ONE PIECE~海賊王への導き手~ 【にじファンから移動】 (グリム★)
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~プロローグ~

書きたいことを書く。

それが俺のやり方です……ということで

この小説では麦わらの一味に仲間を増やしました。

彼がこの物語の主人公です。

※オリジナル組織が出てきます。

原作介入しています。ご注意ください。

新世界編も書く予定です。

原作とのちょっとした違いをわかっていただければと思います。


 いきなりだが俺には、夢がある。

 自分が認めた男とともに世界一の海賊、海賊王になる。

 正確には海賊王の船員になりたい……そしていずれは奴らに……。

 

 夢の実現の為いくつもの海賊船に乗り色々な船長と出会ったがどいつもパッとしないというよりも、俺が好きになれないというのが一番かもしれない……

 

「運命って奴を信じてたんだけど……」

 

 強い人間を見つけるだけならばイーストブルーなどには来る必要はないだろう。

 だけどたぶん俺は人間としての温かみを求めているのかもしれない。

 いくら強くても狂気と権力で支配する海賊じゃダメだ。

 

 視界が歪む……小船でもう3日も海を彷徨っている……。

 3日間水ばかりでさすがに気が狂ってしまいそうだ。

 このままじゃ……餓死……

 

「ハハ……それはダサすぎ……どっかに食いもの乗せた船はないか……。あれは?」

 

 船だ……しかも海賊船!

 海賊船なら襲ったって別にいい、どうせ商船でも襲って回ってるような奴らだ。

 あの海賊旗は……確か……

 

 手配書の束を確認する。

 金棒のアルビダ……500万ベリー……。

 

「……500万か。小物だな」

 

 飯だけ頂いて、とっととサヨナラするか。

 アルビダの船に忍び込むことにした。




にじファンから移ってきました。

向こうで書いていたものをこちらに移していきたいと思います。


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第一話 出会い ※8月9日修正

アルビダの船に乗りこんだ男は甲板を覗き込む。

食料目当てで忍び込んだのはいいが見張りが多い。

彼は……どんな手段を使って食料を頂くのか……

※8月9日修正


 船の物陰に隠れ、船を見回す。

 なにやらどの船員もこき使われているようだ。

 

 船員達に命令している大柄の女性がいる。

 

 あの女性がアルビダか。

 金額は、小物なのに。体は、大物だな……あいさつでもしておくか。

 

「レディ・アルビダ。ご機嫌いかがですか?」

「誰だい!勝手に人の船に忍び込んで!」

 

 こういう奴は大抵褒めとけば問題はない。

 色々な海賊団を転々としてるのだ……なれたものさ。

 

「申し訳ありません。いい船だったもので……つい。お詫びと言ってはなんですが……」

 

 背中のギターを取り、足を組み樽の上に座る。

 軽くギターの線を弾き帽子の隙間から笑顔を向けた。

 

「一曲いかがでしょう?」

「そんなことより勝手に人様の船に……!」

 

 無視をして歌を音楽を奏でる。

 ギターから発っせられる旋律は船にいる全ての船員の心を引きつけ、夢中にさせてしまう……

 

 船員達からもと感嘆の声が漏れる……

 

 瞑っていた目を開きアルビダを見るとどうやら聞き入っているようだ。

 

《掴みは完璧……あとは食料交渉のタイミングだけ……》

 

 などと考えていると……

 

『よく寝たーーーーー!!!!』

 

 どこからか大声が聞こえた。

 

 アルビダが声のした方角へ持っていた金棒を投げる。

 なんという腕力……

 

「なんでしょうね……今の……」

 

 アルビダは何も言わず声のした方角へ歩いていってしまった。

 

「あ、あのアルビダさ~ん……」

 

 何も反応がない……完全に食料交渉のタイミングを見失った……

 ついてなかったな……だが空腹はごまかせん……

 

 勝手に船内へと入り込み物色を始める……食料庫に潜り込みリンゴを一齧りする。

 リンゴの酸味と甘味が口いっぱいに広がる。

 3日ぶりの食事……もう少しちゃんとしたものが食べたいが……文句は言うまい……

 

「おいてめぇ!何してやがる!」

 

 船員が残ってたのか。とっとと行けよな……

 

「てめぇ、とっとと食料から離れろ!」

 

 腰からサーベルを抜き、汚い笑顔を向ける。

 

「死にたいのか?カワイコちゃん?」

「あのなぁ……こう見えても……」

 

 こちらの言葉を無視し勢い良く切りかかって来る。

 ギリギリの所で刃をかわす……

 いくらか髪が切れたかもしれない……

 

「散髪しないとな……なんてね」

 

 2撃目をギターで受け止めサーベルを弾き飛ばす……。

 地面にサーベルが突き刺さる……

 

「どうする?まだやるかい?」

「調子にのってんじゃねぇ!」

 

 向かってきた船員の脇をすり抜け背後に回りこみ首の骨をへし折る。

 

 ゴキッと鈍い音が響き渡ると力なく船員は崩れた……

 

「向かってくる君が悪い……ん?」

 

 なにやら外が騒がしい。

 外に出てみるとアルビダが大の字で倒れこんでいた。

 500万を倒したか……一体……

 

「誰が?」

「俺」

 

 声のする方に目をやると麦わら帽子を被った男が立っていた。

 見たことない奴……手配書にもなかったな……

 

「へぇ……君がねぇ……」

 

 あの麦わら帽子……どこかで……まぁ、いいか……。

 自分には関係のないことだ。

 

 踵を返し食料庫に戻ろうとすると……

 

「なぁ、お前もこいつらの仲間か?」

 

 麦わらの少年が尋ねてくる……首を横に振り船内への扉に手を掛ける。

 

「なぁ、仲間になんねぇか?俺はモンキー・D・ルフィだ」

 

 モンキー・D……海軍の英雄の孫か?

 素材的には面白いな……どうするか……

 

「なぁ、いいだろ?仲間になってくれよ~」

「それはかまわないが……何故?」

 

 この発言にルフィは笑顔を見せ

 

「楽器弾けるんだろ?俺音楽家の仲間が欲しかったんだ!」

「それだけ……?」

 

 あきれ返る俺の後ろで叫び声が聞こえた。

 

「ル、ルフィさん!いいんですか!」

 

 眼鏡の少年が喚いている。

 彼もルフィの仲間だろうか……頼りない……

 

「音楽家の仲間が欲しかったんだ、別にいいじゃねぇか」

「どこの誰かもわからないんですよ!?」

「ふふ……よろしくな少年、仲良くやろう」

 

 ルフィたちは、アルビダの船に積んでいた小船を拝借し次の目的地へ向かう。船上で少年に声を掛ける。

 

「君。名前は?」

「コ、コビーです」

 

 コビーと言う少年は背丈が小さくちょっとぽっちゃりしている。

 特徴といえば……大きな眼鏡を掛けている。

 とても海賊には見えない……

 

「よろしくコビー。俺は、キラだ。よろしく」

「キラさんですか……よ、よろしくおねがいします……」

 

 警戒してる……無理はないか……

 

 この船は海軍基地に向かっているらしい……。

 街の名前はシェルズタウン。

 一度行った事があるが……?

 

「ルフィ……海軍にいってどうする?」

「ゾロを仲間にする」

 

 ゾロ?

 手配書の束をバラバラとめくる……

 

【海賊狩りのロロノア・ゾロ】

 

「へぇ……いい人選かもしれないな」

 

 ルフィはキラの背中のギターを指差し目をキラキラと光らせる。

 

「なぁ、キラ。弾いてくれよ~」

「ん?ギターか?いいよ」

 

 ギターを弾く。

 次の目的地が見えてくるまでの間、ギターの音がやむことはなかった。

 

 新たな出会い・仲間に感謝……



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第二話 新たな仲間と友との別れ ※8月9日修正

ルフィと行動を共にすることにしたキラ。

船の針路はシェルズタウン。

海賊狩りのロロノア・ゾロとはどんな男なのか?

※8月9日修正


~シェルズタウン~

 

 街の中央に聳え立つ海軍基地……下手な海賊じゃまず来ないだろうな……

 ロロノアはあそこにいるのか…… 

 

 コビーが基地を指差し口を開く

 

「あそこにロロノア・ゾロがいるはずです」

 

 キラはルフィの方を見る。

 

「どうする?さっそく……」

「……腹減ったしまずは、飯にしよう!」

 

 金はあるのだろうか……ルフィの前に次々に皿が積み上げられていく……。あきれながらその光景を見ているとルフィがキラに質問をする。

 

「なぁ。モゴモゴ……キラは、どこで楽器覚えたんだ?」

「確かに、すごく上手でしたね」

「とりあえず食べ終わってからにしろ」

 

 食事が終わった後……キラは口を開く。

 

「……親父に教えてもらった」

「そっか。キラの親父は、すげぇんだな!」

 

 ルフィから視線を逸らし深く溜息を吐く。

 すごい……か……

 

「ただの音楽しか出来ないダメ親父だよ」

 

 話題を変えるためルフィに質問をする。

 

「そういえば……どうやってロロノアを仲間にするんだ?」

「どうにかなるさ!」

 

 笑顔で大きくうなずく。

 対照的にキラは頭を抱え肩を落とす……すごく心配だ……

 

「あのな……そんな簡単に……!」

「ん?どうした?」

 

 席を立ち店の出口へと向かう。

 誰かに見られていた……まだ海軍には何もしていないはず……

 

「キラは、一緒に行かないのか?」

「ん?ああ……用事を思い出した。後でな」

 

「おう!」

 

 店から出て一人小船をとめた場所へ向かう。小船へとたどり着き近くの木箱に腰を掛ける。

 見られてるな……人数は3人いや4人くらいか……海軍ではなさそうだ。

 こんなに気配を消せる奴は……たぶん……

 一瞬だけ目線を気配と逆側に向け……地面を強く蹴り一瞬で隠れていた男の背後へと回りこむ。

 

「き、消えた!?」

 

 1人の男の背後を取り腕を掴む……

 

「いつの間に!?」

「これは……やはりか……」

 

 男の腕にはタトゥーがあった。それは過去に何度も見たことのある文字。

 

「”RUIN”」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 RUIN(ルイン)

 

 崩壊を意味する裏組織

 

 彼らの目的は、大海賊時代の終焉。

 世界政府の破滅。

 ルインの為の世界作ることを目的としている。

 すべてがベールに包まれている。

_________________________

 

「何が目的だ?」

「さぁ……ねぇ!」

 

 目を離した隙を付き男はキラの腕を振りほどき距離をとる。

 

「逃がすか!」

 

 逃げた男の目の前へ移動し胸倉を掴み地面に叩きつけた。

 地面は音を立て砕ける……

 

「言え……目的は何だ!」

「ククッ。さぁ?なんだろうな?」

 

「力づくで……!?」

 

 拳を振り上げた瞬間、そいつは口から何かを吐き出した。

 ビシャと地面に何かが落ちる。

 吐き出したものに目をやると舌が地面に落ちている……。

 この男は話ができないよう自分の舌を噛み千切ったようだ。

 

「ちっ!残りの奴らは!?」

 

 周りに気配がない。

 逃げたようだ……狙いが他にも……?

 ルフィと合流するため……急いで海軍基地へと走る……。

 ルフィがロロノア・ゾロと一緒にこちらへと向かって来た。

 

「ルフィ!こっち……!?

 

 ドンという銃声が響くと銃弾がルフィの体に突き刺さる……

 キラは怒りに震え目の色を変える……

 

「ルフィ!貴様!」

 

 キラは屋根の上からルフィ狙撃した男との距離を一瞬でつめ……頭を掴み持ち上げた……

 メシメシと骨が軋む音がキラの耳へと伝わる……

 

「う、うわああああああああああ!!!!」

 

 グシャという音と共に男の頭が握りつぶされた。

 鮮血が当たり一面に飛び散る。

 周りに隠れていた。RUINの奴らが驚いて逃げ去ろうとするが……

 

『ゴムゴムの銃!!!』

『鬼斬り!!!』

『ぎゃあああああ!!!』

 

 同じく相手との距離をつめていたルフィとゾロに一撃を浴びる……

 

「やるな。ロロノア・ゾロ」

「てめぇは?ルフィの仲間か?」

 

 ルフィが目をキラキラさせながらこちらを見ている。

 

『キラ!お前、強ぇな!』

「俺も驚いたよ。まさか悪魔の実の能力者だったとはな」

 

 ガッチリとルフィと握手をし再会を喜ぶ。

 

「おい、確かキラだったか?」

「ああ」

 

 ゾロは、倒れている奴を突付きながら口を開き鋭い眼光をキラに向ける。

 

「こいつらは、なんなんだ?」

 

 ルフィも首を傾げゾロを見つめた。

 

「さぁ、俺は知らねぇぞ」

「お前には、聞いてねぇ。キラに聞いてんだ」

 

 彼らに話してわかるのだろうか……

 偉大なる航路の人間にしかわからないことだが……

 

「ルインっていう俺の敵さ……巻き込んですまなかった」

 

 深々と頭を下げる……

 二人とも首を横に振り「気にすんな」と言っているが……これから先も旅の邪魔をしてくるだろう……

 

 三人で小船に乗り込む……

 人数が足りない……

 

「コビーは?」

「ん?いいんだ。行こう」

 

 出航すると……コビーがルフィ達を見送りに港まで来ていた。

 後から聞くとコビーは町に残り海軍見習いとして頑張っていくらしい……がんばれよ……コビー。

 

「いずれ俺らと戦うかもしれないな」

「シシシシ!だったらおもしれぇな!」

 

 キラたちは次なる町に向けて帆を進める。

 

 ギターを弾く。

 コビーに聞こえるように精一杯友情の歌を歌った。



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第三話 元副船長 ※8月15日修正

ゾロを仲間にして先を進む一行。

航海士がいない中、まともに先へ進めるのか?

※8月15日修正


 コビーと別れて数時間後……

 ゾロがふと気づきルフィに声を掛けた。

 

「おい、これどこに向かってんだ?」

「ん?俺は、知らねぇぞ。キラがわかってるんだろ?」

 

 二人の視線がキラへ向けられる。

 

「さぁ?どこむかってんだろうな……ちゃんとした航海士仲間にしたほうがいいかもなぁ」

 

 2人と話しながらキラはカバンをあさり海図を探す……海を放浪していたときにある海賊船から拝借していたのだが……

 

「……あれ?」

「ん、どうした?」

 

 キラの様子を見ていたゾロが「まさか」という表情を浮かべ……次の言葉を待つ

 

「海図ないな……」

 

 肩を竦めキラはクスリと笑う。

 

『『笑いごとじゃねぇだろ!!!』』

 

 二人がキラの耳元で怒鳴った。

 

「お前ら人任せにしといてその態度はなんだ!」

 

 キラとゾロが言い合いをしている間でルフィの腹の虫が鳴る。

 その音で気が抜けたのか二人は言い合いを止めどすりと船に腰を落とす……

 

「腹減った……食いもん……」

 

 船に大の字に横になるルフィの頭上からキラがサラッと言う

 

「食料なんてない……金がないから買えないんだよ……だいたいお前は食いすぎなんだ……シェルズタウンでも……」

 

 そこまで言いかけるとキラの腹の虫も鳴る。

 

「言う気力もないわって……あれ?」

 

 先ほどまで隣で横になっていたはずのルフィの姿がなくなった。

 あたりを見回すが……いない……ゾロも異変に気づき辺りを見渡すが当たり一面海である。

 悪魔の実の能力者であるルフィが泳いでいるはずもない。

 

「あいつ空腹で海にでも飛び込んだんじゃ……」

 

 キラが不安に思っているとゾロが空を指差し声を上げる。

 

「キラ!上だ!」

 

 ルフィは大きな鳥に捕まっていた……

 大方「食料だ!」とか言って捕まえようとして捕まったとかそんなことだろう。

 それにしても人一人捕まえるとは……デカイ鳥だな……

 

「あのバカ!どうする?」

「どうするって、追うしかないだろ!」

 

 ゾロが必死に船を漕ぐ。

 キラも、船を漕ぐゾロを必死になって応援する……

 

「……って、お前も漕げ!」

「仕方ないだろ、体を動かすのは好きじゃないんだ」

 

 呆れてゾロが船を漕ぎ続けると……溺れてる3人組を見つけた。

 船でも盗まれたのだろうか?

 

『た、助げ……てぐで……』

「あ、死にそう……ロロノア助けたほうがいいんじゃないか?」

「あ!?知るか!急ぐぞ」

 

 血も涙もない……助けないわけにはいかないだろう……

 キラは、三人まとめて彼らを引き上げる。

 引き上げた途端3人の態度が急変し、腰からサーベルを抜き、キラに突きつけた。

 

「おい!俺たちは、道化のバギー……キ、キラ副船長?」

 

 しばらくそいつらの顔を見るが思い出せない……

 とりあえず状況を聞くため知ったかぶりをする。

 

「え?あ、ああ久しぶり」

 

 キラのその様子にゾロは大きくため息を吐く。

 他人から見るとかなり不自然な様子らしい……

 三人組はそんな様子にも気づかず会話を続ける。

 

「副船長!あんたがいなくなってから大変なんです!」

「そ、そうなんだ、よくわからんが大変そうだな」

 

 頷くキラにゾロが質問する……

 

「道化のバギーってのは、誰だ?」

「昔の仲間さ……」

 

 微笑ながらゾロの質問に答える。

 キラは三人の方を向きなおし質問した……

 

「そういえば……なんで海水浴なんかしてたんだ?」

「それが聞いてください!副船長!」

 

 こいつらが海水浴を楽しむことになった経緯を聞くとある女に騙されたらしいのだが……

 

 小船でぐったりしてた所を発見し金をやるから食料を分けてくれと言われ女の宝箱を確認をしているうちに船を奪われさらに宝箱は空。スコールに見舞われ転覆ということらしいが……

 

 海賊のくせにマヌケすぎる……ただその女……天候の読みはすばらしいな……

 

 「そう……」

 「おい、キラ。急がねぇとルフィを見失っちまう!」

 

 ルフィの姿がどんどんと遠ざかっていく

 あの鳥はどこに向かっているのだろう……

 キラは三人の方を見て指示を出す。

 

「おまえら元副船長命令だ!漕げ!」

「イエッサー!」

 

 三人で漕ぐだけあってなかなかのスピードだ。

 これなら追いつけるかもしれない……

 ゾロがキラを見つめ口を開く。

 

「副船長だったのか?」

「まぁ……な」

 

 クスッっと笑いルフィの後を目で追う……が……

 

「あ……ルフィが見えなくなった」

 

 ゾロが頭をかき大きく息を吐く……

 ここから先には……バギーがいる。

 海賊同士が顔を合わせるということは……何かが起きるということだ。

 

「いくぞ……」

「ああ、あくまでルフィを探すだけだ。無駄な戦いは避けよう」

 

 キラがそういうとゾロはフッっと笑う……戦闘は避けられそうもないようだ。



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第四話 久しぶりの再開 ※8月16日修正

バギー海賊団、副船長だった過去を持つキラ

キラは、バギーと久しぶりの再開を果たす。

※8月16日修正


 バギー一味の元にたどり着いたキラとゾロだったが……そこで目にしたものは檻に入れられ身動きの出来ないルフィの姿だった……このままではころされてしまう……。

 

「さぁ、おめぇら!ハデに行くぞ!」

 

 バギーの一言で檻に入れられているルフィに大砲が向けられた……

 

「ロロノア。ルフィが吹っ飛びそうだぞ……」

「あ?……言ってる場合か!!!」

 

 ゾロがルフィのところへと向かっていく……

 バギー一味の中に見たことのある女の姿がある……確か……魚人のとこにいた……なんていったかな……

 

 キラが少し考えていると爆発音が鳴り響く……まさかと思いルフィに目をやるが少し目を離した間に状況が変わっていた。

 

 そう……なぜか……バギーのいた場所が吹き飛んでいた。

 瓦礫を軽く飛び越えキラはバギーの顔を覗き込む……白目を剥いている……

 

「あぁ~せっかく元副船長が会いに来たってのに」

 

 合掌をし横たわるバギーにアーミー帽を取り深々と頭を下げる……

 

「まだ!死んでねぇ!」

 

 バギーが勢いよく立ち上がった。

 

「しぶといねぇ~バギー?」

「あん!?おおおおおお!キラァ!キラじゃねぇか!」

 

 キラの背中をバンバンと叩き再会を喜ぶバギー。

 あからさまに嫌そうな顔をするキラ。

 

「また、悪さしてんのか?」

「海賊なんだ!あたりまえじゃねぇか!また、一緒にやるか!キラ!」

 

 首を横に振り拒否をする。

 一度離れた海賊団に戻る気はさらさら無かった。

 

「悪いが……新しい奴らとつるんでるんだ」

「そうか!おめぇが一緒にいるってことは、見込みのある奴ってことかぁ?」

 

 微笑み首を縦に振る……

 もし、今組んでる男が自分がたった今殺そうとした男だと知ったらこいつはどんな顔をするだろうか……

 

「はっ!そうだ!キラ!悪いがお前にかまってる暇はねぇ!麦わらぁ~!」

 

 どうやらルフィを探してるらしい。

 能力者同士の対決どちらが上か……楽しみだ。

 

「がんばれよ……ルフィ……」

「おう!見てろキラ!また、俺たちの元に戻りたくなるぞ!」

 

 バギーに言ったんではないんだが……まぁ、いいか……

 ルフィを探そうと視線を外すと……視界の端に人影が見えた気がした。

 誰かに見られている……

 

「まさか……」

「オイ!キラ!手ぇ貸してくんねぇか!」

 

 人影を追おうと歩み始めると後ろからバギーが声を掛けるが……無視をして後を追うことにした。

 

「お、おい!キラァ!!!!!」

 

 どこまで離れてもバギーの叫び声が聞こえる。

 あの男は利用できるものはとことん利用する男だ……そんな男になどついていくわけも無い。

 

 それよりも……さっき感じた気配……シェルズタウンの時と同じ……ルインか……

 

 人影を追い続けると開けた場所へと到着する……が気配が消えた?

 

「気のせいか……」

「こっちだよ」

 

 声のする方を振り向くと少年がいる。

 年齢で言うと12歳くらいだろうか……

 

「ここは危ない、家まで送るよ」

 

 踵を返し着た道を戻ろうとすると……キラの顔の横を刃が付いたブーメランが通り過ぎていく。

 アーミー帽がキラの頭から落ち……頬には血が滲む……

 

「お兄さん……ちょっと遊んでよ」

 

 ブーメランはキラの背後の木を真っ二つにし少年の手へと戻った。

 

「おもちゃにしては、よく切れるみたいだな」

 

 もう一度少年はブーメランを投げる……紙一重のところでそれをかわす……

 

「忠告だ……止めとけ」

 

 少年は不適に笑っている……どうやら引く気はないようだ……で、あれば……キラは距離を一瞬で積め拳を振り下ろすと……地面が砕けた。

 

「わざと外したでしょ?」

「お前……」

 

 キラの拳を避けようとしなかった……少年は外すとわかっていたのだ……拳を地面から引き抜き大きく息を吐く……

 少年の下に投げたブーメランが勢いよく戻ってくる。

 

「仕方ない……お仕置きタイムだ」

「ふふっ。楽しみ」

 

 不適に笑う少年……こいつ間違いなく……組織の人間だ……だったら遠慮はいらないな……

 少年の背後に回り……全身を捻る……回転で勢いの付いた体から……回し蹴りを放つ!

 あまりの勢いに風を切る音が鈍く響く……少年はそれを身を屈めてかわし攻撃に転じる。

 

「こっちの番だよ!」

 

 そう叫び腕に力を入れると……少年の爪が伸びる。

 

「そうか……やはりルインの……」

 

 キラがそこまで言いかけると少年は腹部へと深々と爪を突き刺す……

 笑みを浮かべキラの顔を見上げる……

 

「お兄さんの血は何色か……な!?」

「なにを驚いている……」

 

 爪を突き刺したはずの体には、傷一つ付いていなかった……

 逆に……少年の爪が折れている。

 

「うそ……」

「一ノ形……剛」

 

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 剛(ごう)

 

 体の一部分の強度をあげることができる。

 攻撃として使えば破壊力を。

 防御として使えば刃も通さない。

_________________________

 

「剛!?なんで……それは……組織の……」

「さて……そろそろお仕置きタイム終了だ」

 

 キラの眼光が鋭くなり少年を捉える……

 少年の全身から血の気が引いていく……

 

「……ッ!」

 

 狂ったようにブーメランを投げるが……適当な攻撃ではキラを止めることは出来ない……

 ブーメランを受け止め握り潰す……ボロボロと地面へと落ちていく……

 

「お仕置きだ!」

 

 繰り出された拳を少年は寸前の所でかわすが……攻撃へと転じることが出来なかった……キラは少年がかわし攻撃へと転じようとする隙をつき背後へと回り込んでいた……

 拳を振り上げ少年の脳天目掛け振り下ろす……

 拳が頭蓋骨へめり込み……首からはゴキッっという音がする……

 少年は糸の切れた人形のように地面へとへたり込む……

 肩をグルグルと回しキラは大きく息を吐く……

 

「お仕置き終了だ」

 

 倒れた少年の服の袖を捲くる……腕を見てみると”ルイン”のタトゥーが彫られていた。

 

 ”ルイン”では子供でも兵士として使われる……それが組織で拾われ育てられた者の宿命。

 そして力の無いものはこの子のように人体を改造される……この爪がいい例だ……

 こうなってしまっては、もう、まっとうな人間としては生きてはいけない……

 

「悲しいな……少年」

 

 そういうとキラは少年の顔に自分のアーミー帽をかぶせる……

 合掌し歩き出そうとすると少年のポケットからガムがはみ出している……

 

「一枚……もらうよ……」

 

 キラは少年のポケットからガムを一枚取り出し口に含んで歩き出す。

 視界が涙で歪む……ガムの辛さでそうなったわけではない……少年の哀れさを悲しんでいるのかもしれない……

 涙を隠すことが出来ない……帽子を上げたことを少し後悔したキラだった……



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第五話 旋律の男 ※8月16日修正

”ルイン”との戦闘が決着し、ルフィを探すキラ。

ルフィと再開は、果たせるのか?

※8月16日修正


 ルフィを探し彷徨っているのだが……街がほとんど倒壊している……ずいぶんと派手にやったようだ……

 彼らは……手加減というものを知らないのだろうか……

 街を見回していると視線の先からルフィが走ってくる……後ろにはゾロとあの女もいるようだ。

 なぜか町の人々に追われている……これだけの騒ぎを起こしたのだ無理もないだろう……

 キラを見つけたルフィが叫ぶ。

 

「キラ!逃げるぞ!」

 

 コクリと頷き共に船着場まで走る……

 船着場に到着すると溺れていたのを助けたバギー一味の3人が小船の前に立ち塞がっていた。

 どうやら女に復讐したいらしい。

 

「待ってたぜ!どろぼ……」

「お前ら副船長命令だ!どけ!」

 

 キラが叫ぶと少し身を引くが……彼らにも意地があるのだろう。

 小船の前へ陣取り動こうとしない……キラは鋭く睨み付ける……

 

「う、うるせぇ!も、もう副船長じゃ……!」

「……なにか文句でも?」

 

 三人はブルブルとふるえ急ぎ海に飛び込む……

 船に乗り込み海に飛び込んだ三人を上から睨み付ける……彼らは気を失い……ゆっくりと沈んでいった……

 

 隣に泊めてあったバギーの小船にはあの女が乗りこちらの船と並走している……これから先の旅に付いてくるのだろうか……

 

 女の船をボーッっと見つめていると……ルフィがキラに声を掛ける。

 

「キラどこ行ってたんだよ」

 

 キラは微笑みポケットのガムの紙くずを握り締め……

 

「ちょっとやることがあったんだよ……」

 

 女は、黙ってキラの顔を見つめる……

 この姿には見覚えがある……金色の長髪を後ろで束ねるこの男こそ……イーストブルーで最も高額な男。

 

『旋律のキラ』

 

 手配書では帽子を被り顔は写っていなかったが……人違いではないはず……一度だけ見たことがある……

 

「よろしく……ナミちゃん」

「え!?う、うん。よろしく……」

 

 ナミと呼ばれた女の声が震える……高額な賞金首とは思えないくらいの物腰の柔らかさ……だけどどこか危険な感じ……

 ルフィがそれを感じとりナミに声を掛けた。

 

「どうした?震えてんぞ?」

「な、なんでもないわよ」

 

 キラがナミの小船へと飛び乗り……顔を近づける……

 

「な、何……?」

 

 ナミの顔がみるみる赤くなっていく……キラとの顔の距離がどんどんと近くなる……美しい整った顔立ち……人懐っこい笑顔……

 彼は……そっと……耳元でささやいた……

 

「大丈夫。アーロンのことは黙っておいてあげる」

「な、なんのことかしら……」

 

 この男はすべてを知ってる……敵意剥き出しでキラを見つめる。

 ナミにはキラが何を考えているのか、さっぱりわからなかった。

 ここで自分の存在を何故2人に明かさないのか……

 

「俺はルフィを海賊王にしたい……その手助けをしてくれればいい」

「えっ……?私が……?」

 

 この男は何を言っているのか……何故自分に?

 しばらく困惑の表情でキラを見つめるが……柔らかい表情に段々と警戒心が解かれていく……

 心を許してはいけない……そうわかっていても……この男の前では……すべてを許してしまう……

 

「君の航海術が必要なんだ。いいだろ?」

 

 微笑みながらナミに問いかける……

 この笑顔に私は……だまされているのかもしれない……でも……

 

「か、考えといてあげる……」

 

 顔を朱色に染めナミは答えた。

 キラはナミの答えを聞くとギターを取り出し軽く弾く……

 

「新しい仲間のお祝いだ……一曲奏でよう」

 

 ルフィは笑顔でバンバンと手を叩く

 

「よっ!待ってました!」

 

 祝いの歌を歌う……新たな仲間の誕生を祝う歌……

 新たな仲間がどんな問題を抱えているか……それを知っても……彼らは彼女を仲間と呼ぶことが出来るだろうか……

 

 ナミはこっそりとカバンから手配書を取り出し……確認する。

 手配書にはアーミー帽を深く被り顔を隠した長髪の男が載っていた……

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 旋律のキラ

 

 懸賞金:5000万ベリー

______________



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第六話 黒猫 ※8月16日修正

旅を続けるルフィ一行。

まず目標は、新たな仲間そして船

※8月16日修正


 ガイモンという宝箱にはまった男に出会った。

 ルフィは彼を仲間に誘ったが彼にはもうたくさんの仲間がいたようだ。

 彼との別れは海賊王を目指す少年を成長させただろうか?

 

 キラはクスッっと笑いルフィを見つめる……

 

「出会いは人を成長させる……か……」

「ん?どうした?俺の顔なんかついてるか?」 

 

 手を横に振り微笑む……ルフィは首を傾げ不思議がっていた。

 キラは何がそんなに面白いのだろうと……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「さて……これからの話をしよう……」

 

 ナミとこれから先の話を始める……

 なぜ、ナミなのか……ルフィとゾロではまったく話にならないというよりも彼らには計画性というものがないことはこの少しの間でキラはわかっていた。

 

 なのでナミの加入はキラにとってはとても喜ばしいことだったのだ。

 今までは何か考えがあっても2人が勝手に色々する為まったく自分の思ったとおりには進まなかった。

 

「グランドラインに行く為には船が必要だな……」

 

 キラは解けた長髪を縛りながらそう口にする。

 ナミも頷き口を開く。

 

「えぇ、それにいくらあんたらが強いといっても船員少なすぎるし……」

「課題は山積み……だな……」

 

 2人で大きくため息を吐く……なんといっても船を買うには大金が必要だ……

 ルフィがニコニコしながら会話に入ってくる。

 

「船!俺たちの海賊船だな!早く欲しいなぁ!」

「無理よ!予算もないし……船って高いんだからね!」

 

 ナミの怒鳴り声が海に響き渡る……だが彼女の言うことは正しい。

 

「船が手に入ったら……俺が船長でキラが副船長!」

 

 話を聞いていたのだろうか……ルフィはまだありもしない海賊船を夢見て話を膨らませる……

 というよりもまたしても副船長……

 

「俺はいいよ……ロロノアにでも譲るさ……」

 

 ゾロを見つめるとあからさまに嫌そうな顔をし、口を開く。

 

「お前のほうが経験があるんだ。お前が適任だろ」

 

 最もなことを言われキラも何もいうことが無い……

 バギー一味で副船長をやっていたことを知っているんだからそう言われても当然なのだが……

 

「仕方ない……それでいい……」

 

 大きくため息を吐く……

 ゾロは気づいたようにキラに言う。

 

「副船長なんだからたまには戦闘に参加しろよ」

 

 確かにゾロの言うとおり彼らの見ている前ではあまり戦闘していないが……自分なりに戦っているつもりだ。

 それに体を動かすのはあまり好きではない……

 

「考えとくよ」

「あのなぁ……」

 

 キラが適当に返事をするとゾロは大きくため息を吐いた。

 

「おい!キラ!ゾロ!大陸が見えたぞ!」

 

 視線を海にやるとルフィの言うとおり大陸が見えてきた……上陸の準備を始める……沖に船を着け一歩二歩と大地を踏みしめる……

 上陸してすぐに……人の気配を感じる……3人いや4人か……

 

「……見られてるな」

 

 キラはゾロを見つめる……

 

「ああ、あれだろ」

 

 ゾロの指差す先に子供たちがいる……

 海賊船に乗っているわけではないから海賊には見えないはずだが……

 

『うわああああああああ!!!』

 

 すごい勢いで逃げていく少年達と……一人残っているようだ。

 

「あっ、おい俺を置いていくな!」

 

 残った一人はため息を吐き崖のほうから下りてくる。

 そいつはとても長い鼻をしていた……何事かとしばらく見つめていると突然大声を出し始めた。

 

「お、俺は!キャプテン・ウソップ!」

 

 突然の自己紹介に思わずキラは噴出す。

 

「な、何笑ってやがる!お前ら!俺には、8000万の部下が……」

「それ……ウソでしょ」

 

 ナミに指摘されウソップは口を大きく開け固まっている……そんな嘘を誰が信じるというのか……

 笑いが収まらずキラは肩を震わせ海のほうを見る。

 

「笑うな!」

「す、すまない……つい……」

 

 ルフィの方を見るとルフィも笑っていた。

 和やかな雰囲気が流れる……

 

「お前らここに何しに来たんだ」

 

 ウソップがキラに尋ねる……正直に答えても彼なら問題は無さそうだ。

 

「ちょっと船を捜しにね。良かったら村を案内してくれないかな?」

「いいぞ、付いて来いよ」

 

 どうやら悪い奴らとは思われていないようだ……何も無ければいいのだが……

 

~シロップ村~

 

 飯屋で食事をとりながらウソップに事情を話すことにした。

 ルフィは、バカみたいに食べ、ゾロは、昼間から酒を飲む。

 金のことは考えているのだろうか……呆れてものも言えない……

 

「仲間と船が必要なんだったな」

「あぁ、これからの旅に必要でな」

 

 船なんて簡単に手に入らないことはわかっているが……

 

「船か、この村にある大富豪の屋敷なら持ってるかもしれねェな。」

 

 大富豪が簡単に海賊に船を渡すとは考えられない……何か手を考えなければダメだろう……

 

「そうか……」

 

 しばらく考えた末……キラはそれだけいうと席を立ち出口へと向かう。

 

「お、おい話は、まだ終わってねェぞ!?」

「少し考える……後のことは、頼むよ。」

 

 ナミの肩を2、3回ポンポンと叩く……ここで任されても困るとキラに声を掛けるが……

 

「ちょ、ちょっと!キラ!あんた副船長でしょ!?」

 

 何も答えず飯屋を出ていってしまった……

 

「ったく……どうしろって言うのよ……」

 

 頭をグシャグシャとかきナミは天を仰いだ……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 どうすれば船を手に入れることが出来るだろうか…… 

 キラは木陰へと移動し座り込む……柔らかい風が頬を撫でる……

 天気がよくてとても心地がいい……

 

「船を……どうに……か……」

 

 ゆっくりと……深い眠りへと落ちていった……これから何が起きるとも知らずにぐっすりと……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 どれくらいたっただろうか……ルフィたちの叫び声が聞こえたような気がした……

 ナミはうまくやってくれただろうか……自分が目覚めたらもう船の上だったりして……などと考えながら目を覚ますと海岸に海賊船が停泊している。

 これは予想外の展開だ……あの船は確か……キャプテン・クロの海賊船だ。

 とりあえず船着き場まで移動して状況を確認すると……ナミとウソップがクロの海賊達と戦っている。

 

「状況がつかめん……」

 

 キラは頭を掻きながらナミとウソップの前に立つ。

 海賊たちもキラの存在に気づき手を止める……

 

「キラ!あんた、何やってたのよ!」

 

 ナミがキラの後ろで怒鳴っている……耳が……

 

「ごめん……考え事してたら……つい……」

 

 寝てたとは口が裂けても言えない……

 海賊たちを指差しナミが口を開く。

 

「あいつらやつけちゃって!」

「了解……」

 

 ゆっくりと海賊達の元へと向かっていく……

 海賊たちは後ずさりしながら口々に……

 

「お、おい!キラさんだ!」

 

 再会の喜びの表情を浮かべるもの……敵対してしまったと苦痛の表情を浮かべるもの……

 キラは全員の顔を見渡し声を上げる。

 

「お前ら……久しぶりだな」

「キラじゃねぇか!久しぶりだな!元気か!」

 

 ハート型のサングラスをしたこの男は黒猫海賊団副船長ジャンゴ。

 催眠術を得意としている。

 

「ジャンゴ……」

「キラ。お前、今どこにいるんだ?」

 

 笑顔で話しかけてくるジャンゴに微笑みながら言葉を返す。

 

「お前らが今襲っている……麦わら海賊団さ」

 

 それだけいうとジャンゴは表情を曇らせ後ずさる……

 

「そうか、じゃあ俺らの敵な訳だ……」

 

 ジャンゴが身構える……実力差は彼らもわかっているはず……

 キラが睨むと船員達は、後退りする……

 

「ジャンゴ船長……む、無理だ……勝てるわけねぇ!」

「バカヤロウ!やらないと、俺らがクロに殺されちまうぞ!」

 

 キャプテン・クロ非情な男……部下にも容赦はない……

 そんな男の下が嫌でキラは抜けていったのだ……

 ジャンゴの一言で船員達の目つきが変わる……死を覚悟した男の目だ。

 キラにやられるほうが幾分かマシと言うことか……はたまた……勝てると思われているのか……

 

「後者だとしたら……随分と舐められたものだな……」

 

 鋭い眼光が船員達に向けられると彼らの動きが一瞬止まる……躊躇しているようだ。

 戦わないに越したことはない……引いてくれればいいのだが……

 

「行け!お前ら!」

 

 躊躇っていたものたちがジャンゴの一声で一斉にキラへと向かっていく……余計なことを……

 

「お前ら……手加減はしないぞ」

 

 首をポキポキと鳴らし……キラも迎撃体制に入る……

 体制を低くすると……

 

『キラさん!覚悟!!!!』

『二ノ形……旋!』

 

 左足を軸に回転蹴りを放つと突風が巻き起こる……船員達の体は宙へと舞い上がり落下していく……鈍い音と共に船員達は地面へと叩きつけられ……意識を失う。

 

「お、おい。あいつ強ェな……」

 

 大きく口を開けたままウソップがナミの方を見る。

 隣でナミも驚いた表情を浮かべていた……

 

「ジャンゴ。まだやるか?」

 

 鋭い眼光を緩めることなくジャンゴへと向ける……

 ジャンゴの背中を冷たいものが流れていく……

 

「お、おい……てめぇら生きてんのか?」

『ま、まだまだ……ぐふッ……』

 

 何人かの船員は、また立ち上がろうとしたが……地面へと崩れる……

 

「ク、クソ……万事休すかよ……」

 

 キラがジリジリと距離を詰めていく……

 

『つ、ついたああああああああ!!!!』

「あんたたち!遅いのよ!」

 

 後ろから大声が聞こえる……ナミの方を振り返るとゾロとルフィが到着したようだ。

 

「何してたんだ!俺が戦わなくちゃならなくなってるぞ!」

『『テメェ副船長だろうが!!!!』』

 

 自分が戦ったことでイライラしているキラは言葉を続ける。

 

「なんだと!俺は、副船長だとしても事務専門だろ!」

「あんたのどこが事務なのよ!」

 

 ナミの鋭い突っ込みが入り味方内で大騒ぎしていると……背後から嫌な気配がする……殺気……?

 

『ワン・ツー・ジャンゴ!』

『うおおおおおおおおお!!!!』

 

 ジャンゴの催眠で船員たちがパワーアップしていた……こうなると少し面倒だ……

 

「ちっ……催眠忘れてたよ……」

『うおおおおおおおおお!!!!』

 

 向かっていこうとすると……叫び声が見方内からも聞こえる……振り向くと……なぜかルフィもパワーアップしている……単純な人間にはとても効くようだ……

 呆れて大きくため息を吐くとルフィがキラの元へと向かってくる……

 確かに……キラは敵と見方の間にいる……まさか……

 

『ゴムゴムの銃乱打!!!!』

「なっ!?バカ!あとで説教だからな!」

 

 ヒラヒラと攻撃をかわすが……「ぐふっ!!!」

 キラの腹部に何発かのパンチがクリーンヒットしその場に倒れる……敵の船員達も次々に倒れていく……

 

 一通り暴れ終わると……ルフィが敵の船目掛け走り出す……

 船へと到着すると船首を引っ張り始め……そして……

 

「ワン・ツー・ジャンゴ!」

 

 ジャンゴの催眠によりルフィは船首とともに倒れた……なんという馬鹿力……

 

「ル、ルフィ……」

 

 腹部を押さえながらキラがルフィに駆け寄ると、どうやら眠っているだけのようだ……

 クスクス笑いながらキラはルフィの頭を小突く。

 本当に……こいつは……面倒ばかりかける……

 

「キラ!ゾロが!」

 

 ナミの声で振り向くとゾロの前に敵が二人立ちふさがっていた……見たことのあるシルエット……

 

「ニャーニャーブラザーズ……」

『ちがう!ニャーバンブラザーズ!』

 

 ブチとシャムがこちらに叫ぶと……ゾロから一瞬気がそれる……

 ゾロはその隙を見逃さず……キラに向かって叫ぶ。

 

「キラ!すまねぇが刀を取ってくれ!」

 

 辺りを見渡すと……ジャンゴの足元にゾロの刀が転がっていた。

 急ぎ刀の前へと移動する……が……

 

「おい、キラ!俺があっさりと……」

「どけ」

 

 頭を掴みジャンゴを地面へと叩きつける……刀を拾い上げ……

 

「ロロノア!受け取れ!」

 

 全力でゾロに刀を投げる……思ってたよりも力が入っていたのかも知れない……すごい速度で飛んでいく……

 

「な!?取れるか!」

 

 あまりの速度にゾロは刀をかわす。

 キラは小首を傾げ自分の手を見つめる。

 

「加減しろ!このバカ力が!」

 

 避けたのが良かったのか……刀は、ブチとシャムの顔面にめり込んでいた。

 二人は力なく崩れ落ちていく……こんな形で倒して良かったのだろうか……キラはクスッっと笑う。

 

「や、やばい……」

 

 一点を見つめ……ジャンゴが立ち上がりガタガタ震えている。

 

「どうしたジャンゴ?」

 

 ジャンゴの視線を追うとその先には……

 

「キラ。てめぇが絡んでやがったのか。どうりで進まねぇはずだ……まぁいい。おい、ジャンゴ」

 

 ビクリと身を震わせジャンゴがクロを見つめる……

 

「なんだ?このザマは」

「あんただってキラの実力は知ってるはずだ!仕方がねぇじゃねぇか!」

 

 クロの眉間がピクリと動く……

 

「仕方がねぇ……だと……」

 

 すごい殺気を放ちだしたクロにキラは声を掛けた。

 

「俺達に勝てないぞ……とっとと撤退しな」

「なんだと……ニャーバンブラザーズ!起きろ!あの剣士をやれ!」

 

 ニャーバンブラザーズはフラフラと起き上がりゾロへと向かっていく……

 

「よ、よし!キラさんに比べればあいつなんて!」

「ふん!なめられたもんだ……刀が3本あれば……」

 

 ゾロが刀を構える……ニャーバンブラザーズの攻撃があたる寸前……

 

『虎狩り!!!!』

 

 ニャーバンブラザーズの体は宙を舞った……残るは……クロのみ……

 

「キラてめぇ……」

「お前の相手は、ウチの船長だ」

 

 クロがこちらへと向かってこようとするのを静止し、ルフィを指差す。

 

「おもしろい……やってやろう」

 

 微笑み寝ているルフィに声をかける。

 

「ルフィ!こいつまかせるぞ!」

 

 ルフィは体を持ち上げ大声を上げた。

 

「おう!まかせとけ!」

 

 確実に勝てる……ルフィがクロに負けることは無い……キラはルフィを信じ森の中へと向かったジャンゴを追った。



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第七話 決着・決意 ※8月17日修正

ルフィとクロとの戦いが続く中

キラは、ジャンゴを追う。

※8月17日修正


 大富豪の娘カヤを追いジャンゴを追うキラ……森へと向かっていったが……こっちでもない……一体……どこに……

 キラが辺りを見回していると後ろから自分の名前を呼ぶ声がする。

 

「キラ!」

 

 戦闘が終わったゾロが応援に駆けつけたようだ。

 ゾロは自分の向かって来た方角を指差しこう告げた。

 

「どこ探してやがる!こっちだ!」

「え?」

 

 目が点になるキラとそれを見てまた逆の方向を指差すゾロ……

 

「あ!?こ、こっちか!」

 

 どうやらかなりの方向音痴のようだ……いや方向音痴というレベルの話ではない……もはや障害だ。

 頭を抱え大きくキラはため息を吐いた。

 

「おいキラ!何やってんだ!こっちだ!」

 

 前方からウソップが声がする……

 彼なら信用できるはずだ、この村の人間だ地理も詳しいだろう。

 ゾロの腕を掴みウソップの声を頼りに進む。

 腕を掴まれ無理やり連れて行かれているゾロは納得のいかない表情をする。

 どうやらまだ自分の言っていることが正しいと思っているようだ。

 

「きゃあああああ!」

 

 女性の声が森に響きわたる……まさか……

 

「カヤの声だ!キラ!」

 

 視界に女性の姿とジャンゴの姿を捉える……

 接近しジャンゴのがら空きの横腹にキラは手の平を添えた……ぼそりと口が動く……

 

「……この一撃は……砲弾の一撃だ!」

 

 キラの腕に力がこもり血管が浮き出す……

 抵抗では無くジャンゴは命乞いを始める。

 

「キ、キラ!お、落ち着け!俺らの仲じゃ……」

 

 命乞いなど聞く耳もたず……キラは手のひらに力を込め……わき腹を鋭く突き上げた。

 

『剛砲!』

 

 腹部にキラの手がめり込み鈍い音が当たりに響く……まるで大砲の弾が当たったかのようにジャンゴの体は木をへし折りながら吹き飛び地面に叩きつけられる。

 威力がまだ体の内部に残っているのか……ジャンゴは絶叫し……口から血を噴出す……

 キラは冷酷な目で見届けると……微笑ながらカヤへと声をかけた。

 

「大丈夫?お嬢さん」

「は、はい……怖かった……」

 

 気が抜けたのか倒れそうになるカヤの体を支え頭をなでる。

 シャンプーの香りが鼻腔をくすぐった……

 

「もう大丈夫……すべて終わった」

 

 ふと視線に気づき……辺りを見回すと……ウソップがキラを睨んでいる……

 キラはフッっと微笑み気を失ったカヤをウソップに預けると……木によしかかっているゾロに声を掛けた。

 

「ルフィのところに戻るぞ」

 

 負けることはないと思ってはいるが……急ぎゾロをつれてルフィのところへと戻る。

 森を抜け……船着場へと出ると……ルフィの姿がある……足元にはクロが大の字で倒れているようだ。

 ルフィがキラの存在に気づきブンブンと手を振る。

 

「おお!キラ!終わったのか?」

「終わったよ……」

 

 大きく息を吐き笑顔でルフィに拳を突き出す。

 

「シシシシ!さすが!」

 

 それに答えルフィもキラに拳を突き出し……コツンと合わせる。

 心の中でキラは言う……「よくやった」と……

 

「みんな!ありがとう!礼をいう!」

 

 後からキラたちを追ってきたウソップが大声を出す。

 カヤはどうした……

 

「お前の勇気の勝利だ」

 

 キラは笑顔でウソップにそう言うと照れくさそうに笑う。

 そして……ウソップはこう宣言する。

 

「俺はこれを気に決めた!俺は海賊になる!」

 

 また一人……海の戦士がここに誕生したのだった……



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第八話 船と新たな仲間 ※8月17日修正

黒猫海賊団との戦闘も終わった。

次なる冒険へ!

※8月17日修正


 シロップ村の海岸に大きなキャラベル船が泊められる……

 これがルフィ達の船(ゴーイングメリー号)だ。

 キラは深々とカヤへ頭を下げる。

 

「こんなに豪華な船を……ありがとう」

 

 顔を朱色にしカヤは頭を横にブンブンと振る。

 

「いいえ……みなさんは命の恩人ですから」

 

 微笑みキラが再び感謝の言葉を言うと……カヤは目を伏せ手を両手を胸の前で横に振った……気にしないでということだろう。

 甲板ではルフィがキラを呼ぶ。

 

「キラ!こっちきてみろ!この船すげぇぞ!」

 

 仕方ないと付き合うかと……船に乗ろうとしたときナミがキラの襟首を掴む……息が苦しい……

 何故止められたのかというと……メリーという執事が船の説明を始めたからだろう……

 一緒に話を聞けということか……

 

「お、俺も聞くのか?」

「ルフィとゾロじゃ当てにならないんだから仕方ないでしょ?」

 

 そのとおりだ……返す言葉も無い……

 ナミと共に船の説明を聞いていると……ウソップが小船へと荷物を積み込んでいる。

 

「行くのか?」

 

 キラが声を掛けるとウソップはニッコリと笑い感謝の言葉を言う。

 

「お前らのおかげで本当に助かった。じゃあ、また海で会おう!」

 

 ルフィとゾロが揃って首を傾げる……

 2人の言葉を代弁しキラは口を開く。

 

「何言ってんだ?もう仲間だろ?乗れよ」

「えっ……お、お前ら……」

 

 目に涙を浮かべウソップはメリー号へと走りよって来る。

 

「……キャ、キャプテンは、俺だろうな!」

「何言ってんだ!船長は俺だ!」

 

 キラはクスクスと笑いメリー号を見つめる……心の中で「よろしく」と船に向かい呟いた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「よし!ゴーイングメリー号、出発するぞ!」

 

 船長の……ルフィの一言で船は大海原へと帆を進めていく……麦わら一味は、カヤに手を振りシロップ村を後にした。

 船上では……それぞれが杯を手にする……船の中央へと集まり……

 

「新しい船!そして新たな仲間ウソップに!カンパーイ!」

 

 ルフィの一言に全員がいっせいに声を上げる。

 

『カンパーーーーイ!!!!』

 

 それぞれが杯を力強くぶつけた。

 キラはウソップに声を掛ける。

 

「改めてよろしく。ウソップ」

「おう!よろしく!そういえばキラは、クロとは知り合いだったのか?」

 

 ウソップの質問にナミも入ってくる……2人にはキラが色々な海賊団に所属していた話はしたことがないから当然といえば当然だろう。

 

「前にあいつの船に船員としていたことがあったんだ」

 

 それを聞いたとき二人の頭に疑問が浮かぶ……あの残忍なクロが黙って船を下ろしてくれるだろうか……?

 

「へぇ~船下りたいって言った時……殺されなかったの?」

「確かに。クロなら言いかねねェ」

 

 キラはクスっと笑い自分を指差す。

 

「今生きてるのが答えだろ?今日は、宴だ!飲め飲め!」

 

 二人は府に落ちない顔をしているが……気にせず酒を勧める……ルフィが叫ぶ……

 

「キラーーー!歌えーーーー!」

 

 ギターを取り出しかき鳴らす……宴は朝まで続いたのだった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 キラは、あまりの頭痛に目を覚ました……どうやら昨日飲み過ぎたようだ……ヨロヨロとハンモックから起き上がると……外から大声が聞こえる。 また朝から何をしているのだろうか……

 

「おはよう……朝から元気だな……」

 

 容赦なく太陽がキラの頭上から降り注ぐ……軽く立ちくらみがする……

 そんなキラの状況などお構い無しにウソップは大声を上げ……自慢げに旗を見せた。

 

「キラ!見てくれこの旗!」

 

 麦わら帽子を被った海賊旗を掲げる……デザインは完璧ではないだろうか。

 

「いいじゃないか」

「だろ!俺って芸術の才能あるな~」

 

 胸をドンと叩きウソップが満足げな表情を浮かべる……キラも笑顔で拍手をしていると……

 ドン!っと大砲の音がする。

 何事かと音のほうを見る……ルフィが岩に向かい大砲の試し撃ちを始めていた。

 

「うまくいかねぇなぁ」

 

 不服そうなルフィにウソップが歩み寄って行く……

 

「ルフィ、貸してみろ」

 

 岩に狙いを定め撃つ……ウソップの砲弾は見事に岩を砕く。

 射撃の腕があるようだ。

 キャッキャッと騒ぐあの2人は放っておき……とりあえず今後の話を始めることとする……

 船室のドアを開けキラは声を上げた。

 

「おい、お前らちょっとこっちに集まってくれ」

 

 全員がキッチンに集まる。

 集めた理由は、役割分担と今後の話をするためのようだ。

 

「仲間も増えてきたことだそれぞれの役割を決めていこう」

 

 キラがそう言うとルフィが手を上げウソップを指差す。

 

「ウソップは、狙撃手だ!」

「おう!任せとけ!」

 

 黙ってキラは話を聞いている……

 

「ナミは、航海士」

「ゾロは、戦闘員」

「俺が船長!」

 

 話を聞きながらキラは首を傾げる……これは役割なのか……

 

「で、最後にキラが副船長」

 

 なんだか話の観点がずれている気がする……話したかったのはそういうことではなく……掃除とか洗濯とか……家事の役割だったんだが……

 間違いを正そうとキラが口を開こうとすると……ルフィが先に話し始めた。

 

「あとはコックと音楽家だな!」

 

 そういうことじゃないんだよ……キラは頭を抱え俯く……

 

「キラは音楽担当でいいんじゃねぇか?」

 

 ウソップが口を出すとナミが凄い剣幕で怒鳴りだす

 

「ダメ!キラには、舵とってもらったりマッサージしてもらったりショッピングのときの物持ちとか……」

 

 ナミ以外の目が点になる……仮にも副船長にそんなことやらせる気でいる……この女って……

 笑顔でルフィが手を上げる。

 

「やっぱ音楽家は、必要だと思います!」

 

 キラは頭痛が酷くなっていく気がした……

 

「いいか……俺が言う役割っていうのは……」

『海賊ども!出て来い!』

 

 またも途中でキラの言葉は遮られた……何事だと……船室から甲板を覗き込むとサングラスを掛けた男が叫んでいた。

 

「ん?なんだあいつ?」

 

 船室を出て行くルフィ……外が静まりかえっている……何かあったのだろうか……

 

「仕方ねぇ……」

 

 ゾロが船室を出て外へ向かう……なにやらサングラスの男と話している……知り合いのようだ。

 外に出てみるとサングラスの男のほかにもう一人いる……なぜか男は倒れていた……

 キラは、倒れている男を見つめる……この症状は……

 

「これは……壊血病だな……」

「へ?壊血病?」

 

 サングラスの男は不思議そうな顔を浮かべる。

 壊血病も知らないらしい……よく海に出ているものだ……

 

「キラ、ライム持ってきたわよ」

 

 ナミが持ってきたライムをルフィに渡す。

 

「ルフィ、ウソップ。絞って飲ませてやってくれ」

『『おう!!!』』

「こ、これでよくなるのかい!?」

 

 笑顔を向けキラは頷く。

 何度も何度もサングラスの男はキラに頭を下げる……

 気にするなとキラは手を横に振る。

 

「キラ、すげぇ!」

「医者みてぇだな!」

 

 ルフィとウソップは憧れのまなざしでキラを見つめる……

 

『船旅をする上では常識よ!これくらい知ってなさいよ!!!』

 

 ナミの怒声が船上に響く。

 一気に静かになる2人にキラは苦笑いを浮かべた。

 

「ひゃっほー!治ったぜ!」

 

 倒れていた男が突然起き上がり騒ぎ出す。

 

「そんなに早く治るか!」

 

 再びナミの怒声が響く……

 

 2人の男は助けてくれた感謝を告げ頭を下げる……彼らはヨサクとジョニー。

 昔ゾロと一緒に行動していたらしい……

 サングラスの男がジョニーで倒れていたほうがヨサク。

 賞金稼ぎだというのだが……弱そうだ……

 

「さて……話は戻るんだが……いいか、俺が言いたいのはだな……」

 

 キラがそこまで言いかけるとナミが先に話し始める……

 

「ルフィ!必要なのは音楽家じゃなくコックよ」

「コックか!いいな!うまいモンがいっぱい食えるってことだろ!」

 

 天を仰ぎ……キラは彼らに説明することを諦めたのだった……

 そんなキラをよそに話は進んでいく……話を聞いていたジョニーが口を挟む。

 

「コックを探すんならいい場所がありますよ!海上レストランはどうですか?」

「海上レストラン?」

 

 どうやら名前のとおり海の上にレストランがあるようだ。

 話だけは聞いたことがある……確か……あそこのオーナーは……

 キラが考え事をしていると……

 

「よし!いざ!海上レストラン!」

 

 どうやら進路は決まったようだ……麦わら一味は、海上レストランへ帆を進める。



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第九話 海上レストラン ※8月17日修正

海上レストランを目指し帆を進めるルフィ一行。

これからなにが待っているのか……

※8月17日修正


「キラの兄貴!海上レストランにつきやした!」

 

 船室で新聞を眺めていると……甲板からジョニーが顔を覗かせる。

 優しく微笑み感謝の言葉を告げた。

 

「ありがとう……ジョニー」

「キラの兄貴……」

 

 気持ち悪い視線を浴びながらキラは甲板へと出る。

 心地の良い風……目の前に大きな魚型の船が停泊していた……

 これが海上レストラン……よく目を凝らしてみると……レストランに穴があいている……

 

「穴……?」

「あれはルフィだ」

 

 ゾロが呆れながら口を開く……話によれば海軍と遭遇し飛んできた大砲を海上レストランへと弾き返したそうだ……

 

「やってくれる……」

 

 頭を抑えため息を吐く……胃がキリキリと痛む……

 

「今頃、レストランで雑用でもさせられてんじゃねぇのか?」

 

 鉄アレイを持ち上げながらゾロがキラにそう告げた。

 ほどけた髪を縛りながらキラはレストランへと行く準備を整える。

 

「あのバカは帰って来たら……説教だ」

「かわいそうにルフィ……キラの説教長いんだよなぁ」

 

 ルフィを哀れみながらウソップはキラを見つめた……以前に彼も説教を受けたことがあるようだ。

 首を傾げナミがウソップに尋ねる。

 

「え、そうなの?」

「ひどいもんだ。一時間は正座だ。」

 

 ウソップは肩を竦め手のひらを天に向ける。

 手をパンと叩きキラは思いついたように3人を見つめ……

 

「さぁ、行こうか」

 

 微笑みを浮かべキラは海上レストランへと向かっていった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~海上レストラン~

 

 入り口を開け店内を見渡しキラは、感嘆の声を上げた。

 満員とは行かないが席もほとんど埋まっている……味は問題なしといったところなのだろう。

 客のほとんどが満足そうな顔を浮かべている。

 ゾロが空いている席へと腰を下ろす。

 メニューを見ながらウソップは口を開く。

 

「俺は、サンマの料理がいいな!」

「キラ。何食べる?」

「え、ああ。パスタ……」

 

 各々食べたいものを注文し、料理が席に運ばれてくる。

 豪勢な料理がテーブルへと並べられる。

 料理に舌鼓をうつ……どれも美味しく満足のいく味だ。

 ゾロもウソップもがっついている……

 キラは微笑ましくその光景を眺めていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 空腹も満たし席でくつろいでいると……

 

「お前ら!俺がいないのにうまいもん食いやがって!」

 

 エプロンを付けたルフィが文句を言いながら現れた……キラがそれを見つけ鋭く睨みつける。

 それに気づいたルフィはしまったという表情を浮かべ後ずさっていく。

 

「ルフィ。お前、話は聞いたぞ……」

 

 席を立ちルフィとの距離を詰めていく……逆にルフィはどんどんと下がっていっている。

 

「ゲッ!キラ!違うんだ!海軍の奴が撃ってくるから!」

 

 腕を掴みルフィを睨みつけているキラのところにスーツを着た金髪の男が歩みよってくる……

 この男はバラティエコックのサンジ。

 特徴はクルクルとした眉毛と……タバコ……レストランでタバコはいいのだろうか……

 サンジはキラとナミの間に止まると2人に熱い視線を送り……

 

「美女2人は姉妹かな?」

 

 キラの動きが止まる……美女……2人?

 ナミと顔を合わせると笑いを堪えているのか目に涙を浮かべていた。

 

「君がお姉さんかな?」

 

 サンジがキラのほうにそう告げた瞬間……

 4人が腹を抱えて一斉に笑いだした。

 

「キラお姉さま。お味はどうでしたか?」

 

 笑いながらウソップが言い、ゾロがそれに続く。

 

「キラ。お前いつから女になったんだ?」

「いつから女って……お前!おかまか!」

 

 鋭い眼光でゾロとウソップを睨み付け……キラは片腕で大の男二人を持ち上げる……

 その状態で出口へと走って行きレストランの外に連れ出した。

 鈍い音がこだますると……ゾロとウソップが顔を腫らして戻ってくる。

 ウソップが頬を擦りながら謝罪し、ゾロは何かブツブツと文句を言っているようだ。

 

「許してやろう……女に間違われるような俺が悪い」

 

 ナミの元にサンジがデザートを運んでくる。

 

「ありがとう!」

「どういたしまして」

 

 この男は典型的な女好きのようだ……女性への態度と男性への態度がまったく違う……

 キラがふと窓の外へと視線をやると……大きな海賊船がこちらに向かっていた……

 気づいた客の一人が大声を出す。

 

『首領クリークの海賊船だ!!!』

 

 海賊船は海上レストランの横に船を止めると誰かが降りてくる……

 扉が開くとフラフラのクリークとクリーク海賊艦隊戦闘総隊長ギンの姿があった。

 手配書で見たことがあるので間違いはないはずだ。

 クリークは一人では歩けないのかギンに肩を貸し支えてもらっている。

 何をしにきたのかは予想が付く……あの船ではこれ以上の航海は無理だ……ならば目的は……食料をたくさん積んでいるこの船だ。

 

 麦わら一味全員の眼がクリークに集中している間……ナミがコソコソとレストランを出て行く。

 ナミの動きに気付いたキラはこっそりと後を追う。

 

 メリー号を出航させようとするナミに後ろから声を掛ける。

 

「戻るのか?あそこに……」

「わ、私の勝手でしょ!」

 

 好きで戻るわけではないのは顔を見ただけでわかっていた……だからこそ……

 

「……俺も行こう……君の村を救える」

「確かに……あんたなら……でも来ちゃダメ……」

 

 彼女は歯をくいしばり……何かに耐えているようだった……

 

「辛いんだろ……だったら……」

「あいつらには!あいつらには……あんたが必要なのよ……」

 

 消え入りそうな声……彼女は何を背負っているのだろう……

 ナミを乗せたゴーイングメリー号は遠くへと行ってしまう……自分は彼女の事情を知っておきながら一人で行かせてしまった……

 海から自分を呼ぶ声がする……視線を落とすと……

 

「キラの兄貴~助けてぇ。オボッ……ヴェル……」

 

 ヨサクとジョニーが溺れていた……ナミに落とされたか……2人を海から引き上げると同時に……ルフィがこちらへと向かってくる。

 辺りを見回しルフィはキラに尋ねた。

 

「ナミは!?」

 

 気付いた所で……もう遅い……

 キラは、ナミがどこへ向かったのかを説明しようとするとウソップが海を指差し口を開く。

 

「メリー号が見えるぞ!」

 

 もう見失ったと思っていた……まだ希望はあるようだ。

 

「ロロノア!ウソップ!追ってくれ!」

 

 ルフィもキラに続き2人に追うよう指示をする。

 

「ウチの航海士は、あいつなんだ!連れ戻してくれ!」

「わかったよ。船長」

 

 ニヤッと笑いゾロはウソップを連れ小船に飛び乗った。

 船を出そうとした時……一隻の小船がキラの視界に入り……一瞬の間にクリークの船は残骸となった……

 これほどのことを出来る人間など……ごく少数しかいない……キラの想像どおりその船には……最強の剣士が乗っていた。

 なぜ……あいつが……鷹の目が……

 鷹の目の視界に……キラが捉えられる……

 

「強きもの……生きていたか……」

 

 小船に乗っていたゾロがミホークの姿を見つけると子供のような笑顔を見せ……三本の刀を握り締めた。

 

「ちょっと用事が出来た……」

 

 ゾロは船を飛び降り……クリークの船の残骸へ飛び移る……

 戦う気だ……挑戦するにはまだ早い……止めなければ死……

 キラがミホークの所に行こうとするとルフィが腕を掴む。

 

「離せ!ロロノアが死ぬ!」

「ゾロは負けねぇ!信じろ!」

 

 何を言っている……相手は世界一の剣士だぞ……

 捕まれた腕を振り解きルフィに背中を向ける。

 

「見てられるか……」

 

 レストランの扉を開けキラは一番奥の席へと腰をかける……

 頭の中を色々な思いが駆け巡る……

 

「勝てるわけがない……七武海だぞ……」 

 

 頭を抱え目を瞑る……

 

 

 どれほど時間が経っただろうか……どうなった……あいつは生きているのか?

 扉の開く音に気付き顔を上げる。

 

「もう、終わったぞ。女男」

 

 海上レストランオーナーのゼフが義足を引きづりキラの隣に腰を掛ける。

 

「剣士は……生きてますか?」

 

 フッっとゼフは笑うと外を指差す……

 

「てめぇの目で確かめな。」

 

 恐る恐る店の扉を開ける……高く剣を上げゾロがキラを見つめていた。

 死んではいなかったか……良かった……

 

「強きもの……」

 

 小船から鷹の目がキラに声を掛ける……

 

「いい表情になったな……」

 

 キラはミホークに笑顔で答えた。

 

「こいつらのおかげさ……」

「フッ……次は昔のように手合わせ願う……」

 

 ミホークは水飛沫の中に消えていった黙って海を見つめているキラにルフィが声をかける。

 

「キラ。泣いてる場合じゃないぞ」

「大丈夫なのか?お嬢さん」

 

 笑いながらルフィとサンジがキラの顔を覗き込む……涙をふき前を向く

 

「うるさいバカども」

「ヘッ、大丈夫そうだな。」

 

 サンジが笑いながらそう告げた。

 

 大砲の音が聞こえる……クリーク海賊団が本格的に海上レストランを襲うつもりのようだ。

 黙ってやられるつもりなど無い……ましてや……負ける気などまったく無い。

 キラの眼光が鋭くなる……

 

「よし!やるぞ!キラ!サンジ!」

「誰に向かって言ってんだ。レストランは俺が守る」

 

 勢い良く飛び出そうしていた二人をキラが止める……二人の視線がキラへと向けられた……

 

「二人ともこれだけは、守ってくれ」

 

 大きく息を吸い込みキラは力強く言う。

 

『絶対に死ぬな』

 

 ルフィとサンジがニヤッと笑い叫ぶ。

 

『『お前もな!』』

 

 二人はクリーク海賊団へと向かっていく。

 大きく息を吐き……遅れてキラもクリーク海賊団に突っ込んで行った。



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第十話 再会を誓っての別れ ※8月21日修正

ルフィ、サンジとともにクリーク海賊団と戦うことになったキラ。

キラの背後にRUINの魔の手が忍び寄る。

※8月21日修正


 肩をグルグルと回しキラはクリーク海賊団との距離を詰める。

 海賊の何人かはキラの存在に気づき尻餅をついた。

 脚に力を入れ踏み出そうとした瞬間……

 

「お嬢さん、下がってな!ここは、戦うコックさんに任せとけ!」

 

 キラを押しのけ、いかついコック二人が海賊達に突っ込んでいく。

 

『どりゃあああああああ!!!!』

 

 海賊達の悲鳴が響き渡る……戦うコックさん……侮れない……

 キラはクスクスと笑う……完全に気を抜いていた……流れ弾が飛んでくる。

 

『あぶねぇ!』

 

 ギリギリのところでキラはサンジに抱きかかえられ難を逃れた。

 

「何してんだ! ボーっとすんな!」

 

 キョトンとするキラの顔を見つめサンジは頬を染める……

 サンジはボソボソと「こいつは男……」と繰り返し言っているようだ。

 

「あ、ありがとう」

 

 笑顔でキラはサンジにお礼を言う。

 

「か、かわいい……って違うッ!」

 

 サンジは、絶叫しながら近くにいる海賊達を蹴り飛ばす……どうやらキラの出番はなさそうだ。

 それほど海のコック達は強かった。

 レストランなのに中々武器が充実しているようだ。

 近くの瓦礫に腰をかけ戦場を見つめていると……背後に気配を感じた……

 

「お前、旋律のキラだな……」

 

 クリーク海賊団の一人がキラの背後に立っている。

 ゆっくりと振り返り男の手を見ると”ルイン”のタトゥーが彫ってあるようだ。

 

「紛れてたってわけ……」

「貴様には、死んでもらうぞ……我等の野望の為に……」

 

 背後へと回りこまれ思い切り背中をサーベルで切りつけられるが……『剛』でその攻撃を完全に防ぎきった。

 振り向き様男の顔面に拳を叩き込む……鼻から血を吹き出し後退する。

 

「な、なぜだ……貴様、悪魔の実の能力者か……ならば!」

 

 腹部を白い棍棒の様な物で殴られるが……キラは何事も無かったかのように男の腹部に拳を叩き込む。

 鈍い音が聞こえると同時に口から血を吹き出す……

 

「バカな……海楼石が通じない……能力者ではないのか……?」

 

 まったく動じていないキラの姿に混乱しているようだった。

 男の腹部に手を添え力を込める。

 

『剛砲!』

 

 強烈な掌底を見舞うと男は泡を吹きながら膝から崩れ落ちる……背中の皮膚からは、骨が肉を突き破っているようだ。

 キラは合掌し悲しそうな顔で男を見つめる……

 

「キラ!これつけろ!」

 

 ルフィがキラにガスマスクを投げる……突然の出来事に困惑の表情を浮かべる……

 

「早くつけろ!毒ガスだ!」

 

 サンジが叫ぶ。

 どうやらクリークが毒ガスを放ったようだった……急ぎマスクを付ける。 あたり一面にガスが立ち込めた。

 ガスマスクを持たないものたちは一斉に海へと飛び込んでいく……

 

 時間がたち……ガスがはれたころ……キラはガスマスクをはがし辺りを見回す……

 サンジがルフィを指差し叫ぶ。

 

「あのバカ!無茶する気だ!」

 

 ルフィがクリークの攻撃を体で受け止めながら突き進んでいく。

 クリークの表情からもあせりが見てとれた……

 キラは、サンジの隣に立ち声を掛ける。

 

「ウチの船長……無茶するだろ?」

「ああ、お前らも大変だな。助けにいかないのか?」

 

 微笑みルフィの姿を見つめる……ゆっくりとキラは口を開く

 

「ここで負けるようなら……それまでさ」

 

『ゴムゴムの大槌!!!!』

 

 強烈な一撃がクリークを捉える……

 クリークを破ったルフィだったが網のようなものを掛けられ共に海へと沈んでいった。

 キラは、笑顔でサンジの方を見た。

 

「うれしそうだな。キラ」

 

 笑顔でサンジはキラに問いかける。

 キラも笑顔でサンジに答えた……

 

「……悪魔の実の能力者ってカナズチなんだ」

「な!?バカ早くいかねぇと!」

 

 サンジが海に飛び込む……ルフィを助け出し海面から顔を出しキラを睨み付け怒鳴りつけた。

 

『てめぇのとこの船長だろうが!』

 

 微笑みキラはサンジに答える。

 いずれはお前の船長になる男だと……

 複雑そうな表情を見せるサンジ……それもそうだろう自分達と一緒に行くとなるとレストランを去らなくてはならない……

 サンジは海から上がりルフィを自室へと運んだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 椅子に腰掛け談笑しながら2人でルフィの目覚めを待つ。

 ふと疑問をサンジが口にする。

 

「なんでこいつに付いて行こうと思ったんだよ」

 

 寝ているルフィを指差しキラを見つめた。

 キラは出会った時を思い出すかのように答える。

 

「俺はいままでいろんな海賊を見てきた……でもな、こいつ見たいな奴は初めてだったんだよ」

 

 思い出しながらクスクスと笑うキラにサンジは頬を朱色に染めた。

 キラが小首を傾げ口を開けたままのサンジに何事かと聞こうとするが……ルフィが勢いよく起き上がる。

 起きると同時にルフィの腹の虫が泣く……

 クスクスと笑いキラは部屋のドアノブに手を掛けた。

 

「何か食べ物もらってくるよ」

 

 部屋を出てすぐ……話し声が聞こえる。

 サンジが楽しそうにオールブルーについて語っているようだ。

 自分達の目指す先、偉大なる航路(グランドライン)にはオールブルー……その可能性がある……

 彼も行ってみたいのだろう……オールブルーへ……

 キラは少し立ち聞きすると笑みを浮かべ食堂へと向かった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

『メシだぞぉ!』

 

 食堂への扉を開けると同時にコックの一人が声を上げた。

 キラの存在に気づきコックは自分の隣の席をバンバンと叩く。

 

「おお。キレイな兄ちゃん。ここ座りな」

「あ、ああ……でも……」

 

 席を見渡すが……2人の……ルフィとサンジの席がない。

 

「あいつらは、床でいいんだよ。」

 

 部屋から食堂へと来た二人は席が無いのを確認すると仕方なく床で食事を始める。

 コックの一人がスープを一口すすると……大声を上げた。

 

『おい、なんだ!このクソマズいスープ!』

 

 床から立ち上がるとサンジは不味いと口にしたコックのもとへと歩み寄っていく。

 

「それは、俺の作ったスープだ……まずい訳が……!」

 

 これが合図かのごとくコック達は口々に不満を口にしスープを床へと捨て始める……

 まるでサンジを追い出そうとしてるかのように……

 状況を察しキラは部屋を出る……

 

「あいつを連れて行ってくんねぇか。お譲ちゃん」

 

 オーナーゼフがキラに声を掛けた。

 微笑みを浮かべ口を開く。

 

「やはりあなたの指示ですか?オーナー」

「あれぐらいしないと行こうとしやがらねぇからな」

 

 笑みを浮かべ食堂を見つめる……何年もサンジと一緒にいるのだ……一番彼の性格を熟知しているだろう。

 

「彼が行きたいといえばね……」

 

 それだけ言うとキラはゼフの横をすり抜け扉へ手を掛ける。

 扉を開けると心地良い風が入ってきた。

 外へと出ようとするキラの背中にゼフが声を掛ける。

 

「あいつがお前らと一緒に行くと言うとはかぎらねぇぞ?」

 

 何も答えずキラはゆっくりと扉を閉めた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 外に出てキラは大きく体を伸ばし全身で日光を浴びる。

 容赦なく日差しがキラの体を照りつけた。

 背後の扉が大きな音を立て乱暴に開かれる。

 振り向くとそこにはサンジの姿があった。

 

「俺……お前らと行くことにした」

 

 キラはサンジに笑顔を見せると再び海を見つめる。

 

「ヨサクってやつとルフィが船出の準備始めたぞ」

 

 ヒラヒラと手を振りわかったと合図をすると……キラはゆっくりと歩み扉へと手を掛け、口を開く。

 

「サンジ……準備できたらおいで」

 

 返事を待たずにキラは扉を閉めルフィとヨサクのところへと向かっていった。

 

 小船へせっせと荷物を積む男の姿がある。

 キラはその背中に声を掛けた。

 

「壊血病よくなったかい?」

 

 ヨサクは振り返ると笑顔を見せ感謝を告げる。

 

「ヘイ!兄貴のおかげです。ありがとうございやす!」

「どういたしまして」

 

 それにキラは笑顔で答えた。

 サンジは荷物をぶら下げこちらに向かってくると暗い顔で呟く。

 

「行こう……」

 

 すでに船に乗っていたルフィと顔を合わせ出すよう合図を送る……

 船に乗り込もうとするサンジの背中に声が掛けられた。

 

「カゼひくなよ」

 

 オーナーゼフの一言にサンジの目には大粒の涙が溜まっている……

 サンジの背中をキラは優しく叩いた。

 

「ちゃんとあいさつして来な……」

 

 サンジとコック達は、お互いに別れをそして感謝を告げる。

 それは……一生の別れではなく、次の再会への別れ……再び人生という道で交差することを願って……

 感謝は、今までお世話になったことへの感謝。

 サンジとゼフの別れは、まるで親と子の別れのようだった。

 長年二人三脚でがんばってきた師弟の別れ……

 

 ゼフは、サンジが過ぎ去った後も海を見つめ息子の旅立ちを祝っていた。



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第十一話 アーロンパーク ※8月21日修正

サンジを仲間にして。いざ、アーロンパーク。

※8月21日修正


 自分達が今向かっている場所……

 それがどこかまだヨサク以外のものは知らないだろう……

 海を見つめながらキラは口を開いた。

 

「今向かってるのは……アーロンパークなんだろ?」

 

 予想もしていなかった一言にヨサクは驚きの表情を浮かべる。

 何故そのことを知っているのか……

 

「キラの兄貴……なんでそれを!?」

『アーロンパーク?』

 

 ルフィとサンジは首を傾げる。

 キラは淡々と話を始める……何故自分達がアーロンパークに向かっているのか?

 魚人とナミに何の関係があるのかを……

 

「な、ナミさんがアーロンの一味……?本当なのか……?」

 

 小さく頷きキラはサンジを見つめる。

 ルフィもナミを完全に仲間だと思っていた為、動揺を隠せないようだった。

 救う手立てなどいくらでもあったはず……自分は何故……

 キラは海を見つめ……苦悩していた……

 

『モォオオオオオ!!!!』

 

 鳴き声とともに海面がもりあがると……ルフィ達の前にデカイ牛が姿をみせる。

 海に牛っているんだ……キラは黙って海牛を見つめた……

 

「な、何で驚かないんすか!?海牛っすよ!偉大なる航路の生物です!」

 

 海牛へと手を伸ばしキラは撫で始める……

 ヨサクはありえないといった表情でキラを見つめるが……残った2人は関心していた。

 気持ちよさそうな表情を浮かべ海牛は頭をたれる。

 もっと撫でて欲しいようだ。

 

「おい、完全にキラになついてるぞ……」

「キラ、すげぇええええ!」

 

 驚く2人をよそにヨサクは開いた口がふさがらないようだ。

 キラは笑顔で海牛に話しかける。

 

「アーロンパークまで頼むよ」

 

 任せろとばかりに大きく頷く海牛に縄をつけアーロンパークまで引っ張ってもらうことにしたが……

 遅い……これでは日が暮れてしまう……

 ルフィは欠伸をし口を開く。

 

「こいつ、おせぇなぁ。」

 

 サンジもタバコを咥え頷くと何かを考え付いたのかキラを見つめ、提案する。

 

「鞭でもいれるか?」

 

 海牛の背中を抱きしめキラは首を横に振ったのだが……ルフィが脚をしならせ……

 

『ゴムゴムの鞭!!!』

 

 強烈な一撃を海牛に入れる……

 涙を流しながら海牛は泳ぐ……どうやらスピードが上がったようだ。

 

『おぉ!はぇええええええ!!!!』

 

 はしゃぐ2人にキラはため息を吐き、海牛の背中を撫でる。

 しばらくするとはしゃいでいたサンジが青ざめキラの肩を叩く。

 

「お、おい……岸にぶつかる!」

 

 海牛が岸にぶつかり船が上空を舞った……

 4人は……船から投げ出され砂浜へと倒れこむ

 キラが頭を抱え起き上がり辺りを見回し……人数を数える。

 全員いるようだ。

 サンジも体を起こし体に付いた砂をほろう。

 大笑いしながらルフィはもう一回やりたいと言っている……それを見たキラは大きくため息を吐いた。

 遠くから見知った顔がこちらに向かってくる。

 

「ロロノア!無事だったか!」

 

 キラは大声を上げ手を振った。

 ゾロはキラの存在に気づくがなぜか浮かない顔をしている……

 合流するとゆっくりと口を開いた。

 

「ウソップがアーロン一味に捕まった」

 

 まだ生きているなら問題はないと……キラはほっと胸を撫で下ろすが……

 

「ウソップの兄貴は、ナミの姉貴に殺されました!」

 

 後から追いついてきたジョニーの一言に場が凍りつく……

 殺された……しかもナミに……?

 困惑した表情を浮かべるキラと……鬼の形相を見せるルフィ。

 ルフィはジョニーに掴みかかり怒鳴りつける。

 

「ナミが仲間を殺すわけねぇだろ!」

 

 ジョニーも力強く反論した。

 

「でも、俺はこの目で見たんだ!」

「お前!!」

 

 拳を振り上げルフィがジョニーを殴ろうとする……キラが腕を掴みなだめる。

 

「落ち着け……」

 

 物陰からナミが姿を現す……キラはルフィの腕を放し彼女を見つめた。

 

「何しに来たのあんた達。」

 

 彼女の口からは冷たく突き放すような言葉が出てくる……

 

「何って……迎えに来たんだ!」

 

 ルフィがナミに近づくが距離を離されてしまう……

 

「迷惑よ……早く帰って!」

「帰るのは、かまわないんだが……」

 

 キラがそう言うとルフィが食って掛かる。

 

「おい!何いってんだよ!キラ!俺は、帰らないぞ!」

「黙ってろ!」

 

 怒声を上げるキラにルフィは唖然としていた……

 ここまで感情を露にするキラは珍しかったからだ。

 真っ直ぐにナミを見つめキラは決意を口にした。

 

「俺はココヤシ村をアーロンの手から開放する。」

「キラ……か、勝手にすればいいでしょ!アーロンに勝てるわけなんてないのよ!」

 

 それだけ言うとナミは踵を返し去っていってしまう……彼女には隠していることがある……

 キラは一度ココヤシ村を訪れたことがあった……そのときもこの村はアーロンに支配されていた。

 あの時、倒せる実力がありながら自分はなぜアーロンを倒さなかったのか……

 自分が決着を着けなければならない……キラは歩き始める……

 ゾロがキラに気づき声を掛けた。

 

「どこいくんだ?」

 

 首を振りキラは口を開く

 

「アーロンのとこ」

 

 キラは再び歩き始める……ルフィが自分も行こうと立ち上がるが……手でそれを静止する。

 

「俺一人で行く」

 

 黙ってキラの背中を見つめる……誰一人今の彼に声を掛けることが出来なかった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 アーロンパークの扉の前に立つ……前にもこの扉は見たことがある……

 脚を振り上げ門を蹴り飛ばし……破壊する

 魚人たちの目が門へと集中する……椅子に腰を掛けた魚人が鋭い目つきを向けた。

 

「アーロン……!」

 

 椅子に腰掛けこちらを睨み付けているのがノコギリザメの魚人アーロン……

 アーロンはキラの顔を確認すると笑みを浮かべ声を上げる。

 

「旋律のキラじゃねぇか……お前さんほどの男が……何のようだい?」

 

 何も言わずキラは一歩一歩とアーロンに近づく……

 他の魚人たちも手を出すことが出来ずただキラを見送る……

 それほど今のキラには怒気が満ちていた。

 手を出せば自分が殺される……そんな空気を纏っている……

 

 アーロンまでたどり着くとキラは拳を振り上げた。

 

「おいおい……俺とやろ……ッ!?」

 

 言葉を待たずキラは拳をアーロンの顔目掛け振り切る。

 アーロンの巨体が簡単に吹き飛ぶ……

 

「テメェ……覚悟は……!」

 

 キラの瞳が赤く染っている……アーロンの脳裏には自分が殺される残像が映像として映し出された……

 

「ま、待て……俺が何を……!?」

 

 首に手が添えられアーロンの巨体は軽々と持ち上げられる……

 キラは口元に笑みを浮かべ腕に力を入れた……メキメキと骨の軋む音が聞こえる……と……

 

「おーい!」

 

 我に返り右手に持ったアーロンを落とす……

 扉の方を見るとルフィがこちらに向かってくる。

 

「アーロンは、俺がやる!」

 

 キラの隣まで来るとルフィがそう宣言した……

 アーロンはふと我に返ると大笑いし始める。

 

「シャハハハハハ!願ってもねぇ!旋律のキラに比べればお前など……!」

 

 話し終わる前にルフィがアーロンの顔を殴りつける……勢いよく巨体が吹き飛んでいく。

 大将が吹き飛ばされたのを皮切りに一斉に魚人がルフィ達のところに向かってくる。

 

『鬼切り!!!』

『首肉シュート!!!』

『火薬星!!!』

 

 魚人達が次々と倒れていく……キラはアーロンに笑顔を向ける。

 

「さぁ……始めようか……」

 

 キラの一言にアーロンは地団駄を踏み……怒りの表情を浮かべた。



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第十二話 賞金稼ぎ ※8月22日修正

アーロン一味との戦闘が始まった。

キラの相手は?

※8月22日修正


 アーロン一味幹部と麦わら海賊団の戦闘が始まる。

 キラも身構えるが……誰も向かってこない……

 人数を数え……ふとキラは思う……完全に余った……

 落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回すが……ルフィたちは、戦いを始めまったくそれには気づいていないようだ。

 大きく息を吐き……仕方なくナミが乗ってきたであろうメリー号を捜しに歩き出した。

 出口に向かうまでの間何度となく振り返っては見るが……

 全員が戦いに集中していた。

 キラは「がんばれ」と口にするとゆっくりとアーロンパークを出てメリー号捜索へと向かう……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 メリー号は、見つかりにくいように泊めてあった。

 ナミがうまく隠しておいてくれたようだ。

 やはり彼女にはまだ麦わら一味思う心がある……

 キラは船に乗り込み荷物を確認しいつ全員が戻ってきてもいいよう出航の準備を始める……

 自分しかいないはずの船から人の気配を感じる……魚人……

 メインマストへ目をやるとパーカーのフードを深く被りサングラスをかけた細身の男が現れた……

 

「誰だ?」

「俺は、スパイダー。賞金稼ぎだ。」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 スパイダー

 

 賞金稼ぎ

 

 サングラスに赤いフード付きパーカーを着ている。

 通り名:赤蜘蛛

_________________________

 

 賞金稼ぎ……懸賞金目当てか……?

 キラが勘ぐっていると不適な笑みを浮かべスパイダーは口を開く。

 

「貴様を殺してほしいと依頼を受けてな」

 

 依頼……大方キラには察しがついていた。

 何度か暗殺者をよこしてはいるがうまくいっていない……間違いなく組織の仕業だろう……

 突然スパイダーがしゃがみ込んだかと思うと……手から糸のようなもの出した。

 不意打ちだったがギリギリのところで糸をかわす。

 悪魔の実の能力者か……?

 しっかりとスパイダーを視界に捉え次の攻撃に備える……

 

「驚いているな……これは組織が俺に与えた力だぞ?ユダ?」

「ユダ……?」

 

 聞き覚えのある言葉にキラは頭を抱えた……

 思い出せない……思い出そうとすると頭が割れそうに痛くなる……

 痛みで呻くキラをよそにスパイダーは体に力を込めた……

 スパイダーの背中を4本の腕が突き破り、口には牙が現れる。

 その姿は蜘蛛そのものであった。

 苦しむキラにスパイダーは6本の手から糸を放つ……

 糸がキラの体を覆っていく……

 

「このまま絞め殺してやろうか……それとも……」

 

 腕から鋭い棘のようなものが生えてくる……誰が見ても彼は完全に化物であろう……力のためならばどんな姿になってもかまわないということか……

 頭痛から開放されたキラが糸から逃れようとするが……ビクともしない。

 逃れようとすればするほど糸がきつく絡み付く。

 スパイダーがゆっくりとキラとの距離を詰めていく……

 

「さぁ、死んでもらおうか。」

 

 キラの首を一突きしようとスパイダーは腕を振り上げる……が……

 恐怖を感じたスパイダーが後ずさりする……

 

「なんだ……何をした……」

 

 確実に自分は一度死んだ……

 一瞬だがスパイダーは自分の死んだ瞬間が脳裏へと映った。

 動けない相手に彼は恐怖を感じている……

 

「こ、これが……ユダ……」

 

 瞳を赤く染めたキラが糸を一瞬にして切り刻む……

 キラの手には赤いナイフが握られていた……

 

「いつの間に……隠し持ってやがったのか?」

 

 スパイダーが質問しても……何も答えない……

 彼がキラの顔を見ると背中を冷たいものが流れた……

 口元を歪め笑っている……

 底知れぬ恐怖を感じたスパイダーが海へと逃げようとするが……手首に激痛が走った……

 腕をみると手首から下がメリー号の床に転がっている……あまりの激痛にスパイダーは叫び声を上げる……。

 傷口はキレイに切れていた……まるで手首から下が最初から無かったかのように……

 キラは不気味な笑顔を崩さぬままスパイダーへと近寄っていく……

 

「く、来るな……来ないでくれ……」

 

 頭を深く覆っていたフードはずり落ち赤毛が露になる……キラはスパイダーの頭を掴むとナイフを顔の前へと持ってくる……

 

「お、お願いだ……許してくれよ……仲間には手を出さないから……」

 

 キラがスパイダーの頭から突然手を離す……

 床に尻餅をつきスパイダーは這いながらキラとの距離を取る……

 

「うわああああ!」

 

 叫びながらスパイダーは海へと飛び込み一目散に泳いで逃げていく。

 キラは、船のデッキを見回す。

 いたるところにスパイダーの血が飛び散っている。

 

「何があったんだ……」

 

 首を傾げキラは、辺りを見回す……

 瞳の赤は抜けた彼は……何も覚えていないようだった……

 自分が一体何をして……何故スパイダーはいないのか……

 メインマストへと背中を預け腰を下ろす。

 手に持っていた赤いナイフはいつのまにか消えていた……

 ユダとは……なんなのか……

 辺りを見回し大きく息を吐く……デッキブラシを手に取りキラはゆっくりと掃除を始めた……



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第十三話 3000万と6000万 ※8月24日修正

スパイダーとの戦闘も終わり、船の掃除をするキラ。

ルフィの勝敗は?

※8月24日修正


 スパイダーの血もキレイになりキラは船首で横になり物思いに耽っていた。

 一体……ユダとはなんなのか……スパイダーは確実にキラを指差していた……自分と何か関係があるかもしれないと考えていた。

 考えても仕方が無いとキラが立ち上がろうとすると……

 ルフィの声が聞こえる……

 船から身を乗り出し顔を出すとルフィたちがこちらへ向かってきていた。

 キラは船首から飛び降りるとルフィのもとへと歩み寄る。

 

「勝ったぞ!」

 

 満面の笑みでルフィが答えた。

 

「当然! 勝ってもらわなければ困る」

 

 二人は顔を見合わせ微笑みお互いの拳を合わせる。

 

「おーーい!キラ!宴やるって、来いよー!」

 

 遠くからウソップの呼ぶ声が聞こえた。

 ルフィは走って宴の席へと急ぎ、キラはその後ろをやれやれといった顔で追いかけた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 街へと顔を出すと盛大な宴が行われている……

 村人たちは、喜びを爆発させ大騒ぎをしていた。

 彼らは、長年アーロンに虐げられてきた。

 今、彼らは自由となったのだ……

 

 キラの口からは自然と祝福の言葉が出た。

 

「おめでとう……」

 

 微笑み喜ぶ彼らを見つめる……

 輪には入らず遠くから眺めているだけのキラにゾロが声を掛ける。

 

「おい、飲まねぇのか?」

 

 ジョッキを持ちキラの顔を覗き込む。

 キラは手を横に振り結構と断る。

 あまり酒は好きではないのだ。

 木陰へと移動しキラは腰を下ろす……

 ギターを取り出し静かに歌い始めると……ふっと人々が静まり返り歌に聞き入り始める。

 歌には不思議な力があると言われている……その力がどんなものかはわからないが……彼らは確かにキラの歌に魅了されていた。

 踊りだすもの……一緒に歌うもの……涙するもの……

 人々のそれぞれの感情が溢れ出す……

 この日ほど音楽をやっていてよかったと思う日はキラにはなかった。

 何時間たっても宴は終わらず……歌が聞こえなくなったのは、次の日の朝方であった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 出航の日……麦わら一味は船着場でナミを待っていた。

 街の人々も見送りに来ている中……何時間たっても彼女だけは姿を現さない。

 人々も困惑の表情を浮かべていた……なぜナミは来ないのかと……

 行くも行かぬも彼女の人生……キラは文句などなかった……だが船長は納得していないようだった。

 

「ナミちゃん……来ないんじゃないか……?」

 

 キラはルフィの顔を見つめ言うが……

 

「いや!あいつは来る!」

 

 断固として来るといってきかないルフィにキラは大きくため息を吐いた。

 あきらめて船を出そうとキラが錨に向かった……その時……

 

『船を出して!』

 

 ナミが船に向かって走ってくる。

 街の人々の視線がナミへと集中した。

 

「な、なんだ?走り出したぞ。あいつ。」

 

 こちらへと全速力で走ってくるナミにウソップは困惑の表情を浮かべキラを見つめる。

 キラは微笑みゾロに錨をあげるよう指示をした。

 メリー号はゆっくりと進み始める……どうやら彼女は船に飛び乗りあいさつもちゃんとせぬまま旅立とうとしているようだ。

 

「おい、いいのか?こんな別れ方で?」

 

 サンジが街の人々を指差し驚きの表情を浮かべた。

 

「それは彼女の自由だよ……」

 

 微笑みながらキラはナミを見つめる……

 予想通りナミは見送りの人々の間を駆け抜け勢いよく船に飛び乗った。

 メリー号へと飛び乗ったナミはゆっくりと人々の方を振り返る。

 

「じゃあね。みんな♥」

 

 笑顔のナミの手には村人全員の財布があった。

 街の人々は声を揃えて叫ぶ……

 

『待て!この泥棒ネコがぁ!!!』

「フフッ。みんな!いってきます!!!」

 

 彼女は大きく手を振る……

 そんな彼女に返ってきた言葉はもちろん……

 

『元気でな!いつでも帰って来いよ!』

 

 暖かい言葉だった……

 

「みんな……バイバイ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 船が進行し村がどんどんと小さくなっていく……

 村が見えなくなってもナミは村の方角を見つめていた……

 そんな彼女にキラは背中をポンと叩き声を掛ける。

 

「おかえり」

 

 キラが笑顔で言うとナミも笑顔でこう返す……

 

「ただいま」

「ナミさーん!特製ドリンクできたよ~。」

 

 サンジの気持ち悪い声が聞こえたと思うと手にはグラスを持っている。

 彼もナミが戻ってくれて嬉しいのだろう……

 

 船のへりへと腰を掛けキラは空を見つめる……

 太陽がさんさんと降り注ぐ……今日も暑くなりそうだ。

 空を見つめていると……大きな鳥が視界に入る。

 新聞を運んできたようだ。

 お金を鳥のカバンに入れてやりキラは新聞を受け取るとナミへと渡す。

 仕事を終えたのか新聞をもらうと鳥は飛び去っていった。

 渡された新聞にナミは目を通し始める。

 パラパラとナミが新聞をめくっていると……紙切れが2枚落ちた。

 キラはそっと手に取ると驚きの表情を浮かべる……それはルフィの手配書だったのだ。

 ルフィが何事かとキラの手元を覗き込むと……大声を上げ笑い始めた。

 

「俺、3000万ベリーだってよ!なっはっはっは!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 モンキー・D・ルフィ

 

 

 懸賞金:3000万ベリー

_____________________

 

 ナミは大きくため息を吐く……それもそのはず懸賞金があがると言う事はそれだけ狙われやすくなるということだ。

 それもわからず大笑いするルフィに彼女も呆れるしかないのだろう……

 ウソップがもう一枚の紙はなんなのかとキラの手元を覗き込む……と……

 

「ええええええええ!!!」

 

 突然ウソップが驚きの声を上げる。

 耳元で大声を出された為キラは耳を押さえた。

 

「キ、キラ……すげェことになってるぞ……」

 

 首をかしげもう一枚の手配書へと目をやると……キラは驚きの表情を浮かべる……そこには自分の姿があったのだ。

 特段自分は懸賞金のかかっている敵など倒していないはず……

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 旋律のキラ

 

 懸賞金:6000万ベリー

_____________________

 

 ルフィがキラに尊敬のまなざしを向けるが……別に褒められたものではない……

 大きくため息を吐きキラは手配書を見つめた。

 どうやらスパイダーには懸賞金がついていたようだ……だがあの戦闘は誰にも見られてはいないはず……

 

「一体……だれが……」

 

 自分の手配書をキラは破り捨てる。

 

「おい、島がみえるぞ。」

 

 ゾロがナミに声を掛けた。

 あの島はローグタウン海賊王が処刑された処刑台がある。

 ここが見えてきたということは偉大なる航路まであと少し……ルフィ達は、ローグタウンへと上陸した。



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第十四話 ローグタウン出港 ※8月27日修正

ローグタウンについた俺たち。

各々の目的は?

※8月27日修正


 ローグタウン……始まりと終わりの街……

 イーストブルーから偉大なる航路へ行く為には絶対に通らなくてはならない場所だ。

 この街には処刑台がある。

 海賊王ゴールドロジャーが笑いながら処刑された場所だ。

 ルフィは処刑台を見たがっていた。

 海賊王を目指すものとしては当然かもしれない。

 サンジはこれからの航海に必要な食材を買い足しに。

 ウソップは新たな武器を作る為の材料集めにと各々が目的を果たす為バラバラに行動することとなった。

 

 処刑台へと向かうルフィの後を追おうと歩き始めたキラだったが……思い切り腕を引っ張られ処刑台とは逆方向へと進んでいく。

 誰がキラの腕を引っ張っているのか……もちろん彼女だ。

 

「私の買い物に付き合ってくれるわよね?」

 

 ナミが満面の笑みをキラへと向ける……口元は笑っているが目は笑っていない……

 断れば自分はただではすまないだろう……

 そう悟ったキラはただ黙って頷いた。

 

「ありがと♥」

 

 自分達の船で誰が一番えらいのか……麦わら海賊団ではどうやら航海士が一番偉いようである……

 しばらく腕を引っ張られ歩くと服屋が並んでいるのが目に入った。

 ナミは服を買いに着たらしい。

 店に入るとすぐにナミは服を大量に腕に抱え試着室へと入っていく……

 

「キラ、これどお?似合う?」

 

 一着一着試着してはキラへと感想を求める……

 キラが適当に返事をすると鋭い視線が向けられた……

 視線を合わさぬようしばらくキラが下をむいていると……

 

「あっ、これキラに似合いそう!」

 

 なぜ自分と思いキラが顔を上げると……フリルのついた白いワンピースを手に取りナミは怪しい笑みを浮かべていた……

 

「それ……レディース……」

 

 出口へとキラは二歩三歩と後退していく……

 

「あんたカワイイ顔してるから大丈夫!着てみなさいよ♥」

 

 ナミがキラの動きに気づき一気に近づいてくる……キラは自分の中で最高速で一気に街を駆け抜けた……

 とりあえずナミのいる店が見えなくなるまで走り近くにある武器屋へと飛び込んだ。

 大きく息を吐き床へと座り込む……

 

「なんで俺がワンピースを……」

「ワンピース?」

 

 店の刀売り場にはゾロの姿があった。

 どうやら刀を選んでいるようだ。

 

「買うのか?」

「ああ」

 

 それだけ言うとゾロは、刀を選び始める。

 ゾロの刀は鷹の目との戦闘で砕けてしまい……今は一本しかない状態であった。

 三刀流のロロノア・ゾロが一本では格好もつかない。

 色々な武器があるようだ……キラはゾロの後ろを付いていきながら店を見回っていると店主が声を掛けて来る。

 

「綺麗なお嬢さん。何をお探しだい?」

 

 お嬢さんと言う言葉に……キラは沸きあがってくる殺意を抑えながら言葉を返す。

 

「付き添いみたいなもんかな」

 

 キラがゾロをを指さすと店主はあからさまに嫌そうな顔をする。

 

「ああ、あの文なしのツレか」

 

 確かにゾロはあまりお金を持っていないかもしれないが……あからさますぎる気が……

 

 しばらくゾロとともに刀を見ていたが……さすがに買わないのに見ているのはつらい……

 刀を眺めているゾロに声を掛けるとキラはルフィの所に向かうことにした。

 

 処刑台への道を進みながらナミが来ていないか用心をしていると背後から人の気配を感じる……

 まさかと思い振り向くがそこには……

 

「スパイダー……」

「旋律……てめぇも来てたのか」

 

 スパイダーは嫌みったらしくニヤッと笑うとキラの手配書を突きつける。

 

「上がってたみてぇだな懸賞金、何やらかしたんだよ」

 

 どうやらこの男が原因で懸賞金が上がったのではないようだ……では誰が……疑いの目でスパイダーを見ながらキラは処刑台へと進んでいく……

 彼が……スパイダーが原因ではないのならここで始末する必要もないだろう……

 しばらく進み振り返るとそこにはスパイダーの姿はなかった。

 奴も偉大なる航路へと行こうというのだろうか……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~処刑台(ロジャーが処刑された場所)~

 

 処刑台へとたどりつくと処刑台の上に人の姿があった……

 目を凝らして確認すると……それは処刑台に拘束されるルフィ……

 

「ル、ルフィ!?」

 

 キラが処刑台へと向かおうとするともう一つの人影に気づく。

 ルフィはそいつに処刑されそうになっているようだ。

 声が聞こえるので振り返るとゾロとサンジも処刑台へと向かっている。

 人ごみを掻き分け処刑台へと進んでいくうちにもう一人の姿が見えてくる……それはバギーの姿だった。

 彼はルフィに倒されてはいたが殺されたわけではなかったのだ。

 これは、その恨みということか……キラが駆け寄るよりも早くバギーが剣を振り上げ処刑の準備をする。

 処刑台の前は野次馬でごった返している……思ったより前へと進めない……

 ルフィはキラの姿を見つめると笑顔を浮かべ口を開く。

 

「わりぃ!俺死んだ!シシシシ!」

「……ッ!?死なせるかよ!」

 

 人々の肩から肩へと飛び移りながらキラは処刑台へと向かっていく……

 キラの姿に気づいたバギーは急ぎ剣を振り上げる……

 

「ハデに死ねェ!!!」

 

 突然大粒の雨が降り始め……落雷の音が鳴り響く……

 人々は空を見上げた……バギーも突然の出来事に空を見上げる……

 剣を振り上げたままだったのがいけなかったのか……鋭い刃に落雷が降り注ぐ……

 バギーの悲鳴と共に……処刑台は崩れさった……

 崩れた処刑台の瓦礫の中から人影が姿を現す……

 

「なはははは!生きてるぞ!儲け!」

 

 瓦礫の中から姿を現したのはルフィだった。

 キラはルフィに歩み寄ると頭を拳で小突く……

 

「ったく……悪運の強いやつ……」

 

 顔を見合わせ二人はクスッっと笑った。

 大勢の足音が迫ってくる……

 海軍がルフィ達の行く手を阻む……

 ゾロ、サンジが道をこじ開ける……

 倒しても倒しても数が減らない。

 だがこちらも止まることなどない。

 何十人海兵が行く手を阻もうとも彼らには関係なかった。

 メリー号まであと少しという所で女性の海軍が立ち塞がる。

 

『たしぎ曹長!!!』

 

 曹長……ならば少しは腕が立つのだろう……

 キラがたしぎへ近づこうとするがゾロがそれを静止した。

 

「おめぇら先行ってろ」

 

 大きく頷くとルフィ達はここをゾロに任せて船へと向かう。

 再び……行く手に立ち塞がるものがいる……葉巻を咥えた白髪の男……

 

「海軍大佐……白猟のスモーカー……」

 

 スモーカーの姿を見たキラは立ち止まる……

 この男は一筋縄ではいかない……

 キラの姿に気づいたスモーカーが口を開く

 

「旋律のキラか……久しぶりだな……」

 

 背中にある十手を構えスモーカーはこちらを睨み付けた。

 大きく息を吐きキラは一定の距離を保つ。

 先に仕掛けたのはスモーカーだった。

 

『ホワイトブロー!!!』

 

 煙となった拳がキラへと襲い掛かろうとした瞬間……

 

『ゴムゴムの銃!!!』

 

 ルフィの拳がスモーカーの煙を打ち消す……

 

「ルフィ!何してる!逃げろ!」

 

 怒鳴り声を上げキラはルフィを見つめるが……彼は首を横に振り逃げようとはしなかった。

 サンジにルフィと一緒に逃げるよう指示するが……

 

「俺もキラが逃げなきゃ逃げるつもりはねぇ……お前自分を犠牲に俺らを逃がすつもりだろ」

 

 彼らは気づいていたキラが自分を犠牲にし逃がそうとしていることを……それだけスモーカーは手ごわい相手だ……

 

「絶対に帰る……約束する……だから行け!」

 

 2人は頷き……船へと向かっていく……

 キラは笑顔でそれを見送ると……スモーカーへ鋭い視線を向けた。

 彼の気迫にスモーカーはあせりの色を浮かべる……

 自分は……この男に負けるのではないか……スモーカーの頭を敗北が支配した……

 

「どうした……?」

「クッ……なんだってんだ……クソ!」

 

 スモーカーは頭を横に振ると……敗北のイメージを払拭しようと十手を持ちキラへと襲い掛かる……

 見え透いた攻撃にキラはため息を吐いた……海軍大佐ともあろうものが……この程度か……と……

 拳に力を込めると……キラはスモーカーを殴り飛ばす。

 口から血を吹き出しスモーカーは驚きの声を上げた……

 

「お前……この俺に攻撃を……!?」

 

 モクモクの実の煙人間……スモーカーは悪魔の実自然系の能力者である。

 自然系はいかなる攻撃も無効化する……なのに何故彼は攻撃を当てることが出来たのか……

 不適な笑みを浮かべキラは地に膝をつくスモーカーを見下ろした。

 

「次は、本気で……!?」

 

 途中でキラは言葉を詰まらせた……気づくと後ろに人が立っていたからだ……戦闘中とはいえ自分が気づかないのは……ありえない……

 スモーカーはキラの背後に立つ人間に見覚えがあった。

 

「ど、ドラゴン……」

 

 ドラゴンと呼ばれた男はキラを見つめると「行け」と小さく洩らした……キラは頷くとこちらへと向かってくるゾロと合流する。

 2人は船へと全速力で向かった……早くしなければ海軍によって海から出られなくなってしまう……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ゴーイングメリー号~

 

「キラとゾロが来ないぞ!ル、ルフィどうする!?」

「待つ!キラは、絶対に来るって言ってた!」

 

 船の上ではウソップとルフィが出航するか否かで意見を交わらせていた。

 一人陸を見つめていたナミは人影を見つけ口を開く。

 

「ねぇ!あれじゃない!?」

 

 2人は、船へと跳び乗り息を切らせ座り込む。

 キラは呼吸を整えると大声を上げる。

 

「船を出せ!逃げるぞ!」

 

 メリー号はローグタウンを出港した。

 大きく息を吐きキラは安堵の表情を浮かべる……

 

「キラ!信じてたぞ。シシシシシ!」

 

 それだけ言うとルフィは拳を突き出す……

 笑顔でキラは拳を突き出しルフィと拳をぶつける。

 

「見えてきたな。ルフィ。」

「ん?何が?」

 

 不思議そうな顔をするルフィにキラは笑顔で告げた。

 

「偉大なる航路への道標さ。」

 

 キラが指をさす先に光が見える。

 

「進水式でもやるか!」

 

 サンジはそう言うと樽を運んでくる……

 座っていた腰を上げキラは樽へと歩み寄った。

 それぞれが船の中央へと集まり樽を囲んだ。

 

「俺は、オールブルーを。」

 

 自分の目標を口にするとサンジは樽に足を置く。

 

「俺は、海賊王!」

 

「俺は、大剣豪に。」

 

「私は、世界地図を書くため。」

 

「俺は、勇敢なる海の戦士になる!」

 

 みんながキラを見つめる中、最後に樽に足を置くと大声を上げる。

 

『いくぞ!偉大なる航路!!!』



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~キャラ設定(これから先変更有)~

キラの容姿についての質問がありましたので

書こうと思います。


【名前・異名・所属】

 

 キラ 

 旋律のキラ

 麦わら海賊団副船長

 

 

【容姿・身体的特徴】

 

 身長:175cm

 体重: 60kg

 

 年齢:20歳

 

 容姿:女性に間違われることが多く中性というよりは

    女性のような容姿をしている。

    本人としては、女性に間違われることを嫌う。

    サンジ曰く「騙されちまった!」

    ナミ曰く「女装させたら世界一ね!」

    ルフィ曰く「キラ、すげえええ!!!」

 

 特徴:金色の腰まである長い髪を束ねている。

    紫色の瞳が特徴

    

 服装:青いデニムに白いワイシャツがほぼ固定。

    服装には興味がなく戦いやすい格好ならばいいようだ。

 

 

【過去】

 

 バギー海賊団の副船長

 クロネコ海賊団戦闘員    



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第十五話 偉大なる航路 ※8月28日修正

ローグタウン出港後、目指すは偉大なる航路。

※8月28日修正


 嵐の中偉大なる航路を目指すメリー号……

 

 船の上では偉大なる航路への入り口それについて全員で話し合っていたとき……キラの一言によって全員の目が点になる……

 

「もう一度言うぞ……偉大なる航路の入り口は山だ」

『山!?』

 

 ナミとキラ以外のものが驚きの声を上げた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 船室でのことだ。

 全員で話し合う前にキラとナミで海図を広げ意見を交換しあっていた。

 偉大なる航路から来たキラは山を登らなければならないことを知っている……だが自分の記憶は曖昧だ。

 なので先にナミに確認したかった。

 そして二人で話し合った結論が……

 

「どうやら、このリヴァースマウンテンに運河があるようなのよ」

 

 この回答だった。

 運河を登り偉大なる航路へ……海図を見て何度もお互いに確認した間違いはない。

 

「運河があるって言ったって、船が山を登れるわけねぇだろ!」

 

 ウソップが強い口調でそう口にするとナミは静かに答える。

 

「だけど海図には、そう描いてあるのよ。」

 

 黙って話を聞いているキラだったが……彼にはほかにも入る方法がわかっていた……がそれは危険が大きすぎるため口には出さないようにしていた。

 

「南へ下ればどっからでも入れんじゃねぇのか?」

 

 ゾロの一言にキラは大声を上げる。

 

「それはダメだ!」

 

 突然大声を上げた為……全員が静まり返る……

 ふと何かに気づきキラは空を見上げた……

 嵐が……止まった……

 

「キラ……これって……」

 

 ナミの顔から血の気が引いていく……

 

「凪の帯に入っちまった……」

 

 青ざめるキラへルフィは首を傾げ質問する。

 

「凪の帯ってなん……!?」

 

 そこまで言ってルフィの言葉は止まった。

 大きな水しぶきが上がり……海面から大型海王類が姿を現す。

 

「無風地帯……そして大型海王類の巣だ」

 

 数回頷くとキラは大きくため息を吐き肩を竦めた。

 お手上げの表情を見せたキラだが海王類を上から下まで眺めるとゆっくり口を開く。

 

「いいか……こいつらが潜った瞬間全力で船を漕げ……」

 

 全員が頷き息を呑む……

 再び水しぶきを上げ海王類が沈んだ……

 

「漕げえええええええ!!!!」

 

 キラの一言に男達は全力で船を漕ぐ……再び嵐の地帯へとメリー号は戻った……どうやら凪の帯を脱出したようだ。

 ぐったりとする男達を尻目にナミは声を上げる。

 

「あんたたち赤い土の大陸に全速全身!」

 

 男達(サンジ以外)はナミを見つめ声を揃えてこう言った。

 

『鬼め……』

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~赤い土の大陸~

 

「吸い込まれてる……海流だ!舵を取れ!」

 

 大きな海流がメリー号を飲み込もうと口を広げるが……キラは細かく的確な指示を各員へと投げかける。

 何度も危ない場面はあるが着々と船は進んでいく……

 

「キラ!これ……大丈夫なのか!?」

 

 ウソップが情けない顔をしてキラに声を掛けるが……笑顔でこう答える。

 

「ま、ダメだったら全員海の藻屑だな」

 

 ニコッっと笑い恐いことを言うキラにウソップは恐怖を覚えた。

 この男に恐怖心はないのだろうか……

 

「運河の入口だ!ずれてるぞ!もっと右!」

 

 指示通りにウソップとサンジが面舵を切る。

 海流により舵は重みを増していた……ボキッと言う鈍い音が船に響く……

 青ざめるウソップの手には舵が握られていた……

 舵が折れた……このままだと岩にぶつかる……

 舌打ちをしたキラはルフィを見つめた。

 

「任せろ!」

 

 ルフィが船と障害物の間へと飛び込んで行く……

 

『ゴムゴムの風船!!!』

 

 反動で船の進路が元へと戻る。

 船の外へと投げ出されたルフィにキラは手を差し伸べた……

 しっかりとキラの腕を握り締めルフィはデッキへと戻る。

 よくやったとルフィの背中をキラは強く叩く。

 

 運河の出口が見える……

 メリー号は速度を緩めることなく真っ直ぐに出口へと向かっていく……

 各々が笑顔を見せ始める……ついに偉大なる航路……そう思った矢先……

 

「あ、あれは……?」

 

 大きな山が前方に姿を現す……

 そんなわけがないとキラはナミを見つめるが彼女も信じられないといった顔を見せていた。

 ブォオオオオオ!!!

 大きな鳴き声が聞こえる……これは……?

 

「山じゃない!クジラだ!」

 

 サンジが大声を上げる。

 大声を上げキラがウソップに指示をだすが……

 

「左だ!左へ抜けるぞ!とり舵だ!」

「舵折れてるんだよ!」

 

 舌打ちをするとキラはゾロにウソップとサンジへ手を貸すよう指示を出す。

 しかし……まったく船は曲がりそうにない……ぶつかる……と……

 ドウンと大砲の音が海上に響く……

 何事かと船上を見渡すと……ルフィがクジラに向けて大砲を撃っていた。

 

「これで止まるだろ。」

 

 大きくため息を吐きキラは頭を抱える……

 完全にクジラを刺激してしまった……

 クジラに船首がぶつかり……デッキを転がる……

 

 ブゥオオオオオ!!!

 こちらに気づいたクジラは鳴き声を上げる……また少しでも刺激すると……まずい……

 息を呑みキラはクジラの動向を見つめた……

 ルフィは折れた船首を見つめ小刻みに震えている……顔を上げるとクジラを睨み付け……

 

「俺の特等席に何すんだ!!!」

 

 クジラの目を思い切り殴りつける……

 終わった……キラはがっくりと肩を落とし天を仰ぐ……

 

 「あいつが俺の特等席を壊すからだ!」

 

 船首を指差しながらルフィが叫ぶ。

 刺激してしまったせいなのかクジラが大口を空けている。

 どうやらメリー号を飲み込む気らしい……

 船はクジラの口元へと吸い寄せられていく……

 

「ヤバイ!飲み込まれるぞ!!!」

 

 ゾロの掛け声むなしく……メリー号はクジラに飲み込まれてしまった。

 なぜかルフィだけを残して……



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第十六話 誓いの歌 ※8月28日修正

クジラに飲み込まれた俺たち。

これから一体どうなる?

※8月28日修正


 クジラに飲み込まれはしたもののどこにも怪我はなく全員無事だった。

 ただ……ルフィを外に残してきたことがキラは心配だった……

 なんとか脱出する方法はないかとキラは辺りを見回す……と…… 

 全員が顔を見合わせ首を傾げた……

 彼らの視線の先には……なぜか……家がある。

 なぜクジラの胃の中に家が……などと思っていると家の扉が開かれた……

 誰か人が出てくるようだ。

 もしかしたら脱出方法を知っているかもしれないとメリー号を家の近くへと寄せる。

 

 しばらくして家から出てきたのは……爺さんだった……なんでこんなところに……

 全員と顔を見合わせ自分が話しをつけると合図をした。

 船べりに立ちキラは爺さんに声を掛けてみる。

 

「すいません。」

「何だ……?」

 

 爺さんには中々の威圧感があった。

 ただものではないのだろう……キラは少し身構えながら話を続ける。

 

「あのあなたは、ここで何を?」

 

 キラの質問に爺さんは鋭い視線を向けるとゆっくりと口を開いた。

 

「質問する場合は、まずは自分が名乗るものではないのか?」

「ああ、すいません。私は……」

 

 なんという失礼をしたのだと思いキラが名乗ろうとすると……

 

「私の名は、クロッカス。双子岬の灯台守だ。」

 

 おかしな爺さんだ……とキラは半ばあきれ返っていた。

 名乗れと言っておきながら先に何故名乗るのか……だが他にも聞かなければならないことがある為、キラは我慢して話を続ける。

 

「出口とかってあったりは……?」

 

 キラの質問に黙って見ていたサンジが口を挟む。

 

「キラ、ここはクジラの腹の中だぞ。出口なんて……」

「出口ならあそこだ。」

 

 クロッカスが指差す先に通路のようなものがあった。

 このクジラはどういう構造になってんだ……?

 

 出口も聞いたのでクロッカスに挨拶をし進もうとすると……ドォンと大きな音と共にクジラが揺れる……

 何があったのか……またルフィが暴れ始めたのでは……

 キラが苦い表情をしていると……クロッカスが口を開く。

 

「クジラが赤い土の大陸に頭をぶつけ始めた……」

 

 どういうことなのかとクロッカスに質問しようと口を開こうした瞬間……

 大きな音をたてクロッカスが胃酸の中へと飛び込む。

 このままでは溶けてしまう……!

 キラが助けようと飛び込もうとすると……

 

『うわああああああ!!!』

 

 叫び声と共に胃酸の海へとルフィと変な二人組みが落ちていく……

 ゾロが唖然とその光景を見つめていると……

 

「ロロノア」

 

 助けに行けとばかりにキラがルフィを指差す。

 ため息を吐くとゾロは頷き胃酸へと飛び込んだ。

 しばらくするとゾロがルフィと他二名を抱え戻ってくる。

 怪しげな二人組みを見つめる……男と女のコンビのようだ。

 それにしても……女の方の顔……見たことあるような気が……キラは思い出そうとするが頭痛がする為……思い出すのを止めておいた。

 突然クロッカスは怪しい2人の姿をみると声をあげる。

 

「私の目が黒いうちは、ラブーンには指一本ふれさせん!」

 

 何を言い出したのだろうと……全員の目がクロッカスに集中する中……2人組はバズーカを取り出したかと思うと……

 狙いをさだめクジラの胃に向かって放つ。

 

「させるか!」

 

 クロッカスは自分の身を盾にして砲弾へとぶつかる。

 

「なんという無茶を……」

 

 信じられないといった表情を浮かべるキラの隣では2人組はまたも懲りずにバズーカを構えると……

 

「守りたければ守れ!こいつは、我らの食料にするのだ!」

 

 ゲラゲラと笑いながら2人組の男の方が叫ぶ。

 回し蹴りが男の顔面へとヒットする……

 

「あぁ~胸糞悪くて脚が出ちゃった……」

 

 キラがボソッとそういうと男はゆっくりと背後に倒れた。

 女のほうがギャアギャアと騒ぎ出すが……ルフィが脳天に拳を落とす……

 

 気絶した2人をキラは縄で縛り上げると胃酸の海へと飛び込みクロッカスを回収する……

 海から上がると手当てをするためクロッカスの家へと上陸した。

 このクジラ……ラブーンについてキラはベットで横になるクロッカスへ質問をする。

 

「このクジラについて教えてもらってもいいですか?」

「うむ、このクジラは……」

 

 ラブーンの過去……クロッカスさんの過去……そして彼らに纏わる海賊の話などを聞かせてもらった。

 話を聞き終えるとメリー号は出口からラブーンの外へと出る。

 長い間空を見ていなかった気がする……キラは大きく背伸びをした……すると突然頭痛が襲う……

 何かを思い出そうとしたとき……必ずといっていいほど痛みが走る。

 平然を装いキラは船室へと向かう……

 

「どうしたキラ?体調でも悪いのか?」

 

 異変に気づいたウソップが声を掛けるが大丈夫だと笑顔を見せた。

 船室の扉を開けハンモックへと横になる……

 頭が割れそうに痛い……痛みの原因はわかっている……あの2人組だ……

 思い出そうとすればするほど痛みは強くなった。

 痛みでキラの意識は少しずつ……遠のいていった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 船室への扉をノックする……男性人用の部屋をノックして入るなど男どもはしないだろう……ということは男以外のものがドアをノックしている。

 

「キラ、入るわよ。あれ?寝てる……」

 

 部屋へ入ったナミがキラの顔を覗き込む。

 美しい顔立ちにナミの頬は赤く染まる……

 

「ホントムカつくくらい綺麗な顔してる……」

 

 指先で顔を数回つつくとキラは寝返りをうった。

 クスクスと笑いナミはキラの体を揺する。

 

「キラ、これからの航海の計画なんだけど……」

 

 揺すってもなお気持ちよさそうな顔をして眠っていた……

 ナミは部屋をキョロキョロと見回すと……

 

「全然起きないわね……お、起きないとキスするわよ……」

 

 徐々に顔を近づけていく……20㎝……15cm……10cm……

 あと数センチという所でキラの瞳は開かれる……

 ナミはすごい勢いで後退していく。

 

「あれ……?何してんの……?」

 

 顔を真っ赤にして下を向くナミにハンモックから飛び降り近づいていくと……

 

「う、うるさい!」

 

 頭を思い切り叩かれる……

 

「航海の計画たてるわよ!来なさい!」

 

 キラが困惑の表情を浮かべているとナミは勢いよく船室を出て行ってしまった。

 なんだったんだろうか……頭を掻きながらキラが船室から出てくるとウソップが……姿を見つけ声を掛ける。

 

「キラ!誰も修理手伝ってくれねぇんだよ!助けてくれ!」

 

 笑顔でウソップの手伝いをしようと行こうとすると……ナミに引っ張られ椅子に無理矢理座らされた。

 海図を広げたナミがコンパスを取り出す。

 

「それじゃあ、まずは……え!?」

 

 コンパスを見つめたナミの表情が強張る……

 ナミの表情に気づいたキラが視線を落とすと……コンパスの針がグルグル回っていた。

 ああそれか……というような表情を浮かべキラは話始める。

 島々が鉱物をおおく含んでいて航路全域に磁気異常をきたしている為、コンパスは偉大なる航路では通用しない。

 海流や風には、恒常性がないなど次々と知識が出てくる。

 ある程度話し終えたキラが席を立つ……と思い出したようにナミに問いかけた。

 

「そうだログポースは持ってるかい?」

「ログポース?」

 

 小首を傾げナミは聞き返す。

 笑顔でキラは答える。

 

「磁気を記録できるコンパスで偉大なる航路を旅するには、絶対に必要なものなんだ。」

 

 黙って聞いていたルフィがふとポケットから何か取り出すとキラへ見せた。

 

「さっきの二人組みが落としていったんだけどよ……それって、こんなヤツか?」

 

 数回頷くとキラはルフィの手元からログポースを取りナミに渡す。

 辺りを見回しクロッカスの姿を見つけるとキラは声を掛けナミにログポースの使い方の説明をお願いする。

 クロッカスが快く承諾してくれるとキラは笑顔を浮かべた。

 

 船へと戻りギターを手に取ったキラがラブーンの元へと歩み寄る。

 

「音楽好きか?」

 

 ラブーンはコクコクと頷く……額を軽く撫でキラは弦に手を添えた……

 ゆっくりとやさしくギターを弾く……とラブーンがそれに合わせて吠え始める。

 キラもラブーンの声に合わせゆっくりと歌い始めた……

 音楽は動物とでも通じ合える……そう信じて……

 

 しばらくラブーンと戯れていたが楽しい時間には終わりがある。

 ナミの呼ぶ声がする……出発の時間がやってきたようだ。

 出航するギリギリまでラブーンはキラと共に歌っていた。

 船に跳び乗るとキラはラブーンへ宣言する。

 

「次来たときは新しい”旋律”を奏でてやる。」

 

 頷くラブーンに笑顔を見せ船は双子岬を後にした……

 

 岬がもう見えない場所まで船は来た……だがまだラブーンには届くかもしれない……キラはギターを弾く……。

 どこかでラブーンの声が聞こえた気がする……

 大きく息を吐くとキラは真っ直ぐに前を見つめた。

 ギターを鳴らし……大声で歌う……

 再会を誓う歌がラブーンの元まで届くようにと……



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第十七話 ウィスキーピークでの戦いと旧友との再会 ※8月29日修正

ラブーンと別れログを頼りに進む一行。

次の場所は?

※8月29日修正


 ラブーンと別れ船はログポースの示す航路を進んでいた。

 今日も快晴である。

 海を見つめるキラにナミは声を掛けた。

 

「キラ、なんでそんなに偉大なる航路について詳しいの?」

「たぶん……俺は偉大なる航路出身なのかもな……」

 

 自分のことなのに他人のことのような言い方をするキラにナミは違和感を感じた……

 彼は言えなかった……自分にはあまり記憶がないことを……

 覚えていることも……自分がとある島で目覚めた後のことだけ……それより前の記憶はほとんどない……

 ただ一つわかっていることは……自分には黒い過去があると言うことだけ……

 確信がない……だから……まだ言えない。

 ただいずれは思い出し話すときが来るかもしれない……そのとき……こいつらは一緒にいてくれるだろうか?

 まだ仲間と呼んでいてくれるだろうか……

 ボーッっと海を眺めているとナミがキラの肩を揺すっている。

 

「ちょっと……キラ!」

 

 我に返りナミの顔を見つめた。

 心配そうな表情を浮かべている……

 どうやら話しかけても長い間反応がなかったようだ。

 偉大なる航路に来てからと言うもの……頭痛が激しくなっている……

 頭を抱え大きく息を吐く。

 船首にいたルフィが大声を上げた。

 

「島がみえたぞ~!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 錨を下ろし上陸する……

 ここは歓迎の街ウィスキーピーク。

 海賊を歓迎する街だと言うが……そんなもの存在するわけがない。

 海賊を歓迎などありえない話だ。

 それはそうとあの怪しげな男女2人組みだがあいつらはウィスキーピークが見えてくると海へと飛び込んで姿を消してしまった。

 あの2人がいなくなったことには訳があるはず……表情を引き締めキラは大地を踏みしめる。

 

 街に入るや否や人々の熱烈な歓迎を受けた。

 町長のイガラッポイという男が一軒の小屋へと一味を通すとそこには……豪勢な食事、たくさんの綺麗な女性達、大量のアルコール……

 一部を除き麦わら一味はその歓迎をありがたく受け取った……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 夜が更け……一味も寝静まった頃……

 街では動きがあった……

 先ほどまで一緒に騒いでいた人々の姿は消え……街の外は殺気に満ちている……

 それに気づきもせず……一味は酔いつぶれまたは食いつぶれていた。

 麦わら一味が眠る小屋の外では先ほどの怪しげな2人組みが町長のイガラッポイと話し合っている……

 イガラッポイの手には一味の手配書が握られていた。

 2人組みは手配書に目をやると驚きの声を上げる。

 

「3000万!?」

「Mr9声が大きい!」

 

 イガラッポイに注意され2人組の男の方……Mr9と呼ばれた男は自分の大声に気づき口を塞ぐ。

 静かになったことを確認するとイガラッポイはもう一枚の手配書を2人に見せる……

 

「ろ!?6000万!!!」

「Msウェンズデー!」

 

 今度は2人組の女の方……Msウェンズデーが大声を上げた。

 あの優男が……6000万?

 3人は口々に何かの間違いだ……嘘だ……と口論を始める……

 

「楽しそうだな……混ぜてよ」

 

 小屋の壁にキラが背を預け立っていた。

 キラの姿を見つけると3人と一緒にいたシスターが声を上げる。

 

「そ、そんな……だってあんなに飲んで……」

 

 飲んでなどいなかったキラは注がれる酒をゾロやナミの杯へと移していた。

 海賊を歓迎などありえない……そう思って最初から疑って掛かっていたのだ。

 

「残念……まぁ……もう一人起きてるのがいるみたいだけどな」

 

 屋根を見上げるとゾロが不適な笑みを浮かべ仁王立ちしていた。

 イガラッポイたちは身構えた……まさか上手くいかないとは考えていなかったのだろう……。

 

「さぁ……やろうぜ……バロックワークス」

 

 バロックワークス……その名前には聞き覚えがある……

 確か……諜報、暗殺、盗み、賞金稼ぎなど裏の仕事をしている秘密犯罪会社だ……

 

 ゾロの一言に3人は青ざめた……

 自分達の正体がばれている……生きては返すまい……

 たくさんの人影が街の隅々から現れる……

 彼らは先ほどまで自分達と宴をしていた人々だ。

 あっという間にゾロとキラは敵に取り囲まれる……

 取り囲まれたにも関わらず2人は不適な笑みを浮かべた。

 キラが敵の中央へと移動すると屋根の上からゾロも跳び降りお互いに背中を預ける……

 

「いくぞ……合わせろ!」

 

 体制を低くしゾロが刀を構えた……キラは頷き勢いよく体を捻った。

 

「鷹波!!!」

「旋!!!」

 

 突風が敵に襲い掛かる……悲鳴を上げ何十人もの賞金稼ぎが風圧に耐え切れず吹き飛んでいく……

 やるじゃないかとキラはゾロの肩をパンパンと叩く……

 ゾロは青ざめていた……キラと初めて組んで戦うが……

 

《クソ!キラの野郎なんてパワーだ!?化物か!?》

 

 圧倒的な力……なぜこれほどの男が今まで埋もれていたのか……

 黙ってキラの顔を見つめているとゾロの視線に気づき笑顔を見せる。

 

「ロロノア!あっちを頼む!」

 

 それだけ言うとキラは右の通路に走っていった。

 大きく息を吐きゾロは呟く……

 

「あの野郎……負けねぇぞ」

 

 クスッと笑うと左側の通路へとゾロは向かった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 何十人もの賞金稼ぎがキラの後を追ってくる……

 だが彼らには他の賞金稼ぎとは違った空気があった……

 キラは立ち止まると相手の方を振り向く。

 

「お前等……ルインか……」

 

 不適な笑みを浮かべると男達は腕をまくりルインのタトゥーをキラに見せつける。

 彼らがなぜここまでしつこく自分を追うのか……おおよそ検討も付かない……

 どうやら自分を諦めるつもりはないようだ……ならば……

 キラが間合いを詰めようとしたその時……

 

「やめなさい」

 

 一人の男がキラへ向かおうとした瞬間……暗闇の中から銀髪の男が現れ静止する……

 

「キリク様」

 

 男達はひざまづき頭を垂れた……

 そのキリクと呼ばれた男を見た瞬間……キラの頭痛は激しくなり……一部の記憶が蘇ってくる……

 自然にキラの口から言葉が出た。

 

「キリク……」

 

 キラに名前を呼ばれるとキリクはニッコリと微笑み口を開く。

 

「久しぶりですね……ユダ。いや今はキラでしたか?」

 

 ユダ……それは自分の過去の名前……

 笑みを浮かべキラは絶望した……この男キリクは……

 

「ルイン大将のお前が出てきたか……本気で俺を消すつもりか……?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 キリク

 

 ルイン大将

 

 長身と銀髪、切れ長の目が特徴。

 キツネ顔。

____________________

 

 両手を広げキリクは笑顔を見せ口を開く

 

「単刀直入に申しましょう……ルインに戻ってきなさい……」

 

 それを言われた瞬間……過去の記憶が一気にフラッシュバックする……思い出した……自分はルイン側の……組織の人間だった。

 しかも、三人しかいない大将の一人……

 

「あなたの力は私が一番わかっている……だからこそ争いたくは……」

 

 キラは大声を上げ笑い始める……

 自分が何故命を狙われているのか……それは……組織のトップにいた自分の力が他方に回るのを防ぐ為……

 手で顔を覆いキラは笑い続ける……まるで壊れたおもちゃのように……

 キリクは大きく息を吐くと腰の刀に手を置いた。

 

「話にならないようですね……では……死ね!」

 

 突風がキラの顔の横を通る。

 顔を覆っていた手から血が滴り落ちた……

 白い刀の剣先をキラへと向けニッコリと微笑む。

 

「覚えてますか?この白刀の切れ味。」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 白刀(長刀)

 

 ルインが対能力者用に造り上げた刀。

 

 刀身には海楼石と特殊加工金属が使われている。

__________________________

 

 我に返りキラは間合いを詰め腹部目掛け拳を突き出す。

 白刀は懐に飛び込めば振り切れない……そう考えたのだ……

 考えが当たったのかキリクに動きがない……もらった……そう思った瞬間……

 地面を突き破り棘の生えた植物が何十本も飛び出してくる。

 反応が早くキラは寸前のところで植物をかわす。

 

「さすが……ですねぇ……」

 

 そういいながらキリクは自分の左腕を前方に突き出すと白刀で切り落とした……突然の光景にキラは動きが止まってしまう……

 驚くキラをキリクはクスクスと笑いながら見つめていた……

 肘から下の部分がない……なのに何故……血が噴出さないのか……

 突然……腕の切り落とした部分から植物が飛び出してくる。

 植物の鋭い突きを右に受け流し……腕がない左側から再び間合いを詰めようと接近する。

 口元を緩め……笑みを浮かべると……キリクは叫ぶ……

 

「馬鹿め!」

 

 左腕から生えた植物が腕の形を形成すると……腕が再生する。

 すばやく逆手に刀を持ち変えキリクは……刃を振り上げた……

 

『燕返し!!!』

「剛!」

 

 回避が間に合わない……そう判断したキラは防御を固めるが……

 勢いよく後ろに吹き飛ばされるとキラは民家の壁に背中を強打する。

 腕に意識を集中し硬化したため背中の防御は疎かだった……痛みがキラの体に襲い掛かった。

 大声を上げキリクは笑い……キラを見下ろし口を開く。

 

「ハハハハハハ!鈍ったな!ユダ!ああ今は……弱いキラ君だったかな」

 

 今の自分ではこの男には勝てない……そう思った矢先……

 ふと……脳裏に真っ赤な月が浮かび上がる……

 

「さぁ……お別れと行こう……」

 

 白刀をキラの首元へと突きつけキリクは薄ら笑いを浮かべた……

 不気味と言う言葉が何よりも似合うだろう。

 刀を振り上げ口を開く……

 

「さようなら……我が友よ……」

 

 それだけ言うとキリクは刀を振り下ろす……が……

 腕に当たった感触がない……

 振り切ったはずの刀は腕ごとキリクの後方へと吹き飛んでいた……

 

「おや……死神復活……かな……?」

 

 キリクはキラの顔をみるとそう呟く……

 闇夜に爛々と輝き浮かび上がる赤き瞳……

 その瞳はキリクを捉えて離さない……

 舌なめずりをしキリクは笑みを浮かべた。

 

「おかえり……ユダ……」

 

 ゆらりとキラは立ち上がるとその赤き瞳にさらに力が加わる……

 キリクとキラの戦いを見ていたルインの戦闘員は涙を流し命乞いを始めた……

 恐怖が一帯を支配していく……

 首をグルグルと回すとキラは口を開く……

 

「殺す……」

 

 待ってましたとばかりにキリクは白刀を拾い上げキラへと向ける……

 2人が構え距離を詰めようとしたその時……

 

 街のほうから轟音が鳴り響く……

 

「ロ、ロ、ノア……?」

 

 轟音を聞いたキラの赤き瞳は影を潜めもとの紫色の瞳へと戻っていく……

 大きく舌打ちをしキリクは刀を腰に帯刀する。

 

 しばらく町の方を眺めていると……こちらへ何か飛んできた……

 地面へと落ちたそれを確認するとなんだか見たこともない男女だ。

 キラが首を傾げているとキリクが口を開く。

 

「バロックワークスのMr5とミス・バレンタインですね。」

 

 なんで知っているのか?

 不思議そうな顔をキラがキリクに向けるとニッコリと笑いこれでも裏組織の人間ですからと言うと踵を返す……

 キラに背を向け歩きながらキリクは声を上げる。

 

「今回は見逃してあげます……次はわかってますね……」

 

 追うことなど出来ない……キラはわかっていた……

 今の自分では勝てない……

 何かを思い出したのかキリクは立ち止まりこちらを振り向く

 

「次までにはあなたの”創造の力”思い出しておいてくださいね」

 

 ニッコリと微笑むとキリクは闇に消えていった。

 歯をくいしばり敗北をかみ締める……

 キラは倒れている2人組を放っておいて街へと向かった。



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第十八話 ウィスキーピーク出港 ※8月29日修正

キリクとの戦闘が終わり。

みんなのもとへと戻るキラ。

※8月29日修正


 頭痛が治まらない……記憶は戻ったのに何故だ……

 頭を抑えながらもと来た道を戻りキラはゾロの姿を探す……

 

「……ッ!?」

 

 痛みが激しくなり道端に膝をつく……

 大きく深呼吸し治まるのを待っていると……

 前方から誰かの呼ぶ声が聞こえる……

 視線を上げ前を向くとゾロがこちらに呼びかけていた。 

 

「おい!キラ!急げ!」

 

 それだけ言うとゾロはメリー号に向かい走り始める……

 何を急ぐのか……

 キラは言われたとおり痛みに耐えながらゾロの後を追う。

 なぜか船にはみんなすでに乗り込んでいた。

 船へとキラが到着すると無理矢理船へ押し込まれる。

 

 メリー号はすぐ出航する……何があったのか……聞きたいところだが……今はすべてがどうでもいい……

 船室の扉を開けるとキラはすぐさまハンモックへと横になる。

 頭痛のほかにも腹部に痛みがあるようだ……

 

 服をめくり腹部に手を当てる……抉られたような後がくっきりと付いていた。

 完全に防御したと思ったのだが……

 不思議なことに人間と言うものは先ほどまでは痛くはなかったのに傷を確認すると痛くなるものだ……激痛に顔が歪む。

 次は負けない……そう心に近いキラはゆっくりと目を閉じた。

 

 どれくらい時間がたったのだろう……ふと目を覚ますとサンジがキラの顔を覗き込んでいた……

 妙にサンジの顔が赤いのが気になるが……

 キラが目を覚ましたことに気づいたサンジが慌てて口を開く

 

「あ、朝飯できたぞ」

 

 ニッコリと微笑みキラは船室の扉を開けた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~デッキ~

 

 扉を開けるとルフィが朝食にがっついていた。

 クスクス笑いキラは席に着く。

 

「キラ!それもらっていいか!」

 

 ルフィがオムレツを指差しキラの方を見る。

 どうぞと言うと満面の笑みを浮かべ口に運ぼうとした瞬間…… 

 

『テメェは、食いすぎだ!』

 

 料理を運んでいたサンジに蹴り飛ばされる。

 皿を落とさず蹴るとはすごいバランス感覚だとキラが関心していると……

 ふと横にMsウェンズデーがいることに気づく。

 

「Msウェンズデー?何をしてる?」

 

 いつものふざけた格好ではない彼女に声を掛ける。

 普通の格好をしているとまだ少女だと実感した。

 

「あ、あの……」

 

 次の言葉を待っているとナミが口を挟む。

 

「キラ、これには事情があるのよ。」

 

 ナミからウィスキーピークでの一件を聞く。

 彼女が一国の姫……ネフェルタリ・ビビだと言う事……

 何故バロックワークスにいたのかと言うこと……

 彼女の国アラバスタの現状を……

 

 しばらく黙っていたキラは席を立つとビビの肩をポンポンと叩く。

 そして笑顔を見せビビに優しく声を掛けた。

 

「姫、この船に入れば安全ですよ。」

「ありがとう。でも、あなたたちに危険が」

 

 不安そうな顔をするビビにキラは首を横に振り気にしないでと告げる。

 温和なキラの性格にビビは少し安心感を覚えていた。

 サンジの手から料理の入った皿を取るとキラはビビの前へと置く。

 

「ウチのコック、バカだけど腕は一流なんですよ」

 

 ニッコリと微笑みキラはどうぞとナイフとフォークを渡す。

 ビビは一口料理を口にすると……美味しい……と声を洩らした。

 

「しっかりと栄養とらなきゃ、姫に倒れられたら俺達国のお尋ね者ですからね」

 

 キラがそう言うとビビは笑顔を見せる。

 やっと笑顔を見せてくれたビビにキラは胸を撫で下ろす……

 一国の姫がこんなに暗い顔をしていて言い訳がない……

 

 なぜか顔を真っ赤にしむくれているナミに歩み寄りログポースを確認する……

 次の行き先はリトルガーデン……

 表情を引き締めキラは強く拳を握り締めた。 



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第十九話 目覚めた能力 ※8月29日修正

キリクにやられた傷を隠しビビを歓迎するキラ。

リトルガーデンへ到着、これから何が待っているのか?

※8月29日修正


~リトルガーデン~

 

 照りつける太陽……辺り一面の森……ここがリトルガーデン

 森の奥がどうなっているのかまったく見えないほどの草木……

 完全なるジャングルだ……また迷子になるのだろうな……

 横目でキラは船べりへと腰掛けるゾロを見つめる。

 欠伸をするゾロに大きくため息を吐くと……茂みがガサガサと動く……

 何事かと身構えるが大型の虎が茂みから姿を現しただけだった。

 

「なんだ……虎か……」

 

 キラが視線を外すと突然虎が力なく倒れてしまう……

 その光景を見たナミとウソップは青ざめていた。

 大型の虎が簡単に倒れてしまう何かがこの森にはいるのだ。

 

「普通の島じゃないわね。船の上でログが溜まるのを待ちましょう」

 

 力強くナミが宣言しウソップも大きく頷いた。

 それにしてもログが溜まるまで次に行けないとは……面倒だ。

 そんなビビリ2人を尻目にルフィの目はランランと輝いていた。

 

「俺は、いくぞ!冒険だ!サンジ、弁当!」

 

 ルフィの発言にクスッっとキラは笑う。

 彼らしい発言だとそう思った矢先……

 

「私も一緒に行っていい?」

 

 信じられないことに……ビビが行くといい始めた……

 首を全力で横に振りキラは行かないよう説得するが……ルフィは……

 

「おう!いいぞ!付いて来い!」

 

 思い切りルフィの頭を引っぱたきキラはビビに向き直る。

 

「姫に何かあったら……どうするんです!」

「大丈夫!いざとなったらカルーがいるから」

 

 ニッコリと笑いビビは大きなカルガモを指差す。

 このカルガモはカルーといって子供の頃からのビビのお供らしい。

 ビビと一緒にこの船に増えた仲間の一人……いや一匹だ。

 悲しそうな顔でキラはカルーに手を伸ばす。

 

「かわいそうに。いざとなったら囮なんだな君は。」

 

 優しくカルーをなでながら話しかける。

 それを聞いたカルーはブルブルと振るえブンブンと首を横に振り始めた。

 どうやら行きたくないらしい。

 このカルガモも臆病なようだ。

 

「ク、クエー……」

 

 弱弱しくなくカルーに……

 

「行くわよね……カルー……?」

 

 鬼のような表情を見せる一国の姫……

 その表情に気圧され首を縦に振り自分も行くぞと泣きながらカルーはアピールする。

 可哀想な犠牲者が……

 二人と一匹は森の入り口へと移動する。

 

「よし、行ってくる!」

 

 ルフィとビビが森の中へと消えていった。

 心配だ……後を追わなくては……とキラが一歩踏み出そうとした瞬間……

 キリクにやられた傷がズキズキと痛み始めた。

 額からは脂汗がにじみ出る……

 

「大丈夫か?顔色悪いぞ?暖かいスープでも作るか?」

 

 異変に気づいたサンジが声を掛けるが……完全にキラに彼の声は届いていなかった……

 目は虚ろ……尋常じゃない汗……

 

「……あああああ!?」

 

 叫び声を上げたかと思うと突然キラは前のめりになり倒れこんだ。

 船上はパニックになっていた……

 ナミが急いで歩み寄りキラに声を掛けても反応はない……

 それどころか体は凄い熱を帯びている。

 ゾロが歩み寄りキラを背負うと船室のベットへと移動した……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~とある場所~

 

 自室でソファーに腰掛け本を読む銀髪の男……

 今読んでいる本は中々に面白い……サンダースという男の冒険譚なんだが空に島があるという……

 

「くだらないですね……」

 

 ソファーに本を置くと彼は窓の外を見つめる……

 彼はキラとの戦闘後ルイン本拠地へと戻った。

 ルイン本拠地の場所を知っているものなど組織の人間以外誰もいない……

 淹れられた紅茶を一口含むと扉がノックされる。

 

「どうぞ」

 

 扉が開くと兵は膝まづき口を開く

 

「報告です。キリク様総帥がお呼びです。」

 

 ニッコリと微笑むとキリクは頷き自室を出た。

 長い廊下を歩き大きな扉の前へとたどり着く。

 おおよそ察しは付いている……キラを始末しなかったことだろう……

 扉を開けキリクは膝をつく。

 

「総帥。お呼びでしょうか?」

 

 総帥の顔は誰も見たことがない……

 顔は鉄仮面で隠され体は鎧で固められている。

 微動だにしないことから兵の間では、中には誰も入ってはいないのではないだろうかと噂されるほどだ。

 

「何故キラを始末しなかった」

 

 頭を下げながらキリクはやはりと言う表情を浮かべた。

 何も言わず黙っていると総帥は言葉を続ける。

 

「かつての友に情でも湧いたか?」

「いえ……そんなことは……」

 

 キリクがそう言うと総帥はフンと鼻を鳴らし顔を上げろと合図を送った。

 顔を上げキリクは次の言葉を待つ。

 

「キラの力は目覚めていないだろうな?」

「はい……どうやらキラには記憶がないようです」

 

 ほうと洩らすと総帥は笑い声を上げた。

 

「海に落ちたショックか……いいざまだ」

「ですが……あの男は力がなくとも強い……」

 

 その一言に総帥の笑い声が止まり……

 冷たい空気が流れ始める……

 

「手はうってあるのだろうな……」

「はい……神経毒を刀に塗っておりましたので……今頃奴は苦しんでいるかと……」

 

 ニヤッとキリクが笑うと総帥から発せられていた冷たい空気は和らぎ……

 笑い声が部屋へ響き渡った……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ナミとウソップはキラの傷を見て思わず声を上げた……

 腹部の傷は肉を抉られ化膿している……

 毒のせいなのか傷は黒ずみ……熱を帯びていた……

 

「うぐぅ……!?」

 

 痛みでキラは上体を起こす。

 体の節々に痛みが走る……キリクめ……

 ふとビビとルフィのことを思い出し……起き上がろうとするがナミとウソップに静止される。

 心配そうな顔をする2人にキラは一言大丈夫と告げた。 

 

 2人は首を振り寝てるようキラを説得する……

 仕方なくキラが了承した……その時……

 ズン!とものすごい音と共に船が揺れた……音は外から聞こえる。

 顔を見合わせ2人はキラに絶対に寝てるよう言うと扉を開け外へと出て行く……

 しばらくすると……だいぶ外が静かになった。

 何かあったのかと重たい体を持ち上げドアノブに手を掛ける……

 扉を開け外に出るが……人の姿はない……

 

 胸騒ぎがしたのもつかの間……視界が歪む……

 その場に座り込み壁に背中を預け天を見上げる……

 このまま毒で死んでしまうのだろうか……

 それは嫌だななどと思いながらクスクスと笑っていると……

 視界に人の姿がある……

 

「ユダ様」

 

 聞き覚えのある声に目を細めなんとか見ようとするが……

 

「クッソ……」

「目が……見えないのですね……」

 

 声の主はキラに近づくと服の袖をまくる。

 抵抗する力もないキラに取り出した注射器の刺さった。

 不思議と体が少し軽くなったような気がする……

 じゃあ……今のは……血清……

 視界がはっきりし声の主の姿がはっきりと映る。

 そこには、全身ボロボロの少年が立っていた。

 キラははっきりとその名前を口にする……

 

「ジル……お前……どうして……?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ジル

 

 ルイン部隊長

 

 キラがRUIN所属だったころの部下

 細く小柄な青年。

 キラに心酔している。

____________________

 

「覚えていてくれたのですね……」

 

 瞳に大粒の涙を溜め……座り込みジルは嗚咽を洩らす……

 

「わ、私は……あなたに死んでほしくないんです……」

 

 彼のことは子供のころから本当の弟のように面倒を見てきた。

 キラは優しくジルの頭を撫で感謝の言葉を告げる。

 何度も何度も首を横に振り「いいんです」と口にした。

 だがそんな彼を組織は許すだろうか……

 

「ジル……お前大丈夫なのか?」

 

 思わずキラは口にしてしまう……大丈夫な訳がない……

 それは彼の姿が物語っていた……

 ジルは体のいたるところから出血していたのだ。

 

「平気です……覚悟していましたから……」

 

 笑顔を見せるジルにキラはただただ……謝ることしか出来なかった……

 

「ジル……すまない……本当にすまない……」

 

 首を横に振りキラの手を握る。

 

「私は、あなたの為ならどんなことも苦ではないんです……」

 

 お互いにクスッっと笑うとキラは口を開く。

 

「そうだ!どうせ組織には戻れないんだ俺と一緒に海賊やろう」

 

 突然の一言にジルは驚きの表情を浮かべるが……すごく嬉しそうな顔を見せ口を開く。

 

「はい!私をあなたのおそばにずっと……」

 

 ドンッ!っと銃声が森に響き渡る……

 座っていたキラはとびおき辺りを見回す……

 

「ジル……気をつけろ敵は……!?」

 

 口から血を噴出しジルが糸の切れた人形のように倒れこむ……

 腹部には血が滲み……弾は貫通しているようだった。

 キラはジルの傷を手で押さえ体を抱きかかえる。

 

「待ってろ……すぐに治療してやる……」

「キ、キラ様……」

 

 力強くジルがキラの服を掴む……

 痛みに耐えているのだろう……

 

『ハハハハハハ!裏切り者は、こうなるんだよ!』

 

 船首から声が聞こえる……

 顔を上げると視線の先に……汚い笑みを浮かべた男の姿があった。

 

「よぉ。ユダ様!元気かい?」

「ケイ……」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ケイ

 

 ルイン部隊長補佐

 

 キラがRUIN所属だったころの部下

 背が高く痩せ型の男。

 頬に大きな痣がある。

 現在ジルの部下。

 武器:銃(RUIN仕様)

____________________

 

 キラが鋭く睨み付けるがケイはまったく気にせず話し始める。 

 

「まったくウチの隊長は、困ったもんだな。裏切り者に手を貸すとは。」

 

 何の躊躇もなく自分の隊長を撃つ……

 何故そんな非道なことが出来る……

 歯を食いしばりキラは大声を上げた。

 

「ケイ!貴様!心はないのか!」

 

 怒りに唇が震える……

 何かが体の奥底で燃えている気がした。

 ケイはヘラヘラと笑い口を開く

 

「心なんかもってたらあんたみたいになっちまうだろ?ユダ様?」

 

 確かに昔からこの男は自分とジルのことが嫌いだった……

 そんな俺達のようにはなりたくないと残虐非道な任務はすべてこいつが請け負っていた……

 怒りに任せケイに掴みかかろうとするとジルがキラの腕を掴む。

 

「いいんです……悪いのは俺ですから……」

「何言ってんだジル!?」

 

 組織では裏切り者は殺される……これは当たり前のことだった。

 生かされる場合など……ありえない……

 

「裏切ったのは事実です……それに……後悔してません……あなたを助けることができて良かった……」

 

 ジルは優しくキラに微笑む。

 優しくキラはジルを抱き寄せる。

 

「死ぬな……一緒に海賊やるんだろ……!」

「あなたの……そばに……いたかった……」

 

 笑顔で尊敬していた男の腕の中で彼は静かに目を閉じた……

 

「ハッ!最後まで仲良しごっこしやがって!」

 

 ケイが大笑いし始める……

 そしてジルを見下ろすとケイは口を開く。

 

「クズらしい最後じゃねぇか、良かったな~」

 

 その言葉を聞き……キラはの怒りは頂点に達した……

 脳がコイツを殺せと呼びかける……

 絶対にコイツはお前が裁け……と……

 瞳は赤く輝き鋭さを増す……

 ケイを恐怖が支配していく……

 

「お、おい……まさか……」

 

 無意識にキラは自分の指の皮を噛み切る……血が指を滴り地面に落ちた。

 

「思い出したのかよ……」

 

 二歩三歩と後退しブルブルと体を震えさせる……

 指から滴り落ちたキラの血液が形状を変えていく……

 

「報告だ……キ、キリク様に……報告しなきゃ……」

 

 ケイがつまずきながら森の中へとすごい勢いで逃げていく。

 木から木へと飛び移り必死になって逃げる。

 

「目覚めた……目覚めさせちまった……!」

 

 ブツブツと呟くケイの首に一瞬光が走った……

 なぜかケイの目に……自分の体が映っている……

 首のない体が木から落ちていく……

 

『断罪の鎌』

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 断罪の鎌

 

 キラの血液により創造された大鎌

 

 彼の意思で伸縮可能。

 強度、鋭さも意思で変化する。

____________________

 

 ケイの頭が地に落ちる。

 自分の手に持つ大鎌を見つめ大きく息を吐いた。

 

「裁き……完了……」

 

 自分の能力を思い出した……物質・液体などの形状を変化させ武器とすることができる。

 だが思い出したところでジルは帰ってこない……彼の元に歩み寄る。

 ジルの死体を抱き上げ森の中に入る。

 彼を埋めてやるために。

 

 何故、自分が能力を忘れていたのか……それは……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~記憶~

 

 

 組織から逃げ出すときキラは海に飛び込んでしばらく漂流していた。

 漂流してる間に衰弱し……拾われたときにはすでに過去の記憶のほとんどが消えていたのだ。

 飛び降りた時に頭を強くうったショックだったのだろう……

 

 たまに記憶が戻ろうとしたときもあったが……激しい頭痛を恐れ思い出すことを避けていた……そのうちに肝心な能力の部分は完全に眠ってしまったのだ。

 

 そしてこの能力はなんなのか?

 悪魔の実を研究していたルインは悪魔の実の成分を取り出し、実験し、何万もの人間を犠牲にして完成したのが……

 

 『禁断の果実』とよばれる悪魔の実の類似品。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 禁断の果実

 

 

 禁断の果実特徴:能力者の弱点の水、海楼石が弱点ではない。

 

 弱点:防御面

    超人・自然系の一部は、打撃・斬撃が通じないなど利点があるが。

    禁断の果実の能力者はそれらの攻撃が通じる(ただし一部を除く)

 

    禁断の果実を食べることを許されているのは、ルインの人間のみ。

    (隊長クラスより上の人間)

    ルインの科学力を知っている人間は、ほんの一握りの人間だけ。

    禁断の果実の存在を知っているものはいないに等しい。

__________________________________

 

 

 過去の記憶を辿りながらもくもくとキラはジルを埋める穴を掘っていた。



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~RUIN・禁断の果実の説明~

RUINと禁断の果実についての説明が足りなかったようなので

設定説明をしていきたいと思います。


~RUINについて~

 

RUINとは、日本語役にすると崩壊(第二話から登場)

 

その名が示すように、世界を崩壊させることが目的です。

 

世界崩壊後、自分達の楽園を造るがモットー。

 

 

世界の崩壊が目的なので海賊・政府・革命軍を敵視しています。

 

立場的に世界政府・革命軍とは、また違った組織または軍となっています。

 

 

彼等の武器は、科学力。

 

悪魔の実の能力者対策の為、武器という武器に海楼石が使われている。

 

代表例として:キリク使用の白刀(第十七話で登場)

 

 

~禁断の果実~

 

RUINの科学力を証明するものとして禁断の果実がある。

 

禁断の果実は、悪魔の実を研究し造られたもの(第十九話で登場)

 

悪魔の実と違い、泳げなくなる・海楼石などの弱点が存在しない。

 

弱点:防御面の不安がある(打撃・斬撃が通用する。)

   ※一部通用しない奴もいる。

 

禁断の果実を食べられるのは、RUINでも部隊長より上の階級のみ。

 



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第二十話 一難去ってまた一難 ※8月31日修正

能力が目覚め圧倒的な力でケイを倒したキラ。

能力の代償として自分を慕う者を失った。

別れをすませルフィ達のもとへと急ぐ。

※8月31日修正


「またな……ジル……」

 

 ジルの墓を立て終わったキラは合掌しその場を後にした。

 自分を慕ってくれたものが自分より先に死んでしまった……守れなかったのだ……

 すべてを守れる力が欲しい……そう思う……

 俯きただみんなを探し途方もなく……森を巡る。

 

「クエー!」

 

 顔を上げるとカルーが遠くからこちらへと呼びかけていた。

 何かあったのかもしれない……カルーの元へと急ぐ。

 カルーを追いかけ森の中の開けた場所へとたどり着く……そこには巨大な生き物の骨の下敷きになっているルフィの姿があった。

 それを必死に助けようとしていたらしくルフィの周りには口ばしで掘ったような後がある……

 他にもうめき声が聞こえる……辺りを見回すと……地面に埋まってるウソップがいた。

 彼らは、どうしてこうなったのか……

 キラが唖然として見つめていると気づいたウソップが声を掛ける。

 

「キ、キラ動いて大丈夫なのか……?」

 

 ボロボロのウソップがキラへ尋ねた。

 人の心配より自分の心配をしたらどうだろうか……

 それほどウソップは重症に見えた。

 大きく息を吐くとキラはまずルフィの上に乗っている巨大な骨に手を掛ける……

 歯を食いしばり腕に力を込める……何十メートルもありそうな巨大な骨をキラは片手で持ち上げた。

 涼しい顔で持ち上げるキラに2人と一匹は驚愕の表情で見つめる。

 ルフィを助け出すとキラは自分の右腕を見つめた……あきらかに記憶が戻ってからおかしなぐらい力が湧いて来ている……

 悪いことではない……組織が自分にどんな実験を施したのかはわからないが……

 守れるだけの力があるに越したことはない。

 

 巨大な骨から開放されたルフィは体を伸ばし叫ぶ。

 

「じゃあ、あいつらぶっ飛ばしにいくぞ!」

 

 あいつらとは誰なのか?

 地面から体を起こし砂埃をほろうとウソップが事情説明をする。

 なぜ自分達がこうなっているのか?

 あいつらとは誰なのかを……

 ウソップの話によればドリーとブロギーという巨人の決闘をバロックワークスの連中が邪魔したらしい。

 それでルフィもウソップも頭に血が上っているようだ。

 しばらく森の中を探し回り人影を見つけると……

 

『あいつらだあああああああ!!!』

 

 2人と一匹は木をへし折りながら飛び出していった。

 その光景にキラはクスクスと笑う。

 

 焦って行っても仕方がない……と後からゆっくりとキラはルフィ達の後を追うと……

 

「これは……なんだ……?」

 

 蝋で出来た塔のようなもが目の前に現れた……

 塔の上部は回転し蝋を振りまいている。

 手で触れるとネトネトと絡みつき気持ちが悪い……

 

「キラ!動いて大丈夫なの!?」

 

 塔の上から声がするので見上げると……

 ナミ、ゾロ、ビビが蝋で出来た塔の中部にいた。

 

「何してるんだ……?」

 

 不思議そうに見つめるキラにナミは声を張り上げる。

 

「このままだと私達蝋人形にされちゃうの!何とかして!」

 

 大きく頷くとキラは蝋から少し離れ……指の皮を噛み切った。

 血が地面へと滴り落ちる……

 髪型が数字の3となっている男がキラに声を掛けた。

 

「君は、麦わらの仲間カネ」

 

 頭が3だからこいつはきっとMr3とかなのだろう……

 何も答えず瞳を閉じキラは意識を集中する……

 血液が……鎌を造り出す……

 

「な、えええええええ!!!???」

 

 突然現れた鎌にMr3は驚きの声を上げた。

 塔を壊すならば……もっと大きくなければ……

 2m……3m……5m……

 鎌はどんどんと巨大化していく。

 10mに達したとき……キラは瞳を開き……呟く。

 

「破壊させてもらう……」

 

 10mを超える大鎌をキラは片手で軽々と持ち上げている。

 ウソップはルフィとカルーを連れすぐさま非難した。

 

「こ、こんな奴がいるなんて聞いてないガネ!!!」

 

 Mr3の声が森に響き渡る……キラは上半身を捻ると思い切り鎌を振り切る。

 鎌を振り切ると同時に強風が巻き起こり……木々が大きく揺れた……

 頭を抱え伏せていたナミが見上げると……綺麗に塔の上半分が切り上げられ吹き飛んでいっている……

 

「また一段と化物になりやがって……」

 

 ブルブルと武者震いをしゾロはキラを見つめた。

 ナミもビビも開いた口が塞がらないようだ。

 ニコッっと笑うとキラは鎌を身の丈ほどの大きさへと戻す。

 首を左右へ振るとMr3へと歩み寄っていく……

 近づいてくるキラにMr3はガクガクと脚を振るわせた……

 確実に……殺られる…… 

 

「Mr5……」

 

 Mr3は近くにいたサングラスの男へ声を掛けた。

 

「な、なんだMr3……」

 

 Mr5も完全にキラに気圧されている……2歩3歩と後ずさりしていく……

 

「あ、後は、任せるガネ!!!」

 

 それだけ言うとMr3がすごい速度で逃げていくが……逃がすまいとルフィが後を追い掛けていった。

 残った2人をキラがゾロたちを蝋から助けながら見つめる。

 2人はただ固まっていた……蛇に睨まれたカエル状態であった。

 逃げても殺される……逃げなくても殺される……

 そんなことばかり考えている2人にキラはニコリと微笑む。

 その優しい笑顔も今の2人には悪魔の微笑みにしか見えなかった。

 ゾロたちを拘束していた蝋を取り終えるとキラは2人のもとへと歩み始める……

 

「キラ待て、俺にやらせてくれ」

 

 刀を抜いたゾロがキラへと声を掛けた。

 頷きキラはMr5とMsバレンタインから離れる。

 

『鬼斬り!!!』

 

 2人が宙を舞い地面へと落ちた……

 一通り敵はかたずいたようだ……ルフィは大丈夫だろうか?

 

「おーい!終わったぞ!」

 

 笑顔でルフィがこちらに戻ってきた。

 これで本当にすべて片付いたはずだ。 

 大きく息を吐き地面に座り込む……

 巨大な人がうずくまっている……彼が巨人族のブロギーなのだろうか?

 ドリーはバロックワークスの策略により倒れたと聞いたが……

 

『ウオオオオオオオオ!!!!』

 

 突然ブロギーが大声で泣き始める……

 戦友を失ってつらいのだろう……しかも不本意な勝利……

 ブロギーの泣き声が森に響き渡ると……

 

「うるせぇなぁ……」

 

 ドリーが目を覚まし起き上がった。

 泣き声は一層大きくなりブロギーはドリーへと抱きつく。

 話によると攻撃はクリーンヒットしたはずだ……

 キラがふと巨人2人の武器を見ると……ヒビが入っている……

 どうやらこの武器が致命傷を防いだようだ。

 良かった……と胸を撫で下ろしキラは笑顔を見せ自分の友も生きていれば……とジルを想うのだった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~メリー号~

 

 巨人族の2人と別れ麦わら一味は船へと戻った。

 キラはナミのログポースを見つめ口を開く。

 

「ログ溜まった?」

 

 大きくため息を吐くとナミはキラの質問に答える。

 

「それが……この島ログが溜まるのに一年掛かるらしいの」

 

 ドリーとブロギーにナミが尋ねるとそういう答えが返ってきたそうだ。

 それは困る……

 どうするかと考えをめぐらせていると……サンジがこちらに走ってきた。

 

「おーい!ナミさん、ビビちゃん♥」

 

 また気持ち悪い声を上げている……

 というよりも……船にいなかったのか……まったく気づかなかった……

 

「サンジ!お前どこ行ってたんだ?」

 

 キラがどこに行っていたのか尋ねるとサンジは口を開く

 

「どこってキラに栄養のつくものを……キラ!?」

 

 嬉しそうな顔でサンジがキラを見つめる。

 心配してくれていたようだ。

 船へと跳び乗りサンジは思い出したようにキラにポケットの中から取り出したものを見せる。

 取り出したもの……それは……

 

「エ、エターナルポース!」

 

 大声をあげキラはサンジの手からそれを受け取る。

 しかもそのエターナルポースは……目指している場所……アラバスタへのエターナルポースだった。

 これをどこで手に入れたのか尋ねると、サンジは思い返しながら話し始める……

 キラの為栄養のつきそうな食材を探していたところ……小さな小屋を見つけた。

 そこにはエターナルポースとでんでんむしがあったらしい。

 エターナルポースだけもらって小屋を後にしようとした所……電話がありでてしまった。

 電話の相手はバロックワークス社長からの電話で麦わら一味を始末したのか?と聞かれたらしい。

 そこでサンジは答えた「始末した」と……

 その話を聞くとウソップは歓喜の声を上げた。

 

「これで追っ手から追われる心配もないってわけだ!」

 

 喜ぶウソップを尻目にキラは考えていた……本当に諦めただろうか……

 電話の声で違いに気づくのではないだろうか……と…… 

 

 エターナルポースを手に入れた麦わら一味はリトルガーデンを出航する。

 島の出口ではドリーとブロギーが見送りしてくれるようだ。

 2人に手を振るルフィ達だったが……なぜか彼らの表情は険しい……

 ドリーが口を開く。

 

「お前達なにが起ころうとも俺たちを信じてまっすぐ進め。」

 

 ルフィは大きく頷き前を向く……何事もなく船は進んでいく……

 もうすぐ島を出れる……そう思った矢先……

 海面が異常にもりあがっている事にキラは気づく……

 大きな水しぶきを上げ大きな金魚が姿を現した。

 断罪の鎌を造り出そうと指を噛もうとするが……

 

「待てキラ!」

 

 止めるようルフィがキラに声を掛けた。

 頷きキラも手を下ろす……

 

「おっさん達にまかせよう。」

 

 ナミは不安そうな表情をキラに見せる。

 笑顔を見せキラはまっすぐ前を向いた。

 

「まっすぐだ!まっすぐ!」

 

 メリー号は金魚の口へと招かれていく……

 口を閉じメリー号を飲み込む……

 涙を流しナミがキラに抱きついた瞬間……

 

『覇国!!!』

 

 巨人2人の叫び声が聞こえたと思うと……一気に周りが明るくなった。

 どうやら2人の斬撃が金魚に大穴を開けたようだ。

 ホッと胸を撫で下ろしキラがナミを見ると力が抜けたのか地べたに座り込む。

 真っ青な顔をしたナミはフラフラと立ち上がるとキラにエターナルポースを渡す。

 

 「私、ちょっと疲れちゃった……あとよろしく」

 

 エターナルポースを受け取り指針に目をやっていると……背後から物音がする。

 振り返ったキラの目に飛び込んできたのは倒れこむナミの姿だった。

 彼女のもとへと駆け寄り額に手を当てる……すごい熱だ……

 異変に気づきビビもナミのもとへとやってくる。

 ナミのもとへと駆け寄ったビビに笑顔を見せ口を開く。

 

「ビビ、やっと……アラバスタへ帰れるわね……」

 

 力なくそう言うとナミはビビの肩をポンポンと叩く。

 ビビは心配そうにナミに声を掛ける。

 

「ナミさん……顔色悪いみたいだけど。」

 

 心配ないと手を横にふるとナミは体を起こす……が……

 力なくその場に座り込んでしまった。

 キラの顔を見つめるとナミは口を開く。

 

「キラごめん……部屋まで運んでもらっていい?」

 

 黙って頷いたキラはナミを背負うと声を上げた。

 

「みんな!聞いて欲しい!」

 

 船員全員がキラの声に耳を傾ける。

 それを確認するとキラは再び話し始めた。

 

「ナミちゃんがどうやら何かの悪い病気にかかったらしい」

 

 勢いよく走ってきたサンジが心配そうな表情を見せる。

 とりあえず部屋に運び診断すると伝えると全員が一斉に動き出す。

 毛布を用意するもの氷水を用意するもの……騒ぐもの……

 船室の扉を開けナミを部屋へと運ぶ。

 その間も熱は上がる一方であった……一通り診察したキラは口を開く。

 

「……これはただの風邪じゃない」

 

 キラの一言にナミは頷き口を開いた。

 

「ええ、おそらく異常気候による発病……」

 

 そんなものではないとキラは首を横に振る。

 残念だが自分には治療の技術はない……

 アラバスタならば医者はいるだろうが……どれくらいかかるのか…… 

 一緒に部屋に来ていたビビにキラは質問する。

 

「姫、アラバスタまでどれくらいかかる……?」

 

 俯きながらビビは答えた。

 

「一週間以上はかかるわ……」

 

 一週間……とキラはブツブツと口にすると……ボソッっと呟く

 

「このままでは一週間はもたないだろうな」

 

 船室へとキラの声が響く。

 部屋の扉を乱暴に開けサンジが入ってくると大声を上げた。

 

「キラ!どうにかできないのか!?お前なら出来るんだろ!?」

 

 凄い勢いでキラを捲くし立てるが首を横に振る。

 

「悪いが、診断だけだ。治療の技術は俺にない。」

 

 ナミの診断結果をキラはゆっくりと話し始めた。

 彼女はケスチアという有毒のダニにやられていたのだ。

 おそらくリトルガーデンでやられたのだろう……

 露出の多い服を着ていたしあそこはジャングルだ。

 どんな虫がいても不思議ではない。

 この虫にやられては治療しなければ5日の命……

 そう伝えられたビビとサンジはただうなだれるしかなかった。

 

 目を覚ましたナミが口を開く。

 

「私はいいから……アラバスタに向かって……」

 

 その一言にキラは首を横にふる。

 彼女はビビを見ると大丈夫と口にし新聞を指差す。

 新聞に手を伸ばしキラは記事に目を通すとナミに渡した。

 渡された新聞をナミはビビの前で広げる……

 

「う、嘘……」

 

 ビビの顔が青ざめた……

 なぜならその記事はアラバスタの凶報を知らせる新聞だったのだ……

 動揺を隠せないビビにナミは声を掛ける。

 

「そういうことでまっすぐアラバスタに行って?」

 

 それだけ言うとナミは体を起こし……船室から出て行く……

 席を立ちキラも後を付いていく。

 

「ちょっと……この船……」

 

 キラは頷きそれぞれに指示を出し船の進路を修正する。

 船室から出てきたビビにキラは質問した。

 

「姫……どうする?アラバスタへまっすぐ行くか?」

 

 大きく頷くとビビは笑顔で答えた。

 

「ええ、行きましょう!ナミさんの病気を治してからアラバスタへ!」

 

 クスッっと笑うとキラは大きく頷くとナミに笑顔を向ける。

 呆れた表情を見せるナミに声を掛けた。

 

「君の航海術じゃなきゃ」

「バカ……」

 

 それだけ言うと……ナミが膝から崩れる……

 無理をしていたのだろう。

 船室へと運びベットに寝かせる。

 笑顔でキラは話しかける。

 

「みんなが医者探してくれるってさ。」

「キラ……わ、私……死んじゃうの……?」

 

 涙目になりながらナミはキラに尋ねた。

 強がってはいたが彼女も不安で一杯なのだろう……

 

「安心しろ……絶対に医者を見つけてやる……死なせるものか」

 

 が強い口調でそういうと安心したのかナミは眠りに落ちていった。



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第二十一話 ブリキのワポル ※9月3日修正

リトルガーデン出航後。
ナミが倒れてしまう。

キラは、診断は出来るが治療はできない。

ナミの治療をするため医者を探すことに・・・。

※9月3日修正


 ナミが倒れてしまい医者のいる島を探して海を放浪する麦わら一味。

 航海士であるナミが倒れた今代わりをするのは副船長であるキラの仕事だ。

 そんな彼に偉大なる航路が牙をむく……コロコロと天候は変わり……海は荒れた……現在……空から降るのは雪……しかも吹雪だ。

 軽く舌打ちをしてキラは海を見つめる。

 

「キラ」

 

 名前を呼ばれ振り向くとゾロが海を指差していた。

 島でも見えたかと期待して示す先を見つめると……

 海の上に人が立っている……

 何かの間違いではないだろうか……

 きっと寒さで目がやられたに違いない。

 目を何度もこすり海面を見つめる。

 やはりいる……海の上に立っている……

 ゾロと顔を合わせしばらく止まっていると…… 

 

「今日は、冷えるな」

 

 海の上にいる男が声を掛けてきた。

 海面にいるのだから寒くて当然だとキラは心の中で呟く。

 ふと……キラは異変に気づいた……男の足元が盛り上がっている……

 何かある……そう思った矢先……

 

 水しぶきを上げ水中から海賊船が現れた。

 突然の出来事に対処できない一味をよそにその海賊船から何十人もの船員がメリー号へと乗り込んでくる。

 敵の船員は銃を構え一味を取り囲む。

 海賊船から体の大きな男が現れる……あの顔には見覚えがある……

 ドラム王国の王ワポルだ……

 ワポルは一味の前まで移動すると手に持った剣を食べながら話し始める。

 

「お前等ドラム王国へのログポースかエターナルポースは、持ってないか?」

 

 キラは首を横に振りどちらも持っていないことを告げる。

 どうやらドラム王国へと戻りたいようだが……

 王が何故海賊船に……

 などと考えながらワポルを見つめていると

 

「そうか、じゃあこの船と宝を頂こうか。」

 

 そう言い出すとこちらが何か答える前に船べりを食べ始めた。

 

「小腹が空いてるものでな」

 

 一言こちらへそう言うとまた食べ始める。

 メリー号の船べりがどんどんと減っていく。

 ゆっくりとキラはワポルに近づくと肩を掴むと……一閃……ワポルの腹部に拳を叩き込んだ。

 ワポルの巨体が軽々と持ち上がる……

 

「グフッウウウウウ!!!」

 

 地べたへと這い蹲り食べた船の材料を吐き出しワポルは悶絶した。

 敵船員も目の前で王がやられたと言うのに何も言わない……

 キラの一撃に息を呑んでいた……

 軽々とあの巨体を持ち上げた威力が自分に向けられるのではないかと萎縮してしまったのだ。

 唖然としていた側近の一人が我に返り声を上げた。

 

「き、貴様!ワポル様に何をする!」

 

 首をコキコキと鳴らしキラはルフィに声を掛ける。

 

「……あのバケモノ……吹き飛ばすぞ」

 

 ニッっと笑ったルフィが拳を構え大きく頷く

 

『ゴムゴムのバズーカ!!!』

『剛砲!!!』

 

 二人の攻撃がワポルの腹部にめり込む……

 鈍い音が海へ響くと……ワポルの体は宙へと浮かび……吹き飛ぶ……

 敵の船員達は大きく開いた口が塞がらないようだ

 船員達にキラは微笑みながら質問する。

 

「まだやる?」

 

 真っ青な表情を浮かべ側近は大声を張り上げた。

 

『た、退却ーーーーーー!!!』

 

 残党は、急いで船へと戻りワポルの飛んでいった方向へと向かっていく。

 クスッっと笑うとキラは大声で次の進路を告げた。

 

「ドラム王国へと向かう!」

 

 不思議そうな表情を浮かべる仲間達にキラは笑顔を見せる。

 ドラム王国には昔世話になった医者がいた。

 その医者はDr・くれは

 腕は確かだ……信頼できる。

 問題は人間性だな……

 クスッっと笑うとキラは航路の指示を出す……

 目指すはドラム王国……



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第二十二話 チョッパー登場 ※9月12日修正

ナミを治療するためドラム王国を目指す麦わら一味。

※9月12日修正


 キラたちはナミを治療する為ドラム王国を目指し進み続けていた。

 だが行く手を阻むかのごとく海は荒れ辺りを暗闇が包んだ……どんどん進むのが困難な状態になってくる。

 航海士の指示なしで進むのは危険だろうと考えたキラは停泊の決断をした。

 大きく息を吐きメインマストに背を預ける。

 ゾロがキラへと歩み寄ると声を掛けた。

 

「今日はもう進まないのか?」

 

 小さく頷きキラは口を開く

 

「さすがに航海士無しの状態じゃ暗闇を進むのは辛いな……ましてや看病しながらじゃなおさらさ」

 

 肩を竦めお手上げの表情を浮かべるキラにゾロは申し訳なさそうな顔をする。

 

「何から何までお前に何もかも任せっぱなしだな……」

 

 ニコリと笑いゾロの方をポンポンと叩くと気にするなとだけいいキラは船室へと向かった。

 船室の扉を開け中に入るとナミがこちらに気づき体を起こす。

 今日は停泊することをナミに伝えゆっくり寝てるように声を掛けた。

 濡れたタオルを取り替え少しでも体を暖かくするように毛布を掛けなおす。

 キラには看病と言ってもその程度しか出来なかった。

 ナミの額に手をやり温まったタオルを桶に入った水へと浸すが……

 水はナミの熱でだいぶ温まっていた……

 立ち上がり水を替えに行こうとするとキラの腕が掴まれる。

 振り返るとナミがしっかりとキラの腕を握り締めていた。

 

「どうした? 水でも飲むか?」

 

 首を横に振るとナミは口を開く

 

「キラ……全然寝てないでしょ? 私は大丈夫だから……」

 

 彼女の言うとおり……キラは2日ほど寝ていなかった。

 明るい内は航海……夜になると看病。

 誰かに看病を任せればいいのかもしれないがウチの他の男供には怖くて任せられない。

 なんといっても病気になどなったことがない奴等だ……どんな看病をするのか……怖くて考えられない……

 では女性にやってもらえばいいのでは……と思ったが姫にやってもらうわけにはいかない。

 そうなると……自分しかいないのであった。

 

 気にするなとキラは首を横に振る。

 

「うん。ごめんね。」

 

 ナミの言葉に笑顔を見せキラは船室を出て水を替えに行った。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~朝~

 

 朝日が体に染みる……

 大きく体を伸ばすとキラは軽く立ち眩む……

 ビビが船室から出てきてキラへ声を掛ける。

 

「おはようございます」

 

 笑顔を向けビビに朝の挨拶をする……

 船べりへ腰掛けキラは海を見つめる……早くドラム王国へと……気持ちだけが焦っていた。

 

「キラさんは、すごいわ。」

 

 突然ビビがそう口にする。

 不意をつかれ不思議そうな顔でキラが見つめるとビビは笑顔を見せ…… 

 

「だって、何でもできるじゃない?」

 

 何でも出来る……か……

 キラはクスクスと笑うと口を開いた。

 

「器用貧乏ってやつさ」

 

 二人は顔を揃えて笑う。

 自分の国が心配だろうに……強い子だ……

 絶対に彼女の国を助けて見せると……キラは心の中で誓う。

 

「キラ!島が見えたぞ!」

 

 船首へ腰を掛けていたルフィが大声を上げる。

 海へ視線を移すと確かに島が見えた。

 島は雪で覆われている……これが冬島ドラム王国である。

 それぞれが入港の準備を始める……寒い為防寒具が必要だ。

 準備を終え島に上陸しようと船をつけるが……

 

「待て!海賊供!」

 

 陸で大男が武装した兵と共にメリー号を取り囲む……

 あの男は……見知った顔だ……

 

「俺たちは、医者を探しに来たんだ!」

 

 ルフィがそう叫ぶが聞いてなどもらえない……

 出て行けと言わんばかりに複数の銃口がこちらに向けられていた。

 海賊言うことなど信用してはくれないだろう……

 大きく息を吐きキラは兵たちを威嚇するルフィの前に出ると大男を真っ直ぐ見つめ口を開いた。

 

「久しぶりですね……ドルトンさん」

 

 ドルトンと呼ばれた大男はしばらくキラの顔を見つめると……思い出したかのように大きく目を見開く……

 

「き、君は……あのときの……」

 

 笑顔でキラが頭を下げるとドルトンは踵を返し歩き始める。

 

「付いてきたまえ……村に案内する」

 

 突然のドルトンの行動に兵たちは声を上げた。

 

『ド、ドルトンさん!?いいんですか!?』

 

 ドルトンは立ち止まり振り返ると兵たちを諭すかのように口を開く。

 

「忘れたのか……一度村が海賊に襲われたとき助けてくれた少女だ」

 

 兵たちは振り返りキラの顔をまじまじと見つめる……

 思い出したかのように一人の兵が声を上げた。

 

「あ、あのときの娘か……」

「男なんだが……まぁいい……」

 

 頭をボリボリと掻きキラはルフィ達の方を振り返ると全員がキラへと飛びつく。

 重さでキラが雪へと埋まるがそれでもなお抱きつく。

 

「く、苦しい……埋まってるって……」

「ったく、何やってんだか……」

 

 大きく白い息を吐きゾロが呆れた顔でこちらを見ていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~雪の降る村ビッグホーン~

 

 雪道を進みドルトンの後をついていくと村へと到着する。

 あたり一面雪景色……雪にはしゃぐルフィとウソップを放っておいて

 キラたちはドルトンに一軒の家へと通される。

 家へ入ると寒さで凍えた体を暖炉の火が優しく包み込む。

 どうやらここは彼の家らしい。

 椅子へと腰かけるとキラは早速用件を伝える。

 病気の仲間がいること……熱が高く危険な状態であること……Drくれはに治療を頼みたいと言うこと……

 

「42度か……これ以上上がると死んでしまうぞ」

「百も承知です。だからこそDrに治療をお願いしたい」

 

 ドルトンはキラの真っ直ぐな瞳を見つめるとゆっくり口を開く。

 

「今は、ドラムロックの城にいる」

 

 ドラムロックとはドラム島の中央に高くそびえ立つ山である。

 キラはそれを聞くとナミを背負い家から出ようと扉へ手を掛けた。

 驚きの表情を浮かべドルトンが口を開く。

 

「な!?あそこまで病人を背負っていくのか!?」

 

 時は一刻を争う……それ以外に手段は無い……

 大きく頷きキラは扉を開けた。

 ドラムロックへ向かいキラが歩き始めた……そのとき……

 

『キラ!俺たちも行くぞ!!!』

 

 ルフィとサンジが大声を上げた。

 笑顔を見せキラは頷いた……ドラムロックは標高5000m……

 まずは山までの道を進まなくてはならない……キラたちは雪で覆われた急な斜面を駆け上がる。

 途中途中でキラがフラフラとし真っ直ぐ歩けない……

 寝不足がたたっているようだ……

 それに気づいたサンジが声を掛ける。

 

「無理すんなよ。ナミさん落としたら洒落にならねぇぞ。」

 

 頷きキラは気を引き締め斜面を駆け上がった……

 進んでいると……獣の鳴き声が聞こえる……

 振り返ると……巨大なウサギ……凶暴ウサギのラパーンが姿を現した。

 無視して3人は斜面を駆け上がる……が……

 行く手を阻むかのようにラパーンが周りを飛び回り始める。

 キラがサンジを見つめると……大きく頷き……

 

「鬱陶しいんだよ!!!」

 

 ラパーンを蹴り飛ばすサンジ……

 他のラパーンたちも飛び回るのを止める……それを確認し再び進み始める。

 順調に進んでいると……唸り声とともに目の前に巨大なラバーンが何頭も現れた。

 どうやら先ほどのは子供だったようだ。

 ルフィとサンジがキラに先に行く用合図しラパーンへと向かっていく……

 2人がこじ開けた道をキラはただひたすらにキラは走り抜ける……

 雪に脚を取られ思ったように進めない……それがわかっているのかあきらめずに後を追ってくるラパーン。

 

「チッ……しつこい……」

 

 舌打ちをしキラがラパーンを見つめると……

 ラパーン達が雪の上で何度もジャンプを繰り返し始める……

 

「やべぇ……あれ、きっと雪崩起きるわ。」

 

 平然とした顔でキラがそういうとサンジが叫ぶ。

 

『なんでテメェは、そんな冷静なんだよ!!!』

 

 予想通り雪崩が起きた……こちらへと雪の波が向かってくる。

 3人とも一目散に雪崩から逃げる……が雪崩はさらに勢いを増しキラたちを襲う……

 睡眠不足で足元がおぼつかない……

 キラはナミをルフィに預けた。

 フラフラな自分よりもルフィの方が安心だと判断したのだ。

 

「任せたぞ!」

 

 キラの言葉に大きく頷きルフィは雪崩を避けるようにして逃げていく。

 サンジもルフィの後を追い進んでいく……

 後は自分だけ……キラは指を噛み血を滴らせる。

 雪崩が目の前まで迫っていた。

 大きく舌打ちをしキラは血液で長い板を作り出すとその血の板へと飛び乗る。

 うまく行くとは思っていない……だがダメで元々……

 雪の上で血の板が滑走する。

 雪の波に乗った板はどんどんと加速した。

 途中逃げているルフィの姿を確認すると……キラは大声を上げる。

 

「ルフィ!手を伸ばせ!」

 

 声に気づいたルフィがキラの手を掴み板へと乗った。

 板を大きく作っていた為二人乗っても問題はない。

 

「おおおおお!おもしれぇ!!!!」

 

 喜ぶルフィを尻目にキラはサンジの姿を探す……

 どこにもいない……どうやらサンジはルフィとはぐれてしまったようだ。

 仕方なく2人で安全な場所まで移動する。

 大きく息を吐くとキラの視界に吹き飛ばしたはずの男の姿が入った。

 

『いました!ワポル様!』

 

 そうドラム王国元国王ワポルだ。

 どうやら側近と一緒のようだ……吹き飛ばされた後部下達と合流できたらしい。

 仕返しに来たのだろう……キラはルフィに声を掛ける。

 

「ルフィ……先行け……」

 

 ルフィは頷きドラムロックへと走っていく……

 首をコキコキと鳴らすとキラはワポルを睨みつけた。

 

「この前はよくも……」

 

 ワポルはそれだけ言いかけ言葉を飲み込んだ……

 目の前の男は突然どこからか大鎌を取り出しクルクルと体の回りを回していた……

 鋭い眼差しに側近たちも言葉を失っている……

 キラは大きく息を吐くと……鎌を一振りする……

 風圧で周りの木が吹き飛んでいく……

 

「俺は、寝不足でイラついてんだ……」

 

 側近が青ざめワポルを見つめる……

 焦りの表情を浮かべたワポルがゆっくりと口を開く。

 

「よ、よーし……お、お前は許してやろう」

 

 何も言わずキラはワポルとの距離を縮めていく……

 後ずさりしながらワポルは言葉を続ける。

 

「お、お前は見逃してやるといってるん……!?」

 

 赤い瞳がワポルの恐怖を増幅させた……

 キラの紫色の瞳は怒りで赤く染まっていたのだ。

 

「失せろ……死にたいか……」

「ヒッ……!」

 

 急ぎワポルは逃げていく……

 大きく息を吐きキラは大鎌を血液へと戻す……

 ドラムロックを見つめ頭を抱えた。

 

「これ……登るのか……」

 

 頂上を見上げ苦笑いを浮かべる……

 近くで見ると恐ろしく高い……

 表情を引き締めるとキラはドラムロックへ拳を突き立てると……岩に突き刺す。

 どうやら拳を突き刺し上っていくようだ。

 頂上を目指し山を登っていく……標高は5000m……気が遠くなる……

 睡眠不足の為途中で眠気が襲ってくるが眠気を我慢しドラムロック頂上の城へとたどり着いた。

 

 上りきって一息つくと……背後から人の気配がする……

 

「ヒッヒッヒッヒ。久しぶりだね。キラ。」

 

 振り返ると酒を片手に持った老婆の姿がある……歳のわりに元気なこの老婆こそDrくれはであった。

 

「久しぶり……元気そうだね。俺の仲間来てるかい?」

「あの麦わらの小僧だね、中にいるよ」

 

 そう言ってDrくれはは城を指差した。

 Drに招かれキラは城の中へと入る。

 

 城の中は雪で覆われていた。

 それもそのはず城門がひらっきっぱなしになっていた……

 

 何故締めないんだと辺りを見回していると……

 視界の端で何かが動いた……何かいた気がするが……

 殺気がない……敵ではないのだろう……

 

「チョッパー出てきな!」

 

 Drが突然叫ぶ……

 チョッパー……助手でも取ったのだろうかとDrの見つめる先を眺めていると……

 

「ドクトリーヌ……俺……」

 

 扉の向こうから声が聞こえる。

 どうやら扉の影に隠れているようだ。

 声からするととても幼い気がするが……

 

「大丈夫だよ……こいつも化物さ。」

 

 Drはキラを指差すと化物呼ばわりする……

 あいかわらず口が悪いなと笑っていると……

 

「化物って……女だろ?」

 

 鹿のような生き物が扉の向こうから顔を出した。

 どうやら彼がチョッパーらしい。

 

「女じゃない。ちゃんとした男だ。君がチョッパー?」

 

 コクンと頷くと再び扉の後ろへと隠れてしまった。

 キラは腰を落としチョッパーの視線に合わせると声を掛ける。

 

「俺はキラ。よろしく。」

 

 そう言うとキラは握手を求め手を出す……

 少し警戒心が解けたのかチョッパーは影から出てきてキラの手を掴む。

 ニコッっと笑うとチョッパーもぎこちないながら笑顔で返してくれた。

 

 チョッパーはまじまじとキラの顔を見つめるとDrに問いかける。

 

「ドクトリーヌ、キラのどこが化物なんだ?」

 

 キラの手をペタペタと触りチョッパーはどこが化物なのか確かめているようだ。

 その光景が微笑ましくキラは思わず笑顔になる。

 Drはチョッパーの質問に対し昔を思い出すかのように口を開いた。

 

「こいつはね……普通の人間なら1年はかかる怪我を1週間で治したのさ」

 

 昔組織から逃げ出したキラは運よくこの島に流れ着いたのだ。

 そのときキラの体は普通の人間ならば死んでいるであろうと言うような状態だったらしい。

 

「あれは、Drの治療がよかったんですよ」

 

 肩をすくめながらキラはそう口にする。

 

「何言ってんだい。あたしが治療して完治まで1年ということだよ。」

 

 Drが呆れた顔でキラを見つめた。

 チョッパーはキラキラした瞳で見つている。

 

「キラの回復力はすごいんだな!こんど体見せてくれよ!」

 

 今度なと口にするとキラは辺りを見回しナミの姿を探した。

 それに気づいたDrが声を掛ける。

 

「ああ、あの娘かい?」

 

 頷きキラは口を開いた。

 

「やっぱりケスチアだったでしょ?」

 

 Drはクスクスと笑うと大きく頷き

 

「あいかわらず目だけは、確かだね」

 

 驚きの表情を浮かべチョッパーはキラに尋ねる。

 

「キラは医者なのか!?」

 

 首を横に振るとキラは笑顔を見せた。

 チョッパーの頭を撫でると口を開く。

 

「チョッパーほどすごくはないよ。」

「う、うるせぇ。すごくなんかねぇよバカヤロウ~。」

 

 体をくねらせチョッパーは嬉しそうな表情を浮かべた。

 面白い奴だとキラは笑顔を見せる。

 

 医者が仲間だと心強い……キラはゆっくりと口を開く……

 

「仲間にならないか?」

 

 突然のキラの誘いにチョッパーは固まった。

 自分でも何故そんなことを言ったのかはわからない……

 だがルフィならそう言うだろう……そう思うと思わず口にしてしまったのだ。

 

 「で、でも俺……バケモノだし……」

 

 やはりチョッパーは躊躇っていた。

 笑顔をチョッパーに向けキラはナミの部屋へと向かっていく。

 

 「俺だってバケモノさ……まぁ、考えといてくれ」

 

 困惑の表情を浮かべるチョッパーはどう思ったのだろうか……



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第二十三話 キラ離脱? ※9月12日修正

ナミの治療にドラム王国を訪れた麦わら一味。

キラは、チョッパーに会い仲間にならないかと誘う。

※9月12日修正


 キラが部屋のドアを開けるとナミが眠っていた。

 熱は無いだろうかとナミの額を触る。

 

 どうやらだいぶ熱も下がったようだ。

 

「キラ、起こしちゃダメだぞ。」

 

 部屋へと入ってきたチョッパーがキラに声を掛ける。

 起こさないよと手をヒラヒラと振り近くにあった椅子に腰をかけた。

 桶を手にもつとチョッパーがキラを見つめ口を開く

 

「じゃあ、俺。水汲んでくる。絶対に起こさないでよ」

 

 了解と手をヒラヒラ振り合図を送る。

 それを確認するとチョッパーが水を汲みに部屋を出て行った。

 

 手近にあった医学書を手に取り椅子の背もたれによしかかる……

 難しい用語が並ぶ本にだんだんとキラの意識が遠くなっていく。

 気づけば本を手にキラは深い眠りへと落ちていった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 1時間後……ふと人の気配を感じ目を覚ます。

 体には毛布が掛けられていた。

 辺りを見回すとナミが体を起こしている。

 キラに気づくと彼女は微笑み声を掛けた。

 

「キラ、起きた?」

「起きて大丈夫か?」

 

 ナミのベットまで近づくと彼女は腕をグルグルと回しながら口を開く

 

「ええ、もうだいぶ楽になった。……心配した?」

 

 頬を赤らめながらそう言うナミにキラは首をかしげ答える。

 

「ん?ああ……みんな心配してるけど……?」

「……そうじゃなくて。もう、いいわ。毛布返して!」

 

 呆れた表情を浮かべキラに毛布を返すよう促す。

 ナミに差し出すと毛布をキラの手からむしり取り背を向け寝てしまった。

 一体なんだというのか……

 頭をボリボリと掻くとキラは口を開く。

 

「わかんねぇ~」

 

 椅子に戻り腰を掛けようとすると……いきなり部屋のドアが開く。

 大きな音に驚きドアのほうを見つめる……

 なぜかそこにはワポルの姿があった。

 

「ゲッ!お、おまえは・・・!?」

 

 ワポルはキラの姿を確認すると顔が青ざめ始める……

 キラは首をグルグルと回し睨みつけた。

 

「失せろ……」

「ヒッ……!?」

 

 勢いよくワポルは城の上層へと向かっていく……

 後から追いついてきたルフィもワポルの姿を見つけると後を追っていく……

 後を追っていったルフィを見送りキラは部屋に戻る……ナミがいない。

 大きくため息を吐き椅子に腰掛ける。

 先ほどの続きを読もうと本を手に取り眺め始める……が再び睡魔がキラを襲った……

 

 どのくらい時間がたっただろう……

 Drくれはの声でキラは目が覚めた。

 

「キラ、あんたが代わりに助手でもやんのかい。」

 

 椅子から飛び起き辺りを見回す……ナミの姿は無い……

 チョッパーの姿も無い……

 

「あいつらならうちのトナカイを連れて出て行ったよ。」

 

 キラの様子に気づいたくれはがそう言うと笑顔を浮かべた。

 

「そうか……チョッパー……決心してくれたか……」

 

 胸を撫で下ろしもう一度椅子に腰掛ける。

 これで船に医者がいる……これからの航海が少し楽になるだろう。

 向かいの席にくれはが腰掛け懐かしむように口を開く

 

「あんたが昔、あたしの所に来たときボロボロだったねぇ……」

 

 2人で昔話をする……

 以前はくれはの仕事を手伝ったりもしたものだ。

 

「ほんと……よく病人をあそこまでコキ使うよな」

 

 笑いながらキラがそう言うとくれははニコッっと笑い酒を口に含む。

 気づいたかのようにくれはが口を開く

 

「で……あんた本当に助手やるのかい?」

「やらないよ……そろそろ行くさ……」

 

 椅子から立ち上がると扉に手を掛ける。

 思い出したかのようにキラはDrの方を向き直ると口を開く。

 

「何故、あのとき俺を助けたんです?」

 

 Drはヒヒッっと笑うとこう返した。

 

「ただのきまぐれさ……」

 

 思ったとおりの回答でキラは思わず笑ってしまった。

 この人は優しいと……キラはわかっている……

 扉を開きDrに背を向けヒラヒラと手を振り部屋を後にした……

 その背中にDrはボソリと呟く……

 

「バカ息子を頼むよキラ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 キラには許せないことがあった……

 自分を置いて出航しないことはわかってはいるが……何故起こしてくれないのか……

 

~ゴーイングメリー号~

 

 船ではルフィたちがキラの戻りを待っていた。

 仲間達は気を使いDrとキラを2人きりにしたのだが……今どんな話をしているのだろうか……

 

「キラの奴……遅いな……」

 

 タバコに火をつけサンジがそう呟く。

 その横ではルフィも出航したくてウズウズしているようだった。

 

「ドクトリーヌと色々話があるんじゃない?」

 

 ナミがサンジにそう言うと仕方ないかという顔を浮かべる。

 久しぶりの再会つもる話もあるのだろう。

 

「お、おーいキラー!」

 

 ルフィがキラに手を振るが……彼の表情は怒りに満ちていた。

 

「てめぇら!!!起こしやがれ!」

 

 キラの怒声が船に響き渡る……よっぽど置いていかれたのが気に喰わなかったようだ。

 説教を恐れたルフィが声を上げる。

 

「よ、よーし!出航!」

 

 船に飛び移るとキラがルフィへと詰め寄った。

 後ずさりするルフィと詰め寄るキラ……

 怒りに満ちたキラにサンジが声を掛ける。

 

「き、キラ。ババァとの別れは終わったか?」

 

 キョトンとした顔でサンジの顔を見て頷く。

 どうやらキラはみんなが気遣いで置いていったのだとわかっていないようだった。

 それに勘付いたナミはキラの鈍さにため息を吐き口を開く。

 

「命の恩人なんでしょ?」

「瀕死状態だった俺を助けてくれた……」

 

 思い出すかのように俯きキラは答える。

 チョッパーは驚きの表情を浮かべていた……あのDrが無料で患者を見るとは……と……

 3年前……ルインから命からがら逃げだした自分を救ってくれた命の恩人がDrくれはだった。

 ふとキラは気づく……彼らは自分を気遣い二人きりにしたのだと……

 

「おまえら……ありがとな……」

 

 全員が首を横に振り笑顔を見せる……キラは深々と頭を下げる……感謝を込めて……

 柔らかい小さな手がキラの肩を叩く。

 

「チョッパー……」

 

 チョッパーなりに慰めているつもりなのだろう……

 

「キラ。元気になったか?」

 

 大きく頷きキラはチョッパーに感謝の言葉を告げる……彼が去ろうとしたときふと思い出し声を掛けた。

 

「そうだ、チョッパー。」

 

 呼び止められて振り返るチョッパーにキラは微笑みながら言う……

 

「これからよろしく」

「うん、よろしく」

 

 笑顔を見せてチョッパーは船室へと向かっていった。

 大きく息を吐くとキラは防寒コートを脱ぎナミの元へと歩み寄る。

 

「進路は……アラバスタでOKだな……体調は?」

 

 キラの言葉にナミは大きく頷き口を開く。

 

「ええ、体調もバッチリ。行くわよ。アラバスタ。」

 

 笑顔を見せキラは大声を上げる。

 

「よし。お前ら!アラバスタ行く準備は、出来てるな!」

『おう!』

 

 船は一路アラバスタへと向かう。



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第二十四話 祝いの歌

チョッパーを仲間にし、アラバスタへ向かう。

その前に仲間が増えたということは……?


 ドラム王国を出航し……アラバスタを目指し帆をすすめる麦わら一味

 新たな仲間”船医トニー・トニー・チョッパー”を歓迎するべく船上では宴が行われようとしていた……

 全員が杯を持ちメインマストへと集まる。

 集まったのを確認するとウソップがコホンと咳をし杯を高く掲げる。

 

「えぇ~新たな仲間トニー・トニー・チョッパーに……」

『カンパーーーーーイ!!!!』

 

 それぞれが杯をぶつけ合いチョッパーを歓迎した……

 宴会芸が始まる……ルフィは自らの鼻に棒を突っ込み大騒ぎしている。

 みんなの笑い声がメリー号に響き渡った。

 

「チョッパーお前も飲め飲め!」

 

 ニコニコしながらその光景を眺めていたチョッパーにウソップが声を掛け酒をすすめる。

 

 それぞれが宴会を楽しむそんな中……

 一人船首に立ちキラは空を見上げていた。

 ドラム王国の空に桃色の雪が舞う……

 それはまるで桜のようだった……

 ぼそりとキラが呟く……

 

「冬島で桜が見れるとは……」

 

 冬島は年中雪で覆われている為、桜など見ることがない……

 だが、今目の前には鮮やかな色に染められたドラム王国があった。

 Drがチョッパーの旅立ちの餞に雪に咲かせた桜……

 笑顔でキラはしばらく空を見上げていた……

 

「なぁなぁ、キラ。」

 

 キラが空を見上げ感動に浸っていると誰かが声を掛けてくる。

 この幼い声はチョッパーだ。

 何事かと振り向くと……

 

 そこには先ほどまでルフィが自らの鼻に棒を突っ込んでいたのを今度はチョッパーがやっていた。

 呆れた表情を浮かべキラはチョッパーに問いかける。

 

「トニー君……何故こんなことをしている……」

 

 鼻にささった棒を指差しキラは大きく息を吐いた。

 

「キラが元気ないから……元気付けようと思って。」

 

 その言葉に思わずキラは笑顔になりチョッパーの頭を撫でる。

 この子は優しい子だ……

 キラはギターを取り出すとみんなの輪へと入っていく。

 輪の中心へとたどり着くと椅子に腰掛け微笑みながらチョッパーに声を掛ける。

 

「お前の為に歌わせてもらうよ」

 

 そう言うとキラはギターを弾き始める……ルフィたちも口々に声を上げた。

 

「おっ!キラ!歌え歌え!」

「よっ、待ってました!」

 

 ルフィとウソップはバンバンと手を叩き早く歌えと催促する。

 カルーも落ち着きがなく羽をバタバタとさせていた……どうやらキラの歌を気に入っているらしい。

 ギターを強く弾くとキラは声を上げた。

 

「じゃあ、まずは!新たな仲間に!祝いの歌を!」

 

 祝いの歌は海上へと響き渡る……

 自分の歌はドラム王国まで届いているだろうか……

 そして自分の命の恩人まで届いているだろうか……

 あの時助けられなければ今の自分は無い……

 祝いの歌の次は感謝の歌を歌う……

 ウソップが杯を持ち大声を上げた。

 

「じゃあ!それでは、もう一度!新たな仲間チョッパーに……」

『カンパーーーーーイ!!!』

 

 本日2度目の乾杯の時には……日が昇り始めていた……



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第二十五話 BW

チョッパー歓迎の宴も終わりアラバスタへと急ぐ。


 船で事件が起きた。

 8人分の食料が夜中の内に消えてしまったのだ。

 船内を歩き回りキラとサンジの2人は食料を探す……

 

「絶対あいつなんだって!」

 

 サンジは大声を上げルフィを指差しキラを見つめた。

 わかっているという顔をしながらキラは魚釣りをしているルフィの元へと近づいていく……

 思ったとおり……犯人はもちろん……

 犯人の口元を指差しキラは告げる。

 

「口のまわりに何かついてないか?」

 

 驚いた顔をしながら犯人は口元を隠し声を上げた。

 

「しまった!食べ残し!」

 

 犯人を指差しキラはサンジを見つめる……

 

『やっぱりてめぇかあああああ!!!』

 

 強烈な蹴りがルフィに炸裂した。

 大きくため息を吐きキラが呆れた表情を浮かべる……

 その場から立ち去ろうとした時ふと……目に入ったものがあった。

 ウソップ、チョッパー、カルーの口がモゴモゴと動いている……

 犯人は一人ではない……複数犯か……

 キラはナミを見つめ2人と一匹を指差す……

 

「ええ……おしおきが必要ね」

 

 強烈な拳が3人の脳天へと落とされる……

 悶絶し大きなたんこぶを作って3人は床を転げまわった……

 恐ろしい……と青ざめキラはナミを見つめるとニッコリと微笑んでいる……

 ゴホンと咳をするとキラはビビの方を見て口を開いた。

 

「ええっと……これからアラバスタに向かうということは……戦闘は避けられないだろう……そうなった場合の為に敵の戦力を知っておきたい」

 

 大きく頷きビビはBWについての情報を話し始める……

 まずはBWのトップの人間これが厄介なことに王下七武海の一人サ-・クロコダイルだと言う……

 王下七武海とは世界政府によって公認された7人の海賊達のことだ……

 一筋縄ではいかないだろう……

 自分が戦うしかないだろうと……キラが口を開こうとすると……

 

「クロコダイルは、俺がぶっ飛ばす!」

 

 ルフィが大声を上げ拳を突き出す。

 頼もしい限りだ。

 キラはルフィの背中をポンポンと叩き任せたぞと合図を送る。

 椅子から立ち上がとキラは作戦を練るため船室へと向かう。

 

「……今回ルインとやらは、絡んでないのか?」

 

 船室の扉に手を掛けたときゾロがキラに声を掛ける。

 ルインがこんな大きな争いに絡まないことなど絶対に無い……

 ゾロを見つめ口を開く……

 

「絡んでるだろうな……」

 

 2人の会話を聞いていたビビが口を挟む。

 

「キラさん、ルインを知ってるの?」

 

 もちろんとキラは首を縦に振る。

 それを聞いたビビが思い出したように口を開く。

 

「クロコダイルにはミス・オールサンデーの他にパートナーがいるの……確かその男……ルインと何か関係があったはずよ……」

 

 思ったとおりとキラは笑みを浮かべた。

 奴らは歴史に名を残しそうなイベントには絶対に参加してくる……

 

「イガラムが調べてくれたんだけど……」

 

 手配書を取り出すとビビはキラへ資料を手渡す。

 しばらく手配書を眺めると微笑みキラは口を開く。

 

「ルフィ……コイツは俺が倒す」

 

 手配書を見せるとルフィは大きく頷いた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ロベルト

 

 RUIN 中尉

 

 豪腕のロベルト

 

 身長:250cm

 特徴:筋肉隆々、角刈り

 

 懸賞金:7800万ベリー

____________________

 

 組織でも比較的まともな人間だったこの男が何故こんなことを……

 昔を思い出しキラは微笑んだ。

 ロベルトと言う男は曲がったことが大嫌いな人間……

 汚い仕事などは一切しない……一対一……力と力の勝負が好きな男だったはず……

 それがなぜ犯罪組織に加担している……

 

 キラが考え事をしていると手配書を見ていたゾロが疑問を口にする。

 

「確かルインの存在を知ってる奴は少ないんだったよな……?なんで懸賞金てついてんだ?」

「ここがイーストブルーならな……」

 

 そうイーストブルーならば……ほとんどの人が名前を聞いてもわからなかっただろう……だが今自分達がいるところは……

 

「グランドラインでは……有名ってことか……」

 

 ゾロがそう呟くとキラは大きく頷いた。

 だが一つグランドラインでも明確になっていないことがある。

 

「組織体系・構成員を知ってる奴は一握りだろうな……」

 

 そう言うとゾロはそうかとだけ言い黙ってしまった。

 それにしても何故イガラムはロベルトがルインの人間だとわかったのか……

 そんなことを知れば生きていられないはずだが……

 

「よくこいつがルインだとわかったな……」

 

 キラがそう口にすると……ビビはそれに答えた。

 

「ロベルトが自分で教えてくれたそうよ」

 

 自分で教えた……?

 そんなことをすれば組織からロベルト自身が狙われてしまう……

 奴の目的はなんだ……?

 突然考え込んでしまったキラにゾロとビビがどうしたのかと声を掛けるがブツブツ言いながら船室へと入っていってしまう……

 ビビは首を傾げ船室のドアを開けた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

~ キリク サイド ~

 

 部屋をノックする音が聞こえる。

 

「どうぞ」

「失礼致しますキリク様!報告です!」

 

 椅子に腰を掛け自室で新聞に目を通していたキリクは一瞬だけ新聞から目を離し兵を見つめた。

 兵はそれを確認すると絨毯に膝をつき報告を始める。

 

「アラバスタですが……」

 

 アラバスタについての報告を受けるとキリクは満面の笑みを浮かべた。

 戦争が始まる……

 

「そうですか……もう下がりなさい……」

「はっ……」

 

 兵が部屋から去るとキリクは顔を両手で覆い笑い始めた……

 この男は多くの血が流れるのが嬉しくてたまらないのだ……

 手元にある資料をめくり今回のアラバスタの件には誰が絡むのかを確認する……

 資料にある名前を確認すると……キリクの顔から笑みが消えていた……

 

「豪腕のロベルト……何故……?」

 

 ロベルトの名前を見てキリクは自分の目を疑う……

 あの男が戦争ましてや今回の戦争は仕組まれた戦争……こんなものに参加するとは到底思えなかったのだ。

 何かある……キリクは爪を噛み……資料を投げ捨てる……

 まるでこれから何がおこるのかわかっているかのように……

 

 椅子から立ち上がり部屋の隅においていた電伝虫を手に取ると受話器に向かいこう呟いた。

 

「ロベルトが裏切りますよ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 船室へと入ると椅子に腰を掛け天井を見上げているキラの姿がある……

 心ここにあらずと言う感じだろうか……

 顔の前でビビが手をブンブンと振ってみるが……反応が無い……

 何度か顔を覗き込んではいるが……それでも気づかない。

 仕方なくビビはキラの体を揺する……

 

「えっ!?い、いつのまに!?」

 

 驚いた表情で見つめるキラにビビは頬を膨らましながら答えた。

 

「だいぶ前からです!全然気づいてくれないんですもん!」

 

 ごめんごめんと言いながらキラはビビの顔を見つめる。

 頬を赤らめビビは目を逸らした……

 静寂が船室に訪れる……

 彼女は一体何をしにきたのだろう……

 沈黙が続く中……ビビが口を開く……

 

「キラさんは、恐いとかないんですか?」

 

 アラバスタは今戦場となっている彼女は怖いのだ……

 戦場が怖いだけではないだろう……

 自分の国の育った故郷の今の現状を見るのが怖いのだ……

 今……アラバスタは彼女の知っているアラバスタではない……

 民が武器を持ち……国と戦い……多くの血が流れる……

 笑顔でビビの肩をポンポンと2回ほど叩くとキラは口を開く。

 

「戦争止めるよ……俺たちがさ……」

 

 船室の扉へ手を掛けるとニッコリと笑いキラは言う。

 

「元通りになるよ……こんなに姫様が頑張ってるんだから……だからさ……笑ってよ……君の笑顔が国を救うはずだよ」

 

 涙を流しビビは頷くと服の袖で涙をふく……

 

「ありがとう」

 

 満面の笑みでそういう彼女にキラは優しく微笑み船室を出て行った……

 一人船室に残ったビビは呟く……

 

「笑顔が国を救う……か……」

 

 自分は彼から見たらとても悲しい顔をしていたのだろう……

 でも悲しい・苦しいのは自分だけでは無い……わかっている……

 国に住むすべてのものが悲しんでいるのだ……

 だからこそ……自分だけは……あいつらに……国から笑顔を奪ったあいつらに負けないよう精一杯笑おう……

 ビビはキラの言葉を思い出し笑顔を見せる……精一杯の笑顔を……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ??? ~

 

 今日もまた多くの血が流れた……

 裏工作につぐ裏工作……そろそろ自分自身が嫌になってくる……

 大男は眉間にしわをよせ大きくため息を吐く……

 

「どうしたの?元気ないじゃない?」

「いや……別に……」

 

 ここはスパイダーズ・カフェ表向きは普通のカフェだ……

 淹れられたメロンソーダを飲み干すと男は出口へと向かう……

 

「あら?もうおかわりはいいの?ロベルト」

 

 店のオーナーの女性が出口へと向かうロベルトに声を掛ける。

 ロベルトは首を横に振るとため息を吐き口を開く。

 

「食欲がなくてな……」

 

 ロベルトの席に30枚ほど積み上げられた皿を見て女性は噴出した。

 顔を真っ赤にしてロベルトは乱暴に扉を開ける。

 

「それじゃ……ポーラまた来る……」

 

 ポーラと呼ばれた女性はヒラヒラと手を振りまたねと口にした。

 スパイダーズ・カフェはポーラ一人で切り盛りしている……すごい奴だ。

 絶対に自分ならば皿が何枚あっても足りないだろうと腕を見る。

 盛り上がった筋肉は鋼のように硬く……軽く握っただけでもすべてを潰してしまいそうだった。

 

 ロベルトはカフェを後に本拠地への道を歩く……

 大柄なその体は町を歩くだけでも人目についてしまう……

 砂漠地帯を歩いているとふと……殺気を感じた……

 立ち止まり辺りを見回す……

 

 一閃……

 

 銃弾がロベルトの頭部を襲う……が……

 彼の右腕は銃弾を弾き落とした……

 

「誰だ……?」

「さすがは……中尉だ……簡単にはいかないか……」

 

 物陰から痩せた男が姿を現す。

 男の姿を確認するとロベルトは身構えた。

 

「チェイスか……なんのようだ……任務中の接触は……」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 チェイス

 

 RUIN 暗殺部隊

  

 身長:167cm

 特徴:痩せ型、丸いサングラス

____________________

 

 ロベルトが話し終える前にチェイスが口を開く

 

「キリク様はあんたが裏切るとみてる……」

 

 虚をつかれたのかロベルトの動きが止まる……

 サングラスをしている為チェイスの瞳はわからないが間違いなく獲物を捕らえる目をしているのだろう……

 相手は暗殺部隊……力量は……こちらが上か……?

 実力差はまったくわからない……逃げるべきか……

 考えながらチェイスの動きを見つめるロベルトだったが……チェイスから殺気を感じなくなっていた。

 ロベルトに背を向けるとチェイスは口を開く。

 

「キリク様からの伝言だ……ユダが向かっている……始末しろとのことだ」

 

 呆気にとられていたロベルトが我に返り口を開いた。

 

「なっ!?ユダ様が!?」

「そう……奴を始末すれば裏切りも罪に問わないそうだ……以上……」

 

 それだけいうとチェイスはその場から消えてしまっていた……

 過去を思い出しロベルトは恐怖に震える……

 あの”死神”と呼ばれた男と戦う……一対一に喜びを覚えていたロベルトが恐怖したのは先にも後にも”死神のユダ”だけであった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ビビの戻りが遅い……心配したナミが船室へと入っていく。

 扉を開けて目に飛び込んできたのは一点を見つめボーッとするビビの姿があった。

 

「ちょ、ちょっと!大丈夫!?」

 

 ナミの姿に気づいたビビはニッコリと笑い口を開く

 

「キラさんって……素敵ですよね……」

 

 突然のビビの言葉にナミは耳を疑う……

 先ほどキラは船室から出てきていた……まさか何かあったのか……

 何か……とは……

 ナミは顔を真っ赤にし顔の前で手をブンブンと振りはじめる。

 

「ま、まさかね!そうよ!そんなはずないわ!」

 

 首を傾げビビは口を開いた。

 

「そうでしょうか……優しいし仲間思いだし歌ってる姿も……」

 

 頬を赤らめるビビにナミは何か欠点はないだろうかと頭をめぐらす……

 

 顔……顔はまぁ……美形だろう……

 スタイル……スラっとしていて意外と筋肉も……

 性格……ウチでは一番の常識人ではないだろうか……

 

 あっ!とナミが大声を上げ思いついたように話し始める。

 

「そうよ!あいつ貧乏よ!貧乏人はダメよ!ダメダメ!」

 

 必死なナミの姿にビビは聞き返す……

 

「そうなんだ……でも、お金なら……」

「だ、ダメよ!そ、そうよ!キラお金持ってるの見たこと無いもの!」

 

 

 ……クシュン!

 甲板ではキラが大きくくしゃみをした……

 誰かがうわさでもしてるのだろうか……

 

「キラ大丈夫?風邪?」

 

 チョッパーが心配して声を掛けてくれる……船医を入れたのは正解だったのだろう……

 笑顔でチョッパーにかえす。

 

「大丈夫だよ。ありがとう」

 

 船は着々とアラバスタへと向かっていた。

 今、アラバスタは戦場と化している……



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第二十六話 Mr2

いざ、アラバスタ!


 船室で紅茶を飲みキラは読みかけの本を手にくつろいでいた。

 これから戦場へ向かうと言うのに……彼はとても落ち着いているように見える。

 いくつもの戦場を駆け抜けてきた彼に恐怖などないのかもしれない……

 読みかけの本も中盤まで差し掛かっていた頃……船室の外ではルフィの叫び声が聞こえた。

 いつもどおりただ大げさに騒いでいるだけだろうとキラは気にせず本を読みすすめる。

 ドタドタと足音が聞こえたかと思うと……乱暴に船室のドアが開かれた。

 慌てた様子のルフィが叫ぶ。

 

「き、キラ!た、大変だ!」

 

 何が大変なのか……

 本に目をやりながらキラはルフィに尋ねる。

 

「どうした~海王類でも出たのか?」

 

 気の無いキラの返事にルフィはムッっとしながら答えた。

 

「海王類ならおどろかねぇよ!オカマが釣れたんだ!」

 

 何を馬鹿なことを言っているのか。

 呆れて何もいえないキラの腕を引っ張りルフィは船室から出る。

 

「だから……オカマなんて釣れるわけ……」

 

 自分の目を疑った……確かにルフィの竿にオカマが掛かっていたのだ。

 食料が底を付いた為釣りをしていたら釣れてしまったらしい……

 頭を抑えキラは呟く……

 

「疲れてるのかな……気のせいだろ……」

 

 船室へと引き返していくキラにオカマは……

 

『待てい!!!』

 

 といいながら海に落ちていく……

 あんな気持ちの悪い生物には関わりたくないとキラは船室へと戻り飲みかけの冷めた紅茶を飲む。

 

 忘れようと再び本に目を通す……

 外が妙に静かになった……やはり気のせいだったに違いないとキラは胸を撫で下ろした。

 本に集中し始めると再びルフィの叫び声とドタドタとこちらへと走ってくる音が聞こえる……

 大きくため息を吐きどうやら気のせいではなかったと頭を抱えた。

 再び乱暴に扉が開かれルフィが駆け込んでくる。

 そして開口一番……

 

「キ、キラ!あいつMr2だったんだ!」

 

 開いた口が塞がらない……

 あんなふざけた格好の奴がBWにいる……そしてこれから戦うなんて……

 しかも相手に顔を知られてしまった……これは不味いのではないだろうか……

 俯き考え込むキラにルフィは鼻息荒く言葉を続けた。

 

「すごいんだぜマネマネの実で俺たちの顔になれるんだ!」

「ほう……なるほどな……」

 

 ニヤリと不適にキラは笑う……

 相手の能力がわかっていれば対策が練りやすくなる……顔はばれてしまったがこれは大きな収穫だ……

 妖しく笑うキラを見て恐怖を覚えたルフィは急いでみんなの所に戻る。

 

 船室から急いで飛び出してきたルフィにゾロが声を掛けた。

 

「どうしたルフィ?」

 

 青ざめた顔でルフィは船室を指差す……

 何事かとゾロは船室の扉を開ける……

 

「……おまッ!?」

 

 悪魔のような微笑を浮かべたキラの姿があった。

 ブツブツと何か呟いている……

 ゾロが顔を近づけよく聞くと「マネマネ」と連呼していた……

 悪寒がゾロを支配する……2、3歩下がった所でキラと視線が合ってしまう……

 

「ゾロ……ちょっといいか」

 

 笑いながら話しかけてくるキラが不気味で仕方なかった……

 いつものさわやかな微笑みならば誰もが好感を持つだろうが……

 今の笑い方は完全に悪人と同じだ。

 

「な、なんだ……?」

「Mr2のことなんだが……」

 

 手招きしゾロを近くに寄せると耳打ちをすると……

 なるほどといった表情でゾロが頷くとキラはいつもの爽やかな笑顔で答える。

 どうやら作戦を練っていただけのようだ……あんな顔をしなくても……とゾロは腫れ物でも見るかのような目でキラを見つめるのだった……

 

 2人は船室から出てみんなに声を掛ける。

 全員が集まったことを確認するとキラは左腕を挙げ言う。

 

「お前等、左腕にこれを巻け」

 

 バンダナのようなものを全員が腕に巻く……

 

『いいか、左腕のこれが……仲間の印だ!!!』

 

 全員が大きく頷くとキラは大声を上げた。

 

「よし、上陸だ!」

 

 一味はアラバスタへの上陸準備を進める……

 対決までの時が刻一刻と近づいていた……



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第二十七話 火拳のエース

Mr2対策もバッチリでアラバスタへ上陸。


 メリー号はアラバスタへ上陸した。

 上陸して各々が船から荷物を下ろしている中……ルフィは、メシ屋を探し一人砂漠を走っていってしまう……

 ため息を吐きキラは遠のくルフィの背中を見つめる……船長なのに統率の取れない男だ……

 ルフィ以外の一行は港町ナノハナのはずれへとたどり着いた。

 町へついてすぐにナミはサンジに服のお遣いを頼む。

 普通の格好ではBWの奴らに気づかれてしまうからだ。

 問題は……買いにいったのがサンジだということだろう……

 どんな服を選んでくるのか……

 

「素敵!こういうの好きよ!私!」

 

 ナミが露出の多い服を着て笑顔を見せる。

 あれは踊り子の衣装なのだが……

 呆れた顔を見せるキラにサンジは胸を張って答える。

 

「姫と海賊だってばれなきゃいいんだろ」

 

 頭を抱えため息を吐く……

 確かに海賊と姫だとは誰も気づかないかもしれないが……

 問題は男共の衣装だ……

 ゾロなどどう見ても盗賊である……

 仕方が無いとキラも服を着替えると敵がいないかと岩陰から大通りを覗く……

 

『待てえええええ!!!!』

 

 叫び声が聞こえる……

 どうやら海軍のようだ……海賊でも現れたのだろうか?

 ふとゾロが気づきキラに声を掛けた。

 

「お、おい追われてるのって……」

 

 ため息を吐くゾロの肩をポンポンと叩きキラは怒りの表情を浮かべる。

 

「ああ、ウチのバカ船長だな」

 

 あれほど目立つ行動は避けるようにいったはずなのだが……やはりルフィにはそれは出来なかったようだ。

 逃げ回っていたルフィがこちらに気づき声を掛ける。

 

「おお!キラ!」

 

 海軍を引きつれルフィがこちらに向かってくる……キラは舌打ちをし全員に荷物をまとめるように言うと一斉に走り始めた。

 

「何!?俺を置いていくつもりか!?」

 

 ルフィが叫ぶがこのまま巻き込まれるわけにはいかない……と振り返ると……見知った顔が海軍の中にある……あれは……

 

『ホワイト・ブロー!!!』

「は、白猟のスモーカー!?」

 

 海軍大佐スモーカーの姿があった。

 どうやら麦わら一味を追ってイーストブルーからグランドラインへと入ってきたようだ。

 ルフィへとスモーカーの攻撃があたる瞬間……

 

『陽炎!!!』

 

 炎が煙を打ち消す……

 何事かと炎の先をみると……男が立っている……

 

「エース!!!」

「かわらねぇな!ルフィ!」

 

 エースと呼ばれた男はそう答えるとキラへと視線を向け叫ぶ。

 

「ルフィ!話は後だ!逃げるぞ!」

 

 一目散にキラたちは船へと走り出す。

 メリー号へと飛び乗るとキラはゾロに錨を上げるよう指示を出した。

 船を出航させ海軍が見えなくなるとゆっくりと床に腰を下ろす……

 大きく息を吐くとキラはルフィに尋ねる。

 

「火拳のエースと知り合いなのか?」

 

 ニッコリと笑いルフィは口を開く。

 

「ああ。エースは、俺の兄ちゃんだ。」

『兄ちゃん!?』

 

 全員が口を開けポカンとしていると……ゾロが口を開く。

 

「なんでその兄貴が偉大なる航路にいるんだよ」

 

 不思議そうな顔をするゾロにキラが答える。

 

「ロロノア。火拳のエースといえば白髭海賊団の2番隊隊長としてかなり有名だぞ」

「そうなのか?」

 

 白髭について話しているとメリー号へと飛び乗る人影がある……視線をやると……火拳のエースの姿があった。

 

「よぉ、ルフィ。どうもウチの弟がお世話になってます。」

 

 深々と頭を下げるエースにキラたちもこちらこそと頭を下げる。

 頭を上げたエースはニッっと笑うとルフィを見つめ口を開く。

 

「ルフィお前、白髭海賊団に来ねぇか。仲間も一緒にな。」

 

 突然の発言に全員の動きが止まる……そんななかキラは真っ直ぐにエースを見つめ口を開いた。

 

「ダメだ」

 

 ルフィではないところからの答えにエースは目が点になっている……

 キラは続けざまに口を開き

 

「ルフィは海賊王になる……俺が道を切り開く……」

 

 そう言い切ったキラにエースは思わず大笑いをし真っ直ぐに見つめた。

 

「ヘヘッ……好きだぜ……そういうの……俺も親父を……」

 

 何か言いかけたかと思うと帽子を深く被りエースはルフィたちに背を向け船べりへと脚を掛ける……

 船の下を見るとサーフボードのようなものが浮いている……エースはこれで移動しているようだ。

 ふと何か思い出したようにルフィへと向き直るとエースはカバンから小さな紙を取り出す。

 

「そうだ、用事はこれだ。」

「なんだ?この紙切れ。」

 

 紙を手に取るとルフィはマジマジと見つめる……どう見ても普通の紙切れだが……

 

「ビブルカードか……」

「ビブルカード?」

 

 ビブルカードの切れ端をお互いに持っていればまたエースとルフィは会うことになる。

 ルフィにキラがそう説明すると大切そうにポケットへとしまう。

 エースはキラを見つめると微笑み口を開いた。

 

「ルフィ、お前いい相棒見つけたな」

 

 大きく頷きルフィは笑顔を見せる。

 船から飛び降りエースはサーフボード(ストライカー)に飛び乗った。

 

「もう、行くのか?」

 

 ゾロが尋ねるとエースは頷き険しい顔を見せる。

 

「ああ。今、重罪人を探しててな。俺が始末をつけなきゃならねぇ……」

 

 エースはキラを見つめると声を掛けた。

 

「キラ、だったっけ?」

 

 頷くとエースはさびしそうな表情を浮かべ口を開く。

 

「もう少し早く会いたかったな……初めてルフィがうらやましいと思ったよ」

 

 クスッっとキラは笑いエースに声を掛けた。

 

「じゃあ2番隊副隊長の席でも空けといてくれよ」

 

 笑顔でエースにそう告げるとニッっと笑い声を上げる。

 

「ああ、空けとくよ。待ってるぞ!じゃあな!」

 

 背中を向け手を振るエースを見送るとキラは胸を撫で下ろす……

 どうやらエースはキラのこと……ユダのことを覚えていないようだ……

 昔エースが親父と慕う男を狙った暗殺者の顔を……

 自分の過去を思い出し微笑みを浮かべ振り返ると……

 

 一味全員がキラの顔を覗き込んでいる……

 この光景に後ずさりし何事かと辺りを見回す……

 

「キラ!行くなーーー!」

 

 突然ルフィが叫ぶ。

 どうやら先ほどのキラの言葉を本気にしているようだ。

 

「行かないでくれよ!この船にいてくれるよな?」

「そうよ!キラがいないと困ることがたくさんあるのよ!」

 

 各々が行かないでくれと口にする……なぜかゾロは何も言ってくれないようだが……

 笑顔を見せキラは口を開く。

 

「ジョークに決まってるだろ?俺が白髭に入れるわけない……」

「本当?」

 

 ナミがなぜか涙目で聞いてくる。

 クスクスと笑うとキラは笑顔を見せ言う。

 

「俺が好きなのはお前等とこの船だ」

『キラーーーーー!!!』

 

 一斉に抱きついてくる……

 自分はこれだけ大事にされ必要とされているのだ……

 こんなに幸せなことはない。 

 暗い過去を話してもこいつらなら……受け止めてくれる……そう思える。

 全員に離れるよう言うとキラは口を開く。

 

「さぁ、反乱軍を止めるぞ。」

『おう!』

 

 反乱軍の暴動を絶対に止める……無駄な血を流させないためにも……



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第二十八話 仲間

エースとの出会い、別れ。

反乱軍を止める為いざ、ユバへ


 海上を移動し緑の街エルマルへ上陸した麦わら一向……アラバスタへの道のりを砂漠を渡り進んでいく……

 目的地は中間地点のユバなのだが……

 肌を照りつける熱が容赦なく体力を奪い取っていく……

 汗を拭いキラは太陽を睨みつけ……口を開く……

 

「クソッ……あついな……」

 

 冬島出身のチョッパーは完全に暑さにやられ台車に乗りゾロに引っ張ってもらっているようだ。

 顎を挙げ汗を垂らしながらルフィがうめき声を上げている。

 飲み水をみんなで節約しながら進む……大事な水だガバガバ飲むわけにはいかない

 それぞれが少しずつ水を口に含み砂漠を歩く。

 心配そうな表情でビビはキラの顔を覗き込む……

 彼は砂漠を進んでいる間……一度も水を口にしていない……

 

「キラさん……大丈夫?お水飲んだら?」

 

 笑顔で首を横に振りキラは大丈夫と口にする。

 だが渇きで彼の声は出ていなかった。

 

「み、水飲んでいいか……」

 

 水筒を手に持ちルフィがそう言うとナミが釘を刺す。

 

「一口よルフィ。口に含む程度大切な水なんだから。」

 

 ブツブツと何かいいながらルフィは口がパンパンになるほど水を含む。

 それを見たウソップが勢いよく突っ込む。

 

「含みすぎだ!」

 

 叩かれた衝撃でルフィの口に含まれていた水が吐き出される。

 

「ウブッ!はきだしちまったじゃねぇか!」

 

 ケンカを始めた二人の声はキラの耳には届いていなかった。

 意識が遠のいていく……

 自分も人間なのだとクスッと笑いキラは前のめりに倒れた。

 隣を歩いていたビビはキラの体を起こし声を掛けるが……反応が無い……

 

「キラさん大丈夫!?トニー君!」

 

 寝ていたチョッパーが飛び起きキラへと駆け寄っていくと額に手を当て口を開いた。

 

「……熱中症だ!」

「とりあえず日陰で休みましょう!」

 

 ビビは岩陰を指差しそう口にする。

 

「よし!キラ!日陰で弁当だ!弁当食えば治るぞ!待ってろ!」

 

 一足先に荷物を持ってルフィが岩陰へ移動し何もないか辺りを見回すと……

 岩陰に何羽もの鳥が倒れていた……ルフィは荷物を置くと急ぎチョッパーに声を掛ける。

 

「チョッパー大変だ!死にそうな鳥がいっぱいいるんだ!助けてやってくれ!」

 

 大きく頷くと急ぎチョッパーが岩陰へと向かう……ビビは思い出したようにルフィに尋ねた。

 

「鳥!?まさか!?ルフィさん、その鳥って!」

 

 気づいたときにはもう遅く……チョッパーが駆けつけた時には鳥も……そして一味の荷物もなくなっていた……

 苦い顔をしたビビが呟く

 

「その鳥は、人を騙して荷物を盗む。砂漠の盗賊よ。」

 

 サンジがルフィへと歩み寄り掴みかかると怒声を浴びせる。

 

「おまえ!鳥なんかに騙されやがって!」

 

 ムッとした表情でルフィも言葉を返す。

 

「仕方ないだろ!騙されたんだから!」

「てめぇの脳は、鳥以下か!」

 

 今度はルフィとサンジがケンカを始める……

 疲労と乾きで気が短くなってるのだろう……

 

 寝ていたキラがゆっくりと体を起こし立ち上がると……サンジとルフィを見つめ叫んだ。

 

『てめぇら!少し落ち着け!見方内で争ったって仕方ないだろうが!』

 

 怒声が砂漠に響き渡る……

 ケンカしていた2人は静まり返りキラを見つめた。

 2人がケンカを止めたことを確認するとキラは大きく息を吐きチョッパーに尋ねる。

 

「俺は……?どうしてた?」

「熱中症で気を失ってたんだ。全然水飲まないからだぞ」

 

 心配そうに見つめるチョッパーの頭を撫でキラが口を開く

 

「ウチの連中は、計画性ないからさ……誰かが飲まなければ少しは水も持つだろ?」

 

 全員が申し訳なさそうな顔をする……

 自分を犠牲にして仲間達の為に……ナミが怒鳴り声を上げる。

 

「少しは、自分の心配もしなさいよ!」

 

 瞳を潤ませながらナミはキラの服の裾を掴む。

 

「心配させないでよ……」

 

 クスッと笑いキラはナミの方をポンポンと叩く……そして先頭をきり歩き始めた。

 

「さぁ、行くぞ……早いとこ戦争を……」

 

 腕をつかまれキラは立ち止まった。

 首を横に振りナミが口を開く。

 

「あんたは、しばらく寝てなさい。」

 

 大丈夫と口にしキラが歩き出そうとするとサンジが声を掛ける。

 

「キラ、少しは甘えろよ」 

「お前の力が必要になったときには、叩き起こしてやるから今は休んでろって」

 

 ウソップがキラの肩を叩き笑顔を見せた。

 微笑みキラは台車に腰を下ろす。

 

「じゃあ、少し休む……」

 

 すこしの間だけ彼は仲間達に甘えることにした。

 正直に言うとまだ視界はよろしくはないのだ……

 少しだけ……本当に少しだけでいい……眠らせてもらおう……

 仲間達が自分の力を必要とする……それまでは……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ロベルト サイド~

 

 重たい扉を開け建物の中へと入る。

 ここは表向きはカジノだが……裏はBWのアジトになっていた。

 ロベルトは大きくため息を吐き天を仰ぐ……

 自分に死神を倒せるのだろうか……昔挑んだときは指一本すら触れることが出来なかった。

 あの赤い瞳に睨まれただけで失神しそうになっていたほどだ。

 

「無理だ……」

 

 ボソッっと呟いたロベルトは椅子へ腰を掛けた。

 物思いに耽っていると扉が開かれる……

 

「なんだ……暗い顔じゃねぇか豪腕……」

「クロコダイル……」

 

 扉を開け現れたのはクロコダイルとMsオールサンデーだった。

 クロコダイルはロベルトに近づくと笑いながら口を開く。

 

「これから祭り(戦争)だっていうのに何暗い顔をしてる」

 

 俯きながらロベルトは答える。

 

「来るんだよ……死神が……」

「死神?」

 

 オールサンデーは首を傾げロベルトに聞き返す。

 ふと視線をクロコダイルへ向けると険しい顔をし拳を握り締めていた。

 死神とは……彼が……クロコダイルが表情を変えるようなことなのかとオールサンデーは記憶をめぐらす。

 黙っていたクロコダイルが口を開く。

 

「奴が……生きていたのか……」

 

 歯を食いしばりクロコダイルは踵を返し扉へと向かっていく。

 思い出したのかオールサンデーも顔を真っ青にし固まっていた。

 忘れたくても忘れることの出来ない恐怖……

 背を向けたままロベルトにクロコダイルが声を掛けた。

 

「貴様が始末しろよ……豪腕……」

 

 ロベルトは頷くと震える拳を押さえつけ……俯いたまま答える……

 

「もちろんだ……昔の俺とは違う……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 麦わら一行はユバにつくとキラをベットへと寝かせる。

 彼の熱は40度近くあり危険な状態だ。

 チョッパーはタオルを取り替えながらキラに感謝した。

 キラのあの一喝からみんな文句を言わずユバへと歩き……そしてたどり着くことが出来たのだ。

 

「ほんと……キラはすげぇなぁ……」

 

 笑顔でチョッパーはそう呟く。

 タオルを交換しようと手を伸ばすと……キラは目を覚ました……

 見慣れない天井が目の前にある……

 

「ここは……?」

 

 体を起こそうとするキラをチョッパーがまだ寝てるようにとベットに戻す……

 

「ここはユバだよ」

 

 チョッパーがそう答えるとキラは申し訳なさそうな顔をする。

 彼は自分がずっと寝てたのが迷惑になったと考えたのだろう。

 

「仕方が無いよ。熱40度あったんだし……」

 

 タオルをキラのおでこに乗せチョッパーがテーブルの上のコップを手に取る。

 

「キラ、水飲んだら。もう少し休むんだぞ」

 

 渡されたコップを手に取りキラは微笑み口を開く。

 

「はいはい。ウチの船医さんはおおげさだな……」

 

 水を飲み干すとキラは再び深い眠りへと落ちていった……

 

 

~翌朝~

 

「昨晩はお世話になりまして……申し訳ありません……」

 

 痩せた中年の男性(トト)にキラは深々と頭を下げる。

 昨日は一日中眠っていて挨拶などろくに出来なかった。

 

「体は、もう大丈夫かい?」

「ええ、おかげさまで。」

 

 優しく微笑むトトにキラも元気よく答える。

 出発しようと荷物をまとめ進もうとするとトトがルフィを呼び止め水筒を渡す。

 

「おお!水じゃん!」

「正真正銘ユバの水だよ。もって行きなさい。」

 

 首を傾げ水の何が珍しいのかと……ナミに尋ねるとものすごい表情でにらまれてしまった。

 何か悪いことを言っただろうか……

 ユバを後にし……反乱軍を止めるために進み始める。

 進めど進めど砂漠……一向に町は見えては来ない……

 歩いていると突然ルフィが立ち止まる。

 

「やめた」

 

 突然のルフィの発言に全員の歩みが止まった。

 立ち止まっている時間などないのだが……

 ビビが座り込むルフィに声を掛ける。

 

「ルフィさん、反乱軍を止めなきゃ……」

「反乱軍止めたらクロコダイルは、止まんのか?」

 

 ルフィの発言にビビは言葉を失う……

 確かに反乱軍を止めたからといってクロコダイルの暴走は止まらないだろう。

 次なる策を打って出てくるだけだ。

 それだとこちらは常に後手に回ってしまう……

 

「ビビは、この戦いで誰も死ななきゃいいと思ってるんだろ?」

 

 その言葉にビビは答えることが出来なかった……

 彼女の確信をついたのだろう。

 容赦の無い言葉がルフィの口から発せられる……

 

「甘いんじゃねぇか?」

 

 冷たい表情でそう言い放つルフィにビビは顔を真っ赤にして怒りを露にした。

 

「人が死ななければいいと思って何が悪いの!?」

「人は死ぬぞ」

 

 冷酷だが事実だ……

 こういう事態になってしまっては人の死は避けては通れない……

 重たいかもしれないが現実だ……一人の少女に背負わせるには重たすぎる……

 感情を露にしたビビがルフィともみ合いになっている。

 ビビの拳がルフィの顔面にクリーンヒットするが……かまわず彼女は拳を振りかざす……泣きながら何度も何度も……

 

『俺たちの命くらい一緒に賭けてみろ!仲間だろ!』

 

 ルフィの叫びがこだまする。

 顔をくしゃくしゃにしてビビが座り込み泣く……背負っているものの重さ……それに押しつぶされそうなのだろう……彼女自身もどうしたらいいのかわからないのだ……

 そんな彼女に答えを提示する……導くのも……自分の運命なのかもしれない……

 キラはビビの近くにしゃがみ込んで左腕をめくりビビに仲間の印を見せ話しかける。

 

「俺たちは仲間だ……君の背負ってるもの……俺達も背負う……軽くしてやるよ……」

「キラさん……ううぅ……」

 

 声にならない声を上げビビがキラにしがみ付き泣き声を上げた……

 彼女の頭を優しく撫で……強い視線をルフィに向ける。

 

「ルフィ……負けられないぞ……」

「おう!ビビ教えろ!クロコダイルの居場所!」

 

 クロコダイル……首洗って待ってろよ……

 紫色の瞳を赤く染め……キラは不適な笑みを浮かべた……



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第二十九話 砂漠に響く歌声

ユバを出発し、クロコダイルを探す。


 ルフィとビビの言い争いも一段落し一味はクロコダイルの元へと歩を進める。

 クロコダイルが現在本拠地としている場所まではユバから北へまっすぐ上った"レインベース"とのことだ。

 どうやらビビの話によればレインベースまでは丸一日砂漠を歩かなくてはいけないらしい。

 砂漠を歩き続ける……灼熱の太陽……砂が徐々に体力を奪っていく……

 滴る汗を拭い歩き続ける一味……そんな中心配そうな表情でウソップがキラの顔を覗き込む。

 

「キラ……大丈夫か?またぶっ倒れないか?」

 

 首を左右に振り大丈夫だとキラは笑顔を見せる。

 今度は同じ失敗を繰り返すまいと少しだけ口に水を含む……

 最初に倒れてしまい荷物になってしまったのがキラは自分自身気に入らなかったようだ。

 そんなキラの背中を見つめチョッパーも鼻の穴を大きくして歩き続ける。

 

「俺も今日はがんばるぞ!」

 

 チョッパーの姿を見てキラはニッコリと微笑み再び歩を進めた。

 

 

 歩き始めて2時間後……さすがに一味にも疲れの色が見え始める……

 大粒の汗を流し一歩一歩と進んでいく……

 誰一人文句を言うことなく黙々とただ歩き続ける…… 

 しばらく進み続けると……大きな岩が見えてきた。

 

「あそこで休みましょう」

 

 ナミの一声で全員が岩陰へと進み腰を下ろす。

 砂漠を歩くよりは涼しい……失った体力を少し取り戻すことが出来そうだ。

 だがまだたった2時間……これから先まだまだ先は長い。

 

「おで……もうダメ……」

 

 チョッパーが舌を出し横になる。

 やはり冬島出身のチョッパーには砂漠はキツイのだろう。

 そんな彼を元気付けようとキラは重たい腰を上げ精一杯の笑顔で声を掛ける。

 

「チョッパー、頑張れ。今日は荷物になるわけにはいかないぞ。」

 

 キラの言葉を聞き完全にばてていたチョッパーは表情を引き締め力強く頷く。

 

「お、おう。頑張ろうキラ。」

 

 だが疲労しているのはチョッパーとキラだけではない。

 一味全員がばてていた。

 アラバスタ出身のビビにはこの灼熱の太陽は当たり前かもしれないが、他のものには少々辛いのだ……日陰で少し休憩し再び歩き始める。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ??? ~

 

 豪腕のロベルト……あの男は何故この計画に賛同しているのだろうか……

 顎に手を当てMsオールサンデーことニコ・ロビンは考えを巡らせた。

 自分がこの計画に賛同したことは歴史を見るため……だが彼は一体何故なのか……

 風の噂では汚いことは好きではなくただ真剣勝負を求める男だと聞いていたのだが……

 ニコ・ロビンはフッっと笑顔を見せると首を横に振る。

 彼のことはどうでもいい……ただ自分は自分の興味のあることだけを考えればいいと……

 カジノを通り抜け重たい扉を開けるとそこにはバナナワニと格闘しているロベルトの姿があった。

 呆れた表情を浮かべロビンは近くの椅子へと腰を下ろす。

 

「それはボスのペットなのよ?大丈夫?」

 

 クスッっと笑いロビンがそう言うとロベルトは頷きバナナワニの横腹にその豪腕を叩き込む……

 鈍い音と血なまぐさい臭いが立ち込める。

 ロベルトの拳は深く食い込み皮膚を突き破りワニの内臓へと突き刺さっていた……

 

「しまった……」

 

 申し訳なさそうな表情を浮かべロベルトは苦笑いする。

 どうやらやりすぎてしまったようだ。

 バナナワニの腹部には大穴があき血が溢れ出す……

 

「豪腕てめぇ……」

 

 扉が開きクロコダイルが部屋に入るやいなやそう口にした。

 

「加減したつもりなんだが……」

 

 頭を掻き自分の拳を見つめ首を傾げるロベルトにクロコダイルはため息を吐く。

 

「てめぇ……エサやるだけって言ってなかったか?」

「すまん……」

 

 化物じみた破壊力を持つこの男が恐れる”死神”……あの男は今どうしているのだろうか……

 クロコダイルに説教されるロベルトを尻目にロビンは昔見たあの赤い寂しげな瞳を思い出し……不謹慎かもしれないが再会の時を待ち望んでいるのだった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 歩き始めたのはいいが……表情は暗い……

 一味は疲労の色を隠せずにいた。

 少しでも元気付けようとキラは歌を口ずさむ……

 砂漠に澄んだ声が響き渡る……

 歌を聴きながら仲間達は歩き続ける……その表情は暗いものから明るく前を向く表情へと変わっていく……

 一緒に口ずさむもの……聴き入るもの……そしてもっと歌えと煽るもの……

 

「キラさんの声……やっぱり素敵……」

 

 ビビはそう言うと歌を聴き入りながら歩き続ける。

 優しく包み込むような歌声に次第に心が安らいでいく……

 

「ほんと……憎いくらい綺麗よね……あいつ……」

 

 歌いながら歩くキラを見つめナミはそう呟く……

 いつしか笑顔で歩いている仲間達を見つめ……キラも自然と笑顔になる。

 

《歌は人の心を幸せにする……あの人の言葉は間違いではなかった……》

 

 歌声は砂漠に響き渡り……いつまでも終わることはなかった……



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第三十話 ”豪腕””旋律”接触

 美しい町並みが眼前に広がる……ここが夢の町レインベース……

 水を求めルフィとウソップは勢いよく食事処へと走っていく。

 無理も無い……砂漠を水の制限がある状態で歩き続けたのだ。

 よくあの2人が文句も言わず歩いたものだとキラは関心していた。

 

「おーい俺達の分の水も頼むぞー!」

 

 サンジがそう叫ぶと2人は手を振って答える……

 心配そうな表情を浮かべるキラにナミが声を掛けた。

 

「大丈夫よ。あいつらだってお遣いくらいできるわ」

 

 キラが心配そうな表情で頷くとビビがクスッっと笑う。

 

「キラさん、心配なら見てきたら?」

 

 笑顔で言うビビに大きく頷きキラは2人の後を追い街中へと走っていった。

 

「ほんと心配性よね」

 

 そう言うナミの横でビビは頷き口を開く

 

「心配性で……とても……優しい人……」

 

 頬を赤らめそう呟くビビにナミはため息を吐く……

 

「ほんと……罪な男……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ロベルト サイド~

 

「あんなに怒ることか……?」

 

 大きな体を丸めロベルトは街中を歩いていた。

 先日訓練も兼ねてバナナワニと戦闘していたのだが誤まって殺してしまいクロコダイルに散々説教をされたのだ。

 

「確かに……5匹ほど殺してはしまったが……」

 

 頭を掻き空を見上げる。

 バナナワニと戦闘したがあんなものではまったく話しにならない。

 死神は早く強く……そして情け・容赦はない……

 恐ろしいまでに非情な男……

 赤い瞳を思い出すだけで恐怖に体が震える……

 

『いたぞー!麦わらの仲間だ!』

「海軍?」

 

 俯く顔を上げロベルトは海兵の後を追いかけていった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「クソ……見つかるとは思わなかった……変装意味ないじゃないか!」

 

 キラは暑苦しいターバンのような帽子を投げ捨て町を疾走する。

 海兵達はキラのスピードについて来れずどんどんと引き離されていく……

 

 

「あの男……なんて速さだ……」

 

 大きくため息を吐きながら海兵はあきらめずキラの後を追う。

 あの後姿は間違いなく”旋律のキラ”に違いない……

 必死に追うが人ごみをスルスルと潜りどんどんとキラの姿は見えなくなっていく。

 

「おのれ……旋律……大佐になんと報告すれば……」

 

 海兵達は追うのを諦め来た道を戻っていった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ここまでくれば……大丈夫か……?」

 

 開けた道へと出るとキラは背後を振り返る。

 どうやら追っては来ていないようだ。

 だが仲間達とは離れてしまった……来た道を警戒しながらゆっくりと戻り始める。

 きっとこの街にはスモーカーがいる……見つかっては面倒だ。

 物陰に隠れながら進んでいると……ふと背後に人の気配を感じる。

 それはどこか懐かしい……気配……

 

「ロベルトか……」

 

 背後を振り返るとそこには”豪腕のロベルト”の姿があった。

 巨体を九の字にしてロベルトは深々と頭を下げる。

 

「お久しぶりです……ユダ様……」

 

 顔を上げるようキラはロベルトに言うとニコリと笑顔を向けた。

 常に表情を変えず淡々と任務をこなしていた”死神”が見せる笑顔にロベルトは驚いた表情を見せた。

 目を合わせば恐怖を覚える赤き瞳はもうそこにはなく……

 かつての”死神”は優しい眼差しでロベルトに話しかける。

 

「お前……組織を抜けたのか……?」

「ええ……抜けました……」

 

 真実を口にするロベルトにキラは心配そうな表情を見せた。

 組織を抜けると言うことは自分のように死ぬまで組織から監視される状態になってしまう。

 

「大丈夫……なのか?」

 

 微笑ながらロベルトは首を横に振った。

 

「つい先日……チェイスが自分の元に来ました」

「……暗殺部隊が動いたか」

 

 苦い顔をしながらキラはそう呟く……

 暗殺部隊は実力的には尉官ほどの実力がある……まともに戦えば無事ではすまないだろう……

 

「ただ……あなたを殺せば……罪には問わないそうです……」

 

 拳に力を込め真っ直ぐにキラを睨みつける……

 殺気を感じたキラはそれでも柔らかい表情は崩さなかった。

 

「そうか……でも俺もやらなければならないことがある……だから死んでやれない」

 

 ロベルトは震えた……柔らかい表情をしてはいるが……キラの醸し出す雰囲気が恐怖を与える……

 

「腐っても……”死神”か……」

 

 そう言いクスッっと笑うとロベルトは自分の頬を力強く叩く。

 自分にはキラのように”やらなければならないこと”などない……だが……組織に縛られず……己の目で世界を見てみたい……

 

「今は死神じゃない……ただの陽気な海賊さ……」

 

 お互いに距離を取ると……キラは妖しく微笑んだ……



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第三十一話 豪腕vs旋律

 距離を取り間合いを計る……ロベルトのリーチの長さを考えれば懐に飛び込むほうが良さそうだが……

 視線をロベルトの体に移すと異常なほどに盛り上がる筋肉が目に入る……

 生半可な攻撃では通用しないだろう…… 

 

「さて……どうしようか……」

 

 頭を掻きながらそう呟くとロベルトが拳を振り上げる。

 間合いを計りキラは真後ろへと飛ぶがそんなことお構い無しとロベルトは拳を振り切った。

 当たるはずはない……リーチの射程外へと逃げた……そのはずだった……

 突風がロベルトの拳から放たれるとキラの体は軽々と民家の壁へと打ち付けられ鈍い音を立てる……

 

「うぐっ……」

 

 これを機と捉えたのかロベルトは一気に距離を縮めようと真っ直ぐにキラへと向かう。

 キラは妖しく微笑み口元の血液を指でふき取るとそれをロベルトに向かい力強く弾く

 弾かれた血液は刃となりロベルトを襲う……

 

「チッ!」

 

 ロベルトが刃を手で弾き落とすと同時に今度はキラが攻撃に転ずる。

 一瞬でロベルトの背後を取ると横腹へ拳を突き刺す……が……

 

「痛っ……!?」

 

 拳に激痛が走る……まるで……鉄板でも叩いたのではないかと言うほどロベルトの体は硬く……強い……

 振り向きざまロベルトが拳を振り切る……風圧が巻き起こるがそれを利用しキラは一気に後方へと飛び去り距離を取った。

 

「俺には……あなたのように能力(さいのう)がない……だから俺は死ぬほど訓練した……そしてあなたに負けないほどの筋力(さいのう)を手に入れた!」

 

 そう言うとロベルトは全身に力を込める……

 筋肉が盛り上がり体が2周りほど大きく見える……恵まれた体……そして破壊力……これが豪腕のロベルトの力……

 キラはクスリと笑い……声を上げる。

 

能力(さいのう)ねぇ……お前は……ルインの真実を……いや俺達の真実を知らない!」

 

 突然の言葉にロベルトの動きは止まってしまった……

 自分達の真実……?

 

「ど、どういうことですか……?」

 

 ロベルトの質問にキラは悲しい顔を見せた……

 絶望しきったそんな表情を……

 

「総帥に聞いてみな……あの人しか知らないよ……」

「どういう……!」

 

 言い切る前に銃弾がロベルトの頬を掠める……

 血が滲み痛みが走った……

 

「余計なことは言うんじゃねぇぞ……ユダ……」

 

 銃弾の先にはチェイスの姿があった……銃口はキラへと向けられている。

 クスクスと笑うとキラはチェイスを睨みつけ口を開く。

 

「お前はいいよな……”そっち”側の人間じゃないんだからさ」

「貴様……!」

 

 怒りの表情を浮かべチェイスはキラへと銃弾を放つ……が彼に当たる前に真っ二つに裂け地面へと落ちていく……

 キラの手には赤い鎌が握られていた……ロベルトが何度も恐怖を感じた……”死神の武器”……

 

「貴様……能力が目覚めて……!」

 

 禍々しいこの雰囲気……赤い瞳……不適な笑み……

 

「ユダ様……」

 

 恐怖にロベルトの足は震えた……やはり何も変わっていない……昔のまま……

 先ほどの柔らかい表情はどこへいったのか……

 不適な笑みを浮かべキラはチェイスへと刃を向ける……

 

「消えろ……そして伝えろ……組織は……いずれ潰してやるとな……」

 

 急ぎこの場から逃げてしまいたいが……チェイスは立つことが出来なかった……圧倒的な恐怖……

 死神はやはり死んでいなかった……

 踵を返しキラは歩き始める……だがロベルトは止めなかった……いや止めることが出来なかったのだ……

 

「俺は……あの男に……勝てるのだろうか……」

 

 重い足取りでロベルトはアジトへと戻っていった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 頭が痛い……吐き気がする……

 恐らくロベルトの拳圧で壁に叩きつけられたときに後頭部を打ったせいだろう……

 レインベースの町をキラはフラフラと歩く……

 ロベルトを殺すことは自分には出来なかった……だからあえて鎌を向けなかったのだ……

 組織を抜けたあの男が何をするのかそれを見てみたいという好奇心があった。

 もし仲間達に害をなすようなことがあればそのときは容赦なく殺す覚悟が自分にはある。

 

 色々なことを考えながらナミ達のいた場所へ戻るとそこに一味の姿はない……

 

「先に行きやがった……ったく……」

 

 痛む頭を左右に振り気を引き締めると仲間達を探しキラは再び街中へと入っていった。



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第三十二話 鰐

 街中を駆け抜けルフィ達の姿を探す……

 しかしどこにも姿がない……もうBWとの戦闘は始まっているのだろうか……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

~ ビビ ~

 

 私には……どうすることも出来ない……

 この男……クロコダイルには手も足も出ない……

 力なく床へと崩れビビは両手で顔を覆った。

 クロコダイルは悪魔の実”スナスナの実”の能力者で物理攻撃などまるで通らない……

 精一杯の彼女の攻撃もクロコダイルには届かなかったのだ。

 

「てめぇ!ワニ!俺が相手してやる!ここから出せ!」

 

 まんまと罠にかかり檻へと閉じ込められているルフィをクロコダイルは軽く鼻で笑う。

 

「黙っていろ……どうせそこから出れた所でてめぇじゃ俺には勝てねぇ……」

「なんだと!」

 

 檻に手を掛けるとルフィの体から力が抜けていく……

 どうやら海楼石で作られた対能力者用の檻のようだ。

 

「ふん……さぁ、ミスウェンズデー……もうお前に用はねぇ……」

 

 刃がビビの首へと向けられる……

 

「惜しかったなぁ……もう少しで国を救えたかもしれなかったが……」

 

 笑みを浮かべながらクロコダイルはそう口にした。

 惜しかったなどと絶対に思ってはいない……この笑みからは余裕が感じられる……

 

 悔しい……

  

 ビビは大粒の涙を流し檻にいる一味に頭を下げた……

 

「巻き込んで……ごめんなさい……」

 

 声を上げて大笑いしクロコダイルはビビの顔を蹴り上げると口を開く

 

「そうだな!てめぇが無駄に犠牲を増やしたんだ!本当に無能な姫様だ!」

「クロコダイル!」

 

 ルフィが怒りの声を上げる……彼だけではない檻にいる一味全員が怒りの表情を見せた。

 それを一瞥しクロコダイルは鼻で笑う……無力な海賊達を……

 

「さぁ……お話は終わりだ……」

 

 目を瞑り……ビビは頭に浮かんだ人物の名前を口にする……

 辛いとき……苦しいとき……いつも仲間達を支えてきた……男の名前を……

 

「助けて……キラさん……」

 

 冷たい刃は……ビビの首元へ僅かな傷をつけたところで止まった……

 轟音と共にクロコダイルの体は後方へと吹き飛び壁に打ち付けられる……

 瞳を開いたビビの目には……金色の長髪が映りこむ……

 

「遅いですよ……キラさん……」

 

 ゆっくりとビビの方を振り返るとキラはいつもと同じ優しい笑顔を見せ声をかける……

 

「ごめんな……少し遅れた」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ニコ・ロビン ~

 

 自分の目が信じられなかった……

 王下七武海にも名を連ねる男が反応も出来ないほどの速度……巨体を軽々と吹き飛ばす破壊力……

 この目の前の男は何者なのか……

 

「あれが……”死神”だ……」

 

 いつの間にかロビンの隣へと姿を現していたロベルトが呟いた。

 昔見た死神とは違う……あの悪魔のような赤い瞳はなく……優しい眼差しでビビを見つめている……

 

「本当にあれが……」

「ああ……だがあれはまだ本気ではない……」

 

 あれで本気ではないというのか……

 驚く表情のニコ・ロビンにロベルトが言葉を続ける。

 

「先ほど戦ったが……あの人の中にはまだ死神の血が眠ってる……」

 

 思い出しながら話すロベルトは体を恐怖に震えさせた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ロベルト!てめぇが死神の相手をしろ!」

 

 口から血を流したクロコダイルがロベルトの姿を見つけ叫ぶ……

 クロコダイルはキラを睨みつける……何故奴の拳は自分に当たったのか……と……

 

「逃げろ……ここは俺が……」

 

 キラの前に立ちふさがりロベルトはそう呟く……

 舌打ちをするとクロコダイルは扉へと向かっていく……ニコ・ロビンもそれに付き従い部屋を後にする。

 後を追おうとするとロベルトが行く手を阻み通そうとはしない。

 大きくため息を吐きキラは口を開く

 

「やめよう……ロベルト……」

 

 首を横に振りキラは拳を下ろす……

 その仕草にロベルトは自分が敵と見なされていないと確信した。

 やはり先ほどの勝負は本気など出していなかったのだ。

 腹立たしい思いのほかにもう一つ……感情がある……

 

「俺は……あなたを超えたい!」

 

 真っ直ぐにキラを見つめそう叫ぶと……ロベルトは真っ向から勝負を挑む……

 これが豪腕のロベルトという男……強い相手とは拳を交えたいという衝動が真っ先に現れてしまう。

 優しくビビの頭を撫で離れてるよう言うとキラは拳を握り締め笑う……

 

「上等……全力で行く……超えて見せろロベルト!」

 

 瞳が赤く染まり禍々しいオーラを放つ……

 赤く染められた瞳はロベルトの脳裏の恐怖を呼び覚ます……

 冷や汗が流れ……ロベルトの呼吸は荒くなる……だが……

 

「うぉおおおおおおおお!」

 

 雄たけびを上げ恐怖を打ち消すと渾身の右ストレートをキラの顔面めがけ放つ……

 速度・破壊力共に威力は十分。

 全力の拳にキラも刃ではなく……自分の拳で答える

 海王類にも穴を開けるほどの拳にキラは自分の拳をぶつけた……

 ぶつかった瞬間……何かが砕けたような鈍い音が……部屋にこだまする……

 ゆっくりと拳を離すとキラは口を開く

 

「ロベルト……もう諦めな……」

 

 右拳から血を滴らせ……ロベルトは力なく膝から床へ崩れた……

 才能を超える為の努力が……あっさりと砕かれる……

 

「何故……なぜなんだ……」

 

 敗者に掛ける言葉はない……キラは檻へと向かう……

 檻を開けようと鍵を探すが……鍵がない……ビビに鍵のありかを尋ねるとクロコダイルがバナナワニに食べさせてしまったらしい……

 ため息を吐き仕方がないと……口についた血液から大鎌を創り出す。

 ブンブンと振り回し檻の上半分を切り落す。

 

「キラ!遅いじゃないの!」

 

 檻から出たナミの第一声はそれだった。

 キラは微笑み謝罪の言葉を口にする……

 

「ま、来てくれると信じてたけどね」

 

 そう言うとナミはキラの頬にキスをし出口へと向かう……

 突然の出来事に顔を赤らめ固まっていると……仲間達は笑顔を見せキラの背中をバンバンと叩いた。

 自然と笑顔になりキラも出口へと向かおうとするが……檻の中にまだ一人残っている……

 覗いてみるとそこには白猟のスモーカーの姿があった。

 

「お前も捕まってたのか……」

「ふん……今回は見逃してやる……」

 

 檻から出るとスモーカーも出口へと向かっていく……

 キラは今だに座ったままのロベルトを見つめた……

 彼は今まで血の滲むようなトレーニングをしてきたのだろう……

 それが敗れたのだ……無理もないのかもしれない……

 

「おーい、キラ!また置いてくぞ!」

 

 ウソップがキラを呼ぶが首を横に振りロベルトを見つめる。

 

「先に行っててくれ!後で追いつく!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ビビ ~

 

 麦わら一味はレインディナーズの廊下を走りクロコダイルの後を追う……

 キラは結局一緒には来なかった……豪腕のロベルトの隣に座り何か話していたようだった……

 

「キラさん……大丈夫かしら……」

 

 走りながらビビが呟くとナミが口を開く

 

「あいつは大丈夫よ!それよりも大切なことがあるでしょ?」

 

 頷くとビビは前を向き出口へと向かう……

 心配しなくても……あの人は絶対に来る……そう信じて……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「行かなくていいんですか?」

 

 ロベルトは隣に座りボーっと天井を見つめるキラに声を掛けた。

 振り返りニコリと笑顔を見せるとキラは再び天井を見つめる……

 一体……どうしたいのか……ロベルトは大きくため息を吐き尋ねた。

 

「何がしたいんですか……俺を笑いたいんですか?」

 

 ふん……と鼻で笑うロベルトにキラは笑顔を見せ天井を見たまま口を開く

 

「死ぬなよ……いつか……酒でも飲もう……」

 

 それだけ言うとキラは立ち上がり出口へと向かっていく……

 

 本当に……勝手な人だ……

 クスリと笑いロベルトは重い腰を上げキラの後を追う。

 昔……部下としてこの男の背中を追ったように……



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第三十三話 アルバーナへ

~ ビビ ~ 

 

 キラさんとはレインディナーズで別れ……ユバで出会ったラクダ……マツゲの友達であるヒッコシクラブの背に乗り反乱軍を食い止めるためアルバーナへ向かっている。

 アルバーナへ向かっている途中……私達はクロコダイルに襲われた……

 しかしルフィさんが一人クロコダイルへ立ち向かい、私達にアルバーナでの再会を約束し別れることになってしまった。

 その後ルフィさんがどうなったかはわからない……

 キラさんもあの後どうなったのだろう……話によればレインディナーズはクロコダイルの手により海に沈んだとサンジさんが言っていたが……

 

 暗い顔をし大きくビビはため息を吐いた。

 クロコダイルの言っていたことが頭をよぎる……「てめぇが無駄に犠牲を増やしたんだ!」

 自分は……また罪のない人を巻き込んでしまったのかもしれない……

 自己嫌悪で潰れてしまいそうだ……

 

 ヒッコシクラブはアルバーナへの道をひた走る……

 だが……もう時間がない……反乱軍衝突まであと……3時間……時は刻一刻と迫っていた……

 

「おい、ビビ……間に合いそうなのか?」

 

 ウソップが声を掛けるがビビは首を横に振り俯く……

 ここまできて……もう間に合わないのか……ウソップは地面を蹴り上げ怒りを露にする……

 このままでは多くの血が流れる……クロコダイルの計画どおりだ

 諦めかけた時……遠くのほうから砂煙がこちらへと向かってくる……

 それに気づいたナミがビビの肩をゆすり指をさす

 砂煙からあらわれたのは7羽のカルガモ……

 

「超カルガモ部隊!迎えに来てくれたんだわ!」

「ビビ!これで間に合うのか!?」

 

 大きく頷きビビはカルーへと跨った。

 ナミも違うカルーへと跨ると作戦を全員に伝える。

 全員が同じマントを被り敵を引き付けるそしてその隙にビビが南ゲートを通り反乱軍の元へと行くという作戦だ。

 健闘を祈り全員が顔を見合わせ頷く……

 船長、副船長不在のまま……作戦は決行された……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ルフィ ~

 

 俺は……負けたのか……?

 遠くなる空を見つめルフィは太陽に手を伸ばす……

 体に力が入らない……

 蟻地獄へとどんどんと沈んでいく自分の体をルフィはどうすることも出来なかった。

 諦めかけたその時……ふと誰かに手を引かれ……砂から脱出する……薄れる意識の中助けてくれた相手にお礼を告げる。

 

「あ、ありがとう……」

 

 感謝の言葉を告げた相手は……ニコ・ロビンであった。

 彼女が何故ルフィを助けたのかはわからない……

 微笑を浮かべ……彼女はその場を去った……大きな隼に後を任せて……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ったく……お前のせいでベシャ濡れだ!」

 

 大声を上げキラは地べたに座り込むロベルトを睨みつける。

 何故濡れているのかと言うと……あの後2人でカジノを出ようと出口へ向かっている最中に爆発音と共に大量の水が流れ込んできたのだ。

 元はと言えばロベルトがすぐにカジノから出ようとしないせいだと……キラが何度も口にすると……

 申し訳ないという表情でロベルトは頭を下げた。

 だが……クロコダイルはロベルト共々キラを殺そうとした……最初から勝てるなどとは思っていなかったということだ。

 仲間も簡単に切り捨てる……キラが最も嫌いな人間だ。

 服を脱ぎ捨て絞り上げる……男とは思えないほど美しい白い肌が露になった。

 それを見ていたロベルトが顔を逸らし俯く……

 

「お前なぁ……男同士で恥ずかしがって気持ち悪いぞ……」

 

 呆れた表情を浮かべキラがそう言うとロベルトは再び頭を下げる……

 クスッと笑いキラは昔を思い出す……

 自分の部隊に配属されたばかりのロベルトもこうだったな……と……

 乾いた服を着て解けた長い髪を縛り……表情を引き締めると……ロベルトに尋ねる。

 

「アルバーナはどっちだ?」

 

 力強い眼差しにロベルトは昔死神と呼ばれた頃とは違う強さを感じた……

 仲間を思う心……守るべきものがある強さ……

 

「これが……本当の……強さ……」

 

 重い腰を上げロベルトは歩き出す……

 黙ってキラもその後を追う……目指す先はアルバーナ……

 

「待ってろよ姫……今行く……」




最後でやっと主人公登場

感想もらえるとそれが励みになります。


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第三十四話 戦争

~ 反乱軍 ~

 

 興奮し暴れる馬の手綱を強く握り締め反乱軍リーダーであるコーザは戦争開始のタイミングを図る……

 反乱軍の戦士達も今か今かと鼻息荒く待ち続ける……

 

 ユバが水を失ったのは……国のせいだ……国王は狂ってしまった……

 常々コーザはそう口にしていた……しかし……彼の父であるトトはそれは違うと諭し続けてきたが……わかりあえることはなく……

 

 高々とコーザが剣を掲げる……

 

「行くぞ!全軍突撃!」

 

 掛け声と共に反乱軍は南ゲートへと向かった……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ビビ ~

 

 たくさんの馬の蹄の音……男達の叫び声……

 それがだんだんとこちらへと迫って来る……

 南ゲートへと到着したビビは強く唇をかみ締め……その時を待つ……

 怖い……でも……みんながここまで自分を運んでくれた……導いてくれた……その期待を裏切ることはできない……

 遠方に砂煙が見える……

 ビビはゲート前に立ち叫んだ……

 

「止まりなさい!反乱軍!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「おい……もう一回言ってみろ……」

 

 怒りの表情を浮かべキラはロベルトを睨みつける。

 殴られた頬を押さえ膝を地につけたままロベルトはもう一度はっきりと口にした。

 

「ですから……麦わらのルフィじゃクロコダイルには勝てません」

 

 そんなことは言われなくても薄々感づいてはいた……

 相手は王下七武海……こちらは3000万のイーストブルーから出てきたばかりのルーキー……

 勝機は少ない……

 ルフィが死ねば……ここで自分の旅は終わるだろう……だが……

 

「俺は……あいつに賭けてる……」

 

 それだけ言うとキラは城に向かい歩き始める

 大きく息を吐きロベルトは立ち上がるとキラの後を追う

 

「熱い男になりましたね……」

 

 クスッと笑いロベルトがそう言うと顔を赤らめキラは呟く

 

「うるせぇ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ 反乱軍 ~

 

 男達の掛け声とともに真っ直ぐ南ゲートへと突き進む……

 もはや彼らを止められるものなどありはしない……

 南ゲートが眼前へと迫る……

 

「このまま突き進め!」

 

 反乱軍リーダーコーザの掛け声に速度はどんどんと増していく

 

「止まって反乱軍……!」

「……声?」

 

 一瞬……ビビの声がコーザの耳へと届いた……

 だが彼らは止まらない……王国を正しき道へと導く為に……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ニコ・ロビン ~

 

「今頃奴らは水の底か……ハッハッハッ!」

 

 クロコダイルは大声を上げ笑う……その光景を冷ややかな視線でロビンは見つめた。

 この男は最初からロベルトを信用していなかった……もしくは……

 

「”死神”が怖いの……?」

 

 疑問に思ったロビンは思わず口に出してしまう……

 宮殿を目指し前を歩いていたクロコダイルがゆっくりと振り返る……その表情は怒りを露にしていた。

 しまった……と口を押さえるがすでに遅く……クロコダイルの腕がロビンの首を締め上げる……

 

「てめぇだって知っているだろう……海賊王に最も近いと言われる白髭と互角に戦い……海軍3大将を打ち負かせたって言う伝説の男だ……」

 

 頷きロビンがクロコダイルの手を叩くとゆっくりと手を離す

 

「そんな奴とまともにやったんじゃ俺もただではすまねぇ……」

 

 決して負けるとは言わないところがクロコダイルらしいところである……

 だが何故3年間何の噂も聞かなかったのだろう……一説には死んだと言われていたのだが……

 

「奴は今度こそ死んだはずだ……豪腕もあれで中々の手だれだ……道ずれぐらいはできるだろう」

 

 そう言うと再び笑いながら宮殿へと歩き出す……

 この男の野望の前にこれで敵はいなくなったということだろう……

 自分もきっと利用され殺される……

 ロビンはいずれ来るであろう時に備えこっそりとナイフを懐へと忍ばせた……

 

 ついに宮殿の前とたどり着いた……野望達成まで時間は……ない……



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第三十五話 古代兵器と人間兵器

~ アラバスタ宮殿 ~

 

「国王……お逃げくだ……」

 

 アラバスタ王国護衛隊副官ジャッカルのチャカはクロコダイルの前に力なく崩れる……

 彼は宮殿へとたどり着いたビビそしてコーザを守る為勇敢に戦った……

 だが相手が悪い……

 

「ハッハッハ……残念だったなぁ……」

 

 実力が違いすぎる……

 国王コブラも必死にチャカの名前を叫ぶが……彼に反応はなかった。

 

「さぁ……国王……答えてもらおうか……古代兵器『プルトン』のありかを!」

 

 ビビの首を締め上げクロコダイルは国王コブラを満面の笑みで見つめる

 諦め口を開こうとした……国王の視界に……大きな隼が映りこんだ……

 

「クロコダイル!」

 

 隼から飛び降りすぐさまクロコダイルの腹部へ拳を叩き込む……

 

「グフッ……」

 

 その男は再びクロコダイルの前へと現れた……

 背中に大きな水の入った樽を背負って……

 

「てめぇをぶっ飛ばす!」

「ルフィさん!」

 

 歓喜の表情を見せるビビにもう大丈夫と言うようにルフィは力強く頷いた

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ 反乱軍 ~

 

 クロコダイルとルフィの戦いが行われている宮殿の外では変わらず反乱軍と王国軍の戦争は続けられていた……

 たくさんの血が流れる……流れても終わることがない……

 仲間の屍を乗り越え戦う……倒れた敵を踏みつけ戦う……死んだ友の為に戦う……

 戦争とはこれほどまで……悲しいものか……

 

「悲しいねぇ……」

 

 そう言うと一人の男が反乱軍の一人の頭を掴み持ち上げる……

 力を込めると潰れる音と共に頭がはじけ飛んだ。

 国王軍の鎧を纏ったその男は怪しい笑みを浮かべどんどんと反乱軍の者たちを殺していく……

 

「アッハッハッハ!そう!恨めよ!僕を恨め!その憎しみは国への憎しみとなる!」

 

 手にこびりついた血を一舐めすると彼は恍惚な表情を浮かべた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ ルイン ~

 

「あの男を……国王軍へ……?」

 

 キリクは膝まづき顔だけを総帥へと向け困惑の表情を浮かべる……

 

「そうだ……ロキを戦争へ放った……」

 

 頭を抱えキリクは苦い表情を見せた……

 ロキと言う男は実力は将官クラスに匹敵するほど強い……ロベルトを始末するのにはちょうどいいだろう……だが問題がある……

 それは人間性……奴は()()()だ……

 美しい顔を濁らせるキリクに総帥はさらに言葉を続ける。

 

「それに……キラの創造の力が目覚めたらしいではないか……」

「それは……」

 

 確かにチェストからの報告ではほぼ昔の……死神の姿だったという……

 総帥も彼の創造の力が怖いのか……それとも……

 

「まだ……()()()()の力は目覚めていない……今のうちに始末が必要だ」

 

 やはり総帥は()()の能力はユダが持っていると総帥は考えているようだ……

 無理もない……彼女と一番近かったのは……ユダなのだから……

 キリクは立ち上がり深々と頭を下げると部屋を後にした……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ 反乱軍 ~

 

 一人の兵に押されている……

 反乱軍はどんどんと後退せざるおえなくなっていた……

 狂った一人の国王軍の兵……いや……ロキによって……

 

「死ね!ショータイムだ!血をながせえええええええええ!」

 

 ロキが剣を振り切ると複数の反乱軍の首が飛ぶ……

 ロベルト、ユダの始末など……今の彼にはどうでもいい……ただたくさんの人間を殺すことができる……それだけで満足だった……

 悲鳴を上げ反乱軍が恐怖に凍りつく……

 国王軍の兵もやりすぎではないかとロキを見つめるが……誰も彼を止めるものはいない……

 地面に転がるは……無数の首……

 恐怖で尻餅を着くものもいる……がロキは容赦なく刃を向けた……

 剣が当たる寸前……ロキの剣は砕かれる……

 

「お前……バロックワークスか……?」

 

 王国の粗末な剣を使っていた……折られても仕方がない……だが自分の太刀筋を見切られた……

 ロキは満面の笑みで顔を上げる……

 そこには緑色の髪をした剣士の姿があった

 

「おやおや……ユダじゃなかったか……でも……」

 

 鎧を脱ぎ捨て……兜を放り投げる……

 華奢な体……赤いセミロングの髪……幼い顔立ち……

 

「女……?」

 

 クスッっと笑うとロキは剣士に向かい指を向ける

 

「名前は?」

 

 女性特有の甘い声の中に剣士は違和感を感じた……

 狂喜に満ちたその声……どこか戦いを楽しんでいる……

 

「ロロノア・ゾロ」

 

 満面の笑みを浮かべ彼女は手に炎を宿らせた……

 悪魔の実ではない……エースが同じような能力だった……この世に同じ実は二つ存在しない……

 そうなるとこの女の正体は一つしかない

 

「てめぇ……ルインか……」

 

 ロキは不適な笑みを見せると……手の炎を剣の形に変え……

 小首を傾げながらこう言い放つ……

 

「死合おう?」

 

 背筋に冷たいものを覚え……ゾロは気を引き締め力強く刀を握り締めた……



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第三十六話 ロキ

 ゾロはジリジリと距離を保ちつつ隙を伺った……

 だがどう見ても隙だらけ……誘っているのか……?

 腕はダラリと下げ……視線は地に落ちた首を見つめ数を数えている……

 それにしても……見れば見るほど……ただの少女だ……

 体は小さく細い……大体150くらいだろうか……赤い瞳に……狂喜が宿っている……

 

「マリモ!後ろだ!」

 

 サンジの声に気づきゾロが後ろを振り返ると背後から炎の剣が迫っていた

 だがロキの姿は前にある……炎が意思を持ち襲ってきているとでも言うのか……?

 

「クッ……!」

 

 刀で受け止めるが煙が上がっている……

 このままでは刀が溶かされてしまう……ゾロは攻撃を受け流し少女の元へと走り……

 

『鬼切り!』

 

 当たった……が感触がない……

 

「こっちだよ……それじゃあ……僕は切れない……」

 

 背後に少女の姿がある……切られる……そう思った瞬間……

 

「お兄さん……怪我してるじゃん……つまんない……」

 

 腹部から血を流しているゾロにロキは不服そうな表情を浮かべた。

 どうやらMr1との死闘での傷が開いてしまったようだ。

 膝をつくゾロにため息を吐き辺りを見回す……

 自分の正体がばれてしまった……が戦争に終わりなどない……

 

「ま、いっか……他にも一杯殺す奴いるしね~」

 

 ニコニコと笑い地に落ちた死んだ兵の剣を拾い上げると近くにいた国王軍の首を刎ねた……

 首がなくなり糸が切れた人形のように転がる体をロキは恍惚の表情で見つめる。

 

「やっぱ……殺すの最高……」

 

 今……彼女はどちら側に着く必要もない……ということは……まさに殺したい放題……

 

「さ、ゲームスタート!」

 

 悲鳴が戦場を包みこむ……

 何故彼女は炎で出来た剣を使わないのか?

 それは普通の剣のほうが肉を切る感触が伝わりやすいから……

 彼女は欠陥品……品性が完全に損なわれ……快楽に溺れる……欠陥品……

 

 そしてその刃は……戦争を止めに来た……ナミにも向かっていた……

 

「ちょっと……何なの……これ……」

 

 どんどんと兵士達が倒れていき自分の元へと血まみれの少女が迫って来る……

 恐怖で……足が竦む……逃げることが出来ない……

 

「お姉さんも……兵士なの?」

 

 目の前まで来たロキが立ち止まりナミの顔を覗き込む

 少女の両手には兵士の首が握られ……どちらも恐怖の表情で止まっている……

 ナミは首を横に振りその場に座り込む……そんな彼女にも容赦などはなかった……

 

「お姉さん綺麗だね……きっと死に顔も凄く綺麗……」

 

 首に剣の先を突きつけられる……冷たい感触とヌルヌルとした返り血が感じられる……

 剣を振り上げた少女の顔は快楽を感じていた……

 振り下ろした瞬間……少女の体は宙を舞い地面へと落ちる……

 何が起こったのか……ロキは体を起こし辺りを見回す……と……自分と同じ赤い瞳と視線が合う……

 

「あぁあああ……ユダぁ……待ってたよぉ……」

 

 座り込むナミの体を起こし……キラはその赤い瞳に怒りを滲ませた……

 大鎌を手に持ち真っ直ぐにロキへと向かっていく……

 

「殺してやる……2度とてめぇの顔を見なくて良いように跡形もなくな!」

 

 叫ぶキラの気迫に国王軍、反乱軍は気圧され……気を失うものもいた……

 だがその状況もロキを楽しませることにしかならない……

 

「アハッ!最高!殺してよ!僕を美しい君の手で!」

 

 両腕に炎の剣を作り出しロキは満面の笑みでキラへと向かっていった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ アルバーナ宮殿 ~

 

「ふん……だから貴様と俺では海賊の格が違うって言ってんだ……麦わらのルフィ……」

 

 力なく床に倒れているルフィへ向かいクロコダイルはそう口を開く……

 ルフィは確かにクロコダイルへ攻撃を当てた……だが……それで勝ちとはならない……

 相手は王下七武海……いくつもの死線を潜り抜けてきている……

 経験……その差がこの結果を生んだのかもしれない……

 

「さぁ……古代兵器の場所まで案内してもらおうか……」

 

 コブラを引き連れ……クロコダイルは歩き出す……何かを思い出したかのように立ち止まるとビビの元へと歩み寄り耳元で何か囁くと時計等の時計を指差し笑いながら去っていく……

 怒りに震えたビビは……大粒の涙を流し……力なく地面へと崩れるのだった……



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第三十七話 その身塵となるまで……

前回から更新がなかった理由:保存していた小説がすべて消えた為

ということで以前に書いていた小説家になろうでの作品と大幅に変わります(笑)
正直、まったく別の作品になる予感……まぁ、すでに脱線しまくってますけどね~


 ロキは身をかがめたかと思うと一瞬にしてキラとの距離をつめる……

 赤き紅蓮の刃は血を欲し……キラの腹部へと伸び上がる……

 舌打ちをし半歩ほど左足を下げると鎌の側面を使い刃を滑らせ攻撃を受け流す……

 彼女はわかっていた……大鎌は破壊力はあるが小回りがきかない

 懐に潜り込めば分があるのは自分だ

 少女の口は歓喜に震え……雫をしたらせる……

 

「死神ぃぃぃ!討ち取ったぁぁ!」

 

 双剣を武器とする彼女には小回りではキラは遠く及ばない……

 受け流され崩れた体制からロキは振り向きざまもう一本の刃を振りぬこうと振り返った刹那……腹部に衝撃が走る……!

 

「別に鎌だけが俺の武器ではない……忘れたか?」

 

 腹部を押さえロキは2歩、3歩と後退する……

 蹴り……? 完全に自分のほうが早く動いたはず……

 ズキズキと痛む……肋骨が何本か逝った……

 ロキの顔から笑みが消え……

 

「殺す……」

 

 狂気が……満ちた……

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 とめなきゃ……戦いをとめなきゃ……

 ビビは力なく立ち上がるとふらふらと門へと向かう……

 体が絶望に支配されていく……

 自分に何が出来る……? あきらめたら楽ではないのか……?

 とめどなく溢れる涙を拭き……彼女は歩く……先ほどとは違い……力強く……

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ 王家の墓 ~

 

 

「これが国家機密……知らなきゃみつからねぇなぁ……」

 

 歴史の本文(ポーネグリフ)を見つめるクロコダイルはそうつぶやく

 ニコロビンは歴史の本文(ポーネグリフ)の前に立つと文字を指でなぞり読み始める

 

 彼らの目的の……古代兵器(プルトン)については……触れられているのだろうか……?

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「あははは!血だらけだよ? キラぁ~」

 

 恍惚の表情を浮かべ少女はキラを見つめている……

 出血が止まらない……膝をつき死神は地を見つめていた……

 

「何が起きやがった……」

 

 ゾロは目の前で起こった状況に目を見開く……

 

「煉獄火炎……なんてね♪」

 

 少女は笑顔を浮かべ舌をだす……

 

 ゆっくりと死神は傷ついた体を起こす……

 

「おもしろい……」

 

 口元を緩めキラはロキを見つめる……

 

「ひっ……」

 

 先ほどまでの笑顔は身を潜め……今度は恐怖の表情を浮かべた……

 少女が見る先には……赤き瞳を爛々と輝かせ……薄ら笑いを浮かべる死神がいる……

 赤き瞳は先ほどとは変わらない……だが少女にはわかった……

 本物の死神が帰ってきたのだ……



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第三十八話 死への恐怖

 うそだ……ぼ、僕が……恐怖……?

 

 ロキは震える脚を見つめ歯をくいしばる……自らを支配する……恐怖……それを認めることが出来なかった……

 今まで敗北など……一度もなかった……それにまさか……戦場を一度離れた男に負けるなど……

 

「く、クソ……」

 

 顔を上げロキは睨み付けようとするが……キラの瞳を見つめるだけで……自分の死の瞬間が脳裏をかすめる……

 脳裏に浮かぶのは……血にまみれた自分の姿と……それを冷たい瞳で見下ろす死神の姿……

 喉をならし……汗が頬をつたう……

 

「いくぞ……?」

 

 そう洩らすと……一歩また一歩とキラはロキとの距離を縮めていく……一気に距離をつめるわけではない……じわじわと少しずつ……

 距離が詰まっていくにつれて……少女の体を恐怖が縛り付けていった……

 

 周りにいる反乱軍、国王軍ともにキラから距離を置く……

 彼らの中には死神の瞳を見てしまい……その場で失神するものもいた……自らの死……それは誰もが受け入れたくないもの……

 

「こ、怖い……」

 

 ナミも恐怖に震え……キラを見つめるだけで呼吸が苦しくなる……

 これが死神……これが……旋律のキラの本当の姿……

 

「う、うわああああああ!!!!」

 

 恐怖に耐え切れなくなったのか大声を上げロキはキラへと向かっていき……両手に持つ炎の剣を鋭く首へと突き上げる……!

 僅かに首をずらし避けられはしたが……頬を掠めた剣先は……炎を纏い……傷口が焼け爛れた……

 普通の人間ならばその場で体制を立て直そうと距離をとる……そこがロキの狙いだった……小回りのきく双剣だからこそ……至近距離で生きる……体制を立て直そうとした時が懐に一気に飛び込むチャンス……

 だがキラはその程度で怯むことはなかった……体を立て直すことなく無理やり不利な体制から上半身を捻り……遠心力によって鎌を振り上げた……

 意表をつかれたロキだったが……大鎌では……この距離では致命傷を与えられないはずとふみ……2撃目を繰り出す……

 勝利を確信し……ロキが笑顔を見せ……ふと大鎌に目をやる……

 

「いっ……!?」

 

 剣を振るう手を止めとっさにロキは後ろへと飛び去る……!

 

「な、なんで……!?」

 

 キラが持っているものが鎌から刀へと変わっている……この状況では確実に双剣ごとたたき切られる……!?

 後方へと強く踏み出したため……剣の範囲からは逃げ切れる……そう踏んでいた……が……剣の先は再び形を替え彼女の腹部目掛け一気に伸びあがる……死神の武器(えもの)は鋭い槍へと変わっていた……

 

「うくぅ……」

 

 そして……少女の腹部へと深く突き刺さった……!

 

 嘘……僕が……やられた……?

 鈍い感触が全身を襲う……久しぶりに感じる……痛み……押しよせる……死の恐怖……

 

「う、うそだ……うそだよぉ……」

 

 瞳に涙を浮かべぐったりとロキは地面に膝をつく

 腹部からは血が流れ……小さい体を赤く染める……大きく咳をすると口からも血が吹き出しそのダメージをものがたる……

 

 そんな彼女を死神は冷たく見下ろしていた……手に持った槍は再び形を替え……鎌へと戻り……そして……

 

「言い残すことはないか?」

 

 少女の首筋へと刃が向けられた……

 ロキは瞳の涙を拭うとキラを見つめ自分の心臓を指差す……

 

「僕の……炎の能力(ちから)……持っていっていいよ?」

 

 表情をかえぬままキラはゆっくりと頷いた……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ~ 王家の墓 ~

 

「全てを許そう……ニコ・ロビン……なぜなら俺は……最初から誰一人信用しちゃいねぇからさ」

 

 どうやら仲間内で歴史の本文(ポーネグリフ)に記されている内容についての口論から……争いになったようだった……ニコ・ロビンは胸から血を流し倒れている……

 

「ふん……まぁいい……この国が手に入れば歴史の本文(こんなもの)に頼らなくとも自力で探すさ……」

 

 勝利の笑みを浮かべるクロコダイルだったが……突然王家の墓に大きな揺れがおき……壁が……天井が崩れていく……

 クロコダイルはコブラを睨み付け舌打ちをする。

 

「てめぇ……なにしやがった……」

「なに……貴様ごときにはこの国はやれんのでな……!」

 

 ビビの父であるコブラはクロコダイルごと墓を埋めるつもりのようだ……

 

 この男には……クロコダイルにだけは国は渡さない……王の強い意志……国を思う気持ちの現われであった……

 

「ふん……無駄だ……全ての岩盤を砂に変えて脱出するだけだ……さぁ……あと3分だ! 3分で広場は吹き飛ぶ!」

 

 あと3分……そのころビビは……ウソップたちとともに……大砲を探していた……

 間に合うのだろうか……それとも……?



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