ガールズ&パンツァー~島田家の長男~ (園部)
しおりを挟む

プロローグ

知識的にはにわかにすら劣りますがよろしくお願いします。
原作前から始まります


「・・・・で、どうでしょう?戦車道が盛んな我が校に入ってくれませんか?」

 

俺の名前は島田秋人(しまだあきと)。15歳。実家が戦車道で有名な島田流の長男だ。

俺は今学校の校長室で聖グロリアーナからの勧誘を受けていた。

 

「そうですね・・・・・色々言いたいことはありますが、まず・・・・俺は男です。」

 

戦車道は乙女の嗜み。つまり男が戦車道をやるのはかなり珍しい。

というかない。ほぼない。もしかしたらこの人俺の性別間違ってるんじゃないか?

 

「知ってます」

 

知ってたのか。うん、じゃあ・・・・

 

「では次に・・・・・おたくの高校女子高ですよね?」

 

「そうですね。なので特例ということです」

 

嫌だ。さすがに男が1人もいないのは嫌だ。

 

「・・・・・なぜそこまで私を?男が戦車を乗る時点であり得ないし選手としても出れません。なのに授業料免除と学校に関わるものなら全て無料なんて・・・・そこまで島田の名が欲しいんですか?」

 

世界に日本戦車道ここにあり。と、知らしめた島田の名は有名だ。

その知名度を使って生徒数を上げたいってことも考えられる。

 

「私共が欲しいのは島田の名ではなくて、島田秋人さん本人です。ハッキリ申しますとコーチとして最低3年間在籍してほしいのです。」

 

コーチねぇ・・・・

 

「・・・・去年の中学選抜のことを言ってるんですか?あれはあの世代が異常だっただけですよ」

 

中2の頃、縁があり中学選抜の監督をやることになってしまった。

その時当時の高校選抜を破ってしまったのは記憶に新しい。

 

「西住まほ筆頭に当時既に高校レベルの実力を持った人がそこそこいたんです。正直運もありましたし私の力じゃありません」

 

「ですが当時をよく知る人間は口を揃えてこう言いますよ?『島田秋人がいなければ絶対勝てなかった』と」

 

「私はただ練習中に横から口だししただけですよ。凄かったのは彼女らであって私ではありません」

 

「作戦は貴方が考えたと聞きましたが?」

 

「確かにそうですが・・・・誰でも思いつくような作戦ですよ」

 

「誰でもねぇ・・・・(当時の試合を観たけどあの作戦が誰にでも思いつくわけないでしょう。彼はやっぱり聖グロリアーナに欲しいな・・・・・・)」

 

考え込んでどうしたんだろ?

 

「うちに来ればダージリンも喜びますよ?」

 

ダージリン?あぁ、アイツの事か。そういえばあの高校では紅茶の名前で呼ばれるんだったな。

 

「似たようなことはサンダースやプラウダにも言われました」

 

この人が来る前にサンダースやプラウダも来たんだよなぁ・・・

 

「やはり2校も来てたんですね。黒森峰からは?」

 

「あそこは今ガチガチの西住流ですからね。それに女子高ですし絶対来ないでしょう」

 

「そうですか・・・・・で、そろそろ返事をお願いしたいとこですが?」

 

「お断りします」

 

予想通りって顔してるな。駄目元で来てたのか。

 

「理由をお聞きしても?」

 

「男子がいないのはやはり肩身が狭いのと。上品すぎるところは性に合わないので・・・申し訳ありません」

 

「いえいえ、正直駄目元だったので・・・・一応気が変わりましたらご連絡ください」

 

そう言ってスカウトの人は帰っていった。

 

 

「というわけで断ったよ」

 

『そうですの・・・・一緒に戦車道をしたかったんですが・・・』

 

俺はダージリンに携帯で今断ったことを連絡していた。

 

「悪いな。言ってなかったけど高校は戦車道の無いとこに入る予定なんだ」

 

『・・・・はい?私耳が遠くなったのかしら?』

 

「戦車道のあるとこには入らない」

 

『なぜ?貴方は戦車がお嫌いになったの?』

 

「なるわけないだろ。俺にとって戦車道は全てなんだからな。俺ってお前ら好きだし単純にどっかに肩入れするよりかは最初からどこにも入らないほうがマシなんだよ」

 

『そ、そうですの・・・・・(好きって言ってもらえて嬉しいですが、そこは「ら」を抜いてほしかったですわ)』

 

女々しい理由で退かれたか?でも事実だししゃーないしゃーない。

 

「じゃあそろそろ切るよ。じゃーな」

 

さて、次は・・・・

 

「あ、母さん?俺だけど」

 

『どうしたの?母さんの声でも聞きたくなったのかしら?相変わらずマザコンなのね』

 

「俺をマザコンにするのは止めてください。進学先のことで話が・・・」

 

『電話でいいの?直接会わなくてもいいの?母さんの温もりいらないの?』

 

これ会いたいのって母さんのほうだよなぁ・・・・

 

「ああ、電話でいいよ。確認だけしたくてさ・・・・俺の進学先って好きにしていいんだよな?」

 

『そうね。秋人は成績も良いし・・・どこか入りたいとこがあるの?』

 

「そうだなぁ・・・・候補としては大洗学園かな。戦車道ないし学園艦の雰囲気も悪くなさそうだ」

 

『そう・・・・やっぱり戦車道はしないのね』

 

ちょっと残念そうな母さん。

 

「皆の敵に回るくらいだったら応援したいなーって・・・ダメ?」

 

『ダメじゃないわ。秋人が決めたことなら私も賛成するわよ。私もだけど愛里寿は普通の学校生活は無理だろうし・・・・秋人だけでも普通の学校生活を楽しんでほしいわ』

 

「愛里寿については・・・本人は納得してるけど実際どう?」

 

俺の妹の愛里寿は飛び級で来年大学に入ることに決まった。

愛里寿は優秀だけど引っ込み思案なところがあるので少し心配だ。

 

『大丈夫よ。秋人が愛里寿を想っている限りは絶対大丈夫だから』

 

「そっか・・・・近いうちに自宅に戻れるからまたその時に」

 

『ええ、待ってるわよ』

 

そして電話を切る。

 

 

時は流れて4月。俺は大洗学園に入学することに決まった。

 




プロローグだしこの辺りで。
次回から1年生編が始まります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1話

1年生編が始まります。


他にも書く作品あるはずなんだけどな・・・・


俺が大洗学園に入学して少し経った。

大洗学園は俺の上の学年から共学に変わったらしくて男子が全体の1割もいないって知ったのは入学してからだった。

学科はそこそこあったが俺が入ったのは普通科。

他にやりたいこともなかったしね、

 

「武部、五十鈴、ご飯行こうか」

 

「うん」

 

「分かりました」

 

俺は2人の友人を誘って食堂に行く。

本来なら男子の友人が欲しかったところだが・・・・

俺のクラスには俺しか男子いないとかイジメもいいとこだ。

 

「ねぇねぇ、今日は何食べる?」

 

武部沙織。常に明るい女の子。いつも彼氏を欲しがってるが彼氏いない歴=年齢らしい

 

「そうですね~トンカツ定食と味噌ラーメンでしょうか?」

 

見た目大和撫子の大食いは五十鈴華。実家は華道をやってるらしい。

 

「いつも思うけどよく食えるよな」

 

俺が2人とつるむ切っ掛けになったのは五十鈴の大食いが原因だ。

2人がお昼に食堂にいたとき俺もそこにいた。五十鈴の食べる量が凄いからつい声をかけてしまった。別に後悔もしてないし楽しいので問題はない。

 

「秋人は?今日は何食べるの?」

 

「俺は・・・焼肉定食かな。初日食ったときにハマった」

 

タレがご飯と合って超美味いんだよなー

 

「そっかー」

 

「武部は?いつものレディースランチ?」

 

「うん!女は小食のほうがモテるらしいしね!」

 

別にそういうことはないと思うけど・・・

 

「あれ量が少ないから五十鈴はもの足りないんだろうな」

 

「そんなことは・・・・ありますね。あれなら5セットほしいです」

 

だろうな。そして食堂について買ったご飯を食べる。

 

「ねー折角の共学なのに男子少ないってどう思う?」

 

俺が肉を口に運んでるときに急に武部が不満を漏らす。

 

「んー・・・共学になって2年目だしなー。中学の方はまだ女子校だっけ?外からじゃ入りずらいとかあるんじゃねーの?つっても去年よりかは多少多いらしいけど」

 

「そうですね。それに男性と一緒というのはまだ慣れませんね・・・・」

 

「俺も?まだ五十鈴は慣れない?」

 

「いえ!秋人さんは別ですよ」

 

そっか、よかった。

 

「折角共学になったのにこれじゃあ意味ないよー・・・」

 

武部が項垂れてるけど人が来ないのはしょうがないだろう。何か特色でもあれば別だけど大洗は良くも悪くも無難だからなー。

 

「そんなに男に囲まれたいのか?」

 

男としては嫌だけどな。男子校だけは入らないって決めてたし。

 

「モテたいの!高校に入ったらモテモテになる予定だったのにぃ・・・」

 

「残念だったな。来世になったら頑張れ」

 

「私来世になるまで彼氏出来ないの!?」

 

「冗談だよ。頑張れば出来るさ。とりあえず学園艦にいる男子に片っ端から告白すれば1人くらいはヒットするんじゃないか?」

 

「下手な鉄砲も数を打てば決まるってことですね」

 

「それただのビッチでしょ!私は向こうから告白されたいの!」

 

向こうからねぇ・・・・

 

「じゃあまず男子の知り合いを1人でも多く作ることからだな。学園艦に全くいないわけじゃないんだからさ。で、ある程度仲良くなったら向こうから告白されるのを待つってどう?」

 

「切っ掛けがないよ・・・・」

 

切っ掛けって言われてもそんなの自分で作ればいいじゃないか。

 

「切っ掛けですか・・・・秋人さんの友人を紹介してもらうのはどうでしょうか?」

 

「それだ!」

 

こっちを見る武部だが・・・・

 

「悪いがそれは無理だ。こっちに来てからお前らしか友人はいない」

 

「えー!入学してから一週間だよ!?何してたの!」

 

いや、何してたって・・・

 

「お前ら2人と遊んでだくらいだな。この前の案内は本当に助かったよ」

 

なんせ右も左も分からないような状態だからなー。

 

「そういえば何で秋人は大洗に来たの?」

 

「そういえば聞いてませんでしたね」

 

うーん・・・・

 

「そうだなぁ・・・・街の雰囲気とかかな。大した理由はないよ」

 

男子校以外。戦車道以外。それなら割とどこでもよかった。

単純に一番最初に目についたからここにしただけって感じだし。

 

「そっかー。あ、お昼時間なくなるしそろそろ行こっか!」

 

そして教室に戻る俺達。

 

 

放課後。特に部活にも入っていないので俺はそのまま帰宅する。

部屋について携帯をベッドに投げて制服を着替えると着信が鳴る。

 

「誰だって・・・・カチューシャか?」

 

『アキーシャ!アンタのクラスってどこ!?このカチューシャ様が迎えに行ってあげるわ!』

 

何言ってんだ?このお子様は・・・

 

「どこもなにも・・・・俺はプラウダにいないぞ。一体何を勘違いしてるんだ?」

 

『え?何言ってるの?そんな冗談はいいから早く「だからプラウダに入学してないって」・・・・ホント?』

 

「本当。俺そんな事一言も言ってないはずだよな?」

 

『・・・・ノンナ!!どういうこと!?』

 

カチューシャめ・・・・電話あてながら大声出してんじゃねーよ。

 

『・・・・ノンナの勘違い?そんな・・・一緒に戦車道したかったのに・・・』

 

あれ?俺悪くないのに罪悪感が凄いんだけど・・・

 

「泣くなカチューシャ」

 

『泣いてないわよ!』

 

嘘つけ電話越しで鼻すすってんじゃん。

 

「今度そっちに遊びに行くからそれで許してくれ。今俺大洗にいるんだけど何かしらの特産品持ってってやるよ」

 

『・・・・約束よ?近いうちに絶対に来なさい!』

 

何とか機嫌が直ってくれたようだ。

 

「ああ、色々見て周りたいし長期休暇のときにでも寄らせてもらうよ」

 

『ふん!うちに来なかったことを後悔するぐらい凄いの見せてやるんだから!』

 

一体どんなの見せてもらえるのだろうか・・・

 

 

 

休日。俺は今聖グロリアーナにいる。

 

「帰っていいか?皆の視線が超気になる」

 

正確には食堂だろうか。他の生徒もチラホラ見える。

 

「知っていて?せ「あ、格言はいらない。聞き飽きたし」・・・・人が話ているときに喋るのはマナー違反よ」

 

だってなぁ・・・毎回毎回面倒になるし・・・

 

「で、今日は何で呼んだんだ?」

 

俺は出された紅茶を飲みながらダージリンに聞く。

 

「ええ。実はお願いがあって・・・・私たちの練習相手というかコーチをやってほしいのよ」

 

・・・・・・なるほど、そういうことか。

 

「練習相手なぁ・・・・お前はともかく他の子は賛成しないだろ?」

 

男が戦車道だし厄介者扱いされるに決まってる。

 

「それがそうでもないのよ。2年前の試合は貴方が思ってる以上に戦車道やってる子たちには有名だから。事前に聞いてみたら向こうがOKしてくれたら歓迎ですって」

 

へー。でもなぁ・・・

 

「あんまり役に立たないぞ」

 

「貴方は自分を過小評価してるみたいだけど・・・・・なぜ?」

 

なぜって・・・・

 

「母さんにだって俺はマグレでしか勝てないしなぁ・・・・」

 

「(島田流家元にマグレでも勝てる時点で優秀なことに気づかないのかしら?)問題ないみたいね。じゃあ行きましょうか」

 

あれ?俺の話聞いてた?

行先は格納庫。そこには既に選手たちが揃っていた。

 

「皆さんお待たせしました。今到着しましたわ」

 

うわーお嬢様がいっぱいだ・・・・

俺が唖然としてるとダージリンが声をかけてくる。

 

「まずは挨拶をお願い」

 

俺は一歩前に出て挨拶を行う。

腹括るか・・・

 

「皆さん初めまして、島田秋人です。皆さんの中にはなんで男が?って疑問に思う人もいるでしょう・・・・まずはそれに疑問を持つ方がいれば前に出てください」

 

俺が少し待つと誰一人前に出て来ない。

あれ?

 

「別に晒し者にする気もないし遠慮なく前に出てください。疑問を持ったまま練習しても身になりませんよね?」

 

それでも誰も前に出てくる人はいない。

そこでダージリンが・・・・

 

「あの、秋人さん?言ったと思いますが貴方は自分が思ってるよりも有名なのよ。この中に不満を思う方はいませんわ」

 

聞いたけど・・・・・1人もいないの?

ちょっと予想外だな・・・・

 

「そうですか。1人もいないなら問題ありませんね。では改めて・・・まずはいつも通り練習を行ってください。それを見て必要なら横からアドバイスを出したり分からないなら実演もします。今日1日よろしくお願いします」

 

『よろしくお願いします』

 

そして始まる練習。

なるほど、随分丁寧というか優雅というか・・・・綺麗だな。

この戦車の動きが標準か。全てにおいて綺麗なのはいいが・・・

俺は横からアドバイスを言う。すぐに修正できるのはいいな。

そして練習が終わる。

 

「皆さんお疲れさまです。今日1日の練習は終わりましたがどうでしょう?」

 

うん。結構好評っぽいな。

 

「では以上で解散」

 

そう締めくくるとドサっとこちらに人が流れ込んでくる。

 

「あの、砲撃のタイミングをもっと教えてほしいんですの」

「実演されたときの操縦は見事でした」

「アドバイスが凄くタメになりましたわ!」

「コーチもっと教えてください!」

 

おお、これは・・・・

 

「皆さん。あまり無理を言ってはダメですよ。秋人さんもお忙しい身ですので・・・・でもたまには今日のようにコーチをしてくれませんか?」

 

「ああ、たまになら・・・・俺もいい練習になるしな」

 

「では私は秋人さんを送って来るので皆さんは片づけをお願いします」

 

そして俺とダージリンが歩き出す。

 

「今日はすみません。急に無理を言って・・・・」

 

「いやいいけどさ・・・・でも何で連絡くれたときに言ってくれなかったんだ?」

 

「それは・・・・・もし断られでもしたら・・・」

 

ああ、断られるのが不安だったのか・・・

俺はダージリンの頭に手を乗せる。

 

「先約があるならともかく・・・・それ以外断る気ねーよ。心配しなくていい。戦友の頼みなんだからな」

 

「じょ、女性の頭に無暗に手を乗せるのはし、紳士のやることじゃないと昔も言ったでしょう・・・!」

 

懐かしいな。そんな事言われたっけか・・・

 

「いいじゃないか。俺とお前の仲だしさ・・・・もうちょっと気安くていいだろ」

 

付き合い自体は中2からだから2年程度だけどな。

 

「・・・・もう、貴方って人は・・・・」

 

笑顔で言われても説得力に欠けますよー

 

 

 

「おっはよー!」

 

聖グロのコーチをしてから2日後。朝の教室。

 

「武部うっさい。何か良い事でもあったのか?」

 

「聞いて秋人に華!実は昨日ナンパされたんだー」

 

顔に手を当てて腰をクネクネする武部。

ほう、それはそれは・・・・

 

「「嘘だな(ですね)」」

 

「う、嘘じゃないもん!」

 

えーだって武部が?

 

「なんか勘違いな気がする」

 

「秋人気になる!?気になるよね!?」

 

テンション超うざい。

 

「いや、別に気にならないし・・・・」

 

月曜の朝からここまでテンション高いやつっているだろうか?

 

「えー!聞いてよ!実は日曜に街に行ったんだけど・・・」

 

どうしよう。聞いてもいないのに語りだした。

 

「私が1人でショッピングに繰り出してると急に後ろから声をかけれらたの。ナンパかなって振り向くと・・・・・イケメンの人がハンカチ落としたよって!」

 

・・・・?

普通に落し物を拾っただけなんじゃ・・・・

 

「あの・・・それは普通に落し物を拾っただけなんじゃ・・・」

 

五十鈴も同じことを思ったのか、武部に聞く。

 

「ち、違うもん!あれは私が可愛いから後を着けて声をかけるタイミングを探してたところにちょうど良くハンカチを落とした私に声をかけたシャイのイケメンだよ!」

 

イタすぎる!コイツに声をかけたら全てナンパ認定されるんじゃないだろうか・・・

五十鈴も顔を引き攣ってるし・・・・

 

「あのさ、その後どうなったんだ?」

 

「え?あの後はこっちから切り出したほうがいいかなって思ってお礼にお茶に誘ったけど忙しいらしくて断られちゃったよ。でも彼はシャイだからしょうがないよね」

 

ここまで脳内お花畑のやつって存在してたんだな・・・

 

「残念な事実だが、それはナンパではなく落し物を拾っただけだ」

 

「だから違うって!あ、分かった。秋人嫉妬してるんでしょ?」

 

は?

 

「それならそうと言ってくれればよかったのに・・・・・秋人って私の事好きなんでしょ?」

 

俺は五十鈴のほうを見る。

そして頷いたので俺は早速武部に近づいて

 

「秋人?どうし・・・・・・イター!!」

 

アイアンクローをかました。

 

「ちょ・・・なんで!?は、華たすけ・・・・」

 

「もっと力を込めていいんじゃないでしょうか?」

 

無慈悲の宣告。

 

「クラスのみんなー!私をたすけ・・・・」

 

皆顔を逸らす。聞き耳立ててた連中もしょうがないと思ったんだろうな。

制裁が終わったので武部を椅子に下す。

 

「言う事は?」

 

「すみませんでした・・・・」

 

そんな月曜日の朝の出来事。

 




Q.愛里寿ちゃん一番好きなのに何で一度も出てない・・・・?

A.作者がバカだから


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

そろそろ今年も終わりますね・・・・
今年一番後悔したことは劇場版の4DXが観れなかったことです。
もっと早くハマっていれば・・・・


放課後の教室で俺は考えていた。

教室では感じないが廊下を歩いてると視線を感じる。

敵意がある感じではないけど一体なんなんだ?

最初は気のせいかと思ったがもう1週間だ。

いい加減うっとうしくなってきた・・・

 

「どうしたの?」

 

武部が話しかけてくる。

 

「いや、何でもない・・・・そろそろ帰るか?」

 

「うん・・・・と言いたいところだけど今日は華と帰るね」

 

「了解。じゃあ俺先帰るわ」

 

バッグを持って俺は教室から出る。

別にハブられてるとかそういうわけじゃないが、男の俺がいるんじゃやり辛いことなんだろう・・・・多分。

 

とりあえず視線の主を捕まえるために俺は人気のない廊下を通る。

 

「(視線は感じるし・・・あの突き当りを曲がって待つか)」

 

俺がそこで待機してると小さい足音が近づく。

人影が出てきた瞬間俺はそいつの胸元を掴んだ。

 

「よう。最近俺を見てたのはお前か?用があるなら・・・・・女?」

 

そいつは慌てた様子で喋り出す。

 

「す、すみませんでした!その・・・・話しかけようと思ってたんですが緊張してしまって・・・・申し訳ありません!許してください!」

 

慌てた様子で俺に謝ってくる。

どうやら悪気はないので俺はとりあえず手を離して話を聞く。

 

「・・・・とりあえず移動するか。俺に用があるんだろ?」

 

「・・・・はい」

 

俺達はとりあえず食堂に移動した。

 

「ほら、コーヒー」

 

俺は自販機で買ったコーヒーを渡す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

そして席に座って俺もコーヒーを飲んで一息つく。

 

「まずは自己紹介か。俺は1年普通Ⅰ科B組の島田秋人。お前は?」

 

「わ、私は普通1年Ⅱ科D組の秋山優花里と申します!」

 

「そう、秋山さんね。で、俺に何の用?」

 

「そ、その・・・・私実は島田殿のこと前から知っていたんです!」

 

・・・・?

 

「よく分からないな。知っていたからつけていたんじゃないのか?」

 

「あ、違くて・・・・学校に入る前からです」

 

学校に入る前から?

 

「どこかで会ったか?でも大洗は高校で初めて来たしなー・・・・もしそうだったらすまない。俺は君のこと知らないんだ」

 

「い、いえ!こちらが一方的に知ってるだけで・・・・」

 

俺を入学前から知ってるやつ・・・・・で、考えると戦車道しかないか・・・・

 

「戦車関連の人?」

 

「そうです!あ、正確にはただのミリタリーファンですけど・・・・2年前の島田殿のご活躍を知っています!」

 

いや、活躍って俺大したことしてないんだけど・・・・

 

「2年前・・・・中学選抜か。けど俺はメディアにあまり顔を出してなかったはず・・・というか主役は選手たちで俺を知ってるなんて・・・」

 

「島田殿は我々の間では有名人なんですよ!なんせ男で戦車道に関わる人なんて滅多にいませんしいたとしても整備の方ですし・・・・腕もかなりの物だと聞いてます!それにあの作戦立案した方は島田殿って聞いてます!」

 

お、おう・・・・

 

「確かに作戦立案は俺だが実際に成功させたのは選手たちだからそこまで敬愛の眼差しで見られても・・・・」

 

「何を言ってるのでありますか!あんな大胆不敵な作戦を思いつくだけで凄いじゃないですか!それに答えた選手達ももちろん凄いですが・・・・・」

 

「とりあえず声落としてくれ。みんなこっち見てる」

 

さっきから秋山さんが大声で熱弁してるせいで食堂にいる人がチラホラみてくる。

 

「す。すみません・・・・・」

 

秋山さんが周りを見渡すと顔が赤くなった。

恥ずかしいよな。

 

「いいよ。で、俺の事を知ってる理由は分かったけどつけたのは・・・・」

 

「島田殿と話をしたかったんです・・・・初めて見たときは驚きましたよ。だってまさか大洗にいるなんて思ってなくて・・・てっきり戦車道のある学校に行くと思ってましたし・・・」

 

「まぁ、俺も色々あるんだよ。じゃあとりあえず連絡先交換するか?」

 

「え!?」

 

俺の急の提案に驚く秋山さん。

 

「俺こっち来てあまり友達いないんだよ。クラスの連中とは話すけど友達って感じなのは2人だけだし・・・・嫌か?」

 

「いえ!大歓迎であります!!」

 

「よかった。じゃあ携帯出してくれ」

 

そしてお互い番号とアドレス交換する。

 

「感動であります!初めてのお友達が島田殿なんて・・・感無量であります!」

 

え?初めて?

 

「そ、そうか・・・・じゃあこれから戦車ショップにでも行くか?ここら辺の戦車ショップがどこにあるか知らないけど、秋山さんなら知ってるだろ?」

 

「はい!案内はお任せください!・・・・あのぅ・・・」

 

「どうした?」

 

「えっと、秋山さんじゃ他人行儀なので是非名前で呼んでくれると嬉しいなって思いまして・・・・」

 

「そう。じゃあ優花里だな。これからよろしく」

 

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

こうして俺の大洗での3人目の友人が出来た。

 

 

俺が朝登校するとうずくまってる人がいた。

 

「どうしたんだ?気分が悪いのか?」

 

「い、いえ・・・・大丈夫です」

 

どう見ても大丈夫に見えないけど・・・・・

よく見ると足首を押さえているな。

 

「(捻ったのか?)失礼」

 

「あ・・・・」

 

俺は彼女の手をどけて足首を見る。

この程度なら保健室で治療すれば問題なさそうだな・・・

 

「助けは呼んだか?」

 

「いえ・・・・・」

 

「後で文句は聞くから・・・・」

 

「え?・・・キャッ!」

 

俺は彼女をお姫様抱っこで運ぶ。

 

「あ、あの・・・」

 

「悪いな。ここからなら学園に近いしこの程度なら保健室の治療で事足りる」

 

「い、いえそうじゃなくて恥ずかしい・・・・」

 

「恥ずかしいのは分かるが放置も出来ないんだよ」

 

そして俺は学園まで行く。

道中色々な人に見られたが無事に保健室についた。

彼女をベッドに座らせて俺は棚を物色する。

 

「恥ずかしかった・・・・」

 

「大丈夫。俺も恥ずかしいから一緒だ。保険の先生いないし俺が治療する」

 

棚から湿布と包帯を出して冷水を準備して彼女の治療をする。

 

「まずは冷やすぞ。そのまま寝てろ」

 

「えっと・・・スカート覗かないでね?」

 

「大丈夫。足首だけだから不安なら掛布団で隠しとけ」

 

患部を冷やして15分くらいかな・・・・

 

「捻挫みたいだけど腫れもそこまでじゃないから折れてはいないだろう。15分大人しくしとけ。その後は湿布貼って包帯巻くから」

 

「う、うん・・・・ありがとう」

 

始業ベルまで15分か・・・・保険の先生来てくれるといいんだが・・・

 

「あ、そういえば名前言ってなかったな。俺は1年の島田秋人。」

 

「私は2年の小山柚子だよ」

 

先輩だったのか・・・

 

「それは失礼しました。先輩とは知らなかったとはいえ・・・・」

 

「いいんだよ。でもてっきり知ってるものと思ってたよ」

 

ん?有名人かなんかか?そういえばどこかで見た気がする。

 

「えーっと・・・・」

 

「ふふ、私は生徒会副会長なの」

 

ああ、そういえば生徒会の挨拶で見たっけ。

 

「ああ、道理でどこかで見たかもと。そういえば珍しいですよね。生徒会役員が2年のみって・・・」

 

確か3人いて会長と副会長と広報だっけか?全員2年だったはず・・・

 

「うん、うちの会長は凄い人だからねー。でも私も島田秋人君のこと知ってたんだよ」

 

なんだ?また戦車道か?

 

「入試の成績は学年2位。でもトップとは2点差で・・・・男子自体珍しいからね。覚えていたんだよ」

 

ああ、そういうことか。

 

「生徒会って入試の成績も知ってるんですか?」

 

「うちの会長は学園長よりも強い権限あるからねー。そういうのも知ってるんだよ」

 

えー・・・・学園長よりも立場が強い生徒会長ってなんなん?

 

「そうなんですか。あ、時間経ったのでそろ「柚子ちゃーん!!」・・・・?」

 

扉を思いっきり開けて中に入ってきたのは・・・・

 

「学園の新聞で柚子ちゃんが男子に保健室に連れ込まれたって!」

 

「河嶋ー落ち着け」

 

確か小さいほうが生徒会長だっけ?で、一番騒がしいのが・・・

 

「お前か!?柚子ちゃんを連れ込んだやつって!」

 

広報だっけか・・・・

 

「桃ちゃん落ち着いて。別に連れ込まれては・・・・・連れ込まれたね」

 

「そこは違うと言ってほしいんですけどね・・・事実だし反論もし辛いのがなんとも」

 

明らかに誤解してるのは分かるけどな。

 

「やはり事実だったか!!」

 

「事実ではありますが、誤解がありますね。説明するので掛けてください。今お茶を出します」

 

俺は棚からお茶葉を出して人数分のコップを用意する。

 

「手馴れてるねー」

 

椅子に座り会長がそう言う。

 

「そうでもないですよ。湿布や包帯取るときにあったので・・・・別に使っても問題ないでしょ」

 

「面白い子だなー」

 

俺は3人にお茶を出して説明する。

 

「なるほど、そういうことだったのかー」

 

「すまない。私の勘違いだった・・・」

 

「いえ、構いませんよ。大事な友人が心配だっただけなんですから」

 

俺も友人が無人の保健室に連れ込まれたら動揺するだろうし。

 

「ああ、そう言ってもらえると助かる」

 

「もう、桃ちゃんは心配性だなー」

 

「桃ちゃん言うな!」

 

そういえば・・・・

 

「学園の新聞ってなんです?」

 

「その前に自己紹介しとく?」

 

ああ、俺としたことが・・・・

 

「失礼。俺は1年の島田秋人です。」

 

「私は2年会長の角谷杏だよー」

 

「私は広報の河嶋桃だ」

 

「島田君のことは知ってるよー入試2位で今年の男子人気ランキング1位だしねー」

 

・・・・人気ランキング?

 

「えっと、入試については小山先輩から聞きましたが人気ランキングって?」

 

「うん?新聞部&写真部主催の男女の人気ランキングだよー。入学した新入生を対象にしたランキング。ぶっちゃけ顔で選ばれるやつ。写真部が隠し撮りした写真で誰が一番美人とかイケメンとか在校生が選ぶんだよ」

 

「それでお前が今年の1位ということだ」

 

そんなランキングがあったなんて知らなかった。

というかいつの間に隠し撮りされたのだろうか・・・

 

「まー男子少ないからねー。で、学園新聞だっけ?そっちも新聞部が作ってるよー。新鮮のネタがあればいつでもどこでも新聞が発行されるやつ。ほら、これがさっき発行されたやつ」

 

俺と小山先輩がそれを見る。

 

「えーっと、『副会長熱愛発覚!?ラブラブお姫様抱っこで登校!お相手は人気ランキング1位のあの人!そのまま愛の保健室へ!?』・・・・写真つきですね。これは・・・」

 

「新聞部の人って裏とか取らないから・・・・というか恥ずかしいよ!学園歩けないじゃない!」

 

「で、これを見て私たちは保健室に特攻したってわけ」

 

なるほどなぁ。

 

「まー人の噂は七十五日と言いますし・・・・放っておきましょうか」

 

「ありゃ・・・・否定しなくていいのかい?」

 

「いちいち弁解して周れと?面倒ですし恐らくこれっきりの付き合いでしょうから自然と収まるのを待つしかないでしょう・・・あ、小山先輩足出して下さい」

 

「あ・・・・・うん」

 

どうしたんだろう?顔が暗いな・・・・

 

「痛みますか?」

 

「あ、大丈夫だよ」

 

ふむ、まぁいいか。

俺は気にせず患部に湿布を貼り、包帯で巻く。

 

「これでいいでしょう。腫れと痛みが引くまで運動は控えてくださいね・・・・」

 

「うん、ありがとう・・・・・秋人君」

 

名前呼び・・・・まぁいいけど。

 

「とっくに授業始まってますね・・・・・・・正直今日は授業サボりたい」

 

絶対武部辺りが煩い。

 

「まー今から1限出てもしょうがないし我々もサボりますかー」

 

それでいいのか生徒会。

 

「島田君のことをちゃっかり名前呼びした小山は歩けそうか?」

 

「会長!・・・・ええ、大分楽になったので歩く程度なら」

 

「じゃあ島田君。折角だし生徒会室に来ないか?あそこなら誰も来ないだろうし」

 

生徒会室か・・・・

 

「そうですね。小山先輩も「折角だし島田君も柚子って呼んでやれば?」・・・・柚子先輩の足も歩ける程度に回復したのなら・・・・やっぱり心配なのでまた抱っこしますね」

 

今なら皆授業中だし見られることはないだろう。

 

「お、いいねー。じゃあそうしてもらいな」

 

「か、会長!私はもう大丈夫です!」

 

「文句ならまた後で聞きますし移動しましょう」

 

俺は再び抱っこして運ぶ。

 

「やー島田君は中々積極的だねー」

 

 

 

「さぁ、ここが生徒会室だよー」

 

「お邪魔します」

 

俺は柚子先輩を椅子に下ろして隣に座る。

 

「で、要件はなんです?」

 

「うちの役員を助けてくれたお礼に干しいもでも振舞おうと思ったんだよー」

 

「・・・・そうですか」

 

喰えないタイプだし何かあると思ったんだけどな・・・・

そして色々話しながらお茶を飲む。

 

「うちの小山を助けてくれて島田には感謝するよ」

 

「いえいえ」

 

この人って何か作ってる感じがするよなー。

恐らく素は保健室に来たときのアレだろう。

 

「そうだ、島田君も生徒会に入ってみない?」

 

生徒会ね・・・・

 

「いえ、このタイミングで入ると噂が助長されるので・・・・それにプライベートでも若干忙しいので断ります」

 

「キサマ会長の願いを断るのか!!」

 

会長信者の広報がうるさいな。

 

「幽霊部員的なやつならいいんですけどね・・・・理由は共学化ですか?」

 

「察しがいいねー。男子の意見役としてほしかったんだけどなぁ・・・・ま、確かにこのタイミングはマズイかな。また今度にするよ」

 

「ごめんね秋人君。でも会長はやると言ったらやる人だからいずれ入れられちゃうから覚悟しておいてね?」

 

「別に嫌ではありませんよ。じゃあそろそろ行きますね。お茶と干し芋ごちそうさまでした」

 

「いつでも遊びに来てねー」

 

俺は生徒会室から教室に向かった。

 

 

杏side

 

結構面白い子だったなー。島田秋人君か・・・・

 

「会長。島田を生徒会に入れるのは本気ですか?」

 

「もちろんだよー。理由もホント。だけどもう1つ・・・・小山のお気に入りだからかなー」

 

「会長!別にお気に入りなんて・・・・」

 

小山が男を名前呼びしてる時点でなー。

 

「ま、今はまだ時期じゃないけど・・・・・いずれ絶対入れるよ」

 

「・・・・なるほど、会長も気に入ったんですね」

 

それはどうかなー?

 

 

杏sideout

 

 

俺が教室に向かう途中で1限終了のチャイムが鳴った。

俺は教室の扉を開くと真っ先に武部と五十鈴が俺に近づく。

 

「秋人!あの新聞どういうこと!?いつの間に副会長と・・・・」

 

「すみません。私も気になります」

 

来るとは思っていたが・・・・周りも気にしてるようだし・・・・

 

「普通に怪我してたから保健室に運んだだけだよ。保健の先生が不在だったから治療もね。終わったのが中途半端な時間だったから授業には出ませんでした。以上」

 

2人は安堵の顔を見せる。

 

「よかったー!秋人に先を越されてたらショックだったよぉ・・・・」

 

「本当に良かったです・・・・本当に」

 

武部は失礼なやつだな。五十鈴はなんだろう・・・・妙に重く聞こえたけど・・・・

 

「じゃあ真相分かったし次移動教室だよ!早く行こうよー」

 

「分かったよ。少し待ってろ」

 

「ふふ、急いでくださいね?」

 

柚子先輩の為にも早く噂がなくなればいいのにな・・・

 




キャラの口調がよく分からない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話

季節は流れ夏に差し掛かる。

副会長とのゴシップ記事も皆の記憶から薄れ始めていた頃

今年も戦車道全国大会が開催される。

 

「見てください島田殿!沢山戦車がありますよ!」

 

俺は優花里と一緒に全国大会の会場に来ていた。

 

「当然だろ。とりあえず俺は色々挨拶に行ってくるから優花里は適当に席でも取っておいてくれ」

 

「お任せください!」

 

「じゃあ後で携帯鳴らすから」

 

そういって俺はまず最初にグロリアーナのところに向かう。

すぐに聖グロは見つかった。

だって椅子持参で紅茶を飲んでる高校とか聖グロ以外にないし・・・

 

「ダージリン!」

 

その声に反応してこちらを向いてくる。

 

「あら、秋人さん。応援に来てくれたんですか?」

 

ダージリンが俺を見かけると周りにいた他の子たちが俺の方に寄ってくる。

 

「コーチ応援お願いします!私あれから上手くなったんですよ!」

「わーコーチだ!私達頑張りますね!」

「応援ありがとうございます!」

 

見たのって2,3回なのにコーチ扱いって・・・・

 

「あなたたち、あまり騒ぐのは品がなくてよ?」

 

ダージリンが嗜めると周りに集まった子たちが引いていく。

 

「別にいいと思うんだけどな。試合前だしリラックス出来るし」

 

「それはもっと女の子たちに囲まれたかったってことなのかしら?」

 

「チガイマス」

 

なんだろう。妙な圧力が・・・・

 

「で、今日は誰を応援するのかしら?」

 

「誰をってことはないけどな・・・・しいて言うならみんな?」

 

「そう(特定の個人を応援されるよりはマシね・・・)私たちは今年こそ黒森峰の連覇を止めてみせるわ」

 

気合い入ってるな。いい感じに集中出来てる。

 

「でも黒森峰とあたるのは準決勝だろ?目先の相手に足を掬われないようにな」

 

心配はないと思うけど一応注意はしとく。

 

「もちろん油断はしないわ。貴方はこの後どうするのかしら?」

 

「俺は他の高校にも挨拶してくるよ。時間もないしそろそろ行くな」

 

「ええ、ではまた」

 

俺は聖グロから離れて次に向かうのは・・・

 

「アキーシャ!・・・ふん、久しぶりね!」

 

一瞬笑顔を見せたのは気のせいか?

 

「久しぶりカチューシャ。激励にきたよ」

 

「私の応援に来るなんて分かってるじゃない!」

 

「いや、カチューシャだけじゃないけどね。さっきまで聖グロにいたし」

 

「ムッ!アキーシャはカチューシャのことだけ応援してればいいのよ!」

 

相変わらずで少し安心したな。

俺はカチューシャに肩車する。

 

「これも久しぶりか?重さ変わらないけどちゃんと成長してんの?」

 

「失礼ね!してるに決まってるでしょ!」

 

俺とカチューシャのやり取りが他の隊員たちに見られる。

 

「あれって誰?カチューシャのお兄ちゃん?」

「もしくは彼氏とか!」

「ロリコンか~」

「あれって・・・・多分島田秋人だと思う。あの島田流の」

「え!?それって2年前の?」

「そうだと思う。前にチラっと見たことあるし・・・」

 

ちょっと騒がしすぎたか?

するとノンナさんがこっちのほうに来る。

 

「皆さん静かに。今は整備中のはずじゃなかったんでは?」

 

そう言われ隊員たちは自分の持ち場に散っていった。

 

「お久しぶりですね。すみません挨拶してすぐ帰るはずだったんですけど・・・」

 

「なによ!アキーシャはカチューシャと居たくないっての?」

 

「気にしないでください。カチューシャも喜んでます」

 

「喜んでないわよ!」

 

俺はカチューシャをおろす。

 

「じゃあ俺はそろそろ・・・試合頑張ってください」

 

「ありがとうございます。秋人さん」

 

「今年こそは優勝するから見てなさい!」

 

俺はプラウダから去る。

時間ももうないし理事にも挨拶しとくか?

 

「うちには挨拶に来ないのか?」

 

「黒森峰は正直挨拶し辛いですね。流派的にも・・・・みほやエリカには会いたいんですけど・・・」

 

あれ?俺は誰に返事した?

 

「ほう、みほとエリカだけか・・・・」

 

・・・・ああ、何で彼女がこんな所にいるんだろうな。

 

「ええ・・・・」

 

俺はその場でダッシュするが捕まってしまう。

 

「久しぶりだな秋人。私に何か言う事は?」

 

「久しぶりですね。まほとは中学以来ですか」

 

2年にして黒森峰の隊長、西住まほ。西住流戦車道の後継者だ。

 

「本当に久しぶりだ。この日を凄く待ちわびたぞ。お前なら絶対来ると思っていたしな」

 

「そうですね。出来れば笑顔で言ってほしいんですけど・・・・・怒ってます?」

 

「いやなに・・・・中学の最後のほうから連絡しなかったのを根に持ってるとか、ダージリンのところには遊びに行ったのにこちらには全然来ないとか・・・・別にそんなことを思ってるわけじゃないぞ」

 

思っていたのか・・・

 

「ダージリンから聞いたんですか・・・・」

 

「ああ、この前メールでな・・・・散々煽られたよ。」

 

一体どんなメールだったのか。

 

「まぁ、正直黒森峰には行きづらいですね。立場的にね・・・・許してくれませんか?」

 

「じゃあみほと頻繁にメールをやりとりしてる件について聞かせてもらおうか?」

 

「いや、それは趣味が合うし・・・・ボコ可愛いじゃないですか」

 

「くっ・・・やはり共通の趣味というのは大きいのか・・・」

 

俺とまほの妹のみほの共通の趣味とは、ボコである。

ボコられグマのボコ。一部に人気のキャラクターで俺の妹もハマっている。

毎回毎回ボコられ続けても何度だって立ち上がる姿に俺が感動したのが最初。

みほとはなにかとボコグッズを集めてはそれを見せ合っている。

最近、手作りのボコグッズも作成中だ。

 

「ボコはいいですよー。まぁ、この歳で人形とか退かれますけどね」

 

「いや、別に退かないぞ。私はどんな趣味を持っていても受け止めよう」

 

「あはは・・・ありがとうございます」

 

話していると遠くからこちらに向かって走ってくる人影が見える。

 

「「隊長!」」

 

みほとエリカだった。

 

「あ、みほー。直接会うのは久しぶりだね!」

 

「秋人君!?久しぶりー!」

 

俺はみほと互いの出会いに喜ぶ

 

「ちょっと私達急いでるのよ!」

 

お、エリカか・・・

 

「相変わらずツンツンしてるなー。でもそういうところもエリカらしくて可愛いな!」

 

なんだろう、旧友に会ったからか。

ちょっとテンション上がってるかも。

 

「な、なに言ってるのよバカじゃないの!?さぁ、隊長!こんな男放っておいて行きましょう。時間がありませんよ」

 

「あ、ああ・・・・じゃあな秋人。またそのうちに」

 

「またね秋人君」

 

そして3人が去って行った。

 

 

ちょっと挨拶が長引いてしまったな。

そろそろ第一試合が始まりそうだ。

すると優花里から連絡が来た。

 

「島田殿!良い席確保しました!場所は・・・・」

 

「ああ、すぐ行くよ」

 

俺が連絡を受けて行くと・・・・

 

「あ、いたいた。悪いな待たせてしまった」

 

「いえいえ!さ、ここ座ってください!」

 

俺は優花里の隣に座る。

 

「1回戦は黒森峰対コアラの森学園か・・・・まぁ、黒森峰だろうな」

 

「ジャイアントキリングはありませんか?」

 

「ないな。今年は4強がそれぞれ別れたし恐らく準決勝まで波乱はないと思ってる」

 

「なら、島田殿が注目してる高校は?」

 

注目か・・・・それなら

 

「継続高校だな。隊長が気になった」

 

「継続ですか?中堅校って感じですが・・・・」

 

「実力的には恐らく4強より若干落ちるだろうけど、隊長車だけみれば結構面白いんじゃないかな」

 

試合が始まったが1日目の1回戦は思った通り波乱がなく終わった。

 

「今年は別々の会場で同時開催だったんだな。」

 

「スケジュールの都合みたいですね。2回戦は来月みたいです」

 

来月か・・・・

 

「じゃあ帰るか」

 

「はい!」

 

俺は優花里と一緒に学園艦まで帰る予定だったが母さんからの連絡があり途中で別れて俺は実家にまで帰る。

 

「ただいまー」

 

俺が玄関を開けるとそこにいたのは愛里寿だった。

 

「兄様!お帰りなさい!」

 

俺の腹にダイブする愛里寿。

 

「う・・・・愛里寿いたのか・・・久しぶりだな」

 

「うん!」

 

俺は愛里寿に手を引かれてリビングまで行く。

 

「久しぶりね秋人」

 

「久しぶり母さん。今日は何の用?」

 

「あら、母が子に会うのに理由が必要なの?昔は母さん母さんって常に私から離れなかったのに・・・悲しいわ」

 

「そんなことあったっけ?」

 

ま、小さい頃のことなんてそんなに覚えてないしあったのかもな。

俺はソファーに腰を下ろす。そして愛里寿は俺の膝の上に座る。

 

「今日は高校の全国大会でしょ?秋人なら会場で見てると思って呼んだの。久しぶりに家族と一緒に過ごしたいじゃない」

 

「母さんは隙あらば家族と過ごそうとするよな。俺が家を出てくときもギリギリまで出してくれなかったし・・・・」

 

「当然。家族は一緒がいいわ」

 

その意見は否定しないけどねー・・・・愛里寿可愛いし。

 

「愛里寿は大学はどう?」

 

「えっと・・・頑張ってるよ」

 

ああ、戦車道は順調だけど友達は出来てないって感じか。

年も離れてるししょうがないのか?

 

「そっか。さすが愛里寿だね・・・・」

 

俺は愛里寿の頭を撫でる。

くすぐったいのか嬉しいのか、顔が綻ぶ。

 

「えへへ・・・・にいさまぁ」

 

「本当に愛里寿はお兄ちゃん子ねぇ・・・・母さんもまぜなさい」

 

母さんが俺と愛里寿に抱きつく。

 

「母様重い・・・・」

 

「母さん体重上がった?前より重量が・・・」

 

「失礼な子供たちね!ほら、胸のサイズが大きくなったから・・・秋人触ってみる?」

 

「ノーセンキュー」

 

どこの世界にこの歳で母親の胸に触る息子がいるんだか・・・

 

「私小さい・・・・」

 

愛里寿が自分の胸をペタペタ触る。

 

「愛里寿はこれからよ。私の娘なんだから標準以上にはなるんじゃないかしら?」

 

「おっきくなれば兄様を誘惑できるのに・・・」

 

「残念。もうされてるんだなー」

 

俺は愛里寿を抱きしめる

 

「じゃあちっちゃくてもいい」

 

「兄妹仲が良くて母さん嬉しいわ」

 

割といつもの島田家です。

 

 

「今日は腕によりをかけて母さんがご飯を作るわ!」

 

「「え?」」

 

いつもは家政婦さんの仕事なんだけど・・・・

 

「母さん無理しないほうが・・・」

 

「そうだよ母様・・・・うぷっ」

 

「愛里寿!?くそ、昔の母さんの料理を思い出してしまったか!」

 

あの毒を思い出しちゃダメって言ったのに・・・・

 

「失礼ね!今度は上手くいくわよ。母さんだって日々練習してるんだから!」

 

ぶっちゃけうちの家はお金持ち。

全ての家事は家政婦さんが全て賄ってる。

この家に生まれた母さんも家事なんかしたことがなく・・・・。

そして愛里寿の7歳の誕生日。

何をトチ狂ったのか、料理を作るといいだした。

母の料理は初めて食べるので俺も愛里寿もかなり期待した結果。

 

「初めて救急車乗ったんだよなー・・・・まさか兄妹2人同時に救急車で運ばれるときが来るとは思わなかったっけ・・・」

 

「兄様・・・・・救急車呼んでいたほうがいいかな?」

 

今母さんはキッチンで料理を作っている。

 

「いや、日々練習してると言った。俺は母さんを信用してる・・・・胃薬の準備だけしておこう」

 

「信用した結果が胃薬なんだね」

 

それはしょうがない。

 

「大丈夫。毒見は俺がするから愛里寿に被害はこない」

 

せめて愛里寿だけでも守らねば・・・・

 

「ダメだよ!兄様を1人で逝かせない!」

 

「愛里寿・・・・」

 

愛里寿から強い意志が感じる・・・・少し見ないうちにこんな目をするようになったなんて・・・でも

 

「愛里寿は自慢の妹で愛する妹だ。そんな愛里寿に毒と分かって食べさせられない。気持ちだけ貰っておくよ」

 

「兄様・・・・・」

 

「大好きだよ・・・・愛里寿」

 

「にいさまー!!!」

 

「準備出来たからいつまでも寸劇やってないで運んでちょうだい」

 

「「はーい」」

 

ま、普通に料理では死なないしね。

 

そして出来た料理が・・・・

 

「目玉焼きのせハンバーグ、肉じゃが、鳥の唐揚げ・・・・あまり統一性はないけど見事に俺達の好きなものばっかりだな」

 

俺の好きな物は肉じゃがと唐揚げで愛里寿が好きな物は目玉焼き乗せハンバーグだ。

 

「まず俺が一通り毒見をする。愛里寿は待機」

 

「了解」

 

俺はまずハンバーグから手をつける。

ふむ、ソースはデミグラスソースで上手く肉汁が閉じてあるな。

まずは1口食べる。

 

「に、兄様・・・大丈夫?」

 

俺は反応しめさず次に肉じゃが、唐揚げを食べる。

 

「ど、どう・・・・?」

 

何で母さんが不安がってんだよ味見してないのか?

 

「・・・・美味しいです。花丸です」

 

「本当!?」

 

愛里寿がハンバーグを食べる。

 

「お、美味しいよ!」

 

「だよな」

 

戦車以外出来ない母さんが・・・・

 

「あれからいっぱい練習したんだね・・・・」

 

「母様凄い!」

 

母さんが泣いてる・・・?

 

「母さんどうした!?」

 

「母様どうしたの?悲しいことでもあったの?」

 

「違うのよ・・・・ただやっと母親らしいことしてあげられたなーって・・・・」

 

母さん・・・・

 

「家事が出来なくたって俺達2人にとっては自慢の母さんだし、母親らしいこと?生まれたときから温もりを貰い続けた。それだけでいいんだよ」

 

「うん!兄様の言うとおりだよ!」

 

「秋人・・・・愛里寿・・・・」

 

「さ、食べよう。折角のご馳走が冷めるしね」

 

「ええ・・・・・ありがとう2人とも」

 

 

夕食も食べ終わりお風呂に入った後はリビングで愛里寿と母さんとダラダラする。

 

「兄様って今日は泊まって行くんだよね?」

 

「そうだな。明日の昼過ぎには学園艦に戻るよ」

 

「じゃあ今日は一緒に寝ていい?」

 

「いいぞー」

 

「じゃあ今日は親子3人川の字で寝ましょうか!」

 

「じゃあお布団準備してくるね!」

 

ドタバタと愛里寿が部屋を飛び出す。

 

「まだまだ子供だなー」

 

「12歳だもの。まだ子供よ」

 

それっきり一言も話さずリビングに静寂が広がる。

すると母さんが・・・・

 

「ごめんなさい」

 

「急に何?母親らしいことはさっき「違うの。家のことよ」・・・・」

 

家か・・・

 

「いつか謝らなきゃって思って・・・誰よりも戦車が好きで誰よりも才能がある秋人が後継者になれないのは・・・・」

 

「母さんのせいじゃないだろ。戦車道は女性の嗜みって言われるくらいなんだから・・・確かに小さい頃は何で女に生まれなかった?とか男で戦車乗(笑)って馬鹿にされて悩んでた時期はあったけど・・・・」

 

「・・・・・」

 

俺は母さんに向き合って今の気持ちを言う。

 

「少なくても今の俺は優しい家族と楽しい友人に囲まれて幸せだよ。それに今は周囲に認められてるしねー。だから・・・・男として生んでくれてありがとう。母さんが俺の母さんでよかった」

 

そう言うと母さんが俺を抱きしめる。

 

「秋人・・・・・・・・私も秋人が私の息子でよかったわ」

 

「うん・・・・・」

 

愛里寿が呼びに来るまでこの状態が続いた。

 

 

朝になって俺は学園艦に戻る為準備する。

 

「もういっちゃうの・・・・?」

 

「ごめんね愛里寿。長期休暇の時はもっと居られるからさ・・・・我慢してな?」

 

「うん・・・・」

 

「・・・・そうだ。実はボコの新作グッズ作ってるんだ。完成したら送るな」

 

「本当!?」

 

お、元気出てきたか?

 

「本当。ぬいぐるみとか着ぐるみとか他にも・・・・だから楽しみにしてろよ?」

 

「うん!」

 

よかった。愛里寿は大丈夫・・・・・・で

 

「母さん何か涙脆くない?年か?」

 

「秋人・・・もっと居てくれてもいいわよね?何も朝から行かなくていいじゃない・・・・あと年のことは言わないように」

 

「いやー思い立ったら吉日というか・・・・あんまり長居しすぎると戻りたくなくなるし・・・」

 

心地よすぎるんだよなー

 

「母さんが一生養うから・・・・ずっとニートでいいから家に居てよぉ・・・」

 

「嫌だよ・・・・・もし俺が彼女連れてきたらどうなるんだか・・・・」

 

「え?秋人彼女いるの?」

 

「いや、いないけど・・・・もしもだよ」

 

「そう・・・・よかったわ・・・・・証拠隠滅って面倒なのよね」

 

・・・・聞かなかったことにしよう。

 

「じゃあ準備出来たし行くよ。じゃあな愛里寿。ボコグッズ楽しみにしてろよ」

 

「うん!」

 

「母さんは少しは子離れしといてね」

 

「無理よ」

 

即答かよ・・・・

 

「じゃあいってきまーす」

 

「いってらっしゃい!」

 

「いってらっしゃい・・・・」

 

そして俺は学園艦に戻った。




仲の良い家族って憧れますよね・・・・父親?シラネ
千代さんってあんま喋ってないからよく分からない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

夏。7月

全国大会もベスト4が出揃った。

大方の予想通りの結果で、聖グロリアーナ、黒森峰、サンダース、プラウダの4強で決まった。

聖グロリアーナVS黒森峰

サンダースVSプラウダ

どこが勝ってもおかしくないが、やはり黒森峰が頭一つ跳び抜けてる印象だろう。

 

俺がそんな事考えてると武部に水をかけられた。

 

「も~なにボーっとしてるの?」

 

「暑いんだよ・・・・」

 

「じゃあプールに入ればいいじゃん」

 

俺がいるのは大洗学園のプール。

今は授業中という名の自主時間で各々好きに勝手してる。

 

「今は皆の水着姿鑑賞中だ。邪魔すんな」

 

「エッチ!」

 

また水をかけられる。

 

「あまり女性をジロジロ見るものではありませんよ」

 

五十鈴か・・・・

 

「こればっかりは男の性だししょうがないだろう」

 

「開き直ればいいというわけではありませんよ・・・・そんなに見たいなら私だけ見てください」

 

「華!?」

 

大胆なこと言うなー・・・・

 

「皆さんを狼の目から守る為です。私が犠牲にな「別にいいよー」「島田君なら見られてもいいしねー」「見られたくなかったら隔離してるし!」・・・・皆さんを守る為に私だけ見てください」

 

言い直した・・・・

 

「あー・・・パスで」

 

「パスってなんですか!?」

 

おおう、結構大きい声を出すなぁ・・・

 

「いや・・・だって恥じらいがないし・・・・女の子が顔を赤くなってこっちを意識するからこそ価値があるんだよ。五十鈴の場合はそれがない。だから俺は今回武部を見る」

 

「何でこっち見るの!?」

 

ほら、これだよこれ。

水に浸かって顔を赤くして胸元を隠す。

 

「いい感じの恥じらいだな。分かったか五十鈴よ」

 

「分かりました・・・・こうですか?」

 

「駄目だな。恥じらいがない」

 

ポーズだけマネしたところで・・・・

 

「どうしたらいいんでしょう・・・・」

 

「どうもしなくていいんじゃないか?武部がツッコミ放棄してるせいで止め時が分からなくなったし」

 

「私のせい!?」

 

「沙織さん・・・・」

「武部さん・・・」

「沙織ツッコミ放棄しちゃダメだよ」

「武部がんば!」

 

「ほら、クラス中からも責められて・・・・」

 

ノリの良いクラスメイト達だな。

 

「何でクラス中から責められなきゃいけないのよ!」

 

「知るか。じゃあそろそろ入ろうか五十鈴よ」

 

「はい師匠!」

 

「最近華おかしくない?大丈夫?」

 

大丈夫だろ。多分。

 

 

「プール楽しかったなー」

 

昼休みになり今日は中庭で昼食を食べる。

 

「楽しくないよ!何で私一人が・・・・」

 

ブツブツと不満を言ってるようだけど・・・・

 

「そんなことより昼飯くれ」

 

「そんなこと!?・・・・うぅ、はいこれ」

 

俺は弁当を武部から受け取る。

 

「ありがと」

 

「はい、華。華のは大盛りにしといたよ」

 

「ありがとうございます。」

 

なぜ弁当を作ってもらってきたのか・・・・それは単純に武部の女子力アップの為の練習台の為だ。

俺は弁当を開けて中を見る。

中に入ってたのは種類が沢山のおかずとお米。

見た目も華やかでいい感じだ。

 

「美味そうじゃないか。いや見た目に騙されるな・・・・昔の母さんの料理も見た目は普通だったはずだ・・・」

 

油断は出来ない・・・・くっ!保険に胃薬を持ってくるべきだったか?

 

「何葛藤してるの?ほら食べて食べて!」

 

「・・・・味見はした?」

 

「え?当然じゃん!人に食べさせる為に作るんだから常識でしょ!」

 

俺は確信した。この子絶対料理上手い。

箸を持ってメインのおかずであろう唐揚げを食べる。

 

「美味いよ!時間経ってるのにここまで美味しいとは思わなかったなー」

 

「でしょ!前に唐揚げが好きって聞いたから頑張ったよー」

 

覚えててくれたんだな。ちょっと嬉しいかも。

 

「この煮物も美味しいですね」

 

「えへへ、これで女子力上がるかな?」

 

それは知らない。

 

「でもこれだけ美味しく作れるならいつか彼氏出来たときは胃袋ゲットできるかもよ?毎日食べたいって思うし」

 

「「え・・・・」」

 

ん?俺なにか変なこと言ったっけ?

 

「えっと・・・・秋人は毎日食べたいの?」

 

「だってこんなに美味しく唐揚げ作れるんだよ。毎日だって食べたいさ」

 

「(プ、プロポーズだよね!?華もいるのに・・・やだ~もー)それならそうと言ってくれればいいのに~」

 

ん?何で恋愛脳モードに入ってんだ?

 

「あ、秋人さん・・・・それプロポーズですか?」

 

「は?何で?」

 

「え?だって毎日食べたいって・・・・」

 

もしかして・・・・毎日食べたい=毎日一緒にいてくれって誤認させた?

味噌汁を唐揚げに置き換えたバージョン?

 

「ごめん、単純に唐揚げ毎日食べたいぜ!ってことしか考えてなかった。プロポーズのつもりは1㎜もなかった」

 

「1㎜も・・・それはそれで可哀想にみえます」

 

しかしどうするか・・・

 

「ねー秋人はどこで式をあげたい?私は教会でも神社でもいいけど・・・そういえばいい加減苗字で呼ぶのやめてよ~私達夫婦になるんだよ~」

 

「・・・・・五十鈴さん助けてください」

 

「ご自分で蒔いた種なので・・・・・あ、私もいい加減名前で呼んでくださいね」

 

どうしよう・・・・

 

「あー・・・・沙織」

 

「なに?ダーリン♪」

 

えーダーリンって・・・・

 

「・・・・誤解だ」

 

「え?」

 

「あれは言葉通り唐揚げ毎日食べたいってことでプロポーズじゃない・・・・というかおかしいと思え。何で告白吹っ飛ばしてプロポーズなんだよ」

 

時間が止まった。

 

「誤解?」

 

「ああ。正直申し訳ないと思ってる」

 

ああ、自分の奇行思い出して顔が赤くなってる・・・

 

「イヤー!!!!恥ずかしい・・・・恥ずかしい・・・・」

 

orzみたいになってる。

 

「大丈夫だ沙織。お前の奇行は生涯覚えると誓おう」

 

「誓わないでよ!忘れてよー!」

 

「沙織さん・・・・」

 

お、華が慰めに入るか。

 

「私もバッチリ覚えていますよ」

 

止めを刺した。

 

「やっぱり変わったよ!昔の華なら慰めてくれたもん!」

 

「あらあら・・・・私は変わっていませんよ。成長したんです」

 

「悪い意味でね!秋人のせいだー!華が変わったの秋人のせい!」

 

「私関係ありません」

 

「あるよー!もうやだ~・・・・」

 

うーん・・・どうすれば・・・

 

「沙織。気にするな・・・・・お前の暴走は持病だって思うからさ」

 

「持病じゃないもん!フォロー下手すぎ!」

 

・・・・いい加減面倒になってきたな。そろそろ戻るか。

 

「華、そろそろ戻るか」

 

「あらら、放っておいていいんですか?」

 

「え?」

 

沙織がこっちを見る。

 

「いいよ。沙織なら直に回復するさ。1人で落ち着いたら戻ってくるだろう。俺達の友人はずっと落ち込む程弱くないしな」

 

「・・・・そうですね。沙織さん、落ち着いたら教室に戻ってきてくださいね」

 

俺は華と教室に戻る。

 

 

沙織sideout

 

置いてかれちゃった・・・・

 

「秋人・・・・」

 

私は秋人と初めて会った頃を思い出す。

ただ1人のクラスの男子で女子に人気で勉強が出来て顔も良くて・・・・だから教室では誰も声をかけなかった。高嶺の花?って感じで。

始めて会話したのは食堂で。華の食べる量が多かったから気になって向こうから声をかけてきた。女子に対して失礼じゃない?って思った。だからつい言ってしまった。

 

「少し女子に人気だからって何を言ってもいいと思ってるの!」

 

そうしたら秋人は「え?何が?」だもんね。自分が女子に人気なのも知らないしデリカシーが欠けてるし少し可愛いと思ってしまった。

それから秋人と話すようになった・・・

私が恋愛恋愛煩くても話には付き合ってくれるし優しいとこもあるのは分かってる。少しイジワルだけどそれも仲が良いからこその証拠だと思う。

いつからだろう・・・・秋人を意識するようになったのは・・・・

特に特別な切っ掛けはない。けど、そういうものだと思う。

映画やドラマじゃないんだから人を意識するのに切っ掛けなんてそうそうないかもしれない・・・・だから今回のことは正直嬉しかった。

 

「毎日食べたいか・・・・・」

 

それも勘違いで暴走して恥かいて・・・・・

 

「あー・・・好き・・・なのかなぁ?」

 

よく分からない。彼氏は欲しいしモテたいと思ってる。

でもこれが恋愛感情なのかなぁ・・・・

 

「彼氏いたことないしね・・・・」

 

分からないし様子を見よう。

大丈夫。まだまだ時間はいっぱいあるしね!

 

「さて、戻ろうかな」

 

私が教室に戻ると華と秋人が1枚の紙を持って唸っている。

どうしたんだろう?

 

「2人ともどうしたの?」

 

秋人が無言で紙を渡してくる。

 

「ん?なになに・・・・『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』これは・・・・」

 

まさか・・・・

 

 

沙織sideout

 

 

俺と華が教室に戻るとクラスが騒がしい

 

「どうした?何かあったのか?」

 

適当にクラスにいる女子に聞いてみた。

 

「え?・・・ううんなにもないよ?」

 

本当に何があったんだ?

 

「華と戻って来たよ」

「じゃあ本命は五十鈴さんなの?」

「ていうかこれ信憑性あるのかな?」

「新聞部だしなー・・・・」

 

集まって一枚の紙を見てる?

俺は彼女たちに近づいて紙をひったくる。

 

「「「「あ」」」」

 

「悪いが見せてもらうよ」

 

俺が見たのはまたしてもゴシップ記事だった。

 

「なんて書いてあるんですか?」

 

華が俺に聞いてくる。

 

「『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』多分中庭でのやり取りで勘違いしたんだろうな・・・・」

 

「まぁ・・・・」

 

副会長との噂が沈静化したと思ったらこれだよ・・・・

 

「しかもこれによると俺が沙織を捨てて華を選んだって書いてあるな」

 

「ああ、あの場面ですか・・・・」

 

俺が沙織を置いてきたのが仇になった・・・・というか、これをあの短時間で新聞にして学園中にバラまいたのか?やってることはアレだが能力高いなぁ・・・・

 

「どうしましょう?」

 

「別にどうもしないさ・・・・・ただ、お前らに迷惑がかかるなら話は別だけどな」

 

その時は容赦しない。

 

「私は別に・・・ただこれ沙織さんが見たら・・・・」

 

うーん・・・・

 

「どうしたのー?」

 

ちょうどよく戻って来たか・・・・

まぁ、とりあえず見せてみるか。

 

「ん?なになに・・・・『例の1年男子!三角関係!?今度の相手は同級生だ!』これは・・・・」

 

「沙織の思った通り新聞部だ。お前のorzの姿のまま俺と華が去ったから妙に信憑性があるのがタチ悪い」

 

「晒し者になっちゃうの?」

 

んー・・・・

 

「恐らく2年以上ならあんまり信じないだろう。慣れてるから。同じ1年なら信じても・・・・しょうがないかもな」

 

「えー・・・・うちのクラスは?」

 

俺は周りを見てみると・・・

 

「普通に話してるね?」

「険悪ってことはなさそう・・・」

「やっぱデタラメか」

「だと思ったー。あの3人仲良いしねー」

 

「問題なさそうだな。早く噂を無くすなら常に3人でいれば・・・・」

 

「うん。消えそうだね」

 

「なら、いつも通りで大丈夫そうですね」

 

そう思っていた数日後。

 

『例の1年生が公認二股!?お相手は振られたハズのあの子と残ったあの子!』

 

・・・・もう好きにしてくれ。

そう思い俺達は新聞部のやることを気にしなくなった。




今日は終了


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

新年明けましておめでとうございます~


「ねえ、島田君そろそろ生徒会に入らない?」

 

放課後。俺は今生徒会でお茶を飲んで勧誘されてる。

 

「そうですね・・・・まぁ構いませんよ。新聞部のゴシップ記事は気にしないことにしますし」

 

「そういえばあの記事って・・・・」

 

柚子先輩がおずおずと聞いてくる。

 

「デタラメですよ」

 

「そ、そっか。・・・・よかった」

 

柚子先輩が安堵してる。関係ないのに心配してくれたんだな。

優しい先輩だ。

 

「なら、正式に生徒会に所属するってことでいいんだな?」

 

河嶋先輩が聞いてくる。

 

「ええ。よろしくお願いします」

 

「なら、今から島田君は副会長ねー。男子代表として扱うつもりだからよろしくー」

 

「分かりました」

 

そして俺の前に書類の束が置かれる。

 

「なら早速で悪いが書類の整理を手伝ってくれ。出来れば夏休み前に仕事は終わらせたいからな」

 

「分かりました」

 

俺は鹿島先輩に教わりながら仕事を熟していく。

ある程度時間が経った時に柚子先輩がコーヒーをいれてくれた。

 

「はい、コーヒー。初日だし無理しなくていいよ?」

 

「大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」

 

俺はコーヒーを飲みながら作業を続ける。

 

 

作業が終わったので帰宅しようとするが・・・・

 

「あーちょっと待って島田君」

 

「どうしたんです?会長」

 

「今からうちで島田君の歓迎会したいんだけどどう?予定あるなら別の日にするけど」

 

歓迎会か・・・・

 

「大丈夫ですよ」

 

「よかった。じゃあ食材買って帰ろうか」

 

そして俺と生徒会のメンバーで途中食材を買って会長の家に行く。

 

 

「会長って料理出来たんですね」

 

会長がキッチンで料理を作ってる間俺達はリビングで待つ。

 

「当然だ。会長に出来ないことなんてない」

 

「会長料理上手いんだよ~」

 

へーそういうイメージは無かったから少し意外かも。

 

「出来たよー」

 

会長が鍋を持ってこちらに来る。

 

「では、皆飲み物持ってー」

 

会長に言われて俺達は飲み物を持つ。

 

「新しい生徒会メンバーに乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

これは何の鍋だ?

 

「これはあんこう鍋だよ~あんこうは大洗の名産品だからね」

 

食べてみるけど中々美味しいな。

新鮮なあんこうを使ってるんだろう。

 

「折角の会長の鍋だ。味わって食え」

 

そして各人が話ながら鍋を食べたりジュースを飲んだり・・・

 

「会長って料理上手いんですね」

 

「一応言っておくけど鍋以外も出来るからねー。ただ今回は是非あんこう鍋を食べてほしかったし・・・・島田君は料理できるの?」

 

「出来ません」

 

実家じゃ家事は全て家政婦さんがやってくれたし。

裁縫とかは出来るけどな。

 

「そうなの?何でも出来るイメージがあったけどそうでもなかったんだね。いつも何食べてんの?」

 

「コンビニとか弁当屋とか出前とか外食ですね。作れなくても問題ないですよ」

 

「それじゃあ栄養が偏ってしまうよ。そうだ!今度小山にでも作らせに行こうか?」

 

「会長!?」

 

「いや、それは小山先輩に迷惑でしょうし・・・・小山先輩も気にしなくていいですよ」

 

「あ、うん・・・」

 

優しい小山先輩だし気にしてくれてるのかな?

 

「そかそか。じゃあいい機会だし他にも聞いてみていい?」

 

「ええ。答えられる類であれば・・・」

 

「じゃあ待ってねー・・・・普通にやっても面白くないしこれ使おうか」

 

取り出したのは・・・・サイコロ?

 

「出目によって質問するよー。じゃあまず質問内容を事前に書いてっと・・・・じゃあ早速始めようか」

 

会長がサイコロを投げて出たのは3。

 

「3かー・・・・・『今まで付き合った人数は?』だって」

 

「すみません0です」

 

「そうなんだ!へー・・・・」

 

あれ?小山先輩が嬉しそうだけど何で?

 

「にしても0かー・・・・ちょっと意外だねー」

 

「なんでしょうね。友達止まりみたいな感じじゃないですか?義理チョコとかは貰えるんですけどその程度です」

 

「(ホントに義理チョコなのかなー?」

「(恐らく気づかないだけなのでは?)」

「(多分そうなんじゃないでしょうか?)」

 

ヒソヒソ話されると気になるな・・・・

 

「じゃあ次は河嶋振ってー」

 

「私ですか?」

 

「皆1回ずつ振ってもらうよー」

 

「そうですか・・・・では」

 

次の出目は5

 

「えっと・・・『大洗に来た理由』ですか?会長にしては抽象的ですね」

 

「正確には何でうちの学園を志望した理由だよー」

 

ふむ・・・・

 

「大した理由はありませんよ。高校はどこでもよかったのでダーツで決めました」

 

嘘だけど

 

「ふーんじゃあそういうことにしておくよ。最後に小山!」

 

「は、はい!・・・・ではいきます」

 

出た目は1。

 

「これが最後の質問かー『生徒会に入ってよかった?』だってさ」

 

「そんなのまだ分かりませんよ。でも退屈はしないと思ってます」

 

「そっかそっか!」

 

 

 

俺が生徒会に入っていくらか経った。

期末テストも無事に終わって明日から夏休みに入ろうとしている。

 

「終わったー!」

 

「なんとか無事に乗り越えたな・・・」

 

俺達は今掲示板の前にいる。

なんでもこの学校では成績と順位が貼り出されるみたいだ。

 

「私84位!」

 

沙織は中間くらいか

 

「私は19位ですね」

 

華は上位か

 

「俺は2位か」

 

トップは満点か。凄いな。

 

「え!秋人そんなに成績いいの!?」

 

沙織に驚かれたが、そんなに以外か?

 

「凄いですね~」

 

「でもトップには勝てる気しないな」

 

「満点ですものね。でも4点差じゃないですか」

 

トップの名前は冷泉麻子か。名前的に女子っぽいな。

 

「やっぱりトップは麻子か~」

 

うん?

 

「沙織ってトップのやつと知り合いなんだ」

 

「知り合いっていうか小さい頃からの幼なじみ。今度機会があったら紹介するね」

 

ちょっと気になるけど、そのうち紹介してくれるならその時を待つか。

俺達は教室に戻って席につく。

 

「ねぇ。夏休みどうする?」

 

沙織が俺と華に聞いてくる。

 

「私は実家に戻りますね。夏休みが半分くらいになったら戻りますが・・・」

 

「俺も華と似たようなもんだな。色々行くとこあるし戻るのは華より遅いけど」

 

「そっかー。やっぱり皆そうだよね・・・・どこかに遊びに行きたかったんだけどなー」

 

「なるべく早く戻れるようにするさ」

 

多分だけど。

 

「絶対だよ!」

 

「私もなるべくそうしますね。家の都合にもよりますが・・・・」

 

そして夏休みが始まる。

 

 

「兄様お帰り!」

 

俺は実家に帰り愛里寿からの腹ダイブを喰らう。

 

「げふ!・・・・ただいま愛里寿。俺があげたボコグッズ大事にしてるみたいだな」

 

「うん!毎日着けてるよ!」

 

俺が送ったボコグッズ「髪留めVer」を愛里寿は毎日着けてくれるらしい。

愛里寿に手を引かれ中に入ると誰もいなかった。

 

「あれ?母さんは?」

 

「母様は仕事だよ。今は私と早苗さん(家政婦)だけ」

 

母さんは忙しい人だししょうがないか・・・

 

「あら、秋人様・・・・お帰りなさいませ。長旅ご苦労さまです。お茶の準備をしてるのでリビングにどうぞ。お荷物は私が・・・・」

 

「ああ、早苗さん久しぶり。いつもいつもありがとう」

 

この人は家政婦の早苗さん。年齢不詳。俺が生まれる前から島田家で家政婦をしてくれている。物静かで温厚で優しくて・・・・母さんに意見を言える数少ない人だ。

 

「仕事でもあるし私自身やりたいことですから・・・・愛里寿様もどうぞ。ボコの形をしたゼリーを用意してますよ」

 

「ボコ!?」

 

愛里寿は駆け足でリビングに向かった。

 

「秋人様の分も用意してますよ」

 

「ボコですか?嬉しいけど普通で良かったんだけどね・・・・」

 

「あらら。昔は今の愛里寿様のように真っ先に駆け出してたのに・・・・成長されたのですね」

 

「そこで成長実感するの!?」

 

「ふふ、冗談です」

 

意外とこういうお茶目なことを言う。

俺としては家族となんら遜色ないし・・・・別にいいんだけどな。

 

「じゃあ俺も行くかな」

 

「お荷物は部屋に置いておきます。御用のあるときはベルを鳴らしてください」

 

「了解」

 

俺がリビングに行くと愛里寿がソファーに座って待っていた。

 

「兄様おそーい」

 

「悪い悪い」

 

愛里寿が膨れっ面で俺に文句を言う。

それを適当に謝り俺も隣に座る。

 

「思った以上にボコだな。相変わらずのクオリティ」

 

「早苗さんだもん」

 

俺達はボコ型ゼリーを食べる。

最初に作ったときはあまりの勿体なさに中々食べられなかったっけ・・・

 

「味も相変わらずだ・・・・愛里寿大学の方どう?」

 

「友達は出来ないけど・・・・仲間は出来た」

 

ああ。戦車道か・・・

 

「そういえば大学選抜の隊長だっけ?凄いな。経った3ヶ月で選抜の隊長とか・・・」

 

普通ならあり得ないレベルだけど愛里寿なら納得も出来る。

 

「凄いか分からないけど・・・・頑張りたいな」

 

俺は愛里寿の頭に手を乗せて撫でる。

 

「愛里寿は充分頑張ってるよー」

 

「ううん・・・・・兄様みたいに強くなりたいもん」

 

俺みたいにか・・・・

 

「ま、今は戦車道の事は忘れて・・・・・存分に遊ぼうか!」

 

「うん!」

 

食べ終わった食器はそのままに俺は愛里寿と庭でボコゴッコを始める。

ボコゴッコとは愛里寿がボコの着ぐるみ(手作り)を着て俺が敵役の着ぐるみ(手作り)を着て行うゴッコ遊びだ。

友人には絶対見られたくない家庭の遊びの1つでもある。

ついでに言うとボコの素材には衝撃吸収材を使ってる為結構力を入れて殴ったり蹴ったりしても衝撃を無にする。

以前に俺が愛里寿に手を上げたと勘違いした母さんに本気でブチ切れられたのは記憶に新しい。

 

遊びから1時間。夕方に差し掛かる。

 

「・・・・愛里寿。そろそろやめないか?」

 

「・・・・・うん」

 

俺達は着ぐるみを脱いで新鮮な空気を吸う。

 

「暑すぎだろ!夏場にやる遊びじゃないって!」

 

「戦車の中よりも暑い・・・・」

 

夏場にやるのは始めてだけどこれはヤバイ。

夕方で少しは気温も下がってるのにな・・・・

 

「汗でシャツがベトベトだ・・・・風呂入るか。愛里寿先いいよー」

 

「兄様もベトベトだから2人で入ろうよ!」

 

んー愛里寿の年齢で兄と一緒に入るのはどうなんだろう?

まぁ、まだ大丈夫だよな。

 

「じゃあ先行っといて。着ぐるみ片してから行くからさ」

 

「はーい」

 

そうして俺は着ぐるみを片づけて風呂場に向かう。

うちの風呂は広い。無駄に広い。普通に銭湯レベルの広さがある。

本当はそこまで広くなかったが母さんが風呂好きで改築してしまった。

それに合わせて脱衣所も無駄に広くなってしまった。

毎日早苗さんが1人で掃除してお湯を入れて・・・・他にも雇えば負担が少なくなるのに「早苗1人いれば100人分よ。マジで」って言って雇おうとしないし・・・

 

「本当に早苗さんには頭が上がらない・・・・・」

 

脱衣所に着いた俺は脱ぎながらそんなことを考えていた。

 

 

風呂の扉を開けると愛里寿が風呂に浸かっていた。

 

「兄様遅い」

 

「ごめんな。今頭と身体洗ったらそっち行くからさ」

 

俺がシャワーの前に座ると後ろから愛里寿が近づいてきた。

 

「兄様。私が洗ってあげる」

 

「愛里寿に洗ってもらうのは久しぶりだな。じゃあ頼むわ」

 

最初は髪。そして次は身体。愛里寿の好きなように洗われると・・・・

 

「兄様。前も洗いたい」

 

前か・・・・・さすがにないな。

 

「悪いな。前は自分でやる」

 

「何で?」

 

愛里寿って12歳だっけ・・・・妹に性教育とか嫌だし後で早苗さんか母さんに頼んどこう。

 

「自分で洗いたくなったからだよ」

 

俺はスポンジを愛里寿から取り上げて前の方を洗う。

それをジっと見ていた愛里寿がポツリと零す・・・

 

「・・・・・私じゃ気持ち良くなかったのかな・・・・?」

 

そのセリフを聞いた俺はすぐさま行動を起こした。

 

「やっぱり愛里寿がしてくれたほうが気持ちいいな!愛里寿がよければ上半身は愛里寿がやってくれないか?」

 

「うん!」

 

「下半身はやったからお腹や胸よろしねー」

 

タオルをかけて俺の膝に乗って頑張って洗っている。

さすがに愛里寿じゃ反応しないよな?

一応意識を別方向に・・・・

 

「ふぅ・・・・兄様。終わったよ」

 

「ありがとう、じゃあ流して入ろうか」

 

ちょっと焦ったけど無事に終わってよかった。

 

 

風呂に入った後はいつものように愛里寿とテレビを見てる。

すると玄関から音がした。

 

「ただいまー。秋人お帰りなさい。ごめんなさいね。本当は休みだったんだけど急用が入っちゃって・・・・」

 

「ああ、いいよー」

 

「母様。おかえりなさい」

 

「お帰りなさいませ。千代様」

 

早苗さんが母さんから荷物を受け取る。

 

「ただいま。夕飯は食べてきたからいらないわ」

 

「分かりました」

 

そして荷物を置きに部屋を出る。

母さんはそのまま俺と愛里寿によっかかる。

 

「あきとーありすー」

 

どうやら子離れは出来て無さそうだ。

 

「お疲れさん。何かあったの?」

 

「なにもー。そうだ!秋人には明日愛里寿の練習に行ってもらっていい?」

 

母さんが思い出したように俺に言う。

 

「愛里寿の?」

 

どっちだろ。大学選抜のほうかな?

 

「大学選抜のね。島田兄妹対大学選抜っていうのを見てみたいらしいけど・・・・どうかしら?」

 

ふむ・・・・・・俺は愛里寿のほうを見る。

 

「兄様と戦車・・・・・久しぶり。すっごい楽しみ」

 

「OKだ」

 

愛里寿がすごい乗り気だしな。

 

「じゃあ早速連絡しておくわね」

 

そうして母さんが電話をかける。

 

「兄様!兄様!」

 

愛里寿が俺の腹に顔を埋めてくる。

ここまでテンション高いのってボコグッズを初めて買ったとき以来じゃないか?

 

「どうした?そんなに楽しみか?」

 

「うん!兄様と一緒に戦車できるもん!」

 

そこまでテンション高くて大丈夫かな?

そして俺達は明日の為に早く寝た。

 

 

明日になり練習場に行くと、そこには既に大体揃っていた。

 

「おはよう。みんな」

 

愛里寿が挨拶するとメンバーも一斉に挨拶を返す。

 

「その横の人が隊長のお兄様ですか?」

 

隊員の1人が手を挙げて聞いてくる。

 

「そうだ。兄様に粗相したら絶対に許さないから」

 

愛里寿がクールだな。

大方、島田流として舐められないようにだろう。

愛里寿は基本家では甘えん坊だけど戦車道では違う。

 

「へーやっぱり似てるね」

「隊長を男にして成長した感じ?」

「髪の毛が男にしては長い方だけどイケメンだ!」

「DK!DK!DK!」

「ドンキーコング?」

「男子高校生よ!」

 

カオスだ。

あれ?でも見たことあるような人がチラホラ・・・・

 

「静かに!今から兄様の紹介を行う」

 

愛里寿の一喝で場が静まる。

やっぱり隊長だけあるな。

じゃあ挨拶しますか・・・・

 

「島田秋人です。今日は皆様と戦車を乗れるのを楽しみにしてました。若輩者ですがよろしくお願いします」

 

ちょっと硬かったか?

そう思ってるとパチパチ手が鳴る音が聞こえる。

愛里寿が一歩前に出る。

 

「では早速練習試合を始める。2両対20両の殲滅戦だ」

 

え?その差で殲滅戦?

場が騒ぎ始める。

 

「あー・・・・・愛里寿本気で言ってる?」

 

「うん。兄様なら1対20でも余裕だけど私も一緒に戦いたいから・・・・・ダメ?」

 

ミハエル・ヴィットマンじゃないし余裕じゃないよ!なんか愛里寿の俺に対する期待値が異常なくらい上がってないかな!?

でも・・・・・妹に期待されたんじゃやるしかないか。

 

「じゃあ早速準備を始めようか」

 

俺の発言でさらにざわつく。

 

「あ、あのー・・・・」

 

「えっと・・・・」

 

俺がメガネの人に話しかけられる。

 

「ルミです。中隊長やっています。実は初めましてじゃないんですけど・・・・覚えています?」

 

やっぱりそうか・・・・

 

「2年前の高校選抜の・・・・確かあの人とあの人もそうですよね」

 

「はい。アズミ!メグミ!」

 

その二人も来る。

 

「覚えられてるとは思いませんでした。改めてメグミです」

 

「アズミでーす」

 

「よろしくです。あ、俺に敬語なんて不要ですよ」

 

「いやーそう?悪いねー」

 

「ちょっとルミ!」

 

メグミが嗜める。

 

「愛里寿隊長に怒られるわよ!」

 

愛里寿は今戦車の準備をしてここにはいない。

 

「アイツが何言ってるか分かりませんが、マズイようなら愛里寿がいないときだけでも・・・・ダメですか?」

 

その瞬間3人が輪になる。

 

「なにこの可愛さ?」

「さすが愛里寿隊長のお兄様ね」

「2年前は悔しさとかえげつなさが印象に残ってたけど・・・・これは」

 

「あのー・・・」

 

俺が声をかけると3人が振り向く。

 

「・・・・えっと、そうだ!2両対20両って無茶だと思わない!?」

 

メグミさんが俺に聞いてくる。

 

「まぁ、そうですね。でも・・・・・勝算は0じゃないので」

 

3人の雰囲気が変わったな。

 

「そう・・・・じゃあこっちも作戦会議するから」

 

アズミさんがそう言って3人とも離れて行く。

どうやら真面目にする気が起きたようで・・・・

 

 

アズミside

 

 

私達3人が戻ると他の隊員たちはダレていた。

 

「あ、おかえりー・・・どうしたの?随分真剣に見えるけど」

 

私たちの目が真剣な目になってるのを他の隊員が気づいてそれに指摘した。

 

「全員聞いて」

 

ルミが真剣になってるので他の隊員も大人しく聞く姿勢を示す。

こういうところはちゃんとするのね・・・

 

「私達から1つだけ・・・・決して油断はしないこと」

 

「は?愛里寿隊長が凄いのは知ってるけど・・・・例えば同じくらい秋人君が凄くてもいくらなんでも無茶でしょ」

 

そう無茶だ。本来なら・・・・・

 

「そうね。でも相手はその無茶を可能にしたことがある人間よ」

 

メグミがそう言うと隊員たちにも思い当たる節があったのか・・・

 

「もしかして2年前の?秋人君が有名になった切っ掛けになった・・・」

 

2年前。中学選抜対高校選抜の試合。

勝率がほぼ0に等しい状況で高校選抜が負けたのは当時ニュースにまでなった。

私達はあの時負けるわけないと思ったけど・・・

 

「でも今回はさすがに・・・・作戦も何もないんじゃ・・・・」

 

1人の隊員がそう言う。

いくら秋人君が戦略に長けててもこっちが数で押し込めば何もできないハズだと思ってる。それもしょうがないけど

 

「でも私達は戦車の乗った秋人君の実力は知らない・・・・・・けど、前に隊長が言っていたわ。『兄様は既に母様を超えている』と・・・・」

 

隊員たちに激震が走った。それも当然だ。

大学選抜強化チームの役員である島田流家元の指導はここにいる皆が受けたこともあるから実力も知っている。

 

「まさか・・・・・愛里寿隊長の身内びいきでは?」

 

「戦車道に関しては愛里寿隊長は一切贔屓しないわ」

 

私がそう断言する。なにより中隊長3人はさっきの秋人の目について思う。

 

「(あの目。全く負ける可能性を考えていなかった・・・・)」

 

「(絶対的な自信。家元と練習試合をしたときも感じたあの悪寒・・・・)」

 

「(少なくても本気でいかなきゃやられるわね・・・・・)」

 

私は言う。

 

「とにかく油断はしないこと。この状態で負けたら家元のメニューがさらに厳しくなるわよ」

 

地獄のメニューと聞いて隊員たちもやる気が出たのか。

本気で作戦会議を始めた。

 

 

アズミsideout

 

 

さて、勝率は0じゃないと言ったけど・・・・

相手は母さんの指導を受けたこともある強者なのは間違いない。

俺は用意された戦車の上で地図とにらめっこする。

 

「愛里寿は何かある?」

 

隣の戦車の上でボコ人形で遊んでる愛里寿に話しかける。

 

「なにも。兄様がいれば全て上手くいく」

 

愛里寿は本気でそう思ってるのかそのままボコ人形で遊ぶ。

 

「策は全部俺任せ?隊長はお前じゃないの?」

 

「兄様がいるなら1隊員として扱って。本当の凄さを私だけじゃなくて皆にも見せてほしい」

 

はぁ・・・・なら集中するか・・・

俺を思考をクリアにして考える。

この感覚。久しぶりだな・・・・

 

「愛里寿・・・・・俺に任せるなら俺の言うことを聞けよ」

 

「もちろん。久しぶりだなぁ・・・本当に久しぶり・・・戦車に乗ってる兄様。凄いカッコイイ」

 

愛里寿が何か言ってるが全て無視する。

作戦は・・・・・・ない。必要ない。愛里寿が俺の要求に答えられるだけの実力があるなら面倒な作戦はいらない。

 

「作戦出来た?」

 

「策なんて必要ない。お前がその場その場で俺の要求に答えられるなら・・・・・特別な作戦は必要ないと判断した。」

 

「うん。大丈夫だよ。どんな相手だって兄様がいれば・・・・」

 

そして試合が始まる。

 

 

アズミside

 

これはなに?私は目の前の光景が信じられなかった。

味方の戦車20両が秋人君と愛里寿隊長に蹂躙される。

 

「たった2両になにしてるの!」

 

味方の隊員が叫ぶがこれは・・・・・

 

「無理です!動きが不規則だし・・・・捉えられません!」

 

「それに打ったら仲間に当たってしまう恐れが・・・・」

 

そうだ。試合開始早々こっちに向かって2両とも全速前進してきた。

一気に蜂の巣にしてしまおうと思ったけど、こっちの攻撃は一切被弾しなかった。

20両だ。そんなのあり得ない。けど実現されてしまった。

こっちに来たら後は大混乱。下手に打つと仲間がやられるから中々打てないし打っても躱される。既に半分もやられた。

 

「全車後退!」

 

私は全車に後退の指示を出す。

まずは落ち着く必要があったから。

 

「逃がさない」

 

そんな声が後ろから聞こえた気がした。

まさか・・・・・そんな・・・・・。

 

 

アズミsideout

 

 

ちっ、間一髪で逃げられたか・・・

 

「残りは5両。どうするか・・・・」

 

しかし問題はない。

 

「兄様どうする?」

 

「あの中隊長3人の特徴は?」

 

「えっと・・・・バミューダアタックっていう三両一体の技があるよ」

 

なるほど、要は連携技か・・・

 

「じゃあそれ誘ってみるか」

 

「いいの?凄い息の合いようで結構面倒だよ」

 

「いいさ。見てみたいしな」

 

ここで待機してれば痺れを切らしてくるだろう。

少し経つと2両が突っ込んできた。

 

「痺れを切らしたのは他か・・・・愛里寿。1人で相手しろ」

 

「了解」

 

あれなら愛里寿1人で問題はないだろう。

俺は・・・・・

 

「後ろから来てるのはバレバレだ」

 

俺が振り向くと後ろから3両迫る。

 

「バレた!?」

 

「問題ないよ」

 

「私達のバミューダアタックは1人じゃ回避できない!」

 

良い動きだ。日々研鑽を積んでるのが分かる。

 

「なら1人で回避してみせよう」

 

俺は連携技を回避していく。

 

「なんで・・・・」

 

「当たらないの・・・・」

 

ある程度見たな。なら次はこっちから攻めようか。

 

「面白いものを見せてもらったよ」

 

そう言って俺は2両撃破する。

 

「メグミ!ルミ!」

 

2人を心配する声が聞こえる。

 

「兄様!」

 

どうやら愛里寿のほうも終わったみたいだな。

 

「・・・・・降参ですね。参りました」

 

アズミが白旗を上げる。

そして勝負がついた。

 

 

俺達は皆が集まってるところに集合する。

 

「全員揃ったな。では、兄様お願いします」

 

そうして俺は前に出る。

 

「まず判断が遅い。あと何だかんだで油断してたやついたろ。相手が誰であれ油断するな。それと相手は2両だけなんだからまともにやるわけないだろう。もっと疑え。頭を使ってくれ。質問は?」

 

手を挙げるのはメグミ。

 

「あの20両の砲撃の嵐をどう突破したんですか?」

 

「こっちに向ける砲身の角度、速度、タイミング、地形、距離、風向き、風速。そこら辺計算すれば避けれる」

 

「えっと・・・・・計算?」

 

「計算だ。瞬時に割り出すのは安全な場所。だからそこにいれば当たらない。数が多いからって適当に打つな。ちゃんと狙え」

 

「いやいや無理ですって!あの一瞬で計算!?」

 

「兄様なら簡単だ。頭の回転は誰にも負けない」

 

いや簡単じゃない。普通に頭痛くなる。

隊員たちの目がキラキラする。こいつら脳筋か?

 

「じゃあ次。私ルミの質問です。20両の中に突撃したのは相打ちを狙って?それともこっちが打てないことを狙って?」

 

「両方だ。どっちにしろあの状態で中に入ればこっちの勝ち確が決まったようなものだ。実際15両撃破したしな」

 

「じゃあ、あの中で被弾が4発なのは?」

 

「あの距離感なら見なくても敵味方全ての動きを把握できる。ぶっちゃけ見なくても当たらない。当たったのは当たったほうがよかったから当たっただけだ」

 

「それって・・・・」

 

「避けた先が危ないから。当たったほうがマシって話だ。ついでに計算では3発だが、俺の指示がミスって4発になった。ごめんな愛里寿」

 

「いえ、大丈夫です」

 

正直頭割れるくらい脳を行使しすぎた。

 

「他に質問がないなら打ち切るぞ」

 

どうやら無いみたいだ。

 

「じゃあ今日の練習は終わり・・・・らしい。お疲れさまでした。あとタメ口すみませんでした」

 

『お疲れさまでした!大丈夫です!』

 

心が広いなぁ・・・・

練習が終わって俺は片づけの手伝いをする。

 

「兄様。一緒に遊びたい」

 

「こら愛里寿。隊長でもちゃんと手伝いな」

 

練習が終わった愛里寿が俺にじゃれ付く。

じゃれ付かれるのは嬉しいけど他の隊員に示しが・・・・

 

「は~島田兄妹いいわ~」

「超癒される」

「隊長の甘えてる姿超可愛い~」

「秋人君の嬉しいけど困ったような顔もいい!」

「誰かー!写真写真!!」

 

大丈夫そうだな。うん。

恐らくこれからマスコット的扱いを受けるけど、多分嫌われることはないだろう。

 

「秋人君お疲れさま」

 

「ああ、アズミさん。今日はどうもでした」

 

「こっちは負けたけど良い経験にはなったわ。色々ありがとう」

 

「いえこちらこそ。また機会があればお願いしてもいいですか?基本戦車に乗れる機会ってあんまなくて・・・・」

 

「もちろん!うちのとこはみんな大歓迎よ」

 

「よかった。あ、これからも愛里寿のことよろしくお願いします」

 

「ええ、隊長はみんなに愛されてるし心配もいらないわ。それより・・・・」

 

アズミさんの顔が近づいてくる。

 

「ど、どうしたんですか・・・・?」

 

「いえ、戦車に乗ってる時は容赦ないのに・・・・降りたときと違うんだなぁって。うん!やっぱりいいわ!」

 

「ふがっ!」

 

アズミさんの胸に抱きしめられる。

 

「ねー・・・年齢的にそんなに離れてないしお姉さんとどう?「アズミ!!」た、隊長!?居たんですか!?」

 

「いた。兄様の腰を抱きしめてたの見えなかったの?視野が狭くなってるね。今から練習する?」

 

「い、いえ・・・・」

 

「練習したくないなら兄様を誘惑するな・・・・兄様は私と母様のだ」

 

「は、はい・・・・・」

 

アズミさんが俺から離れて行く。

ちょっと残念かも・・・・

あ、ルミさんとメグミさんに怒られてる。

 

「にいさまぁ帰ろう?家帰って遊びたい」

 

「あーでも片づけ終わってないし・・・・」

 

そうすると他の隊員さんたちが気にしないでいいとかやっておくからとか言ってくる。

恵まれてるなぁ・・・・

 

「じゃあお先失礼します。愛里寿も・・・・・ちゃんと礼いいなさい」

 

「うん・・・・・皆ありがと」

 

『愛里寿隊長がデレたー!!!!!』

 

なんというか・・・・いや迫害されるよりはいいよな。

そして家に帰り愛里寿と遊んだ。

夏休みはまだ始まったばかり。




戦車の試合なんてわからなーい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

夏休みは続く


「ここがプラウダ高校がある学園艦か~」

 

俺は今プラウダ高校の学園艦の前にいる。

理由はカチューシャに呼ばれたから。

プラウダ高校は今年のベスト4に残っている戦車道の強豪校だ。

 

「やっと来たわねアキーシャ!」

 

俺に声をかけてくるが姿が見えないなー・・・・

 

「ノンナさん久しぶりー」

 

「ええ。とは言っても1回戦以来だからそこまで時間も経ってないですよ」

 

そうだっけ?まぁ、ちゃんと会うのが久しぶりっていう・・・

 

「ちょっと!カチューシャを無視するんじゃないわよ!」

 

俺が目線を下に向けるとそこにカチューシャがいた。

 

「あ、居たのか。てっきりノンナさんの肩にいないから中で待ってるのかと・・・」

 

「声かけたじゃない!アキーシャの馬鹿!」

 

「ははは、悪い悪い」

 

俺はカチューシャの頭を乱暴に撫でる。

 

「ちょっと!もっと丁寧にやりなさいよ!」

 

「じゃあ行きますか」

 

「ええ」

 

俺たちはカチューシャを置いて学園艦に入る。

 

「だから無視しないで!」

 

慌ててカチューシャも俺達についてくる。

 

 

「ここがプラウダ高校よ!」

 

カチューシャが胸を張る。

 

「ふーん・・・・ロシアと関係が深いから学園もそれっぽいな」

 

それにしても周りからジロジロみられるのは慣れないな。

女子校だしそれもしょうがないとは思うけど・・・・

 

「すみません。やはり男子に慣れてない子も多いので・・・・」

 

俺が気にしてる事がバレたのかノンナが謝ってくる。

 

「ああ、ノンナさんが気にすることじゃないですよ。こればっかりはしょうがないです」

 

それよりも・・・・

 

「いいんですか?準決って3日後なのに遊びにきちゃって・・・」

 

「構いません。サンダース対策は既に万全なので・・・・今年こそ優勝したいですね」

 

さすがノンナさん。抜かりはないか。

 

「当然優勝するに決まってるわ!」

 

相変わらずカチューシャは自信満々だな。

 

「まずは目先の相手を忘れないようにな」

 

サンダースとプラウダって総合的に差はないし。

 

「分かってるわよ!」

 

まぁ、言うだけ野暮だな。

こんな風にしてるけどカチューシャは有能だし・・・・

 

「では私たちの寮に案内します」

 

「それって男が入ってもいいんですか?」

 

「ええ、事前に許可さえ出せば男性でも入れます。まずは管理人室に行って許可証を貰うので首にかけるのを忘れないで下さい」

 

「了解」

 

そして俺達は管理人室に行って許可証を貰う。

受け取った後はラウンジに案内される。

 

「さぁ、こっちよ!」

 

カチューシャの後についていくとそこには生徒がチラホラ見える。

 

「帰省してる子もいますが・・・・部活動のある子達は残ってますね」

 

まぁ、大会に勝ち残ってる所はそうだろう。

恐らく彼女たちの帰省は少し先か。

 

「じゃあここに座りなさい!」

 

4人用のテーブルに案内される。

 

「はいはい」

 

「ノンナはお茶お願い!」

 

「分かりました」

 

ノンナさんがお茶を取りに一旦離れる。

俺も手伝おうかと思ったが・・・何もしないほうがいいだろう。

 

「お待たせしました」

 

持ってきたのは紅茶と・・・・ジャム?

ああ、ロシアンティーか。

俺は礼を言い紅茶にジャムを入れようとするが・・・

 

「待ちなさい!ジャムは直接舐めて飲みなさい!」

 

実演するカチューシャ。

飲み方なんて好きにしてもいいだろうけど郷に従えっていうし言われたみたいに飲んでみる。

 

「へぇ。結構美味いじゃないか」

 

「でしょ!」

 

家に帰ったらやってみるか?早苗さんに頼んで用意してもらおう。

お茶を飲んだところで一息ついた。

 

「で、今日はこれから何するんだ?」

 

「そうね・・・・考えてないわ!」

 

「ゆっくり話すのは久しぶりです。お互いの近況なんかはどうでしょう?」

 

近況か。いいかもしれない。

 

「じゃあカチューシャからどうぞ」

 

「ふふん。じゃあカチューシャの話をたっぷり聞かせてあげるわ!」

 

そしてカチューシャが語り出す。

戦車については勿論。学校生活についてなんかも・・・・

 

「でね!ノンナったらイジワルなの!」

 

「それはカチューシャが我がままだからです。あまり度が過ぎると誰もついてこれなくなりますよ」

 

「ノンナの馬鹿!アキーシャは分かってくれるよね?」

 

どうやら最近のカチューシャは個を重視するあまりチームというのを軽んじてるらしい。それを窘めたノンナさんにイジワルって・・・・

 

「別に悪くはないよ。」

 

「秋人さん!?」

 

ノンナが驚いてる。窘めてくれるのかと思ったのか?

 

「やっぱりアキーシャは分かってるわね!」

 

恐らくこいつの苛立ちの原因は周りのレベルの低さが原因だろう。

最近大分伸びたからこそのチームメイトとのギャップか・・・

 

「でもそれはチームの為か?」

 

「え?」

 

「チームっていうのは仲良しである必要はない。だが、チームに悪影響を与えるならおとなしくしとけ」

 

「ちょっと!さっきは賛成したじゃない!」

 

「そうだな。それがチームの為ならな・・・・」

 

ノンナが小さく手を挙げる。

 

「秋人さんの言いたいことは・・・・チームの為なら個人主義もいいって意味ですか?」

 

「そう。結局チーム力を高めるのは各々の成長が大事だ。チーム力があっても個人個人が弱かったら力が発揮されない。で、俺の意見を聞いたカチューシャはどうしたい?」

 

「どうって・・・・」

 

「このまま1人で突き進むか・・・・それとも味方と一緒に進むかだ」

 

「そんなの・・・・・皆一緒に成長したほうがいいじゃない・・・それが出来ないからこんなに・・・・」

 

「カチューシャ・・・・」

 

カチューシャだって悩んでる。このままでいいなんてあるわけないのは理解してる。けど、どうしていいか分からないって感じだな。

 

「お前に必要なのは格だ」

 

「格?」

 

「見ただけで相手を屈服させるだけの格。オーラと言ってもいいか。そんな選手になれば他の隊員たちも勝手についてくる。西住まほみたいなな」

 

恐らく今の高校生であれほど完成してる選手もいないだろう。

 

「・・・・・どうすればいいの?」

 

葛藤はあるか・・・・けど、超えるならまず同じ土俵に立たなければならない。

俺はカチューシャの両肩に手を置く。

 

「他の隊員たち以上に努力すること。妥協は絶対しないこと。たとえどんな絶望的状況でもお前だけは絶対折れちゃいけない。そして・・・・いつも通り胸を張って笑顔でな」

 

俺はカチューシャのほっぺをムニムニと形を変える。

 

「うにゅにゅにゅ~!」

 

「あはは、何言ってるかわかんねー」

 

俺は手を止める。

 

「フンッ!やってやるわよ!私はカチューシャなのよ!!どんな相手でも屈服させてみせるわ!」

 

うん?まぁ、いいか・・・

 

「・・・・ありがとうございます。どうなるかと思ったんですけど。カチューシャが元気になってよかったです」

 

「あー・・・・ちょっと思った方向性と違うけど・・・・」

 

「いえ、カチューシャにはあれくらいでちょうどいいです。サポートは任せてください」

 

ならいいけど・・・・

 

 

夕方になり俺は帰る準備をする。

 

「もう帰るの?」

 

「ああ、飛行機の時間あるしな」

 

「・・・・泊まって行ってもいいのに」

 

カチューシャが寂しそうにうつむく。

 

「それは今度だなー。準決勝は見れないけど決勝は見に行くからさ・・・・・」

 

「決勝って9月じゃない!・・・・まぁ、いいわ。私の目指す方向性を教えてくれて感謝してるわ!」

 

「お、おう・・・・」

 

まぁ、ノンナさんがいるなら問題ないよな。

俺はノンナさんに目配せする。伝わったのかノンナさんはお辞儀をした。

 

「じゃあね」

 

そして俺は学園艦を離れた。

 

 

 

8月中旬。俺は学園艦に戻ってきていた。

プラウダも無事決勝進出を決めた。

俺は生では見れなかったのでビデオで確認したが、どうやらカチューシャも問題ないように見えた。

一時は苦戦を強いてたプラウダだったが、カチューシャが仲間を鼓舞するようになり逆転勝利を収めた。

 

「にしても・・・・ノンナと一緒とはいえ2両で突っ込むか?まぁ、その姿に味方が触発されて逆転に繋がったのはいいけど・・・・」

 

だが決勝は楽しみだな。前までとは明らかに違うカチューシャの姿に相手は脅威に思うだろう。

 

「黒森峰の10連覇を阻むか?これは本気で楽しみになってきた」

 

ビデオも観終わって俺はこの後どうするか考えた。

 

「暇すぎるし・・・ちょっと学校に行ってみるか」

 

準備して学園に行く。

校庭では各部活動が練習に励んでいた。

 

「大会は終わったのに熱心だなぁ・・・・」

 

折角だし色々見学してみるか。

そう思った俺はまず体育館に行った。

 

「お、バレー部が練習してるけど・・・・・部員少なくないか?」

 

部員5人だけ。しかも見たとこ1年1人だけ・・・・

 

「典子!もっと気合い入れて!」

 

「はい!」

 

典子と呼ばれる1年生?女子が気合いをいれる。

 

「確かバレーって6人必要だよな?大会にすら出られないわけか・・・・」

 

勿体ないな。素人目線だけど全員上手い・・・と思う。

俺は隅で練習風景を見ていた。

 

「集合!」

 

どうやら一段落ついたみたいだ。

 

「最後に3対2やって終わりにするよ!・・・・・はぁ、せめてもう1人いれば3対3出来るのに・・・・」

 

「キャプテン!それは言わない約束でしょ!」

 

「大丈夫!きっと来年は典子が部員集めてくれるって!」

 

「任せてください!1人でも根性で部員獲得してみせます!」

 

1人って・・・・残りの4人は3年か?

 

「というかすみません。先輩達今年受験なのに付き合ってもらって・・・・」

 

「何言ってんの!私達がやりたくてやってるんだから気にしなくていいの!」

 

「そうそう。典子が気にしなくていいんだから!」

 

「先輩!!」

 

熱いなー・・・・

 

「さ!気を取り直して3対2を・・・・・あれ誰?」

 

気づかれたか?

あんまりじっと見てると失礼だろうから俺は彼女らに近づく。

 

「すみません、暇だったので練習見させてもらいました。迷惑なら引きますけど・・・・・」

 

「ううん、別に迷惑じゃないわ。見学なんて久しぶりだしねー・・・・そうだ!貴方バレー出来る?」

 

キャプテンと呼ばれた人が聞いてくる。

 

「え?体育以外でやったことないんですけど・・・」

 

「それでもいいわ!よければ入ってくれない?1人足りなくてさー・・・」

 

「いや、他の部員の方に迷惑じゃ・・・・」

 

「みんな迷惑じゃないよね!?」

 

「全然いいよー」

「問題なし!」

「大丈夫!」

「問題ありません!」

 

ならいいか。

そして始まる3対3。

俺はポジションとかよく分からないし好きにしていいと言われた。

と、ボールが来たな。

俺はサーブを拾って典子?に返す。

 

「ナイス!」

 

そのボールをアタッカーにトスして決まる。

 

「凄いねー素人じゃなかったの?」

 

先輩アタッカーに褒められる。

 

「素人ですよ。見よう見まねなんで」

 

「そっかそっか。この調子で頼むよ!」

 

肩を思いっきり叩かれる。

ガッチガチの体育会系だなぁ。嫌ではないけど。

 

 

そして3対3が終わった。

こっちの負け。敗因は俺のミス。

 

「すみません。中々難しいですね」

 

「いやいや!素人であれだけやれるなら充分だよ!」

 

「そうそう!気にしなくていいって!」

 

「それに時折こっちも驚くくらい良いプレーするしねー」

 

社交辞令だとは思うが結構嬉しいもんだ。

 

「じゃあ今日は練習終わり!また明日頑張ろう!」

 

俺は帰ろうとするが、手を掴まれる。

 

「折角だし一緒に帰らないか!」

 

「ああ、構わないよ・・・・って名前なんだっけ?」

 

「はは、そう言えば名乗らなかったね。磯部典子だよ」

 

「俺は島田秋人。じゃあ帰るか」

 

俺と磯部が歩き出す。

 

「なー島田はバレー部に入らないのか?」

 

「うーん。今回暇つぶしで来ただけだからなぁ。それに女子バレーに男がいても意味ないだろ」

 

「うーん・・・・そうかもしれないけど。男子バレーがあれば入る?」

 

「入らないな。つーか男子〇〇部なんてないだろ」

 

うちの学校では男子の数が少ないからか・・・・・男子専門の部活動は無い。その気になれば作れるだろうけど・・・・。

 

「勿体ないなー。結構上手いと思ったのに・・・・」

 

「って言われてもな・・・・ただ今日は楽しかったよ」

 

「そっか!じゃあいつでも来てくれ!あ、私こっちだから」

 

俺と磯部は連絡先を交換して別れる。

 

 

「夏休み終わりまでもう少しだよ!」

 

俺は今華と沙織でカフェに来ている。

 

「そういえば宿題やったか?」

 

「思い出させないでよ!」

 

あ、終わってないのね。

 

「そういえば夏休み明けテストありますよね」

 

「華もやめて!」

 

どうやら勉強の話題はNGらしい。

 

「勉強よりも遊びたい!残り1週間しかないんだよ!2人は夏休み何かした?」

 

・・・・プラウダ行って女バレの練習に混じったくらいしかないな。

 

「私は大したことは・・・」

 

「右に同じく」

 

「なら遊ぼうよ!同じ夏は二度と来ないんだよ!」

 

それはそうだ。

 

「・・・・じゃあ沙織は何をしたい?今なら何でも付き合ってやろう」

 

よくぞ聞いてくれました!って感じの目だな。

鞄から何かのチラシを出す。

 

「これ!明日皆でこれ行こうよ!」

 

「これは・・・」

 

「大洗市夏祭り?へー・・・・」

 

「もっとテンション上げようよ!」

 

と言われてもなー・・・・祭りでテンション上がらないし・・・

 

「まーいいんじゃないか?」

 

「ええ、なら浴衣の準備しませんと・・・・」

 

「さっすが華!私はもう準備してるよ!秋人は明日楽しみにしててね」

 

「浴衣か・・・持って来てたっけかな」

 

「え?秋人も浴衣着るの?」

 

あれ?おかしいのか?

 

「地元の祭りでは浴衣で行ってたけど・・・・おかしいのか?」

 

「おかしくないよ!じゃあ楽しみにしてるね!(秋人の浴衣かー。楽しみが増えたなぁ)」

 

「私も楽しみにしてますね(秋人さんの浴衣・・・・写真に収めたい)」

 

浴衣持って来てたっけか?

 

 

俺は集合場所に向かう。

浴衣も無事に見つかってよかった。

1人だけ私服っていうのは少し寂しいしな。

そうして考えてる間に2人が待つ場所に着いた。

もう既に2人は到着してた。

 

「ごめん、待ったか?」

 

「「え?」」

 

あれ?2人ともどうしたんだろう・・・

 

「何かあったのか?」

 

「えっと・・・・・秋人?」

 

むしろそれ以外に何に見えるのか。

どうやら華も同じことを思ってるみたいだし。

 

「そらはそうだよ。あ、髪結んでるからか?普段は結んでないし・・・ただ浴衣の時は結んだほうがいいって言われたことがあってさ。似合ってない?」

 

「そ、そんなことないよ!凄い似合ってる!」

 

「ええ・・・・ちょっと見惚れてただけです」

 

「そっか。そこまで言ってくれてありがとな。2人もよく似合ってるよ。それぞれ自分に合った感じでいいと思う」

 

「あ、ありがと・・・・」

 

「ありがとうございます!」

 

沙織がいつもより元気ないな・・・

 

「大丈夫か?」

 

俺はそうして沙織に近づくと

 

「大丈夫!大丈夫だから!」

 

一気に離れた。やっぱり似合ってないんじゃ・・・

 

「大丈夫ですよ。よく似合ってます」

 

そうして俺の腕に抱きつく華。

 

「ああ、ちゃっかり心読んだのはいいけど・・・・何故腕に抱きつく?普通に歩きにくいんだけど」

 

「ほら、人が多いので逸れないようにしないと・・・・」

 

じゃあ手を繋いでいけば・・・・・いや、止めとこう。

 

「は、華!何で腕に抱きついてるの!?」

 

「逸れないようにです」

 

「手を繋げばいいじゃん!」

 

「手を繋ぐよりも確実です」

 

「じゃあ私もする!」

 

「は?」

 

そして反対の腕に沙織が抱きついてくる。

 

「これなら平等だもん!」

 

何をもって平等とか言うのだろう。

それより歩き辛いし目立つし・・・・

 

「では行きましょうか」

 

え?本気でこれで歩くの?

そして歩き出した俺達は・・・・

 

「やっぱこれ歩き辛いし暑いし目立つし・・・やめないか?」

 

「「嫌(です)」」

 

くそ!たまに通行人に撮られるし最悪だ!ツブッターで晒されてそう・・・・

せめて顔にモザイクしてくれよ・・・

 

「あれ?これなんだろう・・・・」

 

沙織が何かに気付いた。

 

「戦車イベント?」

 

どうやら戦車を広める為の催しがあるらしい。

会場には子供からお年寄りが集まっている。

 

「えっと・・・・あの島田流家元?が大洗で戦車講座をしてくれるみたい。島田って秋人と同じ苗字だね」

 

うん、壇上で分かりやすく説明してるのってどう見ても母さんです。

あ、優華里発見。超集中してるせいでこっちには気づいてないな。

 

「・・・・凄い偶然だな」

 

・・・・母さんから何も聞いてないんですけど・・・・

 

「子供でも分かりやすくビデオや実演でやってくれるみたいですね」

 

「・・・・そうみたいだな。お前ら戦車興味ないだろ?早く別の場所行こう。そうしよう。ハリーハリーハリー」

 

今のこの状態を見られるわけには・・・・

 

「・・・・ではアシスタントやってくれる方いませんか?」

 

どうやら母さんがアシスタント募集してるみたいだな。

探してるうちに逃げるか。

 

「秋人さん・・・・そんなに急かさなくても時間はいっぱいありますよ?」

 

「そうだよー」

 

「お前らと2人で一緒に遊ぶんだぞ。いっぱいあっても足りないだろ?こんな所で足止め食うのは得策じゃない」

 

「え・・・・そっかーそれじゃあしょうがないね!」

 

「ええ!じゃあ行きましょう!!」

 

よし!これで逃げれる・・・・

 

「では、アシスタントはそこにいる高校生3人にお願いしますね。よろしいでしょうか?」

 

うわぁ・・・・「拒否したら分かってるよな?」って目だぁ・・・

 

「呼ばれたよ秋人・・・どうする?」

 

「私戦車したことなんて・・・・」

 

拒否権ないし・・・・

 

「大丈夫だろう。素人向けだし俺達だってなんとか出来るさ。とっとと終わらせてとっとと別の場所に行こう」

 

拒否権がないならさっさと終わらせたほうがマシだ。

 

「秋人が言うなら・・・・・」

 

「折角ですし・・・・」

 

そして俺達は壇上に上がる。

 

「すみませんね。デート中に・・・・」

 

じゃあ呼ぶなババア

そう思った瞬間睨まれた。

 

「いえいえ!デートだなんて・・・・・照れますぅ」

 

照れないでくれ・・・・

 

「しかも両手に花なんて羨ましいわぁ。若いっていいのね」

 

「おばさ・・・・いえ何でもないです」

 

帰りたい。心の底から帰りたい。

そして俺達はイベントを手伝う。

母さんの説明は分かりやすく、老若男女に好評だ。

 

「では、1回目の戦車講座は終わりです。皆様ありがとうございました。次回は30分後を予定していますのでよろしければどうぞ。アシスタントの3人もありがとうね」

 

終わったので俺は2人の手を引いて即退散する。

 

「ちょ・・・秋人」

 

「強引なところもいいですね」

 

そしてある程度離れたところで携帯に母さんからメールが来る。

内容は・・・・

 

「今日は秋人の所に泊まります。まさかどこかに泊まりに行く予定ではないでしょうね?合い鍵は持ってるので帰って来るまで待ちます。お話もあります」

 

うわぁ・・・・すっごい帰りたくない。

 

「秋人!様子おかしかったけど大丈夫?」

 

「具合が悪いならどこかで・・・・」

 

「いや、大丈夫だ。すまない。何でもない・・・・じゃあ行こうか」

 

どうせ色々言われるのは確定なんだ。

心配させるのも嫌だし気を取り直して遊ぼう。

射的、金魚掬い、型抜き等々色々出店を回って遊ぶ。

 

「いや~楽しいね!」

 

今は屋台で買った食べ物各種を持って座れる場所に移動する。

 

「いっぱい食べ物も買えましたねぇ」

 

「値段は凄まじいけどな・・・・」

 

祭りって何でこんなに高いのだろうか?

 

「あ、あそこ座ろうよ!」

 

休憩スペースか。

そして俺達は座ってご飯を食べる。

 

「こういう雰囲気で食べるご飯って美味しいよねー」

 

「ええ、いつもの倍は食べられますよ」

 

え?華さん?

 

「そうか。けど食べ過ぎには注意な」

 

各々買った物を食べる。

 

「ねー花火って何時からだっけ?」

 

「後40分くらいだな。か・・・・戦車で時間食ってしまった」

 

危なく母さんって言おうとした・・・・

 

「あー戦車かー。あの人カッコよくなかった?凛々しいっていうかシッカリした女性って感じで!」

 

「そうですね。戦車道は知りませんが有名な流派の家元らしいので・・・・やはり私生活でもちゃんとした方なんでしょうね」

 

「どうだろうな・・・・」

 

「秋人はああいう大人の女性ってどう思う?」

 

「尊敬は出来るんじゃないか?知らんけど」

 

自分で戦車の話題を振ったのは失敗だったな。

 

「あー秋人は男だし戦車に興味ないか」

 

いや、単純に母親の話題は恥ずかしいだけ・・・・

 

「戦車はいいとして・・・そろそろ場所取り行くか?」

 

俺は話題を切り上げて提案する。

 

「いいね!結構な穴場知ってるんだ!」

 

どうやら地元民だけあって穴場を知ってるらしい。

 

移動した先はちょっとした山だった。

 

「ここの頂上ならいい感じに見えるんだよ!」

 

「じゃあ行くか」

 

そして着いたときには既に始まっていた。

 

「本当によく見えるな。ベストスポットじゃん」

 

綺麗だな。

 

「でしょ!」

 

「空に咲く花も良いですね」

 

その後は黙って花火を見つめる俺達。

 

 

花火も終わったので俺達は帰る。

 

「今日は楽しかったね!」

 

「そうだな」

 

「また来年も来たいですねー」

 

そして各々を送って俺は家に帰る。

 

「電気ついてる・・・・・忘れてた」

 

そういえば今日は母さんが泊まるんだった。

俺は覚悟を決めて扉を開ける。

 

「おかえりなさい秋人。ちょっとこっちに来なさい」

 

「はい・・・・」

 

俺はベッドに座る母さんの目の前で正座する。

 

「今日はありがとう助かったわ・・・・・で、あの子達は誰?」

 

聞かれると思ったけど・・・・

 

「クラスの友人です」

 

「恋人?」

 

「違います」

 

「腕組んでたわよね?」

 

「ノリみたいなものです」

 

「ふーん・・・・・ならいいわ。秋人は私に嘘つかないものね」

 

「はい・・・・・もういいですか?」

 

「いいわ」

 

ふぅ・・・・俺はここで緊張を解いた。

 

「何で家元モードで待ってんだよ!ビビるからやめてくれ!」

 

「デレデレしてる秋人が悪いもん!」

 

家元モードは公私混同を避ける為に作られた母さんの作られた顔。

 

「いやいや・・・・私生活でその顔はなしって言ったじゃんか・・・冷たいし苦手なんだよ・・・・」

 

「秋人も愛里寿も戦車乗ってるときは似たような顔になるでしょ」

 

血筋なのかねぇ・・・・婆様もそうだったみたいだし。

 

「今戦車乗ってないじゃん・・・・・」

 

「全部秋人が悪いの。彼女はいない?明らかに好意もたられてるじゃない!」

 

ぐ・・・・・薄々気づいてはいたけど・・・・

 

「やっぱり母さんもそう思う?」

 

「好きでもない男の腕を組む女なんて売女くらいよ!」

 

売女って・・・・

 

「はぁ・・・・」

 

「秋人は彼女たちが好きなの?」

 

「好き・・・・・恋愛的な意味では・・・・・分からない」

 

実際分からない。

 

「そう・・・・まぁいざとなれば囲っちゃいなさい」

 

「何を言ってるのか・・・」

 

「一応日本は一夫多妻制だし問題ないわ。色々条件は厳しいけど秋人なら大丈夫よね」

 

「・・・・・・ま、色々考えるよ」

 

「そう・・・・・話は終わったからお風呂入ってらっしゃい」

 

「ありがとう」

 

俺は風呂に入って色々考える。

実際告白されたわけじゃないけど・・・・勘違いならそれに越したことはないし。

つっても今日明日でどうにかなる問題じゃないし・・・

 

「今考えてもしょうがないか・・・・」

 

「そうねー告白されてからでいいんじゃない?」

 

なぜちゃっかり身体を洗ってるのか・・・・

 

「私も入ってないもの。家族だし問題ないでしょ?」

 

「さすがにこの歳で母親と風呂は笑えない」

 

また友人にバレたくない秘密が出来たじゃないか。

そして身体を洗った母さんが浴槽に入ってくる。

 

「やっぱり狭いわね。改築する?」

 

「ここマンションだから!」

 

はぁ・・・

 

「あら?もう出るの?母さんに欲情しちゃった?」

 

「狭いし出るよ。後してないから・・・・」

 

距離感が近すぎなのも考え物だな。

 

 

そして寝る直前・・・・

 

「なんで同じ布団に入るのか・・・・」

 

「だって他に布団ないじゃない」

 

そういえばそうだった。別に布団は二つもいらないしいいやって思って買ってなかった。

 

「まぁ、仮にあっても一緒に寝るけどね」

 

「・・・・・何か今日は随分構ってくるけどどうしたわけ?」

 

いつもの比じゃない気がする。

 

「いつも通りよ。ただ・・・・まだ夏休みが残ってるのに学園艦に戻った息子を心配して仕事に託けて来てみれば女の子2人とよろしくやってるなんて・・・私の心配を返せとか嫉妬とか色々あるけど・・・・愛里寿が見たらどう思うかしらね?」

 

ええええ・・・・

 

「愛里寿かぁ・・・・ちょっとブラコン気味だな」

 

「ちょっとどころじゃないんだけどね・・・・・」

 

うん、分かってる。ちょっととボカしたけど・・・・

 

「そこも考える。なんとか兄離れしてほしいけど・・・・」

 

「無理よ。私と愛里寿は似てるから・・・・」

 

それ子離れする気ないって聞こえるんだけど・・・・

 

「・・・・寝るか」

 

ダメだ。今日は疲れた・・・・

 

「ええ、おやすみなさい」

 

 

朝になると既に母さんはいなかった。

手紙によると別の仕事があるらしい。

夏休みも残りわずか・・・・9月の最初の土曜に戦車道全国大会決勝戦が始まる。




キャラの口調把握しきれません!
一夫多妻制?こことは違う日本ですし・・・・




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

おつかれ


夏休みも終わり。9月に入った。

今日は全国大会の決勝で俺は優花里と一緒に会場に来ていた。

雨も降っているが普通に決行されそうで・・・

 

「プラウダ対黒森峰。どっちも強豪ですが秋人殿はどっちが勝つと思います?」

 

決勝だけあって人も多い。

席が確保されて本当によかった。

 

「そうだな。正直分からない」

 

「島田殿でも?やはりマウスのある黒森峰が優勢なのでしょうか?」

 

マウスか・・・・

 

「マウスは確かに脅威だが、やり方次第でどうとでもなる」

 

まぁ、各校はそのマウス対策にやっきだけどな。

しかし戦車道に絶対なんて言葉は存在しない。

どんなに凶悪な戦車でも隙はある。

 

「まぁ、プラウダがどんな作戦で来るか見物だな」

 

さて・・・・

俺は席を立ちあがった。

 

「島田殿?」

 

「ああ、委員会に挨拶してくる。結局初日は出来なかったしな」

 

本当は行きたくない。だってあの人いるし・・・

けど、会場に来て1回も挨拶なしは立場上したくない。

 

「そうですか。では私はここで待ってるので!」

 

「ああ、悪いな」

 

俺は大会の役員が集まるVIPルームの前に来ていた。

 

「はぁ・・・・」

 

扉をノックして返事をされるたので中に入る。

 

「失礼します」

 

中に入ると数人の役員が一斉にこっちを見る。

 

「おー島田君じゃないか!久しぶりだね」

 

「お久しぶりです。理事長」

 

先に反応示したのは日本戦車道連盟理事長だ。

母さんの仕事の関係で、ここにいる役員の方々とは何度か面識はある。

 

「しかし島田君が来ていたとは・・・・目当ての選手でも?」

 

「特定の個人はいませんが、2年前の戦友が何人かいますので・・・」

 

「なるほど。で、今日ここに来たのは・・・・」

 

「挨拶です。島田流の人間としては会場に来てるのに挨拶をしないのは皆さんに失礼なので」

 

まぁ、初日は挨拶しなかったけど・・・

 

「そうかそうか。まぁ、ゆっくりしていきなさい」

 

そして俺は各役員に挨拶をする。

1人を覗いて挨拶を済ませた。

最後の1人は一番前に座って会場を見ていた。

 

「お久しぶりです・・・・・しほさん」

 

「久しぶりね。秋人君」

 

まほさんやみほの母親で高校戦車道連盟の理事長にして西住流師範。

それだけじゃなく黒森峰や陸上自衛隊にも師範として指導している。

島田流とはあまり交流はないが、それでも面識はあったので挨拶する。

相変わらずクールだな・・・・

 

「黒森峰の決勝進出。おめでとうございます」

 

「西住流を教えているんだから当然のことよ」

 

帰りたい・・・・

 

「では、私はそろそろ・・・・「待ちなさい」・・・はい?」

 

まさか呼び止められるとは思わなかった。

 

「ここで観戦してきなさい」

 

まさかのお誘いだけど何故・・・・?

 

「試合まで時間はあるし・・・まほやみほと個人的な付き合いをしてるんでしょう?そこら辺詳しく聞かせなさい」

 

これは、娘に手を出してんじゃねーぞコラって言うことなんだろうか・・・・

 

「・・・・分かりました。ただ連絡いれるところがあるので少しお待ち頂ければ」

 

嫌でも拒否は出来ない。

俺は一度部屋を出て優花里に連絡する。

 

「・・・・と、言うわけだ。すまない。一緒に観られなくなった」

 

『そうですか・・・それならしょうがありませんね』

 

「終わったらそっちに行くから待っててくれ」

 

『了解です!』

 

ふぅ・・・

俺は部屋に入ってしほさんの隣に座る。

 

「それで・・・聞きたいこととは?」

 

「あの子達との関係は?」

 

即突っ込んできたな。

 

「普通に友人ですよ。別に恋人ではないので安心してください」

 

やはり島田流と西住流では個人的な付き合いもダメなんだろうか?

母さん的には軽くいいよーって感じだったけど・・・・しほさんの場合厳しそうだし・・・

 

「そう・・・・友人程度ならいいわ。特にみほとは仲良いみたいだけど。」

 

「ああ、趣味が合うので」

 

貴重なボコ仲間だからな。

 

「趣味って・・・・あの変な人形?」

 

変って・・・・

 

「変じゃないですよ・・・ボコです。ボコ仲間は貴重なので・・・しほさんもどうです?」

 

「遠慮しておくわ」

 

分かってたけど即答かよ。

 

「そろそろ試合始まりますね」

 

「ええ」

 

そして試合が始まる。

雨はどんどん強まってるが大丈夫だろうか・・・・・?

 

 

「・・・・・・・」

 

しほさんの機嫌が超絶悪い。一緒に観るの断ればよかった・・・・

なぜ俺がそう考えてるか・・・・それは試合が思いも寄らぬ展開になったからだ。

結論から言うと黒森峰は負けた。

足場が悪いところを走っていて1両川に落ちた。

それをフラッグ車に乗っていたみほが急遽降りて救出。

他のメンバーが動揺した隙に撃たれて負けた。

 

はっきり言ってみほのしたことは間違いじゃない。

俺でもあの状況なら助ける。

雨のせいで暗いし川の流れも早かった。救出隊が間に合わずに死んでいたかもしれない・・・・・。

が、そのせいで黒森峰の10連覇が達成されなかった。

西住流としては許しがたい行為だったんだろう・・・

 

「(し、島田君!)」

 

理事長に話しかけられた。

俺は後ろを振りむくと何かジェスチャーしてる。

しほさんに指を差して、俺に指を差して、口パク?

何が言いたいのか分からない・・・

伝わってないことが分かったのか紙に大きく「機嫌何とかして!!」と書いてあった。

 

「(しほさんの機嫌を俺が何とかして!?ふざけんなジジイ!)」

 

俺は他の役員を見る。

しかし一斉に逸らされた。

 

「(こっちの立場も気にしてくれよ・・・・)あの・・・・しほさん?」

 

「・・・・・ごめんなさいね。無様をみせて」

 

これどうすればいいんだろう・・・・とりあえずみほを褒めればいいのかな?

 

「いえ・・・・あの状況じゃ下手すると救出隊が間に合わなかったかもしれませんし・・・・さすがに大会で人死が出ると戦車道のイメージが最悪になるし3年後の世界大会の為のプロリーグにも影響出ちゃうかもしれないし・・・・さすがみほさんですね。目先の勝利よりも戦車道の未来を取るとは。あの一瞬で好判断。さすが西住流ですよ!」

 

俺は役員に目を向ける。

 

「(褒めて!いっぱい褒めて!)」

 

俺の必死な目に役員連中も気づいたのか。

 

「ええ、島田君の言う通りですな」

「流石西住流です」

「西住流も安泰ですな!」

「10連覇達成出来なかったのは残念ですが、戦車道の未来には代えられませんな」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

あんまり機嫌治ってないよ・・・・

 

「じゃあ私はそろそろ帰りますね。皆様今日はありがとうございました」

 

役員に挨拶をして俺は退出する。

 

 

俺は優花里が待っている客席に向かった。

 

「ごめんな待たせて」

 

「ええ大丈夫ですよ!・・・それにしても結果は意外なものになりましたな」

 

「そうだな・・・・お前は黒森峰の副隊長がやったことどう思う?」

 

優花里が考える。

 

「うーん・・・・・私はあの場合はしょうがないと思います。勿論10連覇は残念ですが・・・・人助けなら私は納得します!」

 

うん、やっぱり良い奴だな。

 

「そっか・・・・じゃあ帰るか」

 

「あの・・・・島田殿はどう思ったんですか?」

 

歩き出そうとする俺に優花里が聞いてくる。

 

「俺?俺も優花里と同じ。あの状況なら副隊長と同じように助けに行ったよ・・・・どれだけ後でバッシング受けようともな・・・・」

 

助けなかったら後で絶対後悔するし・・・

 

「バッシング・・・ですか?」

 

優花里は分かってないのか俺に聞いてくる。

 

「あの行動は賛否両論だ。恐らく味方にとっては・・・・ただの戦犯だな」

 

「そんな!?人を助けたんですよ!なのになんで・・・・」

 

そもそも個人的に戦犯は監督だけどな。

 

「そもそも助ける必要があったのか?って思うやつもいるんだよ。救出隊に任せればよかったんだってな・・・・・それに責任を押し付けやすい」

 

「責任・・・・」

 

「そうだ。負けた場合の責任を押し付けやすい。本来の責任は監督だけどな」

 

いくら西住流だからって1年を副隊長にするしフラッグ車にも乗せるし雨降ってんだからルート考えろとか・・・色々言いたいことはある。

俺が言ってもしょうがないけどな。

 

「あの副隊長殿。これからどうなるんでしょうか?」

 

「恐らく負けた責任を取られるだろう・・・・・」

 

まだ決まったわけじゃないけど・・・・考えただけで胸クソ悪い。

まほさんは隊長だし西住流だから庇えないしエリカにそういうのは期待出来ない。

 

「心配ですね・・・・」

 

ああ、本当に心配だ。

俺が近くに居られれば・・・・・

 

「・・・・俺達が考えてもしょうがないさ」

 

後でメールを送るか・・・・

 

 

 

12月になった。

大会から3ヶ月後。俺は頻繁にみほとメールや電話のやり取りをする。

最初は元気を装っていたがやはりバッシングを受けて日々疲弊していた。

そして悪いニュースは立て続けに来る。

 

「みほも心配だけど・・・・こっちもだな」

 

俺は今体育館に向かっている。

持っている書類はバレー部の廃部勧告の書類だ。

 

「正直伝え辛いけど・・・・やるなら俺の方がいい」

 

あの夏休み以降。俺はたまにバレー部の練習に参加していた。

皆良い人だし楽しいし・・・・バレーも上手い。

典子とは名前で呼び合う程度には仲良くなったしな。

 

体育館に着いた俺は典子達の練習を見ていた。

今日は4人か。部員が少なくて試合に出れないのに休まず努力する姿に少し泣きそうになった。

 

「あ、秋人!」

 

磯部達がこっちに気づいた。

 

「今日も練習に入る?ていうか週1でここに来るならもう入っちゃえよ!」

 

「ああ・・・今日は違う。生徒会としての仕事に来た」

 

俺の様子に典子達が心配をする。

 

「大丈夫?」

 

「具合悪いの?」

 

「具合悪いなら根性で直せ!」

 

「典子・・・・・で、本当に何かあったの?」

 

俺は意を決して口を開いた。

 

「全員いるならちょうどいいです・・・・生徒会からバレー部に・・・・廃部の勧告に来ました」

 

それを聞いた典子達は唖然とする。

 

「これは決定事項で今月でバレー部は廃部。詳しくはこの書類を見てほしい」

 

「何でだよ!秋人だって私たちがどれだけ頑張って来たか分かるだろ!?」

 

典子が泣きながら俺の胸ぐらを掴む。

 

「来年は・・・・・来年は絶対に部員確保して大会に出るって・・・・何で廃部なんだよ!」

 

「典子落ち着きな・・・・私は正直こうなるって予想はしてたよ・・・」

 

キャプテンが磯部を窘める。

 

「キャプテン・・・・どういうことですか?」

 

「他の部で去年もこの時期にあったんだよ・・・・・理由は部員不足でしょ?」

 

「はい。年が代わるタイミングで3年を除いた人数が規定に達してなければ・・・廃部になります。バレー部は3年を除いたら典子だけなので・・・・」

 

「うん・・・・分かった」

 

「キャプテン!?キャプテンはバレー部が無くなっていいんですか!」

 

「こればっかりはね・・・・しょうがないよ・・・・」

 

この言葉を聞いた典子は俺に詰め寄る。

 

「何とかしてよ!嫌だよ・・・・先輩達との思い出の場所を取り上げないでくれ・・・・」

 

俺だって何とかしてやりたい。

お前らの努力する姿を半年程度だけど見てきたんだから・・・・

だから、せめて希望だけでもあげたい。

 

「廃部は決定だ・・・・だから新しく作れ」

 

「新しく・・・?」

 

「そうだ。廃部は免れないなら来年、バレーに興味あるやつ集めて新しく作ってみろ。創部の場合の規定人数は6人必要だ・・・・だから最低5人集めて見ろ。廃部の理由が人数なら人集めれば作れる」

 

「・・・・・」

 

「大事な場所を無くしたくないんだろ?なら一度手放せ。そしていつか絶対に取り戻して見せろ。生徒会としては協力出来ないが、俺個人としては手伝う」

 

それでも集まる保障なんてない。

半端に希望を見せる俺は最低だろうか・・・

みほの件でもそう・・・・俺は無力だな。

 

「秋人・・・・・」

 

本当に気が滅入ることばっかだ・・・

 

「だってさ典子。後はあんたに託すわ」

 

「先輩・・・」

 

アタッカーの先輩が典子に言う。

 

「さぁ!そろそろ練習再開するよ!今月で私達3年のバレーは終わりだから一分一秒無駄にしないように!」

 

「キャプテン・・・」

 

「託せる後輩がいるっていいね・・・・・私たちの無念を晴らしてね典子!」

 

「はい!!」

 

俺は用が無くなったので体育館を出ようとすると・・・・

 

「秋人!さっきはゴメン!秋人のせいじゃないって分かるけど・・・・つい」

 

「いや・・・・とにかく今後手伝えることがあったら言ってくれ」

 

「うん!ありがとな!」

 

そして典子は練習に戻った。

俺も体育館を出て生徒会室に戻る。

 

「お疲れさまです・・・・柚子先輩だけですか?」

 

俺が戻るとそこには柚子先輩が書類作成をしていた。

 

「うん・・・・桃ちゃんも会長もちょっと出てるよ」

 

俺はお茶を入れて柚子先輩に渡す。

 

「ありがと。お茶くみも慣れたね~」

 

「ですね。色々やってきたおかげで結構形になってきました」

 

「このロシアンティーの飲み方・・・・紅茶に入れるんじゃなくてスプーンで口に入れてから飲む方法とか初めて聞いたときは少し驚いたな」

 

「ああ、前に友人に教わった飲み方でして・・・・国によってはそうするみたいですね」

 

カチューシャが教えてくれた飲み方・・・・・そういえば優勝おめでとうって言ってなかったな。みほのことで頭いっぱいで忘れてた。

 

俺はソファーに横になる。

 

「バレー部の退部勧告お疲れさま・・・・何かあった?」

 

「いえ・・・疲れただけです」

 

「そっかそっか・・・・それじゃあ・・・」

 

柚子先輩がこちらに来て俺の頭を上げて膝枕をする。

 

「恥ずかしくないんですか?」

 

「恥ずかしいけど・・・・後輩を労うのも先輩の役目だしね!」

 

顔が赤くなってるし無理しなくていいのに・・・・

 

「ま、行為には甘えますよ」

 

「そうそう。色々一人で頑張るのもいいけど・・・・・たまには私を頼ってね?」

 

頼るか・・・・・

じゃあ今だけは甘えようかな。

 

 

っと・・・少し寝てしまった。

時間を見るとあまり経っていない。

柚子先輩を見ると、どうやら寝ているようだ。

俺は膝から頭をどけて毛布を取って柚子先輩に被せる。

 

「ありがとうございました。柚子先輩」

 

そうしていると会長と河嶋先輩が帰ってきた。

 

「おつかれーお?小山寝てるじゃん」

 

「ええ、なので毛布被せておきました」

 

「まぁ、小山も疲れてるしな。たまにはいいだろう」

 

「じゃあ柚子先輩がやる予定の仕事は俺が代わりにしますねー」

 

「お、島田君やる気あるじゃん!」

 

「体力全快ですから!」

 

柚子先輩のおかげで回復した俺はいつも以上に業務を熟した。

 

 

 

2月後半。

バレー部廃部から2ヵ月が経った。

12月の最後の練習には是非参加してほしいと言われたので俺も参加した。

最後は笑いながら3年生達が引退。典子は泣きながらそれを見送った・・・

後は・・・・特に語るべきこともない。普通に正月は実家で過ごしたし、クリスマスは友人たちと過ごして楽しく遊んだ。

 

そんな俺は今みほと電話していた。

 

「この前のバレンタインはありがとう。ちゃんと届いたよ」

 

『ほんと!?よかった~ボコ型チョコ!自信作だったんだ~』

 

「味も美味しかったしな・・・・ホワイトデーは俺のボコクッキーを送ってやろう」

 

『楽しみにしてるね!・・・・そうだ、ちょっといい?』

 

「ああ・・・・・何かあったのか?」

 

『うん・・・・黒森峰から転校しようと思うんだ・・・・』

 

そうか・・・やはり耐えられないか・・・

 

『頑張って耐えてきたんだよ!・・・・・でも、もう・・・・辛いよ・・・・』

 

みほのすすり泣く声が聞こえる。

 

「ああ・・・・・そうしたほうがいいな。でも、どこに転校するんだ?」

 

『戦車道がないところがいい・・・・・もう戦車道したくないから・・・』

 

なら・・・・

 

「だったらうちに来な。うちは戦車道ないしな。昔はあったっぽいけど」

 

『そうなんだ。でもいいの?迷惑じゃない?』

 

「迷惑とかあり得ないから。アパートもちょうど隣空いてるし・・・・それに色々サポートできるしな」

 

『うん!じゃあそこに決めるね!』

 

よかった。ここなら戦車に関わる必要もないし・・・・・

 

「恐らく時期的には4月になるか?じゃあ楽しみにしてるよ」

 

しかしある事態が切っ掛けで大洗学園に戦車道が復活するなんて俺には予想出来なかった。

 




原作入りたいし無理矢理終わらせたった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

やっと原作入れるー
部員って6人必要だったのか・・・


4月。今日は入学式。

在校生は5日まで休みだが、俺は生徒会として入学式に出席しなければならない。

入学式では特に問題もなく終わり、各部活動の部員獲得合戦が始まる。

そしてバレー部もとい元バレー部は・・・・

 

「とりあえず中学でバレー部だった子達を勧誘する。これデータ」

 

俺が典子に元バレー部だった子のデータを渡す。

 

「おー16人もいるのか!これなら部の復活も早いかも!」

 

「あんまり期待しすぎるなよ・・・・とりあえず手分けして勧誘してみよう」

 

「了解!」

 

早速典子と手分けして当たってみるが・・・・あまり良い反応は貰えなかった。

高校では別の事をやりたいって子が予想よりも多かった。

 

「はぁ・・・・思ったよりも戦果がないな・・・次は近藤妙子か」

 

俺は彼女のクラスに行って中庭に呼び出した。

 

「初めまして近藤さん。俺は2年の島田だ・・・・単刀直入で悪いけどバレー部に君が欲しい」

 

「バレー部・・・・ですか?でもここってバレー部が無いって・・・」

 

「去年人数不足のせいで廃部になった。今は同好会として活動してるけど人数が揃えば部として復活出来るんだ。どうだろう?元バレー部でもある君の力を貸してほしい」

 

「・・・・分かりました。私バレー好きなので是非こっちからお願いします!」

 

「ありがとう!」

 

俺は両手で彼女の手を掴んで上下にブンブン振る。

 

「あはは、大げさですよ先輩」

 

「やっと見つかった1人目なんだ!色々声をかけたけどフラれまくってさー。あ、今から時間ある?部長のところに案内するよ」

 

俺は典子にメールで1人確保と連絡する。

 

「大丈夫ですよ。式も終わったので帰るだけですし」

 

「じゃあ行こうか。案内するよー」

 

俺が彼女と中庭まで行く。

途中で色んな部が彼女に声をかけようとしたが・・・

 

「おーいそこの背の高い子!是非バスケ部に・・・・・あ、島田君の女か」

「その容姿なら是非演劇部に・・・・あ、島田の女か」

「そこの彼女!フットサル部に・・・・・あ、島田君のツレか」

 

「先輩・・・・?」

 

近藤が不審な目を向けてくる。

 

「気にするな。本当に気にしないでくれ」

 

去年新聞部に色々書かれたせいで俺の風評被害が大変なことになっている。

生徒会として前に出ることもあるので恐らくこの学園で会長並みの知名度があるんじゃないだろうか・・・・?

 

「はぁ・・・・・」

 

そして典子を見つけた。

 

「秋人!こっちは2人も確保したよ!」

 

「おーナイス。これで後1人だな」

 

そして各々自己紹介をする。

 

「まずは私。2年キャプテンの磯部典子だ!ポジションはセッター。これから一緒に頑張ろう!」

 

「私は河西忍。ポジションはWSです。」

 

「私は近藤妙子です。中学ではMBをやってました」

 

「佐々木あけびです。私もMBやってました」

 

「じゃあ最後は俺か。2年生徒会副会長の島田秋人だ。バレー部には所属出来ないが色々顔を合わせることも多いと思うしよろしく頼むよ」

 

「先輩バレー部じゃなかったんですか!?」

 

近藤が驚く。

 

「ああ、ただ個人として手伝うだけだからな」

 

「島田・・・・島田・・・・どこかで・・・・」

 

河西がブツブツ呟てるけどどうしたのか。

 

「どうした河西?」

 

「あ、いえ・・・何でもありません」

 

ふむ、何もないならいいけどさ・・・

 

「じゃあ自己紹介も終わったし早速活動するぞ!」

 

「アホ。今日は入学式だけなんだから何も準備してないだろ。本格的なのは明日からにしなさい。」

 

「う・・・・それもそうか。じゃあ今日は親睦を深めたいし今から遊びに行くのはどうだろうか?」

 

それに後輩3人も賛成する。

 

「俺は生徒会の仕事が残ってるしお前らだけで行ってきな」

 

「そうか・・・・・じゃあ今日はありがとう!バレー部復活の希望が見えてきたよ!」

 

さてと・・・・やり残した仕事を片づけに行きますか・・・・

 

 

俺が仕事も終わり家まで戻る。

が、俺が来たのは隣の部屋だった。

チャイムを鳴らして家主が出るのを待つ。

 

「おかえりなさい・・・・秋人君」

 

「ただいま・・・・みほ」

 

みほの転入手続が済んだので既に引っ越しも済ませていた。

俺は部屋に入って床に座る。

 

「もう準備って出来たか?」

 

「バッチリだよ・・・・本当にありがとう」

 

「礼ならいいさ。俺がやりたくてやったことだしな」

 

なるべく学園生活を円滑に進ませるためにサポートをした。

部屋を借りるときも協力したし、学校内でのサポートをする為にクラスも一緒にするように会長から教職員に圧力をかけた。

名目上は転校生のサポートの為って言ったけど・・・・会長には不審がられたな。

 

「夕飯作ったんだ。食べるよね?」

 

「みほの手作り?料理出来たのか・・・・」

 

「簡単な物で申し訳ないけど・・・・」

 

「カレーだろ?好きだし問題ないよ」

 

入ったときの匂いですぐに分かった。

 

「よかった。お惣菜だけど秋人君の好きな唐揚げも買ったから載せて食べてね」

 

さすがみほ。よく分かっている。

量は自分で調節したほうがいいのでそこは自分でやる。

 

「「いただきます」」

 

うん。味はちょっと焦げ臭さがあるけど普通だな。

でも店で食べるより何かいいな。

 

「どう?」

 

「美味しいよ。初めて作ってこれならいいんじゃないか?」

 

「え・・・何で分かったの!?」

 

それは・・・・

 

「その指見れば分かるさ。頑張ったんだな。ありがとう」

 

「えへへ・・・少し焦がしちゃったけど」

 

「しょうがないさ。少なくても俺よりいい」

 

1人暮らししてから1年経ったけど料理なんてしないし。

 

「え?でもボコクッキー美味しかったよ」

 

ああ、ホワイトデーにあげたやつな。

 

「あれは友達に手伝ってもらったからな」

 

沙織に手伝ってもらった。

 

「お姉ちゃんも美味しいって言ってたし・・・・みんなにボコクッキーあげたの?」

 

「ああ、一緒の方が渡しやすいしな」

 

みほ、まほさん、ダージリン、カチューシャ、ノンナさん、沙織、華、優花里、会長、柚子先輩、河嶋先輩、典子、大学選抜の人たち、愛里寿、母さん。

身内を除けば結構な数を貰った。全員別にして返すのも面倒だったし・・・

一番は愛里寿が喜んでくれたのがよかった。

 

「・・・・多分皆勘違いしちゃったんじゃないかなぁ・・・」

 

「そんな単純じゃないし大丈夫だろう」

 

料理を食べ終わってお茶を飲んでゆっくり過ごす。

 

「さて・・・・そろそろ始めるか?」

 

「そうだね・・・・準備は出来てるよ」

 

準備とは何か・・・・それは。

 

「さぁ・・・・ボコ鑑賞会の始まりだ!!」

 

毎晩毎晩行われるボコ鑑賞会。

DVDで1話ずつ見た後はお互いの感想を言い合う。

みほとはボコ友だが、ここまで深く語り合うことがなかなか無かったので充実した時間を過ごせる。

 

「は~やっぱりボコいいなー」

 

「どんなにやられても折れる事なく立ち上がる・・・・立ち上がる瞬間が最高に恰好いいんだよなー」

 

そして時間も深夜2時にさしかかる。

 

「もうこんな時間か・・・・」

 

「時間過ぎるの早いなぁ・・・・もっとお話ししたいのに」

 

「ま、これからも時間がいっぱいあるんだ・・・・焦らなくていいか」

 

「うん!」

 

 

そして春休みが終わった。

4月5日。今日は始業式。みほと一緒に学園まで向かう。

 

「朝のパン屋さんの匂い良いな~」

 

「焼きたてのパンの匂いか。ここは味も良いから今度食べにこよう」

 

「うん!でも焼き立て食べてみたいなぁ・・・・」

 

「平日ならタイミング合わないけど休日なら食べられるだろうし・・・休日の朝はパンにする?」

 

「いいね!」

 

学園に着いた後はみほと一旦別れる。

クラスに行く前に会長に呼ばれたからだ。

生徒会室に行くと既に会長と柚子先輩、河嶋先輩が来ていた。

しかし・・・・何だ?随分雰囲気が・・・・

 

「やーやー島田君も来たとこだし話をしようか」

 

話?

 

「始業式についてですか?それなら段取りも既に終わっていますが・・・」

 

「違う・・・・そうじゃない・・・」

 

河嶋先輩が苦虫を潰したような顔をしている。

そして会長が口を開く。

 

「・・・・学園が3月で廃校になることになった」

 

「・・・・・は?」

 

廃校?何で?そんな・・・・じゃあバレー部は?沙織や華、優花里とは?それに・・・みほと一緒の学校になれたのに・・・・

 

「うちは古いしか取り柄がないからねー・・・・それによって学園艦も廃艦だってさ・・・でも回避する方法がある」

 

目の前が真っ暗になりそうだったが回避する方法があると聞いて持ち直す。

 

「それは何ですか?」

 

「今年の戦車道全国大会で優勝すること。実績があれば潰すなんて出来ないもんね」

 

確かにそうだが・・・・今年?経験者なんてほぼ皆無の状態で・・・・1回戦まで時間も残り2ヶ月程度しかないのに?

 

「あまりに無茶だが・・・・やるしかない。今年から戦車道を復活させる。生徒会は強制的に今年の選択科目は戦車道になるから島田も協力するように」

 

「今から過去に戦車道経験者のある生徒を調べるから島田君も手伝ってほしいな」

 

このメンツなら2日もあれば全校生徒調べつくすことが出来る。

それはマズイ。みほの存在がバレれば会長は何をしても入れるだろう。

何とかみほだけは隠して・・・

 

「・・・・分かりました。今から始業式なの「ちょっと待って」・・・・会長何ですか?」

 

「いやー実はもう調べ終わってるんだわ」

 

そんな・・・・こんな時に無駄に有能ぶりを発揮しなくていいのに・・・

 

「早いですね。居たんですか?」

 

「うん・・・・・2人いるなんてラッキーだね。」

 

「2人ですか・・・・少ないけどいただけでもラッキーと思うしかないですね。早速その2人に接触してみましょう」

 

河嶋先輩が早速動こうとするが・・・・

 

「いやー・・・・接触は1人だけでいいんじゃない?ねえ・・・・島田君」

 

河嶋先輩と柚子先輩がこちらを見る。

誤魔化すのも無駄・・・というか、俺は誤魔化す必要なんてないか。

 

「そうですね。俺は戦車道経験者ですし戦車道も履修しますよ・・・・大会には出られないので監督的な役割ですけど」

 

「うん、だからもう1人のほうに接触すればいいよ。2年普通Ⅰ科A組の西住みほさんにね」

 

どうする?どうすれば回避できる・・・・・折角戦車道から離れたのに俺が大洗に誘ったせいでみほが・・・・

 

「彼女は転校生ですか・・・・今日は始業式なので明日に接触してみましょうか?」

 

「うん、そうしようか」

 

そしてとりあえず今日のところは終わった。

俺は教室に戻るとみほと沙織と華が一緒に話していた。

 

「なんだもう友達になったのか?」

 

沙織や華には事前に話していたが、さすがのコミュ力だな。

 

「あ、秋人君。おかえりなさい」

 

「秋人おはよー少し久しぶり?」

 

「秋人さんおはようございます」

 

「ああ、ただいまそしておはよう」

 

そして俺も話に混ざる。

今日が初対面なのが信じられないくらいに仲良いな。

 

「じゃあ家って秋人の家の隣なんだー」

 

「うん、こっちに来るときサポートしやすいようにって」

 

「秋人さんちゃんとサポート出来てるんですか?」

 

「失礼だな。ちゃんと朝と晩はみほの家に飯を集りにいくぞ」

 

「サポートされる方!?」

 

「あはは・・・・」

 

そして予鈴が鳴ったので体育館に向かう。

始業式は恙なく進行したので後は帰るだけになった。

 

「みほー今日一緒に出掛けない?ここら辺案内してあげるよ!」

 

沙織がみほを誘う。

 

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えるね」

 

「秋人も来る?」

 

「いや、俺はやることあるから・・・・みほの事頼むな」

 

「はーい」

 

沙織たちを見送った後に俺は電話をかける。

 

「もしもし?まほさん久しぶりです」

 

『秋人か・・・・みほの様子はどうだ?』

 

「一応元気でやってますよ。友達も出来ましたしね」

 

『そうか・・・・元気ならそれでいい。何か異常があったらすぐに連絡してくれ』

 

本来なら自分で確かめたいのに・・・・立場がそれを許さないんだな。

 

「分かりました。とりあえずみほの事は任せてください」

 

『頼りにしてる。練習あるからこの辺でな』

 

たまにこうして連絡してる。

純粋にみほが心配なのが分かるしな・・・

 

「あれ?先輩?」

 

俺に声をかけてきたのはバレー部の近藤妙子だった。

 

「近藤か、どうした?」

 

「先輩こそ・・・・ここ1年の廊下ですよ」

 

ああ、ボーっとしてたらこんなとこまで・・・

 

「ついボーっとしててな・・・・近藤は?練習は早朝と夜だろ?」

 

「はい!最初は起きるの辛かったんですけど、少しずつ慣れてきましたね」

 

体育館は正規の時間だと他の部で使うため。彼女たちは早朝の5時~6時。19時~20時に練習をしている。

 

「お前ら以外に誰か入った?」

 

「いえ・・・・練習時間を聞いたら皆逃げちゃうんですよ」

 

普通の女子高生ならそれもしょうがないか。

 

「後2人か・・・・・そういえば、結局近藤は何をしてたんだ?」

 

「ああ、私はこれから寮に戻るとこだったんですよ。そうしたら先輩がいたから何をしてるのかなーって」

 

「なるほど、じゃあそろそろ行くわ。またな」

 

「はい!あ、いつでも練習に参加していいですからねー!」

 

「近いうちに行くわ」

 

 

朝、今日もみほと一緒に登校して教室で話す。

 

「今年の選択教科どうする?」

 

沙織が俺達に聞いてきた。

 

「去年俺は忍道取ったけどさ・・・・手裏剣投げられなかったよ・・・」

 

「秋人テンション上げてたよねー。初授業の後めちゃくちゃテンション落ちてたけど」

 

まさか近代スパイの情報収集力とか・・・・意味分からない。

いや授業で隣になった歴女たちと知り合いになってから楽しくなったけどさ。

 

「今年は・・・・戦車道が追加されてますね」

 

う・・・・目に見えてみほが落ち込んでる。

 

「戦車道って・・・・あの夏祭りのときにアシスタントしたやつ?」

 

「ああ、つっても俺達には関係ないよ」

 

最初は俺だけでも選ぼうかと思ったけど・・・・俺が関わってみほが思い出すのはよくないから選ばないことにした。

会長は強制だって言っていたけど・・・・・無視しよう。

そうして話をしていると会長たちが教室に来てみほを連れて行こうとする。

 

「待ってください。話ならここでいいでしょう」

 

「んー・・・・ま、いいか。西住ちゃんは戦車道選んでねーってだけだしね。じゃあよろしく頼むよ」

 

そう言って会長たちは去っていった。

 

「みほ・・・・選択科目は自由だから。別に選ばなくていいぞ」

 

「う、うん・・・」

 

あの決勝を思い出したのか?

授業中も心あらずでついには先生にも言われて保健室に向かう。

心配になって俺達もついていった。

 

「みほ大丈夫?」

 

みほを保健室のベットに寝かせて沙織が声をかける。

 

「うん・・・大丈夫だよ・・・」

 

「生徒会の方に戦車道をやってと言われてからですよね?秋人さんは何か知っていますか?」

 

さて、どう答えるべきか・・・・

 

「みほは前の学校で戦車道をやっていたからな・・・だからスカウトされたんだろ。でもみほはやりたくないって思ってる」

 

「そうなんですか・・・・やりたくないものは無理にやる必要もありませんしいいんじゃないですか?」

 

「そうだよ!これはみほの意志が大事なんだしさ!」

 

「ありがとう・・・・」

 

気分も多少良くなって保健室から出たら生徒会からの緊急招集が連絡された。

俺達は体育館で選択科目についての説明をされる。

 

「(戦車道のPVみたいなものか。いつの間に作ったのか気になるけど・・・よく出来ている。興味のない連中も食いつき始めた)」

 

このPVを見て沙織も華もやる気になってしまった。

教室に戻った俺達は・・・

 

「みほもやろうよ!」

 

沙織はそう言うが・・・・

 

「みほは戦車道したくないからこの学校に来たんだよ。だからみほはやらない。後、俺もやらない」

 

「えー・・・じゃあしょうがないか」

 

そして沙織と華は戦車道に書いた〇を消してみほと一緒の香道にする。

 

「そんな!私に合わせなくてもいいんだよ?」

 

「いいのいいの!どうせなら4人一緒がいいしね!」

 

「そうですよ。折角のお友達なんですから」

 

そして提出した後の放課後。

生徒会からみほと俺の呼び出しがかかった。

 

「予想はしてたし・・・・行くか」

 

「う、うん・・・・」

 

「私達も行くよ!」

 

華と沙織も連れて俺達は生徒会室に向かった。

 

「会長ー来ましたよ」

 

「やーやー・・・・で、これどういうこと?」

 

会長は俺とみほが提出した選択科目の希望調査書を見せた。

 

「どうもこうも・・・・そのまんまですよ。俺達は香道を選びました」

 

「ふざけてんの?」

 

「そう見えます?」

 

「戦車道選ぶって言ってたじゃん。裏切るの?」

 

「裏切る?別に何を選んだって俺の自由でしょ」

 

「そう・・・・・・あんたら2人学校にいられなくなってもいいの?」

 

沙織と華が反論するが、まともに取り合わない。

というかそんな脅しが通用すると思ってるんだろうか?俺は事情を知っているから遅いか早いかの違いだが・・・・

違うな。ここで俺が去ったらバレー部や沙織や華、優花里も悲しむ。他にも大洗で知り合いになった人もいる。俺の交友関係把握してるなぁ・・・・・。

 

「で、どうする?」

 

「会長はやると言ったらやる人ですからねぇ・・・・しょうがない。転校しようか?みほ」

 

「秋人!?」

 

「秋人さん!?」

 

悪いな。みほを連れてきたのは俺なんだ。責任取ってやんなきゃな・・・

 

「へー・・・・・本当にいいの?」

 

「俺達の退学にそっちは何もメリットはありませんがそち「あ、あの!!」・・・みほ?」

 

皆がみほに注目する。

 

「私・・・・戦車道やります!!」

 

な・・・・いや、みほの性格を考えれば・・・・・

この状況ならみほは自分を殺してでも選ぶのは少し考えれば分かることだった。

 

「みほさん・・・本当にいいんですか?」

 

「うん・・・・大丈夫だよ」

 

大丈夫か。全然大丈夫じゃないだろ・・・・

ならせめて傍にいて支えてやれるように・・・俺も戦車道に変えた。

 

 

3人が生徒会室から出て少し経ったころ。

 

「先輩らの気持ちは分かりますけど・・・・よくもやってくれましたね」

 

俺は3人の前でキレていた。

 

「いやー悪いとは思ってるけどねー・・・こっちもなりふり構ってられないんだよ」

 

ああ、分かるよ。1年だけでも先輩たちを見てきたんだからな。どれだけ学校が好きなのかは理解してるさ。

 

「・・・・・・もういいです。ただ・・・・・戦車道をしてみほを傷つけるようなマネをしたら絶対に許さない」

 

「うん、肝に銘じておくよー」

 

俺は生徒会室から出た。

 

 

杏side

 

やー怖いなぁ・・・・・本気でキレたの見たの初めてだけど、殺気を受ける感じってこういう感覚なのか。

 

「かーしまいつまでビビってんだ?」

 

「び、ビビってません!」

 

嘘つけ。泣きそうになってた癖に。

 

「秋人君・・・・」

 

小山は単純に島田君の心配?それともあれだけ島田君に愛されてる西住ちゃんへの嫉妬?

 

「にしても・・・・一応は計画通りかな?」

 

まさか西住ちゃんの為に転校を決意するなんて少し予想外だったけど・・・・

 

「そうですね・・・・・しかし島田や西住は戦車道経験者って言ってましたがどの程度のレベルなんですか?」

 

「んー・・・・西住ちゃんは名門黒森峰で副隊長。しかも戦車道の名門西住流家元の娘。島田君も名門島田流家元の息子。どっちも大分強いんじゃないかな?」

 

「ですが、島田の場合は監督で関わる予定なんですよね?良い選手は良い監督になれるわけでも・・・・」

 

まー河嶋の不安は分かる。私もあの資料見るまではそう思ってたし。

 

「いや・・・島田君の監督としての腕は昔の記録にあったよ。3年前の中学選抜対高校選抜の試合・・・・当時中学選抜の勝つ確率は一桁とまで言われていたけどね・・・それを覆した立役者は島田君って言われてるんだ」

 

「中学生が・・・・監督ですか?」

 

河嶋が不審な目をしてる。まぁ、そうだよね。

 

「どんな事情でそうなったか知らないけど事実だよ。一応陸上自衛隊の人を講師に呼んでたし大丈夫だとは思う」

 

「そうですか・・・・いえ、別に島田が信用できないとかではなくて・・・私たちは絶対に勝たなくてはいけないので」

 

「もちろん。勝つためならどんなことだってするよ」

 

もちろんルールの上でね。

 

杏sideout

 

 

夜。みほの部屋。

俺はいつものようにみほの家に訪れてた。

 

「・・・ごめん」

 

「秋人君のせいじゃないよ。私が選んだことだから・・・・」

 

みほはレシピ本を見ながら料理を作っている。

 

「それでも・・・・・謝りたい。俺がみほを大洗に呼ばなければこんなことにならなかったんだから」

 

「私ここに来たことは後悔してないよ。秋人君もいるし沙織さんや華さんとも友達になれた。それだけで嬉しいんだ」

 

こちらを見て笑顔で言う。

 

「(そんな顔されたら何も言えないじゃないか・・・)」

 

みほだって覚悟を決めたならこれ以上言っても野暮だ。

 

「出来たよー」

 

出来上がったみたいなので皿を運ぶためにキッチンに向かう。

 

「今日は生姜焼きか」

 

あ、エ〇ラの生姜焼きのタレがある。

野菜はカットキャベツか。最近野菜も高いしね。

 

「焼くだけだから簡単だね」

 

「ちょっと焦げてないか?」

 

「タ、タレは焦げやすいですし・・・・」

 

テーブルに運んで一緒に食べる。

 

「やっぱ肉いいな!」

 

多少焦げ付いたところで問題はない。

ご飯が凄い進む。

 

「ちゃんとキャベツも全部食べてね」

 

「人って肉だけ食えば生きていけると思うんだ・・・・」

 

「バランスよく食べなきゃダメだよ?」

 

作ってもらっている身なので渋々ながらキャベツも食べる。

食べられないことはないけど、野菜は好きじゃないんだよなぁ・・・

 

 

夕飯も食べ終わったし明日も早いので今日はボコ鑑賞会をしないで部屋に戻って寝た。




主人公は料理を作ってくれる対価としてみほの食材代含めて全て払っています。
これまでほぼ出番がなかったのにこの話だけで一気に正妻ポジに入ってくるとは思わなかった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

時間なくて急いで書いてしまって適当になってしまった。
でも、いつも適当だし関係ないか。


今日は戦車道受講の初日。

受講者は全員戦車倉庫の前に集まる。

人数は俺含めて23人だが、特典のわりにはあまり集まらなかった印象だ。

 

まずはバレー部チーム。

話では活躍すればバレー部を復活させてもらえるっていうことだが・・・

 

「そんな事会長が言っていたのか?」

 

俺は典子に確認する。

 

「ああ!会長が「んぁ?いーよー」って言っていた!」

 

うーん・・・あまり信憑性というか、多分会長自身覚えてなさそうな返答だな。

 

「先輩も戦車道選んだんですね!・・・・もしかして私たちの為に!?」

 

「さすが島田先輩!」

 

いや、そんな事実はないんだけどな・・・・

佐々木も近藤も勘違いしてるなぁ。

 

「先輩がいるのって心強いですよ。去年バレー部の為に色々してくれたこともキャプテンから聞いてます!」

 

河西は冷静沈着ってイメージはあったけど、典子にでも毒されたか?

それに色々と言っても大したことはしてない。

 

「結果は残念だったけどな・・・・まぁ、これからよろしく頼むよ」

 

『はい!』

 

次は歴女チームかな。

去年の選択科目で知り合った程度の仲だけど、また一緒になるとは・・・・

 

「ようお前ら。また一緒だな」

 

「おや?島田じゃないか」

 

最初に声をかけたのはカエサル。

こいつらはソウルネームで普段から呼び合ってるせいで1年経っても本名はしらない。

 

「島田も戦車道を選ぶとは・・・」

 

「これは運命だ!」

 

エルヴィンと左衛門左。

長いから俺はエルと門左と呼んでいる。

 

「まぁ・・・・よろしく頼むわー」

 

後は・・・・1年グループか。

 

「あの男の先輩って・・・・」

「やっぱりそうだよぅ」

 

俺を見てコソコソする1年チーム。

 

「人のこと見ながらコソコソ話すのは感心しないなー」

 

「す、すみません!」

 

「あわわわわ・・・・」

 

「うぅ・・・・」

 

あれ?俺そんなに怖いのか?

 

「いや分かってくれればいんだけど・・・・何故そこまでビビるんだ?」

 

「だ、だって・・・・・あの大洗のハーレムキングさんですし・・・」

 

今この子・・・・・何て言った?

 

「あー・・・・誰かと間違えてないか?」

 

「だって・・・・・島田秋人先輩ですよね?」

 

「確かに島田秋人は俺だが・・・・・」

 

「やっぱり!私達も食べられちゃうのかなぁ・・・・」

 

なんだろう。これ放置すると後々面倒になりかねない気がする。

 

「はぁ・・・・一番冷静そうな・・・・君の名前は?」

 

「さ、澤梓です!」

 

「じゃあ澤さん。どういう事?ハーレムキングってなに?」

 

「えっと・・・・私たちの1つ上の学年に常に女性を侍らせてる人がいるって聞いて・・・その人の名前が島田秋人さん。大洗のハーレムキングって新聞部の新聞に書いてあったので。記事によれば近づいてきた女性全てを食らうから気をつけろって・・・」

 

また新聞部か。あまりにも書かれ過ぎて途中で読むのやめたっけ。

あれからまた根も葉もない記事を・・・・

 

「今の2、3年は全員理解してるけど・・・・1年だししょうがないか。基本的に新聞部の記事は面白半分で見ることを教えておくよ」

 

「面白半分・・・・ですか?」

 

「ああ。基本的に2、3年は創作物として楽しんでるのが大半だよ。入学してきたばっかの1年生は君らみたいに信じてる人もいるけど・・・・・半年くらいしたら慣れるんじゃないか?」

 

俺がそう言うと

 

「なんだデマか~」

 

「漫画みたいな人がいるなぁって思ってたけど」

 

「先輩カッコイイから信じちゃった!」

 

これから長い付き合いになるかもしれないんだ。

変な誤解はなるべく払拭しときたい。

 

「じゃあこれからよろしくな。分かんない事あったら何でも聞いてくれ」

 

『はーい!』

 

素直な子達だな。こういう子達って伸びるんだよなー。

俺は次に優花里のもとに来た。

 

「やっぱり来たな」

 

「あ、島田殿!当然ですよ!私が来ないわけないじゃないですかぁ」

 

それもそうだ。誰も来なくても優花里だけは来ると確信してたし。

 

「これからは同じチームだ。俺は試合に出れないけどよろしくな」

 

「はい!それにしても西住みほ殿がいるなんて・・・・島田流と西住流・・・夢の競演ですね!」

 

「ま、2度とないことかもしれないし・・・・ある意味奇跡だな」

 

日本を代表する二流派の本家筋が同じチームって今までにないんじゃないか?

改めて思うけど・・・・本当に奇跡と言っていいかもな。

俺は優花里に別れを告げて前に出ようとすると・・・・

 

「ちょっと!私達は無視なの!?」

 

「沙織か・・・・普段教室で顔合わせてるし今更挨拶もなにもないだろ」

 

「そうですけど・・・少し寂しいです」

 

「華がそう言うならしょうがない。ほら、何か話せ」

 

「何で華ばっかりいつも優遇するの!?しかも妙に上から目線だし!」

 

「そんなことない。沙織もちゃんと大事にしてるぞ」

 

「え・・・・・それならいいけど・・・・」

 

さて、沙織の機嫌も戻ったし会長のとこに行くか。

俺はみほに小さく手を振りそれに気づいたみほも俺に小さく手を振った。

俺が会長のとこに戻って報告する。

 

「報告します。人数は生徒会を抜いて18人。結構仲間内で固まってるのでチーム分けは仲間内でいいでしょう。あそこに1人でいる子はみほのところに入れます。必要戦車数は5両といったとこですかね」

 

「うん、報告ありがとー。じゃあついでに仕切りもよろしくー」

 

うわ、面倒な事になった・・・・

 

「では・・・・今から戦車道の授業を始める。講師役は俺、島田秋人が行う」

 

「秋人が?」

 

沙織が疑問を口に挟む。

まぁ、乙女の嗜みと言われてるくらいだし男の俺が講師役というのもおかしいと思ってもしょうがないか。

 

「俺は幼い頃から戦車道に関わってきた。監督としての実績も一応ある。だから俺が選ばれた。一応講師役の人も明後日来るが・・・・その人も常に俺達を指導してくれるわけじゃないからな。納得したか?」

 

「納得はしたよ・・・・・戦車道やっていたことなんて初めて知ったけど」

 

戦車道に関係がない沙織たちに話してもしょうがないと思っただけで他意はない。

そして俺は戦車倉庫を開ける。

 

「中に戦車が入ってるから実物を一度見てみてくれ」

 

俺は彼女らを引き連れて戦車倉庫に入る。

 

「これって・・・・」

 

「Ⅳ号戦車D型だ」

 

汚い、ボロい。そんな言葉が聞こえてくる。

長年放置されていたしそれもしょうがないだろう。

 

「装甲も天秤も大丈夫そう・・・・・これなら問題ないかも」

 

いつの間にかみほが手をつけて確認していた。

 

「でもこれ1両じゃ・・・・」

 

1両じゃ勝負以前の問題だしな。

俺は手を叩いて注目を集める。

 

「さて、実はこの戦車倉庫には1両しかない・・・・・しかし、あくまで戦車倉庫にはだ。今日の授業1回目は全員で戦車探しを行う」

 

ブーブー文句を言うやつもいるな。

文句を言いたい気持ちも分かるけどな。

 

「1両じゃ話になんないんだよ・・・・だから最低でも4両。1チーム1両ずつ探してくれ」

 

戦車道を始めるならせめて必要数を用意しとけよって話だが・・・しょうがないだろ。急遽決まったんだからな。

 

そして戦車探しを始める彼女達。

俺はみほにメールで「お前をチラチラ見てる子いるから誘ってやってくれ」と打って送信する。

みほならちゃんと誘ってくれるだろう・・・

 

「生徒会では探さなくていいんですか?」

 

「うん。1チーム1両見つけられればOKだからねー」

 

「しかし見つかるでしょうか・・・・」

 

河嶋先輩が心配そうにするが・・・・

 

「ぶっちゃけ運ですね」

 

「身も蓋もないな・・・・」

 

都合よく見つかればいいんだが・・・・

 

 

本当に1チーム1両見つかった。

ご都合主義っぽい気もするが、見つかったものはしょうがない。

それを自動車部に依頼して戦車倉庫の前に運んでもらった。

 

「どれをどのチームが乗る?」

 

河嶋先輩が俺に聞いてくる。

 

「普通に見つけたチームがそれに乗るって感じでいいでしょう。生徒会チームはみほ達が見つけた38tがいいですね・・・・みほ達にはⅣ号に乗ってもらうけどいいか?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

後は・・・・洗車する必要あるけど明日でも問題ないか。

 

「今日はこれで終了する。明日は戦車の洗車をするから体操服か、汚れてもいい服で来るように・・・・・解散!」

 

『ありがとうございましたー!』

 

さて・・・・・と

 

「じゃあ詳しく聞きたいし・・・・」

 

「ゆっくり出来る場所に行きましょうか?」

 

俺は沙織と華に連行される形でついていった。

 

 

「で、どこに行くんだ?」

 

「みぽりんの家。正直気になってたんだよねー関係性とか・・・」

 

関係性なぁ・・・・

 

「別に私と秋人君は・・・・友達だよ」

 

「いやそれは分かってるけどね・・・・結構前に知り合ったんでしょ?」

 

「うん。戦車道関係でね・・・・」

 

そして俺達はみほと俺の暮らすアパートについた。

 

「ここがみぽりんの家かー」

 

「みほさんらしい部屋ですね」

 

俺達はとりあえず座ってお茶を飲む。

 

「まずは夕飯食べながら聞きたいなー」

 

そして沙織主導で料理を作る。

意外と華が出来なかったのが意外だけど・・・・お嬢様だっけ。

それなら出来なくてもしょうがないな。

優花里が飯盒で米を炊こうとしてたのは・・・予想はしてたけど予想通りすぎて少し退いてしまった。

そして出来上がった料理を皆で食べてる途中で話に入る。

 

「そういえば聞いてなかったもんね。秋人が大洗に来るまでのこととか」

 

「そういえばそうでしたね」

 

「家柄はみほと同じようなもんだよ」

 

「確かみほさんは西住流で・・・・なら、秋人さんは島田流ですか?あれ?島田流ってどこかで・・・・」

 

華が思い出す前に沙織が思い出した。

 

「思い出した!去年の夏休み!」

 

「そういえばあの方は島田流家元・・・・もしかしてあの方って秋人さんのお母様ですか?」

 

「正解だよ」

 

「あのイベントは最高でした!まさか島田親子の共演が見られるなんて思いもしませんでしたよー!」

 

優花里が感動したように言う。

 

「えっと・・・・・そんなに凄いの?」

 

「もちろんです!日本戦車道ここにありと世界に示した島田流は西住流と並ぶ日本の戦車道の二大流派なんですよー!」

 

「そんなに凄いんだ・・・・・じゃあ秋人とみぽりんが知り合ったのっていつなの?」

 

「それは・・・・・3年前の中学選抜だな。俺はそこで監督をやってみほが選手だった」

 

懐かしいな・・・思い出したくないこともあるけど

 

「懐かしいね。急に来た秋人君が「俺がお前らの監督だ。今から実力を見せてやる。それで1人でも不満なら出て行ってやる」って・・・・・皆あっけにとられてたなぁ」

 

みほが思い出し笑いをする。

 

「秋人そんなこと言ったの!?」

 

「・・・・あの時は急に指名されたからな。時間もなかったし認めてもらうには一番てっとり早かった」

 

「それでそれで?」

 

沙織が興味深そうに聞く。

俺的には恥ずかしい黒歴史だから止めてほしい。

 

「長くなるから過程は省くけど・・・・・結果的に全員認めて秋人君が監督になったの。」

 

あの時は少し無茶したっけ・・・・

そして優花里が補足する。

 

「その試合は中学選抜対高校選抜だったんですけど・・・・勝率一桁台と言われてた中学選抜が勝ったんですよ。それ以来ですね。島田殿が有名になりだしたのって・・・」

 

「一部でな」

 

「それが監督としての実績なんですね・・・・」

 

「じゃあじゃあ・・・・・何で大洗に来たの?そんなに凄いならもしかしてスカウトあったんじゃないの?」

 

「・・・・・強豪校は女子校ばっかだからな。男の俺が入れるわけないだろう」

 

「嘘ついちゃダメだよ秋人君。ダージリンさん達から聞いてるよ。特別枠でスカウトされたのに聖グロもプラウダもサンダースも蹴ったってね」

 

「それ本当ですか!?聖グロもプラウダもサンダースも全国4強の1つじゃないですか!」

 

みほめ・・・・別に言わなくていいことを・・・・

 

「でも戦車道って本来女子だけだよね?スカウトされても選手としては・・・あ、分かったコーチとしてだ!」

 

「沙織正解。俺はコーチとして3年間協力するようにスカウトされたんだよ」

 

「では・・・・・なぜスカウトされて行かなかったんですか?」

 

「・・・・・女々しい理由だから言いたくなかったけどさ・・・・どこに入ってもどっかと敵対するだろ?それが嫌だったんだよ・・・俺にとっては短い期間とはいえ初めてのチームメイトだったんだから」

 

癖が強い人達だったけど・・・・それでも良い奴らだったんだ。

ま、結果的に全部と敵対することになったけどさ・・・

というか、何でこっちを見てニヤニヤするんだよ。

 

「いやー秋人も可愛い所あるんだなぁって」

 

「秋人さんの新しい一面を見れた気がします」

 

「島田殿って優しくて甘いですよね~」

 

ちくしょう・・・・・

 

「以上で話し終わり!ご馳走様!俺は帰る!」

 

「えーもっと話そうよー」

 

「断る!」

 

俺は部屋から飛び出して自室に戻って不貞寝した。

 

 

みほside

 

ちょっと余計な事言っちゃったかな?

 

「あー秋人怒っちゃった・・・」

 

「少し悪ノリがすぎましたね・・・・」

 

華さんと沙織さんが反省している。

 

「大丈夫だよ。きっと照れてるだけだから・・・・明日になれば元通りの秋人君になってるよ」

 

3年の付き合いだもん。それくらいは分かるよ。

 

「それならいいけどさ・・・・ま、今日は秋人のこと知れたしよかったなー」

 

「そうですね。あまり過去を詮索するのはよくありませんが・・・・知れて嬉しいです」

 

やっぱり秋人君ってどこに居ても愛されてるんだなぁ。

昔も色々あったけど、最後には皆から愛されるようになったし・・・

親愛が恋愛に変わった人も多いけどね。

 

「どうしたのみぽりん?」

 

「う、ううん!何でもないよ!」

 

もしかして沙織さんと華さんも・・・・でも秋人君だもんね。1年秋人君と一緒にいたのなら充分にあり得るか。

 

「ではそろそろ片づけますか!皿洗いなら任せてください!」

 

優花里さんがみんなの食器を運んでくれる。

皆優しくて・・・・やっぱり大洗に来てよかったな。

 

 

みほsideout

 




中学選抜のせいで既にみほは色々なチームの面子と知り合いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

「明日には教官が来るから今日中に洗車を済ますこと」

 

俺は彼女たちに指示を出して洗車させる。

彼女たちは素人なので俺とみほが手分けしてそれぞれのチームの戦車をみた。

 

「これなら指示を出すだけでなんとかなりそうかな。みほのほうは?」

 

「同じかな。思ってたよりもひどくはないからなんとかなるかも」

 

そしてそれぞれの清掃ポイントを説明した後は生徒会チームのほうに行って清掃を開始した。

 

「柚子先輩なんで一人だけ水着なんですか?」

 

「うぅ・・・・だって会長が・・・・」

 

柚子先輩の姿は白いビキニ。正直眼福すぎる。

俺は会長を見てGJをすると、会長も答えてくれた。

 

「似合ってるしいいじゃないですか。じゃあ俺は中をやるので、柚子先輩はそのまま外装のほうをよろしくお願いします」

 

俺は返事を聞かず中に入った。

ついでに会長と河嶋先輩は見てるだけだった。

 

 

「恵みの雨だー!」

 

俺が作業をしてると外で楽しそうな声が聞こえる。

俺も水浴びしたいと思ったので外に出た。

 

「あれ?終わったの?」

 

柚子先輩がデッキブラシを持ったまま俺に声をかける。

 

「後半分くらいですかね。水浴びついでにちょっと休憩です」

 

「そうなんだ。今1年生がホース使ってるから行ってくるといいよ」

 

俺は水浴びついでに様子を見に1年チームのほうに行く。

 

「よう、順調か?」

 

俺はホースを持ってるツインテールのメガネに話をかける。

名前?聞いてないから知らない。

 

「あ、先輩。順調です!」

 

「そっかそっか。分かんないことあったら俺かみ・・・西住に聞いてくれ」

 

「はーい。ありがとうございます!」

 

「後俺に水かけてくれないか?戦車の中暑くてさー」

 

「あはは、分かりましたー」

 

笑いながら俺に水をかけてくる。

あー気持ちいいな。

水でびしょ濡れになったのでシャツを脱いで絞る。

 

『・・・・・・』

 

ん?視線を感じたのでその方向をみると1年チームだった。

 

「どうした?」

 

「いえ・・・あの・・・・」

 

澤が何か言いづらそうというか・・・顔を赤らめる。

 

「先輩ガッシリしてるー!」

 

・・・・こいつ誰だっけ?

見た目も声も幼いやつ。

なんか急に降りてきて人の腹筋触ってくるんだけど・・・・

 

「ちょ、桂利奈ダメだよ・・・・凄い硬い・・・」

 

ダメとか言いながらお前も触ってんじゃねーよ。

えっと・・・・1年チームで一番スタイル良さそうなやつ。

 

「本当だ~」

 

「私も触る~」

 

「・・・・・・」

 

結局澤以外の1年チームが触ってくる。

つーかお前らいいの?思いっきり下着透けてるんだけど・・・

 

「こら!みんな先輩に失礼でしょ!」

 

澤は1年のまとめ役だな。

 

「えー梓だって触りたいと思ってる癖に~」

 

「う・・・・」

 

図星だったのか黙ってしまう澤。

 

「ねー先輩あれできる!?あの腕に捕まってぶら下がるやつ!」

 

桂利奈?が聞いてくる。

 

「あーあれか。多分出来るぞ」

 

「やってやってー!」

 

ここまで無邪気じゃないけど何故か愛里寿を思い出すな。

あれ?コイツって15歳・・・・・

まぁ、いいや。気にしないようにしよう。

 

「ほら、腕に捕まれ」

 

「わーい!」

 

桂利奈が腕に捕まったので俺はそのまま持ち上げる。

 

「すごーい」

 

「力持ち~」

 

人間1人を片腕だから結構疲れるな。

漫画とかでは楽にやってるけど普通にキツイ。

 

「凄い先輩!」

 

おいそのままブラブラ揺れるのやめろ!

しかし先輩としてのプライドがあるので口には出せない・・・

 

「おい!1年チームと島田!何を遊んで・・・・なんで島田は半裸になってるんだ!?」

 

やっべ、河嶋先輩に見つかった。

 

「休憩ついでに水浴びしたいから1年チームに行ったらこんな感じになりましたー」

 

「ましたー」

 

「お前らは・・・・・島田、また新聞部に書かれるぞ」

 

マズイと思った俺は桂利奈を下ろしてシャツを着る。

 

「これ・・・・・経験上もう手遅れなんですが・・・」

 

「諦めろ。お前が悪い」

 

見出しは『島田秋人!今度は新入生に半裸で迫る!!』かな?

 

 

俺が戻ると柚子先輩が作業を続けていた。

 

「おつかれーっす」

 

「・・・・・」

 

あれ・・・あんまり機嫌良くない?

戻るのが遅くなったしなー・

 

「えっと・・・・戻るの遅くなってすみません」

 

「別にいいよ。秋人君が1年生たちとイチャイチャしてても私には関係ないもん」

 

あ・・・・戻って来るのが遅れたからじゃなくて1年生と楽しそうにやってたのが悪かったのか。

 

「別にイチャイチャしてませんよ。ほら、入ったばっかの新入生だとどうしても先輩に壁作っちゃうでしょ?それじゃあよくないし、今後の事も考えて仲良くしてたんですよ。ま、要らない心配だったんですけどね」

 

なんせあんまり話したことない先輩相手にボディタッチしてくるくらいだ。

あれなら問題ないし、行きすぎたら澤が注意するだろうし・・・・案外バランス良いな。

 

「ふーん・・・・・そんな打算があったんだね。そうは見えなかったけど・・・・あの子たちの透けブラをチラチラ見てたでしょ?」

 

「・・・・そこは健全な男子なので・・・・許して頂けると」

 

バレてたのか。

しかし俺も健全な男子だ。ある程度はしょうがないと思ってほしい。

 

「・・・・・シュークリーム食べたいなぁ。生クリームたっぷりの」

 

その程度で許してくれるなら・・・

 

「帰り喫茶店に寄りますか。今日は何でも奢りますよ」

 

「うん!約束だよ!」

 

さて、話も終わったし作業再開しますか。

 

 

 

洗車も終わったし今日はこれでお終いかな。

細かい整備は自動車部に任せよう。

 

「今日はこれで終わりだ。後は自動車部に整備を依頼して明日までに運転出来るようにする・・・そこは河嶋先輩から頼んでもらっていいですか?」

 

「分かった」

 

「じゃあ解散!」

 

そうしてそれぞれ着替えに更衣室に向かう。

俺は柚子先輩に声をかける。

 

「じゃあ校門で待ち合わせしましょう。着替え終わったら来てください」

 

「分かったよ」

 

俺はすぐに着替え終わったので校門で柚子先輩を待つ。

そうすると5分程度待って柚子先輩が来る。

 

「待った?」

 

「5分程度なんで問題ないです。じゃあ行きますか」

 

そして俺と柚子先輩は近くにある喫茶店に向かった。

店に入ると学生でいっぱいだった。

 

「じゃあ言ったとおりお好きにどうぞ」

 

まぁ、女子の胃袋だし大した出費にもならないだろう。

しかし俺は忘れていた。華という前例と甘いものは別腹という言葉を・・・

 

「ありがと。じゃあシュークリームと・・・・・チョコケーキとモンブラン。後は桃のゼリーとイチゴのショート。あ、飲み物はコーヒーで」

 

結構食べるんだな。まぁ、問題はない。

 

「とりあえずそれで」

 

とりあえず?まさかそれだけ食べて追加注文する気なのか・・・

そのまさかだった。

柚子先輩は容赦なく食べた。

普段は小食のハズなのに甘いものには目がないのかその後も食べては注文を繰り返した。

 

「5200円です」

 

俺も食べたけど柚子先輩の消費量半端じゃねぇ・・・・

その栄養はどこに・・・・ああ、胸か。

会計を済ませ外に出る俺達。

 

「ごめんね・・・少し食べ過ぎちゃった」

 

あれで少し?

 

「いえ、大丈夫ですよ。食べてる時の幸せそうな顔が見れたのでむしろ役得です」

 

「もう・・・・あんまり人の食べる姿見るのよくないよ?」

 

「いいじゃないですか。奢った人の特権ですよ」

 

「しょうがないなぁ、秋人君は」

 

しょうがないとか言いながら柚子子先輩は笑う。

俺達はそのまま帰路に着いた。

 

 

 

今日から本格的に戦車道の授業に入る。

整備も自動車部が頑張ってくれたので運転出来そうだ。

 

「今から教官が来るから粗相のないように」

 

俺も誰が来るかは分からない。

陸上自衛隊に連絡したときに教官を派遣するとしか聞いてないからだ。

 

「はい!教官ってイケメンですか?」

 

沙織が手を挙げて俺に質問する。

 

「お前バカ?戦車道の教官なんだから女性に決まってんだろ」

 

いや、俺の存在がいるから勘違いしたのか?

しかし陸上自衛隊の隊員は事務員と整備士以外は全て女性だ。

後はお偉いさんもか。

整備士も事務員も男性の数は極少だけど・・・。

 

そうしてると空から輸送機が降りて戦車を駐車場に放つ。

正確には学園長の車の上に落ちてコナゴナにしてこちらに来る。

 

「(あ・・・最近新車に変えて自慢しまくってた理事長の車が・・・・)」

 

哀れ学園長。

俺は心の中で合掌を送る。

 

そして戦車から出てきたのは見覚えのある女性だった。

 

「みんな、こんにちは!」

 

挨拶されても皆退いてるんだけど・・・・

 

「あー・・・教官の蝶野亜美一等陸尉だ。全員挨拶!」

 

『よろしくお願いします!』

 

しかし蝶野さんか。この人戦車の腕は良いけど感覚派・・・・天才なんだよな。

教えるのにあんまり向いてるタイプでもないと思うけど実際はどうだったっけ

 

「戦車道は始めての人が多いと聞いていますが、一緒に頑張りましょう!」

 

こちらを見る蝶野さん。

 

「久しぶりね、秋人君!」

 

「はい、ですがお話は後でお願いします。時間があまり「あれ?西住師範の娘さん?」」

 

聞けよ。

 

「師範にはいつもお世話「蝶野教官!個人的な話は後にして早速ですが教導をお願いします!」・・・それもそうね」

 

言葉を遮ったのは悪いけど、黒森峰以外にいるんだからみほの事情を察してほしいな。

 

「西住師範?」

 

「秋人先輩とも知り合いだったっし・・・」

 

チッ、ざわめきだした。

俺は手を叩いて静かにさせる。

 

「私語は慎んでくれ!・・・・教官、お願いします」

 

俺は一歩後ろに下がって蝶野さんの右後ろに立つ。

 

「本日は練習試合を行います」

 

え?まだ動かしてないんだけど・・・・

 

「すみません、蝶野教官。彼女たちは一度も戦車を動かしてないんですが・・・」

 

俺がそう進言すると・・・・

 

「大丈夫!戦車なんてバーって動かしてダーって操縦してバンッって撃つだけなんだから!秋人君もそうでしょ?」

 

正直一緒にしないでほしい。

そういえば昔陸上自衛隊の演習に参加したときに・・・

 

「え?今の操作?なんとなくやったら出来た」

 

天才というべきか、本能で最適を導けるタイプって身体が理解しても頭では理解してないから素人に教えるのにあまり向いてない。

なぜ自衛隊はこの人を寄こしたのか。

 

「えーっと・・・各々、地図の印のところまで戦車を移動してみろ。習うより慣れろ。実戦あるのみ・・・・らしい・・・・ゴメン皆」

 

こんなことになるなら教官来る前に基本操作は教えておくべきだった。

 

 

俺と蝶野さんは高台に上がって皆の見える位置に移動する。

 

「正直蝶野さんが来るなんて予想してませんでしたよ」

 

人選的な意味で。

 

「驚いた?秋人君がいるって聞いて自分から志願したの。何故か周りには止められたけど」

 

俺のせいか、ごめん皆。

 

「で、俺は蝶野さんと一緒にここで審判・・・・と」

 

「出たかった?」

 

正直出たかった。生徒会チームなら空きがあるから出れたし。

 

「俺が出ても・・・・・意味がないので」

 

俺が出れば負けない。

これは自信じゃなくて確信だ。

ただ、公式戦に出られない俺がやっても意味がないし勉強にはならないことを当然理解してるけど・・・・みんなと戦車道やりたいな。

はぁ、こういう所が女々しいんだよなー・・・・

 

「ふふ、出たいなら出てもいいわよ」

 

「え!?」

 

「今日は戦車に慣れる為にするからね。そうねぇ・・・・生徒会チームの装填手ならやってもいいわよ。ただし装填のみに集中すること・・・・貴方が指示していいのは最後1対1になったときのみで相手が西住師範の娘さんのときのみ。それを約束するならいいわ」

 

「蝶野さん大好き!」

 

俺は蝶野さんに思いっきりハグをする。

 

「あら・・・・秋人君嬉しいけどせめて場所を「じゃあ早速行ってくる!」あ・・・ふふ、いっぱい楽しんでおいで!」

 

俺はかけだして38tのもとに急ぐ、指定位置には既に38tが着いていたので乗り込んだ。

 

「やっほー皆さん俺も参加します」

 

「秋人君!?」

 

「島田!?参加するのか!?」

 

「はい、装填はお任せしていいので好きにやっちゃってくださいませ」

 

「おー島田君かー。てっきり審判するのかと思った」

 

会長が寝そべって言う。

 

「教官から許可を貰ったので・・・・・でも装填しか出来ません。条件を満たさないと指示が出来ないのでそれまでは3人にお任せします」

 

「条件ってなんだ?」

 

河嶋先輩が聞いてくる。

 

「最後の1対1の相手がⅣ号のときのみ俺は指示を出せることになってます。それまでは装填のみしか出来ませんので」

 

「そうか。まぁ、装填も兼任しなきゃいけないとこだったんだ。それだけで助かる」

 

うん、やっぱり会長は寝てるだけか。

 

「ふむ・・・柚子先輩が操縦、河嶋先輩が砲手、会長が一応車長ですか。正直みんなと戦車に乗れて試合が出来るだけで嬉しいのでもう満足なんですけどね」

 

勝ちたいよりも嬉しいって気持ちがデカすぎてニヤケが収まらない。

 

「ふふ、秋人君凄い嬉しそうだね」

 

「こんなに嬉しそうな島田君って始めて見たかもねー。ま、楽しんでこーか」

 

いつものように会長が占める。

 

『みんな位置に着いたわね?』

 

おっと、蝶野さんからの無線か。

 

『戦車道にはフラッグ戦、殲滅戦の2つがあります。今回は殲滅戦を行います。要は全部倒せってことです。最後に・・・・戦車道は礼に始まり礼で終わります。一同、礼!』

 

『よろしくお願いします!』

 

そして試合が開始された。

 

 

「まずはどうしましょう?」

 

俺なら他と協力してⅣ号を倒す・・・・・フリをしてⅣ号を倒させる。

倒させた後は必ず無防備になるから速攻で撃破するな。

 

「まずはⅣ号だ。経験者のⅣ号を他と協力して倒す。それでいいですよね?会長」

 

「いーんじゃない?」

 

干し芋食ってリラックスする会長。

 

「俺にも干し芋下さい・・・・お茶持ってくればよかったですね」

 

俺の言葉に柚子先輩が反応する。

 

「え?お茶やお菓子って持ち込んでいいの?」

 

「はい。紅茶を常備してる高校もありますし規定違反ではないので・・・・規定違反さえなきゃ基本何やってもいいです。ただ、マナーの範疇で」

 

俺は貰った干し芋を食べながら柚子先輩に答える。

 

「そうなんだ。結構自由なんだね」

 

「お前ら試合中だぞ!集中しろ!」

 

河嶋先輩が嗜めるけど・・・・

 

「大丈夫ですよ。ここからみほのいるⅣ号までまだ時間はかかりますし・・・・序盤は恐らく皆色々試してるとこですから」

 

なんせ初めて乗るんだ。スムーズにいくわけない。

 

「だからって・・・・!」

 

うーん気負っているなぁ・・・・

俺は河嶋先輩の肩に両手をのせて揉み解す。

 

「リラックスリラックス。そもそも集中なんて長時間続きませんし・・・・必要ないところで気合い入れて肝心なところで疲弊しちゃ元も子もないでしょ?」

 

結構こってるな。

 

「おま・・・・やめ・・・・あ・・・・」

 

うん、吐息がエロイな。

 

「桃ちゃん!?秋人君何をやってるの!?」

 

「あー前見て前見て運転に集中してくださいな」

 

俺はそのまま継続して揉む。

 

「もう・・・・だい・・・じょうぶだ・・・」

 

「じゃあ止めますね」

 

「お前なぁ・・・・」

 

顔が赤くなってこちらを睨んでいる。

 

「そんな顔をして睨んでも可愛いだけですよー」

 

「かわ!!・・・・私は可愛くない!」

 

「可愛いですよー。普段は気が強く見えるけど実はそうでもなくて、有能そうに見えるけど実は成績が低かったり・・・・時折みせる甘えた顔なんて特に可愛いです」

 

「秋人君!?さっきから桃ちゃんを口説きに行ってない!?」

 

前しか見てないし騒音だから聞こえないと思ったんだけどな。

 

「桃ちゃん言うな・・・・あと、島田はもうやめてくれ・・・恥ずかしい」

 

俺は河嶋先輩の手を引いて腰に手を回して顔を近づける。

 

「ほら・・・・そういうところ。本当に可愛いな・・・・桃ちゃんは」

 

「!!??!?!??!??!」

 

顔が真っ赤だな。やりすぎたか?

 

「いやー何か島田君の本気を見たって感じだね」

 

ガラにもない事を言ったな。テンション上がりすぎて少しハイになりすぎたか?

俺は手を離して河嶋先輩を座らせる。

 

「さ、そろそろ敵が見えるころですよー。恐らく他の敵が既に襲撃してるころなので混乱に乗じてヤリましょう」

 

「指示していいの?」

 

「指示じゃありません。独り言です」

 

お?気づいたら後ろにM3・・・・1年チームが着いてきてるな。

 

「後ろに1年チームがいますね。気にしなくていいでしょうけど、頭には入れといたほうがいいかもです」

 

当てられる技術はまだないだろうしね。

 

 

おっと、橋にⅣ号が止まってるな。

んで、追撃してるのは三突と八九式・・・・・三突が歴女で八九式がバレー部か。

 

「よし!」

 

河嶋先輩がⅣ号を仕留めようとするが外れる。

 

「桃ちゃーん・・・・そこで外す?」

 

「桃ちゃん言うな!島田のせいで少し動揺しただけだ!」

 

あら。効きすぎたか?

 

「じゃあもーいっぱつどうぞ」

 

俺は河嶋先輩が撃った瞬間には既に装填は完了させた。

 

「次は外さん!」

 

しかし外した。

あらら・・・・

 

「ドンマイでーっす・・・・・あん?」

 

Ⅳ号の動きが止まったと思ったら・・・・明らかに動きが変わった?

 

「(操縦手を変更した?誰と?・・・今までの素人臭さがなくなってる・・・・みほか?いや、みほは操縦はそこまで上手くない。一体誰と・・・・)」

 

考えてもしょうがないし考えるのはやめた。

そして復活したⅣ号がⅢ号と八九式を仕留める。

 

「(操縦を任せられるやつがいたおかげで砲撃に集中できたってわけか・・・)」

 

しかしここまで変わるとは・・・・さすがだな。

 

「どうする!?」

 

「どうしよう・・・・」

 

「とりあえずM3の後ろに移動しようか。すぐに撃破されるだろうけど・・・・島田君が動けるようになるよ」

 

そしてすぐにM3の後ろに隠れるが、M3も撃破されてしまった。

 

「じゃあ今から車長と装填手を兼任します・・・・・いいですか?」

 

「もちろんだよ!」

 

「頼む!」

 

「じゃあ私はのんびりさせてもらうねー」

 

みほは勝った気でいるか?だが、試合はこれからだ・・・・

 

 

みほside

 

38tの動きが変わった?

動きに迷いが無くなってる気がする・・・

 

「秋山さん。一発38tに撃ってみてください。外しても構いません」

 

「了解です!」

 

砲撃は外れたけど問題はありません。

やっぱり動きが変ってる・・・・38tは生徒会チームだけど・・・・

秋人君は乗ってないはずだし、秋人君以外に経験者はいないはず・・・

 

「このまま距離を詰めていいのか?」

 

「お願いします」

 

さて、どう倒せばいいんだろう。

このまま距離を詰めても相手は離れて行くし・・・なら

 

「冷泉さん。一周周ってさっきの橋に誘導できる?」

 

「やってみよう」

 

このままじゃ埒があかないし・・・地形を利用するしかないか。

 

 

みほsideout

 

 

「動き的には誘導か・・・・このままじゃ埒があかないしな。なら乗ってやるか」

 

そしてさっきの橋まで近づいてきた。

 

「柚子先輩。徐々に徐々に減速してってください。そして合図を出すのでその時急停止して思いっきり右にハンドルをまげてください」

 

「うん」

 

次は・・・・

 

「河嶋先輩・・・・相手の意表をつきます。隙が出来てなおかつ近距離。チャンスは一発ですが・・・汚名を返上したいなら俺の合図で撃ってください。」

 

「任せろ!」

 

さて、砲身は斜め後ろ・・・・タイミングが勝負になるな。

 

 

みほside

 

 

砲身の位置がおかしい・・・・あれじゃあこっちに撃っても当たらない。

 

「多分気づいてないんじゃないかなぁ?」

 

生徒会チームは素人しかいない。確かにそれもあり得るけど・・・・・なにか不気味だなぁ・・・

 

「一応警戒しておきます」

 

それに・・・・

 

「冷泉さん。もしかして前の戦車のスピード落ちてますか?」

 

「落ちてるぞ。徐々に徐々にって感じだな」

 

なら・・・ここで決めます

 

「冷泉さん。ここで思いっきりスピードを出して距離を詰めてください。優花里さんは合図を出すのでそのとき撃ってください」

 

「分かった」

 

「お任せください!」

 

スピードが上がって距離を詰める・・・・タイミングは・・・ここ!

 

「撃・・・・!?」

 

急停止!?しかも右に思いっきり曲がりながら・・・・・砲身がこっちに向いて・・・

 

 

みほsideout

 

 

みほなら絶対ここで決めてくると読んでたよ!

 

「撃て!」

 

距離はかなり短い!まず間違いなく当たる!

 

「喰らえー!!!!」

 

雄叫びをあげて河嶋先輩が撃つ。

 

 

結果は・・・・・・・・・




ここで終わります。
時間がないんや


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

前回の続きから


「お疲れさん」

 

俺はみほに自販機で買ったスポドリを投げ渡す。

試合も終わったので今は休憩中だ。

 

「ありがと。それにしても、秋人君が乗ってるの気づかなかったよ。最後の1対1になったとき動きが鋭くなったのは分かったけど・・・やっぱり秋人君がいるだけで違うんだね」

 

「俺の事はともかく、そっちの操縦手だ。なんだアレ。俺ら以外に経験者いたのか?そもそもどこで拾ってきた?最初はいなかったハズだろ」

 

「うん、お昼寝してたみたいで危ないから乗せたんだ。操縦すごい上手いよねー。教本一通り見ただけであそこまで動かせるんだもん」

 

は?

 

「いや、待て。教本見ただけだと?経験者じゃないのか?」

 

「え?うん・・・・あれが初めてだって」

 

それが本当なら恐ろしい才能だな。

運転は一朝一夕じゃ身に付かない。なのに初めてであれだけの動き・・・・しかも多少見ただけで教本を覚える記憶力。恐らく頭も良いのか。

 

「名前は?」

 

「冷泉麻子さん。ほら、今あっちで沙織さんと話している子」

 

指を差す先には沙織と話している子がいる。

名前で思い出したけど、確か幼馴染って言っていたな。

 

「そうか・・・・それにしても、あの状況でこっちが負けるとは思ってなかった」

 

「私も・・・勝てると思わなかったよ」

 

あの近距離の一撃はこちらが外した。

そしてそのままⅣ号に撃たれてこっちの負けで終わった。

 

「ま、楽しめたからいいけどさ。久しぶりにみほとも戦えたし」

 

負けたけどかなり満足してる。

いや、口に出さないだけで結構悔しいけどさ・・・・

 

「うん、私も楽しかったよ!戦車乗って楽しかったのは久しぶりだな~」

 

みほも笑顔だし、今日の所はこれでいいか・・・

 

俺は全員を集合させる。

 

「じゃあ今日の訓練はここまで。明日からも頑張るように・・・・蝶野教官。最後にお願いします」

 

「じゃあ皆お疲れさま!初めてでこれだけ動かせれば充分よ!特に・・・・AチームとEチーム!両者素晴らしいものを見せてもらったわ!それでは、最後に・・・・・一同、礼!」

 

『ありがとうございました!』

 

 

皆が学園の風呂場に行ってるので俺は1人で寂しくシャワー浴びたあとみほ達を待っていた。

 

「お待たせー!」

 

俺が携帯を弄りながら待っていると沙織の声が聞こえる。

目を離して声の方向に向くとみほチームがこちらに来ていた。

 

「ああ、別に待ってないよ。さっぱりした?」

 

「はい。お風呂が広いっていいですよね」

 

華が満足したように言う。

俺は冷泉のほうを見ると、不満と言うかなんとも言えないような顔をしていた。

 

「よう、沙織から名前だけは聞いてたけど初めまして。島田だ」

 

俺は握手を求めて手を冷泉のほうに向ける。

 

「知っている。何かと有名な男だからな。冷泉麻子だ」

 

それに冷泉は答えて握手を交わした。

 

「で、冷泉は戦車道を受講するのか?」

 

「単位の為にな」

 

「麻子は遅刻が多いから単位不足気味なの」

 

呆れたように沙織が言う。

なるほど・・・出来れば島田流(ウチ)に誘ってみたかったが、この様子じゃ無理か?

そう考えるとさらに勿体ないな。

 

「冷泉は戦車道に興味ないか?」

 

「ない。しかし単位の為だ、やるしかない」

 

やはり無理そうだな。

しかし今はⅣ号の操縦手になってくれるだけでいい。

これから先色々話すこともあるし、将来的には口説き落とそう。

 

「じゃあ皆揃ったし・・・・ん?」

 

俺の携帯からバイブレーションと音が鳴り響く。

会長からか・・・

 

「もしもし?」

 

『あ、島田君?急で悪いんだけどさ・・・・島田君のツテでどっか練習試合組めないかな?』

 

今日触ったばっかなのに・・・時間がないししょうがないか。

試合経験は積ませたいしな・・・

 

「分かりました。色々あたってみます」

 

『よろしくー』

 

さて・・・・と

 

「今の誰からですか?」

 

華が興味深そうに聞いてくる。

 

「会長だ。やること出来たから俺はここで・・・・・じゃあ、また明日な」

 

 

俺はみほ達と別れた後、色々考える。

黒森峰は絶対無理。そもそも選択肢にすら入らないし・・・・

プラウダは・・・無理。カチューシャが相手にするとは思えない。

聖グロなら・・・・ダージリンなら恐らく・・・

俺は携帯からダージリンの番号を鳴らす。

 

『もしもし?秋人さんですか?』

 

「ああ、秋人だ。今大丈夫か?」

 

『ええ、構いませんよ。そうだ、次はいつこちらに来ますか?アッサムもオレンジペコもローズヒップも・・・というか、みんな貴方に会いたそうにしてましたよ。ペコもローズヒップも春休みに1回会っただけなのにね・・・相変わらずの人たらしね』

 

人たらしって言われても、普通に対応しただけなんだけど。

 

「ああ、そっちには当分行けない。多分大会が終わるまでは」

 

『・・・・どういうことでしょう?別に約束はしてませんけど、貴方は定期的にうちのコーチをしてくれます。なのに、大会が近いこの時期に・・・・何かあったんですか?』

 

「うちの学校で戦車道が復活した。だからもう、お前らのコーチは出来ない」

 

向こうから何か割れた音が聞こえた。

何かやっていたのか?

 

『・・・・・それは本当なの?私たちのコーチが出来ない?』

 

「ああ、少なくても大会が終わるまではこっちに掛かりっきりになるだろうな」

 

『そう・・・・そう言えば何か用があったんじゃなくて?』

 

「ああ、練習試合をお願『受けましょう』・・・・即答か。でもいいのか?」

 

聖グロは4強の1角だ。他のチームからも誘いがあったはず。

 

『ええ、ちょうど今週はキャンセルがあって空きがあったの・・・・それで、1つ練習試合で賭けでもどう?』

 

「賭け?」

 

珍しいなダージリンが賭けを持ち出すなんて。

 

『ええ、私達が勝ったら秋人さんは聖グロリアーナに転校・・・・とか』

 

「無理だな。そもそもこっちは今日戦車に触ったばっかりの素人集団だ。あまりに分が悪すぎる」

 

賭けにすらなってない。

いくらみほが居ても、本気で厳しい。

 

『・・・・冗談よ・・・じゃあお互い1日限りの命令権なんてどうかしら?』

 

賭けは冗談じゃないのかよ。

 

「その程度なら・・・・問題ないな。あ、一応言っとくけど、この賭けはダージリンと俺の個人的な賭けな」

 

『ええ、勿論そのつもりよ』

 

それならいい。ダージリンならそう無茶な要求もしないだろう。

 

「じゃあそれでいい。場所はこっちで開催するとして・・・・日時は?」

 

『日曜日の10時開始でどうでしょう?』

 

10時か・・・試合前の戦車の点検・整備・近隣の避難・安全チェックで・・・・6時集合辺りが妥当か。

 

「分かった。それでいい」

 

『では、日曜日に』

 

俺は電話を切った。

というか今週日曜って・・・・あまりに時間がなさすぎる。

 

「まず戦車道連盟に練習試合を伝えて審判派遣してもらって・・・あ、審判は蝶野さんでいいか。あと、商店街の人たちや施設関係者への説明も早くしないと・・・」

 

決まったのなら早く行動しなければ試合まで間に合わないかもしれない。

俺は早速各所に連絡を取った。

 

 

「・・・・ってもう10時か・・・・」

 

各所に連絡を取った後は生徒会室で必要な書類作成に勤しんでいた。

1回練習試合をする度に色々連絡や書類の作成があるのは面倒だな。

しかしそこを怠ったらトラブルの元になるので絶対に手を抜けないし・・・

 

「そういえば彼女らの指導はどうするか・・・・最初はみほと別れてそれぞれ基本を叩きこんで・・・・その後で全体練習だな。せめて試合になればいいんだけど・・・」

 

作戦はどうするか・・・・そもそも作戦通りに動けないだろうし・・・なるべくⅣ号優先で作戦を組むしかないか。

 

「いや・・・・まずは書類だけ終わらせよう」

 

やることが多すぎるけど、優先度の高い順からやっとかないとグダグダになっちまう。

各所に提出する書類が終わったのは11時だった。

 

「やっと終わったー・・・・あ、電源切れてた」

 

俺が携帯を見ると電池が切れていた。

すぐに充電して携帯を開くとみほから連絡がきていた。

 

「あー・・・・夕飯か・・・」

 

そういえば何も言ってなかったな。

俺はすぐにリダイヤルをする。

 

「もしもし?」

 

『秋人君、帰り遅いけど大丈夫?』

 

「ああ、仕事が残っててね・・・・心配させて悪い。すぐに帰るよ」

 

『うん・・・・でも気を付けて帰ってきてね?』

 

「ああ、じゃあまたな」

 

俺は電話を切って荷物を纏めて生徒会室を出る。

さすがに暗いな・・・・・あ、心配させた詫びに何か買って帰るか。

俺がコンビニに入ると、そこには冷泉がいた。

 

「冷泉!?こんな時間に何やってんだよ!」

 

いくらここら辺の治安が良いからって・・・

 

「島田か。少し小腹が空いたのでおにぎりを買いにきた」

 

「前に沙織が言っていたんだけどさ・・・お前が低血圧なのって夜更かしが原因?」

 

「今回はたまたまだ。島田は何をしている?制服だけど、まさか今が帰りか?」

 

「ああ、仕事があってな・・・・・と、俺も買うか」

 

俺はデザートコーナーに行ってみほの好きなマカロンを何個か買い物カゴに入れる。

 

「・・・・男がマカロンって珍しいな」

 

買い物カゴを見る冷泉が言う。

 

「みほのだよ。帰り遅くて心配かけたからワビにな」

 

「・・・・一緒に暮らしてるのか?」

 

「部屋が隣で夕飯は大抵みほの家で食ってるからな」

 

「恋人というわけじゃないのか?」

 

なんだ?さっきからグイグイ来るな。

 

「恋人じゃないけど・・・・何?そんなに俺に興味があんの?」

 

「・・・・・自意識過剰」

 

分かってたけど・・・・言われるとグサってくるな。

そして冷泉が続ける。

 

「私じゃないよ・・・・ある女がどうやらお前の事が好きらしいから聞いてみただけだ」

 

「へー・・・・それは嬉しいね」

 

「もしその子が告白したら付き合うのか?」

 

「さぁ?誰かも分からないし・・・・でも相手が真剣ならこっちも真剣に向き合うよ。本気には本気・・・でね」

 

「ふーん」

 

買い物を済ませて冷泉と店を出る。

外は暗く静まり返っている。

 

「送ってくよ」

 

「いらない」

 

拒否しても無駄です。

 

「悪いけど冷泉の意見は聞いてない。こんなに暗い中女1人で家まで戻るのは俺が後で不安になるから勝手に送る」

 

「・・・・変なヤツだな。私に下心でもあるのか?」

 

「ない。加えて言うなら、沙織の幼馴染になにかあって沙織が泣くことがあったら一生後悔する。冷泉だって沙織が泣くとこ見たくないだろ?」

 

「沙織が理由ならしょうがないな・・・・・・沙織が惚れるのも少し分かるな」

 

冷泉さん。小声で言ったつもりだろうけど、こんなに静かでしかもこの距離じゃ普通に聞こえるぞ。

 

「今の・・・・聞こえてたほうがいい?それとも難聴のフリしたほうがいい?」

 

「・・・・いずれ沙織から伝えるだろうから難聴のフリで」

 

「あいよ・・・・・・え!?なんだって!?」

 

俺は冷泉に思いっきり蹴られる。

 

「ワザとらし過ぎて凄いイラっとした」

 

「痛てーよ。お前が難聴のフリでって言ったからやったんだろうが、というか疲れてるんだから労われ」

 

仕返しに俺は冷泉の髪を両手でワシャワシャする。

 

「や、やめろ・・・・お前は女の髪に触れることに抵抗はないのか・・・」

 

「ない。何だ意外とサラサラじゃないか。色々弄っていいか?」

 

「やめろと言ってるんだが・・・・」

 

顔を赤らめながら抵抗する冷泉。

しかしその程度で俺が止めると思ったか。

 

「まぁ、任せろ。妹の髪のセットもやっていた俺に抜かりはない」

 

「人の話を聞け!」

 

なお、このやり取りは麻子の家に着くまで続いた。

 

 

俺は今みほの家の玄関先で正座してる。

そして俺の目の前でみほが怒った顔で仁王立ちをしていた。

 

「今何時か分かる?」

 

「0時30分であります」

 

「電話から1時間以上もかかって何をしてたの?」

 

「は!これを買っていました!」

 

俺はみほにマカロンを献上する。

 

「ふーん・・・・これを買うだけで1時間以上もかかるのかなぁ・・・」

 

俺は隠すことじゃないと判断して麻子に会ったことを話す。

 

「後は・・・・コンビニいた麻子を家まで送っていました」

 

「え?冷泉さんを?・・・・というか、麻子?」

 

「小腹が空いてコンビニにいた麻子を家まで送り届けてました!名前呼びに関しては流れでそうなりました!」

 

あれだけ気安く接していたのに苗字呼びもねぇ・・・・呼んだとき嫌な顔をしていた気もしないでもないが、無視をした。

 

「・・・ふーん・・・秋人君だもんね・・・・今回はマカロンで許すけど、心配するのでちゃんと連絡してください」

 

「はい」

 

そうしてみほが笑った。

 

「じゃあご飯にしようか。温めてたからすぐに食べられるよ」

 

俺は立ち上がってリビングに向かう。

 

「今日はなに?」

 

「今日は・・・・・揚げ物に挑戦してみましたー」

 

揚げ物?とうことは・・・・

俺は期待の眼差しをみほに向ける。

 

「唐揚げでーす」

 

「やったねみほ大好き!」

 

俺は勢い余ってみほに抱きつく。

 

「あ、秋人君!?あんまりそういうのは・・・その・・・・嬉しいけど・・・」

 

顔を赤らめながら慌てるみほ。

しょうがないので抱きしめるのを止めた。

 

「だって疲れてるし腹も減ってるときに好きな食べ物だぞ。テンション上がりまくって抱きしめるのもしょうがないね」

 

しかし今日は最高の日だな。

みんなと戦車道出来るし夕飯は好きな食べ物。

1日の疲れが吹っ飛んだよ。

 

「いっぱい作ったけど味見ついでに私は食べたから・・・・・マズくは「いただきまーす!」早い!?」

 

だって我慢出来ないし・・・・

夕飯を食べた後は時間も遅いので家に戻ってすぐに寝た。

 

 

「唐揚げ残したの正解だったなー」

 

「朝から揚げ物はキツイよぉ・・・」

 

俺とみほは学校に向かうために登校中である。

朝ごはんは昨日残った唐揚げを食べた。

 

「おーい、みぽりーんあきとー!」

 

ん?後ろから沙織の声がしたので振り向くと・・・

 

「ごめん・・・・手伝ってぇ・・・」

 

麻子を背負って登校している沙織の姿があった。

 

「おー低血圧って聞いてたけど登校すらまともに出来ないのか」

 

「早く助けなきゃ!」

 

俺とみほは沙織のところまで行く。

 

「とりあえず麻子は俺が背負おう」

 

「うんお願いー・・・・・麻子?」

 

沙織から麻子を受け取っておんぶをする。

 

「うぅ・・・・秋人ぉ・・・・このまま家に帰るぞ・・・」

 

「麻子さんや・・・・貴方のいるべき所は家ではなくて学校ですぞ」

 

「え、秋人?ちょっと麻子!いつの間に名前で呼び合うようになったの!?」

 

「うるさい沙織・・・・・私は眠いんだ・・・・秋人に聞いてくれ・・・」

 

そのまま麻子は俺の背中で寝た。

 

「秋人!どういう事!?なんで1日で仲良くなってるの!?」

 

「正確には一晩だな」

 

俺は沙織に説明をする。

 

「うぅ・・・・まさか麻子まで・・・・いや、それはないか・・・・」

 

「とりあえず登校するぞー」

 

俺は麻子を背中に背負ってみほと沙織を連れて校門まで来たら風紀委員が立っていた。

 

「「よぉ、そど子」」

 

そど子。園みどり子だっけ?風紀委員長で去年から俺は目をつけられている。

 

「園みどり子よ!冷泉さん!遅刻ギリギリよ!島田君はまた不純異性交遊ね!去年貴方たちがどれだけ風紀を乱したか・・・・あれ?貴方たちって仲よかったっけ?」

 

「男と女・・・・仲良くなるのに一晩あれば事足りるんじゃないかな?」

 

俺は背負っていた麻子を移動させてお姫様抱っこに切り替える。

 

「え!?ま、まさか麻子・・・・」

 

沙織が反応してどうする。

 

「あ、秋人君・・・・・?」

 

冗談なのに悲しそうな顔すんなし。

 

「ふ・・・・・不純よ!!」

 

お、食い付いて来た。

 

「ふ・・・・そど子はおこちゃまだなぁ」

 

麻子が笑いながら俺の首に手を回して顔を俺の頬に近づける。

さすが学年主席。俺の意図をすぐ理解するとはやるじゃないか。

もしかして普段からこいつもそど子をからかってるな。

 

「な・・・・な・・・・」

 

顔を真っ赤に染めてるな。

そど子はからかい甲斐があって面白いなぁ。

 

「じゃあ行こうか麻子。委員長殿はおこちゃまだから免疫がないらしい」

 

「そうだな秋人。そど子はおこちゃまだ。あまり見せつけるのも可哀想だ」

 

俺はそのまま固まっているそど子の脇を通ろうとすると腕を掴まれた。

おっと、そど子がもう復活したか?案外・・・・・

 

「「ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」」

 

そこにいたのは2匹の(みほと沙織)だった。

 

 

 

今日も戦車道の時間がやってきた。

 

「えー練習が始まる前に連絡事項です・・・・今週の日曜日練習試合が決まりました」

 

彼女たちがざわつくがそれはしょうがない。

まともな練習はしてないのに4日後が試合とか・・・・

 

「相手はどこですかー?」

 

優花里が質問する。当然の疑問だな。

 

「聖グロリアーナだ」

 

みほと優花里が驚愕するが分かってない他のやつらはのほほんとする。

 

「聖グロ?ってあのお嬢様学校の?」

「なら勝てるんじゃないかな?」

「お嬢様に戦車って出来るのー?」

「最初だから弱いとことか?」

 

 

「あの!」

 

優花里が再び手を挙げる。

 

「聖グロって・・・・あの聖グロですか!?」

 

「そうだ」

 

「全国でも準優勝したことのある超強豪校じゃないですかー!!4強の1角が相手って・・・・」

 

その発言でさらに場がざわめく。

ざわめきすぎなので俺は静かにさせた。

 

「確かに相手は強い。全国4強の1角で去年は全国ベスト4。しかし相手が聖グロならまだ勝ち目はある!」

 

「勝ち目って・・・・」

「適当なんじゃ・・・・」

 

「適当じゃない!相手は安定した強さを誇り、俺が定期的にコーチに赴いてさらに強くなった気がするが・・・・それでも勝てる!」

 

「キサマはなに相手を強くしてるんだ!!」

 

河嶋先輩が俺の首に蹴りを入れる。

 

「いてて・・・・つまり、俺は相手の情報を持っているということ・・・・情報は武器になる。その情報の扱い方次第で勝機はあるはずだ!時間が惜しいからすぐに練習に入る。試合まで後4日。気合い入れていくぞ!」

 

『はい!』

 

そして練習が始まった。




おつかれさまでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

練習試合が終わるとこまでです。


練習も終わり車長たちが作戦会議の為に生徒会室に集まる。

どうやら河嶋先輩が作戦を考えてきたらしいのでまずはそれを聞く。

 

「相手の聖グロリアーナは強固な装甲と連携力を生かした浸透強襲戦術を得意としてる。そして相手の戦車は硬い!主力のマチルダⅡに対しこちらの攻撃は100m以内でないと通用しないと思え。そこで・・・・1両が囮になり、相手を有効なキルゾーンまで誘い込み高低差を利用して全員でこれを叩く!」

 

ホワイトボードには意外と分かりやすく書かれていたし、説明も分かりやすい。

しかも事前に調べていたのか、相手の戦車の情報も頭に入ってる。

河嶋先輩には昨日の夜メールで報告したばかりなのに・・・すぐに調べてきたんだなぁ。

熱心な努力家。そういう人は好ましい・・・・・

しかしそれとこれと話は別だ。

ハッキリ言ってこの作戦は通用しない。

 

「島田君に西住ちゃん、考え込んでどうしたの?」

 

「いえ、あの・・・・聖グロリアーナも当然囮を使ってくるのは想定してるかと・・・逆に裏をかかれて包囲されちゃうんじゃ・・・」

 

そう、みほの言う通り。

だが、やってみるのもいいかもしれない。

これは練習試合だし・・・・失敗から学ぶことだってあるんだ。

しかし勝たせるみたいなこと言っちゃったしなー・・・

 

「うるさい!私の作戦に口出しするならお前が隊長をやれ!」

 

河嶋先輩も沸点低いなぁ・・・・みほが怯えるだろうが。

 

「・・・すみません」

 

「気にすんなみほ。河嶋先輩は更年期障害なんだ」

 

会長が干し芋を吹いて笑う。

 

「島田!お前は私を馬鹿にしてるのか!」

 

「してませんよ。ちょっとした冗談です」

 

さて、どうするか思ったら会長が発言する。

 

「河嶋の更年期は置いておいて・・・西住ちゃんが隊長でいいんじゃない?」

 

「じゃあみほが隊長な。はいはくしゅー」

 

「え・・・?え・・・・?」

 

パチパチと拍手が生徒会室に鳴り響く。

 

「さて・・・・メインの作戦については河嶋先輩が言った通りでいい」

 

折角頑張って考えてきたんだ。

どうせだったら使わせてやりたいじゃん。

それに本当に使わないと経験上拗ねる。

 

「秋人君?」

 

不安そうな顔しなさんな。

ちゃーんと後の事は考えるからさ。

 

「しかしメインの作戦が成功するとは限らない。失敗した時の為にもう2、3個俺とみほでサブの作戦を考えてきますよ」

 

サブがメインになるだろうしな。

 

「じゃあよろしくー。勝ったらご褒美あげるから」

 

その言葉に典子が反応する。

 

「ご褒美ならバレー部復活がいいです!」

 

「ううん。干し芋3日分ー」

 

「じゃあ負けた時はなんですか?」

 

澤が軽く手を挙げて聞く。

 

「うーん・・・・・あんこう音頭でも踊ろうか」

 

みほ以外の全員の動きが固まった。

状況を理解していないみほは周りを見渡し首をかしげる。

 

「あんな屈辱を受けろと言うのか!」

 

カエサルが会長に抗議するが・・・無駄だ。

良くも悪くもやると言ったらやる人だぞ。

 

「大丈夫大丈夫・・・・・連帯責任で全員だから」

 

大丈夫の要素がどこにもない・・・・

絶対踊りたくないし何とか回避する方法は・・・・

 

「会長。俺は試合後は聖グロの皆さんの相手をする必要があるので参加出来ません」

 

「ん。じゃあ島田君は免除ねー」

 

恨みが籠った目で見られるがあの踊りを回避出来るならいくらでも受けてやるよ。

 

 

作戦会議が終了し、沙織たちと合流して会議の内容を話す。

 

「あんこう音頭!?そんなのやったらお嫁にいけないよ~!」

 

頭を抱えて悶絶する沙織。

 

「そ、そこまでなんだ・・・」

 

「少なくても女性がやるものではありませんし・・・・」

 

あんなぴっちりしたあんこうスーツを着て踊るとか女性のすることじゃないしな。

 

「生き恥」

 

否定はしない。

 

 

 

今日も戦車道の授業があるが・・・・・

 

「これは・・・・一体なにが・・・」

 

「すみません・・・・・止めきれませんでした・・・」

 

優花里が悔しそうに言う。

八九式にはでっかくバレー部と書いてあり

38tは全部金に塗装されて・・・・

M3はピンク・・・・

3突に至っては旗まで立ててるだと!?

 

「Ⅳ号は?」

 

「外装はなんとか止められました・・・・・外装は」

 

ああ。中身が想像できる。恐らく沙織や華の趣味通りになっているんだろう。

これ直すにも時間かかるし聖グロ戦にはこのままで・・・・?

ダージリンが笑う姿が目に浮かぶな。

 

「これって・・・・・」

 

みほも絶句してるな。当然だけど

 

「あはは!戦車をこんな風にする人初めてみたよ!・・・・なんか面白いね!」

 

・・・・みほが笑ってるなら今回は許そう。

 

「じゃあ練習始めるから集まれー」

 

俺は号令をかけて全員集める。

 

「まず・・・・この色は練習試合終わったら即刻消すこと」

 

「そんな!折角カッコよく出来たのに・・・・:」

 

カエサルが悔しそうにする。

 

「せっかく可愛くできたのに~」

 

「先輩横暴ですー」

 

どこがだ。他校でやったら辞めさせるレベルなのに。

普通に色消すだけで許してやるんだ。むしろ感謝してほしい。

 

「これに関しては反論は受け付けない。別に禁止というわけじゃないが・・・・正直同じ学校の人間として見られたくないレベルだ」

 

『そこまで!?』

 

当たり前だろう。

それにもし母さんの目に止まったら・・・・満足するまで笑った後は家元モードで説教されちまう。

 

「そこまでなんだ・・・・・それにあまり印象も良くない。初出場校がこんな色した戦車で挑んだら余計な顰蹙も買ってしまう。その代わり・・・・・内装はルールやマナーに抵触しない限り好きにしていい」

 

「島田殿!?」

 

しょうがないだろ。あまり禁止禁止しても委縮させるかもしれないし・・・・どこか落としどころがあるならそうするさ。

 

「それなら我慢します~」

「残念だけどしょうがないね」

「く・・・・旗だけは取りたくないぜよ」

 

「むしろ旗が一番アウトだ。デメリットしかない」

 

「そんな!?」

「旗が邪魔だって!?」

「これは我らの魂だぞ!」

「いくらコーチとはいえ許せんぜよ」

 

歴女チームが俺に反抗する。

しゃーない。キャラを演出して何とか説得してみよう。

 

「あの旗がお前らの魂だぁ?笑わせるな!蹴れば折れそうな旗じゃないか。随分安い魂があったもんだ」

 

『な!?』

 

「そんなものお前らに必要ない!・・・・なぜなら、既にお前らは自分の内に秘める決して折れることない旗を持ってるだろう!『心』という旗をな!!」

 

ハッとした様子を見せる歴女チーム。

 

「そうだったのか・・・・既に我らは手にしていたんだな」

「まさか島田に教わるとは・・・」

「決して折れない心の旗・・・・」

「カッコイイぜよ・・・」

 

こいつらが単純でよかった。

 

「じゃあ納得したところで練習を始めるぞ」

 

『はい!』

 

 

練習も終わり再び集合させる。

 

「今日はこれで終わりだ・・・・伝え忘れたけど日曜は朝6時集合だから」

 

「辞める」

 

え?今麻子が辞めるって言った?

 

「ちょっと麻子!」

 

そのまま列を離れて帰ろうとする麻子と追う沙織

 

「朝6時だぞ・・・・人間が朝6時に起きれるか!」

 

「いえ、朝6時集合なので起きるのはもっと早いです」

 

「辞める!」

 

おいおい・・・本気で辞める気か?

麻子がいなかったらⅣ号が上手く機能しない。

主戦力であるⅣ号が機能しなかったらたださえ低い勝率が本当に0になっちまう・・・・

 

「辞めたら単位足りなくなっちゃうよ!おばぁにバレてもいいの!」

 

「お、おばぁ・・・」

 

おばぁ?なるほど、ばあちゃんが麻子の弱点か。

 

「・・・分かった」

 

恐らく面倒見の良い沙織のことだ。家まで迎えに行ってくれるだろう。

麻子は心配ない・・・・・

 

「まぁ、朝が苦手なやつらは酷だろうけど・・・・チームメンバーが支えてやってくれ。じゃあ今日は練習終わり」

 

『ありがとうございました!』

 

 

早いもので練習試合当日。

俺は昨晩みほと作戦会議をした。

 

「まず河嶋先輩の作戦は失敗する。で、重要なのはその後」

 

「うん、どう攻める?」

 

「まずまともにやり合っては試合にすらならない。なら、なるべく障害物のある所が望ましい・・・・市街地だな。失敗して囲まれる前に市街地に移動させてくれ」

 

あそこなら地の利がある分こちらが有利。

全てにおいて劣っている大洗学園が唯一勝てるだけの条件がそれだ。

どれだけ地の利を生かせるか・・・・問題はそこだ。

 

「地の利を生かす・・・・」

 

「それしかないだろ。後は状況を見てみほが判断するしかないが・・・・出来るか?」

 

「やってみるよ」

 

本当なら細かく煮詰めたいけど・・・・あまりに時間がなさすぎた。

 

 

そして今俺は聖グロの学園艦前にいる。

麻子は沙織達に任せて俺は・・・

 

「よう、今日はよろしくな・・・・ダージリン」

 

「ええ、あなたのチームがどれだけやれるか楽しみにして来たんですよ」

 

ダージリンたちの案内だ。

 

 

「で、何で紅茶なんだ?」

 

俺は今ダージリンたちとお茶会をしている。

 

「いいじゃない。だって久しぶりよ」

 

「ダージリン様、すごく楽しみにしてたんですよ」

 

1年ながら隊長車の装填手を務めているオレンジペコが紅茶を汲んでくれる。

 

「別に楽しみにしていませんよ。むしろペコのほうが楽しみにしてたくらいで「はい、私とても楽しみにしてました」え?ペコ?」

 

オレンジペコが俺の腕に抱きついてくる。

 

「秋人様・・・・私とっても寂しかったんですよ?折角連絡先渡したのに一度も連絡してくれないんですもん」

 

「いや、要件がないと連絡し辛くてさぁ」

 

あれ?ダージリンがふるえてる・・・

 

「ペ、ペコ?淑女が殿方の腕に抱きつくなんてはしたないんじゃなくて・・・?しかも了承もなしになんて・・・・」

 

「ああ、すみません。つい久しぶりで嬉しくなっちゃって・・・・秋人様は嫌ですか?」

 

「全然嫌じゃないよ」

 

「了承はとったのでもう少しこうしておきますね」

 

ダージリンの紅茶が震えすぎて零れてるんだけど大丈夫か?

 

「めちゃくちゃ零れてるけど大丈夫か?」

 

「秋人さん・・・こんな格言を知ってる?『行いが美しい者は、姿も美しい。』」

 

それ自分の姿のこと言ってるのか?

全く美しくないんだけど・・・・

 

「あー今拭きますから待ってください」

 

そしてペコがタオルを手に取り零した紅茶を吹く。

拭いてるときにアッサムが来た。

 

「秋人さん、今日はよろしくお願いします」

 

「アッサムか。よろしくな」

 

「今紅茶淹れますね」

 

拭いた後はペコが慣れた手つきでお茶を淹れる。

 

「そういえばローズヒップは?」

 

「あの子は落ち着きがなさすぎるから艦内の掃除を命じてるの。ついでに今日の試合には出ないわ」

 

「なに?温存かなんか?」

 

それにペコが答える。

 

「いえ、クルセイダーを壊した罰で今は戦車に乗るのを禁止してるんです」

 

「は?前にあれだけ壊すなって言ったのにまだ壊してんの?」

 

「あの子は1週間経ったら言ったことを忘れる子よ」

 

腕は悪くないんだけど、頭が弱い子だからなぁ・・・

あれ?全速力でこっちに向かって来るのって・・・

 

「秋人さまぁ!」

 

ローズヒップがこちらにダイブして腰にしがみ付きそのまま押し倒す。

 

「お久しぶりですわ!ローズヒップただいま登場!ですの」

 

「・・・・久しぶりだなローズヒップ・・・言いたいことは色々あるがまずはどけ」

 

どんな登場の仕方だよ。

この学校ペコしかまともなやついないじゃねーか。

俺はローズヒップをどかして立つ。

説教をしてやろうかと思ったが・・・・後ろのやつに任せよう。

 

「ローズヒップ・・・」

 

「ヒッ!アッサムさま・・・・」

 

そして説教が開始される。

 

「あはは、すみません秋人様」

 

「ごめんなさいね。あの子は相変わらずなのよ」

 

「あー気にするな。あいつに関しては諦めてる」

 

そのままダージリンたちと話して開始まで1時間をきった。

 

「じゃあそろそろ行くよ」

 

「ええ・・・・約束は忘れてないわよね?」

 

「忘れてないから安心しろ」

 

そのまま俺は艦を出てみほ達のもとに向かう。

既に戦車もスタンバイ完了し、いつでも戦えるようになっていた。

 

「お、準備完了か」

 

「秋人遅い!」

 

沙織に注意された。

 

「遅いって言われてもな・・・俺は出ないし後はお前らが頑張るだけだろ。麻子は?」

 

「麻子は起こして無理矢理連れてきたよー」

 

「そっか・・・ちょっと最後に全員集めるか」

 

俺は全員を集める。

 

「俺から最後に・・・どんな結果になっても自分自身のベストをつくすこと。あっちのほうが上手だが・・・・気持ちで負けるな。いいな」

 

『はい!』

 

そして試合が始まろうとしている。

 

 

 

俺は観戦席にいる・・・・・ローズヒップとともに。

 

「何でいるんだ?」

 

「秋人様が1人で寂しくないようにってダージリン様に言われましたの!御紅茶も持ってきたので一緒に飲みましょう!」

 

ダージリンめ、押しつけやがったな。

 

「紅茶は何ある?」

 

「ローズヒップとダージリンです!おススメはローズヒップですの!」

 

露骨だな・・・

 

「じゃあローズヒップで」

 

露骨だが、犬が散歩を期待するような目で見られちゃ抗えない。

 

「分かりました!今淹れますの!」

 

さてさて・・・・

 

「やっぱりダージリン笑ってやがるな」

 

モニターでは俺達の戦車を見て笑ってるダージリンが映っている。

 

「あの戦車はなんですの?まさか新種の戦車ですの!?」

 

「・・・・そうだ。最近発見された新種の戦車だ」

 

教えるの面倒だしそのまま勘違いさせておこう。

そもそも戦車が自動的に発見されるとかあるわけないだろう。

 

「まさかオーバーテクノロジーの可能性が・・・!」

 

そんな可能性は1㎜もない。

 

「そんな事より試合が始まるぞ。つーか紅茶まだ?」

 

「今お出ししますの!」

 

紅茶を受け取って観戦する俺とローズヒップ。

 

「これは・・・・囮ですの?」

 

やはりローズヒップでもすぐに分かるか。

 

「正解だ。頭撫でてやる」

 

「やったーですの!」

 

そのまま頭を撫でてやった。

 

「でも秋人様の作戦にしては・・・・正直・・・その・・・」

 

言いづらそうだな。

 

「俺の作戦じゃないけどな」

 

「分かりやすすぎですの。作戦立案の方って頭良くないんですの?」

 

ローズヒップに言われるとは・・・・河嶋先輩ドンマイ。

 

「まぁ、今回は練習試合だ。色々課題が明確になってくれれば・・・」

 

そしてⅣ号がキルゾーンまで移動するが・・・

 

「なんですの?何で味方の戦車がⅣ号を撃ってますの?」

 

「・・・初試合だし緊張かな」

 

「あー分かりますの。私も初試合のときは突っ込んで負けましたの」

 

そして気づいたⅣ号以外が敵に向かって撃つが一発もあたらない。

 

「適当に数撃てばいいってもんじゃないって練習のとき言ったんだけどなぁ」

 

まぁ、初試合だ。混乱するのもしょうがないか。

正直一番混乱してるのって河嶋先輩だろうな。

今頃「撃て」しか言ってなさそう・・・

 

「秋人様のチームにしては・・・・」

 

言いたい事は理解してるけど・・・

 

「発足して1週間程度。大会までには形にするさ」

 

おっと、相手からの反撃か・・・

 

「あれ?あのM3に似たピンクの戦車に乗ってる人たちが降りましたの」

 

M3って分かってるのに色塗ったことに気づかないのか?

いやそれより、1年チーム全員が降りてしまったか。

俺は立ち上がる。

 

「どこに行くんですの?」

 

「後輩のメンタルケア。紅茶ご馳走さま。美味かったよ。大洗のチームに俺は少し出てくるからって試合終わったら言っといてくれ」

 

 

さて、あいつらの行先は・・・

逃げた方向と試合が気になるだろうからよく見える所・・・あそこか。

 

あ、見つけた。

木に登って試合見てるよ。

俺は気づかれないように木にゆっくり登る。

 

「あそこで負けちゃうと思ったのに・・・」

 

「先輩達凄いなぁ・・・残り3両だって」

 

なるほど、作戦を移行して早速結果を出したか。

 

「よっと・・・」

 

『!?』

 

「驚かせたか・・・・お前らなら大体この辺りにいると思ったよ」

 

「大体この辺りって・・・・木の上にいるの分かってたんですか?」

 

澤が俺に聞いてくる。

 

「短い付き合いだけど・・・・お前らはたまに悪ノリするけど良い子達だからな。試合の行方も気になるだろうし・・・逃げた先と双眼鏡を使って試合が見える場所って言ったらここらへんだろ」

 

「・・・・先輩」

 

俺は澤の口を掌で封じる。

 

「まずは試合を観なさい。話は後だ」

 

そしてそのまま観戦する俺達。

皆の健闘の甲斐があって最後1対1にまで追い詰めるけどそのまま負けてしまった。

 

「じゃあ降りようか」

 

『はい・・・・』

 

そして木から降りて話をする。

1年生たちがビクビクしてる。

しょうがないよな。怒られるって思ってるんだから・・・

 

「怖かったか?」

 

「はい・・・・凄い揺れるし」

「相手はどんどん撃ってくるし・・・」

「怖かったよぉ・・・・」

 

「そうか・・・「でも」・・・ん?」

 

「それ以上に・・・・隊長たちに申し訳なくて・・・」

「仲間を置いて逃げて・・・・」

「ごめんなさぁい・・・・」

 

ああ、彼女達も後悔してるのか・・・

 

「後悔してるんだ・・・なら、大丈夫だな」

 

『え?』

 

「それだけ深く後悔してるなら・・・・もう大丈夫。お前らは2度と逃げないよ」

 

「なんで・・・・もしかしたらまた逃げるかもしれないのに・・・」

 

「澤・・・だけじゃないな。お前らは理解したろ。残るよりも逃げた後の方が辛いって」

 

『あ・・・・・』

 

「それに今日はあくまで練習試合・・・・勝ち負けよりも大事なこと学べてよかったな」

 

俺は1年生を順に頭をポンと撫でる。

 

『せんぱぁーい!!!』

 

1年たち全員がこちらに泣きながら抱きついてくる。

 

「ちょ・・・・6人同時は無理!」

 

腰やら腕やら足やらに抱きつかれたまま俺はその場で倒れた。

 

「はー・・・あれだ。隊長には謝っとけよ」

 

『はい!』

 

「あと・・・・泣かしたことバレたらお前らを特に大事にしてる沙織にキレられるから涙を拭いとけ」

 

『はい!』

 

「じゃあ後は先に学園艦に戻っておけ。んで、顔を吹いて隊長来るまで待機な」

 

『はい!』

 

 

俺は1年達を学園艦まで送ったあとダージリンのもとに行っていた。

ダージリンはオレンジペコと紅茶を飲みながらあんこう踊りの生中継を見ていた。

 

「よう、待たせたな」

 

「あら、用事は終わったの?」

 

ペコが俺の分の紅茶も淹れてくれる。

 

「終わった。今日はありがとう」

 

紅茶を口に含む。ダージリンか。

 

「全然いいわ。予想以上に面白かったわよ・・・・・2重の意味で」

 

あんこう踊りか・・・・

 

「で、実際どうだった?」

 

「そうねぇ・・・さすがみほさんって言ったところね。まほさんのチームよりもよっぽど面白かったし、破天荒というか発想というか・・・貴方は今回どの程度関与したの?」

 

「市街地行けってだけ。後はその場その場でみほ任せ」

 

「あら、そうだったの。次やるときも楽しみにしておくわ」

 

上機嫌だな、そういえば・・・

 

「何でローズヒップ送ったんだよ」

 

「退屈はしなかったわよね?そういえば、あの子試合の後大洗の戦車をどこで発見したか聞いてたんだけど貴方何か言ったでしょ?」

 

「ああ、新種の戦車って言っておいた」

 

「まったく・・・・あの子『新種の戦車かっこいいですわ!』とか言ってたのよ?私恥ずかしくて顔から火が出そうで・・・」

 

「大丈夫だろ。多分みほ辺りも恥ずかしいと思ってただろうし・・・・今も」

 

未だにあんこう音頭は流れている。

 

「これ写真に撮ってまほさんに送ったらどうかしら?」

 

そういえば最近連絡取ってなかったと思うし・・・いいかもな。

俺は写メでまほさんに送る。

 

To:まほさん

件名:報告

本文

見てくださいこの写真!みほの恥ずかしい姿ですよ。

あ、みほこっちで戦車道再開したので大会で会えるかもです。

 

 

これでいいか。

 

「なんて送ったの?」

 

「みほの写真と戦車道続けてるってことだな」

 

「どんな反応するか楽しみね」

 

そうしてるとバイブとピロンと音が鳴る

 

「早いな・・・」

 

From:まほさん

件名 :報告かんし

本文

わかつた

みほのしやしんもつと

 

 

「忘れてた・・・・まほさんって携帯って電話くらいしか出来ない人だった」

 

「あら・・・なんて書いてあったのかしら・・・」

 

俺の携帯に覗き込むダージリンが紅茶を吹きだす。

 

「そういえばメール苦手って言ってたわね。いつも連絡は電話だし・・・・今回は焦ってついメールで返信してしまったって感じかしら」

 

「しかもこれ更に要求してるぞ。件名も新しくしようと思ったけど意味分からないことになってるし」

 

誰か教えてくれる人いないのか?

エリカにでも聞けばいいのに・・・・

 

「さて、面白いものも見たし私達はこれで・・・・賭けの件はまた後で連絡するわ」

 

「あんまり無茶な願いはやめてくれよ・・・・・またな」

 

「ええ。また」

 

「さっきから空気になってるペコもな」

 

「お二人がゆっくり話してるので・・・・お邪魔かなぁっと」

 

気を回してくれたんだな。出来た後輩だ。

 

 

そしてダージリンが帰った後・・・・

 

「あんこう音頭お疲れ~」

 

俺はニヤニヤしながら皆を見る。

 

『いや~!!!!』

 

はっはっは、愉快愉快




次回は華の実家かな・・・・カットするかも。気分次第。
後はサンダース戦までいけるかな・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話

13話始まりますー
最近もっとらぶらぶ作戦買ったんですよ。
7巻でボコが西住家にやってくる話とか面白かったです(しほさんがボコの着ぐるみ着ただけなんですけどね)
子供みほのテンションが凄い可愛い。

『ぼこだー!』


練習試合が終わった後はⅣ号に乗ったみんなで街を周る。

本来なら麻子も一緒のはずだが御婆さんに顔を見せなきゃいけないらしく俺達とは途中で別れた。

 

「これからどうする?」

 

沙織がそう聞いてくる。

 

「まずは腹を満たしたい」

 

朝は食べたけど昼飯食べてないからな~

時間もお昼すぎだし皆も腹減ってるだろう。

 

「いいですね!」

 

華が即了承する。

この見た目で大食いだからな。

他の面子も特に反対というわけじゃないので近くのファミレスにでも移動しようとすると・・・・

 

「お嬢!」

 

人力車を引っ張ってこちらに向かって来る男がいた。

 

「新三郎・・・・」

 

「え?何それ聞いてないわよ!」

 

「うちに奉公に来ている新三郎です」

 

ああ、華ってお嬢様だったっけ。

奉公人までいるとは思わなかったけど・・・

 

「皆さん初めまして。お嬢がいつもお世話になっています」

 

人の好さそうな爽やかそうな人だ。

 

「いえ、こちらこそ俺達は「華さん」」

 

誰だ?俺の言葉を遮った人は・・・

人力車から降りてきたのは物を着た女性だった。

 

「お母様・・・・」

 

華の母親か。

結構似てる部分もあるし納得。

 

「よかったわぁ・・・元気そうで。そちらの方たちは?」

 

「同じクラスの西住さん、武部さん、島田君」

 

「あ、私はクラス違いますが戦車道の授業で・・・」

 

優花里が言った瞬間華のお母さんの目が鋭くなった。

 

「戦車道・・・・・華さん戦車道をしてるの?」

 

「・・・・」

 

お母さんが華の手を取って匂いを嗅ぐ。

 

「この鉄と油の香り・・・・本当にやっているのね」

 

試合の後とは言えちゃんと洗浄してたはずなんだが・・・華道やってる人って嗅覚強くないと出来ないのか?

 

「はい・・・・」

 

「花を活ける大事な手で・・・・・あぁ」

 

そのままその場で倒れそうになるのを何とか俺がキャッチした。

 

「お母様!?」

「奥様!?」

 

「ショックで倒れただけだ。幸いどこもぶつけてないからこのまま自宅のほうまで運んで養生させるといい。自宅ってここから近いんですか?」

 

俺は新三郎さんに聞いた。

 

「え、ええ・・・・」

 

「なら自宅まで行きましょうか」

 

 

俺達は華の家でお茶を飲んでいた。

 

「すみません・・・・私が余計な事を言ったばかりに・・・」

 

「あれだけ匂いに敏感な人だ。実家に戻る機会があればその時バレてたし・・・遅いか早いかだろう」

 

「そうです。それに・・・・私が母に話していなかったのが悪いんです」

 

あれだけ否定的なら言いづらいのは分かるけどな。

そのとき襖が開いた。

 

「お嬢・・・・奥様が目を覚まされました。お話があるそうです」

 

「私・・・もう戻らないと」

 

「お嬢!・・・・差し出がましいと思いますが、お嬢のお気持ち・・・・奥様にちゃんと話したほうが宜しいと思います!」

 

うん。このままズルズルやってると却って溝が大きくなるしな。

 

「俺もそうしたほうがいいと思う。親子なんだから・・・・話せば分かってくれると思うよ」

 

「秋人さん・・・・・分かりました」

 

 

そして華が移動するのを見て俺達は・・・

 

「さ、華の様子を見に行くか」

 

「そうだね!」

 

沙織は行く気マンマンだな。

 

「え・・・・いいのかな・・・」

 

「家庭の事情ですし・・・私達が立ち聞きしていいのでしょうか?」

 

みほと優花里は気乗りしないと・・・

確かに家庭の事情に他人が入るのはどうかと思うけど。

 

「まるっきり無関係じゃないし立ち聞きくらいならいいだろ」

 

俺達は部屋を移動して襖越しに話を聞く。

 

「申し訳ありません」

 

この声は華か。

 

「どうしたの?華道が嫌になったの?」

 

「別に嫌になったわけじゃないんです。ただ・・・・活けても活けても何かが足りないような気がするんです」

 

「そんな事ないわ。貴女の花は可憐で清楚。五十鈴流そのままよ」

 

「でも私は・・・・・もっと力強い花を活けたいんです!」

 

力強い花か・・・・それが華の目指す華道なのかな。

 

「・・・・昔の貴女はどこに行ったの?これも戦車道のせいなの?戦車なんて野蛮で不格好で煩いだけじゃない・・・・戦車なんてみんな鉄屑になってしまえばいいんだわぁ」

 

落ち着け俺。優花里もイラってきてるけど、俺はもっと落ち着けー

大丈夫。他人がなんて言おうと俺は戦車大好きだ・・・

 

「ごめんなさいお母様・・・・でも私、戦車道は辞めません」

 

ホントに華って意志が強いよな。

 

「・・・・分かりました。だったらウチの敷居は二度と跨がないでちょうだい」

 

「奥様それは「新三郎はお黙り!」・・・・」

 

は?この人自分の娘をなんだと思ってるんだ・・・

俺は襖を開けて中に入った。

 

「ちょ・・・・秋人・・・」

「島田殿・・・・」

「秋人君・・・・」

 

3人の言いたいことは分かるよ。

でも我慢出来なかったんだ。

 

「話は終わったな・・・・・じゃあ帰るぞ・・・・華」

 

「はい、秋人さん。お母様、失礼致します」

 

さて、引き止めてくれるだろうか・・・・

 

「お待ちなさい!華さんを名前呼びだなんて・・・・」

 

釣れたな・・・

 

「貴方には関係ないことでしょ?勘当宣告したんだから・・・」

 

「な!?」

 

何を驚いてる?二度と敷居を跨ぐなってそういう意味だろうが。

 

「これから華がどうなろうと貴方には何も関係がないことですよ。ああ、安心してください。華のことは俺が一生面倒見るので・・・・これからは好きなだけ花を活けさせるし戦車道も続けさせますしね」

 

俺は華の手を引いて部屋を出ようとする。

 

「待ちなさい!」

 

「だから貴方には関係ないと言ってるでしょう。貴女は自分の望み通り動かないことを理由で娘を捨てたんだから・・・跡取りならご自分のお弟子さんを養子に貰えばいいんじゃないですか?ちゃんと望み通りに動けるロボットのようなね」

 

華のお母さんが俺の前に立ちふさがって俺にビンタをする。

すると部屋に甲高い音が鳴り響いた。

 

「華さんは・・・・華は私のたった一人の娘です。他人じゃなく・・・替えのきかない大事な娘です!」

 

痛いなぁ。やっぱ子供を想う母親って強いや。

 

「だったらなんで・・・・そんなに娘のことを想ってるのに二度と敷居を跨ぐなと言った!?なんで娘の強い想いを一蹴した!?」

 

「私は・・・五十鈴流家元として・・・」

 

「分かるよ。俺の家は戦車道の家系だから・・・・でも、それは娘を失うよりも大事なことなのか?」

 

少なくても俺は家族を失いたいとは思わない。

戦車を取るか家族を取るかなんて・・・・迷うまでもない。

 

「・・・・華さん」

 

お母さんが華に向き合う。

 

「はい、お母様」

 

「私は前言を撤回する気はありません・・・・ですが、力強く可憐で清楚・・・・そんな花を活けれるようになったら帰ってきなさい。私は貴女がそれを出来る日をずっと待っています」

 

「お母様・・・・・必ずやり遂げて家の敷居を跨がせてもらいます」

 

はぁ・・・・・これでなんとか・・・

 

「貴方・・・・名前は?」

 

「島田秋人です・・・・・先程は大変失礼を致しました」

 

俺は深く頭を下げた。

冷静になった頭で考えると・・・・俺は他人の家で何をやってるんだろう。

 

「いえ、私も大事な娘を失わずに済みました・・・・ところで・・・」

 

「何でしょう?」

 

「貴方は・・・・華さんの恋人でいいのかしら?」

 

・・・ん?

 

「いや・・・・・え?・・・・なんで?」

 

「だって貴方・・・・華さんのこと一生面倒見るって」

 

・・・・言ったっけ?

あ、そういえば言ったよな・・・・うん。

 

「それは・・・えっと・・・・」

 

「それに華さんも手を引かれた時全く嫌な顔1つしないんだもの・・・・それにお互いの事を名前呼びしてるし・・・隠さなくてもいいのよ?あれだけ胆力のある若い子なら華さんの婿に・・・・」

 

「お母様!?」

 

どうしよう話が・・・・

 

「折角だし許婚にどうかしら?家柄も問題なさそうだし・・・」

 

その時沙織が叫びだす。

 

「あ!あ!もうこんな時間!華も秋人ももう出航の時間になっちゃうよ!」

 

ナイス沙織。

 

「そうだな!じゃあ取りあえず今日のところはこの辺で」

 

「え・・ええ、分かったわ。じゃあ新三郎に送らせるわね」

 

新三郎さんのほうを見るとめちゃくちゃ泣いていた。

 

「うぅ・・・・お嬢!この新三郎・・・・お嬢がお嫁に行っても一生奉公させていただきます!」

 

えー・・・・・

俺の手をガッチリ掴んだ新三郎さんが言う。

 

「旦那様!お嬢のことよろしくお願いします!あれだけ奥様に啖呵を切った旦那様なら信用出来ます!」

 

「お・・・・おう・・・・」

 

旦那様って・・・・

そして新三郎さんが泣きながら俺達を運んでくれた。

 

 

「遅い」

 

俺達を待っていたのは麻子だった。

なぜかカッコイイポーズで。

 

「夜は元気なんだから~!」

 

そのまま6人で走って乗り込む。

 

「貴方たち出航ギリギリよ」

 

「「すまんなそど子」」

 

「そど子言うな!」

 

ギリギリだろうとそど子を弄るのはやめません。

デッキにあがると

 

「西住隊長・・・・」

 

そこにいたのはM3に乗ってる1年チームの面々だった。

 

「戦車を放り出して逃げたりしてすみませんでした!」

 

『すみませんでした!!』

 

1年の謝罪にみほの顔が笑顔になる。

 

「にっしずみちゃーん」

 

生徒会の面々が出てきた。

 

「会長?」

 

「今度から作戦は西住ちゃんと島田君に任せるからー」

 

後ろで驚いてる河嶋先輩は意外に思えたのか?

 

「あとこれ・・・・聖グロから」

 

ああ、ティーカップか。

 

「おお!好敵手にしか送られないあの!」

 

好敵手っつーか気に入った相手だな。

そして・・・・

 

「秋人さん・・・」

 

「華か・・・」

 

俺はデッキで佇んでいるところを華に声をかけられた。

 

「お母様が申し訳ありません」

 

ああ、あのことか。

 

「いいさ・・・それよりも、華のほうが大変だろ?自分の新しい華道を認めさせなきゃいけないんだから」

 

「そうですね。でも、それは遠くないうちに形になる気がします」

 

既に自分の中でおぼろげながらも見えてるのか?

だからこそ、あれだけハッキリと自分の想いを口にできたのかも。

 

「戦車道の大会っていつからなんですか?」

 

「来月に組み合わせ抽選会があって、6月から1回戦が始まって、7月で2回戦。そして8月に準決と決勝があるな」

 

「そうですか・・・それまでには何とか完成したいですね」

 

「俺は華道のことはよく知らないけど・・・・花が好きで毎日笑顔で活けてる華ならきっと大丈夫だと思うよ」

 

「秋人さんがそう言ってくれるなら・・・・頑張れます」

 

後はこのまま夜の海を静かに眺めていた。

月明かりに照らされる華が幻想的に見えて目を奪われたのは内緒だ。

 

 

あれから2週間後。

なんとか形にはなってきた気がする。

恐らく2回戦レベルにはなってるだろうけど、4強以外は抽選だからなぁ・・・

 

「1回戦が黒森峰とかだったら最悪すぎるな・・・」

 

「縁起でもないこと言わないでください!・・・・あ、でも生で黒森峰の戦車見れるなら・・・」

 

ここは組み合わせ抽選会の会場。

優花里が恍惚してるけど残念ながら笑っていられる状況じゃないようだ。

 

「サンダースかぁ・・・」

 

みほがサンダースのところを引いてしまった。

 

「サンダースって強いの?」

 

沙織が聞いてくる。

 

「強いよ。4強の1角で優勝候補だしな」

 

しかしサンダースでよかった。

あそこが本領発揮するのはトーナメント終盤だからな。

1回戦は戦車の保有数が10で制限されてるから・・・

しかし強いことに変わりはない。

 

「偵察と・・・・残り1ヶ月でどれくらい完成度をあげられるか」

 

「でも負けても次がありますし・・・」

 

負けてもか・・・生徒会の面子以外知らないんだっけか。

負けたら廃校になることに。

言ったら更に必死になるだろうけど・・・いや、俺からは言わない。

必要なら会長が言うだろうし。

 

「さて、組み合わせも決まったし出るか。途中で戦車喫茶あったしそこで何か食って帰ろうか」

 

「いいですね」

 

みほを連れてあんこうチームの面々で戦車喫茶に行く。

あんこうチームというのはⅣ号に乗ってる面子だ。

分かりやすくチーム名を動物にしようってことらしい。

他に、歴女チームがカバ、バレーがアヒル、1年がウサギ

気が抜けるようなチーム名だが、彼女たちがそれでいいと言うなら俺から反対する理由もない。

 

「俺はモンブランとアイスティーで。トイレ行ってくるから注文頼んだ」

 

俺はそう言い残してトイレに行く。

 

 

トイレから戻ると誰かと言い合いになってる。

あれって・・・

 

「エリカじゃねーか久しぶりだな!」

 

俺はエリカの肩を組んで笑顔で言う。

 

「ちょっと今そういう雰囲気じゃないんだけど!そもそも何で私にはいつも馴れ馴れしいわけ!?」

 

「え?別にお前だけってわけじゃないけど・・・・自意識過剰?」

 

「本当にムカつくわね!」

 

「秋人・・・知り合い?」

 

沙織が不安そうに聞いてくる。

 

「親友だ!」

 

「ふざけんじゃないわよ!」

 

その割には手をはねのけないんだな。

相変わらず面白い子。

 

「状況は分からないけど・・・大方エリカが挑発したんだろ?コイツいつもツンツンしてるツン子ちゃんだけど実は根は良い子だし許してやってくれ」

 

「う・・・うん」

 

沙織が渋々ながら納得する。

 

「エリカ行くぞ」

 

お、まほさんもいたんだ・・・

 

「おーまほさん。影薄くて気づかなかったわー」

 

「アンタ隊長に失礼でしょ!」

 

相変わらずの崇拝っぷりだな。

 

「それより秋人・・・・・」

 

ん?まほさんが何かを訴えてきてる目・・・ああ、みほの事よろしくってことか。

 

「はいはい、邪魔みたいだしそろそろ行っていいよー」

 

「アンタが肩を組むからでしょ!」

 

そして2人が出ていった。

俺が席に座ると訴えるように沙織や華や優花里が見てくる。

 

「どうした?」

 

「どうした?じゃないわよ!何あの人!?」

 

「黒森峰の隊長と副隊長。みほの姉さんが隊長でツン子ちゃんが副隊長」

 

「もし戦うことになったら絶対倒してやるんだから!」

 

絶対か・・・

 

「あのぅ・・・黒森峰は去年準優勝校で、そしてそれまで9連覇をしたところなんです・・・・」

 

「え!そうなの!?」

 

うーん・・・

 

「で、秋人とはどんな関係?」

 

「言ったじゃん。親友って」

 

「あんな人と?」

 

根は良い子なんだけどねー。それを他人には伝わり辛いししょうがないか。

 

「で、さっき何があったんだ?」

 

「実は・・・・」

 

華がさっき何があったか話す。

なるほど・・・・ま、エリカの気持ちも分かるわな。

苦楽を共にした仲間を見捨てて新しい学校で戦車道をしてるのが許せないんだな。

エリカってみほのことを大事な仲間って思ってるからこそ尚更だ。

暗黙のルールについては、確かにそういう面もあるけど、だから何?って感じだな。

 

「うん、俺から言えることは・・・・気にするな。だ」

 

「気にするなって・・・」

 

「気にしたってしょうがないことをいつまでも気にするな。ほら、糖分と一緒に腹の中にでも入れとけ。麻子なんてもう3個目いってるぞ」

 

「麻子!?食べ過ぎちゃ太っちゃうよ!」

 

「沙織じゃないんだから問題ない」

 

「それどういう意味!?」

 

後は・・・

 

「みほもな。あんま気にするな」

 

「え・・・・うん・・・・」

 

気にするなって言ってもそういうの気にしちゃう子だからなぁ・・・

 

「あんま気にしてるとチューするぞ」

 

「うん・・・・・え!?」

 

やっとこっち向いたな。

 

「秋人!?セクハラは駄目!絶対!」

 

沙織は別にこっち向かなくていいんだけど。

というかその覚醒剤防止ポスターみたいな言い方なに?

 

「冗談だよ。ていうかいちいち気にしてる暇があるなら新しいボコグッズのデザインを一緒に考えてくれ」

 

「ボコグッズ!?新しく作るの!?」

 

「おう、今回は何作るかな?必勝祈願ボコか?ボコのお守りとか最高じゃん。超やる気出るだろ?」

 

「出るよ!凄い出る!」

 

やっと笑顔になったな。

最初からボコの話題ふっとけばよかった。

あれ?周りが退いてるな。

 

「秋人ってそういえばいつも鞄につけてたっけ・・・」

 

「みほさんもですね・・・・戦車乗りには必須なんでしょうか?」

 

「すみません・・・・ボコだけは分かりません!」

 

まぁいい。周りが退くのはいつものことだ。

 

「じゃあ2個目いくか」

 

「私は4個目いく」

 

「麻子は駄目!それ以上食べたら肥満になるよ!」

 

さてさて、残り1ヶ月でなんとか勝てるようにしないとな。

あとボコお守りも1ヶ月以内に作るか。

 




次回は偵察とサンダース戦かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

今回偵察と報告だけ


サンダースとの対戦まで残り2週間になろうとしている。

俺は情報を収集しようと自家用ヘリでサンダースまで来ていた。

 

「さすが金持ちの学園艦。施設が充実しすぎだね」

 

幼稚園から大学までのマンモス校で、アメリカとの関係も深いせいか街並みなんかもアメリカっぽいし・・・

 

「バーガーでっかいなー」

 

サンダース大付属に行く前に昼食を摂る。

昼食を摂った後はある人との待ち合わせの為にサンダース大付属高校の前に行く。

さっきから色んな人に挨拶されるけど、さすが校風が校風なだけに初対面の男相手でもノリが良い。

 

「アキト」

 

おっと、どうやら待ち合わせ相手が来たな。

 

「久しぶりだな、ナオミ。元気にしてたか?」

 

旧友の1人でもあるサンダース大付属高校戦車道チーム副隊長のナオミが俺の待ち合わせ相手だ。

 

「ああ、元気さ。アキトがサンダースを蹴ったときは三日三晩泣き続けたけどね」

 

「嘘つけ。んなタマかよ」

 

「ハッハッハ!じゃあ早速行こうか」

 

ナオミの案内で学園の案内をされる。

 

「しかし今更だけど女子校に男が入っていいのか?」

 

「本当に今更だね。問題ないよ。校風が自由だから皆好き放題に知人を入れてるし誰も気にしないさ」

 

「それならいいんだけどな。そういえば、ケイはどうした?案内役はケイ自身がすると思っていたんだが・・・」

 

「ああ、最初はそのつもりだったんだけどね。今ケイは書類と睨めっこ中さ」

 

なるほど。仕事が溜まっていたのか。

 

「そっか。忙しいときに来て悪いな」

 

「いいさ。この時期じゃないと意味がなかったんだろ?」

 

「ああ、バレてた?」

 

バレても問題ないけどな。ケイやナオミはそういうの気にしない性質だし。

 

「君が大洗に行ったのは有名だからね。タイミングとか考えても偵察以外にないと思ったよ」

 

「一応旧交を温めるってのもホントだけどな。なんだかんだで一年連絡取ってなかったし」

 

「お互い忙しい身だし頻繁に連絡を取り合うようなタイプじゃないからね・・・と、着いた。ここにケイがいるよ」

 

扉には「隊長室」と書いてあった。

 

「こんな部屋があんのかよ」

 

「実質隊長の私室みたいなものさ」

 

ナオミが部屋に入る。

ノックしなくていいのかよ・・・

俺もナオミの後に続いて中に入る。

 

「アキト!」

 

「ケイ・・・・急に抱きつくなよ」

 

会う度会う度抱きついてくる癖はなんとかならんのかね。

 

「だって久しぶりじゃない!あなたったら全然連絡も寄こさないし・・・・今日は偵察よね?存分に見てって!」

 

「お前隊長なのにいいのか?」

 

「いいのよ。アキトならここで却下してもどうにかして情報得そうだもの。それにアキトがどの程度見たかこっちも把握できるしね」

 

なるほど。把握されるくらいならどの程度把握されるか自分らのほうでも認識しときたいってことか。

 

「それなら存分に見ようか」

 

「ええ!この後会議あるけどそれまで時間あるからお話しましょ!」

 

「ケイ、書類は?」

 

「・・・・書類を片づけながらお喋りしましょ!」

 

会議の時間までナオミやケイと一緒に話していた。

ケイは書類を片づけながらだったが。

そして会議の時間が近くなってきたところで俺達は移動した。

 

「俺はどこで見ればいい?」

 

「会議室の隣に空き部屋があるからそこで見ていいわよ。会議の様子は部屋にあるPCでリアルタイムで見れるようになってるから」

 

俺は部屋まで案内されて会議室の様子を見る。

ケイとナオミともう1人が壇上に上がる。

大洗の対策会議・・・ファイアフライ1両、シャーマンA176ミリ砲搭載1両、75ミリ砲搭載8両か。

1回戦から容赦ないなぁ・・・ま、フェアプレイが信条のケイだ。全力で相手にぶつからないと失礼になるからって理由だろ。

 

『じゃあ、次はフラッグ車を決めるよ!OK!?』

 

『イエー!!』

 

フラッグ車を決めるだけで盛り上がりすぎじゃないのか?

で、フラッグ車は76ミリか。

 

『何か質問は?』

 

壇上にいるもう1人が質問を呼びかける。

ここで編成とか聞ければ・・・・

 

『はい!小隊編成はどうしますか?』

 

お、ナイス知らない子・・・・知らない子?

あれ?おかしいな・・・声聞いたことあるぞー・・・

 

『Oh!いい質問ね!今回は完全な二個小隊が組めないから3両で1小隊の一個中隊にするわ!』

 

『フラッグ車のDFは?』

 

やっぱりこの声・・・・

 

『ナッシング!』

 

『敵には・・・・Ⅲ突がいると思うんですけど・・・』

 

『大丈夫!1両でも全滅させられるわ!』

 

会場がお~という声で満たされると・・・

 

『見慣れない顔ね?』

 

しまった。ナオミが気づいたか。

恐らく逃げるだろうから俺は逃走準備を始める。

 

『所属と階級は?』

 

『えっ、あのー、第六機甲師団オッドボール三等軍曹であります!』

 

『偽物だー!』

 

その瞬間優花里が逃げ出したので俺も部屋を出る。

 

「優花里!」

 

部屋を出たところで優花里に声をかけた。

 

「し、島田殿!?」

 

「話は後だ。こっちに来い!」

 

俺は優花里の手を引いて走り出す。

その前にバックを回収し、そのまま外に出てヘリに乗せて出発させる。

 

「し、島田殿・・・・なんでここに?」

 

「偵察と旧友に会いに・・・お前も偵察だな?無茶しすぎだろ・・・・」

 

「だ、だって・・・・西住殿や島田殿が悩んでいた様子だったので」

 

「気持ちは有難いし偵察は禁止されてないから別にいいけどさ。質問はやりすぎじゃないか?あのまま黙ってても小隊編成は発表されてたぞ」

 

「す、すみません・・・・」

 

それに偵察が来てるって分かったら変更されるかもしれないし・・・

いや、今回に限ってはそれはないか。

 

「そう沈むな。お前のビデオは凄い役に立つ。サンダース戦の勝機も見えてきた。お前の頑張りは無駄にしないよう策を考えるさ」

 

「あ、ありがとうございます!島田殿!」

 

「何でお前が礼を言うんだよ。むしろこっちが礼を言わなきゃな」

 

「いえ、島田殿のお役に立てれば光栄です!」

 

忠犬・・・・

俺はヘリを操縦しながらそう思った。

 

「ところで島田殿って操縦士の免許持ってたんですね?」

 

「ああ、それに昔っから乗り回してたからなー。最近買ったばかりの新品だし安心してくれ」

 

これかなり便利なんだよな。学園艦からの移動とか

あ、後でケイに勝手に帰ったことメールしとかなきゃ。

 

 

 

大洗の学園艦についた後は取りあえず優花里の家に向かう。

 

「この制服じゃ親に見つかったらなんて言われるか・・・」

 

「お前の部屋ってあそこら辺だっけ?鍵空いてるか?」

 

俺は2階の窓に指を差す。

 

「空いてますよ」

 

それなら楽勝だな。

俺は優花里を肩に背負って塀をつたって2階まで行き窓を開けると・・・

 

「秋人!?それにゆかりんも!」

 

そこにいたのはあんこうチームの皆だった。

 

「お前ら何やってんの?」

 

「それはどう見てもコッチの台詞だと思う」

 

麻子の言う通りだと思う。

俺は優花里を下ろした。

 

「あ、皆さん御揃いで・・・どうしたんですか?」

 

とりあえず俺は座って話をする。

 

「端的に言えばサンダースの偵察に行って、優花里がいたので回収って感じだな」

 

「そうですね。島田殿がいるとは思いませんでしたけど・・・」

 

「じゃ、じゃあ別に2人とも学校休んでデートに行ったわけじゃなかったんだ!」

 

は?デート?

 

「何の話だ?」

 

俺はみほに聞いてみた。

 

「それが・・・」

 

 

みほside

 

 

今日は1人で登校する。

いつもは秋人君と一緒に学校に行くけど「用があるから学校休む。期待して待ってろ」って言われたけど・・・・どうしたのかな?

 

「みっぽり~ん!」

 

この声は・・・

 

「沙織さん」

 

「おはようみぽりん。あれ?今日秋人と一緒じゃないの?」

 

「うん、何か用があるみたいで今日はお休み」

 

「そうなんだ。じゃあ今日は二人っきりの登校だね!」

 

「ふふ、そうだね。あれ?今日は麻子さんと一緒じゃないの?」

 

「麻子ったら全然起きないんだもん!遅刻するから置いてきた!」

 

麻子さんは本当に朝に弱いからね・・・

そして沙織さんと登校して途中で華さんとも合流して一緒に学校に行った。

 

「あれ?優花里さんもお休みなの?」

 

今は戦車道の時間だけど、優花里さんが休んでいなかった。

 

「そうみたいなんです。だから放課後様子を見に皆で行きたいなって」

 

華さんがそう提案する。いいかもしれない。体調崩していたら心配だもんね。

 

「だから放課後私達で行こうよ!」

 

「うん。いいよ」

 

それにしても優花里さんも休みなんて一体何があったんだろう?

ケガや病気じゃなければいいけど。

 

「あ、待って・・・・今日は秋人もゆかりんもいない・・・・これって偶然かな?」

 

え?

 

「いや、偶然だと思いますけど・・・」

 

「だってあの2人が学校休むって珍しくない!?しかも2人同時で休んでるんだよ!もしかしたら学校休んでデートに行ってるんじゃ・・・」

 

「考えすぎでは?」

 

私もそう思う。

 

「そこら辺も確かめないと!」

 

そして放課後になって優花里さんの家を訪ねる。

 

「へーゆかりんの家って床屋さんなんだ」

 

「とりあえず入ってみましょうか」

 

華さんが扉を開ける。

中にいたのは2人の夫婦?だった。

 

「えっと・・・優花里さんはいますか?」

 

中にいたおじさんが答える

 

「あんたたちは・・・?」

 

「友達です」

 

そう言った瞬間おじさんが驚く。

 

「友達!?友達ってあの憎っくき島田以外にもいたのか!?しかも今度はちゃんと同性・・・・あわわ、いつも娘がお世話に」

 

憎っくき島田・・・・秋人君、優花里さんのお父さんに何したんだろう。

 

「ちゃんと島田君以外にも友達がいたのね。初めまして、優花里の母です」

 

「あ、父です」

 

お母さんのほうは落ち着いてる感じだなぁ。

 

「優花里は朝早く学校行ってからまだ戻ってないの。どうぞ、優花里の部屋で待っていてくれないかしら?」

 

まだ戻ってないって・・・優花里さん学校に来てないんだけど・・・

そして部屋まで案内される。

部屋の中は予想通り戦車のプラモやポスターが所狭しと並んでいた。

 

「ごめんなさいね。これよかったら食べて」

 

優花里さんのお母さんがクッキーとお茶を用意してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

私達はテーブル囲んで座る。

 

「いいえ。お父さんがごめんなさい。同性の友達が家に来るのは初めてだったから・・・ほら、部屋がこんなんだから中々友達が出来なくて・・・でも去年に気の合う友達が出来て喜んでいたし、今年は戦車道の友達が出来て喜んでいたわ。じゃあ、ゆっくりしていってね」

 

そう言っておばさんは退出した。

 

「島田君って秋人の事だよね?家に行くような関係だったんだ・・・」

 

「そうですねぇ・・・そういえば去年からの付き合いだとか・・・」

 

「それに・・・おばさんは学校を休んだ事を知らなかった」

 

本当にどこ行ったのかな?優花里さん

 

「やっぱりデートだよ!学校行くフリをしてデート!」

 

「うーん・・・・」

 

期待して待ってろ・・・・・優花里さんとのデートの結果を期待して待ってろ?なんてあり得ないよね。もし本当にそうだったら鬼にもほどがあるよ。何で好きな人のデートの結果を期待して待たなきゃいけないの?・・・・本当にないよね?

 

「なんにせよ。待つしかない」

 

確かに麻子さんの言う通りだと思う。

その時窓が開いたと思ったらそこに居たのは

 

「お前ら何やってんの?」

 

サンダースの制服を着た優花里さんを肩に背負っている秋人君だった。

それはこっちが言いたいよ。

 

 

みほsideout

 

 

「なるほどねー。タイミング良く2人が休んだからデートしてるんじゃね?って沙織は思ったのか。でもみほには『期待して待ってろ』って言ったはずだけど・・・他人とデートに行くのに普通そんな事言わないだろ」

 

「あはは・・・そうだね」

 

「というか、何で玄関から入らなかったの!?」

 

ああ、沙織の疑問も分かるけどそうするわけにはいかなかったんだよ。

 

「親父さんが他の制服を着た優花里を心配するのと、俺に対して良い印象を持ってないから揉める可能性が高い」

 

「そういえば憎っくき島田とか言ってましたね」

 

やっぱりな。

窓から入って正解だったようだ。

 

「何でそんなに恨まれてるの?」

 

「優花里を押し倒す所を見られたから」

 

あれはまいったね。神がかり的なタイミングだった。

 

「押し倒す!?」

 

「まぁ・・・」

 

「事故です!それがちょうど父に見られてしまったので・・・」

 

最初は好意的だったけどそれ以来敵にしか見られてないんだよね。

お母さんはずっと好意的だけど。

 

「それより面子揃ってるし偵察ビデオ見ようぜ」

 

そして俺達は優花里撮影のビデオを見る。

まず校門、コンビニの制服からサンダースの制服に着替えるシーンは残念ながらカットされていたか。

それで、戦車倉庫。

お、真ん中の金髪ツインテの子可愛いな。

で、全体会議では俺も聞いていたのでその通りだ。

最後は優花里が逃げる姿と俺が手を引く姿が映されて終了。

 

「これで終わりです。最後は島田殿のヘリで無事に逃走出来ました」

 

「秋人ヘリ持ってるの!?」

 

「持ってる。そんなことよりこれを参考にみほと一緒に策を立てる」

 

「うん!絶対無駄にしないから!」

 

色々上手くいったし後は残り2週間みっちり練習するだけだな。

俺達はお暇することにした。

何か忘れてるような気が・・・

 

「お・・・もう帰るのかい?帰り道に気を付け・・・島田ァ!!」

 

あ、親父さんいたんだった。

おばさんが親父さんを黙らせて無事に家に帰った。




後はオリジナルと原作挟んでサンダース戦かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話

久々ですなー・・・
待ってた人いたらすまんなり
内容が微妙だったり文字数少ないのは久々だからってことで見逃してほしいなり


さて、サンダース戦まで残りわずかとなった。

今回は公式戦だから諸々の申請は戦車道教会が請け負ってくれるが、今一番重要なのは・・・・

 

 

 

 

「パンツァージャケットですか?」

 

昼休みの食堂。

いつもの面子で人6用テーブルに腰を下ろして昼飯を食べていた。(なお、麻子はいない。恐らくどこかで昼寝にでも行っているのだろう)。

華は、とんかつ定食大盛り+味噌ラーメン大盛りという食べ盛りの男子も真っ青なメニューを食べながら俺に声をかけた。

 

「ああ、要は戦車道のユニフォームみたいなもんだ。練習試合は別に制服でもよかったんだが、公式戦でパンツァージャケットを着ないのは問題なんだよ。」

 

いや、厳密に言えば無くてもいい。

ルールブックには、パンツァージャケットの着用有無は記載されていない。

しかし、書かれていないのは戦車道をやるうえでの常識だからだ。

書かれていないからといって着ないというのは、あまりに常識知らずとして他校からも笑われるし、コーチとして、島田流の一端を担う者としてあり得ない。

 

「可愛いのがいいよ!ピンクとかさ!」

 

沙織が身をのりだしながら提案する。

 

「私は迷彩柄が・・・」

 

おずおずと優花里が提案する。

 

「ピンク、迷彩・・・・ピンクの迷彩?」

 

みほがボソっと呟く。

 

「待て、そんな目立つ柄は却下だ。一応戦車道は昔からの伝統武芸の1つだから、大人しい感じがいい。」

 

俺の発言で各々が考える。

 

「・・・昔の資料はないのでしょうか?伝統を重んじるのなら、やはり以前と一緒のものもいいかと。」

 

昔の資料・・・盲点だったな。

正直忘れていたが、ここって昔は戦車道が盛んだったんだっけ・・・

 

「ありがと、華。ちょっと探してみるよ」

 

 

 

 

放課後になり、俺は生徒会室に向かう。

 

「かいちょー、昔のパンツァージャケットのデザイン画なんてあります?」

 

会長は、いつものように干し芋を食べながらダラダラしていた。

 

「パンツァージャケットって・・・ユニフォームみたいなやつだっけ?」

 

「そうですね。」

 

「たしか、過去の資料漁ってたときにあったようなー・・・・なかったようなー・・・」

 

過去の戦車道の資料については俺達全員で探した。

その時は、なかったと思うけど俺も全部の資料を目に通したわけじゃない。

 

「・・・とりあえず探してみますよ。戦車道関連の資料は全部図書室からこっちに移しましたよね?」

 

「見つけた限りでねー」

 

それなら話は早い。

俺は棚から全ての資料を引きずりだして探した。

 

「あ、そうだ・・・かいちょー」

 

「今度はなにー?」

 

「全員の採寸取っておいてください。作るときにいつもの被服屋に依頼するんで」

 

「あー・・・あそこなら、安いし丁寧だし早いしねー。うちのとこの制服もあそこだしいいんじゃない?かーしまー」

 

会長が河嶋先輩を呼ぶ。会長の、とりあえず面倒事は部下に任し、重要な事は自分でやるスタンスは嫌いじゃない。

 

「なんでしょう?」

 

「戦車道履修者の採寸よろしくー」

 

「分かりました」

 

さて、採寸はあっちに任せて俺は捜索を続ける。

 

 

 

 

デザイン画は30分程度で見つかった。

 

「正直古臭いデザインを予想してたけど、このままでも充分使えそうだな」

 

俺は1枚のデザイン画を手に取る。

 

「紺のジャケットに白いスカート・・・落ち着いているし、万人向けだし結構機能的だし・・・よし」

 

その時ちょうど河嶋先輩が戻って来た。

 

「お疲れさまです。早かったですね」

 

「ああ、何人かにも手伝わせたからな。それがデザイン画か?」

 

「ええ」

 

俺は河嶋先輩にデザイン画を渡す。

 

「・・・悪くないな。これはこのままでいいのか?」

 

「特に変更するところもありませんしね。後はお任せしても?」

 

「では、今から被服屋に持って行こう。あそこなら一週間もせずに全員分作ってもらえるからな」

 

「じゃあ、お願いします」

 

パンツァージャケットについては問題ないだろう。

練習も、皆の上達が分かるくらいに早い。

みほ以外素人だからっていうのもあるんだろうが、蝶野教官が感覚派の指導を、俺が理屈派の指導を、それぞれ教えているから効率が良いといのもあるんだろうが・・・。

 

「だからと言って勝てるかどうか微妙だな・・・」

 

 

 

 

 

5日後、戦車格納庫前に全員集まる。

 

「パンツァージャケットが届いた。全員格納庫内で試着した後、何か問題があるなら報告くれ。あと、これからの練習はジャケットを着て行うように」

 

全員を格納庫に入れたあと、俺は彼女たちが来るのをじっと待つ。

着替えを待つこと15分。全員が揃った。

 

「どうどう秋人!似合ってる?」

 

沙織がよく分からないポーズを取って俺の前に立つ。

 

「ああ、似合ってるよ。問題ないか?」

 

「うん!」

 

俺は辺りを見渡して・・・

 

「問題のあるやついるかー?」

 

「問題ありませーん!」

「甲冑がよかったぜよ・・・」

「迷彩・・・」

「ドイツ軍を模した軍服を・・・!」

 

特定したぞ。

 

「問題ないみたいなら、これから練習に入る。ああ、さっき文句を言ったやつらのチームは練習量倍な」

 

怨むならチームメイトを怨めよ。

 

 

 

「これでいいかな?」

 

「いいんじゃないか?細かいところは試合中に判断するってことで・・・」

 

初戦前日。俺の部屋でみほと一緒に最後の作戦会議をしていた。

 

「うちの場合、作戦を組んでも実際その通り動けるかまだ怪しいからな。大まかな作戦だけでいい。みほは隊長なんだから、何が起きても慌てないようにな」

 

「うん。なんとかやってみるよ。サンダースは強敵だけど絶対勝てないわけじゃないし・・・秋人君が見たうちの勝率ってどれくらい?」

 

「3割あればいいほうだな」

 

「だよねー・・・」

 

「そう気を落とさなくていい。ここで負けても来年があるんだから、気負わずにやればいい」

 

ま、ここで負けたら来年は無いんだけどな。

 

「うん!頑張ってみるよ!」

 

その後、みほは部屋に戻った。

俺がやれることはやった。後は彼女達を信じよう。

しかし不安が残る・・・こういう時は、ボコのDVDを見てテンション上げようか。




次回からサンダース戦
でも主人公は出ないから、結局他校と一緒に観戦しかないなー


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。