ダンガンロンパ ~reality~ 空想で少女は何を見る (超高校級のネタ体質)
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プロローグ
プロローグ
「Bye, sunshine! have a nice vacation!!!(じゃあね、太陽ちゃん!良い休みを!)」
「thanks you, 〇〇. You, too.(ありがとう、〇〇。貴方も良い休みを。)」
某自由の国、とある州で一番でかい空港で手を大きく振って見送る友達に小さく手を振り、私は搭乗口へと向かっていく。
必要な手続きを済ませ自分の飛行機が見える場所に来た私は、近くの椅子に自分の持ってたキャリーバッグと背中のリュックを置き一息をつく。
「あともうちょいで、日本に帰国かぁ。」
今日から夏休みを迎え、日本へと一時帰国することとなった私は大きめのため息をついた。
外国への留学を決めて外国の高校に通い始めて1年ちょっと経った。
日本にホームシックを少々抱いてはいるものの、いざ帰国となるとやはり少し緊張してしまう。
「別に、国から追放されたわけでもないのに。」
ネガティブに陥りかけた私はそんな思考から逃げるためにリュックからゲーム機を取り出そうとする。
そこで私は一緒に入れてあった携帯に目を向けた。
携帯の画面にはLINEのメッセージが送られてきたことが書かれていた。
「日本に帰ったら何をするつもり、ね…。『取り敢えず新しい漫画やゲームを買いに行く』、と。」
返事を返信すると1分も立たぬうちに既読になり、『そうか(笑)、品揃えの良い店探しとくよb』と返信が来た。
他に特に書く内容もないので携帯をリュックの中に戻し、代わりにゲーム機を取り出す。
ゲーム機の電源をつけると画面は明るくなりタイトル画面を写す。
『ダンガンロンパ1・2 Reload』
『ダンガンロンパ』と『スーパーダンガンロンパ2』をどちらも遊ぶことが出来ると聞いたのでもともと推理系が好きな私は数年前にこれを買った。謎解きゲームとストーリーを見るのがもとより好きな私はそのゲームをやって以来、ダンガンロンパシリーズの大ファンになった。その後もダンガンロンパシリーズは苗木の妹が主役の新作やゲームでは記されてない箇所をアニメにした物など、様々なものが発売、放映されてはそれらを全てゲット、または視聴した。
それはもう、ゲームのガチャアイテムを全てゲットしたり、設定集の中身を全て暗記するぐらいの勢いで私はハマっていた。
「でも、まだ物足りないんだよなぁ…。」
ストーリーに不満があるわけでも、システムに苦情があるわけでもない。
ただ単純に、物足りない。
もっとキャラクターの過去や他の設定とかを知ってみたいし、もっと身近な視点でゲームをしてみたい。そんな本当に単純な思いだった。
「もしも、ゲームの中に入れたらなぁ…。」
と、呟いてみる。別に叶いもしないが、もしもゲームの中に入り込めばゲームでは知ることの出来ないものが見えるかもしれないし、変えられないものを変えることが出来るかもしれない。
例えば、全員生還とか…。
「…アホらし。」
馬鹿らしくなり私は目の前のゲームに集中する。
しばらくゲームを勧めていくと笑うはずのない、画面の中のモノクマが笑ったように見えた。
そこで私の意識は水に落ちるかのように沈んでいった――――――――――――
うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ…
投稿速度は不安定ですのでそこら辺はご容赦を…
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プロローグ Part2
……………。
……………………。
……………………………。
「……うにゃ?」
私は変な声を出して、目をさました。
朝があまり強くない私の頭と視覚は、寝起きでぼんやりとしていた。
「…だるい。どんだけ寝てたんだっけ…?あ、飛行機の時間…。」
起きてまず思い出したのは乗るはずの飛行機の存在だった。
寝過ごしたかな…。スタッフに事情を説明したら乗せてくれるかな…。て言うか寝ている隙に荷物は盗まれてないよね?あ、良かった盗まれてない…。
「…あれ?」
のんきに考えていた私はある違和感に気がつく。
「静かすぎる…。それに確か、椅子の前に机なんてなかったよね…。」
まず、寝る前は他の客も少なくなく多少賑わっていたはずの空港が静寂に包まれていた。
これだけならまだしも寝る前にはなかったはずの机の上に自分自身がうつぶせになるよう寝ていたのだ。
「いくらなんでも、変すぎるっしょ。」
私は少し気になって周りを見渡す。そこで気がついた。
「ここ…どこ?」
私がいた場所は人っ子一人もいない学校の教室だった。
なるほど、これなら確かに静かなのもあり得る。人の賑わう空港ならまだしも、人っ子一人いない、壁の窓に位置する場所に鉄板がどこで売ってたのか分かんない通常の物より大きなネジが止められた監視カメラ付きの教室じゃあ静かなのもしょうがない。
「…まぁ、いっか。取り敢えず探検してみて出口探そう。」
もしもここに銀色の魂を持った眼鏡をつけた侍みたいなツッコミがいたら「いや、あっさりし過ぎだろ!」とか的確なツッコミをくれるだろうが、私はどちらかと言うとボケに属する人間だ。気にしない方向に行く。
「失礼しま~す。」
リュックとキャリーバッグを持った私は扉の前までてくてくと歩いていき扉を思いっきり開けた。
力を入れすぎてちょっと扉から変な音したけど多分大丈夫。
「うわっ!?」
あ、大丈夫じゃなかった。どうやら教室の直ぐ側に人が歩いていたらしく、驚いてしまったようだ。見たところ私と同年代ぐらいの男子高校生だ。
…なんで彼の頭にアンテナが立っているのだろう?寝癖?
「oh, I’m so sorry. Are you all right?(ああ、ゴメンなさい。大丈夫かしら?)」
「え、あ、英語!?あ、アイキャノットスピークイングリッシュ。」
「あ、日本人?ごめん、日本語で大丈夫だから。」
「う、うん。」
目の前に居る男の子はどうやら私と同じく日本人だったらしい。慌てて片言英語で対応するのを見て私は彼に修正を入れた。
まだアメリカに居るもんだから中国人とか韓国人かと思ったんだけどな。
「それより大丈夫?ごめんなさい、驚かして。」
「う、うん、大丈夫だよ。ちょっと驚いただけだから。」
素直に謝る私に青年はそう優しい一言をくれた。
「ねぇ、君も希望ヶ峰学園の新入生なのかな?」
「は?」
…どうしよう、なんか私のせいで彼の頭がイカれちゃったらしい。
「え、そうじゃないの?」
「そもそもここって日本じゃないですよね?」
「え?」
「ん?」
…あれ、違うの?もしかして私、アメリカから日本に瞬間移動したの?ヤバイ、私はどうやら知らず知らずの内に瞬間移動を身に着けてしまったらしい。
「ゴメンちょっと待って。まず、希望ヶ峰学園のことは知ってるよね?」
取り敢えず今ここで話を混乱させるのは良くないだろう。私は彼の話に合わせることに決めた。
「ええ、まあ知っています。」
「キミは、この希望ヶ峰学園に選ばれてきた生徒、……それかその家族だよね?」
「今、私の背を見て付け足しましたね?一応これでも高校生ですからね?」
「ご、ごめん。」
確かに私の身長が女子高校生の平均どころか中学生の平均身長に届くかも分からないのは認めるが見た目で人を判断しないでほしい。
そもそも私のどこに若く見える要素があるのだろうか。
155cmに満たない身長、自他ともに認める童顔、縞模様の水色パーカーにゆったりとした少しブカブカの長袖長ズボン、ボサッとした髪を可愛らしいピンクのヘアアクセでまとめた黒髪でどう見ても高校生……にはちょっと見え難いですね。
少なくとも中1に見えるわ、はい。
「希望ヶ峰学園に選ばれたかはよく分かりません。気がついたらここの教室で眠ってたので記憶が曖昧で…。」
「え、もしかしてキミも?」
「…もしかしなくても貴方も気がついたらここに?」
「うん、実はそうなんだ。学園の玄関まで来たら突然目の前が真っ暗になって…。」
わぁ、すっごい偶然。殆ど状況がおんなじじゃないデスカー。
「…もしかしたら他の人も同じ状況に居るのかもしれませんね。」
「そうかもね…。ねえ、一人で行動するのも不安だし、一緒に探索しないかな?」
え、それってデートのお誘い?ウワーアカシチャン嬉シイナー。
…ツッコまれないボケはまあ置いといて、この状況で一人になるのはたしかに不安だよね。ここは乗っておこうかな。
「うん、それが良いかもしれませんね。そうしましょうか。」
「そっか!ありがとう、えっと…。」
「ああ、そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたよね。私の名前は明石玲香です。一応これでも女子高校生です。」
「うん、わかったよ。よろしくね、明石さん。」
「よろしく。それで貴方のお名前は…。」
…ここで、名前を聞くのは実は一つ確認したいこともあったからなのだ。
もしも、もしも私の予想が違わなければ、彼の名前は恐らく…。
「ボクの名前は苗木誠。この希望ヶ峰学園には超高校級の幸運として選ばれたんだ。」
「……そうですか。よろしくお願いしますね。苗木さん。」
――――――やはり、私の予想は間違いではなかったようだ。
誰もいない教室、窓に取り付けられた鉄板、監視カメラ、現実には存在しないはずの『希望ヶ峰学園』、超高校級の高校生、そして…超高校級の幸運、苗木誠。
これらのキーワードが示す答え、それは現実にはありえないであろうこと。
どうやら私は、アメリカから日本どころか、ダンガンロンパの世界に瞬間移動してしまったようだ――――――――――。
普通だったらそんなことに気がついたら人は目に見えて慌てるだろう。
私もこんな淡々と喋って入るがかなり動揺している。
正直叫びたい気分だ。
もしも苗木君が今目の前にいなければ恐らくパニックになっているだろう。
でも、
「まあ、いっか。あとで考えよう。」
「??明石さん、何か言った?」
「さあ?きっと空耳じゃないかな?」
私は前を歩く苗木とぼけてみせる。
このことは取り敢えず保留にしておこう。そして、思い出した時に考えよう。どうせ、時間はまだあるんだし。
「ところで明石さん、」
「なあに?」
「明石さんはどんな肩書で希望ヶ峰学園に選ばれたの?」
うわぁ…、そこ聞いちゃうかぁ…。
「そ、それが、そこらへんも記憶が曖昧なんですよ。どんな肩書だったのか全ッ前覚えてないです。」
「そっか…。思い出せると良いね。」
思い出すも何も、そんな記憶欠片もないんだけどね…。
「あー、あそこ、人が集まってませんか?ちょっと行ってみましょう!」
「え、あ、ちょっと!」
私は話題をそらす為、苗木君の手を掴んで玄関へと走っていった。
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プロローグ Part3
…まあなんとなくは分かっていたよ。ここに来たってわかった時にちらっと思ったよ。でもさぁ…、
「あ、また誰か来たよ!」と明るい声で喋るのは超高校級のスイマーの朝日奈葵。
「お、今度は二人組じゃん。」と赤い髪を弄りながら言うのは超高校級の野球選手の桑田怜恩。
「もしかして君たちも新入生なのかな…?」と少し気弱そうに尋ねるのは超高校級のプログラマーの不二咲千尋。
「もしかしてキミ達も…?」と不安そうに尋ねるのは苗木君。
「はい、私達も希望ヶ峰学園の新入生なんです。」と苗木君の質問に応えるのは超高級のアイドルの舞園さやか。
……ここの皆、ルックス良すぎでしょー……。
ここでorzポーズにならなかった私はすごいと思う。いや本当に。
山田「これで16人が集まりましたな。少々中途半端な数字ですが全員集まったと考えてよろしいでしょうな。」
石丸「そんなことより!集合時間はとっくに過ぎているだろう!」
苗木「ああ、ゴメン!ちょっと色々あって眠っちゃったり驚くことが遭ったりして…。」
江ノ島「あんた何言ってんの…。この状況なんだしたかが数分ぐらい別にいいでしょ。」
さすが超高校級の風紀委員と言われるだけあるなぁ…。時間や規則には手厳しい。
石丸「何を言ってる!とても重要な事ではないか!いいか…
小学生が見ている前で時間を守らぬとはどういうことだね!そこの彼女が真似をしたらどうするんだ!」
明石「すいません、私高校生です。れっきとした同年代です。」
石丸「な、何…!?失礼した!」
ちょっと待て、若くみえるのは認めるが小学生ってなんだ、小学生って。
流石に小学生には見えないはずだし…
腐川「………。」
セレス「まあ…。」
十神「な、なん…だと…。」
大和田「マジでか…。」
明石「え、なんですか、そのこの世には有り得ないものを見てしまったような顔は。ちょっと、なんで皆さん目を逸らすんですか!」
葉隠「世の中、知らない方がいいもんもあるんだべ。」
それって皆小学生だと思ってた事実を知るべきではないってことか、そうなのか!!
さっきまで一緒にいた苗木君やあの噛ませ眼鏡様こと十神白夜まで驚くってどんだけなの?!
てか葉隠さん止めてください、少しかがんで肩に手をおいて温かい目で見るの。
貴方背が高いから余計に小さく見えちゃうから!!
朝日奈「まあそれはさておき、」
はいこの話題強制終了されましたー。
朝日奈「ねえ、改めて自己紹介しない!?遅れてきたそこの二人のためにも!」
設定集の中身は全部暗記してるから自己紹介は必要ないんだけど、まあ一応乗っておくか。
そして、朝日奈さんの提案により私たちは自己紹介を行うことになった。
まあ、他の皆はやって行ったから私と苗木君が彼らと行うような形だけど。
苗木君はどうやら舞園さんと自己紹介を行っているようだ。
取り敢えず、私は一番背が近い不二咲さんと行うことに決めた。
不二咲「どうも、はじめまして…不二咲千尋ですぅ…。」
明石「明石玲香です。一応もう一度いいますが高校生です。私のことは好きに呼んでください。」
不二咲「なんだか…自己紹介って照れるよねぇ…。これから…よろしくね…。」
ここまでは原作通りなのか。私が特に変な行動をしなければ原作通りに進むんだね。
変に混乱させないためにもあんまり変な行動は避けよう。
明石「はい、よろしくお願いしますね。ちーくん。」
不二咲「ちーくん?!」
あ、やべ、いきなりやっちゃった。
明石「あ、すいません…普通に名字のほうが良かったですよね?」
不二咲「う、ううん、ちょっとびっくりしただけだよぉ。明石さん、そう呼ぶイメージじゃなかったから…。」
明石「そうでしょうか?」
不二咲「うん、なんというか…もっと大人しそうで丁寧なイメージだったかな…。」
明石「えー、そうなんですか?私意外とがさつな方だと思いますよ。中学とか普通に先生生徒とか気にせずあだ名で呼んでましたし。」
不二咲「そうなんだぁ…、すごいなぁ…。」
明石「職員室でもあだ名で先生のこと呼んでましたし。」
不二咲「そこでは気にした方がいいと思うよぉ!」
明石「…『フレンドリーなのは良いけど、場所を考えましょう』って注意されました。」
不二咲「そりゃそうだよ!」
そんなもんなのでしょうかね?
明石「まあ取り敢えず、こんな感じですがよろしくお願いしますね、ちーくん。」
不二咲「う、うん、よろしくね。」
まあ、こんなことも有りながらも、なんとか私は原作通りに自己紹介を済ませた。え、詳細?そこら辺は原作を見てください。
十神「おい、そろそろ本題に入るぞ。」
苗木「本題?」
舞園「さっき色々あって眠っちゃったって言っていたじゃないですか。あれ、私達も一緒なんです。」
明石「一緒、ですか…。」
桑田「この玄関ホールに入った直後に気が失っちまって、気がついたらこの校内で寝てたっつー訳!」
苗木「一体どうして…。」
大和田「それが分かってたら困ってねぇだろうがっ!」
すいません、私分かってて困ってるんですけど…。
ここで、私が知っていることを全て彼らに話せばなんとかなるのだろうか…。いや、止めておこう。絶対怪しまれるし。
ぼんやりとそんなことを考えていると、葉隠の「どうせ学校側が企画したオリエンテーションだべ!」という言葉が聞こえて来た。それで終結させるつもりらしい。
桑田君が一眠りをつこうとしたその時、ダンガンロンパをやったことのある人間にはお馴染みの、あのチャイムが鳴り響いた。
キーン コーン カーン コーン
『あー、あー、マイクテス。マイクテス。 校内放送。校内放送。大丈夫?聞こえてるよね? えー、ではでは。 新入生の皆さん。今から、入学式を執り行いたいと思いますので、 至急、体育館へお集まりくださ~い。』
それは本当に場違いとも言える程、脳天気な声だった。何回もゲームを繰り返し、聞き慣れているはずだが、直接聞く立場となるとやっぱり違和感を感じる。殺人現場や、事故現場で、それをあざ笑うかのような声が聞こえるような。
江ノ島「は…?なんなの…今の…?」
十神「俺は先に行くぞ。」
江ノ島「ちょっと!なんで先に行っちゃうの!」
葉隠「入学式ね…なるほど…。これらは全部入学式の催し物だったべか…。こりゃあリアルに笑えんべ! 爆笑ものだべ! よし、俺もさっさと行くとすっか。」
十神くんと葉隠くんが行ったことにより他の面々も体育館へと向かい始めた。そんな彼らを見送るうちに苗木君とまた二人っきりになった。
苗木「明石さん…。」
明石「ここで何もしないと特に進まなさそうだし…、行きますか。」
そして私は体育館へと向かっていったのであった…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いくらゆっくりと進もうがストーリーは無情にも進むものだ。
私と苗木はゲームのプロローグを終わらせる、あの体育館へとたどり着いた。
葉隠「ほら、俺の言ったとおりだったべ!見たトコ普通の入学式だべ!」
皆は知らない。この後どんなことがここであるのかを…。
「全員集まった~!?それじゃあ、そろそろ始めようか!」
そんな能天気な声をあげ、教卓の方から飛び出したのはあの、白黒のクマだった。
不二咲「え…ヌイグルミ…?」
モノクマ「ヌイグルミじゃないよ!ボクはモノクマだよ!キミ達の、この学園の学園長なのだっ!!」
やはり、ゲームで行うのと現実で行うのとはかなり違う。
モノクマ「ヨロシクねっ!」
ゲームではなんともなかったのに、ここではあのモノクマの脳天気な声を聞いただけで私の中でモノクマに恐怖した。
山田「ぬ、ヌイグルミが喋ったぁぁぁっ!」
朝日奈「だ、大丈夫だよ!き、きっとヌイグルミの中にスピーカーが入っているだけだよ!」
モノクマ「だからぁ…ヌイグルミじゃなくて、モノクマなんですけど!学園長なんですけど!」
腐川「ヒィィィィィィ、動いたァァァ!」
大和田「ど、どうせラジコンかなんかだろ…!」
モノクマ「ショボーン、子供のおもちゃと一緒にしないでよ。深く深く、マリアナ海溝より深く傷つくよ…。ボクにはね、NASAも真っ青な遠隔操作システムが搭載されててね…って夢をDESTROYするような発言をさせるなクマー!」
セレス「クマ、とはベタですわね。」
明石「因みにマリアナ海溝とは太平洋、マリアナ諸島の東にある世界で最も深い海溝で、水面下およそ10,911mと計測されています。」
葉隠「誰に喋ってんだべ?」
そりゃあもちろん画面の向こうの皆さんに。テレビか小説を見ている方に。
モノクマ「……。」
明石「…何でしょうか?しつこく言っときますが私は小学生ではなく高校生!ですからね。」
腐川「アンタ、結構根に持つタイプよね…。」
石丸「なんか本当に、済まない。」
別に気にしてないよ?
ただ何回も言わないと多分忘れられると思うので繰り返しているだけだからね?
モノクマ「…まあ、とにかく進行も押しているからさっさと始めるナリよ!」
江ノ島「キャラを固定しなさいよ…。」
モノクマ「静粛に静粛に、ではでは…。」
大神「…諦めたな。」
モノクマ「起立、礼!
オマエラ、おはようございます!」
石丸「おはようございます!」
明石「モノクマさようなら!」
桑田「切なっ!!」
腐川「と言うか挨拶してどうするのよ、挨拶して。」
良いことでしょ、挨拶。
モノクマ「オマエラのような希望あふれる高校生は世界の希望に他なりません!そんな希望を保護するために、オマエラにはこの学園ないだけで、共同生活をしてもらいます!
その共同生活の期限を言いますと…ありません!つまり、ここで一生暮らしてもらいます!
それこそが、オマエラに課せられた学園のルールなのです!ついでに、予算はたっっぷりあるのでオマエラを不自由にさせることはないよ!安心して共同生活を送るように!」
中途半端かもしれませんが一旦切ります。
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プロローグ Part4
モノクマの言葉を引き金に、生徒たちはモノクマに反発を始めた。
その反発から外の世界トコの学園は全てシャットアウトされていること、助けを呼ぶことは不可能なこと、そして、学園から出ていきたい人のための、ゲームの中ではおなじみのあのルール、人を殺した者のみがこの学園を卒業できるというイカれたルールを私たちは知ることが出来た。
そのことを知った皆が混乱を見せたことを想像するのはそう難しくないだろう。
モノクマ「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺…殺し方は問いません。最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力をしてください!」
明石「むむむ、ハッ!モノクマ、ちゃんと半分に色分けされている!」
モノクマ「それは観察。」
明石「社長、私そろそろライバル会社の動きを見てきます!」
モノクマ「それは偵察。」
明石「モノクマさ~ん、精神科の先生がお待ちですよ、Aの103番室へ…」
モノクマ「それは診察!大喜利じゃないんだからさぁ!というか今遠回しに精神科行くように勧めたでしょ?!」
私 以 外 は な。
これ一度やってみたかったんだよね。
ちょっと皆の視線が痛いが、気にしないでおこう。
大丈夫!見た目によらずタフなのが唯一の取り柄なの!
大神「明石よ、お主は恐れておらぬのか?」
明石「何がですか?ネタが滑ることですか?」
腐川「いやそこじゃないわよ。アンタ、そのクマが怖くないの?」
明石「…微妙なところですね。」
怖くないといえば、嘘になる。
私にしか知らないけどこのモノクマ、正確にはその操縦者は、実質世界を壊したラスボス的な存在なのだ。それを間近にして、恐れる者はいないだろう。
明石(だけど、恐れたからって何も変わらない。)
幾らゲームの世界に来たとは言え、私はこのゲームの
恐れようが恐れなかろうが話は続く。
ならば適当に選んだ選択を取って適当に進んだほうが、楽だ
大和田「もういい、明石、どけ。」
明石「はにゃ?」
私を押しのけ、最前列に立った大和田君は地響きのような声でモノクマに凄んだ。
それにしても、あのモロコシヘッドはどうやって作るんだろう?
大和田「オイ、今更謝ってもおせぇぞ!テメェの悪ふざけは度が過ぎたッ!!」
モノクマ「悪ふざけ…?それってキミの髪型のことかな?」
大和田「あ“ぁぁぁぁぁぁ!?」
駄目だから、今笑っちゃダメだから…。
自分になんとか言い聞かせ、なんとか私はポーカーフェイスを維持してみせる。
ちょっと後ろの方に体を震わすウニ頭とアポが見えるがそっとしておこう。
笑いを我慢していた私だが、笑いはすぐに驚きと緊張感へと成り代わった。
獣のような雄叫びとともにドンッ、と何かが爆発したような音がしたためである。
私は咄嗟に前の方を向く。
大和田「捕まえたぞゴラァ! ラジコンだかヌイグルミだかなんだか知らねぇが、バッキバキに捻り潰してしてやんよぉッ!!」
モノクマ「ギャ~、学園長への暴力は高速で禁止されているよ~!」
音の正体、それは大和田君が足元の床を蹴り上げた音だった。
そして今、大和田君はモノクマの胸ぐらを掴み上げ、首を絞めあげている。
大和田「うるせぇッ!今すぐ俺らをこっから出せッ!出なきゃ力づくで…」
いけない、これが原作通りだったら…。
そんな私の思いを横目にモノクマは唐突に黙り込み、そのモノクマから機械音がなり始める。
大和田「オイ…今更シカトかぁ…?」
今の状況を知らない大和田君はモノクマに凄んでみせるがモノクマはただ黙って機械音のスピードを速くさせるのみである。
大和田「妙な機械音出してねぇでなんとか言いやがれっ!!」
明石「投げてくださいっ!!」
私は人の腰ぐらいあるハードタイプのキャリーバッグのハンドルを両手で持ち大和田くんの方へと走りながら叫ぶ。
大和田「あ…?」
明石「いいから、早く投げてッ!そしてこれ掴んでッ!」
大和田君が私の言うとおりモノクマを思いっきり天井へと放り投げた瞬間、私は自らが持っていた、キャリーバッグを彼の顔の少し上辺りに投げる。
そして、頭を手とリュックで覆い隠し、床に伏せる。
そのコンマ一秒後――――――
ドゴォォォォォォン!!
―――――――――モノクマが、爆発した。
大和田「なっ…!?しゃ、洒落んなってねーぞ…。ば、爆発しやがった…。」
衝撃でグラグラする視界に、小さな白黒の破片が刺さったキャリーケースと、それを持った無傷の大和田くんが入る。
どうやら、キャリーケースをキャッチし、それでモノクマの破片をなんとか防御できたようだ。
朝日奈「明石ちゃんっ、大丈夫?!」
明石「うぅ、まぁギリギリ…。」
痛みを感じる程激しい耳鳴りに、むせ返る程の火薬の匂い。
テレビや映画ではよくある爆発だが、まさかここまでの物だったとは…正直恐ろしい。
不二咲「で、でも爆発したって事は…あのヌイグルミも…壊れて…」
モノクマ「ヌイグルミじゃなくてモノクマ!!」
桑田「うおっ!別のが出やがった…。」
大和田「テメェ…!さっきの…マジに俺を殺そうとしやがったな…。」
モノクマ「当たり前じゃん。マジで殺そうとしたんだもん。校則違反するのが行けないんでしょ?今のは特別に警告だけで許すけど、今後は気をつけてよね。校則違反する悪い子はお尻ペンペンレベルの体罰じゃ済まさないからっ!」
江ノ島「ね、ねぇ…ひょっとしてアンタみたいなのって他にもたくさんいたりするの…?」
モノクマ「モノクマはね、学園のいたる所に配置されております。さらに、学園内には監視カメラも配置されております。校則を違反した者は発見次第、今みたいにグレートな体罰を発動させちゃうよッ!うぷぷ……次からは外さないよ……そうならないよう気をつけてね!」
朝日奈「む、無茶苦茶だよ…。」
モノクマの言葉を聞き、半数の生徒が顔を青ざめる。あの爆発を見せた後だったら、皆恐ろしいのは当然だろう。
モノクマ「じゃあ最後に、オマエラの入学祝いに、これを渡しておきましょう。
じゃじゃ~ん、電子化された生徒手帳、名付けて、電子生徒手帳~!」
明石「その声でそのセリフの伸ばし方止めてください。なんか別なのを思い出すので。」
モノクマ「んも~、ツレナイなぁ…。
…気を取り直して、電子生徒手帳は、学園生活に欠かすことの出来ない必需品なので、絶対になくさないようにね!
それと、起動時に自分の本名が表示されるからちゃんと確認しといてね。
単なる手帳以外に使いみちがあるからね…。因みにその電子生徒手帳、完全防水で水に沈めても壊れない優れ物!耐久性も抜群で、10トンくらいなら乗せても大丈夫だよ!
詳しい校則もここに書いてあるので、各自じっくり読んでおくように!何度も言うけど、校則違反は許されないからね!
ではでは、入学式はこれで終了となります!豊かで陰惨な学園生活をどうぞエンジョイしてください!それじゃあ、まったね~!」
そう言って、モノクマは体育館から立ち去った。呆然とする私達を置いて…
石丸「君達は、今のを一体どう定義する…?」
桑田「どうも何も、ぜんっぜん、意味わかんねーよ…!」
明石「ここで一生暮らすか、生きて出る為に殺すか、モノクマはそう言ってましたね。」
腐川「な、なんなの…?何なのよぉぉぉぉぉお!?」
不二咲「ね、ねぇ、嘘だよね…?」
十神「嘘か本当かが問題なのではない。問題となるのは…この中にその話を本気とするやつが居るかどうかだ…。」
その言葉に、皆再び押し黙ってしまう。そのまま、互いの顔を見渡していた。
互いの胸の内を探ろうとする視線には敵意をも感じ取れた。
『誰かを殺した生徒のみがここから出られる。』
その言葉は皆の思考の深く、深く、奥深くに恐ろしい考えを植え付けた。
―――誰かが裏切るのでは?という疑心暗鬼を。
今でこそ、分かる。ここでの、ゲームの中での緊迫感が。
いかにあのモノクマが、恐ろしい存在なのかを。
私は初めて、知ったのであった。この緊張感を、この恐怖を、このシリアスさを。
この、空想にも近い、
明石「現実はやっぱり、恐ろしいなぁ。」
やっとプロローグが終わりました。稚拙な文で本当にすいません…。
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Chapter1 『イキノビル』
Chapter1 『イキノビル』 Part1
『誰かを殺した生徒のみがここから出られる。』
その一言は皆の思考と体を絡め取るには十分なものだった。
恐怖と不安、そんなマイナスな思考がゆっっくりと浸透していき、全身を支配していく。
辺りに漂う重い空気が、無慈悲に皆の頭と肩にのしかかる。
そんな中、その重みが、背中の冷たさが、その恐怖が他人事のように感じる私は、
狂っているのだろうか?
Chapter1イキノビル (非)日常編
霧切「それで、これからどうする気?このままずっと、にらめっこしている気?」
暗く重たい静寂を破ったのは、霧切さんの無愛想で、トゲのある言い方だった。
しかしそのとげは、皆を現実に引き戻した。
石丸「そうだな…確かにその通りだ…強かろうと不安だろうと、歩を歩み進めなければならぬ時がある!そんな簡単なことを忘れるなんて、僕は自分が情けない…許せない…。
誰か僕を殴ってくれないか!僕は自分が許せないんだ!頼むから誰か僕を殴ってくれッ!」
明石「私で良ければ思いっきり殴りましょうか?」
苗木「いや明石さん、下ろして下ろして。」
ウォーミングアップ代わりにシャドーボクシングをする私に苗木君が優しく拳を下に下ろす。
解せぬ。
大和田「騒いでいるヒマがあんなら、さっさと体を動かせや。」
山田「しかし、具体的にはどのようなミッションを…?」
桑田「バァカ!逃げ道を探すに決まってんじゃん!」
江ノ島「ついでに、あのふざけたヌイグルミ操っている奴を見つけて袋叩きっしょ!」
不二咲「…あのぉ、その前に電子生徒手帳っていうのをみておこうよぉ。」
大神「確かに、動き回る前にモノクマが言っていた校則を確認しておいた方がいいな。」
セレス「ルールを知らずに行動して、さっきのようにドカンとなってしまっては困りますものね。」
大和田「チッ…。」
江ノ島「じゃあさっそく、その校則ってのを確認しようか…。」
ちーくんの提案により、私達はまず、電子生徒手帳の校則を確認することとなった。
しかし、それにより私の方に少し問題が…。
葉隠「おお、どうした明石っち、校則を確認しないんか?」
明石「したいのは山々なんですが、何故か私だけ貰えてないんです、生徒手帳が。」
葉隠「しょうがねぇな。俺っちのを見してやるべ!」
おお、ゲームでは胡散臭いイメージしかなかったのにここじゃ優しい…。
明石「ありがとうございます、葉隠さん。」
葉隠「お礼は、金一封でいいべ!」
明石「……それは考えておきます。」
前言撤回、葉隠はどっちの世界でもクズだった。
だがしかし、都合が良かった。変に動いて怪しまられてしまうより、こうしてもらった方が、多少はマシだろう。
江ノ島「??まあ、確認できたらいっか。」
そこの残姉さーん、黒幕側としてはそこ、気にするべきですよー(棒)
取り敢えず、私はなんとかクズ隠くn…もとい葉隠君に見せてもらい、校則を確認することが出来た。
内容はこのような感じである
1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。
2. 夜10時から朝7時までを”夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。
3. 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。
4. 希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
5. 学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。
6. 仲間の誰かを殺したクロは”卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7. なお、校則は順次増えていく場合があります。
うわぁ、なにこれめちゃくちゃ面倒くさい…。
ふと皆の方を見てみるとかなり渋い顔をしている…。
大和田「ざけんな、何が校則だ!そんなモンに支配されてたまっかよ!」
セレス「でしたら、校則など気にせず行動して見たらどうでしょう?わたくしとしても校則を破った場合遠なるのか知っておきたいですし…。」
山田「しかしそんな事になれば、大和田紋土殿は残機ゼロ状態に…。」
明石「別にどう行動するのかは気にしませんけど、命を無駄使いする気でしたらその前に私の方に言ってください。
そしたら先程私のスーツケースでカバーした破片の数ほど、顔面をメリケンサックつけてぶん殴りますから。」
大和田「…………。」
江ノ島「アンタ、見た目によらず結構バイオレンスね…。」
よく言われます。
大和田「オレはなぁ、ガキん頃から兄貴にしつけーくらいに言われて育ったんだよ。男の約束は死んでも守れってよぉ…。」
江ノ島「……で?」
大和田「オレには、まだ守りきれてねぇ約束があんだ…。
だからここで、死ぬわけにはいかねーんだよッ!!」
セレス「…よく分かりませんが、取り敢えず校則は守るという事でよろしいですね?」
大和田「…ん?あぁ…そうなるな…。」
最初からそこだけを話せばいいのに。
舞園「あの、ちょっといいですか?校則の6番目の項目なんですけど…、これってどういう意味だと思います?」
6番め…舞園さんが言っているのは後半の『他の生徒には知られてはならない』という項目だろう。
十神「…卒業したいのなら、誰にも知られないように殺せという事だろう。」
腐川「な、なんでよ…どうして?」
十神「…そんな事、気にする必要はない。
与えられたルールは守るもの。お前らはそれだけ覚えていればいいんだ…。他人に決めてもらわなねば動けないお前らが、疑問など口にするな。」
明石「…とかなんか上から目線で言ってますけど、要するに貴方にも理由は知らないという解釈でよろしいでしょうか?」
十神「……だまれ。」
…どうやら図星のようだ。
山田「おぉ、あの超高校級の御曹司である十神白夜殿に申し立てるとは…。明石玲香殿、恐るべしですぞ。」
朝日奈「…とりあえずさ、殺人がどうとかバカげた話は置いといて、これで校則も分かった事だし、そろそろ学園内を探索してみようよ!」
石丸「ここは何処なのか?脱出口はあるのか?食料や生活品はあるのか?
僕に走らなければならないことが山積みだッ!」
桑田「うおっしゃあ!さっそく、皆で一緒に探索すんぞー!」
流石ポジティブ三人組。先程までの暗い空気が嘘だったかのように明るくなった。
探索の結果は既に知っているが、この雰囲気で探索を始めたらまあ会議も明るく…
十神「…俺は一人で行くぞ。」
…そうだった、この場面ではこの人がいたわ。
正直私にはあまり理解が出来ない。
いくら世界的に有名な財閥の御曹司、金有り顔有り能力有りのもはやチートなような人とは言え、何故そこまで人を見下せるのか。
お金と名誉があれば皆こうなるのだろうか?
正直面倒である。
大和田「待てコラ…、んな勝手は許さねぇぞ…。」
おっといけない、考えることに集中しすぎた。
何やら私が見てない内に雰囲気が険悪となっている。
十神「どけよ、プランクトン。」
大和田「あ“あッ!?どういう意味だッ!?」
十神「大海に漂う一匹のプランクトン…。何をしようが、広い海に影響を及ぼす事のないちっぽけな存在だ…。」
大和田「ころがされてーみてぇだな!!」
よくそんな人をキレさせる言葉をひょいひょい生み出せるもんだこと。
そう呆れた目で見ていると苗木君が二人の間に入り仲裁に入ろうとする。
苗木「ちょ、ちょっと待ってよ!喧嘩はまずいって!!」
大和田「あぁ?何だオメェ、今キレイ事言ったな?そいつは説教かぁ?オレに教えを説くっつーのか!?」
苗木「い、いや、そんなつもりは…。」
大和田「るせぇッ!!」
ガンッ!!
苗木が、殴られた。
そして、吹っ飛んだ。マンガみたいに綺麗に。
忘れていた。ここは私がいた世界ではないのだ。
この世界はゲームの世界、私の世界の常識は通用しないのだ。
一瞬状況が理解できず、私は呆然としていた。
だが、苗木君が吹っ飛んで、そのまま体育館の椅子に直撃した音を聞いて、我に返った。
舞園「苗木君!」
朝日奈「苗木っ!ねぇ、苗木大丈夫?!」
十神「フン、流石は血の気の多い馬鹿共のリーダーだな。」
大和田「んだとぉ…!上等だこr…あぁ?!」
明石「いい加減にしてくれませんか、お二人とも。」
苗木の方へ走っていく舞園さんと朝日奈さんを横目に、私はまたひと悶着起こそうとしている大和田の膝の裏を蹴り彼らの仲裁に入る。
明石「大和田さん、いくら監禁されて苛ついているとは言え、やって良い事と悪い事が有りますよ?十神さんも、誰かを挑発するのは止めてください。一人で探索するならそうする事だけを伝えてください」
十神「フン、コイツが勝手n…」
明石「いいから口塞いで探索に行くなら行けっつってんだよ、この噛ませ眼鏡。」
十神「なっ…!?」
これ以上十神君に喋らせると厄介だ。少々口は悪いが口を塞いでおいてもらう。
明石「石丸さん、もう面倒なので、探索は適当に個人なりグループなりで良いですよね?」
石丸「あ、あぁ…、それで構わないが…。」
明石「私は苗木君をどこか休める部屋に連れて行きますね。」
桑田「へ?いやいや、明石ちゃんに苗木を担いでいくのはちょっと無理…」
明石「よっこいしょ。」
桑田「ファ!?」
山田「持った…、明石玲香殿が持った!」
確かに私は身長が低いが、こう見えて私も高校生であり、アメリカでは体育系の授業にて毎日筋トレを行っていた為それなりに腕力がある。苗木君をおぶるのは別に難しくない。
明石「誰か、私の荷物持っててくれませんか?」
舞園「あ、じゃあ私が…。」
スーツケースを舞園さんに持ってもらい、私は苗木君を担いで体育館を出て、苗木の個室のある寮の方へと向かうのであった…。
主人公が段々とガサツでバイオレンスなキャラになっていく…
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Chapter1 『イキノビル』 Part 2
舞園「苗木君…大丈夫でしょうか…。」
寄宿舎にある苗木の部屋の中、舞園さんはベッドの上に寝ている苗木君を不安そうに除きながら呟いた。
体育館で様々なことが遭ったものの、なんとか苗木のドット絵のある部屋までたどり着いた私と舞園さんは、部屋に入りベッドの上に苗木君を寝かした。
予想よりも体育館と部屋までの距離があった為、私は舞園さんが持ってきてくれたスーツケースの上に座って、少し休憩をしていた。
明石「きっと大丈夫ですよ。いくら暴走族の大和田さんも、一般人相手に本気で殴らないと思いますし。」
舞園「…それも、そうですね。」
確かにあの大和田君のパンチはかなりヤバそげだが、信じよう。この世界の予定調和と苗木君の丈夫さを。
それにしても、舞園さんはアイドルなだけあってとても綺麗だと思う。
顔やスタイルももちろん良いが、姿勢も良いし礼儀正しく、制服にも清潔感がある。いつも人に見られるからこそ、そこら辺も気にしているんだろう。
舞園「ふふっ、有難うございます。明石さんって人の事をよく見ているんですね。」
明石「そんな、癖みたいなものですよ。アメリカの学校では盗みとかが少なくないから、自然に人を観察するようになって…。」
舞園「え、明石さんって帰国子女だったんですか?!」
明石「いえ、帰国子女って言ってもまだたったの一年d…」
ってあれ?さっき私、口に出していってましたっけ?
明石「舞園さん、私いま、綺麗って口に出してましたっけ…?」
舞園「私、エスパーなんです。」
明石「はにゃ?」
舞園「冗談です。ただの勘ですよ。」
こ、ここここ怖っ!!!本気でエスパーかと思ったよ…。
舞園「ところで、明石さんはこの後どうするんですか?」
明石「え、あぁ…、私は他の皆さんと同じように、少し探索をして来ようと思います。この学園広そうなんで、どこに何があるか把握するつもりで。」
舞園「そうですか…、私はもう少し、苗木君の看病をしようと思います。」
明石「じゃあここからは別行動、ですね。苗木さんの看病、お願いします。」
舞園「はい、明石さんと話せて良かったです。また後で。」
可愛らしい笑顔をこちらに向けて舞園さんは手を降ってくれる。もちろんそれは営業スマイルというものだとは思うがやっぱり可愛い。
明石「ええ、また後で。See you later!(また後でお会いしましょう!)」
そう言って、私は部屋から出ていった。
実を言うと、学園の中を把握するという理由は半分嘘である。
私はこのゲームを何回も繰り返し、第三者視点とは言え、それなりにこの学園の地図を把握しているのだ。
部屋から出た本当の理由は一つ、あの白黒のクマに話したい事があったのだ。
私は苗木君の部屋を出た後、最初に私がいた教室の中へと入った。
明石「…誰も居ない、か。」
人が誰もいないかを確認した後、私は監視カメラに向かってあいつの名前を呼んだ。
明石「モノクマさん、見ているんでしょう?こっちに来てください。」
モノクマ「うぷぷ、呼ばれたから来てやったよ!」
…このクマ、本当に神出鬼没だな。
モノクマ「それで、何の用かな?えっと、明石玲香さんだっけ?」
明石「ええちょっと…、
モノクマ「……へぇ?」
一瞬その動きが止まったが、モノクマはすぐさまニヤリと口角を上げて嘲笑う。
モノクマ「そんな事、どこで知ったの?まだ外の事については手がかりを置いてなかったつもりだったんだけど。」
明石「どうせ、その答えもなんとなく目星がついているんでしょ?聞いても無駄だと思うけど。」
モノクマ「いやいや、結構予想外なことが多くてまだ推測の域にしかないんだよね。だからその答え合わせ代わりに、さ☆」
明石「それなら確信に至るまで聞かない方が面白いと思うけど?推理ゲームは攻略本で答えを先に見ちゃうと萎えるもんだし。」
モノクマ「それはそれで、絶望的で良いじゃないかな~?それにしても、ボクの前では敬語は外すんだね。」
明石「死んだお婆ちゃんに、超絶美少女が操っている半分白黒のクマには敬う言葉を使うなって遺言を残されているんだよ。私はこう見えて、お婆ちゃんっ子なんで。」
モノクマ「ありゃりゃ!何とも細かい遺言だね~!誰のことを指しているんだろう!」
一見ふざけて見えるだろうが、相手は世界を壊した女である、気はあまり抜けない。
モノクマ「ところで、いいの?そんな大事な情報をボクに伝えちゃってさ。」
明石「こんな監視カメラがある中で、プライバシーの糞もないでしょ?それに、これを話しとかないと、私の目的は果たせないし。」
モノクマ「へぇぇぇ?その目的ってなぁに?」
ここからが、本題である。
明石「まず前提条件として、私は全てを知っている。皆のプロフィールから、この学園で起きた事件の真相まで全てね。」
モノクマ「うわぁ~、凄いね!明石さんってもしかして超高校級のストーカーか何か?」
……ちょっと野次が腹立つが無視しよう。
明石「だけど私は別に、この情報を皆に暴露する気はない。まぁ、誰かが私に聞いてきた時は別だけど。」
モノクマ「それでそれで?」
明石「先程、前提条件で私が全て知っていると言ったよね。その中には黒幕さん、アンタの性癖も入っている。」
モノクマ「そ、そんな!ボクの性癖まで知っているだなんて、明石さんってばかなりの変態?!」
「それを踏まえてさぁ…。もしも、
数年かけて考えたであろうこのコロシアイ学園に、飛び入り参加してきた私がことごとくアンタの作戦を見抜いて皆のコロシアイを防止しつつ、誰も死なないままこの学園の真相に皆を導いてアンタを完膚なきまでに負かしたとしたら、
アンタにとって、それってかなり絶望的じゃなぁい?」
モノクマ「…………。」
勿論出来るか出来ないかなんて分かんない、と言うより出来ない可能性の方が高いだろう。
だけど、私は断言する。なんとなく、出来ると思ったから。
なんとなく、この悪魔相手に勝てるだろうと踏んだから。
モノクマ「うぷぷぷ、ぶっひゃっひゃっひゃっ!良いねぇそれ、さいっこうに絶望的だよ!!中々良いこと思いつくじゃんか!」
私の言ったことがお気に召したのか、モノクマは本当に嬉しそうに大笑いを上げる。
それより笑い方がキモいな、モノクマ。
明石「取り敢えず、それを伝えたかっただけだから。私はちょっとのんびりこの学園を歩くつもりだから、もう帰ってもいいよ。」
モノクマ「うぷぷぷぷ、それじゃあ戻らせてもらおうかなぁ。いやぁ、本当に楽しみだよ!」
一応目的も果たせたので、モノクマにはもう用はない。さっさと帰ってもらうことにする
モノクマ「あ、ところで一つ質問してもいいかい?」
明石「なに?」
モノクマ「オマエってさ
結局何者なの?」
……………………。
そんなもの、決まっている。
明石「明石玲香、15歳。世界で最も適当な女の子だよ。」
そう言って、私は教室をあとにするのだった…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
???「うぷぷぷぷ…。良いねぇ、なかなか面白い奴じゃんか、あの明石玲香っていう奴!」
???「突然の乱入者に一時はどうなるかと思いましたが、どうやら予定通りに進めるようですね。」
???「この私様の計画を潰そうだなんて、愚民にしては素晴らしく絶望的なことを思いつくのじゃ!」
???「明石ちゃんが、本当にアタシ達の計画を壊してくれるのも絶望的だしぃ、」
???「このオレ様に敗れてアイツが死んだとしても、それはそれで絶望的だしなぁ!」
???「………それにしても、アイツってば何で
あんな空洞みたいな目で、人の事を見ているんだろう?」
???「……まあ、アタシにはどうでもいい事だけどッ!」
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Chapter1 『イキノビル』 Part 3
教室を出て来た私、明石玲香は、ちょっと明るい気分になるために童謡を歌いながらブラブラと歩いていた。
明石「も~も太郎さん、桃太郎さん♪おっ腰につけたきび団子ー、ひっとつーわったしにくださいなー♪
……『上げるわけねえだろ、この畜生共がぁ!』『だったら奪い取るだけじゃあ、この人間畜生めぇ!!』」
朝日奈「待って!!桃太郎とその家来三匹に何があったの?!」
大和田「てか何で童謡を歌ってんだよ?!」
あ、どうやら他に人がいたらしい。
ツッコミが聞こえた方向を見ると、そこには玄関ホールのほうを調べていた朝日奈さん、大和田君、そして大神さんがいた。
明石「ああさっき振りですね、朝日奈さん、大和田さん、大神さん。そんなに大声を上げてどうなされたんですか?」
朝日奈「いや、今明石ちゃんが歌っているのが聞こえるなぁって耳を澄ましてたら、急に物騒なことが聞こえたから…。」
明石「ああ、すみません。さっきなんとなく、桃太郎とその家来三匹たちの仲いい童謡を歌いたくなってしまって…。」
大神「最後の言葉で、一気に険悪な仲になってしまったがな。」
大和田「むしろ最後のがインパクトありすぎて、その一人と三匹が喧嘩してるイメージしか頭に来なくなったわ…。」
インパクトって凄いね!
明石「それはまあさておき、御三方は玄関ドアを調べているのですか?」
朝日奈「うん、明石ちゃんが出ていった後、結局皆適当に探索をすることになってさ。で、私たちは学校側を調べることになったの。」
大神「どこか脱出できる場所がないかを探しているが…、今のところは見つかっておらぬ。」
明石「見たところ、どこも頑丈そうですからね…。」
残念そうに言ってはいるが、正直玄関ホールのドア以外の脱出経路はあまり期待していない。
最終的に苗木たちが出ていったのも玄関ホールだったしね。
むしろ、変な所から出てマシンガンとかでドガガガガガッってやられたら大変だ。
だからここを出るには正規法しかないだろう。
大和田「お、おい、明石…。」
明石「何でしょうか?大和田さん。」
朝日奈さん達から探索の途中結果を聞いていると、大和田が気まずそうに私に声をかけてきた。
ええ…、私なんかしたっけ…(※明石さんは体育館での膝カックンはスルーしております。)
まさかあって初日に告白とかはないだろうしなぁ…。
いや本当に覚えがないなぁ…(※しつこいようですが膝カックンは明石さんの記憶から抹消されております。)
大和田「…さっきは、助けてくれてあんがとうな。」
明石「へ?」
大和田「オレがモノクマの野郎が爆発した時のことだよ…。」
朝日奈「ほら明石ちゃん、大和田にモノクマ投げるように言ったじゃん!あと、そのスーツケース!」
明石「……ああ、そう言えばスーツケースでモノクマの破片を防御してましたね。あの時は無事で何よりです。」
なるほど、その礼を言いたかったのか。
大和田「出来ればすぐ礼を言いたかったんだが、十神の件で解散しちまったからな…。」
明石「別に礼なんて良かったのに。どちらかと言うと、その十神さんの件の最中に大和田さんが殴ってしまった苗木さんに謝ってくることの方をしてほしかったです。」
大和田「うぐっ!!…あーってるよ…。」
大神「そう言えば、お主は何故そんなに荷物を持ち歩いているのだ?」
朝日奈「あー、確かに!リュックサックはまあ分かるけど、何でスーツケースも?」
明石「うーん…、普段から必要そうなものは持ち歩く癖なんですよ。」
朝日奈「へ~。」
本当は日本に帰国する直前だったからなんだけどね…。なんか一緒についてきちゃってしょうがないから持って歩いてんだよ…。
明石「私そろそろ、他の場所にも言ってみようと思います。朝日奈さんたちもなにか良い物が…。」
朝日奈「もう、明石ちゃん、そんなにかしこまらなくても良いよ!わたしのことは呼び捨てで呼んで!」
大神「うむ、我らは同じ年なのだ。少し気を抜いたほうが良い。」
大和田「オレも、その『大和田さん』は止めてくれ…。むず痒くて仕方がねえ…。」
朝日奈「そうそう、私もタメ口で話してるからさ、明石ちゃんももっと砕けた喋りで喋って良いんだよ!」
明石「皆さん……。
じゃあよろしくな、ゲス共!」
大和田「砕け過ぎだよ!」
おっと、やりすぎてしまった。
明石「冗談冗談。じゃあ4人でいる時はお互いタメで宜しくね。朝日奈ちゃん、大和田君、大神ちゃん。」
大神「……やはり、我はさん付けのままで頼む。」
そんな気楽なやり取りをした後、私はまた探索を始めた…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
十神「…で?ここで何をしているんだ。」
明石「視聴覚室の壁に張り付いてるラジオっぽいものの上に、なんかモノクマの絵が描かれたメダルが見えたので机を使い、上に登って何とかメダルを取ったものは良いものの意外にもここと天井との間が狭いので立ち上がることが出来ず、結構な高さとこの身長のせいで降りれなくなってしまいました…。助けてくれると幸いです。」
十神「本当に何をしているのだ、貴様は…。」
自分でも分からないよ、そんなの。ただモノクマメダルを取りたかっただけなんだもん。
そしたらいつの間にかラジオの角に半分乗って足が床につかない状態から動けなくなっちゃったんだもん。
十神君は舌打ちをしながらも私のパーカーの背広を掴んで私を地上に降ろしてくれた…って私は猫か?!
明石「有難うございます、十神さん。」
十神「ふん、ただ見てて目障りだったから手を貸したまでだ。礼を言われるほどじゃない。」
明石「じゃあ罵ればいいですか?」
十神「何故そうなる?!」
いやだって礼を言われるほどじゃないって言われたから…。
明石「十神さんも探索ですか?」
十神「他の奴らと一緒にするな、俺が調べているのは俺達を閉じ込めた犯人についての手がかりだ。これと言って見つかってはいないがな…。」
明石「じゃあ今のところ、私の中でのこの学園脱出計画に一番使えねぇなランキングのブービーですね!」
十神「どんなランキングを取っているのだ貴様は…!」
明石「因みにワースト1位は、皆が最初に確認している情報を報告会にて笑顔で報告しそうな石丸さんです。」
十神「地味に合ってそうな事を言うな!」
まぁ合ってるんですけどね。
ついでに言うと只今気絶中の苗木君はまあしょうがないので除外にしてます。
だって主人公だもの。
十神「貴様…、体育館での暴言といいこの会話といい…。まさか、十神家の名を知らぬとは言わせぬぞ…。」
明石「今この場で名前言ってるから確かに知らぬとは言えませんけどね。十神さん、私にそう言う堅苦しいのはあんまり効果ないですよ。」
十神「…何?」
明石「私はね、世界で最も適当な女子なんですよ。
肩書だとか御曹司だとか、そんなの私にとってはただ履歴書に書く為の言葉にしか過ぎないんです。もしも、ここで私に凄いと言わせたければ行動で証明してくださいよ。例えば皆を導いて、ここを脱出するとかそんな。もし出来たら改めて敬いますよ、貴方のこと。」
十神「………。」
…なんか急に黙られてしまった。もしかして怒らせちゃったか?もうここにも用はないし、さっさと移動しちゃうか。
明石「それじゃあ十神さん、私はそろそろ失礼します。それじゃあ!」
私は出来る限り早足でその場を去って行った。ちゃんとスーツケースなども忘れずに持って、全速力で。
十神「……良いだろう、証明してみせようではないか。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
早歩きで視聴覚室から去っていった私は、またのんびり探索を始めていた…。
葉隠「おりょ?明石っちじゃねーか。」
不二咲「明石さんも探索してるんだ。」
廊下を歩いていると葉隠君と不二咲…君、そして廊下にある鉄板にくっついて唸っている江ノ島さんと桑田君がいた。
…よく考えたらこのグループ、逆ハーレム状態じゃないか?見た目はともかく。
明石「あ、葉隠さんにちーくん、さっき振りです。ところで、そこで必死に鉄板の螺子を回そうとしている男女二人は何をしているんですか?新手の恋占いですか?」
江ノ島「違うって!今頑張って鉄板を退かそうとしてんの!」
不二咲「あのね、もしかしたら鉄板のどれかが外せるかもしれないから一つずつ試してみようってなったんだぁ…。」
なんだ、恋占いではないのか。
明石「それで結果は?」
桑田「全然ダメ。どれもビクともしねぇよ…。」
江ノ島「ヤバイよ…マジヤバいって…、どーすんの…これ…。」
出来れば、鉄板がどれもこちら側から取り付けられていることに気が付いて欲しかったがまあそういうシナリオなのだから仕方ないか。
明石「…あの、少し試したい事が2つ程あるんですがいいでしょうか?どちらも上手くいくか分かりませんが…。」
葉隠「おっ、なんかいい方法でもあるんか?」
明石「桑田さん、ちょっと荷物預かってくれませんか?」
桑田「お、おう。」
荷物を桑田君に預けて、私は近くの教室から机を持って来た。
私は机の脚を掴んで持ち上げ、鉄板の隣の壁に向かって全力で振り投げた。
明石「おうりゃぁぁぁぁぁ、今朝自費で買ったお菓子を友達に食われた恨みだァァァァ!!」
葉隠「明らかに八つ当たりだべ!」
しかし壁は予想より頑丈だったのか傷一つ付かず、代わりに激突した机はバラバラになった。
明石「チッ、武器が悪かったか…。」
桑田「ちょちょちょ!何やってんの明石ちゃん。」
明石「窓に鉄板が付いているけど、壁には特に何にも施されてなかったみたいなんで壁を壊せば出れるかなーって思ったんですけど…ダメでした。」
江ノ島「…ホッ、良かった…。いや、そんなので壊せたらアタシ達とっくにこっから出られてるでしょ。」
オイ今失言が聞こえたぞ、残姉さん!
不二咲「それで…あとの一つは何?」
明石「この様子だと可能性は低そうですが、簡単に言うと…
どこか壁がやわい所を探し、モノクマをそこに呼びつけて、自爆装置を起動させて穴あけようかなって。」
桑田「えげつないな方法ッ!!」
不二咲「で、でも、確かにそれなら出来そうかも…。」
モノクマ「させないよ、そんなこと!!」
4人が同意しそうになったその瞬間、モノクマがどこからかともなく現れた。
葉隠「うおっ、出やがったべ!!」
モノクマ「聞いちゃったよ、聞いちゃいましたよ、オマエラの恐ろしい作戦を!こんな可愛いボクを使って脱出だなんてさせませんからね!」
明石「ダメですか…チッ。」
モノクマ「舌打ちしたよ、この子?!」
明石「あとついでに言いますけど、貴方が思っているほど可愛くないですからね、そのデザイン。とある進学校の性格が下衆な栗のほうがまだ可愛いです。」
モノクマ「しかも罵ったよ!というか何を比較に出してんの?!
とにかく、オマエラがそんな事しないように自爆装置は切っとくからね!オシオキ道具はまだあるからね!じゃあ、バイナラ!」
モノクマは青筋を立てながら…といってもヌイグルミだからないのだが、とにかく怒った様子でそのまま去っていった。
不二咲「行っちゃった…。」
葉隠「これで明石っちが言ってた案はどっちも潰れたべ…。」
明石「すみません、お役に立てなくて…。」
桑田「明石ちゃん、そんな気にすんなよ。どの道モノクマの暴力は校則違反だから危険だしな。」
江ノ島「こうなったら、このまま全部の鉄板を調べて外せるのを探してやろうよ!」
不二咲「そうだねぇ…、じゃあ頑張ろう!」
私の案は全て没となったが、4人はこのまま鉄板の除去を続けるらしい。4人は拳を上げ、力強く声を上げた。
「「「「えいえい、オー!」」」」
ぐぅ~…。
葉隠「…あ、すまんべ。」
が、葉隠の腹の音でその力は一気に抜けた。
この空気を壊すとは流石は葉隠!私たちにできないことを平然とやってのけるッ!
そこに痺れるぅ!けど憧れないっ!
桑田「オイコラ、ウニぃ!今の腹の音で一気に力が抜けたわ!!」
葉隠「腹の音はどうしようもねえべ!もうここに来てもう8時間経ってるし、朝からずっと重労働してっから腹が減ってしょうがないべ!」
桑田「それでも時と場合ってもんがあんだろうが!」
江ノ島「でも確かにちょっとお腹減ってきたかも…。」
不二咲「僕たち、結構な時間動いてたんだねぇ…。」
近くの時計を見てみると確かにもう5時過ぎていた。確かにお腹が減ってくる頃合いだろう。
………なるほど、ご飯か。
明石「ああ、私そろそろ失礼しますね。作業頑張ってください。」
不二咲「うん、それじゃあまた後でねぇ…。」
桑田と葉隠の口論を横目に、私はこちらに手を振ってくれている不二咲君に手を振り返しながら、食堂へと向かっていったのであった。
因みにとある進学校とは黄色いタコを暗殺する教室がある中学校のことです。
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Chapter1 『イキノビル』 Part 4
まだここに来てから言ってはいなかったが、私はこう見えて料理ができる。
アメリカに留学している間、寮のスタッフが出してくれる食事を取っていたのだが、 流石に毎日洋食だと日本食が恋しくなるし、寮がだす食事だとメニューにも限りがある。
なので時々、キッチンを借りては日本食や寮が出さない食事やデザートを作って食べていたのだ。
因みに私の腕前は厨房のコックのお墨付きであるため、味も大丈夫だろう。
食堂にやってきた私はまず始めに道具の用意を始めようとするが…。
明石「…道具が、届かない。」
まさかのハプニングにみまわれていた。
なんで鍋とフライパンが高いところに吊らされてんだよ!背が低い子は取れないじゃん!
くっ、結局は身長が人生の苦難を決めるのか…!
そんなことを思いながら台に乗って必死に手を伸ばしていると、横から誰かの手が取ろうとしていた鍋を取ってくれた。手が伸びてきた方を見てみると…
舞園「はい、どうぞ。取りたかったのってこれですか?」
そこには、天使がいた。
…ああいや、違った。そこには、舞園さんがいた。
いけないいけない、ちょっと頭のネジが取れたのかな?
明石「ありがとうございます、舞園さん。ええと、探索ですか?」
舞園「はい、といってもここを見に来ただけですが…。明石さんは?」
明石「私はさっき一通り学園の中は見てきたので、皆に夕食でも作ってあげようと思いまして…。」
舞園「わぁ!明石さん、お料理も出来るんですね!」
明石「あんまり期待はしないで下さいよ?料理が出来るって言っても、簡単なものしか作れないので。」
舞園「それでも十分凄いと思いますよ!もしもよろしければお手伝いしますけど…。」
明石「じゃあ、ちょっとだけ手伝って下さい。あと集合の時間になったら苗木さんをよんできてくれませんか?」
料理15人分は少し…いや結構キツそうだけどまあ平気だろう。私は冷蔵庫から材料を取り出しながら舞園さんに頼んだ。
…超高校級のアイドルを助手に使って調理って緊張感半端ないね。
舞園「はい、分かりました。それはそうとこの厨房、野菜やお肉がたくさん置いてありますね。」
明石「私達を餓死させないため…ということでしょうかね?」
モノクマ「そのとおりでございます!」
舞園「きゃあ!」
私が大きな炊飯器に研いだ米に水を入れながら舞園さんとお喋りをしていると突然私達の間からモノクマが飛び出てきた。
何処から出てきてるのよ、この変態クマ!
モノクマ「ボクはね、オマエラに健全なコロシアイ生活を過ごしてほしいのですよ。食事が取れずに餓死だなんてもってのほか!だから、このように食材にはきちんと新鮮なものを大量に用意をしています!ああ、在庫については心配しないでいいよ、ボクが定期的に食材を補充しに来るから…」
明石「舞園さん、そこから調味料を出してもらえないでしょうか?」
舞園「あ、はい。」
モノクマ「って話は最後まで聞きなさい!」
だって内容がクズいんだもん☆
モノクマ「全くも~…、今といい廊下での会話といい、明石さんと話していると気が狂ってしょうがないよ。」
舞園「え、何か話したんですか?」
明石「全然記憶に無いですね…。あと、モノクマそこ邪魔なのでどいて下さい。」
モノクマ「嘘でしょ、もう忘れちゃったの?!しかも邪魔扱いしたよ!
というかいつの間にか着々と調理が始められてる!?」
いやだってボウル取るのに邪魔だったし、喋りっぱなしじゃあ皆すぐに来ちゃうし。
あ、この包丁切れ味がいいな。
モノクマ「ショボーン…、ボクはそろそろ疲れてきたよ…。」
明石「そう落ち込まないで下さいよ、モノクマ。」
モノクマ「元凶の明石さんに慰められたよ!せめてまな板から目を離してから言って!!」
明石「ほら、そういう時は上を見上げて下さい。そしたら見えますよ……貴方の真上に居る血まみれの女性が。」
モノクマ「まさかのホラー!?」
舞園「明石さんったら何を言っているんですか。居るのは女性だけでなく、首のない中年男性でしょう?」
モノクマ「舞園さんも乗っからないで?!というかボクの上には何人居るの?!」
明石「そんなの誰も居るわけないじゃないですか。もしかして
どこか壊れました?」
モノクマ「君が言い出したんじゃん!!…はあ、とにかく伝えるべきことは伝えたからボクはもう行くよ…。」
明石「次に来る時は牛乳とアンパン持ってきて下さいね。」
モノクマ「邪魔扱いの次はまさかのパシリ!?トホホ…。」
材料を切る片手間にモノクマを軽くあしらっていると、モノクマは肩を落としながら帰っていった。
舞園「行っちゃいましたね…。」
明石「あともうちょっと心を折っときたかったんですがしょうがない…。ところで舞園さん、このレストラン以外の場所は見に行きましたか?一応ここにはしばらく滞在しそうだし、一通り把握しといたほうがいいですよ。」
舞園「うーん…、それもそうですね。私、ちょっと他の場所を見に行きますね!それと明石さん、
一緒にお話できてとても楽しかったです。それじゃあ失礼しますね!」
舞園さんはそんな言葉ときれいな笑顔を残して厨房から去っていった。
……楽しかった、か。
明石「…これは本気で、コロシアイを止めないといけないなぁ。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
明石「…こんなものかな。」
一番大きな机の上に全員分の白米と味噌汁を出して私は自分の近くにおいていたスーツケースの上に乗った。
流石に量があったので時間がかかったが、なんとか7時までに夕飯が出来た。
因みに今回のメニューは日本食の定番であろうお味噌汁、白米とともに、
鶏の唐揚げ、鶏の照り焼き、それとマッシュポテトサラダを作った。
え、何故肉料理が2品あるのかって?私がお肉好きなんだもん。
特に鶏肉は肉料理界でも大御所的な存在だと思う。
人間がよく食すだろう豚肉、牛肉と比べて見ると、鶏肉は低カロリーかつヘルシーで女性に多大な人気を持つ。
アメリカでは主に牛肉が食事に出されるため、正直鶏肉が恋しかったのだ。
なんか説明してたらだんだんお腹が減ってきた。くッ、皆はまだ来ないのか!
あんまり遅いと全部食べちゃうぞ!
苗木「あ、明石さん!それにその料理は…。」
私がいい加減つまみ食いを行おうか考えていると、部屋で気絶していた苗木君が舞園さんとともに食堂にやってきた。
明石「苗木さんじゃないですか。大和田さんに殴られた怪我はもう大丈夫ですか?」
苗木「アハハ…、もう痛みはないから大丈夫だと思うよ。そう言えば明石さんがボクを運んでくれたんだよね?重くなかった?」
苗木君の様子を見ても、怪我はもう大丈夫なようだ。
流石ゲーム世界。治りが早い。
明石「全然。苗木さん、ちゃんと食事を取ってますか?高校生だったらたくさん食事をとっておくべきですよ。」
苗木「ぜ、善処するよ…。」
舞園「机においてある料理は、私が出ていったあと全部作ったんですか?」
明石「あ、はい。量が多かったので少し疲れましたが…。」
苗木「え、この料理全部明石さんが作ったの?!」
明石「そうですが、それが何か?」
苗木「いや、ちょっとびっくりしたから…。」
ほほう。
明石「それはつまり、皆の第一印象がガサツでバイオレンスな私がこんな風に料理を作れるとは思わなかった…と。そうですかそれはそれは…。」
苗木「いや、本当にビックリしただけだから!本当に!だからお皿1組を片付けるのは止めて!」
明石「冗談ですよ。ちゃんと分かってますから。」
苗木「そう言いながらもお皿を片付ける手を止めないのは何で?!」
明石「それはね、苗木さんの焦る姿が見たいからですよ。」
苗木「どんな理由?!」
明石「いいですか、苗木さん。苗木さんが焦る姿を見せるっていうのは、小動物がおもちゃで遊んでいる姿と同じくらい可愛げがあるんですよ。」
苗木「そんな可愛げいらないよ!!というかボクって小動物と同等なの?!」
舞園「そんなことないですよ!苗木君は小動物より可愛いですよ!」
苗木「舞園さん、それフォローになってないよ!」
取り敢えず苗木君の可愛い姿を見て満足した私は片付けようとした皿を元の場所に戻してあげる。ああ、可愛かった。
舞園「それにしても、みんな遅いですね。」
明石「そろそろ来てもおかしくないはずなんですけどね。じゃあ苗木君でもう少し遊んでますか。」
苗木「止めてよ、明石さん!ボクで遊ぼうとするの!」
と話し合っていた矢先だった。
タイミングよく食堂のドアは開け放たれ…
石丸「苗木君、舞園君、明石さん、君達が一番乗りだったか!」
苗木「あ、石丸クン。」
石丸「残念だ…僕が最初だったと思ったのだが…。まだ、気合が足りぬという事か…!」
明石「いえ、私は結構前からここにいたのでカウントしない方が…。」
石丸「だが諦めんぞ!次こそは必ず勝ってみせる、正義はかならず勝つのだッ!」
…ダメだ、聞こえてない。
ボケである私にとって空気を読まない石丸君は天敵みたいなもんなんだよねー…。
大神「遅れて済まなかった。我々も探索を終えてきたぞ。」
朝日奈「わぁ!大神ちゃん、机の上に美味しそうな鶏の唐揚げがいっぱい置いてあるよ!」
セレス「和食ですか…。まあたまにはいいかもしれませんね。」
それから間もなくして石丸君に続くように他の皆も食堂に次々とやってきた。
数分立つ頃にはほぼ全員が集まっていた。
因みに大和田君はきちんと殴ったことを苗木君に謝ってたよ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
石丸「よし、全員集まったようだな!では早速、会議を始めようと思う!!お互い、調査の成果を披露しあい、情報を共有化しようではないか!一刻も早くここから脱出するためにッ!」
江ノ島「あ、ちょっと待って…!」
石丸「何かね!?」
江ノ島「えーっと、なんてったっけ?あの銀髪の彼女…。」
明石「……霧切さんのことですか?」
江ノ島「あ、そうそう、霧切響子…。いないんだけど…。」
石丸「何だとッ!?」
たしかに食堂を見渡してみると、霧切さんの姿はいなかった。
というか私的には、一生懸命唐揚げと鶏の照り焼きを自分の取り皿に取っていっては口に入れ頬張っている葉隠君と朝日奈ちゃんの方が気になるんだけど…。
明石「あの…、私学園内を一周回っていたんですが霧切さんの姿は見てないんですけど…、誰か霧切さんを見た人はいますか?」
しかし、皆首を横に振るばかりだ…。
原作通りだと、恐らく学園内の探索をしているんだろう。詳しい場所と方法は分からないが…。
良い成果を持ってくることを願うばかりだ。
石丸「おのれ、霧切くんめ…、初日から遅刻とは…!遅刻をしているにも関わらず遅刻の旨を伝えないとは、遅刻者としての根性がなっておらんぞ…。」
明石「遅刻に根性も何もあるんでしょうかね?」
石丸「だが、何事も時間厳守だ。仕方あるまい。
これより第一回希望ヶ峰学園定例報告会の開催を宣言する!」
一回ここで切ります。
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Chapter1 『イキノビル』 Part5
石丸「まず、皆が調査した結果の報告を始めるとして…その前に一ついいだろうかッ!」
セレス「何でしょう?」
石丸「朝日奈くん、葉隠くん!会議の最中に食事を行っているとは何事だ!」
桑田「そこかよ!」
石丸「食事だけならば百歩譲って許そう…、
だが君達、その量は流石に取りすぎというものだ!他の皆のことも考慮したまえ!」
二人の取り皿を見てみると、確かにかなりの量の料理が山のように盛られている。
流石に取り過ぎだよ!私、皆が来るまで待ってたんだぞ!
朝日奈「だ、だってこの料理、すごく美味しいんだもん!調査でお腹も減ってたし、しょうがないでしょ!」
葉隠「だべ。腹が減ってら育児出来ずって言うべ。」
江ノ島「それを言うなら、腹が減っては戦は出来ずでしょ?」
育児できずって…専業主婦か!
山田「確かに味の方は美味ですが、この料理は一体どちら様がお作りになったんでしょうかね…?」
腐川「まさか…、モノクマじゃないでしょうね?」
明石「あ、私です。」
桑田「あんなヌイグルミの手で料理なんて出来っかy…って明石ちゃん、今なんて?」
明石「私が作りました、ここにある料理を。」
「「「「「「………。」」」」」」
…………ほほう。
明石「…今貴方がたが思っていることを当てましょうか?『明石さん、料理なんて出来たんだ…?』って思っていますよね?すいません、料理できなさそうで。なんなら料理全部下げますよ?」
江ノ島「ご、ゴメン!ただ驚いただけだから!マジで驚いただけだから!」
不二咲「あ、明石さん、凄いなぁって驚いただけだよぉ!」
石丸「う、うむ、その通りだ!だから青筋を立てて皿を片付けようとするのは止めてくれないだろうか!?」
あ、なんかデジャヴ。
ええ本当にすいませんね、料理が出来なさそうで。
どうせ私は見た目は子供、中身はバイオレンスな高校生だよー!
皿を全て片付けようとしたが、苗木君が涙目で説得しに来たので渋々皿を元の場所に戻してあげた。
三度目はないからね!
石丸「うおっほん!まあ、食事を行いながらでいいので、会議を再開しよう。」
明石「おかわりは一応たくさんあるので、必要だったら自分で取ってって下さい。それで、たしか皆はチーム分けをしてたんですよね?」
舞園「はい、そうです。確か石丸君、十神君は別々で行動していました。」
明石「石丸さんはどこを調査してたんですか?」
石丸「僕は寄宿舎の方を調べていたんだが、そこで世紀の大発見を成し遂げたぞ!!
寄宿舎には明石くんの個室を除く全員の個室があったのだ!」
明石「…取り敢えず自分の個室のみがないというモノクマのイジメに泣いてみればいいでしょうか?」
朝日奈「な、泣いちゃダメだよ、明石ちゃん!」
江ノ島「でもたしかに変だよね…。ドアにはネームプレートが貼られててそれぞれの個室を指定してたし…。」
大神「ご丁寧に、名札付きの鍵まで用意してあったな…。」
明石「これ、あれですかね?小学生がよくやる『オマエの席、ねーから!』っていうの。」
山田「だとしたら、なんとも迷惑なイタズラですな…。」
まあ個室なくて当たり前ですけど。
その後、江ノ島さんとちーくんの報告により個室は完全防音であることがわかった。他にも全個室にはシャワールームが存在し、女子の部屋のみがカギをかけることが出来るそうだ。
これ石丸、殆ど役に立ってなくね?
明石「次は十神さんですね。」
十神「俺が調べていたのは犯人への手がかりだ。だが、特にこれといった発見はなかった。もしもあるとしたら、そこの女が視聴覚室で見つけたモノクマの顔が描かれたメダルのみだな。」
明石「なんか気になったので拾おうとしたら高い所から降りれなくなっていたんですが、たまたま表れた十神さんに猫を棚から下ろすかのように助けられました…。」
十神「以上だ…。」
石丸「そ、それで終わりか?」
十神「発見があれば報告するつもりだったがないのだから仕方あるまい?」
石丸「そ、そうか…了解した…。」
見た目格好いいから誤魔化せてるけど、簡単に言うとなんにも手がかりを発見できてないってことじゃん。
私が小さく鼻で笑うと十神君がこちらを向いて滅茶苦茶睨んできた。
地獄耳か!
明石「えっと、単独で探していた人たちの他にもチームに分かれて調査していた人がいたんですよね?」
石丸「うむ、その通りだ。
確かチーム分けは、桑田くん、葉隠くん、江ノ島くん、不二咲くんのチーム、
朝日奈くん、大和田くん、大神くんのチーム、
そしてセレスくん、腐川くん、山田くんのチームだったはずだ。」
朝日奈ちゃんチームと桑田君チームの調査結果は既に探索中に殆ど聞いていたので端折らせてもらう。
…どちらの最終的な調査結果もいい結果はなかった、とだけ言わせてもらおう。
モノクマは言っていた。外の世界は汚れている、と
モノクマは、このコロシアイ学園生活の中で殆ど嘘をいうことはない。
ただ重要な部分を黙っているだけなのだ。
そしてその情報を皆が信じられないだけ。
超高校級の絶望、何とも恐ろしいものだ。
苗木「最後は、セレスさんたちのチームの報告だけだね。」
ぶつぶつとモノクマの手腕について考えている内に最後のセレスさん、腐川さん、山田君のチームの報告となっていた。
時間というのは本当に進むのが早いな。
セレス「正確に言えば、わたくし達は『一緒に行動をしていた』ではなく、『一緒に何もしていなかった』ということになりますね。ずっと体育館にいただけですから。
だって、学園内を駆けずり回って調査するなんて、わたくしのイメージじゃありませんもの…。」
江ノ島「何もしないで体育館にいただけなんて、アンタら何考えてんの?」
腐川「だって、誰も誘おうとしなかったでしょ…一緒に行こうって言ってくれなかったでしょ…!
アタシを除け者にするのが…いけないのよ…!それがいけないのよ…!」
明石「今のところ除け者にされてるの私じゃないですか?」
山田「電子生徒手帳も個室もないですからな…。」
腐川「そこ、うるさいわよ…!」
えー…、でも事実じゃん。
江ノ島「なによ、一緒に来たかったら自分から言えばいいじゃん!」
明石「江ノ島さん、今の発言で世界中のボッチの皆さんを敵にしましたよ。」
江ノ島「アンタは黙ってて。」
明石「はい。」
Oh…、江ノ島さん、マジパない演技っす…。
腐川「フン…こ、こっちから願い下げよ…。あ、アンタみたいな、汚ギャルと一緒なんて…。」
江ノ島「汚ギャル…?」
山田「ふむ、汚いギャルという意味ですな。」
江ノ島「アンタも黙ってて。」
山田「御意ですぞ。」
腐川「あたし…、あんたみたいに頭も体も軽そうな女って…せ、生理的に…吐き気をもよおしちゃうの…。」
江ノ島「ビックリだし、仰天だわ…。ほぼ初対面でそこまで悪口が言えるなんて…!」
いえ、私と山田くんに対するあなたの発言も十分…いやそれ以上に仰天したし怖かったです。
葉隠「お二人さん、冷静に話し合うべ。こんなん肌に悪いし、な?」
舞園「そうですよ!ケンカするほど仲がいいんですか?どうなんですか?」
苗木「舞園さん…、それはなんか違うと思う…。」
うん、それはちょっと違う。
苗木「そう言えば、明石さんはどこを調査したの?」
明石「私は調査、と言うよりはこの学園の部屋の正確な場所の把握ですね。電子生徒手帳を確認しなくてもいいように。一通り把握した後は、調理をしていました。」
朝日奈「明石ちゃんのご飯、すっごく美味しいよ!」
明石「ありがとうございます。でも朝日奈さん、その量は流石に取りすぎです。」
不二咲「まるでリスみたいだねぇ…。」
ちーくんの言う通り、どうやって喋ってるのか分からないくらい、朝日奈ちゃんの頬にはたくさんのお肉が入れられている。
この脂肪が全部胸に行くのかぁ…。羨ましい。
石丸「あと報告していないのは…」
舞園「私、ですね。
私はこの食堂を調べながら明石さんの調理のお手伝いをしていたんですけど、奥の厨房にある冷蔵庫の中に、びっしり食材が詰まっていましたよ。ね、明石さん?」
明石「はい、取り敢えず食料の心配はなさそうです。」
山田「いくら豊富でも、15人もいたら何日持つやら…。」
腐川「あ、あんたはゴマでも食べてなさいよ。」
山田「え?僕は鳥?」
明石「嫌ならヒマワリの種もありますよ?」
山田「ハムスターでもないですぞ?」
違うんだ?
舞園「心配いりませんよ。冷蔵庫には毎日定期的に食糧が追加されるらしいんで。」
明石「…と、モノクマが言っていましたね。」
江ノ島「…会ったの!?」
舞園「明石さんと食糧の話をしていたら飛び出してきて、それだけ言ってまたどっかに行っちゃいました。」
明石「ラジコンとは思えないぐらいの速さでしたよね。」
不二咲「神出鬼没に動くヌイグルミ兵器って、怖いのか怖くないのかビミョーな設定だよね…。」
明石「それ以前にあのフォルムとデザインが微妙ですよね…。」
大和田「オメェは何言ってんだ…。」
朝日奈「でも、二人共大丈夫だった?クマに食われそうになったりしなかった?」
山田「く、食われる…?ねぇねぇ、それってどういう意味で?食われるって、どういう意味の食われる?」
朝日奈「ちょ、ちょっとぉ…!」
桑田「おいこら、ブーデー!」
明石「アハハハハ、もう山田さんったら何を言ってるんですか~?
オタクの風上にも置けねぇな。こういう時はもっとストレートに言うんだよ。」
朝日奈「明石ちゃん!?」
桑田「オタクってそんなアグレッシブなのかよ!?タチの悪い酔っぱらいかッ!」
葉隠「つーか、タチの良い酔っぱらいなんていないべ。」
明石「桑田さん、オタクがアグレッシブな訳じゃないですよ。私は私だからアグレッシブなんです。」
桑田「なお悪いわッ!」
何故だ!アグレッシブで何が悪い!
江ノ島「ちょっとッ!アンタら、フザケてんじゃねーぞ!」
江ノ島の声で先程まで聞こえた喧騒がたち消える。
江ノ島「寝ぼけてんの?私らは監禁されてんのよ?
いつ殺されても、おかしくないのよッ!」
大和田「その女の言うとおりだ…。ふざけてる場合じゃねーぞ。マジでなんとかしねーと…。」
明石「二人共、落ち着いて下さい。今ここで慌てていても、ストレスが溜まるだけですよ。」
江ノ島「だからここで呑気に飯食いながら駄弁ってろっての?アンタ、頭イカれてんじゃないの?! この狂った状況が理解できてないの?アンタは今この状況が恐ろしくないわけ?!」
苗木「え、江ノ島さん、落ち着いて…。」
私に食いかかってきた江ノ島さんの間に入ってきた苗木君の言葉を遮るようにして、その声は上がった。
霧切「ずいぶん騒がしいのね…。余裕があるの?それとも、現実を受け入れてないだけ…?」
明石「霧切さん…。」
石丸「霧切くん!今まで何をやっていたんだ!!とっくに会議は始まっているんだぞ!」
石丸君の言葉も無視して、霧切さんは机の上に一枚の紙を投げた。
霧切さんに話を聞いてみると、どうやらこの紙は希望ヶ峰学園の案内図らしい。
この案内図を見る限り、私達が今いるこの学園は希望ヶ峰学園とほぼ同じ構造だそうだ。
この事により、ここは正真正銘、希望ヶ峰学園だということが証明された。
不二咲「ほ、本当に希望ヶ峰学園だったんだ…。他の場所に連れ去られた訳じゃないんだ…。」
大和田「…んなバカの事があるかよ。こんな所が、国の将来を担うエリートを育てる学園だぁ?」
朝日奈「でもさぁ、もしもここが希望ヶ峰学園なら、どうして他の生徒達はいないの?」
葉隠「もう止めんべ…。そーんな暗い話ばっかし…。」
苗木「でも葉隠クン、心配じゃないの?ボクらの、この状況がさ。」
葉隠「心配…?何の心配だべ?
だってこれ、希望ヶ峰学園が計画したドッキリイベントだろ?実際こんなんで、いちいち動じてたら口からエクトプラズムが出るって話だべ!果報は寝て待て…要はゆっくりイベントの終了を待ちゃいいんだべ。」
江ノ島「アンタの気楽さが羨ましくてしょうがないわ…。」
明石「因みにエクトプラズムとは1893年、シャルル・ロベール・リシェに作り出された造語で、幽霊が視覚化、物質化された時に関与するある種のエネルギー物質のことです。」
桑田「よく知ってるなそんな事…。」
雑学の一部ってもんですよ。
セレス「うふふふ…!」
腐川「あんたは何笑ってんのよ…!」
セレス「よかったですわね。皆さんで手分けして調査した甲斐があったようですね。」
腐川「あ、あんた話聞いてた?ど、どこに調査の甲斐があったのよ!」
明石「私たちの所在地は判明したものの、逃げ道も犯人も未だ不明という残念な結果ですからね。」
セレス「あら、調査したおかげで判明したじゃないですか。
逃げ場のない密室に閉じ込められたというのが紛れもない真実だという事が。」
セレスさんの言葉に皆は口を閉ざした。
おそらく認めたくないのだろう。でもこの現実こそが真実だという事に彼らは気がついていたのであった。
その後の話し合いはほとんどゲームでの進み方と同じだった。
セレスさんが『夜時間の出歩きは禁止』というルールを追加する事を提案して、
それに皆賛成して…。
私たちの最初の話し合いはここで終わった。
食堂で一人きりになった私は、机の上の皿の片付けをしていた。
皆の口に合うか少し不安だったが、皆気に召したようで残飯はゼロだ。
誰も残さずに食べてくれたという事実はなかなか嬉しいものである。
まあそれはさておき、
「…寝るとこ、どうしようかなぁ…。」
話し合いでの情報によると、私の個室がないそうだ。
そして、モノクマの作った校則により、個室以外の場所で寝ることができない。
そのため、私は誰かの個室で夜を過ごさないといけない。
私は少し悩んでいた。いったい誰の部屋で泊まるかだ。
残姉さん…もとい江ノ島さんは黒幕側の人間だし、大神さんも無理やりとはいえ内通者である、最悪寝込みを襲われそうだ。
セレスさんと霧切さんと腐川さんは断りそうだし、ちーたんはそもそも性別が違うし、朝日奈さんは快く泊まらせてくれそうではあるが少し彼女のスタイルを直に見てしまうと心に傷がつきそうだ。
そして舞園さん、彼女も朝日奈さんと同じく泊まらせてくれそうだ。
しかし、おそらくこのコロシアイ学園生活で最も精神が不安定なのは彼女であろう。
あまり、彼女の負担をかけたくない。
その気になれば朝日奈さんやちーたん、それでもダメなら男子の個室に押し入って仕舞えばいいだろうが、はて、どうするべきか…。
「明石さん。」
「んにゃ?」
皿の片付けを黙々と行いながら考え事をしていると後ろから声がかかった。
私は持っていた皿を一旦机に置き、後ろを振り返る。
そこにはミステリアスな雰囲気で有名な霧切さんが立っていた。
「どうしたんですか、霧切さん?夜食をご所望でしたら何か作りますが…」
「いえ、結構よ。それより貴方に聞きたい事があるのだけれど、少しいいかしら?」
「構いませんよ、と言いたいのは山々なんですが今少し困っている事があるのでそれを解決してからがいいんですが…。」
「それって寝床の件よね?誰の個室に泊まるか決めてないのだったら私の個室をするといいわ。」
あら?
霧切さんの性格からして私みたいな怪しい人を泊まらせるのは断るかと思ったんだけど、予想外である。
霧切さんはその鋭く冷たい、しかしその奥には炎のような熱を持った瞳で私を見ながら、その口を開いた。
「単刀直入に言うわ。貴女は何者なのかしら?」
「明石玲香、高校一年生、趣味は家事に読書にエトセトラでぇす☆」
「…そういうことを聞きたいんじゃないわ。私は貴女の…」
「Just kidding.(冗談だよ)つまり、霧切ちゃんが聞きたいのは私の知っている事でしょ?Aren't you?(違う?)」
「!」
私は接触するか接触しないかの距離まで近づき、霧切さんに話しかけはじめた。
「ここじゃちょっと話しにくいからさぁ、霧切ちゃんの部屋で話さない?裸の付き合いでもしながら、ね?」
「…分かったわ。じゃあ、10分後、私の部屋まで来てくれるかしら。」
「of course♡(もちろん♡)じゃあ、10分後にね。」
私は霧切さんに笑顔を向け、手を振って彼女を見送った。
霧切さんは、一度だけ私の方を見て、食堂を去っていったのであった。
投稿速度がしばらく遅くなりますがご容赦を!
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