みかん色の風 (OCEAN☆S)
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1st Amor fabula
第0話「聖夜の後に」


初投稿です!


12月25日…それは冬休みのメインイベントの一つだ。

 

小さな子供はサンタを装った親からのプレゼントで喜びを味わい、

学生や大人は恋人や大切な人達と楽しく過ごすのが普通だ。

 

しかし、俺にはそんな恋人や大切な人達と楽しく過ごすクリスマスなんて、何年も経験していない…。

 

母親はいつも仕事で俺に構ってなんかくれない、この歳でそんな事言うのは少し変だが、全く相手にしてもらえないというのも、少し寂しい…。

 

ー昔はもっと仲良くしてたのにな…。

 

 

「こんな夜に外なんか見てないで、早く入りなさい。」

 

「悪い、母さん…」

 

俺はベランダから部屋に戻る…

 

いつも、俺達の会話はこれくらいだ、必要なこと以外全く喋らない…

 

「ねぇ、悠之…急に引っ越すって言ったらどう思う?」

 

「はぁ?なんだよいきなり。」

 

「いいから答えて。」

 

「別に…普通じゃね?」

 

「ふ~ん…」

 

なんだこの母親…普段全く話しかけない癖に…急に。

 

「まあ、私は風景画家だからね、引越しはよくあることで…」

 

「知ってるよそんな事…今度はどこいくんだよ?」

 

「ヒント」

 

「いや、そう言うのは要らな…」

 

「海があります」

 

「おい話を聞け」

 

…ったくなんなんだ急に…とりあえず海か…どこにだってあるから分からんな。

 

「あと、山があります」

 

山と海…どこかの田舎か?まあ、今の都会暮らしにもうんざりしてたところだし丁度いいか。

 

「ちなみにその山は日本一高い山です。」

 

「日本一高い山…あぁ、静岡か。」

 

「そう!母さん遂に富士山の絵を担当することになったのよ凄くない!?」

 

「………」

 

いや…急にキャラ変えられても困るんだけど。

 

「いやぁ、ここ数年作品に追い詰められてたからね~やっと田舎の方へ身体が伸ばせるわ~」

 

「あ、そう…」

 

 

「何よその反応、あんたは嬉しくないの?」

 

「別に、急すぎるからなんて答えればいいのかわからないだけ。」

 

俺はどっちかと言うと、アンタのキャラ崩壊にビックリだよ。

 

「悠之は、覚えてないの?静岡に行くってことはまたあの子達に会えるのよ?」

 

あの子達…?あぁ、そうか!

 

「俺達また帰れるのか、内浦に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千歌(ちか)~!お風呂上りに窓開けてると風邪ひくよ?」

 

はぁ…今、美渡ねぇと喋っても気分が紛れる気がしないなぁ…

 

「ごめん、今ちょっと海を見てたんだ。」

 

「海?」

 

「今あの人はどこにいるのかな…って。」

 

私は窓をそっと閉める。

 

「もしかして…悠之君…?」

 

「うん…考えてたらちょっと悲しくなっちゃって…」

 

「千歌…」

 

「…もう遅いから寝るね。」

 

私はすぐに自分の部屋に入って行った…きっとこの場から逃げたかったのだろう…

 

私はそのままベッドにダイブして、ぬいぐるみを抱えながら仰向けになる…

 

「そういえば、引き出しの中に…」

 

ベッドから降り、引き出しを開けて一枚の写真を取る…

 

それは、私が小学校に入学した時の写真…

 

写っているのは、曜ちゃんと果南ちゃん、そして悠之君…

 

なんだろう…この写真を見ていると、何だか懐かしい気持ちになる…そして、寂しい気持ちにもなる…。

 

…今年こそ会えるよね?

 

 

 

 

 

 

 

ー引っ越し当日。

俺は高校の数少ない友達に見送られ内浦へ向かった。

みんなはいきなりすぎて逆に笑えると言われてしまいひとりも悲しげな雰囲気はなかった……

まあ、別にいいか、そこまで高校では仲のいい奴なんていなかったし。

 

母さんが車にエンジンをかける。

 

「さあー飛ばして行くわよ!!」

 

「いや、安全運転で頼む。」

 

東京から静岡まで、高速道路を使って約4~5時間程…少し退屈だな。

 

 

…寝て待ってるか。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

♢

「クシュっ!」

 

「あれ?千歌ちゃんもしかして風邪?」

 

「う~ん…昨日窓開けてボーッとしてたから…かな?(よう)ちゃんは風邪とかはひいてない?」

 

「だ、大丈夫だけど…千歌ちゃん顔赤いよ…熱があるんじゃ?」

 

曜が千歌のデコに手を当てるが、特に熱くはなく平熱だった。

 

「ありがとう曜ちゃん、でも大丈夫だから。」

 

「う、うん…たしか今日も店番あるんでしょ?頑張ってね!」

 

千歌はうんっと頷いて旅館に戻った。

 

 

 

…やっぱり体がちょっと辛いなぁ…でも、休むのはお昼くらいからでもいいかなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~

「なあ、俺は何時間くらい寝ていた?」

 

「う~ん…4時間くらいじゃないかしら?」

 

だったらそろそろ着いてもいい頃なんだが…周りを見てもまだ全然進んでないように見える。

 

 

「あ~見ての通り渋滞よ。」

 

「デスヨネー」

 

 

 

 

 

 

そして2時間程経過し、ようやく内浦の海が見えてきた…流石に疲れた…

 

「聞いてなかったけど、俺達の引越し先はどこなんだ?」

 

「あぁ、それは行ってみればすぐにわかるわよ。」

 

母さんが車のスピードを少しあげる、すると見覚えのある景色が目に入った。

 

 

 

そして母さんが車をとめ、ある旅館に止まった…

 

「いい?あんたはこれからここでお世話になるんだから、ちゃんとやりなよ?」

 

母さんが俺を下ろして荷物を渡し、車のエンジンをかけた。

 

「母さんは行かねえの?」

 

「私は事務所に住みながら働くから心配ないわ、温泉にまた入りたくなったら伺うって高海さんに伝えといて。」

 

「なるほど…でも、旅館なんだから金とかは…」

 

「あ〜年間で借りれるほどの料金を払っといたから大丈夫よ。後、高海さんのお宅には既に話を通してあるからご心配なく。」

 

「ほぅ…意外とやるじゃん。」

 

「でしょ、少しは母親を見習いなさい。」

 

母さんはそのまま車を走らせた。

 

 

「さて…と」

 

恐らく三年くらいだろうあの子は元気にしてるだろうか。

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ……

 

 



「こんばんは~!」

 

「はーい!いらっしゃい~!」

 

みかん色の髪…少し幼い顔立ち…間違いない、この子が…

 

「久しぶり、元気だったか?」

 

「ほぇ…?」

 

「俺だよ、覚えてない?」

 

「…だぁれ?」

 

「え…」

 

嘘だろ…もしかして完全に忘れ去られたか!?

いや、確かに三年間ずっと会わずにいたら…

 

 

「え、俺のことホントに覚えてないの?」

 

「う~ん…?」

 

千歌が首をかしげる。

 

や、やべえよ…完全に忘れちゃってるよ……でも、困ってる顔もまた可愛いんだけどな……ってそれどころじゃねえ!これじゃあ俺が変質者だ…

 

「えと…お客様?とりあえずお部屋にご案内しますので、お荷物をお持ち致しますね。」

 

千歌が少し体をふらつかせながら俺に近づく。

 

「い、いや荷物くらいは自分で……」

 

マズイ…このままだと普通のお客と勘違いされてしまう…。

 

「あっ…」

 

千歌が俺の体にもたれてきたので、慌てて支える。

 

「ちょっちょっと!?大丈夫?」

 

「はぁ…はぁ…ごめんなさい…。」

 

やばい…なんか凄くいい匂いがする…

 

「い、いや気にしないで……とりあえず今は無理をしないでゆっくり休んで。」ドキドキ

 

 

 

まずい…心臓の音が聞こえちゃうかな…?

 

俺は他に人がいないか探していると…。

 

「あれ、悠之君もう来てたんだ!」

 

「あ、志満姉さん!」

 

助け舟が俺の所に来てくれて、良かった…。

 

「千歌が急に倒れちゃって…。」

 

「え!?大変!!……でも今は他のお客さんもいるし……じゃあ、悠之君?千歌ちゃんの事…お願いしてもいいかしら?」

 

「えぇ、大丈夫です。」

 

俺は千歌をおんぶして、千歌の部屋に運んだ。

 

 

 

♢

 

 

 

俺はそのまま部屋まで運び、千歌をベッドに寝かせる。

 

「内浦に着いていきなりこんな事になるなんてな…。」

 

 

 

幼い顔立ちなのに、結構発育してんだな…

 

机にみかんの山が置いてある…相変わらずみかんが大好きなんだな。

 

「(確かこうすると…)」

 

俺が千歌のみかんを手に取る…

 

「私の~みかんに手をかけるとは~いったいどこのくせ者だあぁ~!」ガオー

 

千歌が飛び起きて真っ黒いオーラを放ちながら、ジリジリと迫ってくる。

 

丸で動きが怪獣のようだ。

 

「ほら、やっぱり起きた…昔と全然変わってないな。」

 

千歌が飛び起きて俺の事を襲おうとするが、目をぱちぱちさせながら俺を見る。

 

「嘘…本当に…悠之くん…?」

 

「思い出した?」

 

「本当に悠之君だ~!!」

 

千歌が俺に抱きつく…やばいやばいやばい…また心臓が…

 

「悠之君~!」ギュッ

 

「その性格、全然変わってなくて安心したよ。」

 

千歌が抱きつきながら急に泣き始め、涙が俺の服に滲む…

 

「おいおい…いきなり泣くなよ…。」

 

「だって!悠之君ったら連絡先もよこさずにどっかいっちゃって!凄く寂しかったんだからね!!」

 

「ごめんな、向こうで色々とあってな…時間とか全然無かったんだ。」

 

顔をプクっと膨らませてじーっと俺を見つめる…やべ、ちょっと怒ってる…?

 

「でもまた会えて嬉しいよ!」

 

「3年ぶりだもんな……ってことは千歌は中学3年生か。」

 

「うん!悠之君は高校……高校…何年生だっけ?」

 

「二年生だよ。」

 

「悠之君が高校生!?…有り得ない。」

 

「いや、なんでそうなる。」

 

久しぶりにこんな会話をすると凄く懐かしく思える。

 

「それにしても、悠之君雰囲気だいぶ変わったねー最初全然分かんなかったよ。」

 

「そうか?」

 

「なんと言うか…ちょっと大人っぽくなったって言うか…」

 

「一応高二だしな、少しくらいは変わるもんだよ。」

 

俺は千歌の身体の発育に驚いたけどな。

 

…特に胸。

 

「ま、いっぱい話したけど今はとりあえず寝ておくんだ。」

 

「え~…せっかく会えたばかりなのに…」

 

「具合悪いんだろ?じゃあしっかり休まないと。」

 

「はぁ~い…。」

 

「じゃあ、おやすみ。」

 

「あ、待って悠之君」

 

千歌が俺の手を握る…

 

「私が寝られるまで…その…手を握ってて欲しい…なんて。」

 

「いいよ、寝るまで握っててあげる。」

 

「えへへ…ありがとう…。」ギユッ

 

 

夢じゃなかった…悠之君は帰って来てくれたんだ。

 

私の思いが届いたのかな?

 

これでまた、み~んな一緒だね♡




投稿ペースはかなり遅めです!

早くて2日、3日ぐらい
基本的に1週間に一回くらい。

※内容が思いつかないとかなり遅くなるかもです…マイペースなので…。



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第1話「年明け」

皆様明けましておめでとうございます!


「悠之君~!千歌ちゃんの調子はどうかしら?」

 

しま姉が千歌の部屋に入る。

 

「大丈夫みたいですよ、ちょっと色々と抱え込んじゃったみたいで。」

 

「そっか…でも、ちょうど悠之君が来てくれたおかげで助かったわ~。」

 

 

 

 

千歌が俺の右手を握ったまま眠っている…ごめんな。ちゃんと連絡先とかメールアドレスの交換くらいしておけばよかったな……。

 

「悠之君が帰ってきていきなり甘えちゃって…。よっぽど悠之君に会いたかったのね。」

 

「俺もこの日を楽しみにしてましたよ。何せ3年ぶりなんですから。」

 

「ふふっ。未来は十千万は千歌ちゃんと悠之君の夫婦旅館になるのかしら?」

 

「な、なにいってるんすか!?」

 

 

 

 

~~~~~

「いや~今日もお客さんがたくさんで疲れたなぁ…。」

 

「今日も1日お疲れ様!千歌がマッサージしてあげようか?」

 

「ほんと?じゃあお願いしようかな?」

 

千歌が後ろに回って肩を揉みはじめる。

 

「悠之君は今日も一生懸命頑張ってくれたんだね…肩のこりが物語ってるよ。」

 

「まあ、俺だってここの旅館のオーナー何だから当然だろう。」

 

千歌がマッサージをするたびに、千歌が徐々に体を詰め寄せてくるので、千歌の胸が背中に当たり…そして千歌の柔らかい吐息が首にかかった。

 

「千歌…吐息が…。」

 

「えへへ…わざとだよ?わ・ざ・と♡」

 

「へぇ…生意気なやつだな。」

 

ドサッ!

 

「悪い子には…軽くお仕置きしなくちゃな。」

 

「お、お仕置きって何をするの?」ワクワク

 

「嬉しそうにするな!」

 

~~~~~

 

まさかなのこんな事が起きるわけ…。

 

 

そんな事を想像していると、千歌が起き始める。

 

 

「う…ん?」

 

「おはよ、千歌。」

 

「あれ~?なんで悠之君は顔が赤くなってるの~?」

 

「さぁ?なんででしょうね~。」

 

千歌が起きるのと同時に、みと姉が千歌の部屋に入ってきた。

 

「しま姉~お母さんがご飯出来たって言ってるけど……あれ?千歌起きてんじゃん!大丈夫なの!?」

 

「一応大丈夫みたいよ、誰かさんのおかげで」チラッ

 

「あー!悠之君来てんじゃん!いつ来たの!?」

みと姉がでかい声をあげる。

 

「いや…さっきですけど。」

 

「知らぬ間に大きくなって~!!」

みと姉が急に頭をわしゃわしゃ撫でる。

 

「ちょっと!悠之君にいきなり何してんの!?」

千歌がベッドから降りる

 

「あ、千歌は悠之君の事大好きだもんね、ごめんごめん。」

 

「なっ!べ、別にそんな事ないもん…///」

 

「昨日あんなに泣いてた癖に?」

 

「う…うるさいっ///」

 

「てゆうか、悠之君がここに来ることをなんで教えてくれなかったの!?」

 

「いやぁ…サプライズの方が嬉しくない?」

 

「う、嬉しいけど…」

 

千歌とみと姉がまた言い争いをはじめる…ここに来るといつもこうなんだからな……他の人がいると素直になれない千歌が可愛い。

 

「まあまあ、とりあえず今は夕飯にしましょ?悠之君もいるんだから…ね?」

 

「う……は~い…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~

「あれ?千歌の母さんは食べないの?」

 

「あ~ちょうど店番してるからね…。」

 

「そうか、じゃあ時間があったら挨拶しておかないとな。」

 

食事の最中しま姉を呼ぶ声が聞こえる…。恐らく千歌の母親だろう。

 

「私、行かなくちゃいけないみたい。3人は食事を続けててね。」

 

そう言いしま姉は部屋から出ていく…すると今度はみと姉が立ち上がる。

 

「あ、私ちょっとトイレ行ってくるね~。」

 

また部屋から1人減った…今この部屋に残っているのは…俺と千歌だけ…。

 

「ねえ、悠之君。」

 

「な、なんだ?」

 

「はいっ!アーン……」

 

「!?」

 

「さっきのお返しっ!」

 

「あ、ああ…ありがとう。」

 

千歌は俺よりも2つ歳が違うけど、今のさりげない行動に胸がドキドキする……だから俺は高校生活の中で誰とも付き合ったことがない。千歌が大好きだから…。

 

 

 

 

 

 

何故かみと姉は部屋を出てから帰ってこない…そしてしま姉の方が帰ってくるのが早かった。ほんとに何がしたい人なのかわからん…。

 

「とりあえず悠之君のお部屋に案内しておくわね、着いてきてちょうだい。」

 

「あ、そういえば荷物が!たしか入口の方に…」

 

「さっき部屋に運んだから大丈夫よ。」

 

 

 

 

しま姉が案内した部屋に入ると、他の部屋によりも断然広く、快適な部屋だった。

 

「あの、こんな立派な部屋をお借りしてもいいんですか?」

 

「年単位でお金を払ってくれるお客様だもの、これくらいは当然よ。」

 

「いいなぁ~悠之君のお部屋、千歌の部屋よりも立派じゃん!」

 

「わがまま言わないの、千歌ちゃん。」

 

千歌が俺を羨ましいそうな表情で見つめる……いや、俺の事を見てもなにも変わらないと思うんだが…。

 

「とりあえず、悠之君はお風呂入っちゃってね。」

 

「間違えて女湯に入らないようにね?」

 

「それは無いな、確実に。」

 

千歌が余計ななことを言う。全く…間違えて女湯だなんて聞いたことが……あ、俺の高校のクラスに1人居たな、確か修学旅行の時、女湯の方からすげえ悲鳴が聞こえたもんな…。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

俺は3年ぶりの十千万の温泉に入ったが…相変わらず居心地のよい湯だったな…。

そして温泉から上がって時計を確認すると、既に夜の11時を回っていた。

 

そして、自分の部屋に戻ると1人用のお布団が綺麗に敷いてあったさすがは旅館…と思ったが、何故か布団の上に千歌がいる…。

 

「千歌?どうしたんだ?」

 

「その…さっきまでずっと寝ちゃってたから…中々寝られなくて…。」

 

「そっか…じゃあ千歌の部屋に行くよ。」

 

 

俺がそう言うと、千歌は首を振る…。

 

 

「一緒に…寝てほしいの…。」

 

「え…?」

 

「長い間ずっと…悠之君に会えなかったからさみしくて…さみしくて…。」

 

千歌が涙を流す…

 

 

「じゃあ…さっきと同じように、寝られるまでずっとそばにいるよ。」

 

 

二人で一緒に布団に入る…さっきよりも顔の距離が近くて、とても緊張する…。

 

 

「私…嬉しいよ…また一緒にいられて。」

「そうだな…俺も同じ気持ちだよ。」

 

「悠之君…」ギュッ

 

 

千歌がぎゅっと抱きしめる…柔らかい感触が俺の体に伝わる…。

 

この時思った…女の子の身体ってこんなに暖かくて柔らかいのだと…。

 

 

「ごめんね…今日来てくれたばかりなのに…こんなに甘えちゃって…。」

 

「大丈夫…とりあえず今日はもうこのままおやすみ。」

 

「うん…おやすみ♡」

 

 

 

 

そして、翌朝…みと姉にあっさり見られ、一日中ネタにされっぱなしになってしまった。

 

 

 

 

 

~~~~~

そして…あの日から5日過ぎた…今年から楽しい日々が送れそうだ…

母さんからは0時ちょうどにメールで「明けましておめでとう」って届いた…。

 

仕事で旅館には来れないと、メールにも書いてあった。

 

それにしてもさっきから布団から起きようとすると何かが乗っていて起き上がれない…何かグレー系の髪色の女の子が見える……

 

「オッハヨーソロー!ゆ~じくん!」

 

「うわぁ!やっぱり曜か!?」

 

「えっへへ…千歌ちゃんから帰ってきたと聞いたので…えへ♡」

 

曜がウインクをして敬礼をする…懐かしいなぁ。

 

「こ~ら~曜!いきなり飛びついちゃだめだよ。」

 

果南(かなん)!?めっちゃ背が伸びたな?」

 

「えっへへ!でしょ~?」

 

「ゆ~じく~ん!起きた~!?」

 

今度は千歌が俺の部屋に入る、今日はにぎやかだな…。

 

「悠之君、おせちが出来てるから食べに行こ!」

 

千歌がオレンジ色の着物を着ている…彼女だけではなく、曜も果南も綺麗な着物を着ていて、とても可愛いらしい…。

 

「ちょっと待ってくれ、直ぐ着替えるから…」

 

「え!今ここで…?」

 

「ここから出ろって意味だよ。さあ早く!」

 

「はーい。」

 

3人が部屋から出ていく…

 

 

朝から驚いたな…曜と果南が旅館に来ていたとは…そういえば会いに行くのを忘れていたな…

 

寝起きだったから気付かなかったけど、俺の部屋に男性用の着物が置いてある…着ろって意味なのか…?

 

俺はそのまま用意?されていた着物に着替える…。そしてそのまま鏡で確認する…。

 

「(似合ってるかな…?)」

 

そんな不安を抱えながら部屋から出る…。

 

 

 

 

「わあぁ…!凄く似合ってるよ!悠之君!!」

 

千歌がちやほやしてくるので、少し顔が熱くなる…。

 

「似合ってるよ!」

 

「うん、かっこいいよ悠之君。」

 

曜も果南も褒めてくるので恥ずかしくなってしまう…俺よりも千歌達の方がよく似合っているのに…。

 

 

 

俺達はおせち料理を食べに食卓に移動する…

 

「あれ、千歌の母さんはまた店番?」

 

「うん、しま姉とみと姉も今日は1日店番するからずっと自由にしてもいいって!」

 

「そうなのか、じゃあ気遣ってくれた3人に感謝しなくちゃな。」

 

まだちゃんとしたお礼も言えてないのに…なんか申し訳ないな…。

 

 

 

 

 

 

 

そしておせち料理で祝った後に俺達は、初詣に神社へ向かった。

 

「4人揃って出かけるなんて久しぶりだねー!」

 

「毎年悠之君がいなくて寂しかったんだよ?」

 

曜が俺の服の袖を握る…。曜も見ないうちに随分と可愛いくなったな…

 

 

「ごめんな、ちゃんと連絡先を教えておくんだったな…。」

 

「まあ、急な事だったんだし、こんな事だってあるよ」

 

果南がフォローしてくれる…1番気遣いが上手なのは変わってないみたいだな…。

 

4人で会話していると、神社の階段のところまで着いた…。

 

「うわぁ…相変わらずここの神社は階段がきついな…。」

 

「そう?私はいつも駆け上がっているよ?」

 

「果南ちゃんは例外だよ~。」

 

「千歌…大丈夫?」

 

みんなで階段を登っていると、千歌が少しずつ遅れているのがわかった…。

 

「だ、大丈夫だよっ…」

 

「辛いなら無理するな…それに普段履きなれていないゲタなんだし…ほら」

 

千歌にそっと手を差し伸べる。

 

「え…!?いいの?」

 

「ああ、足がくたびれちゃったら困るしな。」

 

「あ、ありがとう///」

 

俺と千歌が手を繋いでいると果南と曜がじーっと見てくる…。

 

「悠之君ってほんと千歌ちゃんに甘いよね~」

 

「ほんとほんと~昔と全然変わってなーい。」

 

いやだってな…千歌がなにかに困ってると、ちょっと追い詰められた子犬のような顔をするから、ついつい甘やかしちゃうんだよな…。

 

「まあ、見ているのも好きだから別にいいんだけどね~」

 

「もう、曜ちゃん!それ以上言わないで!1人でも歩けるもん!!」

 

千歌が俺の手を離す…。

 

「あれ?話しているうちにてっぺんまで来たぞ。」

 

「あ、ほんとだー!」

 

頂上に着くと沢山の人で賑わっていた…。

 

「あ、おみくじがあるよ!」

 

「ほんとだ!みんなで引いてみる?」

 

「賛成!」

 

みんなで一斉に引く……今年こそはいいのが引けますように…!

 

「果南ちゃんはどうだった?」

 

「えっと…しょ、小吉…曜は?」

 

「私は…吉だ!千歌ちゃんは?」

 

すると千歌が大きな声で叫んでる…。

 

「大吉だよ!やったー!」

 

「マジで!?」

 

「悠之君は?」

 

「えっと…あ、俺も大吉だ。」

 

「わああ!!お揃いだー!」

 

千歌が俺に抱きつく…。

 

「お、おいこんな所だと目立つぞ?」

 

「あ、ごめん…。」

 

周りを見ると、老若男女からの視線がじーっと集まった…

 

「若いって羨ましいわね~」

 

「ねえねえ、あのお兄ちゃんとお姉ちゃん抱き合ってるよー!」

 

「こら、邪魔しないの!」

 

「新年から何やってんだ、あのリア充……爆ぜろ!」

 

 

こういうひそひそ声ってなんでこんなに聞こえやすいんだ?

 

 

その後から恋愛運を確認してみると…必ず結ばれると書いてあった……結ばれるといいな…。

 

 

 

色々あったが、みんなで参拝をしに行くことになった。

 

「悠之君はいくら使うの?」

 

千歌が俺に聞いてくる。

 

「俺はいい事があったから多めに500円にするよ。」

 

「いい事?」

 

「また、みんなと一緒にいられること…それと、千歌とも一緒だしな。」

 

「も、もう!悠之君…///」

 

千歌がこれまでにないほどに顔を真っ赤にしている。

 

そしてみんなでお願いをする…。

 

「曜は何をお願いした?」

 

「高校生になっても水泳が上手くいくように…ってお願いしたよ!果南ちゃんは?」

 

「私は、これからもダイビングを楽しめたらなーって。」

 

 

そっか…2人共ちゃんとした目的があるんだな…。

 

 

「そういや、千歌は何をお願いしたんだ?」

 

「ふっふ~ん…なんでしょう?」

 

「え~教えてくれないのか?」

 

「だ~め♡」

 

 

だって…教えちゃったら意味が無いもん。

 

『悠之君にちゃんと思いを伝えられますように』ってね。

 

 




そして、ダイヤ様!お誕生日おめでとうございます!!


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第2話「古風な姉と臆病な妹」

お待たせしました!では、前回の続きからどうぞ!


参拝を済ませた俺達は屋台巡りをしていたのだが…果南と曜がふたりきりにしてくれたのは嬉しいが…ちょっと面倒な事件が起こってしまった…

 

 

 

 

 

~五分前

 

「悠之君は何を食べに行きたい?」

 

「俺は、大判焼きなんかがいいかな。」

 

「よし!じゃあ大判焼きを求めてレッツゴー!」

 

千歌が俺の手を離して、走り始めた…慣れていない下駄で転ばなきゃいいが……って俺も急がないと千歌に置いてかれてしまう!

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

そして案の定……千歌とはぐれてしまった……だが、流石にケータイくらいは持っているはず……

 

「この電話番号は現在電源が切れているか、電波の届かない所にあります。ピーっという発信音の後に……」

 

なんで電源を切ってるんだー!?はぐれた時には電源くらいつけておくだろ!?……とりあえず今は千歌を探さなくては。みかん色のアホ毛の女の子くらいすぐに見分けがつく……

 

俺が歩き始めると沢山の人がが進行方向を塞ぐ……やっぱり簡単にはいかなさそうだな……すぐに見つかるというのは撤回しておくか。

 

 

 

 

 

…10分経過。

 

う~ん…どこへ行っちゃったんだろう…こういう時は迷子案内とかに行ったほうがいいのかな……でも放送で呼んじゃったら悠之君も恥ずかしいだろうし…ど~しよ~。

 

 

 

 

 

~~~~~

「(この辺りも居ないな…どこまで行ったんだ?……ん?なんだあの子は…。)」

 

俺が千歌をさがしていると、赤いツインテのちょっと身長が小さめの女の子が半泣きの状態でウロウロしているのが見えた。………あの子もきっと迷子なんだろうな…。

 

「(今はそれどころではない…早く千歌を見つけなくては。)」

 

俺は果南と曜に連絡して、千歌を一緒に探してもらうように頼んだ。

 

 

 

 

~さらに5分経過。

 

流石にこんなに時間がかかってしまうと…俺も不安になる。呼び出し放送でも使うべきか…?

 

 

「おっと…」

 

俺が周りを見ながら歩いていると、さっき見かけた女の子に気づかず、正面からぶつかってしまった…。

 

「ごめんね、怪我とかはしていない?」

 

「ぴぎっ!?」

 

俺が倒れ込んだ女の子の手を掴む……

 

「ピギ…」

 

「ん…?」

 

「ぴぎゃアアアアアア!!!」

 

俺がその女の子に手が触れた途端に、辺り一帯が吹き飛びそうなくらいな程の絶叫をあげる……それにその女の子は目に涙を浮かべていた……この子の叫び声と同時に360度から痛い視線を感じた…やべえな、俺が変態に思われてしまう、いや変態かもしれんが。

 

 

「えっと…俺は君を怖がらせるつもりはないよ…?」

 

「うぅ…うっ…」

 

俺は必死に説得する…納得してくれればいいのだが。

 

「もしかして君も迷子かい?」

 

「そ、そんなことないですっ!ちょっとはぐれちゃっただけです!!」

 

「…それを迷子っていうんだよ。」

 

「うぅ…」

 

自分が迷子になったことを必死に隠したいみたいだな……それと、見た目からすると千歌のちょうど1歳くらい年下に見えるな。

 

「君は誰とはぐれてしまったんだい?」

 

「…お姉ちゃんです。」

 

お姉ちゃん……か、羨ましいな。俺は生まれてすぐ、物心つく前に父さんは亡くなって…兄弟もいない…昔から母さんと2人きりだったもんな…

 

 

 

 

「あのぅ…?」

 

「あ、ごめん……なにかな?」

 

「お兄さんも迷子ですか…?」

 

「はは……そんな所かな…。」

 

「あはは……」

 

俺とその子は一緒に笑っているが……こんなことしていると時間がどんどん無くなっていく…早く行動に移さなくては…。

 

「とりあえず、君のお姉さんはどんな人なんだい?」

 

「えっと……黒髪で…髪が長くて…赤い着物を着ていて……キリッとした顔をしている人です!」

 

「う、うん………なんか絵に書いたような…和を感じる女性だね。」

 

本当にそんな和服美人な女性がいるのだろうか…だとしたらかなり目立つはずなのだが…。

 

「お兄さんのは?」

 

「俺の探している人は…みかん色の髪をしていて…サイドに三つ編みをしていて、あほ毛が目立つ女の子だ

 

「あ、あほ毛…?」

 

「うん、たまにレーダーみたいに動いてるからすぐに見つかると思うんだ。」

 

「動く!?」

 

女の子が少しオーバーなリアクションを見せる。

 

「(あほ毛がレーダーみたいに動くっていったいどんな…?)」

 

 

 

 

~~~~~

「この反応…近くに何かがいるぞー!!」

 

ぴょこ…ぴょこ…と、あほ毛レーダーが動きはじめる…。

 

「こっちかな……いや、こっち……?」

 

距離が近づくほど、あほ毛の動きが激しくなる…そして…。

 

「おおっ!これは……………かわいいカエルちゃんだー♡」

 

あほ毛の女の子がカエルを見つめていると、カエルが急に逃げ出す…

 

「あぁ…待ってよ~カエルちゃ~ん…」

 

 

 

 

~~~~~

 

「(いやいや…そ、そんな女の子がいるわけが…)」

 

「あの人じゃないかな?君のお姉さんは。」

綺麗な黒髪の女性の方に指を指す

 

 

「え!?あ………お姉ちゃん!」

 

「ル、ルビィ!?」

 

「う、うぅ…お姉ちゃんー!」

 

赤い髪の女の子……泣きながらあのお姉さんに抱きついている…きっと優しいお姉さんなんだろうな……姉妹や兄弟がいるとあんな事が普通にできるのか……

 

「心配したのですよ…ルビィ…電話にもでないから…。」

 

「ごめんなさい…お姉ちゃん…ケータイの電源が切れちゃってて…。」

 

「全く……貴方はすぐにどこかへ行ってしまうのですから…もう少し注意深く行動しなさい。」

 

「は、はい…」

 

黒髪の女性がルビィの事をじっと見つめる……

 

「でも…無事でよかったわ…。」

 

「お姉ちゃん…」

 

すると黒髪の女性の後ろから見覚えのある女の子が出てきた…。

 

「妹さん、見つかってよかったねダイヤさん!」

 

「えぇ…手伝っていただき…ありがとうございます。」

 

「……!?」

 

「……あ」

 

「千歌ぁ!?」

 

「悠之君!?」

 

なんと、まさかの再開…。

 

 

「え、えっとぉ…悠之君は何をしてるの…?」

 

「ち、千歌こそ何を…?」

 

「わ、私はダイヤさんの妹さん探しを…」

 

「俺は…ルビィちゃんだったかな…この子のお姉さんを探して…」

 

「まあ、これは凄い偶然ですわね。」

 

こ、こんなミラクルが起こるなんてな……。

 

「あれ~ダイヤもここに来てたんだ~。」

 

「か、果南さん!?」

うわ……もう何が何だかわかんねえ……

 

 

話を聞くと、ダイヤさんは果南の高校の同級生…つまり俺の1歳年下……とてもそうは見えない。俺よりもしっかりしてそうだし…何よりも大人っぽい……。

 

 

「それにしてもダイヤもここにいたなんてね……びっくりだよ。」

 

「私もですわ……それと、そちらのお方…。」

 

「悠之でいいよ。」

 

「では、悠之さん…ルビィをここまで連れてきていただきありがとうございます…。」

 

「いやいや、俺は偶然ここに来ただけであって…」

 

「しかし、あなたがいなかったら…ルビィはきっと寂しい思いをしながら私の事を探したことでしょう…。」

 

あ、かなりの寂しがり屋さんなんだな…ルビィちゃんって。

 

 

「それにしても…男性恐怖症のルビィがあなたと同行できるなんて思いませんでしたわ…。もしかして、貴方は人を心を和らげる何かがあるのかもしれませんね…。」

 

だから、俺がルビィちゃんに手が触れた途端にあんな叫び声をあげたのか…。男性恐怖症なんて初めて聞いたな…昔に何かあったのだろうか…。

 

「とりあえず今は感謝しておきますわ…お礼はまたいつか…。」

「あ、ああ…」

 

どうしよう……あまりにも丁寧に喋るからなんか……体がギクシャクする…。

 

 

 

 

 

~~~~

「じゃあみんな揃ったところだし、みんなでお店を見て回らない?ダイヤさん達も一緒に!」

 

 

「そうだな、ダイヤさんはどう?」

 

「別に構いませんが……貴方は私よりも年上ですのよ?……さん付けはちょっと違和感が…」

 

「なんか俺よりも年上に見えてしまうからつい……」

 

なんだろうか……威圧?いや違う……大人の魅力ってやつか!……でも俺はやっぱり……

 

 

ギュッ…

 

「ゆ、悠之君!?」

 

「今度ははぐれないように…千歌の手を…ずっと離さないから…」

 

「ありがとう…悠之君…///」

 

他の人からの視線が集まる……やってしまった……また何も考えずに行動してしまった…。でも、さっき視線なんか気にしないって決めたんだ、恥ずかしがってる場合じゃない!

 

 

 

みんなで店を見ている時は、千歌と俺はみんなの1番後ろで歩くことを意識した……みんなの事を気にする必要がないからだ。………あれ?さっきの決意はどこへ……?

 

「そうそう、さっき悠之君が大判焼きが食べたいって言ってたでしょう?」

 

「あぁ、そういえば…千歌とはぐれてから腹が減っていたことでさえ忘れてたよ。」

 

「だからね……」

 

「ん?」

 

千歌が両手を後ろに組んでなにかを隠し持っている……

 

「じゃーん!悠之君が大好きなカスタードの大判焼き!悠之君に会うちょっと前に買ったんだ~!」

 

周りには大判焼きの屋台は沢山あるのに…千歌ときたら……まあ、そんな天然さが可愛いんだけどな。

 

それに千歌が買ってくれた大判焼きだ、いつも食べるのとは美味しさが増してそうだ。

 

「ありがとう千歌。………大好きだよ。」

 

「えっ///(い、今…悠之君…大好きって…。)」

 

「どうした?千歌」

 

「う、ううん!な、なんでもないっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで神社祭りを楽しんでいると……既に夕方になっていた……楽しい時はすぐに時間が過ぎてしまうのがお決まりな展開だ……

 

「じゃあ、私達はここで…」

 

「うん!じゃあね!」

 

「またね、ダイヤ。」

 

 

 

 

 

そして果南と曜と別れた後……2人で海を見に行った。夕焼けが海を照らしていてとても綺麗だ…。

 

「今日は色々とトラブルがあって大変だったね~」

 

「千歌が急に走るから……」

 

「あ~千歌だけのせいにしようとしてる~!」

 

千歌が俺の頬をグニョグニョと触ってくる……。

 

「や、やめろよ…千歌。」

 

「まだまだ~うりゃうりゃ~!」

 

「やっ…やったなー!」

 

俺が千歌のほっぺたをグニョグニョと触る…

 

「うにゅぅ……ゆ~じくん~!」

 

「ん~?なにかな?」

 

「はゃ~なゃ~し~てぇ~」

 

千歌の声が余りにも可愛いので余計触りたくなってしまう……だけど俺は顔から手をはなす…。

 

「ふふっ…去年と一昨年は…こんなに楽しいお正月は過ごしてなかったのに……悠之君がいるだけでこんなに楽しいなんて思っていなかったよ。」

 

「俺も…同じ気持ちだよ…。千歌がいなかった2年間が辛かった…でも、今年から同じ場所で新年が過ごせる…。」

 

千歌が笑顔でうんっと頷く…。

 

「それと…千歌に渡したいものがあるんだ…。」

 

右胸ポケットから包装された物を取り出す…。

 

「なになに~?」

 

「あけてごらん。」

 

千歌が包装紙を外して、中身を確認する…。

 

「これって…髪飾り?」

 

「そう、千歌はいつも双葉の髪飾りをつけているだろう?だから今度は三つ葉の飾りを…千歌の成長…って意味で買ってきたんだ。」

 

「嬉しい……ほんとにくれるの!?」

 

「ああ、もちろん。」

 

「やった~!!」

 

千歌が満面の笑みを見せる…よかった…気に入ってくれたみたいで。

 

「早速つけてみてもいい?」

 

「うん、俺もつけているところが見たい…。」

 

千歌が双葉の髪飾りから三つ葉に付け替える…

 

「じゃーん!どうかな!?」

千歌が嬉しそうにぴょんぴょんはねる…

 

「千歌、すごく可愛い…よく似合ってるよ。」

 

「えへへっありがとう!」

 

俺と千歌は砂浜のベンチに腰をかける…すると千歌が俺の手に自分の手を添える…柔らかくて小さな手だ…俺と千歌はそのまま…夕焼けを眺めていた。

 

「あけましておめでとう…千歌…。」

 

「うん…これからもずーっと…いっしょだよ…♡」




お年玉セットが全て爆死してしまった…


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第3話「宿敵現る!?」

この俺、小野悠之が内浦に帰ってきてから既に10日が経った……俺は引越しでここに来たからある物から逃れることができた。

 

千歌が既に追い込まれている…夏と冬に必ずお世話になる宿敵……

 

そう、その名も…「宿題」という全国の若者が必ず苦しむ…恐るべき強敵である!

 

 

 

「うぅ…ゆ~じ~く~ん…宿題が終わらないよ~」

 

「最終日まで貯めてるからそんな目にあうんだ、毎年毎年同じことを繰り返してないか?」

 

「私にとっては「宿題」と書いて「宿敵」って読むのっ!」

 

千歌がよくわからない言い訳をする。

 

「変な言い訳はいいから早く終わらせろよー」

 

「そんなぁ……悠之君はこんなに困ってる私を見捨てちゃうの…?(ウルウル)」

 

千歌が捨てられた子犬のような瞳で俺を見つめる………

 

「——誰も手伝わないなんて言ってないだろ?」

 

「わぁい!やったぁー!」

 

千歌が嬉しそうに俺に抱きついてきた、千歌の柔らかい胸の感触が俺の身体に伝わる……

 

 

それにしても俺は千歌に甘すぎる気がする……だけど、つい甘やかしたくなっちゃうんだよな……甘え上手な所が千歌の魅力の一つだ。

 

「で、さっきから手が止まっているけど、どこか分からないところでもあるのか?」

 

「あ、うん…ここの計算の仕方が分からないんだ…教科書と同じようにやってるのにできないの…。」

 

二次方程式……か。そういえば俺も昔は苦戦していた時期があったなぁ…だが、高校生になった俺にはもう敵ではない。

 

「じゃあ、俺が直接教えてやるよ。答えを写して解くだけじゃあ後から辛いからな。」

 

「でも…すごく時間がかかるんじゃ…。」

 

千歌が心配そうな顔をする……俺の時間が無くなるのかと思って気にしているのか?

 

「千歌が分かるようになるまで教えるから気にすんな。」

 

「ほ、ほんとう…?」

 

「もちろんだ、俺が今まで千歌に嘘をついたことがあるか?」

 

「あ、ありがとう…///」

 

俺は千歌の隣に座る……

 

「じゃあ、始めよっか。」

 

「うんっ!」

 

「二次方程式の計算の基本から教えていくから……」

 

俺が千歌に分かるように解説をしていく。俺は自然に千歌との距離を詰めていく。

 

「(ど、どうしよう…悠之君の顔が近くて…き、緊張しちゃうよ~///)」

 

「千歌?」

 

「(ダメっ!これは…ただのお勉強……お勉強……だけど…。)」

 

「熱でもあるのか?」

 

「ひゃあ!?」

 

俺は千歌の自分の方に寄せて、おでことおでこを合わせる……

 

「ゆ、悠之君…今はお勉強の時間でしょ…///」

 

「あ、ごめん…顔が赤いからつい…熱がなくてよかったけど。」

 

「もう……私はいつも風邪をひいてるイメージなの?」

 

「あはは…今後気を付けます。」

 

2人で宿題を続けてから1時間

 

「ここで、計算を当てはめてみてごらん。」

 

「やったー!解けたー!!」

 

「よし、じゃあ一旦休憩にしようか。」

 

千歌が畳でごろんっと寝転ぶ。

 

「そういえば、他の教科は何が残ってるんだ?」

 

「えーと…国語でしょ、社会でしょ、英語でしょ…」

 

千歌が指で数える……

 

「ほぼすべてなのはよく分かった…」

 

「あ、でも今ので数学が終わったからあと4教科…」

 

「充分残ってるじゃあねえか!」

 

「えへへ……おねがぁい♡」

 

「全く……」

 

 

さらに時間が経過する……

 

「あと一教科だ~!」

 

「最後は何が残ってるんだ?」

 

「後は……国語…しかも私が嫌いな漢文だ~。」

 

「漢文か…確かに難しいよな。でも、一緒に解いていけばなんとかなると思うから……頑張ろうぜ。」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

気を取り直し、再び勉強に戻る。

 

「ここにレ点があるから……下の文字を読んでから上の文字を読む……」

 

「そう、そんな感じ……」

 

「やった!できたー!!」

 

「お疲れ様、よく頑張ったな。」

 

「うん!悠之君がいたからだよー!」

 

千歌が宿題を始めてから約3時間……ちょうどお昼の時間帯に終わることが出来た。

 

「じゃあ冬休みの最終日だし、午後はどこかへ出かけない?」

 

「そうだな……千歌はどこに行きたいんだ?」

 

「うふふっ」

 

「……?」

 

千歌が楽しそうに微笑む……

 

「悠之君がここに来てから、1度行きたい場所があったんだ~」

 

「へぇ…どこだ?」

 

「まあまあ、ついてきて!」

 

千歌が俺の手を取り、そのまま旅館から出ていこうとした……が。

 

「千歌……まさかその格好で行くのか?」

 

「あ…まだパジャマだった。」

 

「俺も着替えないと……」

 

2人とも自分の部屋に戻り、支度を済ませた。

オレンジ色のニットのワンピースに、黒色のタイツ……いつもより大人っぽい私服に心を撃ち抜かれた…。

 

 

「お待たせ~」

 

「………」

 

「悠之君?」

 

「——可愛い。」

 

「え…///」

 

千歌が戸惑いを隠せないでいる…。

 

「い、いや…いつもと違う雰囲気にびっくりしたというか…」

 

「そ、そうなんだ…あんまり千歌には似合わなかったかなぁ…?(シュン)」

 

「いや、全く逆だよ!」

 

俺は少し深呼吸をして……

 

「可愛いよその服…千歌にぴったりだ…。」

 

「……ほんと?」

 

「千歌は何を着ても可愛く着こなせるんだから、気にしないで大丈夫だよ。」

 

「その…ありがと…///」

 

千歌が顔を真っ赤に染めている……きっと頑張ってオシャレしたんだな…。

 

「じゃあ行こうか。」

 

「うんっ!」

 

俺達が玄関を出ようとすると……。

 

「あれ~?千歌と悠之くんはどこへ行くの?」

 

「み、みと姉!?」

 

「デートだよな~」

 

「ちょっ!悠之君!」

 

「あ、ごめん…邪魔しちゃったね。行ってらっしゃい。」

 

「いっ…いってきま~す……」

 

俺達はそう言い、旅館を出た。

 

 

 

 

あの子達…楽しそうにしてたな…。もうそんな関係になっちゃったのかな?よかったね…千歌…。

 

 

 

 

「もうっ!さっきの悠之君デリカシーが無いよー!」

 

「ああいうのはすぐに話を切った方が効率がいいんだ。」

 

「デリカシーが無い悠之君なんて嫌いだもん!」

 

 

千歌が顔を膨らませている…

 

「まあまあ、そう怒るなって…可愛い顔が台無しだぞ。」

 

「なっ!?か、か…かわいいなんて…///」

 

「ほら、赤くなってる千歌も可愛いぞ~」

 

「うぅ…悠之君のいじわる…。」

 

若干怒りながらも、少しずつ笑顔を見せる…素直な性格がバレバレだな。

 

「ここだよ、悠之君と一緒に行きたかったんだ~」

 

「ここは…喫茶店か?」

 

店の看板を見ると「松月」って書いてある…俺が居ないうちにこんな喫茶店ができていたのか…。

 

「悠之君はやく入ろ!」

 

「あ、ああ。」

 

お店に入ると中から美味しそうなお菓子の匂いが漂ってくる…。

 

「さーて、私は何にしようかな~~。」

 

「色々とあるんだな……何にしよう…。」

 

メニューを見ると苺のショートケーキとコーヒーのセットが写真で乗っている……見栄えがとても綺麗だしこれにしようかな?

 

「悠之君は決まった?」

 

「ああ、俺はこれにするよ。」

 

注文後、二人用の席につく……

 

「悠之君はコーヒー飲めるんだね~。」

 

「ん?千歌は嫌いなの?」

 

「私は……ちょっと苦くて…無理かな。」

 

「そうか…可愛いらしいな。」

 

「直ぐに「可愛い」って言わないで…恥ずかしいよ…///」

 

千歌がオレンジジュースを飲みながら顔を赤くする…。

 

「だってほんとうの事だからつい……」

 

「うぅ…」

 

喫茶店の周りにいる人達からヒソヒソと話し声が聞こえてくる……。

 

「カップルかな?」

 

「彼女さん可愛い~」

 

「爆ぜろリア充」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば千歌は何を頼んだんだ?」

 

「私は~みかんパフェにしたんだ~!」

 

「ほう…美味しそうだな…。」

 

「悠之君のもわけてくれるなら、わけてもいいよ~」

 

「分かってるって」

 

千歌がスプーンから1口分すくう…。

 

「はい、アーン…♡」

 

俺は何もためらいもなく千歌のパフェを

「今度は俺のだな、ほらアーンして…」

 

「あ〜ん……おいし~い…幸せ~♡」

 

千歌の笑顔を見ていると自然に顔がにやけてしまう……。

 

「なんで悠之君がニヤニヤしてるの~?」

 

「うん?……千歌が可愛いからだよ。」

 

「もうっ!さっき言ったばかりなのに…///」

 

千歌が恥ずかしがりながら目をそらしながら話しかける…。

 

「悠之君、私がどうしてここに来たかったか分かる?」

 

「う~ん……スイーツが好きだから?」

 

「ぶっぶー!」

 

千歌が両腕でクロスをする。

 

「じゃあ……なに?」

 

千歌がクスッと笑い……

 

「……やっぱりなんでもないっ!」

 

「えーっ!?」

 

そこまで言っといて最後は何も言ってくれないのかよ……余計に気になるな…。

 

 

 

 

そんな会話をしていると辺りが夕焼け色に染まっていた…。

 

「そろそろ帰ろっか、あんまり遅くなるとみんな心配しちゃうし…。」

 

「そうだな、早く帰ろっか。」

 

2人でお会計を済ませ、店を出ると冷たい風が2人を襲う……。

 

「寒っ!」

 

「1月だからな……春はまだまだ先か…。」

 

海の周辺だからなのか、風がとても冷たい…。

 

「風邪ひくといけないからすぐに戻ろう…。」

 

「悠之君……」

 

「何?」

 

「手……繋がない…?」

 

「い、いいけど……。」

 

ギュッとふたりで手を繋ぐ…千歌の少し小さな手の温もりが俺の指の先にまで伝わっていく…

 

「ほら……2人で手を繋いでいると…心の奥からポカポカしてこない?」

 

「確かに……安心感があるから…かな?」

 

互いに顔を見つめる…

 

「前のお正月の時は果南ちゃん達がいたから…普通に手を繋げたけど…ほんとにふたりきりだと緊張するね…。」

 

「確かに…今日は1日中2人きりだもんな…。」

 

 

2人で歩いているうちに辺りが夕焼けから真っ暗になっていく…。

 

「1人で暗い場所を歩いてたら泣き出しちゃいそう…やっぱり悠之君がそばにいるからかな…。」

 

「俺は千歌がそばに居てくれるだけで充分幸せだよ。」

 

「うん…私も♡」

 

悠之君の手がどんどん熱くなっていく…少し緊張しているのかな?

 

「なあ…千歌。」

 

「なぁに?」

 

「キスがしたい……」

 

「え、え…えー!?」

 

千歌が大きな声をだす。

 

「で、でも……ここお外だよ…?」

 

「ごめん…我慢できない…。」

 

「まって……ゆう……んっ♡」

 

暗闇の小道で千歌の唇にキスをする…。

 

「まって…っていったのに……もう~悠之君のバカ…。」

 

「暗闇だから大丈夫……」

 

「そ、そうだけど…」

 

もう一度千歌とキスをする…。

 

「んっ…んぁっ…」

 

「外で暗闇のキス…ハマっちゃった?」

 

「う、うん…♡」

 

千歌が恥ずかしそうにうなずく。

 

「でも、寒いからやっぱり早く帰ろ!」

 

「えー!?」

 

 

千歌の手を握ったまま一緒に走り出す…

 

 

俺は走りながら少し後悔した…

 

 

まだ告白もしていない女の子に唇を合わせてしまったことを…

 

 

 

 

 

俺達は旅館に戻ると、千歌の母さんがニヤニヤしながら玄関で待っていた…。

 

「2人とも~見ちゃったよ~!」

 

「へ…?」

 

「さっき車で通ったら、夜道でふたりが……」

 

『やめてぇー!!』

 

 

 




キスシーン…書いていて凄く恥ずかしくなってしまいました(笑)

まだまだ僕も純粋ですネ~(どの口が言う)


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第4話「新たなスタート」

更新遅くて本当にすみません…


~朝方

 

「千歌~しいたけのお散歩行ってきてくれない~?」

 

「え~?いつもはみと姉が行ってるじゃんー!」

 

「たまにはあんたも行きなさいよ。」

 

「わ、わかったよ~」

 

 

 

~~~~~

 

「——っというわけで悠之君。千歌と一緒にお散歩いこ?」

 

新学期の早朝からいきなり俺の布団にのしかかって来るから宿題のやり残しか何かと思ったが……そんなことか。

 

「分かったよ、じゃあ着替えるからちょっとまってて。」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

「わあぁ…悠之君のブレザー姿もカッコいいね…。」

 

「あ、あんまりジロジロ見るなよ……」

 

千歌が犬が匂いを嗅ぐように、俺の周りをぐるぐる回りはじめる……

 

「そういえば千歌の制服姿の見るの初めてかも…。」

 

「そ、そう…?……似合ってるかな?」

 

「ああ、千歌は何を着ても可愛いよ。」

 

「ほんと?嬉しい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

「それにしても、しいたけは俺がいない間に随分でかくなったな。」

 

「そうかな?悠之君がいた頃からこのくらいじゃなかった?」

 

千歌と一緒に歩いていると、1人のおばあさんがあるいていた。

 

「あらぁ…今日は高見さんの妹さんがお散歩をしているの?」

 

「あ、おばあちゃん!おはようございます!」

 

「ん?この人は千歌の知り合いなのか?」

 

「うん!よくこの時間を歩いているんだ~」

 

そのご老人を見ると、とても優しそうな瞳をしていた……。

 

「それにしても、千歌ちゃんったらいつの間にボーイフレンドを作ったの?」

 

「ぼ、ボーイフレンド!?」

 

「あ、あの……私達まだ……」

 

千歌が必死に否定する…。

 

「若いって羨ましいわ……その人と仲良く…大切にするのですよ。」

 

「だ、だから違うんですって、おばあちゃん…」

 

「はい!俺はこの子を必ず幸せにします!」

 

ちょ…ちょっと!悠之君何言っちゃってるの!?私は……悠之君に想いが伝えられて……

 

「まぁ…なんて頼もしい人なんでしょう……千歌ちゃんの事をよろしくお願いしますね?」

 

な、なんでおばあちゃんがお母さんポジションになってるの!?

 

「ゆ、悠之君!お散歩が…」

 

「あ、いっけね!急がないと……おばあさんさようなら!」

 

「ええ…足もとに気を付けるのですよ~」

 

 

 

 

 

 

 

「悠之君、さっきの言ったこと本気?」

 

「うん?」

 

「その……幸せにする…って///」

 

悠之が千歌に顔を近づけて…

 

「もちろん、俺は千歌を幸せにするよ!」

 

悠之君はずるいよ……私には言えないような事を、かんたんに口にしちゃうんだから……私にもそのくらいの勇気が欲しいよ。

 

「それって……悠之君と私が結婚するってことなのかな?」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「な、なんでもないよ……///」

 

悠之君と……結婚……したいなぁ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

「「ただいま~」」

 

「「おかえり~!」」

 

俺達が旅館に戻ると果南と曜がお出迎えしてきた。

 

「な、なんで果南と曜がここに来ているんだ?」

 

「いや~新学期が始まるし、昔みたいにみんなで学校に登校しようかな~って。」

 

「それに見せたいものもあるし!」

 

曜が1通の手紙を見せる。

 

「それはなんだ?」

 

「見てみればわかるよ~」

 

俺達は居間に移動する……

 

「えっと…差出人は……黒澤ダイヤ?」

 

『お久しぶりです。いきなりですがこの間のお礼がしたいので、今週の休日に私の家に来ていただけませんか?』

 

 

「いや、なんでこの手紙が果南のところに来てるんだよ。」

 

「さぁ~住所がわかんなかったんじゃない~?」

 

「それより、この手紙の内容…遠回しに遊びに来てって言ってるよね……」

 

「もしかして……ダイヤさんって…。」

 

4人『おちゃめ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と千歌と果南、曜の4人で学校に行くのは3年ぶりだ…俺の高校が千歌達の中学校と途中までバスが同じでとても嬉しく思う。

 

「こうやってみんなで学校に行くのは久しぶりだね~」

 

「そうだね~悠之君がいるだけでこんなにも雰囲気が変わるね。」

 

「そういえば、悠之君って前までどこに引っ越してたの?」

 

曜が俺に尋ねる。

 

「俺は、3年間東京に引っ越してたんだ。まあ、母さんの事務所が東京に移動する事になったからだけどな。」

 

「東京!?こことは比べられないほどの都会じゃん!」

 

みんな東京が都会だ~っていうけど…実際住んでみると結構大変な街なんだよな…便利だけど…。

 

 

「で、東京では彼女はできたの?」

 

「(ビクッ)」

 

果南が余計なことを聞く…

 

「別にいないよ、てゆうか東京でそんなにたくさん友達は作ってないし…」

 

「え、そうなの?」

 

 

しばらくすると千歌達の中学校が見えてきたので、千歌達がバスから降りる。

 

「じゃあ、2人とは一旦お別れだな。」

 

「うん、またね悠之君!」

 

「ああ、気をつけてな。」

 

千歌と曜がいなくなったので今は果南とふたりきりか…。

 

「最近千歌とはどうなの~?」

 

「どうって…別に普通だけど。」

 

果南が楽しそうな目で俺に聞いてくる。

 

「でも、2人ともよく手を繋いだりしてるし。そろそろ友達以上の関係に……いや、もうなってるか。」

 

「いや…まだだけど。」

 

「ええっ!そうなの!?」

 

果南がバスの中で大きな声を出す…ほかに人がいなくて助かった……

 

「えー2人ともあんなに仲いいんだし…もう付き合っているのかと。」

 

「俺は結構アピールするんだけど、千歌がちょっと恥ずかしがっちゃうから……」

 

「確かに千歌はこういう時は結構、消極的だもんね…。」

 

まあ、俺は恥ずかしがってる千歌を見るのが一番好きなんだけどな……これは変態的な意味ではないぞ、趣味だ。

 

 

「悠之君は、千歌の事好きだもんね。」

 

「……まあな。」

 

「そっか……だよね。」

 

「……?」

 

果南と話していると、浦の星女学院が見えてきた。

 

「じゃあ、私はここで。」

 

「ああ、またな。」

 

 

 

 

 

 

~~~~~

ここが新しい高校か……転校ばかりしてきたからあまり違和感はないな。

 

 

俺は理事長に挨拶するため、理事室に向かったの……だが。

 

「はぁい♡君が~小野君ね?」

 

「は、はい…」

 

「まぁ~写真で見たとおり素敵な男の子だこと~お相手はいるのかしら~?」

 

な、なんだ…!?この変に奇妙なテンションな理事長は!?

 

「い、いや…特には…。」

 

「え~嘘おっしゃぁい~。こ~んな素敵な子には素敵な子がふさわしいわ~……例えるなら…私みたいな~?」

 

うっわ……マジで絡みにくいなこの理事長…とゆうか気持ち悪い…。

 

「えっと…そろそろ僕のクラスとかの説明を…」

 

「あ、ごめんなさ~い。では早速あなたの教室にご案内するわ~。」

 

理事長に教室を案内されながらいろんなことを聞かれたが、大体適当に流した。

 

 

 

 

「は~い、皆さん注目~!」

 

「誰?」 「かっこいい…」 「背高い~」

 

沢山のつぶやきが聞こえるが…まあ、大体無視しとくか。

 

「今日からここの学校に転校することになった小野君で~す。小野君は東京から来たイケメン都会人だから」

 

「すごーい!」 「羨ましい~!」

 

そんなに棚にあげんなよ、この理事長……ったく

 

「東京から転校してきた、小野悠之です。これからよろしくお願いします!」

 

パチパチパチパチ……

 

「ちなみに私はこの学校の理事長……」

 

「あんたの自己紹介はいらねえよ。」

 

 

 

俺の自己紹介が終わるとたくさんの質問が始まった…受け答えするのがかなり面倒だな。

 

「悠之君の好きなスポーツは?」

『サッカーかな。』

「嫌いな食べ物は?」

『……せろり』

「彼女は?」

『……いない』

「好きな歌手とかは?」

『いや…特にいないかな。』

 

 

引越しを繰り返している人には分かるはず……転入生は必ず質問攻めに答えるのが一番面倒な作業だってことを…。

 

 

「はい、質問はそこまで。悠之君は空いてる席ならどこにでも座ってもいいわよ。」

 

俺は適当に窓際の席に座った。

 

「小野さん…よろしくね///」

 

「……よろしく」

 

当然空いてる席でも隣には必ず女子生徒がいる……俺は適当に選んだのだが、どうもこの子は自分が気に入られたと残念な勘違いをしているようだ…。

 

 

 

「はぁい、今日は新学期初日だからこのまま下校になりまぁす。」

 

——って理事長がこのクラスの担任なのかよ!?ハズレを引いた気分だぜ…。

 

「ねえ、小野さん一緒に帰らない?」

 

さっき席が隣だった子に声をかけられる……帰りにおそらく千歌と一緒のバスになるはず、この女が一緒なのははっきり言って困る……ん?

 

この子のバスの定期を見ると俺とは反対方向のバスのようだ。

 

「悪いけど、君の持っている定期だと一緒には帰れないから……」

 

「そ、そうなんだ…ごめんね。」

 

「いや、きにしなくていい。」

 

いよーし!ここは突破できた!後は普通に帰るだけ…。

 

 

「小野君~まだ君の教材とかが渡せていないわよ~♡」

 

うっわぁ……まだモンスターが残っていたのか…。

 

「いや、教材は明日でも……」

 

「だ~め~」

 

理事長に思い切り肩を掴まれる……

 

「ちょっ!離せよ!この変態理事長!!」

 

「う~ん…この抵抗感…たまらなく。す…き…♡」

 

だ、だめだ…何を言っても通じない……こいつは本当のバケモノだ……たすけ…て。

 

 

 

 

俺は無理やり連行されて教材を受け取った。

 

「うわぁ…結構な量だな」

 

「まあ、たくさんあるけど頑張って持ち帰ってね~」

「へーい…。」

 

 

 

 

うわぁ…この時間で結構持っていかれたな……15分くらい使った気がするぜ……さっき写メでとったバスの時刻表を一応見てみるか…。

 

あ、まだ五分ある!いつもなら遅くて腹立つ所だけど今は助かった!

 

 

 

そして、俺はバスに乗りみんなが乗ってくるのを待った…そして一つ目のバス停で果南が乗車した。

 

「あ、悠之君。新しい高校どうだった?」

 

「色々とヤバかった……」

 

「な、何があったの…?」

 

「まあ…みんなが乗ったら話すよ。」

 

そして二つ目のバス停で千歌と曜が乗って来た。

 

「あ、悠之君~。……なんかやつれてない?」

 

「ほんとだ~大丈夫?」

 

「大丈夫……ではないな…。」

 

俺は今日の半日の出来事をみんなに話した。

 

「うわぁ……それは大変だったね~」

 

「勘違いしてる女の子がかわいそう…。」

 

「その理事長に会ってみたいな~」

 

「おまえらな……俺はすごく大変だったんだぞ…。」

 

みんなは分からないんだ…俺の苦しみを……理解できるはずがない…

こんな学校に後…約1年も通うなんて…

 

「それにしても、勘違いしてる女の子は放っておくとちょっと厄介なことになるんじゃない?」

 

「なんで?」

 

曜が不安そうに話す。

 

「だって、悠之君には千歌ちゃんがいるじゃん。」

 

「よ、ようちゃーん…。」

 

「確かに……思い違いでトラブルになっちゃうかもしれないね。」

 

果南が真面目な顔をして言う…果南のいうことは大体正しいから信じた方がいいかもしれない。

 

 

 

「あ~あ…これからの高校生活が雲行きが怪しくなってきたな…。」

 

 



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第5話「黒澤姉妹を救え!」

まず、言い訳をさせてください……今回更新が遅れた理由は……

リスアニLIVEに行ってました!(笑)

……すみませんでしたああああ!!!


新学期が始まってから一回目の休日、俺達4人はおちゃめなダイヤ様の家に招待されたので一旦、十千万に集まることにした。

 

 

「で、これからダイヤの家に行くわけだが…果南はダイヤの家には行ったことあるの?」

 

「まあ、中学の頃に何度か行ったかな?最近はあまり行ってないけど…。」

 

果南が少しだけ俯いて、暗い表情をしている……ダイヤと過去に何かあったのだろうか……

 

「で、ダイヤさんのお家ってどんな感じなのー?」

 

「そうだね…大きくて古風な雰囲気がある家だよ。」

 

「へ~早く行ってみたいねー!」

 

千歌と曜がニコニコしながら歩いている…そういえば正月以来みんなで集まったりすることがなかったから、この日が楽しみだったんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分程歩いていると、大きなお屋敷が見えてきた…果南が古風な雰囲気があるというのも、頷ける……

 

「あれがダイヤさんのお家なんだね~!」

 

「果南ちゃんが言った通り、和が出ていていいね~」

 

確かに2人が言うのもわかる、こんなに落ち着いた雰囲気の家に住めたら幸せだろうな……もちろん今の暮らしに不満がある訳では無い、俺は千歌がそばにいるだけで幸せなのだから。

 

 

 

 

「ダイヤがさっきメールで、ルビィちゃんが迎えに行くって言ってたから…ここで待てばいいのかな?」

 

「それでいいんじゃないかな?……それにしても、庭もでかいな…ここまで豪華なお屋敷を見るのは初めてだ…。」

 

 

俺達が話していると、見覚えのある赤い髪の女の子がこっちに向かってくるのが見えた……間違いない、ルビィちゃんだ。

 

「皆さんこんにちわ~」

 

「あ、ルビィちゃ~ん…相変わらず可愛いね~!」

 

千歌がルビィの頭をよしよしと撫でる…

 

「えへへ……」

 

「千歌ちゃん、いきなり頭を撫でちゃって…怪しいナンパみたいだよ?」

 

「いやぁ~可愛いからつい……だって、こんなに愛しい瞳をしてるんだもん!」

 

 

千歌がまたルビィの頭をまた撫でる……

 

「そういえば、ダイヤは?あれから連絡がないんだけど…」

 

「あ、今は朝のお稽古をしていて……でも、あと少しで終わると思いますので…。」

 

ルビィがそう言うと、お屋敷の中から綺麗なお琴の音が聞こえてきた…

 

「綺麗……これをダイヤさんが弾いてるの?」

 

「はい、これがお姉ちゃんの毎朝の日課なんです。」

 

すごいな……こんなに美しい音を奏でることが出来るなんて、小さい頃から努力している証拠だ……。

 

「とりあえず、皆さんを居間に案内しますね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はルビィちゃんに案内され、居間でダイヤの稽古を終わるのを待った……が。

 

「それにしても…ダイヤは遅いね、何をしてるのかな?」

 

「お琴の音は聞こえないし…ルビィちゃんもいないからもう来てもいいと思うんだけどな。」

 

 

するとちょうど良くルビィちゃんが俺達のところに来てくれた。

 

「すみません!今お姉ちゃんが他の人と急にお話が入って……」

 

「お話?」

 

みんなが集まることを知っていて急にお話をしに行くってことは……よっぽど外せない話でもあるのか?

 

「え~どんなお話?」

 

「えっと…それは…」

 

「ねえ、ルビィちゃん。……トイレってどこかな?」

 

「あ、トイレはここを出て右側にあります!」

 

「分かった、ありがとうね。」

 

「もぅ~悠之君はお家に上がっていきなりトイレ?」

 

「う、うるさいな…」

 

 

俺はルビィちゃんの言う通りに、トイレに向かう……。広い屋敷だから探すのにも苦労しそうだぜ……

 

 

 

 

 

~~~~~

ひとまずトイレを済ませたので部屋に戻ろうとすると、正面の扉の向こうから何やら揉め事が聞こえてくる……

 

「私は…絶対に貴方のようなお方のお嫁に行く気は……全くございません!」

 

「ダイヤさん、落ち着いてください…」

 

「お母様は黙ってください!」

 

 

今のは幻聴か?……お嫁だと!?まだ高校一年生なのにそんな話をしているのか!?

 

「確かに…私は歴史ある黒澤家の長女。しかし私はまだ高校生……そんな自由な時間を貴方にはけっして奪われたくはありません!!」

 

「でもね、ダイヤちゃん?僕のところに来れば将来は安心した生活が送れるんだよ?」

 

扉の向こうから、いやらしい喋り方をする男の声が聞こえる……

 

「申し訳ありませんが、貴方のお話を聞く気にはなりません……それに今は友人も待たせております……だから……」

 

 

「今日はここでお引取りを願います…!」

 

 

 

俺は話を聞くのに夢中になっていると……

 

「悠之さん…?そんなところで何をしてるんですか?」

 

「ル、ルビィちゃん!?」

 

「…もしかして聞いちゃいましたか?」

 

 

俺は何も言葉を発すること無く、ただ静かに頷く。

 

「……分かりました、じゃあここではなく私のお部屋に来てくれますか?」

 

「あ、ああ……」

 

俺はルビィちゃんの部屋に連れていかれる……

 

 

 

~~~~~

(ルビィの部屋)

 

 

「ここでだったら、何も気にせずにお話ができます。」

 

ルビィちゃんの部屋を見回すと、アイドルの雑誌やグッズなどが沢山置いてあった……

 

「一年前……あの男の人が私達の家に訪れました…。お姉ちゃんをお嫁にいただきたい……と。」

 

あの男……さっき聞こえてきた声の人なのだろう…。

 

「話を聞くと、その人はいとこの友人だという事が分かりました……そして、前にそのいとこがお姉ちゃんの写真を見せたら……」

 

そこまで話すとルビィちゃんの声がだんだん震えているのがわかる…

 

「グスッ…お姉ちゃんの事を気に入ったらしくて……そして…何度も何度も…私たちの家にやってくるようになりました…。」

 

「そうなんだ……つまり、ダイヤは何度も断ってるのにその男はしつこく家に訪問してくる…ってことなんだね?」

 

「は、はい……」

 

…しつこくやってくるその男もだが…その写真を見せた、いとこは、なぜ止めに入らないのだろうか……

 

俺は深い疑問が胸に残った…

 

「お母さんは何て?」

 

「お姉ちゃんの意思に従うって言っていました…でもあの男は……!」

普段大人しそうなルビィちゃんがあんなに怒りをこみ上げているなんて……自分のたったひとりの姉だからな…きっとで嫁がれるのは嫌なのだろう……

 

「う、うぅ……お姉ちゃん…」

 

嫌がっているのに、無理やり押しかけるとはな……男として最低な奴だ……

 

「……ルビィちゃん」

 

「は、はい……」

「俺も…説得に協力するよ。」

 

「え…!?」

 

ルビィが驚いた顔をする。

 

「もう俺達は赤の他人ではない…俺も2人のために協力するよ。」

 

「でも……」

 

「事が大きくなる前に決着をつけた方がいい……だから俺も手伝うよ。」

 

「………分かりました、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

~~~~

 

俺とルビィちゃんは、再びさっきの部屋の前に立つ……まだ揉め事が聞こえるってことはまだ、話はついていないってことだ…。

 

「…では…あけます…!」

 

「うん…!」

 

ルビィちゃんが扉を開ける。

 

「「失礼します」」

 

「ル、ルビィ!?それに悠之さんも!?」

 

「なんです?ルビィ…そのお方は?私達とは関係の無いものを連れきては……」

 

俺はダイヤのお母さんに挨拶をするために顔を近づける。

 

「勝手にお部屋に上がってしまい、申し訳ありませんが俺はその男に話があります……事情はルビィちゃんにすべて聞きました、俺にあの男と話をさせてください。」

 

「(まあ…なんて素敵なお方……)」

 

「分かりました、では貴方にお任せ致します…。」

 

 

男が不満そうな表情をする……

 

「なんですか?その男は?私達の話とは全く関係ない人物じゃないですか!」

 

「確かに俺はこの家の血筋を引いている訳では無い、だけど貴方の話を聞き、人として最低な行為だという事を証明させる為にここに来ました。」

 

男は少しイラつかせた顔をするが……

 

「いいでしょう、でしたら全く関係のない貴方の意見を聞かせて頂けますか?」

 

男の目つきが鋭くなる……

 

「あなたは…まだ高校生活を満喫している、女子高生を自分の嫁として迎え入れるのですか?」

 

「なにぃ?」

 

「…はっきり言います、あなたは一般常識がなさすぎます……それに、ダイヤはあなたのお誘いを何度も断っています、これ以上この家に訪問することがあれば、警察に対応させることも可能です。」

 

「…!?」

 

男の顔色が変わる……

 

俺は自分のスマホに電話番号を打ち込む…もちろんその番号は……

「110」

 

「どうしますか?このまま電話にかけて、悪質な訪問者として貴方を警察に送り込んでもいいんですよ?」

 

「やめろ……」

 

俺が通話のボタンに手をかける…

 

「いい加減にしやがれ!この糞ガキぃ!!!」

 

男がナイフを取り出す……

 

「うおおおおりゃぁ!!!」

 

男が何も考えずにめちゃくちゃにナイフをぶん回す……

 

「ダイヤ!今すぐ警察に連絡しろ!」

 

「あ、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

「ねえ、今すごい声が聞こえなかった?」

 

「確かに聞こえた…悠之君はどっかに行っちゃうし……みんなで探してみない?」

 

「そうだね、それに面白そう!」

 

今……本当にすごい声が聞こえたけど…悠之君は大丈夫かな?

 

「千歌ちゃん?」

 

「あ、ごめん…みんなでじゃあ探そっか!」

 

 

 

 

私達が廊下を歩いていると使用人がすごく焦った表情をしながら、話しかけてきた…

 

「これより先は危険です!早く屋敷から出てください!」

 

「何かあったんですか?」

 

「ナイフを持った男が、大暴れしていて……」

 

使用人の指の指す方向は……

 

「さっき悠之君が向かったところだ!」

 

「ちょっと千歌ちゃん!そっちに行っちゃダメだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

「てめえ……なんでこのナイフを見ても何も表情を変えないんだ…?」

 

「そんなもので脅したところで俺には何も通じないからだ。」

 

「やめて、悠之さん!!それ以上その男を刺激しないで!!!」

 

 

 

男がナイフを握りしめ悠之に襲いかかる……

 

「ぶっ殺す…!!」

 

「(くるか…だが、ここは落ち着いた奴が勝利するんだぜ…!)」

 

「死ね!小僧ぉ!!!」

 

男がナイフを悠之に突こうとするが……

 

(シュッ!)

 

「な、何ぃ!?ナイフの持ち手の部分を正確に蹴りあげやがった!?」

 

そのままナイフは上空へ飛んでいった…そして…悠之はこの一瞬の隙を見逃さなかった…!

 

(ドゴッ!)

 

激しい音を立てて、男を地面に叩きつける。そして、拳を男の寸前で止める…。

 

「……降参するか?」

 

「(コクっ)」

 

男は素直に頷き、抵抗する意思を見せなかった……そして、すぐに警察が突入し、男は連行された…。

 

 

「悠之さんっ!」

 

「ダイヤ…驚かせて…すまなかったな。」

 

ダイヤが悠之の身体を強く抱きしめる……

 

「なんで、こんな無茶をするんですか!?」

 

「……人が困っていたら助け合うのが人間だろ。」

 

「悠之さんが……殺されてしまうのかと思いました…。」

 

ダイヤの涙が俺の服に滲む……。

 

「悠之君っ!」

 

千歌の声が聞こえたので、慌ててダイヤから離れる……

 

「よかった……生きてた…。」

 

千歌の後ろに曜と果南もそして、部屋をすぐに脱出したルビィも来ていた…。4人とも涙がこぼれていた……。

 

 

「ごめんな……みんな…心配をかけて…」

 

 

事件は解決したが……深い罪悪感だけが俺の心に残った…。

 

 

 

 

 




初めて暗い話を書きましたが、何か違和感があれば感想をお願いします…!


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第6話「貴方への想い」

今回はかなり長めです!


黒澤家の事件から3日……俺は今普通の学校生活を送っていた……だけどそんな平穏はあっという間に過ぎていった……なぜなら……

 

 

『ねえ悠之君、今日の放課後時間ある?』

 

そう、俺の隣にいつもニコニコしながら座っているこの女……名前はなんて言ったけ……まあ、別にいいや…興味の無い人の名前をいちいち覚えてはいる必要は無い……こんな性格だから、東京でもあまり友人も作れなかったのだろう…流石に自覚症状はある……

 

「悪いけど今日は外せない用事があるんだ、また今度な」

 

俺は、なんも予定もない用事を理由に学校を出た……

 

 

俺がバス停に向かうと、何やら見覚えのある子がバス停で待っていた……

 

「千歌ぁ!?なんでここに?」

 

「いやぁ~間違えて反対方向のバスに乗っちゃって……」

 

千歌が照れくさそうに笑う……何か裏がありそうだな。

 

「でも、すぐに帰りのバスに乗って行けばよかったのに…なんで俺のことを待ってたんだ?」

 

「あはは…今日は定期を忘れちゃって……」

 

あぁ…もう千歌の苦笑いしているのを見て、大体理解出来た……

 

「帰りのバス代が無くなっちゃったから俺に頼りに来たと……」

 

「えへへ……おねがぁい♡」

 

「全く……仕方ねえな…。」

 

俺は千歌の頭を撫で、一緒にバスが来るのを待った……

 

 

 

 

 

『(あの子…もしかして悠之君の事を……)』

 

 

 

 

~~~~~

 

「(今……もの凄い殺気を感じた気がするけど…気のせいかな?)」

 

「……悠之君?」

 

「悠之君ってば!」

 

「な、何?」

 

千歌がブレザーの袖を掴んだのでようやく気づいた……

 

「なんか、顔が少し怖かったよ?」

 

「え、マジで?」

 

「急に高校に来ちゃったから……迷惑だった…?」シュン

 

千歌が上目遣いをしながら、目をウルウルさせている…その姿が余りにも可愛いすぎて俺の理性を狂わせる……

 

「…そんな事ないよ、むしろ奥さんが迎えに来てくれたみたいで嬉しいよ。」

 

「お、奥さん!?」

 

千歌が顔を赤くさせて、手を顔に当てている…恥ずかしい時はいつもこのポーズをとるからすぐにわかる。

 

それにしても…あの物凄い殺気は一体なんだったんだろう…

 

 

 

 

 

~~~~~

翌日 PM12:40

 

俺はいつも通り自分の席で、弁当を食べる……前までは1人で食べてる事が多かった、だけど……

 

『悠之君、隣いいかな?』

隣もなにも、そこは君の席じゃないのかな?と思いながら、俺は何も気にせずに弁当を食べる……そろそろ俺もイライラしてきた…この時間が早く終わればいいのに……と、そんな事を思い続けた…。

 

『今日の放課後…話したいことがあるの。』

 

「……分かった。」

 

流石に同じ手は通じないと思い、俺は素直に返事をする……だけどこれはチャンスかもしれない……この人に俺の思いを全てぶつければ少しは距離を遠ざけることができるかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

放課後…

 

教室から他の人がいなくなったので、俺と彼女の2人きりになった…

 

「で、話って?」

 

『…手短に話します。』

 

彼女は顔を赤くさせながら、話を始める……もういいから早くしてくれ…。

 

『一目会った時から好きでした!』

 

「………」

 

『だから、私と付き合ってくれませんか!?』

 

あぁ…めんどくせ、こういう展開…別に好きでもない女に告白されるという…余りにも時間の無駄だ……

 

「俺は…最初から……」

 

『……!』

 

「君の事なんか、何にも興味なかった。」

 

『……!?』

 

俺は、はっきりと今までこらえていた分を話す。

 

「何かとアプローチをかけてくるけど、俺は君に全く興味無いんで。もう、これ以上関わらないでくれないか?」

 

「………」

 

彼女は固まったままだが、俺は無視してそのまま教室を出た。

 

 

 

 

『(最初から…興味がなかった…!?うそよ!…だって新学期の最初に私の隣を選んだのに……なんで!?なんでよ!)』

 

『はあ…はあ…』

 

『(やっぱり…バス停で悠之君と一緒にいたあの女…何かが怪しいわ……。)』

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

「え~今日も曜ちゃんは水泳の練習~?」

 

「ごめんね、千歌ちゃん…今日も先に帰っててね?」

 

「むぅ…仕方ないな~」

 

 

1人で帰るのは少し寂しいけど、曜ちゃんは練習なんだし仕方ないか~今日は悠之君と同じバスかな?

 

私はバスに乗り、辺りを見渡したけど……悠之君の姿はどこにもいなかった…。

 

はぁ…今日は1人か…なんか寂しいな~。

 

すると、バスが急に動き始めた……

 

「うわっ!」

 

吊り革に捕まるのを忘れていた私は、思い切りバランスを崩して1人の女性にぶつかってしまった……

 

「ご、ごめんなさい……大丈夫ですか?」

 

『………』

 

私は慌てて誤ったけれど、その女性は私の事を睨みつけてそっぽ向いてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

『(悠之君がいつも乗っているバスに何かヒントがあるのではないかと思ったけど……まさかあの子が乗っているなんてね……それにあの制服……多分中学生ね。)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

「ただいま~」

 

「おかえり千歌。」

 

私が家に帰ると悠之君が迎えに来てくれた。

 

「今度は、俺が迎えに来たよ~なんてね。」

 

「えへ…悠之君可愛い~」

 

千歌が靴を脱いで玄関を上がろうとした時……

 

「千歌ぁ~帰ってきて悪いんだけど、ちょっと夕飯の買出しにスーパーへ行ってくれない?」

 

「えぇ~!今帰ってきたばかりなのに……」

 

すると千歌が俺の事をジーッと見つめる……まったく…仕方ないな千歌は。

 

「分かったよ、俺も行くよ。それに夜道で女の子1人じゃ危ないからな。」

 

そして、俺達はもう1度外に出る……

 

「じゃあ、いってきまーす!」

 

千歌とスーパーに向かっている時に、強風が吹き…俺達の体を冷やしていく……。

 

「しまったな…今日はマフラーをしていなかったな…。」

 

「そういえば私も~」

 

風が吹くたびに、千歌が俺に体を寄せてくる……

 

「ねえ…寒いからくっついてもいい?」

 

「あぁ、いいよ。」

 

千歌が俺の腕を組みながら歩く……そして、千歌のふくよかな胸が俺の腕に当たるので……すごくドキドキする…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子の旅館の横に高海って書いてあった……悠之君の苗字と違うから…兄弟ではないのね……ってことはやっぱり……

 

 

 

ふふ…面白いオモチャになりそうね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

俺が、あの女に告白されてから1週間が経過した…

 

 

~バスの中

 

「ねえ、悠之君…」

 

「なんだ?」

 

千歌がちょっと不安そうな表情をしている……

 

「私…最近誰かに見られてる気がするの…。」

 

「……!?」 「……!?」

 

曜と果南が大げさに反応する。

 

「誰に!?」 「心当たりはあるの!?」

 

「お前ら落ち着け……」

 

千歌の表情を見ると少し涙目になっている……そんなにしつこいストーカーでもいるのか?

 

「曜ちゃんは部活とかで一緒に帰れない時に、よく怖い視線を感じるんだ……私の足音に合わせて歩いている感じもするし……」

 

 

今にでも千歌は泣きそうだ……ここまで千歌を傷つける奴は絶対に許せんな……

 

「どうする?帰りは俺が浦女まで迎えに行こうか?」

 

「うーん…でも、悠之くんに迷惑かもしれないから大丈夫!曜ちゃん達と一緒に帰るよ!」

 

「そっか、何かあったらすぐに教えてくれよ。」

 

「全く~朝からこのバカップルは~」

 

「イチャイチャしちゃって~」

 

果南と曜がいじってくるけど、今回は少し何かが引っかかるからな…ちょっとは警戒しておいた方がいいかもしれないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はみんなと別れ、自分の教室に入ったが…いつも隣にいる彼女はどこにもいなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

「どう…?校門には誰かいる…?」

 

「ううん…今は居ないね…千歌ちゃん、今のうちに帰ろっか。」

 

「そうだね——」

 

私と千歌ちゃんがバス停に向かって歩いていると、1台の車が猛スピードで走り、私達の前に止まった。

 

「あ、あぶな~なんだろうね?あの車…」

 

「さ、さあ……」

 

車の中からたくさんの男の人が降りてきて、私達を包囲した……。

 

 

「ちょっちょっと!いきなりなんなんですか!通してください!」

 

私は周りを見渡したけど、運悪く人は誰一人居ない…。

 

その男達はみんなガタイがよくて、まさにチンピラのような格好をしていた……私なんかじゃ到底相手にならないだろう…。

 

「間違いないな、この子だ。」

 

男の1人が、千歌の腕を物凄い力で掴む。

 

「いたっ!は、離してください!!」

 

「や、やめて!千歌ちゃんから離れて!」

 

千歌はそのまま車に放り込まれ扉を閉められた。そして、曜は後頭部を殴られその場に倒れ込む……

 

「うそ…でしょ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

「う……ん?ここは?なんだか薄汚いし……空気も悪い…」

 

『やっとお目覚めかしら?お嬢さん?』

 

「………!?」

 

私は辺りを見渡すと、自分がどんなに危険な状況になっているか…すぐに理解することが出来た……。

 

 

「ここはど…こ…!?なんで…私はこんなところに…?」

 

私は恐怖が心の底から込み上がり、逃げようと立ち上がろうとした時……

 

ギシッ

 

 

 

自分が椅子に座らされ、縄に縛り付けにされていたことにようやく気づいた……。

 

『ようやく自分の立場が理解出来たようね。』

 

「誰…?私…貴女のことなんて・・・」

 

その人の目を見ると、異常な殺気を感じた……

 

 

『あなたさえいなければ……彼は私の事を見てくれていたかもしれないのに……!!』

 

何も抵抗のできない千歌に、その女は思い切りビンタする

 

「いっ……」

 

私は声が出なかった……名前も知らないこの女性に何らかの恨みを持たれて…顔を叩かれて…ただひたすらに恐怖だけを感じた……そして…涙がボロボロと流れてきた…

 

『何泣いてるのよ…私の方が泣きたい気持ちでいっぱいなのに!!!』

 

バシッ!

 

 

必死に逃げようとしても、固く結ばれた縄が私の動きを完全に制御している…。

 

『あの人は!私の事を全く見てくれていなかった!!振り向いてすらくれなかったのよ!!』

 

 

バシッ!

 

 

「いた…いよ…もうこんなことやめてよ…!!」

 

 

『わからないの…?私の受けた痛みはこんなんじゃ済まないわよ…!!』

 

 

バシッ!

 

 

「最低だよ…」

 

『あぁ!?』

 

「こんな暴力だけで、心を晴らそうとするなんて…!」

 

『うるさい…お前に何がわかる!!』

 

「そんな表現しかできないのに…悠之くんのことが好きだなんて言わないで!!」

 

「だまれ…だまれ…だまれえええ!!!!」

 

 

バシッ!バシッ!

 

~~~~~

 

うすれた意識の中、私はなんとか起き上がった……誰も私の助けにこないってことは、まだあまり時間は経っていないということ…。

 

 

とりあえず私はスマホの電源を入れて、急いで悠之君に電話をかける。

 

「もしもし?悠之君!?」

 

「曜?どうした?」

 

「千歌ちゃんが…千歌ちゃんが…よく分からない人達に……」

 

「落ち着け曜…まさか、連れ去られた…とかじゃないだろうな?」

 

「私が知らない人達に気絶させられたうちに…千歌ちゃんがどこにも居なくて……」

 

「……曜、警察には連絡したのか?」

 

「い、いや…まだだけど…」

 

 

 

 

悠之君はそのまま電話を切ってしまった……

 

 

 

 

「なんだか…嫌な予感がする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

『ふ、ふふ…いい気分だわ…憎しみを持った人をここまで痛めつけられるなんて…これほどにまで気分のいいものはないわ……。』

 

少しずつ視界が見えなくなってくる……もう何発受けたのだろう……既に数え切れない程受けている……もうどうにでもなってしまいそうなくらいだ…。

 

 

『そろそろ…頃合ね。』

 

一味の女が仲間を一斉に集める。

 

『…パーティをはじまりよ。』

 

男達は歓声をあげ…私の縄をほどいた…

 

私はすぐに逃げようと走ったが、彼らの足は早く…あっという間に捕まってしまった…。

 

 

「痛っ…離して…よ!!!」

 

「お、結構暴れるな…無駄な事だと思うけどね!!!」

 

『貴方に教えてあげるわ…輪姦の恐ろしさをね。』

 

仰向けにさせられ、3人がかりで全身を固定させられる…。

 

私…何をされるの…?りんかん…ってなに?

 

『あんなに殴られてたのに、可愛い顔は全く崩れてないな…これは楽しみがいがありそうだ。』

 

『まあ…俺達全員が満足出来るか分からないけどな。』

 

『は?なんでだよ?』

 

『だってこんな小さな女の子だぜ?身体がぶっ壊れちまうかもよ?』

 

『だけどよ…めちゃくちゃな身体にされて、悔しがる彼氏の顔を見るのが楽しみだとは思わねえか?』

 

『おぉ~それもいいな~』

 

 

私…どうなっちゃうの…?

 

 

誰も助けが来てくれない……

 

 

 

『おいおい、早く全部脱がしちまえよ。』

 

『わかってねえな…少しずつ脱がしながら楽しむもんだろ?』

 

『それもそうだな…。』

 

服の上から胸を触られても…何も思わなくなってきた…

 

別に好きでもない人に体を触られても…

 

何も気持ちよくもないし…嬉しくもない…

 

これは…悪い夢なのかな…?夢なら早く覚めてよ…。

 

 

『そういや…彼氏とはキスはしたのかな?』

 

「うるさい…!!あんたなんかに関係ないでしょ!!!」

 

『ほう…そうか…。』

 

 

無理やり体を引き寄せられ、無理やり口付けされる…。

 

 

 

この瞬間に思った…何も思わないわけがない…体をこんなに簡単に汚されていって…何も思わないわけがないよ。

 

「んー!んー!」

 

『ぷはっ…いいねぇ…柔らかくて甘い味がするぜ…!!』

 

「……っ!」キッ

 

『そんな怖い顔すんなよ~じゃあ次は俺の番かな…』

 

男が私の制服を脱がし、下着姿にさせられる……

 

「いや…触らないで…」

 

『どこまで耐えられるかな…?楽しみで仕方がねえよ!!!』

 

「悠之…くん…」

 

『おやおや?彼氏が助けにでも来てくれる夢を見ているのかな?』

 

『こんな所まで来るとは思えないけどな~!』

 

 

男達が笑い転げる…。

 

ほんとに…来ないのかな?

 

曜ちゃん…果南ちゃん…悠之くん…。

 

『おい?なんか音が聞こえないか…?』

 

『は?なんの音だよ?』

 

『なんと言うか…足音?』

 

『は!?こんな所まで来るわけが……』

 

 

 

 

みんなが一斉に音の聞こえる方を見つめる…そこには、悠之くんの姿が見えた…。

 

 

 

「悠之君…なの?」

 

なんだかいつもの悠之くんの雰囲気とは全然違って見える…物凄い狂気に満ちているみたい…。

 

 

「千歌…じっとしてるんだぞ。」

 

「うん…。」

 

「絶対に助けるから。」

 

 

悠之君の一言に、さっきまでの心の鎖のようなものが、一気に開放された気分になれた…。

 

 

『なんだてめぇ!この女の彼氏か!?』

 

『なぜここが分かった!?』

 

質問はひとつずつにしやがれ…クズどもが…。

 

 

「ここの近くに千歌のバックにつけているストラップが落ちていた…どうやら、てめえらは抵抗している千歌を…無理やりここまで連れてこさせた…。まあ、こんなにバカ騒ぎしてりゃあ…音にもすぐ気づくしな…。」

 

『ふ、ふん…それがなんだと言うんだ?見てみろ、お前の彼女を…この無残な姿をよ…』

 

「悠之くん…。」

 

 

無理やり下着姿にさせられたのか…少し紐が伸びているように見える…何よりも、顔にたくさんアザができている…

 

 

男が7人…女が1人…

 

そうかあの女…やっぱり……

 

 

「お前の顔は…もう見たくもないと思っていたが…全部お前の仕業か」

 

『あなたは私の事が好きだと思っていた……けれど…あなたは私には興味を示さなかった……でも、絶対に愛させてみせる…それが私の望みだった。』

 

「自分の欲望の為だけに…か…それで千歌を……。」

 

『そうよ…!』

 

「てめぇ……」

 

 

 

最初に出会った時から、少し疑問があった…この女には何か闇がある…ずっとそう思ってた。

 

「全員…ただで帰れると思うなよ…。」

 

俺が女に近づこうとすると、他の男達が邪魔をする

 

『リーダーを相手する前に、俺達と相手してもらうぞ…まあ、てめえみたいなガキは俺1人で十分だがな!』

 

それに便乗して、周りの男達が笑い転げる……

 

「……」

 

『ほらぁ、何か言ってみやがれよ?あぁ!?』

 

『おらァ!』

 

チンピラの拳が俺の頬に直撃するが……

 

「悠之くん!!」

 

『へ…!ざまあみやがれ!』

 

ガシッ

 

俺はチンピラの手首をグッと握りしめ、血液の流れを止める。

 

『が…!て、てめえ!離しやがれ!!』

 

「いちいちうるせえんだよ…その汚ねえ口を閉じろ」

 

俺はそのまま手を離し、顔にストレートをぶちかます。

 

バゴッ!

 

『がっ…!』

 

チンピラは激しく吹き飛び、顔を抑えてる…これは相手に恐怖を与えた証拠だ。

 

「おい…」

 

『ひ、ひい!?』

 

「…誰が寝ていいって言った?」

 

ドゴッ!

 

俺はチンピラの胸ぐらをつかみ、顔にもう1発ストレートを放つ。チンピラはグッタリと伸びてしまったが……さらにそこから顎に蹴りを入れる

 

『が…あぁ…』

 

「これ以上、起き上がる真似をしたら…」

 

「…殺すからな。」

 

 

『お、おい…やべえぞ…あいつ…喧嘩で一番強いあいつをコテンパンにしやがった……』

 

『な、なにビビってんだ!相手はたったの1人だぞ!!』

 

『お、おう!』

 

『かかれ!』

 

全員、一斉に俺に攻め始める。

 

『うらぁ!!!!』

 

「……」

 

俺は、相手の攻撃を避けながら1発ずつ拳を放つ

 

『あが…』

 

『うぅ…』

 

『なんでだ…?思い切り顔面に殴ってるのに…全く怯まねぇ…』

 

「…束でかかってもそんなもんか?」

 

こんな奴ら…俺が東京で喧嘩してた奴らよりずっと弱い…話にならんな。

 

 

「最後は…お前一人だ…。」

 

『そんな…こんなはずじゃ……』

 

「心の底からてめえもぶっ飛ばしたいが…女には手は出したくねぇ…それに、もうすぐ警察が来る…ちょうど良いし、全員分の治療をさせてやるんだな。」

 

『くっ…』

 

「お前達に最後に一つだけ教えてやる……」

 

 

 

 

「お前達が千歌に与えた傷は…こんなものじゃ済まされねえんだよ!…!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「千歌、大丈夫だったか?」

 

「グスッ…うぅ…怖かった…悠之君…いつまでも来てくれなくて…私…殺されちゃうのかと思った…。」

 

制服を着させて、リボンを結び直す。そして、そのまま千歌の体を抱きしめる

 

 

「もっと…早く来て欲しかったよ…」

 

「ごめん……怖かったろう?」

 

 

俺も千歌が無事だった安心感で涙止まらなくなった……

 

 

「グスッ…じゃあさ……。」

 

「うん?」

 

千歌が涙を袖で拭き……

 

「私と……付き合ってくれる?」

 

「…もう悠之君とただの幼馴染なんて嫌なの…だから…」

 

ギュッ…と悠之君は私の身体を優しく抱きしめてくれた…

 

「俺も…千歌と同じ気持ちだ……俺も…もうただの幼馴染は嫌だ…。」

 

「…ホント?」

 

「ずっと…千歌のことを守るから…。」

 

 

千歌が俺の唇にキスをする…。

 

 

「悠之君…大好き…。」

 

「俺も…大好きだよ。」

 

「ねぇ悠之くん…」

 

「ん?」

 

「そのバイクどしたの?」

 

「あ~理事長から無理やり貸してもらった。」

 

「ふふっなぁにそれ♪」




シリアス系は多分もうおしまいかな?

次回からきっと普通の日常に戻ります。


~追記~


(2018/05/05 )


文章の訂正、補正を行いました。


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第7話「感謝を伝えたくて」

インフルにかかってしまった…つらいなぁ…


~悠之の部屋

 

あの時…私は涙が止まらなかった……もし悠之君が私のところに来てくれなかったら…いったいどうなっていたのかな………想像もしたくないけど私の身体はあの人達に汚されていたのかな…?

 

……でも、あの事件があったから私は思い切って悠之君に告白が出来たのかもしれないし……なんだか複雑な気持ちだけど、あの事件に少し感謝………?ううん、ほっぺがまだ痛いからやっぱり感謝できない……かな?

 

 

 

 

「何ボーッとしてるんだ?千歌」

 

「え、いや……今日は色々と疲れちゃったかな…って。」

 

 

現在夜の10時……警察の人に少し事情聴取されていたから帰るのが遅くなっていた……

 

「やっぱり、まだ不安か…?」

 

「ううん………って言ったら嘘になるかな…。」

 

「そうか……」

 

 

 

チュッ……

 

「んっ…」

 

「今日は……一緒に寝るか?」

 

「うん……///」

 

悠之が布団を敷く……

 

 

このお布団……少し悠之君の匂いがする…なんだか凄く安心できる…

 

「ねえ…悠之君…」

 

「何?」

 

千歌の目が少しだけうる目になっている……よっぽど怖い思いをしたんだろうな……

 

「その…明日の朝まで……」

 

 

「私の事を抱きしめてほしいんだ…///」

 

「あぁ、お安い御用だ。」

 

 

悠之が千歌の体を抱きしめる……

 

「ん…やっぱりこの感じ……」

 

「ん?何かだ?」

 

「私ね、悠之君の優しい温もりが大好きなんだぁ…♡」

 

「はは…そうか…」

 

千歌がそう言うと、悠之君が千歌の体をもっと自分の方に引き寄せる。

 

「もう…千歌は…誰にも渡さないよ……」

 

「うん……悠之君……」

 

『大好き…♡』

 

 

 

 

 

 

~~~~~

翌朝

 

「千歌ぁ~早く起きないと遅刻するよー?…ってあれ?」

 

みと姉が千歌の部屋に入ったが、そこには誰もいなかった……

 

 

「あれぇ?千歌はどこに行っちゃったんだろう…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~悠之の部屋

 

「う……ん…?」

 

俺が起き上がろうとすると、俺の布団にのしかかっている千歌の姿が目に入った…

 

「ゆ~じくん!起きた?」

 

「あぁ…千歌は昨日はよく眠れたか?」

 

「うん!悠之君のおかげだよ!」

 

千歌はいつもの元気を取り戻していた……が、俺達のこの状況…千歌が俺の体を押し倒しているように見えて…なんだか…やらしい。

 

「ち、千歌…その…起きれないから…どいてくれないかな?」

 

「えへへ…またチュ~してくれるなら、どいてもいいかなぁ~」

 

「ま、またか!?」

 

そう言いつつも、俺は千歌の唇と自分の唇を合わせようとする……

 

 

 

「ねぇ~悠之君!千歌の事をみな……か…っ…た…!?」

 

「「!?」」

 

もう…遅かった…俺と千歌は……既に……

 

「あ…えと……し、失礼しましたぁ~」

 

みと姉が部屋から去る……

 

 

「ど、どどっどうしよ!みと姉に見られちゃった…///」

 

「あぁ……間違いなく千歌が俺の事を襲っている……と認識しただろうな……。」

 

「うわあああ!やめてぇ!!///」

 

千歌が雄叫びをあげる……

 

「ちょっ…ここ旅館だぞ?」

 

「あ……」

 

「あはは……騒がしい朝になっちゃったな……。」

 

 

 

 

 

~~~~~

 

「よし、気を取り直して行きますか。」

 

「うん!」

 

俺達は玄関を開けて、またいつも通りの生活を送る……特に変わりようもない朝だけど……日差しが眩しく…そして、とても暖かった…。

 

 

「なんか、今日はとても落ち着ける日だな~」

 

「そうだね~ポカポカしてて…なんか…このまま寝ちゃいそう……」

 

「おいおい…これから学校に行くんだぞ。」

 

「えへへ……♡」

 

そのまま千歌が俺の方に体を寄せる……

 

「あ、あのさ…悠之君…///」

「うん?どうした?」

 

「その……もう恋人同士なんだし…朝の登校の日も…手を繋いでもいいかな?」

 

千歌の顔は恥ずかしそうに赤くなっているが、少し嬉しそうだった

 

「分かった、じゃあ……」

 

「うん……♪」

 

ギュッ♡

 

 

「あ、でも…これから曜ちゃん達も合流するんじゃ……」

 

「そんな事を気にしてたらこれから大変だぞ~」

 

「う、うん……///」

 

 

バス停で待っていると、曜と果南の姿が見えた

 

「お~い、千歌ちゃん~!悠之君~!」

 

「今日はいい……てん……き…だ……ね?」

 

2人は俺たちの姿を見て、固まっている……

 

「あれぇ?今日は手を繋いでるんだ」

 

「珍しい事もあるんだね~何かあったの~?」

 

「えと…その…バ、バスに乗ったら話すよ///」

 

千歌は急いでバスに乗ろうと急ぐが、悠之の手は離さないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

~バス内

 

 

「で、さっきはなんで手を繋いでたの?」

 

曜ちゃんが私に問い詰める。な、なんて言えばいいのかなぁ……

 

「えっと……そのぉ…///」

 

「付き合ってるんだよね?千歌と悠之君。」

 

「え!なんでその事を!?」

 

俺はバスの中で大きな声を上げてしまった……

 

「あ、やっぱりね。」

 

あ、果南のやつ…ハメたな…!?

 

「え……付き合ってたんじゃないの?」

 

「「え!?」」

 

「うん、私もずっとそう思ってた。」

 

「「えぇー!?」」

 

ぎゃ…逆にこっちが驚いた……想定外な答えだ……。

 

「まあ、よかったね。知ってたけど。」

 

「いつかこうなると思ってたよ。知ってたけど。」

 

曜と果南が呆れた顔をする

 

「お、おう……」

 

そんな会話をしていると、千歌達の中学校が見えてきた。

「じゃ、じゃあ……行くね…悠之君!」

 

「き、気を付けてな~」

 

千歌が手を離して、バスから降りる……なんだ…別に変な意識なんてする必要なかったじゃないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

~千歌達の中学校

 

「それよりも、昨日大丈夫だった?」

 

「うん!悠之君がバイクに乗って駆けつけてくれたんだぁ~!」

 

バ、バイク!?悠之君はいつ免許を取ったんだろう……てゆうか、高校生がバイクなんか乗ってもいいのかなぁ?

 

「そうそう、悠之君ね喧嘩もめちゃくちゃ強かったんだよ!」

 

「そうなの!?悠之君って喧嘩するイメージが全くないから…」

 

「悪い男の人を思い切りぶっ飛ばしてたよ。」

 

ぶっ飛ばす!?あんなにガタイのいい男の人をぶっ飛ばすなんて……

それに、悠之君の二の腕って結構細いし……すごいなぁ……千歌ちゃんの事を守れなかった自分が悔しいな……

 

「ごめんね、悠之君みたいに強くなくて……千歌ちゃんの事を守れなかった……」

 

「気にしないで曜ちゃん。だって曜ちゃんがすぐに悠之君に連絡してくれたんでしょ?」

 

「曜ちゃんがいなかったら…この事件をすぐに解決できなかったと思うんだ。」

 

「でも……」

 

すると千歌ちゃんが私の頭をよしよしと撫でてくれた……千歌ちゃんの優しい香りがする……

 

「そんなに自分の事を責めないで…曜ちゃん……」

 

「うん…ありがとう…。」

 

千歌ちゃんはいいなぁ…大切にされてる相手がいて…私は悠之君は別にタイプじゃないけど……私にもそんな大切な人が欲しいなぁ…

 

「曜ちゃん…どうしたの?」

 

「あ、うん……何でもない!」

 

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は教室に入ったけど、特に変わりようはなかった…今回の事件も噂にはなっていないみたい……。

 

「ねえ、千歌ちゃんは、バレンタイン…やっぱり悠之君にあげるの?」

 

「へ……?」

 

「いや…『へ……?』じゃなくて…」

 

「忘れてた……」

 

「え…!?」

 

「うわあああ!かんっぜんに忘れてたぁー!!」

 

千歌ちゃんが超音波みたいな叫び声をあげてる…窓がぶるぶる震えております…!

 

「ちょ、ちょっと千歌ちゃん落ち着いて!」

 

「よーちゃん!今日何日!?」

 

「え!?え~と……」

 

私はケータイを取り出して、日にちを確認する……

 

「えっと……2月10日だけど…」

 

「まずい!後4日しかない!」

 

「う、うん……一旦落ち着こ?千歌ちゃん?」

 

「うぅ……」

 

千歌ちゃんが深く深呼吸をする……そうか、今年は悠之君がいるから失敗はできないのかぁ…。

 

「と、とりあえず4日もあればチョコレートくらい……」

 

「今年は、チョコレートじゃないの!」

「へ……?」

 

い、いやいや…千歌ちゃんは何を言ってるんだ!?バレンタインって言ったら普通チョコレートでしょ……

 

「でも、バレンタインは基本チョコレートなんじゃ…」

 

「あまーい!」

 

バシッ!

 

「うわぁ!」

 

千歌ちゃんが机を思い切り叩く……結構すごい音がしたけど大丈夫かなぁ?

 

「毎年毎年チョコレートじゃつまらないでしょ?それに今回の相手は悠之君だから…」

 

「チョコレート以外で、感謝の気持ちを伝えたい……ってこと?」

 

「そう!流石よーちゃん!」

 

千歌ちゃんがグッと親指を立てる

 

「悠之君にチョコレート以外で攻めるなら……例えば何?」

 

「そう…それなんだよ…悠之君が今欲しいものってなんなんだろうって…今考えてるんだけど。」

 

今考えてるの!?それじゃあバレンタインに間に合わないよ…千歌ちゃん……

 

「じゃあ、悠之君に聞いたら……」

 

「ダメ!それじゃあバレンタインが盛り上がらないよ?」

 

「う…確かに…。」

 

「じゃあ…最近の悠之君との会話とかを思い出してみれば?」

 

最近の会話…?なんか悠之君言ってたっけ…?

 

「う~ん…?あっ!」

 

「何か思い出した!?」

 

「うん!これなら絶対悠之君も喜ぶよ!」

 

「なになに~?」

 

私は曜ちゃんの耳にあててゴニョゴニョと教える……

 

 

「あ〜!なるほどね!確かにそれなら悠之君も喜ぶはず!」

 

「でしょでしょ!?」

 

千歌ちゃんが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている…確かに恋人なら受け取ったら凄く嬉しいと思う…!

 

「よし!じゃあ今日は帰りに沼津駅に材料の買い出しに行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「あれ?悠之風邪か?」

 

「さ、さぁな…誰かが噂でもしてるんじゃあねえか?」

 

 

~~~~~

 

~放課後…(沼津駅)

 

「さ~てまずは雑貨屋を探しに行こう!」

 

「うん!…って私もついて行っていいの?」

 

「こういうのは曜ちゃん得意でしょ?だから、一緒に来てもらえると嬉しい!」

 

「そ、そう…?///ありがと…!」

 

 

 

~雑貨屋

 

色は何色がいいかな?でも…悠之君の好きな色ってなんだっけ…?確か……

 

「千歌ちゃん!こんな色とかどうかな?」

 

曜ちゃんが淡くて綺麗な赤い毛糸を持ってきてくれた

 

「いい…凄くいいよ…!これにしよう!」

 

「じゃあ、お会計に行こっか!」

 

「うん!」

 

よ~し!今年のバレンタインは気合いを入れて頑張るぞぉ~!

 

 



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第8話「赤き恋のバレンタイン」

今回は連続で書いてるので、少なめです!


ここ最近、千歌があまり構ってこなくなった……なんでだろう…?毎日ベタベタしすぎたからかな?でも……毎朝手を繋いで学校に登校するパターンだけは変わらない……何かしちゃったかな?

 

「千歌~そっちに入ってもいい~?」

 

「ごめーん!今ちょっと無理~!」

 

はあ……今日もかぁ…なんか…最近こんな会話しかしていない気がするなぁ…。

 

 

 

 

 

♢

 

あとは…ラッピングをして・・・よしっ!

 

 

「できたぁー!」

 

 

 

 

 

~~~~~

~バレンタイン当日……

 

「千歌ちゃーん!例の物、ちゃんとできた?」

 

「うん!曜ちゃんが教えてくれたから焦らずにできたよ!」

 

千歌ちゃんがピースをして喜んでいる…きっと、悠之君のために頑張ったんだね。

 

「で、悠之君にはいつあげるの?もしかして朝あげてきたとか?」

 

「ううん、今日の放課後に渡そうと思うんだ~」

 

「そっか、頑張ってね!」

 

「うん!」

 

「あ、でもその前に……」

 

千歌ちゃんがバックをガサゴソと漁っている

 

「まずは曜ちゃんと友チョコなのだー」

 

「あ、あれ?チョコレートだけのバレンタインはつまらないんじゃ……」

 

「チョコレートの欲望には勝てませんでした♪」

 

「あ、あはは…私もちゃんと作ってきたから別に問題はないけどね…。」

 

私と曜ちゃんでお互いのチョコレートを交換する……曜ちゃんのは綺麗なハート型のチョコレートだぁ…!

 

「わああ…曜ちゃんのチョコレート…可愛い~♡」

 

「えへへっ千歌ちゃんに褒められて感無量であります!」

 

今度は、曜ちゃんが私のチョコレートの袋を開ける……

 

 

「千歌ちゃんのチョコレートもハートの型だ~!」

 

「わあぁ…おそろいだね~!」

 

千歌ちゃんとおそろい…なんだか嬉しいなぁ~

 

「ちょっと食べてみてもいい?」

 

「もちろん!」

 

「はむ…ん~!千歌ちゃんのチョコレートみかんの味がする~!」

 

「どう?イケる?」

 

「うん!」

 

嬉しそうに、顔がちょっとだら~んとしてる曜ちゃんを見るのは久しぶりかも

 

パクッ

 

「曜ちゃんのチョコレートもナッツが入っていておいしい~!」

 

 

 

 

 

~~~~~

 

あ〜あ今日もあまり千歌と話せなかったな~。

……そういや今日はバレンタインだったな…千歌が構ってこない寂しさでそんな事はすっかりと忘れていた……

 

俺はボーッとしながら、いつも通り自分の席につく……あの女がいなくなったから少しはマシになったが……やっぱり千歌とたくさん喋りたかったなぁ……うん?

 

自分の机から妙な違和感を感じた……そう、中から出てきたのは……

 

本命でもない、全く喋ったことのない女共からのチョコレート♪

 

まあ俺は甘いものが大好きで、血糖値高めの高校生だから全然イケるから問題はないか……

 

「お、悠之モテモテじゃーん!」

 

「俺にも少し分けてくれよ!」

 

チョコレートが貰えなかったハイエナ達が俺のところにたかってきた…

 

「だめだ、甘いものは俺にとっての命だ。たとえ義理でも、本命でもチョコレートは絶対に譲らん!」

 

俺は変な屁理屈を言って断った……まあ、千歌とかアイツらとかだったら普通に分けてもいいかな…? 後でみんなに配るか…。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

~放課後

 

今日も特に変わりのない1日だったが…まあ、後は千歌達のチョコレートを待つとしますか…!

 

 

バス停に向かうと、たくさんの女の子達が集まっている……

 

「あ、悠之君~!」

 

「遅いよ~!」

 

そこには…千歌、果南、曜、ダイヤ、ルビィちゃんがバス停に来ていた。

 

「な、わざわざ迎えにまで来なくてもいいのに~」

 

「あ〜そんなにチョコレートが欲しかったんだ~相変わらず甘とうだね~」

 

「甘いものは正義だっ!」キリッ

 

でも、ここでチョコレートを貰おうとすると色んな人に迷惑だな…

 

「ここじゃ狭いし、学校の広場の方に行こうか。」

 

5人「は~い!」

 

 

 

♢

 

「じゃあ、最初は私からね……はい!」

 

果南は、緑色のラッピングされたチョコレートクッキーを渡す

 

「おお~サンキュー!……流石に刺身とか干物とかは入ってないよな?」

 

「し、失礼な~そんなの入れてくるわけないでしょ~!」

 

「あはは、冗談だよ。」

 

次にダイヤとルビィちゃんがトリュフチョコレートと、抹茶チョコレートをくれた。

 

「この前は、本当にありがとうございました…感謝の印として、このチョコレートを受け取ってください…!」

 

「抹茶チョコレートはお姉ちゃん、トリュフチョコレートはルビィが作りました!お家でゆっくり食べてください~!」

 

「うん!2人ともありがとな。」

 

 

次に千歌と曜がチョコレートを持ってきた。

 

「私達は偶然チョコレートの形が一緒だったから、一緒の袋に入れました~!」

 

「ナッツが曜ちゃんで、みかん味が千歌ちゃんね?」

 

「悠之君、いつもありがと!」

 

「ああ!2人ともサンキューな。」

 

 

 

「あのう…ちょっと気になっていたんですけど…そのおっきな袋…全部チョコレートですか?」

 

ルビィちゃんが俺の袋に指をさしている…まあ、これは隠しようがないからな。

 

「これは、義理チョコだよ。たくさんあるからみんなも持っていっていいよ~」

 

「こ、これ…いったいいくつあるんですの…?」

 

「ま、間違いなく80個くらいはあるよね……」

 

5人「(恐るべし……悠之君……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

チョコレートを分け合った後、俺達はすぐにバスに乗りそれぞれの帰り道で別れた。

 

そして、やっと千歌とふたりきりになる事ができた…

 

「あの、悠之君!」

 

「うん?どうした?」

 

千歌と久しぶりに会話をする……なんだか気分が一気に晴れていく。

 

 

「ちょっと寄り道していってもいい?」

 

「あ、ああ…」

 

俺達はひとつ手前の駅に降りた……

 

「悠之君…この場所覚えてる?」

 

「うん、正月の時に一緒に見にいった…海だ」

 

俺と千歌は正月の時と同じようにベンチに腰をかける。

 

「悠之君はここで髪飾りをくれたから、私もブレゼントをする時はここがいいかなーって」

 

プレゼント?でも、さっき曜と一緒に……

 

 

千歌は両手を後ろに組んで、何かを隠している……

 

「じゃーん!千歌の…愛の手編みマフラーでーす!」

 

千歌がラッピングされたマフラーを手渡す。

 

 

「嬉しい…ありがとう!千歌!」

 

「えへへ……実はね、このマフラーは2つ作ってあるんだ。千歌とおそろいとして!」

 

「ほんと!?今開けてみてもいい?」

「もちろん!」

 

ラッピングを剥がすと綺麗な赤いマフラーが出てきた。

 

「おお~!ほんとにおそろいだ~!」

 

「これから、学校に行く時とかにつけてくれたら嬉しいな~って」

 

「ああ!もちろんだよ!」

 

当たり前だ、つけていくに決まっている…だって…こんなに心がこもったプレゼントをもらうのは初めてだからだ……

 

「その、悠之君……」

 

「ん?なに?」

 

千歌が少し恥ずかしそうにしている……何かを意識しているのだろうか?

 

 

「このマフラーはね…悠之君のだけ少し長めに作ってあるんだ……」

 

「……?」

 

「それでね、私がもしマフラーを忘れたり…寒がっていたりしたら…」

 

すると千歌が俺のマフラーで、俺と千歌を優しく包み込むようにお互いの首に巻き付ける……

 

「えへへ…こういうのって…恋人巻って言うんだって…///」

 

「こ、恋人巻……か///」

 

いい言葉だ……2人とも同じ目線で、一緒に温まることが出来る……そして、何よりも千歌の体がいつもよりも密着するので、千歌の吐息が当たって…とても興奮する……

 

「……私が寒がっている時とか…寂しい時とか……あるいは、悠之君が寂しい時とかでも…こうやって2人であったまりたいんだ…♡」

 

 

「だから……これからも私にとって、大切な人でいてくれますか?」

 

「ああ…!もちろんだ、このマフラー大切にするよ…!」

「じゃあ……この状態でキスして?」

 

「ああ…///」

 

チュッ…

 

 

「今年は、最高のバレンタインだね…」

 

「うん♡」

 

俺と千歌を巻きついたマフラーが互いの吐息を逃がさないように閉じ込める……そして、このマフラーからほんのりと香るみかんの香りが俺たちを包み込んだ……。

 

 

 

今年はちょっと甘酸っぱいバレンタインだな…。



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第9話「カオスな登校」

今回はちょっと、過激な表現が入っています…!

苦手な方は無理せずにブラウザバックをお勧めします!


「どうして…何も……」

 

 

「どうして…何も言わないで行っちゃうの!?」

 

私は心の奥から叫んだ…こんな大声を出したのは、何年ぶりだろう…

 

 

「きっと…悠之君も別れるのが寂しかったんだよ……」

 

「何も言わないでいなくなっちゃう方が寂しいに決まってるよっ!!」

 

「千歌……」

 

「もう……会えないの…?…嫌だよ…そんなの……」グスッ

 

「そんなの嫌だよっ!!」

 

私は涙が止まらなかった……水臭い悠之君の性格に少し怒りを込めながらも私は海に向かって泣き叫び続けた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

う~ん…?…夢…?

 

はあ…嫌な夢だったな…あの時のことなんてもう思い出したくないよ……

 

……悠之君はまだ起きてるかな?

 

 

 

私は自然と悠之君の部屋に向かう……

 

「ゆ~じくん……ありゃ…ぐっすり寝てた…」

 

私は悠之君の寝顔を見ようと顔を覗かせる……

 

「ふふ、可愛い寝顔~」

 

「ん…?」

 

あ、しまった…つい声に出しちゃった…起きちゃったかな?

 

すると、悠之君は反対方向に寝返る……

 

 

よかった、ただの寝返りだった……

 

じゃあ~♡

 

私は悠之君のお布団の中にそっと入る……

 

 

ちょっと強引だけど…1度やってみたかったんだよね~ 「夜這い」ってやつ。

 

意味はあまり分かんないけど、夜中に好きな人のお布団に忍び込むことらしい…ってクラスメイトが言ってたんだよね~

 

「(今度は、声に出さないように…そ〜っと…)」

 

私は悠之君の寝顔をもう一度見つめる……

 

「(あぁ~やっぱりは綺麗な顔をしているな~♡)」キュンキュン

 

「(ほっぺたも柔らかい~癖になりそう…♡)」ツンツン

 

私は無意識に悠之君のほっぺたをつついていた。

 

「ん…」ピクッ

 

少しピクッと動いたので、ちょっとびっくりしたけど…まだ気づいてないみたい…

 

 

「(ちょっと…やりすぎちゃったかな?…でも……。)」

 

「すぅ…すぅ……」

 

「(はぁ~悠之君の寝顔が可愛すぎて気持ちが抑えられないよ~♡)」

 

もう、寝顔を見つめているだけで心が癒されるちゃう…もしバレちゃったら……怒るかな?

 

だけど、私は構わずに悠之君の顔をもっと近づいて見てみると、少しだけ疑問に思う点があった…

 

「(近くで見て見ると…悠之君の顔って…ちょっと女の子みたい?)」

 

女の子が男の子の髪型にして、ちょっと顔立ちをキリッとした感じ……3年前はあまり気にして見ていなかったけれど…昔からこんな感じな顔をだったけ?…それとも、3年の間にこういう顔になったのかなぁ?

 

「(でも、私はどんな悠之君でも大好きだけどね~♡)」

 

私は、もっと距離を詰めようと体を寄せる……

 

「(今の悠之君は無防備だし…自分から…しちゃってもいいよね?)」

 

私は悠之君の唇に自分の唇を近づける…なんだかいつもと立場が逆転してて興奮するなぁ……

 

では…

 

悠之君と唇がゼロ距離になった瞬間……

 

ムニュ…

 

「…!?」

 

すり…すり…

 

「…!?!?」

 

い、今…悠之君の手が…///

 

私のお尻を触った…!?

 

「くぅ…くぅ…」ムニュ

 

「あ…♡」

 

ど、どうしよ!?い、今…変な声出ちゃった…!?

 

「………」スリ

 

「ひゃんっ♡」

 

こ、この手が……知らない人の手だったら…私は絶対に嫌がっているんだろうな…でも…悠之君に触られているこの状況……

 

すごくドキドキする♡

 

「………」ダキッ

 

「あ……」

 

ゆ、悠之君…もしかして寝た振りしているのかな?い、いきなり…抱きしめて……

 

 

「………」ギュッ

 

「………///」ドキドキ

 

はぁ…はぁ…どうしよう…こんな事されるなんて予想外だよ…こ、心の準備がぁ……♡

 

「………」ムニュ

 

「あん…♡」プルン

 

今度は悠之君の手が私の胸に触れた……

 

「(ゆ、悠之君…やめてよ…こんなに触られちゃったら……)」

 

「(おかしくなっちゃう…♡)」

 

心は嫌がっていても、私の身体は凄く嬉しそうな反応をしている…私ってこんなにいやらしい性格だったのかな?

 

「……んぅ!」ビクンビクン

 

私の全身が火照っているのが、自分自身でもわかった……私…悠之君に触られるのが好きなんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

あれから約三十分経過した……

 

「(や、やっと…終わった…の…?)」

 

悠之君の手の動きが完全に止まった…どうやら完璧に眠りについたみたい……

 

「(ゆ、悠之君の手…激しかったなぁ…♡)」

 

「(これ以上責められたら……完全に昇天しちゃうところだった……まさか立場が一気に逆転されちゃうなんて…。)」

 

今回は、悠之君が寝ぼけながら襲ってきたけど……もし…正気でやっていたとしたら…

 

「~っ♡」

 

ダメダメダメッ!そんなのまだまだ早いよ!…だって私…まだ…中学生だし……

 

…でも…もし、こういう事が初めて出来るんだったら……やっぱり悠之君とが……あぁ…こんな事考えたことなんて今まで無かったのに~///

 

私は深呼吸して、体を落ち着かせてから…もう一度悠之君の顔を見る……

 

「(あの時…もう会えないかと思っていたけど…こうして再会できたのは…やっぱり奇跡だよ……)」クスッ

 

「(また…こういうこと…出来たりするのかな?)」

 

もう悠之君と離ればなれになるのは…もう嫌だよ……

 

 

私は自分から悠之君に抱きついて眠りについた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

…翌朝

 

「…き…て」

 

うん…?今何か聞こえた気が…

 

「お…き…て…」

 

幻聴じゃないな…何か聞こえる…

 

「お~き~て~!朝だよ~!」

俺はしっかりと目を見開くと、そこには千歌の姿が目に入った。

 

「あれ?何で千歌がここにいるんだ?」

 

「え?やっぱり悠之君は昨日のこと覚えてないの?」

 

千歌が顔を赤らめながら、俺のことを見つめる…

 

「え、いや…覚えてない…」キョトン

 

「そ、そうなんだ…///」

 

「ど、どうした千歌?顔が真っ赤だぞ?」

 

「う、ううん!大丈夫!早くご飯食べに行こ?」

 

「あ、あぁ…」

 

何か恥ずかしそうにしている千歌を見て朝から疑問に思うが……とりあえず今は朝飯が優先だ。

 

 

 

 

 

♢

 

俺と千歌で向き合いながら食事をするが…俺が千歌と目を合わせると千歌が目をそらす…俺なんか悪いことしたのかな?

 

「なあ、千歌?」

 

「な、なに!?」ビクッ

 

「何かあったのか?」

 

「う、ううん…別に…」ドキドキ

 

千歌の表情を見ると普通じゃない気がする…顔も真っ赤だし…恥ずかしそうにしている……

 

 

「(な、何も無いわけないじゃん!昨日あんなに私の身体で楽しんで…///)」

 

「(私も寝込みに入ったから人の事言えないけど……あんなに体を触られたら…絶対に恥ずかしいって……しかも無自覚でやってたなんて……)」

 

やっぱり悠之君はずるいなぁ……

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

私と悠之君はすぐに制服に着替えて、家を出た。

 

「(でも…あの時私……いつもより悠之君の体温を感じることが出来て…なんだか凄く嬉しかった……でも、いきなりあんなことされちゃったら恥ずかしくはなるけど…恋人同士だとやっぱり…嬉しい…かな?)」

 

「どうした?今度はちょっとにやけてるぞ?」

 

「え!?」

 

私は悠之君に指摘されてから、自分の顔が緩んでいるのに気づいた。

 

「やっぱり、今日の千歌は変だぞ?」

 

「そ、そう…?」

 

…こうなっちゃったのは全部悠之君のせいなのに……でも。

 

 

「ううん!今日も悠之君は素敵だな~って!」

 

「は、はぁ?///」

 

「あ!赤くなってる~!」

 

「う、うるせえよ!」

 

ペシッ!

 

悠之君が私に軽くチョップをする

 

「あ~!女の子を叩いてもいいんだぁー」

 

「い、今のはお前が悪いんだろっ!///」

 

「そんな悪い悠之君には~~えーい!」

 

ギュッ!

 

「ちょっ朝からいきなり何を……///」

 

「外で千歌の事をキスした悠之君が人の事言えるのかなぁ~?」

 

「うっ…それは…」

 

ふふっ今回は私の勝ちだね!

 

「う~ん?悠之君~も何か言ってごらんよ~!」

 

「う…ごめんなさい…チョップしたり…外でキスしたりして…」

 

「へ?私は外でキスするのは嫌いじゃないよ?」

 

「え?」

 

千歌の発言に俺は驚いて、完全に固まってしまった…

 

「むしろ…」チュッ

 

「……!?」

 

「私は外でキス…大好きだよ♡」

 

「……っ///」

 

ど、どうしたんだ!?朝から千歌は…まるで…人が変わってしまったみたいだ…。

 

「だ~か~ら~もっと千歌と一緒にいて?」

 

「あ…はは…なんか今日の千歌は積極的だな?」

 

むぅ…昨日の悠之君の方がもっと積極的だったのに……

 

「でも…そんな千歌が俺は好きだよ。」

 

「ゆ、悠之君…♡」キュン

 

もう一度千歌とキスをしようとしたその時……

 

 

「「何やってんの?」」

 

そこには、みとねえと千歌の母さんの姿……しまった…まだ玄関から1歩も歩いていなかった……それに見られてはいけない人達に…見られた……!

 

「「早く行かないとバスが出ちゃうよ?」」

 

「え、えっと…どこから見てた?」

 

「「え?最初から全……」」

 

「「うわあああ!!学校いってきまーす!!!/////」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

~バス停

 

「………」

 

「………」

 

どうしよ…さっき…お母さんとみとねえに完全に見られちゃった……帰ったらなんて説明しよう…

 

「な、なぁ…今は気にしてもしょうがないから…元気だして…な?」

 

「う、うん……」

 

はぁ~なんだか…気まずい…

 

私達がちょっと距離を置いてバス停で待っていると、曜と果南の姿が見えた。

 

「あれあれ~?今日は手繋がないの?」

 

「ほんとだ~珍しいこともあるんだね~」

 

曜と果南が色々と煽ってくるが…今は相手にする気力もない……

 

「お二人さん何かあったの?」

 

「「あ、ははは……」」

 

 

2人(はぁ…朝からめちゃくちゃ疲れた~)

 




もうすぐテスト期間に入っちゃうので、投稿が不定期になります…!

余裕があったら出します!


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第10話「桜のような儚きルーツ」

ようやくテストが終わりました!
約10日振り…かな?

とにかく、お待たせしました!


現在…3月最初の日曜日。

 

俺は静岡県の内浦にいるが……やはりどこへ移動しても必ず標的にされてしまうようだな…。

 

この季節、俺にとっては外に出るという事は自殺行為…自ら命を絶つようなものよ……

 

まるで見えない弾丸のように、俺の目と鼻を狙って攻撃してくる自然界の脅威……その名も…!

 

「花粉!」

 

 

 

 

~~~~~

 

30分前…

 

朝食を食べ終わり、俺と千歌はしいたけの散歩をしに行くため俺達は私服に着替ようと、自分達の部屋に向かった。

 

そして、自分の部屋のテレビをつけると今日のお天気情報が流れ始めた。

 

気象予報士「今日は全国的に花粉が飛び交う1日になりますので、花粉症の方はお出かけする前は十分に対策をしてからお出かけください。」

 

「はぁ…」

 

俺は静かにため息をついた…確か…去年もこの天気予報を聞くのが苦痛だった記憶がある…

 

「そういや、去年の時の方がもっと大変だった気がするな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

1年前

 

気象予報士「本日は花粉が飛び交う1日になりますので……」

 

「あ~あ…今日も花粉かよ…嫌だなぁ~。」

 

俺はテレビを見ながらため息をついていると、スマホが鳴った。

クラスの友人からだった…。

 

「おーっす悠之!」

 

「なんだよ、こんな朝っぱらから。」

 

「今日、クラスの男子達でサイクリングすんだけどお前も来る?」

 

「嫌だね。」

 

「へ?」

 

「こんなに、花粉が飛んでいる日にサイクリングなんかできるかっつーの。」

 

「あ、そうか…お前花粉症だったもんな」ニヤリ

 

「(ち…こいつ何か企んでやがるな。)」

 

「じゃあな、お大事に~」ピッ

 

すると、俺の友人は嬉しそうに電話を切った……そして、十分後に俺の家のベルが鳴った。

 

ピンポーン

 

「はいはい、ちょっと待っててください~」

 

俺は何も気にせずに扉を開けるとクラスの男子達が、待ち構えていた。

 

「なんだよ、お揃いで……」

 

「そんな言い方はないだろ、せっかくお見舞いにきたのにな~」

 

全員「な~!」

 

するとクラスの男子全員が一斉に花を俺に向けてきた…。大量の花粉が俺の目に侵入してきた。

 

「せっかく…お見舞いの杉を持ってきたってのによ~!」

 

バフ……

 

「……っ!」

 

俺はたまらずに扉を閉めようとしたが……

 

「おいおい、俺達のお見舞いを受け取れねえのかよ?」

 

俺は必死に扉を閉めようと踏ん張ったが、相手は15人俺1人では流石に力が足りなかった。

 

そして、前に喧嘩で叩きのめした男がでてきた。

 

「逃げんなよ……俺達はお前みたいな付き合いの悪い奴はムカつくんだよ。」

 

「用が済んだんならさっさとサイクリングにでも行け、付き合いの悪い奴を連れて行っても面白くはねえだろ?」

 

俺はクラスの奴らを見ると、誰1人自転車を乗ってきていなかった。

 

「…最初から行くつもりはなかったってことか…。」

 

「へ…相変わらず頭が切れる奴だな。そういう所が本っ当にムカつく奴だ…!」

 

「で、俺を外に出して何がしたかったんだ?花粉症だから外に出して嫌がらせってところか?くだらねえ奴らだ。」

 

「なに……?」

 

周りの奴らがジリジリと近づく……

 

「この前勝ったからって調子乗ってんじゃねえ!」

 

バシッ!

 

クラスメイトのひとりが俺に拳を放ってきたが、俺は簡単に受け止め、腹に蹴りを入れた。

 

ドゴッ

 

鈍い音がして、そいつは倒れ込んだ。攻撃の仕方も前と全く変わっちゃいねえな…少し理解力が足りないようだ。

 

「はっきり言ってやろうか?お前らが束になってかかってきても絶対に俺には勝てねえぞ。」

 

周りの奴らが少し後ろに下がる……

 

「ひ、怯むな!相手は1人だぞ!」

 

そして、奴らが一斉にかかり始めた瞬間……

 

 

「おまわりさーん!!」

 

全員「………!?」

 

「こっちです!早く来てください!」

 

「や、やべえ!逃げろ!」

 

その一声でクラスの男子達は全員立ち去った……

 

 

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

優しい天使のような声が聞こえる…凄くいい匂いもした…疲れてその場に座り込んでいた俺は顔を上げてみた。

 

「最初から警察なんて来てませんよ、早く立ってください。」

 

赤系の髪の色で、お嬢様結びをしている女の子が俺の目の前にいた…。

その女の子は俺に手を差し伸べてくるので、俺はその手に捕まって体を立ちあげる。

 

その時俺は初めて千歌以外の女の子にドキッとして、胸が苦しくなった。

 

「す、すまない……知り合いでもないのに急に…」

 

「いいえ…そんなことよりですね……私の家の隣で何してるんですか!」

 

「ご、ごめん…」

 

「喧嘩だったら他所でやって下さい!近所に悪い噂が立っちゃいます!」ムスッ

 

その女の子は顔をムッとさせて大きな声をあげる…。

 

 

それにこの子…多分中学生だな。

この子の持っているピアノ教室のカバンの生徒は女子中学生が沢山いると聞いたことがある。

 

はは…俺は年下の女の子に説教されてるのか…情ねえな。

 

 

「でも…大きな事故にならなくて良かった…。」

 

「いや…特に怪我は…」

 

なんだか…急に…目がめちゃくちゃ痛くなってきた…鼻もすごくムズムズする……

 

 

「…クシュ!」

 

やべぇ…くしゃみが…それに…ムチャクチャ目がかゆい…

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「お、大げさだな…ただのくしゃみだぞ?」

 

「い…いえ…目が…」

 

「え?」

 

その女の子は、カバンから鏡を取り出して俺を映した。

 

すると俺の目は酷く充血していた…ちょっと触っただけで血が出てきそうだ……出るわけないけど

 

「酷く充血してますよ…早くこっちに!」

 

「え…ちょ…ちょっと!」

 

俺はその子に家の中に引きずり込まれた。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

はぁ…あれから1年か…俺はあの時ほんとに喧嘩っ早かったもんな…今の自分が嘘みたいだ…。

それに、あの子は一体何者だったんだろう。

髪が長かった事と、美人だったという記憶と…あと何かが…

 

「お~い…」

 

あの喧嘩から1度も会ってないし…全く思い出せない…治療してもらったお礼も出来てないってのに……ん?治療?

 

「お~いゆ~じく~ん!?」

 

「あ、ごめん!すぐに準備するよ。」

 

千歌の大きな声を聴いてようやく気づいた。とりあえず今は散歩だな。

 

 

 

 

♢

 

 

「で、その女の子に助けてもらった…てこと?」

 

「ああ、だけど名前も分からないし…いつかお礼がしたかったんだけど、あれ以来1度も合わなかったんだよ。」

 

「で…その女の子は凄く美人だったの?」

 

「ううんって言ったら嘘になるかな。」

 

「ふ~ん……」

 

千歌が少しムッとした顔をする…でもその顔がなんだか愛らしくてついもっと眺めたくなってしまう…。

 

「お隣さん…美人…むぅ…」プクッ

 

今度は顔をふくらませてる…間違いなく嫉妬してるな…だったら~

 

「けど俺は千歌の方が大好きだぞ」ツンツン

 

「うみゅ…つんつんしないでよ~」

 

「え~?なんだって?」プニプニ

 

千歌のほっぺたを触ると、マシュマロのように柔らかくて手が止まらなくなる…この感触結構好きだな。

 

「ひゃめてえよぉ~」

 

さっきまでの怒りっぽい顔から、嬉しそうな顔になってる…ちょっと話をしただけでそんなに嫉妬しなくてもいいのにな~

 

「元気でた?」

 

「な、何が!?///」

 

「嫉妬してたからだよ」

 

「べ、別に嫉妬なんて…そんな…///」

 

「顔真っ赤」

 

「い、言わないでよ~!///」カアアアア

 

 

しいたけ「ワン!ワン!(イチャついてないではよ歩け)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

「それにしても、今日は花粉が飛んでるって聴いたけど。

悠之君は大丈夫なの?」

 

「あぁ、家を出る前に目薬をしたから大丈夫だよ。」

 

「そっか、じゃあ心配ないね……は…クシュ!」

 

千歌が小さなくしゃみをする…もしかして花粉症なのかな?

 

「千歌も…もしかして花粉症?」

 

「ううん、私は違うと思う。

今まで目がかゆいとか、そういう事は無かったし……」

 

「そうか、でも花粉症は今から発症する人もいるから気をつけろよ~。」

 

「え?そうなの?」

 

「ああ、俺も中学の時に花粉症になった。」

 

2人で喋っていると、いつの間にか旅館のところに帰っていた。

 

「まあ、用心しろよ~運が悪かったら…花粉の辛さを味わうことになるんだからな。」

 

「こ、怖いこと言わないでよ~!」

 

 

そして、散歩が済んだのでとりあえず俺は自分の部屋に戻った…。

 

 

 

 

 

 

 

あれだけ考えてるのに…思い出せない…喧嘩っぽい性格だったから避けられちゃったのかな?

確か、あの時から俺は友だちとか作るのをやめた気がするな…

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

「早くこっちに来て、そこに仰向けになってください。」

 

「お、おう…」

 

俺はその子に仰向けにさせられ、急に暑いタオルを顔に被された。

 

「あっつ!?何するんだ!?」

 

「花粉が酷い時はこうするのがいいんですよ。」

 

か、看病をしてくれるのはありがたいんだが…床と頭が直に当たって寝心地が悪い……

 

俺が頭をモソモソと動かすと、彼女が気づいてくれたみたいだ。

 

「あ、枕が…ちょっと待っててくださいね?」

 

「ああ…頼む…。」

 

「よいしょっと……」

 

「…!?」

 

すると彼女は枕を持ってくるのではなく、自分の膝に俺の頭を乗っけ始めた…。

 

「あの人達にいじめられてるんですか?」

「え!?いや…いっつも喧嘩では俺が勝ってるからなんとも言えないけど……」

 

「けど?」

 

「あっちの方が人数多いから…いじめられてる…ってことになるのかな?」

 

「やっぱり…辛いかも知れませんが…頑張ってくださいね?

私はいじめをする人は大嫌いなので…。」

 

「う、うん…頑張るわー」

 

あれ?俺もしかして年下だと思われてる!?

だから急に膝枕なんかして…

 

「どうですか?ちょっとは良くなりましたか?」

 

「あ、あぁ…かゆみは収まってきた…かな?」

 

「あら?耳が真っ赤ですよ?それにさっきよりもタオルが熱くなっていますし…」

 

そりゃあそうでしょ!いきなり美人に膝枕されたら誰だって恥ずかしくなるし、顔も熱くなるわ!

 

「可愛い…」

 

「は、はい?」

 

その子は急にクスッと笑い、俺の頭を撫で始めた。

 

「私、一人っ子なので…こんな可愛い顔をした男の子が弟だったらな~って思っちゃいました。」

 

やっぱり年下扱いしてんじゃん!

 

「俺も君と同じように一人っ子だから…そういう気持ちはよくわかるよ。」

 

「ふふ、私達って何か似てますね。」

 

「う、うん…そうだね。」

 

タオルが被さって、あの子がどんな顔をしているのか全然わかんねぇ…

 

 

 

~~~~~

 

「(…顔が思い出せない理由がようやく思い出した…嬉しかったけど…なんか人生で1番恥ずかしかった出来事かもしれない…。

この事は絶対に千歌にはバレてはいけないな…)」

 

俺が窓から外を眺めていると桜のつぼみがでてきたのが見えた……

 

もうすぐ春か…なんとなく桜の香りするのは気のせいかな?




Aqoursファーストライブ感動しましたね~

特に会場が一体になった、りきゃこコール…僕もつられて泣いていました…。

(テスト期間中にライブに行ったのは突っ込まないでください(笑))


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第11話「無料のタクシー」

なんか変なタイトルになっちゃいました(笑)


~早朝

 

「そんなぁー!」

 

千歌のでかい声が旅館全体に響き渡る…もちろん俺の部屋にも聞こえてきた。お陰さまで朝からシャキッと起きられたけど、旅館で叫んでも大丈夫なのか?

 

「こら千歌!他のお客様もいるんだよ?」

 

「うぅ…ごめんなさい…。」

 

俺は部屋から出ると、千歌とみと姉が何やら揉めているのが確認できた。

 

「えっと…朝から何かあったんすか?」

 

「あ、そうだ!悠之君に頼んでみたら?」

 

「確かにそれいいかも!助かった~」

 

え…?え…?なんか2人とも急に盛り上がってきてるけど…話の流れが全く分かんないだけど・・・

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なるほど、今日は卒業式なのにいつもの時間帯のバスが運休してて、しかも家の車もメンテ中で困っていると…。」

 

「そ~なんだよ~!だからね……」

 

千歌がジーッと見つめるけど、言いたいことが大体分かった。

 

「俺のバイクで送ってくれ……という事かな?」

 

「ピンポンピンポーン!」

 

まあ、今日から春休みだし…ここの旅館にはいつもお世話になってるし、1日くらいバイクを走らせてもいいかな?

 

「分かった、じゃあ千歌は早く準備しておいで。」

 

「はーい♡悠之君ありがとね~!」

 

さて…と俺も千歌の準備が終わる前に着替えておくとしようかな…そういえば二人乗りなんてした事ないけど大丈夫かな?

 

「さ、悠之君は着替えが済んだらご飯食べちゃっててね?」

 

「あ、はい。ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

♢

 

後から、千歌も食卓に来て一緒にご飯を食べた。

千歌の顔を少し見てみると、三つ編みの部分につけているリボンがいつもよりちょっとオシャレで、凄く可愛い…。

 

「千歌の今日のリボン、いつもよりも素敵だな。卒業式用に買ったのか?」

 

「うん!しま姉が昨日買ってきてくれたんだぁ~♪」

 

千歌が嬉しそうな笑顔を見せる、これから卒業式なのに随分と楽しそうだな。

 

「2人とも~!いちゃいちゃしてないで早く行きなさいよ~!」

 

「「は~い!」」

 

俺は先に玄関から出て、バイクの調子を念のため確認した。そういや東京にいた時に母さんに買ってもらったけど…最近は全然使ってないな…。

 

幼馴染のみんなと一緒に登校した方が楽しいからって言って、通学にも使かわなかったし……使う機会は今回くらいかな?

 

「悠之君~!」

 

お、千歌も来たみたいだな…

 

「これが悠之君のバイク?すっごい~!」

 

千歌が目を輝かせながら俺のバイクをジロジロ見ている、間近で見るのは初めてなのかな?

 

「よし、じゃあ後ろに乗ってくれ。」

 

「うん!」ワクワク

 

千歌が後部座席に座ったので、そのままヘルメットを渡す。

 

「付けれた?」

 

「ちょ…ちょっとまって~」

 

…どうやら、付けるのも初めてみたいだな。

 

「ほら、手をどけな。」

 

「あ、うん…ありがとう…///」

 

ちゃんとヘルメットを固定出来たので、俺はそのままエンジンをかける。

 

「うわぁ!す、凄い音だね…!」

 

「しっかりと肩に捕まっとけよ~!」

 

けだましいバイクの音を立てて、いつもの通学路を疾走する。

 

ここら辺で走らせた事は無かったから、知らなかったけれど…この辺は海の潮風が強く流れて来て気持ちいいな…。

 

 

「ひゃあ~!凄いっ!気持ちいい~!!」

 

「風が気持ちいいだろ~!?」

 

「うん~!」

 

内浦の朝ってあんまり車が通らないんだな…結構自由に走れるみたいだ。

 

 

 

「よし、もっと飛ばすぞー!」

 

「おぉー!」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「よいしょっ…と着いたぞ」

 

「すご~い…いつもなら三十分はかかるのに15分くらいで着いちゃった…。」

 

まあ、バスとは違って信号以外で止まったりはしないから、その分早くついたんだろう。

 

 

「んじゃ、帰りも迎えに行くから。」

 

「え!?来てくれるの!?」

 

「ああ、しま姉さん達の車が直るのは明日みたいだから……」

 

「わぁい!ありがとう~!」

 

千歌が嬉しそうにぴょんぴょんはねている…嬉しそうにはしゃぐ千歌はいつ見ても可愛い。

 

 

「じゃあ、行ってくるね!」

 

「あ、ちょっとまって!」

 

「うん?なぁに?」

 

俺は千歌を呼び止めて、胸に手をやる

 

「バイクにのってた時にズレちゃったのかな?」シュルシュル

 

俺は千歌の制服のリボンを一回ほどいてから、もう一度結び直した。

 

「~っ///」

 

「これで…よしっと。」

 

「……///」

 

「どうした?千歌?」

 

「今・・・」

 

「ん?」

 

「今おっぱい触ったでしょ///」

 

あ…そういや、リボンを触った時になんか柔らかいものに触れた気がするな…って思ったけど……。

 

「ま、まぁ…け、健康的な…柔らかさだったよ。」

 

俺はしどろもどろで言い訳をしつつ、少し褒めてみる…が。

 

「もうっ!悠之君のばかっ!エッチ!変態!」プクッ

 

「ちょ…そんなことをでかい声で叫ぶなよ。」

 

「だ、だってぇ…///」ムスッ

 

「と、とりあえず今は卒業式をしっかりとやっておいで。」

 

「むぅ…ちゃんと帰りも来てよね…。」

 

「大丈夫、ちゃんと行くって。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

千歌を何とか送り出した俺はとりあえず一回旅館に戻ることにした。

 

それにしても…千歌の胸…柔らかかったなぁ。

制服の上からでも感じたあの温もりと柔らかさはなんか別物な気がする…。

 

別に他の人のを触ったことがある訳では無いけど、なんだかもっと触りたくなってしまう…そんな感触だった。

 

 

いやいや、俺は一体何を考えているんだ…。故意的にやった訳では無いけど、千歌からすればただの痴漢にしか思えないし……。

 

まずいな…変なこと考えて、事故を起こさないようにゆっくりと帰ろう…。

 

 

♢

 

悠之君にいきなり触られた時は凄くドキドキしたなぁ…。

何でだろう、前にお布団で触られた時とはまた違った気がする…。

 

もしかして、外で触られたから余計にドキドキしちゃったのかなぁ…でも…私はそこまでエッチな性格じゃ・・・

 

「おーい!千歌ちゃ~ん!」

 

「あ、曜ちゃ~ん!」

 

「あれ?千歌ちゃん顔真っ赤だよ?」

 

「えっ!べっ別に…!///」

うぅ…私って感情とかがすぐに表情に出ちゃってるのかなぁ?

うわぁ…恥ずかしいよぉ…

 

「もしかして、悠之君とまた何かやったのかなぁ~?」ニヤニヤ

 

「そ、そんな事ないよっ///」

 

「ほんとかなぁ~?」

 

「むぅぅ…!よーちゃん!」ムッ

 

「あはは、ごめんって!早く教室にはいろ!」

 

「もぉ~!」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

さて…チンタラ走ってたから少し遅くなったけど・・・

 

とりあえずは旅館で待機しておくか…。

 

「あ、悠之君!お見送りありがとね!」

 

俺が旅館から戻ると、千歌の母さんが玄関の掃き掃除をしていた。

 

「いえいえ、帰りは何時くらいに迎えに行けばいいですかね?」

 

「ん~12時くらいでいいんじゃないかな?」

 

「分かりました、ありがとうございます。」

 

12時か…今は…9時だし、何かすることはねえしなぁ…

 

俺は自分の部屋でゴロゴロしてると、何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「お~い、悠之~!いる~?」

 

「いるけど、なに?母さん。」

 

「何よ…その素っ気ない態度は…せっかく進級祝いを持ってきたっていうのに~」

 

何!?進級祝いだと!?毎年ケチって俺にはくれないくせに…珍しい。

 

「進級祝いってなんだ?」

 

「そこの紙袋に入ってるわよ。」

 

「現金かと思ったけど、そうじゃないのか…まあいいや…」

 

ガサゴソ・・・

 

「…何これ?」

 

紙袋の中から、何やら化粧水のような物体が入ってた…

 

「アンタ、知らないの?」

 

「いや、知らねえ…初めてみた。」

 

「これはね…ヘアワックスよ。」

 

「…はい?」

 

俺はもう一度聞き直した…ヘアワックス?

 

「だから~ワックスよ。」

 

「いや、別に頼んでないんだけど。」

 

「あんたね~!高3になるんだからワックスくらい使いこなせるようになりなさい!」

 

「いやいや、その理屈が意味わかんない。」

 

「だいじーな彼女もいるんでしょ?」

 

「…まあ、そうだけど…//」

 

「だったら服装だけじゃなくて、少しは髪にもこだわりを持ったら?」

 

「はいはい、分かりましたよ~」

 

別にワックスくらいでそんなに言わなくてもいいのになぁ~

 

「で、これどこのメーカーの奴なの?」

 

「原宿にある、メンズヘアサロンが使ってるメーカーよ~。」

 

「原宿…!?扱いが難しそうなワックスを買ってくるなよなぁ~」

 

「まあ、練習すればどうにかなるでしょ。」

 

丸投げ!?ほんとにいい加減な母親だな~相変わらず呆れるぜ。

 

「まあ、久しぶりの進級祝いサンキューな」

 

「あら、珍しくお礼を言うようになったじゃない。」

 

…余計な事を…でも…

 

「だからといってよ…1ダースも同じワックスを買ってくんなよなぁ~」

 

「いや~原宿なんてそんなに行かないし、つい~」

 

「はぁ…使わなくちゃ勿体ないし、今度使ってみるか…」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

~11時

 

とりあえず、昼食を済ませ、もう一度千歌の中学校に向かう準備をした。

 

「それじゃ、もう一度行ってきますね。」

 

「うん、千歌の事よろしくね?」

 

「はい、任せてください。」

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

「千歌ちゃんさっき泣きそうになってなかった~?」

 

「よ、曜ちゃんこそ涙目になってたじゃん~!」

 

ワイワイガヤガヤ……

 

 

「あれ?なんだか、あの辺が騒がしいね?」

 

「行ってみようよ!」

 

私と曜ちゃんでその場所に向かうとそこには……

 

「大学生さんかな?」「大人っぽい~」「かっこいい~」

 

なんか騒々しいけど、誰か有名人でも来てたのかな?

 

 

「あ、やっと来たか。」

 

「ゆ、悠之君!?」

 

そこには、朝とは髪型が大きく変わっている悠之君の姿があった。

 

「ど、どうしたの!?その髪…」

 

「まあ…色々と事情があって・・・変かな?」

 

「そ、そんな事ない…かっこいい…。」

 

千歌ちゃんが凄くうっとりしてる…。確かに今どきの大学生みたいな髪型をしてて…。

 

凄くかっこいいと思う・・・今、この渡辺曜も悠之君から目が離せなくなっております!

 

「えっと…迎えに来たけど…まだ他の友達とかと喋ったりする?」

 

「う、ううん…さっき丁度別れたばかりだし…。」

 

「そっか、じゃあ行こーー」

 

『千歌ちゃんとその人って付き合ってるの?』

 

「「え!?」」

 

千歌のクラスメイト?かな、その子がそう呟いた。

 

「ね、どうなの?千歌ちゃん?」

 

「え、えっとぉ…///」

 

「だーいじな旦那様だよね!千歌ちゃん!」

 

「ちょ、ちょっと!よ、曜ちゃん!」カアアア

 

『年上の人と付き合ってるの?すごーい!』

 

「ううぅ…悠之君助けて~!」

 

千歌の頭から湯気がぷしゅーと音を立てて、凄く恥ずかしそうにしている…飛んだ災難だったな…。

 

『そこの彼氏さんは千歌ちゃんの事をどう思ってるの?』

 

「ん?どうって…大切な俺の彼女だよ。」

 

ちょっとカッコつけて、千歌を少しいじってみる。

 

『きゃあー!素敵ー!』キャッキャ

 

「もー!悠之君は本っ当にデリカシーが無さすぎるよー!///」

 




何故今回は、訳の分からない理由でワックスを出したかと言うと。

私が原宿のヘアサロンに行ってきたからです(笑)ただそれだけです(笑)



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第12話「文才少女」

お久しぶりです!お待たせしてしまってすみません!


~春休み初日。

 

俺には春休みにはやらなくてはならない事がある、

そう、俺だってもう高3になるんだ。後悔の無いうちに今からでも勉強に力を入れなくてはならない。

 

とりあえず、参考書とか色々と揃えたいから本屋に行かなくては・・・近くに本屋とかはないかな?…ググってみよ。

 

 

 

 

…近くにあるのは、沼津駅の近辺か…こっからだとバスで500円くらいかかった気がするけど…仕方ないな

 

 

 

♢

 

「とゆう訳なので、これから沼津に行くけど。千歌はどうする?留守番でもしてる?」

 

「悠之君と一緒に行く~!」

 

「でも、参考書買いに行くだけだぞ?千歌が一緒に来ても・・・」

 

「だって、沼津駅に行くんでしょ?だったら、私も春物の服が欲しいな~って」

 

春物の服か…そういや、俺も全然買ってなかったな。送れないうちに早く買って置くべきだな。

 

 

「よし、じゃあ一緒に行こうか。」

 

「うん!」

 

 

 

 

今日の天気予報だと……花粉もあまり飛ばないし、暖かくてすごしやすいって言ってたな…完全にお出かけ日和だな。

 

 

俺は、唯一残っていた春服の、黒ジャケットとジーパンを着て、千歌の準備を待つ。

 

「千歌~まだか~?」

 

千歌の返事を待たずに俺は洗面所の扉を開ける。そこには、寝癖に困っている千歌の姿があった。

 

「普段そんなに寝癖なんて無かったのに、珍しいな。」

 

「う~ん…なんか、今日のは凄くタチが悪いんだぁ~」シュッシュ

 

「どれ、貸してごらん。」スッ

 

千歌の持ってるブラシを手に取って髪を整える。

 

「あ、ありがと…///」

 

「あ~、確かにしつこい寝癖がついてるな…どんな寝方をしたんだ?」シュッシュ

 

俺は、話しながら千歌の髪に霧吹きをかける。

 

「えっ、えっとぉ…。」

 

『枕に足があった…』

 

「え…?」

 

千歌の発言に手が止まった。

 

「も、もう一度聞いてもいいかな?」

 

「だ~か~ら~枕に足があったの!」

 

え…それってつまり…。

 

「起きたら逆さまになっていたと…」

 

「うん、そゆこと。」

 

はぁ…そりゃあ頑固な寝癖もつくわけだよな…一体どんなに寝方をしたというんだ…。

 

「じゃあ、寝てた時になんか凄い夢でもみたのか?」

 

「うん…夢は…みた…。」

 

「へ~どんな?」

 

急に千歌が真っ赤になって黙り込む。

 

「その…言いたくない…///」

 

「え、そんなに怖い夢だったのか?」

 

「う、ううん!…そうじゃなくて…」

 

「嫌な夢だったのか?」

 

「い、いやぁ…そうじゃなくて…その…」モジモジ

 

夢の事を聞いてるだけなのに、中々教えてくれない…嫌な夢じゃないだったら何なんだろう…恥ずかしい夢?とか…?

 

「え、えっと…ね…」

 

 

 

♢

 

~夢の中

 

「悠之君? こんな夜遅くにどうしたの?」

 

「………」

 

「悠之君?」

 

何だか、悠之君の表情がいつも全然違った。顔も赤いし

 

ドンッ!

 

「ひゃあっ!?」

 

悠之君にいきなり押し飛ばされて、ベットに倒れ込む。

 

私は直ぐに起き上がろうとすると、悠之君が上から両手で逃げ道を塞ぐ。

 

「ど、どうしたの…?いつもの悠之君らしくないよ?」

 

「……千歌は。」

 

「…?」

 

「千歌は…俺のことが好きだよな…?」

 

「え、だっ大好きだけど・・・」

 

普段恥ずかしがって真っ赤になるのは私なのに、今日は悠之君が顔が真っ赤になっていた。

 

「じゃあ…いいよな…?」

 

「え…!?」

 

チュッ…

 

「え、えっちょっと…」

 

「千歌…大好きだよ…。」

 

あ、あれ?悠之君から少しお酒のような匂いがした気が…もしかして、悠之君…酔っちゃってる!?

 

「俺は…もっと、千歌の全部が見たい…。」

 

「ま、まって…」

 

シュル…

 

悠之君が私のパジャマのリボンの部分をほどいて、私の手首に優しく結ばれて、拘束される。

 

「ま、まって…悠之君…こ、こんな格好…恥ずかしいよ…///」ギシッ

 

「大丈夫、凄く可愛いから…。」

 

何だか、悠之君に支配されちゃって凄く恥ずかしい…けど、嫌じゃなかった…。

 

そして、私は悠之君のされるがままに夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

♢

 

…ってそんな夢を見ていたなんて言えるわけないよ!死んじゃうかと思うくらいにドキドキしちゃったんだから!

 

「…千歌?」

 

「あ、やっぱ何でもない!」

 

「…?そうか。」シュッシュ

 

 

そして、そのまま悠之君に髪を整えてもらちゃった。三つ編みも綺麗に出来てるし…もしかして、私が作るのよりも上手かも?これからもやってもらおうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ行きますか。」

 

「うん!」

 

俺は、バイクのエンジンをかける。

 

「目標、沼津駅!はっしーん!」

 

「え、何その宇宙戦艦みたいな言い方。」

 

若干ひかれながらも、俺はバイクをとばす…そんなに引かなくてもいいのになぁ~

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~沼津駅

 

「やっぱり、悠之君のバイクだとあっという間だね~!」

 

「まあ、バスよりは早く着くからな。」

 

 

(やべえ…そろそろガソリンの予備を買っとかないと…満タンでどのくらいするんだっけ?)

 

「おーい悠之君~!本屋はこっちだよ~!」

 

「あ、今いくよ。」

 

 

後でガソリンの値段、調べとこっと。

 

 

 

 

 

 

~本屋

 

「う~ん…買うならこれがいいかな…?」

 

俺は、手当り次第に参考書を取り出す。

 

「でもなぁ、どれも『受験に強い』って書いてあるし…どれが一番良いのか分かんねえな…。」

 

「わ、私にはチンプンカンプンだよ~」

 

曖昧なまま買ってもしょうがないしな・・・よし!

 

「やっぱ自分で独学した方がいいかな。」

 

「え、いいの?せっかく沼津まで来たのに?」

 

「これまで、こういう参考書は買ったことが無いからな~

今まで通り、授業聞いて、家で復習していくやり方が一番かな。」

 

「へぇ~それだけで成績がいいなんて、悠之君は才能があるんじゃないかなぁ?」

 

さあ…どうなんだろうな、俺は先生の話を聞いてるだけだからそういったところはあんまりよく分かんないな。

 

 

「んじゃ、とりあえず本屋からもう出ようか…それとも、なんか欲しい物があるなら1冊くらい買ってもいいぞ。」

 

「ほんと!?」

 

「ああ、せっかく本屋まで付き合ってくれたんだから特別だ。」

 

「わぁーい!悠之君ありがと~!」

 

ついでに俺もなにか雑誌でも買おうかな……ん?なんだ?あの子…?

 

ショッピングカートにたくさんの本を重ねて歩いている少女が横切った。

 

「すごい量だね…あの子、全部読むのかな?」

 

「そうじゃないか?よっぽど読者が好きなんだな。」

 

俺達はとりあえず、雑誌売り場に行くことした、俺は何を買おうかな?参考書以外の事を何も考えていなかったな…。

 

 

「千歌は何を買うか決めた?」

 

「うん!これにするね!」

 

千歌が1冊の雑誌を持って俺のところに来る。

 

「なになに…?『みかんの極意』…?」

 

「な、なんか…千歌のために作られた本みたいだな。」

 

「えへへ、でしょ~?悠之君は何にするか決めた?」

 

「まあ、俺はこれでいいかな。」

 

とりあえず、ファッション雑誌でも買っておくことに決めた。

 

「じゃあ、とりあえず会計を済ませ・・・」

 

俺達がレジに向かおうとすると、見覚えのあるツインテの女の子が雑誌売り場にいた。

 

「なあ、あそこにいるのルビィちゃんじゃないか?」

 

「あ、ほんとだ、おーいルビィちゃーん~!」

 

千歌が呼びかけると、こっちを振り向いてニコっと笑顔を見せてくれた。

 

「こんにちは、千歌さん、悠之さん今日はデートですか?」

 

「う、うん…まあ、そんな感じ///」

 

「ルビィちゃんは?」

 

「ルビィは、友達と本を買いに来たんです。確かあの辺に…」

 

「ルビィちゃーん、何にするか決めた~?」

 

さっき、大量の本を重ねていた女の子がこっちに歩いてきた。

 

「あれ?ルビィちゃんこの方達は?」

 

「あ、前に話したでしょ、この人達が悠之さんと千歌さんだよ。」

 

「おぉ~ルビィちゃんの言った通り、優しそうで素敵な方ずら~」

 

「ず、ずら?」

 

『ずら』って言う方言ってかなりの年寄りしか知らないはずなんだが…おばあちゃんやおじいちゃんの癖が移っちゃったのかな?

 

「はわわわ…ま、また…ずらって言っちゃったずら…」

 

「…また言ってるよ?」

 

「ずらぁ~!」

 

はは…何だか面白そうな子だな・・・

それにしても、この子…ほんとに中学生なのか?

 

背は低いけど、バストサイズも明らかに千歌より大きい…最近の中学生だとかなり大きなサイズだろう…俺は一体何を考えてるんだ…。

 

「あ、紹介が遅れました!私は国木田 花丸 です!」

 

花丸…か、ちょっと変わった名前だな、ここら辺では珍しい名前だ。

 

「私は高海 千歌 よろしくね!」

 

「俺は小野 悠之 よろしく。」

 

「わあぁ~ルビィちゃんの言ってた通り、素敵なカップルずらぁ~」

 

「か、カップルだなんて…///」

 

カップルって言われただけで、顔が真っ赤になってる…ほんとに千歌はいつまでたっても慣れないんだなぁ。

 

「ゆ、悠之君!お洋服買いに行くんでしょ!?」

 

「ん?あぁそうだったな。ごめんな、花丸ちゃんまた今度ね。」

 

「はーい!いってらっしゃいずらぁ~」

 

 

 

♢

 

 

「あーあ…恥ずかしかったぁ…///」

 

「そうか?」

 

「悠之君は慣れてそうだけど、私はまだちょっと緊張しちゃうよ…///」

 

緊張…か…まだ、千歌も15歳だし…そういう気持ちはまだ強く残るのかな?

 

「まあ、とりあえず今は洋服を確保しようぜ。」

 

「うん、そうだね!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

とりあえず、春物の洋服は一通り確保できた。後は帰るだけ…だが、まだ帰るには早すぎる時間帯だ。

 

「悠之君、これから、どうしようか?」

 

「そうだな…あ、」

 

2人でショッピングモールを歩いていると、ゲームセンターに流れ着いた。

 

「昼飯まで時間潰すか?」

 

「うん!それにゲーセンなんて久しぶり~!」

 

千歌が楽しそうに、はしゃいでる。確かに、内浦にはゲーセンは無いもんな。

 

「ねーねー!悠之君!あれやろうよ!」

 

「うん?…UFOキャッチャーか。」

 

ケースの中を見ると、大きな伊勢海老のぬいぐるみが置いてあった。流石は沼津・・・

 

「よーし!1発で取っちゃうもんねー!」

 

「頑張れよ~!」

 

千歌が百円を入れて、アームを動かす。

 

綺麗に伊勢海老のぬいぐるみを掴んだが、アームの力が足りず、あっさりとアームから離れてしまう。

 

「む、むむ~もう1回!」

 

「無駄遣いすんなよ~」

 

 

~5分後

 

「もー7回も失敗しちゃったよ~!悠之君ちょっとやってみて~!」

 

「えぇ?俺?」

 

まさかのバトンタッチ

 

やれやれ、どうやって持ち上げようか…普通に掴んでも、力が足りないし…後ろからも、前からも、掴んでもダメだった…じゃあ…どうする?

 

あれ?

 

あれって…ぬいぐるみのタグだよな…あんなに大きく…あれだけ大きければ…

 

 

俺は百円を投入して、アームを操作する。

 

 

ここに通せば…ワンチャン…

 

「おお!ぬいぐるみのタグを掴んだ!」

「よし!入れ!」

 

そして、そのまま綺麗にゴールした。

 

まさか、あんなに綺麗に決まるなんて思ってなかった…けど…。

 

「はい、これ。」

 

俺は千歌に伊勢海老のぬいぐるみを差し出す。

 

「え、いいの!?」

 

「ああ、千歌にはいつもお世話になってるからな。」

 

「わぁーい!ありがと~!」ギユッ

 

 

♢

 

「悠之君 悠之君!あれ見て!」

 

「うん?なんだあれ?」

 

パンチングマシンのところにイカツイ男が1人マイクをもって何やらアピールしている。

 

「俺の記録、190kgを超えられるやつはいるかー!?超えられたら、5万円!手に入るぜー!」

 

おおー!

男前ー!

カッチョいいー!

 

「随分と、あぶねえ奴らだな。千歌行こ・・・」

 

「ねえ、悠之君!アレやってきて!」

 

「え!?」

 

「すみませ~ん!チャレンジしてもいいですか~?」

 

「ちょ、まっ・・・」

 

や、やべえ…早く千歌を止めなくては…

 

「お!お嬢ちゃんが挑戦するのかい?」

 

「ううん!あそこにいる子が!」

 

千歌が自慢げに俺の方に指を指す

 

「おおっ中々イカスな男の子だね~!お嬢ちゃんの彼氏かい?」

 

「え?ま、まぁ…///」

 

「ちょ、千歌 俺はやるなんてひとことも・・・」

 

「それじゃあスタート!」

 

話を聞けえええ!!!

 

俺は無理やりボクサーグローブを付けられ、マシン前に立たされる。

 

これ…結構ガチでやんなきゃいけないやつじゃね?隣には千歌がいるし、周りにはたくさんの観客…ふざけてやったら…最悪……

 

迷ってなんかいちゃダメだ…本気でやんなきゃ…

 

「兄ちゃん、準備はいいかい?」

 

仕方ない…!見せてやるぜ…中高生の時に喧嘩で鍛えた俺のストレートパンチを…!

 

「Rady?…fight!」

 

「せやああああああああ!!!!」

 

バゴオ!!

 

ゲーセンの中に猛烈な音が響き渡る…

 

「そ、測定は?」

 

周りの人が集まるが、機械は全く動かない。

 

「お、おい…」

 

「な、なんだよ?」

 

「この機械…ぶっ壊れてるぞ…」

 

「え?」

 

え?自分でも、もう一度聞き返す。

 

「ぶっ壊れてるぞ……測定不能だ…これ…」プルプル

 

全員「ええー!?」

 

や、やっちまったぁ…

 

「わぉ!悠之君が一番だ~!」

 

「ぶっ壊してまで1位になんかなりたくねぇー!」




実は、春休み中は短期バイトを始めるので、
投稿ペースが落ちます。

※少しでも早くなるように努力します!



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第13話「必殺の魔球炸裂!(前編)」

今回もスローペースで頑張りまーす!


春休み…残すところあと一週間余り…か…このまま、平穏な日々が続けばいいんだがあなぁ…時間は止まってはくれない…進んでいく一方だ。

 

とりあえず、今はこの布団から出ることを優先しよう・・・いや、今日くらいは、二度寝したっていいだろう…だからもうちょっと寝よ・・・

 

 

ガラッ

 

「おーきーろー」

 

 

そう思った矢先に千歌が部屋に入ってくる…とりあえず寝た振りでもしておこうかな。

 

「ゆ~じく~ん!はやく起きてよ~!」

 

いつもだったら、幸せな気分で起きられるんだけど…今日は少しだけタイミングが悪い…千歌には悪いけど、あと…1時間くらい…

 

 

「もぉ~!起きてったら~!」

 

あぁ…この声を録音して、目覚ましの代わりに使いたいなぁ…

いや、やっぱり生声が一番いいな。前言撤回。

 

「(いつもならすぐに起きるのにどうやったら起きるんだろう…?

う~ん…例えば……)」

 

 

「ふんだっ!もう、悠之君なんか知らないから~!

千歌の事を放っておいてずーっと寝ちゃってなよ!」

 

 

怒ったフリして、心を揺さぶる作戦か……全然怖くないな、むしろ可愛いもっとやって。

 

「だっ…ダメかぁ…う~ん…どぉ~しよお~」

 

 

なんか…逆に癒されて眠気がまた来た…もう寝ようかな…

 

 

 

 

 

 

 

♢

1時間後…

 

 

流石に、二度寝じゃあんまりぐっすりは寝られないか……ん?

 

何だか、いい匂いがする…いつも傍にいるような、優しい匂い…。

 

俺は、重たいまぶたをしっかりと開いてみると、俺の布団の中に千歌の姿が見えた。

 

 

お、驚いたな…起こしに来てたというのに、俺の布団で寝ちゃってるんだからな…

 

「むにゃ…」

 

寝返りで、千歌の寝顔が俺のことを見つめる…

 

…やべえなぁ

 

「くぅ…くぅ…」

 

千歌の寝顔めっちゃ可愛い…。

 

とりあえず寝顔が可愛い過ぎるので、ほっぺをつついてみる。

 

いつも触ってるけど、相変わらずマシュマロみたいに柔らかかった…

 

「可愛いなぁ…」ツンツン

 

「……///」

 

あれ?今顔が少し赤くならなかったかな?

 

もう一度、千歌の顔を確認してみると、少し赤くなっていた。

 

「やっぱり少し赤いな…」プニプニ

 

「……」

 

もう少しだけ…いじってみようかな?

 

「いまなら、千歌は寝てるし…キス…しちゃおうかな?」

 

「……!?」

 

「(さて、どんな気持ちなのかな?千歌は。)」

 

「……///」ドキドキ

 

顔がもっと赤くなってるな、嘘はついていても顔に出てるのがまるわかりだ。可愛いらしいなぁ。

 

「……///」ドキドキ

 

「…途中からおきてただろ?」

 

「……!?」

 

「寝た振りしてたのが、バレバレだったぞ。」

 

「え、えー!?いつからー!?」

 

「いや、頬をつついてたところ辺りから。」

 

「そんなぁ…」シュン

 

少し千歌のテンションが下がる…まあ、このままいけば千歌とキスが出来たんだもんな。

 

「キス…して欲しかった…。」ウルウル

 

「え、い、いや…そんな顔されても…」

 

「悠之君とキス…したかったのに…」

 

「わ、わかったって」

 

チュッ

 

「えへへ♪悠之君だーいすき♡」

 

「千歌…さっきのわざとだろ…」

 

「え?私はなーんにもしらないよー?」

 

「はは…そっか。」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「で、何か用があるんだろ?」

 

「え?」

 

「いや、わさわざ起こしに来てくれたってことはなにか用があるってこと何じゃないのか?」

 

千歌が あ、思い出した~!みたいな仕草をしてから話し始める。

 

「そう!ちょっと悩みがあるの!」

 

「どんな悩み?まさか宿題じゃないよな」

 

「えっとね…宿題はないんだけど…」

 

宿題じゃないんならなんだろう…?この日にちだったら宿題に困ってもおかしくないくらいだけど、宿題は無いって言うし…

 

「えっとぉ…その…///」

 

千歌が言うのを恥ずかしそうにしている、そんなに深い悩みなのか…

 

「昨日体重を測ったら、春休みに入る前と比べて1キロ増えてたの!」

 

「…へ?」

 

1キロ?そんなのちょっと動けばすぐに戻る程度なのに、そんなに悩むことかな?

 

「だから、手伝って欲しいの!」

 

「手伝うって…なにを?」

 

「とりあえず、着替えてきてね~!待ってるから~!」

 

 

 

俺は急いで、適当に動きやすそうな服を選んだ。

 

 

♢

 

 

千歌と一緒に朝食・・・いや、昼食って時間帯だなもう、とりあえず一緒にご飯を食べた。

 

 

「ねえ、悠之君…今日は『アレ』してないの?」

 

「アレってなに?」

 

「えっとぉ、卒業式の時みたいな髪型…」

 

「あ〜、アレはちょっと俺には似合わないかな~って…」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

 

あんなにカッコイイ髪型だったのにもったいないっ!初めてあの髪型を見た時に胸がキュンキュンしてたのに♡

 

 

「もっかいアレやってみよぉ~」

 

「えぇ~?でもなぁ…」

 

「大丈夫っ!私が良いって言ったんだからいいに決まってるよ♪」

 

「そ、そんなに言うなら…じゃあ…」

 

 

 

~15分後…

 

「えっと…///終わったけど…///」

 

少し恥ずかしそうにしている悠之君が、食卓に戻ってきた。

 

「わぁ~やっぱりその髪型かっこいいよ~!」

 

何もしてない時よりも、爽やかな雰囲気が出ててオシャレな感じ~

ずーっと見ていたいなぁ♡

 

「えっと…その…やっぱり恥ずかしいからそんなにジロジロと・・・」

 

「えへへ♪恥ずかしがってる悠之君も可愛いなぁ~♪」

 

「か、からかうなって…///」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「───で、公園に来たのはいいけど、これから何をするんだ?」

 

「えーっとね・・・ジャッジャーン!」

 

千歌の手提げ袋から、ソフトボールの1通りの道具がたくさん入っていた。今すぐ試合が始められそうな位の量だな。

 

「そっか、千歌は昔からソフトボールが大好きだもんな。」

 

「うん!だから悠之君が帰ってきた時からずーっとやりたかったんだぁ~!」

 

「俺も久しぶりにやるけど……よしっ!」

 

大体の球技なら俺の得意分野だ、それにしても千歌とソフトボールをするのって、俺が中学生の時だったかな?

 

あの時はまだ千歌達は小学生だったな…懐かしいな。

 

「悠之君~!いっくよ~!」

 

「おーう!」

 

~キャッチボール中

 

「それにしても、悠之君はスポーツ系は何でも行けちゃうんだね~」

 

「あ〜、多分遺伝だろう。」

 

「あ、そっか~悠之君のお母さんもスポーツ得意だもんね~。」

 

「まあ、俺の母さんが、俺が小さい頃からスポーツを教えてくれたからな」

 

確か、小学校時代に俺と千歌と一緒にキャッチボールをやった記憶があるな…スポーツが出来たり、絵が上手かったり、変にファッションにこだわりを持ったり…俺の母さんはやっぱり謎だ。

 

「ねえ、悠之君!」

 

「ん?どうした?」

 

「ちょっとしゃがんで、キャッチャーやってくれない?」

 

「おぉ、もしかしてピッチャーが出来るのか!?」

 

「えへへっ♪まあね!」

 

俺は、キャッチャーミットに持ち替えて、しっかりと構えた。

 

「よ~し!いっくぞ~!」

 

「よしっ!こーい!」

 

「そりゃっ!」ヒュッ

 

バシッ!

 

千歌の最初の一球目は、重みのある直球だった。

キャッチャーミットを付けていても、少し手がジンジンする。

 

「次いくぞっ!」ヒュッ

 

バシッ!

 

「おおっこれもいい球だ。」

 

綺麗に、弧を描くカーブを投げてきた。

かなりキレのある曲がり方だった…しっかり球を見とかないと反応できない所だった…。

 

「じゃあ…次、決め球…いくよっ!」

 

「(決め球!?)」

 

「悠之君に取れるかな?私の必殺…!」ビシュッ

 

「(なんだ?さっきよりもスピードが遅い…ただののチェンジアップか?これなら簡単に…)」

 

グンッ

 

な、なに!?球が…俺の手前で伸び上がった!?

 

スパァン!

 

俺のキャッチャーミットが、簡単に吹き飛ばされ。

衝撃で尻もちを付いてしまった。

 

「やったぁッ!」

 

千歌が嬉しそうにぴょんぴょんはねてる…俺はそれどころじゃないんだけどな。

手が物凄く痛い…

 

「ちょっちょっとまて!なんだ!?今の魔球は!?」

 

「あ~今の?アレはライズボールって言う変化球だよ。」

 

「ライズボール?」

 

「そう、バッターの手前でボールを伸び上がらせる変化球なんだ~」

 

「いつの間にそんな恐ろしい魔球を…」

 

「魔球じゃないよ、変化球だよ~!」

 

千歌がいつの間に、こんな特技を身につけているなんて知らなかった…3年もたてば変わるもんだな…。

 

 

♢

 

 

「おぉーい!千歌ちゃーん!」

 

振り向くとそこには、曜と果南にダイヤ 、ルビィちゃん、花丸ちゃんがいた。

 

「あれ?なんで、みんながいるんだ?」

 

「私が呼んだんだ~ソフトボールやるならみんなとなら楽しいと思うし!」

 

 

確かに、こういうスポーツは人数がいた方が楽しいからな。千歌も結構やるな。

 

「おっはヨーソロー!」

 

「もう昼間だぞ。」

 

「あ、そうだった!」

 

曜が早速、敬礼ポーズをする。相変わらず元気だなぁ~。

 

「(何だか悠之さんの髪型がいつもより素敵ですわ…)」

 

「(悠之君…?何だか…髪型が…カッコイイ…///)」

 

果南とダイヤの目が俺に向いてるんだが…やっぱりこの髪型はおかしかったかな…?

 

 

♢

 

 

「それじゃみんなでキャッチボールしよ!」

 

「ヨーソロー!」

 

「ま、丸…スポーツあんまり出来ないけど大丈夫かな?」

 

「大丈夫だよ、花丸ちゃん。」

 

「ルビィちゃん…」

 

「ルビィも出来ないから」

 

え!?そういうフォロー!?ちょっと予想外。

 

「ルビィ?黒澤家に恥を欠かないような、プレイをするのですよ。」

 

「だ~いや~!これはアウトドアなんだから、そんなに固くならなーい。」ヒュッ

 

「か、果南さん…そ、そうでしたわね。」ヒュッ

 

ルビィちゃんも花丸ちゃんも、最初は出来ないって言ってたけど。

少しずつ投げ方も良くなってきているな。

 

「次、みんなでバッティングしてみないか?」

 

「いいね!じゃあ・・・」

 

 

『おい。』

 

『俺達、これからここで練習するからどいてくんない?』

 

何だか柄が良くない中学生の野球チームが俺たちに絡んできた。

 

 

「最初にここを使っていたのは私達ですわよ!?

公園は広いんですからもっと、隅の方を使いなさい!」

 

「お、お姉ちゃん…落ち着いて。」

 

確かに、この野球チームはコートを広く使った練習がしたいから、俺たちにどけって言っているのだろう…。

 

『こっちはお前達と違って遊びに来てんじゃあねんだよ。』

 

「最近の中学生ってこんな人ばっかりなの?ほんっと、いやになっちゃう…悠之君、面倒だから・・・」

 

果南がそう言いかけたその時…

 

「遊び…?」

 

『あ?』

 

「遊びなんかじゃないよ!」

 

千歌…

 

「体重を戻すための運動だもん!」

 

──ってそっちですか!?

 

『くだらねえ、いいから早く・・・』

 

「まあ、待ちな…こういうのはどうだ?」

 

『あん?』

 

今度は俺が、中学生達に説得をする。

 

「この場所を掛けた…ゲームだよ。」

 

 

…後編へ続く。

 




はい、今回初めて、話を二つに分けました。

次回も投稿は遅くなるかもですが、頑張って書こうと思います!


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第14話「必殺の魔球炸裂!(後編)」

また遅くなってすみません!


『だけどよ、お前達は8人しか居ないじゃねえか。

それに、ソフトボールと野球だとピッチャーの投げ方やフォームだって・・・』

 

「人数が一人少ないくらいどうってことは無い、それに野球にだってアンダースローとかで投げる選手もいる。」

 

少しルールが違っても、人数が足りなくても、このメンバーだったら間違いなく戦える自信がある。

 

体力オバケの果南…水泳ナショナルチームの曜…

 

何よりも、先程見せてもらった豪速球を投げる千歌がいる。

 

ルビィちゃんと花丸ちゃんは初めての割には結構様になってた。

それはダイヤも同じ事。

 

「それとも、負けるのが怖くて言い訳でもしているのか?」

 

『なっ…!』

 

少し上から見下ろしながら言ってやった。

年上に対して、あんな言葉使いをしたのだからこれくらい当然だ。

 

『じゃあ、試合してやるよ!全員恥をかかせて、偉そうな態度をとらせないようにしてらぁ!』

 

…案外簡単に口車に乗るもんだな。扱いが良い。

 

「い、いいの?あんな人達と試合しちゃっても…。」

 

心配そうに、千歌が俺のところに駆け寄ってくる。

 

「全然問題ないさ、相手は中学生のチームだぞ。」

 

「で、でも…なんか、あの人たちすごく怖いし…」

 

「ル、ルビィも…」

 

全員少し怯えた表情を見せるが…

 

「大丈夫だ、本当に強い野球チームはもっと態度がキチンとしている。」

 

『おーい!早く準備しやがれ!』

 

俺はゆっくりと相手チームに近づき、先攻後攻のジャンケンを始める。

 

「…俺達が後攻だな。」

 

『よし、俺達が先攻だ!1回表でコールド勝ちしてやるぜ!』

 

時間が無いので2回の裏表でゲームセットで勝負することに決めた。

 

 

「みんな、少し作戦がある…ちょっと集まってくれ・・・」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

─1回表 (中学野球チームの攻撃)

 

~全員のポジション

 

ピッチャー 千歌

 

キャッチャー ダイヤ

 

ファースト ルビィ

 

セカンド 悠之

 

サード 花丸

 

レフト 果南

 

ライト 曜

 

センター 人数不足の為不在

 

♢

 

プレイボール!

 

…試合前に悠之君が言っていた、ライズボールは強力な球だけど見破られたらすぐに対策が取られるからここぞという時以外は使っちゃいけないって…

 

確かに、悠之君の言っていることは分かる…いま、キャッチャーをやっているのはダイヤさんだし、怪我だって十分にありえる。

 

私のピッチングで、あの人たちに通用するのかな…?

 

『おーい、何やってんだー!早く投げろー!』

 

『初球からビビってんのー?』

 

「うっ…」グッ

 

「全く…下品な連中ですわね…」

 

私は思い切って、直球で投げた…

 

バシイッ!

 

大きな音を立てて、ボールは左中間を抜けて飛んでいった。

 

「(やっぱり…)」

 

『いいぞー!走れー!』

 

『そのままランニングホームランにしてやれー!』

 

相手のチームが二塁を抜け、三塁に向かって走り始めたその時…

 

「うおおおおおお・・・!!!」

 

「…果南ちゃん!?」

 

物凄いスピードで相手のランナーを追いかけ始めた!?

 

ボールを手に持ってるってことは…直接アウトにさせる気!?

 

「だ、ダメだよ果南ちゃん!ボールを回さなきゃ!」

 

「無理だよ、千歌ちゃん。」

 

曜ちゃんが、若干苦笑いを見せている。

 

「こうなった果南ちゃんには、多分なにも聞こえてないからね。」

 

「まじか、果南怖いな。」

 

相手チームのランナーは果南に怯え、三塁に止まらず、逃げるように、本塁に向かって走る。

 

『そ、そのまま走れ!』

 

『早くしろ!』

 

「捕らえる…絶対に…!」

 

「逃がさない…!!」

 

果南のスピードが更に上昇した、ラストスパートって奴か…

てか、早すぎる…さっき長打を拾ったばかりなのに…流石は体力オバケ…

 

「はい、タッチ。」ポン

 

『ハァハァ…う、嘘だろ…』

 

「カッコつけて、ランニングホームランなんか狙うからだよ☆」

 

「わあああ…果南さん…かっこいいずらぁ~」

 

花丸ちゃんがキラキラした目で見ているけど、実際の野球だったら

こんなやり方、有り得ないからね!?

 

『くそっ!まだ、たかが1アウトじゃねえか!』

 

『次打つぞ!ゴラァ!』

 

予想外過ぎる行動に、相手も動揺が隠しきれないみたいだな…。

 

「千歌!後ろには私達がいるんだから、怯えないで思い切りやりなよ~!」

 

「果南ちゃん…」

 

「私もいることもお忘れなくってよー!」

 

「ダイヤさん…!」

 

そうだ、初球から不安になってちゃダメだ。

みんながいるんだから、自信を持って投げなくちゃ!

 

「そりゃ!」

 

ビシュッ!

 

『……!』

 

ガッ!

 

ボールは鈍い音をを立てて、キャッチャーフライとなり、ダイヤのグローブに綺麗に収まった。

 

「お姉ちゃんすごーい!」

 

「とーぜんですわ!私を誰だと思っていますの?」

 

あのダイヤが、あんなに楽しそうにニコニコしている。

 

「キャッチャーフライを取っただけなのに随分と楽しそうだな。」

 

「はじめてアウトドアな事をしたから、楽しくなっちゃってるんじゃない?」

 

ま、まあいいか…これで、相手はさらに心が動揺するはずだ…

 

『こんなのはマグレだ!絶対だ!』

 

効き目抜群だな。

 

『よーし、次こそ特大なのを打って…』

 

「おーっと、ちょいまちな。」

 

『ちっ…なんだよ…』

 

「ポジションチェンジだ。」

 

俺はダイヤにこっちに来いと、サインを送る。

 

「何ですの?まだ1回表なのにもうポジションチェンジするんですか?」

 

「違うな、まだ1回だからこそポジションチェンジを行うんだ。」

 

「は、はい…?」

 

「あと1回アウトが取れれば、俺達の攻撃側になる…その前に千歌の全力の投球を相手に見せつけて、モチベーションを下げさせてから攻撃に移るんだ。」

 

「千歌さんの、全力を出すには私では力不足だというのですか?」

 

ダイヤが少しムッとした顔で、下からじっと見つめる。

いつもより少しその表情が幼く見えた

 

「違う、あの球を受けると怪我をする恐れがあるからだ…特に、普段から慣れていない人は特に…」

 

「はぁ…そこまで言うのでしたら、代わりますわ。」

 

「すまねえな。キャッチャーフライで盛り上がっていた時に。」

 

 

 

♢

 

「千歌あの変化球、もう使ってもいいぞ。」

 

「え?い、いいの?」

 

「あぁ、思い切りぶちかましてやんな。」

 

千歌が頷いたのを確認してから、それぞれの位置に着く。

 

 

悠之君が許可を取ったんだから、出し惜しみしないで…思い切りやってやる!

 

『きやがれ…ぜってえに打ってやる…』

 

「いけぇ!!」

 

ビシュッ!

 

『なんだ…こんな球…簡単に…』

 

「私の決め球は…打者の手前で伸び上がる…」

 

グンッ

 

『……!?』

 

スパァン!!

 

「いってぇ…」ビリビリ

 

な、何とかグローブに収めることは出来たが…相変わらず衝撃が半端じゃない…どうやって投げてるんだあの球…

 

千歌の投球に圧倒され、相手チームが静まり返った…

 

『何でだ…球が速度を変えて浮き上がった…?』

 

「ぴぎゃっ…な、なにが起きたの?」

 

「み、未来ずら…未来ずらぁ~!」

 

「あんな投球を…私は受けるつもりでいたのですの…?」

 

流石にみんなも、ビックリしているみたいだ。

そりゃあ、そうだよな…俺だって最初はビックリしたし、何よりもあの音が衝撃的だったはずだ。

 

そして残りも、千歌のライズボールでこの回は0点で防ぎきった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「凄いよ千歌ちゃん!」

 

「ほんと!いつあんな変化球が投げれるようになったの?」

 

みんなが千歌を囲むように、ちやほや褒める。

 

みんなで盛り上がっていると、相手チームが配置につかずに帰る準備をしているのが見えた。

 

「なんだ?最近の野球チームは試合を放棄して逃げるような連中なのか?」

 

『うるせえ、今回はてめえらの勝ちでいい、それでいいだろ。』

 

「好きにしな、だが実力を見せつけられて逃げるようだったら、もう2度とあんな態度を取るんじゃないぞ。」

 

『………』プイ

 

 

 

 

「これで良かったの?決着は付いていない気がするんだけど…」

 

千歌が少し不満そうな顔をしている、さっきは思い切りライズボールが投げられたから、もっと投げたかったのかな?

 

「まあ、早く済んでよかったと私は思いますわ。」

 

「そうだね、それじゃあみんなでもう一度仕切り直そうよ!」

 

ダイヤも果南は満足気な顔だ、二人とも楽しそうにプレイしてたもんな。

 

「よーし!じゃあもう一度みんなでやろうー!」

 

千歌が清々しい笑顔で、空に向かって指を指す。

今日は楽しい休日だったな…。

 

 




皆さんは体調を崩していませんか?
私は昨日まで熱が出てて39度もありました…(><)

春ってホントに体調が崩しやすい季節なんだなと、はじめて実感しました…


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第15話「今年のGW」

大変お待たせしました!ゴールデンウィークに合わせて投稿しようとしてたらかなり遅くなってしまいました!
ホントに申し訳ございません…!


4月30日

 

「GWの予定?」

 

「そーなんだよ~!今年はゆーじくんがいるのに、お店の予約がいっぱいで遠出が出来ないんだってさ~」

 

まあ、旅館だったらGWにお客さんの予約がいっぱいになったって不思議ではないか…

 

「お母さんは土日以外だったら、遊んでもいいって言ったんだけどね…」

 

「…じゃあさ。」

 

「ん?」

 

「遠出ができて、電車賃、宿泊代がかからない良い場所があるんだけど…どうかな?」

 

「そ、そんな都合のいい話があるわけ…」

 

千歌が少し真面目な顔をする…が、

 

「…ガチですか?」

 

「ガチっすよ。」

 

「ホントに?」

 

互いに謎のキャッチボールが続く…

 

「で、そこってどこなの?」

 

「あぁ、ちょっと待っててな。」

 

俺は、スマホの電源を入れた・・・

 

「もしもし、今母さんに電話代われる?…あぁ、ちょっとだけでいいから…」

 

「なぁに?悠之~?今仕事中なんだけど~」

 

「まあ、そんな事は気にせずに……前に引っ越した家ってまだ売ってないっしょ?」

 

「別に売ってないけど…家具とかだってあそこに全部置いたままだし…それにあそこは私が建てたリゾートハウス…」

 

おぉ、流石は俺の母親だ…こうゆう時はホントに便利だな。

 

「じゃあさ、そこの家をGW中に使ってもいいかな?」

 

「もしかして、千歌ちゃんも一緒なのー?」

 

「ん?千歌も一緒だけど…」

 

「だったら、全然OKよー!むしろウェルカムよ!いっそラブ〇にしても・・・」

 

「おいまて、それ以上は言うな。」

 

ったく…そろそろ三十後半になる母親がなにを言ってるんだ…変な方向に性欲強すぎんだろ…

 

「んじゃ、使わせてもらうぜー。」

 

「はーい!じゃあ、私の家の使用人に車を出してもらうから~宜しくね~」

 

おぉ、相変わらず人の使い方が上手い人だな、予想通り交通費もかからずに済みそうだ。

 

 

「と…ゆう訳で行きますか。」

 

「行くって…どこへ?」

 

「TOKYOだ。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

5月3日

 

そろそろ…母さんの車が来るはずなんだが…お、きたきた。

 

「ゆ~じくん、やっぱり曜ちゃんも、果南ちゃんも用事で無理だって~」

 

「…だろうな。」

 

曜は恐らく水泳の大会だな…果南はきっと、親父さんのお仕事の手伝いだろう…。

 

「まあ、仕方ないか…確か、千歌も旅館の手伝いで土曜日には帰んなきゃだもんな。」

 

「まあね~土日の予約が沢山あったらしいから、その日には手伝わないと…。」

 

千歌と話していると、さっき止まった車から使用人が1人降りてきた。

 

『悠之様、本日別荘地にお送りする者です。』

 

「あぁ、今回はよろしくな。」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

『ありがとうございます…どうぞ席の方へ…。』

 

俺と千歌は車の座席に誘導されて、席に座る。

 

『あ、悠之様。母上からお手紙がありまして…』

 

「ん?見せてくれ。」

 

俺は1通の封筒を開ける…

 

「悠之~ヤル時はちゃんとゴムを・・・」

 

ビリビリビリ・・・

 

「ゆ、悠之君?」

 

「何でもないさ、早く車を飛ばしてくれ…」

 

『はい、かしこまりました…。』

 

 

あのクソアマ…帰ったら絶対に痛い目に合わせてやる…

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

車に乗り、渋滞にハマりながらも、ようやく別荘の近くまで来れた…

 

PM 4時30分

 

 

『そろそろ、目的地に付きますよ。』

 

「だってさ、早く起きろよ。」ユサユサ

 

「ムニャ…ミカンの楽園だぁ…」

 

「おーい千歌さーん?」

 

せっかく着いたってのに、全然起きないや…こうなったら…

 

「あ〜!あんなにたくさんのみかんの木がー!」

 

「なぁんだってえええ!!??」

 

「あ、やっと起きた。」

 

「へ?」

 

千歌が周りをキョロキョロと見渡すが…木は沢山あってもミカン木ではなかった…

 

「あれ?ミカンは…?」

 

「あぁ…えっと…ここには無いっす。」

 

すると千歌がほっぺをムッと膨らませる…

 

「…嘘つき。」ムッ

 

『それでは、私はこれで…あ、母上から温泉の無料券が渡されてますのでぜひお使い下さい…それではこれで…。』

 

「え、あぁ…ありがとな。」

 

あ、あの使用人逃げやがったな…ったく…。

 

「千歌~機嫌直してくれよ~」

 

「プッ…」

 

「…?」

 

「…アハハハ!ゆーじくんってば本気で心配しちゃってる~」

 

「な、今までの全部演技だったのか!?」

 

千歌が舌を軽く出しながらウィンクをする。

 

「えっへへへ!正解~!」ペロ

 

「ったく…もう…。」

 

「ん~?悠之君顔がニヤけちゃってるよ~?」

 

千歌が上目遣いをしながら、ジト目で見つめる…なんだかその姿に胸がキュンとした。

 

「もしかして、こうやって遊ばれるのって結構好き?」

 

「な、そんな趣味はねえよ!」

 

「ホントかなぁ~?」

 

「な、無いって!早く入ろうぜ!!」

 

俺は、千歌の手を握って別荘に向かう。

 

ギュッ

 

「ゆ、悠之君…///」

 

「な、なんだよ?」

 

「その…手を握って貰えるの…久しぶりで…///」

 

「まあ…その…GWはずっと2人きりなんだから、こういう事ぐらい全然…」

 

千歌が顔を急に赤くするので、俺も顔が自然と熱くなる…自分でも分かるくらいに…。

 

 

駐車場から、少し歩いて俺達の別荘が見えてきた。

 

確か、母さんが自然に囲まれた場所で絵が描きたいって言ってたからここの家を建てたんだっけな…

 

「じゃあ、開けるぞ。」

 

「うん!」

 

扉を開けると、広い玄関が待ち構えていた…そして、更に中へ入って見ると、広いリビング…白いキッチン…広い庭…全てが前に住んでた時と変わっていなかった…。

 

「すごいー!こんな素敵な場所に悠之君は住んでたの?いいなぁー!」

 

「まあ、母さんが無理やり建てた家だけどな…わざわざこんなところに建てなくても…」

 

「今はそんな事は関係ないよ~!素敵~!」

 

千歌が窓から顔を出して、はしゃいでる…確かに、俺もこの家に来た時は凄くはしゃいでた記憶が残っているなぁ…。

 

「とりあえず、夕飯が何も無いからなにか買い物に行くか?それとも、さっき貰った温泉の所にも色々とあるらしいけど。」

 

「あ、そこに行ってみたーい!温泉にも入りたいし!」

 

「そうだな、じゃあ行きますか。」

 

「うん!」

 

 

 

♢

~男湯

 

 

温泉は千歌の所の旅館で慣れてたから、あまり新鮮味が無かったけどここの温泉もなかなか居心地がいい…

 

そして、三十分程で俺は温泉から上がり、部屋着に着替えて男湯を後にした…

 

そして5分ほどして、女湯の入口から千歌が出てきた。

 

「ごめんね~ちょっと遅くなっちゃって…」

 

千歌も部屋着に着替えて来たが…風呂上がりで少し赤くなった頬と、三つ編みを解いて揉み上げが出てきていて、少し色気が増していた。

 

「ゆ~じくん?」

 

「え?あ、出てきたのか…」

 

「まあ…今出てきたけど…だいじょうぶ~?」

 

「だ、大丈夫だ…。」

 

「ねーね~ちょっとお腹すいてきちゃった~何か食べに行こ?」ギユッ

 

千歌が俺の腕を抱いてくる…千歌は気づいていなさそうだけどブラを外した状態で胸を押し付けてくるので、少し緊張して歩きづらい…

 

「…なんか大きくなったか?」

 

「へ?何の事~?」

 

「い、いや…気づいてなきゃいいんだ…///」

 

ヤバイな…やっぱり千歌は無意識で俺に抱きついている…ピュアだなぁ…

 

「あっちに色々とあったぞ、フードコートとか…」

 

「ホント!?じゃあそこに行きたいなぁ~」

 

「じゃあ、そこに行こっか。」

 

「うん!」

 

♢

 

「ゆーじくんは何にしたの?」

 

「俺は無難にハンバーグにしたよ。」

 

「あ~それも美味しそうだなぁ~後で分けて~!」

 

「あぁ、いいけど…」

 

五分程経過して、ハンバーグが俺のところに運ばれてきた、それと同時に千歌の頼んでた物も運ばれた。

 

「千歌は…スパゲティにしたのか。」

 

「うん!じゃあ…いっただきまーす!」

 

…なんか、フードコートでこんなに楽しそうにしてる子を見るのは初めてかもな…可愛い…。

 

「ねーねー、悠之君!」

 

「ん?何?」

 

「さっき言ったでしょ~ハンバーグちょっと分けてよ~」

 

「じゃあ、俺にもスパゲティ頂戴。」

 

「えへへ、もちろんだよ~」

 

千歌がクルクルとスパゲティをフォークに巻く。

 

「はい、あーん♡」

 

 

千歌のフォークに自然と吸い込まれていく…少し恥ずかしかったけど、流石に慣れてきたかな。

 

「じゃあ、俺もはい、あーん…」

 

「ん~♡美味しい~♡」

 

千歌が幸せそうにほっぺを抑えてる…何か目の前に天使がいるように見えるんだが…

 

そして、大体20分くらいで食事が終わった…。

 

「んじゃ、もう遅いし、そろそろ家に戻ろうか。」

 

「うん!今日来たばっかりでちょっと疲れちゃったしね~」

 

2人でまた手を繋ぎながら、家の方へ戻っていく…改めて思ったけど、千歌の手ってホントに柔らかいんだな…とてもピッチャーをやってるとは思えない…

 

~~~~~~~~~~~~~

PM10:50

 

 

 

「じゃあ、今日は少し早いかもだけど寝よっか。」

 

「そうだね…ふあぁ~…明日はどこへ連れてってくれるの~?」

 

「そうだな…明日のお楽しみにしておこうか。」

 

「えへへ…それがいいかも…じゃあおやすみ…」

 

「あぁ、おやすみ。」

 

明かりを消して、2人で一緒のベットに入る…1人用だけど、少しだけ詰めれば二人分は全然余裕だった…が。

 

「(いつもより、顔が近くて寝付けねえ…)」

 

なんか、凄くいい匂いもするし…今夜はなんだか眠れない…どうしよう…

 

「Zzz…」

 

こんな状況でも、千歌は相変わらずよく眠れるなぁ…やっぱりピュアだからか?

 

「……」

 

PM11:50

 

「(…やっぱり眠れねえな。)」

 

「Zzz…」

 

羨ましいな…俺も早く寝たいのに…はぁ…

 

「(…今この家にいるのは俺と千歌だけなんだよな…)」

 

「ムニャ…」

 

…こんなに顔が近いとなんかイタズラとかしたくなる…でも…ただのイタズラじゃなくて…何か…もっと…

 

「(今回だけ…だ…)」

 

俺は千歌の頬を触り、自分の顔に少しづつ近づける…

 

「悪い…千歌…」

 

「何が悪いの?」

 

「…!?千歌ぁ!?」

 

俺は驚いて、千歌から離れる…。

 

「ねえ?どうして離れるの?」

 

「え、それは…びっくりしたから…」

 

千歌が俺の身体を引き寄せる…

 

「私は…悠之君の事を…もっと知りたい…悠之君にも…私の事をもっと知ってもらいたい…」ギユッ

 

千歌が俺の手を握り、自分の胸に俺の手を当てた…物凄く柔らかい感触を味わった…

 

千歌の顔を見ると、赤くなってるとか…そういう感じではなかった…何かを伝えようとしている表情をしている…

 

 

 

「千歌…ごめんな…こんなやり方しちゃって…」

 

「ううん…謝らないで…その代わり…」

 

 

 

 

 

 

『私を…もっと触って…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

5月4日

 

「お~き~て~ゆーじくん~!!」

 

「ん…?」

 

今日も、千歌の優しい声に起こしてもらえた…そういや一緒のベットにいると思ったら、ここは母さんの別荘だった…すっかり千歌んちの旅館に慣れてしまったな…

 

 

「おはよ、千歌…ん?」

 

「おは…よ…?」

 

俺と千歌は互いに見つめ合うが…俺も千歌も…

 

 

服を着ていなかった…

(※下半身は布団で隠れてます)

 

 

 

「え…///」

 

「あ、あぁ…///」

 

俺は今…完全に千歌の…見てしまった…

 

「きゃああああああ!!!!////」

 

千歌にまくらを思い切り顔面に抑えられ、ベットに叩きつけられた…

 

「んー!?んんー!??」

 

「もう!悠之君はそのまま顔を塞いでて!!///」

 

「ふぁ…ふぁい…」

 

 

 

…こんな状況で思っちゃいけないことかもしれないけど…千歌の胸…やっぱり大きかったな…。

 

「はい、もう大丈夫だよ~」

 

「まって、俺が大丈夫じゃない…なんか部屋着がベッドの下に落ちちゃってるんだが…」

 

「え~ちょっとまってて……はい。」

 

千歌が下から取りに行ってくれた…これで俺も問題ないな…

 

急いで部屋着に着替える…

 

 

「俺も終わったぞ~」

 

「はぁ…何で私達…裸だったんだろう…」

 

「わ、わからない…何でだ…?」

 

「「う~ん?」」

 

 

♢

 

 

とりあえず気を取り直して、千歌と冷蔵庫に入っていたパンとハムと卵で朝食を作る…もちろん、2人で分担をしながら準備を進めていく…

 

 

「悠之君、目玉焼き焼けた?」

 

「あ~もうすぐ焼けるよ。」

 

2人でこうやって準備する朝もなんだか、新鮮で楽しい…

 

「ねえ、悠之君…」

 

「何だ?」

 

「何か、こうやって一緒にご飯作るのって…その…新婚さんみたいじゃない?エヘヘ…」

 

「…た、確かにそうかもな。」

 

千歌と新婚か…だったらもう人生は永久に薔薇色だな…いや、みかん色か。

 

「あ、悠之君お湯湧いたよー」

 

「おう。」

 

インスタントコーヒーもあったので、ついでに作っておいた…

 

そして、全ての準備が整ったので、ようやく食事ができる…久しぶりに準備をやってみたけど、意外と時間がかかるもんなんだな。

 

「それでは…」

 

「「いただきまーす」」

 

 

「で、今日はどこへ行くの?」

 

「千歌が多分1度は行ってみたいと思うところだと思うぞ。」

 

「へ~楽しみ~!」

 

 

 

 

♢

電車に乗って約15分…もちろん電車賃も母さんが手紙と一緒に渡してくれてた。

 

そして、秋葉原駅から押上駅まで移動し、そして徒歩で約五分程…

 

「あ~!も、もしかして!」

 

『スカイツリーだ~!』

 

千歌が嬉しそうにぴょんぴょん跳ねてる…やっぱまだ行ったことは無かったみたいで良かった。

 

「もう中に入れるの!?」

 

「待て待て、あそこでチケットを買わないと…」

 

「じゃあ早く買いに行こ!」ダッ

 

「急がなくてもチケットはあるぞー」

 

とりあえず、千歌と俺の二人分のチケットを購入した。

 

「このエレベーターに乗って行くと高い所から景色が見えるぞ。」

 

「悠之君~早く乗ろうよ~!」

 

エレベーターはグングンと登っていき、高さ450mの第2展望台まで登った。

 

「うわぁ~!高いよ~!悠之君ー!!」

 

「そうだな~確かにここまで登るといつもと景色の迫力が違うな」

 

「あ、透明の足場があるよ!行ってみようよ~!」

 

「え、あ、あそこはちょっと…」

 

「えー?行こうよ~!」

 

千歌が腕をグイグイ引っ張るから、しょうがなくついて行った

 

「おぉ~下がまる見えだよ~!」

 

「……」ガクガク

 

「悠之君?」

 

「……」ガクガク

 

「…わっ!」

 

「うわああああぁぁ!!!」

 

「も~悠之君は情けないなぁ~」

 

「ジェットコースターとかは慣れてるけど、こういうジーとしたのはちょっと苦手なんだよ…」

 

さっきの衝撃で、足がまだ震えてる…俺も臆病になったもんだな…やれやれ…

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして、あれから色んなところを回った…水族館や、ゲーセンに行ったり、お昼を食べたりと…幸せな時間はあっという間に過ぎていってしまった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM9:00 (別荘)

 

そして、夕食も終わり、あと残すところは…明日帰る準備とお風呂だけだった…

 

 

 

「ねえ?悠之君…」

 

「何?」

 

「その…今朝さ、私の裸…見ちゃったじゃん…」

 

「あぁ…正確に言えば千歌も俺の裸を見ちゃったけどな…」

 

千歌が顔を赤くして、モジモジしている…

 

「その…私…好きな人と…一緒にお風呂とか入ってみたかったって…その…ずっと思ってて…あぁ、でも別にエッチな事がしたいとかそういう事じゃなくて…その…///」

 

あ~お互いの裸を見ちゃって、変にスイッチが入っちゃった感じなのかな?

 

俺はその姿が可愛らしくて、自然に笑顔がこぼれていた。

 

「へ?な、何がおかしいの?」

 

「何か、こうやってテンパってる千歌を見るのはちょっと懐かしいな~って。」

 

ボンっと何かが破裂したように、千歌に顔がもっと赤く染まっていく…

 

「…その…私と一緒にお風呂…いや、混浴してくれませんか?」

 

 

 

 

 

♢

 

流石にいきなり裸で入るのは恥ずかしいので、互いにちゃんとバスタオルを体にまいて入浴した…

 

体の洗いっこをした時にタオルを外したりするのがかなり恥ずかしかったけど、少しづつ慣れてきた…

 

 

「悠之君…やっぱりちょっと恥ずかしいかな…。」

 

千歌が赤面しながら俺の顔をじっと…見つめる…。

その姿が愛らしくてとても可愛いかった…

 

「俺は全然恥ずかしくないとは思わないけど…千歌の全てがもっと見たいかな…。」

 

俺はそっと…千歌の胸に手を添える。

 

「ひゃっ…も、もう…///」

 

恥ずかしいよ…と千歌が目で訴える…。

 

「…まあ、今は2人しか居ないんだからさ。」

 

「あ~もしかしてそれが目的でここに連れてきたの?」

 

「う~ん…少しそれもあるかも。」

 

「もう…悠之君のスケベ…。」

 

千歌がちょっと呆れたように言った。

 

「でも俺は…千歌と一緒に東京を楽しむのが目的だったぞ?」

 

「もぅ…後から言ってもちょっと説得力無いよ~?」

 

それから10分くらい湯船に浸かった…シャンプーしたから当然だけど、千歌の髪から凄くいい匂いがした…

 

 

 

「はあ…今日でおしまいだね…ゴールデンウィーク…。」

 

「旅館の手伝いもあるし…仕方ないもんな…。」

 

「ねえ?悠之君…」

 

「どうした?」

 

チュッ

 

千歌が俺に顔を近づけて、ゆっくりとキスをする…。

 

「ゴールデンウィーク…す~っごく!楽しかったよ…!」

 

「あぁ…俺も楽しかった。」

 

「また一緒に来ようね!」

 

「あぁ…もちろん。」

 

俺も自然に千歌の唇に口付けをしていた…来年もまた…ここに来れたらいいな…

 

 




GW…終わらないで…


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第16話「真夏の文化祭開演!(前編)」

モチベが下がっている…頑張らないと…

あ、今回は二つに分けているので短めです


最近俺は思う…毎朝布団から起きる度にいつも思ってしまう…それは……

 

・・・今年の五月は暑すぎる!

 

何故だ!?いくら温暖化が進んでいるからってここまで暑苦しいとは正直予想外だった…外に出ようと思えばすぐにだらけてしまう…まるで7月並の暑さだ…なんで五月にこんな暑さに苦しまなければならないのだろう…

 

「ゆ~じく~ん・・・暑いよおぉ…」スリスリ

 

「や、やめろ千歌・・・それ以上くっついたら…暑くて死ぬ…」

 

俺達がこんな暑さに苦しんでいるのにはある理由がある…それは…

 

「なんで俺達の部屋だけクーラーが壊れてるんだよ…」

 

「な…なんでって…千歌に言われても分かんないよ…」ハアハア

 

他のお客さんの部屋は付いてるらしいが…こんな偶然にしては出来すぎてる気がする…

それにしても辛い…何か暑さを和らげる方法を・・・そうだ…!

 

「千歌。」

 

「なぁに…?悠之君?」

 

「アイスクリームを食べに行こう。」

 

「え~?でもここら辺はコンビニとかないよ?」

 

「いや、でも少し歩けば流石に・・・」

 

「な・い・よ?」

 

「オーマイガー…」

 

この辺にコンビニが無いんだったら、恐らくサーテ〇ワンとかも絶対ないだろう…いや、沼津駅の辺りに行けばワンチャン…いや、アイスを食べに行くのにわざわざ沼津駅まで行くなんてごめんだ…

 

「そうだな…あ、松月はどうだ?あそこなら冷房もきいてるはずだし…」

 

「そ~だねぇ~松月の事をすっかり忘れてたよ~」

 

とにかく、この部屋から脱出して冷房が効いてる場所に行かなくては…

 

「ゆ、悠之君…」

 

「どうした?」

 

「もう今月の分のお金が無いよぉ~」

 

「あぁー…まあ、それくらいは俺が出すから心配すんな。」

 

「あ、ありがと~!さすが悠之君!!」

 

「さ、暑いから早く準備をしようぜ。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

10分後~

 

少し時間が経って、俺は千歌の支度を待つ…

 

「お待たせ~!」

 

千歌の部屋が開いて、私服に着替えた彼女の姿が見えた…。

 

この前に一緒に買いに行った服を着ているが、スカートの丈がいつもよりもかなり短めだ…少し強い風が吹いただけで見えてもおかしくない長さだ。

 

「ゆ~じくん?」

 

「…可愛い。」

 

俺は自然と言葉が漏れていた…

 

「え…///」

 

「あ…いや、今日の服…凄く似合ってたからつい…」

 

「ほ、ほんと?」カオマッカ

 

「あぁ、可愛いよ。」

 

「えへ…♡ありがと…♡」

 

自分で選んだ服が褒められて嬉しいのか、少しだらけた笑みを見せる。

 

「さ、熱中症にならない内に早く出かけよう。」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

♢

 

松月に向かいながら話し始める。

 

「そういえば、千歌は高校では部活はやらないの?」

 

「う~ん…やってもいいと思うけど…私結構飽きっぽいところあるからなぁ~。」

 

「あんな豪速球が投げられるのに?」

 

俺はふと、千歌のライズボールを思い出す。

 

「あ、そうそう~前のソフトボールの試合を浦女の人が見ていたらしくて、ソフトボール部の人に何度か誘われるんだよね~。」

 

「なんでだ?浦女のソフトボール部はピッチャーがいないのか?」

 

「いやぁ…いるとは思うよ。前だって普通に試合してたし…。」

 

別にメンバーが足りてない訳では無いということか…

 

「で、千歌はなんて答えたんだ?」

 

「私は断ったよ、だって結構飽きっぽい所とかあるし…」

 

「そっか…まあ、何かしらの特技をもっておくのはいいことだと思うけどな。」

 

2人で歩いているとあっという間に、松月の所まで辿り着いた。

 

「ここに来るのも結構久しぶりだな」

 

「そうだね~冬休み以来かな~?」

 

気温が高いからか、店の中に客がぞろぞろと入ってくる…

 

「ねえねえ…悠之君。」

 

「ん?」

 

「あれ…なぁに?」

 

千歌が指を指す方向には、黒色のローブのような物を体に被った痛々しい人がお店に入ってきた…

 

「なんだありゃ…お店のスタッフ…では無さそうだな。」

 

「ねーねー、あれって暑くないの?」

 

「え?めちゃくちゃ暑いと思うぞ、だって完全に無地で真っ黒だし…」

 

 

 

店に入って、20分程たった…ようやく店の中も落ち着いてきたようだ。

 

「悪い千歌、ちょいトイレ行ってくる。」

 

「うん、いってらしゃ~い」

 

俺は、トイレで用を足してから扉を開けると、丁度女子トイレから出てきた人にぶつかってしまい、その人は尻餅を付いてしまった…

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

俺はとっさにぶつかった人の手を握って体を起こしてあげた。

 

「ひゃあっ!?」

 

「あの…だいじょ…」

 

「は、はい!だ、大丈夫です!」

 

いきなりこの人私の手を握るなんて・・・ちょっと驚いたけど、中々肝が座ってるいるわね…

 

「怪我とかは無い?」

 

「え、あ…な、無いです!」

 

ど、どうしよう…また、テンパっちゃった…この私がこんな事くらいで…屈辱的だわ…

 

「そっか、よかった~」

 

「あ、あの…」

 

「ん?」

 

「その…そろそろ手を話してください…///」

 

私の手を握っていたこの男は、ようやくこの状況に気づいたみたい…気づくの遅すぎるわ…どこのラノベ主人公よ…

 

「あ、ごめんね!じゃあこの辺で…」

 

そして、そのままあの人はどこかへ行ってしまった…

 

「変な人・・・」

 

 

 

 

 

 

私が自分の席に戻ると、ずら丸がニヤニヤしながら私の事を見ていた。

 

「み~ちゃったずらよ、善子ちゃん。」

 

「な、何がよ?てゆうか、私はヨハネよ!」

 

「善子ちゃんがお手洗いに行った後に、まるも行こうかな~って思ってお手洗いに行ったら…」

 

『顔が真っ赤な善子ちゃんを』

 

「あああああ~!!ど、どこまで見てたのよー!?」

 

この反応…やっぱり善子ちゃんだったずら…後ろ姿だけです~ぐにわかっちゃうずら。

 

 

「あぁ…ヨハネ…堕天…」ガク

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

月曜日

 

…やはり、月曜の学校は疲れる…やる気が出ないとゆうか、だるいというか…とにかく辛い…

 

「はーい、それでは今年の文化祭の出し物について話し合いたいと思いまーす。」

 

今日の6時限目は文化祭の話し合いだそうだ…特に興味とかないから暇だ…

 

俺がボーッとしている内にたくさんの意見が飛び交う

 

 

そして、6時間目が終わりようやく帰宅の時間が来たが…

 

…正直厄介な役を選ばれてしまったな…。

 

 

そんな思いを抱きながら俺はバスに乗り込む・・・そして、2つほどバス停を通って、千歌達の浦女に止まった。

 

「おーい、悠之君~!」

 

千歌の元気そうな声が聞こえる…今の俺の状態だと、千歌の声はまさに癒しである…ずっと聞いていたい…

 

「浮かない顔してるね、どうしたの?」

 

果南が心配そうな顔をして俺の事を見る…

 

「いや…ちょっと色々あってな…。」

 

「ふぅ~ん・・・あ、そうだ!」

 

「どうした?」

 

「悠之君の所の高校は文化祭いつ?」

 

「う~ん…来週だったかな…。」

 

「な、なんで悠之君が曖昧なの?」

 

そりゃあ、興味が無いからですよ…なんて言ったらカッコ悪いから止めておこう…

 

「私達の文化祭は土曜日なんだ~」

 

千歌が果南の後ろからひょこっと顔を出す。

 

「俺らの高校は…あ、日程あったわ…え~と…俺らは日曜日だな。」

 

「じゃあ、ちょうどいいね。」

 

「私達も悠之君の学校の文化祭見に行くから、私達の学校のも来てほしいんだ~」

 

果南と千歌がまさに「お願い♡」って顔をしている…これは断れんぞ…

 

「あぁ、じゃあそうさせてもらおうかな。」

 

「えへへ~やったぁ♡」

 

「良かったね千歌。」

 

「ところで、千歌達のクラスは何を出すんだ?」

 

「それを言っちゃったら楽しみが無くなっちゃうでしょ~」

 

あぁ、確かにそうか…文化祭に興味が無かったからついこんな事を…

 

「じゃあ、お楽しみにしておくよ。」

 

「うん!じゃあ、絶対来てね♡」

 

 

…今年の文化祭は期待に応えられるようにしないと…。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

あの日から全力で文化祭の準備を手伝うようになった…大切な人が来ると思うとやはり、手は抜けない…

 

周囲の人からは、急にどうした?みたいな事を言われたが、正直今はどうでもいい…やるからには全力で…そして、みんなに勧められたこの役割も本気でやろう…

 

 

そして、文化祭当日まで目前となった。

 

 

 

to be continued…(後編に続く)

 



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第17話「真夏の文化祭開演!(後編)」

こんにちは!ちょっと久しぶりに書いたので文章がおかしいかも知れませんが、続きをどうぞ!


土曜日

 

今日は土曜日…千歌達の学校、浦の星女学院の文化祭の日だ。

 

確か浦女は、生徒の数も少なくて統廃合になってもおかしくないと、世間から言われて来たが…思ったより人は多い…まあ、今はそんな事どうでもいい…

 

絶対来てね!と言われたから、ここにまで来たのだが…

 

 

千歌達のクラスどこだよ!?

 

クラスの数は少ないのに校舎の大きさと比率していない…ここに来てからもう10分程経過している…

 

そればかりか周りは文化祭の仕事に夢中な生徒ばかりでごちゃごちゃしていて、千歌本人を探すのにも苦労しそうだ…。

 

「それにしても人が多いな…」

 

俺が校内をウロウロしていると、後ろから肩をトントンと叩かれたので振り向いてみる…

 

 

「あれ?悠之君じゃん。」

 

「あ、果南!ちょうどいいところに…千歌のクラス何階かしらないか?」

 

「え、千歌から何も聞いていないの?」

 

「あぁ、今朝聞こうと思ったんだが、結構早く家を出てしまったみたいでな…」

 

「はは…流石は千歌、相変わらずおっちょこちょいだね…」

 

果南が苦笑いを浮かべる…まあ、それが千歌らしいってところでもあるんだけどな…

 

「とりあえず、千歌のクラスの場所を教えてくれないか?」

 

「うん、いいよ。」

 

果南に校舎を案内される・・・

 

「それにしても結構活気的な文化祭だな、俺の中学の頃とは大違いだ…。」

 

「そうなの?ここは毎年こんな感じだよ?」

 

「まあ、中学の頃は荒れてたからな…俺も周りの連中も…」

 

今思えば余りいい思い出ではないな…中々俺の記憶から離れてくれない…

 

「おぉーい、悠之君?」

 

「あ…何?」

 

「どうしたの?もう千歌のクラスの教室に着くよ?」

 

「おう、悪いな手間かけて。」

 

「じゃ、私は他の手伝いがあるからこれで…」

 

果南と別れてから教室の扉を開いてみる…すると…

 

「いらっしゃいませ~!」

 

たくさんの角度から声が聞こえる…どうやら喫茶店のようだ、文化祭では定番な部類だけど、かなり出来が良い…時間かけて作ったんだろうな…。

 

「いらっしゃい悠之君♡」

 

俺の目の前に、フリフリのエプロンのウェイトレスを着た千歌の姿が目に入った…

 

「えへへ♡やっと来てくれたんだ~待ってたんだよ?」

 

「……///」

 

「悠之君?」

 

「……天使。」バタッ

 

「ゆ、悠之君!?ゆ~じく~ん!!??」

 

ざわざわ…

 

なんだ?

 

倒れたぞ?

 

「よ、よーちゃん!ゆ~じくんが死んじゃったよ~!」

 

「大丈夫、悠之君はただ気を失ってるだけだよ…千歌ちゃんの魅力にね…」

 

「ど、どうしよう…」

 

「とりあえず、私が悠之君を連れていくから千歌ちゃんはお店の方をお願い。」

 

「でも、1人だと大変じゃ…」

 

「大丈夫…悠之君をお姫様抱っこするくらい余裕だよ…。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~喫茶店裏

 

「よいしょっと…ふぅ…さっきあんなこと言ったけどやっぱり男の子を持ち上げるのは辛いなぁ…」

 

私は悠之君を並べた椅子のところに寝かせて、登校カバンを枕にして置いてあげた。

 

それにしても…

 

「千歌ちゃんが言った通り、悠之君の寝顔って可愛いんだなぁ…」

 

私は自然と悠之君のほっぺをつついていた…

 

「こんなに優しくて素敵な人が…私の恋人だったらなぁ…。」

 

でも…悠之君は千歌ちゃんの事が大好きだし、千歌ちゃんも悠之君の事が大好きだ……。

 

両思い…か…

 

「…ん…あぁ…。」

 

「あ…悠之君起きた?」

 

「あれ…?曜…?」

 

俺は辺りを見回し、曜の顔を見る。

 

「なあ…曜…。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「…どうして泣いてるんだ?」

 

「え…?」

 

俺がそう言った時に、曜の瞳から涙がポロッと流れ落ちた…。

 

「あ、あれ?何でかな?そ、そうだ!多分コンタクトがズレちゃってるんだよきっと!」

 

「…嘘。」

 

「へ…?」

 

「だって曜の涙…さっきから止まってないし…。」

 

俺がそう言うと曜の顔が少しずつ赤くなっていく…

 

「それに…寂しそうな顔してる。」

 

「……!」

 

「何かあったのか?」

 

「いや別に何も…」

 

曜が目をそらし、また涙が流れ落ちる…。

 

「悠之君には…関係ないよ…分かるはずがない…。」

 

「曜…」ギュッ

 

「ひゃっ…ダメだよ…悠之君…千歌ちゃんにバレちゃったら…」

 

悠之君が優しく私の体を抱きしめた…

 

「確かに、この状況を千歌に見られてしまったら関係が複雑になってしまうだろう…」

 

「だったら…何で…」

 

「俺は…大切な幼なじみの悲しい顔とか苦しんでる顔は…もう見たくないんだ…。」

 

「悠之君…。」

 

そっか…前に千歌ちゃんが連れ去られた時…電話越しだったけど、物凄い怒りと悲しみを感じた…

 

「内容は無理やり聞いたりしないから…何が出来る事があったら…言ってくれ…」

 

「その…えっと…」

 

曜が少し戸惑った顔をする…

 

「このまま…私の事を抱きしめて…ください…」

 

「…あぁ。」

 

ギュッ…

 

そのまま…一分くらい悠之君に抱きしめてもらった…暖かくて何だかいい匂いもする…。

 

 

「…もういいかな?」

 

「うん、ありがとう悠之君…。」

 

「そっか…あ、このハンカチ使うか?」

 

「あ、ありがとう…」

 

曜が俺のハンカチで涙を吹きそのまま、自分達の教室に戻ろうとする。

 

「今日は…その…ありがと…///」

 

「あぁ、何かあったらまた力になるから。」

 

「うん!」

 

 

 

曜は俺にハンカチを返して自分の教室に戻った……さて…と

 

「いつまでそこに隠れているんだ?」

 

「あちゃー…やっぱりバレちゃってたか~」

 

「それくらいすぐに分かるぞ、千歌の気配はわかりやすいからな。」

 

机のしたから、千歌がひょこっと出てくる…

 

「…さっきの事、許してくれるか?」

 

俺は少し真剣な顔をして千歌の顔を見つめる。

 

「くすっ…」

 

「…?」

 

「ぜ~んぜん…大丈夫だよ、ちゃーんとした理由があるんだし、落ち込んでる曜ちゃんを元気づけてくれたんだから。」

 

千歌は思ったより優しい笑顔で俺のことを見てくれた。

 

「そっか、その…千歌は嫉妬したりはしないのか?」

 

「う~ん…私は悠之君の事信じてるからそんな事思ったりしないかも…えへへ。」

 

「はは…心が広いな…千歌は。」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

とりあえず俺は喫茶店の方に戻って、空いてるテーブル席を探す…

 

「悠之さーん!」

 

俺は声のする方に向くとそこには、ルビィちゃんと花丸ちゃん、黒いマントみたいなのを羽織っている女の子…ん?あの子どっかで見た気がするぞ。

 

「やっぱり、悠之さんも来てたんですね!」

 

「あぁ、まあね。」

 

俺は最近思う…なんで俺の知り合いには、同性の友達がいないのだろう…まあ、中学の頃の同級生と比べれば遥かにマシだ…。

 

「千歌さんのウェイトレス姿見たずら?」

 

「見たぞ…そしたら気を失ってた…」

 

「ふっ…それはきっと、彼女の強力な魔力のせいよ…」

 

…?このマントの子…一体何を言ってるんだ?

 

「あ、気にしないで上げてください。」

 

ルビィちゃんが呆れた顔をしている…あぁ、きっと思春期に訪れるあの病なのだろう…。

 

「あ、今日は善子ちゃんも来てくれてたんだ~うれしいな~」

 

「私はヨハネよ!遥か遠い天空から来てあげたんだから感謝しなさい!」

 

いつの間にか、千歌が飲み物を持ってきていた。

 

「千歌、知り合いなのか?」

 

「うん!前に花丸ちゃんとニ〇ニ〇動画で…」

 

「ストーップ!」

 

善子だか、ヨハネだかどっちか分かんないけど、急いで千歌が喋ってるのを止める…何か理由でもあるのだろうか?

 

「結構ネット上でも話題になってるから、あんまり言わないでちょうだい(小声)」

 

あぁ、そうか…だったらまずそのマントからやめた方がいいと思うんだが…多分その格好で何か動画とか投稿しているのだろう…

 

「とりあえず、悠之君何か頼む?」

 

「あぁ、そっか…じゃあカフェラテ一つ。」

 

「はーい♡」

 

千歌が俺達のところから離れて、5分ほどで戻ってきた…

 

 

「お、さんきゅ…ん?」

 

よく見るとカフェラテでなにか書いてある…

 

『I LOVE YOU』

 

「えへへ…今日のためにいーっぱい練習したんだ~♡」

 

「わあぁ…これがラテアート~未来ずら~!」

 

「凄い…こんな大胆なメッセージを書けるなんて…流石は千歌さん…///」

 

「これが愛の契約…ってものなのかしら?」

 

千歌が大変満足気な顔している…きっと今日の為に頑張ってくれたんだな…

 

「今日の為にありがとな、千歌。」

 

「うん!」

 

千歌が嬉しそうに笑顔を見せる…

 

「さあーて!喫茶店まだまだ盛り上がるよ~!次は曜ちゃんお得意の『ヨキソバ』だ~!」

 

「ヨーソロ~!」

 

さっきの悲しそうな曜はもう無い…楽しそうにこの時間を過ごしていて何よりだ。

 

「おぉ…喫茶店でオムそばとは…なんともヘビーな…」

 

「わあぁ…すっごく美味しそうずら…」

 

「あ、ずら丸!独り占めはダメなんだからねー!?」

 

「食べ物は逃げないよ善子ちゃん?」

 

ヨキソバの登場により、一気にカオスになったが…文化祭ってこんなに楽しいものだったんだな…。

 

「何ニヤニヤしてるの?ゆ~じくん?」

 

「うん?何でもないさ。」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、翌日…今度は俺達の学校の文化祭の日だ。

 

俺はちゃんと時間帯を伝え旅館を出た…千歌はちゃんと来てくれるかな?

 

 

 

 

♢

 

学校に到着して、俺はすぐに準備を始める…学校の行事でこんなに張り切ったのは初めてだ。

 

俺達のクラスは体育館を使う…うちのクラスの学級委員が頑張って争奪戦に勝利してくれたんだ…準備くらい真面目にやらなくちゃな。

 

「よしっ…これで準備はほぼ全て完了だな」

 

「悠之ー!音出しするからステージの方に来てくれー!」

 

「はいよー」

 

俺はステージの方へ向かおうとすると、体育館の入口の方から何やら気配がした…振り向いてみるとそこには…

 

長い髪の女の子が立っていた…

 

「なんだ…あの子?見たことの無い制服を着てるけど…」

 

何やらウロウロしている見たいだ…迷ってしまったのかな?

 

「おーい悠之ー!」

 

「わりい、ちょっと待っててくれ」

 

俺は何故かその子の方へ向かっていた…何かに引き付けられるように…

 

「君、そこで何をしてるんだ?」

 

「え!?あ、あの…」

 

俺は間近でその子の顔を見ると、どこかで見覚えのある顔だった…

 

「えっと…私今日…ここに転校してきて…先生を探しているんですけど…。」

 

文化祭の日に転校?何か変な話だな…

 

「今日は文化祭だから、何かの手違いとかじゃない?」

 

「え…?」

 

その子は自分のカバンの中をあさって、資料のようなものを取り出した…

 

「あ、明日だった…///」

 

「やっぱり…まあでも、せっかく来たんだし文化祭楽しんでいけば?」

 

すると彼女は少し考えてるような顔をして

 

「じゃあ、少し見てみますね。事前見学…みたいな。」

 

「それがいいと思う!きっと学校にすぐ慣れると思うし。」

 

俺と彼女は自然と笑顔になっていた。

 

「何だか、貴方と喋るの…初めてじゃないみたい。」

 

「俺も、君とどこかで会ったような気がするよ。」

 

「ふふっ私もです。」

 

「俺は小野悠之、君は?」

 

「私は…」

 

『桜内梨子です』

 

 

♢

 

午前11時そろそろ俺達のクラスの出番が来たみたいだ…。

 

俺は一応最終確認の為に1通り点検する…よし…完璧だ。

 

 

「ねえねえ、悠之君達はまだかな?」

 

「もうすぐだと思うよ。」

 

「楽しみずら~」

 

「体育館で何をするでしょうか?」

 

私達は何も悠之君から内容は聞いてないので、さっぱりわからない…けど、体育館でやるくらいなんだから相当なものに違いない…。

 

そんな事を考えていると、照明が暗くなってステージに光が差し込み始めた。

 

そして、光が全体に広がってようやく視界が見えるようになった…すると…

 

ギターを構えてる人…ドラムを構えてる人…そして…スタンドマイクを構えた…悠之君の姿があった。

 

ロックバンド風な服装に着替えた悠之君がとても眩しく見えた…激しい音楽とともに聞こえる悠之君の歌声…

 

「…かっこいい」

 

「…ずら」

 

「…ヨハネ堕天」

 

いつも爽やかな雰囲気がある悠之君のギャップが激しくていつもより一層素敵に見えた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

放課後

 

「いや~悠之君凄くかっこよかったよ~まさかバンドをやっちゃうなんて~だから最近帰りが遅かったんだ~」

 

「まあ、俺も今年はかなり真面目に頑張ったからな。千歌へのサプライズ返しだよ。」

 

「えへへ、サプライズの規模が大きすぎるよ~」

 

2人で手を繋ぎながら、旅館に戻って行く…。

 

「お疲れ様悠之君。」

 

「そちらこそお疲れ様、千歌。」

 

 




皆さんはスクフェス感謝祭に行きましたか?
私はもちろん参加しました、今年も楽しめたと思います。

それではまた次回でお会いしましょう~!


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第19話「桜のような少女」

テストが終わり…とうとう夏休み…頑張ってペースを上げていきたいところです…では続きをどうぞ!




文化祭が過ぎて3日後…

 

俺は普段通りに制服に着替えて、学校行きのバス亭に向かう…そう今日はいつもと違って1人だ…

 

 

 

~20分前。

 

俺はいつも通り布団から目が覚めたが、昨日まで隣で寝ていたはずの千歌の姿がいなかった。

 

「あー悠之君起きた?」

 

廊下の襖を開けると、しま姉さんがちょうど目の前にいた。

 

「あの~千歌が見当たらないんですけど知りません?」

 

「あ~何かさっき学校に宿題忘れたーって言っていつもより早いバスに乗っていったけど・・・」

 

はぁ…千歌だったらありえる話だなぁ…仕方ない今日は1人で行くとしますか。

 

~~~~~~

 

「それにしても…千歌がいないと面白くないなぁ…」

 

「誰がいないと面白くないんですか?」

 

「え?そりゃあ……!?」

 

俺の隣にあの時校舎で迷子になってた女の子が立っていた。

 

「君は確か体育館にいた……え~と…」

 

「桜内梨子…ですよ?」

 

「あ、そうだった…すまない。」

 

文化祭の日以来記憶を整理してみたけど…やっぱりどこかであったっていう記憶だけ残ってはいるんだが…いまいちピンと来ない…

 

「それで、桜内さんはどうしてここに?」

 

「私の家はあの旅館の隣なんですよ。」

 

桜内さんが指を指す方向には十千万の隣の一軒家だった。

 

「小野さんもこの辺りに住んでるんですか?」

 

「俺の家は…」

 

俺が喋ろうとした時、丁度バスが来てしまった。

 

「あ、バス来ましたよ。」

 

 

~~~~~~~〜~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

バスから降り…学校に着いたので、俺は桜内さんと別れて自分の教室に向かった…桜内さんは…恐らく職員室かどこかだろう…

 

3-Aの教室に着き、自分の席につく…隣を見ても俺の横には誰もいない…いや、いない方が正解だ。

 

 

「はぁ~い♡それじゃぁ席についてね~♡」

 

相変わらずの変人理事長…クラスが上がって担任が変わると思ったらまたこの理事長だった…

 

「あ、そうだった!早くこっちに入ってきてね~!」

 

「は、はい…」

 

理事長が廊下にいる生徒にそう呼びかける…もう何となく俺は察した気がした…

 

「は~い、今日は新しい生徒を紹介しようと思いまーす!」

 

『誰?』

『かわいい~』

『髪キレ~』

 

うん、やっぱりこうなると思ってたよ。だって今年退学者を出したクラスはここだけだし…。

 

「えっと…東京から来ました、桜内梨子と言います。」

 

東京…やっぱり俺はこの人とどこかであった気がする…一体どこだ…東京のどこで顔を見たのだろう…。

 

「それじゃあ……小野君の隣でいいかな?丁度そこの席空いてるし~」

 

「あ、はい。」

 

俺は適当に返事をする…

 

『またアイツかよ…』

 

『くたばれリア充』

 

周りの男子の目線が物凄く怖いんだが…俺は何か悪いことでもしたのか?

 

 

「…また一緒でしたね。」

 

桜内が席についたのと同時に、俺の耳にそっと喋りかける。

 

「…そうだな、それにしても同い年だったなんて意外だ。」

 

すると、桜内がクスッと笑い。

 

「私もです、可愛い顔をしてたから年下かと思ってました。」クスッ

 

「はぁ?別に可愛くなんかねえよ。」

 

「あ、今ちょっと顔が赤くなりましたよ?」

 

桜内が微笑ましそうに見つめる…何かこの人といると調子が狂うな…

 

「それじゃあ、桜内さんは教材を取りに行くから、誰か職員室に連れてってあげてちょうだーい。」チラチラ

 

理事長が俺の方をチラっと何度も見返す

 

「…いや、先生が連れてってやれよ」

 

「え~これでも理事長の仕事って大変なのよ~」

 

「でも、流石に1人で職員室くらいは…」

 

「……」クイクイ

 

「…?」

 

桜内が俺の制服の袖をキュッと握ってこう放った…

 

「その…職員室わからない…かな…」ウワメズカイ

 

「……!?」

 

やばいな…今不覚にも可愛いと思ってしまった……俺にはもう千歌がいるのに…でも…まあ、仕方ないか。そんな捨てられた子猫のような目で見られたら断る理由が見つからない…

 

「…行きましょう。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「…よい…しょっと。」

 

「おいおい、それ全部まとめて持つつもりか?」

 

教材といえども山になればかなりの重さになる…しかし15冊以上もある教科書をまとめて持っていくなんて無理がある…はず。

 

「私こう見えて結構力あるんですよ?」ヒョイ

 

桜内が涼し気な顔をしながら軽く持ち上げる…これがギャップと言うやつか。

 

「……貸せよ。」

 

「?」

 

「まあ…なんだ…半分くらい持ってやんないと俺が教室に入れないから…」

 

男子のクレームの荒らしとかな。

 

「ふふっやっぱり可愛いな~♡」

 

「はあ?」

 

桜内が丁度半分くらいの量を俺に渡す。

 

「ねえねえ。」

 

「なんだよ?」

 

「どうしてあんなに楽しそうに歌うことが出来るの?」

 

歌う…?あぁ、多分この間の文化祭の事だろう。

 

「何でって…まあ、楽しいから…。」

 

桜内が少し顔を曇らせる…

 

「羨ましいな…」ボソッ

 

「…?」

 

「あ、ううん何でもない!」

 

2人で少しずつ話をしながら教室へ向かっていく…

 

 

 

♢

 

 

 

昼食の時間…今日は千歌の母さんが弁当を作ってくれたみたいだから屋上にでも行って食べに行こう。天気もいいしな。

 

俺は教室から出て少し上機嫌になりながら屋上に向かう…。

 

「…やっぱり天気がいい時の屋上は最高だな。」

 

「そうですね~今日は結構風通しもいいし…」

 

「そうだな……って何でいるんだよ?」

 

…また桜内か…俺はストーカーでもされてるのか?

 

「一緒にお昼食べたいな~なんて。」

 

「なんで俺なんだよ?他の女子とかと仲良くしてた方が楽しいんじゃないのか?」

 

「そういう悠之君もクラスの男子と全然喋ってないよ?」

 

…こいつ中々痛い所を。

 

「はぁ…じゃあ勝手にしろよ。」

 

「はーい♡」

 

桜内が嬉しそうな顔をしながら俺の隣に座る。

 

「なあ?」

 

「はい?」

 

「桜内は今日入学初日だろ?なんでそんなに人と接するのが上手いんだ?」

 

「桜内…じゃなくて名前で…」

 

「わかったわかった、梨子さん。」

 

「よろしい♪」

 

梨子が嬉しそうな笑顔を見せる…

 

「う~ん…なんでだろ…私ホントはそこまでお喋りが得意なわけじゃないんだけど…悠之君とは初めて会った感じがしないから…かな?」

 

「…そっか。」

 

やっぱり俺もこの人と間違いなくどこかであった記憶がある…なのに思い出せないのはなぜだ…

 

俺は無意識にスマホの画面を開く…

 

「あ、その女の子誰?」

 

梨子が俺のスマホのロック画面をじっと見つめる。

 

「うん?俺の幼馴染だよ。」

 

「へ~幼馴染なのにロック画面にしちゃうくらいに大好きなんだ~」

 

「まあ…そりゃあ……って何言わせてんだ。」

 

「あら、また赤くなった…貴方って結構顔に出やすいんだね。」

 

あぁ…やっぱりこいつといると調子が狂う……

 

「で、付き合ってどれくらいなの?」

 

「いきなり付き合ってる前提っすか…まあ事実ですけど…。」

 

「…笑顔が凄く魅力的な女の子だね♪」

 

「当然だ、それに笑顔だけではないぞ。」

 

「うわぁ…いきなり嫁自慢ですか…おじさん臭いなぁ…」

 

「お前そろそろぶっ飛ばすぞ?」

 

「まさか冗談ですよ♪」

 

「あぁ、俺も今のは冗談だ。」

 

 

何故か俺と梨子は自然と笑顔がこぼれていた、なんかここの学校に来てから初めて「友達」という存在を手にした気分だった。彼女も俺と同じ転校生だから話が噛み合うのだろうか…その辺は俺にはよく分からん。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

放課後

 

俺と梨子は方角が一緒なので帰りのバスも一緒だ。

 

「じゃあ、私はここで降りるね。」

 

「え、まだ一駅前じゃないか。」

 

「私と君が一緒だと、あの子が嫌がるんじゃないの?」

 

「あぁ…確かに。」

 

梨子って結構気遣いできるんだな…少し感心したな。

 

「悪いな、気遣ってくれて…それじゃあまたな。」

 

「うんじゃあね♪」

 

桜内は一駅先に降りて、その場を去った。

 

そして、それから五分ほどたって十千万の前に着いたので俺も降りた…。

 

 

♢

 

「ただいま~」

 

「あ、おっかえり~!」

 

旅館に戻ると千歌が全速力で俺のところに走ってきた。

 

「今日は1日中会えなかったから寂しかった~!」

 

「あぁ、俺もだよ。」ヨシヨシ

 

「もっと~」

 

「わかったわかった。」ナデナデ

 

あー…やっぱり可愛い…。

 

「2人とも~玄関だとお客さんに見られちゃうから早くね~」

 

「「あ、はーい」」

 

 

 

とりあえず、2人で食卓の方へ移動する。

 

「先に食べてても良かったのに…悪いな。」

 

「ううん、悠之君と一緒に食べたかったから~それに朝も一緒に食べれてないし。」

 

「そっか、サンキューな。」

 

「うん♡」

 

今日は、鮭の塩焼きとお味噌汁とご飯と和物、シンプルだがそれがまた食欲をそそる。

 

「ねえねえ悠之君…ご飯粒ついてるよ?」

 

「え、まじか?どこだ?」

 

「ここ♡」ペロッ

 

「——!?」

 

千歌が俺の頬に付いてるご飯粒を優しく舐めとるように食べた。

 

「えへへ悠之君の顔真っ赤~♡」

 

「全く……そら、お返しだ。」ズイ

 

俺は千歌の頬に軽くキスをする……

 

「あ…も、もう…悠之君…今食事中…///」

 

「でも先にしたのは千歌だぞ?」

 

「む~///」

 

千歌が頬膨らませている…ちょっと怒らせちゃったかな?

 

 

と思ったが千歌が少し恥ずかしそうな顔をしている……

 

「あの…悠之君…その…」

 

「うん?」

 

「えっと…さっき続き…千歌の部屋でしない?」

 

 




すごく今更なんですけれど、お気に入り登録人数が100人を超えました!本当にありがとうございます!!


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第20話 「SUMMER SEASON その1」

前に、ヤンデレの敵役を何で出したのかという意見をいただきましたが…正直自分でもどうして出したんだろうな…と、ちょっと失敗したかもと思うところです。

では続きをどうぞ!


七月の下旬…とうとう終業式を迎える日がきた…学生にとって史上最高の長期休み、今日の午後から夏休みの開幕である。

 

あ~この日をどのくらい待ったのだろうか…高校生最後の夏休みだ…今年は何をしよう…受験生だから勉強は当たり前だ…後は…

 

「ねぇ~悠之君~。」

 

学校の支度の最中に千歌が後ろから話しかけてくる。

 

「今日の放課後さ、買い物に行かない?」

 

「別にいいけど…なんで?」

 

「えっへへ…それは後でのお楽しみ♡」

 

「お、おう…」

 

まあ、いいか…何を買いに行くんだろう?

 

 

♢

 

俺と千歌は一緒にバス停でバスを待っていると、梨子が俺たちのいる方のバス停に向かってくるのが見えた…そういえば、

 

「あれ?あの人…悠之君の学校の制服…」

 

千歌がそうつぶやくと梨子が俺たちをちらっと見て微笑んだ…

 

「凄く綺麗な人…ねぇねぇ、あの人悠之君の知り合い?今こっちを見ていたような気が…」

 

「ん?えっと……」

 

…まてよ、これはなんて答えればいいんだ…?

 

 

知り合いの場合~

 

「あの人?一緒のクラスメイトだよ。」

 

「ふぅん…あんな綺麗な人とねぇ…。」ムスッ

 

「いや、別にただの友達……」

 

「はいはい、どうせ私にはあんなお淑やかな雰囲気なんてありませんよーだ。」プイッ

 

「いやいやいや、ホントにただの友達だってば。」

 

「でもぉ、さっき悠之君のこと見て微笑んでたよ?」

 

「いや…だから…」

 

「んもぅ!悠之君なんて知らないもん!」プンスコ

 

千歌のアホ毛が縦に動いてる…これは間違いなく機嫌が悪い証拠だ。

 

ANSWER 嫉妬チカチー不回避ルート

 

 

他人の場合~

 

「いや、俺はあんな人は知らないけど。」

 

「(あんな人…!?そんな…せめて知り合いってくらい言ってくれてもいいのに…)」

 

~教室~

 

「もう…今朝の扱いちょっと酷くない?」

 

「いや、あれは仕方がなかっ……」

 

「あっそう…じゃあ悠之君は年下の女の子が大好きな変態さんだってクラス中に広めちゃおうかしら?」

 

「いや、それは勘弁……」

 

ANSWER 梨子さん激おこプンプン丸ルート

 

 

…まずいぞ、どう答えるかで何となく未来が予想できる…これはかなり言葉を選ばないと面倒な目にあってしまう…。

 

「ねぇ~悠之君~?」

 

いや、でも梨子はこの間俺に気遣ってくれたんだから…後は言い方さえ間違えなければ…。

 

「悠之君、もうバス来ちゃってるよ?」

 

「あ…ホントだ。」

 

やばいな、この間と全く同じパターンだ……はぁ…無駄な時間を費やしてしまったみたいだ…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

学校に着いて校門を抜けると、梨子が後ろからポンポンと肩を叩く。

 

「さっきの悠之君の焦り顔、見てて凄く面白かったわ。」

 

「お前な…少しはこっちの身にもなってみろよ…。」

 

「で、さっきのあの子になんて対応しようとしたの?」

 

「…さあな。」

 

そんなこんなで終業式が始まり、校長の長々とした話が続いた…どこの学校に行ってもそうだ、大体の校長は話が長い…聞いてると自然に眠気が漂ってくる…もう何分経過したのだろう…現実時間では10分程なのだろうが、俺の感覚では30分以上経過している…。

 

「……」カクッ

 

…やばい、今一瞬意識を失いかけた…いや、既に1回意識を失ったということは、もうここから目を覚ますことは不可能だという事……とゆう訳で夢の中にレッツゴーするとしますか。

 

「………」カクッ

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「あれ?今日は千歌ちゃんなんか機嫌良いね。」

 

「えっへへ…今日は悠之君とお買い物に行くのだ♡」

 

「へぇ…相変わらずラブラブしてるね~」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

そして、あれから何分経過したのだろうか…ようやく校長の話が終わり、解散という指示が曖昧な意識の中で聞こえたので俺は椅子から立ち上がろうとする…

 

 

何だか、右の肩がやけに重い…俺は目をしっかりと見開いて自分の右側を見てみる…

 

「すぅ…すぅ…」Zzz

 

「(梨子!?何で俺の肩に寄っかかって寝ているんだ!?)」

 

 

「おー悠之また女の子とイチャイチャしてんのか?」

「ヤルなら学校じゃなくて違う場所にしろよ~」

「せめて保☆険☆室とかでな~」

 

周りの男子が次々と冷やかしに来る…面倒な奴らだ。

 

「やれやれ…梨子起きろ。」

 

「う~ん…?」

 

梨子が半分眠った状態で体を起こし始める。

 

「ふぁ……」

 

「おう、おはよ…じゃあ早く教室に…」

 

「パパ…♡」ギュッ

 

………!?!?!?

 

「はぁ!?」

 

 

 

♢

~教室~

 

「ごめんなさい…さっきのは忘れて…///」

 

「いや、パパって…一体どんな夢見てたんだよ。」

 

「だーかーらー忘れて~!!!」

 

今日から夏休みで助かったぜ…きっと変な噂になる前に周りからも忘れ去られるだろう…

 

「まぁ、夏休みが終わる頃には誰も覚えちゃあいねえよ。」

 

「はぁ…もう学校行きたくない…」

 

…意外とメンタルが弱かった。

 

 

 

 

そして、この学校に来て初めての成績表が俺の手元にきた…内容は…問題は無いな、母さんにもちゃんと胸張って見せられる内容だ…

 

数学以外はな…

 

 

これまで千歌にはどの教科も対応して教えることが出来たが、実は数学が一番の苦手だ…中学の時は普通になんとかなったが、高校になってからは違った…はっきり言って勝てる相手ではない…。

 

まあ、別にいいか…たしか、千歌と買い物に行くんだっけ?

 

♪♪♪~

 

「あれ、千歌からLINE来てる…」

 

『バス停で待ってるから早く来て~♪』

 

バス停で待ってるって…何となく察したかな。

 

 

 

帰りの方面のバス停に着くと、千歌が既にバス停の横で座って待っていた。

 

「おかえり悠之君!」

 

「ただいま…って、また定期券忘れたのか?」

 

「うぅん、ただ会いたかったから…えへへ♡」

 

「……やれやれ可愛いやつめ。」スッ…

 

俺は千歌の頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「ひゃあ~やめてよ~」

 

「今のは千歌が悪いんだぞ~」

 

「えぇ~何で~!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

バスを降りて、千歌が案内したのはいつものショッピングモールだった、彼処で何を買うつもりなのだろう?

 

「ねぇ~悠之君聞いてる?」

 

「うん?何だ?」

 

「もぉ…さっきから聞いてるのに~!」

 

「ごめんごめん、色々と考え事をしててな。」

 

「じゃあ、最初から言うね?ちゃーんと聞くように。」

 

「はいよ~。」

 

千歌がよろしい…っと顔をして話し出す。

 

「悠之君は今年の夏休みなんか予定とかある?」

 

「まあ、あるけど…勉強くらいしかないかな。」

 

「えぇ~あんなに勉強出来るのにその上に更に勉強するの~!?」

 

千歌が驚いたように言う。

 

「…っと言ってもそんなにがっつりはやらないけどな。」

 

「え、そうなの?」

 

「無理にやっても疲れるだけだし…まあ、メリハリ持ってやれば良いかな~程度で。」

 

「うわぁ…流石…。」

 

「そうゆう訳で、あんまり予定は無いけど。」

 

「ふふっ、なら良かった♡」

 

千歌が嬉しそうに笑顔を見せる…あまり話が見えてこないけど、まあいいか。

 

「さ、着いたよ。」

 

「あれ?ここは…」

 

千歌が案内したのは、水着ショップだった。

 

「今年は新しいのを買おうかな~って思ってたんだ~!」

 

「なるほど…俺が入ってもいいのか?この店…。」

 

一応男性物もありそうではあるが、辺り一帯がほぼ女性物だ…見ていて少し恥ずかしくなってくる…

 

 

「まぁまぁ、1人だと入りにくかったもので…」

 

「いや、俺の方が入りにくいんですが…」

 

「まあ、とりあえず…水着を買いに来たんですよ!」

 

あ、無視ですか。

 

「今年はもっと可愛い物が欲しいな~って。」

 

「なるほど…千歌は元が良いから何を着ても似合いそうな感じはあるけどな。」

 

「あ、ありがと…///」

 

「あ、テレた。」

 

「て、テレてなんかなーい!」プクッ

 

二人で言い合いながらとりあえず水着を1着ずつ見てみる…

 

「最近は随分と可愛いのがいっぱいあるんだな…俺にはどれがいいのかさっぱりわからん…。」

 

そんな事をいいながらも悠之君は1着ずつしっかりと見てくれている…やっぱり一緒に来てもらってよかったかな。

 

「悠之君は正直これ!って言うのはあった?」

 

「うん?じゃあ……これなんかどうだ?」スッ

 

悠之君が手に取ったのは、白いパーカー水着で、中の方はオレンジ色のビキニだ。

 

「えぇ~…」

 

「嫌だった?」

 

「嫌じゃないけど…そんな可愛いらしいの千歌が着ても似合うのかな…って」モジモジ

 

「大丈夫だって、きっと似合うから……そうだ、せっかくだから着てみてよ!」

 

「悠之君がそこまで言ってくれるなら…ちょっとくらいなら…」

 

 

~お着替え中~

 

 

「もういいよー」

 

「お、見せて見せて。」

 

「そ、そんなに急かさないでよ~///」

 

シャー

 

やっぱり思った通りオレンジ色と白いパーカーが千歌の可愛いさをより引き立てていた…

「ど、どうかな?」テレテレ

 

「凄くいい…やっぱりこれが似合うと思ったしな~」

 

「う~ん…じゃあ今年はこれにしようかな。」

 

「え?まだ他にもあるのにいいのか?」

 

余りにもあっさりと決めてしまったので少し戸惑いが隠せない。

 

「ちょっと恥ずかしいけど…悠之君が選んでくれたんだから…♡」

 

「そっか、サンキューな。」

 

「その代わり…」

 

千歌が水着を着たまま俺に迫る…

 

「今年はぜ~ったい…楽しい夏休みにしてね♡」




最近本当に更新が遅くて申し訳ございません、忙しいは言い訳にはならないので、もっと頑張って行こうと思います…それでは!


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特別話 「君は今日の事を覚えてる?」

間に合ってよかった…!

皆さんも千歌ちゃんのお誕生日をお祝いしましょ~!


8月1日…そう今日は私の誕生日。

 

曜ちゃんや果南ちゃんからは今朝、LINEでお誕生日おめでとうって言ってくれたんだ…こっちにも来てくれるみたいだし……でも問題はあの人…!

 

 

~朝食前~

 

私は寝ている悠之君を起こすために悠之君の部屋に向かった…。

 

「おっはよー!悠之君ー!」

 

私の声に反応して悠之君が布団から起き上がる…。

 

「ん…おはよ千歌。」

 

「ねーねー悠之君。」

 

私はあの時すぐに行動に移った…

 

「今日ってさ…だ~いじな用事があったと思わない?」

 

「大事な用事?」

 

「うん!うん!」

 

ここまでは順調だったんだよね…

 

「あ~そうだな」

 

「うん!うん!!」

 

「勉強…少しくらいはやんなきゃな。」

 

「え…?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「う~む…流石に悠之君は覚えているとは思っていたんだけどなぁ…それともわざとあんな態度を…?」ブツブツ

 

「何独り言してんのさ?」

 

「うわっ!びっくりした…いつ来たの?果南ちゃん、曜ちゃん…。」

 

「おっはヨーソロー!

千歌ちゃんがブツブツ言っている時より前にもう来てたよ?

おじゃましまーす!って言ったのに気付かなかった?」

 

曜ちゃんがウィンクをしながら敬礼をする…考え事をしすぎて全く気づかなかったよ…。

 

「それで、千歌の旦那さんはどこにいるの?」

 

「だ、旦那さんって…もぅ…///」

 

「あ、千歌ちゃん赤くなってる~」

 

「からかわないでよ~///」

 

曜ちゃんに言われた通り、顔の全体が真っ赤になってる感じがした…果南ちゃんが余計なことを言うから…もぅ…。

 

「悠之君はさっきから部屋でずーっと勉強してたり、電話してたり…はぁ…。」

 

私は知らぬ間にため息が漏れていた…

 

「まぁまぁ、悠之君の事だし、さり気なくお祝いしてくれるって。」

 

「む~でも、今日は全然悠之君と喋れてないんだよ?」

 

「そ、それは大変な状況でありますなぁ…」

 

2人とも黙り込んでしまった…私が落ち込んだ顔をしていたからだ…なんとか元通りにしないと…

 

「ま、まあ…とりあえず2人とも来てくれたんだし上がって上がって!」

 

「そうだね、じゃあ上がろっか。」

 

「そのまま悠之君も呼びに行こうよ!」

 

「うん!そうだね!!」

 

とりあえず、3人で悠之君の部屋に入ってみる…

 

「お~い悠之君…ってあれ?」

 

部屋の中に入ってみたけど、悠之君の姿はどこにも無かった…

 

「あれ?トイレかな?」

 

「あー、悠之君ならさっき図書館に行くって言ってたよー」

 

その光景を見ていたのか美渡姉がそう言った…

 

「え~!?」

 

「千歌ちゃん、悠之君に今日私達が来ることって伝えてあるの?」

 

「あ…」

 

しまった…完全に忘れてたよぉ…それなら出かけちゃってもおかしくないや……

 

「……」シュン

 

「ま、まあまあとりあえず電話してみたら?」

 

「う、うん…」

 

Prrrrrrrr

 

『ただいま電話に出ることが出来ません…ピーという発信音の後に……』

 

その後、またかけ直してみたけど悠之君から応答はなかった…

 

「…もしかしてバイクで移動してるのかも。」

 

「それだ!悠之君はよくバイク乗ってるし…きっと…。」

 

「きっとね…。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あれから昼過ぎになっても悠之君はまだ帰ってこない…相変わらず電話にも繋がらないし…何かあったのかな…少し不安になってくる…。

 

「千歌?」

 

「……」

 

「おーい千歌~?」

 

「あ、何かな?」

 

果南ちゃんが何度も呼びかけているのに私は全く気づかなかった…

 

「ちょっと顔色悪いよ?大丈夫?」

 

「う、うん…」

 

 

~~~~~~~~

 

 

更に1時間経過した…ここまで遅いととても不安が大きくなってくる…もしかして事故?

 

…いや、流石に考えすぎかな?

でも、今私がすべき行動は…

 

「…行ってくる。」

 

「え?」

「どうしたの?千歌ちゃん?」

 

「何だか不安になってきちゃったから…探しに行ってくるよ!」ダッ

 

気がつけば私は部屋を飛び出していた…そしてそのまま旅館の外まで出ていっていた。

 

「曜、私達も行こう!」

 

「う、うん!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あれから日が少し沈んで、太陽が夕日になりかけてた…

 

「どうしよ…まだ帰ってこない…」

 

私が途方に暮れていた時、見覚えのあるバイクが見えてきた…そして、彼がそのバイクから降りた…。

 

「あれ、千歌…?迎えに来てくれてたのか?」

 

「…う、うぅ…。」

 

「千歌?」

 

「おかえり…!!」ダキッ

 

「おわっと…ど、どうしたんだよ?」

 

私は体が勝手に悠之君の方へ飛び込んでいた…。

 

「どーしたもこーしたも無いよ!

電話はしても繋がらないし、帰ってくるのは遅いし!」

 

私は怒りながら涙がジワッと溢れてきた…。

 

「心配したんだから…」

 

千歌がギュッと俺に抱きついたまま離れない…

 

「そっか…ごめんな、心配掛けて…。」

 

俺はそう言いながら千歌の頭を撫でる…

 

「…どうしてこうなったのかちゃんと説明して…。」

 

「あ、ああ…電話に出られなかったのはスマホの電源が切れていて、帰りが遅かったのは道が渋滞してて…」

 

とりあえず今日の出来事を話してみる…

 

「そうなんだ…でもよかった…無事で…。」

 

「オーバーだなぁ…」ヨシヨシ

 

「ばか…心配させる悠之君がいけないんだからね。」

 

「悪かった…悪かったって…」ヨシヨシ

 

「撫でればいいって問題じゃない…」

 

「じゃあ…やめるか?」

 

俺は千歌の頭から手を離す…

 

「…止めないで」

 

「ん~?今なんて?」

 

「…いじわる。」

 

「ごめんごめん」ヨシヨシ

 

 

 

♢

 

とりあえず、悠之君からちゃんと帰ってきたことを曜ちゃんと果南ちゃんにきちんと伝えました…やっぱり千歌はオーバーだったのかなぁ…。

 

「で、その2人はもう帰っちゃったのな。」

 

「うん、お邪魔になるといけないから~って。」

 

「千歌はもう落ち着いた?」

 

「うん、もう大丈夫!」

 

 

すっかり元気になってくれたみたいでよかった…よし!

 

「千歌。」

 

「あ、はい!」

 

悠之君がちょっと真面目な顔をして私の事を見つめる…

 

「…お誕生日おめでとう!」

 

そっと悠之君がプレゼント包装されたものを私に渡してくれた…さっきの騒ぎですっかり忘れちゃってたよ~

 

「ありがとう悠之君!!さっそく開けてみてもいい?」

 

「あぁもちろん。」

 

包装を解いて開けてみる……

 

「わあぁ…もしかして、これペンダント?

ミカンの飾りがついてる…可愛い~♡」

 

「よかった、千歌が気に入ると思って選んでみたんだけど…」

 

「うん、すっごく嬉しいよ!ありがとう悠之君!!」

 

千歌がペンダントを見ていると、その中から1枚の紙切れが出てきた…

 

「あれ?なんか書いてある…ご注文をして頂きありがとうございます……あれ?このお店……これもしかしてオーダメイド!?」

 

「お、よく気づいたな。」

 

「だから悠之君は今日帰りが遅かったのか~…納得だね。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

もちろんあの後、家族みんなからもお祝いしてもらえたんだ…みんな旅館の仕事で忙しいからすぐに解散しちゃったけど、久しぶりにケーキも食べられたし全然満足です♡

 

「悠之君~お風呂湧いたって~」

 

「おう…って何でタオル持ってるんだ?」

 

「えへへ…一緒に入ろ♡」

 

「えぇ…今日はバイク乗って疲れたから……」

 

俺がそう言うと、千歌がちょっと悪い顔をして…

 

「へぇ~今日私の事をあんなに心配させたんだから…お願いの一つくらいはね~」

 

う…流石に言い逃れできないか…

 

「分かったよ…じゃあ一緒に入ろう。」

 

♢

 

~脱衣場~

 

互いに服を脱ぐのも東京に遊びに行った時に慣れた…だが流石に股は隠すけどな…

 

「うん…しょっと…」

 

「ん…?千歌?」

 

「はぁい?」

 

「なんか…また胸大きくなってないか?」

 

千歌の胸に目を向ける…

 

「え…そ、そうかな?」

 

千歌が自分の胸をちょっと恥ずかしながら見ている…

 

「…最近測った?」

 

「えっと…確か、80?だったかな?」

 

「…本当に高校一年生か?」

 

「わ、私に聞かないでよ~///」

 

高校一年生って事はまだまだ大きくなる可能性は充分ある…もしこれ以上大きくなったら……いかん、流石に破廉恥な事ばかり考えるのは良くない…うん…。

 

そんなことを考えながら二人で風呂場に入る…ここの風呂は家族みんなが入る普通の風呂。

今日は時間帯的に温泉は空いていなかったのでこっちに入ることにした…。

 

「悠之君、背中洗ってあげようか?」

 

「おう、じゃあお願い…」

 

「えへへ、かしこまりました~」

 

俺が頭を洗い終わると、千歌が背中を洗おうとタオルにボディソープをつけ始める…

 

「じゃあ始めますね~」

 

「はいよ~」

 

千歌が背中を洗い始める…普段余り人に洗ってもらう事はないので少しぎこちなかったが、一生懸命洗ってくれている感じはあった…。

 

「悠之君、前の方も洗ってあげましょうか?」

 

「いや、前の方はアウトでしょ…色々と…。」

 

そんなふうに喋ってると、千歌が俺の背中にもたれてきた…

千歌の生の胸の感触が、ボディソープを伝わってぬるっとしていて…なんだか凄くいやらしかった…。

 

「ねぇ…悠之君…。」

 

「どした?」

 

「やっぱりなんでもない~」

 

「え~?なんだよそれ。」

 

千歌がクスッと笑って俺を見る…

 

「今度は私の背中も洗って~あ、何なら前も…」

 

「やらないからな?」

 

「あはは…だよね~。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

今日は沢山のトラブルがあったからか、もう既に時間は夜の10時を回っていた…

 

「じゃあ…もう遅いしそろそろ…」

 

「待って悠之君…」

 

「ん?」

 

「ねえ、今日は私の誕生日だよね?」

 

「あぁ、そうだな。」

 

千歌が当たり前の事を聞くのと同時に俺の体をポンッと押し倒す…そして、そのまま俺の体をぎゅっと抱きしめる…。

 

 

「悠之君の事をも~っと体で感じたいから、朝までぎゅっとしてて欲しいな~♡」

 

「はは…まあ、誕生日だしな…。」ギュッ

 

「えへへ…今日はすぐには寝かせないのだ♡」

 

 

千歌のアホ毛が元気よく動いてる……これって絶対抱いてるだけじゃ終わらないよな…

 

「あ、それと…」

 

「…ん?」

 

千歌が俺の唇に少し強引にキスをする…。

 

「ん…久しぶりにキス…しちゃった♡」

 

「まったく…」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

部屋の明かりを消して悠之君と一緒に添い寝をする…。

 

「ねえ、悠之君は私が小学2年生の頃にお祝いしてくれた誕生日の事を覚えてる?」

 

「う~ん…少し記憶が薄いかな…ひまわりの花束をあげた記憶ならあるけど…」

 

すると千歌がクスッと笑顔を見せる。

 

「あの時悠之君ね…私にこう言ってくれたんだよ?」

 

『いつか大きくなったら結婚しようね。』

 

 

「…って。」

 

「えぇ~?ほんとにそんなこと言ってたか?」

 

「ふふっ、やっぱり覚えてないんだ~でも、私ね…すっごく嬉しかった…」

 

私はそのまま悠之君の体を強く抱きしめた…

 

「また悠之君に会うことが出来て…また誕生日を祝ってもらえて…すっごく嬉しかった…!」

 

「千歌…」

 

「…大好き。」

 

私は一言…そう言ったまま悠之君の頬にもう一度口付けをした…。

 

~Happy Birthday~




千歌ちゃんの誕生日話…ずーっと書きたいと思って今日を迎えることが出来ました!

皆さんも千歌ちゃんが大好きなミカンを沢山食べましょう!(笑)

では、また次回~


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side story riko「真夏の追憶」

今回は梨子ちゃん回です!


これは、私がまだ東京にいた頃のお話…

 

私は東京で音ノ木坂という、音楽に力を入れている学校に入学した…もちろんピアノが大好きだからだ…。

 

そして、私が入学して2ヶ月余りの事…

 

そう、新しい学校生活が始まって2ヶ月…大体の人は自分に合った友達を作り、自分の合う合わないの見方が出るようになる…その頃は私だって…ちゃんと友達は作っていた…。

 

でも、そのような見方が生まれることによって、もう一つの見方がが生まれてしまう…それは

 

…嫌いな人に対する…虐め。

 

その時、丁度私の隣にいた男子がその被害にあっていた…

 

私には正直その人がそんな被害にあっているなんて考えられなかった…。

 

だってその人は背が高くて、誰にでも優しくて、顔も結構イケてる方……とてもイジメのターゲットになるような人とは思えない…。

 

『またアイツが来たぜ』

 

『なんで学校へ来るんだよ』

 

『見た目がいいからって調子乗ってるよね~』

 

あちこちから男子や女子の悪口が、彼が教室に入る度に私の耳に入った…

 

私は聞いているだけで、怖かった…そのせいで人との関わりを持つのが嫌になった…

 

 

~~~~~~

 

 

何日か経って、私は教室にいるのが怖くなって、自然と教室から離れるようなった…昼食の時間には屋上へ行くのが当たり前になっていた…

 

そして、今日も屋上へお弁当を食べに向かった…すると、そこには彼がいた…彼は私の顔を見て少し笑顔を見せてくれた…。

 

私は彼の隣に自然と座っていた…

 

「…友達と食べなくていいの?」

 

その言葉が彼との初めての会話だった。

 

「…私はああいう空気は好きじゃないから。」

 

「そっか…でも、ここで飯を食うのはやめた方がいいぜ。」

 

「どうして?」

 

彼の言葉に疑問を感じ、私は問いかける…。

 

「君も嫌われてしまう。」

 

「え…」

 

「俺の存在があの教室の害になっているからここにいるんだ…君もここにいては、いずれ俺と同じ運命にあってしまう…。」

 

「一人相手に…大勢で攻撃するような人たちとは関わりたくはない…それなら嫌われても構わない。」

 

「……そっか。」

 

「ねえ、教えてくれない?どうしてあなたがこんな被害にあっているのかを…」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

彼は何も隠さずに全てを話してくれた…きっと1人で悩むのもそろそろ限界に近かったのだろう…。

 

そして彼が虐めにあっている原因は…

 

…嘘情報の拡散。

 

SNSとかでよくある事件…彼は全くあてはまらないレッテルを無理矢理貼り付けられ、クラス中に広められた…

 

少人数ならともかく、クラス全員…約30人…どうあがいても絶望しかない…。

 

「そっか…これはもうどうしようもないね…」

 

「あぁ…アイツらは影でコソコソと俺の悪口言うだけのヤツら…非常に腹立だしい…」

 

彼は無表情のまま空を見上げる…

 

「ねぇ…」

 

「なんだよ?」

 

「私とお友達にならない?」

 

「はぁ?」

 

「お友達よ」

 

私は彼に何度も言った

 

「やめとけ」

 

「あらどうして?」

 

「君のこれからの学校生活が苦しくなるぞ。」

 

「…別にそれでも構わない。」

 

…ギュッ

 

私は無意識で彼の手を握っていた…

 

「怖がらなくていいよ…私は貴方の味方だから。」

 

「…後悔しても知らねえぞ…あと手を離せ。」

 

私は慌てて彼の手を離す。

 

「私は桜内梨子、え~と…」

 

「俺の名前?」

 

「う、うん…ごめん」

 

「名前は…悠之。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あれから二週間が経った…

 

私は、ピアノのレッスン以外の日に彼とお出かけしたりと、結構楽しんでいた。

 

「ほら、こんな服とか似合うと思うけど?」

 

「こんな爽やかなのが俺に似合うのか?」

 

私は1着の柄の入った白いシャツを少し強引に着させてみた…。

 

「ほら、あそこに鏡があるからちゃんと見て。」

 

「……」

 

彼は無言だけど、顔は少し満足気な表情をしていた…。

 

「気に入ったでしょ?」

 

「…まあな。」

 

「え~…他にいうことはないの?」

 

「うん?…ああ、そうか…」

 

彼は私の頭をそっと撫でる…

 

「ありがとな。」

 

「あ、うん…ど、どういたしまして…///」

 

私は今日初めて彼の行動に胸が苦しくなった…。

 

ちらっと彼の顔を見ると、とても綺麗な顔立ちをしていて少し顔が熱くなる…なんでこんなに素敵な人がいじめの標的にされなくちゃならないのだろう…。

 

「なあ」

 

「どうしたの?」

 

「…なんでこんな俺のそばに居てくれるんだ?」

 

「なんでかな…ほっとけないというか…」

 

私は彼の顔を見つめる…。

 

「悠之君のことが好きなのかも…。」

 

「……」

 

「なーんてね、ちょっと言ってみたかった…」

 

ギュッ…

 

「え…?」

 

私は何故か彼に体を抱かれていた…。

 

「俺も…お前の事が好きだ…」

 

「…え、そ、その…///」

 

普段無口な彼からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった…

 

「…その…ホントにいいの?

君に合ってるかな…だって私地味だし…。」

 

「…俺はそんなお前の事が好きだ。」

 

「もぅ…からかってるの?」

 

私と彼は、一緒になって笑っていた…

 

「今…自然に笑えたね。」

 

「なんか久しぶりに笑えた気がする…きっと梨子のおかげだ。」

 

「あ、やっと名前で呼んでくれた~」

 

「…からかうなよ。」

 

「ふふっ、さっきのお返しよ。」

 

 

彼の笑顔はとても素敵だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

でも…楽しい時間はそう長くは続かなかった…。

 

~終業式前日~

 

誰かが、私達が一緒にいたことを広めたらしく、それが私ではなく、何故か彼の方に攻撃が強くなった…

 

「おい」

 

「……」

 

「お前ちょっと屋上来いよ。」

 

そして遂に悠之君が呼び出されてしまった…人数は4人の男子…みんな強そうな見た目をしていた。

 

私は不安だったので様子を見に行くことにした。

 

「お前よ~最近彼女作ったらしいな~」

「……」

 

「最近妙に明るい雰囲気だと思ったらこういうことかよ~」

 

「……」

 

「おい、だんまりかよ…少しくらい返事しろよ~」

 

「…うるせえよ。」

 

ガッ!

 

男の中の一人が悠之君の胸ぐらを掴む。

 

「俺はお前らと関わる気は無いんでね…早く消えてくんね?何をよくわからない情報を流し込んでるかしらないけどさ…!」

 

「…はぁ?」

 

ドゴッ!

 

「カハッ…!」

 

悠之君のみぞに拳が入った…彼は思い切り吹き飛んでフェンスに体をぶつける

 

私はその時怖くて震えていた…。

 

 

「生意気な態度とりやがって…調子に乗ってんじゃねえよ。」

 

バキッ

 

ドゴッ

 

悠之君に3人の蹴りが入る…もうリンチ状態だった…

 

「なんだよ…口で言った俺に対して…てめえらは…暴力で返すのか?」

 

「はぁ?おまえまだ言うのかよ?」

 

「もうやめて!!!」

 

私は体が自然と動いていた…

そして、殴ろうとしていた男の体を突き飛ばす。

 

でも、私の力じゃ男の人には全く通じず…簡単に起き上がってきた…

 

「なんでこんなことするの!?彼があなた達に危害を加えた事があるの!?」

 

「っ…ふふふ…」

 

「…?」

 

「─っははははは!!!」

 

 

男子達が一斉に笑いだす…なんだか不気味な雰囲気…。

 

 

私は容赦なく首を捕まれそのまま絞められた…。

 

 

「いたっ…やめ…て…」

 

「ふふ…別に理由なんか特にねえよ。」

 

ググッ…

 

「じゃあ…なんで…」

 

「普通の学園生活なんて面白くないじゃん?もっと刺激があった方が楽しいからな。」

 

もう1人男が近づき、私の髪を触りながら話し出す。

 

「別に最初は誰でもよかったんだ、だけど高身長で顔立ちも整ってる…これ程どん底に叩き潰したくなるものはないだろ?」

 

どんな理由かと思ったら…くだらなすぎる…そんなことの為に…刺激を求めることのために彼を利用していただなんて。

 

「そろそろ離してやれよ、気絶とかしたらめんどくせえからな。」

 

スッ…

 

私は首から手を離されたけど…彼らの狂った目に恐怖して全く抵抗できなかった…

 

「ハア…ハア…。」

 

「それにしても、こんな男しかいない屋上によく来られたもんだな」ムニュ

 

……!?

 

「いやぁ!離して!!」

 

「そんな胸を触られたくらいで叫ぶなって」ムニュ

 

「ひっ…嫌…」

 

「おいおい泣かしちゃ可哀想だろ~?こういう清楚系な女の子には優しく扱って上げなくちゃ…」

 

無理矢理床に押し倒される…

 

「ほんとに綺麗な顔をしてんな…少し舐めさせてよ…。」

 

「やめて!!いやぁ!!!!」

 

嫌だ…

気持ち悪い…

触らないで…

 

「…めろ…」

 

「…あ?」

 

「…やめろってんだよ!!テメェ!」

 

「あれだけ殴られてんのにまだ立ち上がんのか…ちょっと甘く見すぎてたな。」

 

「これ以上…俺の梨子に手を出すんじゃねえ!!」

 

 

 

悠之君の叫び隙ができ、私は拘束から逃れられた…でも…。

 

 

 

四人相手ではやはり敵わず…悠之君がまたリンチにされてしまった…

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「悠之君!大丈夫!?」

 

「…ごめん…。」

 

彼の目から涙が溢れていた…

 

「…カッコ悪いところ見せちゃって…。」

 

「ううん、勝ち負けなんてどうでもいいよ…早く治療して帰ろ?」

 

「あぁ…。」

 

 

あの後、悠之君と私への攻撃が強くなり…かなり辛い1日になってしまった…やっぱりクラス全員相手にするのは不可能だった…

 

 

そして放課後…

 

「でも、嬉しかったよ…体を張って私のことを助けようとしてくれたこと…」

 

「でも…俺は最後まで君のことを守れなかった…。」

 

私は悠之君の手を握る…確かに私も怪我をした…

腕や手首を…でも悠之君の怪我に比べれば全然大したことのない怪我…

 

そのまま無言の状態が続いた…何か喋りたかった…でも言葉が見つからない…

 

「じゃあ私こっちだから…」

 

「まって…」

 

「…?」

 

ギュッ…

 

悠之君は私の事をいきなり抱きしめた…。

 

「ど、どうしたの?」

 

「いいからじっとしてて…」

 

「う、うん…」

 

そのまま悠之君は私の唇にキスをした…

 

「ゆ、悠之君…ここ外だよ…?恥ずかしいよ…///」

 

彼は抱きしめたまま私を離さない…キスをしてくれたのは嬉しい…でも外だからやっぱり恥ずかしいかな…

 

「ありがとう…」

 

「え…急にどうしたの?」

 

「大好きだから…」

 

「い、いきなり何言ってるの?私だって悠之君の事…///」

 

「…じゃあね。」

 

悠之君は最後に笑顔を見せてそのまま走り去ってしまった…。

 

確かに今の悠之君は笑顔だった…でも…

 

悠之君の笑顔がどこか寂しそうだった…。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

何だか…もやもやした…悠之君がどこか遠くへ行ってしまいそうで…不安で不安で仕方が無かった…

 

私はとりあえず家に帰り、彼に電話をしてみた…

 

 

 

何回かけても

 

 

 

 

 

 

 

何回かけても

 

 

 

 

 

 

 

悠之君とは繋がらなかった…

 

 

 

怖くて怖くて…食事も通らずに私はそのまま眠りについた…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

翌日…やはり悠之君とは連絡が通らない…怖いけど私は1人で学校へ向かった…

 

 

学校へ着いた時…私の予感はやはり的中していた…

 

 

ホームルームで担任から告げられた言葉…それは…

 

 

悠之君は自殺した…

 

 

 

私はショックで言葉も出なかった…周りのみんなも…ショックで何も言わなかった…

 

 

貴方達がした事が…結果…こうなってしまった…私はそう訴えたかった…

 

貴方達のせいで…私の大切な人の命が奪われた…

 

 

 

♢

 

当然学校は中止になり、全員帰宅することになった…

 

家のポストを見てみると1通の手紙が入っていた…手紙を見ただけで私は何かを察した…

 

私はおそるおそる手紙を開いてみる…

 

 

『梨子へ

君がこの手紙を読む頃には俺はきっとこの世にいないと思う…

やっぱり耐えられなかった…

最後まで楽しい日々を送れたのは梨子のおかげ。

でも、俺のせいで梨子が傷付けられる事が嫌だ…

だから君は俺の分まで生きてほしい…

ワガママな事をしてごめんね…

今まで本当にありがとう…。

悠之より」

 

私はこの手紙を読んで初めて涙がこぼれ落ちた…

涙が手紙にあたってインクが滲み…

私は部屋の中で泣き叫んだ…。

 

「悠之君…」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2年後…私は父親の仕事の都合で静岡に引っ越してきた…

 

間違えて文化祭の日に学校へ行った時…思いもしない出来事が起きた

 

最初は本人かと思った

 

でも、やはり見間違えだった…

 

でも、顔も似ていて、名前も同じ…まるで死んでしまったあの人のようだった…

 

本当は彼に抱きつきたかった…例え本人ではなくても…

 

 

毎年の夏…彼の事を思い出してしまう…だから心が痛い…

 

だから…私は夏が嫌い。

 

 

今年も…お墓参りに行かなきゃ…八月は悠之君の誕生日なんだし…

 

 

 

もし願い事が叶うとするなら…

もう一度彼に会いたい…

まだ未完成だけど、私のピアノの演奏を聴かせてあげたい…

また…一緒にお出かけがしたい…

また…彼の胸に抱きしめてもらいたい…

 

でもそれは、永遠に叶わない願い…

 

悠之君…ごめん…

 

私…あなたがいないとダメみたい…。




久しぶりにシリアスなお話を書かせていただきました。

梨子ちゃんが悠之君によく構っている理由が少し分かっていただけたかと思います。

あ、一応書いておきますけどこの作品は原作設定を完全スルーしています。


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side story riko 2nd「間違った選択」

結構詰まってしまって、投稿が遅れてしまいました!

大変申し訳ございません…それでは続きをどうぞ!


東京…私は今年の夏、またここに戻ってきた…彼のお墓を見に…。

 

 

ここに来ると、私は少し心が落ち着く…目の前に悠之君がいるように感じるから…

 

けれど、それと同時に懐かしい記憶も蘇ってくる…ここは私に安心感と悲しい思いを与える…そんな場所…。

 

 

でも今日は彼の誕生日…あんまり悲しんでばかりじゃなくて、少しは彼に笑顔を見せるように、明るい気持ちで行かなくちゃ。

 

 

私は一年前のお花を新しいお花に入れ替えて、ひしゃくで水を注ぎ、墓石に水をかけ、線香束に火をつけて供える…

 

「…これでよしっと。」

 

私は手を合わせて…お祈りをする…。

 

(また来年もここに帰ってくるからね…そして、お誕生日おめでとう…。)

 

これで全てが終わったのでお墓を後にしようとした…けれど、私の体は何故か動かなかった…

 

(あれおかしいな…?どうして体が動かないの…?いつまでもここに居たらまた悲しくなっちゃう…)

 

でも、私は何かを悟った…

 

本当はもっと彼のそばにいたい…心が嘘をついているから体が動かないんだ…

 

貴方がいなくなってからもう二年も経つのに…

 

少しずつ私のじわっとまぶたが熱くなっていくのが分かった…

 

もう二度と貴方の前で泣きたくなんて無かったのに…

 

そして、1粒ずつ涙がこぼれ落ちた…

 

私…本当にもうダメなのかな…2年間頑張って生きてきたけど…やっぱり貴方の事が忘れられない…貴方に…会いたいよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、女の子が一人でお墓参りかい?」

 

私が一人で泣いていると後ろから優しそうなおばあさんが話しかけてきた

 

「あら…泣いちゃってるの…ハンカチ使うかい?」

 

「い、いえ…自分のがあるので…。」

 

私はポッケからハンカチを取り出して涙を拭く…。

 

「このお墓の人…君のお父さんかい?」

 

「いいえ…私の…大切な人です。」

 

「そうかい…それは辛かったね…」

 

 

 

おばあさんが同情するような目で見てくれた…。

 

「私もね…若い時に旦那は体が弱くて…早く死んでしまってね…それからずーっと独りぼっちでね…」

 

「……」

 

「でもね…私の旦那はこう言ってくれたんだよ…『生きてて…』って…」

 

 

彼と…同じことを…

 

「それから私も毎年墓参りに行ったんだけどね…何回行っても悲しい気持ちは変わらなかった…。」

 

「そう…ですよね。」

 

変わるはずが無い…大切な人の前のお墓で…悲しくならない人なんているわけが無い…。

 

「でも、私には…彼の言葉がずっと…頭の中に残っていた…彼の分まで生きなくちゃ…どんなに辛く悲しくても…」

 

おばあさんの言ってくれることも分かる…けれど私は…

 

「……私もう思いを断ち切りたいんです…いつまでも彼の事を思っていないで…中途半端な自分を変えたいんです…」

 

私は思い切って感情を出してしまった

 

「忘れてはいけないよ…」

 

「…どうしてです?」

 

「貴方の大事な思い出を…彼との思い出を全てを踏みにじってしまうことになるからだ…」

 

「……」

 

「もう一度よく考えてごらん。」

 

おばあさんはそう言い、その場から立ち去った…

 

 

思い出…か…彼との思い出…悲惨な事もあったけど、楽しい思い出もたくさんあった…ううん、むしろ楽しい方が多かった……

 

でも…私はあのおばあさんと違って…そんなに前向きになれない…彼のことを思い出すと…

 

彼に会いたい…

一緒に居たい…

 

そんな不可能な願い事ばかり考えてしまう…

 

私…これからどうすればいいんだろう…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~東京から帰って数日~

 

ちょっと出かけるってお母さんに伝えて、海を見に行った…それは私の気を紛らす為。

 

 

東京とは全然違って、やっぱりここは海がとても綺麗…初めて来た時も感動したけど、夕焼けだともっと綺麗…

 

 

「あれ?お姉さん一人で何してるの?」

 

スーパーのレジ袋を持ったオレンジ色の髪の女の子が私に話しかけてきた

 

あれ?この子って確か…

 

「ここら辺じゃ余り見ない顔だけど…」

 

「あ、うん…私最近引越して来て…。」

 

お姉さんは笑顔でそう答えてくれた…けれど

 

「お姉さん何かあったの?」

 

「え、どうして?」

 

お姉さんの笑顔は、無理やり作ったような悲しそうな笑顔だった。

 

 

「だって…悲しそうな顔をしてる。」

 

「……」

 

私はそう言われて、海に映った自分の顔を見てみる…。

 

確かに、暗い顔だった。

 

「…ホントだ。」

 

「辛いことでもあったの?」

 

「べつに…貴方には関係ないし…。」

 

「そうかもしれないけど…」

「じゃあ何で…?」

 

私は彼女にそう質問する。

 

「私ね、誰かが悲しんでるのって…嫌なんだ。」

 

「…そう。」

 

「…それに」

 

彼女は、真剣な顔をして私にこう言った。

 

「お姉さん、泣いてるんだもん…。」

 

「え…?」

 

「海で顔を見てもぼやけてて見づらいかもだけど…」

 

「ほんとだ…私…」ポロッ

 

私はハンカチを取ろうとしたけど、家に置いてきてしまった。

 

「使いますか?」スッ

 

「あ、ありがと…」

 

私は彼女からハンカチを借りる…

 

「…貴方優しいのね。」

 

「エヘヘ…ありがと♪」

 

…可愛い子

 

「ねぇ、お姉さん」

 

「なに?」

 

「内容とかは聞かないからさ、日曜日にお昼にさ、またここに来てよ。」

 

「え、どうして?」

 

彼女は、ニコやかな笑顔でこう答えた

 

「それはお楽しみ♪じゃーねー!」

 

そのまま、あの子は走り去ってしまった。

 

「変な子…」

 

日曜日…行ってみようかな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

日曜日、私はあの子が言った時間帯にまたここの海に来てみた。

 

約束の時間に来てみたけど、あの子はまだ来ていないみたい…

 

「すみません~!」

 

あの子が裸足のまま走ってきた…海育ちだから?熱くないのかな?

 

「ごめんね、準備してたらちょっと遅れちゃった!」

 

「それはいいけど、これから何をするの?」

 

「あ、うん!こっち来て!!」グイッ

 

「ち、ちょっと!引っ張らないで~!!」

 

私は彼女に強引に引っ張られて、小さな定期船に乗せられた。

 

♢

 

「ねぇねぇ、お姉さんってどこから引っ越してきたの?」

 

「…東京よ。」

 

「おぉ~!都会人だ~!」

 

この子、都会って聞いただけで凄く嬉しそう…別に特別良い場所って訳じゃないのになぁ。

 

「そうだ、お姉さん名前なんて言うの?」

 

「桜内梨子よ。」

 

「桜内梨子さんか~私はね、高海千歌って言うんだ~」

 

「千歌さん…か。」

 

「千歌でいいよ。」

 

「そうだね、よろしく千歌ちゃん。」

 

「えへへ…よろしくね、梨子ちゃん。」

 

私の方が歳上なのに…でも、何だか妹みたいで可愛い…

 

「あ、もうすぐ着くよ!」

 

「う、うん!」

 

 

 

 

 

私達は定期船を降り、小さなダイビングショップに着いた。

 

「いらっしゃ~い…ってなんだ千歌か。」

 

「なんだって酷くない?果南ちゃん」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ダイビングショップに連れてくるということは、今日はきっと海に入るのだろう…

 

私は千歌ちゃんの友達の説明をしっかりと聞くことにした。

 

 

 

「…以上が説明だけど大丈夫そう?」

 

「えぇ、とても分かりやすかったわ。」

 

彼女の名前は果南って呼ぶらしい…スタイルもとても綺麗な子…ハキハキしてて、凄く話もわかりやすい。

 

果南さんにダイビングのコツとかを聞いてると、私は重大なことに気づいた…

 

「そういえば今日水着持ってきてない…」

 

「あ~大丈夫大丈夫、水着だってレンタル出来るんだから。」

 

「そ、そうなんだ…よかったぁ…。」

 

千歌ちゃんは服の下に水着を着ていたみたいで、すぐに準備が出来ていた。

 

私は、果南さんから受け取った水着を着ようとするが…

 

「これ、ビキニだ…」

 

ダイビングって言うから、スク水みたいなのを想像していたけど…まあいいわ、一応着たことはあるし…。

 

確か、水着を着て…その上からウエットスーツを…

 

「梨子ちゃん~まだ~?」シャッ

 

「ひゃっ!?まだ入っちゃダメ~!!」

 

「おぉ…これが都会人のボディ…」

 

「ちょ、ちょっと…千歌ちゃん…どこを見て…///」

 

「背も高くて、キュッとしてて…うへへ…」

 

「もぅ~!千歌ちゃん~!///」

 

ガシッ!

 

「ち~か~?」

 

ポイッ!

 

え、果南さんが千歌ちゃんを片手でつまみ出した…!?

 

「ごめんね、ゆっくりでいいからね~」

 

果南さんが笑顔のままカーテンを閉める。

 

「いたた…別に投げなくたっていいじゃん~!」

 

「覗きに行った千歌が悪い!」

 

「でも、梨子ちゃん…セクシーだったよね~?」

 

「うん、それは間違いない。ハグしたい」キリッ

 

「あはは、だよね~」

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

「お二人共…?」

 

「「あ、」」

 

『ダイビングが終わったらお話がありますから』ニコッ

 

「「ご、ごめんなさ~い…」」

 

 

 

~沖~

 

私達は沖の方に出て、さっそく潜ってみた。

 

どんな海の中…どんな世界なのかな?

 

「(うわぁ…凄く綺麗…やっぱりDVDとかで見るのとはスケールが違うなぁ~)」

 

それに、凄くいい気分になる…普段行くことのない水の中だから?

 

「(梨子ちゃん凄く嬉しそう…連れてきてよかったなぁ。)」

 

私は梨子ちゃんにサインを送る

 

「(こっちに来て…って意味なのかな?)」

 

私は千歌ちゃんについて行ってみる…

 

「(これは…)」

 

私達の頭上から、日差しがかかり、海上を美しく照らしている…

 

綺麗なだけじゃない…どこからかピアノのような音色が聞こえる…こんな海の真ん中で聞こえるはずがないのに…どうしてだろう…?

 

 

「(でも…心が凄く落ち着く…)」

 

♢

 

「どうだった?ダイビング楽しかった?」

 

「ええ、とても心が落ち着いた…それに海の音も聞こえた」

 

「海の…音?」

 

千歌ちゃんは首をかしげてるけど、私には間違いなく聞こえた…凄く綺麗な音色だった。

 

「じゃあ、陸の方に戻ろっか。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「おかえり」

 

私達が、ダイビングショップに戻ると、悠之君が待っていた。

 

「あれ?悠之君どうしてここに?」

 

「あぁ、千歌の母さんが東京行った時のお土産って…あれ梨子?」

 

「悠之君!?」

 

梨子がいつもより、大げさな反応をする…いつもだったらもっと普通にしてるのに…

 

「悠之君、梨子ちゃんのこと知ってるの?」

 

「知ってるも何も、同じクラスだからな。」

 

「へ~そうなんだ~!いいなぁ~!」

 

俺と千歌は年が離れてるから、絶対同じクラスにはなれない、だから少し羨ましいのか。

 

「さあ、早く着替えてシャワー浴びよ?話は後でね。」

 

果南が割り込む

 

「そうね、海水いっぱい浴びたもんね。」

 

「じゃあちょっと待っててね、悠之君!」

 

 

~15分程…

 

ほかの客の声と果南の声が聞こえる…果南さん毎日こんなに日々を送ってるのかな?ちょっと大変そう…

 

私はシャワーを浴び終わり、着替えて部屋から出る…

 

「あれ、梨子じゃん?」

 

話しかけてきたのは…東京の友達…4人だった

 

「なんだ、3年生になる前に引っ越したと思ったらこんなところにいたんだ~」

 

「……」

 

「なによ、せっかく再開したのに黙んなくてもいいじゃ~ん」

 

「…気安く話しかけないで。」

 

「はぁ!?」

 

友達が大きな声をあげた…

 

「前から思ってたけど、アンタほんっとにムカつく女だよね、美人だからって調子乗ってんの?」

 

「……!!」

 

 

~~~~~~~~~

 

『見た目いいからって調子乗ってるよね~!』

 

~~~~~~~~~

 

「…ッ!」

 

あの時と同じ事を…こいつらあんな事したのにまたそんなこと言えるの?

 

…信じられない。

 

「なんだよ、それともまだあいつの事思ってんの?

あんたも変わらないね~」

 

「…やめて!」

 

私はとっさに大きな声を出してしまった

 

「…まぁ、私達はあんたも、あいつも居なくなって清々してたけどね~」

 

「やめて…もうそれ以上言わないで…!!」ギリッ

 

『やめてよ!!』

 

私は声の方に振り向く、叫んだのは千歌ちゃんだった…後ろに果南さんもいる。

 

「誰だか知らないけど、一人相手に数人だなんて最低!恥ずかしいと思わないの!?」

 

千歌ちゃんが本気になって怒っている…幼くて可愛い子だと思ってたけど…とても驚いた…。

 

「なによ、アンタには関係ないじゃない」

 

「関係なくない!私はこの人の友達だもん!!」

 

「ふ~ん…アンタにも友達いたんだ~」

 

彼女は私を見下したような言い方をする。

 

「もういいよ、梨子ちゃん行こ?」

 

「う、うん…」

 

 

私達がこの場を離れようとしたその時。

 

「─ったく何の騒ぎだよ、もう着替えは終わったのか?」

 

「だめ!出てきちゃ…!!」

 

私の声は間に合わなかった…

 

「なんだよ、もう着替え終わってんじゃん。」

 

「嘘…なんであいつが?」

 

だめだ…バレた…。

 

「あ、あんた…な、なんで!?」

 

「は?なんだよお前ら…てか、誰だ?」

 

「ほ、ほんとにあいつなの…?死んだんじゃ…!?」

 

「いや、だから何の事だよ?意味わかんねえ奴らだな。」

 

彼女らは動揺してる…それもそうだ、今まで虐めてきてなお、自殺までさせた、あの悠之君にそっくりな彼を見たんだから…

 

「ね、ねえ帰ろ?」

 

「う、うん…」

 

彼女らは荷物をまとめ始めた。

 

「なぁ、まてよ。」

 

「ひっ!?」

 

「お前ら、俺の友達泣かしたよな…?」

 

悠之君…?

 

「お前達が誰か知らねえけどよ…友達いじめる野郎とか…非常に腹立つんだよね。」

 

「うそ…あいつってあんな事言うやつだっけ…?」

 

「今ここで、梨子に謝るか…この場から消えて、2度と現れないと誓うか…選べ。」

 

「あ、あぁ…」

 

彼女らは恐怖して動けていない…

 

「質問してんだけど…ゴチャゴチャ言ってないで早くしろよ。」

 

「は、はい!消えます!!

もう二度と関わりません!!

それじゃ!!!」

 

タッタッタッ…

 

あの人達は、すぐさま走って行った…

 

「ったくなんだあいつら…梨子、大丈夫か?」

 

「う、うん…」

 

「どうしたんだよ、なんであいつらは俺のことを知ってるんだ?」

 

「それは…。」

 

私は、高校二年感の過去を、みんなに話してしまった…ずっと心の底に閉じ込めておくつもりだったのに…

 

「私…ずっと悠之君に嘘をついてた…!

悠之君があの人に似ているから…

勝手に代わりにして、気を紛らそうとしていた…

でも…寂しい気持ちは変わることは無かった…」

 

「……」

 

「最低だよね…私…」

 

私は、全ての思いをぶつけた…

 

「……そうだな、最低だな。」

 

「悠之君、そんな言い方…」

 

千歌ちゃんがフォローしてくれたけど、私がしたことは悠之君にとって最低な事だ…私の心の気晴らしにするために利用していたのだから…

 

「そうだよね…だって私…」

 

「俺が言ってるのは、誰にも相談せずに、1人で抱え込んだ…そのやり方が最低だって言ってるんだ。」

 

「え…?」

 

「相談しづらい内容かもしれない…

けど、そうやって一人で抱え込み…

一人で苦しんでいる…そんなのは余計に辛いだけだ。

それに…俺なんかを代わりにしてたら、死んじゃったお前の彼氏に失礼だろ?」

 

「悠之君…」

 

私の胸にチクリと痛みが走る

 

「もっと周りを頼りなよ、友達だろ?俺達。」

 

今、一瞬…悠之君の笑顔が彼の笑顔に見えた…

 

「悠之君…ごめんなさい。」

 

ギュッ……

 

私はいつの間にか悠之君に抱きついていた…

 

「いいよ、思い切り泣いても。」

 

「うん……」

 

私はそのまま彼の胸で泣き続けた…。

 

 

悠之君の白いシャツ…まるで、彼のようだ…。

 

 

貴方はずるいよ…代わりにはしないって決めたのに、あなたの存在が彼との記憶を蘇らせる…

 

 

 

でも…これでハッキリと心に決めたことがある。

 

 

 

私は彼のことが大好きだ…でも、その彼はもうこの世にはいない…

 

あの時私は生きる希望をなくしかけた…

 

でも、彼は言ってくれた…『生きて』…と。

 

天国の悠之君…私、生き続けてみせるよ…だって私は…

 

あなたの事をずっと…愛してるから…。

 

そして、あなたの事を絶対に忘れないから…!




とりあえず、梨子ちゃんのストーリーは幕を閉じます。



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第21話 「SUMMER SEASON その2」

夏の話なのに、九月に入ってしまった…8月以内に投稿したかったですね…


8月25日

 

今年の夏休みの生活はかなり充実することができた、勉強も効率よくできたし、千歌と沢山デートもできた。

 

これ程、充実した夏休みは今まで無かっただろう…しかし、もうこの夏休みもあと数日の命だ…

 

そう考えると少し憂鬱な気分になる…最後になにかどーんと、思い出に残せるくらいに楽しいことがしたい。

 

今、千歌は俺の隣で幸せそうに寝ている…少し早く起きてしまった俺は、そんな千歌の寝顔を見ているしかなかった。

 

「ほんとに、寝顔も可愛らしいな…」ツンツン

 

「う…んん…」スヤスヤ

 

今俺には千歌の寝顔を見ている事しか出来ない理由があるそれは

 

千歌が俺の腕を抱いたまま離してくれないからだ。

 

「ん…悠之君…」

 

「寝言か…どんな夢見てるんだ?」

 

それに、千歌の胸が俺の腕に当たり、物凄く柔らかい感覚が伝わる…それだけで理性がぶっ飛びそうなのに、千歌はパジャマのボタンが少し外れていて、角度によっては見えそうだ。

 

「おーい、そろそろ俺の腕を離してくれ…トイレに行きたいんだけど…」ツンツン

 

「んぅ…あむっ。」

 

「…!?」

 

俺の人差し指を…食べた!?

 

「ん…ちゅぱ…れろ…」

 

ちょ…ちょいまて!一体どんな夢見てるんだ!?

てゆうか、千歌の舌がやらしい…

 

「んぅ…こんなに大きいのぉ…はいりゃないよ…」

 

 

ちょっ…そ、そんな意味深な事言っちゃダメだ!!!

 

 

 

「もぅ…お腹の中いっぱい…だよぉ…」

 

やばい…これもうアカンやつだ…千歌のやつトンデモナイ夢を…

 

 

 

 

 

 

 

 

「曜ちゃんの…ヨキソバァ…」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

…うん、もう起きるか。

朝から何を想像してたんだ…俺。

 

 

 

 

俺は自分の腕と千歌の腕を解いて、トイレへ向かった…

 

そういえばこの指…さっき千歌の唾液が……どうするべきか。

 

その1 舐める

 

その2 拭く

 

その3 水で洗い流す

 

うーん…俺は確かに変態だが、流石に恋人の唾液を舐めるってのもな…でも、なんか新しい世界観が見えそうだから色々と悩んでしまう。

 

「どうするべきか…」

 

「何を?」

 

「え、さっきの人差し指……ってええええ!?」

 

トイレの前でウロウロしてると、さっきまで寝てたはずの千歌が背後にいた…キョトンとした顔をしているから、多分まだバレてないハズだ…でも、万が一という事があったら……

 

「悠之君、トイレ行くなら早くね~私も早く行きたいし。」

 

「あ、はい…」

 

よし、ちゃんと洗い流そう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

千歌と一緒に朝食を食べる…こんなふうにゆっくりと食べられるのも、夏休みまでか…

 

 

「そういえば、今日の悠之君なんか早起きだったね、何かあったの?」

 

「いや、なんか目が覚めちゃってな…そっちこそ珍しく早起きじゃん。」

 

「えへへ、今日はみんなと富士マリンプールに行くんだ~悠之君も一緒に来る?」

 

うむ…夏休み終盤でプールに行けるのは嬉しいが…千歌がみんなとって言うことは、いつもの幼馴染みメンバーと黒澤姉妹、よしまるの誰か…全員じゃないにしろ、流石にこの中に混じったら間違いなく俺だけ浮いてしまう…

 

 

「悪い、流石に女の子の中に混じってプールは流石に…」

 

「え~前に千歌と一緒海に行ったじゃーん…」

 

「それは二人っきりの…デートだった訳だし…」

 

「お願い~悠之君も来てくれた方がみんな喜ぶし、楽しいから~」

 

「いや…でもなぁ…。」

 

「うぅ…悠之くぅん…」

 

「だ、だけどなぁ…」

 

「おねがぁい…」ウルウル

 

よ、よせ…そんな目で俺のこと見つめるな……やれやれ、仕方がないこれも付き合いだと思って頑張りますか。

 

「分かったよ、じゃあ行こうか。」

 

「うん!

あ、それと夜には沼津のお祭りにも行くから、そっちも一緒に宜しくね~♪」

 

「めちゃくちゃハードな1日だな。」

 

♢

 

「約束通り、悠之君を連れてきました~」

 

曜と千歌とそして、梨子…ん?

 

「梨子も一緒なのか?」

 

「うん、あの後から千歌ちゃんや他の子達とも仲良くなれて…今日は宜しくね?」

 

「あぁ、一緒に遊ぶのも初めてだしな。」

 

もっと沢山いるかと思ったけど、思ったより丁度いいくらいだな。

 

「曜は今日水泳の練習は大丈夫なのか?」

 

「うん!今日はおやすみの日だったから大丈夫!」

 

 

 

 

 

沼津から富士マリンプールまで、電車と徒歩などで大体1時間くらい…ここまでは問題無いのだが、女の子3人連れて歩くと、周りからの視線も少し痛々しく感じる…

 

「ねぇ、曜ちゃん今日行くプールってどれくらい大きいの?」

 

「んーとりあえず、遊園地みたいに大きいかなー?」

 

曜と梨子が普通に会話してる…千歌との繋がりですぐに友達に慣れたのだろうか。

 

「あ、悠之君!富士山見えてきたからもうすぐかな?」

 

「あぁ、そうだなあと一駅くらいか。」

 

「ここに来た時も思ったけど、やっぱり富士山って綺麗~」

 

「そっか、梨子ちゃんって前まで東京に住んでたんだもんね。」

 

「えぇ、東京じゃ滅多に見られないから…」

 

「え、東京からでも富士山が見えたりするの?」

 

曜が首を傾げる。

 

「うん、時間帯とか外の明るさとかで、偶に見えたりするよ。

流石にこんなにくっきりとは見えないけど。」

 

「へ~私も行ってみたいな~東京~。」

 

♢

 

~東田子の浦駅~

 

「千歌ちゃん、ここがプールの最寄り?周りが富士山しか見えないんだけど…?」

 

梨子が尋ねる

 

「うん!そーだよ!ここから少し歩くんだ!」

 

「ふぅん…どのくらい?」

 

「30分!」

 

「え…30分…?ほんとにここが最寄りなの!?」

 

そう、確かにここの駅は富士山マリンからの最寄り駅…だが、都会の駅とは違い、降りたらすぐ目的地とかそんな優しい世界ではないのだ。

 

「まあ、一応プール行きのバスは出ているわけだし、それに乗っていけば…」

 

「確かにそれが妥当だな。」

 

俺達はバスが来るまで10分ほど待機する…

 

そして、ようやくバスに乗り込み、また10分経過し、ようやくプールに着いた…とにかく長かった…。

 

「な、長かった…」

 

「梨子ちゃん大丈夫?はい、これ当日券ね。」

 

「あ、ありがと…千歌ちゃん。」

 

「いや~長かったけど久しぶりに来たね、富士マリン!」

 

あれだけ移動したのに、曜は元気そうだな…流石飛び込み選手。

 

 

とりあえず、全員プール内に入場する…

 

 

「じゃあ、着替えてくるからまた後でね~」

 

「おう、後でな。」

 

確か、千歌の時もそうだったけど、女の子の着替えってちょっと長いんだよなぁ…さっさと着替えて場所を取っておこう。

 

『先に着替えて場所取りしておくね』…っとこれでいいかな。

 

俺はとりあえず、千歌のスマホにメールをしておく。

 

 

 

 

 

 

~女子更衣室~

 

「わぁ~千歌ちゃんの水着凄く可愛いね!」

 

「えへへ、この前に悠之君と一緒に買いに行ったんだ~」

 

「素敵な水着だね、悠之君もなかなかいいセンスしてるんだね~」

 

私の水着を褒めつつも、梨子ちゃんも曜ちゃんの水着もとても可愛いらしい…

 

梨子ちゃんは桜色のフリフリ付きのビキニ、所々に花柄の模様が着いていて、年上の女の子らしさが出ている。

 

 

曜ちゃんも、ライトブルーの水着を着ている…曜ちゃんは相変わらずスタイルが良いからちょっと羨ましいな…

 

「よーちゃん…私もうちょっとダイエットした方がいいのかなぁ…」

 

「え、千歌ちゃんはそのままで可愛いよ?」

 

「そうよ、ちょっとぷにっとしたくらいが可愛いのよ。」ツンツン

 

「う~曜ちゃん梨子ちゃんもやめてよ~///」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

遅い…流石にそろそろ来てもいい頃なんだが…大体15分位は待った気がする…

 

「悠之君~」

 

「ごめんなさい~」

 

「おまたせ~」

 

「お~…待って…た…。」

 

やばい…3人美少女の水着姿…めちゃくちゃ眩しくて可愛い…俺が何だか場違いのようだ。

 

「おーい、悠之君?」

 

「な、なんだよ…///」

 

少し戸惑ってしまい、曜が話しかけてきたことに気づかなかった…

 

「私達で興奮しちゃった?(小声)」

 

「え、いや…そんな事は…///」

 

「おーい、2人とも何ヒソヒソ話してるのー?早く流れるプール行こーよー」

 

「あ、あぁすぐ行く!」ダッ

 

プールサイドは走らないでくださいね~と係員の声が聞こえた…それにしても、悠之君ってわかりやすいなぁ

 

 

 

♢

 

「ねぇねぇ、流れるプールって言ったらさ、やっぱり鬼ごっこしたくない?」

 

千歌が提案する。

 

鬼ごっこか…俺は構わないが、他のふたりはどうだろう?

 

「いいんじゃないかな?」

 

「じゃあ、悠之君が鬼でスタート!」

 

「え、ちょ…」

 

「20数えたらスタートね!!」

 

マジかよ…結構ここのプール広いよな…しかも、俺が千歌達を追っかけ回して、肌に触れるってことだよな……

 

 

20秒経過…

 

さあ、鬼ごっこの開幕だ!

 

 

とりあえず、深く潜って気配を消しながら、じっくりと近づいていくとするか…

 

ゲームが始まって約五分…

 

お、あの後ろ姿は間違いなく梨子だ…

 

俺は深く潜って、梨子から気配を消しながら前の方に行く…

 

そして、梨子の位置から20m先に移動し、待ち構える…こうすれば、流れに乗って梨子は俺のところに強制的に向かってくる…少々やり方が汚い気がするが、そんな事を気にしてたらゲームにならない…

 

さぁ…来い!

 

「あ、あれ!?悠之君がなんで私よりも前に!?」

 

ようやく俺の存在に気づいたようだ…だがもう、この流れから逃れられんぞ…

 

梨子が頑張って後ろに戻ろうとするが、流れが強くて戻れない…徐々に俺の方に追い込まれていく。

 

 

「悪いな、今回は俺の勝ちだ。」

 

「な、なんで…こんな…に、流れが強いの…!?」ツルッ

 

梨子がバランスを崩して、もっと距離が縮まり、完全にゼロ距離になった

 

 

「お、お願い悠之君…今回は見逃して…」

 

「許せ、これはゲームだ。作戦にかかった梨子が悪いんだ。」

 

「そ、そうね…確かに私が悪いかも…」

 

あれ?案外素直に受け入れるんだ…

 

「…じゃあ、これを喰らっても文句は言わないね!?」ジャキン

 

「な!?そんな大きな水鉄砲をどこで!?」

 

「発射!」

 

 

ぶっしゃああああああ!!

 

や、やばい…目が見えない…勢い強すぎる…

 

 

「ゴホッ!勢い強す…ぎ…」

 

「作戦にかかった悠之君が悪い…これでいいね♡」

 

「ま、まて…梨子…ずるいぞ…」

 

「ふふっ…またね♡」

 

くっそ…完全にやられた…俺の負けだ…。

 

 

 

 

 

あの後、普通に追いかけて、梨子は捕まえられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、結構疲れたね、鬼ごっこ…」

 

「そうだな、もう一日分動いた気がする…」

 

「それにしても、梨子ちゃんはその大きな水鉄砲どうしたの?」

 

「え、いや…後で遊んだりできるかな~って」

 

俺はさっき梨子に思い切り顔面にくらったんだが…しかも、あの水鉄砲の威力…結構やばかったしな、しばらく目が開かなくなったぞ。

 

「ねえねえ、そろそろお昼にしようよ~」

 

「そうだな…あ、あそこに屋台が沢山あるぞ。」

 

ホットドッグに、焼きそば、アメリカンドッグなど定番メニューがずらーっと並んでいる…

 

「こういうのって結構久しぶりだな、皆は何にする?」

 

「私は~ホットドッグがいいかな~千歌ちゃんは?」

 

「うーん…焼きそばは多分曜ちゃんが作ってくれる方が美味しいからね~私も、ホットドッグにしようかな~梨子ちゃんは?」

 

「私も、そうするわ。」

 

なんだ、みんなホットドッグか、じゃあ俺もそうしようかな。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

全員昼食も済んだので、またプールに戻ることにした。

 

「ねえ、今度はあれ行こうよー」

 

千歌が指を指す方向には、大きなウォータースライダーだ。

 

浮き輪で2人で乗るタイプのようだな。

 

「4人いるし、2人ずつ乗ろうよ~」

 

「じゃあ、グーパーで別れましょうか。」

 

4人でグーパーした結果

 

千歌;梨子

 

悠之:曜

 

の組み合わせになった。

 

 

 

案内役員の人が、順番に呼んでいく…

 

「ねえ、悠之君は千歌ちゃんとじゃなくてよかったの?」

 

「ん?今日はデートをしに来た訳じゃないから…」

 

「そっか…あのね…」

 

「なんだ?」

 

「な、なんだろう…言いたい事があったのに忘れちゃった…」

 

「ははっなんだそれ。」

 

曜が少し恥ずかしそうにモジモジしている…何か言いたげにしている様子だ。

 

「本当は何か言いたいことあるだろ?」

 

「え、な、なんで?」

 

「だって、曜の顔が少し困った顔してるから。」

 

「あ、あはは…バレちゃってたか…」

 

曜が苦笑いを浮かべる…

 

「じ、じゃあ言うね…」

 

「おう。」

 

「えっと…その…手…繋いで?」

 

「へ?」

 

「もぅ!手を繋いでって言ってるのー!」

 

「よ、曜…どうしたんだよ急に…」

 

「2回も…聞かないでよ…ウォータースライダーが終わるまでだけでもいいから…」

 

「分かったよ、ほら」クスッ

 

俺は手を差し伸べる

 

「え、ほんとにいいの?」

 

「ほんと!?やったね!!」ギュッ

 

ムニュ…

 

柔らかい感覚が俺の腕に伝わる…そうだ、確か曜も千歌と同じくらいに…

 

 

 

 

「さ、そろそろ俺達も乗るから一回離してくれ。」

 

「え、うん…」

 

「大丈夫、乗ってる時だって手を繋いであげるから」

 

「ほんと!?」パアァ

 

「約束だもんな。」

 

 

 

 

今日また、改めて思ったよ…俺の幼馴染みはみんな可愛い。

 

でも、本命は……

 

 

ごめんな、曜…でも、俺は君のことも好きだから。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~沼津駅~

 

 

「いや~いっぱい遊んだね~」

 

「これからお祭りに行く体力がないよ~」

 

「もう~梨子ちゃんは情けないな~」

 

 

いや、普通に考えて無茶なスケジュールだろ、1日プールで遊んで、その後祭りとか、疲れるに決まってる。

 

 

「じゃあ、とりあえずまた後で旅館の前に!」

 

「うん!」 「また後でね~」

 

曜と梨子と分かれ、俺達も旅館に戻った。

 

 

「悠之君、ちょっと浴衣着てくるからちょっと待っててー」

 

「りょーかい」

 

 

浴衣か…曜も梨子も着てくるのかな?

ちょっと気になるな。

 

 

「おまたせ~」

 

千歌はオレンジ色の、浴衣を着て出てきた。

 

「どうかなどうかな?」

 

「相変わらず可愛いな、思わず写真を撮りたくなるくらいだ。」パシャ

 

「もう撮ってるじゃん!」

 

「おっと…なんか勝手に操作しちゃったみたいだ。」

 

「もう~!」

 

 

あ、流石に今のやり方はちょっとまずかったか…?

 

「写真撮るなら、悠之君も一緒!」

 

「あ、はい。」

 

あの後、めっちゃ二人で自撮りした

 

♢

 

「あ、悠之君、千歌ちゃん~!」

 

旅館を出ると、浴衣に着替えた、曜と梨子の姿が目に入った。

 

「わぁ~梨子ちゃんも曜ちゃんも浴衣姿可愛いね~♡」

 

「ん?千歌ちゃんもすっごく可愛いよ?」

 

「ほんと?ありがとう♡」

 

俺はこれから、この浴衣美人3人を連れてお祭りを回らなくちゃ行けないのか…

 

みんないつもの雰囲気と違った、可愛いらしさと色気が出ている…

 

特に梨子、やっぱり一番年上だからなのだろうか、いつもの下ろしているあの長い髪がうなじが見えるようにセットしてあって、エロさを感じた…

 

「じゃ、どこから回ろうか?」

 

「みんなが行きたいところから回っていきましょ?」

 

「そうだね~じゃあ一つずつ回っていこうか。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

千歌はみかん飴、曜はたこ焼き、梨子は焼きそばを買ってきた。

 

無論俺は、ラムネと大判焼きだ。

 

「悠之君って結構甘党?」

 

梨子が聞く…そうか、梨子は俺の甘い物好きの事は知らなかったんだっけ。

 

「まあな、しょっちゅう食ってるから血糖値がかなりヤバめだ。」

 

「ふふっ、その若さで血糖値なんて上がらないよ。」

 

「まじか、今まで心配して損したわ。」

 

 

 

まあ、とりあえず全員分買ってあるので食事には困らない…後は、花火が上がるのを待つだけだ。

 

 

ひゅ~…ドーン!!!

 

パラパラパラ…

 

 

「おぉ~花火始まったね~!」

 

「うん…凄く綺麗…」

 

沼津の夏祭り…もう何年か前に行った以来だけど、やっぱりここの花火は格が違うな…

 

「ねえ、悠之君」

 

「どうした、千歌?」

 

「ちょっと…」

 

俺は、千歌に連れ出される…

 

「どうしたんだよ、花火は見なくていいのか?」

 

「う、うん…それよりもお礼が言いたくて…」

 

「お礼?」

 

千歌が赤い顔をして俺を見つめる…

 

「今年の夏…悠之君がいてくれたから凄く楽しかった!

夏休みが終わったら言うつもりだったんだけど…待ちきれなくて…」

 

「俺も、千歌がいてくれたからとても楽しかったよ…って、何かGWの時も同じようなこと言ってた気がするけど。」

 

「あははっ確かに~」

 

俺も千歌も照れくさそうに会話を続ける…

 

「ねえ、またして欲しいな…」

 

「何を?」

 

「その…お外での…キス…///」

 

「あ、あぁ…いいよ…///」

 

俺は千歌との距離を縮める…

 

「目…つぶって…?」

 

「うん…」ドキドキ

 

お互い目をつぶったまま、唇が触れ合う…千歌の体を抱き寄せているので、鼓動音がどくん…どくん…と伝わって来るのがわかる…それは俺も同じこと。

 

「んっ…気持ちよかった…♡」

 

「…俺も。」

 

「…もう一回する?」

 

「そうだな…もう一度…。」

 

もう一度俺と千歌の唇が触れようとしたその時…

 

「あーママー!おにーさんとおねーさんがチューしてるよ~!」

 

「「…!?」」

 

「コラ!大きな声で言わないの!!」

 

どうやら、子連れの家族に見られてしまっていたようだ…

 

「…悠之君。」

 

「ど、どうした?」

 

「続きは帰ってから…ね…♡」

 

「ふふっそうだな…」

 

今日は寝られるまでがハードな日のようです。




今年の夏は天気が不安定で、全然遊べなかった気がする…


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第22話 「シャイニー日和」

お久しぶりです!

最近暑かったり寒かったり…体調崩しそうで怖いです…

それでは続きをどうぞ!


二学期が始まり1週間余り…もう夏休みボケも治ってきて、いつもの毎日に戻ってきた…。

 

だが、一番夏休みボケが治ってないのが一人いる…

 

「千歌~もう7時だぞ~バスが来るぞ?」

 

「むにゃ…まだ7時じゃん…」

 

「全く…遅れても知らねえぞ?」

 

「すやぁ…」

 

さて…どうするか…普通にゆさゆさして起こすのもいいが、少しいじってみるのも面白いかもしれないな…

 

「…早く起きないと。」

 

「Zzz…」

 

「…襲っちゃうぞ。」ボソッ

 

「……」ピクッ

 

…よし、少し反応したな。

 

「でも、無防備な状態で襲うのも少し可愛そうだしな~…でも、それはそれで面白そうだし…」

 

「……」ドキドキ

 

顔が赤くなってる、やっぱり狸寝入りの証拠だ…

 

「じゃあ…そろそろ…」

 

「……///」

 

俺は千歌の唇に指をあてる…

 

「千歌お前もう起きてるだろ?」

 

「…!?」

 

ガバッ…

 

千歌が布団から起き上がる。

 

「…どうして?」

 

「そりゃあ、顔が赤かったし…」

 

「そうじゃなくて!」

 

「な、なんだよ?」

 

「その…えと…なんで襲ってくれなかったの?」

 

千歌がほっぺを膨らませる…

 

「いや、朝からは流石に疲れるし…」

 

「むーっ!」

 

「悪かった、悪かったって…」

 

「もう知らないもん!」

 

やっべぇ…朝から機嫌を悪くさせてしまった…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~教室~

 

「それで悠之君は元気無いの?」クスッ

 

「いや…いつも朝は元気無いけど…おふざけが過ぎたかな…ってな。」

 

教室で梨子と会話を続ける…

 

 

「じゃあ、悠之君に良いことを教えてあげよう。」

 

「…なんだよ?くだらない事じゃないよな?」

 

「違いますー!」

 

「じゃあ、なんだよ?」

 

「それだけ焦らしておいて、実行しなかったら誰だって怒るわよ、私だって嫌だし。」

 

「あ、そうなんだ…てか、誰かと経験あるの?」

 

「え!?いや、それは…///」

 

ほう…この反応絶対何かあるな。

 

「ま、まあ…女の子はそんな感じなのよ。」

 

「へぇ~まあ、よく分かったよ…エッチスケッチ桜内さん。」

 

「もうー!バカー!///」

 

 

♢

 

昼休みのチャイムが鳴り、俺達はいつも通り屋上で飯にする事にした。

 

「ねえ、悠之君。」

 

「なんだよ?」

 

「あんな子…この学校にいたっけ?」

 

 

梨子の目線の先には、金髪の女の子が女子トイレに向かってるのが見えた…。

 

俺達の視線に気がついたのか、その子は俺達ににこやかな笑顔を見せた…。

 

「さあ…初めて見るな。」

 

俺達は構わずに、屋上へ向かった…。

 

「九月なのに、全然涼しくならないな…」

 

「まあ、まだ上旬だしね…仕方の無いこと…なのかな?」

 

幸い、屋上には日陰になる場所はあるが、今日は風が全く吹いていないので、じわりと暑さが染み渡っていく…

 

「本当に暑いなぁ…ふぅ…。」プチプチ…

 

「な…!?お前…何して…///」

 

梨子が制服のリボンを解き、ブラウスの第一ボタンと第二ボタンを外す…

 

「何って…暑いからボタンを開けただけなんだけど…」バサバサ…

 

ブラウスをバサバサと動かして、風を送っているのか…無自覚なのかわざとなのか、どっちにせよ動きがとてもいやらしく見える…

 

「そんなことより、さっきの女の子は誰だったんだろうね?」

 

「さあな…この学校は色々と謎だからよく分かんないな…あの変態理事長とか。」

 

「あぁ…確かに。」

 

それにしても暑すぎるな…さっき買ったばっかの飲み物が一瞬で無くなってしまった…

 

「悪い、また飲み物買ってくる。」

 

「あ、じゃあ私は…」

 

「買ってもらいたいならお前もこい。」

 

「ふふっ…分かりました~」

 

「…ったく」

 

ガチャ…

 

「ん?」

 

俺達が屋上から出ようとした時、さっきの金髪の女の子が屋上に入ってきた…

 

「Wow!もう先客が来ていたデースかー!?」

 

「…!?」

 

なんだ?この子…

 

「あ、そうだ…そこのBoy!」

 

俺の方にビシッと指を指してきた…初対面でなんで奴だ。

 

「あ、はい…なんすか?」

 

「私の分のコーンポタージュも買ってきてちょうだ~い☆」

 

「…自分で買いに行け。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

…なんかもう1人、おまけが付いてきた…

 

「はぁ…なんで俺がこんな目に。」

 

結局俺が三人分の飲み物を買うことになってしまった…

 

「センキューBoy~!やっぱり持つべき物は友よね~!」

 

「まだ、初対面なんですがね…」

 

「ま、まあ…悠之君も元気出して?」

 

梨子がそっと、俺にサンドイッチをくれた…

 

「さ、さんきゅー…梨子。」

 

暑い時は普通食欲が湧かないのだが、今回ばかりは何故か空腹に襲われる…おそらく、イライラでやけ食いしたくなっているのだろう…

 

「んで…ずっと俺らの傍にいるけど、なんか用でもあるの?」

 

「そうそう、ちょっとこれを見て欲しくて会いに来たのー!」

 

金髪の女の子がポッケからスマホを取り出す。

 

「一体何を…ってこれ…!?」

 

「そう、今年の文化祭の映像でーす!」

 

「あ、これ前に悠之君が歌ってた…」

 

「な、なんでYouTubeにアップされてるんだ!?」

 

映像を見る限り、歌ってるのは間違いなく俺だ…一体誰が撮ったのだろう…

 

「そう、私はあなたに会いたくて日本に帰ってきたのデース!

あなたの歌声を聞いた途端、直ぐに会いたくて!!」

 

「わ、分かったから少し落ち着いてくれ…君、帰国女なの?」

 

妙に落ち着きが無いなこの子は…

 

「だから、今日の帰りに一緒にカラオケ行きましょ?」

 

「いや、何でそうなる?」

 

「歌声が聞きたいってさっき言ったばっかデース!」

 

はぁ…なんかこの子といると凄く疲れるな…ここは振り切っておくのが無難か…

 

「今日は、暑いから直ぐに家に帰りたいんだが…」

 

「もーそんな事言わないのーカラオケの中は涼しいんだから~」

 

「いや、でもな…」

 

あの時は思い切り歌えたけど、ホントは人前で歌うのが苦手だって言えない…

 

「悠之君、行ってあげれば?」

 

「いや、ホントは俺…」

 

「往生際が悪いな~」ダキッ

 

「……!?」

 

なんだ…この子!?

いきなり抱きついてきた……めっちゃいい匂いすんだけど。

 

「ねえ~行こうよ~」ウワメヅカイ

 

…コイツ、絶対俺の苦手なタイプだ…。

 

「分かった…」

 

断れるわけがねえわ…これ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「いやぁ~たくさん歌った~やっぱり日本のカラオケが一番楽しいわ~♡」

 

「は、はぁ…それはよかったね…。」

 

「やっぱり、悠之君は歌上手いね~」

 

付いてきてくれた梨子も褒めてくれたが…今はそんなに嬉しい気分じゃない…

 

「うん…そいつあどうも。」

 

今日はもう、1日色々ありすぎてめっちゃ疲れた…早く家に帰りたい…

 

「あ、そうそう名前!」

 

「ん?」

 

「あなたの名前!なんて言うの?」

 

「俺は…悠之。てか、普通自分から名乗るだろ…」

 

「ソーリ~私は小原鞠莉!よろしくね☆」

 

鞠莉…か、

 

「ちなみに、私は隣のクラスだから、直ぐ悠之に会いに行けるからね♪」

 

うっわぁ…要らない情報を…。

 

♢

 

いつもより帰りが遅くなってしまった…早くしないと千歌に怒られる…

 

「ただいま~」

 

「おかえり~もうご飯出来てるよ~…ってなんかお疲れだね?」

 

「あぁ…色々あってな…。」

 

 

 

~千歌の部屋~

 

「あはは…そんなことあったんだ~」

 

「もう疲れた…千歌、癒して…」

 

「え、えぇ~?そ、そんなこと急に言われても…」

 

あれ?何かいつもと立場が変わってる気が…

 

「じゃ、じゃあ…」

 

私は悠之君の頭をゆっくりと撫でる…

 

「その…それだけじゃ足りない…」

 

「も、もぅ…今日の悠之君は甘えん坊さんだなぁ~」

 

今度はもっと抱き寄せながら撫でてあげる…

 

「さんきゅ…千歌。」

 

「じゃあそろそろご飯に…」

 

「このまま続けて。」

 

「えぇ~///」

 

私はそのまま、10分ぐらい撫で続けた…

 

 

 

 

♢

 

「悠之君…そろそろ…ってあれ?」

 

「すぅ…すぅ…」

 

幸せそうな顔をして寝ているなぁ…そんなに疲れちゃったのかなぁ…

 

「もぅ…悠之君ったら…。」

 

私は、悠之君をベットで寝かせてあげる…

 

「甘えん坊の悠之君も可愛い…」プニプニ

 

悠之君の頬をつつく…

 

「夜ご飯…一緒に寝てからでもいいかも」

 

私は悠之君を抱いて、一緒に眠りについた…




これで、Aqoarsキャラ全員揃いました~!

この作品構成だと…

中学三年生…善子 ルビィ 花丸

高校一年… 千歌 曜

高校2年… 果南 ダイヤ

高校3年…梨子 鞠莉


原作とかなり変えて作ってます。



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第23話 「プリンのような感触」

お久しぶりです!

最近忙しくて中々投稿出来てませんでしたが一応生きてます(笑)

では、続きをどうぞ!


~松浦家~

 

「な。はぁ…」

 

私は夜の海を眺めながらため息をつく…

 

「やっぱり、10月になっちゃうとお客さんも来ないか~」

 

まあ、それもそうだよね…10月になってまで泳ぎたい人なんているわけが…

 

「ま、私は10月になっても泳いじゃうけど♪」

 

「oh~流石は果南ね~相変わらず変わってな~い♪」

 

「ふふっよく言われるよ…って!?」

 

「チャオ~!」

 

ふわっとした、柔らかそうな金髪…まさか…。

 

「鞠莉!?」

 

「ハーイ♡果南久しぶり~!」ギュッ

 

鞠莉が私の体をぎゅーっと抱きしめる…懐かしい…鞠莉のいい香りがする…。

 

 

「果南~もっとぎゅーってして~♡」

 

「わかった、わかったから1回落ち着いて?ね?」

 

「や~だ~!2年ぶりなんだからその分取り戻すの~!!」

 

「えぇ~」

 

「むふふ…ここもこんなに大きくなっちゃって~」ムニュ…

 

「こらっ!訴えるよ!?」

 

「も~う、そんなに怒らないの~スマーイル☆スマーイル!」

 

 

全く…鞠莉も変わってないな~

こんな感じな会話をしたのは本当に久しぶり…セクハラするのは相変わらずだけど

 

 

「で、どうして帰ってきたの?」

 

「どうしてって?」

 

「だって予定では来年って…」

 

 

私は少し疑問に思った…自分の将来の為にって張り切っていたのに、こうもあっさりと帰って来てしまったことを…

 

 

「ワタシね、やっぱり居心地のよい日本が一番好きなの!

この内浦も大好き…そして…」

 

『果南も、ダイヤも…大好きだから!』

 

 

 

「学校はちがうけどせっかくの高校生活を無駄にはしたくない、果南とダイヤがいない高校生活なんて嫌だからね。」

 

「鞠莉…」

 

「そ・れ・に…好きな人も出来ちゃったし♡」

 

「え…」

 

鞠莉がスマホを取り出して、一枚の写真を見せてきた…

 

「この子よこの子!すご~く可愛いでしょっ☆」

 

(うわぁ…これ悠之君じゃん…無理やりカラオケに連れて行かされたのかな…?目が死んでる…)

 

 

「ねぇねぇ!どうどう!?」

 

「あ、うんうん…可愛い…凄く可愛いね!」

 

 

どうしよう…悠之君には千歌がいることを伝えるべきか…でも、わざわざ帰ってきた鞠莉に今伝えるべきではないか…

 

でも、後から知って悲しむ鞠莉の顔も見たくない…ああ見えて鞠莉は結構メンタル弱いし…

 

 

「かな~ん…どうしたの?」

 

「い、いやぁ…何でもない…。」

 

「そう?じゃあ私はこれで帰るわね~ちょっと寄って行ったってだけだし~」

 

「う、うんじゃあね~!」

 

鞠莉は満足そうな顔をして帰っていった…

 

Prrrrrrrr…

 

鞠莉が帰った途端にケータイが鳴った…相手は…ダイヤか

 

「もしもーし、どうしたの?」

 

「あ、果南さん…そっちに鞠莉さんはいませんか?」

 

「え、さっき帰って行ったばっかだけど…」

 

「あぁ…遅かったですわ…」

 

ダイヤが深いため息をつく…

 

「ど、どうしたの?」

 

「鞠莉さんが…私の夕食後のプリンを持っていったのですわー!」

 

「えぇ~?鞠莉はお金持ちだからそんな事しないと思うけどな~」

 

 

鞠莉の家庭だったら、毎食後にプリンが出てもおかしくないくらいだし…

 

「知らぬ間に自分で食べちゃったんじゃないのー?」

 

「し、しかしそんなことは…」

 

「わかったわかった、今日は遅いからまた今度ねーおやすみー」

 

「あ、果南さん話はまだ終わってないです……」

 

私は遠慮なく電話を切った…

 

 

「ふ…わぁ…」

 

私もそろそろ寝よう…なんだか今日は眠くなるのが早い気がするなぁ~

 

 

☆☆☆☆☆

 

「(ごめんね…お姉ちゃんのプリン食べちゃったの…ルビィなんだ~♡鞠莉さん…だったかな?ちょっと申し訳無いことをしちゃったけど、きっと大丈夫だよね♡)」

 

ガラララララ…

 

「ぴぎゃっ!?お、おお…お姉ちゃん!?」

 

「ルビィ…そのプリンの空箱は…何かしら?」

 

 

お姉ちゃんがゴミ箱に入ってるプリンの空箱に指をさす

 

 

「い、いやぁ…それはその…そ、そう!ルビィが学校の帰りに買ってきたプリンです!」

 

「ふぅん…まあ、いいですわ…」

 

 

(…ニヤリ…)

 

 

「…でしたら、その空箱の裏面をちょっと見せてもらえます?」

 

「うゆ……はっ!」

 

 

プリンの箱の裏に…

 

『ダイヤ』の文字が…

 

 

「ルビィ…貴方は可愛いくて、素直でとてもいい子です…しかし貴方は昔からそういう悪い性格は…ずっと…変わってないようですわね…」

 

「あ、あぁ…あわわわわ…」

 

「お仕置きですわー!!!!」

 

「ぴぎゃああああああああ!!!!!!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~翌日の昼休み~

 

「それでさ、ダイヤったらいきなりワタシを犯人扱いしてくるのよー!?酷くない!?」

 

「まあまぁ…一応犯人はルビィちゃんって分かったわけなんだし…」

 

「でも~!最初に犯人扱いするのも酷いと思わないの!?」ムゥ…

 

鞠莉がむーっとほっぺを膨らませ、身体を寄せてきた…

 

「落ち着けって、一応鞠莉はダイヤよりは年上だろ?」

 

「むぅ…じゃあ少しは大人しくするでーす…」

 

「よろしい…じゃあ後は、近すぎるから少し離れてくれないか?」

 

「えー!?アメリカだとこれくらい普通でーす!」

 

鞠莉がさっきよりも身体を寄せる…耳元に吐息が当たってくすぐったい…

 

「ここは日本だ、アメリカとは文化が違うんすよ…さぁ早く離れ……」

 

「グスッ…ワタシは…傍に居たかった…だけ…なのに…」ポロポロ

 

「え、ちょ…ちょっと待てよ…何も泣かなくても…」

 

「あ~あ…悠之君~鞠莉ちゃんのこと泣かせたちゃった~」

 

「梨子~!お前はこういう時だけに割り込んでくるんじゃないー!」

 

梨子が割り込んで来たので、とっさに大きな声を出してしまった…

 

 

「悪かった、悪かったって…だから涙拭いて?な?」

 

「オーケー…じゃあさ…」

 

「私のコーンポタージュ買ってきて。」

 

 

鞠莉め…余計な事を…。

 

「あ、悠之君私のおしるこもー!」

 

 

梨子…お前も相変わらず余計だ。

 

 

階段を降りて自動販売機のところへ向かう…このパターン…毎日の日常と化してきて、すっかり慣れてしまった…。

 

 

俺ってパシリの才能があるかもしれん…いや、パシリにされる側の方だな。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

~放課後~

 

そういえば、授業用のノートのページが無くなりそうだったんだっけ…いつもより手前の駅でコンビニに寄らないと…

 

 

「あれ、悠之君はもう降りるの?

 

「あぁ、ノートが欲しくてな、コンビニに寄ってくよ。」

 

「わかったわ、じゃあまた明日ね。」

 

「あぁ、またな。」

 

 

さて…と、ノート買うついでに千歌に何かお土産でも買ってあげるか……ん?

 

「ルビィちゃん?」

 

「ぴぎゃっ!?ゆ、ゆゆ悠之さん!?」

 

あぁ…そういえばこの子、男の人が苦手だったんだっけ…

 

「ごめんね、驚かせるつもりはなかったんだ。」

 

「こ、こちらこそ…おっきな声を出してしまって…」

 

 

ルビィちゃんの手に持っているのは二つのプリン……きっとダイヤに対してのお詫び…なんだろうな。

 

「それは、ダイヤへのお詫びかい?」

 

「え!?どうして悠之さんが知ってるんですか?」

 

「まあ、色々と情報を耳にしてね…」

 

 

そのせいで、今日もパシリにされちゃったけどな…

 

 

「でも、帰ったらまたお姉ちゃんに怒られる…うゆ…」

 

また…って事はルビィちゃんこれが初犯な訳じゃないんだ…

 

「ルビィちゃんは、素直な子なんだから、大丈夫だよきっと…」

 

「で、でもルビィ…これが初めてな訳じゃないし…」

 

「大丈夫さ、お詫びの気持ちが伝わればダイヤだって許してくれるさ」

 

「は、はい!」ニコッ

 

ルビィちゃんがオロオロとした表情から、少し笑顔を見せてくれた…ちょっとは気が楽になってくれたかな?

 

 

「よし、じゃあもう遅いから買って帰ろう!」

 

「はい!…って悠之さんは何しにコンビニに来たんですか?」

 

「あ、やべっ!ノート買うんだった!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

また今日も、帰るのが遅くなってしまったか……とゆうか、バスの本数が少ないのが悪いんだけどな~こればかりはどうしようもないか~

 

 

「ただいま~!」

 

「あー!遅いー!!」

 

玄関で千歌が膨れた顔をしている…やれやれ、今夜は怒りんぼ大会だな…

 

「ごめんな、コンビニ寄ってたら少し遅くなっちゃって。」

 

「むぅ…悠之君が帰ってくるまでずーっと待ってたのにー…いつまで立っても帰ってこないんだからー!」

 

「ごめんごめん、その代わりに今日はプリン買ってきたからさ。」

 

「プリンだけじゃ嫌!」プクッ

 

そ、そんなにプリンみたいに顔を膨らませなくても…可愛いからなんとも言えないけどな。

 

「あー…じゃあ後何をすればいいすか?」

 

「課題…手伝って!」

 

「あ、はい…」

 

「あ!その前にご飯とお風呂も済ませようね!」

 

「はいよ~」

 

☆☆☆☆☆

 

 

「いや~やっぱり悠之君が手伝ってくれるとスグに終わっちゃうよ~」

 

「はは…そいつあどうも」

 

 

さっきまでご機嫌斜めだったのに、すぐにご機嫌だな~

 

 

「単純なところがやっぱり可愛いな、千歌は」

 

「むーっ単純ってどういう事!?」

 

「こういう所だよ」ツンツン

 

 

俺は千歌のほっぺをつつく…

 

 

「千歌のほっぺ、柔らかくて気持ちいいな」ムニュムニュ

 

「もぅ~!悠之君だって柔らかいよ~!」ムニュ…

 

「あ…ははっやめろ…ってくすぐったいだろ…!」

 

「えっへへ~参ったって言うまで続けるもんね~!」

 

 

しばらく攻防戦が続いた…

 

 

「ち、千歌…流石にもうギブ…」

 

「ふっふふ~今回は千歌の勝ちかな~?」

 

「なんて…な!」ガバッ!

 

「うわっ!?ずるいぞー!!」ガバッ!

 

「やばっ体制が崩れる…!」

 

「え…!?ひゃあ!?」

 

今度は俺が千歌の体を押し倒す様な形になってしまった…

 

 

「わ、悪い!すぐに離れ……」

 

「まって!」ガシッ

 

千歌が俺の腕を離さない…

 

「ど、どうした?」

 

「その…///このまま…しよ?」

 

「えっ…?」

 

「そのまま…エッチ…しよ?」

 

「あ、ああ…いつものようにキスしたり…とか?」

 

「ううん…本番がしたい…///」

 

千歌が俺の耳元で小さく囁いた…

 

 

「い、いいのか?前は高校卒業してからって…」

 

「えっと…ね、悠之君と一緒に生活していくうちにね…胸の奥がムズムズして…何かが溢れてきて……でも、本番って言ってもあんまりよく分かっていないんだけど…」

 

「そっか…」

 

俺は覚悟を決めた…

 

 

「今日は…千歌に沢山教えてあげるよ。」

 

「う、うん…///」

 

 

俺は千歌の胸に手を当て…そのままゆっくりと揉み始める…

 

 

「千歌、今どんな感じ?」ムニュ…

 

「う、うん…なんだか変な感じ…ムズムズする…」

 

千歌の胸…相変わらず大きくて凄く柔らかい感触が伝わる…

 

 

「…パジャマ脱がすね。」

 

 

 

千歌のパジャマのボタンを上からゆっくりと外していく…お風呂上がりだから、やっぱりノーブラだった…

 

 

俺はそのまま千歌の乳首に触れる…

 

「ひゃ…あん…♡」

 

「今…何か変化はなかった?」

 

「な、なんだか…身体が熱くなって…き、気持ちいいのかな?まだちょっと分からないや…」

 

「…続けるよ。」

 

 

千歌はそう言うが、少し息が乱れている…少し強めに攻めてみるか…

 

 

「千歌…ちょっと失礼するね。」

 

「え…?」

 

ペロ…

 

 

「や…悠之君…そ…そんなふうに…舐めちゃ……あ…♡」

 

「力抜いて…落ち着いてて…?」

 

「む、無理だよぉ…悠之君…赤ちゃんみたいだよぉ…」

 

 

もう千歌の乳首はピンっと…硬くなっていたが、構わず続ける…

 

 

「次…短パン脱がすから少し腰をあげて?」

 

「はぁ…はぁ…う、うん…」

 

千歌の短パンを脱がす…今日の下着は白色のようだ。

 

 

「千歌のここ…もうびしょびしょだね…。」クチュ…

 

「んぅ…!?」ピクッ

 

 

千歌が大きく反応をする…きっと初めての感覚なのだろう。

 

 

「千歌って…凄く敏感なんだね。」クチュ…クチュ…

 

「ひゃめ…へ…変な声…でひゃう…///」

 

「ううん…もっと聞かせて…千歌。」クチュ…

 

 

俺はそのまま下着を脱がし、徐々にスピードを上げていく…

 

 

「や…なんか出ちゃう…///」

 

 

千歌の中がキュッと固くなった…中からトロっとした愛液が漏れだした…。

 

「はぁ…はぁ…これ…凄すぎる…よ…これ…悠之君…。」

 

「気持ちよかった?」

 

「うん…すっごく気持ちよかった…♡」

 

「そっか…それはよかった。

本当はまだ続きがあるけど、今日はもう疲れただろう?」

 

「うん…続きはまた今度…」

 

「あぁ。」

 

 

今まで、キスしたり、一緒にお風呂に入ったりはしたけど…ここまでしたのは今日が初めてだな……本音を言うと、欲求を抑えるのが大変だった気がする…。

 

 

「ねえ、悠之君…」

 

「どうした?千歌?」

 

「エッチって気持ちいいね♡」

 

「やっぱり続きする?」

 

「うん…して…♡」

 




小野悠之

身長 171cm

体重62kg

髪色 黒

瞳 赤色

~幼少期~
女の子っぽい顔立ちをしてたので、幼少期時代に女の子と間違えられることがよくある。(千歌、果南、曜とは幼馴染)


他の情報は、これからの話次第で公開していきます。



ゴールデンウィーク編の時、かなり意味深な事をしていた2人ですが、ここまでは行ってませんでした……エッチなシーンって書くのが恥ずかしいですね(笑)



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第24話「指輪」

お久しぶりです!
本当は昨日の投稿する予定でしたが、時間がかかってしまいました…




ぽた…ぽた…と、俺と千歌の汗が浸る…小さな部屋であれだけ身体を動かしたのだから当然だろう…

 

 

「ね、ねぇ…悠之君…」

 

「どうした…千歌?」

 

「パジャマ…汚しちゃった…他のはもう洗濯しちゃったのに…」

 

「げ、そいつはまずいな…」

 

 

このまま千歌を俺の部屋から出して、万が一美渡姉や、志満姉に出くわしたりしたら、最初に俺が疑われてしまう…

 

 

「あ、じゃあこうしたらどうかな?」

 

 

千歌が俺のタンスを開け始める…

 

 

「あ~このTシャツとか良さそう~!これ、ちょっと借りるね!」

 

「え、ちょっ…」

 

 

千歌が俺目の前で堂々と着替え始める…さっき千歌の色々な所を見たばかりなのに、なんだかまた恥ずかしい気持ちになる…

 

 

 

「えへへ、ちょっと大きいけど、悠之君の服着ちゃった♡」

 

 

俺のビックTシャツを着て満足そうな笑顔を見せる…Tシャツ1枚で千歌の全身を覆っていて…なんだかいやらしい…。

 

 

「ねぇ悠之君…このまま一緒に寝よ?」

 

「そうだな…俺もなんだか疲れたしな…。」

 

「うん…私も疲れちゃったかも…」

 

「わ、悪い…ちょっと強くしすぎちゃったか?」

 

「ううん、悠之君は初めての千歌に優しくしてくれたこと…ちゃーんと、伝わったよ? 」

 

「そっか…なら良かった。」

 

 

俺はホッと…胸をなで下ろす。

 

 

「やっぱり千歌ってさ…いい匂いするよな。」

 

「そうかな?悠之君もいい匂いするよ?」

 

「そうか?どんな匂い?」

 

「うーんとね…千歌の大好きな匂いだよ♪」

 

「ふふっなんだそれ。」

 

「そう感じるくらい…悠之君の事が大好きなんだよ♡」

 

「そっか…俺も千歌の事好きだよ。」

 

「あー、そこは『大好き』じゃないの?」ムゥ

 

「そうだな…大好きだよ千歌…。」

 

 

俺は千歌のおデコに、そっとキスをする…

 

 

「うぅ…さっきまであんな事してたのに…悠之君…反則だよぉ…///」

 

「わ、悪い…千歌が可愛い事を言うから…」

 

「も、もぅ…!///私寝るー!!」ガバッ

 

千歌がそっぽ向く…ムキになってて可愛いらしいな…

 

 

「私の方がもっともっと大好きなんだから…」ボソッ

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「何でもないー!おやすみ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~翌朝~

 

 

千歌と共に寝ていだが、LINEの通知音で俺は目を覚ます…

 

 

(梨子からLINEが来てる…なんだろう?)

 

 

とりあえず、トーク画面を見てみる…

 

 

梨子

『悠之君♪昨晩は随分と楽しかったようね♪』

 

『少しは声を抑えるか~♪窓を閉めるかくらいはしてよね♪』

 

 

俺はそっとスマホの画面を閉じる…

 

 

(…聞かれてた)

 

 

「悠之君?」

 

「お、おう…おはよう。」

 

「どしたの?そんなに慌てて…」

 

「い、いや…何でもない…」

 

 

声が漏れてたって千歌にバレたらきっと恥ずかしがっちゃうから内緒にしておくか…。

 

「今日は2人でお出かけするんだから早くおきよ?」

 

「あ、ああ…そうだな。」

 

 

 

2人で朝食を済ませ、早速準備を始める…それにしても10月だってのに物凄い寒さだ…少し厚着していくか…。

 

 

「悠之君準備できた~?」

 

「あぁ、ちょうど終わったよー」

 

 

千歌は一緒にデートする度に、可愛い服におめかししてくれて凄く嬉しい…今日はニットのカーディガンか…知り合いに見せびらかしたくなるくらいに可愛い…

 

あ、そういや俺、友達全然居ないんだったわ。

 

 

「今日も可愛いな、千歌は。」

 

「えへへありがとう♪じゃあ行こうか!」

 

 

 

今日は、いつもの沼津ではなく静岡へ向かう…だから電車で14駅も移動するが、乗り換えはないのでそこまで大変ではない。

 

 

「ふわ…ぁ…」

 

「眠そうだな、千歌。」

 

「だって…昨日の夜…寝るの遅かったし…。」

 

「そっか…じゃあ少し寝る?」

 

「うん…そうさせて…。」

 

 

千歌が俺の肩に身体を寄っかかってくる…

 

 

「(やっぱり昨日のアレは千歌の身体に少し負担を掛けてしまっていたかもしれない…次はもっと慎重にしなくては…)」

 

 

「千歌、やっぱり昨日の夜は……」

 

「ん…むにゃ……」

 

 

さっきまで、元気いっぱいだったのに、もう寝てる……ん?

 

 

千歌が俺の手を握ったまま離さない…どうりで、手があったかいと思ったよ…

 

 

後、9駅もあるのにな…ちょっと暇だなぁ…

 

 

 

♢

 

 

 

『次は静岡~静岡でございます~』

 

 

長くなると思っていたが、案外あっという間だったな…

 

 

「おーい、千歌起きろよ~」

 

「むにゃ…もう着いたの…?」

 

 

のそのそと起き上がり、大きくあくびをする…なんかしいたけの面影があるな。

 

 

「おはよ悠之君…」

 

「おはよ、熟睡だったな。」

 

「えへへ…悠之君の肩が寝心地がよかったからかな~」

 

「あはは、そいつはどうも。」

 

 

『停車します~電車の揺れにご注意ください~』

 

 

俺と千歌はぎゅっと手を握る…

 

「行こっか。」

 

「うん!」

 

 

俺達が静岡駅に来た理由…それは…。

 

 

 

~先日~

 

 

それは、千歌の母さんからの呼び出しから始まった。

 

 

「悠之君~千歌~ちょっといいかな~?」

 

「あれ、お母さん?いつ帰ってきたの?」

 

「さっき帰ってきたところよ、それより2人に渡したい物があるの」

 

「何ですか?それは?」

 

 

千歌の母さんが二つの封筒を取り出す…。

 

 

「夏休みにお手伝いしてくれたお礼がまだだったからね~はいコレどうぞ~」

 

「い、いや下宿させてもらってる身でそんな——」

 

「ほんとにいいの!?やった~!!」

 

「悠之君もほら、遠慮しないで受け取ってね。」

 

 

 

 

♢

 

 

まあ、断るのも悪いしありがたく使わせてもらおう…

 

 

「静岡駅に来たのも凄く久しぶり~やっぱりこっちの方が賑わってていいな~」

 

「そうだな、買いたい物も沢山あるしな。」

 

 

2人で歩きながら、PA〇COに入る…やっぱり静岡駅と言えばここだろう。

 

 

「悠之君、どこから見ていく?」

 

「先に千歌の見たいところからでいいよ、俺は周りを見ながら探すから。」

 

「いいの?ありがとう♪」

 

 

早速ふたりでレディースの店に入る…やっぱり静岡のPA〇COだ、沢山の服が並んでる…。

 

 

「悠之君、これとかどうかな?」

 

千歌が手にしたのは、意外な事に白色のフード付きコートだった。

女の子らしくて、千歌にとっても似合いそうだ。

 

 

「いいデザインだな…一回着てみたらどうだ?」

 

「うん!」

 

 

♡♡♡♡♡

 

シャーっと音がして、千歌が試着室から出てくる

 

「ど、どうかな///」

 

「可愛いけど…なんで照れてるんだ?」

 

「い、いやぁ~思ったより女の子っぽいデザインだから、わ、私に似合うかな~なんて///」

 

「千歌は、可愛い女の子なんだからとっても似合ってるよ。」

 

「ほ、ほんと?///」

 

 

真っ赤に染まった千歌の顔を見ていると、俺もなんだか顔が熱くなってくる……

 

 

「クスっ悠之君もどーして照れてるの?」

 

「な、それは…千歌が…」

 

「私が?」

 

「い、いいから買ってきなよ外で待ってるから。」

 

「えー、一緒に買いに行く!」

 

千歌が俺の腕をにぎる…こうなると、もう断れないな…。

 

 

 

その後、2人で並んで買うことになった…もちろんお値段はお高めだったが、セール品だったから少し安くなっていたので一安心した。

 

 

「ねーねー、悠之君もコート買おうよ~」

 

「俺も?」

 

「うん!2人で一緒に着れたらいいな~って。」

 

「ふふっ分かったよ、買いに行こう。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの後、メンズ店でフード付きコートを購入した、色はカーキにすることにした。

 

そして、色々な所を回っていくうちに日が暮れ始めた。

 

 

「もう夕方か…もう買いたいものは無い?」

 

「あ、まって、あと一つだけある!」

 

 

千歌が向かったのはアクセサリーショップだった。

 

 

「何が欲しいんだ?」

 

「えっとね…これ!」

 

持ってきたのは同じデザインの指輪を二つ……そういう事か。

 

「そ、その悠之君とずっと一緒に居たいから…えっと…」

 

「いいな、それ」

 

「え?」

 

「買おうぜ、その指輪。」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「その指輪があれば、どこへ行っても千歌と一緒に居られそうで欲しくなった。」

 

「あ、ありがとう…!!」

 

ホントは、俺から言い出したかったけど、千歌に先越されちゃったな…

 

 

「じゃあ、指輪買って帰ろっか。」

 

「うん!」

 

 

♢

 

 

 

俺達が店から出た途端に雨が降り始めた……ちょっとツイてないな…

 

 

「どうしよ、傘もってきてないのに…」

 

「…千歌、荷物貸して。」

 

「え、う、うん!」

 

「駅まで走るぞ!」

 

 

2人で雨の中走り抜ける…丁度いいタイミングで電車も来たみたいだし、ソレに乗車することにした。

 

 

「ふ、ふう…ま、間に合ったね…。」

 

「そ、そうだな…ちょっと濡れちゃったな。」

 

「ぷぷっ…悠之君変な髪型になってるよ。」

 

「え、マジで!?」

 

慌ててスマホを取り出す…

 

「嘘だよ~♡」

 

「な、騙したな~!」

 

「えへへ、ごめんごめん♪」

 

 

『電車、出発いたします…車内の揺れにご注意ください~』

 

 

ガタン!

 

 

「うわっ!?」

 

「ちょっ千歌!?」

 

ギュッ…!

 

 

「…大丈夫か?電車の揺れには気を付け…」

 

「ゆ、悠之君……///」

 

 

顔が…近かった。

 

ただ近いだけじゃなく、電車の端に立っていた俺のを逃がさないくらいに。

 

千歌との距離が近かった。

 

 

「(ど、どうして…こんなに緊張するのだろう…昨日の夜あんな事したばっかなのに…)」

 

「(ただ近いだけじゃない…千歌が俺の身体を抱きながら倒れ込んできた…それに、千歌の心臓の音も聞こえる…)」

 

 

互いに、顔を赤らめながら、見つめあったまま動かない…

 

 

「あ、あの…千歌…そろそろ…」

 

「まって!」

 

「千歌?」

 

「こ、このままじゃ…ダメ?」

 

千歌はよく俺の事をずるいと言う…だけど、心臓が破裂しそうなくらいな今の俺にそんな事を言うのか…

 

 

「千歌も…やっぱりずるいよ…。」

 

 

 

 

俺は耐えられなかった…こんな満員電車の中で、たくさんの人がいるの中で…千歌に口付けをしてしまった…。

 

 

「恥ずかしい…か?」

 

「恥ずかしいけど…嫌じゃない…」

 

「もう1回…する?」

 

「うん…♡」

 

 

もう一度俺たちは唇を合わせた。




TーSPOOK…行きたかった


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第25話「あの子は壁が好き」

またまたお久しぶりです!




もう朝か…

 

俺はスマホの画面を開く…いつも通りの時間だ…。

 

 

身体を起こそうとすると、何だか妙に身体が動かない……あぁそうか、最近天気がよく崩れるから少し風邪気味なのか…。

 

 

 

ガチャ…

 

「悠之君~起きた?」

 

「おぉ、千歌か…おはよ。」

 

「どしたの悠之君?なんか変な声になってるよ?」

 

 

俺は、自分の声をあーっと出してみる…少し鼻声になっていた…。

 

 

「うん…ちょっと体調が良くないかもしれないな。」

 

「えー!?だ、大丈夫なの!?」

 

「んーまあ、これくらいだったら全然平気さ。」

 

「ほんと?……じゃあ、朝ごはん食べに行こう?」

 

「ああ。」

 

 

 

♢

 

「「いってきまーす」」

 

外に出てみると11月とはとても思えない寒さだった…。

 

「うぅ…11月なのにもうこんなに寒いんだね…」

 

「そうだな…今年は秋という感じがあまり無かった気がするしな。」

 

2人で手を繋ぎながらバス停に向かう…

 

「千歌、その指輪ずっと付けてくれてるのか。」

 

「これ?えへへ…この指輪を付けてるとねいつでも悠之君がそばに居てくれてる気がして…ずっと付けていたくなるんだ♪」

 

「そっか…買ってよかったな」

 

「うん!」

 

もちろん俺も肌身離さず身につけている…デザインも結構気に入っているから暇な時にチラチラと見る事も多くなっている。

 

「おはよう、千歌ちゃん、悠之君。」

 

「あ、梨子ちゃん!おはよー!」

 

「おはよう梨子。」

 

「二人共おはよう、今日も相変わらずラブラブだね♪」

 

梨子がクスっと笑顔をみせる。

 

 

「ラブラブだなんて…そんな…///」

 

「それに、この前2人の声も……」

 

「あー!!バ、バスが来たから早く行こうぜ!!」

 

 

あ、危ねぇ…声が漏れてたことは絶対に聞かれてはダメだ…ちょうどよく来てくれたバスには感謝しなくては

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「悠之~梨子~ハロ~!!」

 

「おはよう、鞠莉ちゃん」

 

「おはよう鞠莉。」

 

今日も元気よく鞠莉が寄り添ってくる。

 

 

「あれ~?今日の悠之ちょっとおかしくない?」

 

「あぁ…ちょっと風邪気味かもな。」

 

「そうなの?じゃあ、お大事にね!」

 

 

そう言い、鞠莉は隣の教室へ入っていく…きっとお昼休みにまた来るだろう…。

 

 

「さ、私達も教室へ入ろ?」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「体調が悪くなったら…その…すぐに私に言ってね?」

 

「ん?あぁ、サンキューな。」

 

 

 

ぼーっと授業を受けながら先生の話を聞く…何だか今日は全然頭に入ってこない…ほんとに体調が良くないのかもしれない…

 

「じゃあ、この問題を小野君」

 

今日は寒いくせに日差しだけやたら強い…窓側の席の俺からすれば暑っ苦しくてたまらない…。

 

「小野君?」

 

「ゆ、悠之君…呼ばれてるよ?」

 

「あ…はい、すみません。」

 

 

このタイミングで呼ばれるとは今日はツイてない…それに、話を全然聞いてないから内容が全くわからん…。

 

 

「すみません、ちょっと分からないっす…」

 

「あら、悠之君にしては珍しいわね?

でも、もうすぐ受験なんだからもう少し気合いを入れなくちゃダメよ?」

 

受験…そっか俺もそろそろ…。

 

 

 

♢

 

 

「悠之君、やっぱり今日は無理しない方がいいよ?

すぐに保健室に…」

 

「いや、別に大丈夫だよ…保健室のベット硬いし…。」

 

「だーめ、無理したらもっと辛くなっちゃうよ?」グイ

 

「ちょ、別に大丈夫だって」

 

梨子が袖を強引に引っ張るので振りほどこうとするが、意外と力が強く、中々離してくれない…もう廊下まで引きずり出されてしまった。

 

「もう、往生際が悪いんだから…いい…から…早く!」

 

「わかった…わかったって、とりあえず後ろ向きで歩くと危ないぞ?」

 

 

やれやれ…ここまで言われちゃうと従うしかないか…。

 

 

「別にそれくらい大丈夫……ってきゃあああ!!??」

 

「お、おい!手を離せ!!」

 

 

ドサ……

 

 

 

「わ、悪い…怪我はしてない?」

 

「ゆ、悠之君…」ドキドキ

 

 

梨子が俺を引っ張りながら倒れたので、俺が梨子の身体を押さえつけるような形になってしまった…。

 

 

「と、とりあえず離れよ…な?」

 

「ま、まって…」

 

「え?」

 

「も、もう少し…このままでいて…?」

 

「でも、これじゃあ俺の立場が…」

 

 

今俺は、梨子の身体の上に抑え込んだ形になっている…俺の両腕は梨子の顔の横…

 

 

顔の横……?

 

 

あ、そうか!

 

 

「梨子、壁ドンとか床ドンとか好きだろ?」

 

「え、そ、そんなことは…」

 

「本当か?そのわりには嬉しそうな顔をしているけど?」

 

「うっ…」

 

「どうなんだ?」ズイ

 

「うぅ…そうです…///」

 

「やっぱりそうか…少女漫画とか好きなの?」

 

「え?あ、うん!そうよ!」

 

 

あ、危ない…壁ドン物の同人誌が好きだなんてバレちゃったら…きっと…

 

「梨子?」

 

「あ、うん!も、もう離れてもいいよ。」

 

 

ふう…やっと解放された…。

 

 

「悠之君…その、また今度…さっきと同じことを……」

 

「ダメだ、もしその事が千歌にでも知られたら面倒な事になってしまう。」

 

「そ、そう…だよね…。」

 

「…ったく。」グイ

 

「きゃっ…!?」

 

 

ドン…

 

 

梨子の身体を無理やり、壁側に動かし、壁に手をつく…。

 

 

「…もうやらないからな」

 

「悠之君って…もしかしてツンデレ?」

 

「さあな、ただ…」

 

「ただ?」

 

「お前が、幼馴染以外での初めての友達だからだ。」

 

「くすっ…変なの♪」

 

「はぁ?別にそんなに笑わなくてもいいだろ?」

 

 

梨子がクスクスといつまでも笑い続ける…

 

 

「悠之君のそういう所、大好きだよ♪」

 

「…浮気はしない主義なんで。」

 

「分かってますよ~友達として、だからね?」

 

「んじゃ、俺も友達として君の事が大好きですよ。」

 

 

あくまで…だからな?

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

学校も終わり、ようやく家に帰ってこられた…やっぱり今日は明らかに調子が悪い…。

 

 

「ただいま…」

 

「おかえり悠之くん…って、どうしたの!?

顔色がすごく悪いよ!?」

 

「あぁ…やっぱり具合が悪いみたいだ…。」

 

「と、とりあえずお部屋でゆっくりしてて?今旅館の手伝いがあるから…」

 

「りょ、了解…。」

 

 

やばいな…朝はそこまで気にならなかったのにこんなに辛くなるとは…風邪も舐めてたらダメだな…。

 

 

 

♢

 

 

アレから2時間…まだ俺の部屋には誰も来てくれない…別に寂しい訳ではないんだが…

 

 

「悠之君大丈夫!?」

 

そう思った矢先に千歌が部屋に来てくれた…

 

「おう…風邪は油断したらあかん奴やな…」

 

「ゆ、悠之君…どうして関西弁っぽくなってるの?」

 

 

千歌がそっとおデコに手を添える…少し冷たくなってる…水仕事でもしてきたのだろうか。

 

 

「ん~あんまりよくわかんないな~…じゃあ、こうしよう…」

 

今度はおデコとおデコを合わせ始める…何だか、千歌に襲われているみたいで少し興奮する…。

 

「んー、やっぱり熱いなぁ……このままで待ってて?

お粥作ってくるから。」

 

「あ、ああ…サンキューな。」

 

 

 

 

千歌が部屋を出ていったと思ったら、かなり早く帰ってきた…きっとあらかじめ用意してくれてたのかな?

 

「はい、悠之君あーん♡」

 

「あー…熱っ!!」

 

「あ、冷ますの忘れてた…フーフー…」

 

「こ、今度はちゃんと冷ましてくれ…」

 

千歌がもう1度お粥をすくう…

 

「フーフー…はい、あーん♪」

 

「あー…うん、すごく美味しい。」

 

「えへへ、ありがとう♡」

 

 

♡♡♡♡♡

 

 

「それにしても、悠之君が風邪だなんて…久しぶり見た気がする。」

 

「そうだな…千歌の前ではあんまり体調を崩したことはなかったからな…。」

 

「じゃあ、1晩悠之君の看病をするからね♪

去年のクリスマスの時もお世話になっちゃったし。」

 

「そっか…ありがとうな。」

 

千歌の頭をよしよしと撫でる…アホ毛がぴょんぴょん動いてて…まるで小さな子犬のようだ。

 

 

「じゃあ風邪ひくといけないから、身体の汗を拭いちゃおうか。

さ、脱いで脱いで~♡」

 

「お、おう…」

 

 

千歌の前で服を脱ぐのはあんまりしないから、少し恥ずかしいな…。

 

 

「じゃあ…拭くね?」

 

「あ、あぁ…」

 

身体に浸る汗を千歌がタオルで吹いていく…

 

 

「えへへ…悠之君の身体…ちょっと筋肉があっていいね♡」スリスリ

 

「ちょ、ちょっと…くすぐったい…。」

 

「ここか~ここがいいのかなぁ~?」

 

な、なんだこれ…なんかいけない事してるみたいだ…。

 

 

 

♢

 

 

 

「悠之君、調子は少しは良くなった?」

 

「あぁ、千歌が看病してくれたから明日には良くなっているさ。」

 

「本当?よかった~」

 

俺にとっての1番の癒しは千歌の笑顔だ…だから、ずっと見ているだけで心が落ち着く。

 

 

「悠之君…」

 

ちゅっ…

 

千歌が俺のおデコにキスをする…

 

「早く元気になってね♡」




この前、Aqoarsのファンミのビューイングに行ってきました!

ビューイングでも、やっぱり楽しいですね♪


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第26話「ごめんね」

もうすぐクリスマス…俺がここにそろそろ帰ってきて約一年になる…辺りの街も商店街もクリスマスの飾り付けがされ、イルミネーションが綺麗に光っている…。

 

 

「ここの商店街もイルミネーションがすごく綺麗…ずっと眺めていたくなるくらいだよ…ね、悠之君?」

 

「そうだな…俺は、イルミネーションよりも隣の方をずっと見ていたくなるよ。」

 

俺は、千歌の顔をじっと見つめる…。

 

 

「もー、それ本気で言ってるの?///」

 

「あぁ、本気だよ。」

 

「もぉ…大胆なんだから…///」

 

 

ぎゅっ…と千歌が俺の腕を組む…。

 

「去年の冬も…こうやって一緒に暖まったよね。」ギュッ

 

「そうだな…もう一年か…そういや、千歌?」

 

「なぁに?一年経って何か変わった?」

 

「うん…前も可愛いかったけど、今はもっと可愛いくなった気がする…」

 

「え、そ、それは…その…悠之君がそばに居るから…頑張ってお洒落しようかなって…///」

 

 

モジモジとしながら千歌が顔を赤くする…。

 

 

「こ、こんなこと言わせないでよ…恥ずかしいよ…。」

 

「ん?別に恥ずかしがることはないよ?」

 

「へ…?」

 

「俺の為に頑張ってお洒落してくれたんだろ?」

 

「う、うん…」

 

「ありがとな、千歌。」

 

 

俺は、そう言いながら千歌の頭をそっと撫でる…

 

 

「う、うん…どういたしまして///」

 

「千歌…」

 

 

俺は千歌の顔との距離を近づける…

 

 

「め!」

 

千歌が俺の唇に指を当てる…

 

「今日はデートじゃなくて、旅館のイルミネーションを買いに来たんだからダメ!夜までお預けだよ?」

 

「ごめんごめん、ついな…。」

 

「もぅ…隙があればすぐにキスしようとするんだから…」

 

「悪い、今は大人しくするよ。」

 

「まぁ…そんな大胆な所も大好きだけど…」ボソッ

 

「ん?何が言ったか?」

 

「んーん、何にも♡」

 

 

♡♡♡♡♡

 

 

~雑貨屋~

 

 

「わぁ~いろんな色があるよ~!あ、このトナカイさんのイルミネーションも可愛いな~♡」

 

「そうだな…あ、これとかもいいな。」

 

「ネコの…カチューシャ?」

 

「なぁ、千歌…」

 

「え、ま、まさか…」

 

「あぁ。」

 

「い、いやぁ…流石にそれはちょっと恥ずかしいよ…」

 

 

千歌は恥ずかしいがってるが、俺は、見てみたい…

 

 

「少しだけでもいいから、頼む!」

 

「う、うん…そこまで言ってくれるならなら…。」

 

「じゃあ、失礼するね。」

 

 

俺は、千歌にカチューシャを付けてみる…動物的な可愛いさもプラスされて、今すぐに抱きしめたくなるくらいに可愛い…

 

「ど、どう…?」ピョコピョコ

 

「可愛い…こんな可愛いらしいネコがいたらずっと甘やかしちゃいそうだ。」

 

「も、もう…そ、そんなに褒めたって…嬉しくないもんね!」

 

「すーっごくニヤニヤしてるぞ?」

 

「も、もぉー!!!」

 

 

 

♢

 

 

『お会計2500円になります』

 

「あ、そのカチューシャ結局買うのな。」

 

「その、悠之君が好きなら…別にいいかなって。」

 

「ありがとう、千歌。」

 

「もぅ…気が向いた時…だけだからね?」

 

「分かってるって。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

大体の買い物が終わり、2人で喫茶店に行くことにした…。

 

 

 

~松月~

 

 

「懐かしいね~松月に来るのも…。」

 

「そうだな…アレからもう約1年か…千歌とずっと居たからかな?

あっという間に感じるよ。」

 

 

外にいた時は、白い息が出たし…そろそろ雪が本格的に迫ってきているのだろう。

 

 

「ねぇ…悠之君。」

 

「どうした?」

 

「悠之君はもう進路って決まってるの?」

 

「──っ!」

 

 

そうか…俺は、三年前この時期に居なくなったから心配してるのか…

 

 

「もう決まってるよ、とゆうか夏休みの時に確定した。」

 

「え…?」

 

「千歌には黙っていたけど…俺は、もう夏で受験が終わってたんだ。」

 

「そ、そうなの!?なんで言ってくれなかったの!?」

 

千歌が痛いところをつく…。

 

 

「それは…千歌が悲しんじゃうかもしれないから。」

 

「どうして?」

 

「俺は…」

 

 

『今年中に東京へ帰らなくちゃ行けないから。』

 

 

 

俺の一言で周りの空気が凍りつく…

 

 

 

「それって…東京の大学へ行くことが決まった…ってこと?」

 

「あぁ…だから…」

 

「凄いじゃん!悠之君!!」

 

「え…?」

 

 

予想外の返事が返ってくる…。

 

 

「だって、それって悠之君の行きたい場所に受かったってことでしょ?それって凄いことだよ!」

 

「でも、俺と千歌は…」

 

「私は嬉しいよ?だって悠之君の希望が叶ったんだもん…!」

 

 

千歌は悲しそうな顔をすると思っていたけど、少し予想外だ…

 

 

 

「千歌…俺が東京にまた帰っちゃったら…また、離れ離れになっちゃうんだぞ?」

 

「わかってるよ…そんなこと…わかってる…でも、私は…離れ離れになっても…私、寂しくないよ?」

 

「千歌…俺は……」

 

俺はチラっと千歌の顔を見る…

 

「千歌?」

 

「…別に寂しくなんかないもん…また…いつでも会えるもん…」

 

「千歌…」

 

俺は、椅子から立ち上がり、千歌の身体を抱きしめる…。

 

 

「…泣いてもいいんだよ?」

 

「嫌だ…もう、悠之君の前で、悲しい顔は見せたくないんだよ…」

 

「千歌…もっと感情に素直になってくれ…。」

 

「嫌だよ…そんなことしたらまた、昔の時みたいに弱い自分になっちゃうよ…。」

 

「昔なんて関係ないよ…感情を殺してまで自分を追い詰める必要なんてないんだから…。」

 

「悠之君…」

 

「俺は、無理をする千歌よりも、素直な千歌の方が好きだよ。」

 

「悠之君…やっぱり君はいつも反則だよ…。」

 

 

そう言うと…千歌は吹っ切れたように俺の胸で泣き…そのまま俺の身体を離さなかった…。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「…落ち着いた?」

 

「……うん。」

 

「じゃあ、帰ろっか。」

 

俺は、千歌の手を握る…。

 

「まって…」

 

「うん?」

 

俺が歩こうとした時、千歌が呼び止め…

 

そのまま、俺の唇にキスをした…

 

 

「覚えてる?悠之君はここで…この暗闇の中で初めてキスをしてくれたんだよ?」

 

「あぁ…あの時か。」

 

「私は嬉しかったよ…初めてのキスの相手が悠之君で…。」

 

「俺も嬉しかったよ…って言ってもいきなりキスをしだしたのは俺だけどな。」

 

「くすっ…そう言えばそうだったね♪」

 

 

二人で一緒に笑い合う…

 

 

「悠之君…やっぱりもう1度…そっちから…してよ。」

 

「…わかった。」

 

 

俺は、千歌の身体を抱き寄せながらキスをする…。

 

 

「千歌…」

 

「なぁに?悠之君?」

 

「遠くに離れても…俺は、千歌の事をずっと愛してるから。」

 

「私もだよ…悠之君…。」

 

 

「「大好き。」」

 

 




次回…最終回です。


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Goodbye,s not the end

~12月24日~

 

今日はここに居られる最後の日…本当は、12月上旬に帰る予定だったが、大学の方に無理を言って日にちを遅らせてもらえた。

 

何故俺が早く大学の方へ行かなくてはならないのかと言うと、

俺の受けた学校は新学期が始まる前に、仮入学として授業を受けなければならないからだ。

 

だから、残りの高校生活は、高校と大学の二つを両立していかなくてはならない…だから、俺は今年中までしか居られないのだ。

 

残された時間を大切にするために、1日を大事に過ごしてきたが、逆にかなり充実した生活を送っていたので、より時間が早く感じてしまった…。

 

 

 

「おーい、千歌起きろー」

 

「んぅ…もうちょっと~」

 

「ダメだぞ、もう朝食は出来てるんだから」

 

「ん…じゃあキスして…」

 

「やれやれ…」

 

 

寝起きの千歌にそっと唇を交わす…

 

 

「ん…えへへ…おはよ悠之君。」

 

「おはよう千歌、寝起きなのに嬉しそうだな?」

 

「うん…今日までこうして沢山したな…って…思ったんだ。寝起きのちゅー♡」

 

「確かにそうだな…まぁ、とりあえず今は起きろ?

朝ごはんが冷めちゃうぞ?」

 

「はぁ~い」

 

 

 

♢

 

 

 

「それで、今日千歌が行きたいところってどこなんだ?」

 

「うん、それはね…」

 

 

千歌に腕を引っ張られながら歩いていくと、1台の連絡船が見える…

 

 

「あの船、どこか見覚えがあるな…どこへ行くんだ?」

 

「えへへ、それは着いてからのお楽しみって事で♪」

 

 

『間もなく出航いたします…船が揺れますのでご注意ください。』

 

 

「え、もう出ちゃうって!?早く行こ!」

 

「あ、あぁ…。」

 

 

千歌に手を引っ張られながら船の中へ入る…

 

 

『それでは、あわしまマリンパーク行き…出航いたします。』

 

 

「そっか、今日千歌が連れていこうとしてくれてるのは、

『あわしまマリンパーク』なんだね。」

 

「うん!悠之君がこっちに来てからまだ1度も来てないなーって。」

 

「すごく小さい頃には行ったことあるけどほとんど覚えてないから新鮮味が強いな。」

 

「えー!?あんな事があったのに?」

 

「…あんな事って?」

 

「えっとね…たしか…」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~11年前~

 

 

「ゆーじくん~おかーさん~どこ~?」メソメソ

 

「みろよー、コイツ迷子だってー!」

 

「ちょーだせー!」

 

「まーいご!まーいご!」

 

幼稚園くらいの男子達が私のことをいじめようとした時にね…

 

「こらー!!千歌の事をいじめるなー!!!」

 

 

私のことを探しに来てくれただけじゃなくて、いじめっ子達も叱ってくれたんだよ?

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

~現在~

 

「えー…そうだっかな?」

 

「私は嬉しかったよ♪今でもずーっと覚えていられるくらいのことだもん!」

 

「あはは、それはどういたしましてだな。」

 

 

『間もなく、到着いたします…船の揺れにご注意ください。』

 

 

アナウンスが聞こえたので窓の外を眺めてみると、いきなりイルカのプールが見えた。

 

 

「おぉ、水族館の入口にイルカのプールがあるなんて凄いな。」

 

「でしょでしょ~…ってほんとに覚えてないんだね…。」

 

「はは…すまんすまん。」

 

 

船から降りると、千歌がリードを取るように手を繋ぎ始めた。

 

 

「んー…まあ、いいか!今から楽しい思い出を作ればいいんだもん♪」

 

「あぁ…そうだな。」

 

「じゃあ、行こ!悠之君に見せたいところがあるんだ~♡」

 

 

千歌が見せたいところか…可愛らしいペンギンとかかな?

無難にアシカとかもあるかもしれん…

いや、意外ととクラゲの水槽とか…?

 

 

「ここだよ~♪」

 

 

一つの建物が見えてきた…なんて書いてあるんだ…?

 

「カエル館………え、カエルゥ!??」

 

「うん♡カエルさんだよ♪」

 

「えっと…カエルはちょっと…」

 

「い~から♪い~から♪カエルさんのいい所を知るチャンスだからさ~」

 

「でもなぁ…。」

 

「うぅ…悠之く~ん…」ウルウル

 

「そんな捨てられた犬みたいな顔しても……」

 

 

 

♢

 

 

そして、半場強制的にカエル館に連れてこられた

 

「わぁ~このカエルさんも可愛いなぁ~♡」

 

まあ、千歌の幸せそうな顔が見られたからいいか。

 

「ねぇねぇ、悠之くんも触ってみてよ~」

 

「えぇ……ゲコゲコ言ってるし…」

 

「そりゃあそうだよ、カエルだもの。」

 

 

おそるおそる触ってみるが、少しぬるっとしたこの感触…やっぱり慣れないなぁ……でも、このカエル…

 

 

「瞳が可愛いかも…」

 

「ほんとに!?興味を持ってくれたの!?」

 

「ま、まぁ…少しだけ。」

 

「じゃあ、次はあれ行ってみよー!」

 

ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ……

 

「い、いやいやいや!流石にちょっと多すぎるよ…。」

 

「でも、よく見てごらん?1匹1匹違う目をしてたり、顔の大きさとかが結構違ってたりするんだよ?」

 

「こんなにたくさんいると、直視できないなぁ…。」

 

 

たくさんいるとやっぱり怖い…俺って情けないなぁ…。

 

 

 

 

 

♢

 

 

「いやー、たくさん回ったけど、あわしまマリンパークってやっぱり広いんだな~」

 

「だね~それにちょっとお腹すいてきちゃった!」

 

「この辺りで美味しい店って何かあるのか?」

 

「えーっとね…『いけすや』とか『チェレステカフェ』とかあるよ。」

 

どっちも初めて聞く名前だな…でも、千歌が知ってる店ならかなり美味しい店と見た。

 

 

「カフェは普段からよく行くし、その『いけすや』ってところに行ってみないか?」

 

「ふっふっふ…流石は悠之君…お目が高いね…」

 

 

千歌がドヤ顔をする…

 

 

「その『いけすや』は私のイチオシのアジ定食屋さんなんだよ!」

 

「へぇ~じゃあ期待できそうだな。そこにしようぜ。」

 

「うん!決まり!」

 

 

♢

 

 

 

歩いて約5分…思ったよりも早く、いけすやという店についた。

 

「ちなみに、悠之君は何を頼むの?」

 

「んー、そうだな…」

 

メニューをめくっていると、沢山のアジ定食が出てくる…どれもこれも美味しそうだ…静岡の魚はほんとに美味しいから迷ってしまう…。

 

 

「アジフライ定食なんて美味しそうだな。」

 

「え…?」

 

「え?」

 

珍しく千歌が冷たい目線を俺に送る…

 

「え…っと…悠之君?聞き間違いかな?今なんて?」

 

「アジフライ定食なんていいかなーって。」

 

「アジ…フライ?」

 

「あぁ。」

 

「悠之君っ!!」バン!

 

「は、はい!」ビクッ

 

 

またまた珍しく千歌が喝を入れるような声を上げた。

 

 

「せっかく美味しい『いけすや』に来たのに、何でアジフライを頼むの!!」

 

「いや、だって…美味しそうだったから。」

 

「アジフライだったらいつでも食べれるでしょうが!

何なら今すぐ家に帰って千歌が作ってあげよっか!?」

 

「あ、それもいいかもな」

 

「いやいやいや、何でそんな簡単に受け入れちゃうの!?」

 

「千歌の手料理が好きだから。」

 

「ふぇっ!?そ、そんなに褒めたって…えへへ…///」

 

「顔、すっごくにやけてるぞ?」

 

「う、うるさいなぁ~///…と、とにかく!悠之君にはもっとこの店ならではのものを食べてほしいの!」

 

 

あぁ…もうほんとに可愛いな…千歌は。

 

 

ポンっと千歌の頭に自分の手を添える。

 

「つまり、千歌は俺に食べてほしい料理があるって事だろ?」

 

「それは…その、まぁ……」

 

「ふふっだったら早く言ってくれればいいのに……

じゃあ、俺は千歌と同じものを頼むことにするよ。」

 

「え、いいの?アジフライじゃなくなっちゃうけど…」

 

「いいよ、千歌の好きな物を俺も食べてみたい。」

 

「も、もぅ…最初から言ってくれればいいのに……///」

 

「んー?最初から素直じゃなかったのはどっちかな?」

 

「うぅ…悠之君のいじわるぅ~」

 

 

 

このあと二人で、二食感活あじ丼を堪能した…こっちを選んでおいて正解だったな。

 

 

♢

 

 

もう既に夕方になり、綺麗な夕日が海を照らし出す…

 

「今日はいっぱい歩いたな…でも、この夕日が何だか疲れた身体を癒してくれる…そんな気がするよ。」

 

「うん…そうだね…」

 

「千歌…?」

 

「私ね、悠之君がまた東京に帰っちゃうって聞いてからずっと考えてたことがあるんだ…。」

 

 

千歌がゆっくりと距離を近づける…

 

 

「私も、将来の事…色々考えなくちゃなって思って…悠之君の大学のことをちょっと調べてみたんだ。

そしたら、色々な学部学科が書いてあった…選択の幅も多くて、たくさんのことにチャレンジできそうな感じがした…。」

 

 

珍しい…あの千歌がこんな真剣に将来のことを考えてただなんて…。

 

 

「だから、私は決めたんだ…」

 

『私も、悠之君の大学へ目指す!』

 

「迷惑…かな?」

 

「そんな訳ないよ、千歌も、俺と同じ大学に来てくれたら…俺だって嬉しいに決まってる…!」

 

「悠之君…」

 

「でも、今の千歌だとすこ~し勉強しなくちゃダメだぞ?」

 

「うん、分かってる!だから見てこれ!」

 

「なにそれ……って何で通知表を持ち歩いてるんだよ!?」

 

「えへへ…昨日もらってびっくりしちゃったから持ってきちゃった♡」

 

 

や、やれやれ…もし、落としたりしたら大変なのに…。

 

 

「で、どうかなどうかな?」

 

「どれどれ……おぉ、一学期よりも格段にあがったね。」

 

「でしょ~悠之君が教えてくれたところをちゃんと覚えるように勉強したんだ~♡」

 

「そっか…これならきっと、大丈夫そうだな。」

 

「うん!悠之君のおかげだよ!」

 

 

嬉しそうに、千歌が笑顔を見せる…この笑顔を見られるのが今日で最後だと思うと悲しい気持ちになってくる…

 

分かってる…別に永遠の別れになる訳では無いのに…それに、千歌は俺と同じ大学を目指してくれると言ってくれた…でも…

 

 

この悲しさは何なのだろう……

 

 

「悠之君…?」

 

 

気がつけば俺はもう涙が止まらなくなってしまっていた…

ずっとそばにいてくれた人が明日でお別れをしなくてはならないのだから……

 

 

「ごめん……」

 

「ううん…謝らないで…悠之君。」ギュッ

 

 

千歌がやさしく俺の事を抱きしめる…。

 

 

「悠之君は私に言ってくれたよ…?正直になって…って。」

 

「…うん。」

 

「だから今は…我慢しなくてもいいんだよ?」

 

普段は、小さくて可愛い妹のように思ってきたけど…

 

今は…やさしい母親のような…暖かい温もりで溢れている…

 

 

 

 

♢

 

~翌日~

 

 

「悠之君、そろそろ行くよ~」

 

「あぁ、すぐ行く!」

 

千歌の声が外から聞こえたので急いで表へ出てみる…。

 

 

「み~んな、待っててくれたよ。」

 

 

外に出ると、この内浦で知り合った友達…幼馴染みの曜と果南達が待っていてくれた。

 

 

「みんな…」

 

 

人と接するのが苦手なはずの俺が、こんなにたくさんの友達が出来ていたんだな…

 

 

「悠之さん!東京に行っても頑張って欲しいずら!」

 

「向こうへ行っても、わたくし達のことを忘れてはいけませんよ?」

 

「ルビィも応援してます!」

 

花丸ちゃん…ダイヤ…ルビィちゃん

 

「また、いつでも戻っておいで!私も曜も待っているから!」

 

「東京でも全力ヨーソローだよ!」

 

「くっくっく…堕天使の翼でいつでも迎えに来てあげるわ♡」

 

曜…果南…善子ちゃんに…

 

「悠之!短かったけどお陰で毎日がベリーグッドだったわ!ほんとにセンキューデ~ス!」

 

「悠之君、私に勇気をくれてほんとにありがとう…東京でも頑張ってね!」

 

そして…鞠莉…梨子…。

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、みんな…。きっと…いや、絶対に帰ってくるから!」

 

 

 

~~~~~

 

 

東京行きの電車まで、あと10分か…そろそろ、ホームへ向かった方がいいかもな。

 

「あ、悠之君、私も最後までお見送りするよ!」

 

「あぁ、千歌…サンキューな。」

 

「やっぱりさみしい…?」

 

「そりゃあな…でも、もう大丈夫さ。」

 

 

二人でホームへ向かう…

 

 

「そうだ、悠之君に渡さなくちゃいけないものがあったんだった!」

 

「え…今、手荷物がやばいんだけど…」

 

「はいこれ!」

 

 

『お誕生日おめでとう、悠之君!』

 

「……!!」

 

 

「えへへ…私が忘れてる訳ないでしょ~♡12月25日は悠之君の誕生日だもんね~!」

 

「覚えててくれたんだ…ありがとう…!」

 

 

『熱海行きの電車がまいります…黄色い線の内側までお下がりください…』

 

 

「わ、悪い千歌、このプレゼントは電車の中で見るよ!」

 

「うん!気をつけてね!」

 

「そうだ、最後に言い忘れてた!」

 

「また出会えて…ずっと暮らしていけるようになったら…俺達……結婚しよう!!」

 

 

「……!!うん!絶対だよ!!!」

 

 

 

 

「じゃあ…またな。」

 

「うん!また会おうね。」

 

最後にキスをして、電車に乗り込む。

 

 

『ドア…閉まります…ご注意ください。』

 

 

 

そのまま、電車は東京へ向けて走り去った…

 

 

 

「行っちゃった……」

 

「またね…悠之君。」

 

悠之君と同じように私も涙をこぼした

 

 

 

 

 

~電車内~

 

(そういえば、プレゼントって何をくれたんだろう…)

 

 

そっと袋の中を開けてみる…

 

 

中には、みんなのメッセージが書いてある色紙と、ネックレスが入っている…。

 

 

色紙の真ん中に大きく『がんばって』と書いてある…みんな優しいな…俺が東京から内浦に来る時と全く逆だ…。

 

 

プレゼントのネックレスを付けてみる…電車の中には人がほとんど居ないので周りを気にせずに鏡で確認出来た。

 

 

「ありがとう…みんな。」

 

 

そうだ、さよならは終わりじゃない…

 

きっと…また新しいスタートなんだ…。

 

 

 

 

 

to be continued…

 




はい…これで高校生編のストーリーは最終回を迎えました。

続きは…あります!!


次回から大学生編を更新していく予定です。

これまであまり登場しなかったキャラクターも入れていくつもりです!

この作品を書いてもうそろそろ一年になります。
最初から見てくださっている方、そうでない方も、本当にありがとうございます!これからもこの作品をよろしくお願いします。

それでは、また次の更新でお会いしましょう!


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2nd Nuova Storia
第27話「堕天使は恋をする(前編)」


お待たせ…致しました!

テストも終わり、ようやく時間が取れるようになったので、この作品も再スタートです!




12月中旬…俺が内浦から離れてもうすぐ2年という月日が流れようとしていた…

 

「ありがとうございました~」

 

カランカラン…

 

ここの喫茶店でのバイトも約1年、人はあまり来ないけど、仕事はかなり慣れている…苦手だったはずの接客もかなり落ち着いてできるようになった…

 

 

ある人を除いては……

 

 

カランカラン

 

「こんにちは~」

 

「いらっしゃい……って今日も来たのか…」

 

「お客さんに対してその態度は無いんじゃない?悠之君。」

 

「梨子……ここ最近この店に来る人の8割は君だよ。」

 

そう、東京の音楽大学に通う梨子…

 

 

もうしばらく会えないと思っていたら、そういえば梨子が東京の音大を目指していたことをすっかり忘れていた…。

 

 

それと、さっきから梨子の後ろに隠れている子は……だれだ?

 

 

 

「悠之さん久しぶり!元気にしてたかしら?」

 

 

そう思っていた時に、後ろからその子は現れる…ちょっと意外な人物だった。

 

「え…善子ちゃん?」

 

「ピンポンピンポーン~!正解よ♡」

 

 

まさか、今日は善子ちゃんも来ているなんて、驚いたな…。

スタイルも何だか、中学生時代の時よりもスラっとしてて、素敵だ…もし、浦の星女学院が共学だったら絶対モテモテだっただろう…。

 

「久しぶりに会ったけど、素敵になったな。」

 

「ふふっそうかしら…?このヨハネも、どんどん美しく……」

 

「うんうん可愛いよ、よっちゃん。」

 

「まだセリフの途中!!あとよっちゃん言うな!」

 

あ、そういえば…善子ちゃんは厨二病だったけ…やっぱりさっき思ったことは訂正するべきか…?いや、案外そんな感じな女の子を好む人もいるかも…。

 

「まあまあ、ごめんね、よっちゃん♪」

 

「むぅ…リリー嫌い…」プクッ

 

「あはは……って言うか二人はいつからそんなに仲良くなったんだ?」

 

もはや、二人のやりとりが仲の良い姉妹のように見えるんだが…

 

 

「あ~、それは前の夏コミの時に……ふがっ!?」

 

「そ、それは言っちゃダメよ?」クチフサギ

 

梨子が無理やり口元を抑える。

 

「夏コミ?梨子ってもしかしてオタ……」

 

「悠之君?」ジッ

 

「あ、いや…何でもない。」

 

あ、危ねぇ…もう少しで殺されるところだった…たとえ殺されなくても何かしらのやばい予感がした…。

 

 

「ま、まぁ…とにかく二人は今、すごく仲良しなんだな。」

 

「そうよ、これからカラオケに行くんだけど、悠之さんも来ない?」

 

「悪い、俺は夜までシフトが入ってるからちょっと無理かな…」

 

「そう…ちょっと残念ね…。」

 

 

善子ちゃんが少し残念そうな顔をする…せっかく会えたのに少し勿体無いな…。

 

 

「んー、まあいいわ、私は明日もいるから…明日は一緒に買い物に付き合ってよね!」

 

「あぁ、分かったよ。」

 

「良かったね~よっちゃんったら、ここに来るまでずーっと、悠之さんに会いたい~って言ってたのよ?」

 

「リ、リリー!余計なことは言わないでっ!」

 

 

何だか…知り合い同士が楽しそうに喋っていると、見てて嬉しい気持ちにもなるし、懐かしい気持ちにもなる…。

 

 

「そういえば、千歌ちゃんはいつ、そっちに来るの?大学受験は合格したんでしょう?」

 

 

「あぁ、大晦日にこっち来るんだって。旅館の手伝いがあるんだとか。」

 

 

「へぇ~悠之君も来月にはまた、千歌ちゃんとベッタリなわけね♡」

 

「ほーんと…これだからリア充は……」

 

 

梨子と善子ちゃんがちょっかいを出す…うん、こんな感じにからかわれるのはもうなんか慣れちゃったな…。

 

 

「でも、千歌もほんとにやるわよね…いくら悠之さんのアドバイスがあったからって、あんな高成績を残すんだもの…。」

 

「高成績?」

 

「悠之さん知らないの?千歌は文系科目では浦女のトップレベルよ。」

 

「マジか!?最後に見た通知表では、かなり上がってたけど…まさかトップとは…。」

 

 

前まで、美渡姉さんに『バカチカ』って言われてたのに……やるなぁ

 

 

 

 

♢

 

 

 

「せっかく来たんだ、何か飲んでく?」

 

「悠之君、サービスはもちろん……」

 

「ありません、売上が悪いからな。」

 

味は凄くいいのにな…店長は静かで落ち着くから良いって言ってるけど…ほんとにそれでいいのだろうか、店が潰れなきゃいいけど。

 

 

「せっかく限定のクリスマスメニューがあるのに勿体ないわね…リリーは何にする?」

 

「私は、クリスマスパンケーキにしようかな。」

 

「そうね…じゃあ私もそれにしようかしら。」

 

「了解、二人ともパンケーキね。」

 

俺は、厨房の方へ移動する…。

 

 

「それにしても、悠之さんもなんか、変わったよね~」

 

「確かに…少し雰囲気が大人っぽくなったっていうか…お兄さんってイメージが強くなったって感じかな?」

 

「あ、そうそう、大人っぽくなったって言えばね…」

 

 

善子がスマホで1枚の写真をみせる…

 

 

「え!?これは悠之君もびっくりしちゃうね!」

 

「でしょ?私も最初びっくりしたんだから。」

 

「ん?俺がどうかしたのか?」

 

 

二人で盛り上がっている所にさらっと紛れる…。

 

 

「え、ううん!何でもないよ!」

 

「そうそう!それより早くパンケーキ!!」

 

「はいはい、どうぞ~」

 

 

二人分のパンケーキを机の上に置く…

 

 

「わぁ~美味しそう~これ悠之君が作ったの?」

 

「まあな…マニュアル通りに作れば簡単さ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

今日もバイト疲れたな…でも、久しぶりに善子ちゃんにも会えたし、結構楽しい1日だったな~

 

♪♪♪♪~

 

…あれ?こんな遅くから誰からだろう…

 

 

スマホの画面を開く…相手は……あぁ、あの子か。

 

 

「もしもs…」

 

「はぁーい!!悠之~!元気!?」

 

「うわっ…びっくりした…どうしたんだよ鞠莉」

 

久しぶりに鞠莉の声を聞いたが、相変わらずでかい…電話越しでもこの声量なんだからな…。

 

 

「で、どうしたんだ?電話してくるってことは何かあったのか?」

 

「んーん、久しぶりに声をが聞きたくかっただけ~♪」

 

「はは、なんだそれ。まあ、俺も久しぶりに聞けてうれしいよ。」

 

「そういえば、そろそろ悠之も誕生日ね~」

 

「ああ、そうだな…アレからもうすぐ2年か…時間とは早いものだ。」

 

 

俺も今年で二十歳になるのか…あんまり実感がないな…。

 

「クリスマスにまた会いに行くから、その日は一緒にお酒でも飲みに行きましょ♪」

 

「そっか…俺ももう酒が飲める年になるのか…新しい体験ができるな。」

 

「ふふっじゃあ、またね!わざわざイタリアからそっちに行くんだから感謝してよね~♪」

 

「あぁ、それはご苦労さまだな、それじゃあな。」

 

 

明日は善子ちゃんと買い物…クリスマスには鞠莉と飲み…大晦日は千歌と一緒に過ごす…

 

 

…忙しい年末になりそうだな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

翌日…

 

ピンポーン!

 

ん…?こんな朝早くからいったい誰だ…?

 

ピンポーン!!

 

「はいはい~今でますよ~」

 

ガチャ…

 

「もうっ遅いわよ!今日は一緒に買い物に行く約束でしょ?」

 

あぁ…そういえば、今日は善子ちゃんと出かける約束があったんだった。

 

「ごめんごめん、すぐに準備するから上がって待っててね。」

 

「えぇ…じゃあ、お邪魔するわね…って随分大きな家ね。一人暮らしには広すぎるんじゃない?」

 

「あぁ…もともと、俺の母親の別荘だからな…一人暮らしだと少しさみしいんだ…。」

 

「そうよね…こんなに広い場所で一人だと…さみしいわよね…。」

 

「でも、もう少しで千歌も来るし、なんとかなるさ。」

 

「ふ~ん…ところで……」

 

「うん?どうした?」

 

 

善子ちゃんが後ろから距離を詰める…

 

「えいっ!」ムギュ

 

善子ちゃんが後ろから抱きついてきた…背中から柔らかい感触が伝わる…。

 

「なっ!?ど、どうしたんだよ!?」

 

「ふぅん…千歌から聞いた通り、ホントにいい匂いがするわね…悠之さんって。」

 

「え?あぁ…そりゃどうも。」

 

 

 

 

もし…悠之さんと千歌が付き合っていなかったら…私はきっと自分からアタックしに行ってたのだと思う…。

 

もっとはやく…出会っていたら…と思うと少し悔しい。

 

千歌だけじゃなくて…もっと私の事も見て欲しい…。

 

 

 

 

「善子ちゃん?」

 

「ううん!何でもないわ!それより早く準備しなさいよ!じゃないと置いてっちゃうわよ~!!」

 

「え?あ、あぁ!!」

 

 

 

 

いつか…私に振り向いてくれないかな?

 

好きよ…悠之さん。




ここまでの、サンシャイン2期を見て思ったこと

よしりこが尊い…!!


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第28話「堕天使は恋をする(後編)」

善子ちゃんストーリーの続きです!


~1時間前~

 

「えー!リリーは一緒に来てくれないの?」

 

「だって、よっちゃん悠之君のこと好きなんでしょ?邪魔しちゃ悪いからね♡」

 

「でも…悠之さんにはもう…千歌がいるし…」

 

「大丈夫よ、例え想いが伝えられなくても悠之君は優しく接してくれるはずよ。」

 

 

 

 

~♡♡♡♡♡~

 

 

 

 

リリーはそう言ってくれたけど…私はやっぱり不安だわ…もう相手がいる悠之さんと二人きりで…ほんとにいいのかしら?

 

 

「どうした?さっきまでの元気はどこへ行ったんだ?」

 

「え!?う、ううん!大丈夫よ!」

 

 

とにかく…今は悠之さんと楽しもう!こんな機会は滅多にないんだから。

 

 

 

「で、善子ちゃんはどこに行きたいんだっけ?」

 

「あ、そうそう!あのね……」

 

私は悠之さんに、行きたい場所を伝える…。

 

 

「おー、あそこか~じゃあ…はいこれ!」

 

「え…これって…ヘルメット?」

 

「あぁ、電車で行くより、全然楽だからな。」

 

 

私は、悠之さんにヘルメットを付けられ、一緒に外へ出る…

 

 

「え…まさか本当にバイクで行くの!?」

 

「あぁ、それとも…バイクはちょっと怖い?」

 

「ま、まさか!!このヨハネに怖いものなんてないし!」

 

「そっか、じゃあ後ろに座って?」

 

 

私は後ろの席に座る…それと同時に悠之さんがエンジンをかける…。

 

 

「じゃあ…いくぜっ!」

 

「お、おぉー!!」

 

 

悠之君の掛け声と同時に、バイクが走り出す……

 

 

「大丈夫?もっとゆっくりの方がいい?」

 

「ううん!平気!!もっと飛ばして~!!」

 

「りょーかい!」

 

さらに速度を上げる…

 

「あはははは!!ヤバい!!ちょー気持ちいい~!!!」

 

「ちゃんと、捕まっておくんだぞ。」

 

「はーい!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「はい、着いたぞ。」

 

「おぉ…ここがまさに…約束の地…」

 

 

「秋葉原…SEGA!」

 

 

秋葉原のSEGAか~そういえば、1度も行ったことがなかったから俺も結構楽しみだな

 

 

「ねぇねぇ!どこから行く!?」

 

「ん?善子ちゃんの行きたいところからでいいよ?」

 

「ほんと!?じゃあ、アレやりましょ!」

 

 

善子ちゃんが俺の腕を引っ張る…今日の善子ちゃんは何だかとても楽しそうだ…。

 

 

「これは…レースゲーム?」

 

「うん!一緒に対戦もできるのよ!」

 

「面白そうだな、やろうぜ!」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 

普段からバイクで乗りなれてる俺ならきっとゲームでもなんとかなるはず…

 

 

そう思ってたはずなのに…

 

 

 

 

 

 

「いえーい!私の全勝~!!悠之さんもまだまだねっ♪」

 

「な、なんで…?現実とゲームじゃ…こんなにも違うというのか…」

 

「ふふっじゃあ、何を買ってくれるの?」

 

「えっ…?」

 

「私の全勝なんだし、何かしら…ね?」

 

「やれやれ、そうだな…じゃあ、クレープでも食べに行こう。」

 

「やったあ~♪」

 

 

~♡♡♡~

 

一旦ゲームセンターを抜けて、二人でクレープ屋へ向かう…

 

 

「善子ちゃんは何がいい?」

 

「そうね…この、イチゴとチョコレートブラウニーのやつにするわ。」

 

「じゃあ、俺はバナナクレープでいっかな…

すみません~この二つください。」

 

 

二人分のクレープを買い、ベンチに座る。

 

 

「じゃあ、いただきま~す♡

ん~♡美味しい~♪」

 

「俺も久々に食べたけど、クレープはやっぱり美味いな…あれ?善子ちゃん?」

 

「ん?」

 

「口元にクリーム、ついてるよ?」

 

「えっ!?どこどこ!?」

 

「クスッ…ここだよ。」スッ

 

「あ、ありがと…ごじゃ…いましゅ…//」

 

「どういたしまして。」ペロッ

 

「~っ///」

 

善子ちゃんの頭からプシューと湯気が出るような音が聞こえ、顔を真っ赤にして抑えてる…。

 

「ゆ、悠之…さん…」

 

「ん?」

 

「い、今のは…その…反則です…///」

 

「どうした?急に敬語になっちゃって。」

 

「な、ななな何でもないわよ!そ、それより…」

 

「?」

 

「ひと口…お礼にあげるわよ。」

 

「ほんと?サンキューな。」

 

俺がクレープを取ろうとすると、善子ちゃんが手を引っ込める。

 

 

「………」プクッ

 

善子ちゃんがほっぺを膨らませながら何かを訴えてる…

 

「あーん…してくれなきゃあげない。」

 

「え…?」

 

「は、早く…恥ずかしいんだから…///」

 

「あ、あぁ…」

 

「はい、あーん…」

 

「あー…」

 

善子ちゃんがゆっくりとクレープを口の中に入れてくれる…初々しくてちょっと可愛い。

 

「ど、どう?」

 

「うん、とってもおいしいよ。」

 

「でしょっ!やっぱりクレープはイチゴにかぎるわ!」

 

「そっか…んじゃ、はい…あーん…」

 

「あー…ってええ!?」

 

こ、この流れでクレープを差し出すなんて、天然なの?それとも、大胆なの!?

 

「…いらないのか?」

 

「う、ううん!欲しい!」

 

「じゃ、はい…あーん…」

 

「あー……はむっ」ドキドキ

 

「美味しい?」

 

「う、うん…とっても美味しい///」

 

「善子ちゃん顔真っ赤だよ。」クスッ

 

「か、からかわないでよ~///」

 

 

~♡♡♡~

 

 

「これとこれ…どっちにするか悩むわ…。」

 

 

ゲーセンの次に善子ちゃんが入った店は、ゴジックな衣装や、アクセサリーの売ってる、コスプレ店的なところだった。

 

 

「ねぇねぇ、悠之さんはどっちがいいと思う?」

 

善子ちゃんが黒いロープと、ゴジック風なワンピースの衣装を持ってきた…。

 

 

「俺は…どっちも善子ちゃんらしくていいと思うけど…こっちの方がいいかな。」

 

俺はワンピースの方を勧める。

 

「こっち?じゃあ、ちょっと試着してみるわね。」

 

 

~1分後~

 

 

「ど、どうかしら…///」

 

「良いよ、すっごく可愛いと思う。」

 

「ほ、ほんと?じゃあ…これにしようかしら。」

 

なんだろ…リリーや、みんなに可愛いって言われるのと何だか違う感じ…胸が熱くなって…ドキドキする。

 

やっぱり私…悠之さんの事が好きなんだな…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

楽しい時間は、すぐに過ぎていき…あっという間に日が暗くなる…。

 

 

「送っていくよ、梨子の家だろ?」

 

「えぇ、ありがとう。」

 

 

バイクで帰宅途中…

 

ぽつ…ぽつ…と雨が降り始める。

 

 

「やばっ!私の不幸がこんな時に…!」

 

「ちょっと急ぐぞ!」

 

本降りだな…スピードを少し上げただけで雨が強く当たっていく…

 

 

とにかくスピードを上げて、梨子の家にまで、飛ばしていく。

 

 

 

「見えてきたな……もうすぐだ!」

 

バイクを家の前に止めて鍵をかける。

 

「悠之さん、急いで!」

 

「善子ちゃん!いきなり走ると…」

 

ズルッ

 

「いたっ…!」

 

「大丈夫か!?」

 

「へ、平気よ…これくらい」

 

「膝…少し擦りむいちゃってる…血も出ちゃってるし。」

 

「だ、大丈夫よ…」

 

「ちょっとまってて、すぐに梨子の家に入って…」

 

 

ピンポーン!

 

 

「……あれ?」

 

ピンポーン!

 

返事が無い…なんてこった。

 

 

「し、仕方ない…とりあえず手当だけでも。」

 

バックの中から絆創膏を取り出す

 

「悠之さん…どうして、絆創膏なんか持ってきてるの?」

 

「俺も昔はよく怪我をしたから持ち歩いてるんだよ…はい、これでよしっと。」

 

「あ、ありがとう…悪いわね。」

 

「あとは…梨子を待とうか。」

 

 

~♡♡♡~

 

「悠之君!?よっちゃん!?どうしたの!?ずぶ濡れじゃない!!」

 

買い物袋を持った梨子がようやく帰ってきた…。

 

「あぁ…悪い、ちょっと降られちゃって…」

 

「リリー…私の不運はやっぱり…堕天使だから…。」

 

「と、とにかく早く上がって!すぐにお風呂沸かすから!」

 

 

♢

 

 

「なんか悪いな…お風呂に入れてもらっただけじゃなくて、泊まりまでさせてもらって…」

 

「別に大丈夫よ。こういうことだってあるんだし…。」

 

「でも、パジャマ替わりに、梨子のジャージを着るのには抵抗があるんだけど…」

 

「し、仕方ないじゃない!!それしかないんだもん///それとも裸でいたいの!?」

 

「うっ…それは…」

 

「リリーも大胆よね~下着も着てない悠之さんに自分のジャージを貸すんだなんて。」

 

「もうっよっちゃん!!」

 

 

まあ…夕食まで用意してもらったんだし、ありがたいと思おう…

 

 

「とりあえず、もう遅いし…寝よっか。よっちゃんは明日帰るんだし…。」

 

「えぇ、そうね…。」

 

「布団敷くの手伝うよ。」

 

「うん、ありがとう悠之君。」

 

 

 

 

~夜中~

 

 

「(トイレ…リリーは…?

完全に寝ちゃってるか…まあいいや…一人で行こう…。)」

 

 

私はトイレ行き、すぐにみんなのいる寝室に戻る…。

 

 

「(悠之さんの寝顔…可愛い…)」

 

「(……)」チュッ

 

 

私は悠之さんのおでこにキスをしていた…。

 

 

「(今夜は…一緒に寝かせて?)」

 

そのまま悠之さんの布団に入り眠りについた…。

 

朝起きたら…あとの事は考えよう…

 




サンシャインの最新話ほんとに泣ける…


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第29話「クリスマスはギルティに」

聖夜に…間に合わなかった…ごめん。


~12月25日~

 

透き通った青い空…眠りから目覚めたら、窓から柔らかい日差しが視界に映る…

 

時計を確認すると、ちょうど9時半…今日は学校の授業も無いし、バイトもない…もう少し眠りにつくのも悪くはなさそうだ…。

 

 

「こ~ら、何か忘れてない?」

 

「何って今日はクリスマス……あっ!」

 

ゴツンっ!

 

 

誰かの囁きでベットから飛び起きる…しかし、何かに頭をぶつけまた視界がぼやけてくる……

 

 

「いたた……もうっ!悠之の石頭~!!!」

 

「うわっ!?」

 

物凄いシャウトで再び視界がくっきりと映る……金髪の…女の子?」

 

 

「そっか…今年のサンタさんは金髪のお姉さんか~」

 

「もぉ!いつまで寝ぼけてるの!?私よ!マ・リー!」

 

「ま、まり……はっ…。」

 

「クリスマスに遊びに行くって言ったのに~まさか忘れてたなんて言わせないわよ~?」

 

「あ、ははは………」

 

 

懸命に鞠莉から視線を逸らす…

 

 

「へぇ~忘れてたんだ~」

 

「い、いや…まさか…は、はは……」

 

「お仕置きよー!!」

 

 

~☆☆☆☆~

 

 

「せっかくイタリアから来たっていうのに忘れてるなんて、悠之にしては中々酷いことをしてくれたわね~」

 

「いやぁ…悪い、バイトや学校ですっかり忘れてたよ…ごめんな。」

 

「ふ~ん…忙しくても、千歌のことはぜーったい忘れないのにね~」

 

 

うっ……これは反論できないか。

 

それにしても、どこから入ってきたんだ…?鍵はかけて寝たはずだし…侵入できる場所なんてどこにも…。

 

 

「そういや、鼻に黒い汚れがついてるけどどうした?もしかしてそれは墨か?サンタクロースのコスプレまでして…」

 

「汚れ?なんのことデース?」

 

 

もしかして…

 

「煙突から侵入した…とか言わないよな?」

 

「おぉ~なんで分かったデース?」

 

「何やってんだ…お前…。」

 

だからサンタのコスプレを…

 

 

「あ、そうそう!今日は悠之の誕生日でしょ?だからプレゼントを持ってきたデース!」

 

ガサゴソと大きな袋中から、何かを取り出す。

 

「はいっ!まずはこれ!」

 

「おぉ~でっかいな……って、天ぷら粉!?」

 

しかも、5キロ分位はある…なぜ天ぷら粉なのだ?

 

「いや~イタリアで天ぷらを食べたんだけど、やっぱり日本のが1番美味しいなーって思ってつい♡」

 

「は、はは…ありがとな。」

 

さらに、袋の中から伊勢海老に、山菜、さつまいも、カボチャ、レンコンが出てきた…これはもう天ぷらを作れとしか言いようがないな。

 

「まあ、おふざけはこれくらいにしておいて~本当のプレゼントはこれよ!」

 

鞠莉がもう一つ、大きな袋を取り出す…

 

「さ、開けてみて☆」

 

俺はおそるおそる袋を開けると、中からライダースジャケットが出てきた。

 

 

「いいのか!?こんなに高そうな物を…」

 

「いいのいいの!おととい善子が言ってたのよ?バイクに乗った時すごく楽しかったって!だからそのライダースをプレゼントしようって思ったの♪」

 

「そっか…ありがとな。たいせつにするよ」

 

「うん♪」

 

 

ピンポーン♪

 

「あれ?誰か来たみたいだ……はーい……」

 

「「メリークリスマス~♪」」

 

善子ちゃんと梨子が玄関前でまっていた

 

 

「一緒にパーティしに来たわよ♡」

 

「料理もいっぱい作ってきたんだから!」

 

善子ちゃんと梨子は嬉しそうにしているが、この様子じゃあ断りもなく俺の家でパーティしようとしていたに違いない……

 

 

「ホントは、リリーの家に呼ぼうとしたけどやっぱり悠之さんの家の方が大きいもんね~♡」

 

 

いやいや、その家の本人はまだクリスマスパーティをするとは一言も言ってないんですけど、あと家を使わせるとも言ってないし。

 

「ほんと~こういう時に悠之君は助かるね~♡」

 

 

やれやれ…こんな朝早くからみんなは元気だな…でも。

 

 

「くすっ…」

 

「悠之君?」

 

「どうして笑ってるの?もしかして呪われたの?」

 

 

 

でも、何だかんだでみんなは俺のそばに来てくれる…離れ離れになるとしても……

 

 

「いーや、何でもないさ。パーティ始めようぜ。」

 

「「「おーー!!!」」」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~PM 10:30~

 

「むにゃ…」

 

「酔ってにゃんか……にゃいんだか…ら…」

 

「Zzz…」

 

…梨子と鞠莉がまさかの酒で潰れるだなんてな…俺は控えめにしておいてよかった…どうせ後片付けをするのは俺一人なんだろうし……善子ちゃんは……あ、普通に寝ちゃってるのか。

 

 

~♪♪♪♪♪~

 

あれ…?またこんな時間に電話か?誰だ……あ、この番号は…。

 

 

「もしもし。」

 

「久しぶり♪ゆ~じくん♪」

 

「久しぶり!千歌。そっちはまだ忙しそう?」

 

「んーん大丈夫だよ♡心配してくれてありがとね♡そんなことよりも~」

 

『メリークリスマス!そして、お誕生日おめでとう!』

 

………!!

 

「ありがとう…千歌。もしかして、その為に旅館の仕事の間に電話してくれたのか?」

 

「うん!お祝いが遅くなっちゃってごめんね?」

 

「いや、謝らなくていいよ。毎年ありがとな。」

 

「うん!どういたしまして♡」

 

千歌の声を聴いていると…少し昔に戻ったみたいで心がほっこりとする…

 

「じゃあ、そろそろ電話切るね!」

 

「あぁ!大晦日…楽しみに待ってるよ!」

 

「うん!」

 

「あ、そうだ!言い忘れてた!」

 

「なぁに~?」

 

「大好きだよ…千歌。」

 

「悠之君…///私も…大好き!愛してるよ♡」

 

そう言って、私は電話を切る…

 

あと少し…悠之君とまた会えるんだぁ♡

 

私はウキウキしながらベットにダイブした…

 



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第30話「再会とHappy new year」

あけおめです!


12月31日…そう、今日は大晦日だ。

 

今年も残すところあと一日…1年というものはとても短く感じる…それは、歳をとるにつれて、その感覚が強くなっている気がする…。

 

と言っても、俺はまだ二十歳だがな。

 

 

そんなことより、今日は千歌との再開の日…この日が来るのをどれだけ楽しみにしてきたことか…

 

 

千歌が来るのは、夕方の6時…新幹線で東京駅まで来るので、迎えに行かなくちゃならない。

 

 

だから、今年の大掃除は早めに終わらせることを意識してきた…そのおかげで12月中旬には完璧にしておくことが出来た…。

 

後は何をすればいい…?

 

服装は整えたし、髪のセットもとっくに終わってる…

 

仕方ない…まだ4時だけど、東京駅で時間潰しておこう。

 

 

~♢♢♢~

 

 

そんなこんなで、あっという間に時間はたって、約束の6時まで残り10分になった。

 

 

 

(そろそろホームで待つか…)

 

 

じっと、ホームで待っていると千歌が乗っている新幹線が見えてくる…。

 

 

(そういえば、何列目で降りるのか聞いてなかった…まあ、きっとあとから分かるから大丈夫…かな?)

 

 

新幹線が止まり、人がたくさん降りてくるが、千歌らしき人はどこにも見当たらない……少し不安だな、寝過ごしたりしてなきゃいいけど。

 

 

ドンッ!

 

「あ!ご、ごめんなさい!!」

 

ぼーっと歩いていると、誰かにぶつかってしまった。

 

 

「いえ、そちらこそ大丈夫ですか?」

 

俺はその人が落とした帽子を渡す…その時、初めて顔を合わせた……

 

「……千歌?」

 

「ふぇっ…?」

 

その反応…間違いない…そして、そのみかん色の髪の毛…。

 

「ゆ、悠之…君?」

 

キョトンとした顔で俺の事をじっと見つめる……

 

「悠之君っ!!」ダキッ

 

「おわっ!?え!?ほ、ほんとに千歌なのか!?」

 

「え…私は千歌だよ?」

 

一瞬少し別人のように見えた……肩にかかるくらいにまで髪が綺麗に伸びていて…なんだか大人っぽくなってとても素敵だ…。

 

「ううん、すっごく美人になってるからびっくりしちゃっただけだよ。」

 

「え…///び、美人だなんて…///」

 

「すごく素敵だよ、俺…なんだか凄く嬉しいよ。」

 

無意識に千歌の髪の毛を触る…サラッとしてて少しいい匂いがする…。

 

「そういう悠之君も大人っぽくなったよ?なんだかお兄ちゃんって感じがする!」

 

「そう?…ありがとな。」ナデナデ

 

「えへへ…やっぱりコレだなぁ~」

 

「ん?」

 

「悠之君が頭撫でてくれるとね…す~っごく、落ち着くの…ポカポカする感じかな?」

 

「ふふっ見た目は大人っぽくなったのに、中身はやっぱり千歌だな。」

 

「えー!なにそれ?褒めてるの?バカにしてるの?」

 

プクッと頬を膨らませる…やっぱり千歌だなぁ。

 

「どっちだと思う?」

 

「むぅ…絶対バカにしてる…」

 

 

 

二人で久しぶりに会話をする…いつになってもこの距離感は変わらない。

 

 

「ねぇ、悠之君?」

 

「どうした?」

 

「ちょっと…じっとしてて?」

 

「あ、あぁ…」

 

千歌にそう言われ、その場でぴたっと直立する…。

 

「大好き♡」

 

そのまま、俺の顔に手を添えながら、唇にキスをする…

 

 

「…なんか、キスが色っぽくなったね。」

 

「くすっ…ドキドキしちゃった?」

 

「…周りに人がいなくて助かった。」

 

「え~そんなに?」

 

「だって…千歌の身体…色々なところが成長してるし。」

 

「も、もう///悠之君のエッチ…。」

 

 

~♢♢♢~

 

「もうすぐ夕食の時間になるけど、どこかへ食べにでも行く?」

 

「んーん、悠之君の家で一緒に何か食べたいな♡」

 

「そっか…じゃあ、家にいっぱい天ぷら粉と具材があるんだ。年越しそばでも作ろうか。」

 

「うん♡」

 

二人で、バイクへ乗りに駐車場の方へ向かう…。

 

「あ~このバイク懐かしい~!」

 

「二年前も一緒に乗ったもんな~…はいこれ。」

 

千歌にヘルメットを手渡し…そのままエンジンをかける。

 

「じゃあ…帰ろう!」

 

「うん!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あ、ここって…ゴールデンウィークの時に泊まりに来た別荘じゃん!」

 

「そうだよ、今は俺の家になってるんだ。」

 

「へぇ~じゃあ、また一緒にのんびりと暮らせるね♡」

 

さっそく千歌がソファーにダイブする…。

 

 

「そうだな…俺達また一緒に暮らせるんだな…。」

 

「もー、どうしたの?改まっちゃってー」

 

「だって…」ギュッ

 

「俺…2年間ずっと…千歌が来てくれるのをずっと待ってたんだよ。」

 

 

悠之君が私の後ろからそっと抱きしめる…そのまま私のシャツのボタンを胸元から外していく…

 

「も、もう…どうしたの?急に…寂しかったの?」

 

「あぁ…らしくないかもな…俺…。」

 

そのまま悠之君の手がどんどん下にくる…それ以上、外しちゃ…ブラが見えちゃう…。

 

「悠之君……だめ…まだおふろに入ってない…///」

 

「じゃあ…一緒にはいる?」

 

「うん…♡」

 

 

 

二人で脱衣場に移動する…

 

 

そのまま身体を洗い合い、一緒に入浴する…。

 

 

「悠之君、そんなにジロジロみたら…だめ♡」

 

「だって…凄く綺麗だから…。」

 

「もぅ…///」

 

千歌のタオルが、透けて見えてとてもいやらしい…。

 

(悠之君の視線がわかりやすくて…なんだかドキドキするよぉ…)

 

~♡♡♡~

 

 

「悠之君、ドライヤーお願いしてもいいかな?」

 

「あぁ、もちろん。」

 

 

千歌の髪を乾かす…

 

 

「髪…ほんとに綺麗だね。」

 

「もー、今日ずーっとそればっか言ってるよ?」

 

「なんか、胸も大きくなってない?」

 

「んー…そうかも…背は伸びないのになんでだろ?」

 

「…胸に栄養もってかれてるとか?」

 

「えー!?それはちょっと困るよ~!」

 

「じょ、冗談だって…」

 

 

そのあと、二人で年越しそばを作り、カウントダウンに備える…。

 

「それにしても、沢山天ぷら作ったよね~」

 

「これでもかなり減った方なんだけどな~やっぱりそう簡単に無くならないか~」

 

「凄いね鞠莉ちゃん…こんなにたくさんの食材を持ってくるなんてね。」

 

「まぁ~美味しいからいいけどな。」

 

 

天ぷら粉は別にいいのだが、食材が腐ったりするのは困る…なんとか対策を考えねば…

 

 

「悠之君…もうすぐ年が明けるね。」

 

「ほんとだ…」

 

「「3…2…1…」」

 

『Happy new year!!!』

 

 

テレビのカウントダウン終了とともに、鐘が鳴る…。

 

 

「あけましておめでとう♪」

 

「あぁ、おめでとう。じゃあ…朝になったら初詣に行こっか。」

 

「うん♡」

 

ニコッと笑顔を見せてくれる……これが新年最初の千歌の笑顔か…実に良いものだ。

 

 

「ふわぁ…悠之君…。」

 

「どうした?」

 

「眠たくなっちゃった♡一緒に寝よ?」

 

「そうだな…俺も眠たくなってきたし…寝よっか。」

 

 

二人で寝室へ向かう…

 

 

「わぁ…あの時のベットのままだ~」

 

そのまま、千歌と一緒にベットに入る…

 

「…じゃあ、電気消すよ。」

 

「うん…あ、ちょっと待って!」

 

「ん?」

 

千歌がもぎゅっと俺の体を抱きしめる…

 

 

「このまま…朝まで抱いててもいい?」

 

「あぁ、いいよ…あれ、千歌?」

 

千歌の耳が少し赤くなってるのが気になった…

 

「もしかして緊張してる?」

 

「え、そ、そんなことないよ?」

 

「だって耳が…」

 

ふにっ…

 

 

「やっ…耳触っちゃだめ…。」

 

「…ここ?」チョン

 

「あっ…だめぇ…くすぐったい…からぁ…///」

 

千歌と身体をくねらせながら…小さく喘ぎだす…。

 

「千歌の顔…すごくだらしなくなってるよ?」

 

「だって…だめって言ってるのに…悠之君が…。」

 

「ごめんごめん、千歌の反応が可愛いからさ。」

 

「むぅ…怒ったもん…千歌、怒りました。」

 

 

私はそのまま、そっぽ向く…ホントは、ちょっとエッチななことも期待してたんだけど…もう遅いからいいか…。

 

 

「千歌、こっちむいて?」

 

「もぅ…こんどはなに?」

 

千歌が振り向いたのと同時に、キスをする…。

 

「んむっ……ぷはっ……も、もう…///すぐちゅーしたら許してくれると思ってるんだから。」

 

「そんなところも可愛いよ…千歌。」

 

「も、もう寝るー!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

そして、朝日が登り始めた頃…

 

 

「も~悠之君?早く起きてよぉ…」

 

「Zzz…」

 

「ふっふっふっ…こうなったら…」

 

はむっ!

 

「……!!??」

 

千歌に鼻を噛まれ、飛び起きる……

 

「ち、千歌!?い、いまのは…?」

 

「えへへ…悠之君が中々起きないから…♪」

 

「あ…はは…」

 

「もしかして…迷惑…だった?」

 

千歌が上目遣いをして、俺をじーっと見つめる…。

久しぶりに見た…千歌の捨てられた子犬のような顔を…相変わらず破壊力抜群だ。

 

 

「…可愛いから許すっ!」ナデナデ

 

「も、もぅ!可愛い…って…うぅ…///」

 

 

~♡♡♡~

 

 

千歌が着物に着替えるのを待つ…女の子の支度は長いのは知ってるから全然気にならなかった。

 

 

「お待たせ~」

 

「お~…じゃあさっそく……!?」

 

長い髪を短くまとめて、サラッと出てくるうなじ…凄くセクシーで綺麗だ…高校生の時は可愛いイメージだったけど、今はその可愛さに大人っぽさがチョイスされて、さらに華やかになっている…。

 

 

「どうしたの?早く行こうよ~」

 

「あぁ、そうだな。」

 

こんな素敵な人と一緒に歩けるなんて…

 

「悠之君も素敵だよ?」

 

「千歌?俺の心でも読んだのか?」

 

「んーん、なんとなく…ね?」

 

「ふふっ…なんだそれ。」

 

 

二人で歩いていると、すぐに神社に着いたのでさっそくお参りをする…。

 

 

「悠之君はなんてお願いごとした?」

 

「ん?これからも二人で幸せになれますように…ってね。」

 

「私も…全く同じことをお願いしたよ♪」

 

「そっか…幸せになろうな、俺達…」

 

「うん…!」

 

二人で見つめあってると、千歌が、高校生の時に買った指輪をしてくれているのに気づいた。

 

「その指輪…ずっと付けててくれたんだね。」

 

「うん!このカップル指輪…私の一番の宝物なんだ~!」

 

「そっかじゃあ…」

 

「…?」

 

千歌の右薬指に付けてる指輪を左薬指に付け替える…

 

 

「この指輪が…カップル指輪じゃなくていつか結婚指輪になれる日まで…ずっと一緒にいような。」

 

「悠之君…!絶対約束だよ!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

神社が混み始めたので、先に屋台のご飯を買って、家で食べることにした…。

 

 

「家で食べて正解だったね~」

 

「だな、あんなに混むなんて想定外だったからな~」

 

「だね~」

 

二人きりのこの空間…隣には着物姿の千歌…周りには誰もいない…。

 

 

「なぁ…千歌。」

 

「なぁに?ゆ~じくん?」

 

ドンッ

 

「きゃっ…///ど、どうしたの?急に押し倒して…///」

 

「ごめん…千歌…もう俺には我慢出来ないよ。」

 

千歌の着物を少しずつ脱がしていき、鎖骨が見えてくる…

 

そして、そのまま鎖骨に軽く口付けをする…。

 

その素肌は、凄く綺麗で、少しでも力を入れたら、傷がついてしまいそうだ…。

 

「ね、ねぇ…悠之君…///」

 

「ん?」

 

「もっと…///乱暴にしても…いいよ?///」

 

 

この後の理性を…俺は全く覚えてない。




今年のお年玉いくらかな~♪


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第31話「憧れの人」

お気に入り200人突破っ!ありがとうございます!!


~1月8日~ (成人の日)

 

 

「あ~…成人式疲れた~…」

 

「お疲れ様、悠之君たくさんの人に絡まれて大変だったね~」

 

「ホントだよ…もう2年くらい同級生の人たちと会ってないのに…バレるなんて思ってなかった…。」

 

 

東京の高校の男子達とは絶対に関わりたくなかったな…二十歳になった途端にガンガン煙草は吸ってるし、酒もがぶ飲みはするし…お陰様でヘトヘトだ…。

 

 

「でも、梨子ちゃんの晴れ着姿は、ほんとに綺麗だったよね~また見たいなぁ~♪」

 

「本人はすごく恥ずかしがってたけどな。」

 

「それに、凄くナンパされてたよね…でも、悠之君がいてくれて助かったよ~」

 

「はは…最初は俺も怖かったんだぞ、酒が回ってる連中は何するかわかったもんじゃないからな。」

 

それと…めっちゃ恥ずかしかった…

 

 

~二時間前~

 

 

「梨子ちゃん、ほんとに綺麗~ずーっと眺めていたくなるよ~」

 

「もうっそんなにジロジロ見ないでよ~///」

 

「えへへ…あ、そういえば悠之君は?」

 

「さっき、トイレへ行くって言ってたよ。タバコの臭いで気分を崩したんだって。」

 

「へー…悠之君にもそんな弱点が。」

 

 

 

「ねーねー可愛いお嬢ちゃん達~俺らと一緒に飲んでかない?」

 

雰囲気がチャラチャラしていて…いかにも、悪そうな人が私たちのそばに来る…

 

 

「ごめんなさい、ちょっと待ってる人がいて…」

 

私は断りを入れたが、その人は引く気配がない…。

 

「そんなのいーじゃんべつに~待たせるやつが悪いんだって~」

 

この人…さりげなく悠之君を……

 

 

「いいから飲もうよ~」グィッ

 

酒に酔った男性が梨子ちゃんの腕を引っ張る…

 

「ちょ、ちょっと離してください!」

 

「おいやめとけって、嫌がってるじゃん。」

 

男性のグループの中の一人が止めに入るが、話を聞かない…

 

「そんな硬いこと言わなくてさ~俺たちと飲んだ方が絶対楽しいって~」

 

「嫌だって言ってるじゃないですか!早く離してください!!」

 

 

~☆☆☆~

 

 

~男子トイレ~

 

あー…まさかあんなに気分が悪くなるなんてな…ぜってー将来タバコなんて吸いたくねえな……って何やってんだあいつら?

 

 

激しく酔った男性に絡まれている梨子と千歌の姿が目に入る…。

 

 

「何やってんだよ、お前ら。」

 

「あ、悠之君……この人がいうことを聞いてくれなくて…。」

 

 

俺はその男のそばに近づく…近づくだけで、酒とタバコの匂いが強烈に漂ってくる……。

 

 

さて…どうするか、高校生の時だったら強引に止めようとしてたかもしれないけど、今はそういう訳にはいかない……

 

 

「なんだよ、この女の子に先に声をかけたのは俺だぞ?」

 

 

なるほど…こいつは酒に酔うとこういう性格になるのか…だったら思いっきり見せつけてやるのがショックを与えるのが一番だ。

 

梨子…うまく合わせろよ?

 

「おい、なんか言えよ!」

 

 

俺は相手が掴んでいる手を無理やり離させ、自分の身体と梨子の身体を密着させるように抱き寄せる。

 

「え……///」

 

「お、お前!何やってんだ!!」

 

「悪いな…俺の予定は全部この子だけで埋まってるんだ…。」

 

「──///」

 

「だろ?」

 

「ゆ、悠之君……恥ずかしいです…///」

 

そのまま、梨子の顎を軽く持ち上げる…

 

「もっと…顔を見せて?」

 

「~~///」ドキドキ

 

(ま、まって…悠之君の顔…近いよ…///しかもあごクイって…ちょ、ちょっと千歌ちゃん!そんなにニヤニヤしながら見ないでよ~///)

 

 

(おぉ~悠之君の演技も凄いけど、梨子ちゃんの表情もたまらないのだ…♪これは完全に堕ちてるね♪あのチャラい人も凄いショック受けてるし、これは作戦成功だね♪)

 

 

さて…これだけ見せつければ相手も充分理解しただろう…。

 

 

「さ…行こっか。」ギュッ

 

「ひゃ…ひゃい…///」

 

 

 

~☆☆☆~

 

「今思えば俺って、結構やばいことしてたんだな……」

 

「いや~平和的でいいと思うけどな~でも、演技とはいえ千歌もちょっと嫉妬しちゃったな~」チラチラ

 

「じゃあ…千歌もやる?」

 

「うん♡」

 

ピンポーン!

 

「あら、このタイミングで誰か来ちゃったか…」

 

「あ、私がでてくる~!」

 

 

ガチャ……

 

 

「あ、梨子ちゃーん!」

 

「こ、こんばんは~」

 

「あれ?こんな夜にどうしたんだ?」

 

 

梨子が少し恥ずかしそうにモジモジとしている…。

 

「その…今日…助けてもらったお礼に…」

 

何かが入った箱を俺たちに渡す…

 

 

「梨子ちゃん、開けてもいい?」

 

「えぇ、もちろんよ。」

 

梨子をとりあえずリビングに入れて、一緒に箱を開ける…。

 

「わあぁ~シュークリームだ~!これ、梨子ちゃんが作ったの?」

 

「凄いな…流石は梨子だ。」

 

「悠之君が助けてくれたから…その…だから、ありがとうね。」

 

「あぁ、どういたしましてだな。」

 

恥ずかしそうにお礼を言う……

 

 

「そうだ!せっかくだし、梨子ちゃんも泊まっていきなよ?」

 

「え、でも急だと悪いんじゃ…」

 

「いーからいーから♪じゃ、お風呂入ろ~♪」

 

もう…こうなった千歌は誰も止められない…。

 

 

 

 

~浴場~

 

「千歌ちゃん、あれから何か進展はあった?」

 

「え、何が?」

 

「悠之君と、千歌ちゃんの事よ。」

 

「進展か~うーん…いっぱいエッチした♡」

 

「それは、高校からでしょ?…っていうか何言ってるの!」

 

「えへへ~」

 

「全く…」

 

女の子なんだから、少しくらいはデリカシーを持たないと…。

 

「でもね…」

 

「?」

 

「なんか、悠之君…大人になったな~っていうか…丸くなったっていうか…」

 

「うん…確かに。」

 

「梨子ちゃんも…悠之君も…時間が経つにつれて、どんどん大人っぽくなって…なんだか高校の時のような雰囲気がちょっと薄くなっちゃって…。」

 

「千歌ちゃん…さみしいの?」

 

「うん…少し。」

 

私は小さくうなずく。

 

 

「もう、千歌ちゃんがそんな顔をしてどうするの?」バシャッ

 

「ふぇっ!?」

 

「千歌ちゃんは、私たちの太陽なんだから、いつまでも明るくなくちゃダメ!」

 

「梨子ちゃん……うん!」バシャ

 

「きゃっ!もーやったな~!」

 

二人でお湯をバシャバシャと掛け合う……その時の二人の笑顔がなんだか高校生の時のような、無邪気な顔をしていて、なんだかとても楽しい。

 

梨子ちゃん…いつもは、大人っぽいけど、たまに見せてくれる無邪気な笑顔がすごく素敵……

 

実は、髪の毛を伸ばそうとした時に真っ先に相談したのは梨子ちゃんだった…そのおかげで綺麗に伸びたし、悠之君にも褒めてもらえた。

 

「くすっ」

 

「ん?何笑ってるの?」

 

「んーん…私ね、悠之君のことも、もちろん大好きだけど…梨子ちゃんの事もだーいすき!」

 

「ふふっもう…欲張りね♡」

 

私の憧れのお姉さん…これからもよろしくね♡



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第32話「アミューズメントパーク(仮)」

インフルエンザから復帰しました!

みなさんも体調には気をつけてくださいね!


「悠之君、起きて?」

 

「ゆーじくん~起きて~!」

 

 

二人の女性の声が眠ったままの脳内に響く…

 

 

「あれ…俺の家にはおかあさんが二人も居たっけ…?」

 

オレンジ色のエプロンをした女性と、ピンク色のエプロンを付けている女性がぼんやりと見える…

 

 

「もー、何寝ぼけてるの?昨日無理矢理泊まらされたのを覚えてないの?」

 

「え…梨子ちゃんもしかして嫌だった?」ウルウル

 

「あ!そ、そんなことないわよ!お泊まり出来て楽しかったし……」

 

「ほんと?よかったぁ~」

 

 

あー…そっか、梨子もこの家に泊まっていったんだっけ…それにしても二人ともエプロン姿が似合っているなぁ…

 

 

もし、この二人がお母さんだったらな……

 

 

~♢~

 

「ゆーくん、忘れ物はない?」

 

「あぁ、大丈夫だよ母さん。」

 

「あ、ちょっと待って……」

 

「?」

 

曲がったネクタイをそっと直す…

 

「これでよしっと♡」

 

「サンキュー母さん。」

 

「あー!梨子ちゃんずるい~!私もネクタイ直してあげたかったのに……」

 

「ふふっ千歌ちゃんはお寝坊さんだからね~」

 

「じゃあ~私はゆーくんにいい子いい子してあげる♡」

 

「か、母さん…それはちょっと…///」

 

それでも、手を止めることはなくいつまでも頭を撫で続ける。

 

「ゆーくんは高校生になっても可愛いね~♡」

 

「もー、ゆーくんが困ってるでしょ?早く学校に行ってらっしゃい!」

 

「あ、あぁ…」

 

「帰ったら…私もしてあげるからね♡」

 

 

~♢~

 

 

…って、何考えてんだ俺…もう二十歳になったのに今更何を考えて…

 

 

「(悠之君どうしたんだろう…ぼーっとして)」

 

 

 

3人で朝食を始める…綺麗なサンドイッチも置いてあって、とても華やかだ…

 

 

「そういえば、今日は千歌ちゃんの大学初登校日だよね?」

 

「うん!そうだよ~どんな学校か楽しみだなぁ~♪」

 

「それに、悠之君とラブラブ登校できるもんね♪」

 

「も、もうっ///梨子ちゃん~///」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それから梨子と別れ、千歌と一緒に初めての大学…俺はこの日をずっと待ち望んでいた…今まで途中で別れていたが、これからは同じ学校に通うことが出来る。

 

横をちらっと見ると、千歌がニコッと笑顔を見せる…。

 

 

「どうしたの悠之君?」

 

「いや、こうやって二人で歩きながら学校へ行くのがすごく楽しみだったんだ。」

 

「そうだね~前まではバスで一緒に登校するくらいだったもんね~私もすごく嬉しいよ♪」

 

 

二人で会話しながら歩いていると、もう学校が見えてくる…母さんが貸してくれた別荘とも距離が近いので、通学も楽だ。

 

 

「千歌は今日、体験授業だから…午前中かお昼には終わるな。で、その後に高校も行くんだよな。」

 

「うん、あっちこっち移動するから大変だよ~」

 

「あはは…俺も最初は大変だったな~まぁ、でも体験授業は週に一回しかないから……」

 

「でも、4月になれば悠之君と大学に行けるから楽しみだよ♡」

 

「そうだな、とりあえず今は体験授業を頑張っておいで。」

 

「うん!じゃあまた後でね~」

 

 

 

千歌と別れ、自分の教室へ向かう…

 

「なぁ、今の子って体験授業の子?」

 

同期の友達が後ろから肩を叩く。

 

「すっげえ可愛いかったな~お前の友達?」

 

「いや、彼女。」

 

「え?」

 

 

一瞬で空気が凍りつく…

 

 

「ええぇぇ!!!??お前に彼女なんていたの!?」

 

「お前にって……失礼だな。」

 

「普段全然喋んないお前がか、かか、彼女ぉぉぉぉ!!??」

 

「うるせえよ、中学生か。」

 

「いやぁ~お前って顔は良いけど、性格がちょっとアレだからな~」

 

「俺は興味のないことは、無関心なだけだ…お前とかな。」

 

「またまた~ご冗談を~」

 

「いや、マジで」

 

「ひでぇ!!」

 

 

~♡♡♡~

 

とりあえず、大学の体験授業も終わったし、これから新しい高校へ向かう…私と同じように、あの大学の体験授業を受けてから高校へ行く人を何人か見かけた。

 

 

たったの2ヶ月くらいしか通わないけど、とりあえず残りの高校生活を頑張ろう!もちろん大学の体験授業も頑張らなくっちゃ!

 

 

そう考えながら、自分の教室へ向かう…そういえば、自己紹介とかしなくちゃいけないのかなぁ…なんか、恥ずかしいなぁ…

 

「はい、じゃあ転校生を紹介するわね。じゃあ…こちらに」

 

「は、はい!」

 

ど、どうしよ…急に大きな声を出しちゃった…

 

体をギクシャクさせながら、みんなの前に立つ…。

 

「え、えっと!浦の星女学院高校から来ました!高海千歌です!短い間ですが…よ、よろしくお願いします!」

 

「可愛い…」 「綺麗な髪~」 「優しそう~」

 

 

とりあえず、先生に案内された席に座る…。

 

「ねぇねぇ、高海さんってお付き合いした人とかいるの?」

 

「ふぇっ!?そ、それは…」

 

「へぇ~いるんだ~♪どんな人どんな人?」

 

「え、え~っと…」

 

「こらっ高海さんが困ってるでしょ?」

 

「あはは…。」

 

みんな優しそうでいい人だけど、早く帰りたいよぉ~!

 

~♡♡♡~

 

 

あれ?悠之君からLINEが来てる…?

 

『授業終わったから、家で待ってる』

 

『夜ご飯何がいい?』

 

『なんでも♡』

 

『了解!気をつけて~』

 

『うん!ありがと♡』

 

 

スマホの画面を閉じて、帰りの電車を待つ…高校は大学と違って、少し距離があるから、電車を使わないといけない…と言っても、二駅しか無いけど。

 

電車の中は人がいっぱいだなぁ…田舎の静岡とは違ってやっぱり人がたくさん…

 

「きゃっ!」ドンッ

 

大きく電車が揺れ…誰かとぶつかってしまった…

 

「す、すみません…」

 

「い、いえ…こちらこそ…」

 

ふと顔を上げると、見覚えのある顔だった。

 

 

「だ、ダイヤさん!?」

 

「ち、千歌さん!?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ただいま~」

 

「おかえり~…ってダイヤ!?」

 

「お久しぶりです、悠之さん。去年は挨拶に行けなくて申し訳ございません。」

 

「い、いやいや!俺の方こそだよ。」

 

半年ぐらい会えてなかったからな…なんだか新鮮な感じがするな。

 

「えへへ~電車で会っちゃったからつい呼んじゃった♡」

 

「やれやれ…こんなに毎日お客さんが…俺の家はアミューズメントパークじゃないんだぞ。」

 

「それにしても、一瞬見間違えましたわ…千歌さんがこんなに美人になっているだなんて…。」

 

「えへへ…中身はあんまり変わってないけどね♪」

 

「それを自分で言うか…?」

 

「ふふっ…では私はこれで…」

 

「えー!?帰っちゃうの?」

 

「お二人の邪魔はしてはいけませんからね。」

 

「え~…じゃあ、今度は一緒に遊ぼうね!」

 

「えぇ、約束ですわ。」

 

ダイヤさんと指切りをする…

 

「では、また。」

 

「ばいばーい!」

 

 

~♡♡♡~

 

 

 

「そういえば、千歌の新しい高校の制服ってブレザーなんだな。」

 

「うん!似合っているなぁ?」

 

伸ばした髪がブレザーにとても似合っていて、まるで漫画のヒロインのようだ。

 

「でも、私はやっぱりセーラー服の方が好きなんだよね~」

 

「まあ、確かにそっちの方がイメージがあるしな。」

 

「悠之君はどっちが好き?」

 

「うーん…ちょっと選ぶのが難しいな~」

 

髪の毛が短い時の元気系セーラー服か、長い時の清楚系ブレザーか…うーむ…この二択を選ぶのはかなり厳しいぞ。

 

「どっちもじゃ…だめか?」

 

「いいよ、悠之君に愛されるなら……」

 

「千歌……」

 

 

ドサッ……

 

ブレザーを着ている千歌が余りにも愛おしくて…愛おしくて…俺にはとても我慢出来ない

 

「でも、やっぱりその制服も素敵だね。」

 

「えへへ…ありがとう♡」

 

そっと、千歌の髪を撫でる…もう千歌の耳は真っ赤に染まっていた…。

 

「んっ…悠之君…」

 

「どうした?」

 

そのまま千歌の体を抱きしめる…

 

「もうっ…今日はどうしたの?」ドキドキ

 

「このまま…したい。」

 

「しょうがないなぁ…制服は…汚しちゃダメだからね?」

 

「…わかってるよ。」

 

 

 

 

理性を保てるのか…これは…?

 

 




ファンミ最高だった…


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第33話「時が過ぎても…」

義理チョコはやめよう?

なんだそれ?

義理チョコが無くなったらチョコレートゼロ個だよー!


私が新しい高校へ入学してから既に三日…新しい友達も優しい人が多くてちょっと安心したかな?

 

でも…今までには無い学校生活に少し驚きを隠せなかったかな…。

 

 

「(あ…今日も入ってる…。)」

 

 

ロッカーを開けると1枚の手紙が入っていた…。

 

 

そう…毎日毎日、男子からのラブレターが絶えないんだよね…小学校以来の共学だから、少し驚いた…。

 

 

「ねぇねぇ、あの子知ってる?」

 

「知ってる知ってる!高海さんでしょ?」

 

「可愛いよね~」

 

「ね~!」

 

 

それと…何よりも恥ずかしい…。

 

休み時間とかに他のクラスの男子達が…廊下からじっと…見てくるのがいつも分かる。

 

「(それよりも…この手紙…どうにかして断らなくっちゃ。)」

 

 

~♢♢♢~

 

~3時限目~

 

「(はぁ…疲れたぁ…もう帰りたいよぉ~)」

 

机にうつ伏せになって、深くため息をつく…

 

「千歌ちゃん?どうしたの?」

 

「んーん、何でもないよ?ちょっと疲れちゃっただけ。」

 

「そっか、次体育だから着替えないとだよ?」

 

「うん!ありがとう♡」ニコッ

 

「(可愛い…)」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「はい、今日はソフトボールをやりますよ~怪我しないようにね~」

 

周りの皆がいっせいに準備を始める…

 

「(ソフトボールかぁ…結構久しぶりにやるけど、まだまだやれるかな?)」

 

「ねぇねぇ、高海さん!」

 

1人の女子生徒が話しかける…

 

「千歌でいいよ♪どしたの?」

 

「じゃあ…千歌ちゃん!千歌ちゃんってソフトボールはやった事ある?」

 

「ん~まあ、ちょっとだけなら。」

 

「よかった!じゃあうちのチームのピッチャーをやってもらってもいい?」

 

「うん!任せて♪」

 

 

相手チームには経験者が二人、私達のチームには経験者は私だけだった。

 

 

『プレイボール!』

 

「千歌ちゃん頑張って~!」

 

よし…じゃあ…久しぶりの投球…

 

「(挨拶がわりだっ!)」ビシュッ

 

ズバァン!!

 

「す…ストライーク!」

 

よかった…全然まだまだ投げられるや!

 

「ち、千歌ちゃん…」

 

「す、すごい…」

 

とりあえず、経験者以外には少し手を抜いたけど、経験者には構わずに全力で投げ続けた…。

 

そして、ツーアウトになるまで、誰もランナーを出さなかった。

 

「ちょっとタンマ!代わりに私が代打に出る!」

 

もう1人の経験者が代打に入ってくる…

 

「これ以上好きにはさせないよ…本気で打つ!」

 

「いいね…その気迫…!私も本気でいくよ~!

キャッチャーの人!ミットをしっかりと固定しといてね!」

 

「え、うん!」

 

「(いくよ…!)」ビシュッ!

 

スローボールがキャッチャーミットに向かって飛んでいく…

 

「(初球から遅い球なんて…舐められたものだね…こんなもの!)」

 

グンッ!

 

バッターの手前でボールが急速に加速する…

 

「(うそ!?球が急速に伸び上がったっ!?)」

 

大きな音を立ててキャッチャーミットにボールが収まる…

 

「(今のは間違いなく、『ライズボール』…まさか、高校生で投げられる人がいるだなんて……今度は一体なにで来る?)」

 

「(いくよ…二球目!)」ビシュッ!

 

バスッ!

 

「…今度こそ!」

 

球がバッターの前で急速に落下する…。

 

「ツーストライクッ!」

 

「(そんな…あんなにキレのあるフォークが投げられるだなんて、ただ者じゃない…!)」

 

「(よし…これで最後だ…!)」

 

「(なにで来る…?カーブ、フォーク?それとも、さっきの伸び上がる変化球?)」

 

ビシュっ!

 

「(三振になんてなってたまるか!!)」

 

バットが空を切り…ボールがキャッチャーミットに綺麗に収まる…

 

「スリーストライクッ!バッターアウト!」

 

「(そんな…ストレート…?)」

 

か…完全にウラを読まれた…この子…強い…!

 

「千歌ちゃんすごい!」

 

「どうやったらそんな球が投げられるの?」

 

「んー、昔友達とよく遊んでたからかな?そしたらいつの間にかソフトボールが得意になってたんだ~」

 

いや…遊んでただけでライズボールが投げられるわけが無い…やっぱりきっと昔からソフトボールが好きだったのかしら?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~2月14日~

 

「えー!?レポートが終わるまでエッチ禁止ー!?」

 

「ち、千歌…そんなに大きな声で言ったら……」

 

「あ、ごめん…///」

 

「でもどうして?前は学校の課題で制限とかなかったのに?」

 

「あぁ…でも今回は、レポートだけでなく、美容学部の実施テストもあるんだ。今までとはまたちょっと違ってな…。」

 

「そっかー…悠之君、美容学部だもんね~…やっぱり大変なんだね…。」

 

「だから、ごめんな?終わったら自由な時間もたくさん作るから。」

 

「…うん!わかったよ!」

 

千歌がニコッと優しい笑顔を浮かべる…。

 

「じゃあ…悠之君がレポートとテストが、上手くいくように贈りたいものがあります!」

 

「お、何かな?」

 

「今日はなんの日だ~?」

 

「バレンタイン~!」

 

「はい、どうぞ~♡色々と大変だと思うけど頑張ってね!」

 

「ありがとう、千歌…大好きだよ。」

 

「えへへ~どういたしまして♡」

 

チュッ…

 

「もーエッチは無しなんじゃないの?」

 

「キスだけならまだセーフなの!」

 

「今の悠之君子供みたい~可愛い~♡」

 

 

 

~~♢♢♢~~

 

 

~後日~

 

「ふぅ…ただいま~!」

 

「おかえり悠之君!テストはどうだった?」

 

「あぁ、上達してるって褒められたよ。」

 

「ほんと!?よかったぁ~!」

 

「あぁ…料理とか任せっきりにしちゃってごめんな。あんまり構ってあげられなかったし……」

 

「んーん…気にしなくていいよ!その分今日はいっぱいデートしに行こ?」

 

「ふふっ…そうだな。じゃあ、バレンタインの時はあんまりバレンタインっぽいことが出来なかったから…それを今日しに行こうか。」

 

「うん!」

 

 

~~♡♡♡~~

 

「それでね~この前の体育が終わってからソフトボール部の人達にいっぱい絡まれちゃってね~」

 

「そっか、千歌はソフトボールのピッチャーが凄く上手いからな~未だに千歌のストレートを打ったことが無いや…。」

 

「えっへん!野球だけは悠之君には負けないのだっ!」

 

「それ以外は負けてもいいんかい。」

 

「えへへ…そういえばテストって何をやったの?」

 

「あぁ、ベースカットとスタイリングだよ。」

 

「へぇ~じゃあ今度悠之君にスタイリングとかやってもらおうかな?」

 

二人で歩いていると、空から雪が降ってくる…

 

 

「あれ…今日予報で雪が降るなんて言ってたかな?」

 

「ほんとだね~じゃあ、私折り畳み傘があるから一緒に入ろ?」

 

「あぁ、悪いな。」

 

 

♢

 

 

「わぁ~やっぱりスカイツリーから見える景色はすっごく綺麗…」

 

「そうだな…ここに来たのも高校生以来だな…。」

 

「そっか…あのGWからもう2年以上経っているんだ…時間が過ぎるのって早いね~」

 

 

展望台から街を眺める千歌を横からチラッと見る……顔立ちは子供っぽいのに服装や雰囲気はあの時とは違い…大人っぽくて素敵だ…。

 

時間が経つのはホントに早いものだ…きっと俺達は…大学を卒業して…就職して…そして、いつの日か永遠に結ばれる関係になるまで…

 

考えれば長く感じるけど…時間はやはり、あっという間に過ぎていく…

 

 

「もう~どうしたの?さっきから私の顔をずっと見て…?」

 

「いや…綺麗だなって…思ってな。」

 

「えへへ…そんなふうに言われちゃうと恥ずかしいよぉ~///」

 

「本当に…もう…」

 

 

 

ギュッ……

 

 

 

「悠之…くん?」

 

「久しぶりに感じるよ…千歌の体温を…。」

 

「私も…悠之君ってこんなに暖かかったんだね……」

 

 

キスまでしたかったが、周りに人がいるので一旦離れる…

 

 

「ねぇ悠之君…バレンタインの時に伝えたかったことがあるんだけど…いいかな?」

 

「うん、いいよ。」

 

「その…恥ずかしいから…1回しか言わないからね?」

 

 

 

千歌が1度深呼吸する…

 

 

『私の愛を…これからも受け止めてくれますか?』

 

 

恥ずかしそうに言う千歌に反応するように、千歌の体をもう一度抱きしめる…。

 

 

「俺は…どんな形でも…千歌の愛を受け止めるよ。」

 

「悠之君……大好き♡」

 

 

「「Happy Valentine!」」

 

 

 




義理チョコでも嬉しい限りだったな~


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第34話「溜めすぎてはいけない物」

もはやR15ではないと悟ってしまった…


…最近また、悠之君が私に構ってくれません…。

 

また、大学の忙しい期間に入ってしまったみたい…しかも、学校から帰ったらすぐにバイトに行っちゃうし……

 

 

はぁ…あと、一週間で卒業式なのに……やっと自由な時間がたくさん増えるのに……

 

 

「ただいま~~」

 

 

そう思っていると、バイト帰りの悠之君が帰ってきた……

 

「おかえり~今日も遅かったね~いつもお疲れ様♪」

 

「あぁ、ありがとうな。」

 

 

私は悠之君の体を欲しくなり無意識に悠之君の身体を強く抱きしめていた…

 

 

「ど、どうしたんだよ?いきなり……」

 

「えへへ……悠之君あったかい…」

 

「寒い中帰ってきたんだけどな……」

 

「ねぇ…今日は…その…できる…?」

 

「あ…ごめん、明日も授業が1限からあるんだ…また今度な?」

 

 

最近こんな日がたくさん続いてる…ただでさえ、1人で待つのが苦手なのに…夜まで一人ぼっちな日が多いのは少し辛いよ……

 

 

 

~翌朝~

 

「じゃあ、行ってくるね。」

 

「悠之君、今日は…その、早く帰れる?」

 

「あぁ、今日はバイトもそんなにシフトも入れてないし、そんなに遅くならないよ。」

 

「ほんと!?じゃあ、まってるね♡」

 

「あぁ、行ってきます」

 

 

 

~☆☆☆~

 

「え、今日は俺の後のシフトの人達が誰もいないんですか?」

 

「うん、今日も夜まで頼むよ。給料も少し多くしておいてあげるからさ。」

 

「は、はぁ…」

 

夜までって言っても…流石に1時間伸びるくらいだよな…?

 

 

そんな疑問を抱きながら、いつも通り作業を始める…。

 

 

~~夕方~~~

 

予定だと悠之君はもう帰ってくるはずなんだけど……

 

 

まぁ、あくまで予定だし…ちょっとは時間が変わってもおかしくはないもんね?

 

 

 

洗濯物を取り込んでいると、ハンガーにかかっている悠之君の部屋着のパーカーが目に入る……

 

 

私は無意識にそれに手を出していた…。

 

 

悠之君の…いい匂い…なんだか胸の奥が…ソワソワしてきちゃうよ…

 

 

 

ドキドキ…

 

 

少しくらい…いいよね?

 

 

「んっ…はぁ…」クチュ

 

 

最近1人ですることがなかったから…凄く敏感……。

 

 

私のここ…凄く切なくなってる……

 

 

悠之君に無理やり襲われちゃってるみたいで…

 

「クセになっちゃうかも…」

 

 

 

~~♡♡♡~~

 

やっべえな、やっぱり一時間遅刻してしまった…最近千歌をひとりぼっちにさせちゃってるから、今日こそは一緒にいてあげないと……

 

 

「ただいま~ごめん、少し遅くなった……あれ?」

 

千歌の姿が見当たらないな……

 

 

なんだか、部屋の電気もついてないし、洗濯物も散らかったままだし……

 

 

「やっ…あん……♡」

 

 

なんか、寝室の方から声が聞こえるんだが……

 

 

ガチャ…

 

「千歌~帰ってきた…よ…!?」

 

 

俺の目には、俺のパーカーに鼻を擦り付け、下半身をくねらせている千歌の姿だった…。

 

 

「ゆ…悠之…君?」

 

「ち、千歌…何をして……」

 

「あ、あぁ…」ポロポロ

 

「千歌!?」

 

「うわぁん!絶対嫌われたぁー!!///」ダッ

 

「まて!千歌!!どこへ行く!?」ガシッ

 

 

逃げようとする千歌の手首をしっかりと握る…。

 

 

「いや!離してよ!!悠之君のエッチ!!!」

 

「いやいや、エッチはどっちだよ!?」

 

「なにそれ!?ダジャレ!?」

 

「ちげぇよ!」ドサッ

 

「ひゃっ!?」

 

あまりにも千歌が強情なので、無理やりベットに押し倒す…。

 

そのまま互いに落ち着くまで沈黙が続く……

 

 

「ごめん千歌…。」

 

「ど…どうして悠之君が謝るの?謝りたいのはこっちの方なのに…」

 

「いや…びっくりしたけど、別に気にしてないよ?」

 

「だって……嫌われちゃうかと思って……」

 

 

千歌の瞳から涙がこぼれる…

 

 

「こんなに不安になるまで放っておいちゃって…ごめんな?」

 

「私も…ごめんなさい…。」

 

なかなか千歌が泣き止まないので、頭を撫でながら、そっと唇にキスをする……

 

 

「よしよし…」

 

「悠之君は嫌じゃなかったの…?その…勝手に服を使ってあんなことをしたのに……」

 

「さっきも言ったけど、俺は気にしてないよ?千歌があんなに求めててくれたのにずっと相手にしてあげられなかった俺のせいでもあるんだから。」

 

「でも……」グスッ

 

「はいはい…泣かない泣かない…」ナデナデ

 

余程見られたのがショックだったのかな…まぁ、俺も、もし1人でしている所を見られたら恥ずかしいもんな…。

 

 

「じゃあさ、仲直りに…一緒にしよっか?」

 

「え?…ほんとにいいの?」

 

「千歌はずっと一緒にしたかったんだろ?だったら俺もその気持ちに応えるよ。それに……」

 

「それに?」

 

「その…俺もちょうどしたかったし…な…///」

 

「クスッ」

 

「な、なに笑ってるんだよ///」

 

「んー?恥ずかしがってる悠之君が可愛いな~って♪」

 

「か、からかうなよ……」

 

「えへへ…♡」

 

 

~~~♪♪♪~~~

 

 

 

ベットに押し倒した状態から、千歌の下着の上からそっと陰部を撫でる……

 

「もう…こんなに濡れちゃってるね…」

 

「うぅ…改めて…こんなに見られちゃうと恥ずかしいよ…///」

 

「じゃあさ…今日まで抑えてた分…いっぱい気持ちよくしてあげるよ。」

 

「うん…♡」ドキドキ…

 

千歌のパジャマのボタンを1個ずつ外していく…千歌の白とオレンジ色のデザインのブラが見えてくる…。

 

「もう最初からホック外すね。」

 

そのまま、ブラのホックを外す……

 

千歌の大きな胸全てがさらけ出される…相変わらず綺麗な形だ…。

 

「悠之君…やさしく…ね?」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

胸に触れると暖かく柔らかい感触が手のひら全体に広がる…正直千歌の胸を触れるのも随分久しぶりに感じる。

 

 

「ん…///」

 

まだ胸に触れただけなのにすごい反応だ…これはかなり溜まってる様子だな…。

 

 

 

クリッ…

 

「~~っ!?」

 

「ここは…どう?」

 

「だ、だめぇ…そこ、はぁ…あ、ひゃめ……声がでひゃう…///」

 

俺は構わず千歌の乳首を軽くつまむ…あっという間にピンっ立ち上がっている…。

 

「ほ、ほんとにダメだってば……ひゃうっ…///」

 

「そう?反応はすっごく嬉しそうだけど?」

 

「しょ…そんにゃこと……///」

 

「だって…ずっとしたかったんだろ?」クリクリ

 

「——っ♡」

 

 

千歌の乳首を弄りながらそっとキスを交わす……

 

 

「正直に言ってごらん?」クチュ…

 

「んんっ…!」

 

 

下着の上からそっと、デリケートゾーンに手を当てる…

 

 

「声…もう我慢しなくてもいいんだよ?」

 

「だって…恥ずかしいんだもん…」

 

「千歌の声…すっごく可愛いから…いっぱい聴かせて?」クニュ

 

「ひゃっ…あんっ!」

 

 

油断していた私は無意識に声がこぼれる……

 

「ほら…可愛いよ千歌…」

 

 

悠之君が少しずつ速度を上げていく…同時にしたから上に軽く持ち上げるように私の胸をやさしく揉んでくれている…

 

下着もすべて脱がされ今度は、直接悠之君に私の1番感じる場所を触ってくれている……

 

私はあっという間に悠之君の手と快楽の虜になっていった…

 

それは、あの時パーカーで欲を満たそうとしていた時よりも比べ物にならないくらいに心地よかった……

 

 

「悠之君…私…もう身体を触ってもらうだけじゃ満足出来ないよ…」

 

切なそうに千歌が俺のことを見つめてくる…こんなに顔を赤くして、欲する姿を見て俺も我慢の限界だった。

 

「…わかった。」

 

「その…今日は大丈夫な日だから…いっぱい中にちょうだい♡」

 

「あぁ…じゃあ入れるね?」

 

「うん♡」

 

 

ズプッ…と音を立てて久しぶりに千歌と俺のがひとつに繋がった……。

 

中は柔らかくてものすごく暖かいのに、程よく締め付けられ……物凄い快楽が俺を襲い出す…。

 

 

「悠之君…気持ちいい…?」

 

「うん…千歌の中…すっごく気持ちいいよ…。」

 

「よかった…私もすごく気持ちいいよ…もっといっぱい動かしてもいいんだよ?」

 

「…痛かったら言ってね?」

 

「うん♡」

 

 

まずはゆっくりと、動かしてみる…

 

「あんっ♡はあっ♡」

 

「さっきより…締りが…」

 

腰を動かすたびに千歌の大きな胸が揺れるので、本能的に胸に手が触れてしまう

 

「感じてる千歌…凄く可愛いよ。」

 

「ひゃっ♡見ちゃひゃめぇ♡」

 

「もっと奥まで入れるね…」

 

 

さらに奥まで突き出すともっと締りが強くなっていく…。

 

 

「らめ…悠之君のすっごく深いよ…」

 

「まだまだ動かすよ…」

 

「ひぅっ♡」

 

忘れずに乳首も弄っていく…。

 

「あっ♡んあっ♡」

 

「千歌…俺もう…イきそうだ…」

 

「私も…もうでひゃう…。」

 

すると、千歌が足をホールドさせながら、俺の顔を寄せるように抱きしめる…

 

「千歌…?」

 

『…一緒にイこ♡』

 

そう…耳元で囁かれた…。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~am.3時~

 

「……君。」

 

「……悠之君。」

 

「あれ…千歌…?」

 

「えへへ…やっと起きた…。」

 

「そっか…俺たち疲れ果ててそのまま寝ちゃったのか…」

 

布団やシーツはめちゃくちゃなのに、俺と千歌の体は密着したままだった…。

 

「ねぇ、一緒にお風呂入らない?裸のままなんだし…」

 

「そうだな…したまま寝ちゃったから汗とか凄いだろうしな。」

 

「うん、じゃあお風呂入ろ~♪」

 

 

~~~♡♡♡~~~

 

二人で入浴するのも久しぶりだ…お風呂のお湯で、胸とか大事なところが隠れている千歌の姿が相変わらずいやらしいくて…少し目をそらしてしまう……。

 

「あれ?悠之君、もう日差しが登ってきてるよ?」

 

「あー、もう朝の5時だからな日差しがのぼってもおかしくはないだろうな。」

 

「そうだ!外のバスタブに入りに行こうよ!」

 

「え、でも外の人に見られちゃうかもだぞ?」

 

「いいよいいよ!ちゃんとタオルを巻いて行けばいいし!それとも…」

 

「ん?」

 

千歌がじっと上目遣いを始める…

 

「私と一緒じゃ…やだ?」

 

…相変わらず反則だ…それは。

 

 

バスタブの電源を入れて、タオルを巻いて、一緒に入る…。

 

ここは元はリゾート地だったから、景色は自然に囲まれていて空気がとても綺麗だ…東京の街から少し離れた場所に別荘を立てた母親は有能すぎる…

 

「わぁー!すっごいー!!」

 

「こら、一応ご近所はいるんだからあんまり騒いじゃダメだぞ。」

 

「えへへ…つい…♪」

 

でもはしゃぎたくなるのはわかる…俺も小さい頃はここのお風呂でよく騒いだからな…。

 

「悠之君!」

 

「ん?どうした?」

 

「やっぱり、ずっと一緒だと楽しいね♪」

 

「あぁ、そうだな。」

 

「1人で待つのは…やっぱり寂しいけど…でも、ここにいれば悠之君は必ず帰ってくるんだよね。」

 

「千歌……」

 

「だから寂しくても私はちゃんと待つよ!そして、こうやって二人でいられる時間をもっと大切にしようね♡」

 

「そうだな…俺もそうしなくちゃなって思ってたところだよ。」

 

「えー、ほんとかな?」

 

「ほんとだよ」

 

千歌が距離を詰めるのでキスをしてくるのかと思ったら…やさしく抱きしめてくれた…。

 

 

「大好き♡」

 

 

この熱さ…これはきっとお湯の熱さではない…そんなもの、考えなくてもすぐに分かった…。

 

 




花丸ちゃんの誕生日きたぁー!!


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第35話「記憶」

お久しぶりです!

学校のテストやら課題やらでかなり遅くなってしたいましたが、続きをどうぞ!


午後4時…今日も長い授業も終わった…明日から春休みに入るし、ゆっくりと体を休めておきたいところだ…。

 

あーでも、明日は午前中だけバイトがあるんだった…だるいな~。

 

「あ!悠之君~!!」

 

「おー、千歌も今帰りか。」

 

「うん!早く一緒に帰ろ?」

 

俺と千歌の二人で握った手は何だかとても暖かった…それだけじゃない、この外の気温の温かさ…そして…。

 

「へっくしっ!」

 

「うわっ、大丈夫?悠之君?」

 

 

このくしゃみ…そう…今年の春の再来だ。

 

もうだいぶ暖かくなってきた…今来ている服も少し暑く感じるくらいだからな…そろそろ衣替えの時期か。

 

「そっか~もう春になるんだね~って、悠之君すごく辛そうだけど大丈夫?」

 

「あぁ…今日は特に飛んでるっぽいな…どーにかならないかな~」

 

「あ、確かこの前テレビで言ってたよ!寝る前とかにホットタオルを顔に乗せると目のリラックスになるんだって~!」

 

「あー…そういや昔誰かに言われたことがあったな~」

 

「誰かって誰?」

 

 

高校1年の時…だったかな…?

確か…クラスメイトのヤツらと喧嘩して…その後に看病してくれた人がいたはず…たしか、大人びた顔をしていて、髪が長くて…ちょっと赤みがかった色だったかな…?

 

 

あれ?なんか…なんかちょっとだけ当てはまる人がいるような…?

 

 

 

 

まさかな…梨子と俺は同い年だし…人違いって可能性も。

 

 

~~~~~~~~

 

「何だか…貴方と喋るのが初めてじゃないみたい。」

 

「俺も、君とどこかで会ったような気がするよ。」

 

~~~~~~~~

 

 

あれこれ考えてると、初めて梨子と会話した時のことを思い出す…何度も考えてみたが…やっぱり気になってしまう。

 

 

「おーい?ゆーじくーん?」

 

「あ、ごめん…どうした?」

 

「信号…もう赤に変わっちゃったよ?」

 

「あ……」

 

 

♢

 

バイトの最中なのにやっぱり、昨日考えていたことが気になってしまって中々集中出来ない…。

 

やっぱりあの時看病してくれたのは梨子だったのか?確かに俺と同じように東京育ちだったから、可能性はゼロではないが…。

 

あの時確か、タオルを乗せられて…その後恥ずかしくなっちゃって、全く顔も見ないで帰っちゃったんだよな…。

 

 

カランカラン~

 

そんなことを考えてると、お客さんがいつの間にか入ってきていた…それと同時に外から強烈な花粉が入ってきた…。

 

「いらっしゃいませ~お好きな席へどうぞ~。」

 

今すぐにでもくしゃみが出そうだったが…お客さんの目の前では流石にマズイからな…。

 

 

 

「こんにちは~♪」

 

「いらっしゃ…おー、梨子か。」

 

「くすっ悠之君…変な顔~。」

 

「くしゃみが出そうなんだよ…今年もいっぱい飛んでるみたいだからな…。」

 

「大変ね…花粉症は。」

 

梨子が席についたのと同時にオーダーをする…。

 

「悠之君、カフェラテ貰えるかしら?」

 

「はいよ~…なあ、梨子?」

 

「?」

 

「梨子って…静岡に引っ越す前にどこかであった…?」

 

バイト中にも関わらず俺は梨子に直接聞き出す…幸いお客さんも少ないし、これはチャンスだ…早めに聞いておけばこのモヤモヤもすぐどこかへ消えていくだろう…。

 

 

「悠之君。」

 

「うん?」

 

「今日のバイトが終わったら、私の家に来てくれる?」

 

「え…まあ、今日は昼には終わっちゃうから別に大丈夫だけど…。」

 

「じゃあ、バイトが終わったら来てね。」

 

 

~♪♪♪♪♪♪♪♪♪~

 

バイトが終わり、さっそく梨子の家に向かう…。

 

えっと…確か、507号室だったよな…?

 

 

確か、冬に善子ちゃんと泊まりに行った以来だ…しかし、何故わざわざ家に呼ばれるのだろう?普通にLINEとかで伝えれば良いのでは…?

 

 

ピンポーン!

 

 

「わざわざ呼んじゃってごめんね?」

 

「いやいや、こっちも急に変なことを聞いちゃってごめんな?」

 

部屋も綺麗に整頓してあって、落ち着きのあるいい部屋だ…。

 

 

「で…わざわざ家に呼んで話すってことはやっぱり何かあるのか?」

 

「…。」

 

「梨子…?」

 

「こんな日…だったよね。花粉が強くて、桜の花びらが散って、そして悠之君がまだ…荒々しくて子供っぽかった時…。」

 

 

俺の予想通りだ…やっぱりあの時俺のことを優しく看病してくれた人は梨子だったんだ…。

 

 

「でも…なんでわざわざ家に呼んで話したんだ?電話とかLINEでもよかったんじゃ…。」

 

 

俺がそう言うと、梨子の瞳から涙が流れていた…。

 

 

「梨子…どうして泣いて…?」

 

「だって…学校でずっと近くにいてくれてたのに…気づいてくれなくて…私ってそんなに魅力ないのかなって…」ポロポロ

 

「いや…でも、そんなに泣かなくても…。」

 

「だって…久しぶりに再会できて…名前とかも聞こうと思っていたのに…悠之君はずっと千歌ちゃんに夢中だったから…。」

 

「それは……」

 

 

泣いている梨子の姿を見るとなんだか胸が痛くなる…。

 

 

「最初私は、悠之君を死んじゃった方の悠之君の代わりなると思って仲良くしようと思ってた…だけど…。」

 

 

こんなに感情を爆発させている梨子を見るのは初めてだ…。

 

 

「私は…悠之君のことが大好きなの。

友達としてじゃなくて、本当の恋愛対象として…ダイビングに行ったあの時…東京から来ていた友達にからかわれてた時に助けてくれた…あの時から私は…ずっと…ずっと…」

 

 

梨子が俺の体に抱きつき始める…。

 

 

「…ありがとう。」

 

 

そっと梨子の頭に手を添える…。

 

「悠之…君…///」

 

「確かに、今の俺…いや、あの時から俺は千歌のことが大好きだ。だから、梨子の気持ちには応えることができない…。」

 

「そう…だよね。」

 

「でも、そう思ってくれてる人がいるだけでとても嬉しいよ。それと、あの時…恥ずかしくてうまくお礼が言えなかったけれど…ありがとな?」

 

「私からも…ありがとう悠之君…♡」

 

 

梨子が涙を拭いてようやく笑顔になってくれた…

 

「リリー!遊びに来たわよっ!!」ガチャ

 

「梨子ちゃん~この前のクッキーのお礼…に…?」

 

「千歌ちゃん!?善子ちゃん!?」

 

 

千歌と善子がじとーっとした目で俺達を見つめてくる…これはもう終わったな…GAME OVER だな。

 

 

 

「悠之君…?これはちゃんと説明してくれるんだよね?」

 

「リリー?貴方…一体何をしているの?」

 

よせ…そんな怖い顔して俺達を見つめないでくれ…。

 

「まって!悠之君は悪くないの!!私が勝手に……」

 

「善子ちゃん。」

 

「YES…」

 

ドンッ!

 

 

善子が梨子を壁に追い詰めて手を顎にそっと添える…。

 

 

「リリーは…こういうことをされるのが大好きなのよね?

しかも、イケイケな女の子とか男の子とかに……ね?」

 

「はうっ…ち、違う…の…」

 

「そんなこと言っちゃって…顔…凄くだらしなくなっちゃってるわよ?」

 

「~っ♡」

 

やっべ…これはちょっと逃げた方がいい…かな?

 

「悠之…君?」

 

「千歌、これは誤解だ!」

 

「うん♡それは分かってるよ?悠之君はまだ何もしていないし…」

 

「じゃあ…どうして…?」

 

「だって…目の前で二人きりでいたら……」

 

『嫉妬しちゃうもん…』プクッ

 

顔を赤くして、頬をプクッと膨らませる……

 

「ごめん…次からは気をつけるよ…。」

 

「うん…じゃあさ…。」

 

ドサッ…

 

千歌に無理矢理押し倒される…抵抗しようとしても、千歌が力強く手首を抑えているので中々身動きが取れない…。

 

「千歌…ここは他の人の家……」

 

「いいよ…だって2人とも全然見てないもん…。」

 

「そ、そういう問題じゃなく……」

 

くちゅっと…音を立てて千歌に無理矢理キスをされる…何だか新鮮な感覚で、何だか悪くない感覚だ…。

 

千歌の舌が俺の口の中に入っていくのがすぐに分かった…。

 

 

「悠之さん…千歌…凄い。」

 

「あら?よっちゃん嫉妬?」

 

「ち、違うもん!その体制でよくそんなことが言えるわね!」

 

「いや~だって嫉妬してるよっちゃんがすごく可愛いから…」

 

「もー!リリーのばか~!!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「千歌、ごめんなさいは?」

 

「はい…他人の家に上がり込んでこんなことしてすみませんでした…」

 

「落ち着いた?千歌ちゃん?」

 

「うんっ!!」

 

「おい、千歌?」

 

「はい、すみません…調子乗りました。」

 

 

千歌を連れて、梨子の家を後にする…でも、あれは俺にも少し原因はあるかな…梨子を止められなかった俺も悪いわけなんだし…。

 

 

「ゆーじくん?」

 

「ん?」

 

「相手が梨子ちゃんだったからまだしも…妬いちゃった分ちゃんとお返ししてよね?」

 

「そうだな…じゃあお詫びに春休みにどこか遊びに出かけようか。」

 

「どこかってどこ?」

 

「まだまだノープランだけどな。」

 

「もー!なにそれ~!」

 

 

千歌が握った手を離してから腕にしがみつくように抱き寄せる…2つの柔らかな感触が伝わる…

 

 

 

春休み…なにをしようか?

 

 



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第36話「男子の知らない痛みと痛くないピアス」

何だこのタイトル……


「千歌?」

 

「う…ん…?」

 

「千歌、起きろ?」

 

「ん…悠之君おはよ…。」

 

「どうしたんだよ?なんかあまり元気なさそうだけど…?」

 

千歌が目を擦りながら大きなあくびをする…。

 

 

「ん~?そうかな?私は別に何ともなっ——」

 

 

ズキ…

 

 

「千歌?」

 

「……たい」

 

「え?」

 

「お腹…痛い…。」

 

「えぇ!?」

 

 

千歌が辛そうにお腹を抑える…。

 

 

「だ、大丈夫か?トイレ行く?」

 

「いや…そういうのじゃなくて…。」

 

ズキズキ…

 

「あいたたた…」

 

「え?どういうのなんだ?病院に行くほどのなのか?」

 

「だから…その…そうじゃなくてさぁ…///」

 

「?」

 

 

千歌が俺の耳にごにょごにょと喋りかける…

 

 

「——ってことなの。」

 

「あ~そっか生……」

 

「あー!言わないでって!!!」

 

ズキズキズキ…

 

 

「あたたた……」

 

「ご、ごめん…つい…。」

 

それにしても辛そうだ…男には一生縁のない悩みなんだろうな…千歌の痛みを知らない分俺がちゃんと面倒見てあげないとな。

 

 

「どうする?今日は一日休んでおくか?」

 

「うん…ごめんね悠之君…。」

 

「どうして謝るんだよ?」

 

「だって春休みいっぱい遊ぼうって…約束したのに…体調悪くしちゃって…。」

 

「そんなことでいちいち気にしなくていいさ。辛い時に無理しちゃうと体にもっと負担がかかっちゃうんだしな。」

 

 

寝ている千歌の頭をそっと撫でる。

 

 

「千歌は女の子なんだし、そんなに無理しちゃダメだ…それに俺には一生縁のない痛みなんだから…。」

 

「うん…ありがとう…悠之君…。」

 

 

~☆☆☆~

 

「朝食はどうする?こういう時って消化がいい物の方がいいのか?」

 

「んー、胃腸炎とかとそういうのとはまた違うから、あまり気にしなくて大丈夫だよ~。」

 

「そっか、じゃあいつも通りの感じでいいか。」

 

「うん!」

 

 

とりあえずいつも通りにトーストとサラダを用意する…。

 

「飲み物は何がいい?」

 

「うーん…ミルクティーがいいな~」

 

「あいよ~」

 

 

今はまだ普通だが、いつ痛みが走るかは分からない…。

 

 

「あ、そうそう。昨日の夜にこんな物が届いてたんだった…はいコレ。」

 

「あぁ~!内浦のみかんじゃん!!どしたのこれ?」

 

「志満さんが送ってくれたみたいだぞ。」

 

「ほんとだ!さすがはしまねぇ~♡」

 

 

千歌が幸せそうにみかんを頬張る…さっきまでの辛そうな表情とは大違いだ。

 

 

俺がみかんを持っていると、物欲しそうな顔をしてから口をあーんと開ける…沢山あるんだから自分で好きなだけ取っていけばいいのに…。

 

 

 

「はい、あーん…」

 

「あー……ん~っ!やっぱり美味しい!」

 

「わざわざ俺のから貰わなくても…まだいっぱいあるんだから。」

 

「んーん、悠之君に食べさせて貰うのが1番美味しいもん♡」

 

「はは…なんだそりゃ。」

 

 

♢

 

 

あれ梨子ちゃんと善子ちゃんからLINEがきてる…

 

 

『ごめん、今日はちょっと体調悪いから無理~ごめんね~。」

 

 

これで…よしっと…

 

 

「千歌、腹の調子はどう?」

 

「うん、今のところは大丈夫。」

 

「そっか、じゃあ何かあったら言ってね。」

 

「ありがと、悠之君はやさしいねぇ~ふわ…ぁ…。」

 

千歌が大きくあくびをする…

 

 

「なんだかまた眠たくなっちゃった…また寝るね…。」

 

「そっか、じゃあ…おやすみ。」

 

「まって~いっしょに寝てくれなくちゃや~だ」

 

「ダメだこの前なんて一緒に寝ようとしたら、話が止まらなくなって結局寝られたのは夜中の2時なんだからな。辛い時は早く寝る!」

 

「やーだー!お願い見捨てないでぇ~!」

 

「ダメなものはダメ…」

 

千歌が俺の袖をキュッと握って…涙目になりながら上目遣いをする…

 

ダメだ…今日くらいは押しに負けちゃいけない!

いつもこのパターンにやられてるんだから…流石に少しくらいは学ばなきゃ…!

 

「だって…悠之君がそばにいてくれないと…さみしいもん…」ウルウル

 

「でもな、今日は体調悪いんだから、早く寝た方が楽だぞ?」

 

「でも…急にお腹が痛くなっちゃったら…悠之君に一早く来てもらえないし…。」

 

「だ、だけど…な?千歌……?」

 

「それに…悠之君が一緒にいてくれたらきっと治るのも早くなると思うんだ…」

 

千歌俺の手を自分のお腹に当てる…同時に距離を詰めてくる

 

「お願い…」

 

 

それに…耳元で喋るから吐息が当たってくすぐったい…。

 

さて…普通の男子ならわかるだろう…普段は明るくて活発的な女の子が少し弱々しい雰囲気を出して、なおかつこんな風にお願いされたら答えは1つしかない。

 

 

 

「えへへ~ありがとう悠之君~♡」ギュ~

 

 

結果…こうなる。

 

 

 

「あ~やっぱり悠之君は温かいなぁ~♡」

 

 

はぁ…寝起きだから全然眠くならないや…

 

 

 

「千歌…胸当たってる…。」

 

「ふぇっ!?ご、ごめん…///」

 

「柔らかい…もっと当ててもいいよ。」

 

「もう…エッチ…///」

 

 

そんなこんなで、千歌の症状が治るのに三日かかった…そして、その三日間…同じような日々が続いた…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~翌朝~

 

「ふぅ…やっと治ったぁ~!」

 

「そっか、お疲れさん。」

 

「でもよかったの?完全に症状が治りきるまで待たなくても……」

 

「デート中に貧血とか、吐き気とか、頭痛とか、そういうのが出てきたら楽しくないだろ?」

 

「たしかに…やっぱり悠之君は優しいね♪」

 

「そりゃあどうも。じゃあ…行くぞ。」

 

「うん♡」

 

 

~♪♪♪~

 

「それにしても、春に入りたてだってのに随分と暑いな。」

 

「ほんとだね~薄着で来て良かったかも~」

 

千歌がバックの中からタオルを取り出して、肩と頬を拭く…。

 

髪を少し伸ばしてからか、千歌のワンピース姿が凄く似合っている…軽く肩も出してて、春らしくて可愛いらしく着こなせてる…。

 

 

「悠之君?おーい?」

 

「ん?どうした千歌?」

 

「さっきから…肩ばっかり見てる。」

 

「そ、そうか…な?」

 

「絶対見てたって…肩を出すのってやっぱり千歌には早かったかなぁ…?」

 

「ううん、そんな事ないよ。今の千歌の雰囲気にすごく似合ってる。」

 

「ほ、ほんと…///」

 

千歌がニヤけそうなのを頑張ってこらえてる…

 

「隣で歩いているのが俺でいいのか…?って思っちゃうくらいに素敵だよ。」

 

「もうっ悠之君だってかっこいいんだからそんな事言わないでよ~」

 

「そうか?ごめんごめん。」

 

 

二人で会話してるとやっぱり自然と笑顔になれる…

 

 

「あ、見てみて!ソフトクリーム屋さんがあるよ!」

 

「急に暑くなったから売り出したって感じだな。よしっ買いに行くか。」

 

「うん!」

 

「すみませんバニラ2つで」

 

 

2本で300円か…まあまあってところかな。

 

 

二人でベンチに座る…ちょうど木陰の下なので、風通しがとても良い…。

 

「良いベンチもあるもんだねぇ…あ、悠之君!1口ちょーだい♡」

 

「いいけど、千歌も同じ味じゃなかった?」

 

「いいのいいの♡」

 

 

無邪気に口を大きく開ける…見た目は大人っぽくなってもやっぱり千歌は無邪気な笑顔が1番可愛い。

 

 

「あー……ん~っ!やっぱり美味しい!」

 

「そりゃあ同じ味ですから。」

 

「ちがうちがう~悠之君が食べさせてくれるから美味しいの♪」

 

「またまた~」

 

「はい!悠之君もあ~ん♡」

 

「あー…やっぱりバニラだな。」

 

「もぉ~返して欲しいセリフと違う~!」プンスコ

 

~☆☆☆~

 

 

 

 

 

それにしても心地よい風だ…ここに座っているだけで寝られそうな感じだ…。

 

 

「千歌そろそろ……ありゃ寝てる…。」

 

なんか肩が重たいと思ったよ…。

 

10分くらい…だからな?

 

 

 

~Zzz…~

 

 

「~じ君」

 

ん…?あぁ…きっと 俺もつられて寝ちゃったのか…でも…まだ少し意識が遠いな…

 

「中々起きないなぁ……う~ん…あ、そうだ!」

 

 

おや…今度は何を…?

 

 

少し目を開けると千歌の顔が至近距離に迫っていた…。

 

 

 

え………?

 

 

 

柔らかい感触が唇全体に伝わる……この瞬間に俺の体の全神経が目覚めた…。

 

 

「やっと起きた~♪」

 

「ち、ちちち千歌ぁ!?一体何を…して…///」

 

「おぉ~顔を真っ赤にしてる悠之君もこれは中々レアな…」パシャパシャ

 

「ちょっ…///写真はよせええええ!!!」

 

 

 

 

♢

 

二人で買い物をしていると、千歌が何やら俺の横顔をじっと見つめてくる…

 

「千歌…?」

 

「……」ジーッ…

 

「ちーか?」

 

「おわぁっ!な、なに悠之君?」

 

「俺の顔になにか付いてたか?」

 

「い、いや…悠之君ってピアス開けてたんだね。」

 

「ピアス?あーこれ?」

 

自分の耳たぶについてるピアスを揺らす。

 

「これはノンホールだから、ピアスは開けてないよ。」

 

「のんほーる?」

 

「こういうタイプは穴を開けなくてもピアスがつけられるんだ。付けてみる?」

 

「うんうん!」

 

自分のピアスを外して千歌に付けてみる…。

 

 

「うーん…これはメンズ用だからちょっと千歌には似合わないか…。」

 

手鏡を千歌に渡す…。

 

「どれどれ~?う…確かにこれじゃちょっとヤンキーみたいだね…」

 

「千歌もピアスがしたいのか?」

 

「うん、最近ちょっと気になってて…穴を開けなくてもいいならちょっと付けてみたいな~」

 

「よし、じゃあちょっと見に行こう。」

 

 

自分の行きつけの店に案内する…。

 

 

「ん~どういうのが似合うかな~?」

 

「千歌が付けるなら少し小さめくらいなのが可愛いく見えるかもな。」

 

 

あれこれ悩んだが、やっぱり……

 

 

「これ!このお揃いのにしようよ!」

 

ま、アクセサリーとなるとやっぱりカップル系のやつが1番いいかもな。お揃いにもなるし。

 

「だな。千歌には1番これが似合ってるしそれが良さそうだな。」

 

 

早速購入し、そのまま千歌に付けてみる…。

 

「これは右と左、どっちに付けたらいいの?」

 

「男は左、女の子は右につけるんだよ……はいできた。」

 

 

鏡で確認する…。

 

「おぉ~似合ってるかな?」

 

「あぁ、可愛いらしくてとてもいいよ。」

 

「ありがとう♪悠之君もすっごく似合ってるよ♡」

 

「ほんとか?ありがとうな。」

 

 

外を見ると、すっかり夕日に変わっていた…。

 

「そろそろ家に帰ろっか。」

 

「そうだね~夕飯の支度もしなくちゃね。」

 

「今日は何にしようか~」

 

「千歌はね~今日はハンバーグがいい~」

 

「え~一昨日食べたばっかじゃなかった?」

 

「ハンバーグは特別なの~♪」

 

「やれやれ、仕方ないな~」

 

 

二人で手を繋ぎながら真っ直ぐ家に帰る…夕日がピアスを綺麗に照らしていて、少し眩しい…。

 

 

 

 

今日またひとつ…思い出の宝物が増えた。

 




高海千歌(大学生…この作品の場合)

変わった点

・また少し胸が大きくなった。

・髪を伸ばした…セミショート→セミロングに

・相変わらず無邪気☆





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第37話「幻影」

~沼津~

 

喫茶店の中…

 

「ねえ、善子ちゃん?」

 

「何よ?ずら丸。」

 

「さっきからずーっと呼んでたのに気づかなかったずら?」

 

「えぇ…ちょっと考え事をしちゃっててね…。」

 

 

私は素っ気なく返事をする…

 

 

「くすっ最近善子ちゃんなんだか変ずら♪」

 

「何がよ?」

 

「昔みたいにゴスロリっぽい服とか全然着なくなっちゃったし、なんだかオシャレな女の子みたいになっちゃったずら。」

 

「そうかしら…?昔から私はこんなもんよ。」

 

「ふ~ん♪もしかして好きな人とか出来ちゃったずら?」

 

「なっ///誰も悠之さんのことが好きだなんて…///」

 

「だ~れも、悠之さんだなんて言ってないずらよ~♪」

 

 

ずら丸め…完全にはめられた…

 

 

「あ~もしかしてその事で悩んでたずら?ダメずらよ?悠之さんには、もうお相手が……」

 

「ずら丸。」

 

「…ご、ごめんずら…調子乗っちゃって……」

 

「いや、ごめん…そういう事じゃなくて……」

 

 

怯えているずら丸を落ち着かせる……

 

 

「ねぇずら丸…幻影ってさ…あると思う?」

 

「幻影…ずら?なんで急に…?」

 

ずら丸になら…言ってもいいか。

 

「実は…この前東京から帰っている時にね。」

 

 

~~~☆☆☆~~~

 

~電車内~

 

 

はぁ…やっぱり悠之さんには、千歌の方がお似合いなのかしら…はぁ…天に味方されないのもこれもまた運命なのね…。

 

 

電車が駅に停車し、人がぞろぞろと入ってくる…。

 

 

なんか…急に人が増えたわね…ちょうど退勤する時間なのかしら?

 

 

扉が締まり、電車が発進する…。

 

 

発進して2分くらい経ったあとの事だった…。

 

 

(それにしても人が多すぎるわ…ぎゅうぎゅうだから凄く暑苦しいし…今日もついてないわね…)

 

パシャパシャ…

 

そう考えていると…何やらシャッター音のような音が聞こえる…スクショでもしてるのかしら?マナーモードくらいにはしときなさいよね…。

 

 

でも…私は気づくのが遅かった…。

 

 

下半身の部分にひんやりとした感覚が伝わる…この感じ…もしかしてさっきまでのの音は…!?

 

 

誰…!?また今シャッター音が聞こえたから、恐らくスマホを下の方から覗かせてる人のはず…。

 

私の正面から横にかけてはそんな人はいない…やっぱり後ろの…?

 

 

今度は何やら下着が引っ張られるような感触が伝わる…少し慌てたが私はその人の手首を無理矢理掴めた。

 

私は後ろを振り向き、男にがんを飛ばす…

 

「ねえ、貴方よね…私の事をずっと——」

 

 

そう言いかけたとたん…私の口を無理矢理塞ぎ込む…。

 

 

 

「ねえ…『堕天使ヨハネちゃん』だよね?」

 

「…!?」

 

「結構プライベートだとオシャレで可愛い服を着てるんだねぇ…自分の事を堕天使って言うくらいだからもっと違うのを想像しちゃったよ…。」

 

 

声のトーン的に…男…?今私は…顔も分からない男に痴漢されて……

 

 

「下着も随分可愛いのを履いてるんだねぇ…電車で揺れた時に見えちゃったからついつい撮っちゃった♡」

 

 

最悪……この男…最低のクズだ…!

 

 

早く…逃げないと…こんな男のペースに飲まれちゃダメ…!

 

 

「それに…ヨハネちゃんの、アレ…もちゃんと撮れちゃったしね♡」

 

 

な…!?嘘でしょ…!?さっき下着を引っ張られたような感覚は……

 

 

「驚いた顔をしちゃって~もしかして気づいていなかった?随分のんきなんだねぇ~そうだ!せっかくだし、撮った生写真見せてあげようか?中々見る価値はあるよぉ?」

 

 

嫌…やめてよ…お願い…誰か助けて…。

 

 

 

パシャ…

 

また…シャッター音がなる…?でも、私の近くでは無い…一体どこから?

 

 

「おい、今俺のことを撮ったやつは誰だ!?」

 

私を取り押さえてる男が大きな声をあげる…それと同時に、視線が私達の方へ向く…。

 

 

『え…痴漢?』

 

『警察に通報するか?これ?』

 

 

馬鹿なヤツね…自ら目立つ行動をするなんて。

 

 

「おい、お前だろ俺のことを撮ったのは!いいからスマホをよこせ!!」

 

 

男が叫び込んだ…その視線の先に居た人は驚くべき人物だった…。

 

「悠之…さん?」

 

でも、私は疑問に思った…。

 

それは、いつもの悠之さんとはまた違ったような雰囲気…それに、身体もなんだか、高校生の時に近いような体格をしている…。

 

顔や、目つきは悠之さんそのものなのに、雰囲気は全く別人のようだ…。

 

 

「スマホをよこせってんだよ!早くしろボケ!!」

 

「(こんの…!!)」

 

男が彼に夢中になってるうちに、かかとで男のすねを蹴る…男は軽く怯んだので、その内に逃れられた…。

 

 

「悠之さん!今あいつにいろんな所を盗撮されて……」

 

「………」

 

「悠之さん…?」

 

悠之さんは無言のまま私の頭を撫でる…

 

「ゆ、悠之さん…こんな事してる場合じゃ…///」

 

「なにイチャついてんだ!早く…スマホを…」

 

 

 

一瞬…悠之さんがパッと動いた瞬間…。

 

 

私には何が起きたのか…分からなかった…。

 

 

何かがぱっと光ったような…ほんの一瞬の出来事だった…。

 

 

 

ただ、今認識できるのは、目の前の男が気絶して倒れていて、あの男のスマホは他の人が取り上げてた…

 

 

「君大丈夫?」

 

「怪我はない?あの男のスマホは今俺達が全部消去してるから安心して?」

 

「あ…はい。」

 

 

どこかの学校の男子高生達がその男を捕らえていた…。

 

 

「悠之さん、さっきはありが……あれ?」

 

 

そこには彼の姿は無かった…。

 

 

そして、その後警察に連絡し、無事事件は解決できた…。

 

 

 

 

~~~☆☆☆~~~

 

 

「——って事がこの前あったのよ…。」

 

「許せないずら…善子ちゃんに痴漢だけじゃなく盗撮までするだなんて…。」

 

「ヨハネよ…でも、写真とか全部削除されたし、男も逮捕できたから一安心よ。」

 

「そっか…だから最近善子ちゃんはゴスロリっぽい服とかあんまり着なくなっちゃったんだね…。」

 

「別にそういう訳じゃ……でも、ネットの本当の恐ろしさはこの身体で強く実感できたわ…。」

 

 

でも、あの時私のそばに現れた悠之さんは一体なんだったのかしら…?

 

あのあと、悠之さんに兄弟とかいるのか聞いてみたけれど、悠之さんは一人っ子だった…。

 

 

「じゃあもしかしたら、善子ちゃんの言う通り幻影かもしれないずら。」

 

「なんで、そんな風に断言出来るのよ。」

 

「きっと善子ちゃんの愛の気持ちが悠之さんに届いて……」

 

「バカね、そんな事があるわけがないでしょ?」

 

「堕天使とか、占いとかは信じているのに?」

 

うっ…それを言われると否定出来ない…。

 

 

「だから、善子ちゃんは悠之さんの事をずーっと好きでいていいと思うずら!出会うのが遅かったとか関係ないずら♡」

 

「そうね…まあ、それも悪くは無いかもしれないわね。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あの…千歌さん?」

 

「うーん…なぁに?ダイヤさ~ん…」

 

「なぁに?じゃありません!人の家に上がり込んではダラダラとして…そんな風に過ごすのなら、家でのんびりすればいいのでは!?」

 

部屋全体に大きな声が響きわたる…。

 

「だって…悠之君は今日授業でいないし…今頼りに出来るのはダイヤさんだけなんだもん…。」

 

 

ゴロンと寝返りを打つ…。

 

 

「そんな硬い事言わなくても…ダイヤさんも一緒にゴロゴロしようよ~♡」

 

むぎゅう~

 

「あ、暑っ苦しいですわ!早く離れなさい!」

 

「え~ダイヤさんのケチ~」

 

「それが人の家にお邪魔しに来る態度ですか全く……」

 

 

 

「……いつも悠之さんとこんな事してるんですか?」

 

「え?うーん…まあ、いつもかなぁ~」

 

「そんなに毎日くっついてると飽きたりしませんの?」

 

「ん~あんまり飽きたりはしないかな~悠之くん成分をほきゅ~♡みたいな?」

 

「はぁ…ある意味羨ましいですわ…。」

 

 

ぐ~…

 

「ダイヤさん~お腹すいたよ~」

 

「全く仕方ないですわね…おうどんさんでもお作り致しましょうか?もちろん、あなたも手伝うのですよ?」

 

「は~い♡」

 

 

~♪♪♪♪♪♪~

 

あれ…?悠之くんから電話だ…どうしたんだろ?

 

「もしもし?悠之くん?」

 

「おー、千歌今どこにいるの?」

 

「あー今ダイヤさんの家にいるよ~悠之くんも来る?」

 

「うーん…迷惑かもしれないから俺は別に……」

 

「千歌さん、少し電話代わってもらえますか?」

 

「え?うん。」

 

何やら話し声が聞こえる…

 

「悠之さん。」

 

「ダイヤ?どうしたの?」

 

「少しお話しが…」

 

 

 

ダイヤが発した言葉は予想を遥かに上回る言葉だった…

 

 

 

『学生時代の俺を見かけた…?』

 

 

 

 

謎の言葉に俺はその場に立ち尽くした…。

 

 



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第39話「奇跡と手紙」

前回からかなり時間が空いてしまいました…!

お久しぶりです!!


学生時代の俺を見かけた……?

 

 

ダイヤの衝撃的な言葉から1週間が経とうとしていた……。

 

現実的にそんなことが有り得るはずがない…人違いではないのか…?けれど、善子ちゃんもダイヤも、雰囲気はだいぶ違ったが見かけたと言っていた…。

 

 

まっさきに俺が頭の中に浮かべたのは、学生時代梨子が付き合っていた、俺にそっくりな人…しかも俺に顔も似ているとも言っていた…。

 

 

幽霊…?

 

まさかそんな現実離れした現象があるわけが無い…。

 

 

「ねえ…悠之くん…。」

 

「どうした…?」

 

「悠之君は…幻影なんかじゃないよね…?」

 

「千歌…」

 

不安そうに俺のことを見つめる…そりゃあそうだろうな…他の人が見間違えるほどの人間を見かけたと言っているんだからな…しかもその人は既に亡くなっている…。

 

 

…そんなの不安になって当然だ。

 

 

「大丈夫…俺は幻影なんかじゃない…。」

 

「わかってる…けど…」

 

 

そんな千歌を見ていられず、黙って抱きしめる…。

 

「今は落ち着くことが最優先だ…。」

 

「うん…」

 

「だから、今日はもう寝よう。」

 

ひとまず千歌を落ち着かせ、一緒にベットに入る…。

 

 

 

~~♢♢♢~~

 

 

 

目撃情報から1週間が経過した…。今のところ変わった様子無い…

 

 

静岡で見つかったり、東京で見つかったり…まるで誰かを探しているようだ…俺の知っている中では静岡と東京を行き来しているのは…

 

 

俺と梨子だけ…

 

何を考えているんだ俺は…そんなにことが有り得るはずがないのに…。

 

 

「おーい悠之くん?」

 

「な、なに?千歌。」

 

「さっきからずっと呼んでるのに…顔色悪いよ?」

 

「ご、ごめん…考え事してた。」

 

「大丈夫?これから梨子ちゃんのピアノオーディションを見に行くのにそんな感じで…。」

 

「あぁ、大丈夫さ。ちょっと寝不足なだけ。」

 

「も~演奏中に寝ちゃだめなんだからね?」

 

「へいへい~」

 

 

まぁ…流石に考えすぎか。

 

 

 

 

~♪♪♪~

 

~楽屋~

 

「お~い!梨子ちゃん~♪」

 

「千歌ちゃん!悠之くん!来てくれたんだ~」

 

「よぉ、緊張してないか?」

 

「少ししてるけど、きっと大丈夫♪」

 

「そっか、頑張ってな。」

 

「うん♪」

 

 

思ったより自信がありそうで良かった…後は、演奏を楽しみに待つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

たくさんの人達が演奏を終えて、やっと梨子の出番がやってきた…果たしてどんな演奏をするのか楽しみだ。

 

 

梨子がステージに上がり、一礼をしてから椅子に座り…演奏を始める…。

 

 

彼女の演奏を聴くのは初めてだけど、演奏に全く迷いが無い…聴けば聴くほどその音色に心が引き込まれていく…。

 

 

そして、あっという間に演奏が終わる…。

 

 

 

♢

 

 

 

「(ふぅ…とりあえずノーミス…けれど、練習の時ほど力が発揮できなかったかも…80点ってところかしら…。)」

 

 

私は一礼をして、顔をあげる…

 

あれ…?

 

あの男の子…どこかで…

 

 

 

あの黒髪……赤い瞳……

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

『君、名前は?』

 

 

『悠之…』

 

 

 

 

 

『ほら、こんな服とか似合うと思うんだけど。』

 

『こんな爽やかなのが俺に似合うのか?』

 

 

 

うそ…そんなはずない…だってあなたは…。

 

 

 

 

 

 

『どうして…こんな俺のそばにいてくれるんだ?』

 

『なんでかな…ほっとけないって言うか…』

 

 

 

『悠之くんのことが好きなのかも……なんてね♪』

 

 

 

『ゆ、悠之くん…ここ外だよ?恥ずかしいよ…///』

 

『ありがとう…大好きだから。』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

私は演奏を終えた後、楽屋に戻らず、すぐさまに客席に向かった…。

 

 

「桜内さん?楽屋はこっちよ?」

 

「ごめんなさい、お昼までには戻ります!」

 

 

この目で確かめなくちゃ…!!

 

 

駆け足で客席に向かったが…彼の姿はどこにもなかった…。

 

 

ドレスからすぐに私服に着替えて会場周辺を探し始める…ヒールを履いていた状態なので、中々早く動けないけど、それどころじゃなかった…。

 

 

 

約15分間必死に探し回った…。

 

 

けれど…やっぱり彼は見つからない…。

 

それはそうよね…だって貴方は…水死体として発見されているんだもの…。

 

彼には両親も兄弟もいなかったので、私の家族で葬式を挙げたのをはっきりと覚えている…。

 

もう既に…見せられないくらいに体がふやけてしまっているとも聞いた…。

 

そんな貴方が生きているだなんて…何を考えているのかしら…私は。

 

 

私はゆっくりと歩いて、会場に戻る…。

 

 

「あ!桜内さん!待っていたんですよ!?どこへ行ってたんですか?」

 

「ご、ごめんなさい…ちょっと…」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

あのピアノオーディションの日以来…よく彼の夢を見る…少し辛かったけど、楽しかったあの高校生活が頭の中を遮る…。

 

 

もしかしたら…私の演奏を聞きに来てくれてたのかな?

 

それとも、やっぱり幻覚だったのかしら…。

 

 

なんだか心が落ち着かない…。

 

 

「(ちょっと出かけようかな…)」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

1人でショッピングモールの服を見たりするのは楽しい…それが普段の私だったら…。

 

やっぱり私…彼のことが大好きなんだ…なのに私は…。

 

いつの間にかあっちの方の悠之くんの事も大好きになっていた…。

馬鹿だ…彼に申し訳ない気持ちがいっぱいだ…。

 

 

もし…彼の自殺を止めることが出来たなら私達は一体どんな日々を遅れていたのだろう…。

 

今更悩んだってしょうがないのに…それでも、私はやっぱり彼のことが忘れられない…。

 

 

 

適当に街を歩いていると、音ノ木坂学院が見えてきた…

 

 

そうだ…私と悠之くんはこの階段を降りた先で…。

 

あれが…最期の会話だった…。

 

 

あの時、彼の表情は笑顔だったけど、どこか悲しそうで…

 

 

だめ…思い出しただけで心が痛くなる…あの時少しでも気づいてやれなかった私が悔しい…。

 

 

「どうして…泣いてるの?」

 

「え…?」

 

 

後ろから青年が私に声をかける…。

 

 

「悠之…くん…?」

 

「また…会えたね。」

 

「どうして…?だって貴方は…。」

 

「わかってる、俺はあの時自ら命を絶った…。」

 

「じゃあ…貴方は一体何者なの?幽霊なの…?」

 

「わかんないんだ…自殺をしたあの日から自分の意識が全くなかった……そして、気がついたら東京にいた。」

 

そんな…信じられない…もう既に亡くなっているはずの人が今、私の目の前にいる…。こんな出来事を受け入れてもいいのだろうか…。

 

「ピアノ…すっごく上手だったよ…。」

 

「やっぱり…あの時会場で見ててくれたんだ…!」

 

「うん…はいこれ。」

 

「これは…ハンカチ?」

 

彼の手から淡い桜色のハンカチを差し伸べられる。

 

「きっとこれは…神様が与えてくれた奇跡なんだ…ピアノも聞けた…また、こうして出会えた…もう俺には思い残すことはひとつもないよ。」

 

「な、何言ってるの…やっとこうして再開できたのに…。」

 

 

彼の身体の周りに優しい光が集まる…

 

 

「…お別れの時間が来たってところかな…。」

 

「そんな…嫌…やっと貴方にまた会えたのに…また別れなくちゃいけないなんて嫌よ!」

 

「泣かないで…梨子。」

 

「無理よ…だって私は…貴方のことが…大好きなのに…会えなくなっちゃうだなんて…。」

 

「梨子…この世界はね…出会いと別れの繰り返しなんだ…人間はその連鎖に向き合って行かなくちゃいけない…」

 

「でも…貴方がいない世界なんて…私は嫌よ…。」

 

「梨子…」

 

ぎゅっと…彼の温もりを感じる…。

 

今彼は私のことを抱きしめてくれている…。

 

これは夢なんかじゃない…ちゃんとした人間の身体…暖かくてこのまま彼と共に消えてしまいたいくらい…。

 

 

「梨子は…消えちゃダメだよ。」

 

「どうして私の考えてることが分かって…?」

 

「梨子は俺みたいに自分の命を落とすみたいな、愚かなことはしてほしくないんだ…。だから…俺よりも長生きをして…そのピアノの音色で…たくさんの人を笑顔にしてあげてね…。」

 

「悠之くん…わかった。私もっともっと頑張る…!」

 

彼が何かを言いかけた時…光が強くなり、暖かい日差しのような温もりは透き通った風のように全く感じなくなった…

 

 

 

 

 

 

 

ピアノ…また聴かせてね。

 

 

世界で1番…貴方のことを愛してます。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの日以来、私はほぼ毎日悠之くんのお墓参りに行くようになった…そこへ行けば、また彼のそばにいられるような気がして心が落ち着く…。

 

 

 

お墓を綺麗に掃除して、線香を供える…。

 

 

お線香の火が消えてから、彼宛ての手紙も供える…。

 

 

 

ありがとう…

 

愛する君へ…

 



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第40話「似合う似合わないは人それぞれ」

だいぶ間が空いてしまいました…。

お久しぶりです!最近進路やらテストやらで全く時間が取れなくてかなり遅れてしまいました…。←(言い訳)


「おかえり悠之くん~今日もバイトだったの?」

 

「あぁ、少し人手が足りなくなっちゃっててな。手伝いに行ってたんだ。」

 

 

ゆっくりとソファに腰をかける…

 

 

 

「ねぇ悠之くん、私もバイトしてみたいなーって。」

 

「え?」

 

「一応お母さんからは生活費とお小遣いは毎月送られてくるからあまり気にしなくていいかもしれないけど…私もバイトをすれば、少し生活が変わるのかな~って。」

 

「なるほどね…じゃあ俺のところの喫茶店に来る?今人が足りてないんだって。」

 

「へぇ~じゃあ応募してみようかな?」

 

 

 

~翌日~

 

「いらっしゃいませ~…なんだ悠之くんか。」

 

「なんだは酷くないですか?店長。」

 

「あはは、すまんな。それより今日はシフトじゃないよね?何か用かい?」

 

「あぁ、店長人手が足りないって言ってたろ?だからここで働きたいって子を連れてきたんだ。」

 

「え、えっと!高海千歌です!今日は…」

 

「へ~じゃあ採用。」

 

「「え?」」

 

「採用ね。今から制服を持ってきてあげるからちょっとまってて。」

 

「「えぇー!?」」

 

 

どんだけ適当なんだよ…てか、そんなに人が足りてないのか…?

 

 

 

 

~☆☆☆☆~

 

 

 

「あ、あの…ほんとにこれがここのお店の制服なんですか…?」

 

「お、着替え終わったみたいだね。」

 

「千歌?なんでそんな隅っこに隠れているんだ?」

 

「だ…だって…///」

 

 

 

フワッ…

 

 

 

「え…?」

 

「おぉ、やっぱりよく似合うと思っていたよ。」

 

 

 

ここは…ただの喫茶店のはずだ…なのに今俺の目の前にいるのは…フリルが付いたエプロン風の制服を着た千歌…。

 

普段から少しフワッとした雰囲気がある千歌だからなのか、とてもよく似合っている…しかし…。

 

 

 

「店長…ここは秋葉原じゃないんですよ?」

 

「いやぁ…この際お店の雰囲気も思い切って変えちゃおうかなって…ほら、美少女カフェ!みたいな?」

 

「俺、ここのバイトやめていいすか?」

 

「あ~うそうそ、お店の雰囲気を変えるつもりはないよ。ただ、こういう店員が1人でもいてくれれば、少しお店にお客が集まるかな~って。」

 

 

 

まぁ…確かに、こんな店員がいたらたくさんの人から注目されるだろうな…特に、男性からは確実だ。

 

それに、千歌の雰囲気だったらそこまで違和感はない…セミロングの髪が制服にとても似合っているしな。

 

 

 

「開店前だし、ちょっと小野くんを使って練習してみようか。」

 

「は、はい!」

 

 

使ってって…俺は小道具かなにかで?

 

 

接客の練習をして、20分程…旅館の娘なだけあって、接客はやはり上手だ…飲み込むのが早い。

 

 

 

「よし、じゃあこれからお店開けるから、さっき教えたことを忘れないようにね。」

 

「はい!」

 

「頑張れ~千歌~」

 

「何言ってるの小野くん君も今日はシフトに入ってもらうよ。高海さんのバックアップとしてね。」

 

 

うん…まあなんとなくは予想がついてたかな

 

 

 

♢

 

 

 

カランカラン~♪

 

「いらっしゃいませ~おひとりさまですか?こちらのお席へどうぞ♪」

 

 

主に、お客さんの誘導、接客は千歌にやらせ、俺はキッチン担当をやっているが…。

 

 

「ありがとうございました♪」ニコッ

 

 

千歌の笑顔が眩しすぎる…俺も、もう一度お客さん役をやりたくなるくらいだ…。

 

 

「お待たせしました~こちらソイラテになります♪」

 

 

はぁ…今はお客さん側の人達がとても羨ましい…。

 

 

 

「ありがとうね~あれ?君、新人?」

 

「あ、はいそうです。」

 

「へぇ~見かけない人がいるなーって思ったよ。頑張ってね~。」

 

「はい!ありがとうございます♪」

 

 

 

すごいな…1日でこんなに話せるようになるなんて…やっぱり旅館のお手伝いが接客に繋がってるんだなぁ。

 

 

「彼女、いい調子だね。」

 

「えぇ、すぐに慣れてくれてよかったです。」

 

「この調子なら売上も少しはマシになるかもしれないね。」

 

 

カランカラン~♪

 

 

「いらっしゃいませ~♪あ、ダイヤさん!」

 

「千歌さんどうしたのですか?そのお人形さんのような格好は?」

 

「えへへ…なんか着せられちゃったの♡」

 

「よくお似合いですわよ、抹茶ラテをお一つくださいな。」

 

「かしこまりました♪」

 

 

ダイヤがカウンター席に座る…。

 

 

「最近よく来るね、ダイヤ。」

 

「えぇ、落ち着いたこの雰囲気がとても気に入りましたの。」

 

「なるほどね…はい、抹茶ラテ。」

 

 

ダイヤに抹茶ラテを差し出す。

 

 

「千歌さんもここでバイトを始めたのですか?」

 

「あぁ、生活を少し変えてみたいんだってさ。遊ぶお金も増やしたいって言ってたしな。」

 

「なるほど…それにしても、男性のお客さんが増えているのはやはり千歌さんの影響かしら?」

 

「きっとそうだろうな、あんな格好で笑顔を見せられたら男だったら一発KOだ。」

 

「ふふっ相変わらず千歌さんのことが大好きなのですね。」

 

 

 

 

ダイヤと話していると、千歌がこっちに向かってくる…。

 

 

 

「悠之くん悠之くん、ショートケーキとコーヒーのセットをお願いします♪」ニコッ

 

…やっぱり働いている側でも全然嬉しい。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「いやぁ~高海さんのおかげで助かっちゃったよ。ありがとうね。」

 

「いえいえーまた次もお願いします♡」

 

「よし、じゃあ帰ろっか千歌。」

 

「うん♪」

 

2人でお店を後にする…外はまだ少し明るい…。

 

「最近日が落ちるのが遅くなってきたね。」

 

「そうだね~ちっちゃい頃だったらこの時間まで2人で遊んでたね~。」

 

「それで、2人ともまとめて怒られてたこともあったね。」

 

「あははっ懐かしいね~」

 

 

バイト先から家まで歩いて数分の距離なので移動もかなり楽だ。

 

「千歌、ツイッターに今日の事をたくさん書かれてあるぞ。」

 

「え!?どれどれ~♪」

 

 

 

『新人の女の子が可愛いすぎる。』

 

『毎日通いたくなった。』

 

『制服似合いすぎだろ。天使かよ。』

 

『彼氏とかいんのかな。』

 

 

 

「…なんか、男性の意見がすごく多いね。」

 

「ま、まぁ…それだけ見ていてくれた人がいたって事だろ?初日なのにすげえよ。」

 

「そ、そうかな?えへへ…」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

~自宅~

 

「千歌、その制服持って帰ってきたのか?」

 

「うん!最初は少し抵抗あったんだけど、着てみたらちょっといいなって思っちゃって♪」

 

「へぇ…でも、バイト先のロッカーにしまっておけば良かったんじゃ…」

 

「んーん、やっぱり悠之くんに一番近くで見てもらいたくて、持って帰ってきたの♡」

 

フワッと制服をなびかせる…。

 

「えへへ♡どーお?」

 

最初はあんなに恥ずかしがってたのに…既にもうノリノリだな。

 

「……」ナデナデ

 

 

無意識に千歌の頭を撫でる…。

 

 

「え!?な、なに悠之くん?」

 

「ほんとにお人形さんみたいで可愛いな。」

 

「こ、答えになってな……ひゃんっ!」

 

 

耳たぶにそっと触れ…。

 

そのまま、千歌にそっと口付けをする…。

 

 

 

「んっ…だ、だめ!今から夕食を作るんでしょ!」

 

「ご、ごめんなさい…。」

 

「もぅ…///」

 

 

 

千歌がぷいっと目をそらしてしまった…

 

 

 

「ごめんごめん、あまりにも可愛いかったからつい…。」

 

「ふ~ん」プイッ

 

「夕食の時あーんしてあげるから。」

 

「別にいらないもーん」ツン

 

 

あーあ…ちょっといじりすぎちゃったかな…。

 

 

「もぉ…なにシュンとしちゃてるの?」

 

千歌が俺にサラダ用のトマトを食べさせる…。

 

「今夜は私からあーん♡させてね。」

 

「さ、さっきまでのは…?」

 

「んー?ぜーんぶ演技だよ♪」

 

「ち、千歌…」

 

「別にいいじゃーん普段から悠之くん、よく私のことをからかうんだもん。」

 

 

あ、あれ?さっきまでエプロンの天使に見えたのに、今はなんかちょっといじわるな小悪魔のように見えてきた…。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「悠之くん、どこ行くの?」

 

「あぁ、ちょっとトイレに。」

 

 

…バタン。

 

 

悠之くん居ない今、彼の飲んでいるグラスが気になる…。

 

(これって…お酒だよね。)

 

香りを少し嗅いでみる…なんだか不思議な香りがする…。

 

(ちょっと味見を……)

 

 

 

♢

 

 

 

 

「千歌、明日の予定なんだけど……」

 

「悠之…くん…。」

 

「千歌?」

 

 

ドンッ!

 

ソファに無理やり押し倒される…なんだか千歌の様子がおかしい…。

 

 

「ど、どうした?」

 

「体が…熱い…」

 

くちゅ…っ

 

「んっ!?」

 

 

千歌に無理やりキスをされる…

 

(し、舌が入って…。)

 

 

「ぷはっ…言ったよね?今日は私からあーんしてあげるって…。」

 

「千歌…それはなんか違う気が…ってか、酒の匂いがするぞ!?いつの間に…。」

 

 

すると、千歌が俺の体をぎゅっと抱きしめる…。

 

 

「なんだか…悠之くんがそばに居てくれると胸がドキドキして…体がゾクゾクするの…」

 

「は、はぁ…?」

 

 

絶対これ、酒に酔ってるよな…ちょっと飲んだだけでここまで人を変えるなんて…酒の力は恐ろしいな。

 

そのまま千歌は俺の体の上にまたがる…。

 

いつもと違った角度で彼女の表情が見えて、なんだかドキドキする…。

 

 

「悠之くん…ドキドキしてる…?」

 

千歌が俺の胸に手を添える…

 

柔らかい手のひらが触れて余計に心臓の鼓動が早くなっていく…。

 

「くすっ…分かるよ悠之くん…私の事を見てドキドキしてるんだね…♡」

 

 

やばい…さっきからペースを持っていかれてばかりだ…。

 

何よりも、酒で少し顔が火照っていて色っぽい表情になっているのを見ていると余計に興奮してくる…。

 

 

「ふふっ…今日はもう寝かさないもんね♪」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「─歌。」

 

「─千歌!」

 

「ふわぁ…あれ?悠之くん…?」

 

 

あれから2時間…ようやく千歌が目を覚ました。

 

 

「あれっ!?なんで私裸になって…///」

 

 

千歌がはだけた毛布を体に巻き直す…。

 

 

「いやぁ…まさか千歌があんなに激しい行為をするなんて思ってもいなかったよ……やっぱり酒の力ってすごいな。」

 

「は、激しい行為…?」

 

 

 

少し沈黙するが、すぐに顔を真っ赤に染めて顔を毛布で隠し始めた。

 

 

「~っ///」

 

「もしかして、記憶は残るタイプ?」

 

「私…もしかしてとんでもないことをしてたんじゃ…///」

 

「あぁ、俺の上に乗って吐息を零しながら……」

 

「ばかあああ!!!言わないでえええ!!!」

 

 

あぁ…まただ…私はいっつも悠之くんにからかわれてばっかりなんです。

 




もうすぐ3rdライブ…楽しみですね。


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第41話「雨の日のトラブル」

…頭がいたい。

 

ベットから起き上がり、カーテンを開く…。

 

 

 

やっぱり今日は雨か…。

 

 

最近天気が崩れすぎている気がする…一昨日は鬱陶しいほどの暑さだったのに、昨日は外は曇っててひんやりとした空気…そして、今日はジメジメとした雨…。

 

 

こんな状態で学校へ行くだなんて…あまりにも運が悪い…。

 

 

「あ、悠之くんおきた?」

 

「あぁ、それにしても随分のひどい雨だな…」

 

「ほんとだね、今日から梅雨入りしたって言ってたし…」

 

 

 

マジか…しばらくこんな天候が続くのか…これじゃあいつ体調を崩してもおかしくはないな。

 

 

 

「千歌、今日授業は?」

 

「ふっふっふ…今日は運がいいことにお休みなのだ♪」

 

「うっわ…ずるいなぁ。」

 

 

 

今日はいつもと違って、千歌を家に残して大学へ向かう…それにしてもひどい雨だ…こんな日に外に出るのは気分が乗らない。

 

だけど、今日は千歌が弁当を作ってくれた、少し面倒なことでもこれさえあれば1日がんばれそうな気がする…。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

午前中の授業も終わり、残すところ後一限…全くこんな日に授業を多く入れてしまったことを改めて後悔する…。

 

 

外を見ると、雨はまだまだ止みそうにない…むしろさっきよりも強くなっているような気がする。

 

「お、悠之~今日は1人で飯か?」

 

同じ学部の同期が俺に話しかける…

 

「そういうお前も1人か?」

 

「まあな~でもどうしたんだ?いつもの可愛い女の子とは一緒じゃないのか?」

 

「あぁ、今日は偶然授業を入れてなかったんだとよ。」

 

「へぇ~どうりで寂しそうで…」

 

「まぁ、こんな日もあるだろ。」

 

「ふ~ん、それで今は彼女のお弁当を堪能しているわけか。」

 

「そんなところだ…。そういやお前は午後の授業は受けるのか?」

 

「まぁね~お互いついてないっすね。」

 

「ほんとそれな…雨の日ほどやる気の出ないことは無いな。」

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

そろそろ悠之くんが帰って来る時間かな?

じゃあ夕食の準備をしておかなくっちゃ…

 

 

キッチンの方へ向かおうとすると、何やら別のところから変な音が聞こえる…。

 

 

リビングの方…かな?なんだろ?

 

 

「エアコン…?電源をつけてないのになんでこんな音がするんだろう?」

 

 

リビングに向かってみると、エアコンから鈍い音が聞こえる…。

 

 

近くでよく見てみると、水滴がぽたぽたと散っている…もしかして故障でもしちゃったのかな?

 

 

「とりあえず、バケツでもなんでもいいから何か置いて置かないと…」

 

 

お風呂場から桶を持ってきて、エアコンの下に置く…。

 

 

「えーっと…ちょうどこの辺り…かな?」

 

この時、エアコンの真下に移動したのがうかつだった…。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ただいま~…あれ?」

 

 

なんか、リビングから物凄い冷気が漂うんだけど…お化けでも出たのか?

 

 

「お…おかえり…悠之くん。」ブルブル

 

「た、ただいま…って!なんでそんなビショビショなんだ!?」

 

「さ、さっき…エアコンの水漏れを思いっきり被っちゃって…。」

 

「とにかく早くお風呂入って!!エアコンは俺が見ておくから。」

 

「う、うん…」

 

 

私は震えながらお風呂場に向かったけど…なんで、急に故障なんてしたんだろう…。

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

「悠之くん、お風呂上がったよ~エアコンはどうなった?」

 

「あー、もうこれ多分買い換えなきゃかな…あれこれ試してみたけど、こりゃあ新しいのを買った方が早いと思う。」

 

 

「そっかぁ…夜ご飯どうしようか…キッチンはリビングと繋がってるんだし…。」

 

「そうだな…外食にでも行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

~バイト先の喫茶店~

 

 

 

 

「まぁ、今回くらいならサービスしてもOKだよ。2人にはいつもお世話になってるからね。」

 

「でも、店長…どうして私だけ変装しなくちゃいけないんですか?」

 

「そりゃあそうだよ、だって君はここのお店の看板娘なんだから。彼氏がいるのがバレちゃったら困るからね。」

 

食事をタダにする条件として、千歌に完全防備の変装をさせることだった。

 

帽子に、サングラスとマスク…これじゃあまるで不審者だな…何よりも暑そうだ。

 

いや、さっきまで震えてたからちょうどいいかも。

 

それにこの時間だと客は一人もいないのにな…いや、でもいつ客が来るか分からない…気を抜いてたら一瞬でバレてしまうかもな。

 

 

「まぁ、でもおかけでタダでいいものが食べられるんだ。感謝しなくちゃな。」

 

「うん!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

その後、寄り道もせずに帰宅したが、リビングがめちゃくちゃ寒いのですぐに2人で寝室に移動することにした。

 

 

「やっぱりリビング…すっごく寒かったね…。」

 

「まぁ…明日業者の人が来てくれるからそれまで我慢だな。」

 

「うん…。」

 

 

千歌と一緒にベットに入る…。

 

 

 

 

「足冷たっ!靴下履いてくれば?」

 

足が重なり、冷たい指先が俺の足に伝わる…。

 

「嫌だ~なんか気持ち悪いんだもん…」ムギュゥ

 

 

それでも構わずに俺の体を抱きしめる…。

 

 

「ごめんね悠之くん、エアコンの事…落ち着いて対処できなくて…。」

 

「大丈夫だよ、急に水がぶっかかってきたら誰だってテンパるに決まってる。」

 

「ありがとう…やっぱり悠之くんは優しいね。」

 

「俺はそんなことで怒ったりしないさ。じゃあ、もう遅いし早く寝ようか。」

 

「うん…おやすみ。」

 

 

 

 

~15分後~

 

 

そうは言ったものの、なんだか今は眠れないなぁ…エアコンが壊れちゃったり、びっくりしたことが沢山あったからかな?

 

 

 

ゆ、悠之くんはまだ起きてるかな…いや、雨が降っているのに学校へ行って外食もしてきたんだもん…きっと寝ちゃってるよね…。

 

 

「お~い…悠之くん…?」

 

「……」

 

やっぱり寝ちゃってるか…

 

 

「…綺麗な寝顔。」

 

チュッ…

 

 

彼に気づかれないように、そっとおでこにキスをする。

 

 

「いつもありがと…悠之くん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌朝~

 

もぅ…朝か。

 

昨日は早く寝たからか、目が覚めるのが少し早い…。

 

 

「(さて…少し早いけど起きるか。)」

 

 

千歌を起こさないようにそっと起きようとするが、体が自由に動かない…。

 

 

よく見ると、千歌の足と俺の足が絡まっている…。

 

 

 

ギシッ…

 

 

 

動きたいのに…中々強く絡んでいて動けない…何よりも…。

 

千歌のワンピパジャマの肩掛けが外れていて、ものすごくエロい…。

 

これ以上ズレてしまったら胸が…

 

 

「んぅ……」モゾモゾ

 

 

千歌が寝ながらこっちを向く…動いたことによって、完全に肩から片方ズレて、胸が丸見えになってしまった…。

 

 

色…綺麗だな…。

 

 

別に、俺が悪いわけじゃない…これは千歌の寝相が問題なんだ。今俺が千歌の胸を近距離で見つめているのは不可抗力だ。

 

 

とは言ったものの、俺は無意識に彼女の胸に手が触れていた…。

 

高校生の時から大きいとは思っていたけど…背はどちらかと言えば低い方…それなのに、身体はいやらしい…。

 

こんなの男からしてみれば欲望を抑える方が無理だ。

 

 

…変に筋肉質な訳でなく、ただ柔らかいだけではない…。触れてみると、やっぱりほんのりと暖かくてフワフワしている……だから、1度触れるともう一度触れたくなる…そんな無限ループが自分の脳内を襲うのだ…。

 

 

「んっ……」ピクッ

 

それに、完全に無防備な状態で彼女の胸を揉むのがいけないことをしてしまっているようで、なんだか顔が熱くなる…。

 

 

千歌の反応が良すぎて、いつまでも触りたくなっていく…。

 

 

「あっ……」

 

 

乳首がピンっと立っている…寝ていても、身体は正直に反応してるみたいだ…。

 

 

でも……

 

 

千歌のワンピを元に戻す…。

 

 

やっぱり、起きている時の千歌の可愛い反応が1番心地がいい…だから、これ以上触ったらなんだかもったいない気がする…。

 

 

 

 

「はぁ…昔はもっと幼く見えたのにな…こんなに綺麗になっちゃって…。」

 

 

ツンツン…

 

 

あんなことを言っておきながら今度はほっぺたをつつく…相変わらずマシュマロのように、ふわふわな質感だ…。

 

 

「………」パチッ

 

「あ、千歌…起こしちゃったか?」

 

 

危ねぇ…ワンピを元に戻しておいて助かった…。

 

 

「んっ………」ムギュ…

 

 

千歌が俺の体を抱きしめたまま動かない…。

 

 

寝ぼけているのか…?全く喋らないし…抱きついたまま動かない…。

 

 

すごくいい匂いがする…自分と同じシャンプーやボディソープを使っているはずなのに、千歌からはすごく優しくて甘い香りがする…。

 

俺はいつの間にか千歌の髪の毛を1束手に取って匂いを嗅いでいた…。

 

 

昔から思う…なんで千歌はこんなにいい香りがするんだろう…。

 

 

 

 

「悠之…くん?」

 

「い、いや…これは、違って…その。」

 

「何してるの…?」

 

「そ、それは……」

 

「千歌の髪を鼻に当てて…何が違うのかな?」

 

今度はバッチリ目が開いている…それに、はっきりと見られてしまった…。

 

「悠之くんのエッチ…。」

 

「うっ…ごめんなさい。」

 

「他にも何かしてたんじゃないの?」ジー

 

「い、いや特に何も…」

 

「もぅ…バカっ!」

 

千歌が恥ずかしそうに顔を赤くして、自分の胸を抑える…

 

 

「私が寝てる間にエッチなことしたんでしょ…///」ムゥ

 

「い、いや…だから何もしてないって…。」

 

「嘘だー!なんか悠之くん顔がニヤけてるもん!」

 

 

エッチなことしてたと言うより…千歌がエロかったんだよなぁ…まぁ、自分のしてたことは否定出来ないけど。

 

 

 

「はぁ……もぅ…」

 

 

千歌がため息をつく…少し呆れられちゃったかな…

 

 

「その…触りたいんだったら…起きてる時にしてよ…その時は、別に怒ったりしないから…///」

 

 

恥ずかしそうに俺の顔を見つめてくる…反則だよ。

 

 

「だから………きゃっ!?」ドサッ

 

「じゃあ…起きてる今は……いいよな?」

 

 

手首をぎゅっと握って千歌の動きを封じる…。

 

そんな顔で見つめてくる君がいけないんだ…。

 

 

「身体…触れてもいい?」

 

「もぅ…しょうがないなぁ…優しくしてね♡」

 

 

 

 

 

 

 



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第42話「止まない雨」

お久しぶりです!だいぶ時間が空いてしまいました…


エアコンも無事に直り、やっとリビングが自由に使えるようになった。窓から外を見ると、今日もやっぱり雨…梅雨だからやっぱり仕方ないのだろう…まぁ、最近暑すぎる日が続いてたからそれはそれでラッキーではあるが。

 

 

 

「ふわぁ~悠之くんおはよ~」

 

「おはよ、千歌…今日は1限からか?」

 

「うん…久しぶりの1限だから眠くて……ねぇ悠之くん。」

 

「うん?」

 

 

千歌が頬を突き出す…

 

 

 

 

「んっ……ふふっ言ってくれたらすぐにしてくれる悠之くんは可愛いね~♡」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「えへへっ♪」

 

 

さっさと朝食を済ませて、学校へ向かう。

 

 

 

 

 

 

「最近雨止まないね。」

 

「そうだな…涼しいのはありがたいんだけど、洗濯物が外に干せないのが少しな…。」

 

「悠之くんは涼しいんだ…私はちょっと肌寒いかも。」

 

すると、千歌が俺の袖を掴む…。

 

 

「そっち…入ってもいい?」

 

「え…いいけど自分の傘持ってるじゃん。」

 

「別にいーの!」

 

 

ぎゅっと手を繋ぎながら歩く。…幸い俺の傘は大きめだったので、2人まとめて入るのは簡単だ。

 

 

もう大学では、俺達の関係はすぐに学園で噂になっているので、特に隠す必要もない。

 

 

「今日、悠之くんは何限で終わりなの?」

 

「俺は3限までやって帰りだよ。」

 

「そっかーじゃあ私の方が後だね。」

 

「じゃあ、先に家で待ってるから。」

 

「うん♪じゃあ私こっちだから。」

 

「あぁ、またな。」

 

 

千歌と別れ、それぞれの教室に向かう…。

 

 

 

大学の授業を終わり、ようやく帰れる…今頃悠之くんは何をしているのかな?

 

あさから降っていたのに全然止まない…これが本格的な梅雨なのかな…?

 

 

もうすぐ家に着く…ん?

 

 

家の前でお座りしている野良猫がいた

 

 

「ん~?どうしたのかな~?」

 

「ンにゃ~…」ゴロゴロ

 

「可愛いねぇ~♪君もおうちに入る?」

 

「にゃ~」

 

私はずぶ濡れになっているこの子がほっとけなくってお家に入れた…。

 

 

「悠之くん~ただいま~」

 

「おーおかえり…あれ?どうしたのその猫。」

 

「家の前で寒そうにしてたから連れてきたの♪」

 

「へぇ~こんなところにも野良猫っていたんだな…ちょっとまっててタオルとってくるから。」

 

 

タオルで全身を拭いてあげて、軽くドライヤーをしてあげる…。

 

 

「この子…すごく綺麗な目をしてるね。」

 

「あぁ、とても野良猫とは思えないよ。」

 

「にゃ~♪」スリスリ

 

「ふふっもうどうしたの~♪」

 

「でも、どうするんだ?思ったよりも綺麗な猫だし、どこかの家から逃げてきた猫かもしれないぞ?」

 

「んー…じゃあちょっと調べてみようよ。」

 

 

早速パソコンを開いて、この辺近辺の迷子猫の情報を調べてみたが、この子の情報は全くなかった…。

 

 

「う~ん…特に情報が無いってことはやっぱり野良猫なのかな…?どうする?」

 

「こんな雨の日に外に出すのも可愛そうだよ…。」

 

「そうだな…じゃあせめて雨が上がるまででも入れてってあげるか。」

 

「いいの悠之くん!?」

 

「じゃあ、今からこの子のご飯買いに行くから、夕食の準備とかお願いしてもいい?」

 

「は~い♪喜んで~!」

 

 

バタン…

 

 

「えへへっ悠之くんが優しくてよかったねぇ~」ナデナデ

 

 

ティッシュをくるくるっと丸めて投げてみる…すると、サッカーボールのようにコロコロと転がしながら遊んでくれた。

 

 

「ふふっ♪可愛いなぁ~♡」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あれから数日が経過したが、やはり迷子猫の情報は何一つ来ない…やはり、ただの野良猫なのだろうか

 

あの日以来、あの猫がほぼ毎日家に来るようになった。千歌が動物が大好きだからついつい甘やかしてしまうのだろう。

 

 

「あれ?今日は来ないのかなぁ…?いつもならこの時間帯には来るのに…。」

 

「まぁ、一応野良猫だからな気まぐれってモンがあるんじゃないのか?」

 

 

 

その日…あの猫は1度も家には訪れなかった。

 

 

「なんかちょっと心配だな…」

 

 

私は不安を感じながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

………

……………

 

「ん…また雨…?」

 

最近少し晴れてた日が続いてたのにまた雨かぁ…。

 

 

傘をさして外にゴミ出しに行く…

 

 

(これで…よしっと。)

 

家に戻ろうとするとなんか生臭い臭いがする…ゴミ捨て場から家までは少し距離が離れているので、ゴミ捨て場からではないはず…。

 

(なんなんだろう…こ…れ…っ!?)

 

 

(猫…ちゃん?)

 

臭いのするところに向かってみると無残に食い荒らされた猫の死体…そばに黒い羽が落ちている…。

 

きっとカラスの仕業なんだろう…あんまり体が大きくない小さな猫を狙って…。

 

 

(やっと…お友達になれたと思ったのに……)

 

 

いつもの私ならここで大泣きしていたのだろう…だけど…あまりにも突然過ぎて涙どころか言葉ですら出てこない…。

 

 

……………

……………………

…………………………

 

 

「千歌…」

 

「悠之くんごめん私、1限は休む…先に行ってて。」

 

「あ、あぁ…」

 

 

ずっとこんな状態が続いている…千歌をこのままにしてしまうと何かが崩れてしまいそうで不安になる…。

 

 

 

何日経っても…

 

何日経っても…

 

いつもの千歌は帰ってこない…

 

 

 

~~♢♢~~

 

帰りにロールケーキでも買ってこようかな…。

 

お菓子屋によって、ミカンが入ったロールケーキを購入する…

 

千歌の機嫌が良くなったら一緒に食べよう。

 

 

「ただいま~」

 

「…おかえり。」

 

「千歌、今日は夕食はどうする?」

 

「…お腹がすいたら食べるよ。」

 

「あ、あのさ!!」

 

俺は思い切って声を上げてしまった。

 

 

「あの猫…あれはしょうがないことだと思うんだ…自然の猫なんだから…あんなことはいつ起こるか分からないんだから…。」

 

「……」

 

「急に気分を変えてなんて言わないけど…やっぱりあれは──」

 

「…そんなこと分かってるよ!!!」

 

「野良猫だからそんなこといつ起こるか分からない?

そんなことわかってる!!もうほっといてよ!!!」

 

 

やってしまった…俺は千歌の気持ちを考えもせずに…

 

 

「…外に行ってくる。」

 

 

バタン…

 

 

 

私は傘もささずに外へ飛び出した…。

 

 

もう何を考えたらいいのかわからなくなってしまった…あさから降り続ける雨は私の体を強く当たり続ける…。

 

なんだか空が私の代わりに泣いているみたい…

 

 

…冷たい。

 

服に染み込んだ雨水を手で触れる肌にくっついて余計に体温を奪っていく…。

 

あの猫ちゃんも…こんなに冷たい雨をずっと浴びてたのかな…?

 

いや、猫は賢いからきっと雨宿りできる場所を探しに……

 

 

 

~~~~~

 

「可愛いねぇ~♡君もおうちに入る?」

 

「にゃ~」

 

~~~~~

 

 

 

なんで…どうして…

 

あんなに可愛いお友達ができたと思ったのに…

 

早すぎるよ…別れが…。

 

 

今になってようやく涙が出てきた…あの猫ちゃんだけじゃない…普段から優しくしてくれる悠之くんに強く言ってしまった…。

 

最低だ…最低だよ…私…。

 

 

 

さっきまで降っていた雨が急に止まったようにやんだ…

 

上を見ると、傘をさしてくれている悠之くんの姿だった。

 

「ほら、風邪ひくよ?」

 

「どうして…」

 

「?」

 

「どうして優しくするの!!私があんなこと言ったのに!!

悠之くんは決して悪くないのに!!」

 

「……」

 

「どうして…私にこんなに優しくするの…?」

 

「……」スッ

 

悠之くんが私のことをいつもよりも強く抱き締める…。

 

「気にしないで…誰にだって辛いことがあったら人にぶつけてしまう事がある…そんなこと誰にだってある事なんだから。」

 

「でも私…悠之くんに酷いことを…」

 

「俺は気にしてない…そんな事よりも傘を持っていかないで出ていった千歌の事が不安だった。」

 

「悠之くん…ごめん…。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

あの後、猫の死体は家の庭に埋めてお墓を作った。

 

「やっぱりあの猫……救ってあげたかった。」

 

「千歌…」

 

「?」

 

「俺達が将来、ちゃんと稼げるようになって、一緒に結婚したらちゃんとした猫を買いに行こう。」

 

「…うん。」

 

千歌が涙を拭く…。

 

 

空を見上げたら大きな虹がかかっていた。

 

それは今まで見た虹の中で最も大きく、とても綺麗な色をしていた。



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第43話「私たちの拠点へ。」

~2日前~

 

「そういや、千歌は夏休み実家には帰るの?」

 

「うん!旅館の手伝いとかもあるからね~夏になるとお客さんも結構増えて大変だからね。」

 

そういや…母さんの仕事先もまだ沼津のままだからな…俺も久々に顔を見せに行こうかな?

 

「悠之くんはどうするの?一緒に内浦に帰る?」

 

「あぁ、俺もたまには母さんに顔を見せなくちゃな。」

 

 

~~♢♢~~

 

~現在~

 

 

見渡す限りの青い海…随分と久しぶりだ…そういや大学に行ってから全く帰省してなかったから一年ぶりくらいにはなるのかな?

 

「じゃあ千歌、俺はは先に母さんの所に行ってくるから。」

 

「うん、荷物はあの時のお部屋にまとめておくからね!」

 

「ありがとう、じゃあまた後で。」

 

「行ってらっしゃい~」

 

 

……

………

…………

 

 

母さんの仕事先の家は千歌の旅館から少し離れた場所にある、確か3キロくらい離れている。

 

…バス代をケチって歩いていこうとしたのは間違いだったかな。この暑さで外を歩くのはちょっと賢い判断ではなかったかも。

 

 

 

 

 

なんだかんだで、20分くらい歩いてようやく家が見えてきた。

どんな反応をしてくれるのだろう?

 

ピンポーン♪

 

「はーい、どなたー?」

 

ガチャ…

 

「ただいま母さん。」

 

「悠之!?どうしたの?珍しいわね~」

 

「たまには顔を見せなくちゃって思ってさ。今時間大丈夫?」

 

「大丈夫よ、早く上がって上がって。」

 

部屋に上がると、今までたくさんの書いてきた絵画が飾れている。中には失敗作も混ざっているが、母さんはそれも大きなヒントになるから捨てないで飾っている。

 

「富士山…」

 

「ん?これ?」

 

中でも1番大きく、目立つように富士山の絵も飾れてあった。

 

「そうか…完成したんだ。おめでとう!」

 

「えぇ、これでもうここにいる意味もなくなってしまったわ。」

 

「また新しい仕事場所に移動するのか?」

 

「いいえ、ここ数年間ずっと書き続けてなんだか少し疲れちゃったから、1年間休業しようと思うの。だからここでゆっくりと休むことにするわ。」

 

 

2年間もこの絵を完成させるために、一体どれほどの絵を書いたのだろう…この富士山の絵からたくさんの努力をした情熱さが伝わってくる。

 

「そっか…2年間もお疲れ様。」

 

「そんなことよりも…」

 

「?」

 

「悠之がチャラくなってなくてよかったわぁ~」ムギュウ

 

「はぁ…?」

 

「いやだって、急に美容科の道を行くなんていうから変にチャラチャラしちゃってるのかな~?って心配だったのよ?」

 

「あのな…俺がチャラ男が似合うような性格をしていると思うか?あと暑いから離れろ、いい歳して何してんだか。」

 

「もう、ケチなんだから~」

 

全く…相変わらずキャラ崩壊が激しい人だ。

 

「でも、なんか安心したわ。」

 

「?」

 

「千歌ちゃんと仲良くするのよ。」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

久しぶりにあったけど、とくに変わったことがなくて安心した。

 

 

「ただいま~」

 

そして…ここの旅館も。

 

「おかえりなさい~!」

 

後ろの髪をお団子のように束ねた千歌の姿があった。

 

「どうしたの?悠之くん?ものすごく顔が真っ赤だけど…」

 

「え…?」

 

あぁ…きっといつもと違う千歌の姿に脳内が追いついていないんだろう…。

 

いつも通りだと思ってたらあっという間に裏切られた感じだ…。

 

「もしかして熱中症!?あんまり汗もかいてないっぽいし…!?」

 

「あ…確かに。」

 

自分の首元や顔周りを触ってみたが、汗で濡れてるところが全く無かった…歩いて往復してきたんだから少しは汗をかいててもおかしくないのに…。

 

「早く悠之くんこっちきて!」

 

「う、うん。」

 

 

たしかに、急に目がくらみ出してきた…千歌に言われたから余計に意識して感じるようになったのか…少し視界がぼやける。

 

 

「ここのお布団に…」

 

「あぁ…」

首元に氷枕、デコの上に冷たいタオルを乗せてもらった。

 

「今、飲み物持ってくるから待っててね。」

 

「ありがと…」

 

この地球上…どこにいても、夏は暑い…油断してたらあっという間に身体の体力を削られていく…。

 

「はい、お待たせ。」

 

千歌がスポーツドリンクを持ってきてくれた。

 

「ありがとう…」

 

乾いた喉をあっという間に潤ってくる…

 

「びっくりだよ…いきなり悠之くんが熱中症になっちゃうなんて。」

 

多分俺のこの症状にトドメを指したのは千歌だろうけどな…

 

なんか…疲れがでちゃったかな…

 

 

「悠之くん…寝ちゃった?」

 

 

私はそっと悠之くんの頭を撫でる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「悠之くん~起き…ありゃ、まだ寝ちゃってるか……」

 

もう夕食出来てるから起こしてあげた方がいいよね…

 

熱はどうかな…?もう良くなっているかな?

 

「……」ピトッ

 

悠之くんの額に自分のデコを当てる…。

 

「…千歌?」

 

「あ、起きた悠之くん?」

 

「うん…」

 

悠之くんが私の頬に手を当てる…

 

「悠之くん…どうしたの?」

 

「千歌ってさ…なんでこんなに可愛いの…?」

 

「ふぇっ!?ど、どうしたの?急に…///」

 

なんか、面と向かって可愛いなんて言われたの結構久しぶりかも…。

 

「ど、どうしちゃったの悠之くん?やっぱりのぼせちゃったの?」

 

まだ熱があるのかな…?なにかしてあげた方がいいのかな?

 

「ゆ、悠之くん…なにか欲しいものとかある?冷たいもの…とか?」

 

「…膝枕。」

 

「へ?」

 

「膝枕をして欲しい。」

 

「えぇ!?」

 

ほんとにどうしちゃったんだろ…熱中症になるとなんだか甘えん坊になっちゃうのかな?

 

「は、はい…おいで。」ポンポン

 

「ん…」スッ

 

最初はなんか戸惑ったけど…甘えん坊な悠之くんもなんかいつもと違って可愛い♪

 

「悠之くん、じっとしてて?」

 

「…?」

 

横たわっている悠之くんにそっとキスを交わす。

 

「ん……」

 

「……」

 

ガララ…

 

「千歌~悠之くんは起き…た…?」

 

「あ、」

 

美渡ねぇに見られて、空気が一瞬にして凍りついた。

 

「ご、ごめん……邪魔しちゃって。」

 

「う、ううん…///」

 

「じゃ、じゃあ…あとはお若いふたりで…」

 

ピシャ…

 

な、なんかこんな展開…高校生の時にもあったような気がする…。

 

「千歌…も、もう大丈夫…///」

 

「ゆ、悠之くん…やっと戻った?」

 

「うん…なんかごめん」

 

「だ、大丈夫だよ…///」

 

 

~~♢♢~~

 

「あら、美渡ちゃん?2人はどうしたの?」

 

「志満ねぇ…2人がもうあそこまできてるなんて…」

 

「あそこまでって?」

 

「膝枕しながらキスしてた…///」

 

「…別に驚くことはないんじゃない?」

 

「ど、どうしてさ?」

 

「だって、2人とも高校生の時からアツアツだったじゃない♪」

 

「た、たしかに…」

 

 

~~♢♢~~

 

 

「いやぁ…ごめんな、急に体調崩しちゃってさ…」

 

「大丈夫だよ、こういう日くらい誰にだってあるもん。」

 

「なんか熱中症で頭おかしくなってたみたいだし…」

 

「あはは…確かにいつもの悠之くんっぽくはなかったかも。」

 

 

私はなんか可愛いらしくて良かったと思うけどなぁ…なんか悠之くんを独占している気分になれて少しドキドキしたし…。

 

 

そうだ…悠之くんにあの事を…。

 

 

「悠之くん…明後日にさ、沼津の港の方でお祭りがあるんだけど…よかったらふたりで一緒に行かない?」

 

「お祭り?もちろん行くよ!一緒にお祭りだなんて久しぶりだな~」

 

よかった…前は曜ちゃんや梨子ちゃんも一緒だったけど…今回はデートとして誘えられた!

 

 

早く明後日にならないかな~♪



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第44話「約束。」

千歌ちゃん生誕祭でございます!!




~8月1日 0時0分~

 

 

「お誕生日おめでとう、千歌。」

 

「ありがとう悠之くん!」

 

「んで、今年の誕生日プレゼントは…」

 

「おぉ~♪2年ぶりの誕生日プレゼント楽しみ~♪」

 

「…家に忘れてきてしまいました!」

 

「え…えぇー!?そんなぁ~…」

 

「…ほりゃ!」バサっ

 

「うわっ!?」

 

悠之くんに何かを深くかぶさせられ、前が見えなくなる。

 

「み、みえないよ~!」

 

「それ、取ってみて。」

 

「う、うん。」

 

頭にかぶさせられた物を取ってみる。

 

「ほわぁ~♡可愛い麦わら帽子だ~♪」

 

「誕生日プレゼントだよ。」

 

「ありがとう~♪…って!ちゃんと持ってきてあるじゃん!!」

 

「あはは…どんな反応してくれるかなって思っちゃってな。」

 

「もぅ一!」

 

「はい、あとこれも」

 

今度はちゃんとしたラッピングに包まれたものを私に差し出す。

 

「何かな~何かな~ふふっ♪」

 

包装を解く…

 

「わぁ~今度はサンダルだ~これも可愛い♪リボン付きでとっても可愛いよぉ~♡」

 

「リボンの色、水色とか黒とかいろいろあったけど、やっぱりオレンジ色が千歌に一番似合うかなって。」

 

「うん!とっても嬉しい♪やっぱり悠之くんのくれるプレゼントは最高だよ~♡」

 

「そっかそっか…喜んでくれて良かった。」

 

 

千歌が嬉しそうにプレゼントを受け取ってくれるのでなんか安心した。

 

 

「えっへへ~明日使うの楽しみだな~♪」

 

「……」ギュッ

 

「ゆ、悠之くん?もぅどうしたの?」

 

「いや…こんなにも喜んでくれるから…なんというか…嬉しいというかさ。」

 

「も、もぅ…悠之くんも甘えんぼさんだなぁ~///」

 

「千歌の性格が移ったかも。」

 

「むぅ~それって千歌が子供っぽいってバカにしてるでしょー!」

 

「してないよ?」

 

 

千歌を抱きしめるのをやめて、自分の方から押し倒すように千歌の顔を見つめる…。

 

 

「いつも可愛い顔と声で俺のところに抱きついてくる千歌の事が好きだよ。」

 

「ふぇっ?」

 

「子供っぽいって思ったら時々見せてくれる色っぽい表情も好き。」

 

「……///」

 

「一緒にお出かけに行った時の無邪気な笑顔や、美味しそうに食べる千歌の笑顔も好き。」

 

「うぅ……///」

 

「疲れた時とかに癒してくれる母性的な……」

 

「も、もうやめて…///」

 

 

千歌が顔を赤くしながら目をそらす…

 

 

「それ以上言われたら…恥ずかしくて…悠之くんの顔が見られないよ…。」

 

「…可愛い。」

 

「も、もぅわかったから…///もぅ…」

 

『悠之くんのバカぁ…///』

 

「……」

 

無意識に 千歌のお腹に触れる…千歌が「んっ…」と吐息を漏らす……その甘い声が俺の理性をあっさりと吹き飛ばしてしまった。

 

「んっ…あっ…///」

 

千歌が自分の口元を手で抑える…。

 

「どうして…声を抑えるの?」

 

「だっ…だって…みとねぇやしまねぇに…聞こえちゃ…恥ずかしくて…///」

 

「じゃあ…やめる?」

 

千歌の太ももを下から上へなぞるように触れていく。

 

「んぅっ…///ひゃ…やめ…ないで…♡」

 

 

色っぽい顔をして俺の顔を見つめる…。

 

これだ…いつも千歌のこの表情で自分が何をしているのかが分からなくなる…。

 

 

千歌のワンピースの肩の辺りから少し脱がし、千歌の胸が露出する形になった。

 

相変わらず綺麗なピンク色をしている…

 

 

「そ、そんなにジロジロ見ないでよ…///」

 

「…千歌ってさ、ほんとに大きいよね…大学生になってからまた大きくなった気がする。」

 

「だ…だって悠之くんおっぱい…///たくさん触るから…///」

 

 

確かに俺が触っているのもあるかもしれないけど、胸だけじゃなくて身長も高校生の頃よりも大きくなっている気がする。

 

だから、より身体も大人っぽくなっていっている。

 

 

「ね、ねぇ…悠之くん…」

 

「ん?」

 

「もっと…触って…♡」

 

「…あぁ。」

 

 

゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚

 

 

「ねぇ…しまねぇ。」

 

「ん~?2人のこと?」

 

「うん…若いって凄いね。」

 

「ほんとよね~ねぇ?お母さん?」

 

「そうね、夜は若い2人に任せて、朝になったら千歌ちゃんの誕生日を祝ってあげましょ。」

 

 

゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚゚+.*ʚ♡ɞ*.+゚

 

~夕方~

 

 

「どうどう?似合ってるかな?」

 

「あぁ、とっても可愛いよ。」

 

 

千歌が浴衣を着て嬉しいそうにはしゃぐ…今年の千歌は髪が長いので、また違った雰囲気が良い感じに雰囲気が出ている。

 

 

 

「じゃあ、行こうか。」

 

「うん♡」

 

千歌の手を少し強く握って歩いた。

 

今年は二人きりで夏祭りに出かけられる。おととしは曜と梨子もいたけど、今年は千歌と2人だ。初めての夏祭りデートなんだ。

 

きっといい思い出になりそうだ。

 

「ちょっと早く来たのにもう人がたくさん~」

 

「やっぱりみんなも祭りを楽しみにしてたんだろうな。」

 

「あ、悠之くん見てみて!」

 

千歌がわたあめの屋台に引っ張っていく。

 

「わたあめ一緒に作ろ?」

 

「おぉ~こうやって回す機械はまだ残ってたんだ~」

 

 

割り箸でくるくる回していくうちに綺麗なわたあめができた。

 

 

「はむっ…んっ~!あま~い♡悠之くんも1口いる?」

 

「ん?俺も千歌も同じ味じゃなかった?」

 

「いいから、いいから♪ はい!」

 

「あー……甘いな。」

 

「わたあめだもの♪*」

 

「ふふっそうだな。」

 

「そうだ!今度は悠之くんの好きな大判焼きを買いに行こう♪」

 

 

♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜

 

あれからたくさんの店に回った…そして、そろそろ花火が打ち上がる時間帯になった。

 

 

 

 

「よしっ、ここなら花火を見ながらご飯も食べれそうだな。」

 

「あんまり人もいないしちょうど良さそう♪」

 

 

一緒に座って花火を待っていると丁度いいタイミングで打ち上がった。

 

外に出て花火を見るのはほんとに久しぶりだ…そしてとても綺麗だ。それにいつもよりも特別な雰囲気にしてくれる。

 

それはきっと大好きな人がそばに居てくれてるから…なのだろう。

 

「ほわぁ~…綺麗…ねぇ悠之くん。」

 

「ん?」

 

「今日は一緒に来てくれてありがとう♡」

 

「あぁ、それはこっちも同じだよ。ありがとうな。」

 

「その…こっちみて?」

 

「ん?」

 

 

千歌が俺の顔を触れながらじっと見つめる…。

 

「これからも…私のことを好きでいてくれますか?」

 

「もちろん、約束するよ。」

 

 

ためらわずに答える。

 

 

「ごめん…急に約束事なんか言っちゃって…」

 

「ううん、きっとこれからも2人で生活していくうちに、約束事はたくさん出来てくると思う。だけど…その約束事の中で楽しく生活して行ければ俺はそれでいいと思う。」

 

「だから…俺からも約束させて?」

 

『俺も…千歌の事をずっと愛しています。』

 

 

もぅ…どうしていつも私の心を動かしてくれるようなことを言ってくれるんだろう…。

 

高校生の頃からずっとそうだ。貴方はずるい…でも、その貴方に心を引き寄せられて今はここにいる。

 

「悠之くん…キス…させて?」

 

「うん。」

 

もう今の私には人の目なんて何も気にならなかった。ただ、ただ悠之くんの事が大好き。

 

そんな自分の欲に囚われながら悠之くんにキスをした。

 

どうしてだろう…いつも私はキスをする時、本当は恥ずかしくて目を閉じるのに、私が目を開けると、悠之くんはちゃんと私の顔を見ていてくれている。

 

だから今日こそは…目を開けて、悠之くんの顔を見る……あれ?悠之くんは今日は目をつぶっている。

 

なんでだろう?外だから恥ずかしかったのかな?

 

 

「千歌…ちょっと恥ずかしかった。」

 

「…そんな顔してた。」

 

「悠之くんからも…きて?」

 

「うん…」

 

 

千歌にキスをした瞬間…またひとつ大きな花火が上がった。

 

 

「ありがとう…悠之くん。」

 

「大好き…だよ♡」

 

私はそう言いながら、悠之くんの手に自分の手を添えた。




.*♥Happy Birthday ♥*.


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最終話「最高の友達」

あの夏祭りの日から5年が経った。

 

 

そして、あの時…千歌とひとつの約束をした。これからもずっと好きでいてくれるのか…。

 

 

答えは簡単だった…なぜなら…。

 

 

 

 

「ゆ~じくん早く起きて~!」

 

バタンっ!と、大きな音を立てて千歌が部屋に入る…。

 

「もう起きてるよ~?」

 

「おおっ!珍しい…いつものねぼすけ悠之くんじゃない…」

 

「それ、高校生の頃の千歌に聞かせてあげようか?」

 

「あ……ははは…細かいことはいいの!今日は一緒に内浦に帰るんでしょ?さ、朝ごはん作るから準備手伝って!」

 

「へーい。」

 

 

一緒に朝食の準備を始める…。

 

 

「ねぇ、千歌…」

 

「ん~?どうしたの?」

 

「『アナタ』って言って?」

 

「…い、嫌だよ…恥ずかしい…///」

 

「…なんかさ。千歌のエプロンしてるところを見ると…言ってもらいたくなるんだよね。」

 

 

そう言うと千歌が顔を真っ赤にする…。何年経っても恥ずかしがる素振りは変わらない…。

 

 

「…あなた♡」

 

「……可愛い。」

 

「もぅ…結婚したからって調子乗りすぎ…///」

 

 

そう、去年の8月1日…俺と千歌は結婚をした。

告白したあの日、思い出すのも恥ずかしいくらいだけど、きちんと想いを伝えることが出来た。

 

 

「いいじゃん…減るもんじゃないんだし。」

 

「それでも私は恥ずかしいの…今まで通り悠之くんじゃダメ?」

 

 

上目遣いをして俺のことを見つめる…

 

 

「たまに呼んでくれたら…嬉しいかな。」

 

「しょうがないなぁ…///」

 

 

何年経っても千歌の上目遣いには敵わない…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一緒に自動車に乗り込む…大学を卒業して、ようやく購入した自分の車…とても新鮮な気分だったが、さすがに半年以上使っているので今はそこまで感じないが…。

 

車に乗る度に千歌はウキウキしながら隣に座ってくれるので、全く苦にならない。むしろ、毎日こうやってドライブしたいくらいだ…。

 

 

 

「久しぶりだね、こうやって2人で出かけるのも…。」

 

「そうだな…普段休みは平日だから。千歌とあまり会えない日とかあるしな…。」

 

「だから、こういう夏休みは仕事を忘れて、2人の時間をいっぱい作ろうね♡」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

と、話したばかりなのに…20分後…。

 

 

「…くぅ…くぅ…。」

 

いやいや…いきなり寝るんかい!さっきまでたくさん時間を作ろうって話したばかりなのに…!

 

 

「…すぅ…すぅ…」

 

いつも…寝顔は見ているのに…こういうところで寝ているのを見るとなんだか特別な気分になる…。

 

「…なんか懐かしい気持ち。」

 

 

 

~~~

 

「久しぶり、元気だったか?」

 

「ほぇ…?」

 

「俺だよ、覚えてない?」

 

「…だぁれ?」

 

「え…」

 

 

~~~

 

 

 

あの時の千歌の顔…今思い返せばキョトンとしてて面白かったな…全く知らなそうな雰囲気を出された時はちょっとショックだったけど…。

 

 

「う…ん…?」

 

「起きた?もう少しでサービスエリアに着くけど、寄ってく?」

 

「うん…行く…♪」

 

 

~♪♪♪~

 

 

「あ、これこれ!この前ニュースに出ていたお店!」

 

「お~このクレープ屋か…そういや、行きたいって言ってたもんな。」

 

「うん!悠之くんも一緒に食べよ?」

 

「あぁ。」

 

…楽しそうだな。ずっと仕事ばっかりで中々羽を伸ばせなくて大変だったんだろうな。

 

 

「悠之くん、一緒に写真撮るよー!」

 

「あぁ!」

 

~♪♪♪~

 

 

 

 

 

~内浦~

 

(高海家)

 

 

「おかえりなさ~い♪」

 

さっそく千歌の母親と、しまさん、みとさんがお出迎えしてくれた。

 

「おかえり!新婚さん!」

 

「おかえり~千歌ちゃん、悠之くん。」

 

 

 

相変わらずここの家の家族はみんな美人だ。俺が高校生の頃から何も変わっていない…。

 

 

「おかえり!悠之くん、千歌!」

 

「久しぶりだね!」

 

「曜!?果南!?」

 

「よかった~!二人とも来てくれたんだ~!」

 

「え?千歌が呼んだのか?」

 

「うん!昔一緒だったこの4人でちょっと行きたいところがあってさ。」

 

 

千歌にどこか連れていかれる…。

 

 

 

 

 

~~~♪♪♪~~~

 

 

「ここは…?」

 

「私達の学校…浦の星女学院の跡地だよ。」

 

「跡地…って」

 

「そう、浦の星女学院は善子達が卒業した後、廃校になって、取り壊しになった…。」

 

「…もう形も何も残っていないのか。」

 

「うん、だから…この場所にありがとうって伝えたくて。」

 

 

千歌が声を震わせる…。

 

 

「千歌ちゃん…私も同じ気持ち。ちゃんとした大人になれて、自立ができるようになって…この学校にもありがとうって伝えたい…。」

 

「私も…この学校があったから、たくさんの経験ができた…。」

 

 

 

果南と曜が必死に涙をこらえようと唇を噛んでいる…それはそうだろう…自分たちの思い出の場所が無くなってしまったのだから…。

 

 

「曜ちゃん、果南ちゃん…私達で何ができたのかな?この学校の未来…変えられたのかな?」

 

「千歌…」

 

「千歌ちゃん…」

 

「…過去のことを気にしたってどうにもならないさ。」

 

「悠之くん…?」

 

「俺はみんなと一緒に過ごせた高校生活は何も後悔していない…学校は違ったけど…俺はこの高校生活が無駄だったとは思っていない。むしろ…中学生から高校2年生になるまでみんなと会えなくてすごく寂しかった…。」

 

「思い出の場所が無くなってしまったのはとても残念だ…。だけど、俺はこの高校生活は楽しかった。ありがとな…みんなのおかげだ。」

 

 

3人が顔を真っ赤にする…

 

 

「もぅ…泣くの我慢してたのに…そんなこと言っちゃうのやっぱりずるいよ悠之くん…」

 

「悠之くん…優しいね相変わらず…おいで?ハグしてあげる♪」

 

「あー!果南ちゃんずるいー!!私もー!!」

 

 

ぎゅぅ~………

 

 

「お、おい…曜、果南…暑いって。」

 

 

 

「ちょ、ちょっと!果南ちゃん曜ちゃん!!」プクッ

 

「あ~!奥さんが怒ってるぞ~今夜は修羅場かな~?」ニヤニヤ

 

「もうっ!曜ちゃん!!」

 

 

 

 

 

ついでに俺の学校もどうなっているのか見に行くことにした。

 

 

 

 

やっぱり、俺の学校も…取り壊しにはなっていないけど、これから工事する予定の張り紙が貼ってある…これから解体されるのだろう…。

 

 

懐かしい…でもこれから解体するとなると少し心が苦しくなるな…。

 

 

~~~

 

「悠之~!私の分のコンポタージュ買ってきてほしいデース!」

 

「私の分も欲しいなぁ~」

 

「梨子!鞠莉!俺はパシリじゃないってんだろ!」

 

「え~でも、ちょうど飲み物買いに行きそうだったし…まぁ、みんなで一緒に買いに行きましょ♡」

 

「えぇ♪」

 

「最初からそうしてくれよ…」

 

 

~~~

 

 

もう…あの時のような生活はもう出来ないのか…今振り返れば楽しい思い出ばかりだ…やっぱり俺にとって一番充実していた日々はこの学校の生活だったんだ…。

 

 

 

 

『なに泣きそうな顔してるのよ悠之?』

 

『もしかして…私達が恋しくなっちゃったの?』

 

 

後ろから声が聞こえる…振り返るとそこには、梨子と鞠莉が立っていた…

 

 

「私が呼んだんだ♪きっと悠之くんも会いたくなるだろうなって思ってね♪」

 

「梨子…鞠莉…!」

 

「ふふっ久しぶりだね♪」

 

「ずっと…会いたかったデース♡」

 

「お前ら…」

 

 

梨子と鞠莉が同時にハグをする…。

 

 

「鞠莉ちゃんと梨子ちゃんだけじゃないずらよ?」

 

 

ダイヤ、ルビィ、善子、花丸の4人も来ていてくれていた…。

 

 

「ほら、悠之さんと千歌の結婚祝いがまだでしょ?」

 

「うん♪この計画を最初にやろうって言ってくれたのは善子ちゃんだもんね」

 

「流石…善子さんですわ。」

 

「う、うっさいわね!私はただ…直接お祝いできなかったから…」

 

「善子ちゃん♪」

 

「な、何よ…千歌…?」

 

「ありがとう♪」

 

「…どういたしまして♪」

 

 

久しぶりにこうしてみんな集まることになった…数年ぶりの再開になるが、特に変わった所は見当たらない…唯一変わったと言えば…。

 

 

みんな大人になったってこと…。

 

 

それぞれの夢を見つけて、それに走り続けてみんなやっと大人になることが出来た…。

 

 

なんだか寂しい気持ちもする…

 

 

 

「悠之くん~早く~!」

 

「あぁ!今行くよ!」

 

 

 

俺もあとに続く…どうやら鞠莉のホテルでパーティをするみたいだ…。

 

 

 

ありがとう…みんな…会えてよかったよ。

 

みんな…最高の友達だよ。

 

 

 





ここまで…この作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品書いたのが約…1年半前ぐらいですね。
元々ネットでSS小説とか読むのが好きで、自分でも投稿してみたいなって思い、1年半前初めて投稿を始めました。

正直自分に期待はしていませんでした。人気は出なくていいから少しでも読んでくれる人がいたらいいなってこの小説を書きました。

でも、今になってとてもびっくりです。初めて書いた小説の登録者が200人を越えて、何人もの方から感想が来てくれて。とても嬉しい限りです。

この作品を書き始めて、最終回はこんな感じに終わらせたいなって思い。目標通り、自分の理想の形で終わらせられました。

もうこの作品に次の更新はありませんが、また別の作品を投稿することがあったら…また、見ていただければ幸いです。

(既にほかの作品を投稿中ですが…)


最後に…一年半、この作品を読んでいただき…本当に、本当に、ありがとうございました!


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side story
side story Yuji 「Roots」


まだ、俺が東京で暮らしていた頃…

 

 

別れを言うのが辛くて逃げるように東京へ引っ越した俺…後悔はいっぱいあった、あの日から千歌の事を思い出すだけで、胸が強く苦しめられた。

 

 

だけど、これは母さんの仕事なんだ…そう心に言い聞かせて我慢した。

 

 

東京でも、もちろん友達ができた。高校も付属でそのまま持ち上がりで進学できるとても都合のいい中学校だった。

 

 

ただ…俺の周りに集まる人達はみんな碌でもない人達だった。

 

 

そう…俺の学校は不良のたまり場だったのだ。

 

 

 

そして、クラスでは弱い人はいじめられ…奴隷のように扱われていた。

 

 

そして、いじめられている人を助けると、今度はその人がターゲットになってしまう…。

 

 

そのことは、転校生の俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

「なぁ、お前…コーラ買ってこいよ?」

 

 

まただ…またいつもの日常が始まってしまった。

 

 

「ごめん…もう今月はお金が…。」

 

「あぁ?口答えしてんじゃねえよ。おい、悠之お前もなんか飲むか?」

 

「…そうだな、俺も喉乾いたしな…向こうで決めるわ。」

 

 

 

~~~~~~

 

 

「なぁ、お前抵抗しないのか?」

 

 

俺はいじめられていた男子に問う。

 

 

「え…ど、どうしたの?急に…」

 

「こんな学校に来ちまったんだ…弱々しい態度のままだと体が持たないぞ。」

 

「……」

 

 

俺は、自分の金でコーラとアクエリアスを買った。

 

 

「…な、なんのつもりだい?」

 

「母さんの為に…お金貯めてんだろ?そんな人から金を奪うなんて最低だ。」

 

「ど、どうしてそれを…」

 

「…お前が色んなところで手伝ってるのを見た…中学生じゃバイト出来ないから知り合いのところで店手伝って小遣い稼ぎしてんだろ?」

 

「う、うん…」

 

「だったら母さんを…喜ばせてやれよ。」

 

 

 

俺達はそのまま教室に戻った。

 

 

 

 

だが…その一部始終を見ていた人物がいた…。

 

すぐにクラスにばらまかれて、わずか3時間後…ターゲットが俺の方を刺した。

 

 

 

 

 

「なんだよ悠之…やっぱりお前もいい子ちゃんぶってんのかよ…」

 

「まじできもーい~こんなやつと仲良くなって一体何になるの?」

 

「…ふふっ。」

 

つい俺は笑みを浮かべてしまった。

 

 

「何笑ってんだよ、マゾかよお前。」

 

「悪いな…あまりにも低次元過ぎてよ…」

 

 

 

 

 

『腹の底から笑いが止まらないもんでな。』

 

 

 

 

俺がそう言うと1人の男が俺の胸ぐらを掴んだ。

 

 

「てめぇ舐めてんのか…?転校生の分際で調子乗ってんじゃねえぞ…?」

 

「ゴミみたいに調子乗ってるのはお前達の方だ…善良な人間を数十人で攻めるなんてよ…。」

 

 

もう既に俺の周りにはクラス全員が包囲網のように囲んでいた…。

 

 

「やれ!!!」

 

 

 

 

 

 

そしてその日から2年余り…。

 

 

中学校を卒業して、既に高校2年を進級して3年生になる直前だった。

 

 

あの日の出来事が原因で俺の周りには碌でもない人達が集まるようになってしまった。

 

俺はなるべく避けながら日々暮らすようになってしまっていた…

 

 

「なぁ悠之、隣町の野郎達が喧嘩ふっかけて来たんだが、ぶちのめしに行かね?」

 

「興味無い、お前達だけで行けよ。」

 

「そう言っていつも心配して助けに来てくれるじゃんかよ~」

 

「……」

 

 

そう、あの日以来弱いものいじめをするものはほとんど居なくなった…それはいい事だ。

 

だけど、今度はほかの学校と喧嘩をするようになってしまった…何度も警察沙汰になって正直めんどくさい。

 

だから、いつも俺がやり過ぎないように止めに入るのだが…。

 

 

「まぁ、今回は問題起こさねえように努力すからさ。」

 

 

俺はひと足早く自宅へ向かった…歩いて20分くらいなのでいつも適当にぶらぶらと歩いて帰っている。

 

 

 

1人で帰ろうとしたその時…

 

 

 

「あの…月夜学園の人…ですよね?」

 

 

特に名前も知らないほかの学校の女子生徒が校門で出迎え、そして話しかけてくる…何か不安そうな顔をしているようだ…。

 

 

「そうだけど…何か用?」

 

「あの…うちの学校の男子達が喧嘩を仕掛けたって聞いて…うちの学校の生徒達は全然強くもないのにイキがっていて…このままだと全員大怪我を…。」

 

「俺に説得をしに行って欲しいと?」

 

「は…はい!月夜学園で物凄く強い人がいるって聞いて…その人に頼んでもらえれば…。」

 

「…そんなヤツ知らないな。」

 

 

俺は必死で誤魔化した。

 

 

~~~~~

 

 

今日の夕食…多分母さんは忙しくて事務所で食べて帰るんだろう…適当に買い物して帰るか…。

 

 

商店街の中を歩いていると、何やら小さな声で陰口が聞こえてきた…。

 

 

「ねぇ…あの人、月夜学園の人じゃない?よくあんな汚い学校で暮らしていけるよね~?」

 

「だ…ダメだよそんなこと言っちゃ…」

 

「だってホントのことじゃん~ダメだよ?梨子も付き合う男の子とかちゃんと決めないと~こういう人とか特に。」

 

「……」

 

 

まぁ…変な噂されても仕方ないだろう。実際にうちの学校はたくさんの不良達が暴れ回っているから汚いイメージを持っていてもおかしくない……ん?

 

 

 

「おい、お前ら今うちの学校の悪口言ってたろ?」

 

 

その時、俺の学校の生徒が後ろから2人の女子高生に近寄った…

 

アイツ…喧嘩しに行ったんじゃなかったのか?

 

 

「はぁ?知りません~梨子行くよ?」

 

「…ご、ごめんなさい!勝手なことを言ってしまって…。」

 

「ちょっと梨子!あんたねぇ!?」

 

「なんだお前…妙に素直じゃねえかよ…だけどな、うちの悪口を言うやつは…」

 

「やめろ…カイト。」

 

「ゆ、悠之…!?」

 

「本人も謝っているんだ…それくらいにしろ。」

 

「…だ、だけどよ…!」

 

「…俺の言うことが聞けないのか?」

 

「…っ!」

 

…これ以上コイツがこの人たちと喋っていたら絶対にぶちギレていた…。

 

 

「すまない、うちの学校ヤツが…」

 

「い、いいえ…こちらこそすみません…。」

 

 

2人の女子高生は少し早歩きで俺たちの元から離れた…。

 

 

 

「もういい加減、そんなことでキレそうになるのは卒業しろ…カイト。」

 

「悠之、ちょうどいい所に!」

 

「おい…話を聞け…」

 

「うちの学校が今ボコボコにされちゃってるんだ…だから、助けてやってくれないか?」

 

「喧嘩はしない…助けるだけだ。」

 

「あぁ、わかってるよ。」

 

 

急いで現場に向かった…だが、なにか妙だ。

 

俺の学校の連中がボコボコにされている?さっき話しかけてきた女の子は強くもないのにイキがっていると聞いた…。

 

大体いつもやりすぎて警察沙汰の問題になるのはうちの高校のはずだ…そんなヤツらにボコボコにされるのか?

 

 

 

~~~

 

 

カイトの言った通りの場所に来てみた…もう誰も使っていないような薄汚れた工場だった…。

 

なのに、人の気配をまるで感じない…本当にこんな所で喧嘩なんてあったのだろうか?

 

 

「…カイト、本当にここで喧嘩なんてあったのか?」

 

「…何言ってんだよ…これから始めるんだよ…!」

 

 

 

周りの明かりが一斉に付き、俺を照らすように光る…物陰に隠れていたのか、よく分からなかったが…。

 

全員合わせて50人くらいはいる…。

 

 

「…俺をハメに来たな。」

 

「そう…あんたがいると俺たちの学校が困るんだ…この2年間…あんたのせいで弱い奴らにも権限ができた…そんなつまらない学校生活には何も刺激がない…!」

 

「…そうか、主犯はお前か…カイト。」

 

「あぁ…クラス全員がこの意見に賛成した…もちろん隣町の学校達もだ…」

 

 

 

 

…ここにいる全員が喧嘩に腕前があるのなら、俺は確実に倒されるだろう…。

 

 

「2年前…クラス全員を敵に回して1人で勝ったお前には正直腰が抜けたよ…だけど、あの時とは違う…!今度は50人だ!2年前とは倍以上の人数だ…!」

 

「そうか…」

 

 

 

『…手を組む相手を間違えたな。』

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

「どうして…なぜ…勝てない…?」

 

「…あたりまえだ、喧嘩に使えないようなヤツらを集めてもサンドバッグにしかならん…。」

 

「くそ…!」

 

「カイト…何故こんなことをする?…もうやめないか?こんなことをしたって…体をボロボロに痛めるだけだ…。何も得がない。」

 

「……」

 

「喋らないならもういい…こいつらを連れてここから去れ。」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

 

…寒い…おかしいな…あんなに体を動かしたのに…暑くて汗をたくさんかくはずなのに…。

 

汗が一滴も出てこない…体が冷たい風に煽られてどんどん体が縮こまっていく。

 

 

そうか…きっと今この瞬間…1人になってしまったからだ。バカな連中とはいえ、俺の友人であることには変わりない…。

 

そんなみんなに敵対され、一斉に反抗を食らった…。

 

 

もう俺には仲間がいない…そう思った時…1人の名前が自然と口に出た…。

 

 

「…千歌。」

 

 

それと同時に涙が溢れてきた…アイツのそばから離れたの時も…こんなに冷たくて…寒い日だった…。

 

 

何を馬鹿なことを考えているんだ俺は…今更…こんな荒れ果ててしまった俺を…アイツは受け入れてくれるはずがない…。

 

 

「…悠之。」

 

「母さん…?」

 

 

工場の出口に母親が出迎えていた…。

 

 

「貴方…いつまでこんなこと続けるつもり?」

 

「続けたくなんかないさ…もう…こんなこと。」

 

「そう…ならいいわ、話があるの早くうちに帰るわよ。」

 

 

そのまま車に乗りこみ、自宅へ向かった。

 

 

 

そして…何もかも全て失ってしまったかと思ったあの日…まるで導かれるように、引越しの話になった…。

 

 

希望と不安を胸に、俺は新しい生活の準備を始めた。




…誰だよ!これ以上投稿することはありませんって書いたやつは!!結局同じような事書いてるじゃんか!!


…はい、お久しぶりです…そして、あけましておめでとうございます。

本編と言うより、サイドストーリー的なものや、皆様のリクエスト的なものなどがございましたらちょこちょこと書いていこうかなと思います。

今回は主人公の悠之君のお話を描きました!彼がどうして喧嘩が強かったのかがわかったと思います。

では、また次回があればよろしくお願いします!


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高海千歌生誕祭 2019 「帰省」

たいっへん長らくお待たせしました!(待ってない)

だいぶ期間が空いてしまったので、かなり書き方とか変わってるかもしれないんですけど、それでも読んでいただけたら幸いです…✨





 

 

これは、悠之くんが高校を卒業して東京に行ってからのお話。

 

 

 

現在7月31日。明日でとうとう17歳!時間が経つのは本当に早いなぁ…。

 

 

旅館の掃除をしながらいろんなことを思い浮かべる…。

 

 

去年は確か…悠之くんがこのネックレスをプレゼントしてくれたんだよね。懐かしいなぁ…。

 

悠之くんがくれたネックレスは、あれからずっと肌身離さず身につけていた。

 

…もうあれから1年なんだ。

 

 

 

 

(そういえばこの部屋…)

 

私が掃除していた部屋…それは悠之くんが約1年間ずっと使っていたお部屋だった。

 

 

懐かしいなぁ…よくこのお部屋で悠之くんに勉強を教えてもらっていたっけ…。

 

今…何をしているのかな?きっと授業で忙しいんだよね…この前会えたのはゴールデンウィークの内2日間だけ…。

 

静岡から東京…別に物凄く遠いわけじゃない。会おうとすれば月一で会えると思う。

 

でも、悠之くんは学校も忙しそうだし、私も頑張って悠之くんの学校に入るって決めてから勉強の時間もかなり増えた。

 

そして、旅館の手伝いを入れると自由に行動できる時間が1年生の頃と比べるとかなり減ってしまっていたんだ。

 

LINE通話とかすればいつでも顔は見られるんだけど…毎日毎日する訳には行かないからなぁ…。

 

私は大きくため息をつく…

 

 

 

「何ため息なんてついてるのよ?」

 

後ろから声が聞こえた。

 

振り返ると、スイカを持った善子ちゃんの姿だった。

 

「善子ちゃん!?いつからそこにいたの?」

 

「いつからって…今来たばっかりだけど。」

 

 

悠之くんが東京に帰ってから、曜ちゃんと善子ちゃんがよく交代交代で旅館の手伝いに来てくれるようになった。

 

 

「ごめんね~いつも沼津からわざわざ来てくれちゃって…暑かったでしょ?」

 

「なんで謝るのよ…別に大丈夫よ。こうやって馴染みのある人がいる所の方が気が楽だしね。ちゃんとお給料も出るんだし。」

 

「ふふっ♪」

 

「…なんで笑うのよ?」ジィー

 

 

善子ちゃんがジト目で私を見つめる。

 

 

「いやぁ、善子ちゃんも変わったな~って思って。」

 

「はぁ?」

 

「初めてあった時なんか、よく分からない呪文みたいなこと言ってたのに~♪」

 

「あれは…その…」

 

「ふふっ♪」

 

「あーもう!謝ったり笑ったり!アンタはほんっとうにそういうところ変わらないわね!」

 

「まぁまぁ♪とりあえず、スイカ食べよ?私もここの掃除終わったら休憩入るつもりだったし!」

 

「まぁ…いいけど。てか、私が持ってきたスイカなんだけど…」

 

「よ~し!曜ちゃんや花丸ちゃんとルビィちゃんも呼ぼっか!」

 

「こら~!話を聞きなさ~い~!!」

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「「千歌ちゃん~善子ちゃん~!」」

 

 

花丸ちゃんとルビィちゃんも何やら大きな袋をもって、海岸沿いにやってきた。

 

 

「お~来た来た~おはよう!ルビィちゃん!花丸ちゃん!」

 

「おそいわよ、ルビまる。」

 

「えへへ~暑いから花丸ちゃんと一緒にアイス買ってきたんだ~!」

 

「た~くさんあるずらよ♡曜ちゃんも来たらみんなで食べよ?」

 

 

『おーい!』

 

 

「おぉ、噂をしてみれば~!」

 

 

 

自転車を漕ぎながら曜ちゃんが手を振る。

 

 

 

「じゃーん!今日は暑いから途中でラムネを買ってきたんだ~!」

 

「やれやれ、何だかお腹が冷えそうな組み合わせね。」

 

「まぁまぁ、夏なんだし大丈夫だよ!それとも?善子ちゃんが要らないならスイカは私達だけで…」

 

「あーもう!私だけ仲間外れにするなぁ~!てかスイカ持ってきたの私だから!!」

 

 

 

 

 

そして、休憩を終わらせた後、来てくれたみんなも旅館の手伝いをしてくれた。

 

やっぱりみんなと一緒に作業をすると時間はあっという間だし、楽しいし、いい事だらけだ。

 

 

夏はやっぱり暑いけど、この暑さが私たちらしい…。

 

バテそうになるのに一日中外にいて、ちょっと休んではまた外に出て…そしてこの潮の香り。

 

やっぱり去年のあのころを思い出すなぁ…。またみんなでどこかへ行きたい。

 

もちろん悠之くんも一緒に…

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

いっぱい遊んだ…いっぱいお店のお手伝いもした…沢山笑った…。

 

 

…だけど…やっぱり…

 

 

やっぱり…寂しいよ…

 

 

…どうして…貴方がいてくれないの?

 

 

 

「ゆうじくん…」

 

 

夜の11時…ぼそっと彼の名前を呼んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな…小さな願いが通じたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のスマホから着信音が鳴り響く…

 

 

 

「…もしもし?」

 

「…もしもし、千歌?」

 

「…なんで連絡してくれないの?」

 

「…ごめん。今、スマホを修理に出しててさ…」

 

 

 

スマホの画面をよく見ると、公衆電話って表示されていた。

 

 

 

「一応何回か電話したんだぞ?夕方とか…」

 

「私、公衆電話からの着信は出ないから。」

 

「…なんか喋り方変わった?」

 

「誰のせいだと思ってるの…?」

 

「…ごめんな。」

 

「…電話してくれたから許す。今どこにいるの?」

 

「…今、ちょうど沼津の駅にいる。」

 

 

 

彼の言葉に私は驚きを隠せなかった…。

 

 

 

「…ほんと?」

 

「あぁ、本当だ。だから待ってて今からそっちに向かうからさ。」

 

「まって!」

 

「…?なんでだ?」

 

「私が悠之くんを迎えに行く…!」

 

 

 

 

私は勢いよく家を飛び出した。そして、自転車に股がって沼津へ向かった。

 

 

正直いって馬鹿だ。

 

こんな時間に、こんなに距離があるのに私は全力でペダルをこいでいた。

 

 

普通に考えれば1時間以上かかる距離なのに…

 

どうしてこんなに必死になってこいでいるんだろう。

 

 

自転車をこいでいると、横からクラクションを鳴らされた。

 

その車をよく見てみると、なんだか見覚えのある黒い車だった。

 

 

 

「…まりちゃんの…車?」

 

「ちかっち~!あなたの考えていることはもう分かってるわよ!」

 

 

 

そして、そのまま私を一緒に乗せてってくれた。ちゃんと自転車もトランクの中に入れて…。

 

 

 

「…どうして…ここに居るって分かったの?って…いつから帰ってきてたの?」

 

「…私はただ偶然通りかかっただけよ?帰ってきたのはちょうど今日…ちかっちが自転車で走っているのが見えたからUターンしてきたわけ。」

 

「…でも、どうして私の考えていることが分かったの?」

 

「…そりゃあ、せっかくのバースデーは大切なダーリンに最初に祝ってもらわないとね☆」

 

 

 

鞠莉ちゃんが運転すると、あっという間に駅が見えてきた。

 

 

「…じゃ、行ってらっしゃい♪私はここで待ってるからゆっくり話してきて大丈夫よ♡」

 

「ありがとう…鞠莉ちゃん…!」

 

 

 

私はドアを開けてすぐに駅へ駆けていった。

 

 

そして、駅の中にいる青年に大きな声で呼びかけた。

 

 

「悠之くん!!」

 

 

 

その言葉を口にすると、彼は振り向いた。

 

間違いなく悠之くんだった…幻影じゃないちゃんとここに居てくれている。

 

 

 

「千歌…!」

 

「悠之くん…!!」

 

 

バシッ

 

 

「あたっ…な、何するの悠之くん!?」

 

 

 

何故か私は悠之くんに頭を軽く叩かれていた。

 

 

え…普通ここは男らしく…優しく抱きしめてくれるんじゃないの?って思ったんだけど…。

 

 

 

「…なんでこんな無茶をしたんだ?俺からこっちに行くって言ったのに。」

 

「そ、それは…悠之くんが来てくれてるってびっくりしちゃって…つい…。」

 

「ふ~ん…」

 

「だ…だって…誕生日で一番最初に会いたかったのは…悠之くんなんだもん…///」

 

「……」

 

 

 

 

…千歌が上目遣いをして俺に視線を送る…あぁ…もうダメだ…千歌のこの視線を感じるとすぐに甘やかしたくなっちゃうんだ俺は…。

 

でも…こんな夜遅くに女の子が一人で来てしまっているんだ。さすがにちょっとは怒る…いや、注意くらいはしないと。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい…」ウルウル

 

「あぁぁぁぁ…!分かった!分かったから!その泣きそうな顔をするのはやめろ!!もう怒ってないから!!!」

 

「…ほんと?」

 

「う、うん…」

 

「よ…良かった~」

 

 

 

あぁ…うん。なんだろう…この感情の高低差は…どんなに時間が過ぎても千歌の性格は変わることはないんだろうな…。

 

 

 

 

「…千歌」

 

「…ん?」

 

「お誕生日おめでとう。」

 

「悠之くん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うん!ありがとう♪♪』

 

 

 






一応続きは書く予定!


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