ニセコイ~千棘の義弟~ (舞翼)
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一年生
第1話 テンコウ


完全なノリです。暇つぶし程度に見てやってください。


「失礼しまーす」

 

 俺、桐崎蓮(きりさき れん)は、凡矢理高校の職員室に顔を出していた。

 てか、姉貴はまだ来てないのかよ……。まあ、義理なんだけど。

 ともあれ、俺は編入するクラス担任の元へ向かった。

 

「桐崎蓮です。よろしくお願いします」

 

 頭を小さく下げる俺。

 

「そう畏まらなくていいぞー。担任の日原教子だ」

 

 かなりフランクに接してくれるキョーコ先生。

 

「あ、そっすか。んじゃ、よろしくです」

 

 そんな時、職員室の扉が開き、姉貴が職員室に入ってきて、俺の隣に来た。

 てか、かなり息が上がってるね。なんかあったの?いやまあ、別に知りたくないけどさ。

 

「おー、話は聞いてるぞ。君は坊主の姉だろ?」

 

 おい、キョーコ先生や。坊主ってなんや、坊主って。まあいいけど。

 

「は、はい。桐崎千棘です」

 

 キョーコ先生は、うんうんと頷いた。

 それから、編入先の教室へ向かう。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 所変わって一年C組の教壇の上。

 ここに並んで、俺と姉貴は立っている。あれだ、転校生がクラスに来る特有の騒ぎが起こってるわ。

 

「初めまして、桐崎蓮です。気軽に蓮でいいですよ。……好きな食べ物は肉で。以上です」

 

 まあうん。一方的に終わらせました。

 

「初めまして、アメリカから転校してきた桐崎千棘です。母が日本人で、父がアメリカのハーフですが、日本語はバッチリなので気軽に話しかけて下さいね」

 

 ニッコリと微笑む姉貴。

 掴みは上々って所か。なんでお前がそんなこと言ってんだよ。って感じだけどさ。

 

『はいはーい!桐崎さんたちは姉弟なんですか?』

 

 テンションが高いクラスメイトにそう聞かれた。

 これは聞かれると思った。俺は口を開く。

 

「義理だけどな。まあでも、俺にとってはいい姉貴だ」

 

 『……蓮~。お義姉ちゃん嬉しいよ』って小声で言いながら、姉貴は泣きそうだ。てか、転校初日から泣くとか止めてくれよ。

 まあ、無事に自己紹介が終わると思ったのだが――、

 

「「あ――――――ッッ!!」」

 

 姉貴と……もやし?(俺命名)が痴話喧嘩?を始めた。つーか、登校中に跳び膝蹴りって……。

 

「(……姉貴。なにやってんだ、あんたは)」

 

 こう思いながら溜息を吐く俺。

 で、『猿女』が決定打になり、もやしは姉貴の右手で殴られてたが。……姉貴、女なのに力がハンパないからなぁ。

 ともあれ、俺は空いてる席に腰を下ろしました。席は、真ん中の列の最後尾って所だ。てか、転校初日だから、教科書類とかないんだよね。

 “あれか!今日一日は寝てていいのか!”……とまあ、そんなことを思いながら机にうつ伏せになっていたのだが、茶髪で左側のサイドの髪が長い、アシンメトリーな髪型が特徴の女の子に話しかけられた。

 

「は、初めまして。わ、わたし、小野寺小咲。ええと、き、桐崎君」

 

 俺は上体を起こし、

 

「蓮でいいよ。姉貴も桐崎だろ。呼び方だけど。小野寺、それとも小咲。どっちがいい?」

 

「ど、どっちでもいいよ」

 

「そか。じゃあ、小野寺で」

 

 いや、何。シュンとしないでくれませんかねぇ、小野寺さん。

 あれか、名前呼びの方が良かったとか。……いや、ないか。

 

「蓮君。教科書とかないの?」

 

「ない。だから、今日は寝る」

 

 そう言って、机にうつ伏せになろうとする俺。てか、高校一年の学問は習得してるんだよね。俺、勉強しなくてもいいんじゃね。的な感じでもある。

 だが、小野寺は焦ったように、

 

「だ、ダメだよ。ちゃんと授業を受けないと」

 

「いや、だから教科書がないから」

 

「わ、わたしが見せてあげる。だから、ちゃんと授業受けよう」

 

「……わかったよ」

 

 あれだわ。小野寺って優しくて包容力があると思う。まあ、俺の予想だけど。

 で、教科書を見せてもらい一限目の授業を受けました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時は経過し昼休み。

 俺が大きく伸びをしてると、男子生徒が二人近づいて来る。俺のモットはー、来るものは拒まずだ。

 

「これからよろぴく、蓮さんや。オレは、舞子集ね」

 

「オレは、一条楽だ。一年間よろしくな」

 

「自己紹介で聞いたと思うが、桐崎蓮だ。よろしくな」

 

 自己紹介が終わり、集が俺の肩に手を回してきた。てか、ニヤニヤすんな。

 

「それはそうと、蓮さんや。いつの間に小野寺と仲良くなったんだ」

 

「いや、ただ教科書を見せてもらっただけだから。これと言って何もないし。てか、楽。姉貴の面倒を頼んだわ」

 

 楽は、げっ、という顔になった。

 

「お、オレに暴力女と仲良くなれと……」

 

「まあそういうことだな。だからまぁ、頼んだ」

 

「お、おう……」

 

 がっくりと肩を落とす楽に、この光景を見てニヤニヤと笑ってる集。何というか、高校生活が楽しくなりそうな予感。いやまあ、たぶんだけど。




続くかな?


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第2話 サガシモノ

まさかの続いた。


 初日の授業が終了し放課後になった。

 で、姉貴と帰ろうと思ったのだが、楽の探し物を手伝うらしい。なんか、重要なペンダントとか。

 

「俺も手伝うわ。主犯は姉貴だし。てことは、俺も無関係じゃないし」

 

 いやまあ、たぶんだけど……。

 俺がそう言うと、『サンキューな、蓮』と言って、楽は頭を下げた。

 姉貴は、『えー、わたしも探すのー』ってボヤいてたけど。

 

「い、一条君。わたしも手伝うよ」

 

 楽にこう言った小野寺。

 やっべ、ここまで人が良いと、小野寺が天使に見えてきたわ。――冗談はこの辺にして。楽からペンダントの特徴を教えてもらった。

 何でも、特徴的な形をしていて真ん中に錠があり、10年前から肌身離さず持っていて、鍵を持ってる女の子が現れたら、その子と結婚するらしい。

 あれだ。要らん情報も混じってるんだが。……てか、何。このドラマのような話は。10年前に鍵を受け取った女の子が、鍵を大事に取ってるかも解らんのに……。

 

「なんつーか、運命の出会いみたいだな。楽」

 

 俺ならあれだ。完全に忘れてると思う。その前に、俺、恋愛体験=年齢だし。

 

「まあ、約束の子が覚えてるか解らないけどな」

 

 いや、楽。お前もそう思ってんのかい!と心の中で突っ込みいれる俺。

 そんな時、小野寺が俺に話しかけてきた。

 

「蓮君は、こういう運命は信じないの?」

 

「楽には悪いが、俺は現実主義だし。口約束で結婚はなぁ。……うん、ないな」

 

 楽の想いを否定するつもりはないが。やっぱり俺は、信頼とか信用を得てから結婚だと思う。

 

「小野寺は運命の出会いとか、信じてそうだな」

 

「う、うん。信じてはみたいかな。一応、わたしも女の子だから……」

 

「そっか」

 

 そう言ってから、今日思ったことを口にしてみる。

 もちろん、小野寺にしか聞こえないようにだけど。

 

「(小野寺ってさ。楽のこと好きなの?)」

 

 顔を真っ赤にする小野寺。

 

「(な、なんでわかったの!?)」

 

「(……いや、露骨すぎだから)」

 

 姉貴は鈍感だから、気づいてないと思うけど。

 

「(まああれだ。頑張れ。影ながら応援してるよ)」

 

「(う、うん。蓮君は気になる人とか居ないの?)」

 

「(居ないな)」

 

 キッパリとそう言う俺。てか、俺が恋愛とか考えられん。

 

「(だ、断言するんだね)」

 

「(まあな。俺、独身で死んでもいいと思ってるし)」

 

 この言葉を聞いて小野寺は悲しそうな顔をしたが、俺は見てない振りをしたとさ。

 取り敢えず校庭に出て、ペンダント探しをしました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 一週間後。

 うん、一週間だよ。でも見つからん。ちなみに、楽と姉貴ペア。俺と小野寺ペアに分かれて探している。

 

「見つからないね」

 

「まあな。地道にやるしかないだろ。……面倒くさいけど」

 

 そう言いながら、草をかき分けながらペンダントを探す俺。

 そんな俺を見ながら、小野寺は苦笑した。

 

「でも蓮君は、一条君たちが帰っても、いつも遅くまで残って探してるよね」

 

 マジか……。見られてたとは。

 

「……まあな。友達の為だ」

 

「優しいんだね。蓮君は。わたし、そういう人好きだなぁ」

 

 ……小野寺さん。自分の発言に気づきましょうね。

 まあ、こういうのに勘違いはしない俺だけど。

 

「小野寺。そういう言葉は、楽に言ってやれよ。あいつ、かなり喜ぶと思うぞ。たぶんだけど」

 

 自分の発言に気づき、ボンッと顔を赤くする小野寺。

 で、これを見て嘆息する俺。

 

「……お前って、かなり抜けてるかもな。で、本人の前ではボロは零さないタイプっぽい」

 

「えへへ、そうかも」

 

 とまあ、草をかき分けてると、金色?のペンダントを見つけた。

 楽から聞いた特徴と一致するし、おそらくこれだろう。俺はペンダントを手に取った。

 

「これか?」

 

「たぶんこれだよ」

 

「そか。ミッション・コンプリートだな」

 

 そういうことなので、俺は立ち上がり数メートル離れた所でペンダントを探してる姉貴の所へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「うるっせぇな!だったらもう探さなくていいからどっか行けよ!」

 

 ……何この修羅場。

 ほら、小野寺も唖然としてるし。てか、姉貴帰っちゃったし。

 

「ほら、楽。これだろ」

 

 そう言って、ペンダントを楽の方へ投げる。

 

「さ、サンキュー。これだよ!」

 

「おう。今度から失くすなよ。後、ペンダントを探した礼として。姉貴と仲直りしろよ。いいな?」

 

「わ、わかったよ」

 

「ん、ならいい。俺は帰るわ。雨も降ってきたし」

 

 雨と言っても、小雨程度だが。

 俺は踵を返し、校舎へ向かい下駄箱の近くにある傘置き場から傘を取り、傘をさして学校を後にする。

 その時、俺の後を追うように、水溜りがパシャパシャと鳴り、小野寺が俺の隣にやって来た。

 いや、なんで来る?楽と帰ればいいのに……。まあ、小野寺にとっては、かなり難易度が高いと思うけどさ。

 

「どったの?」

 

 何事もないように、俺はそう言う。

 

「い、一緒に帰ろうと思って」

 

 盛大に溜息を吐く俺。

 

「こういうのは楽にしてあげろよ。まあいいや。帰るか」

 

 とまあ、小野寺と一緒に帰りながら、会話に花を咲かせました。

 俺が前在学してたアメリカの中学とか、小野寺の中学の話とかだな。で、曲がり角で足を止める。俺の家の方向が左で、小野寺は右だ。

 

「じゃあな。また明日」

 

「うん。またね」

 

 無事に一日が終了すると思ったのだが、今日の夜に、姉貴と楽に転機が訪れるのであった。




その場その場で話を考えるスタイルでいきます。
だからまあ、ヒロインは未定のままで。


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第3話 ソウグウ

主要メンバーを早く出したい。


 俺は家に帰り、自室で休んでいた。

 まあ、特殊な家(ギャング)なんだけど。

 

『蓮。入っていいかい?』

 

 この声は俺の義理の父親、アーデルト・桐崎・ウォグナーだ。

 ちなみに、この家(ギャング)のボスでもある。

 

「ああ、いいけど」

 

 ガチャとドアが開き、親父が顔を覗かせた。

 

「いきなりすまないね。蓮には、立ち会って欲しくてね」

 

「何に?」

 

 嫌な予感がするんだが……。

 

「千棘が恋人になる瞬間をさ。最近、ヤクザと小競り合いが起きててね。全面戦争になりそうなんだよ」

 

「なるほどな。そのヤクザとの抗争を止めるために、仲裁として、姉貴とヤクザの息子が恋人の振りをするってことか」

 

「その通りさ。蓮は飲み込みが早い」

 

 いや、この件に関しては褒められても嬉しくないんだけど……。

 ……姉貴、面倒くさいことに巻き込まれたな。

 で、あれだ。俺が姉貴たちが恋人になった瞬間を見届けた第三者になれってことだ。その方が、確実性が出るし。

 

「今から出発か?」

 

「そうだね。一緒に来てくれるかい」

 

 そう言って、俺は部屋を出て、玄関前に止められている黒貼りされたベンツに乗り込んだ。

 俺は、一般の軽でいいって言ったんだけどなぁ……。

 とまあ、そんなこんなで車を発車させ、目的地の集英組へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 所変わって、集英組のある一室。

 カーテンが下ろされ、恋人役のヤクザの息子と目が合った。それは俺がよく知る人物――楽であった。てか、ヤクザの跡取りだったのね……。

 姉貴と楽は目が合った瞬間、再び痴話喧嘩を始めてしまったけど。

 

「……親父。これしか方法はないと思うけどさ。上手くいくのか?」

 

「千棘と楽君には、上手く役を演じてもらわないとね」

 

 え、何。その一方的な意見は。

 その時、『ドガッッッン!!』と爆発音が響き、入口の扉が吹き飛んだ。

 

「見つけましたよ、お嬢……。どうやら、集英組のクソ共がお嬢を攫ったというのは本当だったそうですね」

 

 眼鏡をかけ、髪をバックに整えたスーツを来た奴が乗り込む。その後ろには、部下がウジャウジャと居るし。

 

「く、クロード!」

 

 姉貴がそう叫ぶ。

 

「ご安心ください、お嬢。お嬢を守るのがビーハイブの幹部としての私の役目。不肖このクロードめがお迎えに上がりました」

 

 この騒ぎを聞き付けた、集英組の皆さんも到着する。

 

「おうおう、ビーハイブの大幹部さん……。こいつぁ、ちょいとお痛が過ぎやしやせんか……?今までは手加減してやって来たけんどのぅ……今度という今度は許さへんぞ」

 

 そう言う、集英組の幹部。

 

「ふん、猿どもが……」

 

 睨み合う両者。まああれだ。このままだと戦争が起きるわ。

 はあ、面倒くさい、――俺は冷ややかな声で言う。

 

「……おい、クロード。少し黙ろうか」

 

 俺を見て、目を丸くするクロード。

 

「れ、蓮坊ちゃん。いらっしゃったんですか……」

 

 全身を震え上がせるクロード。

 てか、俺はあんま身長がないから、親父の全身で隠れちゃうだよね。

 

「……まずは、俺の話を聞いてもらおうか。――集英組の皆さんもいいかな?」

 

 集英組の皆さんが、『へ、へい』と言ってから、僅かな沈黙が流れた。

 親父が、『さすが蓮だね』と言っていたが、聞かなかったことにしよう。

 

「いいか。よく聞けよ。桐崎千棘と一条楽は恋人だ」

 

 それぞれの両親が、楽と姉貴の肩を掴んで密着させる。

 

「そうだよ。僕らが認めた恋人さ」

 

「こいつら、超ラブラブの恋人同士だしな」

 

「恋人になった瞬間を見届けた、桐崎蓮だ。まあ、皆さんも聞きたいことがあると思うし、邪魔者は退散するよ。んじゃ、親父。後は頼んだわ」

 

 俺の逃げるような言葉を聞いて、姉貴と楽は恨みがましい視線を俺に向けたが、俺は知らん顔で受け流す。

 そういうことなので、俺は逸早くこの場から離れたのだった。

 話が終わるまで縁側で月を眺めていたら、俺のスマホが震えた。俺はポケットに手を突っ込み、スマホを取り出し、ディスプレイを見て顔を引き攣らせる。

 

「……で、出たくねぇー」

 

 そう、ディスプレイに表示された名前は、奏倉羽(かなくら ゆい)

 俺が昔、孤児院でお世話になった人だ。で、孤児院から俺を連れて出してくれたのが、今の親父である。だからまぁ、俺は両親の顔を知らない。

 それは置いといて、今はこの電話の方が問題だ。

 俺は通話ボタンをタップし、通話口を右耳に当てた。

 

「……もしもし。どうしたんですか?羽さん」

 

『もー、蓮君はつれないんだから。羽姉ちゃんって呼んでくれてもいいのよ。昔みたいに。あと、敬語もなし』

 

「昔の話ですよ」

 

 何、無言の威圧的な感じは。

 

「………………わかったよ。羽姉ちゃん」

 

 満足そうな声を上げる羽姉ちゃん。

 てか、精神がガリガリ削られてくわ。

 

「で、何の用だ?」

 

『特にこれと言った用はないんだけど。……ちょっと寂しくてね』

 

「ああ、そうか。羽姉ちゃんは一人で中国なんだよな」

 

 羽姉ちゃんは、チャイニーズマフィア、叉焼会(チャーシューかい)首領(ドン)であり、今はその役職で大忙しなのだ。

 まあでも、息抜きは必要だ。

 

「……そうだな。なんか話すか」

 

『そうね。蓮君の高校の話が聞きたいかも』

 

「俺の高校のか。そんな面白くないぞ」

 

『いいの。わたしは、蓮君と話すことが重要なんだから。楽しいし』

 

「俺と話のが楽しいとか、変わってるな、羽姉ちゃんは」

 

 あれだ。通話口でムッとしてる羽姉ちゃんが容易に想像できる。

 俺は苦笑してから、

 

「俺が悪かったから、ふくれるなって」

 

『んじゃ、面白い話を期待してる』

 

「だから、面白くないって言ってるだろうが」

 

 俺は溜息を一つ吐いてから、凡矢理高校のことを話し始めた。

 久しぶりに羽姉ちゃんと話す時間は、昔に戻ったような感じになって楽しかった。




羽姉ちゃん出すの早すぎたかも……。
ちなみに、久しぶりの電話です。


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第4話 シンソウ

まさかの連投。


 翌日。今日は休日と言うことで、俺は街に出てぶらぶらすることに決めた。引き籠りすぎは良くないしね。

 向かった先は、とあるスーパだ。店内に入ると、様々な食品等が目に入る。と言っても、買う物はないんだけど。

 そんな時、野菜コーナで、うーんうーんと唸っている小野寺を発見。スルーしようとしたが、声をかけることにした。

 

「よ、小野寺」

 

 小野寺は振り返り、

 

「れ、蓮君か。ビックリしたよ」

 

「あー、悪い。で、何やってんだ?」

 

「うん、これからお家に必要な食材の購入かな」

 

「へぇ、偉いんだな」

 

 そんなこんながあり、俺も同伴しました。

 買い物が終わり、俺が買い物袋を持ちましたとさ。

 

「なんかごめんね」

 

「別に。女の子に力仕事は拙いでしょ。……たぶんだけど」

 

「ふふ、やっぱり優しんだね。蓮君は」

 

「いや、ある女の子から教育?されてな。こういう時は、男の子が率先してやりなさいって」

 

 当然、昨日電話した、羽姉ちゃんの教えである。まあ、助かってる部分もあるけど。

 小野寺は疑問符を浮かべた。

 

「誰かに教育されたの?」

 

「第二の姉貴って言えばいいのかな。そんな人だ」

 

「へぇ、仲がいいんだね」

 

「ま、腐れ縁みたいなもんだな。一番、付き合いが長い人かもしれん」

 

 何せ、俺がガキの時からの付き合いだし。……いや、今もガキか。

 

「その人のこと、蓮君は好きなの?」

 

「いやいや、好きはないから。あの時、気になる人は居ないって断言しただろ」

 

「そうだったね。なんか残念でもあるかな。こういう話ができる人は、あんまり居ないから」

 

 まあ確かに、男とこういう話ができる奴はあまり居ないだろう。

 

「まあ、玉砕した時は慰めてはやる」

 

「ふ、不吉なこと言わないでよ」

 

「悪い悪い」

 

 とまあ、暫く歩いていると、姉貴とチンピラが絡まれてる現場に遭遇した。

 姉貴は、面倒事に首を突っ込みたくないからスルーしてるけど。で、あれだ。チンピラ共の言葉がエスカレートしていく。

 ……うん、俺も我慢の限界です。

 俺は小野寺に買い物袋を渡し、姉貴も元へ歩み寄る。

 

「あんたら恥ずかしくないの。街中で堂々とナンパなんかして」

 

「なんだと、こらぁ!」

 

「ガキが、ぶっ殺すぞ!」

 

「はいはい、弱い犬ほどよく吠える」

 

 ナンパ野郎四人が一斉に殴ろうとするが、俺は軽くそれを躱し、脇腹や鳩尾に拳を強打させる。で、その場に蹲るチンピラ共。

 

「こ、こいつ。ビーハイブの剣舞だ」

 

 なんか、俺に得物を持たせたら絶対に勝てないって言われてるらしい。で、舞のようにボコるから、今の二つ名がつけられた。

 

「はあ、その二つ名好きじゃないんだけど。で、まだやるか」

 

「ひっ、こいつ、素手でも強ぇのかよ」

 

「ず、ズラかるぞ。俺たちじゃ勝てねぇ」

 

 そそくさに逃げるチンピラ共。

 

「はあ、あんな雑魚を殴っちったわ」

 

「れ、蓮。ありがとう」

 

 俺は振り返り、

 

「気にするな。手を汚すのは、俺だけで十分だ。で、今日は楽とデートか」

 

 まあ、見張りが沢山いるからそうだと思うけど。

 

「……まあね。もやしと居るのは疲れるわ」

 

 げんなりする姉貴。

 

「……まあ頑張れ」

 

「蓮~。人ごとのように言わないでよぉ~」

 

「いや、知らんから。てか、戦争を止めるにはこれしかないんだから」

 

「……まあそうなんだけど」

 

 そんな時、俺はあることに気づく。

 それは、小野寺の存在だ。

 

「ハニー、お待たせ」

 

 タイミングよく現れた楽。

 あとあれだ、小野寺が硬直してる。で、げっマジかと思ってる楽。こいつ、小野寺のこと好きだな。って俺は一瞬で確信しましたとさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 所変わって、近場の公園。

 この後も、恋人の茶番劇を見せつけられました。まあ、野郎共にバレるのは避けたいし。

 はあ、後で真相を伝えとくか。……俺って、かなりのお人好し?

 

「んじゃ、デート楽しめよ。――行くか、小野寺」

 

「う、うん」

 

~道中~

 

「え、偽モノの恋人」

 

 小野寺は目を丸くした。

 

「まあな。俺の家はちょっと特殊でな。楽と姉貴が恋人の振りをしないと、戦争が起きちゃうんだわ」

 

「へ、へー。せ、戦争」

 

「そう、戦争だ。だからまぁ、小野寺が心配する事態にはならないと思うから、いつも通り、楽にアタックしなよ」

 

「そ、そんな重要なことを言ちゃって、蓮君は大丈夫なの」

 

「あー、でもまあ、小野寺は他言しないだろ?」

 

「う、うん。そうだけど」

 

 『信用してくれてるんだ』って言う小声が聞こえてますからね、小野寺さん。俺、難聴じゃないからね。

 

「ま、そういうことだ。送るよ」

 

「だだだだだ、大丈夫だよっ」

 

「……小野寺。スマホのバイブ音になってるぞ」

 

 ともあれ、荷物を持つ俺。

 

「んじゃ、行くか」

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

「……いや、他人行儀すぎでしょ」

 

「あ、あははは。そうかも」

 

 俺は小野寺を送るために歩き出した。

 歩幅とか、そういうのも込みでだけど。そんな俺たちの背後を、夕焼けが照らしていた。




ヒロイン候補の順は、小咲、羽、千棘?の順ですね。
まあ、今後どうなるかわからんけど。


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第5話 ヒミツ

ま、まじか。連投だわ(震え声)


 翌日の学校風景。俺はいつも通り登校し教室に入ったのだが。何と言うか、お祭り騒ぎになっていた。何でも、彼女ができないと思った楽に、彼女ができたから。と言う事らしい。

 

「お前ら、付き合うことになったんだってな――!」

 

「末永くお幸せに――!」

 

 とまあ、こんな感じに。

 それで、楽がこのニセコイの真相を言おうとしたが、見張りの存在に気づき、ニセコイ続行に。……頑張れ、姉貴、楽。

 そう思いながら、俺は席に着席し、隣の女の子に話しかける。

 

「おはよう、小野寺」

 

「おはよう。蓮君」

 

 朝の挨拶を交わす、俺と小野寺。

 俺は、あることを聞いてみる。

 

「小野寺は、楽たちの所に行かないのか?ほら、ニセの恋人って知ってるよって」

 

「うん、今はいいかな。皆、祝福モードって言えばいいのかな?そんな感じでしょ?」

 

「たしかに、否定はしない」

 

 そのままチャイムが鳴り、一限目の授業に突入した。ちなみに、教材は届きました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時間は経過し昼休み。俺は教室から出て、いつものように購買でパンを購入してから屋上へ向かう。

 そう、屋上の手摺に寄り掛かりながら飯を食うのが、俺のいつもの光景だ。

 俺は、1年C組の窓際の木を見ながら嘆息する。

 

「……クロードの奴。まだ監視してんのか」

 

 いやまあ、クロードの目から見ると、姉貴と楽はあからさまに怪しいけどさ。

 今日聞いた話だと、午後の家庭科の授業は調理実習らしい。

 

「行きたくねー。リア充(笑)の行事じゃんかよ」

 

 リア充には縁がない俺です。……なんか、自分で言ってて悲しくなってきたわ。

 俺は盛大に溜息を吐いてから、教室へ戻った。

 移動教室があり、五限目の調理実習の時間になった。……なるほどね、だから今日の姉貴の機嫌が高かったのか。クラスにも溶け込んでるし。

 ともあれ、俺はエプロンを首から下げてから、ケーキ作りを始めるのであった。

 

「えーと、砂糖40gに卵が2つ」

 

 そう言いながら、俺はボウルの中に入った材料を箸でかき混ぜる。で、型の中に流し込み、180度に設定してから、オブーンに入れ20分程度加熱。オーブンからケーキを取り出し、最後の仕上げをして完成。てか、何。かなりの人が集まってるんですが……。

 

「れ、蓮。お前ってケーキ作ったことあんの?プロ級のできだぞ」

 

「オレ、食ってみたいんだけど」

 

「オレもオレも」

 

 そう言うクラスメイトたち。てか、ハイエナのように集るな!

 

「ああ、全部食っていいぞ。俺は食わねぇし」

 

 そう言って、ケーキをハイエナたちの前に差し出す。

 ハイエナたちは、ケーキをフォークで刺し、一口。

 

「「「う、うめぇ~~!!」」」

 

「てか、蓮。お前のケーキ、プロにも引けを取らないんじゃないか」

 

「オレ、金を出してもこのケーキは買うな」

 

「お気に召してなによりだよ」

 

 とまあ、そんなこんながあり、俺は傍観することに決めたのだった。

 何でも、姉貴のケーキは、見栄えが悪いのに旨いとか。まあ、姉貴は何でもできる人だしなぁ。ケーキ作りも例外じゃなかったってことだ。

 で、楽に視線を向けると、その場でぶっ倒れていた。原因は、小野寺が作ったケーキらしいが。もしや、小野寺の料理って壊滅的だったりしちゃうの?

 

「(練習すれば上手く作れるようになると思うけど。努力家だしな。あいつ)」

 

 学校が終わり、下校時間になった。

 それはいいんだけど。人待ちなんだよね。その人は、ぜぇぜぇと息を吐きながら歩み寄って来る。

 

「れ、蓮君。待ったかな?」

 

「おう、かなり待ったぞ。待ちくたびれた」

 

 普通なら、『全然待ってないよ。はは』的な感じだと思うけど。

 

「で、何だ」

 

「お礼をと思ってね。ほら、偽モノの恋人を教えてくれた件のこと」

 

「いや、別にお礼とかいらんけど」

 

 まあ、秘密の場所を教えてくれるとかなんとか言ってたけど。てか、俺に教えたら秘密じゃなくなるんじゃね。

 

「もう、そこは『マジか。小野寺、サンキュー』って言うところだと思うんですけどっ」

 

「恋愛経験なし=年齢の俺に、そういうのは期待するな」

 

 小野寺は、頬を膨らませて歩き出す。どうやら、機嫌を損ねてしまったらしい。あれだ。女の子の扱いは難しすぎる。俺にとっては、かなりの難易度だわ。

 で、その場所に案内してもらいました。

 

「へぇ、あんな路地の奥に、こんな場所があるとはなぁ」

 

 ここから見る街の風景は、かなりの絶景だ。

 

「この場所は、昔わたしが偶然見つけた秘密の場所。良い所でしょ」

 

「まあそうだけど。楽じゃなくて、俺で良かったのか?」

 

「もう、蓮君にお礼って言ったんだよ。あの事を教えてくれたのは、蓮君なんだから」

 

「あー、そうなのか。じゃああれだ。ありがとう?」

 

 小野寺は苦笑した。

 

「なんで疑問形なの。蓮君らしいけど」

 

「……いや、俺らしいってなんだよ。まあいいけどさ」

 

 小野寺も俺と同じく、手摺に手をかけた。

 

「蓮君ってさ。昔、どんな子だったの?」

 

「ガキ大将って所か。喧嘩早くてな、孤児院の院長さんに迷惑をかけっ放しだったよ。あ、俺が孤児院出身ってことは気にすんなよ」

 

 頷く小野寺。

 

「そうなんだ。わたしはね、人見知りで引っ込み思案だったかな。今でも、それが抜けてないかもだけど」

 

「俺は否定はしない」

 

「ちょ、ひどいよぉ。これでも、頑張って治そうと思ってるんだよ」

 

「でも、一向に治る気配がないな。まあ、それが小野寺の良い所かも知れんけど……たぶんな」

 

「た、たぶんって。……そうなのかもしれないけど」

 

 そう言って、小野寺はぐぐもった。

 

「悪い悪い。意地悪しすぎたかもな」

 

「蓮君のバカっ……」

 

「ちょ、理不尽すぎない」

 

 まあ、この後も楽しく談笑しましたとさ。

 そんな俺たちを、季節特有の風が頬を撫でた。




楽のヒロインは、千棘で決定かも。
でもまあ、原作通りではあるんですけどね。


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第6話 ホウモン

つ、疲れた……。マジで疲れた。


~小咲side~

 

 凡矢理高校の屋上。屋上の手摺に寄り掛かりながら、わたしとるりちゃんは立っていた。

 

「ねぇ、小咲。あんたどうなのよ?」

 

「どうって?」

 

 次のるりちゃんの言葉で、頬を赤くしてしまう。

 

「いや、あんた一条君のこと好きでしょ?」

 

「な、なな、何で知ってるの」

 

 ば、バレてる~。な、何で、上手く隠してたつもりなのに……。

 そんなことを思っていたら、るりちゃんが溜息を吐く。

 

「いや、丸わかりだしね。早くくっつけっ、鬱陶しい。って感じだわ」

 

 しょ、正直に言いすぎだよ~。るりちゃん。

 でもね。と、るりちゃんは続ける。

 

「でも小咲。最近は、それ(好意)が薄まってきてないかしら?」

 

「薄まってる?」

 

「そうよ。ある男の子によってね。――桐崎蓮。違う?」

 

「そ、それは、……わからない」

 

 わたしは、蓮君をどのように見てるか、未だにわかっていない。

 

「でもあんた。蓮君と居る時は、かなり自然体よ。素が出せてるって言えばいいのかしら」

 

「そ、そうかな。でも、蓮君とは話しやすいけど」

 

 そうなのだ。蓮君は誰とでも分け隔だてなく接していて、クラスの女子の間でも人気が高い。それにプラスするように、相手を思いやる気持ちもある。好意を持つ女性が出てきても不思議じゃないってくらいかな。

 

「そう。なら、それを確かめる機会を作ってあげるわ」

 

 るりちゃんはそう言うと、わたしの手を引いて屋上の階段を下り、教室へ向かい扉を開く。

 

「一条君と桐崎蓮君はいるかしら?」

 

 る、るりちゃん~、何する気なの~……。

 

~小咲side out

 

 

「一条君と桐崎蓮君。今日勉強会しない?ちなみに、一条君のお家でね」

 

 宮本がそんなことを言ってきた。いや、その前に、俺が既に高校一年の学業を収めてることを知ってると思うんだけど。

 そう言おうと思い宮本の目を見たのだが、その瞳には『来ないと、わかってるわよね……』的な意味が込められているんですけど……。怖ぇよ、宮本さん。

 つか、楽はかなりテンションが上がってると窺える。まあ、好きな人と勉強会だしね。

 

「ああ、楽がいいなら、俺は構わないぞ」

 

「オレも、OKだ」

 

 とまあ、了承が得られたと言うことで、今日の放課後、楽の家で勉強会を開くことになった。

 ちなみにメンバーは、楽、集、俺、姉貴、小野寺、宮本だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 と言うことで、再びやってきました集英組。

 はい、敵地のど真ん中ですね。俺、最初の印象あんまり良くないし、警戒されてないか心配だなぁ。

 

「お待ちしてやしたぜ、楽坊ちゃん!勉強会ですってねー!?」

 

 楽が家の玄関に入ると、大勢の部下たちが整列していた。その部下たちの手には、ボードを一人ずつ持ち、『おいでませ』の文字が映る。

 そんな時、俺のスマホが震える。スマホを取り出し、ディスプレイの名前を見て、俺はげんなりする。

 

「……悪い、楽。先に行ってくれないか。後で追いかける」

 

「そ、そうか。オレの部屋までの道は大丈夫か?」

 

「心配すんな。一回来てるんだから」

 

「了解だ」

 

 楽の言葉を聞いてから、俺は再び外に出てスマホの通話ボタンをタップし、通話口を右耳に当てる。

 

「もしもし、羽姉ちゃ――」

 

『久しぶりっ、蓮ちゃん!』

 

「蓮ちゃん言うな!てか、言葉を遮るな!バカ姉が。……はあ、まあいいや。そっちは順調なの?」

 

『うーん、組織を纏めるって大変なんだねぇ。こんなに大変とは思ってなかったよ』

 

 なるほど。俺に弱音を聞く役になれと。俺、羽姉ちゃんにいいように使われてるなぁ……。

 

「つっても、側近?にも手伝ってもらってるんだろ?」

 

(イエ)ちゃんのこと?』

 

「そそ。その夜ちゃん」

 

『どうなのかなぁ。夜ちゃんは、わたしの教育係みたいなものだから』

 

「ふーん、そういうもんか」

 

『そうそう。そういうものだよ』

 

 それから数分間話をしていたが、俺は今日の趣旨を思い出した。

 

「悪い、羽姉ちゃん。これから勉強会なんだわ。また今度でいいか?」

 

『もっと話してたいなぁ……』

 

 やめろっ。その悲しそうな声は。まあ、嘘声って言えばいいのか。たぶんそれだと思うけど。

 

『蓮君。そっちで女の子を落としてないでしょうね?』

 

「いや、そんなのないから。俺が恋愛に興味がないのは羽姉ちゃんがよく知ってるだろ?」

 

『……まあそうだけど。蓮君、天然ジゴロなんだもんっ』

 

 ぷんぷんって言う擬音が似合いそうな声を出すな、羽姉ちゃんや。

 

『お姉ちゃんが彼女になってあげようか』

 

「丁重にお断りします。てか俺、彼女を作る気とかないし。一生独身でいいし」

 

『ホント、蓮君のガードは固いよねぇ』

 

「そうなのか?自覚はないが。てか、そろそろ行かないと。不審がられるかも」

 

『そんなことはないと思うけど……。ま、そういうことなら仕方ないね。またね、蓮ちゃん!』

 

「だ、だから、蓮ちゃんじゃ――」

 

 俺が最後まで言い終える前に、プープーと通話が終了していた。ったく、何とも自由な姉である。

 俺はスマホをポケットに仕舞い、楽の部屋へ急ぎました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「悪い、遅れた」

 

 俺は襖を開け、部屋の中に入る。

 

「なんかあったのか?」

 

「まあな。我がまま人に捉まってた」

 

 ともあれ、楽の隣に腰を下ろし、鞄から教科書類を取り出す。

 ちなみに、教科は数学だ。あれだ。今週一週間の宿題を終わらせてしまおう。良い機会だしな。

 部屋には沈黙が流れ、勉強会特有の音が聞こえてくる。

 

「……るりちゃん、ここの問題解ける?」

 

「んー?」

 

 どうやら小野寺は、中盤の問題で突っかかってたらしい。

 まあ確かに、ここは予習をしとかないと難しい所でもあった。宮本はその問題をじっと見ていたが――、

 

「蓮君。この問題、小咲に教えてあげてほしいんだけど?」

 

「別にいいけど」

 

 小野寺は目を丸くして、宮本に詰め寄る。

 

「(るりちゃん!?何言ってるの!?)」

 

「(ほら、確かめてきなさい!)」

 

「(え、えー。るりちゃん、むちゃくちゃだよ~……)」

 

「(いいから行け。そして二度と戻ってくるな!)」

 

 何話してんすか。お二人さん。

 まあ、聞くとか無粋なことはしないけどさ。そんなこんながあり、俺の元へすり寄る小野寺。

 

「……よ、よろしくお願いします」

 

「ん、よろしく」

 

 俺は小野寺からプリントを受け取った。で、小野寺が指差した問題を見る。

 

「あー、これね。αを代入しないと出ないよ」

 

「な、なるほど。だから普通の計算じゃ解けなかったんだ……」

 

「ん、そゆことだな。だからまぁ、ここがテストに出たら完璧だな」

 

「そ、そうだね。と、ところで、蓮君は終わったの?」

 

 俺は解いた問題集を見せる。

 

「今週一週間分は終わらせた」

 

「す、凄いね」

 

「そうか?まああれだ。解んなかったら、いつでも聞いてよ。席も近いんだし」

 

「あ、ありがとう」

 

 とまあ、宿題も終わり、皆が寛ぐことになった。

 てか、初めて勉強会とかしたから、新鮮だったわ。

 

「そういえば、蓮。学校で好きな人見つかった?」

 

 なんつーことを聞くんだよ、姉貴は。てか、何で皆は耳を澄ましてるの?

 

「いや、俺が好きな人とかありえないから。最悪、一生好きな人はできないだろうなぁ。冗談抜きで」

 

「あんた、アメリカの学校でもそうだったわよね?――わたしは、素敵な恋がしてみたいけどねー」

 

 アホ姉貴。ここには宮本と集が居るんだぞ。てか、姉貴たちは小野寺が偽モノの恋人の件を知ってるってことを知らなかったけ。

 

「……ジョークよ、ジョーク!ダーリンに、ちょっとイタズラしてみたくなったの~~!」

 

「こ、こら!ひ、ひどいぞハニー!?僕という人がありながら」

 

 急にイチャイチャしだす、姉貴と楽。つーか、勘の鋭い集と宮本にはバレてんじゃね。的な感じでもある。と言うことは、この場にいる全員にバレてると言うことにもなるんだが。

 

「ねぇねぇ、楽、桐崎さん。ちょっち聞いていいかな?」

 

 まあうん。集の奴ろくでもないこと言おうとしてるわ。

 

「あ、ああ」

 

「い、いいわよ」

 

「お前らって、ぶっちゃけ、どこまで行ってんの?」

 

 ブー、と噴き出す姉貴と楽。

 で、楽に連行される集と俺。……てか、何で俺まで連行するの?たぶん、俺も関係者だからだと思うけどさ。




まだ、ヒロインは未定で。


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第7話 デアイ

文字数が少ないと、すぐに投稿ができますね。


 俺と集、楽は部屋を出て、縁側に座っていた。

 

「で、何で俺も呼び出されたんだ?」

 

「蓮は、この状況に一番詳しいだろ。だからだ」

 

 まあ、俺は第三者だから、詳しいと言えば詳しいけど。んじゃ、俺が集に説明するとしますか。

 俺は集に、一連のことを説明した。

 

「なーるほど。そういう理由で恋人の振りをしてたのか~~。まさか、そんなに大変なことになってるとは。ま、一番の驚きは、蓮がギャングの義弟ってことだけど」

 

「まあな。姉貴の親父が孤児院から連れ出してくれてな、そのまま義弟になったんだよ。で、今に至る。てか、集はいつから気づいてたんだ?」

 

「ん、楽の肩を揺らした時から」

 

 それ、恋人の振りをした登校初日の時じゃん……。やっぱ、集は勘は鋭すぎだわ。

 まあ、集は笑っていたが、『こんな面白いことに乗らない手はない』的な感じで。

 

「そういえば、楽。小野寺はこのことを知ってるから心配するな。俺がバラしといた。だからまぁ、誤解されることはないな。好きなんだろ、小野寺のこと」

 

「さ、サンキュー。蓮。……ん、何でオレが小野寺を好きってわかったんだ?」

 

「いや、楽の言動を見てれば一目瞭然だから。な、集」

 

 集は腕を組みながら両目を閉じた。

 

「うむ。蓮の言う通りだ。もしかしたら、クラスメイトの殆どは気づいてるんじゃないか。それよりも蓮さんや。本当に好きな人は居ないのかい?」

 

 ニヤニヤしながら、集にそう言われる俺。

 

「ニヤニヤしながら聞くな。さっきも言ったろ、居ないって」

 

「気になる人は居ないのかい?ほら、考えて一番に浮かんだ人とか」

 

「……集はグイグイくるな。てか、一番に思い浮かんだ人ねぇ」

 

 そう言いながら、俺は思考を回してみる。……まあ、浮かんだっちゃ浮かんだが、却下の方向で。

 

「……俺のことはいいだろ。それよりも、楽のことだ」

 

 ここは話を逸らそう。楽、すまん。

 

「ま、それは追々追求するとして。――楽。小野寺は、お前のこと好きだと思うぞ」

 

 集の言葉を聞いて、顔を真っ赤にする楽。

 

「なっ……な!ば、バカヤロウ!そんなことあるわけねぇだろう!」

 

「いや、勝算はあると思うけど。今から告っちゃえば。行動は早め早めにだぞ。……取り返しがつかなくなったら、全部が水の泡だしな」

 

「れ、蓮もそう言うのかよ!」

 

 俺の言葉にも声を上げる楽。まあ、いきなり言われたんだから、こうなるのは無理もないけど。

 

「も、もしオレの立場だったら、蓮はどうするんだ?」

 

「呼び出して、二人になってから告るな。……勝算があればだけど」

 

「蓮は、即断行動の奴なのな」

 

「まあな。ウジウジしてても始まらんし。時が過ぎてくだけだ」

 

 てか、尊敬の眼差しで見ないでくれ、集と楽さんや。

 ともあれ、俺たちは部屋に戻りましたとさ。つーか俺、宿題とか全部終わってんだよね。

 

「(帰るか。このまま帰るのは忍びないけど)」

 

 俺は立ち上がり、

 

「すまん。俺は先にお暇するな。もし、『こいつの手が必要だ!』ってなったら呼んでくれ。上から目線になってすまないが」

 

 とまあ、そう言うことなので、俺は帰りの支度をしてから集英組を後にした。ちなみに、皆から別れの挨拶がもらえました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 それから数週間後。

 まあ、この間にプール等の事件があったんだが、その辺はキンクリと言うことで。なんか申し訳ないが。

 で、今日は日曜日と言うことで、俺は街をぶらぶらとしていた。ちなみに俺の恰好は、デニムに黒いVネックTシャツといったラフな格好だ。

 そんなこんなで電信柱を過ぎた所だった。誰かに目隠しされたのだ。

 

「だーれだ」

 

 ……まさかだと思うけど……。いや、ありえないと思うけど。この声は――、

 

「ゆ、羽姉ちゃん(・・・・・)だったり……」

 

「ピーンポーン。正解正解」

 

 そう言って、俺の前に立つ羽姉ちゃん。

 俺はあれである。混乱から立ち直れないでいる。

 

「来ちゃった♪」

 

「いやいや、『来ちゃった♪』じゃねぇから。何でここに居るんですかねぇ?羽姉ちゃん。てか、叉焼会(チャーシューかい)はどうしたんだよ?」

 

「えっとね。部下の人たちにお休みが欲しいなー。って言ったら、何と二日もくれたの」

 

 へぇ、部下に信頼されてるんだなぁ。羽姉ちゃんは。ちょっと、羨ましいかも。

 そんなことより――、

 

「その休みを使って、日本に来たの?」

 

「そうそう。電話よりも、直接話したいじゃない」

 

 いや、何。その為に日本に来るとか、意味が解らん。って感じなんですが……。

 羽姉ちゃんの恰好は、膝までの藍色のフレアワンピースに、足丈までの茶色のブーツといった格好だ。あれだ、目のやり場に困る……。(俺はだけど)

 

「楽に会わなくていいのか?幼馴染なんだろ?」

 

 唇に、右手差し指を当てる羽姉ちゃん。

 

「うーん、今はいいかな。楽ちゃんには、わたしより良い女の子が居ると思うから。後で大々的に驚かせたいしね」

 

「まあそういうことなら。で、どっか行くのか?」

 

「もちろん。蓮君も一緒にね」

 

 ……うん、こうなることは予想してました。まあいいけどさ。

 

「ふふ、蓮君とデートだ」

 

「デートじゃねぇから。ただの買い物だ」

 

「男女が一緒に買い物することは、列記としたデートだよ。蓮君」

 

 首を傾げる羽姉ちゃん。『もう、何言ってるの』と言ってるようにも捉えられることができる。

 

「……いや、違ぇし。デートじゃねぇし」

 

 最後まで否定する俺。

 

「ふふ、そういうことにしといてあげる♪」

 

 そう、俺は口論勝負では、羽姉ちゃんに勝てたことがない。と言うことなので、この勝負は、俺の負けである。

 俺は溜息を吐き、

 

「ショッピングモールでいいか。てか、俺にそういうのは期待するな」

 

「重々承知してるよ、蓮君♪」

 

「はあ、行くか」

 

 再び溜息を吐く俺。てか、腕を絡めないでください……。胸が当たってるから、俺には究極難易度だから。

 このように、俺の一日が始まった。




羽姉ちゃんの、ヒロイン力高っ。


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第8話 カイモノ

れ、連投です。
てか、羽姉ちゃんの言葉使いとか難しい……。


 所変わって、近場のショッピングモール。つーか、ショッピングモールってデカ過ぎだろ。同じ店がありすぎだし。

 

「来たのはいいけど。何買うんだ?行きあたりバッタリってやつになりそうだけど」

 

「うーん、服が見たいかなぁ」

 

「服ねぇ。今のままで十分可愛いと思うけど」

 

「お、今の言葉ポイント高いよ」

 

 え、何。俺って採点されてんの?

 何それ怖い……。でもまあ、女性の服を最初見たら褒めろって、羽姉ちゃんに教えられたんだよなぁ。

 口には出さないけど、羽姉ちゃんって、モデル並みに可愛いです。はい。

 取り敢えず、一階に点在する服屋へ向かった俺たち。

 

「これがいいかも」

 

 羽姉ちゃんが手に取ったのは、藍色のノースリーブに白いボトム。黄色をラインと青を基調にしたチェックのシャツだ。おそらくこれは、腰に巻いてアクセントをつけるようだろう。ま、ノースリーブの上から重ね着もできるしね。

 

「似合うと思うけど、肩の露出度高くね」

 

「ノースリーブだもの、肩は露出するよ。……もしかして――」

 

「そ、それ以上言わないでください、羽姉ちゃん」

 

 チッ、一瞬でも見られたらヤダって考えちゃったじゃねぇかよ。ま、付き合いが長い姉だし、こう考えるのも無理はないと思うけど。

 

「じゃ、ちょっと着替えてくるね」

 

 そう言って、試着室に消えて行く羽姉ちゃん。まあ俺は、試着室の前にあるパイプ椅子に座った。

 今思った。学校の奴らに見られたら、面倒なことになるんじゃね……。

 そんなことを考えていると、試着室のカーテンが開いた。で、羽姉ちゃんは、その場で一回転。

 

「ど、どう?」

 

「……えーと、あの……」

 

 何これ、かなり恥ずかしんですが。つか、何で感想を言う俺が恥ずかしいのだろうか?俺、おかしい奴じゃないよね?

 

「……かなり似合ってる。可愛いよ」

 

 やっべ、メチャクチャ恥ずかしんですが。ほら、姉ちゃんの顔も真っ赤だし。

 

「そ、そう。じゃあ、これを買っていこうかな」

 

「へ?俺の感想だけでいいの。そんなにあっさり決めちゃって?」

 

「それが重要なのよ。蓮君はわかってないんだからっ」

 

「はあ、そうなのか」

 

 うーむ。俺には今一わからん。てか、女心はわからんの方が適切か。

 それから、姉ちゃんは元のワンピースに着替え、試着室から出て来た。右手で、先程の服が抱えられている。

 

「さて、これを買ったら次に行こうか」

 

「……次もあんのかよ」

 

「もちろん。荷物持ちお願いね、蓮君」

 

 ……うん、わかってた。俺が荷物持ちになることは。

 それから、姉ちゃんが会計をして、店を出ました。で、俺の右手には、先程の買い物袋が提げられている。どうやら、荷物持ちのスタートらしい。

 つーか、服屋何軒回るんスか。俺の両手が、2つずつの袋で埋まってるんですが……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「買った買った」

 

「お、おう、そうだな」

 

 俺と姉ちゃんは、休憩所のテーブルの椅子に座っていた。

 やっと休めたわ。つか、女の子の買い物は長いって聞いてたけど、本当だとは。

 

「羽姉ちゃんは、今日帰るのか?」

 

「今日の夜の便で中国に帰るかな」

 

 日本に来て、すぐに中国に帰る。正しく弾丸ツアーである。

 

「目的は達成できたから満足だけど」

 

「はあ、目的ね」

 

 羽姉ちゃんの目的とは、日本での買い物だろうか?わからん。てか、深く考えると、ド壺嵌まりそうだから止そう。

 

「あ、そうそう。これ土産な」

 

 俺が懐から取り出したのは、ちょっとだけ別行動した時に購入したものだ。

 ちなみに、それは茶袋の中に入っている。

 羽姉ちゃんは、『開けていいかな?』と俺の了承を得てから袋を開け、それを取り出した。

 

「黄色のシュシュだね。ありがとう」

 

「色の好みがわからんから、羽姉ちゃんが好きな色かな。って思うやつにした。い、嫌だったか?」

 

「ううん。黄色、わたしの好きな色だよ」

 

「なら良かった」

 

 つーか、姉貴以外の女性に贈り物をしたのは、羽姉ちゃんが初めてじゃん。

 

「これはわたしから。はい」

 

 羽姉ちゃんが俺に差し出したのは、細い銀色のチェーンに、小さなイルカが嵌め込まれたネックレスだ。……ネックレスは色々とマズイ気がするんだが。だけどまぁ、せっかくの好意を無駄にはできない。

 俺はそれを受け取り、

 

「サンキュー。つっても、学校とかではつけないと思うけど。色々勘ぐられそうだし。出かける時くらいか」

 

 羽姉ちゃんは苦笑し、

 

「気が向いたらでいいよ」

 

「おう、そうする」

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

「そだな」

 

 俺と羽姉ちゃんは立ち上がり、後一軒だけ店を回りショッピングモールを後にした。てか、俺の両手は荷物で完全に塞がったんだけど。いや、既に塞がってたけどさ。

 そんなこんなで、時間帯もちょうど良くなり、空港へやって来た。羽姉ちゃんの見送りである。ちなみに荷物は、専用の箱に入れ、ターンテーブルに乗せ飛行機の中である。

 

「気をつけて帰れよ」

 

 飛行機に乗るんだから、気をつけてもないんだけど。

 

「わかってます。それじゃあね。蓮ちゃん」

 

「だ、だから、蓮ちゃんじゃ――はあ、まあいいや。じゃあな」

 

「うん、またね」

 

 手を振り、ゲートを潜る羽姉ちゃん。俺は、姉ちゃんの後ろ姿が見えなくなるまで見送り続けた。

 これが、羽姉ちゃんとの買い物の一幕であった。




羽姉ちゃん。完全にヒロイン決定ですね。てか、ここからヒロインじゃなかったら、羽姉ちゃん不憫すぎる……。


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第9話 転校生と気持ち

クリスマス、ボッチ決定の舞翼だぜ。
……うん、言ってて悲しくなってきた。


 ある廃墟で、ビーハイブの幹部であるクロードが、とある人物を呼び出していた。

 クロードは、眼鏡をくいっと上げて話し出す。

 

「……来たか。待ちわびていたぞ」

 

「はい。わたしがここに呼ばれた理由はなんでしょうか?」

 

 クロードは、とある人物に写真を渡す。

 

「こいつがお前の次の任務――標的(ターゲット)の、一条楽。既に聞き及んでいると思うが、お嬢は今この男と恋人関係にある。しかし私は、お嬢はこの男に騙され利用されていると睨んでる。滑稽なガキだ……」

 

「し、しかし、聞いた話によると、若が第三者であり、見届け人だと聞き及んでいますが……」

 

 クロードはわなわな震えながら、

 

「わ、若も騙されているのだ、一条楽に――」

 

 この言葉に鼓舞されるように、とある人物が握っている手に力が入り、写真がクシャクシャになる。

 

「ゆ、許せませんね。一条楽……」

 

「……私では直接動向を探ることはできない。だが、私が育てた優秀な部下のお前ならば――」

 

「そういうことならば、了解しました」

 

 クロードは脂汗を、額に滲ませた。

 

「……い、言い忘れていた。わ、若を、絶対に怒らせてはならないからな……ビーハイブの剣舞が降臨したら……」

 

 そう。蓮がキレると、ビーハイブの幹部以上の強さなのだ。クロードは、蓮を本気で怒られたことがあり、ボコボコにされた経歴があるのだ。

 

「わ、わかってます」

 

「そ、そうか。ならいい」

 

「で、では、失礼します」

 

 とある人物は、廃墟を出て行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺はバックを右肩にかけながら廊下を歩いていた。ちなみに、姉貴と楽は登校初日から一緒に登校しているので、俺は基本一人で登校である。

 教室に入ると、俺は自分の席に着く。つか、また転校生らしい。

 

「おはよう、小野寺。……あと宮本も」

 

 俺は隣席の小野寺たちに挨拶をする。

 

「あ、蓮君。おはよう」

 

「ふんッ!」

 

「い、痛ぇよ、宮本。ちょっとした冗談じゃんか……」

 

 はい、宮本に右足を踏まれました……。結構痛いかも。

 

「まったく……。おはよう、蓮君」

 

 いや、宮本さん。溜息を吐いてから言わないでくれ……。まあいいけど。

 

「そういえば、蓮君。このクラスに転校生がくるらしいよ」

 

 小野寺がそう言う。てか、やっぱりこのクラスなのね。

 で、その後に集からの裏が取れました。

 

「蓮君。聞きたいことがあるんだけど。小咲もかなり気になってるらしいわ」

 

 ……なんか嫌な予感。

 

「……な、何かな」

 

「先週くらいかしら。蓮君、○○ショッピングモールにいなかった?」

 

 マジかよ……。見られてたの?いや、まだ誤魔化せる範囲だ。

 

「……いや、行ってないけど。家で寝てたし」

 

 何、この尋問展開は。てか、絶対に誤魔化す!

 

「そう、あの美人さんは誰かしら?」

 

「へ?……い、いや~、何のことか解らないなぁ……」

 

 暫しの沈黙が流れる。てか、三人の中での沈黙って意味ね。

 

「……はあ、海外の姉ちゃんだよ。俺が幼いころから世話になってた。てか、ガッツリ見てたのかよ……」

 

「いえ、美人さんに関しては、カマをかけだけなんだけど。あの時は、蓮君が誰かと話してるのしか見えなかったし」

 

 肩をがっくり落とす俺。

 

「……カマをかけたのかよ。つってもあれだぞ。ただの姉だからな。恋愛とか、そっち方向に持ってくなよ」

 

「わかってるわ。蓮君はそっち方面は興味ないんだったしね。でも、今後はどうなるか解らないわよ」

 

「俺の今後ねぇ。今と変わらないと思うけど」

 

 何でこんな追求したの?いや、別に構わないけどさ。

 てか、俺は本当に今後どうなるのだろうか?結構気になってたりする。そんな事を思っていたら、教室の前の扉が開き、キョーコ先生が入って来る。

 

「よーし、早く座れ。出席とるぞー」

 

 キョーコ先生の言葉によって、生徒が各々の席に着く。キョーコ先生が教壇で出席を取り終わり、

 

「突然だけど、今日はみんなに転校生を紹介するぞー。鶫さん、入って来て」

 

「はい」

 

 教室のドアを開けて入って来たのは、何処からどう見ても、海外で活動しているはずのビーハイブメンバーだった。つけられた異名は、黒虎(ブラックタイガー)。ビーハイブでのトップのヒットマンである。狙った相手は逃がさないとかなんとか……。

 

「はじめまして。鶫誠士郎と申します。どうぞ、よろしく」

 

 自己紹介が終わると、凄まじい歓声が巻き起こる。……まあ、主に女子からだが。でもまあ、本当の性別は――、いや、止めておこう。

 

「(……クロードの差し金か?面倒なことにならなければいいけど)」

 

 って、これってフラグじゃね……。それは置いといて。

 キョーコ先生が空いている席に着いてと鶫に言い、鶫が楽の隣を通りながら、フッと微笑んだ。

 だがまあ、姉貴が立ち上がり、鶫の名前を呼ぶ。

 

「鶫!?」

 

「お久しぶりです、お嬢――!」

 

 俺の予想通り、鶫が姉貴に抱きつく。

 で、クラスからは、

 

『転校生が桐崎さんに抱きついた!』

 

『なんだ、なんだ~~~!』

 

 と声が上がる。

 

「ちょ、いきなり抱きつかないの!?みんなが見てるでしょ!?」

 

「ああ、お嬢……!お会いしとうございました……!ところでお嬢、若はどちらに?」

 

 頭を抱える俺。

 前から鶫には、“蓮”って呼べって言ってるんだが、“若”のままなんだよなぁ……。

 

「蓮なら、小咲ちゃんの隣よ」

 

 姉貴の視線を追うように、鶫の視線が俺を見る。で、勢いよく俺の前に来ました。

 

「わ、若!お久しゅうございます!あれから連絡ができず、申し訳ありません!」

 

「いや、別に大丈夫だ。気にするな」

 

「うぅ……。若の優しさが身に沁みます……」

 

 いや、どこがだよ……。

 ともあれ、ビーハイブのヒットマンが凡矢理高校へ転校してきたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時は経過し放課後。

 

「蓮君は、千棘ちゃんの所に行かなくてよかったの?」

 

「そうね。昼休み話し合ってた時も行ってないし」

 

「俺はいいんだよ。……面倒くさいことになるの目に見えてるし。たぶん、鶫と楽は、『お嬢の恋人に相応しいか決闘だ!』的なことになってると思うけど」

 

 十中八九なってるだろうな、この展開に。頑張れ、楽。

 

「てか、小野寺はいいのか?決闘を見に行かなくて?好きな人の晴れ舞台だぞ」

 

「うーん、ギャラリーが多そうだし。わたしはいいかな」

 

「いやいや、好きなんだろ?」

 

「ちょ、蓮君。声が大きいよっ」

 

 俺の口を塞ぐ小野寺。

 ……うん、俺の心臓に悪いから止めようか。つか、結構強く塞がれたので、息ができん……。

 

んん(ギブ)……んん(ギブ)

 

「あ、ごめん。蓮君」

 

 小野寺は、手を退かし解放してくれた。

 俺はバックを開け、ウェットティッシュを渡取り出して、小野寺に手渡す。

 

「ん、これ使っていいぞ。なんか、色々と悪かった」

 

「き、気にしてないよ」

 

 小野寺は、袋からシートを取り出し手を拭く。

 

「そか」

 

「う、うん」

 

 これを見ていた宮本が、

 

「ふ~ん」

 

 と、意味深な声を上げる。

 ……あれだ。突っ込んだらいけない『ふ~ん』だ。

 

「蓮君。わたし帰るから、小咲を送ってあげてくれないかしら?」

 

「ん?小野寺は、宮本と帰るんじゃないのか?」

 

「わたし、急用を思い出して」

 

「なるほど。小野寺が嫌じゃなかったら構わないけど……」

 

 俺がそう言うと、小野寺と宮本は少し離れてしまった。はて、なんか悪いことでもしたのか、俺。

 

 

~小咲side~

 

「る、るりちゃん。どうゆうことなの……」

 

「あの時、確かめることができなかったでしょ?だから、もう一回機会を作ったのよ」

 

 確かに、今日蓮君と帰れば、わたしが蓮君をどう思ってるのか解るような気もするけど……。

 

「で、でも――」

 

「いいから、蓮君と一緒に帰りなさい」

 

「……う、うん。わかった」

 

「なら、よし。後でどう思ってるか、聞かせてちょうだい」

 

 わたしは、小さく頷き、るりちゃんは優しく微笑んでくれた。

 

~小咲side out~

 

 

「あ、あの~。小野寺さん、宮本さん?」

 

「ごめんね、蓮君。今後必要な物、小咲から聞いてたの」

 

 ふむ。必要な物と言えば、林間学校で使う物だろう。

 

「じゃ、小咲をお願いね。またね」

 

 そう言って、帰りの支度をした宮本は、教室を出て行ってしまった。

 教室に残されたのは、俺と小野寺だけだ。

 

「俺らも帰るか」

 

「そうだね。帰ろっか」

 

 俺と小野寺も帰りの支度をして、下校しました。でもまあ、下校中にあの場所に行こうと言うことになったので、秘密の場所へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「やっぱ、ここから見る景色は綺麗だなぁ。たぶん、今後も通うだろうなぁ」

 

 この場所から見える夕焼けは、街全体がオレンジ色に包まれているようで幻想的であった。

 小野寺は、ふふと笑ってから、

 

「気にいって貰えてなによりだよ。――蓮君、気になったんだけど。今日言ってた、もう一人のお姉ちゃんって?」

 

「そうだな。俺にとっての姉ちゃんは――」

 

 俺は掻い摘んで、羽姉ちゃんとの関係を話した。まあ、裏事情までは話さなかったけど。

 

「まあこんな感じだ。だからまぁ、一番付き合いが長い人だな」

 

「そうなんだ。信頼してるんだね」

 

「もちろん、小野寺もしてるぞ」

 

「わ、わたしも?」

 

 小野寺は、驚いたような顔をする。

 てか、そこまで驚かなくても……。

 

「まあな。小野寺は、裏表もなさそうだし、優しいし、明るいし、包容力が――……あれ、俺、余計なこと言ってね?」

 

 てか、あれだ。小野寺の顔が赤くなってる。夕陽のせいか?

 

 

~小咲side~

 

「(……蓮君が、わたしのこと、こんな風に見てたなんて知らなかったよ……。言葉は、無意識に出ちゃっただけだと思うけど)」

 

 今なら言えるかな。よし、気分が乗ってる勢いで――、

 

「あの、蓮君」

 

「どったの?」

 

 街の景色を見ていた蓮君振り向き、疑問符を上げる。

 

「……えっとね。わ、わたしも、名前呼びがいいかなぁって。ほ、ほら、わたしは、蓮君って呼んでるし……」

 

「確かに、一理ある。――んじゃ。よろしく、小咲」

 

「う、うん!よろしく、蓮君!」

 

 わたし、小野寺小咲は、徐々に桐崎蓮君に惹かれているのが解った瞬間でもあった。

 

~小咲side out~




小咲も、徐々にきてますね(笑)


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第10話 林間学校

なんか、迷走感が否めない展開になってきたかも……。
いやまあ、リハビリ、息抜き作品だから多めに見てね(^_^;)


 俺、桐崎蓮は、ボストンバックを右肩にかけ、全力で学校に走っていた。

 

「だー、羽姉ちゃんのバカ野郎。寝坊しちまったじゃねぇか!」

 

 姉貴と鶇とは一緒に暮らしているが、お互いの部屋には入らないという規則があるのだ。だからまぁ、時間に起きないと学校に遅刻するのだ。

 昨日は羽姉ちゃんと深夜まで談笑し、寝たのが遅かったので、今の状況に繋がる。

 てか、見知った後ろ姿があるんですが……。

 

「って、小咲も遅刻かよ!」

 

「れ、蓮君!ち、違うの。楽しみで眠れなかったの!」

 

「いや、それ遅刻と同じだから!」

 

 ギャーギャーと騒ぎながら、俺と小咲は学校の校門前まで全力ダッシュ。校門前に到着した頃には、俺は荒く息を吐きながら肩を上下させ、小咲も同じく肩を上下させていた。てか、出発前にかなり疲れたわ……。

 

「もう、わたし蓮が間に合わないと思って、気が気でなかったのよ」

 

 姉貴にそう言われる俺。

 

「いや、ちょっと諸事情でな。悪かった、姉貴」

 

 てか、ギリギリ間に合ったらしい。うん、マジでよかったです。

 つか、バスの席はどうなってんの?俺居なかったから、席順なんてわからんけど……。

 

「小野寺と、桐崎弟も来たことだし、出発するぞー」

 

 キョーコ先生の合図がかかると、生徒たちがバスに乗り込んで行く。てか、小咲と俺待ちだったのね。間に合ってないじゃんよ、姉貴……うん、なんかごめんなさい。

 つーか、俺は、楽、集、小咲、姉貴、宮本、鶇と同じ班らしい。俺が遅刻してる時に決まったんだね。……うん、知ってた。で、バスの席は、一番後ろに、宮本、姉貴、楽、鶇。その右斜め前の二人席に、俺と小咲らしい。てか、席に着いたら寝よう。

 小咲が窓際に座ったのを確認してから、俺が通路側の席に着席する。

 俺は大きく欠伸をしてから、

 

「……眠いわ」

 

 と呟く。

 

「蓮君。夜更かし?」

 

 小咲が首を傾げてそう聞いてくる。

 

「まあそんなとこ。姉ちゃんと話しすぎてな」

 

 海外電話でな。と付け加える。

 

「姉ちゃんって、あの時話したお姉さんのこと?」

 

「ん、そうだぞ」

 

「てか、蓮君。その首から下げられてるのは、ネックレス?」

 

 んん?ネックレス……。ああ――――ッ!昨日着けぱなしで寝ちゃったんだわ。で、寝坊して、ネックレスの存在を忘れてたと……。

 

「……ま、まあ、ネックレスだ。羽姉ちゃんからのプレゼントかな。……はあ、学校には着けていかないはずだったんだけどなぁ……。寝坊して、頭が一杯一杯だったわ。てか、小咲の誕生日っていつ?」

 

「へ?6月15日だけど」

 

「ふむふむ。6月15日ね。了解した」

 

 俺は友達の誕生日はお祝いすることに決めているのだ。そういうことなので、小咲から誕生日を聞いたのである。まあ、ネックレスの件を誤魔化す的な感じも混ざっていたのだが……。

 

「蓮君は、いつなの?」

 

「俺か?俺は、6月10日だけど。俺の方が、若干年上なのな」

 

「そうだね。それにしても、一週間程度しか変わらないなんて」

 

「まあ確かに」

 

 そう話してる内に、バスが出発した。

 てか、あれだ。いつものように、夫婦漫才と突っ込みが行われている。姉貴、楽しそう?で何よりだ。

 つか、小咲さん。俺の右肩を枕にして寝ちゃったんですね……。まあいいや。俺も寝よう……。

 と言うことなので、俺も目を瞑り夢の中へ突入した。

 この時、この光景を写真で撮られていたなど、知る由もなかった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 出発から約1時間後。俺が目を開けると、目的地に到着したらしい。続々と生徒は立ち上がり、バスから下りて行く。

 

「小咲、起きろー。着いたぞ」

 

 小咲は、しょぼしょぼした瞳を擦りながら、

 

「あ、蓮君。おはよう」

 

「ああ、おはよう。じゃなくて、目的地に到着したぞ」

 

「う、うん。わかった。そ。それとごめん。蓮君の肩を枕代わりにしちゃって」

 

「いや、別にいいよ。俺も途中から寝てたし。てか、行くぞ」

 

 俺は通路立ち、小咲に右手を差し出し、小咲はおずおずとその手を掴んだ。

 

「あ、ありがとう」

 

「気にすんな」

 

 うーむ、なんかあれだわ。楽から小咲を奪ってる感じで申し訳ない。……も、もしや、これが略奪…………はい、すいません、完全な冗談です……。てか、俺はギャングの義弟、小咲は一般の家庭の子。想い合うことができても、付き合うことは不可能だ。

 ま、羽姉ちゃんは領主だから別だが……。そんな気は全くないけどさ。

 ともあれ、俺と小咲はバスから下りました。

 

「今から班でカレー作ってもらうからな。楽しんで、気をつけて作れよー」

 

 キョーコ先生の言葉を聞いて、楽が顔を引き攣らせたのを俺は見逃さなかった。

 決闘云々の後に、鶫と買い物をしたり、楽が熱を出した時に、姉貴と小咲がお見舞いに行ったり、そこでダークマターのお粥を食べたりとあったらしい。……姉貴、ケーキは上手く作れたのに、お粥はダメだったのか……。

 

「蓮と宮本、小野寺は薪を貰って来てくれ。桐崎は俺が指示するから大人しくしてろよ」

 

 必死やね。楽。まあ、あの二の舞は洒落にならないと思うけど。

 まあ、俺も仕事をしますか。

 

「行くわよ、蓮君」

 

「あいよ。宮本隊長さま」

 

「……あんた、張った倒すわよ」

 

「ちょ、るりちゃん。そんな言葉使ったらいけないよ」

 

「お、おう。小咲の言う通りだぞ、宮本さま」

 

「……まったく、次はないわよ……。てか、蓮君。小咲を名前呼びにしたのね」

 

「まあ色々あってな。他意はないぞ」

 

 ともあれ、俺たちは薪を貰いにいきました。

 で、皆で楽しくカレーを作り、美味しく頂きましたとさ。




次回も頑張ります!
で、蓮君が出かけた翌日の設定です。


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第11話 林間学校Ⅰ

ラブライブのメドレーを聞きながら執筆する舞翼です。(おい、関係ないぞっていう突っ込みはせんといて……)

でもまあ。その中で特に好きな曲は、START_DASH!! Snow halation 冬がくれた予感 No brand girls Angelic Angel とかですね。まだまだ一杯あるけど。

では、どうぞ。


 カレーを完食し、一休みした所で、俺たちの班は宿舎にやって来ていた。

 

「へー、結構広いんだな」

 

「こういうとこ、うちの学校気前良いよな」

 

 俺と集が、部屋の内装を見ながら感嘆な声を上げる。てか、何故男女部屋じゃない。なんかおかしくね……。あれだ。気にしたら負けってやつである。

 ともあれ、各自は荷物を下ろし寛ぐ。てか、飯を食ったからか、再び眠く――って、今日の俺、寝てばっかじゃね……。まあでも、俺は横になりました。つーか、風呂まで時間があると言うことで、トランプ(俺を除く)をすることになったもだが――、

 

「罰ゲーム?」

 

「そ。罰ゲーム。ビリの人がだけど」

 

 俺が端の方で横になっていると、集がこちらに来て、トランプに誘ってきた。何でも、『初恋のエピソードを語る』っていう罰ゲームがあるらしい。

 

「つってもな、集。俺、初恋とかねぇぞ」

 

「なら、気になる子とかで」

 

 うーむ。俺が気になる子ねぇ。……うん、居ないな。でもまあ、ここで断ったら、誘ってくれた皆に失礼だ。

 

「わかった、やろうか」

 

「お、やっぱり蓮は話が解るな」

 

 とまあ、そういうことなので、鶫、集、千棘、楽、小咲、宮本、俺の順で時計回りに座っている。

 鶫から始まり、集が鶫の手札から一枚カードを引き、次に千棘が集の手札から一枚カードを引く。まあそれはいいんだが、小咲と姉貴は表情でジョーカーを持っているかバレバレである。

 で、宮本が小咲からわざとジョーカーを引く。

 

「(ったく、俺を嵌める気か?まあいいど)」

 

 そんな事を考えながらカードを引くと、案の定ジョーカーだった。……うん、こうなるって知ってたよ。

 でもまあ――、

 

「(……蓮君。何でそんなにポーカーフェイスが完璧なのかしら?)」

 

「(職業上(ギャング)だからじゃないか?まあ、小さい時から得意だったからな、ポーカーフェイス)」

 

 おそらく、俺がジョーカーを引いた事に、皆は感づいていないだろう。

 そうこうしてる内にゲームは進み、俺は一位通過。その後も、宮本、集、鶫と続き、残ったのは、小咲と姉貴、楽だ。

 俺の予想では、小咲と姉貴が最後に残るはずだ。まあ、俺の予想は外れる事になり、楽が小咲が持っていたジョーカーを引き、姉貴との最終対決まで縺れ込んだのっだった。

 

「つーか蓮。お前、ポーカーフェイス上手すぎだわ」

 

 集が俺にそう言ってくる。

 

「かもな。俺がジョーカー持ってたの、宮本くらいしか気づかなかったし。最初嵌められた時だけだけど」

 

「オレは聞きたかったわ。蓮が気になる女の子」

 

「だから、居ねぇから。……強いて言えば――――、何でもない」

 

「ちょ、そこまで言って途中で止めるかのかよ……」

 

 再び、姉貴たちの方へ視線を向けると最終局面だった。

 で、姉貴がジョーカーを引こうと――、

 

「こら――!いつまで遊んでる!とっくに集合時間は過ぎてるぞ――!」

 

 キョーコ先生が、襖をバンと開けた。開始から、かなりの時間が経過していたらしい。

 

「…………よかったな」

 

 楽はカードを床に落としながら部屋を出た。床に落ちたカードはジョーカーじゃない。あのままゲームを続行すれば、姉貴が負けていた。

 まあ何と言うか、姉貴、罰ゲーム回避おめでとう?でいいのか?そんな事を考えながら、俺も立ち上がり集合場所へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 夕食が終わり、入浴の時間になった。

 

「蓮。風呂行こうぜ」

 

「いいけど。でも楽。覗きをしようとか言い出すなよ」

 

「し、しねぇよ。てか、バレたら退学ものだぞ」

 

「まあ確かに」

 

 そういうことなので、部屋から服を取り、風呂場に向かおうとしたのだが、楽が電話で呼ばれフロントに向かった。

 俺は壁に背を預けながら、

 

「はあ、なんつーか、今日は疲れたかもな」

 

 そんなことを呟いていたら、電話が終わった楽が駆け寄って来る。

 

「誰からだったんだ?」

 

「それなんだけどよ。誰からも電話がかかってなかった」

 

「は?つまり、悪戯電話か?」

 

「まあ、そうなんじゃないか」

 

 そんなこんなで、男子湯へ向かう俺たち、脱衣所の端で服を脱ぎ体をパパッと洗ってから入浴する。

 極楽極楽。……オヤジっぽい発言だな……。

 岩の端でゆっくりしてると、

 

「ちょ、蓮!?緊急事態だ!」

 

 楽がかなり焦って俺に近づく。

 

「は?何言ってんだ――」

 

 楽の焦りが俺はすぐに解った。

 ……うん、これはかなりヤバイ……。マジでやばい。てか、洒落にならん。

 俺はピンときた。

 

「……これはクロードの奴のせいだな」

 

 で、俺もそれに巻き込まれたと。……つか、あいつ締める……。マジで締める……。慈悲は無い的な感じで。

 

「く、クロードって、あのオールバックだっけか?」

 

「その認識で合ってるぞ。てか、今はそれどころじゃねぇから!」

 

 そう、続々と女子が風呂場に入って来るではないか。

 

「うわー、凄い!いい景色だね」

 

 姉貴に、小咲、宮本に鶫と。

 そんなこんなで焦っていると、体を洗い終わった女子が入って来るではないか……。てか、洗うの早ッ!

 つーか、楽は姉貴に見つかったらしい。……つか、バレてない今なら何とかなる。で、潜水をすると、男子湯に繋がると思われる穴を発見した。

 

「(あそこから、男子湯に行ければ)」

 

 そう思いながら顔を浮上させると、……うん、女子と目が合った。

 

「「え?」」

 

 そりゃこうなるわ。

 ちなみ、即行で背に隠れました。

 

「れ、れれ、蓮君。な、なんで女湯にいるの?」

 

 ……あれだ。小咲に発見されました。はい、社会的に終わりですね……。

 言い訳タイムといきましょうか。つっても、信じてもらえる確立は皆無かもしれんが。

 

「とういことなので、身内のせいなんだよ。この通り、ごめんなさい」

 

「う、うん。蓮君が覗きなんかしないって信じてるけど、この状況はマズイかも。てか、わたしの裸も見られたし……」

 

「そ、それは不可抗力だから。俺は悪くないからっ。他意はないから。信じてください、小咲さま」

 

「……もう、貸しだからね」

 

「盛大な配慮、ありがとうございます」

 

 つい、敬語になる俺。

 

「ねぇねぇ、寺ちゃん。桐崎君とはどんな関係なの?」

 

 アホモブ女子がッ。来るんじゃねぇ。

 見つかったら、社会的に死ぬから……。

 

「ふぇ!」

 

「だってさ、男子の中で唯一名前呼びじゃない」

 

 まあ確かに。何でだろうか?

 何故か同意する俺。

 

「そ、それは最初に話した時そうなったから……。ほ、ほら、千棘ちゃんも桐崎だったでしょ?」

 

 小咲は両手を後ろに回して、潜水してる俺の背を押す。

 

「(わたしが食い止めるから、蓮君は早く脱出して)」

 

「(わ、悪い。恩に切る)」

 

 そういうことなので、ダッシュで男子湯に繋がる穴を通り、

 

「ぷはっ――!」

 

「おわッ!楽の次は蓮かよ!ど、どうしたんだよ、お前ら」

 

 どうやら、楽も脱出できたらしい。

 

「い、いや、ちょっとばかり潜水を……。な、楽?」

 

「お、おう。蓮の言う通りだ……」

 

「つ、つか。楽、出ようぜ。俺どっと疲れたわ……」

 

「お、オレもだ……」

 

 楽はげんなりしながら答える。

 いや、これが普通の反応なんだけどね。

 で、風呂から上がり、下着諸々は男子湯で購入した。何であるんだよ。って言う突っ込みはしないでくれ……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 浴衣姿で俺と小咲は向き合っていた。

 

「れ、蓮君。着替え取っといてあげたよ」

 

 そう言って、袋に入った着替えを渡してくれる小咲。

 いや、マジで女神です。小咲さん……。

 

「お、おう。マジでサンキュー。退学にならなくて済んだわ」

 

「それで、どこまで見たのかな?」

 

 ……え、何。小咲の背後から修羅像が見えるんだが……。

 

「み、見たのは、小咲の裸だけだ。ほ、他の奴は見てないぞ」

 

 てか、あれだわ。完全に変態発言だわ。

 

「じ、じゃあ、何でも一つ言うことを聞くって事で手を打ってくれ。……まあ、俺ができる範囲だけだけど」

 

「……うん、わかった。それで手を打ってあげる」

 

 やっぱ小咲。マジで女神っ!

 

「この話は終わり。時間過ぎそうだけど、星見に行こうよ。蓮君」

 

「あ、ああ。別に構わんが」

 

 そんなこんなで、外のベンチに座る俺たち。

 やはり、星が綺麗に輝いている。

 

「星を見るのって、修学旅行の醍醐味かも」

 

「いや、修学旅行じゃないからな。林間学校だ」

 

「もう、細かいことは気にしない」

 

「はい、その通りです」

 

 今日一日は、小咲には頭が上がらないだろう。

 なんつーか、弱みを握られた?

 

「蓮君って、羽さんのことホントはどう思ってるの?ネックレスをプレゼントしてくれる関係だから、気になってさ」

 

「恋愛対象ってことか?」

 

 小咲は頷いた。

 

「うーん、そう言われてもな。姉としか言えないんだよな。まあ、恋愛以外では好きだけどさ。昔から、世話になってるしな。てか、ほぼと言ってもいいほどの恩人だし」

 

「強い絆で結ばれてるんだね」

 

「どうだろうな。連絡も取り合ったのも、ここ最近だからなぁ。ま、かなり頻繁だけど。……羽姉ちゃんからがほぼだけど……」

 

 げんなりする俺。

 まあでも、邪険にできないけど。てか、したくないが正しいか。

 

「ま、そう言うことだ。湯冷めしちゃうから、部屋に戻ろうぜ」

 

「そうだね」

 

 まあそういうことなので、部屋に戻る俺たち。

 何故か知らんが、ベランダでテルテル坊主の要領で楽と集が吊らされていた。まあ、集あたりが女子部屋に入ろうとして、宮本にやられたのだろう。楽は、そのとばっちりと見た。

 俺は楽と集を助けてから、布団に入り眠りに就いた。

 こうして、林間学校一日目が終了した。

 




林間学校一日目終了です。
ちなみに、蓮の呼ばれ方は、若と蓮坊ちゃんです。


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第12話 林間学校Ⅱ

ラブライブにはハズレの曲はないよね(うん、これニセコイと関係ないな……)

では、どうぞ。


 林間学校2日目。俺は朝食をお盆に乗せ、席に着席して味噌汁を啜っていた。俺の前では、楽が箸を使って白飯を口に運んでいた。隣では集が牛乳を飲んでいる。

 

「蓮。今日肝試しイベントがあるらしいけど、知ってたか?」

 

 楽がそう言ってくる。

 てか、肝試しねぇ……。

 

「蓮。ただの肝試しじゃないぜ?くじを使って、男女二人組のペアが組まれるのだ。更に重要なルールがもう一つ……」

 

 集は勢いよく立ち上がり、

 

「ペアになった男女は、必ず手を繋がなくてはならない!どうだ、燃えてきただろっ!」

 

「いや、別に」

 

 俺は平静に答える。

 

「んだよ、淡白すぎるぞ。蓮さんや」

 

「いやまあ、手を繋いで肝試しするだけだろ。燃える要素がないような気がするんだが」

 

「蓮は、ペアになりたい女子とか居ないのか?」

 

「まあ、知ってる女子がいいな。でもまあ、当たりたいくじを引いたら交換してやるよ」

 

 そう話しながら、朝食を食べ終えてから立ち上がり、お盆を返却口に返して部屋に戻った。

 とまあ、そんな時、小咲にバッタリと会った。で、一階の自販機の近くにある長椅子に座ってます。

 

「えーと。昨日はスイマセンでした」

 

 俺の開口一番が、それだった。

 申し訳なさそうな俺を見て、小咲は苦笑した。

 

「終わった事だから、引きずらないでよ」

 

「ああ。サンキュ」

 

「それで、蓮君は肝試しどうするの?参加するんでしょ?」

 

「一応な。くじ引きの件は如何でもいいけど」

 

 小咲さん。目を丸くしないでよ。なんか、悪いことした気分じゃんか……。

 てか、ペアになりたい女子が居ないことが不思議なのだろうか?

 

「へ、へー。そ、そうなんだ」

 

「まあな」

 

 うーむ。俺はやっぱり淡白すぎるのだろうか……。

 さて、俺も聞いてみますか――、

 

「小咲は居るのか?一緒になりたい奴?」

 

「う、うん。一応ね」

 

「てことは、楽か?」

 

「ど、どうだろうか?」

 

 なんで敬語?つか、一緒になった奴は幸せ者かもな。小咲、可愛いし。

 てか、俺ってこういうことあれから平然と言えるようになったんだよね。なんか不思議だな。

 ともあれ、時は経過し、集合時間となり山を登る事になりました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「これより、恒例の肝試し大会を開始する!準備はいいか野郎共――――!」

 

「「「「「おお――――――!!」」」」」

 

 キョーコ先生の合図により、歓声が上がる。てか、皆さん。かなりテンションが高いわ。俺はあれだ。若干眠いです……。

 つーか、先生たちは晩酌ですか……。まあ、こういう機会にしかできないと思うけど。

 

「それでは、女子からくじを引いてくださーい!」

 

 とまあ、このようにくじ引きが始まった。

 女子が全員引き終わった所で、男子の番である。前の奴が引き、次は俺だ。

 俺は箱の前まで歩み寄り、箱の中に手を入れてくじを引き、元の場所まで戻る。

 

「で、蓮は何番よ?」

 

 集よ。かなりテンションが高いな。対して俺は、欠伸を噛み殺しながらくじを開く。

 書いたあった番号は12番。てか、小咲と一緒やん。

 

「おーい、楽。くじを交換するか?」

 

「マ、マジでいいのか?」

 

 驚愕な顔をする楽。

 いや、何で俺が意外な奴。的な感じなの……。

 

「お、おう。いいけど。てか、そこまで驚かなくても……」

 

 つか、楽の番号は姉貴と同じらしい。うん、姉貴には気を遣わなくてもいいし、気楽だ。

 そんな時、宮本の拳が俺の腹にめり込む。……な、何で。

 

「蓮君。引いた番号を交換するのはやめなさい。相手に失礼よ」

 

「お、おう。そうだけど…………。わかったよ、俺は12番な」

 

「解ればいいのよ。てことで一条君。そこの所よろしくね」

 

 そう言い残して、去っていく宮本。てか、怖ぇよ。宮本さん。

 ともあれ、12番目が回ってきました。

 

「よろしくな。小咲……。ふぁ~」

 

 ……やっべ、無意識に欠伸が出てしまった。

 

「すまん。なんか、今日はやけに眠くてな。てか、手を繋ぐんだっけか?」

 

「う、うん。よろしくです」

 

 なんつーか、小動物見たいだわ。小咲さん。

 そういうことなので、手を繋いだ俺と小咲。

 で、出発進行。てか、客観的に見ると、俺ってダメな男子じゃね……。

 

「(んじゃ、いっちょ頑張りますか)」

 

 つーか、小咲さん。怖がりすぎだから。作り物だから。殴れば血が出るから。殺せるから。……あれ、最後なんか不吉じゃね……。

 

「小咲って、そんなに怖いのダメだっけか?」

 

「う、うん。お化け屋敷とかは、全然ダメで……」

 

「へぇ、小咲も女の子らしい所あったんだな。ちょっと意外」

 

「ちょ、それはどういうことかな。蓮君」

 

「いや、完全無欠なガチガチ女子って感じだったからさ」

 

 これぞ俺の作戦。話してれば怖くない作戦である。あれだ。そのままだわ……。俺、ネーミングセンスねぇな……。

 

「むぅ」

 

 ありゃ、へそを曲げてしまった。

 

「まあまあ。さっきのは冗談で、小咲さんは、可愛い可愛い女子ですよ」

 

「……なんか褒められてる気がしないけど。褒め言葉として受け取っておくね」

 

「いや、褒め言葉だから。嘘偽りはないから……たぶんな」

 

「い、今、たぶんって言ったでしょ、たぶんって」

 

「さあ、それはどうでしょう」

 

 ギャーギャーと軽口を叩き合いながら歩を進める俺たち。なんつーか、周りのお化けも、脅かすのを止めてる感じに見えるのは気のせいだろうか?まあ、その方が色々と好都合だけど。

 

「さて、怖いのはなくなったか?」

 

「あ、ホントだ。最初から、これが目的で?」

 

「まあそうだな。俺も昔は怖がりでな、いつも誰かしらに手を引いてもらってたんだよ。で、今の方法で助けられた事があるから、実行してみた」

 

「へぇ、蓮君も小さい時はお化けが苦手だったんだ。なんか以外かも」

 

「ガキの頃は、夜とかは怖いものばっかだしな。俺もその一人でもある」

 

 この時お化けたちは、

 

「(((((イチャついてんじゃねぇよ!怖がってくれよ!)))))」

 

 とまあ、心の声が一致していたとさ。

 それから数分歩き、出口に到着。

 お化け役の人が足りなかったらしく、楽と姉貴もお化け役として参加してたらしい。まったく気づかんかったが……。

 

「……あんたら、楽しそうに出てきたわね」

 

 宮本がそう聞いてくる。

 

「ずっと話しながら来たしな。お化けは最初しか視界に入らなかった。何でか知らんが」

 

「たしかに、何でだろう?」

 

「そりゃ、あんたらを脅かすのを諦めたんでしょうが……」

 

 ともあれ、このようにして林間学校は幕を閉じたのであった。 




林間学校終了です。
この小説は、2000~2500文字を目安にしてます。


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第13話 プレゼント

れ、連投です。


 林間学校が終了し、ある日の出来事――。

 

「おーい、楽ー!」

 

 楽は、小咲に話しかけようとしたが、姉貴に呼び止められていた。

 てか、名前呼びになったのね。姉貴と楽、かなり距離が縮まってないか。……ここからまさかの、本物の恋人に……。いや、無いか。

 

「この日誌ってどこに持っていくんだっけ?」

 

「ああ?さっき先生が、準備室(理科)って言ってたじゃねぇーかよ」

 

「あー、そっかそっか」

 

 姉貴は、準備室の方へ向かって歩き出した。

 いや、そっちは音楽室だから……。

 

「おい、千棘!理科室の方の準備室だぞ。また、音楽室の方と間違えるなよ」

 

「りょうかい~」

 

 そう言って、姉貴は背を向けながら左腕を上げながら手を振って歩いて行った。

 

「楽。姉貴のこと名前で呼ぶようになったのな」

 

「実は最近、下の名前で呼び合う事になってよ。結構長く付き合ってるのに、下の名前で呼んでないのは変だって友達に言われたんだと。まだ慣れねぇけどな」

 

「なるほどねぇ。ま、良いことじゃないか」

 

「蓮は、小野寺は名前呼びなのに、宮本は名字なのな」

 

 確かに、宮本は名字だわ。

 あれか。名前で呼んだ方がいいのか?つか、男子の皆さんは、女子を名前で呼ぶのに何でそんなに抵抗があるのだろうか?

 

「でもまあ、本人の承諾が得られれば、すぐに名前呼びにするけど」

 

「蓮って凄ぇよ。気軽に女子を名前で呼べるなんて」

 

 いや、どこがだよ……。と、俺は心の中で突っ込んだ。

 てか、……俺の基準がおかしいとか……。それは勘弁だ。

 

「おい、一条楽。お嬢を見ていないか?」

 

 教室のドアを開けて出て来たのは鶫だった。

 

「ハニーなら、さっき理科準備室に行ったぞ」

 

「そうか。それは都合がいいな。皆さんもお揃いのようですし」

 

「いや、鶫。集が居ないけど」

 

 まあ、大体は鶫の言いたい事の予想はつくけど。

 

「皆さんお揃いのようですし。そうですよね、若」

 

 何故か知らんが、集はメンバーに入っていないらしい。何で?

 

「皆さんに、お願いがありまして。実は今日、お嬢の誕生日なんです。なので、お嬢に楽しんで頂きたいので、サプライズパーティーを計画しているのですが。ぜひ、皆さんも参加してもらいたいんです。その方が、お嬢も大変お喜びになられると思うので」

 

 で、俺が鶫の言葉を引き継ぐ。

 

「俺からも頼む。姉貴は、友達に誕生日を祝って貰った事があんまなくてな。いつも身内だけなんだよ」

 

「わたしは行くよ」

 

「わたしも行こうかしら」

 

「オレもいいぞ」

 

 小咲、宮本、楽はサプライズパーティーに参加してくれるらしい。

 今年は違う誕生会になりそうだよ、姉貴。

 

「忘れがちだけど、蓮って千棘の義弟だったんだっけか」

 

 楽にそう言われ、俺はずっこけそうになる。まあ、学校ではいつも別行動をしてるし、登下校も別々だからなぁ。無理もないけど。

 

「てか、忘れるなよ、楽。俺の名字は桐崎だぞ」

 

「悪ぃ悪ぃ」

 

 誕生日と言えばプレゼントか。つか、姉貴の好きな物なんだっけ……。ヤバイ、忘れた……。ま、適当に……は、怒られるか?

 ここは、恋人(偽)の楽に任せるか。後、誰か女子だな。

 

「んじゃ、楽。姉貴のプレゼント選び頼ん――」

 

「そういえば一条君。今日日直だったわよね」

 

 宮本さん。言葉を遮っちゃいかんでしょ……。

 

「あ。そういえばそうだな」

 

「そういうことなので、蓮君と小咲。千棘ちゃんのプレゼントを選んできなさい」

 

「いやいや、そこは宮本だろ。女のプレゼントなんだからさ」

 

「わたし、千棘ちゃんの好みとか解らないし。その点は、義弟の蓮君の方が詳しいでしょ。で、そこに女子の小咲のサポートね」

 

 ……言えない。姉貴の好きな物忘れたから無理。とは、流石に言えない。これは言ったら色々とマズイ気がする……。

 俺は肩を落としながら、

 

「お、おう。了解した。てか、小咲の了承がないけど」

 

「大丈夫よ。小咲なら、二つ返事でOKだから。ね?小咲?」

 

 ……いや、宮本さんよ。ちょっと強引すぎない……。まあ、俺が言っても意味がないんだろうけど。

 

「う、うん。OKで」

 

 OKしちゃうのかいッ!と、心の中で俺は突っ込む。てか、後あれだ。場所と時間も指定されました。はい。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 で、やって来ました。待ち合わせの喫茶店。

 俺は私服に着替えてから、窓際でコーヒーを口にしていた。

 

「(今日の学校は疲れたわぁ。うん、マジで……)」

 

 そんな事を考えながら、テーブルで腕を組んで崩れ落ちる俺。なんつーか、俺マイペース過ぎ?

 そんな事を思っていたら、店のドアが開かれる。どうやら、到着したらしい。で、俺の向かいの席に小咲が座った。

 

「れ、蓮君。だらけ過ぎだよ」

 

 上体を起こす俺。

 

一人で居る時(家に居る時)の俺はこんな感じだぞ。『働いたら負け』的な感じだ。つか、将来働きたくねー。専業主夫を志望します」

 

 ま、無理だけどな。うん、解ってます……。ちゃんと働きますよ。

 小咲は、クスクスと口元に左手を当てて笑った。

 

「蓮君。やっぱり面白いこと言うね」

 

「えーと。それ、褒めてる?」

 

 あれか。林間学校の肝試しで言った仕返し的な。

 

「もちろん、褒めてるよ」

 

「いや、褒めてるように聞こえねぇから。うん、マジで」

 

 そんなこんなで、小咲もコーヒーを注文しました。

 で、俺たちはコーヒを一口飲んでから、

 

「蓮君は、千棘ちゃんの好きな物わかるんだよね」

 

 内心、ギクッとする俺。

 

「……忘れました。ごめんなさい。てか、姉貴、ごめんなさい」

 

「はあ……」

 

 溜息を吐かないで、俺、泣いちゃうよ。マジで泣いちゃうよ……。

 

「しょうがないか。二人で選ぼう」

 

「お、おう。そうしてくれると、非常に助かります……」

 

 とまあ、そう言うことなので、デパートに向かいました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「はあ、何でデパートは迷宮区かね……。何が良いか解らん。つか、人多過ぎ。マジで帰りたい」

 

「お義姉さんのプレゼント選びなんだから、シャキッとする」

 

 何で先生口調?まあいいけどさ。

 

「うす。小咲先生」

 

「よろしい。桐崎蓮くん」

 

 え?何この小芝居は、まあ乗った俺が言うのもアレだけどさ。

 で、プレゼントを選びました。ええ、無難に新しいリボンです。ちなみに、色は赤で。

 それからデパートを出て、家に直行。

 

「良かったね~。良い物が見つかって、千棘ちゃん喜んでくれるかな」

 

「友達からのプレゼントだし、姉貴は大喜びだろ。……たぶん」

 

「ほらぁ。また語尾にたぶんって言った」

 

「い、いや、口癖でな。……えー、何と言うか。すまん?」

 

「何で疑問形?」

 

「その前に、これ何の漫才?」

 

 こう話しながら、俺の家に行きましたとさ。

 




これは、小咲もヒロイン決定ですかね(笑)


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第14話 パーティーと約束

投稿やで!


 やって来ました俺の家。自分で言うのも何だが、一般家庭の家よりデカイ。……いや、かなりデカイ。

 

「ここが千棘ちゃんのお家?」

 

 小咲が俺の家を見ながら、そう呟く。

 玄関前には、俺と小咲以外は集合していた。てか、集も居たのね。皆は家を見上げていた。

 それで、姉貴は目を丸くしてる。……あれか、ギャングだってバレたらヤバイって思ってる?

 

「ちょ、こっち来なさい!蓮!」

 

 玄関が開き、姉貴に右手を掴まれ連行される俺。

 

「ど、どうしたんだよ?姉貴」

 

「ど、どうしよう……。わたし皆に、家がギャングだって事を言ってないのに……」

 

「……いや、ほぼ皆知ってるから。てか、俺がギャングの息子って知ってるから……」

 

 だからまぁ、必然的に姉貴がギャングの娘って事も知られてるんだけどね。

 つーか、そこまで心配することはないと思うけど……。

 そんな事を話してると、楽が隣までやって来た。

 

「どうしたんだ?」

 

「姉貴がギャングだって事を言ってなくて、皆をビビらせちゃうと思ってるらしい」

 

 楽は姉貴を見ながら、

 

「は?お前、そんな事気にしてたの……」

 

「だ、だって、ギャングよギャング。悪の組織よ」

 

 楽は思案顔をしてから、皆の元へ歩いて行く。

 で、姉貴はかなり焦っているが。つーか、既にバレてるって言ったじゃんか。

 

「お~い、皆。実はこいつの家さ~」

 

 まあそう言うことで、楽が皆に言いましたとさ。

 

「知ってたけど、千棘ちゃん」

 

「一条君と同じってことでしょ~?その前に、蓮君もギャングの息子って知ってたよ~。あれ、どうしたの?」

 

「へ?」

 

 姉貴は唖然とするしかない。

 俺は姉貴の隣まで歩き、

 

「心配し過ぎだぞ、姉貴。……まあ、前はこのことで色々あったけどさ」

 

「うぅ……。そうだけど」

 

 とまあ、そんなこんで、鶫を先頭に家に入って行きました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「さあ、こちらが本日のパーティー会場になっています」

 

 ドアを開けると、案の定でした……。はい、いつもの光景ですね。

 

「ハッピーバースデー、お嬢、若~~~~~!」

 

「お誕生日おめでとうございます~~~~!」

 

 何で俺の名前があったかって、俺と姉貴の誕生日は3日しか離れてないから、一緒にやってしまおうという事ですね。ま、その方が色々と楽だし。つか、俺の場合は祝わなくていいって言ってるんだが。姉貴だけで十分だって。

 

「おお~~!今回はお嬢と若のご友人も一緒なんですかい!」

 

「お嬢と若が、ご友人を連れてくるなんて初めてじゃないスか!」

 

「嬢ちゃんたち、今日はよろしく!」

 

 皆に挨拶する野郎共。で、皆も挨拶を返してくれる。つか、クロードは楽に挑発?的な言葉を言うな。

 あ、そう言えば忘れてたわ。

 

「クロード。ちょっと」

 

 俺の傍までやって来るクロード。

 

「何でしょうか?蓮坊ちゃん?」

 

 俺は声のトーンを下としてから、

 

「……忘れた訳じゃねぇよな、林間学校の風呂の件」

 

「……しょ、承知しております」

 

「皆が帰った後に締めるから、そのつもりで」

 

 全身を震わせるクロードを余所に、俺は皆の元へ歩いて行く。

 

「はい、千棘ちゃん。これ、わたしと蓮君から」

 

 姉貴にプレゼントを渡す小咲。

 つか、車をプレゼントとか、演歌のCDとかバナナとかもあったけど……。

 

「ありがとう。小咲ちゃん、蓮。大切にするね」

 

 俺からもありがとう、小咲。あのままだったら、何渡してたか解ったもんじゃなかったし……。

 楽は、ゴリラの人形だった。なんつーか、ブーイング?もあったが。てか、姉貴も喜んでるし、万事OKと言うことで。

 

「俺には要らないからな、野郎共」

 

「そりゃないっスよ……蓮坊ちゃん……」

 

「お嬢と同じ、最高級のマンバッハのオーダーメイドを頼んだんスよ。もらってくだせぇ~」

 

「いや、いらんから。つか、免許ないし……」

 

「「「「「そ、そんなぁ~~~」」」」」

 

「(……仲良いな、お前ら……)」

 

 まあ、そんなこんなでパーティーが始まりました。

 パーティーを楽しんでいたら、俺のスマホが鳴りました。はい、着信者はあの人ですね。解ってたけど。

 ともあれ、ベランダに出て、通話ボタンを押してから右耳に通話口を当てる俺。

 

『もしもし、蓮ちゃん』

 

 あれだ。もう、蓮ちゃん呼びには突っ込まない事にしました。はい。

 

「羽姉ちゃんどうした?」

 

『うん。お誕生日に電話したかったんだけど、その日は忙しくなるから。――蓮ちゃん、お誕生日おめでとう!』

 

「サンキュ。てか、よく覚えてたな」

 

『そりゃそうよ。わたしが、つけてあげた(・・・・・・)って言っても過言じゃないんだから』

 

 そう、孤児院に居た俺は、西暦の替わり目で誕生日を迎えることしか出来なかったのだ。

 そんな時に羽姉ちゃんと出会い、月と日を貰ったのだ。まあ、出会った日が6月10日だから。そのまま6月10日なんだけど。つか、名付け親だね。

 

「その件は感謝してるよ。俺には、ちゃんとした誕生日がなかったから」

 

『もっと感謝してもいいのよ?例えば、お姉ちゃんを彼女に――』

 

「それは却下で。つか、羽姉ちゃんにはもっといい人が居るはずだから。俺みたいなガキが釣り合うわけがないだろ。それに、――何処ぞのガキだぞ、俺は」

 

 俺がそう言うと、通話越しでも解るように、羽姉ちゃんの雰囲気ががらりと変わった。

 

『……蓮。それは言ったらいけない約束だったでしょ』

 

 そう。羽姉ちゃんが俺に怒る時は、呼び捨てになるのだ。

 

「……あ、ああ。悪い」

 

『絶対言わないって、もう一回約束して。蓮ちゃんはね、わたしにとって家族同然なの。――――そう、大切な人なのよ』

 

 後半の呟きは、俺には聞こえることはなかった。

 

「悪かった、約束するよ。そろそろ戻らなくちゃ」

 

『わかった。また今度ね』

 

「今度は俺から遊びに行くよ、――――中国(・・)に」

 

『れ、蓮ちゃん。それってどう――』

 

 俺は、羽姉ちゃんの言葉を最後まで聞くことをせずに、通話を切った。

 俺はパーティー会場には戻らず、自室へ向かう為歩き出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 廊下を歩いている途中で、親父と鉢合わせました。

 で、今は近場のソファーの上に座ってます。

 

「蓮はもういいのかい?蓮の誕生パーティーでもあるんだよ?」

 

「俺はいいや。てか、主役は姉貴だしな」

 

 親父は、ふむ。と頷いた。

 

「なるほど。蓮はもらったんだね。誕生日プレゼント」

 

 ちなみに、親父は羽姉ちゃんの事を知っている。

 

首領(ドン)と蓮は、小さい時から仲が良かったからね」

 

「今では、腐れ縁みたいなもんだよ。俺、今度遠出するかもしれないから、その時は、野郎共と姉貴に誤魔化し頼んでもいいか?」

 

「会いに行くんだね?」

 

「そんなとこ。前は来てもらったしな。……予告なしで、弾丸ツアーだったらしいけど」

 

「任せなさい。後、その時になったら私の所に来なさい。旅費を出すよ」

 

 親父、太っ腹です。有り難く頂くとしよう。……残りは、俺の小遣いに。

 

「んじゃ、俺は寝るわ。お休み」

 

「お休み。蓮」

 

 そう言って、俺は立ち上がり部屋へ戻った。

 皆が帰った後、クロードを締めたのは別のお話。




羽姉ちゃんのターンでしたね(笑)あれですね。羽姉ちゃんは、蓮君との付き合いが10年以上ありますね。(連絡を取ってない期間もあったが)。
つか、誕生日の名付け親です。
ちなみに、二人一緒に祝うのは、今回が初めてですね。
蓮君の誕生日は、蔑ろにはしてないんで大丈夫ですよ。

小咲の誕生日とかは、番外編で書きますね(^O^)
それで、マリーの事なんですが。今のところは、蓮君とくっつけるのが難しいが現状です……。


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第15話 サプライズ

ニセコイを15巻まで集めて、そこで断念した舞翼です。
そりゃないだろ……。があったからですね(笑)
楽が羽姉ちゃんを振ったのはショックでした。いや、薄々解ってたんですけどね……。
だからまあ、ここではヒロインなんですけどね(^O^)



 俺は土日を使い、中国空港にやって来ていた。所謂、弾丸ツアーである。

 ちなみに、親父からは結構な小遣いを貰いました。

 

「……来たのはいいけど。これからどうすっか?中国語は、ちょっとしかできねぇしな」

 

 ボストンバックを肩にかけながら空港内を歩いていたら、俺限定で、殺気を感じた。またこれは、裏に関わってる奴しか捉える事はできないだろう。

 

「……誰だ?俺に殺気を向けてる奴は」

 

 そう言って、警戒しながら周囲を見回していると、前から小柄な少女がやって来た。てか、誰?

 

「……お前誰?殺気を向けてたのはお前なの?てか、試したのか?」

 

「そうね。私の名前は(イエ)首領(ドン)の護衛、兼、教育係ね」

 

「羽姉ちゃんの護衛。側近って奴か?てか、何で俺が空港に来るって分かったんだ?」

 

首領(ドン)の勘ね」

 

 羽姉ちゃんの勘、怖っ!つっても、昔から的中率が80%位あったしなぁ。

 

「それにしてもさすがね。ビーハイブの剣舞を名乗るだけあるね」

 

 ……その名前って、家だけじゃなくて、裏世界にまで広まってるのかよ……。マジ勘弁ってやつだわ。

 その前に、最初にその二つ名をつけた奴、凄ぇ締めたいんだけど……。

 

「名乗ってねぇし。俺は、裏世界にはあんまり関わりたくないんだよ」

 

「大丈夫だと思うね。知られてるのは二つ名だけで、顔と名前は知られてないからね」

 

「……調べられたら、すぐにバレると思うんですが……。まあいいや、これも運命なのかね」

 

 俺がこんなテンプレ的な言葉を使うと思わなかったわ。

 俺は(イエ)の案内の元、ある建物に向かった。あれだね、安土城?的な城だよ。冗談抜きで。

 ともあれ、その最上階に案内されました。てか、途中にあった装飾品とか、百単位の物ばっかだろ……。

 

「ここね。ここが首領(ドン)の部屋、兼、勉強部屋ね」

 

「さっきは聞くの忘れたが、羽姉ちゃんって叉焼会(チャーシューかい)首領(ドン)やってる時、どんな感じなんだ?」

 

「しっかり者。としか言えないね」

 

 なるほど、優等生として頑張ってるのな。流石、としか言いようがねぇわ。

 つか、今からは入る部屋って、女子部屋なんだよね。……いや、今更な感想なんだけどさ。

 まあそれは置いといて、ドアを開けて部屋に入りました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「蓮ちゃん!会いたかったよ~!」

 

 胸に飛び込んで来ようとする羽姉ちゃんの額に、右手を前に出してから当て、動きを止める。あれだ。アイアンクロー的な感じのやつだ。

 

「抱きつこうとするな!駄姉が!」

 

「せっかくの再開なんだよっ!もっとフレンドリーにいこうよっ!」

 

「いや、知らんし。つーか、俺がそういうことに応じない事くらい知ってるだろうが」

 

 俺は、アイアンクローの力を若干強める。

 

「痛ぃ痛ぃ。もうやりませんから。わたしの頭が割れちゃうよ」

 

 嘆息してから、拘束を解く俺。

 

「てか、着けてんのな、シュシュ」

 

 羽姉ちゃんはシュシュを着け、サイドポニーにしている。

 なんつーか、そこ等に居る男なら即行で落とせると思う。ってのが俺の感想。

 

「もちろん。わたしの宝物だから」

 

「……宝物は言い過ぎだろ……」

 

 羽姉ちゃんは、俺が首に下げた物を見ながら、

 

「蓮ちゃんも着けてくれてるんだ、ネックレス」

 

 俺はイルカのネックレスを擦った。

 

「まあな」

 

 俺はテーブルの上に置いてある鍵を見た。

 てか、楽のペンダントに嵌まる形じゃね。聞いて見ますか。

 

「羽姉ちゃん。あの鍵ってなんだ?」

 

「うーん、何て言ったらいいかな。……約束の鍵。って言えばいいのかな。楽ちゃんに関わる事なんだけど。――でも、今度会った時返そうと思う。わたしのじゃ開かないしね……たぶんだけど」

 

 たぶんって、蓮ちゃんの口癖だね。と言って、羽姉ちゃんは優しく笑った。

 

「そうだな。俺の口癖だわ」

 

「それにしても、あの時はビックリしたんだよ」

 

「その方が、サプライズ?になるだろ。つか、羽姉ちゃんだっていきなり来たし」

 

 なんつーか、俺と羽姉ちゃんって似た者どおしだったり……。いや、ないか。

 

「つーか、叉焼会(チャーシューかい)は安定してきたのか?何なら、今日一日手伝うけど」

 

「大丈夫。ほぼ安定したし、他の勢力も大人しくなったしね」

 

「……ちょっと待て。何処かに攻められたのか?」

 

 ……全部がバレても関係ない。そいつら今から木端微塵に潰して、二度と表舞台に立てなくしてやる……。得物は、刀が二本かな。

 

「で、でも、部下の人のお陰で何とかなったから大丈夫。大丈夫だから、ね?」

 

 俺は渋々頷いた。

 

「……まあ、羽姉ちゃんがそう言うなら」

 

「……もう、わたし若干焦ったんだから。蓮ちゃんの力量なら、組織を一つ潰せるんだからね」

 

 と言っても、小さな組織だけど。ちなみに、実行したのは一度しかない。まあ、その時は匿名だったしね。でもまあ、集英組とか叉焼会(チャーシューかい)は流石に……。って感じ。

 

「蓮ちゃんは、今日の夜の便で帰っちゃうんでしょ?」

 

「まあそうだな。てか、弾丸ツアー的な感じだし」

 

「じゃあさ。デートしよう」

 

「いや、デートじゃなくて。買い物な。てか、叉焼会(チャーシューかい)は放っといていいのかよ。首領(ドン)なんだろ?」

 

「そのことなら、(イエ)ちゃんから許可をもらったから問題なし」

 

 ……あれだ。根回しが早すぎる。こうなると予想してたのかよ、羽姉ちゃん。

 まあいいや。買い物に行きますか。

 

「それと蓮ちゃん。今日、わたしの些細なお願い聞いてくれる?」

 

 羽姉ちゃんは腰を曲げて、俺を覗き込むように見た。てか、上目遣いは反則だと思います……。

 

「いいけど。で、どんな事だ?」

 

「今日一日、お姉ちゃん禁止で」

 

「は?お姉ちゃん禁止?あれか、お姉ちゃん呼び禁止ってこと?」

 

 てことはあれか。羽姉ちゃんと姉ちゃんは呼びは禁止ってことだろ……――、

 

「呼び捨てとか、ハードルが高いんですけど……」

 

 頬を膨らませる羽姉ちゃん。

 

「だーっ、頬を膨らませるなって。わかったから――()でいいのか?てか、今日だけだからな」

 

「そう?わたしは、ずっとでも構わないんだけど」

 

「……今日だけにするよ。精神がガリガリ削られると思うし」

 

「慣れよ慣れ」

 

 そんなこんなで、俺と羽は買い物に行きました。




かなりご都合主義がありますが、あしからず。
次回は、買い物(デート)ですかね。

ちなみに、大きな組織は、蓮の家と集英組、叉焼会(チャーシューかい)の三つですね。


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第16話 オモイデ

サブタイトルが思い付かない……。


 今現在俺は、中華街を羽と共に歩いていた。てか、羽呼びに全然慣れません……。いつも、羽姉ちゃんって呼んでたしなぁ。

 

「羽。近いから」

 

 俺と羽の距離は、肩と肩が触れ合う感じだ。俺の心臓に悪いからね。

 

「暫くは会えないんだし、いいでしょ?」

 

 俺は溜息を吐いてから、

 

「……お手柔らかにお願いします。俺、女性に対する免疫が無いんだから」

 

「任せて」

 

 そう言った途端、腕を組んできた。当たってるから、何がとは言わないが当たってるから。何で女の子からはいい匂いがするんだよ……。あー、俺の理性がガリガリ削られてく。……てか、頑張ってくれよ、俺の理性。

 

「それで、最初は何処に行くんだ?」

 

「あそことかどうかな?」

 

 羽が指差した店は、小龍包(しょうろんぽう)屋だ。まあ確かに、中国と言ったら。と言う物でもある。

 俺たちは腕を組んだまま、小龍包屋へ向かった。

 それから、小龍包の中に、豚挽き肉と鶏もも肉が入ったものを一つずつ注文した。一口食べると、薄皮の中に入った肉と共に熱いスープが洩れ出す。

 ちなみに、割り箸を持ち、紙皿の上で食べてます。立ち食いでもあるけどね。

 

「……かなり熱い。口の中が火傷する」

 

「……わたしも同じく」

 

 そういうことなので、若干冷ましてから一口。てか、かなり旨いです。

 

「蓮ちゃん。わたし、豚挽き肉のやつが食べたいな」

 

「いいぞ。ほら」

 

 そう言って俺は、豚挽き肉が入った小龍包が乗った紙皿を、羽の前まで持っていった。

 

「じゃあ、蓮ちゃんも」

 

 羽は、鶏もも肉が入った、小龍包が乗った紙皿を俺の前まで持ってきた。

 それから、割り箸で取って一口。

 

「あれだな。どっちも旨いわ」

 

「そうだね。――後、しちゃったね。間接キス」

 

「……羽。俺が考えないようにしてた事を言ったらいけないよ」

 

「えへへ、ごめんごめん」

 

 羽はクスクスと笑うだけだ。

 羽も俺も顔が真っ赤じゃん。てか、恥ずかしいなら言うなよ……。

 とまあ、間食しました。

 

「俺、ホントに中国に居るの?的な感じだよ」

 

 そう。日本の中華街に居る感覚である。

 

「そうかもしれないね。ここの中華街と、横浜中華街は似てるから。わたしと蓮ちゃんって、周りから見るとどう映ってるんだろ?」

 

「……姉弟ではないような気がするし。たぶん、友達じゃないか?」

 

 羽は思案顔をしながら、

 

「……わたしは、恋人だと思うけどなぁ」

 

「俺と羽が恋人ねぇ。……俺は釣り合わないよ。俺にとっての羽は高嶺の花だしな。それに羽には、もっと良い男が居るはずだ」

 

 

~羽Side~

 

「(……蓮。わたしは、そんな風に思ってないんだよ。きっと、蓮以上の男の子なんて現れないよ)」

 

 そう。このように時間を割いて会いに来てくれたり、わたしの事を知っても変わる事なく接してくれる。蓮が、ギャングの息子って事も若干はあると思うけど。

 ――――――わたしは、そんな君が大好きなんだよ。

 

~羽side out~

 

 

「ま、まあ、この話は終わりにしよう」

 

 うん、何か墓穴掘りそうで怖いわ。

 

「そうだね。違う所に行こっか」

 

「そうだな」

 

 次に向かったのは、お土産屋と言ったらいいのか。そんな所だ。

 店内には、限定ストラップや中国ならではのお土産、文具やお菓子など。てか、日本で言う駄菓子屋に似てるような?

 取り敢えず、親父や姉貴、野郎共には、限定の土産とストラップを買って行こう。無難だしね。

 

「蓮ちゃん蓮ちゃん。お揃いしようよ」

 

「お揃い?」

 

「そうそう。ミサンガのお揃い」

 

「……ミサンガね」

 

 俺には縁が無い代物である。

 羽が手に取ったのは、赤と水色とオレンジで組み合わせてあるミサンガだ。それを2個だな。

 なんつーか。利き腕につけて欲しいらしけど。何故利き腕。と言う疑問が出るが、気にしないでおこう。てか、聞くのは野暮な気もする。

 

「まあいいけど」

 

「ホント!?」

 

 そんなに喜ぶ所なの?なんつーか、女の子って難しい……。

 それから会計をして、土産袋を片手に、利き腕にミサンガを結びました。……てかあれだわ。ミサンガは切れるまで外せないという事は、学校まで。と言う事になる。勘ぐられないか心配になってきたわ。……ま、何とかなるだろ。

 とまあ、買い物も終わった事だし、中国空港へ向かいました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「そろそろ便の時間になるから。って、泣きそうになるなよ。一生の別れじゃないんだから」

 

 羽は、目許に涙を溜めていたのだ。

 

「……やっぱり、寂しいよ」

 

 俺は羽の頭に右手掌を、ポンと置いた。

 

「泣くなって。てか、年上の威厳が無くなってるぞ。羽さんや」

 

「……わたし、いつか日本に行くから」

 

「1週間くらいって事か?」

 

「ううん。ずっとだよ。それまでに、こっちでの事は全部終わらせるから」

 

 いやいや、それって組織を完全に統一させるって意味だよ。……ま、まさか。それを完遂しちゃうの?

 

「でも、これまで通り連絡は取り合いたいかな」

 

「構わないぞ、俺からも連絡はするよ。頻繁に。まではいかないと思うけど」

 

 1週間に2回程度だろう。いや、これも頻繁に入るのか?

 

「わたしは、暇があったらかな」

 

「い、いいけど。学校の時間は勘弁……。まあ、メールなら大丈夫だと思うけど」

 

「うん、わかった」

 

「じゃあ、そろそろ。――わぷッ」

 

 後半の情けない声は、羽が抱きついて来て無意識に出た声だ。

 

「元気でね」

 

「羽こそ元気でな」

 

 そう言ってから抱擁を解き、俺はゲートへ向かい歩き出す。

 ちなみに、土産などはターンテーブルに乗せた。

 こうして、俺の弾丸ツアーの幕が閉じた。




次回から、原作沿いに戻ると思います。
てか、羽姉ちゃんのヒロイン力ハンパないね(笑)


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第17話 シャシン

連投やで!まあ、最初のほうだけになるのかも知れんが……。


 俺はいつものように一人で登校し、自分の机に向かってた。

 

「おはよう。小咲、宮本」

 

「おはよう、蓮君。蓮君あの後すぐにいなくなっちゃうから、ちょっとビックリしたんだよ」

 

 おそらく小咲が言ってる事は、誕生パーティーを俺が早く切り上げた事を言ってるのだろう。

 ちなみに、パーティーが行われたのが金曜日で、翌日の土曜日に中国へ向かいました。てか、準備するものはあんまりなかったしね。

 

「悪い悪い。ちょっと色々あってな」

 

 てか、宮本さん。早速勘づこうとするのは止めて欲しい……。いやね、宮本の視線が俺の利き腕を見てるんだよ。

 こういう時こそ、平静平静。

 

「どうかしたのか、宮本」

 

「いえ、何でもないわ。おはよう蓮君。あと、わたしも名前でいいわよ」

 

「了解だ。るり」

 

 そう言ってから席に座り、机の上で腕を組み、崩れ落ちる俺。

 そんな時、楽と姉貴が教室に入って来た。今日は俺の方が早かったのね。

 でもなんつーか、いつもと様子が違うような?ちなみに俺は、崩れ落ちながら顔を覗かせている。

 

「お、ラブラブカップルのご登場だね~」

 

 教室の扉が開き、女子生徒がそう言う。

 

「ハッハッハ!そうだろう、そうだろう!なんたってオレたちは、ラブラブカップル」

 

 楽は恋人の振りがバレないように、ラブラブってぷりをアピールしようとし、姉貴の肩に触れた瞬間、姉貴は顔を赤らめて可愛い声を上げる。

 

「キャ」

 

 うーん。明らかにおかしい……。誕生パーティーで何かあった?それしか原因は考えられないし……。

 

「蓮君、千棘ちゃんと一条君。喧嘩でもしてるの?」

 

 さすが小咲。微妙な違和感に気づいたらしい。まあ確かに、いつもだったら楽に触れられた瞬間殴ったり、自分からくっついたりしてたし。

 

「うーん、解らん。俺、あの後からちょっと用事があって、席をずっと外してたからな」

 

「用事?」

 

 やべ……。墓穴を掘りそうになってる……。

 

「じゃあ、そろそろ戻るわね。小咲、蓮君」

 

 るりは自分の席に戻っていった。それから数分後にチャイムが鳴り、キョーコ先生が入って来たから教壇に上がった。

 キョーコ先生が言うには、林間学校の写真の焼き上がったらしい。

 

「はーい、注目~。林間学校の写真が焼きあがって掲示板に貼り出されてるから、各自欲しい写真の番号を書いて提出する事。OK?」

 

 返事をするクラスメイト。

 

「あと、恥ずかしくても、好きな奴の写真はちゃんと選んどけよ。アドバイスな」

 

 なんつーこと言ってんだ。この先生は、まあ一理あると思うけどさ。

 とまあ、時は経過し放課後。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「わぁ~。これ、好きなのを買っていいの?」

 

「そうらしいぞ、姉貴。てか、買い過ぎるなよ」

 

 張り出されている写真を見て、姉貴は目を輝かせていた。それで姉貴は、鶫と一緒に選んでいた。てか、一枚100円すんのね。

 

「……姉貴はしゃぎすぎだから。もっと落ち着いて選べないかね」

 

「ハニーはああいうの初めてなんだろ。テンションも上がるって」

 

「まあ、こういうイベント?は初めだし無理もないけどさ」

 

 俺は楽とそう話しながら、写真選びに向かった。てか、写真ね。

 俺があんまり興味なさそう眺めていると、

 

「あ。コレなんかどう?蓮君と小咲が映ってるけど」

 

 るりが指差した写真は、俺と小咲が手を繋いで肝試しをする場面だった。眠そうにしてるね。俺。

 

「いやいや、るり。小咲にはこれがいいと思うぞ」

 

 俺が指を差したのは、楽のズーム写真だ。まあ、その後ろに小咲とるりが映ってる。かなり小さくだけど。

 そう言いながら、写真を厳選し始める俺とるり。顔を真っ赤にする小咲。まあそうなるわな。

 

「おやおや、蓮さん。どんな写真がお好みで?先程から選んでいないようなので」

 

「まあな。どれがいいとか解らんしな」

 

 集が手をすりすりさせながら俺の方にやって来た。その後ろには大量の写真を眺めてる男子たち。ちなみに、俺にしか聞こえないボリュームで話している。

 

「こんなのはどうでしょう?」

 

 差し出されたのは、俺と小咲が肩を寄り添いながら寝てる写真。……こいつ、いつの間に撮りやがった……。

 

「もらっておくけど。集、今から締める……」

 

「ちょ、待て待て。蓮のそれは洒落にならんから――ぎゃあああぁぁあああ――っ!」

 

 集を締め終わってから写真を見ていると、これはダメでしょ。と言う写真を発見した。

 それは、満々の笑みを浮かべる姉貴の写真。だがまぁ、少し開いた扉の向こうに映る小咲の姿。あれだ、着替えの途中といった危険な写真でもあった。

 

「(……ちゃんと検閲しろよ。データを消してもらうか、危なねぇし。てか、姉貴の写真だし、怪しまれる事はないだろ)」

 

 俺はその写真を取ってから、職員室へ向かった。

 とまあ、このようにして林間学校の写真選びが終了した。




次回は、マリーかな?


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第18話 再び転校生

そろそろ年越しですね。早いものです。


 とある学校の一幕。何かまたしても転校生が来るらしい。このクラス、転校生多くね。

 てか、かなり教室がざわついてる。

 

「は~い!全員注目!今日は突然だけど、転校生を紹介するぞ~~!」

 

 まあそういう事なので、キョーコ先生が前の教室の扉を開ける。

 

「それじゃあ入って、橘さん」

 

『はい』

 

 橘と呼ばれた転校生は教壇の上に上がって一礼した。見た感想としては、ロングヘアーに清楚な女子って感じか。

 

「……皆さん、はじめまして。橘万里花と申します。何卒よろしくお願いします」

 

 そんなクラスの奴らは、

 

『うおぉぉおおおー。またしても美人!』

 

『どうなってんだ!このクラスは!』

 

『モデル!モデルなの!?』

 

『オレ、このクラスで本当によかった!』

 

 等々のどんちゃん騒ぎである。……てか、このお嬢様見たことがあるんだが。――そう、警視総監の娘だ。つーことは、野郎共はこれ以上に大人しくしてないとヤバイ。という事だ。

 

「(……はあ、面倒くさいことにならなければいいけど……)」

 

 まあそんな事を考えていたら、俺の予想はすぐに当たる事になる。

 

「楽様~~~!ずっと、お会いしたかったですわ~~~!」

 

 転校生が楽に抱きついたので、またしてもクラスメイトから声が上がる。

 

『転校生が一条に抱きついたぞ!』

 

『うおおぉぉぉ!どういうことだよ!また一条なのか!?』

 

 彼女の話によると、楽とは許嫁関係にあるらしい。てか楽。お前女難の相でもあんの?

 俺はまあ、無いと……思う。

 

「ええい、貴様。一条楽から離れろ!その男は、お嬢のこ、こここ、恋人なんだぞ!」

 

「恋人?」

 

 キョトンとする転校生。

 

「……こんなゴリラみたいな女子より、わたしの方が楽様を幸せにできますわ」

 

「……よく聞こえなかったな~~……」

 

 これはあれだ。俗に言う修羅場ってやつだ。

 で、鶫が銃を橘に向けたので、盾を持った警察官が突入する。……はあ、また戦争の火種が増えたよなぁ……。

 まあこの後は、仮病?使い、楽に保健室に連れて行ってもらっていた。

 

「……はあ、このクラスは退屈しないな」

 

「それには同意するわ。蓮君」

 

 るりは、片手で小説を持ちながらそう言う。

 

「だよなあ……。小咲も、楽にライバルが沢山いて大変だな」

 

 ……えーと、何で不思議そうな顔をしてるの?俺、間違った事言ってないよね?

 

「え……。そ、そうだね」

 

 はて、反応が最初とは違うような?……まあいいか。

 まあ、そんなこんながあり、放課後になりました。

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「今日は雨か……」

 

 俺は、昇降口ある傘置く場で傘を取りながらそう呟く。

 俺は、雨は好きでもある。雨は、辛い事も嫌な事を流し落としてくれる感じだからだ。まあ、俺の偏見かもしれないけど。

 昇降口を出ると、

 

「小咲?帰ってなかったのか?」

 

「う、うん。雨が止むまで待ってるんだ。今日傘忘れちゃって」

 

 そう言って、小咲は苦笑した。

 

「俺のビニール傘使うか?別に、俺は傘なしでもいいし」

 

 両手を前に突き出し、ぶんぶんと手を振る小咲。てか、振り過ぎたら手が捥ぎれちゃうよ。いやまあ、あり得ないと思うけどさ。

 

「だ、ダメだよ。蓮君が濡れちゃうよ」

 

「でも、小咲が帰れないぞ?」

 

「そ、そうだ。一緒に帰ろうよ」

 

 ……相合傘ってやつか。

 

「いやいや、こんな野郎と相合傘は嫌だろ?」

 

「ぜ、全然問題ないです」

 

「そうか?ならいいが……」

 

 そう言う事なので、2人で傘に入りました。まあでも、普通に入っただけなら濡れてしまうので、俺は小咲が入れるスペースを作った。女の子が濡れちゃマズイしね。つーかあれだ。道路側を歩いているからか、車のタイヤが水溜りを踏んで、水飛沫がアレだね。まあ問題ないけどさ。

 

「蓮君。もっとこっちに」

 

 中に引きずり込まれる俺。

 

「俺はいいから。ほら、小咲が濡れちゃうだろ」

 

「うぅ……。そうだけど……」

 

 小咲さん。そんなに申し訳なさそうにしないでくれ。何か、俺が悪い事した感じになってるやん。

 ともあれ、小咲を和菓子屋『おのでら』まで送りました。

 

「蓮君。ここまでありがとう」

 

「気にするな。俺がやりたくてやってる事だしな。ま、困ってる事があったら、いつでも力になるよ」

 

「うん、ありがとう」

 

「おう、じゃあまた明日」

 

 そう言って、俺は手を振ってから家に向かって歩き出した。




迷走感が否めない……。あとあれです。時系列が等に変化があると思いますが、ご了承ください。
次回も頑張ります!


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第19話 オシラセ

新年(この小説)初投稿です。
その場その場で考えるのは楽ですね。

    姉貴←千棘
駄姉、姉ちゃん←羽

後、こんな感じですね。
では、どうぞ。


 7月下旬、凡矢理高校では夏休みが始まったばかりだ。

 その間に楽が小咲の家。和菓子屋『おのでら』にバイトの手伝いに行ったらしいけど。なんつーか、小咲は確めたい事があるとかなんとか。

 まあ、野暮になるからその内容まで聞かなかったけど。

 

「いやぁ~、楽んチで皆と勉強会すんのも二回目かぁ~。しかし、何でこんなタイミングで勉強会?」

 

「鶫の発案らしい。てか、俺はいいって言ったんだけど……ま、俺は駄姉が出した問題集をやるわ」

 

 実は羽姉ちゃんと別れ際、かなり難しい問題集を貰った。

 ……調べてみたら、大学レベルの問題集だったんだよね。……羽姉ちゃん、かなりの無茶振りが好きだからなぁ……。

 でもまあ、皆で勉強は重要だ。

 

「駄姉って誰のことだ?ハニーのことじゃないよな」

 

 楽にそう言われ、俺は頷いた。

 

「まあそうだ。姉貴は姉貴だしな」

 

「……蓮。それ意味解らん」

 

 ともあれ、各自は勉強部屋に上がって行った。

 あれだ。楽が居る所に橘ありである。つーか、楽。橘の想いをしっかり受け止めてやれよ。……もしも姉貴も。ってなったら、色々な意味で頑張れ……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……ところで、その機械は何なの、鶫?」

 

 部屋に到着し、俺たちは各々の場所に腰を下ろしてから、鞄から勉強道具取り出しテーブルの上に置く。そんな時、姉貴が鶫の前に置かれた機械に目を向ける。

 

「これは、勉強会の合間のレクリエーションにでも使おうかと……」

 

「……何企んでんのよ、あんた……」

 

「嫌ですよ、お嬢。何も企んでなどおりませんよ」

 

 レクリエーションに使うと言う鶫を、姉貴は疑わしげに目を細めて見つめる。てか、俺には解ったわ。これは、ビーハイブが造った嘘発見器だわ。

 その証拠に――、

 

 ビ――――――!

 

 と音が鳴る。

 俺は目を細めながら、

 

「鶫……。それって、家の嘘発見器だろ?」

 

 クロードの企みって所か……。

 

「ち、違うんです。若。ぐ、偶然ネットで見つけまして!」

 

 ……あれだ。苦し紛れな言い訳だ。でもまあ、俺は参加しなければ良いことだしね。

 

「へー、面白そうじゃん!せっかくだし、早速試してみようぜ!」

 

 つーか、楽。それはマズイ気が……。

 姉貴との恋人関係を聞かれたら、非常にマズイ……。その証拠に、姉貴もかなり焦っている。

 そんなこんなで、鶫からやってみることになった。

 

「私ですか。じゃあ、どなたか私に質問してもらえますか?」

 

「じゃあ、わたしがしていいかな?」

 

「小野寺様?」

 

 最初に手を上げたのは小咲だ。

 

「鶫さんは、今好きな人はいますか?」

 

「ぶふっ!小野寺様!いきなり何を!?――んん、前に話した通り、私に好きな人はいませんよ」

 

 ビ――――――!

 

「やっぱり!」

 

「違います!」

 

 鶫はそれからも否定するが、嘘発見器はそれを否定する。

 

「嘘発見器なんて元々あてになるようなもんじゃありませんし、そもそも、質問がいけなかったのかもしれません」

 

「うーん…………あ、じゃあ!」

 

「鶫さんは恋をしてますか?」

 

「だからしてませ――」

 

 再び、鶫の発言を否定する嘘発見器。

 鶫は嘘発見器を殴りつける。……つーか、必死すぎだ。鶫。

 

「おかしいな?うん、この嘘発見器は壊れてるに違いない。そうだ、壊れてる」

 

 鶫は楽に、嘘発見器の棒を渡す。

 

「私のことはどうでもいいんですよ。一条楽。次は貴様の番だ」

 

「えっ、オレ!?」

 

「そうだ。お前はお嬢を本気で愛している?イエス、ノー?さあ、答えろ」

 

 ……うん、解ってた。これが(間接的に)やりたかったんだろ。クロードさんや。

 

「そ………そんなもん、イエスに決まってんじゃねぇか」

 

 楽がそう言うと、部屋の中には静寂が流れる。

 嘘発見器の針も、ビクとも動いていない。

 

「くっ……!ど、どうやら本当のようだな……」

 

 悔しげに呟く鶫。

 ……いや、俺も内心ではかなり驚いてる。てか、何で反応しないの?楽って、小咲のことが好きなんだろ?

 あれだ。意味が解らん。

 

「次は誰がやる?」

 

「それでは、わたしが」

 

 楽から渡された、嘘発見器の棒を橘が持つ。

 あれだ。俺は興味が無いので、問題集に集中である。

 参考書を見ながらペンを動かしていくが、難しい。……いや、この問題集難しすぎだろ……。

 

「(……ったく。あの駄姉は、なんつーもん持たせたんだよ)」

 

 でもまあ、愚痴を言いながらも問題を解いていく俺もアレだが……。

 つーか、胸とかキスとかの単語が聞こえるが、俺は無視で集中である。てか、この環境で集中できる俺、結構凄くね。……『ナルシスト発言だなぁ。』って言う突っ込みはしないでくれ。

 

「――――蓮ってば」

 

 どうやら、姉貴に呼ばれていたらしい。……気づかんかった。

 俺はシャーペンをテーブルに置き、

 

「お、おう。どうした?」

 

「蓮も、嘘発見器をやってみないって」

 

「え、マジで。てか、俺に聞きたいことなんかないと思うけど」

 

「いいからいいから」

 

 そういうことを言いながら、姉貴が俺に嘘発見器の棒を渡す。

 

「まあいいけど。で、誰が質問するんだ?」

 

「はい!わたしがしたい!」

 

 手を挙げたのは小咲だ。

 

「蓮君って、気になる人とか居るの?」

 

「気になる?のかな……。その辺は解らんが、俺が家族同然と思ってる人は居るな」

 

 ……これを聞いた羽姉ちゃんが、笑ってる顔がすぐに思い浮かぶ。てか、小咲も知ってるはずだけど。なんかの確認とか?まあいいや。

 

「当然、姉貴も家族同然だぞ」

 

 姉貴とは、約10年の付き合いだし。

 てか、何で皆(小咲以外は)目を丸くしてるの?もしかして、俺の発言が予想外だった?

 

「小咲と姉貴は知ってると思うけど、俺は孤児院出身でな。で、俺と仲良くしてた姉って言えばいいのか、そんな人だ。ちなみに、親父たちに引き取られる前から会ってるな」

 

 次は、姉貴からの質問らしい。

 

「蓮ってさ。キスしたことあるの?」

 

「……それっぽいことなら、一応」

 

「「「「「え――――っ!!」」」」」

 

「「マジか――――――っ!!」」

 

 上がる歓声。

 つーか、律儀になんで俺は答えてんの?アホなの?バカなの?

 ……やばい、痛い奴に見えてくるわ……。

 

「……蓮って、一番恋愛が進んでるんじゃねぇ?」

 

「いやでも、蓮は恋愛に興味がないって言ってるぞ」

 

「楽。それは偏見だぞ。多分な」

 

「うーん……。そう言われると」

 

 ……ヤバイ気がする。つか、何で俺が集中攻撃を受けてる感じになってるの?あれれ、予定外なんですけど……。

 

「だ――っ!勉強だ!今日は勉強会だろ!」

 

 ……はい、強引に話を切り上げて逃げましたよ、俺。

 ともあれ、ここから再び集中し、問題集と向き合いました。




恋愛が一番(無意識に)進んでいるのは、蓮君かもしれませんね。
あとあれです。何処かで、また羽姉ちゃん出せたらいいなぁ。
後、鶫は途中から離脱しますね。

蓮君は、高校3年までの学業は習得済みです。ってスペック高っ!教材等も、学校から取り寄せましたね(笑)


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第20話 エンニチ

連投です。
他のも投稿しないとなぁ……。


「ったく。姉貴は何処行ったんだよ……」

 

 俺は一人で、そう呟いていた。

 今日は縁日であり、姉貴の付添だ。……連行された。の方が正しいか。まあ、クロードが用意した灰色の甚平を着てるんだけど。

 いやまあ、それはいいんだが、姉貴と逸れました……。

 その辺をぶらぶらと歩いていたら、ある人物と目が合いました。で、その人の前まで歩み寄る。

 

「久しぶりだな、小咲」

 

「久しぶりだね、蓮君。今日は縁日に?」

 

 俺は頬を掻いた。

 

「いや、姉貴の付添だな。……甚平の事は突っ込まないでくれ……。うん、クロードの奴がな……」

 

「わ、わかった」

 

 それにしても、小咲の浴衣姿は似合っている。

 ピンク色を基調にし、所々に花の模様があしらっている。

 

「その浴衣、似合ってるぞ」

 

 小咲は、顔を真っ赤にした。……もしかして、気を悪くした?

 ……フォローしないと。

 

「楽に言ってもらうのが筋だよな。……悪い」

 

「ぜ、全然大丈夫!嬉しいもん!」

 

「へ?嬉しい?」

 

 俺が首を傾げると、小咲は必死に取り繕った。

 

「ほ、ほら。褒められると嬉しいものでしょ?」

 

「まあ確かに。ま、小咲は可愛いしな」

 

「……蓮君。それって天然?」

 

「天然?」

 

 小咲は溜息を吐いた。

 いやいや、何で溜息。俺、泣いちゃうからね……。

 

「そ、それはいいとして。小咲は一人で?」

 

「そうかな。恋結びを買おうかなって」

 

「へぇー、恋結びね。ま、俺は興味ないけど」

 

「蓮君って、ホントに恋愛に興味がないんだね」

 

 まあ俺の場合は、恋愛をしないって決めてるんだが。――そう、俺は孤児院出身で、何処の子供かも解らないのだ。そんな奴が恋愛なんかしちゃいけないしね。……あとあれだ。姉ちゃんとの約束は口にしないだから、心の中ではOKなはず。

 てか、かなりの人混みやん。

 

「まあ俺のことは置いといて。手伝うよ、恋結び買うのに」

 

「え、いいよ!そこまでして貰ったら悪いよ!」

 

 両手を前に出して、手をぶんぶんと振る小咲。てか、これって前に見た光景と被るね……。

 

「……小咲って、損な性格してるよな」

 

「そ、そうかな?」

 

「だと思うぞ。欲しい物を譲っちゃったり。先頭を譲っちゃったり。とかありそうなんだけど」

 

「う、うぅ……」

 

 ……うん、あるんだね。知ってた。

 

「そういうこった。遠慮するな」

 

「は、はい……。お願いします」

 

 ……急にシュンとしないでくれませんかねぇ、小咲さん。何か、俺が凄ぇー悪い奴に見えるじゃんか。

 まあそう言う事なので、手を繋いで本堂の神社へ向かいました。……てか、勢いで手を繋いじゃったんだけどね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「か、買えなかったね」

 

「……何かすまん。俺がもっと早く歩いてたら」

 

 違うよ、蓮君。わたしに歩幅とか合わせてくれたんだよね。

 それに、わたしが歩いてる場所が狭くならないように、力技で道を開いてたんでしょ?……お客さんには迷惑になっちゃったかもだけど……。

 わたしは、ずっと気になってたことを聞いてみる。――実は、ちょっと怖かったりもするんだけどね。

 

「蓮君。そ、そのミサンガってどうしたの?」

 

 蓮君は少し思案顔した後、『姉ちゃんも小咲ならOKって言うだろうし、いいか』と言いました。

 

「誕生会の後、俺が居なくなっただろ?」

 

 わたしは頷いた。

 

「実は、パーティーの翌日に中国に行ってたんだ。弾丸ツアーでな」

 

 わたしは、蓮君の次の言葉を待つ。

 

「で、羽姉ちゃんに会って来た。その時に買ったのが、このミサンガって訳だ。姉ちゃんとお揃いだな」

 

 ……蓮君は気づいてないと思うけど、利き腕にミサンガつけるのは、恋愛って意味があるんだよ。

 つまり、羽さんは――――――ってことなんだよ、蓮君。

 

「ま、そういうことだ。深い意味はないぞ」

 

「う、うん」

 

 それからは、金魚掬いや射的、焼きそばの食べ歩きなど。色んな事をしました。……たしかに、るりちゃんの言う通り、自分の素とか緊張とかが……。あれ、どっちも同じ意味かな……。と、ともあれ、蓮君と過ごす時間はとても楽しかった。

 一条君とバイトした時は確信までいかなかったけど、これでハッキリしました。

 ――――――そう。わたしは一条君から、桐崎蓮君に心変わりしていたのだ。

 

「(……わたしって軽い女だったかな?)」

 

 でも、るりちゃんは、『恋に時間なんかは関係ないわ。大事なのは本人の気持ちよ』って言ってくれそう。

 

「……小咲。何で難しい顔してんだ。似合わないぞ」

 

 ど、どうやら百面相?してたらしいです……。

 

「そ、そうかな?」

 

「難しい顔をしてたと思う。てか、小咲の頭じゃ――――」

 

 蓮君の言葉が止まったのは、わたしが少しだけ不機嫌オーラを出したからだ。

 わたしはニッコリ笑い、

 

「……わたしの頭がなにかな」

 

「……えーとですね。……スンマセンでした!小咲先輩。僕の失言です!ごめんなさい!」

 

「蓮君、凄い片言になってるよ。あ、あと敬語にもだけど。――じゃあ今度、勉強教えてよ。蓮君。大学一年までは完璧なんでしょ?」

 

「……いや、高校3年までだ。大学1年の学業は勉強中だな。……てか、姉貴と鵣のスペックは高すぎる……。何処の四大でも入れるらしいぞ。最早、チートだな」

 

 いやいや、わたしから言わせて貰えば、蓮君もチートの域に入ってるからね。

 蓮君は、『あ、そうだ』と言い、懐から細長い棒?を包んだ物を取り出した。それから、その物をわたしに手渡そうとする。

 それは、可愛いい簪だ。

 

「似合うと思ってな、小咲が焼きそばを食べてる間に買って来た」

 

 蓮君は、目を丸くしたわたしを見て、申し訳なさそうな顔をする。

 

「……あー、もしかして余計だった……姉貴にあげ――」

 

「も、貰います。渡してくれるまで動かないから」

 

「……忠犬ハチ公かよ」

 

 『俺の比喩表現だけどな』と言いながら、蓮君はわたしに簪を手渡してくれた。

 簪を着けると、綺麗な鈴の音が鳴った。

 

「ど、どうかな?」

 

「あー、あれだ。まあうん。似合ってるぞ」

 

「蓮君。また片言だよ」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 それにしても、蓮君は罪作りな男の子だと思う。……わたしが、そう思ってるだけかも知れないけど。

 

「さて、帰るか。送ってくよ」

 

「千棘ちゃんはいいの?」

 

 蓮君はスマホを取り出してから、画面を見る。

 

「楽と一緒に居るらしいぞ。楽が送って行くと思うから問題ないだろ」

 

「そっか。それじゃあ、お願いします」

 

「お、おう。何か、遠慮がなくなってきたな」

 

 そうだよ蓮君。恋する乙女は強いんだから。

 それからわたしは、蓮君に送ってもらい帰宅しました。今日はわたしに取って、忘れられない日になったのだった。




小咲は、完全に楽の手から離れてしまいました。……何か楽さん。ごめん<m(__)m>

まあ今のところの蓮君のヒロインは、羽姉と小咲ですね。今後どうなるかは、未だ不明です。


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第21話 ウミベデ

ま、まさかのこちらの投稿。


 夏休みも終盤。授業が再開するまで残り僅かだ。

 そう。楽と集との話し合いにより、海に行く事に決まったのだ。

 

「わたし、日本の海って初めて!ノースカロライナ以来かな」

 

「わたしは、モルディブ以来でしょうか」

 

「(……普通の会話じゃねぇぞ。姉貴、橘)」

 

 俺はラフな恰好で、問題集を眺めていた。これは、俺が小咲の為に製作した問題集である。

 その問題集に目を走らせながら、俺は答え合わせをする。

 ちなみに、問題の範囲は、高校一年の後半の範囲と言えばいいのか。そんな感じだ。

 

「(あー、ここは惜しいわ。……αを代入しないとなぁ。正解率は、五分五分って言った所か)」

 

「……ど、どうだったかな?」

 

 噂をすればと言うやつだ。小咲が俺の隣に来た。

 俺は振り向き、

 

「……うーん。五分五分って所だな」

 

「それって、正解半分って事だよね?」

 

「そんな所だな。でもまあ、高校一年の後半の範囲なんだ。妥当な結果って所かもしれんな」

 

「そうかもだけど。蓮君は、一回勉強できただけで解けるようになったんでしょ?」

 

 まあうん。俺の頭はスポンジ的な感じだしね。

 け、決して。バカって意味じゃないからねっ!……俺がやるとキモイな。うん……。

 

「ま、小咲ができるようになるまで付き合うよ」

 

「そ、そう」

 

 ……顔を伏せて頬を若干朱色に染めるのは止めようか。俺の心臓に悪いからね。

 

「あー楽しみ楽しみ!……わたしいっちばーん!」

 

 そう言って、姉貴は海へ走って行く。

 そんな姉貴を見て、小咲は苦笑した。

 

「千棘ちゃん。元気一杯だね」

 

「あれが姉貴の良い所でもあるしな」

 

 マイナス思考が続けば、負の連鎖があるかも知れないしね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

『おい、なんだあの美女集団……』

 

『レベル高え~~~』

 

『芸能人?見たことないけど……』

 

『どこの雑誌の子だろ…………』

 

 ビーチでパラソルを立てていると、周りの視線が集まった。いやまあ、こうなる事はわかっていたけどさ。女子のレベルは、段違いに高いし。

 

『それに、あのイケメン……どこかの俳優かな……』

 

『……カッコイイわ』

 

『ほら、話しかけて来なさいよ!』

 

 ……いや、女子の皆さん。何で俺を見てそんな事言ってんの?

 俺は平凡な一般男子だから……。

 

「……なあ、小咲。女子の視線が凄いんだが……。俺、何かやったか?」

 

 溜息を吐く小咲。……いや、何でやねん。

 

「……蓮君は、誰もがカッコイイって言う容姿なんだよ。こうなるのは当然だよ」

 

「そんな自覚はないんだがな。俺はそこらにごろついてる男子だぞ」

 

「蓮君。無自覚は罪だよ」

 

「……いや、何のだよ」

 

 小咲は呆れ顔である。……つーか、小咲さん。完全に素ですよ。いつもの可愛らしい顔はどうしたの?

 ともあれ、俺はパラソルの影に隠れながら、横になりましたとさ。泳ぐつもりでは来てないしね、俺は。

 

「まあでも、喉は渇くよなぁ……。ラムネでいいか」

 

 そう言う事なので、俺は立ち上がり海の家に向かった。

 海の家まで歩いていると、チャラそうな男子に、我が生徒(多分だけど)が絡まれていた。

 

「あー、すんません。この子、俺のツレなんス。他を当たってくれませんか」

 

 そう言って、小咲の右肩に手を置く。

 小咲は、ビクッとしたけど。……何か、申し訳ない。

 

「てめぇ。オレらが見つけた女だぞ!」

 

「どうなるか解ってるんだろうな!」

 

 呻くチンピラ共。

 

「えー、1つ言って置きますけど、手を出したら正当防衛しますからね。やられても文句は言えませんよ」

 

 手をポキポキ鳴らしながら、近寄って来るチンピラ共。

 ……うん、こうなるのは薄々感じてた。で、殴ってくるチンピラ共。まあ、これで正当防衛ができたんだけどね。

 んで、そのチンピラ右手を左手で受け止め、力を込めていく。

 

「痛ててててて!おい!離しやがれ!」

 

 あれだ。俺の握力によって、チンピラの骨が音を立ててるね。いやまあ、たぶんだが。

 右ストレートを鳩尾に一発。その場に蹲るチンピラ。

 

「えーと。次はそちらのお兄さんですか?相手になりますけど、正当防衛ですから」

 

 手をポキポキ鳴らしながら、チンピラ共を見る俺。

 

「こ、こいつ。ガキの癖に強ぇぞ……」

 

「ず、ずらかるぞ」

 

「……ちょ、テメェら!オレを置いてくな!」

 

 チンピラ共はこの場から去りました。

 あれだな。典型的な噛ませ犬って所か。てか、さようならー的な感じです。

 

「はあ、面倒な輩だったわ。小咲は大丈夫か?」

 

「う、うん。ありがとうございます。助かりました」

 

 ……いや、何で敬語。まあいいけどさ。

 

「小咲は大事な友達だしな。助けるのは当たり前だ。……てか、友達で合ってるよな。他人とかだったら、俺、泣いちゃうかも……」

 

「……も、もちろん。友達だよ」

 

「サンキュ。俺のHPがかなり削られる所だったわ」

 

 そんなこんながあり、ラムネを買ってから歩幅を合わせ皆の所へ帰りましたとさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

~小咲side~

 

「るりちゃん。ただいま」

 

 わたしは蓮君と一緒に、パラソルまで帰って来た。

 それから、るりちゃんと2人になった。

 

「……小咲。あんた一条君はどうしたの?アタックしなくていいのかしら?――もしかしてあんた」

 

 ……さすが、るりちゃん。もうバレたかも……。

 

「う、うん。るりちゃんの思ってる通り。……わたし、軽い女かな」

 

「いえ。恋は時間じゃなく、本人の想いよ」

 

 やっぱり、るりちゃんは、あの時とほぼ同じを言ってくれた。ありがとう。

 

「小咲の気持ちも分かる気もするわ。蓮君は誰にでも優しいし、誰にでも手を差し伸べるし、どんな悩みも真剣に聞いてくれるしね。きっと彼は、一条君にはない物を持ってるかもね」

 

 るりちゃんは、『でも』と続ける。

 

「蓮君は、恋愛をしないって決めてるわね。たぶん、孤児院出身って事が引っかかってると思うわ」

 

 るりちゃんの言う通りだと思う。わたしも、縁日の時にそれが引っかかってたから。

 ――蓮君は、自分に好意が向けられるなんて、あり得ないって思ってると思う。

 

「それに、蓮君のガードはかなり固いと思うし、強力なライバルも隠れてそうね。わたしの直感がそう言ってるわ。頑張りなさい、小咲」

 

「うん」

 

 わたしは、小さく頷いた。

 

~小咲side out~

 

 

 夕食も食べ終わり、俺は防波堤に腰をかけ、歌いながら海を見ていた。

 ちなみに、夕食はバーベキューであり、片付けは姉貴と楽たちだ。俺はジャンケンで勝ったので免除だ。

 

「隣。いいかな?」

 

「いいぞ」

 

 隣に腰をかけたのは小咲だ。

 

「さっきの歌。綺麗だね」

 

「げっ……。聞いてたのか」

 

 ちなみに、俺が独自に考えた歌だ。

 

「ま、まあ。ガキどもに聞かせた事がある、子守唄みたいなもんだ」

 

「ガキども?」

 

「凡矢理幼稚園のガキどもだな」

 

 俺が街をぶらぶらしていたら、迷子になってる子供を見つけたのだ。

 何でも、昼休み遊んでいて、好奇心で外に出たら帰れなくなったと言う事だった。それから、その子を送ってあげてから、遊んだ。という事である。つか、帰ろうとしても帰してくれなかったんだよね。

 

「んで、寝る時間に子守唄を歌ってくれっていう無茶ぶりから創った歌だ。まあでも、たまに俺も口ずさんじゃうんだよなぁ。てか、夏休みの最終日に会いに行く予定だしな」

 

「そうなんだ。蓮君は、子供も好かれるんだね」

 

「好きで好れてる訳じゃねぇけどな」

 

 小咲は、何かを決心したように言う。

 

「わたしも、一緒に行ってもいいかな?」

 

「いいけど。多分、小咲と遊べる時間はないかもしれん。ガキどもに連行されるかもしれないからな」

 

「うん。りょうかい」

 

「おう」

 

 とまあ、こうして一日目が終了した。




もしかしたら、これから原作ブレイクがあるかも(^_^;)
子守唄は、即興で知ってる言葉を繋げた感じです。音楽は、昔聞いてたのを聞いてた曲をアレンジした感じ。


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第22話 オハナシ

題名考えるの難い……。


 やはり、海の最後を締めくくるのは花火である。

 俺は線香花火を持ちながら、小咲と真剣勝負をしていた。そう、線香花火耐久勝負である。

 その証拠に、パチパチと燃え上がる玉を見つめていた。

 で、結果は――、

 

「俺の勝ちだな」

 

 そう、俺の勝ちだ。……なんつーか、小学生の勝負みたいだけど。まあ気にしない。

 小咲さん。シュンとしないでくれ……。何か、かなりの罪悪感を感じちゃうからさ……。つーか、これって、かなり神経を集中するよね。

 

「俺も小咲も、かなり集中してたな」

 

「あはは、そうだね。『落ちるな、落ちるな』って思いながら、花火を見てたかも」

 

「たしかに。つか、小咲。姉貴と昼に何か話してたけど、何だったんだ?」

 

 林間学校を過ぎてから、姉貴と楽はなんか変なんだよなぁ。

 

「えっとね。千棘ちゃんのお友達が、『胸がドキドキしたり苦しくなったり、前みたいに話せなくなったのは何なのかな?』っていう相談だったんだ」

 

 ……いや、それってモロ姉貴の事だよね?あれか。姉貴が楽に本気になったって言うことか?

 

「それって恋じゃね」

 

 小咲はバケツに線香花火を捨ててから、右手人差し指を唇に当てた。

 

「蓮君も、やっぱりそう思うよね。鶫さんの事だったのかな?」

 

 ……姉貴。恥ずかしくて、自分の事って言い出せなかったんだな。んで、『友達が』って事にしたんスね。うん、知ってた。

 

「まあそれは何とかなるんじゃないか。時が解決してくれるさ」

 

 そんな時、俺がポケットに入れていたスマホ震える。

 ……まあうん。着信者は解るんだけど、この場では拙いような、拙くないようなって感じなんだけど。

 

「蓮君。電話が鳴ってるけど、出なくていいの?」

 

「出ていいか?たぶん、駄姉からだ」

 

 そんな事を言ってから、俺はスマホを取り出し通話ボタンをタップしてから、通話口を右耳に当てる。

 

「もしもし、駄姉か」

 

『んもー、開口一番に駄姉はヒドイよ~』

 

 通話口で唇尖らせてる、羽姉ちゃんが容易に想像できるわ。

 

「悪い悪い、羽姉ちゃん。つか、あの問題集終わりそうだわ」

 

『さすが蓮ちゃんっ!わたしの無茶ぶりをこなすなんてっ』

 

「……やっぱり、無茶ぶりだったんだな。予想はしてたけどさ」

 

『でもでも、大学一年生の学問はほぼ完璧でしょ?』

 

 その通りなんだけどね。てか、高校の勉強が復習的な感じになってしまってる。

 

『蓮ちゃん。女の子と今一緒にいるでしょ?』

 

「……何で解ったんだよ?怖ぇな、女の勘」

 

 いや、何。無言で『変わって』的な感じは。

 ともあれ、通話口を離す俺。

 

「小咲。羽姉ちゃんが話したいだって。どうする?」

 

 目を丸くする小咲。無理もないけどさ。

 

「えと。いいのかな?」

 

「姉ちゃんが変わってって言うんだから、いいと思うぞ」

 

「じゃ、じゃあ、失礼します」

 

 そう言って、俺が手渡したスマホを受け取り、右耳に通話口を当てる小咲。

 ここからは女子の会話なので、話が終わるまで野郎は退散しますか。と言うことなので、俺は小咲に『終わったら呼んでくれ』と言ってからこの場を離れた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「あ、あの。お電話変わりました。小野寺小咲です」

 

『わたしは奏倉羽。よろしくね、小咲ちゃん』

 

 わたしの最初の印象は、かなり明るくて元気な人だ。

 

『とりあえず、何か話そっか』

 

「は、はい」

 

 そう言うことなので、わたしと羽さんは、学校の事や最近の事などを話した。それを約十分話した所か、蓮君の話題になった。……こうなる事は解ってたけど、何か緊張する。

 

『蓮ちゃんの優しい所は変わらないんだね』

 

 羽さんは、慈愛に満ちた声でそう言う。今の話題は、昨日のナンパから助けてくれた蓮君の話だ。

 

「はい、蓮君はとっても優しいですよ。皆に分け隔てなく接して、どんな事でも真剣に相談に乗ってくれて。こんな風にあげたら、切りがないですよ」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 

『そっか』

 

 羽さんのこの言葉には、色んな意味が込められてるとわたしは思った。

 

『ところで小咲ちゃんは、――蓮ちゃんの事が好きだったり?』

 

 わたしは噴き出しそうになってしまった。

 

「い、いや。あの……好きです」

 

 わたしの顔は真っ赤になってはずだ。

 よし、わたしの反撃だ。

 

「う、羽さんはどうなんでしょうか?」

 

『ん、わたし?わたしは大好きだよ。蓮ちゃんのことが、世界で一番大好き』

 

 羽さんはキッパリそう言った。その言葉には、一つの迷いもない。

 ホントに好きって事が、通話越しでもしっかりと受け取る事ができた。

 

『でもね。蓮ちゃんは恋愛に蓋をしてるの。きっと自分の出身とかが、突っかかってるのだと思う。――小咲ちゃんも聞いてると思うけど』

 

「はい。孤児院出身って事ですよね」

 

『うん。“誰の子供かも解らないのに、そんな奴が恋愛なんて”っ感じだと思うんだ。今の蓮ちゃんは』

 

 やっぱり、長年一緒にいる羽さんもこう思ってたんだ。きっと羽さんは、わたしの知らない蓮君の事を沢山知ってる。

 

『だから、蓮ちゃんを振り向かせるのはかなり難しいよ。お互い頑張ろうね、小咲ちゃん。近直、わたしも日本に行くし、その時はお茶しよっか』

 

「いいですね。その時沢山話しましょう」

 

 それからもわたしと羽さんは、話に花を咲かせました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 あれから約一時間後、女子トークが終わったららしい。……てか、女子の話はかなり長いわ。いや、知ってたけどさ。

 俺は元の場所に座り、

 

「かなり長話だったな。どうだ?楽しかったか?」

 

「羽さん。とっても優しい人だね」

 

「そうか。仲良くなって何よりだ。……あとあれだ。もしかしたら、駄姉が無茶ぶりをするかも知れんが、その時は受け止めてやってくれ……」

 

「う、うん。それはさっきの会話の中で感が見えたかも」

 

 おい、羽姉ちゃんよ。もう、無茶ぶりをしたんかい。ちょっと早すぎない?

 そんな時、

 

『そんなもん、上手くいくわけがねーだろ。バカ』

 

『うっさいわね!分かったからもう黙っててよ!』

 

 途切れ途切れだが、このような会話が聞こえてきた。つか何、姉貴と楽の声やん。あの中に割って入るのは、今後色んな意味で拙い気がする。

 そう思った俺は溜息を吐く。

 

「……これから、一騒動ある感じだな。小咲」

 

「そ、そうだね。頑張ろう」

 

「……そだな」

 

 再び溜息を吐く俺。

 夏休みが終わるまでの、一週間程度の夏の夜の事だった。




ヒロインが、邂逅?しました。
てか、今後ヒロインが増えるか未定ですが……。


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第23話 ヨウチエン

前書きで特に書くことないね(-_-;)


 夏休み最終日。俺は指定した待ち合わせ場所に向かっていた。ちなみに、俺の今の恰好は、ラフな恰好だ。

 それから数分歩いたら、待ち合わせ場所に到着した。

 

「小咲。お待たせ」

 

 小咲は振り向き、笑みを浮かべる。

 ちなみに、小咲もラフな恰好だ。

 

「全然待ってないよ」

 

「そうか」

 

 とまあ、あるテンプレの会話を交わす。てか、これで見ると、立場が逆のようにも思えるが……。まあ、細かい事は気にしない方向で。

 ともあれ、時間が着々と迫っているので、目的地に歩き出す俺たち。

 数分歩き目的地に到着すると、入口隣の長石には、『凡矢理幼稚園』の彫刻が施されている。

 

「んじゃ、行きますか」

 

「うん」

 

 内部に足を踏み入れると、そこには園長先生の姿があった。

 

「あ、蓮君いらっしゃい。待ってたわよ」

 

 園長先生の話によると、子供たちは俺に会える事をかなり楽しみにしてたらしい。ま、まあ、このアポを取る為、学校に電話をかけてきてくれたしね。んで、先生たちの予定とか、子供たちの夏休み等とか色々あって、俺の夏休み最終日になったという事だ。

 

「ご無沙汰してます。園長先生」

 

「今日はよろしくね、蓮君。あの後、大変だったのよ」

 

 俺は皆が寝た後に幼稚園を後にしたのはいいんだが、その後がメチャクチャ大変だったらしい。

 何でも、俺が消えた事で、ほぼ全員が先生に『兄ちゃんは何処に行ったの?』って声を上げたとか。

 俺は苦笑し、

 

「何か申し訳ないです。その前に、俺がそんな風に言われてるとは意外ですよ」

 

 その時、三人の園児が俺を見つけた。

 

「あ――――――ッ!蓮兄ちゃんだ!」

 

「兄ちゃん。遊ぼう!」

 

「わーい。蓮兄ちゃんだ」

 

 ……子供らよ。かなりのどんちゃん騒ぎだわ。てか、走るな。危ないだろ。

 んで、俺は連行されそうになる。

 

「大地。翔太。麗香。腕を引っ張るな!捥ぎれるだろ!」

 

 俺の言い訳は虚しく、聞いてもらえん。

 揃って『早く~』って言うな。てか、息が合い過ぎだからな。そんなこんなで、俺は連行されました……。

 

「蓮兄ちゃん。鬼ごっこしよ」

 

「違うから。蓮兄ちゃんは、オレと一輪車で遊ぶんだし」

 

「それも違う。蓮兄ちゃんは、私たちとお城遊びするの!」

 

 園児たちは俺の元に集い、このような言葉を交わす。てか、一気に遊ぶ事はできないからな。俺は分裂とかできないからね。

 つか、口論がヒートアップしてるし。

 

「だーっ。順番で遊ぶぞ。んじゃ、最初は鬼ごっこからだ。次は一輪車。次はって感じな」

 

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」

 

 ……いきなり統制したな、ガキ共よ。それから鬼ごっこをやる人。と言ったら、全員だったんだよね……。で、俺が鬼だわ。

 

「きゃーっ!蓮兄ちゃんが追いかけてくるよ!」

 

「決まってるだろ、夏帆さんや。鬼ごっこなんだから」

 

 んで、捕まえましたとさ。

 それからも、俺は鬼として子供たちを捕まえていった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「園長の本田春香よ。今日はよろしくね♪」

 

「あ、はい。小野寺小咲です。今日はよろしくお願いします」

 

 挨拶を交わす、わたしと園長先生。わたしたちの前では、蓮君と子供たちがかなり楽しそうに遊んでいた。

 わたしは、感嘆な声を上げる。

 

「凄いですね、蓮君」

 

「かなりの人気よ、蓮君は。あっという間に、子供たちの心を掴んじゃったんだから」

 

 園長先生の話によると、恥ずかしさの余り輪の中に入れない子も蓮君と遊び、今ではそれが克服されたらしい。

 園長先生は、それでね。と言い言葉を続ける。

 

「蓮君が帰った後、泣く子が続出しちゃってね。蓮君にまた来てくれるように、名指しで凡矢理高校に電話をかけたのよ」

 

 なるほどです。あの時、蓮君が途中で授業を抜けた理由は、電話を受ける為だったですね。何と言うか、蓮君凄すぎだよ。

 園長先生は、悪戯な笑みを浮かべた。

 

「小野寺さんは、蓮君の彼女かしら?」

 

「ふぇ!?ま、まだ(・・)違いますよ」

 

「まだ。ねぇ」

 

 ……墓穴を掘ってしまいました。園長先生にはわたしの気持ちがバレてしまったらしいです。園長先生、策士です。……あれ、策士でいいんだよね?

 

「まあ頑張りなさい。蓮君、かなりガード固そうだからね。それに、小野寺さんが蓮君を好きになる気持ちは解るわ。蓮君はかなり魅力的だからね」

 

 わたしは、子供たちと遊んでいる蓮君を見ながら、柔らかな笑みを浮かべた。

 

「他の男性には無い物を持ってる気がします、蓮君は」

 

「私も同感よ。――私も、あと十歳若かったらって感じかしら」

 

 園長先生。あと十歳若かったら、蓮君を狙うつもりだったんですね。でもこの光景を見たら、そうなるのは無理もないと思います。

 

「それに、かなり強力なライバルがいると見たわ」

 

 テンションが徐々に上がっていく園長先生。

 やっぱり女性は、恋話になると盛り上がります。わ、わたしもその一人ですけど。

 

「わかりますか?」

 

「ええ、もちろん」

 

 頷く、園長先生。

 羽さんは、かなりの強敵だと思う。だって、かなりの時間を共有してるし、わたしの知らない蓮君をいっぱい知ってるから。――諦める。なんて事は絶対にしないけど。

 そんな時だった。息を切らした蓮君がわたしの名前を呼ぶ。

 

「こ、小咲。た、助けてくれ。俺一人じゃ身が持たない」

 

「う、うん。わかった」

 

 そう言ってから、わたしは園長先生を一瞥する。その表情からは、『お願いね』と言う言葉を捉える事ができた。

 わたしは一礼し、蓮君の元へ小走りした。こうなる事を予想して、『ラフな恰好で来てくれ』って言ったのかな、蓮君は。

 

「小咲お姉ちゃん。今度はこっちのお城」

 

「はいはい。ちょっと待っててね」

 

 そう言って、砂場でお城を作る子供たちとわたし。

 遠目で見ると、一輪車で遊んでいる男の子たちと蓮君が映る。やっぱり、蓮君と共に過ごす時間は楽しい。わたしは改めて思った。

 

「(やっぱり好きだなぁ)」

 

 昼休みも終わり、お昼寝の時間。

 わたしがピアノを弾き、蓮君が独自に作った子守唄を歌い、子供たちを寝かし就けた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「それじゃあ、園長先生。俺たちは帰りますね。それと、お呼びがあればいつでも行くんで、子供たちにもそう言っといてください。――小咲は、どうする?」

 

「わたしも、いつでも遊べるように用意しとくね」

 

「ありがとう。小咲ちゃん、蓮君。ホント助かるわ。……そのまま、ここに就職してくれないかしら」

 

 おーい、後半の声が聞こえてますよ。園長先生や。

 『それじゃあ、また』と言ってお別れをし、幼稚園から出ましたとさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「はあ、疲れた」

 

 小咲は苦笑し、

 

「でも、楽しかったね」

 

「まあそうだけど。てか、明日から学校か」

 

 近直行われる文化祭がメインになるだろう。てか、その文化祭の出し物って何やんの?劇とかだったら、俺は通行人Aとか、木がいいなぁ……。楽だし。

 

「そうだね。勉強頑張らないと」

 

「つっても、小咲さん。後期の勉強ほぼ完璧やん」

 

 小咲は、高校一年の学問は完璧と言っても過言ではない。さすが、我が生徒だね。……生徒で合ってるはずだ。たぶんだけどさ。

 

「でもでも、勉強は大事だよ」

 

「まあそうだけど。てか、今日は助かった。俺一人だったらどうなってたことか」

 

「いえいえ、それにしてもかなりの人気だったね。蓮君」

 

「まあ、好きで人気になった訳じゃないがな」

 

「もう、そんな事言って」

 

 頬を膨らませる小咲さん。

 ともあれ、時間もまだ余裕があるという事なので、近場の喫茶店でお茶をしましたとさ。

 これが、夏休み最終日に起こった出来事である。




次回は、文化祭に入るのかな?
では、次回。感想待ってます(^O^)


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第24話 文化祭の下準備

投稿が遅れて申し訳ない(-_-;)


 新学期、夏休みも終わり残暑の夏が再び始まる。

 そして俺はいつも通り1人で登校し、教室に入ってから席に座り、鞄をかけてから机に突っ伏していた。

 

「(……暑い、焼ける、焦げる、灰になる……)」

 

 つーか、海の一件以来姉貴の様子がおかしい。楽と目を合わせないし、対応がドライだしね。……あの声を聞いた瞬間にこうなる事は予想してたけどさ……。

 そんな時、俺の隣席の人物が席に着いた。

 

「……だらけ過ぎだよ。蓮君」

 

 俺は組んだ腕の隙間から顔を出した。

 

「……おう、小咲か。おはよう、そしておやすみ」

 

 俺は再び寝ようと――、

 

「ちょ、寝ちゃダメだよ。そろそろホームルーム始まちゃうから」

 

「……えー、めんどい。適当に聞いてばいいだろ」

 

 頬を膨らませるな。まあいいけど。

 んで、はぁ。と息を吐きながら上体を上げる俺。

 

「ん、よくできました。蓮ちゃん」

 

「おい、それは止めんか。恥かしいだろうが」

 

 小咲の頭に軽くチョップをする。

 ……涙目になんないで。凄ぇ罪悪感にかられちゃうよ俺。

 

「うぅ……。蓮君がいじめた」

 

「いや、虐めてないからね。…………えーと、ごめんな小咲」

 

 謝っちゃったよ、俺。

 つーか、満足気な顔をするな、小咲さんや。

 

「じゃあ、お詫びとして近い内に皆の所に行こうね♪」

 

 皆とは、昨日の園児たちの事だろう。

 てか、最近の小咲は小悪魔化するんだけど。何で?

 

「あ、そうだ。今度は羽さんも一緒にどうかな?」

 

「予定が合えば構わないけど」

 

「やたっ!」

 

 おい、はしゃぐな。

 てか、最近の小咲は、コロコロと表情が変わるよなぁ。出会った時と比べたら考えられないわ。真面目女子!って感じだったし。

 ま、心の心境でもあったんだろう。例えば、羽姉ちゃんの影響とか。

 それからホームルームが始まり、キョーコ先生が名簿を開き出席をとり終わると、文化祭関連の事を一通り言うと、集がキョーコ先生と入れ替わるように壇上に上がる。

 集は文化祭実行委員なので、文化祭の出し物についてだろう。

 

「我がクラスの出し物は、厳正な投票によって文化祭当日に行われる演劇に決まった!気になる演目は……ロミオとジュリエット。……そして、オレに提案があるんだ。――主役であるロミオとジュリエットについてなのだが……我がクラスのラブラブカップル!一条楽と桐崎千棘嬢にお願いしようと思うのだが、いかがだろうかー!」

 

「やりたくない」

 

 姉貴はやりたくないらしい。……まあ薄々気づいてたけどさ。

 これを気に仲直り。と思ったんだけどなぁ。んで、公平の為にくじ引きで決めたんだが、楽と小咲だった。

 で、俺は照明係だ。仕事が楽なので最高だわー。

 

「よかったな、楽と一緒で。頑張れよジュリエット役」

 

「……ん、頑張る」

 

 あれ、何で喜ばないの?てか、落ち込んでる?何で?

 小咲って、楽の事好きなんだよな?俺の頭は疑問符だらけである。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺は演劇の時間になった所で教室を出て、キョーコ先生から指定された部屋にやって来ていた。

 何でも、使える照明が一つないから探してくれだそうだ。つーか、結構埃が舞うんですが、どんだけ使われてなかったんだよ、この部屋。

 そんな時、入口のドアが開かれた。

 

「蓮君、いる?」

 

 ん、キョーコ先生じゃなくて、小咲?

 

「いるけど。どうしたんだ?」

 

「うん、休憩時間に入ったから、蓮君の様子を見に来たって所かな」

 

「……小咲は、俺のオカンかよ……。まあいいや。ちょっと待っててくれ、今そっち行くよ」

 

 そう言って、俺はドアの前までやって来た。んで、近場の椅子に座る俺と小咲。

 

「んで、劇の方はどうだ?」

 

「ぼちぼちって所かな。主役って、覚える事が多いね」

 

 台本を膝の上に置く小咲。

 そこには付箋がある。おそらく、ジュリエットのセリフの所だろう。

 

「かもな。まあ、小咲なら大丈夫だ。勉強の覚えも早かったしな。流石、我が生徒」

 

「もう、我が生徒は言いすぎだよ」

 

 小咲は笑みを浮かべる。

 

「やっと笑ったな」

 

「え?わたし笑ってなかったの?」

 

「笑ってたぞ。……でもな、小咲が心の底から笑ってる気がしなくてな。いや、別物の笑みって言えばいいのか。そんな感じだ」

 

 小咲は目を丸くした。

 

「よ、よくわかったね」

 

「小咲とは、まだ数ヵ月のつき合いだけどさ、細かい変化が分かるってとこか。考えまでは分からんけどな。てか、嫌なのか、主役が?」

 

「ち、違うよ」

 

 ぶんぶんと左右に頭を振る小咲。

 

「(い、言えないよ。一緒に演じたかったって。それに、わたしの事がそこまで分かるのは、蓮君だけだよ)」

 

「まああれだ。練習相手にはなってやるよ」

 

「ほ、ホント!?」

 

「お、おう。てか、テンションが急に上がったな」

 

「……あ、あはは、そうかな。気のせいじゃないかな」

 

「そうか?まあいいや、あの場所でどうだ?」

 

 あの場所とは、小咲に教えてもらった秘密の場所である。

 練習するには、絶好の場所だ。……セリフは、まあ台本を見ながらでいいだろう。

 

「うん、お願いします。今日は一緒に帰ろうね」

 

「そだな。んじゃ、そろそろ作業に戻るか。休憩もそろそろ終わりだろ?」

 

 椅子から立ち上がった俺と小咲。

 

「それじゃあ、放課後は校門前で待ってるね」

 

「了解だ」

 

 そう言ってから、俺は作業に、小咲は教室に戻った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 放課後になり、俺と小咲はあの場所へやって来ていた。

 やはりこの場所から見る街の景色は、絶景の一言だ。

 

「やっぱ綺麗だな。夕陽が輝いてる感じだな」

 

 小咲は苦笑する。

 

「輝いてるは違くないかな。だけど、その表現も分かる気がするかも」

 

「だろ」

 

「それより、練習しないと」

 

「ああ、そうだっけ。あまりの絶景で、練習を忘れそうになったわ」

 

「も、もう。バカなんだから」

 

 あれ、何で俺怒られたの?まあ、小咲が楽しそうなら別にいいけどさ。

 それから、俺と小咲は沢山練習をした。文化祭当日までには間に合うはずだ。




小咲もヒロイン力高ぇー。
文化祭は、小咲のターンですね。


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第25話 想いと想い

最近、何で千棘の義弟なんだ。と思う時がありますが、都合上こうなったですよね。
見切り発車時の設定的な感じで。

まあ、千棘とあんまり関わってないじゃん。って所は目を瞑ってくだせぇ(^_^;)


 文化祭まで残り一週間を切った。

 現在、一年C組ではロミオとジュリエットの演劇の練習が行われていた。

 俺は仕事を終わらせ、椅子に座り机の上で腕を組んでグッタリしてる。てか、働きたくないっていうのが、俺の本音だ。働いたら負けである。

 

「(小咲と楽もいい感じに仕上がってるし、文化祭までには確実に間に合うな)」

 

 途中で橘も混ざってるけど。

 つーか、眠い。マジで眠い。俺は睡魔に負け、夢の中へ落ちて行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ――パンッッ!

 

 俺はこの音を聞いて目を覚ました。誰かが打った音?ビンタとか?

 俺が上体を起こし発信源に目をやると、そこには楽と姉貴が映った。……姉貴のビンタか。

 そんな時、小咲が俺の前までやって来る。

 

「蓮君、千棘ちゃんと一条君どうしたの?一条君は練習から外れちゃったよ……」

 

「あれだな。海の一件が尾を引いてると思う。特に姉貴だな」

 

 楽は気にしてない感じだったし。

 おそらく、楽のあの時の言葉が、姉貴の心に刺さったままなのだろう。

 

「……千棘ちゃんと一条君、大丈夫かな」

 

「こればっかりは、俺も分からん。これは時間が解決してくれる問題じゃないしな」

 

 ……俺は家で姉貴と顔を合わせられるかな。メチャクチャ悲しそうな顔をしてるよ、きっと。……このまま行くと、破局も有り得るかもな。てか、戦争になったら、この街大丈夫かな……。

 

「でもまあ、何とかなるはずだ。……根拠はないけど」

 

「……な、無いんだ」

 

「おう、無いぞ。てか、文化祭の劇は何とかなると思うし、文化祭の失敗は無いだろ。その後の事は、まあ分からん」

 

 これは、本人次第の事柄だ。このまま離れるのも、仲直りするもの本人次第。

 てか、まだ練習の時間だよね。

 

「練習を再開したいけど、ロミオ役がいねぇーぞ。どうすんだ?」

 

 と、教室の男子が言う。

 あれだ。……メチャクチャ嫌な予感がする。

 

「れ、蓮君。ロミオ役できるでしょ?」

 

「……いや、できるけど。皆の前ではさすがに……」

 

 ……小咲さん、覗き込むように見ちゃダメだよ。

 つーか、涙を溜めるな。

 

「……放課後、クレープ奢ってくれよ」

 

「OKだよ。それじゃあ、よろしくね」

 

 俺は溜息を吐き、椅子から立ち上がった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 放課後。文化祭の練習や準備を終わらせて、俺と小咲は下校していた。

 まあ、二人で帰るのが日課になりつつある。なんつーか、楽に悪い気もするが、こればっかりは仕方がないと自己完結させる。

 

「それじゃあ、近場のデパートに行こう」

 

「そだな。あそこのクレープ旨いし。てか、新作が出たらしい。それ奢りな」

 

 ちなみに新作という事もあり、それなりに高い。

 

「うぅ……」

 

「奢ってもらうぞ。女の子だからって妥協はしないぞ」

 

 あの後、『何で蓮がロミオ役できるんだ?ほぼ完璧じゃねぇかよ』『桐崎君凄いね』『もしかして、こっそり練習してたとか?』等々の意見をもらった。

 いやね、小咲の練習につき合ってたら、自然とできるようになったんだわ。

 

「てか、かなり恥ずかしかったんだからな」

 

「……わかったよ」

 

「素直な子は好きだぞ」

 

「ふぇ!す、好き!?」

 

「いや、恋愛って意味じゃないから。まあ、小咲の事は友達としては好きだけど」

 

「そ、そうだよね。――――蓮君のバカ。期待しちゃったよ」

 

 小咲さん。俺は鈍感主人公じゃないから、後半の言葉は聞こえてる。

 てか、期待って、恋愛的な?小咲は楽が居るのに?……まあ有り得ない事だけどさ、小咲が心変わりして俺に好意を持っても、俺は答える事ができない。――俺は恋愛しないって決めてるから。それに、俺は裏世界に生きる人間だ。

 そしてこれを聞いてしまったら、俺と小咲の関係が微妙に変わってしまうのは確かだ。――だが、俺は口を開く。俺は有耶無耶にするのは嫌だからだ。

 

「小咲はさ。楽と俺の事どう思ってるんだ?」

 

「きゅ、急にどうしたの?」

 

「本当の小咲の気持ちが聞きたくて。……いや、まずはクレープを食べるか。その後話そう」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 デパートでクレープを買い、クレープを食べ歩きながら近場の公園に到着した。

 クレープを食べ終わった俺と小咲は、ブランコに座る。

 そして、小咲は、覚悟を決めたようだった。俺も、聞く覚悟と受け止める覚悟を決めた。

 

「……蓮君、さっきの話に答えるね」

 

「……ああ、聞かせてもらうよ」

 

「……わたしね、中学の頃から一条君から一条君を想ってた。だけどね――」

 

 小咲は、夕焼け空を見上げる。

 

「蓮君と触れ合う度に、蓮君を目で追いかけるようになってた。この気持ちは何だろうって、色々確認もしたんだ。そしてわかったの。わたしは、蓮君が好きなんだって」

 

 掌を返すようで軽い女かもね。と付け加える。

 俺は、いや。と前置きをし、

 

「恋愛は時間とかは関係なく、その人の想いで決まるものだと俺は思う」

 

 小咲は相槌を打つ。

 

「でもな、小咲。時間とか想いとかは関係なく、俺の答えは決まってるんだよ。――俺はな」

 

「うん、わかってる。蓮君はお家の事情とか、出身とか気にしてるんだよね」

 

「……そうだな」

 

「わたしはね、蓮君。出身とか、お家の事情とか関係なく、蓮君が好きなの。――お家の事情は、わたしが裏世界に入ればいい事だし、出身はわたしの想いで捩じ伏せちゃうから心配ないよ」

 

「……かなりの力技だな」

 

 小咲は苦笑した。

 

「そうかも。それに気付いてるんだよね、羽さんの気持ちも」

 

 小咲の言う通りである。俺は、羽姉ちゃんが好意を持っている事に薄々感じてはいたが、それは有り得ない。あったらいけないと思い、ずっと躱続けていた。

 

「まあ、な。前々から感じてはいたよ」

 

「そっか。そこから先は、本人から聞かないとだね。蓮君、そろそろいいんじゃないかな?わたしは、君を受け入れるよ。どんな事があっても」

 

「……俺に向き合えっていうのか。ずっと背けてきた恋愛に」

 

「ちょっとだけでも向き合って欲しいかも。そこから広げるのは、わたしたち(・・)だからね」

 

 確かに、今のままで良くないのは事実だ。

 

「…………少しだけ向き合ってみるよ。でも俺は、さっきの返事を返す事はできない」

 

「うん、わかってる。あの言葉が、本当だって受け止めてくれたら今はいいんだ」

 

 暫しの沈黙が流れる。

 その間は、鳥の鳴き声がよく響いた。

 

「ああ、しっかり受け止めたよ」

 

「ならよし。わたし、これからアタックするからね。学校では控えるようにするけど。――きっと振り向かせて見せるよ、君の事を。恋する乙女は強いんだから」

 

 そう言って、笑みを浮かべる小咲。

 

「お、おう。お手柔らかにお願いします」

 

「うーん、それは分からないかな」

 

 そう言う俺たちを、夕陽の輝きが見守っていた。




小咲さん、羽姉ちゃん一歩先を出た感じかな。
あとあれです。楽、ドンマイ。

次回は文化祭当日かな。
では、エネルギーとなる感想よろしく!


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第26話 ホンバン

れ、連投です。



 あの日から数日が過ぎ、文化祭当日。

 開演30分を迫っている所で、俺は照明器具の設置を完了させた。あとはまあ、遠隔で操作するらしいので、俺の文化祭での仕事は終了である。

 つーか、俺は文化祭でクラスの役に立ってないような。……まあ気のせいだろう。

 

「ま、皆の様子を見たら、俺は文化祭を回りますか」

 

 という事なので、俺は体育館端の二階から降り、舞台裏へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺が舞台裏に上がると、壁際で顔を俯けてる小咲と、隣に座る楽の姿が映る。

 クラスの奴の話によると、小咲が脚立から倒れそうになった女子生徒と受け止めて、足を挫いたらしい。

 俺はそこまで移動し、

 

「おーす。なんか暗くね。ここの雰囲気」

 

「ああ、蓮か。小野寺が足を挫いて。それで――」

 

 橘は、と思ったが。風邪で無理らしい。

 

「……どうしよう。わたしのせいで、皆で頑張ってきた劇ができなくなっちゃう。衣装も台詞も、皆で考えてくれたのに、わたしのせいで。全部無駄になっちゃう……」

 

「そこまで悲観になる事はないんじゃないか。代役ならいるだろ、この場にぴったりな代役が」

 

 すると楽が、ガバッと立ち上がる。

 俺が言った意味を捉えてくれたらしい。

 

「――千棘か!」

 

「そだな。セリフは……まあ気合いで何とかなる」

 

「ああ、そうだな。蓮、サンキュー。後で何か奢る!」

 

 と言って、楽は外へ走って行った。

 俺は、これを気に仲直りしてくれよ。と言い小咲の隣に座る。

 

「劇できなくて、残念だな」

 

「……それは仕方ない事だよ。でも、一条君と千棘ちゃんなら」

 

「あの二人に任せられるしな。てか、立てるか?」

 

「肩を貸してくれれば何とか。それに、体操服に着替えないと」

 

 まあ確かに、ジュリエットの衣装は姉貴が着るしな。

 俺は小咲に肩を貸し、女子の元まで送り届けた。着替え等は、女子が手伝ってくれるので心配はないだろう。

 俺が回りを見回すと、楽と姉貴がステージの真ん中に立っていた。

 そんな時、体操服に着替えた小咲が、俺の隣に立つ。そして俺は咄嗟に肩を貸す。

 

「蓮君。どうしたの?」

 

「あそこだ」

 

 俺の目先を小咲が追う。

 

「……一条君、間に合ったんだ」

 

「楽はヒーロー主人公だしな。あれくらいは当然なのかもな。てか、小咲はこれからどうすんだ?」

 

「……劇にはもう出れないし、客席で劇を見ようかなって。蓮君も一緒にどう?」

 

「自然に俺を誘うんだな」

 

「だって、蓮君はわたしの気持ちを知ってるでしょ」

 

 あの時の言葉を思い出し、俺は体温が上昇していくのを感じた。返事が返せない俺は、ある意味ヘタレなのかもしれん。

 小咲は、俺の内心を読み取ったように微笑んだ。

 

「蓮君はゆっくり考えていいよ。わたしの気持ちは絶対に変わらないから」

 

「……悪い、ヘタレで。まだちょっと怖くてな」

 

「もう、今はいいって言ってるのに」

 

 頬を膨らませる小咲。

 

「……わかった」

 

「それでよし。じゃあ、客席に行こうか。蓮君、肩貸してね」

 

「ああ、いいぞ」

 

 触れ合った肌から、小咲の温もりを感じたのは俺の秘密だ。

 ……てか、痛い奴じゃないからね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 観客席に降りた俺と小咲は、ステージの最後尾の椅子に座り劇を眺めている。

 

『これから語られますは、悲しい恋の物語――。血で血を洗う争いを続ける二つの家、モンタギューとキャピュレット。そこに生まれついたロミオとジュリエットは、皮肉にも恋に落ちてしまうのでした……』

 

 冒頭、集の悲しみのナレーションが入り、劇が進んで行く。

 つーか、最早漫才と化してるが、客受けもいいので万事OKという事で。

 

「一条君と千棘ちゃん。かなり息が合ってるね」

 

「偽モノとはいえ、恋人だしな。あの二人は」

 

 劇は進み、ロミオがバルコニーに行こうとするが、そこでは召使やら、本当の恋人()やらの乱入があったが。

 てか、クロードさん。何やってんの、あんた?

 

「あ、あの人って、蓮君のお家の人だよね?」

 

「……そだな。てか、あのアホ。何やってんだよ、まったく」

 

 そう言ってから、溜息を吐く俺。ロミオ()ジュリエット(姉貴)を会わせない為に乱入したと予想できるけどさ。

 ともあれ、ロミオ()が頑張り劇は成功しました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 劇が終了し、俺は小咲に肩を貸して、校庭のベンチに座らせて保健室へ向かい包帯や湿布等を頂戴した。

 保健室で治療をしたかったが、橘がいるので断念したからである。

 

「上手だね」

 

「まあな。俺は一時期かなり傷を作ってたからな。その時の治療の賜物だ」

 

 包帯を巻いて、サージカルテープを止めて完了と。

 

「……蓮君ごめんね。文化祭回れなくしちゃって」

 

「いや、別にいいよ。気にするな」

 

「それじゃあ、来年の文化祭は一緒に回ろうよ。来年の予約という事で」

 

「き、気が早いな。まあいいけどさ」

 

 小咲は、悪戯っ子の笑みを浮かべた。

 てか、この笑みは羽姉ちゃんと同種のものだ。

 

「デートの約束の言質をとったよ」

 

「デートじゃねぇから。ただ回るだけだからね。買い物するだけだからね」

 

 ……このやり取り、かなりデジャブを感じるんだが。てか、小咲さん。羽姉ちゃんの影響かなり受けてるよね?もしかして、電話のやり取りで聞いたのかな?

 いやまあ、小咲の新たな一面を見れて新鮮だからいいけどさ。

 小咲は何かに気付いたように、

 

「れ、蓮君。わたしたち、ここに何分位居るんだっけ?」

 

「たぶん、20分位じゃないか。………………あ、やべ」

 

 俺は息を飲んだ。

 クラスでは、文化祭成功の打ち上げが始まってるはず。だが、その場に俺と小咲の姿がない。

 てことは、色々な誤解が生まれる可能性もある。

 でもまあ――、

 

「……ゆっくり戻ろう。傷に響いたらいけないし。それに、勘違いされても別にいいしな」

 

「そ、そう。じゃあ、もう少しゆっくりしよう」

 

「まあいいけど。でも、打ち上げが終わるまでには戻るぞ」

 

「りょうかいです」

 

 そう言ってから、俺と小咲は空を見上げた。

 今日の空は、一段と澄んでいた。




小咲さん、遠慮が無くなってきましたね。学校では控えるはずなんですけどね(^_^;)
てか、羽姉ちゃんを早く出したいですね(笑)

ではでは、感想よろしく!!


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第27話 オワリ

まだ、小咲のターンです。


 ガラガラと前の扉を当て、教室に戻ると注目の的になった。

 それもそのはず。俺が小咲に肩を貸して入って来たのだから。まあ、俺はそれを無視して、るりの元まで歩いて行く。

 

「悪い、るり。小咲を頼んだ」

 

「ええ、いいけど。あんたたち今まで何やってたの?」

 

 クラスの奴ら、気になるのは分かるが静かになりすぎだ。

 俺の言葉を、耳を澄ませて待ってるしね。

 

「応急処置に日向ぼっこだな」

 

「約束もだよね?」

 

「来年の約束な」

 

「そうだね」

 

 小咲は微笑した。てか、恥ずかしがり屋さんはどうしたのかな、小咲さんや。ここ教室だよ。

 俺は『じゃあな』と言い、俺はこの場を後にした。

 

 

 小咲 side

 

 わたしが椅子に座り、紙コップに入ったオレンジジュース飲んでいると、痺れを切らした?るりちゃんが話しかけてきた。

 

「……蓮君と小咲は、本当に何があったの?」

 

「な、何もないよ。挫いた所に湿布を貼ってくれただけだよ」

 

「……そういうことにしといてあげるわ」

 

 ……うう、本当になにもないのに。

 

「それにしても、小咲は良い意味で変わったわよね」

 

「そ、そうかな」

 

 るりちゃんはそう言うけど、わたしは実感がないかも。

 強いて言うなら、蓮君と一緒に居ると自然体になれるって事くらいかな。

 

「ええ。長年、小咲を見てるんだから間違いないわ」

 

「そ、そっか。え、えーと。あれが理由かな」

 

 親友のるりちゃんには、あの事を言っとこう。

 わたしはるりちゃんに、耳を貸してと言った。それで、耳を近づけるるりちゃん。

 

「(で、話してくれるんでしょうね?)」

 

「(う、うん。……わたしね、蓮君に告白したんだ)」

 

 驚愕の色を浮かべるるりちゃん。

 まあ、今までのわたしを見てるから、こうなるのも無理もないよね。

 

「(…………………………それ、本当なの)」

 

「(うん、本当だよ)」

 

「(……それで、蓮君の答えは)」

 

「(保留って所かな。蓮君、まだちょっとだけ怖いんだって)」

 

「(なるほどね。蓮君は、恋愛には関わらないようにしてたものね。それにしても、小咲。成長したわね)」

 

「(あはは、ありがとう、るりちゃん)」

 

 ――蓮君。わたしは、いつまでも待ってるよ。

 

 小咲 sideout

 

 

 俺が男子共の元へ向かうと、案の定と言えばいいのか、集が肩に手を回してきた。

 

「おーす、蓮。小野寺と何やってたんだよ?」

 

「捻挫の治療だ。それ以上の事は無いぞ」

 

「いやいや、気になるからな。蓮と小野寺、この頃仲良すぎだろ。てか、蓮と小野寺は付き合ってるのか?」

 

「付き合ってないから。あれだ。へんz…………友達だ」

 

 ……あっぶね。『返事待ちだ』って言いそうになった。

 話題を変えないと、墓穴掘りそう。

 

「俺の事はいいだろ」

 

「まあ無理に聞こうとしたら、蓮に締められるし」

 

 よく分かっていらっしゃる、集さんや。

 

「てか、楽と姉貴は仲直りしたのか?」

 

 楽と姉貴は、クラスの皆の祝福を受けている。

 

「舞台裏で一緒じゃなかったのか?」

 

「一緒だったけど。確実性が無くてな」

 

「なるほど。まあ仲直りしたらしいよ。破局は回避した」

 

 マジよかったわ。破局回避=戦争回避だしな。

 ともあれ、クラスでの打ち上げが終わり、下校時間となった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「それじゃあ、小咲。帰るか」

 

 俺はそう言って、鞄を持ち立ち上がった。ちなみに、教室の生徒は、俺と小咲だけだ。

 まあ、皆の前ではちょっと、ってのもあったんだけどね。

 

「小咲、肩貸すぞ」

 

「ん、ごめんね」

 

 俺の肩を掴み立ち上がる小咲。

 つーか、今思ったけど、女の子からいい匂いがするのは何で?まあ役得だけど。

 とまあ、小咲の鞄を持ってから教室を出て、昇降口で靴を履き替え下校する俺たち。

 幸いにも下校時刻を回っているので、学校に生徒は数える位しかいない。また、今日は文化祭もあって、部活動が休みだしね。

 肩を貸しながら下校していたのだが、小咲は何かを思ったように呟く。

 

「……蓮君、ずっと肩貸してて辛くないかな?」

 

「いや、大丈夫だけど。どうかしたのか?」

 

 小咲は顔を朱色に染め、俯いてしまった。

 そして顔を上げ、意を決したように言う。

 

「……えっとね。提案があるんです」

 

「提案?」

 

 あーなるほど。小咲が言いたい事が予想できた。

 『ずっと肩を貸すより、おぶった方がいいかも』って言いたいのだろう。まあそれはいいんだが、女の子特有のアレが当たるんだよな。どうしたもんか……。

 んで、俺が『おんぶか?』って言うと、顔を真っ赤にしてから頷いた。

 

「小咲はいいのか?アレがアレだぞ」

 

 女子なら、アレの意味が分かるだろう。

 

「うん、蓮君になら構わないよ。減るものじゃないしね」

 

「……あー、まあそういうことなら」

 

 そういうことなので、俺は小咲から手を離し、前に出てから上体を屈める、小咲が俺の背中に体重を預ける。

 小咲が乗った所で、手を後ろに回し落ちないようにした。

 ともあれ、和菓子屋『おのでら』へ向かう俺。

 ちなみに、鞄は小咲に持ってもらった。

 

「おんぶして貰ったの、小学生以来かも」

 

「中学生になれば、そういう経験はなくなるしな」

 

「……うん。蓮君の背中、あったかいね」

 

「そうか?男は皆同じだろ」

 

 『好きな人だからかな?』って笑顔で言わんでくれ……。何か、俺が恥ずかしくなる……。

 まあ俺も、可愛い子から好意を向けられて嬉しいけど。俺も早く返事を返さないとなぁ。

 

「……蓮君、舞台裏ではゆっくりでいいよって言ったけど、実際、わたしの事どう思ってる?……今の気持ちを教えて欲しいかも」

 

「……そうだな。小咲には惹かれてるって言えばいいのか、そんな感じだな」

 

「……ありがとう、答えてくれて。わたし、蓮君が羽さんの事も同じように想っても平気だからね」

 

「いやいや、二股になっちゃうからね。小咲さん」

 

 二股とか、世間一般では最低野郎じゃん。

 だが、小咲の返しは俺の予想とは違った。

 

「ううん、わたしはいいんだ。それに蓮君は優しいから、どちらかを選ぶとなると苦しむと思うから。もちろん、羽さんの許可をもらってからだけどね」

 

 ……羽姉ちゃんが、『別にいいよ♪』って言ってるのが思い浮かんでしまった。……俺、マジで最低野郎じゃん……。

 肩を落とした俺を見て、小咲は苦笑した。

 

「蓮君、どんよりしすぎだよ」

 

「色々思う所があってな……」

 

 それからは文化祭の話題になり、話を弾ませた。

 今日は、俺の思い出になる日となったのだった。




小咲と羽姉ちゃんのヒロインは確定しましたね。
これって、ハーレムに含まれるのだろうか?てか、原作より小咲ちゃん積極的やね(笑)
感想待ってます!!

追記。
楽は千棘に想いが傾きつつありますね。


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第28話 ヤクソク

他のも投稿しなければ……(-_-;)


 俺、桐崎蓮は、いつもの待ち合わせ場所で立っている。

 待ち合わせ場所で俺を見つけ、笑みを浮かべながら近づいて来たのは小咲だ。文化祭の一件後、俺と小咲は予定が合わない日以外は、いつも一緒に登校している。

 てか、夜更かしで眠い……。

 

「蓮君。眠そうだけど、夜更かし?」

 

「……あー、まあ、羽姉ちゃんがな」

 

 まあ、俺がきつくなって途中で終えたんだけど。

 だからまあ、今日の昼に電話をかける約束になっている。

 

「な、なるほど。捉まったんだね」

 

「まあそんなとこだ。てか、俺って小咲の連絡先知らないんだけど」

 

 小咲も、あ、って声を上げてるし。てか、これだけ一緒に居るのに連絡先知らないとか、俺不覚過ぎる……。

 という事なので、スマホを取り出し連絡先を交換する俺たち。

 それから、楽しく談笑しながら学校に到着したんだが……校庭で銃撃戦が行われていた。

 

「(鶫と誰だ……。えーと、ビーハイブの白牙(ホワイトファング)だっけ?)」

 

 つーか、学校の備品壊すなよ……。

 まあ今は――、

 

「悪い、小咲。ちょっと行ってくるわ」

 

「う、うん。気をつけてね」

 

 俺は殺気を二人限定に当てる。

 んで、二人の元まで歩いて行く。

 

「……お前ら、ここは学び舎だぞ」

 

「わ、若」

 

「け、け、剣舞」

 

 おいこら、ここで二つ名を出すな。

 まあ他の奴らには聞こえてないけどさ。

 ともあれ、この場を収めましたとさ。……いやまあ、軽く脅したけどさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 昼休み。

 俺はいつものように屋上で柵に手をかけ、パンを齧りながら、朝の通話の続きをしていた。

 

『文化祭の出し物、ロミオとジュリエットだったんだ』

 

「まあな。主役は、楽と姉貴でもある。……本当は小咲だったんだけど。足を挫いちゃってな」

 

『でも、蓮ちゃんには役得になったと見たね』

 

 ……何でこの駄姉は、俺のあの時の思考が分かったんだよ。

 てか、女の勘怖ぇな……。マジで。

 

「ま、まあそうかもな。役得だった」

 

 俺は、それとな、と言葉を続ける。

 

「……羽姉ちゃん。俺……もう逃げないよ……」

 

 暫しの沈黙が流れ、羽姉ちゃんが笑った。

 

『……うん、わかった。わたしのことも、ちゃんと見てね。それとわたしは、――愛人でも構わないよ、蓮ちゃん♪』

 

 別に気にしないからね♪とも付け加える羽姉ちゃん。

 そして俺は、口に含んでいたバナナ・オレを霧状に噴き出した。

 

「……な、何言ってんだよ、姉ちゃん!」

 

『んー、穏便な済ませかたかな』

 

「いやまあ、そうだけどさ!」

 

 え?何これ。完全に二股野郎じゃん。

 てか、口論になると、絶対に羽姉ちゃんに勝てないと分かった瞬間でもある。

 

『この際だし、蓮ちゃんはハーレムを築いちゃうってどう?男の子の夢だよ、ハーレムは』

 

「…………ちょ、ちょっとタイムだわ。文化祭の話から何でこうなった?」

 

『話の流れで?』

 

「何で疑問形やねん!」

 

 大声を張り上げてしまう俺。

 今思った。ここ学校だわ……。

 

『お、ナイス突っ込みだよ。蓮ちゃん』

 

 ……まあ、姉ちゃんが楽しそうだし、いいか。

 取り敢えず、

 

「……サンキュ」

 

 と、答える俺。

 

『そうだった。こっちの事もあと少しで終わりそうだから、近々そっちに行くね』

 

 ……え、マジか。そろそろ組織が統一できちゃうの。

 羽姉ちゃんのカリスマ性ハンパなくね?てか、あと少しってどれ位だ?半年位か?

 

「会えるのを楽しみにしてるよ」

 

『わたしの想い、しっかり受け止めて貰うからね』

 

「あー、はいはい。了解しましたよ」

 

 棒読みでそう言う俺。

 

『むっ。上手く躱された感じ』

 

「いや、もう躱すとかしないよ。絶対に」

 

『そっか。楽しみにしててね』

 

「わかった。そろそろ切るな」

 

『うん、じゃあまたね。蓮ちゃん』

 

「ああ、またな。羽姉」

 

 通話を終え、俺はスマホをポケットに入れてパンを齧る。……あれだ。どっと疲れた感じだ。

 午後の授業は寝ようかな。と考えていたら、屋上のドアが開かれる。

 入って来たのは、姉貴と橘、小咲と楽だ。おそらく、ペンダントに関する事だと思うけど。つか、姉貴たちも鍵を持てたのな。

 楽には悪いが、“それで結婚しちゃうのかよ!?”って突っ込んじゃうんだよな。まあ、俺が言えた義理じゃないと思うけど。恋愛から逃げてたしな、俺。

 

「あ、蓮君。いつも此処で食べてたんだ」

 

 俺の元に近づいて来た小咲が、そう言った。

 

「転校してから、ずっと此処で食ってるな」

 

 俺のベストプレイスでもある。

 つか、某アニメのセリフじゃね。

 

「んで、小咲はどうしたんだ?」

 

「うん。わたしは、この鍵のことでね」

 

 小咲が首から下げていたのは、羽姉ちゃんと僅かに形状が違う鍵だ。

 

「まあでも、わたしにはもう必要ないものなんだけどね」

 

 そう言って、小咲は苦笑した。

 なんつーか、楽から小咲を奪ったような形になって申し訳ないが、行動や言葉に移さなかったのがアレだった。と自己完結させる。てか、俺も移したか?

 という事なので――、

 

「小咲は、俺にして貰いたい事とかあるか?」

 

 俺に可能な事で、エロい事は無しだけどね。

 まあその辺は、小咲も分かってると思うけど。

 

「い、行き成りどうしたの?」

 

「何となくだ」

 

「そ、そっか。何となくなんだ」

 

 『……デートでもいいのかな?』っていう小声が聞こえてるぞ。

 まあ俺も、近い内にデートしたいと思ってたけどさ。……ふと思ったんだが、小咲と羽姉ちゃんの案を呑む事になりそう。……つーか俺、最低野郎でいいや。

 

「んじゃ、近い内にな」

 

「ふぇ?聞こえてたの?」

 

 いやいや、顔を赤くしないでくれ。

 まあ、バレたらバレたで仕方ないけど。

 

「おう、しっかりとな」

 

「そ、そっか。詳細はLINEでいいかな?」

 

「構わないぞ、楽しみにしてる」

 

「わ、わたしも楽しみしてるね」

 

 そう言って、姉貴たちの元へ戻って行く小咲。

 てか、デートにどんな服を着て行こうか。……いつもの真っ黒装備とか。マジでどうすっか……。

 俺はそう思いながら、頭を捻ってたのだった。




徐々に原作ブレイクしつつあるね(笑)

では、感想お願いします!!


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第29話 デート

書きあげました。
深夜に書きあげたから、誤字多いかも(-_-;)


 俺は黒いV ネックに、シャツの上にジャケット、紺色のスラックスにレザーシューズといった感じで待ち合わせ場所である公園のブランコに座っていた。

 俺が空を見上げていると、とたとたと待ち合わせの人物が到着した。

 俺が前を向くと、白シャツにお洒落なセーター、白を基調にしたフレアスカートに身を包み、肩にはブラウンのショルダーバックを下げた小咲が笑みを浮かべていた。

 

「お待たせしました」

 

「もの凄ぇ待ったぞ。待ちくたびれた」

 

 といっても、小咲が到着したのは十分前なんだけどね。まあ普通ならば『俺の方が早く来たんだから問題ないぞ』って言う所だと思うけど。

 小咲は唇を尖らせる。

 

「さ、三十分前とか。れ、蓮君が早すぎなんだよ」

 

 うーむ、考えて見れば確かに。

 今度からは、俺も十分前にするか?

 

「悪かったって。あれだな。服、似合ってるよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 いやいや、頬を桜色に染めないで。

 てか、逆に黒を基調にした恰好が見たくなった俺である」

 

「うん、いいよ」

 

「……もしかして、声に出てた?」

 

「バッチリとね」

 

「……マジか」

 

 やはり、心の声を聞かれるのは恥ずかしいものがある。……まあ、俺の自爆なんだけどね。

 取り敢えず、公園から出て歩道を歩く俺たち。昨日、連絡を取り合った時、デパートに行きたいってあったが。

 

「んで、デパートで何を見るんだ?」

 

「えっと、冬服の買い変えって所かな」

 

 女の子は、なぜ服が好きなのだろうか?

 羽姉ちゃんとの買い物の時も、服選びだったしなぁ。

 

「蓮君は、冬服はどうしてるの?」

 

「前年度の着回しって所か。服の拘りとかもないしな」

 

 俺って、ファッションセンスを勉強した方がいいのだろうか?

 今日の服も、在る物を着ただけだし。

 

「冬で思い出したんだけど、そろそろ十二月でクリスマスだね」

 

「そうだな」

 

 十二月も近いのに今日は暖い。あれだな、秋晴れって所だ。まあ、天気予想では今日だけらしけど。

 てか、十二月と言えばアレ(・・)か。

 

「蓮君は、クリスマスに予定とかあるの?」

 

「まあある。家の母親が帰ってくる。んで、クリスマスは、家族水入らずで過ごす事になってるんだよ」

 

 俺の母親の名前は、桐崎華。

 マダムフラワー。と野郎共の間では呼称されてるらしい。

 

「蓮君のお母さん、どんな人なの?」

 

「そうだな。現役バリバリの社長って所か。数年先の予定も組まれてる」

 

 ちなみに、母親に反論できるのは俺だけらしい。

 まあ、反論した事は一度もないけど。

 

「す、凄いね」

 

「まあ確かに、冗談抜きに凄いな。……なんつーか、クリスマス一緒に過ごせなくてゴメンな」

 

「うんん、大丈夫だよ。気にしないで」

 

 ともあれ、デパートに到着し、二重自動ドアを潜り二階に点在する服屋へ向かった。てか、何で女の子は服屋の場所を絞る事ができるのだろうか?不思議だわぁ。

 んで、黒のワンピースを持ち、小咲は体の前に合わせた。

 

「蓮君、黒い服ってこんな感じのでいいかな?試着して見るけど」

 

「……え、マジで?いいの?」

 

「うん、いいよ。服屋の醍醐味は、試着だしね」

 

「そ、そうか。じゃあ、お願いします」

 

 りょうかいしました。と言ってから、服を持ち試着室に消えて行く小咲。

 とまあ、俺も試着室前にあるパイプ椅子に座る。

 すると、数秒後に小咲がカーテンを開け、姿を現す。

 

「どうかな?」

 

「…………」

 

 口を閉じ、言葉を発さない俺。まあ簡単に言えば、見惚れてたから。

 白い服を着ている清純派も良いが、黒を基調にして大人っぽい小咲も魅力的である。

 

「……えーと、蓮君」

 

「わ、悪い。見惚れてたわ。…………あっ」

 

 暫しの間が空く。

 恥ずかしい間と言えばいいのか、そんな感じだ。

 

「そ、それで、どうかな?」

 

「大人っぽくて良いと思う。可愛いよ、凄く」

 

 顔を赤くして俯かないで、小咲さん。そう言った俺も結構恥ずかしかったりもする。

 んで、黒いワンピースを購入しました。何でも、今度のデートの時に着たいからだそうだ。

 

 服屋での買い物が終わり、一階の雑貨店にやって来た。

 小咲も、『お揃いがしたい』だそうだ。物は、マグカップだ。

 

「蓮君。この動物のマグカップはどうかな?」

 

 小咲が指差したのは、『彼氏と彼女必見。動物のお揃いマグカップ』の棚に置かれている、犬と猫のペアだ。

 ちなみに、俺が犬らしい。

 

「いいんじゃないか。普段から使うこともできるしな」

 

「それじゃあ、これにしよう」

 

「そうだな。ここも俺が持つよ」

 

「え、悪いよ。わたしも少し出すって」

 

「いや、俺が出す。男はこういう所では、恰好をつけたいんだよ」

 

 それに、俺の軍資金は十万。

 俺の通帳には7桁の数字があるしね。母親の仕事を手伝っていたら(秘書が倒れた為)、知らずの内に溜まってた感じである。……その分、仕事はかなりハードだけど。

 とまあ、会計を済ませて、昼食を食べ、夕方近くまで店を回った所で帰宅する事になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 買い物の最後は、あの場所で夕陽を見る事だ。

 手摺に手をかけながら見る夕焼けは、とても綺麗なものだった。

 そして、俺は小咲に一声かけ、お互いを向いた。

 

「……俺、小咲と沢山の時間を共有してさ、小咲の存在が俺の心の中で大きくなっていった。昨日、やっと心の整理ができたんだ。だから、俺の答えを聞いてくれ」

 

「……うん、わかった」

 

「俺は、――――小咲。お前のことが好きだ」

 

 小咲は微笑んだ。

 

「ありがとう。あの時の答えが出たんだね」

 

「ああ、悪いな。今まで待たせちゃって」

 

 小咲は頭を振る。

 

「うんん、それを言うなら羽さんでしょ。羽さんは、わたしより待ってるはずだから」

 

「……そうかもな」

 

「そうだよ。羽さんの想いにも、応えてあげないとね」

 

「ああ、分かってる」

 

 すると、小咲が笑みを浮かべて、

 

「蓮君は、わたしと羽さん、ちゃんと幸せにしてね」

 

「それも分かってる」

 

 お分かりの通り、俺は小咲と羽姉ちゃんの言葉を聞いて、二人を想うという案を取った。

 世間では、二股最低野郎と言われるかも知れないが、俺にはどちらかを切り捨てるなんてできなかった。

 

「……あれだな。俺、二人の案を呑んだな」

 

「そうだね。でも、羽さんもOKなんだし、これでいいと思うよ。わたしは平気だもん」

 

 形式上は付き合ってるって感じだね。と言い、小咲は笑った。

 俺も、だな。と言い、笑みを浮かべる。

 

「改めて、これからよろしくな。小咲」

 

「こちらこそ、蓮君」

 

 そんな俺たちを、夕焼けが照らしていた。

 今日は俺にとって、忘れなれない日となったのだった。




小咲が、蓮君と付き合いましたね。(形式上)
本質は、ハーレムに近いし。まあ、学校でバレない事を祈ろうか。
次回は、クリスマスかな。

感想、よろしくです!!


追記。
蓮君の二つ名や顔は、一部のヤクザ共に露見してますね。
まあ、大事にならないので大丈夫ですけど。


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第30話 ハハオヤ

羽姉を早く出したいッス。
ちなみに、蓮君のスペックはかなり高いです。そこの所ご注意をm(__)m


「おい、注文したワインまだ届かねぇのか!?」

 

「内層の準備は!?料理はできてんのか!?」

 

「今、やってらぁ!」

 

「早くしろ!もうすぐ、マダムフラワーが到着する頃だぞ!?」

 

 野郎共は、いつも以上にキビキビと動いている。

 後数分で、我が母親が到着するからだ。てか、楽も呼ばれたらしい。

 まあ、仮にも恋人だし、当たり前なのかも知れんけど。

 

「……なあ、蓮。マダムフラワーって誰のことだ?」

 

「ああ、それは俺の母親のことだ。母親の名前は、桐崎華だからな」

 

「……なるほど。それで、マダムフラワーか。てか、蓮はスーツじゃなくていいのか?」

 

 楽の言う通り、俺の恰好は部屋着姿だ。スウェット姿的な感じである。

 ちなみに、楽はスーツ姿だ。

 

「俺は別に」

 

 親子なんだし、別に正装じゃなくてよくね。的な感じだ。

 すると、姉貴が肩を震わせた。

 

「い、いつも思うけど、蓮は肝が据わり過ぎよ」

 

「いや、そんな事はないと思うけど」

 

 つーか、姉貴も親父もビビり過ぎだって。

 そんな時、野郎共から声が上がる。

 

「マダムフラワーが到着しました!」

 

「全員、配置につけ――ッ!」

 

 バン!とドアが開かれると、後ろに部下連れ、桐崎華が立っていた。

 そして――、

 

「ただいま」

 

 と、一言。

 野郎共も、『おかりなさいませ、マダーム!』って言ってるしね。

 てか、親父。仕事を頼まれてたのね。……まあ、やってなかったらしいけど。という事なので、親父は母親の部下に連行されて行った。

 

「さてと、千棘と蓮はいる?」

 

「はひゃい!」

 

「おう、いるけど」

 

 こちらに近づいて来る、お袋。

 

「久しぶりね、元気にしてた?」

 

「お母様!元気にしてました!」

 

「まあ一応、元気でやってたよ」

 

 頷く、お袋。

 

「そう。……えーと、貴方たち、今幾つになったんだっけ?」

 

「は、はい!16歳であります、お母様!」

 

「俺も16歳だけど」

 

 いつも思うが、帰って来たらまずこの話題からなんだよなぁ。まあいいけどさ。

 

「……そう。大きくなったわね。学校の方はどう?」

 

「は……はい。こないだ学年テストで、学年五位を取りました」

 

 ……あー、うん。これは俺も答える感じの空気だね。

 俺は口を開く。

 

「学校は楽しいよ。んで、テストは学年一位だったな」

 

 ま、姉貴より順位が高かったのは、小咲の勉強を教えてたからなんだけど。

 授業とテキストで、二重で復習できたしね。

 

「そう。流石、私の子ね」

 

 まあ義理だけどね。『後で、ぎゅっとしてあげましょうか?』とか言われたが、丁重にお断りした。てか、お袋の言葉を聞いた姉貴が、メチャクチャ震えてる。

 それから、姉貴と楽の恋人関係の話題になったので、俺はこの場から去ろうとしたのだが、お袋に呼び止められた。

 

「蓮は、恋人とかいないのかしら?」

 

 小さい時から、ずっと作ってないでしょ。とも付け加えた。

 俺は内心、ドキッ、としたが平静に答える。てか、あの時に離れればよかった……。と後悔する俺。

 

「……黙秘権を行使します」

 

 姉貴と楽には隠し通せたが、お袋は『ふ~ん。なるほどねぇ』と言った、お袋にはバレた感じだ。

 明日にゆっくり話そうとなり解散しようとしたが、解散直前に、お袋の部下が報告しに来た。またしても秘書が倒れたらしい。

 ……つーか、メチャクチャ嫌な予感がするんですが。

 

「……一条の坊や。今からのクリスマスまで私の秘書をしなさい。千棘と交際を見極める良い機会だしね。……後はそうね。蓮は、一条の坊やのサポートをして頂戴。私の仕事を手伝った事があるんだから、簡単でしょ」

 

 ……いや、サポートといっても、かなりキツイのは変わらないんですが。

 まあ、その分給料は良いんだけどね。一日の労働で、マジで。的な給料が貰えたりする。

 

「……いいけど。でも、俺からの条件も呑んでもらうよ」

 

「正装じゃなくて、『ラフな恰好で』っていうことでしょ。それは構わないわよ」

 

 つーわけで、楽と俺は、車に連行されました。

 楽たちの報酬は、イブの夜に、高級ホテルのウルトラスイーツに二人で一泊らしい。まあ、これを聞いた楽と姉貴は顔を真っ赤にしたけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「5分で覚えてね」

 

 やって来ました、社長室。

 楽はマニュアルを渡され、5分で覚えてとご命令。いや、無理だろ。って俺の突っ込みは止そう。

 ちなみに、俺は黒を基調としたラフな恰好だ。で、楽は正装だね。

 

「蓮は、○○社と○○社の株を見てね。あー、後、○○社と――」

 

 株を任されたのは、計三社の株と会議書類、その他諸々だ。

 ……てか、有名企業の投資だよ。高校生に任せるもんじゃないよね。

 

「……あんたは鬼かッ!てか、高校生に任せる仕事量じゃねぇだろ!」

 

 俺は溜息を吐く。

 

「……まあいいや。PC三台貸してくれ」

 

「いいわ。はい、これ」

 

 テーブルに置かれたPCを受け取る俺。

 それから、用意されたテーブルの椅子に座り、テーブルに置いた3台のPCを起動させ、各企業の株をディスプレイに映し出す。

 ちなみに、楽はコーラを買いに行った。でもまあ、ここからあの人の無茶ぶりが始まるんだよなぁ……。頑張れ、楽。

 俺は株の変動を見ながら、渡された書類に目を通す。

 

「お袋。この会社の損益を見たんだけど、赤字だぞ。……後、これは会議関係」

 

 その書類を渡し、お袋は書類に目を通した。

 

「……たしかにそうね。私の手を煩わせるなんて、何を考えてるのかしらね」

 

 そう言って、お袋は黒い笑みを零す。

 ……○○企業の社長、ご愁傷様です。

 

「……程々にしてあげなよ」

 

「それは、相手の出方次第ね」

 

 多分、踏まれますね。はい。

 んで、株の変動を見ながら投資っと。つーか、仕事任せすぎでしょ。あれから、二つ仕事追加されたよ、俺。

 ……まあ、その分給料はかなり良いけどさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ソファーに座り休憩時間。

 俺はスマホを取り出し、ある人に電話をかける。

 

『どうしたの?蓮ちゃんから電話なんて珍しいね』

 

 俺が電話をかけた人物は、中国にいる羽姉だ。

 

「……なんつーか、声が聞きたくなったからだ」

 

『……そっか』

 

「……まあな」

 

 ……やばい、話題がないので沈黙の時間だけが過ぎていく。

 俺、話題を用意しないで電話したしなあ。どうすっか?てか、休憩時間が残り10分じゃん。

 

「……悪い、羽姉。休憩時間が終わりそうだ」

 

『うん、わかった。お仕事頑張ってね』

 

「おう、またな」

 

『またね、蓮ちゃん』

 

 そう言って通話を切り、スマホをポケットに入れ、社長室へ戻る俺。

 

「どうして断ったんですか!?今の電話、千棘からですよね!?」

 

「仕事があるからよ。あの子とはイブの日に過ごさないと思ってたから、先に予定を入れてしまったの」

 

「……そんなに、仕事が大事なんスか?どうしてそこまで」

 

「私にしかできないからよ」

 

 確かに、お袋の意見には一理ある。

 能力を持つ者は、それを行使する義務がある。必要とされる限り、それを行使し続ける意味がある。といっても、お袋の受け売りの言葉だけどね。

 まあ、楽がお袋に反抗してる感じだし、俺も行きますか。

 

「休憩上がったぞ。んで、さっきのやり取りも聞いてた」

 

「……あら、盗み聞きとか宜しくないわね」

 

「いや、聞こえたもんはしょうがないだろ。俺が代わりになるから、お袋は姉貴に会ってあげていいぞ」

 

 といっても、お袋の代わりなんて、一日しか持たないけどね。

 英語の会議がないのが唯一の救いか。

 

「楽は姉貴を迎えに行ってくれ。たぶん、クラスのパーティー会場にいると思う」

 

 もう、イブの夕方。でもまあ、急げば何とかなるだろう。

 待ち合わせ場所は、高級ホテルのスイートルームらしい。これは、楽の案だ。

 

「お袋はヘリで向かっててくれ」

 

「華さん。オレからもお願いします!千棘に会ってあげてください!」

 

 深く、頭を下げる楽。

 

「……あなたたち、いつの間に結託したのかしら」

 

「いや、結託なんてしてないから。お袋、心の底では姉貴に会いたくて仕方がないんだろ。その手助けだよ」

 

「……分かったわ。お願いするわ、蓮」

 

「任せろ。んで、楽。姉貴を迎えに行って来い」

 

 お、おう。と言って、社長室から楽は出て行った。

 お袋も、お願いね。と言って出てきました。

 とまあ、そういう事なので、俺の地獄の時間がスタートしました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「輸入輸出は気をつけろって、あれだけ釘を刺しただろうが」

 

『も、申し訳ありません!』

 

「……ったく、こっちから幾らか送る。それで何とかやり繰りしろ」

 

『本当に、申し訳ないです!』

 

 受話器を置き、溜息を吐く俺。ちなみに、今の電話の相手は有名企業の社長だ。

 その時、バンッ!と扉が開き、楽が戻って来た。

 

「戻ったぞ、蓮!……てか、その目大丈夫か。かなり疲れた感じだぞ」

 

「……心配するな。楽には、デスクに置いた書類を頼む」

 

「お、おう」

 

 ともあれ、俺と楽は仕事に没頭した。

 そして、午前6時を回る頃に、ほぼ仕事が終了し、俺はデスクに突っ伏した。

 ちなみに、楽はダウンしたが。

 

「……マジで死ぬ。お袋のスペックはどうなんってんだよ」

 

「……蓮、お仕事ご苦労様」

 

 入って来たのは、姉貴だ。

 お袋と十分に話せたらしい。

 

「ああ、死なずに済んだよ」

 

 そんな事を話していたら、お袋が到着した。

 

「蓮、お仕事御苦労さま。千棘との時間楽しかったわ。坊やにも感謝ね」

 

「そうか。……俺、そろそろ帰っていいか?てか、○○企業が赤字らしいから、予備金を送っといた」

 

「……そう、わかったわ。給料はいつもの口座に送っておくわ」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

 俺は重い足取りで帰路に着いた。

 まあこれが、俺、桐崎蓮のイブの出来事だ。




仕事関連で、え?ってあったらすいません。てか、仕事関係は、サポートからメインになってるよ、蓮君(笑)
後、羽姉との電話の件要らなくね。と思う人もいるかもしれませんが、今後に必要なんすよ。

ではでは、感想よろしく!!


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第31話 クリスマス

連投が出来ちゃいました(笑)
やっぱり、ラブライブの曲を聴きながら執筆はいいものですね。
Snow halation とかSTART_DASH!!とかですね。まあ他にも沢山ありますけど。……ニセコィ関係ないね(-_-;)

では、投稿です。
本編をどうぞ。


 翌日の朝。

 集の発案でもう一度クリスマスパーティーが開かれる事になった。俺の予想だと、昨日、姉貴をパーティー会場から連れ去った言葉が原因だと思うけど。

 

「(……高級スイートルームに行くとか言ったんだろうなぁ。んで、男子共がその詳細を聞きたい為、もう一度パーティーを開いたって所か)」

 

 俺は不参加にすると集に連絡したのんだが、クラス全員が集まらないとダメだ。と言う意見を貰い今に至る。

 とにかく、集が借りたパーティー会場のドアを潜り中に足を踏み入れる。

 

「あ、蓮君。今日は来てくれたんだ」

 

 俺を見て、パタパタと此方にやって来たのは、小咲だ。

 服装も、俺と買い物に行った時購入した、黒を基調にしたワンピースを着ていた。上に羽織るカーディガンは、店端のハンガーに掛けられている。

 

「まあ一応。……気を抜いたらぶっ倒れそうだけど」

 

 そう。俺はまだ、昨日の疲れが抜けきってない。

 たった一日でも、お袋の変わりはきつかったのだ。

 

「だ、大丈夫?」

 

「大丈夫だ。いつもの、倍以上働いただけだしな。まあ、このパーティーは持たせるから心配するな」

 

「そ、そっか。きつくなったらいつでも言って。体を壊したら大変だからね」

 

 ここまで心配してくれるなんて、小咲マジ女神だわ。

 

「ああ、そうさせて貰うよ。その服、大人っぽくて似合ってる。買って正解だな」

 

 俺、眼福です。

 小咲は、笑みを浮かべながら頷いた。

 

「うん、ありがと。きっと、蓮君が来てくるって思ったから、着てみました」

 

「サンキュー。……で、いいのか?」

 

「そうだね」

 

 と言って、小咲は苦笑した。

 俺と小咲が付き合い始めてから約2ヶ月が経過したが、未だにバレてない。このままバレずに卒業したいものだ。てか、るり辺りは、気付いてそうだけど。

 やはりと言うべきか、あの言葉はかなり勘違いされてるらしい。まあ、姉貴と楽が必死に弁解してるから、何とかなりそうだけど。

 

「やっぱり、一条君のあの言葉は誤解だったんだね」

 

 あの言葉とは、『高級ホテルスイートルームに行くんだよ!』って言葉らしい。……てか、俺の予想が当たったよ。

 

「まあそうだな。スイートルームは、姉貴とお袋の雑談に使われたぞ」

 

「その時間を作る為に、蓮君は通常より働いたんだね」

 

「その通りだな、小咲さん。てか、後でツリーを見に行くか」

 

 会場から抜け出す形になってしまうが、二人いなくなった所でパーティーには支障はないし、気付かれる事もないだろう。

 でもまあ――、

 

「小咲は、るりに言わないとアレだな」

 

「……言っちゃっていいの?」

 

「るりになら隠す事はないだろ。小咲はるりと親友なんだろ?てか、もう気付かれてるんじゃないか?」

 

「そうだね。その通りだよ」

 

 それじゃあ行ってくるね。と小咲は言い、飲み物を取りに行っているるりの元へ向かった。

 

 

 小咲 Side

 

「るりちゃん、これから出かけて来ていいかな?」

 

「いいけど、小咲1人で?」

 

「……蓮君とかな」

 

 わたしの言葉に、目を見開くるりちゃん。でもこれで、るりちゃんの中で、色々と辻褄が合ったと思う。

 るりちゃんは、わたしだけに聞こえるように、

 

「……やっぱ、あんたら付き合ってるの?」

 

「う、うん。約2ヶ月前位からかな。今まで黙ってて御免なさい」

 

「それは気にしなくていいわよ。言う決心が付かなかったんでしょ」

 

 頷くわたし。

 

「そういうことならいいわよ。楽しんで来なさい。……だけど、詳細は聞かせて貰うわよ」

 

「りょ、りょうかいです」

 

 るりちゃんに許可を貰い、わたしは蓮君の元へ戻りました。

 

小咲 sideout

 

 

「お待たせ。るりちゃんに言ってきました」

 

「そうか。んじゃ、行くか」

 

「うん、りょうかい」

 

 俺と小咲は、皆に気付からないように会場のドアを開けて外に出て行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「気付かれず出てこられたね」

 

 そう言ったのは、ワンピースの上にお洒落なカーディガンを羽織り、ピンク色のマフラーを巻いた小咲だ。

 ちなみに、俺はいつもの恰好に、黒いジャケットを羽織っている。

 

「何とかな。まあ、バレる事はないだろ」

 

 歩道を歩きデパートの二重自動ドアを潜ると、デパートの中心に巨大なクリスマスツリーが鎮座していた。

 かなり大きいクリスマスツリーだ。周りの装飾が、ツリーの迫力を増している。

 

「……綺麗だね」

 

「……そうだな」

 

 取り敢えず、近場のベンチに腰を下ろす。

 肩が触れ合い、お互いの気持ちが分かるようだった。

 小咲は、何かを思いついたように、鞄からスマホを取り出しカメラを起動させた。おそらく、羽姉に写メールを送るのだろう。

 写真を撮ってからメール機能を展開させ、添付ファイルに写真を張り付けて、羽姉ちゃんにメールを送った。

 

「羽さん。見てくれるかな」

 

「見るだろ。小咲からのメールだしな」

 

「そうだね。今度は、3人で来ようよ」

 

 と言っていたら、返信が返ってきた。

 内容は、

 

『クリスマスツリー、綺麗だね。来年は一緒に見ようね♪』

 

 という内容だ。どうやら、考える事は同じらしい。

 俺と小咲は苦笑した。

 

「羽姉も同じ事を考えてくれたとは」

 

「ふふ、そうだね」

 

 とまあ、時間まではデパートを回り、楽しい時間を過ごした。

 まあ、帰った後ぶっ倒れてしまったけどね。




次回は、結構話を飛ばすかも。(巫女さんとか席替えとか)
春ちゃんの扱いをどうしようかなぁ。と考える今日この頃ですね(笑)


ではでは、感想お願いします!!


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第32話 バレンタイン

更新です。
てか、この頃砂糖量産ができなくなってきた。

では、どうぞ。


 冬休みも終わり、三学期。

 そして、今日の日付は2月14日、バレンタインデーである。

 小咲は、鞄から綺麗にラッピングした箱を取り出し、両手で俺に手渡す。

 

「バレタインチョコレートです。もちろん、本命だよ。お返し期待してます」

 

「お、おう。サンキュー、小咲」

 

 そう言って、チョコを受け取る俺。

 

「……ダークマターって事はないよな」

 

「もうっ、それはないから安心して。ちゃんと味見したんだから」

 

 小咲は料理が上手くなるように、日々努力してるらしい。これを見て、小咲の母親は目を疑ったとか何とか。

 ということなので、ラッピングを取り、この場でチョコを食べた。

 

「ど、どうかな?」

 

「旨いぞ。ちゃんとガトーショコラなってる」

 

 そう言って、空いている手で小咲の頭を撫でる俺。てか、『君を好きになってよかったよ』って、小声で言わないでくれ。まあいいけど。

 んで、小咲は一瞬驚いたようにしたが、

 

「……うん、ありがと」

 

「おう。……って、このままだと、学校遅刻する」

 

「あ……」

 

「い、急ぐか」

 

 俺は小咲の手を引いて、学校へ向かって走り出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 学校に到着する直前で、俺は小咲の手を離した。

 俺と小咲は上体を下げ、両膝に両手をつけながら、ぜぇぜぇと息を吐いていた。

 

「ま、間に会ったよっ」

 

「な、何とかな」

 

 到着した時刻は、8時30分だ。まあ、40分からHRなので間に会った。

 とまあ、そう言う事なので、校舎の中に入った俺たち。教室に入ると、男子共はそわそわしていた。

 

「(……にしても、そわそわしすぎだろ)」

 

 と、教室内を見て、俺は心の中でそう突っ込む。

 ちなみに、俺の席は席替えをして、中央の前から二番目だ。隣は変わらず小咲である。んで、その左に姉貴と楽だ。

 ともあれ、俺たちは自身の席に着席した。

 

「今日はバレンタインデーだから、皆そわそわしてるのかな?」

 

「だろうな。好きな奴から本命チョコを貰える日だし」

 

「その点では、蓮君は勝ち組かな」

 

 小咲さん。その通りだけど、その言葉は口にしちゃダメだよ。だってほら、数人の男子がこっち見てるし。

 ちなみに、俺と小咲が付き合ってる事は、るり以外にはバレてない。てか、ほら。クラスの連中にバレるとアレじゃん。

 

「……あー、いや、まあ、たぶんな」

 

 うん、思いっ切り誤魔化したね、俺。つーか、姉貴は楽にチョコを渡したのだろうか。

 姉貴、楽の事が好きだしなぁ……。家の中では気持ちを隠してないので、俺にはもろバレである。まあ、弟だからその辺は気にしてないって所もあると思うけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時は経過し昼休みの教室。

 

「あの、よかったら。コレ受け取ってください!」

 

 お分かりの通り、鵣が女子からチョコを受け取っていた。友チョコというやつだろうか?

 んで、扉まで移動し、女子生徒の背中を見送る鵣。

 

「……なんだ、今のは?」

 

「バレンタインってのはな「嫌いな奴にチョコを上げる日なんだよ」

 

 俺の言葉を遮ったのは集だ。つーか、悪乗りして逆の事を教えるなって……。

 ほら、鵣が集にチョコを渡してる所を見て、楽が勘違いしたし。

 

「鵣。バレンタインっていうのはな、女子が好きな男子にチョコを上げるイベントだな」

 

「な、な、な!そ、それでは、私は一条楽に、舞子集が好きだと勘違いされたんですか!?」

 

「……まあうん。そういう事になるな」

 

「ま、舞子集!貴様――!」

 

 鵣は懐から銃を取り出し、一足先に逃げた集を追いかけて行った。てか、ここは日本なのに、よく銃刀法違反に引っ掛からないなぁ。不思議だわ。

 

「それで蓮君。あんたは貰ったの?」

 

「お、居たのかるり。身長が小さk――」

 

「ふん!」

 

 ……るりさん。ナイスボディブローです。

 

「お、おう。まあ貰ったぞ。もう食ったけど」

 

 ちなみに、貰った場所は、あの秘密の場所である。

 

「へぇ、あの子もやるようになったじゃない。やっぱり、蓮君のお陰かしら」

 

「どうだろうな。まあでも、それだったら嬉しいけどな」

 

「今の所私しか知らないの?あの事は」

 

「まあな。そろそろ、集辺りは感づきそうだけど。あいつ、そういう所は鋭いしな」

 

 まあ、その時はその時だけど。るりから、『あの後何かあったのかしら?』って聞かれたけど、な、何もないよ。ほ、本当だよ……。うん、俺がやるとキモイな。

 その時、るりが俺の右手首を見やった。

 

「それはそうと、蓮君。小咲も色違いの組紐のブレスレットをしてたけどお揃いなの?」

 

「あ、ああ。まあそうだ。あの後、デパートで買ったんだよ」

 

 小咲が言うには、『わたしもミサンガみたいにお揃いにしたい』らしい。だが、ミサンガはできないので、組紐にしたのだ。てか、ミサンガと組紐でバレるんじゃないか。と思ってしまう俺であった。

 

 

 Side 小咲

 

 わたしが体育館に繋がる通路を歩いていたら、その壁に体重を預けている千棘ちゃんを見つけた。

 それで、わたしは千棘ちゃんの元へ移動した。

 

「どうしたの、千棘ちゃん?」

 

「ひゃ、……小咲ちゃんか。ビックリした」

 

 わたしは苦笑してから、頭を下げた。

 

「ごめんごめん」

 

 千棘ちゃんの隣には、ラッピングした袋が置いてある。

 わたしの勘だと、バレタインチョコかな。よし!聞いてみよう。

 

「千棘ちゃん、それバレンタインチョコ?」

 

「い、いや。あの、その……そうです」

 

 わたしは、千棘ちゃんの隣に腰を下ろす。

 

「……私、あげようと思ってる奴がいるんだけど、なかなか渡せなくて」

 

「千棘ちゃんの好きな人?」

 

「……う、うん。そう」

 

「それってもしかして、一条君?」

 

 千棘ちゃん。沈黙は肯定なりだよ。

 昔のわたしだったら、かなり取り乱してだろうな。

 

「わ、私の事は置いといて、小咲ちゃんは好きな人居るの?」

 

「うん、居るよ」

 

「だ、誰、誰!?」

 

 千棘ちゃん、必死すぎるよ。でもまあ、女の子は恋愛に対してはかなりアレだしね。

 取り敢えず、メールでその旨を伝えると、『姉貴なら問題ない』という返信が蓮君から返ってきた。

 

「えーと、千棘ちゃんの弟、蓮君だよ。皆には隠してるけど、付き合ってるんだ」

 

 目を丸くする千棘ちゃん。

 

「え、あいつ恋愛に興味がないと思ったのに、何か以外」

 

「その辺は、わたしが無理やりって部分もあるかもだけどね」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 

「てことは、チョコレートも?」

 

「うん、渡したよ」

 

 『れ、蓮。帰ったら問い詰めてやる』って小声、聞こえてるよ、千棘ちゃん。

 とにかく、千棘ちゃんの背中を押そう。

 

「そんな事より、千棘ちゃん頑張って!」

 

「が、頑張ってみる。ありがとう小咲ちゃん、行ってきます」

 

「うん!その意気だよ!」

 

 千棘ちゃんは、チョコをラッピングした袋を持ってから立ち上がり、校舎へ入って行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 その日の放課後、いつもの帰り道。

 

「そっか、そんな事があったのか。まあ、あの時の表情を見れば、上手くいったんだろうな」

 

「うん。きっと上手くいったよ」

 

 このようにして、俺と小咲は帰路に着いた。

 これが、2月14日に起こった出来事である。




うーん、次はマラソンなんだが、蓮君の独走は確定だし、飛ばしちゃおうか検討中ですね。
では、次回m(__)m


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二年生
第33話 イモウト


マラソンは飛ばしました。だからまあ、二年生編の開始ですね。
あの子の登場です。……まあ、立ち位置はあまり考えてないんですけどね(^_^;)

早く、羽姉出したいです(>_<)
では、どうぞ。


 ? Side

 

 私は今日から高校一年生。念願叶って家の近くの共学に合格。今まさに、新しい生活に期待に胸を膨らませている所です。高校生ってどんな感じだろう。初日は空も真っ青で、桜も咲いて、何だか素敵な恋とか始まっちゃうそうな予感です。……とか思っていたんですが。

 

「お嬢ちゃんかわいいね~、高校生?」

 

「学校なんていいから、オレらと遊ぼ~ぜ~」

 

 なんだか初日からピンチです。

 

「(あわわわゎゎゎわわわ。ど、どうしよう……!ただささえ中学女子校で、男の人苦手なのに~~!)」

 

「お嬢ちゃん、どうしたんだよ。早く行こうぜ」

 

 制服の袖を掴まれた。ああ……ダメだ……。だんだん意識が遠く……。

 

 ? sideout

 

 

「一人で登校は寂しいもんだなぁ……」

 

 今日は小咲が日直で、早く登校したので別別で。という事になっているのだ。

 俺が肩を落として通学してると、何やらガラの悪い奴らに、凡矢理の一年?が絡まれている。てか、小咲にそっくりなんですが、あの子。

 とにかく、その場にまで歩み寄る俺。

 

「お兄さん方、こんな所でナンパですか。もっと場所を選びましょうよ」

 

「な!?楯突くと容赦ねーぞ!ゴラ!」

 

「あ、兄貴。こいつ見た事があります。裏世界で二つ名を持つ奴ですよ!絡むのは危険です」

 

 おい、リアル割れじゃねぇかよ。まあ、こいつらはただのチンピラだし、問題ないとは思うけど。

 

「まあそういう事。んで、殺りあうか?」

 

「じょ、冗談じゃねぇ。ずらかるぞ、お前ぇら!」

 

「「へ、へい。兄貴!」」

 

 ああいう奴らの逃げ足って、かなり早いよね。

 さて、これからどうすっか?

 

「この制服、やっぱウチの生徒だったんだな。タイの色からして、一年か。助けたのはいいが、どうすっかなー」

 

 俺は溜息を吐いてから、例の子を背中におぶった。てか、軽っ!ちゃんと飯食ってんのか、この子。つーか、遅刻確定だな……。まあいいか。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 学校に到着し、俺は例の子を保健室の先生に預け、新たな二年の教室へ向かった。

 教室の後ろ扉を開けると、視線が一気に集中する。てか、教室の扉を開ける、ガラガラガラ、ってかなり教室内に響くよね。如何でもいい事だけどさ。

 ともあれ、席に着席する俺。

 

「(蓮君、どうしたの?こんなに遅くなって)」

 

「(登校中に、ガラの悪い奴らからウチの生徒を助けて、送ってたら遅刻したんだよ)」

 

「(そっか。それなら納得だね)」

 

「(ああ、悪いな。心配かけて)」

 

 と、その時――。

 

「おーい。お前ら仲がいいのはいいが、授業に集中してくれ」

 

 はい、数学の先生に指摘されてしまいました。何かすいません……。

 1限目の授業が終了し、休み時間。んで、俺は持ってくるように頼まれたノートを職員室に運んでから、教室に帰る途中だ。

 

『い、一条。ヤクザの集英組で、女の子を虜にしてるっていう!噂じゃ親の権限で、学校を裏から牛耳ってるていう!』

 

 まあうん。凄まじい勘違いの噂である。てか、如何してこうなった?

 とまあ、その現場に向かう俺。

 

「楽。お前、この子に手を出したのか」

 

「だ、出してねぇからな!お前の勘違いだからな!」

 

「まあ冗談だけど」

 

「蓮の冗談は洒落にならねーんだよ」

 

 てか、今思えば、この子俺が助けた子か。まあ黙って置こう。

 そんな時、その子がおずおずと、

 

「あ、あなたは、桐崎蓮さん……ですか?」

 

「そうだけど。何処かで会ったけ?」

 

 はて、俺としては今日が初対面なんだが。何処かで会った事あったけ?

 

「……どうしたの?さっきから騒々しいけど……。あれ、誰その子……」

 

「千棘……」

 

 楽の背中からひょっこりと顔を出したのは姉貴だ。

 つーか、このままだと、カオスになっていくのは確実である。

 

「楽様――――~~~~!!」

 

 と言ってから、橘が楽に抱きついた。

 

「こちらで私とお茶等いかがですか~~!?」

 

「うおっ!?橘……!?」

 

「な……な……何をそんな堂々と廊下の真ん中で、男の人に抱きついているんですか……!?」

 

 はい、予想通りカオスに突入しました。

 すると、俺の後ろに、

 

「あ、蓮君。この騒ぎどうしたの?」

 

「小咲か。まああれだ、いつものだ。てか、この子、小咲にそっくりなんだけど。知り合いか?」

 

「そっくり?知り合い?」

 

 小咲はその子を見ると、

 

「は、春!どうしたの、こんな所で?」

 

「職員室にプリントを届けたその帰りかな。そ、それより、一条先輩のあれはどういう事なの!?あの人の噂は本当なの!?私、お姉ちゃんを守りに来たの」

 

「あれには深い事情があるんだよ。そっとしとくのが一番かな。噂は春の勘違いだよ。あと、既に守られてるから、春が心配する事はないよ」

 

「……うーん、ん?既に守られてる?――」

 

 例の子は、深く考え出してしまった。てか、あの事は秘密にしてくれてるのね。

 とまあ、そういう事なので、

 

「じゃあ、俺は戻るわ」

 

「ちょ、ちょと待って下さい。桐崎さんは、姉と仲が良いって聞いたんですけど、本当ですか?」

 

「本当だけど……。てか、姉?」

 

「私の名前は小野寺春。小野寺小咲の妹です」

 

 なるほど、妹なら俺の事を知っていても不思議はないわな。

 

「てか、小咲には妹が居たんだ」

 

「あはは、話してなかったからね。ごめんね。あ、そういえば、蓮君。放課後までの課題やったかな?解らない所があったら、教えて欲しいなって」

 

「別に構わないぞ。んじゃ、春ちゃん。そろそろ戻っていいか?」

 

「詳しくはお家で話すね、春。いいかな、蓮君?」

 

「ん、いいぞ。そこは小咲の判断に任せるよ」

 

「うん、りょうかい」

 

 まあそういう事なので、各自解散という事になりましたとさ。

 

 

 Side 小咲

 

『小咲、春―。先にお風呂入いっちゃいなー』

 

 わたしと春は、お母さんにそう言われ、一緒にお風呂に入った。

 それにしても、春と一緒にお風呂に入るのは久しぶりだ。

 

「そ、そういえば、お姉ちゃん。桐崎蓮さんとはどういう関係なの?」

 

 わたしは右頬に、人差し指を当てる。

 

「うーん、そうだね。蓮君とは付き合ってる関係だよ。皆には、秘密にしてるけどね」

 

 鳩が豆鉄砲食らうとはこういう事を言うのだろう。今の春は、それである。

 

「い、いつからなの?お姉ちゃん」

 

「えーと、約五ヶ月前くらいかな」

 

 クリスマス前に交際を始めたので、約五ヶ月で間違いはないはずだ。

 

「ぜ、全然解らなかった……」

 

「一応、上手く隠せてるからね。解らなくて当然かも」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 だけど、るりちゃんと千棘ちゃん、舞子君にはバレてるけどね。

 

「お姉ちゃんは、桐崎蓮さんの何処が好きなの?」

 

「そうだね。全部が、って言えちゃうんだけど。挙げるなら、いつもわたしの事を見てくれて、優しくて包んで、守ってくれる感じかな。それに、どんな些細な相談でも親身になって考えてくれて、魅力的な男性なんだ、蓮君は」

 

 ……でも、羽さん以外にはたらしになって欲しくないけど。

 蓮君、その辺は無自覚だからなぁ。

 

「……私から聞いた事だけど、甘い、甘過ぎるよ、お姉ちゃん!」

 

「そうかな。そんな事はないと思うけど。そういえば、春。お風呂に入る前に王子様とか言ってたけど?」

 

「……え、そうだ!聞いてよ、お姉ちゃん!私、今日、運命的な出会いがあってさー」

 

 ……春の話を聞いてく内に、もしやと思ったが、わたしの気のせいだろう。うん、きっとそうだ。……たぶんだけど。




電話で、楽と蓮君の名前を聞いたんでしょうね。
一条の名前で噂、蓮君の名前で姉の仲って感じですね。

では、感想よろしくお願いします!!


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第34話 プール掃除と探し物

更新です。
あと、プール掃除が行われたのは土曜日です。


 桐崎家 ~蓮の部屋~

 

 ベットに横になりながらラノベを読んでいたら、スマホに着信があった。

 取り敢えず、隣に放置されているスマホの電話に出る。

 

「おう、楽か。どうした?」

 

『ああ、悪い、急に電話して。実はな――』

 

 楽の話によると、キョーコ先生からプール掃除を頼まれたらしい。んで、人手が欲しいという事らしい。

 メンバーは、いつもの奴らだ。俺の予想だと、春ちゃんたちも来るだろう。

 

「別に構わないぞ」

 

『サンキュー、蓮。それで詳細なんだが――』

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 やって来ました、プール掃除。

 

「女子の面子教えれば、皆集まっただろーに……」

 

「人をダシに使えるかよ……」

 

「そうだったら、俺が楽に制裁を下してた」

 

 それから数分後。

 

「一条く~ん。よろしく!」

 

 パタパタと此方にやって来る水着姿で、Tシャツとバレオを巻いている小咲。そして、俺を見て目を丸くした。

 ……誘われた時、俺の名前はその時にはなかったらしい。

 

「れ、蓮君も久しぶり」

 

「いや、昨日会ってるだろうが」

 

 とにかく、俺は荷物を持ち、

 

「まあなんだ、その恰好も可愛いな」

 

「そ、そうかな。ちょっと地味かなーって思ったんだけど」

 

「いや、そんな事はないぞ」

 

 取り敢えず、壁際にランチバックを置き、俺たちは集合した。

 つーか、ここの居るメンバー(楽と風ちゃんは除く)には、俺たちの事はバレてるんだよね……。

 

「……これで全員揃ったか。皆集まってくれてサンキューな。終わったら好きに遊んでいいらしいから、頑張って終わらせようぜ!」

 

「「「「「お~~~!!!!!」」」」」

 

 それからプール掃除が始まった。女子勢は遊びながら、プール掃除をしている。つーか、マジで眼福なんですが。

 これを見ていた男子勢は、

 

「オレ、この様子をDVDにするだけで、儲かる気がするんだけどな~」

 

「やめとけ。敵に回すと恐ろしい奴ばっかりだぞ」

 

「もしやったら、集は締めるじゃ済まないけどな」

 

 男子勢はそう言いながら、プール掃除に励んだ。

 午後を回った頃、掃除が終わったという事で昼食を摂ることになった。ブルーシートを敷き、腰を下ろして小野寺姉妹が用意した昼食を堪能する。

 

「「「「「いっただっきま~~す!!!!!」」」」」

 

 俺の前には、豪勢な弁当が並べられている。てか、高級幕内弁当?……この盛り付けは、小咲か。

 とにかく、俺は弁当を一口食べた。

 

「うまい。これ春ちゃんが作ったのか?」

 

「いえ、片方のお弁当はお姉ちゃんですよ」

 

「ほう。見栄えは良いダークマターじゃないとは驚きだ」

 

「……解ってた事ですけど、お姉ちゃんの料理って桐崎先輩から見てもそうだったんですね」

 

「……おう、壊滅的だったぞ。男子生徒を病院送りにできる」

 

 そんな事を話していたら、小咲が、

 

「ちょ、蓮君。ヒドイよ~」

 

 頬を朱色染めた小咲が、俺の肩をポコポコ叩きながら反論する。てか、まったく痛くないが。

 とまあ、春ちゃんは木を登りポーラの元へ向かった。まあそういう事なので、ポーラも昼食に食べれるだろう。昼食が終わり、各自でプール遊びを始めていた。

 

「あれ、蓮君は遊ばないの?」

 

「まあ俺はいいかな」

 

「そっか。じゃあ、わたしも」

 

 そう言いながら、俺と小咲はプールサイドに座り日差しを避けながら楽しく談笑したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 プール掃除が終了し、小咲を『おのでら』に送って行った後、付近の公園で春ちゃんが何やら探し物をしていた。

 とにかく、俺はその場まで歩み寄る。

 

「春ちゃん。どうかしたのか?」

 

 春ちゃんは振り向き、

 

「あ、桐崎先輩どうもです」

 

「こちらこそどうもです。……じゃなくてな、何してるんだ?」

 

 春ちゃんの話によるとこうだ。

 友達である風ちゃんと公園で遊んでから別れ、自宅に帰宅している途中で、通学バックにつけた大事な月のキーホルダーが無くなっていたらしい。んで、戻る途中で見なかったので、公園の何処かに落ちているという事だ。

 まあでも、俺も探すのに協力したのだが、見つかる事はなかった。日も既に落ちかかっている。

 

「今日はここまでにするか。幸い明日は日曜日だし、明日一緒に探そう。女の子が遅くまで公園にいたら危ないしな。親御さんも心配するだろ」

 

「そう……ですね。……分かりました、では明日お願いします」

 

「おう。また明日だ」

 

 まあそういうことで、春ちゃんには帰路に着いた。

 俺はそれを確認してスマホで時間を見る。今の時刻は16時30分だ。

 取り敢えず、コンビニで懐中電灯を購入。あ、あと、一応カロリーメイトだな。んで、野郎共に連絡してOKだ。

 俺は再び公園に赴き、キーホルダー探索に向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 翌日の早朝、春ちゃんが公園に到着した。

 

「おう、春ちゃん。おはよう」

 

「ほ、本当に来てくれたんですね」

 

「疑い深いな、春ちゃん。まあいいか。んで、これか?」

 

 俺が右手からぶら下げたのは、月のキーホルダーだ。

 

「あ、それです。ありがとうございます!」

 

 春ちゃんは、ぺこりと頭を下げた。

 

 

 Side 春

 

 本当に来てくれるなんて予想外だ。――今の時刻は朝の7時。……いや、待って。何でこんなに早く先輩が居て、既に探し物を見つけてるの?…………まさか、まさかだとは思うけど。私はある可能性が浮かび上がった。

 

「(――桐崎先輩は寝ずに探してくれたの!?)」

 

 よく観察すればおかしいな点はあった。まず服装は昨日と変わってないし、昨日なかったはずの懐中電灯が左ポケットから顔を出している。

 

「……あ、あの、桐崎先輩。もしかして、寝ずに探してくれてたんですか?」

 

 桐崎先輩は、ギクッとする。

 

「そ、そんなわきぇないひゃろ」

 

 ……まったく、そんなに噛み噛みだと嘘がバレバレですよ。

 桐崎先輩は、ハッと閃いたように、

 

「そ、そう!例の王子様が見つけてくれて、俺に渡したんだ。俺、そいつとは親友の間柄でな。いやー、良い奴だな」

 

「……その恰好で言われても、説得力皆無ですよ、先輩。先輩が、見つけてくれたんですよね?」

 

 桐崎先輩は頭を掻く。

 

「……いや、まあ、そうだけど……」

 

 私は、目頭が熱くなるのを感じた。

 

「ど、どうしてそこまでしてくれるんですか?桐崎先輩はお姉ちゃんの彼氏で、私とは他人のはずです」

 

「まあ春ちゃんから見れば他人かもしれないけど、俺にとっては他人じゃないというか、可愛い後輩というか、放っておけないというか……まあそんな感じだ」

 

 『悪いな、曖昧な答えで』と言って、桐崎先輩は苦笑した。

 そんな時、桐崎先輩は大きな欠伸をした。

 

「んじゃ、俺は帰るけどいいか?……あ、礼をしようとか考えるなよ。俺が好きにやった事なんだし」

 

「……ほ、本当にありがとうございます」

 

 私は深く頭を下げる。

 

「気にすんな。つーか、今度は失くさないように気をつけろよ」

 

 そう言って、桐崎先輩は公園を後にした。

 この時、私にある気持ちが芽生えそうになり、それを否定するので精一杯だった。




春ちゃんにフラグ立ったかも?まあ、今後どうするか決まってないんですけどね(-_-;)


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第35話 オミマイ

 あれから色々な事があった、キョーコ先生が結婚するので学校を退職したり、集の好きな人がキョーコ先生だったり、楽の気持ちは姉貴に傾いてたり、俺の想い人(名前は伏せてる)を話したりと色々な事があった。

 んで、今俺は、和菓子屋『おのでら』の裏口へやって来ている。るり曰く、小咲が風邪を引いてるから、看病してこい。だそうだ。

 ともあれ、チャイムを押すと、家の中から『はーい、少々お待ちください』と言う返事が返ってくる。

 玄関のドアがガラガラと開き、

 

「どちらさまで……」

 

 小咲は、凄まじい勢いで玄関を締め姿を隠した。いや、何で隠す?

 

「おーい、小咲。開けてくれ」

 

『……う、うん。わかった』

 

 玄関の扉が開き、再び小咲が顔を出す。

 

「ど、どうして蓮君が家に?」

 

「いや、るりが『小咲が熱を出したから、お見舞いに行きなさい。小咲の友人としての頼みよ』だそうだ。小咲には伝えたらしいけど」

 

「(る、るりちゃん。聞いてないよ。わたし、また熱出しちゃうよ~)」

 

「取り敢えず上がっていいか」

 

 かなりナチュラルに言ってるが、大丈夫だよな?いや、大丈夫なはずだ。

 つーか、小咲のお母さんたちは、商店街の人たちと旅行に出てて、二、三日自宅に帰って来ないらしい。まあ、春ちゃんもいると思うし、家を開けても大丈夫だと思うけど。てか、今はいるのか分からんけどな。

 とにかく、家に上がりました。

 

「んで、調子はどうだ?」

 

「うん。お薬を飲んだから、大分良くなったよ」

 

 だが、若干だが顔が赤い。

 

「でも、今日一日は安静な。家の事は、俺がやるから」

 

「い、いや、悪いよ」

 

「ダメだ。大切な人を無理させるとか、あっちゃいけないしな」

 

「……もう、それはずるいよ。甘えたくなっちゃうからね」

 

 俺的には、甘えて貰って全然構わないんだが。つーか、寧ろ推薦。

 その時、春ちゃんが廊下の角からひょこっと顔を出した。

 

「お姉ちゃん、そろそろ休まない……」

 

 春ちゃんは目を丸くする。

 

「春ちゃん、お邪魔してるぞ。あとこれ、差し入れだ。小咲も腹が減ったら食ってくれ」

 

 俺が春ちゃんに差し出したのは、涼美屋の苺大福だ。お邪魔してる身なのに、差し入れはなしはアレだし。

 とまあ、小咲には二階の部屋で休んで貰い、俺はお粥を作る事にした。春ちゃんも一緒に作ってくれるらしい。

 

「悪いな、急にお邪魔しちゃって」

 

「いえ、彼氏なのでお宅訪問は当然ですよ。姉の看病に来て頂きありがとうございます」

 

「お、おう。こちらこそ」

 

 なんつーか、まだ高校一年になったばかりなのに、かなりしっかりしてる。

 ともあれ、できたお粥を小咲の部屋に運んだ。

 

「小咲、一人で食えるか。何だったら、食べさせてあげるけど?」

 

 小咲は顔を真っ赤に染める。……熱がぶり返すぞ。

 

「だ、大丈夫だよ。一人で食べれるからね」

 

「ほら先輩、お姉ちゃんも大丈夫そうなんで下にいきますよ。お姉ちゃん、何かあったらスマートフォンを鳴らしてね」

 

「う、うん。わかった」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ドアを開けて廊下に出たのだが、俺は春ちゃんの額に右手掌を当てる。

 

「やっぱり。……春ちゃん。小咲の風邪、移っただろ?」

 

「――ッ!?な、なんの事ですか……」

 

 俺は真剣な顔で、

 

「……春ちゃん」

 

「……そうです。ごめんなさい」

 

「いや、謝る事はないと思うけど。まあいいや、春ちゃんは寝なさい。お粥作ってくるから」

 

「……いや、でも」

 

「春ちゃん」

 

「……はい、わかりました」

 

「よろしい」

 

 そう言って、俺はお粥を作り、反対側の部屋を開け春ちゃんの元へ向かった。

 春ちゃんは、安静にしてベットの上で上体を起こしていた。

 俺は近場のテーブルに、お粥を乗せたお盆を置く。

 

「お粥とポカリだ」

 

「すいません、桐崎先輩」

 

「実は俺、謝れるより感謝された方が嬉しいんだが」

 

 春ちゃんは顔を俯けてから、

 

「桐崎先輩、ありがとうございます」

 

「おう、お粥食えるか」

 

「はい、大丈夫です」

 

「そか。俺は下に行くから安静にしてるんだぞ」

 

 そう言って、俺は階段を降りて下へ向かい、風呂から洗面器を取りその中に水道水を入れ、洗面所からタオルと取り出した。

 

 

 春 Side

 

 ……私、何をやってるんだろ。看病してたのに、看病されるなんて。不覚すぎるよぉ……。

 それにしても、冷たくて気持ちいいな。つい、眠く……。

 数時間が経過した頃、私は目を覚ました。上体を起こして周りを見回すと、桐崎先輩が部屋の周りを綺麗にしてくれていた。色々と片付けの途中だったんだっけ(女の子特有の物は片付けには入ってない)。

 

「(あれ、何かさっき額から落ちたような?)」

 

 布団を見てみたら、丸められたお絞りがあった。ベットの下には、水が汲まれた洗面器が置いてある。

 ……ホントに、桐崎先輩の優しさは底知らずだと思う。たぶん、心地良かったお陰なのは、先輩が額に冷えたお絞りを当ててくれたくれたからだろう。

 私はお姉ちゃんの言葉を思い出していた。『蓮君は、優しくて包んでくれる、魅力的な男性なんだよ。それに、とっても親身になってくれてね。……まだ一杯あるんだけどね、これが私の、蓮君の好きな所かな』だったっけ。

 

「お、春ちゃん起きたか。てか、熱は引いたか?」

 

「あ、はい。大分楽になりました」

 

「そかそか、それは良かった。てか、部屋の片付け勝手にやってスマン」

 

「い、いえ、気にしてませんから。……ホントに、何から何まで、探し物の時も」

 

「あー、それは気にするなって言っただろ。春ちゃんは大切な後輩だし、当然の事だ」

 

 ……先輩。その当然の事が、大抵の人はできないんですよ。お姉ちゃんが、先輩を好きになった理由が分かった気がする。

 

「てか、何か食うか?作ってくるけど」

 

「い、いえ。本当に大丈夫ですから」

 

「んじゃ、ゆっくり休めよ。俺、小咲のお絞り交換してくるからな。何かあったらすぐ呼べよ」

 

 そう言って、先輩は部屋から退席していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――……お姉ちゃん、姉妹って似るものなんだね。だから私も先輩の事……。

 

 春 sideout




今後ですが、楽、集メイン(完全な)は飛ばす感じになるかもです。
今回みたいな、キョーコ先生の回とかですね。いや、ちゃんと蓮君もいるんですけどね。

春ちゃんのタグも追加かなぁ。つか、蓮君優しすぎだね(笑)

ではでは、感想よろしく!!


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第36話 サイカイ

つ、疲れた。
今回は、羽姉ちゃんのターンです。


 現在俺は、凡矢理空港に赴いていた。何でも、組織の統一が終わり、例の人が到着するからだ。俺は空港のロビー付近に立ち、出口ゲートを見ている。

 と、その時。俺を見つけ、その人物が俺の元まで小走りで歩み寄る。

 

「蓮ちゃん、お出向かい御苦労さま」

 

 その人物とは、羽姉ちゃんの事である。また、その後ろには護衛である(イエ)も居る。

 

「いや、構わない。俺も会いたかったし」

 

「ホント、ありがとう」

 

 羽姉ちゃんは、目を輝かせて俺の抱きついてくる。てか、空港内なんで止めて欲しいんだけど……。まあでも、羽姉ちゃんも寂しかったんだし、しょうがないか。

 俺も、羽姉の華奢な体を優しく抱きしめた。

 

「お帰り、羽姉」

 

「……うん、会いたかった」

 

「そうか。……てか、温かい視線が凄いからもういいよな」

 

 ……うん、ロビーにいる客の視線が凄いね。

 

「……もうちょと蓮ちゃん成分の補給」

 

「はあ、後数秒だからな」

 

 とまあ、そんなこんながあり、俺と羽姉は歩道を歩いている。

 目的の場所は、凡矢理公園のブランコである。数分歩き公園の到着し、俺と羽姉ちゃんはブランコに腰をかけた。

 

「約半年で組織を統一できるとはな」

 

「うん、蓮ちゃんに会いたいから頑張っちゃった」

 

 てへ☆ってウインクするな。いや、いいけどさ。

 

「後で、ご褒美が欲しいです」

 

「まあいいけど。俺ができる範囲でな。てか、住む場所はどうすんだ?」

 

「うーん、取り敢えずホテルの一室を借りる感じかな。その後の事は追々やってこうと、楽ちゃんとおじさんに挨拶しないといけないしね」

 

 羽姉ちゃんは、小悪魔的な笑みを浮かべる。

 

「そうだ。蓮ちゃん、わたしと一緒に住む?」

 

 俺は目を丸くする。

 てか、その案は却下だ。色んな意味でマズイ。姉貴たちは問題ないが、俺は羽姉の事を異性として見てるのだ。

 

「……魅力的な提案だが、無しの方向で。てか、思春期の高校生にそんな事言ったらいかんからな」

 

 羽姉ちゃんは、左手人差し指を唇に当てた。

 

「わたし、蓮ちゃんになら襲われてもいいけど。既成事実が作れるしね」

 

「……すまん、その話題から離れてくれ。俺、かなり恥ずかしいから」

 

「そっかぁ……。残念」

 

 まあこうしてこの話題は終わりを告げる。そして、ここからが本題である。

 

「蓮ちゃん。わたしの気持ち受け止めてくれる?」

 

 俺は羽姉ちゃんに向き合った。

 

「ああ、もう逃げないって決めたからな。……ここからは俺から言わせてもらうよ」

 

 俺は一拍開け、

 

「……羽姉ちゃん。ずっと好きだった、付き合って下さい」

 

 羽姉ちゃんはにっこり笑った。

 

「もちろん。わたしも、ずっと好きでした。一生隣に居させてください」

 

「ああ、よろしく頼む。大好きだよ、羽」

 

「わたしもだよ、蓮ちゃん」

 

 夕焼けに包まれるように、俺と羽姉ちゃんの唇が重なった。……てか、羽姉ちゃん。お願いだから舌は入れないで。いや、マジで。

 

「……キスしちゃったね」

 

「……まあな。てか、今度から舌は入れない方向でお願いします」

 

「うーん、約束はできないかな。でも、極力は控えるね」

 

 うん、約束はできないのね……。まあいいか。

 てか、小悪魔な笑みを浮かべてるし。

 

「剣舞も領主(ドン)ももういいかね。そろそろ時間よ」

 

 後ろから、ひょっこり出て来たのは、羽姉ちゃんの護衛である(イエ)だ。

 

「うお!ビックリした!」

 

「い、い、(イエ)ちゃん!」

 

「大丈夫ね。途中からしか見てないからね。……叉焼会(チャーシューかい)もこれで安泰ね」

 

 いや、途中からでも、もの凄い恥ずかしいんですが。つーか、安泰とか言うな。

 まあ、羽姉ちゃんの話によると、近直にサプライズがあるらしい。楽しみしてて、だそうだ。

 それから別々に別れ、俺は帰路に着いたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 自宅に帰ると、何故か家に楽が居た。何でも、記憶喪失になってしまったらしい。原因は、姉貴を軟球のボールから守ったらしい。つーか、そろそろ姉貴の誕生日か。

 

「れ、蓮坊ちゃんお帰りなせぇ」

 

「「お、おかえりなせぇ」」

 

 廊下を歩いていたら野郎共と遭遇した。……てか、祝いの看板が丸見えだぞ。まあ黙ってるけどさ。

 

「おう、ただいま」

 

 まあそれからも楽の記憶を取り戻す為思考錯誤をしたが、結果は乏しくなかった。そして誕生日前日の夜、姉貴の部屋の方向から凄まじい音がした。たぶんだけど、今のショック療法?で記憶が戻ったと思われる。

 俺が部屋に入ると、スマホから着信が鳴る。発信者は、羽姉ちゃんだ。

 俺はベットにダイブし、電話に出た。

 

「もしもし、どうした?」

 

『あ、蓮ちゃん。実は頼みがあってね』

 

「頼み?」

 

 はて、頼みとはなんだろうか?

 

『うん、凡矢理の夏休みに夏祭りがあるでしょ。一緒にどうかなって?』

 

 羽姉ちゃんが言うように、凡矢理の八月上旬に夏祭りが開催されるのだ。

 俺は頷き、

 

「ああ、構わないぞ。一緒に回るか」

 

『やった。それじゃあ、当日お願いね』

 

「了解だ。楽しみしてるよ」

 

『うん、それじゃあまたね』

 

「おう、また」

 

 そう言ってから、通話が終了した。

 なんつーか、あれから羽姉の遠慮が無くなったような……。まあ嬉しんだけどね。




羽姉の登場です。たぶん、夏祭りは羽姉と回る事になるかも。
てか、蓮君。羽姉とも恋人になったね(^O^)

ではでは、感想おねがいします!!


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第37話 再びパーティー

今回は、小咲のターンですね(多分)


 ~桐崎家 入り口前~。

 

 現在、俺と姉貴は、家の入り口前でいつものメンバーの到着を待っていた。そう、今日は姉貴の誕生パーティーなのだ。

 それもあってか、姉貴はドレス姿である。といっても、軽い感じだけどね。……俺?俺は普通に私服姿だ。部屋着でも良いかと思ったが、流石にそれはマズイと思ったからである。つーか、姉貴。そわそわしすぎだからね。まあ、話しによると春ちゃんたちも来るらしいからなぁ。とまあ、噂をすればである。

 

「蓮君、一昨日ぶり」

 

「そうだな。てか、羽姉が日本に帰って来たぞ」

 

 小咲の瞳が丸くなる。

 

「じゃ、じゃあ、蓮君の昨日の用事って、羽さんのお迎えだったんだ」

 

「そんな所だな。姉貴たちも移動した事だし、俺たちも行くか」

 

 という事なので、俺と小咲は桐崎家へ入って行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「「「「「ハッピーバースデー、お嬢―!若―!」」」」」

 

 パーティー会場に入ると、直後に大量のクラッカーを鳴らす野郎共。知ってたけど。

 

「お、お姉ちゃん……。き、桐崎先輩たちって何者……」

 

 まあ確かに、かなりゴツイ野郎共に祝われてるんだ。春ちゃんがそう思うのは無理もない。

 

「え?えっと……お嬢様とお坊ちゃん?」

 

 小咲の返しは、半分正解で半分間違えって所か。

 まあでも、ギャングの息子なんだよ!って答えられないもんなぁ、普通。つーか、自家用ジェットなんか要らんわ。なので、野郎共には丁重にお断りをした。

 

「これ、姉貴に」

 

「ありがとう、蓮。大切に使うね」

 

 俺のプレゼントは文具だ。

 それから、各自のプレゼント渡しが行われた。んで、最後は取りの楽の番である。

 

「(姉貴……。不安そうな顔してるなぁ……)」

 

 まあ、前回の誕生日プレゼントが演歌とバナナ、ゴリラのぬいぐるみだったんだから、こうなるのも無理もないけど。楽のプレゼントは花束であった。つーか、花束?それに、姉貴が好きな花である。

 プレゼントを渡し終え、各自パーティーを楽しむ事になった。んでまあ、俺は途中で抜け出しました。主役は姉貴だしね。

 部屋に向かっていると、その廊下で小咲に遭遇した。

 

「あれ、パーティー会場は反対側だぞ。……あ、迷ったのか」

 

 小咲か顔を僅かに染める。

 まあ確かに、桐崎家は一般家庭の約3倍の大きさはあるしなぁ。

 

「う、うん。お手洗いの場所まではよかったんだけど…………れ、蓮君はどうしたの?」

 

 露骨に話題を変えたね。まあいいけど。

 

「いや、俺は部屋に戻ろうと思ってな。んで、小咲から見て右側の部屋が、俺の部屋だ」

 

「へ?」

 

 小咲は、素っ頓狂な声を上げ、俺は苦笑した。

 

「……はわわわわわわわわ。そ、そうなんだ!れ、蓮君のお部屋ね!」

 

「……お前大丈夫か。ぶっ壊れた機械的な感じになってんぞ。てか、俺の部屋の中が気になる的な感じか?」

 

 つっても、男が隠し持つ雑誌やDVDなんかは無いけど。

 その辺は、期待に添えなくて申し訳ない。

 

「え、えーと。…………うん、気になるかも」

 

「そういうことなら入るか?……あ、襲ったりしないから心配するな」

 

 数秒後、俺の言った意味を知ってか、小咲の顔が茹でダコのように赤く染まっていく。

 まあそういう事なので、ドアを開けて部屋の中に入る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺の部屋は、壁際にベットとテレビ。本棚に小説。机の上と棚には、高校と大学の教材と問題集。部屋の真ん中に丸テーブルがあるだけだ。

 

「そんなに見ても、何もないぞ」

 

「う、うん。かなりシンプルだね」

 

「必要な物しか置いてないしな」

 

 てかあれだ。一度だけ姉貴の部屋を覗いた事があるのだが、かなり物が散乱してました。はい。

 まあ、俺は口を挟んだりしないけどね。

 

「あ、でも、机の上に何か飾ってあるよね?」

 

 そういえばそうだった。机の上に写真立ての中に写真を入れ、飾ってたんだっけか。んで、俺に許可を取ってから、小咲は机まで歩み寄り写真を見る。

 

「……これって、小さい時の蓮君と、羽さん?」

 

「まあそうだ。昔の思い出として、この写真だけは大切に持ってたらしい」

 

「『持ってたらしい』って疑問形?」

 

「俺もそんな気は全くなかったんだよ。無意識に、ってやつかもな」

 

 また、小咲の見てる写真は、俺と羽姉が顔をピッタリとくっ付けているものだ。羽姉は笑っているが、俺は不貞腐れた顔をしている。……あの頃は正直じゃなかったしな、俺。

 

「そうなんだ。わたしも欲しいかも、写真」

 

「別にいいけど。ここにカメラないぞ」

 

 俺がそう言うと、小咲はバックからスマホを取り出した。

 なるほど。スマホのカメラで撮るのね。んで、写真を撮る姿勢だが、ベットの上に腰かけ、顔をくっつけてである。てかあれである。小咲を女友達ではなく恋人であり異性として見てるので、色々とヤバイ……。

 予想が裏切られた感覚っていえばいいのか、そんな感じだ。

 ――だから俺は、脇腹を思いっ切り抓る。……かなり痛いが、煩悩が消えるなら構わない。

 

 シャッターが切られ写真撮影の終了だ。振り向くと、小咲の顔が眼前にあった。……てか、ヤバイヤバイヤバイ。俺、ヤバイしか言ってなくね。

 そして、俺の脳内で戦争が勃発する。

 

【いいじゃんいいじゃん。恋人なんだし押し倒しちゃえよ】

 

 頭の中で黒い服を着た俺が、嫌らしい表情を浮かべながらそう言ってくる。

 

「(……いや、それは早いし却下だ)」

 

【お前はな、昔から感情を殺しすぎなんだよ。羽も襲いたい衝動があるんだろ?】

 

「(……俺、まだ高校生。意味解る?)」

 

【ったく、このヘタレ。こんなのだったら、肝心な所で失敗するからな】

 

 うっ、俺の悪魔にそう言われてしまった。いやでも、その通りなのかもしれないけど。

 ――ここは覚悟を決めて……。

 

 

 

 

 

《悪魔の言う事は聞いちゃダメだからな!まだ、お前には早すぎるからな!》

 

 再び脳内では、白い服を着た俺が現れて注意をしてくる。すると、黒い服を着た悪魔が舌打ちをする。

 

【コイツに取ってある意味チャンスなんだぞ。邪魔すんじゃねぇよ】

 

《おま、高校生には早すぎるだろうが!頭逝かれてるんだろ!》

 

【あぁん!テメェ、今なんつった?こら】

 

 組み手を始めてしまった天使と悪魔。いや、何。俺はどうしたらいいの?もう、自分で判断がつかなくなってきたんだが……。

 

【だから言ってんだろうが!テメェの本能のままに動けよ!】

 

《それは早いからな!》

 

【うるせぇ!テメェはどっか行ってろ!】

 

 天使は悪魔に蹴り飛ばされて、脳内から弾かれるように飛ばされていった。

 悪魔は俺の肩に手を回し、悪戯な笑みを浮かべる。

 

【ほら、正直になれって】

 

 そして、遂に――、

 

 

 

 

 

「蓮k――――んん!?」

 

 俺は小咲を押し倒し、唇を重ねていた。……それも濃厚なやつだ。

 だが、次に行く前に、俺は自制心をかき集め若干理性を取り戻し、再び、思いっ切り脇腹を抓る。……これは、さっきのやつより痛いな……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「……スイマセンでした。焼くなり煮くなり好きにしていいです。覚悟はできてます……」

 

 俺は小咲の前で、――――土下座をしている。

 

「蓮君。頭を上げて」

 

「は、はい!」

 

 ガバッと上体を起こす俺。

 小咲は息を吐き、

 

「キスはしていいけど、時と場所は考えようね。ここには皆がまだいるんだよ」

 

「……仰る通りです。ごめんなさい」

 

「許す。それにわたし、蓮君に裸見られてるしね」

 

 ……うん、そんな事あったな。林間学校の露店風呂で。

 つーか、これって俺の黒歴史になったりすんのか?

 

「ほら、皆の所に戻るよ。今ならまだ怪しまれないしね」

 

 まあ確かに、俺と小咲が会場から出て数分しか経過していないという事は、『外の空気を吸ってた。それで、その時鉢合わせた』で誤魔化せる範囲だと思う。

 また、戻るのかぁ。と思ってたが、今はこれが最善策である。

 そして、パーティーが終了し、皆が帰った所で部屋に戻り一息ついた俺は、気持ちを切り替える為ミステリー小説を読む事に没頭したのだった。




れ、蓮君。遂にやってしまったー(笑)まあ、途中で自制心が勝ったけど。羽姉もこれを聞いたらグイグイきそうだし。あれだ。リア充爆発しろって事だな。
次回は、春ちゃんかな?まあそこら辺は解らんけど。

ではでは、感想お願いします!!


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第38話 プレゼント#2

更新です。


 現在俺は、大型デパートの前に立っていた。理由は、小咲のプレゼント選びである。俺が考えた物は全て送ってしまったので、ネタ切れというやつだ。だからまあ、強力な助っ人に協力を仰いだ。ちなみに、俺は一度家に帰ったので、私服姿である。

 

「先輩、お待たせしました」

 

 春ちゃんは、学校から出たのが遅かったので、制服姿だ。

 1年生は、放課後に説明会的なものがあったらから、そのせいだろう。

 

「おう、待った。待ちくたびれたぞ」

 

「……先輩。そこは『全然待ってないよ』じゃないんですか?」

 

 いや、これが俺の待ち合わせのデフォルトだしなぁ。

 

「まあいいです。お姉ちゃんのプレゼント選びですよね。先輩なら、すぐに見つけられると思うんですけど」

 

「いやまあ、プレゼントのネタ切れってやつだな。俺が考えてたものは贈ったしな」

 

 ペア系が多かったけどね。

 

「それって、マグカップとか、先輩が右手首につけてる組紐のブレスレットもですよね」

 

「まあ一応、そんな感じだな。てか、よく分かったな」

 

「いえ、お姉ちゃんがいつも大切そうにしてるんですぐに分かりましたよ」

 

 マジか、かなり嬉しんだが。でもまあ、俺にとっても特別なものだしな。繋がりって言えばいいのか、そんな感じだ。

 まあそういう事で、デパートの二重自動ドアを潜って内部に入って行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「んで、何のプレゼントにする?」

 

「服にしようと思ってます。好みが見つかればいいんですけど。でも、ワンピースは論外ですし」

 

 ……それあれだ。俺が原因かも。何か、ごめんなさい。

 ちなみに、選んだワンピースは黒いワンピースである。大人っぽさを引き立てていて、小咲はかなり似合っていた。すぐに襲いたいレベル。……まあ、その未遂は前にあったんだけど……。

 つーか、今日このデパートでは和菓子フェスタなんかやってんのか。なんつーか、珍しいな。

 

「取り敢えず、目当ての店は見つけたので、絞り込むのは後にしましょう!」

 

 うん、知ってた。春ちゃんが和菓子フェスタにウキウキしてるっって。

 ここは先輩としての威厳を見せよう。

 

「んじゃ、好きな和菓子を買っていいぞ。全部俺の奢りだ」

 

「え……。先輩、お金大丈夫なんですか?」

 

「問題ない。俺の場合、ある手伝いをしてたから、貯金はかなりあるしな」

 

 ある手伝いとは、母親の仕事の手伝いである。一日の給料がかなりあるしね。

 てか、もう好みの店に行ったし。なんつーか、和菓子の事になると、春ちゃんテンションがかなり上がるよね。

 

「先輩!先輩!これとても美味しいです!」

 

 という事で、春ちゃんが紙皿に置いていた饅頭を手に取り一口で食べた。

 ふむ。この餡は甘すぎもなく、滑らかで旨いな。

 それからはまあ、和菓子屋巡りが始まった。つーか、流石姉妹って所か。小咲の好みと春ちゃんの好みがほぼ同じである。

 一通り回った所で、俺たちは近場のテーブルの椅子に腰かた。

 

「……すいません。つい、テンションが上がってしまって」

 

「いや、別に構わないよ。こっちは頼んでる身なんだしな。意外な一面も見れたしな」

 

 春ちゃんは、顔を赤くする。

 

「……それは忘れてください」

 

「いや、無理だ。一生無理だな」

 

 ふと思ったが、今度、小咲と羽姉と来ようか。……いや、やっぱり止そう。今の俺(・・・)にはきつそうだし。つーか、色んな意味で俺がヤバそう……。

 

「……先輩。今、他の女の子の事を考えましたね?」

 

 何で解った!?女の勘は怖すぎる……。春ちゃん、ジト目だし。

 まあここは、

 

「ごめんなさい」

 

 謝るである。俺、弱ぇ……。

 

「いいですけどね!私、先輩の彼女じゃありませんし!」

 

「……何かごめんな。てか、春ちゃんならすぐに彼氏作れそうなんだけど。――――可愛いし」

 

「な、な!?何言ってるんですか!?わ、私が可愛いとか、冗談は止めて下さい!」

 

 春ちゃんは茹でダコのように顔を赤くする。

 だが、俺の頭の中は疑問符だらけである。

 

「いや、本当の事を言ってるだけだそ。てか、俺、間違ったこと言ったのか?……いや、でも、実際に可愛いと思うし。小動物っぽいしな。えーと他には――――」

 

「わ、解りましたから!恥ずかしいです!」

 

「お、おう。何かすまん」

 

「まったく、他の女の子にも言ってるんですよね」

 

「言って…………ないと思うぞ。うん」

 

 いや、実際には小咲と羽姉に言ってそう。2人とも可愛いし。

 

「……言ってるんですね。先輩ってタラシなんですか?」

 

「酷ぇな。……でも、否定できない自分がいて悔しいわ」

 

 春ちゃんは溜息を吐く。

 

「先輩って、二股してそうですね。でもまあ、本人たちの許可があれば問題ないと思いますけど」

 

 ……うん、もう一回言うわ。女の勘って怖すぎる……。何で解った?俺が二股してるって。でも、どちらかを切り捨てるなんて、できなかった。俺、小咲も羽姉も大好きだしね。ずっと隣に居てもらいたいって感じでもある。てか、将来重婚できんのかな?

 

「……あれだ。その辺は詮索しないでくれ」

 

「まあいいですけど。でも、お姉ちゃんを幸せにして下さいね」

 

 ……これはあれだ。バレてるね。もう、成るようになるだろう。

 

「――――それは心配するな、小咲は絶対に幸せにする。不幸な想いは絶対させないって誓うよ。俺の全てを賭けてな」

 

 もちろん、羽姉も幸せにするって誓ってるけど。

 

「……先輩は言い切るんですね。何か凄いです…………――――私も言われて見たいですよ」

 

 春ちゃんの呟きは、周りの音によって掻き消されてしまった。はて、何て言ってたのだろうか?

 

「そうか?普通だろ?」

 

「滅多に先輩のような男性は居ないと思いますけど。世間では、別れてしまうカップルも多々居るんですから」

 

 うーむ。そうなのか?俺が特殊なだけとか?まあいいけど。てか、春ちゃんに高印象で助かったわ。でも普通は軽蔑するような……まあ深く考えるのは止そう。

 まあその後はプレゼント探しを再開し、結果、春ちゃんが選んだ服になった。てか、春ちゃんが髪を下ろすと小咲そっくりなのね。流石姉妹。てか、その感想を言ったら、何か知らんが怒られたけど。解せん……。

 ともあれ、プレゼント選びは無事?終了した。




春ちゃんの高感度が上がってきてますね(笑)
さてさて、今後どうなっていくのでしょう?今回は、ご都合主義がありましたね。

ではでは、感想お願いします!!


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第39話 願いを込めて

更新です。


 プレゼント選びから数ヵ月が経過し、今日は凡矢理高校で催される七夕イベントでもある。

 まあ、笹に願いを書いた短冊かけるといった、季節特有の行事ともいえる。外では、教員たちが笹の木を運んでおり、学年全員には短冊が配られ願いを書く事になっていた。……つっても、願いは既に叶ってるし、ぶっちゃけ願い事なんてないのが俺の本音である。

 俺がペンを左手で回して唸っていると、隣席の小咲が話しかけてくる。

 

「蓮君は、お願い事決まった?」

 

「いや、決まってない。てか、願う事がないしな。……いや、あれにしよう」

 

 そう言って、俺は短冊にシャーペンを走らせ願いを記入していく。まあ、しょうもない願いなんだけどね。

 そんな時、担任教師が前の扉を開け壇上に上がる。

 

「お前ら、願いは書けたかー?早速飾りに行くぞー」

 

 そう言って、担任教師は教室を出て行く。

 そんな訳で、俺は教室を出て目的地を目指す。男子共に、何て書いたのとシツコク?聞かれたが、『もう、勉強教えてやんないからな』と言ってたら、掌を返したように聞く者が出る事はなかった。……なんつーか、餌づけしてる感じだったんだが……。

 靴に履き替え、笹の木の元へ向かうと不自然に垂れ下がってる場所がある。てか、かなりの短冊がかけられてる。

 まあ、言わずとも橘が主犯だったんだが。つか、楽。橘に愛されすぎでしょ。将来頑張れ。としか今はかける言葉が見当たらんな、うん。

 笹の木に短冊をかけると、教室に戻り英語の授業。てかあれだ。既に解ける問題なので、授業が退屈である。まあ、いつも退屈なんだけどね。んで、担任が笹の木の移動を忘れたらしく、それに楽が命名させていた。いや、あれだ。ファイトだよ!……あれ、これって某アニメのセリフじゃね……。

 ちなみに俺が短冊に書いた願いは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――法律に重婚がOKと追加されますように。匿名より。

 

 という願いだ。……うん、高校生が願う事じゃないね。まあ、思い浮かんだのを書いただけである。バレとしたら、小咲くらいだろうな。

 ちなみに、小咲は、

 

 ――――匿名さんの願いが叶いますように。

 

 だそうだ。てか、この祭りは主催してる神主は願いを叶える事で有名な人なので、マジで叶いそうである。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~放課後、帰り道~

 

「蓮君、前の誕生日プレゼントありがとう」

 

「おう、気にすんな。ほぼ春ちゃんが選んだって言っても過言じゃないしな」

 

 小咲は若干膨れたように、

 

「蓮君、春も落とすつもりなの?……春から聞いてるよ、落し物の件」

 

「落し物?……あー、あれか。てか、普通だろ?」

 

 あれ、何か俺マズイ事したの?そんな覚えは1ミリもないんだが。

 小咲は、徐々に呆れ顔になっていく。

 

「……その無自覚さが女の子を落としていくんだからね。……でも、そんな君を、わたしは好きになっちゃったんだけど」

 

「お、おう。サンキュー。面と向かって言われると何か恥ずかしんだな。いや、俺も好きだけどさ」

 

 小咲は、顔を徐々に赤く染めていく。

 

「……ずるいよ、蓮君」

 

「いや、何が?」

 

「も、もう、女の子には色々あるんですっ!」

 

「そ、そうか。何かすまん」

 

 恋人ができても、未だに乙女心が解らない俺である。

 まあでも、解っても何も変わらないと思うけどさ。つーか、誰も居なくなったからって、腕に抱きつくのは止めようぜ、小咲さん。俺の理性が瓦解するからね。

 

「……なあ小咲、当たってるんだが」

 

 『当ててるんだよっ』って言って、小悪魔的な笑みを浮かべないでくれませんかねぇ。まあ、役特だけどさ。

 

「羽さんも、わたしと同じ事をすると思うよ」

 

 いやいや、キョトン顔をしないでくれ、小咲さんや。

 

「……まあ確かに、羽姉なら有り得るな。てか、俺の理性をブチ壊そうとするわな」

 

 これだけはマジで勘弁である。高校生にして大人の階段を上がるのは、ちょっとなぁ。って感じなので。そして、小咲は『そうかもね』って言ってクスクス笑う。

 

「まああれだ。最低でも高校卒業までは待って欲しい。てか、高校卒業したら、小咲はどうするんだ?」

 

 ちなみに、俺の第一希望は、小咲と羽姉と静かに暮らしたいである。

 

「うーん、そうだね。お家の手伝いをしながら、蓮君と一緒に居たいかな。それに、裏に入る覚悟もできてるよ」

 

 そう言って、小咲は無邪気に笑った。てか、そこまで考えてたとは予想外である。

 でもまあ、俺が婿に行くのは不可能(裏事情を除く)であるのは確かだ。なので必然的に、小咲は嫁に貰うという事になる。てか、ここまで将来設計ができてるとはな。

 そしてこれが、七夕イベントで起きた出来事であった。




次回はお祭りかな?
てか、将来設計ができてる、小咲と蓮君でしたね(笑)


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第40話 夏祭り

連投やで(#^.^#)


 季節は流れ、凡矢理高校はただ今夏休み。

 俺は待ち合わせ場所にした、屋台の軒並みから僅かに離れた場所で羽姉の到着を待っていた。

 ――――それから数分後、浴衣姿の羽姉が到着。浴衣姿の羽姉は、最早、女神である。言い過ぎかもしれないが、俺の第一印象で感じた感想なので仕方ない。ちなみに、俺は茶色の甚米姿である

 そして羽姉は、パタパタと此方に駆け寄る。

 

「蓮ちゃん。お待たせ」

 

「いや、全然待ってないぞ」

 

 羽姉は、クスッと笑う。

 

「今日は、『待ちくたびれた』じゃないんだね。それで、どうかな?わたしの浴衣姿?」

 

 羽姉はその場で一回転する。羽姉の浴衣は、ピンク色を基調にした花柄があしらってある浴衣だ。

 それに今日はいつもと違い、後頭部で髪を纏め、纏めた部分を黄色のシュシュで止めてある。俗に言う、ポニーテールである。

 

「(……やばい、すぐに抱きしめたいんですが。可愛いすぎる)」

 

 羽姉は、小悪魔な笑みを浮かべる。

 

「蓮ちゃんは、わたしを抱きしめたいって思ったんでしょ?」

 

 ……俺の心の声は、羽姉には筒抜けらしい。

 そして、羽姉は頬を朱色に染める。

 

「……えっとね。蓮ちゃんがよければ抱きしめていいよ」

 

「お、おう。いいのか」

 

 俺はしどろもどろに答える。

 

「う、うん。此処からは誰にも見られないしね」

 

「じゃ、じゃあ――」

 

 俺は羽姉を抱き寄せ、華奢な体を優しく抱きしめる。女の子特有なものが、胸板に当たるが色んな意味で我慢我慢。てか、浴衣だからほぼダイレクトに当たるんだよね……。

 それにしても、優しい香りが鼻腔を擽るんですが。女の子って、どうしていい匂いがするだろ?……決して、変態発言じゃないからね。

 そして、数秒してから抱擁を解く。……てか、俺も羽姉も、顔が真っ赤だろうな……。

 

「え、えっと。どうだった?」

 

 そ、それを聞いちゃいますか……羽姉ちゃんや……。

 

「い、いやまあ、役得でした」

 

「そ、そっか」

 

 顔を赤くし、俯く俺たち。……つーか、こんなんでこの先大丈夫か心配になってきたわ。

 ともあれ、平静を取り戻した俺と羽姉は、手を繋ぎ移動する事になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 祭りは凡矢理市主催の為か、かなりの賑わいだ。

 

「懐かしいなぁ、日本のお祭り」

 

「羽姉ちゃんは、ずっと中国だったんだもんな」

 

「でも、寂しくなかったよ。蓮ちゃんとの思い出があったから」

 

「つっても、子供の時のだろ?」

 

「うん、だからさ。これから沢山思いでを作ろうね」

 

 羽姉は、屈託のない笑みを浮かべる。てか、俺もそのつもりである。羽姉とは、これから沢山の思い出を共有していきたいと思ってる。

 

「それと、わたしは蓮ちゃんとずっと一緒だからね」

 

「そうだな。将来、羽姉ちゃんは俺が貰う予定だし」

 

「ふふ、そうだね。楽しみにしてるね♪」

 

「善処します」

 

 そんな時、羽姉が焼きそば屋を見つけ、焼きそばを一つ購入。

 それはいいんだが、途中でお腹が一杯なってしまい半分は俺が食う事になった。んでまあ、必然的に割り箸は1膳しかないので、間接キスということになるのだが――、

 

「はい、蓮ちゃん。後は任せた」

 

「はいはい、任されました」

 

 俺は割り箸で焼きそばを取り、口に運ぶ。

 ちなみに今居る場所は、屋台から僅かに離れた石段に座っている。

 

「どうどう?わたしの味は?」

 

 俺は焼きそばを飲み込み、羽姉の額を小突く。

 

「おバカ。セクハラ発言をするんなよ」

 

「ご、ごめんなさい。つい……」

 

 いやいや、シュンとしないで、罪悪感がハンパないからさ。

 

「まあ、俺は気にしてないから問題ないだろ」

 

 ……てか、羽姉。『大好きだよ』って言って、腕に抱きつかないでくれ、当たってるから。何がとは言わないけどさ。

 ともあれ、焼きそばを全て食べ、タッパーをゴミ箱に捨ててから次の目的地へ移動。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 次の目的地は、射的屋だ。これは、羽姉の希望である。……てか、嫌な予感がするのは俺の気のせいか……。

 取り敢えず、金を払わけなければ何も始まらない。

 

「親仁、射的2回ぶn――」

 

「――1回分でいいですよ」

 

 ……うん、羽姉に上手く遮られたね。てか、何を狙ってるか想像ついたわ。

 ほら、あれだ。『上手く撃てないから。体を支えて的なやつ。んで、胸元が見えそうで見えないやつ』だね。きっと。

 

「蓮ちゃん蓮ちゃん。1等のやつ狙いたいんだけど。上手く銃口が定まらないから、ちょっと支えてね」

 

 ……俺の予想が的中である。てか、羽姉。俺の理性削りに来てるよね……。俺は腹を括る。

 

「こうか?」

 

 俺は、羽姉の体を優しく支える。

 

「うん、そんな感じで」

 

「おう」

 

 さて、素数を数えよう。2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37……。

 『出ました、1等賞!』と親仁の声が聞こえた。……どうやら、終わったらしい。良く耐えた、俺の理性。

 

「……はあ~、マジ疲れたわ」

 

「そ?わたしは楽しかったけど?」

 

 今俺と羽姉は、軒並みを歩いている。もちろん、羽姉の胸の中には、先程景品として取った熊のぬいぐるみが抱かれていた。

 そして、最後は祭りの目玉となる打ち上げ花火だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~丘の上~

 

「へぇ~、こんな場所があるなんて」

 

「まあな」

 

 この丘からは、花火が一望できる。あれだ。俺のリサーチの賜物である。羽姉には喜んで欲しかったしね。

 立ちながら夜空を眺めていると、打ち上げ特有の後、花火が打ち上がる。てか、ハート形とはまたベタな……。

 

「……綺麗だね」

 

「そうだな。もちろん、羽姉も綺麗だぞ」

 

「もうっ、蓮ちゃんのバカっ」

 

「ごめんごめん」

 

 俺と羽姉は向き合い、唇と唇が重なる。

 離れると、僅かに顔を紅潮させ、お互い苦笑した。

 

「蓮ちゃん。今日はありがとう。何かお返しをしたいんだけど」

 

「いや、気にするな。その言葉だけで十分だ。……後、プレゼントがあるんだ」

 

「……プレゼント?」

 

 羽姉はキョトン顔だ。

 俺は胸ポケットから、指輪の穴に細い銀色のチェーンが通ったネックレスを取り出す。

 

「それって、婚約指輪?」

 

「……うーん。…………ん、そのつもり、かな?」

 

 羽姉は苦笑する。

 

「釈然としない答えだね」

 

「絆的な感じでもあったからなぁ。本物は、俺が成人するまで待ってくれ」

 

「うん、わかった。ところで、蓮ちゃんのもあるの?」

 

「まあ一応な」

 

 そう言って、俺は首にそのネックレスをかける。てか、羽姉から貰ったネックレスもあるんだよなぁ。2つつけるのもアレだし、どうすっかな?

 

「蓮ちゃん、つけてつけて」

 

 そう言って、羽姉は後ろを向き、俺は受け取ったネックレスを首にかける。

 再び羽姉は向かい、指輪を取り眺める。

 

「綺麗だね。……うん、決めた。わたし、このネックレスずっとつけてるね」

 

「ず、ずっと!?」

 

「そうだよ。ずっとだよ」

 

「……まあいいんじゃないか。てか、そろそろ帰るか?」

 

「そうだね」

 

 この会話の後、俺と羽姉は丘から下り帰路に着く事になった。

 その間も、今日の祭りの話で盛り上がったのは言うまでもないだろう。




羽さん。ネックレスをずっとつけるという事は副担任の時もですね(笑)
つか、蓮君リア充ですね(^O^)

さてさて、次回は春ちゃんかな?
ちなみに、この小説では、春ちゃんはお祭りで迷子になってない設定ですね。小咲も、皆で祭りを楽しみました。


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第41話 水族館

更新です。


 ~とある廃墟の外~

 

「うちの野郎共に任せる事はできなかったのか?」

 

「若、覚悟を決めて下さい。始めてではないでしょう?」

 

 そう、今から俺と鶫で、ちょっとした組織を潰す感じだ。

 俺の両腰には、刀の鞘が一つずつ下げられ、鶫は胸ポケットから取り出した拳銃のアンロックを解除していた。

 

「ビーハイブの皆さんは別任務に当たっているので、人手が足りないんですから。――それに狙いは、日本に来日した領主の捕獲と聞いてます」

 

 鶫のパートナーはポーラなのだが、そのポーラも別任務に当てっている為居ないのだ。なので、俺に白羽の矢が立ったのである。……つーか、羽姉の捕獲とか……。殺していいかな?

 

「……なあ鶫。そいつら殺していいかな」

 

 俺は若干、殺気を体から醸し出す。

 

「だ、ダメです。鎮圧だけにしてください!その後は、クロード様たちに任せましょう!」

 

「…………解ったよ。まあでも、二度とそう考えられないように痛みつけておけよ」

 

「了解しました。伝えておきます。それで、どのようなフォーメーションに致しましょうか?」

 

「そうだな。俺が突っ込んで、全員を峰打ちで気絶させるから、その間飛んでくる銃弾を鶫が弾く感じでいいか?」

 

 これが無難な戦術だろう。

 

「それでは私は、スナイパーライフルも用意しときます」

 

「ああ、そうしてくれ。――んじゃ、行きますか」

 

 そう言ってから、俺は二刀を抜き放ち、鶫が「お気をつけて」と言ってからスナイパーライフルを携え、配置に向かった所で作戦開始である。

 ――俺は、木製の入口の扉を右足で思いっ切り蹴り抉じ開ける。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「なっ!誰だ貴様!」

 

「いや待て!顔を隠して、二振りの刀と言ったら、あいつしか居ないだろうが!――ビーハイブの剣舞だ!」

 

 如何にも雑魚そうなチンピラ共が叫んでる。……てか、やっぱり剣舞の二つ名って、裏では有名なのね……。

 雑魚共は、刀や鉄パイプ、拳銃を携え迎え撃つ気が満々と見える。

 

「(……こうなるから裏の仕事は好きじゃないんだけど。ま、今回は事情が事情だし、仕方ないか……)」

 

 俺は刀を構え、迎え撃つ体勢を整え、一気に駆け抜け、峰打ちで一人の意識を狩り取る。

 奴らは反撃として拳銃を発砲するが、それは的確に撃ち落とされる。……あれだ。鶫の的確な射撃には舌を巻く。

 

「なっ!?全弾、弾いただと……」

 

 俺はチンピラが怯んだ隙に、舞うように刀や鉄パイプを弾き飛ばした後、腹に峰打ちを入れて意識を狩り取る。てか、雑魚すぎでしょこいつら。

 こいつらが羽姉に手を出そうとか、反吐が出る。

 

「(……まあいいや、潰せばいい話だし)」

 

 そして、最後のチンピラを気絶させた所で、任務完了である。

 俺は刀を鞘に仕舞い、軽く息を吐く。と、その時、俺の胸ポケットに仕舞ったスマホが震える。

 着信者は、

 

 

 ――小野寺春。

 

 

 まあ取り敢えず、電話に出ないと何も始まらない。

 俺はアジトを出て、電話に出た。

 

「春ちゃんか。どうしたんだ?」

 

『先輩。明日、用事とか入ってますか?』

 

「いや、特にはないぞ」

 

『そ、そうですか。実は――』

 

 春ちゃんの話によると、商店街の福引をした所水族館のチケットが二枚当たったが、小咲や風ちゃんが用事があるので行けないらしい。

 そこで、前のお礼も兼ねて一緒にどうですか?ということらしい。

 

「俺は構わないけど」

 

『それじゃあ、水族館前に14時集合でどうでしょうか?』

 

「了解だ。んじゃ、明日な」

 

『はい!また明日です!』

 

 こうして、通話が終了した。

 ともあれ、明日の予定が決定した俺だった。んでまぁ、鶫が報告すると言う事なので、俺は先に家に帰ったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~水族館前 午後14時~

 

「お待たせしました、先輩」

 

「おー、待った待った。ちょー待ったな」

 

「……解った事ですけど、もうちょっと気の利いた言葉が欲しかったです……」

 

 肩を若干落とす春ちゃん。

 

「まあ俺だし。てか、その白いワンピース。小咲の奴か?」

 

 そう、春ちゃんの服は、小咲が前着ていたワンピースだった。ちなみに俺は、VネックのTシャツに、黒いジーパンだ。

 

「よくわかりましたね。昨日、お姉ちゃんから借りたんです」

 

「よく似合ってるよ。うん、可愛いよ」

 

「……その言葉、私以外にも言ってるんですよね」

 

 あ、あれー、何かデジャブなんだけど、これ。まあいいけど。

 

「まあな。ある人からの教えでもある」

 

「そうなんですか。立ち話もアレですし、中に入りましょう」

 

 まあそういう事なので、入口でチケットを渡し内部に足を踏み入れる。

 そして、目の前にあったのは、巨大な水槽である。小魚やサメ、エイなどが泳いでいる。

 

「……いつも思ってるんだが、よく小魚はサメに食われないよな」

 

「そのように教えられてるんだと思います。飼育員さんとかに」

 

「……それ、迷信じゃね」

 

「そうでしょうか」

 

 春ちゃんは首を傾げる。

 その仕草は、小咲のものにそっくりであった。流石、姉妹である。つか、今になって混み出すとは、予想外である。

 

「春ちゃん。手を出して」

 

「はい?」

 

 春ちゃんは、疑問符を浮かべながら右手を出す。

 俺はその手を左手で握り、

 

「な、なっ!?」

 

 春ちゃんは顔を茹でダコのように赤くする。

 

「あれ?嫌だった?」

 

「た、ただ、ビックリだけです。は、ははは」

 

 

 Side 春。

 

 先輩、ビックリするに決まってるじゃないですか。私は女子中出身で、男性に免疫がないんですよ……。てか、そういう仕草で、女の子を落としていくんです。まったく、この先輩は。

 

「なあ、春ちゃん。行きたい所あるか?」

 

「えーと、そうですね。イルカショーとかどうでしょうか?これから開演らしいですし」

 

「ふむ。良いじゃないか」

 

 ……わ、私今気づいた。こ、これってデート、だよね?

 と、とにかく、私たちはイルカショーへ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 スタジアムに向かうのに、そんなに時間は掛からなかった。

 私たちは幸運にも、最前列の席に座る事ができた。イルカショーは滞りなく進んでいったけど――、

 

『お次のショーは、お客様に手伝ってもらいたいと思います!』

 

 司会のお姉さんが周りを見渡しながら、そう呟いた

 そして――、

 

『では、そこのカップルお二方!こちらへ来ていただけませんか?』

 

 ……へ?カップル?誰と誰が?

 

「あーと、春ちゃん。俺たちの事らしい。どうする?行くか?」

 

「えっと、その……。先輩が嫌ではないなら……」

 

「俺は別に構わないけど。てか、カップルって見られるんだな。俺と春ちゃん」

 

 ……こ、この先輩は……私が意識しないようにしてる事を平然と言うんだから……。ひょっとして、女の子慣れしてるのかな?……うん、有り得そう……。タラシ先輩(私命名)だもんね。わ、私の心も盗む気ですか!?」

 

「ひでぇな。タラシ先輩とか。……まあ、否定できない俺だけど。つか、春ちゃんの心を盗むとか考えた事ないからね」

 

 私は、頬を膨らませた。

 

「知らず知らず盗もうとしてる人がよく言いますね」

 

「え?そうなの?初耳だわ」

 

「まったく、行きますよ」

 

 私は自然に先輩と手を繋いで、ステージに急いだ。先輩は、『ちょ、待て』って言ってたけど、無視である。……良いよね、こういう時だけは先輩をリードしても……。

 

『この旗をお持ちに。こちらの合図で旗を上げると、ルー君がジャンプしますので』

 

 司会のお姉さんは白い旗を私に、赤い旗を先輩に渡した。

 

『それでは二人共、手を繋いで下さ~い!……あ、ごめんなさい。既に繋いでますね』

 

 そんな事があり、私は白旗を上げ、イルカが大きくジャンプ。先輩も赤い旗を上げて、イルカがジャンプする。

 

『は~い、カップルさん。ご協力ありがとうございます!』

 

 このように、イルカショーが終了した。

 そして最後は、お土産屋さんだ。

 

「へぇ、和菓子とコラボしたキーホルダーね」

 

「そうです。珍しくないですか。私、スマホのストラップにしようかな。――先輩もどうですか?」

 

 そして、私は固まる事になる。私、今何て言った?『どうですか?』って言ったよね。

 やばいやばいやばい……。私、何を聞いてるんだろ……。先輩には、お姉ちゃんたちが居るのに……。

 

「構わないけど。……まあうん。何とかなるだろ」

 

 そう言って、先輩は私の手からキーホルダーを取った。

 それから会計を済ませ、私たちは水族館を出ました。先輩は水族館を出た後、スマホにキーホルダーをすぐに付けたけど。

 

「春ちゃん。今日は楽しかった」

 

「ええ、私も楽しかったです。先輩」

 

 きっと私は、今日という日を忘れないだろう。




次は、羽さんですね(笑)やっと出せますよ。


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第42話 サプライズ#2

早めに更新ができました。


 ~夏休み最終日、とある一軒家~

 

 俺は、2LDKのリビングでのんびりとしていた。言わずとも、羽姉の家である。てか、女の子の特有の良い匂いが鼻腔を擽るんだが……。決して変態発言じゃないからね。

 

「明日から学校か。……メンドイ」

 

「もぉ、そんな事言わないの。明日サプライズがあるんだから」

 

 羽姉ちゃんは、笑みを浮かべる。

 

「サプライズねぇ。ま、楽しみにしてるよ」

 

「……だ・か・ら、今日はお泊まりなしね☆」

 

 羽姉は妖艶な笑みを浮かべた。だがまあ、いつもの事なので俺は平然と受け流す。

 

「はいはい。そういうのは、俺が高校を卒業してからな」

 

「ぶぅー、蓮ちゃんのケチ」

 

「ケチで結構。……ほら、おいで」

 

 俺が腕を広げると、羽姉は目を細めて胸の中に飛び込み、俺は優しく抱きしめる。いつも思うけど、こうなると羽姉は年下にしか見えない。

 

「……蓮ちゃんの胸の中、暖かいね」

 

「そうか?普通じゃね」

 

 それから、数秒の抱擁をした後、俺たちは離れた。てか、羽姉。名残惜しそうな顔しないでくれ。いつでもやってやるから。

 

「蓮ちゃん。ご飯食べてく?」

 

「うーん、そうだな。……うん、戴いていくよ」

 

「ホント!?お姉ちゃん、腕を振るちゃうぞ~!」

 

 そう言いながら、羽姉は立ち上がりキッチンへ向かった。

 最初、羽姉は餃子しか作る事ができなかったが、努力の末、中華料理全般は作れるようになったらしい。

 ともあれ、俺は羽姉の作った中華料理を御馳走になり、帰路に着いた。……まあ、玄関で深いキスをされたけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 次の日の新学期。

 俺はいつも通り登校し、退屈な始業式を受け、自身の席に座り、机の上で頬杖をしていた。クラスメイトは『担任が変わるらしいよ~』『しかも、美人らしい』『ずっと副担任で回してもんね~』と言う声が聞こえる。

 そして、その人が教室に入って来ると、俺は頬杖を崩し、顔面を机の上にぶつけてしまった。……サプライズってそういう事かよ。

 その人は教壇に上がり自己紹介を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からこのクラスの先生になる――――奏倉羽(・・・)です。皆さん、よろしくね!」

 

 ちなみに、担当は英語らしい。

 ……つーか、俺を見てウインクするな……。

 

「ねぇねぇ、先生ってどこから来んですか?」

 

「これって、“(ユイ)”って読むんですか?」

 

 羽姉は、この質問に答えていく。

 ――俺は次の質問で、心臓が飛び上がる感じになる。

 

「先生が首から下げてる指輪って、何なんですか?」

 

「えっとね。この指輪は、婚y――」

 

「――羽先生。ちょっと来て」

 

 俺は立ち上がり、羽姉の右腕を優しく掴んで廊下に出る。『蓮ちゃんどうしたの~』っていう羽姉の声や、『蓮ちゃんだと!どういうことだ!桐崎弟!』って声が聞こえたが、無視である。今はこっちの方が重大事項だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「蓮ちゃん、どうしたの?」

 

 キョトン顔をしないで羽姉さんや。

 

「あのままじゃマズイと思ったから、連れ出しただけ」

 

 羽姉は、『この事?』と言って、指輪を右手で取って持ち上げる。

 

「……ああ。その指輪の事は、上手く誤魔化して欲しいです……」

 

「もぉ、蓮ちゃんったらウブなんだからぁ」

 

「ウブじゃねからな。つーか、此処は学校だからね」

 

「そうでした」

 

 そう言って、羽姉は舌を出して笑った。その表情は、誰から見ても魅力的である。

 

「……ったく、頼んだよ。羽姉」

 

 うん、マジで頼んだ。俺の平穏な高校生活に関わるかもしれないからね。

 

「しょうがないな、わかりました」

 

 ともあれ、教室に戻りました。

 ……まあ、それからの質問攻めは凄かったけど。難なく乗り越えたよ、俺。てか、姉貴と橘も羽姉と知り合いだったとは世の中狭いのね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~屋上~

 

 放課後になり、屋上には羽姉、小咲、姉貴、橘、鶫、楽が集まっていた。どうやら。この5人は約束の場所に一緒に居たらしく集まったということらしい。……つーか、俺って呼ばれる理由あったのか?うん、早く帰りたいまである。

 

「……うそ。奏倉先生もあの場所にいて、鍵まで持ってるなんて……」

 

 姉貴がそう声を上げる。まあ確かに、約束の場に6人が居て、その4人が鍵を持ってるなんて、凄い偶然である。つか、本当に偶然なのか?まあどうでもいいけど。

 

「わたしも、ビックリしたんだよ~。あの場に皆が勢揃いしてるんだもん」

 

「……口を挟んで悪い。羽姉、俺って居る意味あんの?」

 

「あるよ、蓮ちゃん。約束の場所から数キロ離れた所に、蓮ちゃんが住むお家があったんだよ」

 

 ……マジか。初耳である。でもまあ、これなら辻褄も合う。何故、俺が小さい時に羽姉と姉貴に会えた。っていうのが。

 

「……なるほどな。俺はそのまま親父に引き取られたんだな」

 

 でもまあ、羽姉と姉貴が入れ替わりで遊んで感じになったけどね。

 羽姉は頷き、

 

「うん、大当たりだよ。蓮ちゃん」

 

 俺も若干関連してたとは、意外すぎる。下手したら、小咲と橘とも会ってるんじゃね。まあ、記憶に無いからそれはないと思うけどさ。

 それからはまあ、羽姉が皆について教えてくれた。んで、肝心の鍵の事に――、

 

「あの……先生は、鍵の事……。いえ、約束の事を覚えてるんですか?私たち皆、10年前に楽と何か約束したらしいんですけど、それについて何も思い出せないんです。先生は、何か覚えてませんか?」

 

 姉貴が羽姉にそう聞くが――、

 

「あー……約束ね」

 

 右拳を口元に当て、空を見上げる羽姉。つか、俺が中国に行った時、鍵の事を少し話してたよな?――自分の鍵は、絶対に開かないって事も。

 

「ごめん、全然覚えてない。――でもね。一つ言える事は、わたしが持ってる鍵じゃ、楽ちゃんのペンダントは絶対に開かない」

 

「「「「え?」」」」

 

 ポカンとする、姉貴、橘、小咲、楽。まあ確かに、鍵を持ってる女の子が、絶対に私のじゃ開かない。って言えばそうなるも無理もないと思う。

 

「それにわたしは、既に新しい恋が始まってるしねー。――だからはい。楽ちゃん」

 

 羽姉は、左ポケットから取り出した鍵を楽に渡し、楽はそれを受け取る。楽は、この場でペンダントに鍵を入れ、錠を開けようとしたが開く事はなかった。

 羽姉は、楽を見ながら、

 

「ねっ。開かないでしょ、楽ちゃん。わたしは、約束の女の子じゃないんだよ」

 

「お、おう。そ、それじゃあ、残りは3本って事になるな……」

 

 いや、実際には橘と姉貴。どちらかなんだけど……。

 ……この際だから、楽も2人と付き合っちゃえばいいのに……。はい、すいません。一方的な押し付けだよね。

 ――その時、

 

「じ、実はわたしも、新しい恋をしてるの……。だから一条君。もし、わたしの鍵で開いても、わたしの事は気にしちゃダメだよ」

 

 そう言って、小咲は首に下げた鍵を取り楽に渡した。……つーか、小咲の鍵でペンダントが開く感じが凄ぇするんですが……。

 ま、昔は昔。今は今だしね。なんつーか、いい訳みたくなってるけど、良しとしよう。

 その後は、小咲と羽姉は質問攻めにあってたけど上手く交わした。まあこれが、羽姉が凡矢理高校の担任に就任した日のできごとであった。




楽さんのペンダントの意味が……(苦笑)
ちなみに、その後は皆一緒に帰りました。


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第43話 オウサマ

かなり久しぶりの投稿です。覚えてる人居るかな?てか、矛盾してないか不安です(-_-;)
ちなみに、蓮君と千棘は、プライバシーには深く突っ込まない事に決めてます。それ以外は普通に家族ですけどね。


 ~桐崎家~

 

 あの日から数ヵ月が経過し、今は週末の日曜日。まあ、その間に三者面談などがあったけど適当にはぐらかした。

 俺の将来は、羽姉ちゃんから叉焼会(チャーシューかい)首領(ドン)を受け継ぐ事になると思う。……俺、組織を纏められるか心配になってきたわ。また、小咲も将来は一緒に歩んでくれるそうだ。

 

「(二人には、デートの時にプロポーズをしたんだけどな。……この歳で早すぎると思うけど)」

 

 婚約指輪になる物もしっかりと渡してある。まあでも、学校では左手薬指に嵌めていけないから、俺たちはネックレス状にしてる。てか、俺の知らない間に羽姉と小咲は会ってたらしい。……正妻と愛人を決める為にお茶とか、マジかよ……。って思った。何でこう、女性の行動力は早いのだろうか?

 俺がベットの上で横になり、スマホを弄っていた時、着信音が鳴った。ディスプレイには、奏倉羽の文字だ。

 俺は通話ボタンをタップし、通話口を右耳に当てる。

 

『もしもし、蓮ちゃん。今空いてるかな?』

 

「空いてるぞ。今からデートとか?」

 

『うーん。その提案も魅力的だけど、実は楽ちゃんのお家をお掃除してたら、千棘ちゃんと麻里花ちゃんが来てね。でも、集ちゃんがそうなるように仕込んだらしいけど』

 

 集英組は一拍二日の旅行に出掛けたらしく、今日の掃除を楽の親父に頼まれたらしい。なので、楽の家に羽姉ちゃんが居るという事だ。

 んで、姉貴たちに集が、楽は現在羽姉ちゃんと二人きりだよ。と、メールを送った所、現場に急行という事だ。

 

『これを機に、皆で遊びたいなって。小咲ちゃんも呼んでさ。ほら、わたし学校の行事とかで皆と触れ合う時間があんまり無かったから』

 

 俺は上体を起こす。

 

「なるほどな。良い案だと思うぞ。今から支度をして家を出るよ」

 

『うん、待ってる。――ねぇ蓮ちゃん。わたしが楽ちゃんと居るって聞いて、嫉妬した?』

 

「……嫉妬……してるかもな。羽姉ちゃんは、誰にも渡したくなって気持ちが強いよ……」

 

 まあ、小咲にも当て嵌まるんだけど。……俺、独占欲強すぎ?

 羽姉ちゃんは、クスクスと笑った。

 

『ふふ、そっか。大丈夫だよ。わたしは、蓮ちゃんものだもん。――将来を誓った仲だし、わたしの心は蓮ちゃんが掴まえてるから』

 

「……後者は良いとして、前者はちょっとな……」

 

 羽姉ちゃんは、俺の大切な人だ。もの扱いなどは絶対にしたくない。

 羽姉ちゃんは苦笑する。

 

『例え話だよ。真に受けちゃ、メッ、だよ』

 

「悪い悪い、そうだよな」

 

『うん、そうだよ。――――蓮ちゃん、愛してる』

 

「――――俺も愛してる」

 

 ……やばい、話の趣旨が変わってきてる。話を戻さなければ。

 

「じゃ、じゃあ、すぐに向かうな」

 

『……無理やり話を戻したね』

 

「い、いや、一生終わらない気がしてな」

 

『ふふ、そうかも。じゃあ、待ってるね』

 

「おう。すぐ行くよ」

 

 俺は通話を切り、支度の用意をしてから家を出た。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 楽の家に到着し、扉を叩いて玄関を入ると、既に全員分を靴が揃っていた。どうやら、俺が一番最後になったらしい。

 

「(にしても、春ちゃんと風ちゃんも居るとは以外だわ)」

 

 ともあれ、靴を脱いで廊下に上がり居間へ向かい扉を開けると皆が談笑していた。

 

「悪い、遅くなった」

 

「蓮ちゃん待ったよ~」

 

 そう言った、羽姉ちゃんの隣に腰を下ろす。てか、皆に気づかれないように密着するのね。まあいいけど。また、俺の隣に小咲だ。

 

「蓮君。久しぶり」

 

「ん、久しぶり……なのか?」

 

 俺の記憶が正しいなら、三日前に放課後デートした記憶があるんだが……。

 それにしても、小咲の黒いワンピースはかなり似合ってる。――と、その時、

 

「蓮君、どうしたの?」

 

 小咲にそう言われてしまった。誰にも気づかれないように見てたつもりだったんだが、気づかれてたらしい……。女の子って、こういう視線に鋭いよね。

 

「いや、似合ってるなって。うん、可愛いよ」

 

「ふふ。蓮君、いつも言ってるよ。その言葉」

 

「い、いやー。本当の事だし。――にしても」

 

「あ、気づいたんだ。春の服装は、わたしの白いワンピースなんだ」

 

 そう、対面に座る春ちゃんの恰好は、小咲が着ていた色違いのワンピースだったのだ。流石姉妹。かなり似合ってる。

 それからは学校の事や休日の過ごし方などの雑談となったのだが、集が『王様ゲームやろうぜ!』と言って開催される事になったのだった。

 ともあれ、開始される王様ゲーム。クジ引きの結果、王様は姉貴らしい。

 

「じゃあ、二番が五番の子を膝枕で」

 

 いやいや、姉貴。そこは王様と誰かでしょ。楽と自分が当たるのに有利なのに。……姉貴、時々抜けてるんだよなぁ。つーか、二番は俺だし。

 

「二番は俺だわ」

 

 そんな時、顔を真っ赤にして右手を挙げたのは春ちゃんだ。

 

「わ、私が五番です……」

 

 

 Side 春

 

「……やばいよ。風ちゃん。先輩の膝枕とか恥ずかしすぎる」

 

「そうだと思うけど、王様の命令は絶対だよ」

 

「そ、そうだけどぉ……」

 

 風ちゃんは、私が先輩の事を気になってる事を知っているのだ。てか、先輩が近づいてくるよ~。私の頭は、ショート寸前だ。風ちゃんも『どうぞどうぞ、蓮先輩。春の隣に座って下さい』って促してるよぉ……。

 

「嫌かも知れないけど、王様の命令は絶対だしな」

 

「そ、そうですね。王様ゲームですから!」

 

 ちょ、何で語尾を強く言ってんの私!先輩、目を丸くしてるじゃん。

 

「そ、それでは行きます!」

 

「お、おう。何か違うような気がするが。どうぞ」

 

 先輩に膝枕される私。……何と言うか、安心するなぁ……。優しく頭を撫でてくれるし、優しい瞳で見てくれるし。何だか眠くなってきちゃう……。

 

「(……お姉ちゃんと羽先生は、時間が空いた時にやって貰ってるんだろうなぁ……。何ていうか――――羨ましいかも……)」

 

 私の瞼は重くなり、目を閉じそうに……って、しっかりするのよ、小野寺春!皆の前で眠るとか、黒歴史になっちゃうじゃない!

 

「も、もういいですか。千棘先輩」

 

 ちょっと名残り惜しいけど、私は上体を起こす。

 

「うん、いいよ~。次行こう!」

 

 千棘先輩がそう言い、桐崎先輩は、『まああれだ。何か悪かった』って言って、元の席に戻った。お姉ちゃんと羽先生は『やっぱり鈍感だよ。蓮(君)(ちゃん)』的な視線で桐崎先輩を見てたけど。桐崎先輩はこうゆう事に鈍感過ぎます!私の心臓バクバクなんですからね!カッコイイ人から膝枕とか、誰でも緊張しますからね!

 

「どうだった?蓮先輩の膝枕」

 

「うん、とっても気持ち良か――って風ちゃん」

 

 風ちゃんは、意味深に微笑むだけだ。……何か、風ちゃんには一生勝てない気がしてきたかも……。私の気のせいかも知れないけど。

 そして、王様ゲームは続いていくのだった。




正妻←小咲。
愛人←羽姉。って感じです。(今の所です。途中で変わる事も有り得る)

次回は、小咲も参戦ですね(笑)
皆が居る時は、ちゃんと小声ですよ(^O^)

追記。
将来、和菓子屋おのでらは、蓮君が何とかするから大丈夫です。(権力とか色々ですね)

再び追記。
蓮君は二人に、正式にプロポーズしました。羽姉は、指輪を既に持ってましたけどね(笑)


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第44話 オウサマ#2

更新です。


 王様ゲームは、鶫と橘がキスしそうになったり、姉貴と楽が握手したりと進んでいった。

 そして、次の王様だが、

 

「あ、わたしが王様だ」

 

 そう声を上げたのは俺の隣に座る小咲だ。

 

「えっと、5番の人がこの場で好きな人を言う……とか?」

 

 何で疑問形。つか、5番俺なんですが……。マジでその質問なの?……んで、意を決して手を上げる俺。

 

「……5番は俺だ」

 

 周りからは、なんつーか、黄色い声?が凄い。小咲は、『……質問間違えたかも』って顔になってるし。

 俺は嘆息してから、

 

「まあなんだ。俺の好きな奴らは、一生懸命で時には抜けてて、誰にでも優しい。でも、甘えたがりな奴らだ。ま、そんな所が可愛いんだけど」

 

 言ってみると、似てるなこの二人。

 羽姉と小咲はバレないように顔を俯けてるけど、茹でダコののように顔だけじゃなく、耳まで真っ赤だ。これだけの情報があれば、皆気づくだろうなぁ。現に、楽以外は気づいてるらしい。……うん、鈍感は健在やね。

 

「そ、それでは蓮様。キスは済ませたのですか!?そ、それと、どのようなシチュエーションで!?」

 

 お、おう。橘は凄い形相だな。でもまあ、【楽を想ってのキスをどうするか?】っていう要素が強いんだろうなぁ。質問に答えてもいいが、羽姉たちがもっと羞恥に駆られちゃうので、橘には申し訳ないが断るか。

 

「その質問はプライバシーって事で、秘密な」

 

「……そうですか。残念ですわ」

 

「悪ぃな」

 

 それからはまあ、滞りなく王様ゲームは終わりを告げた。てか、姉貴、『私も泊まるから、蓮も泊まりなさい』とか横暴やで。ま、橘が『今日は楽様のお世話をしますわ。家族の方々は旅行なんですし』とか言わなければなぁ。という事になり、羽姉も小咲も、的な感じになり、全員が泊る事になった。

 そういう事なので、俺、羽姉、小咲は買い出しに行く事になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「初めてかもな。3人で出掛けるのは」

 

「うーん、そうかも。いつもはデートで2人きりだからね」

 

「最初の頃は、わたしが誘っても断られたんだけどなぁ」

 

 俺は羽姉の言葉に、うっ。と言葉を詰まらせる。

 

「し、仕方ないだろ。あの時は、恋愛に蓋をしてたんだし」

 

 でもまあ、それを開けてくれたのは紛れも無く、羽姉と小咲なんだけどね。

 とにかく、近場のスーパーに到着し、自動ドアを潜り内部に入る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺はカートに籠を乗せ、カートを引きながら肉売り場に居た。つーか、視線を集め過ぎだからね。まあ、超絶美人が2人居るんだから仕方ないと思うけど。

 

「蓮ちゃんは、牛肉と豚肉どっちがいい」

 

 羽姉がそう聞いてくる。

 

「いや、どっちでも構わないぞ」

 

 困ったように呟いたのは小咲だ。

 

「蓮君、それ一番困る答えだよ」

 

「お、おう。じゃ、じゃあ、簡単な生姜焼きとかどうだ?人数も多いんだし」

 

 この場では最適な答えだと思う。2人も、それでいこう。って納得してくれた。取り敢えず、今夜の献立は、生姜焼きに白米、サラダと、簡単なものになった。

 必要な物を籠に入れ、レジに向かい会計を済ませてから、レジを出た場所にある四方形のテーブルの上で購入した商品を参照した買い物袋の中に入れていく。

 うーむ、結婚したらこれが日常風景になるのだろうか?ともあれ、買い物を終了した俺たちは外に出た。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「結構買ったな」

 

「ん、みんな食べざかりだと思ってね」

 

 と、羽姉。

 

「久しぶりに腕がなるね」

 

 小咲は気合い満々である。……昔だったら必死に止めてた俺である。見た目のいいダークマターはアレのアレだしな。

 それから集英組に戻り、羽姉たちの料理を食べ順番に風呂に入って行った。んでまあ、羽姉に『一緒に入らない』って言われたが、丁重に断った。今の俺には色々と早すぎるからね。

 

「今日は、星が綺麗に出てるなぁ」

 

 縁側に出た俺がそう呟くと、後ろには風呂上がりの小咲がいた。

 

「うん、ホント綺麗……」

 

 小咲は俺の隣に腰を下ろす。

 

「そだな。でもまあ、小咲と羽の方が数倍綺麗だけど。これ、冗談抜きにな」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「……マジか。赤面するはず場面なんだけどなぁ」

 

 最初の頃だったら、小咲は間違えなく赤面してたはず。こういうのに関しての耐性が付いたのだろうか?

 

「――――蓮君、左手ちょっと貸して」

 

 俺が左手を差し出すと、小咲の右手が握られ、肩に頭が乗せられた。てか、小咲から恋人繋ぎは意外だな。

 

「急にどうしたんだ」

 

「何となく、かな」

 

 そっか。と頷く俺。

 大体1分経過した頃、俺が口を開く。

 

「……なあ小咲。後数秒で終わりな」

 

「え?なんで?」

 

 目を丸くする小咲。いやね、ここ集英組だからね。

 それに気付いた小咲は、

 

「……あはは、そうだね。ついね」

 

「気をつけてくれよ。つっても、俺らが付き合ってる事、楽以外にはバレたと思うけど」

 

 まあ、自爆要素も入っていると思うが。

 

「うん、たぶんね。でも、みんな言いふらさないと思うから、その辺は安心かな」

 

「まあそうだな」

 

 こうして、俺たちの関係が皆に知られたのであった。




付き合ってることがバレましたね(バラしたが適切かもしれんが)
次回は文化祭かな。春ちゃんも行動させなければ(使命感)

着替えは、元の服ですね。泊る感じも、ドミノ倒してきな感じで。


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第45話 文化祭

 涼やかな秋空の元、凡矢理高校は熱い盛り上がりを見せている。校舎は色とりどりの装飾が施され、生徒たちも、制服姿の者や、仮装してる者も窺える。そう、本日は凡矢理高校の文化祭である。

 そんな中、俺、桐崎蓮は開会式をサボり屋上のベンチで横になっていた。傍から見ると、完全に不良少年である。いやね、開会式とか面倒くさいじゃんか。

 ちなみに、俺の恰好は和服姿で、一言で表すと武士の恰好に近い。

 

「そろそろ開会式終わった頃か。……戻るか」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 教室に戻り、自身の椅子に着席すると、隣席に座る小咲が頬を膨らませながら俺を見る。いや、何。メチャクチャ可愛いんですが。

 

「蓮君。何処に行ってたの?」

 

「いや、開会式が面倒くさくてサボってた」

 

「……もう、そんな事だと思ったよ」

 

 そう、俺はサボり常習犯でもある。まあ、先生にはバレないようにサボっているが。

 

「悪い悪い。怒るなって」

 

「お、怒ってないもんっ」

 

「はいはい」

 

 俺は、小咲の頭をポンポンと撫でる。てか、これが日常になりつつあるんだよなぁ。

 また、俺たちのクラスの出し物は、コスプレ喫茶でもある。俺は厨房係だから、教室の端、青いビニールシートに囲まれた所から出ないけど。でもまあ、コスプレはしてくれとの御達しである。

 

「確か。小咲は俺と同じ、午前中のシフトだっけ?」

 

「うん、そうだよ。午後一緒に回ろうね」

 

「そうだな」

 

 それから、午前中の仕事に取りかかる俺たち。コスプレ喫茶の客足も上々だ。

 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 午前中の仕事を終え、俺たちは約束通り文化祭を回る事になった。

 俺と小咲は、屋台で飲み物を買い、屋上へ続く階段に座り一休み。飲み物を一口飲み、俺が口を開く。

 

「そういや、小咲が家から出る時、春ちゃんから『お姉ちゃん、私のクラスの出し物に来てね』って言われたんだよな?てか、何の出し物だ?」

 

「う、うん。春のクラスの出し物はお化け屋敷らしいんだ……」

 

 俺は、あー、と声を上げる。小咲は、大のお化けが苦手でもある。

 

「まあでも、作り物だし大丈夫だろ」

 

「そ、そうだね」

 

 という事で、空になった紙コップをゴミ箱に捨て、一年の教室へ向かう。

 

「春ちゃんはA組だっけか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「お姉ちゃん!先輩!」

 

 俺と小咲が教室の前に到着すると、教室内から春ちゃんが出て来た。

 

「すいません、すぐに案内したいんですけど、結構並んじゃってて……」

 

 春ちゃんが指差した列には、ぱっと見、20人位が並んでいる。それだけ、盛況という事なのだろう。

 列に並び、10分程経過した頃か、俺たちの順番になった。にしても「……マジ怖かった……」とか「……あれ、怖すぎだろ……」とか、終わった客の声がかなりあった。

 

「次の人どうぞー」

 

 受付の人にそう言われ、俺と小咲は教室内部に入って行く。中は薄暗く、装飾もかなり凝っており不気味である。でもまあ、俺には全然怖くないが。血生臭い経験をしてるからだろうか?

 

「文化祭にしては、結構凝ってるな。小咲は大丈夫か?」

 

「……う、うん。何とか……」

 

 言葉とは裏腹に、俺の右腕をギュっと掴んでいるんですが。てか、女の子特有のアレがあってるんですが……。まあ、小咲は、そういうのを気にしてる余裕が無いんだと思うが。

 ともあれ、歩みを進める俺たち。歩いていると、近場に備え付けられていた障子から、複数の両手が飛び出した。

 

「きゃあああぁぁぁああッ!!」

 

「うぉっ」

 

 突然の事に驚き、小咲は俺の胸の中に飛び込んで来る。驚いたのを確認してか、障子から飛び出た両手が戻って行く。

 

「大丈夫だ。俺が傍に居るから」

 

 俺は小咲の頭を優しく撫でる。小咲は、

 

「……うん」

 

 と、頷いてくれた。

 とにかく、この場で足を止めてると他の人の邪魔になってしまうので先を目指す事にする。ちなみに、小咲は俺の右腕に抱きついてる。

 

「あれだな。林間学校の肝試しを思い出すな」

 

「うん、そうだね。確か、話てれば怖くない作戦。だっけ。安直な名前かも」

 

「……それは掘り起こさない方向でお願いします」

 

「ふふ、そうだね。あの時の蓮君。かなり眠そうだったね」

 

「いやまあ、疲れたからな」

 

 にしても、2人の空間といえばいいのか、それが構築されている為、お化けが脅かしに来ても全然怖くなく無くなった小咲である。

 

「((((イチャイチャしすぎで、もう、脅かす気にもなら(ないよ)(ねぇ)……))))」

 

 お化けたちはこう思っていたらしいが、俺が気づく事はなかった。

 ともあれ、話ていたら、いつの間にかゴールが見えてきた。俺たちは教室を出て、一息吐いた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「先輩、お姉ちゃん。お化け屋敷どうでしたか?」

 

 振り向くと、そこには春ちゃんの姿が映った。

 

「良く出来てたと思うぞ。文化祭の出し物にしては、かなりレベルが高い」

 

「うん、怖かったよ」

 

 春ちゃんは目を丸くする。それもそうだろう、お化け屋敷の苦手な小咲が平然と言ったのだから。

 

「お、お姉ちゃん。もっと怖がると思ってたのに。以外かも……」

 

「隣に蓮君が居てくれたから怖くなかったんだよ」

 

「……惚気、御馳走様だよ。お姉ちゃん」

 

「そ、そうかな」

 

 とまあ、このようにして文化祭が進んでいくのだった。




文化祭は、後一話くらい続くかも。


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第46話 ミスコン

文化祭は、小野寺姉妹のターンかもです。


 お化け屋敷を終え、出し物を見て回った俺たちは、校舎外のベンチに座り飲み物を飲んでいた。ちなみに、俺がカフェオレで、小咲がメロンソーダだ。

 

「ふぅ、結構回ったな」

 

「うん、楽しかった」

 

 そう言って、小咲は微笑んだ。そして、先程配られたいた用紙に目を向ける。それは、午後最後の部であるミスコンの募集用紙だ。

 

「小咲は、ミスコンに出場するのか?」

 

「どうしよっかな。……でも、あんまり目立ちたくないんだよね」

 

 そう言ってから、小咲は俺を見る。

 

「れ、蓮君は、どう思う?」

 

「俺は見てみたいけど。可愛い衣装着るんだろ?」

 

「う、うん。沢山ある中から自分で決めるらしいよ」

 

「なるほど。コスプレ感覚か」

 

 申し込み時間は、後30分だけらしい。あれだ、ほぼ飛び入り参加的な感じになる。ミスコンって誰が出るんだろうか?にしても、審査員が楽と姉貴だとは。

 

「出てみるのもいいんじゃないか。挑戦だと思ってさ」

 

 まあ、俺が見たいってのが大半を占めてるが。

 

「う、うーん……。ん、出てみるね。蓮君はリクエストとかある?」

 

 俺は空を見上げながら、

 

「そうだなぁ。着物とかセーラー服とかナース服とか。後は――」

 

 俺はハッとした、場合によっては俺の発言は変態発言ではないだろうか?

 

「ふふ。蓮君、下心丸出しかも」

 

「……お、おう。否定ができなくて悔しいわ」

 

 小咲は立ち上がり、エントリーしてくるね。と言って、この場を後にした。という事なので、俺は一足先に体育館へ向かう。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

『えー……大変長らくお待たせいたしました。ミス凡矢理コンテスト!まもなく開催いたします!!』

 

「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」」

 

 司会の集がそう言うと、体育館に集まった男子共は歓声を上げ、集たちが実況を進める。ちなみに、俺は後方の壁に背を預け、手を前に組みながら壇上を眺めている。

 

『それでは皆さん!ミス凡矢理コンテスト、スタートで~す!』

 

 と集が言って、ミスコンが始まった。ミスコンの内容は、ステージに上がった女の子が衣装を着て、自己紹介した後、アピールを話という感じである。アピールというよりは、集の質問に答えていく。というのが正しいかもしれんが。

 そんなこんなで、俺は壇上を眺める。

 

『それでは次の方参りましょう!エントリーナンバー十一番!ご入場ください!』

 

 舞台袖から出て来たのは、着物姿の小咲だ。つーか、似合いすぎでしょ。

 

『それでは、自己紹介をお願いします』

 

『え、えーと……。2年C組の小野寺小咲と、も、申します。……ど、どうぞ、よ、よろしくお願いひまあしゅ』

 

 ……うん、まだ人前では恥ずがり屋なんだね、小咲さんや。内心では、「出場しなければ良かったかも……」って思ってるんだろうなぁ。てか、男子共の中には、鼻血を噴き出す奴とかも居たりした。

 

『おおーとっ。今ので男子の心を鷲掴みかー!』

 

 ……テンション高いな集。

 

『では、小咲さんに質問です。とても素敵なお召し物ですが、これは御趣味で?』

 

『ち、違いますっ!これはリクエストで!…………あ』

 

『最後の、“あ”とはどういう事ですか!?リクエストとは!?』

 

 これを見守ってる俺は、冷汗が額に一筋流れる。……小咲さん、上手く誤魔化してね……。うん、マジで。てか、男子共の「誰がリクエストしたんだ!」って声が凄い。

 

『お、女の子のプライバシーなので、も、黙秘します!』

 

『それもそうですね。プライバシーは大事ですから。最後に、会場の皆さんに向けて、とびっきりの笑顔を!』

 

『ええッ!』

 

 ニッコリと笑う小咲。うん、可愛いね。大半の男子は心を打たれた感じになってるし。俺が嫉妬しないかって?いやまあ、少しはするけど、将来を約束した仲だし、そこまでは。って感じだ。ともあれ、小咲の出番が終了する。

 

『それでは次の方参りましょう!エントリーナンバー十二番!ご入場ください!』

 

 ステージには、可愛らしい和装の売子姿に身を包んだ女の子が立っている。女の子の名前は――小野寺春だ。てか、春ちゃんも出場してたとは。こういうイベント事には、参加しないと思ってたからなぁ。まあでも、自分の意思で参加。って感じゃ無さそうなのは、俺の気のだろうか?

 

『和服を着こなした、何ともキュートな女の子が入ってきました!それでは、学年とお名前をお願いします!』

 

『え、えーと……。1年A組の小野寺春と、も、申します。……ど、どうぞ、よ、よろしくお願いひまあしゅ』

 

『おおーと!早速、姉妹ならではのシンクロを見せつけてくれましたー!』

 

 流石姉妹である。てか、男子共の声援が凄い……。アピールタイムとなったが、あまりの緊張で“和菓子屋おのでら”の宣伝を始めてしまう春ちゃん。

 そんな時、

 

『特別審査員の一条さんは、何か質問などありませんか?』

 

『……はい?』

 

 無難な質問をし、集たちに何かを言われている楽。

 

『コホン。……え、えーと。恋をするなら、年上と年下。どちらがいいですか?』

 

 ……まあうん、今の春ちゃんの顔は茹でダコのように真っ赤に染まってるだろう。流石に、恋愛系の質問は予想外だと思う。

 

『……と、年……上?』

 

 そう答えると、会場内は喜びと残念そうな声が響く。てか、年上か……春ちゃんは、どんな奴が好みなんだろうか?

 

『何と!春さんは年上が好みのようだ!僕もこんな後輩が欲しー!エントリーナンバー十二番、小野寺春さんでした!皆さん、暖かな拍手を!』

 

 集がそう言って、春ちゃんの出番は終了。春ちゃんは、疲れたように舞台袖に下がっていく。

 春ちゃんの次に出てきたエントリーナンバー十三番は、ポーラであり、集の質問に答えず、無言で終了となり、その後の橘は、水着姿であり、布面積が小さいということで失格。とまあ、このようにミスコンは進んでいった。んで、結果発表。

 

『それでは、結果発表!予選を勝ち抜いた2人は……――小野寺小咲さんと、小野寺春さんです。決勝戦は、姉妹対決だッ!』

 

 そう、集が宣言する。それにしても、同表でこの結果は、何かが誘導したと思えてしまうんだが……。ちなみに、俺は票を入れていない。ともあれ、ミスコン決勝は姉妹対決となるのだった。




次回で、ミスコンは終了かな(^o^)


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第47話 ミスコン#2

今回は、急展開があるかも(笑)
では、どうぞ。


『それでは、準備の為一時休憩にしたいと思います。皆様、暫し御歓談を――』

 

 集がそう締め括り、一時休憩となり、俺は飲み物を買う為体育館を出た。先程カフェオレを飲んでいたが、250mlでは足りなかったからである。

 廊下を歩いていると、控室と思われる場所の扉が開き、誰かと衝突する。

 

「せ、先輩っ!」

 

「は、春ちゃんか。誰かと思ったわ。……なんつーか、春ちゃん元気ない?」

 

「そ、そんなことないと思いますが……」

 

 春ちゃんの話によると、小咲と勝負しても負けるのがオチなので、棄権しようか迷ってるという事らしい。

 

「……でもな、春ちゃん。俺からしたら、春ちゃんは十分魅力的だし、可愛いと思うぞ」

 

「……そう、でしょうか?」

 

「おう。……でもまあ、俺が言っても説得力はないかもしれんが」

 

「タラシ先輩ですもんねっ」

 

「……満面の笑みで言わなくてもよくね、春ちゃん」

 

 だが、否定できない俺である。まあ、本当の事だから仕方ないけど。

 

「ま、まあそういうこった。だから大丈夫だ」

 

 俺がそう言うと、春ちゃんはクスッと笑った。

 それから上目遣いで、

 

「……先輩、見ててくれますか?」

 

「お、おう。見てるぞ」

 

 もちろん、小咲もな。と付け加えると、春ちゃんは頬を膨らませる。

 

「……先輩。女の子と話てる時に、他の女の子を考えるのはどうかと思いますが。ポイント低いです」

 

「悪い悪い。てか、俺、ポイント付けられるようになったのかよ……」

 

 俺が項垂れていると、春ちゃんは、でもと前置きする。

 

「先輩と話して元気が出ました。負けると思いますが、お姉ちゃんと戦ってみます」

 

「その意気だ。小咲を倒しちゃえ」

 

「……先輩は、どっちの味方なんですか……」

 

「え、えーと……両方です」

 

 春ちゃんは、ぷっ、と噴き出す。

 

「票はお姉ちゃんでいいですけど、私の応援を許可してあげます」

 

「お、おう。じゃあ、そうさせてもらうよ」

 

 そう言って、俺は踵を返し片手を上げながらこの場を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 体育館に戻り、数分が経過した時、集の放送によって休憩が終わり、

 

『さあ、最終審査の時間が迫って参りました!それでは、優勝を争う美女に登場して頂きましょう!――まずは、小野寺小咲さんの登場です!』

 

 すると、舞台袖からは、黒のセーラ服に身を包んだ小咲が姿を現す。てか、歓声が凄い……。

 

『おおーと、これは意外!なんと、セーラー服!セーラー服です!特に着飾る事の無い、オーソドックスタイプ!』

 

 それから集は、セーラー服について熱弁していく。当の本人は「これのどこがいいんだろ……」てことを思っているはず。

 これに関しては、男心って言えばいいのか、そんな感じだからなぁ。

 

『さて、次はもう一人の小野寺さんこと。小野寺春さんです!ご入場して下さい!』

 

 と、集が言っても、春ちゃんが出て来る気配がない。

 ――――それから数秒後、ハァハァという息遣いが聞こえてくる。そして、春ちゃんの衣装は――――ウエディングドレス。

 俺から一言。姉に引けを取らない可愛さ。というのが、俺の感想である。それから始まる質問タイム。

 

『それでは最後の質問です。小野寺小咲さん。春さん。現在、好きな人はいますか?』

 

 ザワザワと騒がしくなる会場。

 

『では、小咲さん。最初にどうぞ』

 

 うん、今の小咲。顔が真っ赤だろうな。

 

『……わ、わたしは……居ます……大切な、大好きな人が居ます!』

 

『……お、おおー!これは何と、小野寺小咲さんには、意中の人が居るという事だー!』

 

 会場が「誰だ誰だ!」って凄い……。……いやね、俺もかなり恥ずかしかったりする。何で?と思うが、小咲は俺を見るようにして答えたからである。てか、よく見つけられたな、俺の事。

 

『その方とは付き合っているのですか!?』

 

『ご、ごめんなさい!それはノーコメントでお願いします!』

 

『で、では、その方と出掛けた事は!?』

 

 ……マジで止めてくれ。俺のライフがゼロに近いからね。質問してる集。後で締める。

 

『……ま、まあ、それくらいなら、ありますけど……』

 

『そうですか。質問はこれくらいにしましょう。小野寺小咲さん。ありがとうございました!』

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

『次に小野寺春さん。好きな人はいますか?』

 

『……えっと……私は……その……居ます。――――私は今日、その人に見てもらいたくて、このコンテストに参加しました』

 

『おおーと!これは、小咲さんに続き、大胆発言!春さんには、現在想い人がいらっしゃるらしいです!どこの何方か存じませんが、羨ましいぞ、こんちきしょう!』

 

 ……マジか。春ちゃんには、好きな人が居るのか。誰だろうか?そして、アピールタイムが終了し集計がされた。

 

『では、集計結果が出たようです。お、これは僅差、僅差です。……第23回ミス凡矢理コンテスト、ミスの栄冠に輝いたのは……』

 

 暫しの沈黙。

 

 

 

 

 

 

 

『エントリー№12番――――小野寺春さんです!おめでとうございます!』

 

 「わああぁぁああ!」と会場が沸いた。投票用紙の感想は、まあ察してくれ。

 それから、優勝トロフィーが春ちゃんに渡される。付属として後夜祭のフォークダンスの男性パートナーを指名できるとは。にしても、毎年数々のロマンスを生み出してるとか、初耳である。

 

『毎年数々のロマンスを生み出してきた、この強制指名券!今年は誰が選ばれるのでしょう!?それでは春さん!ご指名ください!』

 

『……えっと』

 

 盛り上がりを見せていた会場が、急激に静まる。観客たちは、春ちゃんが誰を指名するのか、両耳に全神経を集中させているのだ。

 

『それじゃあ……。桐崎蓮先輩、お願いしていいですか?』

 

 ……はい?俺かい。つーか「ええぇぇぇえええ」「……桐崎弟か……。仕方ないか」って声が凄ぇ……。耳が悪くなるわ。

 

『な、なんと!春さんが指名したのは、我がクラス、2年C組の桐崎蓮さんです!……ま、まさか!?』

 

 すると、春ちゃんが苦笑した。

 

『あの、誤解しないでください。私、女子中出身で、あんまり男子の友達とか知り合いがいなくてですね。お姉ちゃん経由で知り合った、桐崎蓮先輩にお願いしたまで……』

 

 春ちゃんは言葉を続ける。

 

『ここで好きな人指名したら告白同然ですよ!?それに、私にそんな事が出来る訳ないですから!』

 

 春ちゃんの言葉を聞き、次第に「そりゃそうだ」とか「ごもっともです」とかの言葉が飛び交い、会場が笑いに包まれる。ともあれ、拍手と共に、ミス凡矢理コンテストは閉幕したのである。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 Side 春

 

「お疲れ様、春」

 

 私が振り向くと、風ちゃんが微笑んでいた。

 

「まさか、優勝しちゃうとはね」

 

「あ、あははは、偶々だよ」

 

「私は、必然だったと思うよ。春ってば可愛いんだから、もっと自分に自信持った方がいいよ」

 

「うぅ……そんな事言われても……」

 

 風ちゃんの次の言葉で、私の心臓が飛び上がる感覚に襲われる。

 

「ねぇ春。あの時の言葉、本当は照れ隠しなんでしょ?」

 

「……風ちゃんは、何もかもお見通しなんだね……」

 

「……告白、するの?」

 

「う、うーん。微妙な所かな。先輩、彼女居るし」

 

 あ、口が滑ったかも……。風ちゃん、目を輝かせてるし。

 

「誰っ誰っ?蓮先輩の彼女って?」

 

 一人だけなら、いいよね……。先輩、お姉ちゃん。ごめんなさいっ!

 

「えっと、私のお姉ちゃん、かな……」

 

 目を丸くする風ちゃん。

 

「……蓮先輩やるね。小野寺姉妹を落とすなんて」

 

 うん、姉妹って似るのかもね。……告白かぁ。どうしよう。――――うん、決めた!

 それから、風ちゃんと話していたら後夜祭の時間になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「先輩」

 

 俺が星を眺めていると、後方から声が届く。振り向くと、春ちゃんは此方に歩み寄る。

 

「踊りましょうか」

 

「そだな。んじゃ、行くか」

 

「はい」

 

 俺が春ちゃんと手で繋ぐと、ビクッと春ちゃんの肩が震える。

 

「あ、悪い。嫌だったか?どうせ繋ぐからと思ってな」

 

「い、いえ、嫌じゃないですけど、フォークダンスは繋ぐというか添えるというのが正しいかと」

 

「……マジか。フォークダンス小さい時からやってないからさ、ド忘れしててな」

 

「そうだったんですか。先輩、行きましょう」

 

「そだな」

 

 俺たちが向かう先は、燃え上がるキャンプファイヤーの周りであり、フォークダンスを踊る者は、男女ペアになり並んでいた。

 踊り方をド忘れした俺は、春からレクチャーを受けた。それから、BGMが流れフォークダンス開始である。

 

「こうか?」

 

「お、先輩上手いです。そんな感じです」

 

 話ている内に、フォークダンスが終わりを告げた。俺と春ちゃんは、キャンプファイヤーから離れ、少し奥の方で腰を下ろし星を見ていた。

 

「そういえば、先輩。お姉ちゃんはどこに行ったんですか?」

 

「ああ。小咲なら、るりと羽姉の所だな。3人で後夜祭じゃないか?」

 

 春ちゃんは、なるほど。と言い頷き、暫しの沈黙が流れる。

 それから、春ちゃんが意を決したように口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

「……先輩、あの時の私の言葉覚えてますか?」

 

「あの時?……ああ、体育館での事か。覚えてるよ」

 

「実はあれ、ある人に贈った言葉でもあるんです。――――先輩、あなたにです」

 

「俺?」

 

「そうです、先輩。先輩は鈍感なんで、私、ハッキリいいますね」

 

 春ちゃんの声は、僅かに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――蓮先輩。大好きです。思えば、あの時からだったかも知れません」

 

 あの時とは、落し物の件の事だろう。また、周りは緊張に包まれている。

 

 

 

 

 

 

 

「―――俺も春ちゃんを嫌いじゃない。どちらかと言えば、好きだな。でもな、俺は最低野郎だぞ」

 

「構いませんよ。私は、先輩を好きになったんですから。――――先輩、私とも付き合ってください!」

 

「……三股野郎になるけど、いいのか?」

 

「さっきも言いましたが、構いませんよ。私、先輩がどんな人でも、この気持ちは変わりませんから。それと、お姉ちゃんたちより、メロメロにさせてあげますよ」

 

 ……何というか、女って強い生き物だな。って思い知らされた。それに、今のセリフも小咲にそっくりである。つか、最後の言葉は、ある意味宣戦布告に聞こえたんだけど、気のせいだよね?

 

「そっか。これからよろしくな、春ちゃん」

 

 春ちゃんは、「はい!」と頷いた。

 

「あと春ちゃん。先輩と敬語は止めにしないか?」

 

「じゃあ、蓮さん。これからよろしく。でどうかな?」

 

「いいと思うけど。蓮でいいぞ」

 

「えっと、そこはまだちょっとって感じかな……」

 

「まあ、そこは追々でいいか」

 

 学校とか、知人の前では敬語という事になった。

 それから、羽姉と小咲に報告した所、簡単にOKが返ってきた。遅かれ早かれ、こうなる事は予想してたらしい。なんつーか、女子って色々と凄いわぁ。って思った瞬間でもある。

 あとあれだ、将来の為にも、俺が“和菓子屋おのでら”を買っちゃおうかな。俺の傘下から経営する感じにしてさ。そうすれば、小咲も春ちゃんも色々と楽になりそうだしね。まあ、まだ買い取らないけど。

 ともあれ、こうして凡矢理高校の文化祭が終わりを迎えたのだった。うん、色々あった文化祭だった。




急展開でしたかね?でもまあ、春ちゃんも、蓮君と付き合うことになりました(^O^)/蓮君と春ちゃんは、これからお互いの事を知る感じですね。蓮君、春ちゃんにすぐに落とされそうですね(笑)

てか、ニセコイ小説(原作でいうと、現在は15巻)も、後、半分ちょっとって所ですかね。原作は25巻までなので。
ではでは、次回も宜しくです!


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第48話 遊園地

更新です(^O^)今回は、春ちゃんのターンです(笑)


 ~週末の日曜日~

 

 手を繋いで入場するカップル、子供の手を引く家族連れなど、俺が待ち合わせをしている場所では賑わっていた。

 

「蓮さん、お待たせです」

 

 待ち合わせ場所までパタパタと駆け寄りそう言ったのは、長袖のカットソーにモコモコのニットカーディガン、スカートにブーツを着こなした春ちゃんだ。ちなみに俺は、ジャケットにVネックTシャツ、デニムにスニーカーである。

 

「おう」

 

 俺は左手を挙げる。

 

「春ちゃん、何か大人っぽいな。うん、可愛いよ」

 

 春ちゃんは、頬を僅かに赤く染めた。

 

「そ、そうかな。…………ありがと、蓮さん。大好きです」

 

「おう。俺も大好きだぞ」

 

 春ちゃんは目を丸くし「聞こえてたの……」と言いたい表情である。まあうん、俺は難聴主人公じゃないから、しっかりと聞き取れる。

 

「春ちゃん、行くか」

 

「そうだね、蓮さん」

 

 俺と春ちゃんは歩き出し、入場口で切符購入し、ゲートを通ってから恋人繋ぎで手を握った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「さて、まずは何処に行きたい?」

 

「お化け屋敷とかどうかな?」

 

「いや、良いと思うけど、春ちゃんは大丈夫なのか?ほ、ほら、姉妹は似るっていうし」

 

 ちょ、脇腹を抓ないで。痛い、痛いからね、春ちゃん。

 

「……先輩」

 

「ご、ごめん。今は、春ちゃんとデートだったよな」

 

「……先輩は、まったく」

 

 溜息を吐く春ちゃん。

 

「と、とりあえず、お化け屋敷に行くか。う、うん、そうしよう」

 

 春ちゃんが、「逃げたね」って小声で言ってたけど、スルーの方向で。

 ともあれ、お化け屋敷に向かう俺たち。その間春ちゃんは、肩に体重を預けるように俺の手を組んでいました、はい。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~廃墟、お化け屋敷内部~

 

 俺と春ちゃんが入ったお化け屋敷は本格的なものだった。周りは薄暗く不気味である。すぐにでも何かが飛び出してきそうである。

 

「ちょ、春ちゃん。くっつきすぎだ。当たってる、当たってるからね。役特だけどさ」

 

「い、今は許してあげるから……。蓮さん、私の事離さないで……」

 

 「私、作り物のお化け屋敷なんて怖くない」って意気込んでたけど、それは完全に崩れ去ったと窺える。でもまあ、これは男性でも怖がるお化け屋敷だろう。え、俺か?俺は血生臭い経験があるから、耐性がついたのかもなぁ。

 

「……れ、蓮さんは怖くないの?」

 

「おう、まったく怖くない。俺の場合は一度きりだけど修羅場に遭遇したからな。その賜物って所か」

 

「それって、蓮さん一人で組織を潰した時の事?」

 

「まあな。それで、剣舞っていう二つ名がつけられた」

 

「……もう、危ない事はしないでね」

 

 その声音は、本当に俺を心配してるようだ。不謹慎かもしれないが、メチャクチャ嬉しい。

 

「まあ心配するな。ここ数年は小さな組織を潰す手伝いくらいだ。俺も裏の事は避けてるから大丈夫だ」

 

 ちなみに、俺と張り合えるのは幹部クラスの奴だけだろう。そして俺は、殺傷はしないと決めている。まあ、峰打ちで気絶位は実行するけど。

 

「……それ、ホントに大丈夫なのかなぁ……。私、かなり心配なんだけど……」

 

「まああれだ。お前らに心配かける事はしない…………はずだ」

 

「むぅー、その間はなんなのさ」

 

「い、いや、もしもの保険だよ」

 

 話していたら、いつの間にか前には光が差し込んでいた。

 どうやら、ゴール地点に到着したらしい。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「はあ、途中まで怖かったー」

 

「中盤からは、ずっと話してたしな」

 

「はい、蓮さんのお陰だね」

 

 そう言って、春ちゃんは俺の頬にキスをした。……うーむ。付き合うようになってから、春ちゃん大胆になったよな。だけどまあ――、

 

「うぅ……。恥ずかしい……」

 

 とまあ、このように顔を真っ赤にして自爆してしまうんだが。まあ、これも含めて可愛いけど。

 

「アホ。恥ずかしいならやんなければいいのに」

 

「う、うん。そうなんだけど。蓮さんをメロメロにしたくて」

 

 俺は盛大に溜息を吐く。

 それから、右手掌を春ちゃんの頭に優しく乗せた。

 

「まあなんだ、俺は春ちゃんにメロメロだぞ。俺は春ちゃんとずっと一緒に居たいとも思ってるし、一緒に歳を重ねたいとも思ってる」

 

「わ、私もそうだけど」

 

「だろ。思ってる事は同じなんだ。焦る事もないし、無理に大人ならなくてもいい。それぞれのペースがあるしな。…………あれ、話の趣旨が違うような……気のせいか?」

 

「ふふ、少しだけずれたかもね。でも、ありがとう」

 

 春ちゃんは、俺の肩に体重を預け、右肩にコテンと頭を乗せた。……まあなんだ、かなり近いしメチャクチャ良いに匂いがするんだが……。

 

「今後はどうしようか?春ちゃんは、何か乗りたいアトラクションはあるか?」

 

「ジェットコースターとかどうかな?」

 

 春ちゃんが言ったジェットコースターは、ここ最近リニューアルしたばかりでかなりの人気らしい。

 

「いいけど、春ちゃんは絶叫系いけるのか?」

 

「た、たぶん、大丈夫」

 

「お、おう。何か曖昧なのな」

 

 と、いうことなので、俺たちは立ち上がりジェットコースター乗り場へ向かうのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 結果からいうと、「きゃぁぁアアアあああっ!」と春ちゃんの絶叫が凄かった。まあ俺に関しては、「へぇ、かなり良く出来てるんだなぁ」という感想だったが。

 そして、休憩してから乗ったコーヒーカップでは、ハンドルを回すぎて、2人とも気持ち悪くなりました、はい……。

 まあ、そこからも様々なアトラクションに乗った。空中ブランコとかパレードラン?的なやつとかだ。

 そして、遊園地の最後といえば――観覧車である。

 

「夕陽が綺麗だな」

 

「そうだね。空がオレンジ色の絨毯みたいに輝いてる」

 

 観覧車に乗り、軽く笑い合いながら空を見ながらそう呟く。

 

「……蓮さん、今日はありがとう。とっても楽しかった」

 

「ああ、俺も楽しかったぞ」

 

 今日の事を話している内に、――――観覧車は頂上へと到達した。

 

「……蓮さん、隣座ってもいい?」

 

「……ああ」

 

 そして、俺たちは見つめ合い唇が重なった。――――長いソフトなキスだった。まるで、お互いの体温が伝わるように。

 

「……しちゃたね、キス。ちなみに、ファーストキスだよ」

 

「えっと、ありがとう?でいいのか?」

 

「その辺はお任せするよ」

 

 春ちゃんは苦笑し、俺も釣られるように笑った。――――そして、再び唇が重なる。キスを終えると、俺たち互いの体温を感じるように抱き合った。

 抱擁を解いた俺は、

 

「これからもよろしくな、春ちゃん」

 

「こちらこそ、蓮さん」

 

 幸せを噛み締めるように、俺たちはそう呟く。――――今日という日は、俺たちの思い出に刻まれただろう。俺たちは、そう思う一日だった。




これで、羽姉、小咲、春ちゃんとのデート風景を書く事ができました。そろそろ、三人同時も書かなければ。(使命感)でも、かなり難しそうだが……。書かなかっただけで、普通にデートはしてるんですけどね(笑)
てか、原作はアレのアレのアレでしたからね……(-_-;)


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第49話 アルバイト

投稿です。


「蓮君、明日のお休み時間あるかな?」

 

 俺が呼ばれたのは、午前の授業が終了し教材を机の中に片付けている時だった。

 

「明日か。……うん、空いてるぞ。どうかしたのか?」

 

「えっと、実はバイトを頼みたくて」

 

「バイト?」

 

「う、うん。温泉旅館でのバイトなの」

 

「ふむ。温泉旅館ね」

 

 とまあ、日時等の約束をして俺はOKを出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 土曜日。小咲と俺はバスに乗って目的の温泉旅館へ向かっていた。

 

「うちが和菓子を卸してる旅館なんだけどね。親戚のおばさんがそこの女将さんをやってて、この時期は人手が足りなくなるの。わたしも何度かお手伝いに行ったことがあるんだ」

 

「なるほどね。つか、俺なんかで良かったのか?接客スキルとかほぼないぞ、俺」

 

「そこは大丈夫かな。蓮君に頼むのは力仕事だと思うから。……それに、完全に心を許せる男の子は蓮君だけだし」

 

「……まあなんだ。そこまで信用してくれてありがとな」

 

「当然だよ。将来は一緒になる仲なんだから」

 

 うん、面と向かって改めて言われると、何だか恥ずかしい。

 

「それに蓮君。わたしたちの予想通り、春も落としちゃったんだね。蓮君、ハーレムだね」

 

 小咲は苦笑した。

 

「あー、まあ、うん、そうだな。でも、皆幸せにするって誓うよ」

 

「ふふ、そこは心配してないから大丈夫だよ」

 

 小咲は小さく欠伸をした。

 どうやら、今日の準備等で寝るのが深夜になってしまったらしい。

 

「寝ていいぞ。教えてくれた駅に着いたら起こすよ」

 

「……う、うん。じゃあお願いね」

 

 そう言ってから、小咲は俺の肩に体重を預け眠ってしまった。結構疲れが溜まっていたのだろう。

 それから数分後、バスが目的の駅に到着し、バスから下りて数分歩くと、旅館に到着した。

 正面から旅館へ入いると、花柄の着物をきた女性が此方に歩み寄る。どうやら、この旅館の女将さんらしい。

 

「いらっしゃい、小咲ちゃん!久しぶり!いつも悪いわね~」

 

「こんにちはおばさん!今日はよろしくお願いします!蓮君、此方はこの旅館の女将さん」

 

「桐崎蓮です。本日はよろしくお願いします」

 

 業務的な自己紹介になってしまったが許して欲しい。俺、あんまり対人スキルがないからね。

 女将さんは、ニヤニヤ笑い、

 

「桐崎君って、小咲ちゃんの彼氏?」

 

 顔を真っ赤にする小咲。

 

「まあ、はい。そうです……」

 

「女将さんもからかうのは程々にお願いしますね。小咲、まだ耐性がないらしいので」

 

「あら、そう。残念。じゃあ、早速で悪いけど仕事に入ってもらうわね。まずは着替えてから、後で小咲ちゃん、色々教えてあげてね」

 

「は~い」

 

 ともあれ、挨拶を終え俺たちは別々の部屋で仕事着に着替える事に。つっても、和服に近いんだけどね。

 

「さてと、行くか」

 

 着替え終わった俺は、部屋の襖を開け廊下に出る。

 

「蓮君、お待たせ。どうかな?」

 

「あー、うん。可愛いぞー」

 

「ちょ、棒読みすぎないかな」

 

「冗談、冗談だって。かなり似合ってるよ」

 

 うん、最早女神だね。

 

「ありがとう。――じゃあ、早速だけど仕事の説明をするねじゃあ早速仕事の説明するね?こっちに来てくれる?」

 

「おう、了解だ」

 

 俺が小咲に案内されたのは、ある一部屋だ。どうやら、最初の仕事はこの部屋の掃除らしい。

 小咲は畳んだ布団を持ったが、意外に重かったらしく足元がふらふらしてる。ちなみに、俺は使用済みの湯飲みなどをお盆に乗せている。

 

「おっとと……」

 

「あ、そういうのは俺やるぞ。せっかくの男手なんだろ」

 

 俺は立ち上がり、小咲の元まで歩み寄るが、小咲は足元のシーツに足を捕られ体勢を崩してしまう。

 

「ありがと。じゃあお願い……きゃっ!」

 

「小咲!」

 

 俺は傾く正面を支え、布団は後方へ崩れ落ちていく。だが、馬乗り状態になってしまったのだが……。

 

「ったく、危ねぇぞ」

 

「う、うん。……ありがとう」

 

 ……まあうん、この状況は俺が色々とマズイ。

 

「わ、悪い、すぐに退く」

 

「……ねぇ蓮君。キス、してもいいよ」

 

 俺は僅に逡巡したが、唇を重ねた。

 

「「ん……」」

 

 ま、マズイ……。これ以上は本当にマズイ……。そういう雰囲気が流れてる……。てか、俺、高校卒業するまで持つのか心配になってきたわ……。

 とりあえず、俺と小咲は上体を起こす。

 

「さ、さて、仕事再開といきますか」

 

「そ、そうだね」

 

 ともあれ、俺たちは仕事を続け、夕暮れになってしまった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 縁側で休んでいると、小咲が慌てて此方にやって来る。

 

「蓮君!大変だよ!」

 

「大変?」

 

 

 ~厨房~

 

 話を聞くと、板前さんが腰を痛くして作業が中止になってしまったらしい。また、今日に限って替わりの板前さんも居ないらしい。

 「大丈夫だ」と板前さんは言っているが、何処からどう見ても大丈夫ではない。

 

「困ったわねぇ……。もう夕食の準備を始めなきゃいけないのに……」

 

 すると、小咲が、

 

「女将さん、板前さん。わたしと蓮君ならできます!」

 

 いやいや、小咲さん。その自信は何処からくるの?

 

「こう見えて、わたしたち料理には自信があるんです。やらせて下さい!」

 

 だが、そう簡単にはいかなかった。

 

「けっ、板前を舐めんなよ嬢ちゃん。ガキのままごとで務まるような、そんな甘っちょろい世界じゃねえんだ」

 

「できます!」

 

 こうなってしまうと、小咲は意見を曲げない。簡単に言えば、頑固になるのだ。

 俺は覚悟を決め、

 

「俺たちが板前さんの代わりになれるとは思いません。ですが、やらせて下さい。仰って頂いた事はちゃんとやります」

 

「お願いします!」

 

 頭を下げる俺たち。

 

「……手加減しねぇぞ」

 

「「望むところです」」

 

 手を洗い、食材を準備してから作業を始める。

 そして、俺たちみながら目を丸くする板前さん。

 

「……てめぇら、本当に料理初心者か」

 

「いや、俺は子供の時から作ってまして」

 

 ほぼ野郎共にですが。あいつら、料理できねぇし。

 

「わ、わたしは独学です。……わたし、料理が壊滅的だったのでかなり頑張りました!」

 

 女将さんも「まあ、この旅館に就職してくれないかしら」とか言ってるしね。

 てか、料理の技量は俺の方が上でも、飾り付けとなると小咲には負けるけど。

 

「それじゃあ、最後の飾り付けだ。てめぇら、できるのか?」

 

「何とかできます。小咲には負けますけど」

 

「ふふ、料理の技量は蓮君の方が上じゃない」

 

「まあそうだけど」

 

 まああれだ。傍から見たら夫婦に見えるのは気のせいじゃないのかもしれん。

 ともあれ、作業を続ける俺たち。

 

「ほぉ~!お前ら、オレの弟子になる気はねぇか?」

 

 俺たちの腕前に、板前さんは愉快に笑うだけだ。

 そして料理が終わり――、

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「あー……。疲れたわ」

 

「うん、すごくドキドキしちゃった!」

 

 無事料理を作り終えた俺たちは、玄関前で腰を落としていた。

 

「にしても、此処で俺の料理スキルが役に立つとはなぁ」

 

「わたしの方も同感だよ」

 

「さて、帰ろうぜ」

 

「そうだね。女将さんに挨拶をして帰ろっか」

 

 立ち上がり、女将さんに挨拶をしてから俺たちは着替えバス停へ向かう。

 最終バスは十九時だ。ギリギリ間に合うだろう。

 ともあれ、今日色々あったが、楽しい一日になったのだった。




混浴は書きませんでした。もう将来は決まってるんで、書かなくていいかなーと思いまして。

次回も早く投稿できるように頑張ります!!


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第50話 修学旅行

自由行動は二日目からです。


 ~四時限目のHR~

 

「修学旅行の班決めねぇ。自由に決めたらダメなのか?」

 

「平等にクジ引きで決めるらしいわよ、蓮!」

 

 修学旅行は一泊二日らしい。んで、今日は集団行動の班決めである。つーか、班決めは今年から完全クジ引き制になったらしい。

 すると、ひそひそ声で小咲が、

 

「(ね、自由行動では二人で行動する?)」

 

「(……前の小咲からは想像できない発言だな)」

 

「(えっへん!女の子は日に日に強くなるのだ)」

 

「(……小咲さん。それ、キャラ崩壊してるよね。ま、自由行動では二人で回ろうか)」

 

 まあでも、話によると恋愛祈願の神社に行きたいらしい。『必要なくね』と言った所、『女の子はこういうのは気になっちゃうの』って事らしい。形だけでも。という意見もあったけど。

 ちなみに、クジ引きの結果は、楽を除く俺たちはいつものメンバーである。楽は、完全にいじけてしまっている。……まあうん、ドンマイ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~修学旅行、当日~

 

 俺は現在、新幹線の通路側に座り外を眺めていた。

 ちなみに、席はボックス席であり、姉貴、小咲、俺、楽である。隣のボックス席は、集や橘たちである。

 

「見て見て、蓮君!富士山だよ!写真撮ろうよ!」

 

「あ、ああ。構わないぞ」

 

 そう言ってから、小咲は姉貴にデジカメを渡す。でまあ、俺が窓際に移動し、富士山が後ろになるようにする。あれだ、ほぼ密着状態である。

 姉貴の「ハイ、チーズ」という合図の元、写真が撮られた。

 それからも談笑をし、時間を潰しながら京都駅に到着し、清水寺、北野天満宮など、京都の名所に回ってから、予約したホテルで一泊した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~修学旅行、二日目~

 

 現在、いつものメンバーは阿波弥大参寺という寺に訪れていた。まあ、2人行動で向かった先に、皆が居たって感じなんだが。

 

「で、ここは何の寺なんだ」

 

「わたしが恋愛享受のお寺があるって言ったでしょ。そこの寺が此処だよ」

 

「なるほどね。だから、橘と姉貴はあんなに必死なのな」

 

 そう、姉貴と橘は、恋の矢?的な物を楽にぶっ放している。なんつーか、縁結びに強力な矢だとか。

 

「んで、小咲は見てるだけでいいのか?」

 

「う、うん。もう結ばれてるしね。お守りを買うだけでいいかな」

 

「お、おう。そうか」

 

「うん!羽さんと春の分もどうかな?」

 

「そうだな。いいんじゃないか」

 

 そう言ってから、お守りを買いに行く俺たち。にしても後ろでは大乱闘?が行われているが放っといていいのだろうか?まあ、あの中に飛び込む勇気は持ち合わせてないけど。

 ともあれ、その場を後にする俺たち。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 阿波弥大参寺を後にした俺たちは、ホテルに戻ろうとした時に、その途中の大通りで着物レンタル店を見つけた。

 

「着物レンタル店か……記念に写真でも撮るか?まあ、小咲は着物を着たばっかりだけど」

 

「全然構わないよ。蓮君は、袴って事だよね?」

 

「まあ、置いてあればだけどな」

 

「そっか。なら、行こうよ」

 

 それから俺たちはレンタル店へ入って行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 店内を回って見つけたのは、黒色の袴と、ピンク色を基調にし様々な花があしらってある着物だ。

 

「んじゃ、俺はこれにするな」

 

「じゃあ、わたしはこれだね」

 

 という事なので、選んだ着物、袴を持って試着室へ入っていく俺たち。

 着替えが終わり、数分待合い椅子に座り小咲を待っていると、着替え終えた小咲が此方にやって来る。

 

「ど、どうかな?」

 

 振り向いた俺はフリーズしてしまった。――そう、小咲の顔は薄く化粧が施されていたからだ。……つーか、俺の理性がガリガリ削られていく……。

 

「れ、蓮君?」

 

「お、おう。似合ってるぞ。可愛いよ」

 

「そ、そっか。よかった……」

 

 安堵の息を洩らす小咲。

 まあうん、俺も安堵の息を洩らしてたんだけどね。……でもなあ、高校中で色んなものを卒業しそうだわ、俺……。

 

「んじゃ、写真撮りに行こうぜ」

 

「うん、そうだね」

 

 俺たちは再び手を繋ぎ、撮影場所へ向かった。

 写真を撮り、春ちゃんたちにお土産を購入し、旅館に戻った。

 ともあれ、こうして俺たちの修学旅行の幕が閉じたのだった。




うん、短いね。でもまあ、次回の転校の話が大きくなるような気がするし、いいよね。的な感じです(-_-;)
羽姉ちゃんや春ちゃんのターンが先になりそうだなぁ……。

ではでは、次回も宜しくです!!


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第51話 テンコウ

更新です。


「修学旅行が終わって突然ですが、大切なお知らせがあります。――桐崎千棘さん、桐崎蓮さん、鶫誠士郎さんが、今週を最後に転校する事になりました。お家事情でアメリカに再び帰るとの事で」

 

 羽姉はこう言っているが、俺は絶対に日本から離れないけど。恋人を置いて遠くへ行くとか論外だし。

 まあ、家は羽姉の家に居候。一人暮らしでもOK。金は一人分の貯金はあるし、ビーハイブに居られなくなっても、叉焼会(チャーシューかい)に世話になればいい事。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌日昼休み、屋上~

 

 俺、小咲、春ちゃんは手摺に手をかけながら景色を眺めていた。

 

「蓮君は、引越しどうするの?」

 

「ん、ああ。行かないよ。一人暮らしか、羽姉の家に居候を考えてる」

 

 ホッとする彼女たち。つか、離れる訳ないじゃん。

 

「全然OKだよ。むしろ推奨だよっ」

 

 羽姉は、俺の居候に賛成らしい。……つか、今思った。俺、色々と大丈夫か?

 

「蓮さんは私が最初に好きになった人だから、離れたくない」

 

「大丈夫だ、春ちゃん。俺は三人の前から絶対に居なくならないから」

 

 まあうん、今の状況からしてイチャつきたいんだが、如何せん、此処は皆が勉学に励む学校である。放課後まで我慢我慢……。ともあれ、昼食は三人で摂りました。

 それからはまあ、羽姉とは時間差で、小咲と春ちゃんとは同じに屋上を後にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~桐崎家、書斎~

 

 俺がノックして親父の部屋に入ったら、姉貴が親父に喰ってかかっていた。

 状況から察するに、引っ越したくないんだろうなぁ。皆(特に楽)と離れ離れになっちゃうし。

 

「悪い、親父。俺、日本に残るわ」

 

「それは……」

 

 まあ、血が繋がってないとはいえ、俺、親父の息子だし、家族だから心配なんだろうなぁ。

 でもまあ――、

 

「警備等の心配しなくていいぞ。俺は叉焼会(チャーシューかい)に身を置くからさ。一人でやってける金もあるし、世話になる場所も叉焼会(チャーシューかい)の首領の所だし」

 

 うん、完璧。親父とクロードも、『……なるほど。それなら問題ないかも』的な感じだし。

 俺の方は何とかなりそうだけど、姉貴はどうなるか解らない。俺のように、強力な反撃材料がないのだ。

 

「(……ポーラも転校ってなるのか……。でも、今の俺じゃ自分の事で精一杯なんだよな……)」

 

 姉貴は、鶫が一緒に居れば何とかなると思ったが、鶫は本当の最終防衛ライン。組織が束になって襲って来たら多勢に無勢に落ちいるのは目に見えていた。なので、引越しの話は揺るがないのだ。

 それからも、姉貴は親父に喰ってかかっていたが、結果が覆る事はなかった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌日。屋上~

 

 翌日の学校は、クラスは桐崎家の引越しの話題で持ちきりだった。おそらく、春ちゃんのクラスもポーラが居るのでそうだろう。

 ともあれ、俺と楽は、屋上の手摺に腕を組みながら景色を眺めていた。

 

「で、楽。姉貴とはこのままでいいのか?」

 

「どうするもこうするもねぇよ。親父たちが決めた事なんだろ?てか、蓮も転校するんだろ?」

 

「俺はしないぞ。まあ、俺の場合はだが」

 

「え?まじ?じゃあ、千棘も?」

 

「それは解らん。俺の場合は、裏のパイプが結構あるから何とかなるんだよ」

 

 まあ色々とギリギリだったけど。

 

「俺にできる事があったら言ってくれ、協力するぞ」

 

 そう言ってから、俺は屋上を後にした。

 あれからも、姉貴は様々な手段を講じたが、クロードが首を縦に振る事はなかった。

そして、時は経過し数日後。てか、お別れパーティーも開かれるらしい。俺、違う高校に編入するかも知れんが、一生のお別れじゃないし、行かなくてもいいよね。って感じである。

 と、廊下を歩いていたその時、右ポケットに入れたスマホが震えた。手に取りディスプレイを見ると『姉貴』の文字。

 とにかく、窓際に移動し通話ボタンをタップし、右耳に当てる。

 

『蓮!私も居候する事にしたわ!』

 

 姉貴の開口一番がこれだった。つか、居候?何処に?

 まさかだと思うけど――、

 

「姉貴。もしかしてそれって、集英組にって事か?」

 

『ええ、そうよ。あの時、一人暮らしの時も、署名の件の時も、警備がどうのこうのって断られたでしょ。なら、私を守ってくれるよう集英組に居候すればいいだけの話なのよ。どう、名案じゃない?』

 

「……名案かも知れんが、俺も似たようなものだし。まあでも、資金面とか違う方向を指摘されたらどうすんだ?俺の場合は、其れなりに蓄えとか、身を守る術。叉焼会(チャーシューかい)に身を置くとか。それなりの反撃材料があったからいけたけどさ」

 

『うッ!そ、その時はその時よ!』

 

 ……うん、そこまで考えてなかったんだね、姉貴。

 んで、楽と電話を変わるらしい。

 

『もしもし、蓮か。今の話どうだ?』

 

「いや、いけると思うけど。その策だけじゃ穴が空きすぎじゃないか?まあ、現状ではそれしかないと思うけど……つーか、本気、なんだな……」

 

『……ああ、千棘は本気らしい。だから蓮、これが成り立つように協力してくれないか?』

 

「……まあ、あの時できる事は手伝うって言ったしな。協力するよ。てか、親父たちには伝えるのか?」

 

『いや、何も言わず、鶫と転がり込むらしい』

 

「……マジか。ほぼ家出同然じゃんか。まあいいか。そこまで本気って事だろ」

 

『ああ、頼む』

 

「了解だ」

 

 通話を終え、すぐさま行動に移す俺たちであった。




蓮君。反撃材料がかなり強力ですね(笑)
さて、次回も続きになりそうです。

ではでは、次回もよろしくです!!


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第52話 カイケツ

久しぶりの更新です。


 やって来ました、集英組。

 俺と楽は、集英組の玄関前で、姉貴たちの到着を待っていたが、待ち合わせ時間になっても、姉貴たちは姿を現さない。

 

「……なあ蓮。千棘の奴、ドタキャンとかねぇよな?オレ、親父に説明しちったぞ」

 

「……ドタキャンは無いと思うぞ。てか、説明済みかよ……」

 

 既に楽は手を回してたのね。

 うーむ。何で恋愛では、この行動力が発揮させないのかが不思議である。てか、俺の荷物等も、羽姉の自宅に郵送済みである。

 

「(……まだ未成年なのに、同棲するとはなぁ……。世の中、何が起こるか解らないわ)」

 

 つーか、アレだ。間違いが起きるかもしれないって、メチャクチャ不安でもある。幼馴染の前に、先生と生徒なのだ。

 てか、姉貴、遅すぎるな。何かあったのか。……野郎共は有り得ないから、考えられるとしたら、クロードか。

 

「もう、二時間も待ってるぞ。クラスのお別れ会もパーティーもあんのに、始まってちまうぞ」

 

 楽は、お別れ会から、残留会に変更になると思うが。と付け加える。

 その時、楽のスマートフォンに着信が入った。ディスプレイに表示された名前は、鶫誠士郎だ。

 

「――はあ!?盗聴、監禁。千棘を!?」

 

 楽が、荒い声で叫んだ。

 『監禁』『盗聴』の言葉で、俺は仮説を立てた。――あの時に盗聴器が仕掛けられ、クロードには、楽たちの会話が筒抜けになっていた。んで、姉貴を呼び出し監禁室に閉じ込めた。ってところか。

 楽に確認した所、ビンゴ(当たり)だったらしい。てか、楽。通話越しでなら、恥ずかしい事が平然と言えんのかよ……。

 俺は、通話を終えた楽に話しかける。

 

「んで、楽。これからどうすんだ?」

 

「ああ。千棘を助けに行く。蓮、力を貸してくれ」

 

「約束だからな。力を貸すよ」

 

「すまねぇ。恩に切る」

 

 ともあれ、桐崎家に向かう俺たち。

 作戦はシンプルだ。鶫がクロードを呼び寄せてる間に、監禁室の鍵を入手し、鍵を使って監禁室の扉を開け、姉貴を救出だ。

 桐崎家に向かった所で、鶫と合流し、パスワードと鍵の絵が描いてある用紙を受け取る。

 

「一条楽、若。鍵を入手したら、お嬢の所まで行って、救出を」

 

「ああ、任せろ!」

 

「まあ俺は、楽の護衛に回るよ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 家に入り、鍵を入手して監禁室に向かうが――、

 

「楽、そこは(トラップ)だ」

 

 俺が右手で楽を自身の方へ引き寄せると、直後、楽の居た場所に、槍が通過し壁に刺さる。

 

「こ、殺す気満々じゃねぇか、あの眼鏡」

 

「まあクロードだからな」

 

「……蓮。それ答えになってねぇから」

 

 その後も、楽は罠に引っ掛かりまくった。

 まあ、直後に俺が回避させてるから問題はないんだが。

 目的の部屋に到着し、楽が扉越しで、姉貴に呼びかける。

 

「千棘、助けに来たぞー」

 

 数秒経過しても反応がない。

 

「おい、蓮。この部屋でいいんだよな」

 

「大丈夫だ。この部屋が監禁室で合ってる」

 

 ――すると、扉越しから、

 

『……楽、蓮。そこにいるの?』

 

「おう、助けに来たぞ。千棘」

 

「まあ、俺は楽の護衛だな。つーか、早く姉貴を出してやれ。クロードに見つかるのは、時間の問題だぞ」

 

 鶫の時間稼ぎは、そんなに長く続かないと、俺は予想してる。

 鍵を刺して、扉を開けようとするが、肝心の鍵が施錠口に入らない。

 

「……成程な。これは一杯食わされたわ」

 

「どういう事だよ、蓮?」

 

「その鍵は、(フェイク)って事だよ。……だろ、クロード」

 

 俺が顔を向けた先には、眼鏡をクイッと上げるクロードの姿が映った。

 

「さすが、蓮坊ちゃん。蓮坊ちゃんの仰る通り、その鍵ではなく、私が持っている鍵が正解です」

 

 クロードは、懐から鍵を右手で取り出し、俺たちに見えるように掲げた。

 俺は両手で、骨をパキパキと鳴らし、

 

「……楽は隙を見て、クロードから鍵を奪ってくれ。俺が隙を作ってやる」

 

「で、でもよ。眼鏡相手で、大丈夫なのかよ」

 

「まあ心配すんな。未だに、勝率は俺の方が上だし」

 

 でもなぁ、クロードがあれから鍛えてたら、五分五分って所か。

 得物がこの場にあれば、圧倒的に俺が有利に立てるんだが……。

 俺とクロードは、同時に駆け出した。

 俺の右ストレートは躱される。だが俺は、反射的に右回し蹴りを放つが、クロードは両手を前に突き出し、腕を上げて蹴りを防御する。

 

「……さすが、蓮坊ちゃん。やはり、先制攻撃の権利は、坊ちゃんにあるんですね」

 

 俺はクロードに向き直り、

 

「……昔は、さっきの攻防で決まってたはずなんだけどな。てか、銃は使わないのか?」

 

「素手で挑まれたのに、銃を使うなんて外道がやる事。私は、外道に堕ちる事はありません」

 

「……そうかい。んじゃ、続きと行きますかッ」

 

 俺とクロードは、急所を狙い、殴り、蹴りを放つが、上手く躱し躱されで、勝負が一向に付く気配がない。

 両者とも、ジワジワと体力が奪われていく。

 仕切り直す、俺とクロード。

 

「……ったく、強くなりすぎだろ、クロード」

 

「それを坊ちゃんが言いますか、私について来るんです。おそらく、隠れて鍛錬を欠かさなかったのでしょう」

 

「まあな。俺には護る者があるからな」

 

 再び飛び出そうとした瞬間――、

 

「は~い、ストップ。蓮もクロードもそこまでだよ」

 

 振り返ると、親父が立っていた。

 

「親父……。親父も、クロードとグルなのか?」

 

 そうなった場合、俺の勝ち目はゼロになる。

 だが親父は、違う違う。と首を左右に振る。

 

「君たちが争う理由がなくなったから、止めに来ただけだよ」

 

 話によると、引越しは中止。

 理由は、この屋敷にいる野郎共全員からの、嘆願書と誓約書だ。まあ、流石にここまでやられたら、親父が折れるしかないだろう。お袋も、姉貴の意見を尊重したいという事らしい。

 この勝負、完全に姉貴の勝ちだ。

 ここで、一つの疑問が生じる。

 

「(……俺と楽。屋敷に乗り込んだ意味あったの?)」

 

 まあいいや、姉貴も助かった事だし、ミッションコンプリートという事で。

 つーか、俺の荷物、羽姉の家にあるんだよね……。どうすっか……いや、マジで。

 

「俺は荷物を取りに、羽姉の家に行くわ」

 

 とにかく、屋敷を出る俺。

 羽姉に、今後は一緒に暮らそうって言われたらどうすっか?悩みの種である。

 

「(ま、流れに任せるか。どうにかなるだろ)」

 

 とまあ、楽観的な俺でした。

 ともあれ、このようにして、引越し騒動の幕が下りたのだった。




次回は、クリスマスイヴかな。
次回は、羽姉たちを出したいですね(^O^)
……蓮君、リア充やで(笑)

ではでは、次回もよろしくです!!


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第53話 クリスマス#2

クリスマスイヴは、家族で過ごした設定です。
では、本編をどうぞ。


 俺、桐崎蓮は、ある一軒家のキッチンで和食を作り皿に盛り付けていた。

 メニューは、若芽の味噌汁に、焼きシャケ、白米だ。後はまあ、麦茶っていったところか。

 

「羽姉ー。飯できたぞー」

 

「はーい」

 

 テレビを見ていた羽姉は、キッチンに赴き、俺が作った料理をリビングの備え付けられているテーブルへ運ぶ。それから、対面になり、テーブルの椅子に座るに俺と羽姉。

 ――そう、俺は引越し騒動の後、羽姉の自宅に居候しているのだ。

 

「わぁ美味しそう。和食では、確実に蓮ちゃんの方が上だよ」

 

「そうか?いつも通り作ってるだけなんだが」

 

 まあでも、野郎共に好評だった。

 何でも『坊ちゃんの料理は、毎日食べても飽きねェです』という事らしい。

 

「にしても、この年(未成年)で同棲するとはなぁ。世の中、何が起こるか解らんものだ」

 

「でも、結婚したら毎日一緒だし、未成年の内でも問題ないと思うけど」

 

「……まあその通りなんだが」

 

 ちなみに、同棲を始めて一週間だ。その間、まあ色々あった。家事や風呂の順番決めとか。

 ……後はあれだ。うん。

 

「……今日は風呂に入ってくるなよ。俺の理性が持たん」

 

「えー、いいじゃん。バスタオル巻いてるし」

 

 羽姉は平然と答える。

 

「それでも、素っ裸同然なんだよっ。未成年で、大人の階段を上るのはダメだからねっ」

 

 ……いやね、羽姉も未成年なんだからね。そこの所解ってるの?

 

「わかってるって、心配しないで。抜け駆けはするつもりはないから。やっぱり、みんな一緒じゃないとね♪」

 

「……それならいいけど」

 

 ……つーか、成人したらそれが起きるって事だよね……。俺、死んだりしないよね?大丈夫だよね?

 ともあれ、覚悟を決めた所で、俺は箸を持ち夜食を食べるのであった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 夜食を食べ終わった所で、羽姉が口を開く。

 

「そういえば、蓮ちゃん。クリスマスイヴはどうするの?」

 

「お袋が帰ってくるから、その日は家族水入らずで過ごすって感じか。まあでも、クリスマスの日は予定が空く感じだと思う。てか、意地でも空ける」

 

「そっか。クリスマスの日、みんなでショッピングモールの大きなツリーを見に行かない」

 

「そういえば、デカイもみの木が展開されてたな。飾り付けとか、その他諸々はしてなかったけど」

 

 羽姉の話によると、クリスマスイヴの日に完成し、夜にお披露目らしい。ちなみに、イブの日から一週間展開されるという事だ。

 

「で、どうかな?」

 

「いいぞ、行こうか。約束でもあるし」

 

 当然、春ちゃんにも声をかけるけどね。

 空いた皿を流しに持って行き、羽姉と洗い物をした後ソファーで寛いだ俺は、今日の話を二人にメールをしたところ、小咲と春ちゃんからはOKと二つ返事で返信がきた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~クリスマス当日~

 

 俺と羽姉は、待ち合わせ場所である噴水広場で、小咲と春ちゃんの到着を待っていた。てか、回りを見る限り、カップル多過ぎない?

 

「……リア充ばっかだな。爆発しろ」

 

「……蓮ちゃん。それってブーメラン発言だよ。ハーレムを築いてる時点で、蓮ちゃんもリア充だからね」

 

「……まあ、そうかも知れんが」

 

 そうこうしている間に、小咲と春ちゃんが到着した。

 ちなみに、羽姉たちの恰好は、マフラーを首に巻き、ミニワンピースの上にふんわりとしたコートを羽織り、下はブラウンのブーツ、ショルダーバックだ。

 対して俺は、タートルネックにミリタリージャケットを羽織り、下はスキニーパンツにチャッカブーツ。

 

「(なんつーか、皆ほぼ同じ恰好だから三姉妹みたいだなぁ)」

 

 ってのが、俺の感想である。結論から言えば、皆可愛いって事だ。てか、小咲と春ちゃんに感想を聞かれ、可愛いよ。って返したら顔を桜色に染めた。『じゃあ、羽姉は』と思うが、羽姉は耐性?ができているのか、平静を保っていた。

 ともあれ、ショッピングモールに入り、中央に鎮座するツリーの元へ向かう俺たち。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「わあ綺麗。ね、先輩」

 

 春ちゃんが感嘆の声を上げる。春ちゃんが言うには、『まだ、先輩って口癖がでちゃうんだ』という事らしい。まあ、嫌な気は更々ないから、別にいいんだけどね。

 つか、このツリーをカップルで見る事ができると、一生幸せになるっていう噂もあるらしい。俺は信じないけど、己の行動が全てだと思ってる。まあ、恋人までこぎつけるのに、俺のヘタレも多々発動したけどさ……。

 

「いや、春ちゃんの方が綺麗だよ」

 

 平然と言う俺。んで、ビクと肩を震わせる春ちゃん。

 

「ま、またまた~、ご冗談を」

 

 ……いや、冗談じゃないんだが。てか、皆の方が、この場に居る女子より可愛いと思う。いやまあ、俺の偏見だったアレだけど。

 

「蓮君。イルミネーションは20時かららしいよ」

 

 小咲が言うには、イルミネーションは今から1時間後という事だ。

 すると羽姉が提案する。

 

「それまで、みんなでデートしよっか」

 

 ともあれ、時間までデートをする事になった俺たち。

 羽姉と春ちゃんが先頭を歩き、俺がその後ろを歩いていると、小咲が俺の隣まで寄り添う。

 

「今日は誘ってくれてありがと」

 

「去年の約束もあったし、誘うのは当然だろ」

 

 春ちゃんもな。と付け加える俺。

 小咲は微笑み、

 

「そっか。春も楽しみにしてたしね。『蓮さんとデートだよ。お姉ちゃんたちもだけどね』って」

 

「そうか。それはよかった」

 

「ふふ、蓮君の女の子タラシめ」

 

「俺はタラシじゃな…………いや、タラシかもな」

 

 俺は『タラシじゃない』と言おうとしたが、今まで事を鑑みると、完全にタラシである。

 それからは、皆で記念写真を撮り、時間に近づいてきた所でツリーの場所まで戻った。

 時間の20時に時計の針が差し、ツリーのイルミネーションが始まる。それはとても幻想的であり、俺たち4人の思い出に刻まれたのだった。




蓮君、ハーレムデートやで(≧∀≦*)つか、人を沢山動かすのは難い(>_<)
さて、この小説も終盤まで差し掛かってきました。

20巻のアレは起きないので、一安心ですな。
次回は新年まで飛びそう?まあ未定ですな。

ではでは、次回もよろしくです!!


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第54話 シンネン

更新です。



 クリスマスが過ぎ、年が明け、俺は羽姉と神社に参拝に行く事になった。

 つーか、何で俺は袴なの?まあいいけどさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 神社の鳥居を潜ると、そこにはいつものメンバーが着物姿で待っていた。全員集合は、サプライズも兼ねてるらしい。てか、楽と集は私服じゃん。

 俺も私服がよかったな~。ってぼやくが、今更である。

 

「蓮さん蓮さん、どう?似合ってるかな?」

 

 春ちゃんは、俺の姿を見つけそう言った。いやまあ、かなり似合ってるが。

 ちなみに着物は、ピンク色を基調にし、所々に花柄を刺繍してある。

 俺は軽い口調で、

 

「はいはい。似合ってますよ。世界一可愛いよ。春ちゃん」

 

「……完全に棒読みだよね、蓮さん」

 

「い、いやー、春ちゃんは何着ても似合うしな。うん」

 

 春ちゃんたちは素材がいいし、何着ても似合うと思う。

 春ちゃんは唇を尖らせて、

 

「……そういう事にしといてあげる。せ、先輩も、カッコいいです……」

 

 頬を赤く染めないでくれ。俺も恥ずかしくなるから……。

 

「お、おう。サンキュー」

 

 それから皆で、新年の挨拶を済ませる。つか、橘が居ないのは以外だった。

 どうやら、旅行の疲れが出てしまったようで、大事を取って休むだそうだ。理由は、楽を攫って南国に行ったのは良いが、海上を楽と漕いでたボートが沈み、無人島に流されたかららしい。

 まあ、本田さんが翌日に見つけたくれたお陰で、急死を脱したらしいが。

 

「(それにしても、南国か……。新婚旅行、どこがいいだろか?)」

 

 そんな事を考えていたら、小咲に袖を、くいくいと掴まれた。

 

「蓮君、クリスマスの日以来だね」

 

「だな。年末のごたごたがあって、デートができなかったしな」

 

 小咲も春ちゃんと同じく、ピンク色を基調にした着物で、所々に花柄を刺繍してある。

 小咲はこの場で一回転した。

 

「どうかな?」

 

「似合ってる。可愛いよ」

 

 その時、小咲の隣にいる春ちゃんが、

 

「ちょ、蓮さん。私の時は棒読みだったのに」

 

 俺は春ちゃんの頭に右手掌を乗せ優しく撫でると、春ちゃんは小猫のように目を細めた。

 

「ちょと意地悪だったな。うん、春ちゃんも可愛いよ。流石姉妹」

 

「しょ、しょうがないな。許してあげます」

 

 春ちゃんは、ぷんぷんと怒る。

 あれだ。羽姉と小咲にはない、ツンデレ属性というやつだろうか?まあ、そんな所も可愛いんだけど。

 

「そういえば蓮さん。蓮さんはどんなお願いをするの?」

 

「まああれだ。日本の法律追加についてだな」

 

「法律?」

 

 これを聞いてた羽姉が、

 

「春ちゃん。蓮ちゃんの願いは、将来重婚がOKになりますように。だよ」

 

 お、おう。その通りです羽姉。……俺の考えは、羽姉にダダ漏れだったりすんの?まあ漏れても、別にいいんだけどね。

 ……うん、小野寺姉妹が顔を赤く染めました。おそらく、結婚生活でも想像したのかな?

 

「あ、そういえば私、千棘ちゃんに呼ばれてるんだったっ」

 

 話によると、姉貴は小咲に何かの相談をしたいらしい。

 姉貴の相談は、楽のことについてだろう。

 なんつーか、引越し騒動の後、姉貴が楽と歩いている時に告白されたらしい。告白つっても――『親友(・・)』として好き。という事らしい。それを姉貴から聞いた時、“その雰囲気で親友なの?”って言いたくなったわ。まあでも、本当の告白になると、楽は橘を振る。という事にも繋がってしまう。

 ちなみに、俺は姉貴から相談された時、的確なアドバイスはできたと思う。んで、聞き終わったあと姉貴は頷き、『女の子の意見も必要だよねっ』って言ったんだった。その女の子こそが、小咲という事だろう。ともあれ、参拝が終わった所で、自由行動になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「んで、集。どうしたんだ、俺を呼び出して?」

 

 俺と集が今居る場所は、参拝場所から少し離れた所だ。

 楽は姉貴たちと話しているので、この場には居ないが。

 

「蓮は、小野寺たちと上手くやってるのか気になって。何かあったら、アフターケアを手伝えると思ってな。余計なお世話かもしれないけど」

 

 本当、集は優しい。

 ここまで気にかけてくれる友人は、そうは居ないと思う。

 

「あ、ああ。そういう事。それなら心配すんな。もう、将来一緒になる事も決まってるしな」

 

「お、おう。もうそこまでいってんのか。てか、高校生で結婚の話か。凄ぇな、蓮」

 

「そうか?集が言うんだから、そうかも知れんが。――ま、俺よりもだ」

 

「楽のこと。だろ」

 

 流石、集。やっぱ、解ってたか。

 俺は頷き、

 

「ああ、そうだな。このままズルズルと引き延ばすのはよろしくないぞ。てか、きっと楽は、姉貴と橘、2人をほぼ同時に好きになってるぞ」

 

 言い方は少し悪いが、と集は前置きし、

 

「蓮から見てもそうか。どこかでアクションをかけないと、泥試合になるぞ、これ」

 

 俺は、うーん。と考え込んだ。

 

「……やっぱ、何かしらの手助けをした方がいいか?姉貴には、簡単なアドバイスはしたんだが」

 

「そうか。でも、大きな切っ掛けは必要になるかも。切っ掛け作りなら、問題ないんじゃないか?」

 

「……まあ、その辺が妥当か」

 

 てことは、姉貴と橘は、今年が勝負の年になるのかもしれない。

 その時、

 

『お――い!』

 

 と、楽の声。

 そちらを見たら、皆が集合してる所だった。

 

「んじゃ、行きますか。集さんや」

 

「だな。今年も色々とよろしくな、蓮」

 

 皆の元に歩いて行く俺と集。

 新年の挨拶を終えた俺たちは、新学期を迎えようとしていた。




蓮君。リア充やで(笑)
さて、今回の話で、集と蓮君の相談?がありましたね。楽は、いつ自分の気持ちに気づくんだろうか?
たぶん、次回はその辺の話になるかな。

ではでは、次回もよろしくです!!

追記。
蓮君たちは、小野寺姉妹と待ち合わせをしてた感じです。


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第55話 スキナヒト

更新です。


 新学期が開始し、俺、楽、集は屋上で昼飯を食べていた。

 いつもなら、小咲たちと俺は昼食を摂っているのだが、楽が重要な話があるという事で、男三人で屋上で昼食を摂ってるのだ。

 昼食を食べ終わった所で、手摺の上で腕を組み体を預けた楽が口を開く。ちなみに、俺と集も手摺の上で腕を組み体を預けている。

 

「聞いてくれ、二人とも!千棘に好きな人がいるらしいんだ……!?」

 

 楽の話によると、定期デートの時に“そういう話”になったらしい。

 その時に姉貴が、楽の前で好きな人が居る。と宣言したらしい。で、楽はかなり動揺したとか。

 

「蓮は、千棘の義弟だろ。何か知らないか?」

 

「いや、恋愛話とかは、姉貴とした事はないな」

 

 ……まあうん、嘘だが。

 つーか、集。『お前って、本当に面白い奴だな☆』って、楽に向けたドヤ顔を止めろ……。俺、笑っちゃうだろうが……。

 

「ち、ちきしょう……。どんな奴かだけでも知りてぇ……」

 

 俺はアイコンタクトで、

 

「(どうする、集?このままじゃ、一向に進まんぞ)」

 

「(だよなぁ……。切っ掛け作りっていっても、楽に自覚してもらわないと、どうにもならないよな)」

 

「(……一つくらい、助言?でもしとくか。気持ちを気づかせる的な感じで)」

 

「(了解~。その役はオレにやらせてくれよ~)」

 

「(わったよ。頼むわ)」

 

 すると、集が楽に向き直り、口を開く。

 

「相手の事はよく知ってるよ。オレたちの身近にいる人物だから」

 

「み、身近だと!?それ、マジかよ!?」

 

「そだよ。それにしても、楽は何でそんなに焦ってんだ。やっぱり、偽モノの恋人といえど、誰かに取られると思うと不安になるのかな?」

 

 楽は、『なんねーよ!』と否定した。

 てか、集、楽に煽りかけるのが完璧すぎる……。流石、クラスの参謀と呼ばれてるだけはある。

 

「……なあ楽。オレたちの身近にいる桐崎さんの好きな人……少しは真面目に考えたら答えが出るかもよ」

 

「……ゴリ沢のことか?」

 

「「……マジ?」」

 

 俺と集の言葉が重なった。

 いやね、身近っていっても、姉貴はゴリ沢と何の接点もないからね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 学校が終わり、家に到着し、玄関で靴を脱ぎリビングに上がると、一つの書置きがテーブルの上に置いてあった。何でも、『蓮ちゃん、学校が終わったら、楽ちゃんの家まで来てね♪』という事だ。

 

「……うーむ、何で楽の家?」

 

 俺は考え込み、一つの結論に至る。

 

「そうか。羽姉ちゃんの誕生日か」

 

 俺は合点がいった。

 羽姉ちゃんの誕生日会は大々的に行われる。そうすると、この家では狭いし、ビーハイブとはほぼ面識がない為、屋敷での開催は不可能だ。なので、ある意味育ての親である集英組の組長に場所の提供を頼んだのだろう。

 俺は自室で私服に着替え貴重品を持ち、玄関の扉に鍵を閉め、集英組に向かったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 久しぶりに集英組の庭に足を踏み入れ、『お邪魔しまーす』と玄関の扉を開けると、廊下は何所もかしこも、龍の彫刻やら高そうな花瓶、天井からは紅白の提灯がぶら下げてある。

 

「……凄ぇな」

 

 ともあれ、玄関で靴を脱ぎ、廊下を歩いて作業中の居間へ向かう。てか、居間の中も、飾り付けが凄ぇ……。

 俺が呆気に取られていると、居間にいた羽姉が俺の到着に気付いた。

 

「あ、蓮ちゃん。お帰り~」

 

「おう」

 

 返事をしてから、羽姉の元へ向かう俺。

 そこには、楽の姿もあった。

 

「羽姉も20歳になるのか。……全然20歳に見えないけどな……。な、楽」

 

「ちょ、蓮。オレに振るなよ。……まあ、蓮の言う通りかも知れないけど」

 

 頬を膨らませる羽姉。

 

「ちょっと2人とも~。お姉ちゃん傷付いちゃうよ~」

 

「……まあうん。羽姉、無理にぶりっ子しなくていいぞ。ま、可愛いけど」

 

 俺の発言に目を丸くする楽。

 ……あー、そうだった。楽は、俺と羽姉の関係を知らなかったんだっけ。まあ、楽が感づくまで誤魔化す方向で。

 

「まああれだ。客観的意見だぞ、楽」

 

「あ、ああ。なるほど」

 

 いやいや、納得しちゃうのかい。“あれ、2人の雰囲気がおかしくないか”くらい気づいてもいいと思うんだが……。

 とまあ、話し合った結果、羽姉の誕生日会には、姉貴や小咲を招待する事に決まったのだった。てか、この誕生日会で、姉貴たちに何かの進展があったらな~。と思う俺でした。




楽が、自分の気持ちに気付いた?感じですね。
次回は、羽姉の誕生日回の話になりそうです。

ではでは、次回もよろしくです!!


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第56話 カクニン

このペースで更新が維持できるようになればなぁ(願望)


 誕生会当日、俺と楽は、集英組の厨房で料理作りに勤しんでいた。てか、厨房に立ってるのが7人って、料理人少な過ぎない。まあ、他の野郎共も料理の事はからっきしだから仕方ないと思うが。

 ちなみに今日は、各国から叉焼会(チャーシューかい)の傘下のボスたちも集まってるらしい。……なので、正門付近には黒塗りのベンツが凄いとか。

 とまあ、そんなことを考えていたら、オーブンで温めていた茶碗蒸しができあがった。

 

「うし、楽。最後の料理ができたぞ」

 

「ああ。オレの担当の料理も完成だ」

 

 ともあれ、できた料理をお盆に乗せ、居間へ向かう俺たち。

 途中でバッタリ会った羽姉は、叉焼会(チャーシューかい)の正装を身に着けており、大人っぽさを際立出せていた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 長テーブルに最後の料理をお盆から乗せ、全ての料理の完成である。

 

「……ふぅ、終わった」

 

「……だな。ここまで動くとは、予想外だったよ」

 

「まあ、野郎共が料理を作れないのは想定済みだったろ。流石に、ビジネスホテルの料理人を引っ張って来る訳にはいかないしな」

 

 最悪、営業妨害になっちゃうしね。

 楽が同意した時、玄関から『お邪魔しまーす』という声が聞こえてくる。どうやら、招待していた小咲たちが到着したらしい。

 玄関で靴を脱ぎ、此方に歩み寄る小咲と春ちゃん。

 

「蓮君、大変そうだね。手伝おうか?」

 

「お、お姉ちゃん、抜け駆けはダメだよ。れ、蓮さん、私も手伝うよ」

 

 そう言ってくれる、小野寺姉妹。

 てか、今更だけど、羽姉、小咲、春ちゃんは俺の恋人なんだよな。まあ、世間では三股野郎だけど。既に開き直った俺は気にしてない。

 

「大丈夫だ。今はパーティーを楽しめ。何かあったら呼ぶからさ」

 

「「はーい」」

 

 ……流石姉妹。息がぴったりだね。

 

 ――閑話休題。

 

 それにしても、成人の儀式はしっかりしてるもんだなぁ……。つーか、叉焼会(チャーシューかい)の各ボスさんや。俺の事を『若』って呼ぶのは止めてくれ。それは、ビーハイブだけで間に合ってるからね……。

 ちなみに、小咲と春ちゃんは、『王女』と『姫』らしい。まだ、羽姉ちゃんは『首領(ドン)』らしいが、将来何かしらに変化があると見た。

 

「(……姉貴、巨大ケーキをわきから食べすぎだ)」

 

 てか、楽。姉貴のこと、露骨に逸らしすぎだ。意識し始めたから仕方ないと思うけど。もう少しナチュラルにな……。

 まあそれは置いといて、左側のケーキ部分がなくなり、バランスを崩し倒れ始める。落下地点には、俺、楽、羽姉、姉貴だ。

 あー、これは避けられないと。俺は内心で思い、ケーキをほぼ顔面から被ったのだった。……つか、甘ぇ……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~風呂場、浴槽の中~

 

「……マジで酷い目にあった」

 

「姉貴も悪気があったわけじゃないし、許してやれよ」

 

「そうなんだけど。……てか、蓮。最近気になってきたんだけどよ、蓮と羽姉って付き合ってるのか?」

 

「まあな。つか、半年前から付き合ってたぞ」

 

 小咲とも半年前で、春ちゃんとは約四ヶ月前くらいか?

 

「んで、楽はどうすんだ?姉貴と橘のこと」

 

「……なんで橘も出てくんだよ……」

 

 成程なぁ。楽の中では、姉貴の事で一杯一杯なのかぁ。まあでも、楽は股にかける選択は取らなそう。

 何というか、律儀というか、紳士というか。まあ、それが楽の魅力なんだと思うが。

 ともあれ、風呂から上がり、楽から借りた浴衣?を脱衣所で、下着と共に着る俺。

 脱衣所から出て、会場に続く廊下を歩いていたら、(イエ)に出くわした。

 

「で、何の用だ。(イエ)

 

「……今日は剣舞に大事な話があるね」

 

「……大事な話?」

 

 俺は目を細める。

 

「そうね。実は、首領(ドン)縁談(・・)の話がきてるね。剣舞、お前どうするね――?」

 

 

 

 

 

 

「そりゃ決まってるだろ。そんな縁談、俺が――潰してやる……。羽姉が俺以外の奴と一緒になるとか嫌だし……」

 

 潰すのには、お袋のバックアップとビーハイブの力があれば問題ないだろう。

 まああれだ。お袋と親父に貸しを作っておいて正解だった。という事だ。ガキの言葉で、組織が動くのは有り得ないしね。

 小咲と春ちゃんにこんな話が来ても、縁談ごと潰すけど。

 (イエ)は、ふっ、と笑った。

 

 

 

 

 

 

「今のは()ね。剣舞の最終確認に来ただけね。首領(ドン)にもしもがあったら、違う奴と結婚する為にね」

 

「で、俺は合格か?」

 

「合格よ。首領(ドン)を幸せにしてやってね」

 

 すると、夜はこの場から姿を消した。

 まあそうだよな。羽姉も20歳になった事だし、(イエ)は、結婚の話を俺が真剣に考えてるかを確認に来たのだろう。

 

「(……にしても、(イエ)。殺気を当てなくてもてもよかったんじゃねぇか……。慣れてない奴だったら、即気絶だぞ……)」

 

 やはり、羽姉の護衛なんだなと。改めて実感した瞬間でもあった。

 俺は嘆息してから、会場へ足を進めるのだった。

 てか、会場に戻った時、俺が羽姉に、『成人式の付添お願いね』って笑顔で言われてもねぇ。俺、まだ未成年だぞ……。




蓮君は楽に、羽姉のことしか伝えてませんね。蓮君の事情を知ると、頭がパンクしちゃうので(^_^;)
ちなみに、羽姉がうっかり蓮君たちの事を漏らしてしまい、瞬く間に野郎共に知られちゃいました(笑)
で、小咲と春ちゃんの二つ名?が『王妃』と『姫』ですね。
てか、この20巻で羽姉に不幸が訪れる筈ですが、この小説では起こらないので、胃?が痛くなりませんね(笑)


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第57話 セイジンシキ

こ、更新です……。明日投稿できるかは未定……。


 成人式当日、俺は『凡矢理市民会館』へ向かっていた。理由は、羽姉の迎えである。つか、『付添い』ではなく『送迎』にお願いしました。まあうん、かなり目立っちゃうしね。

 ともあれ、市民会館入口に到着すると、そこには晴れ着姿の羽姉と同級生が何かを話していた。

 俺は、マジかぁ、あの輪の中に入るのか……。と思いながら歩を進める。

 

「羽姉、迎えに来たぞ」

 

「あ、蓮ちゃん。お迎え御苦労さま」

 

 羽姉は、俺の右腕をギュっと抱きしめる。

 

「おう。……つか、皆の前で腕を組むな。目立つだろうが」

 

「こ、こんにちは。小学校で羽ちゃんと同じクラスだった、白野あきらって言います。お名前を窺っても?」

 

「ご、ご丁寧にありがとうございます。桐崎蓮です。羽姉がお世話になってました」

 

 俺は、ぺこりと頭を下げる。

 羽姉は頬を膨らませ、

 

「蓮ちゃん。子供扱いしないでよっ。これでも私、成人して大人なんだからねっ」

 

「……いや、ならいつもの言動を振り返ってみろよ。まあ、切り替えが上手いのは凄ぇけどさ」

 

 羽姉は、甘える時はとことん甘えるし、きっちりする所はきっちりしてる。まあ、ON、OFFが上手いって事だ。……てか、針の莚状態なんですが、俺。

 

「あの~。桐崎蓮くんと、羽ちゃんの関係って?」

 

「蓮ちゃんと私は、婚約者だよ。将来を誓った仲だよね。ね、蓮ちゃん?」

 

「まあそうだけど。でも、結婚とかは俺が成人してからだぞ」

 

「うん、わかってるよ」

 

「つか、羽姉。オープンで話しすぎだ。俺、羞恥に駆られてるからね」

 

 これが、穴があったら入りたい気分ってやつか……。てか、そこらに溜まってる男子、俺に嫉妬の眼差しを向けるな。まあ成人式を気に、羽姉に告白を!って奴が居たんだと思うけど。

 すると、あきらと自己紹介してくれて女の子が、

 

「羽ちゃんたち、夜の同窓会とかどうかな?色々聞きたいし」

 

「すんません。俺はパスで。羽姉は旧友との再会なんだ。行ってあげてもいいんじゃないか?」

 

「ん~……ん、そうだね。あきらちゃん、何時から開始なの?」

 

「えっと。今日の夜7時、『凡矢理ロイヤルホテル』のロビーに集合ってなってる」

 

「ん、りょうかい」

 

「それじゃあ、時間までに羽姉を送ります」

 

 とまあ、一連のやり取りをした後、俺と羽姉は『凡矢理市民会館』を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~公園~

 

 今、俺と羽姉はある公園のベンチに座っていた。

 ちなみに羽姉は、俺の右肩にこてんと頭を乗せている。

 

「……考え深いな、この公園は」

 

「……そうだね。私たちが結ばれた場所だから」

 

「そだな。てか、いつまで頭を乗せてるの?」

 

「んー、私が満足するまでかな?」

 

 ……うん、何で疑問形なの?羽姉ちゃんや。まあいいけどさ。

 

「でだ、どうだった?成人式」

 

「うん、楽しかったよ。昔の友達とも会えたしね」

 

 羽姉ちゃんは笑みを浮かべる。

 

「そういえば蓮ちゃん。(イエ)ちゃんが、蓮ちゃんを試したってホント?」

 

「本当だな。結婚について試されてな。ま、合格をもらったけど」

 

「さすが蓮ちゃんっ。大好きっ」

 

 俺に抱き付く羽姉。

 

「満面の笑みで抱き付くなって。まあいいけどさ」

 

 ……心臓鼓動がヤバイ。てか、羽姉。R-18展開望んでんの?でもまあ、俺の理性の化け物を舐めてもらっちゃ困る。

 羽姉は満足したのか、俺から離れる。

 

「うーん、蓮ちゃんの理性は鋼並みだよ」

 

「それなりに理性には自信があるが、一度タガが外れそうになった時もあった」

 

「あ、それ知ってる。小咲ちゃんを襲いそうになったんでしょ?」

 

「……そうだけど。何で知ってんの?」

 

 話を聞くと、羽姉、小咲、春ちゃんは、グループLINEで連絡と取り合ってるらしい。その時、この話題が出たとか。俺の私生活がダダ漏れになってるのは気のせいか?

 

「……ねぇ蓮ちゃん。キスして」

 

 ……いきなり大人びるのは反則だろ。てか、今の会話の流れから何故そうなった……。

 

「……お、おう」

 

 俺は羽姉の唇に、自身の唇を重ね、舌を入れお互いの舌を絡める。

 そっと離れると、お互いの唾液が、つーと伸びた。

 

「……蓮ちゃん。深いキス、上手くなってるね」

 

「……まあ、な。てか、羽姉が舌を入れてくるからな」

 

「ちょ、それって私のせいなのっ?」

 

「うん、そうだな」

 

「……蓮ちゃん。断言しすぎだよ」

 

 羽姉ちゃんは、しゅんとする。

 とまあ、これが成人式の帰りにあった出来事であった。




うーむ、甘く書けたかなぁ。最近、書く機会がなかったので……。
ちなみに作者は、R-18を書くのは無理です。てか、書く技量がないですね。スンマセン(-_-;)

ではでは、次回もよろしくです!!


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第58話 バレンタイン#2

更新です。
ニセコイ小説も、完結が見えてきましたね。


 今日は、2月14日。

 この日といえば、女性が男性にチョコを上げるイベントの日だ。やはり、傍から見てチョコをもらっている男子を見かけると、リア充爆発しろ。と思ってしまう。まあ、小咲たちが聞いたら、もう、ブーメラン発言だよ……。って呆れると思うが。てか、俺はまだ本命は一つも貰ってない。

 

 

 ~昼休み、体育館裏~

 

 俺は今、ある女性と対面している。その女性とは、恋人である小野寺春だ。

 何でも、一対一で、雰囲気がある場所で渡したいから。という事らしい。まあうん、告白の醍醐味の場所とも言えるよね、体育館裏って。

 

「おう、春ちゃん。どうしたんだ?」

 

 頬を膨らませる春ちゃん。

 

「もうっ。わかってるくせにっ」

 

「悪ぃ悪ぃ。たぶんだが、チョコの件だろ?」

 

「うん!頑張ってお姉ちゃんと作ったんだ!――本命チョコだよ!」

 

 差し出されたのは、可愛らしいラッピングがされた箱だ。あとあれだ。愛情もタップリ詰まってるからね♪とも言ってくれた。

 

「ああ、サンキュ。有り難く頂くわ」

 

「ホワイトデー。期待してるねっ」

 

「おいこら、いきなりハードル上げんなよ」

 

 春ちゃんの頭を、ぐりぐりと撫でる俺。

 バカっ。と言って、俺を睨むようにして見てくるが、とても愛くるしいので逆効果である。

 

「蓮さん。お姉ちゃんと羽さんからは?」

 

「小咲と羽姉からはまだもらってないな」

 

 まああれだ。これからくれるんだと、切に願ってたりする。

 十中八九、くれると思うけどさ。

 

「そっか。私が一番最初なんだ。何か、お姉ちゃんたちに勝った気分だよ。私、学年が一つ下だから、蓮さんと余り接点がないんだよね」

 

「デートとかを抜きにすると、学校ではそうかもな。でも、春ちゃんは俺の大切な人には変わりないぞ」

 

「も、もう。そうやってポイント稼ぐのは、ずるずるだよ」

 

 いやいや、ポイントを稼いだつもりはないんだが。

 てか、ずるずるって、ずるい人って事か?まあ、そうなんだと思うけどさ。

 

「ねぇ蓮さん。ちょっと、ゆっくりして行かない?」

 

「ああ、構わないぞ」

 

 俺と春ちゃんは、体育館端にある階段に座った。

 春ちゃんは、誰も居ないのを確認してから、俺に体重を預ける。そして俺は、腰に手を回して春ちゃんを抱きしめる。

 

「ん、蓮さん。大胆だね」

 

「いや、最初は春ちゃんからだろ。だから俺は大胆じゃない」

 

 春ちゃんはクスクス笑った。

 

「ふふ、どっちも大胆ってことにしよう」

 

「そだな。てか、この場を見られたらやばかったり?」

 

「んー、大丈夫だと思うよ。先生たちは職員室だと思うし、私が見た限りでは生徒は教室だと思うから」

 

「な、なるほど」

 

 それから俺と春ちゃんは、昼休みギリギリまで話し込んでから、お互いの教室へ戻った。

 また、ハーレムデートしようよ。とも言っていたが、あれ、かなり体力を消費するんだよなぁ。楽しいけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~放課後、教室~

 

 帰り支度をしていると、隣席に座る小咲が俺を呼び、体を向ける。

 

「蓮君。ハッピーバレンタイン」

 

 小咲が手渡してくれたのは、ピンク色のラッピングをしたチョコだ。

 

「サンキュ。ちゃんとお返しはするな」

 

「うん、楽しみにしてるね。そういえば、蓮君。春からはもらった?今日はお家で『今日はバレンタイン。蓮さんにチョコを渡すぞー』って宣言してたから」

 

「昼休みにもらったぞ。まだ食ってないけど」

 

 もらったチョコは、ちゃんと鞄の中に大事に保管してる。

 つーか、朝と昼、下駄箱と机の中の義理チョコの通算が、手提げ袋一個分なんだが……。これ、小咲たちにバレるとやばかったりすんのかな?ま、まあ、何とかなるか。

 ちなみに楽も、姉貴や鶫から義理チョコをもらっていた。てか、今日も橘は休みなので、前回のような楽銅像?のようなチョコはなかった。

 あの元気な橘から何の連絡もないとなると、嫌な予感がしてならないんだよなぁ……。これ、フラグになったりしないよね……。




蓮君は羽姉から、晩御飯の後チョコをもらいました。
次回は、ストーリーを進める感じになりそうです。

ではでは、次回もよろしくです!!


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第59話 ケイヤク

メチャクチャ久しぶりの投稿です……m(__)m


「橘万里花さんが、昨日をもちまして転校になりました……」

 

 HRが始まり、教壇の上に立った羽姉の言葉に、俺は目を見開いてしまった。……つーか、嫌な予想が当たったのかよ。教室内も、混乱の渦である。

 この日から数日経過したが、あの日から橘とは音信不通である。ちなみに、女性陣が橘が住んでいた家に行ったらしいが、橘の姿は無く留守状態だったらしい。……まあ、転校してたなら当然なんだが。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~屋上~

 

「……万里花ちゃん、どうしたのかな?」

 

 そう聞いたきたのは、俺の隣に立つ小咲だ。

 

「……解らん。つっても、急な転校に、楽にチョコを渡す時意味深な言葉。あれから音信不通。……これだけで嫌な匂いが凄ぇけどな」

 

 楽は『意味深な言葉』ってだけしか聞かせてくれなかったけど。まあ、『橘の覚悟が窺える言葉』と、俺は解釈しとこう。

 

「今、一条君は誰に連絡してるのかな?」

 

 そう。今、楽は誰かと連絡を取っているのだ。

 

「おそらく、橘の九州の友達だろうな。前に来襲?した時に連絡先を交換したらしい」

 

 なるほど。と頷く小咲。

 そして、スピーカ越しに会話はこうだ。

 橘が転校した理由は、母親との契約らしい。まあ、何の契約かは解らんが。

 橘の実家は九州でも指折りの歴史ある家で、九州の地元では有名であり、知らない人はいないそうだ。んで、橘はそこの一人娘。……にしても、母親の命令が絶対になるとか不憫すぎる……。それに、橘の母親は、橘自身には興味がない。という母親らしい。簡単に言えば、橘を家の歯車としか見てないって所である。

 

「結婚!?明日だとぉ!?」

 

 楽がそう声を上げた。

 相手の男性は、40歳の社長でバツ一らしい。つか、明日結婚とか、仕組むの早すぎだろ、橘の母親。

 

「……やっぱり、結婚は好きな人としたいよね」

 

「まあな。てか、俺の場合は重婚になるけど。……将来、法律が改変されなくても、何とかなると思うし」

 

 そうだね。と言い、小咲はにこりと笑った。ちなみに、重婚相手は、小咲、春ちゃん、羽姉である。

 ……と、話を戻すと、九州の方はアクションが起こせない為、決定はほぼ確定ということだ。……完全ではなく、ほぼ。という事は、俺たちの動きで、その未来が変わるかもしれないという事決まるって所だと思う。……たぶんだけど。まあその辺は、楽の判断で決まるだろうなぁ。

 そして――、

 

「……らしくないッ!あんたは助けに行きたいんでしょ。なら、行動あるのみ!いつもあんたはそうでしょ?」

 

 と、姉貴が楽に言った。

 楽は、びくりと肩を震わせたが、覚悟が決まったようだった。

 

「あ、ああ、そうだな。ありがとな、千棘。――でも、オレだけじゃ不安だ。皆の力を貸してくれ!」

 

 賛同する姉貴たち。(俺と小咲、るりは除く)

 

「つっても皆さん。明日は平日で、普通に学校があるんだけど……」

 

「「「「「あ」」」」」

 

「……いや、姉貴たちは今気づいたん?助けに行くのはいいが、学校はどうすんの?」

 

 その時、バンッと扉が開かれる――。

 

「話は聞かせてもらいました!皆の九州行きは、私たち叉焼会が全力をもってサポートします!」

 

 羽姉の一言で、俺たちは学校を休み、橘の救出が決まったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~翌日。凡矢理空港~

 

「んじゃ羽姉、俺と小咲がいない期間は、春ちゃんを気にかけてやってくれ」

 

「羽さん、春をよろしくお願いします」

 

「うん、任せて。……あと蓮ちゃん、九州でフラグを建てたりしたらダメだよ」

 

 いやね、羽姉。フラグを建てたりしないからね、俺。

 

「その辺は任せて羽さん。しっかり、私が見とくから」

 

「……まあそういうことだ。心配しなくていいぞ」

 

「なら安心だね」

 

 俺たちは、皆集まっている場所まで移動する。

 

「皆、気をつけてね」

 

 俺と楽で「おう」と返事をし、空港の扉を潜った俺たちであった。

 現地では、色々と穏便に済ませたいなぁ……。




次回は、乗り込みかな?

ではでは、次回もよろしくです!!

ちなみに、楽のヒロインは、千棘と万里花の予定です。……うん、予定です。


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第60話 キュウシュツ#1

この話、書くの難いかも……。


「「「「「でかッ!!」」」」」

 

 羽姉が用意してくれた車から降り、橘の実家を見た俺たちの第一声だ。……つーか、完全に城だ。俺の家の100倍以上はある。でもまあ、城は城でも、近代化された城って所か。

 

「着いたのはいいが、これからのプランはあんのか、楽?」

 

「ああ。取り敢えず、インターフォンを鳴らして話してみる」

 

 ……俺が思うに、一方的に切られるだけだと思う。

 とまあ、楽がインターフォン越しに容件を伝えるが、一方的に切られてしまってた。予想通りの反応である。……やっぱり、強行突破しかないのかなぁ……。

 すると、姉貴が息を吸い込み、

 

 

「万里花――――!いる――――!!??いるなら返事しなさい――い!!」

 

 

 やっぱりこうなったか……。と思い溜息を吐く俺。楽と姉貴は、『どうすんだよ、お前!』とか話し合ってたけど。

 すると、ドドドッ!と音がし、正面扉が開かれ、棒を持った門番?が多数(10人くらい)出現。……これはもうあれだ。強行突破しかねぇわ。

 

「……ったく。――鶫。一旦、皆が逃げるまで時間稼ぎするぞ」

 

「――了解しました、若」

 

「ってことだ。俺と鶫が正面の道を開くから、皆はその内に内部に走ってくれ。姉貴はもしもの場合、頼んだぞ」

 

 頷く楽たち。その時、小咲から『無理はしないでね』ってアイコンタクトをもらった。俺も『ああ。小咲も気をつけろよ』と返した。まあ姉貴がいるから心配いらないと思うが。

 俺と鶫は走り出し、男たちの意識を刈り取っていく。その隙に、楽たちは内部に突入。

 楽たちが逃げ切ったのを確認してから、俺と鶫はこの場から離れた。……まあ全員気絶させたんだが。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 皆が逃げた場所へ向かうと、姉貴が黒髪の美人さんに抱きつかれていた。……てか、髪をハスハスは止め。とまあ、鶫の拳骨で事は済んだけど。

 話を戻すと、この近場に城へと続く隠し通路があるらしい。案内の元そこへ向かい、鎖を引っ張り上げると地下通路が姿を現した。どうやら、この通路を辿れば、城へ入る事ができるらしい。でもなあ、無事に到着できるかは神のみが知るって所である。

 

「んで、人選はどうすんだ?あんまり多すぎると、見つかる危険が増えるけど」

 

 人選は、俺、楽、姉貴、鶫という感じだ。

 小咲とるり、集は、違う方面から内部に侵入するらしい。まあ、九州の友達(御影さん)が如何にかして侵入ルートを作るのだろう。

 ともあれ、楽が天守閣までの地図を受け取り、人選組は地下通路へ入って行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「しかしまあ、これって不法侵入だよなぁ……」

 

「バレなきゃ問題ない。バレたらバレたで何とかすればいいだろ」

 

 俺の言葉に、楽の口角が引き攣る。

 

「な、なんとも心強い言葉で……」

 

 進んで行く内に、楽が呟く。

 

「てかさ、橘の母親って徹底してるよな……。橘を連れ戻して、たった二日で結婚式だなんて、それにオレたちと会わせないようにしたりとか……。オレ、そんな人を説得できんのかな……」

 

 楽の言葉を聞き、姉貴のチョップが楽の頭に落ちる。

 

「なぁに弱気になってんのよ。あんたの気持ち、素直に伝えればいいじゃない。その後は成り行きよ、何とかなるって。鶫と蓮もいることだし」

 

「そ、そうだな!行こう!」

 

 通路を走り広間に出るが――、俺と鶫が待ったをかける。

 

「……待て、誰かいる」

 

「……ええ、若の言う通り誰かいますね。気配からして、かなりの実力者と」

 

 柱の陰から姿を現したのは、橘の護衛である本田さんだ。

 

「お待ちしておりました。篠原様が手引きなさってる以上、浸入するのはこの通路しかないと思っていました。――誠に申し訳ないのですが、ここを通すわけには参りません。どうぞお引き取りを、抵抗するなら捕縛せよの御達しです」

 

 楽は、本田さんに抗議するが、本田さんは聞く耳持たずだ。てか、話によると、本田さんは生まれながらに橘家に仕えてるらしい。……つまり、橘家に仕える忍者。だという事だ。

 

「できれば、怪我はさせたくありません。速やかに、ここからお引き取りを願います」

 

「……若、お嬢、一条楽。ここは私に任せて、先に進んでください」

 

「だが、鶫。俺も参加した方が勝率はぐっと上がるぞ」

 

「ダメです、若。ここから先なにがあるか解りません。お嬢もお強いですが、若のように裏の適用はあまりないのです」

 

 確かに、姉貴には暗部系が来ると分が悪すぎる。

 もし遭遇したら、その場で捕縛される確率は高い。

 

「……解ったよ。俺たちは先に行くが、お前も勝って追いかけろよ」

 

「ええ、わかりました」

 

 俺は、楽と姉貴に『行くぞ』と言い、この場から走り出した。

 まあ出口に出たのはいいが、姉貴……小枝を踏み付けて、音を出してから猫真似で誤魔化すのは無理がありすぎるだろ。それに追いかけてくる人数が50人以上とか、俺一人じゃ捌けないからね。姉貴と太刀打ちすれば何とかなると思うが(半分以上の確率で捕まる)。それに、天守閣まで距離があるのに、楽を一人にするのは不安すぎる……。だからまあ、取るべき手段は逃げるである。

 

「ま、マジかよ!前からも来た!これじゃあ挟み打ちになる!」

 

 楽が声を上げる。

 そして、俺はその場で停止。

 

「……姉貴」

 

「わかってるわ。もやしをどうにかしてくるから、蓮は先にやっててちょうだい。囮は二人いた方がいいしね!」

 

「ああ、早めに頼むぞ」

 

 姉貴と楽は、窓を開け外に出て行った。

 おそらくだが、姉貴は楽を上へ投げ飛ばすつもりなのだろう。……まあ楽。頑張れ。

 

「……前後で50で、100人ってとこか。……つーかこれ、無理ゲーだよなぁ……」

 

 てか、姉貴と捕まるのが目に見えてる気がするんだが……。そして俺は溜息を吐くのだった。




さて、次回は結婚式破壊か!?漫画では、ここのシーン最悪だったからなぁ。(漫画は16巻からレンタルで見た)

戦闘に関しては、ラブコメだし許してm(__)mまあ現実ではありえないからなぁ(遠い目)

つ、鶫の言葉は無駄に終わったのか!?まあその辺はご都合主義ですね(笑)

追記。
蓮君の活躍は、もうちょい先になりそう。(多分)


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第61話 キュウシュツ#2

この話はこれで終わりで、蓮君がメインになりますね。


 ~地下、牢獄内部~

 

「……どりゃあああぁぁぁああ!!」

 

 姉貴が全力で柵に蹴りを入れるが、柵はビクともしなかった。

 おそらく、俺たちが力を合わせても突破は難しいだろう。……てか、姉貴の全力蹴りで破壊されないとか、柵硬過ぎない?

 

「……姉貴、これ以上やっても柵はビクともしないと思う」

 

「そ、そうかもだけどっ。……でも、早くしないと万里花が」

 

「その辺りは、御影さんが如何にかしてくれるだろ。たぶんあの人、俺たちがこうなる事は見越してたと思うし」

 

 あの人、最悪のパターンまで考慮してそうだし。てか、あの人の性格上、かなり用心深そう。

 それから数分後、「牢屋の鍵はいらんかえ~」って御影さん登場である。でまあ、手錠と牢屋の鍵を開けてもらい、俺たちは自由になった。

 それからすぐに楽とも合流し、橘の母親の話を聞くと、俺が予想した人物像とほぼ一致だった。だからまあ、橘が反発する気持ちも分かる。

 とにかく、全員が輪になり座って、今後の話をする。

 

「で、楽これからのプランはどうすんの?」

 

「ああ。結婚式をぶち壊して、橘を力ずくで連れ戻そうと思う。……あの母親相手に話し合いは通じねぇ。とにかく一度、物理的に距離を開ける必要があると、オレは思う」

 

 楽は言葉を続ける。

 

「連れ出したら、とりあえず家に匿おうと思ってる」

 

 楽が言うには、ヤクザなら警察も手は出しにくいし、訳を話せば、集英組の皆も分かってくれるからだそうだ。

 まあ確かに、連れ出した後の策は、これがベストだと俺も思う。ビーハイブでもいいと思うが、親父は橘と面識がないので、却下の方向で。てか、結婚式ぶち壊しの後は、たぶん俺は手を引くだろうなぁ……。まあ助けを求めて来たら、手を貸すかも知れんが。

 ともあれ、今後の動きが決定した。てか、姉貴が言っていたように、「ここまで来たなら引き下がれない」っ言葉には共感した、うん。

 姉貴は、参加条件として、橘を家で預かる気らしいが。……まああれだ。俺、羽姉の家に居候してて良かったわ。色んな意味で。つか、小咲たちが城内部に潜入していたとは驚きである。

 

「そいじゃ!万里花救出作戦の概要ば説明するとよ!」

 

 作戦内容は、結婚式に乗り込み橘を連れ出し、事前に打ち合わせした通路から脱出って感じだ。重要なのは敷地内連れ去るタイミングらしい。まあ確かに、先程の一連で警備強化(特に結婚式会場前とか)されてるのは必須だ。

 ちなみに、結婚式開始の時間は、今日の正午過ぎかららしい。

 

「準備を考えたら、あまり時間が無か。すぐに取りかからんと」

 

「「「了解!」」」

 

 作戦会議が終了し、移動を開始した俺たち。……てか、この作戦。穴がありすぎなのは気のせいだよな。つーか、色んな場所に繋がりすぎだろ。御影さんが持ってる隠し通路……。

 

「……なあ、何か外が騒がしくないか?」

 

 俺が言うと全員が耳を澄ませ、飛び交う会話の中には『式が一時間早まった』って言う会話もあった。

 どうやら、橘の母親は俺たちの妨害をさせない為に、時間を早めたのだろう。

 

「……んで、楽。どうするよ?」

 

「ああ。こうなったら会場に直接乗り込むしかねぇ」

 

「いや、それしかないと思うが、警備が厳重すぎるぞ」

 

「んなこと分かってる。でも、オレは行く!」

 

 こうなったら、楽は止まる事はないだろう。そして俺は溜息を吐く。

 

「俺と楽で乗り込むから、姉貴たちはバックアップをお願いしたいんだが」

 

「ええ。そっちの方が動きやすいでしょうからね。鶫もいい?」

 

「私はお嬢の意思に従います」

 

「オレもそれでいいよ~」

 

「……あんたらは、ホント無茶ばかりするばい」

 

 どうやら姉貴たちはOKらしい。

 ともあれ、俺と楽は通路に飛び出し、会場の扉を開けた。所謂、乗り込みってやつだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「その結婚式、待ったああぁぁあああッッ!!」

 

 扉を勢いよく開けた楽の第一声である。

 結婚式に出席していた来客も「何だなんだ?何が起こってるんだ?」「待ったって、この結婚式はどうなってんだ?」って言う声が飛び交う。

 万里花は楽の名前を呼ぼうとするが、何かに遮られるように口を結んだ。そして――、

 

「……何をしに来たんですか?一条さん?」

 

 それから、万里花は「誤解です。帰って下さい」「今でも私が一条さんのことを好きだとお思いで、だとしたら寒気がします」「邪魔をしないで下さい」と、冷たい言葉を楽に言う。

 だがそんな時、遅れて登場した蓮が――、

 

「……ったく。何で橘はそんな嘘をつくのかね。お前のその言葉、本心じゃないだろ?」

 

「あら。誰かと思いましたら、クラスメイトの桐崎蓮さんじゃありませんか」

 

 万里花は平然に言う。

 

「ああ。久しぶりだな、橘。つーかお前よ、ポーカフェイスって知ってか?目許に涙を溜め過ぎから」

 

 蓮の言葉は続く。

 

「お前のことだから、迷惑がかからないようにしたんだと思うけど。そうだと思うよな、楽?」

 

「ああ、蓮の言う通りだ。なあ橘、一人で抱え込むなよ。嫌なら嫌って断れよ、今後のことはオレたちと相談して決めればいいじゃねぇか」

 

 楽は『でも』と言葉を続ける。

 

「……オレはまだ、橘の想いに答えを出せない優柔不断な男だが、必ず答えを出す」

 

 答えは決まってると思うが、楽も蓮と同じ路線まっしぐらだろう。……世間一般でいう、ダメ男である。まあ当人たちは気にしないと思うが。

 

「だから橘、オレたちにお前を助けせちゃくれねぇか」

 

「お前はホント優柔不断だな。まあ振らないだけマシかも知れんが」

 

 楽はジト目で蓮を見ながら、

 

「いやいや、蓮もだろ。オレ知ってるぞ。蓮が、小野寺と春ちゃん、羽姉と付き合ってること」

 

 蓮は、うぐッ、と唸った。

 

「いやね、俺の場合、誰か一人を選ぶとか無理だから」

 

「だから、全員を選んだと」

 

「お、おう」

 

 珍しく、楽が蓮の上に立つ構図である。

 ともあれ、万里花が――、

 

「……楽様。私のこと攫ってくれますか?」

 

 万里花が目許に涙を溜めながら言った。

 楽が『おう』と同意し、後方の扉が開き全員集合である。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 出て来た衛兵たちが武器を向けるが、いきなり腹を押さえてどんどん倒れていく。

 

「成功ね。小咲」

 

「う、うん。でもまた作るとは思わなかったよ」

 

 話によると、内部に潜入した際、結婚式用に作った料理は、小咲の殺人料理らしい。

 それを先に衛兵たちに勧め、食べた衛兵が倒れたということだ。……何ともえげつない作戦である。

 

「この先は、本田さんが出てくるだろ。鶫」

 

「はい、若」

 

 鶫が取り出したのは、刀が一振りだ。

 蓮に必要になると思い、脱出のついでに盗み出したらしい。

 蓮は刀を受け取り、腰から吊り下げる。

 

「楽。ここから先では本田さんが出てくる。相手は俺に任せて先に行け。鶫は楽たちの護衛な」

 

「で、ですが、若」

 

 鶫は心配そうに声を上げるが、

 

「俺のことは気にすんな。鶫は、楽たちを橘の所まで導いてくれ」

 

「……わかりました」

 

 と、鶫は返事を返し、そして楽が「ここからが正念場だ。橘のこと取り戻すぞ!」と言ってから走り出すと、予想通り本田が楽たちの前に立つ。

 

「……楽。姉貴たちと先に行け。鶫、護衛は任せたぞ」

 

「お、おう。ここは任せた」

 

「了解しました、若」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……まさか、貴方と戦う事になるとは思いませんでした。ビーハイブの剣舞」

 

「……その二つ名は好きじゃないんですけどね。本田さん」

 

 蓮が刀を抜くと、本田は懐から鎖分銅を取り出す。そして蓮は眉を顰める。刀とほぼ飛び道具では、蓮の分が悪い。

 まあでも、蓮の役目は本田をこの場での足止めである。

 すると、突然本田消えるが、後方からの本田の蹴りを蓮は右腕を上げ防御する。

 

「中々の反応速度ですね。……貴方、本当に高校生ですか?」

 

「……何と言われようと、俺は高校生ですよッと」

 

 蓮が右手で握った腕を上げ、力ずくで斬り上げると、本田は後方に飛びそれを回避。

 

「なぜ、貴方たちはお嬢様の結婚式を邪魔するのですか?」

 

「何でって言われても……。まあ友達の為って言っておきますよ」

 

「……そうですか」

 

 蓮は走り出し、本田の鎖を潜り抜け刀を振るうが、本田はそれを上手く鎖で迎撃。

 また、二人の回りの遮蔽物は粉々に粉砕されていく。

 蓮と本田は攻防をしながら、

 

「貴女は本当に、橘を裏切ったんですか?」

 

「……何を言ってるか解りません」

 

「いや、らな何で苦しそうな顔をしてるんですか?普通なら、橘の幸せを祝う顔をするでしょ」

 

「………………何が言いたいんですか?」

 

「本当は、この結婚には反対ってことですよッ」

 

 蓮が鎖を弾き、二人は一旦距離を取る。

 

「……貴方は情で行動しすぎです。裏に生きる者、そのようなものは障害になるだけです」

 

 本田は鎖振るうが、蓮は正面から刀を構え、

 

「……ホント、貴女は強がりすぎですねッ!」

 

 蓮は鎖を叩き落としたが、本田の姿は見当たらなかった。蓮が回りを見渡すと、橘救出ヘリの近くに本田の姿が――、

 

「クソッ!逃がしたか!――楽!本田さんがそっちに行った!気をつけろ!」

 

 だが、万里花は本田に捕まり、中央に着地した。そして、万里花を離し、再び蓮と向き合う。

 すると何かが到着した。――隠衛衆である。所謂、忍びの集団だ。だが、万里花を捕まえようとするが、それを鎖が薙ぎ払った。

 

「……成程。本田さん、貴女は俺と同等に私情を挟む人じゃん」

 

 そう、本田はいつも、万里花の為に行動していたのだ。今回の結婚騒動も、ここでまで見越していた。なので、騒動が起こるまで万里花を欺いていたのだろう。

 

「……桐崎蓮さん、鶫さん。私はこれからお嬢様をこの場から離脱させます。どうか助力願いませんか?」

 

 蓮と鶫は、本田の所まで飛んだ。

 

「今まで申し訳ありません」

 

「気にしないで下さい。貴女の本音が聞けて嬉しく思います」

 

「つーか、本田さん。最初からそのつもりなら、戦闘の最中に教えてくれればよかったのに。まあいいですけど」

 

「……では、参ります」

 

 蓮たちは飛び、迎撃に入ったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「蓮!そこの壁壊して!」

 

 姉貴の声に従い、俺は指定された壁を壊すと、外にはヘリの姿が。

 吊り下げれた柱には、楽の姿がある。そして橘は走り出し、楽が抱きしめた。

 

「(成程な。正に、王子様がお姫様を連れ去るってことか)」

 

 ともあれ、今回の一件に終止符が打たれ、その後俺たちも、御影さんの先導の元、城から脱出したのだった。

 




……まあうん、戦闘とか銃刀法とか色々あると思うが、フィクションだしね(-_-;)
でまあ、原作ではアレだったけど、本作では楽は振りませんでしたね。てか、蓮君。楽に優柔不断と言われてしまった(笑)


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第62話 コレカラ

この小説も完結に近づいてきました。(今は原作の22巻)
……てか、蓮君のヒロインに万里花を入れることができなかったっス。期待して方ゴメンナサイ(^_^;)


 ~学校の屋上、昼休み~

 

「じゃあ、万里花ちゃんは通院っこと?」

 

 そう。橘は小さい時から病気を患っており、病院に通うことになったのだ。その病院の経営を行っているのは橘家らしい。だからまあ、本田さんの行動にも納得だった。おそらく、橘に治療を受けてもらいたい為、無理にでもあの結婚式に賛成していたのだろう。てか、結婚式を破壊した後、母親から『好きにしろ』って電話をもらったらしい。なので、捕まることなく病院に通えるってことだ。

 

「まあそうなるな。羽姉、まだ学校には通達がいってないのか?」

 

「うん、まだきてないよ。たぶん、今日の職員会議で通達されると思う」

 

 確かに、昨日の今日の、数時間では連絡は早すぎるわ。

 

「なるほどなぁ。てか、小咲も救出ごくろうさん」

 

「ううん。私は、あの料理を作っただけだし、万里花ちゃんを助けたのは一条君と蓮君だしね」

 

 すると、輪になって座り、弁当を食べていた春ちゃんが声を上げる。

 

「え、お姉ちゃん、あれをまた作ったの?」

 

 春ちゃんは、『うへー、食べた人はドンマイだなぁ』と言いたい表情だ。

 俺も一度口にしたことがあるが、あれはえげつない料理である。

 

「う、うん。また作るとは思ってなかったけど」

 

 小咲は苦笑だ。

 今なら、あの料理のえげつなさが解るのだろう。ちなみに、今の小咲の料理は、レストランで出しても金を取れると言っておこう。

 

「楽ちゃんは、千棘と万里花ちゃんをどう想い、どんな答えを出すんだろうね」

 

 確かに、羽姉の言う通り、俺も気になる事柄である。

 楽も裏を生きてく者なんだし、股にかけるのもアリだと、俺は思う。……でもまあ、俺が言える事じゃないんだが、客観的に見たら俺最低野郎だし。

 

「一条君は選ぶ選択を取ると、私は思うなぁ」

 

「お姉ちゃんの言う通り、一条先輩はその辺はきっぱり決めそうな感じだね」

 

「でも、私は蓮ちゃんが取った選択でもいいと思うけどなぁ。二股になっちゃうけど」

 

 羽姉、『蓮ちゃんの場合は三股だね』って笑顔でいうのは止めてくれ……。まあ、俺は今の選択をして後悔はしてないけど。でもまあ――、

 

「……小咲、春ちゃん、羽姉は、こんな俺を好きになって良かったのか……、やっぱ後悔してる、のか?」

 

「ううん、まったく。――私は、小咲ちゃんや春ちゃん、蓮ちゃんといれて幸せだよ。これ以上望むものはないよ。それに、昔からの願いも叶ったしね」

 

「私も後悔はしてないよ。こんな幸せの時間をくれて感謝しかないよ、蓮君」

 

「私も幸せだよ、蓮先輩。私は、お爺ちゃんお婆ちゃんになっても傍にいることを誓うよ」

 

「……ありがとう。必ず幸せにするよ」

 

 羽姉ちゃんたちは『楽しみしてるね』と言って、にっこり笑った。

 そんなこんなで昼休みが終わり、俺たちは各教室、職員室へ戻ったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 学校が終わり、俺と小咲、春ちゃんは通学路の途中にある公園に赴いていた。ちなみに羽姉は、学校のことがあるのでこの場にはいない。

 

「少しだけ暖かくなってきたな」

 

「そっか。もう三月になるんだ。受験が近づいてくるね」

 

「私は、そろそろ二年生だよ。時の流れは早いかも。楽しければ尚更だよ」

 

 時より吹く風が頬に当たり、春の訪れを告げていた。

 

「ねぇ蓮君。私たちは蓮君と結婚したら、どうなるのかな?」

 

「あ、それ。私も気になる」

 

「ほぼいつもと変わらないぞ。大学受験を受けても、就職しても大丈夫だぞ」

 

 俺は叉焼会(チャーシューかい)首領(ドン)になるが、羽姉たちを束縛する気はない。

 少し変わるとしたら、羽姉たちの籍を叉焼会(チャーシューかい)に置くくらいだと思う。まあ帰る家は皆同じだけど。

 

「じゃあ、私たちは就職かも」

 

「そうだね。私と春は、『和菓子屋おのでら』を二人で継ぐって決めてるから。……それでも大丈夫かな。個人経営で、資金とかその他諸々があるけど」

 

「二人の進路は決まってるのか。そういうことなら、『和菓子屋おのでら』は俺が買い取る(・・・・)から心配すんな」

 

 まあ、大学進学や、他の企業に就職だった場合も、護衛は数人置いたと思うが。ちなみに、羽姉は結婚後、教師を続ける感じだ。

 小咲と春ちゃんは目を丸くしたが『そっか』と言い、微笑んだ。




今回の話で、進路希望の話も書いちゃいました。


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三年生
第63話 テンタイカンソク


お久しぶりです。


 季節7月。俺と小咲は三年に、春ちゃんは二年生になった。そして今、俺たちは通学路を三人で登校している。ちなみに、羽姉は先生という事もあり、登校時では別登校である。

 

「もう7月か。早いものだな」

 

「だね。私たちが一年だった頃が、つい最近のようだよ」

 

「私も月日が流れるのは早く感じるなぁ。それもこれも、蓮さんのお陰だけどね」

 

 俺と小咲、春ちゃんはいつものように話をしながら登校し、学校の校門前に到着し、昇降口を入って上履きに履き替え教室へ向かう。

 とまあ、このようにして、俺たちは一日一日を過ごしていく。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~昼休み、屋上~

 

「さて、明日は天体観測である」

 

 そして、集が布を取り払った場所には天体望遠鏡があった。……まあ、何処から借りたきたのはいいとして、相変わらず集の交友関係は選手層が厚い。

 そんな時、小声で春ちゃんが、

 

「れ、蓮さん蓮さん。私二年なのに、天体観測に参加していいの?」

 

「ん、ああ。構わない。てか、羽姉も参加するらしいし。俺たちは三人、皆一緒だからな」

 

「そ、そっか」

 

 春ちゃん、頬を朱色に染めないでくれ。何か、俺も恥ずかしくなるから。

 すると小咲が、

 

「蓮君蓮君。私、お弁当持ってくるね」

 

 春ちゃんも一緒に作ってくれるらしい。

 

「お、いいな。休みの学校で弁当か」

 

 羽姉も弁当を作るって言ってたし、俺たち全部食えるかな?まあ、残すことは絶対しないけど。

 てか、噂によると、五十年に一度しか見ることができない大規模なものらしい。この流星群を男女が一緒に見て告白すると、その恋が成就するとか。……まあ俺は噂とか信じないが。

 

「蓮君と春はどう思うかな?この噂?」

 

「んー、私は信じないかなぁ。自分の行動が全てだって思ってるし」

 

「俺もそうだな。ヘタレな部分もあるけど」

 

 ……まあうん。俺っていつも重要な所でヘタレるんだよね……。マジでこれは治したいわ。

 ともあれ、明日の天体観測では橘も参加するらしいし、姉貴たちはこれを使って、橘は再び楽に告白、姉貴も楽に告白をしようって考えてるのかもなぁ。

 

「この話はまた放課後にでもしよう。俺は、ちょっと楽と集の所に行ってくるわ」

 

「うん、りょうかいだよ」

 

「りょうかいしました、蓮さん」

 

 ともあれ、楽と集がいる手摺前に移動する俺。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 手摺に両手を組んで体重を預ける。並びは右から、俺、集、楽である。

 

「んで、何の話をしてたんだ?」

 

「おう、蓮か。いやな、楽の恋についてな。そういえば蓮は、学校を卒業したらアメリカに戻るのか?」

 

 これは集の質問だ。

 

「いや、俺は日本に残るぞ。色々と仕事を片付けないといけないし」

 

 集はニヤニヤし、

 

「それって、小野寺たちのことか?」

 

「俺の場合は全員を選んだから、そのことでな色々な。まあ、俺の家柄上心配いらない事だと思うけど」

 

「なるほどねぇ。蓮の職業上、愛人や複数の恋人がいても問題なさそうだしなぁ。それにしても、姉妹と先生とは驚いたけど」

 

「あー、そのことに突っ込むのは止してくれ」

 

 いや別にいいんだが、世間で見ると色々とやばいかもだし。先生と禁断の恋とか、姉妹を恋に落とした変態野郎とかのレッテルがね……。

 

「で、俺のことはいいとして、楽はどうすんだ?二人の好意には気づいてるんだろ?」

 

「……まあそうなんだけど」

 

 おそらく、楽の中では葛藤があるのだろう。

 二人を一緒に選ぶか、どちらか一人を選ぶか、と。

 ともあれ、それぞれの想いを胸に、天体観測の日がやってくる。




投稿が久しぶりすぎで不安です、色々と……。
さて、この小説も完結までもう少しですね。


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第64話 ホシゾラ

 ~天体観測当日~

 

 俺と春ちゃん、小咲、羽姉はいつものように学校に向かっていた。まあ、羽姉は教師ということもあり途中で別れるのだが、今日はその心配もいらない。てか、姉貴と橘、楽の集合時間早くね。ちなみに、集合時間は18:00である。……まあ、俺も人のことを言えないんだが。

 

「何か、時間前に集合しそうだね」

 

 小咲が俺を見ながらそう言い、俺は頷いた。

 

「かもな。しっかし、今回の天体観測で色々動くと俺の予想」

 

「一条先輩、橘先輩、千棘先輩のことだよね」

 

「でも楽ちゃんだし。まだ決まらないかもよ」

 

 ……うーむ。春ちゃんは兎も角、羽姉ちゃんは辛口意見である。でもまあ、傍から見てるともどかしく見えるのは事実だけど。

 ともあれ、こうして早く集まったので合流してから校舎下に集合するが、唐突に雨が降り出した。

 スマホで調べて見ると、台風が進路を変え、凡矢理市周辺に暴風警報が発令されてるらしい。……今回の天体観測は中止だろうなぁ。夜の屋上で仰向けになって、皆と星を見ることがしたかった……。

 

「てことはなんだ。この学校には、オレたち七人だけってことか?」

 

「そうなるなぁ。ま、いいじゃんか」

 

 俺の返しに、楽は肩を落とす。

 

「……蓮さんや、楽観的だな」

 

「そうか?夜の学校に俺たち七人とか、楽しそうだし」

 

 ちなみに台風は、凡矢理に直撃コースらしい。

 

「まあいいや。とりあえず、教室に行こうぜ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 教室に向かう俺と春ちゃん、小咲、羽姉だったが、天帝望遠鏡が屋上に出しっぱなしだということに気づき、俺たち四人は屋上に向かい、入口のドアを開けていた。……うん、予想通り土砂降りである。ちなみに、楽たちは先に教室に向かった。

 ともあれ、天体望遠鏡はシートにかけられ固定されているから無事である。てか、壊して賠償金を取られるとか洒落にならん。

 

「蓮ちゃん、私たちも手伝うよ。あの大きさを一人では辛いだろうし」

 

「わ、私も手伝う。タオル持ってきたし、大丈夫」

 

「むー、私だけ仲間外れは嫌だよ」

 

「……手伝ってくれるのは嬉しいんだが――……」

 

 そう、女子が私服で雨に打たれると色々拙い状況になるのである。……まあ、俺はそこら辺はヘタレだから心配いらないと思うが。

 俺は溜息を吐き、

 

「了解。手伝ってくれ」

 

 三人は、りょうかい。と頷いた。

 それから俺たちは、雨に打たれながら走り出す。

 

「地面が滑るから気をつけろよ!」

 

 ともあれ、天体望遠鏡を仕舞うことに成功しました、はい。んで、何とか理性が勝ち、この場は何とかなりそう。……まあ、かなり際どい線だけど。

 すると突然停電が起こり、雨が急に止み、風の音も聞こえなくなった。

 

「わあ、綺麗……」

 

 小咲に続く形で俺たちが外を見ると、暗闇に星が流れていた。

 

「……確かに、幻想的な景色だなぁ」

 

「星、なのかなぁ?」

 

「台風の目に入ったことで、星が見えるようになったとか?」

 

「そこら辺は解らんが、来てよかったな」

 

 この景色が見れたということで、雨に打たれて濡れたことはチャラだろう。

 だが、この景色もつかの間であり、また雲に隠れ雨が降り出したんだけど。たぶん、一時的に台風の目に入ったということにしておこう。そうしよう。

 

「保健室の暖房って借りても大丈夫かな?羽姉」

 

 今の気温で、少しの暖房で服は乾くだろう。

 

「問題ないよ。何かあれば、教師権限を使っちゃうしね」

 

 おいこら、舌をぺろって出すな羽姉ちゃんや。つか、それって職権乱用だよね?……まあいいか。

 

「んじゃ、保健室に行こうぜ」

 

 保健室に向かっている途中、春ちゃんが、

 

「一条先輩たちはどうなったのかな?」

 

「私の予想だと、今の停電でなにかあったと思われる」

 

「「私も同感!」」

 

 怖ぇな女の勘……。てか、何かあったのは確実なのね。

 

「その話は、俺が居ない所で頼むわ。まずは、保健室で服を乾かしてから楽たちと合流して飯でも食おうぜ」

 

「「「はーい」」」

 

 まあうん、声が揃うとか仲良いなお前ら。ともあれ、俺たち四人はいつも通り平常運転である。

 それからは、服を乾かして全員が集まって飯を食べたが、橘と姉貴の様子がいつもとは違った。このことから察するに、何かあったのだろう。それがプラスに働くのかマイナスに働くのかは俺には解らんが、今後の学園生活に響かないこと祈ろう。




文字数少な!……久しぶりの投稿って怖いですね(-_-;)
ニセコイも、そろそろラストに向かってる感じですね。

ではでは、また会いましょう!

追記。
集は、集合時間に台風で来れなくなった設定です。


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第65話 タンサク

久しぶりの投稿です。


「で、検査結果はどうだったんだ?楽は、あの停電で頭打ったんだろ?」

 

 俺の問いに、楽は頷いた。

 

「ああ。病院で診てもらったけど、異常はないってさ」

 

「そうか。大事に至らなくて何よりだ」

 

「悪ぃな、蓮。心配かけて。……結局、流星を見る事ができなかったけど」

 

「あー、まあなんだ。次がある……たぶん」

 

 つーか、姉貴と橘がそわそわしすぎである。……これは停電中に、告白をしたのか?聞かれたのか?っていう線が濃厚である。まああれだ、恋愛という面倒事に巻き込まれるかも知れないってことである。

 ともあれ、この昼休みに待ち合わせがあるんだったわ。なので、俺は隣にいる小咲に声をかける。

 

「小咲、後は頼むな。ちょっと行ってくる」

 

「あ、うん。春によろしく伝えといてね」

 

「おう、了解だ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺は教室を出て、一階に繋がる階段を下りていく。下まで降りた所で、昇降口前の階段に腰をかけていたのは、俺の恋人、小野寺春だ。

 

「悪い、春ちゃん。待たせたか」

 

 春ちゃんは此方を振り向き、

 

「うんん。私も今来たところで、空を見て和んでただけだよ」

 

 ちなみに、今日の天候は快晴である。時折吹く風も、心地良い。

 ともあれ、俺も春ちゃんの隣に腰をかける。

 

「蓮さん。お姉ちゃんは教室?」

 

「まあな。てか、一人一人の時間を作ろうって決めたばっかだろう。デートでもいいけど」

 

 俺は左手突き出し、人差し指で、春ちゃんの眉間を優しく突く。

 

「……うぅ、そうだった。私としたことが」

 

「悪かった。ちょっと意地悪だったな。――話は変わるが、そろそろ夏休みだな」

 

 凡矢理での夏休みの最中にはイベントとして、縁日や花火大会などが開催される。

 受験生なのに、行事に現を抜かしてでいいのか?とも思うが、小咲と俺の成績は、全国模試でもトップクラスである。なので何の心配もないのだ。まあ、多少の緊張感は必要だと思うが。

 

「夏休みの花火大会とかは、四人でお出かけしたいね。どんな浴衣を着て行こうかなぁ……」

 

 いやいや、もうそこまで先の事を考えてるのね。まあいいけど。

 ともあれ、俺たち四人は、縁日と花火大会には参加する方針である。……今回も、嫉妬の視線が強いのかなぁ……。偶に敵意剥き出しの視線もあるけど。

 

「青色を基調にした朝顔の花柄。とか良いんじゃないか」

 

 ちなみに朝顔の花言葉では、『固い絆』『愛情』『あなたに結びつく』って意味があるらしい。まあ俺の豆知識だ。

 

「うーん、じゃあそれにしよっか。お姉ちゃんと羽さんは色違いってことで。それにしても、前の流星群綺麗だったね」

 

「まあな。でも、すぐに雲に隠れて土砂降りだったけど」

 

 今となっては、あれも良い思い出である。

 

「そういえば、千棘先輩と万里花先輩、一条先輩はどんな感じなのかな?結構気になってたりしちゃうんだ」

 

 まあうん、女の子はその手の話が大好物だよね。俺としちゃ、今後の事を考えると胃がキリキリするんだよなぁ。

 

「そわそわして落ち着かない感じだな。これから面倒事に巻き込まれる感じでもある」

 

 恋愛事は、面倒がつきものだしなぁ。ソースは俺。

 

「そっか。手伝えることがあったら何でも言ってね。力になるから」

 

 マジで嬉し過ぎる言葉である。

 もうあれだな、春ちゃん女神である。まあ、小咲と羽姉にも言えることだけど。

 

「ああ、了解だ。手が必要になったら頼らせてもらうよ。んじゃ、昼休みが終わるまで学校探索と行きますか」

 

 春ちゃんは苦笑し、

 

「蓮さん、学校探索って。……まあいいけど」

 

 俺と春ちゃんは立ち上がり、下駄箱で靴に履き替えてから外に出るのであった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「若ッ――!お嬢の行き先はご存じないですか!?」

 

 いつものように登校していたら、鶫が凄まじい勢いで正面に立った。ちなみに、羽姉は職員会議がある為先に出た。

 そして、鶫の話によると、早朝の時点で姉貴の部屋は蛻の殻であり、姉貴の姿が見当たらなかったそうだ。

 

「(これはあれだな。職員会議でこの話題が出される感じか?)」

 

 ちなみに、羽姉から職員会議の内容を事前に聞いた所、夏休み中のことについて。ということだった。

 

「いや、解らん。心当たりは……」

 

 心当たりが有りすぎる、十中八九あの事件?関連だろうなぁ。

 ともあれ、学校に到着しいつものメンバーで話あった所、姉貴の姿を確認できた者は居ないらしい。

 

「み、みんな大変だよ~!!」

 

 羽姉が一枚の紙を持ってこちらに走ってきた。

 その内容は、休学届ということだ。ちなみに、休学届は学校のポストに投函されており、本人とも連絡が取れないし、親父に連絡しても口を噤んで肝心な部分は伏せている感じらしい。

 

「蓮ちゃんたちは、千棘ちゃんから何か聞いてる?こんな状態じゃ、休学届の受理もできないよ……」

 

 まあ確かに、休学届は本人の意思確認と保護者の同意がないと取れないはず。いや、たぶん、知らんけど。

 

「わ、私は今すぐお嬢の探索に向かいます!」

 

「っておい!鶫、学校は!?」

 

 楽の問いに鶫は、

 

「そんなものお嬢の安否に比べれば、どうでも良いわ!私は今から、お嬢が向かうであろう場所を片っ端から当たって見る。連絡は常に取れるようにしておくから、何か解った事があったら連絡をくれ!――首領羽、よろしいですね!?」

 

 そう言って、窓を跳び超え、隣の木の枝に着地する鶫。

 

「……あ、うん。気をつけてね~」

 

 それから数日間姉貴を探したが、一向に消息を掴む事ができなかった。

 ……ここまで探しても何も掴めないという事は、国を飛んだ可能性。が濃厚である。いや、俺の予想だが、姉貴ならそれくらい実行できる行動力はある。

 ともあれ、何も掴めないまま、俺たちは終業式を迎えてしまった――。




この小説ももう少しで完結ですね(たぶん)
うん、小説って書くの難しいです(-_-;)

ではでは(@^^)/~~~

追記。
前に書いた感じですが、蓮君は羽姉の家に居候してます。


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第66話 ヤクソク

久しぶりの投稿ですが、スゲェ短いです……。


 ~終業式~

 

「終業式になっちゃったね」

 

「だなぁ。姉貴、本当にどこに行ったんだよ」

 

 やはり、海外に行った。という線が怪しいよなぁ。ならば、俺たちの手だけではどうしようもないので、親父たちの助力が必要になる。

 

「もうここからは、橘と楽に任せるか。ここからは俺たちができる事は、ほぼないし」

 

「うん、私たちは主役じゃなく、観客ってことだよね」

 

「……そうだけど。てか、小咲ってポエマーなの?」

 

 小咲は、へっ。と声を上げる。

 

「ち、違うよ。私たちと千棘ちゃんたちは、そんな風に感じただけっ」

 

「まあ確かにな、この先は頼まれたら動くって感じか。ちょっと矛盾した感じでもあるが」

 

「それで大丈夫だと思うよ。それより、終業式サボって見ようよ。一回こういうのやって見たいんだ」

 

 俺は目を丸くする。

 

「ま、まさか小咲からそんな事が聞けるなんて……。完全無欠のガチガチ女子。って感じだったのに……」

 

「そ、それは聞きづてならないよぉ……。私も、蓮君たちと出会った事で変わったっていうこと」

 

「まあうん。あの頃と比べると、小咲、かなり大人の女性になった気もするしな」

 

「……それ、口説いてるよね。鈍感蓮君」

 

 『鈍感』の部分を強調する小咲。

 

「ひ、酷ぇな」

 

「ま、そんな君も好きだけどね」

 

「……まー、うん。サンキュ。てか、回りの視線が凄いから止めようか」

 

 そう、さっきから(聞こえてる奴ら)からの暖かい視線や、殺気の視線が凄い。……九割方、殺気の視線が強いんだけど。

 小咲は回りを見渡し、

 

「あ、ははは。そ、そうだね」

 

「まあ、そういう天然の所は直らないのな」

 

 終業式が始まる為、クラスの皆は廊下に出て移動を始めるが、俺たちは皆に教室の後ろのドアから出て行き、屋上へ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~屋上~

 

「それにしても、屋上を常に解放しておくとか、泥棒が入ったらどうすんだ?」

 

「け、警備さんが夜に閉めてるんだよ……たぶん」

 

 小咲は自信無く呟く。

 

「そうだろうな。普通だったら、泥棒が入っても不思議じゃないしな」

 

「そ、それより、私たちは今後どうしよっか?」

 

「そうだなぁ。……とりあえず、デートするか?」

 

「私はいいけど、羽さんと春は大丈夫かなぁ」

 

 まあ確かに、羽姉ちゃんは姉貴の件で大変そうだし、春ちゃんはクラスで行事があるらしので手が離せない状況かも知れん。

 

「今回は、俺たちだけで行くか。春ちゃんと羽姉にはメールを送っておくよ」

 

 あれだ。羽姉ちゃんと春ちゃんで、個人で行く感じにしよう。……てか、俺の体持つかなぁ。ま、休みを挟めば余裕だ。ちなみにメールを送った所『その条件なら問題なし』という事だ。

 

「どうだった?」

 

「ん、大丈夫だってさ」

 

 ちなみに、突然決まったデートなので、何処に行くか決まってない……。どうしよう……。

 すると、小咲が閃いたように、

 

「じゃあ、明日千葉の幕張メッセに行こう。新しくプールが設立されたんだって」

 

「了解。そこに行ってみるか。プールとか、久しぶりだしな」

 

 でもまぁ、小咲がナンパされたら、そいつを殺しそうで怖いわ……。まあ、その辺の自制はできているので、大丈夫だろうけど。ちなみに、水着は新調したものがあるらしい。

 ともあれ、終業式をバレずに抜け出した俺たちは、終業式が終わったのを見計らって教室に戻ったのだった。



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第67話 デート#2

今回は、小咲のターンです。
てか、連日投稿できてしまった(驚愕)


 ~デート当日、凡矢理駅前~

 

 俺は黒いVネックTシャツに、黒色の短パンと、黒色の大き目のバックとかなりラフな恰好である。俗に言う、真っ黒装備である。てか、部屋着に近い。……断じて、お洒落をするのが面倒くさくなった訳ではない。そう、面倒くさかった訳ではない。大事な事なので二回言ったぞ。

 小咲は、白いワンピースに大きめの麦わら帽子に、茶色の大き目のバックの紐を肩から下げていた。清楚なお嬢様という感じで、かなり似合っている。

 小咲は、俺を下から上に眺めてから、

 

「れ、蓮君。かなりラフな恰好だね」

 

「い、いやー。偶には、こんな恰好もいいかなぁ。と思って」

 

「(きっと、お洒落をするのが面倒くさかったからだろうなぁ。でも、かなり似合ってるから性質が悪いよ)」

 

 それから俺たちは駅のホームに入り、改札を潜ってから電車を乗り継ぎプールまでの道のりを歩いている。

 目的地の入場口では、客の活気で溢れていた。オープンして間もないということもあり、客の出入りが凄まじいのだろう。たぶん、いや、知らんけど。

 

「へぇ、デカイ施設だなぁ」

 

「お客さんもかなりいるね」

 

 とりあえず、金を払ってから入場口から施設に入り、俺はコインロッカーで黒色のサーフパンツに着替え、ロッカーを施錠してから上に白いパーカーを羽織って集合場所に決めた場所へ向かった。

 そこで待っていたら、

 

「蓮君、お待たせ」

 

 振り返ると、小咲は、白と黒が入り混じったボーダ柄の水着であり、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。……まああれだ、目の保養には抜群であり、ある意味猛毒でもある。

 

「ど、どうかな?」

 

「かなり似合ってる。可愛いよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 そう言って、笑みを浮かべる小咲。そして何より、いつもストレートに流している黒髪を、肩に回し纏めているので色々と破壊力がやばい。

 ともあれ、小咲は右手に淡い青色のパーカーを持っていたので、

 

「とりあえず、パーカーを着てくれ。余り他人に見せたくないので」

 

 そう言って、目を逸らす俺。

 

「ふふ、独占欲が強いんだね、蓮君は。そういうことなら、りょうかいしたよ」

 

 そう言う事なので、小咲はパーカーを着て、

 

「それで、最初はどこから回る?」

 

「流れるプールにでも行くか?なんつーか、無難だしな」

 

「りょうかい♪」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺たちはパーカーを脱いで流れるプールに入り歩いている。

 流れるプールは、水流が結構強く、体が左右に揺さぶられるが俺はバランスを保ち続けている。

 

「何か、ダイエットをしてる感じかも」

 

「水中ダイエットってやつか。てか、小咲にダイエットは必要ないだろ。今のままでも凄まじいプロポーションだし」

 

 俺の肩に寄り添う小咲は、

 

「……蓮君、それセクハラになるかも」

 

「いや、セクハラになるのか?てか、言い出した小咲が悪い」

 

「わ、私が悪いの!?」

 

「おう、小咲が悪いな」

 

 小咲は、「うぅ」と声を上げる。

 そして、小咲が「きゃ!」と声を上げると、急に流れが強くなり、小咲は俺の腕にしがみ付く。

 

「……小咲さん。当たってる当たってる、何がとは言わんが」

 

「へ?……あわわわ、蓮君の変態」

 

「俺は悪くない。流れるプールが悪い」

 

「わ、わかってるよぉ」

 

 ……まあ、俺の理性がガリガリ削れていくんだけどね。てか、プールってこういうハプニングがあるから、油断できねぇんだよなぁ……。

 ともあれ、流れるプールを一周してから上がり、パーカーを羽織る俺たち。

 

「何か飲むか?買って来るけど」

 

「んー、冷たいミルクティーが飲みたいかな」

 

「了解。ちょっと待っててくれ」

 

 俺はこの場から離れ自販機に向かい、ミルクティーとブラックコーヒーを購入し小咲がいる場所へ戻るとそこには――、

 

「ねぇ彼女。これからオレたちと遊びに行こうよ」

 

「そうそう。一人なんでしょ、オレたちと楽しいことしようよ」

 

「ちょと止めて下さい!私は待ち合わせ中なんです!」

 

 そう、小咲が男二人組にナンパされていたのだ。

 これを見た俺は平静になり、男共の元まで移動し、小咲に伸びる男の手を握る。

 

「……ほーん。俺の女をナンパかぁ」

 

 握る手に力を込め、ナンパ男の骨を軋ませていく。

 

「痛ぇ!……悪かった悪かったから!離してくれ!」

 

 俺は溜息を吐き、手を離す。

 

「で、あんたもナンパする気?」

 

 俺はもう一人の男に問う。

 だが男は、首を振り顔面蒼白である。うーむ、もしかして無意識に殺気を当てていたかも知れん。

 

「い、いや。……お、おい、ズラかるぞ!」

 

 男共は、そう言って走り去って行った。

 すると、小咲は目許に涙を溜めて、俺に抱きついた。

 

「怖かった、怖かったよ。蓮君」

 

 俺は腕を回し、小咲を優しく抱きしめる。

 

「ああ。悪いな、一人にして。もう大丈夫だ」

 

「……うん」

 

 それから俺たちは休憩所に休みながら、購入したドリンクを飲んでから、このプールの目玉であるウォータースライダーに行く事になった。ちなみに、このウォータースライダーは目玉ということもあり、そこそこ列ができていた。

 

「うぅ……。意外に高いんだね」

 

 確かに、此処からの眺めは回り一帯を見る事ができる感じだ。

 

「確かに結構高いな。目玉と言われることだけある。ま、大丈夫だろ」

 

 そうこうしている内に俺たちの順番が回って来たので、まずは小咲が準備地点に座り、俺がその後ろを抱きしめるように座る。

 そして、監視員?さんが『どうぞ』って言ってから、少しだけ前に滑りスタートした。

 小咲は「きゃあああぁぁぁ!」と叫んでいたが、俺は「へぇ、良くできてんな」という感想だった。

 ともあれ、俺たちは滑り台から投げ出され、プールの中へ着水した。

 

「「ぷは!」」

 

 俺と小咲はプールから顔を出し、小咲は俺のことジト目で見る。

 

「蓮君。事故とはいえ、胸を揉んだらダメだよ」

 

「……はい、ごめんなさい」

 

 申し訳なさそうにする俺。

 そして小咲は、表情を戻し息を吐く。

 

「でも、減るものじゃないし別にいいけど」

 

「……お、おう」

 

 それからは、様々なプールに入り楽しい時間を過ごした。

 遊び終わりパーカーを羽織った俺たちは、プールから少し離れたベンチで一休み。

 

「で、今日のデートは何点だ?」

 

 俺は皆から、デートを採点されていたりするのだ。

 

「んー、80点ってところかな」

 

 でも、私の内心では100点なんだよ。と、小咲が思ってた事は、俺が知る由もない。

 なので俺は――、

 

「お、前回の65点より上がったな」

 

「ふふ、そうだね」

 

 それから、帰宅する事になった俺たちはロッカールームに向かい、着替えてから荷物を取り出し、施設を後にしたのだった。

 その帰宅途中、俺たちの所為で砂糖を吐いていた客を見たのは気のせいだろう……。




蓮君、リア充やね。羨ましいっス……(血涙)てか、蓮君の鋼の理性は凄いってスね(笑)

ではでは、次回(@^^)/~~~


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第68話 デート#3

投稿が遅れて申し訳ない。てか、短いよぉ……。


 翌日。

 今日は羽姉とデートの日である。そして羽姉は白い純白のワンピースに上着を羽織り、髪はサイドポニー。靴も可愛らしいサンダルで、茶色のショルダーバックを肩から下げている。つか、何時もとは違う服装なので、破壊力がやばい……。

 そして、俺は黒いVネックにジーパンと、いつものラフな恰好である。

 

「羽姉が白とか、かなり新鮮だな」

 

「そうかも。いつもは黒色寄りだしね」

 

「だな。んで、最初は映画館だっけ?」

 

「そそ。今公開中の恋愛映画、あれを見よっか。その後は、成り行きで」

 

 かなり行き当たりばったりのデートである。

 ちなみに恋愛映画の内容は、青春の甘酸っぱい恋の行方。的なものである。

 

「了解。まあ、昨日は家で何も決めないで行こう。って言ってたしなぁ」

 

 ともあれ、手を繋ぎ映画館に向かう俺たち。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~映画館~

 

「お、良い席が空いてるな」

 

「真ん中からちょっと後ろかぁ。うん、いいと思う」

 

 チケットを購入し、劇場に入り指定座席に座る。……映画を内容は、確かに甘酸っぱい恋愛映画なのだが、生徒と先生の禁断の恋愛が題材とか狙ったとしか思えん、羽姉ちゃん。まあ、『現状の私たちみたいだね!』って言う意味も含めての選択だったのだろう。てか、ドロドロの内容じゃなくて助かりました、はい。

 軽く内容を説明すると、惹かれ合った生徒と先生が困難な道を潜り抜け、最後には一緒になるっていう内容だ。まああれだ、かなりベタな内容である。

 ともあれ、映画を見終えて、映画館から出る俺たち。

 

「ベタな内容の映画だったわ」

 

「そうかも。それに、先生と生徒の恋愛は共感できちゃうなぁ、私」

 

「……まあうん、そこはまんま俺たちだからな」

 

 そんな事を言いながら、成り行きでぶらぶらと歩いていたら、ある張り紙が目に入る。

 

「へぇ、ショッピングモールの四階にプラネタリウムねぇ。羽姉は知ってた?」

 

「ううん。私も今始めて知ったよ。次はここにしよう」

 

「了解。まあ、俺もかなり気になるし」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ショッピングモールに到着し、エレベーターで四階を目指す。それから四階に到着し、受付でチケットを購入しドームを潜った。

 其処は、青色にライトアップされた夢空間だった。

 

「うわぁ、綺麗……」

 

「確かに幻想的な空間でもある。でも、人工的なものなんだよなぁ」

 

 頬を膨らませる羽姉。

 

「蓮ちゃんは夢がない事を言わないっ」

 

「い、いやーつい……ごめんなさい……」

 

 もうっ。とぷんぷんと怒る羽姉。てか、今日の羽姉やけに子供っぽいよね?何て言うか、何時ものお姉さん感がないというか。そんな感じだ。

 ともあれ、後方の席に座り、シートを倒して空を見上げる。

 

「……凄ぇな。本当の星みたいだわ」

 

「うん。いつか、本物を見ようね。もちろん、その時は春ちゃんと小咲ちゃんも一緒に。でも、今日は私が蓮ちゃんを一人占め、だよ」

 

 それから、俺と羽姉はお互いに見合った。……てか羽姉、上目遣いで俺を見るのは止めようか。俺の理性が崩壊するからね。だが、お互いが目を逸らす事ができずに、顔が赤くなる。

 そして俺と羽姉の唇が重なり、優しい口づけを交わした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 部屋を出ると、羽姉は、う~ん。と伸びをする。その時に何かが強調させてしまったが、俺は目を逸らしこの場をやり過ごす。

 

「綺麗だったね。蓮ちゃんは途中で目が重くなってたけど」

 

「……すいません。あの空間での眠気には勝てませんでした。いや、星は綺麗だったよ」

 

 いやね、俺はああいう空間では眠くなってしまう性分なのよ。てか、望遠鏡も設置してあるのね。

 望遠鏡がある所まで歩き、望遠鏡を覗き込むと、外の光景が鮮明に映った。

 

「あれだな。人がゴミのようだ」

 

 次いで羽姉ちゃんが望遠鏡を覗き、

 

「本当に人が小さく見えるよ。それにしても、奥の方に見えるのは凡矢理学園かな」

 

「確かに、ここから見えそうだよな学園。てか、羽姉は凡矢理学園の教師を続けていくんだろ?」

 

 羽姉は俺に向き合い、

 

「うん。私は蓮ちゃんと結婚してからも、教師を続けていくことになるかな」

 

「そっか。なら、学園を卒業したら羽姉から引き継ぎか?」

 

 さて、俺はいつごろ首領(ドン)を継げばいいのか。それがまだ解らん。

 羽姉は少し考え、

 

「うーん、どうだろう。蓮ちゃんが卒業しても、後一年くらいは私が続けるかも。その期間で、蓮ちゃんは組織の下見。って感じになるのかなぁ」

 

「有り得るわ。その期間で、(イエ)の英才教育って感じもするし」

 

「ふふ、そうかも。でも蓮ちゃんなら、今までのことを考慮すれば楽勝だと思うよ。(イエ)ちゃんも、蓮ちゃんのことを認めてるみたいだしね」

 

 まあうん。殺気を当てられた時はどうしよう。って思ったけど。

 ともあれ、俺が首領(ドン)になるのは、まだ一年先ということになるのだろう。

 

「さて、そろそろ時間だし帰るか」

 

「そうだね。帰ろっか」

 

 そう、空からは夕陽が沈む時間帯なのだ。

 俺たちは、ショッピングモールを出て、手を繋いで自宅に歩を向けた。そして今日は、俺たちの思い出に残るデートになったのだった。




ネタが尽きてきたよぉ……。


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第69話 遊園地#2

投稿が遅れてすいません(^_^;)
失踪はしないのでお許しを……。


 俺はいつもの真っ黒服装で、遊園地前で春ちゃんを待っていた。ちなみに、遊園地デートは2回目だ。

 ぱたぱたとやって来た春ちゃんは、黒を基調にしたワンピースに大きめの麦わら帽子に、茶色の大き目のバックの紐を肩から下げていた。流石姉妹、小咲とほぼ瓜二つである。

 

「お、お待たせ。蓮さん」

 

「おう、全然待ってないから心配するな」

 

「ふふ、いつもの『待ちくたびれた』じゃないんだね」

 

「まあな。んじゃ、行くか」

 

 俺たちは受付で入場券を購入し、受付係に入場券を見せて遊園地内に入った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~遊園地、内部~

 

 俺たちが遊園地に入ると、回りにはお子さん連れの家族、学生、カップルが賑わっていた。

 と、その時、俺と春ちゃんの手が触れ合う。

 

「れ、蓮さん。人多い、ね」

 

「だなぁ。手を繋いでおくか」

 

 春ちゃんは、「はい!」と元気良く頷く。

 春ちゃんの手は暖かくて、優しさに包まれるような感覚である。

 それから俺たちは、様々なアトラクションに乗った。ジェットコースターにコーヒーカップ、お化け屋敷と。

 

「蓮さん蓮さん。あれ食べよう」

 

 春ちゃんが指差したあれとは、遊園地の定番?であるチュロスである。あれだ、遊園地に来たら食べて於かないといけない代物である。……いや、たぶん、知らんけど。

 

「いいぞ」

 

 という事で、店へ向かう俺たち。

 

「すいません、チュロスを2本ください」

 

 それからお姉さんが「お待たせしました」といって、代金と引き換えにチェロスを受け取った。ちなみに、通常版とマキアート風の種類があったので、それぞれ1本ずつである。

 

「蓮さんのも一口ちょうだい」

 

「ん、ほれ」

 

 ベンチに座りながら、俺は隣に座る春ちゃんの口許にチュロスを持っていくと、春ちゃんは小さな口を開けて一口。それから、口をもごもごさせ飲み込んでから、

 

「ん、美味しいね。――じゃあ、蓮さんもどうぞ」

 

 春ちゃんが口許に持ってきたチュロスを、一口してから咀嚼して飲み込んでから口を開く。

 

「うむ。美味いな」

 

「ふふ、そっか」

 

 ともあれ、チュロス食べたからベンチから腰を上げ、

 

「それじゃあ、アトラクションの制覇に行こう!」

 

「いや、制覇すんの?まあいいけど」

 

 という事なので、俺たちはアトラクションに乗る為に歩き出したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 そして日が沈み、もうすぐ閉園時間。

 

「楽しかった」

 

「まあ、制覇はできなかったけどな」

 

 と、俺は苦笑する。

 そう、この遊園地には最近できた絶叫ジェットコースターもあったのだ。それを見て、春ちゃん「あ、無理だ」と悟ったらしい。

 ともあれ、最後に遊園地の名物?観覧車に乗ることになった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「わぁ。……すごい綺麗だね」

 

「まあ確かに。ザ・夕焼けって感じだな」

 

 春ちゃんと対面に座り、俺たちは綺麗な夕焼けを眺める。

 そして頂上に到着した所で、俺は春ちゃんを手招きし、隣に座ってもらい向き合う形になる。

 

「ん、どうしたの蓮さん?」

 

「いや、ちょっとこれを渡したくてな」

 

 俺は懐に手を入れ、小さな箱を取り出し箱を開ける。

 

「ごめんな。まだ本物が用意できなくて」

 

「う、ううん。あ、ありがとう。とっても嬉しいよ」

 

 俺は箱から銀色の指輪を取り出し、春ちゃんの左手薬指に嵌める。

 ともあれ、俺は真剣な顔で、

 

「小野寺春さん、俺と結婚して下さい」

 

「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 それから、ぷっ。と笑う俺たち。

 

「お、俺たちには似合わないな」

 

「だ、だね。いつも気楽な感じだもん」

 

 春ちゃんは「そういえば」と言って、

 

「蓮さんは、お姉ちゃんと羽さんにもプロポーズを?」

 

「それっぽい事はしたと思うんだが、正式にちゃんとした方がいいのかなぁ」

 

「うーん。私の場合は、今ので十分なんだけど」

 

 春ちゃんは「私の物差しで見ちゃダメだよね」と、悪戯っ子のように舌を出す。

 

「まあ、その時が来たら考えればいいか」

 

「うん、それでいいと思うよ」

 

 それからは、学園のことや最近の事ことを話し、観覧車から降りた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 遊園地も閉園になり、外に出た俺たちは伸びをした。

 

「それ、学園には嵌めてくるなよ。色々な意味でやばいと思うから」

 

「だいじょうぶ。学園では、ネックレス状にしていくから」

 

 ……うん、学園には持ってくるのね。まあ、バレなければ良いと思うけど。

 それから俺たちは手を繋ぎ、遊園地を後にした。こうして、俺と春ちゃんのデートは終わりを告げたのだった。




指輪は、小咲と羽姉はすでに持ってます。
春ちゃんにも渡したので、全員、結婚指輪(仮)を持ってることになりましたね。

ではでは、次回もよろしくですm(__)m


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第70話 ソウダン

投稿が遅れて申し訳ない……。
てか、そろそろ完結が見えてきました。


 ~とある公園~

 

 俺、集、楽は、手摺に体を預けていた。

 

「いやぁ楽。随分悩んでる顔をしてますなぁ!どう思います、蓮さんや」

 

「まあそうだな。で、楽。俺たちに相談ってなんだ?」

 

 楽は、口をもごもごして口を開く。

 

「昨日色々あって、オレは、2人の女の子を好きになった自分の気持ちに気づいちまったんだ。正直、そんな気持ちは初めてだし、正直解んなかったし、解りたくなかった」

 

 俺は、いや。と前置きをし、

 

「別に2人を好きなっても良い思うぞ。俺みたいな優柔不断の男が居るんだし」

 

 自分でそれ言っちゃうのか。と、集が呟いていたが。

 まあ、世間一般で言うと、俺は最低野郎だからなぁ……。

 

「楽の気持ちは真剣なんだろ?だったら、蓮のように股を掛けちゃえばいいじゃない!これからは2倍ドキドキ出きるんだぜ、最高じゃん!な、蓮さんや」

 

 集が、楽にそう言う。てか、最後は俺に振るのかよ……まあいいけど。

 

「そうだな。集の言うことは、強ち間違えじゃない。その分、その子たちを心から愛する。っていう前提があるけどな」

 

「さすが経験者は違うねぇ。噂では、すでにプロポーズを済ませてるとか」

 

 ……いや、集さん。何でそれを知ってるの?

 集の情報網はバカにできないからなぁ。まあどっかから漏れたんだろ。てか、気づかれても問題ないしね。

 

「……そうだけど、何処情報だよ」

 

 企業秘密だよ~。と、答えをはぐらかす集。

 ともあれ、今は楽の相談である。

 

「俺のことは置いといてだ。で、楽はこれからどうするか具体的に決まってるのか?」

 

「いや、具体的には……オレは、蓮たちのように楽観的に考えられねぇよ。オレ、2人を裏切ってるようで……」

 

 何か、俺は楽にディスられてる?ように聞こえるが、世間では当然なことかも知れないので、聞き流すことにした。でもまあ、楽には2人を選ぶっていう選択肢はないだろうなぁ。……いや、たぶんだが。

 すると、集が口を開く。

 

「でも楽。人を好きになることは素晴らしいことさ。――今の楽に大切なことは、その2人から1人を、きちんと選ぶことじゃないかな」

 

 ともあれ、俺が、

 

「俺が言えることじゃないかも知れんが、楽が悩んで納得した方と結ばれる。それが、ケジメになるんじゃないないか?……まあ、知らんけど」

 

「……最後の言葉がなかったら、最高だったと思うがなぁ」

 

 と、集。

 まあうん、断言できないし仕方ない。それにしても、俺たちはもう3年であり、意外に時間は短いのかも知れん。

 

「……いや、そうだよな。オレ、集たちに相談してよかったよ」

 

「……そうか、頑張れよ」

 

「うむ。オレも応援してるよ、楽」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 あれから色々あったらしく、その期間で、楽たちのニセの恋人っていうことが鶫にバレたらしい。

 進路だが、小咲と春ちゃんは“和菓子屋おのでら”の継ぎ、羽姉は教師を続けるということだ。まあ、“和菓子屋おのでら”は、首領(ドン)の系列店に変わる違いがあるけど。ともあれ、俺は高校を卒業したら、首領(ドン)になる為に必要な1年間の修行期間になるらしい。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~夏休み、秘密の場所~

 

 俺たちは私服姿で、秘密の場所に集まりある話をしていた。

 

「俺の故卿に行ってみたい?まあ、俺はいいけど」

 

 俺の故卿になる場所は――天駒高原(てんくこうげん)という場所だ。

 と、春ちゃんが思い出したように、

 

「あ、私行ったことがあるらしいよ。小さい時だったから記憶薄れてきてるけど、私その高原で、楽しそうに特定の男の子遊んでたって、お母さんが言ってた」

 

 と、春ちゃん。

 ……いや、ちょと待て。その時の春ちゃんって、黒髪ストレートとかじゃないよね?俺、1日だけどその子と楽しく遊んだ記憶がある。……薄っすらな記憶なんだが。

 

「わ、私も行ってみたいかな……。私にとっては、12年前の思い出の場所らしいから」

 

 と、小咲。

 まあ確かに、天駒高原(てんくこうげん)は、姉貴、楽、橘、羽姉の思い出の場所。――鍵交換、施錠のやりとりもこの高原であった出来事らしい。

 

天駒高原(てんくこうげん)かぁ。私にとっては、蓮ちゃんとの思い出の場所でもあるんだよね……私と蓮ちゃん、この高原でたくさん遊んだよね。楽しかったなぁ」

 

 と、羽姉。でも羽姉と遊び終わって別れた後、俺は親父に引き取られて、桐崎家の義弟になったのだ。最近わかったことだが、俺の両親は日本のお偉いさんらしい。まあ、当時は色々と切羽詰まっていて、俺を施設に預けたのだろう。で、仕事が軌道に乗り、迎えに来たら俺は引き取られてたという事。

 

「俺も楽しかったよ。施設の先生も優しくしてくれたし……でも、もう残ってないだろうなぁ、施設。俺が最後だったらしいし」

 

 俺は一拍置き、

 

「久しぶりに天駒高原(てんくこうげん)に行ってみるか。当時のことをもっと思い出せるかも知れないし」

 

 俺がそう言うと、羽姉たちは「おー!」と賛同してくれた。

 ともあれ、週末に俺たちは天駒高原(てんくこうげん)に行くことに決まったのだった。




遂に出ましたね。思い出の場所“天駒高原”。
ちなみに、蓮君と羽姉は、“約3週間”は天駒高原で遊びました。写真を撮ったり、鬼ごっこをしたりと色々ですね。なので、はっきり蓮君は覚えてるってことです。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m


追記。
蓮君の両親はお偉いさんの政治家ですね。蓮君の事情は知っており、蓮君の意思に任せるっていった所でしょうか。ちなみに、蓮くんは両親を恨んでいません。
まあ、政治家とヤクザにパイプができるのはいいことです(たぶん)

追々記。
羽姉は、鍵と錠の交換をした後、施設を見つけて蓮君と遊んだ感じです。羽姉の両親もご存命ってことです(まだこの時は)
その事もあり、羽姉は蓮くんの連絡先を知っていたってことですね。


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第71話 オモイデ

今回は早く投稿できました。
ご都合主義満載です(笑)


 ~天駒高原(てんくこうげん)、丘の上~

 

 俺と春ちゃん、羽姉は荷造りをしてから、天駒高原(てんくこうげん)に向かい施設の跡地にやって来た。施設の造りは、頑丈な木造建築だ。まあ、木造建築でも冬は暖かったし、夏もそれなりに涼しかった記憶がある。

 

「懐かしいね」

 

 羽姉がそう呟く。

 施設から高原までほぼ追い駆けっこをしたからなぁ。だからまあ、かなり焼き付いてる記憶でもある。

 

「まあな。いつもって言っていい程、追い駆けっこをしてたし」

 

 追い駆けって言っても、ガチな追い駆けっこでもあったんだが……。んで、俺と羽姉はよく傷を作って施設の先生が『元気があるのは良いけど、元気がありすぎね』って苦笑してた。

 ともあれ、小咲が施設を眺めながら、

 

「そっか。この施設が、蓮君と羽さんの出会いの場所なんだね……何か、私にも懐かしい場所って感じなんだ」

 

 小咲がそう呟く。てか、懐かしいってことは、小咲も施設に来たことがあるんだろうか?でも確かに、春ちゃんの迎えに女の子が来て、その子とも遊んだような気もしないでもないが……。

 小咲が言うには、施設から数キロの先の場所で約束が交わされたらしい。

 

「私は、積み木遊びとお絵かき、かくれんぼで遊んだ記憶が薄っすらと残ってる」

 

 と、春ちゃん。

 確かに、俺も薄っすらだがその記憶はある。で、あの時の春ちゃんの髪はストレートに流していたが、今はサイドポニーである。

 

「ま、そうなるな。なんつーか、運命みたい出会いだよなぁ」

 

 俺は現実主義であるが、この時は運命を信じてたということにしておこう。……巧い話だが、良しとしよう。

 また、集からの電話によると、姉貴、橘、楽、集、るりも天駒高原に来てるらしい……てか姉貴、天駒高原(てんくこうげん)に来てたのね。ということはだ、クロードと鶫も来てるだろうなぁ。

 その時――、

 

 ――――“ドカァァン!!”

 

 と、爆発音……これは、クロードと鶫の戦闘の爆発だろう(たぶん)。高原に、観光客が居なくて幸いである。……そして、鶫の師匠はクロードである。ということは、十中八九、勝てないだろう。てか、爆発で雰囲気が壊された感じだ。

 俺は溜息を吐き、

 

「悪い。ちょっと、行ってくるわ」

 

 「き、気を付けてね」と、羽姉たちの言葉をもらい、俺は「おう!」と言い、この場を後にしたのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 side小咲

 

 私、春、羽さんは、蓮君を見送り施設の裏側に移動し、裏側には小さな石が1つ鎮座していた。かなり重量があり、風にも飛ばされない石だ。その石の表面には、相々傘で“羽、蓮。ずっと一緒”。と彫り込まれていた。

 

「あ、あはは。私、ここまでは覚えてなかったかなぁ」

 

 羽さんはそう言って苦笑した。

 そして、その隣大き目の箱には、“小咲、春、蓮の宝物”。と書かれた画用紙が入っていた。中を画用紙は取り出すが、かなり汚れていた。だけど、雨からは守られていた為内容が読めない程ではない。

 その画用紙には、4人の絵が描かれていた。4人ということは“春、私、施設の先生、蓮君”なのだろう。

 

「(……やっぱり、私も施設に来たことがあったんだ)」

 

 確かに、この場所に来た時に懐かしさを感じたが、その内容までわからなかった。でも、私と春は蓮君と一緒に遊んだことがあるのだ。

 おそらく、私が春を迎えに来た時に一緒に遊んでお絵描きをして、この場所に思い出の品として隠したのだろう……何で外の箱に隠したのかは不明のままなんだけど。

 

「何か、蓮さんが言ってたように運命を感じるね」

 

 確かに、春の言う通り、高校生時で再び再会できるなんて奇跡に近いだろう。そして、その4人が将来を共にする。まるで、ご都合主義の漫画見たい。

 

「来てよかったよ、天駒高原(てんくこうげん)

 

「私もです」

 

「ですね。私たち4人は、これからもずっと一緒です」

 

 私たちは想いを再確認し、今より絆を深めたのだった。

 ともあれ、蓮君大丈夫かな?

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「どうしてだ、誠士郎。どうして、あの小僧の肩を持つ!」

 

「いえ、肩を持ったりはしていません。ですが、今のお嬢たち(・・)と一条楽は会うべきなんです」

 

「さっき言っただろう、あの小僧は他の女に目移りするクズだと!誠士郎、お前はお嬢が傷付いてもいいというのか!」

 

「確かに、お嬢は傷つく可能性も否めませんが、ここで逃げてしまったら、一生後悔すると思います!だからこそ、もし傷つくとしても、会うべきなんです!」

 

「……そうか。ならば言葉は不要だ!全力で叩き潰す!」

 

 クロードと鶫の戦闘が始まったが、鶫が押され気味だ。そう、鶫の戦術はクロードの手に取るように解るのだ。

 闇社会に於いては、弟子が師匠を超すことは、かなり難しい。

 

「(……くッ。予想がしてたが、ここまでとは)」

 

 その時、気だるげな声が丘の下から聞こえてきた。

 蓮は、頭を右手で掻きながら、

 

「おーす。随分派手にやってるなぁ」

 

「若ッ!なぜここに!?」

 

「蓮、坊ちゃん……」

 

 鶫は声を上げ、クロードは呆気に取られる。まあ確かに、この場に蓮が居るなどと予想もできないだろう。

 

「んで、お前らは何やってんの?」

 

 蓮の予想では、クロードは楽を戦闘不能にすることで、鶫はそれをさせない足止めだろう。

 クロードと鶫は口を開こうとするが、蓮が先に口を開く。

 

「まあ、楽と姉貴たち(・・)の恋愛関連だろ?」

 

 ええ。と頷くクロードと鶫。蓮は、やっぱりな。頷く。

 それから、蓮は鶫の隣に立つ。

 

「悪いなクロード。この場では、俺は鶫に協力する。楽は、姉貴と橘に会って答えを言うべきだからな」

 

 そうすると、片方が振られてしまう……こればっかりは仕方がないとしか言えない。

 だが蓮は、楽に2人を選んで欲しかったなぁ。と思ってしまうのは我儘なのだろうか……。

 

「な、なぜですか!そんなことをすれば、お嬢は癒えない傷を残すかも知れません!」

 

 蓮は、右頬を右手人差し指で描き、

 

「まあ、その時はその時だな。だけど、クロードも姉貴の強さを知ってるだろ?」

 

 蓮は、懐に隠してある鞘からナイフを抜き取って右手で持ち、ナイフを逆手に構え、蓮は鶫に話し掛ける。

 

「行くぞ、鶫」

 

「了解です、若」

 

 鶫と蓮、クロードとの戦闘が始まったが、結果は目に見えていた。鶫と蓮の連携は完璧であり、クロードは不意をつかれて戦闘不能になったのだった。




は?とか思うかも知れないけど、戦闘とかは大目見てね(^_^;)
それにしても、羽姉たちは凄い偶然ですね。4人が施設に訪れていたとは\(◎o◎)/!
ともあれ、予定では残り1話で完結です。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m


追記。
施設はそのまま残されていました。まあ、色々な意味で思い出の場所ですからね。
後、小咲や羽姉の屋敷での思い出の場所も書けたら描きます。


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最終話 コレカラ#2

投稿が遅れて申し訳ない……。覚えてる人居るかな?
つか、超ご都合主義発動です(笑)


 クロードたちとの戦闘を終え、俺は羽姉たちの場所へ戻った。ちなみに、戻った場所は“天駒高原(てんくこうげん)の丘の上”だ。

 

「蓮ちゃん、お疲れ様――ぎゅ。てしてあげる」

 

 そう言って、俺を優しく抱きしめてくれる羽姉。

 

「「あ、ずるい」」

 

 そう言って、俺を優しく抱きしめてくれる、小咲と春ちゃん。まあ結果として、俺が羽姉たちの胸の中に埋まる形になるんだが。てか、女の子の胸の中って、何でこんなに良い匂いがするの?……決して、変態発言じゃないからね。

 ともあれ、俺は顔を上げ「ただいま」と声をかける。

 

「楽ちゃんたちは上手くいったのかな?」

 

 これは、羽姉の問いだ。

 

「楽は答えを出したんだろうけど、上手くいったかは解らん。まあ、楽が出した解答にもよると思うけど」

 

 今までの言動からして、楽が二人を選んだ。という可能性は低いだろう。俺の勘では、橘か姉貴。どちらかを選んだはずだ。

 結果、どちらかが振られてしまうという事に繋がってしまうが、こればっかりは仕方ないと割り切るしかないのかも知れない。ま、俺の場合は、一般的に最低な方法を取ってしまったんだけど。

 

「でも一条君は、自身が後悔しない選択をしたはずだよ」

 

 確かに、小咲の言う通りかも知れない。おそらく、楽は考えた末に出した答えなのはずだから。

 

「私たちが考えても、終わったことは戻せないよ。私たち皆、それぞれ違うから……」

 

 まあ確かに、春ちゃんがいうことが全てなのかも知れない。友達は友達。自分は自分。という事なのだろう。ま、俺たちがゴチャゴチャ考えても仕方ないという事だ、成るように成るだろう。

 

「ま、そういうことだな。……つーことで、抱擁を解いてもいいぞ」

 

 羽姉たちは「ん、わかった」といい、抱擁を解いた。

 

「んじゃ、帰りますか」

 

 それから、俺と羽姉、小咲と春ちゃんは手を繋ぎ、天駒高原(てんくこうげん)を後にしたのだった。こうして様々な想いが混じり合った、永い一日が終わりを告げた。

 そして、楽と一緒になった姉貴(・・・・・・・・・)は、自分の進路の為に日本を離れてデザイナーの仕事を学ぶという事で、友達の橘は休養の為暫く学校を休むという事だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~卒業式。中庭~

 

「お姉ちゃん、蓮さんも卒業おめでとうございます」

 

「小咲ちゃん、蓮ちゃん。卒業おめでとう」

 

 春ちゃんと羽姉が、俺と小咲の卒業を祝ってくれる。

 

「ありがとう、春、羽さん」

 

「サンキュ。春ちゃん、羽姉」

 

 今後の進路としては、俺は首領(ドン)なる為の勉強が始まると(イエ)からの御達しで、小咲は、“和菓子屋おのでら”の本格的な手伝いが始まるという事。ちなみに、春ちゃんが卒業した所で、俺が“和菓子屋おのでら”を買い取る予定だ。たぶん、その頃には新米首領(ドン)だと思うし。んで、羽姉は気が済むまで教師を続けるそうだ。

 

「つっても、いつもほぼ一緒にいるからお別れって気はしないけどな」

 

 春ちゃんが卒業した所で、俺たち四人で同棲ということが決まっていたりする。

 

「そ、そうだけど。形だけって事だよ、蓮君」

 

「そ、そうだな。悪い、水を差して」

 

 焦った俺を見て、苦笑する羽姉たち。

 

「それじゃあ、俺と小咲はそろそろ教室に戻るな」

 

「うん。また放課後だね」

 

「ん、りょうかい。お姉ちゃん、蓮さん」

 

「じゃあ、一旦解散しようか」

 

 俺たちは各教室、職員室へ歩き出した。――――そう、俺たちは一歩を踏み出したのだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~数年後、とある屋敷~

 

「蓮坊ちゃん!こちらの書類の確認が終わりました!」

 

「若!こちらの確認もお願ぇしやす!」

 

「お、お前ら!首領(ドン)に失礼だぞ!」

 

 そう。俺は一年弱で勉強を終え、羽姉の跡を継ぎ首領(ドン)に就いたのだ。んで、傘下の中には昔馴染みの顔があり、俺を“坊ちゃん”“若”と呼んでいたりもする。……まあ、その度に訂正が入るんだが。ちなみに、俺はラフな恰好で偉い立場の椅子に座っていたりする。

 

「……呼び方は何でもいいから、早く書類を持ってこい」

 

 そう言って、俺は溜息を吐くのだった。

 ともあれ、野郎共から書類を受け取る。

 

「蓮ちゃん、居る?」

 

 そう言って襖を開けて入って来たのは、ラフな恰好で、今は『王妃』と呼ばれる “羽姉”である。ちなみに、小咲が『王女』で、春ちゃんが『姫』である。

 

「「「王妃、お疲れ様です!」」」

 

 野郎共にそう言われた羽姉は「お疲れ様」と言って苦笑した。

 ともあれ、俺を見つけた羽姉は、俺の元まで歩み寄り、

 

「はいこれ、探してた書類。わたしの部屋にあったよ」

 

「ああ、サンキュ」

 

 書類を受け取る俺。

 

「そういえば蓮ちゃん。小咲ちゃんと春ちゃんが捜してたよ。たぶん、新作の味見だと思うけど」

 

 そう。小咲と春ちゃんは、首領(ドン)系列で“和菓子屋おのでら”を継いでいるのだ。そして2人の和菓子は、野郎共にかなりの好評でもある。

 

「了解した。仕事も一段落したし、小咲たちの元に行きますか」

 

 そう言って、書類を片付ける俺。

 

「ん、りょうかい。皆も、もう少しで新作の和菓子が出来るから、楽しみにしててね」

 

「「「へい!王妃!」」」

 

 そんな野郎共に手を上げながら、俺と羽姉は部屋を後にし、屋敷を出た所にある“和菓子屋おのでら”に向かうのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~和菓子屋、おのでら~

 

 扉を開け、店の中に足を踏み入れた俺と羽姉。

 

「小咲、春ちゃん。来たぞ」

 

「わたしも居るよー」

 

 厨房から、パタパタと姿をやって来たのは、仕事着(着物)を着こなした小咲と春ちゃんである。

 

「蓮君、羽さん、いらっしゃい。早速、新作の味見をして欲しんだけど」

 

「今回も、わたしとお姉ちゃんの力作です!食べて見て」

 

 俺と羽姉は、春ちゃんと小咲が持ってきた器の中から和菓子を手で取り、口に運ぶ。

 何度か咀嚼した所で、餡子のほろ苦い甘さと、外側の饅頭が柔らかくて、かなりの品になってると思う。つい、歯止めが効かなくなってしまう和菓子とも言えるかも知れないが。

 

「ん、わたしのは抹茶味だね。とっても美味しいよ!」

 

「ああ。これなら商品として売っても問題ないと思うぞ。きっと、野郎共の舌を呻らせる事もできるはずだ」

 

「じゃあ、もうちょっと味を増やさないと。――お姉ちゃん、もうちょっとだよ」

 

「う、うん。頑張ろうね、春」

 

 俺は、俺と一生を添い遂げてくれる彼女たち、俺たちを支えてくれる人たちを大切にする。俺はそれを心に刻み毎日を生きていこう。彼女たちとの手を放さないように――。




これにて完結です。
なんか、打ち切りのような終わり方になってしまった。後、マリーごめんさい!!
まああれですね、そこは作者の力量の足りなさですね(^_^;)

では、また機会があればよろしくお願いします!!


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