Fate/Bloodborne「血に酔った狩人が侵入しました」 (アメントス)
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召喚
こんな素晴らしいクリボッチ明けの日に、こんな内容のモノをぶちまけるなんて……
まあ、楽しんでいただければ幸いですがねぇ……
・この物語はFate/zeroに狩人さんをぶち込んだビルゲンワース的物語です。
・メンシス学派の人間が許せない方はお出口へどうぞ。
・マリア様とはマブダチフレンズ
・超展開だって悪くないだろう?(啓蒙99)
夢を見ていた。
それが何時の時代の、何処の誰のモノかは定かではない。内容は言葉にすれば陳腐なもので、B級スプラッターホラー映画のようなものだった。
自身はそういったものに対して娯楽としての理解はもっていたつもりだ。
それはホラーの分野だけではなく、戦争映画、パニック映画、冒険活劇からドラマ作品に至るまで。
だから娯楽として捉えられた、虚構に描かれる陳腐な“死”を、軽蔑しながらも笑って許容してきた。
人類は“智”を誇り、“無知”を恐れる。
だからどんな恐怖の対象であれ、それを経験し理解できたのなら、それだけで恐怖は理性によって征服される。
ところが“死”は生きている間はどうしたって経験しようがない。したがって本当の意味で理解することが出来ないので、人類は別の手段を講じて死を理解しようと努めた。
それが他人の死を観察し、想像することで疑似体験しようというものだ。
つまり映像化された虚構の死とは極論、観察することで死の恐怖を矮小化し、自己解釈で理解する事によって克服しようと言う無意味な努力でしかない。
人命を尊び、疑似体験の様にどれだけ説得力のある“死”を描こうとも、本質的なものとは遥かにかけ離れている。
例えば、日常光景として爆撃や地雷で、隣人が挽肉より惨たらしい姿に変わる戦火の地において、ホラー映画を誰が見るだろう?
陳腐に描かれた想像上の死体と、昨日まで生きてた隣人の挽肉。衝撃的な体験として死を捉えるなら、どちらが相応しいかなど聞くまでもない。
誰かが言った。
一世紀を生きて死を説く坊主よりも、揚水の中で息絶える稚児のほうがよっぽど、死を理解していると。
全くもってその通りだが、平時において死を間近に感じる機会など幾らあるだろう?
そのように考えたところ、役に立つのが娯楽の虚構だ。想像に難く、されど見てみれば“何となく”理解した気になれる。
かつては自身も死と言うものが怖かった。だから理解と許容を示せる。だが
上辺だけの軽薄な人形劇ではもう、満たされない身体になってしまっているのだから。
けれど――その夢は、虚構とは思えないほど生々しかった。
まるで本当の追体験のように、月の香りが芳しいその夢に、雨竜龍之介は魅入られた。
血と、死と、その陰惨な積み重ねが育んだ呪いの街を舞台に。
病を患った罹患者達を、切り刻み、焼き焦がし、叩き潰し、引き千切る。剣で、槍で、斧で、槌で、杖で、鋸で。銃をぶち込み、火炎瓶を投げつけ、内蔵を引き摺り出し、老若男女、人も獣も見境無くその悉くを屠殺する“彼女”の物語。
それの夢に名をつけるとすれば、それはきっと……
『血に酔った狩人の夢』
冬木と呼ばれる町の住宅街。その一画、四人家族の民家に押し入った龍之介は都合四度目の凶行――その真っ只中で血の恍惚に酔いしれていた。
これまで龍之介は全国を股に掛けて渡り歩きながら犯行を重ねてきた。しかし同じ土地で2回以上の殺しを重ねたことはないし、大半の被害者は今も行方不明者として扱われている。
用意周到、だけどスリリングにFUNKYでCOOLにやろう。それが雨竜龍之介という殺人鬼の矜持である。
そんな彼が何故 この冬木の地で、警察機関の目を掻い潜りながらも危険を冒して犯行に及んでいるのか。その理由は彼の実家に納められていた一冊の古書にある。
「
土倉の奥にひっそりと眠っていた虫食いだらけの本。古い和綴じの個人の手記と思わしきそれは、慶応二年に書かれた曰くありげなもので、百年物のお宝だ。
内容は妖術だの儀式だのと言った、荒唐無稽な戯言ばかり。異世界の悪魔に人身御供を捧げ、式紙をどうこうとありえないオカルト話に、当初は龍之介も伝奇小説でも書いていたのかと思った。
「繰り返す都度に四度――あれ、五度? えーと、ただ満たされるトッキーを破却する……だよなぁ、うん」
しかし現実はこう。鼻歌交じりに召喚の呪文を暗誦しながら、龍之介はリビングのフローリングに刷毛で鮮血の紋様を描いている。
儀式と言うのは本来、荘厳に行われるものだが、辛気臭いのは龍之介の趣味ではない。
雰囲気重視と言っても、所詮は“自己満足”であり、むしろフィーリングの方が肝心だ。
なにせ龍之介が行う魔術染みた凶行の理由自体、新たなインスピレーションを得る為の行為でしかないのだから。
加えて言えば、そして古書を見つけた夜に、あの素晴らしい夢を見た。
実行するのに何を迷う理由があるというのか。
龍之介にとっての運命の夜とはあの夜を指す。
「よっ、と」
前三回のリハーサルもあって、今夜の魔法陣は例の手記に図解されていた通りに、一発で完璧に仕上がった。こうもすんなり出来てしまうと、むしろ準備の甲斐がない。今夜の材料に選ばれた両親と長女を殺して、血を抜いていたと言うのに。
「
余った血を壁にぶちまけてファンアートを描いた龍之介は、部屋の片隅に転がしてある猿轡とロープで縛られた少年に目を向けた。
「ねー坊や? 悪魔って本当に居ると思うかい?」
姉や両親の亡骸を凝視していた少年の顔を覗きこみながら、龍之介は芝居がかった仕草で小首を傾げて問うた。
もしこの場に第三者が居れば、貴様こそが悪魔だと言うだろう――この狂気の殺人鬼に物申す勇気があるのならば。
「新聞や雑誌だとさ、よくオレを悪魔呼ばわりするんだよね。でもそれって変じゃねぇ? オレ一人が殺してきた人数なんてダイナマイトの一本もあれば追い抜けちゃうのにさ」
常々思っていた疑問を口に出しながら龍之介は笑う。
月の香り芳しいあの夢を見たからこそ、彼には世間が自身を悪魔呼ばわりする事実が、滑稽に思えてしまう。
だがそんな事は、恐怖に震える少年には知りようが無い。
「いやオレが悪魔でも別にいいんだけどさ、でもそれってさ、本物の悪魔が居たらちょっとばかし相手に失礼な話しだよね。そこんとこスッキリしなくてさー、『チワッス、雨竜龍之介は悪魔であります』なんて名乗っちゃっていいもんかどうか。そう思ったらさ、もう確かめるしか他にないと思ったわけよ。本物の悪魔が居るかどうか」
上機嫌に龍之介は笑う。普段は喋るのも億劫なのに、怯える子供を前に道化のように愛嬌を振りまく。何故ならそれが彼の癖だからだ。
血溜まりの中――もっと言えば、死に瀕した者を前に立つと、彼は人が変わったように饒舌になる。
「でもね。やっぱりホラ、万が一本当に悪魔とか出てきちゃったらさあ、何の準備も無く茶飲み話だけ、ってのもマヌケな話しじゃん? だからね坊や……もし本当に悪魔サンがお出ましになったら、一つ殺されてみちゃくれないかい?」
「――!?」
龍之介の発言の異常さは、幼い少年でも本能的に理解できた。そして、何故自分だけ生かされていたのかも。
目の前で声も上げられず、察した事実に絶望の表情を浮かべる少年を見て、龍之介はますます上機嫌になって笑い転げた。
「悪魔に殺されるのって、どんなだろうねー? ザクッとされるのか、グシャットされるのか。何にせよ貴重な体験に違いな――ぁ痛ッ!」
不意に右手に走った痛みが、龍之介の躁状態に水を差す。見れば右手の甲に、何の前触れも無く、まるで劇薬でも浴びたかのような激痛が走った。
痛みそのものは一瞬で治まったが、その痺れるような余韻が皮膚の表面に張り付くように残っていた。
「なんだ――これ?」
右手の甲にはどういったわけか、寸前まで無かった刺青のような紋様が刻み込まれていた。龍之介は知る由も無いが、その紋様は彼の地にて“獣”を差す文字であった。
恐怖や不安を感じる前に、伊達男としてのセンスが龍之介にそれを気に入らせる。なかなかどうして、洒落ているじゃないか。
そうして、ニヤつくのも束の間、背後で空気が揺れ動いた。
「なっ!?」
風が湧いていた。締め切った室内に、ありえない風の奔流。龍之介は驚き、咄嗟に背後を振り向いて確認する。
鮮血で床に描かれた魔法陣がいつしか燐光を発し、風は渦巻き“本来ありえない”ぬめりを帯びた青白い輝きすら溢れ出す。
何らかの異常、怪奇現象はむしろ期待通りだったが――こうもあからさまな演出は、軽蔑する低俗なホラー映画のそれに違いない。
「これって本当に、夢じゃない?」
なのに龍之介は、あの夢を見たときと同等以上の高揚を感じていた。直感的に、本能的に、既知感にも似た感覚から彼は理解していたのだ。
そして爆発的な閃光と爆音が轟き、龍之介の身体を暴力的な衝撃が駆け抜けた。
それはまさしく高圧電流に焼かれ、血液の水圧に押し流されるような彼にとっての
稚拙な召喚陣でも、間違った呪文の詠唱が成されても。其処に依り代としての覚悟を持つ贄がなくとも。
本質的に近しい“それ”が縁を結び、歪んだ聖杯は此処に極大の奇跡を召喚せしめた。
「問おう」
「これが私の見た夢の果てと言うのなら」
いつしか風は止み、魔法陣の発する光も治まっていた。強烈な閃光にやられ、明滅していた視界が安定してゆくにつれ、龍之介の目に“それ”の像が映る。
近世とでも言うべきか、随分古いが仕立ての良い意匠の服を着た人物だ。
「狩りを続けても良いのだろう?」
銀の長髪を後ろにまとめ、まだ若いらしく皺一つ無い顔は、まるで人形の様に整っている。涼やかな眼差しは憂いを帯び、しかし真っ直ぐに自身を見据えている。
時計塔の最奥で熱き血潮を交えた“女”と同じ装備を身に着けた、夢に見た“彼女”が、其処に居た。
「なあ、現代の獣よ」
「は、え?」
そして――此れが、雨竜龍之介と言う名の、世間を騒がせた稀代の殺人鬼、最後の言葉。
前兆無く振りぬかれた落葉の煌めきは、ただの人間でしかない龍之介の目に捉えられるはずも無く、あっさりとその首を刎ね飛ばしたのだった。
新鮮な返り血を浴びた“彼女”は、“彼女”のように血振りを行うと、窓から差し込む月光を見て宣誓する。
「さあ、獣狩りの夜を始めよう」
サーヴァントデータ
名前:異邦の狩人
性別:女性
身長:女性としては長身
体重:未開示
スリーサイズ:未開示
属性:混沌・悪
宝具:狩人の夢
未開示
未開示
筋力:E 耐久:E 敏捷:A+
魔力:A 幸運:E 宝具:EX
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第一夜 暗殺者
言峰理性「あめんどーず、あめんどーず」
読者諸君。
かねて血をおそれたまえよ。
この世界の外側には、あらゆる出来事の発端とされる座標。次元論の頂点に在る“力”があると言われている。
それこそが全ての魔術師の目標であり、到達点。曰く『根源の渦』と号される、この世全ての始まりと終焉を司る神の座だ。
その世界の外側へ至る目論見を、二百年前に実行した者達が居た。
遠坂、マキリ、アインツベルン。後に始まりの御三家と呼ばれる魔術師達が企てたのは、幾多の伝説に綴られる万能の願望器『聖杯』の再現だった。
試行当初、三家の秘術により召喚した、古今東西の勇名を馳せた英雄の魂――即ち、叶えるべき願いに匹敵するエネルギーを聖杯の器に封じ込める試みは順調に事を運んでいた。
だが、その聖杯が叶えられるのはただ一人の祈りのみ。
その事実が知れた途端、根源に至るという目標のもと協力関係にあった御三家は楔を別ち、血で血を洗う闘争へと形を変えた。
これが聖杯戦争の起源である。
以来、六十年に一度の周期で聖杯は、かつて召喚された極東の地『冬木』に再来する。
そして聖杯は己を手にする権限を持つ七人の魔術師に、聖杯の中身たる燃料、『サーヴァント』と呼ばれる英霊召喚を可能とさせ、いずれが己を手にするに相応しいかを競わせるようになった。
「なるほど。興味深い……」
雨竜龍之介なる獣に召喚された日より、およそ二日後の草木も眠る丑三つ時。
召喚された“彼女”は今、冬木郊外の森林の中で自身の知る聖杯と異なる性質の、『冬木の聖杯』から供給される知識を吟味していた。
何故二日もたって行っているのかといえば、単純に召喚された彼女の好奇心を現代日本の社会が刺激したからだった。
日中は市街にて奇異な目に晒されながら“現代”の街並みを観察し、夜は『定められたレギュレーション』に従って魔力供給の名目で獣狩りに勤しむ充実した日々。
ヤーナム市街に慣れた彼女に、平穏な日常の空気は心地好すぎた。
そうして、擦り切れた心がある程度癒されたこの日。とある教会の前を横切った彼女は、嗅ぎ慣れた臭いに気付いた。
それはイかれたビルゲンワース学院に足を踏み入れたときのような感覚で、幻の月で真実の隠蔽していた、メンシス学徒の如き浅ましい陰謀の香り。
あの夜を駆け抜け、啓蒙の高まった彼女だからこそ看破できたのは、言葉にする意味もないだろう。
結果、獣染みた嗅覚を頼りに、狩りの準備を始めて現在に至ったわけである。
「セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカー」
供給された知識の中にある、己が刈るべき獣の名前を諳んじる。口に出せばより一層深みのある名前だと彼女は感じていた。彼等の保有戦力も、高位の上位者相当と想定するべきだろう強敵ばかり。
「ふふ、ふふふ……」
ヤーナムの獣狩りに参加した時同様、流されるような参戦ではあるが、彼女の気分はこの異常事態に高揚していた、
血戦を、血で血を洗う、素晴らしい狩りを愉しもう、と。
『第一夜 暗殺者』
アサシンのクラスにて現代に召喚されたそのハサンは、世闇に紛れながら森を駆け抜け、アーチャーのマスターである、遠坂時臣の命を狙っていた。
彼の与り知らぬ事情だが、ハサンのマスターである言峰綺礼。
本来魔術師と敵対関係にある聖堂教会に属する彼は、此度の戦争で確実な勝利を得るため、御三家の一画“遠坂”と同盟を組んでいる。とは言え、それは彼自身が望み行動した結果ではない。
彼の父――言峰璃正と形式上の魔術の師である遠坂時臣。両名の協定の下、戦争の駒の一つとして行動しているに過ぎないからだ。
そうして三年という月日を費やし、事前の準備が全て整った今夜。
各陣営の役者達が見守る中で、戦争のため、欺瞞の決別として師である時臣を襲うことで、他の陣営にアサシン陣営は敵対していると示す。
傍から見て何とも疑わしい関係だがしかし、時臣氏曰くこのタイミングで行わねばならない。
傍から見れば三文芝居もいいところの軽薄な筋書き。
二流どころか三流にすら成れないだろう脚本だが、それを知らぬ暗殺者は、仮面の下で余裕の表情を浮かべた。そして宵よ時刻は規定通り、月の位置から強襲の時と判断した暗殺者は、開戦の号砲たる茶番を演じる――筈だった。
「良い身のこなしだ。特別な生まれと見える」
冬木の一等地、瀟洒な豪邸へ侵入するべく人外染みた跳躍を行ったハサンの
「なッ!?」
想定外の緊急事態。何の前触れも無く、何者かに背後を取られていた?
決断は瞬時に。声の距離からして自身の背にピタリ、と謎の敵は張り付いているだろうと判断したハサンは、暗殺者の英霊たる証明をするかのように、宙を舞いながら敵を絡めようと振り向き様に肢体を伸ばす。
軽業師の如き身のこなし、蜘蛛の巣の様に敵を捕えんとする手足の胎動。
その全てが一流以上の、対格闘戦を想定した動き。教本にも載せれそうな、理想的とも言える対処術。
「だが、それだけでは勝てんよ」
「……!!?」
激痛、恐怖、そしてそれに勝る驚愕。なにが起きたのか理解出来ないハサンをよそに、襲撃者たる彼女は細く笑みを浮かべた。その左手には、ハサンの生きた時代に名前すらなかった鉄の筒。
“アレは武器だ”認識した瞬間、ハサンに向けられた筒の口から、稲妻のような光と轟音が放たれる。
反射的にハサンは女の腹を蹴り飛ばし、草木の茂る森林へ逃走を図った。
「お、ぐッ……」
筒の口が跳ね上がり、斜線がずれると、辛くもハサンは生き延びる。
右の鼓膜は破れ、伸ばした右手が肩から消し飛んでいるが、対象との距離が離れた。互いに起伏のある緑の大地に着地すると、油断無く視線を交わす。
(マスター綺礼、緊急事態です。他のサーヴァントに強襲されております)
半身を血で染めるハサンは、霊的パスで繋がったマスター。言峰綺礼へ念話を飛ばし、状況の報告に努めた。
(背格好から見て、恐らく未だ確認が取れていないキャスターと思われます)
肩で大きく息をしながらも、四肢は緩やかに。即時行動を取れるよう染み付いた歴戦の暗殺者たる臨戦態勢。
敵は一歩、また一歩と、優雅な足取りでゆっくりと距離を詰めてくる。
正面戦闘で三騎士に遅れをとる暗殺者は、湧き上がる焦りを堪え、未だ応答の無い主人へ指示を仰ぐ。
(マスター! 指示を!!)
何も知らない、憐れな蒙昧。
懐かしい姿でも被ったのか、そんなハサンの様子を、心底おかしそうに見ながら彼女は嗤った。
(マスター、マスター綺礼! ……?)
パスは繋がっている、供給される魔力からそれは確かなことだ。しかし、念話に反応は無い。
言峰綺礼という男は、ハサンの目から見ても寡黙な印象を受けた。必要なこと以外、会話した憶えもない。
例えるなら、雇い主と下僕の関係に近いだろう。だが、だからこそ、このような事態で一切の反応を返さないのは異常だった。
では何故?
考察する必要など無いだろう。なにせ眼前の敵は、恐らくキャスターである。ならば妨害工作に類する宝具や魔術を想定せて然るべきだ。ハサンはそう判断した。
彼の考えは、あながち間違いではない。実際に念話の妨害を行っているのは、彼女なのだから。
思案は一瞬だった。未知の敵と相対し、逃走しようにも深手を負ったハサンは、状況が詰んでいる事に気付く。同時に、彼我の距離が英霊にとって一歩で詰められる程度に縮まっていた絶望にも。
だが、天は彼を見捨てては居なかった。
突如として遠坂邸より飛来した黄金の閃光が、彼女を背後より貫いたのだ!
「おや、これは……油断したな」
そして貫通した黄金が、ハサンの頭蓋までも破砕する。
彼女の胸からは止めどない血が流れ落ち、ハサンの身体は魔力の粒子となって消えて逝く。彼女もまた、膝から崩れ落ちるとその身体を霞の様に霧散して消えて往った。
先までの緊迫した状況と一転した、あっけない幕切れ。
原初の王が漁夫の利を得るような形となってしまったが、これが第四次聖杯戦争初戦。
開戦を告げる戦いであった……
我様「トキオミェ……」
アッサシーン「これって、魔貫光○砲と似たような構図なんじゃ……」
今回登場した左手武器(獣狩りの銃器)はこちら!
『獣狩りの散弾銃』
狩人が獣狩りに用いる、工房製の銃。
獣狩りの銃は特別製で、水銀に自らの血を混ぜ、これを弾丸とすることで、獣への威力を確保している。
また、衝撃により獣のはやい動きに対処する部分も大きく、特に散弾を用いるこの銃は、当てやすく効果が高い。
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