太正?大正だろ? (シャト6)
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プロローグ

遅くなりましたが、新年を迎えましたので新しい作品を久々に投稿しました。

尚、この話は台本形式とオリジナルが混ざっています。もしそれでも言い方は読んで感想等をお待ちしてます。

それが嫌な方は、ブラウザバックして下さいm(__)m



「……」

 

「起きて下さい」

 

「ん…んん…」

 

「起きて下さい」

 

女性の声が聞こえたので俺は目を覚ます。起きると見知らぬ場所だった。

 

「どこだ…ここ?」

 

「ここは天国と地獄の狭間です」

 

「…はっ?」

 

女の言葉に俺は間抜けな声を出していた。

 

「…まぁいい。ここが取り敢えず狭間として、何で俺はそんな場所にいるんだ?」

 

「はい。貴方は猫を助けようとしてトラックに轢かれたんです」

 

「あぁ…思い出した。確かに猫を助けようとして道路に飛び込んだな」

 

「もちろんその猫は無事です。ですが、貴方が轢かれてここにいるのです」

 

「なるほど」

 

その言葉に俺は理解した。

 

「で、俺はそのまま天国か地獄に行くのか?最も、良い行いしてないから地獄行きかもな」

 

「本来ならそうですが、貴方は危険を承知で猫を助けました。そして、本来は貴方は死ぬ予定ではありませんでした。ですので、天国にも地獄にも行かず新しい世界で生きてもらいます」

 

「新しい世界?どんな世界?」

 

「えっと…」

 

女はそう言いながら、何処からか取り出した箱の中を探る。中から一枚の紙を取り出し中を確認している。

 

「貴方には…サクラ大戦の世界に行っていただきます」

 

「って、くじ引きかよ」

 

そんな決め方に俺は思わずツッコミをいれた。

 

「仕方ないんですよ。新しい世界に行く時はこうしないと。それと次は特典を差し上げます。まずこの中にある紙を引いて下さい」

 

「……」

 

そう言われ無言で紙を引いた。開くと数字の20と書かれていた。

 

「はいはい!それじゃあ数の確認ね。特典の数は……20!?初めて見たわよ!!」

 

「数もくじ引きかよ。って事はもしかして…」

 

俺は嫌な予感がした。

 

「はい、特典もくじ引きになっています」

 

「マジかよ」

 

これで変な能力とか当たったら恨むぞマジで…

 

「では引いて下さい」

 

そう言われまず1枚目を引く。

 

「ほら」

 

「では確認しますね。何々…【トリコの小松の能力】」

 

「いきなり凄いの出たな」

 

そう言いながら続いて二枚目を引き女に渡す。

 

「確かにそうですね。続いては…【one-pieceのサンジの能力】」

 

「おいおい、確かに前世でも料理はしてたけど…新しい世界で料理人でもやれってか?」

 

思わずそう言いたくなってしまう。だってそうだろ?これで節婆とか出たら最強だな

 

「き、気を取り直して三枚目いきましょう!!」

 

多少可笑しなテンションでそう言う女。その流れに任せて三枚目の紙を引き渡す。

 

「では次に、【ドラえもんの秘密道具】…嘘やろ」

 

遂に女の口調が可笑しくなった。そりゃそうだろな。そしてまだまだあるんだから口調も可笑しくなるわな。

 

「あ~、なんか…悪い」

 

思わず謝りたくなった俺である…気まずい雰囲気のまま、残りの特典を引き終わる。当たったのは何かって?それはおいおい分かるよ。

 

「…さて、それでは【サクラ大戦】の世界へ行っていただきます」

 

「分かった」

 

こうして俺はサクラ大戦の世界へ転生したのであった。



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サクラ大戦1
第一話


サクラ大戦の世界へ転生してから3年の月日が流れた。俺は神様がくれた力もあり、銀座に2年前に出来た大帝国劇場の近くに店を構えている。当然最初の頃は客なんか全然来なかった。しかし、大帝国劇場の女優でもあるマリア・タチバナやそこの副支配人である藤枝あやめが通っていると噂になり、そこから客足が増えて行った。そしてそこからは俺の腕の出番だ。小松やサンジの料理技術があり、前世で食べた物が当然この時代にはまだない物もある。それを出して行けば自然と繁盛するのである。そして今日も、店の開店準備をしているのである。

 

「ん~!!いい天気だな!今日も1日平和に過ごせそうだな。…あんなのがいなきゃな」

 

そう言いながら向かいの建物の屋根を見る。そこには、最近世間で騒ぎを起こしている化け物がいたのである。

 

「あんなのが増えたら、商売あがったりになるぜ」

 

「全くだ」

 

すると、横から声が聞こえてきた。

 

「米田さん、おはようございます」

 

米田「おう、おはようさん。相変わらず朝から大変だな」

 

そこにいたのは、大帝国劇場の支配人である米田一基だ。ウチの店の常連で、よく酒を飲みに来る。

 

「いえいえ、それが私の仕事ですから。でも珍しいですね?こんな朝早くに」

 

米田「ウチも今日は久々に夕方からだしな。それに、おめえさんに話があってな」

 

「私にですか?」

 

米田「おうよ」

 

「では中へどうぞ」

 

俺は米田のおっさんを店の中に入れる。まだ開店時間じゃないし、まぁいいだろ。え、話し方が違うって?そりゃそうだろ。こんな言葉遣いで商売できないだろ?

 

米田「それと、口調はいつも通りで構わねぇぞ?そっちの方が俺も楽だ」

 

「…分かったよ」

 

そして普段の口調に戻す。因みに、俺のこの口調を知っているのは米田のおっさんだけだ。流石に女性陣にはな。店に入り椅子に座らせると、温燗で酒を出す。

 

「ほら」

 

米田「おいおい、朝から客に酒勧めるなよな」

 

「あんたの場合は、水みたいなもんだろ?」

 

米田「へっ!ちげぇねぇ」

 

そして嬉しそうに飲み始める。

 

「ほら、お通しだよ。少しは酒のつまみになんだろ」

 

米田「わりぃな」

 

嬉しそうにお通しを受け取り、それを肴に飲む。

 

「で、劇場の支配人であるあんたが、わざわざこんな朝早くに店に来た理由はなんだ?」

 

俺は話の内容をおっさんに聞く。

 

米田「ああ。実はよ、今日ウチに新しく入る娘がいてな」

 

「新しく?」

 

米田「そうだ。お前も知ってると思うが、ウチの女優の桐島カンナが今、親父の弔いで沖縄に行っちまってよ。流石に、今いる連中だけじゃ厳しいんでな」

 

「なるほど。確かにここ最近、桐島の奴がウチに食いに来ないから気になってたが…そういうことか」

 

米田のおっさんの事情は分かった。けど、何でそんな事を俺に話すんだか。

 

「で、そんな話を俺なんかにしてどうすんだよ」

 

米田「お前さんの耳にも入れておいた方が、後々何かあった時に説明しなくていいからな」

 

「…そんなに問題児なのか?そいつ」

 

米田「いや、問題児って訳じゃねぇ。以前話したと思うが、俺は昔対降魔部隊に所属してたのは言ったよな?」

 

「そういえば、そんな事も言ってたな」

 

対降魔部隊…なんでも、昔米田のおっさんや藤枝を含めた4人で構成された組織だそうだ。戦う相手は、今日建物の上にいたあの化け物。あれが降魔って名前だそうだ。今現在は、滅多に現れないからそのままにしてるそうだ。日本政府はよ。

 

米田「で、その隊に【真宮寺一馬】って男がいたんだ。今回来るのはその一人娘なんだ」

 

「ふ~ん」

 

米田「仲間だった奴の娘だ。ま、舞台だしそこまで心配してはないがな」

 

酒を飲みながらそう言う米田のおっさん。けど、ならなんでそんな辛そうな表情してんだよ。

 

「なら何でそんな表情してんだ?確かに新人の女優ならミスもするが、所詮はその程度だろ?ま~人間付き合いの方は知らんがな」

 

米田「ハハッ…確かにそうだな」

 

「ならそんな顔すんな。お前さんの顔、大切な戦友の娘をまるで戦場に送り出すような顔してんぞ?」

 

煙草を吹かしながらそう言う。すると、米田のおっさんからとんでもない言葉が飛び出た。

 

米田「戦場に送り出す…か。間違っちゃいねぇな」

 

「なに?」

 

その言葉が俺には妙に引っ掛かっていた。間違っちゃいないってどういうことだ?

 

米田「いや、気にするな。此方の話だ」

 

「……」

 

おっさんは何でもないと言ったから、その話はそこで終わる。何かあるよなこれ。

 

(後で調べてみるか)

 

そしておっさんと他愛ない話をして、おっさんは帰っていた。俺は店を開きいつも通り客の相手をして店を閉める。そして明日の仕込みの準備をして応接室に入る。

 

「さて、んじゃ行くか」

 

俺は机に手を当てると、机が光だし俺の手から指紋などを読み込む。すると机と椅子がある床が下に下がっていく。下に到着するとモニターや機械がある部屋に来た。

 

「しかし、いつ見てもすげ~よな」

 

神から貰った特典とかで、うさみみ女に気に入られ物凄い知識を埋め込まれた(誤字にあらずw)から、この世界には存在しない機械や機能があるんだよな。ま、読んでて指紋認証してる時点でおかしいけどな。

 

「さて、あの元軍人であるおっさんや、同じ降魔部隊にいた藤枝の奴が支配人や副支配人をしてるあの劇場を調べるか」

 

おっさん達は昔軍人だったみたいだが、今は人気の大帝国劇場の支配人か。

 

「けど、軍人のおっさん達が劇場の支配人ねぇ」

 

キーボードを操作しながら調べてる。

 

「ん~…支配人米田一基、元対降魔部隊。副支配人藤枝あやめ、此方も同じく元対降魔部隊。…少し軍の情報に潜ってみるか。序でにスパイ衛星とか使っておくか」

 

秘密道具のスパイ衛星を使い、劇場と劇場に出資してる、綾小路伯爵を調べてみるか。

 

「さて、陸軍のデータベースはっと…」

 

軍の情報を調べていると、ある事実が分かった。

 

「これって…どういうことだ?」



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第二話

「こいつは…どういうことだ?」

 

軍の情報をハッキングした俺は、見つけた情報を見て驚く。

 

「帝国陸軍中将、米田一基。同じく帝国陸軍中尉、藤枝あやめか」

 

おっさんには、昔陸軍に居たって話は聞いた事あったが、未だに現役とは聞いてなかったな。話し方を聞いた感じ、とっくの昔に退役してるもんと思ってたからな。

 

「……」

 

俺は再び資料を見ていく。すると、これまた面白いことが分かった。

 

「あの劇場…見取り図も保管してんのか。それに、劇場の出資者に、軍はおろか政治家の連中も関わってるとはな」

 

となると、どう考えてもあそこの関係者が、ただの一般人って事はないだろな。おそらくマリア達や事務で働いてるかすみ達も関係者だろな。

 

「で、あの劇場の出資に大きく絡んでるのが、神崎重工トップの“神崎忠義”と、貴族院議員の“綾小路頼恒”か。これまた、随分と大物が関わってるとはな」

 

俺は椅子にもたれかかり、タバコを吸う。

 

「フ~……“帝国歌劇団”であり“帝国華撃団”か」

 

つまり整理していくと、街に敵が出てきた時に出てくるあの光武という機械。それにマリア達が乗って戦っており、その司令官が米田のおっさん。んで、副司令に藤枝がいて、劇場では支配人と副支配人をしている。だが、あの劇場自体が帝国華撃団の本陣って訳か。

 

「…だからおっさんは、あの時あんな顔してたのか」

 

あの時の事を思い出す。おっさんからしたら、マリア達は娘…アイリスに限っては孫といってもいいだろな。だが、あの光武に乗って戦ってるのがマリア達なら、可愛がって娘同然な連中を戦場に送らなければいけない。そらあんな顔になるか。

 

「俺もこの事を知ってたら、いい顔は絶対に出来ないな」

 

俺もマリア達との付き合いは、何だかんだで長い。そう考えれば、知り合いが死ぬかもしれない戦場で戦ってる姿を思えばいい気はしないな。

 

「…仕方ない。今度おっさんと会った時に話してみるか」

 

俺自身から、おっさん達の協力者になりたいと言うしかねぇな。ま、俺が何処まであいつらの助けが出来るかは分からんが、少しでもおっさんや藤枝の助けになってやりたいのも事実。折角神様にこの世界に転生させてもらって、その上色々な特典も貰ってんだ。ここで使わなきゃいつ使うんだって話だよな。

 

「そうと決まれば、早速おっさん達との話ができるように、色々と準備しねぇとな」

 

俺は再びパソコンに向き直り、おっさん達との交渉に必要な情報を探すのだった。

 

「…こんなもんか」

 

ようやくおっさん達との交渉に必要な情報の整理が終わった。

 

「ん~…!ここ暫く情報の整理なんかしてなかったから、久々に肩こったな」

 

ボキボキと肩を捻りながら呟く俺。取り合えずこんなところなので、地下室の電源を落とし店に戻った。店に戻り時間を確認すると、時間は既に午後3時になっていた。

 

 

ぐ~っ…

 

 

「…腹減ったな」

 

ひと先ずは飯を食うか…



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第三話

飯も食い終わり、店も開店した。客は疎らだが、貯蓄もかなりあるから心配していない。すると、店の電話が鳴る。

 

「はい、もしもし?」

 

米田『森川か?』

 

電話の相手は米田のおっさんだ。

 

「米田さん?どうかしたんですか?」

 

客がいるので、言葉も丁寧にする。おっさんもそれが分かってるから特に何も言ってこない。

 

米田『実はな、昼間言った一馬の娘が何処かに行っちまってよ』

 

「娘?あぁ、昼間話していた人ですか。何処かにって、何かあったんですか?」

 

昼間言ってた奴か。けど、確かあそこ(劇場)に住まわせるんじゃなかったのか?

 

米田『ああ。名前は真宮寺さくらってんだが、さくらの奴、今日劇場で迷って舞台中裏に行っちまってよ』

 

「舞台にですか!?」

 

米田『そうだ。んで、すみれの奴が怒っちまってよ。今じゃ他の連中達の間でも邪魔者扱いになっちまってるんだ』

 

おいおい、もう既に問題起こしてんのかよ…

 

「そうですか」

 

米田『そこで悪いんだが、もしさくらを見つけたら今夜はお前の所に置いてやってくれないか?』

 

いきなり押しつけかよ!けどまぁ、まだ直接話してないが、協力するって決めたしな。

 

「分かりました。もし見かけたらこちらでお預かりします」

 

米田『すまねぇ』

 

「いえ、別に構いません。彼女の特徴を教えてもらえますか?」

 

米田『ああ。ピンク色の着物に赤色の袴を着てる。髪の色は黒で後ろで纏めてる。赤色のリボンをしてる』

 

「なるほど…分かりました。店が終わり次第此方でも捜します。それでは」

 

そして電話を切る。

 

「マスター、誰からだったんだ?」

 

客の一人が話しかけてきた。

 

「お得意様ですよ。少し問題が起きたらしく、協力してほしいと」

 

「か~っ!マスターは優しいねぇ!!」

 

「ホント!ウチのカカァにも見習ってほしいぜ。んじゃ、ごちそ~さん」

 

「ありがとございました」

 

店に残ってた最後の客も帰っていった。

 

「さて、片付けて一応散歩ついでに探してみるか」

 

店の片づけをさっさと終わらせて、俺は銀座を歩き回った。服装はおっさんに聞いた感じだと、結構目立つ色みたいだから見つけやすいだろ。と思ってると、簡単に見つかった。

 

「あいつか。っておいおい、フラフラして危なっかしいな」

 

足取りがフラついており、いつ人とぶつかってもおかしくない。そしたら案の定人とぶつかっていた。

 

「イッテ!どこ目ェつけてんだ!!」

 

さくら「あっ…」

 

「何とか言えよこの女!!」

 

2人組の男が、真宮寺に文句を言う。

 

「はぁ…」

 

俺は溜息を吐きながら側に行く。

 

「探しましたよ真宮寺さん」

 

さくら「えっ…」

 

「何だテメェは?」

 

「すみません。彼女少し疲れていまして…」

 

「なら、お前がどうにかしてくれんのか?あぁ??」

 

柄悪い奴だな。今はサングラスもしてないからあんましビビらないか。面倒だが、少し脅しておくか。

 

「何とか言え…!?」

 

「おい、どうし…!?」

 

男2人組は途中で言葉を止めた。ってか止めさせた。

 

「…あんま調子に乗るんじゃねぇぞ?殺されてぇのか?あぁ??」

 

俺は2人の耳元でそう呟く。

 

「「すす、すみませんでした~!!!!」」

 

それにビビって、さっさと逃げてしまった。

 

「…ビビんなら最初っからすんなよな」

 

小声で文句を言っておく。

 

「さて、大丈夫ですか?」

 

さくら「あの…」

 

「おやおや、顔が少し腫れていますね?ウチの店に来てください。そこで治療しますので」

 

さくら「で、でも…」

 

「いいですから」

 

俺はそう言うと、真宮寺が持っていた荷物を強引に持ち、一緒に俺の店兼家に連れて帰った。店に帰ると、カウンター席に真宮寺を座らせ、水で濡らした布巾で腫れている頬を冷やしてやる。

 

「少し痛いかもしれませんが、我慢してくださいね」

 

俺は出来るだけ優しく真宮寺の頬を拭いてやる。すると、真宮寺が布巾を持った俺の手を握ってきた。

 

「おっと、痛かったですか?」

 

そう聞くと、真宮寺の目に涙が溜まっていく。

 

さくら「うっ…うわああああああああああん!!!!!!!」

 

俺の胸でとうとう泣き出しだしてしまった。

 

(おいおい泣いちまったぞ!?マジで向こうの連中何やったんだよ!泣くまで追い詰めたのか!?)

 

流石の俺も泣き出すとは思わなかったので、かなり動揺してしまった。そのまま泣きつかれて寝てしまった真宮寺は来客用の部屋に寝かせた。1階に降り、米田のおっさんに電話する。一応保護したから報告しとかねぇとな。

 

米田『もしもし?』

 

「米田のおっさんか」

 

一方、帝劇では米田とあやめが話をしていた。

 

 

 

 

 

 

【米田side】

 

米田「しかしまぁ、派手にやってくれたもんだ」

 

あやめ「申し訳ありません。光武の欠陥を見抜けませんでした。いくらさくらの霊力に反応したとはいえ、あれ程の暴走を」

 

米田「違う…恐怖だよ」

 

あやめ「えっ?」

 

俺はそう答えた。

 

米田「降魔戦争の時さ。君も恐怖したろ?恐怖は霊力を増幅させる…だが、問題はそれを制御する心だ」

 

そんな話をしてると、電話がかかって来た。

 

米田「もしもし?」

 

『米田のおっさんか』

 

米田「オメェさんか。どうしたんだ?」

 

『真宮寺をこちらで保護した。一応その連絡をと思ってな』

 

米田「そうか…さくらが見つかったか」

 

俺の言葉を聞いて、あやめ君もホッとしている。

 

『後、そっちの連中…真宮寺に何したんだ?』

 

米田「何って何だ?」

 

『真宮寺の奴、頬を腫らしてて、それの治療中に泣きだしたんだぞ』

 

米田「そうか…」

 

森川の言葉を聞いて、俺は心が痛んだ。

 

『そっちの事をとやかく言うつもりはないが、泣くほど追い込んでやるなよ』

 

米田「…すまねぇな」

 

森川の言葉にぐうの音も出ねぇぜ。

 

『で、どうするつもりだ?』

 

米田「俺達にはさくらの力が必要なんだよ」

 

『……』

 

俺の言葉に、森川は黙っていた。

 

『そっちにも色々と事情があるみたいだが、あんな風になるのはどう考えてもおかしいだろ。一体そっちで何があったんだ?』

 

米田「……」

 

俺はアイツの質問に答える事が出来なかった。アイツとは長い付き合いだ。だが、一般人に俺達の秘密を喋るわけにはいかねぇ。

 

『…何か話せない理由があるみたいだなおっさん』

 

米田「…ああ」

 

『そうか…ま、そっちの事情もあるだろう。別に無理には聞かねぇよ。けど、どうするんだ?今の状態じゃ真宮寺が戻っても上手くいかないだろ?』

 

米田「それは…そうだが」

 

森川の言う通りだ。仮に今さくらが戻って来ても、他の連中が受け入れない事には意味がない。

 

『…ま、真宮寺が戻る気になるまで預かっててやる』

 

米田「いいのか?」

 

『ああ』

 

米田「すまねぇ」

 

『別にいいさ。戻ってまたいざこざが起きたら、俺も気分が悪いしな』

 

米田「恩に着る」

 

『気にすんな。それじゃあな』

 

そして森川は電話を切った。

 

あやめ「あの…米田支配人」

 

米田「なんだ?」

 

あやめ「いえ、先程話されていた方は一体?」

 

米田「ウチの近くにある“オアシス”の店主だよ。暫くの間、さくらの面倒を見てくれるってよ。今戻ってもややこしくなるだろうってな」

 

あやめ「そうでしたか」

 

俺の言葉を聞いて、安心した表情になるあやめ君。あやめ君もアイツとの付き合いは長いからな。どんな奴か知ってるから安心したんだろう。

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、俺の店…

 

 

 

 

 

 

【主人公side】

 

「……」

 

俺は、店にある応接室で1人考えていた。何をかって?あの真宮寺の事だよ。

 

「…少し調べてみるか」

 

俺は地下に行きモニターを起動する。昔おっさんや藤枝と同じ部隊に所属してたらしいから、軍のデータベースをハッキングすれば情報はいくらか出るだろ。

 

「こりゃ最悪徹夜だな…」

 

そんな事をボヤいてしまう俺であった。翌日、調べ物もひと段落し上に行きコーヒーを淹れる。すると、2階から真宮寺が降りてきた。

 

さくら「おはようございます」

 

「おはようございます真宮寺さん。昨日はよく眠れましたか?」

 

さくら「はい。ありがとうございます」

 

「それは良かった。今コーヒーを淹れているんですが、飲まれますか?」

 

さくら「コーヒーですか?」

 

少し微妙な表情をしたな。あんまりコーヒー得意そうじゃなさそうだな。しゃあない、日本茶淹れてやるか。

 

「コーヒーは苦手みたいですね。でしたら、丁度頂き物の日本茶の茶葉がありますのでそちらの方にしましょうか」

 

さくら「す、すみません」

 

「いえいえ、苦手な物を無理矢理飲ませる訳にはいきませんからね」

 

取り敢えず、お湯は沸かしてるし充分足りるだろ。やかんからお湯が沸き、コーヒーと日本茶に注いでいく。

 

「どうぞ。少し待てば飲めますので」

 

さくら「あ、ありがとうございます」

 

真宮寺はカウンター席に座り、俺は湯呑と急須を置く。

 

さくら「両方できるまで時間がかかりそうですね」

 

「そうですね。ゆっくりと待ちましょうか」

 

俺達はのんびりとコーヒーと日本茶が出来るのを待った。俺はこののんびりとした時間が結構好きなのだ。暫くして両方完成したので飲む。徹夜明けには効くな…

 

「真宮寺さん」

 

さくら「さくらでいいですよ。えっと…」

 

「ああ、すみません。まだ自己紹介していませんでしたね。私はこの店のオーナーをしてます森川大輔といいます」

 

さくら「じゃあ、森川さんと呼ばせてもらいますね」

 

「ええ」

 

お互い自己紹介を済ませた。ま、俺だけだがな。

 

「それでさくらさん。今日はどうなされるんですか?」

 

さくら「私は…皆さんにキチンと謝りたいんです」

 

「それでしたら、後程劇場に行かれるんですね?」

 

さくら「はい!」

 

「頑張ってください。一応、荷物はそのままでも構いませんので」

 

一階の隅に置いてるさくらの荷物を指差す。

 

さくら「そんな、悪いですよ」

 

「いえいえ、気にしないで下さい。上手く仲直り出来たら取りに来てくれれば構いません」

 

さくら「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

 

「そうして下さい。では、朝食の準備をしますので着替えてきて下さい」

 

さくら「何から何まですみません」

 

そしてさくらは、二階に着替えに行った。

 

「さて、さっさと飯作って調べ物の続きをするか」

 

俺は朝食の準備に取り掛かった。さくらもいるし和食だな。そんな事を思いながら俺は調理を始めたのであった。



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第四話

俺が作った朝食を食べて、さくらは刀袋を持って劇場に行ってしまった。まぁ、荷物は置いてったけどな。

 

「さて、作業の続き続きっと」

 

俺は地下に下り、調べ物の続きを始めた。まぁ、ほとんど調べ終わってるから後はこれを整理するだけなんだけどな。そんなこんなでようやく資料の整理が完成した。しかし、そこに載っていた事に色々と興味が湧く。

 

「なるほど。確かに米田のおっさんが言った通り、さくらの親父さんは1918年、太正7年の3月に死んでる。しかも、その原因がさくら…真宮寺家に流れてる血、破邪の血。そしてあの化け物(降魔)を封印する魔神器を使ったのが原因か…」

 

調べたら、軍から真宮寺一馬の事が出るわ出るわ。ってか、ここまで大事な事もう少ししっかりと管理できないのかよ軍の連中は。

 

「ま、はっきり言ってウチのレベルじゃこの時代のデータはザルだけどな」

 

これも、あの神に貰った特典のお陰ではあるけどな。

 

「それよりも気になるのが、この山崎真之介って男だ」

 

モニターに山崎のデータを映し出す。

 

「軍では既に死亡扱いになってるが、その原因は不明で未だ行方不明…」

 

端末を操作し、山崎のデータを見る。

 

「んで、今あいつらが使ってる光武やたまに見る翔鯨丸は、元々こいつが設計したみたいだな」

 

これも、開発に携わっている神崎重工からデータを調べた。

 

「……」

 

俺は暫く、この男の事が頭から離れなかった。

 

「ま、今は特に気にする事じゃないだろ」

 

そう決めた俺は、モニターの電源を落とした。

 

「しかし、山崎と藤枝が元恋人同士だったとはな」

 

山崎の経歴を調べてたら、藤枝の名前があった。

 

「ま、お互い対降魔部隊にいたみたいだし、既婚者とおっさんじゃ恋には芽生えないわな」

 

そんな事を呟きながら、地下室を後にした。

 

「ふぁ~…徹夜したし、少し仮眠するか」

 

そう決めた俺は、部屋に戻って夕方まで眠るのであった。暫くねてると、突然地震が起きた。

 

「な、なんだ!?」

 

俺は慌てて飛び起き、窓を開ける。空は既に薄暗くなっていた。

 

「一体何が起きたんだ?」

 

とにかく情報収集だ。俺は店を跳び出した。走ってると雷門付近に人だかりができていた。

 

「すみません、何かあったんですか?」

 

俺は近くにいた男に話しかける。

 

「おう、マスターじゃねぇか。いやな、さっきデカい機械が突然出て来てよ。長屋の方に行っちまったんだよ」

 

「しかも、警察の連中が通せんぼしててよ」

 

「なるほど…」

 

「かぁちゃん!!」

 

すると、前の方で子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。振り向くと、警官に止められながら泣き叫ぶ子供がいた。

 

さくら「とらちゃん!」

 

「姉ちゃん!姉ちゃん!!」

 

泣き叫ぶ子を見て、さくらは近くに止まってた車に走っていった。俺もその後を追いかける。すると、中から藤枝とマリア、そして神崎が降りてきた。

 

マリア「中心街でなかった事が、寧ろ好都合だったと思います。目的は分かりませんが、このまま長屋の方に進んでくれれば、身動きが取れなくなるはずです。そこを狙って一気に…」

 

さくら「そんなのおかしいです!!」

 

「落ち着いて下さいさくらさん」

 

叫ぶさくらを宥める。

 

あやめ「さくら…」

 

さくら「貴方達の護る帝都って、あそこだけなんですか!!長屋は帝都じゃないんですか!!」

 

さくらは、町の中心を指差して言う。

 

マリア「落ち着きなさい、さくら」

 

さくら「私は…私は帝都を…ここに住む皆を護りたいんです!私1人でも長屋は護ります」

 

そしてさくらは長屋の方に走っていった。

 

マリア「さくら!」

 

「見事に一本取られましたね?マリアさん」

 

マリア「森川さん…」

 

「ま、今は詳しい事は聞きません。けど、さくらさんの援護はいいんですか?」

 

あやめ「そうですね。マリア、すみれの両名はさくらの援護を」

 

そう言うと、神崎が突っかかって来た。

 

すみれ「援護!?私があの娘の援護ですって!」

 

あやめ「…隊長、復唱を」

 

マリア「私とすみれの両名は、さくらの援護に向かいます」

 

そして2人もさくらの後を追いかけてった。

 

「やれやれ」

 

あやめ「ところで」

 

2人が行ったのを確認すると、藤枝は俺の方を向く。

 

あやめ「何故【オアシス】のマスターである貴方がここに?」

 

「ん?ああ、さくらさんが中々戻って来なかったもので、気になって探しに来たんですよ」

 

あやめ「…そうですか」

 

藤枝は納得してない表情だな。そらそうだろな、俺だっていきなりさくらと一緒に来たら警戒するしな。

 

「!?」

 

そう思ってると、別の所から同じ機械が出てきた。

 

あやめ「そんな!?脇侍は一体だけじゃなかったの!?」

 

「脇侍?」

 

初めて聞く名前だな。

 

あやめ「ここは私が時間を稼ぎます!マスターは逃げて下さい!!」

 

拳銃を取り出し俺の前に出る藤枝。

 

「逃げろって…藤枝さんは!」

 

あやめ「一般市民を守るのが軍の役目でもあります。ですから早く!!」

 

そう叫びながら脇侍に銃を撃つ。しかしあまり効いていなく刀が藤枝に襲い掛かる。

 

「あぶねぇ!!」

 

俺は藤枝の上に覆いかぶさり、刀を回避する。

 

「ったく、あんまり調子に乗ってると三枚にオロすぞ!」

 

そう言うと、脇侍が少し怯み後ずさる。

 

あやめ「……」

 

それをあやめは茫然と眺めていた。

 

「とっととくたばりやがれ!!」

 

俺はこの世界で初めて使うサンジの技を使った。

 

首肉(コリエ)肩肉(エポール)背肉(コートレット)鞍下肉(セル)胸肉(ポワトリーヌ)もも肉(ジゴ―)!!」

 

脇侍「ギ、ギギギギ…」

 

「吹っ飛べ!羊肉(ムートン)ショット!!!」

 

そして脇侍は首がもげ、それっきり動かなくなった。

 

「おかわりは自由だぜ?」

 

煙草に火を点け、脇侍に煙草を向けてそう言う。

 

あやめ「……」

 

「おう、無事か?」

 

俺の言葉に、藤枝はハッとなり気が付く。

 

あやめ「え、ええ。大丈夫よ」

 

「ならよかった」

 

そう言いながら俺は煙草をふかす。ん?藤枝の前で言葉遣いが変わってるって?んなの、ガラクタと戦ってからもう気にしてねぇよ。

 

あやめ「あの」

 

「ん?」

 

あやめ「助けて下さってありがとうございます」

 

「別に気にすんな。俺もこいつ(脇侍)に腹立ったし」

 

あやめ「そうですか。後、随分と言葉遣いが変わりましたね」

 

やっぱり来たかこの質問。

 

「まぁな。俺のこの口調を知ってるのは、あんたを除いて米田のおっさんだけだ」

 

あやめ「司令をおっさん…」

 

「因みに、本人からの許可は貰ってんぞ?」

 

あやめ「はぁ…」

 

そんな話をしてると、さくら達が戻って来た。

 

マリア「ただいま戻りました」

 

あやめ「お帰りなさい皆」

 

「皆さんご無事でなによりです」

 

あやめ「……」

 

恐らく、急に俺の口調が変わったから戸惑ってんだろな。

 

さくら「あやめさん、どうかしましたか?」

 

あやめ「い、いいえ。何でもないわさくら」

 

「ま、とにかく今日はこの辺にしておきませんか?皆さんお疲れでしょう」

 

あやめ「そうですね。じゃあ皆、撤収するわよ」

 

「「了解!」」

 

マリアとすみれの奴は、そのまま車に乗り込んだ。

 

あやめ「さくら、貴方はどうするの?」

 

さくら「荷物をまだ森川さんのお店に置いたままですので」

 

「今日まではウチで預かりますよ」

 

あやめ「分かりました。それじゃあさくら、明日森川さんと一緒に劇場に来てちょうだいね」

 

ちゃっかり俺も連れてこさせんなよ。絶対今回の件での話だろうな。

 

さくら「分かりました」

 

そしてあやめ達は帰っていった。俺もさくらと一緒に店に戻り、少し遅めの夕食を作り眠りについたのであった。



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第五話

脇侍を倒した翌日、俺はいつものように朝食の準備をしようとしていた。しかし、1階に下りるとさくらが厨房にいた。

 

さくら「あっ、おはようございます」

 

「おはようございますさくらさん。随分と早いですね」

 

さくら「はい!2日ですがお世話になった森川さんに、どうしても朝食を作りたくて。すみません、勝手にお店の台所を使っちゃって」

 

「気にしないで下さい。ですが、よく調味料などの場所が分かりましたね?」

 

さくら「実は、私の実家も同じような場所に置いてあって。お米の場所や調味料の保存の仕方が同じだったので助かりました」

 

なるほど。さくらの実家でも、俺と同じ保存の仕方をしてたのか。なら、場所は大体想像できるわな。

 

さくら「もう少しでできますので、ゆっくりしてて下さい」

 

「ありがとうございます」

 

カウンターに置かれたお茶を飲みながら、朝食が出来るのを待つことにした。

 

さくら「お待たせしました」

 

どうやら出来たようだ。出てきたのは白米、味噌汁、漬物、焼き鮭、納豆、のりだった。見事にザ・日本の朝ごはんって感じだな。

 

「美味しそうですね」

 

さくら「お口に合うか分かりませんけど…」

 

「いただきます」

 

まずは味噌汁だ。…うん、いい感じに出汁も取れてていい塩梅だ。次は焼き鮭だ。…これもいい感じの焼き加減だ。

 

「どう…ですか?」

 

さくらは心配そうな表情で俺に感想を聞いてきた。そんなに心配せんでも普通に旨いって。

 

「ええ、とても美味しいですよ」

 

さくら「良かった」

 

俺の言葉を聞いて、安心したのかさくらも食べ始めた。

 

「味噌汁といい、この焼き鮭といい、さくらさんは料理が上手なんですね」

 

さくら「いえ、小さい頃からお母様に教えて頂いたおかげです。他にも裁縫など色々と」

 

「そうですか。優しいお母さんですね。これなら、さくらさんは良いお嫁さんになれますね。私が申し込みたいくらいですよ」

 

さくら「そそ、そうですか///」

 

顔を赤くして恥ずかしそうな表情をするさくら。これなら、何処に嫁に行っても恥はかかないだろうさ。

 

さくら「お嫁さん…森川さんの…お嫁さん///」

 

なにやらブツブツ言ってるが、何を言ってるか全然聞こえん。で、俺達は朝食をすませて大帝国劇場にやって来た。入り口ではマリアが立っていた。

 

マリア「来たのねさくら」

 

さくら「はい!」

 

マリア「森川さん、支配人室で米田支配人達がお待ちです」

 

「分かりました。ではさくらさん、マリアさん、私はここで」

 

俺はそう言い残し、おっさん達が待ってるであろう支配人室に向かう。何度か来てるから場所は分かる。

 

「あったあった」

 

目的の場所に到着したから、取り敢えずノックする。

 

米田『開いてるからへぇりな』

 

「失礼します」

 

取り敢えず今は敬語で話しておくか。中に入ると、おっさんと藤枝の2人だけだった。

 

米田「悪いな森川、こんな朝早くにさくらを送ってくれてよ」

 

「いえ、構いませんよ。此方も米田さん達にお話があったので」

 

米田「話って、俺とあやめ君にか?」

 

おっさんと藤枝は、互いの顔を見る。

 

「ええ…お2人と是非話したかったんですよ。現帝国陸軍所属で、帝国華撃団総司令の米田一基中将と、帝国華撃団副司令の藤枝あやめ中尉」

 

「「!!?」」

 

俺が発した言葉に、2人の顔は驚いていた。

 

米田「…何で俺とあやめ君が、その帝国華撃団の総司令と副司令と思ったんだ?」

 

「そんなの…あ~面倒だ。言葉遣い戻すぞ。言っちゃ悪いが、あんたら軍のデータなんて、簡単に調べる事が出来るんだよ」

 

あやめ「貴方…軍のデータを盗んだのね!」

 

「ま、盗んだとしても証拠なんて一切残してないけどな。んで、調べたらこの建物の地下に随分と面白い物があるみたいだな。確か、光武って名前だったか?」

 

米田「光武の事まで調べやがったか」

 

おっさんは呆れた表情をしながら呟いてる。

 

「それに、この劇場に出資してる連中も割れてるぞ。特に多く出資してるのが、貴族院議員の綾小路頼恒と神崎重工の神崎忠義だ」

 

あやめ「そんな事まで調べたなんて…」

 

藤枝の奴は動揺が隠せないみたいだな。

 

米田「…おめぇ、それほどの情報を何処で調べたんだ?」

 

「ん?ああ、“サイの花屋”だよ」

 

米田「なに!?サイの花屋だと!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、おっさんは驚いた。

 

あやめ「支配人、サイの花屋というのは一体?」

 

米田「サイの花屋…この帝都一の情報屋だ。その正確さ、早さは軍をも凌ぐと言われている。その分、かなりの金額で取り引きされるらしい」

 

あやめ「……」

 

米田「おめぇ、それほどの大金を払ってまで、俺達の事を調べたのか?」

 

「いや、金は一銭も払ってないぞ」

 

「「……えっ?」」

 

俺の言葉に、おっさんと藤枝の目が点になっていた。

 

米田「ど、どういうことだ!?サイの花屋はタダで情報は売らないと聞いたが」

 

「いや、売らないもなにも…サイの花屋って俺の事だし」

 

「「……はああああああああああっ!!!!!!?」」

 

今度は2人して、バカデカイ声で叫ぶ。

 

「うるさ」

 

米田「ちょっと待て!お前がサイの花屋だと!?」

 

「ああ。自分で調べるんだから、金なんか必要ないからな」

 

米田「おいおい…」

 

おっさんは等々頭を抱えた。

 

米田「…だが、お前がサイの花屋だったんなら、これだけの情報を手に入れれてもおかしくはねぇわな」

 

おっさんは、俺が持ってきた資料を見ながら言う。

 

米田「んで、こんな事を調べて俺達に教えるためだけに、わざわざ正体を明かした訳じゃねぇんだろ?」

 

流石おっさん。俺がただ単に情報を教えただけと思ってない。

 

「ああ。色々と調べたが、さくらやマリア達はあの光武ってのに乗って、街とかに出てる鎧を着た物と戦ってんだろ?」

 

米田「そうだ」

 

「そこでだ。俺が持ってる技術とかで、おっさん達を手助けしてやりたいと思ったんだよ」

 

米田「なんでそんな事を思った。お前さんになんの得があるってんだ?」

 

「得か…」

 

ま、なんだかんだでおっさん達との付き合いも長いしな。

 

「ま、強いて言うならウチの常連の連中に何かあったら、ウチの店は大打撃だからな」

 

「「……」」

 

俺がそう言うと、おっさんと藤枝の顔はキョトンとしていた。

 

米田「フフフ…ハハハハッ!確かに、お前にとっては大打撃だわな」

 

あやめ「フフッ、そうですね」

 

「……」

 

米田「けど、帝都一の情報屋が味方になるってんなら、これ程ありがたい事はねぇ。これからよろしく頼む」

 

「ああ」

 

俺とおっさんは、ガッチリと握手をするのであった。

 

「さて、言うことも言ったし俺はそろそろ帰らせてもらう」

 

米田「なんでぇ、もう帰るのか?」

 

「ああ。俺は元々さくらの奴を送る序に、藤枝に呼ばれただけだしな。だから話もついでにとおもってな」

 

あやめ「私の事はあやめで結構よ」

 

「そうかよ」

 

そして俺は劇場を後にした。帰った後はいつも通りに店を開店した。それから数日後、おっさんから電話があり、明日さくらが劇場で初舞台だそうだ。で、俺にも見に来ないかとチケットを送って来た。ま、折角の初舞台だし、見に行く序に差し入れでも持っていくとするか。

 

「そうと決まれば、何を作るかな…」

 

冷蔵庫の中を開けると、いくつかの果物と昨日店で使った春巻きの皮が残っていた。今日は舞台を見に行くので仕入れは明日の朝になっている。なので冷蔵庫の中は碌な物が残っていなかった。だが…

 

「果物が結構あるから、あれを作ってみるか」

 

メニューが決まった俺は、早速作る。テキパキと料理を作る。流石に小松やサンジの料理技術等あればやっぱ楽だな。

 

「さて、最後の仕上げは向こうでさせてもらうか。やっぱ出来立てが美味いしな」

 

仕上げを残した料理を詰めて、劇場に向かう。おっさんは来たら顔を出してくれって言ってたし、来賓客用の入り口から入ってくれって言われたな。そんな事を考えながら劇場に到着すると、既に入り口は開門前なのに人で溢れかえっていた。

 

「へ~、やっぱ人気なんだな」

 

その光景を見ながら、俺は来賓客用の入り口から入った。

 

「あら、いらっしゃい森川さん」

 

「こんにちは榊原さん」

 

榊原「もう森川さん、由里でいいっていつも言ってるじゃないですか」

 

「ええ、中々慣れないもので」

 

由里「もう」

 

「米田支配人はいますか?」

 

由里「ええ、支配人室でお待ちですので」

 

「じゃあお邪魔しますね」

 

そして俺は支配人室に向かった。ノックすると中からおっさんの声が聞こえたので中に入る。

 

米田「おう来たか」

 

「来たかじゃね~よ。まさかさくらが女優としてデビューするなんて流石に驚いたぞ」

 

米田「以前言ったじゃね~か。本来は帝都を護る為だが、それ以外はウチで女優をするって」

 

そう言われ、俺は言われた時の事を思い出す。

 

「…あ~確かに言ってたな」

 

確かにあの時そんな事言ってたな。あの後色々あって忘れてったわ。

 

米田「で、今日がさくらの初公演って訳だ」

 

「今頃あたふたして、めっちゃ緊張してる姿が思い浮かぶな」

 

米田「まぁな」

 

苦笑いしながらその姿を思い浮かべる俺とおっさん。

 

「っとそうだ」

 

俺は持ってきた差し入れを思い出す。

 

「おっさん、開演まで時間あるか?」

 

米田「ああ。まだ開演まで時間はあるが」

 

「なら悪いが厨房貸してくれないか?差し入れ持って来たんだよ」

 

俺は持ってきた差し入れが入ったバックを見せる。

 

米田「そりゃありがたい。あいつらも喜ぶだろうよ」

 

「今回は、女子に嬉しい差し入れだしな。悪いけど、皆をどこかに呼んでほしいんだが」

 

米田「なら控室でいいだろ。そこでよく打ち上げとかするしな」

 

「なら後程」

 

俺は厨房に行き、差し入れの料理を仕上げる。

 

「揚げ終わったし、控室に行くか」

 

出来た料理をもって、皆が待っている控室に到着した。

 

「すいません、どなたか扉を開けてもらってもいいですか?手が塞がっていまして」

 

『分かりました!』

 

中から聞こえた声はさくらの声だった。扉を開けてもらい中に入ると、既に皆が集まってた。

 

「お待たせいたしました」

 

アイリス「わ~い!大輔お兄ちゃんだ!!」

 

「こんにちはアイリス」

 

俺は足元にやって来たアイリスに挨拶する。持ってきた料理は置かれてたテーブルに置く。

 

「これは私の差し入れです。女性が多いですし、もうすぐ舞台が始まるので軽めの物にしたんですが」

 

中を開けると、先程揚げたばかりの料理がある。

 

マリア「これは?」

 

すみれ「舞台前に、こんな油ぎってる料理を持ってきたのですか?」

 

「これは見た目は春巻きですが、こう砂糖を軽くまぶして切ると…」

 

切られた春巻きの中から、果物の甘い香りが広がる。

 

さくら「うわ~美味しそうですね」

 

「名付けてフルーツ春巻きです。あっさり甘口なので、おやつやお夜食なんかにピッタリなんですよ」

 

アイリス「いただきま~す!」

 

いち早くアイリスが食べる。さて、どうかな?

 

アイリス「美味しい~!お兄ちゃん、これ凄く美味しいよ」

 

「口に合ってよかったです」

 

さくら「ホント!物凄く美味しいですよすみれさん、マリアさん」

 

さくらにそう言われ、マリアや神崎も食べる。

 

マリア「あら、本当ね」

 

すみれ「しつこい味と思いましたが、随分とサッパリしていますのね」

 

「ええ、流石に講演前ですし差し入れならこういったのがいいと思いまして」

 

あやめ「でもこれ、本当に美味しいわね」

 

あやめの奴もそう言う。ま、喜んでもらえてなによりだ。

 

米田「確かに美味いけど…俺にはちょっとな」

 

「まぁ、男性はそう言うかもしれませんけどね。あやめさん、これ同じのなので由里さんや他の方達にも」

 

あやめ「ありがとう。あの子達も喜ぶわ」

 

残りを受け取り、あやめは控室を出て行った。俺もそろそろ行くか。

 

「では皆さん、講演楽しみにしてますので」

 

米田「頑張れよさくら。今日はお前さんの初舞台なんだからよ」

 

さくら「は、はい!頑張ります!!」

 

あ~…こりゃ駄目だ。おっさんの言葉で緊張しちまってる。仕方ない、少し緊張をほぐしてやるか。

 

「さくらさん、初めての講演で緊張するのは分かります。なので緊張するなとは言いません。ですが、女優として初めて上がる舞台です。そんな機会は今後二度とないでしょう。ですので自分が後悔しないようにしてください。大丈夫です。今まで練習もなさってるんです。必ず上手く行きますよ」

 

俺はさくらの頭を撫でながらそう言う。

 

さくら「森川さん…私、頑張ります!」

 

「ええ、頑張ってください」

 

どうやら緊張はほぐれたようだな。控え室を出て、俺は米田のおっさんと一緒に、さくらの初舞台を見守った。その劇は無事に終わったのであった。

 

(ま、頑張ったんじゃないか?)

 

拍手が起こる中、俺もさくらを見ながら拍手を送った。



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第六話

さくらの初公演も無事に終わり、ここ最近は平和な日々を過ごしている。ま、それも昨日までだけどな。

 

「しかし、昨日の闘い方は流石に…」

 

俺は昨日、帝国華撃団の闘いを見ていた。何故見ていたか…米田のおっさんに言われたんだよ。折角華撃団の事を教えたんだし、あいつらの闘い方を見てくれないかとな。確かに戦闘に関しちゃ色々と分かるが、その事はおっさん達は知らない。最も向こうは素人なりに何か意見が合ったら言ってくれって感じだったしな。しかし…

 

「あのピンクの光武は駄目だろ。帝都を護る側が器物破壊したらな」

 

そう、今回戦っていた光武は黒、紫、黄色だったのだがその後にピンクの光武が現れた。で、敵を倒したまでは良かったんだけど…その後ピンク光武が派手に動き街灯や建物を壊していた。更に俺はおっさんと一緒にその現場を見ていたのだ。

 

「んで今朝の新聞か」

 

今日の朝刊には、昨日の事が載っており、大きくこう書かれていた。【佃島相生橋大崩壊!】と。

 

「こりゃあ米田のおっさん、今頃頭抱えてるだろうな」

 

おっさんは、大帝国劇場の支配人であり帝国華撃団司令だ。確か今日は劇場が休みって言ってたから、おそらく上の連中に何か言われてんだろな。

 

「このパターンの連中は、大概碌でもない連中だろうな」

 

グラスを拭きながらそんな事を言う俺であった。すると店の扉が開いた。

 

「あの…こんにちは」

 

やって来たのはさくらだった。

 

「こんにちはさくらさん。珍しいですね、この時間に来られるのは」

 

さくら「はい!今日は皆さんお休みを頂いたので」

 

「休日ですか。いいですね」

 

ま、まだ帝都に来てそんなに経ってないしな。色々と見て回りたいんだろうよ。

 

「折角来たんですし、何か飲みますか?」

 

さくら「そうですね」

 

そう言いさくらはカウンターに座る。俺は以前さくらに出した日本茶を出す。

 

「どうぞ」

 

さくら「ありがとうございます」

 

日本茶をすすり、美味しそうに飲む。さて、お茶請けに何かあったかな?食材を見ると昨日使った小豆等があった。そういえば、昨日餅作ったもち米がまだ残ってたな。

 

「ふむ。さくらさん、時間は大丈夫ですか?」

 

さくら「はい。大丈夫ですけど」

 

「なら少し待ってて下さい」

 

早速俺は調理に取りかかる。もち米に小豆とくれば作るのはあれしかない。そして料理が完成しさくらに出す。

 

「はいどうぞ。余ったもち米と小豆でおはぎを作ってみました」

 

さくら「うわ~美味しそうですね」

 

そしてさくらは一口食べる。マズくはないと思うけど…

 

「どうですか?」

 

さくら「とっても美味しいです!こんなに美味しいおはぎ初めて食べました!!」

 

「そう言って頂いて作った甲斐があります」

 

美味しそうに再びおはぎを食べるさくら。店に来た時、少し悩んでる表情をしてたが、それもないし一安心だな。女は笑ってる方がいいんだよ。

 

さくら「ご馳走様でした」

 

あっという間におはぎを完食した。すげ~な。五つ作ったけど全部食いやがった。

 

「お粗末様でした。綺麗に食べて頂いて嬉しいです」

 

さくら「本当に美味しくて、私あっという間に全部食べちゃいました」

 

「ならよかった」

 

俺は空いた皿を洗う。さくらの方はお茶を飲み一息ついていた。

 

「色々あってお疲れじゃないですか?確か米田さんに聞きましたが、もう次回公演が決まったんでしょう?」

 

さくら「はいそうなんです。森川さんもう知ってるんですね」

 

「いえ、劇の内容までは知りませんよ。この間米田さんがそう言ってましたので、そろそろじゃないかと」

 

さくら「そうですか」

 

そこで話は終わり、暫くお互い何も話さずのんびりする。

 

さくら「私そろそろ帰りますね」

 

「そうですか。すみません何もお構いできなくて」

 

さくら「いえ、森川さんと楽しい時間を過ごせました。おはぎ美味しかったです」

 

そう言い残してさくらは帰っていった。さて、そろそろ俺も店の準備をするか。夜はいつも通りにチラホラと常連客が来、閉店時間を向かえた。

 

「ふぅ」

 

一服してると、電話がかかって来た。誰だこんな時間に?

 

「もしもし」

 

『森川か?米田だ』

 

「こんな時間におっさんから電話とは珍しいな。何かあったのか?」

 

米田『実はよ、今度花組に新しい隊長を入隊させるんだよ』

 

新しい隊長?確か今花組の隊長ってマリアだったよな?

 

「随分と急だな。現隊長はどうするんだよ」

 

米田『マリアには、副隊長になってもらうつもりだ。それに、今回の隊長は男なんだよ。だから、表の方はマリアが隊長だ。その方が、少しでもあいつの負担が減るだろうよ』

 

「確かにそうかもしれないけどよ。しかし思い切ったことするなあんたも。帝国華撃団は女だけだろ?その中に男の隊長とはな」

 

おっさんの思い切ったことに俺は脱帽だぜ。

 

米田『ああ。花組に新しい風を入れるには丁度いいと思ってな』

 

「どうせおっさんの事だ。上の連中になんか言われる前に対策したかったのもあんだろ?」

 

米田『へっ!おめぇさんには敵わねぇぜ』

 

思った通りだったか。

 

「で、そいつはどんな奴なんだ?」

 

米田『名前は大神一郎。士官学院を卒業したばかりの海軍少尉だ』

 

「卒業したばかりって、流石に無理ないか?」

 

いくらなんでも、士官学院を卒業したばかりの奴をあんな個性の強い連中の隊長は…

 

米田『お前さんが言いたい事も分かるぜ。けどな、あいつらにはいい刺激になると思うんだよ。俺の勘がそう言ってるんだ』

 

「結局はおっさんの勘かよ!!」

 

呆れた。ま、おっさんの勘はこういう時は馬鹿にできないからな。

 

米田『こっちに来て落ち着いたら、お前さんにも紹介するぜ』

 

「了解だ」

 

そして電話を切った。しかし、花組に新しい隊長か。ついこの間さくらの奴が来たばかりなのによ。

 

「ま、考えてもしょうがない。暇な時そいつの事を調べてみるか」

 

そう決めた俺は、風呂に入って眠るのであった。



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第七話

あれから時が経ち、帝国華撃団花組に新しい隊長が着任したそうだ。初めての男の隊員だが、果たして上手くいくのやら。俺は今、店の片づけをしている。残ってる客は、米田のおっさんだけだ。既に店の看板はしてあるので客が入ってくることはない。

 

「で、どうなんだ?新しい隊長ってのは」

 

米田「ああ、来て早々文句を言ってきたぜ。随分と血の気の多い奴だよ」

 

「とか言いながら、随分とうれしそうな顔してるな?」

 

米田「まぁな」

 

そう言いながら酒を飲むおっさん。

 

米田「森川よぅ…花組の隊長の条件って分かるか?」

 

「隊長の条件だと?普通の奴より状況判断なんかが優れてるとかか?」

 

米田「いや違う」

 

「じゃあなんだよ」

 

一呼吸おいておっさんは話し出す。

 

米田「華撃団の花組隊長は、ただの軍人にはできない。いや、させてはいけないんだよ。人の命を…勝利の為に犠牲にするような戦いを繰り返しちゃいけねぇんだ」

 

「……」

 

米田「花組の隊長を務める奴は、花組を…あの劇場を…あの暮らしを愛してくれる奴でなきゃいけねぇ」

 

「なるほど。あの大神って男にはその可能性があるって訳か」

 

米田「そうだ。本当はお前さんもその条件に当てはまるんだがな」

 

いきなりとんでもない事を言うな…

 

「条件が当てはまったところで、俺は光武には乗れないから意味ないだろ」

 

米田「確かにお前は光武には乗れない。だが、それ以外は今の大神より上回っている」

 

「上回っているって、そりゃ入っていたばかりの奴と比べるのがおかしいだろ」

 

米田「確かにそうだが、俺はこのまま大神が成長してもその部分に関しちゃお前さんを越えれないと思ってる」

 

「買い被りすぎだおっさん。俺はそこまでできた人間じゃないさ」

 

そう言いながら俺は、おっさんに新しい酒を出す。俺も一通り片づけが終わったから一緒に飲むか。

 

「おっさん、俺も貰うぞ」

 

米田「ああ」

 

おっさんから酒を注がれる。

 

「けど、まだ新しい隊長にはあっちの華撃団は教えてないんだろ?」

 

米田「そうだ。脇侍が現れるまでは教えないつもりだ」

 

「そうかよ」

 

今の帝都じゃ平和な日は悪いが長く続かいないからな。

 

「ま、俺も明日は店休みだし、その隊長の顔を見に劇場に行ってみるか」

 

米田「そうだな。お前の事を大神にも紹介したしな。勿論、ここの店のマスターとしてだぜ」

 

「分かってるよ」

 

そして今夜はお開きになった。翌日、俺は昼頃に劇場にやって来た。今日は舞台も休みって聞いたから外には誰もいないな。

 

「こんにちは」

 

「森川さん、いらっしゃいませ」

 

「どうもかすみさん」

 

彼女は藤井かすみ、俺と同い年の女だ。最も、同い年の奴にも表では敬語で話さなきゃなんないのが面倒だがな。

 

「皆さんはどちらに?」

 

かすみ「花組の皆さんは舞台の方で稽古中です」

 

「もしかして、新しい方も?」

 

かすみ「はい。大神さんもおられますが?」

 

「この前、米田さんに新しく入った方がいたとお聞きしたのでご挨拶をと思いまして」

 

かすみ「そうですか。でしたら、舞台の方へどうぞ」

 

「では失礼します」

 

俺は挨拶して、舞台裏の方に向かった。舞台袖に到着すると、何やら騒ぎ声が聞こえた。

 

「ん?誰と誰が言い合ってんだ?」

 

覗くと、さくらとすみれが言い合っており、お互い平手で叩こうとしている。

 

「あの馬鹿どもが!!」

 

俺は急いで2人の間に割って入る。

 

「2人ともそこまでです」

 

舞台にいた男が止める前に俺は2人の手首を掴む。

 

すみれ「貴方は」

 

さくら「森川さん」

 

「2人とも落ち着いて下さい。あのままでしたら、お互い顔に怪我をしていましたよ?女優は顔も命なんでしょう?」

 

すみれ「それは…」

 

さくら「すみません」

 

2人は俺にそう言われ反省していた。反省したならいいだろう。俺は2人の頭を優しく撫でる。

 

「分かって頂ければいいです。喧嘩の内容は分かりませんが、お互い稽古に熱くなり互いの感情が上手く制御できなかったんでしょう」

 

「「……」」

 

「喧嘩をするなとは言いません。人間誰でも我慢できないことがあります。ですが、手を出してしまい万が一大怪我などさせてしまったら、一生後悔する事になりますよ。例えそれが、自分の意志でないにしてもです」

 

「彼の言う通りだよ」

 

すると、隣に突っ立ってた男が話し出す。

 

「俺は舞台の事はよく分からないし、稽古に口出しするつもりもない。けど…劇団だってチームワークが大事なんだろ?喧嘩は…やめようよ」

 

「そうですよ皆さん」

 

すみれ「…そうですわね」

 

アイリス「お兄ちゃん」

 

マリア「……」

 

さくら「すみませんでした。森川さん、大神さん」

 

ほう、こいつが新しい隊長の大神一郎か。確かに米田のおっさんの言う通り、芯はしっかりしてるな。

 

大神「分かってくれればいいんだよ。じゃ、俺はこれで」

 

そして大神は舞台から出て行った。

 

「……」

 

さくら「すみません森川さん、ご迷惑をおかけして」

 

「いえ、気にしないで下さい」

 

マリア「ところで、何故森川さんがこちらに?」

 

「ええ、米田さんに新しい方が入られたとお聞きして、折角なのでご挨拶をと思ったんですけど」

 

マリア「そうだったのですか」

 

俺がここに来た理由を言いて納得したみたいだな。すると、劇場に警報音が響き渡る。

 

「なんだ?」

 

マリア「森川さんはここにいて下さい!行くわよ皆!!」

 

そして俺を残して全員行ってしまった。なるほど、敵が出た時はこうなる訳か。

 

「しかし、どうすっかな。このまま街に出てもおそらく出れないだろうしな…」

 

んな事を考えてると、売店の売り子である高村椿がやって来た。

 

椿「森川さん、ここにいたんですか!」

 

いつもの売店の服ではなく、軍服ではないが制服を着てる。

 

「椿さん、その服は?」

 

椿「それは後で説明します!私と一緒に着いてきてください!!」

 

俺は椿に無理矢理引っ張られる。そのまま劇場の地下に案内された。

 

椿「司令、森川さんをお連れしました!」

 

米田「ご苦労。すぐに配置についてくれ」

 

俺を案内し終わると、さっさと前にある機械に座った。

 

「で、何で俺を連れてきたんだおっさん」

 

おっさんにしか聞こえない声で話す。

 

米田「どうせ今は外も避難勧告で出れないだろ。それに、いつかはお前にここを見せるつもりだったしな。それが早まって今回になっただけだ」

 

ホントおっさんいい性格してるな。

 

「で、状況は?」

 

米田「今回は大神の初実戦だ。幸い脇侍の数も少ないし、一先ずあいつに任せるつもりだ」

 

「確かに、ここで色々と指示出しても、最終的には現場の判断が一番だしな。今回は誰が出てるんだ?」

 

米田「白は大神、黒はマリア、紫はすみれ、ピンクがさくらだ」

 

それを聞いて、俺は頭を抱えた。

 

「つまり、以前暴走したピンクの操縦者はさくらだったって訳か」

 

米田「まぁ…な」

 

おっさんも流石に苦笑いするか。

 

「流石にアイリスは出撃させてないんだな」

 

米田「ああ。まだアイリスの機体の調整が済んでなくてな」

 

つまり、今は出撃しないが機体の調整が済み次第、アイリスも出撃するって訳か。

 

「損な役割だな…おっさん」

 

米田「ああ」

 

そう呟くおっさんを横目に、正面にある巨大なモニターで戦況を見守る。マリアとすみれは勝手に行動し、唯一大神の指示に従ってるさくらも、大神との連携はちぐはぐしてた。ま、今回は数が少ないから勝つには勝ったけどよ。

 

「何か微妙な勝利だな」

 

米田「まぁな。ま、今日は光武をまともに動かせるかに重点を置いてたからな」

 

結果オーライって訳ね。

 

米田「森川、この後皆で花見に行くがお前も行くか?」

 

「俺が邪魔していいのか?」

 

米田「構わねぇよ。あいつらも、お前が来ると喜ぶしな。特にさくらとマリアがな」

 

何で二人の名前を出したかは知らんが、折角呼ばれたし今年はまだ花見してないし丁度いいか。

 

「ならお呼ばれされるかな。一応此方でも何か差し入れいてやるよ」

 

米田「そいつはありがてぇ。なら、誰かを迎えに寄越すからそいつと来ればいい」

 

「了解。なら一度店に戻るわ」

 

そして俺は店に戻っていったのだ。



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第八話

俺は店に戻ると、早速料理に取り掛かる。

 

「さて、花見だし本格的な料理は向こうが作るだろう。なら、軽いものでいいか」

 

となればあれを作るか。料理が決まりテキパキと作る。暫くすると店に誰かがやって来た。

 

さくら「こんばんは」

 

「こんばんはさくらさん、それにマリアさんも」

 

やって来たのはさくらとマリアだ。態々迎えに二人も寄越さなくていいのによ。

 

マリア「米田支配人に言われて、お迎えに来ました」

 

「わざわざすみません。劇場の女優お二人に迎えに越させてしまって」

 

さくら「いえ、気にしないでください」

 

「では行きましょうか」

 

出来た料理を袋に詰めて、待ち合わせ場所に向かう。

 

「いい天気ですね。あまり寒くもなくいいお花見日よりですね」

 

マリア「そうですね」

 

さくら「ところで森川さん、それって何ですか?」

 

さくらは、俺が持ってきた袋の中身が気になるようだな。だが、悪いが教えない。

 

「これですか?皆さんに差し入れですよ」

 

さくら「そうなんですか!うわ~なんだろ~」

 

「それは向こうに行ってからのお楽しみです♪」

 

3人で目的地に向かってると。正面からガラの悪そうな3人組がやって来た。

 

「おいおい、冴えない野郎が劇場の女優二人と歩いてるぜ♪」

 

「へへへ」

 

「なぁなぁ姉ちゃん達、そんな野郎より俺達とどっか行こうぜ♪」

 

そう言いながら一人の男がさくらの手を掴む。

 

さくら「は、離してください!」

 

「いいじゃねぇか」

 

マリア「あなた達!止めなさい!!」

 

マリアが止めに入るが、流石に男二人に手を掴まれては抵抗できないな。やれやれ…

 

「止めてください。彼女達が困ってます」

 

「うるせぇな、てめぇは引っ込んでやがれ!!」

 

さくらを掴んでた男が俺を殴る。

 

さくら「森川さん!!」

 

「へっ!お前は黙ってそこで寝てろ」

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ

 

 

 

 

 

 

 

あったまきた!!人が下手に出てりゃいい気になりやがって!!俺は素早くさくらを掴んでる男を殴る。

 

「ぐえっ!!」

 

さくら「……」

 

「こ、この野郎!」

 

俺は直ぐ様マリアを掴んでた二人も殴る。そしてそのまま俺の背後に二人をやる。

 

「こいつ…」

 

「すみませんさくらさん、マリアさん。これを持って米田さんの所へ行ってください」

 

マリア「で、ですが」

 

「正直言って、お二人を護る自信がありません」

 

ま、本当はあやめの時みたいに性格がバレるのが面倒なんだがな。

 

さくら「で、でも!森川さんを置いては行けません!」

 

「お二人は女優です。皆さんに元気を届けるのが仕事です!」

 

「「……」」

 

「さぁ早く!」

 

マリア「分かりました」

 

さくら「すぐに米田さんと大神さんを呼んできます!」

 

そして二人は走っていった。さて、これでやり易くなったな♪

 

「お~お~格好いいね。二人を守る武士か?」

 

「さぁどうだろな?」

 

俺は眼鏡を外し、上着のポケットに入れる。さて…殺るか。

 

「さっきはよくも殴ってくれたな?ん?」

 

拳をボキボキと鳴らしながらゆっくりと3人に近付く。

 

「な、なんだよ…やるってのか!」

 

んなビビりながら言われても迫力ねぇぞ?

 

「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?俺はまだ寝てないぞ?寝かしてくれんだろ?」

 

「あ、あわわわわ」

 

「あ、兄貴~!」

 

既に後ろの二人はかなりビビってるな。けど、マリアとさくらに手を出したんだ。満足に帰れると思うなよ♪

 

 

 

 

 

さくらside

 

私は今、マリアさんと急いで米田支配人達の元に向かっている。こうしてる間も、森川さんが大変なことになっているからだ。

 

さくら「急ぎましょうマリアさん」

 

マリア「そうね!もう支配人達は待ってるはずよ!」

 

お花見をする上野公園に到着した私達は、急いで米田支配人達を探す。皆さんはすぐに見つかり、私達に気が付いた大神さんが話しかけてきた。

 

大神「やぁさくらくん、マリア。どうしたんだい?そんなに慌てて」

 

米田「さくらにマリア、森川の奴はどうした?」

 

さくら「そ、それが大変なんです!」

 

私は大きな声でそう言う。

 

大神「さ、さくらくん!?少し落ち着いて」

 

マリア「そうよさくら」

 

さくら「で、でも!」

 

マリア「いいわ、私が話すわ。つい先程、さくらと私と森川さんでここに向かってたんですが、その途中で男性3人に絡まれてしまって」

 

さくら「森川さんが私とマリアさんを守るようにしながら、逃がしてくれたんです!」

 

米田「な、なんだと!?」

 

その事を聞いて、支配人とは驚いていた。勿論、大神さんや他の人達もだ。

 

米田「なら、あいつはまだそこにいるってのか!?」

 

さくら「はい…」

 

米田「大神、今からそこに行ってくれ」

 

大神「はい!さくらくん、マリア、悪いけど案内を頼む!」

 

「「はい/了解!」」

 

そして私達は、森川さんと別れた場所に戻っていった。森川さん…無事でいてください!

 

 

 

 

 

 

 

森川side

 

「ったく、弱いならあんまり調子にのるなよな」

 

手をパンパンと叩きながら俺はそう呟く。結局あの後、俺は3人に路地裏に連れてかれたが、そこからは俺の独壇場だ。人に見られなきゃボコボコだ。で、その三人は今俺の足下で仲良くお寝んね中。言い方を変えればのびてる。

 

「ん~…流石にやり過ぎたか?」

 

まだこの世界で使ってない技を軽く使っただけなんだがな…

 

「ま、別にいいか」

 

さてと、差し入れはさくらに渡したけど…花見に場所聞いてないしな。どうすっかな~

 

「…帰るか」

 

場所も分かんなきゃ行きようがないしな。もう帰って酒でも飲んで寝るか。と思い路地から出ると、向こうからさくらとマリア、そして大神が走ってきた。

 

さくら「森川さん!!」

 

そのまま勢いよく俺に抱き付くさくら。っていうか、心配させたのは悪いが、もう少しスピード緩めてくれ。地味に痛いんだよ!

 

さくら「無事だったんですね!よかった~!」

 

「すみませんさくらさん、マリアさん、心配をかけまして。大神さんもありがとうございます。わざわざ来ていただいて」

 

大神「いえ、さくらくんとマリアから話を聞いたので」

 

マリア「……」

 

するとマリアは、俺が出てきた路地裏を見詰めていた。

 

(まずい!まだあそこにはあいつらが寝てる…)

 

さくら「森川さんも無事でしたし、戻りましょう!」

 

大神「そうだね。米田支配人達も心配してるだろうし」

 

「そ、そうですね。それじゃあ行きましょうかマリアさん」

 

俺は未だに路地裏を見てるマリアに声をかけた。まさか…見えたか?

 

マリア「…そうね。行きましょうか」

 

俺の言葉に反応した。なら見えてないしバレてもないだろ。そしてその場から離れ、俺達は花見が行われる上野公園に向かった。

 

マリア「……」

 

到着すると、俺の姿を見て待ってた連中が話しかけてきた。

 

アイリス「森川お兄ちゃん、大丈夫だった?」

 

「ええ、大丈夫ですよアイリス。心配かけてしまってすみませんね」

 

俺はそう言いながらアイリスを抱っこする。

 

米田「ったく、さくら達から話を聞いたときは流石にビビったぜ」

 

「ご迷惑をお掛けしました」

 

米田「気にするな。それに、本当は此方が礼を言わなきゃならないんだしよ」

 

さくら「そうですよ。森川さんがいなかったら、今頃私やマリアさんはどうなっていたか。ね、マリアさん」

 

マリア「……」

 

さくらの呼びかけに反応しない。これは確実にバレたな、あの連中を俺が寝かしたのを。

 

さくら「マリアさん?」

 

マリア「あ、ごめんなさいさくら」

 

さくら「どうしたんですか?さっきからボーッとしてますけど」

 

マリア「何でもないわ、大丈夫よ」

 

さくら「ならいいですけど」

 

「さて、それじゃあそろそろお花見を始めましょうか」

 

俺の言葉に待ってましたと喜ぶ連中。おっさんは早速持ってきた日本酒を飲み、大神はそれに付き合っている。アイリスやさくら達は、自分達が作った料理と俺が差し入れた料理を食べている。

 

アイリス「美味しい!!」

 

さくら「ホント、美味しいねアイリス」

 

由里「これって、森川さんの差し入れですよね?」

 

「ええ、お花見にピッタリの中華ちまきです」

 

酒を飲んでたおっさんや大神も食べる。

 

米田「こいつはうめぇ。酒のつまみにもピッタリだぜ」

 

大神「本当に美味しいですね。森川さんは料理人なんですか?」

 

そういえば、まだきちんと俺の事紹介してなかったな。劇場に行った時は色々バタバタしてたし。

 

米田「こいつはな大神、ウチの劇場の近所にある【オアシス】って店の料理人だ。俺は勿論、マリアやさくら、アイリス達もよく行く店だ」

 

大神「そうだったんですか。道理でどの料理も美味しい訳ですね」

 

「ありがとうございます。今度大神さんも是非ご来店ください」

 

大神「はい!」

 

お互い笑顔でそう答えた。

 

かすみ「森川さん、これってどうやって作るんですか?」

 

かすみの奴が、ちまきの作り方を聞いてくる。

 

「そうですね…説明しても難しいと思いますので、もしよろしければ今度お教えしますよ?」

 

かすみ「是非お願いします!!」

 

由里「私もいいですか!」

 

さくら「あの!私も!!」

 

次々と手が上がる。おいおい、これ以上増えたら料理教室になるぞ。ま、それもいいか。

 

「いいですよ。時間に都合がつけばですけれど」

 

由里「そんなのいつでも都合が付きますよ♪」

 

椿「由里さん、流石にそれは…」

 

椿の言う通りだぞ。お前らは劇場の業務もあり、尚且つ華撃団としての活動があるんだ。簡単に時間はできないだろうな。

 

「いつでも構いませんよ」

 

由里「かすみさ~ん!どうにか出来ませんか~」

 

かすみ「そうね~…支配人に相談したら?」

 

そう言われた由里は、おっさんを見る。さくらや他の連中もだ。

 

米田「な、なんだよおめ~ら」

 

「まぁまぁ皆さん。今日は折角のお花見なんですし、この話は後日にして今は楽しみましょう」

 

『賛成~!!』

 

何とか話はそらせたか。ま、帰ってからおっさんは大変だろうけどな。



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第九話

ここ最近、帝都は平和な時間が流れている。しかし、客足はさっぱりだ。何故かって?夕方から雨が降り始め、それが次第に激しくなり雷まで鳴っている。

 

「こんな天気じゃ客は来ないな。…閉めるか」

 

今日はもう閉店だな。表に出て看板を裏返す。すると、こんな天気の中1台の蒸気自動車が走っていった。で、乗ってた人物を見て驚いた。

 

「今のは、米田のおっさんとあやめの奴だよな?こんな天気に何処行くんだ?しかも軍服で」

 

しかもえらい神妙な顔してたな。

 

「…後追ってみるか」

 

俺は店を閉めると、雨の中おっさん達を追いかけた。屋根伝いに。後を追いかけると、車はとある建物の前に止まり中からおっさんとあやめが中に入っていった。運転してたかすみの奴は帰っていった。

 

「こんな建物に何の用なんだ?」

 

建物から少し離れた場所から見る。雨は相変わらず降ってるけどな。

 

「どうやって中に入るか」

 

そんな事を考えてると、1人の学者らしき男が慌ててやって来た。

 

「……」

 

そいつを見て俺はある事をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

米田side

 

俺は今、動かなくなった脇侍を見ている。今からこいつを解体して少しでも何かつかめればいいがな。

 

「す、すみません!遅れました!!」

 

すると、一人の男が慌てて入って来やがった。

 

「何してるんですか!貴方がいなければ指示を出せないんですよ!!」

 

「悪い悪い。じゃ、これより脇侍の解体を始める!」

 

「各部署、計画通りの行動を正確に行うよう」

 

いよいよ脇侍の解体が始まりやがった。防護服を着た男が脇侍にナイフを入れる。周りは夢組もいる。解体は順調に行われていた。しかし、いきなり脇侍から人間の腕が出て来やがった。

 

あやめ「これは!?」

 

米田「夢組!塞げ!!」

 

俺の指示に夢組は素早く行動した。しかし、次々と気絶させられていきやがる。そして脇侍から女が現れやがった!

 

「んふふ。ここがきゃつらの基地かえ?来たれ、闇よ」

 

すると、地面から脇侍が次々と現れやがった。くそっ!どうする…そんな事を考えている間に、脇侍に施設は破壊されてく。

 

あやめ「司令!」

 

米田「俺達も避難するぞ!!」

 

俺とあやめ君も避難する。しかし、逃げる途中で右足を切ってしまった。

 

米田「ぐっ!?」

 

あやめ「司令!!」

 

すぐにあやめ君が俺を抱えてくれた。しかし、こんな状態じゃ逃げれねぇ。

 

米田「あやめ君、ひとまず監視室に避難するぞ!」

 

あやめ「はい!」

 

そして俺達はそこに避難して、暫く敵の様子を見守る事にした。

 

 

 

 

森川side

 

やれやれ、興味本位で潜入した結果がこれかよ。まさか、こんな場所で脇侍の解体をしてたとはな。で、そこから敵が出て来て施設は半壊状態。おまけに逃げる連中の波にのまれおっさん達を見失った。

 

「何処に行ったんだ?おそらく、まだ逃げてないはずだし…」

 

すると、おっさんを担いでるあやめを発見した。確かあの場所は監視室だったな。

 

「とにかく俺もおっさん達と合流するか」

 

俺も急いで監視室に入っていく。中ではおっさんがあやめに右足に包帯を巻かれていた。

 

あやめ「どうやら、帝国華撃団の本部と思って現れたようですね」

 

米田「…もういい、あやめ君!君1人なら、何とか逃げ出せる!」

 

あやめ「司令…」

 

「止めときな」

 

俺はたまらずおっさん達に声をかける。

 

あやめ「貴方は」

 

米田「確か、遅刻してきた奴だったな」

 

「ま、今はそんな事は後回しだ。もう既にかなりの数の脇侍が建物の中を徘徊してる。あんた1人でも脱出は厳しいぞ」

 

米田「そうか…ん?」

 

するとおっさんは、モニターを見る。そこには華撃団の連中が映っていた。

 

米田「あいつら!?かすみの奴、喋りやがったな」

 

あやめ「戻ったら、厳重注意ですね」

 

「注意だけにしてやれよ。おそらく、向こうもあいつ等に気が付いたはずだ。これで、あんたら2人が脱出できる確率が少しだが上がったんだ」

 

俺はおっさん達にそう説明する。すると、監視室のドアが開かれる。そこには脇侍が1体いた。

 

米田「クソッ!ここまでか」

 

おいおいおっさん、何のために俺がわざわざ変装までしてここに潜り込んでると思ってんだよ。

 

「投影、開始」

 

俺は神様に貰った能力の1つを使う。魔力と気を集中させ、頭に思い浮かんだ剣を作った。

 

米田「あれは!?」

 

あやめ「凄まじい霊力…」

 

「霊力とは少し違うが…まぁ似たようなもんだな。おい脇侍」

 

脇侍「ギギ」

 

「小便はすませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタふるえて命乞いする心の準備はOK?」

 

俺は持ってた剣に自分の気を流し込む。すると剣は光だし、それでいて周囲を優しく包み込むように輝く。

 

米田「なんて光だ」

 

あやめ「はい。しかしとてつもなく優しく感じます」

 

「星光の剣よ…赤とか白とか黒とか消し去るべし!ミンナニハナイショダヨ?えっくすカリバーーーーー!!!!!!!」

 

2本の剣で脇侍を切り刻んだ。流石にこの場所であっちの方を放つ訳にいかないしな。

 

「さて、一応ほかの連中も見に行くか」

 

俺はさくら達の様子を見に監視室を出ていく。すると、おっさんが呼び止める。

 

米田「待ってくれ!お前さん…一体何者だ」

 

「……」

 

あやめ「何故私達を助けてくれたの?」

 

「…人を助けるのに理由がいるのか?」

 

「「!?」」

 

「じゃあなおっさん」

 

米田「!?」

 

そう言い残し、俺はさくら達の元に向かった。

 

米田「……」

 

あやめ「不思議な人ですね」

 

米田「……」

 

あやめ「司令?」

 

米田「気が付かないか、あやめ君」

 

あやめ「??」

 

米田「いや、気にしないでくれ」

 

米田は森川が出て行った入り口を見つめていた。



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第十話

さて、おっさん達と別れた俺は、さくら達の所に向かっている。途中で脇侍を2体ほど倒したけど。で、さくら達を見つけたのは良いが、その前に女が立っていた。俺は離れた場所からそれを見る。

 

「木偶人形のお出ましかえ?」

 

大神『誰だ!!』

 

「黒之巣会の1人…紅のミロク」

 

大神の問いに、ミロクはそう答えた。っていうか、黒之巣会って名前ダサすぎだろ…

 

大神『黒之巣会!?』

 

すみれ「下りてらっしゃい!私が相手をして差し上げますわ!」

 

ミロク「ほざけ木偶人形が!妾に勝てると思うのか」

 

そう言い残し、ミロクは浮き上がったまま上に行ってしまう。それをすぐにすみれとマリアが追いかける。残った大神とさくらは、脇侍に苦戦している。

 

「おいおい…またバラバラで行動しやがって。あれじゃ勝てる戦いも負けるぞ。それに、大神ももう少しキツく言わないと彼奴らをまとめるのは無理だぞ」

 

下で脇侍と戦ってる大神の機体を見ながらそう呟く。ってか、まだあんだけ脇侍いたんだな。ここに来るまで2体しか見なかったから、そんなにいないと思ってたんだがな。すると、さくらと大神が脇侍を一体ずつ相手していた。だが、さくらの攻撃が避けられ壁に刀が刺さり抜けなくなっていた。

 

「まずい!!」

 

俺は素早く動くとした。すると、さくら機が外に出て脇侍が振り下ろした斧を白羽どりする。そのまま、壁から突き出た剣に脇侍を刺しやっつけた。

 

「心配する必要はなかったみたいだな。ミロクは大神が追っかけたみたいだし、マリア達の様子を見に行くか」

 

俺はその場から離れ、すみれとマリアの様子を見に行った。すみれは、脇侍の下敷きになっていたが何とか勝ったみたいだな。で、マリアは屋上で光武から出ており雨に濡れていた。

 

マリア「戦闘能力に優れている?状況判断に長けている?偶然生き残ってきただけじゃない!!」

 

「……」

 

間雨が降ってる中そう叫ぶマリア。俺は静かにその場を後にし、大神の場所に向かった。到着すると、既にミロクや脇侍の姿はなく、何かで固定され動かなくなっていた光武だけがあった。

 

「やれやれ…惨めだな」

 

俺は固定されていた部分を破壊し、大神の光武を自由にする。

 

大神「あ、ありがとうございます」

 

「……」

 

俺は無視してその場を離れる。

 

大神「あの…」

 

「無様な戦いだな」

 

大神「えっ」

 

俺は何も言わないつもりだったが、あまりにも無残な姿につい言葉を発した。

 

「無様だって言ったんだよ。自分達が判断してこの場に来たことはいいが、結果敵は逃がし個々の隊員達に上手く指示が出ていない」

 

大神「……」

 

「確かに、戦闘は現場の判断が一番だが、それはまともに判断できる奴がすることだ。あんたが隊長らしいが、こんな隊長じゃ悪いがいずれアンタについて行った部下は死ぬだろな」

 

大神「なっ!?」

 

「じゃあな、間抜けな隊長さん」

 

俺はそう言い残して、自分の店に戻ったのだった。翌日、昨日の事があった為、店は今日は休みにした。はっきり言って眠いんだよ。

 

「だが、腹も減ったし少し腹ごなしするか」

 

俺は1階に下りて、キッチンで遅い朝食兼昼食を作り始めた。すると店の扉がノックされる。

 

「誰だ?」

 

看板は出してないぞ?開けるとそこには米田のおっさんが立っていた。

 

「なんだおっさんかよ。どうしたんだ?」

 

米田「悪いが、少しお前と話がしたくてな」

 

「話ねぇ。ま、今昼飯作ってる途中だから入ってくれ」

 

米田「邪魔するぞ」

 

おっさんは中に入り、何時も座る席に座った。俺はキッチンに戻り飯をちゃっちゃと作る。飯を作り終わり俺はおっさんの横に座り食い始める。

 

米田「…食いながら出いいから聞いてくれ。お前さん…昨日あの場所にいただろ?」

 

「ガツガツ…モグモグ…」

 

米田「何でお前があの場所にいたかを聞きたいんじゃねぇ。昨日の戦い…見ててどう思った」

 

「ズズ~…おっさんの言う通り、昨日おっさん達の前にいたのは俺だ。あの場所に行った理由は、おっさん達があんな激しい雨の中軍服を着て何処かに行ってたからな。それが気になって後を追いかけたんだよ。で、おっさん達が入った後に変装した男が来たから服なんかを借りて侵入したって訳だ」

 

米田「……」

 

「ポリポリ…で、監視室でおっさん達と合流して、入って来た脇侍を倒しそのままさくら達の様子を見に行ったんだよ。ま、結果は勝ったけど散々だったけどな。ご馳走様でした」

 

俺の言葉をおっさんは黙って聞いていた。飯を食い終わり食器を水につける。洗うのはおっさんの話を聞いた後だな。

 

「言っちゃ悪いが、あの隊長…大神一郎だがもう少し強めに言わないとあいつらの為にならないぞ?ハッキリ言って、こんな戦いを続けてたら…華撃団は全滅だ」

 

米田「ああ…分かってる」

 

「別に大神の奴1人が悪いとは言わん。すみれは、無駄に高いプライドがあるし、マリアも同じだ。そして、マリアの場合は前の隊長と大神を無意識に比べてる」

 

米田「お前!?何処でその事を…」

 

おいおいおっさん、俺の本業忘れたか?

 

「俺は情報屋だ。あいつらの過去を調べるのなんて簡単だ。マリアは昔、ロシアの革命軍に参加していた。で、その革命軍の隊長だったのがユーリー=ミハイル・ニコラーエビッチ…マリアが今も唯一尊敬してる奴だ。過去を忘れろとは言わないが、マリアの場合は中々それが出来ないようだ。だから、自分が唯一尊敬し心を許した隊長と、同じ隊長についた大神とを比べてしまうんだろうな」

 

米田「そうか…」

 

おっさんは、マリアの過去を聞いてそう呟く。

 

「この話は、おっさんの胸の中にしまっておいてやれ。おっさんもハッキリ言って、ここまで詳しくは知らなかったはずだ」

 

米田「その通りだ」

 

「しかしおっさん、あんたんとこの連中、なにかしら過去にこういったものを抱え込んでる連中ばかりだな」

 

米田「ははっ、そこまで調べられちまったか」

 

「悪いとは思ったがな。こっちも協力する代わりに、色々と調べさせてもらったぜ」

 

今現在いる帝国華撃団の全メンバーの過去を調べた。すると、出るわ出るわ隠したい過去。けど、正直この事は誰にも言わないつもりだ。今回はマリアの行動の事を話すために仕方なかったけどな。

 

「今回は無様な戦いだったが、今後に期待だな。あれで諦める連中じゃないだろ?」

 

米田「そうだな。じゃあ、俺はそろそろ帰るとするか」

 

おっさんは立ち上がり、出て行こうとする。

 

米田「おっと忘れるとこだった」

 

「何がだ?」

 

米田「今日の会議で決めたんだが、残りの連中も近い内に帰ってくることになった」

 

その言葉を聞いて、俺は笑う。

 

「そうか。なら、あいつらが帰ってきたらウチに顔出す様に言ってくれ。少しはサービスするってな」

 

米田「分かった。じゃあな」

 

そしておっさんは帰っていった。俺も後片付けするか。



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第十一話

おっさんと話してから数日が過ぎた。おっさんの話によれば、なんだかんだで各自あの戦いは悔しかったようで、暇があれば稽古などを行ってるようだ。ま、それはいいんだけどよ。

 

「ここ最近、あいつら全然食いに来ないのも虚しいもんだな」

 

少し前までは、開演前なんかには由里達やさくら達が飯を食いに来たんだが…

 

「ま、あの時の戦いを悔しいと思ってるなら、まだ見込みはあるけどさ」

 

んな事を思ってると、外から爆発音が聞こえた。

 

「な、なんだ!?」

 

慌てて外に出ると、劇場前でバイクがお釈迦になっていた。

 

「だ、大丈夫ですか!!」

 

すぐに乗ってた奴の元に駆け寄る。

 

「えろうすんません。ご心配かけまして」

 

ん?この独特の話し方…それにこの紫色の三つ編み。まさか!?

 

「もしかして、紅蘭さんですか?」

 

紅蘭「はい、そうですけど?って、森川はんやないですか!久し振りですな~」

 

やっぱりか。

 

「お久しぶりですね。お元気でしたか?」

 

紅蘭「ウチは元気だけが取り柄やさかい!森川はんも元気そうでんな♪」

 

そんな話をしてると、劇場から大神が出てきた。

 

大神「な、何事だ!?」

 

「あぁ大神さん」

 

大神「森川さん」

 

紅蘭「おっ、あんたが例の隊長はんかいな」

 

大神「えっと…あなたは?」

 

ま、知らないのは無理ないか。

 

紅蘭「ウチの名前、李紅蘭といいます。帝劇花やしき支部から、本日付で銀座本部に転属になりました。今度こちらにご厄介になります。よろしゅう」

 

おい紅蘭、俺がいる前でその話はしていいのか?

 

大神「そうだったのか。それじゃあ、支配人の所に案内するよ」

 

紅蘭「おおきに」

 

「紅蘭さん、またウチに食べに来てくださいね」

 

紅蘭「勿論や!森川はんの作る中華料理は、本場に負けず劣らずやさかいな。必ず食べに行くわ」

 

「お待ちしてますよ」

 

そして大神と紅蘭は、劇場に入っていった。結局、機密事項を話したことの追求はなかったな。

 

(いいのかそれで?)

 

ま、考えてもしょうがない。向こうには向こうの事情があるだろうよ。

 

「さて、店に戻るか」

 

まだ開店途中だった事を思いだし、俺は店に帰ったのであった。その夜、客足もなくなりそろそろ閉店しようかと思った時、おっさんが帰ってきた紅蘭達を連れてやって来た。

 

米田「ワリィな森川、急に頼んでよ」

 

「ホントですよ。本来なら、もう少し早めに言ってくれれば、仕込みなんかが出来ましたのに」

 

米田「だから悪かったって言ってんだろ」

 

かすみ「すみません森川さん、支配人が無茶なお願いをしまして」

 

「気にしないで下さいかすみさん」

 

謝って来たかすみを宥める。だって、おっさんが勝手に行動しただけで、お前には何の責任もないんだしよ。けど、こんな事を真っ先に止めそうな奴の姿が見えないな。

 

「そういえば、あやめさんの姿が見えませんが?」

 

米田「ああ、あやめ君は少し前から出張でな。明日か明後日には帰ってくる予定だ」

 

「なるほど。あやめさんがいないから、米田さんがこんな無茶な行動に出たと」

 

ハメ外すなとは言わんが、何もあやめがいない時を狙うなよな…

 

「まぁいいですけど。さて、まだ少ししか料理が出来てません。ですので、今できてる料理で始めて下さい」

 

さくら「あ、お手伝いします」

 

手伝ってもらう事もあんまりないが、出来た料理を運んでもらうか。

 

「でしたら、出来た料理を皆さんの所に運んでいただいていいですか?」

 

さくら「分かりました!」

 

マリア「さくら、私も手伝うわ」

 

マリアも手伝ってくれるなら助かる。いちいち厨房を離れなくていいしな。そして俺は急いで残りの料理を完成させていく。今日は紅蘭の歓迎会だ。なので、料理は紅蘭の故郷料理になる。

 

「お待たせ!春巻きに炒飯、拉麺完成したよ」

 

さくら「じゃあ、私は春巻きと炒飯を持っていきますので、マリアさんは拉麺をお願いします」

 

マリア「分かったわ」

 

「残りは私が持ていきますので、お2人も食べて下さい」

 

「「分かりました」」

 

そして俺は残りの二品を完成させ、さくら達の所に持っていった。

 

紅蘭「ん?森川はん、これって…」

 

由里「お豆腐と…何かしら?」

 

椿「お豆腐が白と黒の二つが交互に重なっていますね」

 

米田「けどよ、流石に豆腐だけ食えってのはねぇんじゃね~か?」

 

この豆腐には、これから面白い事が起きるんだよ。俺は豆腐の下に引いてあった笹の葉を全て抜き取る。するとそこから豆腐が角切りにされ、下から赤い液体が出てくる。

 

「まずは、特製大魔術熊猫麻婆(マジカルパンダマーボ)完成!!」

 

それを見た紅蘭が感激してた。

 

紅蘭「凄い…凄いで森川はん!!ウチには、今の光景がパンダに見えたさかい!!」

 

さくら「あの紅蘭、パンダって何?」

 

興奮する紅蘭に、さくらは質問していた。あ~…確かに今の時代じゃパンダは知らないか。確か日本に初めて上陸したのが1972年だったっけ?

 

紅蘭「パンダっちうのはな、ウチの国中国にいる動物のことなんや。白と黒の毛の色しててな~、それがこのマーボと同じ色なんや♪」

 

由里「へ~そうなんだ」

 

アイリス「アイリス、写真で見た事あるよ!すっごく可愛いんだ」

 

さくら「そうなんだ~」

 

「見た目は可愛いけど、パンダはクマ科の仲間ですし」

 

すみれ「く、熊なんですの!?」

 

「はい。普段は特に人を襲う事はないんですけど、発情期になれば獰猛になるんですよ」

 

俺は前世で見たパンダの意見を言う。

 

紅蘭「その通りや。しかし森川はん、あんさんえらい詳しいですな」

 

「え、ええ…知り合いに専門家がいまして。ついこの前まで中国にいたのでその時に」

 

あぶねぇ…ついベラベラ喋り過ぎた。

 

「さて、次はこれです」

 

紅蘭「これは…お焦げやな?」

 

「ええ、もうそろそろ」

 

すると、まん丸のお焦げから湯気が大量に吹き出し、それが割れ中から熱々の餡が現れた。

 

「幻のお焦げ料理完成!!」

 

すみれ「素晴らしいですわ!」

 

紅蘭「ホンマや!中華料理は美味しいのは勿論、見た目にもインパクトがあるんや!森川はんは、見事にそれを両方引き立てとる!!」

 

「さぁ、食べて下さい」

 

『いただきます!!』

 

それぞれが料理を食べる。

 

さくら「美味しい!この麻婆豆腐」

 

マリア「本当ね。この辛さが何とも言えないわ」

 

すみれ「ですが…少し辛すぎませんこと?」

 

アイリス「辛い~!!」

 

あぁ、アイリスやすみれには早かったか?

 

紅蘭「すみれはん、アイリス、麻婆豆腐は豆腐とタレを一緒に食べてこそやで?」

 

「そうですね。一応本場四川並みの辛さなので、苦手な方は無理して食べないで下さい」

 

紅蘭「けど、この麻婆豆腐はウチも初めて食べるな」

 

流石紅蘭、気が付いたか。

 

「ええ、白いのは絹ごし豆腐ですが、黒い豆腐には黒砂糖が混ざっています」

 

紅蘭「そうか!白い絹ごし豆腐から黒い甘い豆腐、そしてタレ。この三種が交互にウチらの口の中に襲い掛かって来よるんや!!」

 

米田「けど、甘い豆腐がこんなに合うなんてな」

 

マジカルパンダマーボは好評だな。

 

由里「この餡かけおこげも美味しいですよ」

 

かすみ「ええ、中の具にもしっかりと餡が染み込んでいるわ」

 

椿「凄いですよ森川さん」

 

大神「士官学院時代に、様々な国の料理を食べましたが、こんなに美味しいのは初めてです」

 

「ありがとうございます」

 

どうやら、今回の料理も気に入ってくれたみたいだな。そしてそのまま宴が始まり、夜遅くまで盛り上がったのは言うまでもない…



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第十二話

宴会が行われた翌日、俺はおっさんの招待で劇場に来ていた。昨日から紅蘭の奴が舞台に立ってるそうだ。で、昨日俺に

 

米田『明日紅蘭の奴の舞台を見に来い。今回は舞台袖から見させてやるよ』

 

って言ってきた。ま、折角紅蘭復帰の舞台だし見に行くか。店を閉め劇場に向かう。入り口は来賓客用からだ。入ると由里に挨拶し、そのまま舞台袖に向かう。到着すると、舞台袖には大神にすみれ、アイリス、紅蘭がいた。

 

紅蘭「森川はん」

 

「こんにちは」

 

すみれ「珍しいですわね。こちらにいらっしゃるなんて」

 

「ええ、今回は米田さんに舞台袖から見てみないかと言われたので」

 

大神「そうだったんですか。今丁度クライマックスに入ったばかりですよ」

 

大神に言われ、すみれたちと一緒に袖から劇を見る。

 

さくら「オンドレ様!私と…お逃げ下さいませ」

 

マリア「使命も部下も捨てて、貴方と共に逃げ出す私など…最早私ではない。そんな私を貴方は愛せるのか?」

 

さくら「オンドレ様~!!」

 

さくらの奴、中々迫真の演技だな。普段の彼奴からは想像でいないのが事実だな。

 

紅蘭「大神はん、森川はん、見て見なはれ。さくらはん頑張っとるで」

 

「そうですね」

 

紅蘭「それにしても…マリアはん、はまり過ぎやで。こら、女の子は辛抱たまらんわ。失神するで」

 

すみれ「やれやれ、田舎くさい演技ですこと」

 

アイリス「すみれうるさい~」

 

ま、すみれもいつも通りだな。しかし、客席から見るのと袖から見るのとでは、また違った意味で凄い迫力だな。

 

すみれ「全く、何で私がこんな脇役をやらねばならないのかしら。主役のスポットライトは私にこそ相応しいのに。そう思いませんこと少尉?」

 

大神「は、はあ」

 

んな事言われても答えようがないだろうよ。コイツは舞台の事は素人同然なんだしよ。

 

紅蘭「しっ!いよいよ山場やで!」

 

さくら「オンドレ様~!」

 

紅蘭の言う山場。さくらがマリアに抱き着くために走り出す。しかし、ここで問題が起きた!走ってたさくらが足を挫き、そのまま片足ケンケンで俺達がいる方に向かってきたのだ。

 

さくら「あっ!とっ!たっ!たっ!とっ!」

 

『!!?』

 

こけそうになるさくらは、舞台の幕を掴みそのまま倒れた。その衝撃で、セットを支えてる縄が緩みセットが崩壊しかける事となる。

 

紅蘭「うひゃ~!!舞台がめちゃくちゃや」

 

すみれ「…もう堪忍袋の緒が切れましたわ!!」

 

アイリス「あ、すみれ!ダメだよ~!」

 

マリア「すみれ!まだ本番中よ!」

 

アイリスとマリアの制止を無視し、そのまま舞台に出ていくすみれ。こりゃ、嵐が吹き荒れるぞ。

 

すみれ「さくらさん!舞台をこんなにしてしまって、どうするおつもり!!」

 

さくら「す、すみません…」

 

すみれ「全く、よくコロコロと器用に転べますこと!これだから田舎者は…ドロくさい、トロくさい…おまけに田舎くさい。くさいくさいの三拍子ですわ!!」

 

さくら「…NGなら、すみれさんが一番多いですけど」

 

すみれにボロクソ言われ、さくらの奴もついに言い返したか。そりゃ、あんだけ言われりゃ誰だってああなるわな。

 

すみれ「な、なんですって!?」

 

すみれも更に怒り出す。

 

紅蘭「こらマズいわ…」

 

「ですね」

 

俺と紅蘭は、既に収拾がつかない舞台を見守る。

 

マリア「2人とも!お客さんの前よ!止めなさい!!」

 

マリアも等々2人に対して怒り出す。

 

紅蘭「アカン!大神はんここは止めに入らんと!!」

 

大神「…いや、今は本番中だ。ここはそっとしておこう」

 

「そうですね。まだ客席にはお客さんがいます。そこに私や大神さんが出て行っては、更に混乱を招きかねませんし」

 

紅蘭「なるほど。流石お2人さん、冷静沈着やな」

 

しかし、これ以上ヤバくなったら関係なく乱入するしかないけどな。

 

大神「う~ん…しかしこの喧嘩、簡単にはおさまりそうにないぞ」

 

すると、舞台からミシミシと音が聞こえた。まさか…

 

紅蘭「今の音は…アカン!また舞台が崩れそうや!!」

 

大神「な、何だって!?」

 

アイリス「お兄ちゃん!さくら達が危ないよ!!」

 

「大神さん!すみれさんをお願いします!!私はさくらさんとマリアさんを!!」

 

大神「分かりました!!」

 

すぐさま俺と大神は、まだ舞台に立ってた三人を抱きかかえる。

 

さくら「きゃっ!」

 

マリア「も、森川さん!?」

 

そして次の瞬間、舞台セットは完全に崩壊したのであった。

 

大神「うわあああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

さくら「きゃあああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

すみれ「あれえええええええええ!!!!!!!!!!」

 

マリア「舞台が…なんてことなの…」

 

こうして、俺が見に来た舞台公演はとんでもない出来事で幕を閉じたのであった。そしてその夜…

 

大神「やれやれ…とんだ公演になってしまったな」

 

マリア「…怪我人が出なかっただけよかったですよ」

 

「そうですね。助けた3人にも怪我がなくて安心しました」

 

崩壊した舞台を見ながらそれぞれがそう話す。何故俺がいるかというと、事故現場の立ち会人でもあるから、大神とマリアと一緒に報告したんだよ。

 

紅蘭「でもなぁ…見てみいこの舞台」

 

ま、言葉通りの崩壊だな。

 

すみれ「さくらさん!貴方セットを壊してしまって一体どうするおつもり!!」

 

さくら「…すみません」

 

未だにすみれの怒りはおさまらず、さくらに怒鳴っている。

 

すみれ「すみませんじゃ済みません事よ!明日だって公演があるんです!今夜中に直してちょうだい!!」

 

さくら「そんな…」

 

おいおいすみれ、いくらなんでもこれを今夜中にって。プロでも厳しいのに、素人のさくらにそんな無茶を言ってやるなよ。

 

大神「おいおい…さくらくん1人を責める事ないだろ?」

 

俺が言おうとした台詞を大神が言う。

 

すみれ「あら…それなら少尉が代わりにセットの修理をして下さるのかしら?」

 

やれやれ。

 

大神「…分かった。やってやるよ。俺にも責任があることだし」

 

「でしたら大神さん、微力ながら私もお手伝いしますよ」

 

流石にこれを大神1人にやらせるのもな。本当なら、秘密道具を使えば一瞬で修理できるんだが…こいつらの前で使う訳にも行かないし。

 

大神「そんな…森川さんは関係ないですよ」

 

「いいんですよ。流石にこの量を1人でさせるのはね。それに、こういうのは男の仕事ですしね」

 

大神「…そうですね」

 

「皆さんはもう休んで下さい」

 

さすがに、明日も公演がある女優に徹夜させる訳にもいかないしな。そして俺と大神以外の連中は全員部屋に戻ったのであった。さて…やるか!



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第十三話

現在俺と大神は、壊れたセットの修理を行っている。

 

大神「すみません森川さん。手伝って頂いて」

 

「気にしないで下さい。ですが、流石に手がかかりそうですね」

 

大神「そうですね」

 

崩壊してるセットを見てそう呟く俺と大神。こりゃ徹夜は覚悟しとかないとな…

 

大神「森川さん、俺は取り敢えず小道具から修理しようと思います」

 

「ではそちらはお任せします。私は周りを片付けながら使えない物が残っていないか確認しますので」

 

大神「お願いします」

 

大神は小道具の修理に取り掛かる。俺は片付けながら、明日以降も使えるものを探すため少し離れる。

 

「あの…」

 

すると、後ろから声をかけられる。振り返るとさくらが立っていた。

 

「さくらさん?どうしたんですか?」

 

さくら「…ごめんなさい森川さん。私のせいで大神さんや森川さんにご迷惑をかけてしまって」

 

ん~、確かにそうかもしれないが、こんな仕事をさくら…ましてや女にやらせるのは流石にな。

 

「気にしないで下さい」

 

さくら「でも」

 

「私は、さくらさんやマリアさん、他の方達に怪我がなかったのが一番なんです。それに、さくらさんは明日も舞台に立つんですよ。ファンの方達に、寝不足でフラフラな状態で演技するんですか?」

 

さくら「……」

 

「私も含め、ファンの方達はこの状況でも公演が決まれば必ず見に来ます。ですので、今さくらさんに出来る事をしっかりとやるべきです」

 

さくら「分かりました。森川さん、まだ大神さんとお仕事続けられますよね?」

 

「ええ」

 

さくら「でしたら、少し待ってください!」

 

そう言い残し、さくらは舞台から出て行った。何する気だ?

 

大神「イッテ!!」

 

舞台の方からそんな声が聞こえた。トンカチで指でも叩いたか?ひとまず見に行くか。で、見に行ったらそこにはあやめがいた。

 

「帰って来てたのか」

 

するとあやめは俺に気が付き、こっちにやって来た。

 

あやめ「お疲れ様」

 

「ああ。そっちも出張だったみたいだな」

 

あやめ「ええ。けど、まさか貴方まで手伝ってくれるなんて」

 

「流石にさくらの奴1人にやらせるのもな。すみれも無茶言うが、こういうのは専門家か男の仕事だ」

 

あやめ「うふふ」

 

何笑ってんだよ。すると、誰かの気配を感じた。

 

さくら「……」

 

いや…あの、さくらさん。何でそんなに俺の事を睨んでるんですか。

 

あやめ「あらさくら?」

 

さくら「…お帰りなさいあやめさん」

 

だから何でそんなに不機嫌なんだよ!

 

「ん?」

 

すると、さくらの手に弁当があった。

 

「もしかして、さくらさんが作ってくれたんですか?」

 

さくら「…はい」

 

なら悪いことしたな。

 

「ありがとうございます。丁度お腹が空いてたんです。よかったら一緒に食べませんか?」

 

そう言うと、先程まで不機嫌だった顔が笑顔になる。

 

さくら「は、はい!」

 

あやめ「ふふっ、よかったわねさくら。それじゃあ、私は支配人に報告に行くわ」

 

あやめは俺達を残しておっさんの所に行ってしまった。

 

さくら「あの…お口に合うか分かりませんが」

 

そう言いながら弁当箱を開ける。あんまり時間が経ってないくせに、きちんとした料理が詰められていた。

 

「美味しそうですね。ではいただきます」

 

俺はおにぎりを食べる。…うん、以前さくらが作った料理を食べた事があるけど、やっぱり家庭的な味だ。

 

「美味しいですよさくらさん」

 

そう言うと嬉しそうな表情をするさくら。

 

「しかし、まさかあやめさんに会うとは思いませんでしたよ。明日か明後日まで出張とは、米田さんから聞いてはいましたが」

 

さくら「遅くまで大変なんですね」

 

「そうですね。ご馳走さまでした」

 

弁当を平らげさくらに返す。

 

さくら「お粗末様でした」

 

「とても美味しかったですよ」

 

すると、深夜を知らせる鐘が鳴る。

 

「さくらさん、もう遅いですしそろそろ寝てください」

 

さくら「でも…」

 

「私は、徹夜してもいつでも寝れます。ですが、さくらさんは明日も公演を控えているんです。さぁ」

 

さくら「…分かりました。それじゃあ森川さん、お休みなさい」

 

「はい、お休みなさい。また明日」

 

そしてさくらは自分の部屋に帰っていった。

 

「さて、続きをやるか」

 

俺は止めてた作業を再び始めるのだった。んで翌朝、多少は修理できたが、やっぱ厳しいな。大神の奴も途中で部屋に戻したし、おっさんにも休むようの言われたから、劇場に泊まったんだよな。で、起きて作業を開始してると、さくら達が集まってきた。

 

さくら「おはようございます!」

 

マリア「おはようございます森川さん。朝早くからすみません」

 

「おはようございます皆さん。気にしないで下さい。まだ全部修理できていませんが」

 

紅蘭「そんなことあらへん。小道具や背景なんかは修理できてるやないですか」

 

何とか、昨日の内に大神と小道具と背景の修理は出来た。が、照明やその他諸々まだ沢山残っている。早速皆で修理の続きと思った時、劇場に警報音が響き渡る。

 

すみれ「来ましたわね!!」

 

マリア「皆、修理は中断よ!指令室に集合して!」

 

さくら「森川さんはここにいて下さい!!」

 

そして、俺を残して全員が行ってしまった。これはこれで都合がいい。

 

「誰もいないなら道具を使っても問題ないな」

 

ここで俺は、神様から貰った3つ目の特典である【秘密道具】を使うことにした。

 

「これを直すなら…これだな。復元光線~♪(大山のぶ代風)」

 

これは、壊れた物を元通りにする物だ。俺は早速これを壊れてるセットに光線を当てる。すると、当てられた場所が元通りになっていく。

 

「おいおい、なんだそれは」

 

振り返ると、そこにはおっさんが軍服を着て立っていた。

 

「何でおっさんがいるんだよ」

 

米田「お前が指令室に来ねぇからだろうが!で、今のはどうやったんだ?」

 

「これは俺が開発した物でな、壊れた物を元通りに復元できるんだよ。こうやってな」

 

手本を見せるように、壊れた物に次々と光線を当てていく。そしてあっという間に舞台は元通りになったのであった。

 

米田「……」

 

おっさんは驚きのあまり声が出ていない。

 

「おっさん、この事はあいつ等には黙っててくれ」

 

米田「なんでだ?」

 

「この道具は、元々使う予定じゃなかったんだよ。皆で修理する予定だったが、敵が出た上に終わってから舞台修理はしんどいだろ。だから今回は使ったんだよ」

 

米田「そうか。色々と面倒かけてすまねぇな」

 

「気にすんな。俺もあいつらの舞台は好きだしな」

 

俺はあいつらがやる舞台が好きなんだよ。だから、出来るだけあいつらの負担を減らしてやりたいんだよ。

 

米田「さて、舞台が直ったなら指令室に来てくれ」

 

「分かったよ」

 

おっさんの言われた通り、指令室に到着する。モニターを見ると、脇侍が残り一体だけとなっていた。

 

「残り一体なら、大丈夫そうだな」

 

米田「だな」

 

由里「米田司令!」

 

すると、由里が話しかけてくる。

 

由里「あの脇侍なんですが、天海と名乗る老人が突然出現させたんです」

 

米田「天海…だと?」

 

かすみ「はい。そして、あの脇侍なんですが少しおかしいんです」

 

「おかしい?」

 

椿「脇侍の妖力の反応はあるんですが、大神さん達の攻撃が全く効いていないんです」

 

米田「なんだと!?」

 

椿の報告に、おっさんは驚いていた。天海ってジジイが突然出現させた脇侍。そいつ相手にあいつらの攻撃が効かない。特にあの脇侍に何かしたわけではなさそうだが…

 

「……」

 

俺は黙ったまま、大神達が戦ってる脇侍を見る。すると、違和感に気が付いた。

 

「おっさん、あの脇侍幻影なんじゃないか?」

 

米田「幻影だと?」

 

「ああ。特にあの脇侍に何かしたって感じはしない。だが、霊力がある大神達の攻撃が全く効かない。一般の連中が攻撃したなら分かるが、そうじゃないならそれ以外考えられないと思うぞ?」

 

米田「確かに…周囲に他の敵がいないか確認しろ!」

 

『了解!』

 

さて、俺の予想が正しければ…

 

かすみ「司令!大神さん達の近くで別の反応を確認。おそらくこれがあの脇侍の本体かと」

 

米田「よし!翔鯨丸にいるあやめ君に連絡だ!」

 

「おっさん、俺も少し外すぞ」

 

米田「お、おい!」

 

そう言い残し、俺は劇場の屋根に上る。

 

「帝都タワーがあるのは…こっちか」

 

俺は方向を確認すると、呪文を唱える。

 

「I am the bone of my sword」

 

弓矢を作り、それを大神達がいる方向に構える。

 

「ふぅ…」

 

射るのは久しぶりだからな。さて、集中だ…

 

「…偽・螺旋剣(カラドボルグII)!!!!!!!」

 

俺は気を矢に込めて放った。矢は一直線に大神達がいる場所の脇侍本体に向かって飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらside

 

 

さくら「はああああああああああっ!!!!!!!!」

 

私は今、本体である脇侍に攻撃をしている。隊長である大神さんは、帝都タワーに向かってる脇侍を食い止めている。

 

すみれ「この…さっさと倒れなさいな!!」

 

マリア「落ち着きなさいすみれ!!」

 

紅蘭「せや!うち等が慌てたら、必死になって向こうを止めてる大神はんに悪いで!!」

 

紅蘭の言う事も分かる。でも、私達が早く倒さないと、大神さんの負担が増す事も事実。そんな事を思ってると、すみれさんの背後から何かが飛んできた。

 

さくら「すみれさん!避けて下さい!!!」

 

私の言葉に反応するすみれさん。だけど、既に遅く飛んできた物はそのまますみれさん目掛けてきた。当たると思った瞬間、それはすみれさんの脇を通り脇侍に命中した。次の瞬間、当たった何かが爆発した。

 

さくら「きゃあああああああああああ!!!!!!!」

 

すみれ「あれえええええええええええ!!!!!!!」

 

紅蘭「な、なんなんやあああああああああああ!!!!!!!!??????」

 

私達は爆風に飛ばされたが、幸いに光武も傷んでおらず私は無事だった。

 

マリア「皆!ケガはない!!」

 

すみれ「な、何とか無事ですわ」

 

紅蘭「うちもや」

 

どうやら、他の皆も無事だっみたい。よかった

 

マリア「だけど、一体何だったのかしら?」

 

さくら「さぁ?何かが脇侍に当たったのは分かったんですが」

 

紅蘭「帝劇に戻れば、おそらく何か分かると思うんやけど…」

 

マリア「そうね。戻って米田司令と確認しましょう」

 

一体何だったのかしら?まぁでも、無事に脇侍も倒せたし一件落着ですね♪

 

大神「お~い」

 

すみれ「あら?少尉が戻ってきましたわ」

 

紅蘭「うわっ!光武がボコボコやわ。帰ったら修理せな」

 

マリア「お願いね紅蘭」

 

さくら「さて皆さん、ここはやっぱりあれですよね!!」

 

紅蘭「あれやな!」

 

いつものお約束…

 

紅蘭「ほないくで~…勝利のポーズ」

 

『決め!!』

 

やっぱり、勝った後はこれがないとね♪

 

 

 

 

 

森川side

 

「…やっちまった」

 

俺は、偽・螺旋剣(カラドボルグII)を放ったのを後悔した。俺は偽・螺旋剣(カラドボルグII)を放つと同時に壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)を発動させている。今回はそのつもりはなかったんだが、いつもの癖で一緒にやってしまった。

 

「あいつら…生きてるよな」

 

敵を倒したのはいいが、不安になる俺であった。



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第十四話

帝都に平和な日々が訪れていた。劇場の方も連日満員御礼。で、その近くにある俺の店も久々に客足が止まらず、連日満席だ。ま、偶には悪くないな。そうそう、花組にカンナの奴が帰って来たらしい。って事は、無事に仇は打てたみたいだな。帰ったなら、俺の料理を食わせようと言ったんだが、昨日の夜出撃があったらしく、その時に大神が逃げ遅れた子供を庇って怪我をしたそうだ。そんな訳で、カンナの歓迎会は怪我が治った時に頼むとおっさんに言われた。しかし…

 

「おっさんの話じゃ、子供を庇った大神に対して、マリアの奴が怒ったらしいが」

 

おそらくだが、マリアは昔の隊長と大神がダブって見えたんだろな。じゃなきゃ、普段のあいつからそんな言葉が出るはずない。すると、おっさんから緊急通信が入る。

 

米田『大変だ森川!!』

 

「いきなり大声で叫ぶなよ…ったく。で、何が大変なんだ?あんたが教えたばかりの緊急通信用のコードで連絡するなんて」

 

米田『マリアの奴が、1人で敵の所に出撃しやがった!!』

 

「はぁ!!?」

 

その言葉に、俺は柄にもなく間抜けな声で叫んでしまう。

 

「ど、どういう事だ!?」

 

米田『さっき、大神の奴から聞いたんだが、黒之巣会の刹那っていう奴が、マリアの過去の事を話してな。それで一人で来いって言いやがったそうだ。全く、マリアも敵の安い挑発にのりやがって…』

 

「黒之巣会…刹那」

 

流石に1人ではマズいと思い、おっさんに言う。

 

「おっさん、俺も個人的に動いてマリアを探す。大神達も捜索はすると思うが、流石に敵が放っておかないだろ。だから、マリアの事は俺に任せてくれ」

 

米田『しかし、お前は光武には乗れないんだぞ!!』

 

「心配すんな!じゃあな」

 

米田『おい!森川!!』

 

おっさんとの通信を切り、俺は急いでマリアを探す。

 

「確か敵は築地で戦ったって言ってたな。なら、とにかく築地に向かうか」

 

俺は屋根伝いに移動していく。築地に到着すると、脇侍が何体もいた。

 

「ビンゴだな。後は、マリアの奴がどこにいるかだが…」

 

やみくもに探しても意味がない。なら…

 

「スパイ衛星セット~!」

 

秘密道具の出番だ!!俺は衛星を飛ばし、全ての倉庫を確認していく。

 

「ここは…違う!こっちは…外れだ!クソッ!!」

 

イライラしながら次々と画面を切り替える。そしてようやくマリアを見つけた。

 

「あの倉庫か!!」

 

俺は急いでその倉庫に向かう。大神達は脇侍と戦っている為、まだ時間がかかりそうだ。

 

「ここか~~!!!!」

 

俺は倉庫の扉を蹴破る。

 

「な、なんだ!?」

 

その台詞を聞くと、あの台詞を言いたくなるが我慢だ。

 

「悪いな。ウチの常連客を返してもらおうか?」

 

刹那「常連客だと」

 

「ああ。彼女は大切な人でね。テメェなんかが連れていい相手じゃねぇんだよ」

 

刹那「ふざけるな!!」

 

お~お~、怒っちゃって刹那君。

 

マリア「森川さん…何故あなたが」

 

「詳しい話は後だ。まず、そこのチビを片付けないとな」

 

刹那「チ、チビだと!?貴様…」

 

あら?もしかして…

 

「身長小さいの気にしてたのか?心配すんな。お前はまだガキだろ?」

 

刹那「一度ならず二度も僕の事をからかうとは…どうやら本気で殺されたいらしいね!!!!」

 

怒った刹那は、長い爪で俺を攻撃して来る。俺はそれを避ける。

 

「おいおい、身長の事くらいでそこまで怒るなよ」

 

刹那「うるさい!!」

 

再び攻撃して来る刹那。同じ様に避けるが、着てた服が少し破ける。

 

「へ~、この服は特注なんだが、それを破くとはな」

 

刹那「どうだ!僕を馬鹿にするからだ!!」

 

そんな話をしてると、大神が入ってきた。

 

大神「マリア!!」

 

マリア「少尉!?貴方まで…」

 

刹那「来たか」

 

「よう大神、遅かったな」

 

俺に声をかけられ、大神は驚いていた。

 

大神「貴方は…森川さん!?何故こんな所に!!?」

 

「何故って…マリアを助けに来たんだよ」

 

大神「ええっ!?」

 

「そんなに驚くか?まぁいい…大神、マリアは任せた!!おいチビ!外で決着つけようぜ」

 

刹那「また僕を馬鹿にして!!!!いいだろう!!蒼角の威力教えてある!!!!!」

 

やれやれ、完全に頭に血が上ってるな。こんな言葉に簡単に応じるとはな。俺達は外に出、刹那は機体に乗り込んだ。

 

「さて…やろうか!!」

 

刹那『その余裕…どこまで持つかな』

 

すると刹那は、俺の周りを素早く移動する。

 

「ほう、かなり早いな」

 

刹那『当然だ!今頃になって後悔したかい?』

 

「言ってろ」

 

俺は攻撃を避けながら、マリアが捕まっていた倉庫を見る。すると、大神と一緒出てきたのを確認した。なら、後はコイツを倒すだけだな。

 

「投影・開始!」

 

俺はある剣を投影する。あいつの背後は海。ならあの剣が使える。少し黒の巣会の連中には警戒してもらわないとな。投影した剣に自分の気を流し込む。すると、辺りに小さく輝く光が沢山浮かび上がる。

 

大神「この光は?」

 

マリア「森川さんから」

 

さくら「綺麗…」

 

すみれ「幻想的ですわ」

 

紅蘭「ほんまや」

 

カンナ「初めて見たぜ」

 

刹那「な、なんなんだこの光は!?」

 

さくら達はそう言うが、刹那だけは俺の気に何かを感じたみたいだな。

 

「さて…蒼き刹那。残念だがお前はここで終わりだ!」

 

刹那「ふざけるな~!!」

 

俺は剣を構えて呪文の唱える。

 

「束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるがいい!約束された(エクス)勝利の剣(カリバー)!!!!!!!

 

剣から放たれた光が刹那を飲み込んだ。

 

刹那「黒之巣会に…栄光あれ~!!

 

そして刹那は倒れた。

 

「……」

 

俺はエクスカリバーを消し、爆発した場所を黙って見ている。

 

マリア「あの…森川さん」

 

すると、マリアが声をかけてきた。

 

マリア「私なんかの為に…ありがとうございます」

 

「…気にするな」

 

俺は、言葉遣いをどうするか考えたが、バレてるし普段通りに話す事にした。

 

マリア「それが…森川さんの普段の話し方なんですね」

 

「ああ、呆れたか?」

 

マリア「いえ」

 

「ならいいさ」

 

俺は煙草に火を点け一服する。

 

さくら「マリアさん、森川さん」

 

マリア「さくら」

 

「さくらさん」

 

俺は言葉遣いを戻す。

 

さくら「森川さん、言葉遣いは普段通りにして下さい。その事を知ってるのは私とマリアさんだけですし」

 

「…聞いてたか」

 

さくら「すみません」

 

「……」

 

さくら「あの…森川さん」

 

「はぁ…分かった。お前らの前ではこの話し方で話す。だが、おっさんとあやめ以外の連中には言うなよ」

 

さくら「は、はい!」

 

何でそんなに嬉しそうなのかな?

 

マリア「あの、森川さん。おっさんとは、もしかして…」

 

「ああ、米田のおっさんの事だぞ。因みに、本人の許可は貰ってるから」

 

マリア「でしたら問題ありません」

 

そんな話をしてると、大神達がやって来た。

 

大神「マリア!さくらくん、森川さん!!」

 

さくら「大神さん!」

 

マリア「…隊長」

 

「お疲れ様です皆さん」

 

俺達はそれぞれ戦いの事を労う。

 

大神「そんな。森川さんこそありがとうございました」

 

カンナ「凄かったな!まさかあんなに強いとは思わなかったぜ!」

 

紅蘭「ほんまや!」

 

すみれ「先程の技、とても美しかったですわ」

 

「ありがとうございます」

 

そんな話をしてると、マリアが大神に言う。

 

マリア「大神少尉!貴方は、私達帝劇・花組の隊長です!」

 

カンナ「頑張ろうぜ!皆!!」

 

『お~!!!』

 

花組の団結が上がり、これからの戦いを俺は密かに楽しみにしていたのだった。

 

カンナ「さて、折角勝ったんだ!あれやろうぜ!」

 

さくら「今回はマリアさんが音頭を取って下さい」

 

マリア「分かったわ」

 

紅蘭「ほら!森川はんも一緒に」

 

アイリス「そうだよ」

 

俺は2人に手を引かれ、さくらとマリアの間に入る。

 

マリア「それじゃあいくわよ!勝利のポーズ!」

 

『決め!!』

 

「……」

 

俺は突然の事に、呆気に取られていた。

 

「皆さん、もしかして毎回これをしてるのですか?」

 

さくら「そうですよ♪」

 

「大神さん…貴方も?」

 

大神「ええ。最初は俺も驚きましたけど、やっている内に段々クセになりまして。逆にやらないと戦いが終わった感じがしないんですよ」

 

「はぁ…」

 

戦いがある毎にって。マジかよ…



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第十五話

刹那との戦いが終わり、一段落した。したんだが…

 

「あの後の俺の飯を食った量が尋常じゃない」

 

あの時、俺は久々に莫大の気を消失した為、その反動で食欲が半端なかった。まさに腹ペコセイバーって気分だった。

 

「秘密道具の【グルメテーブルかけ】があって助かった。なかったら、店の食い物全部食いつくしてたな…絶対」

 

グルメテーブルかけを使ったから、食いまくった。で、俺の前にはチョモランマを彷彿とさせる皿の山ができあがっていたし。あの後、片づけが大変だった…

 

「…偶には気分転換がてら散歩でもするか」

 

そう決めた俺は、鍵をかけてブラブラする。

 

「いい天気だな」

 

空は晴天。雲一つない。まさに平和って感じだな。周りを見ても、皆楽しそうにしてるな。やっぱ平和が一番だな。

 

「ん?あれはさくらじゃないか」

 

のんびり歩いてると、前からさくらが荷物を抱えてやって来た。

 

さくら「あ、森川さん!」

 

「よう。買い物か?」

 

さくら「はい!」

 

「随分と買い込んだな。何か特別な事でもあるのか?」

 

物凄い量の食材を見て質問する。

 

さくら「いえ、そうじゃないんです。今日は休みなんで、カンナさんが皆で夕食を作ろうと言いまして」

 

「皆で夕食作りか。何を作るんだ?」

 

さくら「カレーです!」

 

カレーか。確かにいいかもしれないが、この時代にはまだルーなんて便利な物はなかったはずだ。各店も独自にカレー粉を混ぜてその店オリジナルを作ってる筈だ。

 

「カレーか。さくら作った事あるのか?」

 

さくら「ありません!」

 

んな自信満々に言われても。

 

(ま、確かにカレーに必要ない物まであるから、作った事はないんだろうな)

 

さくらが抱えてる荷物を見てそう思う。だって、大根や豆腐にカマボコとか入ってんだぞ。使おうと思えば使えるけどさ、流石に…

 

「なら、誰か作り方とか知ってる奴いるのか?」

 

さくら「多分今頃マリアさんとかが、作り方を調べてる筈です。味見はすみれさんにお願いしてます」

 

「なるほど。すみれならカレー食った事あるだろうしな」

 

しかし不安だな。本当にできるのか?アイリスもいるし、変なの食わせてやるなよ。

 

さくら「そうだ!森川さん、森川さんのお店でもカレー出してましたよね?」

 

「ああ。ウチの店でも出してるが?」

 

さくら「もし、お時間があれば私達にカレーの作り方教えてくれませんか」

 

作り方か…ま、以前料理を教えるって約束してたしいい機会か。

 

「分かった。なら俺は一度店に戻ってからそっちに向かう。だから、勝手に始めるなよ?」

 

さくら「ありがとうございます!」

 

そして、俺はさくらと一度別れて店に戻る。何故店に戻るかというと、俺が普段使ってるカレー粉を持っていくからだ。流石に、今から調合等してたら時間かかるしな。

 

「さて、カレー粉に他にも材料の準備は出来たし行くか」

 

俺は劇場に向かった。中に入り厨房に行くと、既に調理が始まっていた。

 

「やっていますね」

 

マリア「森川さん!?」

 

紅蘭「なんで森川はんがここに?」

 

「先程さくらさんと会いまして、お聞きしたら皆さんでカレーを作られるそうで」

 

さくら「それで、私が森川さんに作り方を教えて下さいとお願いしたんです」

 

マリア「そうだったの」

 

カンナ「助かるぜ!森川さんが作り方を教えてくれるなら、百人力だ!!」

 

歓迎されながら、俺は持ってきた材料を広げる。

 

「カレーに使う材料などを持ってきました」

 

すみれ「ですが森川さん、お肉の種類が多いのでは?」

 

「はい。鶏、豚、牛、ウチのカレーはその時の気分で変えているんですよ。そして、これはウチで調合したカレー粉です」

 

瓶に入ってるカレー粉を見せる。

 

さくら「それがカレー粉なんですか?」

 

「そうです。カレー粉は何十種類のスパイス等を組み合わせ調合し、各店オリジナルのカレーを作っているんですよ」

 

すみれ「確かに、お店ごとにカレーの味は違いますわ」

 

「他にも、果物や野菜等も使っているところもある筈ですよ。一言にカレーといっても、それだけ多くの種類があるんです」

 

『へ~』

 

何故かカレー粉の説明になっていた。

 

「それでは、各自で材料を切りましょうか」

 

『はい!』

 

それぞれが、先程まで自分がいた持ち場に戻る。

 

「すみれさんは、料理はなさらなんですか?」

 

他の人達は割烹着やエプロンをしてたが、すみれだけはなにもしていない。

 

すみれ「ええ、私の様な人が料理など」

 

「ですがすみれさん、料理が出来る女性は男性の憧れですよ」

 

その言葉に、すみれはピクッとなる。

 

「私みたいに料理が出来る人でも、気になる女性の料理は食べたいと思うんですよ」

 

その言葉に、さくらとマリアは耳をダンボにしていた。ま~幻覚だろうけど。

 

すみれ「ですが、私今まで生まれて一度も料理をしたことがないんですの」

 

「大丈夫ですよ。ここにプロがいるんです。教えますから、すみれさんも一緒作りましょう。皆で作った方が美味しいですよ」

 

すみれ「…分かりましたわ」

 

渋々すみれも料理に参加する事が決定した。そうだ!せっかくカレーを作るんだし、ご飯は…

 

「大神さん」

 

大神「はい」

 

「実は…」

 

俺はある事を大神に提案する。

 

大神「それはいいですね!皆も喜びますよ」

 

「でしたら、そちらはお願いしてもいいですか?良かったら、他の方達も誘って」

 

大神「分かりました。それじゃあそちらはお願いします」

 

そして大神は厨房から出て行った。さて、カレー作るか。俺は極力手を出さず、やり方を教える程度に済ませる。ま、すみれは別だがな。

 

「いいですよすみれさん。慌てないでゆっくりでいいですから」

 

すみれ「は、はい」

 

まだ多少は危なっかしいが、それでもゆっくりと野菜を切っていく。

 

「ん~、もう少し肩の力を抜いて下さい。そして、こういう感じで…」

 

俺はすみれの背後から手を出し、すみれの手と一緒に包丁を持ち扱い方を教える。

 

すみれ「///」

 

「と、こんな感じです。どうですか?」

 

すみれ「は、はい!こうですわね!!」

 

少し顔が赤いが大丈夫か?んで、さっきからずっと俺とすみれの事を見てるさくらさんとマリアさん、顔が怖いですし手が全然動いてないですよ…そしてようやくカレーが完成した。今回は、アイリスや辛いのが苦手な人用の甘口と、辛いのが大好きな人用の辛口の二種類作った。

 

「それでは皆さん、今から鍋をもって裏庭に行きますよ」

 

『??』

 

疑問に思いながら、俺とカンナで鍋を持ち中庭に向かう。到着すると、そこではおっさんや大神が米を炊いており、テーブルに皿を並べるあやめ達の姿があった。

 

「折角のカレーですし、外で食べようと提案したんですよ」

 

マリア「そうだったんですか」

 

そして鍋を大神が作ったかまどに置く。

 

「どうですか?」

 

大神「ええ、もうすぐ炊けますよ」

 

米田「ったく、急に俺達まで呼び出しやがって。手伝わなきゃ飯抜きはね~だろ」

 

「すみません。ですが、働かざる者食うべからずですよ、米田さん♪」

 

かすみ「ご飯が炊けましたよ~!」

 

よし、米も炊けたしカレーを食べるか。

 

「それでは食べましょうか。皆さんお皿にご飯を盛ったら、こちらに来て下さい。カレーは二種類あります。アイリスや辛いのが苦手な方は甘口を用意しました。激辛とか辛いのが平気な方は辛口もあります」

 

それぞれどちらがいいか聞き、よそってあげる。全員にわたり席に着く。

 

大神「それじゃあ…いただきます!」

 

『いただきます!』

 

一斉に食べ始める。

 

アイリス「美味しい!このカレー」

 

さくら「ホント!初めて食べたけど美味しいね」

 

椿「辛いのが苦手な私でも大丈夫です!」

 

由里「美味しいわ」

 

かすみ「まさか、ここでカレーが食べられるなんて」

 

あやめ「ウフフ、皆で作ったからより美味しいわね」

 

甘口を食べてる人はそう言う。

 

カンナ「うめ~!!でも辛ぇ~!!」

 

マリア「そうね。でも、これがカレーな気がするわ」

 

すみれ「確かにそうですわね。この辛さ、今は私には丁度いいですわ」

 

紅蘭「ウチはあっちにしとけばよかったかも…」

 

大神「この辛さは、海軍時代よりも辛いですね」

 

米田「情けねぇな大神」

 

「そう言いながら、米田さん汗凄いですよ」

 

辛口は大人組?が食べており、こちらも人気だった。

 

「…いいものですね」

 

米田「何がだ?」

 

「こうやって、皆で料理をしてそれを外で賑やかに食べるのがですよ」

 

米田「そうだな。この笑顔、守っていかねぇとな…大神」

 

大神「そうですね」

 

俺とおっさん、そして大神の三人は楽しそうに食事をする花組達を眺めていたのだった。



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第十六話

「今日は暇だな…」

 

店を開けて昼過ぎ、今日は客がまばらで今は暇している。すると、どこからかサイレンが聞こえてきた。

 

「なんだ!?」

 

俺は慌てて外に出る。周りを確認するが、脇侍が出たわけではなさそうだ。

 

「すみません」

 

俺は近くにいた人に聞く。

 

「何かあったんですか?」

 

「ああ、実は浅草にある活動写真館が潰れてな。幸い怪我人なんかはいないみたいなんだが」

 

「そうですか。呼び止めてすみません」

 

俺は聞いた相手にお礼を言い、店に戻る。

 

「しっかし、活動写真館が潰れたとはな。原因は分かってないみたいだが…」

 

俺は起きた事件が気になったが、はっきりとした情報がない。

 

「少し調べてみるか」

 

俺は久々に、本格的に今日起きた事を調べる事にした。そうと決まればすぐ行動だ。神から貰った特典を最大限に生かす。地下に行き、機械を起動させ道具を使い調べ始めた。それから暫くして、様々な情報が俺の所に舞い込んでくる。これを正確に繋ぎ合わせる。

 

「なるほど」

 

すると、ある事が分かった。

 

「活動写真館が崩れる直前に、1人の男と女の子が騒いでいた。その2人の特徴は、女の子は外国人で金髪。男は黒髪でツンツン頭…ん?ツンツン頭だと?」

 

俺は気のせいかと思うが、ある男の事を思い浮かべる。

 

「ま、まぁ気のせいだろ。で、その男は帝劇のモギリと同じ服を着ていた…おい、完全にあいつだろ!!って事は、一緒にいた金髪の子供ってアイリスか!?」

 

まさかあの2人がいたとはな。ってか大神、モギリ服でうろつくなよ…

 

「…次だ次。今回放映してたのは…【珍獣大登場】か」

 

この作品は、とある研究者が深い山奥に住んでおり、ある化け物の研究をしていたって話か。

 

「…アイリス、昔閉じ込められ化け物と呼ばれてた時の事を思い出したんだなこれは」

 

アイリスは、昔親に城の地下に閉じ込められていた。だが、それは親がアイリスを世間から護る為の行為だ。しかし、子供のアイリスにはそれが伝わらない。

 

「これは、また面倒な事になってるな」

 

活動写真館の事件の犯人は分かったが、それとは別の問題が持ち上がった。

 

「大神は恐らくこの事を知らないんだろうな」

 

そう思いながら日付を見る。

 

「ああそうか。今日はアイリスの誕生日だったか。だから2人で出かけてたんだな」

 

となると、今頃大神の奴おっさんに大目玉喰らってるだろな。

 

「少し行ってみるか」

 

俺は店を閉め、劇場に向かった。中に入り支配人室に向かう。

 

「失礼します。米田さん、入りますよ」

 

ノックをして中に入る。するとおっさんの他にマリアもいた。

 

米田「森川!?こんな時間にどうしたんだ?」

 

「…今は2人だけみたいだな。いや、今日起きた事について聞きに来たんだよ」

 

マリア「今日ってもしかして」

 

「ああ、浅草の活動写真館の事だよ」

 

米田「もう知ってやがったのか」

 

おっさんは頭を掻く。

 

「ああ。今回脇侍の事は聞かなかったからな。調べてみたら、原因はアイリスだったって知ってな」

 

米田「そうか」

 

「勘違いするなよ。俺はアイリスを咎めに来たんじゃねぇ。活動内容を見て心配になって見に来たんだよ」

 

マリア「活動写真の内容ですか?」

 

マリアは俺に質問する。

 

「ああ。今回大神とアイリスが見に行った活動写真だが、そのタイトルが【珍獣大登場】だ。内容を調べたら、アイリスが暴走した理由も納得でな」

 

米田「どんな内容なんだ?」

 

俺はおっさんとマリアに活動写真の内容を説明する。すると2人は悲しい顔をする。

 

マリア「そうだったんですか」

 

米田「アイリスの奴、まだどこかであの事を思い出したんだな」

 

「ああ。特に小さい時に受けた事だ。簡単には払拭出来ないだろうな」

 

「「……」」

 

おっさんとマリアは、俺の言葉に何も言わない。いや違うな、言わないんじゃなくて言えないんだよ。大人は、未来ある子供を守る。その肝心な大人が、子供のアイリスにビビってるんだからな。

 

「そういえば、大神の奴がアイリスを追い掛けたらしいけど」

 

米田「ああ。アイリスが部屋から出て直ぐに追い掛けてった」

 

「そうか。けど、おそらく行っても無駄だろうな。アイリスからしたら、ここにる劇場のスタッフ達は全員大人だ。だから、今日1日は誰とも会いたくないだろうさ。俺を含めてな」

 

マリア「そうですか」

 

そして再び部屋の空気が重くなる。

 

「ま、これ以上いても意味ないし、今日のところは帰るわ」

 

米田「そうか。すまんな、態々アイリスの事を見に来てくれてよ」

 

「気にすんな。じゃあな」

 

そして俺は部屋から出ていった。玄関に向かってる途中でさくらと会った。

 

「ようさくら」

 

さくら「森川さん。もうお帰りですか?」

 

「まあな。で、そっちはどうだ?」

 

そっちとは勿論アイリスの事だ。

 

さくら「はい…それが紅蘭が説得に出たんですが、心を詠まれたみたいで」

 

あ~、そういえばアイリスは花組で一番霊力が高かったな。その上、人が考えてる事が読み取れるんだったな。

 

「なるほど。で、紅蘭がああなってるって訳か」

 

カンナと大神に肩を借り、ボロボロになってる紅蘭を見た。

 

さくら「そうなんです。私、アイリスが心配で」

 

「それは皆思ってる事だ。けど、少なくとも今日1日は大人しく放って置いてやれ。向こうも、子供だが1人になりたいだろうしな」

 

さくら「…分かりました」

 

さくらは俺に言われ、納得してそうでしていないという表情をする。

 

「悪いな。俺はアイリスの事情を知ってるからそう言うしか出来ないんだよ」

 

さくら「アイリスの事情…ですか?」

 

「そうだ。だが、それを言う事は出来ない。本人の口から言わない限りはな」

 

さくら「……」

 

その言葉にさくらは下を向く。

 

「とにかく、今日はもう遅いからお前も休め。肌にも悪いぞ?」

 

俺は頭を撫でて劇場から出て行った。さて、今の現状アイリスから話を聞くのは難しい。だからといって、先延ばしにしても意味がない。どうするか…

 

「…もう一度資料を見直すか」

 

そう決めた俺は、家に戻りアイリスの資料を見返す事にしたのだった。いい解決策が見つかればいいけどな。



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第十七話

翌朝、俺は朝食を済ませてアイリスの事を調べていると、電話が鳴る。しかも、緊急の音の方だ。

 

「嫌な予感が…」

 

そう言いながら電話に出ると、案の定米田のおっさんからだった。

 

米田『大変だ森川!!』

 

「お、おっさん…大変なのは分かったが、声がデケェ」

 

俺は受話器から耳を離してそう言う。

 

米田『す、すまねぇ』

 

「別にいいけどよ。で、そんだけデケェ声出すって事は何かあったんだろ?」

 

米田『そうなんだ!アイリスの奴が、届いたばかりの光武で浅草に出ていっちまったんだよ!!』

 

「はぁっ!?」

 

今度は俺がデカい声を出す。だってよ、電話がきてアイリスが光武に乗って浅草に出て行ったって聞けば、誰だってあんだけ声出すぞ。

 

米田『既に大神達は浅草に向かってる。しかも、黒之巣会の奴等も出て来てやがる』

 

「黒之巣会もか」

 

なんともタイミングが悪い事で。

 

「とにかく、俺もすぐに浅草に向かう」

 

米田『すまねぇ』

 

そして俺は電話を切ろうとする。すると、おっさんがこう言った。

 

米田『アイリスの奴を…助けてやってくれ。あいつは…大神もだが、それ以上にお前の事を好いている』

 

「…出来る限りの事はするつもりだ」

 

そして電話を切り、急いで浅草に向かう。屋根の上を移動し、浅草に到着する。すると既に建物は壊れており、脇侍も出現していた。

 

「酷いな。これがアイリスがやったのか?」

 

周囲を見回していると、さくら達がアイリスが乗っているであろう金色の光武を取り囲んでいた。しかし、その光武は他の光武を攻撃し逃げていく。

 

「あちゃ~…また要らん事したんだろなあいつら」

 

俺は囲んでた赤、紫、緑の光武の搭乗者達を見て苦笑いした。

 

「大神とさくらがアイリスを追いかけたか。なら、俺も追いかけるか」

 

俺も屋根の上を移動し、アイリス達の元に向かった。到着すると、さくらと大神がアイリスの光武を捕まえていた。

 

アイリス「嫌!放して!!」

 

さくら「アイリス!」

 

大神「落ち着くんだ!」

 

「やれやれ。見てられないな」

 

俺は地面に下り、アイリス達の前に出る。

 

さくら「森川さん!?」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん…」

 

「よっ、アイリス。随分派手にやったな」

 

俺は笑いながらアイリス達に近付く。

 

アイリス「……」

 

アイリスは、黙ったまま俺から顔を背けている。

 

「……」

 

俺も黙ったまま、アイリスを見る。俺は煙草を吸いだす。

 

「「……」」

 

さくらも大神も、2人とも俺達の事を黙ったまま見ていた。

 

「…スッキリしたか?」

 

アイリス「えっ?」

 

「こんだけ暴れて、スッキリしたのかって聞いてんだよ」

 

アイリス「……」

 

俺の言葉に、アイリスは再び黙ってしまう。

 

「確かに、他の連中がお前の事を子供と見てしまう。それは仕方ねぇな。実際お前はまだ子供だ」

 

さくら「森川さん!そんな言い方…」

 

大神「さくら君」

 

文句を言おうとするさくらを大神が止める。

 

「だがな、俺や他の連中から言わせれば、子供でいいじゃねぇか。二十歳を過ぎれば大人…子供の時間の方が短いんだ」

 

さくら「そうよアイリス。誰だって子供だった時はあるのよ?」

 

大神「そうだね。大人になったら、どんなに戻りたくても子供に戻る事は出来ないからね」

 

「その通りだ。大人になれば、残りの人生はずっと大人だ。子供だった時間なんて一瞬で過ぎる」

 

そして俺はアイリスの側に行き、抱きかかえる。

 

「子供でいいじゃねぇか。子供なら多少の我が儘だって許される。今この時を大いに楽しめばいいんだよアイリス」

 

頭を撫でて俺はそう言う。

 

アイリス「…お兄ちゃん!!」

 

そしてアイリスは俺にしっかりと抱き着く。

 

大神「アイリス、君は俺達の大切な仲間なんだ。皆心配してるんだよ」

 

アイリス「うん!」

 

ようやくアイリスの顔に笑顔が戻ったのでった。

 

大神「さぁ!皆の元に戻ろう」

 

「「「はい!(うん!)(ああ!)」」」

 

俺達は、マリア達の元に戻り、脇侍の殲滅を開始する。さぁ、反撃開始だ!!



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第十八話

アイリスを無事説得した俺達は、マリア達と合流する。

 

大神「皆、待たせたね」

 

『隊長(少尉)(大神はん)!!』

 

さくら「お待たせしました!」

 

アイリス「皆ごめんね」

 

アイリスは合流した早々、皆に謝る。キチンと謝れれば大したもんさ。

 

マリア「いいえアイリス、私達こそごめんなさい」

 

紅蘭「せやな。ウチやすみれはんが余計な事言ってもうたからな」

 

すみれ「ちょいと紅蘭!それではまるで、私が悪いみたいな言い方ではありませんか!」

 

カンナ「いや、お前も充分悪いからな?アタイ達と一緒で」

 

カンナの言葉に、俺は思わず頷いてしまう。だって、その通りだしな。

 

大神「さぁ皆、反撃開始だ!」

 

『了解!』

 

大神の言葉に、俺を除いた全員が返事した。だいぶ隊長らしくなってきたな。

 

マリア「隊長、敵の幹部は雷門の向こうの浅草寺にいます。一気に叩きましょう」

 

紅蘭「けど、そう簡単にはいかんようや。途中にある雷門は閉められとるで」

 

見ると、雷門は確かに閉じられていた。

 

大神「仕方ない。…気が引けるが門を破壊して進もう」

 

紅蘭「光武の力じゃ無理やで。雷門は以前焼失した苦い経験から、シルスウス鋼で再建してるんや!光武の攻撃だろうが、翔鯨丸の砲撃だろうが受けつけへんで」

 

「また面倒だな。ってか、シルスウス鋼って聞いたことねぇぞ」

 

紅蘭の言葉に、俺は聞こえない声でツッコミをする。だって、前世でも聞いた記憶ねぇしよ。

 

大神「なに?それじゃあ絶対に中に入れないのか!?」

 

「安心して下さい」

 

大神の言葉に、俺が前に出る。

 

「皆さんが乗ってる光武や、翔鯨丸の砲撃も効かない。ならば、それ以上の威力で壊せばいいわけですね」

 

紅蘭「た、確かにせやけど…森川はん、どこにそんな威力のあるモンが?」

 

「大丈夫です。けれど、申し訳ありませんが皆さん、耳をしっかりと塞いでいて下さい」

 

『??』

 

俺の言葉を理解してないか。そりゃそうだろな、いきなり耳を塞げって言われればな。

 

大神「とにかく皆、森川さんの言う通り耳を塞ぐんだ!」

 

大神が指示してくれたか。少し待ったし、全員が塞いだだろ。塞いでねぇ奴は知らん。

 

「それでは。スゥゥゥゥ……」

 

俺は大きく息を吸い、目標の雷門入口の方に向く。

 

「ゥゥゥゥゥ……ボイスミサイルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!

 

腹に溜め込んだ空気と一緒に、思いっきり叫び口からミサイル並の威力の音を飛ばす。

 

大神「ぐっ!!?っっっっっっっ!!」

 

さくら「み、耳がっ!!!」

 

すみれ「な、なんて声ですの!!!!?」

 

紅蘭「あ、あかん!これ以上近づけば光武が悲鳴あげるで!!!!」

 

カンナ「な、なんなんだよ!!?」

 

アイリス「耳が痛いよぅぅぅ」

 

マリア「っっっっ!!!!」

 

耳を塞いでても、かなりダメージあるみたいだな。音壁かボイスアーマーでも纏わせときゃよかったか。 だが、お陰で雷門の入口は綺麗に吹き飛んで開いたからいいか。

 

「開きましたね。皆さん、大丈夫ですか?」

 

大神「え、ええ…なんとか」

 

さくら「森川さんに、耳を塞ぐうように言われてなかったら」

 

すみれ「か、考えるだけで恐ろしいですわ」

 

「すみません。何せ久々に使ったもので威力の加減が上手くいかなくて」

 

俺は久々に使ったので、威力の加減が出来ないことを謝る。事実だしな。

 

マリア「ですが、森川さんのお陰で雷門は開きました」

 

カンナ「だな。一気にけりをつけてやるぜ!」

 

大神「いくぞ!」

 

そして大神達は、ボスである敵の元に向かっていった。

 

「さて、後はあいつらがなんとか…って、まだ雑魚がうじゃうじゃと」

 

俺を取り囲むように、脇侍達が立っている。ったく、めんどくせぇな。

 

「相手するつもりはなかったが、俺を取り囲んだんだ。やられる覚悟はあんだよな?」

 

脇侍「ギギ…」

 

俺は脇侍達を睨む。すると脇侍達は怯んだのか、俺から少し距離をとる。

 

「ガラクタが…大圧力鍋!

 

大圧力鍋を使い、俺を取り囲んでた脇侍達を気圧で全て押し潰した。そこに残ったのは、ペシャンコに潰れたガラクタの山だった。

 

アイリス「せ~の…勝利のポーズ、決めっ!」

 

そんな声が聞こえた。どうやら向こうも無事に終わったみたいだな。

 

「さてと!俺も帰るとするか」

 

軽く伸びをして、俺は元来た道を走り家に帰ったのだった。それから数日後、色々と壊された浅草は元に戻りつつある。平和な日がまた戻ってきた。俺は散歩をしてると、劇場前でさくらとアイリスがいた。

 

「アイリスのやつ、えらく嬉しそうだな」

 

さくらの前で笑顔で踊っていた。踊るってより回ってる?

 

さくら「ねえ、アイリス…1つ聞いていい?」

 

アイリス「えっ!?」

 

さくら「森川さんに抱き付いたとき…何か感じたの?」

 

アイリス「……」

 

さくらの言葉に黙るアイリス。ってか、隠れて聞いてるってなんか…ねぇ。

 

紅蘭「アイリス、大神はんが呼んでるで」

 

アイリス「分かった紅蘭」

 

さくら「……」

 

アイリス「お兄ちゃんが、前駄目になったデートやり直してくれるんだって。で、夜に大輔お兄ちゃんがアイリスの好きなの作ってくれるから、お店においでって!」

 

さくら「嬉しそうね」

 

あの…さくら、なんでお前の背後から黒いオーラが見えるのか説明してほしい。

 

アイリス「あっそうだ。大輔お兄ちゃんに抱き付いた時ね…何か、とってもあったかかった」

 

アイリスはアイリスで、何で顔を赤く染めるんだよ…

 

アイリス「それでね…」

 

さくら「うん?」

 

アイリス「後はヒ・ミ・ツ!行ってきま~す!」

 

さくらにそう言い残し、大神の元に行ってしまった。

 

さくら「……」

 

アイリスがいなくなった後、さくらから更に黒いオーラが出たのは気のせいではないだろな。こりゃ、今さくらと会ったら完全にとばっちりを食らう。俺はそっとその場から離れようとする。だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン!

 

 

 

 

 

 

 

 

うっかり足下にあった箱に足をぶつける。

 

さくら「……」

 

当然その音に気づいたさくらは、俺の方を見る。

 

「よ、ようさくら」

 

さくら「……」

 

そのまま俺の方に近寄ってくる。

 

さくら「…森川さん」

 

「な、なんだ」

 

さくら「少しお話が。マリアさんと一緒に」

 

ヤバイ…目が笑ってねぇ…

 

「わ、悪いな。俺今から買い出しに行かないと…」

 

さくら「大丈夫です。私が後で付き合いますので」

 

そんなニッコリとした顔をすんな!!

 

「いや…今日はアイリスの」

 

さくら「大丈夫です。私も手伝いますから」

 

駄目だ。これは何を言っても意味がねぇ。肚括るか…そして俺は、さくらと一緒に劇場に入り、マリアと何故か説教をくらうのだった。因みに、さくらとマリアがアイリスの料理を手伝いに来たのは言うまでもない。



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第十九話

とある日、俺は店の掃除をしている。今日は久々に店を休みにし、掃除や食材整理等を行っている。だが、普段からマメに行ってるから、すぐに終わったんだよな。

 

「予定より早く終わっちまったな…」

 

煙草を吸いながら呟く。どうすっかな~…この後。

 

「散歩にでも行くか」

 

店に鍵をかけて、銀座の街をブラブラ散歩することにした。歩いてると、所々に明日公演する舞台のポスターがあちこちに貼られている。

 

「そういえば明日か。おっさんからチケット貰ってるけど…」

 

一昨日、店にこの公演のチケットが届いた。差出人が米田のおっさんからだ。

 

「けど、この公演親善大使向けの招待客のみだろ。俺みたいな一般人が行ってもいいもんかねぇ」

 

煙草を吹かしながらそう呟く。だってよ、この公演、一回だけなんだぜ。そんな中、俺がチケット持ってるってバレたら…

 

(お~恐ろしいな)

 

思わず体がブルッちまった。

 

「おっ、丁度劇場前か。明日に向けてラストスパートかけてんだろうな」

 

そのまま前を通り過ぎようとすると…

 

「なんですかこれは!!」

 

「うおっ!?」

 

俺は思わずビックリして、吸ってた煙草を落としてしまった。ちゃんと火は消したぞ。

 

「今の声…すみれ奴か。またなんかあったのか?」

 

俺はそのまま劇場の方に足を戻し、来賓客用の入り口から中に入っていった。すると、食堂ですみれがあやめに向かって叫んでいる。

 

すみれ「神崎“つみれ”とは、どういうことです!!」

 

あやめ「ごめんなさい、つみ…いえ、すみれ。誤植なの」

 

おい、お前が間違えんなよあやめ。

 

すみれ「誤植!!貴女方キチンと確認しなかったの」

 

かすみ「しました。ですが刷り上がって来たときにはつみれに…」

 

すみれ「何よそれ!!当然直していただけるんでしょうね?」

 

あやめ「もちろんよ」

 

そりゃそうだろ。修正しなきゃ、親善大使の連中がすみれの名前を間違って覚えて帰ることになるからな。

 

すみれ「分かりました。ですが、もし明日の招待客の皆様に、こんなパンフレットお渡しするようでしたら、私は舞台に立ちませんから!失礼!」

 

そして食堂を出ていった。

 

あやめ「ふぅ…」

 

「大変でしたね」

 

すみれが出ていったのを確認してから、食堂に入りあやめに声をかけた。

 

あやめ「森川さん…」

 

「お疲れですあやめさん。すみれさんの声、外まで聞こえてましたよ」

 

あやめ「そう…」

 

その言葉に、あやめは疲れた表情をする。

 

「かすみさん達も大変でしたね」

 

俺は未だに隅っこに寄ってる、3人に話しかけた。

 

かすみ「いえ…」

 

「ですが、流石にこれは酷いですね」

 

俺は、テーブルに置かれてるパンフレットを1枚取り上げる。

 

由里「はい…今朝届いて確認をしたら」

 

「こんな風に仕上がっていたと」

 

椿「そうなんですよ」

 

「ま~、こればかりはかすみさん達のせいではないので、気にしないで下さい。すみれさんも、頭では分かってる筈ですから」

 

かすみ「はい」

 

俺の言葉に、3人の表情はほんの少しだけ晴れる。ま、こればかりはかすみ達をせめても意味ないからな。

 

「ですが、間違いであっても、笑ってはいけませんよ。あやめさんも、すみれさんの名前を言い間違えかけていましたよね?」

 

あやめ「そうね。私達も配慮が足りなかったわ」

 

「分かっているなら大丈夫ですね。笑うのは、すみれさんが許して、無事舞台が終わってからです。そうすれば、笑い話になりますし」

 

『はい!』

 

3人は、笑顔で返事をした。

 

「さて、私は米田さんにご挨拶してきます」

 

あやめ「ええ」

 

そして俺は、おっさんの部屋に向かう。しかし…つみれか。寒くなれば鍋だな…

 

(本人の前じゃ絶対言えねぇがな)

 

支配人室に近づくと、中から話し声が聞こえた。

 

(おっと、先客がいるみたいだな。出直すか)

 

俺はそのままあやめ達がいる食堂に戻ろうとする。すると中から背の低いじいさんとさくらが出てきた。

 

さくら「あ、森川さん」

 

「こんにちはさくらさん。此方の方は?」

 

さくら「はい、私の家に代々使えてくれている権爺です」

 

「権太郎といいますだ」

 

「これはご丁寧に。私は、この近くで飲食店を営んでいる森川大輔といいます。今度是非、ウチの店に食べに来て下さい」

 

俺はじいさんに挨拶して、尚且つ自分の店も宣伝しておかなきゃな。

 

権爺「これはご丁寧にどもども。ではさくらお嬢様、オラは一度奥様に電話して来ますだ」

 

そしてじいさんは行ってしまう。

 

さくら「私もお稽古に戻ります。それでは森川さん」

 

さくらも俺に挨拶して、舞台に戻っていった。そのまま中に入ると、おっさんが疲れた顔をしてた。こっちもかよ…

 

「えらく死にそうな顔してるな?」

 

米田「ほっとけ」

 

「ここの支配人と副支配人って仕事は、ストレスが溜まる仕事みたいだな。あやめと同じ顔してるぞ?」

 

米田「そうかよ…」

 

やれやれ。随分とやられてんな。しゃあない、愚痴くらい聞いてやるか。

 

「何があったんだ?愚痴くらい聞いてやるよ」

 

米田「そうかよ。実はな…」

 

おっさんの話を聞く。聞くとさっき会ったじいさんぼ話では、明日はなんでもさくらの親父の命日らしい。で、運悪く明日は1日限定の舞台がある。なので、さくら自身が帰ることを断ったらしい。

 

「なるほど。まぁ、人の家の事をとやかく言うつもりはねぇが、さくら自身が決めたんならそれを尊重してやればいいんじゃねぇのか?」

 

米田「まぁ、そうだがよ。向こうはそう思えないらしいからな」

 

「そこは納得してなくても、さくらの意見を通してやれ」

 

米田「…そうだな」

 

そしておっさんは酒を飲む。俺もご相伴にあずかる。その日の夕方、俺は再びおっさんの部屋に行く。

 

「やれやれ。さくらの次はすみれの奴かよ…」

 

米田「はぁ…」

 

「おっさん…アンタその内胃に穴空くんじゃないか?」

 

米田「言うな…」

 

デコに手を当てるおっさん。

 

「今度ウチに食いに来い。胃に易しい精進料理出してやるよ」

 

米田「頼む…おっと、忘れるとこだった」

 

おっさんは、何かを思いだし俺を見る。

 

米田「お前さんには話しておくけど、今回の公演の後の劇なんだが、シンデレラをすることにした」

 

「シンデレラか。主役はすみれか?」

 

俺はおっさんの言葉に疑問を持つ。

 

米田「いや、今回主役のシンデレラは…さくらにするつもりだ」

 

「さ、さくらの奴をか!?」

 

おっさんの言葉に驚く。だって、さくらはまだ入って1年経っていない。そのさくらを主役に抜擢って。

 

「随分と急な話だな。さくらは、まだ歌劇団に入ってまだ間もないぞ?いきなり主役は重くないか?華激団はまだしも」

 

米田「確かにそうだ。だが、アイツを主役にすることで、さくらの霊力を更に高めようって考えだ」

 

「…けど、やっぱ主役はなぁ。前のクレモンティーヌだって、マリアがフォローしたからこそじゃないか?」

 

前の劇の話をする。けど、おっさんの言いたいことも分かる。だが、それでさくらの奴潰れなきゃいいがな。

 

米田「そこでだ。お前さんにこの事を話したのは、さくらをフォローしてやってほしいんだ」

 

「フォローね。言っとくが、俺は舞台に関しては素人同然だぞ」

 

米田「そうじゃねぇ。さくらの奴が、プレッシャーに潰れないようにしてやってほしい」

 

また難しい注文を…

 

「…分かったよ。俺なりにフォローしてやる」

 

米田「すまねぇ」

 

「本来、こういうのはおっさんかあやめ、若しくは隊長の大神がすることだろが」

 

米田「本来ならな。だが、さくらはお前さんを好いてる。だからお願いしたんだよ」

 

「やれやれ」

 

こうして俺は、次回公演のフォローをすることが決まったのだった。因みに、翌日の特別公演は見事に上手くいった。パンフレットも、キチンと神崎すみれと修正されていた。



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第二十話

特別公演が終わり2週間後、今度はシンデレラの舞台公演が決まり、早速花組は舞台稽古を開始した。俺は初日が始まるまで、さくらのフォローを終えるまで俺は店を休むことにした。任された以上は、キチンとこなすつもりだ。で、早速舞台で台本読みをしてるのを見てたんだが…

 

すみれ「何ですかそれは!それが台詞?ただ棒読みしてるだけでしょう」

 

さくら「す、すみません。まさか、私がシンデレラを演じるとは思っていなくて…」

 

すみれ「そういう問題ではありません。先生!本当にこれで宜しいの?」

 

「…もう一度頭から」

 

さくら達と一緒に座ってる、稽古の先生に文句を言うすみれ。だが、その先生は上手くかわしてるっていうか、すみれの扱いに慣れてんだな。そして今日の練習は終わる。

 

「……」

 

米田「どうだ?さくらの奴は?」

 

「…素人の俺が言うのもなんだが、これはヤバそうだな」

 

俺は既にテンパりかけてるさくらを見てそう言う。

 

「今はまだ大丈夫だが…時間の問題だな」

 

米田「そうか」

 

俺とおっさんは、舞台から出ていく。

 

米田「森川、お前本当に店休んでよかったのか?」

 

「ああ。流石に今回ばかりは両立が厳しい。俺がいない間に、さくらのプレッシャーが爆発しないとは限らないからな。なら、初日が始まるまで店を休んで此方にいた方が対処しやすい」

 

米田「…そうか。なら、お前さんは初日まで支配人室で寝泊まりしてくれ。俺はいつも自分の家に帰ってるからな」

 

「分かった」

 

ま、稽古が終わった後帰るつもりだったが、逆にありがたい。これならすぐにフォローがしやすい。

 

「こりゃ、どうにかして、適度にガス抜きさせないとな…」

 

さて、どうしたもんか。それからも暫く、さくらの様子を見ることにする。ま、終わり次第話したり飯作ってやったりはしてやったけど、これでガス抜き出来てるかどうか…そして、舞台初日を翌日に控えたのである。

 

椿「通し稽古どうでした?」

 

売店で明日の準備をしてる椿と、それを手伝ってる俺。通し稽古を見てきた由里に話を聞く。

 

由里「……」

 

すると由里は、首を左右に振る。

 

椿「ええっ!?初日明日ですよ」

 

「これは、流石にまずいですね」

 

由里「そうですね」

 

俺達3人は、明日の心配をする。

 

「椿さん、すみませんが少し皆さんの様子を見てきます」

 

椿「分かりました。手伝っていただきありがとうございます、森川さん」

 

「いえ、それでは」

 

断りをいれ、中に入るとすみれがさくらに怒鳴っていた。

 

すみれ「何なのこれ!これではまるで学芸会じゃない!!さくらさん、貴方は主役なのよ!その意気込みってそんなものですの。貴方の役に対する気持ちって、この程度のものなの」

 

さくら「……」

 

あっちゃ~。すみれの言いたい事も分かるが、今のさくらにはトドメの一撃になるぞ。

 

カンナ「すみれ、もういいって。本番はさ、皆で助けてやりゃいいじゃねぇか」

 

紅蘭「せやな、言えてるで。さくらはんもやれるって」

 

他の連中がフォローする。ん~…こりゃまずいな。

 

「稽古はこれで終了します。今日はグッスリ寝てちょうだい」

 

そして、さくら以外は舞台から出ていき、照明が落とされた。その日の夜、明日が初日ということもあり、俺が全員に料理を振る舞う。

 

「皆さん、明日の公演頑張って下さい。何もできませんが、せめて私の料理でもてなさせてください」

 

カンナ「うほ~!うんまそ~!」

 

『いただきます』

 

そして全員が食事を始める。既におっさんや3人組は帰ったが、花組の連中と大神、そしてあやめが俺の作った料理を美味そうに食ってる。だが、一番食ってほしい奴が食ってねぇ。さくらだ。

 

「さくらさん、お口にあいませんでしたか?」

 

さくら「い、いえ!そうじゃないんです。少し疲れただけで…」

 

「…そうですか」

 

俺はそれ以上何も言わない。

 

カンナ「おふぁわり!」

 

紅蘭「森川はん、ウチもや!」

 

「たくさんありますから、ドンドン食べて下さいね」

 

だが、結局さくらはあまり飯を食わなかった。で、明日に備えて今日は全員早目に寝た。

 

「ん~まずいな。爆発寸前だ」

 

俺は、さっきのさくらを見てそう呟く。

 

「明日の朝イチで、さくらのガスを抜かねぇとな」

 

そう考えてると、廊下から足音が聞こえた。

 

「誰だ?こんな時間に」

 

俺は起き上がり部屋を出る。そして廊下を見るとさくらがいた。

 

「あれは…さくら?」

 

さくらが俺に気づかず、そのまま歩いていった。

 

「あっちは食堂があるが…まさか!?」

 

俺はある事を思いだし、すぐに食堂に向かう。その途中で、マリアとすみれと鉢合った。

 

マリア「森川さん」

 

「マリアさん、それにすみれさんも」

 

すみれ「こんな時間にどうなさったのです?」

 

「それは此方の台詞…と言いたいですが、お2人と同じです」

 

その言葉で、2人はすぐに理解した。

 

マリア「森川さんも見たんですね」

 

「ええ。ですが、今は急ぎましょう。嫌な予感がします」

 

そして俺達は食堂に向かった。到着すると、さくらは冷蔵庫から食べ物を食べていた。

 

マリア「さくら?」

 

「さくらさん!さくらさん!!」

 

俺はすぐにさくらに駆け寄り声をかける。

 

さくら「…あ、森川さん。それにマリアさんも」

 

そう言うと、すぐに自分の足下に散らばってる食料を見て絶句する。

 

さくら「私…私、怖くて、不安で」

 

「大丈夫だ。落ち着け」

 

さくらは泣きながら、俺の胸に顔を押し付ける。俺も素の口調でさくらをあやす。

 

マリア「さくらだけじゃない。初めての初日の主演は、誰でもそうだった」

 

さくら「私…怖くてできない」

 

泣きながらそう言うさくら。まさか、こんな風に爆発するとは…完全に油断した俺が悪い。

 

マリア「アイリスだって紅蘭だって、すみれだって同じ様に苦しんで、それを乗り越えて来たのよ」

 

マリアが優しくさくらに話しかける。

 

「マリアの言う通りださくら。誰にだってプレッシャーはあるんだ」

 

さくら「私には…無理です!」

 

未だに俺の胸の中で泣くさくら。そして暫く泣いた後、泣きつかれて現在は俺にもたれ掛かって眠っている。

 

「しかし、まさか睡眠関連摂食障害が出るなんて…」

 

もたれ掛かったまま寝ているさくらを見ながら、俺はそう呟く。

 

マリア「森川さん、何ですか?その睡眠関連摂食障害とは?」

 

「おっと、そう言えばまだこの時代にはそんな病名なかったか」

 

しまった。うっかり俺がいた時の病名を言っちまった。

 

すみれ「どうかなさいましたの?」

 

「なんでもない。とにかく、まずはさくらを自分の部屋で寝させてやろう。その後話してやる」

 

マリア「そうですね」

 

俺は寝てるさくらを抱き抱え、さくらの部屋に向かった。ゆっくりベットに寝かせ、俺達は支配人室で話をする。ついでに紅茶を出す。

 

「睡眠関連摂食障害…寝ている間に体が勝手に起きて、食事をする現象の事だ。今回の場合、初主役に対するプレッシャーで、ストレスが蓄積されたのが原因だろう」

 

マリア「やはり…」

 

「起きたから言っておくが、今回俺が店を休んでまでここにいたのは、米田のおっさんに頼まれてなんだよ」

よ」

 

すみれ「支配人に?」

 

「ああそうだ。前にあった特別公演の時、おっさんに次回シンデレラの主役はさくらでいくって聞いててな。で、さくらを精神的にフォローしてくれって頼まれたんだよ」

 

すみれ「そうでしたの。…クシュン」

 

くしゃみをするすみれ。そら、この時間にその格好は寒いわ。しゃあない、俺の上着をかけてやるか。

 

すみれ「あ、あの…」

 

「明日は大事な初日なんだ。大切な女優に風邪ひかせちゃ悪いからな。嫌と思うが我慢してくれ」

 

すみれ「い、いえ…ありがとうございます///」

 

素直にお礼を言われると嬉しいな。で、マリア…何で俺を睨む。

 

「んっん~!ま、フォローしてたつもりが、キチンとガス抜きできてなかったからああなっちまったんだがな。流石に睡眠関連摂食障害が出たときは驚いたが」

 

マリア「……」

 

「明日改めて、さくらと話しておくさ。プレッシャーは、人それぞれ違う。そこは理解してやってくれ」

 

すみれ「…分かりましたわ」

 

流石のすみれも、今回に限っては理解してくれたか。

 

すみれ「それと、別のお話なのですが…森川さん、それが普段の話し方ですの?」

 

「そうだ。この事は米田のおっさん、あやめ、さくら、マリアが知ってる」

 

マリア「森川さん、おそらくアイリスもかと」

 

「マジかよ。んじゃ、後知らないのは大神と紅蘭、カンナ、3人娘の連中だけか。また随分とバレたもんだな」

 

俺は笑いながらそう言う。だってよ、最初はおっさんだけだったんだぜ?

 

すみれ「そうですか。でしたら、私の前でもその様に話して下さらない?もちろん、他の方達の前では普段通りで構いませんわ」

 

「そうか。なら、そうさせてもらうぞすみれ」

 

すみれ「は、はい///」

 

…何で頬を赤く染める。これ、さくらにマリア、最近ならアイリスで見たぞ。

 

マリア「……」

 

…マリアさん。睨むより、普通に無言で素の目で見られる方が、数倍怖いですから!そして話は終わり、それぞれが眠りについた。翌朝、初日というだけあり、客席は満員でチケットは完売。当日券も即売り切れた。後は劇が始まるのを待つだけ…だったんだが。

 

紅蘭「なんやて!?さくらはんが楽屋に立て籠った!!ベル鳴ったでどないすんねん!?」

 

さくらは、やはり昨夜の不安を払拭できず、あろう事か楽屋に立て籠ってしまった。どうするか…

 

すみれ「……」

 

するとすみれは、楽屋の方に歩いていった。嫌な予感がするのは、気のせいじゃねぇだろうな。やれやれ…

 

(念のため俺も様子を見に行くか)

 

俺はすみれの後を追い掛けた。楽屋の前に到着すると、あやめの姿しかなかった。すみれの奴、どこ行ったんだ?

 

あやめ「さくら、とにかくここを開けてちょうだい」

 

さくら『私…やっぱりできません』

 

中から弱々しい声が聞こえた。こりゃマジでヤバそうだな。

 

すみれ「どいて下さいまし」

 

すると、すみれがやって来た。手にさくらの刀と自分の薙刀を持って。まさか…

 

 

すみれ「きええええええ!!!!」

 

俺の考えは当たり、見事薙刀でドアを真っ二つにしたのだった。

 

さくら「す、すみれさん!?」

 

流石のさくらも、ドアを真っ二つにするとは思っていなかったみたいだな。ってか、俺も思わねぇよ。そのままさくらの腕を掴み、舞台に引っ張っていったすみれ。そのままさくらを前に投げ、持ってた刀も放り投げた。

 

すみれ「抜きなさい」

 

さくら「えっ?」

 

すみれ「抜きなさい!その曲がった根性、叩き直してあげますわ!!」

 

そう言いながら、薙刀で攻撃する。さくらも素早く落ちてた荒鷹を拾い上げ防いだ。何だかんだで、体に染み付いてんだな。

 

さくら「や、止めて下さいすみれさん!」

 

すみれ「聞く耳持ちませんわ!!」

 

すみれの攻撃を防ぐさくら。そして、荒鷹を抜き反撃した。腕前はさくらが若干だが上であり、そのまますみれの薙刀を弾き飛ばした。

 

さくら「……」

 

すみれ「…それでいいのです。その力強さで、お芝居に挑みなさい」

 

さくら「!?すみれ…さん」

 

やれやれ。すみれの奴も素直じゃないな。こんな回りくどいやり方しやがってよ。

 

あやめ「終わったわね。それじゃあ、幕を上げるわよ!お客様が待ってるわ」

 

『はい!』

 

そして確実持ち場についた。こうして、さくらの初主役であるシンデレラは、周りのフォローもあり無事公演を乗りきったのだった。…けど、すみれマジでビビったぞあれはよぅ。



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第二十一話

久々に“賽の花屋”の仕事が舞い込んできた。本来なら休業中なんだが、何度も頻繁に連絡がきたので、依頼を引き受けた。依頼主は、まさかの神崎重工からだ。すみれの奴の実家とは驚いたな。ま、依頼内容は単純で、神崎重工に別の重工からのスパイがいるかもしれないから、それが誰でどんな奴に話してるか調べてほしいそうだ。で、調べると簡単に尻尾を掴んだ。で、報告して俺の仕事は終了。今現在は、地下のモニターから帝都の街を見ている。

 

「たまには、帝都全域に仕掛けたカメラの様子も見ておかないとな」

 

モニターに映ってる数台のカメラの映像を見ながら、そう呟く俺。これで起動してないのがあれば、交換しなきゃなんねぇしな。

 

「ん?あれは…おい、拡大してくれ」

 

「了解です。メインモニターに映します」

 

俺は1つのカメラの映像を見て、そのカメラの映像を拡大するように指示する。因みに指示した相手だが、ポニーテールの女だ。ま、女といっても俺が作ったんだがな。戦闘力は低いが、その分通信やハッキング等の技術はピカイチだ。キーボード等の入力を素早くするために、手首から先が多肢に分かれてる。やっぱ、指多い方が早いだろ?普段は普通の手での対応で充分だがな。因みに作ったガイノイド…まぁアンドロイドだが、種類は4つ。種類といっても、見た目が違うってのが殆どだ。1体はさっき言った茶色のポニーテール。次が黒髪のロング。で、眼鏡かけたのと短髪で大人なタイプだ。意味?あのアニメとかで出てきたのがこの4種類しか知らないからだよ!!…ゴホン。言っておくけど、最初のポニーテール以外は、まだ起動テストをしてないから、現時点で使えるのがポニテの奴なんだよ。さて、メインモニターに目を向けると、そこには花組の連中が映っていた。

 

「珍しいな。大人数で出掛けるとは」

 

オペレーター「はい。劇場は本日休演日ですので」

 

「なるほど。たまの休日だし、女連中で出掛けようってなったわけか。ま、楽しそうだしいいんじゃねぇか?」

 

モニターに映ってる顔は、とても楽しそうだった。マリアの奴も、いい顔で笑うようになったじゃねぇかよ。

 

「ま、特に問題なさそうだし、そのまま映すだけ映しといてくれ。他はそのままカメラの動作チェックだ」

 

オペレーター『了解です』

 

さくら達の映像を左隅に映しながら、残りの動画のチェックを行っていく。そして、ようやく全てのカメラの動作チェックが終了した。

 

オペレーター「全てのカメラ動作のチェック、終了しました」

 

オペレーター「全て正常に稼働中です」

 

「ご苦労さん。なら、後は数人を残して休憩を回してやってくれ」

 

そう言い残すと、俺はそのまま店の方に戻っていく。店に到着すると、開店準備を始め看板を営業中にする。因みに店の方は1人で切り盛りしている。そこまで広くないから、オペレーター連中を使うまでもない。それに、仮にオペレーターを使ったら、おっさんやさくら達に説明すんのが面倒だしな。

 

「さて、今日ものんびり頑張るか」

 

ま、普段はそこまで客は来ねぇがな。

 

 

 

 

カランカラン

 

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

扉に付けてるベルが鳴ったから、そっちを見る。すると、大神やおっさんを除いた帝劇の女連中がやって来た。

 

さくら「森川さん、こんばんは」

 

「こんばんはさくらさん。皆さんお揃いで」

 

マリア「すみません。突然大人数で押し掛けてしまって」

 

いきなり来た事に、マリアが代表して謝る。

 

「大丈夫ですよマリアさん。さぁ皆さん、適当にかけてください」

 

俺がそう言うと、さくら達はカウンターとテーブル席に分かれた。俺はそのまま看板を閉店に変える。流石に、劇場の女優だしな。

 

「皆さん今日は一緒に出掛けていたんですか?」

 

俺は見てたから知ってるが、一応知らないフリをしとかねぇとな。

 

あやめ「私やかすみ達は、ついさっき合流したのよ。他の皆は、仲良く買い物してたみたいよ」

 

「そうでしたか。今日は米田さんや大神さんは、ご一緒じゃないんですか?」

 

2人の事を聞くと、カンナが代わりに答えてくれた。

 

カンナ「ああ。支配人と隊長は、男同士で出掛けてったみたいでな」

 

紅蘭「せやから、ウチらはウチらで外食しよかって話になったんや」

 

かすみ「そうなんです。たまには、女性達だけで外食もいいと思いまして」

 

「そうでしたか。でしたら、何故ウチのお店に?出掛けられていたのでしたら、そちらの方でと思うんですが?」

 

ワザワザ出掛けたんなら、お前らの家の近所のウチで飯食わなくてもいいだろうに。

 

すみれ「最初はそれも考えましたけれど、やはり森川さんのお料理の方が、断然美味ですので」

 

アイリス「暫く大輔お兄ちゃんのご飯食べれなかったもん」

 

由里「そうですよ!森川さんのお店は、其処らのお店より安いですし美味しいんですよ」

 

椿「はい。それに劇場の近くなら、少し遅くなっても安心ですし」

 

なるほど。そう言ってくれると、料理人冥利に尽きるな。

 

「それは嬉しいことを言ってくれますね。お世辞でも嬉しいですよ」

 

さくら「お世辞なんかじゃありませんよ。ねぇ皆さん」

 

マリア「そうね。さくらの言う通りですよ。私達は、森川さんの料理を食べに来たんですから」

 

「ありがとうございます」

 

ヤベ…ジーンときた。

 

「では、ご注文をお伺いしましょう。今日はメニューにない物でもお作りしますよ。皆さんの故郷の料理等でも」

 

カンナ「あたいの故郷は沖縄だけど…久々のゴーヤチャンプルとソーキソバが食いてぇな♪」

 

紅蘭「ウチは北京やさかい、それでお願いしますわ」

 

さくら「私は…」

 

「さくらさんの故郷は仙台でしたね?でしたら、仙台づけ丼とはっと汁等はどうですか?」

 

さくら「うわ~!はっと汁なんて久し振りです!」

 

「他の皆さんも、そんな感じでお作りしましょうか?」

 

『お願いします』

 

「ですが、もしこれが食べたいというのがあれば、遠慮なく言ってくださいね」

 

よっしゃ!久々の各国の料理だ!腕がなるな~♪さて、まずはさくらのだな。俺は素早くさくらの故郷料理を作っていく。同時進行で、他の下拵えも忘れないがな。そして数十分後…

 

「お待たせしました。まずは、さくらさんのはっと汁と仙台づけ丼です」

 

さくら「うわ~!美味しそう~」

 

「マリアさんには、まずは定番のボルシチにピロシキ、そしてカトリェータにサラート・オリヴィエにデザートのシャルロートカです」

 

マリア「まさか、ここで本格的な料理が食べれるなんて」

 

「すみれさんは神奈川なので、けんちん汁と小田原とろ金目鯛の三宝丼です」

 

すみれ「懐かしいですわ。よくお祖父様とお婆様が一緒だった時に食べに連れていって下さいました」

 

「カンナさんには、要望通りのソーキソバとゴーヤチャンプル、そしてミミガーにアグー豚を使った丼です」

 

カンナ「おおおおっ!うんまそ~!!」

 

「アイリスはこれでいいんだね?」

 

アイリス「うん♪」

 

頷くアイリスの前に置いたのは、オムライスだ。最初はアイリスの故郷の料理を作るつもりだったが、本人からオムライスがいいと言われた。ま、少しホッとしたがな。アイリスの故郷は酒を使った料理が多いからな。あんまりすすめれないんだよ。

 

「紅蘭は、北京料理のマーラー刀削麺に油条と杏仁豆腐です」

 

紅蘭「流石森川はんや!見事に再現してくれてますな」

 

次々と料理を出していく。だが、東京出身の連中は困ったな。ま、あやめとかもそこは分かってるみたいで、前もって別のを注文してくれたけどな。かすみと由里の2人は、茨城と静岡の出身なので、それぞれの故郷料理を出した。因みに椿の奴は、あやめと同じ東京なので店のメニューを注文してくれた。



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第二十二話

今日はシンデレラ公演が上手くいったお祝いに、関係者等を集めてシンデレラ公演成功パーティーが開かれる事になった。俺もさくら達からそのパーティーに招待されている。始まるまで少し早いが、俺は既に劇場に来ている。中を見ると、さくら達がパーティーの準備に追われていた。

 

「大変そうですね」

 

マリア「森川さん!」

 

食堂のキッチンで料理を作ってるマリアに声をかける。

 

「凄い量ですね」

 

マリア「ええ」

 

大神「大丈夫かいマリア。手伝おうか?」

 

大神が食堂に来て手伝いを申し出てきた。

 

マリア「いえ、手伝っていただけるのなら、カンナ達をお願いします」

 

大神「カンナ達?」

 

マリア「はい。買出しに出てまだ帰ってこないんです」

 

マリアにそう言われ、大神は買い出しに行ってるカンナ達を迎えに行った。しかし、未だに料理の用意には時間がかかりそうだな。

 

(仕方ない、手伝うか)

 

俺はキッチンに入り、マリアがまだ切っていない材料を切り始める。

 

マリア「森川さん!?」

 

「料理の準備が遅れてるんだろ?せっかくここに普段から料理してる人間がいるんだ。使わない手はないと思うぞ?」

 

マリア「しかし…」

 

マリアは申し訳なさそうな顔をする。確かに今回俺は招待客の1人だ。だが、それで料理が間に合わなきゃ意味ねぇからな。

 

「気にすんな。逆に料理がパーティーまでに出来なきゃ、来た客の評価に繋がるぞ?」

 

マリア「…分かりました。お願いします」

 

「任せろ」

 

そして俺は材料を切り始める。ま、貰ったスキルに今までの蓄積があるから、貰った当初より素早くできるがな。で、あっという間に俺は材料を全て切り終わった。

 

「終わったぞ」

 

マリア「えっ!?」

 

流石のマリアも驚くか。普段は教えながらだから普段より遅く作ってるからな。

 

「どれどれ…残るはこれとこれか。代われ」

 

俺はマリアと交代する。そしてキッチンにあるコンロを2つ一気に使う。テキパキと料理を作る俺の姿をマリアだけでなく、いつの間にか来ていたさくら、椿、かすみが驚きの顔で見ていた。

 

「完成しましたよ」

 

「「「「……」」」」

 

「皆さんどうかしましたか?」

 

さくら「いえ…」

 

かすみ「なんといいますか…」

 

椿「あっという間の出来事で」

 

マリア「そうね」

 

「ああ。普段は皆さんに教えながらなのでゆっくりですが、店を切り盛りしている時は今位ですよ。でなければ、1人で店を回せませんよ」

 

俺の言葉に唖然としながら4人は納得した。そして夜になり、シンデレラ成功パーティーが始まった。

 

カンナ「カンパーイ!!」

 

『カンパーイ』

 

カンナが木の着ぐるみを着て、乾杯の音頭を取っていた。

 

カンナ「なんだってアタイがこんな格好しなきゃなんねぇんだよ!!」

 

すみれ「あ~らカンナさん、舞台の上より余程お似合いです事よ。オッホホホホホホッ!!」

 

カンナ「なんだとぉ!このサボテン女が…あややや…どわっ!!」

 

おいおい、あんな恰好で無理に動こうとするからそうなるんだよ。倒れたカンナを黒服の男達が起き上がらせる。

 

米田「…ク~ッ!うんめぇ!打ち上げパーティーの酒ってやつは、また格別だぜ♪大神!おめぇも遠慮なくやれ」

 

大神「いえ、自分は任務がありますので」

 

大神はいつものように断る。だが、流石に今回はパーティーの席だ。

 

「大神さん、今回はいいんじゃないですか?折角の打ち上げパーティーなんですから」

 

米田「そうだぞ大神。隊長たる者、苦しみと喜びを仲間と分かち合ってこそ、真の隊長と言える。ここに来て3か月も経ってるのにまだそんな事も分からねぇのかこの石頭!」

 

おっさんはおっさんで、普段から大神に酒を進めすぎなんだよ。

 

米田「さぁグッといけ!!」

 

大神「…はぁ」

 

大神は諦めたのか、酒を飲んでいく。それを見たおっさんも満足したのか、更に自分も飲んでいく。俺は少し離れた場所に移動する。そして暫くすると、おっさんと大神は酔いつぶれて眠っていた。

 

あやめ「あらあら、2人とも」

 

大神「支配人…もう飲めましぇん…」

 

米田「グ~ッといけ…グ~ッと…」

 

やれやれ。

 

カンナ「はい!という訳で盛り上がってまいりました~!シンデレラ杯花組争奪隠し芸大会!!お次のチャレンジャーは誰だぁ!!!」

 

さくら「はい!あたしです!」

 

するとさくらは、カンナと打ち合わせをし、竹を2本高く投げるようにお願いした。

 

さくら「…お願いします」

 

カンナ「んじゃ、いくぜ!とりゃあああああああ!!!!」

 

カンナは空高く竹を放り投げた。

 

さくら「…!!たあああああああっ!!!!」

 

それと同時に、さくらも高くジャンプして竹を一振りでバラバラに斬った。斬った竹は、コップみたいになってそれぞれの場所に落ちてきた。地面に着地し刀を収めると拍手が響き渡る。確かにあれはすげぇな。

 

さくら「故郷でお祝い事があると、こうして杯を作って乾杯するのが、真宮寺家の習わしなんです」

 

カンナ「へぇ」

 

花組の面々はさくらの技を褒めていた。

 

マリア「わ…私も…」

 

するとマリアが話し出す。

 

マリア「か、かくし芸…やってみようかしら」

 

マリアがそう言うと、マリアの性格を知ってる連中は全員が驚いた。

 

『ええええええええっ!!!!?』

 

ま、そら驚くわな。俺ですら顔には出してないがさくら達と同じ様に驚いてるんだもんよ。

 

あやめ「珍しい事もあるものね。何を見せてくれるのかしら?」

 

するとマリアは、懐から自分の拳銃を取り出した。

 

マリア「私がお見せするのは、The Verses 日本の言葉で乾杯という意味です」

 

紅蘭「なんやベロ噛みそうな名前やな」

 

カンナ「ザ、ババーシュ…いってぇ!」

 

すみれ「言ってる側から噛んでるおっちょこちょいがいますわよ」

 

アイリス「で、どんな事するの?」

 

マリア「空に向けて銃を撃ち、落ちてきた弾に向かって次の弾を発射して、空中で2発の弾丸をぶつけ、2つの標的を同時に命中させるという技よ」

 

カンナ「ちょちょちょ!タンマタンマ!!」

 

流石のカンナもかなり焦っている。そらそうだわな。自分に弾丸が飛んでくると聞いて落ち着ける訳ないわな。

 

マリア「カンナ…私を信じろ」

 

カンナ「…お~し!いつでも来やがれ!!」

 

カンナもハラを括ったのか、覚悟を決めていた。そしてマリアは空に向けて銃を放った。そして落ちてくる弾丸を確認して前に構える。見るとカンナは冷や汗がダラダラ流れている。そして次の瞬間、2発目の弾を放った。だが、マリアが言った通りにはならず、2発目の弾は壁に命中した。

 

カンナ「…けはぁ」

 

カンナは安心したのか、安堵の表情を浮かべた。

 

マリア「フッ…フフフフ…そんな芸当できるわけないでしょ。本気にした?」

 

マリアはそう言い、周囲は笑いや安堵の雰囲気になる。カンナも笑いながら俺達の元に来る。だが、俺は見た。マリアが本気で悔しがっていた。

 

(マリアの奴…)

 

そしてパーティーはお開きになった。俺ももう遅いと言われあやめの行為に甘え、帝劇に泊まることになった。そして皆が寝静まった時、俺は中庭に人の気配を感じたので見に行く。

 

「こんな時間に誰だ?」

 

中庭に行くと、マリアが立っていた。失敗して壁に穴が開いた場所に。

 

「こんな時間に出歩くとはな」

 

マリア「誰!!」

 

「よぉ」

 

俺はマリアの側に行く。

 

マリア「森川さん…」

 

「やはりいたか。周りの連中は気づかなかったが、俺はお前の表情を見たんでな」

 

マリア「…そうですか」

 

「んで、失敗したのは、自分が今の生活に堕落したとか思ってんだろ」

 

マリア「!!」

 

俺にそう言われ、マリアは驚きの顔をする。

 

「やっぱりか」

 

「……」

 

「お前、自分は幸せになっちゃいけないとも思ってるだろ」

 

マリア「…はい」

 

「……」

 

俺はマリアに近づき、胸倉を掴む。

 

「テメェふざけんなよ」

 

マリア「!?」

 

「幸せになっちゃいけない奴なんて、この世に誰もいないんだよ。そして、自分でそんな事を思う奴が俺は一番嫌いなんだよ!」

 

マリア「だったら…だったらどうすればいいんですか!!

 

マリアは目に涙を浮かべながら叫んだ。

 

マリア「戦場では、一つのミスが命取りになります!だから、あのミスは私はしてはだめなんです!!」

 

「何でもかんでも、お前1人で抱え込んでんじゃねぇよ。花組の連中がいるだろう。花組が無理なら、俺がお前のミスをカバーしてやる。他の連中が助けなくても、俺がお前を助けてやる!だから…だからお前も誰かに頼れ!そして、幸せになるんだよ!せっかくここにお前の帰りを待ってくれる仲間がいるんだからよ」

 

マリア「あっ…あぁ…あああああああ…」

 

マリアは俺の胸で泣き出した。そして暫くして泣き止み、顔を赤くしていた。

 

マリア「すみません…」

 

「気にするな。それでお前の気持ちが少しでも楽になればいいさ」

 

マリア「…ありがとうございます」

 

そしてマリアは自室に戻って行った。

 

「フ~…で、見てたんだろさくら」

 

さくら「……」

 

出てきたさくらだが、少しだけむくれていた。

 

「なにむくれてんだよ」

 

さくら「別にむくれてませんよ」

 

「いや、むくれてるだろうが」

 

さくら「いいですよね。マリアさんは頭を撫でてもらって」

 

あぁなるほど。つまりさくらは拗ねてるって訳か。

 

「仕方ねぇな。ホラ」

 

俺はさくらの側に行き、マリアと同じ様に頭を撫でて抱きしめる。

 

さくら「♪」

 

さくらは満足そうに俺に体を預ける。

 

「話を聞いてたなら分かると思うが、マリアの奴も辛いんだよ」

 

さくら「それは…分かってます。でも、私だって森川さんに甘えたいんです」

 

「…分かったよ。だが、2人きりの時だけだ」

 

さくら「はい♪」

 

そしてさくらも部屋に戻り、俺も割り振られた部屋に帰って寝るのだった。



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第二十三話

翌日、俺は一旦家に戻り再び劇場に来ている。理由はいつも通り、舞台を見に来てるからだ。今回はカンナとすみれが主役の“愛はダイヤ”だ。夜の公演とだけあって、相変わらずの満員御礼だ。俺は出番が終わったさくら、アイリス、今回は出番のないマリアと楽屋にいる。

 

「相変わらずいい芝居するよなお前ら」

 

アイリス「えへへ~♪」

 

さくら「当然ですよ」

 

マリア「そうね」

 

すると楽屋に大神と黒子役の紅蘭が入ってきた。

 

大神「皆、皆宛に荷物だよ」

 

大きな荷物を抱えて来た大神。アイリスとさくらは、テーブルに置かれた贈り物を開ける。中身はこの劇場そっくりに作られた建物…プラモみたいなやつだ。前の世界で何て言ったっけ?

 

『うわ~♪』

 

紅蘭「いや~!こらよぅ出来てるわホンマ」

 

アイリス「これもファンからのプレゼント?」

 

大神「うん。マリア、君に手紙だよ」

 

マリア「私に…ですか?」

 

マリアは大神から受け取った手紙を読み始める。さくら達は劇場の模型を見てはしゃいでいる。

 

さくら「あら?」

 

するとさくらが模型に耳を近づける。

 

さくら「何か変な音聞こえません?」

 

アイリス「時計みたいな音?」

 

大神「そういえば」

 

紅蘭「ん~、これはアメリカのレロックス社製のセコンド音やな」

 

マリア「…!?皆伏せて!!」

 

「!?ボイスアーマー!!」

 

マリアがそう叫んだと同時に、模型が爆発する。俺は爆発する寸前に、全員にボイスアーマーを纏わせた。爆発し、辺りには爆風で吹き飛んだ荷物と火薬の臭いが充満する。

 

米田「どうした~!!なぁっ!?」

 

おっさんとあやめが楽屋に来た。2人も楽屋を見て驚く。

 

大神「大丈夫か皆!?」

 

さくら「はい…なんとか」

 

紅蘭「使われてた火薬の量が少なかったんや。こらきっと、脅しかなんかやで…」

 

米田「一体何が…」

 

マリア「…帝劇に、爆弾が仕掛けられています」

 

大神「なんだって!?」

 

マリア「爆弾の撤去をお願いします!!」

 

あやめ「マリア!!」

 

そう言うとマリアは、読んでた手紙を地面に叩き付け楽屋を飛び出していった。あやめが手紙を拾い読み上げる。

 

あやめ「『君の愛する大帝国劇場…仲間を失いたくなければ、築地の埋め立て地まで1人で来たまえ。起爆装置をお渡ししよう。マリア・タチバナ。バレンチーノフから愛を込めて』」

 

大神「バレンチーノフって?」

 

あやめ「ニューヨークのマフィアよ」

 

大神「マフィア!?マリアはそんな連中と付き合いがあったんですか?」

 

あやめ「昔の話よ…支配人!彼女はこの男に恨みを買っています」

 

米田「マリアを引っ張り出す為に、この帝劇を餌に使ったって訳か」

 

あやめ「彼女は1人で戦う気です」

 

米田「あのバカが!!」

 

全くだ。

 

米田「とにかく、ボヤボヤしてられねぇ!全員、直ちに爆弾の捜索に当たれ!」

 

『了解!』

 

そして俺達は、劇場に仕掛けられてる爆弾を探すのだった。しかし、ただでさえ無駄に広い帝劇だ。それに、マリアの事も気になる。

 

「仕方ない」

 

俺は通信を繋ぐ。

 

「俺だ…悪いが帝劇に爆弾が仕掛けられた。何人か連れておっさん達と協力して、爆弾を探し解除しろ。頼んだぞ」

 

通信を済ませると、俺はマリアが向かった築地の跡地に向かう。急いで向かうとマリアと男…多分あいつがバレンチーノフか。それにさくらもいるし、それになんだ?あの無駄にデカい機械はよ。

 

「暫く様子見るか」

 

するとマリアとさくらは、バレンチーノフを無視して機械に攻撃を始めた。

 

(あのデカ物に攻撃してるって事は、あれが起爆装置と連動してるみたいだな)

 

だが、流石はマリアとさくらだな。3か月とはいえ十分連携できてる。あっという間にデカ物は動きを止める。

 

マリア「早く!起爆装置を!!」

 

マリアにそう言われ、さくらはとどめをさそうとする。しかし、バレンチーノフに刀を撃ち抜かれ手から離れた。

 

バレンチーノフ「ははははははは…もう爆発を止める事はできん。勝負あったな!クワッサリー!!」

 

バレンチーノフは、持ってた機械を地面に落とす。

 

バレンチーノフ「あぁ…いい気分だ。今夜は皆の最後を祝して乾杯といくか」

 

マリア「クッ!!」

 

『悪いがそうはいかねぇな』

 

バレンチーノフ「!?誰だ!!」

 

バレンチーノフは後ろを振り返るが、声が聞こえた場所には誰もいなかった。

 

さくら「今の声って…」

 

「やれやれ。まさかマリアだけじゃなくさくら、お前まで来てるとは驚きだ」

 

「「森川さん!!?」」

 

マリア達の横に立つ俺を見て、2人は驚く。

 

マリア「いつの間に」

 

「今さっきだ」

 

さくら「そうだったんですか」

 

バレンチーノフ「誰だ貴様!」

 

「俺か?通りすがりの通行人だ」

 

バレンチーノフ「ふ、ふざけるな!!」パァン!

 

バレンチーノフは俺の答えにムカついて、俺に向かって発砲した。だが、銃弾ごときで俺を倒せると思うなよ?

 

「「森川さん!!!」」

 

「安心しろって」

 

そう言うと俺は、撃たれた銃弾を素手でキャッチした。

 

「「「…はっ?」」」

 

さくらとマリアだけじゃなく、バレンチーノフまで同じ声を出す。

 

「やれやれ…俺を殺すつもりなら、マリア以上の腕を身に着けるんだな」

 

「「「……」」」

 

いや、そんなに黙る事か?って黙るわな、普通に考えれば。俺はあいつの所で修業したから、普通の人間より動体視力とかがずば抜けてるの忘れがちなんだよな。

 

「さて、そんなのはいいとして…俺の大切な奴が世話になったみたいだな」

 

俺はマリアとさくらを可愛がってもらった礼をする事にする。

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらside

 

 

「さて、そんなのはいいとして…俺の大切な奴が世話になったみたいだな」

 

森川さんがそう言った瞬間、私達の周りの空気が変わったのを感じました。森川さんの方を見ると、普段通りですが、森川さんの背後に鎌を持った人が見えた気がした。

 

「「「!?」」」

 

「取り合えず、そこのデカ物を始末するとするか…」

 

そう言うと森川さんは、先程まで私達が戦っていた蒸気機械にゆっくりと近づいていく。

 

バレンチーノフ「ハ、ハハハハハ!何をするかと思えば、丸腰でどうするつもりだ?」

 

「どうするもねぇさ…圧力鍋!超高圧!!」

 

森川さんがそう言うと、蒸気機械は何かで押しつぶされた様にどんどん凹んでいく。

 

バレンチーノフ「なっ!?」

 

さくら「マリアさん」

 

マリア「なに?」

 

さくら「森川さんって…何者なんでしょうか?」

 

マリア「…私にも分からないわ」

 

そうですよね。でも、それでも森川さんが好きな事に変わりありません!頑張るのよ!さくら!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ。またガラクタができちまったよ。

 

バレンチーノフ「貴様…ふざけるなぁ!!」

 

バレンチーノフは俺に向けて発砲した。だから、俺に真正面からは…

 

マリア「森川さん!!」

 

マリアが叫ぶと、マリアも発砲した。なるほど。乾杯するつもりか。なら手は出すことはないな。そしてマリアが放った銃弾は、見事にバレンチーノフが撃った銃弾に当たり、バレンチーノフとガラクタに命中した。

 

「助かったよマリア」

 

マリア「全く…いくら大丈夫とは言え心配しますよ」

 

さくら「そうですよ!」

 

さくらにも怒られた。マリアはバレンチーノフの元に歩いていく。そして銃に弾を一発込める。

 

バレンチーノフ「よ…よせ」

 

マリア「生か死か。運命に任せましょう」

 

さくら「マリアさん!」

 

「安心しろさくら」

 

さくら「えっ?」

 

バレンチーノフ「やめろおおおおおおおお!!!!!!!」

 

そして引き金を引いた。しかし弾は発砲されずバレンチーノフは気絶した。そして俺達の所に来ると、一発の銃弾をさくらに渡す。

 

さくら「弾…入ってなかったんですね」

 

マリア「運命は、自分で切り開くものでしょう?」

 

「ったく、最初から殺すつもりなかったくせによく言うぜ」

 

マリア「フフッ。森川さんにはバレてましたか」

 

「バレバレだ。さて、帝劇に戻って皆を安心させてやるか」

 

さくら「はい!!」

 

そして俺達は、気絶してるバレンチーノフをほっといて、帝劇に帰ったのであった。翌日、紅蘭やあやめ達から、オペレーター達の事を聞かれて少し面倒だった。

 

すみれ「全く!冗談じゃありませんわ!!」

 

「何かあったんですかすみれさん?」

 

すみれ「これをご覧あそばせ!」

 

すみれは持ってた雑誌を大神に渡す。

 

大神「何々?先日の花組公演は大盛況…いいじゃないか」

 

すみれ「いけないのは、その後なのですわ」

 

さくら「取り分け…終演後のお笑いコーナーが大好評。神崎すみれと桐島カンナの漫才に、花組の新たなる可能性…」

 

すみれ「私はスタァですのよ!目先の笑いは必要ありませんの!」

 

カンナ「いいじゃねぇか!ドッカンッカンウケたんだからよ」

 

すみれ「そ、それは…」

 

紅蘭「なんや。まんざらでもないみたいやな」

 

「みたいですね」

 

アイリス「漫才やるならコンビ名考えないとね」

 

大神「なんかないかな」

 

すみれ「美女と猛獣でわ?」

 

カンナ「なるほど!アタイが美女で」

 

すみれ「私が猛獣!って違うでしょうに!!」

 

紅蘭「また漫才になっとる」

 

『あははは!!』

 

すみれとカンナのコンビか。普段からの事をネタにすれば、ネタが尽きる事はないだろな。

 



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第二十四話

「あっついな…」

 

ここ最近暑い日が続いている為、外を歩いてる人もいつもより少ない。

 

「ここ最近客足もさっぱりだな」

 

そんな事を思ってたら、夕方頃から外の人の人数が増えてきた。その中には浴衣を着てる人も何人かいる。

 

「浴衣…あぁ、そういえば今日は神田川で花火大会があったっけ」

 

思い出した思い出した。けど、そうなると余計に客足が減るな。

 

「しゃあない。今日はもう店を閉め…ん?」

 

すると店の電話が鳴る。

 

「はいもしもし。こちらオアシス」

 

米田『森川か?』

 

電話の相手はおっさんからだった。

 

「おっさんか。どうしたんだ?」

 

米田『いやなに、実はこれから大神達と神田川に花火を見に行くんだが、お前も来ないか?』

 

「花火見物って、さくら達を連れてけば混乱するんじゃないか?」

 

帝劇の人気女優が来れば、会場は混乱するのは目に見えて分かる。

 

米田『それは安心してくれ。俺達は屋形船を貸し切って見物するつもりだからよ』

 

なるほど。それなら見つかっても近づいてこれないって事か。

 

「そうか。けど、俺も一緒でいいのか?」

 

米田『当然だ。むしろお前を誘わないとあやめくん達に、一緒に船に乗せねえて言われてな』

 

「おいおい…」

 

なんだかおっさんが哀れに思えてくるわ。

 

米田『だから俺からも頼む』

 

「あ…あぁ。分かった。取り合えず帝劇に今から向かうわ」

 

米田『頼んだぞ』

 

俺は店の閉店準備をし、戸締りをして帝劇に向かった。帝劇に到着すると、既にロビーには全員が揃っていた。

 

「皆さんお揃いですね」

 

さくら「森川さん!」

 

すみれ「来ましたわね」

 

さくらにすみれ、マリアが俺に近づいてくる。

 

「こんばんはさくらさん、すみれさん、マリアさん。少し前に米田さんからお誘いを受けまして」

 

マリア「そうだったんですか」

 

「はい。皆さん浴衣姿、凄くお似合いですよ」

 

俺がそう言うと、全員が顔を少し赤く染めていた。

 

米田「来たな森川」

 

「米田さん。今日は誘っていただきありがとうございます」

 

米田「いいってことよ」

 

あやめ「それじゃあ出発しましょうか」

 

俺達は屋形船がある神田川に向かった。全員が乗り込み発進する。みると、運転は大神がしている。流石は海軍出身者だな。船の運転はお手の物ってか?

 

 

 

 

ドドーン!!

 

 

 

 

すると空に花火が打ち上がる。花火大会の始まりだ。しかし、やはり花組の乗ってる屋形船は人目がつくな。まぁ、宣伝も込めてのぼりとか掲げてたら分かるか。

 

さくら「綺麗…」

 

紅蘭「そっかぁ。さくらはんは初めて見るんやったな。両国の花火」

 

さくら「ええ。もう感動しちゃって」

 

すみれ「そうでしょうねぇ。なんたってさくらさんは、チャキチャキの田舎娘ですものね」

 

さくら「むっ…」

 

すみれの一言でさくらは、持ってる団扇を握りしめていた。ったく、こんな時くらい黙っててくれよ…

 

マリア「私も初めて見た時はそうだったわ。日本の花火もいいものね」

 

マリアは花火を見ながらそう言う。

 

大神「皆!お待たせ!」

 

すると大神はスイカを切って出てきた。

 

アイリス「わ~!スイカだスイカだ!」

 

カンナ「流石隊長!気が利くぜ!」

 

紅蘭「ウチ塩かかってへんやつや!」

 

するとアイリス、カンナ、紅蘭は大神の所へ行きスイカを取る。その反動で大神は川に落下したがな。

 

さくら「大丈夫ですか!」

 

あやめ「あら?大神君、酔い覚まし?」

 

米田「にしちゃあ、ちと早くねぇか?」

 

大神「はは…ちょっと飲みすぎました」

 

あやめとおっさんは、下で酒を飲んでいた。お前らは飲みすぎだ。

 

カンナ「隊長!これうめぇぜ!」

 

アイリス「ホント!冷えてて美味しい」

 

紅蘭「ほんま。流石大神はんや」

 

お前らはお前らで、スイカ食いながら言うなよ。

 

大神「はは…そりゃよかった」

 

ほら見ろ、大神も苦笑いしてるじゃねぇかよ。そして俺達は花火を満喫し、家に戻り眠りについた。翌日、俺はいつもの様に店の観点準備を終え、帝劇にいる。だが、いつもと違いなんだか慌しい。

 

「よう」

 

米田「森川か」

 

「随分と劇場内が慌しいみたいだが?」

 

米田「ああ。そりゃあ多分あれだ。大神が今回の脚本を書いたからな」

 

「大神が?」

 

おっさんの言葉に俺は驚く。

 

米田「そうだ。1度でいいから自分で舞台を作ってみたいとぬかしやがってな。一応、俺やあやめくん、かすみ達もフォローに入ってだがな」

 

「なるほど。しかし、大神の奴随分思い切った事をするもんだな」

 

米田「まぁな。俺も最初は驚いたがよ。面白いと思ってな」

 

「おっさん、あんたも充分思い切った事してるの気付けよ…」

 

俺は呆れながらおっさんにそう言うのだった。俺は台本を見せてもらう。

 

「“真夏の夢の夜”か。いいタイトルじゃねぇか」

 

米田「今回は、何かかも自分達でするらしいからな。衣装や演技指導もな」

 

「なるほど。って事は今他の連中は練習中って訳か」

 

米田「そういうことだ。お前さんの分のチケットは、既に店に届けてあるからよ」

 

「ありがとな。んじゃ俺は、少しあいつらの様子を見てくるか」

 

俺は支配人室を出て舞台の方に向かう。今回は客席側から見てみる。中に入るとマリア達が練習を行っている。

 

「これは面白そうだな」

 

俺は本番を楽しみにしながら店に戻る。そして数日後、遂に本番当日を迎えた。俺はあいつらに声をかける為舞台裏に向かっていた。すると大神が物凄い剣幕で走ってきた。

 

「大神さん?」

 

大神「森川さん…」

 

「隊長服なんか着てどうしたんですか?」

 

大神「……」

 

大神は俺の質問に黙る。こりゃ何かあったな。

 

「まさかとは思いますが、脇侍が出現して一人で出撃するつもりですか?」

 

大神「!?」

 

図星か。ったく、今日はお前がお前が考えた折角の舞台だろうが。

 

「…ったく、お前はバカか」

 

大神「も、森川さん!?」

 

「この口調、マリアを助けた時に聞いただろ。他の連中には黙ってろよ」

 

大神「は、はい…」

 

「折角お前が一から考えた舞台だろうが。お前はそのままあいつらの舞台を見届けてやれ」

 

大神「ですが!」

 

俺はこれ以上言ってもダメだと思い、大神を気絶させた。

 

大神「グッ…な、何故…もり…」

 

「悪いな大神。お前達の頑張りを無駄にしたくないんだよ」

 

俺はそう言い残し、帝劇から出て行った。

 

「さて…悪いがこれ以上あいつらの邪魔はさせねぇ」

 

俺は脇侍が出現した場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君…が…くん!」

 

大神「う…うぅ…」

 

あやめ「大神君!よかった、気が付いたのね」

 

大神「あやめ…さん」

 

俺は森川さんに気絶させられ、あやめさんに起こされた。

 

あやめ「いったい何があったの?支配人に伝えに行く途中で、大神君が倒れていたから」

 

大神「倒れて…そうだ!」

 

俺は慌てて立ち上がり、あやめさんに確認する。

 

大神「あやめさん!森川さんは!!」

 

あやめ「えっ?森川さんなら、用事が出来たって言って帰って行ったわ」

 

大神「なんてことだ…」

 

俺は、あの時の森川さんの言葉を思い返す。

 

森川『悪いな大神。お前らの頑張りを無駄にしたくないんだよ』

 

あやめ「大神君?森川さんがどうかしたの?」

 

大神「実は…」

 

俺はあやめさんに全てを説明した。俺の代わりに森川さんが黒之巣会と戦いに行った事。それで俺は気絶させられた事。

 

あやめ「そんな…」

 

大神「あやめさん!急いで米田司令に伝えて下さい!」

 

あやめ「そうね。大神君、貴方も来てちょうだい」

 

そして俺とあやめさんは、司令がいる舞台袖に向かった。

 

米田「大神、あやめくん。なにしてんだ?」

 

あやめ「司令…実は」

 

俺とあやめさんは、森川さんが黒之巣会と戦いに行った事を説明する。

 

米田「あのバカ…だが、どうかしてるぞあやめくん。帝都防衛と芝居と、どっちが大切だと思ってる!」

 

あやめ「それは…分かっています。でも」

 

米田「でももへちまもねぇ!黒之巣会が出た以上公演は中止だ!」

 

マリア「なんですって!?黒之巣会が」

 

米田「しかもよりにもよって、森川が出撃するなんてよ!」

 

さくら「森川さんが!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米田「しかもよりによって、森川が出撃するなんてよ!」

 

さくら「森川さんが!?」

 

私は米田支配人の言葉を聞いて驚いた。

 

米田「大神!何であいつを一人で行かせた!」

 

大神「申し訳ありません。自分も森川さんに気絶させられてしまって」

 

あやめ「大神君から聞きましたが、森川さんは皆の為に一人で出て行ったんです。今日まで必死に頑張ってきた皆の努力に応えるために」

 

米田「そんなこたぁ…そんなこたぁ分かってる。だが、あいつ1人で行かせたのは…」

 

森川さん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

すると突然開演のブザーが鳴り響いた。仕方なく私達は舞台に出る。出るとそこには大勢のお客様が集まっていた。

 

さくら「皆さん、こんばんは」

 

私の挨拶で会場は拍手に包まれる。これだけのお客様が入ってくれるのはとても嬉しい。だけど…

 

カンナ「おい、どうすんだよ」

 

すみれ「わたくしに聞かないで下さいまし」

 

すみれさんとカンナさんも話している。皆気持ちは同じ。だったら言わなきゃ!

 

さくら「皆さん、ごめんなさい!今夜の特別公演は中止にします!」

 

『え~!!』

 

お客様がそう言う中、私達は急いで出撃準備をし、翔鯨丸で発進するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、目的の場所に到着したが…

 

「相も変わらず、ガラクタがたくさんいるな」

 

ざっと見ただけでも軽く10体以上いるな。

 

「さて、あいつらが心配する前にさっさと終わらせるかな!!」

 

俺は1体の脇侍に突っ込む。

 

「コリエシュート!!」

 

首を蹴り飛ばしその場に着地する。すると全部の脇侍がこっちを見る。

 

「さて…次はどいつだ!!」

 

俺は刀を三本投影する。左右の手と一本を口に咥える。

 

「この技…これだけ数が多いと使いやすいかもな。龍…」

 

俺は刀を構え、囲まれた脇侍目掛けて放つ。

 

「巻き!!!」

 

脇侍『ガガガガガガガ!!!』

 

龍巻きで数体の脇侍を切り刻む。だが、まだまだ脇侍の数は多いな。

 

「二刀流…犀回(サイクル)!!鬼斬り!!虎狩り!!」

 

俺は次々と脇侍を斬っていく。

 

「えぇい!鬱陶しい!!」

 

俺は脇侍から距離を取り、秘密道具を取り出した。

 

「能力ディスク~!!」

 

このディスクには、元々はドラえもんの秘密道具だが、この世界に俺を送った神様の計らいで、人間には決して出せない技が収録されている。例えばワンピースにある悪魔の実の能力などだ。流石に体をマグマにしたり煙にしたりなんかは出来ないしな。ただし、制限時間もある。1時間だ。

 

「俺の時代も、倍にしなきゃ録音できる時間は60分だったしな。さて」

 

俺は紅色のディスクを腹部に当てる。するとディスクは吸い込まれていく。

 

「!!…わしの出番かのう」

 

俺はディスク赤犬を入れた。俺前世の時この能力好きだったんだよな~♪

 

「屑鉄どもが。まとめて始末しちゃる!」

 

俺は周りに被害が出ない程度に威力を抑え技を放った。

 

「流星火山!!」

 

上空からマグマの塊が隕石みたいに落下してくる。ってか、ここ街中じゃなくてよかった~。

 

「威力抑えてこれかよ…このディスク使いどころ間違えないようにしないとな」

 

俺はこの秘密道具は、余程の事がない限り極力使わないでおこう。

 

「さて、まだまだ行くぞ!!」

 

俺は今度はある英霊の呪文を唱える。

 

「是非もなし!三千世界に屍を晒すがよい。……天満轟臨!これが魔王の三千世界(さんだんうち)じゃあっ!!」

 

信長の宝具の三千世界で、一気に脇侍の数を減らした。

 

「ようやく数えれる程に減ったか」

 

だが流石に俺の体力も削られている。そんな事を考えてる間に、1体の脇侍が俺の背後から斬りかかってきた。

 

「しまった!!」

 

流石に俺も連戦で気が抜けたのか、その隙を狙ってきた。

 

 

 

 

 

 

ボン!ボボン!!

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

『帝国華撃団・花組、見参!!』

 

「皆さん…」

 

さくら「ごめんなさい、森川さん」

 

マリア「これは私達花組全員の責任です。文句の方は後でいくらでも聞きます!」

 

「さくらさん、マリアさん」

 

紅蘭「森川はん、やっぱり森川はんもおらんと嫌やわ」

 

アイリス「いつもみんな一緒だよ大輔お兄ちゃん」

 

「紅蘭さん、アイリス」

 

カンナ「大将!憂さ晴らしにパ~っと暴れようぜ!」

 

すみれ「少尉が考えた舞台。そして、森川さんにお見せする舞台。邪魔した者がどうなるか、思い知らせてやりますわ」

 

「すみれさん、カンナさん」

 

俺はさくら達の言葉に感動する。

 

大神「森川さん」

 

「大神さん」

 

大神「貴方も俺達の仲間。立派な花組の一員なんですよ」

 

「花組の一員…」

 

はっ!嬉しい事を言ってくれるな。

 

「ありがとな」

 

俺は小さな声だが、お礼を言った。

 

大神「いくぞ皆!」

 

『了解!!』

 

大神「カンナ!敵の陣列を乱せ!!」

 

カンナ「任しとけぃ!!」

 

カンナが敵陣に突っ込んでいく。

 

カンナ「桐島流奥義!一百林牌(すうぱありんぱい)!!」

 

大神「右敵部隊はマリア!アイリスは森川さんの回復を!!」

 

「「了解!!」」

 

大神「左敵部隊は紅蘭とすみれくんだ!」

 

「「了解!」」

 

マリア「スネグーラチカ!!」

 

マリアは必殺技を放ち、脇侍数体を凍らせる。

 

アイリス「大輔お兄ちゃん。イリス・マリオネ~ット!」

 

すると俺の体力や気が回復する。これがアイリスの力か。

 

「ありがとうアイリス」

 

紅蘭「頼むで!チビロボ達!」

 

すみれ「神崎風塵流…胡蝶の舞!!」

 

あっという間に脇侍の数を減らしていく。

 

すみれ「ふん。ちょろいもんですわ」

 

大神「残りの敵はさくらくん、森川さん!俺達で片づけるぞ!」

 

「「了解!」」

 

残り五体を俺達で対処する。

 

大神「狼虎滅却…快刀乱麻!!」

 

大神が2体の脇侍を倒す。

 

さくら「森川さん!」

 

「ああ!」

 

残りは俺とさくらで倒す。

 

「瞳に映る輝く星は!」

 

さくら「皆の明日を導く光!」

 

「「今、その光を大いなる力に変えて!破邪剣征・桜花乱舞!!」」

 

そして残りの脇侍を倒し終わった。

 

「なんとかなったか」

 

そして俺達は劇場に戻る。

 

「皆さん…」

 

俺はさくら達の方を見る。

 

さくら「森川さん、どうして1人で行ってしまったんですか」

 

「……」

 

俺はさくらの問いに何も言わない。

 

マリア「そうです。隊長を気絶させてまで、森川さん1人で出撃なんて」

 

「…皆さんの頑張りに水を差したくなかったんですよ」

 

俺はそう応える。

 

「たった1日の公演ですが、大神さんを始め皆さんがこの日の為に精一杯準備していました。だから、私はそれに応えたかったんです」

 

『……』

 

俺の問いに誰も何も言わない。

 

さくら「それでも」

 

するとさくらが話し出す。

 

さくら「それでも、言って欲しかったです。もし…もし森川さんに…何か…あったら…あたし…」

 

するとさくらは、俺の胸に抱き着き泣き出してしまった。見るとマリアやアイリスも目に涙を浮かべていた。

 

「さくらさん…」

 

大神「森川さん。花組は、出撃の時必ず全員で無事に戻ると決めています。そこに森川さんも入っているんですよ」

 

「大神さん…」

 

すみれ「そうですわ」

 

カンナ「だよな」

 

紅蘭「森川はんも、立派なウチらの仲間や!」

 

「…ありがとうございます」

 

そして俺はさくらを泣き止まして、上に戻る。するとかすみ達がおにぎりなどを持って忙しそうにしている。俺達はそのまま舞台に行くと、客席にいた客は誰一人帰っていなかった。

 

米田「遅えぞこのばかやろう!」

 

するとおっさんがおにぎりややかん、そして割烹着を着て立っていた。

 

米田「見ての通りだ。公演中止だって言っても、人っ子一人動かねぇ。おめぇ達が帰って来るのを待ってるって言ってな。仕方ねぇからこのザマよ」

 

さくら「大神さん」

 

大神「うん!」

 

米田「なにボサッとしてやがる!お客が待ちかねてんだぞ!さっさと支度して来やがれべらぼうめ!」

 

そしてさくら達は支度に行った。そして俺は大神と一緒に客席の後ろから見届ける。

 

さくら「あの頃の~♪こ~と~♪胸の中に~♪思い出が~♪くるくると~♪ま~わ~る~♪」

 

そしてさくら達の1日限りの舞台が始まった。立ち見も出る程の人気だったのも嬉しい事だった。俺と大神は、かすみ達に差し入れられたおにぎりを食べながら見ていると…

 

『『よかったな。夢が叶って(守れて)』』

 

「「!!?君は(お前は)…」」

 

『『もう1人の俺さ』』

 

「「もう1人の俺?」」

 

『『俺は君(おまえ)でもあり、君(お前)もまた俺でもある。帝劇を愛し、花組を思う限り、君(お前)と俺は同じ存在であり続ける』』

 

大神「俺は夢でも見ているのか?」

 

「同意見だ」

 

まさか、俺と大神…自分自身と話すとはな。

 

『『夢?さぁそれはどうかな。でも(けど)、夢を叶える為もう1人の君(お前)は、いつでも応援している。そして皆も…』』

 

そして俺と大神は、舞台の方に一瞬目を向け再び見る。しかしそこには俺と大神はいなかった。こうして、一日限りの公演“真夏の夜の夢”は無事に終わり大盛況だった。



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第二十五話

俺は外で掃除をして、ふと空を見上げる。

 

「…平和だな。ここ最近は、脇侍や黒之巣会の連中も出てこない。このまま続けばいいが、そうもいかねぇんだろうな」

 

雲1つない空を見上げながら、俺はそう呟く。呟きたくもなるがな。

 

「帝劇も、次回公演を控えてるから、ここ2、3日は休演中だしな。アイツらも、それぞれ自由に過ごしてるみたいだしな」

 

ま、劇場が休演中は家の店も暇なんだけどな。

 

「さて、今日はどうするかなっと。ウシッ!掃除終わり!!」

 

店前の掃除も終わり、店に入る。取り合えずコーヒーでも淹れるか。パッパと準備をし、後はのんびり待つだけだ。コーヒーの匂いが店中に広がり、のんびりとした時間が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランカラン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、扉に付いてるベルが鳴る。客か?

 

「いらっしゃ…珍しい組み合わせだな」

 

入り口を見ると、米田のおっさん、あやめ、さくら、マリア、すみれがいた。

 

米田「おう、邪魔するぜ」

 

さくら「こんにちは森川さん」

 

すみれ「失礼いたしますわ」

 

マリア「突然お邪魔してすみません」

 

あやめ「ごめんなさいね」

 

「別にいいさ。とにかく座れ。コーヒーくらいなら淹れてやる。丁度飲むつもりだからな」

 

俺は5人にカウンター席に座るよう進める。序でに店の看板も裏返しておく。

 

「ほら」

 

俺はコーヒーを自分の分を含め、5人に出す。

 

「で、5人で来るのは珍しいな」

 

米田「まぁな」

 

「俺に何か用か?それとも飯を食いに来たのか?」

 

米田「……」

 

そう言うと、おっさんは飲んでだカップを置く。これは向こうの方の仕事か。ま、後で聞くか。俺もこの後色々と調整もあるしな。で、さくら達はおっさんを残して店を出ていった。今から残りの面子と合流して、買い物に行くそうだ。俺も誘われたけど、おっさんが残るし断った。さくら、マリア、すみれは残念そうな顔をしてたが。で、その中にあやめの奴が混ざってたんだが?

 

「さて、依頼内容は?」

 

俺は誰もいなくなった店内を確認し、おっさんに話しかける。

 

米田「…実はな、ここ最近ウチの連中が、変な奴につけられてるらしいんだ」

 

「なに?」

 

俺はおっさんの言葉を聞いて、僅かだが眉毛を動かした。

 

米田「3日前の事だ。さくらと椿の奴に買い出しを頼んだんだが、道中何処からか見られているような感じがしたそうだ。それに、かすみや紅蘭も劇場付近で怪しい人影を見たらしいんだよ」

 

「なるほど」

 

俺はコーヒーを飲みきり、おっさんの話の被害を考える。

 

「分かった。調べてやるよ」

 

米田「助かる」

 

「気にすんな。俺もアイツらが被害に遭ってるかもって聞きゃ、気分悪いからな」

 

そして俺達は、早速地下に向かった。

 

「一応、ここ帝都にはところ狭しと俺がカメラを取り付けてるからな。おい、ここ最近の劇場周辺の様子を映してくれ」

 

オペレーター「了解です」

 

俺の指示でオペレーター達は一斉に動き出す。

 

米田「おい森川。誰だあの嬢ちゃん達は?全員同じ顔だが…」

 

「ああ、あいつらは俺が作った機械人形だ。戦闘等はイマイチだが、その分機械関係は滅法強い」

 

米田「お前が作っただぁ!?しかも機械人形だと!!どっからどう見ても人間だろうがよ!」

 

「当たり前だ。街でも情報収集してもらうんだ。人間そっくりに作ったに決まってるだろ」

 

俺はさも当然の様に答える。おいおっさん、何で手をデコに当てて溜め息ついてんだよ。

 

米田「やれやれ…つくづくお前には驚かされるぜ」

 

「ククク…褒めてもタダにはしないぞ♪」

 

米田「褒めてねぇよ!それに、キチンと支払う。呆れてんだよ」

 

ハハッ。たまにはおっさんをからかうのも悪くねぇな。

 

オペレーター「マスター、3日前に帝劇付近にて、怪しい人影を確認しました」

 

「あったか。拡大してくれ」

 

オペレーター「了解です」

 

中央の画面に拡大させる。

 

「時間は…午後2時だな」

 

米田「ああ。確かこの時は、さくらとアイリス、それに椿の3人で買い物に出掛けてた筈だ」

 

少し時間を進めると、確かに劇場からさくら、アイリス、椿の3人が出てきた。すると男は、3人が出てきた瞬間物陰に隠れた。

 

「あいつらが出てきた瞬間に隠れたか。こりゃマジで怪しいな」

 

米田「ああ」

 

そして、今度は更に2日遡り画面を見ると、マリアとかすみ、すみれの3人が夜に帰宅してた時の映像だ。

 

「明らかにこの3人をつけてるな」

 

男に気付いたのか、マリアが銃を抜き先程まで男がいた場所に向かっている。

 

米田「随分と素早いな」

 

「…おい、こいつの顔拡大できるか?」

 

オペレーター「了解、画像を拡大します」

 

男の顔がカメラに映った時に停止し、顔を拡大する。ウチの技術があれば、はっきり鮮明に映し出せる。

 

「こいつか」

 

米田「……」

 

「おっさん、この男の顔に見覚えは?」

 

米田「いや、悪いが俺には心当たりはねぇな」

 

ふむ…おっさんには心当たりはないと。

 

「この画像を現像してくれ」

 

そう言うと、オペレーターの連中はテキパキと動き、この映像を現像した。

 

「これを他の連中に見せてみるか。見せれば誰かしら知ってるかもしれねぇしな」

 

米田「そうだな。なら、今夜ウチに来てくれ。全員を集めておくからよ」

 

「了解だ。後、金は後日でいい」

 

米田「分かった。じゃあ夜にな」

 

そしておっさんは帰っていった。俺はそのまま椅子に座り、ストーカー行為をしてる男の映像をジッと見ていた。

 

「ん~…どっかで見た気がすんだけどなぁ」

 

俺は、男の顔に見覚えがあるような感覚になるが、結局は思い出せんかった。

 

「ま、今日あいつらに聞けば、少しは進展するだろうさ。後は任せたぞ」

 

オペレーター『了解です』

 

そして俺も戻ったのであった。



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第二十六話

おっさんとの約束の時間になり、俺は店を閉めて劇場に向かった。勿論、今回の依頼内容を調べた資料を持って。

 

米田「待ってたぞ、森川」

 

「悪い、待たせたみたいだな。これが、より詳しく調べた資料だ」

 

俺はおっさんに資料を渡す。

 

「それと、分かってると思うが俺の事は言うなよ」

 

米田「分かってら。んじゃ、皆サロンで待ってるから行くか」

 

おっさんに言われ、二階にあるサロンに向かった。つくと、既にさくら達花組に大神、あやめ、三人娘の連中が揃っていた。

 

米田「お前ら悪いな。待たせてよ」

 

さくら「大丈夫ですよ支配人」

 

大神「ですが、全員を呼び出して何かあったんですか?森川さんもいますし」

 

かすみ「それに、花組の皆さん以外に私達まで」

 

米田「ああ、森川の場合は少し協力してもらってな」

 

そう言いながら、おっさんは俺が渡した資料から、1枚の写真を出し、テーブルに置く。

 

米田「集まってもらった理由だが、おめぇらに聞きてぇんだ。誰か、この男に見覚えはないか?」

 

テーブルに置かれた写真に指差し、集まった連中に聞く。

 

さくら「ん~…私はないですね」

 

紅蘭「ウチもやわ」

 

すみれ「私もありませんわ」

 

カンナ「知らねぇな」

 

大神「自分も覚えが…」

 

マリア「支配人、この男がどうかしたんですか?」

 

皆を代表してマリアが質問する。流石にそういうとこに気付くのは、クワッサリーと言われるだけはあるな。

 

米田「ああ。話す前にお前達に聞きたいんだが、最近変な奴や気配を感じなかったか?」

 

おっさんにそう言われた途端、全員が思い当たる顔になる。

 

米田「どうやら、全員に思い当たる節があるみてぇだな」

 

「そうみたいですね」

 

米田「この写ってる男だが…ここ最近お前達をつけ回してる奴だ」

 

『ええええ!!?』

 

その言葉を聞いた瞬間、全員が驚きの声を出す。まぁ、この時代にストーカーって言葉や概念がないからな。俺が生きてた時代なら、完全に“ストーカー規制法”に当てはまるがな。

 

マリア「そうでしたか」

 

さくら「なら、ここ最近感じた気配や視線は…」

 

米田「間違いなく、こいつのだろうな」

 

すみれ「気持ちが悪いですわ…」

 

すみれや数人は、気持ち悪さに体を震わせていた。

 

椿「…ああ!」

 

すると突然椿が大声を出す。その声に全員が驚いた。

 

由里「な、なんなのよ椿。いきなり大きな声出して」

 

椿「思い出したんですよ!由里さん、かすみさん、この人よく劇を見に来る常連さんですよ!」

 

由里「嘘!?」

 

椿の言葉に、由里とかすみは俺が持ってきた写真をよく見る。

 

かすみ「…本当ね。前の講演の時も毎日来られてたわ」

 

由里「確かに。それに、売店で皆さんのブロマイドを全部買われてたわ」

 

『ええっ!?』

 

その言葉に、花組の連中は驚く。

 

大神「売店でブロマイド…毎日来場…ああ!あの人か!!」

 

さくら「思い出したんですか?大神さん」

 

大神「ああさくら君。今はっきりと思い出したよ。確かにこの人は、前の公演昼の部、夜の部両方来ていたんだよ」

 

米田「大神、それだけ来てたならすぐ思い出しやがれ」

 

「仕方ありませんよ米田さん。大神さんは1人でチケットを切ってるんです。それに花組の劇は人気ですから、来場する人数も多いですので」

 

俺が1人でチケットを切ってる大神をフォローする。あの人数を1人で捌くのは流石にな。人数が多かったら、基本は由里やかすみもモギリをするが、たまに来賓客が来るときもあるらしく、その時は大神1人で捌いてるんだよ。俺はそれを知ってるからフォローしたんだよ。

 

米田「けど、これで犯人は分かった。だが、特に被害が出ていない以上、捕らえることもできんのも事実だ」

 

すみれ「何故ですの!!」

 

おっさんの言葉に、すみれが反発する。

 

「すみれさん、確かにこの人が犯人で間違いないと思います。ですが、未だ花組の人達に被害が出ている訳ではありません。問い詰めたところで、しらを切られるでしょう」

 

すみれ「……」

 

俺の言葉に、すみれは黙ってしまう。だがそれは仕方ないんだよ。万が一此方が手を出しても、向こうが認めない限り、警察が対処しても此方が不利になる。暫くは様子見と、なるべく1人で行動しないことだな。

 

米田「とにかく、なるべく1人で行動するなよ。基本は2人以上で行動しろ。いいな」

 

『了解です!』

 

こうして、話し合いは終わり各々自分の部屋に戻っていった。俺もおっさんに家に帰ると言い、戻っていった。取り合えず、暫くはあいつらの回りにスパイ衛星とかを飛ばしておくか。



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第二十七話

あれから3日が経ったが、特にこれといった進展はない。スパイ衛星も飛ばし、銀座中にあるカメラで劇場や花組の連中を監視してるが、俺達が話してからその男は姿を見せなくなった。

 

「何で急に姿を見せなくなった?しかも俺らが話した翌日から。タイミングがよすぎる」

 

念のために、オペレーター達も数人街で情報を集めに行かせている。顔が同じだから、髪型や服装を変えさせてるけどな。

 

「とにかく、今は情報が手に入るのを待つしかないか」

 

そして俺は、普段通りに店を開けるのだった。そこから更に3日後、おっさんから電話がきた。聞くと、遂に花組の連中の私物が無くなったらしい。被害はさくらとすみれ、そして紅蘭の3人だ。さくらはリボン、すみれはチョーカー、紅蘭はスペアの眼鏡を盗まれたそうだ。俺は早速地下に行き、この6日間の様子を確認する。すると、夜中に劇場に忍び込んでる影を見つけた。

 

「やっぱ侵入してたか」

 

オペレーター「はい。犯人はこの日に運ばれた荷物の中に潜伏しており、そこから中庭を通り2階の花組の部屋に向かっています」

 

「しっかしコイツの動き、素人じゃねぇな。動きに無駄がねぇ」

 

モニターに映ってる犯人の動きは、素人じゃ絶対にできない動きだ。この時間は、大神の奴が巡回している。それを掻い潜っている。あいつは海兵であり花組の隊長だ。気配には特に敏感なはずだ。それに、侵入した紅蘭やすみれはともかく、さくらに限っては余程の事がない限り気配に気づくはず。

 

「それに気づかないって事は…少し厄介だな」

 

素人の犯行じゃないとすると、対応できる奴は限られるな。

 

「とにかく、米田のおっさんとあやめに話しておくか」

 

俺はさっきの動画を持って、大帝国劇場に向かった。花組の連中は、次の舞台の稽古中らしい。ま、此方にとっては都合がいいがな。

 

「おっさん、入るぞ」

 

中に入ると、おっさんが酒を飲んでいた。

 

「昼間っから飲んでんじゃねぇよ。ったく」

 

米田「別にいいだろう。で、珍しいな。お前さんが連絡も寄越さず来るなんてよ」

 

「ああ。大至急あんたの耳に入れとかなきゃなんねぇ内容でな」

 

米田「……」

 

すると先程までの酔っ払い顔から一転、真剣な表情へと変わった。流石は陸軍中将だな。酒は飲んでも飲まれるなって事か。

 

米田「それで、その内容ってのは?」

 

「これを見てくれ」

 

俺は持ってきた映像をおっさんに見せる。

 

「まずは、俺が独自に撮影させたカメラの映像だ。日付は、さくら達の物が盗まれた日の深夜だ」

 

米田「おいおい、まさか荷物の中にいやがったとは」

 

「この荷物は、この日に運ばれた物だ。おそらく、何かであんた等が使う荷物を調べて、隙を見て紛れ込んだんだろう」

 

米田「なるほどな。次から、人が入れそうな荷物は全部チェックしねぇとな」

 

「まぁ頑張んな。で、ここからの行動だが…」

 

荷物から出て素早く中庭に出、そこから壁をつたってさくら達の部屋の窓に近づく男。その男の動きを見ておっさんは驚く。

 

米田「おいおい…こいつは素人の動きじゃねぇな」

 

「ああ。それに、大神の見回りもうまいこと回避している。だからさくらは、部屋に侵入されても気づかなかったんだ」

 

米田「相当な手練れだな」

 

「だろうな」

 

すると、支配人室のドアがノックされる。

 

米田「開いてるからへぇりな」

 

あやめ「失礼します」

 

来たのはあやめか。

 

あやめ「あら、貴方も来ていたのね」

 

「ああ。おっさんに話があったからな」

 

米田「それであやめ君、何か用か?」

 

あやめ「はい。実は、最近この近くでネズミ小僧が出てるそうなんです」

 

米田「ネズミ小僧だぁ?」

 

あやめの言葉に、米田は驚く。

 

あやめ「なんでも、ここ最近現れたみたいで、被害もかなりなものだったそうです。宝石は勿論、一部のファンには貴重な物まで盗んでいるそうです」

 

「「!?」」

 

あやめの言葉に、俺とおっさんは顔を見合わせる。

 

米田「もしかすると…」

 

「ああ。その可能性は大いにあり得る」

 

あやめ「あの…」

 

「あやめ、これを見てくれ」

 

俺は、先程おっさんに見せた映像をあやめにも見せる。

 

あやめ「これは…」

 

「お前も分かるだろ?動きが素人じゃないと」

 

あやめ「ええ」

 

米田「おそらくだが、先程あやめ君から聞いた、ネズミ小僧に違いねぇ」

 

「だろうな。一部のファンには貴重な物も盗む。さくらのリボン、すみれのチョーカー、紅蘭の眼鏡。ファンにとっては喉から手が出るほど欲しい代物だ」

 

米田「となると、もしかするとまた来るかも知れねぇな」

 

十中八九来ると思うぜ。

 

「来るだろな。さくら、すみれ、紅蘭のは入手済み。となれば残りのマリア、カンナ、アイリスの3人の持ち物を盗むだろうよ」

 

あやめ「3人には、特に警戒するように伝えるわ」

 

「いや、それは無理だろう」

 

3人に伝えに行こうとするあやめを止める。

 

「大神やさくらといった、普段から稽古してる連中ですら気づかないんだ。警戒したところで、マリアやカンナも同じだろうよ」

 

あやめ「ならどうすれば」

 

どうすっかなぁ。…!そうだ。

 

「おっさん、1つ提案があんだが」

 

米田「提案?」

 

「ああ、それはな…」

 

俺は思い付いた事を2人に話す。

 

米田「なるほど」

 

あやめ「本当に上手く行くかしら?」

 

「なにもしないよりいいだろう」

 

米田「そうだな。よし!それでいこう」

 

こうして、俺の案が採用となった。さて、ネズミ小僧だかなんだか知らねぇが、チョーシに乗った事を後悔させてやるよ。



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第二十八話

さて、今回の事件で俺はおっさんとあやめにある提案を出した。その案とは…

 

(まぁ、俺が言った事だが寝巻きがねぇのは驚いたな)

 

今現在俺は、マリアの部屋でマリアに変装して寝たふりをしている。大丈夫だとは思ったんだが、やはりマリアも女だ。それに、今回の犯人は巷を騒がしているネズミ小僧だ。念には念をって訳だ。

 

(マリアの奴、普段は裸で寝てるって言ってたから、マリアの服を借りる嵌めになっちまったからな)

 

そう。マリアは寝巻きを着て寝ないから、普段生活で着てる服を借りたのだ。

 

「さて、何時来るのやら」

 

そんな事を思ってると、ドアがカチャリと音を立てて静かに開いた。

 

「(来たか)Zzz…」

 

俺はバレないように、気配と聞き耳を立ててネズミ小僧の行動を確認する。

 

ネズミ小僧「チュ~チュチュチュ、よく寝てるぜ。さて、今回は何を頂こうかな♪」

 

するとネズミ小僧は部屋を物色し始めた。

 

ネズミ小僧「おっ、こいつは…」

 

すると、枕元に置かれてる拳銃を見つめていた。これはマリアの愛銃で、わざわざ借りたのだ。

 

ネズミ小僧「劇場の女優の癖に、物騒な物持ってやがるな。だが、こいつを売れば結構な値段で取引出来そうだな♪」

 

なるほど。盗んだ物は、どこぞのコアなファンに高値で売ってるって訳か。

 

ネズミ小僧「こいつは頂くぜ♪悪く思うなよ姉ちゃん」

 

そ~っとネズミ小僧は俺に近づく。もう少し…後3歩、2歩、1歩…今だ!!

 

「そこまでだ、ネズミ小僧」

 

俺は素早く起き上がり、ネズミ小僧を蹴り飛ばす。

 

ネズミ小僧「グヘェっ!!」

 

米田「観念しろネズミ小僧!」

 

それと同時に、おっさん達も部屋にやって来た。

 

ネズミ小僧「な、何でバレたんだ!」

 

米田「それはそこにいる奴のおかげだよ」

 

おっさんはそう言いながら俺を見る。

 

ネズミ小僧「女優のマリア・タチバナがだと!?」

 

「すみませんね。私はマリアさんじゃないんですよ」

 

丁寧な口調で、俺は変装を解く。

 

ネズミ小僧「なっ!?」

 

「私はこの近所で喫茶店を営んでいましてね♪」

 

俺の正体を見た瞬間、流石のネズミ小僧も驚いてた。

 

さくら「私のリボン返してください!」

 

すみれ「私のチョーカもですわ!」

 

紅蘭「ウチのメガネもや!」

 

盗まれた物を返せと言う3人。

 

ネズミ小僧「悪いね。盗んだ物は返せないってね!!」

 

そう言った瞬間、床に煙球を投げつけやがった。部屋はあっという間に煙で包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると突然ガラスが割れる音が聞こえた。そしてそこから煙が抜けていく。窓を破って逃げたか。だが、逃げられると思うなよ♪ネズミ小僧。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネズミ小僧「ヘヘッ!そう簡単に捕まるネズミ小僧様じゃねぇのよ」

 

屋根伝いに逃げてると、突然後ろから攻撃された。

 

ネズミ小僧「おわっと!!だ、誰だ!」

 

オペレーター「ターゲット確認。それ以上動けば攻撃するわよ」

 

そこにいたのは、髪を縛ってる茶髪の姉ちゃんだった。

 

ネズミ小僧「へっ!たかが姉ちゃん1人で俺様を捕まえようってか?ちゃんちゃらおかしいぜ」

 

『なら、これならどうだ?』

 

背後から突然声がして振り向くが誰もいねぇ。

 

ネズミ「だ、誰もいねぇ」

 

そして再び前を向くと、さっきの姉ちゃんが増えていた。俺は目がおかしくなったのかと思って目を擦る。すると更に姉ちゃんが増えていた。しかも全員同じ顔だ。

 

ネズミ「ど、どうなってんだよ!?」

 

「どうもこうも、見たまんまが現実だ」

 

すると姉ちゃん達の後ろから、女優のマリア・タチバナに変装してた男が出てきた。

 

ネズミ「て、テメェは!?」

 

「観念しろネズミ小僧。もう逃げ場はねぇぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「観念しろネズミ小僧。もう逃げ場はねぇぞ」

 

俺は後を追い掛けて、先回りさせてたオペレーター達の間を抜けてネズミ小僧に話しかける。既にネズミ小僧の背後にも、オペレーターを配置してる。完全に包囲した形だ。

 

ネズミ「どうなってやがる!お前以外は全員同じ顔なんておかしいぜ!!」

 

「そりゃそうだろな。全員(この時代で言う)機械人形だからな」

 

ネズミ「き、機械人形だと!?嘘を言うな!!」

 

んなに叫ぶなよ。ま、お前の言い分も分かるけどな。どっからどう見ても、オペレーター達は普通の人間にしか見えねぇよな。はっきり言ってその気になれば夜の相手も出きるからな。

 

「さて…どうするネズミ小僧。この人数を相手に逃げれると思うか?」

 

ネズミ「クッ!」

 

悔しそうな顔してんな。さて、さっさと捕まえて…

 

ネズミ「チューチュチュ♪そう簡単に捕まってたまるかよ!」

 

するとネズミ小僧は、回りにいるオペレーター達の中に紛れ込んだ。

 

「この中に紛れ込みやがったか」

 

さて…どうするか。

 

「……down」

 

俺は英語でそう言うと、変装したネズミ小僧以外は全員がしゃがんだ。

 

ネズミ「なっ!?」

 

「なるほど。お前が偽物か」

 

ネズミ「クソっ!」

 

再び逃げようとするが、俺は鎖を出現させたネズミ小僧を縛り上げた。

 

「雑種ごときが、我から逃げようなど片腹痛いわ!」

 

ネズミ「な、何が起きやがった!?」

 

「王である我を侮辱するだけでなく、我の愚民も侮辱した。それは万事に値するぞ。図に乗るなよ」

 

ネズミ「お、お助け!」

 

「命乞いはあの世でするんだな」

 

俺は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を俺の後ろに出現させ、ネズミ小僧に狙いを定めた。

 

「じゃあな。雑種」

 

そして俺は宝具を発射した。

 

ネズミ「ぎゃああああああああ!!!!!!!!」

 

ネズミ小僧の叫び声がこだましたのだった。

 

「なんてな♪殺すわけねぇだろうがよ」

 

宝具も発射すせず、その場から動かしていない。だがネズミ小僧は発射されると思い、泡を吹いて気絶していた。

 

「さて、後はこいつを米田のおっさん経由で警察に届けてもらうか。お前ら、今日はお疲れ。もう解散していいぞ」

 

『了解しました』

 

そして俺はネズミ小僧を担ぎ、オペレーター達は全員帰っていった。そして翌日、盗まれた物も無事戻ってきたそうだ。買った奴は、ネズミ小僧に依頼をしたため逮捕されたそうだ。

 

「しかし良かったじゃねぇか。3人の盗まれた物も無事帰ってきてよ」

 

俺はおっさんと2人で、支配人室で話している。

 

米田「まぁな。それにああいう事があったから、上の連中も警備を強化するって言い出してよ」

 

「へ~。どんな感じにだ?」

 

米田「それはな」

 

「大神さん!また間違ってますよ!!」

 

すると、事務所の方から声が聞こえた。

 

大神「勘弁してくれかすみ君。昨日から一睡もしてないんだよ」

 

「どうなってんだ?あれ」

 

米田「ああ。直ぐに警備の費用は落ちねぇからよ、当分の間、大神に寝ずに見回ってもらえって言われてな」

 

「鬼かよ。いくらなんでも無理だろうに」

 

米田「俺もそう思ってる。ま、今日までの辛抱だ。明日から花組の連中も含めて、日替わりで見回ることになってるからよ」

 

「それまでアイツがもつといいがな」

 

俺は今にも船を漕ぎだしそうな大神を見て、苦笑いをするしかなあった。ま、同情するよ。



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第二十九話

泥棒事件から3日が過ぎた。その間は世間は捕まったネズミ小僧の逮捕の話で持ちきりだった。俺の店にも、来る客来る客同じ話をする。んで、劇場の方は今日からすみれとカンナが主役の孫悟空が開演している。んで、最早お決まりのように、俺は舞台袖から劇を見ている。

 

カンナ「やいやいやいやい!古今東西の…あ、妖怪変化どもぉ!この三蔵法師の一番弟子!孫悟空様に刃向かうたぁ、いい度胸だぁ。まとめて極楽浄土に送ってやるから、あ、感謝しろい!!」

 

すみれ「ハッ!身の程知らずの石猿め!この美と愛の化身、妖鬼夫人が直々に、ハッ、地獄に送って差し上げてよ!!オホホのホー!!」

 

『アハハハハハ!』

 

すみれの台詞に、観客達は笑っていた。

 

紅蘭「すみれはん…毎度ながらハマっとるわ」

 

大神「カンナの孫悟空といい、すみれくんの妖鬼夫人といい……イメージにぴったりだな」

 

「大神さん。例え思っていても本人達には絶対言ってはいけませんよ」

 

アイリス「でも、すみれ後で絶対『何で私が悪役ですの!?』って言うんだろ~ね」

 

さくら「ふふ、きっとそうね」

 

絶対に言うだろな。またおっさんとあやめの胃がやられそうだな。今回の孫悟空の配役は、孫悟空がカンナ、妖鬼夫人がすみれ、三蔵法師がマリア、猪八戒がさくら、沙悟浄がアイリスとなっている。今回紅蘭は、大神と同じで裏方の仕事だ。

 

カンナ「覚悟しやがれ!この、この、くぅぅ…ヘ、ヘビオンナ!」

 

すみれ「なんの!この大バカ猿!!」

 

(おいおい、すみれの奴、今の絶対台詞だけの感情じゃねぇよな)

 

普段からあいつらは、犬猿の仲だからな。けど、それでも仲が悪いって訳じゃないからいいけどよその辺は、おっさんやあやめ、大神達がやることだからな。

 

カンナ「あっ!?」

 

するとカンナが変な声を出す。俺達は舞台を見ると、すみれの衣装をカンナが踏んですみれが倒れていた。

 

すみれ「ひぇ~~~~っ!?……ドタッ……」

 

『ワハハハハハ!!』

 

当然それを見た観客は大爆笑。

 

紅蘭「あ…やってもうたわ!」

 

アイリス「ヤバ…」

 

すみれ「何なさるんですのっ!?ちゃんとお芝居してくださらないこと!?」

 

カンナ「なんだと!?そっちこそちゃんとやれよ!!このくされババァ!!」

 

売り言葉に買い言葉。カンナの言葉で本格的にゴングが鳴ったのである。

 

すみれ「!!何ですって!このバカザル!マヌケ!勝負ですわ!」

 

カンナ「おーおー!上等だ!かかってこい!!」

 

そして2人は、お芝居の事を忘れて本格的な喧嘩に発展したのだった。

 

「仕方ない」

 

俺はこれ以上客にこの光景を見せるわけにはいかないと思って、勝手に舞台の幕を下ろしたのだ。

 

マリア「森川さん!?」

 

「すみません。あれ以上お2人の喧嘩をお客様達にお見せする訳にもいかないと思いまして。勝手ながら幕を下ろさせてもらいました」

 

マリア「いえ、ありがとうございます」

 

どうやら、マリアの奴も俺と同じ考えみたいだったようだな。さて…面倒だか止めるか。万が一何かが起きて大きな怪我とかされちゃ面倒だからな。

 

「お2人とも!そこまでです!」

 

俺は2人の間に割って入る。

 

すみれ「止めないで下さいませ!森川さん!!」

 

カンナ「そうだぜ!今日と言う今日は勘弁ならねぇ!!」

 

「とにかく!続きをするにしろ話をするにしろ、 まだお客様もいます。ですので、ひとまず楽屋の方に行きましょう」

 

そして俺はすみれ、大神はカンナの相手をしながら楽屋に向かった。

 

大神「…やれやれ。舞台はめちゃくちゃになってしまったね」

 

すみれ「……」

 

カンナ「……」

 

米田「よぉお前ら。随分派手にやってくれたな」

 

「お待たせしました」

 

俺はおっさんと一緒に楽屋にやって来た。

 

さくら「支配人」

 

米田「すみれもカンナも、随分とボロボロになりやがってよ」

 

さくら「森川さん…あの2人ステージが終わってからもずっとあの調子で…まさに、一触即発って感じで」

 

「そうですね~」

 

さくら「大神さん!どうにかしてください!」

 

大神「う~ん…」

 

さくらに言われ、大神は2人の前に行く。

 

(ったく、すみれの奴服とかボロボロじゃねぇか。後で手当してやるか)

 

すみれ「なんですの少尉?わたくし、非常にイラついてますの!」

 

カンナ「うるせえぞ隊長!今、頭にきてんだ!話しかけないでくれ!」

 

あちゃ~、2人とも大神にまで当たってやがるよ。

 

カンナ「このザマス女のせいで、赤っ恥かいちまったぜ!」

 

すみれ「それはわたくしのセリフですわ!この筋肉女!」

 

カンナ「なんだと!?このイヤミ女!」

 

すみれ「怒ってる理由は、どこぞのサル女ですけど!」

 

カンナ「なんだとぉ!このマネキン女ぁ!!」

 

すみれ「なんですってぇ~!」

 

ダメだこりゃ。話せば話すほど状況が悪化してってるわ。

 

すみれ「だいたい、貴女の野生丸出しの演技がいけないんですわ!…お陰で、わたくしの完璧な演技がメチャクチャですわ!」

 

カンナ「へッ、笑わせるんじゃねーよ!おめぇ、服を踏まれてコケるの、これで何回目だ?よっぽど顔面で着地するのがお気に入りようだな!」

 

すみれ「キーッ!なんですってえ!!」

 

カンナ「おもしれえ!さっきの続きをやるか!?」

 

ダメだ。これ以上話しても同じことの繰り返しだ。今日1日は、お互い顔を見ない方がよさそうだな。

 

「おいおっさん」

 

米田「なんだよ」

 

「面倒だが、今日1日すみれの奴ウチで預かってやる。お互い今日1日はこれ以上顔会わせない方がいいと思うぜ」

 

米田「そうだな。頼めるか」

 

「俺から言ったんだ。1日くらいいいさ。けど、後で誰かすみれの話し相手に送ってくれ。流石に俺1人だと面倒だ」

 

米田「分かった。いい加減にしろ!」

 

そしておっさんが声を張り上げて怒鳴る。

 

米田「お前達、今日1日は離れていろ!森川、悪いが今日1日すみれの奴をお前の所に置いてやってくれねぇか」

 

「すみれさんがよければいいですけど?」

 

米田「って訳だ!すみれ、とにかく部屋に行って1日分の泊まる用意をしてこい!」

 

そしてすみれは楽屋を出ていった。

 

米田「後…さくら、そして紅蘭。悪いがお前達も用意してくれ」

 

さくら「えっ?」

 

紅蘭「ウチらもですか?」

 

米田「ああ。流石に森川1人にすみれを任せるわけにはいかねぇしな。カンナの方は、マリアとかがいた方がいいだろ」

 

さくら「分かりました」

 

紅蘭「ほなウチらも用意してこよか」

 

そしてさくらと紅蘭も、外泊の用意をしに行った。

 

「じゃあ米田さん。私は先に戻ってますね」

 

米田「すまねぇな。今日1日はよろしく頼むぜ」

 

「分かりました」

 

そして俺も店に戻るのだった。



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第三十話

先に店に戻った俺は、すみれ達が寝泊まりする部屋の掃除をしている。ま、ほとんど終わったがな。

 

「うし!こんなもんだろ。布団も3人分用意したし、後はあいつらにやってもらうか」

 

部屋の隅に布団を置いておく。すみれの奴、普段はベットらしいが今日くらいは我慢してもらうしかねぇがな。

 

「さて、店の開店準備をするか」

 

すみれ達が来るからといって、店を休むわけにはいかないからな。ま、普段から自由にしてる分、いるときくらいは店開けとかねぇと客減るしな。そして俺は1階に下り材料の仕込みを始めた。暫くして、外泊の荷物を持ったさくら達が来た。

 

さくら「こんばんは森川さん」

 

紅蘭「今日は世話になります」

 

「ええ、よろしくお願いします。皆さんが泊まる部屋は、以前さくらさんが泊まった部屋ですので、すみませんがさくらさん、お2人の案内を任せてしまってもいいですか?」

 

さくら「はい大丈夫です。任せて下さい」

 

「ではお願いします」

 

そしてさくらの案内で、2階に上がっていった。

 

「おっと、後でさくら達に営業中は下りてこないようの言っとかねぇとな。下りてこられたら、店ん中が一瞬で混乱するからな」

 

流石に劇場の女優が3人も店にいると知れれば、さくら達見たさに野次馬が集まってくるしな。

 

「おし!仕込み終わりッと。店開ける前にあいつらの様子を見に行くか」

 

俺は2階に行き、さくら達の部屋に向かった。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」コンコン

 

ノックして中から返事が来るのを待つ。

 

さくら『あ、森川さん。入って来ても大丈夫ですよ』

 

「失礼します」

 

中に入ると、各々が自由に過ごしていた。

 

さくら「本当にすみません森川さん」

 

「気にしないで下さい。それよりすみれさん。すみませんが家にはベットなんて立派な物はありませんので、布団で我慢して下さいね」

 

すみれ「構いませんわ。元々わたくしと怪力女のせいで、森川さんにご迷惑をおかけしている事は重々承知していますわ。ですので、これくらい問題ありませんわ」

 

「よかったです。後皆さん、私は下で店を開けていますので、下に下りてきてはいけませんよ」

 

さくら「?どうしてですか?」

 

いやさくら、それくらい理解してくれよ。

 

すみれ「そんな事も分かりませんのさくらさん。わたくし達は女優なのですよ」

 

紅蘭「せやでさくらはん。ウチらが下に行ったら、森川はんの店にお客さんが溢れかえってまうで」

 

さくら「あ、そうか」

 

「ええ。皆さんは人気ですので、1人でもウチの店にいると分かれば、それを聞いた人達で店に人だかりができて商売になりませんので」

 

さくら「分かりました。できるだけ此方で待ってますので」

 

「それではお願いしますね」

 

そして俺は下に戻り、看板をひっくり返し店を始めた。チラホラと常連客達が来たが、特に目立った問題も起きず、無事閉店をむかえた。

 

「んっん~…今日も終わったか」

 

俺は腰に手を当て後ろに反る。

 

さくら「森川さん」

 

すると二階からさくら達が下りてきた。そういえばさくら達、まだメシ食わしてなかったな。

 

「すみません皆さん。まだお食事を用意してませんでしたね。すぐに用意しますので、カウンターに座って待っててください」

 

さくら「あっ、お手伝いします」

 

別に手伝わんでもいいが、さっさと終わらせたいからそのまま手伝ってもらうか。

 

「お願いします。ではさくらさんは、味噌汁を温めて下さい。私はその間におかずをもう1品作りますので」

 

さくら「分かりました」

 

そして俺達は料理を作る。すみれや紅蘭も手伝うと言ったが、悪いが狭いんだよ。厨房内…だから俺とさくらで十分なんだなこれが。そして味噌汁も温まり、おかずも出来上がる。

 

「お待たせしました。残り物になりますが、鯖の味噌煮とだし巻きです。後ウチで漬けた漬物と味噌汁です」

 

紅蘭「こら旨そうやな」

 

すみれ「そうですわね」

 

「折角ですし、奥のテーブル席で食べましょうか」

 

そう言うと、すみれと紅蘭は俺とさくらの分の膳も運んでくれた。

 

「それではいただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

そして食事も終わり、各々に順番で風呂に入るように言う。一応俺の家にも風呂は作ってる。そして順番に風呂に入り、部屋に戻っていった。俺はまだ食器の片付けてや、今日の売り上げ計算とかもあるからまだ入ってない。すると、二階からすみれが下りてきた。

 

「ん?すみれか。どうした、寝れないのか?」

 

すみれ「はい。少し目が冴えてしまって」

 

「……」

 

だがすみれの顔は、寝れないだけが原因じゃないみたいなんだよな。

 

「…座りな。ホットミルクでも出してやるよ」

 

俺は鍋で牛乳を温める。すみれはカウンター席に座る。

 

「ほら。少しハチミツを入れてある」

 

すみれ「…いただきます」

 

すみれはゆっくりとホットミルクを飲む。

 

すみれ「…美味しい」

 

「だろ♪このハチミツや牛乳はちょっと特別でな。普段は中々手に入らねぇから客には出してないがな」

 

すみれ「その様な貴重な物を」

 

「気にすんな。逆にこういうときだからこそ飲んでほしいんだよ」

 

そして再びホットミルクを飲むすみれ。

 

すみれ「…森川さん」

 

「ん?」

 

すみれ「今日は本当にありがとうございました。私とカンナさんの為に、関係のない森川さんまで巻き込んでしまって」

 

「それこそ気にするな。元々は、俺からおっさんに今日はすみれを預かるって言ったんだよ」

 

すみれ「そうなのですか!?」

 

やっぱ驚くか。そらそうだよな。

 

「ああ。お前らの喧嘩は何時もの事だが、流石に今回ばかりは俺もまずいと思ってな」

 

すみれ「……」

 

「別に喧嘩するなとは言わねぇさ。逆に喧嘩とかしなかったら、余計ストレス溜めるだけだしな。お前やカンナ、お互い譲れないモンがあるからこその衝突だ。んで、お互い1日顔会わせなきゃ、頭も冷えてもう少しまともに話せるだろうと思っただけだ」

 

すみれ「…そうですか」

 

「ま、明日戻るんだ。互いに冷えきった頭で話せよ」

 

すみれ「フフッ…そうですわね」

 

そしてすみれは、カップに入ってたホットミルクを飲みきり立ち上がる。

 

すみれ「私そろそろ寝ますわ」

 

「ああ、そうしろ。今日はゆっくりと寝ろ」

 

すみれ「はい」

 

そう言いすみれは二階に上がろうとする。だが途中で止まり俺の方にやって来た。

 

「?どうした」

 

すみれ「これはお礼ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

すみれ「フフッ…ではお休みなさいませ」

 

そしてすみれは部屋に戻っていった。

 

「…ったく、いきなりだから流石に驚くだろうが」

 

まさか唇にするとは俺も思わなかったからよ。動揺が隠せねぇよ。

 

「……」

 

続きの計算をしようとするが、やはり俺も男だ。さっきの事が気になって集中できねぇ。

 

「ハッ!ガキかよ俺は。風呂に入って頭冷やすか」

 

売り上げ計算を明日にするか。取り合えず風呂に入って、変に上がった体温を落ち着けるか。

 

「……」

 

だが俺は、この時アイツがあの現場を見ていた事に気づく事が出来なかった。



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第三十一話

「ふぅ…やっぱ風呂は気持ちがいいな」

 

すみれとのキスから俺は、すぐに風呂に入り火照った顔を冷ましていた。

 

「風呂は命の洗濯。日本人の心だな。やっぱ湯船に浸からないとな」

 

浴槽は、俺が余裕で足を伸ばせるくらい大きく作ったからな。狭いと疲れが取れねぇんだよ。

 

「しかし…」

 

俺は、先程の事を思い出す。まさかすみれとキスするとはな。

 

「ま、言っちゃ悪いが過去(前世)でモテた事ないからな」

 

前世では、好きになった女に告白しても、イイ人止まりだったからな。

 

「……」

 

これ以上考えるのや止めだ。さっさと上がって、酒飲んで今日は寝るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

浴室の扉が開く音が聞こえたが、湯気で入り口が見えねぇな。目を凝らして見ると、湯気に人影が浮かび上がる。そしてやって来たのは…

 

「さ、さくら!?」

 

さくら「……」

 

さくらだった。

 

「バ、バカ!俺が入ってるの知ってるだろが!!」

 

俺は慌てて後ろを向く。

 

さくら「す、すみません///けど、どうしても森川さんと話がしたくて」

 

「……」

 

話って、風呂から出た後でもできるだろうが!けど仕方ねぇ。これ以上立たせて風邪引かせたら意味ねぇからな。

 

「…とにかく湯船に入れ。そのままじゃ風邪引くぞ」

 

さくら「し、失礼します」

 

そしてさくらは入ってくる。一応2人でも入れるからいいが…

 

「「……」」

 

か、会話がねぇ!こんな状況で何話せばいいんだよ!!ってか、さくらもさくらだ!嫁入り前の女が男の!しかも独身の奴の風呂に入ってくんなよな!!

 

 

「「……」」

 

未だに俺達は、互いに背中を向けている。

 

さくら「…ごめんなさい」

 

「あ?」

 

さくら「私…見ちゃったんです。森川さんがすみれさんとせ…接吻したのを」

 

「……」

 

その言葉に俺は何も言えなかった。事実だからな。

 

「あ~…」

 

さくら「それを見たら、胸がチクチクして…苦しくなって…」

 

「だから、こんな行動に出たって訳か」

 

さくら「…はい」

 

やれやれ。だからってこんな行動を起こすとは、普通思わねぇわな。俺は側に置いてあるタオルを腰に巻き湯船から立ち上がる。

 

さくら「森川さん…」

 

「嫁入り前の女が、気軽に肌を見せるんじゃねぇよ」

 

さくら「ごめんなさい」

 

「だが、生憎俺は鈍感じゃねぇ。お前の行動の意味は理解してるつもりだ。けど、今はお前の気持ちには答えられない。お前…さくら以外にも、マリアやアイリス達の事もあるからな」

 

さくら「……」

 

俺の言葉に、さくらは黙っている。

 

「それに、今は帝都を脅かしてる脇侍をどうにかしないといけないしな。それが片付いたら、お前らの問いに答えるつもりだ」

 

そう言い残して、俺は風呂を後にした。そのまま着替え自分の部屋に戻り、ベッドに横になる。

 

「ったく、鈍感な大神の奴が羨ましいぜ」

 

そう呟いた俺は、そのまま眠りについた。翌日、俺はいつも通りの時間に起き、さくら、すみれ、紅蘭、そして俺の計4人分の朝飯の用意をしている。

 

「ん?1人起きたな。この気配は…さくらの奴か」

 

よりによって、先に起きたのがさくらか。いくら俺でも少しばかり気まずい。

 

さくら「お、おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

さくらは俺の顔を見ると、昨日の事を思い出したのか顔を赤くしてる。ま、俺もバレない様に頑張ってんだがな。

 

さくら「あの…森川さん」

 

「さくら、お茶を淹れたから飲め」

 

さくら「は、はい」

 

カウンターの席に座らせ、淹れた茶を出す。それを受け取ったさくらはゆっくりと飲んでいく。

 

さくら「はぁ…美味しい」

 

「そうか」

 

俺はそのまま朝食の準備をする。

 

さくら「森川さん…昨日の事なんですが」

 

「……」

 

さくら「私の気持ち…」

 

「…昨日言った通り、今すぐにはお前の気持ちに答える事は出来ねぇ」

 

さくら「……」

 

「お前だけじゃねぇからな。ま、取り合えず平和になってからだな」

 

さくら「そう…ですね」

 

「悪いな」

 

話してる間に、朝食の用意が終わった。んで、タイミングよくすみれが下りてきた。その後ろから、ボサボサの髪をした紅蘭も下りてきた。

 

すみれ「おはようございます。さくらさん、森川さん」

 

さくら「おはようございますすみれさん」

 

「おはようございます。すみれさん、紅蘭さん」

 

紅蘭「ふあぁぁぁ…おはようさん」

 

そして俺達は朝食を食べるのだった。食べ終わり、食器を洗い終わると、さくら達は荷物を持って下りてきた。

 

すみれ「森川さん、本当にお世話になりました」

 

「気にしないで下さい。後は、お2人が仲直りできる事を祈ってますよ」

 

いやホント。頼むから仲直りしてくれよな。もうこんなのはごめん被るわ。

 

さくら「それではお邪魔しました」

 

紅蘭「ホンマ世話になりました」

 

そして3人は劇場へと帰っていった。

 

「さて、店の準備するか」

 

俺は3人が出てったのを確認すると、店の開店準備を始めるのであった。



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第三十二話

すみれとカンナの喧嘩か翌日、おっさんから電話がかかってきた。

 

「もしもし」

 

米田『おぅ、森川か?この前は色々とすまねぇな』

 

「気にするな。俺から言い出した事だからな。で、あれからどうなんだ?」

 

米田『ま、相変わらずだな。だが、すみれとカンナ、そして大神の3人には、少し前に深川に行ってもらった』

 

「行ってもらったって」

 

いやいやおっさん、何でわざわざあの2人を大神と一緒に行かせたんだよ。

 

「おっさん…大神に押し付けたな」

 

米田『人聞き悪い事言うんじゃねぇよ!』

 

いや…状況を知ってる俺らから見れば、どう見ても大神に押し付けたとしか考えられないんだが…

 

「まぁいいか。けど、何で深川を調べに行ったんだ?」

 

米田『その事について説明してぇから、今から劇場に来れるか?』

 

「分かった」

 

そして電話を切り、俺は店を閉めて劇場に向かった。到着すると、来賓用の入り口にかすみが立っていた。

 

かすみ「お待ちしてました森川さん」

 

「わざわざ出迎えてもらってすみません」

 

かすみ「気にしないで下さい。今回は支配人室ではなく、司令官直々に森川さんを作戦室に案内するように言われましたので」

 

「作戦室…ですか」

 

って事は、劇場の地下に案内されるんだな。流石にあそこは俺1人で行くわけにはいかないしな。

 

かすみ「はい。それではご案内しますね」

 

そして俺は、かすみに案内されて地下にある作戦室にやって来た。

 

かすみ「失礼します。米田司令官、森川さんをお連れしました」

 

米田「ご苦労。森川、適当な席に座ってくれ」

 

俺は空いてたさくらとマリアの間の席に座る。

 

「それで、大神さん達以外の皆さんがいますが…」

 

あやめ「ええ。大神君達から連絡が来るまで、今は待機中なの」

 

米田「一応この後翔鯨丸に乗り込むがな」

 

「なるほど」

 

ん?なら何で俺は呼ばれたんだ?

 

「では、何で自分は呼ばれたんですか?」

 

米田「実はな、大神達から連絡が来た時に、あやめ君達と一緒に行ってほしいんだよ」

 

「…はい?」

 

俺耳がおかしくなったか?一緒に行ってほしい?

 

「いやいや、おかしくないですかそれ!?」

 

米田「無理な頼みだってのは十分分かってるつもりだ。だが、あいにく俺はこの後どうしても外せない用事があるんだよ」

 

あやめ「緊急事態の時ならば、問題ないのよ。けど、今は緊急警報も出ている訳じゃないから」

 

あ~確かに。別に何処かで脇侍が暴れてるって訳じゃないからな。

 

「しかし、自分は一緒に行って何をすれば?」

 

米田「なぁに、翔鯨丸の椅子に座ってこいつらを励ましてやればいいんだよ」

 

それってつまり、おっさんの代わりに翔鯨丸の椅子に座って指揮しろと言ってるもんだよな。

 

「えっと…皆さんはそれでいいんですか?」

 

俺は念の為さくら達に聞く。

 

さくら「全然大丈夫ですよ!森川さんが来てくれるなら!!」

 

マリア「指揮等は、合流して大神隊長が引き継ぎますし、それまでの間は私とあやめさんが行いますから」

 

アイリス「アイリス、大輔お兄ちゃんに来てほしいな」

 

紅蘭「ウチも構いません。森川はんが来てくれら方が、皆の霊力も上がりますさかいな」

 

あやめ「ってな訳で、よろしくお願いするわね♪」

 

「…わかりました」

 

やれやれ…なんでこうなるかな。すると、由里が作戦室に入ってくる。

 

由里「米田支配人、大神隊長より連絡がありました」

 

米田「分かった。聞いたなお前ら。それでは直ちに翔鯨丸に乗り込み、大神達の元に向かってくれ」

 

『了解!!』

 

米田「森川…頼んだぞ」

 

「分かったよ。ったく、今度ウチの店の売り上げに貢献してもらうからな」

 

俺はおっさんにそう言い残して、さくら達の後を追いかけた。到着すると、普段は外からしか見ることのない翔鯨丸があった。

 

「近くで見ると、やはり大きいですね」

 

あやめ「フフッ、そうでしょ?それじゃあ森川司令官代行、行きましょうか」

 

「司令官代行はよしてくださいよあやめさん。ガラじゃありませんよ」

 

あやめ「あらそう?うふふふ♪」

 

所鯨丸に乗り込むと、中の作りを見て俺は驚く。

 

(この時代にしては、かなりな技術が詰め込まれているな。流石は最新鋭の技術が使われてるだけあるな)

 

由里「翔鯨丸、発進準備完了」

 

椿「地上に警報発令」

 

かすみ「ハッチ、開きます」

 

俺は普段はおっさんが座ってるであろう席に座って、かすみ達の行動を観察する。

 

かすみ「藤枝副司令、いつでも大丈夫です」

 

あやめ「分かりました。翔鯨丸、発進して下さい!」

 

由里「了解!翔鯨丸、発進します!」

 

そして翔鯨丸はゆっくりと浮き上がっていき、やがて地上に出た。俺はブリッジから外を眺めていた。まさか自分が乗り込んで外を見る側になるとはな。翔鯨丸は、大神達のいる深川へと向かうのであった。



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第三十三話

翔鯨丸で大神達のいる深川に向かっている俺達。

 

由里「副司令!大神隊長達の周りに大量の脇侍が出現しています!」

 

あやめ「分かったわ。直ちに翔鯨丸の砲撃準備!それと同時に、搭乗している皆を地上に降ろして!!」

 

「「「了解!」」」

 

そして、翔鯨丸の砲撃を撃ったと同時に、さくら達は降下していった。

 

さくら『遅くなってすみません!皆、大丈夫ですか!?』

 

大神『さくらくん!』

 

あやめ「さあ!貴方達も出撃よ!!」

 

カンナ『よっしゃあ!やったるぜ!!』

 

すみれ『これで役者が揃いましたわ』

 

3人もやる気満々だが、ここでトラブルが起きた。先に降下させたさくら達だが、大神達の光武の近くに降りることができなかったのだ。

 

カンナ『おいおい。随分皆と離れちまったじゃないか!』

 

すみれ『さくらさん!どうしてもっと近くに降りてこなかったんですの!!』

 

「すみれさん。地形が複雑だったんで、降りれる場所が今いる場所しかなかったんですよ」

 

すみれ『も、森川さん!?』

 

大神『何で森川さんが翔鯨丸に!?』

 

あやめ「米田司令が、どうしても外せない用があってね。それで代わりに森川さんに乗ってもらったのよ。皆賛成してるわよ」

 

わざわざ言わんでもいいだろうに。

 

すみれ『そういう事でしたら、この神崎すみれ…森川さんに無様な戦いはお見せできませんわ!』

 

既にすみれがやる気を出しているよ。

 

アイリス『む~!アイリスだって負けないんだから!!』

 

さくら『あたしだって!』

 

マリア『……』

 

すみれに対抗して、アイリスとさくらもそう言う。後、マリア…黙ってるけど翔鯨丸にある霊力測定器みたいな機械が、さっきより上がってるんだが。

 

大神『あはは…さて、二手に分かれてしまったか。皆気を引き締めていくぞ!!』

 

『了解!!』

 

そして二手に分かれていても、さくら達は順調に脇侍を倒していく。そして残ったのはボスだけだ。

 

「妾は紅のミロク。お望み通りお相手してさしあげましょう。出てくるがよい!妾が忠実なるしもべ、紅蜂隊!!

 

ミロクがそう叫ぶと、同じ色の脇侍が数体出てきた。

 

ミロク「フフフフフ…まずは小手調べ…」

 

そう言い残して、ミロクは屋敷の上で待機する。

 

あやめ「ミロクの言う通り、紅蜂隊全てを退治しなくてはならないようね。紅蜂隊を倒して目にもの見せてやるのよ!大神くん!!」

 

「皆さん、気を付けて下さい」

 

そして再び戦闘に突入する。だが、紅蜂隊はあっという間に片づけられる。

 

(おかしい。余りにも簡単にやられすぎる。どういうことだ?)

 

俺は簡単に倒された紅蜂隊を見て、疑問を抱く。

 

大神『観念しろ!もはや後はないぞ!!』

 

ミロク「フフフ。これしきで勝ったと思っているのか?」

 

するとミロクは、さくら機に光を当てる。

 

さくら『んっ?全然効かないわよ!』

 

ミロク「ふ…これで終わったと思うな!」

 

ミロクはそう言い残して、大神達の前から消えて行った。

 

大神『…どういう事だ?』

 

カンナ『まぁ、奴の光線も只のハッタリだったようだし…それでは!』

 

すみれ『いきますわよっ!』

 

『勝利のポーズ…決めっ!』

 

そしていつものように、勝利のポーズをしていた。だが…

 

(ホントに只のハッタリなのか?)

 

俺はミロクがさくら機に当てた光線の事を考えてたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

 

 

「ぬかりはないであろうな?…ミロクよ」

 

ミロク「はっ…お任せ下さい。奴らの本拠地は既に…」

 

「残る地脈ポイントは後一箇所!いよいよ、我が『六破星降魔陣』の完成の時が来た!!天地開闢(かいびゃく)以来の大いなる裁きが、帝都を打ち滅ぼすのだ!!神国、日本の未来は堕落した西洋化にあらず!我、再び、徳川幕府復活の為に蘇った。行け!!全ての西洋文化を打ち払え!!」

 

「はい…」

 

ミロク「全ては天海様のお言葉通り…」

 

天海「うむ…」



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第三十四話

すみれとカンナが仲直り?してからというもの、西遊記は大盛況である。セットも派手になり更に客の盛り上がりがある。おっさんからもそんな話を聞いて嬉しそうだ。

 

「よし、明日の仕込みも終わったし、そろそろ店を閉めるか」

 

表の看板を閉めようとした時、電話がかかってきた。

 

「誰だこんな時間に」

 

俺は電話に出る。

 

「もしもし?」

 

『森川か?俺だ、米田だ』

 

電話の相手はおっさんからだった。

 

「こんな時間に電話なんて珍しいな」

 

米田『まぁな』

 

「んで、こんな夜遅くにどうしたんだ?」

 

米田『いやなに、今夜あたり大神の奴をいい店に連れてってやろうと思ってな。んで、お前さんも誘おうと思ってよ』

 

へ~いい店ね。この時代にもそんな店があるんだな。

 

米田『どうだ?お前も行かねぇか?もちろん俺のおごりだ』

 

「そうか。なら遠慮なく連れてってもらうかな」

 

米田『そうこなきゃな!じゃあ悪いが一度劇場に来てくれねぇか?まだ仕事が残ってるからよ』

 

「分かった」

 

そして電話を切る。

 

「ま、たまにはいいか」

 

俺は店の看板を閉店にし、鍵をかける。劇場に行くと来賓用の玄関はまだ開いていた。

 

あやめ「あら?森川さん」

 

中に入るとあやめと出会う。

 

「よぅ」

 

あやめ「こんな時間にどうかしたの?」

 

「ああ。少しおっさんに呼ばれてな」

 

あやめ「あらそうなの?支配人なら支配人室にいるわよ」

 

「分かった」

 

俺はあやめと別れ支配人室に向かう。

 

「おっさん、入るぞ」

 

中に入ると、大神とおっさんが書類の整理をしていた。

 

米田「おぉ来たか。悪いがもう少しだけ待っててくれ。今大神と二人でチャッチャと終わらせちまうからよ」

 

「ならその間劇場をブラつかせてもらうぞ」

 

米田「分かった」

 

そして支配人室を出ていく。歩いてると、マリアが地下に下りていくのが見えた。

 

「ようマリア」

 

マリア「森川さん」

 

「格納庫なんか覗いてどうしたんだ?」

 

マリア「はい…実は紅蘭の様子を見に来たんです」

 

「紅蘭の?」

 

マリア「そうです」

 

「なんでまた?」

 

格納庫に紅蘭がいるのはおかしくないが、わざわざ覗き見せんでも。

 

マリア「実は、今日皆と千秋楽について話し合ったんですが、一回だけの公演ですが、皆いい舞台にしようと紅蘭に新しいセットを頼んだんです。ですが、紅蘭はなんだかそれが嫌だったみたいで」

 

「なるほど。それで様子を見に来たって訳か」

 

マリア「はい…」

 

「まぁ、俺はその場にいた訳じゃないから何にも言えないが、一方的に紅蘭に押し付けるのもどうかと思うぞ。紅蘭自身も何か言いたかったはずだろうしな」

 

マリア「そうですよね」

 

「ま、今はそっとしておいてやるのが一番だろうよ」

 

マリア「分かりました」

 

そしてマリアは上に上がって行った。

 

「さて、俺もそろそろ上に…」

 

すると奥から何かの気配を感じる。

 

「この気配は…さくらのだな。だが、えらくダルそうな感じだが?」

 

俺はさくらがいるであろう風呂場に向かう。

 

「おいさくら、いるのか?」

 

ノックをするが反応がない。別にシャワーとかを浴びてる訳でもないみたいだしな。

 

「入るぞ」

 

そう言って中に入ると、畳の場所で倒れてるさくらを見つけた。

 

「おいおい!?大丈夫か!」

 

俺は倒れてるさくらに声をかける。

 

さくら「あ…もりかわさん…長湯したら、湯あたりしちゃいまして…」

 

何やってんだよ全く。

 

「長湯も程々にしろ、アホが」

 

さくら「はぁふぅぅ…ちょっとのぼせちゃって…おでこのあたりとか…さすってもらえますかぁ…お願いしますぅ…」

 

「やれやれ」

 

俺は取り合えず、さくらが言ったように自分の手をおでこに当てる。

 

さくら「はぁ…森川さんの手…冷たくて、気持ちいいですぅ…そのまま…おでこを触っててもらえますかぁ…」

 

「分かったよ」

 

暫くすれば治るだろうよ。俺は呆れながらさくらを見ると、なんとか着たであろう着物の胸元がはだけている。

 

さくら「ど…どこ見てるんですかぁ///ふぅ…森川さん…早く冷やしてくださぁい」

 

「わ、わりぃ」

 

俺は再びさくらのデコに手を当てる。ったく、風呂場だからとはいえ、こんな無防備なさくらに何考えてんだよ…

 

「後は首筋や足元も冷やすと効果があるぞ」

 

さくら「そうなんですかぁ…それじゃあ…両方お願いしますぅ」

 

俺はさくらを少し抱き起し、首筋と足に俺の手を当てる。

 

さくら「はぁ…本当ですねぇ…森川さんの手…冷たくて気持ちいい…もっと…さすってもらえますかぁ…」

 

そして暫く俺はさくらの看病をした。

 

さくら「はぁ…森川さん、大分楽になってきました…」

 

「そうか。これからは長湯に気を付けるんだな」

 

さくら「はい…ありがとうございました…森川さんに心配してもらえるなんて…たまには…お風呂でのぼせるのも…いいかもしれませんね」

 

「何言ってんだよったくよ。俺がお前の気配に気づかなかったらどうするつもりだったんだか」

 

俺はさくらから離れる。

 

「もう少し休んでおけ。それと、上にあがったら水分をキチンととっておけよ」

 

さくら「分かりました…ありがとうございます森川さん」

 

「じゃあな」

 

そして俺は風呂場を出た。さて、そろそろおっさん達の仕事も終わった頃だろ。上に行くと、支配人室からおっさんと大神が出てきた。

 

米田「待たせたな森川。それじゃあ行くぞ!」

 

おっさんに連れられ、俺達は夜の街に繰り出していった。割愛するが…おっさんいい店知ってんな…俺達は楽しい時間を過ごして劇場前に戻ってきた。

 

大神「支配人ってば、はしゃぎすぎですよ…もう俺、恥ずかしくって…」

 

「本当ですよ米田さん」

 

ったくこのおっさんは、年甲斐になくはしゃぎやがって。

 

米田「なんだよ、大神ぃ…森川ぁ…お前らだって、凄かったじゃねぇか」

 

大神「いやぁ、俺はまだまだ…なにをどうしたらいいのか分かりませんでしたし…」

 

米田「へへっ…ああいうのは慣れだからな。また今度三人で行こうじゃねぇか!」

 

そんな話をしてると、劇場の玄関前に複数の人影を見つけた。あ~。こりゃまずいな…

 

「お二人とも、それより前を見て下さい」

 

「「前?」」

 

俺に言われ前を見ると、あやめと花組が勢ぞろいだった。

 

あやめ「お帰りなさい、三人とも」

 

さくら「…森川さん?随分と楽しそうですねぇ」

 

大神「わわっ!あやめさん…皆…これは…その…ご、ごめんなさい。もうしません…」

 

大神は素直に謝る。ま、この状況で言い訳した方が余計怒りを買うしな。

 

さくら「まったくもぅ…二度とこんな事しないで下さいね!」

 

大神「反省します…」

 

さくら「森川さんもですよ!」

 

「すみません…」

 

俺は別に構わねぇだろうがよ。ここに住んでる訳じゃないんだしよ…だが、今の状況口が裂けても言えないわな。

 

米田「これぐらいの事で頭下げるなんて、情けねぇぞ、大神、森川…」

 

おっさん…よくこいつらの前で言えるな、その台詞…

 

マリア「支配人…何かおっしゃいましたか?」

 

米田「いっ、いや、何も…」

 

ほら見ろ、言わんこっちゃない。この状況で俺達が勝てる訳ねぇだろうが。

 

あやめ「お説教はこれくらいにして、皆、戻りなさい。…大神くんと森川さんも。これに懲りて、行動を慎むようにね」

 

大神「はい…気を付けます…」

 

米田「ち…こんなワナが待っていたとはな…」

 

おいおっさん…今の言葉はマズいって…

 

あやめ「…支配人!貴方はここに残ってください」

 

米田「げげっ!?」

 

言わんこっちゃない。懲りないおっさんだな。

 

大神「支配人…大丈夫かな?」

 

「どうでしょう?ですが、口は災いの元…ですね」

 

大神「…そうですね」

 

そして大神は見回りに行った。俺はというと…

 

さくら「さぁて森川さん、米田支配人達と何処に行ったんですか?」

 

すみれ「キチンと話していただきますわよ」

 

マリア「……」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん、ちゃんと話してね♪」

 

あやめ「そうね。アイリスの言うとおりね」

 

俺は今現在、五人に囲まれている。カンナと紅蘭は、この空気に耐えられずすぐさま逃げて行った。

 

あやめ「そうね…誰かの部屋でゆっくりと話を聞きましょうか」

 

さくら「私の部屋でどうでしょう?隣の部屋はすみれさんですし」

 

すみれ「あら、だったら私の部屋でもいいはずですわ。両隣はさくらさんとマリアさんですし」

 

マリア「そうね。だったらすみれの部屋にしましょう」

 

アイリス「賛成!」

 

そして俺は、すみれの部屋に連行されていったのであった。なんで俺がこんな目に合うんだああああああああ!!!!!!!



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第三十五話

あれからなんとかさくら達の説教から解放された俺は、今地下に向かっている。ま、解放といってもまた脇侍が出現したからなんだけどな。で、深夜に出現したが無事に撃退し、戻ってきたさくら達を迎える為に地下に向かった。到着すると、緑色の光武の前でさくら達が集まっていた。

 

大神「…どうしたんだ?紅蘭がどうかしたのかい?」

 

さくら「分からないんです…光武の中から出てきてくれなくて…」

 

「一体何があったんでしょうか?」

 

大神「光武の中から出てこない?それで…皆は何をしてるんだい?」

 

大神の疑問も最もだな。カンナの手には肉まん、アイリスはウサギのぬいぐるみ、すみれは工具、マリアはそれを見て呆れている。

 

カンナ「ほらほら、紅蘭!肉まんだぞ!!うまいぞ~!出て来いよ!」

 

紅蘭「……」

 

すみれ「紅蘭が肉まんなんかで喜ぶ訳ないでしょう。カンナさんじゃあるまいし」

 

だよな。悪いが俺もすみれの意見に賛成だわ。カンナの奴だったら出てきそうだな。

 

カンナ「なんだと~っ!じゃ、てめぇならどうすんだよ!」

 

するとすみれは、持っていた工具をカンナに見せる。

 

すみれ「お~っほっほっほっほっ!紅蘭にはこれが一番ですわ。ほら、紅蘭。貴方が欲しがっていた、本場アメリカ製の工具ですわよ」

 

紅蘭「……」

 

しかしすみれの言葉でも反応しない。

 

アイリス「アイリスもぬいぐるみ持ってきたんだよ~!ほらほら、かわい~よ~っ!!」

 

さくら「で、こうやって皆で説得してるらしいんですけど…」

 

大神「説得?」

 

あ、これやっぱ説得だったのか。説明されなきゃ分からんな。

 

大神「もっと真面目にやれよ。皆がやってる事は、説得になってないじゃないか」

 

「そうですね。これは説得ではなく、ただ物で釣ってるだけですよ皆さん」

 

マリア「隊長と森川さんの言う通りよ。こんな事で紅蘭が出てくると思っているの?」

 

さくら「そうですよ…悪ふざけはよくないと思います」

 

すみれ「何をおっしゃるさくらさん。…悪ふざけとは心外ですわ。皆で楽しくやっていれば、お祭り好きの紅蘭のこと、誘われて出てくるはず。つまり…『天岩戸作戦(あまのいわとさくせん)』ですわ!」

 

天岩戸作戦って…

 

さくら「そ、そうだったんですか!?すみません、そこまで考えが至らず…」

 

おいおいさくら、そんな作戦真に受けるなよ。

 

マリア「さくら…何納得してるの。上手くいくわけないでしょ」

 

マリアに全面的に同意だ。

 

マリア「紅蘭もいい加減にしなさい。今回の戦いの失敗は、貴方だけの責任じゃないんだから。隊長の怪我もたいしたことなかったし、誰も貴方を責めたりしないわ」

 

いや、それもあるが大半の理由はあの時マリアに聞いた事だろな。

 

紅蘭『…もうええやろ。ほっといてんか…皆は機械の事…この子らの事、分かりたないんやろ…』

 

「やっぱりそうでしたか」

 

大神「紅蘭…俺も機械の事好きになるから。な、紅蘭。機嫌直してくれよ」

 

大神、今紅蘭にその言葉は不味いと思うぞ。

 

紅蘭『ウチが聞きたいんは、上辺だけの言葉なんかやない!』

 

ほら見ろ、言わんこっちゃない。

 

紅蘭『そんな考えやから!千秋楽でしか使わんセットを作ってくれなんて言うんや!!機械なんて、壊れても直せばええやなんて言えるんや!!』

 

すみれ「も、もしかして…わたくしが…」

 

紅蘭『すみれはんだけやない…皆、同じ事言うた!大キライや!!人間なんかより、機械の方がエエ!!』

 

なるほど。それで紅蘭の様子がおかしかったって訳か。確かに、紅蘭は花組の中では特に機械の事を気にかけている。機械を自分の子供の様に思ってる。俺自身もそこまでは思えないが、長年使ってる機械とかは愛着が湧くからな。紅蘭の気持ちも分からなくもない。

 

紅蘭『この子らは、ウチを必要としてくれる!必要としてくれてるんや…』

 

大神「紅蘭…」

 

「……」

 

紅蘭『うぅ…皆大キライや…』

 

「…大神さん、皆さん、今は紅蘭を1人にしてあげた方がいいかと思います」

 

マリア「そう…ですね」

 

大神「分かりました。皆、ひとまず上に行こう」

 

そして大神達は上に行った。ま、俺は格納庫に残ってるがな。

 

「さて…」

 

俺は紅蘭が入ってる光武を見る。

 

「紅蘭さん…いや、紅蘭」

 

紅蘭『…森川はん?』

 

「確かに大神達は、機械…光武とかをお前より大切には思ってない。俺自身も同じだ」

 

紅蘭『……』

 

「だがな、俺も少しはお前の言う事も分かってるつもりだ。紅蘭ほど機械に思い入れはないが、自分が長年使ってた機械ってのは、なんだかんだで愛着が沸くもんだ。この懐中時計とかな」

 

俺はこの時代に来て初めて買った懐中時計を取り出す。

 

「すみれとかが言った言葉は、確かに紅蘭にとっては辛い言葉だ。俺はお前のその性格は否定しない。だが、お前の思いをあいつらにぶつけるのも違うんじゃないか?」

 

紅蘭『!?』

 

「脇侍や光武だってそうだ。確かにお前がこいつら(光武)の心配をするのも分かる。だがな、そんな事を気にしながら戦えば、街の人達どころか、戦ってるお前らまで危険な目に合う」

 

紅蘭『それは…』

 

「分かってる。お前もそれくらいの事はな」

 

紅蘭『……』

 

「とにかく、まずは顔を見せろ。別に上には戻らなくてもいい。俺がお前の話を聞いてやるよ」

 

すると光武が開き、中から紅蘭が降りてきた。

 

「さて、取り合えず適当な場所に座って話すか」

 

近場にあった毛布を手に取り、紅蘭の手を引き一緒に包まる。

 

紅蘭「も、森川はん///!?」

 

「風邪ひくだろ」

 

俺は問答無用で紅蘭を包む。

 

紅蘭「…ありがとうな」

 

そして紅蘭は、泣き疲れたのかそのまま眠った。俺は寝る訳にはいかないしな。それから数時間後、格納庫にあやめがやって来た。

 

あやめ「森川さん…」

 

「ん…あやめか」

 

俺もいつの間にか寝てたみたいだな。

 

あやめ「紅蘭は?」

 

「まだ寝てるよ。こいつも色々と溜め込んでたみたいだな」

 

あやめ「そうね。心が一人ぼっちの時って、誰かに側にいてほしいものなの…ありがとう、森川さん。紅蘭の事思ってくれて…」

 

「気にすんな。俺自身も、紅蘭の気持ちが少し分かっただけだよ」

 

あやめ「そう…それでね森川さん。紅蘭の事で…見てもらいたい物があるの」

 

「見てもらいたい物?」

 

あやめ「ええ。30分後に支配人室来てほしいの」

 

「分かった」

 

あやめ「それじゃあ、後で」

 

そしてあやめは出て行った。そして少しいて紅蘭は目を覚まし、再び光武の中に戻って行った。

 

「仕方ないか。取り合えず支配人室に行くか」

 

俺は紅蘭を残し上に上がって行った。

 

 

 

 

 

紅蘭「光武…ウチ、もう疲れた…森川はん以外…ウチの事も、お前達の事も…分かってくれへんのやな」

 

紅蘭は、森川が出て行ったのを確認してそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

「さて、時間までまだ少しあるな」

 

言われた時間までまだある。少し劇場をぶらつくか。適当に歩いてると、玄関から声が聞こえた。見ると箒を持ったさくらと由里、そして大神がいた。

 

由里「…分かろうとしたの?紅蘭の事、分かってあげようと思ったの」

 

さくら「…したと思う。だって…紅蘭はあたしの大切な友達だし…」

 

由里「今のさくらさんと同じ様に、紅蘭は…機械の事も大切な友達と思ってたのよ」

 

「そうですね」

 

俺は話に加わる為、さくら達の会話に混ざる。

 

さくら「森川さん」

 

「紅蘭さんは、光武を友達…いえ、自分の子供の様に思ってます。その気持ちを少しは分かってあげて下さい」

 

大神「……」

 

さくら「…ごめんなさい」

 

由里「あたしや森川さんに謝ってもしょうがないでしょ。紅蘭に謝らないと…」

 

「そうですね。キチンと気持ちを込めて謝れば、きっと紅蘭さんも許してくれますよ」

 

由里「それと大神さん…紅蘭の事責めたりしたら、許さないからね。あの子は…強いんじゃない。いつも我慢してるよの。皆の為にって…」

 

大神「…分かってる。紅蘭は…優しい子だからね」

 

そして由里は戻って行った。さくらも気にしながら中に戻って行った。

 

「大神さん、よかったら紅蘭に話しかけてあげて下さい。由里さんも言いましたが、紅蘭さんは我慢して溜め込むタイプなので」

 

大神「そうですね」

 

「では自分もあやめさんに呼ばれていますので」

 

そして俺は支配人室へと向かったのだった。



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第三十六話

成長するアイリスを書いたが、自分の絵の酷さに落胆した今日この頃。

誰か上手い人に書いてほしい(願望w)


支配人室に到着し中に入ると、おっさんの他にあやめと大神もいた。

 

あやめ「…米田司令、揃いました。お願いします」

 

米田「…まずはこれを見てくれ」

 

するとあやめがブラインドを閉じて部屋を暗くし、大神が映写機を動かした。真正面に映る映像を見ながら俺は適当な椅子に座る。映ったのは激しい戦闘が行われてる映像だった。

 

大神「これは?」

 

米田「欧州大戦の映像だ」

 

すると今度は、光武に似た機体に乗り込んでる子供達が映る。

 

「この子達は?」

 

米田「この量子甲冑に乗り込んでいる子供達は…星組。花組結成以前に作られた実験部隊だ」

 

大神「星組…この子供達が」

 

「……」

 

こんな子供を実験に使うとはな。軍の連中もおかしいだろうがよ。そして映像が進んでいくと、5機の量子甲冑が街を破壊した。

 

米田「たった5人で、街1つ消す程の霊力を見せたが、今はもう解散しちまった…あれは俺の考えていた華撃団とは違う。そしてな、紅蘭はこの映像を毎日のように見ていたんだ。泣きながら、見続けていたんだってよ」

 

「「……」」

 

おっさんの言葉に、俺と大神は黙る。そして映像も終わり部屋を明るくする。

 

あやめ「人型蒸気同士が壊しあう戦場…」

 

「紅蘭さんには辛かったでしょうね」

 

大神「どうして…紅蘭はこの映像を?」

 

米田「最高の量子甲冑を作る為だ…俺も紅蘭には辛い思いをさせちまったよ。自分の友達である機械が壊されて…人々に憎まれている姿を見せちまった」

 

おっさんも後悔してるな。けど、この映像を見て今の量子甲冑が完成したのも事実。複雑だな…

 

あやめ「機械が友達なんて、おかしなことかもしれない。でも…それは違うの。大切にしている気持ちを傷つけられるのは、とても悲しいことなのよ。自分の常識に囚われず、紅蘭のありのままの心を分かってあげて。貴方には、それができるはずなんだから。ね、大神くん」

 

大神「は…はい。俺、もう一度紅蘭と話をしてきます」

 

そして大神は支配人室を出て行った。

 

米田「大神か…いい奴じゃないか」

 

あやめ「あら、今頃お気づきになられたんですか?」

 

「随分と遅いな」

 

米田「ふふふ…あいつなら、皆を守ってくれるな。星組の二の舞は、もうごめんだ。それに、お前もいるしな…森川」

 

あやめ「ふふっ…そうですね」

 

「おいおい、あんまり期待すんなよ。…ん?」

 

俺は下から機械の足音が聞こえた。なんで足音が?下にあるのは光武だが…

 

「まさか!?」

 

俺は慌てて部屋を出て地下に向かった。

 

米田「おい森川!?」

 

おっさんの声も無視して。そして地下に行くと、紅蘭の光武がなかった。

 

大神「待ってくれ紅蘭!!俺に謝らせてくれ!!」

 

「あっちか!!」

 

俺は大神の声がした方向に走る。するとそこにいたのは紅蘭の光武と、その進路の前に立ちふさがる大神だった。

 

紅蘭『もうええんや、大神はん…昨日な、森川はんがずっと一緒にいてくれたんや。ほんでな、少し考えたんや。ウチはここにいてええんかなって…』

 

大神「違うんだ!俺の話を聞いてくれ!!俺は…紅蘭がそんなに光武を大切にしているなんて、気づいていなかったんだ。機械は…光武は紅蘭の大切な友達なのに…」

 

紅蘭『大神はん…』

 

大神「君の事を…機械の事を真剣に考えていなかったんだ…すまなかった、紅蘭…光武にも、すまなかったと思っている…」

 

すると紅蘭は光武の中から出てきた。

 

紅蘭「……」

 

大神「紅蘭…」

 

「そうですよ紅蘭さん」

 

俺は紅蘭と大神に接触する。

 

大神「森川さん」

 

紅蘭「森川はん…ウチ…ウチ…」

 

紅蘭は俺の方にやって来た。

 

紅蘭「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

そして泣いてしまった。俺と大神は、紅蘭が泣き止むまで黙っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅蘭「…へへっ。思いっきり泣いたら、なんやスッキリしたわ。あんな森川はん、大神はん…ウチ、中国で暮らしてた頃…友達、おらへんかってん。毎日…誰とも遊ばんと…1人で時計や…機械ばっかりいじっとった。父様の形見の懐中時計…これだけが、ウチの友達やった。この子と話をするんだけが、ウチの支えやったんや…」

 

大神「紅蘭…」

 

「……」

 

大神「どうやって時計と話すんだい?機械は話なんか…」

 

おいおい大神。もう少し言葉を選べよ言葉をよ。

 

紅蘭「確かに、話なんかしてくれへん。でもな…分解して…組み立てなおす。そうしてると…色んな事を話してくれてる気がするんや。ほんで、あやめはんに会うて、神戸のパーシーはんって人に預けられたんや。夢みたいな毎日やったな…パーシーはんと一緒に、機械ばっかりいじっとった。ホンマに幸せやったんや…あんな事、言われるまでは…」

 

「あんな事?」

 

もしかして…

 

紅蘭「パーシーはんのオバハン…嫁さんやな。欧州大戦で息子はんが殺されたらしいんや」

 

大神「欧州大戦…」

 

紅蘭「その後…ウチ、見てもうたんや…星組の映像を…」

 

やっぱりか…

 

大神「…俺と森川さんも見た。さっき、米田司令から見せてもらった…」

 

紅蘭「確かに…あの映像をみたら、機械が人殺しに見えてもしゃあないと思った…でも…違うんや!機械が人を殺すんやない!!人が人を殺すんや!機械を使うてる人間が、悪いことをしてるんや!!」

 

「……」

 

紅蘭「人間は皆勝手や!!機械は壊してもすぐに直る…機械は文句を言わん…機械は人間やないから…悪い事は、みんな機械のせいにする!」

 

大神「紅蘭…」

 

確かに紅蘭の言う通りだ。機械に意思はない。だから、最終的に使う人間によって善し悪しが決まるのも事実だ。

 

紅蘭「なぁ大神はん、森川はん…ええ機械って、どんな機械か分かる?」

 

大神「いい機械?」

 

「なんでも言う事を聞く機械…ですか?」

 

紅蘭「そうや。ええ機械っちゅうのは、作られた目的をきちんと達成する機械の事や。【設計思想】って言うんやけどな。機械を設計する時、こういう風に動いてほしいって考えて作るもんなんよ。せやから【設計思想】通りに働いてくれる機械が、ええ機械っていうことなんや」

 

大神「へぇ…そうなんだ」

 

紅蘭「ウチが今までに会うた機械で、一番エエ子なんはな…この光武や。この子は…作った人の気持ちにきちんと応えとる。光武の設計図の裏にな、こんな言葉が書かれとった。『この霊子甲冑が、人々の希望になりますように』ってな。この設計図を描いた山崎はんって人の言葉やけど、凄く温かいって思った」

 

山崎…以前調べた元降魔部隊の山崎慎之介か。確かに、その人物の言う通り今光武は帝都に住む人の希望になってるしな。

 

紅蘭「せやのに…機械はこんなに頑張ってくれとるのに…皆は…」

 

「…ん?」

 

話してると、格納庫に人の気配を感じた。数的にこれはさくら達だな。やっぱあいつらも気になったか。

 

紅蘭「壊れたら直せばええとか…一回だけ使えればええとか…人間側の身勝手ばっかり…」

 

「紅蘭さん、その気持ち皆さんに伝えてみてはどうですか?」

 

大神「そうだよ紅蘭。君の気持ちを花組に…いや、世界中の人達に伝えよう!」

 

紅蘭「森川はん…大神はん…」

 

「ですよね、皆さん」

 

俺がそう言うと、花組の連中が出てきた。

 

紅蘭「皆…」

 

すみれ「そうですわ。きちんと話して下されば、私も分かりますわ。少尉と森川さんの言う通りですわ。紅蘭はいっつも我慢して、話してくれなかったでしょう。一言…言ってくだされば、わたくしだってきちんと機械とお付き合いいたしますわ」

 

大神「紅蘭…」

 

「紅蘭さん…」

 

紅蘭「大神はん…森川はん…ウチ…ウチ…」

 

「紅蘭さんの気持ち、皆さんに伝わっていますよ」

 

紅蘭「すみれはん…ウチ、皆に謝らなあかん。ウチ…皆に酷い事言うてもうた…」

 

すみれ「いいんですのよ紅蘭。それはお互い様ですわ。わたくし達も、紅蘭の気持ちを分かろうとしていませんでしたもの。これからは…たくさんお話いたしましょう。機械の事や…舞台の事…」

 

紅蘭「もちろんや!皆は…皆はウチの大切な友達やさかい」

 

雨降って地固まるって感じだな。

 

アイリス「わ~い!これで皆一緒だね!」

 

さくら「ふふふ…ねぇすみれさん。あれは渡さないんですか?」

 

すみれ「分かってますわよ…さくらさんは、黙ってらっしゃい。それで…わたくし紅蘭に渡したい物があるんですの。あ、あの…これ…初めて描いた物で上手くはありませんけど」

 

そう言うとすみれは1枚の紙を渡す。

 

紅蘭「ん…なんや?設計図みたいやけど」

 

すみれ「あの…千秋楽で使いたいセットでの設計図ですの。【西遊記】だけではなく、他の舞台でも使えるようにと考えてみたんですけど…」

 

へ~。あのすみれが自ら設計図をね…

 

紅蘭「こりゃええわ!確かに、どんな舞台でも使えるセットになっとる!!凄いですみれはん!ウチ、このセット作る!期待しててや!!」

 

カンナ「よっしゃ!これで今日の千秋楽も、凄い舞台になりそうだな!!」

 

そんないい雰囲気に水を差すブザーが鳴り響く。

 

あやめ『皆、集合して!黒之巣会が現れたわ!』

 

ったく…マジで空気読めよ黒之巣会…

 

マリア「皆行くわよ!」

 

紅蘭「了解や!」

 

「皆さん、頑張ってください!」

 

そして全員出撃していった。



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第三十七話

今回は短いですね。前回切る場所間違えましたw


紅蘭達は、仲直りして出撃した。しかし、出撃した場所にはあの天海がいた。

 

天海『ふぉっほっほっほっほ…待っておったぞ、帝国華撃団!!我が待望成就の祈願に、主らのむくろを帝都に飾ってくれようぞ!』

 

紅蘭『天海、許さへん…機械達に…こんな事させてからに!皆、お願いや!もう、この子らに…悪さをさせとうないんや!!』

 

「……」

 

俺は紅蘭の言葉を聞いて黙る。最初の時との違いを確信したからだ。

 

紅蘭『ホンマは壊しとうないけど…この子らを助けるには、こうするしかないから…』

 

大神『ああ、分かってるよ紅蘭。皆、行くぞ!天海を倒すんだ!!』

 

『了解!』

 

そして天海が出した脇侍達を倒す。全員倒し終わると、天海は既に帝都タワーの上に立っていた。

 

天海(て、帝国華撃団…少々みくびっておったわ…)

 

すると天海の横に叉丹が現れた。何かを話してるみたいだが流石に距離がありすぎて、俺達は愚か大神達も聞こえていないみたいだ。

 

天海「帝国華撃団!次に我と会う時が、貴様達の最後だと知れ!!」

 

天海はそう言い残して、帝都タワーから消えた。

 

「次に会った時が最後…ね」

 

紅蘭『くそ~っ…あのジジイ、もっとボテクリこかしたかったのに!』

 

「ボテクリこかすって…北九弁かよ。紅蘭の奴、神戸だよな?預けられた場所」

 

米田「ああ。だが、紅蘭の回りには色んな場所の奴がいるからな。そこで覚えたんだろうよ」

 

「やれやれ。女がんな言葉使うなよな」

 

俺はおっさんから理由を聞いて呆れるしかなかった。

 

『勝利のポーズ!決め!!』

 

そしていつものように勝利のポーズを決めて、今回の戦いは無事に終わった。そして翌日、すみれの提案で作った機械が、早速西遊記で使われていた。

 

大神「へぇ…あれがすみれ君が設計して、紅蘭が完成させた舞台装置か」

 

紅蘭「まぁな。金斗雲型ロボット…その名も【キントくん】や!簡単に言うたら、役者さんを宙に浮かすための大型舞台装置やね。これなら、西遊記だけやのうてこれからの帝劇の舞台でも、宙吊りが簡単にできるんや」

 

「なら、あの装置は千秋楽だけで終わりではないんですね」

 

紅蘭「ずっと使えるようにって、すみれはんが徹夜で設計してくれたからな」

 

なるほどな。しかし、すみれの奴が徹夜してまで考えるとはな。するとキントくんから変な音が聞こえてくる。

 

紅蘭「あ、あれ?」

 

すみれ「あ~れ~っ!」

 

カンナ「お、おわわわわわわわっ!!」

 

そしてキントくんは爆発し、すみれとカンナを巻き込んだ。

 

紅蘭「あははは…え、えぇと…多分、あれやな…【設計思想】ちゅうやつや。きっとすみれはんが、カンナはんに一泡吹かせたいって考えて設計したから…せやから、あの子が気を利かして…」

 

「「…紅蘭(さん)」」

 

俺と大神は、言い訳をする紅蘭を見る。

 

紅蘭「あははははは!こんなはずやなかったのに~!!二人とも、無事か~っ!?」

 

そして紅蘭は、すみれとカンナの所に走っていく。

 

「やれやれ」

 

大神「あはは…爆発はしてますけど、千秋楽に来ているお客さんは喜んでいるみたいですし…紅蘭の気持ちも皆に伝わったみたいですし、これで良かったんじゃないですか?」

 

「かもしれませんね。ですが、爆発は勘弁してほしいですけどね」

 

大神「それは確かに」

 

俺と大神は笑いながら、必死になって二人を心配する紅蘭を見守った。だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーン!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また爆発した…

 

紅蘭「とほほ…人間と機械が支えあえる日ってまだまだ先なんかなぁ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミロク「天海様…帝国華撃団壊滅の準備、整いましてございます」

 

天海「そうか…ご苦労じゃった。【六破星降魔陣】成就の為には、奴らが目障りだからな。一時の勝利に浮かれおれ、帝国華撃団!!貴様らの最後は目の前じゃ!」

 

叉丹「天海様…【天照】の最終調整も完了いたしました。天海様のご要望通り…この汚れた帝都を消し去る、極みの魔操機兵にございます」

 

天海「【天照】も完成か…これで全ての駒が揃ったというわけじゃな。我が大望の成就する時は近いぞぉ!ふぁっはっはっはっは!!!」



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第三十八話

カンナとすみれが行った西遊記の公演も今日で終わり、花組の連中も一息つけるな。

 

「ま、最初は色々あったが、無事に終わっておっさんもホッとしてるだろうな」

 

俺は支配人室で、頭を抱えてたおっさんの事を思い出す。すると、外の天気が少し暗くなる。

 

「曇ってきたな。夕立でも降りそうだな」

 

空を見ると、徐々にだが雲に覆われている。こりゃ客足が少なくなるな。

 

「ま、別にいいがな。趣味でやってるだけだし」

 

すると、荷物をたくさん抱えたさくらを見つけた。フラフラして危なっかしいな。只でさえさくらの奴はコケるのに。

 

「仕方ない。手伝いに行くか」

 

俺は店を閉めて、さくらの元に行く。

 

さくら「よいしょっと…」

 

「相変わらず危なっかしいな」

 

俺は荷物を持つ。

 

さくら「森川さん!?」

 

俺に気づいたさくら。

 

「随分と買い込んだな。何かあるのか?」

 

さくら「そうなんです。今日で西遊記の公演が終わるので、皆さんと楽屋で打ち上げをするんですよ」

 

「なるほど。だからこんなに飲み物やつまみがあるのか」

 

さくら「はい。少しだけ買いすぎちゃって」

 

「危なっかしいから手伝ってやるよ」

 

さくら「そんな、悪いですよ」

 

「気にすんな。それに、早くしねぇと雨が降るぞ。多分夕立だろうがな」

 

さくら「雨!?も、森川さん!早く行きましょう!!」

 

さくらはそう言うと、慌てて俺を後ろから押す。そして劇場に着き楽屋に到着した。

 

さくら「はぁ…すっかり遅くなっちゃった…」

 

「仕方ねぇだろ。荷物の量が量なんだからよ」

 

さくら「あの…さくらです。遅くなりました」

 

さくらが楽屋のドアをノックした瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴロゴロゴロ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、随分デカい雷だな」

 

さくら「あっ!?」

 

するとさくらは、座り込み壁にもたれ体を小さくする。

 

大神「さくらくん!!どうした?大丈夫か!?」

 

さっきの声を聞いて、楽屋から大神達も出てきた。

 

すみれ「さくらさん!どうなさったの!?」

 

紅蘭「かんにんや。さくらはんがこないに恐がるとは、思ってもみいひんかったんや」

 

いや、これは紅蘭達が驚かせた事じゃねぇ。

 

さくら「か、雷様に…お、おヘソとられちゃう!」

 

すみれ「はぁ…?」

 

なるほど。さくらの奴雷が苦手なのか。だが、怖がり方が尋常じゃないな。過去になにかあったんだろうな。

 

「大丈夫ですよさくらさん」

 

俺は怖がって震えてるさくらを優しく抱きしめる。

 

マリア「さくら、貴方…本気で言ってるの?」

 

マリアがそう言うと、館内放送が入る。

 

由里『大神少尉、大神少尉。米田長官がお呼びです。指令室までお越し下さい』

 

大神「くそっ!よりによってこんな時に…」

 

「大神さん。さくらさんの事は自分に任せて下さい」

 

大神「森川さん…」

 

「米田さんが支配人ではなく、長官として大神さんを呼んだと言う事は、華撃団関係だと思われます」

 

大神「…分かりました。さくらくんをお願いします」

 

そして大神は指令室に走って行った。

 

すみれ「それにしても…雷様が恐いなんて、よく『光武』で戦えますこと!」

 

アイリス「アイリスだって雷様こわいもん!」

 

カンナ「さくらは…よっぽど幼い頃に、恐い思いをしてるんだな」

 

「そうみたいですね。すみれさん、人は誰でも小さい時に恐い思いをすれば、大人になっても払拭できない事もあります。すみれさんも覚えはありませんか」

 

すみれ「!?」

 

俺にそう言われ、すみれは自分もトラウマになっている事を思い出す。すみれは蜘蛛が苦手だからな。さくらの気持ちも少しは分かるはずだ。

 

すみれ「そう…ですわね。さくらさん、申し訳ありませんでしたわ」

 

すみれはさくらに謝る。やはり、自分も同じ様にトラウマをかかえている分理解できるわな。そして打ち上げはお開きとなり、それぞれ部屋に戻って行った。俺は未だにさくらの側にいる。だが、相変わらず外は雨が降り雷が鳴っている。

 

「さくら、雷の音が聞こえねぇ地下に行くか?」

 

俺の言葉にさくらは頷く。ホントは勝手に地下に行っちゃまずいんだが、今回は緊急だし仕方ねぇよな。そして地下に行きプールがある更衣室に入る。

 

「ここなら余程デカい雷が落ちない限り聞こえねぇだろうよ」

 

さくら「…森川さん」

 

「なんだ?」

 

「森川さんにだけ…お話しておきたいんです」

 

「……」

 

俺は黙ってさくらの話を聞く事にした。

 

さくら「あたし…子供の頃、お転婆で…喧嘩友達のたけしくんと遊んでたんです…あの日、お祖母ちゃんが外で遊んじゃダメだというのに、たけしくんを誘って…木登りをしていました。すると、突然…空が真っ暗になって…たけしくんは、雷様におへそを取られたんです」

 

なるほど。それを子供の時に体験したから、未だに雷が苦手なのか。そら、子供の時にそんな体験したらトラウマになってもおかしくねぇよな…

 

「…その子が雷に打たれたって訳か」

 

さくら「はい…あたしが、お祖母ちゃんの言う事を聞かなかったから…それ以来…あたし…雷様が怖くて…いつか、たけしくんのようにおへそを…」

 

「……」

 

さくら「おかしいでしょ?光武に乗って戦うパイロットが、雷様を怖がるなんて…」

 

「そうでもねぇよ。人間なにかしら苦手なものはある」

 

さくら「……」

 

「さくらだけじゃねぇ。すみれ、マリア、カンナ、紅蘭、アイリス、米田のおっさん、あやめ、三人娘の連中もだ。当然俺にだってある」

 

さくら「森川さんもですか?」

 

おいおい…そんな意外そうな顔で言うなよな。

 

「当たり前だろ。俺だって人間だ。苦手や怖いもんだって1つや2つあるっての」

 

さくら「…そうですよね。誰にだって苦手なものありますよね」

 

「そういうことだ」

 

さくら「フフッ、でも意外です。森川さんにも苦手なものがあったなんて」

 

「おいおい。俺はどんな奴だよ」

 

さくら「フフフ♪」

 

「ったく…」

 

ま、なんとかさくらの恐怖を和らげる事はできたみたいだな。なんて事を思ってると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴロゴロゴロ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくら「きゃ~~~~~~~っ!!?」

 

突然地下に響く音に、さくらは俺に抱き着く。

 

さくら「ああ……か、雷様が、怒ってる…」

 

「さくら!しっかりしろ!!(さっきの音は、雷の音じゃねぇ!爆発音だ!けどなんで地下で?…まさか、黒之巣会の連中か!?)」

 

すると再び爆発音が響き、部屋全体が揺れる。

 

「!?まずい!!」

 

俺はさくらを抱きかかえ、素早く奥に避難した。俺達がいた場所に瓦礫が落ちてきて入り口を塞いだ。

 

「チッ!瓦礫で入り口が塞がったか…」

 

さくら「か、雷様に…お、おヘソとられちゃう!」

 

どうする!さくらは未だにこの状態だし…俺の技じゃ脱出は出来るが、劇場が崩れる可能性がある。こういう時に四次元ポーチを持ってこなかったことを後悔するとはな。さて…どうするかな…



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第三十九話

さくら「か、雷様に…お、おヘソとられちゃう!!」

 

とにかくさくらの奴を落ち着けねぇと…しかしどうやって…

 

「(仕方ねぇ!これしか思いつかん!!)悪いさくら!!」

 

さくら「えっ!?もりか…むぐっ!!?」

 

俺がとった方法は…さくらにキスをして落ち着かせる事だった。だってよ、既に抱きしめても落ち着いてねぇんだぞ。もうこれしかねぇだろうがよ!!

 

さくら「んっ…ちゅ…ぷはっ…も、森川さん…」

 

「…落ち着いたか」

 

さくら「は、はい///」

 

顔を真っ赤にしながら答えるさくら。そらそうだろうな!!俺も自分でも分かるくらい顔が熱いんだよ!!言わせるな!!!

 

さくら「ど、どうして急に…」

 

「まぁ…その、なんだ。お前を落ち着かせる方法があれ(キス)以外思いつかなかったんだよ。それとあれだ!また雷が怖かった時は、俺が側にいてやるからよ」

 

さくら「も、森川さん///」

 

「ん…んん~!さ、さて!とにかくまずは更衣室から出る方法を探さねぇとな!」

 

さくら「クスッ♪はい!」

 

取り合えず俺は、隙間がないか入り口周囲を調べる。

 

「…ダメか。壁と天井が崩れて完全に埋まってるな」

 

さくら「完全に閉じ込められてしまいましたね」

 

「だな。崩れた壁をどうにかすれば、出ることはできるんだがなぁ」

 

さくら「爆弾でもあれば、ここを壊して脱出できるんですけど」

 

「紅蘭じゃねぇんだからよ。そんな都合よくんな物持ってるかよ…」

 

さてどうするか…

 

さくら「森川さん!ロッカーの陰にこれが!」

 

さくらは持ってきた物を俺に見せる。

 

「これは…銃だな」

 

さくら「多分、マリアさんの練習用の銃だと思います」

 

「なるほど。壁が崩れた時にロッカーから出てきたのか。弾は…入ってるな」

 

なんとか壁が崩れてる所で、弱い個所をつければそのはずみで塞がってる瓦礫が崩れるはずだ。

 

「やるだけやってみるか」

 

俺は銃弾一発だけを残して、残りは中から火薬を取り除いて壁にセットする。

 

「これでよしっと。爆発そのものの威力は小せぇが、力学上のポイントさえ押さえときゃ、この程度の爆発でも岩は砕けるはずだ」

 

さくら「ホントにそんな事ができるんですか?」

 

「多分な。だが、他に方法がないのも事実だ。これに賭けるしかない。だが、これは一歩間違えれば2人とも生き埋めになってお陀仏だ。一か八かの危険な賭けだ。だがな、危険な賭け事は嫌いじゃないんだよ」

 

さくら「大丈夫です…あたし、森川さんを信じてますから」

 

「…ありがとな」

 

そして俺はセットした場所に向けて銃を構える。

 

「……」

 

俺の手は震えていた。

 

(情けねぇな。あれだけデカい事を言っておいて、いざってなったらこの様だ)

 

俺は確かにスキルは貰っている。当然銃の扱い、整備の仕方もだ。だが、この世界で矢とかは撃ったことはあるが、銃は初めてだ。アイツの所で練習とかはしたがな。自分だけならいいが、今回はさくらもいる分、いつも以上にプレッシャーを感じるな。

 

さくら「森川さん」

 

するとさくらは、震えてる俺の手を優しく握る。

 

さくら「撃って下さい」

 

俺はそのおかげで緊張がほぐる。そして撃った。銃弾は見事に命中し爆発する。しかし、思っていたより爆発の威力があった。

 

「クソッ!」

 

さくら「森川さん!!」

 

さくらが俺の前に立ち、何かの光で俺達を包み込み爆風から守ってくれた。

 

「さくら…今の光は…」

 

さくら「わ、分かりません…あたし、無我夢中で…森川さんを助けたい…それしか考えないで飛び出していたんです。でも、何故あたしに…あんな力が使えたのかしら?」

 

「……」

 

そう言うさくら。だが、俺はある事を思い出していた。それは、前にさくらのオヤジさんの事を調べた時だ。さくら…つまりは真宮寺家には、特殊な血統があるそうで、その名は『破邪の血』。その血が原因で、さくらのオヤジ…真宮寺一馬は死んだと言ってもいい。

 

(やはり、さくらにもその血は流れていたんだな。そりゃそうか、着任早々その血が暴走して、光武を暴走させたっておっさんが言ってたしな)

 

とにかく、今はやることをやるか。

 

「その事は後で考えればいいだろう」

 

さくら「そうですね。今は急いで皆と合流しないと!」

 

俺達は外に出る。

 

「なんとか出れたな」

 

さくら「そうですね。下の方から爆発音が聞こえます」

 

「なら、敵は地下から来たって事か。かえって好都合じゃねぇか。光武に乗れるんだからよ」

 

さくら「そうですね。森川さん…行ってきます」

 

「ああ!行ってこいさくら!!」

 

そしてさくらは光武の元へ走って行った。



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第四十話

さくらを見送った俺は、作戦指令室とは反対の場所に向かう。

 

「さて、今回は劇場(ここ)を直接襲ったんだ。俺も出張るが…」

 

そう、俺は作戦指令室に向かわず、格納庫にむかった。到着すると、ほぼ無事な機体はさくらのしかなく、侵入してきたミロクに苦戦していた。

 

ミロク「ふふふ…この紅のミロクの本当の力を見せる時が来たようね」

 

さくら「そんな…まだ本気を出していないなんて…」

 

ミロク「出てくるがよい!童が忠実なる僕、紅蜂隊!!」

 

すると、ミロクの機体の周辺に、屋敷で見た紅蜂隊が出現する。

 

「おっと、流石にあの数はまずいな」

 

さて、そろそろ出ますか。この力、向こうで修業した時以来だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくら「くっ…このままじゃ」

 

ミロク「お~ほほほほ!!最早帝国華撃団の運命もここまでじゃ」

 

「それはどうかな?」

 

ミロク「なんじゃと!?」

 

MISSOURI(ミズリー) SMASH(スマッシュ)!!」

 

誰かがそう叫ぶと、紅蜂隊の一体の首が吹き飛んだ。

 

「大丈夫かい?」

 

そして私達の目の前には1人の男の人が立っていた。物凄く…筋肉がたくましいけど。

 

カンナ「な、なんだあいつ」

 

すみれ「カンナさんより筋肉ゴリラの人初めて見ましたわ」

 

紅蘭「いや~…あれは中々やな」

 

大神「それに、顔が物凄く…濃い」

 

ま、普通ならそんな感想が出て当然だわな。

 

「HAHAHA!悪いが紅のミロク、ここ大帝国劇場から出て行ってもらおうか!」

 

ミロク「な、なんだと!たかが人間にこの紅のミロクが負けるはずなかろう」

 

「それは大丈夫!何故って?私が来た!

 

ミロク「ほ、ほざけぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

ミロクは躍起になり、俺目掛けて攻撃してきたが、俺はそれを拳で叩き落としていく。

 

「何故…何故わらわが、人間ごときに!!?」

 

「ヒーローとは…常にピンチをぶち壊していくもの! 敵よ…こんな言葉を知ってるか!!?更に向こうへ!!Plus Ultra!!!!

 

ミロク「きゃあああああああああ!!!!!」

 

俺が放った拳は、劇場の格納庫の天井を突き破り、空高く飛んでいき爆発したのだった。

 

カンナ「ま、マジかよ…」

 

さくら「ミロクを…それも生身の人が殴り飛ばした…」

 

すみれ「カンナさん以上に究極の脳筋ですわ…」

 

マリア「出鱈目すぎるわ…」

 

大神「まさか反撃の隙も与えないとは…」

 

紅蘭「あちゃ~…天井の修理どないしよ」

 

それぞれがそんな感想を述べていた。まぁ確かにただ力任せに殴ったけどよ…すみれ、カンナ以上の脳筋は流石にないんじゃないか?

 

「やれやれ…やはり力が使い慣れていないな。全盛期だったら5発も打てば十分だったのに、300発以上も打ってしまった」

 

そんな事を言った瞬間、光武で顔は見えないのに全員の驚く顔が浮かび上がった。もちろん、指令室にいるおっさん達の顔もな。

 

さくら「と、取り合えずいつものしましょうか」

 

そしてさくら達はいつものように勝利のポーズを決めていた。こっそり俺も写ったけどな。すると…

 

ミロク「お~ほほほほほほ!」

 

さくら「えっ?まさか!ミロクの声!?」

 

紅蘭「機体の爆発に紛れて逃げよったんや!ホンマしぶといやっちゃで!」

 

ミロク「ほほほほ!これで勝った等と思わない事ね」

 

大神「ま、まさか!奴らの襲撃は俺達を足止めするために!?」

 

マリア「米田中将やあやめさんが心配です。取り合えず上に上がりましょう」

 

おっと、俺は今の内に退散するか。そしてマリア達を出迎えないとな。

 

大神「そうだな。それじゃあそこの方も…っていない!?」

 

アイリス「どこいったんだろう?」

 

大神「いないものは仕方ない。急いで戻ろう!」

 

『了解』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵叉丹「完成だ…フフフ…」

 

天海「おお、やりおったな叉丹!ついに最後の地脈を抑えたか!時は来た!!天よ吠えろ!!地よ叫べ!!偉大なる支配者の、復活を祝うのろしを上げるのだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神達が上に戻って来た瞬間、地震が起きた。

 

大神「なっ!?」

 

「大きいです!!」

 

まずい!これだけデカいと街中が混乱してるはずだ!

 

さくら「きゃああああああ!!」

 

「さくらさん!?」

 

大神「さくらくん!?どうしたさくらくん!しっかりしろ!!」

 

さくら「うう…あああ」

 

「さくらさん!!」

 

するとさくらはその場で倒れた。

 

マリア「隊長!さくらが!!」

 

「さくらさん!しっかりして下さい!さくらさん!!」

 

俺は気絶したさくらを抱えると、急いで自分の家に向かった。

 

あやめ「待ちなさい!さくらをどこに連れて行くの!」

 

「私の家です」

 

あやめ「その必要はないわ。ここには医療ポッドがあるわ」

 

「…そんな時代遅れの物では無理です。すみませんがこちらで治療を行います」

 

俺はそう言い残して、あやめの制止も聞かず自分の家…地下の医療施設に連れて行く。

 

「…詳しく知りたいなら、米田さんに話を聞いてください。そして、米田さんを含め3人までなら、私の家に来ても構いません。それでは」

 

そして今度こそ本当に、俺は劇場を後にしたのだった。



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第四十一話

家に戻った俺とさくらは、早速地下に向かい地下にある医療室に入る。そこにはこの時代にはない最新技術の医療機器が揃っている。

 

「取り敢えず、まずはさくらの容態の確認だな。お医者さんカバン〜」

 

俺は秘密道具の【お医者さんカバン】を取り出し、聴診器をさくらの胸付近に当てる。

 

『解析中…解析中…』

 

カバンが、今現在のさくらの容態を解析している。大抵はこれでなんとかなるんだが、ここで思いもよらない解答が帰ってきた。

 

『ピピッ…解析完了。身体ニ異常ハナシ。脳ニモ異常ハナシ。心ノ病ノ可能性アリ』

 

「心の病…だと!?」

 

流石に心の病と診断されるとは思わなかった。心…夢か?

 

「夢なら、一応夢の中に入る事も出来るが…」

 

俺は1つの道具を取り出した。

 

「ユーメー人。本来は見たい夢を見る機械だが、少し改造して寝てる奴が見てる夢や心の中に入れるように改造するか。ってな訳で、天才ヘルメットと技術手袋〜♪」

 

これでこのユーメー人を改造だ。どう改造するかは、このヘルメットが考えてくれる。技術手袋は指先が色んな工具になりどんな工作もできる。これのおかげで、俺の地下は今の世界の数百年先の機械があるのだ。そこから改造する事30分。ようやく完成した。

 

「よし、これでさくらの夢の中に入れる」

 

すると医療室の扉が空いた。見るとオペレーターだった。

 

オペレーター1「マスター、米田様達が到着されています」

 

「分かった。通してくれ。オペレーター達は引き続き帝都全体の警戒を頼む」

 

オペレーター1「了解しました」

 

入れ替わりでオッサン達が入ってくる。

 

「来たのはおっさんにあやめ、そしてマリアか」

 

米田「ああ。本当は大神を連れてこようと思ったんだが」

 

あやめ「流石に貴方の姿を見たことがないしね」

 

「なるほど。既に俺の素を知っていて、花組副隊長であるマリアが選ばれたって訳か」

 

マリア「はい」

 

米田「それで、さくらの容態は?」

 

おっさんはベットで寝てるさくらの事を聞いてくる。

 

「調べたが、身体には影響なしだ。だが、診断結果だがさくらの心の中に入らなきゃならん」

 

あやめ「心の中に?」

 

「恐らくだが、先程の地震に関係あると思うんだ。それで、さくらの中に流れてるモンが反応して、さくらを昏睡状態にしたと睨んでる」

 

マリア「さくらの中に流れているもの…」

 

米田「破邪の血…か」

 

「おそらくな」

 

完全には言い切れないが、ほぼ間違いないだろう。

 

「んで、たった今改造が終わったこの【ユーメー人】を使って、さくらの夢の中に入るつもりだ」

 

米田「なるほど。お前さん程の技術ならそれも可能って訳か」

 

マリア「森川さん、私も行きます」

 

「いや、駄目だ」

 

俺はマリアの案を断る。

 

マリア「何故です!」

 

「さくらの夢の中に入るには、それ相応の覚悟がいるんだよ」

 

あやめ「どういうこと?」

 

「確かにユーメー人を使えばさくらの夢に入れるが、一歩間違うとそのままさくらの夢の中に閉じ込められて二度と現実世界に戻って来れない」

 

「「「!?」」」

 

俺の言葉に、おっさん達は驚く。

 

「おっさんやあやめ、マリアはこれから必要な存在だ。だから、戦いにそこまで関わっていない俺が行くのがいいんだよ」

 

マリア「ですが!…そんな」

 

「なぁに、夢にいるさくらを引っ張って戻って来るさ。だからそんな顔するな」

 

俺は悲しそうなマリアと、顔には出してないがあやめの頭を撫でた。

 

「じゃあおっさん、そっちは任せたぞ」

 

米田「ったく、言ってくれるじゃねぇか。任せとけ!さくらを連れて戻って来いよ。じゃないと、すみれやマリア達が突撃してくるぞ」

 

「それは怖いな。んじゃ行ってくる」

 

そう言い残し、俺はユーメー人を気道させさくらの夢に入っていったのだった。



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第四十二話

ユーメー人でさくらの夢に入った俺は、今真っ白な空間にいる。

 

「そろそろさくらの夢が出てきてもいいんだが…」

 

すると徐々に真っ白な空間が変わっていく。

 

「ここは…帝劇だな」

 

俺は現在、帝劇のロビーにいる。

 

「特に他と変わった様子はないが」

 

「何度言ったら分かるんですか!」

 

すると舞台の方から怒鳴り声が聞こえたから、俺は舞台に向かう。すると舞台ですみれに説教してるさくらの姿があった。他にもマリアやアイリス、大神とかがいる。

 

さくら「全く…どうして台詞も満足に言えないんです!」

 

すみれ「も、申し訳ございません」

 

さくら「そんなんで次のお芝居をするつもりなんですか!すみれさん!」

 

マリア「さくらさん、すみれも一生懸命していますし」

 

まさかのマリアが、さくらに対してさん付けだと!?

 

アイリス「そ、そうですよさくらさん…」

 

アイリス、お前もかよ。

 

「相変わらず賑やかだな」

 

すると今度は、舞台から男が出てきた。だが、その男を見て俺は驚いた。

 

「お、俺!?」

 

さくら「あ、あなた」

 

「あ、あなた!?」

 

俺が出てきた事にも驚いたが、さくらの奴が俺に対してあなたって言いやがった。となると、その台詞で考えられるのは1つ。

 

「俺、さくらと結婚してるのかよ…」

 

ってか、さくらの中での俺って、あんなに美化されてんのか?物凄く周りがキラキラしてる気がするんだが…というより、最初俺って分かんなかったわ!

 

さくら「あなた、すみれさん達酷いんですよ。私が折角稽古してあげてるのに」

 

「まぁまぁ。すみれ達も一生懸命やってるんだ。花組トップスタァのお前と一緒にしたんじゃ大変だろうが」

 

さくら「それもそうね、ごめんなさい…わたし」

 

「気にするな。お前は花組の事を思って言ってるって、俺には十分分かってるさ」

 

「あなた…」

 

だ〜!!いくらお前(さくら)の夢とはいえ、あんな小っ恥ずかしい台詞聞きたくねぇよ!俺もあんなキャラじゃねぇ!人前であんなイチャ付けるか!

 

すると場面が切り替わった。

 

「今度は…帝劇の外だな」

 

今度は街中に出る。辺りを見てると売店の新聞に目に入る。

 

「何々…『帝劇花組のトップスタァの真宮寺さくらが結婚。お相手はなんと、あの【オアシス】の主人の森川大輔!!』新聞になったのかよ!!」

 

いやはや…もう呆れるわ。再び画面が切り替わる。今度は随分と田舎の風景だ。

 

「ここは…帝都じゃないな。何処だ?」

 

俺はまた辺りを見る。すると、小さな女の子が両親と歩いている。

 

「あれって…まさかさくらか?小さい時の」

 

さくら(子)「お父様、お母様、早く早く!」

 

「さくら、そんなに慌てたら転びますよ」

 

「はは、いいじゃないか。子供は元気が一番だよ」

 

両親は、とても穏やかで優しい雰囲気が出ている。

 

「さくらの両親か。確か父親の方は1度見た事があったな」

 

それは最初の頃に調べた、米田のおっさんがいた【対降魔部隊】の事を調べた時だ。

 

「あれがさくらの父親で、おっさんやあやめと一緒に戦った【真宮寺一馬】か」

 

「そうだよ」

 

すると俺の背後から声をかけられた。振り返ると、そこには子供のさくらがいた。

 

「お前は…」

 

さくら(子)「お兄さん、さくらお姉ちゃんの夢に来たの?」

 

「ああ。さくらを起こしに来たんだよ」

 

さくら(子)「なんでなの?ここにいれば、さくらお姉ちゃんも幸せなんだよ」

 

「確かにそうかも知れない。だがな、残された奴の気持ちはどうするんだ?俺はもちろん、さくらが目を覚ますのを待ってるおっさんやあやめ、マリア達花組の連中も心配してるぞ」

 

さくら(子)「……」

 

俺の言葉に、子供のさくらは黙っている。

 

「大切な人がいなくなる。その気持ちはお前が誰よりも知っているはずだが?」

 

さくら(子)「…うん」

 

「だったら、さくらを皆の元に返してやってくれないか」

 

さくら(子)「分かったお兄ちゃん」

 

すると子供のさくらは、笑顔で俺を見て上に浮かんでいく。

 

「お別れだな」

 

さくら(子)「うん」

 

「森川さん」

 

すると、俺の後ろに今のさくらがいた。

 

「よう」

 

さくら「なんで森川さんが?」

 

「どっかの寝坊助を起こしに来たんだよ」

 

さくら「むぅ」

 

俺がそう言うと少しむくれるさくら。

 

さくら(子)「…大好きな人を守りたいなら、立ち向かう事です」

 

すると突然さくら(子)の雰囲気が変わった。

 

さくら(子)「愛する心は…どんな困難にも打ち勝ちます。愛を貫くということは…命をかけて戦う事です!」

 

「こいつは…」

 

さくら(子)「敵は、魔を封じ込めた門の上にいます…」

 

そう言い残して、さくら(子)は姿を消し、俺達の目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…うぅん…」

 

俺は目が覚めると、自分の医療室な事に気が付く。

 

「どうやら、無事に戻れたみたいだな」

 

オペレーター「マスター、ご無事でなによりです」

 

すると、部屋にオペレーターの1人が入ってきた。

 

「ああ、おかげさんでな」

 

さくら「うぅん…ここは?」

 

するとさくらも目を覚ます。

 

「よう、ようやくお目覚めか?」

 

さくら「森川さん…」

 

「寝起きで悪いが、あんまりゆっくりしてる暇はないぞ」

 

さくら「ここは…いったい?」

 

「ここは俺の店の地下室だ。簡単に言えば、帝劇の地下室と同じだ」

 

さくら「こんなのがお店の下にあったんですね」

 

そう言いながらさくらはベットから起き上がる。

 

「オペレーター、状況は?」

 

俺はモニター室に行き、現在状況を確認する。さくらも来たが、全員同じ顔のオペレーターが大勢いたので驚いていた。

 

オペレーター2「はい。少し前に帝国華撃団が出撃しましたが、葵叉丹と名乗る人物と脇侍が出現したため、現在困難にあっています」

 

「そうか…」

 

俺は冷静に状況を分析する。

 

オペレーター3「それと、天海と名乗る老人が、政府の解散に帝都銀行から100億円、そして米田中将の命を差し出せと要求がありました」

 

「なるほど。あれが普通の地震じゃなく天海の力なら、それくらい要求があっても不思議じゃない」

 

オペレーター4「1時間以内に要求が呑めない場合は、帝都を滅ぼすとも。残りは約50分です」

 

「既に10分が過ぎてるか…さくら、急いで帝劇に戻って出撃準備だ!」

 

さくら「了解です!!」

 

そして俺とさくらは、先に出撃しているマリア達を救うため、急いで帝劇に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神「くそっ!敵の数が多すぎる!!」

 

カンナ「隊長…どうするんだ!?」

 

大神「皆、命を無駄にするな!この大軍とまともにぶつかっても勝負にならない。取り合えず守備陣形をしけ!後は脱出の機会を待とう!」

 

紅蘭「了解や!逃げるのかて、立派な戦法やしな」

 

すみれ「けれど…絶体絶命の状況ですわね。この大軍を相手に、いつまで耐えられるでしょうか…」

 

すると、突然数体の脇侍が吹き飛んだ。

 

すみれ「な、何事ですの!?」

 

大神「あれは…!?」

 

さくら『あたしの大事な仲間を傷つける奴は…許さない!!』

 

すると、上空にある翔鯨丸から、さくらの光武が落下して、大神達と脇侍達の間に降り立った。

 

大神「翔鯨丸!!さくらくん!無事だったのか!!」

 

さくら「遅ればせながら、真宮寺さくら、参上!!」

 

すみれ「遅いのよ…あなたって人は」

 

さくら「大神さん!皆!黒之巣会の本拠地が分かりました。ここは退いて下さい!」

 

マリア「本当!?」

 

さくら「説明は後です!一気に戦線を離脱します!」

 

大神「だが、どうやってこの状況から脱出を…」

 

ようやく俺の出番みたいだな。

 

さくら「それは大丈夫です」

 

『待たせたみたいですね』

 

大神「こ、この声は!?」

 

紅蘭「これって、森川はんの」

 

すみれ「確か【音弾】といったかしら?」

 

マリア「そうね。声だけを飛ばす事ができるそうね」

 

そんな話の最中に俺は現れる。

 

「お待たせしました」

 

『森川さん!!』

 

「ここは私が引き受けますので、皆さんはその隙に離脱して下さい」

 

大神「ですが、森川さんはどするつもりなんですか!」

 

「それは…」

 

俺はゆっくりと両手を動かし、胸の前で手を合わせ拝む。

 

「百式観音!!」

 

貰った特典の1つ、ネテロの百式観音が俺の背後に出現する。

 

『!!?』

 

これには、大神達以外にもさくらや後ろにいる葵叉丹も驚きの顔をしている。

 

「さて、相手になろうか」

 

大神「…はっ!皆今の内だ!森川さんが作ったこの隙に離脱するんだ!」

 

『了解!』

 

大神の合図で、花組はこの場から離脱していく。脇侍達はそれを追いかけようとするが、んな事俺がさせる訳ない。

 

「悪いが、ここから先は通行禁止だ」

 

脇侍『ギギギギ!』

 

すると追うのを諦めた脇侍は、俺に向かって来る。

 

「悪いが、さっさと終わらせてもらうぞ。百式観音・壱乃掌!!

 

俺がそう言うと、百式観音に複数ある内の一本の腕が動き、真上から脇侍達を叩き潰す。

 

葵叉丹「な、なんだと!?」

 

流石の葵叉丹も、たかが人間にそれも一瞬で多くの脇侍が破壊されるとは思っていなかったようだな。

 

「まだまだ!百式観音・参乃掌!!

 

今度は参乃掌で、左右の掌が脇侍を挟み込むように思いっきり叩く。

 

葵叉丹「くっ!!」

 

「さて…お前はどうする?戦うか?」

 

葵叉丹「…フフフ。いや、悪いがここは退かせてもらおう」

 

「逃がすと思って…ん??」

 

葵叉丹っていったよな。アイツの顔何処かで見た気がするんだが…

 

葵叉丹「帝国華撃団と天海、どちらが勝つか行く末を見させてもらおう」

 

「おい!どういうこと…」

 

そこまで言ったが、既に葵叉丹の姿はなかった。

 

「華撃団と天海の行く末を見させてもらう。何を考えてる…葵叉丹」

 

葵叉丹の言葉に疑問を思いながら、俺はどこでもドアを使って帝劇に戻るのだった。



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第四十三話

帝劇に戻った俺は、既に戻ってたさくらやおっさん達に出迎えられる。

 

さくら「森川さん!無事だったんですね!」

 

米田「ったくよ〜、無茶しやがって」

 

「ご心配をかけてすみません。ですが、ああでもしないと大神さん達はあの場から離脱できなかったですし」

 

すみれ「それはそうですが、少しは私達の事も思って下さい」

 

マリア「すみれの言うとおりね。今まで何度も森川さんに助けられてるけど、心配なのは変わりありません」

 

あ〜、確かに普通に考えたらそうだよな。

 

「申し訳ありません。そこまで考えていなくて」

 

米田「けど森川」

 

するとおっさんが真剣な顔で俺に話しかけてくる。

 

米田「お前さんが、脇侍相手に生身で戦えるのは知ってる。だがさっきのといい、どこでそれ程の力を身に着けたんだ?」

 

あ〜…やっぱそうなるよな。とはいえ、百式観音やオールマイトの個性はどうにかごまかせるけど、投影とかは誤魔化せないよなぁ。

 

「…先程の技ですが、あれは自分が修行をした成果です」

 

米田「修行だと?」

 

「はい。あの技は百式観音といい、俺が8歳の頃から修行をして身に着けたんだものです」

 

大神「は、8歳から修行!?」

 

ホントは嘘なんだが、こうでも言わないとまずいしな。

 

「8歳から、毎日欠かさず祈ってから正拳突きを行う。それを1日1万回」

 

『い、1万回!!?』

 

あ〜、流石に驚くよな。俺は神様から特典で貰ったから必要なかったが、ネテロは毎日欠かさず行ってたしな。

 

カンナ「いくらアタイでも、流石に毎日はキツイぜ」

 

「はい。私も最初はキツかったです。ですが、それを毎日繰り返す。気を整え、拝み、祈り、構えて突く。この一連の動作を一回こなすのに、当初は5〜6秒かかりました。ですので、1日1万回突き終えるのに初日は18時間以上かかりました」

 

アイリス「その間ご飯とかはどうしたの?」

 

「もちろんとってません。1万回突き終わるまでは、他に何もしていません」

 

カンナ「う、嘘だろ!?」

 

紅蘭「バケモンやで森川はん…」

 

そう言われても仕方ないが、実際言われると少しキツイぜ。

 

「そして2年が過ぎた頃です。私は自分の異変に気付きました」

 

あやめ「異変?」

 

「はい。1万回突き終わっても日が暮れなくなりました」

 

米田「マジかよ…」

 

「そして遂に、1万回突くのに1時間を切りました。そして祈る時間が増えました。そして私から放たれる拳は…」

 

俺はそう言いながら、拳を前に突き出した。その後から…

 

 

 

 

 

 

 

 

パンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

そう。本気でやれば俺は音を置き去りにする。

 

カンナ「…達人の域とか、もうそんな次元じゃねぇ」

 

すみれ「ええ。まさに森川さんの背後に…観音様が…」

 

マリア「音を置き去りにする。途轍もない修行ね」

 

さくら「はい」

 

米田「なるほど…お前さんの強さの一部が理解できた」

 

あやめ「そうですね」

 

それぞれがそんな感想を言う。

 

米田「だが、あんまり無理はするなよ?お前さんがいて助かるが、やはり生身で戦うとなると心配になる。俺はもちろんこいつらだってな」

 

おっさんはそう言いながらさくら達を見る。さくら達は全員が頷いている。

 

米田「しかし、お前以外にも生身で戦う奴はいるがな」

 

大神「ああ、あの時帝劇でミロクを殴り飛ばした人ですね」

 

ゲッ!その話が出るのかよ。あれも俺なんだよな。オールマイトの技を使うと、普段の見た目から思いっきり変わるんだよな。顔は濃くなるし筋肉はムキムキになるし。あれで街歩いたら、絶対子供は泣くし大人も離れるよな。強いからいいんだけど、その分に関してはデカイデメリットだよな。

 

(まぁ、これから何度か使ってオールマイトみたいに有名になれば話は変わると思うけど…)

 

米田「そう、ソイツだ。ミロクを倒してくれた事はありがてぇが、派手に打ち上げたお陰で、地下の格納庫が丸見えだ。運良く穴が空いたのが中庭だったからよかったものを」

 

(うん。今は正体はバレたくないな。バレたらおっさんに何言われるか分かったもんじゃねぇ)

 

米田「おかげで修理費が嵩んで仕方ねぇ。只でさえ帝劇は金食い虫って言われてるのによぅ」

 

(これ、バレたら絶対におっさんに修理費請求されるな…間違いなく)

 

俺は、オールマイトになっても捕まらないでおこうと心に誓ったのだった。

 

あやめ「それはそうと司令、さくらが言った『敵は、魔を封じ込めた門の上にいる』。その言葉の意味するのはもしかして…」

 

米田「ああ、多分あそこだ」

 

マリア「米田長官、何かご存知なのですか?」

 

あやめ「魔を封じ込めた門の上…おそらく、5年前に魔を封じ込めた封印の地に違いないわ。そしてそれは…黒之巣会魔法陣の中央を占める…日本橋よ!!」

 

遂に黒之巣会の本陣が分かったか。となると、後はそこに攻め込むだけだな。

 

大神「日本橋!!」

 

米田「そう、日本橋だ…」

 

カンナ「今度こそ間違いなさそうだな」

 

すみれ「いよいよ本番ですわね!腕がなりますわ!」

 

紅蘭「これが最後の決戦やな!」

 

アイリス「これに勝ったら…もう戦わなくていいんだよね!」

 

マリア「皆、準備はいいわね!」

 

さくら「大神さん!出撃命令をお願いします!」

 

大神「皆、これが最後の決戦だ!だが、命を無駄にするな。必ずここに帰ってくるぞ!」

 

『了解!!』

 

そして大神達は黒之巣会の本拠地がある日本橋へ向かった。

 

「さて、俺も行くか」

 

俺はおっさんとあやめに気づかれないよう、こっそりと抜け出して日本橋に向かった。到着すると、既に道中には倒された脇侍が何体もいる。

 

「今のところは順調みたいだな。さて、天海…帝都をあんな風にする力があるのも事実だ。大神達はどう戦うのやら。それと、葵叉丹…天海と帝国華撃団の行く末を見守るって言ってたが…今回の戦いはどう出るつもりだ?」

 

俺は、あの時の葵叉丹の台詞が、未だに頭から離れない。

 

「もし出張ってくるなら、アイツらの邪魔はさせねぇ」

 

俺はそう誓いながら、天海と大神達がいるであろう洞窟の奥に進んでいくのだった。

 



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第四十四話

天海「よくぞここまでたどり着く事ができたな…褒めてつかわそう…」

 

大神「黒之巣会首領天海…!帝都の…いや、この地上の全ての善なる者に変わり、貴様の命…ここで貰い受ける!」

 

天海「小賢しい!!百年…早いわ~!!」

 

天海は俺達に向かってそう叫ぶ。それだけでもかなりの妖力を感じる。

 

天海「かァァァァァァァァァァっ!!」

 

すると天海は蒸気脇侍に乗り込んだ。そして、俺達と天海の戦いが始まった。これが最後の戦いだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、何でお前とここで出会うかね~」

 

葵叉丹「ふん…流石に貴様にあの場に行かれれば、天海の負けは確定だからな」

 

「なるほど。それで勝てないまでも俺をここで足止めって訳か」

 

叉丹「その通りだ。だが勘違いするなよ人間…あの力はこの場所では使えぬはず。となれば、貴様が私に勝てる見込みはない!」

 

ほう…そこまで考えてたとは驚きだ。確かに葵叉丹の言う通り、この場所は洞窟で百式観音を出せば大きさに耐えられず崩壊する危険もある。だがな…

 

「いつ俺があれでしか戦えないっつった?ええ?若造が」

 

葵叉丹「な、なんだと!?」

 

「あ?むしが…上からモノ言ってんじゃねぇぞ!!

 

俺は自分の中にある気をオーラとして纏わりつかせる(イメージは龍が如くの極みオーラです)。そしてそこからオールマイトの様なガチムチボディに姿を変える。

 

葵叉丹「!!」

 

「さて…始めようか!有精卵共!!

 

そしてここで俺と葵叉丹との戦いも始まった。

 

「百式観音は出せねぇが、だからといってお前に負けるつもりはない!CAROLINA(カロライナ) SMASH(スマッシュ)!!

 

俺はチョップをする要領で、葵叉丹に詰め寄る。

 

葵叉丹「ぬう!!」

 

叉丹は俺の攻撃を辛うじて刀で防ぐ。

 

「HYE!HYE!!どうした?先程の台詞は嘘だったのかな?」

 

葵叉丹「たかが人間が!」

 

「HAHAHA!!それが間違いなのだよ。人間だって、本気になれば戦う事もできるのだよ。大神青年やさくら少女達のようにね」

 

葵叉丹「お…おのれぇ…」

 

「さっさと終わらせてもらうよ!悪魔風脚(ディアブルジャンブ)…」

 

俺はオールマイト状態でサンジの技を出す。

 

粗砕(コンカッセ)!!」

 

葵叉丹「ぐああああああ!!!!」

 

叉丹はうめき声をあげる。しかし、ここで俺は重大な欠点を忘れていた。只でさえサンジの足技は、普通に壁や地面を砕く威力がある。それをオールマイトの状態で繰り出せばどうなるか。そんな簡単な事を忘れていたのだ。その結果は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺麗に叉丹がいた場所に、大きな穴が出来上がる。そして当然それだけには留まらず…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシ…ピシピシピシ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の壁にも影響が出たわけでございます。

 

「やっべ〜…やりすぎた」

 

既に洞窟は崩壊し始めている。

 

「アイツら大丈夫か!?」

 

俺は叉丹を探すが姿は見えず、既に逃げ出したと思い急いで大神達の元に向かう。すると、脱出最中の大神達と出会う。

 

(どうやら天海は倒したみたいだな)

 

大神「貴方は!?」

 

HAHAHA!青年、今は悠長に話している時間はないよ。急いでここから脱出しなければ!!」

 

大神「そうですね!!」

 

そして俺達は、なんとか洞窟に埋もれずにすみ、無事に地上に脱出したのだった。

 

大神「皆無事か!」

 

さくら「はい…なんとか…」

 

すみれ「酷い目に合いましたわ」

 

マリア「本当ね」

 

紅蘭「後少し遅かったら、ウチら全員生き埋めやったで」

 

アイリス「怖かったよ〜」

 

カンナ「まぁいいじゃねぇか。全員無事だったんだしよ」

 

「カンナ少女の言うとおり!全員無事が一番だ!!」

 

それぞれそんな会話をする。

 

大神「それにしても、地下で俺達を救ってくれたあの光はなんだったんだろう?あの輝きはいったい…」

 

米田「あれが、彼女達が帝劇に配属になった理由さ…」

 

おっさんが現れ、大神が見た事に対しての答えを言う。

 

大神「…あれが彼女達の霊能力なんですか?だとすれば…」

 

米田「それだけじゃねぇ。おめえ力でもあるんだ」

 

大神「自分の?」

 

米田「大神…お前なんで花組の隊長になれたと思う?」

 

大神「それは…自分が光武を動か事が出来るからだと…」

 

おっさんの質問に大神はそう答える。

 

米田「それだけか?」

 

大神「…はあ」

 

大神はおっさんの質問の意図を理解できてないな。

 

米田「それだけが理由なら、光武に乗れない森川でも十分隊長が出来る。触媒なんだよ…お前は」

 

大神「触媒…?」

 

米田「そうだ。彼女達の霊能力は、確かに他の者と比べて抜群に秀でている。でも、いくら優れた霊力でも、それがバラバラに存在しているだけでは意味がない。時として、背反さえする彼女達の霊力を統べ、ひとつの大きな力にまとめ上げる力…花組は、お前の力を触媒として、初めてその能力を充分に発揮できるんだ…」

 

大神「……」

 

おっさんの言葉に、大神は黙って聞いていた。

 

米田「なぁんてな。ちょっとばかり、褒め過ぎかぁ?ハァ〜ハハハハ!」

 

…結局はいつものおっさんに戻る訳ね。

 

カンナ「よう隊長!米田司令!男同士でな〜にボソボソ話してんだよ。敵の親玉も倒したし、明日からまた芝居の稽古だぜ!」

 

そうだな。ようやく天海との戦いも終わったし、暫くはのんびりできるだろ。葵叉丹が動くまではな。

 

アイリス「って事は〜…お兄ちゃんもモギリに逆戻りだね!ウフフ…」

 

大神「いいっ!?」

 

あ〜アイリスの言う通りだな。華撃団が活動しない時は、大神の奴はモギリになるな。ま〜ドンマイ…大神。

 

「大神青年…しっかり生きなさい」

 

さくら「あ!」

 

するとさくらが何かを思い出したのか叫ぶ。

 

さくら「そういえば、まだあれやってないですよ。折角皆が揃ってるんですし、ここでやりましょうよ」

 

紅蘭「せやな」

 

さくら「じゃあいきますよ!せ〜の、勝利のポーズ…」

 

米田「きめぇい!」

 

っておっさんが言うのかよ!

 

大神「……」

 

さくら「ちょ…長官!?」

 

アイリス「あ〜ん!アイリスも言うの〜!」

 

米田「ま、たまには…な?」

 

カンナ「仕方ねぇな…」

 

あやめ「……」

 

米田「まぁいいじゃねぇか。なあ?だあ〜ははははは!」

 

『アハハハハハ…』

 

おっさんが笑った為、つられて全員が笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米田「…さて、お前さんが何者か聞かねぇとな」

 

するとおっさんは、俺の方を見る。

 

米田「おめぇさん…何者だ?」

 

「HAHAHA!私の事はオールマイトと呼んでほしい!」

 

米田「んじゃオールマイト。お前さんは、何であの時と今回ここにいたんだ?」

 

「あの時と今回、私は森川青年からの依頼で、帝国華撃団の皆を助けに来たのだよ」

 

米田「アイツの仕業か」

 

「それと、私は今回の事で、君達に謝らなければならない」

 

さくら「どうしてですか?」

 

「依頼された身…ましてやヒーローとして、君達のピンチに駆けつけられなかった事。そして…その…」

 

すみれ「なんですの?」

 

あ〜…物凄く言いたくない。

 

「…あの崩落は…私が葵叉丹と戦った衝撃で起きたものなのだよ…」

 

『…はああ!?』

 

「本当に申し訳ない!」

 

俺は頭を深々と下げる。

 

すみれ「どういう事ですの!貴方の出鱈目な攻撃で、私達は生き埋めになりかけたのですよ!」

 

紅蘭「ホンマや!」

 

「本当に申し訳なかった!では、私はそろそろ行かなければ!それでは諸君!気をつけてお帰り!!」

 

すみれ「待ちなさい!まだ話は終わっていませんことよ!」

 

これ以上いたら、マジでヤバくなりそうだったから、俺は猛ダッシュでその場から離脱したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

私達は、物凄い勢いで走り去ったオールマイトさんを見届ける事しかできませんでした。

 

さくら「も、物凄いスピードでしたね…」

 

大神「あ、ああ…」

 

米田「あれで走ってるだけかよ…」

 

カンナ「あたいでも無理だぜ…」

 

すみれ「まだお話はすんでいませんのよ!」

 

紅蘭「まぁまぁすみれはん。向こうも充分反省してたやないか」

 

マリア「そうよすみれ。これ以上はいいじゃない」

 

アイリス「アイリス達も無事だったんだし」

 

すみれ「わたくしは納得できませんわ〜!!」

 

そんなすみれさんの叫び声が、日本橋にこだましたのでした。




次回は、少し本編をズレて、GBで出た【檄・花組入隊!】を書こうと思います。
ここで登場する主人公は、コラボしているアマゾンズさんのキャラ【狛江梨 直仁】となります。


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第四十五話

天海との戦いも終わり、俺達は普通の生活に戻っていた。今日も俺は店で働いている…んだが

 

「ったくカンナの奴。ウチは出前はしてないって何度言えば分かるんだ」

 

俺はカンナに注文された【カンナスペシャル】を持って、帝劇に出前を届けている。なんでもある人と稽古ををしすぎて飯を食いそびれたらしい。

 

「しかし、カンナが飯を食いそびれる程稽古をする相手って誰だよ。大神の奴ではなさそうだし…」

 

そんな事を考えながら帝劇に到着する。中に入りカンナを探していると…

 

「とりゃーーーーーーーー!!!!!!」

 

「な、なんだ!?」

 

物凄くバカでかい声だが…地下からか?俺は出前を持ったまま地下に下り、さくら達がよく稽古をする稽古場に到着した。声は中からみたいだな。

 

さくら「森川さん!」

 

すると同じく駆け付けたさくらと入り口で出会う。

 

「おうさくら。さっきこの中からバカでかい声が聞こえたんだが」

 

さくら「はい。なんでも米田支配人のお知り合いで、今大神さんとカンナさんがお稽古をしているみたいで」

 

「へ~おっさんの知り合いか。それは興味あるな。それに、カンナが中にいるなら好都合だ。ついでに出前を渡せるしな」

 

さくら「でしたら入りましょう」

 

中に入ると、大神と柔道着を着た男が稽古をしていた。

 

さくら「あ、あの人は…!」

 

カンナ「おうさくら!それに大将も!」

 

「探しましたよカンナさん。食堂に行ってもいないので」

 

カンナ「たはは…わりぃわりぃ。今米田支配人の知り合いの人に、あたいと隊長が稽古つけてもらってたんだよ」

 

「見れば分かりますよ。取り合えず、ご注文の【カンナスペシャル】です」

 

カンナ「おっ!待ってました!!」

 

俺は注文のカンナスペシャルを渡し、代金を受け取る。するとすぐに食べ始める。

 

大神「ぐあっ!」

 

「うむ…」

 

すると大神達の訓練も終わった。

 

大神「あ…ありがとう…ございました」

 

「うむ。若者よ、もっと己を愛し、己を信じ、己に勝つ。それが、セガサターン!シロ!!」

 

何言ってんだあのおっさん。するとおっさんは、俺とさくらの方を見ると突然…

 

「さくらさ~ん!さくらさ~ん!」

 

さくら「ふふっ」

 

するとさくらも笑いながらおっさんの方に駆け出した。

 

さくら「こっちこっち~!こっちよ~!こっち~!」

 

「さくらさ~ん!さくらさ~ん!

 

さくら「あっはははは……うふふふふ……」

 

「はははははは!」

 

そしてふたりは互いを見つめあう。

 

「…また会えたね」

 

さくら「…はい」

 

「…なんだよあれ」

 

俺は思わず素の言葉が出てしまった。

 

大神「さ、さぁ…」

 

米田「相変わらずだな。せがたとさくらは」

 

大神「米田支配人!」

 

すると稽古場におっさんがやって来た。マリア達もいて全員が集合している。

 

米田「せがたは昔。小さいさくらとよく遊んでくれててな。さくらの奴も、未だに仲がいいんだよ」

 

「いや、あれ仲がいいって時限か?」

 

どうみても、キャキャウフフでイチャついてるようにしか見えんが?

 

米田「あいつは…せがたは、俺が知ってる中でこの世で一番強いと見てる」

 

カンナ「ああ。それに関してはあたいも同意だ。今まで色んな奴と戦ってきたが、一番強いって思った」

 

大神「はい。自分も稽古をしてもらってそう感じました」

 

え~、おっさんや大神、それにカンナにまでそう言わせるか。

 

米田「んじゃ紹介するか。せがた三四郎だ」

 

せがた「己を愛し、己を信じ、己に勝つ。遊びの道を極め、頂点に達した男。それが俺だ。それが…せがた三四郎なのだ!」

 

『……』

 

せがたの紹介に、俺達は黙ってしまう。どんな自己紹介だよ。

 

さくら「うふふ、変わりませんねせがたさんは」

 

米田「全くだ。相変わらず訳の分からねぇ自己紹介だぜ」

 

どうやら毎度の事らしい。

 

大神「しかし、それほど強い人に稽古をつけていただいたとは。……」

 

すると大神は、俺とせがたを交互に見る。

 

大神「ふとした疑問なんですが、森川さんとせがたさん、どちらが強いのでしょうか?」

 

すみれ「確かに…それは気になりますわね」

 

紅蘭「せやな。ウチらは森川はんが強いのは知っとるけど」

 

アイリス「大輔お兄ちゃんは負けないよ!」

 

マリア「どうかしら?見た感じ、せがたさんからも凄い霊力に似たものを感じるわ」

 

あ~…これは面倒な事になりそうだな。

 

米田「面白いじゃねぇか。森川、お前せがたと戦ってみろよ」

 

「米田さん…」

 

はぁ…これはやるしかなさそうだな。俺は渋々前に出る。

 

「よろしくお願いします」

 

せがた「うむ。だが、今のままではお互い本気で戦えまい」

 

するとせがたは、自分の回りに気を集中させる。

 

せがた「はああああああっ!!はあああああっ!!!!!!

 

すると周りの景色が稽古場から変わる。

 

あやめ「なっ!?」

 

大神「ここは…」

 

せがた「ここはかつて私が修業をした空間。ここならば、互いに本気で戦ったとしても、周りを気にする必要がない」

 

おいおい…確かに俺の地下にも似たようなのはあるが、自分の気でこんな空間を作り出すかよ…

 

「やべぇな…勝てるビジョンが浮かばねぇ」

 

この世界に来て、俺は初めて敗北すると心から思った瞬間だった。

 

米田「それでは…」

 

さくら「始めてください!!」



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第四十六話

おっさんとさくらの掛け声で、俺とせがたの稽古という名の戦いは始まった。

 

せがた「はあああっ!!」

 

「だああああっ!!」

 

お互いオーラを全身に纏う。俺は焦ってる感情の一方、嬉しい気持ちもあった。

 

「嬉しいねぇ。この世界に来て挑戦者か。血沸く血沸く」

 

せがた「……」

 

俺の言葉に、せがたは何も反応しない。だが、隙もない。

 

「おっさん達には隠したかったが、あんた相手だ。出し惜しみはできない」

 

そう言うと俺は、オールマイトボディに変身する。その姿を見た全員は驚きの表情になる。

 

すみれ「まさか…あの出鱈目な技を出す人が森川さんだったなんて…」

 

マリア「でも、森川さんの強さを考えれば納得もできるわね」

 

大神「これは凄まじい戦いになるだろう」

 

カンナ「ああ。一瞬たりとも目が離せねぇぜ」

 

全員俺の正体を知っても、真剣な表情で俺とせがたの戦いを見ていた。

 

せがた「……」

 

しかし、せがたは未だに動こうとはしない。

 

「動かないなら、こっちから行かせてもらうよ!」

 

俺はせがたに詰め寄る。

 

DETOROIT(デトロイト) SMASH(スマッシュ)!!!」

 

俺は地面に拳を叩きつけ、竜巻を巻き起こす。当然加減なんかしていないから、離れてみてるさくら達も巻き込まれる。

 

さくら「きゃああああああ!!」

 

大神「皆!踏ん張るんだ!!」

 

米田「これがあいつの本気か!?」

 

あやめ「今まで加減をしていたなんて!!」

 

大神達は踏ん張るので精一杯みたいだが、せがたは平然と立っている。

 

「おいおい…あの中を平然と立っているなんて」

 

せがた「……!!」

 

すると今度はせがたが動き出す。ジャンプして俺めがけて蹴りを繰り出してきた。所謂ライダーキックだ。

 

「だが、それくらいなら受け止め…!?」

 

受け止め用途した瞬間、俺は殺気を感じて慌てて避ける。すると俺がいた場所が大きな穴が空いていた。

 

「…マジかよ」

 

穴の大きさを見て、俺は言葉を失った。オールマイト状態でサンジの技を出しても、あんだけデカく深い穴は空かないぞ。どんな足してんだよあんた。

 

『……』

 

さくら達も、せがたが放った蹴りを見て言葉を失っていた。

 

「…ハハハ。こいつは凄いわ」

 

せがた「よくぞあの蹴りを受け止めなかった」

 

「最初は受け止めようとしたさ。だがな、殺気を感じて避ける方を選んだんだよ」

 

せがた「うむ。中々の観察眼を持っているな」

 

「どうも」

 

さて、あれだけの足技を見て、俺の技が通じるとは思えないが、やるだけやるか!百式観音は最終手段だ!

 

「んじゃ、俺の足技も見てもらおうか!首肉(コリエ)!」

 

俺は足技をせがたに放つ。すると、それをせがた受け流していく。

 

肩肉(エポール)!」

 

せがた「ふん!」

 

背肉(コートレット)鞍下肉(セル)胸肉(ポワトリーヌ)もも肉(ジゴー)!!」

 

せがた「ふん!はっ!せい!どりゃ!」

 

続く攻撃も受け流す。

 

「この野郎…羊肉(ムートン)ショット!!

 

せがた「むん!!」

 

「この技も受け止めるか…」

 

せがた「ほう。私の蹴りと同等の威力とは驚きだ」

 

「どこがだよ」

 

俺は更に攻め込む。

 

肩ロース(バース・コート)!」

 

せがた「せいや!」

 

「なっ!?」

 

今度は受け止めず、同じ蹴りで返してきた。マジかよ!?

 

腰肉(ロンジュ)後バラ肉(タンドロン)腹肉(フランシェ)上部もも肉(カジ)尾肉(クー)もも肉(キュイソー)すね肉(ジャレ)!」

 

せがた「まだまだ!!」

 

仔牛肉(ヴォー)ショット!!」

 

せがた「どりゃああああああ!!」

 

しかし、この技も受け切られた。それどころか同じ様に蹴り返してきやがった。

 

「…これも駄目か」

 

せがた「……」

 

「…悪魔風脚」

 

せがた「!?」

 

二級挽き肉(ドゥジェム・アッシ)!!」

 

この技ならどうだ!!せがたがいた場所には、物凄い土煙がまっていた。その中、せがたに足を掴まれ思いっきり投げられた。そのまま壁にぶつかり…

 

 

 

 

 

ボカーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ!?」

 

壁に叩きつけられた瞬間、俺がいた場所が爆発した。

 

(マ…ジ…かよ)

 

そして互いは土煙で見えなくなる。

 

米田「か、勝ったのか?」

 

大神「どうなんでしょう」

 

カンナ「いや…」

 

土煙が晴れると、そこにはせがたが立っていた。せがたも道着が破れていたが、まだまだやれるといった感じだ。対して俺は、先程の爆発で多少だがダメージが残る。

 

「…やっぱり立ってるか」

 

俺は半ば諦めていた。

 

「格闘系は駄目だな。なら…投影・開始」

 

俺は一本の大剣を投影する。

 

せがた「ほう。格闘の次は剣か」

 

「格闘でできる範囲やったさ。まだあるが、それは最後の手段だ。ここからは悪いが武器を使わせてもらう」

 

せがた「構わない。それでこそ遊びを極めた者なのだ!」

 

相変わらず何言ってるか分からん。

 

せがた「さぁ来なさい!」

 

「なら遠慮なく!はああああっ!!」

 

俺は自分の気を集中させる。そして稽古場が真っ白く包まれる。それが晴れると、俺達は砂漠にいた。

 

すみれ「な、なんで砂漠にいますの!?」

 

カンナ「あ、あたいに聞くな!んなの!」

 

せがた「!?」

 

流石にこれにはせがたも驚いてるな。

 

「ここは嘗てイスカンダルの軍勢が駆け抜けた大地だ」

 

米田「イ、イスカンダルだと!?」

 

「見よ!我が無双の軍勢を!肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられ、それでもなお余に忠義する伝説の勇者達!時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友達!彼らの絆こそ我が至宝!!我が王道!!余が誇る最強…宝具王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)なり!!

 

俺の背後には、イスカンダルの軍勢がいる。そのまませがたに突っ込んでいく!

 

せがた「…つあ!!

 

するとせがたの人数が増えた。

 

「な、なに!?」

 

せがた「ふふふ…」

 

そしてせがたとイスカンダル軍勢が激突する。が、みるみる内にイスカンダル軍勢が減っていく。

 

(嘘だろ!イスカンダル軍勢は普通の人間じゃないんだぞ!)

 

せがた「足腰がなっとらん!」

 

そう言いながら、せがたーズはイスカンダル軍勢を空手y柔道の技でなぎ倒していく。そして、せがたーズが立ち残っていた。

 

「これも駄目か…」

 

俺は空間を元に戻す。

 

マリア「元に戻ったわね」

 

あやめ「だけど、凄まじい戦いだったわ」

 

「「……」」

 

俺とせがたは、互いに睨み合う。そして再び俺が動き出す。

 

「…聴くがよい。晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽ーーーーー首を断つか!死告天使(アズライール)…!」

 

この技はほぼ一撃必殺の技だ。入ればほぼ即死する。んだが…

 

「これも無理って、一体全体どんな体の構造してんだよあんたは!!」

 

せがた「ははは!己を愛し、己を信じ、己に勝つ!」

 

「訳分かんねぇよ!」

 

この技も無理となるとどうするか…俺は剣を消す。

 

せがた「どうした若者よ。もう諦めたのか!」

 

「いや…切り札その1だ」

 

俺は気を集中させる。すると徐々に体が金色に輝く。

 

さくら「森川さんの体が…」

 

アイリス「金色に輝いてるよ」

 

大神「それに、森川さんの回りに小石などが当たって砕けている」

 

せがた「ははは!若者よ!真剣に遊んでいるではないか!!」

 

「それはどうも。流派…東方不敗が最終奥義!!」

 

米田「おい…」

 

あやめ「嫌な予感がします…」

 

大神「皆ふせるんだ!!」

 

「石破…天驚けぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!

 

俺はせがたに石破天驚拳を放つ。これなら流石に…

 

せがた「……」

 

「…流石に自信なくすな」

 

だってそうだろ?俺が今まで貰った特典で、オールマイト、サンジの技、宝具、流派東方不敗も使っても勝てないのか。いよいよ追い詰められたな。俺は履いてた靴を脱ぎ捨てる。

 

あやめ「遂に出るわ」

 

さくら「はい…あの技が」

 

「……」

 

俺は大きく深呼吸をし、両手で拝む。

 

「…百式観音!!」

 

そして俺は遂に百式観音を召喚した。

 

せがた「おぉ…これは素晴らしい!」

 

せがたも、百式観音を見て感動していた。

 

「これが俺の今出せる全力だ!」

 

せがた「いいだろ!若者よ!全力で打ち込んで来い!!」

 

「百式観音…壱乃掌!!」

 

上から一本の腕がせがためがけて振り下ろされる。見事に命中したが、俺はその瞬間驚いた。

 

(硬い!?)

 

生身の人間が、なんでこんなに硬いんだよ!

 

「参乃掌!!」

 

そのまま今度は左右の手で、せがたを挟む。

 

「どうだ!」

 

せがたを包み込んだが、徐々に挟んだ手が開かれる。

 

「マジかよ!!」

 

宝具とかで驚いたが、まさかこれ以上驚く事があるのかよ…

 

大神「せがたさんって、黒之巣会よりも強いんじゃ…」

 

大神、俺もそう思う。そして挟んでいた手からせがたが脱出する。

 

「百式観音…九十九乃掌!!」

 

ズドドドドドドドドドドドドド!!!!!

 

俺は隙きを与えず、百式観音のラッシュが入るが、せがたはそれすらも対処する。その隙きにせがたは俺に詰め寄り、腕を掴みぶん投げる。

 

「グッ!!」

 

この時に右腕に激痛が走った。まさかぶん投げられただけで腕が折れるとはな。

 

(こうなったら、あれを使うしなさそうだな)

 

俺はゆっくりと百式観音を投影する。

 

せがた「む?」

 

「腕がなけりゃ祈れねぇとでも…?」

 

せがた「……」

 

「祈りとは、心の所作。心を正しく形を成せば想いとなり、想いこそが実を結ぶのだ。これが最後だ!行くぞ!せがた三四郎!!」

 

せがた「若者よ、全力で打ち込んでくるがいい!」

 

どうやらせがたも、俺が最後の技だと感じ、構えに入る。

 

「…感謝するぜ。お前と出会えたこれまでの全てに!」

 

せがた「若者よ。私も久しく感じなかった戦い。感謝する」

 

「詰めるもんなら詰んでみな…百式の零を見せてやるぜ」

 

俺はゆっくりと手を合わせ、百式観音もそれに合わせせがたを優しく包み込む。

 

(流石に全気力を使うと俺も死ぬ。だが手を抜く訳にもいかない。となると、ギリギリだが95%までだな。ま、終わった後は立てるか分からんがな)

 

そして俺は、百式観音零を発射する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神(あれは神の領域だ)

 

俺は、せがたさんと森川さんの戦いを見てそう思った。森川さんの百式観音は、優しくせがたさんを包み込んで、百式観音の口が開いた。あれは…無慈悲の咆哮だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は自分の気力95%を使い気力、地面に座り込む。

 

(頼むぜ…もう立っててくれるなよ)

 

俺は祈りながら、土煙が立ち上る場所を見る。しかし、俺の希望は打ち砕かれた。

 

せがた「……」

 

「は…ははっ…マジかよ…」

 

俺はもう諦めた。

 

せがた「若者よ…いや、森川君よ」

 

「せがた…さん…」

 

せがた「素晴らしかったぞ。私も、久々に熱くなれた!」

 

「そう…ですか…俺は…ショックですよ…あれだけ…技を喰らって…立ってるなんて」

 

せがた「それは、己を愛し、己を信じ、己に勝つ!遊びの道を極め頂点に達した男…それがせがた三四郎だ!!」

 

「はは…遊びの道を極めた男…か。これは勝てねぇや」

 

俺は気が抜け倒れ込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『森川さん(大輔お兄ちゃん)!!』

 

私達は倒れた森川さん駆け寄る。

 

アイリス「大輔お兄ちゃん!霊力がかなり少ないよ!」

 

マリア「なんですって!?」

 

すみれ「まさか、先程の技で霊力を使い切ったのでわ!?」

 

紅蘭「どないしたらええんや!」

 

さくら「私の霊力を送ります!」

 

私は森川さん抱きかかえると、集中して霊力を森川さんに送る。

 

すみれ「さくらさん!私の霊力も使って下さい!」

 

マリア「私ものよ」

 

アイリス「アイリスも!」

 

紅蘭「ウチのもや!」

 

そして、私達4人の霊力を森川さんに流し込んだ。すると、森川さんの呼吸が落ち着いた。

 

さくら「呼吸が落ち着いたみたいですね」

 

すみれ「よかったですわ」

 

マリア「けど。それ程までにせがたさんとの戦いが凄かったのね」

 

アイリス「アイリスもビックリしたもん!」

 

紅蘭「せやけど、森川はんも落ち着いてよかったで」

 

あやめ「そうね」

 

するとあやめさんもこちらに来ていた。

 

さくら「あやめさん…せがたさんは?」

 

あやめ「せがたさんは、米田支配人と話した後帰ったわ」

 

さくら「そうですか」

 

あやめ「とにかく、森川さんを運びましょう」

 

すみれ「それでしたら、私のベッドをお使いください」

 

マリア「そうね。すみれのベッドだといいかも知れないわね」

 

さくら「はい」

 

そして私達は、眠っている森川さんをすみれさんの部屋に運んだ。




せがた三四郎は、サクラ大戦がセガサターンの世界の為、その恩恵を受けています。なので、せがた三四郎に勝てる人は存在しないって設定ですw


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第四十七話

「ん…んん…」

 

俺は目が覚める。意識がまだ少しボーッとしてるがな。

 

「そうか。俺はせがたと戦って…んで負けたんだ」

 

徐々に意識がはっきりしてくると、せがたとの戦いの事を思い出す。

 

「しかし、俺も色々と特典を貰ったが、あれで勝てない相手は初めてだ」

 

俺はこの世界に転生して、初めて本氣で戦った。だが、俺の技を尽く受け流したりされたのは、転生して初めての経験だった。というより…

 

「さっきから随分と体や腕が重い…ん…だ…」

 

そう思いながら俺の体を見ると、さくら達が一緒になって寝ている。俺の左腕にはさくら、すみれ、紅蘭。右腕にはマリア、あやめ。んで、胴体部分にはアイリスが乗っていた。

 

「なんだこの状況…」

 

なんで俺は、さくら達と同じベッドで一緒に寝てんだよ。なんて事を思ってると、おっさんが入ってきた。

 

米田「よう」

 

「おう」

 

おっさんは特にこの状況でも普通に話しかけてくる。

 

米田「おいおい、随分と羨ましい状況じゃねぇか。えぇ?」

 

「うっさい。此方は戦いで疲労して動けねぇんだよ。仕方ねぇだろ」

 

米田「ま、だろうな。しかし、せがたの奴が褒めてたぞ。『私に攻撃が通じないと分かっていても、あれだけ真剣に打ち込んできた若者は森川君が初めてた!』ってな。俺も驚いたぜ。なんせ、お前があのせがたと同等の戦いをするなんてな」

 

「結局は負けたがな」

 

米田「あいつに勝つのは難しいだろうな。未だに無敗だって聞くしな」

 

無敗…ねぇ。あんなのに勝てる奴いるのか?

 

米田「さて、おれはそろそろ行くぜ」

 

「もう行くのか?」

 

米田「ああ。元々様子を見に来ただけだしな。だがよ森川」

 

「ん?」

 

米田「お前さんの口調、もう三人娘以外全員が知ったぞ」

 

「あぁ…」

 

その事か。そらそうだろな。あの場にいた連中は全員が知っただろう。

 

「ったく、最初はおっさんだけだったのにな」

 

米田「確かにな。けど、いいんじゃねぇか?その方がお前も楽だろう」

 

「フッ…どうだかな」

 

米田「んじゃぁな。俺は今から、体験入隊する奴と会わなきゃなんねぇからよ」

 

そしておっさんは部屋を出ていった。

 

「さて…そろそろマジで起きないとな」

 

さくら「うぅん…」

 

するとさくらが目を覚ます。

 

「おう、おはようさん」

 

さくら「おはよう…ございます…って森川さん!気が付いたんですね!」

 

さくらの声により、他に寝ていた全員が目を覚ました。目を覚ました全員から心配したと怒られたのは言うまでもないがな。

 

「それよりあやめ、さっきおっさんが言ってたが、体験入隊ってなんだ?」

 

あやめ「ああ。それはね、私が以前出張に行ってたのは知ってるわよね?」

 

「大分前だがな」

 

あやめ「その時に、色々回って霊力が高い人物を何人か見つけていたのよ。それで、今日から1ヶ月間花組に体験入隊する事になったのよ。皆も後で顔合わせすると思うからお願いね」

 

「体験入隊か。それは女なのか?それとも大神と同じ男なのか?」

 

あやめ「男性よ」

 

男性ときたか。女なら分かるが、男は中々光武を動かせる程の霊力を持ってる奴はいないからな。

 

あやめ「名前は【狛江梨 直仁】くんよ」

 

「随分と変わった名前だな」

 

あやめ「そうかも知れないわね」

 

するとあやめはベットから降り立ち上がる。

 

あやめ「それじゃあ、私も行くわ。森川さんはまだ安静にね。それじゃあ…チュ」

 

キスをしてあやめは部屋から出ていった。っていうより、この状況でキスしていくかあいつ…

 

『……』

 

ほら見ろ。さくら達が物凄い目で俺を見てるじゃねぇかよ…んで、あの後さくら達にもあやめと同じ様にキスされた。流石にアイリス相手には俺の心も罪悪感が抱いた。

 

「さて、取り合えず店に戻るか」

 

さくら達は、今日から一ヶ月間体験入隊する狛江梨っていう奴に会いに行った。俺はそのまま店に戻り、オペレーター達に入ってきた体験入隊者の事を監視させ、今日は1日安静にする事にした。当然店も休んだ。部屋に入りベッドに横になると、やはり疲労が溜まってたのかあっという間に眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると外は朝日が昇るか昇らないかの明るさだった。

 

「大分寝たみたいだな」

 

俺は地下に行き、オペレーターに様子を伺う。

 

オペレーター「おはようございます」

 

「おはよう」

 

オペレーター2「随分とお疲れでしたご様子でした」

 

「だろうな。俺も自分で驚いてるよ。で、入隊してる奴の様子は?」

 

オペレーター3「はい。本日で入隊4日目です」

 

「…は?」

 

俺は聞き間違えたのか、オペレーターにもう一度聞く。

 

オペレーター「本日は、狛江梨直仁さんの入隊4日目です」

 

「…マジか。聞き間違いじゃなかったのか」

 

どうやら俺はあれから3日間眠り続けたみたいだ。まぁ確かに、自分の中にある気を95%も使えばそうなるか。

 

「取り合えず今日は1日店に集中するか。引き続き頼むぞ」

 

『了解しました』

 

俺は上に行き、店の開店準備を始める。開店して暫くすると客がチラホラとやって来る。

 

「マスター、この3日間どうしたんだ?」

 

「そうだぜ。この3日間ここの飯が食えなかったんだからよ」

 

「すみません。どうも疲労が溜まったみたいで」

 

「そいつは大変だな。まぁ、マスターも一人でこの店を切り盛りしてるから仕方ねぇな」

 

「本当に申し訳ありません。今日はお詫びに1日2割引きの価格で構いませんので」

 

「本当か!なら俺はこれとこれと…」

 

そして、その話が広がり今日は1日中忙しかった。翌日、今日は帝劇に行く事にしている。

 

「流石に5日も顔出さなかったから、何言われるか分かったもんじゃないな」

 

そんな事を思いながら帝劇に到着した。

 

「取り合えずおっさんの所に行くか」

 

俺はその足で支配人室に向かう。到着しノックする。

 

米田『誰だぁ?』

 

「自分です米田さん」

 

米田『おう。開いてるからへぇりな』

 

中に入ると、おっさんとあやめだけだった。

 

「よう」

 

米田「何が『よう』だ。5日間も顔出さねぇで」

 

あやめ「本当にね。何でかしら?」

 

なんだろう…普通に話しかけられてるのに、あやめからの圧力が半端ないんだが。

 

「あぁ…流石に力とかを使いすぎたみたいでな。疲労が一気にきて3日間は寝てたみたいなんだよ。んで、流石に店もあるから昨日は2割引きで1日中営業してたって訳だ」

 

米田「なるほどな。けど、後であいつらにも会ってやれよ」

 

「ああ」

 

会っていかないと、あやめみたいなオーラ出されても困るしな。会っても出されそうだけど…

 

「そういえば、今来てる入隊の…狛江梨直仁だっけ?」

 

米田「ああそうだ」

 

「特に調べてはないが、おっさんやあやめから見た感じどうなんだ?」

 

米田「まだ5日だが、とても面白れぇと思うぜ」

 

面白い?

 

あやめ「そうですね。直仁君は、とても努力家で最初の頃と比べてみるみる実力をつけてきています」

 

へ~、たかが五日でおっさんやあやめがそこまで評価するか。

 

「ま、多分あいつらに会う序に出会うだろ」

 

俺は言い残して俺は支配人室を出て行った。

 

「さて、さくら達を探すか」

 

俺はさくら達に会うため、劇場を探し始めた。



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第四十八話

さくら達を探して劇場をうろつく。ロビーには客以外誰もいないな。いや、売店に椿がいるぐらいか。そのまま二階に上がり、エントランスを見るとさくらがいた。

 

「よう」

 

さくら「あ、森川さん!」

 

さくらは俺に気づくと近寄ってくる。

 

「5日ぶりか」

 

さくら「ホントですよ。直仁さんが来た時から全く来てくれないんですもん」

 

「さっきおっさんやあやめからも愚痴言われたぞ。仕方ないだろ。せがたさんと戦ってその傷や気が回復してなかったんだから」

 

さくら「それは…分かってますけど」

 

少し拗ねながらさくらは言う。

 

「あの後店に帰って寝たらあの日から4日経ってたしよ。んで、流石に4日も店休んじゃまずいと思ってな。昨日は2割引で1日中営業してたんだよ。今日は店休んで此方に来たって訳だ。新しく花組に入隊した奴も見にな」

 

さくら「そうだったんですか。あの時は、森川さんの霊力…「俺の場合は気だ」気が少ない事をアイリスが気付いて、私とすみれさん、マリアさん、アイリス、紅蘭の5人で霊力を分け与えたんです」

 

「そうだったのか。ありがとな…お前らが霊力とかを分けてくれなかったら危なかっただろうよ。なんせあの技は、俺の気を95%持っていくからな。一応5%は残したが危なかったみたいだな」

 

さくら「『みたいだな』じゃないですよ!本当に危なかったんですからね!!」

 

俺は笑いながらそう言うが、さくらからしたらたまったものじゃないだろな。それに関しては、ホントに感謝してるしな反省もしてる。

 

「さて、取り敢えずまずはさくらと出会ったから、残りの連中も探さないとな」

 

さくら「すみれさんならサロンにいましたよ」

 

「サロンか。多分茶でも飲んでるんだろうよ」

 

さくら「はい。紅茶を飲んでました。アイリスは部屋お昼寝してるかも」

 

「マリアは?」

 

さくら「マリアさんは、多分地下の射撃場だと思います。後地下にいるのは大神さんとカンナさん、紅蘭は、多分親方と広井さんと光武の所かと」

 

「分かった。後で地下にも行ってみるわ。じゃあな」

 

さくら「はい!」

 

俺はエントランスからそのままサロンに向かう。するとさくらの言う通り、紅茶を飲んでるすみれを発見した。

 

「おっす」

 

すみれ「森川さん」

 

「さくらの奴に、すみれがここで茶を飲んでるって聞いてな」

 

すみれ「そうでしたの。森川さんもいかがですか?」

 

「なら貰おうかな」

 

俺はすみれの隣に座る。すみれは自分のおかわりを含めて、新しく紅茶を作り始めた。

 

すみれ「どうぞ」

 

「悪いな」

 

俺はすみれから紅茶を受け取り匂いを嗅ぐ。…うん、紅茶のいい香りだ。

 

「さっきさくらに聞いたが、お前も俺に霊力を分けてくれたそうだな。ありがとな」

 

すみれ「気にすることはありませんわ」

 

「それでもだ」

 

俺は紅茶を飲む。…うん、流石は神崎のご令嬢だ。いい茶葉を使ってる。暫くの間、俺とすみれは紅茶をのんびり楽しんだ。

 

「ご馳走さま。流石はすみれだな。いい茶葉を使っている」

 

すみれ「お粗末様ですわ。流石森川さん。気が付きましたか」

 

まぁな。前世の俺じゃ全く分からなかったが、今の俺はサンジや小松といった料理人に関する舌があるからな(本人は気づいてませんが、森川の舌はトリコのG7並です)

 

「そういえば、新しい隊員の話を聞いたが、すみれから見てどうなんだ?」

 

すみれ「そうですわねぇ…年齢もお若いですし、少尉や森川さんには敵いませんが、磨けば素晴らしい者になると思いますわ。私も薙刀を指導していますけど、これからといった感じでしょうか」

 

ほぅ…すみれにもそう言わせる人材か。これはますます会うのが楽しみになるな。

 

「そうか。それじゃあ俺はそろそろ行くとするか。紅茶ありがとな。美味かったぞ」

 

すみれ「いえ、またご一緒いたしましょう」

 

そして俺は再び劇場内をブラつく。すると、中庭から声が聞こえてきた。行くとそこにはカンナと男がいた。多分あいつが入隊した奴か。

 

カンナ「おう大将!」

 

「こんにちはカンナさん」

 

カンナ「おっとそうか…」

 

カンナは俺の言葉遣いに気づいたのか、小さな声で納得していた。

 

「カンナさん、此方の方は?」

 

カンナ「ああ直仁。大将はな、あたいが世話になってる飯屋の大将だ!大将、こいつは体験入隊で来てる狛江梨直仁だ」

 

直仁「狛江梨直仁です」

 

「初めまして狛江梨さん。私はカンナさんから紹介された通り、帝劇の近くで店をしている森川大輔です」

 

直仁「直仁でいいですよ森川さん」

 

「それでは直仁君と」

 

俺達は互いに自己紹介をする。

 

(へ〜…こいつは凄いな。気…さくら達でいえば霊力か?それがとてつもなくデカイな。さくらやもしかするとアイリス並かもな)

 

俺は感じた霊力のデカさに驚いた。これは確かの、すみれの言う通り磨けばいいのができるな。

 

直仁「っというよりカンナさん!森川さんに話していいんですか!?」

 

カンナ「ん?ああ気にすんな。大将はあたいらの裏の顔も知ってるからよ」

 

直仁「そ、そうなんですか!?」

 

「ええ、カンナさん達が帝都を護ってる帝国華撃団なのは知っていますよ」

 

その言葉を聞いて、直仁は驚いていた。確かに、外部で花組の事を知ってるとは思わないわな。

 

「それではカンナさん、直仁君、私はそろそろ失礼しますね。まだマリアさん達にお会いしてないので」

 

カンナ「おう!早く会ってやれよな」

 

直仁「森川さん、またお会いしましょう」

 

「ええ。是非ウチの店にも食べに来てください」

 

そして俺は中庭を後にした。

 

「なるほど。あれが狛江梨直仁か。中々どうして面白い素材じゃねぇか。おっさんやあやめ、さくら、すみれ、カンナが言う通りだな」

 

俺は直仁の今後を期待すると、笑いが止まらなかった。

 

「さて、マリア達に会いに地下に行くか」



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第四十九話

地下に降りた俺は、紅蘭と親方達に出会う。

 

紅蘭「森川はん!」

 

俺に気づいた紅蘭は、作業の手を止め俺に駆け寄る。

 

「紅蘭さん、お疲れ様です。さくらさんから聞きましたよ。ありがとうございます」

 

紅蘭「そんなん気にせんでええよ。けど、森川はんが無事で良かったわ」

 

「ははっ。面目ありません」

 

親方「おっ!森川さん」

 

親方も此方に来る。

 

「どうも親方。光武はどうですか?」

 

親方「ここ最近出撃もないんでね。その分紅蘭さんと一緒に整備をしてるんで万全ですよ」

 

「それは頼もしいですね。皆さんがいるから、大神さんや花組の皆さんが安心して戦えるんですから」

 

紅蘭「せやせや」

 

親方「へへへ。嬉しい事を言ってくれますね」

 

そんな話をしてると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああっ!!」

 

親方「広井!お前何やってんだ!!」

 

広井「す、すみません親方」

 

親方「オメェは一体何年ここで仕事してんだよ!」

 

親方は広井の所に行き説教を始めた。

 

紅蘭「あちゃ〜…相変わらずやな広井はんも」

 

「みたいだな。けど、技術者の腕は親方に次ぐ優秀さだからな」

 

紅蘭「それは認めるけど…もうちょいしっかりしてほしいわな」

 

確かにそうだな。

 

「さて、じゃあ俺はマリアの所に行くか」

 

紅蘭「そっか」

 

「じゃあな紅蘭。霊力分けてくれてマジで助かった」

 

俺はそう言い残し、マリアがいる射撃場に向かう。近づくと銃声音が響いてきた。中を覗くとマリアが的目掛けて撃っている。

 

「終わるまで待つか」

 

俺はマリアの後ろの椅子に座り、撃ち終わるのを待った。暫くして撃ち終わり的を寄せて命中した箇所を確認している。後ろから見ても全弾ド真ん中に命中しており、それ以外穴は空いてない。

 

 

 

パチパチパチパチ

 

 

 

俺はそれを見て拍手をする。それに気づきマリアは俺の方を見る。

 

マリア「森川さん」

 

「邪魔させてもらってるよ」

 

マリア「来ていたなら、声をかけて下さいよ」

 

「いや、あの中声かけても聞こえねぇだろ」

 

あんだけ銃声が響いてたらな。

 

「しかし、流石はマリアだな」

 

マリア「いえ」

 

俺はマリアに近づき、マリアの銃エンフィールドを持つ。

 

「ほぅ…かなり使い込まれてるな」

 

マリア「分かりますか?」

 

「ああ。普通の人間ならまず扱えないな。仮に扱えたとしても、こいつのクセをつかなまい限り、的の中心に当てるのは難しいだろうな」

 

そう言いつつ、俺は的に向けて銃を構える。そして撃った。全て撃ち終わり的を寄せると…全弾ド真ん中に命中している。

 

マリア「!?」

 

それを見たマリアは驚いていた。

 

「っとまぁこんなもんだ。クセさえ掴めれば扱える」

 

マリア「…驚きました。森川さんの腕がそこまでだったとは」

 

「なに、昔かじった程度だよ」

 

嘘だがな。そりゃ次元やルパンといった銃の腕が凄い奴の特典があればな。弾丸で弾丸を撃ち返すんだし。

 

「マリアもありがとな。さくら達から聞いたぞ。霊力分けてくれたってな」

 

マリア「いえ、気にしないで下さい」

 

「そうもいかない。今度さくら達連れてウチの店に来い。好きなものをタダで食わしてやるからよ」

 

マリア「そんな!」

 

「気にするな。受けた恩は返す。当たり前の事だろ?」

 

悪いが俺も一歩も引くわけにはいかないからな。

 

マリア「…分かりました。今度さくら達を連れて行きます」

 

「ああ。ただ来るときは事前に連絡くれよな。豪華な飯を作りたいからよ」

 

マリア「ふふっ、分かりました」

 

そして俺は、寝ているアイリスを除く全員にお礼を言って帝劇を後にした。数日後、今日は日曜で帝劇も休みだ。

 

 

ジリリリリリリ!!

 

 

 

すると店の電話が鳴る。

 

「はいもしもし。こちらオアシスです」

 

米田『森川か?俺だ』

 

電話の相手はおっさんからだった。

 

「どうしたんだ?おっさんが昼くらいに連絡するなんて珍しいな」

 

米田『俺だってたまには連絡するぞ。いや、今日の夕方なんだが、体験入隊の直仁の歓迎会をしようと思ってな。んで、お前も参加しないかって連絡だ』

 

「ああ、あいつのか。確か入隊して1週間経ったくらいか」

 

米田『ああそうだ。他の奴も今張り切って準備中なんだよ』

 

「分かった。なら俺からも料理を一品差し入れするわ」

 

米田『そいつはありがてぇ』

 

「じゃあ今日の夕方な」

 

俺は電話を切ると、歓迎会に差し入れする料理を作る。

 

「さて、何を作るかな…」

 

メインは多分さくらやマリア達が作るだろうから、作るならデザート系か?

 

「あれを作るか。せっかく色々と果物がある事だし」

 

俺は大量の果物を見て作る物を決めた。その名は【フルーツティーパンチ】だ。用意するのは紅茶、砂糖、炭酸水、ジンジャーエール、オレンジ、りんご、すいか、もも、パイン、アメリカンチェリー、レモンだ。おっさんもいるからラム酒入りのやつも作っておくか。そして俺は二種類のフルーツティーパンチを作って劇場に向かった。

 

「こんばんは」

 

由里「森川さん、待ってましたよ!」

 

かすみ「私達も今から向かうところなんです」

 

椿「一緒に行きましょう!」

 

「ええ、ご一緒させて下さい」

 

俺は三人娘と一緒に楽屋に行く。中に入ると、俺達が最後みたいで既に他の連中は集まっていた。

 

かすみ「すみません。遅くなりました…」

 

由里「差し入れを持ってきました~」

 

椿「お邪魔しま~す」

 

「失礼しますよ」

 

米田「おう!来たな森川」

 

俺は挨拶し、かすみと椿の間に座る。

 

米田「全員揃ったな。オホン…これより直仁の歓迎会を行う」

 

「あ、これ私からの差し入れです」

 

俺は作ったフルーツティーパンチを出す。

 

アイリス「うわ~綺麗!」

 

すみれ「この匂い…紅茶ですわね」

 

「はい。これは紅茶をベースに砂糖で味付けをしてフルーツを漬けた【フルーツティーパンチ】です。こちらの赤い入れ物は、ラム酒が入っていますので未成年の方は飲まないで下さいね」

 

米田「ラム酒入りか。そいつは嬉しいねぇ」

 

そしてそれぞれのカップに注がれていく。

 

あやめ「皆、ちゃんと飲み物はいきわたってるかしら?」

 

さくら「大丈夫です」

 

あやめ「では支配人…乾杯の音頭を」

 

米田「うむ…では直仁の体験入隊を歓迎して…乾杯!」

 

『乾杯!!』

 

そして直仁の歓迎会はスタートした。

 

さくら「直仁さん、帝劇で1週間過ごしてみてどうでした?」

 

直仁「凄く楽しいです。何もかも新鮮で…」

 

さくら「ふふ…そう言ってもらえるとあたしも嬉しいです」

 

すみれ「直仁さんとおっしゃったわね?この中で誰が一番綺麗だと思ってらっしゃるのかしら?」

 

またすみれの奴は…ラム酒入りの方飲んでないのに、んな質問するなよな。

 

直仁「すみれさんが一番です」

 

すみれ「あら、分かってるじゃありませんこと。オ~ホホホホホホ」

 

すみれ…お前直仁に気を使われてる事を分かれ…

 

カンナ「お世辞に決まってんだろ…直仁、このサボテン女の事はあまり気にすんなよな」

 

まぁ、カンナの言い分が正しいわな。

 

カンナ「前にも聞いたかも知れねえけど、お前喧嘩とかは強いのか?」

 

直仁「まぁまぁ…という感じですね」

 

カンナ「お、なんか自信ありげなセリフじゃねえか。頼もしい限りだぜ」

 

はいそこ!戦いたいのは分かるけどそんな事言わないの!

 

マリア「カンナ、あまりプレッシャーをかけてはダメよ。ごめんなさい。なんだか質問大会みたいになっちゃって…」

 

直仁「そんなことないですよ」

 

マリア「そう言ってもらえると助かるわ」

 

紅蘭「なあ直仁はん。ウチからも質問させてもろてエエか?」

 

こうして、直仁の歓迎会から質問大会に変貌したのだった。

 

あやめ「ふふ…直仁君も人気者ね」

 

米田「そうでなきゃ、体験入隊なんかできねぇよ」

 

「人気と言っていいのか?あれ…」

 

米田「よし!ここは一発、俺が直仁の為に浪曲を披露してやろう!」

 

おっさんがはりきってそう言った瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神「緊急警報!?」

 

米田「あやめくん!至急状況を確認するんだ!」

 

あやめ「はい!」

 

米田「全員、指令室に集合せよ!」

 

『了解!』

 

大神「よし、直仁君!俺に着いて来てくれ!」

 

大神達は楽屋を出て行った。俺はおっさんと一緒に作戦指令室に向かう。

 

米田「全員揃ったようだな…あやめくん、状況は?」

 

あやめ「上野公園に、正体不明の機体が出現したとの報告が入ってます」

 

大神「まさか黒之巣会が?」

 

あやめ「いえ、違うわ…上野公園に出現した正体不明機…データから推測して99%光武よ…」

 

米田「何だと?」

 

紅蘭「あ!!」

 

すると突然紅蘭が叫ぶ。

 

マリア「どうしたの紅蘭?」

 

紅蘭「あやめはん…もしかして、その光武…」

 

あやめ「ええ…」

 

紅蘭の問いかけにあやめは顔をしかめる。

 

カンナ「おいおい、分かるように説明してくれよ!」

 

あやめ「今度、実験機を1台ここに配備する話は知ってるわよね?」

 

「確か、神崎重工の方で新システムを搭載した機体ですよね?」

 

俺はおっさんから聞いてたのでそう答える。

 

大神「まさか!?」

 

紅蘭「そのまさかや…上野公園で暴れとるのはその実験機や…」

 

米田「とにかく、急いで上野公園に出撃してくれ」

 

大神「了解!帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

『了解!!』

 

そして大神達は上野公園に出撃していった。



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第五十話

今回は少し短めです。


大神「皆配置についたな。各員その場で待機せよ。直仁君、君は俺の側にいるんだ」

 

直仁「分かりました」

 

大神「よし、行くぞ!!」

 

そして周囲を警戒していると、実験機が見つかった。

 

マリア「隊長!問題の光武を発見しました!」

 

マリアからの報告を受ける。

 

大神「様子はどうだ?」

 

マリア「それが…止まっています。活動を停止しているんです」

 

大神「中には誰も乗っていないのか?」

 

俺はマリアの答えに驚いた。

 

マリア「反応がありません…逃げた後のようです」

 

大神「そうか…」

 

マリア「これより機体の回収にかかります」

 

そして俺達は、無事に光武を回収して帝劇に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大神達が光武を回収して戻って来て、おっさんに報告する。

 

米田「ふむ…妙な話だな…」

 

あやめ「神崎重工からの連絡によると、こちらへ輸送する途中に突然起動したそうです」

 

突然起動…ねぇ。

 

米田「誰かが勝手に操縦して、そして勝手に乗り捨てていったか…」

 

大神「悪戯にしては度が過ぎますね…」

 

本当にそうなのか?すると、俺に通信が入る。

 

「…俺だ」

 

オペレーター『マスター、先程の光武の件ですが』

 

「詳しく教えろ」

 

オペレーター『はい。簡潔に言えば映像等を確認した結果、誰もその実験機に搭乗していません』

 

「…確かなのか?」

 

オペレーター『はい。神崎重工から帝劇に移動する道中の映像を確認しましたが、誰も光武に乗り込んだ形跡は見つかりませんでした』

 

「…分かった。引き続き調べてくれ」

 

オペレーター『了解しました』

 

そして俺は通信を切る。しかし…誰も乗っていないか。

 

米田「おい直仁、お前はどう思う?」

 

直仁「光武が勝手に動いた…とか?」

 

大神「おいおい…流石にそれはないだろう?」

 

米田「はははははは!いや、面白い意見だ。お前、センスあるな」

 

おっさんは笑ってるが…あながち間違ってないかもな。俺もオペレーターからの連絡がなきゃ笑ってたかもしれないがな。

 

米田「という訳だ。今後、光武の輸送には十分気を付ける事だな。神崎重工には、厳重に注意しておいてくれ」

 

あやめ「……」

 

米田「ん、どうした?あやめくん?」

 

あやめ「いえ…了解しました」

 

米田「よし解散!」

 

そしてそれぞれ着替えに戻り自分の部屋に戻っていく。

 

「おっさん、あやめ、少しいいか?」

 

米田「ん?」

 

あやめ「なにかしら?」

 

「さっきウチのオペレーターから連絡があってな。実験機…あれの輸送状況を調べさせたんだが」

 

米田「そうか。相変わらず仕事が早いな」

 

「まぁな。それで、あの実験機だが…輸送道中誰から乗り込んだって報告はなかった」

 

あやめ「それって!?」

 

「まだ確信は持てないが、あいつ…直仁か。あいつの意見あながち間違いじゃないかもな」

 

米田「おいおい…まさか本当に勝手に光武が動いたって言うんじゃねぇだろうな?」

 

「言っただろ。まだ確信は持てないって。俺も戻って直接映像とかを見て調べるつもりだ」

 

「「……」」

 

「詳しい事が分かればまた報告する」

 

俺はそう言い残して帝劇を後にした。さて、あの光武…何かありそうだな。店に戻り俺はすぐ地下に向かい、神崎重工から運ばれた光武の様子を映像で見る。

 

「ん〜…確かに誰かが乗り込んだ形跡はないな」

 

信号なんかで止まった時に、特に注意して見たが誰も近づいてない。走ってる時なんかは論外だ。

 

「となると、直仁言った仮説が当たってるかもしれないな」

 

光武が勝手に動いたっていう仮説がな。

 

「けど、そうなると何でひとりでに動いたかって事になるよな…」

 

さてさて、これは調べるのが大変だぞ…

 

「オペレーター、悪いが光武の事をもう少し調べてくれ」

 

オペレーター「了解しました」

 

俺はオペレーターに後を任せ、上に行き今日は眠ることにした。



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第五十一話

結局、あれ以降光武に誰かが乗り込んだ確認は取れなかった。

 

「となると、ますます直仁の言った事が現実味を帯びてきたな」

 

もう暫くは時間がかかりそうだな。

 

「取り敢えず、今日は店を休みにして帝劇に向かうか」

 

俺は資料を隠し金庫に入れ、戸締りをして帝劇に向かった。

 

「さて、あいつの入隊状況はどうかな?」

 

俺はブラブラと帝劇を歩く。すると、中庭で直仁が鍛練している。俺はバレない様にこっそりと見る。すると、直仁は木刀を構え素振りを始めた。しかし、少し見てると俺は驚く。

 

(あの型…さくらの太刀筋に似てるな。まだ荒削りだがな)

 

そう。直仁の太刀筋はさくらの太刀筋とほぼ同じだ。すると今度は拳を突き出す。

 

(今度はカンナの型か。もしやあいつ、見ただけである程度の型とか覚えてるんじゃねぇか?)

 

俺は気になり直仁に話しかける。

 

「こんにちは直仁君」

 

直仁「貴方は…森川さん。こんにちは」

 

「すみません。集中している時に話し掛けてしまって」

 

直仁「いえ、大丈夫ですよ」

 

「そうですか。少し気になったんですが、直仁君は刀や格闘に心得が?」

 

直仁「違いますよ。確かに運動とかは得意な方ですが、刀の使い方等は、花組の皆さんに教えてもらったのを自分なりに改良したものです」

 

やっぱり…こいつ相手の型や技を見て再現出来てやがる。それははっきり言って俺でもギリギリできるかだ。

 

「それは凄いですね。相手の型や技を見て自分の物にできるなんて」

 

直仁「努力の賜物ですよ。その分、鍛練を怠ると使えなくなりますから」

 

なるほど。見て取得する事はできるが、鍛練を怠ると弱体化するって訳か。

 

「そうですか。これからも頑張って下さい。今度是非ウチの店に食べ来て下さい。サービスしますから」

 

直仁「はい!その時はお願いします!」

 

そして俺は、再び鍛錬に入る直仁を置いて、支配人室に向かった。到着し中に入ると、おっさんにあやめ、さくら、マリア、大神がいた。

 

米田「森川か。どうしたんだ?」

 

「いや、直仁の様子を見に来てな」

 

米田「ほう…で、お前さんから見てどうなんだ?」

 

「どうも何も、随分と恐ろしい奴を見つけたなあやめ」

 

あやめ「恐ろしい?」

 

「だってそうだろ。相手の型や技を見ただけでほぼ自分の物にできるなんて、恐ろしい以外なにがあるんだよ」

 

米田「確かにそうだな。丁度大神達からも同じ報告をもらったところだ」

 

やっぱりこいつらもそう思ってたか。

 

「お前らもか」

 

マリア「はい」

 

さくら「直仁さん、私の剣筋を見ただけで荒削りですができていました」

 

大神「自分の時もそうですし、他の隊員達も同じ事を言ってました」

 

米田「こりゃ、とんでもねぇ奴を引き入れられたかもな」

 

「ああ。だが、そこから更に化けるかは本人次第だがな」

 

米田「まぁな」

 

さくら「直仁さんなら大丈夫ですよ」

 

マリア「そうね。彼はこれからもっと成長できると思うわ」

 

大神「それは俺も同意見だな」

 

あやめ「ふふふ…」

 

「これからが見物だな。1ヶ月という短い期間でどんだけ化けるか…」

 

そう言いながらも、俺もなんだかんだであいつには期待してしまってるんだがな。その日の夜、俺は珍しく夜にも帝劇にいる。まぁ、今日は店が休みだからな。すると、サロンでおっさんを含めた全員が揃っていた。

 

「皆さんお揃いですね」

 

米田「森川か」

 

さくら「実は今、直仁さんに昔の花組の話を支配人にしてもらってたんです」

 

「昔の花組ですか」

 

さくらや大神達が来る前の話とかか。懐かしいな。

 

米田「森川、お前はほぼ花組結成時から知ってるんだ。話してやれよ。俺はそろそろ帰るからよ」

 

おっさんはそう言い残して帰って行った。

 

「自分が話していいんですか?」

 

あやめ「別にいいわよ。確かに、貴方は帝国華撃団結成時からの付き合いですしね」

 

直仁「そうなんですか!?」

 

直仁は驚いた顔をしている。

 

マリア「そうでしたね。確かに森川さんとは、花組結成の時からお世話になっていますし」

 

すみれ「お~ほほほほほ!直仁さん、森川さんから私の武勇伝をお聞きくださいな」

 

カンナ「何が武勇伝だよ」

 

「分かりました」

 

そして俺は椅子に座る。

 

「それで、何を聞きたいんですか?」

 

あやめ「あれはどうかしら?大神君が花組の隊長になるきっかけの」

 

「あぁ。あれですか」

 

そんな話をすると、さくらにすみれ、アイリス、マリアは嫌な顔をする。

 

さくら「その話は止めて下さい!あやめさん!森川さん!」

 

すみれ「そうですわ!」

 

あやめ「フフッ。けど、大神君も気になるわよね?」

 

大神「え?ええ、まぁ」

 

大神がそう言い、さくら達は観念したのか黙ってしまう。

 

あやめ「じゃあ話してあげて」

 

「分かりました。あれは確か、今の光武が来て何度目かの出撃の時でしたね…」

 

そして俺は、大神が花組の隊長になるきっかけの戦いの事を話し始めた。



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第五十二話

「あれは確か、今の光武が来て何度目かの出撃の時でしたね…」

 

あの時は、まだ大神や紅蘭も帝劇に来ていない時だったな。さくらの奴もまだ裏方の仕事しかしてなかった時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、米田のおっさん急に劇場に来いって言いやがって」

 

俺は店の開店準備をしていたら、おっさんから電話が来てすぐに劇場に来てくれって言われて切られた。で、俺は渋々だが劇場の支配人室に向かっている。到着しドアをノックする

 

『開いてるからへぇりな』

 

俺は中に入ると、おっさん以外に老人が座っていた。

 

(あれ?この爺さんって確か…)

 

米田「森川、紹介するぜ。この方はウチに出資してくれてる綾小路伯爵だ」

 

(あ~思い出した。確かここの事を調べたら名前があったな。こいつが出資者の1人の綾小路か)

 

綾小路「米田くん、彼はいったい」

 

米田「伯爵、こいつは森川大輔。私達花組をサポートしてくれる奴でさぁ」

 

綾小路「なるほど。彼が君の言っていた…」

 

米田「ええ。そして、裏の顔は帝都一の情報屋である【賽の花屋】です」

 

綾小路「なんと!?我々の業界でも数名しか知らない情報屋が彼だというのか!?」

 

流石に綾小路の爺さんも驚いてるな。

 

米田「はい。彼はそれで我々帝国華撃団の存在を知り、更にはこの帝劇に一番出資している伯爵と神崎家の事まで調べたそうです」

 

綾小路「なるほど」

 

すると爺さんは俺を見る。

 

綾小路「君の事は、あやめくんやマリアくんから聞いてる。これからも彼女達に力を貸していただけないだろうか?」

 

「もちろんですよ」

 

綾小路「そうか」

 

俺がそう言うと爺さんは満足したのか、椅子に座りなおした。

 

綾小路「ところでどうした。その恰好は」

 

米田「ん?始めますか」

 

するとおっさんは部屋を暗くして映写機を回し始めた。どうやら触れてほしくないみたいだな。映し出された映像を見ると、光武が出てきた。

 

綾小路「おお、これは」

 

米田「ええ。今日の光武の実践訓練なんですがね」

 

見るとマリア機が動く的を撃ち抜き、すみれ機が巨大な戦車みたいなものを薙刀で一刀両断している。

 

綾小路「これは中々…」

 

「そうですね」

 

米田「そう思っていただけるのもここまでです」

 

「「??」」

 

すると、映像の続きを見て俺達は唖然とした。

 

綾小路「こ、これは…」

 

爺さんはその映像を見てこめかみを抑えていた。まさかとは思うが…

 

米田「さくらですよ。あの子が操縦をしくじってこのザマですよ」

 

なるほど。おっさんも被害にあって包帯巻いてる訳ね。

 

米田「霊力も充分、剣の腕も一流…才能は、申し分ねぇんですが」

 

綾小路「米田くん。私が花組に芝居をやらせたのは…」

 

米田「帝都にあだなす者への目くらましと、歌舞音曲の持つ霊的意味合い」

 

綾小路「無論それもある。だがそれだけではないよ」

 

「「??」」

 

俺とおっさんは、爺さんの言葉に頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。俺と爺さんは支配人室を出て、爺さんはそのまま帰って行った。俺は劇場内をブラブラ歩いていると、マリアがいた。

 

「マリ…」

 

声をかけようとしたが、俺は止めた。見るとさくらが1人寂しく食事をしていた。

 

マリア「森川さん」

 

「どうも。さくらさん、大丈夫でしょうか?」

 

マリア「……」

 

流石にマリアも、簡単には答えれないか。

 

さくら「私って…ホントダメだわ…」

 

あちゃ〜。かなりまいってるな。只でさえ前の時もすみれの奴にボロクソ言われてるだけにな。

 

「これは、暫くはそっとしておいた方がいいかも知れませんね」

 

マリア「そうですね」

 

「大変そうですね。花組の隊長…」

 

話していると、俺はテーブル残されてる料理を見つけた。数口食べただけで、殆ど残っている。

 

「…あいつら」

 

マリア「森川さん?」

 

俺は、店をする時に決めた事がある。客相手でも、食べ物を残した奴には容赦しない。つまり…

 

「…お」

 

「「お?」」

 

「お残しは…許しまへんでえええええええええええ!!!!!!

 

俺の怒鳴り声が、劇場全体に響き渡った。

 

「「……」」

 

それを見たマリアとさくらは、言葉を失っていた。俺は二人を見て、ニッコリと笑いながら言う。

 

「マリアさん、さくらさん」

 

「「は、はい!」」

 

「すみませんが、すみれさんとアイリスを連れてきていただいていいでしょうか?」

 

「「わ、分かりました!!」」

 

すると二人は、急いで二階に行きすみれとアイリスを呼びに行った。そしてすぐに戻ってきた。何故かおっさんやあやめもいるがな。

 

すみれ「なんですの森川さん」

 

アイリス「どうしたの大輔お兄ちゃん」

 

「お二人とも、これを見てください」

 

俺は残ってる料理を二人に見せる。

 

「二人は、これを残しましたか?」

 

すみれ「ええ。美味しくいただけませんでしたので」

 

アイリス「アイリスも」

 

「……」

 

俺はそれを聞くと、二人の首根っこを掴んで椅子に座らせる。

 

すみれ「な、なんですの!」

 

「…食べて下さい」

 

「「えっ?」」

 

「ですから、食べて下さい」

 

俺は残ってる料理を二人に突き出す。

 

すみれ「ですから、美味しくいただけなかったと…」

 

「せっかく、お二人の為に作ってくれた料理を、美味しくいただけない。ただ自分の気分で言っていますよね?」

 

俺は淡々と二人に話す。

 

「私はね、店を経営する時に、ただ一つ決めた事があるんです」

 

すみれ「な、なんですの…」

 

「絶対にお客には、食い逃げとお残しは絶対に許さないと」

 

俺はそう言うと、しゃもじを取り出し仁王立ちする。

 

「「……」」

 

「ですので…お残しは…」

 

するとマリアとさくらは耳を塞いだ。

 

「許しまへんでえええええええ!!!!」

 

「「は、はい!」」

 

俺の声に、二人は涙目になりながら残ってた料理を食べた。食べ終わるまでは、俺はずっと二人を睨んでたがな。

 

「「ご、ごちそう…さまでした」」

 

完食した二人を見て、俺は笑顔になる。

 

「はい、お粗末様でした。せっかく作っていただいたんですから、残しては失礼ですよ。次からは気をつけて下さいね」

 

「「は、はい…」」

 

俺はそう言い残し、食器を流し場に持っていった。

 

米田「…おっかねぇな」

 

あやめ「はい」

 

マリア「流石に、二人の自業自得とはいえ…」

 

さくら「なんだか可哀想です」

 

後ろでそんな話が聞こえたが、俺は特に気にしない。残す奴が悪い。因みに、それ以降花組の間では、絶対に食べ物を残さないという決まりができたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直仁「そ、そんな事があったんですね…」

 

直仁の顔がひくついてる。

 

すみれ「あの時は、本当に生きた心地がしませんでしたわ」

 

カンナ「あたいが親父の敵討ちに行ってる時に、そんな事があったのかよ」

 

紅蘭「けど、確かにウチらは出された料理は全部食べてたな」

 

大神「俺もその注意事項は聞いていたが、まさか森川さんが原因だったとは」

 

「いや〜、お恥ずかしい」

 

今でも残す奴と食い逃げには容赦しないけどな。

 

直仁「それで、その後はどうなったんですか?」

 

「そうですね。あの後は、さくらさんが新人として初めて舞台に立つことが決まったんです。マリアさんの推薦で」

 

さくら「そうでしたね」

 

「ですが、当然すみれさんは舞台を降りるように言ってましたね」

 

すみれ「当然ですわ。あの頃のさくらさんは、本当にドジでしたものね。今も然程変わりませんが」

 

さくら「……」

 

はいはい。喧嘩は止めてくれ。

 

「そしてその時ですね。黒之巣会が相生橋に出現したのは…」

 

俺は再び話しだした。



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第五十三話

黒之巣会が攻めてきて、佃島の現状報告をされる。

 

米田「一昨年より、制圧を続けてきた奴らが遂に動き出した。狙いは佃島。帝都の喉元に当たるこの場所に、自分達の前線基地を作るつもりだろう。翔鯨丸と轟雷号はまだ使えん。代わりに陸軍輸送大隊が現地に光武を搬送する。帝国華撃団・花組は現地にて合流。以下奴らを殲滅するものとする。尚、初めての大規模な実践の為私も現地に合流する。各自、日頃の訓練の成果を存分に発揮してくれ!以上だ!」

 

マリア「はっ!帝国華撃団・花組、出動!!」

 

マリアが出撃命令を下し、さくら達は佃島に向けて出発した。佃島の相生橋に到着した。辺りはすっかり暗くなっている。それはいいんだが…

 

「おいおっさん…」

 

米田「なんだ?」

 

「なんで俺までほぼ最前線に出てこなきゃなんないんだよ」

 

米田「いいじゃねぇか。お前にも見てもらって感想を聞きてぇんだよ」

 

「だったら、ここじゃなくてもいいだろうが!俺は自分の家で見れるんだからよ!!」

 

ホント、ウチの地下から見りゃいいだろうが。

 

「んで、その生で見る戦闘だが、既にさくらが置いていかれてるぞ」

 

米田「ああ。多分マリアがあそこで待機って言ったんだろう」

 

「…そうか」

 

さくらの顔は見えないが、その背中は光武越しでも寂しそうにしていた。一方、マリア達は順調に脇侍達の所に進んでいる。だが、少し疑問に思う。

 

「なんだ?」

 

そんな事を考えてると、すみれが一機だけで突撃していく。

 

「おいおい」

 

米田「すみれの奴…」

 

俺とおっさんは頭を抱えていた。それと同時に、動かなかった脇侍達が一斉に動き出す。するとアイリスが怖がったのか、腕に付いてるガトリングガンを適当にぶっぱなし始めた。脇侍にも当たるが、当然俺達の方にも銃弾は飛んでくる。

 

『うわあああああ!!!』

 

「おいおい!マリアの奴は何してんだ!!」

 

流石にあれを止めてないマリアに俺はキレる。そして今度は、マリアとすみれが大技を放ち橋の一部が崩壊する。

 

「…おっさん、どうすんだ修理費」

 

米田「……」

 

おれの問いかけにおっさんは何も言わなかった。

 

米田「あ~てんでダメじゃねぇか。バラバラに戦ってたんじゃ勝てる戦も負けちまうぜ。もっとこう陣形を大切にしてよ…あぁ違って!そうじゃねぇだろ!ったく」

 

もうかける言葉がねぇよ。

 

米田「はぁあ…やっぱりあやめくんの意見は正しかったかなぁ」

 

「おっさん」

 

俺はおっさんに話しかける。

 

「あやめが何言ったかは後回しだ。少し妙じゃねえか?」

 

米田「妙だと?」

 

「ああ。敵さんの攻撃、単調すぎないか?」

 

米田「言われてみれば…」

 

おっさんは双眼鏡をのぞき込む。

 

「百眼」

 

俺は百眼を使ってみる。すると奥の方に巨大な発射砲台を見つけた。

 

「まずいぞあれは!」

 

米田「ああ!」

 

おっさんは急いで通信機を手にする。

 

米田「さくら!一大事だ!」

 

さくら『えっ?』

 

米田「奴ら、橋諸共マリア達を葬る気だぜ!」

 

さくら『なんですって!?』

 

米田「魔操機兵で、光武を橋の上で足止めし、佃島口の蒸気砲台で一気に…」

 

くそっ!俺が出張るか!!

 

米田「行くんださくら!」

 

さくら『で、でも…また失敗したら』

 

米田「バカ野郎!いつまでウジウジしてやがる!芝居も任務も同じだ!しくじる事を恐れてたら何にも始まりはじねぇんだよ!!」

 

さくら『司令…』

 

米田「いいかさくらよ。帝都の平和も芝居の役も、自分の力で勝ち取るもんなんだ!」

 

「そうですよさくらさん」

 

さくら『森川さん』

 

「前へ進んでください。行って…自分自身で勝ち取ってください!」

 

さくら『…帝国華撃団・花組、真宮寺さくら。行きます!』

 

そしてさくらはマリア達の所に向かう。

 

さくら『ダメ!間に合わない!よし、こうなったら…』

 

するとさくらは刀を抜く。

 

さくら『北辰一刀流奥義!』

 

向こうの蒸気砲台も発射した。

 

さくら『破邪剣征…桜花放神!!』

 

さくらの必殺技と蒸気砲台の霊弾がぶつかり合う。そして佃島口にいた脇侍と蒸気砲台は、奇麗に消え去ったのだった。

 

さくら『や、やったやったああ!!

 

見事倒した事にさくらは喜んでいた。俺とおっさんも互いに笑う。だが…

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

 

突然地鳴りが響き渡る。そしてさくらの光武が動かなくなる。

 

さくら「え?えぇ…」

 

「ま、まさか…」

 

米田『総員、退避いいいいいいいい!!!!!!!』

 

おっさんの叫び声と同時に、相生橋は崩落していく。俺達は急いで後ろに下がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまぁ、こんなことがあったんですよ」

 

直仁「あ、相生橋が全崩壊…」

 

大神「さくらくんの桜花放神で…」

 

「それで、米田さんがあやめさんと伯爵と話し合い、新たな隊長…大神さんが呼ばれたんですよ」

 

大神「そうだったのか」

 

大神は初めて自分が呼ばれた事を知って納得する。だが、その当時を知るさくら達は俺に言い寄って来る。

 

さくら「酷いですよ森川さん!全部喋っちゃうなんて!!」

 

すみれ「そうですわ!わたくし達が橋から落ちた事まで話さなくても」

 

アイリス「酷いよ大輔お兄ちゃん!」

 

マリア「……」

 

さくらやすみれ、アイリスは文句を言ってきたが、マリアだけは顔を赤くしながら俺をにらんでいた。

 

「で、ですけど、あれがあったからこそ、今の皆さんがあるんじゃないでしょうか…」

 

さっきからさくらとアイリスにポカポカ叩かれながら俺はそう答える。

 

大神「そうだね。今では充分君達は素晴らしいチームワークがあるじゃないか」

 

直仁「そ、そうですよ皆さん」

 

大神や直仁も俺をフォローしてくれる。

 

さくら「でも…でもぉ!!」

 

未だに俺を叩くさくらとアイリス。そんな光景を見て、周りは笑うのだった。まぁ、平和が一番って事だな。

 

さくら「森川さん!聞いてるんですか!!」

 

すみれ「そうですわ!!」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん!!」

 

マリア「流石に…恥ずかしいですよ」



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第五十四話

直仁の奴が花組に体験入隊してから2週間が過ぎた。最初の頃と比べ、だいぶ逞しくなっているのが分かる。一応俺も何度か帝劇に行き、体を作る飯も出している。

 

「さて、今日も飯を作りに行くか」

 

俺は帝劇に向かう。中に入ると今日は全員が舞台に集まっていた。大神や直仁は客席で練習を見ている。

 

「こんにちは」

 

大神「森川さん」

 

直仁「こんにちは」

 

「今日は通し稽古ですか」

 

大神「ええ。三日後には次回公演が始まりますからね」

 

そんな話をしてると…

 

「痛っ!!」

 

舞台で稽古をしてたさくらが倒れる。

 

大神「さくらくん!?」

 

「「さくらさん!?」」

 

俺や大神達は急いで舞台に上がる。回りの奴らもさくらの所に集まる。

 

さくら「イタタタ…」

 

「大丈夫ですか?」

 

さくら「は、はい…痛ッ!」

 

立ち上がろうとするさくらだが、再び座り込む。

 

「失礼しますよ」

 

俺はさくらの足を触る。こりゃ捻挫してるな。

 

「これは少し酷いですね。大神さん、すみませんが氷を持ってきてもらってもいいですか?」

 

大神「分かりました」

 

「後、直仁君。君は医務室から包帯を持って来て下さい」

 

直仁「はい!」

 

2人はそれぞれ俺が頼んだ物を取りに行った。そして大神と直仁から氷と包帯を受け取り、さくらの足を治療した。

 

「暫く冷やしていて下さい」

 

さくら「はい。ありがとうございます」

 

カンナ「けど、この様子じゃさくら舞台に立てないだろ?」

 

マリア「そうね。今回は少しの役とはいえ、抜けるといたいわね」

 

すみれ「全く…本当にドジですわね」

 

紅蘭「けどどないする?全員が揃う個所もあるから、ウチらが二役すんのは無理やで」

 

アイリス「そうだよね」

 

マリア達はそう言う。

 

大神「代役か…」

 

すると、全員が直仁の方を見る。

 

直仁「えっと…」

 

マリア「直仁、貴方さくらの代わりに舞台に出てくれないかしら」

 

直仁「ぼ、僕ですか!?」

 

直仁は驚いている。そらそうだろ。いきなりさくらの代役で舞台に立ってくれなんて言われりゃな。

 

カンナ「そうだな。直仁なら顔も女っぽいしいけんだろ」

 

直仁「ちょ、ちょっと待って下さいよ!自分に芝居なんて無理ですよ!!それなら、今まで見ている大神さんとかが…」

 

紅蘭「そら無理やわ直仁はん」

 

直仁「な、何故です!?」

 

マリア「今回さくらの役は娘役なのよ。流石に隊長に女装はちょっと…」

 

大神「あはは…」

 

「ま、私も同じなんで何も言えませんけど」

 

俺や大神だとな。秘密道具使えばいけるが…面倒だ。

 

すみれ「という訳で」

 

するとすみれはパンパンと手を叩く。すると黒子が数人現れ直仁は何処かに連れていかれた。数分後、直仁は女装をして戻って来た。来たんだが…

 

『……』

 

直仁「い、いじめだ」

 

いや悪い直仁…お前の気持ちも分かるが…

 

大神「す、凄いね直仁君」

 

「ええ…ここまで化けるとは思っていませんでした」

 

マリア「これは驚いたわね」

 

すみれ「ええ。流石のわたくしも驚きましたわ」

 

さくら「直仁さん!とっても素敵ですよ!」

 

アイリス「ちい兄ちゃんとっても可愛い!」

 

直仁「うぅ…全然嬉しくないですよぉ」

 

ヤバい…女装してるから普通に女にしか見えん分、そんな涙目で言われると…

 

大神「ぽ~…」

 

あ、既に大神が逝ったわ。

 

「オホン!取り合えず、見た目はこれで大丈夫そうですね」

 

マリア「そ、そうですね。後は当日までに台詞を覚えてもらうだけですね」

 

すみれ「ですので、ビシビシいきますので覚悟なさい」

 

直仁「お、お手柔らかに…」

 

こうして、さくらの代役として直仁は次回公演に立つ事が決定したのであった。因みに、おっさんとあやめが女装した直仁を見た瞬間、やっぱり驚いていた。おっさんはその後盛大に笑ってたがな。そして舞台当日を迎えた。動き等は直仁お得意の見とりでほぼ同じ様に動けたが、流石に台詞は三日間で覚えるのは大変だったみたいだ。

 

「いよいよですね。七緒さん」

 

直仁「止めて下さいよ。女装中の為とはいえ、まさか名前がつくなんて…」

 

直仁が女装してる時に、流石に紹介する時に名前が必要とおっさんがいい

 

米田『女装の時のお前さんは前梨七緒と名乗れ』

 

と言われたのだ。当然パンフレットにも写真と名前が載っているのは言うまでもない。ま、頑張れや。結果は、すみれ達の指導のおかげもあり、無事に舞台を終える事が出来た。お客さんからの鳴りやまない拍手に、直仁の奴も感動していたがな。ま、おっさんが味を占めて直仁をこれからも使わないとは限らないけどな。因みに、直仁の人気はかなりのもので、『次回公演にも出てほしい』や『ブロマイドを作って欲しい』といった手紙が殺到しており、その人気にさくらは頬を膨らませて拗ねていたとかいないとか大神が言っていた。



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第五十五話

特別講演も終わり、今日も平和な日が続いている。直仁の奴は相変わらず花組連中に鍛えられている。

 

「へ~。直仁の奴に、さくらとカンナの技を見せたのか」

 

さくら「はい。私が渡したサボテンにお花を咲かせたのでお礼として」

 

俺はさくらから直仁について聞いていた。相変わらず見取りをしてメキメキ頭角を現してるみたいだ。

 

すると、突然警報が響き渡る。

 

「これは!?」

 

さくら「森川さん、あたし行ってきます!!」

 

そしてさくらは行ってしまう。さて、その間俺はどうするか…

 

「取り合えず、外で煙草吸うか」

 

俺は表に出て煙草を吸う。アイツらが出撃しても、ここら一帯は特に変わりない。となると、別の場所か。するとまた警報が鳴る。今度はどこだ?警報が鳴ってる間に周りの人は徐々にどこかに行く。

 

「おいおい…まさか…」

 

物凄く嫌な予感がするんだけど…

 

「ああ…やっぱり」

 

すると向こうから暴走してるであろう光武が、劇場目掛けてやって来た。

 

「ったく。大神達は何してんだよ」

 

俺は煙草の火を消して、こっちに来る光武の前に立つ。大神達が来るまで時間稼ぎするか。

 

 

 

 

 

 

 

ガシャン!ガシャン!!

 

 

 

 

 

 

すると後ろから別の光武がやって来る。見ると、さくらの機体に似ている。

 

「おいおい…もう一機かよ」

 

すると、劇場からあやめが出てくる。

 

あやめ「森川さん!その機体には直仁君が乗ってるわ!」

 

「なるほど。となると、相手をするのは向こうの奴だけか。直仁!聞こえてるな!二人で大神達が来るまで粘るぞ!!」

 

あやめ「これを受け取って耳に付けて!紅蘭が開発した通信機よ!これで直仁君だけだけど声が聞こえるはずよ!!」

 

(おいおい。紅蘭が開発したって大丈夫か?爆発しないよな?やだぞ、耳吹っ飛ぶの)

 

俺は恐る恐る耳に付ける。するとそこから直仁の声が聞こえた。

 

「聞こえるか直仁」

 

直仁『はい!ですが、森川さん…口調が』

 

「今はそんな事はどうでもいいんだよ!来るぞ!!」

 

直仁『はい!来るなら来い!!訓練の成果を見せてやる!』

 

そして俺と直仁との戦いが始まる。まずは直仁が光武に近づくが、向こうの光武は逃げる。

 

「逃げてんじゃねぇよ!!」

 

俺は背後に回り後ろから光武を蹴り飛ばす。

 

「直仁!」

 

直仁『はい!』

 

俺の合図に直仁が攻撃する。それからも俺と直仁が交互に攻撃し、光武も徐々に動きが鈍っていく。

 

「これで終わらす!」

 

直仁『はい!』

 

俺は息を整え、直仁は刀を居合いの構えをする。だが、普通の居合ではなく逆居合いだ。

 

(あの構えって…俺が前世で観た座頭市の構えじゃねぇか!?)

 

まさかこの世界でその構えを見るとは思わなかったな。

 

直仁『破邪…剣征…』

 

「スウウウウウウ……」

 

直仁『桜花…』

 

「ボイス…」

 

直仁『放神!!!!!!!』

 

「ミサイルぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

俺と直仁の必殺技が放たれ、互いの技が合わさり光武に命中した。そして無事に光武は破壊されことは収まった。そしてその2分後、ようやく大神達が到着した。

 

大神「2人とも、大丈夫か!!」

 

さくら「森川さん!直仁さん!!」

 

直仁「大神さん、さくらさん」

 

「ったく、遅いぞお前ら」

 

大神「森川さん!?」

 

大神は俺の口調に驚く。

 

「別にいいんだよ。ここには風組の連中はいないし、直仁の奴には、戦いの時にもうバレてるしな」

 

すみれ「森川さん、あまり隠す気ないのですか?」

 

「ほぼな。お前ら花組全員にもバレてるし、風組の連中にバレるのも時間の問題だろうよ。特に、由里の奴が探りそうだしな」

 

『あはは…』

 

俺の言葉に誰一人由里のフォローをする奴はいなかった。そしてそれからは平和な日々が過ぎて行き、直仁が花組にいる最終日になった。さくらから言われ、直仁のお別れパーティーをするからと言われ、早めに行き俺が全て料理を作る事にした。

 

「おし!完成!!」

 

マリア「相変わらずお見事な腕前ですね」

 

さくら「そうですね」

 

「ほら、さっさと楽屋に運ぶぞ」

 

俺達は作った料理を楽屋に運び、直仁の送別会が始まった。

 

大神「直仁君。1ヶ月よく頑張ったね。お疲れ様。君の頑張りには俺も見習うべきものがあったよ。直仁君」

 

米田「お前がこの後どういう身の振り方をするか知らねぇが、いつでも力になるぜ。何だったらこのまま帝劇で働くか?」

 

あやめ「貴方には貴方の進むべき道があるわ…ここで得たものは、きっとその道でも何かの力になるから頑張って」

 

さくら「これで、お別れなんですね…」

 

すみれ「あら、さくらさん。これで永遠の分かれという訳ではありませんわ」

 

マリア「帝都を守るという志の下にきっと、また会える日がくるはずよ」

 

カンナ「同じ空の下。会いたくなったらどっちからでも会いに行けばいいのさ」

 

紅蘭「そや。だから“さよなら”を言うのはやめや」

 

アイリス「うん。また会うんだもんね」

 

「ええ。皆さんの言う通りです」

 

さくら「そうですね。じゃあ“さよなら”は言いません…また会いましょう!」

 

さくらは明るく直仁にそう言うのだった。そして翌日、直仁は帝劇を去っていった。

 

「んで、お前らは朝っぱらから集まって何してんだよ」

 

米田「ああ。こいつさ」

 

おっさんは1枚の紙を俺に渡す。

 

「何々…狛江梨直仁を海軍に推薦する。帝国陸軍中将米田一基。そしてあやめと大神のサインか」

 

米田「ああ。あいつならこれくらいしても、向こうで充分やっていけるはずだ」

 

「たしかにな。まさか、大神を含めた全員の型や技を全て見取っていくとは思わなかったがな」

 

大神「ええ。自分の技も見事に見取られましたよ」

 

あやめ「フフッ」

 

米田「ま、これからのアイツに期待だな」

 

やれやれ。これからアイツがこれからどうなるか、行く末を見守らせてもらうぞ。狛江梨直仁…



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第五十六話

直仁が戻り1ヶ月。年も変わり世間は正月。俺も年末年始は店を閉め、花屋の仕事もなくのんびり過ごしている。年明けの今日は、帝劇に挨拶に行く。もちろん、お節やアイリスにやるお年玉を持って。

 

「さて、おせちもできたし行くか」

 

作ったおせちを持って出発する。

 

「ちょっと気合を入れ過ぎたか?」

 

おせちは5段重ねが2つ。張り切り過ぎた…

 

「ま、カンナの奴がいるし、余る事はないだろ」

 

外に出て戸締まりをして向かう。

 

「うぅっ!さっむ!」

 

今日はいつも以上に冷えるな。さっさと行かないと、せっかく作ったおせちが冷めちまう。そして劇場に到着するとさくらとアイリスが出迎えてくれた。

 

さくら「森川さん、新年明けましておめでとうございます」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん、明けましておめでとう!」

 

「ああ。さくらもアイリスも明けましておめでとう。アイリス、早いがお年玉だ」

 

俺はアイリスにお年玉を渡す。

 

アイリス「わ~い!ありがとう大輔お兄ちゃん!!」

 

「無駄遣いするなよ」

 

アイリス「うん!」

 

さくら「フフッ、アイリスったら」

 

「ま、年に1回の事だ。それに、あれは子供の特権だしな」

 

さくら「そうですね。皆さん楽屋で待ってますよ」

 

「ああ。一応俺からおせちの差し入れだ」

 

さくら「わぁ!ありがとうございます」

 

そして俺とさくら、アイリスは楽屋に向かった。中に入ると既におっさん達が揃っていた。

 

米田「よぅ森川」

 

「新年早々変わらねえなあんたは。明けましておめでとう」

 

米田「おう。おめでとさん。今年もよろしく頼むぜ。色々とな」

 

あやめ「明けましておめでとう」

 

「ああ。おめでとう。あやめは普段から着物だから変わらんな」

 

あやめ「フフフ」

 

さくら「皆さん、森川さんからおせちの差し入れですよ」

 

カンナ「おお!」

 

紅蘭「森川はんおおきに」

 

さくら「森川さん、昨年中は色々とお世話になりました。今年もよろしくお願いします!」

 

すみれ「あら…さくらさん、珍しく礼儀にかなったご挨拶ですこと」

 

さくら「ありがとうございます。今年こそ、すみれさんのようなレディになれるよう頑張ります」

 

今年もお前らは変わりなさそうだな。ってかすみれ、なんだお前のその頭…

 

すみれ「あ~ら、オホホホホ……あなた随分センスがおよろしくなったわ!ま、わたくしに見習って、社交界にデビューできるよう精進することね」

 

やれやれ…

 

すみれ「ところで森川さん。どうかしらこの服?やはりちょっと、地味かしら?」

 

地味って…普段以上に派手だろ。

 

「ああ…いいんじゃねぇか?すみれらしくて」

 

すみれ「うふ…本当でしたら、京都から特別に取り寄せた西陣織で仕立てた…超高級なお振り袖をご披露するはずでしたのに。残念ですわ…」

 

紅蘭「はいはい。相変わらずよう似合うてはるで。すみれはん」

 

すみれ「あら…随分トゲのある言い方ですこと」

 

ま、紅蘭の気持ちも分かるがな。というか分かりすぎる…

 

マリア「隊長、森川さん…今年もよろしくお願いします」

 

大神「やあマリア。今年もよろしく頼むよ」

 

「ああ。今年もよろしくな」

 

紅蘭「よろしゅう。中国の正月はまだ先やさかい、おめでとうは早いねんけどな」

 

「確かにな。中国の正月は1月25日からだったよな」

 

紅蘭「せや。流石森川はん。よう知ってるわ」

 

そこからは賑やかに話をしながら楽しんだ。

 

米田「一応言っとくが、三が日は出撃以外は休みだからな」

 

『は~い』

 

そして解散しそれぞれ部屋に帰っていく。

 

「しかし、平和に正月を過ごせるのはいいもんだな」

 

米田「だな。お前さんやあいつらが頑張ってくれたおかげだ」

 

「ほぼあいつらだろ」

 

俺とおっさんは、お屠蘇を飲みながらそんな話をする。すると、楽屋に大神とカンナを除いた全員がやって来た。

 

さくら「森川さん、よければ今から皆さんと一緒に初詣に行きませんか?」

 

「初詣か。いいな」

 

米田「おう、行ってこい行ってこい。相変わらずモテるなお前は」

 

「茶化すな」

 

こうして俺達は、神社に初詣をしに出発した。



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第五十七話

さくら達と初詣に来ている俺は、帝都で一番でかい神社に来ている。

 

さくら「うわぁ〜!凄い人ですね」

 

「だろうな。正月だし、この神社は帝都で1番デカイ場所だ。これくらいの参拝客はいるだろうよ」

 

すみれ「全く…相変わらず田舎臭いですわね」

 

さくら「ムッ…」

 

「正月で神社まで来て喧嘩するなよ」

 

マリア「そうよ二人とも」

 

やれやれ。さて、取り敢えずお参りだが、何を願うか…

 

(俺は既に1度神様に会ってるんだよな…)

 

アイツにお願いかよ。ま、店の繁盛と健康長寿に、さくら達帝国華撃団の安全を願っとくか。

 

紅蘭「ようやくウチらの番やな」

 

紅蘭に言われ、俺達はようやく賽銭前に到着する。

 

(金額か…全員分だし千円でいいだろ)

 

因みに金額はこの時代の千円ではなく、俺の時代の千円の価値だ。それでも奮発してると思うがな。

 

(店の繁盛に健康長寿。それと、さくら達全員が安全に生きられますように)

 

『その願い叶えたわよ!』

 

「!?」

 

俺は聞こえてきた声に、思わず辺りをキョロキョロする。

 

(あの声…あいつの声だよな?)

 

さくら「森川さん?」

 

するとさくらが俺に声をかけてきた。

 

さくら「何かあったんですか?」

 

「あ、いや…なんでもない」

 

あやめ「急に辺りをキョロキョロし始めたから驚いたわ」

 

紅蘭「知り合いでもおったんかいな?」

 

「ああ。それに近いな。ま、見付からなかったがな」

 

誰が神の声を聞いたって言って信じるんだよ。

 

マリア「さぁ、お参りも済ませたし、少し辺りを見回りましょう」

 

アイリス「わ〜い♪」

 

紅蘭「行く前におみくじ引かんとな」

 

さくら「そうですね」

 

俺達は出店に行く前におみくじを引く。

 

さくら「皆さん引きましたか?」

 

マリア「ええ」

 

それぞれ中身を確認する。しかし、おみくじには何も書いていない。

 

アイリス「何も書いてないよ?」

 

紅蘭「ホンマやな」

 

すみれ「不良品かしら?」

 

あやめ「フフッ、これはね、水につけると文字が浮き上がる仕組みよ」

 

そして全員のおみくじを水につけると、徐々に文字が浮かび上がる。

 

さくら「出ましたね。私は…末吉です…」

 

マリア「私は中吉ね」

 

すみれ「小吉…まぁまぁですわね」

 

アイリス「わ〜い!アイリス大吉〜!」

 

あやめ「私はマリアと一緒で中吉ね」

 

紅蘭「そらないわ〜。ウチ凶やわ」

 

それぞれがおみくじの運を言う。さて俺は…おい

 

さくら「森川さんのおみくじは…」

 

『……』

 

俺のおみくじを見た瞬間、全員が黙ってしまった。そりゃそうだろな…こんな文字を見たらよ。

 

「なんだよ…最凶って」

 

おみくじはそう書かれていた。いや、大凶とかは聞いた事あるが…最凶って。せめて最強の方がまだいいわ。

 

紅蘭「ま〜…ある意味森川はんには合ってる気が…」

 

すみれ「字は違いますけど…」

 

さくら「間違ってはいない気が…」

 

マリア「そうね」

 

あやめ「確かに森川さんは…」

 

アイリス「大輔お兄ちゃんは強いよ!」

 

(アイリス…お前だけだ。素直にそう言ってくれるのは…)

 

俺は嬉しくなり、アイリスを肩車してやるのだった。

 

アイリス「うわ〜!高い高〜い!」

 

うんうん!子供は笑顔が1番だ!

 

さくら「そ、それじゃあ縁日に行きましょうか」

 

すみれ「そ、そうですわね」

 

紅蘭「せやな!」

 

さくら達は、これ以上このおみくじに触れない様に、俺を連れて縁日に行くのだった。別にそこまで気を使わなくてもよ…

 

アイリス「うわ〜!お店がいっぱいだ!」

 

紅蘭「ホンマやな。ぎょ〜さんあるで」

 

「取り敢えずどこ行くか」

 

マリア「森川さん。射的はどうですか?」

 

「射的か。いいな」

 

マリア「フフッ。必要ないかも知れませんが、銃の扱いをお教えしますよ♪」

 

「よく言うよ」

 

俺達はまず射的をすることにした。

 

アイリス「あ〜ん当たらないよ〜」

 

さくら「これは難しいですね」

 

あやめ「そうね」

 

マリア「…上手くいきませんね。銃身が歪んでるのかしら?エンフィールドなら簡単なのに」

 

「射的と射撃は違うからな。そもそも銃の重さが違うだろ?景品の上の方を狙って、沢山玉を当てるのが倒すコツだ」

 

マリア「上の方ですか…」

 

俺のアドバイスに、マリアは景品の少し上を狙うが当たらない。

 

マリア「ふぅ…駄目でした。すみませんが森川さん、お手本をお願いします」

 

「手本かよ。上手く行くか分からないぞ」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん!アイリスあのパンダのヌイグルミが欲しい!」

 

あれか。なら、いっちょ狙ってみるか。まずは少し上を狙って…よし。このまま同じ箇所を狙えば…ゲットだ!

 

「やるねぇ兄ちゃん」

 

「ええ。ほらアイリス」

 

アイリス「うわ〜い!ありがとう大輔お兄ちゃん」

 

アイリスは嬉しそうにパンダのヌイグルミを抱きしめる。あんだけ喜ぶならあげたかいがあるな。

 

さくら「よかったわねアイリス」

 

一方マリアは、相変わらず景品に玉が当たっていない。

 

マリア「…どうして当たらないの?理論的には間違っていないはずなのに」

 

「ほら。もっと腕を伸ばして景品に近づけ。でないと当たらないぞ」

 

俺は後ろからマリアの腕を持つ。

 

マリア「は、はい…ですが…」

 

「普段通りにやればいいんだよ」

 

マリア「あ、あの…森川さんの息が…首筋に…それで…」

 

「あ、悪い」

 

仕方ない。マリアが撃つまで息止めるか。

 

マリア「……」

 

早くしてくれ…

 

マリア「風向…南南西…微風」

 

ま、まだか…

 

マリア「銃身のズレ…右に二度」

 

も…もう無理…

 

「ぶはぁっ!」

 

マリア「キャッ!」

 

俺が息を吐いた衝撃で、マリアは撃ってしまい外れた。

 

「わ、悪い…」

 

マリア「い、いえ…いいんです」

 

「けどマリア。真剣になるのはいいが長すぎだ」

 

マリア「す、すみません。けど、こうして森川さんと一緒に入れて楽しいです」

 

「そ、そうか…」

 

照れる事を言うなの。

 

さくら「え〜…ゴホン!」

 

「「!?」」

 

さくらの咳払いで、俺とマリアは離れる。

 

すみれ「随分楽しそうですわね…森川さん」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん」

 

紅蘭「なんや、ウチらの事忘れられてた気分やわ」

 

あやめ「本当にね」

 

マリア「な、何言ってるの」

 

「忘れる訳ねぇだろうが」

 

さくら「本当ですか?」

 

ジト目でさくら達が見てくる。いや…そんな顔すんなよ。

 

『!!』

 

その時、俺達は気配を感じる。こいつは…

 

「久しいな…帝国華撃団」



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番外編
2018年 クリスマス


クリスマスなので、急遽即興で書いた話です。

…私は寂しくチキンを食べてます(。´Д⊂)


世間は12月24日…俺がいた時代では、クリスマスがあったがどうやらこの時代にもあるみたいだ。流石に、俺がいた時みたいに、イルミネーションとかがある訳じゃないが、帝劇ではクリスマス公演が行われている。かという俺もそのクリスマス公演のチケットを貰っている。けど…

 

「何で手書きなんだ?」

 

俺が貰ったチケットは、アイリスとレニが手作りで作った物だ。気持ちは嬉しいが、これしか貰ってないから不安になっておっさんに電話したら、『心配すんな。当日はそのチケットで入れるよう手配してるからよ』との事だ。ま、それならいいんだが。で、俺は公演が始まる前にケーキを作っている。何で作ってるかって?世間ではクリスマスだが、実はレニの誕生日でもあるんだよ。だから、おっさんに言って、ケーキは俺が作る事にしたんだ。一応プレゼントも買ってるがな。

 

「おしっ!こんなもんかな」

 

俺は三段重ねのケーキを箱に慎重に入れる。

 

「カンナとかが結構食うだろうが、これだけデカきゃ足りるだろ」

 

そして俺はケーキを持って劇場に向かった。既に劇場には長蛇の列ができており、大神が必死に切符をモギっていた。俺は来賓用の玄関から入り、由里の案内で支配人室に向かった。

 

由里「支配人、森川さんがお越しです」

 

米田「開いてるからへぇんな」

 

そして俺はケーキを当てないように慎重に中に入る。

 

米田「おいおいおい…いくらなんでもデカ過ぎねぇか?コレ」

 

「カンナとかがいるし、足りなくなるよりデカイ方がいいだろ」

 

米田「そうだがよぉ」

 

「公演が終わったら、楽屋で打ち上げ&レニの誕生日会するんだろ?それまでここに置かせてくれ」

 

米田「仕方ねぇか」

 

俺はケーキをゆっくりと置く。

 

「さて、なら俺は貰ったチケットで入場させてもらうぞ」

 

俺は支配人室を出て、列に並んで帝劇に入場した。大神にチケットを見せると、話を聞いてたみたいで切らずにアイリスが作った判子を押された。そして俺はそのまま一番前の席に案内された。

 

(上からは見たことあったが、正面でしかも一番前からは見たことなかったな)

 

そう思いながら席につく。そして、クリスマス特別公演が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…流石だな」

 

公演が終わり、客も帰ったホールに俺はまだ座っている。簡単に言えば、さっきの劇の余韻に浸ってるんだよ。

 

「一番前で見ると、あそこまで迫力があったのか」

 

この席だと、さくら達の真剣な表情もはっきりと見える。舞台に出てる時のあいつら、あんな顔だったんだな。

 

米田「よぅ」

 

「おっす」

 

すると米田のおっさんがやって来て、俺の隣に座る。

 

米田「どうだった?あいつらの舞台を間近で見てよ」

 

「ああ。凄かったよ。今まで上の方からは見たことがあったが、こんな場所で見るとまた違った凄みがあるな」

 

米田「そうか…」

 

おっさんはそう言うと、椅子に背を預ける。

 

米田「そう言ってくれりゃ、あいつらも嬉しいだろうな。今回は、大神やかすみ達以外は、お前が来るのを知らなかったからな」

 

なるほど。だから舞台中さくらが俺を見た瞬間、一瞬だが驚いた顔になった訳か。

 

「ったく、相変わらず人が悪いなおっさん」

 

米田「まぁいいじゃねぇか。さて!そろそろあいつらも楽屋に集まってる頃だ。さっさ大神と一緒にあのデカイケーキを運んでくれ」

 

「分かったよ」

 

そして俺は、ケーキが置いてある支配人室に向かった。向かうと入り口前で大神が待機しており、一緒にケーキを楽屋まで運んだ。楽屋に入り、箱からケーキを出すと流石に皆驚いていた。そしてローソクをレニの年齢分立て、電気を消す。レニは火を全て消し拍手が起きる。

 

『お誕生日おめでとう!レニ!』

 

レニ「皆…ありがとう」

 

そして皆からレニにプレゼントを渡していく。俺も渡す。因みに中身は、かなり考えたが無難にブックカバーとしおりにした。ブックカバーは俺のお手製なのは言うまでもない。

 

レニ「森川さん、ありがとう。大切にするよ」

 

「いえ、気に入ってもらえて嬉しいですよ」

 

そして誕生日会&打ち上げが始まった。さくらやマリア達には、俺がいたことに驚いたと言われ、おっさんは大神を巻き込んで飲み比べを始め、カンナはケーキをバクバク食いそれをすみれ達に注意されていた。前世では独りの時が多かったが、今はこういった連中がいる。やはり、こういうイベントの時は、知り合いとワイワイする方が俺にはあってるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おし、全員寝たみたいだな」

 

一端店に戻った俺は、再び劇場に来ている。理由は勿論…

 

「フォフォフォ。メリークリスマス」

 

アイリスやマリア達にクリスマスプレゼントをあげるためだ。一応おっさんには、今日の夜中にあいつらにプレゼントを配るって説明はしてるからな。

 

「さて、大神の奴が見回り終わってればいいんだが」

 

今回プレゼントを届けるのは、さくら、すみれ、マリア、アイリス、紅蘭、カンナ、レニ、織姫、あやめ、大神の8人だ。あやめと大神は最後の方になるがな。

 

「さて、手始めに最初はさくらからだな」

 

俺は見つからないように、サンタの格好をしながらさくらの部屋を目指した。今回の為に、おっさんからマスターキーを借りている。そして、事前に上手い具合に何が欲しいかも調査済みだ。

 

「さくらの奴は、新しいリボンが欲しいって言ってたな」

 

そこで俺が用意したのは、ピンク色のリボンと白色のリボンの二種類。さくらはピンクが好きみたいだからな。白は、普通の服に合いそうだと思ったからだ。

 

「ここか」

 

部屋の前に到着した俺は、気づかれない用にソッと鍵を開け部屋に入る。

 

「お邪魔しま~す」

 

中に入ると、ベットでさくらは気持ち良さそうに寝ている。

 

さくら「ス~…ス~…」

 

「ヨシヨシ♪気持ち良さそうに寝てるな」

 

俺は部屋にある机の上にプレゼントを置く。そして寝ているさくらを見る。

 

「俺からのクリスマスプレゼントだ。メリークリスマス♪フォフォフォ」

 

そして俺は部屋を出て鍵をかけた。

 

「ウシッ!次はすみれだな」

 

続いてはすみれの部屋だ。先程と同じ様に鍵を開け中に入る。

 

「こんばんは~」

 

中に入ると、先程のさくらの部屋とは違い、絨毯が敷かれており、ベットには屋根がついていた。

 

「流石は神崎重工の娘だな。絨毯からベットまで他と違うな」

 

さて、すみれのプレゼントを同じ様に机に置く。中身はカチューシャと首飾りだ。これなら普段から身に付けれるしな。ま、すみれの趣味に合えばいいがな。

 

「さて、次はマリアの部屋か」

 

マリアが一番気を付けなきゃんねぇからな。

 

「……」

 

俺は出来るだけ気配を消し、マリアの部屋に入る。

 

マリア「スゥ…スゥ…」

 

マリアも寝てるな。なら、さっさとプレゼントを置いて出ていくか。因みにマリアのプレゼントはホルスターだ。

 

「さて、プレゼントも置いたしそろそろ「うぅん…」ん?……!!?」

 

声が聞こえたので、マリアの方を見ると…おいおいおいおい!お前服は!

 

(忘れてた!こいつは寝る時何も着ないんだった!!)

 

俺は以前の時の事を思い出した。【その事は第二十五話にて知り得ました】

 

(ってか、寒くねぇのか?…あ!マリアロシア出身だったな。なら慣れてんのか?)

 

取り合えず俺は、はだけた布団を直し部屋を出るのであった。

 

「なんか…どっと疲れた」

 

俺はドアにもたれ掛かり、座り込んだ。

 

「…さて、残りを行くか」

 

俺は立ち上がり、残りのプレゼントを配りに行った。アイリスは縫いぐるみ。紅蘭は工具セット。カンナは俺の店の料理割引券&5枚の無料券。レニは推理小説の本。織姫はピアス。あやめは簪、大神はネクタイピンだ。後序でに支配人室に俺の店で一番高くて旨い酒一升瓶で置いてった。翌日、プレゼントも貰った一同は、各々のプレゼントを身に付けていた。

 

(あの顔見たら、あげたかいあったな)

 

嬉しそうな顔を見て、俺は自分も嬉しく思うのである。因みに、3人娘の連中には先程渡してきた。かすみにはハンカチ、由里にはブローチ、椿には由里の雑誌で見てたワンピースをあげた。3人とも嬉しそうにしてくれたのでよかった。流石におっさんにもあげたのに、3人娘だけあげないって訳にはいかないからな。



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2019年 お正月

皆様、新年明けましておめでとうございます。昨年は、シャト6の小説を読んで頂きありがとうございます。
今年も一年、皆様に読んでいただけるような作品を確認したら投稿していきたいと思っておりますので、これからも宜しくお願いします。 

今年こそは、何れかの作品を完結させたいと思ってます。


新年明けましておめでとうございます。今年も一年宜しくお願いします。…と、読者及び自分への挨拶は終わったとして、俺は今、おっさんに呼ばれてさくら達と一緒に楽屋で新年の挨拶をしている。

 

さくら「森川さん、新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますね」

 

「明けましておめでとうございますさくらさん。此方こそ、今年も宜しくお願いします」

 

マリア「森川さん、明けましておめでとうございます。どうぞ」

 

するとマリアは、俺のお猪口に酒を注いでくれる。

 

「おめでとうございますマリアさん。すみません」

 

そして俺は酒を飲む。

 

あやめ「すみません。遅れました」

 

するとあやめが遅れてやって来る。後ろには、あやめそっくりな女性がいる。

 

米田「来たかあやめ君、かえで君」

 

かえで「明けましておめでとうございます米田支配人。お久し振りです」

 

あやめ「皆紹介するわね。私の妹でかえでよ」

 

かえで「藤枝かえでです。レニと織姫の元上官かしらね」

 

織姫「久し振りデスネ~かえでサ~ン」

 

レニ「久し振り、かえで」

 

どうやら、レニと織姫関係みたいだな。となると、元星組だったっけ?それの関係者か。

 

かえで「えっと…貴方が森川さんね」

 

するとかえでは、挨拶をそこそこに俺に話しかけてきた。

 

「初めまして。森川大輔といいます」

 

かえで「貴方の事は、姉さんから色々と聞いているわ。花組や風組に色々力を貸してくれているとか」

 

「いえ、そんなたいした事はしていませんよ」

 

かえで「そう…けど、これからもあの子達の事助けてあげてね」

 

「勿論です」

 

そう言うと、かえでは嬉しそうな顔をしてあやめの所に戻っていった。

 

かえで「なるほどね。あの人が姉さんが気になってる人か」

 

あやめ「かえで!余計な事を言わないの!!」

 

かえで「は~い♪」

 

いやね、いくら小さな声で話してても、俺の聴覚じゃ丸聞こえなんだよ。ってかあやめ、お前俺に気があったんだな…

 

米田「おうおめぇら、今日から三が日までは休みだから、初詣にでも行ってこいよ」

 

大神「いいんですか支配人?」

 

米田「ああ。行ってこい行ってこい」

 

こうして、俺達は初詣に行くこととなった。おっさんは軍の上層部との顔合わせがあるらしく来ていない。あやめとかえでも行くと思ったが、ただ新年の挨拶に行くだけらしいから、あやめ達も俺達と一緒に行くことになった。

 

「…分かってはいましたが、やはり物凄い人ですね」

 

あやめ「本当ね」

 

かえで「これだけ人が多いと、はぐれちゃいそうですね」

 

「と言っている間に、大神さん達とはぐれましたね」

 

神社にお詣りに行く人込みの流れで、大神、紅蘭、カンナ、アイリス、レニ、織姫、椿とはぐれた。俺の近くにいたのはさくら、すみれ、マリア、あやめ、かえで、かすみ、由里だ。

 

さくら「大神さん達、何処にいるんでしょう?」

 

マリア「そうね」

 

すみれ「流石にこれだけの人込みですと、デカイカンナさんも見つけられませんわね」

 

「それ以前に、皆さん晴れ着なんですから、動くのも難しいでしょうね」

 

そう。俺と大神以外は全員晴れ着を着て初詣に来ている。だから、普段着ならいいが、これ程人が多いと移動も大変になる。

 

「まぁ、万が一大神さんに『はぐれた場合は、近くにいる人と回ることにする』と話していますので。集合時間も決めてますし」

 

かすみ「でしたら安心ですね」

 

こうして、俺は俺の回りにいた連中とお詣りを済ませ、縁日を見て回る事にした。

 

さくら「ん~美味しいですね」

 

さくらはリンゴ飴を食べており、由里やかすみは輪投げをしている。

 

マリア「……」

 

マリアは射的をしてるが、中々景品に当たらないみたいだな。

 

「当たりませんか?」

 

マリア「はい。拳銃とかってが違うみたいで」

 

「少し失礼しますね」

 

俺はそう言うと、マリアの後ろに回りに腕を持って構えさせる。

 

「射的の銃は、少し上目に狙いをつけて撃つのがいいですよ」

 

マリア「は、はい///」

 

『ジー……』

 

えっと、なんで全員がジト目になるんですかね~。さくらやすみれは分かるぞ。後あやめも。けど、かすみに由里、そしてなんでかえでまで睨んでんだよ。その後、俺は全員それぞれ行きたい場所に付き合う事で機嫌を直す羽目になったのであった。



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2019年 節分

本日は二月三日、節分である。どうやらこの時代も俺がいた前世と節分は同じみたいだ。となれば、やることは決まっている。

 

「まずは豆を炒るか」

 

豆は今からしておかないと間に合わないからな。後は恵方巻か。

 

「けど確か、この時代では恵方巻は食ってなかった筈だよな」

 

恵方巻は、早くて関西方面で1970年代から食べ始められたらしい。んで、全国区になったのが1998年にとあるコンビニで巻き寿司を販売したのが起源だと言われてるらしい。つまり、今の時代(太正)にはまだ始まってすらいないというわけだ。

 

「まぁ別にいいか。ここ自体が俺の居た世界と異なってるわけだし」

 

そして俺は再び豆を炒り始めた。暫くしてようやく豆が終わり、次は恵方巻を作る。すると店の扉が開かれた。

 

「(おいおい、表に看板出してるんだぞ)すみません。今はまだ準備中でして」

 

「すみません」

 

するとやって来た客はさくらだった。さくらだけじゃない、劇場の全員がやって来ていた。

 

「さくらさんでしたか。それにしても皆さんお揃いで」

 

あやめ「ごめんなさい」

 

米田「実はな、今日ウチで厄落としも兼ねて豆まきすることになってな」

 

アイリス「それでね、大輔お兄ちゃんも誘おうと思ったんだ」

 

「そうでしたか。なら是非参加させて頂きますよ」

 

 

ま、一応・・節分で邪気を追い払うって意味もあるみたいだしな。

 

紅蘭「ところで森川はん、何してはるんですか?」

 

「ああ、今恵方巻を作ってるんですよ」

 

『恵方巻??』

 

やっぱり分からないか。

 

「恵方巻とは、こうやって海苔巻きを作って、その年の方角を向いて食べ終わるまで話してはダメなんですよ」

 

すみれ「なんで話してはダメなんですの?」

 

「恵方巻を食べる時、喋ってしまうと運が逃げると言われてるんです。更に、無言で恵方巻を食べている間に願い事を思い浮かべるといいとも言われています」

 

あやめ「そんな習わしがあるのね」

 

かすみ「初めて聞きました」

 

そらそうだろな。まず今の時代に恵方巻は存在していないはずだからな。

 

「そうですね。関東では珍しいかもしれませんね。恵方巻は関西でも一部の地域でしか食べられていないみたいですし」

 

米田「そうなのか?」

 

「はい。私も偶々知ったくらいですし」

 

米田「お前さんが知らないってんだ。余程珍しいんだろうな」

 

はい嘘です。本当は知ってます。けど、こんな感じで言っておけばいいだろ。

 

「宜しければ、皆さんもご自分の恵方巻を作ってみますか?」

 

さくら「うわぁ!いいんですか?」

 

「もちろんですよ。材料は沢山ありますから」

 

そして、俺達は恵方巻を作っていく。皆自分で食べるのは自分で作る事にした。俺は其々の場所を回りながら、手助けをしていく。

 

「これで完成ですね」

 

『うわぁ♪』

 

それぞれの恵方巻が完成する。皆個性的な恵方巻ができたな。

 

「さて、では豆まきをするなら劇場に戻りましょうか」

 

米田「そうだな」

 

そして皆で恵方巻と豆をもって劇場に向かった。

 

大神「それじゃあ豆まきを始めようか」

 

『おお~!!』

 

そして豆まきを始める。

 

さくら「鬼は~外!」

 

アイリス「福は~内!」

 

マリア「鬼は~外」

 

すみれ「福は~内ですわ」

 

大神「イテテテ!ア、アイリス…もう少し優しく…」

 

米田「おめぇもださくら!」

 

「難儀だな」

 

あやめ「フフッ、皆から貴方が鬼をやったら豆を投げれないって言われてるからね。あの二人にはその分頑張ってもらわないと」

 

やはり豆まきには鬼役がいないと始まらない。だから俺がお手製の鬼の面を作った。んで、最初は俺と大神、そしておっさんの3人で鬼をするつもりだったんだが、さくらやアイリス達が、俺には豆を投げたくないと言ったので、強制的におっさんと大神となったのだ。そして豆まきが終わる頃には、おっさんと大神はへばっていた。

 

「お2人ともお疲れ様です」

 

俺はおっさん達に温かいタオルを渡してやる。

 

大神「ありがとうございます」

 

米田「しっかしひでぇ目にあったぜ。お前はいいよな。女連中に止められてよ」

 

おっさんは、少しだけ俺に愚痴を言ってきた。

 

「本当にすみません」

 

大神「まぁまぁ支配人。仕方ないじゃないですか」

 

あやめ「そうですよ。あの子達の希望なんですから」

 

米田「わ~ってるよ」

 

おっさんは分かってはいるが、納得は出来ないみたいだ。ま、気持ちは分かるけどよ。

 

「さて、それでは恵方巻を食べましょうか」

 

『賛成~!』

 

自分で作った恵方巻は旨いぞ。今年の方角は確か東北東だったな。(方角は今年2019年のを参考にさせてもらってます)

 

「それでは、いただきます」

 

『いただきます!』

 

各自方角を向いて、無言で食べるのであった。ま、途中でカンナやアイリスが我慢できなかったけどな。



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2019年 クリスマス

今年も書きました番外編


※今回からアマゾンズさんとのコラボ、「サクラ大戦〜もう一つの視点」がちょくちょく入っていきます。

コラボは今後も続いていきますので、どうぞよろしくお願いします。


今年もクリスマスがやって来た。去年は帝劇のあいつ等と過ごしたな。ま、今年もなんだがな。しかし、今年は何時ものメンバーにもう1人追加されたらしい。ま、取り敢えず俺はいつもの様にレニの誕生日ケーキを作って持っていくとするか。

 

「さて、劇場に着いたが、今年も楽屋か?」

 

去年は楽屋でクリスマスパーティをしたが、多分今年も同じだろ。俺は来賓用も入り口から中に入り、そのままケーキを持って楽屋へ向かった。道中でさくらと会う。

 

さくら「森川さん!メリークリスマスです」

 

「さくらさん、メリークリスマス。ところで今年もパーティは楽屋でしょうか?」

 

さくら「はいそうです」

 

なぜ俺がさくらの前で敬語なのか。それはさくらの後ろにいる奴がいるからだ。男だが、随分と若いな。

 

「さくらさん、後ろにいる方は?」

 

さくら「いやですよ森川さん。森川さんも知ってる人ですよ」

 

すると後ろに隠れてた男の姿を見て驚いた。

 

「これは驚きました。まさか直仁君だったとは」

 

直仁「お久しぶりです森川さん」

 

これまた随分と久しい顔だな。あ?こいつが誰かって?面倒くさいが説明してやるよ。こいつの名前は【狛江梨(こまえなし) 直仁(なおと)】だ。以前花組の体験入隊をしていた奴で、俺も何度かここ(帝劇)で会っている。たった1ヶ月間だけだったけど、さくら達の評価も良く立派な花組の一員だ。

 

「お久しぶりです直仁君。直仁君もクリスマスパーティに呼ばれたんですか?」

 

直仁「はい。さくらさんから手紙を頂きまして。それで久々に来たんです」

 

「そうですか。私と同じですね」

 

俺は笑いながら直仁に言う。そして俺達は3人で楽屋へと向かった。

 

『メリークリスマ〜ス!!それとレニ、椿(ちゃん)!お誕生日おめでとう!』

 

そう叫びクラッカーを鳴らす。パーティの始まりだ。

 

米田「しっかし、相変わらずマメだなお前は」

 

「どうしてです?」

 

俺はおっさんと酒を飲みながら話している。

 

米田「どう考えても、あのケーキを1人で作るなんて普通は考えつかんもんだぞ」

 

「まぁ、確かに言われればそうですが、慣れてしまえば別に問題ないですよ?」

 

米田「慣れって問題じゃねぇだろうが」

 

「それに、今日は折角のレニさんと椿ちゃんの誕生日を兼ねてますし(レニの誕生日は12/24ですがあしからずm--m因みに高村椿は12/25です)、ケーキ位豪華にしたいじゃないですか」

 

誕生日はなるべく盛大に祝ってやりたいからな。

 

マリア「森川さん、いつもケーキをありがとうございます」

 

するとマリアがケーキのお礼を言いに来る。

 

「気にしないで下さい。皆さんから材料費は頂いていますし」

 

マリア「ですが、やはり森川さん1人に任せ過ぎだと思いまして」

 

まぁそう言いたくなるよな。ケーキはもちろん、パーティ並んでる料理は全部俺が作った物だ。別に面倒でもなかったけどな。下拵えは終わってたから、後はここで仕上げをするだけだったしな。

 

すみれ「もりかわさん〜、こっちに来て一緒に飲みましょ〜よ〜♪」

 

今度は既に酔っ払ってるすみれが俺の所に来て、背中から抱き着いてきた。

 

さくら「す、すみれさん!?何を羨ま…じゃなかった。何をしてるんですか!!」

 

マリア「すみれ、森川さんに迷惑でしょう」

 

さくらは驚きながらもすみれにそう言い、マリアは冷静に注意してるが物凄く俺を見ている。いや、俺悪くないだろ…んで、別こ方の視線に気づくと、アイリスと紅蘭、織姫に三人娘、あやめ、かえでがこっちを見ている。おっさんわは笑っており大神は苦笑い、カンナはそのまま料理を食っており、レニはこちらをチラッと見ただけだ。んで、何故か直仁から羨ましそうな視線を感じた。

 

(あ〜…やっぱり今年もこうなるのか。ま、その方がコイツ等らしいけどさ)

 

俺はさくら、すみれ、マリア、いつの間にか来たアイリスや紅蘭達に囲まれてそう思うのだった。そしてそのままパーティは盛り上がり、ほぼ全員が寝てしまいおっさんも戻るのが面倒といい、俺と直仁も泊まり全員で楽屋に雑魚寝したのだった。俺はさくら達に囲まれるように寝てたけど。そして翌日、酒を飲みすぎたすみれや大神、おっさんは二日酔いに悩まされていた。珍しくマリアの奴も二日酔いになっていた。俺は二日酔いに味噌汁を作り渡した。他の連中も昨日の料理が残っており、味噌汁だけ飲んでいた。唯一カンナだけは昨日の残り物を食いながら飲んでいた。其々部屋に戻っていく。因みに、今年は既に各部屋にクリスマスプレゼントを置いてあるので、昨日はゆっくりできた。

 

「ま、俺もさくら達から貰ったがな」

 

俺もクリスマスプレゼントを貰っている。さくらからは手ぬぐい。すみれは包丁、マリアはエプロン、紅蘭は自動食洗機、アイリスはうさぎのぬいぐるみ、カンナは下駄、織姫はワイシャツ、レニは算盤、おっさんは1年間の劇場入場券、あやめはハンカチ、かえでは万年筆、三人娘からはサングラスを貰った。結構いい値がするやつだ。

 

「ま、今年も色々あったけど、なんとか年を越せそうだな」

 

もう間もなく今年も終わる。そう思うと色々な事を思い出すな。

 

「さて、帰ったらおせち作ったり大掃除しなきゃな!」

 

俺はそう決め、自分の店兼家に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと忘れてた」

 

俺は真正面を見る。

 

「この作品を読んでくれた大勢の方達、今年も色々とありがとうございました。また来年も、俺を初めさくら達も頑張りますので、また読んでやって下さい。それでは皆様、よいお年を!

 

『よいお年を!!』

 

「って!?何でさくら達もいるんだよ!」

 

さくら「それは、もう今年も終わりますから、本編以外で挨拶できませんから」

 

「そうですよ」

 

「そうだよね〜」

 

「そう思います!」

 

「お前らは誰だよ!?」

 

俺はさくらの後ろにいた連中に話しかけた。

 

「酷いです〜!いずれ出てくる巴里華撃団のエリカ・フォンティーヌですよ森川さん!」

 

「更に後に出てくる、紐育華撃団のジェミニ・サンライズだよ!なんちってなんちって!」

 

「私は今年12/12に発売された、新サクラ大戦の天宮さくらです!!」

 

「今後出る連中が先に出てくるんじゃね〜よ!!

 

天宮「いいじゃないですか!」

 

ジェミニ「そ〜だよ!いつになるか分からないんだから、ここで出とかないと!」

 

エリカ「あぁ神よ、これが試練なのですね」

 

さくら「ま、まぁ色々とありましたけど、これからもサクラ大戦【太正?大正だろ?】をよろしくお願いします。それでは皆様、また来年!それと、本編の方はまだ書きますので」

 

「勝手に終わらすな〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bye…2019



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2020年 お正月

新年明けましておめでとうございます。
昨年は、たくさんの方にこの作品を読んでいただきます、とても嬉しく思います。

今年も頑張って投稿しますので、これからも【太正?大正だろ?】を宜しくお願い致します。

※他の作品も頑張って投稿していきます。

今年の豊富は、書いてる作品で他の方ともっとコラボしていきたいですね。


今年も無事に新年を迎えられたな。今年もいい年だといいけどな。

 

「さて、もうじきあいつらも来るし。おせちや料理もこれだけあれば足りるだろ」

 

そんな事を思ってると、店のドアが開く。振り返るとさくら達帝劇の連中が来た。

 

「いらっしゃいませ」

 

さくら「森川さん、新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますね」

 

すみれ「新年明けましておめでとうございますわ。今年も宜しくお願いしますこと」

 

マリア「森川さん、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますね」

 

紅蘭「森川はん、明けましておめでとさん。今年もよろしゅうな」

 

アイリス「大輔お兄ちゃん!明けましておめでとう!今年も宜しくね」

 

カンナ「おうマスター!明けましておめでとさん!今年も食いに来るから、宜しく頼むぜ♪」

 

織姫「森川さ〜ん!明けましておめでとうデ〜ス」

 

レニ「森川さん、明けましておめでとう。今年も色々宜しく」

 

大神「森川さん、明けましておめでとうございます。今年も1年間宜しくお願いします」

 

かすみ「明けましておめでとうございます」

 

由里「今年も私達や帝劇を」

 

椿「宜しくお願いしますね!」

 

あやめ「明けましておめでとう。今年も大変だと思うけど、宜しくお願いするわね」

 

かえで「森川さん、明けましておめでとうございます。姉さん共々宜しくお願いします」

 

米田「おう森川、明けましておめでとうさん。今年も花組連中を宜しく頼むぜ」

 

「皆さん、明けましておめでとうございます。今年もウチの店【オアシス】を宜しくお願いします」

 

俺達は新年の挨拶をすませると、それぞれが座敷に上がりコタツに入っていく。

 

アイリス「暖か〜い」

 

紅蘭「ホンマやわ〜」

 

「今日は珍しく雪が降ってますからね。皆さん寒かったでしょう」

 

俺はそう言いながら、温かいお茶とおしぼり、んでおっさんには熱燗を出す。

 

さくら「はい。お正月に雪が降るなんてビックリしました」

 

大神「本当はこの後皆で初詣に行こうと思ったんですが、この雪では流石に」

 

まぁそうだよな。調べたら今日は1日中降るみたいだしな。

 

「わざわざそのような中来ていただいてすみません。精一杯おもてなししますので」

 

そう言うと俺は、作ったおせちと料理、後雑煮を出す。

 

「それと、少し雰囲気を出しましょうか」

 

俺は秘密道具の1つ【立体映写機】を取り出してスイッチを入れた。すると店から和風な部屋に変わった。

 

アイリス「うわ〜!すごいすごい!!」

 

紅蘭「こら驚いたで!いったいどんな仕掛けなんや?」

 

「ただの写し絵ですよ」

 

大神「これが写し絵なんですか!?」

 

すみれ「どう見ても本物にしか見えませんわ」

 

確かに本物にしか見えない。だが、あくまで映像なので店の作りはそのままだ。だから…

 

カンナ「イッテ〜!何でここに段差があんだよ」

 

「すみませんカンナさん。これは写し絵なので、店の形はそのままなんです。ですので、移動は手探りになるんです」

 

あやめ「凄いけど、その分大変な部分もあるのね」

 

由里「けど、移動しなければ大丈夫そうですね」

 

コタツに座ってる由里達はそう言う。

 

「さぁ皆さん、雄雑煮をどうぞ。温まりますよ」

 

アイリス「うわ〜い!お雑煮だ〜」

 

俺が出した雑煮を甜そうに食べるアイリス。一応こっちは関東だから、関東風にしてある。味付けは醤油ベースのすまし汁。餅は焼いて角餅で、具材は鶏肉、かまぼこ、しいたけ、青葉(小松菜可)、人参、三つ葉、大根だ。各家庭で違うが、俺はレシピで見たこの作り方がメインだな。

 

さくら「美味しいです」

 

すみれ「素晴らしいですわ」

 

マリア「今まで食べたお雑煮で一番美味しいです」

 

大神「ああ。実家の雑煮もいいけど、森川さんの作る料理には、流石の姉さんも負けるな〜」

 

それぞれそんな事を言いながら食べている。おっと、忘れるとこだった。

 

「アイリス、レニ、此方においで」

 

アイリス「なに?」

 

レニ「何かな」

 

雑煮を食べ終わったのを見計らって、俺はアイリスとレニを呼ぶ。

 

「折角のお正月ですしね。はい、どうぞ」

 

俺は2人にお年玉をあげる。

 

アイリス「うわ〜!ありがとう大輔お兄ちゃん!」

 

レニ「ありがとう」

 

「いえいえ、気にしないで下さい」

 

アイリスは嬉しそうにはしゃぎ、レニもそこまで感情は出してないがどことなく嬉しそうだ。

 

米田「おっと忘れてた。ほらアイリス、レニ。俺からもお年玉だ」

 

アイリス「ありがとう米田のおじちゃん」

 

レニ「ありがとう支配人」

 

2人は俺とおっさんからのお年玉を開けた。

 

アイリス「米田のおじちゃんは〜…5円だ〜♪」

 

おっさんは5円か。確かここ時代の5円は、俺がいた時代(ネット調べですが、大正の1円は今の役1000倍の価値。つまり1000円ですね)

で言えば5000円か。

 

アイリス「大輔お兄ちゃんは〜…凄〜い!10円だ!」

 

レニ「ぼくも10円だ」

 

『!?』

 

二人の言葉に、周りは驚いていた。そりゃそうか。だって10円って今で言えば1万円だもんな。

 

さくら「え〜!10円!」

 

紅蘭「森川はん、えらい太っ腹やな〜」

 

米田「バカヤロー!俺よりデカイ金額入れる奴があるか!」

 

「あはは…すみません。二人とも、お金はあやめさんかかすみさんに預けておきなさい。二人ならきちんと貯金してくれますから」

 

アイリス「は〜い!」

 

レニ「分かった」

 

米田「何で俺やかえでくんには言わないんだ?」

 

「いや、お二人に預けたらいつの間にかお酒に変わっていそうで」

 

かえで「失礼ね!」

 

流石に怒ったのか、かえでは俺をポカポカ殴ってくる。が、意外に力が強くて痛い…この後、紅蘭達にお年玉をせびられたが、もう大人といって我慢してもらった。そしてその後は、俺が出したカラオケセット等で楽しい正月を過ごしたのだった。来年もこいつらと一緒に過ごしたいもんだ。



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2020年 バレンタイン

今日は久々に店も休みにし、花屋の仕事もない。そんな時さくら達が店にやって来た。

 

さくら「こんにちは森川さん」

 

「なんだなんだ大勢で。今日は休みだぞ」

 

マリア「実は、今日は森川さんにこれを渡そうと思いまして」

 

するとマリア達から箱を渡される。しかもハートの形をした。もしかしてこれって…

 

「これは?」

 

すみれ「チョコレートですわ」

 

やっぱりそうですか。

 

紅蘭「実はな、マリアはんに聞いたら海外では好きな相手に、チョコレートを送る習慣があるみたいなんや」

 

アイリス「えへへ。だから、アイリス達も作ったんだよ」

 

あやめ「チョコレートなんて、作った事なかったから不安だったけど」

 

さくら「マリアさんに色々聞いて作りました!」

 

なるほど。この時代日本ではまだメジャーじゃないからな。ま、やっぱ貰えると嬉しいもんだな。

 

「そうなのか。いや、ありがとな」

 

お礼を言うと、全員が少し顔を赤くする。

 

さくら「早速食べて下さい」

 

「ああ」

 

俺はまず、ピンク色の箱に入ったチョコを食う。うん、この時代にある定番の味だ。

 

さくら「それは私のです。少し形が悪いですけど…」

 

「いや、確かにそうかもしれないが、充分美味いぞ」

 

さくら「よかった〜」

 

すみれ「続いてはわたくしですわ」

 

今度はすみれのチョコを食う。……に、苦すぎる…

 

「……」

 

すみれ「どうですか?森川さんの為に、材料であるカカオを100%使った物ですわ」

 

カカオ100%って、そら甘さ一切ないわな。苦味しかないっての!

 

「すみれ…」

 

すみれ「はい?」

 

「カカオ100%は止めとけ。苦味しかないから」

 

すみれ「そんなはずは…」

 

すみれは俺に渡したチョコを一口食べると、顔がしかめっ面になる。

 

すみれ「…申し訳ありません」

 

「いや、次から気をつけろ」

 

すみれ「はい…」

 

次はマリアのか。…おぉ。ブランデーが入ってるな。

 

「ブランデー入りか」

 

マリア「はい。よく気付かれましたね」

 

「これでも料理人だ。ま、マリアらしいがな」

 

マリア「フフッ。大人の味ですよ」

 

アイリス「次はアイリスだよ!」

 

アイリスのチョコは、ジャンポールの顔をしている。

 

「似てるな」

 

アイリス「えへへ〜」

 

「よく作れたな」

 

アイリス「うん!アイリス頑張ったんだよ。ちょっとマリアやあやめお姉ちゃんに手伝ってもらったけど」

 

だろうな。けど、味も悪くない。これは今後にも期待かな?

 

紅蘭「次はウチや」

 

すると紅蘭は、ある機械を取り出す。

 

紅蘭「ウチが発明した【チョコ製造くん】や!これはな、贈りたい相手の事を考えると、自分そっくりにできるんや!今から作るで!」

 

すると紅蘭は、ヘルメットの部分を頭につける。そして機械が音を立てて動き出した。

 

紅蘭「森川はんの思いは、誰にも負けへんで!」

 

すると徐々に紅蘭の顔にチョコが作られていく。だが…

 

 

 

 

 

 

 

プシュー!プシュー!!

 

 

 

 

 

 

「おい…」

 

紅蘭「アハハ…こらあかんわ」

 

「ちぃ!音壁!!」

 

俺は急いで音壁を張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見事に機械は爆発し、チョコも粉々になったのはお約束である。

 

紅蘭「ケホッ…こらあかんわ」

 

『紅蘭…』

 

俺達はチョコレートまみれになったのだった。その後、全員で店の掃除をし帰っていった。因みにあやめのチョコは後日感想が欲しいそうだ。

 

「しかし、お返しが大変だなこりゃ」

 

さくら、すみれ、マリア、アイリス、紅蘭、あやめ。その後からかすみ、由里、椿からも渡された。だが椿よ、煎餅のチョコはちょっとキツイぞ…



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コラボ作品
IF編 次世代へ託す人間の魂


アマゾンズさんとのコラボ作品です。
向こうは筋書きを書いていたので、こちらは森川視点でなるべく深く話を書いていこうと思っています。


あくまで【もしも】ですので、そこはご理解下さい。
直仁や森川の恋人は変更の可能性有り


降魔の策略で幻都から復活した降魔皇。

 

降魔皇『我を封印した事を後悔するがいい!この世に生きる全ての人間に復讐する!!』

 

そう言い残した降魔皇は、以前出現した呪われた大地【大和】と共に大気圏外ギリギリに浮上させ停止している。

 

すみれ「どうですか大輔さん」

 

「ああ。降魔皇が言った通り敵さん大気圏外ギリギリで待機中だ。それに見てみろ」

 

俺は仕事場に来てるすみれにも映像を見せる。

 

すみれ「これは!?」

 

画面には降魔等は一体も映っていない。

 

「恐らくだが、向こうは俺達を舐めてる。出なければ、自分がいる場所を防衛するはずだ」

 

すみれ「……」

 

俺の言葉にすみれは何も言わない。

 

「まぁ、引き続き監視はしておく」

 

すみれ「お願いしますわ」

 

「んで、あっちの方はどうなんだ?」

 

俺がそう聞くと、すみれは首を左右に降る。

 

「はぁ…まだ歪み合ってんのか」

 

俺はため息を吐く。何故俺とすみれが呆れているかというと、それは数時間前まで遡る…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降魔皇の封印が解けたなら、当然旧華撃団…さくら達も戻ってきた。最初は俺やすみれとの再会に、現華撃団の連中は涙を流していたり歓迎ムードだった。

 

天宮「華撃団の皆さんがいれば百人力です!」

 

初穂「まぁ、今ならあたし達だけでもいけるけどな」

 

その言葉に、何人かは初穂を見る。

 

直仁「おい初穂。少し調子に乗り過ぎだぞ」

 

初穂「ははは…わりぃ」

 

直仁の言葉で、旧華撃団は持ち直すが、上海華撃団や伯林、倫敦の連中もいらんことを言う。

 

シャオロン「そうでもないだろ?現に今まで帝都を護ってきたのは、俺達上海華撃団なんだしよ」

 

ユイ「うんうん」

 

こいつら…余計な事を…

 

ランスロット「それにさ、今はマシになったけど帝国華撃団はお荷物だしね」

 

『……』

 

まずい…エリカやジェミニはそんなの気にしないが、マリアやグリシーヌとかはヤバい。

 

誠十郎「まぁ、前まではそうだけど、今ではしっかりとやっているし。それに、軍人ならやはり犠牲は少ない方がいい事だし」

 

その言葉に、今度は大神と大河が反応する。

 

「…これが今の華撃団なのね」

 

すると、誰かがそんな言葉を言う。見るとマリアだった。

 

マリア「確かに、私達が封印されている間に帝劇が落ちたのは分かるわ」

 

グリシーヌ「だが、それを自慢げに話すなど器の小ささが伺える」

 

シャオロン「なんだと!?」

 

ロベリア「あたしはグリシーヌの意見に賛成だ」

 

サジータ「あたしも同意見だね。聞いた感じ、今は認めてるって言い方にしか聞こえないんだが?」

 

昴「昴も同意見だ」

 

ユイ「だって、実際本当だったし…」

 

シャオロン「今はすげ〜けど、神山が入った時点では夢を語るだけの存在だったしな。こっちが潰そうと思ったくらいだ」

 

その言葉に、旧華撃団全員の雰囲気が悪くなる。

 

クラリス「で、ですけど、なんとか皆で上手くやって行けていますし」

 

アナスタシア「そうね」

 

あざみ「あざみ達…負けない」

 

ロベリア「上手くやってるねぇ…たかが降魔皇の手下の戦いでへばってた奴等が何言ってんだか」

 

『!?』

 

ロベリアの言葉に、今度は現華撃団の連中が反応する。

 

マルガレーテ「どういう意味?まるで私達の実力が足りないって聞こえるけど」

 

マリア「その通りね」

 

『!?』

 

大神「少しいいかな?」

 

すると大神が会話に割って入る。

 

大神「少し聞きたいんだけど、各華撃団の隊長に聞くけど、華撃団の隊長の条件は知ってるかい?」

 

「「!?」」

 

その言葉に反応したのは、帝国華撃団隊長の神山と、伯林華撃団隊長のエリスだ。この二人には以前直仁から華撃団の隊長になる条件について話していたからな。

 

シャオロン「隊長は、華撃団の部下を指揮して、多少の犠牲があっても帝都の平和を護るもんだろ?」

 

アーサー「勿論、なるべく犠牲は出さないようにするつもりです」

 

「「……」」

 

上海、倫敦の隊長の二人はそう答える。その答えに大神と大河は黙る。

 

大神「そうか。軍人としては素晴らしい回答だよ」

 

大河「そうですね。ですけど、華撃団の隊長としては失格ですね」

 

「「!?」」

 

大神と大河の答えを聞いて、シャオロンとアーサーは驚く。

 

シャオロン「何が違うんだ!」

 

大神「華撃団の隊長は、歌劇団での生活を愛し、同時に住んでいる街を愛し、命を軽んじない人間こそが華撃団の隊長に相応しいんだよ」

 

アーサー「命を…」

 

シャオロン「軽んじない…」

 

その言葉に二人は黙る。

 

大神「はっきり言えば、君達は華撃団の隊長に相応しくない」

 

アーサー「……」

 

シャオロン「言わせておけば…たかが旧華撃団の隊長の癖に…」

 

「「いい加減にしろ!」」

 

流石にまずいと思い、俺と直仁は同じタイミングで怒鳴る。

 

直仁「お前らいい加減にしろ!確かに大神さんに言われた言葉が気に触るのは分かるが、実際にお前らより実力も実績も上なんだよ!」

 

怒鳴る直仁の背後に龍の残像が見える。それを見た現華撃団は黙ってしまう。

 

「大神、お前もだ。確かにこいつらはお前らより実績はないが、流石に言いすぎだ。期待してるのも分かるが、俺達が華撃団をしてた時と違う。マリアやグリシーヌ、ロベリア、サジータ。お前らもプライドとかに触ったのも分かるが、もう少し後輩に対して言い方はあるだろが!」

 

森川も森川で、怒りのオーラが出ており、背後に観音が浮かび上がる。

 

『……』

 

俺と直仁の説教に両華撃団は黙る。

 

「直仁。少し間を空けさせる」

 

直仁「そうですね。人数がそちらが多いので食堂を使って下さい。こちらは地下の作戦室に行きますんで」

 

「ああ。そっちは頼んだぞ」

 

そして直仁は現華撃団と一緒に地下室に向かい、俺は旧華撃団…ほぼ俺の嫁と話をする。

 

「さて、もう少し言い方があっただろう…マリア、グリシーヌ、ロベリア、サジータ、昴」

 

マリア「ごめんなさい」

 

グリシーヌ「すまぬ」

 

ロベリア「ふん」

 

サジータ「確かに、少し言い過ぎたかな」

 

昴「昴は言った。少し大人気なかったと」

 

「ったく。俺はお前達に前に会えて嬉しいのに、いきなり他の連中と歪み合うなよ…」

 

ホント、いきなりこんな展開は勘弁してくれよ。

 

「大神、大河。自分らの嫁さんは任せたぞ」

 

大神「え、ええ」

 

大河「森川さんも頑張って下さい」

 

大神達は、それぞれ自分の嫁を連れて食堂から出ていく。

 

さくら「ところで森川さん」

 

それを見送ると、さくらが話しかけてきた。

 

「なんだよ」

 

さくら「すみれさんから聞きましたけど、現華撃団の何人かに好意を抱かれてるとか…」

 

「……」

 

すみれの奴!よりによってそれを言うか!!

 

さくら「そこのところを詳しく聞きたいなと」

 

すみれ「私は、既に言っていますので別に構いませんわ」

 

マリア「なら、私は聞かせてもらおうかしら?」

 

アイリス「そうだね〜」

 

紅蘭「しっかりと聞かんとな」

 

織姫「そうデスね〜」

 

レニ「しっかりときかせてもらう」

 

エリカ「森川さん、エリカも聞きたいです!」

 

グリシーヌ「そうだな。じっくりと聞かせてもらおう!」

 

ロベリア「逃しはしないよ」

 

ジェミニ「ぼくも聞きたいな〜」

 

ダイアナ「わ、私も聞きたいです」

 

あやめ「そうね」

 

かえで「気になるわ」

 

ラチェット「やっぱり、私達のダーリンには色々と聞かないとね」

 

「…剃!」

 

俺は六式の剃を使ってその場から逃げた。しかし、俺は久々過ぎて忘れていた。俺の嫁全員が六式を取得していた事を…

 

さくら「逃しません!」

 

すみれ「待ちなさい!」

 

マリア「追うわよ皆!」

 

「戻ってきてこれはないだろ〜が〜!!」



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IF編 次世代へ託す人間の魂2

結局剃で逃げたが、あいつら向こうに行ってる間に俺より剃の使い方をマスターしていた為逃げられず、説教をくらうことになった。その説教もようやく終わり、改めて俺はさくら達に今の華撃団の事を聞く。因みに、天宮達の事は後日本人も交えて話をする事で落ち着いた。

 

「さて、改めて聞くがお前らは今の連中をどう思ってる?」

 

マリア「そうね…」

 

俺の質問にすみれを除いた連中は考える。当然すみれは、間近でその成長を見ている分特に言うことはない。

 

マリア「確かに、今の華撃団が協力してプレジデントG…幻庵葬徹を倒した事は凄いと素直に思うわ」

 

グリシーヌ「うむ。それに関しては私も同意見だ」

 

ロベリア「しかしよ。逆に言い換えればその程度の敵しか戦っていないって事だろ?」

 

まぁ、ロベリア達の言い分は最もだ。朧に関しては、俺が過去に見てきたのと比べても雑魚に等しい。さくら達帝都は天海や悪魔王サタン、黒鬼会、黄金蒸気。巴里はサリュやパリシィの怪人。紐育は織田信長といった感じだしな。んで降魔皇ときたもんだ。

 

「確かに、お前達が今まで戦った連中と比べるとそう思うのも無理もない」

 

さくら「確かにそうかも知れません。ですが、私達も最初はそうだったじゃないですか」

 

さくらは天宮達のフォローをする。

 

サジータ「確かにそこは考慮するよ?けど、あの子らは実戦と考えが伴っていないよ」

 

ロベリア「ああ。その分言うことだけは1人前だがな」

 

はぁ…こりゃ少し時間を空けるしかないか?確かにアイツ等は幻庵しか戦ってないからそう言いたくもなる。まぁ、今までが常識外れすぎなのもあるけどよ。

 

「取り敢えず、俺は今から向こうの様子を見てくる」

 

俺はそう言い残し、地下の作戦司令室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は現在、作戦司令室にて誠十郎達と話をしている。

 

シャオロン「何なんだよあいつら!英雄だか伝説だか知らないが!」

 

ユイ「そうだよ!別にあんな言い方しなくてもいいじゃんか!」

 

上海の連中が言う事も理解はできる。だが、甘い考えなのも事実だ。

 

神山「シャオロンもユイさんも落ち着いて下さい」

 

直仁「いや、悪いが俺もマリアさん達の意見に同意する」

 

その言葉に全員が俺を見る。

 

アナスタシア「どういう意味かしら支配人」

 

クラリス「やっぱり、直仁さんも私達が劣っているって思うんですか?」

 

直仁「はっきり言えばそうだな」

 

神山「直仁さん!」

 

神山はテーブルを叩き立ち上がる。

 

直仁「誠十郎、お前もだ。幻庵に勝ったからって少し浮かれてるんじゃねぇか?」

 

神山「!?そんな事は…」

 

直仁「言っちゃ悪いが、お前ら現華撃団と旧華撃団とは大きな差がある。知ってると思うが、帝都は悪魔王サタンや黄金蒸気の事件。巴里はサリュや巨大樹。紐育は織田信長といった、はっきり言って幻庵以上の敵と戦ってきている」

 

アーサー「まるで、幻庵はそれ等の敵より下みたいな言い方ですが?」

 

直仁「はっきり言えばその通りだ。それに、各華撃団との実力差も歴然だ」

 

ランスロット「そんな事無い!!」

 

今度はランスロットが立ち上がる。

 

直仁「そんな事あるんだよランスロット。お前俺に勝てない時点で、旧華撃団の人達には勝てないんだよ。なんせ、あの人達は俺より強いんだからな」

 

ランスロット「!?」

 

ランスロットは驚きを隠せない。確かに俺はここにいる連中より強い。だが、俺はあの人達に鍛えられたんだ。

 

直仁「上でお前がさくらさんに殺気を向けてたのは知ってる。当然さくらや他の人達もな」

 

ランスロット「なら、あたしの殺気を受けても無視したって訳?」

 

直仁「当然だ。あの人達からしたら、お前の殺気等おこちゃまなんだよ」

 

ランスロット「!!」

 

直仁「まぁ、森川さんはお前を睨んでたけどな」

 

俺はランスロットを睨んでた森川さんを思い出す。

 

ランスロット「な、なんでよ!」

 

直仁「そりゃそうだろ。自分の嫁さん達が睨まれれば、誰だって気分が悪いだろ。あぁ、因みに言っておくが森川さんに喧嘩売るなよ。マジギレしたあの人が戦えば、ここら一帯が更地になるからな」

 

『!?』

 

その事実を聞いた華撃団は、今まで以上に驚く。帝都と伯林の連中は築地倉庫の事件の話はしたが、まさかそれ以上に酷いことになるとは思ってなかったみたいだしな。

 

神山「そ、それは流石に大袈裟なんじゃ…」

 

直仁「いや、それがマジでそうでもないんだよ。けど、その森川さんでも勝てない相手がこの世にはいるんだよ」

 

神山「そ、そんな人が!!」

 

直仁「まぁ、にわかに信じられねぇよな。けど事実なんだよ。森川さん本人やすみれさんから聞いた話だしな」

 

初穂「あの人が勝てないって、どんな奴なんだよ」

 

クラリス「まさか降魔皇なんじゃ…」

 

直仁「いや、降魔皇じゃない。寧ろ、降魔皇の封印ができたのは、あの人がいたからだ。華撃団は封印する為に、なるべく霊力を温存させる必要があった。その分頑張ったのが俺や森川さんなんだよ。まぁ、8割はあの人のおかげだがな」

 

ほとんどあの人が降魔皇にダメージを与えてたし。

 

神山「一体…どんな人なんですか?」

 

直仁「あの人は…俺も1度世話になった人物だ。その人の名は…せがた三四郎」

 

『せがた…三四郎』

 

懐かしい。俺が落ちぶれた時にふらっと来て、俺に稽古をつけてくれたっけ。随分強引だったけどな。けど、そのおかげで今の俺があるんだしな。

 

直仁「そうだ。せがた三四郎。森川さんが本氣で戦って、唯一勝てなかった人だ。話を聞いた感じ、ホントに人かと疑った事もあるけどな…」

 

ホント、聞いた限りじゃほとんど人じゃねぇだろ。

 

神山「それ程までの人がいるなんて」

 

天宮「だったら、その人にも協力を頼みましょうよ!」

 

直仁「それができれば苦労はしねぇよ。あの人は神出鬼没でな。いきなりふらっと現れるからな」

 

エリス「どうにかならないのか?」

 

無理だろな。帝都1の情報屋である森川さんですら、せがたさんの居場所は見つけられないみたいだし。

 

直仁「難しいな」

 

「だろうな」

 

すると森川さんがやって来た。

 

「ホント、何故かあの人の情報だけは一切手に入らねぇんだよな」

 

直仁「でしょうね」

 

「っとそんな話をしに来たんじゃねぇ。直仁、提案なんだがこの際こいつ等とあいつ等を競わせたらいいんじゃねぇか?」

 

直仁「戦わせるって事ですか?」

 

「そうだ。勿論お互い生身で得意分野でな」

 

その提案に、現華撃団は乗り気である。

 

初穂「いいじゃねぇか」

 

シャオロン「この際それでどっちが上から分からせてやる!」

 

ユイ「うんうん」

 

ランスロット「これを気にあの人達と戦える!」

 

直仁「やれやれ」

 

こうして、旧華撃団と現華撃団との戦いが幕を上げるのだった。



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