神物語~聖夜の闇匣~ (かいきあえ)
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第1話

第1話「出逢い」

 

昴「くっ・・・俺は確か...いきなり意識を奪われて...ここは...どこだ?」

 

見渡す限り、真っ暗闇が広がる静寂の空間。状況を把握する為にも、昴は冷静に数分間闇を味わった。

そして数分後、目が慣れて多少の空間把握が出来るようになった。しかし、分かるのはここが狭い部屋であること、この部屋の入り口らしきドアが1つある事くらいしか現時点では分からなかった。窓は一つもないところを見る限り、ここは地下室なのだろう。しかし、幸運なことに1人ではないらしい。今把握した感じでは昴を含め、5人は確認出来る。こんな狭い部屋にこんな大所帯・・・勿論、コミュ障の昴には少々地獄であった。が、このまま沈黙を貫いても何も始まらない、昴は頑なに閉じていた口を開いた。

 

昴「あの・・・皆さん大丈夫ですか?」

??「あぁ、なんとか怪我も何もねぇ。」

 

昴の問いかけに答えてくれたのは、まさかのあの時救った少年であった。

 

昴「あ!!お前はあの時の・・・まぁ、今は無事を素直に喜ぼう」

??「へっ、お気楽なもんだぜ。こちとら命狙われてたかもしれねぇってのに。でもまぁ、あんたが身を呈して救ってくれなければ今の俺はない。その、まぁ・・・ありがと。」

 

相変わらず口は悪いが、感謝はしてるようだ。まぁ、多少の礼儀はなってるようだな。

 

昴「まぁ、無事なら良かったよ。何でこうなったのかは全く分からねぇ。今後のことも考えて、それぞれ軽く自己紹介しておかなかいか?」

??「人にものを尋ねるならまずは自分からだろ?」

 

いちいち毒々しく悪態をつくガキに多少イラつきつつ昴は自分の紹介を始めた。

 

昴「まぁ・・・そうだな。俺は黒井 昴、俳優をやってる。テレビにはちょこちょこ出てる芸能人だ。よろしく」

 

輪廻「昴ってあの昴君か!!通りで見覚えがあると思った。僕は佐野、佐野 輪廻(さの りんね)って言うんだ。スポーツを色々とやってて体力には自信がある。好きに呼んでくれて構わないよ。」

 

輪廻と名乗ったその男は見た目は小柄ながらも、どうやらスポーツ選手らしい。体格はがっちりしている...正直ギャップなのが声が少し高い

。まぁ最近こういった声の高い男性って増えてるし驚きはあまりないのだが、やはり少し慣れない・・・

 

昴「輪廻か、珍しい名前だな。まぁ力仕事とかは色々と任せるよ、よろしく。次は君だね」

 

卦堂「俺は卦堂 鶏弍(けどう けいじ)、医大で医療の勉強をしている。趣味は八卦道、我流ではあるが一応師範並みの実力あるつもりだ。よろしく。」

 

相変わらず変わった名前が多いな...でもまぁ、不幸中の幸いってやつだな。医大生って言ってたけど、医者(卵)がいるのは正直心強い。

卦堂は身長も高い、あんな長身から放たれる八卦とか想像しただけで恐ろしい()てか、そもそも医大生が八卦極めてるってこれまたツッコミどころが・・・うーん、今回は見逃しておこう。

 

昴「おう、医者は結構助かるな。よろしく!!えーっと次は・・・」

 

赤崎「私ね。私は赤崎 成美(あかさき なるみ)職業は訳あって今は話せないわ。決して変な仕事はしてないからそこら辺よろしく。」

 

この5人の中で紅一点、職業が不明ってのは少し気にかかるが、まぁプライバシーってことで。

とてもスレンダーでスタイルもいい。思春期の息子にはちょっと刺激が強いかもしれんな(ナニの話をしているのだろうか)。

 

輪廻「変な仕事って何よ・・・?」

 

赤崎「さぁ?ただあなた達が思ってるほど危ない仕事はしてないから安心して。一応人に言える仕事はしてるから。」

 

昴「さてと・・・ラストは」

 

凛「俺は水野 凛(みずの りん)男だ。職業って言えるほどのことはしてない、普通の学生だ。特に馴れ合うつもりはない、よろしく。」

 

凛と名乗った少年は周りが高校生以上の年齢でありそうな中、唯一小学生のような体格をしている。ってかこれコ○ンじゃね?と思わせるような小学生ではないような風格をしており、いかにも頭はずば抜けて良さそうだ、ただ小学生ならもう少し可愛げがあってもいいと思うのだが・・・。

 

昴「さてと、みんな自己紹介も終わった所で状況を把握しよう。まず、ここはどこか分かるかい?」

 

凛「分かってれば今頃は脱出してるだろ、ちったぁ頭使おうぜ有名人さんよ?」

 

昴「・・・まぁ、だな。」

 

輪廻「それにしてももう少し言い方考えよ?相手は年上なんだし」

 

凛「ふっ、年上がそんなに偉いか?お前らみたいな腐った大人が俺をこんな目に合わせなきゃ、もう少し・・・子供らしく・・・」

 

凛の言葉が詰まる。その静かな目は憎悪に満ちていた。

 

次回へ続く・・・



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第2話

真冬の夜、しんしんと降り積もる雪の中
突如暗闇の空間に閉じ込められた昴達5人
何故閉じ込められたのかも分からぬまま
部屋の捜索に向かうのであった…。

登場人物紹介
★黒井 昴(くろい すばる)
俳優業をこなす20歳の好青年、だが実際はコミュ障であまり人と触れ合うのは好まない。赤髪に赤目と赤尽くしの見た目だが、髪は前髪あたりにメッシュのような黒い部分があり、右目もたまに痒がっている。医者によると花粉症のようなアレルギーらしいが・・・

★黒井 雪女(くろい ゆきめ)
昴の妹で家事炊事等をこなすイマドキのJK。正義感が強く、控えめながらも悪事は見逃せない性格。だがしかし、昴に対しては違うようで結構な頻度で昴を走らせている。でも実は結構心配性、これらの行動は彼女なりの愛情の裏返しか?


第2話「兆し」

 

昴「ともかく、手分けしてここを捜索してみよう。このまま、ここでのんびりしてても何も変わらない。」

 

輪廻「そうだね。さてと・・・捜索するにしてもメンバーをどう分けるかとかは考えてるのかい?」

 

昴「いや・・・まだみんなの事も把握しきれてないのもあって、ここは公平にくじ引きにしようかと・・・」

 

凛「へっ、結局大人つっても考えることはガキか。」

 

赤崎「こら凛くん、考えはどうあれ君の先輩なんだから。もうちょっと使う言葉を気を付けなさい。」

 

凛「・・・はい。」

 

・・・やけに素直だな。やはりガキはお姉さんに弱いものなのだろうか?

何はともあれ、昴・輪廻・凛グループと卦堂・赤崎グループに分かれた。

凛については昴と顔見知りだからという理由でこっちになった。

 

凛「まぁ・・・くじ引きじゃしょうがないわな。さっさと終わらせようぜ。」

 

ホントにちょろいなこのエロガキ・・・。と満面の笑みでその場を流しつつグループでの行動が始まった。

グループで分かれて行動と言っても実際には、ここの館はあまり広いわけでもなく、閉じ込められた部屋は地下1階だったのだが、分かれて行動し始めたのは1階に着いてからだった。地下は昴達が閉じ込められていた部屋以外に目立つものもなかったのだが、1階は見た感じ全部で4部屋で昴達は2部屋ずつ分担して捜索することとなった。

さて、まずは昴グループ、光源は輪廻が持っていたライターで周りを照らしつつ捜索を始めていた。

 

輪廻「みんな、今から部屋から聞こえる音を探るから静かにね。」

 

輪廻は昴達に注意を促しつつ扉に耳を当てようとした。・・・が彼も世界を飛び回るスポーツ選手、日頃の疲れが出たのだろう。耳を当てるつもりがそのままおでこをぶつけてしまい、その勢いで扉も開けてしまった。

運良く部屋の中は空であり、恐らく倉庫だと思うが特に目立つものもなかった。

 

凛「何やってんだよ・・・この人。」

 

輪廻「ごめんね、こんなつもりじゃなかったんだけど・・・」

 

昴「ともかく、部屋には何もなさそうだな。」

 

3人はそのまま部屋を去り、隣の部屋を探り始めた。

輪廻も扉から部屋の聞き耳をし、先程の部屋のような誰もいない空間である事を察した。

ゆっくりと扉を開いていく。その部屋はどうやら先程とは違い、机や椅子がいくつか並べられている客間のような部屋だった。

奥に暖炉らしきものもある。もちろん火など付いてるわけもない。あくまで微かな光の中3人は捜索している。

 

輪廻「うーん・・・これはここの館の主の名前かな?」

 

輪廻が見つけた肖像画の下に名前と思われるプレートを見つけた。

しかし、日本語でなければ英語でもなさそうだ。

 

昴「ダメだ、読めそうにねぇ。ここはパスかもな。」

 

凛「俺らのグループは収穫無し・・・か。」

 

輪廻「まぁこんなこともあるよね。あっちと合流してみようか。」

 

凛が言った通り収穫は無かった。時間制限がないとはいえ、ここから脱出したいのに情報が無いというのは、昴や輪廻を確実にじわじわと焦らせていった。

視点は変わって卦堂赤坂ペア。光源は赤坂が持っていたマッチを使って道を照らしていた。赤坂が何か鍵を握ってる、不確かながらも謎めいた女性である事に変わりはない。卦堂は慎重に赤坂と話していた。

 

卦堂「あ、赤崎さん。」

 

赤崎「なぁに?卦堂君だっけ?そんなに堅くならなくてもいいのよ?そうねぇ、せっかくペアになったんだしお互いに情報交換でもしよっか?」

 

赤崎は卦堂に対しにこやかに微笑んだ。卦堂もぎこちない感じではあったが笑顔を返しつつ本題を聞いてみた。

 

卦堂「赤崎さんは、何をしている人・・・なんですか?僕ら全員が集まってる間では危険な仕事じゃないとしか教えてくれなかったですけど・・・」

 

なんだこの初々しいカップルみたいなのは・・・さっさと爆発してくれませんかねぇ?という作者の嫉妬は置いといて、赤崎はすぐさまいつもの涼しい顔で言うのであった。

 

赤崎「ホントいきなりね。うーん・・・でも卦堂君だしいいかな?私はね、実はこの館を知ってるの。」

 

卦堂「えっ・・・」

 

赤崎「半年前、私はここの館の従業員だったの。」

 

卦堂と赤崎の間を冷たい風が吹き抜けていった。

 

次回へ続く・・・




年末年始で色々と忙しく、今の今まで投稿出来ず申し訳ないです(^ω^;)
今後も不定期ではありますが、ゆっくりと投稿していきます。
エンディング的なものはもう考え付いてるので、必ず完結させます。
なので首を長くしてお待ち下さいね(^ω^;)


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第3話

未だに招待の掴めぬ謎の集団により連れ去られた昴達。
館を手探りで捜索するも、掴める情報はこれといって無く
現場には重い空気が流れ始める。
そんな中、卦堂は赤崎が以前この館で働いていた事を知るのであった。

登場人物紹介
★佐野 輪廻(さの りんね)
型にはまらない斬新な動きで世界を飛び回るスポーツ選手。年齢も29と昴より年上なのだがどことなくそう見えないのは・・・何が原因なんでしょうねww声が高いから多分それだろう、うん。
年長者という事もあり、一番グループ内では落ち着いているが実はこれはいつもの疲れが溜まって集中力が切れてるだけの模様。
特殊な名前だが、本人曰く本名らしい。

★卦堂 鶏弐(けどう けいじ)
このグループ内で一番のインテリの21歳。というのも彼は医大に通う医大生、つまり医者の卵という訳だ。しかし勉強の方は基本見ただけで理解してしまうので、普段は我流の八卦を極めている。彼が気まぐれに受ける相談はかなり好評で医大外でも有名。うなじの所に彼自身も気付かないくらいの小さい鶏の印が押されている。


第3話「暗闇」

 

赤崎の突然のカミングアウトに卦堂は呆然と立ち尽くすしか出来なかった。最悪の事態を予想しつつ、赤崎は話を続けた。

 

赤崎「私は少し、他の人とは変わっててね。千里眼・・・って言うのかな?つまり未来が視えるの。っていってもそんな大層なもんじゃないのよ?私に視えるのは自分に起こる危険なこととか、直接じゃなくても私が間接的に危険な目に遭ってるっていうのも私には予知できる。」

 

正直頭がこんがらがりそうだった。デジャヴとか予知夢とか、現代で未来が視えるなんて話は珍しくもないからだ。ただ、それ故に疑問も残る。ただ、今彼女を問い詰めるのは良くない。卦堂はそう判断し、赤崎の話に真剣に耳を傾けるのであった。

 

赤崎「私が千里眼を使える事に気付いたのは数年前よ。とはいっても、私にも最初は分からなかった。でも、視える映像に従えば私に危害が及ぶことは無い。それだけは理解出来た。」

 

卦堂「ってことは、今まで辛いものばかり視てきたんだろ?相談とか出来なかったのか?」

 

赤崎「私にはそういった友達とかいないし、家族や親戚も疎遠で何の情報もない。こうなると私の悩みなんて話すに値しないんだろうなって思ってた。だから・・・ホントは人と接する事自体、私には怖くてね。でも、みんなあんな暗闇にいて不安なのは一緒。だから私なりの強がりをしてみた。ホントは今は無職よ、みんな立派だなぁって羨ましかったわ。」

 

卦堂「・・・。少し、辛い話をさせたかもしれないな。ごめん。」

 

赤崎「いいのよ。ここまで話が出来たのも初めてだなぁ。ちなみに元々働いてたのはホント。千里眼でここの館の主が危ないってのも分かってた。でも・・・」

 

卦堂「でも?」

 

赤崎「その映像には、今まで見たことない私がいたの。後にあなた達が来ることも分かってたけど、孤独で寂しいことからの解放とかじゃない、笑顔の私が。今まで人と接するのを恐れて避けてきた私が、人に対して笑顔なんてどうしてだろう?そんな好奇心から私は1人あの地下牢であなた達を待ってたってわけ。」

 

卦堂「なるほどね・・・。ここの主人が危険だってのは分かった。具体的には分からんのか?」

 

赤崎「ごめんなさい、私の千里眼も鮮明に覚えられるのはいくつかだけだから。あっ、でも働いてたからだけどここの主人の名前は知ってるわ。ここの館の主人は・・・破道龍獅(はどう りゅうじ)」

 

卦堂「破道・・・か。分かった。」

 

赤崎「それと・・・私がここで働いてたのは2人だけの秘密にして。」

 

卦堂「・・・分かった。うまい具合に話はまとめとくよ。」

 

こうして卦堂は赤崎からここの館のことや、主人である破道がおかしくなっていった経緯を彼女の見たままの話を聞いた。そして1階に大したものが無いのも実は知ってた赤崎は卦堂と共に集合場所へ導くのであった。

こうして集合場所にて昴達が集まった。

 

昴「すまんな、こっち側はあまり収穫なかったよ。」

 

凛「・・・なんか、ホントに申し訳ない。」

 

卦堂「俺達も大体そんなもんだ。得た情報っていってもここの主人のことくらいで。」

 

輪廻「それなら僕達も肖像画らしきものを見たよ。名前は・・・ちょっと分からなかったけどね。」

 

卦堂「いや、大丈夫だ。やつの・・・俺らを閉じ込めた犯人の名前は破道龍獅、どうやら半年前までは普通のおっさんだったらしいけど、日が経つにつれて何かに取り憑かれたかのように狂っていったそうだ。」

 

赤崎「私達がなんで捕まえられたのか・・・それについては分からなかったわ。」

 

凛「そう・・・だったんですね。」

 

昴「凛?どうした、浮かない顔してよ。」

 

昴が凛を心配し、肩に手を置いた途端に凛は今までの俯いていた顔からその形相を変え、昴を思い切り睨んだ。そして、初めに会った時の口調でぶちまけた。

 

凛「てめぇ・・・。やっぱここに来てから何も覚えてないようだな。ここの主人の名前だとか目的は知らねぇけどよ、俺らがここに来る必要は無かったんだよ!!俺がトラックに轢かれかけた時、俺があそこで死ぬなんてことは絶対なかった。それをアホみたいに自分から車に突っ込んで行ってよ・・・。」

 

赤崎「凛君、そんな言い方・・・」

 

凛「すみません赤崎姉さん、でもこれだけは言わせてください。俺は・・・俺らは、お前の優しさのせいでここの主人の企みにまんまと釣られたんだよ!!」

 

次回へ続く・・・




どうも、作者のあえです( 'ω')
今回はほとんどがなんかイチャ回みたいな感じになりましたねww
当初はそのつもりはなく、そのまま凛と昴の言い合いにしようかなぁとも考えてたんですけどね。行き当たりばったりで作ってますので、案がコロコロ変わってきますね(^ω^;)
自分が決めているEDを迎えられるようにはしますので
今後とも応援ヨロシクお願いします!!


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第4話

真冬の聖夜に何もわからずに拉致された昴達5人は
遂に館の主の正体を知る。そして卦堂は赤崎の秘密を知り、驚きつつも彼女を受け入れた。そして凛は全員の前で昴に対し怒りをあらわにするのであった。

登場人物紹介
☆水野 凛(みずの りん)
見た目は小学生のような感じだが年齢は不明。頭脳明晰でまるでコ〇ンのような設定だが彼は事件や探偵とは無関係だ。甘いものが好きでみたらし団子にハマってる。口が悪いのは昴に対してだけであって他の人には敬語を使ったりと礼儀正しい子である。

☆赤崎 成美(あかさき なるみ)
身長は158cm、体重はヒミツ♡赤髪のロングヘアーでかなり可愛い。スタイルがよく胸もかなりでかい。サイズ(カップ)は設定しないので皆さんの想像に任せる。千里眼を持ち、自分が関与することであれば他人の不幸も視ることが可能。ただし、基本自分の未来が優先されるため全員の危険予測までは出来ない。卦堂にだけは心を開いている。千里眼でナニを視たんでしょうね。


第4話「特殊」

 

凛は語気を強めて己の怒りを発したが、もちろん理解しがたい内容である。確かに昴は人と接するのは苦手だが困ってる人を助けられない性格だ。でも、その優しさが今の災いを生む?ここの主がそこまで奇々怪々な人物なのか、昴は考えを巡らせながら黙り込んでしまった。

 

輪廻「まぁまぁ、凛くん。少し落ち着こうよ。君達に何があったのかは知らないけど、優しさが災いを生むって言われても僕らも理解し難いし、君の意見には賛成しづらいよ。」

 

凛「賛成なんて・・・同情なんていりませんよ。僕もコイツを除いては何も知りませんから。」

 

卦堂「だとしても、言い方が意味深すぎるぞ。言葉をあまり知らない子供をあまり責めることは出来ないが・・・」

 

赤崎は静かに凛をじっと見つめている。だがその視線はいつもの赤崎とは違うような気がした。もちろん、その事に気がついたのは凛だけだが。

 

卦堂「とにかく、俺らに話せるヒミツがあるんなら話してくれないか?俺らが捕まった原因が分かるかもしれない。もちろん差し支えなければだが。」

 

凛は少し俯いた。昴を今まで睨んでいた時のような覇気は消えたが、昴に対する目だけは変わらぬままであった。その時、黙り込んでいた昴が口を開いた。

 

昴「俺は・・・お前が轢かれそうだった所を助けた。ありがた迷惑って言葉も聞くけどどうも腑に落ちない。こういうのを非難される理由も全く分からない・・・。」

 

凛「おい・・・てめぇホントに何も覚えてないのか?クロイス。」

 

周りのみんなは黒井昴の名前を呼びやすくしたものなのかと解釈したが、昴だけは何か頭を過ぎ去るような痛みを感じた。

なんだ・・・この頭痛。名前を呼ばれただけなのに変な違和感と、凛に言われた【覚えてない】の言葉が昴の頭を混乱させ、その場に倒れてしまった。

 

輪廻「おい!!昴君、大丈夫かい?」

 

卦堂「凛、お前は一体・・・」

 

赤崎「大丈夫よ、ショックで気を失っただけみたい。少し横にしてあげたらいいと思うわ。」

 

赤崎の冷静な対応が輪廻や卦堂の緊張を解いた。そして言われた通り昴をその場に寝かせる。

 

赤崎「さて、聞かせてくれる凛君?あなた達のこと。」

 

凛「本当は誰にも言いたくなかったけど、仕方ない・・・ですよね。分かりました、話します。少し長くなりますけど、とりあえず最後まで聞いてください。」

 

凛は誰にも気付かれないような部屋にみんなを移動させ、少し俯いたまま話し始めた。

 

凛「端的に言います。まず、僕と昴はここの人間じゃないです。僕は天界の妖精リン。そしてこいつ、昴は天界の神クロイス。僕らは2人でこの下界に来ました。本来なら僕は要らないんですけど。まぁ・・・少し訳ありです。こいつ、クロイスは天界でもかなり優秀で下界に来る際に記憶を失うようなヘマはしないはずなんですよ。本来は・・・」

 

昴「俺が・・・神?」

 

昴は自分で何があったのか理解出来ないような様子で、凛の話に入ってきた。

 

輪廻「そうみたいだね、何も覚えてないっぽいけど。」

 

卦堂「そうだとしても、俺らに何か起こるわけでもないだろ?それがこの原因を呼び込んだなら話は別だが。」

 

凛「まぁ、確かにそれだけなら何も起こらないです。詳しいことが分からないと何も言えませんが、僕の予想では僕ら1人1人に特殊な能力的なものがあってそれで集められたんじゃないかと思います。僕は妖精、そしてこいつは神ですし。」

 

特殊な能力、その言葉を聞いたみんなが己の過去を振りかえる。確かにこの現代に妖精や神がいるって事実だけでも頭が追いつかない。しかし、自分も人とは違う。始めに少しおどけたのは赤崎だった。卦堂がその様子に気付き彼女を自分の背後に隠す。だが、卦堂にも心当たりはあった。過去に起こった不思議なこと、そしてそれは輪廻も同じだった。自分がスポーツ選手としてやれてるのはいいが他の人には真似出来ない事が自分には出来る。2人にとって疑問でもあったが強みでもあった。それ故に疑問は心の奥深くに消えていたのだろう。

 

凛「とりあえず・・・先に進みましょうか。止めてしまった僕が言うのも変ですけど・・・これ以上話しこんで時間を潰してもいけませんし。脱出しない事には何も出来ませんしね。」

 

赤崎「そうね、ここの主人はまだ健在だわ。多分2階にいると思う、ここからは気を引き締めて行きましょ。」

 

昴「みんなに何かあっても、みんなはみんなですよ。こうして会えたことも変わりません。おかしくなったらみんなで止めればいいだけですし。」

 

輪廻「おいおい、簡単に言ってくれるね。でもそうだね。みんな頑張ろうか。」

 

卦堂「こんな所で立ち止まっても、何もねぇしな。」

 

昴達が特殊な人間であることが確認出来た5人。だが、特殊であろうとも自分は自分。なにも変わらないことを改めて心に秘めた。

昴達は結束をかため、危険であるという2階へと進むのであった。

 

次回へ続く・・・




どうも、作者のあえです( 'ω')
予定ではもう少し話を進めるつもりだったんですけど
少し足踏み状態になりましたね(^ω^;)
次回辺りから話の展開が変わっていくと思うのでよろしくお願いします(^ω^)


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第5話

真冬の聖夜に突如として館に拉致された昴達5人
この館の元従業員という赤崎の千里眼もあり館の全貌や
館の主、破道の存在を知る
そして以前昴は神であったことも突然凛の口から暴露されたのであった。
しかし彼らの秘密を受け入れ結束を新たに固めた5人は破道が待つ2階へ足を踏み入れるのであった。


第5話「対峙」

 

館の2階にたどり着いた昴達は改めて、目的を確認する。

 

昴「ここに破道がいるのか・・・」

 

赤崎「ええ、そうよ。あの親父が何考えてるかは分からないけど、私達みたいな特殊な人間集めて変なことしようとしてるのは確かだからね。」

 

そう、ここにいる人たちは全員特殊な能力を持ってる。昴のように人外だから集められたというのもいるが。破道の企みを潰せばこの館からも出れる。皆がそう思いを強める中、静かに殺気を漂わせる男が1人。

 

凛「卦堂さん?さっきからどうしたんです?」

 

卦堂「ん?あぁ・・・ちょっと緊張してるだけだ。」

 

輪廻「そっか、確かにここに親玉がいるみたいだね。扉の奥から微かだけど声がする。」

 

昴「だが、扉は頑丈で鍵もかかってる。赤崎さん、ここの鍵は?」

 

赤崎「残念だけど2階の部屋の鍵は全て破道が管理してる。この部屋に入るにしても、あいつがここから出てくる隙を狙うしか・・・」

 

輪廻「そっか・・・なら話は早いね。みんな、少し下がってて。」

 

そういうと輪廻は扉に対し集中力を高める。そしてその刹那輪廻の足が扉に触れたかと思うと、扉は物凄い音と共に吹き飛んだ。そんな神業をいきなり見せられて呆然と立ち尽くすしかなかった4人であった。

 

??「おやおや、随分と荒々しい。ノックも無しにこの部屋に入るとは・・・。まずは、あなた達に礼儀から教える必要がありそうですねぇ。」

 

昴「あんたが破道だな?」

 

破道「ふむ、いかにも。おや?赤崎さんもいらしたんですか、なるほど。こんなにも早くここまで来れたのにも合点がいく。」

 

赤崎「私はもう会いたくなかったわよ。」

 

破道「くっくっく・・・それは私には関係ない事だ。どうやら全員お揃いのようだ。私の理論が正しかったと証明される時が今・・・」

 

言葉と共に振り向いた破道を見て一同は驚愕した。その形相はまるでこの世のものとは思えないほどに歪で、身体はまだ人間の様ではあるが片目は完全に人の目ではなかった。片腕も動物の腕や足と言うには程遠い、まるで触腕のようにうねうねとうごめいていた。破道は不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめている。

 

赤崎「破道・・・あなたはもう・・・」

 

凛「こいつももう人外だな。俺らとはまた違った類のだが。人種が違うのではない、人間を捨てたんだ破道は。」

 

破道「捨てた?いや、違うな。生まれ変わったんだ私は。そして創造するんだ。下界から召喚されし者達によってな!!」

 

そう叫ぶと破道は手元の本を開き、ぼそぼそとつぶやき始めた。

 

卦堂「やつを止めろ!!何か始めようとしてるぞ!!」

 

卦堂達はすぐさま破道の元へ駆けつけるが

卦堂の叫びも虚しく、既に破道は詠唱をやめ静かに本を閉じる。

 

破道「さぁ・・・ここから私の世界が始まるのだ!!いでよ、ロキ!!」

 

破道は天に向かってロキの名を叫ぶ。輪廻や卦堂はいつでも戦闘が出来るように構えている。が、次の声は彼らの後ろから聞こえてきた。

 

??「随分と長い間寝かしてくれたじゃないの。」

 

そう、ロキを召喚されたのは黒髪に染まった、片目が黄色になっている昴だった。

 

次回へ続く・・・




どうも、あえです
本当はもう少し早めに投稿予定だったんだけど
リアルで色々ありましてね(^ω^;)
相変わらずの不定期投稿となりそうですがこれからもよろしくです
次回からまた急展開が起こりそうですねぇ


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