MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド (溶けない氷)
しおりを挟む

始まり

War... War never changes


日本

その日はよく晴れていた。

そして心を躍らせながらスマートフォンを片手に歩いているのは伊丹耀司。

彼はオタクであり、自衛隊員。

 

「今日は絶好の同人誌即売会日和だな。」

そう言いながら電車を降りて、上りエスカレーターで上へとあがっていく。

次の瞬間、彼の頭に衝撃が走る。

額を柱にぶつけてしまったのだ。

 

連邦、かつてのマサチューセッツ州

一方、その日は激しい放射能嵐だった。

そしてVault111の上、目を閉じてあの日の事を思い出しているのは唯一の生存者。

「感じる・・・放射能、熱、エネルギー・・・あの日のように」

思い出すのは、一家の運命が変わってしまった日のこと。

核により世界が滅んだ日のこと・・・周りに転がっている白骨はあの日、Vaultに入れなかった人々。

彼らはある意味、幸運だったろう。

次の瞬間、彼の頭に衝撃が走る。

放射能嵐で生じた雷に打たれたのだ。

 

『『っぐああぁぁ』』

時間も世界も違えど、二人の頭の中に何かのイメージが映し出される

伊丹耀司には美しい3人の女性の像が

111には、核爆発、燃え上がる街々、焼けただれのたうつ人々・・・

二人の違いがこの先、何をもたらすのか

 

 

War…War never changes

俺はショーンを失った…再び…

目を閉じると、あの懐かしい生活を思い出す

思い描いていた未来像は、一瞬で変貌することがある。

心の準備ができていなくとも

それは誰にでも人生のどこかで起こること

ここは俺が望んだ未来ではなかった…

だが間違いなく俺のいる唯一つの世界

連邦、わが故郷は、引き裂かれてそして今再び一つになった。

きっと家族を探し出せる,そう思っていた。

叶うならば、時計の針を戻し全てを元どおりに

だが分かっている、世界は変わりその先に待つのは険しい道

今度は覚悟ができている、俺には教訓があるから

War…War never changes…

 

 

2077年10月23日9時47分、中国がマサチューセッツ州を核攻撃

世界は滅んだ

それから210年間の月日が流れ

2287年10月23日、Vault111の奴が目覚める

異なる世界で伊丹三尉、銀座事件で避難誘導の功績により二尉に昇進。

帝国軍、アルヌスの門と同時期に開いた地下洞窟の門より別の異世界に侵攻。5000の兵力を持って侵攻。

侵攻部隊は48時間以内にカマドウマ、アリ、蚊、ゴキブリ、蝿、蟹、ザリガニなどに襲われ壊滅。

散逸した兵士たちはウェイストランドを彷徨ううちに次々と餌食になりほぼ全滅、運よく戻れたものも放射能に侵され特地(111はグリーンランドと呼ぶ)でフェラルグール化。

帝国軍は生き残ったものの報告から地下門の向こうは見渡す限りの荒野だという報告を受け、地下門を閉鎖しようとするが既に同時期のアルヌス門の向こうの壮麗な都市を重視し、放置。

荒れ果てた蛮地ゆえ大したことはないだろうと思っていたら溢れ出てきたアボミネーションが蔓延したために果たせず。

 

それから約3ヶ月、インスティチュートとBoSの戦争が

インスティチュートの勝利に終わる。

同時期、ヌカ・ワールドが本格的に再稼働

総支配人がマサチューセッツ州を完全支配下に置く

ほぼ同時期、自衛隊が特地に駐屯地を建設

アルヌスの丘を巡る戦いが始まろうとしていた・・・

 

「総支配人、ヌカ・ワールドがこうやって本格的に動き出し連邦を俺たちの影響下に置いたことでキャップがどんどんながれこんできてる」

どっかの斬撃サイボーグ忍者・・・ではなくゲイジがフィズトップマウンテンの総支配人室に報告にやってくる。

「キャップが入ってくるのはいいが、正直暇だな。

もっとこう・・・エキサイティングなヌカ・ワールド独特の催事はないか?

ああ、この前捕まえた変なレイダーでまた遊んでみるのはどうかな?

まだ残ってたろ」

「勘弁してくれよ、ボス。

この前はガントレットが死体で詰まって掃除に1週間はかかったんだ。

残ったやつもあんたが入るなり2秒で皆殺しにしちまってみんな逆に欲求不満なんだ」

 

「そうか、じゃぁ残ったやつはシンシア(Red Rocketで飼っているペットのアルビノ・デスクローの雌 2歳)の餌にでもしておいてくれ」

 

「ああ、それとだがボス。連中、妙な言葉を話してたろ。

それでパックスの連中がこの前面白がって外に放ってみたんだがな

連中、妙な洞窟の中に逃げ込んで行ったらしい

ここから離れているらしいんだが、もしかしたらVaultじゃないかっていう噂だ」

 

その話を耳にして我らがそして読者の中には総支配人をよく知るものもいるだろう。

この総支配人とはあなたでもあるのだ、具体的にいうとヌカ・ワールド総支配人兼インスティチュート所長のVault111のアイツである。

そしてVaultという話を聞いて総支配人も興味深そうになった。

「未発見のvaultだと?レイダーのアジトになっているのか・・・人手を集めろ、殲滅して新しい拠点にする」

「了解だ、ボス」

 

ゲイジがエレベーターでオペレーターズ、パックスに総支配人の命令を伝えに行く。

総支配人も壁にかけたレーザーガトリングにヌカ・ランチャー(個人携行核ミサイル)

そしてX-01クアンタムカラーを手早く着込んで50m程はある展望室から手っ取り早く飛び降りる。

何が始まるんだ?第四次世界大戦だ

総支配人がヌカ・タウンの町通りを行くにつれて大急ぎで駆けつけたレイダーが総支配人の眼前を汚さないようにと市民(奴隷)に火炎放射器を突きつけておきまりの言葉を吐く。

『ヒャッハー!おらー道を開けろ!総支配人様のお通りだぁ!膝まづけぇ!消毒されてぇか!』

『ヒャッハー!俺たちのヒーロー、総支配人様がまた大虐殺を始めるぜぇ!』

なんという世紀末の光景なのでしょう、実際世紀末なのですから仕方ありません。

弱者は奴隷、強者が総取り。

でも、いつの時代もそんなに変わらないですね。

ヌカ・レイダー達だって弱者を外敵から守ってやる代わりに物資を寄付してもらっているのですから。

そんなこんなでやってきたのはヌカ・ワールドの南あたり。

荒れ果てた荒野のど真ん中の核廃棄物処理場です。

処理場といっても戦前の企業倫理観を反映して高濃度核物質をそこらへんにポイ捨てしてるだけなので、当然ガイガーカウンターがチキチキ鳴りっぱなしです。

でも大丈夫、黄色いドラム缶や水辺に近づかなければ比較的許容範囲です。

こんなところにやってくるのはスーパーミュータントか、物好きなスカベンジャーか、グールかアボミネーションかアトム教徒くらいでしょう。

要するに普通の土地です。

「総支配人!ここです、あの妙なレイダーが逃げてったのは!」

そう、レイダーの一人が指差したのは廃棄場の奥の洞窟。

「ここは・・・ここから先は放射能汚染が酷い、俺が見てくるからお前達はRAD-Xを多めにもってこい」

そう言うなり、前へとずんずん進んで行く総支配人。

手にはレーザーガトリングを構え、いつでも撃てる状態に。

強敵に備え、腰につけた核爆弾もいつでも投擲可能。

パワーアーマーの動力は核、武器も核動力に核爆弾と文字通り全身核兵器。

ウェイストランド、そこは人が生きるということは誰かから奪うか、奪われるかという世界。

『全く、酷い世界だ・・・』

だが自分を制して悪に徹しなければ生きることすらできない世界だ。

そして総支配人の目の前に現れたのは・・・そう、銀座に現れた門とはまるで違う。

それは恐ろしく分厚い鋼でできていた。それは歯車の形をしていた。

それはあるものには忌まわしい過去、あるものには希望の象徴。

Vaultのゲートだった。

『セキュリティは・・・解除されているのか、珍しいな』

そしてそのゲートを開くと、総支配人は驚愕し持っていたガトリングを取り落とした。

青い空、緑の大地・・・流れる川・・・

 

日本はこう呼んだ、『特地』

 

111はここをこう呼んだ。

『グリーンランド』と



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地獄の始まり

時間は少し経つ

自衛隊がなぜ門の向こう側の補給基地確保に時間をかけたか

近代の軍隊は膨大な量の補給を必要とする、それは銀座の門では本格的な補給を行うには不足だということ。

一方でヌカ・レイダーは?

補給?奪って食えを地でいく連中だ、その気になれば・・・というか普段から不思議な肉でも食べてるし。

 

そしてアルヌスの丘で自衛隊が諸王国連合軍を迎撃しようとしていた頃。

ずっと小規模ではあるがヌカ・レイダー軍と激突しようとしていた。

そしてヌカ・レイダーの先頭に立っているのは我らが総支配人の111。

彼がグリーンゲートと名付けた謎のVaultゲートから少し先の小さな砦をとりあえずの前哨基地として周辺の様子を探っていた。

 

久しぶりに嗅ぐ朝露に濡れた木々の匂いを吸い込みながらドッグミートと朝のお散歩・・・

ではないのは着込んだX-01とレーザーガトリングを見ればわかりますね。

「ボス、この先にある程度の町があるらしい。連中、その手前で待ち構えてるそうだ」

サイボーグ忍者ではない、ゲイジだ。

「いいだろう、連中に誰が新しいボスか教えてやれ。

それと馬を手に入れるんだ、なるべく傷つけずにな。

それ以外は殺せ」

「馬?まさか、あのでかい犬を食うのかボス?」

「食うんじゃない、乗るんだ」

自衛隊が日本から補給物資を持って来ざるを得ないのに対して、

111はこの地に新しい帝国を築くつもりだった。

そのためにも特にウランなどの地下資源が豊富で防御のしやすい土地を探すべく大量のアイボットを放って適当な土地を探させていた。

土地を見つけたら新しいVaultを築き、Vault-Tec Super Reactorから工場群のコンボで武器弾薬を生産し、核兵器搭載のロボット軍団を量産。

そこを足がかりにこの地の征服を行うのだ。

核から身を守るためでない、攻めるためのVaultだ!

さすがに68兆円相当の代物を一人でDIYしただけはある。

しかしながら流石に食料までは無から生産できないのでそこらの村を脅して取り上げる必要がある、その為には機動力だ。

 

「なんと・・・話には聞いていたが正に蛮族だな」

砦から命からがら逃げてきた兵士の話を聞いて、伯はどんな蛮族かと思ったが。

遠目にヌカ・レイダー達が近づいてくるのを街道の開けた土地で見て辺境伯は失笑する。

周りの騎士達も口々に苦笑し、これではアルヌスの蛮族征伐の方がまだやりごたえはあると侮っていた。

実際、ヌカレイダーの服装はこの世界の貴族から見れば大道芸人にでも見えるのだろう。

帝国辺境伯率いる騎士達が槍を揃え、足並みも乱れず次々とレイダー達に向かって突撃してくる。

瞬時、レイダー達の射撃の前に次々と撃ち抜かれ絶命する・・・

騎士達の数が半数までに減ったところで巨大なスレッジハンマーを持った総支配人を先頭にレイダー達が突っ込んでいく。

多くの兵を一瞬で失い、隊列を乱すも彼らの士気は未だ高く、目の前に迫りつつある蛮族に槍をつけようと駆け出した・・・

鎧を着た蛮族の族長らしき男まであと30m・・・と思った瞬間・・・・

瞬時、伯を初めとする高位騎士10人以上の頭が宙を飛んだ、何が起こったのかは常人には知りようもない。

暴流屠神拳奥義:武律図

あれこそは、ベヒモスを素手の一撃で屠った総支配人の111の奥義の一つである。(嘘です ただのBlitz)

かくしてヌカ・レイダー達のこの世界での初戦はレイダー側の死傷者0、鹵獲した軍馬多数。

辺境伯を初めとする帝国軍討伐部隊2000が全滅という結果に終わった。

 

かくしてレイダー達の大暴走は始まる、村という村から略奪しアルヌスの丘で食いはぐれた傭兵団の存在もあって帝国の警備隊程度では歯が立たない。

皇帝の焦土作戦も機動力を得て、そもそもウェイストランド人の連邦に比べればこの世界は溢れる食料庫のようなものだ。

「鹿なのに頭が一つしかないぜ?なんか損した気分だな」

「でかくて悪い総支配人様、最高!こんないいところに俺たちを連れてきてくれるなんてよぉ!」

帝国軍はおろか自衛隊に比べても少数のヌカ・レイダーがこの3ヶ月の間に帝国の3分の1まで浸透しているのには訳がある。

まず彼らの個々の戦闘能力の高さ。

レイダーなのでバカっぽい・・・というか実際バカが多いのだが彼らの身体能力はFEVと放射能によって高められ超人的な域にある。

何しろ頭に50口径弾が直撃しても”いてぇ!”で済ませる連中だ。

同数でもスーパーミュータントと互角に戦うだけはある、

プレイすればわかるが実際強いんだこいつら。

 

そして彼らの機動力はウェイストランドでは既に絶滅してしまった生物、馬によって高められた。レイダーにとって馬とはサファリパークの説明だけの動物。

乗れるでかい犬のスーパーミュータントみたいなものだと思ってるものが大半だった。

だがはるか昔、北米のネイティブアメリカンは元々馬を知らなかった。

彼らは適応能力が高く、映画で描かれるようにヨーロッパからもたらされた馬に順応した。

 

早い話が馬に乗ったスーパーミュータントがAKを構えて襲ってくるようなものである。

所構わず襲ってくる神出鬼没なヌカ・レイダーによって帝国の辺境は瞬く間にヒャッハー!な世紀末になった!

「ヒャッハー!待てやぁ!」

銃を撃ちながら逃げる馬車を追うのは馬に乗ったレイダー。

「ヒャハハハハハァ!新鮮な肉だぁ!捕まえたぜ!」

馬から馬車へ飛び乗り、御者の頭を跳ね飛ばして馬車を転倒させる。

「見ろよこいつ、こーんなもん持ってやがったぜぇ」

そう言って、貴族の馬車から引き出した箱を地面にぶちまけると金貨の山が零れ落ちる。

「こんなもん、エナジー武器のmodくらいにしかならねぇのによぉ!」

「おい、一応拾っとけ。総支配人様のロボづくりに必要らしいからな」

「チッ、まぁこれ全部でコーラ10本くらいにはなるか」

ちなみに紙幣はケツを拭く紙くらいにはなる。

後に残るのは新鮮な死肉のみである。

伊丹二尉の偵察隊が帝国全土を襲う蛮族について知るまでもう少し。

未だ自衛隊はヌカレイダーを知らない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蛮族大侵攻

「ふむ、敗れたか。だがこれで近隣諸国が帝国を脅かす不安は解消した。

アルヌスより帝都に至るまでの全ての町と村を焼き払い、井戸には毒を投げ入れ、食料・家畜を運び出せ。さすればいかなる軍とて補給できず立ち往生するであろう」

 

「しかし陛下、アルヌスの蛮軍に対してはそれで良いでしょうが。

ベッサニカの蛮族に対してはいかがなさるおつもりなのですか?」

 

連中は蛮人とはいえ軍のアルヌスとは違い、まさに蛮族。

バラバラに散って略奪して回る連中に焦土作戦は相手の脅威度の割に被害が大きすぎる。

「ふ、所詮は蛮族の群れにすぎん。そうだな、適当にはした金・女を与えてやりアルヌスの丘の蛮族に当てればよかろう。

夷を以って夷を制す、制せずともある程度の被害を与えてくれればそれでよし」

今までも帝国は圧倒的な国力を以って東方遊牧民の撃退にも事をなした。

遊牧民同士の仲間割れを助長すればそれで事は足りる。

 

もっとも、総支配人の異常なクラフト能力を中世レベルの科学技術で想像しろと言うのが無理がある。

「よっこいしょと」

そう言うなり新しい拠点に常温核融合炉とウォータポンプと街灯やベッド、ミサイルタレット等を5秒で製作する総支配人。

「ベッドまで作るはめになるとはな、いっその事このままヌカ・ワールドでも作ろうか?」

この拠点はつい最近までそこそこの街だったらしいがなぜか焼け落ちて住人がいなくなっていたのでレイダーの拠点にしたのだ。

結論から言えば、帝国兵よりも粗衣粗食な連中の上の総支配人や自衛隊相手に焦土作戦は自身の体力を削るデメリットの方が大きすぎたと言える。

「ヒャッハー!灯だぁ!水だぁ!これでまた略奪に精がでるってもんだぜぇ!」

なお、どう頑張っても乱雑で世紀末感が溢れるのがレイダー拠点である。

「ボス、食料が足りないって部下の連中が文句を言ってるんだが」

「それに関しては問題ない。もっと労働者を集めればいいだろう。幸い、そこかしこに食いはぐれた農民がいるみたいだしな」

帝国の焦土作戦とは要するに農民から作物を取り上げて飢えて死ねと言うようなものである。

従わないのならば剣にものを言わせるのが帝国のやり方。

言葉がわからないために何が起こっているのかはわからなかったが、総支配人は立派なレイダーだけに帝国のやり方もよくわかった。

「着飾って、洒落た椅子に座ってりゃレイダーも貴族か。面白いな」

あなたもヌカ・ワールドで働こう!!

ちなみに奴隷には爆弾首輪をつけて労働させるのがヌカ・ワールドです。

寝場所、食料、水があり、スーパーミュータントのおやつになる心配もないのだからウェイストランド基準では充実している。

まぁこの世界の農民は弱いので面白半分に犯されたり殺されたりするかもしれないが。

「総支配人、部下たちからの献上品が届いてるここいらで取れた戦利品だそうだ」

そう言って部下たちから差し出されたのは新鮮な野菜に銅貨に巨乳の美女。

小綺麗な衣装を着て、ビクビクしている様子だが手が荒れていないことからそれなりの身分の女性だったのだろう。

「中々気がきく部下どもじゃないか、美味しそうな山の幸にデザートか。」

「ああ、だが英気を養ったらまたやる事をやってくれよ。コルターみたいに怠けられたんじゃまた新しいボスを探さなきゃならないからな」

 

 

レイダーは農村なんぞ支配しない。

防御陣地を築くにも不適当、大した資源もない、取れるのはせいぜい農産物だけ。

彼らはただ奪うだけ、面倒だからだ。

その農産物にしても皇帝の命令によって刈り取られるか焼かれ、井戸は毒が投げ込まれ使えなくなっている。

村の戦略的価値は低い。

キャップ・暴力・薬こそ彼らの存在意義。

 

アイボットが見つけた資源が豊富な土地、エルベ藩王国を攻めるべく兵力を整えるため総支配人は大量のロボット軍団の生産を決定した。

第3世代の人造人間は変に小賢しくて信用できないから却下。

そのために必要なのは大量の資源。

銅貨はそのための布石。

 

『ようこそヌカ・ワールドへ!アメリカ1のアミューズメントパークさ!やぁみんな!僕はキャッピー!』

『おっと、おいらはボトル』

と愉快な最低限の安全基準は満たしてるヌカワールドへの紹介ビデオを流し続ける農作業用のロボの隣にはバラバラ死体が壁に飾られていたり頭が串刺しの伝統のレイダーアート

「正直にいうと、大勢の人間がいる割にはこの世界にめぼしいものは見当たらないな」

今まで略奪した中で一番価値のあるものは言うまでもなく新鮮な野菜。

放射能に汚染されていない野菜はそれだけで同じ重さのキャップの価値があるレアものだ。

金や銀といった貴金属の類はウェイストランドではもはや大した価値はない。

「レイダーは自分の両腕で持って歩けるキャップ以外は信じないからな」

 

レイダーの点と点の支配は帝国にとっては歯がゆい



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Welcome to this crazy world!

「ハァ、なんでこんな任務に就かされちゃったんだろうなぁ・・・」

と先程馬上で愚痴を繰り返しているのは

若い”帝国大使”・・・・とは名ばかりの地方出身の下級貴族の若者であった。

名前もユリウスと普通、そして今手にしている皇帝からの書状も実際にはそこらへんの下級役人が古くて安い適当な羊皮紙にそれっぽく書いただけの粗末な物。

それというのも皇帝が元老院への命令というのが

「かの蛮族どもに適当な額の金と女でも掴ませて懐柔せよ」

というもので方法はというと宰相に投げっぱなし、更にその宰相はその責任を辺境伯に投げるつもりだったのだが主だった辺境伯は先のアルヌスの門への侵攻で自衛隊との戦闘で戦死。

残ったのは更に先の蛮族との戦闘、および帝国全土を荒しまわる戦の後難のアルヌスで雇い主が戦死したため傭兵業を中止して盗賊となって暴れまわる傭兵から領地を守るために手いっぱい。

この未曾有の大混乱の最中でありながらもなおも帝国元老院には徹底抗戦を唱えるもの多し。

彼らの騒乱、かつて帝国が10万の兵を一夜にして失ってもなお

戦争、重税、略奪、飢饉、疫病・・・・

帝国に不幸の影が降りようとしていた。

「ユリウスよ、愚痴を言っても始まらん。今儂等にできることはさっさと親書をその蛮族に渡して帝国の威光を連中に知らしめることにある」

「父上、しかし連中が大人しく従うでしょうか?」

ヒャッハー!な巣窟に向かう二人は道道で帝国と盗賊団とヌカ・レイダーという三重苦によって荒廃し尽くした帝国領を見る羽目になった。

大抵は皆殺しにされたか逃げ出したか、さらわれて奴隷にされたかで無人であった。

どのみち、焦土作戦で食料がないのですぐに無人になるだろう。

「ヒャッハー!奴隷がどんどん増えるぜぇ!総支配人様の言った通りだぜ!」

田畑を荒らされ、食料も無く、金も力も無い農民の流れ行く先は食料のある場所。

それは帝国の食料を集めた都市か総支配人の支配する拠点か。

金があれば(金のある農民なんているのかどうかは別にして)都市で戦争が終わるまで凌げるかもしれない。

力があれば傭兵か山賊としてやっていけるだろう。

だが、金も力も無く故郷を追い出された農民は大抵の場合農奴になるしかない。

「おらぁ農民どもぉ!今日からここがお前らの寝床だぁ!怠けやがったら首がなくなるぞぉ!」

総支配人が作った大きな小屋に押し込まれる新しい農奴。

家族に一軒の木の小屋はウェイストランドでメンドくさがりな総支配人が量産なさったあのタイプである。

更にVaultのベッドは資源が微妙に少なくて済む優れものだった。

とはいえ、寝床と食事と安全と街灯(レイダーの気まぐれで殺されるのは別として)が確保された彼らは殆どのウェイストランド人より恵まれている・・・・・窓?知らない建造物ですね

「ヒャッハー!感謝しろ奴隷どもぉ!総支配人様がソーダマシンを作ってくださったぜぇ!

電球も一軒に2個の大盤振る舞いだぁ!

給料も払ってくださるぜぇ!キャップでだぁ!」

総支配人のグリーンランドを支配する恐ろしい計画とはコーラに隠されているらしいが果たして・・・

 

 

 

ヒャッハー砦へと向かう一見すると・・・・というかかなり普通のこの二人組は帝国の下級貴族のユリウスとブルーノの親子。

皇帝から宰相へ、宰相から元老院へ、元老院の中でも上から下へと仕事がたらい回しにされてこの二人に落ち着くあたりいかにヌカ・レイダーが軽く見られているかがわかる。

 

従うわけがない。

連中を従わせる一番手っ取り早く唯一の方法はベヒモスを素手の一撃で粉砕する世紀末総支配人を一騎打ちで倒すしかない。

やり方は簡単!ガントレットに入って様々なアトラクションでお楽しみください!

最後には当ヌカ・ワールドの総支配人が権力の座をかけてお客様を丁寧におもてなしいたします!なお本アトラクションは一切の安全基準を満たしておりません。

ヌカワールドは焼死、爆殺、刺殺、斬殺、撲殺、放射能汚染、疫病、窒息死、失血死、そのほかアトラクションによる不利益一切の責任を負いません。

 

一方でかつては帝国のそれなりに豊かな土地の村だったのだろう。

今は家の軒先にミートバッグが吊り下げられ、その中身は・・・・・

まぁお察しである。

「このあたりはエモノが多い!ナックルはここが好きになった」

広間の中央でガイコツや肉や死体を散らばせながらスーパーミュータントがアサルトライフルをかざして仲間に演説している。

頭に被ったり、腰に差しているのは殺した騎士から奪った剣や鎧兜だろう。

「「いいぞ、いいぞ」」

広間のミュータントも串に刺した何か不思議な肉にしゃぶりつきながら囃し立てる。

「ここの人間、とても弱い!柔らかい!美味い!連邦よりもずっといい場所!

緑の兄弟はここ支配する!兄弟はたくさん食べてもっと強くなる!

兄弟はもっともっと美味い肉を手にいれる!」

剣で盾を叩いたり、柱に吊り下げたちび人間の鎧を揺すっておもいおもいの方法で囃し立てるスーパーミュータント達。

スーパーミュータント:特地のオーガだと言われればそうかと日本人ならば思うだろう。

FEV(強制進化ウイルス)によって生まれた元は人間のミュータント。

しかしながら連中の恐ろしさは人間と同様に銃火器を使うということにある。

そればかりか銃弾を撃ち込まれても平然としているタフさ、放射能に対する耐性、人間をチーズみたいに割いてしまう怪力などウェイストランドで最も厄介な人類種の敵である。

弱点はこの話し方から分かる通り、バカなことにある。脳筋キャラなのだ。

「でも兄弟、ここの人間、銃持ってない。弾、拾えない」

「安心しろ兄弟、ここの人間弱くて愚か。銃いらない。殴れば簡単に死ぬ」

ミートバッグの一部になってしまった騎士を指差すナックル。

ちょっと変わった逸れオーガかと思って討伐に来たのが運の尽きであった。

「兄弟、ちょっと前 俺たち変なドアからここへ来た。

ここは緑のものがないけど、それ以外はいい場所。ここの兄弟は扉に戻ってもっと兄弟をたくさん連れて来るべき。

兄弟は皆でここをわかちあうべき」

開いた扉が一つだけなんて誰が決めた?

ウェイストランドの恐るべき生物はレイダーだけではない・・・・

「ヒャッハー!ますますいいところになって来たぜぇ!

キャップ!暴力!SEX!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人は・・・過ちを繰り返す

 

「か、壁が崩れたぁ。もう駄目だぁ!」

城壁にレイダーが馬に乗り込みながら投げつけられたのはヌカ・グレネード。

ピカドンという形容にも相応しく凄まじい閃光と凄まじい衝撃は帝国軍の魔道士の攻撃魔法が霞んで見えるほどの威力であった。

空いた壁を塞ごうとした守備兵が殺到するが

「ヒャッハー!火炎瓶を喰らえぇ!」

「ヒャッハー!汚物は消毒だぁー!」

「ヒャッハー!動くものはみんな撃てぇ!」

ヌカ・レイダー達の持つ火炎瓶・グレネード、ライフル、火炎放射器の圧倒的な火力の前にたちまち皆殺しの目にあう。

「ヒャッハー!新鮮な奴隷だぁ!」

「オラァ!女は一人一匹だ!もう持ってる奴は欲張るんじゃねぇぞ!」

 

村人を美女と見れば誘拐し、男なら女レイダーがおもちゃにするか奴隷市場に売り飛ばすレイダー。

ウェイストランド基準では特に美しい女なら食料3ヶ月分の価値がある。

逆に言えば美女でもそれくらいの価値しかないほど荒んだ土地でもある。

地獄そのもののウェイストランドからヒャッハー成分が流れ込んでから3ヶ月。

ヌカ・レイダーはまだ3週間ほどしか経っていないが恐るべき勢いでその勢力を広げていった!

今日もレッド・アイのレイダーラジオからは今日の略奪速報が流れてくる。

レイダーの何人かが左手のpipboy-3000で効率よくキャップを稼ぐジャンクを見繕う。

Pip-boy3000、二百年前に存在したアメリカという国で一般的な携帯ハンドヘルドコンピューター。

この世界の技術力を数千年は先取りした超最先端デバイスが、特地の人間から見ても蛮族としか言いようのないレイダーの手にあるとは皮肉な話だ。

今や多くのレイダーが稼ぐためにScrapperとなった。

 

『よう、馬鹿ども。こちらレッドアイ、レイダーラジオの経営者だ。

今日の、ホットアイテムは・・・オイルだ。

総支配人は今オイルがとーっても必要、何に使うかは・・・わかるなぁ?

ま、言ったところでお前らの脳みそで理解できるたぁ思わねぇけどよ。

それとだ、この前金貨ばっかり送ってきた奴、金はダブってるからあんまいらねぇってよ。

あーそれと相変わらず銅は不足気味だそうだから高値買取が期待できるぜぇ。

このグリーンランドでもっともっとーって気分だろぉ?

ほんじゃ、新作行くぜ こいつはぁ、この前殺した奴に書かせた曲だ。

いや冗談、ちゃんと自分で書いたって。殺したのはホントだけど』

 

 

「ヒャッハー!今降伏すれば奴隷にするだけで済ましてやる!降伏しないなら男は皆殺しの上で!女子供は奴隷として売り飛ばしてやる!」

「だ、誰が貴様ら蛮族どもに降るものか!たとえ、最後の一兵になろうとも誇り高き帝国臣民は貴様らに膝を屈しないのだ!」

既に守備側は多くの兵を失い、城壁を破られもはや最後の本丸しか残っていない。

「ほぉー、面白い奴だな。気に入った、殺すのは最後にしてやる。

ヒャッハー!行けぇお前ら、一番多く殺した奴はヌカ・レイダーとして取り立ててやる!」

「「「「「ヒャッハー!」」」」」

今や傭兵兼山賊はアルヌスの丘で自然失業してしまった分を取り戻すために新しい雇い主を見つけたようだ。

そう、ヌカ・レイダーがこの異世界での新しい雇い主ということのなる。

言葉が通じにくい点はあったがそこはお互いならず者同士。

更に価値観の違いも逆にうまく作用した。

ヌカ・レイダーの価値観はキャップ!暴力!薬!であり襲撃も略奪も虐殺もこれを満たすため。

薬を買うために暴力を振るってキャップ目の物を奪う。

金貨の価値はレイダー的にはオリーブ油よりも低い。

一方で普通の盗賊はというと普通に金貨と女が必要だった。

彼らの中には善良なものもいるにはいる。

そもそも善良なら盗賊にはならないだろと思われるかもしれないが

大抵の場合彼らは農家や貴族の次男坊・三男坊。

資産がないから戦争で一稼ぎして故郷に錦を飾りたいというささやかな望み。

そして、戦争につきものの女性を誘拐しての略奪婚は地球でも同じようなことは古代から現代に至るまで山ほど例がある。

ウェイストランドのレイダーのように今日を最後と思って常に奪い続けなくても良い分健全とも言える。

 

そしてこの指揮官の決断は正しい。

『レイダーには銃で抵抗してもいい、机の下に隠れてもいい。

だが絶対に降伏するな、その白旗で首を絞められるだけだ。

ウェイストランド・サバイバルガイドより』

もっともこの30分後にミサイルの集中砲火で砦は落ち、この街の人間は抵抗するものは貴族も平民も全て殺された。

そのあとはお決まりのレイダー・山賊合同による略奪と暴行という人類史でありふれた光景が繰り返された。

 

 

一方でレイダーの総支配人はこの世界の状況を理解し、支配するための大計画を実行しつつあった。どうやらこの世界に来た異世界人は自分たちだけではないらしい。

手下の山賊によるとアルヌスとかいう土地から湧き出た異世界の侵略者の軍勢によってわずか2かで30万の軍勢が半数まで討ち取られたという。

連中はレイダーをその異世界の侵略者の一部だと思ったらしい。

よくはわからないが攻撃方法から曲射榴弾砲を開発する程度には文明の発達した侵略軍なのだろう。

顔はここの住人とは違って平たい顔だという・・・・東洋人だろうか?まさかレッドチャイニーズなのだろうか?

あの忌々しい共産主義者はこんなところにまで蔓延してまた俺の人生を台無しにしようとしているのだろうか?許さん。レッドチャイニーズ死すべし、慈悲は無い。

常識的に考えれば恐らくは自分と同じく核兵器を保有している可能性が高い。

と、なるとレイダー側もかなり武装強化しなければならないだろう。

具体的にはプラズマ兵器、ガンマ線兵器、核兵器の増産に対空核ミサイル。

新しく手下になった山賊どもには38口径パイプライフルでも配ってやればいい。

連邦ではもっぱらゴキブリやハエ退治くらいにしか使えない38口径でも人間の騎士の鎧を撃ち抜くには十分だった。

最初はたかが38口径で死ぬ人間がいるとは信じられなかったが、実際に捕まえた騎士をパイプライフルで撃つとあっさり死んだ。

明確にわかったことがある、この世界の人間は弱い。

ヌカ・レイダーはおろかそこらへんの普通のレイダーでも10倍の騎士相手に戦えるだろう。

ましてや総支配人はそのレイダーを4桁は転がして来たのだ。

そしてこの世界は美しい、水は汚染されていないし土地も健康そのもの。

手に入れた女たちも実に美しかった。

この世界が欲しい、全部手に入れたい、全部自分の縄張りにしたい。

そう思うのはウェイストランドで過ごしたことがあるものなら当然。

 

だが、せっかく見つけた新しい縄張りを新参者に荒らされるのは気に食わない。

新しく手下にしたグリーンレイダーで頭数を揃えたがレッドベレー出身の総支配人からしてみれば

雑魚ははいくら集めても雑魚。逆に足を引っ張るのでは無いかと思っている。

「で、連中は使えるのか?」

「ふん、グリーンランドの連中はどいつもこいつも腑抜け揃いだ。

銃が無いことを差し引いても俺たちヌカ・レイダーの足元にも及ばん」

「連中の女の扱いは荒すぎる、この前も”市民”から苦情が来ていたぞ」

このような時代、領主の雇った荒くれ傭兵が陥落した町で乱暴狼藉の限りを尽くすのは兵隊の当然の権利だと思われていた。

そんな世界に現れた本物の世紀末総支配人の価値観の違いはあまりにも大きい。

 

グォォォォン!というV8核融合エンジンの音もけたたましく異世界の草原を全身鉄条網とトゲトゲでとガトリング砲で装飾された世紀末トラックが駆け抜ける。

バンパーにはご丁寧に『ヌカ・コーラを讃えよ!』

2台の世紀末バイクと世紀末ロケット69に先導されて今しがた奪った町からのオリーブオイルを戦利品として総支配人の元に届ける途中なのだ。

たかが油、されど油。

油なしでは車も銃も核ミサイルも作れないのだ。

最初はこの世界の新鮮な人間が捨てていた骨を拾って作っていたが、

やがて植物から作った油を奪ったほうが早くて大量に手に入れられるとわかった。

折角の貴重な死体を無駄にするここの連中の贅沢さが理解できなかった。

それだけじゃ無い、綺麗な水も新鮮な野菜も贅沢にある。

今やヌカ・レイダーの一番下っ端でもダイアモンドシティのデブ市長よりキャップ持ちだ。

「ヒャッハー!総支配人様のいった通りだぜ!こんだけありゃぁ、一生遊んで暮らせるぜぇ!

ダイアモンドシティの一等地によぉ、豪邸でも買うかぁ!」

「バカか、周りを見てみろよ。総支配人様はなぁ、ここを征服してここに住むに決まってんだろ」「おい、しっかり荷物を見張ってろよ。総支配人様にお届けする大事な荷物なんだからな。

無くしでもしたらキャップを大損しちまうぜ」

 

「皇帝陛下!いかがなさるおつもりなのですか!

あの蛮族どもはますます調子に乗り、辺境区のみならず帝国の要衝までも!

既に20以上の街が略奪の憂き目に遭っております。農村に至っては全滅したものも多数・・・

このままでは帝都でも来年には飢え死にするものが続出しますぞ!

既に属国の中にはあろうことかあの蛮族どもと独自に交渉しようというものもおる始末・・・」

およそ、一人の騎士を養うには500ヘクタールの土地と作業する農民が必要とされていたという。

帝国はその膨大な軍事力を背景に大陸のほぼ全土をいわゆる天下統一に向けて征服し続けて来た。豊臣秀吉の天下統一の後には諸侯にわけ与える領地不足が朝鮮出兵を促した。

十字軍の動機も増える人口と増えない領地という問題の解決策だった。

帝国の場合は異世界に領土を求めたが、一方は日本

もう一方はおよそまともな生活ができそうに無い・・・というか帝国が天国に見えてくるウェイストランド。

 

連鎖する負の要因によって今や帝国は絶頂期から破滅へとまっしぐらに転がり落ちていくのか・・・



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヌカ・コーラを讃えよ

 

ヌカ・コーラを飲みながら帝国からの特使とやらを砦で迎えた総支配人。

ちょうどいい花崗岩の岩山があったのでワークショップで中身をくり抜き戦術核弾頭程度なら耐える要塞を作り上げて終わったところだった。

バンカーバスターや戦略核弾頭相手には分が悪いが手作りにしてはまぁまぁだろう。

NORADやVaultとまではいかないが最低限の安全は確保できた。

将来的には資源がiBotに調査させた結果、鉱物資源が豊富なエルベ藩王国を本格的拠点にするつもりだ。

ここはいわば

一方でこの要塞に招かれた・・というか殴られ目隠しされ拉致同然に連れてこられた帝国の特使はおっかなびっくりだった。

「き!貴様ら!我々にこんなことをして・・・た、『BANG!』ギャァ!」

足に一発打ち込んで黙らせる実に紳士な我らが総支配人。

黙れ!とか煩い!とか大声を出さないのはさすがは戦前の教育を受け、文明的なインスチチュートの所長でもある。

「ボス、いきなり撃つのはどうかと思うがな」

「ああ、次からは殺してから撃つことにしよう。それで、なんだって?従えって?冗談だろ

これを考えた奴は馬鹿なのか?それとも、とんでもない馬鹿なのか?」

無論、ここまでの会話は全て英語であるので特使にはわからない。

もっとも、足を撃ち抜かれて痛みに悶えて聞いている場合ではないが。

『戻ってお前達のボスに伝えろ。糞食らえだとな』

這うように逃げ出す二人だった。

 

「この世界の人間はみんなあんな感じなのか?随分変わった別れかただな」

チタデルの総支配人室で集まってきたジャンク品を確かめながら確認する。

プラスチック、電子回路が手に入らないのは痛かったが工場で生産すれば補える。

奴隷に関していえば、実に効率的な運用方法を見つけた。

今日も今日とて砦の下に集まる奴隷に向かってマイクから声をかけてやる。

 

この砦の下にいる者だけでも数千はいるだろう、荒れ果てた帝国から水と食料を求めてやってきた憐れな民衆。

岩肌を削って作られたのは巨大なシンボル。

特徴的なヌカ・コーラのロケットボトルを模したそれは遠目からにもはっきりと見える。

外では奴隷が騒がしくしている、尤もマグスはそんなことは気にしない。

マグス・ブラック、オペレーターの首領でありボスの右腕。

レイダーにしては小綺麗なスーツ姿が映える、今の状況を見て口角をわずかにあげ嘲るように民衆を見下す。

総支配人がエレベーターを作動させ、発電機が吼える。

モーターが唸りを上げ、エレベーターが姿を現しその上に載せられた超大型輸送車両が民衆の前に姿を表す。

フォルド・コンボイ V8核融合エンジンが生み出す圧倒的なパワーでかつてアメリカという国の物流を担っていたワークホース。

今の呼び方はこうだ、ヌカ・コンボイ1。

ヌカ・ワールドの工場からかつては連邦のありとあらゆるところにヌカ・コーラを運んでいたのだろう。

トレーターに描かれたヌカ・ガールの笑顔が民衆に微笑みかけるが同じくらい美人と評判のマグスは全く微笑まない。

「俺たちはオペレーターズ!」

『オペレーターズ!』

 

「俺たちは強い!」

『オペレーターズ!』

 

「俺たちは総支配人の欲する物を手に入れ、キャップを手に入れる!」

『オペレーターズ!』

 

掛け声とともにトレーラーヘッドがバックし、輸送車両と連結する。

 

「連結完了!出撃準備よし!」

 

ヌカ・コンボイ1のマグスは助手席に座ると運転席の部下にエンジンを掛けさせる。

グォォォォと地獄の獣のようにV8が唸る。

銃、ミサイルを装備したオペレーターズがヌカ・コンボイ1に無理やり溶接された銃座につく。

運転席の横を護衛のバイクが通り過ぎる、サイドカーに備えられた機関銃が前を睨み奴隷を車線から遠ざける。

 

「俺たちはイタリカの町に向かう!」

『イタリカァ!』

 

「コーラもたっぷり用意したぁ!」

『ヌカ・コーラァ!』

 

「武器も食料もたっぷりある!」

『作物に7.62mm!』

 

「巨人も二人用意した!」

『パワーアーマー!』

 

掛け声は支配人がいた軍隊とかいう組織でもあったらしい。

出撃前の恒例行事みたいなものだ。

一定のリズムで行われる掛け声はレイダー達の士気向上につながる。

整備兵と運転を任されたドライバーが最終点検を済ませる。

連邦で拾ってきた車は程度のいいものを見繕ってきたとはいえ二百年もの。

総支配人の手腕がなければゴミだったろう。

「バカバカしい、さっさと金稼ぎに行かせろよ」

マグスはこの儀式に不満があるようだ。

ドライバーがアクセルを軽く踏み、V8が吼える。

振動が周囲の空気を震わせ、今にも飛び出しそうな雰囲気を出す。

 

 

そして砦のバルコニーにヌカ塗装のT-51に身を包んだ総支配人が姿を表す。

カッと砦の周囲に配備されたスポットライトが彼を照らし、彼の存在をそれ以上に大きく見せる。

奴隷達から歓声が上がる。

「総支配人様ぁ、お恵みを!」

「総支配人!総支配人!」

「総支配人を!ヌカ・コーラを讃えよ!」

「ヌカ!ヌカ!ヌカ総支配人!」

「ヌカ!ヌカ!ヌカ総支配人!」

歓声は奴隷だけでなく市民と認められたもの達にも広がる。

ヌカ・ワールドは徹底的な実力主義、才能があればグリーンランド人でもレイダーに昇格できる。

 

「皆の者ォ、不死身の総支配人様がお見えになられた!総支配人を!ヌカ・コーラを称えよォォ!!」

 

ヌカ・ワールドの総支配人にして神格的象徴。

 

「我々は、ヌカ・コンボイを走らせイタリカの町に向かう!

そしてそこを征服し、従属せしめ我らの新しい拠点にする!

より多くの食料とヌカ・コーラの材料のために!

そしてこの重要な任務を任せるのは、我らが栄光あるレイダー軍団のコマンダー

マグス・ブラック!」

 

「ヌカ・コーラを讃えよ!」

『ヌカ・コーラ!ヌカ・コーラ!ヌカ・コーラ!』

総支配人の演説が岩肌に反響する。

奴隷もレイダーも全員、親指を立てた右手の甲と左手の平を合わせてヌカ・コーラのボトルを形作る。

パワーアーマも器用に合わせ総支配人に忠誠を誓う。

 

これが総支配人の教える教義、英雄の魂は至上のヌカ・コーラ クアンタムの流れる天国へと導かれる。

それは高濃度放射性汚染物質ではないかというツッコミは知らん。

 

「見捨てられた憐れで惨めなもの達よ、私の元に来なさい。

私は日々のささやかな労働と引き換えにキャップを

キャップと引き換えに蛇口からヌカ・コーラを飲ませる」

 

更に総支配人は立って、大声で言われた。

 

『だれでも渇いているなら、わたしのもとにキャップを持って来て買いなさい。

わたしを信じる者は、ジョン・ケイレブ・ブラッドバートンが言っているとおりに、

その人の心の奥底から、生けるヌカ・コーラの川が流れ出るようになる。』

これは、総支配人を信じるレイダーが後になってからヌカ工場を征服したことを言われたのである。」

 

そう言うと奴隷達はさっきの熱狂が嘘のように静まる。

「くるぞ、くるぞ」

「もうすぐよ、もうすぐ飲めるのね」

 

「ヒャッハー!奴隷どもにヌカ・コーラの配給だぜぇ!

総支配人様に感謝しなぁ!」

レイダーが砦の上からヌカ・コーラが詰まったコンテナを下ろす。

 

民衆がウオォォォと獣のような唸り声をあげて降ろされたヌカ・コーラのコンテナに殺到する。

近づきすぎて降りてきたコンテナに潰されたり、他人に踏み潰されるのもお構いなし。

コーラのボトルを奪い合い、殴り合う奴隷達。

「ヌカコーラが必要だ、飲ませろ」と取り合いが始まり、悲鳴絶叫が飛び交う。

それを上から眺める総支配人は嘲るような笑いをヘルメットの下で浮かべる。

 

「よく聞け、ヌカ・コーラに心を奪われてはいけない。禁断症状で生ける屍になってしまうぞ」

総支配人は奴隷達に忠告してやる。

それでも民衆は奪い合いをやめない。

ウェイストランドでは特に珍しい現象ではないが。

 

砦のブラストドアの奥に総支配人が消えても民衆の諍いの声は絶えなかった。

ヌカ・コンボイ1が出発し略奪に向かう。

一方でエレベーターが上がり始める

 

「頼む!俺もレイダーにしてくれ!」

「見て!この娘は美人よ!総支配人様のお目にきっとかなうわ!」

哀れな人々はエレベーター係のレイダーにお願いする。

総支配人が必要とする者はレイダーか美しい娘。

お目に叶えば、食料も電気も綺麗な水も整った砦で暮らせるのだ。

レイダーが差し出された娘を見る、若く美しい女の子だ。

母親はせめて娘だけでもと彼女を差し出したのだろう。

今度はウォーリアバニーの少女、だが総支配人は人種の違いなぞ気にしない。

「よぉし、お前は来い!他はだめだ!」

少女の腕を掴み、エレベータを上げさせる。

多くのものが上がろうとするが許可なく乗ろうとしたものは突き落とされる。

 

空調の整った総支配人室では総支配人が新しい世界の地図を見ながら今後の計画を練っていた。

レイダー・帝国・謎の軍隊・・・この世界は謎が多いがどこの世界でもやることは変わらない。

人種にしてもエルフ・ダークエルフ・獣と人間の合いの子っぽい亜人種各種は人間と交配することが可能だということは既に確認してある。

ウェイストランドに比べれば遥かに健全だろう、いろんな意味で。

産ませた子供は立派に人類を導くものとして教育してやろう。

実際問題、この世界の人間の科学知識は刀剣が主力の時点でお察し。

インスの科学者は引きこもりでフィールドワークはしやしない。

レイダー?凄い(棒読み)

ならもう自分の血族で固めるしかないではないか。

ショーン?いやあの子は人造人間だし。

インスティチュートはその性質上、血縁採用が多いので総支配人は子沢山でもある必要がある。

この地に新インスティチュートを築くにあたってはとりあえずロボット部門、バイオサイエンス部門、SRB、先進テクノロジー部門にレイダー部門に兵器開発部門にそれぞれ所長、副所長に母親違いでも18人は必要だと思う。

「さて、そろそろ完成だな」

「しかし、あんたも器用なもんだな。こっちにきてからまだ3週間だってのに要塞の片手間にこんなもんを作り上げるとは

総支配人がDIYしちゃったものとは何か・・・

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集いし獣達

 

「どういうことだい、もう始まってるじゃないか。あの連中はなんだい」

イタリカの街の郊外で先遣偵察にでたマグスは木の上からリコン・スコープを覗いてイタリカの守備隊と盗賊団の戦いを見ていた。

ここからは大分距離があるが、かなりの規模の山賊と街の守備兵が壁を巡って激突しているところが見える。

自衛隊が到着する前、東門での戦いを遠目に観察しているが山賊が場慣れしているのに対して守備側はいかにもど素人臭い動きが拭えなかった。

総支配人の分析通り、例の戦争とやらで守備兵の質も量も不足しているようだ。

「どうやら、野生のレイダー連中とあの街の連中が揉めてるみたいですね。

しかし連中、ウォールは立派だが手並みは貧相だ。」

「ふぅん・・・・それなら双方のお手並みを拝見といこうじゃないか。どっちみち本隊の到着を待つつもりなんだからね」

手に7.62mmアサシンライフルを持ち、サプレッサーを装着する。

オペレーターズが得意とするのはそもそも遠距離からの確実な狙撃戦。

この世界の連中が勝手に殺しあってくれるなら弾薬の節約にもなる。

ライフル弾だってタダじゃない、収支決算を黒字にするには節約に気を配らないと。

ライフルのリコンスコープを覗き、距離、風向を計算。

壁の上で指揮を取る騎士に狙いをつける。

長いレイダー生活からそれが若く、美しい少女だが高価な鎧、周りの反応から指揮官だということがわかる。

はっきり言って、素人より少し増し程度の子供がそんなところにいるかはわからないが仕事は仕事だ。

「バン!・・・ま、せいぜいレイダーを減らしてくれよ」

もしもこの時、マグスが狙撃していればピニャは脳天を撃ち抜かれていたろう。

7.62mmアサシンハンドメイドライフル、ショーンの武器ショップにマグスが依頼した特注品の銃。

人間相手の戦闘が殆どのレイダーにとってどれほど強力な武器かは言うまでもない。

彼女がなぜ撃たなかったのか、この時には守備側の敗北を見越していた。

やがてレイダー連中は退却していった。

「ふぅん、あのレイダー連中の威力偵察も終わったみたいだね。

まぁいいさ、もともとこっちは夜襲のつもりだったしね」

オペレーターズが得意とするのは狙撃に夜襲。

加えて夜間戦闘用に総支配人に狙撃兵用にはリコン・スコープを作らせた。

10人ほどの前衛が派手に撃って敵を引きつけたところを側面か背後から別の10人の狙撃兵が確実に片付ける。

この街はダイアモンドシティよりもでかいが、片付けるのにそんなに時間はかからないだろう。

5000人規模の街を30人で陥とす。

住民の全員が兵士ではないといえ、圧倒的な数の差がある。

無茶な話に聞こえるがその程度のことは難なくやって見せるのがヌカ・レイダーだと言えばその強さがわかるだろう。

加えてこちらにはT-60PAもあるのだ、負けるはずがない。

パワーアーマーで壁の上に跳んで、動くやつは皆殺しにする。

簡単な作業だ。

パワーアーマー、かつての最終戦争における米軍の決戦兵器。

素手で戦車の装甲を引きちぎり、銃砲弾の飽和攻撃にも耐える。

撃破するには戦車の徹甲弾か核弾頭の直撃しかないレイダーにとっては究極兵器。

この世界の人間も白兵戦ではそれなりの力があるが、核融合バッテリーで動くパワーアーマーの前では濡れた新聞紙みたいに引き裂かれてしまう。

 

「手持ちのステルスボーイの機能をチェックさせな!双方の殺し合いが最高に達したら横合いから殴りつけるよ!それまで交代で見張りを立てて休憩しな」

 

そう・・・・彼ら精強なる自衛隊の出現によって彼らの計画も狂わされるのだ。

 

「ボス!車両が街に近づいてます!」

 

そう見張りに言われて起こされると見たことのない車が街の門に近づいていたところだった。

 

「??あれがこの世界の連中の言ってた侵略軍ってやつか?

音が違う・・・内燃機関。幌タイプに装甲タイプの2種類。

武器は・・・・ライフルに機関銃、ロケットもか?

あの連中は車両を新造できるくらい復興したのか?」

 

「核融合じゃない?例のガソリンってやつを燃料に動く車ですか?

まさか・・・・総支配人の言ってたレッドチャイニーズって連中ですかね

例の昔、爆弾を落としたクソ野郎ども」

 

「クソ野郎でも、だとしたらお宝さ。

至急、砦に連絡。

レッドチャイニーズらしき連中を見つけたってね。

総支配人は侵略軍の生きた指揮官には10000キャップ払うって言ってるんだから」

 

「了解!」

レイダーの兵隊がビークルに走って無線機を使う。

『侵略軍の軍隊?将校付き?偵察チームか・・・・アルヌスでは16万人も虐殺したらしいからな、相当凶暴な連中だ。

無理な交戦はしなくていいができるなら生け捕りにしろ、無理なら脳みそだけでも持って帰れ』

 

「階級章・・・あいつが指揮官か?間抜けヅラだね・・・・門に倒された。

やれやれ本当にあんな間抜けに10000キャップの価値があるのかね?」

この時点では知るはずもないが伊丹耀司も自分の身に1万キャップの懸賞金をかけられるとは思ってもいなかったろう。

瓶の蓋1万個、高いか安いかはあなたの判断次第である。

 

この時点で総支配人が知っていることは

アルヌスで異世界の軍隊が30万の連合軍のうち16万人を殺した。

アルヌスに砦を築いている。

 

後はよくわからない。

これだけ聞くと、大量虐殺を行う軍隊が侵略準備を進めているとしか思えない。

ウェイストランドではよくあることだし、この世界でもよくあることだ。

 

「将校は捕らえろ、それ以外の動く者は殺せ」

「だけど、女どもは?レアものだらけだ、殺したら高く売れない。

あの将校の首だけ持って帰って空いたスペースには女と品物を詰めよう」

エルフのティカ、ゴスロリのロウリィ、幼いレレイ、栗林に黒川は特徴からなかなかいないレアもの扱いで高価な奴隷の評価をつけられる。

恐ろしい話をしているがウェイストランドではよくある事。

「欲しければ勝手にしな。だが狙いは生きた将校だ、私はおセンチな総支配人の仲良し家族計画を手伝う気は無い」

 

一方、イタリカの街の血と狂乱に連れられ連中が近くまで来ていた事にはさすがのレイダー連中も気づかない。

「静かに!人間、戦争してる。兄弟は馬鹿な人間が人間殺してる隙に街に近づく!

兄弟は人間全部殺す!あの街、兄弟の物になる!」

 

「「「「ウオォー!」」」」

 

「静かに!人間気づく!」

狂乱の声を上げるスーパーミュータント達。

口輪をしているミュータントハウンドも体を揺らし、狩の時間が来たことを悟る。

イタリカの街の血の匂いに惹かれてこの獣達もやって来た。

帝国軍+自衛隊VS盗賊VSレイダーVSスーパーミュータント

地獄の門が今、開かれようとしていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

血戦!イタリカ 前編

 

都市イタリカは、そこそこ大きい地方都市といった位置づけだ。この街を治めるフォルマル伯爵家では、幼い当主が後を継いだばかりという事情もあった。

 

 イタリカへ続く道の至る所には、破壊された家屋や倉庫が放置されている。

家財道具が一部残されたままになっているのは、持ち出せるほどの余裕が無かったからなのだろう。

 

 農村地帯はほぼ廃墟と化しており、畑からは多数の黒煙が揺らめき、完全に焼け野原へと変貌していた。

これでもウェイストランドに比べれば遥かに豊かな食料が歩いている。

新鮮なお肉はいつの時代も尽きることがな。

イタリカは豊かな穀倉地帯、それはもはや昔の話。

原因は主に4つ

帝国による焦土作戦、盗賊の跳梁跋扈、時も所も選ばず襲ってくるレイダー、スーパーミュータントによる人間狩り。

道端に点々と散らばるのは道中で力尽きた農民だろう。

狼やカラスについばまれ無残な尸を晒している。

ある意味、ここが戦場となったのは当然かもしれない。

もはや農村には奪うものがない盗賊、略奪をイナゴのように繰り返すレイダー、農村を文字通り食い尽くしたスーパーミュータント。

今の帝国は自分の身を食いながら穴にこもって命を繋ぐタコに似ている。

補給を略奪に頼る前近代までの敵になら効果的だったろう。

だが、待っていたものはレイダーという鋼鉄の歯を持つウツボ。

包囲され兵糧攻めにあうのは今や帝国の方だった。

帝国が滅びるのが先か、レイダーが奪いつくすのが先か。

そしてイタリカの街、いまここに人々が平凡な生活を送っていた兆しはもはやない。

市内の各所が燃え、血と炎の匂いで何処もむせ返る。

戦場という表現すら生易しい、地獄だ。

話は伊丹達の自衛隊が南門の防御を受け持ったところまで戻る。

盗賊達はアルヌスの丘で帝国・連合王国を一方的に打ち破った自衛隊を避け東門へと兵力を集中した。

「思った通りだな、南門を避けて東に兵力を集中か。

盗賊の指揮官にしてはなかなかやるなぁ」

ロウリィが東門に向かっていくのを見ると、伊丹は南門の守備を放棄し、東門に向かうように命令した。

その時だった、突然闇夜の中から巨大なホーンが響き渡る。

「な、なんだぁ!?」

その瞬間、PAM!PAM!という音とともに前面に立てて矢玉よけに使っていた軽装甲機動車に鋭い銃弾の当たる音がする。

「ふ!伏せろ!」

日頃の訓練の賜物ゆえ、とっさに伏せた自衛隊の面々だったが銃弾は絶え間なく降り注ぎ掘った塹壕から身を乗り出すこともできない。

「た、隊長!どうなってんです!この世界の軍隊は銃なんか持ってないんでしょう!」

装甲車のMINIMI機銃を撃ちながら倉田が叫ぶ。

だがここで不幸が起こる。閃光をあげ、機関銃を撃つ倉田は確かに弓矢相手ならば圧倒的に有利だったろう。

だが同時に銃による殺人が日常茶飯事のウェイストランド人にとっては撃ってくださいと言わんばかりだ。

「見えた、装填よし・・・ロックオン」

 

伊丹は森の切れ目に炎が迸ったのを見た、そして瞬時にありえないと思いつつも体を銃弾の雨に倉田を機銃座から引きおろす。

「ミサイル!ミサイルだ!」

装甲車めがけてまっすぐに飛んできたミサイルはそのまま全部の装甲を貫き熱いエンジンに直撃する。

爆風の熱と衝撃が塹壕の中の伊丹にも襲いかかる。

「た、隊長!大丈夫ですか!?黒川、負傷者を」

桑原曹長が援護射撃をしながら伊丹と倉田の負傷を衛生の黒川に見させる。「いや、大丈夫だ!それよりアルヌス駐屯地に緊急の連絡!敵勢力は誘導弾を所持している!ヘリが知らずに来たら危険だ」

伊丹は運が良い。防弾着のプレートの上に爆発した車両の破片が突き刺さっていたが、より爆発に近かった倉田はそこまで運が良くなかった。

「倉田!おい、しっかりしろ!」

倉田の太ももには破片が突き刺さり、激しく出血していた。

「まずい、動脈を傷つけたかも・・・すぐに近くの建物に避難を!」

黒川と栗林が倉田を引きずって南門の近くの衛兵詰め所に引きずる。

その間にも南門に対する射撃は続いていた。

 

『撃ち方やめ、隠れやがった。BoSほどじゃないが、いい反応だ』

オペレーターズの分隊指揮官は部下に射撃をやめさせる。

 

一方で北側では。

イタリカの北側には門が無い、故に置かれている兵は他に比べ少ない。

「おい、東門じゃ相当派手にやってるみたいだな。

北側には異常はないか?」

が、その瞬間闇夜から銃弾が飛来し、見張りの二人の兵士をことごとく撃ち殺す。

パワーアーマーがジェットパックを吹かして壁の上にたどり着く。

ズシンという重々しい着地音とともに鋼鉄の死神がイタリカの壁の上に姿を現した。

T-60F、最終戦争で使用された鋼鉄の死神は世界も超えて未だに健在。

「よし、壁のはパワーアーマーが抑えた!

上がってこい!」

通常、このように高い壁を越えるには巨大な攻城梯子や櫓を必要とする。

が、そのようなものは重く、大きく取り付くまでに時間がかかる。

それが常識だった・・・・今までは

森の中から獣の唸り声が響く。

V8エンジンを轟かせて巨大なトラックが姿を現した。

その上に並んでいる鉄棒の上に乗っているのはレイダー達。

10m以上もの長さの棒に足を乗せてトレーラーの左右に身を振り子のように振るのは命知らずとしか言いようがない。

「ビビるんじゃねぇ!こんなもん、ヌカ・ワールドのアトラクションみてぇなもんだ!」

「どうせ死ぬなら、思いっきり銃弾を浴びて派手に散ろうぜ!」

「ヒャッハー!飛びうつれぇ!」

城壁に身を寄せると次々と振り子棒からレイダー達が城壁の上に飛び移って来た。

今、北の城壁はあまりにも呆気なく陥落した。

少数の守備兵が向かったが瞬時に射殺されその死体を街に散らばらせる結果となった。

だが、今この瞬間にも西門でも災難が迫っていた。

その日、西の門を守る民兵の青年は不退転の決意を持っていた。

愛する家族と婚約を控えた恋人達を守るために手に持った弓を城壁下に油断なく向ける。

東門に盗賊が攻撃を集中している今でも西の警備をおろそかにするわけにはいかない。

その時、闇夜の中から奇妙な音が聞こえて来た

目をこらすと「ピッピッ」という音を出すものを持った緑色のオーガが走ってくる。「て、敵だ!怪異だぁ!」

西門を守っていた兵士たちはオーガの恐ろしさを知っている。

盗賊団がオーガを飼っているとは知らなかったが、その怪力は白兵戦では圧倒的な武器になる。

「オーガを城壁に取り付かせるな!」

「矢を射かけよ!」

だが、オーガは矢が命中するのにも関わらずまっしぐらに走ってくる。

「バカなやつめ!いくら怪力でも城壁を崩せはしない!」

オーガが右手に持つ奇妙な玉のようなものを城壁に叩きつけると西門を守っていた守備兵五十人ほどは一瞬で光に包まれた。

ピカドン!という轟音と閃光はイタリカ全体に伝わり、ピニャは何が起きたのかと伝令を走らせることになる。

 

スーパーミュータントスーサイダーが西門を自らの肉体もろとも破壊したのを見て残りのミュータントは武器を叩いて囃し立てる。

『兄弟!よく死んだ!』

『突っ込め!この街はもう俺たちのものだ!』

北からレイダー西からスーパーミュータント、頼みの自衛隊は南門で負傷者を出し制圧射撃の前に動けない。

今、ピニャ皇女の人生で最大の危機が訪れようとしていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

血戦 イタリカ! 中編

えーそれではみなさま、お手持ちのヌカ・ワールドツアーのしおり5P
『イタリカ大爆発!
ぶっちぎりバトルレイダーズ!!』の章をご覧ください。


スーパーミュータントスーサイダーが西門を自らの肉体もろとも破壊したのを見て残りのミュータントは武器を叩いて囃し立てる。

『兄弟!よく死んだ!』

『突っ込め!この街はもう俺たちのものだ!』

北からレイダー西からスーパーミュータント、頼みの自衛隊は南門で負傷者を出し制圧射撃の前に動けない。

今、ピニャ皇女の人生で最大の危機が訪れようとしていた。

 

今もまた目の前の若い兵士が悪夢から飛び出して来たような巨大な犬の化け物に食い殺された。

『人間、いっぱい!うまそう!』

『いたぞ!柔らかそうなメスだぁ!』

『そのメスは俺が食うんだぁ!』

『独り占めよくない!兄弟は分かち合う!俺、足がいい!』

なぜかスーパーミュータントからモテモテなピニャ皇女。

無論、捕まれば文字通り食べられてしまう。

「姫様!お逃げください!こやつら怪異の癖に!

ハミルトン!姫様を安全な場所に!」

ノーマとグレイが剣を振るい、必死にスーパーミュータントに立ち向かう。

『不味そうな人間!死ね!』

ノーマもグレイもこの世界での人間の強さの格からいえば騎士でありかなり上の方にある。

だが、それはあくまでも人間であって生体パワーアーマーとも言えるスーパーミュータントと白兵戦で戦えるものではない。

「行け!ハミルトン!姫様を連れて最後の防衛拠点まで!」

状況は最悪だった。本来ならば第一線が敵を引き受けたところに第2線の部隊が突出した敵を半包囲し叩くという戦術は幾つもの不確定要素に崩れた。

盗賊団の士気が異様に高かったことが作戦を崩壊させた、遮二無二攻め立てる盗賊達の勢いに負けてしまい一気に第2線まで押し込まれてしまった。

そして背後の西門が崩れ去ったという知らせ、兵達に悪い知らせを知られまいとしても伝令の様子とあの大音響と閃光では誰もが状況を悟るのに時間はかからなかった。

結果、民兵達の士気は崩壊し戦線も総崩れとなった。

「ヒャハハァ!イタリカの街はもう俺たちのものだぁ!」

「殺せぇ!奪え!焼いちまえ!」

この盗賊は報復を求めていた、アルヌスの丘では自衛隊相手には一矢も報いることができずに近代兵器の前に一方的に屠殺される豚みたいに

しかし ピニャは走った!死んでいったもの達のためにも指揮官が死ぬわけにはいかない!目には涙が溢れ、死んでいった民兵たちに詫びる。

『人間死ねぇ!お前たち人間が俺たちを作った!お前らの傲慢さの報いを受けろ!』

「くそっ!アグリーどもがいるなんて聞いてねぇぜ!撃て!撃ちまくれ!動くものはみんな撃て!

野郎!どたまねじ切っておもちゃにしてやるぜぇ!」

逃げ惑うイタリカ市民にそれを守ろうとした民兵、どさくさ紛れに市内で略奪する盗賊団。

動くものは皆標的だ!

「クソォ!なんで異世界の軍隊がこんなところにまで!かまうことはねぇ!こうなったら自棄だ!金目のものは早いもんがちだぁ!」

街のいたるところで激しい銃撃戦!放火!核爆発!略奪!強姦!の地獄絵図が展開される

街の裕福な商人の店だったろう商館は、今や双方が投げつけるグレネードや火炎瓶で激しく炎上し見る影も無い。

「ドケェ!くたばリヤがれレェ!」

怒り狂ったレイダーの一人がヌカ・ランチャーを構え、ヤケクソで核弾頭をイタリカの街に適当に狙いをつけて叩き込む。

老いも若きも男も女もまとめて建物ごと核の光で蒸発する。

「死ね!人間!」

負けじとミュータントもロケットや5.56mmを動くものにはなんでも撃ち込む。

イタリカの市民も略奪に来た盗賊達も関係なくレイダーのあるいはミュータントの銃弾の餌食になっていく。

もうこうなったらレイダーもミュータントも理性をなくし・・・・・元々そんなに無いが

イタリカのありとあらゆる動くものを殺戮するだけの殺人マシーンと化した!

『『『『『『『『『『ヒャッハー!』』』』』』』』』』

なぜかわからないが無駄にテンションが高くなったレイダー達は

「汚物は消毒だぁー!」と叫びながら誰彼構わず火炎放射器を吹きかけて回ったせいで街中が松明で人をつけるよりも遥かに早く火の海になっている。

「ひゃっははははぁ!最高だぜ!熱くて!痛くて!これぞ生きてるって証明ダロォ!ヒャッハー!」

「人間はそんなになってなぜ戦う!さっさと死ね!」

阿鼻叫喚の地獄絵図だがウェイストランドではごく当たり前の日常でしかない。

「テメェ!邪魔するか異世界の侵略者野郎!」

ある銀行内では盗賊とレイダーが略奪するものを巡って血みどろの白兵戦を展開していた。

火炎瓶を、グレネードを、剣を、リッパーをスーパースレッジを、槍を振るい。

美しい装飾の施された壁も豪華な絨毯も血と臓物が撒き散らされる羽目になった。

道端にはありとあらゆる階層のイタリカ市民だったものが転がっている、今はもう新鮮な死肉だ。なんということでしょう、美しかったイタリカの街があっという間にまるでウェイストランドの普通の街になってしまいました。

東門の部隊が敗走し戦線崩壊の後に、ピニャ達は手勢の退却を命じ市内の堅固な館であるフォルマル邸で最後の一戦を挑むべく後退して来た。

民兵は突破、分断されバラバラに敗走。

今や市内で無分別に戦うものもいるが全滅するのは時間の問題だろう。

 

一方で自衛隊部隊は何をしていたのか?

倉田3等陸曹が負傷してからの伊丹二尉の判断は素早かった

まず敵に遠距離攻撃が可能な武器を持つものがいることを判断したのちは一度は要請したアルヌス駐屯地にその危険を警告しようとした。

だがタイミングが悪く、すでにヘリがスピーカを搭載して出撃。

更に最も重要で高価な無線機が軽装甲機動車もろとも破壊されたことによって通信途絶という状態に陥ってしまった。

ヘリが通信圏内に来れば通信できるが・・・・

(俺の判断ミスだ、特地の武装勢力の武装は脅威では無いなんて勝手に判断したために!)

倉田の容体は安定してはいるが出血多量により、輸血なしでは危険だという報告を受けた。

更にそこに続く東門の陥落、西門の崩壊、北側からは新たな盗賊団の侵入という報告は皮肉なことに、制圧射撃の元にある南門が最も比較的安全という状態を生み出してしまっている。

今、伊丹の元に届く報告は錯綜するか元々帝国からは信頼されていない自衛隊のために途切れ途切れのもの。

今ならイタリカ市民を見捨てて南門から強行突破すれば射撃を受けかなりの損害は出るだろうがつつも自衛隊は脱出できるだろう。

今、最終防衛拠点のフォルマル邸に向かえば、帝国軍とともに玉砕エンディングだろう。

指揮官として考えればどうすべきかは考えるまでも無い。

「みな、聞いてくれ。俺たちはこれからフォルマル邸で帝国軍と合流し抵抗線を構築する。

壁は突破されたが持ちこたえれば、ヘリ部隊の火力で敵を一掃することが可能なはずだ。

危険な状況だということはわかっているが、ここが敵の射撃を受けている以上装甲の無い高機での突破は難しい」

言い訳だ、壁があっさり突破されてしまった以上それなりに頑丈とはいえ邸宅が城壁より持ちこたえられるとはとても思えない。

ましてや戦闘において有利な機関銃と軽装甲車も喪失した今の火力では刀槍弓の特地の武装勢力相手でもそんなには持ちこたえられないだろう。

それでも、伊丹は自衛隊員としての誇りを持って市民をできるだけ守る選択をした。

 

一方で我らが総支配人は…

「ボス、連絡が入った。オペレーターズが街で予想外の連中と交戦中。

負傷者が出ている上にこのままじゃ街が焼け落ちちまいそうだ。

新しい拠点にするつもりならちょっとまずいんじゃ無いか?」

 

新しいウォーリアバニーの少女とベッドで楽しんでいた総支配人は不機嫌そうな表情で無線機をとった。

「マグスか?なんだって?やれやれ、また問題発生か?総支配人の仕事はいつからワールドの何でも屋になったんだ?」

『冗談じゃないよ!この種馬!これじゃとんだ大赤字だ。これ以上揉め事が続くってんならうちは今回の一件は降りるよ!新しい小娘と乳繰り合ってないで後は自分でなんとかしな!』

「わかった・・・わかったよ。すぐにそっちに行く。

ゲイジ、ペルチバードを用意させてくれ。ほら、ドッグミートおいで」

かくして3週間ぶりにこの世界で戦うことになった総支配人。

身にはクアンタムカラーのX-01を纏いレーザーガトリングとロケットランチャーで武装したその姿は相対するものをことごとく絶望の淵に叩き込んできた連邦の死神に他ならない。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

血戦! イタリカ 後編

なお、総支配人的ヌカ・ワールドでのヒエラルキーは

犬=DIYロボット>(超えられない壁)>>>>>>亜人=レイダーである

 

イタリカは戦場と化していた、だがこの世界の戦場ではない。

ある意味では伊丹たちの地球の戦場に近かった。

三つ巴どころか四つ巴の激しい戦闘など滅多にないだろうが、ウェイストランドではありふれたことだ。

負傷した倉田を高機に載せ、フォルマル邸へと到着した伊丹たちは邸宅前の広場、大通りに面した有利な場所に残っていた機関銃を据え付ける作業に移る。

「機関銃この位置、射線前方の交叉路」

遠くからは激しい銃声、爆発音と悲鳴が聞こえてくるが段々近づいてくるのがわかる。

「隊長、こちらの方の機関銃は設置完了!いつでも交戦可能です!」

桑原曹長が5.56mmMINIMI機関銃を邸宅の屋上に据え付ける。

高所からの銃撃がどれだけ有利かは言うまでもない。

111だったらチャチャッと自動ガトリング砲台を1ダースほど作って据え付けてしまうのだろうが。

今も大閃光が邸宅の北のほうでドォン!という爆発音とともに上がる。

邸宅の一階部分は既にフォルマル邸の手伝いによってそこらじゅうからかき集めた材木や家具でバリケードが築かれているがあんな凄まじい爆発物を使われたらと思うとゾッとする。

「隊長、いつから俺たちは剣と魔法のファンタジー世界から戦争映画に紛れ込んじまったんですかね?」

双眼鏡で炎上するイタリカの街を監視しながら富田が呟くが、伊丹にだってそんな事はわからない。

フォルマル邸の中も屋上も今や、敗走してきた帝国軍の敗残兵や民兵の残りが集結し防御を固めている。

レレイが通訳して言うには緑色のオーガや、別の盗賊団が襲ってきたと言う。

唯一の救いはそれぞれが敵対しているのかイタリカの街でそれぞれ勝手に戦闘を繰り広げているのでこっちに連携して向かってきているのではないと言うことか。

もしも同時攻撃されていたら・・・と思うとゾッとする。

間違いなくフォルマル邸は30分と持たずに陥落し、この世界の常識どおり男は皆殺し、女は辱められたろう。

フォルマル家のメイド達もそこのところは覚悟しているのか手にはナイフを持ち、万が一賊が侵入して来た時にはせめて一人でも多く道連れにしてやろうと言う気迫を目に宿らせていた。

伊丹は手に持った64式小銃の安全装置を外し、いつでも撃てる体勢を取る。

20発の弾倉が予備も含めて8個で180発。

銃を持ち、防弾衣を着ていても剣も槍も矢も同じ人間を殺すには充分すぎる武器になる。

日本人は甘く見ていたのか、銃が無い、内燃機関が無い彼ら特地の人間相手に戦うのは簡単だと。尤も騒乱の原因はやはりこの世界の人間では無いので今更嘆いてもどうしようもないのだが。

 

「ハイヤァァァ!」

一気呵成にそのハルバートを振って振り落とされた巨大な槌ごと巨漢の腕を切り落とすのはロウリィ聖下。

東門の戦闘に参加すべく突っ込んでいったノリノリな彼女であるが東門の戦線が崩壊し、今や町中が戦場と化した現況では近くにいる怪しい奴を片っ端からぶっ殺す薩人マシーンと化していた。今も彼女に突っかかって来たスーパーミュータントが一人、銃ごと腕をぶった切られて苦しみに悶える。

『い、痛いぃぃ!』

彼女の足元には既に3人ものスパミュが血を流して首をすっ飛ばされたり胴を貫かれて倒れていた。

「これで、4人っ!」

だが駆け付けた他のスパミュも黙ってやられるのを見ているだけではない。

『撃てぇ!撃てえ!あのチビ人間強い!ナックルと同じくらい強い!』

38口径が雨あられとロウリィに降り注ぐがその程度のチャチな銃撃程度では戦乙女はの法は破れない。

体の大半をハルバートで覆い銃弾を防御、スパミュのリロード中に低姿勢から接近、横薙ぎに足を払い体勢が崩れたところに頭部への致命的一撃。

グロッグナック・バーバリアンばりの流れるような近接攻撃はヌカ・ワールドのレイダー達ですら及ばない。

面白い奴だ、ベースボールチームNuka-World cappiesに年俸100万キャップでどうだ?

ベースボールとは2つのチームが相手をスワッターと呼ばれるバットで撲殺しあい、殺した人数が多い方が勝ちというウェイストランドにおける長い伝統を誇り最も人気がある由緒正しいスポーツである。

世が世紀末なら、ロウリィならばきっと素晴らしいスワッターになれるだろうに惜しいことだ。

今も襲って来た巨漢をそのハルバートで叩き殺し、潰す。

それでスパミュが怯むかと言えば、ますます手強いこのチビ人間に敵意を示して兄弟達の仇を撃とうと盛んに撃ってくる。

見ればさすがのロウリィもこの雨あられと降り注ぐ銃弾の雨にさすがに無傷とはいかないようだ。亜神とは言え頭部、心臓といった急所への直撃は行動不能に直結する。

この状態で捕まったら生きたまま喰われてしまうというのは流石のロウリィも避けたい事態だろう。

派手な銃撃戦の音に惹きつけられて次から次へとスパミュが現れ、ロウリィも徐々にフォルマル邸の方向へ押し込まれていった。

一方で伊丹達自衛隊と帝国軍の守るフォルマル邸も今や嵐の中心になっていた。

「前方100に敵散兵の集団!まだ撃つな!引き付けろ!!」

50にまで敵兵が迫ると伊丹の指揮のもと自衛隊の機関銃、小銃、が一斉に銃声をあげた。

これに加えて民兵の弓兵にティカも加わって応戦し、あっという間に数十人が倒れる。

飛来する銃弾と矢の前にバタバタと倒れる盗賊だが彼らも馬鹿ではない。

機関銃が盗賊の真っ只中へ撃ち込むと連中も市街地の中へばらけて遮蔽物に隠れる。

だが撃たれっぱなしではない、連中は邸宅の車線から逃れると物陰から弓矢や投石機で反撃して来た。

木材や石壁で覆われているとは言え、生身の部分に命中すれば大怪我は免れない。

今も飛んで来た鉛の玉に顔を貫かれ民兵の一人が血みどろになって防御陣地の中に倒れこむ。

投石機は空気抵抗を少なくするために円錐形に鋳造された鉛の玉は革の鎧を貫いて人間に致命傷を与えるに充分な威力がある。

無論、それは民兵側の飛び道具にもいえ、銃弾とともに盗賊に突き刺さった矢玉で脳みそを路地に飛び散らされた無残な死体が転がっているのがここからも見える。

「無理に突っ込むな!家の壁を壊して・・・できるだけ体を晒さずに近づけぇ!」

「援護しろ!弓兵、めくら打ちでいいから奴らを集中させるな!」

自衛隊の銃に無くて弓にある特性の弓なり弾道、盗賊団の矢が屋上に陣取った伊丹達に降り注ぐ。自衛隊は確かに強い。遠距離から民間人の被害を考えなくていい砲撃戦でなら間違いなく一方的に撃破できるだろう。

だが、肉体的にも頭脳の点でも帝国人も日本人も同じ人間でしかない。

科学技術を補う戦い方をしてくるのは当然と言えた。

え?総支配人?骨がアダマンチウムだったりする生物が人間だと本気で思ってるのか?

「くそっ、くそぉッ!」

栗林達は館の応急銃眼から64式小銃を出して盗賊達に向かって発砲し続ける。

しかし元々64式小銃は遠距離から狙って撃つ大口径小銃でありこの場合は小口径の89式の方が向いていると思われる。

更に言えばなぜか弾丸が爆発するスプレーアンドプレイならもっと良かったろう。

「前方の石壁の向こう!敵散兵、手投げ弾!」

勝本三等陸曹が手榴弾を投げ、石壁の向こうから矢を射かける敵兵を始末する。

「やった!やりましたよ!」

栗林が喜ぶが、次の瞬間轟音が館の中に響き渡る。

「な、なんだぁ!?」

「隊長、投石器のでかいやつです!奴ら、燃えた岩石を館に打ち込んで来ました!」

盗賊団は今度は大型の投石機で焼けた石を打ち込んで来た。

このカタパルト戦術は今でもシリア内戦の市街戦で使われることもあるので案外馬鹿にできない。

自衛隊は今や袋のネズミとなっていた。

銃弾を消耗し、敵味方に既に多数の死傷者が出ているが数で勝る盗賊団は遮二無二攻めてくる。

「隊長!荷車が来ます」

見れば向こうから全面に木の板や鉄板、を雑多に貼り付けた荷車が向かってくる。

即席の破城槌を盾に攻めてくる盗賊団だったが・・・

「隊長!屋敷の北側が破られました!盗賊団が侵入して来ます!」

投石機で破られた屋敷の北側の壁から飛び道具の援護の元、馬車を盾に接近して来た盗賊団は屋敷の内部に突入して来た。

自衛隊と盗賊。

銃と剣の戦いの始まりだ・・・・



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パックスの場合。

このようにして地には悪しき人々が蔓延っているのを見て、総支配人は言った。『かの卑しい悪党どもを取り除かねばならない、これはジョン・ケイレブ・ブラッドバートンの予言にもある』
総支配人が右手を当てると命がヌカ・コンボイに吹き込まれた。
『いけ、悪しき人々に裁きを下すのだ』
正義のヌカれいだぁ戦士たちは武器を取り
『ヌカのために!総支配人のために!必ずや悪しき人々を打ち倒し、この地に正義をもたらしましょう!』
このようにしてたちまちのうちに帝国の圧政に苦しむ人々は総支配人と彼の戦士たちによって解放され、清く正しい彼らを受け入れたのです。

出ウェイストランド記 
預言者・総支配人と彼の清く正しいヌカれいだぁ戦士たちより

機体説明
ヌカ・コンボイ
ヌカ・ワールドのワールド・オブ・リフレッシュメントに200年間放置されていた車両。
ヌカ・ワールドで生産されたヌカ・コーラを運搬するために通常のフォルド・コンボイを改造して作られた車両。
核融合V8エンジンに強化されたフレーム、ガトリング砲、プラズマ兵器、核ミサイルを搭載した強襲トラックで護衛用のパワーアーマステーション、セントリーボットも搭載している。
武装・装甲が軍艦並みに強力になっているのは道路の事故、暴動突破、ライバル会社の襲撃、ヌカ・コーラの爆発、発売前に奪おうとする客などに備えたものである。
総支配人の手によって更に魔改造されて蘇った地獄の特急便。
今やコーラの代わりにレイダーや奴隷、略奪品を運ぶために使われる。

完全にオリジナル設定だが、普通だと感じたらあなたも立派なウェイストランド人。


「じょ!城門を閉めろぉ!奴らが来るぞ!」

遠くから喧しい奇妙な音楽が聞こえて来る。

今や帝国で略奪を受けていない街の方が珍しい中、この街はまだ奇跡的に略奪を受けていなかった。

だが、この街も機動力を手にいれたレイダーの前にはある程度繁栄している街は略奪対象になるということを理解し防御を固め始めたその矢先にパックスが襲来した。

『ヒャッハー!レイダーラジオ、今日もサイコとジェットで決めていくゼェ!』

『ヒャッハー!ヒャハハハッ!ヒャッハー!』

薬をキメて狂ったように笑い声を上げ、トラックの上の超大音量のスピーカーでエレキギターとドラムのロックンロール演奏を生演奏で周囲に撒き散らす。

車両の全身やギターに装備された火炎放射器からは常に火炎が吹き上がり遠目には森林火災が近づいて来るように見えるだろう。

中世ヨーロッパの文明レベルから見れば世紀末レベルの連中なのだから異様に見えるだろう。

パックスのリーダーメイソンの号令のもと、V8艦隊が思い思いにホーンやクラクション、バックファイアのカナギリ越えを上げ更に規制をあげる。

『奪え!』

『ヒャッハー!』

『殺せ!』

『ヒャッハー!』

『犯せ!』

『ヒャッハー!』

『進め進め!モタモタしてると獲物を楽しむ時間が減るぞ!』

なんという世紀末、帝国とて今までの征服先で似たようなことはしてきたが自分たちがやられる番になるとは想像もしていなかったのでしょう。

レイダーの中でも一番サイコでアホという褒め言葉を頂くパックス。

 

オペレーターならば金目の物をあるだけ差し出して首輪爆弾つきの奴隷になれば人体実験の材料にされることもあるが、パックスの場合は完全にその場のノリで拷問もデスマッチもあるので一層恐れられている。

 

「開けてぇ!お願い、子供もいるのよ!」

「くそっ!締め出す気かよ!まだ大勢外にいるんだぞ!」

レイダーが接近したのに合わせて大慌てで城門を閉める守備兵。

この世界の街並みは中世ヨーロッパに似ている。

いわゆる典型的な古典的RPG世界だが、そんな中で極彩色に塗りたくったパックスの外見は異様に見えた。

当初は道化の集団と、侮られたが道道で目に付く村も街で行われる帝国以上の残虐行為の噂が流れると誰もが彼らを恐れるようになった。

難民も扉が閉まると、当初は叩いて入れてくれと叫んでいたがやがてパックスが近づいて来ると逃げ惑う。

「助けてぇ!お願いよ!」

『ヒャッハー!まずは追いかけっこゲームだぜ!』

陣形の中から骨むき出しのバギーが出て来ると、パックスの一人がスワッターを手に取り、逃げ惑う人々に追いすがる。

生身の足とバギーとでは勝負になるはずもなくあっという間に追いつかれ・・・

『カッキーン!ホームラン!』

振り下ろされたロケットスワッターに頭蓋骨をかち割られ無残な死体を次々と晒す人々。

それを恐怖と悔しそうな目で眺める守備兵。

『ヒャッハー!見たかよあの間抜けな死に様、アヒャヒャヒャひゃ!』

なんという北斗ワールドなセリフなのでしょう。

やがて、集結したレイダーたちは城門前で気勢を上げる。

『ヒャッハー!さっさと門を開けて降伏しろぉ!

今なら奴隷化だけで許してやるゼェ!ヒャッハー』

おきまりの文句だが嘘である。

レイダーに約束などという概念は通用しない、約束を覚えるだけの脳みそも存在しない、約束を強制する暴力があってもすぐに忘れるからだ。

運び屋が証明したようにウェイストランド人は脳無しでも行動には支障がないことから証明されている。

昆虫みたいな連中だな。

レイダーの脅しに壁の上からクロスボウ、投石機、バリスタに攻撃魔法で応答する守備兵たち。

もはや問答無用ということだろう、当然だが。

5、6人のレイダーに命中し、もんどり打って死んだり重傷をおったりするが

他のレイダーは

『ヒャハハっ!馬鹿なやつダァ!』

あははハハッはははっ!と死んだり重傷を追った連中を指差して笑っている。

その異様さにゾッとしたような守備兵も更に撃ち込むが、レイダー側も容赦なしに攻撃を開始する。

車に据え付けられたガトリング砲が火を吹き、携帯ミサイルが防御塔を粉砕する。

そしていよいよ、ヌカ・コンボイが唸りを上げて加速を開始する。

100kmまで2秒という頭のおかしい加速度で300トンの鋼鉄の巨獣が突っ込むと中世風の城門は左右の塔ごと細い飴細工みたいにひしゃげて町中まで飛んで言った。

『ヒャッハー!吹っ飛んだゼェ!アヒャヒャヒャひゃ!みっともねぇ死に方しやがった!』

『V8を讃えよ!』

『V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!』

指を組んで巨獣の心臓のV8に祈りを捧げるレイダー。

「城壁が崩れた!怯むな!我らの街からあの巨獣を追い払うのだ!」

帝国の魔法使いが火球の攻撃魔法でトラックを攻撃するが、瞬時にガトリング砲の掃射を食らって木っ端微塵になる。

『ヌカ・コーラ社の所有物への破壊行為は直ちにやめてください。

違反者は、厳罰に処されます』

トラックのハッチから現れたのはヌカ・コーラ社の防衛ロボットのセントリーボット。

ガトリング砲を撃ちまくりながらミサイルを発射する様は処罰を通り越して処刑だと思うのだが、戦前は無賃乗車するとレーザーで射殺して来るロボットが駅員だったりするので普通である。

『ヒャッハー!汚物は消毒だぁー!』

そう言いながら火炎放射器を撒き散らし、街を焼き払っていくレイダー達。

突入したトラックからは次々とレイダー達が躍り出て、思い思いに銃をぶっ放している。

亜人のウォーリアーバニーやハーピー、ワーウルフ種といったものまで今やパックスではレイダーとして参加している。

というか、パックスの奇抜なファッションが異常すぎてこっちの方が普通に見える。

「ヒャッハー!帝国め!今までの恨み、思い知れ!皆殺しにしてやるわ!」

見事にレイダー精神を振るいウォーリアーバニーはサブマシンガンを動くものに対しては皆に乱射する。

「お前達のせいで俺の家族はみんな殺されて!死ね帝国の犬ども!ヒャッハー!」

あるワーウルフは帝国から痛めつけられた痛みを万倍にして返そうと刀を振るって逃げるものも皆殺しにした。

一部の守備兵と民兵は教会に避難した住民を守るべく必死の抵抗をする。

が、所詮はそこまでであった。

最大の防御力を持つ城壁が崩れた時点で勝敗は決している。

 

 

帝国でもかなり大きい街だったのであろう・・・・・・だったのであろう街並みはレイダーパックスの攻撃によって陥落した。

 

今や、街並みはまるでカリカリのリスの串焼きのような醜さと破壊の跡を残している。

街の街路樹という街路樹からは死体が吊り下げられ、女神像は首が破壊された挙句に切り取られた犠牲者の首と交換されている。

広場に陣取っているのはV8核融合エンジンを搭載し、やたらと棘や鉄条網でとげとげしくなりペンキをぶちまけ極彩色に彩られたヌカ・コンボイ・パックス。

数々の刈り取られた人間・動物の頭蓋骨で全身に装飾が施された荒んだ美意識はこの狂った世紀末にふさわしい。

「ヒャッハー!オラー奴隷ども!さっさと荷物を積み込みなぁ!」

焦土戦のために街に集められた食料・物資は根こそぎ巨大なトラックに運び込まれていく。

運ぶのはこの街の元住民で殺されなかった男達だ。

美形は女パックスの玩具にされ散々犯された後に殺された、まるで女郎蜘蛛だ。

美女は総支配人への貢物として選ばれたこの街の伯爵令嬢以外は貴族も平民も御構い無しに好きに犯され、この後は奴隷として売り飛ばされる運命にある。

この世紀末において弱者の辿る運命は3つ

殺される、娼婦、奴隷。

時は!正に!世紀末!力こそ正義!狂気こそ正気!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウォーリアバニーレイダー その入団

頭脳はオッペンハイマー!戦闘力は異能生存体!精神はレイダー!
その名はヌカワールド総支配人!


戦え!勇者 ヨージ イタミ!世界征服を目論む魔王を倒すんだ!

魔王111
武装 
X-01FフルスペックPA
アーマードスーツ一式
クアンタム BigBoy
キロトンラジウムライフル
プロブレムソルバー
スプレーアンドプレイ
ファイナルジャッジメント
パーティースターター
クアンタム・ヌカ・グレネード
アトムの審判
など

Lv300くらい

15mくらいワープする
ヘッドショット連発
怒るとハルクみたいにパワーアップする
守護天使がついてる
撃ったやつに銃弾が時々帰っていく
消える
日光で回復
放射能でも回復
夜目がめっちゃ効く
コーサーみたいにどこにでも現れる
あと色々

ペットがデスクロー たくさんいる あとゴリラ
執事が魔改造世紀末戦車ロボ 核ミサイルをバカスカ撃ってくる 取り巻きがいっぱい
愛犬は多分ライオンより強い
魔王の居城 レーザーとガトリング砲 ミサイルが嵐のように飛んでくる あとデスクローや伝説のセントリーボットがいっぱいいる魔境
取り巻きのレイダー 下っ端でもめっちゃ強い 最上位になるとスパミュ・オーバーロードより強い。
時間経過で増える。

ファッ!こんなの倒せるわけないやんけ!
もう主人公に丸投げするわ、がんばれ(棒読み
伊丹「無茶言うな・・・」


その日は、例年と比べても暑かった。

いや、暑いと感じていただけかもしれない・・・・

「皇帝陛下の命により、アルヌスより帝都に至るまでの進路上の全ての村と街は焼き払う!作物と家畜は全て城塞に移動し、井戸は全て毒を投げ込んで封鎖せよ!」

焦土作戦、自らの肉を削いで敵を弱らせる。

近代以前の文明レベルで万単位の大軍を維持するには常に豊かな土地をイナゴのように食い荒らしながら移動するのが地球でも一般的な常識だったのでかなり有効な作戦だろう。

しかしながら指導者への不信による味方の離反、戦後復興もままならなくなるのでもろ刃の剣でもある。

例をあげればローマ軍のガリア戦役、ナポレオンのロシア遠征でも実施にあたっては当然のように不満が出ている。

高い税金取って兵隊維持してたけど、やっぱ勝てないので君達の不動産焼き払います。

素直に納得するという奴がいたら見てみたい。

 

そんな理不尽な暴力に晒された者がこの町にもいた。

「姉さん、また移動するの?」

朝目覚めたら町中がざわついて慌ただしい、母親がまた荷物を纏めていることからすぐに移動するのだろう。

妹の姉の名前はアニーネ、かつてはウォリアーバニーの一族だったが一族が帝国の侵略によってことごとく奴隷化されるか高名な戦士は皆処刑された時からこうやって従軍娼婦にまで身を落としている。

身を寄せているマガン傭兵団が異世界の軍隊と戦うためにアルヌスに出発してからまだ3日間しか経っていない。

他にも娼婦として傭兵団に付き添っている女達はそれこそ星の数ほどいるがファミーネは自分の姉がいつも一番綺麗だと思っている。

「ファミーネ、よく聞くんだよ。もうマガン傭兵団は無い」

「え?」

「みんな死んじまったんだ、団長も団員もみんな・・・・」

突然の知らせに頭が回らない。

姉は団長とはいい仲で、もう三年の付き合いになる。

身体を売るといってもここに流れてきてからは団長にだけでその他は身の回りの世話の掃除洗濯・炊事くらいだった。

団長も異世界の侵略者との戦でまとまった金ができたら田舎の郊外に家を買ってそこで一緒になろうといってくれていたことは知っている。

「俺もいい年だし、家庭を持ってもいいかなって思ってさ。

年配の者には退職金を払って、若いもんは知り合いの所に移籍するか仕官のあてもこれだけの大戦ならあるしそれなりに蓄えも残るだろう。

この近くでいい物件を見つけたからさ、節約すればファミーネも学校に通わせられるし・・・俺たちとは違う、まともな人生を送ってもらいたいからさ・・・」

 

彼女は知らないが、いわゆる死亡フラグ満載のセリフを残してしまった連合王国の兵士たちは自衛隊にことごとく討ち取られてしまった。

 

不幸な人間は埋め合わせを求め幸福になろうと努力するが、大抵は不幸なまま終わる。

世界はまさに無常である。

その後、傭兵団は前代未聞の生存者なしという結果から自然消滅してしまった。

酒保の爺さんは雇い主に約束の金を払うよう求めたが、雇い主自体も戦死してしまってはどうしようもない。

払われる金も今、自衛隊が一緒くたに埋葬してしまった。

傭兵団が自然消滅し、雇い主も無くなってしまった今となっては従軍娼婦達も自然失業の運びとなった。

「ちょっと!あたし達への払いがこんだけってどういうことよ!?」

姉妹に渡されたのはわずかに銀貨が15枚。

「すまない、だが肝心の資金は団長の金庫と一緒に消えちまったんだ」

残った金はわずか、傭兵連中が凱旋した時に備えての食品の買い出し費用が不要になったので残りを傭兵団でわずかに残った酒保や娼婦達に分配すると残ったのは雀の涙。

そんな事は分かっている、誰もが苦しい時代なのだ。

だが問題はこれからどうするかという事だ。

「これから・・・・残りの連中と一緒にプレッジの街まで行こうと思う。

そこで帝国が蛮族に対抗する部隊を編成するって話だ・・・

そこならまた雇い主が見つかるかもしれないし・・・」

 

帝国の軍事拠点の街まで行くという話に殆どの者はついて行くことにした。

元々、帰る場所がある者が傭兵について行くなんて事は殆どない。

 

だが馬車で街まで行く途中に帝国の部隊と遭遇してしまったのが運の尽きだった。

「待てい!貴様らぁ!何者だ!どこへぇ行くつもりだぁ!」

大仰な様子で騎馬の上から荷車を止めるのは帝国の騎馬隊の将校。

遠目からも神経質な様子がうかがえる。

「わしらはただの酒保でして、これからプレッジの街で新しい雇い主を探す所でして・・・」

「ならん!いかなる街も非戦闘員を迎え入れてはいかんとの、皇帝陛下のお達しだ!すぐに引き返せ!」

元からの住民ならともかく非戦闘員は籠城戦では足手まといにしかならない。

身元不明の人間がトロイの木馬として敵方に寝返って手引きすることだって考えられる。

残忍で冷酷で的確な判断だ。

「そんな、どこへ引き返せと・・・」

と、次の瞬間将校の振るった剣が酒保の爺さんの首を刎ねた。

「構わん!亜人まで混じっている売女の群なぞ大方敵の間者であろう!

殲滅せよ!」

従軍娼婦には帝国に滅ぼされた亜人が多いというのは常識である。

尤も、他に生きる手があるかと言えば無いというのが答えだが。

荷馬車に次々と矢が飛んでくるが非戦闘員に対抗する術があるはずも無く次々と殺されていく。

「ファミーネ、あんたはこの中に隠れてな!何があっても出るんじゃ無いよ!」

姉は妹を馬車の中の樽に押し込んで自分は団員が残していった弓矢を手にし騎士に向かって放ち、馬上の騎兵がもんどり打って落馬した。

姉のアニーネの弓の腕前は部族でも優れる事1、2位と称えられた。

だが、すぐに騎士達は彼女に気づきまた矢を番える前に盾を構え直剣を振るい彼女の体に槍を突き立てた。

 

 

樽の中に隠れていたファミーネは何時間も、何時間も隠れていましたがやがて体が痛くなって静かになったのでそっと出てみました。

・・・・・見知った顔の仲間達は皆殺されている光景が彼女の目に映ります。

彼女は見知った人たちと姉のために穴を掘ると、埋葬したのでした。

 

やがて、その馬車の側を物資を漁りに来たレイダーの物音で目を覚ました。

『おい、なんかあったかい?』

女レイダーが破壊された馬車を漁るレイダーに話しかける。

『何にもねぇ、墓とゴミ。しけてやがるぜ!早くどこでもいいから餌持ってそうな奴を襲ってぶっ殺して奪おうぜ』

 

『ん?ちょっと待ちな、なんだいその樽は』

女が銃剣を構え樽に近くと、樽から少女がナイフを突き立てようと飛び出して来た。

ウォーリアバニーのしなやかな筋肉が伸び、放たれた矢のように飛び出す。

が、所詮は人殺しに慣れたレイダーの不意をつくことはできなかった。

足を蹴り飛ばされ、ナイフを手刀であっさり弾き飛ばされてしまう。

 

『このガキ!ぶっ殺してやらぁ!』

 

男が銃をぶっ放そうとするのを腹を蹴り飛ばして女が言う。

 

『ふざけんじゃ無いよ、こいつは私の獲物だろ。私が好きにする』

そう言うなり手持ちのロープで縛り上げて略奪品を運ぶ小型ジープに載せる。

 

『いつつ、本気で蹴ったろ!?どうすんでぇそんなもん?そのやせっぽちを?

スープの出汁だって出やしねぇし、子産み女にもなりゃしねぇのによぉ』

 

『馬鹿。ほんと喰うやる殺すしか頭に無いんだね。ちったぁ総支配人を見習いな。

こいつの本気でかかって来た目が気に入った、巣穴に放っておいてどうなるか見てみよう』

『物好きな奴だ、まぁいいさ』

パックスは群れではあるが弱者の群れでは無い。

自由に生きて、自由に死ね。

何をしようが自由、責任はとれ。

指示が欲しいなら奴隷にでもなってろ。

 

(これから・・・どうなるんだろう)

ジープの荷物室で縛り上げられたままファミーネは揺られる。

あちこちからかき集めた価値のある鉄や銅、油壺といったガラクタと一緒に放り込まれてあちこちがゴツゴツ当たって痛い。

数時間後、やっとジープが止まると荒っぽく荷物と一緒に放り出される。

『おら、着いたぞ!砦だ、さっさとこのジャンクを片付けな!』

ジープが砦に着くなり、荷物運びのプロテクトロンが次々と荷物を運んでいく。

砦のジャンク倉に入れるのはロボットと総支配人だけ。

人間は重要な部分には入れない。

『鉄50に銅200、銀が50に金が20。おお!油が500ポンドも!これは高値で引き取らせてもらいますよ!』

運び込まれたジャンクの買取値段をつけていくMrハンディがレイダーにキャップを渡していく。

『しめて今回の支払いは9600capです。いつもニコニコ現物払いのヌカトレードをまたご贔屓に』

 

レイダーはキャップを受け取ると、どんと地面にファミーネを放り投げる。

ナイフを取り出すと、少女の目が恐怖に見開かれたが意外にも縄を切られただけだった。

『言葉がわからないが・・・ま、その程度で尻込みするならその程度さ。

根性があるなら自分でなんとかするだろう』

そう言うと彼女の襟首を掴んでパックスのねぐらに持っていく。

『24時間営業の奴隷市場!パラダイスマーケットを是非ご利用ください!

年中無休、夜間ナイター設備完備!余裕の取引でみんなハッピー!』

とスピーカーから営業案内が響き渡る。

 

レイダーがたむろする塒に一人突然放り出された亜人の少女。

 

『おい、ヘレン!なんだこのガキは、また拾って来たのか!!?』

『構わないだろ、こいつには入団試験を受けさせる』

『こんなガキにか?まぁいいが、だが言葉はわかるのか?』

『そんなためにMrトーキーがいるんだろ。おい、こいつに伝えな・・・』

 

そう言うとMrハンディの改造機種のトーキーが現れ少女に話しかけた。

宙に浮かぶ丸い金色のタコに少女はびっくりするがそれが話し始めると逆に言葉が通じる事に少し安心する。

・・・と、思いきやMRガッツィーの口調で罵り翻訳を始めたのだから。

「いよぉガキンチョ、テメェがハンナに見込まれたってやつか?

ok,説明するぞ。

ルールは簡単、これからお前は檻の中に入る。

で、出てくる奴を殺すと合格、死んだら失格。

合格すると晴れてレイダーに、嫌なら奴隷市場で売る」

奴隷市場という言葉にビクッと反応する。

ウォーリアバニーは高い戦闘能力と美しい風貌から奴隷市場で高値がつけられるのが常なのだ。

「れ、レイダーって何?」

 

「レイダーはレイダーだよ、この間抜け!

人様を転がして物を頂戴したり、締め上げてアガリを献上させるのが仕事だ。

わかったか?このウスラトンカチ!」

 

ファミーネは思う、それじゃまるで・・・まるで帝国の貴族や皇族とやり方が同じじゃないかと金色のタコに返す。

 

「やっと、気づいたか、このすっとこどっこい!

力こそ正義だ!

お前は弱いのか?なら奴隷になってどっかで勝手にくたばれ!

ほんでオイルの材料にでもなっちまえ!その方が世のためだ!

嫌なら殺せ!奪え!」

 

そうだ、私は・・・お姉ちゃんを殺した帝国の奴らを許さない!

強くなってやる!

 

「やります・・・・私、殺します!」

『ガキンチョが入るぞ!入団テストの始まりだ!』

たちまちアジトで武器やレイダーアートの作成に取り組んでいたものが囃し立てる。

檻の中に入ると、武器として様々な接近戦武器が置かれている。

「好きなのを取れ!ルール無用だ!」

ファミーネは迷う事なく、扉に向かって槍を手にし構える。

姉に教えてもらった槍術の基本を忘れずに、集中すると扉が開く

「殺せ!相手はブリキ人間のオスだ!ヒャッハー!」

 

結論から言うと、ファミーネは入団試験をパスした。

相手は娯楽用の帝国兵だったが、彼女はその高い身体能力を活かしてその剣の間合いから常に一歩引いた距離から牽制、普通に考えれば男で鎧を着込んだ騎士には勝てなかった。

常に円を描くように騎士の攻撃をかわし続ける。

そしてここはレイダーアリーナ、長引けばどうなるか?

「何やってやがるー」

「早くしろ〜殺せー」

「テメェ!そのブリキ缶は飾りかよぉ!」

飽きっぽいレイダーのヤジとともに騎士に飛んでくる酒瓶、空きカン、火炎瓶にグレネードで吹っ飛ばされ怯んだ騎士の隙を逃さずに鎧のスリット突いて一撃で突き殺した。

結局は集中力と信念、生への執着と復讐心の強いファミーネが勝った。

どんなに汚い手を使ってでも殺す、レイダーのやり方だ。

 

アリーナから出ると、そこにはハンドメイドライフルを自分に差し出すあのレイダーのヘレンがいた。

「今日からお前もパックスの一味だ!せいぜい好きに生きるんだな!」

金色のタコの言葉を彼女は一生忘れないだろう。

後に多くの亜人がレイダーとして活躍することになる。

彼女はそのほんの一例にしか過ぎない。

「ヒャッハー!帝国は全滅よ!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

山の魔王の宮殿にて

総支配人Music
山の魔王の宮殿にて クラシックラジオより

装備 貫きのレーザーガトリング 蝿から拾えた謎

第3世代人造人間 能力は高いらしいがインス内部のは温室育ちという印象が拭えない
ゴキブリを素手で殺して拾って食うのが日常のウェイストランドでは生きていけそうになさそう
脱走したい者が多いが、何地上に幻想抱いちゃってんの?感が強い



伊丹たち第三偵察隊がフォルマル邸で64式小銃やMINIMIを奮っての白兵戦に突入してからすでに1時間が経過している。

当初は自衛隊の火力に押され気味だった盗賊団だったが、ここにスパミュの一団が乱入。

3すくみの大接戦になってしまった結果、当初の予定のフォルマル邸突入を優先される形となった。

「こんの!いい加減諦めなさいよ!」

今も栗林が銃剣で剣を振るって突入してきた盗賊団の剣士の一撃を躱して白兵戦でどタマをカチ割る。

ちなみに銃剣や銃床を振るって白兵戦をするとせっかく合わせた照準が狂ってしまう可能性があるので基本的にはお勧めできない。

 

しかしながら接近戦でそう贅沢も言っていられない。

何しろ、今この館に押し寄せてきているのは盗賊団だけではないからだ。

「この!いい加減諦めろ!」

今も冨田二曹の64式の銃弾が粗末な銃を物陰から撃ってきた巨大なモンスター、スーパーミュータントの頭蓋に直撃する。

自衛隊の銃弾は連射性を高めるための弱装弾だがそれでもウェイストランドでは高級な308口径相当の弾丸だ。

スパミュに対抗するにこれ以上の物は望めないだろう。

『い、痛いぃぃぃ!』

頭を撃たれて声をあげながらも、パイプサブマシンガンを撃ち返してくる。

だがそれで戦意がひるむことはない。

スパミュとは味方が殺されるのも、敵を殺すのも大好きという戦意の塊、好戦的種族なのだから。スーサイダーの核タッチダウンからもわかるように何も考えてない。できるからやるみたいなノリで。

 

『やるなチビ人間!もっとだ!もっとよく戦え!』

『兄弟がやられた!げーきどぉ、げーきどぉ!』

四方八方から自衛隊と帝国軍と盗賊団とに無差別に銃撃を加え、フォルマル邸宅はあちこちに弾痕がつき、壁はボロボロ、窓はことごとく割れた悲惨な有様になっている。

 

短機関銃の38口径は自衛隊の防弾着でも防げる、が喰らって無事というわけにはいかない。

「うわっ!」今も伊丹の防弾着にどこからか飛来した38口径が紛れ当たりし、倒れこむ。

「隊長!大丈夫ですか」

慌てて黒川が駆けつけるがすぐに起き上がって小銃を今やボロボロの壁に即席で作られた銃眼から冷静に撃ち返す。

「俺に構わず!それより倉田を見ててやってくれ」

倉田は傷の縫合が完了すると未だに傷が癒えていないにも関わらず銃座でMINIMIによる制圧射撃を行なっている。

既にフォルマル邸に分散配置された偵察隊の空薬莢がそこかしこに散らばっているという日本では考えられない光景だ。

民兵もクロスボウ、弓矢をこの3すくみの乱戦に対抗しているが豆鉄砲とはいえ銃に対しては不利は隠せない。

ましてや強力な5.56mmアサルトライフルを持ったスパミュも混じっているのだから。

防弾着とはいえ、ライフル弾を至近から喰らっては貫通間違いなし。

連邦でも有数に危険な存在だろう。危険でない場所なぞ連邦に存在するかと言われれば答えられないが。

『チビ人間どもよ、あっそぼう!!』

いつの間にやら銃弾をくぐり抜けてバリケードを突破し一階の玄関ホールに侵入してきたスパミュに相対してしまったのは栗林だが、彼女の戦闘スキルは卓越している上に侵入してきた怪物に敢然と立ち向かう人物がいた。

「弓兵は階上より上の布陣を崩すな!入ってきた敵を確実に仕留めよ!」

ピニャ皇女の勇気の守護天使が突然勤労意欲に目覚めでもしたのか民兵を指揮してホールや開いた壁の穴から侵入してくる敵兵の迎撃に当たっていた。

階上の弓兵がクロスボウを至近距離で次々とスーパーミュータントに突き刺していくが、その程度では頑丈な筋肉の塊に刺さるだけで動きを鈍らせるだけでしかない。

『い、痛いぃ!人間、もうおこったぞ!』

激怒しながらボードを栗林に叩き付けようとするが、素早い動きによってかわし床に穴が開くだけで終わる。

動きが鈍ったスパミュに栗林が至近距離から64式を叩き込むと

『アイエエエエェ!』

という叫び声をあげて倒れ伏した。

「やった!やりました!」

「みんな!踏ん張るんだ、もうすぐ味方が来る!」

伊丹達第三偵察隊の要請を受けて空から戦乙女が駆けつけつつある。

 

だが、イタリカの上空に現れつつあったのは健軍一等陸佐の第4戦闘団だけではない。

 

『間も無く、目的地上空。高度500ft、対地速度250kt。

風向北西、3m』

「目的地上空で降下する、その後は砦に帰還しろ」

ヌカ・ワールドの象徴とも言えるクアンタムカラーのX-01に身を包みながらイタリカ上空に到着した総支配人は徹甲ガトリングレーザーに核融合電池フュージョンコアを装填する。

市街戦では爆発物の使用は味方も巻き込んでしまいかねないため使用を自粛している。

 

二百年もののペルチバードは装甲が薄いため僅かな被弾も命取りになりかねないため先頭には参加せず総支配人は降りたら敵を皆殺しにしてテレポーテーションで帰る。

「降りる」

自由落下。

一瞬ののちに空中に飛び出すとそのまま自由落下しレイダー達が待機するモンフェラート商館の屋上に着地する・・・はずだったが強度が少し足りなかったらしく屋上から1階までそのまま突き抜けてしまう。

「うん、思ったよりも脆かったな。やぁマグス、調子はどうだい?」

「やっと来たかい、次からはお得意のテレポでヒュッと来てくれよ。

農民だけかと思ったら、スーパーミュータントに例の変な軍隊まで混じってるなんて話はアタシは聞いてないよ。

こっちはおかげで死人まで出て大損さ、これ以上やるっていうんなら部下は貸すからアンタが出張るんだね。

それと、街を全部更地にするのはやめといてくれよ。

農民ならいくらでも補給はできるが、キャップの入りが悪くなっちまう」

 

「敵勢力について情報はあるか?」

 

「まずはご存知スーパーミュータントども、あんたが連邦でさんざ殺して来た相手さ。

次が帝国軍、数だけの雑魚さ。あんたのご自慢のPAなら簡単に始末できるだろ。

それとここいらの野生のレイダー、帝国よりはやるみたいだが正直似たようなものさ。

そして最後が謎の軍隊、今んところは帝国に味方してるみたいだね。

連中の武器はコンバットライフルにグレネードってところ」

 

「それは変だな例の軍隊と帝国は今も交戦状態の筈だ。

帝国の連中も勝利か死かと息巻いてたぞ」

 

「アタシが知るかよ、大方一時休戦ってやつだろ。

どうする?全部にぶっ放して、結局街が消えてましたなんてオチは願い下げだよ」

 

「無論、いつもの通り。

連中が”平和的解決法”に応じるならそれでよし。

そうでないなら、ここじゃこいつが法律だ」

 

そう言って徹甲ガトリングレーザー”Refreshment”を構える。

Legendary Weapon、ウェイストランドにおける権力の象徴。

二百年前のアメリカと呼ばれていた国では様々な軍事科学技術が異常な発達を遂げた。

工場の量産品に優れた職人や科学者が更に様々な改良を加え、驚異的な破壊力を持った武器が多数つくられた。

今となっては伝説の域にある科学技術によって作られた、再現不能な武器は高キャップで取引されウェイストランドの権力の象徴となっている。

ミニニュークは自爆の危険がある威力過剰な上に、高価なこともあってここぞと言う場合にしか使えない。

このRefreshmentもその一つ。

中国のキメラ戦車や装甲車に対抗するために作られた?のであろうこの武器は

貧弱なアーマーしかつけていないグリーンランド人なら一発かすっただけで蒸発、城壁もダンボールのように貫くおそるべき兵器である。

この世界での問題の大半は安い無誘導のロケットと銃弾でカタがつく。

平和的解決とは”物資を全部出せ、殺さないでおいてやる”

ウェイストランドでの普通の解決とは”いうことを聞かないなら殺す”

なのでかなり紳士的である。

 

「OK、ボス。手下の中でも腕利きを連れて来な。

後はご自慢のPAとポンコツ3等兵どもで終わらせりゃいい」

そう言うなりオペレーターズの中でも最精鋭のブッチャーが6人、総支配人の直衛につく。

 

「総支配人、目標は現在戦闘中のこの街の中心。情報によるとこの街の元締めのアジトです。

言うことを聞かせてやりたいなら、こいつを付ければどんな奴も一発ですよ」

 

そう言って例の首輪爆弾の束を総支配人に手渡す。

今まで制圧した街の元締めの貴族の連中にはことごとくこいつをつけて絶対服従の奴隷になってもらった。

それでも反抗する奴は文字どおりクビになってもらおう。

ライバルが大勢いるソフトドリンク業界のビジネスは厳しいのだ。

 

「よし、行こう。動くものには全部銃弾をぶち込め」

「ヒャッハー!」

 

商館からレイダー達が出撃していく先ではスーパーミュータントとの戦いを終えたロウリィがフォルマル邸で伊丹達と合流したところだった。

双方の兵員が疲労の限界に達したところで一時的な小康状態に陥った隙をついてロウリィが道端からバリケードをくぐって転がり込むようにフォルマル邸に入って来たので

全員で慌てて中に引きずりこむようにして臨時の応急処置室になった台所へと運び込んだ。

ハルバートを杖代わりに使い、ぼろ切れのようになったドレスを身にまとい全身血にまみれて黒くなってさえいなければ中々扇情的で艶やかなお姿であったろう。

「ちょっ!?だ、大丈夫ですか。ロウリィさん!?すぐに傷の手当てをしないと・・・早く衛生を」

黒川が慌てて衛生キットを手に駆け寄り、傷の具合を見る

「だ、大丈夫よ・・・ちょっと疲れただけ・・・それに返り血が殆どだから見た目ほど重症じゃないし、亜神だから死なないしね。あの緑野郎どもかなり手強かったわよ」

「大丈夫じゃありませんよ、ひどい銃創ですから」

ウィンクをして茶化しているが急所は外してあると言うだけで手足や内臓を通らない場所には38口径がのめり込みひどい有様だと言うことは明白。

人間ならばとっくに死んでいるであろう重傷でも動けたこと自体、亜神の力の証明になる。

弾丸を摘出しつつ、傷口に包帯を巻いていくが既に弾丸は排出され傷口は塞がりつつある。

それでも痛みは人間と同様に受けるのだ。

「いつつ、ヨージ達も持ってるけど銃?結構痛いわね。

正直舐めてかかってたわ」

「ダメですよ!弱い拳銃弾・・・弱い銃だから良かったですけど、自衛隊の使ってるような強力な物を受けていたら手足がちぎれていてもおかしくなかったんですよ!」

 

その時、夜明けの空に響き渡る爆音と音楽が皆の耳に聞こえて来た

「みんな!援軍だ、もう少しだけ持ちこたえてくれ!」

そう言うと伊丹は発煙筒を敵の陣地の手前に放り投げ、残っていた無線機を掴む・・・

 

イタリカの戦い、第2ラウンドが始まろうとしていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

UH-1 ダウン

HUDに息のある敵勢力がハイライトで表示される。

射程内に野生のレイダーが表示されたのを見て、レーザーの照準とPip-Boyをリンクさせる。

敵の装甲と脅威度が表示される

実弾耐性10 エネルギー耐性0 放射線耐性0 脅威度(Lv)1

まるでお話にならない、そこらのウェイストランドの食い詰めレイダーと同様だな

と思ったが、連中は食い詰めているからレイダーになったのであってそこらへんはどこも変わらないなとヘルメットの中で苦笑する

VATSを使うまでもないほどの低脅威度ゆえ、足を止めることもなく進み続ける。

盗賊が住民を犯したり、殺したり酒を飲んだり略奪しているが別に気にもしない。

この程度でいちいち突っかかっていたら総支配人は毎日のように大虐殺をしなければならない。

「いやぁ、やめてください。お願いします!」

ある家からは上がり込んだ盗賊達が壁に串刺しにされ既に生き絶えた夫の目の前で妻を犯していたり。

「ほらっ!歌えよ!旦那の前でいい声でヨガってみせろよ!ヒャハはっ!」

酒屋から略奪した酒を飲みながら妻と娘を目の前で犯されている夫に見せつける外道。

中世ではありふれた光景だし、ウェイストランドでも似たようなものだが手下でもない連中にこれから自分の財産になる町を好き勝手されるのも不愉快だ。

 

総支配人はガトリング砲で掃射することも考えたがフュージョンコアが勿体無い。

核物質さえ掘れれば量産は可能とはいえ、たかが人間相手に撃ちまくるのも大人気ない。

総支配人は手持ちの火炎瓶を取り出すと2、3個手近な家に放り込む。

直後、大音響とともに家が燃え上がり盗賊をまとめて焼き尽くす。

バカでも気づく攻撃を食らって仲間がカリカリのローストにされたことに気づいて盗賊達がやることを中止して総支配人の進む大通りの真ん前に飛び出してくる。

「やろう!どっかの騎士か!?」

「構うこたねぇ!ぶっ殺してその鎧ひん剥いてやらぁ!」

 

早口で罵り言葉を叩きつけてくる野生のレイダーの言うことはわかりにくい。

もっとも、わかる必要も気も無い。

サイドウェポンのレーザーピストルを取り出し、家から刀槍を手に飛び出してきた馬鹿を撃つ。

レーザーピストルは軽量でありながら射程が長く、殺傷能力・命中精度のバランスの高さから冷酷にも熱血な殺人にも対応する優れた武器だ。

人間以上の存在を殺すには少し物足りないが。

レーザー光の赤い光が宙を割いて現れる。

文字通り光速の攻撃は身を隠す暇も避ける暇もなく、盗賊の一人に命中し瞬時に全身の水分が蒸発。

残った炭素の部分も超高熱で炭化し一瞬で灰と化し地面に散らばる。

「あの図体で魔術師なんて聞いてねぇぞ!」

『やれやれ、これじゃ総支配人じゃなくて清掃係だな。

ゴミ回収係をもう2、3人雇わないとな』

無造作に、軽くジョギングしながら赤い光線がほとばしるたびに盗賊が一人、また一人と灰になっていく。

盗賊達も遠距離からは弓矢を射かけるが、傷すらつかない。

ピストルといえども木製の壁を打ち抜くことくらいはできるのでまとめて焼き尽くす。

「こっちはまだ大事な仕事が山ほど残ってるんだから」

面倒になった総支配人はフラググレネードを取り出すと無造作に盗賊団達が立てこもるイタリカの商館の建物の中にゴミ箱にコーラの瓶でも入れるように投げ入れる。

瞬時、建物全体が激震し爆音が響く。

ウェイストランドでは野球のボールがわりくらいの軽い気分で投げたりバットで打ち返されるが

みんなはムカつく奴がいるからって、そいつの家に爆弾を投げ込んじゃいけないぞ。

「さっさと終わらせないとな」

更にもはや隠す気もなくレーザーガトリングを取り出すと分厚い壁でできた建物の向こう側にいる盗賊達に向かって引き金を引く。

分厚い壁の向こう側だろうと生体反応探知能力のあるX-01の前ではヌカーワールドの射的同然。

一瞬の空転の後に赤い光線が次々と現れる、超高熱の熱戦は石壁を紙のように貫通し次々と人間を石壁もろとも木っ端微塵にしていく。

しかしあまりにも激しい射撃の前にさらされた建物の重量が強度を上回り、柱がメキメキと嫌な音を立てながら徐々に傾いていくと思いきや勢いよく崩れた。

 

「おっと公共物破損だ、警察を呼べ!それと葬儀屋もな」

 

さすがにイタリカを瓦礫と死体置き場にしてしまうとあとで困るのは総支配人なので今度は武器をロケットブースター付きの2076年ワールドシリーズ・バットに変える。

「野球やろうぜ!俺がバッター、お前らがボールだ」

 

盗賊達は困惑していた、目の前の鎧を着た騎士だと思ったら魔術師の大男が今度は棍棒に持ち替えたのだ。

壁に隠れ様子を伺っていたが、次の瞬間信じられないものを目にすることになった。

『ヤキューしようぜ。オーイ、来いヨ?ok,俺いく』

下手くそな帝国語で喋った青い騎士が消えたと思ったら次の瞬間建物の2回から凄まじい悲鳴とグシャ・スコーンな擬音と共にでクロスボウを構え騎士に放とうとしていた盗賊の上半分がこっちに向かって飛んできた。

飛んできた半分の死体に潰されて傭兵が一人ついでに死に1.5人分の肉が混ざった奇怪なオブジェが出来上がる。

ほら、またレイダーアートの出来上がりだ。

総支配人は芸術家としても名をはせるぞ!

『スワッター!スワッター!また背番号を追加するぞ!』

2階から盗賊の一人をクッションがわりにして飛び降り更に相手へと蹴飛ばす。

野球とはウェイストランドにおける最も人気のあるスポーツ。

9対9のチームに分かれ、スワッタ―で相手チームを沢山殺した方が勝ち。

シンプルなルールながら奥深く、長い伝統を誇る競技である。無論、通年MVPは常に総支配人である。

ワールドシリーズという名前なので当然世界中でこの競技が戦前は行われていたのだろう。

 

 

そのほかには人間をバスケットにシュートして重い死体取ってきて入れた方の勝ちというバスケットボールなる競技もあるのでみんなもやってみよう!

 

騎士の凄まじい膂力に肝を潰した盗賊達であったが彼らも熟練の傭兵でもある。

あの強力な飛び道具を使わない理由はわからないが、おおよそ飛び道具を使わないのは魔法使いならば魔力切れと相場が決まっている。

「取り囲んで槍襖にしろ!相手は一人だ!」

丸い大楯を構え、短槍を構えた歩兵が20人ほど総支配人を囲もうと大回りに移動しようとするがそれを許すほど総支配人はのんきでは無い。

『おっと、盗塁か?そいつはいけないな』

この野球に盗塁もホームランもないと思うが。

パワーアーマが一瞬で加速し盾の壁を無造作に吹き飛ばす。

崩れた体型を立て直す暇も与えずに次々と目に付く人間を殴り飛ばしていく。

人間がスワッターで殴られるたびに壁や地面に人間の残骸が降り注ぎ、街並みを前衛的な芸術ギャラリーへと変えていく。

スコアが同点なら壁に染み付いた残骸の芸術点で勝敗を決めるのもローカルルールとしてはありかもしれないという光景だ、審判がよく殺されそうなスポーツになりそうだ。

 

圧倒的な蹂躙力で目につく者を片端からホームランにしていく総支配人にようやくレイダー達も追いついた。

7.62mmライフル弾を次々と逃げ惑う盗賊に片端から打ち込んでいく。

『逃すな!皆殺しにしろ!』

レイダー達が進路上の盗賊を始末していきながら、自衛隊・帝国連合部隊が抵抗を続けるフォルマル邸宅に近づいていく。

もうそろそろ朝日が登ろうという頃、太陽を背にして航空機の爆音が響いてくるのを誰もが聞いた。

『航空機?』

『ボス、まさか帝国の連中が飛行機を持ってるっていうんですかい?

だったらこいつの出番でさ』

そういうなり誘導回路が外付けされたミサイルを装備したレイダーが装填し爆音が響いてくる方向に向ける。

『いや、武装がどの程度かわからない。核ミサイル装備ならこっちの居場所がバレるとまずい

隠れてやり過ごすぞ』

実際にこの世界でどうかはわからないが、帝国はともかく例の軍隊が核兵器程度の武装をしている可能性は高い。

『俺の合図で一斉射撃だ。回避行動を取らせるな』

散会し、航空機を撃墜するのに丁度いい物陰に潜むレイダー達。

『・・・・それにしても・・・Flight of Valkyrieか、面白い連中だな』

 

一方、フォルマル邸の上空に到達した自衛隊のヘリコプター部隊はイタリカの惨状に声も出なかった。

中世ヨーロッパ風の町からはあちこちから黒い煙が上がり、そこかしこに略奪と殺戮を行う盗賊達が黒い点のようにそこかしこに見える。

「第3偵察隊との連絡はとれないのか?」

最初のロケット攻撃で最も強力な偵察隊の通信機は破壊されてしまった。

今の伊丹たちが装備しているのは個人用の通信機でしかなく通信範囲は車載用のそれとは比べ物にならない上に今現在も戦闘中の雑音が凄まじくなかなか音声が拾えない。

「偵察隊の伊丹隊長と通信が取れました!」

「__こ__第3偵_隊__丹_尉、敵___ケット__撃_けた_

現在、フォ__邸__で応_中、発_筒を_擲する」

注___たし」

凄まじい銃声とノイズが混じり明確に聞き取れないが、激しい銃撃戦が行われている場所は空からははっきりとわかる。

やがて緑色の煙が伊丹の投げた発煙筒から立ち上り

 

「第3偵察隊、これより航空支援を行う。

遮蔽物に退避・・」

 

ヘリ部隊はまだ知る由もなかったが下の常に怒りっぽいスパミュは考えもなしに38口径を自衛隊のヘリ部隊にやたらめったら撃ちまくっていた。

所詮は低威力の護身用、弾が豊富で安いだけが取り柄のためヘリに到達する弾丸はないので悲しいくらい気づかれない。

「輸送UH-1は着陸できる地点で降下部隊を下ろす!コブラでの掃射を開始する遮蔽物の後ろに退避しろ!」

コブラの20mmが唸り声を上げ、ロケットが逃げ惑う盗賊やスパミュに襲いかかる。

UH-1も装備していたロケットを抵抗が弱まった敵の地上部隊に向けて撃ち込み、フォルマル邸に砂糖に集る蟻のように殺到していた盗賊やスパミュを吹き飛ばす。

その様を屋上から見ていたピニャがこの壮大なオペラに驚愕していたが

誰もが同じ意見というわけではなかったらしい・

『ミサイル警報!回避!回避!』

突然、下から飛んできたロケットを回避するためにUH-1がチャフ・フレアを展開したが・・・

ロケットは一つだけでなく数条の発射煙が下から飛んできた。

「テールローターに被弾!メーデー・メーデー・メーデー!」

一機のUH-1がバランスを崩し、勢いよく回転しながら乗っていた乗員ごと街の建物に叩きつけられ墜落した。

『3号機が墜落!繰り返す、3号機が墜落!』

この特地における初の自衛隊の損害らしい損害だった。

『生存者を視認・・・降下部隊が速やかに救出に向かう。

コブラが航空援護を継続する』

 

「ヤッタァ!人間の空飛ぶ機械落ちた!」

「ぶっ殺せ!弱い人間、殺して奪う!」

ロケットでヘリコプターを撃墜したスーパーミュータントたちは更に気勢をあげ、目標をフォルマル邸から墜落したヘリへと変更し、生存者たちの上に銃撃を加え始めた。

 

撃墜されたUH-1には自衛隊の隊員が乗り込んでおり、墜落したヘリに寄ってきた敵兵と交戦状態にあることが上空からも伺えた。

「こちら、第2分隊。機長が負傷。それ以外は無事だが現在、銃撃を受けている

攻撃の手薄な南側から退避する!支援を頼む」

『ダメだ、近すぎてロケットが使えない。

機銃射撃で対応する』

20mm機銃の榴弾で攻撃を加える敵兵へと射撃を続けるが、予定にない撃墜に動揺していないといえば嘘になる。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Air Cobra Down

2077年、最終戦争以前のアメリカは大統領は核戦争を予期して海上採掘場に避難。
10年以上続く中国との戦争によって財政破綻・ハイパーインフレを引き起こし
食糧配給の不足から暴動が続発し内戦状態、兵士への食糧の配給すら滞るほどだった。

0.01kt デイビークロケットの半分の威力のミニニューク
それでも半径80m以内の建物は殆ど倒壊す
こんなもんを東京やニューヨークで使ったら911以上の大惨事になる

AH-1S コブラ 

自衛隊の戦闘ヘリ
改良型のスーパーコブラがトルコで去年撃墜された

蛮族+核兵器=ヌカ・レイダー 

ボストンってどんな場所?
毎日、常にどこからか銃声が聞こえてくる。
時々核爆発



「くそ!こんなになるって聞いてたらキャリバー持ってくるべきだったな!」

墜落したヘリの現場では生き残った自衛隊の空挺が手持ちの小火器で押し寄せるスーパーミュータントに対抗していた。

『いいぞ!お前たちとってもいい!もっとよく戦え!』

自衛隊を強敵と認め、本気になった緑の巨人たちは今までの豆鉄砲の38口径から5.56mmアサルトライフルを持ち出して自衛隊に本格的に襲いかかってきた。

スーパーミュータントは大きい音に引かれてくる。

ヘリコプターの爆音とワルキューレの騎行のBGMは彼らをホイホイ誘っていたため幸いにもイタリカ市民が朝食になる事態を改善したとも言える。

「物陰にもいるぞ!2号機、ブレイク!ブレイク!」

「そこかしこから湧いてくるぞ!撃ちまくれ!」

『人間!降りてきてもっと戦え!ずるいぞ!』

『はっ!まるでラッドローチみたいな奴ら!おっくびょうもの!』

自衛隊とスーパーミュータントの戦いは空からの支援と火力では自衛隊が、単純な頑丈さではスーパーミュータントが勝つという構図が出来上がっていた。

そこかしこで銃声が聞こえ、降下した自衛隊空挺部隊の64式とアサルトライフルが撃ち合いその度に少なく無い損害が隊員にでる。

「撃たれた!撃たれた!」

「三島がやられた!援護しろ、その建物の中へ!」

「援護射撃!正面だ、突っ込んでくるぞ」

 

『いったぁぁぁい!人間、よくもやったな!』

『緑の人間!すぐに喰ってやる!』

 

今もコブラの20mmがスーパーミュータントの一体に直撃し木っ端微塵にするが

それを隣で見ていたスーパーミュータントは怯えるどころか血の匂いに更に興奮しロケットを打ち上げてきていた。

命中率が低いとはいえ、投石や弓矢とは桁違いの破壊力を持つロケットが装甲の薄いヘリに直撃すれば墜落は免れないため回避行動を取らないわけには行かず支援も予定されていたほどには上手く行かない。

『アルヌス駐屯地へ、こちらは敵の抵抗に遭遇。既に2機のヘリを失い死傷者も多数出ている!

至急、機甲部隊の応援を要請する』

 

市街地で十分にその威力を発揮できない上に頑強な筋肉の鎧に阻まれ、ロケットも平地で貧弱な人間を相手にするとはワケが違う。

 

一方でその戦闘を物陰から観察している者たちもいた。

自衛隊の空挺団とスパミュとの予期せぬ戦いの漁夫の利を得ようという者たちだ。

三つ巴、四つ巴の戦闘はウェイストランドでは珍しくもないが。

 

一方は盗賊団

「な、なんなんだよ!?空飛ぶ魔獣!?」

「うろたえるんじゃねぇ!目的は略奪だ!金目のものと女を取ったらずらかるぜ!」

 

「こんなやばいところに居られるか、俺はさっさとずらかるぜ!」

 

そんな中、

「野郎ども!集結しろ、フォルマル邸にはこの街の領主の家族と後継の娘のミュイがいる。

金庫室もだ!おまけに捕虜から聞いたが皇女もいるってわけだ!

今なら緑野郎が空飛ぶ魔獣の方を向いてる。

この隙に突っ込んで全部いただいちまうぞ!」

「最後の突撃ってわけかよ、いいぜ。

パーっとやろうじゃねぇか」

「へへ、俺は伯爵令嬢をいただくぜ」

「俺は皇女様だ、くそ皇帝への意趣返しに俺たちが皇位継承者を仕込んでやる」

「さらったら身代金が届くまで全員で廻しちまおうぜ」

 

『ターゲットセンサーに生命反応、弾頭の威力を最小0.01ktに設定』

0.01とはおおよそ10トン程度の爆薬程度の破壊力しかない。

最小でも歩兵の一発にB-29以上の破壊力を持たせる、明らかに狂った計画だが誰か止めなかったのか。

絨毯爆撃でも撃破困難なパワーアーマーに戦車すら蒸発させるヌカ・ランチャーで武装した米軍を止めるには、もはや戦略核を使うしかなかったのだろう。

盗賊たちの彼らの望みは叶うこともなく一瞬で終わることになった。

ヒュルルルルルルルー

という間抜けな風切り音が聞こえた後、閃光が走り彼らを原子へと分解してしまった。

街中での小型の核爆発は凄まじい爆風となって街の区画を吹き飛ばし、地表爆発によって生じた爆風が空中のヘリ部隊を襲う。

凄まじい爆風でヘリも横殴りの強烈な突風を受けたかのように態勢を乱した。

空挺隊員を下ろしていたUH-1が折り悪く爆風に煽られイタリカの建物に叩きつけられ搭乗していた自衛隊員ごと爆発炎上する。

『6号機が墜落!6号機が墜落!』

『なんだ!?敵の攻撃か!?』

『5号機から隊長機へ、市街地の中心部で大規模な爆発を確認!

敵の魔法攻撃か!?』

 

『全機、敵は盗賊に緑のオーガだけじゃないぞ!

一層警戒を厳に!』

そのうちにUH-1が煙をあげる爆心地から離れた場所に伊丹達自衛隊が立てこもるフォルマル邸に向かいつつある人影を確認した。

『盗賊の別働隊か?地上と連絡を取れるか?状況を』

『通信機できません、先ほどの爆発で電波障害が・・』

そのうち、黒い山賊らしき男達がヘリに銃を向けて発砲し始める。

先頭を行く青い鎧の大男と二人の黒い鎧がこちらに気づき、咄嗟に建物の陰に入ったこと

その早さから盗賊団以上の強敵だと思われた。

『相手が撃ってきた!正当防衛だ、撃て!』

そのうちに何本かの発射煙が見え、こちらに向かってくるのが見える

『くそっ!こいつらもロケットを!回避行動しつつ応射しろ!』

が、自衛隊の思い違いは特地の戦力をアルヌスで一方的に撃退できたことから過小評価していた。

『追尾してくる!ロケットじゃない!ミサイル!ミサイル!』

総支配人の手によって誘導装置が復活したミサイルランチャーは回避行動に入った自衛隊のヘリコプターに次々と向かってくる。

隠れていたレイダー達も手持ちのミサイルを撃ち尽くした後は手持ちの小火器でヘリに対空射撃を始める。

だが、運動性にも装甲にも火力にも優れたAH-1は果敢にもレイダー達に向かって反撃をし始める。

『総支配人!ダメだ!敵の攻撃ヘリの火力が強すぎる!』

『わかった』

総支配人は核弾頭をしまうとレーザーガトリングに核融合電池を装填し、徹甲モードにするとVATSを起動。

空中で攻撃を仕掛けてくるAH-1に銃身を向け、その弱点を検索する。

最も大きい部分のエンジンを照準し発射する。

『なんだ!?レーザー!?魔法なのか!?』

コブラも20mmガトリングで応戦するが、PAを装備した部隊に対しては効果が低い。

今も20mm砲弾の直撃を食らってレイダーが何人か吹き飛ぶ。

徹甲弾の直撃ならば違ったかもしれないが特地の相手ならば榴弾中心の方が効果が高いという教訓が今回は仇になった。

『エンジンに被弾!出力低下、不時着します!』

徹甲レーザーがコブラのエンジンに直撃し爆発、黒煙を吐きながらコブラは高度を下げていきイタリカの市街地に墜落する。

『コブラが墜落!繰り返す!コブラが墜落!』

これ以上の損害を出せば空挺部隊は撤退することすら難しくなってしまうと判断。

郊外に部隊を展開させるべく退避して行く。

 

 

 

『マグス、損害を報告しろ』

『ボス、ヘリに8人と歩兵に5人やられた。パワーアーマーも敵のロケットの直撃を食らって大破が一機。

これ以上の損害は許容できないというのがオペレーターズの意見だよ』

 

自衛隊との戦闘でレイダー側も大きな損害を被っていた。

『ふむ、では話し合ってみるか』

『話し合う?!馬鹿げてるよ、戦闘中だってのに』

『だが、これ以上戦えば町が完全に破壊されてしまう。

妥協案を提案するのも総支配人の仕事の一つだろ』

 

そこで総支配人はそこらへんにあった棒に白旗をつけると首輪爆弾をつけた盗賊の一人に

『おい、お前。行って一時休戦に応じる用意があると伝えろ』

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Hard Negotiation

ウェイストランドでも連邦はキャピタルに比べればかなりましだから。
キャピタルは人間やめちゃったアッパラパーがそこらへんにうろついてて人肉食が当然のように横行してるから。
え?連邦もそんな変わらないって?
農業ができるだけまだマシなんだよ!(ガチギレ
この清浄な世界だとfallout世界は動物も植物もめちゃくちゃ繁殖力強そうだから大増殖しそう。


「隊長、矢文です。白旗の用意ありと書いてあります」

「白旗?」

屋上で警戒態勢に当たっていた栗林から階下の伊丹へ報告がなされた。

銃を構えながら油断なく周囲の様子を伺う伊丹だったが、向こうから白旗をつけた矢文がフォルマル邸宅の屋上に届いたという報告を受けた。

自衛隊の空挺部隊と緑の怪物達との銃撃戦がいまだに向こうで行われる中、伊丹達第3偵察隊は銃弾も既に残り少なくもう一度の突撃を受ければ自衛隊員も槍や剣で応戦せざるを得ないほどに追い詰められていた。

 

 

伊丹の頭によぎったのは某国民的ロボットアニメの監督の巨大な赤いジ○と因果地平のお話であった。

白い旗が”根こそぎに殲滅する”という意味、白手袋を投げつけると同じだという可能性はある。

 

「まさか、俺たちを殲滅するって意味じゃないよな」

「何言ってるんですか、ここでも降伏は白旗ですよ。

内容ですけど・・・レレイに読んで確かめてもらったんですけど・・・・」

手紙に書かれていた内容は意外にも話し合いに応じるというものであった。

 

イタリカの領主 ミュイ伯爵令嬢へ

「降伏せよ。我々はヌカ・ワールド。

町の物資と人員を総支配人に献上しろ

抵抗は無意味だ」

 

自衛隊へは

「異世界の軍隊へ、貴公らはよく戦った。

これ以上の戦闘は双方にとって無意味である。

貴公らが帝国と敵対するのであれば、彼らに与して損害を被る理由はない。

速やかに武器を収め、撤収することを提案する。

我々は手出ししない

拒むならば”地上の太陽”で殲滅する」

 

回答期限は太陽が頂点に達する時までにとも添えられていた。

時計が発明されていない帝国では最も正確な時間を測る道具は日時計だと考えられていた。

総支配人から帝国と自衛隊双方に向けて当てられた文面は要するに降伏するか、撤退するかの違いだけである。

自衛隊については正体不明ということもあるのか、文面はわりかし穏当だがいざ戦闘になれば重火器を保有していない偵察隊にまず勝ち目はないだろう。

「ムゥ・・・この”ヌカ・ワールド”というのがわからないな・・・

帝国の人員の中で誰か知っている人はいるのかな?」

伊丹が降伏か、戦闘継続かで招集した帝国のそれぞれの代表、ピニャ・ハミルトン、そしてミュイとその側仕えの執事に問いかけるが誰もはっきりとしたことはわからない。

そんな中、正確な翻訳の為に出席してもらっていたレレイが手を上げて知っていると言った時には周囲の人間も驚いた。

「商人から聞いた話、あくまでも噂」

レレイの話によれば”異世界への門”は最低でも二つあり帝国が侵攻した”ニホン”は伊丹たちが住む世界。

もう一方の”荒野”、そこはあまりにも荒んだ世界。

ただ荒廃した建物と荒野が広がるだけの何の価値もない土地。

うだるような暑さの快晴が続いたかと思えば、毒を含んだ嵐が襲ってくる。

そこに住み着く怪異は戦闘力も凶暴性も帝国が今までに戦ったモンスターとは桁違い。

侵攻した帝国軍の部隊の中核のはずの騎士ですら圧倒する怪力のアンデッドのようなモンスター。次々と湧いて出てくる巨大な昆虫。

そして帝国の重装騎士がまるでぼろきれのように引き裂かれたという”鋼爪竜”

そんな怪異たちが常に殺し合い、奪い合い、貪り合う修羅の世界にも人間は生きている。

当然のように彼らの凶暴性や好戦性はかつて帝国を襲った蛮族のそれと比べても凄まじい。

そんな彼らが自分たちのことを”レイダー”と呼んでいる。

意味は”襲い奪うもの”

彼らは凶暴で我が強い為に幾つかのグループで殺し合い、縄張りを主張しあっていた。

そんな彼らを前の王を殺し、圧倒的な暴力とカリスマでまとめ上げたのが彼らの指導者の”オーバーボス”

彼らの蛮族王だという。

彼に関しては明らかに誇張や帝国の伝説から盗用したとしか思えない噂が付いている。

曰く、人間だが200歳を超えている。

曰く、数々の強大な怪異を斧一本で討伐した。

曰く、7日と7晩で帝国侵攻の巨大な拠点”砦”を築いた。

曰く、数々の精緻なゴーレムを創造し、使役する。

曰く、とてつもなく巨大な鎧を纏い人間を小枝のようにへし折ってしまう。

曰く、数々の怪異を僕として飼いならしている。

曰く、帝国の要塞を一人で完全に破壊した。

曰く、強大な炎の魔導師である。

曰く、矢玉も彼を避けて射手に返って行く。

曰く、一口飲むだけで傷を癒す神秘の霊薬の製法を知るただ一人の人間である。

 

(レレイは馬鹿馬鹿しいと思うが全部実話である)

 

はっきり言って、バカバカしいほどの誇張だ。

「本当だとは思えない、蛮族の王が自分を神格化するための馬鹿げた作り話だと思う」

この話にはピニャも賛同せざるを得ないが

「そんな話は妾も父上から聞いたことがない。

だいたいなんだ!?帝国皇女たる妾が知らんことを商人が知っているというのか!?」

 

「だから噂は噂、けど商人は相手が蛮族でも現実的に取引する。

一方で帝国は彼らを侮っているから情報収集も疎かにしている。

彼らの価値観は私たちとはまるで違うけど”得”と考えれば取引はする。

むしろ、今まで帝国が彼らを知ろうともしなかったのが意外」

 

「なっ!?帝国が怠けていたとでも言いたいのか!?

それでもそなたは帝国の恩顧を受けた民か」

 

副官のハミルトンも鼻息を荒くしてレレイに突っかかるがそれを”どうどう”抑えたのが我らがヒーローの伊丹二尉。

 

帝国の行動や彼らの話云々はともかく、今の状況は自衛隊にとって圧倒的に不利なのは変わらない。

要は彼らの要求を受け入れるか受け入れないかの話だ

「反対だ!奴らが約束を違えないという保証がどこにある!?

それにそなたら”ジエイタイ”は武器を置けば立ち去れるとしてもイタリカの民はどうなる!?

話ではかの蛮族どもは男は殺し、女は奴隷にするというではないか!?

そんな連中が皇女殿下や伯爵令嬢を捕えれば・・どうなるか・・・

それをわかって言っておるのだろうな!?」

ハミルトンが一気にまくし立てるが

伊丹はピニャやハミルトンやミュイが同人的な展開で屈強な男たちに無理やり押し倒され

”くっ殺せ!”から

”イヤァ!”ビリビリから

奴隷娼婦ENDな展開を想像してしまった。

エルフのテュカも年相応に性に関しては知っている。

何しろ身売りをして稼ごうと言い出したくらい大胆な方向にいく娘なのだ。

自分が野蛮な男たちに昼も夜もあーんな事やこーんな事をされ望まぬ子を身籠もる想像でちょっと赤くなっている。

「だ!大丈夫だから!エルフって見た目より頑丈だし!5,6人産まされたくらいで私メゲないから!」

「いや、駄目でしょ!ハーフエルフが毎年仕込まれる将来しか見えないから!

明らかにBADENDだから!」

伊丹も見知った少女が鬼畜な苦界に落とされるのを許容するほど人でなしではない。

だが、このままではイタリカは消滅してしまい市民も皆殺しにされてしまう。

集まった自衛隊、帝国のピニャはじめとする代表、町の有力者たちがあーすべきだ

こーすべきだと議論白熱し纏りを見せない。

「方法ならある」

中世的的な価値観が横行する特地では降伏しなかった町は男は皆殺し、女は手篭めにされるのが普通であるし今まで帝国はそうやって領土を増やしてきた。

それだけに今度は自分たちがそうなる番だと思うと悲観のあまり街に火を放って赤子や子供は刺し殺し、自分たちも皆自決してせめて相手に何も残さないようにしようという地球のマサダ砦かバンザイクリフのような案すら出た。

集団自決は何も中世的な考えではない、地球でも最近までは・・・今でもありふれたものだという事を伊丹は思い出した。

そんな中で彼らにいい解決法があるとレレイが言った。

「商人から聞いた話。蛮王は必ずしも絶対的な王ではない」

ピニャがどういうことかと聞くと

「むしろ、蛮族の利益を調整する存在だと聞いた。

この手紙には”総支配人から”という文面がある、つまりここに蛮王が来ている可能性は高い。

だから彼ら支配下の蛮族でなく、蛮王の直接の財産としてイタリカを寄進するという形を取れば、蛮族も蛮王の私有財産に手はつけられない」

 

これにはピニャも大反対した!

「バカな!ここイタリカは帝国の要衝!それを蛮族に明け渡すだと!?

そのような事、帝国が許すと思うたか!?」

思わず腰の剣に手をかけるが、周りの空気はシンと重い。

そんな中、誰もが思わぬ人物が声をあげた。

「・・・・私は、彼らに明け渡そうと思います」

この町の名目上の領主であるミュイ伯爵令嬢だった。

「ミュイ様!?何をおっしゃっておられるのですか!?」

 

「聞いてください、確かに彼らが蛮族なのは明らかでしょう。

ですが帝国から送られて来た兵がいかに皇女殿下率いるとはいえこれだけというのは?

そうです、我々は帝国から見捨てられ滅びよと命ぜられたも同然なのです。

異界の軍も民を守るためと義憤に駆られて我らに味方してくれましたが、結果として彼らをもまた苦境に追いやってしまいました。

我らは今や弱く、自らを守る術も持たない以上・・

悲しい事ですが強者に媚びるしかないのです。

無論、彼らに無条件でひれ伏すのではありません。

イタリカが存続し繁栄することが彼らの利にもなるという事を納得させられれば有利な条件で彼らの譲歩を引き出せるやもしれません」

 

そう言ってすっと場をたつミュイ伯爵令嬢。

「伊丹殿、あの文面にはイタリカと”ジエイタイ”への二者への文が認められておりました。

我らに加勢してもらった上にこのような事を更に頼むのは心苦しいのですが、どうか私と共にかの蛮王と交渉に臨んでもらいたいのです

あなた方のお力添えがあれば、あるいは市民の生命には危害を加えないという確約を得られるやもしれません」

”市民の生命”それはつまり財産や”市民”には含まれないこの町の有力者の身の安全はわからないという事だ。

特地では新たに支配した領地の旧支配層は僅かに血を引くものも徹底的に一掃される傾向にある。これがマキャベリズムというものなのはわかっているが、この少女は自らを犠牲に捧げ市民を守ろうというのがわかってしまった。

「わかりました・・・伊丹二尉は全力でイタリカの全ての人を守ります」

さすがは英雄、伊丹はミュイも含めて全てのイタリカ市民を守るために蛮王。

総支配人と交渉に臨む覚悟をした。

そうと決まれば矢文を打ち込んで来た男に声をかける。

「おーい!我々は”ニホン”の”ジエイタイ”とイタリカの代表だ!

”総支配人”と交渉の準備ができたから、今からそちらに行く!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Battle without Arms

  私はアルファでありオメガである。最初であり最後である。私は渇く者には工場出荷したての炭酸が抜けていないヌカコーラのボトルからキャップと引き換えに飲ませる。
ヌカチェリーの書 第21章6節

Garden of Eden Creation Kit (G.E.C.K.) は Vault-Tec 社 の Future-Tec部門によって開発された惑星改造モジュールです。装置の目的は核戦争後の荒廃した大地を生き返らせることでした。設計や装置のコンセプトは Dr.スタニスラウス ブラウン (天才的で利己的なVault-Tecの研究者)によって作られ、完成しました。

アメリカの超技術の集大成
種類がいくつかある
2287年のマサチューセッツ州では遂に自立思考し行動、自動的に材料を収集し、農業・商業・住居・鉛筆から兵器まで生産する工業、娯楽施設、核融合発電所まで設営、巨大なVaultを短時間で建造し、敵を排除し、生命を創造し、自我を持ったロボットも生産し、文明を独力で再建し、従わない奴は説得(物理)もする最新機種が登場する。
言うまでもなく総支配人のことである。
予期せぬバグで世界征服を始めてもVault-Tecは一切の責任を負いません。

最近流行の異世界転移にはこれ持っていけばいいんじゃね?
時々即死級の核爆弾になるけど

ウェイストランド人
戦闘民族 
妖怪 新鮮な肉置いてけ 
死体は飾り
核爆弾を崇めたりする 
どうも志々雄真実級の超人が普通にいる様子

世紀末
文明が崩壊し、義務教育もないので文盲も普通
人間と区別がつかない人造人間が製造される一方で
殆どの人間は中世レベルの特地と比べても野蛮人扱いされてもやむを得ないほど


この世界では皇帝や領主の銅像とか街にありそう
だが一瞬で総支配人に解体され電球に変わる運命である

新アメリカ合衆国
帝国を消滅させた後に総支配人が特地に建設予定の国
総支配人 電気・水道・ヌカコーラ・核電池といった生活インフラの支配者
総支配人の血縁 科学者・市民
人造人間 エンジニア 
ロボット  総支配人に絶対服従の兵隊
レイダー 鉄砲玉
その他 知らんな、好きにしろ 

法律
力こそ正義!いい時代になったものだ 以上終わり

ヌカドルが公式貨幣
1ヌカドル=ヌカコーラ一本
タバコ・キャップ・薬・銃弾も通貨
硬貨?貯蓄?知らない概念ですね


地球・異世界を問わず貴金属・・・
硬貨や豪華な装飾品、王冠にも使われ王権の象徴には欠かせない・・・・
なのだがウェイストランド価値観では兵器の材料の一種でしかない
ベガスならともかく、連邦では牛糞とプラスチックが原料の最も安価な薬物のジェットと同じ価値しかない
こんなもんケツ拭く紙にもなりゃしねぇってのによ!状態の一歩手前

ヌカ・コーラのレシピ
世紀末的契約の書
門外不出の絶対権力の象徴 

民主主義
「昔は”でもくらしぃ”があって、世界は素晴らしかった云々カンヌン』
USS Democracy
「おっ、この船”でもくらしぃ”って書いてある!これが素晴らしいものだな!」
戦略核ミサイルがどっさり
「そうか、”でもくらしぃ”とはこういうことだったのか!
これが”けーもー”ということなのか。アトム様を讃えよ!」


自衛隊を代表して伊丹二尉、帝国を代表してピニャ皇女とハミルトン、

ミュイ伯爵令嬢とそのお付きの執事にメイド達、通訳としての役割を果たしたいとレレイが中心として同行することとなったが

問題は誰が共に同行するかという問題だった。

「桑原曹長はここに残って万が一に備えてください」

「しかし、誰かが付いて行くべきでしょう・・・」

「いえ、戦力の面から考えても小銃を持てる隊員は一人でも失うわけには行きません。

まぁ、俺のわがままですがね・・・・」

伊丹隊長はせめて自分の部隊の隊員は万が一が起こったとしても失いたくないという普段の勤務態度からは離れた責任感を見せた。

「それなら・・・私も行きます!」

と、元気よく手を挙げたのはエルフのテュカだが

「駄目、レレイが付いてきてくれるだけでも十分危険なんだ。

これ以上、危険を増やすわけにはいかない」

とはっきり断られしゅんとしてしまった。

伊丹としては気持ちは嬉しいが、これ以上の危険は冒せないと・・・

と思いきや

「それなら私がついてくわ、ヨージって何となく放っておけないし」

とちゃっかりいつのまにか出発組の側に混じっていたのはロウリィだった。

「ちょ!駄目ですよ、言ったでしょ万が一に備えてこれ以上の人員は割けないって・・・

それに怪我してるじゃないですか」

「怪我ならもう心配いらないわよ。その万が一に備えるために私がついて行くのよ。

大丈夫、いざって時には大暴れすればいいだけだし」

「確かに・・・って!交渉ぶっ壊れること前提にしちゃダメですから!

それより、伯爵令嬢は大丈夫ですか?その・・・」

 

レレイが翻訳するが、伊丹が言いたいことはわかる。

あまりにも幼すぎる

「ご懸念ご尤。しかし私もお飾りとはいえ領主としての責務と誇りがございます

・・・・本来ならば私達があなた達を巻き込んでしまった形の筈ですのにね・・・」

と、この事態を収めることに集中している。

むしろ、ここまでやってくれた伊丹達偵察隊と今も本来は敵のはずなのに死傷者を出している自衛隊に感謝していた。

 

伊丹達交渉団も白旗を掲げてゆっくりと相手が”話し合い”の場所に指定してきた場所の商館に六人が用心深く歩いてくる。

向こうは5人でくるとパシリが伝えてきた・・・

伝えてきたのだが・・・

 

 

「止まれグリーンマン。

フゥン、お前が例の異界の軍隊の兵隊だってか?

ひ弱なグリーンランド人を10万人ほど殺せた?だから何だ?

ここにはご自慢の榴弾砲は持ってこなかったのか?あるいは迫撃砲か?」

交渉の場に指定された建物の物陰から相手が銃を構えながら姿を現した。

商館に入るなり巨大なミニガンを突きつけられました。

と、いうか全員がこっちに銃を突きつけているんですけど・・・

今の伊丹は64式小銃を提げて対抗しているが、ミニガンを構えたパワーアーマー3体とどちらが有利かは考えるまでもない。

5人の内訳は青くてでかいのが一人、美人が一人、黒い鎧が2人に犬が一匹・・・

犬?いや人じゃないんですけど・・

そのうちに美人がこっちに銃を向けながら伊丹に話しかける。

「おかしな真似は無しだグリーンマン。

今、指一本でも動かしたら壁をあんたの脳みそでペイントするからね」

レレイが顔を蒼ざめながらマイルドに通訳するが、伊丹にもそのおおよその意味はわかる。

そういうなり物凄い力で大男が伊丹を壁に押し付け身体検査をし

荒々しく小銃と手持ちの9mm拳銃をもぎ取る。

ロウリィが動こうとするが伊丹は制して武器を置かせる。

「あんたらもだ、グリーンランダー。

バラバラ死体になりたくなきゃ武器をそこの箱の中に置きな」

『断る!我らは交渉に(BANG!』

毅然とした態度で臨もうとしたピニャであったが顔のすぐそばをマグスの44マグナムの弾丸が過ぎ去っていった感覚にへたり込んでしまった。

「おい、そこの嬢ちゃん。私のフランクに伝えな。

言うことを聞け、さもないと殺す』

レイダーの方々の威圧的な交渉にはロウリィもムッときて斧に力を込めるが、

その時に部屋の奥、青い鎧の男の空っぽで凄まじい殺気が全身を襲った。

(な・・・何よあれ・・・)

レレいの馬鹿げた噂話も納得だった・・・亜神の自分ですら未だにあそこまでの境地には至っていない。

そう、何の感慨もなく平然と人を”必要だから”殺す。

楽しむわけでも、狂気に駆られてでもない。

ただ、淡々とつまらない仕事をこなすように・・・

(面白いわぁ・・・・ヨージと出会ってから・・またこんな逸材に出会えるなんてね。

これも我が神のお導きってやつかしら)

ロウリィはこの傲慢な人間どもがどういう結末を出すのか亜神として見守ることにした。

 

『そこまでだ、マグス。必要はない』

『ちょっと!これは私の仕事で・・』

『この場の決定権はこの交渉が始まった時点で俺に移った、こいつらが話をしたいのは俺だ』

そう言うと、部下を下がらせ青い鎧の男が6人の目の前に出てくる。

伊丹もピニャもミュイもその巨体に圧倒されるように内心では緊張するが、背を伸ばし凛とした態度で臨む。

『さて、私が”総支配人”だ。要求はすでに伝えた。

受け入れるか、死ぬかどちらかだ』

開幕にこのど直球な脅し、だがウェイストランドでは紳士的な部類に入る。

 

『よろしいでしょうか、総支配人殿。

あなた様の要求はこうでした

”町の物資と人員を総支配人に献上しろ”と』

ミュイは総支配人からの要求には簡潔だけに交渉の余地はあると感じていた。

大雑把な要求は書かれていないことは話せという意志の表れだ。

『いかにも』

 

その点は断れないだろう、ならば受け入れて次に託すのみ。

『わかりました、献上いたしましょう。あなた方のお力は領主として伺っております。

抵抗は無意味、それもまた分かっております。

代わりに提案をよろしいでしょうか?』

 

『提案?聞こう』

 

『この町をあなた様の支配下に置き、一方では”ニホン”と”帝国”の商人に対しては自由で開かれた自由都市として開放致したいと商人たちが要望しております

つきましては我が家がイタリカ領主であり続けることと、

我々に引き続き自衛の為の武装と防衛の強化にご助力いただきたいのです』

 

『面白いことを言う。名目上は私に臣従するが、実質的には自由都市にせよと?

私にとってどんな得があると言うのだ?

お前たちが武装を強化し、”帝国”や”ニホン”と組んで私に反旗を翻すのを私が助けるようなものではないかね?』

 

『ご覧の通り、この街は今大きな被害を受けてしまいました・・・・

あなた様にとっては雑魚同然のたかが600の野盗ですら我々を打ちのめせるのです。

更には新しく出現した緑の怪異にとっては私どもの壁は薄衣も同然でした。

このような状況では商人たちがこのイタリカの街を出て行ってしまうでしょう。

防備の弱い街を拠点とする商人なぞ居りませぬゆえ。

そうなればこの街は自然と衰退し、領民の流出に歯止めが効かなくなればあなた様が臨む”農作物”すら献上できなくなりますでしょう

ゆえにこの度のあなた様の攻撃も無駄足だったと言うことになります』

 

『ほう・・・・献上品の安定供給を盾に逆に私を脅すか、子供ながらよくやる。

お飾りの領主だと聞いていたが、なかなかどうしてやるじゃないか』

 

総支配人は考える・・・確かに農民が逃げ出してしまってはここでなら順調に育つ可能性が高いヌカ・コーラの原料となるパッションフルーツの供給も危うくなってしまう・・・

ただでさえ、新しいヌカコーラ本位制度をスタートさせようと言うこの時期に大きな供給元でぐずつくのはまずい。

『たとえ、我々が力をつけたとしてもそれがどうしたと言うのでしょうか?

蟻がねずみに変わろうとドラゴンの前では無力であることは同じ』

 

この子供・・・実にあざといな。これで10歳かそこらか?

成る程、貴族という存在が人々の上に立ち続けられるわけだ。

 

『いいだろう、総支配人が安全を与えお前たちが農作物を献上する。

だが人質なしというわけにはいかないぞ?』

 

『もちろんです、大事な私の叔母を忠誠の証としてお受け取りください』

 

実のところ、ミュイを差し置いてイタリカの実権を握ろうと画策するあの二人を排除することもできる策だが

勿論総支配人は知らない。

 

『それで”ディール”だ.

・・・・さて、そちらのおふた方はどうかな?』

今度は伊丹とピニャに血がこびりついたスワッターを右手で玩びながら話しかける。

 

『話は聞いている・・・ピニャ皇女・・・皇帝の3女、だからなんだ?

そして・・・・お前はなんだ?迷彩服の東洋人?

お前は何者だ?チャイニーズなのか?

なぜここにいる?なぜ帝国と共闘している?

お前が属している軍隊は何だ?』

矢継ぎ早に伊丹に質問を浴びせかける総支配人だった・・・

例の軍隊がチャイニーズだったら盗んだUSSデモクラシーの SLBMで別のゲートを核攻撃しよう。

これが民主主義の力だ!(核爆発)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Pay me, now!

人物説明
総支配人 Fallout4の主人公
色々あって”愛などいらぬ!”
ヌカコーラ社のCEO
聖帝ポジション

マグス・ブラック
オペレーターズのボス
キャップ大好き 犯罪は捕まらなければセーフ
北斗でいうとジャッカルっぽい
 
奴隷を使ってお薬の人体実験を行う
薬剤師のリジーは北斗でいうとアミバ
『ん!?まちがったかな・・・』

ウィリス 影が薄い 思いつかない

ディサイプルズ
全員サイコ
それを言ったら、レイダーはみんなサイコ
出ない

パワーアーマー
ヌカ・ワールドレイダーが多数保有
T-60が主力

パックス
メイソン 群のボス 
アオーン
きっと獣人
ハーシーンの信徒 
狼人間にいつか変身する
牙一族っぽい
デスクローも狩る

ヌカコーラ
某世界一有名な飲み物のパロディ
ちなみに1日に7億本売れてると言われている
理論上は地球人は年に三十本は飲むはず
ヌカコーラ社は滅びぬ!何度でも蘇るのだ!

核ミサイル
広島級で約15kt
ちなみに総支配人が「こんなもんCoAに任せられんわ!」とUSS Democracyから盗んだ核ミサイルは大きさからしてトライデントⅡ相当だとすると
1発に500ktが14発入りのMIRV
オハイオ級潜水艦並みに入るなら24発
合計168メガトンで単純に広島級の一万倍以上の破壊力がある。
「すげぇ…世界が燃えちまうわけだぜ…」


『質問に答えろ、余計な無駄話は聞きたく無い』

 

「わ、私はニホン国ジエイタイの伊丹洋司二尉・・・です」

伊丹の脳天に44マグナムを突きつけながら、いつでも発射できる体制で総支配人は周りのレイダーに奇襲に備えさえる。

『つまり・・・軍隊の士官というわけか。レッドチャイニーズではないと?

確かにアジア系ではあるが・・・・装備も旗も違うな。

”二フォン”というのがどこのどいつかは知らないが”帝国”もよくわからなんしな。

まぁいいだろう、こちらの要求はもう知っているな?

すぐにこの街から軍隊を撤退させるよう上層部に伝えろ。

無意味な戦闘でこれ以上貴重な兵力を失うのはお互いに避けたいだろう』

このような感じでレレイに伝えさせたが伊丹の回答は

「自衛隊の行動に関しては偵察隊である自分たちは自分の権限で動けるが、現在展開中のヘリ部隊は自分の要請で到着したが自分の指揮下では無い。

故に撤退するかどうか自分では決められない」

と、伝えると総支配人は怒り出した。

『お前に決定権が無いだと?ではなぜこの場にいる!?上官の決定に従うというのなら、

すぐにお前の上官に報告して撤退するがいい!

そもそも、お前達の軍隊はなぜこの街に進駐した?』

伊丹はアルヌスの丘の難民、翼竜の鱗、そして生活資金のための売却という流れを説明した。

説明したのはもっぱらレレイだったが。

『つまり、別に戦略的意味は無いがただの人助けの為に兵を動員したと?

そんなバカな説明を真に受けるほど俺がお人好しだと思ったのか?

兵を独断で動かして独断で戦闘に参加させた、そのくせに今は決定権が無いと言う!

兵士を動かすのにどれだけの物資が必要か知っているのだぞ!俺を馬鹿だと思ったか!?』

 

伊丹は相手を説得した!CHAが足りなかった!スピーチチャレンジ失敗!

総支配人が44のハンマーを起こした!いまにも引き金が引かれそうだ!

至近距離で喰らったら、人間の頭蓋骨なんぞ卵の殻も同然!

伊丹ピンチ!だがウェイストランドでは談笑が一転し銃撃戦のスプラッターはチャメシインシデント!

ハンバーガーが並ぶ食卓に3秒後には別種のハンバーガーが並ばないという保証はどこにも無い。

 

『待って、イタミの説明は本当。

それに意義ならある』

レレイは自衛隊の庇護下に置かれた難民が自活できることによる自衛隊の負担軽減、

及びその相場に足りない分の代金代わりとして情報を商人に提供するように求めたことを説明した。

『その結果として、あなたと交渉しこの街をあなたの私有財産として認めさせることができた。

多くの人が略奪されるよりは上納金で済めばいいとも納得してくれた。

不確定要素が強かったけど、結果として我々にとっても利になる行動だった』

レレイの説得!

利があることを理論的に説明した。

説得成功!総支配人は伊丹を殺すことを一時中断した。

『ふむ、筋は通っている。

お前は1ブロックも歩かないうちに死ぬタイプだな。

だがそれならばなぜ、撤退しない。やはりこの街を支配したいのか?』

 

『”ジエイタイ”は”人道的”ということを重視している。

イタミはそれに加えて”帝国”に”ジエイタイ”の力をこの皇女の前で見せつけることで

”帝国”との講話を有利にしようという魂胆もあった』

 

確かに二百年前のアメリカ軍も最前線の”前線野郎”と自らを呼ぶ誇り高い戦士たちは自らを律していた。

だがその他の部隊の腐敗ぶりは酷いものだった、高級将校が欠陥製品をコネ採用したり天下り、部下への責任の丸投げ、無謀な自殺任務の実施は当たり前。

戦死者数は”軍事機密”の一言で隠蔽され、現地部隊でも殆どの部隊で給料の未払い・食料物資の不足は深刻なものだった。

遂には軍が市民に向けて発砲する事態も日常的になってしまっていた。

やはり十年以上続く戦争で皆おかしくなってしまったのだろう。

だが・・・・目の前にいる男は栄養状態も良く、軍隊は良く統率され装備もみすぼらしく無い。

よほど復興した文明の国なのだろう。

『講話ね・・・条件にもよるだろうがお手並み拝見といこう。

いいだろう、我々の条件は”ジエイタイ”はイタリカから撤退する。

我々は手を出さない、双方に出た損害は両者痛み分けとして不問にする

これを仮の停戦条件としよう、異存はないか?兵士よ』

 

「・・・いいですよ。えーとですね、その代わりに・・

レレイ、こう伝えてくれないか?

『緑の巨人に攻撃されているから、撤退したくても撤退できない。

協力して撃退してくれれば我々も速やかに撤退できる』って」

 

レレイが伊丹の言葉をわかりやすく伝える。

話の流れは日本語で考える→簡単な日本語でレレイに伝える→レレイが簡単な帝国語で伝える→総支配人が慣れない帝国語で苦労する。

という実に遠回りなやり方で伝えるしかない。

「俺にスーパーミュータント退治を手伝えと?

どんな義理があってだ?お前たちが戦えば放っておけば退治できる。

俺が手を汚す必要性がどこにある?」

 

『総支配人様、私からもお願いいたします。

先ほどの約定、イタリカの安全の約束と引き換えの献上。

約定を遵守し、かの怪異どもを撃退していただくのも今のあなた様の務めかと存じます』

 

「いいだろう、そしてお前たちは戻ってこの”総支配人”の力の証人になるがいい」

自衛隊の偵察隊長の伊丹と皇女のピニャに更に続ける

「私に敵はいない、皆死んだ。

これから敵になるものは皆死ぬだろう。

お前たちも私に敵対すると言うのなら・・・・

お前達の上官が懸命であることを願っておくんだな」

そう言うなり伊丹に武器を返還する。

「いい銃だな、兵士。

丁寧な作りだ、今時は珍しい。どこで買った?」

と、伊丹の64式をチェックしていた総支配人が伊丹に返す。

「ハァ、どうも。それと買ったんじゃなくて支給品ですよ」

そうか・・と総支配人は一瞬考え込むが、とりあえずは目の前の目標を解決すべくレーザーガトリングを手にする

自衛隊のヘリを銃撃した時に使い切った電池を交換し、サイドアームのレーザー銃と44マグナムを用意する。

「先導してもらおうか兵士。妙なことは考えるな、無駄な死人が増えるだけだ」

銃を受け取り市街戦で荒れ果てた道に出ると、遠くでは未だに自衛隊がスーパーミュータントと交戦している銃声が聞こえてくる。

伊丹のなんやかんやで他人に頼る戦略はここでは正しい。

もっとも、攻撃された他の自衛隊員が利害が合致したから今からレイダーと合同戦線を組みます

などという伊丹の考えに同意するかは別だが。

しかし帝国と一時的に同盟を組み、更に今は総支配人とも同盟を組むという流れに持って行った伊丹は実は”運び屋”の適性があるのかもしれない。

「総支配人、そいつの言うことはもっともだけど

私らは今回は組まないよ。

アグリーの殲滅はあんたの義務であって私らの義務じゃ無いんだからね」

マグスは総支配人の自衛隊を援護するという行動に反対だった。

「だがマグス、もともとこの街の攻略はオペレーターズに任せたはずだ。

それが駄目になったから俺が来たんだぞ、結果がどうあれ仕事は仕事だ」

「わかったよ、あんたがボスだ。

うちのPAを二人連れてきな。BoSから奪った奴だから性能は保証するよ.

ああそれと、そこのお嬢ちゃん二人は残りな。

グリーンマンとこの街の連中との調停は済んでも、あんたらとの調停が済んだわけじゃ無いから人質になってもらうよ」

銃をピニャとハミルトンに突きつけて残るように命令する。

「さてと・・・・帝国が五体満足のあんたらに幾らの値段をつけるか話し合おうじゃ無いか」

やっぱりこうなる、レイダーの前に重要な人物がのこのこ現れると間違いなくこうなるのはわかりきった筈なのに自分を差し置いて敵国の士官が違う敵と交渉するなど!

と息巻いて現れたピニャの残念な箱入り娘ぶりがうかがえる。

「どうだいボス、この小娘二人を買わないか?2つセットで即金なら5万キャップに負けておくよ。あんたになら安いもんだろ?」

「その娘か?悪いが、貴族の娘はどれもこれもめんどくさい性格ばかりだ」

「だ、そうだよ。残念だったね、あんたのパパが身代金を払ってくれることに期待だ。

さぁ!ついてきな!それとも膝に銃弾を撃ち込まれて引きずられたいのかい!?」

ピニャとハミルトンは武器を取り上げられ,

目つきのきついマグスに銃口を向けられて顔面蒼白だ。

そんな所に首をつっこむ者は一人しかいない。

伊丹だ

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!

特別国家公務員の目の前で思いっきり誘拐・人身売買を見逃すわけにもいかないんですよ!」

マグスが余計な口を挟んだ伊丹にブチ切れた!

まずい!ただでさえ、損失が出て腹を立てている今の彼女に突っかかるのは火薬庫に松明を持って入るような者!

「なんだい!?グリーンマン!余計なお節介しようってんなら、いくら総支配人が調停に立つっててもねぇ!」

マグスは躊躇いなく次元大介並みの0.3秒の早業でマグナムの銃口を伊丹に素早く向けて発砲した。

だが総支配人が一瞬早くその銃口を掴んで逸らし、銃弾は伊丹の被る鉄帽を少し削っただけで明後日の方向に飛んでいった。

ウェイストランドではちょっとした理由で本気の殺し合いが毎日起こるから仕方ないね。

「落ち着けよマグス。それにそこの兵士もだ。

それなら、お前がこのお嬢さんたちの身代金を払うのか?

ここから先はお前には関係ないだろう?」

「ですので待ってください。

ほら、帝国の重要人物の皇女とそのお付きを誘拐したら帝国とあなた方が本気で戦争状態に入ってしまうでしょ?」

伊丹はレレイに習って総支配人に利害で納得させようとした。

「それならば心配はいらない、我々は既に帝国と全面戦争に突入している。

そして勝利するのはテクノロジーと戦意に優れる我々だ

ここに重要人物という人質も加えれば完全勝利は更に揺るがなくなるだろう」

説得失敗!なぜか説得が上手くいかない、そんな時もあるから気にするな!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Cap and Gun

64式小銃
ゲートで登場する自衛隊の小銃
2287年のコンバットライフル相当

ハンドメイドライフル
ヌカワールドでの一般的な小銃
ぶっちゃけ手作りAK47
コマンドーっぽい銃床がお気に入り
ショベルから小銃を作る連邦のレイダーの器用さよ

パイプガン
腐る程手に入る
ご自由にお持ち帰りください
弾が出ればいい人向け
銃も安いし弾も安い
38口径拳銃弾使用の粗末な銃 
自衛隊の9mm機関拳銃相当
見た目が錆びたステンガンっぽい
ステンガンも一部ではパイプガンと呼ばれていた
思ったんだが拳銃弾を使うんだから、オートならサブマシンガンでは?

日本
総支配人が生まれる前に中国に併合された
2067年の最終戦争勃発時には単なる中国の一部分
民族浄化されたかどうかは不明だがチベットやウイグル同様になったと思われる
その後は不明だが核戦争で消滅した結果には変わりがない

中国 
資源の枯渇から油田を求めて2067年にアメリカ・アラスカに侵攻
十年以上続いた地獄のような戦争を終わらせるために核攻撃をした
結果として地球そのものが第3次世界大戦すら生ぬるいリアル世紀末になった

総支配人
デズの声になぜかイラっとした
なのでレールロード壊滅には反省の念は無い
BoSには悪いことをした・・・これが戦争なのか・・・
このカルマ値と世界征服の野望持ちだと
実はアルドゥインかも
「世界を喰らいし者」だとしても
喰うべき世界は寝ているうちに燃え尽きて
放射能塗れの灰になっていたというオチ

ヌカレイダー
蛮族
銃を使う
化学兵器使う
核兵器もよく使う
ヌカコーラよりも安い命
ヒャッハー!エンジョイ&エキサイティング!
奪って犯して喰う 
帝国が進路や行動を予想できないのも道理、当の本人たちもその場のノリで決めている
総支配人
「自由にやれ!ここは自由の国だ!」
「ヒャッハー!」


「なるほどな、そういうことか。

銃を下ろせ、この小娘は既に用済みだ。

殺す価値も捕虜にする価値もない。

わかるか?0キャップだよ」

 

そう言ってピニャとハミルトンを持って帰って,身代金か奴隷市場に沈めるかしようとしていたマグスを止める。

わざと特地の言葉で話すのはこの場にいる物にもわかるように

「考えれば簡単なこと。偵察などという捕虜になる可能性も高い捨て石に重要人物を選ぶ理由。

それはこの小娘がもう重要でないから。

例のアルヌスの侵攻の失敗とやらで帝国の領地持ちの椅子の座には空白が大量にできた。

もともと、この小娘はどこぞの大領主に売っぱらって権力の確保に使う腹立ったんだろう。

だが、それも無用になった。

大領主が大勢いなくなった今なら御家お取り潰しからの天領への編入も簡単。

今となってはこの小娘をどこかに家に協力と引き換えに売る意味がない。

むしろ将来的に帝室に対抗できる大領主に”帝室の血”をくれてやる事になるからマイナスだな。

玉座を巡っての御家争いが目に浮かぶ。

こいつはもう、不良債権だよ。

むしろ、”名誉の戦死”を遂げてくれた方が皇帝にとってはラッキーだろう。

”帝国の為に命を捧げた悲劇のヒロイン” 実に大衆受けしそうな物語だ」

 

娘の死を願う父親という皇帝像を簡単に説明する総支配人。

これにはピニャもハミルトンも大いに怒り、皇帝陛下を侮辱するか!と眉間に青筋を立てる。

 

「侮辱?何を勘違いしている?

支配者にとって手持ち資産の有効活用は褒められこそすれ、非難されることではない。

お前たち小さき者の価値観で世界を測ろうとすることこそ侮辱だ」

 

そういうなり、ピニャとハミルトンに武器を返し伊丹に向き直って自衛隊の場所に先導するように命令する。

「PAは俺についてこい、邪魔するものは誰であろうと殺せ。

他のものはここにフォルマル邸に旗を掲げに行け」

 

総支配人に命令一下で素早く動きだすレイダー達。

戦闘能力が皆無のミュイとそのお付きの執事は他のレイダー達に囲まれながらフォルマル邸に戻り

イタリカが総支配人の支配下に入ったことを邸宅で待っている市民や残りの自衛隊員に伝えることになる。

 

自衛隊の降下部隊とスーパーミュータントの戦いは未だに続いていた。

昨日の夜からぶっ続けて戦闘を続けていたスーパーミュータントだが全く疲労の色を見せない。

むしろ血に酔ってますます攻撃的、かつ凶暴に降下した自衛隊員に攻撃を続けていた。

「死ねぇ!死ね人間!」

「狩野三曹がやられた!誰か援護しろ!」

今も自衛隊員の一人が銃弾を食らって倒れる。

市街地ゆえシリアでのロシア軍のような無差別大規模爆撃もできず、

そもそも自衛隊に戦略爆撃機は無いのでしようがないが。

歩兵と歩兵、ライフルとライフルの戦いではもはや差は存在しない。

筋肉ダルマのスーパーミュータントの方が圧倒的に有利になっていた。

「クソゥ!このままじゃ全滅しちまうぞ」

遮蔽物に隠れ、防御態勢をとっていた自衛隊だがスーパーミュータントの死を恐れない蛮勇と頑強な肉体、そしてやたらめったら撃ってくる銃弾の雨の前に次々と死傷者を増やしていく。

『弱い!弱いぞ緑のニンゲン!強いスーパーミュータントは弱いニンゲン喰ってやる!

喰ってお前らスーパーミュータントの力になる!それが正しいこと!』

64式小銃の7.62mmを喰らっても気にせずに直進して剣を振りかざし自衛隊員を切り裂かれた。

銃の撃ち合いで均衡が取れていた自衛隊とスーパーミュータント軍だが至近戦が白兵戦へと変わったことでこの均衡は一気に崩れた。

・・・・自衛隊の一角が崩れると側面をとったスーパーミュータントは怪力を生かして建物の壁を崩し防御陣地の他の自衛隊員に側面から襲いかかった。

スーパーミュータントが恐れられているのは野獣並みの怪力と銃火器を使える程度の知能の融合だけではない。

それは戦いのうまさ。

実弾飛び交う実戦が毎日のウェイストランドとあくまでも”演習”の日本の違い。

本能的に相手が弱いところを突くスーパーミュータントの動物の感は軍事組織のBoSですら脅威と認めている。

「う、うわぁぁぁ!」

側面を突かれた自衛隊は人間同士の戦いではありえないほどの大胆さで突っ込んでくるスーパーミュータントのハンマーで頭を砕かれた。

防御陣地のど真ん中に敵が出てきたのを皮切りに自衛隊員は次々とその強みを活かせずにやられていく。

そんな様子をアルヌスで残っていた建物の屋上から見ていた総支配人はその戦いぶりを見てどれほどの戦闘力かを計測する。

「よく訓練されてはいる、が実戦経験不足だな。

市街地への被害や味方撃ちを配慮するより、ヘリはありったけの火力を叩き込むべきだな」

 

はっきり言って冷酷な決断だが、アンカレッジでは味方を殺すことを恐れていては自分も味方も結局は殺すことになった。

もっともそんな冷酷な決断をせざるをえない世界というのは不幸な世界だろう。

「まぁいい、これ以上放っておいたら今度はこっちがスーパーミュータントを全部相手にせざるをえないしな。

そろそろ行くとしよう」

スーパーミュータントを横合いから思いっきり殴りつけられるタイミングを測っていた。

「いや、あの・・・・早く援護に行って欲しいんですけど・・・」

 

「俺に命令するのか?いいだろう。

まずお前が行って5、6発撃たれてくれないか。

それで敵の場所がはっきりとわかる」

「いやいやいや!死んじゃいますから!」

 

伊丹を囮に敵の正確な場所を測定しようという総支配人の決断。

実際のところはヘルメットのターゲッティングHUDを使えば簡単に予測できる。

今現在、自衛隊と交戦しているスーパーミュータントの数は30体ほど。

イタリカに攻め込んだ当初は60体以上だったのだからかなり減らせている。

200名以上の自衛隊を相手に市街戦という接近戦を活かせるフィールドで有利に立っている。

相当な数の死傷者が出ている様子だ。

総支配人の目には今もスーパーミュータントの居場所と自衛隊員の居場所が同時に表示され双方の動きが手に取るようにわかる。

とはいえ、細かい場所までわかるわけではないし伊丹の戦闘力を測りたいというのもある。

ジエイタイイン 脅威度30 実弾防御60  エネルギー防御10 放射能耐性5

目前の兵士は明らかに脅威度に対して防御力が極端に低い。

64式小銃の弾薬が308よりも威力の低い弱装弾だということから”二フォン”の文明具合がどの程度なのかいまいちよくわからなかった。

ウェイストランドに弾薬の威力を増やす者はいてもわざわざ減らす奴はいなかったからだ。

だが連射するためと考えるなら?

比較的高価な308を大量に使えるほど潤沢な生産力を持っているということになり、

脅威度はかなり高い。

高い工作精度がなければ作れない複雑な構造の銃を支給できる時点で豊かなのだろう。

古臭い内燃機関ながら戦闘ヘリを運用できる時点で優れた技術力を持っているに違いない。

 

「では行こう。

俺が制圧射撃でアグリー連中を引きつけてやる。

若造、お前は突破して自軍の現場指揮官と話をつけてこい。

間違ってもこっちに撃ってくるなよ、殲滅しなきゃならなくなるからな」

さらっと伊丹に銃撃戦の最中を突っ切って自衛隊の空挺団と話をつけてこいという総支配人の無茶な要求であった。

なお、-210年すれば総支配人の方が伊丹より五年以上若いのだが・・・

遠距離からの制圧射撃ということで総支配人もが正面から引き付けるから、レイダーT-60F2体に側面に回り込んでスーパーミュータントを撃ち殺すように指示する。

伊丹はその隙に銃弾を掻い潜って自衛隊の陣地に滑り込むだけの簡単な仕事だ。

銃弾が当たったら?

”災難と思って諦めな”(プレデター2感

 

「後退!後退しろ!」

ヘリが墜落し、搭乗者の救助に向かった自衛隊員であったが墜落現場の騒ぎに惹かれてやってきたスーパーミュータントの一団に襲撃され既に多数の死傷者を出していた。

これが開けた草原などで準備を整えた上での自衛隊であったならばスパミュも太刀打ちできなかったろう。

射程外からロケットや砲弾を撃ち込んでアルヌスのように一方的展開だったはずだ。

それをさせない為に接近戦に持ち込む程度の頭脳と分別と指揮系統は残っているのも元人間のスパミュが恐れられている理由だが。

なんでそんな余計なところだけは残ってるかって?

世紀末だからさ。

「ガッハッハっ!お前ら人間やっぱり弱い!兄弟は強い!サイキョー!ムテキ!

ここもスーパーミュータントのものになる!お前たちみんな新鮮な肉!」

調子に乗ったスパミュの一体が自衛隊員を殺して奪った64式小銃を右手で掲げて噴水のあった広場で振りかざす。

しかしそんな死亡フラグを満たしてしまったスーパーミュータントの命も長続きしなかった。

遠距離から飛来した赤い光線を受けてたちまち灰になるスーパーミュータント。

『あー!?兄弟やられた!?メタルマン!?メタルマンナンデェ!?』

『殺す!メタルマンもグリーンマンも殺して頭もぎ取る!』

二手に分かれて総支配人の方向に今度はスーパーミュータントが殺到してきた。

事前の計画もあっさり忘れて目の前の敵がいたらとりあえず叩きのめしに行くという実にわかりやすい行動だ。

・・・・唯一の計算違いは伊丹が進む方向とスーパーミュータントの一団が進む方向が被ってしまったことだろう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Let's Dance, Baby

馬、鎧、槍に最低でも騎士一人の武装を揃えるには一人だけで500ha必要。
中世ファンタジーでは決戦兵器・・・の筈だがラノベではせいぜい中ボスにされてしまう。
宗教騎士団を形成!騎士といえど一兵卒!団長の命令に絶対服従!
すると薩人マシン、テンプル騎士団や聖ヨハネ騎士団のように強くなる。
チームワークは大切ってことだね。

マサチューセッツ州
ラノベ異世界が天国にしか思えないほどの世紀末
だが世紀末度が更に振り切れて頭のおかしいキャピタル (旧ワシントンDC)に比べれば文明的で平和で快適な土地に思えてくる不思議

ヌカ・ワールド レイダー
アメリカ最先端のアミューズメントテーマパーク ヌカ・ワールドを本拠地にしたレイダー
2288年の人間は基本的に放射能とウイルスと世紀末強制サバイバルの影響で頑丈にできている。
頭を撃たれたり、丸焼きにされた上にグランドキャニオンから突き落とされても生きてるやつもチラホラ。
ゴキブリより生命力が強い
いくら殺してもゴキブリより出てくる
頭の中はキャップ!暴力!薬!奴隷!S○X!だけの連中
200年間世紀末蠱毒みたいな事を続けたので強さだけは桁違い。
たかが山賊と思って日本政府も帝国も軽視していたが・・・・
ヌカ・ワールドは2077年の米軍の最新兵器の研究・生産施設だったせいで・・・・
子供向けテーマパークで人体実験や新型核兵器や生物兵器や軍用ロボットの開発とか
流石の倫理観ガバガバ世界である、頭おかしい。
核兵器やメタルギアで武装した匈奴やヴァイキングみたいなもんだと考えればok



税金
そんなものは無い
そもそも政府自体存在しない模様

五百年前の総支配人の先祖
「代表なくして課税なし!こんなクソ税金のかかった紅茶なんぞ海に放り込め!ヒャッハー!」

総支配人(OVERBOSS)

今やレイダー業界のBIGBOSSならぬOVERBOSS
遺伝子改良されたウイルス兵器に感染してもほとんど異常がない(HP-10)
”砦”を中心に支配地域をじわじわと増やして行く。サバイバルモードかな?
個々人に強烈に”自由”であることを求める
首輪をつけているのはそれを望んだからよ、望まなければ誰の奴隷でも無いわ(パックス感
帝国をぶっ壊し、族國の藩王国も全部ぶっ壊し、日本も追い出して、大陸を平定し
世界もついでに一回全部ぶっ壊して
この地に新アメリカ合衆国を築き上げ、人類を再定義する!
完全なアメリカ式補給体制築きたいのに文明崩壊したせいでチート使えんのは辛い!
前進拠点をアサルトロンやセントリーボットで武装してチート!
従わない奴は核兵器で殺してチート!
輸送手段が核動力トラックと核エンジン付き帆船、核エンジンVTOL機というおかしさ
攻撃すると核爆発を起こすぞー!ピカドンエンジン
流石の頭のおかしさ
俺がアメリカだ!

民主主義
この作品では、もっぱら核爆弾のことを指す
卓球の球くらいの感覚で撃つ

ラジウムライフル
国民突撃銃VG45っぽいが45口径を使って放射線ダメージを与えられる不思議な銃

作戦
勝てないなら逃げる、勝てるなら襲いかかる(孫子
帝国の焦土戦術?”輝きの海”くらいじゃないと”焦土”とはいえねぇなぁ
行く先々で防備の弱い町や村を襲撃、奪えるものは全部奪う!
このような襲撃は騎行と呼ばれ、現代の戦略爆撃に相当する。
百年戦争でフランスが荒廃するわけだ。
山賊や盗賊団でなくても王族や貴族でも行う正々堂々とした戦法
討伐に来た軍隊が分散したら集結して物資貯蔵庫に山犬のように襲いかかり、集結したら分散してラッドローチのように逃げる
目的が略奪であって、戦うことでも勝つことでも無いので奪えないなら逃げの一手
致命傷は与えられないが、失うものが最初から何も無い相手に消耗戦を強いられる帝国の赤字は天井知らず。
地球でも蛮族が古代から厄介な理由。

世紀末農作物
Drホルドレン「所長、新しく遺伝子改良した作物を試してみて実験結果を報告してくださいね」
スパミュの遺伝子混合組み換え作物とか怖すぎるので、やめてくれませんかね

クリボーの”くっ殺せ”展開とかどこに需要があるんですかねぇ?


 

装甲車や武装ヘリを撃破するために作られたレーザー砲を食らったら生物はどうなるか?

答えは半分くらいは死ぬ。

もっともウェイストランドの生物はフォグクロウラーやマイアラークを始め、戦車並みの装甲とまではいかなくても装甲車程度の防御力を持ち合わせる生物はごく普通にいるため油断はできない。

今も徹甲ガトリングレーザーをスーパーミュータントの上に雨あられと降り注がせているが、いつまでも同じところにはいない。

掃射したならば、すぐに遮蔽物に身を隠し移動

あらかじめ想定しておいた次の射撃地点でまた射撃を繰り返す。

スーパーミュータントは確かに頑丈だし、銃を扱う程度の知性はある。

だが、大抵はそこまでだ。

肉体の頑丈さと怪力と勢いで自衛隊を押し込んでいるように見えるが勢いに任せた突進は今のようなちょっとした別方向からの攻撃で崩れる。

今も素早く態勢を立て直した自衛隊員が今度は2方向に分断されたスーパーミュータント軍団を散会しつつ、開けた大通りまで誘い出し四方八方から射撃を加えている。

部隊を分け、射線の通ったキルゾーンに誘い込まれたスパミュは次々と自衛隊員の64式小銃とコブラの対戦車ミサイル、20mm機関砲で討ち取られる。

「アイエェェェェ!」

「ヒ、ひデブぅぅ!」

石畳の道路上には次々とスパミュの巨体が散らばり、倒れていくがそんな事にも御構い無しにそれでも突っ切ろうとする。

「人間!やったn(ベシャ)」

と威勢良く突撃しようとしたスパミュは次の瞬間にはTOWの直撃を喰らい、木っ端微塵になる。

たかが一体に対戦車ミサイルまで使うとは完全にオーバーキルだが、自衛隊の火力は凄まじく開けた場所では勢いはあっても素人同然のスパミュが敵うものではない。

スパミュが一体、ロケットランチャーを担いでヘリを狙える建物の屋上に姿を現した。

だが、次の瞬間には自衛隊の狙撃手の放った銃弾によって頭部を撃たれ更に小銃・機関銃の集中射撃によって蜂の巣になった。

自衛隊は二度も同じ手が通じるほど甘い組織ではない。

奇襲の混乱の中で部隊を再編成し、危険な場所を警戒して小銃手を素早く配置したその冷静さと的確な判断は世界の軍隊の精鋭部隊に比しても恥じない能力だと言える。

自衛隊の射撃の前に遂に自衛隊を襲っていた方のスーパーミュータントはあっという間にうち減らされていき、最後の一体リーダー格のナックルが孤軍奮闘していた。

『来いよニンゲーン!ヘリなんざ怖かねぇ!やろうぶっ殺してヤルゥゥゥ!』

遂にトチ狂って銃弾が雨あられと中、自衛隊に向かってアサルトライフルを連射するスパミュであったが正面きっての火力の差は如何ともし難く遂に全滅する。

 

その頃、無線機の届く距離まで近づきつつあった伊丹だった。

無線機、と言うと遠くまで電波が届きそうな雰囲気だが

自衛隊の個人通信機は山どころかちょっとした丘や、コンクリートの壁でも意外と届かなくなる

自衛隊が特地に偵察隊の持ってきた旧式の無線機は新型のアンドロイド搭載の無線機と比べ、音声のみしか送受信できないという制約はあるが電池の持ちがいいという利点もあった。

新型なら電池を食うが画像も送れるためにこの状況を説明するのにも早かったのだが・・・

『空挺、空挺。こちら偵察隊の伊丹二尉 聞こえるか?送れ』

ザッという雑音の後に空挺団の指揮官が応答する。

『偵察隊か?一体どうなっている、こちらは当初予想された以外の正体不明の敵勢力の攻撃を受けた。

死傷者多数 現在もなお交戦中』

伊丹は”総支配人”と呼ばれる盗賊もどき及び帝国と一時休戦したことを報告した。

この手の報告は案外、雑音の多い無線機だと手間取るし女っ気のない無味乾燥した文章になるのでサクッと中略することにする。

読者の皆さんの想像力で補っていただきたい。

だが、伊丹の交信は銃声に紛れて近づいてきたスーパーミュータントの蛮声によって中断させられてしまう。

交信のため、屋上の電波状況が良い場所に登った伊丹だが上にいるということはそれだけ目立ちやすい存在になってしまった。

運が良かったのか悪いのか、背負っていた無線機が銃弾を受けて破壊されてしまったのだ。

『!人間!いたゾォ!』

咄嗟に屋根の縁に伏せ、銃弾をやり過ごす伊丹の上を風切り音とともに銃弾が通過していく。

『おい!偵察隊!?偵察隊!?応答せよ!?伊丹二尉!?イタミィィィ!』

 

通信機を破壊され、交信不能になった伊丹を呼び続ける空挺だがその声はもう届かない。

『上だ!殺せぇ!』

どすどすと多数のスパミュが建物の中に入り込み、屋上めがけて殺到してくる。

伊丹二尉の命がけの隠れん坊が始まった。

「あいつ・・・ちっ、これじゃスパミュどもが射線から隠れて撃てないじゃないか」

仕方なしに小回りのきくライフルに持ち替えて、今度は接近戦を仕掛けようという総支配人。

伊丹の予期せぬ遭遇によって計画が狂ってしまったので、いつもの通りの装甲と火力に物を言わせたゴリ押しでいくことにした。

「PAは現在位置で待機しろ、俺があいつらを建物の外に追い出す」

そう言いながら、あの兵士は死ぬかもなと思った。

もっとも、死は人生では常に唐突でそしてありふれてる者だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Bit too close

元々は荒野に住んでいた野蛮な種族で肉体は頑健だが汚らしく、
荒々しい部族であり、かろうじて人間で、
そして他者をうんざりさせる言語の“いんぐりっしゅ”を話す。
これは僅かに人間の言葉に似ている。
れいだぁ族は恐怖によって敵を逃げ出させた。
なぜなら彼らの浅黒い顔つきは恐ろしく、
そして彼らは寧ろ巨大な不細工な塊とも言うべき顔、
不気味に塗りたくった戦化粧である。
彼らの強健さはその野蛮な外見に現われている。
亜人と違い、人間ではあるらしいが大抵の亜人よりもずっと獣に近い。
彼らの背丈は高く、身動きは素早く、機敏な兵士で、
肩幅は広く、”ガン”という飛び道具を用いるのに巧みであり、
常に血の匂いを漂わせており、頑丈な首を持っている。
彼らは人間の形をしているが、野獣の獰猛さを有している。

れいだぁ族について



ミニニューク

誰でも簡単!手作り水爆!
この水爆の利点は・・・
誰でも、安価に核融合爆弾が作れます!
D-D反応なので安価な重水素だけでok!
トリチウムフリーなので長期保存ok!二百年経っても使えます!(実証済み)
小型・軽量・大威力!自爆を避けるため威力調整もできます。
融合反応だけなので汚染物質も残らない!綺麗な爆弾です!
占領も楽々!汚染が残らないので“使える核兵器”です!
放射線探知機にも引っかかりません!
あなたの国にも抑止力を!
(注*実際に起爆させることは、ご遠慮ください。
御神体として崇める、公園のモニュメントにする、二足歩行兵器に積んでロマン枠にするなど平和的にご利用ください)



顔つきは平たい顔の”ニホン族”と違い、むしろ帝国人に近い。
人間でありながら若々しい青年の姿をしており、200歳を超えているとは到底信じられない。
トーガに似た白く清潔な衣装に身を包んでおり、蛮族の砦でなければ帝国の貴族だといっても通じたろう。
極めて強大な戦士であり、戦場では常に先頭に立ち獰猛な蛮族の戦士も彼には敬意を示す。
戦い方は残忍で獰猛だが、一方で恐ろしく狡猾で彼がかつて属していた
”ふぉっくすはうんど族”という部族で学んだ戦術で戦う。
彼らは常に相手の不意をつき、相手方からすれば幽霊に襲われたとしか思えない。
極めて学問や技術を重視し、特に武器・防具の生産や改良には自ら手を加え、魔法や植物学についての知識を集めようと金銀を惜しまず蔵書を収集し学者を援助しようとしている。
生活は常に質素で彼の居室には飾りは殆どなく、机や椅子、ベッドに武器・防具が置かれている程度である。
金銀財宝といった物には全く興味を示さず、赤ん坊の頭ほどある金塊ですら”じゃんく”ゴミ呼ばわりする。
酒も健康に悪く頭脳を鈍らすとして全く飲まない。
酒や贅沢な食事は健康に悪いとして遠ざける。
女性関係は極めて多情で十人以上の愛妾を持つが、彼女たちは皆平民やあるいは亜人であり、政治・軍事には一切関わらせない。
唯一こだわりを見せるのは彼のみが作れる万能霊薬の”ぬかこぅら”のみであり
これはあらゆる万病を癒し滋養強壮にもよく効き、そしてとても美味しい飲み物で蛮族の間では通貨としても用いられる。
極めて支配欲が強く、支配地域の拡張を何よりも喜ぶ。
帝国はこのような手強い人物を相手にしていることを自覚すべきである。
蛮族王について

帝国文書館、帝都の靴職人ギルド内部の契約についての口論とそれから生じた暴力事件の報告に挟まって発見された。


伊丹が絶好の的になる建物の屋上から屋内へと滑り込むように窓から転げ入ると、それを見られたらしく階下からはスパミュがドアを蹴破って乱入してくる音が聞こえた。

「殺せ!人間殺せ!」

「捕まえてギタギタのぐちゃぐちゃにしてやるぅ!」

銃を構えながら口々に怒りの言葉を発するスパミュが屋内を捜索し始めた。

伊丹は連中に見つからないようにこの建物から脱出し、速やかに自衛隊と連絡を取りさらなる戦闘を防がなければならない。

さもなければ、レイダーとの戦闘で更に死傷者が増える一方だろう。

更に言えば今日のスパミュのおやつのメニューに伊丹も加わることになる。

伊丹は小銃を構えながらそっと階下の様子を伺っていたが、スパミュも住民が避難し目ぼしいものも無いという事に気がつくと下をうろうろし始めた。

何を探しているかと言えば、伊丹なのだがわざわざ鍋の中やタンスの中まで叩き壊して調べるというか目に付くもはみんな叩き壊してみる様子だった。

「くっそ、エルフや獣っこなら歓迎だけどファンタジー世界でオーガと一つ屋根の下とかシャレにならんでしょ」

小声で悪態をつきながら、敵の捜索を避けながら物陰から物陰へ。

相手がドアを開けて入ってきた時は一瞬の隙をついて視線を逃れ、ドアの横から廊下へと足音すら立てずにすり抜けた。

「あー、こっちにはいないぞぉ。

どこいったぁ人間?でっておいでぇ、すぐに済むからぁ」

すぐに生皮剥いでミートバッグの仲間入り、という意味なので全く嬉しく無いすぐであった。

おつむが足りないとは言え、狭い室内で敵の捜索を避けて発砲すらする事なくくぐり抜ける。

スニーキングスーツではなく、嵩張る防弾着を着た状態で音も立てずに移動することがどれだけ難しいか知っている人間なら今の伊丹のステルスは絶技だと断定できたろう。

それもこれも銃・銃剣・装具や脱落防止の金属部分に脱落防止のビニールテープを丁寧に巻いて消音にこだわったおかげだろう。

 

小銃を構えながら、用心してスパミュの捜索の目を逃れる伊丹だったが一階の窓から出ようとした次の瞬間にあちこちの窓から屋内に投げ込まれた大量のフラググレネードの爆発で吹っ飛ばされる。

家を震わせる轟音とともに爆発の衝撃波が伊丹を襲い、スパミュもろとも吹き飛ばされ更に衝撃で家の柱が折れ家自体がメキメキと軋みながら崩れ始めた。

「ニゲロォ!崩れる!」

伊丹も爆風で飛んできた木の破片が防弾着に突き刺さったのも気にもとめずに家から滑りだすように逃げ出すと同時に入り口から出ようとしていたスパミュに64式の弾倉20発をありったけぶちまける。

「イデェェェェ!」

弾丸は表層で止められたものの、伊丹の放った弾丸で足を潰され出口でつっかえたスパミュはそのまま崩れ落ちる家の下敷きになって潰された。

「全く、なんて日だ・・・」

 

もちろん、グレネードを伊丹とスパミュの家に叩き込んだのは総支配人である。

別に彼に悪意があるわけではない、まぁ手榴弾くらいなら死んだりはしないだろうと思ったので牽制として放り込んでやっただけなのだがうまく爆風を壁で避けたようだ。

自衛隊の手榴弾なら普通の家は吹っ飛ぶが、遮蔽物で爆風の直撃さえ避けられれば何とかするだろう。

「生きてたか、まぁ動きは悪くなかったな」

あの兵士の動きは緻密で大胆、明らかに一般的な歩兵のそれではなく特殊部隊かそれに類する精鋭部隊のそれだった。

向こうに展開している部隊員も明らかに正規軍の動きをしており、極めて高価な航空兵力を保有している時点でヌカワールドのようにゴミの山から引っ張り出してきた骨董品をだましだまし動かしているようではなさそうだ。

内燃機関・新造の火器・航空兵力・何よりも近代戦に対応した正規の軍の教育を受けた士官。

いずれも高価な代物。

明らかにグリーンランドの寄せ集めとは文明レベルが違う。

エネルギー兵器が見られない理由はわからないが、

20世紀後半か21世紀初頭相当の軍事テクノロジーの集団だろう。

ならば当然、核兵器で武装しているだろう。

核兵器の撃ち合いは避けたいところだが、連中がこの大陸を全部欲しいというのならば争いは避けては通れないだろうから、例の発掘したモノを使えるようにしなくてはな・・・

脅威度設定に戦闘ヘリ・輸送ヘリを捉えながらいつでも射撃態勢に持って行けるように射線に入らないようにしながら“じぇったい”の方に近づいていく。

 

 

爆風で防弾着には焦げ目ができ、木の破片が刺さりボロボロだった伊丹だったが。

もう追撃のスパミュが出てこないことを確認すると、また自衛隊の降下部隊の方に手を振りながら近づいていく。

「止まれ!誰か!?」

「第3偵察隊の隊長、伊丹二尉」

誰何を受け、攻撃を受けたヘリの側の臨時の監視所となった家屋で立哨に今までの状況を説明し空挺部隊の指揮所に通される伊丹だったが。

それを物陰に隠れながら観察する総支配人とレイダー達には気がついていなかった。

光学迷彩のステルスボーイを使っていたのだから当然だが・・・

「俺が合図をしたらヘリを落とせ、手打ちが物別れに終わったら一人も生かして帰すな。

目撃者は消せ」

総支配人の非情な命令だが、ウェイストランドの普通のレイダーに比べれば話し合いをするのだからかなり良心的で理性的な部類だろう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Bad Luck

ここで帝国・ヌカコーラ社・日本の最終的目標をわかりやすくしてみよう

帝国 日本・ヌカコーラ社をフォルマル大陸から追い出す(ゲート以前への状態復帰)

日本 帝国と和平して賠償金と地下資源を独占して大儲けしたい
レイダーは所詮盗賊団なのでアフリカの軍閥みたいに武装解除させりゃいいと思ってる。

ヌカコーラ社 総支配人以外の権威者は皆殺しにし、人類の再定義を妨げるものは殲滅する。

極限環境生物
 
放射能嵐吹き荒れるウェイストランドでも繁殖できる生物の総称
筆頭はウェイストランド人
総支配人など、中にはゴキブリすら即死する放射線を照射されても異常が無い個体も確認される。

「これはよくできた玩具だよ、もっと強力なの持ち込んでるに違いない!」
74式戦車について

モルト皇帝
「民主制は弱い。なぜなら個人が好き勝手に動いて効率的に動けないからだ」

総支配人
「民主制は弱い、なぜなら選挙を気にして1発の核兵器すら恐れるからだ。
民主制は恐ろしい、なぜなら怒った大衆ほど非理性的に勝利に貪欲な存在は無いからだ」

総支配人の考えでは核兵器を持つというのはアメリカ人が拳銃を持っているようなもの。
持てるのに持たないというのは家族を殺されても何もしない、情けない人間がいるということを認めるようなもので彼の今までの経験からすると認めがたい状態なのだ。

メタル・ギア・リバティ
メタルギアがあくまでも核抑止のために作られたのに対して
総支配人のメタルギア・リバティは反抗勢力を文字通り踏み潰し、焼き殺し、核兵器の威力を見せつけるために建造された。
「総支配人の意思という原動力を世界という機械に伝達する”金属の歯車”!メタルギアだ!」
逆らう汚物は消毒だぁ!
反乱分子は核レールガンで消毒だぁ!
「市民、自由は義務です!」
「民主主義を受け入れなさい!(核攻撃)」

石炭は採掘するたびに大勢の死人を出す危険な燃料だ
環境汚染物質を撒き散らし、大勢の死人を出す原始的で危険な燃料など
命の値段が紙より安い共産主義者には相応しいがアメリカには相応しくない。
化石燃料などという、酸化窒素や硫黄、鉛、水銀といった永遠に環境を汚染する
物質を撒き散らしながら常に爆発して動力になる危険な物質を使うのは野蛮なコミュニストくらいだ。
化石燃料などという前時代的で原始的なコミュニストの動力源などアメリカには相応しくない。

総支配人的にはウランを探すのは、日本人が異世界でも石油を求めるようなもの。
日本人が放射能物質は危険だ!と注意しても、それは「気化したガソリンに火をつけたら爆発するぞ!」と言うのと同じ。


原子力は日本人にとっては被爆国ということでデリケートな問題です。
一方で生まれた頃から核物質入りのヌカ・コーラを愛飲し核動力の車を買い、核動力のパワーアーマーで中国軍と戦い核発電の文明生活を送り、核動力のロボットに赤ん坊の世話を頼みコーヒーを入れてもらう総支配人にとって核動力は普通です。

1から5シーベルトで大抵の人間は死亡する。
最大の5シーベルトとするとγ線の場合みんなお馴染みのラド換算で500rad。
毎秒10ラドの普通の放射線嵐に遭遇した場合、防護服なしだと若くて健康な日本人でも1分以内に死亡する。
いかにウェイストランドが過酷な土地かお分かりにいただけるだろう。
2011年3月15日11:00に発表された福島第一原発3号機付近の「400ミリシーベルト毎時」
と言うのは火災を起こした原子炉のすぐ隣に一時間何の防護もなしに突っ立っていると0.4RADダメージを受けるということといえばわかりやすいだろう。


伊丹が自衛隊空挺部隊の指揮官にイタリカの現況を報告した。

帝国軍・盗賊団・緑の怪異の軍隊・そして近代的山賊団。

自衛隊の選択肢は単純に言えば、戦うか・それとも戦わざるかに分かれる。

既に人員・機材に(高価なヘリも含めて)損害を出してしまっている上に相当量の武器弾薬を消費した今の現状では敵の士気を一気呵成に砕いて相手を敗走させられるかは疑問だ。

イタリカの現状は盗賊団を撃退するという当初の目的こそ達成したが、その結果はイタリカが中立(名目上、実質はヌカワールドの契約農場化)宣言を出したことによって達成できたと言える。

「・・・・・報告はわかった、これ以上の戦火の拡大は確かに望ましく無い。

だが、連中がこちらの撤退中に攻撃してこないという保証はあるのかね?」

後退が最も軍事行動の中で昔から難しい。

後退が追撃を受けて一気に敗走に転じたという事例は歴史上、ありふれている。

伊丹もそのところの疑問は尤もと思いつつ陣地の外側で警戒態勢に当たっている隊員の向こうを見ると今も初めての実戦に緊張し、あちらこちらへと銃口を向けながら立哨している様子が見えた。

すると向こう側から特地の言葉で突然よびかけが来た。

『二フォンのジェッタイに告げる、速やかにヒケ。さもないと、お前ら皆ゴロス。

選ぶ権利は無い』

と言うなり、どこからともなくロケットが飛んで来て立哨に当たっていた隊員のすぐ近くに着弾する。

『ウァァァッァァ!熱い!アズいィィィ』

土嚢の後ろに隠れていたにもかかわらず、ロケットの破片が土嚢を突き破り体のあちこちにめり込んだのだ。

のたうちまわる隊員を周辺の他の隊員が大急ぎで引きずって物陰に隠すが、早く出血を止めないと危ないのはわかっていた。

「クッソ!やむをえん、撤収だ!撤退!援護射撃しつつ後退しろ!」

 

自衛隊はイタリカの街からこのようにして撤退した。

結果から言えば、予期せぬ接敵によって損害を出したのみで何の戦果も得られるものではなかったとして後にマスコミに叩かれることになり内閣総辞職の原因になりかねないのだが・・・

 

そもそも、日本の帝国を存続させつつ和平を目指すという戦略は近代ならともかく中世では戦略として成り立ちえない。

どこの世界に戦える兵士がいる内に自国の運命を他者に握らせる君主がいるというのか・・・

この世界の常識では敗者となった支配者はもはや支配者ではいられない、なぜなら民衆も貴族も力のある方に従うから。

力こそが正義!の世界に異世界の日本の態度は単なる弱さとしか取られない。

日本の近代民主制国家は帝国の専制君主制を今ひとつ理解できていなかった。

その点では総支配人のヌカコーラ社の方が帝国に比較的近いかもしれない。

 

一方で総支配人も”ニフォン”との全面武力衝突を恐れていた。

特に彼らの科学技術の観点から核武装をしていることは間違いと思われ、偶発的戦闘が戦術核の報復、さらには戦略核兵器による全面核戦争に突入することを恐れていた。

実際には、日本は戦略どころか戦術核すら装備していなかった。

もし総支配人が日本のお粗末な火力を知っていたら苦笑しながらも、アルヌスへ問答無用で核ミサイルを先制して撃ち込み、不確定要素を抹殺していたろう。

このフォルマル大陸に総支配人以外の権威は存在してはならないのだ、ニフォンは危険すぎる。

世界とは最も適応できる種族が生き残る、自らが適応するために環境すら変える人間はその意味では最もしぶとい生命体だろう。

現に総支配人やウェイストランド人のように毎時4000RAD以上の放射線嵐にも耐える生物なら他にもいる。

そう、総支配人のように半年足らずでエンジニアから世紀末ヒャッハーな世界を支配する総支配人にジョブチェンジする柔軟性こそ人間が世界を支配する要となった要因なのだ。

二フォンは追い出されなければならない、帝国は滅ぼされなければならない。

別に憎いとか嫌いとかでは無い、むしろ帝国のやり方はレイダーのやり方と近い。

近親感すら持てる。

だから滅ぼさなければならない、大陸という一つのシマにレイダーグループが二つ以上あれば殺し合いになるのは目に見えている。

金貨を発行して経済を支配する皇帝とヌカコーラを通貨にしたい新参者の総支配人、シノギを取り合えば殺し合いになるのは当然の結末だ。

政治学の学位なんぞ無くても政治なんて難しいことはない、ゴッドファーザーを見ろ。

法学部の学位なんぞ無くても法律なんて簡単だ、銃が法律で裁判官が俺だ。

 

総支配人としては彼らがどの程度の威力の核兵器を持ち込んでいるかがはっきりするまでは核を使用するのは危険だと判断し、ミニニュークの起動スイッチをオフにした。

元々、威力過剰なミニニュークは使い勝手が悪い。

大破壊を起こしてコーンスターチの有力な契約栽培農場となりうるイタリカをこれ以上破壊してしまうことはこちらとしても避けたい。

コーンシロップから作られたヌカコーラは成分的には同じのはずだが、味が今ひとつ違うという評判があるが砂糖よりも安く大量に確保できるという利点があるので必要なのだ。

相手が大量に密集していたり、ヌカコーラ社のトラック並みの装甲を持っているならともかく人間相手に使うのは費用対策効果が悪すぎる。

ひ弱なグリーンランドの生物も同様だ。

大抵は安い7.62mmやロケットでケリがつく。

地球でも核砲弾が高い割に効果が低いとして開発中止になったから似たようなものだった。

たかがこの程度の威力の兵器を使うために異世界の軍隊と全面核戦争のリスクを犯すのは割りに合わない。

 

日本は危ないところで、3回目の核攻撃を回避したのだがこの時点では誰も知らない。

いくら日本が核を持っていないと主張したところで、科学技術があるこの状況で持っていないと言ったところで誰も信じないだろうが。

核爆弾はウランさえ濃縮できれば基本的な物はあまりにも簡単に作れる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Get the hell out here!

総支配人よりモブレイダーの方がヒャッハーしてる、遥かに。


薔薇騎士団は・・・
1 みんな大好き、”くっ殺”展開 お前ら全員がママになるんだよ!
2 すれ違いセーフ

イタリカの戦い 西暦2288年
スーパーミュータント 殲滅
野生のレイダー 殲滅
ヌカレイダー 死者17名
自衛隊 戦死者8名 負傷者:多数
帝国軍 民兵ほぼ全滅
民間人死者1000人以上
市街地の3割が壊滅 市街地で2回の核爆発

内閣総辞職かな?


自衛隊がイタリカの街でモガディシュの米軍のように手痛い損害を被り、撤退する事になった。

次々と支援射撃の下で

だが伊丹にはフォルマル邸に残してきた第3偵察隊とティカ・レレイ・ロウリィを拾って撤退させなければならない。

邸宅は今やレイダー達が占拠するヌカコーラ社イタリカ支店になってしまった。

一方でピニャ・ハミルトンはフォルマル邸のメイド達に邸宅に戻った途端、

『ご無礼仕ります』と丁寧に武器を取り上げられ軟禁状態に置かれた。

精神的にも肉体的にも疲れたところにお召し物を、と言われ気を休めようとしたところで首にナイフを突きつけられた。

「ど、どういうことだ」

「何卒、ご自重ください。全てはイタリカの為。

あなた様がたには身代わりになっていただきます」

そう言われて、ピニャとハミルトンは自分たちが置かれた状況が陥落寸前から全く良くなったわけではないことに気づかされる。

総支配人はイタリカの安全は保証した、そこには帝国の皇女は含まれていない。

彼が帰ってきたらそこにあるベッドの上で娼婦ですらしないような辱めを受けるのだろう。

まず間違いなく、二人揃って慰みものになり・・・・・

「ひ、姫さまご安心ください!姫さまの純潔は私がお守りいたします」

ハミルトンが軟禁されたピニャの盾となると、忠誠を誓うがここまで頼りにならない盾もそうはあるまい。

プロウスキー核シェルター(ブリキ缶並みの防御性能)並みの安心感のあるハミルトンだが軟禁された部屋では身を守れそうな武器といえば椅子の足くらいしかなく、二人は部屋の中をウロウロ歩き回る羽目になる。

 

一方で第3偵察隊も館に入ってきたマグス率いるレイダーに武器を取り上げられて、銃剣で急かされながら大広間に押し込められてしまった。

それもミュイが総支配人との“約定”を盾に、都市での支配と自治権は全権が今やミュイ“支店長”に委任されピニャ皇女と自衛隊員の身柄はミュイが預かるところとなったため

彼らに危害を加えることは許されていないと主張した。

このためにレイダーとは敵対関係にある帝国と自衛隊の構成員の皇女や偵察隊は安全だったというのだから何が作用するかはわからない者だ。

 

そうでなければ、頭の悪さには定評があるレイダーのことだから男は殺して女は犯すといういつもの頭の悪い行動をコーラを飲むくらいの感覚で始めるだろう。

 

お互い殺しあうか、あるいは余所者を殺すしか能の無いレイダー集団の凶暴性を特地の弱者に向けさせるばかりか、

捕虜をすぐには殺さないというある程度文明的な行動を取り戻させることすらできた総支配人は支配者の鑑。

なお、文明的な行動に核兵器やハルシジェンガスなどのNBC兵器の使用も含まれているので結果的には凶悪度は増している。

捕虜も雄は新薬やハルシジェン社の化学兵器の人体実験の実験台になったりコロシアムで野球などに参加させられるので死ぬ。

女に至っては言うまでもない、一年後にはベビーブームだね。

総支配人はレイダーにも文化的になれということで、女性を多人数で使用することは衛生上の理由から禁止している。

ラノベでは人気のハーレムだが、人間には一夫多妻はやっぱり難しいらしく歴史上でも後継問題や男女関係のドロドロでよく殺し合いになるという欠点がある。

後継が生まれると、他の女はおろか外でライバルになりうる子供を作りかねない夫は

もはや不要と抹殺の対象になるという

女郎蜘蛛の修羅の国になるのでハーレムは難しい。

いくら一山いくらのレイダーにしても、

チンパンジーみたいに女の取り合いで殺し合いを始められたら

ヌカワールドは崩壊してしまうといのが本当の理由だが。

武器が棍棒から核爆弾に進化しただけで、やっぱり野蛮人から脱してない。

 

一方でジェッタイ・スーパーミュータント・地元のレイダーの侵略を撃退し、

一躍イタリカの街の支配者となった総支配人は侵略軍がイタリカの街から整然と隊列を乱さずに後退していく様子を見て追撃を断念する。

今、手を出したら反撃を食らって返り討ちにあうだろう。

その一方で大方焼け野原になったイタリカを見渡して、もっとやりようはあったと反省すべき点は多かったと思う。

もしも自分がもっと早くイタリカを支配してやっていれば地元のライバル勢力もこの街には入ることはおろか近づくことすらできなかったろう。

総支配人はこの世界の人間は理想的な新インスティチュートに管理・運営されることによってのみ初めて永久に生き延びることができるのだと確信を深める。

これ以上、愚かな争いを続けてしまっては人類そのものの生存を危うくしてしまうだろう。

一刻も早く、世界の監督不十分な帝国をクビにし自分が支配してやらなければならないという使命感と正義感も強く

・・・・それにしても気になるのはジェッタイとか名乗る謎の軍隊だ。

彼らもこの世界を奪いにきたのだろう。

だが連中がどんな考えを持っていようとも、一つの世界に二つの支配者は両立しえなかった。

総支配人はレイダーにトラックに積んであったワークショップをイタリカの中心のフォルマル邸宅に据付けるように命令する。

防衛に必要な城塞としてはこの街は貧相すぎるため、大幅に強化してやる必要があるだろう。

読者の中にはミサイルタレットを大量に配置して近づくものは何でも木っ端微塵にした建築家もいるだろう。

つまり、そういうことである。

・・・・ワークショップの能力を100%活かせる者が今のところは自分一人だというのが実に惜しい。

だが、総支配人がいる限り文明世界は滅びない。

そして総支配人と科学技術に共生関係を築いたアメリカもまた同様である。

そういえば、とイタリカの再建と奴隷・・・ではなくて労働者の新しい経営方針に関して考えながらイターミという兵士の偵察隊と皇女とお付きの女を捕虜として取っていたことも思い出した。撤退した約束は約束だから、ジェッタイの兵士たちは変換するつもりだが帝国の皇女はどうしようか?と考えて、昔読んだチンギスハンの行動を思い出した。

「うん、あの女は征服の為の材料になるだろう。沢山産んでもらわないとな」

今日はヌカコーラクアンタムを祝杯にしようイタリカ征服を祝って。

 

_______

敵の攻撃を受け、現況では損害を大きくするばかりだという判断から撤退することとなった自衛隊。

だが、伊丹は小銃を手に持つとフォルマル邸宅の方に向けて敵の攻撃を警戒しつつも全身し始めた。

彼の小隊長としての責任感が未だに邸宅に残る部下たちの脱出を援護させようというのだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

New City

栗林ちゃん
『口枷をつけた獣だぞ!』byレイダー
『ああ、そうだ!獣の超ヤバい血(遺伝子)だ!』by総支配人
まさかのクリボーが総支配人と子作りして征服王を産む。
後世に鉄血女王姉妹と呼ばれた武王『マホ』と覇王『ミホ』である(嘘、多分


ヌカコーラを売る、契約農場は弾丸と引き換えに農作物を献上する。
都市は作物納めてれば自治させて放置
後は知らん、力こそが正義!殺人も自由
この中世ファンタジー風世界と思ったらベルセルク風ダークファンタジーになる素敵仕様

ハーディ「あなたのせいで世界のバランスが崩れたわ!」
総支配人「じゃ、ニフォンの人間を俺のいた世界に送り込んでバランスとってよ」
ハーディ「OK」
結果として、日本人オリ主の転生先がキャピタルウェイストランドのどこかに一律設定されました
これでみんなトラック転生しても安心だね
主食はゴキブリな!



「ヒャッハー!この街も俺たちの物だ!ヒャハハハハッハ!」

イタリカの街からありったけの酒と食料と女にショタっ子を供出させ宴会を早速開くレイダー達であった。

総支配人にしても街を攻略するために彼らに犠牲を払わせているため代金を請求された場合に物納しなければならないのだ。

どこの世界でも回り回って弱者が強者のツケを全額払うことになるのは同じ。

「オラァ!酌しろやぁ!」

「は、はいぃ!」

今も雄レイダーの一人がイタリカの街の女性を慰み者にしたり、雌レイダーがショタっ子を性的に食っていたりとヒャッハー達の野蛮な狂宴を街の広場で繰り広げている。

「クッソォ!まだ殺り足りねぇぜ」

地元のレイダーの皆さんの新鮮な肉でキャピタルでも好評なヒャッハーレイダーアート展覧会を町の城壁をモチーフに開いていました。

ねじ切られたアヘェ頭がポールに刺さっていたりフックでマグロが軒先に吊り下げられたりという実に正当でクラシカルなアートです。

もちろん、我らが総支配人がアート展覧会で金賞を受賞致しました。

ほら、広場に展示された逆さに吊り下げられながら光る電球を口に加えた新鮮なお肉チャーンが第52回ヌカワールド芸術展覧会で金賞を受賞したアートです。

尻の穴からコードが伸びるという独創性には流石のレイダーもドン引き。

え、ピックマンのパクリ?ヒャッハー!君も新鮮なお肉になるといいよ。

 

『ひ、姫様・・・・申し訳・・うう、ありません』

『くっ殺せぇ・・・・この・・・ケダモノが・・・』

ハミルトンとピニャはフォルマル邸宅の大部屋のベッドで裸で二人仲良く力尽きていた。

過程の表現は避ける、どうせよくあるエロゲみたいな展開だったし。

結果としていうなら、二人の胎内では新しい生命が芽吹いていた。

『この世界の人間は生命の尊厳を軽くみすぎている・・・嘆かわしいから命の尊さを教えてやろう(ゲス顔』

なので通りがかった皇女とそのお付きの女騎士にとりあえず種付けという世紀末世界な倫理観を発揮してしまった。

別にどこの世界でもよくあることだし、無問題。

唯一の救いは総支配人は美形なので生まれてくる子も間違いなく美形だろう。

ヌカワールドのレイダーに限らず、なぜか中世のヴァイキングやクマンといい蛮族は美男美女が多かった。

理由はお察しください。

 

焼け落ちた町の建物がまだ熱い内に早くも世紀末の流儀で支配を始めたレイダー達であったが

肝心な事を忘れてはいないだろうか?

そう、第3偵察隊のことをスパッと忘れていたのだ。

実際のところは解放すると伊丹に約束したので武器は取り上げて後は好きに死なと総支配人が自衛隊の撤収を確認すると館から解放したのだ。

ほんとのところは捕虜の監視なんていう退屈な仕事をさせると

レイダーが反乱を起こさないかと心配した総支配人が追い出したと言うべきだろう。

街に戻ってきた伊丹は日が暮れるのを待って物陰の中を進み、フォルマル邸を目指していたがイタリカの街が圧倒的に悪い意味で変貌したのに目を見張った。

まず、門にはでっかいロボットが詰めるようになった。

セントリーボット 2077年まで生産されていたアメリカ陸軍の軍用ロボット

ガトリング砲や核ミサイルなど、重装甲と重火器で武装したこいつに普通の歩兵が正面から戦えば3秒とかからずにミンチの出来上がりだ。

 

アサルトロン

頭部に高出力ビーム砲を搭載し、接近戦に優れた機体。

ドミネーターにかかれば一瞬で人体の微塵切りからカリカリ炭焼きの出来上がり。

 

そしてMrガッツィー大佐

高度な人格AIを搭載した軍用のMrハンディが門に恐る恐る近づいてきた伊丹を尋問する

『このコミュニストのクソウスノロが!

ハジキなんざ怖かねぇ!野郎ぶっ殺してやらぁ!』

伊丹をセンサーに捉えるなり、実に荒っぽい性格とともに機関銃をぶっぱなしながら襲いかかってきた!

どうもコマンドーを人格AIを作る時に参照したのがまずかったようだ。

いきなり殺しにかかってきた!

近づく者を片っ端から殺そうとする奴を門番にするのはどうなんだろうか?

咄嗟に都合よく転がっていた蛆虫が早くも湧いている死体の山を盾にして銃撃を避けるが

『あら、駄目よ。あれってば殺しちゃ駄目な方の人間じゃないかしらぁん?』

『何だって?おーいお前は殺しちゃ駄目な奴か?』

総支配人の命令により一応、今の所は暫定的に殺してはいけない人間リストに加えられていたのには自衛隊員っぽいのも含まれているらしい。

『悪かったな兄ちゃん、てっきり赤のオフェラ豚と思っちまった。

名前を言え、一応入れそうな気がするゼェ』

門や壁からは死体が吊り下げられ首が城壁から掲げられた旗ざおに突き刺されている

ベルセルク風中世ファンタジー世界な街に好き好んで入りたがる人間が多いとは思えないのだが・・・

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

街までは何マイル?

総支配人がイタリカを支配し

イタリカがヒャッハーなレイダー達の巣窟となった。

伊丹がイタリカに入ると地獄そのものといった外観に反してその街の中は様変わりしていた。

焼け落ちるか、崩れ落ちた家はいつの間にやら消え去り跡地には自衛隊が難民に提供していたようなコンテナ風の家が立ち並んでいた。

街の主な通りには一番信じられなかったのだが街灯が並び、もう日暮れだというのに明かりが煌々と照らされていた。

一般的に特地でも魔法を使った明かりはあるが総じて高価であり貴族の邸宅に使われている程度だったのだから地球では街灯は燃料代がかかるのでよほど豊かな街の大通りくらいしか近代以前はランタン街灯くらいしか使われていなかった。

総支配人の支配する領域では松明もランタンもガス灯もすっ飛ばしてLED電球の街灯がポンポン建てられていた。

だからと言ってレイダー連中が電球の構造について理解しているとは言えない。

車が運転できても車の構造を理解していないというのに似ている。

伊丹が街に入るとまず目についたのはド派手なカラーリングの巨大で真っ赤なNuka-Colaとド派手にネオンが輝く屋台だった。

「おい兄ちゃん、どうやってここに入ってきた?」

屋台から話しかけられるとそこには真っ赤なMrハンデならぬMrフロシーが第3偵察隊の面々をもてなしていた図があった。

「あ、隊長!良かった、生きてらっしゃったんですね」

富田二曹が説明するにはあの後、山賊が邸宅になだれ込んできた後に自分たち自衛隊とその協力者のロウリィ、レレイ、テュカは自衛隊が敗走したという知らせとともに邸宅から放り出されたのだという。

置いてあった高機は戦闘で破壊され、レイダーに部品をひん剥かれて解体されて改造されてしまった。

富田二曹が目をやるとそこには鉄板を貼り付けられ、刺々しくなった世紀末世界風の自衛隊の車両があった。

伊丹も思わず『北斗ワールドかよ!』

と突っ込まずにいられないほどに改造された自衛隊の高機を

”ヒャッハー!!”と叫びながら馬乗りになったモヒカンのレイダーが運転していた。

なぜ運転するのに窓から身を乗り出すのか、なぜ火炎放射器を装備するのか。時は正に世紀末だからだろう、連中の行動に合理性を求めること自体間違っている。

「目は合わせんなよ、兄ちゃん。殺されて屍肉の塊だぜ。

それより酒はどうだ?なんか飲んでくだろ?まさか冷やかじゃないだろうなぁ・・・」そういうなり機関銃の安全装置を解除するフロシー。

ここもひどい世紀末バーテンダー。

馬車が来るまで偵察隊も待ち合わせ場所のここで半ば無理やり店に引きずり込まれたのだ。

尤も、出された酒は紛い物でも薄められたものでもなく料金も人生経験の長いロウリィに言わせると“この味でなら良心的な価格よぉ”らしい。

総支配人の考えでは薄めたり不味い酒を出すバーは消毒されるべしなのだから当然かもしれない。

 

 

受け取った銀貨もろとも移動する術を無くしてしまったため今はイタリカの生き残った商人が手配してくれている馬車が届くのを待っているということだった。

「そっちも生きてたんだったら、連絡しろよ」

「いえ、無理だったんですよ。連絡しようにも無線機まで取り上げられたんですから」

それから富田はあれから起こったことを報告した。

イタリカの街はこれから中立地帯となり、あの総支配人と呼ばれる人物がとりあえずということで壊れた城壁や家を建築し、街灯をつけてとりあえず見れる外見にしたことやあの皇女とお付きの騎士が今やお手つきになったという話。

これにはエロ=ゲかよ!と倉田も驚いたらしい。

 

あまりにも疲れていたので他の隊員は屋台の裏のホテルをとってそこで休憩しているという話だった。

「要するにだ、みんな今はすぐそこの旅館にいるんだな?

それも無傷で」

隙あらば金を毟り取ろうというロボットだったが宿は案外適切な値段だった。

宿もこの街であちこちに建てられたコンテナ風の建物だった。

総支配人もめんどくさかったのかVault-Tecコンテナ建築でとりあえず仮設住宅を建てたのだが、余った資材で街に必要と思われる商人用の宿も建てておきそれを偵察隊に貸していた。

どう考えても昼間から建て始めて夕暮れには終わっているレベルの建築ではないが気にしてはいけない。

なぜか片言の日本語で『ナニニシマスカ?』と屋台の別のロボットがラーメンを出してきたのには

(タカハシ!?量産されていたのか!?)

『お、おう』と押し切られて買ってしまった。

お代は商人から代金として受け取った銅貨でも払えるらしい。

はっきり言って謎の山賊は滅茶滅茶な存在だとしか思えないが、目の前のロボット?の事も後で報告する事になるのだろう。

まず間違いなく信じないだろうが・・・・

 

 

「急げ!既に街から火の手が上がっているぞ!」

薔薇騎士団は馬に拍車をかけイタリカの街に急いでいた。

 

本来であればイタリカから撤退する第3偵察隊と鉢合わせて伊丹がアーッ!な展開になるが高機が盗まれた今ではレイダーカフェで管を巻くしかない。

すぐそこではレイダーが娼婦とパコパコやっているのが見えたり、死体が逆さに釣り下がって皮を剥かれているなどかなりの世紀末ぶりを見せているが

ウェイストランド人にとっては穏やかすぎて退屈な光景にすぎない。

 

薔薇騎士団が町の半ば崩れ、コンクリートで無理やり補修した門のところにやってくると

異形のゴーレム達が出てきたのには驚いた。

武闘派で知られたボーゼスが何者だ!と詰問すると、

Mrガッツィー大佐がボーゼスをいきなり電ノコで切り刻もうとするのをドミネーターが止めた。

『やめなさいよ、また殺したら今度こそ初期化されちゃうわよ』

『Fuck!構いやしねぇ!ムショが怖くて生きてられるかぁ!』

正直、門番としてはレイダーよりは理性的だが世紀末AIはどいつもこいつも殺っちゃうよ!モードが基本なのはなぜだろうか?

きっと誰かがそのうち直してくれるだろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

予想通り不合理

なんで原作の皇帝が好きになれなかったとか考えると
結局、子供の意見に振り回されて万事他人事だという態度で典型的なかっこ悪い悪役でした。
根性足りなさすぎて敵としてはあまりにもかっこ悪いので
人間らしく抗う姿勢マシマシにしてみました。

総支配人は主人公なのでブレずに自分を制して悪に徹します。
敵がかっこ悪いと読者も萎えちゃうぞ。



 

伊丹率いる第3偵察隊はどうにかして地獄の片鱗となったイタリカから脱出し、アルヌス駐屯地へと帰還した。

薔薇騎士団は初陣で全滅した、貴族の男は従順にはなり得ないという理由で徹底的にレイダーに叩きのめされ爆弾首輪をつけられ、女性騎士は揃って犯され孕まされた。

『ケダモノ・・・ケダモノがぁ・・・いっそ殺せ!』

総支配人の命中率はVATSでも使っているのか凄まじく、全員一発必中だった。

エ=ロ芸かな?

 

すぐに帰還した伊丹は戦闘中の混乱の中でMIA扱いであったが、商人の馬車を貸してもらって帰還した伊丹を待っていたのは取り調べだった。

自衛隊員は特地では異性との性的関係を持つことは禁じられているが、ヌカワールドではそんな規定は無い。

というか、規定そのものが無い。

レイダーに秩序は暴力による上下関係以外無縁である。

 

撃墜されたコブラやヒューイ、そして鹵獲した高機動車などを調べた結果

総支配人は自衛隊についていくつかの情報を手に入れることができた。

1:ジェッタイは階級が存在する正規の軍隊

2:科学技術は充実

3:武器・装備は帝国は無論、ジャンクの寄せ集めに過ぎないヌカワールドを上回る。

4 アルヌスの大虐殺と合わせて対戦車ヘリの存在はその他の戦車・遠距離火砲の存在を意味する

総兵力は不明

しかしながら寄せ集めの集団に過ぎないレイダーの現有兵力では勝てない

接近戦では小銃・防弾チョッキなどを調べた結果互角という結論を出せたが

近代戦で接近戦など、なんの意味も持たない。

・・・・・・・・・不利なのはいつものことだ。

一個小隊で1000万以上の中国兵の海の中に成層圏から飛び込むのに比べれば、どうということもない。

一方で総支配人はイタリカの商人達や鍛治職人に”お話”をして情報を集めさせ次のような結論を出した。

『“帝国”は日本への遠征が失敗した後に、大急ぎで魔術師をかき集めて日本から攫ってきた人間を拷問して情報を集め、魔術師と技術者にその対策を研究させている』

ここまではわかる、当たり前の話だ。

問題は、どういう手を打つのか?

・・・・考えられるのは門を閉鎖することくらいだが?

日本の補給体制は不明だが、門が開いてから大きな動きがなかったことから十分とは言えないのだろう。

海路も鉄道も無いのでは輸送など問題外だろう。

事実、自衛隊はアルヌスの駐屯地にトヨタ式のカンバン方式で補給を続けていた。

自衛隊の幹部の中にはこれに不安を唱える者も多かったが、中世レベルの敵相手に無駄遣いはできない財務省の主張によりこの方法がとられていた。

実際、ストックが少ないこの状況で門が閉まれば燃料だけでなく大量の部品を必要とする航空機・ヘリ・戦車などはあっという間に共食い整備のガラクタに成り果てる。

門を閉じれば大量の物資を消費しつづけなければならない近代軍はモスクワの門前のドイツ軍に成り果てる。

小銃弾やロケットといった歩兵装備くらいなら、総支配人でも生産できるがこれ以上の大型武器の生産は現状ではできない。

一番なのは現地の鉱物資源から弾薬を生産すること、故に連中が侵略を続け生存圏を拡大する前に門を叩かなければ勝機はなくなる。

時間は今や、総支配人の敵になった。一分一秒も無駄にはできない。

皇女をいきなり孕ましたのはやはり無駄ではなかったと確信した総支配人は帝国のメンツを”今のところは”潰さずに帝国と妥協点を探る決意をする。

『ウラン鉱石さえ確保すれば後はどうとでもできる』

この世界には魔法があるが、原始的なヒロシマ型以下の破壊力しか持たないのでは兵器としてはお話にならない。

 

一方で特地での初の戦死者発生という知らせに日本は大いに揺れた

最大手の旭日新聞は号外も組んで『戦後初の戦死者!!問われる自衛隊の危機管理能力!!』

新聞・テレビといったマスコミは自衛隊を揃って無能・無為と非難轟々の連続であった。

帝都新聞なども『土人国家にすら敗北!最新兵器が聞いて呆れる!』

一回の予期せぬ敗北で自衛隊を年に5兆円以上の予算を無駄遣いする浪費の象徴だとこぞって叩きまくった。

実際には土人はおろかヌカワールドもスーパーミュータントも2077年の軍事超大国の超兵器の落とし子とでもいうべき存在であり、20世紀後半のそれも旧式装備ばかり財務省の都合で持ってきた自衛隊が接近戦で無傷で勝てる相手ではない。

更に言えば5兆円など第3次世界大戦での米軍の半日分の予算に過ぎない。

今のヌカワールドが米軍の搾りかすの残りカスに過ぎないのも頷ける。

無論、特地の軍隊は中世レベルの野蛮人の群れに過ぎず自衛隊の前には腐ったドアも同然だ!

という理論で進出経済界からの付け届けもあって吹聴したのもマスコミだったが、それはさらっと忘れたらしい。

 

帝国と日本の講話は不可能だ、なぜならこの状況で講話などすれば支配の正当性が消滅する。

貴族は強いから強いという常識を打ち破ってしまった日本を認めれば

強いから他者を支配できていたこの封建世界は崩れる。

その先にあるものは真に力を持った者が天下を狙う居心地のいい世紀末世界だ。

一つの世界に覇者は二人いらない、こんな常識すらわからないほど二フォンは甘くないだろう。

(実際には甘かった)

世界は残酷で理不尽だ。 やっぱ人間ってくそだな。

 

「今回の作戦で、日本本土の連中は自衛隊への非難轟々だよ。

全く、アルヌスの丘の時は勝った勝ったの大合唱だったのにな」

柳田が悔しそうに唇を噛む。

技術面から見れば、遥かに自分たちより劣る土人国家相手なら自衛隊は無敵だという予想を覆されたのだ。

 

「優秀な隊員を大勢殺された・・・・たかが土人国家相手の戦争にだ!」

 

「すまない、俺の指揮のミスのせいで」

伊丹が謝罪するが、それに慌てたように柳田が否定する

「いや、お前のせいじゃない。いや、誰のせいでもない」

戦後初の実戦、それも誰にとっても未知の異世界での戦いに常識を持ち込む方がおかしい。

 

剣と魔法の世界に銃が加わった、通常の自衛隊の仮想敵に戻っただけなのだ。

「それにしてもだ、新しく確認された『大規模武装集団』?

連中や緑の大男への政府の公式な呼び方だが、新聞もテレビも大したことは放送してないな・・・・」

イタリカで見かけたヌカワールドの規模がどれくらいかはわからないが、伊丹たちがまさか五体満足であの地獄から生還するとは誰も思っていなかったらしくアルヌス駐屯地で戦死認定される寸前に戻ってきたことから大騒ぎになった。

「政府の公式見解では特地にはいかなる『国』も存在しない。

それゆえ特地での行動は全て治安活動で『帝国』も武装勢力ゆえ内閣総理大臣の命令さえあれば治安出動および国民保護派遣が可能ということだ」

 

相手国など存在しない、単に反乱分子がいるだけだというのは今の朝鮮半島や中国と台湾、あるいはシリアの例を見ればわかる。

相手国が無くても戦争はできるのだ。

 

「いえ、政府は特地を『日本国』と見なしてる。

であれば特地における自衛隊の活動はすべて『国内における活動』と解釈でき、

国会の承認が無くとも内閣総理大臣の命令さえあれば治安出動および国民保護派遣が可能になるのだと」

 

確かにこれならば、戦争はできる。

だが相手国がこれをどう思うか?考えて欲しい

『お前は武装勢力だから講話しないよ』

国じゃないから話し合わない、同じようなことはまさに世界中で頻発している。

そして結果が今どうなっているかも。

はっきり言ってかなりまずい手だが、日本からすれば外交よりも内向きの言い訳を重視したのだろう・・・・

 

伊丹も柳田も政府の方針に疑問を覚えないではなかったし、自衛隊幕僚の中にはこの表明を危ぶむ者も多かったが、

自衛隊の立場もあるので表立って修正するようには言えなかった。

 

話題を変えようとして、柳田は外務官僚の菅原の方を見やった。

「そう言えばどうなってます?例の属国との同盟ですけど」

「うん、それが予想外でね」

 

冴えない表情をするが

 

「どの国も適当にはぐらかすだけで、のらりくらり。

ここに至ってそんな態度をとるって事は、帝国側に付くと決めたも同然だ」

 

帝国の強硬な態度に業を煮やした日本はその属国を切り崩そうと反帝国包囲網を構成しようとした。

アステカを征服したコルテスやローマに対するハンニバルの戦略を取り入れた分断し、統治せよ戦略だが・・・・

実際問題として前者のように定期的に大量の生贄要員として自国民を屠殺されるほど恨みが深くなければ新参者の日本に積極的に協力する者は多くなかった。

 

伊丹は信じられなかった

属国の大半は、あのアルヌス攻防戦を戦った。

そこで自衛隊と自分たちの圧倒的な戦力差を嫌というほど思い知らされたはずだ。

 

そもそもあの戦い自体が帝国が属国の戦力をすりつぶすための陰謀だったという話もある、それでも帝国に忠誠を尽くすのか?

 

総支配人なら、こう言ったろう

『誰かの為に戦うから、こういうことになるんだ。マヌケェ!』

 

『相手がでっかい銃を持ってるから、はい降参とか。

お前、支配者の資格ないわ。支配者失格なら奴隷になるしかないな』

 

言葉は悪いが総支配人の言葉は真理をついている。

 

被害者ですらあるはずの属国がなぜ今だに帝国について勝ち目のない戦争を仕掛けるのか?

 

現代人が理論的に考えれば、馬鹿な!あり得ないだろう。

 

 

圧倒的な国力差のある米国に日本はやらなければ破滅と絶望から奇襲した。

 

アメリカ人の理論では戦争は勝ち目があるからするものであって

勝ち目がないから戦争するなどあり得ない。

ゆえに日本は戦争を仕掛けてこないと考えていた為にむしろ戦争は起こった。

皮肉なことに今の日本人と帝国の関係は1941年の日米関係を思い出させるが当の日本人はそんな事も忘れてしまっている。

 

(馬鹿な、帝国が自衛隊に勝てるとでも思ってるのか? 文明レベルが500年は違うんのに・・・)

文明レベルが違う、だからどうした?

損になる?だから降伏しろと?

 

アルヌスの丘で自衛隊は10万以上の属国兵を大量虐殺した。

当然、戦死者の中には彼らの国でもかなりの高位の貴族子弟も大勢含まれていた。

ナショナリズムは戦勝の高揚からでなく、敗北の屈辱から生まれるのだとしたら史上空前のナショナリズムの嵐が属国と帝国の宮廷では吹き荒れていたのだが日本側はこれをまだ知らない。

 

『侵略者を倒せ!祖国を守れ!』

地球でも有史以来、延々と繰り広げられてきたスローガンだし

どことは言わないが、今の日本のすぐそばでも日常的な光景の一部だ。

そしてそんな言葉に動かされる民衆も多いということを日本の合理的な官僚は理解できなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

めちゃくちゃイかれてる

ウェイストランドで生きていたかったら
めちゃくちゃ(MAD)イかれてるか、めちゃくちゃタフか
あるいは両方でないと

日本人が異世界転移すると?
レイダーに女は子産み女として売られ、男は輸血袋としてスティムパック製造機にされます
主食は焼いたゴキブリ、飲み物はコップ一杯の水が3日に一度
理性も倫理観も無くした人間はどんなモンスターよりも恐ろしい




イタリカから砦、総支配人が築いたThe Fortへと移された薔薇騎士団女性陣は今の所は総支配人専用の女として彼から与えられた世話係の女奴隷とMsナニーをあてがわれていた。

この世界に来た時に見つけたちょうどいい場所にあった、砦は今や武器弾薬、奴隷、食料、薬(マトモでもマトモでないのも)そして当然ヌカコーラを生産しトレードする中心地となっていた。

その意味ではアルヌス駐屯地と似ているかもしれない。

違いは、自衛隊が門を厳重に守っていたのとは対照的にレイダーは放りっぱなしで誰ももう気にしてやいないといない。

イベントで一度行ったらもう行かないロケーションってあるよね。

元々、いい場所があればイナゴみたいに移動する連中なのだ。

 

人類史において、一般的に鞭打たれる奴隷というのは多く存在したがそれらは奴隷の中でも最底辺の使い捨て可能な者であって大切にされたものもいる。

といっても、それは羊飼いが羊を全力で守り、蚕農家が蚕を自分よりも優先するのと同じ理屈である。

子産み女にされたピニャやハミルトンは現代人の感覚で言えばとても高価なサラブレッド牝馬に匹敵する。

アホなレイダーが触れようとしただけで総支配人に頭ねじ切ってオモチャにされることは必定であったし、現に2、三人そうなった。

 

最初の時は総支配人に種付される前に

『ま、待て。父上が私とハミルトンの分の身代金を払ってくださる。

女奴隷が千人は買えるぞ、悪くはあるまい』

 

『悪くない話だ、だが断る。

タフなウェイストランドのレイダーは欲しいものは奪う!取引などしない!』

 

『や!やめろ!ハミルトン逃げろ!』

 

『せ、せめて初めてなので痛くしないで!』

(二人同時に押し倒されて、ビリビリという音の後にベッドで子作り)

どうやら総支配人はファーハーバーの霧を吸い込みすぎたせいでおかしくなったらしい。

世紀末世界なのでむしろ普通になったと言うべきか。

“アメリカ独立宣言”の起草者で第3代大統領のジェファーソンも女奴隷を子産み女として使っていたのだから問題ないだろ。

別に高貴な身分の女性が捕虜になって征服者の子供を産むというのは帝国でも珍しい話ではないが、まさかピニャも自分がそうなるとは思っていなかった。

「う、グスッ。ひ、ひどい。初めてだったのに」

「い、痛いです。ヒリヒリします」

 

「メソメソしやがって。たかが2、3回犯されたくらい気にするな。

心配するな、二人とも着床したのを確認したからもう必要は無い」

「い、いやだ。お前の子供なぞ、産みたくない!」

総支配人は口元を歪ませて世間知らずのお姫様をあざ笑う。

『いいや、選択肢なんてこの世には最初からないのさ』

子供が芽吹いたからもう犯す必要は無いと言う理論、薔薇騎士団の女騎士にはありがたいがこれは酷い世紀末倫理。

その後はボーゼスが

『姫様を・・・放せ!この外道が!叩き切ってくれる!』

だが、いくら修練を積もうとも殺戮と狂気が日常の一部の荒野の支配者に敵うはずがない。

たちまち叩きのめされて、その場で”くっ殺”展開である。

ゾルザル皇子のように詳しく描写するとR18に引っかかってしまう恐れがあるのでカットされてしまった。

”本当に申し訳ない”(棒

『面白いやつだ。気に入った、俺を倒せたら全員解放してやろう。

制限はないから回復したらかかってこい』

とベッドに横たわるボーゼスに吐き掛けるが、妊婦に剣を持ってかかってこいとは中々の外道っぷりである。

 

イタリカを征服し、とどまるところを知らないヌカコーラ社の躍進。

コーラを売ることから始まって、テーマパーク経営、兵器開発、異世界侵略と多種多調な事業を展開しております。

 

・・・・・・・・・・・・・

帝都の悪所は元々、荒んだ場所だったが

ヌカワールドのレイダーが進出してきたことによって

今までの状況がお上品で生ぬるい、核戦争後の世紀末世界のような有様を晒すことになった。

地面から伸びたポールに何人か突き刺さっていたり、街頭から吊り下げられた檻に死体が入っていたりするという実にレイダーアート蔓延る世紀末な街角。

そのほかにも街角にはどこからか持ってきた鉄材と木材でバリケードが築かれ、

常に炎がパイプの先から吹き上がり、鉄材で作られた総支配人を象徴するヌカワールドの鉄のエンブレムが真っ赤に焼かれて輝いている。

この街のあちこちから持ってこられた廃材で工夫を凝らした市街戦の要塞が築かれる結果となった。

人目を最も引き付けるのは、ヌカコーラのエンブレムを崇拝するカルトと化したレイダーの不気味な集会所だろう。

核爆弾とV8エンジン、ヌカコーラクアンタムの三位一体が祭壇に並べられた様は正に世紀末。

『これこそが総支配人様が地上に起こした奇跡の象徴!

V8を讃えよ!この咆哮によりて悪しきものをことごとく新鮮な屍肉とし、ソールズベリーステーキにすべし!』

『V8!!V8!!V8!!V8!!V8!!』

失われた技術で作られた核兵器や核動力をご神体と崇めるアトム教クアンタム派の出来上がりであった。

カルト宗教と世紀末はお約束の親和度を持つ。

 

今も銃眼からは機関銃が街路に狙いをつけ、地雷が植えられ、クレーンから釣り下がったウォークライヤーがドラム缶のドラムを鳴らしながらむせ返るような炎の中演奏している。

なぜ、そこら中に火炎放射器が設置されているのか?

なぜ、昼も夜もスピーカーから凶暴なロックンロールが鳴り響くのか?

世紀末だからだ。

今日も今日とて悪所の覇権をかけてカチコミをかけてきた地元の野生動物と新顔のアニマル達の縄張り争いが始まる。

『ウォーボーイズ!侵入者だ!殺せ!栄光ある戦いに生きて!死んで!俺たちは蘇る!』

狂ったようにドラムを打ち鳴らし、戦闘員を鼓舞する様は背景で常に炎と黒煙を吹き上げるパイプの存在もあってまるで地獄だ。

今では使う人間も少ないが、太鼓は世紀末世界ではれっきとした情報伝達手段である。

携帯電話などという便利な物が消滅すると、18世紀以前の技術も復活した。

なので世紀末のヒャッハーがやたら騒がしいのは・・・多分関係ない。

『やったぁ!新しい頭が手に入るわ!』

とバットを持って女レイダーが飛び出してくると、地元のギャングのワーウルフに襲いかかる。

色とりどりのぬいぐるみ付きアーマーに身を包んだパックスは陽気なレイダーだが、極めて残忍に陽気である。

『めちゃくちゃ腹減ったぁ!久しぶりに新鮮な肉が食えるな!』

 

『いい毛皮だな!俺のブーツにぴったりだ!』

なぜ帝都中の地元のギャングに憎まれているのかさっぱりわからない。

レイダー流に普通に襲って、皆殺しにして帝都の悪所でも流通の便がいいところを独占しただけなのに。

最初、新しいギャング団であるヌカレイダーが進出してきた時には、地元の野生のギャングと一悶着があった。

いつまでも総支配人に頼りきりではレイダーの名が廃ると、血まみれ大好きパックスのウォーボーイズは誰の許可も無くスワッターを持ち出して敵対してきたギャング団で野球をした。

今も根城にした建物には彼らの骨や皮で作った椅子やテーブル、壁紙が誇らしげに飾られている。

 

「いらっしゃい、いらっしゃい!入荷したての健康な奴隷が安いよ!

オスの輸血袋は一袋1000キャップから!子産み女は1万キャップから!

愛玩用の人間のオスと雌も揃ってるよ!」

 

人的資源という言葉があるが、世紀末世界では正に人はあらゆる意味で資源扱い。

愛玩動物扱いの奴隷が売られる分、余裕があり文明的な所は流石に総支配人の手下だろう。

 

言うまでもなく働くのはトレーダーという名の奴隷。

奴隷が奴隷を商う、人類史では普通。

こんな世紀末世界でも人間はたくましく生きていることを示す微笑ましい光景が悪所では見られた。

ファンタジー?知らない言葉ですね。

 

この悪所を支配するのはパックスのメイソン。

今も『ヒャッハー!』という観客の歓声とともに捕らえられた野生のギャングが持ち込まれた動物と金網デスマッチを繰り広げさせられている。

メイスン曰く、

「ここは砦より居心地がいい、人が多すぎるのが玉に瑕だが。

ボスは俺たちに文明的な生活をさせたいらしいが、これが文明なら悪くない」

これが(レイダー)文明なのか・・・・

 

考えても見て欲しい、ウェイストランドでは『いいえ、私は遠慮しておきます』死体ですら余さず有効活用されるのだ。

貴重な資源を非生産的なアートに無駄遣いできるだけ連邦は文明的な土地であり、そこの住人も余裕がある。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死徒達の午後

刺突爆雷(サンダースティック)
棒の先に爆弾をつけた代物
日本軍などが使っていた
俺を見ろ!
よくぞ死んだぁ!

ワークショップ
いろんなガラクタを放り込むと掘っ建て小屋や銅像、首刺しスパイク、常温核融合発電機になって出てきます。
元は多分、米軍の前線補給作業用品 3Dプリンターの進化系
材料を取ってくれば缶詰肉(いいえ、私は遠慮しておきます)から銃火器、服、殺人ロボット、核爆弾、バイク、自動車,B-29と太っちょ(複雑なものほど当然高価ですが)も作れます。
まぁ、レイダー程度の連中は銃弾とヌカコーラさえあればいいよね。

ご要望に伴い、世紀末では手に入りにくいゴムや光ファイバー、電子部品なども対応する原料を手に入れれば工場で制作できるようにいたしました。



rocket69
(公式で)核融合V8で音速を突破する怪物マシンj
戦前の頭の悪すぎる倫理観を代表する商品の一つ
馬力は有り余っているので装甲、トゲ、衝角の世紀末セットを搭載してもへっちゃら
こんな世界なのでハンドルを握りながらソードオフのショットガンを撃つといいでしょう
俺の名前を言ってみろぉ!



 

伊丹、ロウリィ、レレイ、ティカの国会への参考人としての招へいは大荒れだった。

自衛隊史上初めての戦死という事態に野党は内閣不信任案決議を提出するとまで言いだした。

ほぼ原作通りなのでカットするとして伊丹への詰問という名前の嫌がらせは度を越していた。

『そもそもですねぇ、独力でなんとかするとか そういう発想はなかったんですかねぇ?』

 特地での作戦行動を巡り、国会は紛糾した。

自衛隊が初の戦争をする。

戦争の目的は大義名分は銀座事件の責任を取らせ、賠償させること。

だが、その裏では日本そして企業の思惑があった。

その時点ではイタリカでの山賊との戦闘による損害が問題とされ、伊丹や空挺部隊の現場指揮官が参考人として質問という名の野党からの避難の矛先に挙げられた。

この時にも、平和団体や左翼からの即時撤収と国連軍へ参加要請という意見が挙がったが

外国の軍隊を武装した状態で日本国内を通過させるという安全保障上の懸念という至極当然の理屈から見送られた。

 

ヌカレイダーに関しては都合の悪い部分は魔法などと誤認され、結局はアフリカの部族並みの武装程度であり自衛隊の敵ではないとされたため

また、特地では地下世界の神ハーディの恩恵によるものか地下資源が豊富だとわかった時点でその資源を採取、加工して売れば莫大な利益が見込まれた。

「特地は日本国内」という政府見解に基づき、最終的に自衛隊は、『特地における治安出動』に出ることにした。

 

・・・・・

 

 

突然だが、皆さん史実で野盗が数万規模にまで膨れ上がるという現象をご存知だろうか。

世間が荒れると野盗は加速度的に膨れ上がる。

なぜならば被害者が加害者に協力するようになり、流浪の野盗集団は喰うために豊かな土地を荒らし、荒らされた地方の農民は野盗集団に参加してさらに野盗集団は膨れ上がり、膨れ上がった集団はその巨体を維持するために更に他人に襲いかかる。

雪だるま式に肥大化する略奪集団とはわかりやすくいうと黄巾賊とか太平天国の乱を思い出していただければ結構である

普通はそうなる前に正規軍が野盗+流浪の農民を殺処分してなかったことにしてしまうが、時々初期の処分に失敗して伝染を防げず大混乱に陥ることもあった。

不要な人間が、まるで鳥インフルエンザに感染した鶏のように殺されるのは異世界では普通なのだ。

それを考えれば8時間労働で済ます程度の総支配人がどれだけ慈愛に満ちた存在かお分かりになるだろう。

奴隷という制度が結局は破綻せざるを得ない制度であったことを考えると今のうちに貨幣経済を浸透させたかったという理由が大きいが。

つまりどういうことかというと、自衛隊によって属国の兵力(警察の役割も兼ねる)がほぼ消滅したいま、無法地帯と化したエルベ藩王国は阿鼻叫喚の地獄の中にあった。

 

今も重要な商業・農業の都市の一つがレイダーによって陥落した。

レイダーグループ ディサイプルズ

ニシャを中心に女性が主な構成メンバーとなっているレイダー。

だからと言って他のレイダーグループより優しいなどということがあるはずもなく

キャップ!暴力!セックス!の内、3番目が2番目で代替注されたとしか思えないほどの凶暴性と残忍性を持っている。

 

『ンフフ!なかなか楽しませてくれたじゃないか?え、おい

馬鹿な奴らさ、大人しく死んでりゃそこまで苦しまずに済んだものを』

目を抉り出され、大事な部分を切り取られて口に突っ込まれた城主の死体を前に、苛立ちまぎれに人足がわりに使っていた奴隷を蹴り殺す。

特に理由の無い残虐な殺人と拷問こそ“殺戮使徒”の間で敬意を得る方法の一つである。

残忍な殺しをすればするほど、恐れられるほど敬意を得られるのだ。

壁という壁の蝋燭立てにはねじ切られた頭が飾り立てられ

噴水は今や死体の血抜きに使われている。

厨房では牛肉の隣に人肉が吊り下げられるなどサイコパスぶりがそこかしこで展開されている。

檻の中に逆さまにされた男達は輸血袋として、スティムパックなどの医薬品製造に必要な原材料になっているのだ。

レイダーがこの異世界で学んだ事は帝国が支配地域を広める方法であり、男は玉をちょん切って文字通り玉無しに、女は一晩回せば誰でも従順になる。

倫理観をなくしたが、学習能力だけは残った人間ほど厄介な物はないという一例だろう。

男もいる他のレイダーではそこまでしない。

男は素材として利用し、せいぜい女と見るや全部パコパコして売り飛ばす程度に止めるのと比べると凶暴さがわかるだろう。

それをちょっと町単位で実践すると、そこらへんの盗賊や難民もホイホイ金と女目当てに参加してどんどん大規模になっていった。

とはいえ、ディサイプルズに入団するには彼女達の前で考えうる最も残忍な行為を実践しなければならないので誰もがドン引きして下っ端に甘んじている。

城主の奥方は娘共々そこらへんでくっついてきた山賊に廻されて見るも無残な尸を晒している。

ウェイストランドではありふれた光景すぎて誰もなんとも思わない。

ニシャを初めレイダー全員が気にくわないのが、この世界そのもの。

どいつもこいつもつまらない生活をしている。

一生つまらない畑を耕して終わるつまらない人生なら、さっさと終わってろ。

だから連中のつまらない人生を自分たちの刺激的な人生の一部にしてやった。他人の生き方がつまらないからぶち壊し、それを楽しむとはレイダーの中でもここまで病的なサイコパスは仲々いない。

大抵は奴隷にして生かさず殺さず搾り取るのが精々だが。

城下町ではレイダーが銃の射撃練習に逃げ惑う人々を使っている。

 

『逃げろ逃げろぉ!ホラァ、撃ち殺されてぇかぁ!ヒャハハハ!』

商店や館には押入りめぼしい物は奪い尽くし、奪えないほど大きければ壊すか焼いてしまう。

広場では新しく傘下に入ったクズどもとの親睦会と称して野球が行われている!

ルールは簡単、逃げ惑う人間をバットで一番多く殺したものが優勝!

もはやベースボールのかけらも残っていないが、世紀末なので仕方ない。

 

『オラァ!ども!さっさと運び入れなぁ!』

まさに世紀末な光景がそこかしこで繰り広げられるが、ここまで酷い虐殺

凶暴さで知られるレイダーの中でも最悪なのがヌカワールドだが、間違いなく3つのレイダーグループの中で最も捕らえられたくない連中であり、奴隷の扱いも家畜としか思っていない。

ここでいう家畜とは食用も含む。

 

かつて城では罪人を捕らえるための牢獄が、今では世紀末レイダーの材料倉庫兼牢獄に成り果てている。

 

「この前買ってきた黒髪の輸血袋の調子はどうだ?

もうそろそろ出荷できるだろ。」

 

「ああ、汎用でA++グレードのハイオクさ。

二フォン製は質がいいから、もっと取ってきてくれてオペレーターズの連中から依頼が出てる」

 

「ガス欠か?なら、バイオメカニックにハイオクを輸血してもらいたかったらリッター500capは必要さ」

 

「ひどく高いな、一匹1000で買っておけば7リッターは取れるだろ」

 

「こっちだって商売さ、それに輸血袋もタダでメンテできるわけじゃない」

 

バイオメカニックとは要するに世紀末医者のことだが、人体が主な材料のこの世紀末世界においては生体部品を取り扱う技師とみられている。

 

銀座事件で誘拐された日本人男性はあちこちの奴隷市場を転々と転売されレイダー連中の目にとまったところ優秀な輸血袋として異世界でも大人気になっていた。

理由としては珍しい黒髪黒目の日本人でスティムパックを作ったところ、アドレナリン増大の調子が良く性欲増進に役立ったためらしい。

程よく放射能汚染されているのが効くらしいが、真偽のほどは所詮レイダーのお粗末な知能であるため不明である。

世の中のウェブ小説に異世界転移はあるが、ここまで最悪な異世界転移もそうそう無いだろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Dragon Slayer

総支配人「核弾頭のお届けものでーす」
ヒロシマ級ピカドン
炎龍「ファッ!?」

総支配人
「人生色々あったけど黒王様が結局正しかった(世紀末世界を見渡してから ドリフターズを読む
人類からこの世界を守るんだ!
お前らは死ね(戦略核のプレゼント」

日本・帝国
「ファッ!?」


「さて・・・今回役員会議を招集してまで、ここに集まってもらったのは他でもない。

例のなんとか国のウラン鉱山のことだ」

「好きにしな、キャップにならないなら意味はない」

「石っころ掘りなんぞ趣味じゃない、ツルハシ持つのはあんたの仕事だ」

「どうでもいいから、もっと血を見たいね」

だめだこいつら、頭が悪すぎる。

「無論、お前らに理解してもらおうなんざ考えてない。

俺が言いたいのはこいつについてきたおまけの事さ」

 

総支配人が話を切り出したのは、エルベ藩王国で前から目をつけていたウラン鉱山だ。

総支配人の目標ははっきりしている。

この美しい世界を守らなければならない。

資源への欲望と黒々した政治的駆け引きで、侵略者は異世界の文明を連中の価値観で塗り潰し、彼らと手を握るどころか鉛弾を叩き込む。

互いのいいところを教え合うなんてこともなく、企業は一部の人間だけが儲かる一方的な取り引きを結ぶ。

そう言うやり方を取ろうとしているのだ、許せない。

企業・・・Vault-Tecやハルシジェンの同類の薄汚れた獣ども。

企業の手下、ジェッタイは完全に破滅しなければならない。

連中を引き込んだ帝国も同様。

有害な彼らは完全に破壊され新しい世界を受け入れねばならない。

門など未来永劫破壊されるべきだ。

世界は異世界の科学という存在なぞ知る必要はない。

知識や進歩などという誤った観念は必要ない。

世界は未来永劫永久に閉じた安寧の揺り籠であるべきだ。

そして私、総支配人は永久に生き続ける。

支配者、その血脈の中で。

 

「連中と協力する気はないのか?

帝国を倒すという目的は一緒なんだろ」

「無いな、俺の経験上

帝国と二フォンが講話したら今度は俺たちを”資産の整理”と称して消すだろう。

だから準備が不十分な今のうちに、こっちが消してやる」

 

今や元帝国の要塞を改造した本拠地の“砦”から距離があるせいで侵攻できずにいたが、今や3ヶ月でヌカワールドは大幅に拡張した。

兵員は流れ者の山賊・盗賊団に元王国の傭兵崩れそれに奴隷兵を吸収し総数30万人にまで拡張されている。

大抵は弾除けがわりにしかならない雑魚だが、それぞれのレイダー集団も現地で見込みのある人間・亜人を新しく採用している。

オペレーターズ

手段は問わない!キャップを持ってこい!

 

パックス

狼になれ!強い獣を狩って持ってこい!

 

ディサイプルズ

殺しあえ!生き残った奴だけだ!

 

それぞれのレイダー集団の特色あるリクルート方法でそれぞれを強化していた。

 

「なんだと言うのだ・・・ここは」

ヤオが故郷に現れた炎龍討伐をなしうる勇者を探しに出かけてからの粗筋はそれはそれは苦難に満ちたものだった。

 

カカシ

総支配人の支配領域を示し、弱者に恐怖と絶望を与えるために掲げられた鋼鉄の異形。

鉄と木材、殺された人間で作られ昼も夜も燃え盛って道を照らし出す様は地獄の道しるべとも言える。

元帝国領のあちこちに作られたそれはここが総支配人の物だと言うことを示し許しなく入ったものがどうなるかをも示している。

 

レイダーの植民地経営によって弱者は奴隷に。

だが強者はレイダーになった!

魔王軍に入れば殺しも強姦もやり放題という事でバカが入ってくるが、大抵は入団試験にすら耐えられず死ぬので大抵は下っ端でしかない。

魔王、そう魔王なのだ。

人類を再定義し、守ると誓った総支配人は今や魔王なのだ。

伊丹からすれば総支配人は敵で魔王だが、

総支配人からすれば自衛隊が魔王で伊丹はその一部。

 

この弱肉強食の修羅の国での生存確率は1%未満!

 

名無しの修羅ですら飛び道具無しで帝国兵士一個小隊を簡単に虐殺してしまうほどのバケモノ揃いなのだ。

いつからウェイストランドは修羅の国になった?

 

遂に帝国軍の駐屯地ですらレイダーに襲われるようになった。

奪うためではない、力を誇示するために殺しを楽しむ。

銃ではなくスワッターで、スワッターでなく素手で。

困難な方法で殺すほど尊敬を得られる。

武装した人間を素手で狩ることほど、レイダーの中で尊敬を得る方法はないのだ。

千人の帝国兵が守る駐屯地ですら、十人程度の飛び道具はおろかバットすら持たないレイダーに真昼間に正面から攻められて易々と陥落させられた。

「このような弱兵でも務まる軍なぞ聞いたことがないわ!

弱き者どもよ、死ね!ここは今より修羅の国の武の掟が支配する!」帝国兵は一人残さず皆殺しにされた。

駐屯地は焼き払われ、死体は人の外の馬返しの柵に残さず突き刺されカラスの餌となった。

時はまさに世紀末!

 

カカシの無残な光景を眺めて、ここは危ないと直感が告げ離れようとしたところをヒャッハー!どもに襲われあえなく囚われてしまった。

ヤオは総支配人の砦であられもない格好で囚われの身となっていた。鎖に繋がれ檻に入れられたその姿はダークエルフの戦士がこれからビリビリにひん剥かれて“くっ殺”展開を予想させた。

総支配人の支配下を抜けて炎龍を傷つけたと言う緑色の人々の元まで行こうとしたが、迷ったところをレイダーのディサイプルズに捕まって売り飛ばされてここにいる。

知っての通り、少数の遺伝子情報から構成された一族はたった一つの細菌、たった一つのウイルスでも絶滅する恐れがある。

それゆえ、この世界で血族が途絶える可能性を少しでも減らすためになるべく多くの母系遺伝子を取り込む必要があるので多くのサンプルを必要としていた。

要するにヤオもレアなダークエルフということで総支配人に献上されてしまった。

嫁き遅れヤオちゃんも遂に処女卒業だね!

 

・・・・

「おまけというのは炎龍・・・でっかい空飛ぶデスクローみたいなものさ。

そいつが俺の鉱山の近くで暴れてる・・・で、俺を頼ってこいつが来たわけさ」

今は総支配人の椅子のすぐそばで体を惜しげも無く晒し、まとわりついている。

「なんだい、またあんたの新しい女か?」

 

「ま、そう邪険にするな。俺とこいつの子供が新しい族長になる予定だ。

条件を満たせばな」

 

要するにヤオと総支配人の間に生まれた子供が十分に成長し、与えられた武器と道具を使いこなせる教育を受けた時にはダークエルフ族の新しい族長として彼の血族に貢献する契約を結んだが

それには暴れまわっている炎龍を退治してくれというものだった。

 

「おいおい、そりゃあんたの私事だろ。

手下を使いたきゃキャップ払いな、危険手当込みだよ」

 

「でか蜥蜴を殺して武勇を示そうってか?

そりゃいい、最近はガントレットもご無沙汰だしな。

あんたのご活躍がベッドの上ばっかなのも飽きて来たとこだ」

 

「どうだっていいさ、勝手にしな」

 

炎龍退治に実に非協力的なレイダーグループの役員連中だった。

炎龍退治に必要なのは・・・

1:核弾頭を問答無用で打ち込む

2:4連対戦車ミサイルの直撃

3:対戦車レーザー砲の集中射撃

 

考えた末、総支配人は1を選ぶことにした

 

 

クアンタムヌカランチャーの出力をナガサキクラスで叩き込めばいかにデカデスクローといえど撃破できるはずだ・・・




植民地支配、新大陸征服
科学の暴走と成長の神格化
そして核戦争による全ての破滅
結局、ドリフターズの黒王様が正しかったんだよ・・・・
だけどオークやゴブリンは嫌い
なので少数の人間だけが科学知識を持つ支配体制にするね
血族だけが核兵器や光学兵器で武装し後は中世レベル
これだけ力の差があれば反乱なんて無理だし
これなら資源を大衆のために浪費せずに済むから持続可能だよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Rocket69

ハハッ!僕キャッピー!下郎の皆様こんにちは!
(世界一有名なネズミの声で)
こちらは毎日ヒャッハーな笑顔溢れるヌカワールドDEATH!
ただいま奴隷のバーゲン中!薬も酒もコーラもあるよ!



レイダーどもに”炎龍退治するぞ”と言った総支配人であったが、

付いてくる者はいなかった。

連中は身勝手でわがまま、好き放題の権化なので予想はしていた。

足手纏いにしかならないならそもそも必要ないので問題はなかったが。

はっきし言って、ヤオの要求なんぞ聞く気は当初は全くなかった。

適当に孕ませたらそれで充分と思っていたのだが

あまりにも必死に勇者を探していると頼み込むので話を聞く気になった。

「ま、待て。待ってくれ!私の部族を苦しめている炎龍を倒す勇者を探す途中なんだ。

これが終わったらいくらでも好きに・・いや、倒してくれた相手に捧げなければいかんのか?

と、とにかく話を聞いてくれ!」

 

 

人々を苦しめる悪しき獣を放っておくわけにはいかない!(棒

おっ、トカゲ頭ねじ切って新しい部屋飾り取り付けるか!

とか、ヌカ再現装置にDNAサンプル放り込んで量産すれば最強のペットじゃないか?

ドラゴンライダー総支配人カッコイイ、ノロマな馬鹿どもを上から撃ちまくって殺しまくるの最高!

とかは思ってないよ、多分。

キャップ!暴力!SEX!しか頭にないレイダーにとっては総支配人がトカゲの頭をネジ切るのには興味がないらしい。

それぞれが身勝手に動き回り、強い者は避け必ず自分より弱く金持ちを主に襲うレイダーにとってわざわざ遠征して1キャップにもならないドラゴン退治は割に合わない仕事だった。

ゆえに今のお供は仕事が終わったら子供を産む契約をしたヤオと犬だけ。

蒼く輝く車に拳銃、クレンヴの歯、バット、突撃銃、対戦車レーザー砲、劣化ウラン弾、ロケット、核弾頭といった武器弾薬とPAを積み込み助手席にヤオを押し込む。

「流石に詰め込みすぎたか?」

 

「さっさと乗れ、行くぞ

ろくな地図が無いのでは日没までに着かないと一夜を明かす羽目になるぞ」

「ああ、それにしてもこれがお前たちの噂の馬なし馬車か?

到底動きそうには見えないが魔法の道具なのか?」

青く輝く自動車だが速そうには見えないらしい。

 

だがその感想も1万8000馬力のV8核融合エンジンの耳をつんざく轟音を吹かすでどこかに吹き飛んだ。

 

人間に制御できるとは思えないオスプレイの1.5倍もの出力の狂ったエンジンが生み出す力は大型ヘリにもそのまま使える程。

航空機のエンジンをそのまま車に取り付けたんじゃないだろうか。

戦前アメリカ人の頭が悪すぎる倫理観ならありそうだ。

後部にPAをワイヤーで固定しトランクには武器を満載。

 

「す・・凄まじい声を出すのだな

これは魔法生物なのか?」

「いちいち質問の多い女だな。

黙っていないと犬肉の餌肉にするぞ」

わふっとドッグミートが反応するが

「冗談だよ、ちゃんとした餌なら用意してある」

頭を撫でてやるとパタパタと尻尾を振って喜びを表現する犬。

「わ、私は犬の餌以下なのか・・・・」

落ち込むヤオを無視してアクセルを踏み込むと一瞬で砦の格納庫から弾丸のように飛び出し道を歩いていた間抜けな奴隷を一匹轢き殺す。

跳ね飛ばされた体がボンネットで跳ね返り、全面窓ガラスに叩きつけられ血と脳漿の痕跡を残して一瞬で後方に消えていく。

「おい!誰か殺したぞ!」

加速で大抵のやつは息も絶え絶えになるのだがこの女は青い顔をしつつも外を気にする余裕すらある・・

部族でも優秀な戦士というのは嘘ではない、これなら優秀な子孫を残せるだろうとむしろ総支配人は感心した。

「壊れてはいない」

「そういう意味ではないのだが・・」

世紀末世界では人命はゴミより安いので問題はない。

「外に出たら加速する。

吐くな、死ぬぞ」

「ま!待ってくれ!まだ心の準備が!」

だがもう遅い、街中で既に100kmを出していた頭のおかしい車は開けた町の外に出ると更にアクセルを踏んで500kmにまで加速する.

 

最高速度の半分以下の安全運転だが加速した途端ヤオは

「グエェ」とヒキガエルが潰れたような呻き声を出してシートに押し付けられる。

全身の骨が軋み、筋肉が悲鳴をあげ失神してしまった。

「なんだ、寝たのか」

 

車は轟音を立てながらエルベ藩王国のダークエルフたちの領域

炎龍の塒へと進んでいく。

運転しながら集めた炎龍のデータを元に狩を想定する

(破壊力の点なら核弾頭を使うのが最も確実、次点で核地雷

最大出力10ktなら確実に殺せる

だが前者はHEATロケットを回避したことから直撃は難しい

後者は確実に着地する場所を想定できなければ無意味か・・)

総支配人は緑の人の鉄の逸物が歩兵用の対戦車ロケットだと目星をつけていた。

無誘導では空中の目標に命中させるのは難しく、初速の遅い核弾頭では直撃は期待できないだろう。

炎龍は空中機動力が高い、故に

(レーザー砲で翼をもいでから、確実に当てるしかないな)

それでも駄目だったらアトムの審判で亜屠無殺拳を披露するしかない。

逆に炎龍の名前にもある炎はPAを着込んでいれば脅威とはならない。

炎龍の炎のブレスは最高で1300度

ゲル状の燃料を口から発射し点火させることから、人間の火炎放射器と原理はほぼ同じと推定される。

生身の生物相手なら大した飛び道具も肉体もひ弱なこの世界では脅威に違いない。

PAはロケットの4000度の噴射炎にも平然と耐えるので余程長時間でなければ問題はない。

炎で火薬が暴発する危険性はある、同行しているヤオがローストにされる危険性もあるが

前者は武器を耐爆箱にでも入れるか、分散しておけばいい。

後者は戦争に被害はつきものと諦めてもらおう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

USS マサチューセッツ

米海軍の説明文
『骨董品の戦艦あるでしょ
古くても装甲厚いから簡単には沈まないでしょ
これにギガトン級のでっかい水爆積むでしょ(広島級の7万倍
上海あたりに突っ込ませて自爆させれば一気にやっつけられます』

この人たちみんな頭おかしい 

第3次世界大戦ってどうだった?
「ほーら、お薬の支給だよー(サイコやジェットをプシュープシュ投与」
「やろう!ぶっ殺してらぁ(戦術核ポーン)」

ヤク中の兵隊が戦術核を投げつけてくる狂気の世界
中国側もにたようなもんだろう


話は少し戻る

「ふむ、”にフォン”とは異世界から出現した侵略者か。

そして”ジェッタい”が奴らの軍隊の名称。

科学水準はおよそ20世紀後半レベルといったところか」

 

総支配人はこの前遭遇した謎の軍隊と国について考察する。

 

「ならば核弾頭を配備していると考えるのが適当か・・・

チンピラと骨董品で正規軍と戦う羽目になるかもしれん。

ふむ・・・とんでもなく予算と資源を食うが・・・あれをやるしかないな」

 

総支配人はそう言うと、郊外にある核融合炉に足を向ける。

この砦は故郷のマサチューセッツ州に条件が似た良港に面しており、かつ略奪軍が帝国を荒らし回るのに適した中央に近い場所に設置されている。

この場所の戦略的な有利さに帝国が気づかないわけはなく、当然のように軍隊が駐留し防衛に当たっていたが今は皆カカシと練り混ぜられてしまった。

総支配人の考えではまずは海を支配すべきが考えであった。

 

「AN-D0、”フィラデルフィア装置”の出力を最大級にまで準備」

総支配人は配下のロボットのMrハンディに巨大な・・かつて自分が手作りしたテレポーテーション装置の超巨大版を用意させた。

あまりにも巨大なために結局山一つを水爆で吹き飛ばして用地を確保しなければならなかったほどの設備。

これだけの設備を作っても、工作精度の質の悪さのため使えるのはおそらくはこの一回こっきりだろう。

 

総支配人の考えることは単純であった。

自衛隊が74式戦車やF-4ファントムといった強力な武器を異世界から持ち込むと言うのならば

こちらも対抗して強力な武器をウェイストランドから持ち込んで強化しようと言うのだ。

実際、向こうが戦術核爆弾を使えばこちらには対抗するすべがない。

せいぜいどこに飛んでいくかわからない年代物のポンコツ戦略核ミサイルが相手に当たることを期待してやたらめったら撃つしかない。

それでいて核ミサイルの打ち合いになったら向こうにはまず敵わないだろう。

そして、ウェイストランドの文明レベルは中世から見てもひどいもの。

強力な文明の利器など今や殆ど失われていた。

M61戦車や超音速戦闘機スティングレイなどは200年も放置されていたためにもはや鉄の塊にすぎず使い物にならなかった。

ゲートの性質をよくわからないが使えそうな物はなんでも利用して本来なら持ち込めないほどのサイズの物を持ち込む、それも一回限りで最大級の戦力を保有しているもの・・・

総支配人には心当たりが一つだけあった。

 

戦艦  USSマサチューセッツ

1942年竣工

地上砲撃しかしたことない

武装

40cm核砲弾

巡行核ミサイル

対空核ミサイル

核魚雷

核爆雷

硬X線レーザー砲

核動力

(恐ろしい事に実際に全部冷戦中に作られた)

ロボット操縦でありったけの核兵器を狂ったように撃ちまくりながら全速前進し

撃ち尽くしたら中国の港湾都市に突っ込んで反応炉を暴走させ

戦艦そのものを巨大な水爆として使う

紺碧の艦隊のヘルや大和もびっくりの特攻作戦の予定だった

共産主義者は死ぬ 

 

流石は帆船に原子力ロケットをつけて飛ばそうとした国である、頭おかしい

 

この300年以上前の博物館そのものの戦艦もロボットが艦長となって今も出撃命令を待っていたが

(前任の人間の艦長は頭のおかしすぎる作戦に反対していたので飛ばされてロボットが据え付けられた

「私が世紀末大統領だ(説得」

 

「おお!確かにあなたは大統領として登録されております!

最高司令官、いつでもご命令を!勝利か死か!

栄光ある合衆国海軍は永久不滅であります!」

アイアンサイズ艦長と同型ロボットの艦長が答える。

ロボットなので完全にイエスマンだ。

 

そう、総支配人は今や合衆国大統領として登録されていた

具体的にはボイルストンクラブで死んでた前大統領から盗んだパスコードを使ったハッキングで。

「なんだ?こいつら元大統領に議員い州知事?ふーん、絶望して自殺した?

メンタル弱いなぁ。たかが世界が滅んだ程度で死んでたんじゃ人類滅亡しちまう。

おっと、もうほぼ滅亡してたな!」

 

だが、係留されていた戦艦をあのゲートを通すことはできない。

ならばどうするか?それがこのフィラデルフィア装置と呼ばれるテレポート装置を巨大にしたものだ。

マサチューセッツ州から博物館をフォルマル大陸の砦の近くの海にワープさせ戦力とする前代未聞の計画であった。

4万6千トンもの戦艦をテレポートさせるなど前代未聞、

一歩間違えれば対消滅を起こして惑星が蒸発してしまうかもしれない無茶な計画だったが

「まぁなんとかなるだろ」

と実に楽観的な勢いで計画を実行することにした。

「大統領閣下!反応炉の臨界まであと5秒!テレポーテーション成功確率は30%

5・4・3・2・1・・・」

 

その瞬間、世界は一変した。

テレポーテーションの衝撃で巨大な津波が帝国の沿岸部に押し寄せ、

漁村はことごとく壊滅的打撃を受け、港湾都市に押し寄せた津波は波止場も船も商店も押し流し

河川から逆流した海水は農地へと流れ込んで塩害で作物を一気にダメにしてしまった。

収穫できない作物、不作は盗賊による荒廃とあいまって多くの餓死者を出すだろう。

「ヌカコーラがあればヘーキヘーキ」

総支配人は自分はヌカコーラとグールを主食にウェイストランドで生き延びてこれたのだから

フォルマル大陸の民衆もたかが農作物が全滅した程度で飢えるとは思わない。

これで少しでもジェッタいとの戦力差を埋められればいいのだが・・と総支配人は思った。

骨董品の戦艦なぞ、飛行機の前ではただのマトでしかないのはわかりきったこと。

限られた戦力、限られた武器、それでも人類は戦わなければならないのだ。

生きるために



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フレンドリーな特地においでよ!

「ううむ・・・・」

東京

ここは自衛隊アルヌス駐屯地から送られてきた情報を統合的に整理し

今後の特地での任務を幕僚、そして防衛省の幹部に報告し適切な国家の判断の材料にするものである。

 

 

「皆様、ご覧の通り今や特地は混沌の極みと言えます」

 

自衛隊の偵察機RF-4Jから映された映像が会議室のモニターに映し出されると、その場に居合わせた誰もが息を呑んだ。

次々と燃え上がる村々に町、めぼしい街からは大小の差異はあれど煙が上がり陥落したことを示している、

そして中世の文明レベルで街が陥落すれば始まるのは古今東西、異世界を問わずほぼ同じことだ。

虐殺に略奪、勝者による敗者への陵辱。

「そして・・・こちらが推定による略奪集団の推定数です」

「これは・・・・推定30万以上!?こんな事がありうるのか?」

「歴史上・・・このような騒乱は地球の歴史にも多く見られます

中国での黄巾の乱を始めとする王朝交代時の大反乱やゲルマン民族の大移動などです」

 

数ヶ月前まではたった1000人にも満たないヌカワールドのレイダーは今や現地の食い詰め者を大量に取り込んでその数を大幅に増やしていた。

ほとんどはレイダーに許された銃火器までは与えておらず、ただの肉の盾兼二足羊扱いだが。

こういうものを地球では古くから戦奴と呼び戦争の度に矢玉避けに使われてきたので珍しいものではない。

財産も故郷も失った被害者が加害者の一行に加わることによって食っていくというイナゴの経済システムが急速に出来上がっていることを示している。

「そして・・これが偵察隊が撮影した”大規模武装集団”です」

 

『ヒャッハー!見ろあの必死の顔をよー!』

『イヤッホーッ!!』

『ホホホーッ!』

『汚物は消毒だー!!』

そこに移っていたのは刺々しく改造したバイクや自動車に跨り、突撃銃や斧を振りかざしながら人々に襲いかかるモヒカン・肩パッド・レザーアーマーの・・・どう見ても世紀末ヒャッハーです。

ご丁寧に火炎放射器で武装しお約束の言葉まで吐く某聖帝配下のモヒカンまでいるという映像に自衛隊の幕僚達も唖然とした。

 

「何だこいつらは!?北○の拳の雑魚どもか!?」

幕僚がつい放った言葉が全てを説明していた、80年代に流行した漫画のやられ役そのものの連中が映像の中で暴れまわっていたのだ。

違う点は銃火器でヒャッハーどもが武装している事と世紀末救世主がいないことくらいか。

「連中がアルヌスの丘で自衛隊と偶発的に交戦した部隊の一部と考えられております

装備に関しては殆どが何処から拾ってきたのかもわからない粗雑なものですが、殆どがAK-47に酷似した小銃で武装しており更に一部は大口径の対戦車ミサイルも装備しておりますので

接近戦に限れば火力は普通科と何ら変わらないと思われます。

自衛隊の偵察隊が廃棄された自動小銃をサンプルとして持ち帰った所、その重量こそ89式の倍以上という軽機関銃並みの重さだったが重さ以外は十分に実用に耐える精度と頑丈さを有していた。

工作精度の低さと材料の質の悪さを肉厚で補う世紀末設計だったが、それゆえに頑丈さは勝る。

偵察隊の映像は更に続き、陥落した町で繰り広げられるお決まりの略奪・そして街が陥落するとそこに建てられたのは・・・

「はぁ!?コーラの瓶!?」

巨大なコーラの瓶がトラックから降ろされると町の真ん中に建てられる。

『ヒャッハー!この町も総支配人様のものだー!』

「コーラ!コーラ!コーラ!コーラ!」

トラックから真っ黒なヌカコーラが下され、レイダーに支給されるとレイダーたちが勝利を祝って乾杯する。

『ウヘヘヘヘへぇ、ふいー人を殺すとコーラが飲みたくなるぜ』

更に巨大コーラボトルからにロープが吊るされると・・・

「連中!なんてことを・・・・」

そこにはこの町の有力者の貴族とその家族が吊るされた。

『ヒャッハはー!総支配人様に逆らう奴は皆殺しだぁ!ミュージックスタートぉ!

 

World of Refreshmentは(ヒャッハーには)素敵な場所!

(ヒャッハーな)フレンドリーなヌカタウンで弾ける笑顔(と脳みそ)!』

 

そして流れるのがヌカ・ワールドのテーマソングだった。

200年以上前はパパママお子さんに人気の夢の国のテーマソングも

今や世紀末世界では恐怖の象徴のようになっている。

街のそこかしこにゴミのように放置される死者、鎖に繋がれモヒカンに

『オラーッ!奴隷ども、歩けー!ぐずぐずする奴は消毒するぞー!』

と急かされる。

『この薄汚いゴミクズども!ノロノロしやがって、さっさと車に乗り込め!

ぶっ殺されてぇかコラァ!』

甲高い声で今や奴隷となった人々を罵るのは世紀末仕様に改造され右手に火炎放射器。左手に機関銃を装備したヌカワールドのマスコットキャラのNIRAだ。

『こんにちは坊ちゃん、楽しんでますか?grgafsfsdエラー』

『このクソガキが!さっさと歩け!さもなきゃうじ穴に放り込んでやる!』

最後の映像は狂ったロボットが機関銃を乱射しながら人々を奴隷輸送車に詰め込むシーンだったが・・・

 

『まずい!連中、こっちに気づいたぞ!』

自衛隊偵察隊の何人かがレイダー連中が自衛隊に気づき銃をこちらに向けて発射してきたのシーンに変わった。

『射撃しつつ後退!退避!』

自衛隊員がMINIMI、89式小銃を撃ちながら大急ぎで林の中に隠してあった高機動車の方に駆け込む。

『隊長!バイクが向かってきます!』

『ヒャッハー!新鮮な肉だー!』

たちまち気づいた何人かのレイダーが刺々しい車やバイク・・・マッドマックスの改造車のような車に乗り込んで追いかけてくる。

『全速力だ!』

偵察隊も小銃を撃ちつつ後退する。

自衛隊の軽装甲機動車が3両の偵察隊の最後尾につき、銃弾を弾きつつ銃座のminimiを打ちまくりながら後退するが装甲があるぶん、そして純粋にパワーの差で徐々に追いついてくる。

 

『ヒャッハー!あいつは俺の獲物だー!』

『ざけんな!あの軍隊野郎は俺がぶっ殺す!』

二人乗りの改造車やバイクが追いかけてくる。

改造車は一人がドライバー、もう一人がガンナーでグレネードスティックと呼ばれる

先端にグレネードや火炎瓶をくくりつけた投げ槍やロケットで武装している。

MADMAX怒りのデスロードの連中と同じノリだ。

要するにアフリカや中東の戦場でよく見かけるテクニカルである。

自衛隊も応射するが、双方高速で揺れ動く車上から常に動き回り急所は装甲化された車両同士の軽火器の撃ち合いのためまるで第二次世界大戦時の飛行機の戦いのような戦闘になる。

追うレイダーもこれでは埒が明かないと見たのか、ついにロケットランチャーを持ち出して軽装甲車に狙いを定める。

『地獄に落ちやがれ!』

ところで何故特に奪うものもないのに自衛隊に襲いかかるのか?

まず間違いなく、何も考えてないよ。だってレイダーだし。

シュパ!という間抜けな音とともに対戦車ロケットが軽装甲車に向かって放たれる。

『右に避けろ!』

銃座についていた隊長が咄嗟にドライバーに指示を出し、回避に成功するが

危機はまだ終わっていない。

近づいてきたバイク乗りが速度を落とした軽装甲車に向かってグレネードを投げつけてきたのだ。

爆発音とともに大きく揺さぶられる軽装甲車。

隊長の持つminimiが次々とバイク兵を撃ち殺すと、横転したバイクがそのまま今度はハンドルを切り損なった装甲改造車に突っ込んで激しく横転した。

次の瞬間には軽装甲車は脇目も振らずに撤退し、レイダーの追撃を振り切ったところで映像は終わっている・・・

「以上が特地で無法行為を行う”大規模武装集団”に関する報告です」

「こんな物をどうやって国民に報告しろというのだ・・・」

 

特地が急速に昔の漫画で見たような世紀末状態になりつつありますと国会で説明しなければならないのかと思うと自衛隊の幕僚たちは頭を抱えるのであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伊丹の決断!

なんで姫騎士や女騎士っていつも悪党やオークにパコパコされちゃうの?
JapanのHENTAI E-ROGEのせいだね。

ちなみに
ヒャッハー!新鮮な豚肉だー!(オークを見た雌レイダー)
ブヒー!喰われるー(文字通り)異世界の人間怖すぎブヒー!

奴隷って必要?
ロボットの方がコストパフォーマンスでは遥かに勝るので要らないby 総支配人
もっぱら特地の奴隷商人に食料と交換でレイダーが売っているようだ

ヌカ・ワールド協賛企業
InGen社 
新しい恐竜を作っては案の定逃げられる倫理観ガバガバ企業
デスクロー、ゲータークローなどの制作で米軍と協力
最後まで全く反省しなかった

これが総支配人流の異世界内政チートだ!
農業 ロボット
商業 ロボット
鉱業 ロボット
工業 ロボット
戦争 レイダー+現地徴用レイダー
要らない人間>現地の奴隷商人に売り払って在庫処分 もしくは屠殺して新鮮な肉
完璧だな!


ダークエルフの里にやってきてやった総支配人はヤオを道案内にして彼らと契約を交わした。

しかし、彼は知らなかった。

同時に伊丹たちもうっかりその場に居合わせてしまったことを。

正確に言うと、日本への炎龍討伐依頼をエルベ藩王国(絶賛レイダーの大略奪で炎上中)が別ルートで出し、資源利権にホイホイ乗った企業の”要望”で伊丹たちが来ることになってしまった。

レイダーのみならず失業した大盗賊団が大暴れしている上に兵力をアルヌスの戦いで消耗しきって都市部以外はMADMAX状態のエルベでどうやって資源を採掘し、どうやってゲートまで運び、更にそこから加工工場まで輸送するのか?

採掘に必要な投資額、運送に必要なインフラ、ゲートの保持費用。

更にそれだけの巨額の投資をしてもゲートが開いた時のように突然閉まったらどうする気なのか?

三○や伊○忠といった商社でも吹っ飛びそうな地雷案件だと言うことはすぐわかりそうなものだが、日本人は資源獲得という面で弱いからね。

仕方ないね。

一方で総支配人の計画は現状をこう捉えていた、それは・・・

”アメリカは建国以来、戦争に一度も勝ったことがない”という点を認めることから始めた。

栄光ある戦争と持ち上げる独立戦争は言ってみればイギリス国籍を持つ人間同士の”イギリス内戦”でしかなく、

南北戦争は内戦という愚行を始めざるを得なかった時点で大敗北している。

第二次世界大戦はたまたま相手が誰の目から見ても極悪のナチだったから正当化されただけであって、中国と西欧市馬の獲得という戦略は共産中国とソ連の躍進で頓挫。

日本はアメリカとソ連による世界勢力の再編という嵐の中によりにもよって極悪人のナチスと組んで盲目に突っ込んできて破滅しただけ。

ベトナム、イラクなどは言わずもがな

第3次世界大戦に至っては勝利者などいない、に尽きる。

アメリカは有史以来一度も戦争に勝てていない。

ただ圧倒的な国力で戦略的敗北による被害を上回る回復をしただけに過ぎない。

アメリカ以外の国は回復できず致命傷になるから真似しないようにね!

で、あるならばフォルマート大陸の支配・征服とう事業はアメリカを一度捨てる行為から出発しなければならない。

レイダーも現地レイダーの編成もその為、勝利の為の消耗品。

最後に自分一人さえ生きていれば、それで戦略的勝利なのだから・・・・

『で、お前らは何をしに来た?』

手持ちのショットガンを向けて伊丹たちを牽制する総支配人であった。

一応は契約を交わしたダークエルフの里でチェーンガンや核弾頭を振り回さない程度の配慮は見せてあげる優しさであった。

伊丹たち第3偵察隊も着剣し64式小銃を向けるが

『やめておけ、この距離でもこいつの装甲は308程度じゃ抜けん。

一方的に殺されたいなら別だがな』

しっかりパワーアーマを着込んで白兵戦に備える総支配人であった。

正面切っての白兵戦ではPA相手は生身では自殺行為に他ならない。

とはいえ、総支配人も警戒するのが亜神のロウリィであった。

「まさか、こんな所で出会えるなんてねぇ。

この世界を汚し続ける連中の親玉に!」

言うなりトマホークを振りかざし、今にも斬りかかろうとするロゥリィを伊丹が

「いやいやいや!ここで戦うのはやめてください!お願いします!なんでもしますから!」

『ああ、自称”神”か。世界を汚す?ふふん、どうやら自称”神”どもにとっては我々は気に食わない存在らしいな。

ああ、認めるよ。俺たちはそいつらみたいに洒落た菓子も文化も持ってない

うん、200年前に全部消えたからな』

どうやら総支配人からすれば自分たちがやっていることは帝国が昔から今までやって来たことを真似しているに過ぎない。

歴史の書を紐解けば帝国というか人間種が2000年前にこの世界にやって来た時の暴れぶりは・・・

そういうことである。

だが、新参者だからと言う理由でそれを世界を汚すとされては黙ってはいられないのも事実だった。

我々は生きていたい、だが悲しいかな歴史上どんなに新参者が平和的でも先住者との間でいざこざが絶えず絶滅戦争にまで発達するのは人類史ではありふれたことである。

『で?どうする?俺を殺すか?それで次は、俺たち全員を殺し尽くす大戦争に突入か?

こっちも反撃するからじえーたいも巻き込んでの大戦争になるだろうな、俺は構わんが?

理由なき戦争。趣味の戦争。お祭り騒ぎの戦争。

ほら、銃構えろよ。そんなんじゃソブンガルデに行けないよ?』

伊丹は上からレイダー連中と戦争状態に入らないようにきつーく注意されてしまった。

だってレイダーを討伐しても日本には1円の利益も入ってこないんだもん。

帝国は建前では未だに日本人を誘拐し戦争を仕掛けて来た。(総支配人からすれば買い戻せばそれで済む問題だと思った、中世では攫われて奴隷にされた人間は家族や知人に金があれば買い戻すのが普通)

『ほら、あんたエムロイとかいう奴の使徒なんだろ?

俺を終わらせてくれよ』

ロゥリィの戦闘力はあのオズワルドを少し上回る程度なので問題はないだろう。

流石は200年以上もの間、銃火器で武装したレイダー相手に剣で戦ってきただけはある。

 

『例えばさ、火星人が突然地球に降り立って土地を貰えれば平和的に住みますよーなんて言われてもさ誰も納得しないでしょ。

なんやかんやで戦争になること必至じゃない、で凶暴極まる火星人としてはだ

地球人を可及的速やかに制圧してあげたほうがお互いに被害が少なくて人道的だと思うんだよね』

いやその倫理はおかしい、と伊丹は思ったが突っ込むと総支配人が持つ凶暴そうなデザインのハンマー”アトムの審判”(放射性物質漏れ、日本人は死ぬ)に恐れをなしたわけではあるまいが。

そうだと言ってくれ。

お互い睨み合う総支配人と偵察隊、緊張はヒートアップし気がつけばいつのまにかレーザーガトリングを構えているので一掃射で偵察隊は蒸発してしまうだろう。

だがこの場で最も平和的で理知的な人物の伊丹は提案した!

「だからストーーーーップ!ね、我々の目的は今はお互い戦うことじゃないでしょ?

ほら、族長さんの言った通りまずは炎龍退治が優先なんだからそれまでは休戦ってことで・・・」

 

『俺はとりあえず、お前たちを皆殺しにしてからその仕事にかかっても構わない』

まずい!総支配人は核爆弾のピンに手をかけている!

「あら、奇遇ねぇ。私もあなたの魂を刈り取ってみたいの。

ふふ、一体どれほどの地獄を見ればそんな魂の色になるのかしら?」

 

『案内しようか?お嬢さんのお気に召すとは思えないがね』

早速やりあうき満々の二人は気にも留めなかった。

空気状態の自衛官である。

 

だが、ダークエルフ族の族長である女性が両者の間に割って入ったことでこの場はひとまずは治った。

「ご両名、この地は我らの部族のもの。我らの顔を立ててここはお互い弓を収めますように」

なるほど、他人の土地で許しなくドンパチするなということである。

彼女の年齢から出されるオーラには流石の両名をも納得させる威厳があった。

『確かに、既に契約を交わしたのだからな』

ちなみにヤオをコマしてして生まれた子を次の族長にするという内容だった。

流石と言わざるを得ない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

麻薬戦争 case日本

別に他意はない、ただ自衛隊の足を引っ張りまくって溺死させようとする政治屋が見て見たかった。
ちなみにリアルはもっと酷く野党vs与党どころか野党の内ゲバも日常茶飯事よ!
そしてメキシコでは2017年現在でもありふれた世紀末状態

ヌカ・ワールド協賛企業
ヌカ・コーラ社
言わずと知れたブラック企業
しかし後述のさらにエクストリームブラックな企業と比べると大人しく見える

Vault-Tec社
死ぬほど危険なウェイストランドを更に危険にし復興を妨げている大戦犯
クッソガバガバな倫理観すらすっ飛ばして顧客で人体実験を行う

InGen社
クッソガバガバな倫理観で毎回恐竜を作っては案の定逃げられて大惨事を引き起こす
だが他の企業に比べると、少なくともお客を楽しませようという姿勢が見られるから
マトモだと思ったあなたの倫理観はマトモだろうか?

アンブレラ社
殺人ウイルスを作って案の定地球滅亡

サイバーダイン社
核のボタンをAIに委ねて案の定地球滅亡

ファロン社
自己複製する殺人ロボットを売り出して案の定地球滅亡

以上、アメリカの技術力は凄いけど頭が地球滅亡級に悪い企業の残骸で異世界侵略します
世界滅亡させてもお抱え弁護団は無敵なので無問題


オペレーターズ
マグスが設立したインテリレイダー
理系教育を受けた構成員がいるためか技術力は高い
他に比べると凶暴度は控えめでまともな連中に見える
キッチンの冷蔵庫を覗くまでは Hi Mom

パックス
戦前のアメリカの大サーカス団が発祥
飢える動物たちに不思議なお肉をやるために大道芸をした道化師が初代団長
観客はあなた、お代は命 真夜中のサーカスの始まりだ
ピエロとサイコパスとレイダーが合わさり最恐

ディサイプルズ
戦前のマリア様が見ていた良家の子女達が通うミッションスクールが発祥
”使徒”という名前はその名残である
世紀末、女子高生達に襲いかかった過酷すぎる運命の中
スワッターで男のボールをホームランして回ったお姉様が初代団長
あら、頚椎が曲がっていてよ



ピニャは目が死んでいた。

あの日戦に負けた多くの奴隷に降りかかった運命が自分たちにも遂に襲いかかったのだ。

覚悟はしていたがまさか初めてがあんな形で奪われ、しかも敵の子を宿してしまうという屈辱には耐えられなかった。

圧倒的暴力、絶対的邪悪の前に弱者は項垂れ従うしかないのだ。

「醜い子ならいい、あんな男の為に美しい子など産んでやるものか…」

少しづつ膨らんできたお腹を見ながら忌々しげに呟く。

兄に犯されかけた時には手元の物をありったけ投げつけて反抗したが、総支配人の場合は顔もよく見ないうちにいきなり殴られて犯された。

ピニャは捨てられた、薔薇騎士団の女性陣も全て帝国によって”そんな人物はいない”ことにされた。騎士ともあろうものが自害すらせずに奴隷となり、女性に至っては敵の子を孕まされたなど恥以外の何者でもない。

ヌカ・コーラ社は冷酷で従業員の扱いも酷いものだったが、帝国も負けじと冷酷だった。

 

ナンバー2という名目の使いっ走りのゲイジはいい顔をしなかったが、古今東西

愚民を支配するには宗教が一番だという例を知っていた総支配人は宗教を設立した。

名付けてChild ofAtom ヌカ・コーラクアンタム派

キリスト教とイスラム教とユダヤ教とヌカコーラとChild of Atomをごっちゃ混ぜにしたインチキカルト宗教。

改修しない奴は放射線焼きの刑に処す,アトム様のご尊顔を仰げば嫌でも総支配人の慈愛が感じられるだろう。

 

総支配人の綺麗どころを集めたガキ生産施設はその尊い血を残すために多くの種族が集められていた。

(修羅の国、ウェイストランドの価値観で尊いとはつまり強いことである)

これは総支配人の遺伝子多様性に欠ける種族はたった一種類のウイルスで絶滅する恐れがあるという事実に基づいている。

母体の多様性が富んでいればいるほど絶滅のリスクを減らすことができる。

要するになるべく多くのメスにガキを産ませる。

受精作業は効率的に済ませるのが生産効率化への秘訣だろう。

時間のかかる拷問などしない、レイダーはせっかちなので自白剤をあるだけブッ込んで吐かせる。

 

 

一方でレイダーもその風習に習ったのかガキを生産し始めた。

 

『総支配人もヤキが回ったな。

あんなナヨナヨしたメスどもにガキを産ませるっていうんだ。

生まれてくるのも、どうせ貧弱なガキだ』

支配者に自分の子供を据えつけようという総支配人の意図を汲み取ってこれである。

ちょっとでも隙や弱みを見せると全力で殺しにかかってくる実に愉快なヌカ・ワールドのお友達である。命令を全く聞かない部下には困ったものだ。

『稼がせて楽しませてくれるって言うんなら今のボスは悪かねぇ。

実際、総支配人をヒーローだって讃える奴も大勢いるからな。』

捕まえた特地の農民をナイフ投げの的当ての的にしながら遊んでいたレイダーが遂に脳天にナイフをぶち刺してまたもオブジェが出来上がる。

 

 

『総支配人は我々のヒーローだっ!夢を現実にした!

グリーンランドは全部俺たちのものだ!全部だ!

彼に出会ったら、膝をついてお礼を言うんだ!俺たちの救世主だってな!』

 

『よう、クソ野郎。別にお前に恨みがあるってわけじゃ無いんだぜ?

だが俺たちも食ってかなきゃいけないしなぁ…言いたいことはだ

お前は思ったより美味いぜ、ほら』

血抜きの後に文字通り食い物にされる人々。

 

 

『よー馬鹿ども!貧乏人!今日もお祝いだぞ!またしてもっ!奴隷を大量に入荷した!

今度のは…えーっと、どっかの町の生きのいい連中だ。

ぶっ殺して遊ぶなよー、言っても無駄か』

 

『次のこの世界の総支配人はうちのボスさ、なんたって頭の出来が違う。

パックスやディサイプルズの馬鹿どもにこんだけの虫けらどもの世話ができるか?

できないだろ』

オペレーターズは武器・弾薬を蓄え、弾除けの奴隷を揃えウェイストランドで手に入れた化学兵器を増産し戦争に備えた。

 

『ふん、連中のことなら知ってるさ。いつも口先だけの守銭奴。

裏でセコセコバレないように貧相な物をしごくのだけはいっちょまえさ』

 

 

ちなみに奴隷の使い道は殆どが帝国内の奴隷商人に売り飛ばして、食い物や酒、武器・弾薬・薬に必要な資材との交換に当てる。

「へぇ、旦那。こっちの方はどうです?旦那と同じ金髪に青い眼、おまけに処女です」

 

『いらねぇよ、それよりもっと頑丈なメスはいねぇのか?

一度にガキを2、3匹は仕込めるでかいメスがもっと必要だ』

 

(全く変わった連中だな)

普通は男は若くて華奢なゾルザルが求めるような女奴隷を求めるが

レイダーに必要なのは雌人であり、美醜は特に構わない。

どうせ顔なんて見ないし。

 

一方でライバルレイダーグループの”帝国”の次期リーダーというゾルザルは雌兎のテューレとやりまくっているくせにガキを1匹も産ませていない。

既に数匹のウォーリアバニーの雌に種を仕込んだ総支配人とは大違いだ、種無しなんじゃないか。

と悪所のレイダーから流れてきた情報によって侮蔑され軽蔑されていた。

 

レイダーの勢力は雪だるま式に膨れ上がり、今やその支配領域は帝国に残された領域を遥かに超えている。

だが統治などそもそもできるはずはなく、農地は荒れるに任せ都市は荒廃しきっている。

もっともウェイストランドを見慣れた人間ならば”荒廃”の定義も変わるだろうが。

要するにガンダムGP02を奪ったメキシコの麻薬カルテルみたいなもんだ。

そう考えればそんなに大した問題ではないように思える。

 

一方で平和な日本国の発表では突然現れた“違法薬物密売暴力団”への対策が今日も国会で議論されていた。

違法薬物は無論のことヌカコーラである。

『ですからねぇ、このような問題は。えー、特地が日本国内の領土だと認められている以上

あー既にある帝国を名乗る武装組織では無いと判明いたした折でー』

 

『では何だというんだ!?与党は問題を曖昧にするのをやめろー!』

『『『『そうだ、そうだ』』』

『『『バカヤロー』』』『『引っ込めー』』

 

『あーこれらの組織を法的に分類するのならば、広域指定暴力団に分類されるのであり』

『それなら警察の仕事だろうが!』

『自衛隊は警察権まで侵害しようというのか!』

『戦前の憲兵の復活反対!』

結果、”広域指定暴力団”にレイダーが追加され

現行犯の場合には逮捕することを自衛隊に求めることが閣議で決定された。

後にこの事を捕虜にした自衛隊員から聞き出したレイダーグループは悪知恵を効かせ

レイダーからは武器を隠して撃たず、自衛隊員がギリギリまで近づいたところで銃を抜いて重砲の支援ができない接近戦で自衛隊員を殺すという偶然にもイラクでの武装勢力が米軍を奇襲するのと同じ方法を思いつき自衛隊員に”正面からの奇襲”を仕掛ける。

イタリカの戦いで総辞職し、総選挙したばかりの国会はこれによってまた半年とたたないうちに内閣総辞職、防衛省の制服組のすげ替えによって現地の自衛隊は貴重な時間を浪費させられることになる。

 

一方でその頃…

『生産数は現在日産500体。目標の日産3000体は三ヶ月以内に達成される見込みです。

最終的には日産5000体が現在の資源供給量から見て維持可能なライン』

戦力の充実のためプロテクトロンがロボットがロボットを造る生産ラインで大増産されていた。

その他にもクローン作成機でデスクローを量産しようと思ったら10万ボルトの電磁檻のバテリー切れで逃げられたり、カニが食べたいので養殖しようとしたらマイアラーク一家の檻に鍵をかけ忘れて大脱走したりとうっかりを連発していた。

既に3万以上の重機関銃で武装した麻薬カルテルの軍隊を形成し、レイダーが今度はその隙間を埋める補助戦力扱いされるのも時間の問題だった。

のちの歴史ではもしも日本軍が初期の頃に断固とした行動をとっていればロボット軍の増産を防げたかもしれないと著されていた。

犯罪組織かと思ったらBETAみたいな連中である。

だがその時は政治とすら呼べない政争に費やされもはや勝利の見込みはなくなった。

このまま異世界ファンタジーは鋼鉄の波に押し切られてしまうのか…



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。