めだかボックス■相良紫音は面白おかしく生きてみたい。 (coka/)
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プロローグ:僕の友人達


『世界は平凡か?』


壇上に立った彼女が、会場にいる生徒全員に問いかけた


『未来は退屈か?』


正面のモニターに大きく映し出されている凛とした彼女の顔は、
とても自信に満ち溢れ、緊張なんて一切感じられない


『現実は適当か?』


その解答を誰かに求めることもなく、続けざまに言う


『安心しろ――』


その口元には笑みを浮かべて





『それでも――生きることは劇的だ!』





臆面もなくそう言い放った彼女こそ、
この箱庭学園の新生徒会長【黒神めだか】そのひとである


……まったく、めだかちゃんは相変わらずだなぁ




 

「おい聞いたかよ、新しい生徒会長の噂!」

「聞いた聞いた!私たちと同じ一年なのに生徒会長になった女でしょ?」

「しかも、相当変な奴らしくて、先生達も手に負えないって話だぞ――」

 

箱庭学園の普通科、壱年一組の教室。

僕、相良紫音(さがらしおん)が通うこの教室では今、かの生徒会長様の話で持ちきりになっている。

というか、選挙戦の時から噂になってたのに知らないの?

君ら今更騒ぎ過ぎじゃね?

まぁ、どうでもいいけどさ。

 

ふと、後ろの席の()に目を向ける。

寝てるのか何なのか知らないけど、机に顔を伏せていた。

彼こそ、僕の親友その1にして幼馴染の人吉善吉くんだ。

暇だし声かけてみようかな。

 

「おーい、善吉くん寝てんの?」

 

返事はない。

 

「みんな生徒会長の噂ばっかだからつまんねぇよな。僕らからしたら彼女が会長になるのは解ってたようなもんだし」

 

またも返事はない。

 

「ふぅ……返事がない只の屍のようだ」

 

……………

 

おいおい、()吉だけに()無視かよ。流石に酷くないか?

お前はどっかの誰かと違って、ちゃんと話を聞いてくれるやつだろうに。

僕は君をそんな子に育てた覚えはないぞ?

いや、そもそも育てたのは僕じゃないけどさ………

 

「二人共なんの話してるのー?あたしも交ぜてよ♪」

 

そう言ってやってきたのは、同じクラスの青髪で小柄な少女――不知火半袖ちゃんだ。

いつもニコニコとした親友その3である。

今日も笑顔が眩しいねぇ。

 

「聞いてよ袖ちゃん。善吉が無視するんだぜ?酷いと思わない?」

「あひゃひゃ♪きっと疲れてるんだよ。今朝もあのお嬢様に付き合わされてたみたいだし♪」

 

ああなるほど、そりゃご愁傷様だ。

今朝一緒に登校しなくて正解だったよ。

………まさか、そのこと恨んでるんじゃないよね?

もしそうなら逆恨みもいいとこだけど

 

「しっかし、あのお嬢様も全校生徒を前によくあんな啖呵が切れるもんだよね。人前に立つのが慣れてるっつーかさー♪」

 

ふむ、人の前に立つのが慣れてるねぇ……

 

「いやいや、袖ちゃん。それは違うと思うよ?」

「んー?どーゆーコト?」

「紫音の言う通りだぜ不知火」

 

僕と半袖ちゃんの話を聞いて急に起き上がる善吉。

というか、やっぱり起きてたのかよ!

さっきは僕の事無視したくせに!

 

「ありゃあ、人の前に立つのに慣れてんじゃねーよ。人の上に立つのに慣れてんだ!」

「あー、なるほど!そりゃそーだね。そーでなきゃ、一年生で生徒会長になんかなれっこないか♪」

 

まぁ、そういうことだ。

人の上に立って下を眺めているからこそ、みんなの相談に乗るとかなんとか言ってるんだよねぇ

どっかの王様か何かかよって言いたい。

ホント迷惑極まりない人だよ、めだかちゃんは。

いつも巻き込まれてる善吉が不憫に思えるよ。

 

ちなみに僕はのらりくらり回避してます。

じゃないと、文字通り骨が折れそうだから。

 

「それで?あのお嬢様の幼なじみである人吉と相良は、どーすんの?」

「ん?どうするって何が?」

「お嬢様が当選したってことは、とーぜん二人も生徒会に入るわけ?」

 

ああ、そのことか。

 

「まぁ僕はともかくとして、善吉は入るんじゃないの?めだかちゃんにしつこく誘われてたみたいだし」

「カッ!そんなわけねーだろ!これ以上、あいつに振り回されてたまるかっての」

 

そう言って立ち上がる善吉。

 

なんかすごい意気込んでるなぁ

でも――後ろにいるめだかちゃんには気付いてないみたいだね……

僕も今気づいたんだけどさ。

一体いつの間に入ってきたんだか……

 

 

「俺は絶対!――生徒会には入らない!!」

 

 

人吉~うしろ、うしろ~!

本人いるから!なんならポーズ真似されてるからね?

半袖ちゃんも絶句したのか笑ったまま固まってるし……

まぁ、話も進まないしめだかちゃんに話しかけるか

 

「だそうですよ、生徒会長殿?」

「ふむ、そうつれないことを言うでないぞ善吉。」

 

そう言って、後ろから善吉の頭を掴むめだかちゃん。

アイアンクローでも決める気かな?

 

「な!?お前いつの間に!つか、手離せ!」

「安心しろ、貴様が大人しくしておれば手荒な真似をする気はない」

「そう言いながら手に力込めてたら、説得力ないと思うよ?めだかちゃん」

 

現に善吉ちょっと痛そうだし……

 

「なに、善吉ならこのくらい余裕だろう。さて、紫音お前にも一緒に来てもらうぞ?」

 

あ~、多分このままついて行ったら巻き込まれそうだなぁ

 

「悪いけど、今日は先約があるんだよ。だから一緒には行けないよ!」

「なに、直ぐ済む話だ。そのあと向かっても問題はなかろう」

「ん~、なら今話してよ。そうすればもっと早く済むしさ!」

「ふむ、それもそうだな。では、単刀直入に言わせてもらおう」

 

まぁ、どんな内容なのかだいたい予想が付くんだけどさ。

 

 

 

「生徒会に入ってくれ、紫音」

 

 

 

「やだ」

 

 

 

………………

 

 

沈黙。

あれだけ騒がしかった教室内が、今は静寂に包まれている。

そりゃ、噂してた超人が目の前にいて、その誘いを即答で断る人間がいたらこうもなるよね。

 

「……もう一度聞こう。紫音よ、私の生徒会に入ってくれ」

「断る!」

 

二度目の誘い。

もちろん、これも拒否する。

 

「入れ」

「うんそれ無理♪」

 

三度目。

ついには、お願いじゃなくて命令になっている。

 

「……どうしてもか?」

 

気落ちした顔で僕に聞いてくる。

……今回は、珍しくしつこいなぁ

いつもなら直ぐに「そうか」って言って終わりなのに。

はぁ、仕方ない……

 

「めだかちゃん、僕が意外と頑固なの知ってるでしょ?悪いけど生徒会に入るつもりはないよ。暇なときに手伝いとかならしてあげるけど」

 

鞭ばかりではダメなので、飴も用意する。

決して雨ではない。なんなら飴を降らせることもできない。

そんなこと出来たらそれこそ人外だしね。

 

「!……そうか、残念だが仕方あるまい。だが、言質は取ったぞ?何かあれば手伝ってもらうからな!」

 

残念と言いながらもすごく嬉しそうなめだかちゃん。

手伝ってあげると言っただけでこの有様である。

というか、暇な時って言ったの忘れてない?

 

「では、そろそろ私は行くとしよう。時間を取らせてすまなかったな紫音」

「気にしないでよめだかちゃん。僕らの仲じゃない!」

「うむ、それもそうだな」

 

そう言って、笑いながら善吉を引き摺って出て行くめだかちゃん。

善吉くんは犠牲になったのだ。南無南無

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

めだかちゃんが出て行ったあと、変な空気になった教室を僕も出て、下駄箱に向かう。

なんか視線が痛かったからね!……うん、逃げました。

因みに、いつの間にか復活していた半袖ちゃんも何故か一緒だ。

 

「いやーそれにしても、相良がお嬢様の誘いを断るなんてね♪」

「ん?意外だった?まぁ、僕は善吉ほどめだかちゃんに固執してないし、生徒会にも興味ないからね」

「ふーん。そーいえば、先約がいるとか言ってたけど、ここでのんびりしてていいの?」

 

ん~?ああ、あれか。

 

「いいのいいの、だってあれ嘘だもん」

「え!?そーなの?」

「そうなの。だってあのままついて行ったら巻き込まれそうだったしね」

 

まぁ、結局めんどくさいことになったけどね

教室の雰囲気も悪くなったし。

あれは僕も悪かったかな、やっぱり。

 

「ってことで、袖ちゃん暇?暇ならなんか食べに行こうぜ!」

「ん~?奢ってくれるならいいよ!」

「んじゃ、どっか食べ放題の店行こうか」

 

半袖ちゃんは大食いキャラだからなぁ

あの小柄な体のどこに入るのか、いつも不思議なんだけど。

 

「そうと決まれば、レッツゴー!」

「おー♪」

 

そのまま僕と半袖ちゃんは、食べ放題の店を探しに歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお余談だが――

その日、オープン記念の食べ放題をやっていた近所の中華料理店が、

3日もしないうちに店を畳んだそうだ。

………なんでだろうね?(笑)




初めました。(誤字ではない)
狐花(こか)と申します。
決してコーラでも麻薬でもありません。(誰も言ってない)

さて、色々と初めての事なのでおかしな点はどんどん言ってください。
よろしければ、アドバイスや感想などもしてください。(図々しい)
これからよろしくお願いします。


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第1箱:言質を取られた暇人のお遊び

めだかちゃんの演説とか、教室での一件があった翌日の昼休み。

僕と善吉、袖ちゃんの三人で食堂にいるんだけど……

 

向かいに座ってる善吉がボロボロになっている。

別に、午前の授業で殴り合いのケンカがあったとかではない。

 

「ねーねー、前から思ってたんだけどさー。人吉ってひょっとして頭悪くない?なんで毎回毎回お嬢様のシゴキに付き合ってるのさ、部外者のくせに」

「うるせぇ。大体あいつは――――」

 

そう、袖ちゃんが言った通り善吉はまた(・・)めだかちゃんにシゴかれたらしい。

なんでも、めだかちゃんの設置した目安箱に剣道場に関しての投書があった為、それを解決しに行ったんだとか。

うん、なんで剣道部でもないのに善吉はシゴかれてるんだろうね。

まだ生徒会にも入ってないみたいだし。

まぁ、僕からすればいつものことだけどさ~

 

「まぁ、仕方ないよね。善吉って口では色々言ってるけど、その実めだかちゃんが大好きなツンデレだからさ」

 

僕は自前の弁当を食べながら、袖ちゃんの疑問に答える。

なんか善吉が話してたみたいだけど、どうせめだかちゃんのことだろうからどうでもいい。

……うん、今日の弁当も美味しい!

 

「あー、なるほどねー♪でも、男のツンデレなんて誰得なんだろ?」

「さぁ?」

「お前ら好き勝手言いすぎだろ!!」

 

だって事実だし。

 

「とりあえず、あれだ。あいつらもあんなヒデェ目に遭っちゃ、もう剣道場に近寄らねェだろうさ」

「「………」」

 

こいつは一体何を言ってるのかなぁ……

 

「人吉って案外あのお嬢様のことわかってないよね♪幼馴染なのに。」グサッ

 

お、善吉にクリティカルヒットした。

よし、追い討ちかけよう。

 

「本当にね。あれだけ長い間一緒にいるのに、めだかちゃんのことなんにも理解してないみたいだしさ!善吉いる意味あるのかな?」グサグサッ

 

……あ、膝抱えちゃった。流石に言いすぎたかな?

と思ってたら袖ちゃんがサムズアップしてきた。

 

「と、とりあえずさ、めだかちゃんのことだから、悪い奴をやっつけてめでたしめでたしとはならないと思うよ?」

 

話を戻して善吉に話しかける。

 

「そーそー、あれがそんなカンタンな女ならあんたや紫音も苦労してないでしょ?」

 

……さらっと僕も苦労してるみたいに言わないでよ。

 

――――――――――――ボソッ

 

ん?今、ボソッと声が聞こえた気がする。

声の主の方へ目を向ければ、同じクラスの日向くんが席を立ち食堂を出ていくのが見えた。

………?

なんだったんだろうか?

 

「んん?なぁ、今後ろの席に誰かいなかったか?」

 

どうやら善吉にも聞こえたらしい。

真後ろの席に座っていたから僕よりはっきり聞こえたかもしれない。

 

「同じクラスの日向がうどん食べてたよ~♪」

「日向?」

 

やっぱりあの声は日向くんで間違いないのかな?

 

「それがどうかしたの?」

「………いや、別に。」

 

善吉は気のせいだと思ったのかな?

ま、僕もよく聞こえなかったし気にしないでおくかな、。

……むしろ、袖ちゃんが若干ニヤけてる事の方が気になるし。

 

 

とりあえず、三人とも食べ終わったので食器とお盆を持っていく。

僕はもう弁当箱片付けたから、後ろからついてってるだけだけどね~

 

「ま、もうすぐ人吉もお役御免なんだし、お嬢様のことは気にしなくてもいーんじゃない?」

「あ?」

 

ああ、袖ちゃんが言ってたあの話か。

 

「確か今日の放課後に役員募集会やるんだっけ?学園側主催で」

「そーそー!んで、二年三年の特待生集めてやるんだってさ♪」

「………カッ!そりゃぁいい。生徒会のメンバーさえ決まれば俺も振り回されなくなるだろうからな!」

 

……なんというか、善吉は嘘が下手だよねぇ

私不満ですって顔して言っても説得力無いぜ?

まったく、素直じゃないんだから。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

んで、放課後。

多分剣道場に行ったんだろう、善吉は見当たらなかった。

だから、袖ちゃんを探してたんだけど……

 

「あひゃひゃ♪けど、紫音は勿論、人吉も生徒会に入る気なんて更々なさそうですけど?」

「…………」

 

……な~んか軽く修羅場ってる?

まぁ、あの二人はなんとなく相性悪そうだしねぇ

さてさて、ここは空気を読むべきか、ぶち壊すべきか………

 

よし、軽くぶち壊そう!

 

「袖ちゃんみっけ!あ、めだかちゃんもいるんだね。珍しい組み合わせだけど、何話してたの?」

「む、紫音か。なに、不知火と二人で生徒会役員の話をしていただけだ」

「ああ、役員募集会とかの話かな?めだかちゃんとしては善吉を入れたいんだろうけど」

「うむ、私には善吉が必要だからな」

 

開いていた扇子をパチンと閉じて言う。

そして、それを僕に向けて、

 

「無論、私としては貴様も入ってくれると嬉しかったんだがな?」

「あはは、言ったでしょ?僕は入らないよ?」

「なに、無理強いはせんさ。暇なときは手伝ってくれる様だしな」

 

流石めだかちゃん、ちゃんと覚えてたんだね。

 

「おーい、あたしを忘れないでよ♪」

「ん?忘れてないよ?」

「ホントかなー?あ、そう言えばお嬢様。剣道場の方はどうなったんですか?」

「私が戻るまで自主練を言いつけておる。一刻も早く連中を剣道少年に戻してやらんといかんからな」

 

ああ、善吉に聞いた通り【上から目線性善説】発動中なんだ。

善吉が勝手に真骨頂とか言ってるだけで、ただのめだかちゃんの勘違いなんだけどね。

 

「へー、そーいや投書の差出人って一体誰だったんでしょうね?」

 

ふと、袖ちゃんがそんなことを言い出した。

確か、投書は匿名だったんだっけ?

 

「確かに迷惑っちゃ迷惑でしたけど、使ってない剣道場に不良が溜まってたトコで、実際に困る生徒なんていないはずなのにねぇ?」

「いやいや、もしかしたら単純に剣道がしたい生徒が出したのかもよ?」

「えー?なら別に匿名じゃなくても良くない?」

 

いや、普通に報復とかされたくなかったから、とかかもしれないじゃん。

 

「なんにせよ、私は知らんし、知る気もない。私は誰からの相談でも受けつけるぞ。そもそも、匿名性がなければ目安箱の意味がないしな」

 

う~ん、めだかちゃんらしいっちゃらしいんだけど、

本当にそれでいいのかなぁ?

……まぁ、めんどくさくなるから言わないけど。

てか、なんか袖ちゃんがずっとニコニコしてるのが地味に怖いんだけど……

 

「じゃ、たとえばあたし達のクラスメイトで剣道の腕前は全国クラスだけど性格に問題があって、中学時代に暴力事件ばっか起こしてたって過去を持つ日向くんが差出人でも?」ペラペラ

「一向に構わん」フン

「いや、構おうよ!!」

 

日向くんってそんな人だったのか

てか、袖ちゃん全部知ってたんなら今までの会話なんだったのさ!

 

「だったらぁ…あたしからの投書でも受け付けてくれるんですよね?」

 

そう言って袖ちゃんはめだかちゃんに一枚の紙を渡す。

何が書かれてるんだろうか?

 

「もちろんだ」

 

それを受け取って読み出すめだかちゃん。

ちょっと横から覗いてみよう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

☆生徒会長様☆

実は私のクラスの日向くんの

性格がとってもとぉ~っても

悪そうなので、

ゼヒゼヒ叩き

なおしてやって  自分の絵

くださいな♡

 

       ☆トクメイキボウ☆

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

うん、色々ツッコミたいけどひとつだけ

自分の絵書いてたら匿名にならないじゃん!

しかも地味に上手いし!

 

「ふむ、確かに受けつけた。すぐ(・・)に行ってこよう」

 

あ、受けるんだこんなの……

って、ちょっと待った

すぐってことは今から行くの?

 

「めだかちゃん行くのは勝手だけど、募集会どうするのさ?」

「む、そうだな……よし、不知火と紫音。」

 

あ、これめんどくさい奴だ

 

「二人に代理を頼もう。どうせ暇だろう?」

 

やっぱりこうなったか……

 

――――――――――――――――――――――

 

南校舎の第四会議室。

そこには特待生の二年三年が何人か集まっているんだけど……

 

「えーっと、それでは最初に質問させてください。」

 

ザワザワとしているこの教室で、一人の生徒が質問をしてきた。

 

 

 

 

「あなた方は一体誰ですか?」

 

 

 

「……………大統領です!(精一杯のギャグ)」

 

 

 

教卓の上に正座し、ひらがなで【かいちょー】と書かれた腕章を付けた袖ちゃんが答える。

まぁ、そのすぐ横に僕も立ってるわけなんだけどね。

 

 

結局、あの後めだかちゃんは日向くんの所へ向かった。

………僕らに募集会を押し付けて。

まぁ、頼まれたのは仕方がないから代理をしに来たんだけどさ。

 

「あの、それであなたは?」

 

質問をした眼鏡の人が僕に聞いてきた。

 

「あ、僕はその秘書兼友人兼生徒会長代理(・・・・・・)です。」

「生徒会長代理?」

「ええ、会長である黒神めだかさんに急用が入った為、代理に任命されました。因みに、僕は生徒会役員でも無ければ、生徒会に入る気もないのであしからず」

 

とりあえず質問に答えておく。

え?口調が気持ち悪いって?

袖ちゃん以外上級生だから仕方ないよ。

 

「うっわー 紫音、それ吐き気するからやめなよ」

 

袖ちゃんに引かれた……って吐き気するってなにさ!

まぁ、やめるけど

 

「うん、じゃあや~めた!ってことで皆さん、めだかちゃんは来ません!残念でした~」

 

僕の急な態度の変わり様に驚いたのか、先輩達は押し黙っていた。

これじゃ、僕が滑ったみたいじゃないか!

 

まぁいいや。さっさと解散してもらって、僕も帰ろう。

 

「そ~ゆ~訳で、先輩がt――」

『ギャアアアアア―――――!!!!!』

 

話を進めようと思ったら外から叫び声が聞こえた。

多分日向くんの声なんだろうけど。

てか、よくここまで叫び声が届いたね。

意外と近くにいるんだろうか?

 

「えー気を取り直しまして」

 

先輩達が、え?今の無視?って顔でこっちを見る。

だって原因知ってるし。

 

「先輩方には申し訳ないんですが、全員不採用ってことでお願いします!んじゃ、解散!!」

 

そう言った瞬間、先輩達はポカーンとした顔のまま固まってしまう。

なぜか、袖ちゃんだけは楽しそうに笑ってるけど。

………よし帰ろう!

 

 

 

 

 

とまぁ、そうは問屋が卸さない様で………

 

「おい、一年坊主。いきなり現れて何生意気なこと言ってんだ?」

 

多分体育科の特待生であろう、ガタイのいい男の先輩が立ち上がって前に来る。

他にも何人かデキそうな人がチラホラ立ち上がっていた。

うっっわ、めんどくさい。

 

「あんまり先輩()めるんじゃねぇぞ!不採用ってんなら理由言えよ、理由を!」

「理由ですか……そもそも、めだかちゃん本人が来てない時点でちょっとは察してくださいよ。あんたら全員要らないって言われてるんですって」

 

まぁ、めだかちゃんはそんなこと一言も口には出してないけどね!

でも、実際善吉くん以外要らないだろうしさ。今はまだ。

 

「はい、わかったら皆さん解散してください。僕達もう帰りたいんですよ」

 

てか、袖ちゃんはいつまでニヤニヤ笑ってるのさ!ちょっとは何か発言してよ。

もとわと言えば君のせいなんだし……

 

「ちょっと、袖ちゃんも何か言tt――――――」

 

左を向いて袖ちゃんに話しかける。

そして、それを言い切る前に……

 

僕の視界は暗転した。

 

その瞬間頬の痛みを感じる。

ああ、殴られたのか。

そう理解して、黒板に叩き付けられる。

 

「ぐはッ!」

 

死角からの思いもしない一撃だったせいか、勢いよく叩きつけられ声が漏れる。

あ~クソ、かなり痛い

 

「たくっ、あまりにも生意気なこと言うからつい殴っちまったじゃねぇか。」

 

どうやら僕を殴ったのはさっきのガタイのいい先輩らしい。

 

「そもそもなぁ、代理だかなんだか知らねえが、お前みたいな役員でもないわけのわっかんねぇ奴に指図される筋合いねぇんだよ」

 

そう言った後、倒れている僕を軽く蹴る先輩。

いや、お怒りはごもっともだけどさ、流石に追い打ちとか酷くない?

そして、その先輩に同調するように他からも声が上がる。

 

「そうだよ!黒神さんに言われるならまだ納得できるけど、君に言われても腹が立つだけだよ!」

「そうだそうだ!!お前なんか引っ込め!生徒会長連れて来い!」

「弱っちいくせして先輩に歯向かってんじゃねぇよ!クソが!」

「あんた一体何様なのよ!」

「中性的な顔しやがって!キモいんだよ!」

「黒神さんのこと名前呼びとか羨ましい!!」

「お前会長とどうゆう関係なんだよ!」

 

エトセトラエトセトラエトセトラ……

 

よっぽど腹が立っていたのかなんなのか分からないが、僕に対して罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせる先輩達。

もしかしたら八つ当たりだったりもするのかな?

僕が言った通り、めだかちゃんがここに来なかったって事は、先輩達ははなから見向きもされてないってわけだから。

てか、後半只の妬みじゃないの?

 

罵声が一旦止んだところで、僕は痛みを我慢して立ち上がる。

とゆうか、思ったよりダメージ大きいなぁ

口の中、若干切れてるのか血の味するし。

 

「あ~、いってて。殴られるなんて思ってないから気ぃ抜いてましたよ。てか袖ちゃん、助けてくれてもよかったんじゃないかな?」

 

立ち上がって袖ちゃんを見るとまだ教卓に座ったままニヤニヤしていた。

 

「えー、やだよ!あたしに矛先向けられたくないし!それにあたしは親友の紫音が酷い目に遭ってるのを安全な所から眺めたいだけの人間だから!!」

 

笑いながらそう言い放つ袖ちゃん。

……君絶対人間じゃないよ、悪魔かなんかだよ

 

「それにさーあんたならこれぐらい余裕なんじゃないの?」

「いや、それは流石に買いかぶり過ぎだよ袖ちゃん。僕も一応色々習ってはいたけど、善吉みたいに鍛えまくってたわけじゃないし」

 

てか善吉と僕とじゃスタイルも違うし、身近に師匠的存在もいなかったからね。

 

「おい!こっちを無視してんじゃねぇよ!!」

 

話をしている途中でまた殴りかかってくる先輩。

あなた流石に短気過ぎません?

 

 

 

 

 

……………はぁ、仕方ない――――――やるか

 

「まぁ、でも――――」

 

そう言って手を軽く握り―――――――

その瞬間、先輩の鳩尾を打つ。

 

 

 

「ガハッ!!ゲホッ!ゲホッ!」

 

大きく息を吐き、すぐに咳をしながら前のめりになる先輩。

 

「これぐらいならできるけどね!」

 

袖ちゃんの方に向き直って声をかける。

彼女はやっぱり笑みを浮かべたまま、やるじゃんと言うだけだった。

 

「て……てめぇ……ふ…ふざ…け…ん……なよ…」

 

殴られた先輩は苦しそうに言う。

ちょっとやり過ぎたかな?

 

「調子こいてんじゃねェぞクソ一年が!!」

「お前なき入れさせるぞゴラァ!!」

「テメェの尻の穴から手突っ込んで奥歯ガタガタいわせてやろうか!!」

 

他の先輩達もなぜかキレている。

皆さん過激すぎじゃないですかねぇ?

 

「先に仕掛けてきたのは先輩だから、これは立派な正当防衛ですよ?それでも文句があるって言うなら……………かかってこいよ」

 

 

 

オレ(・・)がそう挑発し、軽く構えをとった所で、先輩達が一斉に殴りかかってくる。

因みに、この教室にいた先輩の半分程は、既に帰ったのかもういない。

残ってるのは目の前にいるこいつらだけ。

まぁ、これぐらいなら充分だろ。

 

 

 

………さぁ、オレを楽しませてくれ!

 




明けましておめでとうございます!
年末年始忙しかった為、今日やっと2話目を投稿することができました。
楽しんでいただけたら幸いです。

このペースで投稿してたら何年もかかりそうなので、ある程度ペースを上げていけたらと思ってます。
それでは次回もまたよろしくお願いします。


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第2箱:空虚な僕

生きることは空虚だと僕は思う。
いつからそう思うようになったのか、僕自身あまり覚えてはいない。
ただ漠然と、空っぽでつまらない人生を歩んでいく気がしていた。
だからこそ(・・・・・)、僕は自分の生きる意味を知りたいとも思った。
現在、二つだけ見つかってはいる(・・・・・・・・・・・・)けれど、きっとそれだけじゃないはずなんだ。


もっともっと僕は知りたい。


世界は無価値で、
未来は未知数で、
現実は理不尽で、
生きることは空虚だけれども、
そんなことがどうでもいいってなるくらい、
僕は楽しく生きてみたい。
そして、生きる意味を見出したい。
どうせいつかは死ぬんだから、その時に生きててよかったと思いたい。



だからさ、もっと僕を楽しませてよ。
そうすれば、もっと生きる意味を見つけられるから。
もっと、みんなと楽しく生きられるだろうから。










あ、でもめんどくさいのは勘弁して下さい。お願いします。



南校舎_第四会議室

 

まぁ、結果だけ言ってしまえば“つまらない”の一言に尽きると思う。

あれだけ威勢の良かった先輩達は、その殆どが気絶。

残りは痛みで倒れていたり、呻き声を上げている。

 

………いや、僕そんなに強く殴ってないはずなんだけど。

やっぱり、的確に人体急所狙ったのが拙かったのかなぁ?

あ、因みに一対十数人で喧嘩して、僕はほぼ無傷です。

これはドヤ顔してもいいんじゃね?

 

「うっわー、みんないったそー☆ でも、流石にこれはやりすぎなんじゃない?」

 

いつの間にか教室の後ろに移動しいていた袖ちゃんが、こっちに来ながら言う。

 

「あ~、そうだね。流石にやりすぎちゃった。保健委員呼んどいてくれないかな?」

 

ほぼ無傷とは言え、流石に疲れたから適当に答えを返す。

 

「えー?いいけどなんか奢ってよね☆」ピポパポ

 

そう言って携帯をイジる袖ちゃん。

図々しくないかとかツッコミたいけど、ここは黙っておく。

 

「じゃ、おねがいしまーす♪……ほい、呼んどいたよー」

「うん、ありがとう。」

「それにしても、すごかったねー♪先輩達の死角から急所を狙って、バッタバッタ倒しちゃうんだもん☆」

 

にやりんっとした顔で言ってくる袖ちゃん。

さっきのを見て分析でもしたのかな?

てか、いつまでニヤニヤしているんだろう……

 

「しかも先輩達、死角に移動してる紫音に気付いてなかったみたいだしさー。なんてーの?瞬間移動みたいに目の前から消えたみたいなー」

「………」

 

……あの短時間でそこまで理解したんだ

流石と言えばいいのか、目敏いと言えばいいのか……

まぁ、正直そんなのはどうでもいいんだけどさ。

 

「ふぅ、そんなことより袖ちゃん。何奢ればいいの?あんまり高いのとか、大量に頼むのだけはやめてね」

「……んー?じゃあ、焼肉ね!食べ放題でいいよ!」

 

食べ放題でもまあまあすると思うんだけど……

懐に余裕はまだあるけどさぁ

 

「了解。んじゃ、行こうか!」

「おー♪」

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

とりあえず、誤魔化されてくれた(・・・・・・・・・)かな?

まぁ、問いただそうとか、深入りしようとかは思ってなかったみたいだしね。

 

別に僕のスキルがバレるのとかは、全くもって気にしてないんだけど、

でも、今はまだその時じゃない気がするんだ。

それに、バラすならもっと面白くなるようにバラしたいじゃん。

 

 

 

……さて、切り替えていかないと。

久しぶりの焼肉だしね!

楽しんでいこう!

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

次の日の朝

 

朝食中になんとなくツイッターを覗いてみたんだけど………

 

 

 

【生徒会役員募集会で起きた騒乱!】

 

役員募集会に参加していた特待生の内、約半数が保健室送りにされました~

なんと!それをやったのがあたしと同じ、普通科の一年生だって言うんだから驚きだよね~☆

因みに、あたしじゃないよ!現場にいたけど!

なんなら、そいつクラスメイトだけど!

これ以上は守秘義務の為、言えないけどね!

別に、焼肉奢ってもらったりしてないからね!

イニシャルがS,Sだったりしないからね!

以上、不知火の学園情報でした♪

 

 

 

「………」

 

まぁ、こうなるとは思ってたけどさ

名前が出てないだけマシだと思おう。そうしよう。

 

……イニシャルS,Sって他にいるかなぁ?

 

 

 

そういえば、善吉は生徒会に入ったみたいだ。

どうせ、めだかちゃんにお前が必要だって言われて堕ちたんだろうけど。

ま、僕の分まで頑張ってね。

 

 

さてと、早く食べないと遅刻するな。

僕は朝食を片付けて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

腑罪証明(アリバイブロック)」発動

 

 

「ははは、流石に僕も驚いたよ。まさか紫音くんがあれ(・・)を完成させてたなんてねぇ。

まったく、封印されてるとそーゆーのに疎くなっちゃうぜ☆

これは面白くなりそうかな?

期待してるぜ?紫音くん?」

 

 

 

 

 

「あ、そうそう

僕が出てきて驚いてるかもしれないけど、安心しなさい。

紫音くんが僕の端末(ぼく)ってわけじゃないから。

それじゃ、またね」




ペースを上げたいのに上げられない狐花です。
結局月一投稿になっている現状……
それでも見てくれている人がいると思って頑張ってます。

さて、今回はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです。
色々フラグが立ってますが、気にしないでください。
全部回収できるかわからないのでw(しないとは言ってない)

それでは次回もお楽しみに。
できるだけ早く投稿できるよう頑張ります。


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