外道屋のドラゴンボール (天城恭助)
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プロローグ

暇つぶしで始めました。期待しないでください。


私はついに完成させてしまった。

某猫型ロボットが使っていた、あれを。ロマンが詰まったその改変版。

 

「絵本入り込み靴~改め、漫画入り込み靴~」

 

誰もが思い描くであろう、作り物に過ぎない世界へと足を踏み入れることを可能にする夢の様な道具だ。ただ入るだけでなく物語への干渉も可能で、その本自体の内容も変わる。

 

 気まぐれに適当なことを考えていたら奇跡的な何かによって謎のお告げが私に降りてきて、私の力で偶然完成した。

 

 この靴原作と何が違うと言えば、巻が分かれていても問題ないところにある。原作の方では、絵本のページがバラバラに差し替えられるとその通りに滅茶苦茶になったりするけど、これに関しては全く影響がない。我ながら素晴らしい魔改造っぷりだ。

 

 しかし、この道具にも原作同様の危険性が存在する。靴が両方そろっていなくては効力を発揮できない点だ。入ってきて帰れなくなる可能性が存在するのだ。……とは言っても作った本人がいるので、壊れたり無くしたりしても作ればいい話だ。その漫画の中に必要な材料が揃っているとは限らないけど、無くても私が作り出せばいい。何せ私は元とは言え神だったのだから。神というのは少しばかり語弊があるかもしれないけど、悪神と呼ばれていた時期が私にはあったのだ。

 

 誰かを誘うことも考えたが、まだ試作段階なので気が引けた。私が作った以上失敗などありえないが、万が一ということもある。今まで何度もいろんな人を危険な目に合わせたが、大体命の保証ができる程度には保険をかけてきた。悪神などと呼ばれていたり、今でも外道屋の社長として悪行を働くことはあるけど、人死にが出るような事態は避けてきた。悪行と言ってもかわいい、程度が知れた悪戯みたいなものだ。それも元悪神というアイデンティティがあるからやっているだけで別に拘りがあるわけじゃない。

 

 というわけで、一人で楽しもうと思ったのだが、どの作品に入るか迷うな。ランダムで選んでもいいんだけど、どうせなら思いっきり楽しみたい。そうだ、累計発行部数がトップの……ないな。完結していない作品はやめておきたい。ここは、ドラゴンボールにしておこう。

 

「え? ドラゴンボール超? 知らない子ですね」

 

「ドラゴンボール超が終わってないだろ! いい加減にしろ!」という電波を受信したが、そういうことなので気にしない。

 しかし、目的意識なしに入るのもどうかと思うし、ちょっと無理難題に挑戦してみることにしよう。

 

『悪人、悪役、自然死などを除き主要人物から死傷者を出さない』とかどうだろう。……自分で考えておいて難だが、かなり無理がある。死ぬことで誰かのあるいは己の成長に繋がることが割とよくあるこの作品では、その場は大丈夫でも後々やばいことになりかねない。

 

「……でも、やってみよ。おもしろそうだし」

 

そして、早速入ることにした。だが、すぐに私らしくない失敗にちょっと後悔することになった。

 



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無印
01 始まりはブルマの家


「知らない天井だ」

 

 ドラゴンボールの世界に入ったと思ったら寝ていた。……どうやら私は、この世界に入った瞬間に消滅したようである。私は私についての記憶を持つものが存在しなければ、私は存在できない。このドラゴンボールの世界に私を知る人間は誰一人としていないのは当然なわけだが、私のいる世界とこの世界は断絶された世界であると言える。

 

 で、消滅しておいて存在できているのは、私の機械の身体を調べてくれた人間がいたから復活できたわけだ。この世界でそんなことをしようとする人間は限られてくる。

 

 ――ブルマだ。

 

 私は体を起こして、機械の画面に向かって調べ物をしているブルマを発見した。人(私は人ではないけど)は第一印象が大事と言うし、挨拶はしっかりしよう。

 

「こんにちは!」

「うわぁっ!」

 

 大きな声で呼びかけたら随分と驚いたようだ。この世界の住人らしく椅子から滑り落ちていた。

 

「な、なんであんた動けてんのよ!」

「動けるように作ったからね」

「そういうこと聞いてんじゃないの! 電源も何も動かしてないのに機械が動けるわけないでしょ!」

「あぁ、それなら……」

 

 説明は省略。これを見ているみんなは理由わかってるよね?

 

 

 

 

 ブルマには私がどういう存在かを教えた。元は神であること。人の記憶によって存在を保っていること。この機械に憑依していることを話した。

 

「にわかには信じがたいわね」

「信じるか信じないかはあなた次第だけど、事実しか言っていないわ」

「それが事実だとして、なんか白けちゃったわ。随分緻密にできていると思ったのに、そんな非科学的な存在だと思わなかった」

 

 ブルマは、この時には天才とか言われていたらしいし、既に科学者としての意識を持っているのだろう。一応、私も科学者の端くれだ。白けてしまったという気持ちが理解できる。

 

「私と言う存在は非科学的かもしれないけど、この身体自体は科学的なものよ。調べたかったら、どうぞ調べて」

 

 私は笑顔でそう言った。

 

「遠慮しておくわ。あなた人間みたいで解剖しているような気分になりそう。それにただの暇つぶしだったし」

 

 暇つぶしと言われて少しばかりショック。私の世界だったら、機械工学の人間全員が何としてでも解明したがるだろう身体なのに。まぁ、なぜブルマが暇つぶしなんかしていたのか、予想はつく。

 この世界には、本編開始後に入った。それが、カプセルコーポレーションの中と思われる場所にいる。その時のブルマと言えば……ちょっと仕返ししてやろ。暇つぶしと言われて傷ついた私の心を癒すためだ。

 

「あなた恋人はいないの?」

「いるわよ」

 

 うん、知ってる。でも、この質問で機嫌が悪くなっていないあたりヤムチャはまだ浮気をしていなさそうだ。つまり、本当にただの暇つぶしだった。むむむ……

 

「こんなの所にいたのか」

「あ、ヤムチャ」

 

 噂をすれば影が差すというやつね。既に短髪となったヤムチャが出てきた。

 

「こんにちは」

「ど、どうも、こんにちは」

 

 少し挙動不審だ。そして、ヤムチャはこそこそとブルマに私のことを聞きに言った。

 

「誰なんだ、この人?」

「そういえば、名前聞いてなかった。あんたの名前は?」

「私? 私は、神宮寺イーヴィ。よろしく」

 

 ヤムチャとブルマも私に自己紹介してくれた。なんか、ドラゴンボールの世界にやって来たって感じがして気分がいいわ。

 

「ところで、なんで下着姿なんだ」

「ブルマに服を引っぺがされて……」

「誤解を生むようなこと言ってんじゃないわよ! ッ痛!」

 

 私のことを殴って拳を痛めたようだ。

 

「私のこと、機械だってわかってたでしょうに」

「うるさいわね!」

「まぁまぁ。理由はわかったよ。それじゃ、そろそろ俺は練習に戻るよ」

 

 これで今が、第21回天下一武道会の前ということがわかった。私も参加しようか迷うな……

 

「と言っても、武天老師様のところで修業している悟空が来たとしたら勝てるかどうか」

「なら、私があなたの修業を手伝おうか?」

 

 ここでヤムチャを魔改造するのもなかなか面白そうだ。今から鍛えておけばサイバイマンの自爆に耐えられるようにできるかもしれない。

 

「君が? 機械なんだろ?」

 

 嘲笑に近い笑い。彼らしい見た目で判断する悪い癖だ。まずはそれから矯正してやろうか。

 

「私を侮っていると後悔するわよ」

 

 ヤムチャ魔改造ひいては、あっさり死ぬことも割とよくあるこの世界で主要人物を死なせないための戦いがこれから始まるのだ。

 




ヤムチャいじめ、楽しい。詳しいことはカットするつもりだけど。


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02 第21回天下一武道会

 結論から言おう。ヤムチャは強くなった。どれくらいかと言えば、今回の天下一武道会で優勝できるのではないか、というぐらいには強くなったと思う。ただし、今回の天下一武道会には参加できない。何故かと言えば、私が少々いじめすぎた。重りは悟空たちが亀仙人の所でやっていた倍以上。毎日フルマラソン。強くなってきたところで毎日2回以上。至近距離からの200~300キロの野球ボール避けなどなど。特に野球ボール避けで100球ぐらい同時を休む間もなく連続でやったら軽く殺しかけてしまった。時々、銃弾もぶっ放していたので主な原因はそっちかもしれない。私も同じメニューをこなしていたが、私の身体は機械なのでなんの苦痛もない。ボールが当たっても痛くもかゆくもない。

 

「仕方ない。代わりに私が天下一武道会に参加しよう」

「イ、イーヴィさんが!?」

 

 ヤムチャは私のことをさん付けで呼ぶようになった。私のことを軽く恐怖しているようにも感じるけど、そこは気にしない。むしろ、私に対する感情が強いなら良いことだ。

 

「へへっ、修業で怪我して参加できなくなるなんてだせぇ」

 

 ウーロンが軽く毒を吐く。同じところで暮らしていれば、当然会うこともある。スケベであるが、悪いやつではない。豚だが。一回、私にちょっかい出してきたときは灸をすえてやった。それ以降は、おとなしいものだ。

 

「イーヴィさんの修業をお前もやってみるか? ウーロン」

「勘弁してくれよ!」

「確かに、仕方ない気もするけど……やっぱり情けないわね」

「もう許してくれよ」

 

 ヤムチャの姿は、松葉杖をついた半ミイラ君状態だ。間抜けに見える。多分、これが最初で最後の優勝できるチャンスだったのに……かわいそうなヤムチャ。まぁ、私のせいなんだけどね。

 

「それじゃ、私は予選に行ってくるよ」

 

 

 

 予選会場である競武館に入ると視線が集まっているのを感じる。あぁ、私って美人だから。こんなところに女が来るなんて珍しいだろうし。でも確か、ランファンとか言う女も出てた気がするけどお色気に頼るただの下品な女なので眼中になし。

 

 予選は楽勝だった。指で突けば勝手に倒れてくれる。実力差がそれだけある。武道会行きを決めた後、悟空を探しに行った。そして、丁度武道会行きを確定させたところを見つけた。

 

「やぁ、君が悟空だね。武道会出場おめでとう」

「おめぇ、確か……あれ? どっかで見たような気がするんだけどなぁ。それにどうしてオラの名を?」

「ブルマから聞いたのよ」

「ブルマの知り合いかぁ。おめぇも武道会に出るんか?」

「そうよ。こう見えて私、強いから」

「へぇ~。すげぇんだな」

 

 少しは私に興味を持ってくれたようだ。

 

「そうそう。ブルマやヤムチャが来てるから挨拶しに行ったら?」

「そっか、じゃあ行ってくる!」

 

 武道会出場を決めたクリリンと共に観客席へと走っていった。

 

 

 

 本戦は、原作と変わらずヤムチャの代わりに私が入る形になった。つまり、一回戦の私の相手は亀仙人もといジャッキー・チュンなわけだ。わざと負けてもいいが……私はヤムチャのように噛ませ犬ではないので、手加減していい戦いを演出しつつ勝つことにしよう。下手をすると亀仙人の武道家としてのプライドをズタズタにしてしまう可能性があるが……スケベジジイだし、天津飯の時も若い者に追い越されることを善しとしていたし、問題ないだろう。

 




哀れ、ヤムチャ


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03 ジャッキー・チュン 対 神宮寺イーヴィ

イーヴィの力は人造人間16号並みにあるのでこの展開は仕方ないのです。でも、イーヴィのやることはZの彼らにはできない手加減だと思います。まる。


 第一試合のクリリン対バクテリアは原作通り、鼻がないというギャグ漫画的なノリでクリリンが勝った。当時はまだ完璧にバトルマンガに移行していなかったからだろうなぁとしみじみ思う。

 そして、第二試合。とうとうと言うか、早速ジャッキー・チュンと闘うことになった。

 審判の第二試合開始の合図と共に試合の鐘がなる。

 

「ほっほっほっ、お前さんみたいなプリチーなギャル対戦できるとは嬉しいのう」

「あなたほどの武道家にそう言っていただけて光栄だわ」

 

 我ながら本心にもないことを言う。

 

「お主……」

 

 ジャッキーの顔つきがシリアスになる。

 

「後でぱいぱいつつかせてくれんかの?」

 

 会場でその言葉を聞いていた私を除いた全員がずっこけた。

 

「ふふっ、私に勝てたらいいわよ」

「本当か!? それじゃ、ちょっと本気を出そうかのう」

「ちょっとと言わず、全力で来るといいわっ!」

 

 台詞と同時にジャッキーに突進を仕掛けた。

 

「速いっ!?」

 

 そのまま頭突きを食らわせる。手加減しているので、のけぞる程度だったが。

 

『おおっと、イーヴィ選手! 頭突きによる先制攻撃だ!』

 

「痛つ……驚いたのう。お主からは何も感じられんのにそこまでの力を秘めているとは」

 

 内心、全力を出さなければやばいと感じているはずだ。未だギャグマンガ的なノリ故に壮大に変なことをやらかされる可能性があるが、私のシリアス度の方がギャグに勝る!

 

「それではさわやかな風をプレゼントしてあげちゃおう」

 

 腕を振ることによって発生する風圧で私を場外に押し出す気だ。ならば、私も同じだけの力で相殺する。

 

『どういうことでしょう!? 何故か両選手、素振りをしました!』

『あの老人が素振りしたことによって生まれた風圧をイーヴィさんは同じ様にして相殺したんだ!』

 

 ヤムチャが解説してくれた。ふむ、彼なら解説王になれるのではなかろうか。

 

「そういうことするなら、私もプレゼントするわ。風ではなく弾だけど」

 

 私は指弾の様に空気を弾いた。幽遊○書の戸〇呂弟が使っていたあれである。

 ジャッキーの顎にクリーンヒットした。その後も連続で撃つ。

 

『これまたどういうことでしょう! イーヴィ選手が何もしていないのに、ジャッキー選手にダメージを食らっています!』

『イーヴィさんはさっきと同じ様に指で空気の弾を弾き出しているんだ!』

 

 弾が後ろの壁に当たった。避けられた!? でも、姿は……これは、残像拳!

 

「ほいっ!」

 

 頭上から攻撃を仕掛けてきたジャッキーに対し私は同じく残像拳で避けた。

 

「何っ!?」

 

 横合いから殴りつけた。少し力を込めたので本館の前の壁に激突した。壁も崩れて結構ダメージが入ったと思う。

 

『ジャッキー選手、さすがにこれにはダウンだ!』

 

 ジャッキーはすぐに瓦礫の中から立ち上がった。

 

「お主、これほどの力を一体どこで……!?」

「独学……かな」

 

 そこそこいい試合になったと思うし、そろそろ決着を付けようかな。

 

「わしが思っていたよりもずっとすごいのう。ならば、本当に全力を出さなければならんな」

 

 そして、男の子なら誰もが使ってみたいあの技の構えをした。

 

「か~め~……」

 

 それで私が倒されることはないとわかっていても、ドキドキする。

 

「は~め~……」

 

 正直、この技を生で見れるのなら負けてもいいかなと思えるぐらいにはワクワクするのだ。

 

「波っ―――――――!!!!」

 

 だが、これから見る機会何度でもあるだろうし食らってやるつもりはない。手刀で難なく上に逸らした。

 

「なんじゃと!?」

 

 悟空たちや観客はかめはめ波に驚き、私がそれを弾いたことに驚いた。

 

「そんな攻撃で倒せると思った? 甘ぇよ……が、その甘さ嫌いじゃあないぜ」

 

 某過負荷さんの台詞って使ってみたかったんだよね。それにブウ編のサタンぐらいの知名度と人気度があれば『大嘘憑き』の再現もできるんじゃないかと皮算用してる。

 

「言ってくれるのう」

「私の言う全力は殺すつもりでって意味よ。そんな威力じゃ、私にダメージを負わせることなんて絶対に無理」

「然らば……まいった」

 

 そうなっちゃったか……できれば劇的勝利が望ましかったんだけど。

 

『な、なんということでしょう! ジャッキー選手、降参だぁ!』

 

「ピチピチギャルにそんなことはできん。それにお主は悟空たちより強いようだ」

「でしょうね。まだ1パーセントも本気だしてないし」

「な、なんと!? それほどとは……」

 

 安心させる……と言うのもおかしいが、一言言っておこう。

 

「あなたの目的は知っていますから、心配しないでください。亀仙人さん」

 

 面食らったような表情を浮かべるジャッキー・チュン。

 戦いとしては、面白味もなんもなかったが元祖かめはめ波が見れただけでも良かった。

 




イーヴィさんは、ドラゴンボールの大ファンなのです。


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04 クリリン 対 神宮寺イーヴィ

これも本当に仕方ないことなんです。力関係的にこうならざるをえなかったんです。


第3、第4試合は原作通りの展開で勝負がついた。まぁ、私が手を加えていないので当然と言えば当然だ。バタフライエフェクトもありうるが、この世界がそんなに繊細だとは思えない。いや、バタフライエフェクトってそういうことじゃないけど、そういう理屈が通りそうな気がする。

 インタビューも原作通り……ということはなく、私も呼ばれた。女でありながら圧倒的な力でかめはめ波をも使える武術の達人を倒したのだから気にならない方が変だろう。

 クリリンがどこの道場で習ったか聞かれ、武天老師だと答え観客が驚く。当然、私にも聞かれたがどこで武術をと聞かれれば我流だと無難に答えておいた。だが、私はこの世界で注目されておきたい。せめてこの世界でぐらいやんちゃしたい。というわけで審判からマイクを奪う。

 

「あっ、ちょっと!」

『どうも~! イーヴィちゃんでぇ~す!』

 

 野太い声援が聞こえる。なんかキモイな……

 

『私、正直ですね……負ける気がしないんです。私は最強なんだと確信しています』

 

 野太い声援が(ry

 

『しかも、天才です。さらに歌って踊れます。なんでもできちゃうんです』

 

 あっ、自分で言っててうざいと思う人いそう。

 

『というわけで一曲聞いてください』

 

 アカペラでCHA-LA HEAD-CHA-LA歌ったら結構盛り上がった。うん、アイドル路線も悪くないかも。審判にマイクを返す。

 

『だっ、第五試合はじめーっ!』

 

「はーーーーっ!」

 

 連続でパンチとキックを繰り出してきた。この程度、難なく避けられるけど。速度は常人には見えないレベルだろうが。

 

「あ、当たらない……」

「もう終わり? じゃ、ちょっと反撃」

 

 2パーセントぐらい本気の速度を出して腹に五回ほどパンチを撃った。

 

「がっ、がはっ」

 

『ダ、ダウーン! い、一体何が起こったのでしょう!? イーヴィ選手が消えて、クリリン選手の目の前に現れたと思ったらクリリン選手が倒れていました』

 

「ほら、解説はいいからカウント、カウント」

 

『は、はい。ワン……ツー……』

 

 数えるだけ無駄なんだけど。言っても仕方ない。

 

「イーヴィさんは、あの一瞬で距離を詰めて腹に五発もパンチを撃っていたんだ!」

 

 悟空にも全く見えなかったはずだが、ヤムチャにはしっかり見えていたようだ。うむ、修業の成果が出ているな。試合で発揮されないことが悲しい限りだけど。まずい、少し吹き出しそうになった。

 

「おめぇ、ホントにすげぇなぁ! ヤムチャが修業つけてもらった人だって言ってたけど、クリリンをあんなにあっさり倒しちまうなんて! オラ、全く見えなかったぞ!」

「君もあれぐらい簡単にできるようになるさ」

 

 だって、サイヤ人だし。言わないけど。

 




1%とか2%とか戦闘力のこと全く考えてないので、文句はなしでお願いします。


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05 孫悟空 対 神宮寺イーヴィ

力関係的に(ry


 第六試合も当然ながら原作通りである。ナムへのフォローも亀仙人がしっかり果たした。そして、ようやく悟空との対決だ。この時期の悟空じゃちょっとお話にならないけど、この物語の主人公としての片鱗は感じられるはず。

 武舞台に上がると悟空が嬉しそうにしているのが見える。強いやつと闘える、それが何より嬉しいという悟空らしい感情だ。サイヤ人だからこそかもしれないけど。ただ、私が今の悟空よりちょっと強いとかそういう次元じゃないことがちょっと残念。20年もすれば今の私より圧倒的に強いんだけどなぁ。

 

『ではただいまより天下一武道会決勝戦をおこないまーーす!!』

 

 悟空が構えるので、私もそれっぽく構えておく。

 

『決勝戦、はじめーっ!』

 

「……私、両手を使わないわ」

 

 宇宙の帝王さんもやっていたやつ。サービス期間があるらしい。

 

「両手を? 随分と自信あるんだな」

「手加減しないと勝負にならないからね」

「それはどうかな?」

 

 悟空から攻撃を仕掛けてきた。

 

「てやーっ!」

 

 私からすればまだまだ遅い。上に避ける。悟空もジャンプをして追ってきた。飛び蹴りか……でも、これは残像だ。後ろから蹴りを入れる。

 

「あれ、残像?」

「上だぁ!」

 

 両腕が振り降ろされたが、何とか足でガードした。その勢いのまま背中から着地することになってしまったが。痛くも痒くもないが一本取られた。私が少し間抜けだっただけと言うのもあるが……なんか……こう、嬉しいな。

 

『イーヴィ選手、空中から叩き落されたにもかかわらず笑っている! 余裕の表れでしょうか!?』

 

 首跳ね起きで立ち上がる。

 

「全く効いてねぇな」

「まぁね」

「すっげぇ、鍛えたんだな」

「あ、あぁ、うん。そうだね」

 

 なんか純粋に尊敬しているような視線で見ているけど、私の身体機械だからそういうんじゃないんだよなぁ……少し心が痛む。悟空が純粋な分、痛い。

 

「それじゃ、今度はこっちから行くよ」

 

 連続で蹴りを入れる、悟空も負けじとパンチをはなってくるが、私には当たらない。身長差もあって、私にパンチを当てづらそうだ。パンチとキックの応酬になっているが、私が少しずつ速度を上げていくことで、形勢は私の方に傾く。

 

「そこだっ!」

 

 悟空の胴体に蹴りがクリーンヒットした。

 

「ぐえっ!」

 

 結構、効いたはず。手加減しているとはいえ、直撃だからね。

 

「痛ちち……!!」

 

 反応がそんなに効いてなさそうなのは気のせいかな……

 

「今度はオラの攻撃だ」

 

 悟空はかめはめ波の構えをした。

 

「君のかめはめ波じゃ、私には効かないよ」

「へへ、そうでもねぇと思うぞ」

 

 何をするつもりだ?

 

「か~め~は~め~……」

 

 悟空はそのタイミングで後ろを向いた。

 

「波―っ!」

 

 そして、その勢いで私に飛び込んできた。うぉっ、マジか!

 

「くらえ!」

 

 とはいえ、ノロい。胴体を掴んで、そのままバックドロップを決めた。

 

「痛ちちちち……両手使わねぇんじゃなかったのかよ」

「あっ、ごめん忘れてた」

 

 しかし、こんな危険な技食らって「痛ちちち」で済むこの子はタフすぎる。まぁ、サイヤ人だし仕方ないか。後のことを考えると、星を吹っ飛ばすような奴らの攻撃にも耐えるのだからこれぐらい当然ともいえる。

 そろそろ潮時かな。決着をつけてもいいだろう。その前に悟空が今後大猿化するのも面倒だし、月を破壊しておくか。力を見せつけるという演出でやっておこう。

 

「君に実力の差を思い知らせてあげるよ。あの月を見てごらん」

「月?」

 

 悟空が変身し始めてしまった。服が破ける前に破壊せな。ピッてやったらボカーンって壊れた。衛星だから綺麗な花火にはならん。

 

「な、なんだ?」

 

 観客席のブルマたちが悟空の変化が収まったことに安堵してる。私の言葉に相当焦っていたようにも見えた。理性を失って暴れるんだから当然か。審判に秋の風物詩がなんだの言われたけど気にしない。そのうち、神様が再生させるでしょ。

 

「というわけで、わかったかな? 片手間で月が破壊できちゃうだけの力が私にはある」

「そんなこと言ってもまだ勝負はついてねぇぞ」

 

 ま、降参するなんて欠片も思っちゃいない。それじゃ、最後はジャッキー・チュンと同じ様な感じで決めるとしよう。

 

「はぁー!」

「てやーっ!」

 

 走って互いにジャンプした。そして、私と悟空は同じ様に蹴りを繰り出す。当然、それは私にも悟空にも当たる。が、喰らうダメージには天と地ほどの差がある。

 私はダウンすることはないが、悟空はそのまま倒れた。立ち上がろうとするも、力尽きた。10カウントを受け、私の勝利が決まった。

 

『優勝です! イーヴィ選手の優勝です!』

 

 さて、これからどうするかな。

 




接戦に見せようとするのはイーヴィさんは偏に目立ちたいからです。イーヴィさんは手加減が上手ね。字数稼ぎとも言う。


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06 レッドリボン軍編開始

 優勝賞金50万ゼニーを貰った。だが、悟空たちにご飯を奢ったので消し飛んだ。主に悟空のせいで。わかりきっていたので気にしてない。……気にしてないったら気にしてない。

 

 帰りの車で悟空は修業がてらドラゴンボール、というか四星球を探しに行くと言い、すぐに出発を決めた。私は、付いて行こうか迷ったのだが……付いて行かないことにした。どうせ、すぐにドラゴンレーダーを壊して西の都に来る。その時に付いて行けば、ウパの父であるボラの死を回避することは可能だろう。

 悟空が来るまでの間は私の身体のメンテナンスかな。

 

 ヤムチャにはモテ期がやってきて、私の言っていた修業は怠けるようになっていた。私はそのことに関して特に言うつもりはない。彼が死ぬかもしれない時期はまだまだ先だし、急いでことに当たる必要はないだろう。それにブルマを放置してくれないと、ベジータとくっついてくれない可能性が出てきてしまう。私の目的としてはそこにこだわる必要はないけど、原作通りの方が安心できる。

 

 数日で悟空はカプセルコーポレーションにやってきた。私は研究室にずっといたので、ブルマと共にすれ違うことなく再会できた。ブルマは学校をさぼって家に帰ってきたわけだが、私は大人なので学校には行ってない。この身体は数年前に完成したものだけど、私という意識は2000年以上生きているから今更教わることなんかない。というか、ちょっと前まで教師やっていたし。

 ブルマはミクロバンドを使って、悟空と一緒に四星球を探すことにしたようだ。

 

「ちょっと待って、私も行くわ」

「イーヴィも来るんか? でも、筋斗雲に乗れるんか?」

「大丈夫、私は自前で飛べるから」

 

 実際の所、私が筋斗雲に乗れるかはわからない。この身体は機械なわけだし。生身の身体を顕現できたとしても、元とはいえ悪神だから乗れる気もしない。どうせ、悟空さえも使う機会の減る道具だからそんな気にしなくてもいい気がするけど。

 

 紆余曲折を経て海底にあるドラゴンボールを探すため、亀仙人の元へ潜水艦を取りに行った。これは、ブルマが持ってくるカプセルをブリーフ博士のと間違えたためなのだが、知っておいて放置した。特に理由はない。強いて言うなら原作通りだから。

 

 無事、潜水艦を借りクリリンも一緒に海底へと向かうことになった。海底洞窟を見つけたが、レッドリボン軍に追われることになる。私は知ってたので特に慌てることはない。

 

「どうして、あんたはそんなに冷静なのよ!」

「これぐらいの方が冒険らしくていいじゃない」

 

 クリリンとブルマに呆れられた。心外な。

 

 海底洞窟の奥に進むと暗くなったが、悟空がすぐに電燈のスイッチを見つけて押した。その後悟空が骸骨を拾って、ブルマを脅かして遊ぶと、その骸骨によってクリリンはこの海底洞窟が海賊の宝が隠してある場所だと気づいた。そして、踏むと槍が飛んでくるトラップにクリリンが引っかかりそうになった。悟空とクリリンは飛んで飛び越え、ブルマは私が抱えて飛んで運んだ。

 

 奥の広い部屋に出ると、ロボットが私たちを襲ってきた。めんどいから腹パンの一撃で破壊した。私はロボットを破壊したときの爆発に巻き込まれたが、なんてことはない。

 

「す、すげぇ~!」

「この程度、楽勝よ」

「ドラゴンボールはこの奥よ」

 

 さっきのショックで洞窟が崩れはじめた。急いで奥に向かうと井戸にたどり着いた。

 

「そういえば、あなた水は大丈夫なの?」

「その程度で壊れるほど、やわじゃないわ」

 

 ブルマは、私が機械と知っているからこその反応だろうが、悟空とクリリンは疑問符が頭に浮かんでいた。だが、説明している暇はない。洞窟が崩れそうなので急いで先に進んだ。奥には宝箱があり、クリリンとブルマが開けに行った。

 

「そこの水たまりの中にドラゴンボールがあるから、悟空探してきて」

「あぁ、わかった」

 

 悟空が飛び込んだところでブルー将軍がやってきた。

 

「ほっほっほっ…ざんねんながらその宝はレッドリボン軍がいただくわよ」

 

 ちょっと超能力を使える雑魚だからさっさと倒しておこう。ブルマが奇行に走ったがそれはどうでもいい。ブルーはオカマだから意味ないし。

 

「レッドリボンのオカマさん。あなたにはご退場願うわ」

「随分と自信があるようね」

「まぁね」

 

 ブルー将軍如き、ワンパンで終わりだった。殺さない程度には力を抜いたけど、別に殺してもよかったかもしれない。ここも崩れ始めた。

 

「見つけたぞー!」

 

 悟空も戻ってきたし、急いで脱出を試みた。途中で、潜水艇を発見して乗り込んだ。エンジンは掛かり、そのまま脱出できると思われたが、案の定途中で燃料が切れた。

 

「悟空、かめはめ波よ」

「そうかっ! 三人共息をとめろ!!」

 

 悟空がかめはめ波を撃つことによりその推進力で洞窟を脱出し、海から飛び出すことに成功した。……あのネズミ死んじゃったかな? ま、いいか(悟空風クズ思考)。

 




原作で悟空が助けたネズミまで助けようとは思いません。どのネズミかもわからないし。


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07 ブルー将軍死亡回避

タイトル通り。ただし、アラレちゃんは出ません。


 無事海底洞窟を脱出した後、カメハウスへと戻った。ブルマは特大ダイヤを潜水艦の弁償にと亀仙人に渡していた。私もちょっと欲しかった。私の研究費みんなカプセルコーポレーションに肩代わりしてもらっているから、申し訳ないんだよね。

 ランチさんが、くしゃみで性格が入れ替わっておりダイヤを奪おうとしたが、私が気絶させておいた。首をトンッてやって。一度やってみたかったんだよね、これ。

 その後いつの間にかブルー将軍が、超能力を使って私たちを縄で縛った。だが、私には無意味だ。力が入らないように縛ってあると言っても、私は機械なので人間の構造とは別物だ。瞬時に引きちぎった。

 

「あの時は、手加減してあげたのに余程死にたいようね」

 

 ブルー将軍を生かしておく理由は正直、ない。

 

「あれは油断しただけよ! 今度こそ」

 

 ブルー将軍の目が光る。超能力を使ったのだろう。だが、圧倒的な力の差を持つ私には効かない。そもそも機械だから効かない。

 

「なんで、私の超能力が効かないのよ!」

「弱いからよ」

「なんですってーっ!」

 

 ウザいので腹パンして、倒す。

 殺そうかと思ったけど、悟空も私自身も殺すこと自体は好きじゃない。なので、軽い生き地獄を味合わせることにする。

 マウントポジションを取り、タコ殴りにした。ブルー将軍の顔が原型を留めないレベルにしておいた。自分の顔が好きというか、ナルシストというか、とにかく顔に自信があるようなので二度と世間に顔向けできないぐらいに変形させておいた。

 

「ふぅ、スッキリした」

「む、むごい……」

「殺されないだけ、ありがたく思ってよね」

 

 悟空たちの縄をほどいた。

 

「お主、本当に強いのう」

「本当ですよ。イーヴィさんどうしてそんなに強いんですか」

「オラも気になるぞ」

「ま、ある意味当然かもしれないけどね」

「ブルマさん知っているんですか!?」

 

 ブルマには私のことを教えているので、知っていて当然だ。

 

「口止めされてるわけじゃないけど、言ってもいいの?」

「私から言うから、必要ないわ。実は私ロボットなの」

 

 面食らって、皆黙る。

 

「そ、そんな冗談やめてくださいよ」

 

 クリリンらしい答えだ。

 

「冗談じゃないわ。証拠を見せてあげる」

 

 首の接続部分をいじり、アラレちゃんの如く首を外す。ブルマを除いてみな一様に驚く。

 

「そ、そんなことして痛くねぇんか……!?」

「全然。というか、ロボットだから痛覚なんてないって」

「そーなんか……」

 

 私は首を接着しなおす。昔、一度取れたことあるから結構しっかりくっつけているのよね。めんどくさい……

 

「いやはや、驚きじゃわい……人でないならその強さも納得じゃ。どちらにしても人智を超えている気がするがの」

「もしかして、ブルマさんが作ったんですか!?」

「私はこんなの作らないわよ」

「……失礼な。作ったのは私自身よ」

 

 みんな、疑問符を浮かべている。悟空に至っては理解できていないことを理解できてなさそうだ。そりゃ、自分で自分を作ったなんて意味不明か。

 

「一体、どういう意味なんじゃ?」

「どういう意味も何もそのまんまの意味。私という存在は、意識だけで存在できるもの……とでもいうのかしら。説明するのがめんどくさいからブルマから聞いて」

「ちょ、なんで私がっ!?」

 

 私は、めんどくさくなったのでブルマに投げた。さっさと、悟空と一緒にボール探しに行こう。

 

「ほら、悟空。行こう!」

「どこに行くんだ?」

「ドラゴンボールを探しによ!」

「わかった! 筋斗雲―!」

 

 私は飛び去り、悟空は訳も分からず私についてきてくれた。

 さて、いよいよ主要人物……というには微妙な線な気がするが、初めて味方?で明確な死者となる予定の人物を助けに行こう。

 




この後、ブルー将軍は警察に引き渡されました。……なんかブルー将軍が死亡を回避したよ。


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08 聖地カリン

桃白白登場


 レーダーを頼りに西へ――カリン塔の方へと向かう私と悟空。これから死人が出るかもしれないから少し気を引き締めてかかろう。

 

「なぁ、イーヴィ」

「何?」

「イーヴィってロボットなのになんか変だな」

 

 恐らく、シルバー隊が持っていたロボットを基準に考えているのだろう。あんなのと一緒にされるのは腹が立つが、悟空だしそんなデリカシーは期待していない。

 

「身体はロボットだけど、中身が違うからね」

「どういうことだ?」

 

 そういわれると説明が難しいな。

 

「人造人間って知ってる?」

「あぁ、ハッチャンだな」

 

 私が知ってる前提かな? まぁ、知ってるけど。

 

「そのハッチャンと似たようなものかな」

「そっかぁ、ハッチャンと似たようなものかぁ。やっぱ、よくわかんねーや」

 

 ですよねー。

 細長い何かが見えてきた。あれが、カリン塔かな。近づいたら飛行機も飛んでいる。多分、ウパが捕まってるな。

 

「あれ? なんだなんだ?」

「あれはレッドリボン軍の飛行機だね」

「なんだってーっ!」

 

 飛行機に近づき、操縦士イエロー大佐をぶん殴った。ウパはその拍子に落ちてしまったが、悟空は筋斗雲で救った。

 

 ウパの父親から感謝され、そして悟空がドラゴンボールを持っていることに気づいた。それが四星球だとわかると大喜びしていた。ドラゴンボールの説明は私がしておいた。

 

「オラは願いを叶える気はないけどな」

 

 悟空がカリン塔のことが気になったようで、ウパの父親に聞いた。カリン塔の言い伝えを聞かされたわけだが、私は既に知ってる。

 

「永いあいだそう語り継がれてきたが迷信かもしれんぞ……」

「いや、ホントだよ。私を倒したいなら、ここぐらい登ってみせな、悟空」

「それならオラ登ってみようかな……」

「父上、あれはなに!? なにか飛んでくるよ!!」

 

 どうやら桃白白が来たようだ……

 

「こっちにくるぞっ!」

「危ない!」

 

 全員が、桃白白が乗っていた柱を避けた。

 

「アロ~~~ハ~~」

「な、何者だ!?」

「世界一の殺し屋、桃白白!」

 

 ウパの父親が桃白白の目的を聞くとレッドリボン軍の依頼で悟空を殺しに来たことを話した。

 

「ち、父上。あのおにいさんをたすけてあげて!」

「その少年はわたしの息子の命を救ってくれた。このまま黙って立ち去らぬのなら、わたしが相手になるぞ」

 

 悟空は自分が闘うというが、この聖地を守るのが私の役目だとウパの父親は引かなかった。仕方ないけど、実力差がわかってないんだよな。でも、悟空を追い込んでほしくもあるし……放置する。

 ウパの父親は槍で攻撃を仕掛けたが、桃白白に難なく受け止められ上に投げられた。

 

「槍をかえそうか!」

 

 ヤリは無慈悲にウパの父親を貫こうと飛ぶ

 

「やばいっ!! 筋斗雲!!」

「父上―っ!!」

「殺らせないっ!」

 

 月を爆破したときと同じ要領で槍を爆破した。

 

「何ぃ!?」

「しまった! 強くやり過ぎた!」

「ち、父上―!!」

 

 爆風によって遠くに飛ばされるウパの父親。私は飛ばされた方向へと走る。そのまま落っこちたら死んじゃう。というか、あの爆風で死んでなきゃいいけど。

 

「悟空! そいつを頼む!」

「わかった!」

 

 勝てないことは知っているけど、多分死なないはず。

 

 

 落下地点に到達して、キャッチ成功。よかった、生きてる……ちょっと、死にかけているけど。ま、まぁ死ぬよりマシだよね。

 ウパが私に追いついた。

 

「父上は無事なの!?」

「ひどい怪我だけど、無事だよ。ごめん、私がうまく加減できなかったら」

「いいよ。お姉さんのおかげで父上が死なずに済んだから……」

 

 あぁ、ええ子や……

 とりあえず、死亡回避成功。大怪我させたけど、死んでないからセーフ。




やっちゃったぜ。殺ってはいない。


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09 カリン塔

 ウパとボラを連れて元の場所に戻ると悟空が倒れていた。

 

「悟空さん!」

 

 原作通りドラゴンボールが持ってかれて、懐に入れた四星球で助かっていた。

 

「さて、実力不足がわかったことだしカリン塔に登ろうか。その四星球を狙って桃白白が戻って来るだろうしね」

「よし! オラ登ってみる!」

「私も付き添うわ。ウパはお父さんを看病してて」

「わかりました! 頑張ってください!」

 

 怪我を治してくれるものが、頂上にはあるしね。私の用はどちらかと言えば仙豆にある。

 

 

 悟空と私はさっさとカリン塔に登った。だが、悟空はペースが落ちていった。

 

「私、先に行くよ」

「あぁ、先に行っててくれ」

 

 まぁ、飛んで行ってもいいんだけど初回ぐらいちゃんと登るさ。...さて、頂上に着いた。

 

「カリン様~仙豆ください!」

 

 階段を昇った先に二足歩行の猫、仙猫様であるカリン様がいた。

 

「お主、登るのが無茶苦茶速いのう。そして、超聖水ではなく仙豆を求めてやってくるとはの」

 

 価値的には、仙豆の方が兆倍有益だからね。

 

「私に超聖水は必要ないからね。それより大怪我させちゃった人がいるから治してあげたいの」

「……お主、心が読めんが何者じゃ?」

「元悪神です!」

 

 横ピースも決めて言ってみた。

 カリン様がポカーンってしてる。絵にかいたような、コレ→( ゚д゚)だった。目は細目のままだけど。

 

「ま、まぁいいじゃろう。仙豆をくれてやる」

「ありがとうカリン様」

 

 放り投げられた豆をキャッチして懐にしまう。

 

「それじゃね」

「何をっ!?」

 

 私は飛び降りようとした所で止まる。

 

「この後、登ってくる悟空という少年のことをよろしくお願いしますね、カリン様。さようなら」

 

 私は飛び降りた。

 

「おい!? あやつ、武空術が使えたのか……」

 

 

 降りている途中で悟空を見つけた。

 

「悟空頑張ってー!」

「おう!」

 

 瞬時にすれ違ったので、会話を交わすこともできないが必要はないでしょ。

 そんで、地上に到着っと。

 

「イーヴィさん! 頂上までいけたの!?」

「行ったよ。超聖水は飲んでないけど」

「どうして?」

「私の目的はこっち」

 

 私は仙豆を取り出した。

 

「これは?」

「仙豆って言うんだ。これにはびっくりすると思うよ。君のお父さんは?」

「こっちだよ」

 

 変わらず瀕死の重傷だ。数時間しかたってないのだから当然だが。

 

「これ、食べて」

 

 意識が朦朧としているようだが、口を開けてくれた。仙豆を口の中に入れる。そして、飲み込んだ瞬間に完全に怪我が治った。

 

「よかった。死なれちゃ寝覚めが悪いからね」

 

 というか、私の目標が頓挫する

 

「わたしは確か、桃白白に槍で殺されそうになって……」

「私がそれを爆破して防いだんだけど、威力が強すぎて大怪我負わせちゃったんだ。ごめんね」

「いや、あなたは命の恩人だ。むしろ礼を言わせてくれ。ありがとう」

「父上ーっ! よかったぁ!」

 

 うむうむ。親子愛はいいものだなぁ。私にはそういうのいないし。

 

「そういえば、あの少年は?」

「悟空なら、カリン塔を登っているよ。私は登って降りてきた」

「この短時間でか!? 君はすごいな」

「私は(今のところ)世界最強だからね」

 

 言ってないけど、今のところってところが大事。どうせ、20年も経てば宇宙の帝王がかわいいレベルになって、太陽系が簡単に破壊できちゃうような奴が出てくるんだから。




仙豆ってチートアイテムですよね。


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10 レッドリボン軍編終幕

 3日後、桃白白がやってきた。ウパとウパの父親には隠れるように言ってある。戦いに巻き込まれるようなことはないだろう。

 

「やぁ、桃白白」

「女、例のボールがひとつここに残っていたはずだ。だせ」

「ドラゴンボールなら、悟空が持っているわ」

「悟空? あの小僧、生きていたのか……!? なら、居場所を言うんだな」

「悟空ならそろそろ戻って来るわよ。上からね」

「何?」

 

 悟空が筋斗雲に乗ってここまで降りてきた。

 

「塔に登って隠れていたか……それにしても貴様、この桃白白のどどん波をくらってよく生きていられたな」

「懐に入れてたドラゴンボールのおかげで助かったんだい!」

 

 まぁ、原作通りの会話だ。

 

「悟空、私は手出ししないわ。思いっきりやっつけてやりなさい」

「おう!」

「馬鹿め。この桃白白様に勝てるわけなかろう」

 

 その後は当然の成り行きで、桃白白はボコボコにやられたら後、どどん波を撃つが悟空に受け止められ、カプセルで曲刀を出してきた。あ、そういえば如意棒どこいった? 手出しはしないといったが、ちょっと分が悪そうだ。仕方ない。

 

「破っ!」

 

 手刀で刀を叩き割ってやった。

 

「何ぃ⁉ 貴様! 手出ししないんじゃなかったのか!」

「あんたがせこい手使うからそれを阻止しただけよ。あんたが素手なら私は何もしないよ」

「すまねぇ、イーヴィ」

「何、謝るのはこっちの方だよ。戦いの邪魔をして悪かったね」

 

 ちょっと原作と変化してしまったが、その後は原作通り悟空がわざと滅多打ちにされ手の内を読んだ後、桃白白を一方的に叩きのめした。

 

「すっ、すまん私が悪かった!! 許してくれ!!」

 

 桃白白は土下座をした。

 

「頼む。この通りだっ! もう二度と悪いことはしない!!」

 

 それが嘘だということはわかりきっているが、自業自得な目に遭うことが分かっているので放置した。

 

「そ、そんなこと言ったってなぁ……」

「ふはははっ!!! ひっかかったな!!」

 

 桃白白は飛び上がり爆弾を投げ捨てた。

 

「さらばだ!! 死ねーっ!」

 

 悟空は爆弾が地面に落ちる前に桃白白の方へと蹴り上げた。

 

「へ!? いや……」

 

 大爆発を起こし、こちらまで爆風が来る。私は平然とその様子を眺めた。

 

「たーまやー」

 

 どうせ死んでないし、不謹慎でもなんでもない。

 

「やったーっ! 勝ったぞ!」

「よし、このままレッドリボン軍を倒しに行こう」

「そうだな。あんな悪さする連中、ほっとけねぇ」

 

 隠れていたウパ達が、出てきた。

 

「お前たち、もう行ってしまうのか?」

「あぁ、オラたちレッドリボン軍を放ってはおけねぇ」

「そうか、健闘を祈っている」

「ありがとう! 悟空さん、イーヴィさん!」

 

 ドラゴンレーダーを取り出し、場所を確認する。

 

「悟空、ドラゴンボールのある場所にレッドリボンの基地がある。一緒に行こう」

「あぁ! 筋斗雲―!」

 

 

 まっすぐレッドリボン軍の方へと向かっているが、どうせ悟空一人でレッドリボン軍を壊滅させられる。私はレッドリボン軍が回収し損ねたドラゴンボールの方を回収しに行こう。本来ならこっちのレーダーを奪って既に見つけてたところだけど、まだできてないみたいだからね。

 

「悟空。今、まっすぐレッドリボンの基地に向かっているけど、ドラゴンボールがある場所にもレッドリボンの兵士がいるはずだ。そこの奴らをやっつけてくるわ」

「わかった。オラは基地にいる奴らを倒せばいいんだな?」

「そうよ」

 

 分かれて、私はドラゴンボールを回収しに行った。回収して戻ってきたころにはレッドリボン軍は壊滅しているだろう。さてさて、ボールの近辺まで来たぞっと。

 

「なんだ、貴様は!?」

 

 やっぱりレッドリボンの兵士が居たけど、無視無視。

 

「よし、みーっけ」

「それはドラゴンボール!」

「おい、女。死にたくなきゃ、そのボールを寄越しな」

「ふぅ、一体誰に向かって口を聞いているのかしらね。私は世界最強のイーヴィちゃんよ!」

 

 横ピースが華麗に決まったわっ!!

 

「ぷっ、あははは!! 何、言ってんだこの女」

 

 ムカッときた。指弾で空気飛ばして気絶させた。でも、こんなの殺すのはちゃんちゃらおかしいから殺しはしない。悪神時代だったら絶対殺しているわ……悪神時代はあんなことしなかったけど。さっさと悟空の所に行こ。

 

 レッドリボン軍の基地に向かうと近くに飛行機を見つけた。私はその傍に降りた。

 

「やぁ」

「イーヴィさんじゃないか!」

「こんなとこでみんな揃って何してるの?」

 

 知ってるけど、聞いておく。

 

「それはこっちの台詞ですよ! 悟空と一緒に居て、どうしてレッドリボン軍に殴り込みするのを止めなかったんですか!」

「いや、レッドリボン軍を潰すことを奨めたの私だし」

 

 乗っている全員に驚かれた。

 

「悟空とは言え、それはあまりに無謀じゃ!」

「亀仙人さん。そんなことはないよ。多分だけど、今頃もう全滅させてるんじゃない?」

 

 本当は気が探れるから、既に知っているんだけどね。

 

「みんな! 何か飛んできたぞ!」

 

 クリリンがいち早く空に浮かぶ物体を見つけたようだ。

 

「悟空じゃない? 悟空~!」

「ほ、ホントだ!」

「イーヴィ! それに何でみんなもいるんだーっ!?」

 

 悟空がこっちに降りてきた。

 

「お前が一人でレッドリボン軍に乗り込んだって言うからみんなで助けに来たんだぞ!」

「へ~。よくわかったなぁ。オラが乗り込んだって……」

「……お前、本当にレッドリボン軍を全滅させたのか?」

「よく知ってるな。全滅させたぞ」

 

 悟空から事実確認してもみんな信じられないようだ。

 

「プーアル、基地の様子をちょっと見てこい」

「は、はい。ヤムチャ様」

 

 プーアルは行ってすぐに戻ってきた。

 

「本当ですー!! 全滅しちゃってますーっ!!」

 

 私を除いてみな一様に驚く。うん、マンガで見た光景まんまだ。

 悟空が亀仙人にカリン塔に登ったという話をしていた。

 

「あ、私も登ったよ~半日で行って帰ってきたけど」

「な、なんと! イーヴィさんはホントに規格外じゃのう」



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11 占いババの選手×4 対 神宮寺イーヴィ

家族愛は大事ですよね。後の悟空にそれがあるかはなんか微妙な気もするけど。







 さて、占いババの元へ行く理由がなくなってしまった。まぁ、私が集めたいと言えばついて来てくれるかな? ボールを集めたいというよりは、ただ悟空におじいちゃんに会って欲しいだけなんだけど。正直、必要ないと言えば必要ないが人としてあれは重要なことだと思う。ああいう家族愛が私は大好きだ。

 

「ねぇ、ブルマ。ドラゴンレーダーに最後の一個が映らないんだけど、治してくれない?」

「六個もみつけたのに、まだ悟空のおじいさんの形見を見つけられないの?」

「いや、四星球なら見つけたぞ」

 

 悟空が私に代わって答える。

 

「なら、どうして?」

「別に叶えたい願いがあるわけじゃないけど、こういうのは全部集めて置かないと気持ち悪いのよ」

「どっちにしてもここじゃ、治せないから一旦カメハウスに戻りましょ」

 

 カメハウスに戻って、ブルマにドラゴンレーダーをみてもらった。

 

「おかしいわねぇ……どこも壊れてないわ」

 

 知ってる。

 

「でも、残りの一つが映らないじゃないか。途中まではちゃんと7つ映ってたんだぞ」

「……ということは……なにものかがそのドラゴンボールを飲み込んじゃったのかもね」

 

 それも知ってる。正確には飲み込んだんじゃんなくて、ピラフがレーダーに映らなくする特殊なケースに入れてるからだ。

 

「諦めるしかないわね」

「それは嫌だな」

 

 私がこう言っておけば、亀仙人が言ってくれるはず。

 

「占いババの宮殿に行けばきっとそのドラゴンボールのありかを教えてくれるぞよ」

 

キター! 場所を教えてもらい、ヤムチャ、クリリン、悟空がついて来てくれることになった。

 

「ブルマは来ないの?」

「行くわけないでしょ! もうコリゴリ!」

「私は来ることをオススメするよ。珍しいものが見られると思うから」

「あんた、初めて行く場所なのに何でわかるのよ?」

「女の勘ってやつ? 亀仙人さんも来た方がいいですよ」

「じゃが、わしは……」

「おっぱい、つつかせてあげるから」

「わしも行こうかの」

 

 ふっ、わかりやすいスケベジジイ。約束守るつもりはないけどな!

 全員で占いババの宮殿に向かうことになった。私も悟空もしばらく着替えていなかったので、着替えを買いに行った。デザインは亀仙流のものと同じものにした。ただし、色は少し赤く、丸の中に悪と入れてもらった。全員にドン引きされたが、私は気にしない。

 「左之助かよ」と思ったやつ表へ出ろ。二重の極みをくらわせてやる。

 

 占いババの宮殿へと入る。

 

「おやまぁ、みんなずいぶんと若いのう」

「おめぇがうれねぇババか?」

「占いババじゃっ!」

「変な名前だなぁ」

「本名ではない! あだ名じゃっ!」

 

 悟空とこの占いババのやり取りはホント笑えるから好き。

 

「ちょっと探してほしいものがあるんだけど」

「いいとも、一千万ゼニーおだし」

 

 みんながその金額に驚く。

 

「相変わらずがめついのう、姉ちゃんは」

 

 みんながまた驚くが、私は知ってるっての。

 クリリンがただで占ってくれるように亀仙人に言わせようとするが、占いババは拒否する。

 

「占って欲しくば、わしらの選手を五人倒すんじゃ。勝てばただで占ってやるぞよ」

「なーんだ、そんなことか」

「ふっふっふ、おばあさん。僕たちのウチ二人はいい線いって、一人は優勝したんですよ」

「ほぉ、それは楽しみじゃの。では、こっちにおいで」

 

 移動するさなか、亀仙人が一言いう。

 

「相手は姉ちゃんが選んだ相手じゃ。一筋縄ではいかぬと思うぞ」

「なら、私がやるわ」

 

 他の雑魚なんてどうでもいい。アックマンを悟空以外にやらせるのが拙い以外に注意することはない。

 

「ルールは?」

「特にない。湖に落ちるか、ギブアップしたら負けじゃ」

「さぁ、始めるぞい。そっちは誰からやるのじゃ?」

「僕が……」

「待って、クリリン。私が占って欲しいって言い始めたんだから、私にやらせて」

 

 本当は負けたり、勝ったりとかがめんどくさいだけだけど。私がアックマンまで全員蹴散らす。

 

「うーん、しょうがないですね。イーヴィさんがそう言うんだったら」

「ドラキュラマン、出でよ!」

 

 コウモリが現れ、人となった。

 

「よし、試合開始っ!」

「ふっ!」

 

 だいぶ後の話で悟空がチチに使っていた技をマネしてみた。ドラキュラマンはそのまま湖に落ちた。

 

「イーヴィさん、いいぞー!」

「大した、嬢ちゃんじゃ」

「早く次の対戦相手出してってもういるわね」

「何言ってんだ。イーヴィさん」

 

 透明人間だろうが、気を感じられるんだから関係ない。

 

「そ、その通りじゃ、透明人間のスケさんじゃ! 試合はじめっ!」

「はぁっ!」

 

 普通に顔にパンチをくらわせた。

 

「こ、降参します」

 

 ブルマにはちょっと感謝して欲しい。本当なら亀仙人に胸を見られるところだったから。言ったところで仕方のないことだけど。

 

「結構やるのう。じゃが、残りの3人は実力派じゃぞ。次の対戦相手から場所を変える。ついておいで」

 

 悪魔の便所か……死なせないように気をつけよ。

 占いババが下に落ちたらどうなるかを肉を落として実演する。

 

「試合をよすなら今のうちじゃぞ」

「関係ない。早く次をだして」

「余裕じゃのう。三人目は戦う干物ミイラ君じゃ!」

「ぐっふっふっふ……」

「それでは始め」

 

 地面を5回蹴る、剃もどき!

 

「消えたっ!?」

「掌底破!」

 

 私の掌底がミイラ君の鳩尾を捉え、そのまま悪魔の口へとふっ飛んで行った。

 

「この場合はどうなるの?」

「お、お主の勝ちでよい」

「早く、次」

「へんっ調子に乗りおって。その勢いもこれまでじゃ! 4人目の選手、アックマン!! 出番じゃぞ!!」

 

 アックマンが現れた。亀仙人たちが驚いているようだがそんなことはどうでもいい。ただ、一つ確かめてみたいことがある。

 

「私、あなたのこと知っているわ」

「何?」

「アクマイト光線を使う人でしょ。使ってみなさいよ」

「ふん、それだけの達人ならな」

「試合はじめっ!」

 

 私がアクマイト光線くらったらどうなるか、ちょっと試してみたい。アクマイト光線は悪の心を膨らませて爆発させる技だが、私の場合どうなるのだろう。なんか機械だから効かなそうだから、できれば私の本当の身体で試したかったけど仕方ない。

 

 アックマンが自前の羽で飛び上がり攻撃を仕掛けてくる。地獄がどうとか言っているけど、さっと避けてデコピンをくらわす。それでダメージが十分通る。さっきよりも手加減しないと気絶させてしまうからね。

 

「デ、デコピンでこれほどのダメージだとっ!?」

「ほら、アクマイト光線使わないと勝てないよ」

「ならば、お望み通りくらえ! ふんっ!」

 

 くるくると円を描きながら黒がかかった紫色の光が飛んでくる。避けようと思えば簡単に避けられるが、わざと当たる。

 

「ふはははっ。ふくらめ、ふくらめ、悪の心よ!!」

 

 私の身体が光を帯びているが、特に変化は起こらない。

 

「爆発だっ! ぎゃははははは!」

 

 しばらくすればなにか起こるかと思ったけど何も起きないや。

 

「なんともつまらない結果だね」

「バカな……まさか……悪の心がじぇんじぇんないというのか……!!」

「それは違うかな。理由はいくつか考えられるけど」

「なっ、何者なんじゃあやつ!?」

 

 アクマイト光線をくらうっていう目的を果たしたし、アクマイト光線の光も消えたし、終わらせるか。

 アックマンが武器を取り出したので、原作の悟空がやっていたよう蹴り上げて、天井に突き刺しておいた。

 

「逆犬神家の完成」

 

 天地逆さまにすれば多分犬神家っぽい。さすがに沼にあのポーズで落とすのはかわいそうなのでやらなかった。




イーヴィは元悪神なので悪の心なんて塊レベルでありますが、元とは言え神様なので善悪関係ありません。破壊神であるビルスが悪ではないのと一緒。その上、機械の身体なので、そもそも心があるのかどうかも微妙なところです。


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12 ドラゴンボールが揃いました。神龍はでません。

「勝ったけど、最後は?」

「ふん! やるのう……ここまで勝ち進んだのはお前さんが初めてじゃ。だが、ここまでじゃよ。わしらの5人目はとんでもない達人でのう。ひっひっひ……やっと出番が来たぞよ」

 

 奥から狐の面を付けた男が現れた。少し笑いそうになる。

 

「私、降参するわ!」

 

 占いババを含めて全員が驚く。最初からこうするつもりだったけど。

 

「次の選手とは悟空に戦って欲しいの」

「なんでオラなんだ?」

「戦えばわかるわ」

 

 狐の面を付けた男――孫悟飯の方を向いて、ウインクしておく。表情は見えないが、お辞儀している。

 

 悟飯は、占いババに場所を変えることを提案し、外に移動する。悟空は悟飯のことに気づいていないようだが、なんとなくわかっているようだ。

 私がどうして降参したのか、みんなに聞かれたが、見てればわかると押し通した。

 悟飯の方は占いババに悟空のことを話しているようだ。楽しみだと言っているのが聞こえた。ついでに、私の方にも視線が向いた気がする。

 

「試合まだー?」

「よーし、では次の試合を始めるぞよ。どちらかがまいったというまでじゃ。無理じゃと思うが、もしもこれで小僧が勝てたならドラゴンボールとやらのありかを占ってやるわい」

 

 

 

 その後のやり取りは大体原作通りだ。でも、この二人の戦いは感慨深いなぁ……みんなが戦いに驚いているなか、私は涙目になっていた。

 亀仙人が、悟飯の正体に気づき、みんなに教える。

 

「しかし、イーヴィさんはこれをわかっていたのか?」

「私は何でも知っているからね」

「ドラゴンボールの場所は知らないのに?」

 

 ブルマにそんなツッコミされた。

 

「知っていることと知らないことがあるのっ」

「何、当たり前のこと言っているのよ」

 

 そりゃそうだ。

 

「いって~っ!!」

 

 あ、悟空の尻尾が切れた。悟空はそのことに怒ったが、悟飯が降参した。そして、悟空に正体を明かした。感動の再会というやつだ。悟空が泣くのは、全体通してこことピッコロ大魔王倒した時だけじゃないかな。

 

「孫くんが泣くなんて……」

「珍しいものが見られるって言ったでしょ」

「それにしたって、なんでこうなることがわかるのよ」

「わかっていたからとしか言いようがないわ」

 

 ブルマにすごい疑惑の視線を向けられたが……諦めてくれたようだ。原作知識持っていることに関して隠しているわけじゃないけど、話す必要もないでしょ。

 

 悟飯が私に挨拶をした。

 

「理由はわかりませんが、悟空と戦う機会を設けてもらいありがとうございます」

「いえいえ、私はあなたと悟空の戦いをみたかっただけですから」

 

 他のみんなにも挨拶をして、どうやらもうあの世に帰ってしまうようだ。

 

「では、みなさんもいずれあの世でお会いしましょう」

 

 一言二言交わした後、消えた。

 

「じいちゃん! オラ、今度また尻尾はえたら尻尾も鍛えてもっともっと強くなるからな!」

 

 

「ほれ! 占ってやるぞよ。7個目のその球がある場所じゃったな」

 

 占いババが「ほーいほいほいのほいさっさー」と呪文を唱える。占いババの占いがすごいことは知っているが、マヌケっぽくて少し笑いそうになる。

走っている車の中にあることがわかった。知ってたけど。

 

 

「場所は?」

 

 占いババが方向を指さしこの方向に200キロだと言う。

 

「それじゃ、取りに行ってくる」

「もう行くの?」

「すぐ帰ってくるから、話でもして待ってて」

 

 飛んでいけばすぐだ。ピラフ一味相手に手こずる要素もない。ってか、もう着いた。

 車の前に降りて、立ち止まる。

 

「ハロー」

 

 ピラフが顔を出し切れた。

 

「バッキャロー! 死にてぇのか!」

「ドラゴンボール頂戴」

「ど、どうしてそれを? レーダーには映らないはず……」

「ピラフ様! こ、こいつ、衛星映像であの小僧と一緒にいたやつですよ!」

「一体、何の用だ!」

「さっきも言ったじゃない。ドラゴンボール頂戴」

「なんで貴様なんぞにやらなければならんのだ」

「仕方ないな。私に勝てたら私が持っている5個のドラゴンボールをあなたにあげる。その代り私が勝ったらそのドラゴンボールを頂戴」

 

 ピラフ一味が相談を始めると自信満々に乗る。

 

「約束だぞ。嘘ついたら針千本飲ませるからな」

「ほら、来な」

「ふはははは! いくぞっ!」!

 

ピラフ一味は、ホイポイカプセルを投げると、マシンが出てきてその中に乗り込んだ。

 

「がははは! どうだっ! 降参するなら今のうちだぞ! このピラフマシンはとんでもないパワーなのだぞ!」

「そーなのかー」

「むむむ……信じてないな。よし、マイ! このピラフマシンの恐ろしさを思い知らせてやれっ!」

 

 なんかまごついてるので、マシンの致命傷となる位置に突きを入れた。

 

「な、何ぃ!? だが、このピラフマシンに傷をつけただけのようだな!」

「いや、既に終わったよ。3秒後にはボンッ!! だ」

 

 私が科学者かつ強い力持っているからこそできる遊び……もとい技だ。機械の致命となる部分だけを掠るように攻撃することによって時間差で破壊する。機械に対してのみ使える北斗神拳みたいな技。名付けて北斗鋼鉄爆砕破。なんてね。

 

「そんなわけ……へっ?」

 

 私の宣言通りぶっ壊れた。ドッカーンと爆発を伴って。

 

「生きてる~? 生きてたらボール頂戴」

 

 マシンの残骸の中で倒れているピラフを見つけた。

 

「ほら、私勝ったよ。ボール頂戴」

「はい……」

「それじゃ、バイバイ」

 

 

 占いババの宮殿へと帰ると、みんなは3年後の天下一武道会に向けて頑張ることにしたそうだ。ヤムチャやクリリンは亀仙人のもとで修業。悟空は一人で世界を巡って修業するらしい。

 

「ちょっと待った。ヤムチャは亀仙人さんのもとで修業する必要ないわ」

「ど、どうしてだ?」

「戦ってないから気づいてないかもしれないけど、あなたの力は今の悟空に近いのレベルにあるはずよ。だから、カリン塔へ行くことをオススメするわ。その方が強くなれる」

 

 悟空が亀仙人のもとで修業しない理由は、強くなったからだ。それに近いレベルなのにヤムチャがそれより低いところで修業するのはおかしいだろう。

 

「イーヴィさんがそういうなら、その方がいいかもしれんのう」

「わかりました。目指してみます。カリン塔を」

「イーヴィさんはこれからどうするんですか? やっぱり、悟空と同じ様に修業ですか?」

 

 私はなにをしようか正直迷っているが……今、決めた。

 

「私はやりたいことがあるから修業はしないかな。それにこの身体で修業しても強くなれないし」

 

 機械の身体じゃ、科学力が上がらなければ強くなれない。それに地球の素材だけじゃ、どんなに足掻いても限度があるだろう。と言っても、今でも次の武道会に余裕で優勝できるだけの力があるのだが……

 

「でも、次の大会に出るんだろ。イーヴィ」

 

 悟空がそう聞いてくる。

 

「そうするつもりだけど、場合によってはでないかもね。努力はするつもりだけど」

「一体、何をする気なんですか?

「それはヒ・ミ・ツ。ほら、さっさと修業を始めないと私には勝てないわよ」

 

 悟空は歩きで世界を巡り、亀仙人たちは占いババに一言言われて走って帰ることになっていた。私は飛べるから関係ない。かわいそうなのでブルマとプーアルは私が抱えて西の都まで飛んで行ってあげた。




イーヴィさんは今後も勝てる勝負で勝とうとしないことがよくあると思われます。


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13 イーヴィの野望

今回の話は第22回天下一武道会までの3年間でイーヴィが何をしているかの話です。


 私は西の都に戻った後、カプセルコーポレーションを出ることを決めた。家出とかそういう意味ではなく、部屋を出るという意味だ。西の都にいる間はヤムチャに修業を付けてた以外ではずっと研究室に引きこもっているつもりだったけど目標達成のために必要があると考えた。

 私が外に出る目的は、有名人になることだ。

 私の力は、人々が持つ私に関する記憶や私に対する感情によって決まる。人々が私に強い印象を覚えたり、とにかく強い感情を向けられるほど私は強くなる。

 

 現在の私の力は、私の持つ科学力によるものであり、私自身の持つ力ではない。元の世界では、安易に力を求めるのは危険だと判断したために大きく目立とうとはしてこなかった。何者かに利用される可能性を考えてだ。悪神時代は、それのおかげで消滅することになった。だが、この世界は私の世界とは全くの別物だ。そこまで考えるのは杞憂だろう。むしろ、私がミスターサタンの様な存在となれるのならば、強力無比な力を手に入れられる。神龍なしで神龍並みに願いも叶えられるだろう。地球の神の様な役に……使い物に……とにかく私の方が有能な神になれるのだ。別に地球の神になる気はさらさらないけど。

 

 というわけで、私はこの3年の間に格闘大会で優勝して有名になる。しかも、それだけに留まらず、アイドル活動もこなしてみよう。さらにさらに、科学者としても大成しよう。そうすれば、私は超有名人だ。そうなれば、生身の身体を取り戻すのも容易だろう。

 

 でも、戸籍を持たない私では格闘大会やオーディションに参加できない。科学者としては、カプセルコーポレーションのコネを使えばいけそうだが……地道にストリートで目指すか……

 

 目指せ! 歌って踊れて戦える天才科学・武道家アイドルイーヴィちゃん! ……長いな。

 

 

 

 この世界では何故か意味不明の自信でもって挑戦料を貰って、ストリートファイトを行い勝てたら賞金を出すというような馬鹿が結構いる。こいつらは天下一武道会を見ていないのだろうか、とよく思う。見てればそんな自信は粉々に砕け散ると思うのだけど……ただ、私の目的のためにはいいカモだ。知名度と金が貰えて一石二鳥だからね。都中を探せば一人はこういう馬鹿がいたので、簡単にぶっ倒せた。私の外見が女であるという油断もあって、挑戦料が無料になることもあった。そんなことを一週間ほど続けると天下一武道会で優勝したこともあって、そんな馬鹿どもであってもさすがに学習しており、戦いを避けられるようになってしまった。それでも500万ゼニーは稼げたけど。

 天下一武道会の優勝者がストリートファイトで荒稼ぎしているという噂は全ての都で広まってしまった。どうも一般市民にも恐怖の対象として噂されているようで、好ましくないことだ。そこで私は、ストリートライブに路線変更した。この世界で見かけたことはないが、元の世界では割とメジャーな行為だ。だけど、この世界では弾き語りをする人と言うのは物珍しいらしく初回から結構観客が付いた。この機械の性能も手伝って私の歌はかなり上手い。それ故に歌い終えれば、拍手喝采を貰えた。ちなみに曲は大体ドラゴンボール関連。歌詞にドラゴンボールって付いているのは歌ってないけど。

 

 ストリートファイトとライブを繰り返していると一ヵ月程でテレビ局の取材がやってきた。できるだけ好印象を持たれるように受け答えをし、天下一武道会で優勝したこともあると言っておいた。

 

 何度か取材を受けているうち、テレビ局側から世界武道選手権大会の予選に参加してみないかというオファーを貰った。当然、私の目的のために受けた。というか、基本的に雑魚しかいないので優勝は楽勝だった。まぁ、ただ勝つんじゃ面白くないから、踊ったり、歌いながら戦った。そのあいだに私は攻撃を避けようとはしないし、当たっても動きを止めなかった。決勝では、目隠しと腕を縄で縛って挑んだ。当然、相手は激昂したが、頭突きの一撃で仕留めた。おかしな行動のせいで、変なファンが増えたりしたが、それでも向けられる感情が強い分には別にいいことなので気にしない。相手がパンプットとか言う、なんか次の天下一武道会に出ていた雑魚だった様な気もするがそれも気にしない。

 優勝インタビューにはこう答えた。

 

「最初から私が本気を出したら、一瞬だ! 最強たるものの戦いはエンターテインメントでなければならない!」

 

 某元キングの台詞をパクリつつ、観客を沸かせた。あれは、決闘者だけど。

 

 

 武道家としては名が売れたので、今度は科学者として頑張ることにした。今まで稼いだ賞金を基に開発を開始した。そして、完成させたのが普段着に使える防具だ。この世界はやたらと強盗が多い。傷害事件もままある。それだけに自分の身を守るものというのは需要があると考えた。

 薄くて肌着として使え、ゼロ距離でライフル銃を撃とうとも貫けない超高性能品だ。この開発で今まで貯めた金がほぼ吹き飛んだ。だが、カプセルコーポレーションの名を借りて世に出すと売れる、売れる。最初作ったのは、10個ほどで一つ2000万ゼニーだったが即完売。速攻で増産する。量産に向かないものであるためたくさん作れなかったが、純利益で100億ゼニーはいった。私はその金で東の都に会社を起ち上げた。会社名はもちろん外道屋だ。

 ちなみに東の都に会社を建てたのにはちゃんと理由がある。将来、ナッパとベジータの宇宙船が到着する場所だからだ。ナッパとベジータによって起こされるはずの破壊を目の前で防げたのなら、私の注目度も倍増だ。

 

 この前科学者としてテレビ局からインタビューを受けた時は

「私の科学力は世界一ィィィ!」

と言っておいた。ドン引きされた。おのれシュトロハイム

 

 

 ……しかし、この3年間で私は強く(有名に)なり過ぎてしまった気がするな。




外道屋、爆誕。元のとは別物ですが。


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14 第22回天下一武道会

 占いババに占ってもらってからあっという間に3年の月日が流れ、第22回天下一武道会の開催日となった。

 受付まで歩くとブルマや亀仙人たちが居た。

 

「やぁ、久しぶり!」

「……? どちら様ですかの? ブルマ知っておるか?」

「私も知らないけど……その声はもしかして……」

「あ、気づけなかった? 私よ、イーヴィよ」

 

 私は有名人になったので、正体を隠していた。有名になったことにより神としての力を少し取り戻し、結構なんでもできる状態になっている。ついさっきまで私を私として認識できないように意識をずらすということをしていたが上手くいった。現に話しかけてもすぐに亀仙人たちは気づけなかった。

 

「久しぶりね! 最近じゃ、テレビでよく見るけど、なかなかウチに戻ってこないじゃない」

「結構忙しいのよ。今日は天下一武道会に出るために仕事休んで来たけどね」

「イーヴィさんは多才じゃのう」

「まぁね」

「それで、後ろに居るのは知り合い?」

 

 私の後ろには、フードを被った人がいる。というか、私である。語弊があるけど、間違ってはいない。

 

「そうよ。今回の天下一武道会に参加するの」

「二人はどういう関係なの?」

「双子の妹よ」

 

 ってことにしておく。実際、容姿は全く一緒だし。見分けがつくように髪型は私はポニーテルにしており、この子は、髪を降ろしている。

 

「「妹ぉ~!?」」

 

 全員が同じ反応をする。

 

「あんた、機械でしょうが!」

「まぁ、その辺の事情は気にしないで。それより悟空が来てないね」

 

 まぁ、すでにこちらに向かっているのはわかっているけど。

 

「このままじゃ、受付が締め切られてしまうな」

「悟空の奴、どうしたんだ」

 

 悟空のことに話題が移動する。そのあいだにこっそりと受付を済ませる亀仙人がいた。どうやら今回もジャッキー・チュンとして参加するようだ。

 

 その後、鶴仙人たちがやってきて、亀仙人と軽く口喧嘩になっていた。鶴仙人は「これが武道だ、というところを」とかなんとか言っていたけど、ドラゴンボールの戦いって拳で戦っているってだけで、最早武道関係ないよね。

 

 鶴仙人たちが会場の方へ入って行ったあと、悟空がやってきた。みんなと再会を懐かしみ、受付を済ませる。ヤッホイというこの場所から地球の反対側に位置する場所から泳ぎでやってきたことにみんな驚く。本編終了時には彼の孫娘が4歳の時点で簡単に地球一周しているけどね。

 

「おめぇ、イーヴィか?」

「そうよ。髪型違うからわからなかった?」

「いや、そうじゃなくてさ。でも……後ろの奴……? なんだかよくわかんねぇぞ」

 

 さすが悟空。野生の勘というやつだろうか。ちょっとオツムが弱いから説明はできないようだが、本質にはなんとなく気づいているようだ。

 

「私の後ろに居る子は私の妹よ。名前はディザルム」

 

 名前は、私の昔の名前にしておいた。

 

「そーなんか。よろしくな」

 

 ディザルムに手を差し出す悟空。

 

「ごめん、この子、恥ずかしがり屋だからさ」

 

 だから、握手はできない。嘘だけど。

 

「ん? それじゃ、しょうがねぇなぁ」

 

 納得してくれたようだ。まぁ、隠す必要もないのだけど説明がめんどくさい。それに私の方が消えたりすることもあるだろうし、ややこしくなる。

 

 

 

 予選が始まった。特別これといったことはない。ただ、ヤムチャは亀仙流の道着を着ていなかったりする。彼は亀仙人のもとで修業をしていたわけではないので当たり前かもしれないが、意外といえば意外だ。後、あったことと言えば天津飯とヤムチャがなんか言い合っていたり、チャパ王が悟空にあっさり倒されたりしていただけだ。

 私とディザルムも当然難なく予選通過だ。そういえば、パンプットと予選で当たって雪辱を果たそうとしていたみたいだけどデコピンで終わらせた。

 

 

 

 

 今回のくじ引きは少し重要になってくる。組み合わせ次第では、天津飯が更生しないかもしれない。私も餃子のように超能力でくじを弄れるけど、どうしようかな……原作からあまり離れるのもどうかと思うし、上手く調整しよう。最悪、天津飯と敵対関係になっても問題ないだろう。というか、天津飯はストイックで真面目だから元から善人よりの性格してる気がする。善人というよりも生粋の武道家かな?

 

 審判がジャッキーの名前を呼び、ジャッキーがくじを引く。次にヤムチャが引きに行くと餃子が細工をしているのが見えた。今回、どう変えてくるかはわからないが私の思い通りにさせてもらおう。次に私が引きに行くわけだが、一回戦で狙う戦う相手は悟空だ。引いたくじの番号を見せる瞬間に弄る。ヤムチャとジャッキーから離れた位置を選んだ。餃子が焦ったような表情をしていた。どうやら違う番号にしようとしていたようだ。

 次の天津飯は、ヤムチャにぶつけるつもりだ。多分、原作よりも善戦できるヤムチャをみれるはずだ。下手したら勝っちゃうかも。

 この対戦を見るためにくじを弄ったが、餃子の様子に焦っている様子はない。ここは原作通りのようだ。クリリンは……この後、死なせなければどうでもいいや。

 そして、私の妹(という設定)ディザルムは……天津飯と戦わせたいし、ジャッキーと戦わせよう。ジャッキーもとい亀仙人の出番はこれで終わりでいいでしょ。今後、魔封波を使う機会もない。ピッコロ大魔王と戦うことになるのは悟空だけの予定だ。ほら、亀仙人は天津飯との戦いでこれからは若い者の時代とか言ってたし、別にいいよね。

 くじは結果的に、原作のパンプットの位置に私が、男狼の位置にディザルムが入った。

 ちなみに男狼は、今回の武道会に参加していない。おそらく、外道屋で販売した商品のおかげだろう。月が消えてしまったので、上手くやればビジネスチャンスになるなと思い試しにプラネタリウムを販売した。この世界でプラネタリウムを見たことがなかったので作ってみたのだが、意外と好評で売れた。プラネタリウムで月なんて見たことないけど確か映るようにした気がする。多分、それで人間に戻れたんだと思う。それに別にブルーツ波が出ている必要はないみたいだしね。




今まででも十分チートやってたイーヴィさんがさらにチートになりました。


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15 天津飯 対 ヤムチャ改

ヤムチャ改ってほどでもない気が……


 早速、第一試合。天津飯対ヤムチャだ。

 

「貴様の減らず口もこれで二度と聞けなくなるぜ」

「ほう、貴様がくたばるからか?」

 

 マンガとなんも変わらないように見えるがその実、結構かわっている。審判の説明でヤムチャが亀仙人の弟子であることは言われなくて、天津飯が鶴仙人の弟子であることが言われた。

 ヤムチャが亀仙人の弟子でなくなったことは、おそらく正解だったはず。カリン塔を無事攻略したのなら、天津飯に勝てる可能性も十二分にあるだろう。

 

『では、第一試合。ヤムチャ選手対天津飯選手。はじめてくださいっ!!!』

 

 最初の攻撃はヤムチャからだった。蹴りを入れるが、天津飯にガードされ、天津飯も拳で返そうとするが、ヤムチャも防ぐ。素早い攻防を繰り返すが、一進一退だ。

 

「いくぞ! 新狼牙風風拳!」

「おもしろいっ!」

 

 先程よりも素早い攻防だ。原作ならここで天津飯に押されるが、互角だ。しばらくの攻防の後、お互いに距離を取った。

 

「ようし…」

 

 あ、ヤムチャかめはめ波使う気だ。悟空も気が付いている。

 

「か…め…は…め…」

 

 あかんよ、跳ね返される。そして、飛んで避けて叩き落とされて足折られちゃう。

 

「波!!!」

 

 天津飯がよくわからない動き(あれ必要?)で、人差し指を立てて手を組む。

 

「はーーーーっ!!」

 

 それによって、かめはめ波が跳ね返された。ヤムチャはそれをなんとか飛んで避けた。

 

「ヤムチャ危ねえーーっ!」

 

 空中で天津飯に背中を取られ地面に蹴り落される。

 ほぼ原作通りなんだけど……なんなんこれ?

 

 天津飯は、ヤムチャに追撃する……が、ヤムチャは避けた。……避けたっ!?

 

「ちっ」

 

 天津飯が舌打ちをする。これで決まると思っていたのだろう。

 

「まさか、かめはめ波を返すとはな……」

「あの程度の技で俺が倒せるわけなかろう」

「だけど、俺にはまだ取って置きがあるぜ」

 

 右の掌を上に向け、左手で手首を掴む。これって、まさか……

 掌から気の弾が出てきた。

 

「繰気弾!」

 

 キター! ってか、登場早すぎィ!

 

「ばっ!!!」

 

 繰気弾を天津飯に投げつけた。天津飯はそれを避けるが、ヤムチャは気弾を操って追撃する。

 

「はいっ!」

 

 上から叩きつけるように天津飯を襲うが、避けられて、気弾は武舞台に激突する。

 

「なかなか驚かされたが、そんなノロい攻撃じゃ100年たっても当たらないぜ」

「それはどうかな」

 

 繰気弾が地面から出てきて、天津飯の顎を捉えた。

 

『天津飯選手ダウーン!』

 

 カウントが始まるが、天津飯はすぐに起き上がった。

 どうも、繰気弾こそは使えたが気が小さくて、威力が足らなかったようだ。

 

「貴様を見誤っていたようだ。少し全力で行くぞ!」

 

 天津飯は腰を落とし、両手を頭の横に持ってきて手の甲をヤムチャに見せている。

 

「新鶴仙流太陽拳!!」

 

 強烈な閃光が、目を眩ませる。太陽拳って便利な技だよね。

 

「め、目がっ!」

 

 天津飯はその隙にヤムチャの後頭部に膝蹴りをくらわせた。

 審判はサングラスをかけていたので普通に見えていたので、目を眩ませて後頭部に蹴りを入れたことを解説した。私は、目でものを見ているわけではないので太陽拳が全く効かない。でも、私には必要な大体の人は目が眩んだから解説は必要だね。

 

『ヤムチャ選手ダウーン!』

 

 10カウントされてヤムチャの負けになった。でも、足折られてないから十分な進歩だよ。私は感動した。これで、後々サイバイマンに自爆されて死ななければいいんだけどね。

 あ……足は折られなかったけど、気絶はしていて、担架で医務室に運ばれた。やっぱ、情けない……




ヤムチャ、天津飯相手にちょっと善戦。でも、結果は変わらずかませ犬。


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16 ジャッキー・チュン 対 ディザルム

『さて、続く第二試合はジャッキー・チュン選手対神宮寺ディザルム選手です』

 

 ピッコロ大魔王との戦いに亀仙人は必要ないというところを見せつけるためにも倒しに行こうか。これで天津飯を諭す人がいなくなってしまうのが少し心配だが、なくても多分更生してくれるだろう。

 

『ジャッキー選手は、前大会一回戦で敗退したものの優勝したイーヴィ選手とは素晴らしい戦いを見せてくれました。対して、ディザルム選手は前大会優勝者であるイーヴィ選手の双子の妹なのです』

 

 ディザルムはマントを外すと私と全く同じ外見をした姿を現す。違うところは髪型だけだ。

 

『ほ、本当にそっくりです。髪型が違わなければ判別がつきそうにありません』

「本当にそっくりじゃのう。これで力もそっくりだったら勝てる気がせんわい」

 

 ディザルムは返事をする事はなかった。そんな機能というか頭付けてないから当たり前なんだけどね。

 

『それでは第二試合はじめてください!』

 

「イーヴィさんの縁者とあれば、遠慮は不要かの」

 

 ディザルムは構えも取らずに棒立ちしている。必要ないだけで舐めプしているわけではない。ほら、南斗鳳凰拳にも構えがないじゃない。前進制圧あるのみなんだよ。

 

「はっ!」

 

 ジャッキーから攻撃を仕掛けてきた。ラッシュ攻撃だが、ディザルムは棒立ちのまま片手で防いでいる。

 

「ならば、これでどうじゃ」

 

 周りを囲むように多重残像拳で攻撃を仕掛けてくる。ディザルムは、その一撃目でジャッキーの腕を掴んで放り投げる。

 

「お主、何故攻撃せんのじゃ」

 

 ディザルムにはしゃべる機能ってか、頭付いてないから応えようがないんだよね……

 

「イーヴィさんと違って随分無口じゃのう……見た目はピチピチギャルに変わりないんじゃが、なんか怖いのう」

 

 そんなことを言ってもディザルムには、なんの影響もないんだよね。

 そろそろ決着付けさせてもいいかな? 圧倒的力さえ見せ付ければ、無理して前線に出ようとはしないでしょ。何て言ったって私も居るし。というわけで、ディザルムに決着を付けるように指示する。

 

 ディザルムは右手を挙げ、その後前に出し掌を向けた。

 

「なんじゃ?」

 

 かめはめ波のように、光が収束していく。見た目のイメージは.hackのデータドレインだ。技の性質はかめはめ波と一緒だけど。

 

「かめはめ波か!? ならばっ! か…め…は…め…」

 

 ディザルムが気を放つと同時に

 

「波っ!!!」

 

 かめはめ波が放たれる。技がぶつかり、押し合いになる。

 

「くっ……はぁーっ!」

 

 ジャッキーがさらに力を込めるもディザルムの攻撃が一気に押し込んだ。爆発がジャッキーを包んだ。なんとかガードしていたジャッキーだったが、ディザルムはガードの上から拳を叩きこんだ。

 

「~~~~っ!」

 

 防御の上からでも痺れるほどの攻撃をくらわせ、その上から更に追撃する。それに耐えきれず、ジャッキーはあえなく場外まで飛んだ。

 

『じょ、場外!』

 

 ディザルムの勝ちだ。まぁ、もう少しやり方があった気がするけどごり押しの方が単純な力の差を見せつけられる気がしただけ。圧倒的過ぎると逆に理解して貰えなさそうな気もしたしね。

 さて、次の天津飯との戦いはどうするかな? その前に悟空と戦わなければならないんだけど、あんまり勝つつもりがないんだよね。




ディザルムって、一体何者なんだ…ってなります?


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17 再戦! 悟空 対 イーヴィ

 第三試合であるクリリンと餃子の戦いは寸分違わず原作通りだった。違うところは、ヤムチャも観戦していることぐらいだ。クリリンの対戦中に起きたようだ。

 それにしても、餃子って悟空以上に頭が悪いよね。悟空が計算できるかはわからないけど、悟空なら少なくとも二回目以降引っかかることはないだろう。でもこれ以降、餃子の頭悪そうな描写はないから、特に問題はないでしょ。

 ま、ピッコロ大魔王と会わせなければ、サイヤ人編までは死ぬ要素はない。そこまで気に掛ける必要もないはずだ。

 

『それでは、第四試合を開始します』

 

 私と悟空が武舞台に上がる。

 

「悟空、全力を出しな」

「あぁ、イーヴィなら戦闘用のパワーでも勝てるかわかんねぇからな。全力でいくさ」

 

『孫選手は、やはり亀仙人の弟子のひとりでありまして、イーヴィ選手と孫選手は前回の武道会の決勝戦で闘っており、その戦いではイーヴィ選手に軍配が上がりました。孫選手にとってイーヴィ選手は因縁の相手と言えるでしょう』

 

 

『対して、イーヴィ選手は、この天下一武道会以外にも世界武道選手権大会で優勝しています。また、今や世界一の会社であるカプセルコーポレーションに追いつこうという業績をだしている外道屋の社長でもあります。まさに、文武両道の選手なのであります!』

 

 観客が沸く。ナイスコメント、審判の人。

 でも、私は審判からマイクを奪う。審判の人に嫌そうな顔されたが気にしない。

 私は、天を指さす。

 

「最強は一人、この私だ!」

 

 こういう演出した方が盛り上がるので、最近こういうのをよくやる。注目度が増す度に力が増すのがわかる。積み重ねが大事。

 マイクを審判に返した。

 

『それでは第四試合、はじめてください!』

 

 

私と悟空は互いに構えを取る。

 

「へへっ、いつの間にそんな目立ちたがり屋になったんだよ」

「ちょっと、事情があってね」

 

 私は悟空に飛び掛かった。様子見にパンチを放つ。悟空はそれを捌き、私にカウンターをくらわせようとした。私はそれを避けきれずくらってしまった。

 

「あれ? 当たっちまったぞ」

 

 ちょっとふっ飛ばされた。

 

「……痛いなぁ。この感覚久々なのよね……」

 

 最後に痛みを感じたのは、何年前だったかなぁ……

 私はふらふらと立ち上がる

 

「おめぇ、本当にイーヴィか?」

「ふふふ……私は正真正銘、イーヴィだよ。でも、その疑問は半分正しいかな。身体は別物だからね」

「何……!?」

「はぁーっ!」

 

 私は右の拳に力を籠める。左手を前に出し、右手を引く。

 

『イーヴィ選手の拳が光っている! 一体、何をしようというのでしょうか!?』

 

 昔、元ライバル兼友人に使われた技だ。私の身体である、機械の首が飛ばされてしまった技。

 

「閃光拳っ!」

 

 右の拳を前に突き出すと閃光を放つ塊が光速で、悟空の腹に突き刺さる。

 

「ぐあっ!」

 

 悟空は地面に擦り付けられながら吹き飛んだ。場外まではいくことはなかった。

 

「今までの私じゃできなかったことよ」

 

 改造すればできなくもなかったけど、原理は別物になる。今のは神としてのエネルギーとかそんなのではなく、純度100%私の気だ。この身体は生身であって、機械じゃない。だからこそ気が出せる。ちなみに月を壊したのは気ではない。私が作った実弾だ。以前、槍を破壊したのも同じものだが、あの時は出力を間違えちゃっただけだ。

 

 悟空は平然と立ち上がった。

 

「やっぱ、イーヴィは強ぇな。でもよ、前の時の方が強かったんじゃねぇか?」

「大正解。今の私はそんな強くないわ」

 

 生身の方が神としての力は強いが、こと純粋な武力では、機械の身体に大きく劣る。神としての力を使えば、その内、機械の身体以上の力が出せるようになるけど……生憎、有限のものなので使用は控えたい。限りなく無限に近づけることはできるけどね。

 

「それでも、今の悟空よりは少し強いと思うわ。次は連続でいくわよ」

 

 私は、閃光拳の構えを取る。なんか、この技を連続で出すとなるとちょっとペガサス流星拳っぽい気がする。

 

「はぁーっ!」

 

 私が拳を突き出すと閃光が何発も悟空に襲い掛かる。悟空はそれを全て避けた。

 

「か…め…は…め…」

 

 悟空はジャンプで避けたところで

 

「波っ!!!」

 

 私に向かって撃ってきた。

 

「その程度っ!」

 

 閃光拳によってかめはめ波をかき消した。が、悟空の姿を見失った。

 

「どこっ!?」

「ここだ!」

 

 悟空は私の懐に居た。

 

「だぁーーっ!」

 

 連続パンチで私の腹を攻撃し、止めに顔に蹴りを入れられた。

 

「どうだっ!」

 

 私は耐えきれず、後ろに倒れた。

 やばい、久しぶりの痛みで結構きつい。というか、女の私にこんな容赦ないパンチと蹴りを入れてくるなんて……さすが、悟空と言うべきか。うん、思ったより楽しめた。

 さて、今回勝つつもりはないし、驚かせてからギブアップすることにしよう。楽しませてもらったお礼だ。少し神の力を使う。

 私は立ち上がって、口の中を切って出た血を拭う。

 

「悟空、最後に驚かせてあげるよ。威力は今の私が出せる最高出力だ」

「一体、何を……」

 

 呼吸を整える。

 

「あ、観客のみなさん! 伏せることをオススメします! 下手すると死にますから! 審判さんも伏せた方がいいですよ」

『り、理由はわかりませんが、イーヴィ選手程の実力者が言うのであれば、仕方ありません』

 

 事実だけを述べた。これで死者が出ても私は気にしない。一部の観客はなにを言っているんだという感じだったが、ブルマ達は、理解はできないが納得したようで伏せた。

 それを確認して、私は気だけでなく神としての力も練り上げた。そして、憧れのあの技を使うことにした。

 

「かぁ…めぇ…」

 

 皆、一様に驚いてくれる。使える奴意外と多いのに新しいやつが使うたびに驚く人がいるよね。

 

「はぁ…めぇ…」

 

 

――――――――波っ!!!

 

 極大のかめはめ波が悟空めがけて飛んだ。こんなでかいのまともに当たったら悟空でも死ぬが、避けられるように調節はした。

 かめはめ波を撃ったことによる衝撃波で、誰も立ってはいられず、さらに観客席前の塀が一部崩れた。

 かめはめ波を観客席手前で上へと進路を変えた。こんなパワーが地球に当たったら、地形が変わるってか、死傷者が沢山出るからね。

 

「ふぅ……悟空、生きてるー?」

 

 右腕に焦げた跡が残る悟空がいた。

 

「なんとかな……」

「そっか……じゃあ、降参」

『はい? イーヴィ選手、今、降参と言いましたか?』

「言ったよ。降参って」

 

 ここにいる全員が「えーっ!!」というような反応をした。

 

「どうしてだよ!?」

 

 悟空も納得いかないようで私に言う。

 

「さっきので、力使い果たしちゃったし……あと、私はこの後の悟空の試合がみたい。ここで悟空に勝っちゃったら、それで終わりじゃない」

「そ そうかもしんねぇけどよぉ……」

『ど、どうも私を含め皆さん納得できなさそうですが……ルールはルールです。孫選手の勝利です』

 

 さて、私はピッコロ大魔王戦について考えるかな。既にお復活されているようだし。




イーヴィさんの生身はこの時点の悟空と互角ぐらいの力です。ただし、神の力を使うとさっきの場合は初期のベジータぐらいに跳ね上がっています。燃費を気にしなければ、フリーザ第一形態が消し飛ぶレベルです。イーヴィさんの知名度と人気度がさらに上がれば、ドラゴンボールのインフレに置いて行かれるどころか突き放す勢いで強くなります。


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18 天津飯 対 ディザルム(イーヴィ)

なんか考えていたのと違う方向に……


 降参した理由をヤムチャやクリリンに質問されたが、悟空に言った通りだ。力を使い果たしたというのは、嘘だけど。

 

 悟空に結構な大怪我をさせてしまったが、ヤムチャが仙豆を持ってきていたので、悟空に食わせた。悟空は仙豆のことは知っていたが、回復することまではこの時点で知らなかったので驚いていた。ついでにクリリンも驚いていた。

 まだ、仙豆は3粒残っているから安心して、天津飯に大怪我させられる。さて……あの身体に戻るとするかな。

 私の生身の身体は霧散して消えた。

 

「あれ、イーヴィさん?」

 

 私の意識はディザルムの中に入った。元に戻っただけともいう。

 

「探してもどこにもいないよ」

 

 武舞台の方から、ディザルムが出てくる。というか、私――イーヴィだ。

 

「イーヴィさん? いや、ディザルムって人か?」

「ディザルムとイーヴィは同一人物だよ」

「どういう意味なんですかね?」

「俺に聞かれても……」

「もう次の試合が始まるからまた後で」

 

 悟空はなんとなく感づいていただけあって私の言葉でわかったようだった。ヤムチャとクリリンは何が何やらといった感じだ。

 

『それでは第五試合をはじめます』

 

 私と天津飯が武舞台へと上がる。

 

「女がここまで勝ち上がってくるとはな」

「ここまで来たら、そんなのは関係ないと思うけど?」

「! お前、喋れたのか」

 

 ディザルムは、ここまで一度も喋っていない。誰かに話しかけられても無言だった。それを天津飯は見ていたのでちょっと意外に思ったようだ。

 

「私がしゃべったのがそんなに意外?」

『いえ、私もはじめて聞きましたが驚きましたよ。随分とイーヴィ選手とそっくりですね』

「双子の妹だからね」

 

 まぁ、嘘だけど。

 

『それに表情豊かになりましたね』

「今は、お姉ちゃんがいないからね。私、お姉ちゃんが苦手だから」

 

 これも(ry

 

「……さっさとしてくれ」

『おっと、これは失礼しました。それでは、はじめてくださいっ!』

 

 私は棒立ちで天津飯を待つ。

 

「またそれか。俺はあの老人のようにはいかんぞ」

 

 ジャッキー――亀仙人より速い連続攻撃を私にしてくる。それでも私は、片手で全て止めた。天津飯は一旦後ろに下がった。

 

「どうしたの? それで終わり?」

「なるほど。やはり相当な達人のようだな。ならば倍ならどうだ」

 

 四妖拳かな?

 

 天津飯は力を籠める。

 

「ぐ……ぬぐぐぐぐ……! おおおーーーー!!」

 

 天津飯の肩甲骨の辺りが盛り上がり、腕へと変貌した。

 

「まるで、ビックリ人間だね」

「いつまで余裕でいられるかな?」

 

 また連続攻撃を仕掛けてきた。さすがに両手を使いはしたが、一撃も当てさせなかった。

天津飯はまた、私から距離を取った。

 

「解せないと言った表情だね。私はまだ一度も攻撃してないのに」

「そうだっ! なぜ、攻撃しない!」

「手加減しないと一撃で終わらせてしまいそうだからね」

「な、なんだとぉーっ!」

 

 自分で言ってて、何か変なテンションになっているのがわかる。こんなこと言うつもりじゃなかったのに。なんていうか、おちょくりたいのだ。しばらく私のアイデンティティをこなしていなかったせいかうずうずしているのだ。その状態で現在対峙しているのがたまたま天津飯だった。それだけの話。決して、天津飯を貶めようと考えているわけではない。

 

「ほら、全力できなよ! 叩き潰してあげる!」

 

 生身の身体に意識を移したことが影響しているのかもしれない。冷静にこんなこと考えてられるけど、表層意識じゃどうにもならない。

 

「でやぁーーーーっ!」

 

 私は既に防御すら放棄していた。天津飯の渾身の一撃が顔に当たる。

 

「どうだっ!」

「なにが?」

 

 当然、ダメージはない。

 

「!? 何故だ! どうして効かない!」

「単純な話だよ。私が強い、それだけ」

 

 本当はこんなことをしたいわけじゃないんだけど、どうも思い通りに動かせない。

 

「これで終わりにするよ」

 

 右手を前に出すと光が収束する。ぜ、全力で手加減しないと……殺しちゃう。

 

「はぁっ!」

「くっ!」

 

 右手から光線が放たれる。天津飯は咄嗟にガードをする。だが、光線が天津飯に当たることはなかった。天津飯の手前に穴が開くのに留まった。

 

「……調子悪い。休む」

 

 私は光線が出る方向を下に向けていた。あのまま天津飯に当てていたら殺してしまっていた。

 私は、武舞台から降りた。

 

『な、なんと! ディザルム選手、場外負けだ! 圧倒的優勢だったのにも関わらず自ら降りた!』

「ちょっと寝てくる」

 

 会場は、唖然としたまま次の準決勝が始まろうとしていた。

 




イーヴィさん、闇堕ちフラグ?


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19 イーヴィは元悪神

今更ですが、今回も結構省きます。


 気分が悪い……違う、落ち着かない気分だ。誰かを不幸にしたいとか、そんな気分。

 クリリンや悟空、ヤムチャに心配されたが奥で休んでいると伝えて、休んだ。

 

 私は元とは言え悪神だ。そのつもりで元の身体を構成したのが間違いだったのかもしれない。悪神の形を作り出し、その体を利用することでそれに意識が引っ張られたのかもしれない。何にしても推測の域はでないけど。

 最大の敵は自分か……前にもあったな、そんなこと。少し、昔のことに思いをはせる。

 

 

 

 

 外では悟空とクリリンが闘っているようだ。力関係が変わらない限り、どう足掻いても悟空が勝つだろう。結果は火を見るよりも明らかだ。歴史的事実ともいえる。

 急に静まり返ったので、多分悟空が勝ったのだろう。すぐに審判が悟空の勝利を告げたのが聞こえた。

 

 

 すぐに決勝戦が始まったらしく、すぐに歓声が聞こえてきた。この機械の身体は音もよく拾ってくれるので、戦っている音も聞こえる。見てないから詳しくはわからないが、悟空がずっと圧倒しているようだ。私と天津飯との戦いをじっくりと見たせいかもしれない。

――あ、外から光が……太陽拳使ったな――

 さすがに私との戦いのあれで瀕死まで追い込まれたとは言いづらいし、多分そういうことだろう。

 

 鶴仙人の指示によって餃子が試合を妨害していたようだが、原作通り天津飯に気づかれ、亀仙人がかめはめ波で鶴仙人を遠くに飛ばしたようだ。どうなるか不安だったが、亀仙人はしっかりと活躍してくれたようで嬉しい。

 

 しばらくして、天津飯が避けろという旨の発言をしているのが聞こえた。気功砲を撃つんだろうなと思ったら、爆音が聞こえた。さて、原作と違って時間がずれたことと悟空が終始優勢だったことは勝敗に響くのかな。――審判から伝えられたのは、悟空の勝利だった。狙ったわけじゃないけど、そうなると思っていたよ。さて、外に出て悟空の勝利を祝うとしよう。

 

「なんだ貴様は」

 

 緑色の怪物が居た。ってか、タンバリンだっけ? 手には武道会の名簿とドラゴンボールがあった。

 

「……それ、君のものじゃないよ。返してくれない」

 

 私の中の冷たい何かが溢れ出す。ストレスもとい私の中の悪を発散させなくちゃ。

 

「誰が返すか。死にたくなければ、おとなしくしているんだな」

「へぇ……つまり、死ぬ覚悟はできているんだね」

 

 私は躊躇なくタンバリンの心臓を手刀で貫いた。

 タンバリンは「え?」という情けない言葉だけを残して絶命した。

 

 タンバリンの手からドラゴンボールを奪うと、クリリンが入ってきた。

 

「......ディザルムって人? それとも、イーヴィさん? 一体、これは……」

「そいつがドラゴンボールを取っていたみたいだから奪い返したわ」

「そ、そこまでする必要はなかったんじゃ……」

「必要はあったわ。こいつを殺さなきゃ、他に死人が出た」

「どういうことですか? 説明してくださいよ!」

「ピッコロが現れた」

「え?」

 

 私は走って外に出た。

 

「待ってください! ピッコロって一体……!」

 

 

 

 

 

 外で悟空たちを見つけた

 

「あ、イーヴィ!」

 

 私の様子を見た悟空が難しそうな顔をする。

 

「何かあったのか?」

「悟空、今すぐ次の武道大会の準備のためにカリン塔に向かいなさい」

「急になんだよ」

「それでカリン塔に着いたらカリン様に天界に行きたいと言いなさい」

「どうしたと言うのじゃ。それに天界じゃと?」

「私は行かなきゃいけないとこができた。何があったかはクリリンに聞いて。それじゃ」

 

 私はピッコロ大魔王のいるところまで、飛んで行った。

 




イーヴィさん、未だ少し乱心中。


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20 ピッコロ大魔王

これがちょっとずつでも面白い方向に転がればいいなと思っています。


 咄嗟にタンバリンを殺ってしまったが、良かったのだろうか……というか、どうしてこんなことをしてしまったんだろう。クリリンを殺させないためではあるが……それに私は今、ピッコロ大魔王の下へ向かっている。ついさっきまでの私は何を考えていたんだ?

 ピッコロ大魔王を殺す気か? いや、最初からそのつもりだったけどすぐに殺したら多分ピッコロさんの方が産まれないぞ。それに悟空に倒させるつもりだったのに……

 そして、ついに会ってしまった。ピッコロ大魔王が乗る飛行船に。

 

『ピッコロ大魔王様目的地上空につきました』

 

 確か、ピラフ一味のマイの声だ。

 甲板にピラフ一味と共にピッコロ大魔王が現れた。

 

「お、お前は、あの時の!」

 

 ピラフが声を荒げる。

 

「何者だ」

「以前、我々のドラゴンボール探しをジャマしたやつです!」

「タンバリンを倒したのはお前か」

「そうだよ、ピッコロ大魔王」

「ほう、私を知っているのか」

「あぁ、よくね。欲しいのはドラゴンボールでしょ? 欲しければ降りてきな」

 

 私は地上へと降り、ピッコロ大魔王もそれに続いた。

 

「お前、わしのことを知っていて邪魔をするとは命が惜しくないようだな」

「あなたはいくつか勘違いしているわ」

「何?」

「一つは、私は別に今はあなたの邪魔をしようと思っていないことよ」

「ふん。それでは、そのドラゴンボールは置いていくのか?」

「あげてもいいわ、ほら」

 

 私は四星球を投げ渡した。

 

「命拾いしたな。わしの部下を殺しておいて生き延びることができるんだ。感謝しろ」

 

 もう六個は、既にピッコロ大魔王たちが持っていたけど、そんなことわかっていた。わかりやすい位置に六個まとめてドラゴンボールを隠しておいたから。レーダーを持っていればすぐに見つかる。

 

「さぁ、でてこい! 神龍とやらよ!!」

 

 空が急に暗くなった。

 神龍を見るのはこれが初めてだな……

 ボールから巨大な竜――神龍が出てきた。神々しく、威厳に満ちた姿だ。インフレしてくると「どんな願いも」が嘘になってしまう悲しい存在でもあるが……

 

「さぁ、願いを言え。どんな願いも一つだけ叶えてやろう」

「この私を若返らせてくれ! もっともパワーが溢れていた頃にな!」

「容易いことだ」

 

 神龍の赤い目が光ったかと思うと、ピッコロ大魔王のしわしわだった肌にだんだんとハリが出てきて、若々しい姿へとなっていった。

 ピッコロ大魔王は喜んだ。

 

「願いは叶えてやった。では、さらばだ」

「くくくく……残念ながら、そうはいかん」

 

 ピッコロ大魔王が口から怪光線を放った。が、私がそれを阻止した。神龍の前に立ち、怪光線を払いのけた。

 その間に神龍が消え、ドラゴンボールが世界中に散って行った。

 

「お前、邪魔をしないんじゃなかったのか?」

「あなたの目的は若返りと世界征服でしょうが。それ以外を邪魔しないとは言ってない」

「せっかく生かしておいたものを……」

「ほら、私を殺してみせなさいよ」

「小娘如きにこのピッコロが手を下すまでもない」

 

 ピッコロ大魔王が卵を吐き出し、その卵はすぐに孵る。

 

「お前の名はドラムだ。さっさとこの小娘を片付けてしまえ」

「はぁ……」

 

 手刀でドラムの首を撥ねてやった。

 

「!?」

「これがもう一つの勘違いよ。お前は魔封波や神龍以外で倒されないと思っているけど私はお前を倒せる強さを持っている」

「その程度のことで粋がりよって……このわしを倒すだと? 笑わせる」

「やってみればわかるわ」

「ふん、小娘如きがこのピッコロ大魔王様を舐めたこと後悔させてくれる」

 

 ピッコロ大魔王は私の首めがけて手刀をしてきた。私はそれを避けずにくらった。

 

「かはっ!」

 

 私はその場で倒れた。

 

「口ほどにもない。死んでいるぞ」

 

 今日この時、私の心臓は確かに止まっていた。

 




うわあ。イーヴィさんが死んじゃった(棒)


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21 イーヴィの陰謀

ヤジロベーが出てきますが、アニメのような訛りはありません。原作仕様です。


 私は起き上がった。心臓が止まっているというのは本当だが、そもそも今の私の身体は機械なので心臓などない。電源スイッチを切って死んだようになっていただけだ。

 

「おめー、生きてたのかよ!?」

 

 あ、ヤジロベーが居る。

 

「あなたは?」

「俺は、ヤジロベー様だ」

 

 知ってる。それにしても偉そうにしている。食い意地はっているだけなのに。

 

「そう……」

「おめー、どうして生きてんだよ? 確かに死んでたよな?」

「私の身体は機械よ。そもそも生き死に関係ない」

「おめーが? どう見てもただの女にしか見えないぜ」

「ただの女よ。身体は機械だけど」

「……それは女って言わん」

「精神も見た目も女の子の私になんて失礼な」

「百歩譲っておめーが女の子だとしても化物と戦うような女はただの女じゃねぇ!」

 

 ごもっとも。

 

「確かにそうかもしれないね」

「それで、これからどうするんだよ?」

「しばらく待って、ピッコロ大魔王を倒しに行くわ」

「やめとけよ! 今度こそぶっ殺されるぞ」

 

 ヤジロベーって実は良い人だよね。サイヤ人編でなかなかの活躍も見せるし。盗みもすれば意地も汚いけど。

 

「心配ないわ。さっきやられたのはわざと。倒そうと思えば一撃で終わるわ」

「嘘言え。それに、なんでわざとやられる必要があるんだよ」

「さっさと世界征服にでも行ってもらおうと思って」

「なんのために?」

「世界征服ともなればいろんな人が不幸に遭う。私がそれを助ける。私はこの世界を救ったヒーローとして持ち上げられる。ドゥーユーアンダスタン?」

「……おめーって相当性格悪いだろ」

「それが何か?」

 

 自覚はある。人の不幸は蜜の味とも言う。まして、私は元悪神。性格が悪くないわけがない。

 

「けっ、いけ好かない女」

「あっそ」

 

 ワンセグを取り出し、ニュースの確認をする。特に変化はない。

 

「それ、テレビか? そんな小型の製品があったのか」

 

 この世界は同じ科学技術でも異常にまで発達している分野と現実より著しく劣る分野がある。マンガだから当然か。私の会社はその辺の科学技術の穴埋めは既にしている。

 

 

「これは私の会社の製品よ」

「おめー、そんなことまでしてんのか」

「自分の会社を持っていた方が、都合がいいからね」

「機械の身体だもんな」

「そういうこと」

 

 本当はそれ以外にも理由はあるけど、別に話す必要もない。

 

 

 

 しばらくして、犬の国王がピッコロ大魔王に王位を譲ることが放送された。

 

「よしっ! 行くかな」

「おい!」

 

 飛んでいこうとしたところでヤジロベーに呼び止められた

 

「何?」

「頑張れよ」

「……ありがと」

 

 今後こそキングキャッスルへ向けて飛んだ。

 

 

 

 キングキャッスルに到着すると丁度ピッコロ大魔王が西の都を攻撃しようと外に出るところだった。

 

「やぁ、ピッコロ大魔王」

「貴様、生きていたのか」

「あれは、ただの死んだふりさ」

「ふん。死にぞこないめ」

「降りてきな。今度は、殺してあげる」

「小娘が……!」

 

 私の言うとおりにピッコロ大魔王は降りてきた。

 

「今度こそ息の根を止めてやろう」

「死ぬのはお前よ」

 

 正直、カメラが来るまで粘って勝ちたい気もするんだけど……さっさとけりをつけることにする。

 

「5秒で終わらせてくれる」

「あっそ」

 

 前と同じように手刀を仕掛けてきた。私は攻撃される前にピッコロ大魔王を蹴り上げた。

 

「ぐおっ!」

 

 カウンター気味にくらい、武空術によって空中で受け身を取った。

 確か、原作でもあれぐらいの位置でやられていたと思うし……力を集約して、貫通力の高い技がいいかな。

 

「はぁっ!」

 

 貫通力を高めた、ただのエネルギー波だ。それは、ピッコロ大魔王の胴体に巨大な穴を開けた。

 

「な……なんだと……! このピッコロ大魔王がこれほどあっけなく……!」

 

 私が本気を出せばざっとこんなものよ。

 ピッコロ大魔王がブツブツ言った後に卵を吐き出し、大爆発を起こした。

 私は城に居る犬の国王に向かってピースした。

 

「ピッコロ大魔王は死んだ! 私の勝利だ!」

 




ピッコロさんが登場できるように手加減するイーヴィさんでした。
そして、今後二度と出番がないであろうヤジロベー


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22 偽りの英雄

ミスターサタンは嘘ついて英雄になったけど、イーヴィさんはほぼ自演。


 ピッコロ大魔王を倒してすぐに国王から世界を救った英雄として称えられた。ついでに国王の側近の一人は私のことを知っており、サインを求められたりした。

 これによって、テレビの出演依頼が激増した。しばらくするとCMのオファーなんかも来た。全て受けるのはめんどくさいので適当にいくつか選んで出演するとこれでなかなかの人気者になれた。

 東の都では、私の銅像が建ったりした。また、外道屋の入社希望者も激増し、売上も倍増。お金の面で見ればうはうはだ。

 ここまでは嬉しい出来事なのだけど、悟空のことが気掛かりだ。一旦、テレビ出演は全て蹴って、天界に向かうことにした。

 

 

 天界に着くと、悟空の姿が見え一安心した。傍には、ミスターポポが居た。

 

「どうも、こんにちは」

「おす」

 

 ミスターポポが右手を挙げて挨拶する。

 

「お、イーヴィ!」

「やあ、悟空。元気にしてた?」

「あぁ! 今、ポポを倒すために修業してんだ!」

「そっか。頑張ってね」

「もちろんだ!」

 

 私はポポの方を向く。

 

「さて、ポポさん」

「わかってる。お前、神様に用があるんだろ。こっちへ来い」

 

 ポポに連れられ神殿の方へ歩くと神様の姿が見えた。

 

「こんにちは、神様」

「よく来た。まずは、ピッコロを倒してくれたことに礼を言う」

「礼を言われるようなことじゃないよ。私にとっては片手間だからね」

「しかし、解せん。お前はピッコロと初めてあった時点で倒せたはずだ。わざわざ若返らせて、負けたふりまでして、一体何が目的だったのだ」

「私はできるだけ好感度の高い有名人になりたいんだ」

「何故だ?」

「私の力は、私に関する記憶や人々から向けられる感情が強いほど強くなる。そのために必要なの」

「わたしが見るに、お前の力は既に世界最強と言っていい。そこまでして、何故更なる力を求める」

「神様は私が世界最強と言うけど、まだまだ上がある。現時点でそれが地球に居ないと言うだけの話。別に私は最強を目指しているわけではないけど」

 

 そう。飽く迄、悪人を除いた主要人物が殺されるのを防ぎたいだけだ。ただ、それを行うのにはかなりの力が

必要になる。現実でもこれほど力を求めることはなかったし、必要でもなかった。それだけ、後のこの世界は滅茶苦茶強いやつらが出てくる。

 

「わかった。それで、お前は何のためにここに来たのだ? 修業をしに来たわけではあるまい」

「あの世に行って、界王様に会いたい」

「界王様だと!? 界王様に何の用があるのだ」

 

 神様さっきから質問ばっかりでうざいな……ドラゴンボールしか利点のないナメック星人のくせして。もうピッコロさんと合体してればいいよ。そんなこと言わないけど。

 

「会いたいだけ。本当にそれだけ」

「わかった。ピッコロを倒してもらったんだ。その願い聞き届けよう。私に触れろ」

 

 神様の肩を掴むと瞬時にあの世に来た。

 あの世に来ると神様は閻魔大王に事情を話した。

 

「ふむ……待っておれ。神宮寺イーヴィ……神宮寺イーヴィ……しかし、生者が界王様に会いに来るとはな」

 

 閻魔帳をめくって私の名前を探しているようだ。

 

「私、最初から機械に魂宿っているようなもんだからある意味生きてはいないかも」

「何!? では、死んでもここに来ることはないかもな」

「それで、界王様に会いに行くのは許可してもらえないの?」

「……よかろう。界王様に会いに行くといい」

「ありがとう。閻魔様」

「案内人を呼んでやるから、あっちから出て待っておれ」

 

 私は蛇の道の方へ歩いていく。

 案内人に連れられて蛇の道までたどり着いた。

 

「さて、頑張るかな」

「くれぐれも蛇の道から落ちないように気を付けてくださいね。下は地獄で落ちたら帰ってこれません」

「問題ないよ」

 

 私は蛇の道を飛んで行った。

 確か、百万キロあるはずだけど、全力を出せば半日で行けるでしょ。

 

 

 思った通り、半日で着いた。今更だけど、あの世では私の力の減退あるいは消滅することはないようだ。この世と分断されている世界であるならば私は消えていてもおかしくなかった。神様が一緒だったから消えるとはなかっただろうけど。理由はわからないが、この世とあの世は意外と密接な位置にあるのかもしれない。宇宙中から魂が来るという割には魂の数が少ないような気もしたし、案外銀河ごとぐらいに別れてるんじゃないかな?

 

 小さな星で界王様を見つけた。てか、界王星ほんとちっさ!

 

「界王様~!」

「なんじゃ、お前」

「私は神宮寺イーヴィ。挨拶しにここまできたよ」

「それだけのために蛇の道を渡って来るとは随分と物好きじゃのう」

「あと、一つお願いが」

「なんじゃ?」

「多分、数年後に私の知り合いをここに連れてくるので修業をつけてあげて」

「いいじゃろう。そやつにギャグのセンスがあればな!」

「それじゃ、また今度」

 

 私は蛇の道へと戻った。遠くから界王様が小さく「なんじゃったんじゃ、あいつ」と聞こえた。

 




イーヴィさんは蛇の道を半日で渡りました。正直、これでも遅いかなとか思ったけど、時速にしたら滅茶苦茶な速度なのでなんとなくこれぐらいにしました。


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23 イーヴィの技術開発

 蛇の道から帰ってきた私は神様によってこの世に戻ってこれた。一日足らずで戻ってきた私に随分と驚いていたようだ。悟空にも別れを告げて、また3年後の天下一武道会で会おうとも約束した。

 

 下界から降りて、まず私が向かったのはユンザビット高地だ。神様が乗ってきたという宇宙船を探しにここまで来た。神様は私のことを見張っているかもしれないが、別に文句は言わないだろう。下界に滅多に降りてこないし。

 

 宇宙船は案外簡単に見つかり、カプセルコーポレーションへと運んだ。降ろすとちょっとだけ勢いよく地面に落としてしまった。壊れてないかな……

 

「ブルマ~! ブリーフ博士~!」

 

 たまたま外を出歩いていたブリーフ博士が居た。

 

「おう。イーヴィ君じゃないか。ん? これはなにかね?」

「おそらく、宇宙船です」

「ほ~、それは興味深いのう」

 

 家からブルマが出てきた。

 

「何!? 今の振動!」

 

 私を見つけてこちらに来る。

 

「イーヴィじゃない! あんた、なんでいつの間に英雄なんかになっちゃってんのよ!」

「まぁ、成り行きでね」

「それで今日は何の用なの?」

「ちょっと解析と改造してもらいたいものがあってね」

「もしかして、そこの四本足のやつ? これなに?」

「多分、宇宙船」

「まさか~」

「ホント、ホント。ブリーフ博士と調べてみてよ。私も手伝うけど」

「最近、テレビに出て忙しそうだもんね、あんた。わかったわ。って、父さんもう調べてるのね」

 

 ブリーフ博士は宇宙船の足の部分を触ったり、軽く叩いたりしていた。

 

「見たことない素材じゃのう。これどうやったら開くんだ?」

「それならわかるわ。『ピッコロ』」

「え!?」

 

 宇宙船の扉が開いた。

 

「ピッコロって……なんで開くの?」

「宇宙からやってきた乗り物だから別の言語に反応するみたい。上手く調節すれば私たちの言語でも反応するように改造できるんじゃないかな~と思ったからお願いしに来たんだけど、駄目かな?」

「……面白そうじゃない。やってみるわ」

「そうじゃのう」

 

 

 

 この宇宙船の改造は思ったより難航した。改造自体はそんなに難しいことでもなかったが、ナメック語の言語体系がこの世界の言葉と別物で解析に時間がかかった。急がず、ゆっくりやっていたというのもあるが、予想以上に時間がかかった。私はテレビ出演したり、外道屋の方に顔を出したりしていたし。それでも、未知の言葉というかナメック語を1年程でほぼ翻訳し尽くしたことには、この二人の天才ぶりに感服せざるを得なかった。

 

「完成したはいいけど、どこか行きたい場所でもあるの?」

「あるよ。別に面白いところではないと思うけど」

 

 ただ、原作じゃ全く描写されてないし、アニメでもちょっと描写されたぐらいの場所だから実際の所はどうなのか知らない。

 

「なんのために行くのよ」

「更なる技術躍進と力を求めて~ってとこかな」

「あんたどこまで強くなるつもりよ……」

「科学者がそれを言う? 科学者は果てを追求するものじゃない」

 

 フリーザと同じ声の某死神マッドサイエンティストさんも「今まで存在した何物よりも素晴しくあれ、だが、けして完璧であるなかれ」とおっしゃていた。

 

「……そうね。確かにその通りだわ」

「ブルマも一緒に来る?」

「宇宙には興味あるけど……遠慮するわ。あなたと一緒だとろくなことがなさそう」

「あはは、確かにそうかもね」

 

 この世界で起こる悪いことは大体すでに決まっていることだが、現実での私は悟空に近いかもしれない。悪いことを引き込んでいるという点で。まぁ、私の場合はなんだかんだ仲間から死傷者を出すこともなく無事に済ませてきたし、この世界でもそうすることが私の目標だ。そのためにも宇宙に行く必要があると考えたわけだ。

___いざ、ヤードラッド星へ!!

 




ヤードラッド星での修業描写はカットの方向で行きます。想像でもいい気はするけど、アニメで一瞬ぐらい映ったのからじゃ、ちょっと膨らませられないです。想像力が貧困で申し訳ない。


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24 第23回天下一武道会

天下一武道会ってか、メインはどうしてイーヴィさんがヤードラッド星に行ったかって話です。まぁ、誰でも想像付くと思いますが一応。


 いやぁ、ヤードラッド人は良い人達でしたね。さすが、急にやってきた悟空を介抱して、瞬間移動まで教えてくれた人達なだけある。

 何故、私がヤードラッド星を目指したかと言えば、当然瞬間移動が目的だ。これが使えれば移動のみならず、戦闘にもかなり役立つ。これで死ななくても界王様ところへも自由に行ける。

 ヤードラッド人は、私にも懇切丁寧に瞬間移動について教えてもらえた。悟空が1年もかかって体得した技なだけあってかなり苦労したが、技術の確立もできそうで、機械の身体でも使えるように転用できそうだ。まぁ、元の世界での転用は難しそう(いわゆる中国の民間療法などで言われる気はあっても、ドラゴンボールのような気という概念はないため)だが……このドラゴンボールの世界に限って言えば、使うのに支障をきたすことはないだろう。

 

 私も悟空と同じ様に1年程でこの瞬間移動の習得に時間を費やし、さらに地球に帰ってもう2年使って技術転用できるようになった。これの為に会社の金を使いまくったけど、ちゃんとお給料と税金は払っています。

 会社のお金を使いまくったけど、さすがに瞬間移動の技術を一般に伝えたくない。いつか誰かが到達する技術かもしれないが、今発表したらなんかめんどくさいことになりそう。それに行けるところはやっぱり人の居る所だから、プライバシーなんてあったもんじゃない。

 

 こうして、瞬間移動の為に技術開発を行っていたらもう天下一武道会が開かれる年になってしまった。特になんの対策もしてないが、悟空は天界で修業を積んだからピッコロを倒せないこともないだろう。唯一懸念があるとすれば、悟空が超神水を飲んでいないことだろうか。でも、あれは潜在能力を引き出す道具だから修業によっても引き出せるものだ。心配する必要はないはず。

 

 

 

 天下一武道会の日、丁度全員揃ったところに私は着いた。

 

「ハロー、みんなお久しぶり」

 

 右手を挙げて挨拶する。

 

「ブルマは久しぶりって程でもないけど」

「つい最近、あんたの研究ちょっと手伝ったりしたしね」

 

 皆が私を懐かしがってくれた。

 亀仙人とランチさんはテレビで何度か私を見ていたみたいで、そうでもないようだったけど。

 

「大きくなったね、悟空」

「あぁ、じっちゃんたちに言われるまでそんな感じなかったけどな」

 

 武道会会場から予選が始まるので競武館に集まるようアナウンスが流れた。

 

「それじゃ、みんな頑張ってね」

「頑張ってねって……イーヴィは参加しねぇんか?」

「今回特に出る目的がないからね」

「なんだよ……今度こそちゃんと勝ちたかったのに」

「戦うのはまた今度ね」

「ちぇっ」

 

 悟空は大人の見た目になっても大きくは変わらないのよね。そこが彼のいいところでもあるけど。

 

 予選結果とトーナメント表は原作通りとなった。私が介入していなければ当然の成り行きだけど。でも、ヤムチャの試合がちょっと気になる。初めて会った時にわずかだけど鍛えて、それによって天津飯に足を折られることが回避された。今回でも何かしら響くといいのだけど。

 

 予選終了後、私は競武館の方を歩いていた。

 

「そこに居るんでしょ」

 

 予想通り、ピッコロの姿があった。

 

「貴様、何故この大会に出場しない」

「私が大会に出ても優勝するのはわかりきっているからね」

「ふん。貴様を殺すためにこんな茶番に参加したというのに」

「悟空を倒せたら、戦うことを考えてあげるわ。あなたにとって私以外で世界征服の邪魔になるのは彼ぐらいだろうし」

「ならばその悟空とやらを殺し、お前も殺してやる」

「できればね」

「言ってろ」

 

 ピッコロはその場を去って行った。

 私は観客席に戻るとするかな。人にばれないよう、認識をずらす神の力を使って。

 




イーヴィさん、天下一武道会出ないってよ。
なので次回で無印最終回です。


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25 試合結果

今回が今までで一番長いですが、飛ばしても問題ないかもしれないぐらい基本的には原作と変わりません。ピッコロ戦でちょくちょくイーヴィさんが手を出すぐらいです。ただ、ヤムチャがほんのちょっとだけ頑張ります。


 第一試合、桃白白と天津飯の戦いは全くもって原作通り。ちょっと戦って、桃白白が不利だとわかると腕からナイフを出して反則。それでも続けて戦い、スーパーどどん波を撃つも天津飯に気合いだけでかき消される。そして、天津飯の腹パンで沈んだ。

 

 

 第二試合、悟空対匿名希望。そういえば、匿名希望している人がチチだということを知ってはいるけど、会ったことは一度もない。

この試合も原作通り、チチが嫁にもらってくれると約束したという話をして、悟空に勝ったら名前を教えるという話になる。悟空はそれを軽い一撃で倒して。チチという名前を明かし、悟空は軽いノリで結婚を了承する。

 どうでもいいけど、悟空ってチチがいなかったら絶対結婚してないよね。性欲とかもなさそうだし、よく子供が二人もできたなとは誰もが思うはず。

 後で、クリリンに「案外イーヴィさんと悟空がくっつくかもしれないと思っていた」的なことを言われたが、「そういう感情を悟空に持ったことはないし、悟空自身もないでしょ」と言っておいた。ついでに「私には好きな人がいる。故人だけど」と言ったら驚かれた。

 

 

 第三試合は、クリリン対マジュニアというかピッコロさん。この試合は、ピッコロさんの圧勝かと思いきやクリリンがそこそこ善戦するという原作通りの展開だ。といっても、ピッコロさんは本気じゃなかっただろうけど。後、この辺りで武空術がみんな使えるようになってきたのがよくわかる。

 

 

 第四試合、ヤムチャ対シェンもとい神様。これが少し楽しみだった。ヤムチャには初めて会った時に、口を酸っぱくして見た目で油断するなって言ったからね。見た目がどんなのであろうと強いやつは強い。それだけは嫌になるほど叩き込んでやった。勝てないにしても恥をかくような無様な姿は晒さない……はずだ。

 ヤムチャが武舞台に出てくるとプーアルが「ヤムチャ様―!」と大声で応援する。ブルマが「今度は1回戦突破できそうね」と言っていたが、「多分、無理でしょ」と聞こえないぐらいの小声で言っておいた。

 ヤムチャの態度は原作とあまり変わってないように見えるが、神様のこけたところからの脇腹への蹴りをしっかり避けた。

 

「シェンさんだっけか? あんた、なんでそんなふざけた戦い方してんだ。嫌なやり方にも程があるぜ」

 

 何度も見た目に惑わされてはいけないと注意した甲斐があったよ。本当に成長したよ、ヤムチャ。

 

「ほう、良く気が付きましたね。あなたには真の武道家としての素質があるようだ」

「そうかい。なら、あんたを倒してその真の武道家ってやつになってやるよ」

「いやいや、そうはいかんのだよ。私は勝たねばいかんのだ」

「ほざけ!」

 

 その後は、ほぼ原作通りだった。「足元がお留守ですよ」とかは言われなかったけど、やはりムダが多く、隙が多いことには変わらなかったらしい。繰気弾の威力はあがっていたけど、神様を倒すには至らず、場外負けしてしまった。

 成長したよ、ヤムチャは。ただし、噛ませ犬という宿命によって勝てない。もう悲しみを背負ってもいいと思うの。

 

 準決勝、第五試合、悟空対天津飯は以下略。悟空が重り外したら結構あっさり勝っちゃうんだよね。四身の拳で追い込まれたように見えるけど、息上がってないし。

 

 

 準決勝、第六試合、以下略。もうわかりきっている展開だ。ただ、以前に宇宙船の改造を頼んでいたのでナメック語の会話が私とブルマが理解できてしまっていた。

 

「あ、あいつ、自分のことピッコロって……! それにあのおじさんが神って……! 一体、どういうことよ……!」

「そのまんまの意味でしょうね。マジュニアはピッコロで、シェンは神様。つまり、ピッコロと神様は同一の存在であると」

「ピッコロ大魔王はあんたが倒したんじゃないの!」

「その前に試合を観たら?」

 

 神様は魔封波を放ち、ピッコロに返され逆にビンの中に閉じ込められてしまった。

 試合はピッコロの勝ちとなった。決勝までは、休み時間が設けられた。

 

「一体、どういうことじゃ! イーヴィさん!」

「詳しくは悟空に聞きに行った方が早いと思うよ」

 

 悟空たちの下へ向かい、悟空は神様から聞いたピッコロについてのことを話した。

 

「なぁ、イーヴィ。神様が言ってたんだけどよ、イーヴィはピッコロの分身を知っていて放置したんじゃないかって、本当なのか?」

「そうよ」

「なるほどな。余程、自信があると見える」

 

 ピッコロが声をかけてきた。

 

「孫悟空、貴様は神などよりはやるようだが俺の敵ではない。神宮寺イーヴィの前座にすぎん。覚悟していろよ、今度のピッコロ様は3年前とは比べ物にならんぞ」

「はいはい。君の敵は悟空だよ。悟空を倒してから言いなよ」

「あぁ、オラぜってぇ負けねぇからな」

 

 

 

 二人が武舞台に上がり、決勝戦が始まる。二人の様子見の戦いが始まり、と言ってもクリリンや天津飯たちにとっては格上の戦い。

 

 本気の戦いとなると、ピッコロが空中に上がり巨大なエネルギー波を放とうとするが、悟空がジャンプして誘導した。避けた後、お返ししてやると超かめはめ波を放とうとするが、ピッコロが死ねば神様も死んでしまうので亀仙人が止める。

 

「止める必要ない! それぐらいじゃ、あいつは死なないわ! 思いっきりやってやりなさい!」

「イーヴィがそういうなら!」

 

 悟空はかめはめ波を撃った。それはピッコロに直撃したが、服がボロボロになっただけでほとんどダメージはなかった。

 ピッコロのターバンが取れたことにより、正体がばれてピッコロは孫悟空と私を殺し、再び王になってやるという宣言をする。それによって観客はピッコロにビビッていなくなった。

 

「随分とさっぱりしたわね」

「イーヴィさん、よくそんな暢気でいられますね」

「悟空は勝つよ。信じてるとかじゃなく勝つよ」

「イーヴィさん……」

 

 ピッコロは、次に巨大化して悟空を襲うが悟空の挑発に乗りさらに巨大化する。悟空は、ピッコロの体内に入りこみビンを回収して、私に渡してきた。私はビンの蓋を開けた。

 

「わ、わたしは、魔封波を返されて……」

「悟空が助けたんだよ、神様」

「イーヴィ……」

 

 ピッコロは元の大きさに戻り、戦いが再開した。悟空が足からかめはめ波を出して、ピッコロに攻撃を当てるが、ピッコロの頭についている触覚からの怪光線をくらい怯んだ。神様がピッコロの追撃を止めに入ろうとするが、私が腕を掴んで止めた。

 

「何をする!?」

 

 悟空はその間に殴られたが、そこまで効いていない。

 

「神様。この戦いをあなたが止める必要はないわ」

「今、ここでピッコロは倒さねばならんのだ! そのためにも悟空と協力しなければならん!」

「そんなの悟空は望んじゃいないよ」

「ピッコロを倒さなければ、いつか後悔することになるぞ!」

「悟空が負けた時は私がピッコロを倒すわ。悟空が勝つと思うけどね」

 

 ピッコロがこちらを向く。

 

「この俺が勝つに決まっている。貴様はそこで首を洗って待ってろ!」

「そうでもねぇぞ。オラ、もうおめえの技は見切った!」

「な、なに~……! この俺の技を見切っただと……!! そんなわけがあるか! この俺は、この俺は3年前の時よりさらに数倍もレベルアップしたのだ……!!!」

「じゃあ、オラはそれよりもさらにもうちょっとだけ強くなったんだ!」

「ほざけーっ!!!!」

 

 ピッコロが言葉と同時にエネルギー波を放つ。悟空はそれを避けるが追尾し続けた。悟空はピッコロの目の前でギリギリで避けて自爆させた。

 これによりピッコロは左腕に大きな怪我を負った。ピッコロはその腕をもぎ取り、新たに腕を再生させた。

 

「ゆ、ゆるせんぞ……! こ、この俺をここまで追い詰めるとは……ピッコロ大魔王様の最後の賭けを受けてみるがいい……!!」

 

 ピッコロが気をため始めた。ここら一体を吹き飛ばすつもりだ。

 

「逃げろっ! 逃げろーっ! みんな今すぐここから離れるんだーーーっ!!!」

「悟空さはどうする気だーっ!」

「オラはこらえてみせる!」

「バカを言え! いつまで強情を張るつもりだ! こんなものはもはや試合などではない!」

 

 ピッコロが気をため終えたようだ。

 

「くっそーっ! もうみんなが脱出する時間がねぇっ!」

 

 天津飯が気功砲で地面に穴を開けた。

 

「おい、みんな!! 死にたくなかったらこの穴に飛び込め! 悟空を困らせるな」

 

 私を除いて天津飯が開けた穴に入って行く。

 

「悟空、無理すんなよ!」

「おう!」

 

 神様は、無理だとぼやくが、ランチさんが穴に蹴り入れた。

 

「おめぇも早く入れ!」

「私は大丈夫。早く入らないと危ないよ」

「や、やばっ!」

 

「死ねい!!」

 

 悟空は腕をクロスさせ、足を踏ん張りピッコロの攻撃に備えた。私は穴の前に立ってバリアを張っておく。

 ピッコロが閉じていた身体を広げ、気が解放される。凄まじい衝撃が辺り一帯を襲う。それによって武道会会場とその一帯の街はほとんど更地へと変えられた。

 

「お、終わった……」

 

 上を向いたままのピッコロはそう呟いた。しかし、穴から顔を出したクリリンが

 

「悟空――――っ!!!」

 

 そう喜びの声をあげた。

 

「何っ!?」

「ど、どうだ……なんとかこらえちゃったもんね……」

「そ、そんな……ば……ば、馬鹿な……」

「私は傷一つ付いちゃいないけど? ついでにこの穴に土埃とか入れてないから」

「生きてる! 悟空は生きてるぞーーーっ!」

 

 みんな、穴の外へ出て歓声をあげる。

 

「優勝いただき!」

 

 悟空は勝利を確信したようだ。悟空は気を貯めた後、クラウチングスタートのポーズを取る。

 

「よーい……どん!!」

 

 自分でスタートの合図をしたと同時にピッコロに突進し、肘打ちから連続でハイキック、ピッコロがよろめいたところで腹に強烈な一撃を加える。ピッコロはこれによってダウンし、悟空はそのタイミングで飛び上がって、かめはめ波の準備をした。

 

「伏せろーーーっ!」

「波――――っ!!」

「うわああああ~~~~っ!!」

 

 真下に出されたかめはめ波がピッコロに直撃した。その衝撃によって小さなクレーターができた。

 

「審判のオッチャン、カウント!」

「あ、は、はいっ!」

 

 審判の人が悟空の傍に近寄る。

 

「こ……これはひょっとして死んでいるのでは……?」

「死んじゃいねぇさ。こいつはそんなやわじゃねぇよ。それに……」

「そうだ……この私が生きておるのが何よりの証……残念ながらピッコロはかろうじて生きておるようだ」

 

 生きているどころか、まだ攻撃できる余裕があったりするんだよね。言わないけど。別に悟空死なないし。

 

 カウントが始まる。みんなもそのカウントを始める。

 

「……セブン! ……エイト! ……ナイン!」

 

 悟空が勝利を確信し、親指を立ててこちらを向く。

 ピッコロが突如起き上がり、口から怪光線を吐き悟空の左胸の上部を貫いた。

 

「ぐ……ぐあ……ごほっ! うわあああーーー!」

 

 肺を傷つけたのか、咳に血が混じっている。そして、その咳で傷つけられた部分が相当痛んだようだ。

 

「悟空――――っ!」

 

 ピッコロが立ち上がり、悟空に近づく。

 

「しぶとい奴め……まだ、生きてやがる」

 

 ピッコロが傷ついた部分を踏みつける。

 

「ぎゃうっ!」

「このやろーっ!」

 

 クリリン達がピッコロの所へ向かう。

 

「やめなさい! 必要ないわ」

「で、でも、イーヴィさん!」

「ピッコロには、あなたたちを殺す余力ぐらい残しているわ」

「その通りだ! 先に死にたければいつでも殺してやるぞ!」

 

 悟空は付けられた傷が痛むようだが、なんとか立ち上がった。

 

「よかった。急所は外れたみてぇだ」

「き、貴様!」

 

 また一撃、二撃とやりあうがお互い力をほぼ力を使い果たしているので、かなり遅い。悟空は大きな傷を負っていることもあって出血が多く、目が霞んでいる。

 ピッコロから肘打ちをくらい、倒れたところにニードロップで両膝に攻撃した。

 

「ぐあああーーーっ!」

「あ、足が折れた……!」

「これで動くのは左手だけだ。だが、念には念を入れておくか」

 

 ピッコロは指先からエネルギー波を放ち悟空の右腕を焼く。

 

「これで貴様は全く身動きができん。最後の一撃をくらうがいい」

 

 ピッコロは武空術で浮き上がる。

 何故、最後の一撃で浮き上がりたがるのか……

 

「殺される! 悟空死んじゃうぞ!」

「問題ない! 悟空はまだやられちゃいない!」

「何を言っている! 天津飯とやら私を殺せ!」

「そんなの必要ない!」

「……イーヴィの言うとおりだ。オラは勝ってみせる」

 

 その間にピッコロは最後の一撃を放った。

 

「ああーーーっ!!」

「動けない手足では防ぐこともできんぞーー!」

「悟空―――――っ!」

 

 エネルギー波によって、かめはめ波と同様に小さなクレーターができあがった。

 ピッコロはゆっくりと地に降りてきた。

 

「粉々になりおったぞ……!! いくら神龍と言えど、これではもう復活はさせられまい!! 勝ったぞーーーっ! 孫悟空は死んだーーーっ!」

 

 ピッコロが勝利の雄叫びをあげる。

 

「次は貴様だ。神宮寺イーヴィ」

「何を言っているの? まだ勝負は付いちゃいないわよ」

「なにっ?」

 

 クリリンは、悟空の存在に気づいたようだ。

 

「天津飯。あんた目がいいだろ……あれ、ひょっとして……やっぱり悟空だーーーっ!」

「なっ!?」

「武空術だーっ!」

「お前のっ、負けだーっ!!!」

 

 悟空はそのままピッコロに頭突きをくらわせた。ピッコロはそれにより軽く吹っ飛ばされて、気絶した。

 

「し、審判の……おっちゃん……あ、あいつ場外に……お、落ちただろ……?」

「え……!?」

「試合さ……オ、オラ……勝ったよな……」

「そ、そういえば……! 確かにここは場外……!」

 

 審判は両手を挙げ叫ぶ。

 

「孫選手の勝ちですっ!! 孫悟空選手、天下一武道会優勝――――っ!」

「や、やり……!」

 

 悟空は破顔させて喜ぶ。

 みんなが悟空の下へ駆け寄る。

 

「やったな! やっぱりお前すげえよっ!」

「へへへ……オラ、優勝したぞ……」

「おめでとう、悟空」

「いろいろ気ぃ使って貰ってありがとな、イーヴィ……」

「当たり前のことをしたまでよ。ちょっと待ってなさい。仙豆取って来るわ」

「え?」

 

 ヤジロベーがいないから私が代わりに取りに行かないと……今まで忘れてた。

 私は額に二本指を当て、気を探る。カリン様の気を見つけ瞬間移動する。

 

 

 

「うぉっ!?」

「やぁ、カリン様。また仙豆を貰いに来たよ」

「お主、そんなことまでできるのか……」

「つい最近ね。悟空大怪我してるんだから、早く」

 

 それに、神様がピッコロを殺しかねない。

 

「それもそうじゃの」

 

 仙豆が一粒投げ渡される。

 

「もう一つもらえない?」

「なんじゃ? まぁ、よいが……」

「ありがと、カリン様。それじゃね」

 

 私は瞬間移動で悟空の下へ戻る。

 

「ほら、悟空。仙豆」

「あ、ありがてぇ……」

 

 悟空の傷が一瞬にして治った。悟空は飛び上がり優勝を喜んだ。

 

 神様がピッコロの傍に居るのが見えたが、悟空がその前に立ちはだかった。

 まぁ、原作通りのやり取りでピッコロを殺した後、神龍で生き返してくれればいいという話をするが、神様が死ねばドラゴンボールが消えてしまうため不可能だ。

 神様は、自分はとうに神を辞めるべきだったというが、亀仙人がドラゴンボールがあったからこそこの出会いがあったと語った。それによってこの世は救われたのだと。

 亀仙人は本当にいいことを言う。まるで最終回のようだ。

 

 神様は悟空のボロボロになった服を元に戻した。

 

「イーヴィ、もう一個仙豆持ってねぇか?」

「そういうと思ってたから二つ持ってきてるわ」

 

 私は悟空に仙豆を投げ渡す。

 

「さすが、イーヴィ! サンキュー!」

 

 悟空はピッコロに仙豆を食わせた。

 ピッコロの傷は一瞬で治り、悟空たちから距離を取る。

 

「ばっ馬鹿野郎っ! な、なに考えてんだよっ!」

 

「今日のところはこのまま引き下がってやるが、その内必ず貴様らを倒し、世界をいただくぞ!」

 

 ピッコロは笑いながら去って行った。

 

「悟空さーーっ!」

 

 チチが、悟空の下へ駆け寄り抱きつく。

 神様が悟空たちを天界に誘い、神になるように言うが、悟空は拒否。

 筋斗雲を呼んでチチと共に去って行った。

 

「みんな、バイバーーーイ!! また会おうなーーっ!」

 

 さて、次は5年後だったかな……

 

「イーヴィよ……」

「神にはならないよ。興味ないし」

「えっ?」

「私にはまだまだやりたいことが沢山あるからね。神なんて退屈なことやってられないよ」

 

 神様は私の発言にちょっとショックを受けたようで(´・ω・`)ってなってた。

 




これにて無印終了。次からドラゴンボールZ・サイヤ人編です。ここから大きく変わってくると思います。


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ドラゴンボールZ・サイヤ人&フリーザ編
26 サイヤ人編突入


新章開幕。ここからが本番、はっちゃけていきます。
それと今更ながらZから始めれば良かったかなと思ったり、思わなかったりします。


 私は今、少し焦っていた。

 悟空とピッコロの戦いの後、ドラゴンボールである願いを叶えた。その後、私はすぐに神様の宇宙船で宇宙へと飛び立っていた。狙いはフリーザ軍の同行の観察及び退治だ。

 宇宙人からも人気が欲しくなった私は、おそらく宇宙で最も有名であろう悪人フリーザから人々を守ることが近道だと考えた。私はスカウターに映らないので、する必要もないけど背後からの奇襲も容易だった。全員皆殺しにしていたこともあって、フリーザ軍はだれも私の姿を見たことがなく、この5年間の間でフリーザの拠点の星を15個消し、侵略中の星を30救った。このことから私はフリーザ軍からサイレントキラーと呼ばれ恐れられている。

 

 しかし、サイレントキラーってさすがにださいと思うの。真剣に訂正させるためだけに全滅させようか迷ったりもしてる。

 

 それだけのことをしていると宇宙の人々の中には私をフリーザ軍から守ってくれる守り神のような扱いをする人たちもいた。逆に私が助けたことによってフリーザ軍から尋問、拷問を受け逆恨みする者も居たけど結局フリーザ軍に全滅させられたので私には関係ない。それだけのことをすればさすがに私の容姿に関しては聞き出せたようだけど。

 

 

 この活動で私の力がだいぶ増して来たのはいいんだけど、この活動に夢中になり過ぎてラディッツが地球に来ることをすっかり忘れてしまっていた。このままじゃ、悟空が死んじゃう! 地球に向かっているが悟空とピッコロの気がだいぶ変動している。

 

 あ、間に合わない……だが、私には奥の手がある。

 私は額に二本指を当てて悟空の気を探る。……見つけた!

 

 

 

 移動した瞬間に強い衝撃に襲われた。魔貫光殺砲だ、これ。背中の丁度真ん中あたりで、ものすごい音を響かせている。しばらくすると魔貫光殺砲は消えた。

 

「び、びっくりした……胸にでかい穴が開くかと思ったよ……!」

「なっ!?」

「貴様! そんなところで何をしている!」

 

 ピッコロさんに怒られた。まぁ、ラディッツをあと一歩で殺せるというところで邪魔したから当たり前か……

 

「なんだかよくわからんが、助かったぜ……ええい! 放せ! カカロット!」

「うわっ!」

 

 悟空は驚いてしまったこともあって力が緩みラディッツを放してしまった。

 

「何者か知らんが、助かったぜ」

「悟空に死なれたくないから、急いで戻ってきただけさ。サイヤ人」

「ほう、我らを知っているのか」

「フリーザ軍の奴らをぶっ殺していたら、サイヤ人の名前は何度か聞いたわ」

 

 本当はそんなの聞いたことないけどそれっぽい理由な気がする。

 

「何!? まさか、お前があの噂の……!」

 

 ラディッツがスカウターをいじる。

 

「何も映らん! 戦闘力が測れんぞ……!噂通りということか……赤い髪の女、サイレントキラー! 何故、貴様がこんな辺境の星に!」

「この星は私の故郷よ」

 

 ただし、世界が違うけど。

 

「なんだとぉ……!」

 

 フリーザ軍の兵士は軒並みラディッツ以上の力を持つ。そのフリーザ軍の部隊をいくつも消した私にラディッツが勝てるわけがない。その事実を知っているラディッツは明らかに動揺している。

 

「今だっ!」

 

 悟空はもう一度、ラディッツを後ろから羽交い絞めにした。

 

「し、しまった! またしても……!」

「イーヴィ! オラが抑えているうちに早く倒してくれ!」

「悟空。抑えている必要はないわ」

 

 私はラディッツの顔を殴りつけた。その勢いで悟空は抑えていられず、ラディッツは地面に倒れ伏した。

 

「さて、お仕置きの時間よ」

「く、来るなっ!」

 

 この怯えっぷり……新しい玩具になりそうな予感! 悟空の兄という潜在能力がとてつもなく高そうな人材。色々と使えるかも……

 

「タコ殴りでいいか……」

 

 スカウターを一瞬で取り上げ、ラディッツの全身を隈なく殴りつけた。

 

「よし、気絶した」

 

 ラディッツの全身は痣だらけとなった。もはやラディッツの上半身に腫れていない場所などない。

 

「す、すげぇ……」

 

 スカウターの通信は切れていないようだし、ベジータ達に宣戦布告といくかな。

 

「あ、あーもしもし、サイヤ人達聞こえてる? 聞こえている前提で話すけど、君たちサイヤ人ってのは、思ったより雑魚いねぇ。こりゃ、君たちも大したことないんだろうなぁ。悔しかったら、地球に来るといいよ。絶滅させてあげる」

 

 スカウターからノイズが聞こえる。

 

『サイヤ人を舐めたこと後悔するなよ』

 

 それで通信が切られた。

 

「悟空、これで君が弱いことがわかったね?」

「あ、あぁ……こんなに強ぇ奴がいるなんて思わなかった」

「さっきサイヤ人達に挑発しちゃったけど、次ここに来るサイヤ人はこいつの数倍から十数倍は強いわ」

「な、なんだって……! ……っ!」

 

 肋骨が折れていることもあって滅茶苦茶痛そうだ。さっさと治してやらないと……

 

「イーヴィ。お前は一体どうしてこのタイミングでやってきた」

 

 ピッコロさんが納得いかないようで私に質問してきた。

 

「偶然よ、偶然。悟空がやばそうだなーっと思って瞬間移動したらああなっただけ」

「それにあのやり取りはなんだ……! わざわざ敵を地球に呼び寄せるようなマネしやがって」

「どうせそのうち来るんだからすぐ来るってわかった方が対処しやすいでしょ」

「ちっ、貴様は何を考えているか全くわからん……!」

「ま、また、あいつみてぇのが来るんか……?}

「一年後には来るでしょうね」

 

 このタイミングでクリリン達が、飛行機でやってきた。

 

「イ、イーヴィさん! なんでここに!」

「ホントよ! あんた、宇宙に行ってたんじゃないの!?」

「嫌な予感がしたから急いで帰ってきただけよ」

 

「よ、よぉ……クリリン……」

「ご、悟空! 大丈夫か!?」

「あんまし大丈夫じゃねぇよ……」

 

 私はピッコロの方を向く。

 

「ピッコロ! その子、頼んでもいい?」

「何……!? この俺に頼むだと……!」

 

 クリリンとブルマ、亀仙人に止められる。理由を聞かれたのでサイヤ人が再びやってくるので戦力を集める必要があると言っておいた。

 

「その子、悟空の子供でしょ?」

 

 私は悟飯を指さし聞いておく。

 

「あぁ、そうだ……悟飯ってんだ」

「その子は次のサイヤ人との戦いで戦力になるわ。その子からはとても大きな力が感じられたわ」

 

 正直、別に戦ってくれる必要ないんだけど、後々戦えるような状態であってほしい。

 

「それなら悟空か、イーヴィさんがやればいいだろ!」

 

 それだとピッコロさんが改心してくれないかもしれない。

 

「私と悟空は別で修業をするわ。それに私は忙しいの。悟空は駄目?」

「オラは……オラは……イーヴィがそう言うなら……いいと思う。イーヴィはオラよりずっと頭良いし、なんか考えがあるんだろ……?」

「もちろん。ピッコロは?」

「……よかろう、引き受けてやる。ただし、どうなっても知らんぞ」

 

 ドラゴンボールの願いがどの程度かわからないけど多少は効いているのだろう。5年前、私がドラゴンボールに願ったことは「5年後、神様に死期が近づいているように感じさせてほしい」だ。ピッコロと神様は同一人物である為にどちらかが死ねば両方死ぬ。そして、本来の死ぬ原因は悟飯をかばって死ぬためだ。それを神様とピッコロは、その原因はわからないが死ぬ予感はしていた。死ぬ予感があったからこそ神様は、「ピッコロは何かを残したいと思ったのではないか」と考えていた。しかし、私が居る以上ピッコロさんが死ぬような事態は起こり得ない。そしたら、死期が近づいているなんて感じないだろう。ならば、そう思い込むようにするしかない。そのためにドラゴンボールを使った。こうすれば、きっと悟飯に修業を付けてもらえると思っていたし、実際上手くいった。

 

「それでいいよ。ありがと」

 

 ピッコロは悟飯を連れてどこかへ去って行った。

 クリリンやブルマはこのことにめっちゃ焦ってる。

 

「チチさんには、全部私がやったことだって責任押し付けていいから。それじゃ、ブルマこれ渡しとくから天津飯たちも探しておいて」

 

 スカウターをブルマに投げ渡した。

 

「ちょ、ちょっと! 何よ、コレ!」

「相手の位置と力の大きさを測る機械よ。もういいよね。そんじゃね」

 

 私は、倒れ伏した悟空とボロボロのラディッツを連れて瞬間移動でカリン塔へ向かった。

 

「カリン様、仙豆頂戴」

「またそれか……まぁよいが……ほれ」

 

 仙豆が入った袋ごと投げ渡された。

 

「ありがと、カリン様。ほら、悟空」

「さ、さんきゅー……」

 

 悟空は仙豆を食べて全快した。

 

「それでこれからどうすんだ?」

「界王様のところに行く」

「界王様?」

「ホントなら死ななくちゃいけない上に100万キロ走らなきゃいけないところを一瞬で済むんだから、感謝して欲しいわ」

「いってぇどういうことなんだ? それにそいつも連れてよ」

「行けばわかるわ」

 




最近見たドラゴンボールの二次創作でラディッツ生かしておくパターンを何度か見たので生かしてみました。


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27 界王星

果たしてラディッツの運命や如何に


 私はラディッツと悟空を連れて、瞬間移動で界王星に向かった。

 

「やぁ、界王様。お久しぶり」

「うわあ! って、イーヴィか。ん? そいつはなんだ?」

「あ、あんたがもしかして……?」

「ふふふ……わしか? わしは……かいーよー、かいーおー、かいーおう、界王じゃ」

 

 寒いギャグ炸裂。悟空の反応は特にない。

 

「そうなんか。それで、界王様ってどういう人なんだ?」

 

 界王様はずっこけた。

 

「お前、そんなことも知らんでここに来たのか?」

「だって、イーヴィに連れて来られただけだしよ。知ってるわけねぇって」

「はいはい、今から説明するから」

 

 私は悟空に界王様に関することを教えてあげた。

 

 

 

 

「へぇ~、界王様ってのはすげぇ奴なんだな」

「そうじゃ、少しはわしの偉大さがわかったか?」

「あぁ! それで修業つけてくれんだろ!」

「その前にその服を直してやろう」

 

 界王様の魔術? の様なもので悟空の道着は綺麗になった。

 

「サンキュー。界王様」

「それで、修業だったな。付けてやってもいいぞ。ただしギャグの天才であるわしをシャレで笑わせることができたらじゃ」

 

 

 以下省略。界王様がつまらないダジャレで笑ったことなんてどーでもいい。

 

 

 

 

「ブフフ……よ、よかろう。修業をつけてやる。それで、そのボコボコになっている男はなんだ?」

「あぁ、これ? 悟空の修業に使えるかなと思って連れてきたの。とりあえず、悟空はここの重力に慣れる必要があるだろうから放置しておいて」

「あ、あぁ、わかった。しかし、その男暴れないか? サイヤ人だろ?」

「大丈夫、大丈夫。ちゃんと首輪付けとくから」

「……首輪って、犬じゃないんだぞ」

「オラも首輪なんかでそいつが抑えられるとは思えねぇぞ」

「それがそうでもないんだな、これが」

 

 私は気絶したままのラディッツにネックレスを付けた。

 

「そんなんで大丈夫なんか?」

「そうよ」

 

 ラディッツの口の中に仙豆を押し込み回復させる。

 飛び起きて、私から離れた。

 

「な、なんだ、ここは!?」

「ここは界王星よ」

「はっ、何故ここに連れてきて治したかは知らんが、逃げさせてもらうぜ!」

 

 空を飛んでどこかへ去ろうとするが、私がスイッチを押すと痺れて落ちてきた。

 

「いっ一体なんだ!?」

「あなたに付けたそのネックレスは発信機付の強力な電気を流す装置よ」

「こんなものっ! ぐぉーーーっ!」

 

 ネックレスから電気が流れ全身を痺れさせラディッツの行動を奪う。

 

「無理矢理外そうとすると電流が流れるわ。この星から逃げようとしても電流が流れる。要はあなたに逃げる術はない」

「くそーっ! ががががががががっ」

 

 ネックレスをまた無理矢理外そうと続けたが、最終的に気絶した。

 

「あーあ、気絶しちゃった」

「だ、大丈夫なんか?」

 

 別の理由で心配をし始めた悟空。

 

「大丈夫よ。普通の人間だったら致死量だけどサイヤ人だし、丈夫だから。それより、界王様に修業を付けてもらいなさい」

「修業をつけるのはいいが、どれくらいの期間やるつもりじゃ?」

「地球にサイヤ人が来るまでね」

「それは厄介な奴らに目を付けられたな。どれ、サイヤ人がいつごろ地球に着くか調べてやろう」

 

 界王様の帽子に付いている二本の触覚の様なものが動く。

 

「ふむ、確かにサイヤ人が飛んでおる。地球にたどり着くのは……そうだな……あと320日ってとこか」

「すげぇ! そんなことわかっちゃうんか!? しかし、その間でこいつより強ぇっていうサイヤ人に勝てるかな」

「それはわしにもわからん。はっきり言ってあのサイヤ人達はわしより強い」

「げっ! 界王様よりも……!?」

「そういうことだ。つまりは、少なくともこのわしを越えねばサイヤ人に勝つのは無理ということだな。では早速始めるか。おーい、バブルスくーん――」

 

 そして、悟空はこの重力に慣れるため、バブルス君を捕まえるという修業を開始した。

 

 

「界王様、私は用事があるから地球に戻るね。そこのサイヤ人……ラディッツが起きたら呼んで。それくらいできるでしょ?」

「あ、あぁ、問題ないぞ。しかしお前、わしのこと敬ってないだろ」

「あははは、そんなことないですよー。それじゃ、また後で」

 

 私は瞬間移動で神様の下へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

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 界王は以前にも思っていたが、イーヴィという存在に疑問を感じた。気が測れず、とてつもない技術と力を持ち、さらにはヤードラッド星人の術である瞬間移動を使いこなす。

 

「そういえば……ヤードラッド星は、滅んでいなかったか?」

 

 以前、そんな噂が流れていたことを思い出した界王は、ヤードラッド星を調べた。そして、何事もなく暮らすヤードラッド星人達が居るのを確認した。

 

「……気のせいだったか?」

 

 どことなく違和感を覚えつつも、気のせいだろうと捨て置いた。

 

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「やぁ、神様」

「イーヴィか……貴様は一体何を考えておるのだ」

「何も。強いて言うなら、みんなを死なせないことかな」

「ならば、貴様が一人で戦えばよかろう。わたしにおまえの力は測れんが、サイヤ人の力など遥かに超えているように思える」

 

 鋭いな……腐っても神様か……別に私が倒してもいいと言えばいい。でも、それじゃ面白くない。

 

「買いかぶりだよ。私はそんな大それた力を持ってない。だから、みんなの力が必要なのさ」

 

 神様は目をつぶって、考え事をしているようだ。

 

「……そうか。それならば、天下一武道会に参加していた者たちを連れてくるといい。わたしが修業を付けよう」

「ありがと」

「礼には及ばん。地球のためだ」

 

 私は神様に言われた通り、ヤムチャとクリリン、天津飯と餃子を天界に連れて行った。クリリン達に一緒に修業しないかと誘われたが、機械の身体ではいくら修業しても強くなれないことを伝えて断った。

 その後、私は外道屋に行き東の都を守るための開発を行っていた。東の都にバリアを張り、落下地点を人のいない場所へとずらすという方法だ。これでサイヤ人の宇宙船が落下してきても東の都に被害は及ばないし、ナッパによる挨拶で東の都が消し飛ぶこともないはずだ。

 ただ、昔と今で東の都を守ろうという理由は少し変わっている。昔はあわよくば名声をと思っていたが、今はここまで成長させた外道屋を壊させてたまるかという思いが第一にある。今や外道屋は西のカプセルコーポレーション、東の外道屋と並び称されるほどの企業となった。それを易々と壊させたくない。

 

 しばらくして、界王様からラディッツが起きたことが知らされたので瞬間移動で界王星へと向かった。

 

「やぁ、数日ぶり」

「うぉっ! いきなり出てくるな!」

「そういう技なんだから仕方ないでしょ」

「……それで何の用だ」

 

 ラディッツは思ったより大人しくしていたようだ。界王星が荒れている様子はないし、悟空はバブルス君を追いかけているのに夢中で私に気づいていない。

 

「君は悟空のことをどう思っているの?」

「悟空? カカロットの事か……我が弟とは思いたくない一族の恥さらしだ」

「でも、彼は一年の間でこれから地球にやってくるサイヤ人よりも強くなるよ」

「はっ! そんなことはありえん。あいつらはサイヤ人のエリートだぞ」

「そう! それ!」

 

 ラディッツは一体ナッパとベジータに対してどういう感情を持っているのか知りたい。

 

「な、何がだ……?」

「その君より強いサイヤ人がエリートということは、君は落ちこぼれなんでしょ?」

「違う! 俺は一流の戦士だ!」

「でも、フリーザ軍と何度も戦ってきて君はかなり弱い方だと思ったけど?」

「…………ちっ。そうだ。あいつらから見れば俺は下級戦士の落ちこぼれだろうよ。しかし、だからこそ、貴様らに勝ち目などないのだ!」

 

 悟空よりはマシだと思っているようだが、やはりナッパやベジータに比べたらかなり弱いことは自覚しているようだ。それを僅かでも認めたくない思いもありそう。

 よかった。ナッパとベジータより弱いことに対して僅かでもコンプレックスはありそうだ。反骨精神の欠片もないようじゃ、サイヤ人とは思えないからね。

 

「君はさ、見返してやりたいと思わないの?」

「……無理だ。奴らは俺をはるかに上回る戦闘力を持っている」

「そうじゃない。強くなりたいの? なりたくないの? どっち?」

「なりたいに決まっている! そして再び、全宇宙一の強戦士族、サイヤ人の名を宇宙中に知らしめてやるのだ!」

「野望があるのは大いに結構よ。でも、君程度の実力じゃ、カスも同然よ」

「なにぃっ! ががががが!」

 

 スイッチを押してやるとラディッツが電気で痺れる。

 

「その電流を止めがががががあ!」

「この程度で身動きが取れなくなるようじゃ、まだまだね」

 

 スイッチを止めてあげた。

 

「はぁ、はぁ……貴様は俺に何をさせたいのだ……」

「君には地球にやってくるサイヤ人と戦わせようかと思ってね」

「は? そんなことするわけないががががが!」

 

 もう一回スイッチを押してやった。

 

「ラディッツ、君はここで強くなってもらう。そして、地球を守ってもらう。拒否権はない!」

「何故、俺が……!」

「憎むなら、己の力のなさを恨みなさい」

「ち、ちくしょう……!」

 

 こうして、ラディッツは渋々界王の修業を受けることにした。

 

 

「ねぇ、界王様。ラディッツにも修業を付けてあげて欲しいんだけど」

「……むぅ。……いいぞ。もしも、このわしをシャレで笑わせられたらな」

 

 界王様は何故そこにこだわりたがるのか……寒いシャレで笑うくせして。

 

「ほら、ラディッツ、シャレの一つや二つぐらい言いなさい」

「誇りあるサイヤ人の俺がどうしてそんなことを……!」

 

 ラディッツの前にスイッチをちらつかせる。

 

「……止めてくれ」

「仕方ない。(寒い)シャレの一つや二つ教えてあげるわ」

「お前、今、寒いって……」

「……」

 

 もう一度スイッチをちらつかせる。

 

「……わ、わかったから止めてくれ」

 

 ラディッツに小道具を渡し、耳打ちで教える。

 

「よ、よし! 行くぞ、界王とやら!」

「いつでも来ていいぞ」

「あ、アルミ缶の上にあるみかん!」

 

 ラディッツはアルミ缶の上にみかんをおいて叫んだ。

 

「………………ブフッ! だーはっはっはっは! ひー!」

 

 界王様は笑い転げた。しかし、こんなつまらないシャレのどこがおもしろいというのか……こんなので笑える界王様はある意味幸せだなとか思ったり、思わなかったりする。

 

 無事、界王様との修業の許可を貰ったラディッツは悟空よりも先の段階の修業を受けることになった。

 




次回予告

ついに、二人のサイヤ人が地球にやってきた。サイヤ人は余興とサイバイマンを出す。Z戦士たちと対峙することになり、威勢よく飛び出るヤムチャ。サイバイマンと言えば、自爆でヤムチャを殺すはずの相手……お願い、死なないでヤムチャ!あんたが今ここで倒れたら、私の目標はどうなっちゃうの? ここを耐えれば、生き残れるんだから!

次回「ヤムチャ死す」。デュエルスタンバイ!

※次回のタイトルは違います


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28 永遠のかませ

タイトルと次回予告で何となく想像付きそうな内容ですね。
ヤムチャが本編よりちょっとだけ頑張るのがこの二次創作のスタイル。


 ラディッツの様子を時々伺いつつ、東の都で街を守るための技術を開発し、ヤムチャの修業の相手も気まぐれにしていた。やはり、今回の一件で死ぬかもしれないのだから気になる。本来なら他にも餃子、天津飯、ピッコロと合計4人の死人が本来は出るわけだけど、ヤムチャだけ前座で死ぬのだから一際気になるというものだ。私の目標は悪人を除いて主要人物を殺させないことにある。でも、戦わせないとは言ってない。私が鍛えたヤムチャがどうなるか、試してみたいのだ。……多分、勝てないけどね。

 

 

 そして、サイヤ人達がやってきた。狙い通り東の都に直撃するコースから逸らして遠くの荒野に落とすことに成功した。ナッパが挨拶することなく、強い戦闘力を持っている者の下へ向かったようだ。界王様から悟空たちを迎えに来いと連絡が来ているが……無視しよう。とりあえず、サイバイマン戦が終わるまでは放置。

 

『イーヴィ、早く迎えに来てくれよ!』

 

 悟空に言われると少し揺れるが……どうなるか見守りたい。

 

 私はスカウターには映らないので、堂々とナッパとベジータを追跡できる。私は悟飯とピッコロ、クリリンが居るのを確認して岩陰に隠れた。

 ドラゴンボール関連の会話がなかったが、概ね原作通りの流れだ。

 

「おい、サイレントキラーはどうした」

「サイレントキラー? イーヴィのことか。あの野郎がそんな風に呼んでいたいな。知らん! 俺が聞きたいぐらいだ」

「ふん。まぁ、いい。ナメック星人には他にも聞いてみたいことがある。願いを叶える球が実在するのか、どうか……とかな」

「ドラゴンボールのことか……!?」

「ほう……そのドラゴンボールとやらについて詳しく聞かせてもらおうか」

「誰が貴様らなんぞにっ!」

「それなら痛い目を見てもらうまでだ。おい、ナッパ。サイバイマンがあと6粒ほどあっただろ。出してやれ」

「へへっ、遊び好きだな。ベジータは」

 

 ナッパがビンに入った粒を地面に埋めて、ビンに入っていた液体を垂らすとすぐにサイバイマンが出てきた。

 そこに天津飯、餃子、ヤムチャがやってきた。

 その後、会話の流れが違うもののベジータがサイバイマンとの1対1を提案した。まず、天津飯が出て、サイバイマンの溶解液を避け一撃で倒した。

 サイバイマンは立ち上がるがベジータがバラバラに消し飛ばした。

 次に、ヤムチャが前に出た。「お遊びはいい加減にしとってとこを見せてやりたい」と言っていたが……どうなることやら。クリリンに対しては私との修業で自信を付けたとかなんとか言っていたが中々嬉しいことを言う。修業に関しては割と片手間でしかやってないけど、防御に関しては相当に念を入れたから仮に自爆されても死にはしないはず。

 

 サイバイマンとの攻防を繰り広げた後、空中で襲い掛かるサイバイマンの攻撃を避けかめはめ波で仕留める。……ちゃんとサイバイマンの気が途絶えている。間違いなく死んでいるから自爆される心配はなさそうだ。

 

「お前たちが思っているほどこの化物たちは強くなかったようだな。残りの4匹もこの俺一人で片付けてやるぜ」

「ちっ、サイバイマンよ。あいつの言う通りまとめてかかってやれ」

「キキーッ!」

「いくらでもかかってきやがれ!」

 

 4匹のサイバイマンがヤムチャに一斉に飛び掛かった。ヤムチャは全てのサイバイマンの攻撃を捌き、一発づつ攻撃を当て着実にダメージを与えていく。

 

「はいはいっはいーっ!」

 

 ヤムチャは1匹に大振りの攻撃をくわえたが、他のサイバイマンに腕を掴まれた。

 

「なにっ!?」

 

 吹き飛ばされたサイバイマンもまとめてヤムチャに引っ付いた……あ。

 

「しまっ……」

 

 全てのサイバイマンは大爆発を起こした。爆発の後に残されたヤムチャは例のあのポーズだった。

 

「ヤ、ヤムチャさーーんっ!!」

 

 ……やばい、超悲しい……なのに、フフッ超笑いそう。だ……駄目だ……まだ笑うな。堪えるんだ。し、しかし………

 

 

………かろうじてだけど気が感じられる。ヤムチャはちゃんと生きている! 修業の成果だよ! やったね! ヤムチャ。

 

「い、生きてる! 脈がある! 息もしている! は、早く仙豆を!」

 

 クリリンが生存確認もしてくれた。いやぁ、大丈夫だとは思っていたけどこの瞬間まで死ぬんじゃないかと。勝ってないけど。

 

「ちっ、まだ生きてやがるのか……しぶとい野郎だ」

「自爆して殺せないとは情けねぇサイバイマン共だぜ」

 

 敵とはいえ、散々な言われよう。でも、私は褒めるよ……と思ったけど駄目だ。やっぱり、笑いの種にしかならない。ごめん、ヤムチャ。やっぱり君は最高のかませだ。これ以降はモブ並みの扱いになるけど私は君の事ずっと忘れないよ。君と言うかませがいたことを。

 

※ヤムチャは死んでません。

 




我がヤムチャは永遠にかませです!


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29 下級戦士とエリート

ラディッツが別人になっている気がしますが、二次創作ですし気にしないでください。


 私は、瞬間移動でヤムチャの近くに移動した。

 

「やぁ、クリリン」

「イ、イービィさん! 今までどこ行ってたんですか!」

「近くにいたよ。それで観戦してた。それより、ヤムチャに仙豆を食べさせてあげて」

 

 私は、クリリンに仙豆を投げ渡した。

 

「は、はい……ヤムチャさん、食べられますか……?」

 

 クリリンが仙豆を食わせている間にベジータの方に向き直る。

 

「お前がサイレントキラーか?」

「あなたたちが勝手にそう呼んでいるだけで、私はイーヴィだっての」

 

 ヤムチャがこのタイミングで復活した。

 

「す、すまない。助かった」

 

 ベジータ達は、ヤムチャの様子を見て驚いている様子だった。

 

「どういうことだ……!? 確かに、あの野郎は死ぬ寸前だったはずだ……!」

「地球には不思議一杯なのさ」

「ちっ、だがそんなことはどうでもいい。俺たちをコケにして生きていられると思うなよ」

「全く……あんたたちの相手は私じゃないわ」

「ほう、それは誰だ? まさか、その周りの奴らではあるまい」

「ちょっと待ってなさい」

 

 瞬間移動で悟空を迎えに行く。

 

「あ! イーヴィ、何やってんだよ! 遅ぇじゃねぇか!」

「ごめんごめん。ちょっとヤムチャたちがどうなるか気になったからさ」

「とにかく急いでくれよ」

「はいはい。ラディッツも行くよ」

「あ、あぁ」

 

 二人は私の肩に手を置き、そのまま瞬間移動で戻って来た。

 

「戻って来たよ」

「……貴様、一体どうやって……ラディッツ! 隣にいるのはカカロットか!」

「ナッパ! ベジータ! 助けてくれ!」

 

 私はラディッツの頭を殴った。

 

「な、なにしやがる!」

「あいつら見返すんでしょ。助けてもらってどうすんのよ」

「それはお前が無理矢理言わせようなもんだろうが!」

「なんだ、ラディッツ? 裏切るのか?」

 

 ベジータが茶化すように言った。

 

「へへ、弱虫ラディッツがそんなことを言うとはな」

「違う! そんなこと俺は言ってねぇ! ……だが、まぁ少なくともナッパ。あんたよりかは強くなったと思うぜ」

 

 弱虫ラディッツという言葉にイラッとしたのか、ナッパに対して当たりが強い。

 

「何ぃ? ベジータ、ラディッツの戦闘力はいくつだ!」

「おぉ、測れ測れ。今の俺の戦闘力は数値にしたらどれくらいか知りたい」

 

 相当力を付けたのか自信満々だ。

 

「……信じられん。5000を超えている。カカロットもだ」

「ご、5000だと……!」

「5000か……だが、この程度で驚くなよ……それに俺は学んだぞ」

「な、なにをだ……」

「こいつらのような戦闘力の探り方……そして……戦闘力のコントロールだ!!!」

「はぁあああ……!!」

 

 ラディッツが気を高める。

 

「べ、ベジータ! ラディッツの戦闘力はいくつになった!!」

「8000以上だ……!!」

「は、8000以上……!? そりゃあ、間違いだぜ! 故障だ!」

「言っておくが、まだまだ戦闘力は上がるぞ。そして、カカロットも俺と同じぐらいの実力を持っている」

「な、なんだとぉ……!」

 

 ナッパは格下と思っていた相手が自分以上の戦闘力を持っていることに驚いただけでなく、プライドを傷つけられたようだ。

 

「カカロットよ、手を出すなよ。俺一人で倒す」

 

 助けを求めた割には意外とノリノリだ。

 

「別にそんなことしねぇよ。それによ、あいつらは兄ちゃんの因縁の相手だもんな」

 

 に、兄ちゃん……だと……!

 悟空とラディッツはいつの間にか結構仲良くなっていた……のか?

 

 

 

ちなみにこの様子に生き残ったみんなの反応は

「一体、どうなってやがるんだ……!?」

「……? え? え?」

「あいつもサイヤ人なんだろ? どうしてサイヤ人と敵対してるんだ」

「天さん……ぼくにもわからないよ」

「確かに全然わからん」

「お、俺も全然わからないっすけど、とりあえずイーヴィさんと悟空が居ればどうにかなるような気がしてきましたよ」

というような反応だった。

ちなみに上からピッコロさん、悟飯、天津飯、餃子、ヤムチャ、クリリンである。

 

 

 

「俺一人で倒すだと……ラディッツ如きがこの俺を舐めるな!」

 

 ナッパが、渾身の一撃をラディッツにくらわせようとするが瞬時に後ろに周って避けた。

 

「ククク……遅いぞ、ナッパ」

「このっ!」

 

 また大振りの一撃を当てようとするが、ラディッツはナッパの拳の上に乗り顔面に蹴りを入れた。

 

「少し前は人のことを弱虫、弱虫と散々馬鹿にしてくれたな。この弱虫ナッパ」

「ぐっ……ぬぅうう!」

 

 ナッパの頭には血が上っているのが見てわかる。

 ナッパは連続で攻撃を仕掛けるが、ラディッツに一発も当たることはなかった。

 

「はははは! どうした! そんなもんだったか!? エリートの力は!」

「ラディッツ如きに舐められたままでたまるか!」

 

 ナッパは距離を取ってエネルギー波を放った。

 

「この程度っ! はぁっ!!」

 

 ラディッツは気合いだけでナッパのエネルギー波をかき消した。

 

「な、なにぃー!!?」

「これでわかっただろ、ナッパ! 俺は完全にあんたを超えた!」

「ち、ちくしょおぉ~っ! ちっくしょおぉおおお~っ!!」

「愚か者め!! 頭を冷やせ、ナッパ! 冷静に判断すれば捉えられんような相手ではないだろう!」

「……! そ、そうか……! ありがとよ、ベジータ。おかげで目が覚めたぜ」

 

 ラディッツはナッパの落ち着いた様子を見て再び笑った。

 

「確かに俺様は頭に血が上っていた……これからが本領発揮だぜ」

「それは安心したぜ。……正直言って、俺はあんたらエリートに憧れていたからな。こんな形で勝っても嬉しくねぇ」

「へっ、もう勝った気でいやがるのか」

「そうじゃない。俺は自分のことを一流の戦士だと誇りを持って戦ってきた。だが、本当のところはあんたらの足手まといでしかないレベルだった……いつかあんたたちエリートの様になりたいと思っていた。だから……そんなあんたに敬意を表して本気を出す」

「何ぃ?」

「界王拳だ!」

 

 ラディッツの身体を纏う気が赤く変わった。

 

 え? ラディッツが界王拳使えるの?

 ラディッツは先程とは比べ物にならないスピードでナッパとの距離を詰め、連続攻撃をくらわせた。まさに拳と蹴りの弾幕だ。止めに蹴り飛ばし、ベジータの横に転がって行った。

 

「どうだ! ナッパ、ベジータ! 俺は強くなっただろ! これでサイヤ人の天下に一歩近づいただろ!」

「……あぁ、認めてやるよ。ラディッツ……強くなったな」

「ベジータ……!!」

 

 今までに見たことのない笑顔をしたラディッツだった。年齢で考えると微妙な気がするが、サイヤ人らしからぬ邪悪さがあまり感じられない屈託のない笑顔だった。

 

「べ、ベジータ……助けてくれ……」

 

 ナッパは瀕死の状態でベジータに手を伸ばす。ベジータはその手を取った。

 

「す、すまねぇ、ベジータ……」

「ラディッツにやられているようじゃ、お前もおしまいだな」

「え?」

「そぉれっ!」

 

 ベジータはナッパを空中に放り投げた。

 

「なっ、何を……!! ベジータ!! ベジーターーーッ!!」

「動けないサイヤ人など必要ない!」

 

 ベジータの周りに気が充足していく。

 

「死ね!!」

 

 ベジータの周りの気はそのままエネルギー波となって、ナッパを襲った。

 

「べ、ベジー……!!」

 

 そのエネルギー波によってナッパは跡形も残らず消滅した。

 

「な、なな、なんて奴だ……じ、自分の仲間まで殺しちまいやがった……」

 

「な、なんで……! なんで、殺した! ベジータ!」

「さっきも言っただろう。動けないサイヤ人など必要ないんだよ」

「治せばいいだろう! この地球には変わった薬もある。それで治せば良かったんだ!」

「さっきの奴を治していたあれのことか? 確かにあれは便利そうだな……あとでいただくとするか」

 

 ラディッツはベジータに対して怒っていた。

 

 私が思うに、サイヤ人というのは意外と仲間意識が強いのかもしれない。仲間となる身内には意外と甘いし、同族であっても敵対するというなら容赦はしない。ベジータは、王族だから別枠なのだろう。ベジータは己こそが最強であるというプライドだけで、それ以外はどうでもいいと考えてそうだ。だからこそ、これからフリーザに敵対するのだろう。この場で死ななければ……の話だけど。死なせるつもりもないけどね。

 

 

「そうだ、ラディッツ。本当はまだこっちに戻る気があったのだろう? 戻って来い。ナッパよりは使えそうだ」

「…………!!」

 

 ラディッツは少し迷っているようだ。

 

「兄ちゃん! そんな奴の言うことなんか聞く必要はねぇ!」

「黙れ! カカロット! お前の処刑は決まっている」

「お、俺は…………ナッパは嫌な奴だった……俺のことを散々馬鹿にしやがったしな……だが、あいつは共に戦った仲間だ……! それを殺したお前を許すことなどできん!!」

 

 お、謀反だ反逆だ復讐だ。自分でナッパを痛めつけておいてって感じもしないでもないけど、ラディッツがベジータと戦う決心をしたならそれは良いことだと思う。

 

「ふん、馬鹿めが……! 下級戦士如きにこの俺が直接手を下すことになるとはな」

「や、やってやる! カカロット以外の奴はここから消え去れ! 死にたくなければな!」

 

「ちっ、確かにこの戦いには付いて行けそうもないな……行くぞ、悟飯」

「で、でもお父さんが……!」

「俺たちがいてもかえって邪魔になるだけだ。この場から離れよう」

「は、はい……わかりました」

 

 ピッコロたちは皆この場を離れていった。私はその場に残り、悟空はラディッツの傍へと行った。

 

「まさか兄ちゃんが、そんな気を回すとはな」

「勘違いするな。お前が気にして全力を出せなくなると困るからだ。俺一人では、正直ベジータには勝てん。だが、お前と組めば倒せない相手ではない」

「そんな強ぇんか?」

「あいつは惑星ベジータの名を貰うほどの天才戦士だ。俺たちより強い……!」

「くっくっく…………組めば勝てると思っているとはな……俺も随分と舐められたもんだぜ」

「あぁ、倒してやるぜ!」

 

 私は岩陰からこの戦いを見守ってよ……その前にナッパのスカウターでも回収しておこ。

――回収完了

さて、岩陰に隠れてっと……

 

 実はこの戦いって展開的に結構熱いんじゃないかな? でも、絵面的にそんな熱くなれない。兄弟での共闘なんて胸熱ものなのに……

 




ラディッツがまるで主役の様ですが、これくらい優遇されたっていいぐらいのキャラ設定だと思っています。それに、悟空の兄でバーダックの息子が仲間想いじゃないわけがない……と思いたいです。後、悟空と修業したし、影響を受けていたっていいと思うの。


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30 サイヤ兄弟 vs ベジータ

オチが若干タイトル詐欺だけど気にしないでください。


「くっくっく……喜ぶがいい。貴様らの様な下級戦士が超エリートに遊んでもらえるんだからな」

 

「おい、カカロット。最初から界王拳を使っていけ。使わずに勝てる相手じゃない」

「そ、そんなにすげぇ奴なのか?」

「あぁ、手を抜けば絶対に負ける」

「手を抜かなければ勝てると思っているのか? おめでたい奴らだぜ」

「そう思うのは勝手だが、俺らをただの下級戦士と思っていると痛い目をみるぜ」

「面白い冗談だ。では、下級戦士ではどうやっても超えられない才能の差を見せてやろう」

 

 ベジータとラディッツ、悟空が構えを取る。

 全員同時に飛び出した。ラディッツと悟空は赤い気を纏っている。

 空中で激突し、上昇しながら激しい攻防が起こった。さすがにベジータでも界王拳を使った二人相手に優勢とはいかず、押され気味だった。

 ラディッツから一撃いいパンチをくらい、そのまま少し距離を取る。

 

「ちっ、思ったより面倒だ……!」

「……勝てる。勝てるぞ、カカロット! このまま押し切れる!」

「下級戦士がこの俺に勝つだと……? ふざけるなぁ!!」

 

 気を放出することで暴風が起こった。

 

「あいつのプライドっちゅうやつを傷つけちまったみてぇだぞ……」

「気にするな。奴は俺の仲間を殺しやがったんだ」

「今度はさっきのようにいかんぞ……!!」

 

 ベジータはエネルギー波を悟空とラディッツに向けて二発放ち、避けたところでラディッツを叩き落し、エネルギー波で追撃した。

 

「くそっ!」

 

 ラディッツは何とか防御する。

 

「兄ちゃん!」

「よそ見をしている暇はないぞ!」

 

 ベジータは悟空も吹き飛ばす。

 

「ぐっ、強ぇ……!」

「どうした? 一人ではそんなものか!」

 

 悟空に追撃をかけるベジータ。悟空は集中的に攻撃され防御するのがやっとと言った感じだ。

 やはり、分断され一人一人に分けて対処されると勝ち目がなさそうだ。3倍にすればベジータを超えられるが、それをやると身体が持たないのだろう。

 

「カカロット!」

「おっとっ!」

 

 ラディッツが悟空の救援に入るが、攻撃は当たらずまた距離を取られた。

 

「す、すまねぇ」

「ベジータは俺たちを各個撃破しに来ているようだな……」

「貴様らを同時に相手するのは面倒だが、一人ずつなら大したことはないな」

 

 さっきとは一転してベジータに余裕が出てきたようだ。

 

「……それならよ、無理をしてやるぜ」

「お、おい、兄ちゃん。3倍に上げるのか?」

「そうしなければ、ベジータには勝てん。はぁっ!!」

 

 ラディッツの気の勢いが強くなった。

 

「な、なに……!?」

 

 ラディッツは先程よりもさらに速くベジータに突進した。ベジータの防御よりも速くパンチを当て吹き飛ばす、さらに後ろに周って攻撃する。ベジータも攻撃をするがそれを避け、渾身のボディブローをくらわせた。

 

「ば、馬鹿な……!! 俺の戦闘力をこ、超えやがった……!」

「くっくそ……きついぜ……! これは……!」

 

 悟空は2倍のままでは間に割って入ることはできなさそうだ。

 

「こ……こんなことがあってたまるか……! 俺は超エリートだ……! あ、あんな下級戦士にやられるわけがない……!」

 

 ベジータが口を拭うと血が流れていることに気づいた。

 

「ゆ……許さん……絶対に許さんぞぉおおお……もうこんな星などいるもんか!! 地球もろとも粉々に打ち砕いてくれるぞーーっ!」

「「な、何っ!」」

 

 

 ベジータは空中高くに飛び上がり、左の掌に右手の甲を合わせ、気を高める。

 

「避けられるものなら避けてみろ! 貴様らは助かっても地球は粉々だーっ!」

「考えやがったなーっ! ちくしょう!」

「カカロット!」

「わかってる!」

「か……め……は……め……」「はぁぁぁあああ……っ!」

 

 悟空はかめはめ波の準備を、ラディッツは両手に気を集中させる。

 

「俺のギャリック法は絶対に食い止められんぞっ! 地球もろとも宇宙の塵になれーっ!」

 

 ベジータがギャリック砲を放った。

 

「「波―――!!」」

 

 悟空とラディッツも同時に放った。エネルギーがぶつかり合い周りに衝撃波が飛ぶ。

 

「なっ何ぃっ!? 俺のギャリック砲とそっくりだ…!」

 

 互角の状態だ。二倍の悟空のかめはめ波と三倍のラディッツのフルパワーエネルギー波が互角か……これ、悟空たちが既に押し勝っていても良くない?

 

「くっ、俺の技では、カカロットのかめはめ波のような一点に集中した力が出せん……!」

 

 あ、そんなカラクリだったんだ。

 

「な、なら……! 3倍だぁーっ!」

 

 悟空たちの放った技がギャリック砲を一気に押し返した。

 

「!! おっ……押され……うわあああーーーーっ!」

 

 悟空たちの攻撃はベジータまで届き空の彼方へと運んで行った。

 

「はぁ……はぁ……カカロットよ……」

「……わかってる。あいつ、まだ死んじゃいねぇ……!」

 

 ……少し時間が経ち。

 

「どうしたんだ? どうして降りて来ねぇんだ」

「……! そう言えば、月が見えん。もう見えてもいいはずだ。ベジータ達は満月の日を狙ってここに来たはずだからな」

「そういや、前にも月がどうとか言ってたけどどういうことだ?」

 

 そのタイミングでベジータが降りて来た。

 

「月を消しておいてしてやったり! ……って、とこだろうがそうはいかんぞ! ラディッツが居ながら気付かんとはな。それともただの悪あがきか?」

「やはり、そうか……!」

 

 ベジータは、掌から光の玉を出し上へと放り投げた。

 

「弾けて混ざれっ!」

「馬鹿めっ! 俺も大猿化するぞ!」

「ふん! 俺が対処していないとでも思ったか!」

 

 ラディッツの真上からエネルギー弾が降って来た。

 

「な、何ぃ!」

 

 ラディッツは咄嗟に避けるも尻尾に掠めて尻尾が消えてなくなってしまった。

 そして、ベジータは大猿となった。

 

「ぐっ……! し、しまった!」

「ぐはははは! どうだ、貴様ら! 今度こそ終わりだ!」

「お、大猿の化物……!」

 

 悟空は、自分の義理の祖父である悟飯を殺してしまったのが自分であると気が付いたようだ。原作でこれ以降触れられることもないけどね。

 

「カカロット! 元気玉だ! それしかない!」

「あぁ!」

 

 悟空は距離を取ろうとその場を離れる。

 

「おいおい、逃げるのか?」

「はっ、お前の相手なんぞ俺一人で十分だ!」

「……ラディッツ。どうやら、先に死にたいようだな」

 

 悟空は離れた位置で両手を挙げ、元気玉の準備をした。

 ラディッツはベジータにいいように遊ばれていた。叩きつけられ、足を踏みつぶされた。

 

「ぐあああーーーっ!」

「おっと、うっかり足を踏みつぶしてしまった。ん……!」

 

 ベジータは悟空の気配に気づいたみたいだ。

 

「な、何をしている……? 何かやばそうだ……くらえっ!」

 

 ベジータは口から怪光線を悟空に向けて放った。

 

「なっ!?」

「五倍界王拳っ!!」

 

 ラディッツは、悟空を庇った。

「ぐわああああ!!」

「に、兄ちゃん!」

 ラディッツを気遣おうとした瞬間

「で、できた!」

 元気玉が完成したようだ。

「はーーっ!」

 

 すぐさま悟空は元気玉を放ち、ベジータに直撃した。

「ぐわああああ~~っ!」

 エネルギーが起こす衝撃波が伝わり、ベジータを空中へと押し上げていく。

「ぎゃぁあああああ……!!」

 

 ベジータは再び空の彼方へと飛ばされていった。

 悟空はすぐにラディッツの下へ駆け寄った

 

「だ、大丈夫か!? 兄ちゃん!」

「……な、なんとかな。さ、さすがに死んだかと思ったぜ……」

 

 ベジータは落下して、地面へと叩きつけられた。

 

 さて、大猿状態だったけど威力減退が起きていない元気玉をくらった。……どうなったかな? ……なんか普通に起き上がる元気はありそうな気がする。手を出すつもりはなかったけど、ヤジロベーがいないし、万一の時は……ね。

 

「……ぐっ!」

 

 やはり、ベジータは立ち上がった。

 

「い、今のは俺も死ぬかと思ったぜ。か、かなりのダメージだったが貴様らゴミを片付けるぐらいの力は残っているぞ」

「ち、ちくしょう……!」

 

「……仕方ない」

 

 私は、刃状のエネルギー波をベジータの尻尾めがけて放った。地球ごと切断しないように威力は調整したが、圧倒的な力を持つ私が放つのだから外すわけもなくベジータの尻尾は切断された。

 

「な、なにぃっ! お、俺の尻尾が……!!」

 

 ベジータは人間の姿に戻っていった。

 そして、私はベジータの目の前に立った。

 

「本当は手を出す気なかったけど、さすがに勝てなそうだったからね~。まぁ、美味しいとこどりみたいで気が引けるけど、仕方ないよね」

「こ、この女っ!! まだ、いやがったのか!」

 

 ベジータは私に攻撃をしかけるが、元々私のほうが力が上だし、ベジータは大きなダメージを負っている。私にそんな攻撃が当たるわけもない。

 

「ほら、満身創痍なんだからさっさと、帰りなって」

「こ、このぉ……! 舐めやがって……!」

 

 うぅむ。この時点で攻撃を仕掛けると弱い者いじめみたいになるから嫌だけど、帰る気が起こるぐらいダメージを与えなきゃダメっぽいな……

 私は右手の人差し指に力を込めた。

 

「でやぁっ!」

 

 またパンチを空振ったところで

「えい」

ベジータの広い額に少し強めにデコピンをくらわせた。

「ぐあぁああっ!」

 

 ベジータは地面に擦られながら、吹っ飛んでいった。

 

 ベジータは止まった所で懐からリモコンを取り出し、宇宙船を呼び寄せた。

 私は元気だけど、見逃す気満々なので放置。

 

「い、いいのか……? 止めを刺さなくて……」

 

 ラディッツがそんな疑問を口にする。

 

「別に最初から殺す気ないし、ラディッツは殺してほしいの?」

「……いや、許せなくとも仲間だったんだ。殺したくはない」

 

 とってもラディッツっぽくない発言。ちょっと変わりすぎじゃない?

 

「そう。それで、悟空は?」

「オラはここであいつを殺すのはもったいねぇ気がするんだ……だから止めは刺さないでくれ。今度来たら絶対倒せるだけの実力を付けるからよ」

「元から止めを刺すつもりはないよ」

 

 ベジータは体を引き擦りながら宇宙船に乗り込んだ。

 

「よ、よく覚えておけよ、ゴミども……こ、今度は貴様らに奇跡はないぞ……くっくくく……せいぜい楽しんでお……おくんだな……」

 

 宇宙船の扉が閉まり、宙へと飛んで行った。

 

「負け惜しみもあそこまで言えると清々しいねー」

 

 私は宙を見上げながら言った。

 私は倒れ伏しているラディッツと今にも倒れそうな悟空の傍へと向かった。

 

「二人なら勝てると思ったんだけどなぁ……はい、仙豆」

 

 私は仙豆をまだ12個程ストックしてある。この二人にあげても10個残る。

 二人は仙豆を食べて全快した。

 

 

 

 

「おい、イーヴィ。お前、最初から戦ってもベジータに勝てただろ」

 

 ラディッツにそんなことを言われた。図星だけど正直に言う必要もない。

 

「そんなことはないさー。君たちがベジータの体力を減らしてくれたからこそ私は余裕で倒せたのさ」

「ちっ、アホらしい」

「でもよぉ、イーヴィはなんで戦わねぇんだ? あんなに強ぇのによ」

「私はサイヤ人と違って別に戦うこと自体は楽しくないの。ギリギリの戦いを鑑賞するのが面白いの。高みの見物が一番好きなのよ」

「……へっへへ」

 

 私の発言にさすがの悟空も苦笑いしかできないようだ。

 

「さて、君らに休みなんかないよ。次の敵に備えて修行と行こうじゃない!」

「お、おい、次の敵ってなんだ……!?」

「ラディッツは私のしていたことを知らないわけないでしょ。そうすれば自ずと答えはでるよね?」

「……? ……! ま、まさか……!」

「次の標的はフリーザよ!!」

 




ラディッツが頑張りました。今後も活躍するかはわかりません。


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31 ナメック星へ

ちょっとラディッツの扱い方がわからないです。キャラを再現しようと少し頑張りましたけど完璧に別人になってしまった気がします。結構、受け入れられない人多いかもしれません。というか、心変わりが早すぎる。


 ベジータが地球を去った後、私はナッパの持っていたスカウターを使ってナメック星にドラゴンボールがあることをリークした。じきにベジータもそのことを知ってナメック星に向かうことだろう。そして、私たちもナメック星に向かうと……その前にラディッツと悟空を説得しないと……悟空は必要ないかもしれないけど。

 

「ふ、フリーザだと……! お前、言っていることわかっているのか!?」

「フリーザ……?」

 

 悟空はフリーザのことなど知っているわけもなく疑問符を浮かべている。

 

「わかっているよ。宇宙の帝王フリーザでしょ」

「いいや、わかってない。フリーザはベジータより強いんだぞ! ベジータが比較にならんぐらいな!」

「そ、そんなに強ぇんか……!? ちょっと見てみてえな……」

「確かに今の君たちじゃ天地がひっくり返ろうとも勝てない相手だけど、修業すれば届くわよ、そのうち」

「無理だ! 仮にそうだとしても、何故今すぐなんだ……!」

 

 ラディッツがすごい現実的だなぁ……というかブロリーを相手にしたベジータみたい。

 

「ドラゴンボールの存在を知っちゃったみたいだからさ。力を持つ権力者が叶えようとする願いなんて不老不死しかないからね」

 

 私が教えたんだけど。

 

「ド、ドラゴンボールって……! 地球に来るんか!?」

「いや、来ないと思うわ。神様とピッコロの故郷の方に探しに行っているだろうから」

 

 二人にナメック星のことも話しておいた。しかし、ラディッツはベジータ達と一緒に居たはずなのにナメック星人についての知識がなかったとか……どういうことなの?

 

「このままだとナメック星が危ないし、その内地球にも来ることが考えられる。それなら不老不死になられる前に倒しておかないと」

「……不死身じゃ、倒しようがねぇもんな。それならオラ行くよ。もっと強くなりてぇし、そのフリーザってのとも戦ってみてぇ」

「俺は行かんぞ……死にに行くようなもんだからな」

(スーパー)サイヤ人になりたいとは思わないの?」

(スーパー)サイヤ人だと? 貴様が何故その言い伝えを知っているのかは知らんが、そんなのはただの架空の話だ」

(スーパー)サイヤ人ってなんだ?」

「1000年に一人現れるどんな天才戦士も超えられない壁を超えるサイヤ人……ってことらしいけど実はある条件を満たせば簡単……って程でもないけどなれる」

 

 ブウ編で悟天とトランクスなんて理由もわからずなっていたしね。ベジータの超サイヤ人のバーゲンセールって表現は、中々上手いこと言うなぁと思ったぐらいだし。

 

「その話が本当だとしても貴様が何故そんなことを知っている」

「知っているからとしか言えない」

「ちっ、それでその条件とはなんだ」

「教えない。教えてなれるもんでもないし、場合によっては知らない方がなりやすそうだしね」

「な、なんだとぉ……!」

「おっ、私に歯向かう気?」

 

 ラディッツの首にはまだペンダントが付いている。

 私はスイッチをちらつかせる。

 

「ふん。あの程度の電撃ならもう効かんぞ」

「それはどうかな?」

 

 私はスイッチを入れた。

 

「ごおぎゃあぐぶりあっ!」

 

 ラディッツが意味不明な悲鳴を上げた。

 

「いつからあの電力が最大だと錯覚していた」

 

 ラディッツは黒焦げになって、倒れた。

 

「ひ、ひでぇな……」

「あ、ちなみに悟空は、超サイヤ人になる前提条件はクリアしてるかな」

 

 穏やかで純粋な心なら悟空が子供の時点で持ってるでしょ……いや、穏やかではないか。

 

「前提条件って他にもあんのか……」

「むしろもう一個の方が大事なんだけど、これが難しいというか……偶然とかの領域だね」

「なんだよ……運まかせなんか?」

「運ではないけど知らないと運だね。大事な大事なきっかけなんだけどね……前提条件、悟空はクリアしているけど、そのもう一個の方が私のせいでクリアしづらいんだよね」

 

 私、誰もってか悪人以外の主要人物殺させる気がないからなぁ。悟空が本気で怒るとしたらやっぱ仲間が死んだ時だろうから。

 

「イーヴィのせいって……なんか段々気になってきちゃったじゃねぇか」

「まぁ、そのうち超サイヤ人になれるようになるよ」

「それならいっか」

「半月後くらいに君の家に行くから。それまでに準備しておいてね」

「あぁ、わかった」

 

 気にせず前向きに生きる姿は彼の魅力だと思う。父親としては、ダメ人間だけど。

 

 そして、悟空とラディッツを孫家に帰し、私は外道屋本社へと帰った。外道屋の社員達には、宇宙からの飛来物の回収を命じており、私の要望通り回収してくれたようだ。すぐにカプセルコーポレーションへと運び込み、ブリーフ博士と共に重力発生装置付きの宇宙船作りに取り掛かった。私が関わる以上、原作と全く同じものを作る気はなく、原作よりも巨大なものへと改良した。外道屋で開発した合金技術も駆使し、私の機械の身体を構成する物質に近い超硬度を持つものとなった。

 宇宙船を作り終えたので、ナメック星に連れて行くメンバーを考えよう。まず、悟空とラディッツは確定。悟飯とクリリンは迷いどころだ。でも、クリリンにはナメック星にいく理由が欠片もない。悟飯は、鍛えてあげたいけどチチさんがいるからな……ま、何としてでも連れて行くけど。ピッコロさんは……必要ない気がするけど、悟飯と一緒に連れて行った方が二人共喜ぶでしょう。

 私は早速、孫家に向かうことにした。瞬間移動をするために気を探る……たまたまラディッツを先に見つけたのでそっちへ行くことにした。

 

「やぁ、ラディッ……ツ!?」

 

 私は、ラディッツのやっていること……というか格好の両方に面食らった。ラディッツが……オーバーオール着て、麦わら帽子被って畑を耕している。……お前は戦闘力5のおっさんかよ!

 

「おぉ、イーヴィか。半月ぶりだな」

「……地球に馴染みすぎでしょ」

「サイヤ人たるもの戦いこそ全てと思っていたが、こういうのも悪くないもんだ」

 

 首に巻いたフェイスタオルで汗を拭うラディッツ。良い汗かいたとでも言いたげな表情といい……なにこれ?

 

「……なんで畑、耕しているの?」

「居候する身で働かないのは肩身が狭いだろ。甥を攫ったりもしたからな……」

 

 え? なに、この常識人っぷり。自分の行いを反省してるし。悟空とベジータにラディッツの爪の垢煎じて飲ませたい。

 

「おーい! 兄ちゃーん! メシできたぞー!」

「すぐ行く! 立ち話もなんだ、カカロットの家でメシでも食いながら話そう」

 

 ……ホントに誰? この人。

 孫家に行くと悟空と悟飯に暖かく迎えられた。

 

「それで、ナメック星に行くこと考えてくれた?」

「オラは行くつもりだぞ」

「ラディッツは?」

「正直、まだ行く気はせん……が、確かにフリーザを放っておけばとんでもないことになるかもしれん。この地球も……な。だから……その……なんだ、お前らと一緒に行こう。ナメック星へ」

 

 正直、( ゚д゚)って感じ。ラディッツさんちょっと悟空たちに影響受けすぎと違いませんか……穏やかになり過ぎでしょ!

 

「な、なんだ。その反応は……」

「いや、ちょっとビックリして……まぁいいや。それで……」

 

 私が悟飯の方を向くとチチさんに睨まれていた。

 

「あ、あの、チチさん、怒ってます?」

 

 私は恐る恐る聞いてみた。

 

「当たりめぇだ! イーヴィさは、一年前に悟飯ちゃんをピッコロに渡したそうじゃねぇか! もし不良になってたらどうするつもりだ!」

「えー……私としては、悟飯君はとっても強い力を秘めていますし、それを放置するのはもったいないなぁーと思っているわけで……それでナメック星にも一緒に修業に行けたらなぁ……って」

 

 私に対してこんな強く言ってくる人初めてだからなんか尻込みしちゃう……いや、いなかったわけじゃないけど今までのは悪ふざけに対するツッコミだったから。これは、私の押し付けの善意だけど悪いことしたわけでもないのに怒られるとか初めての経験だから戸惑っちゃう。

 

「今、必要なのは力じゃなくて勉強だ! 悟飯ちゃんは(えれ)ぇ学者さんになるんだからな!」

「別に今からそんなに詰めなくても十分学者になれると思いますよ」

「甘ぇ! そんだなこと言ってるとあっという間によそ様に追い抜かれちまうだ」

 

 本当に頑固な教育ママだ……子供のことを思っているのはわかるけど押し付けるのはなぁ……悟飯も学者になりたいって言っているけどさ。

 

「……チチよ。悟飯の意見を聞いてから決めてやってくれないか。家族とは言え、強いるだけでは良い結果を産むとは限らん」

 

 だから、ホント誰!? いや、めっちゃ良いこと言ってるけどさ。

 

「ラディッツさがそう言うなら……悟飯ちゃん。どうなんだ?」

 

 ラディッツ、この半月でどんだけチチさんの信頼得てるの!? 下手したら悟空より信頼されてるんじゃない!?

 

「ぼ、僕はできればお父さんたちとナメック星に行ってみたいです。せっかく、おじさんとも仲直りできたしもっと仲良くなれたらいいなって……! 地球のためにも何かしたいですし……」

 

 チチはショックを受けたようだったが……覚悟はしていたせいかそこまで落胆している様子はなかった。

 

「……はぁ。仕方ねぇ。行ってこい! でも、宿題を忘れるでねぇぞ!」

「……! はい!」

 

 すげぇ、チチさんから許可貰ったよ……

 

「よかったなぁ、悟飯」

「はい、おじさんのおかげですね」

「よせよ。悟飯が自分の意思を表明した結果だ」

 

 私は今日、何度ラディッツを誰だ、お前と思っただろう……地球に馴染むにしても早すぎる。まぁ、良いことだけどさ。サイヤ人がこんなんでいいのか? ベジータに色々言われそう。

 悟空たちには明日にも出発することを伝え、午前中にはカプセルコーポレーションに来るように伝えた。

 そして、私はピッコロを誘いに瞬間移動をつかった。

 

「やぁ、ピッコロ」

 

 ピッコロは、いつものように高野にいた。本人も言っていた気がするが、故郷に似た場所を好んでいるようだ。

 

「何の用だ」

「君の故郷に危機が迫っているから君を連れて行ってあげようかと思って」

「危機が迫っているだと?」

「まぁ、私のせいだけど自分の故郷だし放ってはおけないでしょ」

「……故郷のことなどどうでもいい。だが、大魔王が自分のルーツを知らないというのもおかしな話だ。いいだろう。行ってやる」

「どうも。あと、悟飯も一緒だよ」

「……そうか」

 

 あ、ちょっとニヤッとした。ピッコロさんはやっぱりベジータに次いでツンデレさんだと思いました。まる。

 

 

 翌日、カプセルコーポレーションには、悟空、悟飯、ラディッツ、ピッコロが揃った。全員が、宇宙船に乗り込んだところで、ヤムチャが出てきた。

 

「イーヴィさん! 俺も連れて行ってくれ!」

「……悟空たちでもやばそうなのにヤムチャじゃなおさら無理!」

 

 ここはきっぱり言う方が優しさだ。

 

「うっ……わかったよ。諦める」

 

 この場には、ブルマやヤムチャの他にもクリリン、天津飯、餃子、ウーロン、プーアルと勢揃いしており、みんなが見送ってくれた。

 

「さぁ、いざナメック星へ!」

 

 




このラディッツの性格の変わりよう……断髪でもさせようかな……


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32 フリーザ編をどう乗り越える?

 私はナメック星に向けて飛び立ったものの少し悩んでいた。フリーザ自体は私が戦えば一瞬で方が付くが、そうするとセル相手に詰む可能性が出てくる。なんとか悟空を超サイヤ人にしたい。だが、私の目標は悪役を除いた主要人物を誰も殺させないことにある。クリリンも連れてきてはいない。私を代役に使うというのもありだが、悟空が私の死ぐらいで超サイヤ人になるほど怒ってくれるかが微妙なところだ。というか、私はこの身体が爆散したところで私の身体のストックは2つあるし、私という存在を完全に消し去る方法なんて二つしかない。この世界の誰にも教えてないからこの身体が爆散すれば死んだと思うだろうけど。それにクリリンがフリーザに殺された時は二回目の死ということもあり、悟空はドラゴンボールで生き返れないと思っていた。だから私が死んだ場合「でぇじょうぶだ、ドラゴンボールがある」になりかねない。

 

「なぁ、イーヴィは修行しねぇんか?」

 

 ピッコロと悟飯のために10Gから始めた重力室の中で孫一家は筋トレしていた。ピッコロさんは空中で胡坐をかいて瞑想中。そして、私はただぬぼーっと座っているだけだった。

 

「機械の身体を鍛えても強くはなれないの。だから修行しても意味ないの」

「そうなんか……それなら後で、組手してくれよ」

「まぁ、それぐらいなら……気功波とかはなしよ」

「わかってるって」

 

 この宇宙船は悟空が乗っていた宇宙船の3倍はでかく、超頑丈に作ったので組手をするぐらいで壊れることはない。ついでに全員で足並み揃えて修行をするためにゆっくりナメック星に向かっている。ナメック星に到着するのは2週間ほどかかるだろう。

 

『イーヴィよ……聞こえるか』

「あ、界王様」

『フリーザに挑むなんてことはやめろ! 今まで冗談だと思って聞いていたが、本当にナメック星にいるじゃないか!』

「諸悪の根源を消し去りに行くんだから別にいいじゃない」

『馬鹿者!! フリーザの怒りを買ってみろ、他の星々もただではすまん!』

「心配する必要ないさ。みんなにも勝てる奴じゃないってことは伝えてあるから」

『なら、いいが……いいか! 絶対に戦うんじゃないぞ』

「はいはい」

 

 どうせ、戦うことになるだろうけどね。

 

 この修業期間、悟空とラディッツは異常な程自分をギリギリまで追いつめて仙豆を食べるということを何度かしていた。いや、原作の悟空もやっていたのだが、おかげで仙豆が残り2粒になってしまった。この二人が修業している間は、激しすぎて他に人が入れず私と悟飯、ピッコロさんは別の部屋で待っていることしかできなかった。

 

 残り1日という時点で悟空とラディッツ、ピッコロさんは100Gを克服した。悟飯は、チチに課せられた宿題などをやっていたこともあり、80Gまでしかやっていない。それでも、この2週間で全員ギニューを超えただろう。でも、どうひっくり返ってもフリーザには届かない。多分、最終形態ぐらいまでなら追い込めるだろうがそこが限度だ。最悪の場合は私がフリーザを殺すしかないかな。気が引けるがここで悟空を超サイヤ人にできなくても超サイヤ人にするための奥の手はある。ついでにベジータは悟空が超サイヤ人になれるようになれば勝手になれるようになるでしょ。ラディッツは知らん。

 

 ナメック星に到着し、全員外へと出た。

 

「ここが故郷か……」

 

 ピッコロさんが感傷に浸ってる……

 

「とりあえず、二組に分かれようか。既にフリーザ達がドラゴンボールを探し回っているみたいだし、できれば助けよう」

「フリーザはどうするんだ。この一つだけ感じる馬鹿でかい気が、フリーザって奴だろう? とてもじゃないが、敵わないぞ」

「フリーザと会ったときは、基本逃げて。戦えると思ったら戦ってもいいけど、十中八九死ぬわよ」

 

 サイヤ人の宇宙船が一つ落ちていくのが見えた。今、ベジータも来たところか……

 

「あれは……ベジータか!? 気の感じからしてもおそらく奴だ!」

「ふむ……今のみんなならベジータを倒せると思うわ。でも、多分ベジータもフリーザに挑みに来ているから、場合によっては協力関係になるかもね」

「どうしてそんなことが言える」

「ラディッツなら、わかるんじゃない?」

「あぁ……サイヤ人は誇り高き種族だ。ベジータは王族だけに特にな。フリーザの圧倒的な力の前では従うしかなかったが……内心は腸が煮えくり返っていただろうよ」

 

 みんながベジータの内心を知ったところで二つのチームに分けた。片方は私、悟飯、ピッコロさん。もう一つは、悟空とラディッツだ。パワーバランス的にはこれでいいでしょ。私は単独行動でもいいんだけど……一人で行動しててもつまんないし。

 

「悟空とラディッツは、ナメック星人の村に行ってベジータから守ってあげて。私たちは、フリーザ達の様子を見ながらナメック星人達を助けるわ」

「えぇ……オラ、フリーザって奴が見てみたかったぞ」

「無駄に誰かの命が奪われるのは放っておけないでしょ」

「そうなんだけどよ……わかったよ」

 

 悟空は不承不承と言った感じだ。私が悟空にフリーザの方の様子を見させないのは悟空をフリーザに会わせたりなんかしたら「戦いてぇ」とか言い出すに決まっているからだ。ナメック星人達が攻撃されているのを見れば、悟飯と同じ様にキレてそのまま挑むに決まっている。悟飯も多分怒るだろうが、フリーザに手を出すことはないでしょ。出してもドドリアを蹴り飛ばすぐらいだ。

 

 悟空とラディッツはベジータの居る方にある、気が20程固まっている場所に向かった。私たちは、この星で最も大きな気を持つ者――フリーザのいる場所へと走って向かった。

 

 




行き当たりばったりで考えているので、本当にどうなるか未定。


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33 ノープラン

ストックが尽きました。それにリアルが忙しくなりますのでこれから更新速度が落ちると思います。ご了承ください。


 フリーザの居る場所に向かっている途中、ベジータが気を上げているのを感じた。多分、今頃キュイが汚い花火にでもなっているのだろう。

 

「ふっ、それにしても俺たちは随分強くなったようだな」

 

 ピッコロさんがそんなことを言っていた。今のベジータは地球にやって来た時よりも強いが、今やピッコロさんと悟飯の方が圧倒的にパワーは上だ。

 

「そりゃ、あんな無理な重力やってればね」

「しかし、これでもフリーザとかいうやつには届かない……とんでもない化物だ」

「……僕たち、本当にこの星の人たちを助けられるんでしょうか」

「さぁね。やってみなくちゃわかんないさ……静かに」

 

 フリーザ達を見つけ、岩陰に隠れた。既に村におり、ナメック星人が外に出るように言われていた。

 

「お、俺とそっくりだ……あれが、ナメック星人か……」

「あのドラゴンボール、僕たちが知っているのよりずっと大きいですよ……!」

「バレるから静かにして」

 

 フリーザはナメック星人たちにドラゴンボールのありかを聞いていた。……そういえば、ここで名前のあるキャラが二人も死ぬんだよね。片方に至っては、本当にやられるだけの子供だけど……主要人物とは言えないけど……これを見殺しにすることは私の目標に反する……のか?

 

 フリーザ達は、村の住民を一人殺し、それに怒った他の村人がフリーザ達に攻撃を仕掛けるが逆に殺された。若いナメック星人たちが助けにやってきたが、倒せるのは雑魚だけで、ドドリアには敵うはずもなかった。ここの村の長老――確か……ムーリは、スカウターを破壊したけど怒りを買うだけでそこまで意味がないんだよね。もちろん全くの無意味とまでは言わないけど。

 悟飯、ちょっと飛び掛かりそうだ。それをピッコロさんが抑えている。実は、私も止めようかちょっと迷ってる。放置してたら死んじゃうし……ここでの見殺しはやっぱり目標違反なのかなぁ。

 

「ナメック星人の誇りを見せてくれるっ!」

 

 ムーリ長老が言った瞬間mフリーザが指からエネルギー波――ゲームとかでは、デスビームと言われるやつを放った。それは、ナメック星人の子供にあたった。……って、カルゴ死んじゃったよ! 

 

「カ、カルゴッ!」

 

 ……名前しか知らないナメック星人の子供さん、ごめんなさい。私の目標的にはノーカンということにさせてください。一言も喋らないし、物語にも関与しないキャラを登場人物とカウントするのは私的にはなしの方向で、ただのモブと判断することにしました。どうせドラゴンボールで生き返るからいいよね。……というわけで、ムーリ長老とデンデは助ける方向で行こうか。

 

「……二人共、隠れててね」

「な、何……!?」

 

 私は瞬間移動でドドリアのムーリの間に入り、ドドリアの動きを止めた。

 

「!! な、なんだてめぇは!?」

「ノーコメント」

 

 軽い裏拳をくらわせた。ドドリアは家に激突した。

 一撃で殺せたけど、ベジータに譲っておこう。ここでドドリア殺したら、ザーボンも殺さなくちゃならなくなって、ザーボン殺したらフリーザってなっちゃう。フリーザはできれば私以外に倒して欲しい。無理ゲーな様な気もするけどできるだけ粘るつもりだ。

 

「それじゃ、さよなら」

 

 ムーリ長老とデンデを連れて飛んだ。

 

「追うんですよ、ドドリアさん! 捕まえなさい!」

 

 抱えているからちょっと速度が出し切れないな……仕方ないちょっと移動したし、瞬間移を使お。別に額に指当てる必要ないし……悟空のところへ

 

「! ど、どこ行きやがった!」

 

 と、ドドリアが騒いでいる頃だろう。予定通り、悟空とラディッツのところに着いた。

 

「や、悟空」

「い、イーヴィ! いきなりどうしたんだよ。ピッコロと悟飯は? それに、後ろに居るピッコロみてぇなのは……もしかしてナメック星人か!?」

「フリーザ達に殺されそうになったから助けてきたよ」

「い、一体、君たちは何者かね……?」

 

 ムーリ村長が訪ねてくる。そりゃ、当然の疑問だ。

 

「えーっと、私たちは地球から来ました。ナメック星へは、ちょっと責任を取りに来たって感じですかね。私以外はただの巻き添えみたいなものですが」

「はい?」

 

 私は、ムーリ村長に私がドラゴンボールの存在をフリーザにわざと漏らしたことや地球にドラゴンボールがあること、そしてフリーザ達とどうことを構えるつもりかを話した。

 

「そうでしたか……ならば、最長老様に知らせに行きましょう」

「このナメック星で一番偉い人ね。いいわ、どっちの方向に居る?」

「あ、あちらの方角ですが……?」

 

 ムーリはどうするつもりか疑問に思っているといった表情だ。

 

「さっきも見たでしょ。私は、気を見つけられればその人の場所に瞬間移動できるのよ」

「おぉ……それはすごい……!」

「私の肩に掴まって。私に間接的にでも触れていればみんな一緒に移動できるわ」

 

 ナメック星人特有の二つの気がある場所を見つけた。瞬間移動をした。

 

「なっ……!」

「ようこそ、地球からやって来た方々……まずは、わたしの息子たちを助けていただいたことに礼を言いたい。ありがとう……」

 

 あら、私が急に出てきて驚かないのは初めての反応だ。さすがは最長老と言ったところだろうか……ネイルはそんなことなかったみたいだけど。

 

「いえいえ、むしろこの現状を作り出してしまったのは私のせいもありますから」

「ナメック星に住む者の知恵と力の証、希望の玉がまさかこのようなことを……」

「できればそのドラゴンボールをいただけませんか? 地球にもドラゴンボールはありますから私たちにドラゴンボールは必要ありませんが、フリーザ達に渡すわけにはいきません。まぁ、7つ揃ったところでフリーザ達に願いを叶えることはできないでしょうが……」

「あなたは一体どこまで……!」

 

 最長老がここに来て、驚きの表情を見せた。あ、寿命縮めちゃったかな?

 

「地球の事情に関しては、悟空を調べた方が早いかもしれませんね。私、機械ですし」

「へっ? オラ?」

「ど、どういうことかはわかりませんが、そこのお方こちらに来てくれませんか」

「あ、あぁいいけど……」

 

 最長老は悟空の頭に手を置いた。

 

「すこし、あなたの過去を探らせてくだされ……」

 

 最長老はこちらの神様の事情を知ったようだ。

 

「まさか、カタッツの息子がな……なるほど。あなた方にご助力……いや、ナメック星のために協力させてください」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「それにしてもあなたはとてつもない力をお持ちですね。それにサイヤ人でいらっしゃるのにとても清い心の持ち主だ」

「そ、そんなことまでわかるんか?」

「ええ、そこの御仁もサイヤ人だとわかりますが……どういうわけか邪悪な気配が薄い。あなたから良い影響を受けているのでしょうね」

「……ふん」

 

 ラディッツがそっぽ向いた。あんなに丸くなってもあまり認めたくない事実というやつなのだろう。

 

「あなたにはまだ眠っている力がある。私には引き出しきれませんが……それを起こして差し上げましょう」

「……え? す、すっげぇ! 力が溢れてくる……!」

「な、なんだカカロットの戦闘力が急激に上がっている!」

 

 最長老に潜在能力を引き出してもらえるかな……とは少し思っていたがこうも上手くいくとは思わなかった。でも、フリーザに勝てるかと言われたら難しそうだ。

 

「そこの御仁もどうぞ」

「……よろしく頼む」

 

 ラディッツも潜在能力を引き出してもらい、かなりの戦力アップになった。少し、ベジータがかわいそうになるレベルで段違いにパワーアップしたな。

 

 気の感じからして、ドドリアは死んだようだがザーボンは生きているか……ベジータは死にかけかな? つまり、ベジータは村を一個破壊したのかな……あ、考え事する前にピッコロさんたち回収しておこう。

 

「ごめん、ピッコロたちを連れてくるね」

 

 瞬間移動でピッコロの下へと向かった。

 

「ごめん、ピッコロ」

「……イーヴィ! 勝手に行動するな! こっちもばれるところだったろうが!」

「ま、まぁいいじゃない。それよりも、みんなで一旦合流しよう」

「……ちっ、仕方ない。いくぞ、悟飯」

「はい!」

 

 瞬間移動で最長老の下へ戻ろうとすると悟飯が裾を引っ張った。

 

「何?」

 

 耳打ちするようにこちらに顔を近づけるので耳を近づける。

 

「ピッコロさんはああ言ってましたけど、僕もピッコロさんも正直スカッとしましたよ」

「へぇ~……」

「……お前の瞬間移動を使うんだろ。さっさとしろ」

 

 さっきの耳打ちがピッコロさんに聞こえていないわけがない。つまりはそういうことか。ツンデレさんめ。

 

「はいはい」

 

 最長老の下へと向かった。

 

「も、もしや……カタッツの息子……!?」

 

 最長老はピッコロさんを見てそういった。

 

「お前は、いや、あなたは……?」

「覚えていませんか……まぁ、無理もないでしょう」

「このお方は最長老様だ」

「ナメック星の長……か。記憶にはないが、少し懐かしい気分になる」

 

 宙から5つの邪悪な気を感じる……このタイミングでどうもギニュー特戦隊がやってきたようだ。原作よりタイミングが少しばかり早い気がするが……多分私のせいだな。私の特徴はフリーザ達に割れていたのに前に出たから警戒して早めに連れて来たんだろう。これ……ベジータは、宇宙船から抜け出せないんじゃないかな。

 

「今、5つの大きな力を感じたわ。私たちの敵ではないと思うけど、フリーザ側の戦力のはずよ。各自、戦う準備をしておいて。今のあなたたちならフリーザにも勝てるはずよ」

「5つ……ギニュー特戦隊か……!」

 

 やっぱり、ラディッツは知っているのか。ラディッツはベジータより強いかもしれない奴が5人居ることをみんなに伝えていた。

 

 フリーザに勝てるってのは、全員まとめてかかればあるいは……ってぐらいだけどね。もちろん、私を除いて。もう少し倒すために力を付けたかったけど、あんまり引き伸ばしても意味はないだろうし……迎え撃つことにしよう。無理だった時は私が殺すでオールオッケー。

 

「最長老様、そこの二人の力も引き出してもらえますか?」

「ええ、もちろん」

 

 

 

 

 これで、全員潜在能力を引き出してもらえるわけだ。それならばもう戦いに行くしか選択肢はないだろう。私に後退の二文字はない! ……さっき逃げたけど。

 

「さて、ナメック星の命運を分ける決戦に行こうか」

 




正直、原作での時間を全く考慮していません。まぁ、ノリと勢いだけで考えていますので許してください。


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34 ギニュー特戦隊

リアルが忙しくなると言ったな。あれは嘘ではないです。でも、いいところまで書けたので投稿します。


内容に関してはだいぶ簡略化してギニュー特戦隊を倒します。フリーザ以外はただの雑魚みたいな状態なので仕方ない気もしないでもない。


 私はみんなが心の準備を終えたのを確認し、フリーザの下へ向かうことにした。

 

「みんな覚悟はいいわね。行くわよ」

 

 私は瞬間移動を使った。丁度、宇宙船の上でフリーザとザーボン、ギニュー特戦隊が揃っていた。

 

「やぁ、フリーザ。初めまして」

「! あなたは先程の……やはり、あなたが最近私の部下たちを殺していたサイレントキラーですね」

「あれが、サイレントキラーか……なるほど、本当にスカウターに何の反応もない。生物ではない……ということでしょうな、フリーザ様」

 

 ギニューが私の考察をしているようだ。まぁ、間違ってはいない。

 

「そのサイレントキラーって止めてくんない? 私にはイーヴィって名前があるの」

「それで何の用ですか、ナメック星人にサイヤ人――ラディッツまで一緒にここに来て……そちらのドラゴンボールを私に渡してもらえるのでしょうか?」

「違うね。私はお前を――フリーザを殺しに来た」

「私を? ほーほっほっほっほ! 面白い冗談を言いますね」

 

 ギニュー特戦隊も大笑いしている。

 

「後ろに居る奴らも大した戦闘力もねぇのに何言ってやがんだ!」

「試してみるか?」

 

 ラディッツが答えた。

 

「はーはっはっは! ベジータにも劣るラディッツ如きが俺たちに敵うものか!」

「……私から提案なんだけど、ちょっと1対1の試合をしない?」

「試合ですか?」

「そう。ここにベジータいるでしょ。ベジータを加えれば私たち6人。そちらは……7人だけどそれぐらいいいわ」

「……いいでしょう。しかし、試合と言っても私たちは殺しますからね」

「別に1対1を守るなら文句は言わないわ。それじゃ、ベジータのところに行こうか」

 

 まぁ、とっくに回復して脱出の機会を伺っているところだろうけど。

 

「ベジータが協力してくれんのかな……」

「奴とて、この状況をどうにかすることはできまい。こちら側につくしかない」

 

 宇宙船の一部が爆発した。

 

「な、なんだ!?」

「ベジータがドラゴンボールを狙って……というとこかな」

「なんですって!? みなさん、行きますよ!」

「はっ!」

 

 ザーボンもギニュー特戦隊も一緒に宇宙船の中を探しに行った。ベジータ、見つかったらオーバーキルまったなしだね。

 

 

 

 意外とすぐに戻って来た。スカウターもあるから当然か……ベジータの外に居ると見せかけて中に居るという作戦が使えないからね。ボロボロの状態でリクームが持ってここまで来た。

 

「おいおい、お前らのチームのベジータちゃんはもうボロボロだぜ」

「べ、ベジータ!」

 

 まだ仲間意識を持っているのか、ラディッツが心配そうに声をかけた。

 

「勝手に殺さないでよ。まだ、試合は始まっちゃいないんだから」

「ほーほっほっほっほ! どうせ死ぬことになるでしょうが……まぁ、いいでしょう。まだ最後の一個のありかをベジータから聞き出せていませんからね」

「その件だけど、ドラゴンボールを探す道具を持っているわ。私たちに勝てたらそれもくれてやるわ」

「おい、イーヴィ! そこまで言う必要はないだろう!」

 

 ピッコロさんに怒られた。(´・ω・`)

 

「それは素晴らしい! それではすぐにその道具をいただきましょう」

「もう勝った気でいるの? それにはまだ早いと思うわ」

「我らの恐ろしさをわかっていないようだな。他の兵士たちと我らギニュー特戦隊は別格だぞ。さらに、フリーザ様はその遥か上を行っていらっしゃる。貴様らに勝ち目などないぞ」

「あっそうですか。とりあえず、ベジータ渡してもらえる?」

「へっ、いいぜ」

 

 ベジータがこちらに投げ渡され、私の横に転がった。

 

「……な、なぜ貴様らが……ここに……」

「ドラゴンボールを使わせるわけにはいかないからね。君にもあいつらと戦ってもらうよ。ザーボンにリベンジもしたいでしょ」

「……がはっ……! 余計な……お世話だ……!」

「意外と元気だねぇ。それならこれはいらないかな?」

 

 私は、ベジータの前に仙豆を出した。

 

「なんだ……これは……?」

「食べればわかるわ」

 

 ベジータは私から奪い取る様に仙豆を取って食べた。傷が全快したことにベジータは驚いていた。

 

「どうなってんだ……!? ボロボロだったベジータが……」

「さぁ、始めようじゃない。ドラゴンボールを賭けた勝負を」

 

 宇宙船の傍に全員降りた。

 

「先にルールの確認をしようか」

「必要ありません。すぐに始めましょう」

「……それじゃあ、自分のチームの中から一人指名して」

「それでは、ザーボンさん。今度こそベジータに止めを刺してきなさい」

「はっ! 了解しました。フリーザ様」

「へっ、望むところだ」

 

 あ、勝手にベジータが……! まぁいいか。最初から戦わせる気だったし。

 

「さっきのようにはいかないぜ。ザーボン」

「先ほどの戦闘のことを忘れているようだな。私はお前より戦闘力が高いのだぞ」

 

 ザーボンは変身して、全身が肥大化する。

 

「ザーボンさんよ……あんたはサイヤ人のことを詳しく知っているはずじゃなかったのか? サイヤ人は死から立ち直るたびに戦闘力をどんどんと高めることができる。スカウターで俺の戦闘力をよぉーく見ておけよ。はぁぁぁあああ……!!」

 

 ベジータが気を高めていく。うーん、ギニュー以外なら殺せそうかな……

 

「ば、馬鹿な……!」

「どうした? かかってこい」

「こ、こんなものはスカウターの故障だ!」

 

 ザーボンは攻撃を仕掛けるが、ベジータに掠る気配すらない。

 

「随分と差が付いてしまったようだな」

「ベジータ如きが舐めるんじゃない!」

 

 ザーボンの大振りの一撃を、上体を屈めて避け、ベジータの拳はザーボンの鎧を破壊し、ボディに突き刺さるほど強い一撃を放った。

 

「あ……あぐ……」

「今まで散々こき使いやがって……死ね!」

 

 そのまま突き刺した拳でエネルギー波を放ち、ザーボンは粉々に砕け散った。

 

「べ、ベジータ! そこまですることはないだろ!」

「カカロット、いつまで甘いことを言っているつもりだ。それに、俺が殺さなくてもフリーザが殺しただろうぜ」

 

 フリーザはしかめっ面していた。

 

「みなさん、ベジータの言う通り負けたら殺しますよ。私の部下に役立たずはいりませんからね」

「はっ!」

 

 ギニュー特戦隊はそう返事をするがグルド、バータ、ジースは冷や汗をかいていた。

 

「おいおい、なんで怯えてんだよ。ザーボンなんて雑魚だぜ。俺たちの敵じゃねぇよ」

 

 リクームが励ますように言っていた。

 

「だ、だけどよ、ベジータの戦闘力……ありゃ、間違いないぜ」

 

 グルドは一番戦闘力が低いせいか、一番心配そうだ。

 

「早くしなさい。殺しますよ」

「は、はいぃ!」

 

 今度はグルドが闘うようだ。ここは悟飯に……といきたいところだけど

 

「私が闘うわ」

 

 悟飯じゃ、超能力で不意をくらう恐れがある。それでやられたら情けなさ過ぎて涙が出る。強さ的には負ける要素はないけど、そんな姿はみたくない。というわけで私が闘うことにした。

 

「おい」

「何、ベジータ?」

「あいつは、戦闘力は低いが超能力を使う。油断するなよ」

「! あぁ、問題ないよ」

 

 ベジータが私にそんなことを言うとは思わなかった。まぁ、私がフリーザを倒す戦力になると思っているからこその発言だと思うけど。

 

 グルドは私が出てきて安堵しているようだ。現在、一番強いのは私なんだけどね。

 

「こんな女じゃ、あっという間に終わっちまいそうだ」

「お前がね」

 

 私は、最大速度の手刀でグルドの首を刈り取った。

 

「え?」

「ほら、終わった」

「い、いつの間に……い、一体何が……?」

「さぁ? 答える必要もないし、じゃあね」

 

 私はグルドの頭をエネルギー波で消し飛ばした。

 

 どうも敵味方含めて私の速度に驚いているようだ。ジースがバータより速いとかそんな話しているし……ベジータも驚きを隠せない感じだ。

 

「イーヴィ、何も殺さなくても……」

「どうせフリーザが殺しちゃうだろうから、私が殺しても結果は変わらないわ」

「そうかもしんねぇけどよ……」

「カカロットよ、ここは戦場だ。命を奪わなければ命を奪われることになることだってある。情けはかけない方がいい」

「兄ちゃん……」

 

 フリーザの機嫌はますます悪くなっているようだ。

 

「フ、フリーザ様! 次こそは勝ってみせますぜ!」

「その意気だ! リクーム! 今度こそ奴らの息の根を止めてこい!」

「了解! ギニュー隊長!」

 

 次はリクームか……

 

「悟空、次やる?」

「あぁ、待ちくたびれたぞ」

 

 悟空は前へと出る。

 

「なんだよ。戦闘力たったの5000か。これじゃ、相手になんねぇな」

「おめぇはオラに勝てねぇ。戦わなくてもわかる」

「へ!? ぶわーはっはっは! 何を言うかと思ったら、このゴミムシとんでもねぇホラをふきやがったぜ!」

「そうでもねぇと思うぞ」

「これ以上大ボケ野郎の冗談に付き合ってられねぇぜ。一瞬で永久に大人しくさせてやるぜ」

 

 ギニュー特戦隊特有のあの変なポーズを取るリクーム。

 

「リクーム……!」

 

 また違うポーズになる。が、悟空がそれを待たず肘打ちを腹にくらわせた。

 

「わりぃな。隙だらけなもんだったからつい……」

「こ、このヤロ……」

 

 リクームはそのまま前に突っ伏して倒れた。

 

「な、なぜリクームが……! なんてことない一撃だったはずだ!」

「馬鹿者! あいつはおそらく瞬間的に戦闘力を大幅に上げたのだ。俺の見立てでは戦闘力100000ほどとみた」

 

 なんか100000とかで他の隊員が驚いているけど、原作では確か180000は超えているんだよね。さらに最長老のところで潜在能力を引き出してもらっているからそれをさらに上回っているはずだし、ラディッツもそれと同レベルのはずだ。ピッコロさんはそのワンランク下ぐらいの感じ。悟飯はさらにもう一つ下。経験が足りないけど、パワーならギニューを圧倒的に上回っている。

 

 

 フリーザは、次の瞬間にはデスビームを放ちリクームを消し去っていた。

 

「フ、フリーザ様……!」

「私は先程忠告しましたよ、ギニュー隊長。負けたら殺すと」

「も、申し訳ありません! つ、次こそは必ずや、倒してみせます! そこの貴様!」

 

 私の方を指さす、ギニュー。

 

「私?」

「そうだ、私と戦え!」

「……まぁ、別にいいけど」

 

 私が一番強いと踏んで挑んで来たか? ボディーチェンジするために。

 

「た、隊長……!」

「なに、心配するな。俺のスカウターを持っておけ」

 

 ジースにスカウターを渡すギニュー。こりゃ、確定かな?

 

「貴様があの中のリーダー……あの中で最強だな」

「そうだね。ちゃんと戦ってないからわかんないけど」

 

 いや、現在は確実に私が一番強いけどね。

 

「そうか。お手並み拝見といこうか……」

「どうぞ、ご勝手に」

 

 ギニューは私に攻撃を仕掛けてきた。連続攻撃だ。私は避けることもせずに受けてみた。ギニューは途中で手を止め、距離を取った。

 

「全く効いておらんな……!」

「言っておくけど、さっき戦っていたサイヤ人、戦闘力200000は超えていると思うわよ。私はそれより上」

「な、なんだとっ! ……やはり、俺様の手に負えんか。くっくっく……」

 

 ギニューが笑い始めた。お、やっぱりチェンジする気なのかな?

 

「何がおかしいの?」

「貴様が俺よりも圧倒的に強いからだ……くっくっく」

 

 ギニューは自分の右胸に大きな傷をつけた。

 

「気に入ったぞ……その強い身体……」

 

 私に向かって身体が気に入ったとか変態っぽい。そういう意味じゃないってわかってるけどさ。

 

「チェンジ!!」

 

 ギニューの口から出た魂の様なものと私の何かが入れ替わった。……というか、入れ替われるのか……

 

「まさか、身体を入れ替えられるとはね……」

 

 というか、めっちゃ痛い! 他人の身体使うの久しぶりだし、なんか見た目キモイしもうなんか嫌! やっぱ傍観せずに殺せばよかったかな……

 

「でも、身体動かせないでしょ」

「な、何故だ……! 身体が動かん……!」

「スカウターで戦闘力を測れなかった時点で機械の身体ということは、検討が付いていたはずよ。そして、機械である以上セキュリティをかけるのは当たり前よね」

「なんだと……! 最初から乗っ取られる前提があったとでも言うのか!」

「そりゃ、いつ自分の身体がハッキングされるかもわかんないわけだし対策しないわけがないでしょ」

 

 私は、自分の服のポケットを探す。

 

「な、何を……!?」

「お、あった、あった」

 

 ホイポイカプセルを取り出し、それを投げると、もう一個私の機械の身体が現れた。

 

「な、何!?」

「短い間だったけど、この身体ともおさらばだ」

 

 私はもう一つの機械の身体へと乗り移った。私は自分の魂の様な本体の移動もお手の物だ。実際、自分の本当の身体を構成するほどの力がなく、機械の身体を作るほどの技術がなかった時は、他人の身体を借りていた。他人の身体を使うという点では私の方が上なまである。

 

「さて、復活! 覚悟はいいかな?」

「や、やめろ……!」

「どうせフリーザに殺されるからいいじゃない。自爆スイッチオン!」

 

 私のさっきまで使っていた身体は粉々に吹き飛んだ。自壊させることが目的なのでそこまで威力はないが、別にそのために仕込んだ爆弾ではないので関係ない。

 ギニューの身体は魂の抜けた抜け殻の様なものなので、生命機能自体は働いていてもピクリとも動かない死体と同意だ。

 

「ギ、ギニュー隊長がやられるなんて……! う、うわあああ!」

 

 ジースが逃げた。それに続くようにバータが逃げたが、フリーザに撃ち落された。

 

「あーりゃりゃ、殺しちゃったよ」

「おめぇ、自分の仲間を……!」

「まさか、私自ら戦わなければならなくなるとは思いませんでしたよ」

 

 フリーザはあの一人用の乗物から降りた。

 

「いよいよか……!」

 

 やっとフリーザか……私以外が倒せるのかな……心配だ。とりあえず、誰かが超サイヤ人になってくれれば私が倒してもいいかなと思い始めている。

 




週一で更新できたらいいなぁ、と思っています。


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35 フリーザ

とりあえず一週間でできました。


「一々一人ずつ相手するのも面倒ですから、まとめてかかってくるといいですよ」

 

 フリーザは余裕のようだが、この人数相手で第一形態は無理と違うかな?

 

「この人数相手に勝てると思っているのか?」

 

 ベジータは余裕の表情を見せる。まぁ、6対1でギニュー特戦隊を超える戦闘力が3人以上揃っているとわかれば気も大きくなるか……別に戦闘力()が大きいから気が大きくなるとかいうシャレを言ったわけではない。

 

「何を言い出すかと思えば……どうやら私の恐ろしさを忘れてしまったようですね……ですが、確かに油断ならない方もいるようですからね。私も少し本気を出しましょう」

「変身するつもりかっ!」

「ほう、よくそのことを知っていましたね」

「ザーボンの野郎が口を滑らせやがったんだ」

「そうでしたか……さぁ、滅多にみられるものではありませんよ。惑星ベジータを攻めこんだ時に王と戦った場合も変身する必要もなく勝ってしまいましたからね」

「何っ!? 惑星ベジータは隕石の衝突で滅んだのではなかったのか!?」

 

 ラディッツがこのタイミングで惑星ベジータ消失の真実を知るとはね。

 

「おや、ラディッツは知りませんでしたか? まぁ、どうでもいいことです」

 

 フリーザの鎧が壊れた。

 

「何が変身だ。笑わせやがるぜ」

 

 そして、フリーザの変化が始まった。

 

「ほああ……ああああ……!」

 

 全身が巨大化していき、悟飯より少し大きいぐらいの大きさがピッコロより少しでかくなった。ガタイも先程とは比べ物にならない程よくなっている。

 

「こ、これほどとは……!」

「さぁ、始めようか……! ばっ!!」

 

 フリーザは左腕を軽く上げ、気を爆発させ周り一帯が一瞬で更地に変えられた。全員、空中に逃げてはいたので誰もダメージはくらわなかった。ただ、宇宙船にダメージがいっていないあたり、フリーザは意外と器用だなとか思ったりした。力を抑えられないから変身するみたいなこと言っていたけど実はそんなことないんじゃないだろうか。

 

 土煙が立っていて周りが見えない……

 

「ベジータ後ろだ!!」

「何ッ!」

 

 オーバヘッドキックの要領で、ベジータは地面へと叩きつけられた。

 

「今の一撃で死ななかったか……さすがはサイヤ人と言ったところか」

「く、くそ……!」

 

「悟飯! あなたじゃ、この場は足手まといになるわ。逃げなさい」

「で、でも……!」

「悟飯! イーヴィの言うとおりだ……俺もこの戦いについてはいけんな」

「わ、わかりました」

 

 悟飯は宇宙船の方へと去って行った。

 

「……まぁ、虫けらの一匹ぐらい逃がしてもいいだろう」

 

 ドラゴンボールを失っていないせいか寛容なフリーザ様だ。

 

「おい、イーヴィ! 本当にあれに勝てるんだろうな!?」

「さぁね」

「俺たちを連れてきておいてそれか!?」

「超サイヤ人になるしかないんじゃない?」

「超サイヤ人だと……!? 貴様、超サイヤ人について知っているのか?」

 

 フリーザが超サイヤ人という言葉に反応を示した。

 

「知っているよ。どうやったらなれるかもね」

「何!? 何故、あの野郎がそんなことを……!!」

「ふっ、ふははははは! ロボットが冗談を言うとはな。貴様はサイヤ人でもなんでもないだろう」

「それと私が知っていることとは関係ないんじゃない?」

「……ちっ、それならば、お前から死ねぇ!」

 

 フリーザは私に突進してきた。角を突き刺すつもりのようだ。私は膝と肘でその角を挟みへし折った。

 

「な、何ぃ!」

「よっと」

 

 回し蹴りをくらわせラディッツの方へとふっ飛ばした。

 

「ほら、ラディッツ」

「お、おう! くたばりやがれ!」

 

 両手を組んだ拳をフリーザに打ち込み、叩き落した。

 土煙が晴れると、わりと大丈夫そうなフリーザが居た。

 

「な、なんて野郎だ!」

 

 まぁ、私はそんな力入れてないし、ラディッツの力じゃそんなにダメージが与えられなくても不思議ではない。

 

「貴様を少し侮っていたようだ……先に教えておいてやろう。このフリーザは変身するたびにパワーがはるかに増す……その変身をあと2回も俺は残している。その意味がわかるかな?」

 

 私を除き全員が驚く。私は最初から知っていたし、最終形態になられても余裕で勝てるので絶望感も危機感もない。

 

「光栄に思うがいい! この変身まで見せるのは貴様が初めてだ!」

 

 フリーザが力を籠めると、背中から突き刺さりそうな突起が生え、頭がぬらりひょんの様に伸びた。顔もなんというか平べったい感じになった。

 

「お待たせしましたね。第二回戦といきましょうか」

 

 みんな絶望的な表情をしている。ここは空気に合わせてやられておいた方がいいのかな? そうしないとみんなに戦う理由ができないし……このままじゃ私が倒す流れになっちゃう。

 

「今度は先程のようにはいきませんよ!」

 

 フリーザが私に向かって仕掛けてくる。私はかなり速度を抑えて逃げた。そして回り込まれた。……計画通り。

 

「これはこれは久しぶり……」

「なにっ」

 

 って言っとけばいいかな?

 

「ひゃ!」

 

 指先からエネルギー弾を放ってきた。私はそれを避けずにくらう。さらに連続で「ひゃ!」という言葉と同時に撃ってきた。痛みもなんもないので何も感じないが、さすがに無防備でくらっていると損傷がまるでないわけでもない。さすがにフリーザなだけはある。

 

「イーヴィ!」

 

 悟空が私を助けに来た。フリーザは不意を突かれ、そのまま地面へとふっ飛ばされた。簡単にリカバリーされていたが。

 

「大丈夫か?」

「ちょっとますいかもしれない。少し修理しているからそれまでの間なんとかできる?」

「……難しいかもしんねぇ。でも、十倍界王拳を使えば今のあいつならなんとかなりそうだ。兄ちゃんもいるしな」

「そう。それじゃ、任せたわ」

「あぁ!」

 

 私は離れた所へゆっくり移動した。

 

「あなたを逃がすと思いですか!」

「待てっ!」

 

 悟空が私への道を塞いだ。

 

「おめぇの相手はオラだ!」

「そこをどけぇ!」

 

 悟空はフリーザのパンチを受け止めた。

 

「何ぃ!」

「でやぁ!」

 

 フリーザを蹴り飛ばす悟空。私はその間に地上に降りて修理を開始した。と言っても塗装が少し剥がれてしまったぐらいの損傷なんだけどね。

 

「おい、貴様!」

「ベジータ……何の用?」

「超サイヤ人になる方法を知っていると言ったな。俺に教えろ!」

「知ったところで今の君にはなれないよ」

「な、なんだとぉ……!」

「超サイヤ人に必要なのはパワーじゃない。あるきっかけだよ。まぁ、無理矢理そのきっかけを作れなくもないだろうけど……」

「なんだそのきっかけというのは!?」

「まぁ、とりあえずどうなるか見守ったら?」

「ちっ! 無理矢理聞きたいところだが、貴様の戦力は貴重だからな……」

 

 

 現在、悟空とラディッツが協力して戦っており、ピッコロは私とは違う場所でその戦いを見守ることしかできていなかった。

 戦況は悟空とラディッツが押しているようだ。第3形態では10倍界王拳を使う二人相手ではさすがのフリーザもきつそうだ。

 

「ひゃあ!」

 

 フリーザの放ったパンチは、悟空にもラディッツにも当たらず、二人のカウンターパンチをもらっていた。

 

「くっ、……どうやらあなた方サイヤ人も舐めていたようです。……これで超サイヤ人にでもなられたら困りますからね。私の真の姿をご覧にいれましょう」

 

 フリーザが力を籠める。

 

「これ以上変身させてたまるかっ!」

 

 ラディッツと悟空が変身中に攻撃を加えるが、フリーザは微動だにしていなかった。

 

「おい! 早く、超サイヤ人になる方法を教えろ!」

「あぁ、はいはい。もう一回死にかければいいんじゃない?」

 

 テキトーに答えてみる。

 

「本当か!? ならば、俺を早く半殺しにしろ! まだあの仙豆とか言うのが残っているんだろう!」

「お望みどおりに」

 

 

 フリーザが変身を完了させると気が周りに溢れ、悟空とラディッツは吹き飛ばされた。

 それと同時に私はベジータの腹にエネルギー波で穴を開けた。そして、すぐに仙豆を食わせてやった。

 

「くっくっく。これで俺は超サイヤ人だ」

 

 この発言聞いているとベジータが哀れに思えてきた。

 

「待っていやがれ、フリーザ! 俺がぶっ殺してやるぜ!」

 

 

 フリーザの周りの土煙が晴れて正体が現れた。

 

「なんか小さくなってけど、ものすげぇ気だ……!」

「だが、カカロット……俺たち二人でやれば、なんとかやれるはずだ……!」

 

 ベジータが悟空たちとフリーザの間に割って入ってきた。

 

「待て! 貴様らの出番はない! 超サイヤ人ベジータ様が一人で片付けてやるぜ」

「超サイヤ人だって……? ふっふっふっふ……相変わらず冗談きついね」

「下級戦士共に出番はないぜ!」

 

 ベジータはフリーザに攻撃を仕掛け、フリーザは避けようとした。

 

「見えているぞ!」

 

 そう言い放ったが、フリーザに攻撃は当たることなく避けられた。

 

「ちょっと本気でスピードを上げたらついてこれないようだね。それでも超サイヤ人なのかな……」

「ば、馬鹿な……俺は……俺は超サイヤ人だ!」

 

 怒りと焦りに身を任せ、フルパワーのエネルギー波をフリーザに放った。

 

「ベジータ! この星ごと消す気か!」

「きえっ!」

 

 フリーザはベジータのエネルギー波を蹴り上げて跳ね返した。

 ベジータは戦意を喪失し、涙すら流していた。

 これって、私のせい?

 

「今度はこっちから行くよ」

 

 フリーザはベジータに頭突きをくらわせ、追撃に尻尾で叩き落した。

 

「べ、ベジータ!!」

 

 フリーザは、ベジータを尻尾を使って首をしめて持ち上げた。そして、サンドバックの様に殴られていた。

 

「や、やめろぉ!」

 

 ラディッツはフリーザを殴り飛ばした。ベジータは解放され、地面に横たわった。

 

「まさか、ラディッツにここまでの力があるなんてね……」

「大丈夫か、ベジータ!」

「げほっ! 何故、俺を助けた……」

「何故って当然だろう。俺たちはサイヤ人、仲間だ」

「貴様、いつの間にそんなに甘くなった……! 貴様とカカロットはもう超サイヤ人になれてもおかしくないはずだ……」

「多分、それは間違ってはいないと思うぜ。あいつが言うには、カカロットは既に超サイヤ人になる前提条件はクリアしているみたいだからな」

「な、何……!? あ、あの女……! 嘘を言いやがったな……!」

「その話、いつまで続くのかな?」

 

 フリーザはなんだかんだ待ってくれている。あれ? このままだともしかして……

 

「だが……ククク……フリーザ。本気でやった方がいいぜ……カカロットとラディッツは、貴様が恐れていた超サイヤ人になろうとしている……てめぇはもう終わりだ……ざまぁみやがれ……」

 

 フリーザはデスビームでベジータの心臓を貫いた。

 

 あ………………………………………やられちまっただ。

 




次回でフリーザ編も終わりです。まだ、どう決着をつけるかは決めかねていますけどね。


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36 超サイヤ人

 ベジータの心臓貫かれちゃったよ……仙豆もないし……死亡確定だね、こりゃ。

 

「べ、ベジータ!」

「が……がはっ!」

「何も止めを刺すこたあねぇだろ!」

「超サイヤ人だなんてつまらないただの伝説にいつまでもこだわってるからさ。僕はくどいヤツが嫌いなんだ」

「カ、カカロット……ま、まだ……そんな甘いことを言っていやがるのか……」

「よせっ! もうしゃべるな!」

「ラディッツ……てめぇもか……ゴホッ……」

 

 もう死ぬ寸前だ。まだ喋れるのはサイヤ人の生命力故か……

 

「べ、ベジータ!?」

「知っているとは思うが……わ…惑星ベジータは……フリーザが壊しやがったんだ……俺たちサイヤ人はあ…あいつの手となり足となり命令通りに働いたってのに……」

「ど、どうしたんだよ……ベジータ……! らしくねぇよ……」

「お、俺たち以外は全員殺された……貴様らの両親も俺の親である王も……フリーザはち、力を付け始めたサ…サイヤ人の中から超サイヤ人が生まれるのをお…恐れたからだ……」

 

「ふっ…よく言うよ」

 

 ベジータは涙を浮かべていた。

 

「た、頼む……フリーザを……フリーザを倒してくれ……頼む……サイヤ人の……手……で……」

 

 ベジータが事切れたみたいだ……言い訳じゃないけど、このベジータが悪人と言えないわけがないしこれも私の目標的にはノーカンということに……!?

 

「に、兄ちゃん……!?」

 

 ラディッツの様子がおかしい。髪の色が……!

 

「よ、よくも俺たちサイヤ人を……仲間たちを……親父を……ベジータを……! 殺しやがったなぁ!!」

 

 その咆哮と共にラディッツは超サイヤ人となった。髪は逆立っていないが……間違いなく超サイヤ人だ。金髪になって、力も大きく上がっている。ネックレスもなんかぶっ壊れてるし……

 予想を全くしていなかったかと言うと嘘になるけど、本当に超サイヤ人になるとは思ってなかった。

 

「カカロット、悟飯たちを連れて先に地球に帰ってろ。フリーザは俺一人で倒す!」

「……! わかった。死ぬなよ、兄ちゃん」

「さっさと行け!」

 

 フリーザは驚愕の表情を浮かべたままだったが、悟空たちが離れていくのを見てはっとする。

 

「逃がすと思うのか?」

 

 デスビームを撃とうと指を悟空に向けるが、ラディッツが腕を掴んで止めた。

 

「俺の弟まで殺す気か……! 俺にとって共に生きてきたサイヤ人はもうあいつしかいないんだよ!」

 

 フリーザはラディッツの手を振り払い、距離を取る。

 

「ど、どうして、ラディッツなんかにこれほどの力が……! ま……まさか……き……きさま……」

「てめぇは絶対に許さねぇ!」

 

 一瞬で距離を詰め、フリーザを殴り飛ばし地面へと叩き落した。フリーザにダメージは通っているのがありありとわかったが、すぐに瓦礫を吹き飛ばした。

 

 私は、フリーザ達が離れた隙にベジータの死体を回収しておく。ぐちゃぐちゃにされたら蘇生が上手くいかないかもしれないからね。とりあえず、腐らないように原作ではクリリンや餃子も入った保存用のカプセルに入れておく。私特性の一品なので星が吹き飛ぶようなことがなければ壊れることはない。あ、そうだ。フリーザがナメック星を壊すかもしれないからフリーザの真下にいないと……

 私は急いでフリーザとラディッツが闘っている真下に向かった。

 

 ちょっ……! どんどん遠くに行くなぁ……海の中に入らないといけないじゃない……

 

 現在もフリーザとラディッツの間で激しい攻防が行われているが、圧倒的にラディッツが優勢だ。フリーザの攻撃をくらってもラディッツにそこまでダメージがある様子はない。逆にフリーザはラディッツの攻撃をくらっていると決して小さくないダメージが確実に蓄積していっている。フリーザは堪えきれず、ラディッツから距離を取る。

 

「ふん。てめぇももうおしまいだな」

「何ぃ!?」

「次で終わりにしてやるぜ。ベジータの技でな」

 

 ラディッツはギャリック砲の構えを取った。

 

「……不老不死は惜しいが……俺はここで貴様に殺されるぐらいなら自らの死を選ぶぞ」

「勝手にしやがれ……」

「だが、俺は死なん……」

 

 フリーザは両手を掲げ急速に球体の大きなエネルギーを作り出す。

 

「俺は宇宙空間でも生き延びられるぞ。だが、貴様らサイヤ人はどうかな!?」

 

 フリーザは勝利の笑みをみせる。

 

「この星を消す!!」

 

 球体のエネルギーをそのまま海の下、この星に向かって投げた。でも、そこには私が居るから無問題(モーマンタイ)

 

「ジャストミートォ!」

 

 私の蹴り上げによって、エネルギーは宙の彼方へ飛んで行った。

 

「な、何!」

「……! ふっ、どうやらイーヴィの奴が気をまわしたようだな……相変わらず、なんでもありな野郎だ……」

「まだ居たのか……あの鉄屑……!」

 

 鉄屑とは失敬な……ところで屑鉄と鉄屑って同じ意味なのかな?

 

 フリーザは、私にエネルギー波を撃ってきたけど、軽々弾いた。

 

「私を攻撃する前に目の前の敵を倒したらー」

「ちぃっ! こうなったらみせてやるぞ、100%の力を! 俺を倒せるわけがないんだ! 覚悟しろ!」

「今頃、本気になったところで超サイヤ人に勝つことは不可能だ!」

「ばっ!」

 

 気でラディッツを吹き飛ばす、フリーザ。ラディッツは海に落ちそうになったものの空中で受け身を取る。

 

「みくびったな! 言っておくが、今のはまだ全力じゃないぞ! 70%ほどかな……そしてこれが……お待ちかね、100%!」

 

 気を集中させ、気を高めていくフリーザ。

 

「させるかっ!」

 

 ラディッツは、気にせず直行しフリーザを殴り飛ばした。

 

「……多分、ベジータとカカロットが同じ状況にあったらてめぇの全力を叩き潰すことを考えただろうが……俺にとってはてめぇを倒すことが一番大事だ! くたばりやがれ!」

 

 エネルギー波を撃った。

 

「ちぃっ!」

 

 フリーザは両手を使ってそれを受け止めたが、その間にラディッツが後ろに周り込み両手を組んだ拳で地面へと叩きつけられた。瓦礫から吹き飛ばして立ち上がるが、身体がふらついていた。

 

「ち、ちくしょー……! ちくしょ~~~っ!」

 

 フリーザの叫びがむなしく響く。

 

「諦めろ。てめぇじゃ、もう俺には勝てないんだよ」

「負けん……俺が負けるものかぁ!」

 

 それと同時にあの気円斬みたいな技をラディッツに使った。

 まぁ、なんなく避けられるでしょ……

 

「ふん……こんなもの……」

 

 あ、調子に乗ってるな。正面から受け止めようとしているみたい……それは非常にまずいわ。

 

「馬鹿! 避けなさい!」

「何!?」

 

 ラディッツは何とか避けることに成功した。頬を傷つけられることにはなったけど。

 なんでナッパみたいな失敗してんのよ……あー、そういえばクリリンこの世界で気円斬使ってなかったね。だからってどういう技かもわからないなんて……超サイヤ人にもなって情けない。

 

「ちっ! またあの野郎か!」

「……そんな技で望みを繋ぐようじゃてめぇもおしまいだな」

 

 気づけなかったくせしてなんで偉そうなの……?

 

「馬鹿め」

 

 気円斬がまた戻って来るように飛んできた。ラディッツはそれから逃げるように飛び回る。

 

「ふははははっ! そいつはどこまでもお前を追いかけるぞ。そしてどんなものも切り裂くんだ!」

 

 

 確かに面倒だけど避けようと思えばいくらでも避けられそう。

 

 どうも私が積極的に介入しないと元の様な展開になろうとするみたい。歴史の修正力ならぬ漫画の修正力みたいな? まぁ、そこまで強いものではないみたいだけど……決して作者の力が足りないとかそういうわけではない。そういうことにしておこう……ね!

 

 

 ラディッツは、フリーザの居る方向へと飛ぶ。

 

「こっちに向かってきてギリギリでかわし俺に当てようってんだろ! そんなつまらん作戦に引っかかると思うか……! そんな古い手には引っかからんぞ!」

 

 ラディッツは、フリーザの手前で上へと進路変更した。

 

「つあーーーっ!」

 

 フリーザは気円斬を操作して、追尾させる。ラディッツは落ち着かれそうになったが、バク転の要領でギリギリかわした。

 

「くっ!」

 

 しかし、完全にはかわし切れず、長髪の半分ほど持っていかれてた。

 

「外したか!」

 

 気円斬が通り過ぎたところをラディッツは全速力でフリーザに攻撃を仕掛けにいった。

 

「今度こそくたばりやがれ!」

「やられるものか!」

 

 ラディッツの突撃に対し、パンチで応戦するが

 

「何ッ!?」

 

 それは残像だった。

 

「後ろだ」

 

 ラディッツの蹴り上げがフリーザを気円斬のある場所まで飛ばし、そのままフリーザは上半身と下半身に切断され落下した。

 

 あら? 終わっちゃった。ラディッツは原作の超サイヤ人の悟空の実力に劣るみたいだけど悟空より殺る気が強かったせいかな。甘さ控えめみたいな? このラディッツ、容赦せん!って感じかな。

 

 ラディッツは、フリーザが落下したところに向かった。私もそこに向かった。

 

「宇宙の帝王フリーザらしからぬ最期だな」

 

 ラディッツは、超サイヤ人を解く。

 

「ち……ちくしょう……ちく……しょう……」

「情けない終わりね。ホント。まぁ、こうなるだろうとは思っていたけど」

「……いたのか」

「そりゃずっと見てたからね」

「……ったく、てめぇは以前もそうだったよな」

「私のアイデンティティだからね」

「てめぇが最初から動いていれば、ベジータだって死ななかったかもしれないんだぞ! それをてめぇのアイデンティティとか理由で済ませられてたまるか!」

 

 ラディッツに怒られた。でも、ごもっともなご指摘。

 

「別に私だって見殺しにしたくて見殺しにしたわけじゃないし。どうせ生き返すし」

「な、何……!? どういうことだ!」

「た……助けて……助けて……くれ……」

「てめぇは黙ってろ!」

 

 ラディッツは死にかけのフリーザにエネルギー波を撃ちこみ、止めを刺した。上半身が跡形もないや。片手間で消されてかわいそうに。

 

「地球にはドラゴンボールがあるんだから生き返せないわけがないでしょ」

「ほ、本当に生き返るのか? というより、生き返してもいいのか? あいつは地球を侵略したんだぞ……!」

「何? そんなにベジータに生き返って欲しくないの?」

「いや、そんなことはないぞ!」

「ま、結果的にそうなるだろうというだけで、殺されたナメック星人達を生き返すのが目的よ」

 

 本当はベジータを生き返す方が目的だけど、元々ナメック星人も生き返す予定だったし何も変わらな……くわないな。ナメック星人が全員一括で生き返せないし。本当なら殺されたナメック星人を生き返してくれで済んだのにフリーザ一味に殺された者を生き返してくれにしないといけない。別に二回に分けても良さそうだけどセル編と時間が被ったりと色々めんどくさい。……そういえば、ジースとバータもフリーザに殺されたっけ。でも、生き返ったところで私が処理をすればいい話だ。

 

「ドラゴンボールというのは、そこまで可能なのか……」

「一応、どんな願いでも叶えられるっていう龍だしね」

 

 ラディッツが何故か、挙動不審になっている。

 

「……その……なんだ……あ…り…が…とう?」

「なんでお礼? そして疑問形?」

「俺が超サイヤ人になれたのはある意味お前のおかげではあるが、お前が居なければベジータと戦うこともフリーザと戦うこともなかった。要は、俺はお前から色々と負担を強いられているような気がして、お礼を言うのも変だと思ってな」

「でも、私が居なかったらあなた、ピッコロに殺されていたわよ」

「む……! それを言われると言い返せん。お前は俺の命の恩人……なんだよなぁ」

 

 心底残念そうに言っている。認めたくないということだろうか? でも、命の恩人扱いしてくれるだけラディッツは十分常識人だと思う。実は純粋なサイヤ人の中で感性が一番地球人に近いのではないだろうか。

 

 

 

「ここでの用事も終わったことだし、最長老さんに報告して悟空達が乗っている宇宙船に乗って地球に帰ろうか」

「あぁ、そうだな」

「それと髪ちょっとすごいことになってるから後で整えてあげる」

「ありがとよ」

 

 

 その後、最長老にフリーザを倒したことを報告した。もちろん、報告するまでもなく知ってはいたが、それとなく恩を売ったことにしておきたかったというのもある。そんなことをしなくても向こうは勝手に感謝の念を覚えているようだったけど。いつかこちらのドラゴンボールを利用させてもらうことになるかもしれない、という話をしたら快諾してくれたぐらいだったからね。

 

 最長老は寿命が近いこともあり、ムーリ長老が最長老となりナメック星人達を導くようにと伝えていた。私とナメック星との関係が今後あるかはわからないが、あるとしたらドラゴンボールとデンデ(ドラゴンボール)ぐらいかな……やだ、ドラゴンボールしかない。

 

 何度もお礼を言われつつ瞬間移動で悟空たちの居る宇宙船へと戻った。悟空達は界王様から既にフリーザを倒したことを知らされていたらしく、祝杯ムードで迎えてくれた。帰る途中、悟空が私の瞬間移動を使いたいと言ってきたので教えることにした。私自身元々教えるつもりだったけど、きっかけがなくて困っていたので逆にその申し出はありがたかった。それより超サイヤ人になれるかが心配だが、トランクスが来るまでに変身できないようなら奥の手を使うつもりだ。

 

 

 地球に帰った後、すぐにドラゴンボールを集めナメック星人たちを生き返すことにした。願いの内容は「フリーザ一味に殺された人のその一味である者を除いて生き返らせて欲しい」だ。これなら余計な奴らを生き返さずにナメック星人とベジータを生き返らせることができる。早速、ベジータを迎えに行った。

 

「……俺は生き返ったのか?」

 

 ベジータは自分の状況に困惑しているようだった。まぁ、普通は死んだら生き返らないからね。ドラゴンボールのせいで死ぬことがやたらと軽く感じちゃうけど、死んだら普通は生き返りません。

 

「やぁ」

「貴様か……!? 俺を生き返したのは」

「まぁ、ナメック星人を生き返すついでにね。地球のドラゴンボールでフリーザ一味に殺された人を生き返らせて欲しい、という願いを叶えてもらったからね」

「なるほどな。それで、俺も生き返してしまったというわけか」

「別にあなたを生き返して失敗だとは思っていないわ。ラディッツはあなたが死んで悲しんでたし」

「ふん……! それで、フリーザはどうした?」

「ラディッツが倒したわ。超サイヤ人になって」

「な、何!? ……ラディッツに会わせろ」

 

 どうせ超サイヤ人になったラディッツを見てみたいとか、倒したいとかそんなこと考えているんでしょうね。

 

「最初からそのつもりよ。肩に掴まりなさい。瞬間移動で連れて行ってあげる」

「……ちっ」

 

 少し気に食わなそうな表情で私の肩に手を置き、瞬間移動で孫家に着く。ベジータの気に気づいたのか、ラディッツと悟空、悟飯が外に出て来た。

 

「べ、ベジータ……!」

「おい、ラディッツ。お前、(スーパー)サイヤ人になったんだろ。見せてみろ」

「いや、あれは偶然というか……まだ、上手くコントロールできないんだ」

「ちっ、所詮は下級戦士か……また今度来てやる。その時までにはコントロールできるようにしとけよ」

「あ、あぁ!」

「それじゃ、私はベジータを宿に連れて行くから。また今度会いましょう」

 

 

 ベジータをブルマ邸まで連れて行き、ブルマにベジータを泊めるよう頼んだ。ブルマだけでなく、ヤムチャとかにも反対されたが、ベジータが居るのを見て快諾してくれた。後で、ブルマに「あんたのところでもいいでしょ」と言われたが「私のところには人を泊めるスペースはない」と言っておいた。本当はなくもないが、修業できるスペースはない。私は別に東の都に家を持っているわけではないので、会社で暴れられても困る。それに、一応はブルマとくっつけておきたい。本当にそうなるかはわからないけどなるようになるでしょ。

 

 

 

 これでしばらくはすることはないかな……

 人造人間・セル編は私の機械の身体の強さが超えられてくる時期だ。ここからは少し気を引き締めていこうか。もちろん、舐めプはするけどね。

 




ようやくフリーザ編が終わりました。
前にも言いましたが、行き当たりばったりなので今後どうなるか僕にもわかりません。


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番外編 ラディッツ、自立する

本当は即未来トランクス出そうと思ったんですが、思い付きで来るまでの一年の間の出来事を一つ。


 ラディッツは、今やサイヤ人とは思えないほど丸くなり地球人のような一般的な良識さえ身に着けていた。

 そのためいつまでも孫家にお世話になっていることが申し訳なく思えて仕方なかった。悟空との血の繋がりがあるものの地球に来た当初は悟空たちに悪いことをした。何もせず居候するのも悪いと思っていた。一応畑仕事をしているが、サイヤ人は大食らいである。それが3人も居れば、すぐに食料が尽きる。故に孫家のエンゲル係数はとんでもないことになっている……チチはラディッツに気にしなくていいと言うが、ラディッツは孫家の家計を気にせずにはいられなかった。

 

 ある時、チチに買い出しを頼まれて街に出ると、一枚の求人広告を見つけた。いわゆる商社関係の求人だ。社員寮もあり、給料も悪くない。これなら孫家を出て行っても生活は可能だ。一大決心をして、チチにここの就職試験を受けることを告げることにした。

 

「チチよ。俺は、この会社の試験を受けることにした」

「……! 偉いべ! 悟空さにもちっとは見習って欲しいだよ。悟空さは結婚してから1銭だって稼いでくれたことがねえだ。今もどこに行っているのかもわかんねえし」

 

 

________

その頃、悟空は

 

「へっくし!」

「風邪でも引いた?」

「多分違うと思うけど……誰かがオラの噂でもしてんのかなぁ」

 

 イーヴィから瞬間移動を教わっていた。

_______

 

 

 

「前はそうは思わなかったが、あいつの方が俺よりサイヤ人らしいからな。戦う方が性に合っているんだろう」

「それが悟空さなんだからしょうがねえとも思うけんど、やっぱり働いて欲しいだよ」

「ずっと言っていればちゃんとあいつも働くようになるさ」

 

 サイヤ人は、星の地上げという悪行であるもののある意味では働き者だ。それは戦闘と言うサイヤ人にとっての趣味も含まれるので、それが天職だったからというのもあるだろうが。

 

「それよりも俺はここを出ようと思うんだ」

「どうしてだ……!? 何か嫌なことでもあっただか?」

「いや、そうじゃない。いつまでもチチ達の世話になるのも悪いと思ってな。この会社には社員寮もあるし、生活に必要な物は支給してくれる。ある程度なら仕送りもできるかもしれん」

「ラディッツさがそこまで気を遣わなくてもいいだよ」

「俺がそうしたいんだ」

「……わかっただ」

 

 チチはラディッツの意思を酌み、送り出すことにした。

 

 

 翌日、身支度を整え玄関へと立つ。

 

「それじゃ、行ってくる」

「頑張ってね! おじさん!」

「ラディッツさ、ダメだったら無理せず帰ってくるだよ」

「心配するな。なんとかなる」

 

 

 ラディッツは、その会社まで飛んで行き、途中で目立つのはまずいと思って降りて移動することにした。オフィスビルの前に立つと、今までに味わったことのない緊張を感じていた。

 指定された場所に向かい、面接官一人との個人面接が行われた。

 

「えーっと……ラディッツさん、ですね」

「よ、よろしく頼む……ます」

 

 面接官に怪訝そうな顔をされるラディッツ。ラディッツは比較的常識人になってはいるが、学も職もない。今までサイヤ人として生きていたせいもあって、戦闘力が自分より低い相手に敬語を使うことに対する違和感が変な敬語にさせていた。髪もフリーザとの戦いの中で斬られて短くなったとはいえ、それでも平均的な男性よりはかなり長い。あらゆる面が、面接官に対し悪印象だった。面接官は書類を見た時点で落としたかったが、応募者がラディッツのみだったため、とりあえず上からのやれという指示に従って面接を行っていた。

 

「それではまずうちの会社を選んだ志望動機を教えてください」

「あぁ、その社員寮があって、給料も良かったんでな。ここが一番良いと思ったんだ」

「……そうですか」

 

 正直なことを言っているのだろうが、「思っていても普通それを言うのか」と面接官はかなり不快な気分になった。

 

「それでは、自己PRをお願いします」

「力には自信があります」

「ほう、どれぐらいですか?」

「誰にも負けんぞ。地球に俺より力のあるやつはいないだろう」

 

 たった二つの質問しかしていないが、面接官はラディッツとは一緒に働いていけないというかラディッツは会社の足手まといになることが容易に想像ついた。

 

「…………ラディッツさん。申し上げにくいですが、我が社、延いてはこの業界に向いていないと思います」

「そ、そうなのか……!?」

「はい。はっきり言ってしまいますが、不合格です」

「なっ!」

 

 普通は後日結果を伝えるものだが、あまりにも酷いのでその場で言ってしまった。

 

「そ、そうか……すまない。失礼する」

 

 ラディッツは肩を落として、その会社を去った。

 

「そう上手くはいかないと思っていたが、あそこまではっきり言われるとはな……」

 

 唐突に目の前に悟空が現れた。

 

「うおっ!?」

「おっ、兄ちゃん! やりー! 上手くいったぞ!」

「なんでお前がここに……」

「実はイーヴィから瞬間移動のやり方を教わっててよ、その練習で兄ちゃんのところにきたんだけど……その恰好はどうしたんだ?」

「就職しようと思ったんだよ……上手くいかなかったがな」

「就職? ……兄ちゃん、働くんか!?」

「働くのかって……お前もちゃんと働けよ。チチを困らせてやるな」

「それ言われっとつれぇ……」

 

 悟空は気まずそうに頭を掻く。

 

「まずは、畑仕事でもしておけ。何もしないよりはずっといい」

 

 それに、それ以外の普通の職業はサイヤ人(戦闘バカ)にはあまりできないだろう……と。

 

「……それじゃ、瞬間移動が完璧に使えるようになったら畑仕事するからよ、今度超サイヤ人になる方法教えてくれよ」

「ん? まぁ、いいが……教えたからといってなれるとは限らんぞ」

「それでもいいって。オラもサイヤ人だし目指してみてぇんだ」

「やはり、お前はサイヤ人だな……今の俺よりずっとらしい」

「へへへ……それじゃな、兄ちゃん。オラはイーヴィのところに戻るな」

 

 悟空が飛び立って行った。

 

「イーヴィのところで修業か……そういえば、あいつ確か外道屋とか言う会社の社長をしているとか言っていたような……待て! カカロット!」

 

 ラディッツは悟空を追いかけて呼び止めた。

 

「な、なんだよ、兄ちゃん」

「俺も一緒にイーヴィのところに連れて行け」

「別にいいけどよ、イーヴィになんか用事でもあるんか?」

「そんなところだ」

「ふーん」

 

 悟空は特に気にせず、ラディッツと一緒にイーヴィの下へと向かった。

 

「ようやく戻ってきたね……って、あれ? ラディッツ、その恰好……似合ってないわねー」

「うるせぇ!」

 

 イーヴィは、笑いそうになった。でも、最近のラディッツならそういう恰好をしても不思議ではない気もしていたので、そこまで意外だとは思っていなかった。

 

「それで何の用?」

「単刀直入に言うぜ。俺をお前のところで働かせてくれないか?」

「は?」

 

 それは予想外だった。イーヴィはラディッツに嫌われていると思っていたし、今でこそいろんな商売に手を出している外道屋ではあるが、本業は研究や技術開発が主である。ラディッツが仕事に就くとしたら、それこそ運送業やとび職のような仕事がピッタリだろう。外道屋にもそういう仕事がないわけでもないが……

 

「できれば、社員寮とか、住むところがあればいいんだが……」

「あぁ、なるほど」

 

 それだけで、イーヴィはラディッツの事情を察した。良識のある人間らしいことをしようとしているのだと想像がついた。本当は何か悪戯してやろうかと思ったが、ここまで真剣な表情で来られると少し気が引けた。

 

「駄目か?」

「いいわよ。採用してあげる」

「本当か!?」

「まぁ、準社員としてだけどね。正社員になりたかったら頑張って働きなさい」

「おう!」

 

 

 

 こうしてラディッツは外道屋で働くことになったわけだが、イーヴィからのパワハラで何度か泣きを見ることになるのはまた別のお話である。

 

「オラのこと忘れてねぇか?」

 




就活やってる中、このお話を書いてて妙な気分になりました。……働きたくないでござる。


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人造人間編
37 未来トランクス


ようやく人造人間編に入りました。


「は~る~か~天空(そら)響いてる~♪ いの~りは~、き~せ~き~に~♪」

 

 フリーザを倒してから一年後、私は宇宙船が近づいてくるのを誰よりも早く感づいた。というか元から知ってた。

 気の感じからしてフリーザは乗っておらず、コルド大王が乗っている。さすがに上半身が消し飛んでいてはメカフリーザにすることはできなかったようだ。さて、まだまだ遠くに居るのに早めに来た理由は宇宙から地球を破壊される可能性があるからだ。だから、ここから先に迎撃して撃ち落す。そのための兵器(ネタ)も持ってきた。

 

「いくよ! レイジングハート!」

「All right. My master」

 

気合を入れて兵器(ネタ)を作って来た。大事でもないけど二回言ってみた。

 あの魔法少女ものとは思えないリロードできる杖。威力はドラゴンボール仕様のド派手なあの魔法というか、魔砲を使って撃ち落したいと思って作ってきた。というより、これがやりたいがために早めに来た。

 

 杖がガシャン、ガシャン、ガシャンとリロード音を鳴らす。本当に鳴るだけで意味はない。

 

「これが、私の全力全壊! スターライトー……」

 

 杖の先のルビーの様な球体に桜色の光が集まっていく。元気玉のように周りから集まっているように見えて実際は全て純度100%私のエネルギーだ。

 

「ブレイカーッ!」

 

 桜色のビームが宙に向かって飛んでいく。肉眼では決して捉えられない様な位置にある宇宙船に直撃した。ビームは宇宙船を飲み込み、過ぎ去った後には何も残らなかった。

 ちなみにスターライトブレイカーとは言ったが、名前を借りただけで全く別物である。本家でもなんかできそうな気はしないでもないけど。

 

「All right. My master」

「うっさい」

 

 私は杖を折って投げ捨てた。この杖自体はただの玩具だ。それっぽくやりたかっただけで、「All right My master」しか言えない。AIも積んでないので当然だ。さすがにそこまで力を入れて再現する気はない。しかし、私がやっていることにツッコミがいないことが悲しい……やっぱり、ツッコミがいてこそのボケやネタかな……面白くもなんともない。

 

 気づけば、近くには未来からやって来たトランクスが居た。

 

「やぁ、こんにちは」

「こ、こんにちは……」

 

 すごい困惑した表情だ。私は彼のいる歴史にいたことはないだろうからね。ドラゴンボールにおけるタイムトラベルはパラレルワールドだけど、私は来た世界が違うから彼が私を知る由もないし、私の実力についても驚いているのだろう。あ、もしかして私が杖を折って投げ捨てた方に驚いてた?

 

「……あなたは一体誰ですか? フリーザがここに来ることを知っていたようですが……あの気功波はフリーザを倒すために撃ったんですよね」

 

 未来トランクスは、どうせこの編が終わったら会うことはないよね……

 

「……色々と面倒だから君には真実を話すよ。どうせ君は未来に帰るんでしょ、トランクス君」

「ど、どうして、俺の名を……!?」

「まずは自己紹介からしようか。私の名前は神宮寺イーヴィ。こことは全く別の世界からやって来た元悪神だよ」

「元悪神……ですか?」

 

 トランクスの警戒が強くなった。

 

「元悪神って言っても別に地球や地球の人々に害を為す気は全くないよ。私がこの世界にやって来てもう15年も経つしね」

「そ、そんなに前から……それではこの時代は俺の知っている歴史とは全く違う世界なんですね」

「辿っている歴史は君のものとは別物だけど基本は一緒だよ。だから、人造人間もこの世界で現れるでしょうね」

「そんなことまで……! あなたは俺が未来から来たことも知っていました。どうしてですか?」

「説明が難しいけど、私が元々居た世界ではこの世界の歴史を知る方法があるからとしか言いようがないわね」

 

 私に取って漫画の中の世界であることは伏せておく。それ自体は無用の混乱を招く。この世界でその類のシリアスはあまり向いていない。

 

「それではこれからどうなるかも知っているんですか!?」

「まぁね。君が未来からやってきたおかげで、この時代は犠牲を払いつつも救われるよ」

「そ、そうですか……!」

 

 絶望の未来を変えられることを知れたからか、非常に嬉しそうだ。

 

「でも、私が知っている世界とも全く違う世界であることに違いはないから、同じようになるとは限らない。基本は変わらなくても、君が言った通り君が知る歴史とは大きく変わっているところもあるからね」

 

 私は今後の展開に大きく影響を与えそうなトランクスが辿った歴史とは大きく違うところを話した。

 悟空が既に地球に居ること。ラディッツが生き残り、今では(スーパー)サイヤ人になれること。悟空がまだ(スーパー)サイヤ人になれないことを伝えた。

 

 トランクスにとっては、悟空が未だ(スーパー)サイヤ人になれないことは頼りにして来ただけに相当にショックなことだったようだ。

 

「悟空は(スーパー)サイヤ人にまだなれていないとは言ったけど、すぐなれるようになるさ。それより、みんながフリーザに気づく前に私が倒しちゃったから悟空たちを呼ぼうか」

「ど、どうやってですか?」

「そりゃもちろん、君が超サイヤ人になれば勝手に人が集まるでしょ。特に悟空とベジータは、すぐにやってくるはずよ。自分以上の力を持っている奴なんてそうはいないからね」

「……そうですね。でも、あなたが気を高めてもいいんじゃないですか?」

「私は機械だから、気を高めるということはできないの」

「……あなたは本当に人造人間ではないですよね?」

「性質上近いけど、レッドリボン軍の人造人間とは無関係よ」

「わかりました……それでは……」

 

 トランクスは超サイヤ人へと変身し、気が大きく膨れ上がった。数分もすると悟空が瞬間移動でやってきた。ラディッツも一緒だ。

 

「あれ? イーヴィも来たんか?」

「そうよ。それより、瞬間移動はもう使いこなせるようになったみたいね」

「あぁ、おかげさまでな」

「それであのでかい気を持った奴は誰なんだ……それにあの姿は(スーパー)サイヤ人じゃないか……!?」

「紹介するよ……この子は20年後の未来から来た子よ」

「未来から!?」

「ふん、そんなことが信じられるか」

「信じてはもらえないかもしれませんが、この姿からサイヤ人の血を引いていることは察していただけると思います。何故、俺がサイヤ人の血を引いているかと言うと、ベジータさんの息子だからです」

「べ、ベジータの!?」

「息子ぉ!?」

 

 この二人一緒に住んでいたせいか最近反応がそっくりになった気がする。兄弟だし、本質的なところで結構似通っているのかもしれない。

 

「あなたが孫悟空さんですね」

「あぁ、そうだけど?」

「聞きたいことがあります。イーヴィさんに聞きましたが、(スーパー)サイヤ人になれないというのは本当ですか?」

「あぁ、イーヴィには言ってなかったか? オラ、最近(スーパー)サイヤ人になれるようになったんだ」

「え……!?」

 

 ラディッツが超サイヤ人になった時ぐらい驚いた。正直、仲間が死ぬ以外でそんな怒れないんじゃないかと思ってた。原作での悟飯は想像だけでなんかいけたみたいだけど……

 

「き、きっかけは!? どうやって!?」

「兄ちゃんにどうやったら超サイヤ人になれるか聞いてよ。プッツンと切れることがきっかけになるって言ったんだ。だよな? 兄ちゃん」

「あぁ、そうだな。想像でどうにかしていたが……納得いかないようなそうでもないような想像でなりやがったがな」

「どんな想像?」

「イーヴィによ、みんなが殺されるところ」

「馬鹿っ……!」

「へ? あー……」

 

 その想像がしやすいのは私の出自のせいかもしれない。私は人間によって生み出された存在なのだが、それは主に憎まれ役としてだ。全ての災厄・不利益は悪神によってもたらされるもの。私が関係あろうとなかろうとそういう風にできていた。だからこそ、それが悟空にも適用されたために想像しやすかったのかもしれない。

 

「イーヴィ、すまんな。弟が馬鹿なことを言っちまって」

「いや、いいよ。むしろ、悟空が超サイヤ人になれたってことは喜ばしいことだし。それで私が役に立ったて言うなら尚更よ」

「それなら、悟空さん。(スーパー)サイヤ人になってみてくれませんか」

「あぁ、いいけど」

 

 悟空は(スーパー)サイヤ人になった。

 

「失礼します」

 

 トランクスは背負っていた剣を抜き、悟空に襲い掛かったが当たる前に止めた。

 

「な、何故避けなかったのですか……?」

「殺気がなかったからだ。止めるとわかっていた」

「なるほど……では、今度は止めません。いいですね」

「わかった」

 

 悟空は右の人差し指に気を籠める。トランクスが再び剣で今度は止めずに連続で斬りかかるが、悟空は全て人差し指のみで受け止めた。

 

「さすがです。噂は本当でした。いや、それ以上です」

 

 トランクスは剣を投げて背中の鞘にしまい、(スーパー)サイヤ人を解く。

 

「フリーザをも切り裂けるような剣だったのですが」

「おめえが本気じゃなかったからさ」

 

 悟空も(スーパー)サイヤ人を解いた。

 

「あなた方にはすべてお話します。俺が言うまでもなく、イーヴィさんは知っていたようですが……」

 

 トランクスは今から3年後に人造人間が現れること、人造人間によって起こされた未来のことを話した。そして、悟空に心臓病の話をした。悟空は原作通り死んでしまうことで人造人間と戦えないことを残念がったが、当然トランクスが特効薬を持ってきていたのでそれを悟空に渡した。

 

「そういや、未来でイーヴィと兄ちゃんはどうしたんだ?」

「イーヴィさんは未来にいませんでした。ラディッツさんもです」

「……なんでだ?」

「昔言ったけど私はこことは全く別の世界からやってきたから、ここの時間軸だけにしか干渉してないんでしょうね。だから、トランクス君のいる未来で私はいない。私がいなければラディッツはピッコロの魔貫光殺砲で死んでいたでしょうから、未来にラディッツがいないのは当然のことね」

「へー。なんかよくわかんねぇけど、イーヴィがいねえから未来にも兄ちゃんがいねえってことだな」

「まぁ、そういうことね」

 

 未来にもし私がいたら絶望の未来になんかならないだろう。まず、悟空が心臓病になって治療法がないって言っても私が治せるだろうし、人造人間に後れを取ることもないだろうから、負ける要素がない。誰も死なないね。……それはそれで面白味が無さ過ぎて、何かしらやらかしてしまいそうな気がするけど。

 

 トランクスがタイムマシンの話をして、悟空がトランクスの母親がブルマだと知って驚いたりすることがあったが、割とどうでもいい。ラディッツは、ベジータが子供を作ったことの方が驚きだったのでそこまで驚いていなかった。

 そして、生き残れれば応援に来ると残してトランクスは去って行った。

 

 すぐ後、ベジータ、ピッコロ、クリリン、ヤムチャ、天津飯、がやって来たので事情を話した。3年後に人造人間という敵がやってくることを知らせに来た青年が来たことを。ヤムチャや天津飯、クリリンが嘘くさいと思っていたが、トランクスがタイムマシンで未来へ帰るところを見て、本当のことのようだと考えを改めた。

 

 

 ベジータは大きな戦闘力を二つ感じたことを問い詰めると、未来から来た青年と悟空だということを教えた。ベジータは悟空がそれほどの戦闘力を持っていることを信じられなかったが、悟空が超サイヤ人になると押し黙った。プライドが傷つけられたようである。他のみんなは「すげえ」と言った感じだったが。

 

 

 その場は、3年後の5月12日午前9時に南の都の南西9キロ地点にある島に集合ということで解散になった。

 

 

 ちなみに、ブルマには私が伝えておいた。原作と同じ様にドクターゲロを今倒してしまうよう提案されたが、「そんなことをしたらベジータにぶっ殺されるよ」と忠告しておいた。

 

「それに、他のみんなも戦いたがるでしょうね。特に悟空」

「絶対おかしいわよ。イーヴィもそう思うでしょ」

「いや、私は面白そうだなとしか」

「……そういえば、あんたはそういうやつだったわね」

「あはは、照れるじゃない」

「褒めてない!」

 




この先、何となくのプロットはできていますが、頭の中だけですし変更することも大いに有り得るのでどうなるかわかりません。これここに書くの3度目ぐらいな気がしますけど、然程重要でもないかもしれませんが繰り返しお伝えしました。

それより、続き書けることができるだろうか……そっちの方が心配だったりします。


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38 誰も知らない人造人間

意味深なタイトルですが、内容はそうでもありません。


エイジ767年5月7日

 この日、人造人間がやってくる5日前に第24回天下一武道会が開催された。この回はアニメ、原作共に全く描写されることはなかった。しかし、ミスターサタンが優勝し更なる人気を獲得するという重要なイベントである。

 

 正直サタンのことはどうでもいいのだが、私の力を高めるためには有名になる……というよりは、私に対する熱狂的な感情が欲しいのだ。外道屋というトップ企業の経営をしたり、テレビに出演するなど知名度はかなり既に高いのだが、人気かと言われれば微妙なところだ。ピッコロ大魔王を倒して英雄と呼ばれたこともあったがそれももはや今は昔。人気がなければそもそもそんなにテレビに出演することもないのもわかっているが、原作のミスターサタン程かと言われると弱い。そこで人造人間が来るという差し迫った時期ではあるが、自分の強化のため参加を決めた。

 

 この第24回天下一武道会から行われるパンチングマシンの予選の数値は、とりあえず130出しておいた。この手の手加減は大得意。上手いことサタンを上回らない程度の点数だ。

 

 本戦は当然、雑魚しかいないので難なく勝ち進めた。サタンは私が過去の天下一武道会優勝者ということを知っていたようだが、実力の程はわかっていなかったらしく顔が青ざめていくのが見て取れた。

 

 決勝では、原作の18号よろしく八百長を行いサタンに優勝させた。別に勝っても良かったんだけど、ミスターサタンというキャラを失うのは惜しい気がした。ちなみに私がサタンにした要求は、必要になったら私に手を貸すこと。そのことに疑問を持たれたが、びびってすぐに撤回した。どうしてそんなことを要求したかと言えば、私よりサタンの方が妙なカリスマ性があるので嘘を吐いた時信じられやすい。私もばれない嘘や冗談はよく言うが、あんなバレバレな嘘はしない。でも、それが気づかれないというのはそれこそ私にはない才能だ。力を使えばできなくもないが嘘を吐く度に使うなんて勿体なさすぎる。サタンを利用すれば一般人に対してはかなり有効な手段になるだろう。

 

 ついでに、少年の部を優勝していたビーデルにも少し武術を教えた。というか、中の人ネタがやりたいのでそれだけのために技を教えた。

 人造人間がやってくる前日まで教えていたから、もしかしたら7年後のスポポビッチ戦で負けることはないかもしれない。だって、私が教えた技3日でほぼ使えるようになっちゃったし……間違いなくサタンより格闘センスは上だよね。

 

 

 

 と、前置きが長くなってしまったが、南の都南西9キロ地点にある島に到着した。既に、みんな揃っているようだ。

 

「やぁ、みんな。もしかして遅れた?」

「まだ、9時半よ。人造人間が現れるまでにはまだ30分はあるわ」

「そう、よかった。一応、仙豆持ってきたから」

「サンキュー、イーヴィ」

 

 ヤジロベーがいないから私が代わりを果たさないとね。

 

「それより、イーヴィさん。ブルマさんが抱えている赤ん坊に驚かないんですか」

「え? トランクスでしょ」

「なんであんたも知ってんのよ。」

「だって、未来から来た青年ってその赤ん坊が成長した人だし」

「イ、 イーヴィ!?」

「別にもう隠す必要ないでしょ。生まれたんだから」

「それもそっか」

「へー。どんな子だった?」

「そのうち来るよ。多分ね」

 

 

 10時頃になって

 

「妙だと思わんか……? 10時はとっくに過ぎているのに敵の気配が全く感じられん……」

 

 天津飯がそんなことを言うが

 

「別に不思議じゃないでしょ。私と同じ理屈で気が感じられなくても変じゃない」

「そうか! でも、それじゃどうやって探せば……」

「では、もう街の中に……!!」

「いるかもね」

「手分けして直接目で探すしかあるまい」

「よし、みんな散って探そう! ただし、深追いはするな。発見したらすぐみんなに知らせるんだ!」

「行くぞ!」

 

 みんな、散って街の中に降りて人造人間を探した。私は散らばるように見せかけて、ヤムチャの後を追った。原作通りならヤムチャが最初に会うはず。

 悲鳴が上がり、ヤムチャがその声がする方へと走り出す。

 既に一般市民が殺されており、ヤムチャが犯人を聞き出す。

 

「あ、ああ……おかしな3人組だった」

「さっきまでそこにいたが、き、消えちまった」

 

 ……3人?

 

「き、消えただと……それに3人……?」

 

 私は上を確認した。確かに3人いる……しかも、その新たな3人目に見覚えがある……間違いない。

 

「ヤムチャ、上よ!」

「何っ!?」

 

 3人の人造人間が降りて来た。

 

「何故、私たちに気づいた」

「知っていたから……ね。ヤムチャ、気を高めてみんなを呼んで」

「あ、ああ」

 

ヤムチャが気を高める。

 

「久しぶりね」

「フフフ……会いたかったわよ」

 

 まさか、ここでブルー将軍と再会するとは思わなかった。

 

「勝手な行動をするなよ。21号」

「わかってるわよ。20号」

 

 みんながこの場に集結した。

 

「貴様らが人造人間か……やっと面が拝めたぜ……」

「……!? 不思議だ……何故我々が人造人間だとわかったのだ? それにここに現れることもわかっていたようだな……何故だ? 答えてもらおう」

「さあな……力ずくで聞き出してみたらどうだ?」

「そうしよう」

「待て!! ここじゃ犠牲が大きい! 誰もいない場所に移るぞ! おめえらもいいな!?」

「誰もいない場所か……いいだろう。だが、わざわざ移動することはない」

 

 20号は目から光線を放った。悟空と天津飯が咄嗟に避けたが後ろの建物に当たる。20号はそのまま薙ぎ払うようにゆっくり首を回転させる。

 

「止めろ―――っ!!」

 

 悟空は、20号を殴り飛ばした。

 

「誰もいない場所を作ってやろうと思ったのだが、どうやらここは気に入らないらしいな」

「ついてこい! 3人ともぶっ壊してやるっ!」

「お前たちに我々は倒せない」

「いいだろう。ついて行ってやる。好きな死に場所を選べ、孫悟空」

 

 みんながどうして知っているのかと驚く。さらに、20号は全員の名前をここで言い当てた。

 私のことも知っているとなると、私の強さについても知っているのかな……? 一度たりとも全力を出したことないけど。

 警察や救急車が近づいてくる音が聞こえた。

 

「訳は、後で聞こう……行くぞ……!」

 

 人の居ない岩山に囲まれた高原の辺りまで飛ぶと20号が選ぶ権利などないと言い途中で降りた。原作通り、もしもの時は隠れられるようにだろう。

 

 ついでに悟空の息もあがっている。もしかしなくても心臓病だろう。

 悟空が私たちの名前を知っていた理由を20号達に聞くとスパイロボットを使って偵察していたことを話す。孫悟空への恨みを話すとピッコロが「まるで貴様自身がドクターゲロの様な言い方だな」と指摘する。20号は否定したが……

 

「別に嘘を吐く必要はないんじゃない? ドクターゲロ」

「そうか……! 貴様も科学者だったな……神宮寺イーヴィ」

 

 ブルマがドクターゲロのことを知っていたように私も知っていた。原作で既に知識もあったんだけど。だから、研究所の大体の位置もわかる。

 

「何っ!? では、あいつらはあいつが言っていた人造人間ではないのか……!?」

 

 ピッコロがそう言う。

 

「そうでしょうね。まぁ、ここに来る前から彼の歴史とは別の流れを辿っているから、こうなって変ではないでしょ」

「むぅ……」

「何をごちゃごちゃと言っている」

 

 ドクターゲロが痺れを切らしたのか、少し声を荒げる。

 

「スパイロボットで偵察していたって言ってたけど、ナメック星以降は?」

「そんな必要はない。ベジータ達との戦いまでで貴様らのパワーや技は完全に把握した。その後さらに腕を上げたとしても年齢から考えそれまでのような大幅アップは無理という計算だ……」

「はい、残念。悟空とラディッツは君らの計算を大幅に上回るパワーアップをしたのは間違いないわ。悟空、見せてあげて……と言いたいところだけど、悟空は帰りなさい」

 

 多分、止めなかったら(スーパー)サイヤ人になろうとしてた。原理はよくわからないけど(スーパー)サイヤ人になると心臓病の進行が早くなるらしいから止めてあげないと。

 

「な、なんでだ!?」

「あなた、身体の調子悪いでしょ? それ、例の心臓病の症状じゃないの?」

「確かに、調子はわりいけど……」

「そんな状態で闘ったら症状が悪化して、死ぬわよ」

「わ、わかったよ……」

「ヤムチャ、付き添ってあげて。帰る途中で悪化する可能性があるから」

「あ、あぁ、わかった」

「わりいな……ヤムチャ」

「気にするな」

 

 悟空とヤムチャが孫家へと向かった。

 

「それじゃ、悟空の代わりにと言っては難だけど私が闘おうかな。悟空がレッドリボン軍を潰すのを手伝ったしね。みんな、手を出さないでね。ブルー将軍は私が狙いのようだから」

 

 ブルーが一歩前に出てくる。

 

「この時を待っていたわ……刑務所にぶち込まれて以来、あなたに復讐することだけを考えて生きて来た」

「あっそ。そのために改造までするとは普通思わないけどねー」

 

 さて……ブルー将軍は吸収式なのか、永久式なのか。

 

「何度も言うが、勝手なマネはするんじゃないぞ。21号」

「私は神宮寺イーヴィさえ殺せればそれで十分なのよ。だから気にする必要はないわ」

 

 ブルー将軍がこちらを睨んでくる。目が光ったような……

 

「相変わらず私の超能力は効かないようね」

「そんなものいつまで経っても効くわけないじゃない」

「そうね。それならこれでどう!」

 

 ブルーがそう言うと、地震が起きた。

 

「うわっ」

 

 私たちはバランスを崩し、次の瞬間には私のところだけ地面が隆起して私を空中へと放り投げた。

 

「きえええ!」

 

 ブルーは私に向かって飛び上がり、顔面めがけたパンチが私に直撃した。そのまま地面に叩きつけられた。

 

「ほほほほほ! 少しは効いたかしら」

 

 私は立ち上がり、服の埃をはたく。

 

「いや、全然」

「ちっ……今のはほんの小手調べよ」

「そう。ただの強がりじゃないといいけど」

「いいわ。それなら私の本気を見せてあげるわ!」

 

 再び私に超スピードで襲い掛かってきたが、私はすべてよけた。

 拳が空を切る音が、なんとも久しい気がする。というか、まともな戦いをするのは初めてな気がする。ただ、だからこそ少し物足りない。

 

「どうしたの? あなたの実力はそんな程度?」

「ちぃ!」

 

 大振りの一発をバックステップで避ける。

 

「どういうこと……!? 計算したあなたの実力をはるかに上回っている!」

「スパイロボで私たちのことを観察していたってことだけど、私は一回も本気を出したことがないからね」

「なんですって!? そんなの嘘っぱちよ!」

「そう思いたいなら勝手にしなさい」

「このぉお!」

 

 砕け散った岩や、石が私に向かって飛んできた。するする避けていると、小さな岩山が飛んできた。

 

「すごく……大きいです……」

 

 とか、言ってみる。とりあえず、パンチで粉砕。岩を破壊した後、ブルーの姿を見失ってしまった。

 

「どこいった?」

「取ったわ!」

 

 いつの間にか、背後を取られて捕まえられた。

 

「このまま砕いてくれる!」

 

 ミシミシと軋む音が聞こえる。痛みはないが、放置すればこの身体もタダではすまないだろう。けど、このままやられる筋合いもない。

 

「はぁっ!」

 

 全身からエネルギーを放出し、ブルーを引きはがした。

 

「思ったよりやるわね。でも、期待外れかな……」

「何を言っているのよ。さっきだってギリギリだったじゃない」

「ギリギリの戦いの方が面白いでしょうが。でも、大して面白くもなかったし……あなたを生かしておいたのは失敗だと思ったし……ここで終わりにしようかな」

「できるものならやってみなさい!」

 

 突撃をしてきたので、カウンターで蹴り上げ浮き上がって無防備なところをかかと落としで叩き落す。そして、右の拳を固めてエネルギーを籠める。イメージはゴンさんのジャジャン拳グー。髪の毛は上に伸びたりしないけど。ちなみに蹴り上げた時に「ボ」という効果音はしない。

 

「これで……」

 

 落ちていくブルーを追いかけ、地面に激突する瞬間

 

「終わりだぁ!!」

 

 心臓めがけて右の拳を撃ち込む。衝撃の余波で暴風が起き、土煙を上げる。

 

「ふぅ……久々に殺っちゃったわ……」

 

 パラ…パラ…と、石と砂が降り注ぐなか呟いた。

 





ブルー将軍を生かしておいて、出て来たと思ったら即退場してしまいました。今度はきっちり止めを刺しているので、二度と出てくることもないでしょう。




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39 16号と17号と18号

就活怠いな~と思いながら、ちょくちょく書き進めようやく39話完成。こんなことやってて就職できるのか。そんな不安を持っていないこともないこともないかもしれない。それでもやめる気はありません。やってて楽しいし、息抜き代わりです。


 別に人を殺すのは初めてではないけど、相手が悪人だろうと気分が良いものではない。私は、悪戯は好きだが殺しは別に好きではない。それでもブルー将軍を生かしておいても碌なことにはならないだろうから、生かしておく理由もない。

 心臓をぶち抜いたから右手が血塗れになってしまった……自分の服で血を拭う。

 

「そ、そんな馬鹿な……21号は、17号と18号にも匹敵するパワーを持っているのだぞ……!」

 

 やっぱり、永久式だったみたい。吸収式だったらもっとあっさり倒してしまっただろうから。

 勝ち目がないと思ったのか、20号はこの場から離脱、19号もそれについて行く。

 

「忘れものよ!」

 

 ブルーの遺体を19号に投げつけ、ぶつかったところにエネルギー波を撃った。ブルーの遺体と共に19号は粉々になって消え去った。

 

「ちぃっ!」

 

 20号は、舌打ちしつつもそのまま岩山に逃げて行った。私はそのまま見逃した。

 

 

「おい! 何故逃がした! お前なら十分倒せただろう!」

 

 ピッコロさんにそう言われた。ごもっともなことだ。

 

「あのまま消し去っても面白くないでしょ。敵はまだ居るんだから放置して、連れて来させないと」

「何?」

「さっき言っていたでしょ、17号と18号って。今頃、目覚めさせに行ってんじゃない?」

「……以前、あいつは二人組の人造人間が現れると言っていたよな。だが、現れたのは3人組だった。その上、お前はまだ人造人間がいるって言うのか……お前は一体何を知っているんだ?」

 

 ラディッツは、私や悟空と共にトランクスの話を聞いていた。当然の疑問だ。

 

「私はいろんなことを知っているの。例えば、こんなこととかね。そこに居るんでしょ、ベジータ」

「ベジータだと!?」

 

 岩陰から、ベジータが姿を現した。全員が驚愕の表情を見せる。

 

「何故、俺がいるとわかった」

「だから、さっきも言ったでしょ。いろんなことを知っているって」

「相変わらず、意味のわからん女だ。それに貴様、俺との戦いの時もフリーザとの戦いの時も手を抜いてやがったな……!」

 

 ブルー将軍との戦いは、全力を出したからばれたか。現時点のベジータとは格が違うからプライドが傷ついたかな? 精神と時の部屋で修業されたらあっという間に抜かれるけど……

 

「すぐ終わったらつまらないでしょ。それに、私は別に戦い自体はそんな好きじゃないの」

「貴様が、戦いが好きだろうと嫌いだろうと関係ない。気に食わん奴はぶっ倒すだけだ」

「私を倒したいのなら人造人間たちを倒してからにすることね」

「……ふん。今は言うとおりにしてやる。それで、その人造人間共はどこにいる」

「北の都の近くの山のどこかにある洞窟の中にドクターゲロの研究所があるわ。そこに向かっているはずよ」

「そうか。貴様らは家に帰ってのんびりミルクでも飲んでやがれ。俺の邪魔をせんようにな」

 

 ベジータは北へと飛び去った。

 

「さてと……私たちも行く?」

「待て。まだ、聞きたいことがある」

「今度は何?」

「17号と18号の特徴を教えろ。未来から来たやつが言っていたのは、その二人なんだろ。もう間違えるのはごめんだ」

 

 

 私は、17号と18号の特徴を伝えた。

 

 

「よし。手分けして、ドクターゲロの研究所を探すぞ。できれば、目覚めさせる前に破壊するんだ。あの21号とイーヴィの戦いを見る限り、悔しいが俺たちでは相手にならん」

「あら? 気づいちゃった?」

「気が分からなくともあんな戦いをされれば気付かないわけがないだろう」

 

 ベジータが気づけてピッコロさんが気づけないわけがないか……別にばれてもいいんだけどね

 

「で、でも、もし人造人間が目覚めたらイーヴィさん、戦ってくれるんでしょう?」

 

 クリリンが心配そうに言ってくる。

 

「さぁ、どうだろうね。行く末は見守りたいから探しはするけど」

「こいつを当てにするだけ無駄だ。強いと言ってもこの態度じゃな」

「当てにして欲しくはないよ。でも、君たちと敵対するつもりはないし、絶望の未来にさせるつもりもない」

「そう思うのならば協力しろ」

「はいはい」

 

 

 北の都付近まで全員で飛んだあと、手分けして探すことになった。

 道中、エネルギーを吸収してくることも警戒していたがそんなことはなかった。

 

 クリリンが研究所を発見したようで気を高めているのを感知できた。全員が集まり、天津飯とクリリンが扉を開けようとしていた。ピッコロがエネルギー波で破壊しようとすると中から口論が聞こえて来た。既に17号たちは、目覚めているようだ。

 

「どけ!」

 

 ベジータが扉をエネルギー波でこじ開ける。

 

「あいつらだ……! 以前話した孫悟空の仲間どもだ! 侮るなよ。19号と21号が破壊されたんだ」

「19号と21号? そんなのも造ったのか……なるほど、そいつらに博士自身を人造人間に改造させたわけだな? タイプは? エネルギー吸収式か?」

「19号はそうだ。だが、21号は貴様らと同じ永久式だ」

「へぇ~……! 永久式の人造人間を倒す奴なんているんだ」

 

 18号が驚きの声を挙げる。と言っても、余裕が見えるが。

 

「倒したのはイーヴィだ」

「あのデータ不足の奴か」

「ここにいるんだけど……」

 

 小声で存在アピール。というか、データ不足だったのにあんな自信満々だったの……アホすぎるでしょ。

 

「そんなことはどうでもいい! さっさと奴らを片付けてしまわんか!」

「ガタガタぬかすな。俺たちはやりたいときにやる」

 

 と、この場にトランクスがいないこととラディッツがいること以外はほぼ原作と同一のやり取りが行われた。

 

 18号が16号に興味を示し、動かそうとする。それをドクターゲロが必死に止めようとするが、17号に蹴りで首を切断された後、頭を踏みつぶされて殺される。

 

「さぁ、スイッチを押すんだ」

 

 本来ならここでトランクスが止めようとしてエネルギー波を撃つが生憎この場にはいない。18号はスイッチを押して、16号の入ったカプセルの蓋を蹴り開ける。

 16号が目覚め、ドクターゲロが動かすのを嫌がっていた理由を17号達が聞くがしゃべることはなかった。17号は16号に孫悟空を殺すために造られたことを確認すると、とりあえずの目標として孫悟空を殺すことに決めた。

 そして、私たちの横を通り過ぎて17号が歩みを止めた。

 

「そういえば、神宮寺イーヴィ。お前は、俺たちと同じ永久式を倒したと言っていたな。どんな奴だったんだ?」

「ブルー将軍っていう、レッドリボン軍に居たやつよ。超能力を使うオカマ」

「強かったか?」

「いや、全然」

「なんだ。ただの失敗作か……それともお前が強いのか……」

 

 17号は興味深そうに私を見る。

 

「まぁいい。今は孫悟空だ。神宮寺イーヴィはその後でもいいだろ」

 

 何故か、最優先は悟空らしい。やっぱ、レッドリボン軍を壊滅させた張本人というのがでかいのだろうか。

 

 人造人間たちは、飛び去って行った。

 みんなはそのことにほっとするが、ベジータがそう思うわけもなかった。無視されたことにムカつき、超サイヤ人になって人造人間を追いかけた。

 

「追いかけるぞ」

 

 一歩出遅れて、全員動き始めた。

 さすがにそろそろトランクスが到着するころだ。南の都付近の島からは結構離れているが、クリリンが気を高めてから時間も結構経っている。それにベジータも戦い始めている。

 

 山道に居るベジータのところに着くと、トランクスも着いていた。

 

「逃げましょう、ベジータさん! 殺されてはプライドもくそもありません!」

 

 当然、ベジータは拒否。邪魔扱いされていた。

 

「逃げたきゃ逃げてもいいよ。私たち、逃げるものには興味ないからね」

「冗談じゃない。これから一気にてめえらを片付けようって時になんで逃げる必要がある」

 

 ベジータは手を組んで戦うぐらいなら、ひとりだけで戦って死んだ方がマシだとも言った。

 

 私の目標的には現在の性格なら別に死んでもらってもいいかもしれない。ブウ編になると悪とは言い難い性格になってくる。ドラゴンボールにも極悪人とは思われていないし、さすがにこの時に死んだらアウトだよ。それにその時に自爆するので今死んでもらった方が実は楽。まぁ、セルとの戦いでベジータが死にそうっていうのはなかったから死ぬことはないでしょう。それに、死なせるつもりもない。

 

 17号はベジータと18号の一対一の試合を邪魔すると参加すると言ってきた。ベジータは、私たちは臆病な平和主義者だから手を出さないと言った。私は手を出す気はないが、全く別の理由だ。正直、人造人間たちと戦う理由がない。でも、ちょっと16号は鹵獲したい。どうせセルとの戦いで損傷してカプセルコーポレーションで直すことになるだろうから今動く必要もないけど。16号はその時に弄らせてもらおう。

 

 ベジータと18号の戦いは当然、手を加えていないのでベジータが負ける。途中まで互角の勝負をするも人造人間の無限のスタミナに対し、ベジータはスタミナが減り続けるために逆転される。ピッコロさんとかそのことにすぐ気づいていた。原作ではクリリンとトランクスがそのことに「え!?」って言っていたけど、ラディッツまで「え!?」とか言っていたあたりラディッツも戦力外通告でいい気がしてきた。

 

 18号の蹴りによって、ベジータの左腕が折られたことを皮切りにトランクスが超サイヤ人になって援護に入った。18号に剣で斬りかかるも右腕一本で弾かれて剣が欠けた。さらに17号に後ろから攻撃されたことによって一撃で倒された。戦闘不能にはなっていないが。

 ピッコロや天津飯、ラディッツも援護に入ったが、17号にあっさりやられ、ベジータも17号に向かうが18号に足を掴まれトランクスが突っ込んできたところにベジータを投げつけた。天津飯はヘッドロックにより落とされ。ピッコロが追撃を仕掛けるも腹パンで一発KO。ラディッツも超サイヤ人となって攻撃を仕掛けるが、蹴りで沈められた。ベジータは起き上がり18号に攻撃を仕掛けるも、反撃され倒れたところへ蹴りを入れられ更に右腕も蹴りで折られ気絶した。

 悟飯も飛び込もうとしていたが、私が襟を掴んで止めた。どうして止めるのか聞かれて、勝てないし意味ないと伝えた。そういう意味で言えば、全員止めても良かったんだけどたまたま近くに悟飯が居たから止めただけ。

 

 17号と18号がこちらに戻って来た。クリリンがやたらとビビっている。

 

「心配するな。どいつもまだ生きている。早く仙豆ってやつを食わせてやるんだな。すっかり回復するんだろ?」

 

 仙豆の存在を知っているのも多分スパイロボ経由なんだろうな。

 

「もし、もっと腕を上げることができたらまた相手になってやると言っておいてくれ。じゃあな」

 

 人造人間たちは、悟空を探すことも含めて楽しむことにしていた。クリリンがそのことを聞きに行ったようなので、私と悟飯はみんなに仙豆を食べさせることにした。とりあえず、これでクリリンにフラグが立ったのかな?

 

 クリリンは人造人間たちから聞いたことをみんなに話した。それぞれが人造人間の強さを認識し、ベジータはどこかへ飛んで行った。トランクスも追おうとするが、ピッコロに止められた。

 

「それよりイーヴィ、さっき何故戦わなかった。お前なら倒せたんじゃないのか?」

 

 21号との戦いも見られたし、当然の反応か……

 

「確かにその気になれば、あの人造人間たちの一人か二人倒せたでしょうね。でも、そんなことしたってあんまり面白くない」

「面白くないって……あいつらを野放しにすれば、俺の未来のように……!」

「問題ないわ。未来の人造人間が、暴れているのだとしてもここの人造人間はそうでもないよ。今は悟空を殺そうと動いているみたいだけど、他に人を殺す以外の目的ができれば平穏そのものだよ」

「でも……!!」

「安心しなさい。本当に危険だと思ったらちゃんと行動するから」

 

 私の言葉に安心している様子は全くなかった。当たり前か。

 

「それで、これからどうする」

 

 悟空の病気が治ってからあれこれ考えることにしようとピッコロが提案し、クリリンがピッコロにこれからどうするのか聞いていた。

 

「さあな……」

「な、なんだよ。その顔は何か作戦でもあるんじゃないのか? 教えろよ、ピッコロ。仲間じゃないか?」

「仲間だと!? 調子に乗るなよ! この俺がいつから貴様らの仲間になった! ふざけるな! 俺は魔族だ。世界を征服するために貴様らをただ利用しているだけだと言うことを忘れるな!!」

 

 ピッコロは神様の神殿の方に飛んで行った。協力する気満々のくせしてあんな台詞を残すなんてピッコロさんはやっぱりツンデレだと思いました。まる。

 天津飯が「まだ世界征服を企んでいたのか……」とか呟いていた。

「ピッコロさんはそんなことを考えていないと思います。きっと何か考えがあってのことですよ」

 

 悟飯は、天津飯の言葉を否定した。

 クリリンは違和感を覚えてはいたみたいだけど、ナメック星で最長老の話を聞いていないから推測が付かないみたいだ。それなら私が代わりに……

 

「ピッコロは、別に世界征服なんてしようと思っていないよ。多分、元の一人に戻ろうとしているだけさ」

「どういうことですか?」

「神様とピッコロは元々同一人物であることは知っているよね? 実は、この二人に分かれたことによって大きく力を落としているのよ。それを取り戻したら、(スーパー)サイヤ人をも超えるはずよ」

「そうか! ピッコロが向かっていた方角は神様の神殿だ! これは少し希望が持てるかもしれないぞ!」

「でも、ドラゴンボールが無くなるというリスクもあるわ。まぁ、どちらにしろピッコロが殺されてしまえばドラゴンボールは消えてしまうんだけどね」

 

 みんなが少し落ち込む。

 

「ピッコロがもし本当に神様と合体するつもりだとしたら、それだけあいつが追い詰められるほど、とんでもない敵だって感じたんだ。あ、あいつ……神様大っ嫌いだったのによ……」

「おと……いえ、ベジータさんはどうするつもりなんでしょうか……」

「もう隠す必要はないわ。ベジータ以外には私が言っちゃったし」

「え!?」

 

 みんなに苦笑いされた。

 

「ベジータは負けたからと言って絶対に逃げ出すようなヤツじゃない。あいつはサイヤ人の王子としての誇りを持っているからな。必ず(スーパー)サイヤ人をさらに超えようとするはずだ」

 

 と、ラディッツが言った。……さすが、純血のサイヤ人。考えることはみんな一緒なんだ。割と本気で感心した。というか、ここ本当は天津飯の台詞だったよね。天津飯は何を思ったんだろ。

 





ようやく次回でセルが出てきます。これでイーヴィさんを少しは追い込むことができそうです。


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40 セミじゃなくてセル

 あれから天津飯は一旦餃子の居る場所へと帰り、私を含めたみんなは悟空の居る家へと向かった。悟空の家に到着すると、クリリンが「人造人間は本当にムチャクチャ悪いヤツなんだよな……?」と疑問を口にした。

 

「とんでもなく冷酷なやつらです……少なくとも俺たちの時代では……どうしてですか?」

「い、いや、もしそうじゃなかったら助かるな……! と思ってさ」

「そういう甘い希望は持たない方が良いと思いますが」

「そうでもないかもよ。さっきも言ったけど、今のところ人造人間たちが暴れそうな感じはないからね」

「……そうだったらいいとは思います。しかし、そんなこと……」

「深く考えても仕方ないんじゃない。とにかく私は悟空を殺させたくないとは思っているから」

「そうですか……」

 

 悟飯が玄関の扉を開けて、「ただいま、お母さん」と入って行った。

 ヤムチャとチチに現在の状況を手短に話し、寝たきりになった悟空を飛行船に乗せ、みんなも乗った。

 カメハウスへと向かう道中、タイムマシンを使ってドクターゲロの研究所を破壊しに行かないかという提案をトランクスがするが、そんなことをしても意味はない。この世界観でのタイムパラドックスの解消のされ方は、パラレルワールドだ。過去に行って行動したところでその過去が新たな世界となるだけで、こちらには全く影響がない。

 

「さて、ブルマに連絡入れておくかな」

 

 私は携帯電話を取り出して連絡をした。ちなみに携帯は私が開発というか再現して、この世界に普及させておいた。『ドラゴンボール超』では、悟空がスマホ使っていたけど……まぁ、時代の流れだよね。主にこっち(日本)の時代の。それに某少年探偵さんの世界なんて時間全然経ってないのにスマホとか出てきてるから……まだマシ、なのか? そういう問題ではない気がするけど。

 

閑話休題

 

「もしもし、ブルマ?」

「何、イーヴィ!? あれから、どうなったのよ!」

 

 うるさいなぁ、と思いながら事情説明。

 

「へぇ……それで大丈夫なの?」

「まだなんとも言えないね。でも、今のところ人造人間たちに不穏な動きはなさそうだし、悟空だけを気にしていればいいんじゃない?」

 

 本当にどうにかするべきなのはセルで、今のところ私が対処する気は全くないけどね。予め対策を取っておけば第一形態の時点で倒せちゃうからね。そうするとブウ編で詰みそうな気がするからしない。

 

「そう……それじゃ、私からも聞きたいことがあるんだけど」

「何?」

 

 ブルマが何日か前に田舎の人から不思議な乗り物が捨ててあったのでそれの動かし方を聞かれたそうだ。それどう考えてもタイムマシンです、本当にありがとうございました。

 オチがもうわかってしまったので、適当に聞き流してその乗り物の写真を送ってもらった。私は驚いたフリをして、トランクスに写真を見せた。そして、そのタイムマシンがある場所に私、悟飯、トランクスは向かった。ラディッツは放置。

 

 途中、人造人間の話をしていて弱点の話題が出たとき、原作知識としてもそれがあることは知っていたし、一科学者としても緊急停止装置を付けるのは当然だろうということは言っておいた。そんなことをしなくても勝つ算段がある。とも言ったけど。その方法も当然聞かれたが、答えなかった。トランクスと悟飯に嫌な顔をされたが今更なので気にしない。

 

 その後、ブルマと合流してタイムマシンがトランクスのものと同一のものであることを確認し、卵と抜け殻を発見。名前はわからずとも正体不明の化け物がいることを確認した。それの正体を私は当然知っているわけだけど言わない。どうせすぐわかることだしね。

 

 どうでもいいことだけど、セルって不完全変態してるんだよね。不完全変態って言うとセミのイメージがあるし、セルってなんかセミっぽいよね。ブルマだって抜け殻を見た時こんなでっかいセミがいるの?とか言ってたし。ちなみに不完全変態っていうのは、サナギにならずに成虫に変態することを言うよ。他に代表的なのはバッタとかカマキリとかゴキブリだね。

 

閑話休題

 

 ブルマは家へと帰り。私たちはカメハウスに移動。テレビでは、セルが姿は見えないがセルに街が襲われているのが映されている。この現状が人造人間たちによるものではないだろうということをクリリンたちに話した。そして、現場に向かおうというときにセルのあの色々混じった独特の気を感じた。フリーザのというかコルド大王の気を知っている人が誰もいないのが少しかわいそうな気がしないでもない。フリーザの気は、悟飯が感じたことがあるからみんなに教えていたけどね。困惑する事態であることに変わりはないので、クリリン、トランクスは確認しに行くことにしていた。当然、私もついて行く。セルのこと……というより、ドクターゲロの研究所の方に用がある。トランクスたちに壊されたくないからね。

 

 途中で神コロ様の気を感じつつ、ピッコロがセルの正体を聞き出し終えたであろうタイミングで到着した。これでセルは追い込まれたわけだが、ここで倒してしまっても面白くない。

 クリリンとセルとの会話でセルが自分の辿った歴史とは違ってきていることを知ると私は一言付け加えておいた。

 

「私はお前のことを良く知っているよ。君が完全体になったらどれくらいの力になるかも知っている」

「何……!? 貴様がどこの誰かは知らんが……今この場は気にすることでもない……17号と18号は必ず手に入れてみせるぞ! 貴様らに邪魔しようとしてもどうにもなるまい!」

 

 セルは太陽拳を使って、目くらましをした後に飛び去って行った。実は私にはくらわないんだけどね。光学センサーが一時眩むだけで赤外線とか衛星カメラとかエコーロケーションもできる。と、まぁセルを捕捉する手段なんていくらでもある。使わないだけ。ピッコロさんからしたら手伝えよって感じだろうけど。

 

 ピッコロさんがセルをさっさと倒してしまうべきだったと激おこぷんぷん丸しているとベジータがやってきた。ベジータはピッコロがパワーアップした理由を聞いてショックを受けていたけど、そんなこと知るか。インフレに置いて行かれないんだからいいじゃないか。とメタ的なツッコミをしたくなる。

 天津飯もやってきたからピッコロさんが現状説明。これからどうするべきかも少し話していた。ベジータと私を除いて同調するが、ベジータは「(スーパー)サイヤ人を超えてやる。勝手にやってろ」って感じでどっか飛んで行った。精神と時の部屋にさっさと行けばいいんじゃないか? さっさと行ってさっさとセルを殺されても嫌だから教えないけど。

 

「ラディッツさんの言っていた通りみたいですね……」

「サイヤ人っていうのは、そういう人種だからね。強い相手がいればそれを超える強さを身に付けたがる。そしれそれを繰り返したがる」

 

 

 クリリンとトランクスが研究所を破壊しに行こうという話題を持ち上げるとそれを聞いた瞬間

 

「それを壊すなんてとんでもない!!」

 

 と声を荒げてしまった。本当の目的は現状の彼らからしたら最悪の行動かもしれないが、一応、科学者としてちゃんとした建前もある。

 

「ドクターゲロは悪の科学者だったかもしれないけど、技術に罪はないわ」

 

 例えばダイナマイトは、人を爆殺するためじゃなく土木工事のためにある。要は技術とは人の使い方次第なわけだ。17号や18号に使われた技術も上手く利用すれば医療に使えるかもしれないし、セルに使われた技術は再生医療に使えるかもしれない。

 こう考えると、ドクターゲロの研究もとっても価値のあるものかもしれないでしょ。と、別にそれに利用する気もないことをぺらぺらと嘘を吐く。これで納得してもらえたようで、使えなさそうならセルも一緒に破壊するからと念を押した。

 

 そうして私は、無事一人でドクターゲロの研究所の地下室に向かうことができた。早速人造人間たちの設計図を発見。17号たちの設計図は、私が解析して緊急停止装置作ってもいいんだけどめんどくさいからブルマに送った。私がしたいのはそんなことではないからね。私の用は現代のセルにこそある。私がここに来たのはセルを研究して、科学的方法で倒すというドラゴンボールにあるまじき方法を使おうかと思ってのことだ。それ以外にもあるけど、全てセル関係だ。さて、賢い読者様方はなんとなく察しがついてしまうことかもしれないけど、これ以上はネタバレになる。というわけで……

 

 

 

 

 

 

 

 

キングクリムゾン

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究完成! 早速、実験するために瞬間移動だ。17号が丁度吸収されようとしているところだった。セルの気を感じたところにきたから真ん前、隙だらけだしベストタイミング。セルの変身中は無敵だと誰もが思うかもしれないけどそんなことはない。セルを研究し尽くした結果、細胞がどのように変化していくかも知っている。その過程で一瞬柔らかくなる位置も存在する。そこに用意していた注射器(研究成果)を刺して注入。そして、セルは変身を完了した。

 

「……一体、何をした?」

「面白いことを起こすための布石といったところかな」

 

 腕で薙ぎ払われ、私はふっ飛ばされた。この身体じゃ勝ち目がない。

 

「貴様が何をしようとも無駄だ」

 

 私が色々やっている内に16号と18号は逃げていたがすぐに捕まりそうになっていた。16号は軽いエネルギー波で頭部が損傷した。別にすぐに完全体になってくれてもいいんだけど……ベジータが活躍する機会もあげたいので、ついでに天津飯が死にかけるのも阻止してあげるために、我が科学力を持って足止めをしよう。

 私はセルの肩をとんとんと叩いた。振り向いたところを殴る。微動だにもしなかった。

 

「あれ? まさかのノーダメ?」

「そういうことだ」

 

 16号と同じ様にエネルギー波によって頭部が損傷してしまった。仕方ないのでホイポイカプセルでスペア取り出して、身体を入れ替えて新品に変える。

 

「何っ!?」

 

 私は体を入れ替えてすぐに次の手をだす。

 

「全砲門斉射!」

 

 セルへと光が降り注いだ。数秒後にはミサイルが飛び交い、無人機も近辺を飛びそこから鉛玉を撃ち出す。

 こんなものを一体どこからと言われれば世界各地には私の研究施設や外道屋の支店がある。そこには私の趣味によって改造された兵器がたくさんある。この近場の海底にもいくつか無人機やら無人空母やら砲撃可能な基地を作ってある。宇宙にもレーザー照射機能付きの衛星がある。

 正直、これらだけでフリーザ軍は余裕で凌げるレベルだと思う。でも、それは戦闘力が下っ端であるならばの話であってセルみたいな星ぐらい簡単に破壊できちゃいます的な戦闘力の持ち主には大してダメージを与えられない。

 数十秒ぐらいミサイルやらレーザーやら鉛玉やら爆弾やら打ち尽くしたんだけど、埃が舞い上がっただけかな。

 土煙が晴れた後には、セルが無傷で立っていた。

 

「そりゃそうなるよね」

「……力は16号程度のようだが、貴様は一体何者だ?」

「そういえば、名乗っていなかったね。私は神宮寺イーヴィ。元悪神さ」

「元悪神だと? 妙なことができるようだが、まぁ私の敵ではないか」

「そうやって私を侮っていると痛い目をみるよ。前にも言ったけど、君の完全体がどの程度の強さかはわかっているんだ」

「強さがわかっているからといって、私が倒せるわけではあるまい」

「別に今倒せなくはないよ。ただそれをするにはそれなりのリスクを負わなくちゃいけないし、なにより面白くない」

「ふっ…ふはははは! 根拠のない強がりを言いやがって……! 貴様なんぞすぐに破壊してくれる」

 

 セルが突っ込んでくる。確かに早いが、瞬間移動で避けられる。

 

「……!!」

「やあ、天津飯。さっさとここを離れるよ」

「し、しかし……!」

「問題ないよ。仮に18号が吸収されたとしてもね」

 

 ピッコロさんも回収しなきゃ。瞬間移動で死にかけのピッコロさんのもとへ移動して拾う。

 

「そんじゃ、またそのうち会うこともあるでしょ。さようなら」

「逃げる気か……そうはいかん!」

 

 再び瞬間移動で悟空の居る神様の宮殿に向かった。

 

「やぁ、みんな数日ぶり」

「助かったぜ、イーヴィ。あんがとな」

「私はやりたいことやっているだけだから」

 

 とりあえず、ピッコロさんに仙豆を食わせた。起き上がったピッコロさんはセルの途方もない強さに若干諦めが入っているようだ。と、そこで精神と時の部屋からベジータたちが出てきたようだ。あれ、私その話聞いてないや。知っていたけどさ。

 




だるいです。とってもだるいです。一体……どうすれば……内定……取れるんですか……いや、まだ就活は始まったばかり……と思いたいです。


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41 セル 完全体

完全体セルなのかセル完全体なのか。どうでもいいことに迷ってました。




 ベジータとトランクスが精神と時の部屋から出た後はみなさんご存知の通り。ブルマが戦闘服を渡しにやってきて、ベジータとトランクスはそれを受け取った後、すぐにセルを倒しに行った。この間に純粋なサイヤ人の髪の毛は変化しないっていう話とか、トランクスに仙豆を渡していたりするけどその辺はどうでもいい。

 悟空と悟飯が精神と時の部屋に入った後、疑問を口にした。

 

「ラディッツは精神と時の部屋に入らないの?」

 

 どうしてここに居るのかも疑問なぐらいだ。ただ精神と時の部屋に入るならば、悟飯よりラディッツの方が良い修業相手になるはずだ。それでラディッツと悟空が精神と時の部屋に入るならわかるけど、それもない。

 

「本当はカカロットと入るつもりだったんだが……カカロットは悟飯を鍛えたいみたいでな。悟飯もやる気を出していたから口を出すのは気が引けた」

「へぇ~……意外なような、そうでもないような。それで、これからどうするの?」

「俺は一旦、外道屋に戻ることにする。妻も待っているからな」

「そう……え?」

 

 ラディッツ、今なんと言った?妻?wife?

 

「あなた結婚してたの……!?」

「あぁ……最近な。子供もそろそろ産まれる」

「相手は!?」

「同僚だよ。外道屋の」

「いつの間に……」

「社長のくせに会社を放って色々飛び回ってるせいだろ」

「やりたいことがたくさんあるのよ! それに他にもやらなくちゃいけないことがあるの!」

 

 ラディッツのくせに私に口答えするとは生意気な。

 

「そうかい。それで、イーヴィはどうするんだ? 精神と時の部屋に入るのか?」

「私が入ったって強くなれないよ。それどころか、私が消滅する可能性すらあるから」

 

 精神と時の部屋は、時の流れが違う別の世界だ。環境が既に普通の人間が生きてけないレベルなのは問題ないにしても外界からシャットアウトされてしまうと私へのエネルギー供給が途絶えて死ぬ。そもそも機械の身体じゃいくら鍛えようが強くなりようがない。百害あって一利なし。故に私が精神と時の部屋に入ることはない。

 

「お前との付き合いも数年になるが、相変わらず変な体質だな」

「そりゃ、人間じゃないからね。身体も精神もね」

 

 元悪神だし。この世界に居るような神とは一緒にして欲しくないけどね。あいつら神を名乗っているけど、ただの役職名じゃん。いつか神どもの誰かにツッコミたい。

 

 ラディッツは飛び去ってしまい、私はベジータの方を観察することにした。ピッコロさんは下を覗き見るだけでいいから便利だね。私はドクターゲロよろしくスパイロボと衛星カメラを使ってみますかね。ベジータの気も感じるし、もう戦いは始まっているみたいだ。

 

 

 映像を確認してみると原作から特にずれることもなく、ベジータが圧倒していた。セルの「貴様はベジータだろ!?違うのか……!?」という発言にベジータが「俺は……(スーパー)ベジータだ!!」って答えるところは実はギャグシーンだよね。この後のことを考えると「(スーパー)ベジータ?プークスクス」ってなるのは仕方ないことだと思う。この後の「いちいち説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しろ」も名言かつ迷言すぎる。このセリフの汎用性の高さと勝手に超ベジータとか名乗っておいて何も言わない煽り具合が何とも言えない。

 

 

 視点をずらせば、クリリンと人造人間も見えた。今は、ベジータがまだセルを圧倒している最中だが会話を聞けば完全体になれば勝てるという話をしている。このままいけば、セルが18号を吸収することになるだろう。

 さて、あの注射を使う必要はもうないけどダメ押しにもう一発打っておこうかな? 前回と同じように吸収した瞬間を狙おう。あの気のバリアも対策済みだ。多少、神としての力を使うことになってしまうけど許容範囲内だ。

 放っておいたらクリリンがやられるだろうし、久しぶりにあれを試すのも悪くないかもしれない。この世界に入ってから一度も使ったことはないけどね。

 

 ベジータがセルの完全体がなるのを手伝い、トランクスが阻止しようとしていたが、結局18号は吸収されることとなった。私は18号がセルの尻尾に入ったのを確認して瞬間移動を使った。

 

「イーヴィさん!?」

 

 セルの目の前に出た瞬間に、バリアを神としての力で中和。研究から導き出した一時的に脆くなる部位を見つけ出して注射を打つ。そのままセルは完全体となり注射は取れて砕け散った。

 

「折角、完全体になれていい気分なんだ。妙なことで水を差すなよ」

「そりゃ申し訳ない」

 

 セルは自分の能力を確かめるように軽く私に手刀をしてきた。避けることもかなわず直撃し、近場の岩に激突した。

 

 また、壊されちゃったよ。動かせないこともないけど、役に立たないかな。この身体作るのにいくらかけてると思ってんだか……セルからすればそんなこと知ったことじゃないだろうけどさ。

 

「ち……ちくしょお!! よくも18号を……!」

 

 クリリン、怒るのはいいけど私のことは?

 

 クリリンがそのままセルに突撃しようとしたので、私は身体を乗っ取って動きを止めた。

 私は、ギニューの様に他人の身体を操ることができる。ただギニューとは違って身体を交換する必要がないし、技名を叫ぶ必要もないし、直線状に障害物があっても関係ない。使い勝手の良さはボディーチェンジの比じゃないね。

 

「か……身体が……! 動かないっ」

『行ってもやられるだけだから、やめときなって』

「イーヴィさんか!? でも、向こうに……」

『私は人の身体を乗っ取ることもできるのよ。今は無茶しようとする君を止めるために使ったの』

「そ、そうか……すみません。イーヴィさん」

『何、気にすることはないさ』

 

 こうやって、乗っ取った相手と会話もできる。()()()()()()()()()()()()

 

 セルは少し素振りを繰り返し、満足したのか少し笑った。

 

「どうやら思ったとおり完全体になっても大したことはなさそうだな」

 

 ベジータが降りてきて、そう言った。

 「いや、全然大したことあるよ。べジータじゃ勝てないし」と内心思った。言ったところで怒りを買うだけだから言わない。

 

 

「ではキミが私のウォーミングアップを手伝ってくれるかな?」

「いいとも……ウォーミングアップでおしまいにしてやるぜ」

「よろしく」

 

 

 ウォーミングアップでおしまいにされるの間違いなんだよなぁ……

 

 

「ベジータじゃ、勝ち目がないな」

「クリリンさん?」

「今はイーヴィだよ。クリリンの身体を借りてしゃべってる」

 

 

 セルとベジータの戦いが再開された。軽い攻撃のやり取りだ。セルは全く本気を出していない

 

「そ、そんなこともできるんですか……?」

「それよりも、ベジータは勝てないよ。知っているんだ、本当の力は今感じている気よりもずっと強いことを。君もね」

「そんなことまで知っていたんですか……!?」

「でも、それでも勝てない。君のその変身は失敗だからね」

「え?」

 

 ベジータが渾身の蹴りをセルに食らわせるが、セルには効いていない。そして、例の台詞だ。

 

「どうしたのだ? さっきまでの勢いは……笑えよ、ベジータ」

 

 ベジータに取っては屈辱でしょうね。でも、この台詞もみんな大好きな台詞だよね。調子に乗った奴をぶちのめした後に言ってみたい台詞第一位なのは間違いない。そんなシチュエーションになることはまずないけどね。

 

 

「どういうことですか?」

「戦ってみればわかるよ。ベジータを超えたと思っているなら大間違いなこともわかる」

 

 

ベジータは蹴飛ばされ岩を破壊してなお飛び、途中で止まった。

 

 

「それなら今すぐにでも……!」

「でも、ベジータは一人で闘うことに拘るだろうから行かなくていいよ。死にそうだと思ったら私が助ける」

 

 

 16号はセルの不意を突こうとするが、あっさり見抜かれていた。

 ベジータは両手を広げて気を高めていた。その後、ゆっくりと両手を前に持ってきて手首だけを合わせた。ベジータを纏う気が激しい風を起こし、荒々しくなる。

 

「セルーッ! いくら貴様が完全体になったと言ってもこいつをまともに受け止める勇気があるかーっ! ははーっ! 無理だろうな! 貴様はただの臆病者だーっ!」

 

 避けさせないための挑発をしていた。セルもわかっていてこの挑発に乗っていることだろう。

 

「ちょっと離れようか」

「そんなこと言っている場合ですか!! このままじゃ、地球が……!」

 

 

 

「ファイナルフラーッシュ!!」

 

 

 

 巨大な閃光がセルを襲った。その閃光が通った跡は、地面や海を削っていき閃光は、地球の外へと飛んで行った。

 途中に惑星があったら、お陀仏なのかな?と、見知らぬ惑星の人たちに思いをはせる。まぁ、私には関係のないことだ。

 

「父さんはちゃんと計算して範囲を絞ったんだ……!」

 

 トランクスがそんなことを言うが、自分の居る星も消し飛んだら自分も死ぬんだからそんなことはしないことぐらい簡単に思いつくだろ、とツッコミたい。

 

 

 セルはと言えば、右腕が完全に消失していた。人間と同じ様に考えるならば、右の肺も胃や小腸の一部も破壊されているぐらいに削られていた。

 

「ぐ……ぐぬ……!」

「ざまあみやがれ……!」

「うがっ……し、しまったぁああ……!」

「くっくっく……はっはっはっは……」

 

 セルは悔しがり、ベジータは三段笑いし始める。これ、コントだよね。あんまり勘違いで笑わせるのもかわいそうだし、指摘するか。

 

「随分と演技がうまいなー、セルは!」

 

 大声で棒読みしてあげる。それでベジータも気づくでしょ。

 

「何!?」

「む……ネタ晴らしされてしまったか。しかし、ベジータはこの私がピッコロの血を引いていることを忘れていたようだな。むんっ!」

 

 セルの身体は再生した。ピッコロさんと同じ再生の仕方なわけだけど、本当にキモい再生の仕方だよ。いきなり生えてくるんだもの。

 

「ガッカリしたかな?」

 

 悪意満載な茶目っ気だよね。でも、こんな余裕かましているから負けることになるわけで……ホント、この世界の強者は何かと調子に乗ってるやつが多いよね。そうでもしないと面白くないって気持ちはわからなくもないけどさ。

 

「さてと……そろそろ殺してしまうか」

 

 セルがゆっくりとベジータに近づく。

 

「くそっ!!」

 

 ベジータは、エネルギー波を連続で撃った。連続エネルギー弾、通称フラグ――ではなくグミ撃ちでもない。普通に有用な技のはずなのにやってないフラグな悲しい技だ。

 セルに効いているはずもなく、左ストレートをもろにくらった。ベジータが立ち上がったところに蹴りあげて空中に浮かし、背後に周って肘打ちで叩き落した。地面に激突したベジータはそのまま気を失った。

 

「ふっふっふ、しぶといな。まだ、かろうじて生きているようだ。いますぐ楽にしてやるぞ、ベジータ」

 

 さて、クリリンの身体で闘ってみるかな……

 

「クリリンさん……いえ、イーヴィさん! どうするんですか!?」

「私が闘うよ。トランクスは引っ込んでて」

「無茶だ!」

「問題ないよ」

 

 他人の身体でも瞬間移動を使うことは容易なのでそれでセルに近づく。

 

「何の用だ? クリリン」

「ベジータが殺されるのを阻止しにきた」

 

 私は、セルの顔面に一撃パンチをくれてやった。ダメージはくらっていないようだが、思った以上の衝撃だったようだ。

 

「!? 貴様、本当にクリリンか?」

「私はイーヴィだよ。クリリンの身体をちょっと借りているだけさ」

「……! 元悪神とやらは随分と面白いことができるようだな」

「まぁね。本来の身体ならもっと力を出せるんだけど、まだ時期尚早かな」

「だが、その程度のパワーでは私に傷一つ付けられはせんぞ」

「でしょうね。それでも、ベジータを殺させないぐらいは簡単なことだよ」

「大した自信だ。ならば、やってみせろ!」

 

 セルは回し蹴りをしてきたが、腕に当たった瞬間に軌道を逸らすことでさばく。

 

「!?」

「はぁ!」

「ぐぉっ!」

 

 体勢を崩したところに蹴りを加えることでセルの蹴りの勢いを活かしてそのままふっ飛ばした。セルは近場の岩に激突した。

 

「決まった! なんちゃって裂蹴拳!」

 

 私は彼と違って人間大好きですが、この技使ってみたかった。この世界にこういう戦い方する人いないし。

 

 

「トランクス! 早くベジータを回収して!」

「は、はい!」

 

 トランクスはベジータを回収して飛び去って行った。

 

「これで心置きなく戦えるかね?」

 

セルはいつの間に私の傍に立っていた。やっぱりダメージはなかったみたいだ。

 

「いや、最初からベジータを逃すために戦いに来たからこれ以上の戦闘をするつもりはないよ」

「私から逃れられるとでも思っているのか?」

「逃げるのは簡単だよ。それは知っているだろ」

「それならば逃げてしまうのか? 失望のあまり地球ごと貴様らを消すかもしれんぞ」

「そんなことはしないだろ? お前はサイヤ人の血を引いているんだから」

「なるほど。貴様は(サイヤ人の性質)のことを良く理解しているようだな。望みはなんだ?」

 

 ん?DIOかな?ちょっと台詞違うけど、なんかそれっぽい。まぁ、それは置いといて

 

「10日ちょうだい」

 

 本当はそんなに必要ないけど、原作通りの時間ぐらいもらってもいいでしょ。

 

「それだけの時間があれば、私を超えられると?」

「誰かは超えるでしょうね。それは私かもしれないし、悟空かもしれないし、ベジータかもしれないし、ピッコロかもしれない。はたまた、全く別の誰かかもしれないよ」

「面白い。ならば、その10日後に武道大会を開いてやろう」

 

 セルは、1対1の戦いで勝ち抜き戦を提案した。セルは一人だけどね。セルはそれだけ余裕なわけだが。

 

「場所など詳しいことは近いうちに知らせてやる。テレビ放送を通してでもな」

 

 そういうやり方は嫌いじゃない。人類を殺すことを許容するわけにはいかないけどね。

 

「いい退屈しのぎができそうだ。ふっふっふ……じゃあな。仙豆はたくさん用意しておいたほうがいいぞ」

「そうさせてもらうよ」

 

 悟空やベジータは使いたがらないだろうけど、必要なのは間違いない。

 セルは飛び立とうと瞬間に足を止めた。

 

「そういえば……最後に質問をさせろ」

 

 セルが私に聞きたいこと?あれしかないな

 

「貴様は私が17号と18号を吸収したとき、なにか注射したな。なんだあれは?」

「教えないよ。ただ、あれの効力を発揮するには君を追い詰める必要がある。そうならなければ何の効果もない。余裕をもって勝てばいい話だよ」

「ふっ……それならば、問題ないな。それぐらいのハンデはあってもいいだろう」

 

 セルはそのまま去って行った。私は、戻って来たトランクスやベジータにこのことを教えた。16号も参加を表明したので修理してあげる約束をした。

 

 

 

 翌日、テレビを通してセルゲームの開催の告知がされた。そして、孫親子が精神と時の部屋から出てきてセルゲームのことを知ることとなった。

 




次回、セルゲーム。


自分の就活次第で内容が変わります。ま、嘘なんですけどね。


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42 セルゲーム

 セルゲームまでの間、何をしていたかと言えば、まず16号の修理。ロボットなので壊れても私の目標的には壊されてもOKとしておこうと思ったが、未然に防げそうなものを防がないというのも気分が良くないので、16号には爆弾を取り除いたことを教えた。そうすれば、セルと共に自爆なんて考えもしないわけで。ついでに、思考回路(脳みそ)を少し弄らせてもらった。元の世界でもAI作っていた経験があったからドクターゲロとは違ってこの手の作業は大得意だ。これで悟空を殺すという目的は消失した。消す必要もなかったかもしれないけど、今後も存在するなら消しておいた方がいいでしょ。

 

 

 3日後には、軍がセルに攻撃を仕掛けたことによって軍は壊滅させられ大量の死人が出た。そのことから悟空はドラゴンボールが使えないかとナメック星まで行き、デンデを連れて帰って来た。私はデンデを助けたこともあったので、悟空から呼び出しされた。ドラゴンボールが復活したのを見届けた後、他にもやりたいことがあるとさっさと帰った。

 

 

 あとは、取材の応対だ。私は一応武道家としても名が知られているためセルゲームに参加するか、否かを問われた。ミスターサタンに一番大きな期待を寄せられているわけだが、私もそれなりに期待されているようだ。

 

 

 ちなみに悟空と悟飯は9日間を超サイヤ人のまま下界で過ごした。そして、セルゲームの3日前にはラディッツの娘が誕生し、地球が滅亡間近かもしれないというなかではあったが、仲間たちが盛大に祝った。この娘は悟空にとっては姪、悟飯にとっては従妹にあたるので特に喜んでいたように見える。名前はパースと名付けられていた。名の由来は……パースニップと呼ばれるセリ科のニンジンに似た根菜だろう(wikipedia情報)。そんなものは作者の勝手な事情であって、この世界の住人によるところではないとメタ的なことを考えてしまうが、それは野暮というものだろう。そんなこと言ったらブルマ一家は全員下着だからね。現実だったら残念すぎるにも程がある。深く考えない方がいい。

 

 

 さらに言えば、ラディッツも一応精神と時の部屋に入り超サイヤ人を超えたサイヤ人いわゆる超サイヤ人第2段階というやつにはなれるようになっていた。ついでにある技を使えるようになれと社長命令を出したのだが、1年での習得は無理だった。むしろ、使えたらおかしいレベルの技ではあるが便利だしいつか使えるようにさせたい。

 

 

 そしてセルゲームが行われる運命の5の26日を迎えた。

 ベジータを除き、神様の神殿に仲間が集まっていた。ここでデンデが直したドラゴンボールがポルンガの様に複数回生き返らせることはできないことが発覚する。悟空は普段通りだけど、一応指摘するか……悟空が「早く行こう」と言った後に私は呼び止めた。他の仲間には先に行かせ、悟空だけを神殿に残した。

 

「一体どうしたんだよ、イーヴィ」

「ねぇ、悟飯が切り札なんでしょ」

「……やっぱ、イーヴィには隠せねぇな。別に隠すつもりもなかったけど、驚かせたかったんだ」

「確かに、悟飯が怒りをきっかけにしてセルをも上回る力を発揮するのは私も間違いないとは思うわ。その選択は武道家や戦士として考えるには正解かもしれないけど、一人の父親としてはどうでしょうね」

 

 悟空は戦士としては一流かもしれないけど、父親としては三流だろう。どうにも悟空は人間味に欠けるところがある。別に悪いことではない。でも、良いことでもない。この性格を矯正するつもりは欠片もないが、ピッコロに指摘された時動こうとしたし、考え直していたのだろう。どうせ考え直すぐらいなら今のうちに言った方がいい。

 

 悟空は迷ったのか考え込む仕草をする。

 

「……オラはセルを倒すにはそれしかねぇと思ってる。やってみなきゃわかんねぇけど、多分オラはセルに負けるからな」

「託すのは悪くないと思うわ。悟飯も理解してくれるでしょうけど、他の人からみたら虐待のそれと同じようなものよ」

「それならイーヴィにはなんかあんのか?」

「私を誰だと思っているの? 元悪神にして、外道屋社長よ。できないことなんてない。私は私が最大限楽しむ為の方法を取るまでだよ。そして、仲間は死なせない。私にはそれができるだけの力も手段もある」

 

 死なせないのは死なせたくないという思いとかではなく単なる目標でしかないけどね。私にとってこの世界はどこまで行っても漫画の中の世界でしかない。この世界をゲームとして楽しむのが一番の目的だ。

 

「なら、イーヴィが倒しゃいいじゃねぇか……」

「私にとっては戦うことは目的じゃないって前にも言ったでしょ。それに戦いたいのは悟空でしょ」

「ははは、まぁな。そろそろ行くか」

 

 みんなから少し遅ればせながらの到着だ。すでに、ベジータと16号は既に居て、おまけにサタンやカメラマン、名も知らぬアナウンサーもいる。

 テレビカメラの方に手を振っておく。

 

 16号がこちらに近づいてきた。16号の最終的な調整はブルマたちに任せていたから、神殿には連れて行かなかったんだよね。

 

「改めて礼を言わせてくれ。ありがとう、イーヴィ」

「まぁ、私の趣味みたいなところもあるしいいって。それよりも」

「ああ」

 

 悟空が16号に手を差し出し「お互い頑張ろうな」と握手を求める。

 

「お前を殺す」

「?」

 

 悟空はなぜこの場でそんなことをいうのか理解できていないといった感じだ。というか、普通理解できない。

 

「すまない。これはイーヴィが、これを言われた相手は死なないおまじないだから言えと言われてな」

 

 ある意味間違ってないけど、本音はただ、中の人ネタやりたかっただけです。ごめんなさい。絵面はなかなかに面白かったよ。

 

「意味わかんねぇ……どうしてこんなことさせたんだよ」

「私が面白いからいいの」

 

 これに嘘はない。

 

 

「さてと! 早速、オラから戦わせてもらおうかな!」

「え!? いきなり悟空さんから始めなくても……」

「好きにしろ。どっちにしてもフィニッシュを決めるのはこの俺だ……」

「か、勝手に順番を決めるんじゃないっ!」

 

 全然目立っていなかったサタンが声をあげた。

 

「ミスターサタンが、先手? 別にいいんじゃない?」

「イっイーヴィさんっ!ど、どどうしてここに!」

 

 あら、かなりビビっている様子。というか、今まで見えてなかったんだろうか?悟空たちの陰になっていたとか?

 

「どうしても何も、セルゲームに参加することはテレビを通して言ったわよ」

 

「これはこれは、イーヴィさんではないですか! あなたもセルゲームに参加するのですね! これほど頼もしいこともありません! で、そちらの方々は?」

 

 アナウンサーが話しかけて来た。名前は知らない。

 

「彼らは、心強い味方さ。天下一武道会の優勝者も居るよ。それ以外の大会に出ていないだけで実力は私が保証するよ。名前は個人情報だから秘密ね」

 

 

 正直、ここは漫画で読んでいてイラっときたのでさらっと原作改変。

 

 

「時間だ。どいつからでもいい、さっさと出ろ」

「当然俺だ。俺に決まっている」

「おめえ、殺さ「がんばれ、サタン」なんだよ、イーヴィ」

 

 私は、サタンを止めようとする悟空の言葉を遮った。

 

「サタンが戦ってくれたほうが、都合がいいんだ。試したいこともあるからね。16号、身体預かって」

「わかった」

 

 私は機械の身体からサタンの身体へと乗り移る。抜け殻となった機械の身体は16号が受け止めてくれた。

 

 

「一体何をする気なんだ、イーヴィさん」

「俺にも何をするかは皆目見当もつかん。この身体自体は神宮寺イーヴィと似ているかもしれないが、性質は全くの別物だ」

 

 

 16号がクリリンの質問に答えていた。

 

 

 私はちょうど、カプセルからカバンを取り出したところに乗り移った。サタンと受け答えするのも面倒なので意識を刈り取って、身体を奪う。

 さて、カバンだけだして放置するのもどうかと思うし拾って、上に放り投げる。落ちてきたところに拳を立てて殴りつけた瞬間に指を折り二連撃を加える。カバンごと瓦は砂のように粉々になった。理論的には一撃目で物体の抵抗を消して二撃目に抵抗のなくなったところに攻撃を加えることでその攻撃は抵抗なく全体に伝わるというものだ。要は二重の極みである。疑似科学だけどその辺は、マンガの世界だからツッコミはなしで。

 

「!?」

 

 この場にいる人間の全員が驚いていた。瓦を割ること自体は、この場にいるほとんどが指一本で可能だ。だが、一発で文字通り粉々にすることができる者はいないだろう。

 

「さて、お試しといこうか」

 

 ダッシュでセルに近づく。

 

「貴様、イーヴィか!」

 

 私と分かった瞬間に迎え撃とうとしているようだ。

 

 サタンの身体能力はただの一般人にしては少し強いレベルだ。こんな身体じゃ、勝ち目がない。だから、これは練習だ。神の力を戦闘で使うことは滅多にしないから肩慣らしといったところか。

 

 セルが払うように手刀をしてくる。これにあたると多分、死ぬ。私ではなくサタンが。

 サタンを死なすわけにもいかないのでスウェーバックの要領で避ける。勢いつけすぎてブリッジになってしまったが、そのまま蹴り上げてセルの顎を掠めた。

 

「ちっ、猪口才な」

 

 原作でのサタンに対する攻撃と違い、力はそんなに入っていなくとも若干殺意が含まれているので当たるとたぶん死ぬ。でも、こっちの攻撃はクリーンヒットしてもダメージ1あるかもわからん。無理ゲーです。

 

 次、試しの一発を入れて降参しよう。クリリンの時に使ってもよかったんだけど、そうするとそのまま続けて闘わないといけない状況になっただろうからやらなかったんだよね。

 

「はぁっ!」

 

 見え見えなストレートと思いきや、蹴り上げをしてきた。こんなのくらったら死んじゃう!肘でセルの膝の横を叩き避ける。神としての力を籠めて、全力で腹パンする。でも、セルは仰け反りもしなかった。むしろ、私の手の方が痛いぐらい……

 

「やはり、その程度か……」

 

 先ほどより速い手刀が当たり、そのまま吹き飛ばされてしまった。近場の岩山に激突し、奇しくも原作と同じように吹き飛んでいた。

 

「痛っーーー!」

 

 死ななかったのは、ギャグになっているからなのか、運が良かったからなのか、思ったより丈夫だったからなのか。ホント、死んだかと思った。

 

 場外負けしたことによってアナウンサーが絶望しているようだ。

 

「ミ、ミスターサタン……な、なんで負けてしまったのですか?」

「少し滑ってしまってな。でも、ただで負けたつもりもない」

「そ、それはどういう……?」

 

「おい! セルの様子がおかしいぞ!」

 

 仲間の誰かがそう言った。

 セルは俯き、咳き込む。その後、少量ではあるが血を吐いた。

 

「相手の体内に送り込んだ力を爆発させることで内臓にダメージを与えた」

「さ、さすがは、ミスターサタン!」

 

 セルは私を睨みつけた。

 

「やってくれたな……! 神宮寺イーヴィ!」

「また後で闘おうじゃないか」

「ちっ……はあああああ!」

 

 セルは内臓を再生させたようだ。

 ダメージを与えるというよりは力の使い方を思い出すことが目的だったからそれは達成した。元の身体に戻るとしよう。

 

 

「……? あだ、あだだだ……?」

 

 

 サタン自体は意識を失っていたので記憶が全くなく、痛みだけが残っていたようだ。

 

 

 

「さて、今度こそオラの番だな」

 

 

 

 その後、セルと悟空の闘いは原作と寸分も違わなかった。私がセルに与えたダメージなんて欠片も影響していなかったようで、少しばかりショックだったりもする。

 




悟空とセルの闘いは飛ばします。ピッコロの時はちょくちょく手を出してたから書きましたけど、セルとの戦いでは少しも変わりそうもないので。


というわけで、次回は「おめえの出番だぞ、悟飯!」から始まります。


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43 セルゲーム終幕

就活で精神的ダメージを負いながら完成。内容に反映していないとも言い切れない程、ちょっとだるいです。段々と焦りも出てきて……どうなるのかなぁって就活もこの作品も自分の人生も不安になります。


「おめえの出番だぞ、悟飯!」

 

 ↑X↓BLYRAカカロットォ……はっ!つい、条件反射で……というのは冗談。

 ついにこの時が来た。

 

 悟空の言葉にみんなが驚いて、ピッコロさんは悟飯じゃセルに敵わないと悟空に激おこなわけだ。悟空が敵わなかったセルに悟飯が勝てるわけがないと。

 悟空はそれに対し悟飯は自分たちが思っている以上の力を持っていると反論した。そして、悟空は悟飯に「自分とセルの戦いについていけないと思ったか」と質問すると悟飯は「思わなかった」と答えた。手を抜いているように感じたというのだ。周りの反応は信じられないと言った感じだったが……

 悟空は悟飯の背中を押して「平和な世を取り返してやるんだ」と。悟飯はそれに応えてセルと戦うことを決めた。

 悟飯はピッコロさんからもらったマントを脱ぎ棄て、岩山を降りる。

 

 悟空がクリリンから仙豆をもらっているところが見えたのですぐに悟空とセルの対角線上近くに移動する。

 

「セル!」

 

 私は悟空がセルに仙豆を投げたところに飛び込んだ。

 

 

「キャッチ!」

 

 

 セルに渡る前に仙豆を掴み

 

 

「アンドリリース!」

 

 

 悟空の口の中に投げ返してやった。ちゃんと口の中に入って飲み込んだのも確認できた。

 セルは、何事か?といった風だった。回復アイテム貰えなくて残念でしょうね。

 

 

「な、何すんだよ! イーヴィ!」

「それはこっちの台詞よ。フェアじゃないとか考えてるんでしょうけど、敵を回復させようとする必要はないでしょうが! そんなことするのは、余裕があるときにしなさい!」

「わ、わかったよ……」

「それと、まだ悟飯に言っておくことがあるんじゃないの!」

「で、でもよ……言ったらあんまり意味がねぇんじゃねぇかと思ってよ……」

 

 

 悟空の狙いは悟飯が怒りをきっかけに本来持っている力を引き出すことだ。怒りは意識させない方が怒りやすいというのはあるかもしれない。感情なんて起こそうとするものではなく起きるものなのだから。それでも、悟空は父親としてそれ以前に人として悟飯に言わなければならないのだ。

 

「セルを倒せる力を秘めているとはいえ、悟飯はまだ子どもよ。あなたは何も言わず子どもにこの地球の運命を任せるの?」

「……! 悟飯!」

 

 悟空は悟飯の傍へと寄った。

 

 

「やはり貴様が戦うのか? 孫悟空」

「違ぇよ。悟飯に言わなきゃならないことがあっただけだ」

「……お父さん?」

「悟飯、オラは……オラは、おめえの真の力が発揮すればセルに絶対勝てると思ってる。ただ、その力が解放されるには怒りが必要だ。怒れ、悟飯。それでセルに勝てる」

「……そう言われても、できませんよ。お父さん……」

「そんなことはねえさ。きっとなんとかなる。悟飯にセルを上回る力が眠っているのは間違いねえんだ」

「わかりました。やります……」

 

 

 不必要なやり取りのような気もするけど、悟空のお父さんレベルが1上がったのではないかと思いたい。

 ただ、怒れって言われても悟飯にはそんなに怒る要素がないし、一般人とか軍人とか殺されてはいるけど、親しい人がいたわけでもない。やはり、仲間が痛めつけられることが怒りの条件になるのかもしれない。原作での16号が破壊されて超サイヤ人2になったのは、怒りを爆発させるきっかけになっただけで、それだけじゃない。仲間がセルジュニアに痛めつけられていたからこそだろう。

 

 でも、私はそれをさせるつもりはない。

 

 

 悟飯は、気を入れる。悟空にも匹敵しそうな大きな気だ。

 

 

「セル! 悟飯と戦う前に一ついいことを教えてあげる」

 

 

 私は予め言ってしまうことにした。さっきの話も聞こえていただろうけど。

 

 

「さっき、悟空が言っていた通り悟飯にはあなたを倒すだけのポテンシャルがあるわ! でも、まだそれを引き出せていない。どうしたらいいか……それは悟飯を怒らせることよ!」

「ふん……何を言い出すかと思えば……だが、参考にさせてもらおう」

 

 

 セルがニヤリと笑った。

 

 別に私はセルに悟飯を怒らせるように仕向けようと考えているわけじゃない。でも、どうせならそれなりに凝った演出もしたい。正直、これから私がやろうとしていることは物理的には何の問題もないが、倫理的に問題がある。後、展開的の熱さ的な意味でも。そんなことを気にする私じゃないけど、普通に道徳のある考え方をする人が見れば嫌悪感を抱く人は多そうだ。一応はテレビに映っているわけだし、事実はどうであれ悪人然とした姿を見せたくない。でも、誰も(物理的に)あまり傷つかないようにと考えるとどうしても避けては通れなさそうだから諦めている。悪いことするわけじゃないから別にいいよね。

ちなみに、この手段は悟空が超サイヤ人になれなかった時の為に用意していた手段でもある。

 

 

 セルと悟飯の戦いは、セルが圧倒的だった。と言っても、悟飯もただではやられていない。セルにダメージが通ったような攻撃もあったし、セルは余計に怒らせてみたくなったとやる気になった。フリーザの使っていたデスビームを使って、悟飯の動きを誘導して胴体を両腕で掴む。ベアハッグという絞め技だ。セルのパワーでやれば、背骨も折れるだろう。

 悟空はピッコロが悟飯を助けるために飛び出そうとしているのを止めていた。

 

 私はと言えば、セルの真後ろに立っていた。

 16号と同じで機械故に気で察することはできないから簡単だった。

 

 

「ねえ、悟飯」

「!?」

 

 

 悟飯を放し、セルは私から距離を取る。

 

「はあっはあっはあっ……」

 

 悟飯は苦しそうに息をしていた。

 

「一体、何の用だ」

「正しいことのために戦うことは罪ではない。話し合いなど通用しない相手もいる。精神を怒りのまま自由に開放してやれ」

 

 ほぼ棒読みで、原作で16号が言っていた台詞を言ってみた。

 

「……何を言っている?」

「言っておきたかっただけよ。悟飯、参考にしてね」

「いいアドバイスだが、私は私のやり方でやっているのだ。貴様は邪魔だ」

 

 セルの容赦の無いエネルギー波によって私の身体はバラバラになってしまった。

 

「イーヴィさん!」

 

 悟飯が心配そうにというか、声を荒げてくれる。別に問題ないし返事をしておこう。

 

 

 

 

 

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 悟飯の後ろに私の肉体を構築し、登場してみた。

 

 

「何故だ……!? 確かに貴様はバラバラになって、ここに残骸が……それもスペアか!?」

「いいや、これが私本来の身体だよ。それでこれが……」

 

 

 私は悟飯の頭に手を置き、脳みそを弄る。ホルモンとか記憶とかそういうのだ。そうやって悟飯の怒りを引き出す。

 

 

「うわああああああああーっ!!!!」

 

 

 悟飯の気が大きく膨れ上がり髪が逆立つ。その気の勢いに私は吹き飛ばされそうになりながら耐えた。でも、私の残骸はどこかに吹き飛ばされてしまった。もったいないから後で回収してリサイクルしよう。

 

 

「悟飯の本当の力だ」

「もう許さないぞ、お前たち……あれ……?」

 

 

 私が弄った記憶との齟齬が生じたみたいだ。私の機械の身体が壊された以外は仲間に被害はほとんど出てないからね。

 

 

「ようやく真の姿を見せたか……これで面白くなってきたぞ!」

「悟飯、思いっきりやってやりな」

「イーヴィさん、これは一体……?」

「理由はどうあれ、悟飯の眠れる力が目覚めたのさ。もう恐れるものは何もないはずだよ」

「……はい!」

 

 

 状況は完璧に理解できていなさそうだけど、自分の力は理解できたようだ。セルに向き直り構えを取る。

 

 

「生意気なガキだ。まさか、本気で私に勝てると思っているのか?」

「勝てるさ」

「ふん……大きく出たな。では、見せてやるぞ……! このセルの恐ろしい真のパワーを…!!」

 

 

 セルは気を溜める。フルパワーまで溜めた瞬間に爆風が巻き起こる。あー、私の残骸が段々遠くに飛ばされる……

 

 

「どうだ、これが本気になった私だ」

「それがどうした」

「……! くっくっく……」

 

 

 セルが全速力で悟飯に突撃し、右腕を振り下ろすように悟飯の顔を殴りつけた。悟飯は仰け反るだけで大したダメージはないようだ。セルが左の追撃を放つもさばかれ左のボデーブローがセルの脇腹を襲った。

 

 

「あ……ぐうっ……!」

 

 

 セルは殴られた部分を手で押さえていた。大きなダメージが通っていることが良く分かる。右手で殴られた部分を抑えたまま左の手刀を出すが、容易に避けられアッパーを食らった。吹き飛ばされて受け身を取り、立ち上がるがダメージが足に来ていた。

 

 

「ば、馬鹿な……な、なぜ、この私がたった2発のパンチでこ、これほどのダメージを……」

 

 

 ここまで来れば、そろそろ薬が効いてもいい頃なはずだけど……

 

 

「うっ……」

 

 

 吐き気かな……セルは口を抑えている。どうやら効いていきたようだ。気も弱々しくなっているのがわかる。あと少しで分離しそうだ。

 悟飯はゆっくりとセルに近づく。

 

 

「ぎ……!! ずああっ!」

 

 

 悟飯に蹴りを連発して放つがしっかりとガードされ、逆に顔を蹴られて吹き飛ばされた。

 セルは起き上がるが、完全にパワー負けしていることに気が付いたようだ。まぁ、諦めるわけもなく飛び上がってかめはめ波の準備を始めた。

 

 

「くらえ! 全力のかめはめ波だ! よければ地球が吹っ飛ぶ……! 受けざるをえんぞ!!」

 

 

 セルの気が大きく膨れ上がった。

 

 

「波――――っ!!」

 

 

 巨大なかめはめ波が地球に悟飯に向かって飛ぶ。地球に当たればセルの言う通り地球は宇宙の塵となるだろう。それでも、悟飯は慌てる様子もない。

 

 

「かめはめ……」

 

 

 悟飯は小さく呟く。

 

 

「波―――!!」

 

 

 一瞬のためでセルより大きなかめはめ波を撃ち、セルのかめはめ波をも飲み込んだ。

 

「おおおお……!! ぐあああーーーーっ!!」

 

 セルにかめはめ波が直撃した。右腕以外の四肢がもがれ、頭部の一部や羽の様な部分も崩れていた。

 

「な、なぜだ……なぜあれほどのパワーが奴に……」

 

 そろそろセルがブチ切れる頃だ。

 

 悟空は早く止めをさせと悟飯に伝えるが、悟飯はあんなやつは苦しめてやらなきゃと言っていた。

 セルが人類に対してやったことは許されないものであるのは間違いないが、仲間を傷つけられてもいないのにこんなに怒るなんて……って、私が植え付けた記憶のせいか。そうしなくてもこうなっていただろうから別にいいか。セルに自爆させる気もない。

 

 ただ、悟飯って真面目な割にこういう時、大体調子に乗るよね。物語を盛り上げるために必要な要素なのかもしれないけど、マヌケにも程がある。パワーアップした直後はカッコイイのに……

 

 セルは身体を再生させ、「ちくしょう……ちくしょう……!ちくしょぉおおお!!」と叫んだ後にパワーに偏った変身をした。地面に降りてきて「貴様なんかに負けるはずがないんだああ!」と叫びつつ大振りの攻撃で空振る。

 悟飯は避けた後に勢いを着けて顔に蹴りをいれた。セルはよろけ、様子がおかしくなっていた。そして、セルは18号を吐き出した。

 私はセルの傍に近寄った。

 

 

「イーヴィさん?」

 

 

 悟飯に声をかけられるがあえて無視。

 

 

「セル、私は言ったはずよ。私が打った薬は追い込まれた時に効果を発揮するって」

 

 

 セルは18号を吐き出した後も苦しそうにもがきながら完全体ではなくなっていった。

 

 

「あなたの身体は17号と18号を吸収して細胞レベルで融合しているけど、強い衝撃で分離を始める。それがあなたの元々の性質。私が打った薬はそれを強化するものよ。通常なら強固なその肉体によって守られているけどそれを破られた今、それだけでは済まなくなる」

「い、一体何が……!?」

「その前に……さらにもう一発!」

 

 セルにボディに思いっきりパンチを入れる。本来の身体での思いっきりの一撃は、機械の身体のパワーを大きく上回った。そのためにしっかりとダメージも通ったようだ。それは、私に対する記憶や信仰心の強さがある一定以上に高まったことを意味する。

 

「うごおえぇ……」

 

 セルは、17号を吐き出した。

 

 

「そして、セルの肉体を構成するのは様々な生物の細胞。それらも分離を始める。つまり、あなたの身体は細胞レベルでバラバラになる」

「な、なにぃ!? そ、そんなことがあってたまるか!」

「後、10、9、8……」

「……! うおおお!!!」

 

 

 セルが突っ込んできたので避けて尻尾を掴み、空へと放り投げる。その間もカウントダウンを止めない。

 

 

「3、2、1……」

 

 

 セルに向けてエネルギー波を放っておく

 

 

「ボンッ!!」

 

 

 そのままエネルギー波に飲まれセルの肉片は一片も残らなかった。

 ほぼ良いとこ取りというか横取りみたいな感じだけど……

 

 

「私の勝ちだ!!」

 

 

 天に拳を掲げ勝利宣言しておいた。

 




相変わらず呆気ない終わりで、こんなんでよかったのかなとは思っています。これが実際面白い面白くないは置いておいて、自分が書いてて楽しいで気にしてはいません。反省はしたいと思います。
次回、人造人間編のエピローグをやります。その後はすぐブウ編には行かずオリ編を挟もうかと思っています。


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44 彼の未来は明るくなりそうで実はそうでもなかったりする

 セルを私が倒した。誰の疑いの余地なく私が倒したのだ。テレビカメラは壊れていたが、アナウンサーやカメラマン、サタンもばっちり見ていた。一応、アナウンサー達にピースサインしておいた。

 

「イーヴィさん……どうしてわざわざ……」

 

 あの状況を見ていれば余裕で悟飯が勝てると誰もが確信したことだろう。だが、私は知っていた。

 

「あのままいってたら、セルは自爆しようとしたよ。地球を巻き添えにしてね」

「え……!?」

「で、それを阻止するべく悟空が界王星に瞬間移動して、悟空が死ぬ。ってところまでわかっていたから私が介入した」

 

 しかも、セルは死んでなくてパワーアップして戻って来る……って話はしなくていいか。

 みんなも傍に近寄ってきた。

 

「確かにその状況になってたらオラ、そうしてたかもなぁ」

「しかし、どうしてそんなことがわかった。以前にも似たようなことがあった時、お前は最初から知っているような素振りだった。もしや、お前も未来から来たのではないか?」

 

 前々から神様には感づかれているところあったからなぁ。ただ、「漫画の世界に遊びに来ました」以外は隠す必要がない。トランクスにも私が別の世界からやってきて未来を知っているということは話している。

 それじゃ、アナウンサーも来たことだし

 

「あ、あのイーヴィさん、これは一体どういう状況なのでしょうか……?」

「私がセルを倒した」

「で、では地球はセルの魔の手から救われたのですね……!?」

「そうなるわね」

「お聞きになりましたか世界のみなさん!! 地球は、地球はすくわれたのですっ! イーヴィさんのおかげでーっ!」

 

 イーヴィコールが聞こえてくるようだ。実際には観衆もいないから気がするってだけなんだけど。

 

「私はこれの応対しなきゃいけないから、みんなは先帰ってて。話はあとでちゃんとするから、あ、17号と18号もちゃんと連れて行ってよ」

 

 ピッコロやベジータは少し納得いかなそうだったが、悟空や16号は了解してくれた。17号は16号が、18号はクリリンが背負っていた。みんな神様の神殿に向かったのだろう。

 と、思ったらベジータに胸座を掴まれてしまった。

 

「おい、さっさと話せ。前から貴様のその態度が気に食わなかったんだ。なにもかもわかったような面で、こそこそ動き回りやがって……てめぇは一体何がしたいんだ」

 

 やはり、ベジータに常識は通用しないな……ちょっとぐらい地球に馴染んでてもいいんじゃない。ラディッツを見習って欲しいよ。まぁ、それは置いておいて。

 

「私は楽しみたいだけだよ。今も昔も変わらず。未来から来ているかどうかの質問ならノーだし、未来を知っているかと聞かれたらイエスだ」

「何っ!?」

「詳しい話が聞きたいならまた今度。今は報道の時間」

「ちっ……」

 

 やっと手を放してくれた。

 

「今は放っておいてやる……」

 

 飛び去りながら最後に呟いていた。悟空が死んでないせいかやる気に満ち溢れている?「俺はもう戦わん……」とか言ってなかったし、ブウ編でも修業は怠っていなかったみたいだけどもっと強くなるのかな?まぁ、どちらでもいいけどね。

 

 

 報道の相手をしていてセルとの戦いについていろいろ聞かれたわけだが、誤魔化したり、嘘を入れたり、思ってもいないようなことを言った。その中で大きな嘘が二つある。

 一つは、機械の身体の私がやられた時私が死んだように思われていたようで、あれはどういったことなのか聞かれた時だ。私は嘘泣きしながら、「実はあれは私の双子の妹なんです」と答えた。その怒りをパワーに変えて戦っただのどうでもいい嘘を吐いた。そしたら、後日国葬とかいう話になっていた時には、どうしたものかと思ったよ。

 もう一つは、ミスターサタンが与えていたダメージのおかげでセルに勝てたということにした。その場にミスターサタンが居て、覚えてもいないのに調子に乗って笑いながらその時のことを話す。思いっきりボロを出しているのに、バレないところはさすがミスターサタンだと感心した。

 

 

 アナウンサーは後日改めて取材をしたいことや、他のメディアとのこともありその場は解散となった。

 

 そういえば途中、暗くなったからドラゴンボールが使われたんだ。そりゃ、当たり前か。

 

 早速私は、悟空たちの下――神様の神殿へと向かった。

 

「やぁ、お待たせ」

 

 周りを見渡すが人造人間たちはいなかった。

 

「あれ? 人造人間たちは?」

 

 全員どこかへ飛び去ってしまったとピッコロさんが答えてくれた。

 

「まぁいいや。機会があったら彼らにも話しておいてよ。トランクスには前に話したことだけどね」

 

 私は改めて自分が異世界からやってきた元悪神だということを話した。そして、この世界の未来をある程度知っており、すでにその未来からはずれていること。

 

「ちなみに本来なら現時点で悟空とトランクスが死んでいたよ。悟空は生き返りを拒否するしね」

「自爆の時の話か……」

「どうして生き返るのを拒否するんだよ?」

「オラに聞かれても、そのオラとは違うんだからわかんねぇって」

 

 クリリンがそんな疑問を呈するが悟空は当人でないので答えられるはずもなかった。

 

「確か、ブルマに悟空が悪いもん引き寄せてるんじゃないかと言われて納得していたことと、あの世に過去の達人がいるから面白そうだってこの二つの理由からだったかな」

「そういや、そんなこと言われたことあるぞ。それに過去の達人かぁ……今からでも界王様のとこにでも……」

「止めはしないけど、チチに怒られるわよ」

 

 それからみんなの様子は

 

 

 悟空は相変わらずそんな調子で、戦闘オタクに変わりなかった。超サイヤ人3にいつなれるようになるのかなぁと死ななかったために、そこだけ少し不安に思っていたり、いなかったりする。

 

 

 悟飯は、これからより勉学に励んでいくつもりのようだ。弱体化するのは確定事項なのだろうか……ブウとの戦いで死んだりしないよね?

 

 

 ラディッツは、今後も私のげぼk……部下であることに変わりない。いつの間にか家族作っていたことに文句を言うつもりはないが、私に報告しろやと言いたくなった。今度、挨拶にでもいこうかな。

 

 

 ピッコロさんは、一応私の言うことに納得してくれたようだ。これからは神殿で過ごすようで、やっぱり神様と融合して神様の影響を大分受けている気がするんだよね。

 

 

 クリリンは、18号との未来をそれとなく私に聞こうとしていたが、自分で確かめなさいと言っておいた。実は人生勝ち組だよね、クリリンって。

 

 

 ヤムチャは……悲しいかな、特に何も言うことはない。これからかませどころか、非戦闘員と化していく彼に価値はあんまり感じられない。でも、そこを活かしてこそ楽しめる様な気もしている。

 

 

 天津飯は、別れ際に二度と会うこともないみたいなこと言っていたけど、超で会ってるんだよね。ブウ編でも一応出てくるし、というか悟飯と会うし。さらに、ちょっと早めに会う予定でも作っておくかな。

 

 

 トランクスには、本来の歴史で殺されたときベジータが怒ってセルに立ち向かっていたという話をしておいた。この歴史でも同様に思っているかはわからないけど、ただ冷たいだけの人でもないと教えておきたかった。超でのこと考えるとかなりまるくなるからね、あの人。

 

 

 ベジータは、トランクスから私の話を聞いたらしい。不機嫌そうな顔で、今度戦えとかなんとか言われた。セルとの戦いのとき、私の力は完全体のそれを超えているように感じたのだと言う。そこにムカついたようで、カカロットの前に貴様を倒してやるとか言われたけど当然断った。数年後に戦う機会を用意するからとその場は逃げ切った。嘘は言っていない。

 

 

 私は、地球を救った英雄となり、私の力はベジータの言うとおり最も力が満ち溢れている状態となった。元の世界でもこんなに力に満ち溢れていた時代はなかったんじゃないかと思う。今なら一瞬で宇宙ごと消せそうなぐらい……私も死ぬから絶対にしないけど。その代り、取材の量は倍増したし仕事も増えまくりでプライベートな時間があまり取れなくて辟易することもあった。私には、機械の身体という変わり身がいるから本体の私は悠々と抜け出しているんだけどね。

 

 トランクスとの別れ際もそうやって抜け出した。トランクスには、贈り物をした。これからも前途多難な人に向けて剣のプレゼントだ。剣は18号に壊されたからね。薄紫の刀身の剣をあげた。というか、エター○ルソード。

 

「これは?」

「時を超えて世界を救った伝説の英雄が使っていた剣……のレプリカだよ」

「そ、そうですか」

「レプリカといえど、特別性だから切れ味も耐久性も抜群だよ。君の未来はこれからも辛いことがあるだろうし、そんな多難な未来へと旅立つ君にせめてもの餞といったところかな」

 

 彼の辛い未来を想うともう幸せになってもいいんじゃないかってぐらいなんだけどね。運命というか、作者というか、そうさせてくれないんだよね……ドラゴンボールないし、悟空死んでるし、頼れる人やモノがない。だから、代わりと言ってはなんだけど剣を渡すことにした。ただの中の人ネタとも言う。

 

「……もしかして人造人間以外の脅威も俺の未来にやってくるんですか?」

 

 心配そうなトランクスに

 

「それは自分の身で確かめなさい。どうしても駄目そうだったらまたこの時代に来ればいいじゃない。きっとなんとかできるから」

 

 その時に私は恐らくいないだろうけどね。

 

「そうですね……そうさせてもらいます。イーヴィさんには色々とお世話になりました。本当にありがとうございました」

 

 トランクスは全員に礼を言って、タイムマシンへと乗り込んだ。トランクスの死亡がなくなったからなんとなくないと思っていたけど、ちゃんとベジータの伝説のデレシーンは見れた。あのベジータが言葉には出してないけど別れの挨拶をちゃんとしていたところにビックリという意味で伝説のデレなんだろうけど、ブウ編でちゃんと家族に対する愛情見せていたんだからそっちの方が価値あるデレだと思うよ、私は。でも、私の目標的に見れそうにないのはちょっと残念でもある。自爆に巻き沿いにされてでも間近でベジータの自爆を見たかった。ベジータの自爆は漫画、アニメ界の中でも屈指の名自爆だと思います。

 

 まぁ、ブウ編の心配をするのはまだまだ先かな。だって、7年後だよ。ドラゴンボールZに突入する前も5年もの月日が経っているけど、その時はまだやることがたくさんあったからよかった。だから偶には、私からみんなに呼び掛けるのもアリだよね。どうせなら時間かけて面白そうなのを作ろうじゃない。

 

 トランクスを見送った後、私は一つ宣言をした。4年後に武術大会を開くことを。詳細は日が近づいたら招待状を送ることにし、各々この大会を目標に修業を続けて欲しいと伝えた。

 

 さて、楽しみも作ったことだし早速作業に入るとするかな。

 




これにて人造人間編は終わりです。
次回からは、オリジナルエピソードというやつです。


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イーヴィ主催 天下一武『術』会編
45 イーヴィ主催 天下一武術会開催


今回は新章のプロローグといったところです。
ちょっと内定が未だ取れていないので、投稿ペースが遅いですが頑張ります。


 セルゲームから4年後のある日、悟空の下へ一通の手紙が送られた。

 

『孫悟空様へ

 

 

 第一回天下一武術会を開催することをここにお知らせ致します。

 つきましては今大会にご参加いただけるようお願いします。

 ルールなどの詳細は、当日会場にてお知らせいたします。

 

 

 神宮寺イーヴィ』

 

 

 同様の内容の手紙が悟飯、ピッコロ、ベジータに送られた。手紙の中には、位置データや地図なども入っており、天下一武術会の開催場所が記されていた。ちなみに追記には、優勝賞金1000万ゼニーと書かれていた。

 悟空と悟飯はチチがいることで参加できるか不安であったが優勝賞金が1000万ゼニーであることをチチに伝えることで説得し、参加を決めることができた。

 ちなみにピッコロには、悟飯が参加することが、ベジータには悟空とラディッツ、私が参加することが追記されていた。その辺りの根回しは意外と用意周到なイーヴィであった。

 

 

 会場は、海の上に造られた人工島であった。巨大なドーム状になっており、直径は100キロメートルを優に超えている。入口部分に悟空たちを含む一般の参加者が集められていた。参加者は100名ほど集まっていた。ドームの入口部分の上部には、モニターが取り付けられている。

 

「よ、ベジータ」

 

 悟空が人混みの中でベジータを見かけたので声をかけた。

 

「ようやく来たか……ラディッツはどうした?」

「なんか仕事があるとかでイーヴィのところに行ったみたいだぞ」

「何っ! また、嘘吐きやがったのか、あの野郎」

「まぁまぁ。別にいいじゃねぇか。まだ出ないって決まったわけでもねえしよ」

「言っておくが、俺は貴様ら兄弟を倒しに来たんだ。そうでなければ、こんな大会などに参加などしない」

「一応、オラから連絡入れておくからよ。そうカッカすんなよ」

「ふん……」

 

 

 悟飯は離れたところにピッコロを見つけ駆け寄った。

 

「ピッコロさーん!」

「悟飯か」

「ピッコロさんも来ていたんですね」

「まぁな。あのイーヴィから送られてきた招待状だ。おかしなことをしそうではあるが、武道家として楽しみでもある。しかし……いや、気のせいだろう」

 

 ピッコロは一つ違和感があった。イーヴィのことだから、仲間は全員呼びそうなものだが、この場に居るのは4人だけ。参加するかどうかは置いておいてクリリンやヤムチャ、ブルマがこの場に居てもおかしくないはずだ。何か企んでいるのかとも思ったが、いないことによって何ができるわけでもないので考えすぎだろうと捨て置いた。

 

 

『はーい! 皆さんちゅうもーく!』

 

 モニター画面にイーヴィが映しだされた。

『早速、ルール説明を始めるよー!』

 

そして、予選のルール説明がなされた。そのルールを簡潔にまとめると6つであった。

 

1.本戦であるトーナメント出場枠は7つ

2.予選は迷路であり、先着順。

3.ゴールは7つあり、1つのゴールにつき1人しかゴールできない。

4.ゴールするためにはゴール前の門番の課す勝負で勝利しなくてはいけない

5.制限時間は3時間

6.枠が埋まらなかった場合は、門番から選ばれます。

 

 

『以上! 質問はありますか?』

 

 

 悟空たちは質問をしなかったが、一般人からいくつか質問されたので答えるイーヴィ。

 

 

Q.妨害はあり?

A.アリです。武器を使用してもらってもかまいません。こちらでいくつか用意していますので、使いたい方がいたらいくらでも持って行ってください。

 

 

Q.武器ありって、殺してもいいの?

A.推奨はしませんが、ルール違反ではありません。

 

 

Q.壁は破壊してもいいの?

A.構いません。できるのであれば。

 

 

Q.門番の課す勝負って?

A.ああ!……じゃなくて、私にもわかりません。場合によっては私がお題を出すことがありますが、基本は門番にお任せしています。

 

 

Q.出場枠は何故7つ?

A.8人目はすでに決まっているからです。私の特別推薦枠とでも思ってください。

 

 

 

『質問がないようなので最後に注意事項を伝えさせていただきます。先ほどの質問で殺すことがルール違反でないことをお伝えしましたが、この大会で受けた傷や死亡した場合、こちらは一切責任を負いません。さらにいえば、この迷路には罠があり、発動した場合死ぬことも十二分にありえます。中には、気付かずに即死するかもしれないような危険度の高いものも用意されているので、死にたくない方はここでお帰り願います。ただ、途中でリタイアしたくなった方はすぐにリタイアしてください。係員が安全に外にお運びします』

 

 

 最後にと、イーヴィは付け加える。

 

『即死するようなトラップにどのようなものがあるか、一例を教えたいと思います』

 

 人の形を模した金属の板を掲げて、スイッチを押すとワイヤーがちょうど首の部分を真っ二つにした。

 

『と、こんな感じで首と胴体がバイバイしちゃうことになるかもしれないので、死にたくない方は帰りましょう』

 

 

 このパフォーマンスによって参加者は100人から20人ほどまで減った。命知らずはそこまでいないようだ。逆に言えば20人もいるのだが、そう感じるか否かは感性にもよるだろう。

 

 悟空たちは予選について全く心配をしていなかった。それは自身の強さや修行に裏打ちされた自信故であった。実際、通常の武器で彼らを傷つけることができるものなどそうはいない。しかし、思っていた以上に色んな意味で苦戦を強いられることになる。

 




次回、ギャグ回っぽくするつもりです。キャラ崩壊あるかもしれません。


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46 天下一武術会予選 前編

予選の部分はまとめてしまおうと思ったんですが、なかなか思うように進まないのでとりあえず3つに分けることにしました。


『それではみなさん準備はよろしいですね? よーい……スタート!!』

 

 イーヴィの開始宣言と共に花火が打ち上げられた。

 参加者はドームの中にどんどん入っていった。ドームの中に入るとすぐさまいくつもの分かれ道が現れた。

 

「それじゃあ、全員違う道を行こうぜ」

「当然だ。貴様らと一緒になんて行けるか」

 

 悟空たちは、早速バラバラに行動を始めた。

 

 そんな中イーヴィは数多ある監視カメラで参加者一人一人を観察していた。

 

「早速、みんな分かれたか」

 

 イーヴィは、全員がどんなルートを辿るかを確認していた。

 このままだと、悟飯以外は面白いことになりそうだ。悟飯の辿るルートは面白くなさすぎるから私が手を加えようかと悩むぐらいだ。

 イーヴィは悟空たちであろうと簡単に予選を通過させる気はない。というより、普通の予選では軽々と突破されてしまうから迷路という変わり種にしたのだ。罠などのギミックが好きだからというイーヴィの趣味も含まれている。

 ピコーンと、イーヴィに悟空たちの誰かが罠に掛かったことを知らせるアラームが鳴った。

 

「お、早速、誰かが掛かったみたい♪」

 

 モニターを覗くと、悟空が罠に掛かっていた。

 悟空の右足首に鎖が巻き付いて先に進めなくなっていた。

 

「ぐぬぬぬ……!! 駄目だ……びくともしねぇや……」

 

 通常の鉄では、素のパワーで引きちぎられてしまうがそう簡単に抜け出されては面白くない。超サイヤ人になられたら流石に破壊されてしまうが……とイーヴィは思っていると

 

「仕方ねぇな。はぁああああああ……!」

 

 超サイヤ人になろうとする悟空。

 

『ちょっと待ってぇ!!』

「あれ? その声、イーヴィか?」

『その鎖を外すにはちゃんとルールがあるんだから、力づくでなんとかしようとしないでよ』

「そうなんか?」

『ほら、目の前にモニターが出てるからちゃんと確認して、クリアしてね』

 

 悟空は言われた通りにモニターに表示されている課題を見る。

 

「………………わかんねぇ」

 

 モニターには一次方程式や図形などの中学生レベルの数学の問題が表示されていた。問題数は50問。合格ラインは8割正解。悟空は亀仙人のところで、多少の勉強をしていたものの小学生レベルの学力しか持ち合わせていないのでわかるはずもなかった。当然、イーヴィはそんなことはわかっていたので解けない場合は、救済措置として勉強することが可能になっていた。これで、悟空は制限時間ギリギリの勝負になることだろう。

 

 

 

 しばらくは動けなさそうなので、イーヴィは画面から目線を外しベジータの方を見る。

 

「はぁっ!」

 

 危険度の高い罠を破壊しながら突き進むベジータの姿があった。これもイーヴィは予想済みではあったが、それなりのお金と労力をかけて作ったものをこうもあっさり壊されてしまってさすがに凹んだ。丸鋸や包丁などが飛び交う中をエネルギー波などで容赦なく破壊されたのだ。傍にいた一般人は、罠の恐ろしさ以上にベジータの動きに恐れて早々にリタイヤしていった。

 そして、ベジータは予選開始から30分も経たないうちにゴール手前まで来てしまっていた。だが、イーヴィが易々と通過させるわけもなかった。

 

 一際、大きな扉の前に立つとゆっくりと扉が開いていく。その先に人影が見えた。

 

「ようやく門番というやつか……」

 

 そして、その場所にいたのは……

 

「げっ……ベジータかよ……!」

 

 クリリンであった。ちなみにクリリンは既に武道家を止めており、髪の毛が生えている。18号と一緒に暮らすこともできていた。

 

「ふん……お前が相手では話にならんな」

 

 とか、言いながらやる気満々のようで構えを取るベジータ。

 

「ちょっ、ちょっと待てよ! 最初の説明で言ってただろ! 門番の作った勝負をクリアしたらゴール。つまり、予選通過だって」

「そんなことはどうでもいいだろう。貴様を倒しさえすればな」

 

 闘志むき出しのベジータに若干ビビるクリリンであったが、どちらかと言えば審判にも近い立ち位置であり恐れる必要はないと考えなおす。

 

「いいのかなぁ……この場でのルールは俺に委ねられているから俺の気分次第で失格にできるんだぞ」

「そんなことをしたらぶっ殺してやる!」

「じゃあ、失格に……」

「ま、待て! わかった……その勝負とやらに勝てばいいんだろう。さっさと言いやがれ」

 

 荒々しさは全く変わらないが、ベジータにしては随分丸くなったようである。ルールに従っている時点でもうだいぶ変わったと言えるだろう。

 

「それじゃあ俺との勝負はカラオケ対決だ」

「…………」

 

 数秒の沈黙が訪れた。ベジータにとっては予想外もいいとこだろう。両者共に中の人は歌が上手いが設定上はどちらも下手だ。原作にその描写は一ミリもないが、そういうことになっている。そういうことにしておこう。

 

「ふざけるな! サイヤ人の王子であるこの俺に歌えと言うのか!?」

「この勝負を受けないなら失格になるだけだから別に歌う必要はないぞ」

 

 ベジータが本戦に拘っているとみて強気に出るクリリン。イーヴィから報酬と安全を確約されている以上仕事はしっかりとこなさなくてはいけないと、意外と真面目な彼の性格が出ている。時々、臆病なところが玉に瑕だが。

 

「ちっ……仕方ない。ならば聴かせてやろう! 超エリートサイヤ人の圧倒的歌唱力を!」

 

 

…………………………

 

……………………

 

………………

 

…………

 

……

 

 

結果

 

ベジータ 得点 65点

クリリン 得点 70点

 

「何故だ!? 少なくともあのむかつく歌よりは良かっただろうがぁ!!」

 

 ベジータの歌といえば「ベジータ様のお料理地獄」を思い出す。他にもベジータが歌っているものはあるが一番の有名どころだろう。あれはキャラソン?でほとんどセリフでギャグなあれを歌と言っていいのか微妙なところだが、歌唱力は高いと判断できるものだろう。しかし、後に映画で「楽しいビンゴ」なるものを歌い、ビルスから下手と言われている。つまりは後者の設定が適用されてしまったわけだ。

 

「俺に言われても機械が判定してるからなぁ」

 

 クリリンの方は実はそんなに勝ちたくはなかったものの普段通りに歌っただけだった。

 クリリンの歌と言えば某映画で歌っていた「翼をください」に独特のアレンジを加えたものだ。リズムはともかく音程は取れているし、あの独特のアレンジさえなければもう少し点数が伸びるだろう。

 

「その機械に何か細工しているんじゃないだろうな!」

「し、してねぇよ! 少なくとも俺は……」

 

 クリリンは言葉を濁す。自分はしてないと主張できるが、機械自体を用意したのはイーヴィということもあるし、イーヴィの性格を考えると可能性を否定できない。

 ちなみに冤罪である。

 

「別に一回勝負ってわけでもないし、一回でも勝てばここはクリアになるから落ち着けって」

「本当だな! なら、さっさとしろ!」

「ひ、ひえぇぇ!」

 

 ベジータは無駄に気を高ぶらせ、クリリンをビビらせる。

 

 

 

その後、クリリンはいつ攻撃されるのではないかとヒヤヒヤしながら歌い、ベジータは全力で歌い続けた。それは、2時間程に及び、互いの点数は回を重ねるごとに点数が下がっていった。それは、クリリンにはベジータからの威圧による精神的疲労があり、ベジータは全力で歌うことによる喉へのダメージであった。結局、クリリンの精神的疲労がベジータの喉へのダメージが上回りそれが点数となって表れた。つまり、ベジータは予選突破したのである。それによりベジータは思わずガッツポーズを取ったとか取らなかったとか……ただ、声がガラッガラになっていたのは間違いない事実である。

 




ベジータとクリリンが何を歌ったかはご想像にお任せします。


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47 天下一武術会予選 中編

ちょっとネタに走り過ぎた感が……投稿するのを躊躇うぐらいに。でも、何言われようが修正する気も特にないのでそのまま投下します。


 イーヴィは、ベジータの下手くそな歌を一回聞いて笑った後、次の展開が読めたため別の場所に視線を移す。とりあえず、ピッコロの動きがおかしい。劇場版でいつも思うことだが、何故か悟飯の危機に現れるのがテンプレの中ボスキラーな彼であるが、それまでなにしているんだって話。変な考え方すれば、悟飯のことをストーキングしてベストなタイミングで出て行ってるんじゃないだろうか。

 と、憶測はここまでして観察していると普通に迷路を進んでいた。

 

 

 ピッコロに取って、イーヴィがこの場所を作ったということが問題だった。ピッコロのイーヴィに対する評価は何をしでかすかわからない変人である。命を奪うようなことはしないと思っていたが、あのデモンストレーションである。普通の人間であれば間違いなく死ぬだろう。仲間内なら死なないだろうが、あのイーヴィが自分達に全く効かないような罠だけを設置しておくだろうか。

 

 その憶測は半分正解と言ったところだった。物理的要素で彼らを抑制しておく術など限られてくる。それこそ本当に殺すつもりでやらなければならない。そこまで命がけでお遊びはしたくない。ある程度の危険ならばいいが、綱渡りはしたくない。そこで、他のルールで縛ったのだ。それで、迷路なんてものを作っていたのだ。別に自由に他のルールが使えるならトランプでもじゃんけんでも脱出ゲームでも人狼でもなんでも良かったのだ。ただ、迷路が一番好きなように細工しやすかっただけだった。

 

 しかし、罠と言ってもやはり物理的なものでは時間稼ぎはできても簡単に破られてしまう。だから別ルールで勝負させようと思ったのだ。その一例がカラオケ対決だった。そして、ピッコロの場合は…………

 

 

「よう、久しぶりだな」

「お前は……ラディッツか」

 

 ラディッツが相手だった。

 

「貴様と戦ったのは随分と前に感じるな。あれから色々あったからな……」

 

 ラディッツはピッコロと戦った後のことを思い出していた。ある意味ではサイヤ人としての生き方を曲げられてしまった出来事である。ただ見方を変えればもっと生きやすい生き方になったと言えなくもない。意外と不満ばかりでもないことを思い出し、複雑な想いを抱いていた。

 

「感慨に耽るのもいいが、ここでは門番が課した勝負で戦うことになるのだろう? さっさと説明したらどうだ」

「実は、俺もあまり説明されてなくてな。イーヴィの奴がここで話すとか言っていたぞ」

「何?」

 

 そういえば、質問されていたとき

【場合によっては私がお題を出すことがありますが、基本は門番にお任せしています】

 と答えていた。つまり、これがその場合なのだろう。

 

「おい、イーヴィ」

『呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン!』

 

 くしゃみされてなくとも、壺からでなくとも、そんな台詞を言う。

 

『それじゃあ早速お題を伝えるよ。君たちがやる勝負内容は~』

 

 どこからともなくドラムロールが流れる。数秒後にシンバルの音とともに止むと

 

『ナンパ勝負です!!』

 

「…………」

「…………」

 

 ピッコロとラディッツが顔を見合わせた後、イーヴィの方に向きなおす。

 

「「何?!」」

 

『まぁ、でも普通に考えて君らにそんなことできるわけないからVRゲームで頑張ってね』

 

 一応、ラディッツが妻帯者だからとかそんな気遣いもなくはなかったが、人を用意するのが面倒だったことや状況の操作がしづらいことの方が大きな理由だ。

 

 そしてVRゴーグルが二つ、地面から台座と共に出て来た。

 

『それかぶって先にゲームクリアした方の勝ち。何回でも勝負していいけど、制限時間あるから気を付けてね』

 

 ブツっと接続を切った音が反響する。

 

「……仕方あるまい。とりあえず、こいつを被るぞ」

「あぁ、そうするしかないだろうな」

 

 二人は嫌々、それを被るしかなかった。二人が被ると視界が暗転する。が、すぐに視界は浜辺へと変わる。さざ波の音や人々が海水浴を楽しむ姿が見える。室内であるはずなのに太陽の照りつけるような感覚さえ覚える。ただ、頭に被り物をしただけでここまでの臨場感を出すイーヴィの技術力に少し感心する二人。

 そして、肝心のゲーム説明が空中に浮かぶように文字にして現れる。

 

《これから女の子があなたに話しかけてきます。機嫌を損ねない様に、遊びに誘おう! 遊びに誘うことができたらゲームクリア》

 

 これを目の前にしていくらなんでも簡単すぎないかと思う二人。その上、これは現実ではなくゲームだ。恥を考える必要もそこまでない。端から見たら実はもう既に変人にしか見えなかったりするが。

 何はともあれ、二人はゲームに集中する。

 

――ラディッツの場合――

 

 ラディッツの方にボールが飛んできた。ボールを拾うと、緑髪で虎柄のビギニを着た女性がやってくる(飛行している状態で)。

 

「そのボール、こっちに返して欲しいっちゃ」

 

 《選べ》

①「お返しします」

②「どうせなら一緒に遊びませんか」

③「ヒャッハー! 女だー!」

 

 なんなんだ、この選択肢は……普通に考えたら②にするべきなのだろうが……と、ラディッツが思っていると

 

「あっ! ダーリン! 何してるっちゃ!」

 

 女の子は急に電撃を放ち、どこかの男にあたった。そして、その電撃を食らった声はどこかで聞き覚えのある声だった。

 

《GAME OVER》

 

「はぁあああああ!? いきなりゲームオーバーになったぞ!」

『時間切れだね。機嫌を損ねようが損ねまいが、可能性がゼロと判断された時点でゲームオーバーになるから』

「ちなみに、どうすればクリアなったんだ?」

『諸星〇たるならクリアできたかもしれない』

 

 それは女の子のモデルが完璧にラ○ちゃんだからというかそのものです。本当にありがとうございました。

 

「人かよ! というか誰だよ、そいつ」

『いや、できないか』

 

 あれの性格的に考えて機嫌を損ねないとか絶対に無理だね。

 

「できないのかよ!」

 

 ラディッツはゴーグルを外して投げ捨てた。

 

 けれど、ラディッツがそんなことを知る由もなかった。

 

 結論から言おう、このゲームは絶対にクリアできないクソゲーだ。

 

――ピッコロの場合――

 

 ピッコロの方にボールが飛んできた。ボールを拾うと、黒髪の美しい女性がこちらにやって来た。胸に7つの傷を持つ男と一緒に……

 

「そのボールを返してもらえないか?」

 

 その男がボールを返すように求めてくる。

 

《選べ》

①「New year!」

②「何ぃ、聞こえんなぁ!」

③「サラダバー!」

 

 なんなんだ、この選択肢は…… 恋愛などの感覚が全くわからないピッコロでもこの選択肢がおかしいのはわかった。②はまだ理解できるが、①のnew year?③のサラダバーってなんだ? 疑問しか浮かばない。

 

「っ! お前は○ン……! ではないな。○ンはそんな顔ではなかったな……」

 

 急に胸に7つの傷を持つ男が語り始めた。南斗聖拳がどうの、殉星がどうの、同じ女を愛した男がどうの言っていたが、何一つ理解はできなかった。

 

「すまないな。いきなりこんな話をして。お前がどこか○ンに似ているような気がしてな。機会があればまた会おう」

 

 《GAME OVER》

 

「どうしろというんだ!!」

 

 ピッコロはゴーグルを投げ捨てた。

 男に話しかけられて語られたと思ったらゲームオーバーになっていた。誰にも理解できない。イーヴィも作っておいてなんだこれはと思ってしまっていた。そこが笑いどころでもあったが。

 

 これもピッコロに(というか誰でも)クリアできるわけがなかった。

 もはや、ただの嫌がらせである。というより嫌がらせそのものでしかなかった。

 

 

 お互い同じタイミングでゴーグルを投げ捨てており、お互い顔を見合わせる。

 

「その様子だとお前もクリアできなかったみたいだな」

「あぁ……むしろクリアできるのか、これは」

「できないだろうな」

「お前もそう思うか」

「「はぁ」」

 

 互いにクソゲーに振り回されただけの結果となった。

 

『やっぱり、君らには無理だったね』

 

 あんなのクリアできるか! とツッコミたくなる二人。

 

『仕方ないからもう普通に戦ったらいいんじゃないかな。それじゃ』

 

 もう自分は思いっきり楽しんだからどうでもいいやとばかりに投げやりな対応になる。

 

「それなら最初からそうしやがれ!!」

 

 ラディッツの怒鳴り声が、イーヴィに伝わることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、グダグダになってしまったが仕切り直して戦士らしく力試しといこうじゃないか」

「望むところだ」

 

 互いに構えを取り戦闘態勢に入る。互いに四年前より実力を上げている。向かい合った時点で互いにそれを理解した。そして、どちらがより強くなったか……互いにじりじりと距離を詰める。

 

「どうした、かかってこないのか」

「それはこっちのセリフだ」

 

 牽制しあい、攻撃を仕掛けるタイミングを計る。

 

「ずあっ!」

 

 先に攻撃を仕掛けたのはピッコロだった。距離はまだ空いていたが、ピッコロは腕を伸ばすことができる。

 

「しまった……!」

 

 右腕を伸ばして、ラディッツの左腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。そして、体制が崩れているところに左の拳叩き込む。しかし、ラディッツは体勢が崩れた状態のまま拳を右手で掴んで止める。そして、これ以上は無意味と放した瞬間に凄まじい攻防が始まった。

 その攻防によって生じた衝撃が地面や壁にひびを入れていく。

 

 

「でやぁ!」

「どぅあ!」

 

 互いの渾身の一撃がぶつかり合い、鍔迫り合いの様に押し合いになる。そのまましばらく硬直状態になっていたが、互いに距離を取る。

 

「時間制限があるんだ。互いに全力でいこうぜ」

「……そうだな。出し惜しみをしていては、いつまでも決着がつかなそうだ」

 

 ピッコロがターバンとマントを外し、気を入れる。そして、ラディッツは超サイヤ人となる。

 

「なぁ、ピッコロよ」

「……なんだ?」

「俺は、イーヴィの奴に感謝しているんだ。あんなふざけたマネをする奴ではあるがな……」

「それがどうした」

 

 急にラディッツがイーヴィの話題を振ってくることに戸惑うピッコロ。

 

「イーヴィが居なければ、多分俺はここまで強くなれなかった」

「それは超サイヤ人のことか?」

「いや、超サイヤ人になるにはきっかけが必要だったかもしれないが、イーヴィがいなくともいつかなれた可能性がある。だが……」

 

 ラディッツが掌に気を籠める。

 

「はああぁぁああ!」

「なんだ……!? この威圧感は……?」

 

 そして、右手には光り輝く刀の様なエネルギーの塊ができていた。

 

「こいつは、イーヴィが居なければ絶対にできなかった技だ」

「気を物質化したのか?」

「そんなところだ」

「確かに使える技かもしれんが、それが感謝するほどのものか?」

「やればわかる。行くぞ、ピッコロよ!」

 

 ラディッツは、飛び掛かりそのまま刀を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 ピッコロはギリギリで横に避けた。刀はそのまま地面を斬りつけた。さらに、斬りつけた延長線上も斬り裂かれた。

 

「こ、これは!」

「こいつがこれの力だ」

「……態と外したな」

「直撃すれば、即死しかねんからな。それは本意ではない」

「舐められたもんだな……」

 

 ピッコロは距離を開け、右手を額に近づけ気を指先に籠める。

 

「あの技か……もう俺にあれは効かんぞ」

「前と同じだと思うなよ。破壊力も速度も以前とは比べ物にならん」

「だが、溜めるのに時間が掛かるのも同じなのだろう?」

「へっ、それはどうかな」

「何っ?」

「魔貫光殺砲!」

 

 不意を突く形でピッコロの魔貫光殺砲が放たれた。だが、ラディッツは超反応で魔貫光殺砲を刀で斬った。

 

「な、なにぃ!?」

 

 斬られた魔貫光殺砲は、真っ二つになってラディッツの後ろの壁の二か所に穴を開けた。更にピッコロの右腕が斬り落とされていた。

 

「これはただの気で形作っただけではない。超高密度に固められているのだ。次元さえも斬り裂く程にな。おかげで……気の消耗が激しいがな」

 

 ラディッツの超サイヤ人が解け、刀も消える。

 

「うおおおおお……!!」

 

 ピッコロは斬り落とされた腕を再生させる。

 

「これで、五分と五分ってところか?」

 

 互いに大きく消耗し、次の一撃で決着が着くことだろう。

 

「……いや、俺の負けだ、ラディッツ。お前、二回ともわざと外しただろう」

「確かにそうだが、これは殺し合いではない。単なる力試しだ。そして、まだ決着は着いていない」

「これ以上やっても結果は見えている。お前は五分と五分と評したが、まだまだ超サイヤ人になるのもさっきの技を使う余力が十分あるだろう。侮辱していると思われても仕方ないぞ」

「そ、そんなつもりは……」

「そんなことはわかっている。しかし、お前はサイヤ人の中で一番地球人らしい気がする。悟空もベジータも闘うことばかりで、直情的で思ったことはそのまま言う。悟飯は気遣いができるが、抜けているところがある。お前は、気遣いすぎて逆に失礼になっている節がある」

 

 地球人に感化され過ぎたのか、元々そういう傾向があったのか、イーヴィが暴走し過ぎているからか、それはわからないがラディッツは傷つけないよう色々と気遣うようになっていた。

 

「その通りかもしれん。俺が逆の立場なら憤慨しただろうし、昔の俺が今の俺を見たら腑抜けていると思ったことだろうな」

「だが、悪い変化だと思っていないのだろう」

「…………そんなこと言えるか」

 

 僅かに残ったサイヤ人としての矜持が、答えることを許さなかったが、認めているも同然の台詞だった。

 




後半部分でシリアス感出していますが、もはや全てがギャグな気もしなくもないです。
次回もネタに走りつつちょっとシリアスな内心が吐露されるような感じでいくつもりです。


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48 天下一武術会予選 後編

卒論が終わってようやく書けるようになりました。
社会人になるまでには完結させたいですね。

ちなみに今回の内容に関してですが、ネタに走るつもりがどうしてこうなったって感じです。


 ピッコロとラディッツが出会う同時刻、悟飯もまた門番である天津飯と対峙していた。

 

「久しぶりだな、悟飯」

「お久しぶりです、天津飯さん」

 

 互いに挨拶を交わし、和やかな雰囲気が漂うがこの場は戦いの場である。天津飯はすぐに雰囲気を切り替えるべく、真剣な表情へと変える。

 

「早速だが、俺との勝負方法を伝える。俺との勝負は————排球だ」

「排球……ですか?」

「あぁ。要するにバレーボールだな」

 

 それは知っていたが、生粋の武道家である天津飯とは思えない選択である。敗色濃厚な闘いであろうと武道家として自身の限界に挑み続けるために、闘うことを選択しそうなものだ。

 

「何というか、天津飯さんらしくないですね」

「あぁ、本当は武道家として全力でお前と闘いたい。だが、悔しいことにお前と俺では話にならないほど実力差がある。そして、イーヴィさんからは勝つように言われている。ならば、勝てる勝負をしなくてはならない」

 

 天津飯は依頼という形でこの場に来ていた。セルとの戦いの後も餃子と共に修行を続けていたが、働かなくては当然お金がなくなっていく。ほとんどをサバイバル生活に費やしている彼らにとって無一文でもあまり問題はなかったが、常に各地を放浪しながら修行しているために保存食などを買う必要があり、またいつまでも野宿というわけにもいかず、宿に泊まることがある。そしてお金に少し困ったタイミングでイーヴィと接触し、依頼されたのだ。勝利しなくては報酬が貰えないというわけではなかったが、できる限り勝つように言われてはその期待に応えなくてはと考えていた。

 

「それでバレーボールですか……」

「かつては排球を基に考えた技も使っていたこともある。これならお前にも負けん」

「わかりました。でも、僕も負けませんよ」

「そうこなくてはな」

 

 二人の間にネットが地面から出てきた。線も同時に浮き上がり、バレーボールコートのできあがりである。

 

「バレーボールは本来チーム競技だからな、ルールも少し変則的になるぞ」

 

 バレーボールは本来6対6で行われるスポーツだ。自コート内で3回まで触れてよいが、同じプレイヤーが続けて触れることは許されていない。だが、この場では1対1のため2回触れてもよいことになった。そして、時間がないわけでもないが何度も挑戦できるようにするため1セット15点の1セットマッチになっていた。

 審判にはロボット(イーヴィ製造)が立つことになった。

 

「こちらのサーブからいかせてもらうぞ」

 

 天津飯が、ボールを何度か地面に軽く打ち付ける。そして、ふーっと息を吐く。

 

「いくわよー!」

 

 悟飯はその掛け声にビクッとする。いきなり大の男が裏声の女言葉しかも叫びもすれば、誰だって何事かと思う。

 天高く投げられたボールにジャンプして、悟飯のいるコート目掛けて掌を叩き付ける。入射角45度越えである。

 悟飯はボールを捉えてレシーブの構えを取る。そして、完璧にボールを拾えたかに思えたが、弾いたボールは悟飯の顔面に直撃した。

 

0-1

 

「おい、大丈夫か? 悟飯」

「大丈夫です。意外と難しいですね、これ」

 

 悟飯の身体能力はオリンピック選手も真っ青なレベルであるが、スポーツをする技術は欠片もなかった。それでも大抵のスポーツでは身体能力が高すぎて一般人では相手にならないわけだが、悟飯ほどでなくとも常識外れの力を持った、スポーツの技術を持った者であればいい勝負になる。

 

 気を取り直して再び天津飯のサーブが悟飯目掛けて放たれる。悟飯はそれをアンダーではなくオーバーで処理した。常人だったら指が持っていかれて良くて突き指あるいは骨折(最悪天津飯の放つ威力なら指がもげる可能性もある)してしまうが、悟飯にそんな常識が通用するわけもなく軽く威力を殺して上にあげられてしまう。

 

「てやあああ!」

 

 今度は悟飯のスパイクが天津飯に飛んでいく。

 

「とうっ!」

 

 ボールが破裂してしまうのではないかと思うほど強烈なスパイクも落下点に間に合いさえすれば拾えないことはなかった。しかし、浮き上がったボールを天津飯が追うことはなかった。

 そのことに疑問に思った悟飯が天津飯の方に目を見やる。

 

「悟飯よ。球技においてボールから目を離すのは愚策だぞ」

「え?」

「アターック!」

 

 甲高い声が上空から響き、悟飯のコートにボールが落ちた。

 

「し、四身の拳……」

 

 二人居る天津飯を見て、悟飯が呟く。天津飯は悟飯がボールを目で追っているうちに四身の拳で一人増やし、天津飯に視線が移ると同時にボールに飛び上がってスパイクを打っていた。

 

「悔しいが身体能力で劣る状態で勝つためには、技しかない。こんな小賢しい手を使わなくてはならなければ勝てないというのは情けないが、全力で勝ちを取りにいかせてもらうぞ」

「……はい! 僕も負けません」

 

 どこか気乗りしなかった悟飯も天津飯の本気を目の前にして気持ちを切り替えて挑むことにした。

 その後の悟飯は慢心なく、天津飯との勝負に挑んだ。悟飯は元々天津飯を馬鹿にする気持ちなどあったわけではなかったが、どこかで力が劣っていると感じていた。しかし、そういう気持ちがあることを自覚し、自分を恥じこの勝負に全力で挑むことでそれを晴らすことにした。

 結果、3セット目にして悟飯は天津飯から勝利をもぎ取っていた。

 

「時間いっぱい負けるつもりはなかったんだがな……お前の勝ちだ、悟飯」

「いえ、もっと公平なルールだったら僕の負けでした」

「だが、勝ちは勝ちだ。それに、武道家としての実力ではまだまだ俺が劣る。だが、これからも精進し続けるつもりだ。また機会があれば手合せ願おう」

「はい!」

 

 こうして、悟飯は予選を突破した。

 

 

 そして、悟空は残り15分にしてようやくテストを突破した。

 

「やべぇ! 急がねぇと!」

 

 参加者はほとんどが脱落し、あとは合格者のみとなった予選会場はがらんとしていた。悟空の全力のダッシュによってすぐに開けた場所――門番の居る場所までたどり着いた。

 

「久しぶりだな、悟空」

「あ、おめぇはヤムチャ。……なんで、そんな変な恰好してんだ?」

 

 ヤムチャの恰好は、言うなれば顔がヤムチャのロボットだった。というか、人型サイズのガ○ダムだった。顔はヤムチャだが。極めてシュールな光景だった。

 

「ま、秘密兵器といったところだな。時間もないし、早速勝負方法を伝えるぞ。と言ってもただの試合だ。悟空の勝利条件は俺と戦って、俺を倒すかこれから被るマスクをはぎ取ればいい」

「マスク?」

「あぁ、こんなのだ」

 

 そして、ガ○ダムの頭部を被るヤムチャ。

 

「ルールはわかったけどよ、ヤムチャじゃ、オラの相手は……」

「心配するな。これを着た俺は前までとは違う」

「そっか楽しみだなぁ」

 

 ヤムチャは当然の様に背中からビームサーベルを引き抜く。

「悟空あらかじめ言っておくぞ。この剣には触れないことだ。行くぞ、悟空!」

 

 ロボット特有の音を鳴らし、一瞬で速度を上げる。

 

「は、速ぇ!」

「もらった!」

 

 ヤムチャが斬りかかるが、悟空は間一髪よけた。だが、服がわずかに焼き切れ、髪の毛が若干焦げていた。

 

「あ、あぶねぇ……触れるなってのはこういうことか……」

「油断していると命を持っていかれかねねぇぜ、悟空」

「そうみてぇだな。それじゃ、第二ラウンドいってみっか」

 

 悟空は超サイヤ人となった。

 

「今度はオラの番だ!」

 

 悟空が攻撃を仕掛けるが、ヤムチャが防御にビームサーベルを使うため攻めあぐねていた。

 

「どうした、そんなものか、悟空!」

 

 ヤムチャは、超サイヤ人のスピードにも十分についていけていた。それはヤムチャの装備しているものの性能が良いというのもあるがそれ以上に操作が上手かったことにある。このガ〇ダムの最高速度は確かに超サイヤ人さえも上回ることができるが、普通は直線にしか動かせず小回りは効かないのである。それを、ヤムチャはマイクロメートル単位の操作で行うことで補っていた。いくら武道家として常人をはるかに超える力を持つとはいえ、もはや人間技ではない技能だった。

 

 悟空がビームサーベルに正拳突きしそうになるのを寸止めした。

 

「もらった!」

 

 ヤムチャは渾身の蹴りを悟空にくらわせた。

 

「ぐわあああっ!」

 

 壁に激突し、豪快な音を立てて壁が崩れる。

 ヤムチャはこの装備によって、途方もない強さを手に入れたのである。正直なところ、武道家として思うところがなかったわけではない。それでも、失われてしまった誇りを取り戻すために必要なことなのだと割り切った。一見矛盾しているように思えるが、ヤムチャは既に武道家としての限界を感じてしまっていた。仮に強くなれたとしても悟空達には到底及ばない。それを補うためには道具を使う以外に方法はなかった。その道具を使うのにも努力を要したが、間違いなくこれまでの自分以上の実力を引き出すことに成功したのである。

 

「どうした、その程度じゃないだろ?」

 

 悟空は瓦礫の中から飛び出た。

 

「悪りいな。まだ、ヤムチャのことを見くびっていたみてぇだ」

「それじゃ、これからは遠慮なしだな」

「あぁ」

 

 二人は同時に飛び出した、先に攻撃を仕掛けたのはヤムチャだった。このままいけば、悟空はビームサーベルによって真っ二つになってしまう。

 

「でやぁ!」

 

 悟空はビームサーベルを白刃取りした。

 

「な、なに!?」

 

 悟空はビームサーベルをそのまま投げ捨てた。

 

「でりゃりゃりゃりゃりゃ! おりゃあ!」

 

 隙だらけとなった胴体に連続パンチをくらわせた後、蹴り飛ばす。

 ヤムチャは吹き飛ばされるが、壁に激突することはなかった。

 

「……あんまし効いてねぇな」

「いや、そんなことはない。痛みがないってだけで、損傷率は結構なもんだ」

 

 ヤムチャの装備は正しく鎧だ。衝撃吸収が十分にされるため本体までダメージが及ばない。しかし、形あるものは必ず壊れるものだ。強い衝撃を加えればいつかは壊れる。損傷率はヤムチャのHPそのものだと考えていい。ヤムチャに直接当たれば、下手をすれば一撃でKOだ。

 

「痛みがねぇってだけで結構ずりぃよな。オラなんて火傷覚悟でびーむさーべる?っちゅうもんを掴んだんだぜ」

 

 悟空は、手に気を纏うことでダメージを削減して掴んでいた。それでも熱を完璧に遮断できるわけではないので当然悟空の両の掌は火傷を負っていた。

 

「確かにそうかもしれないな。しかし、驚いたぜ。ビームサーベルを躊躇なく掴むなんてよ。さすが、悟空だ」

「ヤムチャもな」

 

 悟空は素直に感心していた。道具を使っているとはいえ、セルとの戦いでは事実上の戦力外であったにもかかわらず自分にここまで肉薄することができている。彼らしく強敵(ヤムチャ)との戦いにわくわくしていた。

 

「時間もない。時間切れなんてオチは嫌だからよ。次の一撃で決めようぜ」

「あぁ、いいぜ」

 

 両者の気が大きく膨れ上がる。建物が崩れないか心配になるレベルの大きさだ。設計上は地球が壊れても問題ない強度なので大丈夫なはずなのだが、この戦いを覗くイーヴィは壊れるのではないかと不安さえ感じるほどの高まり方だった。

 

「かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……」

 

 悟空はかめはめ波の準備を始めた。

 ヤムチャもかめはめ波を使えるが、あえて使わないことにした。仮に同じ強さで同じ技がぶつかり合うなら技量が上である方が勝つ。悟空の方がヤムチャよりも明らかにかめはめ波を使い込んでいる。パワー云々の前にかめはめ波の技量が悟空の方が上だと判断したからだった。そのため自壊覚悟でリミッターを解除し自壊覚悟で突っ込むことが最善だと判断した。そのための構えは自身の技たる狼牙風風拳であった。最高の速度で最高の一撃を叩き込むことだけを考えることにした。

 

「波ぁーーーっ!!」

 

 悟空が放ったかめはめ波に真正面からぶつかりに行く。

 

「はぃいいー!」

 

 かめはめ波に突っ込んだのはいいものの全く押し返せる気がしない。耐えるのが精一杯だ。だが、まだヤムチャには奥の手が残っていた。

 ヤムチャは、悟空と戦う前にイーヴィにこんなことを言われていた。

 

『多分、それでいい勝負ができると思うけど、どうしても勝てないと思ったときはこういうといいよ』

 

 機体性能を限界を超えて引き出すための合言葉。それは

 

「トラ〇ザム!」

 

 本来のそれとは違うが、機体をオーバーヒートさせて最高のパフォーマンスを引き出す。その代償として、異常な熱を持ち自らの体を焼き、使い終わったときには機体が駄目になってしまう正に諸刃の剣だった。

 

 ヤムチャはかめはめ波を一気に押し返していく。

 

「くっ、なんてパワーだっ!」

「はああああああああ!」

 

 後、もう一歩というところまで来た。ここで一撃、一撃を当てれば勝てる。

 

「はぁっ!!」

 

 悟空はここにきて、かめはめ波の威力を上げた。

 

「う、うおおぉおおおお!!」

 

 そして、勝負は決する。

 かめはめ波の衝撃によって、瓦礫は土埃となり煙幕の様になっていた。それが晴れた先には

 

 

 

 

 

 

――ヤムチャが立っていた。

 

「なっ!?」

 

 さすがの悟空も大きく力を振り絞った後にすぐ動くことはできない。

 

「悟空……俺の…か……ち……」

 

 ヤムチャは勝ちを確信し拳を振り上げた。しかし、振りかぶった拳は悟空に当たることはなく、鎧は粉々に砕け散りインナーだけの姿になって倒れた。

 

 ヤムチャは悟空をあと一歩のところまで追い込んだが、敗れてしまった。道具を使ってまで挑んだ戦いであったのに彼の悔しさは大きなものであろう。

 そして、悟空もまた本来であれば負けであったかもしれない戦いをしたことで前にも増して一層鍛えることを考えるのであった。

 

 

 

 

 




おまけ

イーヴィにとって予選はすべて思った通りに進んでいた。だが、彼女にも誤算はあった。

「バレーボールにガ〇ダム……ネタにしかならないと思ってたのに思いのほかシリアスに……な、なにを言ってるのか(ry」

などと供述している模様。


作者的には、予選でちょっと熱い展開にしすぎて本戦の影が薄くなるのではと戦々恐々としております。


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49 天下一武術会本戦 その1

現状、この作品はでき次第上げていくつもりなのでどれくらいオリ編が続くのかわかりません。誤字脱字も結構あるかもしれません。
大体の構想は頭の中でできていますがプロットとか全く書いていないので……思い付き次第書くので安定感ゼロです。まぁ、自分は書いていて楽しいんですが。今更ですが、こんなのでも楽しんでいただけたら幸いです。



 悟空がヤムチャを倒し、開いた扉をくぐるとそこには予選を抜けた者たちが待っていた。

 その部屋は休憩室の様になっており、テーブルや椅子などが置かれていた。

 

「あれ、二人だけか?」

 

 悟空は最後にギリギリで予選を突破したために最後に到着していた。

 と言っても、その場にいたのは悟飯とベジータだけだったのだが。

 

「ピッコロさんは……負けてしまったみたいですね」

 

 悟飯はピッコロが予選突破できなかったことに少しショックを受けているようだった。自分は突破しているのに敬愛する師匠が突破できなかったというのはやはり残念なのだろう。

 

「ふん……この程度の予選で負けるとはな」

 

 ベジータはだみ声で言う。

 

「ベジータ、おめえ、声がちょっと変だぞ。どうしたんだ?」

「う、うるさい!」

 

 ベジータは予選のカラオケの影響で声がガラガラになっていた。ベジータも指摘されると少し恥ずかしいようだった。

 

 そして、奥の部屋からイーヴィが現れた。

 

「やぁ、みんな久しぶり」

「よ、イーヴィ」

「お久しぶりです」

 

 ベジータは私に背を向ける。

 

「予選は楽しんでもらえたかな?」

「いつもとは趣が違ってよかったと思います」

 

 悟飯がちゃんと感想を言ってくれたことにほっこりする。後の二人にはまともな感想を期待するだけ無駄というものだ。

 

「結構楽しかったぞ」

 

 悟空にしてはまともな発言に聞こえるが(ヤムチャとの戦いが)が透けて見える。

 

「あんな下らん真似、二度とするか」

 

 残念ながら、場合によっては地球と家族を守るためにダンスと共に歌を披露することになります。

 

「ま、みんな疲れたでしょうし、休んでて。食事休憩も含めて1時間後に本戦開始といこうか」

「あぁ、楽しみにしてんぜ」

 

 

 この後、イーヴィは食事を無料提供するがそれだけで300万ゼニーは飛んだ。高額になることはわかりきっていたことだったが、実際に目の前でやられるとお前らは大食いでもしに来たのかと思ってしまった。そのせいで悟空の「楽しみにしてんぜ」という言葉が食事に対してかと勘違いした。いや、多分勘違いではなかったのだろう。やっぱ旨かったとかそういう発言が聞こえたので……悟空に味のこだわりはそれほどないと思われるが、好みはやはり肉に偏っているのは間違いないだろう。

 

閑話休題

 

 食事休憩を終え、イーヴィは本戦のルール説明へと入る。

「大会開始前に言ったけど、本戦はトーナメント形式で行うから。そんで優勝した人が賞金と私と戦う権利が与えられます。権利だから戦いたくなければ別に戦わなくてもいいよ」

 

 悟飯はともかく悟空とベジータが戦わないなんていう選択肢を取るわけがないとわかりきっているが言っておく。悟空とベジータは優勝したら当然イーヴィと戦う気でいるようだった。

 

「基本的には天下一武道会とルールは一緒。違うのは一応殺しても負けにならないこと。全力で戦って死んでしまったならそれは致し方ないことだからね。もちろん、死人は出したくないけどね。もう一つは、武器を使ってもいいってことね」

 

 これも大会開始前に同じようなことを言っているので特に反応はなかった。

 

「それでトーナメント表の組み合わせは私が勝手に決めたから」

「え? でも、それじゃあ公平じゃないんじゃ……」

 

 悟飯が最もなことを言う。だがしかし、

 

「大原則としてこの場では私がルール。それに公平なことなんて予選からないよ。運が良ければ普通の人だってここに来れないことはなかったしね」

「関係ない。勝てばいい話だ」

「そうだな。誰が来ても問題ないように鍛えてきたんだ。心配することねぇって、悟飯」

「……そうですね。わかりました。頑張ります」

「それじゃ、トーナメント表はこんな感じになりましたっと」

 

 イーヴィは3人の前に紙を広げた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「それじゃ、私は会場の準備をして来るから。じゃーね!」

 

 まるで隠し部屋の様に何も見えない壁の扉からイーヴィはどこかに去ってしまった。

 

 

 ベジータはそのトーナメント表に反応を示さなかったが、悟空と悟飯はそうもいかなかった。と言っても悟空はさっきの発言の通り、誰が来ても問題ないと本気で思っているので動揺はないが、悟飯はいきなり悟空と対戦することになってしまうことに少なからず不安を抱えた。

 

「大丈夫だって。気負わずに行こうぜ、悟飯」

「でも、お父さん……」

 

 悟空は、この大会は遊びの様なものなのだから気負う必要がないことを伝えるが悟飯は真剣に戦わなければ悟空に失礼なのではないかと思っていた。

 

「悟飯はオラみたいに戦うのが好きじゃねぇってのはわかってけど、悟飯がどれくれぇ強くなったのか知りてぇ。今まで見てきてわかっちゃいるけどよ、実際にぶつかって知りてぇんだ」

 

 悟空には大事な人たちを守りたいという思いはあるが、それ以上に自分を高めることばかりを考える。悟空はそんな人間だ。それでも、悟空なりに息子のことを大事に考えていた。悟飯の夢は学者になることであるが、悟空にはその道については何もわからない。それ故に、武でしか悟飯を推し量れないのだ。大事なのは、道をどう極めていくかだ。戦えば、それがなんとなく見えるのではないかと悟空はそう考えていた。

 

「ま、本音を言やぁ、セルの時みたいに本当の力を出した悟飯と戦いてぇけど、今出せる全力で戦ってくれりゃ、それでオラは満足だ」

「……わかりました」

 

 この場では誰よりも状況を察することに長けている悟飯は悟空の想いに勘付き、その想いに応えられるように全力を尽くそうと考えた。

 

 悟空達が会話を終えると待合室となった部屋にトーナメントに参加する選手たちが入ってきた。

 

 16号と17号と18号、ラディッツ。そして、全身を覆い隠して顔が見えない選手。

 

「久しぶりだな、孫悟空」

「おぉ、元気にしてたか?」

 

 16号が人造人間たちを代表してあいさつをした。

 

「メンテナンスを毎日怠らずにやっているからな、問題ない」

「そりゃよかった」

 

 悟空は笑って応える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベジータの方は、ラディッツに突っかかっていた。

 

「今日はお前も倒してやるから覚悟しておけよ、ラディッツ」

「なんで俺に突っかかって来るんだよ。カカロットと戦っていればいいだろ」

「お前もカカロットも下級戦士でありながら俺を超えたんだ。そう簡単に許されると思うなよ」

 

 ラディッツは、ベジータに対し「こいつうぜー。いつまで引きずってやがるんだ」と内心思うが、本人を目の前にして言えるわけもなかった。仕事が忙しく大した修行もできないため現在のベジータより劣っていることは、ほぼ間違いないと考えており正直トーナメントに参加したくなかったのがラディッツの本音である。予選だけなら運が良ければ誰も来ないと考えていたが、結局ピッコロが来てしまった。わざと負けてもよかったのだが、ピッコロに対して失礼である上にイーヴィに何をされるかわかったものではないので全力を出していた。それでもピッコロに少し怒られてしまっているが。

 

「わかった、わかった。お互い勝ち上がれれば、戦うってことでいいだろ」

「逃げるなよ」

 

 ラディッツははぁっと一息吐く。ベジータの相手をするのが面倒で嫌なのだった。そして、今現在隣にいる同僚と戦うことになっているのも面倒で嫌なのであった。

 

「初めまして。コルクと申します」

 

 ラディッツの横に居たコルクと名乗る選手が握手するようにベジータに手を差し出す。

 

「ふん……!」

 

 ベジータはその握手に応えることもなくどこかへ去っていった。

 ベジータは、コルクを少し警戒していた。イーヴィの選んだ選手ということは、ただの雑魚ではない可能性が高い。その選手を態々一回戦でラディッツと当てるところも理解しがたいが、とにかくイーヴィが考えなしに組み合わせるわけがないのだ。その様なことを考える意識の裏にはイーヴィに対する苦手意識があるのだった。ただ、少し気にかかったのが、コルクの声にどこか聞き覚えがあるのだった。

 

 

 コルクは悟空にも挨拶をしに行った。

 

「初めまして。コルクと申します。当たるとしたら決勝ですが、よろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそ」

 

 悟空はコルクの握手に応える。

 そして、悟空もまたベジータと同様にどこかで声を聞いたことがあるような気がしたのだった。

 

「もしかして、オラたちって会ったことあるか?」

「いえ、間違いなく初めてですよ」

「そうか?」

「はい。それでは、失礼いたします。もし決勝で当たることがあればお手柔らかにお願いします」

「あ、あぁ……」

 

 声に覚えがあるような気がして引っかかるのだが、どうしても思い出せなかった。というより、声に対して雰囲気と言葉遣いが噛み合わなくてどこか気持ち悪ささえ感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ~って、お待たせしちゃったかな? 早速、第一回戦始めようか! あ、今更だけど身内だけだし敬語は外すね!』

 

 いきなりイーヴィの声が響く。

 さらに閉じていた扉が開く。

 17号と18号は開いた扉に入って会場へと向かう。

 

『それじゃ、17号と18号は舞台に上がって。他のみんなはここで待機。モニターで様子は見れるから』

 

 待合室の天井から大きなモニターが下りてきた。そこには、武舞台となる会場が映された。天井や壁がある以外は、天下一武道会の武舞台とさほど変わらない。

 武舞台の上に17号と18号が上がり、中央で向かい合わせになる。

 

『それじゃ、早速第一回戦第一試合開始ぃー!』

 

 開始を告げられると同時に17号が口を開く。

 

「18号、俺たちは永久式の人造人間だ。パワー値こそ俺の方が若干上だが、なかなか決着がつかないだろう」

「だから何が言いたいのさ」

「一つ提案をしたい。一撃先に入れた方が勝ちってことにしないか?」

 

 18号にとっては、ある事情から願ってもない提案だった。設計上も17号の方が、強さが上になるように作られている。そちらの方がむしろ勝率が上がると言っていい。

 

「いいわ。取り消すって言っても遅いからね」

「問題ない」

「はあぁああ!」

 

 18号は17号に猛攻した。連続でパンチをするが、17号はそれを軽くいなしていった。その間、17号は一切反撃することはなかった。不審に思い18号は一旦距離を取る。

 

「なんで攻撃してこないんだい?」

「一発当てれば終わりなんだ。そう焦る必要もないだろ」

 

 確かにもっともな意見だ。しかし、攻撃をしなければ勝つことはできない。攻撃してこないならば18号にとって好都合ではあるが、17号が理由もなく攻撃せずに待っているとは考えづらい。子どもっぽいところを持つ17号だが、知能レベルが子どもであるわけではない。何か考えがあると見た方が良い。

 

「なんだ、今度は様子見か? それなら……」

 

 17号がゆっくりと空中へと浮き上がる。ある程度浮き上がったところで両手にエネルギーを集中させる。18号はその様子を見て連続でエネルギー弾を放って来るのだと思った。

 

「させないよ!」

 

 放つ前に対処しようと一気に距離を詰める。17号は18号が目前まで迫ったところでエネルギーの集中を止めた。クルリと18号の攻撃を横に避け、手に銃を持ち、撃った。

 銃撃でも簡単に対処できるような動体視力と身体能力を持つ18号でも攻撃直後の隙を狙われてはよけることもかなわず脳天に直撃した。

 

()っ」

 

 銃撃をくらって痛くて出たわけではないが、反射的に声が出てしまっていた。

 

「俺の勝ちだな」

「……あんた、それはさすがにずるいじゃないか」

 

 ルール上は武器を使っても構わないことになっているが、暗黙の了解で使わないとばかり思っていた。武器を使うよりも素手で攻撃した方が強いからというのもある。

 

「別にルール違反じゃないだろう。それに、これでも18号、お前を気遣った結果だ」

「気遣った? 銃撃しておいて?」

 

 17号が撃ったのはゴム弾であるが、それでも普通の人間がくらったら死ぬこともある代物である。その18号の指摘ももっともなことではあったが

 

「銃より俺の普通の攻撃の方が強いに決まっているだろ」

 

 それも至極当然のことであった。

 

「それに18号、妊娠しているだろ?」

「気付いていたのかい……」

 

 17号が攻撃をしなかったのは18号の子どもを気遣ったからであった。17号ほどの力を持った存在にまともに攻撃されれば、18号は無事でもお腹の中の子どもが無事で済むはずもなかった。先に一撃入れた方というのも18号のお腹の子どもに負担がかからないよう、なるべく早く決着が着くように17号なりに配慮した勝負方法でもあった。

 

「当たり前だ。全く……いくら金が必要だからってそこまでする必要はないだろ。それこそお灸チビ……義兄さんを頼れよ」

「わかったよ」

 

 現在はたまにしか会うことない姉弟であったが、18号は17号の気遣いを嬉しく思った。

 

「たださぁ、さっき、私の旦那のことをお灸チビって……」

「さて、いつまでもここにいるのは邪魔になる。戻らないとな」

 

 18号の言葉を無視して、いそいそと待合室に戻る。

 

「ちょっと、逃げるんじゃないよ!」

 

 そのあと、軽く怒られる17号であった。それにしてもクリリンをちょっと悪く言われただけで怒るとはこの18号、クリリンにベタ惚れである。

 

 




おそらくこれが年内最後の更新です。
ちゃんと完結させられたらいいなぁ……

コルクの正体、わかった人います?
今回の話だけでヒントがいっぱいなんでほとんどの人がわかっちゃったかもしれませんが……名前も一応ヒントになってます。

それではみなさん良いお年を。


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50 天下一武術会本戦 その2

悟空と悟飯の戦いを何とか予選より盛り上げたかった結果、考えるのに時間がかかってしまいました。ヤムチャ戦が殊の外熱い感じだったんで、まさか親子対決がそれに劣るわけには……とか思って必死に考えてました。時間をかけた割には微妙かもしれませんが、個人的には面白くなったのではないかと思っています。


『第一試合の勝者は17号! 私的には結構好きな勝ち方だったよ。でも、試合はまだまだあるので次の試合もさっさと始めようか! 第二試合の選手は会場に行ってね』

 

「そんじゃ、いよいよオラたちの番だな」

「はい!」

 

 悟空と悟飯は別の扉を通って、武舞台に上がり向かい合わせとなる。

 

『それじゃ、第二試合開始ぃ―!』

 

 互いに気を高め、構えを取る。

 

「来い、悟飯」

「……行きます」

 

 悟飯は一気に距離を詰めて、蹴りを入れる。が、悟空は難なく受け止める。それを皮切りに常人には見えない速度の攻防が始まる。

 一進一退の攻防であるが、悟空の表情にはまだまだ余裕がある。

 

「どうした、悟飯。そんなもんじゃねぇだろ」

「はぁあああ!」

 

 悟飯は攻撃の速度を上げるが、悟空はそれに難なくついていく。正確には、悟飯に合わせていると言っていい。基礎的な力も技能も悟空は悟飯よりも数段上であった。いつも修行しているものと時々しかできないものでは、それだけの格差があって仕方がないことであった。いくら悟飯の潜在能力が高いと言っても引き出せないのでは意味がない。

 

「ぐっ!」

 

 一瞬の攻防の中で悟飯が大振りの一撃を繰り出そうとしていた。

 悟空はそれに合わせてカウンターをしようと思ったが、その腕は悟空に向かうことはなく地面に向けられた。そのままエネルギー弾が放たれ、爆発を伴って煙幕を引き起こす。

 

「おっ!?」

「でやぁ!」

 

 悟飯は煙幕で隠れた姿が隠れた瞬間に気を消し、しゃがんで悟空に足払いをする。

 

「うおっ!?」

 

 悟空はたまらず体勢を崩した。悟飯は体制を崩したところにアッパーを放つ。

 悟空は吹き飛ばされたが、空中で止まった。

 

「今のは中々よかったぞ、悟飯。でも、さっきので決めるくらい全力で攻撃するべきだったな」

「いえ、僕の攻撃はまだ終わっていませんよ」

「?」

 

 悟飯は、エネルギー弾を放つ。当然、何の変哲もない攻撃であるため悟空は易々といなした。悟空は悟飯の意図が全く読めなかった。

 もう一発、悟飯はエネルギー弾を放った。

 

「何のつもりわかんねぇけど、そんな攻撃じゃっ!?」

 

 悟空は背中にエネルギー弾をくらっていた。悟空は後ろに気を取られたために真正面に来たエネルギー弾もくらってしまった。

 大したエネルギー弾ではなかったが、直撃してしまったために予想以上のダメージを負った。

 

「次は連続でいきます」

「へへっ、よし! 来い!」

 

 悟空は嬉しそうに笑う。

 今度は連続でエネルギー弾を放つ、悟飯。悟空はそれを全てはじき飛ばすが、全て壁にぶつかる前に止まる。それはピッコロの魔空包囲弾を模倣した技だった。ただ模倣するだけに留まらず、悟飯は自分なりの技へと昇華させていた。

 

「はああぁ!」

 

 弾かれた数が、百を超えた辺りで悟飯はその弾かれたエネルギー弾を一気に悟空に向けて放った。

 

「はぁっ!」

 

 悟空は超サイヤ人となり、放たれたエネルギー弾全てに自分のエネルギー弾を当て相殺した。

 

「驚いたぞ。たまに姿が見えねぇと思ったら、ピッコロのところで修業してたんか?」

 

 悟空は実際にピッコロの魔空包囲弾を見たわけではないが、さっきの技はピッコロが使いそうな技だと憶測して聞いた。

 

「はい。お母さんもただ勉強しているだけじゃダメだと思ったみたいで、許可してくれました」

 

 ラディッツにただ勉強させるだけでは、悟飯のストレスになるだろうと息抜きを兼ねて体を動かすことをチチと悟飯に勧めていた。そのアドバイスために悟飯が時折ピッコロのところに行くことを許可されていた。

 

「随分変わったんだなぁ、チチ。オラには、文句ばっかりなのによ」

「お父さん……」

 

 悟飯は悟空のことを尊敬してはいるが、やはりこの修業ばかりというのも問題があると思っていた。道を究めんとする姿は素直にカッコイイのだが、社会的に見れば駄目な大人の代表格と言っても過言ではない。

 

 働きもしないで修業ばかりしていれば、チチの文句も当然なのだが、最早チチはあきらめ半分でもあった。それでも、子ども達に恥じない行動してもらいたいというチチの気遣いでもあるのだが、それが悟空に伝わっている気配はないのであった。今、悟飯は改めてそれを感じた。

 

「僕が勝ったら、ちゃんと働いてくださいね」

「どうしたんだよ、急に?」

「理由があった方が僕も真剣に戦えると思ったので」

「そっか。いいぞ。オラが負けたらちゃんと働く」

「約束ですからね」

「あぁ、約束だ」

 

 悟空は悟飯が真剣に戦えるというのなら、どんな約束もしてもいいと思ったのですぐに了承した。もとより負けるつもりもない。

 悟飯は超サイヤ人となり、悟空と同じ条件にまで持っていく。それでも経験値の差は大きかった。

 

 

 悟飯の攻撃が直撃したのは最初の不意打ちぐらいで、その後、悟空に通じることはなく、ほぼ一方的な勝負にとなっていった。

 

「どうした、悟飯。最初だけじゃねぇか」

「くっ……」

 

 わかっていたことだったが、同じ超サイヤ人でも悟空と悟飯では練度がまるで違った。一瞬の爆発力は悟飯の方が上であるのだが、それ以外の全てで悟空は悟飯のはるか上を行っていた。悟飯はほぼ全力に近い飛ばし方なのに悟空は6割程度と言ったところだ。

 

「そんなんじゃ、オラを働かせることなんてできねぇぞ」

 

 言っていることがクズ発言である。悟空は別に絶対に働きたくないと思っているわけでも、悟飯を怒らせる目的があったわけではないが、その発言が悟飯の逆鱗に触れた。

 悟飯は悟空を働かせるために戦っていたわけではないが、少し身勝手が過ぎる。チチが嘆いているのにかかわらず修業ばかり。ラディッツに指摘されていてもだ。そんなわがままな父親に対して、気にも留めていなかったレベルの不満の積み重なりが悟飯の中で遂に爆発したのであった。

 

「もういい加減にしてください!!」

 

 悟飯はセルの時の様に怒り、超サイヤ人2となった。

 

「勝手なことばかり言って、もうお母さんを困らせないでください!」

 

 悟空は悟飯の言葉にタジタジである。イーヴィはその様子を見て、絶賛爆笑中であった。後に、イーヴィは笑い死ぬかと思ったとぼやくぐらいであった。

 

「いや、でもよ、ここで負けたら働くって約束したんだからよ、いいじゃねぇか」

「良くないです! 勝敗に関係なく働いてください!」

「わ、わかったからよ、早く続きやろうぜ」

 

 悟飯の予想外の怒りに戸惑い驚いたものの悟飯の真の力が見れたことに悟空は喜んだ。これで自分ももっと力を出せると。

 

「そんじゃ、オラも」

 

 悟空も超サイヤ人2となる。あれから更に修業を重ねた悟空は、当時のセルの力を既に超えていた。悟飯はそれに驚くもここで勝たねば悟空はいつまでたっても残念な父親のままになってしまうと地球を守らねばならぬ時並みに覚悟を決めていた。

 イーヴィはその心の内も読めたので尚笑いが止まらなかった。地球を守る覚悟の大きさ≒父親を働かせる覚悟の大きさ、など可笑しいにも程がある。

 

「でやぁっ!」

 

 悟飯の一撃は先ほどよりも重く、受け止めた悟空の腕を痺れさせる。同じ激しい攻防でも先ほどまでとは威力も速度も次元が違う。更に、悟空と悟飯の力関係が悟飯の方が優勢になっていた。悟飯の攻撃が、悟空に通り始めていた。

 

「……っ!」

 

 悟飯の猛攻に防戦一方になりつつある悟空。堪え切れず、一旦距離を取る。

 

「やるなぁ、悟飯。でもよ、まだ先があるんだぜ。超サイヤ人を超えた超サイヤ人をさらに超えた超サイヤ人がよ」

「えっ?」

「まだ、未完成だけど、このままじゃ負けちまうからな……」

 

 悟空は気を溜めるために踏ん張りが効くように構える。

 

「はあああああああああああああ……!!」

 

 悟空が気を溜めると地響きが起きる。地球全体を揺らすような大きな気のうねりだ。イーヴィは思わず「マジかよ……」と感想を漏らす。悟空が超サイヤ人3になれなきゃ困るとは思っていたが、ここで未完成とはいえその前段階に来ているのは素直に驚きだった。

 会場に居る選手たちにも動揺が見える。あいつはどこまで強くなるんだと。

 悟飯も悟空の様子に圧倒され、手が出せずにいた。

 悟空の姿が眼窩上隆起を起こし、髪が少しずつ伸びていく。しかし、途中まで大きく膨れ上がっていた気が不安定に乱れ一瞬の乱高下を繰り返し始めた。その途中で悟空がキッと悟飯を一瞬睨み、悟飯がそれにわずかに怯んだと思ったら瞬時に距離を詰めた悟空がそのまま肘打ちをくらわせ、悟飯はそのまま場外まで吹き飛ばされてしまった。

 悟飯は場外の地面へと叩きつけられ、大きなクレーターができた。

 それで悟空の変身が解けてしまった。

 悟飯は場外負けして、口の中を切って血を流し、先ほどの肘打ちをくらった頬が痣になっていたが、それ以外はいたって無事で意識ははっきりしていた。

 

「わりぃな、悟飯。不意打ちみてぇになっちまってよ」

 

 悟飯は立ち上がり、変身を解き道着の砂埃を払う。

 

「……いえ」

 

 負けてしまったのは、変身に驚いた自分が悪いのだと反省した。ピッコロにもそれで怒られてしまうだろう。一撃だけ耐えれば勝機が十分にあったはずなのにと少し後悔もした。

 

「どうしても安定しねぇんだよな……気を溜めてる途中でバテちまう」

 

 そのせいで、変身の途中で攻撃に切り替えるしか方法がなかったのだった。もっとも、完成したとしても体への負担が大きく、燃費が悪いことには変わりない変身なので今後も悟空が頻繁に使用するかどうかは微妙なところだ。

 

「強くなったな、悟飯」

「はい……ありがとうございました」

「なんだよ、元気ねぇな。負けたのがそんなに悔しかったのか?」

「それもありますけど、お父さんが働いてくれないと思ったら……」

「それなら心配すんなって。ちゃんと働くからよ。さっき約束したじゃねぇか」

 

 悟飯は確かに怒った時に『勝敗に関係なく働いてください』と言い、悟空はそれにわかったと返事をしていた。悟飯は勢いで言っただけで悟空はその勢いに押されて言っただけなので約束としては成立しないのではないかと思っていた。しかし、悟空はそういえば約束していたという理由でチチと結婚したような男なので、約束は守る方である。色々と軽いが、良くも悪くも子どもの時から変わらず素直なのである。若干、大人の悪い部分に影響されている節はあるが……そういう子どもの様な大人なのである。

 

「よ、よかった~……頑張ってくださいね、お父さん!」

「おぅ!」

 

 悟空はラディッツかイーヴィに頼れば何とかなるだろうと皮算用していたが、そこそこ苦労することになるのはまた別の話である。

 




2戦づつやるつもりが1話使ってしまった。別に入れてもよかった気もしますが次入れるとちょっと長くなりそうなのでここで切ってしまいました。


次回は16号対ベジータです。更にラディッツ対オリキャラのコルクもやるかもしれません。


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51 天下一武術会本戦 その3

前回のあとがきの通り「ベジータ 対 16号」と「ラディッツ 対 コルク」ができました。楽しんでください。






 悟空と悟飯の親子対決も終わったのでさっさと次に進めようと考えていたイーヴィだったが、既に武舞台の上には16号とベジータが立っていた。

 

『……あんたら、早すぎ。別にいいけどね』

「ふん。さっさとしろ」

 

 極めて冷静にベジータはそう言ったが、内心はかなりイラついていた。超サイヤ人2の時点で悟空に勝てるか危ういと感じていたのに更にその上の可能性を示唆されては、焦りもでる。

 

『あぁ、そう。16号は大丈夫?』

「問題ない」

『そんじゃ、第三試合開始―!』

 

 先に動いたのは16号だった。右腕をベジータに向け、右前腕部分が発射された。

 べジータはそれを難なく避け、右腕の前腕はそのまま壁に刺さった。

 

「どうした。右腕を失ってそれでおしまいか?」

 

 べジータはそう嘲笑した。しかし16号は動きを見せない。

 

「けっ。やる気がねぇんだったらさっさと降参しやがれ」

 

 どこからともなくBGMが流れ始める。

 

♪街を包む(wht’s going on) Midnight fog♪

 

♪孤独な shilouette 動き出せば♪

 

♪それは まぎれもなく ヤツさ♪

 

♪コ○ラー♪

 

ジャキンッ!と16号の右腕から出てきたもの、それはサ○コガンだった。

 

『コブ○じゃねーよ!』

 

 もはや見た目や中の人とか全く関係ないパロネタを挟んできた。しかし、やったのはまぎれもなくヤツ(イーヴィ)だ。要は自作自演である。

 

「ちっ、ふざけやがって。そんなおもちゃで俺に勝てると思っているのか?」

「やればわかる」

 

 銃口はそのままべジータに向けられており、エネルギーが発射される。細い射出口から放たれたそれは普通に放つエネルギー波より貫通力が高い。

 べジータはそれがただのエネルギー波でないことがわかったため避けることにした。直線にしか動かないのであれば避けるのは容易い。

 飛び上がって避けたが、16号の放ったそれはべジータを追尾した。まさかのサイ〇ガンと同じ仕様である。

 

「何っ!?」

 

 咄嗟に超サイヤ人となり、エネルギー波を放って相殺した。その隙を16号は逃さず、左腕でべジータを地面へと叩きつけた。べジータは受け身を取ったため、大きなダメージとはならなかったが、かなり屈辱だった。

 

「くっ……くたばりやがれ! ファイナルフラーッシュ!」

 

 溜めが短いため、セルに放った時程の威力はないが放つまでの速度は格段に速かった。そのため空に居た16号に直撃した。更に天井には大穴が開いた。

 パラパラと細かな瓦礫が降る中、土煙が晴れると16号が両腕を防御に回し、服の端々が焦げているもののダメージを減らしていた。

 

「以前のままなら危なかった」

 

 16号はイーヴィの趣味によって度重なる改造を受けていた。お遊びで弄くりまわされる16号は不快に思うこともあったが、自身の恩人でもあるイーヴィを無碍にできなかった。その影響で何の役に立つのかも意味不明な機能から無駄に実用的な機能まで幅広い機能を付けられた。基礎的な出力も大幅に向上されており、さらに頑丈な造りにもなっていた。元々、機械とは思えない人間らしさを持つ16号であったが、イーヴィの意味不明な行動に益々疑問を持つなど妙な人間らしさを更に増やしていくのだった。

 

 そんなことなどべジータに取ってはどうでもいいことであるのだが、ただ自分の攻撃が難なく防がれたことがなにより我慢ならなかった。完全体のセル以上の実力を身に付けた(この時点でもまだプライドは取り戻せていないが)自分が以前であれば楽に倒せたはずの奴が倒せない。機械が相手とは言え、自分の成長速度を追いぬかれた様なそんな気分にさせられた。

 

「くそったれーっ! 人形如きに何度もこの俺を超えられてたまるかーッ!!」

 

 一気に気を高めて16号に対して肉弾戦に持ちこむ。16号は右腕を上手く攻撃や防御に回せないため防戦一方となる。

 

「どうした!? そんなものか! ぬぉっ!?」

 

 自分が優勢になったと思った矢先、壁に突き刺さっていたはずの16号の右腕がべジータを殴り飛ばした。

 

「悪いな。この右腕は自動で戻ってくるようにできているんだ」

 

 サ○コガンが引っ込み、右腕が元に戻る。

 

「イーヴィが関わっているせいか、お前の行動一つ一つがイライラするぜ……!」

 

 さっきの一撃で口の中を切って出た血を拭い、再び空に上がる。

 

「だが、それもこれで終いだ!」

 

 ベジータは親指だけを折った右の掌を16号に向ける。

 

「ビックバンアターックッ!」

 

 一瞬の溜めとは思えないほど巨大な気弾が16号を襲う。16号はそれを受け止め、そのまま気弾を返そうと動くとべジータが両腕を広げ、気を溜めているのが見えた。

 

『ちょっ! その威力はまずいって!』

 

 

「そんなこと俺の知ったことか!」

 

 イーヴィの制止も聞かず、べジータは全開に近いそれを再び放つ。

 

「ファイナルフラーッシュ!」

 

 ビックバンアタックを受け止めている最中の16号が避けられるはずもなく気弾ごと弾け飛ぶ。当然その先にある壁を破壊し、星すらも軽く消し飛ばす様なエネルギーは宇宙の彼方まで飛んでいった。

 

『角度悪かったら自滅してたよ……あれ』

 

 16号はと言えば、何とか核たる頭の部分のみは無事だった。全壊を免れたのは運がいいのか悪いのか。とりあえず、取り返しが付くレベルでよかったとイーヴィは安堵する。

 

「ん? 何処だ、ここは?」

 

 天井も壁も大半が破壊されて広がる外の風景は、地球のそれではなかった。空の色も海の色も近くに見える自然の色も地球のものではなかった。

 

『あ、バレたか。別に隠していたわけでもないけど』

「どういうことだ。説明しろ」

『ちょっと待って。16号回収しにそっち行く』

 

 ほぼ崩れた武舞台の出入り口からイーヴィは現れた。近くに落ちていた16号の頭を拾い上げる。

 

「すまない、イーヴィ」

「いやいや。完全に壊されてないだけ御の字だよ」

 

 ベジータはイラついた様にイーヴィを睨む。

 

「そんなに睨まないでよ。説明するから。お察しの通り、ここは地球じゃないわ。星の名前を聞かれてもわかんないけど」

 

 先ほどのベジータが撃ったファイナルフラッシュの様に星を破壊しかねないような攻撃ができる奴らの戦いを地球でやらせるのは危険なので別の星でやらせる方が安全と結論付けたイーヴィは知的生命体のいない星を見つけて、その星に武舞台を作りワープ装置を取り付けた。いつの間にやったかと問われれば、4年の間にだ。ワープ装置の技術は瞬間移動の体系化に既に成功していたため容易だった。場所も一時期宇宙を旅していたために簡単に見つけられた。

 

「ちなみにこのトーナメントのために8つ武舞台を用意したから、星も8つ用意してあるよ」

「……無駄に規模がでかいな」

 

 地球のみで開かれる大会としては、異常な規模であるのは間違いない。それだけ悟空やベジータの力が常軌を逸しているのだ。普通の人間だったら過剰すぎる処置だが、今回のことを考えたらやっておいて良かったとイーヴィは思うのだった。

 

「さぁ、さっさと戻って続きを始めようか」

 

 この試合は、ベジータの勝利ということで幕を閉じた。ベジータは16号をぶっ壊したことで溜飲が下がったようだった。別にそのつもりもそうしたわけでもないがご機嫌取りをさせられたような気分になってイーヴィは少し気分を害したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イーヴィはまた自分の部屋へ、ベジータは控室に戻り、次の試合へと進む。

 

『次はラディッツ対コルクね。ほら、武舞台に向かって』

 

 ラディッツは遂に来てしまったかとため息を吐く。

 

「よろしくお願いします。ラディッツさん」

 

 極めて紳士的な態度で接するコルク。しかし、ラディッツはその正体を知っているためになんとも言えない気分になる。姿をフードとコートで隠しているため今のところ誰にもバレていないが知られたら一体どうなることやら。

 

「あ、あぁ」

 

 生返事を返し、コルクはそれで満足したのか武舞台に向かう。それのゆっくり後を追うように別の道から武舞台に向かう。ラディッツは憂鬱な気分を変えることは全くできそうになかった。

 

『ではではー、第四試合開始―!』

 

 ラディッツは仕方なく構える。

 

「おや、やる気なさそうですね」

「勝っても負けても地獄を見そうなんでな」

 

 ラディッツはイーヴィがコルクにどれだけの労力を使ったかを知っている。その強さも理解している。そして何より、イーヴィの性格の悪さを知っている。

 そのためコルクに勝ったとしたら「何故私があれだけ労力をかけたものに勝ったのか」と摂関を受ける。逆にコルクに負けたとしたら「易々と負けることが許されるとでも思っているのか」と摂関を受ける。どちらも考えられる。

 その上、現在想定できるコルクに対する勝ち筋が殺さなくては不可能な点だった。殺しが単に嫌だということもあるが、それを上回るレベルでイーヴィに何されるかわからないというところが怖い。

 それに加えて、単純にコルクと闘うのが嫌でもあった。

 

「ふふふ……ラディッツ、全力で来いよォ!」

 

 コルクは戦闘時には敬語がなくなる。その上、巻き舌がすごくなる。そこはどうでもいいのだが、物凄く好戦的になるのだった。

 

「やる気が出ないと言っているだろうが……」

「そんなことは私の知ったことではない。貴様にそれ以外の選択肢などない」

 

 仕方ないので超サイヤ人となるラディッツ。最初から全力を出さなくては勝負にならない。

 コルクは何処から取り出したのか両手に銃剣(バヨネット)を持ち十字になるように構える。

 

「エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!」

 

 その声に一瞬気圧されたラディッツに対しその一瞬で距離を詰める。そして、両手の銃剣がラディッツに振り下ろされた。

 

「くっ!」

 

 紙一重で避けるラディッツ。しかし、休むまなく斬りと突きを繰り出すコルク。

 

「さぁ、さぁ、さぁさぁさぁ! どうした! ご自慢の剣を出して来いよ!!」

「言われなくても、出してやらぁ!」

 

 刀を模ったエネルギーの塊を作り出し、それで銃剣を受け止めた。銃剣はそれによって切り裂かれた。

 

「ぬぅ……流石はと言ったところか……伊達にあのお方の傍に居たわけではないということか」

「まぁな。お前もその程度ではないんだろう」

「その通りだ。たかだか剣の一本や二本折った程度で調子に乗って貰っては困る」

 

 コルクが距離を取ったと思ったら、今度は銃剣を指先で挟んで八本持ち、ラディッツに投げつけた。

 

「ちっ」

 

 その全てを斬り落とし、その余波で武舞台や天井、壁も切り裂かれた。

 

「聞きしに勝る切れ味だ。だが、当たらなければ問題ない」

「こっちは致命傷にならない様に気を使ってるんだぜ。その辺も考えて欲しいもんだ」

「私のことを知っているんだ、遠慮することはあるまい」

「それでも、事故ってこともあるだろうが」

「その程度であれば私はそれまでの存在だったというだけだ。そんな弱い私であればあのお方に仕える価値もない」

「……狂信者かよ」

「さもありなん。あの方こそ唯一にして絶対の神。あの方を信じずして何を信じるというのか」

 

 話には聞いていたが、コルク程あいつに忠誠を誓っているものはいない。ここまでくると気味が悪い。

 

「それじゃ、遠慮なしにいくぜ」

「さぁ、来いよ……全力を持って私とあの方を楽しませるのだ!」

「うっせぇんだよ!」

 

 ラディッツが刀を振り回す。次元ごと斬り裂くそれに斬れぬものはない。さらに斬った延長線上をも斬り裂くため半ば飛ぶ斬撃でもある。

 

「ぬるい……ぬるすぎるわ!」

 

 コルクはそれをかすりもせずに避け続ける。

 

「ならば、望み通りに……!」

 

 ラディッツは懐に飛び込まれた。完璧に間合いの内に入られた。

 

「くっ……!」

 

 連続のパンチは重く鋭く、ラディッツに動く隙を与えない。更に、最後の一撃で空へと飛ばす。

 

「天から堕ちよ!」

 

 それを追い、叩きつけるように人一人分程の大きさのエネルギー弾をラディッツに叩きつけた。

 

「うぉおおおおお!」

 

 ラディッツはそのまま武舞台に叩きつけられた。

 

「死んだか……」

 

 白目を向き、仰向けに倒れ伏すラディッツ。

 

「勝手に殺すんじゃねぇよ……」

 

 一瞬、意識が飛んでいたがすぐに起きあがった。

 

「流石だ……流石はサイヤ人! サイヤ人のラディッツ! さぁ、続きを……」

「降参だ」

「……何?」

「これ以上やっても俺に勝ち目はない。だから降参だ」

「そんなことが我らに許されるとでも思っているのかぁ!」

 

 まだ、戦い足りない。まだ、死力を尽くしていない。まだ戦えるというのであれば、不完全燃焼もいいところなのだった。しかし

 

『いいよ、別に』

「我が神!?」

『それなりに面白かったし、ラディッツ最初からやる気なかったみたいだし、無理に続けてもね』

「我らが神がそうおっしゃるのであれば是非もなし」

「おい」

 

 ラディッツは勝手に我らという一括りにされて少し腹が立った。

 

『というわけで第四試合の勝者はコルク!』

 

 コルクはラディッツの傍に寄った。ラディッツは何をされるのかと警戒した。しかし、コルクは手を差し出し「ありがとうございました」と言った。戦闘時からいきなり紳士的態度に戻ったため気持ち悪さを感じたが、とりあえず握手には応えるのだった。

 




コルクをもっと若本っぽくしたかった。この大会でもっと暴れさせる予定なのでその時にでもやってしまおうかと思います。こういう中の人ネタやパロネタが不快だったら今更ながらごめんなさい。でも、自分は楽しいです。


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52 天下一武術会本戦 準決勝

入社までに完結させるつもりだったけど無理みたいっす。というか、書くのに時間かかりすぎですね。


『ついに二回戦よ。実質準決勝戦。人数が8人しかいないから当たり前だけど』

 

 自分でルールを作っておきながらどこか不満気に漏らすイーヴィ。

 

『どんな物事も終わりへと向かって行くもの。この二回戦はまだまだ中盤。みんな頑張ってくれたまえ。それでは、悟空と17号は武舞台に向かってね』

「よしっ! 行くか!」

 

 悟空が軽くストレッチをして気合を入れる。

 

「初めまして……ではなかったな。まぁ、よろしく頼む」

 

 セルとの戦いの後、悟空達と共に神殿に行っていたためこの時点で一応顔見知りではあった。

 

「あぁ、よろしく」

 

 互いに武舞台に上がり、構えを取る。

 

『それじゃ二回戦第一試合、開始!」

 

「「はあぁぁ!」」

 

 互いに突っ込み距離を詰めてから拳のやり取り。通常状態の悟空がやや押され気味だろうか。自分が不利だと感じたためか、悟空は超サイヤ人となる。

 

「早速、それか」

「超サイヤ人じゃねぇときつそうだからな」

 

 攻防を繰り返しながらそんな会話をする。超サイヤ人となったことで実力は五分五分といったところだった。

 

「俺もそれなりに強くなったつもりだったんだが……サイヤ人って言うのは少しずるいな」

「ずりぃことなんてしてねぇって。ちゃんと修行をしてきた成果だ」

「そうか? だが、そんな強いお前だからこそ面白くもある」

「何?」

「簡単にクリアできるゲームじゃ面白みに欠けるからな」

「へへっ、ゲームのことはよくわかんねぇけど強ぇ相手と戦いたいってことはよくわかるぜ」

「それは違う……と言いたいところだが、似たようなものか」

 

 どこか似ているところを持つ二人。本質は全くの別物であるが、近いところはある。

 

「はぁ!」

 

 連続でエネルギー弾を放つ17号。悟空はそれを軽々と避ける。しかし、それでも17号はエネルギー弾を止めずに撃ち続ける。

 17号は長期戦を考えていた。17号は実力を上げたもののまだまだ超サイヤ人2に比べればだいぶ劣る。だが、エネルギーを無限に持つためスタミナが切れることはない。一方で超サイヤ人は強力だが体力を消耗するもの。力を上げれば上げるほど体力の消費も大きくなる。そうすれば、17号に勝機が見えてくる。

 

「波っ!」

 

 悟空は、17号が撃ち続ける間に生ずる僅かな隙にかめはめ波を撃つ。17号のエネルギー弾は一気にかき消された。

 

「くそっ」

 

 直撃する寸前でバリアを張ってかめはめ波を凌いだ。

 

「硬ぇなぁ、それ」

「バリアなんだからそう簡単に破られちゃ困る」

 

 この世界では戦闘力至上主義なところがあるが、バリアは戦闘力にあまり関係なく強い。多少格上の相手ならば易々と攻撃を弾く。使う頻度も使える人物も少ないが。

 

「なら破ってみっか」

「できるものならやってみろ!」

 

 再び連続でエネルギー弾を放つ17号。悟空は最初の数発をいなし、武空術で空に逃げる。

 悟空は先ほどよりも避けるのに大きく動いているためその方がエネルギーを使う。17号としては、その動きはありがたかったが悟空が自分の狙いに気づいていないと考えるのは甘い。何か考えがあると見た。

 悟空は更に速度を上げて、大きく旋回し、エネルギー弾を撃ちながら17号へと近づいた。しかし、17号の周りを回りながら撃ち続けるために方向が定まらず、17号の横を素通りしていく。

 

「どこを狙っている!」

 

 それでも、悟空と17号との距離は縮まっていった。エネルギー弾も徐々に互いに掠る様になっていた。どちらが先に防御をするか、ある種の根競べ状態であった。

 

「くっ」

 

とうとう、17号はバリアを張った。これで悟空に攻撃されても一安心かと思いきや、悟空の姿が消えていた。

 

「ど、何処だ!?」

「後ろだ!」

 

 振り返ったところに悟空の拳が17号の頬を捉えた。17号はそのまま場外まで吹き飛ばされてしまった。

 

「ふぅ……」

 

 悟空は超サイヤ人を解いた。17号は起きあがり、未だ自分がどうして負けたのか分からないでいた。悟空が超スピードで自分の後ろに回り込んだまではわかる。しかし、悟空は自分のバリアの内側にいたのだ。この悟空が起こした不可解な現象、どうやったのかが全くわからなかった。

 

「一体、何をしたんだ?」

「瞬間移動だ」

「瞬間移動? それは確か、相手の気がわからないと使えないんじゃなかったか?」

 

 17号は悟空に瞬間移動という技があることを知っていた。しかし、人造人間から気は感じ取れないため使えないだろうと警戒していなかった。

 

「あぁ、よく知ってるな。でもよ、自分自身の気は感じ取ることもできなくはないんだぜ」

「そうか……あの連続の気功波は、攻撃というより瞬間移動のための目印だったのか」

「あったりぃ!」

 

 こうして悟空は超サイヤ人2になることもなく17号に対して勝利を収めた。

 

 

『なかなか好試合だったんじゃない? もうちょい何かあっても良かった気がするけどね。そんじゃもう一つの準決勝。べジータとコルクは武舞台に上がってね。って、もう上がってるし』

 

 イーヴィの言葉の通り、二人は既に武舞台の上に立っていた。依然、コルクはコートにフードを被ったままであったが。

 

「貴様、一体何者だ? 貴様から感じる気はあいつに良く似ている」

「今更隠す必要もないかもしれませんね。よろしいですか? 我が神よ」

『あ、はい。どうぞ~』

 

 コルクはコートを脱ぎ棄てるとそこに現れたのは黒い甲虫の様な羽を持ち、緑色に黒い斑点がある肌、白い顔や手。要はセルの完全体と全く同じ容姿であった。

 

「やはりてめぇか……何故、生きてやがる」

「何か勘違いをしておられるようなので言わせてもらいますが、私はセルではありません。基の身体こそセルとほぼ同一ではありますが」

 

 その言葉でべジータはコルクが何者であるか察した。

 

「……現代のセルか」

「その認識で間違ってはいません。我が神――イーヴィ様に様々な改造を施されたので元のセルとは別人ですがね」

「どうりでセルよりも更に気がごちゃ混ぜになっているわけだ。あの野郎が何をしたかは知らんが、てめぇの面は気に食わん」

「そんなことを言われても困ります…………が、闘争ならば望むところだ! さぁ、来いよ、べジータ。貴様を微塵に砕いてくれる!」

 

 先ほどまでの紳士的な態度が一変。戦闘狂としての一面を見せる、コルク。

 

「てめぇのその変化。虫唾が走りやがるぜ」

「御託はいいからかかってこいよぉ! こねぇならこっちから行くぞぉっ!」

 

 コルクは銃剣を両手に持ち、べジータに振り下ろす。べジータはどちらも片手で白羽取りして受け止めた。

 

「どうした、その程度か? それで粋がっているようだったら随分と笑わせてくれるぜ」

「これはただの小手調べよ。ならば、これでどうだぁ!」

 

 今度は両手の指に挟み、計6本を持って斬りかかった。べジータはそれらの腹に蹴りと手刀で折って防ぐ。

 

「ぬぅぅ……やはりこの程度の武器では殺せぬか……」

「違う武器なら俺を殺せるとでも?」

「あぁ……貴様には特別に極上の武器を以ってお相手しよう」

 

 脱ぎ捨てたコートから一本の戦斧を取りだした。幅広い刃はひび割れており、その中心部には紫色の宝石が鈍く光っていた。

 

「この斧の銘は、ディアボリックファング。切れ味はご覧のありさまで使い物にならんが、貴様を破壊するには十分すぎる威力がだせる」

「よくしゃべる野郎だ。さっさとかかってきやがれ」

「ならば遠慮なく……死ねぃ!」

 

 コルクが、かがんだ状態から逆袈裟に斬りかかった。

 べジータは先ほどと同じ様に武器を破壊することを考えたが、嫌な予感がしたために避けに転じた。少し遅れたために髪を掠った。

 

「ちっ!」

「甘いわぁ!」

 

 斬り上げた斧をすぐにまた横の斬りへと変えた。通常の剣でさえ、身体の身体構造や遠心力などにより体に大きな負荷がかかり普通よりかなり速度が落ちてしまう様な行動であるが、力技で先ほどよりもさらに速い攻撃となっていた。

 

「ぬぉっ!」

 

 なんとか左腕を防御に回したべジータであったが、その一撃で左腕の骨を折られてしまった。その勢いのまま地面に倒れ伏す。

 

「ほう、なんとか躱したようだな。本来なら、今の一撃で死んでいたはずだ」

 

 かなりのダメージを負いながらも立ち上がるべジータ。一撃でこれほどのダメージを負うとは全く思っていなかった。内心でくそったれと、毒を吐く。最初に感じた嫌な予感が正しく的中していたようだった。戦闘の続行は難しいが、彼はサイヤ人。戦いにおいて諦めるなどという選択肢はない。

 

「……今の、一撃で決められなかったことに後悔するぜ」

「面白い……ならば、超えてみせよ。そして、俺のこの渇きを癒せぇぇ!」

 

 コルクは、再び斬りかかる。

 

「はあぁあああああああああ!!」

 

 べジータは超サイヤ人となり気を高めていく。その圧に耐えかね、コルクはその場で踏ん張った。

 

「あれほどの傷を負いながらこれだけの力を……いいぞ……! もっとだ! もっと楽しませろぉ!」

 

 コルクは歓喜の声を上げる。イーヴィに肉体と精神を改造され、イーヴィに忠実かつ戦闘狂へとなった者ために強者との戦いがなにより嬉しいのだった。元々の素体がセルだったせいもあるが。

 

「てめぇのにやけ面をぶちのめしてやる!」

 

 実際には違うとはいえ、また似たような奴にやられてしまう己が許せず、なんとしてでも倒すと心に決めていたべジータ。己の誇りを何度傷つけられようと、その誇りを守るためなら何度でも挑む。

 

「でやぁ!」

「せいやぁ!」

 

 べジータのアッパーに合わせコルクは右の拳も潰しにかかる。しかし、べジータのアッパーはフェイントであり、その勢いに乗って左の蹴りで、コルクの斧を逸らし、右でコルクの頬を全力で蹴飛ばした。

 コルクは、その蹴りによって地面へと倒れ伏す。

 

「ふん!」

 

 ようやく一矢報いたと不満気ながらも少しスッキリしたべジータであった。

 倒れたコルクは、起きあがり口の中を切って血が出ていたのでそれを拭う。

 

「くふ……くふふははははは!」

 

 コルクは急に笑い出す。べジータは気持ちが悪くて悪寒が走っていた。

 

「いい……! 実に良い! これならもう少し上げても良さそうだなぁ!」

 

 少し離れた位置から斧の先をべジータに向ける。

 

「ジェノサイドブレイバァァー!」

 

 斧の先から巨大なレーザーが放たれた。

 

「くっ、ビックバンアターックッ!」

 

 咄嗟にべジータはビックバンアタックで迎撃する。しかし、勢いを僅かに遅らせるだけでかき消された。

 

「何っ!?」

 

 レーザーはべジータに直撃した。レーザーに武舞台の端まで持っていかれたものの場外になるのはなんとか凌いだ。

 

「はぁ……はぁ……くそっ……!」

「よく凌いだ。だが、次も上手くいくかな?」

「くっ、くそったれ……!」

 

 既にコルクは先ほどのレーザー――ジェノサイドブレイバーは、発射可能な状態であった。

 

「願わくばこれも凌いで反撃してくれることを望む。では、さらばだ」

 

 紫色の閃光が無慈悲にべジータへと向かう。べジータはそれに対して両手を広げて気を溜める。そして両手で受け止めて、踏ん張る。

 

「ふはっ!」

 

 それを見て思わず笑い声を漏らすコルク。未だ諦めをみせないべジータに対して心底感心していた。

 

「ファイナルフラーッシュ!」

 

 そのままファイナルフラッシュを放ち、ジェノサイドブレイバーを押し返そうと試みる。エネルギーの押し合いは、べジータの分が悪かった。まず、自分が受け止めることで勢いを殺し、ファイナルフラッシュで押し返す心づもりだったが、予想以上にジェノサイドブレイバーの威力は高く、全く動かせる気配がなかった。

 

「どうした!? 押し返してみろよぉ!」

「黙りやがれぇーーっ!」

 

 べジータの気の勢いが僅かに増すが、押し返すには至らない。その様子に少しばかり気落ちするコルク。

 

「もう少しなんだがな。まぁ、今回ばかりは仕方ない」

「な、何……言ってやがる……!」

 

 耐えるのに必死でコルクが何か言っているのは聞こえたが、あまり気にしている余裕もなかった。

 

「残念ながらこれで終いだ」

 

 斧を振り上げ、ジェノサイドブレイバーの放出が止まるが勢いが留まることはない。

 

「ぶるぁあああああ!」

 

 斧を振り下ろすと衝撃波が、べジータを襲う。

 

「く、くそーっ!!」

 

 ジェノサイドブレイバーを抑えるのに精一杯のべジータがその衝撃波を防ぐことは叶わず直撃。そのままジェノサイドブレイーバーも一緒にくらってしまった。武舞台の端だったこともあり、そのまま場外へと押し出されてしまった。

 べジータは気絶し、超サイヤ人も解けて黒髪へと戻る。

 

「はぁ~……」

 

 コルクはため息を吐く。

 

『べジータ、場外!勝者、コルク! ……あー、べジータ、死んでないよね?』

「ご心配なく。べジータさんは生きていますよ」

 

 戦闘モードを切り、紳士モードになるコルク。切り替えの早いことだ。

 

『そんじゃ、べジータ回収して戻ってきてね』

「承りました。我が神」

 

 どこか気落ちしたコルクの姿が見えた。その不満は力を出し尽くせていないことにあった。圧倒的な力を手に入れ、それを振るう場がない。その力を戦闘狂故に出し尽くしたいのだ。それはつまりべジータとの戦いでまだまだ全力を出し尽くせていないことの裏付けでもあった。

 

 

 

 いよいよ決勝戦。イーヴィの造り上げた新たなセル――コルク。悟空はこれにどう打ち勝つのか。イーヴィは最高の戦いを期待していた。

 

 




なんか、コルクが若本というかバルバトスになってしまった。書いている途中コルクじゃなくてバルバトスって間違えてしまったぐらいにはバルバトスになってしまいました。


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53 天下一武術会本戦 決勝

とりあえず、社会人になる前にぎりぎり一話投稿できました。次の投稿はいつになることやら。早めに更新できたらいいなと思います。早く更新できなくてもエタる気は全くないので心配はご無用です。

ちなみに、この話を書いた感想
コルク、マジバルバトス


『ついに来てしまった決勝戦。せめてわt…みんなが楽しめるといいな。コルク対孫悟空! 武舞台へ上がってどうぞ!』

 

 二人が武舞台に立ち、互いに向き合う。いつぞやのセルとの戦いと似たような情景であるもののその場に居るのはセルではなくコルクであり、悟空は超サイヤ人でなく、通常状態である。

 

「またおめぇと戦うことになるとはな」

「あの、私はセルではなくコルクですよ」

 

 少し嫌な顔をするコルク。見た目はそのままセルではあるが、中身は完全に別人である。

 

「わりぃわりぃ。見た目はそのまんまだかんなぁ」

「基となったものがセルなので仕方ないことではありますが、あんなのと一緒にしてもらっては困ります」

「……確かにな。おめぇはあの時のセルより強ぇ。だけど、オラだってあの時より強くなったんだぜ」

 

 コルクはゆっくりと片手で自分の顔を覆う。

 

「くふっ……楽しませてくれよ」

「なぁ……おめぇのそれ気持ちわりぃよ」

 

 悟空も戦闘狂には違いないが、コルクとは全く別物である。ある意味で近しい反応もしたことはあるが、あんなに気色悪くはない。

 

「すまんなぁ……だが、私にはわかるのだ。基礎はべジータと同等であるはずのお前にはべジータ以上の何かがある。一回戦で見たあの長髪の超サイヤ人。あれは確実に私の力を上回っていた。それが楽しみなんだよ」

「オラも楽しみだよ。おめぇとの戦い」

 

 互いに構えを取る。

 

『そんじゃ、天下一武術会決勝戦、開始ぃ!』

 

「はぁっ!」

 

 悟空は最初から超サイヤ人2となる。べジータもそれに近い力を出していたが、それでも一方的にやられていたため最低限これだけの力を出さなければすぐにやられてしまうと考えたからだった。

 

「ほう……ならば、私もあれを使うとするか」

 

 コルクはべジータの時に使った斧、ディアボリックファングを右手に持った。

 悟空は気にせず、コルクに直進し右のストレートを仕掛ける。コルクは左から横に振って迎撃する。悟空のそのストレートはフェイントであり、コルクの攻撃をかがんで避ける。さらに、斧の後ろを叩くことでコルクの体勢を崩しにかかった。

 しかし、コルクはその勢いのまま一回転してもう一度悟空に斬りかかった。その攻撃は、刃の腹に手を置き逆立ちの様になって避け、さらにエネルギー弾を喰らわせた。

 そして、一旦距離を取る悟空。

 

「なかなかいい動きだ」

 

 それでもコルクに一切のダメージは見受けられなかった。

 

「タフなやつだなぁ……」

「その程度ではいつまで経っても勝てはせんぞ。孫悟飯に使ったあれで来い」

「あれはまだ未完成なんだ。おめぇ、わかってて言ってんだろ」

「ふふふふ……貴様なら、この戦いの最中にでも完成させることができよう」

「随分と期待してるみてぇだな」

「当然だ。死力を尽くすことこそ私の今の最高の願いなのだ」

「なるほど。ちょっとだけオラと似てるな」

 

 悟空の指摘した通り、コルクと悟空は似ているところがある。しかし、戦いを求める理由は似て非なるものだ。コルクは全力を出したいがために強者を求める。対して、悟空は自分の力を確かめるため、さらには自分の力の向上と限界を超えて強くなり続けるために強者を求める。実際にはそこまで小難しことは考えていないだろうが、とイーヴィは両者をそう評した。

 

「だが、強さはどうかな? ここから少しずつ上げていくぞ」

「よし……! 来い!」

 

 再びコルクが斬りかかるが、悟空はいなして防御する。先ほどと同じ様に体勢を崩されているのにもかかわらず力業で強引に次の攻撃へと繋ぐコルク。それが連続で繰り返していた。互いに埒が明かないと思い始めたところで先に動いたのはコルクだった。

 

「縮こまってんじゃねぇ!」

 

 空いている左手で悟空の顔面を掴んだ。

 

「んがっ!」

 

 悟空がコルクの腕を掴み引きはがそうとするがビクともしない。胴体に蹴りを入れてもダメージが見受けられない。

 

「ずあっ!」

 

 コルクは悟空をそのまま地面へと叩きつけた。

 

「ぐ……があ」

「いつまで寝てんだ!」

 

 叩きつけて横たわった悟空にストンピングをする。

 

「ぐぁああああ!!」

「まだいくぞぉ!」

 

 もう一度繰り返そうとすると、悟空は足を掴んで防いだ。そのまま寝がえりを打つようにコルクの足を捻って倒す。

 

「ぬぉっ!」

 

 これは堪えきれずに地面へと倒れ伏した。が、大したダメージでもないのですぐ起き上がった。悟空はその間になんとか距離を取った。

 

「ふふふ……面白い。だが、まだ足りぬぞ。その程度ではまだまだだ」

「ちぇっ。こっちはほとんど全開だって言うのによ……なら、これならどうだ」

 

 悟空はかめはめ波の構えに取る。

 

「かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……」

「ほう……ならば、こちらも迎え撃つとしようか」

 

 コルクは斧の先を悟空に向ける。

 

「ジェノサイドブレイバー!」

 

 そして、悟空の姿が消えた。

 

「俺の背後に立つんじゃねぇ!!」

「ぐああああああああ!!」

 

 悟空は瞬間移動を使ってジェノサイドブレイバーの隙を突いて背後からかめはめ波を撃つつもりだった。しかし、背後に回った瞬間にコルクが超反応で悟空を斧で天高く吹き飛ばした。悟空は天井にぶつかり、そのあと落下して地面に再び倒れることになった。

 

「素晴らしい技だったが、俺の前では無意味だったな」

 

 本来なら感知することもできずに悟空のかめはめ波をくらうはずだった。だが、コルクはイーヴィから受けた改造によって敵が背後に居ると身体が自動で相手を天高く吹っ飛ばす攻撃をするようになっていた。本人の意思とは全く関係なく動いてしまうため、それがある意味弱点ではあるのだが、この瞬間においては悟空にとって最悪の性能だった。同時にコルクにとっては自分の意志が介在していない攻撃のため多少不満でもあった。これらを悟空が知る由もないが。

 

「ぐっ……くく……ああ……!」

 

 先ほどのダメージが大きいが、なんとか立ち上がる悟空。

 

「これでも立ち上がってくるか……さっきのは俺も遠慮できなかったからな。かなりのダメージのはずだ」

 

 コルクはほとんど力業のみを使っているがそれでも一度も全力を出していなかった。しかし、背後に対する反射だけは、自分の力の調節さえ受け付けない反応であるためにほぼ全力の攻撃となってしまったのだった。

 

 悟空はその攻撃を受けたために既にふらふらだった。下手をすれば、ジェノサイドブレイバーを直撃した以上の一撃をくらってしまったのだ。ここまで来てしまうと反撃の手立てが一つしか思い浮かばない。それもかなり分の悪い賭けになる。

 

「そんじゃ、おめぇの希望通り、超サイヤ人3でやってやるよ」

「まだ未完成だから使わないんじゃなかったのか?」

「使わないなんて言ってねぇよ」

 

 イーヴィがこんな感じのことをよく言っていた気がした。そんな思いがよぎる程度にはまだ余裕があるらしい。

 悟空は常々強いやつと戦いたいと言っているが、ただ戦えればいいのではない。強者と戦いたいのは自分の全力を尽くし、限界に挑み続けるためなのだ。だから、分が悪い賭けでも最後の最後まで諦めない。相手に勝ち得る全ての可能性を試して初めて全力を出したと言えるのだ。

 

「ぐ……がぁ……ああああ……!!」

 

 悟空が超サイヤ人3となるべく気を溜める。その過程であって自分の居る星さえも揺るがす。その力は、本来あの世でしか許されないほどの強大な力だと言う。この世で使うにはエネルギーの消費が大きすぎて、長い間使えない。そのため、悟空にはまだ御しきれないようだった。

 この長い気を溜める時間は隙だらけでもあったが、コルクは待った。コルクにとっては勝つことが目的ではない。イーヴィから指示されていることは、楽しませることであって勝つことではない。そのため、自分も最大限楽しむために全力の相手と戦いたいのだ。己の全力を出せることを願って。

 

「ああああああああああ!!」

 

 悟空の髪が伸びていく。悟飯の時は途中から気が乱高下していたが、今は安定している。今までの超サイヤ人であれば炎の様に湧き上がる気が、超サイヤ人3では悟空を包むように留まっている。

 

「待たせたな」

「上手くいったようだな。ククク……それでこそだ」

 

 悟空は一瞬で距離を詰めてコルクに右ストレートを放つ。ギリギリで反応して刃の腹で受け止める。元々ひびの入っていた斧であったが、そのひびが大きくなった。

 そこからは悟空のラッシュである。今度はコルクが防戦一方となっていた。それでも、コルクに一撃も入らないことに驚きを隠せない悟空であった。逆にコルクは、口の端がどんどん吊り上がっていく。

 

「いいぞぉ! もっと楽しませろぉ!」

 

 悟空の蹴りを屈んで躱すと、そのまま地面にエネルギーを叩きつけて爆風を起こす。その爆風に耐え切れず、悟空は仰け反った。

 

「おい、孫悟空」

「なんだよ。時間があんまねぇんだ。喋ってると、この状態でいられなくなっちまう」

「俺に一撃入れろ」

「は? なんでだよ」

「さっき、お前に後ろに立たれた時反撃しただろ。あれは我が神に改造されていたが故にできたこと。あれに俺の意志は介在していない。だから、本来ならば直撃していたはずだ」

「それがなんだよ。おめぇの力じゃねぇか」

「まぁ、これは建前だ。本音を言うとだな、俺は攻撃をくらうことで全力の一撃が出せる。違うな。正確には限界を超えた一撃を出せる。色々とリスクは背負うがな」

 

 悟空は戸惑った。この言葉に甘えるのか。断るのか。正直に言えば、自分で一撃当てて全力を出させたい。だが、

 

「その方がおめぇがやりやすいっちゅうんなら、いいぜ」

「あぁ、思いっきり頼む」

「でりゃあ!!」

 

 悟空の渾身の右ストレートがコルクの左頬を捉えた。叩きつけるように放たれたその一撃はコルクを地面へと沈ませるには十分な威力だった。武舞台には、大きなクレーターができた。

 悟空は思いっきりやり過ぎたかと、少し不安になったが、コルクがすぐに立ち上がったために杞憂であることを悟った。

 

「く……ククク……ハーッハッハッハ!!」

 

 悪役っぽい三段笑いをするコルク。放電現象のような気がコルクの身体から迸る。

 

「もっと楽しもうぜ! この痛みをよぉ!!」

 

 自分から攻撃させといて、変なことを言うと感じてしまうが、別にコルクがMなわけではない。この状態にするために言わなければならない呪文のようなものであって、そんな趣味は一切ない。これも当然、イーヴィの改造のせいである。

 

 放電が治まり、コルクに特に変化は見られない。気の総量も変わってはいなかった。

 

「なんだよ。なんも変化ねぇじゃねぇか」

「やればわかる」

 

 悟空は再び攻撃を仕掛け、先ほどと同じ様にコルクは防戦一方になるばかりで何も変わらなかった。また、一瞬の隙を突いてコルクは避け今度は反撃に出る。斧でではなく左腕によるボディーブローだ。悟空は防御するために腕で受け止めようとした。

 

「ぐぉっ……!」

 

 だが、悟空の防御を突き破って腹に入った。あまりの衝撃に膝を着く。

 悟空は超サイヤ人2の時より気の総量が大きく増えている。即ち、全ての能力が高まっていることを意味する。当然、防御力も上がる。それでも、コルクの一撃は悟空に大きなダメージを与えていた。

 

「解せない。という面持ちだな。気が増えたわけでもないのになんでもない一撃が予想以上に重い。その答えは、さっきの技だ。あれは、簡単に言えば防御力を犠牲に攻撃力を上げる技だ。だから気の大きさは変わらないが、一撃の重さが全く違う」

 

 態々、解説を入れるコルク。

 

「……なるほどな。でもよ、そんなこと喋っていいのかよ」

「問題ない。その方が楽しめそうだからな。さぁ、いつまで膝を着いている。立て」

「くっ……」

 

 悟空は立ち上がり、かめはめ波の構えを取る。

 

「またそれか。今度は真正面から来るか? それともまた後ろに来るのか?」

「さぁ、どうかな?」

「どちらでもいいことか。どちらにしろやることは同じだ」

 

 悟空に向けて斧を向ける。

 

「か……め……は……め……」

「ジェノサイドブレイバー!!」

 

 悟空はコルクの後ろへと瞬間移動した。

 

「無駄だと言ったはずだ!」

 

 コルクは超反応で悟空に向かって斧を振り上げるが、悟空はすぐに撃たず、バックステップで避けた。

 

「何ぃ!?」

「波!!」

 

 今度こそかめはめ波が直撃した。それも、超サイヤ人2の時より威力が高いうえに、コルクの防御力が下がった状態で。

 土煙が晴れるとコルクは武舞台に倒れ伏していた。

 

「へへっ……どうだっ」

「……っぐ、ぐぬぅ……」

 

 コルクは足を震わせながら何とか立ち上がった。

 

「ク……クフフ。さすがに今のは死ぬかと思った。だが、まだだ。まだ俺は全力を出し尽くしちゃいねぇぇぇぇえい!」

 

 斧がオレンジ色の閃光を放つ。

 

「んなっ!?」

 

 コルクの気が急激に高まっていく。それが放たれれば、この星どころか世界さえも壊してしまうのではないのかと思えてしまうほどだった。

 

「おめぇ……死ぬ気か!?」

「何、俺もお前も死にはせん。これを使ってもこの星は壊れん。ただ全力を出すだけだからな」

「……そうか……だったら、耐えてやる!!」

「覚悟はできたか? ワールドデストロイヤー!!」

 

 コルクが斧を振り下ろしたその瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場は全壊した。

 武舞台が置かれた地球ではないどこかの星の岩山はすべて平地となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク……」

 

 コルクは笑みを浮かべて倒れた。

 そして、その横には悟空が立っていた。

 

「ふぅ……」

 

 悟空が超サイヤ人3を解く。

 

「よっしゃー! 勝ったぞー!!」

 

『コルクは……戦闘不能、みたいね。ということで、第一回天下一武術会優勝者は孫悟空だー!』

 




やっと決勝戦が終わった。でも、天下一武術会はまだ終わりじゃないんです。もう忘れられてるかもしれないけど、この大会が始まるときにイーヴィが言っていたことを思い出してください。まぁ、この編のエピローグごとやるつもりでもあるんですが。


次に更新できるの本当にいつになるかわかりませんけどね。



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54 天下一武術会本戦 EXTRA

結末の予定が少々変わってしまいましたが、これも今後に必要なことと割り切ってやってしまいました。


 天下一武術会は孫悟空の優勝で幕を閉じた。しかし、イベントはまだ一つ残っていた。

 

 イーヴィは、悟空のいる武舞台に現れた。

 

「悟空、優勝おめでとう」

「おぉ。ありがとな」

「優勝賞金は、振込……って、口座がなかったね。まぁ、後日送金させてもらうよ」

「それよりよ、早くやろうぜ」

 

 悟空は待ちきれないといった様子だった。

 この戦闘民族は……とイーヴィが内心呆れる。軽く流して説明したのをちゃんと聞き逃してはいなかった。優勝したものには私と戦う権利を得るということを。

 

「私は約束は破るけど、契約を違えることはしないわ。ちゃんと戦うからまずは傷を治しなさい。ほら、仙豆あげるから」

 

 イーヴィは仙豆を投げ渡す。

 

「サンキュー」

「戦うにあたって場所を変えるわよ。ルールは武術会と同じだけどね」

「あぁ」

 

 移動した場所は、今までと同じような武舞台だった。ただ、壊される前のきれいな状態というだけにしか見えない。互いに武舞台に上がり、向かい合わせになる。

 

「戦う前に一ついい?」

「なんだ?」

「正直な話、私はあなたに勝てない」

「やってみなくちゃわかんねぇだろ。オラが勝つつもりではいるけどよ」

 

 負けるつもりで戦うやつなどそうはいない。イーヴィも孫悟空に勝てないという話をしたいわけではない。

 

「別に勝てないから止めたいとかそういう話じゃないの。この戦いのルールのことなんだけど、天下一武道会に比べてルールが緩いでしょ」

「武器使えたりすることか? オラは使わないけど別にいいんじゃねぇか?」

「さっき私は勝てないと言ったけどそれは天下一武道会のルールの場合はってこと。ここでのルールなら勝つ自信がある。というか、本当にルール無用の勝負だったら私は絶対に負けない」

「一体、何が言いてぇんだ? わかんねぇって」

「要は、全力は出さないけど勘弁してねってことよ」

「そっか。ならよ、全力を出させてやる」

「たとえ私がどんなに危なくなっても全力を出すことはないと思うけどね」

 

 イーヴィが全力を出すということは、それ即ち終わりを意味する。イーヴィの全力は神龍に願いを叶えてもらうこととほぼ同義。それを起こすためには相応のエネルギーが必要だが、全ての過程を省略し結果だけをたたき出す。それを楽しむための戦いで使うなど面白みに欠ける。命を捨てることになるぐらいなら使う心づもりだが、たかだか試合で使う気は全くなかった。

 

「なんだよそれ……まぁ、いっか。リベンジといってみっか!」

「そうね。受けて立つわ。ま、今この場で私が言うのも変だけど……天下一武術会、特別試合開始!」

「はぁっ!」

 

 イーヴィが試合開始を告げたのと同時に悟空はイーヴィに飛び掛かった。と、同時にイーヴィは懐から大口径の銃を取り出す。どこぞの吸血鬼が使っていたような普通の人類には使えない銃だ。だが、それでもこの世界の最高峰の実力を持つ相手には話にならない。

 

「パァンッ」

 

 という、言葉とともに発砲する。悟空はそれを軽々と避けた。気弾より速いと思うんだけどなぁとそんなことを思いながら、もう一度撃った。それも悟空は悠々と避け、イーヴィの目の前まで迫った。

 

「ぐわっ!?」

 

 ところが、悟空は背後から攻撃をくらい驚いて後ろを見る。

 

「隙だらけよ」

 

 拳銃の持ち手で悟空の頭を叩きつける。衝撃で銃が壊れて、バラバラに分解された。

 

「余所見は厳禁よ。と言っても、私は相手の裏をかくのは好きだから前だけ見てても危ないかもね」

「おぉ~……! 痛ってぇ~」

 

 後頭部を抑えて、屈む悟空。

 

「一体、どうやって後ろから……」

「この会場、今までと同じように見えるけど仕掛けがたくさんあるのよ。私の攻撃をサポートしたり、攻撃をする仕掛けがね」

「そりゃ、さすがにずりぃぞ」

「私がルールだから問題ない」

 

 ドヤ顔で答えるイーヴィ。相手が生きるのに支障をきたさない範囲内で嫌がらせをすることに関しては全力を尽くす様な元神だ。それは相手が物語の主人公が相手でも変わりない。

 

「ちくしょー……」

「さて、次はどうする? 私は何が来ても対応できる自信があるよ」

 

 悟空に聞こえないように小さく「超サイヤ人4とかゴッドにならない限りは」と呟く。イーヴィの中で悟空が超サイヤ人3になったのは、意外ではあったが想定の範囲内の出来事であった。それくらいでなければこの世界の主人公はやっていけない。だが、自分を上回らせる気は欠片もなかった。それでも、主人公というのは予想を超えて強くなるものだとも思っていた。故に、余裕を見せつつも気は抜けない。

 

「それじゃ、ま、とりあえず……!」

 

 超サイヤ人2へと変身する悟空。設定上は通常時のおよそ百倍の戦闘力になることになっているらしい。ただ、実際のところそこまで上がっているかは疑問が残るところはある。

 何故なら……

 

「はぁっ!」

 

 再び攻撃を仕掛けてくる悟空に対し、新しく懐から出した銃で捌く。もう片方の手でもう一丁取り出し、悟空の顔めがけて発砲する。悟空は上体を反らして避け、そのまま蹴りを入れてくる。イーヴィは腕でガードをしつつ後ろに後退する。

 

「一応、真っ向勝負できなくはないのよね」

 

 それこそが超サイヤ人2が通常時の百倍も戦闘力が上がっているのか疑問に感じる理由である。悟空の素の状態でもある程度苦戦する私が、変身することによって大きくパワーアップしている悟空に普通に戦えている時点でおかしいのだ。本来なら一方的にやられてしまってもおかしくない。この現象はこの世界が物語であるが故の作用であると考えている。どんな作用でそうなっているかはわからない。私はこの世界へ自分の発明品で来ているわけだが、自分の創ったものの原理を完全に把握しているわけではない。過程を省略して結果を出せてしまうが故の弊害だ。過程が分かっててわからないことも多々あるが。

 

「真っ向勝負できても勝てはしないんだけどね」

 

 小さくぼやいてしまう。本当はできなくもないが、悟空を真っ向勝負で倒すには神としての力をどれほど使い果たさなければならないかを考えると嫌になる。ロマンのためだけに命を削りたくはない。

 

「何、ぶつぶつ言ってんだ?」

「なんでもないよ。そろそろ本領発揮してみようかと思っただけよ」

「お、ホントか!? いまいち真剣にやってるように感じなかったからよ。それなら嬉しいぜ」

「そんなつもりは全くないんだけどね。久々に生身だし」

 

 銃で戦っているため、生身である必要はないのだが、身体機能を強化するのであれば生身の方が都合が良かった。俊敏性を高めるためだけならそこまで力を使う必要がない。捌くのは技術力の問題であって力はそこまで必要じゃない。問題は攻撃力だけだ。ダメージを与えることはできても決定打が一つもない。イーヴィが神としての力を使わずに出せる力は初期のベジータ辺りが限度だ。これでも頑張って鍛えたのである。でも、鍛えて力を上げても生身を神の力に還元してまた生身にするとまたゼロスタート(少年時の悟空ぐらい)なのである。維持にも力を消費する。しかも、還元しても100%還ってこない。これが、イーヴィが普段生身になりたがらない理由である。

 

「いつものやつの方がいいんじゃねぇのか?」

「機械の身体だとどうあがいても勝ち目が薄いのよ。戦闘中に力を高めるってことができないしね」

 

 機械の身体である場合、強化はできるが戦闘中には不可能だ。いや、力を使えばできなくもないがそうするなら生身の方が断然変換効率が良い。悟空と互角以上で戦えば確実に悟空は戦闘中に強くなる。それを上回って倒すには、戦闘中に力を上げるのは必須だ。

 

「イーヴィがそう言うならいっか。それなら再開といこうぜ」

「そうね。さぁ、来なさい」

 

 二丁拳銃を構えて待つ。

 

「……よし。っとぉ!?」

 

 再び悟空の背後より射撃されたが、それを何とか避けた悟空。

 

「おぉ~よく避けたね」

「そりゃ同じ手は……うぉ、とっとっとっぉ!」

 

 今度は壁や天井、床に至るまで大量の銃口が向き上下左右から入り乱れるように撃たれ、悟空はそれを躱し続けた。最早、武舞台の上に人が居られる隙間はない。

 

「なっんで、イー、ヴィは、こん、な中、じっと、してられん、だ?」

 

 息をつく間もなく、避け続けているために絶え絶えにしゃべる悟空。

 

「私はこの銃撃全ての軌道を把握しているから、最小限の動きで避けられるのよ。仕掛けた本人が対処できないようじゃ間抜けじゃない」

 

 イーヴィは直立不動のように見えたが、時折足や腕を動かして銃弾の嵐をすり抜けていた。

 

「当然この弾幕を避けるのに必死なあなたは私の攻撃を躱すのは更に困難なわけで……頑張ってね」

 

 まるで他人事のように手に持つ銃を悟空に向けて発砲する。悟空は避け続けるなか更にそれを避けることは叶わないため最小限の動きで指を使って掴んだ。

 

「残念。掴むのもダメなんだ」

 

 悟空が掴んだ銃弾は、爆発した。それは小さな爆発であったが、悟空の体勢を崩すには十分な威力だった。一度体勢が崩れれば、降り続ける銃弾は避けられない。一度捕まれば、銃弾の豪雨から抜け出すのは困難だ。というより、普通の人間ならば一秒も立っていられずに即死なのだが、サイヤ人にそれを当てはめるのは野暮というものだ。だが、身体が丈夫で銃弾で風穴が開かないと言っても、特別性のそれはサイヤ人相手であっても、普通の人間に投げて小石をぶつける以上のダメージはある。大した事ないように感じるかもしれないが、それが豪雨のように続いたらどうなるだろうか。考えるまでもなく大怪我ないし、運が悪ければ死ぬだろう。

 

「ぐあぁあああ……!」

 

 悟空は亀のように丸くなり、当たる部位を最小限に抑える。それでも上下左右から放たれる銃撃は一部の隙もなくダメージを与える。

 

「我ながらせこい手だけど、私の領域内だし、これぐらいのハンディキャップないとね」

 

 イーヴィは追撃して勝ちを取りに行くことも考えたが、悟空はまだこの状況を打開していない。ただ勝つのも負けるのもイーヴィの中では許されないのだ。何かを得なくては、この大会を開いた意味がない。ただ単に自分が楽しみたいというのもあるが。

 

「ん?」

 

 悟空の動きが止まっている。耐えるために同じ格好のままになることはあるが、攻撃をくらえば僅かなりとも身体は動いてしまうものだ。今はそれすら見受けられない。

 

「…………やばっ!!」

 

 咄嗟に防御の構えを取るイーヴィ。

 

「だぁああああああああああ!」

 

 悟空は気によって爆風を起こした。武舞台のタイルは剥がれていき、天井は悟空の立ち昇る気の圧に耐え切れず吹き飛び、壁は剥がれたタイルが激突し暴風によって根こそぎ取り払われた。

 肝心のイーヴィは多少のダメージを負い、手に持っていた銃も破壊されたものの大きな傷はなかった。

 

「ふぅ……やっと防げた」

 

 道着の砂埃を払う悟空。イーヴィは茫然と立ち尽くしていた。

 

「あ、あははは……力技でどうにかするかもなぁ、とは思ってたけど根こそぎ持ってかれたよ……この大会で一番金かけたのに」

 

 この戦いでしか使う予定はなかったもののそれでも勿体ないと思ってしまう。

 

「なんだよ、これでおしまいなのか?」

「いや、損失金額に目も当てられないだけよ。別に勝つ手段を失ったわけじゃないわ」

 

 この一瞬のために国家予算分ぐらいは吹き飛んだじゃなかろうか。それでも手はまだある。全力を出さずとも余剰分のすべてぐらいはここで使っても良いはずだ。

 

「ふっ!」

 

 どこぞの弓兵や正義の味方のように両の手元に先ほどと同じような銃を作り出す。彼らが作り出すのは(偽物)であって、イーヴィは(オリジナル)を作り出すことだが、やっていることは同じようなものだ。

 

「そんなこともできるんか」

「お望みならいくらでも」

 

 ピッコロさんも服や剣を魔術?で作り出していたが、あれは結局どういったものなのかは謎だ。意外とキャスターになれそうな人物たちである。

 

「それじゃ、第二ラウンドといってみる?」

「あぁ!」

 

 イーヴィは悟空が返事したのと同時に両手に持った銃を連発する。悟空はイーヴィに真直ぐに直進しながらも全て避けている。イーヴィの持つ銃のデザインならば本来の装填数は6発ほどだが、撃った矢先に新しい銃弾が補填されているため関係なかった。それでも悟空に対して意味を成していないが、その銃弾は普通の弾丸ではない。先ほどと同じように爆発するようにできていた。それも先ほどの数十倍は破壊力があるものだ。

 背後で爆発すれば避けようもない。が、悟空は気にせず直進してきた。むしろ、爆風で少し速度上がっている。

 力強い右の拳は、一撃でも当たれば大ダメージは必至。いつものように外に反らすように捌く。しかし、いつまでも同じようになる悟空ではなかった。手を開いて外側に向けて、エネルギー波を放出。力技で内に戻してきた。裏拳のような形でイーヴィの頬に直撃した。

 

「やっと、一発当たったぞ」

 

 吹き飛ぶ中、空中で受け身を取って無事着地する。が、その後膝をつく。

 

「あぁ……ふらふらする。軽く脳震盪でも起こしたかな?」

「痛っ……」

 

 悟空もかなり無理な体制からの攻撃だったために肩を痛めたようだ。

 

「力技、好きだねぇ。私もロマン砲大好きだけどさ」

 

 この世界の住民はロマン砲大好き過ぎる気がするのである。このタイミングではそれしか勝つ手段がないというのも無きにしも非ずなのだが、それにしたって頼りすぎな気がするのである。

 

「別にそんなつもりはねぇぞ。ただ、こうやれば防げる、当てられるってのを実践してるだけだ」

 

 ただの戦闘馬鹿なのか天才過ぎるだけなのか。どちらにしろ生身のイーヴィにはできない芸当だ。マネしたくないだけとも言う。

 

「そんな力技使うんだったら、私も力技でいくよ」

 

 銃を創り出しては空に放り投げ、空中に固定する。光がその銃口の一つ一つに収束してゆく。

 

「対策するなら今のうちだよ」

 

 イーヴィがしようとしている攻撃はコルクの使用したジェノサイドブレイバーやワールドデストロイヤーを上回ることを予感させられた。そのため悟空は、攻撃を先に仕掛けてイーヴィの攻撃を潰すか、気を底上げして防ぐ選択を迫られた。悟空が取った選択は、前者だった。

 

「はぁっ!」

 

 その気合の一声の一瞬で超サイヤ人3となった悟空は突進を仕掛けてきた。そのためにイーヴィは出力を最大まで溜める前に放たざるを得なくなってしまった。

 

「発射!!」

 

 大量の大口径の銃が閃光をまき散らす。最大まで溜めてあったのなら一発一発が星すらをも破壊しかねないほどの威力。最大とまではいかなかったためにそこまではいかないがそれでも人一人を壊すには十分すぎる威力だ。むしろ、オーバーキルにも程がある。

 全ての銃の閃光が一つにまとまり極大なものへと変わる。その大きさは地球さえも飲み込んでしまいそうな巨大さだ。巨大であるため逃げることも避けるということはできない。悟空はそれに対して気を全力で引きあげて、抑える。

 

「く……く……!!」

 

 そのままの状態で悟空は耐え続けた。少しずつ押されている。だが、イーヴィは映画でのクウラとの戦いのように押し返してくるだろうと思っていた。危機に陥ってもそれを覆すのがヒーローというものだ。それが孫悟空だ。だが、イーヴィの予想は悪い方向に覆された。

 

「ぐ……ぐぐぐ……ぐわぁああああ!」

「あれ?」

 

 悟空は閃光に飲まれた。その巨大さゆえに莫大なエネルギーを持つそれをくらうということは、死ぬ可能性が高い。閃光が通り過ぎた後は、何も残っていない。ぼろぼろになった悟空を除いては。

 

「ちょっと、悟空!?」

 

 イーヴィは悟空に駆け寄った。悟空の超化は解けて、気絶していた。

 こんなつもりではなかった。悟空なら易々とこの危機を乗り越えてしまうのだろうと考えていた。危なくてもなんとかしてしまうだろうと。超サイヤ人3になった悟空は、原作内では最強格だと言って差し支えないだろう。それが思った以上にあっさりと倒せてしまったのだ。

 

「死んでは……いないか。よかった……」

 

 主要人物を殺さないように立ちまわっているのに自分で殺してしまっては本末転倒だ。

 

「でも、そうか……私が主人公を」

 

 倒した。倒してしまった。それも思ったほど力を使わずに。

 主人公というのは特別なものだ。主人公が全く負けないなどということはないが、ここまで手ごたえがないとは思わなかった。これは相当に神の力蓄えられていると考えてよい。

 イーヴィは言いようのない興奮を覚えた。激しくもなく冷めてもいない、内側から少し熱くなってくるような感覚。

 

「ふふっ」

 

 笑い声がこぼれる。そんな意図はなかったはずだった。勝つつもりもあった。それでも予想以上にうれしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 だが、この事実はあまりよくなかったのかもしれない。後々、イーヴィはそのように思った。きっとこれが遠因になってしまったのだと、これが自分を調子に乗らせたのだと。この出来事が起きなければ良かったのだと、数年後思い知ることになる。




一応、これにてオリ編は終わりです。次回からブウ編に入りますが、相変わらずいつ更新できるかはわかりません。
早く書けたらいいな。


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ブウ編
55 変化していくブウ編の始まり


遅くなりました。すみません。理由としては、やる気でなかったり、FGO始めたり、書き終わってすぐ投稿してなかったり、要は全て自分の責任なんですが……と、とりあえず完結はちゃんとさせますのでご安心?ください。


 天下一武術会から3年ほどの月日が流れ、第25回天下一武道会の日が近づきつつあった。

 

 その日は本来であれば、界王神が現れバビディの居場所を見つけ出すためにほぼ何も言わずに悟空たちに協力させる。結果として、ほぼすべての行動が裏目に出てブウの復活の阻止はできず大混乱の渦に巻き込まれていくわけだ。内容をかなり省略して説明したわけだが、とにかく界王神が使えないということがよくわかる。事態を面白くするという点においてそれは良い。故にブウが復活するのは構わないし、いくらか一般人が死のうと気にしないが、原作通りなら起きる地球人がほぼ全滅という事態だけは避けたい。そうなると私が消滅ということになりかねないために、目的が達成できなくなったとしてもそれだけは絶対に防がなくてはならない。生き残れたにしても元の世界に帰れない可能性もある。

 

 だからといって、本気を出すとブウが出てくる前に全てが終わってしまうので舐めプは必須だ。楽しむためにこの世界に来たというのにそれでは何のためにここまで来たのかわからなくなってしまう。だが、ブウが出てきたところで超サイヤ人3となれる悟空が生きている時点でどうにかなってしまいそうだ。と、なればだ。状況を操作しやすく、尚且つ事態を混乱に陥れやすく、更には安全策を取りやすい立ち位置を取るべきだろう。その立ち位置は……まぁ、読者さんたちには追々伝えていくことにしよう。

 

 

 

 

 悟飯がオレンジスターハイスクールに通うことになることを知ってからは、悟飯にスパイカメラを飛ばして様子を監視していた。別にそうしなくてはならない理由はない。ただ退屈なのだ。

 仕事の関係上、ブルマとはよく会うのだがそれ以外のキャラとは中々会えないために様子を知ることができないのだ。知る必要もないのだが、ただ仕事をして過ごすのは退屈で仕方ない。そのため、この時期主人公となっている悟飯に焦点を当ててみた。私の行動で何かが変化したのかも気になる。

 

 スパイカメラを飛ばし、悟飯の様子を探ると筋斗雲に乗って登校途中の悟飯を見つけた。そのまま後を付けさせると原作通り事故現場というか犯罪現場に遭遇、超サイヤ人になって解決して、即退散。私が、いくら被害を減らすために開発を繰り返したところでこの手の事件発生がなくなるわけではないようだ。

 

 悟飯を追って学校まで追うと、案の定ビーデルが居た。ほぼ原作通りだと思いきや、私がセルを倒していたこともあって多少の変化はあった。まず地名からしてサタンシティではなく、本来の名称であるオレンジシティのままである。そして、悟飯達の会話を盗み聞くと……

 

『ビーデルのパパはね、なんとあのミスターサタンなのよ』

『ミスターサタン……!?』

『そうよ。実際にセルを倒したのは、イーヴィさんだけど重要な役割を果たしたあのミスターサタンよ』

 

 この世の中ではそういうことになっている。セルを倒したのは私ことイーヴィだが、セルを倒す協力者として大きく貢献したことになっている。実際には悟飯ひとりでどうにでもなったことだが、止めをさしたのは私で相違ない。

 

『別にそんな偉そうに言えることじゃないと思うんだけど』

 

 ビーデルは調子に乗っているサタンのことをよく思っていないせいか、そんなことを言う。

 

『でも、実際にイーヴィさんがミスターサタンのおかげだって……』

『あの人は、目立ちたがりのようでいつも一歩引いて物を見ている気がするの』

『お、さすがはイーヴィさんの弟子。師匠のことはよくわかってるんだ』

『えぇっ!?』

 

 悟飯は思わず声を挙げた。彼にとっては相当予想外だったらしい。

 

『師匠と言っても数日指導を受けただけよ。確かにあの人の指導で私の武道の考え方は変えられたけどね』

『そ、そうなんだ……』

 

 悟飯にとってイーヴィは不穏の象徴とまではいかないが、苦手意識のある相手だ。悪い人ではないが良い人でもない。対応に困る人であった。

 

 その後は、金色の戦士の話題になる。悟飯は自分の正体がばれる可能性を危惧するのだが、本人に隠す気が本当にあるのか不思議になるほど常人離れした動きを体育で見せてしまう。本人の周りに一般人がいなかったせいで基準となる人がいなかったからだろう……母親であるチチさんもサイヤ人達ほどではないが相当強い……ブルマが居ただろと思ったそこの君、気にしてはいけない。

 

 後の展開も知っての通り、正体を隠して人助けをするためにブルマに頼み簡単に正体を隠せる衣装となれる装置を作ってもらう。しかし、あっけなくビーデルに正体がばれてしまう。ビーデルはそれを元に、次の天下一武道会に参加するように脅す。更に、空の飛び方を教えてもらう様に約束させられる。

 

『空の飛び方を教えるのはいいですけど、イーヴィさんから教わらなかったんですか?』

『なんでそこで師匠の話が出てくるのよ』

『イーヴィさんとは、実は知り合いで空飛べるんですよ』

『えっ!? そうなの!? ……世間って狭いのね』

 

 ちなみに空の飛び方を教えなかったのはわざとである。

 その後、悟飯はヘルメットが武道会では使えないためにブルマに相談しに行き、ターバンとサングラスで顔を隠すこととで対処することになる。そして、ベジータが悟飯が武道会に出場することを知ることになる。

 

「そのなんとかって、大会に俺も出る。どうせカカロットも来るんだろう。それにあいつもな……!」

「父さんにもイーヴィさんにも言ってないのでまだわかりませんけど、たぶん出場するでしょうね」

「よし、乗った!」

 

「き、貴様! いつからそこに!?」

「最初からいたけど?」

 

 先ほどの通り、ブルマの居るところ、つまりはカプセルコーポレーションにはよく足を運ぶのだ。

 

「居るなら早く言え……!」

「兎に角、私も参加するからよろしく。一応、私も出資者だしねー。それじゃ、用は済んだから帰るね。仕事の方はよろしくね、ブルマ」

「はいはい」

 

 ちなみにこの件に関しては本当にこの物語とは全く関係がない仕事のことである。次回の天下一武道会で台無しになる可能性はあるけど、普段通りに行動する方が怪しまれることは少ないだろう。すでに怪しまれているけどね!

 

 

 悟飯の様子を再び覗けば、家族に天下一武道会のことを話していた。チチは反対していたが、悟空、悟飯、悟天の家族全員に押され出場を認めることに。私の開いた武術会の優勝賞金をもらっていることもあって、原作よりは家計に余裕があるらしい。ちなみに悟天とは、既に数度会っている。あちらが私のことを覚えているかは微妙なところだが。

 

 悟飯は原作ほどではないが、そこまで鍛えていないために悟空に鍛えなおしてもらうことを願い出た。悟空はそれに快く承諾し、悟天も一緒にやりたいとせがみそれも悟空は了承した。

 

 その翌日、ビーデルが悟飯の下へ武空術を教わりに来た。

 

『お父さん……どうにかできませんか?』

『おめぇが約束したんだろ。ちゃんと責任もってやれよ』

『そ、それはそうなんですが……』

 

 悟空が至極当然のことを言っているのに果てしない違和感がある。

 

『オラは先に悟天と修行してっから、その子にちゃんと武空術を教えてやれよ』

『は、はい……』

 

 今まで修行をしていなかった分、取り返さなければならないと感じていたがビーデルが来たことによってその時間が短くなってしまうことを懸念した悟飯だったが、結局は原作通り教えることになった。

 

 ちなみに、悟天は既に悟空から教わっていたために飛べるようになっていた。

 

 悟飯とビーデルはほとんど原作と変わらない様相だった。飛べるようになる速度は、原作よりも早かったが。気と教えていたわけではないが、気を扱えなければ使えないような技を教えていたために習得するまでが早まったようだ。一日でほぼ自由に飛べるようになっていた。気について知るためにも、もう一日来るということになり、悟飯の一日はそれで終わった。

 悟空は悟空で農業を営んでいるために一日中修行というわけにもいかなかったが、機械を使うなどして時短+品質向上しており、意外とハイテクなのであった。それは悟空がというよりはラディッツの提案と伝手によるものなのだが、それはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

 各人、天下一武道会に向けて調整している中、私はブウの対処をどうするか考えていた。既にバビディの宇宙船の所在は掴んでいる。界王神の所在もだ。天下一武道会を楽しみ、その後バビディの下に行くことを考えてはいるが、界王神の相手がめんどくさそうだ。キビトも回復役と瞬間移動は使えるが、性格的には正直うざい。まだ会ったこともない人物に思うことではないが、多少痛い目を見てもらっても構わないだろう。ブウは復活させる前提で動いて……さて、どうなることやら……愉しみだ。




ようやくブウ編が始まりました。一応はブウ編の後をちょっとやって本編完結と考えています。超の方は、おまけみたいな感じで気が向いた時にでもやろうかと……
 今年中に本編終わったらいいなぁ……
 (正直、もう別のやつ書き始めたい……)


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56 ラディッツの娘、パースの実力

珍しく連投です。ただ単に、前のやつを投稿してなかっただけなんですが


 大会当日。みんなが集まった。正に勢ぞろいだ。原作にはいなかったはずのラディッツやその奥さんと娘も追加されているが、死人が一人も出ずにここまでやってこれた。当然原作のラストまで……正確にはブウ編の終わりまで死人を出す気はない。……はい、そこ、フラグとか言わないし思わない。私の意のままにならないことなんて(ほとんど)ない。

 

「なんだ、コルクは居ねぇんか?」

「あのねぇ……コルクとセルの見た目はまんま一緒なんだから来れるわけないでしょうが。セルに何人殺されたと思ってんのよ。大会どころじゃなくなるから」

「それもそっか。ちぇっ、もう一度戦いたかったのによ」

 

 ベジータも不満気である。

 

 コルクに関しては本当に連れて行きようがない。今後も出番がなさそうである。自分の愉しみのためだけに生み出しておいて難だが、もう用済みなのである。殺しはしないが、外に出られることはあるだろうか……本人が望めば、宇宙に飛び立たせてあげてもいいが、本人がそれを望むかどうか。……それはまた今度考えることにしよう。

 

 みんなが大会申し込みをしていると、当然悟天達が引っ掛かった。

 

「君は少年の部だね」

「え!? 少年の部!?」

「15歳までの少年は少年の部です」

「別にいいじゃない」

 

 だが、私は口をはさむ。

 

「イ、イーヴィさん!?」

「その子たちの実力じゃ、同じ子供相手がかわいそうになるぐらい強いから大人と一緒にやらせてあげた方がいいわ」

「し、しかし規則ですし……」

「責任は私がいくらでも取ってあげるから」

「イーヴィさんがそこまで言うなら……」

 

 知名度というやつはこういうところで本当に便利である。地位や権力というやつは労力を使わずして、ある程度のことは思うがままだ。ある意味、そのために手に入れたような力でもある。

 

「わーい! ありがとう、イーヴィさん!」

 

 悟天とトランクスが喜ぶ。クリリンは嬉しくなさそうだった。

 

「ねぇ、私は?」

 

 そこに小さな女の子が来た。

 

「いや、流石に君は……」

 

 パース――ラディッツの娘。私はこの子のことをほとんど知らない。性格も実力の程も。ラディッツが相当甘やかしているのは間違いないが……

 

「流石に許可できんな。パースよ、少年の部で我慢してくれ……」

 

 ラディッツがパースと目線の高さを合わせ諭す。

 

「トランクス君も悟天君も大人の部に出るんでしょ。だったら、私も出たい!」

「パースはやめとけって。前に俺たちと遊んだ時、後ろに付いてくるのがやっとだったじゃないか」

 

 このパースは悟天とトランクスと遊んだことがあるようだ。言葉から推測するに一般人よりは強そうだが、悟天とトランクスほどではないようだ。それでも、一般人から見れば天と地ほどの差がありそうだ。だって、女の子と言えどサイヤ人だし。

 

「そうだね。今回は我慢しておいて」

「ねぇ、お願いイーヴィさん! 私も大人の部に出させて」

「無理言っちゃダメでしょ。すみません、社長。この子がわがままを」

 

 ラディッツの奥さん(……確か、マヨレさん)が私に謝る。いや、大人として当然のマナーというか礼儀というか……普通な人だ。

 

「気にしないで。それとこの場は会社じゃなくてプライベートだからイーヴィさんとでも呼んで。皆、そう呼ぶから」

 

 そう呼ばないのもいるけど。

 

「ありがとうございます。イーヴィさん」

「……少年の部で我慢する」

 

 不貞腐れた様ではあるが、本人もどうしようもないと判断したようだ。賢い子だ(と思いたい)。

 

「偉いわね。パース」

 

 マヨレがパースの頭を撫でる。

 

「パパ!」

 

 今度はラディッツに駆け寄るパース。ラディッツはパースを抱き上げる。

 家族仲はとても良いようだ。ラディッツの顔がやたらデレデレしていて気持ち悪いのは、どうでもいいとして、何か面倒なことにならなければいいのけど……と自分が面倒を起こそうとしているのを棚に上げて思ってしまう。

 

 

 受付を済ませ、会場内へと入る。ピッコロさんが悟飯を気遣ってカメラを破壊していたが、そのあたりは正直どうでもいい。そろそろ目立つ必要もなくなってきたし、マスコミが居なくても別にいい。界王神たちがどこにいるかも気になるところではあるが、今はまず楽しむことだけを考えよう。

 

 

 

 予選は原作通りのパンチマシーンである。ただし、私が作った特別性である。最初のサタンの時だけ設定を弄るが、それ以外は一般人では1点が出ればよい方という激辛設定にする。普通の設定だと遠慮せずに叩いた場合、みんなカンストしてしまう。というか、マシーンが壊れてしまう。そこで特別性のを作ったのである。ちょっと前からみんなの純粋なパンチ力を測ってみたかったんだよね。これだとビーデルが通れるか怪しいが……彼女なら20ぐらいはイケルイケル!……多分。

 

 

 結論から言わせてもらえば、ベジータがトップだった。というか、ただ単に一番遠慮なしに殴ったのがベジータだったからそうなっただけなのだが。本気で殴っても大丈夫とは伝えたが、そこまでやるのは気が引けたのか……まぁ、さすがに超サイヤ人になられると危うかった。しかし、悟飯が超サイヤ人はなしと決めていたのでなんとかパンチマシーンは壊れずに済んだ。

 とは言ったものの、強めにやっているために実力差がはっきりと出る。ベジータの次点に悟空、その次にピッコロ、18号、ラディッツ、悟飯、トランクス、悟天、クリリンと続く。

 審査途中、審査員もモブも壊れているのではないかと疑問を口にしたが、私という技術者が壊れていないと言えば壊れていないのだ。ちなみに、私はサタンと同じくやらなくてもトーナメント出場が決まっているのだが、あまりに文句を言うので私も殴ってきっちり100ポイント出しておいた。さすがにカンストさせると不正を疑われそうだったので自重した。

 

 

 少年の部の試合は、当然のことながらパースが勝ち抜いていた。おそらく私が見ることがないであろう悟空の孫であるパンを思わせる戦いぶりである。というか、周りが雑魚過ぎるだけである。この様子なら私が何か仕込んでもよかったかもしれない。面白い試合が一つもない。決勝の相手は本来であればトランクスが倒したというかあしらった、名付きのモブであるイダーサだった。しかし、なかなかにひどいネーミングである。ダサイって……性格からいえば15歳と言えど、むしろ15歳故なのか、なかなかにクズな性格が染みついている様なので哀れとは全く感じないが。

 とか思っていると決勝が始まり、試合開始直後に軽いボディブローでイダーサが沈んだ。

 いつもの審判の人が気絶を確認した。

 

「気絶している……パース選手の勝ち! 少年の部優勝です!」

 

 勝ったものの浮かない表情のパース。あまりに一方的な試合ばかりでは面白くないのは当然だろう。サイヤ人の気質を強めに引き継いでいる様子の彼女にとっては少しかわいそうである。

 

「それではお楽しみのアトラクションです! たった今少年の部を優勝したパースちゃんに世界チャンピオンのミスターサタンと戦ってもらいましょう!」

 

 サタンの本当の実力を知らないためか、ちょっとわくわくした様子のパース。これはサタンの強さにがっかりして余計落ち込んでしまいそうだ……サタンに助け舟を出す意味でもここは私が一肌脱ぐべきかな。

 

「ちょーっと待ったー!」

 

 私はくるくるとバク宙しながら武舞台に降り立つ。

 

「パースちゃんとの試合私にやらせてくれない?」

「え、えぇっと、私の方ではなんとも……」

「少年の部を優勝して、お遊びと言えども世界チャンピオンが小さな女の子相手じゃ、やりづらいと思うし、ここは女である私が戦った方が良いと思うのよ」

「それもそうですが……やはり、ミスターサタンに確認を取らないと」

「ミスターサタンにはちゃんと許可取ってあるから問題ないわ」

 

 本当は取ってないけど事後承諾で問題ない。サタンだし。

 

「そうでしたか! パースちゃんもそれでいいですか?」

「……イーヴィさんは強いの? パパとママの上司の人っていうことは知っているけど」

 

 本当のことを観客に聞かれるのも嫌なのでパースに耳打ちするように伝える。

 

「自分で言うのも難だけど結構強い方だと思うわ。知っているかは知らないけど、私が知る限り最強の人。あなたの叔父さん、孫悟空と戦って勝ったこともあるわ」

「悟空叔父さんと……!?」

 

 どうやら悟空の強さを知ってはいるようだ。

 

「どう? やる気になった?」

「うん! お願いします!」

 

 パースは構えを取る。

 

「それでは、急なことではありますが、少年の部を優勝したパースちゃんとイーヴィさんの試合始めてください!」

 

 イーヴィは様子見に軽くジャブを放つ。パースは、それに対して微動だにしていなかった。

 

 どうした? 防御も避けもしないの? イーヴィの瞬間的な思考のさなかで頬に触れるぎりぎりの瞬間にパースは動いた。イーヴィの拳をいなし、腕を掴みそのまま一本背負いを仕掛けた。

 

「んなっ!?」

 

 イーヴィはそのまま綺麗に武舞台に叩きつけられてしまった。

 

「おぉっと! 女性とは言え、自身の体格の1.5倍以上はあろうイーヴィ選手を投げた!」

 

 生身であるが痛みはそれほどでもない。だが……

 

「柔道だったら一本負けね」

 

 パースはにぃっと笑う。

 

「たあぁああああ!」

 

 そのまま膂力だけで、私を上に放り投げる。生身であるが故、体重は機械の時よりはるかに軽いが、それでもパースの倍以上は体重がある。それを放り投げるなんて……混血とはいえサイヤ人にその常識を当てはめること自体おかしいか。思考を改める。イーヴィは正直ちょっと強めの少女ぐらいだろうと思っていたが、明らかに少年時代の悟空より強い。

 

 そして、パースは追い打ちをかけるべく空に飛びあがる。投げられたとはいえ勢いはそれほどでもない。パースが追い打ちをかけようとした瞬間に宙で体制を立て直した。

 

「わわっ!?」

「お返しよっと」

 

 軽いエネルギー弾で吹っ飛ばす。

 

「きゃあ!!」

 

 パースはくるくるときりもみしながら飛んでいき、場外に落ちてしまった。

 

 

「おぉっと! パース選手場外です! この試合、イーヴィさんの勝利です! しかし、パース選手大健闘です! あのイーヴィさんを二度も投げ飛ばすその強さ! これは将来に期待が持てそうです!」

 

 確かにこれは将来有望だ。まぁ、もっと強くなるころには私はいないだろうが

 イーヴィはパースの下へと向かう。

 

「立てる?」

「はい」

 

 イーヴィの差し伸べた手を取り立ち上がる。

 

「本当に強いんですね。イーヴィさん!」

「まぁね。パースのその武術は誰から?」

「自己流だよ。パパもママも忙しそうだから本を読んでずっとイメージトレーニングしてたの! 悟天君もトランクス君も対決ごっこで私相手だとちゃんと相手してくれないし」

 

 イメージトレーニングだけでこれだと本当に伸びしろが大きそうだ。純粋な膂力だけでは勝ち目がないから技術を身に着けようとする。この世界観にあまりない発想なだけにちょっと嬉しい。直接でなくとも私が変化させたための結果だからこそそう思う。

 

「今度、悟空に修行を付けてもらえるよう頼んでみなさい。悟空なら喜んで相手してくれるだろうから」

「うん!」

 

 こうして少年の部は幕を下ろした。

 ようやくブウ編の導入部分が終わり、序章が始まろうとしている。スポポビッチやヤムーそれとついでに界王神とキビトに天下一武道会を邪魔させる気はゼロだけどね!




ちなみに、この先パースが活躍することはおそらくないでしょう。せっかく出てきたオリキャラなのでちょっとだけ活躍させたかっただけのお話。


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57 天下一武道会は止めさせない

パースとの試合後、そのまま悟空たちと合流し、昼食に向かった。私は食事を取る必要がないので食べなかった。ただ、相も変わらずサイヤ人たちの食欲は旺盛だった。成長期の子どもでもこんなには食わないぞ。原作よりこの場に居るサイヤ人が多いので、ここの食糧が全て尽きるんじゃないかと思った。

 

 

 

 くじ引き会場に向かうと原作通り、彼らが居た。正直、私にとってはうざったい対象でしかないので悪印象しかない。最初は不思議な雰囲気を出しているが、話が進めば一気に小物になるし……はっきり言ってしまえば嫌いである。

 界王神がこちらに寄って来る。ただ、悟空にではなくラディッツの方だった。

 

「こんにちは。あなたがラディッツさんですね」

「あ、あぁ、そうだが……どうして俺の名を?」

「噂を聞いたことがありましてね、一度お手合わせしてみたいと思っていたんですよ」

 

 この発言は地球人ではないことをほぼ自白したようなものだ。その根拠は、ラディッツは一度たりとも地球で有名になるようなことはしていない。うちの社内ではそれなりの有名人であるが、当然会社の外でそれを知るものは限りなく少ない。であれば、宇宙でのこと(恐らく、フリーザを倒したこと)でラディッツを知ったのだろう。まぁ、界王神だと既に知っているので意味のない考察だ。

 

「本選で当たるかはわかりませんが、是非握手だけでも」

「よろしく」

 

 ラディッツが握手に応えると界王神が不敵に笑う。

 

「なるほど、良い魂をお持ちのようだ」

「はぁ?」

「では、お先に」

 

 そして、キビトと界王神はくじ引き会場に向かった。

 

「何者だ? ラディッツ」

「俺が知るわけあるか」

「あ、はーい、私知ってる」

「本当か?」

「ピッコロは驚きすぎて腰を抜かすかもしれないけど聞く?」

「もったいぶらずにさっさと言え」

 

 ラディッツにも催促された。

 

「あれは、界王神だよ」

「か……! 界王神……!?」

「ん? 誰だ?」

 

 悟空は界王様と居た期間が前より少ないから知らないようだ。

 

「界王神というのは、この宇宙で最も偉い神だよ。界王様は4人いるけどその上には大界王様が居てそのさらに上に界王神がいるの」

「なんでそんな奴が地球の武道大会に来る?」

 

 ラディッツの疑問も最もだ。

 

「まぁ、普通そうなるよね。それより、ピッコロもデンデも気づいてなかったの? 地球に新たな脅威が迫ってること。それも宇宙を脅かすレベルの」

「何!? 界王神様はそれで地球に居られるのか!?」

「私は別に大会の後でもいいかと思って放置しているけどね。ついでに言えばその黒幕の手下がこの大会に参加してる」

「何故、それを言わなかった」

「相手側に厄介なのもいるけど、私の戦力でなんとかできるレベルだし、予め誰かに言う必要はないかなと」

 

 立ち回りさえ間違えなければラディッツとコルク、私でブウを復活させず完封する自信がある。面白味もなんもないのでやらないけど。

 

「とりあえず、界王神はその手下を利用して黒幕の居る場所を見つけようとしているみたいだけどそれをさせる気はないから」

「おい、相手は宇宙で最も偉い神だぞ。そんなことしていいはずが……!」

「私が問題ないと言えば、問題ない。そいつの居場所は私が知ってる。情報量も実力も私たちの方が圧倒的に勝ってる。神格以外で私に勝っているものがあるなら界王神の言うことを聞いてもいいけどそうでないなら絶対に嫌」

 

 周りがなぜか黙っていた。何か視線がおかしい。

 

「何?」

「いや、敵意をむき出しにしているのは珍しいと思ってな」

「あぁ、人をイラつかせることはあってもイラついているところを見るのはなかなかない」

 

 ラディッツとピッコロの言葉にひどく納得してしまう。

 この感情はドラゴンボールの読者であるが故の界王神に対するイラつきだろう。あの無能っぷりは見ていて苦笑いしてしまうほど、ひどい。ついでに本質は違えど神であった私的にみて神と呼ぶにはあまりに人間的過ぎる界王神を神と認めたくないのだろう。

 ちなみに地球の神は正直神としてみていない。それこそただの回復が使えるドラ……まぁ、有能なので良き隣人です。

 

「なるほどね。界王神にイラついているっていうのは図星だよ。でもそれは敵意っていうより、どうしてそんなことができないのかっていうイラつきだよ」

「一体、界王神様の何を知っている」

「色々。いつものことでしょ」

 

 全員、それで納得してしまった。ふ、実績があるとやはり違うぜ……呆れと感心が半々みたいなよくわからん顔を向けられたけどそれもいつものことだ。

 

 クリリンが催促し、くじ引き会場に向かう。ビーデルにさっきの話の詳細を聞かれたが、大会が終わったら教えると適当に誤魔化しておいた。別に私の口から教える必要はないかなぁと。

 

 

 

 本選のくじ引き――本来であればそのままやる方が良いのだが、予測できないところで天下一武道会が中断させられる可能性があるのでくじに細工をすることにした。

 

 と言っても、大体原作通りにするだけである。順番は多少入れ替えたが。サタンに優勝させることを考えつつ、スポポビッチ及びヤムー、ついでに界王神やキビトに邪魔させはしない……私が言えたことじゃないが天下一武道会目的じゃないやつが多いな。

 

 この大会……物語に絡まないモブが存在しない故に脇役から蹴落とされていきそうである。いや、実力的にも必然なために仕方のないことではあるのだが、それにしたって予定調和という感じが否めないのである。

 

 ちなみに私の一回戦の相手はクリリンである。クリリンは「げっ!」と嫌そうな顔をされた。確かに実力は私の方が上かもしれないが、さすがにその反応はひどい気がする。

 

 モブを私やラディッツ、トランクス、悟天で埋めただけみたいなものだが以下対戦の組み合わせである。

 

 第一試合 クリリン VS イーヴィ

 

 第二試合 マジュニア VS シン

 

 第三試合 孫悟天 VS トランクス

 

 第四試合 キビト VS グレートサイヤマン

 

 第五試合 18号 VS ミスターサタン

 

 第六試合 ビーデル VS スポポビッチ

 

 第七試合 ラディッツ VS ヤムー

 

 第八試合 孫悟空 VS ベジータ

 

 重要となるのはやはり第四試合だろうか。強さ的には圧倒的に悟飯だが、乱入者が気になるところだ。その前のトランクスと悟天に反応しても良さそうだが、見た目からスルーされる可能性もある。そこは観察してみるしかないだろう。しかし、界王神はどうやってあの状況にするつもりだったのだろう。下手をすれば、悟空たちに一回戦で当たることができずに悟空たちがスポポビッチ達をノックアウトしてしまう可能性さえあったはずだ。尋問すればいいとも思うのだが……むしろエネルギーを与えることがない方法なのでむしろ推奨されてもいいぐらいなのだが……やはり、界王神は無能……それはそれとして私は私の思うようにブウ編を進めて界王神が狼狽している姿でも見て楽しむことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん! 大変長らくお待たせしました! 早速、第一試合を始めていただきましょう。まずは、神宮寺イーヴィ選手対クリリン選手です!」

 

 審判の人がお互いの紹介を始める。私はセルの件もあるので人気である。歓声が上がり、悪くない気分だ。クリリンはくじ引きの時こそ嫌そうな顔をしていたが、そんなに気負っている様子はなさそうだ。ちょっと楽しもうぐらいの感覚しかないのだろう。家族もいるし悪くないと思う。勝負を譲る気はないが。

 

「それでは試合を始めてください!」

「お手柔らかにお願いしますよ、イーヴィさん」

「ま、ほどほどにね」

 

 互いに距離を一気に詰めて、拳がぶつかりあう。

 拳をぶつけ合って感じるのだが、やはり武道を離れて衰えてしまっているのだろう。悟飯との落差に比べたら微々たるものだが、やはり落ちるものは落ちる。セル編で既にそうなっているのだが、戦力外である。ブウ編での出番はほぼ石にされるためにあるようなものだ。だが、私のシナリオにその役目は必要ない。

 ドラゴンボールにありがちな連続の攻防でじわじわと追い込み、クリリンの頬に強烈なパンチをくらわせる。クリリンはそのまま場外に落ちた。

 

「場外! イーヴィ選手の勝ちです!」

 

 悲しいかな。クリリンがモブの役割を引き受けてしまっている……私が元凶なので悲しむ権利もないかな。

 

 

「続いて第二試合、シン選手対マジュニア選手」

 

 ピッコロは審判が入場を言う前に近づく。

 

「すまない。棄権する」

「棄権……戦わないんですか?」

「そうだ」

 

 ピッコロは戦う直前まで迷っていたようだが、やはり界王神とは戦いづらいようだ。ピッコロの中の神様のせいで拒否反応でも出ているのだろう。閻魔大王に対してあのへりくだり様だ、界王神なぞまさに雲の上の存在。強さは自分が上であろうと恐れ多く感じてしまうのだろう。

 

「マジュニア選手は棄権しましたので、シン選手の不戦勝となりました!」

 

 さて、ここからどう変わるかな?

 

「続いて第三試合、孫悟天選手対トランクス選手です!」

 

 トランクスと悟天の二人が武舞台に上がると観客席からどよめきが走る。それもそのはず、武道会のルールとして15歳以下は少年の部に参加しなくてはならない。一応、私から解説を入れておこう。

 審判の人からマイクを借りる。

 

「みなさん、この二人がどうして少年の部に参加せずここにいるか疑問に思っていることと思います。この二人がここに居る理由は単純です。この二人は圧倒的に強いからです。もし、この二人が少年の部に参加していた場合間違いなくこの二人のどちらかが優勝すると確信をもって言えます。それではあまりにその他の子どもがそして、ほとんど実力の出せないこの二人がかわいそうです。そのため私はこの二人が大人の部に参加することを許可しました」

 

 観客の反応はそれほど悪くない。信頼と知名度というやつは本当にすごい。私からの説明というだけで、ある程度は納得してもらえる。まぁ、実際に見てもらえばこの二人が少年の部に参加するということがどういうことかが理解できるだろう。実際、原作でもほとんど省かれたし。

 

 審判の人にマイクを返す。

 

「それでは、孫悟天選手対トランクス選手! 試合を始めてください!」

 

二人のやり取りは原作と大差なかった。軽い攻防からの気功波のやり取り。

 だが、この舞台は大人の部であり、あの二人がその試合を見ていた。

 

「おい、あのガキ」

「だが、そこまでのエネルギーでもないぞ」

 

 普通に戦っているだけでは標的とみなされないのか、まだ襲う気はないようだ。少しでも多くエネルギーを集めた方が良いだろうに何を躊躇しているんだか。効率厨かな?

 その後、悟天とトランクスは原作と同じように超サイヤ人になったが、スポポビッチとヤムーが動くことはなかった。超サイヤ人になるのが一瞬過ぎてエネルギー測定器で拾えなかったのだろうか。

 結局、この試合の勝者は何事もなくトランクスとなった。

 

 

 

 

「続いての第四試合はキビト選手 対 グレートサイヤマン選手です!」

 

 武舞台に上がり、試合開始が宣言される。キビトは悟飯に超サイヤ人になるように言った。

 

「あいつ悟飯に超サイヤ人になれって言ってるぞ」

「無駄だよ。私がなるなって釘を刺しておいたからね。何が起こるかわかってるのにさせるわけないって、ねぇ界王神」

「あ、あなたは一体……!」

 

 キビトは少なからず動揺しているようだ。もう少しすんなりと、ことが運ぶと思っていたようだ。

 

「仕方ありませんね……キビト!」

「……棄権だ」

「へ? あなたもですか!?」

「そうだ」

「キビト選手が棄権したため、グレートサイヤマン選手の不戦勝となりました」

 

 キビトと悟飯が武舞台から降りてくる。

 

「キビトを下げたのはいい判断だね。キビトの能力は色々と役に立つ。ここで怪我をされたらもったいない」

「キビトのことまで……神宮寺イーヴィ、あなたの存在は把握していました。しかし、あなたは得体が知れなさすぎる!」

「私は私よ。神宮寺イーヴィという名の元悪神。外道屋社長という肩書もある。ま、別にあなた達の敵ではないよ。それにこちらからしたらそれはこっちのセリフだしね。私は知ってたけど」

「どういうことかいい加減説明しろイーヴィ。貴様といえど不敬が過ぎるぞ」

 

 痺れを切らしたのかピッコロさんが質問してきた。意外と界王神擁護してるし。

 

「界王神たちがやろうとしていたことは悟飯をエサにしてバビディの配下を釣ることでしょ。そして、それを追って本拠地たる宇宙船を見つけること」

「……その通りです。あなたは一体どこまで知っているのですか!?」

「まぁ、とりあえずほぼ全てのことかな。多分、君よりずっといろいろ知ってる。今のバビディの戦力から魔人ブウが復活した時の脅威までね」

「そ、そんな馬鹿なことが!」

 

 キビトたちが戻ってきて口を挟んできた。

 

「もういいから。君たちの目的に関しては私が叶えられる。この大会が終わった後にでもね。だから、それまで大人しくしていてよ」

「貴様……!」

「キビト!! お止めなさい。私にはまだこの者の言うことの全てを信ずることはできませんが、一つだけ確信が持てました。この者と敵対すれば、恐らく魔人ブウは復活してしまうでしょう。違いますか?」

「ま、どうなるかわからないけど大会が終わったら協力はするよ」

 

 目的を叶えられると言っただけで叶える気は全くないけどね。

 

 それに、私の行動が読めていなかった時点で界王神に私の心を読むことはできないことに確信が持てた。これで悪だくみに気づかれることはない。いつのまにか消えていた設定のようにも感じるが……その辺は気にしたら負けかな。

 まぁ、ブウのことに関しては天下一武道会が終わってから追々考えていこう。プランもある程度は練ってある。全力で楽しむためのね。



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58 ビーデルとサタン

最近上手く話が思いつかないです。完結させるつもりはあるんですが、ホントいつになることやら。


「それでは第五試合ミスターサタン対18号選手です!」

 

 観客がサタンコールで盛り上がる。観客の声援に応える様にバク宙で武舞台に立つサタン。が、着地で足を滑らせ後頭部を打ち付ける。痛がりながら転げまわるが、すぐさま立ち上がる。

 

「ガハハハハ!! ジョーク、ジョーク!!」

 

 世間体を気にするところは相変わらずである。読者にはこのキャラ性が愛されていたり愛されてなかったりする気がする。ただ、ギャグ要素満載な彼ではあるが、実は一番現実的なキャラでもある。少なくとも(世界チャンピオンだが)一般人らしい一般人で、狡いところもあるが良識もある。

 

 18号は呆れ顔でゆっくり武舞台に上がる。

 

「それでは第五試合、始めてください!」

 

 サタンは18号の強さを知らない。そして、18号はこの状況では原作のような脅しを使う可能性が低い。これでは詰んでしまうかもしれない。対策は……特に考えてなかった。

『どーしよ♪どーしよ♪』と童謡のワンフレーズが頭でリフレインする。私の計画にサタンはいなくても成立する。ただ、原作での最後のキーキャラを削ってもいいものかと原作ファンとしての自分がなんとかしたいと思っている。

 

「さぁ、かかってこい!」

 

 18号のパワーなら小突くだけでサタンは終わる。18号はお金が欲しくてこの大会に参加している。サタンが金持ちというのはわかるだろうが、原作では確実にサタンを優勝させることができる状況で単に自分が優勝するより更にお金を手に入れる方法が思いついたからこその脅しだ。であれば……

 

 18号は軽くサタンを倒そうと一瞬で距離を詰め顔面にパンチを入れようとしたが、

 

『18号、ストップ!!』

 

 私は力を使うことで18号に念で話しかけた。それにより、サタンにパンチは当たらず寸止めになったが、風圧でサタンは軽くダメージをくらった。ただ、一般人にその攻撃が見えるはずもなく

 

「おぉっと、18号選手のパンチがミスターサタンの顔面にクリーンヒット!」

 

 一般人で寸止めしたことに気づく者はいなかった。ミスターサタンはそれに気づけてはいたが、それでなおダメージを食らっていることに驚いていた。というか、18号が常識では測れない人外の者だと気づいた。要は、私や悟空の様な存在だと気づいたわけだ。

 

『なんだい、いきなり』

『この試合、お金出すからさ、サタンに勝たせてあげてくれない?』

 

 お金を出すという言葉に僅かに反応した。

 

『いくら出せる?』

『1000万ゼニーでどう?』

『……まいどあり』

 

 一瞬、悩んだ様だがまずこのメンツで優勝することは不可能。順当に行けば3位か4位だろう。3位なら300万、4位なら200万だ。もう少し吊り上げることも考えたが、交渉を取り消されるより良いと考えたため交渉を受け入れた。イーヴィとしては、そろそろこの世界を去るので会社の資産ごと渡してもいいのだが、さすがにそこまでいくと怪しまれると思ったので18号が大きく利を感じる程度にした。

 

 その後は大体原作通りの運びになった。ヘッドロックからのサタンに呼びかけ、わざと18号が引きはがされたように見せかけてからのサタンの必殺技であるただの右ストレート(名前忘れた)。18号はそれに呆れを通り越して驚き、時間差で場外に(わざと)落ちた。しかしまぁ……あれでよくばれないものだと思う。観客の半分ぐらいは疑ってもいいんじゃないかな?そこがサタンのすごいところではあるが。

 

 

 それよりも次の試合、私的には悟空とベジータとの勝負より気になるビーデルとスポポビッチの試合だ。ビーデルの力は底上げしてあるが、一般人の中での最強では、ほぼ人間をやめているスポポビッチを倒すことは無理かもしれない。だが、それは倒すことが無理なのであって、試合に勝てないわけではない。それを伝えなくては。

 

「ビーデル」

「師匠、どうしました?」

「ちょっとアドバイスしに来たの」

「アドバイス……ですか?」

 

 怪訝そうな顔を浮かべるビーデル。師匠と言えど一応、この場では敵同士でもある。師匠と言っても数日指導しただけの関係でもある。言ってしまえば、ビーデルとの縁は深いようで浅いのだ。

 

「ビーデルの対戦相手。スポポビッチは大会の規則には違反していないけど、ほぼドーピング、それもかなり危険な代物を使っているのと変わりない状態と言っていいわ」

「それってどういうことですか……?」

「まともな方法じゃ気絶しないし、痛みもないに等しいから降参もしない。純粋な格闘での勝ちを取るのは難しい」

「場外に出せと?」

「その方が確実よ。私が教えた技なら簡単でしょ」

「とっておきにしておきたかったんですけど、師匠がそこまで言うなら……そうします」

 

 素直に従ってくれればいいけど……負けず嫌いだしなぁ。ただ使うだけってのはしてくれないかも。

 

「ビーデル選手。早く、武舞台へ」

「ごめんなさい」

 

 駆け足で武舞台に上がる。スポポビッチは全身が力み、息も荒い。

 中央で向かい合い、ビーデルは一瞬顔をしかめる。

 

「それでは、ビーデル選手 対 スポポビッチ選手。第六試合始めてください!」

 

 ビーデルが一気に攻勢に出た。スポポビッチはそれに対して防戦一方である。

 

「連牙弾!」

 

 五連続のパンチから一瞬のためを入れた正拳突きがスポポビッチの胴に入る。通常よりも気が込められた拳のため威力は高い。だが、スポポビッチは立ち上がった。

 やはり決定的に威力が足りないのだ。技を教えたと言っても、人の領域をはみ出た程度に過ぎない。それこそ、小さい頃の悟空が参加していた天下一武道会なら通用するレベルだが、今となってはその程度……なのは悲しいことである。

 

「ビーデル!」

「……はい」

 

 少し不機嫌そうにしたが、アドバイス通りにはしてくれそうだ。

 スポポビッチが拳を繰り出すが、ビーデルは深く沈んで避け左の拳で胴を叩く。その勢いでくの字に曲がり、その際に突き出た顎を右の拳でジャンピングアッパー。

 ……あれ、真・昇竜拳じゃん。臥龍空破じゃないじゃん。

 元ネタがなぜかズレたが、結果は同じ事だ。スポポビッチは空高く舞い上がった。そのまま落ちれば、場外コースだ。

 

「おぉっと! これは場外か!?」

 

 と、思いきや、すれすれで武空術を使って浮いていた。

 

「なんと! スポポビッチ選手が宙を浮いている! 場外に落ちておりません!」

 

 さすがのビーデルも面食らったようだ。だが、場外にしやすい技は他にもある。

 スポポビッチは武舞台に立つと怒りの形相を浮かべていた。掌を前に出し、気功波を出した。

 

「!? 飛葉翻歩!」

 

 本来は敵の背後を取るための技だが、気功波を避けるために使い難を逃れた。スポポビッチはますます頭に来たようだった。一気に距離を詰めようとビーデルに向かって直進する。

 本気で来ているのか、今までの様な体格通りの速度ではない。巨体に似合わない速度だ。そのまま体当たりされても、直撃すればビーデルの身体が文字通り粉砕されかねない。

 スポポビッチの右ストレートが来るとビーデルは身体を反転させながら避けて二発の掌底を入れる。スポポビッチがわずかによろけた。

 

「獅子戦孔!!」

 

 獅子の形をした闘気がスポポビッチを吹き飛ばす。

 

「ぐぉっ!?」

 

 初めてスポポビッチのダメージらしい声を聞いた。吹き飛ぶ勢いは止まらず、観客席の壁に激突した。

 

「スポポビッチ選手場外! よって、ビーデル選手の勝利です!」

 

 歓声が沸く。スポポビッチは何事もなかったように立ち上がる。怒りの形相を浮かべたまま。気功波を撃とうとするが、何者かが腕を掴んだ。

 

「止めろ、スポポビッチ。我々がすべきことはこんなことではない。あんな小娘に負けるとは思わなかったがな」

 

 その正体は、ヤムーであった。

 

「ちっ」

 

 スポポビッチは不満気にその場は去った。

 こいつらの動向は気になるところではあるのだが、それ以上にエネルギーを測定する器具やら吸収する器具は一体どこにしまっているのやら。荷物らしい荷物も持ってなかったし、服にも隠すスペースなんてない。まさか、四次元ポケット……!? と、冗談は置いておいて、どこから取り出そうが対策は完璧だ。というか、光学迷彩&気配遮断をしているコルクが待機中である。

 

 ビーデルの勝負はここまで鮮やかな勝利になるとは思っていなかった。まぁ、今後戦いでの活躍の機会はないだろうからね。お茶の間にリョナを見せるよりずっといいんじゃないかな……と、誰に言い訳するわけでもないがそう思っていた。



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59 注目の大波乱は起こらない

二連続投稿です。ちょっと短めでしたのでね。


 

「続いて第七試合 ヤムー選手 対 ラディッツ選手です」

 

 両者が武舞台へと上がる。

 この二人、ある意味では似ているかもしれない。原作でそこまで目立たずに消えた悪役という意味で。ラディッツの方が主人公組を圧倒し、結果的には悟空を殺しているので目立っているのだが、悟空の兄という点では影が薄い。ヤムーに関してはスポポビッチを止めたのと悟飯のエネルギーを吸収したぐらいの出番しかない。そのあとは消されるだけである。

 と、イーヴィが考え事をしていたら決着していた。

 

 当然のことながら、ラディッツの勝ちである。ヤムーは場外に顔を半分めり込ませるように倒れていた。

 一瞬の出来事でほとんどの観客が見えていなかったようである。まるで編集でカットされたが如くである。手抜きなどではないよ。ホントダヨ。

 

 スポポビッチは既にコルクが捕獲済みだし、16号にでもヤムーを回収させよう。別に保護する必要もないが、死なせる必要もない。洗脳の解除はできるかは知らないけど、この件が終わったら手を出してみるのも一興かもしれない。

 

 武舞台から降りてきたラディッツがこちらに向かってくる。

 

「今度は一体何をさせるつもりだ?」

「別にこれと言ってないよ。まぁ、家族も来ているんだし張り切って良いとこ見せなよ」

「お前は……」

 

 絶対に何かを企んでいると思い聞き出そうと思ったが、事が起きるまで予測ができないためその流れに身を任せることにした。自分を変えられてしまったが、それも悪くないと思っている自分が居て、それなりにひどい目にも遭うが、良いと思えることもある。

 と、イーヴィはその思いを見越しており、良いd……ではなく部下になってくれたと喜ばしく思っていた。

 

 

「一回戦、最後の試合となります。第八試合 孫悟空選手 対 ベジータ選手です」

 

 仲間内の誰かが固唾を飲んだ。この二人の対決は言わばとびっきりの最強 対 最強である。クウラではない。色々考えると違うかもしれないが物語的にそう思え。

 仲間内ではこれが実質決勝戦だと考えている者もいるかもしれない。以前のイーヴィの大会でのことを知っている者からしたら下馬評は悟空がやや上か。

 

 二人が武舞台に向かう前にイーヴィは二人の肩を掴んだ。

 

「なんだよ、イーヴィ」

「なぜ止める」

 

 二人して非難の視線を飛ばしてくる。

 

「君らが全力で戦ったら超サイヤ人にならなくても被害が甚大になりかねないから制限をかけさせてもらうよ」

「何?」

 

 イーヴィは二人に手錠のようなブレスレットを付けた。

 

「な、なにすんだよ」

「力を制限させる機械だよ。君らの力なら外そうと思えば外せる。気を大きく高めれば外れるからね。けど、それを外したら負けを認めなさい。それがルールよ」

「ふん。まぁ、いい。同じ条件なら負けはしない」

「オラだって、負けねぇさ」

 

 この二人って、戦闘能力は図抜けて高いが戦術・戦略で考えると著しく低レベルな気がするのだ。本人たちの性格的にもあまり考えてないというか本能に任せているというか……これは、それを測るいい機会だ。そこを考えないからこその魅力のような気がするが、原作やアニメの内容を振り返ると悔い改めてほしいことが多々あるのだ。身体能力はいくらでも伸びるのだが、それ以外がまるで成長していない……。いい歳して成長も何もおかしな話だが。

 悟空は以前にある程度は測れた、今回は主にベジータを見よう。

 

 二人は武舞台に上がり、互いに構えを取る。

 

「それでは第八試合始めてください!」

 

 開始と同時に激しい攻防が始まった。力が制限されようとその実力は一般人の押し測れるようなものではない。その高速すぎる戦いは一見してどちらが多く攻撃しているのか攻撃をくらっているのかもわからないような戦いである。

 動体視力にかなり優れているものなら、時折互いに大きめに振りかぶった拳が激突する瞬間がわずかに見える程度だろうか。

 悟空がベジータのパンチを腕でガードし、反撃にパンチをすると拳を掴んで止める。空いた手でパンチをすれば悟空もまた掴んで止める。

 激しいぶつかり合いは、気がスパークするように散る。

 

 こうして見ていると、単純な戦闘の技量だけで言えばベジータの方が上手に見える。思うにこれには今までの鍛え方による差が出ているのだと考えている。

 悟空は今までたくさんの人に師事してきたが、教わったのは単なる技や身体能力の向上でしかないのだ。悟空の基本的な技量は義理の祖父である孫悟飯に教わった技術と経験である。悟空の技量はそれがほぼ全てである。対してベジータは誰にも師事したことがない。彼の性格的にそれができないというのもあるだろうが、それ故に考える機会が多かっただろう。教わらないが故に考えるのだ。悟空も考えてはいるがそれは直感や本能に近い。しっかり考えているからこそ、ベジータは疎かにはできないのだ。数多の戦術や可能性を。悟空の強さは自身の極限を目指す故の強さであり、ベジータは打倒の極限を目指すが故の強さ。その差だろう。それは趣向にも少し表れているように思う。戦い好きは同じだが戦いたい理由が似ているようで全く違う。悟空は自身の限界を測り、限界を超えるため。ベジータは、自身の誇りから自分が最強でありたいためだ。

 

 自身の限界を極め続ける悟空は極限の戦いにおいて自身の限界を超えるということを何度もしてきた。そして地球や宇宙の危機をも救う。……が、それ故にこの試合には負ける。

 悟空は実力が拮抗あるいは格上と対峙するとき力で相手を上回らなければ勝てないことが多い。そうなれば自明である。

 

 悟空が気を高めるために距離を取る。

 

「だあぁあああああ!!」

 

 気が炎の様に吹き上がるが……

 

「あっ……!」

 

 悟空の手首に着けていたブレスレットが外れた。力を出し過ぎた故にブレスレットが外れてしまったのだ。それに気づいた悟空は気を高めるのを止め、ベジータは構えを解いた。

 

「ちっ……これで終わりか」

「一応、オラたちで決めたルールだかんなぁ」

 

 互いに不満気である。ベジータとしては戦いで悟空に勝ちたいのであって試合に勝ちたいわけではない。悟空も自身の強さを極め続けるために戦いたいのであって、試合の勝ち負けは関係ない。要は不完全燃焼なのである。

 

「関係ない。続けるぞ。カカロット」

 

 ベジータは再び構えを取った。

 

「いやぁ、でも、なぁ……オラも続けてぇのは山々なんだけどよ」

「なんだ、一体」

 

 悟空は学はないがきっちり規則は守る。ベジータは気に食わない規則には従わない。これも性格がよく出ている。

 なんとも皮肉な話である。性格的には悟空は試合向きでベジータは勝負向き。だが、戦いにおいて実は悟空の方が勝負向きでベジータの方が試合向きなのである。大抵の敵が相手にならないので、この二人の間に限っての話になるのだが。

 

「このまま続けてイーヴィがどうすると思う?」

「……めんどくさいことになりそうだ」

「だろ?」

 

 と、思っていたのだがどうやら私がいるからこのルールを守るつもりらしい。私、そんなにひどいことしたかな。

 

「思いっきりやんのはまた今度にしようぜ」

「貴様の提案に乗るのは癪だが、その方が良いだろうな」

 

 ベジータは構えを解き、悟空は審判の方を向く。

 

「審判のおっちゃん。オラ、降参だ」

「えぇー!? 孫選手、本当にそれでいいんですか!?」

 

 押され気味だったとは言え、決定的なシーンは全くなかった。素人が見ても達人が見ても勝負の行方はまだまだわからないところにあったために疑問を抱くのは仕方のないことだ。

 

「オラたちで決めてたルールで負けちまったからな。それを破るわけにゃいかねぇ」

 

 良い勝負であったが、半ばで終わってしまい残念と言った面持ちである。他多数の観客も同じようなことを思っていそうだ。

 ……何かすごく悪いことをしてしまった気分なのだが、本来ならここで戦うどころかベジータに結構な人数殺されるはずだったのを大幅に変えたのだから気にしないでもらいたい。

 

「そうですか……それではこの試合、孫悟空選手が降参したため、ベジータ選手の勝利です!」

 




もうちょい何とかならないかと思いつつどうにもできないので、先へ進めます。こうでもしないと一生終わらない気がします。


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60 第二回戦

ちょっと詰め込み過ぎた感。そんなに長くはないですが……


『それではこれより二回戦を開始したいと思います!イーヴィ選手とシン選手は武舞台へ上がってください!』

 

 どことなく緊張した面持ちの界王神。得体のしれない存在に慄いているのか。

 

「それでは第二回戦、始めてください!」

 

 私が一歩踏み出すと、界王神が一歩後退る。

 

「ねぇ、びびってるなら降参したら? この後もお仕事あるでしょうし、ここでケガしても何の得にもなりもしないわよ」

 

 私の発言に少しむっとした様子。

 

「いえ、私にも界王神としての矜持がありますので、ここでみっともないところはみせられません」

「意地を張る人は嫌いじゃないけど、考えなしのバカは嫌いよ。知識も実力もないような神様なら仕方ない気もするけどね」

「こ、このっ!」

 

 流石に堪忍袋の緒が切れたのか、気功波を撃つ構えを取るがそれより先に私が界王神の顔前に掌を向ける。

 

「実戦ならこれで死んでるよ」

「あなたは一体、何をしたいのですか?」

「私はただやりたいことをやりたいようにやるだけよ。それで続けるの?」

「……降参します」

 

 項垂れて降参を告げる界王神。はぁ、とため息をこぼすイーヴィ。

 

 審判の人がイーヴィの勝利を告げ、二人とも武舞台を降りていく。

 

「もしかしたら勘違いしているかもしれないけど、別に私はあなたを困らせたいわけじゃないからね」

「えぇ……!?」

「いや、それは間違ってはないか……対象の範囲がほぼ全ての人ってだけで」

「えぇ!!?」

「勘違いしてほしくないんだけど困らせたいだけであって、脅かしたいわけじゃいからね」

「……それは一体何が違うんですか?」

「犯罪と悪戯ぐらいの違いはあるわ」

「……悪戯によっては、それも犯罪では?」

 

 全くもって真理である。

 

「死人や後遺症が残ることがなきゃなにやったっていいのよ!」

「開き直った!?」

 

 後腐れがなければ、どんな悪事も許される……とまでは思っていないが、それに近い考えである。

 

「とりあえず、私が悪であることは認めるけど、あなたは自分が無知であることを罪に思った方がいいわよ。あなたは神である割に物を知らなさすぎる」

「え……」

「全知全能なんて都合の良い神様が居るとは思ってない。それでも、あなたの知らなさっぷりは犯罪的よ」

「そこまで言うなら教えてください.。私が何を知らないのかを」

 

 あまりのおかしな発言に失笑し、呆れてしまう。

 

「……教えを乞うような神様が居ていいわけないでしょうが。それぐらい自分で知りなさい」

 

 全く……これだから、無能神は。魔人ブウに襲われた件もあり、仕方ない面もあるのかもしれないが…でも、神を名乗る者がこんなのでいいわけがない。

 不服そうな面持ちの界王神。

 

「そんな顔しないでよ。威厳も何もあったものじゃない。この件で必要だと思うことはちゃんと教えるから」

「……! お願いしますよ」

 

 この腰の低い態度は、この界王神としての美点であり欠点だ。

 

「えぇ」

 

 だが、教えを乞われて嫌な気分はしない。

 

 

 二回戦第一試合が終わり、次の第二試合が始まる。

 第二試合は悟飯もといグレートサイヤマン 対 トランクスだ。

 ここでの試合は悟飯に軍配があがった。当然と言えば当然の結果である。いくら修行をさぼり気味とはいえ経験も底力も別格である。少々危ない場面も見られたが、トランクスを場外負けにさせた。

 

 そして、第三試合 ビーデル 対 ミスターサタン。

 共に普通の人間の枠を大きく踏み越えていない……ビーデルはそうでもないか。サタンはギャグ的には人類超越してるけど。

 

 二人が武舞台の上に立つ。観客の下馬評は五分五分、ややサタン寄りであるが、ビーデルとサタンの実力を正確に知る者たちはどうひっくり返ってもビーデルの勝ちである。

 今回、イーヴィはサタンに全く手を貸す気がなかった。どちらかに肩入れする気が起きなかったのである。サタンがどう打開するのかにも気になっていた。今回ばかりは運だけではどうにもならない。

 

「ビーデル、思いっきりかかってきなさい」

「もちろんよ、パパ」

 

 最も近しい関係である親子でありながら互いに本当の実力を知らない者同士。サタンはビーデルを溺愛しながら、ビーデルはサタンを避けたいお年頃。しかし、サタンの力を信じている。

 

「それでは第三.試合、始めてください!」

 

 先に仕掛けたのはビーデルだった。

 

「はぁ!」

 

 ビーデルが鋭い突きを放つ。気を意識しない者が放つものとしては、最高レベルだ。

 サタンはその一撃にビビる様子も見せずに受け止めた。

 

「!?」

「ずぁああああ!」

 

 受け止めた拳をそのまま引っ張り込み、後方に投げ飛ばす。ビーデルは武空術により空中で受け身を取った。

 

「びびび、ビーデル……!」

「どう? パパ、驚いた?」

 

 楽しそうな表情のビーデル。

 

「飛行少女になってしまったのか……!?」

 

 話を聞いていた全員が呆然とした。なんてつまらないシャレを言うのかと。

 

「あのねぇ、ふざけないでよ!!」

「そんなことはない。パパはいつだって真剣だよ」

 

 サタンは構えを取る。

 ビーデルはゆっくりと降りて、サタンに相対する。

 

「私は正直、パパの強さを疑っているの」

「な、なにを言っているんだ、ビーデル! パパは世界チャンピオンなんだよ!」

「師匠から技を教わって、悟飯君のパパの修行を少しだけ見たの。パパのするトレーニングよりずっと過酷で、動きもまるで違った」

 

 さすがに身近に居る自分の娘までは欺けなかったようだ。

 

「さっきの18号って人との試合も何かおかしかったし、私は何で今まで疑問に思わなかったんだろうって……」

 

 サタンは覚悟を決めたのか、さっきまでの慌てる様はなかった。

 

「ビーデル、黙りなさい」

「でも、パパ!」

「黙りなさい。試合を続ければわかることだ」

 

 珍しく真剣な表情をするサタンに自分も真剣に立ち会わなければならない。そう感じた。

 

「はぁあ!!」

 

 ビーデルは先ほどより速い連打をサタンに繰り出す。サタンは何発かは止められたが、そのほとんどを受けてしまっていた。

 

「たぁ!!」

「ぬぉおお!!」

 

 飛び蹴りがサタンにクリーンヒットした。一般人ならこれで決着かと思ったが、サタンは起き上がった。

 

「さぁ、来なさい、ビーデル」

 

 余裕ありげなセリフとは裏腹に既に足が震えている。少ない攻防で最早限界が近い。

 

「パパ……」

 

 このやり取りでビーデルは確信に変わった。自分の父親は世界で一番強いわけではないのだと。元々抱いていた疑問ではあったが、小さな失望だった。

 

「試合はまだ終わっていない……来なさい」

「まだ続けるの?」

「世界チャンピオンだからな」

 

 サタンというのは悉くが並である。努力は重ねてきたのだろうが並である。努力にしても世界チャンピオンになってからはサボりがちだ。人より強いところと言えば虚栄心で、また運もかなり良い方だが、今度こそ運の尽きというやつなのだろう。有象無象ではなく娘に敗れるのだからまだ良い方なのかもしれないが……

 

 ビーデルの一撃が入る度にサタンは倒れる。反撃する力さえ残されていないようだが、それでもサタンは立ち上がった。

 

「パパ!! これ以上は!」

「……コヒュー……」

 

 サタンの呼吸は乱れ、なぜ立っているのかもわからないような状態だ。それでも構えを取る。

 

 

「ずあぁあああ!」

 

 サタンは、それでもビーデルに走って向かう。ビーデルは蹴りで迎え撃ち、サタンは再び倒れ伏す。それでも、立ち上がろうとした。

 

「もうやめて! もう結果は見えてるじゃない!」

「……ミスターサタンは、パパは、世界チャンピオンだからな。娘、相手にも負けるわけにはいかん……」

「これ以上やったら死んじゃう!!」

『ミスターサタン……私もそう思います。ここは降参を』

 

 さすがに審判の人も諫める。

 

「絶対にそれはできん!!」

 

 痣だらけの身体を起こし、立ち上がる。

 

 一連の様子を見て、さすがに可哀想に思ったのかイーヴィは力を使った。それはサタンの運気を大きく上げるものだった。それは気休め程度に怪我の程度を少なくする程度のものだ。すぐに復帰できるように、また彼の評判が悪くならないようにと思ったからだった。運命を操作し、サタンを勝たせると言う様なご都合主義な能力も持ち合わせているが、直接フォローしてしまうとサタンの心意気を汚してしまうような気がしたので控えた。

 

 ただ、イーヴィに誤算があったとすれば、サタンの運というのは最初から並外れていたということだった。

 

 サタンは馬鹿の一つ覚えの様にビーデルに走って向かった。右ストレートを当てるために。ビーデルはそれにカウンターを合わせに行った……が、サタンは足を滑らせた。

 ビーデルの一撃は外れ、サタンの拳はビーデルの顎にクリーンヒットした。それは、一般人の脳を揺らすには十分な威力だった。ビーデルは確かに一般人に比べれば超人に入る部類であるが耐久力は一般的な女性と変わらなかった。故に、ビーデルは脳震盪を起こし倒れた。

 

 しばしの沈黙の後、歓声が上がる。

 

「そんなのあり……?」

 

 イーヴィは自分の力に驚いていいのか、サタンの運の良さに驚いていいのか困惑した。本当に、運気を上げただけなのである。人によっては、本当におまじない程度の気休め程度にしかならないはずだったが、いろいろと常識外のことが重なったことによって奇跡が起きた。奇跡と呼んでいいかは甚だ疑問が残るが……

 

 とは言ったもののあの怪我では次の試合に出ることは叶わないだろう。仙豆という回復手段がないわけではないがそこまでフォローする気はない。しかし、これでサタンの名誉は守られたと言ってもいいだろう。

 

 

『二回戦最後の試合、ラディッツ選手 対 ベジータ選手。武舞台に上がってください!」

 

 

 武舞台の上でベジータとラディッツが向かい合う。

 

「貴様と一対一で戦うのは初めてだな」

「あぁ、できればなくてよかったんだがな」

 

 例によって勝っても負けてもめんどくさい事態になりそうだからこその感想だった。

 

「ちっ、お前も悟飯の様になまっていないだろうな?」

 

 ベジータは悟飯の様に戦うことに重点を置かなくなったが故の発言だと受け取った。それは半分間違いで半分正解である。今の地球がどんなに平和でもイーヴィが居る限り平穏が続くと思えない。

 

「イーヴィのおかげで腕がなまりようがないからその心配は無用だ」

 

 そのため鍛錬を怠ることはなかった。イーヴィに強要されていたとも言う。

 

 

 互いに構えを取る。ベジータはいつもの構えだが、ラディッツは居合でもするかのような構えだ。

 

『それでは第二回戦第四試合始めてください!」

 

「でやぁぁぁぁ!」

 

 先に動いたのはベジータだった。ラディッツは居合のような体制を崩さず待つ。

 

「はぁっ!」

 

 そして、ベジータが拳を振り上げる合間に何も持たぬ手で降り抜いた。ラディッツの動きの方が速かったが、ベジータのパンチには何の影響もなく、そのまま拳を繰り出したが

 

『おぉっと!? これは一体どういうことだ!?』

 

 ベジータは場外の地面に拳が埋まっていた。ラディッツは武舞台の上に立っていた。

 

「!?」

「悪いが場外負けにさせてもらった。正面からやりあったらただで済みそうもないからな」

 

 ラディッツは次元刀を完璧に自分のモノにしていた。空間を切り裂き場外手前の空間と繋げて、その空間にベジータが飛び込んで場外になったのだった。

 

「おい、ラディッツ! 俺との戦いから逃げたのか!?」

「それは間違いね」

「なんだ、イーヴィ!」

「さっきの一撃、その気なら君を真っ二つにできたからね」

「なっなんだとぉ!?」

「さっきのラディッツの攻撃、気で作り出した剣によって空間ごと切り裂く技だから肉体の強度に関係なく斬れる。ベジータのパンチが当たるよりも速く、ベジータの手前の空間を斬ったんだ。それがどういうことかくらいわかるでしょ?」

「ちっ! 次は絶対に負けん! イーヴィ、貴様も覚悟しておけよ!」

 

 ベジータはその場から飛び去ってしまった。

 

「慌ただしいことで」

『……この試合、ベジータ選手場外によりラディッツ選手の勝ちです!』

 




思ったより時間がかかってしまいました。書いてて原作がどうして天下一武道会を最後までトーナメントで進めなかったのかがわかった気がしました。だれます。
後、審判のおっちゃん……時々存在忘れます。


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61 天下一武道会 閉幕

なかなか書く気分になれなくて、進められませんでした。今後もゆっくりと更新していく所存です。


『それでは準決勝、イーヴィ選手 対 グレートサイヤマン選手の試合を開始します』

 

 私とグレートサイヤマンが武舞台へと上がる。

 

「こうやって面と合わせて戦うのは初めてね」

「そ、そうですね」

 

 悟飯の苦笑いが見て取れる。悟飯に苦手意識を持たれているのは前々から自覚しているが、こうも態度に表れていると少々傷つく。本人はちゃんと隠しているつもりなのもわかっているが。

 

「遠慮なくかかってきなさい」

「はい。いきます」

 

 悟飯が構えを取る。私の方は、ステップを取る。カポエラなんかでよく見る動きだ。我流なので名称はよく知らない。

 

『それでは準決勝始めてください!』

 

 開始と同時に悟飯が仕掛けてきた。私は大仰に避ける。ブレイクダンスの様な動きでわざと服に掠らせたりする。

 

「くっ!」

 

 私の動きに悟飯は多少の苛立ちを見せる。その際に大振りの右ストレートをしてきたので逆立ち状態で足の裏で受け止めた。

 

「あの! ふざけてるんですか?!」

「いや、遊んでるだけだよ」

 

 開脚した状態で腕だけで体重を支えながら回転する。要は体操やダンスなんかで使われる開脚旋回である。その勢いで蹴りを入れる。少々トリッキーな動きだが、悟飯はしっかりと防御した。

 

「防がれたか……ちょっと甘く見過ぎたかな」

「もう少し本気でやってもらえませんか?」

「うーん……まぁ、いいけど?」

「けど?」

「すぐ終わるよ? ほら」

 

 瞬時で背後にまわり、飛んで頭を掴んで武舞台に叩きつけた。

 武舞台に小さなクレーターができあがったが、悟飯は丈夫なのでこの程度で死んだりはしないだろう。

 

『グレートサイヤマン選手ダウン!ワン!トゥ!スリー!……』

 

 カウントダウンが始まる。

 

「……! ふっ! ぐぬぬ……!」

 

 悟飯が立ち上がろうと腕を動かすが、中々起き上がれない。

 

「あら、意識があると思わなかった」

 

 確実に脳震盪を起こすように叩きつけたつもりだったが、やはりサイヤ人は特別の様である。

 

『ナイン!テン! イーヴィ選手の勝利です」

 

 悟飯を背負い、武舞台から降りる。

 

「痛てて……こんなに力の差があるなんて……」

「超サイヤ人になる前に潰しにかかったしね。ちょっとずつ力上げるとか、そんな負けフラグ私はやりたくないから」

「負けフラグですか?」

「そういうことすると最終的に負けちゃうのよ。本当に実力差が桁外れに違わない限り」

「イーヴィさんはホント独特な戦いをしますよね」

「楽しむこととが第一だからね。負けるにしたってそれなりに理由を付けたいのが私だから」

 

 

 

 

 

 

 続く準決勝はサタンの負傷による棄権のためにラディッツが決勝に上がることとなった。そして、決勝戦。イーヴィとラディッツが武舞台の上で対峙していた。

 

「こうして真正面から戦うのは随分と久しぶりね」

「正面から? 一方的に何かされた覚えしかないぞ」

「そうだった? いじってる相手からの反撃は嫌いだからねぇ、そうしてたかも」

 

 これだから嫌なのだ、とラディッツは思う。恩があるのもまた事実ではあるが。

 

「娘の前だ。いつものようにはやらせんぞ」

「君、ホント良いパパさんやってるね」

 

 イーヴィは目頭を押さえながら言う。

 

「な何故、そんなことを褒める」

 

 気持ち悪いぞ、と口がついて出そうになるのを止めた。

 

「嬉しいからだよ。私の起こした変化が」

「また、よくわからんことを……まぁ、いい。来い!」

 

 開始を告げる声と共に飛び掛かる。様子見の左拳の連打をラディッツは容易く避ける。

 

「随分と速くなったんじゃない?」

「貴様が訓練した結果だろうが」

「それじゃあ、一気にスピードを上げるよ」

 

 今度は両手で手数を増やす。ラディッツは受け流しつつ、後退することもない。多少は焦ると思ったのに思いのほか余裕がある。ここでローキック……と思わせて、ハイキック。

 

「え! 嘘!?」

 

 ラディッツは、フェイントに引っかかることもなく私のキックを掴んで止めた。

 

「せいっ!」

 

 そのまま放り投げられた。武空術で場外は防いだが、危ないところだった。

 

「長年、相手をさせられているんだ。お前のしそうなことぐらい何となく読める」

「む……ラディッツのくせに生意気な。それならこれでどうだ」

 

 右手で銃のハンドサインを、某霊界探偵の如くラディッツに向ける。

 

「バン」

 

 私の言葉と同時にラディッツは背中に衝撃を受けた。

 

「なっ!?」

 

 イーヴィが何かすると身構えたら背中にダメージを受けた。それはつまり

 

「てめぇ……それは反則だろう」

「さぁ、何のことかしら」

 

 まごうことなく反則である。要はいつもの如く仕掛けを作って、狙撃しただけの話だ。ただし、飛ばしているのはただの空圧である。と言っても、一般人が脳天に食らえば死ぬこともある威力だ。

 

「このぉ!」

 

 ラディッツが思い切り殴りかかるが、イーヴィはラディッツを嘲笑うようにムーンサルトでラディッツの頭を触りつつ後ろに避ける。

 

「てめぇはムカつくが、ルールだけは守るやつだと思ってたのによ!」

「え、意外。私のことそんな風に思ってたんだ」

 

 ちょっと嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。

 

「それをてめぇは……失望したぜ」

「あー、うん。そんな風に思ってくれているとは思ってなくて、えと、その……ごめん」

 

 イーヴィがあたふたしながら謝っている。その様子にイーヴィをよく知る者たちは、驚きを隠せなかった。イーヴィとしては恩義を感じていてくれているのは知っていたが、自分に失望するような要素があったことに驚いていた。いつものように、あいつなら仕方ないと思われるとばかり考えていた。

 

『え、えーと、私には事情がわからないのですが……イーヴィ選手が何らかの反則を行い、イーヴィ選手がそれを認めたと……?』

 

「ちっ……こんな勝ち方あるかよ……!」

「ごめん、って……」

 

 ラディッツに近寄り、再び謝意を示そうとするとラディッツがイーヴィの頭を掴んだ。そのまま武舞台に叩きつけた、

 

「はーっはっはっは! ざまぁみろ! いつもの仕返しだ!」

 

 周囲はドン引きである。昔の悪の血でも騒いだのだろうか。

 

「あぁ、そう……なかなか面白いね。面白いよ……ふふふ」

 

 イーヴィは額から血を流しながら、ラディッツに向いてそういった。それはそれはいい笑顔だった。表情に反してブチ切れていたが。

 イーヴィは、ラディッツの足首を掴みある術を決行した。その術を使った瞬間、武舞台からラディッツと共に姿を消した。

 

「二人の気が消えた……?」

 

 悟空たち全員がラディッツとイーヴィの気を捉えられなくなった。

 

『……これはどうしたらいいのでしょう』

 

 審判のおっちゃんは、途方に暮れることしかできなかった。

 

 そして、イーヴィたちは砂漠の上にいた。

 

「な、なんだここは?」

「ここはとある人たちの心象風景を模して作った異空間。そしてその能力を再現してみようと思ったの」

「……どんな能力だ」

「私の後ろを見ればわかるよ」

「……!! おい、冗談だろ」

 

 遥か彼方に見える影、それはイーヴィだった。ただし、数が尋常ではない。地平線のかなたまでいるのではないかと思えるほどだった。

 

「本来は自分に忠を誓った配下を呼ぶ術なんだけど、そんな軍勢になるほどの配下は私にはいないからねぇ。私の機械10万体で代用してみたの。って、わけで数の暴力を味わってね」

「う、うわぁあああああ!」

 

 次元刀で脱出を試みるが、出てこれた場所は同じ砂漠の上。

 

「逃げられると思った? おあいにく、対策済みなの」

 

 イーヴィの軍勢に囲まれ、ラディッツに為す術はなかった。

 

「それじゃ、病室でまた会いましょう」

 

 拳の雨あられは30分の制限時間ギリギリまで続いた。そして、術を解いた時にはボロボロになったラディッツと気が晴れたと言わんばかりのイーヴィが武舞台の上に現れた。

 

『一体、どちらにいたんですか?』

「遠く見えないどこかで決着付けてきたのよ。結果は御覧の通り」

『生きているんですか……?』

「ちゃんと生きているわよ。呼吸も脈も内蔵機能にも異常はないわ」

 

 審判はしっかりと呼吸を確認した。

 

『私、正直何が起こったのかさっぱりわからない上に待った挙句決着が付いている試合に非常に納得いかないのですが、イーヴィ選手の勝利! 優勝です!』

 

 優勝については特に灌漑もなく、とりあえず微妙な声援に応えるイーヴィ。ただ、今回の件で不正疑惑が多数来そうなのでミスターサタンを使って疑惑を晴らそうと考えるイーヴィであった。

 

――不正しかないね。



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62 楽しみを求めるもの

 天下一武道会の表彰式も終わり、早々に会場を後にする。海の上の空で他のメンバーが揃うのを待った。

 すぐに悟空、悟飯、ヤムチャ、クリリン、ピッコロ、界王神、キビトが集まった。ビーデルも追ってきたが、悟飯とイーヴィが軽く事情を説明して帰らせた。

 

「さて、みんな揃ったね」

「それでは、教えてください。バビディの居所を」

 

 界王神が急かす。自身の作戦を潰されて、気を揉んでいるのだろう。

 

「その前に、敵の情報共有が先」

 

 事前情報として、バビディが何者であるか、魔人ブウがどのような存在かを軽く説明する。

 

「現在、バビディ自体は大した戦力にならないから除外して、それ以外で問題があるのはダーブラくらいかな」

「ダーブラですって!?」

 

 界王神が驚く。その恐ろしさを界王神とキビトが語る。

 暗黒魔界の王。それがダーブラの肩書である。

 

「強さに関しては、セルの完全体と同等ぐらいだから勝てない相手じゃないよ。ただ、ダーブラの唾に触れると石化するから要注意はそこだけね。他のことは移動しながらにしましょうか。それと緊急時に備えてクリリン、ピッコロ、ヤムチャはドラゴンボール集めた後、神の神殿で待機」

 

 クリリンとヤムチャは相手の強大さに少しビビっていたのですぐに納得した。だが、ピッコロは納得いかない様子だった。

 

「何故、俺が外される」

「できる限り少人数で行きたいからね。本当なら界王神とキビトも外してもいいぐらいなんだけど責任者を外すわけにもいかないからね」

「貴様っ!」

「いいのです、キビト。この人に付いていきましょう」

 

 ピッコロが文句を言おうとした瞬間にキビトが間髪入れずにキレたために言うタイミングを逃した。

 

「要は、戦力外ということか」

「ありていに言えばそうなるね」

「ちっ、はっきり言いやがるぜ」

「これは保険でもあるのよ。もしも私たちが負けるもしくはそれに類する何かが起きた場合の対処法をまともに考えられるのはあなたしか居ないと思ってる」

「それでフォローしたつもりか? ……だが、いいだろう」

 

 戦力的に悟空、悟飯、イーヴィが最も優れているのは、間違いなかった。ベジータも入れればもっと確実だったろうが、天下一武道会で負けた後すぐにどこかへ行ってしまった。ラディッツは、怪我を負ったので置いてきた。仙豆を食わせればいい話だが、めんどくさかったので放置した。

 

「後、もう一つ共有したことがあるの。魔人ブウが具体的にどう脅威であるのかってこと」

 

 魔人ブウが驚異的な存在である理由は4つある。

 一つ目、単純に強いこと。具体的に言うと、フルパワー状態で復活した場合悟空の超サイヤ人3以上であること。

 二つ目、様々な能力を持つ。一番脅威なのは、敵を好きなものに変えてしまう能力。魔人ブウは菓子を好むため、人間を飴やチョコなどの菓子に変えて食う。

 三つ目、学習能力の高さ。一度見た技をすぐに使えるぐらい学習能力が高い。また、吸収能力を用いて、敵の能力をそっくりそのまま手に入れることができる。

 四つ目、これが一番の脅威。再生能力の高さ。仮に文字通り粉々にしても、完全復活した状態に戻る。魔人ブウを倒すためには肉片を一片も残さず消し去る必要がある。ちなみに焼いても復活するので、塵や灰を残してもダメ。

 

「以上だけど、質問ある?」

「あなたは一体どこでそんなことを……」

「はい、企業秘密です。他に」

 

 イーヴィはにべもなく答える。

 原作では、最終的にデブのブウが味方になるわけだが、やはり掛け値なしに化物には違いない。

 

「さっき吸収って言ってたけど、どんな感じなんだ?」

 

 悟空が質問した。

 

「ブウは切り離された自分の肉片の一部を粘土みたいに遠隔でも自由自在に操れるのよ。それで、敵を包んで自分に取り込むって感じかな」

「なんか気持ちわりぃな」

「まぁ、厳しい戦いになるけど決して倒せない相手ではないよ」

「仮にイーヴィさんが言うことが本当であるにしても決して復活させてはいけませんよ」

「わかってるよ。厳しい戦いになることは間違いないんだから面倒な敵を増やすようなことはしないよ」

「それならいいのですが……」

「それじゃ、バビディの宇宙船まで行こうか」

 

 既にバビディの宇宙船は衛星で捉えていた。イーヴィが先導して、バビディの宇宙船へと向かった。

 

「あ、そうそう。界王神に伝え忘れてた」

「なんですか?」

「界王神界にあるZソードってやつは、剣っていうより封印する為のもので、あなたのご先祖様が封印されてるからさっさと叩き割って助けてあげな」

「な、なんでそんなことまで……!? しかし、伝説の剣を叩き割るなんて……」

「そうだ! あれは、神聖なものなのだぞ!!」

「いや、いつまで経っても出られない人が可哀想でしょうが……悟空か悟飯なら簡単に抜けると思うし、あの人ならまともな助言もしてくれるでしょう。これが上手くいくにしろ、失敗するにしろさっさと封印を解くことをおススメするわ」

「わ、わかりました」

 

 イマイチ信用してくれないキビトの気持ちもわからないでもなかったのだが、真実しか言っていないので、少々イラっとしてしまう。

 

 

 

 

「着いたわ」

 

 宇宙船のそばの岩場に降り立つ。

 

「どこにもないではないか。それにここは以前に探したことがあるぞ」

「そこ見てみなさい」

「掘り返した跡……そうか! 宇宙船を地中に埋めていたのか!」

「それでは、バビディは私が地球に来ていることを知っているのかもしれませんね」

「ここに来ているのにももしかしたら気付いているかもね。本来ならここにスポポビッチとヤムーが来ているはずだし、痺れを切らしているかも」

 

 と、噂をすれば宇宙船の出入り口からバビディの配下と思われる手下が数人出てきた。

 

「まぁ、応じるとは思えないけどあいつら人質にしようか」

「え? ちょっと、待ってください!」

「何?」

 

 界王神が言い終える頃には、全員拘束済みだった。手錠と縄で雁字搦めにして身動きひとつ取れなくしていた。

 

「な、なんという……!」

 

 イーヴィはどこからともなく拡声器を取り出した。

 

『バビディに告ぐ! 10秒以内に出てこなければ、そこの部下を皆殺しにする! いーち!』

 

 数えた瞬間にバビディの配下が爆発した。

 

「……案の定って感じね」

 

 バビディが魔術を使って自分の配下を殺したのだろう。悟空と悟飯が自分の仲間を殺したことに嫌悪感を示していた。

 

『再びバビディに告ぐ! 10秒以内に出てこなければ、宇宙船ごと爆破する!』

「ちょっと、イーヴィさん! そんなことをしたら魔人ブウが!」

「そんなの知ってるわよ。さっきも言ったけどフルパワーで出てきても、悟空なら戦えるレベルだから。それに、敵さんもフルパワーに拘っているだろうし出てくるわよ。ほら」

 

 小さな人影と角を生やした大きな人影。バビディとダーブラが宇宙船の中から出てきた。

 

「お、お前ら~……! こんなことをして生きて帰れると思うなよ!」

「ドウモ、ハジメマシテ。バビディ、お前の野望もコレマデダ」

 

 片言且つ棒読みで言うとおかしなものを見るような視線がその場にいる全員から突き刺さる。

 

「なんだこいつは……」

「私は元『悪』神のイーヴィ。界王神のお手伝いで遊びに来たよ」

 

 イーヴィは悪の部分を不自然に強調して言った。

 

「ぐぬぬ……いい気になるなよ、界王神。こっちにはダーブラがいるんだ」

「はい、バビディ様。貴様らの相手はこのダーブラがしてくれる」

 

 ダーブラが前に、バビディは後退りながら宇宙船の中に入っていった。

 

「待て! バビディ!」

 

 界王神は追いかけようかと迷ったが、罠の可能性を考えて飛び出すことはできなかった。それ以前にダーブラがそれを許すはずもなかった。

 

「ダーブラがいなくなれば実質バビディは詰みだから『場合によっては』これが最終決戦なのよね」

 

 また、不自然な言い方をするイーヴィ。

 

「私を倒せると思っているのか? この暗黒魔界の王、ダーブラを」

「倒せるよ。というか、ここの全戦力出したら弱い者いじめになるぐらいにはね」

「私が……弱いだとっ!? これだからバカは困るのだ」

「バカは君たちの方さ。敵の情報、自陣の戦力、相手の出方の予測。私はそれらを入念に準備している。これだけ揃えて勝てなかったらそれこそバカだ。君らに勝ち筋は一片もない」

 

 と、なればバビディは与えられた情報であるあれを利用する以外にはない。それに気付くかどうかはダーブラとバビディ次第だ。

 

「貴様ぁ!!」

 

 ダーブラが魔術で剣を作り出し、斬りかかってきた。私は白刃取りの要領で止める。

 

「みんなは手を出さないでね。こいつは私が倒す」

「ずりぃぞ、イーヴィ」

「舐めやがって。ぺっ」

 

 ダーブラが唾を飛ばして来た。常に警戒していれば、そう当たるものでもない。悠々と避けた。

 

「ちっ」

 

 ダーブラは剣を放して距離を取った。イーヴィは間髪入れずに剣をダーブラに投げ返した。

 

「くっ……!」

 

 ダーブラが防いだ直後にできた隙に右ストレートが頬を捉えた。

 

「このぉっ!」

 

 くらったままの体制で蹴りを入れようとするが、イーヴィは軽くいなして代わりにボディブローをかました。

 

「ぐおぉ!」

 

 ダーブラは、その衝撃で吹っ飛び地面に叩きつけられた。それによって小さなクレーターができあがった。

 

 

 

「すごい! あのダーブラを押している!」

「あの者……あれ程までに強いとは……!」

 

 界王神とキビトが感心している。あれだけのことを豪語するだけはあると。

 

「なんかイーヴィさんらしくないですね」

 

 悟飯がそう声を漏らす。

 

「えっ?」

「確かにそうかもなぁ。イーヴィなら倒せる時に一気に倒すからな。それに、一対一を望むのもらしくねぇ」

 

 それに同調する悟空。その気になれば、イーヴィならば最初の一撃で殺せたはずである。相手を怒らせて遊ぶときはその限りではないが、その様子もない。そういうときのイーヴィは決まって笑っていたのにそれがない。

 

「それじゃあ、イーヴィさんは一体何をしようと?」

「オラにもわかんねぇよ……今度は一体何を考えているんだ? イーヴィのやつ」

「……誰かが困ることはあっても、本当に困った事態にはならないと思いますよ……多分」

「ははっ、そうかもな」

 

 親子そろって苦笑いをする。イーヴィは何かをやらかすつもりだ。口にはしないがほぼ確信に近い予感だった。

 

 

 

「もっと思い切りやったら?」

 

 地面に叩きつけられたダーブラにそう声をかける。返ってきたのは言葉ではなくエネルギー弾だった。イーヴィは咄嗟にガードしたが、ダーブラは背後に回り今度はイーヴィを地面へと叩きつけた。

 

「はぁっはぁっ……どうだ! このゴミめ!」

 

 イーヴィは平然と立ち上がり服に付いた土ぼこりを払っていた。

 

 ダーブラはその様子を見て焦燥感を覚えていた。バビディの魔術によって従ってはいるものの暗黒魔界の王としての気位は高い。どことも知れぬ馬の骨にあしらわれているのだ。プライドも傷つく。

 一方イーヴィはいい加減、気付いてもらいたいものだと少しむかつきを覚えていた。バビディが気付かないのならばダーブラに気付いてもらうしかない。だが、一向にその気配がない。

 

「ダメならダメで構わないんだけどさ……」

 

 もっとらしくしなければいけないのだろうか……悪らしく。

 

「何をぶつぶつ言っている!」

 

 再び襲い掛かってくるダーブラに対してイーヴィは袖から鎖を投げつけた。鎖はダーブラの右腕に巻き付いた。

 

「何っ!?」

 

 鎖でダーブラを振り回し近くの岩壁に叩きつけた。その隙に四肢の全てに鎖を巻き付け、磔にした。口にも鎖を巻き付けていた。

 

「さて、これで何もできない」

 

 ダーブラが何かを言おうとするが、何を言っているかはわからない。

 

「残念ながら私は一思いに殺そうとか、慈悲をあげたりはしないの。正義の味方ならきっとこんなことはしないでしょうね。残念ながら私は『悪』だから」

 

 ここにきて頭に違和感を覚える。ようやく来た。

 

「ああああああ! ぐぅうう……!」

 

 頭痛がする。イーヴィは頭を抱えて蹲った。

 

「いけない! バビディの魔術です! イーヴィさん、何も考えてはいけません! 無心になるのです!」

 

 それはできない相談だ。最初からこれが目的だったのだから。

 

「はぁあああああああ!」

 

 イーヴィの右手の甲に独特なMの字が表れた。



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63 魔人ブウ復活

「ふぅ……」

 

 イーヴィは自身の掌を見つめ、拳を握り何かを確かめる。

 

『ひひひ、ひーひっひっひっひ。お前はもう僕のしもべだよ』

 

 頭の中に声が響く。わざと術を受けたが、しもべだと言われるのは少々腹が立つ。

 

『さぁ、そいつらを殺すんだ。界王神だけは半殺しにしてね』

「……その前に片づけておきたいものがある」

『……? そんなのいいから、僕の命令を優先するんだ!』

 

 イーヴィはダーブラの鎖を解いた。

 

「ぶはぁ……さすがはバビディ様。あいつをこちら側に引き込むとは」

 

 イーヴィはダーブラにゆっくりと近づく。

 

「なんだ? お前はあいつらの相手をしろ」

「先に片づけておきたかったのよ……お前をね」

「何っ!?」

 

 イーヴィはダーブラに掌を向けてエネルギー弾を放った。

 それは原作でダーブラがキビトを殺した方法と同じような形となった。

 

『な、ななな!? なんでダーブラを殺したんだ! そんな命令はしてないぞ!』

「あら、ごめんなさい。ちょっとむかついてたから、つい」

『……ふん。まぁ、その強さに免じて許すよ。だから早くやれ』

「はいはい。というわけで、戦うことになっちゃった」

 

 いつもと同じような笑顔を悟空たちに向ける。

 

「しっかりしてください、イーヴィさん!」

「おめぇ、本当にバビディに操られちまってるのか?」

「残念ながらそういうことになっているね」

 

 瞬間移動を使い悟空の後ろに回った。

 

「ほいっと」

 

 回し蹴りが悟空を捉えた。すぐにイーヴィは次元刀を振るい、次元が裂け悟空はその裂け目の中へと入りどこかに消えた。

 

「父さん!」

「はい、君も入ってね」

 

 またしても瞬間移動で今度は悟飯の後ろに回り、前蹴りで吹き飛ばしそのまま裂け目に吸い込まれていった。そして、裂け目は閉じた。

 

「そ、そんな……! 悟空さんと悟飯さんが……!」

「か、界王神様! しっかりしてください!」

「ふむ……」

 

 イーヴィが次元刀を振るうと界王神とキビトの足元に次元の裂け目が表れた。

 

「なっ!?」

 

 イーヴィは瞬間移動で界王神とキビトの頭上に表れた。

 

「それじゃあねー」

 

 界王神とキビトを裂け目の中に押し込み、次元の裂け目は消えてなくなった。

 

『お前、一体あいつらをどこにやったんだ。僕は殺せと命令したんだぞ』

「実質、殺したようなものだから気にしないでよ。ある意味、あの世より遠い場所に送ったんだから」

『へ?』

「さて……」

 

 瞬間移動でバビディの下へと移動した。

 

「ひぇっ!」

「そんなに驚く必要ないでしょ」

「……そうかもしれないけどさ。お前のせいで色々と台無しになっちゃったからね」

「そりゃ悪うござんした」

 

 イーヴィは力を使い椅子を創り出し座った。

 

「代わりと言ってはなんだけど魔人ブウをすぐにフルパワーで復活させてあげようか?」

「なんだって? 本当にそんなことができるのかい?」

「もちろん。ただ、私の質問にいくつか答えてからね」

「質問? いいだろう。なんでも聞いていいよ」

「まずはそうねぇ……どうして君の親父さんは、魔人ブウを封印していたと思う?」

「どうしてってそりゃ休むためだろ?」

「どうして休む必要があったの? 魔人ブウは本当に言うことを聞くの?」

「パパの創ったものなんだぞ。僕の言うことを聞くに決まってる」

「……真正のアホね」

「ん? 今何か言ったか?」

「いえ、何も。最後に一つだけ忠告させて。これから魔人ブウを復活させるわけだけど言うことを聞くとは限らないよ」

「お前がそんな心配をする必要ないんだよ」

「私は忠告したからね」

「パッパラパー!」

 

 バビディが呪文を唱えるとブウの封印された玉ごと宇宙船の外へと出た。

 イーヴィは玉に手をかざす。気をブウの玉に送る。ブウの玉が置いてある台にある計器の様なものの針がゆっくり回転していく。

 

「結構、持っていかれる……」

「なんだ、無理なのか?」

「無理じゃない……! 黙ってみてなさい」

 

 そんで死ね!

 

 空の遥か彼方上の衛星がちょうど近くを通る。バビディの宇宙船を狙いを定め、極大のレーザーが放たれた。それは遠くから見れば、光の柱が建っているかのようであった。

 

 バビディの宇宙船は破壊され、辺り一帯は何もない荒野と化した。魔人ブウの玉は少し焦げたような色にはなったが、フルパワーまで充填された。

 そして、バビディの方は

 

「あれで生きてたんだ」

 

 全身に火傷を負っているようだったが、生きていた。

 

「な、なんでお前は無事なんだ……」

「私はあの光線のエネルギーをそのままブウの玉に移してたから無傷だよ。自分のエネルギーだけじゃ、ヘロヘロになっちゃいそうだったし」

「こ、この……ま、まぁいいよ。これで魔人ブウの復活だ!」

 

 魔人ブウの玉からピンク色の煙が溢れ出す。

 

「出るぞ! 魔人ブウ!!」

 

 玉が真っ二つに分かれたが、中身は空っぽだった。

 

「あ、あれ……空っぽ?」

「上をよく見なよ」

 

 空に飛んで行ったピンク色の煙が段々と一か所に集まり、人型になっていく。

 

「ブウ!!」

 

 デブで細目のブウが復活した。降りてきたかと思うと復活の喜びからか跳ね回る。

 

「おーい、魔人ブウ」

 

 バビディが魔人ブウの傍に行き、イーヴィはそれに付いていく。

 

「僕はお前を作ったビビディの息子のバビディって言うんだ。玉に封じ込められたお前をすごい久しぶりに復活させてやったんだぞ」

 

 復活させたのは私だけどな。と、イーヴィは心中で毒づく。

 魔人ブウは、細い目を少し開けてバビディを見やる。

 

「だ、だから、今日から僕がお前の主人だ」

 

 魔人ブウが無視するように別の方向を見る。

 

「お、おい。挨拶ぐらいしろ。僕はお前のご主人様なんだぞ」

「ばぁ!!」

「ひぇっ!!」

 

 魔人ブウはいないいないばあの要領でバビディを驚かせた。バビディはそのまましりもちをついた。

 

「あっはっはっはっはっは!」

 

 魔人ブウは笑った。とてもご機嫌なようだった。

 

「私はイーヴィ。よろしく」

 

 イーヴィは一歩前に出て手を差し出す。

 

「なんだ?」

「握手よ。地球での挨拶」

「こうか?」

 

 イーヴィが差し出した手を手に取る。よくわからないといった表情からニコニコした笑顔になる。イーヴィも笑い返した。そのまま、イーヴィはブウに何か耳打ちをした。

 

「いいぞ。やろう」

「ん? なんだ? 何を話している?」

 

 その様子を見て、バビディが話しかけてきた。

 

「教えてほしい? それじゃ、ちょっとこっち来て」

「これから忙しくなるんだ。さっさとしろ」

 

 ゆっくりと歩いてきたところで、イーヴィはバビディの口にテープを張り付けた。

 

「……!!」

 

 もがもがしているが、何を言っているかはわからない。すぐにテープを外そうとするが、外れそうにもない。

 

「地球で作られたただの瞬間接着剤だよ。これで呪文は唱えられない」

 

 バビディは逃げ出そうとしたが、イーヴィはマントを踏んで逃がさない。

 

「私が逆らったのが疑問? それなら単純明快、本当は洗脳にかかっていないからだよ。手の甲のこれは、ほら」

 

 手の甲に付いていたMの字はシールの様に剥がれた。Mの字は手の甲にではなく本当は額に表れていたのだが、その見た目が嫌で手の甲にシールを張っていた。バビディはそれに疑問すら浮かんでいなかった。

 

「私も洗脳なんかの類は得意でね。最も魔術ではなく科学でだけどね。洗脳された後、すぐに洗脳しなおしたんだ。最初から君の潜在能力を引き出す力を利用するのが目的だったのさ」

 

 バビディはマントを引っ張って外そうとするが外れる気配も破ける気配もない。

 

「それで君の処遇も少し悩んでいたんだ。最初は殺すつもりだったけど、今この状況ではブウの教育に悪い。かと言って、君が改心する可能性はまぁ、ゼロだ。一時は誓ったとしてもどうせすぐに破る。なら、どうするかって? ブウ」

「ほいっ!」

 

 イーヴィはその場から離れ、ブウは自分が入っていた割れた玉にバビディを入れた。そして、頭の触手から怪光線を浴びせると玉は閉ざされた。

 

「一生死ぬまでその玉の中で反省するといい。さて、死ぬのとその中で一生を過ごすのはどっちが良かったかな? そこも含めて悔やみ続けるんだね」

 

 何かの拍子でまた出てこられても困るので、しっかりとどこかで管理しなくてはならない。出てきたところで何ができると思わないが、界王神の様に魔人ブウの玉を放置するようなマネはしない。

 

「さて、これから君に紹介したい相手が居るんだけど、その前に悟空たちを回収しないと」

「誰だ?」

「私の仲間。君とはこれから仲良くしたいし」

 

 イーヴィが空間を裂いて悟空たちを送った場所は精神と時の部屋だった。こちらの空間での1日が精神と時の部屋では1年。1分で約6時間経ってしまう。向こうに送ってから5分程度は経っているため1日以上は経っている。

 次元刀を使い空間を切り裂き、再び精神と時の部屋に繋ぎブウと共に中に入った。

 

「ハロー、元気?」

「イーヴィじゃねぇか! ……その後ろのやつは誰だ?」

 

 悟空たちと一緒にいた、界王神が恐れおののいていた。

 

「あ、ああ、あああぁあ……! ま、魔人ブウ……!」

「な、なんだって!?」

「待って。ブウに敵対意思はないよ。ねぇ」

「うーん。まぁ、今のところは」

「ほら、大丈夫」

「今のところはって言ってますよ! 本当に大丈夫なんですか!? それにあなたはバビディに洗脳されたんじゃ!?」

「洗脳はされたけど自分で洗脳しなおしたのよ。自分に従うようにね」

「そ、そんなことができるなんて……」

 

 ぐぅうと腹の音が聞こえる。

 

「話の途中で悪ぃんだけど、飯食わしてくんねぇか? オラ、腹減っちまってよぉ」

「そうね。ブウに紹介したい人もいるし、そっちの方で食事を取りましょう」

 

 精神と時の部屋を切り裂いた空間から出た後、連絡を取る。大勢で押し掛けるために食事を用意させるためだ。心の準備も多少は必要になるだろう。

 

 

 連絡を取った後、瞬間移動で邸宅に向かう。サタンの家だ。

 

「おぉ、イーヴィさん! 私に紹介したいというのは、そちらの方々で?」

「いや、正確にはそこのピンク色の」

「ブウ」

「そ、そうですか」

 

 若干ビビり気味のサタン。一応、どういう力の持ち主かは事前に説明しておいた。

 

「さ、さ。まだ準備中ですが、食事を用意していますのでこちらに来てください」

 

 悟空や界王神たちに一体どういうことなのか説明を求められたが、食事を取りながら話すと言った。

 魔人ブウはパーティ会場のような大量の食事をみて、目を輝かせた。一目散に食事に向かう。ものすごい勢いで食事がなくなっていく。

 

「あぁ! ずりぃぞ!」

 

 張り合うように悟空も食事を取りに行く。

 

「……まぁ、説明は腹ごしらえしてからでもいいでしょ」

「そうですね。ちゃんと説明してもらいますよ」

 

 しばらくして、イーヴィは自身がこれまでの経緯を話した。洗脳にかかったふりをしたこと。バビディを封じ込めたこと。

 

「しかし、どうしてそのような回りくどいことを」

 

 小声でバビディだけを倒せばよかったではないですか。と耳打ちする。

 

「元々の魔人ブウが破壊の化身だというのは私も良く知っているけど、そこの魔人ブウが無邪気な子どもみたいなものということも私は知っていたの。それが閉じ込められたままなんてのもかわいそうじゃない」

「それだけのためにこんな危険なマネを!?」

「別に理解してもらおうとは思わない。ただ、あの魔人ブウの玉をずっと放置するのもよくなかったでしょ。封印なんて何が原因で解かれるかわからないんだから、問題を先延ばしにしているのと大して変わらないわ」

「そ、それは……そうかもしれませんが……」

「それに私はこの一件が終わったら、元の世界に帰るつもりだから」




ようやく終わりが見えてまいりました。魔人ブウ編はあと少しで終わると思います。終わるといいなぁ。今年中に終わらせたいと思っています。


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64 最終決戦に向けて

「元の世界?」

「私はこの地球でもこの宇宙の生まれでもない。もっと別な世界から来たのよ」

「……別の宇宙からですか?」

「いや、もっと違うもの。世界の法則そのものが違う所よ。私がこの世界に来たのは……そうね、観光みたいなものかしら」

 

未だに魔人ブウは食事に夢中になっている。悟空はある程度満足したのかこちらの話を聞いている。悟飯は最初から食事をとりながら話を聞いている。

 

「予知ではないけど、この世界の歴史というか未来のこともある程度知っていたし、色々歴史を変えて遊びに来た感じよ」

「イーヴィさん……前例がないのでなんとも言えないのですが、それはもしかしたら神の法では重罪かもしれません」

「いや、重罪だとしても帰るから関係ないし。私の世界とこちらの世界は普通は干渉できないようなところにあるからね。私の瞬間移動でも次元刀でも行き来ができないような場所だから。まぁ、この話は置いておいて今後の魔人ブウの話よ」

「そうでしたね。残念ながら、魔人ブウもあなたも私にはどうしようもないことですから」

 

 魔人ブウの方を見やるとまだ食事をしている。サタンが追加で色々と持っていっている。そこで、会話を重ね順調に仲良くなっているようだ。

 

「界王神は知っているでしょうけど、魔人ブウは元々今の姿ではなかったわ」

「はい」

 

 今更、イーヴィが知っていることに関して言うのがアホらしくなったのかその事実を知っていることに対して特に何も言わなかった。

 

「何がきっかけでその元の姿になるかわからないから、今の魔人ブウからその魔人ブウを切り離して退治したいと考えているわ」

「えええええ!! そんなことが可能なのですか!? というか、あんまりそんなことしてほしくないような……」

「後顧の憂いは断っておくべきよ。それで私もスッキリとした気持ちで帰れるわ」

 

 イーヴィとしては本当は悪のブウも誕生させてギリギリの戦いを楽しみたかったのだが、ギリギリすぎて自身の消滅する可能性が高かったので辞めた。地球人が全滅させられるとイーヴィの力は大きくそぎ落とされる。主要な登場人物に関してもかばいきれるとはとても思えなかった。悪人を除いた主要人物を殺させないがイーヴィの目標だったのでそれを選択できそうになかった。今までわざと危険にさらすこともしてきたが、必ず安全策を用意した上でのことだった。しかし、今回ばかりは用意できそうになかったため諦めた。いや、本当はないわけでもなかったが、安全策は必ず自分を起点に動かせるものに限定するこだわりがあったために思いつかなかった。

 

 ブウをどう処理するかも悩んだが、少なくとも内に潜んでいるであろう悪の部分。それをどうにかしなければイーヴィとしてはこの物語を終わりにすることができない。

 

「それが可能かどうかは、微妙なところだけど……とにかくその戦いに向けて準備をしたいと思っているわ」

「準備ですか……本当に倒せるのでしょうか」

「その心配は全くしてないわ」

 

 勝つ手立てならいくらでもある。老界王神の潜在能力開放。ポタラ。フュージョン。いずれの方法でもあの俗に魔人ブウ純粋と言われる存在を倒せるだろう。しかし、いずれの方法にせよ面白味がない。それだけがイーヴィの中で納得がいかなかった。今更、考えても仕方ないと思考を中断した。危険は冒しつつも安全策だけは何重にも用意するのが信条だ。

 

「ただ、地球でやると戦いで星そのものが壊れそうだから界王神界で戦わせてくれない?」

「な、なんですとぉ!? 界王神界に人間を連れて行くだけでも不敬極まりないのに戦わせてとは何事だ!」

「キビト。今更、気にすることではないでしょう。それに、イーヴィさんの言うことはもっともです」

「どうもありがと。それと、前にも言ったけどZソードを回収したいからすぐに界王神界に連れてって欲しいんだよね」

「確か、私のご先祖様が封印されているのでしたね」

「そう。あなたの15代前の界王神よ。その人の能力を借りれば余裕で勝てるわ」

 

 丁度、悟空たちの食事も終わったらしい。

 

「話聞いてた?」

「あぁ。でも、よくわかんなかった」

「父さん……」

 

 いつも通りである。

 

「要は今の魔人ブウは良いやつだけど、悪い魔人ブウもいるからそいつを倒したいって話」

「良い魔人ブウと悪い魔人ブウが居て……それ魔人ブウが二人居るってことか? やっぱよくわかんねぇぞ」

「もっとわかりやすく言うなら倒しておきたい強い敵がいるとだけ思っておいて」

 

 それで悟空も納得してくれた。

 

「その魔人ブウは強いんですか? そこに居る魔人ブウも相当に強いようですが……」

「悟空の超サイヤ人3でも勝つのは難しいでしょうね。それに戦闘に関する知能は回るくせしてそれ以外の理性がまるでない」

「理性がない……?」

「今の魔人ブウはお菓子を食べて楽しんだり、遊んだりそういう人間らしい感情や嗜好がある。だけど、その魔人ブウは破壊と殺戮しかしない。戦いを楽しんだりもするけど、それ以外は星を自分ごと破壊して、自分だけ再生してまた別の星を破壊することを繰り返すだけの生物になる」

 

 いきなり星ごと破壊されたら自分たちに勝ち目がない。界王神界は易々と壊れはしないそうなのでそこを戦う場に選んだ。

 

「そんなに危険なら出さない方がいいんじゃないですか?」

「さっきも言ったけど、何がきっかけでいつ出てくるかわからないから入念な準備をした上ですぐ倒してしまった方が良い。出てきた瞬間に地球を破壊されて終わりなんてこともありえるかもしれないからね」

「なるほど。後回しにしたツケを払うことになるかもしれないということですね」

「そういうこと」

 

 悟飯は理解が早くて助かる。

 

「というわけで、私は魔人ブウを分離するための準備に取り掛かるから、悟飯たちは魔人ブウを倒すための準備をお願い。戦う日は……一週間後にしましょう。集合場所は神の神殿よ」

 

 

 

 

 悟空たちは界王神界へ。イーヴィはピッコロたちに事情を説明した後、自身の研究室へと向かった。

 

 界王神界へと向かった悟空たちは大した苦も無くZソードを引き抜き老界王神を解放することに成功した。老界王神に疑問を抱かれながらも魔人ブウを倒すため、悟飯の潜在能力を限界以上に引き出す儀式を始めた。悟空は、自身の力は自分自身で引き出したいという思いや単純に長い時間じっとしているのが嫌だということもあり、潜在能力を引き出すことは拒否した。

 

 一方、イーヴィは魔人ブウから細胞の一部分を分けてもらい研究していた。

 

「……ホント、意味わかんない」

 

 本当に生物なのか怪しく思えるほど、理解しがたい細胞だった。魔人ブウの意思が介在しなければほとんどただの粘土と変わらない。その割には有機的な性質も見て取れる。元々、煙からでも再生できるような生き物なので理解しようとする方がおかしいのかもしれないが、何とかしなければ戦うこともできない。

 

「めんどくさいし力を使っちゃおうかな……」

 

 ただ、宇宙を破壊しつくしかねないような怪物に力を使って、自分の容量を超えてしまわないかが不安だった。メタ的なことを言えば、ドラゴンボールのラスボスである。要素としてはそちらの方が問題だ。法則を捻じ曲げる行為には、それ相応の代償がいる。その代償で元の世界に帰れなくなるようでは、意味がない。というより、私が困る。バビディの能力で底上げをしているとはいえ……結局のところ一番重要なファクターは元悪神たるイーヴィがどれだけ多くの人々に畏敬の念を抱かれているかによる。それを一週間足らずで増幅させる方法なんて……

 

「あるじゃん。そんな方法」

 

 むしろ、なぜ今までその方法を使わなかったのか。無意識にずる過ぎて遠慮していたのか。チートにも程がある方法があった。

 

「勝った。第三部完!」

 

 イーヴィは勝利を確信した。だが、このセリフがフラグなのはイーヴィ自身自覚があったのか、なかったのか。当人にも知る由はなかった。



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65 これにてドラゴンボール完結?

約束の一週間後、神の神殿に界王神界に行くもの、見送りに来たものが揃った。

 界王神界に行くのは、イーヴィとラディッツと魔人ブウだ。ベジータも連れて行こうとしたのだが拒否された。イーヴィが居ると戦いが茶番にしかならないと思っているようだ。

 見送りに来たのは、チチやブルマ、クリリン、ヤムチャ、ピッコロ……原作で最後のブウ戦の後に戻ってきた時に神殿に居たメンバーだ。

 その場にいたクリリンやヤムチャがブルマにどうして同行しないのかと聞かれて戦いに付いていけないと言う様な会話をしていた。

 悟天やトランクスも付いていこうとしていたが、チチやブルマに止められていた。スキを伺うもピッコロの監視も振り切ることはできなかった。

 

「みなさん、準備はよろしいですか?」

「おい、待て。カカロットと悟飯はどうした」

「悟空と悟飯なら既に界王神界に居るよ」

 

 悟飯は界王神界で潜在能力を引き出した後、悟空が手合わせを望んだ。悟飯がそれを拒む理由もないのでそのまま修行としてずっとやっていたようだ。

 

「それでは行きます。カイカイ」

 

 界王神の瞬間移動により、界王神界に到着する。そこには、老界王神と悟空と悟飯が待っていた。

 

「お前さんがイーヴィか」

「そうよ」

「色々聞きたいことはあるが、この件に関しては一理ある。さっさとどうにかしてしまえ」

「えぇ。そのつもりよ」

 

 魔人ブウを近くに呼び、イーヴィの前に立たせる。

 

「みんな準備はいい?」

 

 悟空や悟飯を見やり、確認し頷くのを確認した。

 ブウに手をかざし、精神を集中させる。

 

「はっ!」

 

 魔人ブウの背から小さな何かがはじき出された。それはすぐに小さな人型の魔人ブウへと変化した。

 

「ホッホゥ!!」

 

 寝たような状態からすぐに覚醒し咆哮する。

 

「ウォー!ホッ、ホッ、ホッ!」

 

 ゴリラのドラミングの様に胸を拳で叩く。

 

「あれが魔人ブウか?」

「そう。この宇宙を滅ぼしかねない破壊獣」

「それじゃ、早速オラが……」

「いえ、お父さん。僕に行かせてください」

 

 悟飯が前に出る。老界王神の潜在能力の解放もあり自信に満ち溢れている。

 実力的にもあの魔人ブウ純粋を単独で倒せてもおかしくない。

 

「そうだなぁ……よし、悟飯行ってこい!」

「はい!」

「頑張れよ、悟飯!」

 

 ラディッツも声援を送る。自然と一対一を考えているが、平和を脅かす敵だとわかっているのだろうか。

 

「お前らブウと格闘試合をするんじゃないだぞ! 一緒に戦わんかい!」

「ご先祖様、この人たちに言っても無駄ですよ。ここは任せて私たちは安全な場所に行きましょう。私たちが居ても足手まといになるだけですから」

「ふん。わかっとるわい。お前ら頼んだぞ」

「俺も一緒にいっていいか? サタンのところに戻りたい」

「え? あなたもですか……一緒に戦って、ってこの人たち一緒に戦わないんでしたっけ……いいですよ。行きましょう」

「ありがとう。お前イイヤツだな」

「……カイカイ」

 

 魔人ブウにお礼を言われ、何とも複雑な気分になりつつも、ブウと共に地球へと瞬間移動した。

 

 

 いつの間にか静かになっていた魔人ブウを見やると立ったまま涎を垂らしながら寝ていた。

 

「あ、あいつ……! 寝てやがる」

「なんかやりにくいなぁ」

 

 そう言いつつ、気を高める。ブウはその衝撃で目覚めまた咆哮を挙げてドラミングを始める。

 

「ふざけやがって……!」

 

 悟飯は先制攻撃とばかりにブウを蹴り飛ばした。ブウはそのまま吹き飛んだが、その状態でもドラミングをやめていなかった。そのまま岩山に激突して様子が見えなくなった。

 悟飯はエネルギー弾で追撃を始めた。爆音と衝撃で大きく土煙が立ち何も見えなくなっていく。煙が晴れたときには、十数メートルはあった岩山が跡形もなく消し飛んでいた。ブウの姿が見えないと思ったが、すぐに空に姿を表した。バラバラになったがすぐに空で再生したようだ。

 

「ギギギッ! シャア!!」

 

 少しばかり怒りの形相を見せたと思えば、瞬時に腕を伸ばし、悟飯の腕を掴んだ。

 

「なっ!?」

 

 悟飯はそのまま引き寄せられ、ブウがヘッドバットをくらわせた。怯んだところをパンチの連打が悟飯を襲う。何発もくらってしまったが、悟飯はカウンター気味に膝蹴りを入れ仰け反ったところにかかと落としで叩き落した。地面に追突し、立ち上がったブウの頭は潰れていたが、すぐに元通りに戻った。

 

 

 ブウ相手の肉弾戦に意味があるのか疑問が浮かぶ。痛みがないわけではないようだが、何事もなかったような状態にすぐに戻る。悟飯はその後も比較的攻勢で押しているように見えるが、その実ブウにダメージを与えられている様子がなかった。

 

「やはり悟飯では倒しきれないのではないか?」

「いや、悟飯はオラたちの中で一番強い。悟飯に勝てなきゃオラたちでも勝てるか……」

「一対一を望んでおいて難だが加勢するか?」

「まだ決着はついてねぇし、必要ねぇと思う。イーヴィはどう思う?」

「え? 私?」

 

 話しかけられて驚いたような様子を見せるイーヴィ。どちらかといえば何かに集中していたところを中断させられたようなそんな感じだ。

 

「なんだよ。聞いてなかったんか?」

「いや、聞いてないことはなかったけど……今のところ悟飯が優勢みたいだし、このまま倒せるんじゃない?」

 

 それはそれで退屈だが、安全に安全を重ねてしまった時点で展開にこだわるのもどうかと思い始めていたイーヴィだった。現時点においても更なる安全策を重ねようとしていた最中だった。

 

 

 ブウは腕を切り離し、丸めて悟飯に投げつけた。普通はありえないトリッキーな動きだが、悟飯はだいぶ慣れてきたのか捌くのが上手くなっていた。ブウの表情に焦りの色が見えてくる。投げつけられた腕を地面に叩き落し、ブウに攻撃を仕掛けようと一気に距離を縮めようと動いたが、ブウは足を地面に突き刺しそのまま悟飯の下から足を延ばして攻撃した。悟飯は完全に不意を突かれたがそれでも避けた。が、ブウはニヤリと笑った。先ほど叩き落された腕が形を変え、悟飯を包むほどに拡がった。

 

「な、なんだ!?」

 

 悟飯はそのままブウの腕だったものに包まれ、ブウ本体に吸い寄せられ一体化した。

 

「いぃっ!?」「はぁ!?」

 

 悟空とラディッツがその状況に驚いた。ブウの形がどんどん変形していった。身長が高くなり、悟空や悟飯が着ているような道着を身に着けていた。

 

「マ、マジか……それは想定してなかったわ……」

 

 イーヴィにとっても予想外であった。その能力を持っていることは知っていたが、どういう条件で使うのかがいまいちわかっていなかったためだ。

 

「おい、これどうすんだよ!? 悟飯が吸収されちまったぞ!」

「し、知るか! おい、イーヴィ! 何とかできんのか!?」

「ん? いや、まぁ……できるよ」

 

 想定外ではあったが、対処できない事態ではない。今のイーヴィは神龍以上になんでもできる自信があった。

 

「ほ、ホントかぁ!?」

「あの太っちょの魔人ブウからあの小さな魔人ブウを出した時と同じ要領でいけるわ。ブウと悟飯を分離させるのはね。多少気をためる時間がいるから、私の目の前で棒立にさせて15秒時間をくれたら確実よ」

「……キツイな」

「あぁ。ブウのやつ、悟飯を吸収して気がめちゃくちゃでかくなってやがる」

 

 悟空の超サイヤ人3ではもはやどうやっても勝つことは叶わないレベルで力の差が付いてしまっていた。少しの間、時間稼ぎするのにも苦戦することは必至だった。

 

「最悪、私の目の前に立たせるだけでもいいんだけど、確実に成功させるためにもお願いね」

「あぁ!」

「やってやる!」

 

 イーヴィは気弾を撃つときの様に右手を前に出す。

 ラディッツは超サイヤ人に悟空は超サイヤ人3になって、ブウに飛び掛かった。

 

「ギヒヒィ~」

 

 ブウは凶悪な笑みを浮かべ悟空たちを迎え撃つ。ほぼ棒立の状態であったにもかかわらず、すぐ目の前まできた悟空とラディッツのほぼ同時のパンチに対してどちらもいなして悟空とラディッツで同士討ちをさせた。

 

「ギャハハハハ!!」

 

 その様子を笑うブウ。

 

「こ、この野郎っ!」

 

 次元刀を使いブウを切り裂くが、ブウは斬った直後には元通りになった。

 

「何っ!? ぐぉっ!!」

 

 すぐにブウのパンチをくらい吹き飛ばされ岩山に激突するラディッツ。

 

「兄ちゃん!」

 

 悟空は肩に違和感を感じ振り返るとブウが肩を人差し指でちょんちょん叩いていた。

 

「舐めやがって……!」

 

 悟空が拳の弾幕と言わんばかりの攻撃をするが、ブウは身体を変形させて遊びながら避けていた。そして、攻撃のわずかな切れ間にヘッドバットをくらわせる。

 

「がぁっ!」

 

 悟空が仰け反り少し後退する。ブウの方を見やれば、指でかかってこいと挑発する。

 

「この完全に遊んでやがる……」

 

 突如、横から巨大な気弾がブウの上半身を消し飛ばした。

 

「俺を忘れるんじゃねぇよ」

 

 ラディッツが放った気弾であったが、ブウは何もなかったように復活する。ラディッツを一瞥することもなかった。

 その様子にラディッツは久しく忘れていたサイヤ人らしい怒りがこみ上げる。

 

「ぶっ殺す!」

 

 ラディッツはブウに再び飛び掛かった。

 

「兄ちゃん! ダメだ! そんなんじゃやられちまう!」

 

 ブウはそれを一瞥することもなかった。ラディッツは拳を振りかぶりそのままパンチする……かと思いきや、ブウの腰を掴みにかかった。

 

「?」

 

 ブウはまた打撃で来ると思っていたためか、少し驚いていた。そのまま後ろに回り込んだ。

 

「舐め腐ってんじゃねぇぞ! コラぁ!!」

 

 そのままジャーマンスープレックスを決めた。魔人ブウの頭は完全に地面に突き刺さって埋まった。

 

「カカロット!! 抑えろ!!」

「あ、あぁ!!」

 

 悟空は、ブウの腕を足で抑えつけ足を両腕で掴んだ。

 

「イーヴィ! これでいいだろ!」

「逆さに棒立ちさせるとは、お見事! いやぁ、プロレスで遊んでてよかったねぇ」

「ふざけてる場合か!! 早くしろぉ!! 長くはもたんぞ!」

 

 ブウは、振りほどこうと暴れるが四肢を完全に封じられている。力の差があれどこれほど完璧に抑えられては、簡単には抜け出せない。

 イーヴィはブウの近くまでいきデブのブウにやった時の様に、特殊なエネルギー波を飛ばす。

 

 ブウの背から小さな物体がはじき出され、それは悟飯となった。

 

「うぉっ!?」

 

 ブウの背が元の大きさに戻ったために、ラディッツと悟空の抑えが外れた。ブウの大きさの変化に合わせて抑えることはさすがにできなかったようだ。

 

「予想以上に上手くいったわね」

 

 イーヴィはそれこそ二人が倒されても一人でどうにかする自信もあった。もちろん、悟飯を救出しつつだ。

 

「だが、まだ終わってないぞ」

「あぁ、悟飯も気絶したままみてぇだし」

 

 ブウは地面から飛び出し、怒りの形相を浮かべている。せっかく吸収したものをはぎ取られ頭にきているらしい。

 

「もう私たちの勝ちは決定したようなものだけどね」

「は?」

「いってぇどういうことだ?」

 

 イーヴィは上を指差す。

 

「い、いつの間に……!」

「で、でけぇ!」

 

 

 そこには、惑星と見紛う程巨大なエネルギー球だった。

 

「早く悟飯を連れて離れなさい!」

「あぁ!」

 

 ラディッツと悟空はすぐに悟飯を連れて遠くに飛びさる。

 ブウは巨大なエネルギーに対してエネルギー弾を撃ち込むがそのまま吸い込まれていく。

 

「これが私の元気玉……神としての力が集まったモノ。その名も信仰玉よ!」

 

 イーヴィは信仰玉のすぐ下のところまで瞬間移動した。

 

「これで終わりよ!!」

 

 イーヴィは信仰玉をブウに投げつけた。魔人ブウはそれを受け止めた。しかし、その巨大なエネルギーを押しとどめるのは魔人ブウと言えど不可能だった。

 

「保険をかけておいて正解だったわ」

 

 イーヴィの神としての力はどれだけ多くの人から強い感情を向けられているかによる。ほぼ万能な力ではあるものの大きな事象ほど大きく力を消費してしまい、自身の存続さえ危ぶまれる。今までアイドル活動やら武道会出場、研究開発、都市開発etc……と、様々な活動を行ってなお大きく力が溜まることはなかった。それにも関わらず一連のブウに対する力の行使が可能となったのは偏にドラゴンボールのおかげだ。ドラゴンボールで「すべての人々がイーヴィに対して特別な思いを抱かせる」という願いを叶えたのだ。何故か、イーヴィの関係者に対してはあまり効果がないが、重要なのは数なので莫大な力を手に入れられた。

 

「さようなら、魔人ブウ。さようなら、ドラゴンボールワールド」

「ぐ……ぎぎ……!!」

「また会うこともないでしょうけど、末永く続くといいわね。終わってしまったはずなのにまだまだ続くこの世界をいつまでも楽しみにしてるから!」

 

 それは誰に言っているのか、その場の誰にもわかることはなかった。ただの一ファンの発言でしかないので当然である。

 

「それじゃあね。はぁああああああ!!」

 

 最後の気による一押しをする。ブウは押さえ切れなくなりそのまま圧倒的なエネルギーの奔流に細胞の一片も残さず消し去った。

 直線上の岩山も削り取り、その後信仰玉は宙へと飛んで行った。

 

 

 

 イーヴィは悟空とラディッツと喜びを分かち合い。いつものように最初から倒せただろと図星を突かれたりした。悟飯も無事意識を取り戻した。

 

 

 こうして、本来であれば宇宙の存続さえ危ぶまれるほどの大災厄――魔人ブウをほぼ被害なく倒したイーヴィ。後は元の世界に帰るだけ。一抹の寂しさを感じつつ惜しむことはない。

 

「明日にはお帰りか……」

 

 そう独り呟いた。




次回、エピローグという名の新章に突入します。
つまり、もうちっとだけ続くんじゃ。
予定では3~5話ぐらいで終わらせる予定です。もっと長引く可能性もあるし超の方も気が向いたら書くかもしれません。でも、次で最終章なのは確定事項です。


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イーヴィ編
66 ラスダン出現


 魔人ブウを倒し、それを祝したパーティーを開いた。それは同時にイーヴィにとっては送別会でもあった。それぞれと別れを惜しみつつ、おそらくこうして会うことは二度とないであろうとイーヴィは珍しく寂寥感に苛まれていた。悟空の笑い声もベジータの憎まれ口もイーヴィに向けられることはなくなる。それが本来の状態だ。イーヴィは長い時をここで過ごしたが、結局は漫画の中の世界だ。イーヴィ自身見下しているつもりはないが、自分とは全く違う存在であると、元神と人間という分類以上に全く違う区分の枠組みの存在なのだ。それが交わることがダメなことではないが、いつまでもここに居ては元の世界を楽しむことができなくなってしまう。イーヴィにとってはここはいくつも楽しめる世界のうちの一つでしかない。だが、単なる遊びを超えて長居し過ぎたと少し反省した。元々好きな世界だったが、少々情が移りすぎた。

 

「だけど、まぁ。今日一晩ぐらいはいいよね……」

 

 朝には帰ろうと自宅で床に就く。会社に書置きだけして、すぐに元の世界に帰ろう。

 

 

 翌朝、窓から日差しが入り込む。清々しいほどの快晴であった。特に持ち帰る物もないので絵本入り込み靴だけ用意しようと仕舞って置いた金庫を開けた。

 

「……ない」

 

 漫画のキャラがイーヴィの世界に出ることは叶わないので、盗られたところで悪用されることはないがこれでは帰れない。

 

「作ればいっか」

 

 と、思ったのだが作り方を覚えていないので力を使って作り出そうとした。

 

「あれ?」

 

 ブウとの戦いのときには溢れかえると錯覚するほどにあった力がない。もはや万能で自分にできないことはないと思えた力の一切がない。

 冷汗が流れる……自身の生身の状態が保っていられるのが不思議なくらいだった。念のため自身の身体を機械の身体へと移す。

 

 唐突に暗くなった。あれ程晴れていたのに夜になったのかと思うほどの暗さだ。地球のドラゴンボールはまだ石の状態のはずなのに……と、窓から空を見上げるとそこには超巨大な傘状の物体があった。というより……

 

「ダイクロフト!?」

 

 某ゲームに登場するラスダンそのものであった。それは空中都市と呼ばれる建造物であり、ベルクラントと呼ばれるビームを地上に向けて撃ち込み、粉砕した地表を空に巻き上げ空に大地を作るシステムを備えていた。

 ベルクラントの発射口は傘で言えば柄の部分にあたる場所。剣の様になっているところから発射される。形が丸々一緒なので同じ機能を持っていると考えていいだろう。

 

「あんなもの創れるの私しかいないはず……」

 

 技術力だけで言えばドラゴンボールに登場する天才科学者ならやりかねないレベルだが、デザインが他作品まんまである。そんなことは、その知識がなければ作ることは不可能だ。何よりイーヴィ以外がこんなことをするとは考えられない。

 元の世界でも自身と同一の存在であるはずのディザルムと敵対することになったことがある。だが、ディザルムであればこんなことをしないのである。パロネタ作る様な力があったらもっと実用的、もしくは直接目的を達成させる方向に力を使う。であれば、自身以外にこのようなことをするはずがないのだが、あんなものを作った覚えはない。

 

「誰か助けて……」

 

 意味不明な状況にすることは慣れていても意味不明な状況にされることは酷く不慣れだった。こうなればやることは一つしかないのである。

 

 

 

 

 

 

 

「助けてください! お願いします!」

 

 土下座である。まずは近場に居たラディッツに頭を下げていた。

 

「きゅ、急にどうした……!? らしくもねぇ」

 

 社長椅子に置いてあった書置きを持っていたが、まだ開けてはいないようだった。

 

「実は……今日、元の世界に帰ろうとしたんだけど帰れなくなっちゃって……」

「この書置きは、それに関することだな? それで?」

「おそらく、今空に浮かんでいる物体のせいなので助力を求めた次第です、はい」

「自分だけで何とかできんのか?」

「何故か私の力のほとんどがなくなってて……多分、私だけじゃどうにもならないの」

「ふっ、言い様だな。散々、俺らをコケにしてきたツケが回ってきたわけだ」

 

 イーヴィは何も言い返せず俯く。その様子にラディッツが気まずそうにする。

 

「……あまりしおらしい態度はよせ。調子が狂うだろうが。いつもみたいに傍若無人にふるまえばいい」

 

 どこか気恥ずかしそうに言う。本人的にもこの発言は自分らしくないのだろう。イーヴィ的にはもう地球に馴染みすぎててそうは思わないが。

 

「いや、今回の件はほぼ間違いなく自業自得なので……何をやらかしたせいでこうなったかはわからないんだけどね」

「ある意味、いつも通りだろうが」

「え?」

「いつもは自分一人で対処できて、今回はできない。それだけだろ。だったら、いつものように誰かをこき使えばいい。俺とかをな」

 

 少し自虐的に思える発言だったが、気遣いが感じられる優しさに溢れる言葉だった。

 

「……あなたいつの間にそんなイケメンみたいなこと言えるようになったの?」

「茶化すなら手を貸さん」

「ごめんなさい。謝るから助けて」

「全く……他の奴には頼んだのか?」

「いや、まだだけど?」

「なら、俺も手伝ってやる。イーヴィが頭下げて助力を求めるってことは、俺一人じゃまだまだ戦力は足りないんだろ」

「あなた、本当に察しが良いわね。ホントにラディッツ?」

「お前は俺を馬鹿にしているのか? 協力して欲しくないのか?」

「ごめんなさい。見捨てないで!」

 

 ラディッツの膝に縋りつくように寄りかかる。

 

「ええい、くっつくな! 鬱陶しい! こんなとこ見られたら変な誤解されるだろうが!」

「社長、失礼します。少しお伝えしたいことが……」

 

 秘書の一人が入ってきた。イーヴィとラディッツを見やると咳払いをした。

 

「失礼しました。後ほどお伝えします」

 

 ドアを閉めて去っていった。足音から察するにかなり早歩きをして去っていった。

 

「絶対、勘違いされたぞ」

「私は帰るから関係ないね」

「おい……」

 

 今までにない低いトーンの発言だった。さすがのイーヴィも少しビビった。

 

「冗談よ、冗談。ちゃんとフォローするから」

「揶揄う余裕があるなら手伝う必要なくないか?」

「絶っ対に必要になるから! 私を助けて!」

「お、おう。わかったから。少し落ち着け」

 

 

 

 次に協力を取り付けるとしたら距離的にはベジータだろうか……ついでに、トランクスも連れてこよう。

 ラディッツには、悟空たちを連れてくるよう伝え、イーヴィはカプセルコーポレーションに向かい、すぐにブルマを見つけた。

 

「ブルマ~」

「あら、イーヴィ。どうしたの? 何か用?」

「今日はちょっとベジータに用があったんだけど、居る?」

「ベジータならいつものトレーニングルームよ」

「ありがとう」

 

 急ぎ足でトレーニングルームに向かう。が、

 

「ちょっと、待ちなさいよ」

 

 ブルマに呼び止められた。

 

「何?」

「空に浮かんでるあれ。あなたの仕業じゃないの?」

「私のせいかもしれないけど、なんとも……」

「ずっとあそこに居られると、鬱陶しいのよ」

「そう言われても……何とかするために協力を仰ぎに来たんだけど」

「貴様、何の用だ」

 

 ちょうどいいタイミングでベジータが現れた。

 

「やぁ! 今日はお願いがあって来たんだ」

「断る!」

「まだ何も言ってないよ」

「貴様とかかわっても碌なことがない。カカロットかラディッツにでも頼めばいいだろう」

「既にどっちにもお願いはしているんだ。その上でベジータの力を貸してほしいの。ついでにトランクスの力も……」

「え!? なになに!?」

 

 何かを嗅ぎつけたのかトランクスがやってきた。

 

「トランクスは協力してくれるよね?」

「いいよ! で、何を手伝うの?」

「空に浮かんでるあれを撃墜させるのよ」

「それぐらいならイーヴィさんでもできるんじゃないの?」

 

 あの大規模な物体に対してそんな感想が出てくるあたりが、異常極まりないのだが……実際のところ、本当にただ空に浮かんでいるだけの建造物ならなんとかできただろう。

 

「試してないけど……多分、無駄だと思うからやってないのよ」

「ほう……貴様ができないのか?」

「多分、外部からの攻撃じゃ傷一つ付けられない……と思うよ」

「おもしろい。俺がぶっ壊してきてやる」

「ちょっと! あんなの壊したら瓦礫が降ってくるじゃない!」

「心配するな。跡形もなく消し飛ばしてやる」

「なんかすごそう!!」

 

 ブルマ、トランクス、ベジータは外へと出た。見上げるは巨大空中建造物ダイクロフト……のようなもの。ベジータは空に浮き上がり、超サイヤ人へと変身する。

 

「はぁぁぁぁああああ……!!」

 

 ベジータが気を高めていくとそれによって地響きが起こる。当然のように以前より力を増しているのは「さすがはベジータ」と言いたくなるイーヴィだったが、確信に近いレベルで無駄であるとも思っていた。

 

 ベジータは両腕を広げエネルギー球を創り出し、それを前に持ってきて重ね合わせる。

 

「ファイナルフラーッシュ!!」

 

 技を撃った余波で暴風が吹き荒れる。エネルギー波はそのままダイクロフトに直撃……しなかった。ファイナルフラッシュはバリアに阻まれていた。ビーム状のエネルギー波であるファイナルフラッシュはそのままバリアを破壊すべく突き進もうとする。

 

「ちっ! はぁああああ!!」

 

 ベジータは更に力を込めた。それでもバリアに傷一つ付けられる様子はない。次第にファイナルフラッシュの勢いも弱まり、ついには消えた。

 

「そ、そんな……! パパのファイナルフラッシュが効かないなんて……」

 

 ベジータ以上にショックな様子のトランクス。ベジータは不満気に舌打ちするばかりであった。

 

「それで貴様はあれをどうやって墜とすつもりだ?」

「中に乗り込んで元凶を倒すつもりよ」

「元凶? また、妙なことになっているようだな。だが、貴様のことだ。敵の正体ぐらいはわかっているんだろう?」

「推測はできるけど、確信がないのよ。間違いなく言えることは今回の敵は私と全く同じことができるってことぐらい」

「同じことだと? ……いいだろう。協力してやる」

「ホント!?」

「ただし、俺の好きなようにやらせてもらう」

「それだと協力してもらう意味が……」

「なら、この話はなしだ」

「それでいいです。それでお願いします」

「ようし。俺は先に行っているぞ」

 

 ベジータはダイクロフトへと飛んで行ってしまった。

 

「待ってよ! パパ!」

「トランクスは待って!」

「なんだよ、イーヴィさん」

「一応、作戦というか……作戦って言うにはあまりに杜撰だけど奥の手を使うために君の力を借りたいの」

「奥の手?」

「本当はベジータも協力して欲しかったんだけど、人数が足りなくなるから」

「人数?」

「サイヤ人が6人必要なんだ。悟空と悟飯と悟天とラディッツ、それにトランクスで1人足りないんだ」

「それパースちゃんはダメなの?」

 

 本来なら存在しないキャラなので忘れていた。まだ胎内にいるサイヤ人の女の子でもいいなら既に生まれているサイヤ人の女の子がダメなわけがない。

 

「それだ! ナイスだよ。トランクス!」

 

 トランクスが照れる。ブルマはともかくベジータがトランクスを褒めるところは想像がつかない。ブウ編では、少し親バカっぽさを出してはいたが。

 そんなことは置いておいて、本当はやるつもりはなかったのだが緊急事態なのでやってしまうことにした。本当は制限時間があるためダイクロフトの中で行いたいが、何が起きるかわからない。なので乗り込む直前に悟空を変身させてしまおう。

 

 

 

 

超サイヤ人ゴッドに。




というわけで、最終章突入です。


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67 ラスダン攻略

とうとうヤツが……


「でっけぇなぁー」

 

 悟空が空を見上げ思わず口に出す。

 空に浮かんでいる都市なのだから当たり前と言えば当たり前かもしれない。ここにあるのはそんな意図で作られたものではないだろうが。

 

「それでみんなを集めてどうすんだ?」

「正直、今回の敵がどれくらいの強さなのか私には全くわからないの。今までの敵は事前に知ることができていたから、それに合わせて出力を調整したりしていたの」

「そういや、イーヴィが全力だしてるとこ見たことねぇな」

「それは誤解よ。その時々によって力にぶれがあるんだもの。誰もが悟空みたいにずっと強くなるとは限らないの。それにここに居る全員いつかは老いて衰退する時はやってくるから」

「亀仙人のじいちゃん見てるとそうは思えねぇけどな」

「あれは特殊過ぎる例なのでノーコメント。って、話題が逸れたわね」

 

 イーヴィは咳ばらいをして、場の雰囲気を改める。

 

「私は力を吸い取られて弱体化しているから全力が出したくても出せないので、悟空を最大限強化したくてみんなに集まってもらいました」

 

 強化という言葉に皆が疑問符を浮かべる。

 

「悟空を超サイヤ人ゴッドにします」

「すーぱーさいやじんごっど?」

 

 悟天の幼い声が妙に響く。ブウ編での一切の活躍がなかったためか、しかしその後の性格を考えてもあまり違いはないように思う。超での活躍ほとんどなかったし……

 

「サイヤ人の神話に登場する人物らしいんだけど、正しい心を持ったサイヤ人5人が手を携えてもう1人のサイヤ人に心を注ぎ込むことでなれるのよ」

 

 悟天とトランクスとパースがよくわかってなさそうな顔をする。訂正、悟空もよくわかってなさそうだ。

 

「要は手を繋げばいいの。それで心を注ぎ込む……って言ってもこればっかりは言葉じゃ説明できないし、とりあえずやろっか」

 

 手を繋ぎ輪になり、端にいる悟飯とラディッツが悟空の背に手を当てる。

 しばらくすると、中心にいるパースから光が広がり隣にいるトランクスと悟天へ更にラディッツと悟飯へと伝播し、悟空に伝わる。

 どうやら上手くいったようだ。

 悟空の髪と瞳の色が赤くなり、身体の方は少し細くなっていた。

 

「……すげぇパワーだ」

「そうなんですか? 僕には何も感じられませんが」

「どうも神の気って言うのは、普通の人間には感じられないらしいんだよね。私自身の力も神の気に類するものみたい。だから、私にはわかるよ。途轍もない力だって」

 

 だが、自身の力をほとんど奪われたとするとそれに勝てるかはわからない。それこそ誇張なしに無敵だと思える程度に力を蓄えていたのだ。それを十全に使えるとなれば……嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

 

 その頃、ベジータは既にダイクロフト内に侵入していた。誘い込むように扉が開いており、罠だろうと理解しながらも突入していた。ベジータには何が来ようと全て叩き潰して進めると思っているからだ。

 とにかく中心部へと向かっているつもりだが、巨大すぎる場所のため方向感覚など掴めるはずもない。その上、道は入り組んでおり、転送装置も使って移動する。イライラしたベジータは壁を破壊しようとしたが、破壊することは叶わず、結局地道に進むことになった。

 

「んなっ!?」

 

 自身の勘に従い進んでいくと、ベジータをして素っ頓狂な声をあげてしまう存在がいた。

 自身の小さい頃の記憶。自身の父親であるベジータ王を頭を足蹴にし、顎で使っても平然とできる存在。睨みを利かせるだけで、身動きができなるほどの威圧感。

 痩せた猫の様な見た目を持つその者は……

 

「な、なんでこんなところに……破壊神ビルスが」

 

 しかし、ビルスは台座の様な寝床ですやすやと眠っていた。

 柄にもなくビルスを起こさないように慎重に過ぎ去ろうと移動するベジータ。

 

「お前ぇ!!」

「!!?」

「むにゃむにゃ……それおいしそうだなぁ……」

「ね、寝言か……」

 

 ベジータは心臓が飛び出るかと思うほどに焦った。

 

「ぶぇっくしゅ!!」

 

 次にはビルスがくしゃみをし、ベジータの横を何かが通過した。

 爆発音と共に壁に特大の穴を開けていた。

 

「俺が全力を使っても壊せなかった壁を寝ぼけたまま破壊しやがった……!」

 

 破壊神だけが扱う破壊のエネルギーによる攻撃。さすがに破壊神の攻撃を防ぐほどの壁ではなかったようである。

 自身の不甲斐なさに怒りを覚えるベジータだが、同時に今の攻撃に当たらなくて冷汗をかきながらほっとしている自分にも気づいてしまった。

 

「くそぉ……!」

 

 そうぼやきながらビルスが破壊してできた穴を進んだ。

 

 

 

 

 

 

「ん? なんか今爆発音がしなかった?」

「いや、聞こえなかったけど?」

「気のせいかなぁ……嫌な予感しかしないよ」

 

 戦うことになったら即詰みが確定しているような存在が中に居ることも知らず、ダイクロフト内に侵入した悟空、悟飯、悟天、ラディッツ、トランクス。そして、イーヴィ。パースは、かわいそうだが置いてきた。

 

「パワーアップしたのはいいけどよ。戦う相手がいないんじゃもったいねぇな」

「そんなこと言われても、中でやったんじゃ何が起きるかわかったもんじゃないし、待っててくれるとも限らないし」

 

 時間制限もあるだろうから、戦いが始まる直前がベストだったのだが、そもそもなれなくては意味がないので予めにしておくほかなかった。

 広めの通路に出るといたるところに鏡が張り付けられていた。そして、奥まで進んでも道はなく鏡があるだけだった。

 

「なんだ……行き止まりかぁ……戻って別の道を探すか?」

「いや多分、鏡のどこかに道があると思うから手分けして探してみましょう」

 

 

 あらゆる場所の鏡を触っていく。

 元のゲームだと頻繁に鏡の中を出入りしていた様な気がするが……

 

「痛てっ、何するんだよトランクス君」

「俺、別に何もしてないぞ」

 

 悟天とトランクスは二人で探索していたが何かあったようだ。

 

「えぇ? じゃぁ、誰が僕のことぶったの?」

「知らねぇよ。寝ぼけてたんじゃねぇのか?」

「そんなはずないよ」

「痛てっ、何すんだよっ! ……ごて……ん?」

 

 トランクスは殴られたと思って振り返って、そこに居たのはトランクスだった。

 

「なんで!?」

「どうした!? トランクス!」

 

 仲間が全員集まるとそこには確かにトランクスが二人いた。

 

「どうなってんだ? トランクスが二人いるぞ」

「片方は偽物よ」

「このぉ! 痛ぇ!!」

 

 トランクスが偽物トランクスに攻撃を仕掛けるが、偽物は鏡の中に消え去った。そのためトランクスは鏡にパンチすることになってしまった。

 鏡の中のトランクスは、何かポーズを取っていた。

 

「あれ? 僕もいるよ」

 

 そして、その隣には同じようなポーズを左右対称に行っている悟天。

 口は動いているが声は聞こえない。妙な動きでそのまま二人は近づいていく。もしかすると……

 

「なんだよ、あのだっせぇ踊り」

「もしかしなくても、フュージョンだよ!」

 

 そして、鏡の中で指が合わさり眩いほどの光が放たれた。そして、そこに表れたのはトランクスと悟天が合体した姿。ゴテンクス。しかも

 

「あいつ、超サイヤ人3になってっぞ!?」

 

 最初からコレである。すぐに鏡の中から飛び出して来たかと思えば、すぐに鏡の傍にいたトランクスと悟天は吹き飛ばされてしまった。

 

「悟天! トランクス!」

 

 今の一撃で二人とも気絶してしまったようである。

 ゴテンクスはその様子を見て、大笑いしているような様子だ。声は全く聞こえないが。

 

「……あいつ、なんかムカつかんか?」

「まぁ、性格なんかも同じなんでしょ。あの2人の合体した性格かなりお調子者だろうから」

 

 事実、原作でもお調子者だった。調子に乗っては痛い目を見ているのに全く懲りない。そんな合体戦士だ。でも、結構強いから性質が悪い。

 

「だが、この感じは悟飯のパワーにも匹敵するんじゃないか?」

「実際、それぐらいの力はあるでしょうね」

「それは何か……すごく複雑な気分になります」

 

 原作ではゴテンクスを吸収したブウが悟飯を圧倒していたぐらいである。もちろん、悟飯が一方的にやられていたわけではないが、普通に戦っても厳しい戦いになっただろう。

 

「オラにやらせてくれ」

「いや、まぁ、それはいいけど……」

「なんだよ?」

「多分、今の悟空なら手加減しても一撃だよ?」

「あんだけ強ぇならそんなことねぇと思うぞ」

「そう思うならそれでいいけど」

 

 悟空はうきうきした様子でゴテンクスの前まで移動する。

 

「待たせて悪かったな」

 

 ゴテンクスが突撃を仕掛ける。そのまま頭突きをするつもりなのだろうか。悟空は、

難なく躱してみせ、いなすように背中に手刀を当てた。ゴテンクスは地面に叩きつけられるように落下した。そして、ゴテンクスはそのまま霧状になって消えた。

 

「マ、マジか……」

「まぁ、そうなるよね」

 

 超サイヤ人ゴッドは悟空の超サイヤ人3をデコピンで倒すような存在に6割ほどの力を引き出させるのだから、一撃で倒せてしまうのも必然だろう。

 

「カカロットのやつ……あんなに強くなってたのか」

「それほど力も入れていなかったはずなのに……次元が違いますね」

 

 今までならば悟飯が最強格であったはずなのに、それに匹敵するパワーの持ち主が現れ、それをあっさりと一撃で倒してしまう悟空。尊敬する父のことであるため落ち込んだわけではないが少しばかり釈然としない気持ちがあった。

 ラディッツは、既に強さを大きく超えられてしまったこともあってかそこまで大きなショックはなかった。気の大きさ、戦闘力だけが強さではないとイーヴィを通じて知ったからというのもあったが、弟を誇らしく思う気持ちも大きくなっていたからだった。

 

「お、この鏡。中に入れるみてぇだぞ」

 

 先ほど、ゴテンクスが出てきた鏡に触れるとそのまま中に入れるようになっていた。

 

「2人は一応連れて行きましょう。また、襲われないとも限らないし」

「そうですね」

 

 悟飯は悟天を、ラディッツはトランクスを背負い、全員で鏡の中へと入った。

 鏡の中に入ると先ほどとは左右反対になった通路だった。再び奥に進むと行き止まりに鏡が置いてあり、その中を通ると左右が元通りになった。

 

「変なとこだなぁ」

「私が知っているのに寄せて作ってあるね。若干違うけど」

 

 自分がやっても多分同じようなことをすると思う意匠や仕掛け、手抜き具合。進めば進むほど自分が作ったとしか思えない建造物である。そして、私ならそろそろ嫌がらせの二段階目をやるころだ。

 

 少し開けた場所に出た。そして、そこはベジータも通った場所でもあった。

 

「げぇっビルス!」

 

 イーヴィも思わず口に出てしまった。というよりもこの場でその存在を知っているのはイーヴィただ一人なので恐ろしさがわかるのもイーヴィただ一人。

 

「なんだ? 誰か寝てるぞ」

「みんな静かに! 絶対に、絶対に、ぜ~ったいに! そこにいる人……人?を起こしたらダメだからね! そんで動きに常に警戒して!」

「お、おう。でも、イーヴィが一番うるさいぞ」

「それぐらいやばい相手なのよ」

 

 開けた部屋の中心には破壊神ビルスがすやすやと眠り続けていた。

 悟天とトランクスが気絶していてよかったとこの時ほど思うことはないだろう。

 

「そんなに強ぇんか?」

「今の悟空でも100%勝てない」

「そんなん言われたら余計に気になんじゃねぇか」

「そう思っても絶対に何もしないでね。機嫌損ねたら星を破壊するとか無茶苦茶なことをするからこれは地球のためでもあるの。悟飯とラディッツもいいね」

 

 悟飯とラディッツは心配ないと思うが、念のため注意しておく。問題はやはり悟空なのだが……

 

「道がそこに開いているとこしかないわね」

 

 壁が不自然な形に壊れていた。爆破されたというよりも消し去られたような跡だ。焦げ跡が全く残っていない。

 

「みんな行こう」

 

「おーい。起きて試合してくれよ」

「馬鹿っ……!」

 

 悟空がビルスの耳元で起こしに行っていた。悟空がビルスを起こそうと触れると思った瞬間、すり抜けた。

 

「どうなってんだ? すり抜けちまったぞ」

 

 イーヴィは呆然とする。これは間違いなく自分に向けられた悪戯なのだ。ビルスの恐ろしさを理解している者ならば恐怖しないわけがない。普段は自分が理不尽なことをしているつもりだが、それを超える理不尽が破壊神なのだから。だが、実際には更にそれを超える理不尽が存在するのでもう何が何だかわからない世界である。どちらも機嫌さえ損ねなければ害はないが、恐ろしいことに変わりはない。

 

「……多分、ホログラムね。私はその破壊神ビルスの恐ろしさを知っているから、私が恐怖して驚愕している様をみて楽しんでたんでしょうね」

「へぇ……イーヴィにも怖ぇもんはあったんだな」

「そりゃ、私にだって怖いものぐらい……」

 

 ビルスのホログラムが寝返りをうつと尻尾が悟空へと向かい

 

「ぐわぁっ!」

 

 悟空を吹き飛ばした。悟空はそのまま壁に叩きつけられた。

 

「父さん! ホログラムじゃないんですか!?」

 

 悟飯が驚きの声をあげる。

 

「それは間違いないはずなんだけど……! もしかしたら、力さえも再現する空間なのかも」

「力の再現?」

「そこのホログラムは、実際にビルスの姿を映し出しいて寝返りだったり、寝ぼけて動いた攻撃だったり、その力の強さや動きまで反映させてるとしか言えないわ」

「……出鱈目な技術だな」

「うぉぉぉ……! 痛ててて……」

 

 悟空は尻尾でぶたれた頬を抑えていた。

 

「超サイヤ人ゴッドじゃなかったらやばかったかもね」

「さすがに死にはしねぇと思うけど、気絶ぐらいはしてたかもしんねぇ……」

「さっさと、ここを出ようか」

「戦ってみてぇけど、実際にここに居るわけじゃねぇんだもんな」

 

 無駄に体力を消耗をさせられつつ、次の部屋へと向かった。




(破壊神は)現れなかった。


超の要素は、また出す予定です。


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68 初めての絶望

 更に先に進むと開けた部屋に出た。天井も高く、そしてその最奥には巨大な球体が置いてあった。某ゲームにおいては神の眼と呼ばれる物体だ。そして、その目の前には

 

「ベジータ!」

 

 ラディッツがベジータに駆け寄った。ベジータはボロボロの状態で倒れ伏していた。ラディッツがベジータの上体をゆっくりと起こす。

 

「ラディッツか……ということは、イーヴィのやつも来ているのか」

「あぁ! 大丈夫なのか!?」

「ちっ、結局やつの言う通り……というわけか」

「何を言っているんだ?」

「いいか……よく聞け……この戦い、俺たちに勝ち目は、ない……!」

「お前らしくないじゃないか……!」

「さっさと逃げろ……」

 

 ベジータはそのまま気絶した。

 

「ベジータ!?」

「逃げたくば逃げるがいい」

 

 この声は!?

 

 唐突に上から人がゆっくりと降りてきた。

 その者の髪は金の長髪であり、後ろで束ねられていた。右手には黒い剣が握られていた。その姿は某ゲームのラスボスにして、このラスダンの主のもの――ミクトランのものだった。

 

「追いかける気はない。私は降りかかる火の粉を払ったまでだ。もっとも、イーヴィは二度と元の世界へとは帰れなくなるがな」

 

 そして、その声はベジータと同じものだった。悟空たちはそのことに驚いているようだった。

 

「なんだ? 声に驚いているのか? これに大した意味はない。ただの演出だよ。なんならこの喋り方もこの剣も服も、この空中都市ダイクロフトもそうだ」

「悪趣味ね」

 

 イーヴィは思わず口をついて出る。

 

「それをお前が言うか? 私の正体にも勘づいているのだろう?」

 

 普通なら前後が繋がらない言葉だが、推測が確かなら繋がる言葉だ。

 

「そうね。どういう理屈かはわからないけど、それ以外に考えられない。あなたは神宮寺イーヴィ。私自身よ」

 

 全員が驚く。

 

「どういうことですか?」

「言葉通りとしか……」

「その通りだ。と言っても、同じ名前では都合が悪い。この場はディザルムと名乗らせてもらおうか。元の姿にもならんでおこう。ややこしくなるからな」

「それで、何が目的なの?」

「それを聞くか? 私が元悪神がイーヴィが自分にそれを聞くか? はっはっはっはっは!!」

 

 ミクトランの姿をしたイーヴィ……いや、ディザルムは笑う。悪党の様に。

 

「嫌がらせに決まっているだろう」

 

 いつも通りだ。全員の思考が一致した瞬間だった。

 

「なら、もう十分なんじゃないですか? 僕たちが戦う必要はないじゃないですかね」

 

 悟飯はもはやここで戦う意味を失していた。イーヴィは良い人ではないが、悪い人ではない。その同一人物であるし、非道な行いでないのであれば戦う理由がない。

 

「ならん。私はそこに居る私――イーヴィの心を徹底的に叩きのめさなければならん。そのためなら、自身の信念さえ曲げよう。上のモニターを見るがいい!」

 

 ディザルムが上を指差す。モニターがあり、そこには西の都……カプセルコーポレーションが見えた。

 

「さぁ……ベルクラント発射だ!!」

 

 次の瞬間には、西の都をレーザーが襲った。巨大な爆発が起こり、その跡には巨大なクレーターだけが残った。

 

「さて、地球が更地になるまで何時間かな?」

 

 その様子を見た、悟飯が怒りに燃えた。

 

「このぉ!!」

「許せねぇ!」

「野郎!!」

 

 悟飯とラディッツと悟空は一斉にディザルムに飛び掛かった。しかし、三人同時の攻撃にも拘わらず、ディザルムは目をつむったまま、優々とかわしていた。

 

「あぁ、ちなみにだが……」

 

 悟飯とラディッツと悟空の連続攻撃が受け止められた。

 

「ベジータを倒したのは私ではない」

 

 その三人の攻撃を受け止めたのは、ディザルムではなかった。

 

「きぇっ!!」

 

 何者かが気で三人をまとめて吹き飛ばした。

 

「な、なんでてめぇがここにいやがる! ……フリーザ!」

 

 敵の正体が分かった以上、不思議なことではない。何故なら、イーヴィの神としての力はまさに万能。神龍と同じく、いや、それ以上にどのような願いも叶えられる。

 

「それはもちろん、地獄から蘇ったのさ。ラディッツ」

「ならもう一度地獄に叩きこんでやる!!」

 

 超サイヤ人となって、フリーザに飛び掛かる。が、尻尾を使ってラディッツの腕を掴んで止めた。そして、そのまま悟空たちの居る方に放り投げた。

 

「ぐあっ」

「大丈夫か? 兄ちゃん」

「あ、あぁ」

「そう焦ることはないでしょう。兄弟共々じわじわと苦しめて殺してさしあげます。そこの元悪神もね……!」

 

 フリーザが蘇り、超サイヤ人のラディッツの攻撃が容易く避けられたということは、それはとてつもなくまずい状況かもしれない。超サイヤ人より強いフリーザとなるとここにホログラムとはいえビルスが居たことからも、ほぼ間違いなくアレになることができるだろう。

 

「そう簡単にはいかないと思うぜ」

 

 悟空はフリーザの目の前に立った。

 

「ほう……以前とは雰囲気が違いますが、それも超サイヤ人ですか?」

「あぁ、超サイヤ人ゴッドっつうんだ」

「超サイヤ人ゴッド……ですか。その言葉通りだとすると神に近しい存在になったということでしょう? まさかサイヤ人の神と闘うことになるとは思ってもいませんでしたよ」

「オラもまたおめぇに会うとは思ってなかったぜ」

 

 2人は互いに歩いて少しずつ距離を詰めていく。どちらも笑みを浮かべているが、その意味は違う。

 

 互いにパンチを当てられる距離まで近づくとフリーザが先に右のパンチを仕掛けた。悟空はそれを左手で掴んで止め、仕返しとばかりに右の拳を出すがフリーザも掴んで止めた。

 気の高まりが、ダイクロフトを揺らす。

 

「フリーザの野郎……! なんてパワーをしてやがる。以前とは比べ物にならん」

「えぇ……! 底が知れないです」

 

 はっきり言って悟空に勝ち目は……ない。私――イーヴィがディザルムに勝てる可能性も……ない。だが、それは諦める理由にならない。なんとしてでも元の世界に帰る。例え全てを犠牲にしてでも。

 

 

 

 

 

 悟空とフリーザの攻防は熾烈を極めた。戦局的には悟空の方が押している。だが、悟空が必死に見えるのに対してフリーザには常に余裕が見えた。

 

「はぁっはぁっ、おめぇ……! まだ、本気出してねぇな!」

「えぇ。もちろん。本気を出すまでもなさそうですからね」

 

 悟空は既に息が上がっている。おそらく、超サイヤ人ゴッドでいられる時間も僅かだろう。

 

「父さん!」

「カカロット!」

 

 2人に手を出せるような次元の闘いではなかった。そのため、声をかける以外に悟空を手助けする手段がない。

 

 だが、イーヴィはゆっくりと逆転の芽を掴まんとしていた。

 イーヴィは気配を隠したまま神の眼に近づいていた。それには、間違いなく神としての力――エネルギーが大量に込められている。それを奪い取れば、逆転できずともまともな闘いにはなる。そして、それは目の前まで迫っていた。

 

 解析――間違いなく、これに私の持っていたはずの全エネルギーがある。これを取れば逆転するのは簡単だ。

 

 すぐに回収を……って、パスワード!?

 電子機器類において最もポピュラーなセキュリティ。

 

 そう簡単に取り戻させてはくれないか……これを間違えたら何が起こるのやら……唾も出ない身体だが固唾を飲む。

 チラリとディザルムの方を見るとこちらを見て笑みを浮かべていた。

 わかっててあえて止めない。普通なら余裕をこきやがって!と怒るのだろうが、これをしているの相手は自分だ。それをするということは、間違いなく例えこれを取り返すことができたとしても勝つ自信があるのだ。それがわかってもそれしか勝つ手段が浮かばないのでやるしかないのだが。

 

 自分が付けそうなパスワードを入力し、一呼吸おいてエンターキーを押す。

 

『パスワードが違います。後、4回間違えるとロックします』

 

 即アウトの可能性も考えたが意外と有情である。

 ディザルムはこちらをチラリとみてまた笑った。

 やはり狙ってやっているのだ。間違えても正解してもどちらでもいいと思っているからこその反応だ。それでも、ここ以外には僅かな光明さえない。

 

これだ!

『パスワードが違います。後、3回間違えるとロックします』

 

それじゃあ、これ!

『パスワードが違います。後、2回間違えるとロックします』

 

くそっ、なら、これで!

『パスワードが違います。後、1回間違えるとロックします』

 

後、一度間違えたらどうあがいても詰みだ。ならば、ここで命ギリギリまで使うしかない。自身に残った僅かな神としてのエネルギーを使い、パスワードを導きだす。

 

その答えは「a」

 

 自分に馬鹿にされている。非常に複雑な気持ちである。たった一文字、1byteである。自分の大切な何かが込められているかと思えばそんなことはなかった。元の世界での友人の名前やかつて愛した者の名を入れていたのに、こんな答えとは思わなかった。

 だが、今は苛立っている時間さえない。一刻も早く力を回収しなければ、勝ち負け以前に死んでしまう。全て回収する!

 一気に力が満ちてくる。だが、唐突に供給は止められた。

 

『これ以上のエネルギー供給には上位管理者権限が必要です』

「嘘でしょ……!」

「はっはっはっ! 中々、良い演出だっただろう? 絶望させるのに挙げて落とすのは常套手段。落差が大きければ大きいほどショックも大きかろう?」

「まぁ……私がすることだしそんなことだろうとは思ったけど……!」

 

 何をするかまではわかっていなかったが、本当に悪質である。そして、やっぱり自分がやりそうなことだった。

 

「ここで勝負を決めるぞ、フリーザ。変身しろ」

 

 フリーザのこめかみがひきつっているのが見えた。

 

「……それは構いませんが、ディザルムさん。その声で指図するのは止めていただけませんか。命令されるだけでも腹が立つのに、その声は余計に虫唾が走ります……!」

「それは悪かったな。この姿の持ち主の声をそのまま出しただけなんだが……ならば姿も変えよう」

 

 ディザルムは瞬時に見た目が変わった。その姿は、ドラゴンボールのキャラでもなければ他作品のキャラでもない。黒髪の、日本ならどこにでもいそうな至って普通の男子学生の様な姿。だが、その姿はイーヴィにとっては特別だった。

 

「あなた……本当に嫌なことをするわね……!」

「いいだろう? ここにはいない友達の姿だ」

 

 元の世界での友人。好きで飛び込んだこの世界だが、決してここで会うことはできないはずの人だ。

 

「さて、そろそろこの闘いにも飽きてきましたし、本気を見せるとしましょうか」

 

 フリーザが気を貯めている。黄金に輝くその色は、まるで超サイヤ人のようだ。

 

「はぁあああああああ!」

 

 フリーザの白い肌の色も金色に染まる。細部のデザインも変わっているが、重要なことではない。このままでは勝機がまるでない。

 

「安っぽいネーミングですが、ゴールデンフリーザとでも言っておきましょうか。あなた方であればこの姿がどれほどの強さもよくおわかりになると思います」

「……あぁ、すげぇな。これ程とは思わなかったぜ」

 

 素直に感心の声を上げる悟空。

 悟空もベジータも現状では超サイヤ人ブルーになることは叶わない。何をどうしようと無理だ。例えなれたとしてもゴールデンフリーザのパワーそのものはブルーを超えている。スタミナが少々劣っていたぐらいだ。

 

「おや、諦めたのですか?」

「? まだ諦めたつもりはねぇぞ」

「いえ、変身が解けているものですから、てっきり諦めたのかと」

 

 悟空の超サイヤ人ゴッドも解けていた。悟空は指摘されて初めて気づいたようだ。

 

「これで詰み……なの?」




さて、こっから逆転どうしましょう。一応、考えてはあるんですけどね。納得できるオチかなぁ?と既に心配です。


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69 奥の手

これはやっても良かったのだろうかと疑問に思いつつも終盤だし別にいいよね的なノリ。


 諦めるには、まだ早い。

 まだここで誰も死んではいない。

 というより、私と同一人物だと言うディザルムが好んで人を殺すことは考えづらい。西の都を破壊したのは、おそらく悟飯たちの怒りを焚き付けるためで、闘うことを引き起こすためだ。それは何のためか。本人も言った通り私への嫌がらせだろう。ならば、何故私に嫌がらせをするのか――

 しかし、この考察をしている様な時間はない。今できる最善を尽くす以外にできることはない。少し取り戻した力でできる対抗策。少しと言っても、これだけあればかなり色々できそうだ。

 

 

 

 

「さて、どの様に殺してさしあげましょうか……」

「へ……万事休すか……?」

「フリーザ!!」

 

 悟飯が大声で叫ぶと同時に気弾を放った。フリーザは飛び上がって避けた。悟空は、爆風にあおられながらも何とか立っていた。

 

「くたばりやがれぇ!!」

 

 フリーザが飛び上がった、その背後からラディッツは、次元刀で斬りかかった。

 

「殺った!」

 

 フリーザは脳天から真っ二つに……なってはいなかった。

 

「何ッ!?」

「甘いよ。残像っていうやつさ」

 

 残された残像は消え去り、本物はラディッツの背後を取っていた。そして、フリーザの尻尾がラディッツの首を絞めていた。

 

「お前をこのまま一思いに殺すのは容易い。でも……それで俺の気が晴れると思うなよ!」

 

 ラディッツをサンドバックのように何度も何度も殴りつけるフリーザ。

 

「助けに入りたければ、どうぞ。すぐに死ぬことになるけどね」

「く……くそっ……!」

 

 悟飯は助けに入ることはできず、悟空は立っているのがやっとの状態だ。悟天、トランクス、ベジータは未だに気絶している。

 イーヴィはディザルムを警戒して、身動きが取れなかった。

 

「早くしないと、ラディッツが死んでしまうぞ。俺はお前が何をしようが邪魔をするつもりはない。何をしようとしているかも大体見当がつくしな」

 

 おそらく、ディザルムのその言葉に嘘偽りはない。既に対策をされているとわかっていても行動するしかない。この手は少々ベジータから怒りを買いそうでもあるが、最も勝率が高い。

 気絶しているベジータの左耳に神の力によって創り出したポタラを付けた。

 

「悟空っ! 受け取って!」

 

 イーヴィは悟空にポタラを投げて渡した。悟空はふらふらながらもしっかりとキャッチできたようだ。

 

「それを右の耳に付けて!」

「……事情はよくわかんねぇけど、イーヴィがそう言うってことは逆転できる何かがあんだな……!!」

 

 フリーザはラディッツをサンドバックにするのに夢中だ。目の端で気付いているようにも見えたが、放っておいても大丈夫と軽くみたのだろう。

 

「これでいいか!?」

「ばっちし!!」

「なんだっ!?」

 

 悟空はベジータに、ベジータは悟空に引き寄せられた。そして、そのまま二人が激突したと思った瞬間、発光し、一人の人間へと変わった。

 

「これは……なるほど。ベジータとカカロットで合体したわけか……まぁこの際、仕方ない。絶対にフリーザを倒すにはこれぐらいしなくちゃならないってことだろう」

 

 二人の意識が混ざり合い、新たな人格が生まれているがベースは悟空とベジータだ。ややベジータの要素が強く、この合体に関して多少の不満があるのだろう。だが、仕方のないことだと割り切ってくれたようだ。

 

「なんだ、貴様は?」

 

 さすがのフリーザも唐突に現れた、人物に驚きを隠せないように見える。

 

「ベジータとカカロットが合体して、ベジットってところかな」

「合体……だと? サイヤ人が合体したところで、この進化したフリーザ様に勝てると思うのか?」

「どうだろうな? まぁ、良い戦いにはなると思うぜ」

 

 ベジットは首を鳴らして、構える。

 

「その余裕いつまで持つかな?」

「御託はいいからかかってこいよ」

「減らず口をっ」

 

 フリーザはラディッツをベジットに投げつけた。

 

「おっと」

 

 ベジットはラディッツを受け止め、その硬直を狙ってフリーザは攻撃した。

 そのパンチをなんとか屈んで避け、フリーザはすぐさま屈んだベジットに蹴りを放つ。それも躱してベジットは距離を取った。

 

「ちっ」

 

 フリーザはこれで仕留められると思っていたためか舌打ちを打つ。

 

「全く……汚ぇマネしやがるな。ラディッツ、大丈夫か?」

「あぁ……なんとかな……」

「よし。悟飯!」

「は、はい!」

 

 悟飯がベジットの下に向かった。そして、ベジットはラディッツを悟飯に渡した。

 

「ラディッツとチビ共連れて、ここから逃げろ」

「ぼ、僕も……! いえ、わかりました。負けないでください」

「……必ず、勝てよ……」

 

 ベジットは2人の言葉にサムズアップで応えた。

 悟飯がトランクスと悟天も背負ってこの場から離れようとするとフリーザが狙い撃とうと指先を悟飯に向ける。

 

「止めろ」

 

 ベジットはフリーザの腕を掴んで止めた。フリーザはすぐさま振り払い、パンチをしたが、ベジットはそれを受け止めた。

 

「確かに、随分と強くなったようだね」

「まぁな。これで勝てねぇようならプライドどころか精神的に壊れちまうぜ」

「ふっ、ぬかしたな。勝てて当然というわけか。このフリーザ様をコケにしやがって!」

 

 

 

 

 その一連の流れを見ていたイーヴィたちはただ眺めているだけだった。

 

「これでようやく……」

「面白くなる?」

 

 ディザルムの呟きに対してイーヴィは先読みして言った。

 

「わかっているじゃないか。ま、それも当然の話か」

 

 同一人物であれば展開や手段の好みぐらいはわかる。互いにそれを理解していた。

 

「あなた、本当に勝つ気があるの? 確かにあのフリーザは現時点で強力無比。それにスーパーサイヤ人ブルーにはなれないだろうけど、あのベジットよ」

 

 おそらくは現時点で最高の強さ。実際のところはわからないが、破壊神ともまともに戦えるはず。

 

「勝つ気があるとかないとか、そこは問題じゃない。目的を達成できるかどうかだ」

「それであなたの本当の目的はなんなの?」

「先刻も言った通り、嫌がらせだよ」

 

 嘘は言っていない。だが、本当のことは言っていない。それは推測でしかないが間違っていないとほぼ確信をもっていた。ただ、そう確信を持ててもその本当のことは未だにわからなかった。

 

「なんでも思い通りに行くとは思わないでね」

「それはこっちの台詞だよ。君らはずっと俺の術中だ」

 

 

 

 

 

「これが超ベジット!」

 

 ベジットが超サイヤ人へと変化する。その気の圧はゴールデンフリーザにも劣らぬように見える。

 

「ただの超サイヤ人じゃないか。今更そんなもので俺に勝てるか?」

「勝てるさ」

「生意気なサイヤ人がっ!」

 

 右手の人差し指からビームを連射するフリーザ。ベジットはそれを簡単に躱してみせた。

 

「どうした? そんなもんかよ」

「これならどうだ!」

 

 フリーザは両手の指からビームを放った。

 

「さっきと大して変わらないじゃないか」

「ふっ」

 

 ベジットの言葉をフリーザは一笑に付す。舐められているのは腹が立つが本当にそうならこの攻撃は決まる。

 

 

 ベジットは先ほどよりも数を増したビームを難なく避ける。だが、ベジットは違和感を覚え始めた。そして、確信へと変わる。

 

「ふんっ!」

 

 ベジットは自身の後ろから飛んできていたビームを拳で弾き飛ばした。

 

「ちっ」

「イーヴィとの戦いの経験が役に立ったぜ」

 

 本人の意図しない背後からの攻撃。気を探知・把握し対処する戦士たちにとってもわかりづらい攻撃だ。ベジットはフリーザが何かを仕掛けてくるという勘と悟空がイーヴィと闘った際の経験がその攻撃を避けさせた。

 

「今のはほんの小手調べですよ。次から本番です。行きますよっ!」

 

 フリーザは先ほどにも増して連続でビームを撃ち続ける。ただし、出鱈目に上下左右様々な方向にだ。フリーザが撃ったビームは、壁に当たると方向を変え、乱反射を繰り返す。反射したビームは消えることなく増え続ける。ビーム同士が接合し巨大化したり、壁に当たって複数に分裂を何度も繰り返し、その挙動を予測するのは不可能だ。ビームの密度は更に濃くなっていき、空間のほとんどがビームに塗りつぶされていく。

 

「これはお前も困ったことになるんじゃないのか?」

「心配ご無用です。当たったところで困りませんからね」

 

 フリーザにビームが当たったが、それも壁に当たった時と同じように反射した。

 

「なるほど」

 

 ベジットはいつも通り余裕の構えを見せるが、額に少しばかり汗を張り付けていた。

 

「ぶっつけでできるかは怪しいが少しばかり賭けをする必要がありそうだ」

「何を言っているんだ? お前はこのまま俺にハチの巣にされるんだ!」

 

 フリーザがベジットに向けて指を向けるが、ベジットは動じず目を閉じる。

 

「とうとう諦めたか? それで許したりしないがな!」

 

 フリーザがビームを放つ。しかし、ビームはベジットに当たることなく消滅した。

 

「なにっ!?」

 

 ベジットは赤いオーラを纏い、全身も少しスリムになっていた。つまり、超サイヤ人ゴッドになっていた。

 

「他のサイヤ人の手を借りられない今できるか心配だったが、問題なかったようだ」

「少し驚いたが、孫悟空がその状態になっても俺に敵わなかったんだ。貴様が何になろうと俺に勝てるものか」

「カカロットと今の俺とでは基本パワーが何倍も違う。それがゴッドの力を得たならカカロットの超サイヤ人ゴッドとは比較にならないと思うぜ」

「だからなんだ! 貴様は俺には勝てないんだ!」

 

 フリーザは口では強がったが、わかってしまっていた。今のベジットが自身よりも強い力を持っていることを。しかし、自身のプライドを曲げてまで鍛えて付けた力をサイヤ人二人の合体で超えられてしまったことを認めることができなかった。

 

「あっそ」

「この!」

 

 フリーザはエネルギー弾を放つが、ベジットは姿を消した。

 

「どこに消えた!?」

「後ろだよ」

 

 ベジットが肘でフリーザの後頭部を殴りつけた。吹き飛んだフリーザを追いかけ蹴りで叩き落す。

 

「ぐぬぬ……くそぉ……!」

 

 フリーザは何とか立ち上がろうとすると目の前にはベジットの掌があった。

 

「二度と生き返ってくるなよ」

 

 ベジットはそのままの体勢でエネルギー波を放った。

 

「ち、ちくしょぉおおおおおおお!!」

 

 フリーザは跡形も残らなかった。

 

「ふぅ……しかし、これだけやって壊れないとはどんだけ頑丈なんだ。この建物は」

 

 

 パチパチパチと拍手を鳴らす、ディザルム。

 

「お見事。さすがだ」

「それでどうするんだ? 今度はお前が戦うのか?」

「そうだね。ただ俺としては、勝つ気も負ける気もないというか、目的は既に半ば達成しているしね」

「何?」

「後はどう終わりを迎えるかだよ。勝敗は割とどうでもいいんだ」

 

 まるでイーヴィの様なディザルム。同一人物であるというのだから当然のことなのだろうが、姿形を変えた状態では違和感がある。

 

「あぁ、そうだ。どうしてこんな嫌がらせをするのかを言っていなかったね。そもそも俺がこの世界に現れた明確な原因は俺自身もわかっていない。だが、推測される原因は魔人ブウをイーヴィが倒してしまったことだ」

 

 まるで因果関係が見えてこない。

 

「君もイーヴィが未来の出来事を色々と知っていたことを聞いただろう? あの魔人ブウを倒すのは本来なら孫悟空が元気玉で倒すはずだったんだ。そして、悟空は『今度はいいやつに生まれ変わって、一対一で勝負をしよう』と、願うんだ。それを閻魔大王が聞き届け10年後にはそれが叶うはずだった」

「それと私に嫌がらせすることと何の関係があるのよ」

「話は最後まで聞け。この世界は……イーヴィにとっては物語の世界だ」

「な、なな、ここで暴露するぅ!?」

「な、何……?」

 

 さすがのベジットもその事実には驚きを隠せないようだった。

 

「イーヴィが未来を知っているのも当然だ。物語としてこの世界の話を繰り返し見てきたのだから。そして、本来であれば10年後に魔人ブウの生まれ変わりと悟空が修行しに行くところで物語は完結する。しかし、イーヴィが魔人ブウを倒してしまったことでそこで物語は完結してしまった」

 

 しかし、そこまで話を聞いてもこの嫌がらせには繋がらない。

 

「完結してしまったこの物語だが、イーヴィはこの世界の住人ではない。いずれ元の世界に帰る。イーヴィが帰れば変化はそのままにイーヴィの痕跡がこの世界から消える。だが、イーヴィが残した痕跡が大きすぎる。どれもこれもイーヴィが居なければ成立しないようなふざけた現象ばかり、だからイーヴィがこの世界から居なくなる代わりに俺がこの世界に誕生した」

「……? 待って、その理屈なら私が元の世界に帰った後にあなたが誕生するんじゃないの?」

「その辺は、元悪神だからの一言に尽きる。この膨れ上がった力を使えば、時間の概念を捻じ曲げるのも容易い。つまり、俺は悪くない」

「この……どこぞのレプリカか過負荷みたいなこと言ちゃって。それでなんで誕生したら私に嫌がらせすることになるのよ?」

「俺はイーヴィと全く同じ記憶を持っているが、俺はお前と同じように元の世界に帰ることができない。この世界の住人として誕生したからだ。故郷に帰ることもできなければ、友に会うこともできない。一生この世界に縛り付けられたままになった。これで、恨まないはずもないだろう。例えそれが、同じ自分自身だったとしても」

 

 元の世界に帰れない。それは確かに自分にとっても死ぬことの次に嫌なことかもしれない。この世界も好きではあるが、結局は自分にとっての現実ではない。

 

「てめぇの理屈はわかった。だが、西の都を壊す必要はなかったはずだ」

「そうだね。だから、壊してない」

「何!? 確かにお前が見せていただろうが!」

「まぁ、正確には壊した直後にすぐに元通りに修復したんだけど。西の都にいた人たちは白昼夢でも見た気分なんじゃないかな」

 

 い、命が軽い。ドラゴンボールにそれは付き物な感じもするが。頭の中で『でぇじょうぶだ。ドラゴンボールがある』という台詞が浮かぶ。

 

「なら、もう闘う理由もないはずだが? 目的はもう達成したんだろう?」

「ここまでやって闘わないなんて選択肢はないだろ。俺はこのやりきれなさを全て何かにぶつけたい」

 

 ベジットが笑みを浮かべる。

 

「いいぜ。お前の苛立ちに付き合ってやるよ。全力で来な」

「そう言ってくれると思ったよ。サイヤ人ならね」

 

 

 ……うーん。私空気。そんでもって、私のキャラじゃなくない?

 尽きぬ違和感に困惑しつつも、戦いを眺める以外にできそうなことはなかった。




次回で最終話。
と、思ったけどまだ続きますってパターンはないです。気が向いたら書くかもしれないけど。


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