかつにスピードが出せなかった。

 

「…なんです賽の河原って」

 

「あれ、知らないの?ここっていくらものを片付けてもきりがないから裏でこっそりそう呼ばれているんだよ。前に一度ここに不法投棄していく業者を捕まえるために俺たちと教師、それに警備の連中まで一緒になって追っかけたんだよ」

 

「それで…結果は?」

 

「今の状況がその答えだがね。まぁかろうじでピントのずれまくった犯人の写った写真が一枚手に入ったぐらいかな」

 

「そこまでしてここに捨てたいのか…」

 

言うな同僚。…しかし凄いなその業者。

下手したら世界最強の織斑さんとか、まだ見たことないけど篠ノ之束とか超えるんじゃなかろうか。

 

「まぁともかくとしてここまでお疲れちゃん♪さぁ~てそんな君らの働きに免じてこいつの起動とかその他もろもろは俺がやっちゃうよ~。さあてはずはこいつの起動ビスケットを…」

 

「それちゃんと動くんですか?」

 

こう言ってはなんだが結構放置されていたように見えたし本当に動くのかには疑問が…「動いたア!」…問題なかったようだ。

 

『グオオオオオオオオオン!!』

 

独特な機械音を出しながらロボタンは起動した。

錆が出来てしまっているのか若干関節部分からぎしぎしと音がしていた。

が、しかしそれ以外には特に問題は無かったようでロボタンの視線はゴミ山へと向かっていた。

 

『グオオオオオオ!』

 

「うわっ!?」

 

「おうう!?」

 

「お~どうやら問題はないみたいねぇ。食べてる食べてる」

 

どうもロボタンは掃除機のようにゴミを吸引するのではなく直接口?らしき部分からとっていくようだ。

なんというか本当に食べているように見えるなこれ…。

恐竜が仕留めた獲物を食べているみたいだ。

 

「は、早い…」

 

「や、やつの速さはさんば…ゲフン。俺たちも見習いたい速さだな」

 

同僚よ。以前の日本ならともかく今の日本は非常に著作権に厳しい国になったのだ。そのような発言は我が身を滅ぼすぞ。

…もっとも同人誌というものは未だになくなっていないが。これがジャパニーズオタクの魂か。

 

しかし早い。ロボタンの掃除は本当に早い。

ロボタンの口はショベルカーのショベルが二つ上下に組み合わさったようなもので見ただけでも固そうだと分かる。

関係ないけどショベルカーってかっこいいよね。

俺がこの世界に来て真っ先にやったのはショベルカーに乗ったことだったりする。いや、ほら体に心が引っ張られるというかね。まあそう言うものが好きだったのよ。

中身はともかく見た目は子供だったから割と簡単に載せてくれたのはいい思い出だ。

 

「「「おおう!!」」」

 

時間にして三十分。たったの三十分でロボタンはあふれんばかりであったゴミ山をきれいに野に帰した。

俺たちの四時間とはいったい…。

 

「あぁ~やっと帰れる!!」

 

「だなぁ…」

 

時刻は午後の七時。今頃は学園祭の〆生徒会主催の観客参加型の演劇「新訳:灰被り姫」が行われている真っ最中だろう。

しかしもはやそれを見ようとも思わない。

俺も同僚も今日は一日働きづめだったのだ。もう体も服もボロボロだ。

 

「おまえらぁちゃんとロボタンを倉庫に持っていくまでが仕事だからなぁ?ほらほら最後のひと踏ん張りよオ!」

 

「いやはや、先輩方には本当に感謝しないといけませんね…」

 

「おいおい俺にもちゃんと感謝の気持ちを示せよオ?本当はロボタンは持ち出し禁止なんだからな」

 

「へえ、何でですか?」

 

「そりゃお前さんあんなのがいたら俺たちの仕事が無くなっちまうだろうが。あんなのがあったら俺たち清掃員はすぐに用無しになっちまうよ」

 

ああそう言うことか。意外とせこい理由だったのね…。

いやまぁ確かにIS学園としてはなりべく部外者は校内に入れたくないわけだからこんないいものがあったら絶対にそっちを採用するよなぁ。

まぁいいやとにかく仕事は終わった。さあさっさと帰るぞオ!

 

「あのう、副長。こいつってどうやって停止させるんですか?」

 

同僚が副長にそう聞いてくる。

そういえばまだ停止方法を聞いていなかったな。

 

「確かに。どうやって停止させるんですか副長?」

 

「え?そりゃもちろん…もちろん……もちろン…………」

 

「「え?」」

 

「………………どうすんだろう」

 

 

 

 

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』

 

瞬間その場が凍りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はふ、副長…なんかあろロボット俺たちの方を見ていませんか?」

 

「ふ、副長。お、おれもそう思うんですけど…!」

 

ロボタンはゴミ山のゴミを全て片付け終えると今度は目を怪しく光らせながら俺たちの方を見てきた。

 

「ひょ、ひょっとして半日の間ずっとゴミと触れてきたユーたちにゴミの匂いが染み込んじゃっているとか…?」

 

「つ、つまり……?」

 

「………同僚。どうやらやっこさん俺たちを片付けようとしているみたいだ。……あの自慢の口を使って」

 

「………おーまいごっと」

 

「にっ!!」

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!』

 

『逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

学園祭は終わりを迎えようとしていた。




補足としてロボタンの絵でも……一応見なくても話しは分かるように書いているつもりですが念のため。


【挿絵表示】


次回の投稿は本当に未定です。評価・感想を下さった皆様、本当にありがとうございます。


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学園祭(裏)後編

難産でした…………。

遅くなってすみません(-_-;)
そしてこれまでの話の中で最も長いです。読むときは注意してください。


 バタフライ効果というのものを知っているだろうか。「北京で蝶が羽ばたけばニューヨークで竜巻が起こる」というものである。まぁ古典的な考えであり現代で例を挙げるならば史実の人物に憑依もしくは転生をした時に起こしたちょっとした行動がとんでもない大事件につながってしまったという具合で用いられている。

 その効果は確かに健在だったようで実際に複数の転生者が存在するここ『インフィニット・ストラトス』の世界でも随所に正史とのずれが見られる。

 その中でも大きなものが束の結婚、ラウラの家族、鈴の知り合いなどがある。

 …ただしこれはあくまで物語の主要人物だけに限った話でありそれ以外の個所でも大きなずれが見られるのだ。

 

 具体的な例を挙げるとするとまずは「IS至上主義」ではないことが挙げられる。…もちろんISはすさまじい力を持っておりとてもじゃないが現行の兵器では太刀打ちが出来ないのだ(ただし一部の例を除く)。ただ圧倒的に数が少ない。世界中全てのISを合わせても五百にいかないのだから正直言って各国軍では持て余し気味である。現在も軍がISを所有しているのはその技術を自分たちの装備に付与するためであり、またそれと同時にテロリストたちにこれらの強力な兵器を持たせないためでもあるのだ。(もっともイギリスでは一台、アメリカも一台盗まれておりその国の高官たちは大騒ぎをしているが)。

 

 さらには別段そこまで女尊男卑ではないのだ。確かに一部の女性はISを傘にしてあれこれと言ってはいるが正直な話一般市民としてはそんなことに構っているほど暇はないのだ。(そもそもの話ISに触れることのできる機会が少なく認知はされているがそれ以上の発展はない)。結局のところIS云々はあまり関係なくただ単にいじめをする理由に出来るからなのでありこれを完全な女尊男卑と呼ぶのにはいささかの疑問がある。

 

 以上が主だった原作との差異ではあるが一つ面白い違いがある。…IS学園はそのすべての運営を日本政府が受け持っているため何かするたびにその分の費用は全額日本持ちなのだ。政府としてはその分の予算をどうにかして抽出せねばならずそのための一環として『ゆ~I❤!!』というIS学園を舞台にしたアニメが放映されている(正式名称;優原アイは蒼空を飛ぶ~インフィニット・ストラトス~Ⓒ)。実はこのアニメ、政府主導の公共事業の一環でありアニメの関連グッズを含んだ諸々の利益の八割はIS学園の維持費になるのである。また他にもISをモチーフにしたゲーム制作も行っておりそこそこな利益が出ているそうだ。ちなみに時の鳩波内閣はこれらの事業をまとめて「ゆ~I政策」と呼んでいる。

 

 …いささか話がずれてしまったがともかくとして転生者という異物があるためにこの世界は原作の物語と幾分か別のものになっているのだ。

 さてここで話は現在の時間へと移ることになる。

 

*****

 

 (……まさか亡国企業がここまで派手な動きを見せるなんてっ!)

 

 エメリッヒ・バルクホルンは内心そんなことを思いながら舌打ちをしていた。

 彼を含めたほぼすべての転生者が原作の知識を持っており(我らが主人公はそれを使う機会がなかったためにほぼ忘れている)それぞれは口には出さないが自然と原作通りに事が進むように行動をとっていた。そのために今まで大きな差異は起こっていなかった……のだが。

 

『生徒は速やかに避難行動をとってください!現在教師部隊が事態の鎮圧に向かって動いております!だから落ち着いてッ!……えっ!?なんで部隊の人員がこんなに少ないんですか!?…へ?ロボットにやられた?どういう事ですかソレ!?』

 

 (…この放送も確か原作ではなかったはずだ。やはりこの世界は元の世界とは違うものに成りつつあるのか。それにロボット?亡国企業はそんなものまで持っているのか)

 

 現在IS学園に未曾有の危機が訪れていた。生徒会主催の劇が行われているアリーナに爆弾が仕掛けられていたのだ。それにより会場は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたのだ。

 また運悪くその時に行われていた劇にこの学園の専用機持ちがほぼすべて集まっておりさらには一般の生徒も参加していたため下手に戦闘を行おうとすれば周りの生徒にまで攻撃の余波が届くことは明らかであった。

 

 「この子を死なせたくなかったら白式をおとなしくこっちに寄越しな」

 

 また爆発の混乱に乗じて構成員の一人が劇の出演者の一人を人質にしており余計に手が出しにくい状況になっていた。

 現在専用機もちたちの目の前にいる敵は二人。一夏などの人間は彼らの名前を知らなかったが転生者たちはその姿を見てすぐさま彼らの名前を思い出した。

 

 『オータムとスコール…』

 

 人質を片手で抑えつつオータムは専用機持ちたちを挑発した。

 

 「奪えるもんなら奪っていいぞォガキども。ま、奪われたら別のを奪いにいきゃぁいいんだけどさ」

 

 それに無理に奪いに行こうとするとこの子の命が危ないぜと付け加えた。

 

 (…人質には悪いが俺としては今ここであいつらを叩きたい。……が)

 

 バルクホルンは一見すると妹に欲情する最低な変態ではあるがこんな彼でもその体にはしっかりと殺すための技術が備わっている。

 彼やラウラはもともとデザインベイビーでありその基本的なコンセプトは力である。故に彼らの筋力に無駄な部分は一切なく骨も人一倍頑丈で、さらには生まれてからここに来るまでずっと軍にいたのだからその思想、技術はすべて軍人としてのものであり必要ならば小を捨てるという選択だって出来るのだ。

 

 (兄ならば迷わずここで彼女を捨てるはずだ…だが…)

 

 (だが今ここでそんな選択をすれば専用機同士で争いかねない…。下手すれば全滅だ)

 

 そんな彼らと比べると一夏は去年まで他の人よりも少々特殊ではあったが一般人である。少なくとも現代日本において戦争なんてものと関わることはほぼなく教育だってそんな殺伐としたものではない至極一般的なものだ。むしろ道徳の時間では常々人を助けなさいやいいことをしましょうと教えられてきたのである。果たしてそんな教育を受けてきた彼に見捨てるという選択は存在するだろうか?否存在しないのである。

 

 「その子を離せ!その子は何も関係ないだろ!!」

 

 「それで…犯人は人質を解放するのかい?」

 

 「少なくともこの戦いにはあの子は関係ないッ!!」

 

 「………バカ?」

 

 同じことを繰り返して言う一夏に対し思わずオータムは素の口調でしゃべってしまった。

 

 「一夏、お前はバカか。そんなことを言って『はい、そうですか』とみすみす人質を手放すような犯人がいるわけないだろうが!!」

 

 晴男ハレオはとにかく事態の収拾を図るためにまずは一番の荷物であろうと思われる一夏をその場から下がらせようとしていた。…敵と戦闘するのにまずは味方をどうにかしなければならないというのはどうなのだろうか?

 ハレオは続けて言う。

 

 「おい青磁、あと何分でこの生徒ゴミどもはいなくなるんだよ!このままじゃ何も出来ねえぞ!!」

 

 「…今教師たちが全力で誘導しているけど…何かもう一つ事件があったせいか行動が遅れている」

 

 端末を操作しながらハレオの欲しい情報を伝える篠ノ之青磁。

 しかしながらいまだに混乱は続いておりアリーナの闘技場には人が残っていた。

 彼を含め専用機もちたちは皆さっさと生徒を避難させて敵を叩きたいのだが…そうもいかない。

 

 「もしも動こうとしたらどうなるか…わかっているわよね?」

 

 オータムが専用機持ちたちを脅す。

 最初こそ二人ならばまだ何とかなると思っていた者もいたが動こうとすると足元に弾丸が降ってくるあたりどうやら敵は目の前の二人だけではないようだった。いまだに発見の報告がないところを見るとひょっとすると足元に弾を撃ち込んでいる人間もISを纏っているのかもしれない。

 なんにせよ敵の総数がわからないうちに行動をとるのは危険すぎるのだ。

 

 「さあ織斑一夏君。おとなしく白式のコアを渡してもらおうかしら」

 

 スコールはそう言いながら一歩一夏に近づく。

 

 「待ちなさい!分かったわ!あんた達亡国企業でしょ!そっちの人質を持っている方がきているのはアメリカのISね!!」

 

 歩みを進めるスコールに待ったをかけたのは鈴であった。

 

 「アメリカッ!?それじゃぁあれはアラクネ!!まさか本当に…」

 

 セシリアも何か心当たりがあったのであろう驚愕の表情を浮かべる。

 

 「みなさんいけませんわ!あれが本当に亡国企業ならば先ほどから私たちを射撃をしているのは……」

 

 セシリアは何かを専用機持ちたちに伝えようとしたが最後までそれを伝えることは無かった。なぜなら…。

 

 「「!?」」

 

 瞬間アリーナの入り口からありえないものが飛び出してきたのだ。

 

 「ど、どどど退けー!!ひかれたくなきゃそこを退けー!!」

 

 「ロボタンがやってくるぞオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 『グオオオオオオオオン!!』

 

 一台の軽トラが物凄い勢いでクラクションを鳴らしながらアリーナの中へ突っ込んでくる。その軽トラを追っていたのであろう大きなロボットも続いてきた。

 

 「なんだ……あれ」

 

 意外にもその光景を見た一同の気持ちを代弁してくれたのはオータムだった。

 

 「一夏!!」

 

 突然のことに全員が驚き固まっているとそこへボロボロの打鉄を纏った千冬が現れた。その姿を見た専用機もちたちと亡国企業は反応こそ違うが同じ感情を持った。

 

 「何があったんだよ千冬姉!!」「なんでこいつがここに現れるんだよスコール!」

 

 千冬はそんな彼らの様子を気にもせずだた一言言わなければならないことを伝えた。

 

 「私がこうなったのはあのロボットの仕業だ…。いいか全員よく聞け。あいつに対しこの学園は合計で二十二基のISをぶつけた。持てる火器はすべて使い自衛隊とも連携した。果てには三年生の連中にまで出てもらった。……それであの状態だ」

 

 その言葉に専用機もちたちは思わず息を呑んだ。が、そんな彼らとは対照的に顔色をよくした人物がいた。

 

 「へえ…あいつあんなナリしてあの世界最強をここまでズタボロにしたのか…………」

 

 オータムは口元を歪ませながらロボタンの姿を見る。ロボタンは未だ清掃員二人をゴミと認識しているのかしつこく追いかけている。

 ただでさえ混乱していたアリーナがロボタンが乱入したことによってますます混乱していた……かに見えたが意外にもそれは起こらなかった。

 

 なぜならばロボタンはもともとゴミを回収するための機械。そのプログラムには人を傷つけるものは存在しておらずむしろロボタンは周りの生徒に被害が行かぬよう器用に尻尾を使って観客席の方に出していた。

 とにもかくにも彼が狙っているのは清掃員たちゴミだけである。

 

 「なんでこんなところに入り込んだんだよ!こんなに生徒がいるんじゃうかつに逃げ回れないぞ!!」

 

 「おちつけ!!後ろを見てみろ!あの野郎器用に俺たちを追いかけながら尻尾を使ってアリーナにいる生徒たちをはじき出していやがる!!やっこさん狙いは俺たちだけみたいだぜ!!」

 

 「ハッ!!最高だな!!!!畜生!!!!!」 同僚はやけくそ気味にそう言った。

 

 「しっかしいろんな道が通れなかったうえに織斑さんが負けるなんて想像しとらんかったわ!!とりあえず何とかここから脱出しなけりゃこっちが危険だ!!」

 

 瞬間二人の乗っている軽トラがガコンと音を立てながら浮かび上がる。とうとうロボタンが車に追いついたのだ。

 ロボタンはようやく捕まえた獲物を逃すまいとしっかりと車を咥える。何とか逃げ出そうとアクセルを必死に踏み込むがタイヤは空を切るばかりで前進はしない。

 

 「ああ……そうしたいのはやまやまだが、どうやら俺たちの冒険もここで終わりみたいだぜ……。見ろよあいつ、嬉しそうに尻尾を振っていやがる…。復活の呪文を覚えておきゃあ良かったよ…」

 

 バックミラーを見ながら同僚はそう口にする。

 見るとロボタンは尻尾を振りながらようやく獲物を食べられると上機嫌そうであった。ロボタンが完全に車を破壊しようと顎に力を入れ始めたとき一つの影がその口に衝撃を与えた。

 

 「オラオラア!かかってこいよ糞野郎!」

 

 「何をやっているの!?オータム、戻りなさい!!」

 

 慌ててスコールが止めるように言うがオータムはそれに構わず相手に飛び掛かる。

 さすがに裏の家業を専門にしているせいかオータムの放った一撃は教職員のそれよりも威力があったようだ。ロボタンは車を離し素早く方向転換をしてオータムと向かい合った。

 

 『ウガガガガ!』

 

 せっかく楽しんでいたところを邪魔されたのがよっぽど嫌だったのかロボタンはオータムに対し怒りを抱いていた。そしてその怒りは彼のプログラムを黙らせロボタンは明確にオータムを敵と判断したのである。

 

 「へへ!そうじゃなくちゃなぁ?だけど悪いがあたしはフェアじゃないもんでね!このまま攻撃を食らいやがれ!!」

 

 オータムはアラクネを器用に操作しながら再度ロボタンに攻撃を与えようとするもかわされてしまう。

 

 「ッち!そんなナリして動きは速えようだな!!」

 

 『ウガア!!』今度はオータムに代わりロボタンが攻撃を仕掛ける。どうやらアラクネの足を掴み相手の動きを封じるのが狙いだったようでしっかりとアラクネの足を咥えた。

 

 「ヘッ!あたしの足が欲しいのならいくらでもくれてやるさ、パージ!!」

 

 が、驚くべきことにアラクネは自らの足を切り離すことでロボタンの攻撃をかわしたのだった。

 

 「うそ!アラクネってあんな動きが出来るの!?」

 

 その光景を見て思わず鈴は叫ぶ。彼女はあのISは足さえ押さえることが出来たら簡単に倒せるだろうと考えていたのだ。しかしながらその目論みは失敗に終わってしまうのだった。

 

 「いえ、鈴さん。アラクネは本来ならばあのような動きは出来ないはずですわ。……おそらくは亡国企業が独自の改良を施したのでしょう」

 

 セシリアが鈴の驚きに対し冷静に説明する。

 

 「少なくとも独自に改良を施せる技術力と設備があるわけか…。敵は思った以上に厄介なようだ」

 

 セシリアの話を聞きながらバルクホルンはそう呟く。それに同調してラウラも言う。

 

 「本国の方にもっと亡国企業に対する警戒レベルを上げてもらうように言っておかねばならんな」

 

 「…君ら普段と様子が違いすぎないかい?」

 

 青磁が呆れながら二人に対して言う。

 その時であった。

 

 「…………!!」

 

 「……へぇ音を出さないように攻撃したはずなのによく避けれたわね」

 

 「ミステリアス・レイディ……」

 

 一同がロボタンという新たな存在に注目している今を好機ととらえたのか楯無はオータムに対し攻撃をしていた。しかしながらスコールもその道のプロ。直前ではあったが彼女の存在に気付いたようである。

 がしかし、その心の中は体とは裏腹に荒れていた。

 

 (Mは何をしているの…………!?)

 

 そう今回の作戦には合計で三台のISが投入されていた。一台は先ほどからロボタンと闘いを繰り広げているアラクネ。次にスコールの纏っているラファール・リヴァイブ。そして最後にMの乗るサイレント・ゼフィルスだった。

 アラクネとゼフィルスはどちらもアメリカとイギリスがそれぞれ威信をかけて製作していた機体だ。特にゼフィルスはつい最近出来上がったばかりの最新鋭機でありよほどのことがない限り負けることはない。

 しかしながら問題となってくるのはリヴァイブだった。

 

 スコールの乗るリヴァイブは普通のそれよりもスピードが出るようになっていたりと改良は加えられていた。が、しかしさすがに第二世代の機体でありもしもこれに専用機が当たってしまったら世代差により負けてしまうのは明白であり今回のMの任務はそうならないようスコールを護衛することのはずだった。

 

 (どうしてMは通信に出ないのよ!)

 

 スコールは慌ててMに対し通信を試みたがそれに出る気配はない。まさか故障かと思いオータムはISのマルチレンズを使ってアリーナ上空を捜索したがそこにもMはいなかった。

 

 (まさか落とされた!?)

 

 「……あら?もしかして仲間がいなくて焦っているのかしら」

 

 「……!?まさかあなたが!!」

 

 「フフ……さあね?」

 

 楯無の言葉に驚くスコール。しかしながら一見余裕そうな表情を見せている楯無もその心まではそうではなかった。

 

 (…どうやら本当にそうだったようね。まぁ何が起こったのかは知らないけど使えるものは使わなくちゃね♪)

 

 楯無がさらに攻撃を仕掛けようとしたがそれが行われることは無かった。

 

 「!!…ようやく来たわねM」

 

 「……フ、私はア・イ・ツ・とは違う。仕事はしっかりと全うする」

 

 「…その言葉もっと早く聞きたかったわね」

 

 楯無の攻撃はMのISによって防がれることになった。

 

 「悪いな。こいつを拾ってくるのに手間取っていてな」

 

 「クソが!邪魔すんじゃねえM!」

 

 Mが先ほどまでいなかったのは勝手にロボタンと戦っていたオータムをその場から離脱させるためでありそれに手間取っていたのだ。

 

 「サイレント・ゼフィルス…なかなかいい機体を持ってくるじゃない」

 

 楯無はそんな三人を逃がすまいと構えの姿勢を取る。

 

 「あら悪いわね御嬢さん。このままここに居たら私たちが負けてしまうわ。だから今日はここまでね。今日のことであなたたちの実力は分かったし次はお相手をしてもいいわよ?」

 

 「なに!?まだあいつとは決着がついていないんだぞ!このまま帰るってのか!!?」

 

 スコールの言葉にオータムが反応する。

 そんなオータムの様子を見ながらスコールはきつい口調で言う。

 

 「無茶言わないの!この戦力差だったら負けるのは私たちの方よ!おまけにあの妙なロボットもいるのよ!!敵の力がわからないのに戦うのは愚か者のすることよ!!」

 

 「………………分かったよ」

 

 オータムは戦闘狂ではあるが彼女自身このままでは全滅することは分かっていた。

 先ほどまで戦っていたロボットはなるほど確かに千冬を退けただけのことはあるようですでにアラクネの足は八本から三本にまで減っていた。

 おそらくこのままこの場に留まっておけばオータムは捕まってしまっていたであろう。

 

 「もう空に上がった方がいい。あいつが来るぞ」

 

 Mが顔を向けた先にはロボタンがいた。

 彼はまだ戦い足りていないのか息を荒くしながら(そのように見えるだけだが)こちらに向かって走って来ていた。

 

 「それじゃあねミストガール!!」

 

 スコールのISは煙幕も出せたようで煙が晴れた時にはすでに彼らはそこにいなかった。

 こうしてアリーナには専用機持ちたちとロボタンが残されることになったのである。

 

 *****

 

 ここでいったん時間軸は少しばかり過去に戻ることになる。

 

 オータムがロボタンに対し攻撃を加えたことにより一時的ではあるが清掃員たちはロボタンの標的ではなくなっていた。

 ロボタンがオータムの方へ向かっていったのを確認した二人はすぐに車から脱出し楯無以外の専用機持ちたちと合流することが出来た。

 

 「二人とも大丈夫……ってクサ!凄い臭いがしてますよ!!」

 

 何とか逃げ出せた二人の下に真っ先に向かっていったのは一夏だった。

 

 「そんなことはいいんだ!問題はロボタンだ。今のうちに何とかしてあいつの対策を考えないと今度こそ俺たちは食われちまう……」

 

 清掃員はそう言いながら腕を組み考え込む。

 

 「一応言っておくがあいつに攻撃を仕掛けようなんて思ったらいかんぞ。俺たちがここに来るまでに何人もそれをしてあいつの尻尾で場外までふっとばされているんだ…。しかもきちんと落ちても怪我をしない場所に落としていやがる…」

 

 戦闘隊形に移ろうとしていた専用機持ちたちを見て同僚がそう忠告する。

 

 「ちょっと待ってよ!それじゃあなんで千冬姉はあんなにボロボロなのよ!!」

 

 同僚の言葉に鈴が反論する。しかし、同僚は鈴の反応にも臆することなく冷静に答えた。

 

 「織斑さんはいまあそこで戦っている奴みたいな戦闘をしちまったんだよ…。最初は足止めだけのつもりだったらしいがいつの間にかマジの戦いになっていってな…」

 

 しかもあの時あの人笑っていたんだぜと言いながら同僚は何とも言えない顔をする。

 

 「…………………」

 

 その発言を聞いた鈴は同じく何とも言えない顔をしたまま黙り込んでしまった。

 

 「んん!そ、その話はいますることではないだろう!まずはあいつの対策を考えるべきだ!」

 

 「千冬姉…………」

 

 一夏も何ともいえない顔で千冬の姿を見る。

 なるほど、確かにいかにも満身創痍に見えるがそれはあくまでも打鉄に関してでありそれを装着している千冬自体には大したダメージは無いようだ。

 

 「一夏、あとで私の部屋まで来い。…とにかくとしてあいつに対して打鉄は効果はない。だからー」

 

 千冬は一夏に向き合うとこう言った。

 

 「白式を私に貸せ。それであいつを止めてくる」

 

 あたりでは今なお戦闘が続いているにも関わらずその場から音が消え去った。

 

 

 

 

 「お二人ちゃぁ~ん!!大丈夫だったぁ!!?」

 

 ……かに思われた。

 

 一瞬即発の状態になりかけていた空気の中に登場してきたのは副長であった。

 一人ロボタンに襲われることもなく残されてしまった副長はどうやら他の清掃員に連絡してここまで来たようである。彼は他の清掃員の運転する軽トラでここまで来たのだった。

 

 「まったくもう仕方がないとはいえ二人が勝手に車に乗っていくもんだからここまで来るのにえらい時間が掛かっちまったよォ。あ、まぁそれはいいんだ。うん。ともかくとしてまだ生きていたようで良かったよ」

 

 副長はアラクネと戦っているロボタンを見て小さくまだ止まっていないわけね…と呟いた。そして清掃員二人、さらには専用機持ちたちの方を向いてこう言った。

 

 「さすがの俺もロボタンがあそこまで固いとは思っていなかったよ。なんせ聞くところによればISまで投入したそうじゃないの」

 

 じゃあやっぱりあの方法しかないかぁと言いながら副長は運転席にいた清掃員に何かを出すように頼んだ。

 

 「いやぁ何せロボタン自体ジャンク品の塊だからね。こいつの設計図を探すのには苦労したよォ!これを持ってくるために班長に土下座をしたからねぇ。まぁ俺の土下座の時間よりも説教の方が長かったけど」

 

 「それはいいですから早く話を進めてください!何か対策があって来たんでしょう!!今は俺たちが食われるかもしれない状況なんですよ!!」

 

 同僚に急かされて慌てて副長は話を進めた。

 

 「ウオホン!…さっきも言ったけどロボタンは寄せ集めの部品で出来た塊なわけ。そしてすべてがそうとは言わないけど寄せ集めの機械ってのは大体無理やり異なるパーツをくっつけるためにつなぎ目があるんだよね。そしてなんとロボタンには……………………すべてのパーツをつないでいる場所がある。いやぁ~先代たちの技術力にはもう惚れ惚れしちゃうねぇ~!!こんな構造のロボとなんて見たことないよもう!!」

 

 「!!?つまりその場所を攻撃することが出来れば一発であいつをばらばらに出来るのか!?」

 

 一夏の反応にその通りと返事を返す副長。

 

 「で、この情報聞いたのにな~んか難しい顔をしているのねユーたち」

 

 副長は先ほどから黙っている清掃員と他の専用機持ちたちを見まわした。

 

 「俺としちゃあ場所がどうこうなんて関係ねえ。だけどこいつらは違う見てえだぜ」

 

 ハレオが黙っている者たちの気持ちを代弁する。皆はその場所がどこにあるのかを知らなければ安心できないのだ。

 

 「…………ええっと、体の中ーちょうど中央部分だね。おまけにISの武器を使っても装甲が破壊されなかったところを見るに多分よっぽど固い武器を使うか口の中を狙って攻撃するしかないね」

 

 「…冗談きついっすよ副長」

 

 同僚は半ば呆然としながらそう口にしたのであった。

 

*****

 

 さてここで時間軸は亡国企業が撤退をした直後に戻る。

 ロボタンは先ほどまで戦っていた相手が突如としていなくなたったことに対し怒りを抱くもしょうがないと諦めていまだに捕食掃除出来ていなかった二人ゴミを片付けて仕事を終えようとした。

 が、さすがに目を離しすぎていたのかロボタンが咥えていた軽トラにはもう彼らの姿は残っていなかった。

 

 『ウググググ』とうなり声をあげながらあれはどこに行ったのかとロボタンは探す。

 すると。

 

 「俺たちを探しているのか!それならここだぜ恐竜野郎!!」

 

 「こっちだバカ野郎!!」

 

 彼らがいたのはグラウンドではなく観客席の最前席付近だった。

 二人の姿を確認したロボタンは彼らを片付けるべくそちらの方へ走り出す。が、しかし観客席はグラウンドから約三メートル上に存在する。

 一番高く見積もっても二メートルしかないかぐらいのロボタンはまず届かない。故にー。

 

 『ウガア!!』

 

 自慢の脚力を使って飛び上がった。

 ロボタンの口はしっかりと狙いを定めグラウンドから一直線に二人をめがけて飛んでくる。

 このままいけばまず間違いなくロボタンは二人を捕食することが出来たであろう。

 しかしロボタンの動きは急に無くなる。

 

 「ラウラ!!今は周りのことを気にするな!あいつだけに集中しろ!」

 

 ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されたAICがロボタンの動きを封じ込めたのだ。

 それにさらに追い打ちをかけるべくバルクホルンも自身の機体であるシュヴァルツェア・レーゲン・ドライに搭載されたAICでラウラの負担を軽減する。

 

 「私もドイツなんかに負けていられませんわ!!」

 

 「さすがに束姉のISを戦闘不能にするようなのをほっておけないからねぇ~頑張るかぁ」

 

 今のロボタンは口を開けた状態で固まってしまっている。つまりこの状態で口の中に攻撃を仕掛けることが出来ればその時点でこちらの勝ちなのだ。

 セシリアはせっかくの学園祭が色々と残念なことになってしまったことに対する怒りを込めてスターライトmkIIIの引き金を引く。

 

 青磁もさすがにあんな化け物を野放しにしておきたくはない。普段はあまり自分から行動をしようとしない彼だが今回は新開発した狙撃型光線銃を片手に同じく引き金を引く。

 

 どうやら自分たちに仕事が来ることはなさそうだと狙撃、AICが使えない面々は思っていた。

 それは彼らのさらに後ろに控えていた教師たちも同じだった。

 事件の発生からすでにそれなりの時間がたっておりようやくアリーナからはほぼすべての生徒が避難できた。幸いなことに重傷を負っているものは年齢職種問わずゼロ人であった。なお千冬の負った怪我は本人からしてみれば軽微なモノらしくカウントされていない。

 事態は収拾の方向へ向かっているかに思われた。

 だがここである予想外の問題が発生する。

 

 「ハルマゲドオオオオオオン!バスタアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 條ノ之青磁の作った狙撃型光線銃の威力があまりにも大きく足止めしていたラウラとバルクホルンをまとめて吹き飛ばしたのだった。

 

 「な、なに!!」「あのバカ味方まとめて吹き飛ばしやがった!!」「ちょ、ちょっとなんて威力なのよアレ!!?」

 

 それぞれがそれぞれの感想を口に出す中、当の本人はというと。

 

 「……やりすぎちゃった♪」

 

 「舌を出してかわいらしく言っても事実は覆りませんわ!!」

 

 失敗しちゃったとのんきに言い放った。

 

 『グアアアアア!!』

 

 はたしてその声はロボタンのものだったのかそれともラウラとバルクホルンのものだったのかは分からない。が、しかし青磁の放った一撃は誰かには傷を負わせれたようである。

 

 光線銃から飛び出た大量のエネルギーによってアリーナ一帯は、観客席に至るまで土煙に覆われた。

 そしてその煙が晴れたとき、その場にいたのはー。

 

 『グ、グググ!』

 

 ロボタンであった。

 

 『ウガアアアアアアア!!!』

 

 先ほどの一撃はよほど効いたのかロボタンは尻尾が半分に折れており右足のギアも逝かれてしまったようで引きずるような形で立っていた。しかしながらそれでも彼は自らの務めを全うしようと最後の力を振り絞って清掃員と同僚に飛び掛かる。

 

 「い、一度目がダメでももう一度撃って倒せばいいのです……わ!?」

 

 セシリアが再び攻撃しようと少雨順を合わせたところロボタンはまるで二度も同じ手を食らうものかと言わんばかりに千切れかけていた自身の尻尾をセシリアに向けて投げつけた。

 

 「危ない!」

 

 このままでは当たるかと思われたセシリアだが間一髪のところで青磁によって腕を引っ張られ回避をすることに成功した。

 

 「あ、ありがとう……ございますわ」

 

 「いや助かって良かったよ。……もっともこれで完全に狙撃をするチャンスはなくなったけどね……」

 

 「しまった!!」

 

 青磁の言葉に慌ててセシリアは下を見る。するとどうだろうか眼下では今まさにロボタンが二人に襲い掛かろうとしていた。

 

 「あ、あんな攻撃をしても効かないのかよ!!」

 

 完全に作戦は失敗したと思った同僚は絶望した表情でそう口にする。そもそもの話この作戦自体同僚は乗り気ではなかったのだ。

 

 『ロボタンは長い年月の間にプログラムがいくらか不完全なものに成っていて普通なら起こり得ないような誤作動が起きている。そしてどうやらあの様子を見る限りロボタンは君らのことをゴミだと認識しているみたいでねぇ…おそらくはユーたちを片付けない限りはあいつは止まらないと思うのよ。…仮にユーたちにこびりついたゴミの匂いを消し去ったとしても暴走状態に有るロボタンがそれで止まってくれる保証はどこにもない。だから………』

 

 同僚の脳裏には作戦を説明していた時の副長の声がよみがえってくる。

 

 「ロボタンは俺たちに対して異様なまでの執着心を持っている。だから俺たちを囮にしてロボタンを引き付けその間に専用機持ちたちが攻撃を行う。ロボタンが俺たちを捕食しようと口を開けたとき、やつの中心部ーコアに攻撃を届かせることが出来ればあいつはバラバラになる」

 

 同僚は隣から聞こえてきた声にハッとする。

 先ほどまであまり喋っていなかった清掃員が静かな調子で話し始めたのだ。

 

 「しかしながらコアは並大抵の武器では破壊できず効果がありそうなものを持っているのは狙撃種のみだった。おまけに堂々とこれから狙撃をしますよなんて言うポーズでいたら絶対にロボタンは寄ってこない。故に狙撃手たちはロボタンの死角から攻撃を行わなければならなかった」

 

 迫りくるロボタンの口は同僚にはやけにスローモーションに見えた。

 

 「あの二人はなんだかんだ言っても学生だ。熟練の兵士じゃない。…だけどよくやったと思う。本来ならばこういうのは大人がしなければならないのにな」

 

 「…………ああ。本当によくやってくれたと思うぜ」

 

 もはや二人がロボタンの口から逃れることは絶望的な距離までロボタンは迫っていた。

 

 「それも相手はISを凌ぐほどの力を有しているのにだ」

 

 「俺だったら絶対にあいつとは戦いたくないな」

 

 ハッと自嘲しながら同僚は清掃員の言葉に続ける。

 

 ロボタンはようやく己の使命を果たせると喜んでいた。

 

 「人間いつかは死ぬもんだ。それは明日かもしれないし何十年も先なのかもしれない」

 

 清掃員は言葉を続ける。彼の眼には火がともっていた。

 

 「無限に生きる者はいない。それは俺たちだってそうだ。だがー」

 

 一瞬の間をおいて清掃員は言い放った。

 

 「今じゃない」

 

 ロボタンが彼らを捕食しようとしたその時、青白い光がアリーナを包み込んだかと思うとその瞬間ロボタンの体は中央から千切れた。

 

*****

 

 『今です!!』

 

 「ウオオオオオオオオオオオ!!」

 

 「こんのー糞ロボットがア!!」

 

 「俺たちの出番を奪いやがってええええ!!」

 

 コントロールセンターにいた真耶の合図とともに一夏、鈴、ハレオの三人が清掃員たちの前に飛び出す。

 

 一夏は雪片弐型を構えロボタンのパーツが飛び散って来ないように二人の前へ出る。

 鈴はロボタンの前身部分を吹き飛ばすために龍咆を放つ。

 ハレオはここまで出番がなかったことに対する恨みをぶつけるべく自身のオリジナル機体である『コスモ』でアリーナのバリアを破壊してロボタンの後ろ部分を吹き飛ばしに行った。

 

 彼らの様子を見て千冬はほっと息をつき万が一のためにと用意していた木刀をゆっくりと下げる。

 どうやら作戦はうまくいったようであれだけしぶとかったロボタンは龍咆の空気弾に当たるとばらばらに飛び散った。

 

 アリーナの方では青磁の攻撃に巻き込まれたドイツ組が教師たちに救助されていた。しかしながら自分で起き上れていたようなのでおそらく向こうも特に問題はないであろう。

 今回ばかりは絶対防御を付けてくれた束に感謝をする千冬であった。

 

 (アリーナに設置されているバリアを一度切りやつがそこを通り抜けようとする瞬間に作動させることで無理やり体ごとコアを破壊する……なかなか心臓に悪い作戦だったがうまくいって何よりだな)

 

 と、そこへ通信が入った。

 

 『お、織斑さ~ん!!う、うまくい、行きましたよ!!行っちゃいましたよ!!めちゃめちゃ怖かったですよオ~!!!』

 

 「ご苦労だった山田君。あとで君に大役を押し付けた大馬鹿者清掃員にはよく言っておきなさい」

 

 『はい!!』

 

 実はこの作戦は当初の予定であればセシリアと青磁による狙撃だけで終わるはずだったのだがそこに待ったをかけた人物がいた。

 清掃員である。

 

 『実は俺にも一つ作戦があります』大まかな作戦が決められ皆が行動を始めようとしたとき彼はそう言って先ほど千冬が思い出していた作戦を話したのである。

 比較的簡単に行えて準備もさほど必要ないため彼の作戦はバックアップ用として行われることになったのだ。

 しかしながらその計画の要となるのがバリアを作動させるタイミングであった。

 

 アリーナには観客席には攻撃が飛んでこないようにバリアが張られておりこれはコントロール室から操作出来た。

 そして運良く(真耶にとっては運悪く)そこには真耶がいたので彼女にタイミングを見計らってバリアを作動してもらったのだ。

 今回の作戦ではまず間違いなく一番の功労者は彼女であろう。

 

 「……しかしながらここまでの被害が出るとは。……おそらくは世界中の役人どもが押し寄せてくるだろうな」

 

 千冬はため息を吐きながらボロボロになったアリーナを見渡す。

 ロボタンに亡国企業。まさか学園祭がこんな結末を迎えるとはさすがの彼女も想像していなかったのだ。

 

 (ロボタンはともかくとして問題なのは亡国企業…………か)

 

 おそらくは学園の警備体制を指摘されるだろう。下手をすれば国連から治安維持のために軍が派遣されるかもしれない。

 

 (もっとも来たところで何もできないだろうがな)

 

 少なくとも再びこのような事態が起こったとして、もはやこの学園のテクノロジーは一世紀も二世紀も進んでしまっている。おそらく現行兵器しか有していない国連軍では介入することすらできないのではなかろうか。

 

 (アトランティスのような終わり方は迎えたくないものだな……)

 

 しかしながら未来のことを心配するのはいまじゃない。

 とりあえずこの場でしなければいけないことはあのロボタンを起動させた三人に対しきっちりみっちり特大の反省活動をしてもらうことに他ならないだろう。

 

 「ふっ……いったいいつまでどうやって喜んでいられるかな?」

 

 一度は下げた木刀を再び持ち上げて織斑千冬は未だなお二人して涙を流しながら抱き合っている馬鹿者ども清掃員たちに制裁を加えるべくゆっくりと歩き出すのであった。




ひょっとしたら矛盾が生じていることが……いや、いつものことですかね…。
とにかくとしてこれにて学園祭編は終了です。
次回からは後始末の話、日常回になると思います。


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数字じゃない数字

久しぶりの日常回です。
例によってIS要素はほぼ皆無です。読むときはご注意ください。


「で、何かいい仕事が無いか探しているんだが」

「ここをなんだと思っているんですかあなたは……」

 

色々ありすぎた学園祭も終わり破壊された建物も修復が進みつつある今。

IS学園には一応の平穏がもたらされていた。

そう、平穏がもたらされていたのだ……俺と同僚の給料を除いて。

 

「いやぁー今月……というか任期を終えるまでの間ずっと財布が厳しくなる予定でね…」

「…いやこれでもかなりーというか相当軽減されたんですよ?」

「……それは重々承知しているんだけどもさ、やっぱり先立つものは金なわけでございまして。それに世界は資本主義だし生きていくのには……ね?」

 

あの忌まわしき学園祭が終わった後俺と同僚にはそれなりの処分が下された。

具体的には今後三年間にわたる減給、今年のボーナスの消失である。

いやまぁボーナスは来年から出るし給料も三年たてば元に戻るんだよ?あれだけのことをしてこれで済んだのは本当に奇跡だったし。

 

「一応あの山の掃除を行わせた学園側にも責任があるという形でこうなったんだっけか…」

「ええ。本当に大変だったんですよ…。各国の高官相手にわたくしどもがいったいどれだけ働いたことか…」

「いやまぁそれよりも本当に何か手ごろな一日で終わる仕事はないのかよ?」

 

確かに大変だっただろうがこっちもこっちで大変だ。

あてにしていたボーナスとか給料とかがいろいろ変動しちゃったので生活を見直さないといけないのだ。

 

「そんなことよりって…えぇ……。いやまぁ確かにこれが私どもの仕事でしたけどもうちょっと労いの言葉は無いんですかまったく」

 

ぶつくさと言いながら彼ー呉無処理太郎はタブレットを扱う。

そう、俺は何か仕事がないかと処理部の方に顔を出していたのだ。

 

(クレームがあるということは問題があること。故にその問題を解決したら黄金色のお菓子が…ぐふふふ)

 

やがてちょうどいいものがあったのか処理太郎は俺にタブレットの画面を見せてきた。

 

「ここならどうです?依頼…というか苦情ですが、子供が反抗期に入って勉強をしなくなってしまったって言うやつです。解決できれば報酬もあるそうですよ。…………ていうかうちに出す苦情じゃないでしょこれ絶対」

「おお!ちょうど良さそうだな。ふふん!これでも子供の扱いには長けているんだ簡単簡単♪」

 

俺がそう言って胸を張ると処理太郎は微妙な顔で、「はぁ…そうですか」とだけ言ったのだった。

 

*****

 

「頼むうちの息子が反抗期に入ってしまったんだ!!」

「よりにもよってお前かよ!!」

 

後日、俺が依頼者との待ち合わせ場所に来たときそこにいたのはなんと以前出会いがあった電卓夫であった。

 

「君は子供受けもいいと聞くし何とか出来るはずだろだから頼む!」

「わ、わかった!分かったから顔を近づけるな!」

 

何が悲しくて男の面をドアップで見なくてはいけないのか。

とにかくとしてまずは卓夫の家に行かなければ何も始まりはしない。

 

「とりあえずあんたの家に行ってからにしよう」

「おお、なら引き受けてくれるのか。良かったならさっそく私の車に乗ってくれ」

「車ってこいつはダイマクション・カーじゃないか!」

 

流線型の三輪車なんてこいつぐらいしか存在しない。

 

「個人的な伝手があってねこいつはオリジナルだよ」

「世界に三台しかないオリジナルを手に入れることが出来る伝手ってよっぽどだぞ……」

「そんなことよりも早く乗ってくれ。ことは一刻を争うんだ」

「分かったから押し込むんじゃない!」

 

ドタバタと騒ぎながらも車に乗り込みV8気筒エンジンの駆動音を背景に卓夫の家まで行くのであった。

 

*****

 

「ここが私の家だ」

「外から見るといたって普通の家だな」

「君は私の家をなんだと思っているのかね」

「てっきり電卓の形をした家が出てくるものとばかり思っていたからな…」

 

思っていた以上に卓夫の家は普通の家であった。

いやこれが当たり前なんだろうけどさほら?卓夫のキャラクター的にね?

 

「さ、入ってくれ詳しい話はそこでしよう」

「おう」

 

卓夫に連れられて家の中に入る。

どうやら中もいたって普通の様子で電卓の影も形もない。

 

「……中身も普通だな」

「当たり前だろ。家というものは日常生活を送るための場所なんだぞ」

「…………」

 

あ、はい。

しっかしここまで普通の家だとなんというか逆に不安になるぞ…。

 

「さ、そこに腰かけてくれ」

「ああ」

 

テーブルに腰を掛ける。どうやら本題に入るようだ。

 

「…さて、どこから話したものか。私の家では今二人の子供がいてな…兄弟なんだが兄の方が最近勉強をしなくなってしまってな…。私から言っても何も聞いてくれないんだ」

「つまり部屋から出ないということか?」

 

俺がそう聞くと「ああ…いや、微妙に違ってな」と卓夫は言う。

少し考えた後に卓夫は口を開いた。

 

「いや、それも少し違ってな…私に勉強をしない理由を話してくれないのだ」

「ああなるほど」

「そこでだ!」

 

いったん言葉を区切ってから卓夫はグイッと顔を近づけてくる。

だから距離が近い!誰もおっさんの顔をドアップで見たくなんかないわ!

 

「頼む!!息子から勉強をしない理由を聞いてきてくれ!!それだけでいいんだ」

「分かったから顔を近づけるんじゃない!!」

 

とにかく理由を聞いてきてくれればいいのか。

だが肝心の息子の居場所が分からないとどうしようもないぞ。

 

「息子はいま部屋にいるんだ」

「あそれなら都合がいい。…だがまずはある程度の情報を集めてからでないと何も『ピーピーピーピー』うお!何の音だ!?」

 

俺が喋っている途中どこからか機械音が鳴り響いた。

俺がそれにびっくりしていると卓夫がポケットをごそごそと漁って、

 

「失礼妻からのメッセージだ」

「いまどきポケベルかよ…」

 

ポケットベル、通称ポケベルを取り出していた。

 

「ええと…今夜の晩御飯はすき焼きです…か」

「ポケベルなんて大変だろ?」

 

俺がそう聞くと卓夫はそうでもないと言ってポケベルをこちらに渡してきた。

 

「我が家の教育方針で子供に小学一年生のころから数字になれるようにしているんだ。ポケベルもその一つだ。ただし普通のポケベルとは違って我が家のポケベルの数字はごろ合わせじゃなく組み合わせだ」

「組み合わせとはまた面倒な…。そういえばこれが出てから4649とか3470とかのごろ合わせが出だしたよな」

「うむ。ポケベルによってごろ合わせというものがぐっと身近になっていったな」

 

しっかしポケベルなんて久しぶりに見たな…。

正直こんなのスマホのアプリで探せばありそうな気もするが…。

 

「ポケベルは我が家での重要なコミュニケーションツールだ。今では家の内外に関わらず皆これで会話をしている。風呂場でも食事中でもな」

「ちょっとは会話をしろ!!どこのスパイ一家だよお前らは!!」

 

そうか?と言いながら首をかしげる卓夫にポケベルを返す。

 

「食事中にポケベルでやり取りをするのは周りから見たらただの変人だぞ…。第一ポケベルを外で使うときは公衆電話が必要になるいだろうが」

「心配いらない。私はこれでもIS学園の講師だぞ?それぐらいは簡単に改造出来る」

「肝心の電波はどうするんだよ…。ポケベルのサービスなんてとっくの昔に終わってるぞ」

 

俺がそう質問するとふふんと胸を張りながら卓夫が答えた。

 

「抜かりない。ちゃんと近くのアンテナから拝借している」

「盗んでいるんじゃねーか!!」

「失礼な!死ぬまで借りているんだ!」

「それを盗むって言うんだよ!」

 

まったくとんでもない奴だな。

ん?そういえば何か忘れているような…あ!

 

「もうこの話は終わりだ!とりあえず何も情報が無いのは分かったからさっさと部屋に案内してくれ!」

「君から話を振って来たんだろうに。まぁいい。息子の部屋はあっちだ」

「もう帰りたくなってきた…」

 

*****

 

「ああ、あなたが噂の清掃員さんでしたか。父さんより話は聞いています」

「そのお父さんに息子が勉強しなくなったと泣きつかれたんだが」

 

今この部屋にいるのは卓夫の息子(関数と言うらしい)と俺だけで卓夫は部屋の外に出されている。

俺が泣きつかれたことを関数に話すと申し訳なさそうな顔をしながら口を開いた。

 

「父さんがご迷惑をかけて申し訳ございません」

「それはまぁいいんだが…せっかくだ。どうして勉強をしないのか話してみてくれないか?親父さんは本気でお前のことを心配しているようだし何よりも俺は何も知らない第三者だ。少しは話しやすいと思うのだが」

 

しばらく考えてからそれもそうですねと言って関数はなぜ勉強をしないのかその理由を話し始めた。

 

「実は…………どうしてもある問題が解けないのです!」

「問題?」

 

どうやら勉強をしないのではなく問題が解けなくて他の勉強ができない状況のようであった。

まぁしかし…俺の出る幕はないよなぁ…。いや、でもとりあえずはその問題を見てみるか。

 

「まぁ解けるかどうかは保証しかねるが見せてくれないか」

「ああ、はい。もちろん大丈夫ですよ。ちょっと待ってくださいね」

 

そう言って関数は机の引き出しを開けてごそごそと中身を取り出していく。

今チラッと見えたんだがフェルマーの最終定理とか書かれてあったぞ…いったいどんな問題が出てくるんだよ…。

よくよく見たら棚にある本とかも全部数学関係のものでタイトルが全く読めない文字で書かれているし…。

なんだよアレ多分ヨーロッパ系の言葉なんだろうけど全く読めないぞ…。

 

「ありました。この問題なんです…」

 

ようやく見つかったのか関数は一冊のノートをこちらに寄越してきた。

どうやらこのノートにその解けない問題は書かれているらしい。

 

「そのノートの十四ページに有る問題がどうしても解けないんです」

「どれどれ…」

 

問:以下の表記からもっともふさわしい文字を書き入れよ

 

8809 = 6   7111 = 0

2172 = 0   6666 = 4

1111 = 0   3213 = 0

7662 = 2   9312 = 1

0000 = 4   2222 = 0

3333 = 0   5555 = 0

8193 = 3   8096 = 5

7777 = 0   9999 = 4

7756 = 1   6855 = 3

9881 = 5   5531 = 0

 

2581 = ?

 

「なんじゃこりゃ」

 

なんか変な数字の羅列が現れた。

 

「8809が6になって7111は0になる…。なるほどこいつが解けないのか…」

「そうなんです!頑張って解こうとしたんですけどどうしても解けなくて…」

 

非常に困った顔をしながら関数はいってくる。

でもそれなら親父さんに頼めば良かったのではないだろうか…。

 

「父さんにこの問題が解けないって言いに行くのはちょっと抵抗があって…」

「ああ、なんか分かる気分だな。こういう事ってなかなか言いに行きづらいよな」

 

俺が共感の言葉を伝えるとやっぱりと言った様子でうんうんと頷きながら関数はしゃべり続ける。

 

「あなたもそうでしたか!そうなんですすごく言いに行きづらいんですよ!…ただ、一度母さんに聞きに行ったんですがその時は母さんも分からないって言ってきて・・」

「この問題は簡単だぞ」

「え?」

 

俺が言った言葉に対し素っ頓狂な声をあげる関数。

いやそんなに驚くことかよ…。

 

「で、ですがどれだけ式を立てても解けなかったんですよ!!」

「うお!?慌てるんじゃない!そして顔を近づけるな!!」

 

まったく…親子なだけあってか行動も似ているな…。

そんな俺の気持ちは至極どうでもいいようで関数は速く早くと俺を急かす。

仕方がない。さっさと解き方を教えて家に帰ろう。なんかもう精神的な疲れが半端じゃないし…。

 

「そもそもの話この手の問題を解くのに必要になってくるのは数学の力じゃなくて柔軟な発想なんだよ。まず初めにしなくちゃならないのは最初の四ケタの数字を数字だとは思わずに記号だと思うことだな」

「え?」

「この問題の答えは2だ」

 

俺がそう言うとどうしてそうなるのかとうんうん言い長ら頭をひねり始める関数。

ここはひとつヒントを出してやろうか。

 

「ヒントは〇だ。数字じゃない図形の問題だ」

「〇……あ!そうか!!8は〇が二つになるのか!!それじゃあ他の数字も…」

「そ、他の数字も同じように…たとえば6と9は〇が一つずつになる。あとの数も一緒だな」

 

どうやらこの説明で納得できたらしく関数は喜んでいた。

こういう問題って大体が真面目に解いたら負けなやつなんだよな。

 

「けど式を一切使わない数字の問題があったなんて驚きです!!」

「こういう問題を解くのに必要なのはさっきも言ったけど柔軟な発想だからな。芸術系の能力が必要になってきたりする」

「なるほど芸術ですか!!」

「お、おう」

 

何やら目をキラキラさせながら聞いてくる関数。

いや、正直ウザったいレベルだがまぁ問題は解決?したのかな。

とりあえず本人から確認だけ取って終わりにしよう。

 

「それで、これでもう勉強は出来るようになったのか?」

「はい!!本当にありがとうございました!!」

 

どうやら本当に問題は解決したようだ。ならばこれで俺の仕事はもう終わりだ。

卓夫に言って貰えるものもらってさっさと帰ろう。

それじゃあと言って俺は卓夫に問題を解決したことを報告してくるのであった。

 

この後涙を流しながら卓夫が眼下に迫ってきたことは思い出したくない…。

 

*****

 

「じゃあ問題は解決できたんですね」

「もっとも精神的にひどく疲れましたけどね」

 

ここは何かと世話になっている秘密基地。

もっとも最近では公然の秘密になってきているような気配があるがそれでも名前は秘密基地だ。

今日は山田さんと久々に二人きりで飲んでいた。

 

「あの問題って実は結構有名な奴なんですよ。以前ネットの方で見たことがあってそれで簡単に答えが出せたというわけです」

「それでも関数君にとっては悩みが解決したから結構なことじゃないですか♪」

 

ふふと笑いながら山田さんはお酌をしてくる。

あ、これはどうも。

そそがれた酒を飲みながら今回のことを改めて思い返す。

 

「正直って今回のことはあまり割に合いませんでしたね…精神的にですが。これなら普通に清掃員として働いた方がいいかなぁ…っていうところです」

「あれ?もうアルバイト辞めちゃうんですか」

「アルバイトというかなんというか……」

「もったいないですよ!せっかく私も教師のお仕事を依頼しようとしたのに」

「……教師はもう勘弁してください」

 

むうと頬を膨らませながらこちらを睨んでくる(本人はそのつもり)山田さん。

正直言って教師の仕事って大変だもんなぁ…。

もう前回のやつで懲りたし今後は質素倹約でちまちまとした生活を送るしかなさそうだ。

それはそれとしてどうやって山田さんの機嫌を直そうかと考えているとドタバタと騒ぐ音がした。

 

「き、君!!」

「げ!?また出た!!今度は何の用事だよ…」

 

よっぽど急いできたのであろう額に汗を浮かばせながらぜいぜいと息を切らしている卓夫がそこにはあった。

今度はいったい何の用事だよほんとに!!

 

「た、たたた、大変なんだ!!また息子が反抗期に入ってしまったんだ!!」

「あいたたたたた!!首を掴むんじゃない!!」

「そんなことはどうでもいいんだよ君!!息子がいきなり芸術を学んでくると言ってパリに行ってしまったんだ!!」

 

え?芸術を学んでくる?パリに行く?卓夫の息子?

……………………。

どうしようめちゃくちゃ思い当りがあるぞ。

 

 

「頼む!!もう一回息子に会って説得してくれ!!!金なら払う!!」

 

グアングアンと卓夫に頭を揺すられながら俺は関数の真意に気が付くと思いっきり叫んでいた。

 

「お前らの一家はやることが極端すぎだアアアアアア!!!」

 

お金を貯めるのって厳しい。そう学んだ俺であった。




過去に未解決の数学の問題(解けたら賞金が出るやつ)を解いてみようと思ったのですがまず第一に何を求めたいのかがわかりませんでした。


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お袖とお菓子と清掃員

お久しぶりです。今回のお話は短めです。


 

「天馬空を落ちる……ってね」

 

「むぅ、それって太るよ~って言ってるつもり~?」

 

気がつけばあっという間に九月だ。時がたつのは意外と速い。

しかしながら残暑は衰えることもなく元気に活動しており体感的には未だに八月の気分だ。

もっとも時たま吹く風はどこか涼しく確実に季節が変わったなと感じ取れる。

 

清掃員の仕事と言うのは非常に地味であり重要な仕事だ。

この職に就いてから六か月。だいぶ俺も仕事に慣れてきた…と思っている。

 

今日の担当区域は裏庭だったので掃除が終わったら少しばかりそこでゆっくりしようかなと思っていたのだが来てみるとどうやら先客がいたらしい。

故に俺は真面目に掃除をしつつ早くどいてくれないかなぁと思ったりもしながらその人の姿を見ていたのだ。

そして先ほど言った言葉はその人の様子を見て自然と口から発せられたものなのでありそこには断じて俺個人の意識は存在していない。

 

「長ったらしく言ってるけど要は心の中でおもっていたことが口に出ちゃったっていう事だよね~」

 

「いぐざくとりー」

 

「お~いんぐり~っしゅ、わんだほぉ~」

 

現在裏庭で俺とこのばか…崇高な会話をしているのは布仏本音ちゃんである。

いつもだぼだぼな制服を着ていて非常に印象に残りやすい子だ。

実際インパクトがあってすぐに覚えられたわけだったし。

彼女の纏う雰囲気はなんというかほわほわしていて良く言えば安らぐ。

 

「じゃあ悪く言ったらどうなるのぉ~?」

 

「馬鹿っぽいって言うところでどうだろうかね」

 

「むぅ~学がないのはおじさんのほうっぽい~」

 

「おじさん言うな」

 

まったくおじさんとはなんだおじさんとは。

俺はまだまだ二十代のお兄さんだい!……この言い方だけはしないでおこう。

なんかすごくバカっぽいし…。

 

「とりあえずおじさん呼びでもいいからそこでお菓子を食べるのを止めてはくれんかね御嬢さん。君がそこでお菓子の食べかすをボロボロとこぼしているせいでおじさんは仕事が終わらなくて困っちゃってるんだ」

 

個人的にはお菓子の食べすぎも注意したいところだが俺の体系じゃあ説得力はないよなぁ…。

 

「むふふ~お菓子はね~お菓子なんだよ~。だから誰にも止められないのだぁ~!」

 

「あらまぁ~…………はっ!いかんこやつにいつの間にかイニシアチブを持って行かれていた!!?」

 

本音…恐ろしい子!!…いやそんなことはいいんだ本当に。

とりあえずこの摩訶不思議のんびり生命体のせいによって俺の仕事が本当にいつまでたっても終わらない。あとはここだけなんだがなぁ。

え?ほかが済んでいるならもう仕事を切り上げていいじゃないかって?

どうせ明日にはまた掃除をしなきゃいけないし戻っても大丈夫だって?

そんな発想は無かったよ…。

 

「…思っていた以上に俺は社畜だったらしい」

 

「あるある~そんな時にはお菓子を食べるといいよぉ~。はい!あげる~」

 

「ああ……ありがとう」

 

手渡されたのはひとつ十円で買えるスナック菓子だった。

味はコーンポタージュらしい。割と俺の好きな味のやつだ。

 

「…これを食べるのって結構久しぶりだな」

 

最近はお菓子売り場に行くこともめっきり減っていたしそもそもお菓子を買うこと自体が少なくなっていたのでこのお菓子の味がとても新鮮に感じられた。

菓子の細かなくずが口元に引っ付いてくるこの感触もなかなか懐かしい。

一口食べるごとにそうそうこんな味だったなと子供のころの記憶が蘇ってきた。

 

「立って食べるのもいいけど座った方がマナーがいいよぉ~」

 

「ん?そうだな…じゃあ座るか」

 

「お客さんいっちょ~」

 

本当は向こうのベンチに座ろうと思っていたのだがどうやら隣に座ってもいいらしい。

布仏ちゃんが横にずれてくれたので彼女の隣に腰を下ろす。

 

「……意外とうまいもんだな」

 

「でしょ~♪」

 

そのままむしゃむしゃとお菓子を食べ終える。

よし!今はまだこの子にイニシアチブを握らせているけどそれもこの菓子をすべて食べ終えるまでだ!

食べるものも食べたしさっさと仕事に……。

 

「おきゃくさ~ん…活きのいいのが入っていますぜぇ。いりますかい?」

 

「…………まぁ、たまにはいいか」

 

「そうそう休憩は大事なのだぁ~」

 

差し出されたスナック菓子を手に取って噛り付いた。

数年ぶりに食べた菓子の味は化学調味料の濃い味とそれからほんの少しばかりの優しさがしたのだった。

裏庭の静かな空間にしばらくの間二人が菓子を食べる音だけが響いたのである。

 

 

 

その後、結局菓子の食べかすを俺が掃除することになるのだがそこを語る必要はないだろう。

そんなところを話してしまったらせっかくのお菓子の味が消えてしまうのだ。

 

…そう言えば布仏ちゃんはあれでどうやって袖を汚さずにものを掴んでいるのだろうか。

 

IS学園の新たな謎が増えた日であった。




原点回帰と言うことで少しばかり初期のころの書き方に戻しました…。


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カンチガイ?

(´・ω・`)やあ


 「……♪」

 

 「お~……。凄いな」

 

 秋も半ばな今日この頃。学生たちが中間テストに追われて大慌てで復習をしようとしてとりあえずマックで勉強会をしようとした結果おしゃべりの方に夢中になってまったく進まずに家で一人で悶々と頭を抱えている頃(彼ら曰く勉強に勤しんでいるとのこと)、俺は片手で清掃活動を行っていた。

 

 「………!!」

 

 「お、終わったかい。ありがとうな。じゃあ次はそっちの机を運んできてくれ」

 

 「………♪~」

 

 俺が片手で掃除をしているのは別にサボっているからではない。単純に左腕にギプスがついているために動かすことが出来ないのだ。

 いやね、骨折。骨折しちゃったのよ俺。

 え?どうしていきなり骨折なんてしたのかって?

 あ~それはね~……いやまぁ真面目に話すと全部俺の不注意が原因なんだよ。

 

 三日前に廊下の蛍光灯を付け替えることがあったんだがその時に脚立の上でバランスを崩してしまってその後はもうドンガラガッシャーン!ってな具合でして。

 その時に左腕が俺の体の下敷きになってしまって万有引力によって左腕は俺の全体重を一手に受け止めてしまったのだ。

 

 まぁその結果腕が腫れてしまってジンジンとした痛みもあったので念のためと言うことで校内に有ったレントゲン……その時はどうとも思わなかったが凄い字面だよな。えっと…それでレントゲンを撮ったところ折れてはないがヒビが入っていることがわかり大事を取るということでギプスを付けるになったのだ。

 おのれニュートンめ!え?関係ないだろって?

 

 とはいえ俺の利き手は右だったし何よりもヒビが入っているだけだったので一週間ほどでほとんど回復するだろうとは医者の言葉だ。

 故に俺は一日だけ休みをいただいた後は普通に仕事に復帰しようとしたのだが……。

 

 「………!!!」

 

 「おっ!ナイスタイミング!さすがゆう子ちゃん!!」

 

 「……///」

 

 以前この小説に出てきた幽霊の女の子(仮名:ゆう子、命名は清掃員)がせっかくなので仕事を手伝ってあげると言ってきたのでそれに甘えている状況だ。

 あ、メタな話だけど描写が無いだけで毎週一回はゆう子ちゃんに会いに行ってるからね?

 ん”ん”!!え~それはともかくとしてだ、最初こそ本当に大丈夫だろうかと心配した物だったが意外や意外。ゆう子ちゃんは強かった。

 

 たとえば俺と同僚の二人でひーこら言いながら運んでいたあの電子机もゆう子ちゃんは軽々と浮かせて運んで行ってしまう。

 やはり幽霊に物理法則は効かないのかッッ!!

 

 しかしながら冗談抜きで役に立っている。正直な話ゆう子ちゃんの手助けのおかげで骨折する前の時よりも仕事が楽ちんになってるのだ。

 まぁさすがにこのお手伝いは期間限定にさせるつもりだけどね。

 いくら幽霊とはいえ幼い子供に労働を強いるほど鬼畜ではない。それに本人もおままごとのノリでやってると思う。だって顔が明らかに遊んでいる表情だもん。

 

 「まぁなんにせよ笑顔はいいことだな」

 

 「……?」

 

 「んあ?ああ、こっちの話だよ。さてと、それじゃあその机をそのあたりに置いたら休憩しようか」

 

 「……ん!」

 

 非常にほんわかする笑顔を振りまきながらゆう子ちゃんは机を俺が指定した場所に置いた。

 いやしかし癒されるね本当に。……言っとくがロリコンじゃないからな?

 

 「……いこ!」

 

 「あいよ~。よっしゃ今日はみたらし団子で一つ息抜きしますか」

 

 「……やた♪」

 

 ちなみにゆう子ちゃんと話し合った結果(もっとも俺の質問に首を縦に振るか横に振るかをゆう子ちゃんがしていただけだが)彼女の存在は隠すことに決まった。

 本人曰く以前に存在をばらしたことがあったらしいがその際にとんでもない目にあったらしい。

 まぁ軽くそのことがトラウマのようなので俺もそうならないように気を付けているのだ。

 事実これから行く休憩スペースは例のログハウスだしね。

 いや本当、あそこは昼間は誰もいないうえに山の奥にあるから最高の隠れ家だよ。

 

 「さあて、撤退開始ー」

 

 「かいしー」

 

 今日はどんなことをゆう子ちゃんに聞かせてあげようかと考えながら俺はログハウスに向かったのである。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 はたして清掃員は気付いていたのだろうか。彼と幽霊のコミュニケーションを物陰からこっそり見ていた人物がいたことを。

 しかもその人物がー

 

 「手を触れていないのに机を浮かした!!?これはもしかして…………」

 

 転生者でー

 

 「もしもし束、うん実はさー」

 

 とんでもない勘違いをしていたということに。

 

 「新しく転生者が見つかった。うん、そう多分特典もち。いや亡国企業じゃない。清掃員。うん、今データを送る」

 

 しかもその半分はあっていたりしちゃうことを。

 

 




『遅くなってしまって本当に申し訳ない。君のスーツはこの小説が完結しない限り脱ぐことは出来ないのだよ』(某博士並感)

完結目指して頑張ります。

あとなぜ平日の昼間なのに学生が外にいたのかに関しては後の話で解説いたします。


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あー藻ーやだ!!

本当に遅くなってしまって申し訳ない(メタルマソ)
今回は唯の日常の一コマです。


今週は重大なイベントが二つも起こってしまった者で現在の俺は非常にストレスがたまっている。

 

え?いきなり何の話かって。そうだなアレハ今から八千年前の…………冗談です、はい。

 

 

 

さて忘れている人もいるかもしれないからおさらいしておこう。ここIS学園にある汚れというのは基本的にホコリ・チリ・紙くず・ペットボトル……などなどまぁ日常にありふれたものなわけだ。

 

別にこいつらごときでストレスがたまるなんて言うわけはない。いやたまにうぜえなぁとは思うけどノーカンだノーカン。そんなものを係数に入れるんじゃない。

 

 

 

で、いろいろ頭おかしい学園ではあるが掃除に関してのみはこれまでは常識の範疇を超えてこなかったのだが、とうとうこの学園ゴミに関する常識も投げ捨てやがった。

 

 

 

「ええい!!また貴様か海藻がァ!!」

 

 

 

そう今俺はべちゃべちゃと音をたてながら廊下に散乱した海藻類を頑張って回収している真っ最中である。

 

海藻は濡れてて絡まりやすいので某円盤型お掃除ロボットにまかせっきりには出来ない。

 

というかソイツにさせてみたら藻が回収装置に絡まって機械自体がぶっ壊れた。で、弁償代が俺の給料からさっぴかれた。今月の給料マイナスだよ。俺が払わなきゃいけない給料ってなんだよ?(哲学)

 

 

 

仕方ないので当面の間は山籠もりするかゴミをあさって生きていくしかないな。山田先生に頼んだらいくらか融通してくれそうな気はするけどなんか見返りが恐ろしそうだからやめとこう。

 

 

 

千冬さんは……ないな。うん。色々な意味で頼りにならない。

 

 

 

で、別に海藻だけならここまでイラつかないのだよ。俺がこやつらにイラつく真の原因は毎回毎回回収のためには腰を曲げなければいけないこと、それとここ最近毎日毎日ところ構わず落ちているという事、おまけに多分に海水を含んでいるから廊下はぬるぬるになるし塩を落とすために大量の真水使わないといけないし場所によっては腐食を抑えるためにメンテしなきゃいけないし―――。

 

 

 

しまった、あまりにイライラしているせいで熱く海藻の悪口を語ってしまった。

 

…えっと、まぁとにかく校内中に海藻が落ちているというのが一つ目の重大なイベントなわけだ。

 

で、なんでこんな惨事になっているかっていうとISの海中利用がいよいよ目前に迫ったからだ。

 

 

 

ISというのはもともと宇宙空間での活用を目的とした機械なのだが残念なことに今はもっぱら軍事利用されている。そこでこんな開発者の意図を無視した流れは止めましょうという運動が三か月前くらいに発生してその目的を達成するための第一歩がISの海中展開なのである。

 

 

 

話の流れが意味不明?まぁ簡単に言うならいきなり宇宙で使うのは安全面で不安が残るのでまずは海の中でやってみましょうという事らしい。ニュースでそう言ってた。

 

 

 

なお安全面に不安なんてあるはずがないだろ!って言ったウサギがいたとかなんとか。ウサギがしゃべるわけないんだよなぁ……。多分目撃したって言ってるやつは相当疲れていたんだろう。そうに違いない。

 

 

 

そんなわけで海中で活動できるように研究を進めているらしいのだがやはり本番のデータが足りない。そこでデータを得るための役割を任されたのがここIS学園なのである。

 

 

 

そんな大役を任された学園であるがここでいくつかの問題が起きた。一つはISの防水加工。まぁこれは四組にいるらしい専用機持ちが解決してしまったらしい。凄いな最近の学生。

 

だが二つ目、これが難敵だった。折悪くこの時期のIS学園付近の海では海藻類が大量発生していたのである。

 

じゃあ延期するしかないよね…ってなればいいのだけれどそうは問屋が卸さない。

 

唯でさえ学習カリキュラムが狂い気味なのにこれ以上余計なものがくっ付いてくると来年度にまで影響を及ぼしかねない。

 

 

 

よって天下の千冬さんの鶴の一声によって海藻たくさんのこの時期にデータ取りが強行された。

 

まぁ海藻だらけの中でのデータ取りなのでぜんっぜん進まない。進まないったら進まない。

 

ねえ何時に成ったら終わるんですかこの作業?え?もう少し?それ先々週聞きましたよ……。

 

ま、まぁいいや。とりあえずここの区画の清掃は終わったし……

 

 

 

 

 

 

 

「うえぇぇぇぇぇ…………また海藻でべちゃべちゃぁ~」

 

 

 

「こ、これだから島国というのは嫌いなんですわ!!」

 

 

 

「せっし~の国も島国だよ~?」

 

 

 

「ふむ、今後のISの舞台は海上か…。本国の連中に訓練させておかねばな」

 

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

もう軍事利用の現状を変えなくていいんじゃないかな、そんなことを割と本気で考えるそんな清掃員であったとさ。




次回は……いつになるんでしょうね?(無能)
追記 平成が終わるまでには書けてるはず


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