山の翁はどこぞの世界で暗躍す (氷那)
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ユグドラシルの奇跡

ももんがの骸骨顔みてたらなんだかハサン達が出てきてしまった。

おいたんは悪くない。
しいて言うならば、骸骨なのが悪い(意味不明)




............話をしよう。

 

数年前まで大ヒットだったゲーム......ユグドラシルは長い時を経てだんだんと廃れてきた。

人間による異形種狩りによってその多くがいなくなる中、一つのギルド......アインズ・ウール・ゴウン。

異形種のみの構成でありながら、あらゆる人間種のギルドを悉く捻り潰す最強に等しいギルドであった。

しかし、ゲーム内最強のギルドも寄る瀬にはかないはしない。

ギルド内のメンバーも一人二人と姿を消していく。

 

しかし、ユグドラシルというゲームの生涯を、最後まで共にしたものはユグドラシルそのものが起こした奇跡によってまた新たな軌跡を紡ぎだす.........。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった今......ヘロヘロさんが淡い青色のエフェクトを残してログアウトした。

俺たちの努力と金と強欲の結晶といっても過言ではないこのユグドラシルを置いて。

 

「なぜ......何故そんなにも簡単に捨てられる!一人ずつ一人ずついなくなって.......。あんなにも必死に、あんなにも楽しんでいたこのゲームをッ!!」

 

俺は....いや、『ももんが』は右手を固く握りしめ、今は誰一人姿の見えない円卓を殴る。

分かっている、いや、分かっていた。このゲームあっての人生じゃない。人生があってこそのゲームだ。

さっきログアウトしたヘロヘロさんも、再就職した場所がとんでもないブラック企業で、今にも死にそうだと嘆いていた。

このギルドは、社会人であることが前提だ。こういうことは日常茶飯事。心のどこかで諦めてしまっていたのかもしれないな。

 

「このゲームの最後を、みんなで見届けられればいいな.......なんて......」

 

スカルフェイスのこの顔からありもしない涙が溢れそうになったとき、『一つ目の奇跡』が訪れる。

それは心に穴が開いたような気持ちを誤魔化そうと立ち上がった時だった。

俺の正反対に位置する椅子に赤い黒いもやがかかって、その中から黒いマントと白い骸骨のマスクをつけたヒトガタが音もなく現れたのだ。

 

「ハサン.....さん....ですか.......?」

 

「遅くなって忝い。山の翁、ももんが殿の招集に従い参上いたしました」

 

老いた男とも若い女とも聞こえる不思議な声が、しかしとても懐かしい声が俺の脳に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、十六夜祟は今現在盛大に焦っている。

現在起動中の相棒にあったメールには『あの日には都合の合う人は会議室に集合してください』というギルマスからのメールがあったのだ。

妹の呪いのようなドジによって―――買ってきた水を転んだ拍子に壁に叩きつけ、俺の相棒にぶっかけた―――お亡くなりになった初代相棒を修理にだして、たったいま帰ってきた新・相棒を起動して、ユグドラシルを開いていた。

何が問題だったのか、修理屋から

 

「なにをどうしたら外も中も綺麗なのに笑えるくらいプログラムだけ壊滅させられるんだい?」

 

と、時間かかるよ?もついでに苦笑交じりに話された。

思わずふぁあああああああああああああああああああああ――――――ッッ!!!と叫んだ俺は悪くない。

このあと親の説教(物理)があったが、妹の添い寝があったから許す。

結局これも親に見られて説得(物理)によって沈黙させられた。二日間くらい記憶がないんだが寝てたのか?

 

時間を見れば23時45分。もうそろそろ終わる......一日も、ユグドラシルも。

長いダウンロードを終えて中に入れば、全面にひびがはいった円卓に一人たたずむ我らがギルドマスター。

 

「ハサン.....さん....ですか.......?」

 

そう零れるように流れた言葉にいつもの口調で返す。

 

「遅くなって忝い。山の翁、ももんが殿の招集に従い参上いたしました」

 

「............」

 

動きのとまったももんがさんに再び話しかける。

 

「ももんが殿?いかがなされたので?........ももんが殿?」

 

「......っ!すみませんハサンさん。来てくれたのがうれしくてつい........」

 

「はははは!そういわれますと恥ずかしい物ですな.......それにしてもそのスタッフ。やはりももんが殿の手の中にあるのがふさわしい。ほれ、持って行っても構わんでしょう?」

 

「ですが.....それは.....」

 

「皆もそういうと思いますよ。ももんがさんが一番だと」

 

「そうでしょうか.......でもハサンさんが言うならそうなんでしょうね。きっと」

 

そういってかざってあったギルド最強武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に歩き出した。

ぞろぞろと魚の群れのようについてくるメイドたちを引き連れてついたのは、ギルメンの旗の飾ってある場所。もちろん俺の旗もある。

その奥にあるのは、大きな玉座とその傍らにたつ腰から黒い羽根をはやす長い黒髪を持つ美女。

 

ももんがさんはなれない様子で、

 

「ええっと.....待機、それから....傅け」

 

一糸乱れぬ動きにおおう......とおののいているももんがさんを見てほっこりした。

玉座に座ったももんがさんは妙に似合っていて、思わず感嘆の言葉をもらす。

 

「実に威厳のある佇まい....流石ですぞ」

 

「どうです?僕もやろうと思えばできるんですよ!」

 

「ははは、して、さきほどから何かを操作しているようですが一体何を?」

 

「これですか?アルベドのキャラ設定が気になったものですから」

 

「確かに、設定厨のタブラ殿が親ですからなぁ.....流石の文字数だ.....」

 

「設定厨なのはあなたもです、ハサンさん」

 

「なんとっ!?」

 

少しからかいを含んだ声を出せば、まさかの即答であなたも同類であると言われてしまった。

なぜだ!?ただ俺は、自分の嫁(仮)を作るためにあらゆる知識を総動員しただけだというのに!!

 

「なんだこれ......『因みにビッチである』.....うわぁ......」

 

「タブラ殿........」

 

「そういえばタブラさんギャップ萌えでしたっけ」

 

「そのスタッフがあればその設定も変えられるのでは?」

 

「ダメですよそんなの.......と言いたいところでしたが、少しだけなら許してくれますよね?『最後』ですし」

 

「許してくれますよ『最後』ですから」

 

カナシそうに『最後』と零したももんがさんは、文章を消し同じ文字のとある言葉を入れ込んだ。

 

 

『ももんがを愛している』

 

 

どうやら何かしらの雰囲気を私から感じ取ったのだろうか。

ももんがさんが、必死に言い募ってくる。

 

「ち、違うんですハサンさん!これは別に悪気があったわけじゃないんです!好みがどストライクとかこういうお嫁さんが欲しいなぁーとかそんなんじゃないんです!」

 

「分かっております、ええ、わかっておりますとも」

 

「ハ、ハサンさん......!」

 

「ももんが殿はそういう性癖なのでしょう?大丈夫、心配せずともばらしはいたしません」

 

「ちっがあああぁぁぁう!分かっていません!ぜんぜんわかってませんよ!!」

 

「そもそも私は細かく言ったわけではありませぬ故、今のはご自分の自爆ですぞ?」

 

「くっ......そんな.........」

 

面白い、やはり実に面白い。

考え方や言動、行動力などすべてをとってもいい大人、といっても二十と少しくらいだろうが。

こと恋愛系には中学生のように初心、弄りがいがあるものだ。

随分と焦っていたのだろうか、宙をかいていた手がキーボードに触れ、決定してしまった。

 

「...................」

 

「...................」

 

静まりかえるなか、ふと言った。

 

「もう時間ですよ、ハサンさん」

 

何を言いたいのかは分かっていた。

もう終わる、この世界が、ユグドラシルが。

 

「楽しかったですね」

 

「ええ.....本当に楽しかったとも」

 

「もう会えなくなりますね」

 

「そうですなぁ......向こうでは誰が誰だかわかりませんし」

 

「.........ぶくぶく茶釜さんがよくあなたとデートしたと周りに言っていましたが?」

 

「あれはデートではなく私が連れまわされていただけなのですが......」

 

「声を聞いていた限りだとものすごくうれしそうに語っていましたが?ペロロンチーノさんですら、『くっあんな姉にも春がきやがった!ぶっくぶくだった頃から一緒にダイエットに付き合ってくれてた仕事の同僚だとさ。けっ!どうせそのうちエロゲよろしくナニするんだろ?俺は知ってるぞ?てか期待の新作の狙ってたキャラの声がまた姉でガチでいろいろないわー』とか言ってましたけど?あなたのことなんてファンが大勢いるせいで秘匿なんてできませんよ。」

 

「声マネうまいですね。素晴らしい精度です!」

 

「ごまかしましたね?まあそのことは僕がどうこう言う権利なんてないんですけどね」

 

カウントがもうすぐ三十を切ろうとしたとき、メールが届く。

 

「差出人は.....Yggdrasill?運営のメールじゃない?」

 

「私にも来たのですが.....こちらも運営ではありません」

 

「とりあえず読んで見ましょう」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

           私にはもうあとは無くなってしまった。

    この世界を愛してくれたあなたたちに深き感謝を。 

     この世界に留まってくれたことに深き感謝を。

           理想を求めたあなたたちに多大なる感謝を。

       勝手ながら、新しい地を用意しました。        

     喜びの愛が終わらぬように.....。

            揺るがぬ幸福が満たされるように。

          ありがとう、ありがとう、ありがとう!

            最後に訪れたこの時に。

 

 

 

 

         ―――――■■■■■■■■■。

 

 

 

 

 

          ≪Iam deeply grateful to you. ≫

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「これは一体誰から......」

 

俺自身も戸惑いを隠せないでいた。

運営ならばメールではなくお知らせに入れるからだ。

意図も理由も不明瞭のまま、無情にもカウントは0を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――二つ目の奇跡が舞い降りる―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

0を迎えた.......迎えたはずなのだが、視界がいつまでたっても変わらない。

ももんがさんも同じらしい、骸骨顔からはよくわからんが、かなり驚いているはずだ。

 

「これは......どういうことだ!!」

 

思わず立ち上がって叫ぶももんがさんも無理はない。

正直俺も相当に驚いている、今にも叫びたくなるくらいには。

すでに混乱している俺たちに、さらに混乱させる出来事が舞い込む。

 

「......ももんが様?」

 

「....?.........ッ!!?」

 

キェアアアアアアアアアアア!?!?!!?!!?シャベッタァァァァァァアァアァアァアァアア!?!!?!?!??

NPCが喋った!?いや、ゲームでも話してはいたが、こんなにも表情豊かではなかった。

 

「ももんが様?一体どうなされました?........ももんが様?」

 

未だにアルベド―――と、思わしきもの―――はももんがさんに話しかけているが、ももんがさん本人はフリーズしたPC画面のように動かない。

ナザリック最高支配者が機能停止している今、自分にできることは何かと、静かに考え始めた。

 

 

 




メッセージにちょっと仕込んでみたんですがわかりますかね?
黒い■の中にはメッセージ内のある言葉がぴったりはいる筈です(数えてない)。
あれです、いわゆる謎解きってやつです。
え?謎ですらない?

.......そうだね。、プロテインだね!(発狂)


あっ(唐突)、なにか矛盾とか文字の間違いとかあったら言って下さるとありがたいです。


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為すこと為されること

なんで一月ってこんなにやることが多いんですかねぇ....。
碌に寝れないから頭がいろんな何かにやられそう。


なにかすこしでも(うわっ。 やめてね。 みたいのがありましたらすぐにBBをお勧めします。


俺は、モモンガさんにこっそりと伝言を送って正気を取り戻してもらうことにした。

モモンガさんだからこそできるトップの風格。

俺とは違った、最善最高の姿になるはず.......多分、焦って素が出なければ。

 

(モモンガ殿!モモンガ殿!、お気を確かに!)

 

(はっ!すいません!あまりのことについ......)

 

(お気持ちは分かります故。しかし、今は現状の解決が最優先かと)

 

(そうですね、すいません助かりました)

 

「んっんん!すまないアルベド、少し予想外のことに動揺してしまってな......」

 

「私めに出来ることならばなんでもお申し付けください!」

 

(ん?今何でもするって言いましたよね?)

 

(少し落ち着きましょう?........改めて、今現在メニュー画面の展開及びGMへのメッセージの送信が不可能になっております。メッセージの送信は不可能ですが、身内での伝言は使用可能なため、多少の制限は考えられますがスキルは概ね使えます)

 

一瞬にして壊れていく王の風格(笑)は、感情が揺れすぎて状態異常無効化の範囲に入ってしまう。

もう一度動きのとまったモモンガさんは、しばらくしないうちにまた動き出す。

 

「いや、大丈夫だ。解決法はすでに見つけてある」

 

流石としか言い表せない脳の回転速度。あれほど荒ぶっていたあとでこれなのだから、平常時には今以上の知識が総動員されるのであろう。

 

「まず、このナザリック外部に斥候を放て。今までとは違った制限が現れているために、最悪の場合どこかへ転移させられている可能性がある。セバス!」

 

「はっ!」

 

「ナザリックを中心とした半径1kmの調査をしろ。敵性勢力は潰しても構わん。だが、多少話が通用しそうならば丁重にもてなして連れてこい。先ずは情報が最優先だ」

 

「承知いたしました」

 

「プレアデスたちは九階層にあがり、侵入者がこないかの監視を行え」

 

「「「「「「仰せのままに」」」」」」

 

モモンガさんは簡潔に対処を述べると、セバス(メイド総括)はプレアデス(戦闘メイド)達を連れて玉座の間を去って行った。

この場に残っているのは、俺、モモンガさん、あとアルベドのみとなる。

 

「モモンガ様、私は何をすればよいでしょうか?」

 

「......ふむ、そうだな。私のそばに来い」

 

「.........はい!」

 

なんだか至極嬉しそうな顔のアルベド。あれか、そんなに近くに寄れてうれしいのか、設定とはいえ。

下手をすれば鼻先がくっつきそうな位近づくアルベドだったが、モモンガさんが驚くことで接触は回避された。

なにやってんだよ......と呆れていると、何かに驚いているモモンガさんがあわてた様子で(心の中だけ)≪伝言≫を飛ばしてきた。

 

『匂いが!なんだか良い匂いがします!』

 

『この非常事態で一体なに考えてるのですか.....』

 

『いや、そうじゃなくてですね?〝匂い"がするんです。ゲーム内ではなかった匂いが。それだけじゃないんです。脈もあるし触れた反応もまるで生きているかのようなんです』

 

匂い?言われてみれば、ユグドラシルをプレイしていた時は匂いなんてなかった気がする。

それどころか、脈なんてなかったし反応を伺う前に運営に違反として消されたしな。

ちゃんと考えてみると、依然と違うことが多い。

ギルドの御旗は幽かにはためき、興奮しているのか息を荒げるアルベドの呼吸も聞こえる。

本当にどうなってんだ?今何が起きてる?分からない、現状は何一つわからない。

まるで、明りのない大迷宮に放り込まれたかのようだ。

 

ここまで考えて、今しがた思い浮かんだ案を相談しようとモモンガさんを見れば、なぜかアルベドの胸を揉んでいる。

 

『変態』

 

たった一言送っただけなのに、モモンガさんは物凄く慌て始めた。

 

『ち、違うんですハサンさん!別に触れてみたかったという願望じゃないんです!一種の実験の結果だったんです!!』

 

『とりあえず言い訳を聞きましょうか』

 

『ほら、ユグドラシルだと異性に触れただけで運営に消されたじゃないですか。だからここでそれに近い行為をすることで≪以前と変わらない世界≫なのか、≪以前のものに改良がされてる世界≫なのか、そもそも≪まったく別の世界≫なのかの判断を行おうかと思っていたんです。アルベドを見ればわかりますが、NPCとの会話ができたりそれに伴って変化する仕草や表情、匂い、今までのゲームではなしえなかったことばかり......』

 

『後半になるにつれてどんどん真面目になっていくところは流石としか言えませぬが、その右手が未だに胸にあるということがなければ最高でしたな』

 

「はっ!?」

 

おーい、声が出ちゃってるぞー。

 

興奮して迫るアルベドをどうにかして落ち着かせた―――そんなことをしている場合じゃないとか言ってたけど、主犯はあなたです―――モモンガさんは、アルベドにとある命令をだす。

それは、一時間後に第四、第八を除く各階層守護者達に、第六階層の闘技場まで来るように伝えるというもの。

やはり、統治者として有能すぎるモモンガさんはいかなる時も頭が回るものだと感心する(時々何をしたかったのかわかんないときがあるが)。

 

「行きましょう、ハサンさん」

 

「闘技場へですかな?」

 

「ええ、いろいろと試したいこともあるので」

 

モモンガさんは、右手の薬指にある指輪を見せながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成功......ですな」

 

見事に変わった景色を見てそういった。

この場所は第六階層、円形闘技場である。

ぶくぶく茶釜さんの設定した双子の守護者がいる場所だ。

 

「指輪の効果はちゃんと効くのか、アイテムは大丈夫そうですね」

 

「そのようですな、アルベドやセバス達は現在モモンガ殿にしたがっているようですが......」

 

「ほかのNPCたちはどうなんでしょうかね?」

 

闘技場特有の柵をくぐって中に入れば、ひとりのダークエルフが迎えてくれた。

 

「とうっ!!」

 

かわいらしい声が響くと同時に、礼服を着た男装の少女が飛び降りてくる。

土埃を巻き上げて綺麗に着地した彼女―――アウラ・べラ・フィオーラ......以降アウラ―――はこちらに向かってポーズをとる。

 

「ぶいっ!」

 

『かわいい(確信』

 

『ハサンさん、あなた本当に茶釜さんと付き合ってないんですか?』

 

『前にも言いましたが付き合ってないです。そもそもそういう関係じゃないです』

 

『嘘は行けませんよ嘘は。今の声は明らかに自分の娘が可愛すぎて死にそうになってた人の声です』

 

『そ、そのようなことがあろうはずがございません』

 

モモンガさんの追及を流していると、アウラが俺たちの目の前に来ていた。

 

「いらっしゃいませ!モモンガ様!ハサン様!私たちの守護階層までようこそおいで下さいました!」

 

「少しばかり邪魔をさせてもらおう」

 

支配者モード(勝手に命名)に切り替えたモモンガさんは、上位者の風格を醸し出すオーラをのせて声を放った。

 

「何をいっているんですか、モモンガ様達はここナザリック地下大墳墓の主人。絶対の支配者ですよ?その方々がどこかにお尋ねになって邪魔者扱いされるはずがありません!!」

 

「そ、そうか.......」

 

「ところで、マーレの姿が見えんようだが何か取り組んでいる途中だったか?」

 

気になったから、アウラにマーレのことを聞いてみた。

いつも二人でいることが多いってか二人でいるところしか普段見ないため、一人...つまり別行動をしているのは珍しい。

 

俺がいってから察したのか、隣に弟の姿がないのに気が付く。

 

「ちょっとマーレ!モモンガ様とハサン様に失礼でしょ!!とっとと飛び降りなさいよー!!!」

 

さっき自分が降りてきた方を向いて、全身を使って叫ぶ。

背が低いせいか、向こうにも見えるようにぴょんぴょん跳ねている。

 

「無理だよお姉ちゃ~ん!」

 

はたから見たらとてもバイオレンスでデンジャラスな会話のなかに、下手したら転んだだけで死んでしまいそうな弱弱しい声が響く。

彼は女子のような声と容姿をしているダークエルフの双子の片割れである。

 

―――――だが男だ。

 

何故かスカート標準装備しており、中を見られないよう端を押さえながら顔を赤くして双子の姉と会話している。

 

―――――だが男だ。

 

なかなか降りてこないから、俺がお姫様抱っこして降ろしてあげたらリンゴのように顔が紅潮して、こちらを覗き見るようにして見つめてくる。

 

―――――だが男だ。

 

―――――だが男だ、男だ男だ男だ...いや女だぁぁぁぁあああぁあぁあ!!!!!

 

はっ!?今俺は何を考えていたんだ?

無意識の内に倫理規定のその先に行こうとしていたのか?

しかも禁断の扉を開いて......。

 

 

 

ありのまま今起こったことをh(ry

 

 

 

「お、お待たせしましたモモンガ様.....」

 

少し伏せ気味に口を開くマーレ。

 

「うむ、少し二人に手伝ってもらおうと思ってな」

 

かっこいいぞモモンガさん!まさに支配者って感じだぁ!

それでこそギルドマスター!よっ日本一!

まぁ、このギルドはワールド1位だったから事実世界最強だが。

しかし、モモンガさんの様子が少しおかしい。

まるでなにかをためらっているような........何だ?

 

「マーレ、少し聞きたいんだが......」

 

「はっはいぃ!」

 

「その...だな、なぜ少し腰が引けて前かがみになっているのだ?体調でも悪いのか?」

 

「―――ッ!?なっなんでもないです!お気になさらず!」

 

「いや、だがな....?」

 

「 お 気 に な さ ら ず !」

 

涙目で肌を深紅に染めながらも懸命に訴えてくるマーレ。

なんだかこれ以上はイケナイ雰囲気になりそうってか訴えられてるモモンガさんが精神鎮静喰らいまくってる。

 

「わかった、先の質問は聞かなかったことにしておこう」

 

「あ、ありがとうございますぅ.....」

 

 

 

 

 

 

 

このあと冷静になったマーレがスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに気付いて、モモンガさんが熱く語ったり、モモンガさんがプライマル・ファイアー・エレメンタル(レベルは80後半だったはず)を召喚したり、戦うことになった瞬間逃げようとしたマーレが興奮したアウラに連れていかれたりといろいろあった。

 

その中でモモンガさんは魔法の発動範囲、再使用までのリキャストタイム、自分の持つMPの量を確認していた。

双子が使う魔法の軌道も確認して異常がないことが分かったらしい。

 

正直、ただの暗殺者である俺が魔法の種類や軌道をそれほど知っているわけもなく、あんまり役に立てなかったのは言うまでもあるまい。

 

ほんの少しずつだが把握できたが、残る問題は山積みで.....。

 

「≪伝言≫」

 

「ふむ......未だGMにはつながりませんな」

 

ビーっと音がなりそれ以降は何も聞こえてこない。

本当にどうなってしまったのだろうか。

 

このまま終わるかと思いきや、我らがギルドマスターの方に変化が。

 

「セバスか、どうだ...そちらの様子は」

 

.............。

 

「ふむ....現在守護者全員を集めている。至急第六階層の闘技場まできて、お前のみたものを説明しろ」

 

........。

 

どんな会話してるのか全くわからん。

盗聴なんざ趣味でもないししたいとも思わんが。

 

 

そんなこんなで時間がたっていたらしい。

原初の火の精霊が火の粉となって散っていき、それをみた双子がこちらに走ってくる。

 

「二人とも実にすばらしかったぞ」

 

「的確な状況判断に互いの弱点をカバーし合う余裕、そして乱れぬことのないコンビネーション.....よくやったな」

 

モモンガさんに続いて俺も褒める。

後衛で後ろからえぐい魔法バカスカ撃っていくモモンガさんと、闇にまぎれて一人ずつ確実に消していくタイプの俺はこの二人の戦い方が理想的であることは分かっている。

だからこそ、素直にほめて褒美を与える。

 

ありがとうございます、と水を受け取って飲み干す二人に、ランクは低いがかなり使える体力が満タンに近いほど攻撃力・防御力が上昇するアイテムを渡した。

期間限定のイベントからとれるこのアイテムだが、よくドロップする割には効果が最高級レベルに使えるもの。

かくいう俺も様々な時にこのアイテムにお世話になったものだ。

出来るだけ攻撃はかわして反撃、無理なら回復付の防御魔法で耐えてから隙を狙っていきく双子の戦術にはぴったりであろう。

効果が発揮される時間は三十秒と短めではあるが。

 

「モモンガ様ってもっと怖いのかと思ってました」

 

「そうか?そっちの方がいいのならそうするぞ?」

 

「いや、今の方がいいです!絶対いいです!」

 

滅多にモモンガさんを見ていなかった二人は見た目で性格を判断していたのだろうか、思っていたのと違うねー、と感想を漏らす。

悪戯心が湧いたっぽいモモンガさんが冗談めかしていえば、全力で今の方がいいと満面の笑みで言われる始末。その迫力にモモンガさんが少し押されてた。

 

『なんで俺と似たような見た目の...というより俺以上に見た目が怖いハサンさんは言われないんですかね?』

 

心なしか傷ついたのかトーンがほんのちょっと落ちているモモンガさんに言われた。

ゆっくりと歩きながらよく見渡せる位置に移動を開始する。

 

『いや、俺は茶釜さんによくミッションしよう!って誘拐されてたんで、何度もあってるんですよ』

 

『ホントにそれだけですかね?俺にはその裏に何かあったような気がしますよ?ほら吐いてください。きりきりと』

 

『......他のプレイヤーが近くにいるのに『私たちの子供達は本当に可愛いわね!』とか大声言いやがったんで双子にも家族のように接して、仕返しとして茶釜さんのことを≪お母さん≫って呼ぶようにしただけですよ』

 

『もしかして一時期茶釜さんの様子がおかしかったのって.......』

 

『俺は何も知りませんよ?ええ、何も知りませんとも。ちっともこれっぽっちも知りません』

 

『ハサンさん.......」

 

『別にそれのせいで俺と茶釜さんの様子がおかしいとか声優業界で変なデマが流れたり、あいつら結婚してたのかというわけ分からん理由で同僚に襲撃されたことなんて恨んでませんよ全く』

 

『.............』

 

『その日以来俺と茶釜さんが一緒にいると人間種にあってもPKされなくなったし、wikiにも『あの二人が一緒にいるときに攻撃した場合、貴様は生き物として失格である』とか書かれるし。しかもどのwiki覗いても確実にあるし。ギルドのみんなどころか、他のプレイヤーにもリアルの人間どもにすらあったかい目で見られるし......あ、だめだ。だんだん腹が立ってきた』

 

『もういい!もういいですよハサンさん!なんかいろいろと俺もきつくなってきたんでもういいんですよ!』

 

『あっ.........』

 

精神鎮静が掛かった。

ああぁぁぁぁああぁあ!!!死にたい....死にたくないし死ねないけど死にたい........。

 

『すいません...ちょっと取り乱しました』

 

『ちょっと...?というより、ハサンさんの素ってそんな感じなんですね』

 

『すいません....キャラは全力で演じたい派の人間でして』

 

『構いませんよ、NPCがいないときはお互い素に戻りましょうか。そっちの方が、心の負担は軽くなるはずです』

 

『寛大なお心ありがとうございます、モモンガさん』

 

その途中で、少しづつ守護者達が集まってきた。

ガルガンチュアとビクティムはいないがそれ以外の守護者が一回に同するなんてめったに見られない物。

謎の感動が心に湧き上がる。

 

そういえば、モモンガさんや俺はユグドラシルでは最高レベルだったがこの場所ではどうなんだろうか。

弱者か?強者か?何もわからん以上は警戒を解く訳にはいかない。

 

それに、もしこの世界が異世界の空間だと仮定したなら、元の世界に戻ることが出来るのだろうか。

戻る方法があって、その手段も手の中にあるのなら、戻るべきなんだろうか。

 

友達なんて殆どいないし、家族にも滅多に会えない。

朝から仕事をして帰ったらご飯を食べて寝るだけの毎日に。

そんな生活にはどんな価値があるというのだろうか。

 

 

「それでは皆、至高の御方に忠誠の義を」

 

「第一・第二・第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォール。御身の前に」

 

「第五階層守護者コキュートス。御身の前に」

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ」

 

「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ」

 

「「御身の前に」」

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

 

「守護者統括、アルベド。御身の前に」

 

集結した全ての守護者が、モモンガさんに頭を垂れる。

心なしか黒いオーラが漏れ出しているモモンガさんはまさに異形の王。

≪死の王≫は伊達じゃないってやつか。

 

「第四階層守護者ガルガンチュア、および第八階層守護者ビクティムを除き、各階層守護者...御身の前に平伏し奉る」

 

俺にもサポートキャラはいるが、後で紹介しようか。

たしか、モモンガさんは見たことがなかったはずだから。

 

「ご命令を....至高なる御身。我等の忠義すべてを、御身に捧げます...!」

 

 

 

 

俺氏、現在隠密スキルで隠れているのだが誰も気づいていない。

すまない、モモンガさんすまない。

これからモモンガさんが必要になるであろうスキル(能力)は今つけるべきなんだ......っ!

それに俺に忠義を捧げられてもそれに応えてあげられるほどの力はない。

俺は暗殺者で向こうは守護者。

殺すことしか能がない人殺しの人形より、考え、守ることが出来る愛しい者達ではどちらが良いかはっきり分かるだろう?

 

裏切るならば、後ろから容赦なく殺してくれ。

それが暗殺者としての運命だから。

殺してもいるんだ、殺されもするさ。たとえ俺を殺すのが敵であろうとも『仲間』であろうとも。

 

少なくとも俺はナザリックの者達を『仲間』だと、『家族』だと考えている。

向こうがどう思うかなんぞ知らんが。

 

二つめの死なんてありえない、何故なら一つ目の死で何もかもが完結するからだ。

もし、もしだ、俺がこの世界で死ぬようなことになったなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくも悪くもナザリックの者達が最後の記憶でありたいなぁ......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん。

私は一体何がしたかったんだ?(困惑

まぁいい。
ネタ満載にしようとしてたらマーレ弄ってるし主人公おかしくなってるし。
とりあえず、ここでアニメ版一話のないようは終わりですかね。

次は頑張ろう。(頑張るとは言ったが、まじめにやるとは言ってない



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変態疑惑浮上

ぐぬぬ......頭が産廃とかしたことで、脳内コンテが崩れてバルスされてしまった。
これだから変態企業の言うことは聞くなとあれほど........。


AMSから光が逆流する.....ッ!?

うわあぁあぁぁああぁぁああぁぁぁ―――――ッッ!!!

(訳)投稿遅れてすいませんでした。


そういえば、闘技場にて彼ら階層守護者からみた、モモンガさんや俺の印象を聞かせてもらったのだが......。

NPC達のモモンガさんへの忠誠心が半端ない。(確信

え?俺?俺はかなりの強者だが、素晴らしさよりも恐怖が打ち勝つらしい。

酷いよね。アインズさんは見た目骸骨だよ?スカルフェイスだよ?まあ確かに?針だの青い炎だの仰々しいものついてるし?マントとか血塗れだけど?隠密解いてるとはいえ俺を見ると悲鳴を上げるのは違うと思わない?ねえ。

 

とりあえず、彼らにとって至高の41人――――元ギルド構成メンバー達――――は最強最高の存在でモモンガさんは彼らをまとめ上げた長として、さらに名声が高いようだ。

裏切る可能性は今のところは限りなく低いと考えていいだろう。だがゼロというわけではない。配慮していることに間違いはないだろう。

俺を訝しんだり、警戒する奴は必ず出てくるだろうが、その分モモンガさんに忠誠が向くなら重畳だ。

 

夜を迎えたナザリックをこっそり抜けようとするモモンガさんは、途中でデミウルゴスと、彼の配下たる三魔将に見つかってしまう。

その後、なんやかんやあったものの結局デミウルゴスと共に外を見ていると、マーレがナザリックを大規模魔法による土砂で覆い隠そうとしているところを目撃する。

その働きたるや、もはや勲章ものと言っても過言ではないだろう。

彼(彼女?)にナザリックを自由に行き来するためのアイテム、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを褒美として手渡すと、それをはめたマーレが興奮気味にこれからもがんばりますと答えた。

 

ただ、なぜオトコノコの君が左手の薬指に指輪を嵌めるのだろう。心なしかピンク色のオーラみたいのがマーレから放たれているのを幻視した。

おいこらそこのデミウルゴス。マーレを見ながら眼鏡を怪しく光らせないの。

 

後からやってきたアルベドにも、今までとこれからもよろしく頼むと願いを込めて指輪を渡す。

すると、アルベドもおなじく左手の薬指に指輪を通す。あれか、はやってんのかこれが(思考放棄)

目に見えぬ変な空気に圧倒されてしまったモモンガは、口ごもりながらも激励の言葉を皆にかけると慌ててその場を後にした。

 

 

~~~翌日~~~

 

 

モモンガさんは彼らに仕事を頼むと、こちらが驚くほどのやる気で応えてくれた。

すごいとしかいえない状況を、顔をひきつらせながら――引きつる筋肉がないが...――最後まで完遂したモモンガさんは盛大に疲労からくるであろうため息をついて玉座に座る。

彼は離れた場所を見ることのできるアイテムを展開するがここはゲームではなく現実。今までとは勝手が違う。どう動かせばいいか分からないため、ふらふらと両手をあちらこちらに動かす姿はなんだか笑えてくる。

しかし流石はギルドの頭を張っていただけはあるようだ。すぐにコツを掴んだのか、滑るように景色を変えていく。

 

「周り一面ただの平たい草原と浅い森だけとは.....ここを隠すのはかなりの難題になりそうだな。かつてのようにむき出しのまま大侵攻されては骨が折れるからな......」

 

あんなに辛かった高プレイヤー達のみの大侵攻を『骨が折れる』だけとは恐れ入る。そういえば、前線メンバーは弱音と悲鳴を上げながらもこちらも敵もドン引きする笑顔を浮かべていたっけか。

因みに、敵を退けたあとは弾幕薄いぞ!何やってんの!!とか叫びながらこっちに突っ込んできた。無論怒りの大乱闘が勃発するのは避けられない。

ステージをボロボロにした彼らは、たっちみーさんに説教されていた。二時間ほど正座で。

 

画面を切り替えていると、明らかにチャンバラではない景色が映し出された。

どこの人間かは知らないが、騎士風の甲冑を着た者達が何の武器も持たない村人らしき人たちを切り殺している。

ただの虐殺かと思われたが、一つの転機が訪れる。

父親らしき人物が、娘らしき二人の少女をがばって斬られたのだ。男は何かを叫んでもう一度刺された。

少女たちはその場から逃げだすことが出来たが、卑劣な顔をした騎士風の男二人が、そのあとを追いかける。

 

これは俺の勘違いかもしれないが、きっとモモンガさんはこれをどうでもいいと感じているのだろう。

実際俺もそうだ。これほどの状況を見ておきながら、何とも思わない。

 

「いかがしたのですか?」

 

そばにいたセバスが、モモンガさんにそう尋ねた。

 

「いや、なんでもない。こいつらは見捨てるぞ。たとえこいつらを助けたとして、アインズ・ウール・ゴウンの得になるとは思わん」

 

そういって画面を他に移動させようとするが、背中からくる視線がさせてくれない。

俺にはセバスのまっすぐな綺麗に澄んだ目が、彼を創った正義にあふれた人物にかぶって見えた。

しばらく背後に目を送っていたモモンガさんも俺と同じように見えたのだろうか。

 

「そうですよね、たっちみーさん」

 

「はい?」

 

そうだよね、普通そういう反応するよね。

 

「気が変わった。あいつらを少しばかり手伝うとしよう。あの村から、世界侵略を始めようではないか」

 

万能執事には考えがお見通しなのだろうか。心なしか嬉しそうな顔のセバス。

 

「セバス!しばしここの管理を頼む。私はあの村に恩を売ってくるとしよう」

 

「お任せ下さいませ、モモンガ様」

 

「ハサンさん、行きましょう。手遅れになったらあの村に行く必要性がなくなってしまうからな」

 

そんなセバスから逃げるように私をせかすモモンガさん。なんだか人間性が残っている感じがしてほっこりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレポートで飛んでみれば、ちょうど二人の少女に男が切りかかっている真っ最中であった。

一人の騎士が剣を持った腕を振り上げるも、少女たちの背後に現れた禍々しいゲートに動きが止まる。

自分が切られていないことを恐る恐る確認した少女たちも、騎士の見ている方向を見てまた動きが止まる。

 

出てきたのは、黒いマントをたなびかせて太く大きい角をのばした骸骨の男。

まぁ硬直するのも無理はない。俺もこういう境遇じゃなかったら完全にフリーズしてた。まじ考えるのを止めた究極生命体レベルで。

そして、動かない騎士に対して容赦なく即死魔法を唱えるアインズさん。

この魔法を何度か見たことがあるが、自分より弱い相手じゃないと効果がないという欠点があったはずだが―――――

 

 

 

普通にニギィ...しているということは格下なんだろう。

 

 

 

心臓を握りつぶされ、声もなく崩れ落ちる騎士の男。

目の前で人が死んだというのにも関わらず、戦闘NPCより弱いのかよと落ち着き払っている自分。

なんだか俺が俺ではなくなったような感覚に少し気分が悪くなる。

 

俺の雰囲気をなんとなく察したのだろう。もう一人の男は、少女たちには目もくれず一目散に逃げ出した。

もしや、このまま逃げ切れるとでも思っているだろうか。まぁそんわけないよね。

 

今まで隠密で姿を隠していたが、男の逃走経路に姿を現してやる。突然現れた脅威に目を見開く男。

しかし、腹をくくったのか真正面から突っ込んでくる。

日光を鈍く反射するロングソードを振り降ろし、こちらの首を落とさんと迫る。

甘い軌道を描くそれを、俺は紙一重で躱した。

 

俺は、既に無視して通り過ぎようとする男の頭を掴み、地面に叩きつけた。

 

肺の空気を押し出され、痛みに悶えて喘ぐ騎士を、モモンガさんの作ったデス・ナイトが寸分狂わず心臓に剣を突き立てた。

心臓を突き刺したはずだから確実に死んでいる筈(前の世界基準)

人が眼前で死んでいるというのに、何も感じない.........いや、『感じられない』......。

 

これが、自身が人ならざる者になった証拠なのだろうか。以前は指から出た血を見るだけで力が抜けたが、今を見て見よ。

指どころか心臓から溢れているのにこれと言って感じるものがない。

しいて言うなら偶然道端の蟻を踏んでしまって、丸くなってもがいているのを「うわぁ.......」って見ているような感じだ。

つまりだ。人間とは蟻だった.........?(暴論)

そう思ったら心なしか楽になった。そこ、あいつ自分に催眠かけやがったとか言わない。

安心しろって、自己暗示で怪力Aになったりしないから。

 

男たちを瞬殺した俺たちを怯えた表情で見つめる少女ら。

 

「飲め」

 

モモンガさんは、そんな少女たちに近づき、ただそれだけ言ってポーションを差し出す。

初めは生き血を飲まされると警戒していたが、催促されて恐る恐るポーションを飲み下した。

 

少女達は不思議な視線を自分の体に向けていたが、途中で背中にあった切り傷からくる痛みがないのに気が付いたのだろう。

呆然としたまま、こちらを見つめている。

 

「デス・ナイト。この村を襲っている騎士達を殺害せよ」

 

デス・ナイトに村を襲う騎士たちの殺戮を命じたモモンガさんは、雄叫びを上げてこの場を去っていくデス・ナイトを驚愕の眼差し(目はない)で見つめている。

 

(ハサンさん、盾として召喚したモンスターが、守るべきものを置いていっちゃったんですが!?)

 

(問題ないですよ、モモンガさん。どこぞの特殊部隊のFPSゲーでも、防衛側が率先して敵を排除しに行きますから。同じように、脅威となる存在がいなければ防衛成功となるのです)

 

(なんという脳筋的な考え方なんだ......!でもあながち間違ってないから反論できない!......ってか、命令したの俺だった)

 

張りつめた空気が壮絶な音を立ててしぼんでいくのを感じたが、モモンガさんが何かを思いついたようで、少女たちに声をかけた。

 

「その顔を見るに、痛みはなくなったようだな」

 

「は、はい.....」

 

「ところで、お前たちは『魔法』と言うものを知っているか?」

 

「えっと、町に時々来られる薬師の......私の友人が魔法を使えます」

 

「そうか......ならば話が早い。私はマジックキャスターでな......アンティーライフ・コクーン、ウォール・オブ・プロテクション・フロム・アローズ」

 

少女たちを中心に、緑色のドームらしきものが広がる。

モモンガさんが少女たちにかけたのは、徐々にHPが回復する魔法と、投擲物を防ぐ魔法だ。

 

「防御の魔法をかけてやった。そこにいれば大抵は安全だ。加えて、これもくれてやる」

 

「これは.......」

 

「そいつを吹けば、ゴブリンの軍勢がお前に従うべく姿を現すだろう。........そいつらを使って身を守るがいい」

 

ちょいと過保護なくらいに魔法をかけたモモンガさんは、俺に念話でいきましょうと告げると背を向ける。

だが、予想外なことに少女たちがモモンガさんを呼び止めた。

 

「あの......助けてくださってありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

(かわいい。特に赦す)

 

(なるほど....モモンガさんは、ロリコンの気もあったと.......。これはペロロンチーノさんにもいいお土産ができたな)

 

(ちょっ、ま、ちが、ヤメテ!誤解を招くような風評被害を撒き散らすのはよくないアルよ!?)

 

(その焦りかた.......もしや、本当に?)

 

(ちっがああああああああう!!)

 

(ほら、なにか返事を返してあげませんと)

 

(くっ、その汚名!必ず晴らして見せる......ッ!)

 

「気にするな」

 

モモンガさんの脳内で酷い三文芝居が展開されているにも関わらず、口からは威厳溢れる低い声が出てくる。

俺も、口に出すときは低い声を意識して出しているんだゾ。

 

「お名前は......お名前は、なんと仰るのですか!」

 

「名前......?」

 

(どうしましょう........)

 

(そしてこのタイミングでストレートどころか手から離れたら、キャッチャーミットにはいっていたパターンの魔球を投げるモモンガさんまじ鬼畜)

 

(そんなテニヌや別次元サッカーするような奴らと同じ括りにしないでくださいよ!!)

 

(名前なぞ既に決まっているでしょうに......。『アレ』以外ありえませんよ)

 

(そう......ですよね。『アレ』以外ありえませんね)

 

「心して我が名を聞くがよい、我こそが―――――

 

 

 

―――――アインズ・ウール・ゴウンである!!!」

 

 




すまない、まったく話が進んでいなくてすまない。

最近、ゲームで作ったキャラを見ると胸がキュンキュンして苦しくなる謎現象にとらわれている私。
普段はロングだが、ふとした瞬間にショートにすると、体から沸いてくる不可解な感覚が私の脳を支配してやまない。

これってなんですかね?(純粋


時間あいたのにこんなのしかできなくてすいません。
次話は、精進します......。


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