ひよこ大好きマンが行く〜HUNTER×HUNTER〜 (ウォント)
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ひよこひよこ!!
オレはひよこが好きだ。大好きだ。愛してる。
昔流行ったカラーひよこを買い占めるほど愛してる。
幸いにも実家は養鶏農家で、当時12歳のオレが買い占めても損害はオレの財布がすっからかんになるくらいだった。
部屋は基本黄色く、ベットと絨毯以外はすべてひよこで構成されている。
棚の中にひよこの人形、壁には歴代のひよこたち。ベットのふちにはたくさんのひよこの人形が。
自分でもイカれていると思う。けれどやめられない。
なにもひよこだけを愛しているわけではない。中雛ももちろん、鶏だって愛している。
突かれてオレが痔になろうが愛している。頭にフンを落とされようが愛している。
そんなひよこ大好きなオレはクラスでも浮いていた…ということはなかった。別にひよこがかわいそうだから卵を食べるななんて言わないし、むしろひよことなれなかった卵たちを美味しく食べてくれという勢いだ。
そして友達とゲームセンターに行ったオレは運命の出会いを果たした。
ぽつんと置かれていたUFOキャッチャー。
手乗りサイズよりも小さなカラフルなひよこの人形。
当時18歳のオレは真顔で財布から1万円札を取り出して両替機ですべて百円に崩した。
幸いにもオレはUFOキャッチャーが得意で、一度に五匹ほど取るのを繰り返した。
呆れ目の友達は帰ろうとしていたが、UFOキャッチャーで○NE PIECEのフィギュアをとって見せると満足げに待っていてくれた。
流石に一人では寂しい。
袋いっぱいにひよこを入れ、オレは大満足だった。
友達も大満足だった。
うきうきしながら家に帰り、即座に部屋に飾った。
ベットに上がり、ふわふわのひよこを眺める。
「ふふ…んふふふふ…」
ばたばたと悶えているとらガタンと棚に足がぶつかった。
そしてことんと何かがずれる音。
上を向くと、ひよこのガンガンが頭上から降ってくるところだった。
頭に直撃しそこでおそらくオレは死んだんだろう。
***
「よぉ、起きたかカス」
回想していると、ゴスッと頭にステッキが振り下ろされた。
ふと見ると、いつの間にいたのか金髪碧眼のイケメンがいた。
なんだか偉そうだ。見た目からしてオレよりも年上だろう。
「てめえは死んだ。それは理解してるよな。理解してないなら理解しろ0.1秒はい終了理解したな。」
なんと理不尽だ。
しかしやはり死んだのか。
悔いは…親孝行できなかったことと、孵化しそうな卵と、友達が泣いていないか、だな。
「てめえは生き物を大切にしていた。だから権利をやる。生まれ変わったら、なにになりたい。」
生まれ変わったら?そんなの決まっている。
「生まれ変わったら、人間になりたいです。」
「ほう…意外だな、ひよこになりたいとでもほざくかと思ったが…」
「ひよこになったらひよこを愛でられないじゃないですか。ひよこを愛でられる人間になりたいです。」
そうか、といってなにやら紙に書き出したイケメンのEさん(仮)。
「よしもう良い。行け。」
「へ?」
どか、と尻を蹴られて滑るように進み始めた。
「喜べ!てめえの最後に触れたものを_____」
聞こえない。
訳もわからぬまま、意識が消えた。
***
テリーベル・H・ハボレイ
男、6歳、将来有望、貴族。
ひよこが異常なほどに好き
それが今のオレ、テリーベルだ。
貴族と言っても色々あるらしく、ウチは大体四国くらいの面積の領土を持っているらしい。
公爵家だとか。
ちなみにミドルネームのHはひよこのHかと期待したが、ヒュラディのHだそうだ。期待させやがって…!でもひよこを持ってきてくれる父上大好き!
因みにこの世界にはハンターという男子憧れの職業がある。
これさえあればなんか色々便利らしい。
へー
そして新聞では幻影旅団がどうとか騒いでいる。
幻影旅団。聞いたことがないだろうか。
そう、盗賊団のくせして美形集団、性格イケメン集団の集まりである。
…イケメン集団の集まりって集まりの集まりってことだよね。
そう、なんとオレはHUNTER×HUNTERの世界へと転生したらしいのだ!!!
ふざけんな!死ぬだろ!
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ひよこ大好きマンが出動
テリーベルきゅん10歳!野原を駆け巡る、純粋キャピキャピな男の子だぞっ!今日はおとうさまとおじいさまとおばあさまにお呼び出しくらっちゃった☆え〜ん、こわいよぉ><
母様が倒れた。原因は体力の過激な消耗らしい。
い、一体ナニをしたんだ…とおぼっちゃまテリーベルはきょどるものの、父様の深刻そうな表情とお爺様の悲しそうな顔にそんな下ネタも言える雰囲気じゃない。
呼び出されて早々倒れただなんて聞いても現実味が湧かない。嘘をつくなクソッタレと言いたいところだが真っ赤な顔で眠っている母様を見るにマジらしい。お祖母様なんてプルプル震えちゃってるし、お爺様も口を噛み締めてプルプルしちゃってる。
「と、とーちゃん…」
「お父様と呼べ。ヒュラディ。……なあ、ヒュラディ。頼みがあるんだ。」
「なんだいお父様…」
「口調を直しなさい。いいかい、まずはテリーベル、お前にハンターになってもらいたい。」
「突然すぎやしませんことお父様」
「ちゃんとした口調にしなさい。いいかい、そして秘薬…というか薬草を手に入れてもらいたい。」
お祖母様が真っ赤な顔で崩れ落ちた。だ、大丈夫かババァ!!
「お父様、わたくしの話は聞いてくれないのね。」
「やめなさい。」
「はい。」
割と本気で怒られた。というか母様も震えてる。おい爺様、今吹き出さなかったか?なあ。
「場所はヒミツだ。自分で探しなさい。」
「待って、ねえ待ってくださいお父様。母様死にかけですわよ?ヒ・ミ・ツ☆とか悠長な気と言ってる場合ですか。普通にハンターに依頼したらどうですか?」
「それじゃダメなのじゃよ、リーベ…」
「お爺様…」
「なんか、あれじゃ。親族が手にしなきゃダメ系の薬草なんじゃよ。あとーそれと、えーっと、そうじゃ、ハンターでなければ行けぬ場所にあるのじゃ。」
「……。」
親族が手にしなきゃダメ系の薬草とかなにそれ。
というかめっちゃ考えてなかった?
遂に父様が崩れ落ちた。心なしか母様の顔がさらに赤くなり息も荒い気がする。
そう、笑いをこらえているみたいに。
「…それでは爺様が行けばいいのでは?確かハンタ」
「ええい!いいから往くのじゃ!ほれ荷物と地図じゃ!申し込みは既に済ませてあるからの、無事に帰るのじゃぞ!」
「健闘を祈るぞ、ヒュラディ!」
「おいコラ」
荷物を持たされ、いつかの如くぽーんと窓から放り出された。
心得ておりますと言わんばかりにいい笑顔でサムズアップした何故かカウボーイの姿をしているマーチョ。
「な、なあマーチョ、お前確か料理長だよな?」
「馬に乗ったことはありますので問題ありませんよ。ひっはっは!」
ああ、この妙な笑い方はマーチョだ。間違いない。
「んべっ!」
ガトンッ!と急に馬車が動く。おいおいどこ走ってんだ?
体勢を崩したまま外を見る。
岩場だった。
「ムーチョ!おい、おいムーチョ?!どこ走ってんだお前、これ馬車!馬車だぞ!後ろに車ついてんの、というかなんで馬車ぁ?!」
「ひはっ!岩場ですなぁ!ザバン市まで突っ走りますぞぅ!馬車は単なる当主様のご趣味です、ぞっ!」
「ぅうううううう?!?!!!!」
浮遊して、着地。身が持つとはとても思えないぞ、こんな運転じゃ…!
ムーチョ・ギュウシ
白髪混じりの赤毛に青い目。初老。
ハボレイ家の料理長。御者はやったことないが乗馬はやったことがある。
笑い方が独特。「ひっはっは」
テリーベルの扱いがかなり雑。
使用人ではあるが、忠誠心というのは全く持ってない。
ただ料理ができればいいという料理人。馬の扱いはとても上手いが、後ろのことは全く考えないため御者には向いていない。スピード狂。やたら早い。
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ひよこ大好きマンの旅路
・着替え
・飲み物、タオル
・人形(ひよこ)
・ぴーたん(ひよこ)とぴいな(ひよこ)のアルバム
尚、水筒の柄もひよこでありタオルの柄もひよこである。
ガタガタと揺られ時には放り出され気を失い、目が覚めると海を走っていた。
「?!?!!!!?!?!」
「お目覚めですかな、坊ちゃん!」
「な、な、な、……!!」
何を言っているのかわからないと思うが、海を走っていた。
本当なんだ、信じてくれ。
キラキラと太陽に輝くエメラルドグリーンの海。それを馬車が掻き分けて進んでいっている。
まるでこれが当たり前と言わんばかりに、進んでいる。
「マーチョ!おま、なんだこれ!」
「ひっはっはっはっは!見てわかりませぬかな、海を走っておるのですぞ!」
「そうじゃない、いや、そうだけどそうじゃなくて!!」
縁にしがみついてマーチョを見る。青い目をキラキラと輝かせてとても楽しそうだ。栗毛の馬…馬?馬かこれ?
気にしていなかったがよく見ると何かおかしい。
栗毛なのだが、その肉体はゴリゴリムキムキの筋肉に覆われている。筋肉こそ正義と言わんばかりに、筋肉だ。
白い歯をむき出しにしたその形相はちょっと…いやかなり怖い。目もどこかを剥いている。何を見ているのかわからない。前を見ろ、前を。
「あ、あの…マーチョ?」
「ひっはーっ!!いいですぞ、その調子ですぞ、魔獣たちよ!」
「おい!今魔獣って言わなかったか?!」
「ひーっはっは!気のせいですな!まさかこの可愛らしい栗毛の馬たちが魔獣などと!」
「いや…うわこっち見た」
ぎょろりと白目の割合が多いくりくり…いや、ぎょろぎょろとした目がこちらを捉え、にたりと笑った気がした。とても怖い。
全く、ハボレイ家はどんだけ常識外れなんだ…ああ、そういえばマーチョに聞いてみようか。
「なあマーチョ!」
「なんですかな?!」
「母様は本当に病気なのか?!」
「病気ですと?!あの奥様が!笑わせないでくださいな坊ちゃん!絶対にありえないですな!!」
はい確定ウソだ。
ということはあれは茶番?茶番なのか?薄々勘付いてはいたけど下手すぎでしょ…ん?ならハンター試験を受けさせる口実にあんなことを?言ってくれれば受けるのに。
「ちなみに坊ちゃん!今回のハンター試験は2日後ですぞ!ついでに2日後といえばぴいな殿の卵が羽化する日ですな!!ひっはっは!残念でしたな坊ちゃん!」
「やだあああああ!!!なんでぇえええ!!!!帰る!!!!!ぼくかえるぅうううう!!!!!ああああああああ!!!!」
無理やり送り出したのはこういう事だったのか!クソっ!ハボレイ家なんて嫌いだっ!!
僕の叫びも虚しく魔獣の引く馬車はどんどん進んでいく。ああ、ああぴいな、ぴーたん。きみたちの愛の結晶はどれほど美しく可愛らしく羽化するのだろう…見られないのが残念で…
「うわああああああん!!!!マーチョぉおお!!!かえる、帰るぞおおお!!!!ぴーたんんんんんんんっっっ!!!!!!!」
「ダメですな、坊ちゃんや!このマーチョめはザバン市に坊ちゃんを送り届けるようにと言われておりますゆえ!」
「クソっ!せめて、せめて生まれる子には「ぴっこちゃん」と名付けろ!」
「奥様がピレーヌと名付けると聞かなかったので無理ですな!!ひっはっは!!」
「はぁあああああ?!?!!!!!」
ぐったりとした僕を連れて馬車は走る。途中嵐に会い、船とぶつかったけど僕は無事にザバン市につきました。
カッポカッポと馬…いや、魔獣が蹄を鳴らしてザバン市を歩く。
異様な光景だろうに、街の人は一瞬ぎょっとするも、ハボレイの家紋を見てすぐに納得していく。
…い、一体ハボレイ家はなにをしたんだ…
そうして魔獣と魔獣を操る御者モドキマーチョといたいけな儚い美少年を乗せた馬車はザバン市中央へとたどり着いた。
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