処女作ですが、楽しんで読んでいただけると幸いです。
忍大国木の葉隠れの里…
10月10日九尾襲来により里は壊滅的な被害を被っていた。里一面は倒壊した家屋や発生した火災で満たされていた。そして今、その里のはずれで2つの命が消えようとしていた。
「・・・ミナトごめん私ばっかりで・・・」
「ううん・・・いいんだ・・・。ナルト・・・父さんの言葉は・・・口うるさい母さんと同じかな・・・」
八卦封印・・・!
(ナルトこの里を頼んだよ・・・)
波風ミナト、うずまきクシナは息子であるナルトに九尾を封印しこの世を去った・・・はずだった。
(あれ?ここは・・・?)
ミナトは瓦礫の中で目覚めた。周囲は真っ暗で何も見えない。屍鬼封尽で死神に封印されたはずのミナトは何故か再びこの世に生を受けたが-----
(確か僕は・・・何をやっていたんだ?自分が誰なのかも思い出せない・・・)
ミナトは記憶を失っていた・・・
「おぎゃああ・・・」
言葉を発しようと思ったが、泣き声しか口から出てこない。頭が疑問でいっぱいになっていたその時、真上から瓦礫をどかす音と誰かの話し声が聞こえてきた。しばらくすると目の前が明るくなった。
「おい!赤ん坊が瓦礫の中にいるぞ!すぐに医療班を呼べ!」
ミナトは誰かに抱えられ、安心感からかその腕の中で寝てしまった。
三代目火影である猿飛ヒルゼンは、昨日の事件での大きな爪痕が残された里を眺めながら、復興の指示を出していた。
(まさか屍鬼封尽で九尾を息子に封印して里を救うとは。ナルトを信じて力を託していったのか、それとも近いうちにこの里に災害がもたらされようとしてるのか・・・。ミナト、クシナ・・・お主たちが命を懸けて守ってくれたこの里や息子のナルトはわしが命に代えても守り抜くぞ)
ヒルゼンはそう思いながら里の忍たちの様子を眺めていた。
「火影様!」
その時ヒルゼンの目の前で膝をついた状態で里の忍が現れ、ヒルゼンに声をかけてきた。
「なんじゃ?」
「先ほど新たな生存者が発見されたようです。その生存者はまだ生まれて間もない赤ん坊で、応急処置を施し今は病院に搬送されているようですが、どの孤児院も子供がいっぱいで引き取ることができないそうです」
「そうか・・・それならばわしが引き取ろう。ナルトと一緒に育てると伝えてくれ」
「わかりました。そのように病院に伝えておきます」
「頼んだぞ」
(ナルトのためにも九尾のことは箝口令を敷くとしよう。ナルトがわしの新たな家族と共に健やかに過ごせていけるといいのじゃが・・・)
その忍は返事をしてその場から去っていった。こうして四代目火影である波風ミナトとその息子であるうずまきナルトは、三代目火影の下で生活することになったのである。
僕が里の人に発見されて、おじいちゃん(三代目火影)に引き取られて数年がたった。僕には発見されたときに名前が無かったから、おじいちゃんに<猿飛シュン>という名前を付けてもらったんだ。親がいない僕をまるで自分の息子のように可愛がってくれるおじいちゃんやとっても優しいアスマおじちゃんにとても感謝してるんだ。さらに僕には、ナルトという同い年の幼馴染もいて毎日ナルトと一緒に過ごしてるんだ。
「シュン!今日は森に遊びに行くってばよ」
「ん!いいよ!」
ナルトは僕の大切な家族と言っていい存在なんだ。
「おじいちゃん。ナルトと遊びに行ってくるね!」
「じいちゃん、行ってくるってばよ」
「おお。気を付けるんじゃぞ」
「「はーい」」
木の葉の森…
「今日は何しようか」
「ここは忍らしくかくれんぼをするってばよ!」
「ん!了解。じゃあ、僕が鬼やるからナルトは隠れてきてね」
「わかったってばよ。ちゃんと10秒数えるんだぞ!」
「ははは・・・わかってるよ」
10秒数えた後、僕はナルトを探しに向かった。ナルトは将来火影になるという夢をもっているだけあって、気配を消して隠れるのがうまくなった。昔はすぐ隠れている場所を見つけることができたのになあ・・・としみじみ思いながらもナルトを探しに向かう。
(ししし・・・うまく隠れることができたってばよ)
生まれたときからの幼馴染であるシュンは、とてもいいやつなんだ!オレが火影になりたいってシュンに伝えた時もシュンは笑わずに聞いてくれた。シュンは最初何もわからなかったオレにいろいろなことを教えてくれたんだってばよ。おかげで今では、忍として大切な気配を消して隠れることもできるようになったんだ。オレは今、鬼であるシュンを眺めることができる位置に隠れてシュンを眺めている。
(探してる、探してる・・・今日はオレの勝ちだってばよ)
シュンはキョロキョロしながらオレを探してる。今までかくれんぼで勝ったことがないから、今日は初めてシュンに勝てるかもしれないってばよ!シュンから視線を切って内心ほくそ笑んで勝ちを確信して油断していたその時、----------シュンの姿が消えた。
(あれ?シュンがいなくなったってばよ!?まずい・・・早く別の場所に移動しないと-----)
そう思って、慌てて移動しようとしたときにはもう遅かった。右肩を軽くたたかれて振り向くと、シュンが笑顔で立っていた。
「見つけたよ、ナルト」
---この瞬間ナルトのかくれんぼの負けが決定した---
「やっぱシュンはすごいってばよ!今日こそ勝ったと思ったのに・・・」
「いや、ナルトもすごいよ。ナルトの隠れている場所全然わからなかったもん」
「そんなこと言っても毎回シュンの勝ちじゃんかよ~」
「ははは・・・まあかくれんぼは得意だからね」
僕とナルトは里の商店街の道を通りながら帰っている。この商店街には色々な商品が売られているなと周りの様子を見ながら進んでいるとふと気が付いた。
(里の人たちが僕たち・・・いや、ナルトを見ながら何か話してる・・・?)
里の人たちの様子に首を傾げて進んでいると、ナルトに向かって石が飛んできた。ナルトに当たらないように石を手でつかみ、石が飛んできた方向を睨みつけるとそこには子供がいた。僕がその子供になんで石を投げたか聞こうとして近づくと、その子供はどこかにいってしまった。周りの人たちはその子供に注意するどころか、ナルトをずっと睨んでいた。僕はここから早く立ち去ろうと考え、ナルトの手を引いて家まで走って帰った。ナルトはとても悲しそうだった・・・
僕は家に帰るとすぐに、ナルトを自分の部屋に行かせておじいちゃんのところに行き、さっきのことを伝えた。おじいちゃんは僕の話を聞くと、悲しそうな様子で「そうか・・・」とつぶやき、里の人たちに注意することを約束してくれた。僕はおじいちゃんのその言葉に安心して、自分の部屋に戻った。
「まだ人々はナルトを憎んでいるのか・・・」
三代目火影猿飛ヒルゼンは誰もいない火影の執務室でふと呟いた。数年前に発生した九尾事件は、いまだに里の住民たちの心に憎悪と悲しみを残していた。里の復興は進み、今では九尾事件の爪痕は残っていないが、人々の心は事件の時から変わっていないようであった。冷静に考えれば里に大きな被害をもたらした九尾と、それを封印されたナルトは全く別の存在だとすぐにわかるはずなのだが、里の人々はナルトと九尾が同じ存在だと認識してしまっているようだった。事件の後、ナルトを悲しませないように里の住人に箝口令をしいたが、それもあまり意味をなしていないようだった。
「ミナト・・・クシナ・・・わしはいったいどうすれば・・・」
ヒルゼンの呟きは空気に溶けていった。
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猿飛アスマ
僕とナルトが5歳になってから、数日が経ったころ、僕とナルトは火影の執務室に呼ばれた。ナルトと一緒に執務室に向かうと、そこには机に何かの書類を広げて火影用の椅子に座っているおじいちゃんがいた。
「じいちゃん、来たってばよ!」
「話というのは?」
「うむ。実はの・・・シュンとナルトには来年の4月からアカデミーに通ってもらおうと思っているんじゃ」
「「本当(マジで)!?」」
「本当じゃ。2人には同年代の子供と同じ学び舎で、勉強をしたり思い出を作ったりしてほしいんじゃ」
「ありがとう!やったね!ナルト」
「うんうん!オレってばさ、頑張っちゃうもんね!」
「決まりじゃな!後日必要な物を渡すからの」
「わかったよ」
「ありがとう、じいちゃん!」
「うむ。話は以上じゃ。・・・シュンにはこの後話したいことがあるから残ってくれ」
「ん!じゃあ、また後でね、ナルト」
「おう、わかったってばよ」
おじいちゃんはナルトが出て行ったのを確認してから話し始めた。
「シュンよ、アカデミーでは今まで経験したことがないことを経験できる。シュンも慣れない環境で大変だとは思うが、ナルトを気にかけてやってくれ。アカデミーで生活する上でナルトが困ることが多々あると思う。そういう時にはナルトの支えになってくれんかの?」
「大丈夫だよおじいちゃん!ナルトが困ってたらどんな時でも力になるから」
「うむ、良い返事じゃ」
「それで他には・・・?」
「うむ・・・、いや何でもない。下がってよいぞ」
「では、失礼します」
そう言って僕が火影の執務室から退室した。
(どこかあやつに似ているのお・・・)
シュンはミナトとは違い、髪は黒色で目の色もあやつより濃い青色をしている。しかし、ナルトのことに関して話をしていたあの時のシュンはどこかミナトの雰囲気に似ていた。
(まあ、そんなことはあるわけないがの)
わしは、そう結論付けてシュンの後ろ姿を見送った。
時は流れ4月・・・僕とナルトはアカデミーに入学した。何故かすこし懐かしい感じがして、ナルトみたいにソワソワすることはなかった。入学式の挨拶をするおじいちゃんはとても格好良かった。アカデミーの教室はとても広かった。掲示板に張り出されている紙によると3年生になるまでは、2クラスに分かれるみたいだ。残念ながら、僕とナルトは別々のクラスになってしまった。
「シュンと同じクラスが良かったってばよ・・・」
「ははは・・・まあしょうがないよ。行きと帰りは一緒だから・・・ね?」
「う~わかったってばよ」
「じゃあナルト、僕はこっちの教室だから。また帰りね」
「おう!」
ナルトと別れて教室に入った僕。皆緊張してるな~なんてのんきなことを考えながら席に着いた。しばらくすると、先生が教室に入ってきた。
「皆、おはよう。今日から皆さんの担任になるミズキです。これから3年間よろしくね」
ミズキ先生は優しそうな雰囲気を持っている男の先生だ。周りの女子生徒たちが黄色い歓声を上げている。
「今日は教科書の配布と皆の自己紹介をします。まず教科書を配るから1人1冊ずつ取って回してね」
思っていたよりも分厚かった・・・。とりあえず配られた教科書をパラパラとめくってみる。意外と面白そうな内容だな。
「次は皆の自己紹介をしよう。一番前の人から順番に言っていってね」
「犬塚キバだ。そしてこいつが相棒の赤丸!これからよろしくな!」
「ワン!!」
・・・クラスメートに犬と一緒にいる人がいた。あれ?学校ってペット連れてきてよかったの?-----後々犬塚家は特別だということが分かった。しばらくすると僕の順番が回ってきた。ちなみに、クラスの席順は五十音順なので僕の出席番号は結構前のほうだ。
「猿飛シュンです。これから3年間よろしゅく」
・・・ちょっと嚙んだ。まあギリギリのラインだしばれてないだろうと思ったけど、周りからクスクス笑っている声が聞こえた。・・・見事にばれていたようだ。ちょっと恥ずかしい。
自己紹介で少し失敗してしまった僕はナルトと一緒に帰路についていた。今日のアカデミーは入学式と簡単なオリエンテーションだけであり、授業は明日から行うそうだ。
「シュン、何でそんなに落ち込んでいるんだってばよ?」
「自己紹介で失敗しちゃってね・・・。ナルトはどうだった?」
「もうばっちりだってばよ!」
きれいなVサインと共に答えるナルトを見て、ナルトは僕より緊張してたはずじゃ・・・と思ったのは秘密だ。
そんなこんなで家に着いた。僕とナルトは数日前からおじいちゃんの家から出て、おじいちゃんが用意してくれたアパートで暮らすことになった。僕とナルトの部屋は隣同士なのでそこまで離れている感じはしない。ナルトと別れて玄関の扉を開けようと鍵を差し込んで回すが開けた感触がしない。気になってドアノブを回してみると、扉が開いた。鍵閉め忘れたっけ?と内心思いながらも部屋の中に入る。
「おお、シュン。帰ったか」
すると、聞きなれた声と共に見知った人物が部屋の中にいるのが視界に入った。
「アスマおじちゃん!久しぶり。・・・でもなんで部屋にいるの?」
この人は猿飛アスマ。おじいちゃんの息子さんで、僕とナルトのお兄ちゃん的存在。最近忙しいらしくてしばらく会ってなかった。
「今日は、早く任務が終わってな。お前とナルトがアカデミーの入学式だということを思い出して祝ってやろうと思って待ってたんだよ」
「そうなんだ!ありがとう、アスマおじちゃん」
「おう。それでアカデミーはどうだった?」
「ん~、ちょっと自己紹介で失敗しちゃった」
「ハハハ!お前にもかわいい所あるじゃねえか。今日はお前たちの入学祝に飯でも食いにいっか、オレのおごりで」
「いいの?ありがとう、アスマおじちゃん」
「おう!ナルトの部屋にも影分身おいて祝いの言葉をかけるようにしてたが、そろそろ話が終わるころか。ナルトと合流して飯食いに行くぞ」
その後ナルトと合流して、ナルトがアスマおじちゃんが2人いることに驚いていた。そういえばなんで僕は驚かなかったんだろう・・・なんか知ってる感じがしたんだよな。ナルトたっての希望でご飯は一楽で食べることになった。味噌ラーメンが美味しかった。
翌日から、アカデミーの授業が始まった。1年生のうちは主に座学が中心だった。木の葉隠れの里の歴史や忍術のことについて学んだ。基本の忍術である≪分身の術≫を実際にやった時に1回で成功させることができ、先生やクラスの皆が驚いていた。どうやら初回は印の確認が主な目的で、これから何回も授業でやっていく中でできるようにするという予定だったようだ。
僕はその日から忍術について興味を持ち、おじいちゃんに忍術の載っている巻物を借りて家に帰った後に森で練習するようになった。でも、アカデミーではそこまで目立ちたくはなかったから、成績は中の上をキープするようにしていた。ナルトは隣のクラスでイタズラをしたり、授業中に寝たりしているらしい。ちゃんと授業受けないとダメだよと注意しているけど、今はイタズラのほうが面白いってばよと返されてしまった。
(まあ、ナルトも楽しみを見つけたと考えてもいいのかな・・・?)
ちょっと天然が入っているシュンなのであった。
読んでいただきありがとうございます。
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影分身の術
今日は日曜日でアカデミーも休みである。僕は忍術の練習をするために里のはずれのほうにある森に来ていた。アカデミーで分身の術を習った時から続いている忍術の練習はもう習慣になっていて、おじいちゃんに貸してもらった巻物に載っている簡単な忍術なら一通りできるようになった。
(そういえば、アカデミーの入学式の日にアスマおじちゃんが使ってた影分身の術ってどうやって使うんだろう。影分身って名前がついてるから分身の術と同系統なものだとは思うけど・・・)
僕はなんとなくこの前アスマおじちゃんが使っていた影分身の術を再現したくなって、影分身の術の練習をすることにした。ベースは分身の術のはずなので、印の組み方を少しずつ変えながらチャクラを込めてみたけど、何も起こらない。その後も諦めずに印の組み方を変えたり込めるチャクラの量を変えたりしたけど何も起こらなかった。気が付いたらこの森に来た時は青かった空が赤色になっていたので、今日は諦めて帰ろうと思ったその時・・・何かの印の組み方が頭に浮かんだ。
(これを試してから帰ろう)
そう思ってさっき頭に浮かんだ印を組んでチャクラを込めたその時・・・
「で・・・できた!!」
ボフンという音を出しながら目の前にもう1人僕が現れた。どうやら分身の術とは違って影分身には実体があるようだ。自分で成功させることができたのでとても嬉しくなって影分身を触ってみたり動かしてみたりした。術を解いてみると影分身の記憶が頭の中に入ってきた。どうやら影分身にはフィードバックのようなものがあるらしい。また1つ新たな発見ができた。
「こ・・・これは影分身の術!?なぜシュンがこの術を使えるのじゃ!?」
火影の執務室でシュンの様子を水晶で見ていた猿飛ヒルゼンは驚愕した。それもそうだろう、まだアカデミーに通い始めて1年も経っていないような子供が高等忍術である影分身の術を使用したのだから・・・。
(シュンが自分であの術の印を見つけたということか・・・!?いや、そんなことが一介のアカデミー生にできるはずがない)
その時ヒルゼンは、ナルトがアスマが2人いて驚いたと言っていたことを思い出した。その時は、(影分身の無駄遣いをしおって)と内心ため息をついていたがアスマがその時にシュンに印を教えたのかと考え、真偽を確かめるためにアスマを呼び寄せることにした。
「どうしたんだ?急に呼び出して」
アスマは火影の執務室に入って来るや否やヒルゼンに問いかけた。
「のう、アスマよ。お主はシュンに影分身の術の印を教えたか?」
「シュンに?いいや、教えてないぜ」
「印を見られたということはないか?」
「それもない。シュンがどうしたんだ?」
「あやつが影分身の術を使いおった」
「マジか・・・。あいつはアカデミー生だぜ!?」
「だから驚いて、お主に聞いておるんじゃ。お主の時以外に影分身の術を知ったり見たりする機会はないからの」
「じゃあ、あいつが自分であの術の印を見つけたってことかよ」
「そうなるの・・・」
「こりゃカカシやイタチ、ミナトさんに次ぐ天才かもな。影分身なんて高等忍術じゃねえか」
「いや、しかしまだあやつはアカデミーに入学したばかりじゃぞ」
「確かに言われてみれば、少しおかしいかもしれない」
「やはり・・・」
「でも多分考えすぎだぜ。人間誰しも同じ道を歩むとは限らないからな。もしかしたらどこかで影分身の術についての話を聞いたのかもしれないしな」
「ううむ、そうかのう」
ヒルゼンは無理やり自分を納得させることにした。
そのころシュンは影分身を解除した後にいきなり押し寄せた疲労を感じながら家に向かって歩いていた。
(どうしたんだろう・・・今にも倒れそうなくらい疲れてる。何か術の構築でも失敗したのかな)
実際はチャクラ配分を失敗してチャクラを込めすぎたために、シュンの体にとてつもない疲労感が押し寄せているわけだが、そんなことを知らないシュンは自宅についてシャワーを浴びた後、死んだように眠ってしまった。
読んでいただきありがとうございます!
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再会
「おお、ここが・・・温泉宿か」
外からでもわかる湯気の量。今まで嗅いだことのないような独特なにおい。僕は今木の葉隠れの里の外れのほうにある温泉宿に来ている。一度も経験したことのない温泉への期待に胸を弾ませながら僕は昨日の出来事を思い返していた・・・
ナルトと一緒に里の商店街に買い物に来ていた僕は、2000両の買い物で1回回すことのできるガラガラ抽選に挑戦していた。1等が赤色でカップラーメン1年分、2等が青色で温泉宿の宿泊券、3等が緑色で商店街の商品券・・・というように色によって商品が分かれているものである。ナルトは「先にカップラーメンをいただいてくるってばよ!!」と宣言して僕の前に挑戦して末等のティッシュペーパーでものすごく落ち込んでいた。横でナルトが「カップラーメン・・・」と呟いて謎のプレッシャーを与えてくる中僕が挑戦してみると、青色の球がコロリと出てきた。
「大当たり~!!2等の1泊2日温泉宿の宿泊券です!!」
「おおー!!凄いってばよ、シュン!2等だってばよ」
「うん、僕も驚いてるよ」
僕もナルトと同じでティッシュペーパーだと思っていたのだが、なんと2等が当たった。
「これはペアチケットで明日から使えるから、友達や家族と一緒にいってきてね」
「はい!ありがとうございます」
どうやらこれはペアチケットだったらしい。ナルトと一緒に行こう。
「ナルト、良かったら一緒に行かない?」
「え、いいの?」
「うん。ナルトと一緒に行きたいんだ」
「嬉しいってばよ!じゃあさ、じゃあさ明日行こうぜ」
「そうだね。アカデミーが始まったら行けなくなっちゃうからこの連休中に行こう」
「じゃあ、明日8時に起こしに来てくれってばよ」
「ナルト、少しは自分で起きるようにしようよ・・・。まあ、いいけど」
僕もおじいちゃんと一緒でナルトに甘いなと思ってナルトと帰宅した。
そして今日、ナルトが風邪を引いて熱を出した。・・・うん、やっぱ1人は寂しい。1人で行くのは悪いと思って今回の旅行はやめようと思ってたんだけど、「オレのことは気にせずに行ってきてくれってばよ」とナルトに言われた。だけどナルトが心配で僕が看病しようと思ってたんだけど、ナルトと何故かナルトの部屋に看病しに来ていたアスマおじちゃんに説得されて行くことにした。・・・なんでアスマおじちゃんがいたのかは本当にわからないけど。理由を聞いたら「ナルトが風邪を引いた気がしたから」と返されてしまった。アスマおじちゃんは多分親バカになるだろう。
「あの2人とおじいちゃんにお土産を買って帰ろ・・・何してるんだろうあの人」
なんか望遠鏡を使って露天風呂の方を覗いている人がいるんだけど・・・。あれって犯罪だよね?
「ええのう、ええのう。ぐふふ・・・」
「あのー、犯罪ですよ」
「うわっ、なんだお前は・・・!?」
「いや、こっちが聞きたいんですけど・・・」
さっき見つけた白髪のおじいさんに声をかけたらなんか訝しむような視線を向けられた。僕は正しいことを言ってるはずなんだけど。まさかここら辺では覗きが犯罪ではないのかもしれない・・・・・ってそんなわけないか。1人で考えていたらおじいさんが驚いた様子で呟いた。
「・・・ミナト」
「えっ?」
後に知ることになるがこれが伝説の3忍である自来也さんとの出会いだった。
「ミナト・・・」
「えっ?」
「ミナトなのか?」
「えっとよく言ってる意味がわからないんですけど・・・」
僕が望遠鏡で覗きをしていた白髪のおじいさんに話しかけたら、驚かれて逆に質問されている。いきなり問いただされて少し困ってしまった。
「あ、いや・・・すまんのォ。少しお前の容姿がワシの知り合いに似ていたんでいきなり問いただしてしまった」
「いや、大丈夫です。少し驚いただけですから」
「そうか、それならよかったわい」
「はい・・・ってそうじゃなくてお風呂を覗くのは犯罪だと思うんですけど!?」
「失敬な!!これはワシが書いてる本の取材だぞ!!」
「そうだとしても駄目なものは駄目です!!」
「むう・・・しかし「きゃーーーーー!覗き魔よ!!」・・・まずい!小僧いったんここから離れるぞ」
「え?ちょっと待ってくださ・・・うわーーーー」
白髪のおじいさんは、有無を言わさずに僕の襟をもって高速で移動し始めた。やっぱ悪いことをしてる自覚はあったのか・・・。ていうか僕何も関係ないんだけど!?ただ温泉に入りに来ただけなのに・・・。
里の外れの方の森に到着してやっとおじいさんは僕のことを離してくれた。少し首が痛い。
「いやーさっきはすまんかったのォ。ばれると困ったことになるんでな」
「やっぱ悪いことをしてる自覚はあったんですね」
「まあまあ、細かいことは気にするでない。そういえば自己紹介をしておらんかったのォ。ワシの名前は自来也だ。お前の名前は何というんだ?」
「猿飛シュンです」
「猿飛・・・?お前は三代目と何か関係があるのか?」
「九尾事件の時に火影様に引き取ってもらったんです」
いくら家族のような関係であるとはいえ流石に他人におじいちゃんとは言えない。・・・そういえば自来也って名前どこかで聞いたことがあるような気がする。
「そうだったのか・・・。すまんの、つらいことを思い出させてしまって」
「あ、いえ大丈夫です・・・!?自来也ってあの伝説の三忍の!?」
「おお、よく知っておるのォ」
「はい!とてもすごい忍だと聞き尊敬しています。・・・まあ、覗きをしていたことは驚きましたけど」
「そうかそうか、なんか面と言って言われるのは嬉しいのォ。・・・そしてあれは本の取材だと言っておるだろうが!」
「・・・そういえば自来也様はどんな本をお書きになっているんですか?」
「あーー、ワシはそういう堅苦しいの嫌いなんで普通に自来也でいいぞ。・・・ちょっとお前には早いかもしれんのォ」
自来也様・・・自来也さんはそう言いながら執筆しているという本を見せてくれた。少し内容を読んでみたけど、確かにこれは僕が読んでいい内容ではないようだ。顔を真っ赤にしながら本を返した。
「がはははは、やっぱお前にはまだ早かったか。そういえば売れなかったやつだが1冊お前でも読めるやつがあるぞ・・・ほれ」
今度は僕でも読めそうなタイトルだ。『ド根性忍伝』というらしい。しばらく読んでいたらすっかりこの本にはまってしまった。とても面白い。
「とても面白いですこの本!買わせてもらってもいいですか?」
「おお、気に入ってくれたか。金は要らん、お前にやろう」
「いいんですか?ありがとうございます!・・・そういえばこの主人公の名前ってナルトっていうんですね。僕の親友の名前と同じです」
僕がそう言うと自来也さんはとても驚いたような顔をした。
「そうか・・・そいつはその主人公のように真っ直ぐ育っているか?」
「はい!」
僕がそう返すと自来也先生はとても嬉しそうな顔をした。
「そろそろワシは行かなきゃならないところがあるんでのォ。シュンよ、また機会があったらどこかで会おう」
そういって自来也さんは背中を向けて立ち去ろうとした。僕はもう一度本のお礼を思ったら自然と口が動いていた。
「ではまた。自来也先生!」
何故か自来也先生と呼ばなければならない気がした。また会った時には何か術を教えてもらおう。
「自来也先生・・・か」
あそこから立ち去る瞬間背中から聞こえた呼び方につい数年前のことを思い出してしまう。あの猿飛シュンという少年はどこかかつての弟子である波風ミナトに似ている・・・自来也はついそう思ってしまった。
「そんなことあるはずがないのだがのォ」
そんな自来也の呟きは町の喧騒の中に消えていった。
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才能
今回は頑張って長めに書いてみました。
自来也さんと遭遇した後僕は温泉宿に戻って旅行を楽しんだ。疲労回復効果のある温泉や新鮮な海の幸が使われた料理などいい思い出ができた。僕はおじいちゃんやアスマおじちゃん、ナルトにお土産を買って自分の家に帰った。自分の部屋に着いた後に荷物を置き、お土産を渡しに隣のナルトの部屋に向かった。インターホンを鳴らすとナルトが扉を開けて出迎えてくれた。ナルトの元気な様子に内心安心しつつナルトの部屋にあがった。
「それでね、そこの温泉が-----」
「そんなに凄かったのか!?オレも行きたかったってばよー」
「今度は一緒に行こうね」
「おう!」
ナルトの部屋にあがった後はナルトが聞きたがってたので主に旅行のことについての話をした。お土産を渡したらとても喜んでくれたので僕も嬉しくなった。ナルトの部屋を出たのが13時だったので、今日おじいちゃんにお土産を渡しに行こうと考えた。ついでに新しい巻物を借りよう。
しばらくして火影邸に着き僕は今火影の執務室の前にいる。扉をノックしてみるが、返事はかえってこない。どうやらおじいちゃんは執務室にはいないようだ。
(まだ時間はあるし探しに行こう)
そう思っておじいちゃんを探しに向かった。
「火影様。やはり一族の中に何か不穏な動きがみられます」
「そうか・・・。なんとかならないかのう」
「火影様・・・。私に一族の監視の許可を与えてもらえませんか?」
「しかしシスイよ。そのようなことが一族に知られたらお主が危険な目に合うかもしれんのだぞ」
「気にしないでください火影様。私は一族のために-----」
おじいちゃんを探して屋上を覗いてみると、おじいちゃんと癖を持った黒髪を短く切りそろえた男の人が話しているのが見えた。屋上の入り口付近から覗いているから2人が何を話しているのかわからないけど、どうやらとても真面目な話をしているらしい。このままこの場にいるのは気が引けたので、僕は火影の執務室の前で待っていることにした。
「おお、シュン!久しぶりじゃの。今日はどうしたのじゃ?」
しばらくして話を終えた様子の2人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「久しぶりおじいちゃん。いきなり押しかけちゃってごめんね。今日は旅行のお土産を渡すついでに新しい巻物を借りようかと思って」
「おおそうか、すまんの。巻物はあとで渡すとしよう」
僕がお土産を渡すとおじいちゃんも嬉しそうに受け取ってくれた。するとそこでおじいちゃんとさっきまで話していた男の人が不思議そうな顔をして口を開いた。
「火影様、この子は一体・・・?」
「すまんの、紹介がまだじゃった。この子の名前はシュン。わしの養子で最近まで一緒に暮らしておったんじゃよ」
「なるほど・・・そうだったんですか。シュン、オレの名前はうちはシスイっていうんだ。よろしくな」
「猿飛シュンです。よろしくお願いします」
その後は3人で少し話をして僕とシスイさんは帰路に就いた。シスイさんと2人で歩いていると、シスイさんが話しかけてきた。
「なあシュン。さっき火影様に巻物を借りていたよな?巻物で何をするんだ?」
「僕忍術に興味があって、おじいちゃんに簡単な術が載ってる巻物を借りてそれで修行してるんです」
「アカデミーもあって大変じゃないのか?」
「いえ、そんなことはないですよ。アカデミーの休みの日や放課後にやってるので全然苦じゃありません」
「そっか、偉いなシュンは・・・」
そう言ってシスイさんは何かを考えるようなそぶりを見せて立ち止まった。
「シスイさん?」
「シュン、もしよかったらオレがお前の修行を見てもいいか?」
「え?そんなの悪いですよ。シスイさんも忙しいでしょうし」
「確かに任務もあっていつも一緒にいられるわけじゃないがお前の修行を見てみたいんだ。オレの気分転換にもなるし」
「そういうことなら是非お願いします!」
「おう!明日からよろしくな」
そうして僕の修行は変わっていった。
そして翌日から僕の修行は始まった。今まで術の印の組み方とかしかやったことがなかったけど、チャクラコントロールはとても大切だと教えてもらいまずチャクラコントロールの修行から始めることになった。
「じゃあ、今日からまずチャクラコントロールの修行を始めるぞ」
「チャクラコントロール・・・ですか?」
「ああ、全ての術においてチャクラコントールはとても大切なものだ。今までにチャクラを込めすぎたり逆に少なかったりして術が失敗した経験はないか?もしくは術を使った後に倒れそうになったりとか」
確かに初めて影分身の術を使った時には術は成功したけど体から多くの力が抜けていくような感覚を味わったことがある。
「確かに同じような経験はしたことがあります」
「だろう?それを改善するために今からチャクラコントロールの修行をするんだ」
「わかりました!よろしくお願いします」
僕たちは池の前に立っている。シスイさんがいきなり池のほうに歩いて行ったと思ったら、そのまま池の水面に立っていた。
「これが今からお前にやってもらうものだ。足のチャクラを集中して均等になるように保ちつつ池の水面を歩くんだ。ではやってみろ」
「は、はい」
まずは集中して自分の足の部分のチャクラを均一にして・・・よしできた。後は池の水面に立つだけ・・・
「うわっ」
池の水面には辛うじて立つことは出来ているが脛の部分まで水につかってしまった。これ思っていたよりも難しいな。
「おお!いきなり水面に立つことができるようになるとは思っていなかった。普通なら何回も試行錯誤して行うもんだけどな」
「いや、でも難し・・・うわっっ」
長い間チャクラを保つことができずに水に落ちてしまい服が濡れてしまった。しかし何回も水に落ちながらも練習し続けた結果普通に水面に立つことができるようになった。
「できました!」
「まさか半日でできるようになるとは思ってなかった。シュン、今のイメージを忘れるなよ」
「はい」
「よし、今日の修行は終わりにしよう。次は水面を歩けるように修行していこうな」
「ありがとうございました」
こうして1日目の修行が終わった。家に帰ってみて分身の術を使ってみたけど、チャクラ量をコントロールするのとしないのとでは明確な違いがあることが分かった。
あれからおよそ1ヶ月後。今では簡単な術ならば完璧なチャクラコントロールで術を発動できるようになった。やはり修行を見てくれる人がいるだけで効率の良さが全然違う。シスイさんが教えるのがとても上手っていうのも理由の1つだと思うけれど。
「行きます」
「おう、どこからでもかかってこい」
今日はシスイさんと模擬戦を行っている。この模擬戦で今まで修行した成果をシスイさんに見せるというのが目的だ。まだ力の差は大きいけれどやるからには勝ちたい。僕は模擬戦用の木製のクナイを構えシスイさんの方に向かっていく。まずはシスイさんに向かって煙玉を投げ煙幕を作ってこちらの姿を隠す。
「影分身の術」
その隙に影分身の術で分身を作り、影分身に直接シスイさんを攻撃させ僕は後ろに回って挟み撃ちの形で攻撃を仕掛ける。
「甘いぞ!」
しかしシスイさんは両手に持ったクナイで僕と影分身の攻撃を受け止め弾き飛ばす。
「ぐっ」
今の衝撃で影分身が消えてしまったが、どうにか空中で体制を整えた僕はシスイさんに向かって木製の手裏剣を放った。
「こんな攻撃が当たるかっ!」
直線的に進む手裏剣をシスイさんは体を横に移動させることによって避ける。・・・しかしそれが僕の狙いだった。
「なっ!?」
シスイさんは驚愕している。なぜならいきなり森の中からクナイが飛んできて手裏剣の方向を変えたからだ。僕が影分身の術で作った分身は2体で煙に乗じて1体の影分身を森の中に忍ばせておいたのだ。シスイさんが手裏剣を迎撃しているうちに僕は背後に回って攻撃を仕掛ける。シスイさんが手裏剣を迎撃し終えてこちらを向くがもう遅い。僕の攻撃がシスイさんの腹部に命中して-----
「えっ!?」
ボフンという音を立てて消えた。これは・・・
「分身の術!?」
僕が分身の術を使えるということはシスイさんも使えるのは当たり前。どうやら僕はシスイさんが分身であるという可能性を考慮していなかったようだ。僕は驚いて動きを止めてしまった・・・そう止めてしまったのだ。そのことに気が付いてこの場から離れようとしたがクナイが首に当てられた感触と共に
「最後まで気を抜いちゃだめだ」
というシスイさんの声が背後から聞こえて僕の敗北が決定した。
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シスイ
シスイさんと模擬戦を行った日から1ヶ月。その間シスイさんと出会うことは無く1人で黙々と修行を重ねていた。そして今日久しぶりにシスイさんとの修行を行うことができる。
「久しぶりだなシュン、最近会えなくてごめん」
「いえ、シスイさんも忙しいことはわかってるので大丈夫です」
「ありがとう。・・・今日はオレの使っている術を教えたいと思う」
「シスイさんの使っている術を!?」
「ああ。最近任務が忙しくてもしかしたらこれが最後の修行になってしまうかもしれないしな」
「そうなんですか・・・。わかりました!シスイさんの術を習得出来るように頑張ります」
「今日お前に教える術は瞬身の術と呼ばれる移動忍術だ。よく見とけよ」
シスイさんがそう言ったと思ったらいきなり姿が消えてしまった。
「え!?」
「シュンこっちだ」
後ろから声が聞こえたので振り向いてみると5メートルくらい離れたところにシスイさんが立っているのが見えた。
「今のが瞬身の術だ。これは体をチャクラで活性化させて移動する術でチャクラコントロールがとても大切になる。この上位の術には時空間忍術と呼ばれるものがあるが今はそれは置いておこう。最初は印を組んで体中にチャクラを均等に行き渡らせるんだ」
「はい!」
言われたとおりに印を組んで集中する。チャクラコントロールについてはシスイさんのお墨付きなので大丈夫だと思う。しばらくすると体に均一にチャクラを行き渡らせることができた。・・・足を使うから少し足の方を多めにしておこう。
「できました」
「よし、そのまま前方10メートルの場所を到達点と考えて移動するんだ。この術には得意不得意があるからできなくても気にするなよ」
「はい!」
シスイさんに言われたとおりチャクラを維持したまま前方に移動する!!
≪フッ≫
軽い浮遊感を感じて地面に着地する。・・・あたりを確認する。どうやら成功させることができたようだ。
「やった!」
僕は嬉しくなってシスイさんの方に振り返ると、なぜかシスイさんは大きく目を見開いて立ち止まっていた。
「どうしました?」
「どうしました?」
シュンがオレに向かって言葉を発してきているが、驚愕のあまり答えることができない。それほどシュンの瞬身の術の速度が速かったのだ。
さっき言った通り瞬身の術を含む移動系忍術は適正の有無が関係しているためそう簡単に習得することはできない。オレはシュンなら習得できるだろうと思って術のやり方を教えたわけだが、一発で成功させたことはもちろんその速度はオレの想像をはるかに超えていた。
「シュン、お前のその速さは・・・!?」
「え?どこか駄目なところがありましたか?」
「いや、術の完成度としては申し分ないんだが・・・」
オレ自身『瞬身のシスイ』と呼ばれていることもあって、その速度には自信を持っている。しかしシュンのそれはオレに勝るとも劣らぬものだったのだ。これから成長していくうえでさらにその速さには磨きが気がかかることだろう。シュンはオレの想像以上の忍になるかもしれないな・・・。
「・・・流石シュンだ、この技を一発で成功させるとはな。この技を使いこなせば相手の意表を突く形で行動できる。シュンの攻撃パターンに組み込んでみると面白いかもしれないな」
「ありがとうございます!シスイさんに追いつけるように頑張ります」
・・・その時、誰かが話しかけてきた。
「こんなところで何をやっているんだシスイ?」
「イタチ!?」
そこにいたのはオレの弟分であるうちはイタチだった。
いきなり僕たちのそばに人が現れた。どうやらシスイさんの知り合いらしい。
「イタチ、どうしてここに?」
「いや、お前が1人で森の中に入っていくのが見えたからな」
「ははは、ばれちまったか。実はそこのシュンの修行を見ていたんだ」
「そうだったのか。・・・君は三代目様の・・・」
「猿飛シュンです。よろしくお願いします」
「オレはうちはイタチだ。よろしくな」
「なんだイタチ、知ってたのか」
「ああ、ちょっとな・・・。それよりもシスイ、あのことで少し話がある」
「・・・!そうか。ごめんなシュン。今日はここまでだ。次はいつになるかわからないが、また機会があったらまた修行を見るから」
「はい!今までありがとうございました。シスイさんから教えてもらった術を使いこなせるように頑張ります」
「ああ、頑張れよ」
「すまない、シュン」
「大丈夫ですよイタチさん!」
「そう言ってもらえると助かる。じゃあなシュン」
「またなシュン!次に会った時に瞬身の術を見せてくれ」
「はい!ありがとうございました」
挨拶をかわし僕はシスイさんたちと別れた。何故か僕は言い知れぬ不安を感じていた。
あれから数日が経った。今日はいつも術の練習をしている森の演習場が使用されていたため、里の外れの方の森に向かっている。
「今日はついてないな。こんなに遠くまで来なきゃならないなんて」
僕はぶつぶつ呟きながら誰もいない道を進んでいく。しばらくして目的の場所に着いたと思ったらクナイのぶつかり合う音が聞こえてきた。
「ここも誰かが使ってるのか・・・!!」
とっさに隠れて様子をうかがう。僕の視界には6人の忍が戦っている光景が映っている。あれは6人でというより5対1に別れて戦っているようだ。しかも模擬戦とかの雰囲気じゃない・・・!!その時1人で戦っている人が瞬身の術で逃げていくのが見えた。その時僕は頭を金づちで殴られたような感覚を味わった。あの顔は・・・
「シスイさん!!」
「何を考えている?なぜオレの邪魔をする!!」
「お前の瞳術別天津神、それをクーデター阻止のために使うのは勿体ないと思っての。それが成功したとしてもうちは一族がいるだけでまた里に危害が及ぶだろう。だからワシがその写輪眼を有効に使ってやろうと思っていてな」
「お前、初めから・・・」
くそ、やはりダンゾウはそう簡単にやらせてくれないか。ここでオレがやられたらうちはの皆が・・・!
「これも木の葉の真なる平和のため・・・」
そう言うとダンゾウはオレの方に向かってきた。オレは十字剣で応戦する。
≪キン・・・キン≫
オレとダンゾウが戦っている音があたりに響く。ダンゾウがクナイを構えて迫ってきたのでオレは十字剣でそれを受け止め鍔迫り合いの状態になる。
「うおおおおお!」
「ぐっ」
どうにかダンゾウを弾き飛ばすことができた。老いていたとしても油断はできないな・・・。
「ハアッ・・・ハアッ流石はうちは1の手練れ・・・その名は伊達ではないか。ならば!」
ダンゾウが手で合図をするとさっきオレを襲ってきた暗部たちが草陰から出てきて大量の忍具をこちらに投げてきた。
「くそっ」
≪キキン、キン、キン、キン≫
オレがどうにか全ての忍具をクナイで弾き飛ばすとダンゾウの姿が見えなくなっている。
「なに!?いったいどこに?」
オレが背後に気配を感じて振り向くとそこにはオレとの距離を縮めているダンゾウがいた。ダンゾウの手がオレの右目の方へと向かってきて・・・・・
「ぐああああああっっ!!!」
鮮血が地面に零れ落ちた。
読んでいただきありがとうございます。
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戦闘
「ぐあああああ!!!」
オレは思わず目を見開いた。オレの右目を奪おうと迫ってきていたダンゾウの手には手裏剣が刺さっていた。いったい誰が・・・
「ダンゾウ様!!」
さっきまでオレと敵対していた暗部たちが全員ダンゾウに駆け寄る。・・・これはチャンスだ!オレは持っていた煙玉で煙幕を作り瞬身の術で逃走を図った。
「ぐ・・・この場に2人残して後の者はシスイを追え!絶対に逃がしてはならん」
ダンゾウは腕に突き刺さっていた手裏剣を投げ捨て声高に叫ぶ。余程シスイの写輪眼が奪えなかったことが頭に来ているのだろう。命令を受けた暗部は2人を残しシスイの後を追うために去っていく。
「ダンゾウ様、私たちは?」
「手裏剣を投げてきた奴を始末する。・・・シスイの奴の仲間だろうからな」
「はっ」
ダンゾウのもとに残った暗部は手裏剣を投げてきた者を始末するために、手裏剣が飛んできた方向に捜索に向かう。
「何者かは知らんが絶対に許さん。せっかくの機会を潰しおって!!」
ダンゾウは手裏剣の飛んできた方向を睨みつけながら吼えた。
「くっ!しつこい!!」
シスイは追ってきた暗部たちを相手にしながら逃走を図っている。あたりには忍具をはじき返す音や木々が揺れる音が響く。
「絶対に逃がすなよ。ただし頭は狙うな」
「「はっ」」
暗部たちが再び忍具を投擲する。シスイはそれをはじき返そうとクナイを構えて迎撃態勢に入るが、今までのダメージの蓄積のせいか少し動きが鈍くなってしまう。
「ぐうう」
迎撃しきれなかった忍具がシスイの体をかすめる。ダメージを気にせずに再び逃走しようとするとシスイは体がふらつくような感覚を覚えた。
(毒か・・・。厄介な)
「火遁・豪火球の術」
印を組んで術を発動させどうにか距離を離すことに成功させたシスイは前に見えた草原地帯に着地する。
「ハアッハアッ!思ったよりも毒の回りが早い」
シスイの受けた毒は強力な神経毒であり、そのためシスイは立っていられなくなりその場に蹲ってしまった。その間に距離を離された暗部たちが着地しシスイを仕留めるために駆け寄ってくる。
(ここまでか!?)
「覚悟!・・・・なっ!?ぐああああああ!!!」
シスイがどうにか体を動かそうとしたその時、シスイの横を3つの豪火球が通り過ぎ暗部たちを打ち倒した。
(これは豪火球の・・・)
シスイがぼやける頭で自分を助けてくれた人物を推理するよりも早くその人物が姿を現した。
「遅くなってすまなかった」
「イタチ・・・!?・・お前・・・任務があったんじゃ・・・」
「嫌な予感がしてな・・・」
「・・・すまない」
「その傷口は・・・毒か!?応急処置をするから少しじっとしててくれ」
「ああ・・・」
「・・・よし、これで大丈夫だ。この後正しい処置をするからお前はなるべく動かないようにな」
しばらくして応急処置を終えたイタチがシスイに話しかける。
「それで何があったんだ?あれは根の暗部だろう?」
「三代目様に別天津神の使用許可をもらった帰りにダンゾウに襲われたんだ。あいつはうちは一族をよく思っていない。オレがダンゾウに目を奪われそうになった時にお前が手裏剣で阻止してくれたおかげで、目を奪われずに済んだ。両目が揃ってないと別天津神は使えないからな」
「そうだったのか・・・。しかしシスイ、オレはさっきお前のもとに駆け付けたから手裏剣を投擲してはいないぞ」
「なに!?じゃあ、あれは誰だ?・・・イタチ、オレを助けてくれた奴のところにも暗部が行ってるはずだから助けてやってくれないか?」
「ああ、しかしお前をほっておくわけにもいかないから影分身に見張りを任せていくぞ」
「すまない」
イタチは影分身を作ってシスイのことを任せその場を去った。
「くそっ」
「よくもダンゾウ様の邪魔をしおって!」
「お前の命で償ってもらうぞ」
手裏剣を投擲した人物-----シュンはダンゾウが送り込んできた暗部たちと戦っていた。
(シスイさんは無事なのか?・・・とっさに変化の術を使って暗部の姿に変えることができたから僕がばれることは無いだろうけど・・・きつい)
いくらシスイにその才能を認められているからと言ってもシュンはまだアカデミー生。ダンゾウのもとに仕えている暗部とはチャクラ量も術の数も戦闘経験の数も違うのだ。今は影分身の術や瞬身の術を使用してどうにか相手の攻撃を捌いている状況だがこのままではチャクラが尽きてしまう。さらに相手から絶えずに浴びせられる殺気もシュンを疲労させている原因の1つだった。
(このままでは・・・)
シュンが焦りを感じたその時暗部の1人が印を組み忍術を使用した。
「土遁・落し蓋!!」
シュンの上空から豚のような形をした巨大な蓋が次々と降ってくる。シュンはそれを次々避けるがもう1人の暗部が投げた毒煙玉に気が付かなかった。
≪シュー≫
紫色の煙が土遁・落し蓋を避けたシュンのあたりを包む。
(この状況で煙幕!?・・・いや毒か!!)
シュンはすぐさま瞬身の術でその場を離脱する・・・が毒煙を吸い込んでしまい体が上手く動かない。その様子を見て暗部たちはシュンに忍具を投擲する。
(瞬身の術!!)
シュンは瞬身の術を連続で使用し忍具を避ける。それと同時にいくつか手裏剣やクナイを投擲する。
「こんなものが!!」
しかし流石は暗部というべきか死角から放ったはずの手裏剣も悉く捌いていく。忍具を捌き終えた暗部たちは猛スピードでシュンのもとに接近し蹴りを放つ。1人の蹴りはどうにか防御することができたがもう1人の蹴りがシュンに炸裂し、シュンの体は嫌な音を鳴らしながら吹き飛んでいく。
「がはっ」
地面に叩きつけられ肺の中の空気と共に血の塊がシュンの口から吐き出される。シュンの体はボロボロであった。打撲はもちろん骨折や毒のダメージで常人なら立ち上がれなくなるほどの怪我であったがシュンはどうにか立ち上がる。
「ハアッ・・・ハアッ・・・」
「意外と粘るな・・・。しかしこちらもいつまでも時間をかけてはいられないのでな」
そういうと暗部の2人は印を組み術を発動させた。
「「雷遁・四柱縛り」」
暗部が術を発動させると同時に、地中からシュンを囲むように4本の岩柱が隆起した。
(なんかわからないけど悪い予感がする!)
シュンは必死にその体を動かそうとしたがそれよりも早く4本の岩柱が放電し電撃がシュンを襲った。
「があああああっ!!」
シュンは自分の意識が遠のいていくのを感じた。
(まずい、このままじゃ・・・)
「なにっ」
「ぐあっ」
シュンの最後に見た光景はイタチが暗部2人を打ち倒しているものだった。
イタチは攻撃に集中していた暗部をクナイで切り裂き息の根を止めると、暗部に攻撃を受けていた人物を助け出した。イタチが暗部の格好をしているその人物を抱えると、その人物は意識を失ったのか変化の術が解けた。その姿を見てイタチは驚愕することになる。
「なっ!!シュンだと・・・!?」
(この子が1人で暗部相手に戦っていたというのか・・・)
イタチは少しの間驚愕のあまり立ち止まっていたがシュンの怪我の度合いを確認した後シスイのもとに移動したのであった。
「イタチ・・・そいつが!?」
「ああ、この子がお前を助けた奴だと思う」
「シュンだと!?」
「今は気を失っているが重傷だ。病院やオレの家に行くのはダンゾウやうちは一族にシスイやシュンのことがばれてしまう可能性があるから避けた方がいいな」
「なら、オレの家に行こう。オレの家は村の外れの方にあるしオレ以外住んでる奴もいない。一応医療キッドは家にあるからシュンの様子も見よう」
「ああ、わかった。じゃあ、行くぞ」
シュンとシスイをそれぞれイタチと影分身が抱えてシスイの家に向かった。
読んでいただきありがとうございます。
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邂逅
(ここは・・・どこだ?)
今僕の体はよくわからない場所に浮いている。周りを見渡そうと思ったけど力が入らない。その時、目の前が白く光って人のようなものが現れた。
「あなたは・・・?」
「こんにちは、初めまして・・・だね」
「ここは一体どこですか?そしてあなたは?」
「ここは君の心の中・・・とでも言っておこうか。オレの名前はまだ教えることができないんだ」
「まだ・・・?」
「うん、まだ・・・ね」
その人がそう言った瞬間僕の目の前がだんだん明るくなってきた。その人の影もだんだん消えてきた。
「どうやら時間みたいだ・・・」
「え!?待ってくださ・・・」
目の前が光って見えなくなった。
「う・・・」
「どうやら目が覚めたようだな」
僕の目が覚めると本を読んでいたイタチさんが声をかけてきた。どうやら畳の上に敷かれた布団に寝かされていたらしい。
「ここは・・・ぐっ!!」
「まだ起きない方がいい。お前の体はボロボロだからな」
僕が体を起こそうとしたら体中に痛みが走った。
「ここはどこですか?」
「ここはシスイの家だ」
「シスイさんの・・・?シスイさんは無事なんですか!?」
「ああ、お前のおかげだ。なぜお前はあの場所にいたんだ?」
よかった・・・どうやらシスイさんは無事のようだ。間に合ってよかった。
「たまたまあの場所にいたんですよ」
「それはお前の行っている修行でか?」
「はい」
「・・・今回は無事だからよかったが次からは無茶するなよ」
「わかりました」
その時シスイさんが部屋に入ってきた。包帯は巻いているが元気そうだ。
「おお、シュン起きたのか!」
「はい、おかげさまで・・・。治療していただきありがとうございます」
「いや、お礼を言うのはこっちの方だ。お前のおかげで助かった、ありがとう」
「いえ、間に合ってよかったです」
「・・・お前には話しておくべきかもしれないな」
「話・・・?」
「ああ、実は・・・」
僕はシスイさんにうちは一族のことを聞いた。まさかこんなことになっていたなんて・・・気が付かなかった。
「そんなことが・・・。シスイさんたちはどうやってそのクーデターを止めるんですか?」
「どうしても止められなかった場合は・・・オレの万華鏡写輪眼の能力を使う」
「しかしシスイ!それではお前が・・・」
「いや、これはあくまでも最終手段だからな。そうならないようにこれから行動していかなければならない」
「そうだな」
「取りあえずお前は家に戻った方がいいかもしれないな。幸いお前の姿は見られていないから家に戻らない方が不自然になる可能性があるからな」
「はい、わかりました」
「オレたちはフガクさんや一族の人たちと話し合ってみる」
「今日はお前のおかげで助かった。改めて礼を言う」
「いえ、僕は当然のことをしたまでですから」
僕はシスイさんたちと別れ、自分の家に帰った。
「しかし、シュンの奴・・・アカデミー生なのに複数の暗部と戦うことができるとはな」
「ああ、あいつのような忍が将来里を背負って立つようになるんだな」
「イタチ、オレたちもあいつに負けていられないな」
「そうだな。・・・まずはクーデターを止めよう」
「おう!」
イタチとシスイはクーデターを止めるために行動を開始した。
「シスイ君、イタチ。お前たちの言っていることもわかる。しかし、私は一族の長でありこのまま一族が邪険にされるのは許せん!」
「しかし父さん!このまま里と争っても双方の利益にはなりません!」
「では、このままでいいというのか!」
「そのためにオレたちがいます。オレたちが里の重鎮たちとのパイプ役になります!もう一度考え直してみてはくれませんか?」
「むう・・・。わかった、お前たちのことを信じよう。確かにこのままクーデターを起こしても利益にはならないかもしれないしな。どうやら視野が狭くなっていたようだ」
「それでは!!」
「うむ。一族の方には私から話をしておく。そちらの方も頼むぞ」
「「はい」」
シスイたちはフガクを説得することに成功し、一族のクーデターを防ぐことができた。
シスイは火影の執務室でヒルゼンと話をしていた。
「シスイよ、よくやってくれた」
「いえ、私も一族のために行動できてよかったです。今回は私だけでなくイタチやシュンの助けもありましたから」
「シュンだと?どうしてシュンが・・・」
「詳しいことは言えませんがシュンの力は私たちの助けになりました」
一族を説得した後、シスイとイタチはダンゾウのもとに行き、一応和解という形で話し合いは終わった。シスイたちもやり方は過激だがダンゾウの木の葉の里を思っている気持ちが分かった。そのためシスイはイタチと話し合い、ダンゾウのことは伏せることにした。
「シュンには特別な才能があると思います。私にシュンの面倒を見させてもらってもよろしいでしょうか?」
「確かにあやつはどこか普通のアカデミー生とは違う・・・。もしかしたら不安定になってしまうこともあるかもしれん。シスイよ、頼んでもよいか?」
「はい!では失礼します」
そう言ってシスイは執務室から去っていった。
「しかしシスイが自らシュンの面倒を見たいと言うとはな。シュンになにか特別な物でも感じたのかのう」
そう言い残しヒルゼンもまた執務室を去っていった。
読んでいただきありがとうございます。
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アカデミー卒業
「これより話し合いを行います。うちはフガク様よりお願いします」
ここは木の葉の重役たちが集っている一室。先日のクーデター事件の反省から今日はうちは一族と木の葉の重役たちが話し合う場が設けられたのである。司会を行っているのはシスイとイタチ。
「我々うちは一族の中には里から隔離されているのではないかという不安を持つ者がいます。私としましても里の隅の方に追いやられて好きな場所に住むことができないと考えている一族が多いと思います。また木の葉の重役の中にうちは一族の者を入れていただきたく思っております」
「うむ・・・確かにそうじゃの。うちは一族を隔離しているような状態になっているのも確かじゃ。これからはうちは一族の者1人1人に好きな場所に住む権利を与えよう。また重役の件は・・・」
双方に信頼されている彼らが司会として見守りつつ、話し合いは進行していくのであった。しばらくして里にうちは一族の自由居住権が発表され、一族の中には集落から移り住む者が出始めた。また定期的に話し合いが行われるようになり、木の葉とうちは一族の溝は無くなりつつあった。木の葉警備隊であるうちは一族の士気も上がり、日向家誘拐事件などの事件を何の犠牲もなく解決することができ、里の人々からの信頼は厚くなった。
時は流れ、アカデミーの卒業試験の一週間前になった。シスイさんとの修行はイタチさんも含めて行うようになった。2人ともとても凄い忍なので、早く追いつけるように頑張りたい。ナルトは忍術が苦手みたいで、今までは1人で頑張ると言っていたんだけど僕が一緒に術の練習をすることにした。
「じゃあ、まずは変化の術からやってみよう。おじいちゃんに変化してみようか」
「わかったってばよ」
ナルトは印を組んでチャクラを込める。ボフンという音を立てて現れたのは・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
ちょっと似てないかな。
「うん、一応雰囲気としては合ってると思うよ。次は唇と目を意識してやってみて」
「おう」
何回も練習してだんだん似てくるようになった。ナルトは自分で修正して変化の術をよりよくしていった。
「次は分身の術ね」
「え~!オレ分身の術好きじゃねーんだってばよ」
「だからこそだよ。分身の術はよく使うと思うから練習しておいた方がいいと思うんだ。僕も一緒にやるから頑張ろう」
「わかったってばよ・・・」
僕とナルトは同時に印を組む。ナルトの横に現れたのは抜け殻のようになっている分身体だった。
「やっぱ無理だってばよ」
「大丈夫だよ、まだ時間はあるから。変化の術みたいに何回も練習すれば上達するって」
「シュンがそういうなら・・・」
ちょっとふてくされた様子だけど、ナルトは術の練習を再開した。ナルトは印の形とかは完璧なんだけれど込めるチャクラの量を調節するのが苦手みたいだ。
あれから1週間経ち今日はいよいよアカデミーの卒業試験である。最終学年である今年は1年に3回試験があり、そのうちの1回でも合格すれば卒業できるというシステムである。ナルトは過去2回の試験に落ちてしまっているが、どれも惜しいラインで不合格になっているのでたくさん練習してきた今回なら多分合格すると思う。
「今から卒業試験を行う!試験内容は分身の術だ。呼ばれた者から順に別室に来るように!」
ナルトの担任の先生であるイルカ先生はそう言って教室を出て行った。イルカ先生はナルトを通して仲良くなった先生でナルトのことを思ってくれている良い先生だ。隣にいるナルトは凄く緊張しているようだ。何か声をかけて緊張をほぐさないと・・・。
「ナルト、大丈夫?」
「シュン、オレどうしよう・・・。よりにもよってオレの一番苦手な術だってばよ~」
「今まで練習してきたからいつも通りやれば大丈夫だよ」
「次、うずまきナルト!」
「!!・・・呼ばれたってばよ」
「頑張れナルト!」
「おう、ありがとなシュン」
名前を呼ばれてナルトは試験を行っている部屋に向かっていった。
「じゃあナルト、早速だが分身の術を見せてくれ」
「わかってばよ!」
イルカ先生に言われ、印を組む。凄い緊張してるけど、シュンのアドバイスの通りやれば大丈夫だってばよ。集中しろオレ・・・。
「分身の術!!」
≪ボフン≫
軽快な音と共に現れたのは不完全な分身だった。1週間前の抜け殻のような分身と比べたら進歩しているけれど、全然駄目だってばよ。これじゃあ・・・
「うずまきナルト・・・失格!」
「・・・・・」
わかっていたけど辛い・・・ごめんシュン、せっかく教えてくれたのに。ミズキ先生がイルカ先生に何か言っているけどショックが大きすぎて何も聞こえなかった。
試験が終わり、アカデミーの中は人ごみでいっぱいになっている。僕は受け取った額当てをカバンにしまいナルトを探した。しばらく探して、ブランコに乗っているナルトを見つけた。
「ナルト・・・」
「ごめんシュン・・・一緒に卒業できなかったってばよ」
「・・・・・」
「せっかくオレに教えてくれたのに・・・」
こういう時にどう声をかけたらいいのかわからない。ナルトの気持ちが痛いほどわかる。このままで居るわけにもいかないので一緒に帰ろうと声を発しようと思ったその時声が聞こえてきた。
「見て、あの子よ・・・。あの子だけ試験に落ちたらしいわよ」
「いい気味ね、なんたってあの子は・・・」
「しっ!その先は禁句よ」
ナルトが落ち込んでいるのにそんな言葉を追いうちのようにかけてくる人たちに対して、僕は激しい怒りを感じた。何故かは知らないけどナルトを悪く言うことは許さない。
「なんでそんなこと・・・」
僕が抗議しに行こうと思ったらナルトに腕を掴まれた。
「ナルト?」
「いいってばよ、シュン」
「だけど!」
「本当に大丈夫だから・・・」
ナルトの声が震えているのが分かった。僕はこの場所から急いで離れようとナルトの手を引いて家に向かった。家に着くなりナルトに1人にしてほしいと言われたので、僕は自分の部屋のベッドで寝転んでいる。今日はナルトが1人で整理できるように1人にして、明日気分転換のために2人でどこかに行こう。そんなことを考えているうちに、眠気が来て僕は眠ってしまった。
≪ドンドン≫
僕を眠りから覚ましたのは僕の部屋のドアを叩く音だった。なんだろう?疑問を感じながらドアを開けるとそこにいたのはイルカ先生だった。
「イルカ先生?」
「シュン、ナルトを知らないか!?」
「ナルトなら隣の部屋にいると思いますけど・・・どうしたんですか?」
「理由は移動している時に話すからナルトを探すのを手伝ってくれないか?」
「わかりました」
イルカ先生の様子からただ事ではないと察した僕は先生に協力することにした。
「ナルトが封印の書を!?」
「ああ、今里じゅうの大人たちがナルトを探しているんだ」
イルカ先生の話によると、ナルトが禁術の載っている巻物をおじいちゃんの家から持ち出したらしい。それで今里じゅうの人たちがナルトを探すために行動しているようだ。僕がちゃんとナルトの話を聞いていれば・・・。
「僕のせいだ・・・僕がちゃんとナルトの気持ちを分かっていれば・・・」
「それは違うぞシュン。そんなこと言ったらオレだってナルトのことに気が付いてやれなかった」
「イルカ先生・・・」
「反省は後だ、今はとにかくナルトを探そう。オレはこっちを探すからシュンはあっちを探してくれ」
「分かりました!」
森に入りイルカ先生と別れてナルトを探すことになった。しばらく探していると、ナルトの特徴的な金髪が目に入った。
「ナルト!」
「シュン!なんでここに!?」
「ナルト、里の人たちが探してるよ」
「え?なんでだってばよ?」
「それは・・・」
「ナルト!!」
さっき別れたイルカ先生が合流した。
「あ、鼻血ぶー見っけ!」
「馬鹿者!見つけたのはオレだ!」
「ナルト、今まで術の練習してたの?」
「へへ、そうだってばよ」
「なんでこんなことしたんだ?」
「ミズキ先生が教えてくれたんだってばよ!この巻物に載っている術を覚えれば合格間違いなしだって」
「イルカ先生・・・これは」
「ああ、まさかミズキが!!危ない」
イルカ先生が僕とナルトを突き飛ばした。驚いてイルカ先生の方を向くと、そこにはクナイが背中に刺さっているイルカ先生がいた。
「「イルカ先生!!」」
「よくナルトを見つけることができたなイルカ!もう1人いるようだが」
「ぐっ・・・ナルトをたぶらかしたのはお前か!ミズキ!!」
「ご名答!!」
そこにいたのは残酷な笑みを顔に張り付けたミズキ先生だった。
評価や感想お待ちしています。
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ナルト
「よくこの場所が分かったな、イルカ!」
「なるほど、そういうことか・・・」
「大丈夫ですか!?イルカ先生!!」
イルカ先生はミズキ先生から投擲された手裏剣やクナイで怪我を負っている。ミズキ先生は何をしてるんだ・・・?
「ミズキ先生、何故イルカ先生を!?」
「邪魔だからだ。猿飛シュン・・・この状況を目撃したお前も後で始末してやるからな」
「あのさ、あのさ!どういうことだってばよ!?」
「ナルト、その巻物を渡せ!」
「ナルト、その巻物を渡すな!」
イルカ先生とミズキ先生がそれぞれ違うことを言っている。いくらアカデミー生の僕でもわかる。これは・・・。
「それは禁術が記されている巻物で、それを手に入れるためにお前を利用したんだ!」
「!!」
やっぱりそうか・・・。こんなことにナルトを利用するなんて・・・。
「ナルト!イルカはそれをお前が持つことを恐れているんだ」
「え!?」
「何を言っているんだミズキ!?ナルト早くこの場から離れろ!シュン一緒に逃げるんだ!」
「はい!」
混乱状態に陥っているナルトとイルカ先生の指示通りに逃げようと思ったらミズキ先生が驚くべきことを口にした。
「いいのかイルカ?お前の両親を殺した奴がこのまま育っていくんだぞ?」
「え・・・?」
ミズキ先生が口にした内容に思わず足が止まってしまう。ナルトに至っては目を見開いてミズキ先生の方を向いている。ナルトがイルカ先生の両親を殺した・・・!?
「ナルトは関係ない!シュン早くナルトを!」
「ククククク・・・本当のことを教えてやるよ。ナルト、シュン!」
「バカ止せ!」
「これを知ったらシュンも驚くだろうな。12年前の事件以来里にはある掟が作られたんだ」
ナルトも僕も逃げなきゃいけないってことはわかっているのだけど、金縛りにあったみたいにミズキ先生から目を離せない。
「ある掟・・・?」
「ミズキ止めろ!!」
「それはナルト!!お前の正体が化け狐だと口にしないという掟だ!!」
「え!?」
「ナルトが・・・?」
「つまりお前がイルカの両親を殺し里に壊滅的な被害を与えた化け狐なんだよ!!おかしいと思わなかったか?里の奴らが皆お前のことを煙たがっているのが!!」
「ミズキ!!」
里の人たちがナルトのことを煙たがっていた理由が分かった。でも僕は・・・!!
「どうせシュンもこの話を聞いてナルトから離れていくんだ・・・」
「そんなことない!!」
気づいたら口から大声が出ていた。ナルトもイルカ先生もミズキ先生もみんな僕のことを見ている。
「たとえナルトの正体が九尾だとしても僕がナルトから離れることなんてない!!」
「お前の両親も化け狐に殺されたから三代目の養子として生きていくことになったとしてもか?」
「それでも僕はナルトのことを親友だと思っている!!ナルトは人一倍寂しがり屋で、努力家で・・・何よりとても優しい心を持っている僕の大切な友達だ!!」
「シュン・・・」
「シュンの言う通りだな・・・。ナルトはこのオレが認めた優秀な生徒だ・・・。努力家で一途で・・・そのくせ誰にも認めてもらえなくて・・・。あいつは人の心の苦しみを知っている。ナルトは化け狐なんかじゃない!木の葉の里のうずまきナルトだ!!」
「イルカ先生・・・」
ナルトが巻物を抱えながらボロボロと涙をこぼしている。僕とイルカ先生はいつもナルトの味方だよ・・・。
「ハッ!!美しい愛情だな・・・。もういい・・・お前らを殺してから巻物を奪うことにするからよ!!死ねイルカ!!」
そう言ってミズキ先生は背中に背負っていた大型の手裏剣をイルカ先生に向かって投擲した。
「イルカ先生!!」
僕は瞬身の術を使ってイルカ先生の前まで移動して持っていたクナイで方向をそらす。ミズキ先生を抑えなければ・・・と思って前を向いた瞬間思わず笑みがこぼれた。ミズキ先生がナルトに蹴り飛ばされて宙を飛んでいたからだ。
「ナルト!!」
「やってくれるじゃねえか」
「イルカ先生に手だすんじゃねえよ!殺すぞ!!」
「てめえみたいなガキがほざくな!!お前なんて一発でぶち殺してやるよ!!」
「やってみろ!!」
そう言ってナルトが印を組む。あの印は・・・!?
「影分身の術!!」
≪ボボボボボボボボボボボ≫
「ナルト・・・その術は・・・」
音を立てて現れたのはたくさんのナルト。イルカ先生もとても驚いている。あんな数の影分身を出せるなんてナルトはやっぱり凄いな。
「なんだと!?」
「一発で殺せるんじゃなかったのか?・・・来ないならこっちから行くぞ!!」
「うああああああああ!!」
ナルトの出した影分身にミズキ先生は手も足も出ずにやられてしまった。
「えへへ・・・ちょっとやりすぎちゃったかな・・・。イルカ先生大丈夫か?」
「あ、ああ」
ナルトがミズキ先生の足元で頭を触りながら言った。僕はいてもたってもいられなくなってナルトの方に走っていく。
「ナルト!!やっぱりナルトは凄いよ!!」
「そうかな?・・・ありがとうだってばよ、シュン!!」
しばらくナルトと話しているとイルカ先生がナルトを呼んだ。
「ナルト!!こっちに来てくれないか?お前に渡したいものがあるんだ」
「え?」
「行ってきなよ、ナルト」
イルカ先生の意図が分かった僕はそっとナルトの背中を押す。ナルトがイルカ先生に額当てをまかれている姿を見て涙がポロポロとこぼれてきた。ナルト・・・良かったね。
「よし、もう目を開けてもいいぞ。卒業・・・おめでとう」
「イルカ先生!!」
感極まった様子のナルトがイルカ先生に抱き着く。ナ・・・ナルト、イルカ先生は怪我してるんだから・・・。
「ぐっ!!ナルト、オレ怪我してるんだぞ!!」
「ごめん、イルカ先生・・・。オレ嬉しくって」
「よし、今日はオレのおごりで合格祝いに一楽でも行くか!シュンも一緒に行くぞ!」
「はい!」
僕はナルトとイルカ先生と一緒に森の中を歩いていくのであった。
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班編成
「では、これから班分けの発表を行う!」
アカデミーの卒業試験の日から数日が経ち、今僕たちはアカデミーの教室でイルカ先生から下忍の班分けの発表を聞いている。一班一班が発表されるたびに周りから歓声が聞こえてくる。まあ、これからずっと一緒に行動していくメンバーなんだから当たり前なんだけどね。僕も知っている人と同じになれるように祈っている。
「では次、第七班!うずまきナルト、春野サクラ、うちはサスケ!」
そうこうしているうちにいきなりナルトと同じ班になれないことが判明した。しかし、ナルトとサスケが同じ班か・・・。これはこれで楽しそうな班だな。ナルトはサスケのことをライバル視していて、事あるごとに勝負を挑んでいる。サスケもその度に文句を言いつつも毎回ナルトとの勝負を楽しみにしているとイタチさんから聞いている。なかなかいい班構成だと思う。
「最後の班だ。第十一班!うちはナツナ、屛風シイナ、猿飛シュン!」
なかなか呼ばれなくてもしかして合格扱いされていないの!?と危惧していたけどそんなことは無かった。最後の最後でようやく呼ばれた。うちはナツナはその名の通りうちは一族の人で実技系に秀でている。屛風シイナはアカデミー生の中で一番最初に仲良くなった人で学力に秀でている。2人とも知っている人で良かった・・・。
「もう少ししたら各班の担当上忍たちがここに来るからそれまでこの教室にいろよ」
どうやら担当の先生がこの教室まで直接来てくれるらしい。果たしてどんな人が来るのだろうか・・・と考えていたところで声をかけられた。
「シュン、同じ班だね!ナツナも一緒だし!良かった~」
「シュン、シイナ、これからよろしくね!」
「僕も仲のいい2人が一緒の班で良かったよ。これからよろしく!」
他の人たちも今発表された班のメンバーで集まっているようだ。その後僕たち3人が雑談をしていると教室の扉が開いた。そこにいたのは・・・
「第十一班の3人、オレについてくるように!」
僕の師匠であるうちはシスイさんだった。
僕たちは今シスイさんに連れられて、木の葉の里の演習場の一つにいる。僕も含めて3人とも緊張した面持ちでシスイさんが言葉を発するのを待っている。
「じゃあ、最初に自己紹介にしようか。まずはオレからだな。オレの名前はうちはシスイ、第十一班の担当上忍だ。これからよろしくな!知っている者もいるがシュンから自己紹介をしてくれ」
「自己紹介ってどのようなことを言えばいいんですか?」
「そうだな・・・名前と将来の夢とか好きな物とか、まあ何でもいいよ」
「分かりました。僕の名前は猿飛シュン、好きな物というか趣味は読書で将来の夢は立派な忍になることです。これからよろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。では次の子」
「はい!私の名前は屛風シイナです。好きなことは料理で将来の夢は誰かを支えていけるような人になることです。よろしくお願いします」
「よろしくな」
「私の名前はうちはナツナです。好きなことは体を動かすことで将来の夢はうちはの名に恥じないような人物になることです。よろしくお願いします」
「よろしくな。・・・では自己紹介も終わったことだし明日の予定を伝える。明日は朝9時にこの演習場に集合だ。詳しい事は言えないが忍具などの準備をしっかりしてくるように!また万全の状態で臨むこと!」
「「「はい!!」」」
「うん、いい返事だ。今日はこれで解散する。明日は遅れないように」
そのシスイさんの言葉を最後に今日のところは解散となり、それぞれ帰路に着いた。僕は明日のことを考えながら帰った。
翌日の9時、誰1人遅れることなく集合することができた。・・・僕がシスイさんよりも先に着いておこうと思って1時間前に行った時にはすでにシスイさんがいたのには驚いたけど。他の皆が来るまで少し雑談していた。
「みんな集まったようだし、今日行うことを発表する。今日行うことは・・・」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。もしかしたら僕が出した音かもしれないしそうでないかもしれない。
「模擬戦だ」
「「「え?」」」
3人の声が重なった瞬間だった。
「ルールは相手に重傷を負わせるような攻撃はしないこと、それとオレに参ったと言わせることだ。お前たちの実力が下忍に値しないとオレが判断した場合は問答無用でアカデミーに戻されるから真剣にやれよ?」
「!?」
せっかく下忍になることができたのに、アカデミーに戻される可能性があるだなんて・・・。おそらくこれはどの班でも行われているテストのようなものだろう。これは作戦を考えないとな。
「このクナイがオレの手から離れて地面に刺さった瞬間からスタートだ」
そう言ってシスイさんはクナイを手放す。僕の目にはゆっくり落ちていくように見えたクナイが地面に突き刺さり模擬戦が開始された。
(瞬身の術!)
まずは体制を整えて作戦を考える時間が必要だと考えた僕は、模擬戦の開始と同時に瞬身の術を使って森の中に逃げ込んだ。こちらからシスイさんの様子が見えるような位置に隠れることのできた僕は、気配を殺しながらシスイさんの様子をうかがう。どうやら他の皆も無事に隠れることができたようだ。正面からぶつかっては下忍の僕たちが上忍のシスイさんに勝てる可能性は限りなく低い。これはどうするべきか・・・。僕1人がどんなに作戦を練っても・・・
「!?」
(1人!?そうか!そもそも下忍が上忍に参ったと言わせることなんてほぼ不可能だ。これはチームワークを試す目的があるんじゃないのか?)
そう考えているうちにシスイさんが移動した。これは方向的にナツナの方か!ナツナもシスイさんが近づいているのに気が付き逃げきれないと悟ったのか演習場に出てきた。下忍に森の中で戦うという技術はまだ無いから一番戦いやすいかもしれないけど・・・。
≪ダダッ≫
ナツナとシスイさんの戦いが始まった。
「くっ」
逃げきれないと悟ったナツナは自分が一番戦いやすい演習場の場でシスイと戦うことに決めた。しかしやはり実力的に天と地ほどの差がある。いくらナツナが実技系のトップレベルだとしてもそれはアカデミーでの話。下忍と上忍とではやはり差がある。しかも相手はうちは一族でも天才といわれているうちはシスイである。ナツナは押され気味であった。
≪バシッ≫
「わかっていたけど強い!!・・・火遁・豪火球の術!!」
「その歳で豪火球の術が使えるなんて優秀だな・・・だけど!」
「!!」
ナツナが多くのチャクラを込めて放った豪火球はシスイにかわされ、シスイはナツナとの距離を詰めてくる。術を発動させて硬直しているナツナはシスイの速さに対応することができない。
(やられる!?)
そうナツナが思った瞬間に煙が投げ込まれ誰かに抱えられた。そして、そのまま森の中へと移動していった。
シスイはシュンの持ち物である木製クナイを掴みながらつぶやいた。
「今のは・・・シュンか。やるな」
ナツナまであと少しの距離まで詰めていたシスイは、ナツナを気絶させようと手刀を構えていた。しかし目の前に煙玉が投げ込まれ、一瞬ひるんだ隙に木製クナイがこちらに投げ込まれ、それに対処している隙にナツナには逃げられてしまった。
「どうやらシュンはこの模擬戦の真意に気が付いたようだな」
シスイはシュンたちを追うようなことをせずその場に居座った。
「どんな手段で来るのか楽しみだ」
シスイから逃げ切ったシュンたちはシイナと合流していた。
「さっきはありがとう。助かったよ、シュン」
「どういたしまして・・・それよりもナツナ、シイナ」
「どうしたの?」
「普通に考えて僕たち下忍が1人で立ち向かっても上忍に勝てる可能性は低いと思わない?」
「でも、そうしないと私たちはアカデミーに戻されちゃうんだよ?1人でもどんどん立ち向かって・・・1人?そうか!」
「なるほどね。1人じゃなくて私たち全員で挑むべきなんだね」
「そうだと思う。多分この模擬戦の目的は1人1人の実力を確かめるってこともあると思うけど、最も重大な目的はチームワークを見ることだと思うんだ」
「じゃあ、作戦を立てないとね」
「うん、私もこのメンバーならいけると思う」
「作戦は・・・」
シュンたちの初のチームワークが今発揮される。
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模擬戦
シスイはシュンたちを探そうとはせず、演習場の丸太に腰かけていた。探すのが面倒くさいというわけではなく、シュンたちの出方を探っているのだ。いくら模擬戦と言えども、これは下忍に成りたての者たちと行うものである。よってシスイにはシュンたちを探す気も写輪眼を使う気もなかった。ただただ純粋にどんな戦い方をしてくるのかを楽しみにしていた。
≪ジャリ≫
「・・・来たか」
砂を踏む音が聞こえてそちらに注意を向けた・・・その瞬間
≪バシッ≫
シスイの後ろから木製のクナイを構えたシイナが飛び出してきた。しかしシスイは多少驚きながらも同じく木製クナイで対処する。
「火遁・豪火球の術!!」
鍔迫り合いになった一瞬の隙をついてナツナがシイナに当たらないように豪火球の術を発動させる。
(良いタイミングと向きだ)
シスイは内心感心しながらもクナイを持っている手に力を入れてシイナを後退させ、すぐさま印を組む。
(印を組むスピードが速い!)
「火遁・豪火球の術!!」
流石はうちは一族の中でも天才といわれるシスイと言うべきか、凄まじい速度で印を組み術を発動させる。
(押される・・・!!)
しかもその術の威力はナツナの豪火球を押し返すほどである。しかし術を放ち一瞬硬直するタイミングこそシュンたちの狙っていたものである。
「瞬身の術!!」
「はああああああ!!」
左右からシュンとシイナが木製クナイを構えて攻撃を仕掛けてくる。完璧なタイミングである。
「!!」
すでにナツナは横に飛んで豪火球を避けていたため、シスイの豪火球はナツナの豪火球を飲み込んで空に消えていった。そしてシスイが2人の対処をしようと木製クナイを両手に構えた瞬間・・・
≪ボコッ≫
地面がめくれ上がった。
「何っ!?」
「捕まえた!!」
地面から出てきたもう1人のシュンがシスイの足をつかむ。バランスを崩されたシスイは迫ってきた2人とギリギリ鍔迫り合いの状態になることに成功した。
「危なかったが・・・まだまだ甘・・・!!」
そして3人の対処をしつつ口を開いたシスイは背中に感じた木製クナイの感触に驚愕する。
「僕たちの勝ち・・・ですね」
シスイの背後には、木製クナイをシスイの背中に押し付けているシュンがいた。
「3人とも文句なしの合格だ」
「「「やったー!!」」」
模擬戦を終え、演習場の丸太に腰かけている3人にシスイが合格を言い渡す。3人は互いにハイタッチをして喜んでいる。
「よくあんな作戦を思いついたな」
「僕たち3人で話し合って考えました」
「まあ、ほとんどシュンが考えたんですけどね」
作戦は至極単純なものである。誰かがシスイの足止めをしてその場にとどめる。そこに影分身のシュンが地面から近づきシスイの動きを封じる。そして3人(+シュンの影分身)の誰かがシスイに攻撃するというもの。
1人1人が無駄なく動き作戦を成功させたことにシスイは大いに感心していた。
「お前たちはこの模擬戦の意味が分かったようだな」
「はい、3人で協力することですよね?」
「その通り。任務は基本的にこの班で行う。その時に一番大切なのがチームワークだ。これが無いとうまく連携が取れずに最悪の場合全滅ってこともあり得る。このことをよく覚えておいてくれ」
「「「はい!!」」」
「いい返事だ!じゃあこれから合格祝いと親睦を深めるために何処かに食べに行くか。もちろんオレのおごりだ」
「本当ですか!?」
「やったね、シイナ」
「うん!!」
シュンたちはシスイに連れられ親睦会を楽しんだのであった。
「どうやらシュンたちは合格したようじゃの」
水晶でナルトとシュンの様子を見ていたヒルゼンは火影の執務室でほっと安心し息を吐いた。
(しかし、シュンの技量は下忍の中でも目を見張るものがあるのう。シュンが努力をしていたことは知っていたがまさかこれほどとは・・・)
人知れずヒルゼンはシュンの技量に驚愕していた。
それから数日後。
「よし、これで全部かな」
「ああ、ありがとうね。私じゃとても運べなくて」
「いえ、気にしないでください。何かあったらまた僕たちが手伝いますよ」
シュンたちは任務をこなしていた。今日の任務は里に住むおばあちゃんの買い物を手伝うことである。買い物の最中、おばあちゃんと班員の女子たちの会話が盛り上がっていてシュンは(すぐ仲良くなれるなんてすごいな)なんてことを考えていた。
「今日も無事任務達成だ、皆お疲れ様」
「「「お疲れ様です!!」」」
シュンたちのこなしている任務はDランクである。木の葉隠れの里の任務はグレードが分かれていて、Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクの五つのランクに分かれている。シュンたちはまだ下忍になって間もないので一番下のランクの任務をこなしているというわけだ。他の下忍の班の中には、Dランク任務をずっとこなしていることに不満を持つ者たちもいたが、シュンたちの班はそうではなかった。むしろ、里の人たちと触れ合うことができると楽しみにしているまでである。そのせいか、シュンたちの第十一班の里の人たちからの人気は凄まじく、わざわざ指名してくる人もいるくらいだ。シスイはこの事実に(シュンたちの人柄の良さかな)なんて考えていたが、シスイも里のマダムたちから人気でその第十一班の人気を高めていることを知らない。
「明日は9時に集合だ。遅れないように」
「わかりました」
「了解です」
「はい」
シスイの言葉に3人はそれぞれ返事をしてその日は解散となった。
今日は久しぶりにナルトと一緒に一楽で夕飯を食べることになった。話を聞いている限りナルトたちも試験があったようだ。3人とも無事合格できたらしい。
「でさ~その千年殺しってやつのせいで未だにケツが痛いんだってばよ」
「そ、それは痛そうだね・・・。大丈夫だった?」
どうやらナルトはカカシ先生という人にとてつもない攻撃を食らったらしい。とても痛そうだ。
「まあ、それはいいとして。任務が退屈なものしかないんだってばよ」
「しょうがないよ。僕たちはまだ下忍になったばかりなんだから」
「でもさ、オレは早く活躍したいんだってばよ!サスケも退屈だって言ってたし」
「あはは・・・」
まさかナルトだけじゃなくサスケまでそう思っていたなんて知らなかった。ナルトもサスケもお互いにライバル意識を持っているからしょうがないのかな・・・。
「こうなったらやけ食いするしかないってばよ!おっちゃんお替り!!」
「ナルト・・・これで3杯目だよ」
「シュンもちゃんと食べなきゃダメだぞ!!」
「僕はもうお腹いっぱいだから・・・」
僕はナルトの食欲に驚くばかりだった。
感想や評価などお待ちしてます。
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中忍試験開始
いよいよ中忍試験に入ります。
僕たち第十一班がしばらく任務をこなしていたある日、里の外に任務に行っていたナルトたちが帰ってきた。数日前に、ナルトが急に里の外に任務に行くって言ってきたときにはとても驚いた。帰ってきたことを教えてくれたナルトの顔つきが、任務に行く前と比べて変わっているような気がした。どうやら任務の最中でナルトに何かしらの心境の変化があったらしい。
そして今日、第十一班の全員はいつもの演習場に午前10時に集まるようにシスイさんに言われた。任務の時は、依頼人の住んでいる近くの公園とかに集まるのに珍しいと思う。現在の時間は9時20分。そろそろ家を出よう。
僕はいつも集合時間よりも早く着くようにアパートを出ている。そのおかげかほとんどの確率で僕が一番最初に集合場所に着く。ほとんどと言うのは、僕よりシスイさんの方が先に集合場所にいることがあるからだ。特にやることが無くて1時間前に集合場所に向かった時に、すでにシスイさんが待っていた時はとても驚いたけど・・・。
「よし、20分前に着いた」
集合場所に早めに着いたので、僕の趣味である読書を開始する。今日は、自来也さんからもらった本を読んでいる。僕のお気に入りの一冊である。この本を読んでいると、やる気がわいてきて僕もこの本の主人公のようになりたいと思う。
「おはよ~」
「おはよう、シュン」
「おはよう、2人とも」
しばらくすると、シイナとナツナが来た。僕は挨拶を返して、読んでいた本をカバンにしまう。その後はシスイさんが来るまで、3人で談笑していた。
「おはよう!みんな揃っているな」
「「「おはようございます!」」」
「今日集まってもらったのは、お前たちに伝えたいことがあったからなんだ」
「伝えたいこと・・・ですか?」
「うん・・・実は今日お前たち3人を中忍試験に推薦してきた。もちろんお前たち自身に参加するかどうか決めてほしいんだけど・・・どうする?」
シスイさんの口から驚きの言葉が放たれた。そういえば、そろそろ中忍試験の時期だったけどまだ下忍になりたての僕たちが参加できるなんて・・・。それほどシスイさんが期待してくれてるってことかな。僕たち3人は顔を見合わせて答える。
「「「参加したいです!!」」」
「良い返事だ!じゃあこれが志願書だ。それぞれ注意事項を確認して名前を書いてくるように」
「はい」
「「わかりました」」
僕たちはシスイさんから中忍試験の志願書を受け取った。
「オレはこの3人なら中忍試験でも良い成績を残せると思う。まだ下忍になったばかりだとか気後れせずに頑張ってくれ。では今日はこれで解散だ」
「「「ありがとうございました!!」」」
シスイさんは僕たちにそう言うとその場から姿を消した。僕たちは志願書を見つめながら嬉しい気持ちをこぼす。
「やったね、私たちが中忍試験を受けられるなんて・・・」
「それだけシスイさんが私たちに期待してるってことだよね!」
「うん、そうだね。シスイさんも言ってたけど気後れせずに頑張ろう!」
「「うん!!」」
その後僕たちは別れ、帰路についた。
「シュン!!オレってば中忍試験受けることになったんだってばよ!!」
「びっくりした・・・よかったね、ナルト」
僕がアパートに着くのと同時に隣の部屋に住んでいるナルトが僕の部屋に突撃してきた。僕は驚きつつもナルトに言葉を返す。そうか、ナルトと中忍試験を受けることができるんだ・・・。なんか嬉しいな。もしかしたら他のアカデミーの同級生も一緒に受験するのかな?
「だろだろ!?シュンは中忍試験受けるのか?」
「うん、僕も今日シスイさんに中忍試験の志願書をもらったよ。もちろん受けるつもりだよ」
「シュンと一緒に受けられるのか!・・・へへっ、負けないってばよ」
「ん!僕もナルトに負けないように頑張るよ」
「今度こそシュンに勝つんだってばよ!」
「あはは・・・取りあえず中忍試験に合格することが第一目標だからね」
「わかってるってばよ!・・・じゃあ、オレは今から修行に行ってくるってばよ。またな、シュン」
そう言うとナルトは僕の部屋から飛び出して行ってしまった。本当にやる気に満ち溢れている気がする。ナルトの火影になるっていう夢の第一歩だもんね・・・。よし、僕もナルトに負けないように中忍試験の対策をシイナたちとしよう。
そして数日後、いよいよ中忍試験当日がやってきた。近くの公園で集まり、僕たちは試験会場へと向かった。試験会場に着くと多くの人でにぎわっていた。
「やっぱ人が多いね」
「うん、他の里から来ている人もいるみたいだし」
「私たちもしっかり気を張っていかなきゃ!」
「そうだね」
「志願書ちゃんと持ってきた?」
「持ってきたよ。忘れたら大変だから3回も確認しちゃったよ」
ナツナとシイナと話しながら進んでいると、教室の前でナルトたちが木の葉の人と何か言い合っているのが見えた。
「ねえシュン、ナツナあれ何してるのかな?」
「わからないけど・・・何で2階で皆止まってるんだろう」
「集合場所は3階だけど・・・幻術がかかってるみたいね」
ナルトたちの言葉を聞いて木の葉の人たちが幻術を解く。301と書かれたプレートの数字が201に変化した。その後にサスケと木の葉の人とのいざこざがあったけど、おかっぱ頭の人が止めてくれたおかげで収束した。
しばらくして僕たちは無事に集合場所である301の教室に着くことができた。僕たちより先に行ったはずのナルトたちが、僕たちよりも後に来たことには少し驚いたけど・・・。
キバやシカマルたちと挨拶を交わした後皆で話していると、銀髪のお兄さんに注意されてしまった。お兄さんにうるさくしてしてしまったことを謝ろうと思った瞬間、人ごみの中からお兄さんに攻撃を仕掛ける人がいた。さらに追撃をしようとしていたので、それを止めようとしたところで教室の前方に煙が発生した。皆驚いてそちらに注目する。煙の中に数人の人影が見えた。
「なにあれ・・・急でびっくりしたわ」
「煙玉かな?」
「何か人影が見えるよ」
煙がはれると、多くの木の葉の忍に囲まれる中に大柄な人が立っているのがわかった。
「おい、お前ら静かにしろ!!」
その一言で教室が静かになった。
「これから中忍選抜試験第一次試験を行う。オレは試験を担当する森乃イビキだ。志願書を提出するのとともににくじを引いて、その番号の席に座るように」
その言葉を聞いて、教室内の人たちが動き出す。僕たちもその列に並んでくじを引く。ん!僕は一番後ろか。
「テストは行き渡ったな?では、これからこの試験の説明をする」
僕は一番後ろの席に座っている。2つ前にシイナ、4つ前にナツナが座っている。ナルトはヒナタと隣で真ん中の列の席に座っている。
イビキさんの説明が終わり、教室内がざわざわと騒がしくなる。このテストはどうやら班の合計点数で合否が判定されるらしい。さらに10問めは試験中に出題される。誰か一人でも多く間違えたら不合格の可能性が高くなるということか。これは集中して解かないとね・・・。
「よし、試験時間は1時間だ。では、始めろ!!」
イビキさんの掛け声とともに僕たちの中忍試験は始まった。
読んでいただきありがとうございます。
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第一試験
室内に響いていた受験者たちがペンを走らせる音が小さくなった。今回の試験の内容は下忍の知識ではそう簡単に解けないようなものばっかりだ。
そろそろ気がついた者もいるだろう。この試験のやり方に。
「あと30分だ」
この試験のやり方に気がつかない者は、解けないプレッシャーに押しつぶされることだろう。気がついたとしても下手なやり方だと減点されていく。今年の受験者たちはどうやって試験を乗り越えていくのか楽しみだ。
・・・・・それにしてもあのピンク色の髪の毛の受験者と、一番後ろにいる黒髪の少年は一度も動揺することなくペンを動かしているな。まだ幼いのに大したものだ。
ふう・・・そろそろ9問目まで解き終わるな。問題を見た時から思っていたけど、このテストはアカデミーまでの知識だけでは9問全部を解くことは難しいだろう。僕はおじいちゃんから教材を借りて中忍の内容まで勉強していたからわかるけど、ナルトは大丈夫だろうか。シイナもナツナもこの試験のやり方に気がついたようだけど、ナルトは頭を抱え込んでしまっている。・・・本当に大丈夫かな?
ナツナはどうやら普通に解いている人の書き方を写輪眼でコピーしているようだ。シイナは・・・いくら窓が開いてるからってそこまで強い風が他人のテスト用紙を飛ばすことはそうそうないよ・・・。ばれそうで怖い。
〈カッ〉
「っ!?」
「5回ミスった。失格だ。連れのやつを連れて退場しろ」
「くそっ」
受験者の机にクナイが投げつけられる。カンニングが失敗して点数が0になった受験者がまた1人また1人と退場していく。やり方に気がついても試験管の人に気がつかれるとダメらしい。これは情報取得能力を見ているってことかな。
「45分経過。これより第10問目の問題を発表する。しかしその前にお前たちに受けるか受けないかの選択をしてもらう」
あれから時間が経ち、イビキさんから10問目についての概要を伝えられる。イビキさんによると、10問目を受けてもし失敗した場合は持ち点が0になり二度と中忍試験を受けることができないらしい。逆に受けない場合は、即失格だが来年も中忍試験が受けられるということらしい。それを聞いて次々と受けないことを選んだ受験者が退場していく。僕たちはもちろん受けることを選んだ。
ピリピリとした空気が続く中、ナルトが手をあげた。ナルトが手をあげたことに驚いていると、さらに驚くことが起きた。
「なめんじゃねえ!!オレは逃げねえぞ!!もし一生下忍だったとしても意地でも火影になってやるから受けてやる!!」
ナルトが机にあげていた手を振り降ろして、堂々と宣言したんだ。ナルトらしいや。
ナルトの言葉が雰囲気を変えたのかその後は誰も受けないという選択をする受験者は出てこなかった。そしてイビキさんが口を開き・・・
「ここに残った全員に・・・第一の試験合格を申し渡す!!」
合格を貰った。
どうやらこの試験は情報を収集し秘匿することができるような意志を持っているかどうかや任務を受ける心構えを試していたらしい。イビキさんが額当てを取った時の拷問の跡には思わず驚いてしまった。
合格を言い渡されほっとしていると、外から誰かが接近してくるのが見えた。イビキさんめがけて向かっている。敵である可能性を考え、僕は窓を破って室内に突入してきた人に向かってクナイを投擲した。
「きゃっ」
そのクナイはその人の持ち物を捕らえて壁に縫いとめ、その持ち物に引っ張られたのか襲撃してきた人は体制を崩し転倒した。万が一に備えクナイを構えて、その人のことをよく見てみると、木の葉の額当てをしていることが分かった。
・・・・・もしかしてやっちゃった?
「きゃっ」
オレは近くの窓を破って室内に入ってきたやつを見る。するとそこには持っていた横断幕を投擲されたクナイで壁に縫い止められ、その影響で体制を崩し床に尻をついているみたらしアンコがいた。
「ア、アンコ大丈夫か?」
オレは倒れたまま動かないアンコに声をかけるが返事はない。アンコの肩が震えているのはわかった。
「誰よ!!この私に向かってクナイを投げて来たの!?」
アンコはばっと立ち上がりクナイが投擲されたであろう場所を見て怒鳴る。どうやらせっかくの登場を邪魔されて怒っていたらしい。
「す、すみません。イビキさんを狙ってやってきた敵だと思い行動に移してしまいました」
すると一番後ろに座っていた、黒髪の少年が立ち上がる。・・・確かあいつはさっきの試験で、問題を普通に解いていたやつだ。あの反応速度に、行動に移す際の躊躇いの無さ。なかなか見どころのあるやつだ。
「ハハハハハ!!いや、良い反応だ。今のはこんな登場をしたこいつが悪いからな。気にすることはないぞ」
「ちょっと!!イビキそれどういうことよ!!」
「空気を読めってことだ」
「うっ・・・それは悪かったと思ってるわよ。そこの子も・・・気にしてないから座っていいわよ。だけどイビキ!28チームも残したの?今回の第一試験甘かったのね」
「いや、今回は見どころのあるやつが多くてな。こんな人数になってしまった」
先ほどの少年はもう一度謝罪の言葉を入れ席に座った。アンコの言う通り人数が多くなってしまったな。
「まあいいわ。次の第二の試験で半分以下にしてやるわよ。私の名前は、みたらしアンコ。第二試験の試験監督よ。詳しい説明は明日やるから、集合場所や時間は各々上忍の先生に聞いておくように。以上、解散!!」
アンコさんの言葉で解散になり、ぞろぞろと部屋から人が出ていく中、僕はアンコさんのもとに向かっていた。先ほどのことをもう一度謝罪するためだ。
「アンコさん!」
「ん?あなたはさっきの・・・」
イビキさんと話していたアンコさんに声をかける。
「先ほどは本当にすみませんでした」
「いや、確かに私の登場の仕方も悪かったからいいわよ。だけどあの一瞬で私の動きを見切るなんてあなた中々やるじゃない」
「それはオレも思っていた。あの対処の速さで下忍だとは恐れ入る。やはり今年は優秀な奴が多い」
「いえ、そんなことは・・・」
「あなた名前は?」
「猿飛シュンです」
「ああ君が三代目様の・・・。道理で優秀なはずだ」
「猿飛シュンね・・・覚えたわ。さっきも紹介したけど私はみたらしアンコ。明日の試験官よ」
「よろしくお願いします」
その後は軽く雑談をして僕は部屋を出た。部屋の外で待っていたシイナとナツナに揶揄われてしまったのはしょうがない事だったのだろう。逆に僕のアパートの部屋に来たナルトには、凄いと感激されたので苦笑してしまった。
シュンが帰った後、試験会場に残ったイビキとアンコは話をしていた。
「あの子、普通の下忍の子たちとは違うわね」
「ああ、落ち着きがあってとても下忍とは思えない雰囲気を持っている。しかもこのテストを見てみろ。あいつは何も見ないで中忍レベルの問題を全部正解している」
「イビキの言った通り今年は期待できそうね」
「ああ」
「ここが第二の試験会場。第44演習場、別名死の森よ。あなたたちにはここでサバイバルをしながら争ってもらうわ」
そして翌朝、中忍試験の第二試験が始まろうとしていた。
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第二試験開始!
「はい、じゃあまずはこの参加承諾書にサインして」
アンコさんが第二試験の説明をした後に渡されたのは、第二試験の参加承諾書だった。この試験は、「天」と「地」の両方の巻物を持って、5日以内にゴールするというものらしい。各班に「天」か「地」のどちらかの巻物が分けられるため、それを奪い合う方式だそうだ。
渡された参加承諾書の概要欄を見てみる。どうやら死の危険性があるらしい。周りの受験生の中には顔が青ざめている人たちもいる。
「どうしたの、シュン?早く提出しに行きましょ」
「私たちはもうサインしちゃったわよ」
「ん?ごめんごめん。周りの人たちも様子を見てたんだ」
僕が周囲の様子を確認してるとナツナとシイナが話しかけてきた。この2人は全然恐れている様子がない。心強いな。僕はすぐに参加承諾書に自分の名前を書いて、ナツナとシイナと共に提出した。
僕たちが参加承諾書を提出して戻ってくると、ナルトが何か叫んでいてアンコさんがクナイを投げていた。・・・ナルト、もう少し落ち着こう。
「あの試験官の人おっかないわね」
「でもあの人の動き凄いよ。試験官を任されてるぐらいだしね」
「!?」≪ゾクッ≫
その時、僕は背筋が凍るような視線を感じた。ナツナとシイナの2人は話に夢中になっている。僕はすぐさまあたりを見渡したが、特に怪しい人はいなかった。・・・いや、舌でクナイを拾っている変わっている人がいた。
「あの人の舌長くない!?」
「そんな術あるの?」
「い、いや体質かなんかだと思うけど・・・」
呼吸を落ち着けつつ2人に返答する。さっきの視線は気のせいか・・・?
「皆参加承諾書にサインしたようね。では今から各班に巻物とこの森の地図を渡すわ」
受け取った地図と巻物を確認する。僕たちは「天」の巻物か。ということは他の班から「地」の巻物を奪わなければならない。
「各班、巻物と地図を受け取ったわね?じゃあ、10分後に試験を開始するからそれまで作戦をたてるもよし、談笑するのもよし、好きなように過ごしなさい」
その言葉を皮切りに各班が色々な場所に移動する。僕たちはフェンスから離れた大きな木のところに集まった。
「どうする?」
「先に行って罠を張るっていう手もあるけど、待っている時間がもったいないよね」
「5日間分の飲食も考えなきゃならないからね」
「大掛かりなものを仕掛けても、相手が罠にかからなかったら無駄になる」
「ばれないような罠を仕掛けて、誰かが相手を罠の所まで誘うっていう手もあるよ」
「シュンの作戦良いわね」
「罠まで誘って各個撃破ってことね」
「じゃあ、取り合えず今言った作戦にしようか。成果が出なかったらまた別の作戦を考えよう」
「そうだね」
「ええ」
簡単に作戦のことについて話し合った後、ナツナとシイナに断りを入れ談笑しているナルトのもとへと向かった。
「ナルト」
「お!シュン!」
「調子はどう?」
「絶好調だってばよ!!オレさ、オレさ早くシュンと戦いたくてうずうずしてるんだってばよ」
「ん!僕もナルトと戦うの楽しみだよ。でも第二試験はチーム戦だから、勝手な行動はとっちゃだめだよ」
「わかってるってばよ」
ナルトは今から試験という緊張感を感じさせないような話し方をしていて、こっちも笑顔になる。
「ん?そこにいるのは・・・?」
「ああ、ヒナタだってばよ。さっきまで話してたんだ。ヒナタ!」
ナルトのいた木から顔を出してこちらの様子をうかがっているヒナタが見えた。ナルトがヒナタを呼び、彼女が僕たちの方に来た。
「こ、こんにちは。シュン君」
「こんにちは、ヒナタ。ヒナタも大丈夫そうだね」
「うん。さっきナルト君に励ましてもらったから・・・」
「そっか。お互い頑張ろうね」
「うん!」
「シュンもヒナタも一緒に合格できるように頑張ろうぜ!!」
ナルトの激励に返事をして、ナルトとヒナタと別れ、ナツナとシイナのもとへと戻る。
「お待たせ」
「ナルト君たち緊張してなかった?」
「うん、大丈夫そうだったよ」
「シュンはナルトのこと大切に思ってるからね~」
「あはは、もちろんナツナとシイナのことも大切に思ってるよ」
僕がそう言うと、2人は顔を見合わせて笑った。
「ありがと」
「頑張ろうね」
受験者たちがあらかじめ決められていたゲートの前に立つ。僕たちの班はゲート25だ。
時間になり、アンコさんがフェンスにかかっていた南京錠を鍵をさす。
「これより第二試験を開始する!!君たちの健闘を祈る」
アンコさんが鍵を回して南京錠が外れるのと同時に、第二試験が開始された。
「このあたりでどう?」
「うん、じゃあさっそく罠を仕掛けないとね」
「私葉っぱとか集めてくる」
試験開始と同時に、僕たち3人は最高速度で移動し、他の班が通りそうな場所に息をひそめた。
簡単に罠を張って、その後の話し合いで僕が囮役として他の班をこの場所に誘うことになった。
「じゃあ、シュン。頼んだわよ」
「気を付けてね」
「ん!任せといて。2人とも気配を殺して隠れておいて」
2人にそう言い残し、僕は周囲を探索しに行った。
「いたぞ!今1人で行動してるやつがいる」
「いや、もしかしたら罠かもしれないぞ」
「だが、俺たち3人で襲い掛かれば、あいつを捕まえて人質として巻物を手に入れられるかもしれん」
「見た目もひょろそうだしな」
「合流される前に仕留めるぞ!!」
俺たちの前には、木の葉隠れの額当てをした受験生が1人で辺りを散策している。寝床か食料を探しているのだろう。木の葉の忍がこちらに気が付く前に3人で仕留めることになった。
「あいつが後ろを向いた瞬間に行くぞ」
「おう」
「簡単にクリアできそうだな」
そして、木の葉の忍が後ろを向いた瞬間・・・
「今だ!」
俺たちは襲い掛かった。木の葉の忍は俺たちがたどり着く寸前に気が付いたようで、焦ったような顔をしながら逃げて行く。逃走速度は恐怖のためか遅く、すぐに追いつくことができそうだ。
「ははは!もう追いつくぜ!!」
獲物を簡単に仕留めることができるという確信が持てた俺たちの顔は皆残虐な笑顔を浮かべている。木の葉の忍が持っている巻物が「天」だとしたら、最初に二次試験を突破できるのは俺たちだろう。俺たち3人が木の葉の忍に追いつき、意識を奪おうとした瞬間・・・目の前が真っ暗になった。
「まさか、こんなに簡単にいくとは・・・」
「あはは・・・罠を使うまでもなかったね」
「まあとりあえずこの受験生たちを縄で縛って、巻物を貰おう」
当初は僕がこの場所に誘い込んで罠を発動して気絶させる予定だったけど、完全に油断して意識が僕にしか向いていなかったため、背後から2人に強襲してもらった。それが上手くいって、無事に滝隠れの忍3人を気絶させることができた。僕が今気絶している滝隠れの忍たちを縄で縛り、巻物を確認する。
「あ、『地』の書だ」
「・・・早すぎない?」
「・・・もう終わっちゃたね」
「でもこれをゴール地点まで持っていくまでが試験だからね。最後まで気を抜かないようにしよう」
「うん」
「了解」
第十一班、第二試験開始1時間で「天」「地」両方の巻物を入手。
「ああ、良い良いわ・・・。どっちにしようかしら・・・」
木の葉の里に魔の手が伸びていることを彼らはまだ知らない。
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