ガルパン転生 (グラン(団長))
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1話

転生したよ


転生したよ。

神様っぽいダルそうな幼女に転生させられたよ。

 

「特典はお前がさんざん課金したスマホゲームに関係するようにしといてやる」

 

「World of Tanks、通称WOTですか!?」

 

「なにその食いつきキモい」

 

って言われた落とされたよ。

解せぬ。

 

さて、そんなこんなでこの世界に生まれてこれまでいろいろあった。

角谷家に生まれた俺は、角谷杏仁という名前をもらった。なんだかんだ2度目の子供時代も楽しいものだった、極力迷惑かけないようにしたけど。

可愛い姉(小さい)もいてなかなか幸せな生活ができてると思う。

 

さて、そんな俺は現在、大洗女子学園の生徒会室に来ている。ここまで来る途中の女子の視線が気持ち……じゃなかった、痛いくらいだった。

そりゃそうだよね、女子高なんだから。

目の前にはふんぞりがえるようにして高そうな椅子に座る我が姉、角谷杏。こんなロリっ子なのに頭いいから生徒会長やってる。

そして姉の左右を固めるように、メガネの性格キツそうな美人さん、優しそうなオパーイ美人さんがこちらを見ている状況だ。

生徒会の人かな?

 

「よく来てくれたね杏仁、突然だけど明日から大洗女子学園に通ってね~」

 

「毎度のことながらぶっ飛んだチャンネーだぜ、説明プリーズ」

 

「河嶋~」

 

「はい、会長。私は生徒会の河嶋桃だ、よろしく頼む。それじゃあ最初から説明させてもらおう……」

 

メガネさんが説明してくれた。

要約すると、学園艦がなくなりそうだよ!戦車道で全国優勝できればなくならないよ!とのことだった。

まぁ、学園艦が無くなるのは困る、でも条件が戦車道の全国大会で優勝ってのは現実的じゃないよなぁ。だって経験者ろくにいないのに勝てるわけがないもん。

いやまぁ、原作では優勝するんだろうけどね。

 

「ヤバそうなのはわかったけどなんで俺?」

 

「杏仁中学時代に全国大会優勝してたじゃん、うち西住ちゃん以外初心者だから戦車道教えてよ」

 

「コーチ的な?」

 

「そうそう」

 

「……わかった、それくらいならやるよ。この船がなくなるのは俺も困るから」

 

「ありがとねぇ」

 

そんなこんなで明日の放課後から戦車道教えることになった。

ちなみにさっき姉ちゃんが言ったように、俺は中学のとき戦車道の全国大会で優勝してる。とは言っても、男の戦車道競技人口は少ないので中高まざった大会だった。

その大会で俺は特典の1つである、『WOTのように自由自在に戦車を操れる』で縦横無尽に殺りまくった。

ほぼワンマンプレーだったけどそれぐらいチートだったから仕方ないと思う。自分でもやり過ぎたと思ったので、高校では戦車道のない学校に入りましたとも。

大洗男子学園っていう、この学園艦の大洗女子とは少し離れたとこにある男子校にね。

学園艦なくなっちゃうと俺も行く当てなくなりそうなんで頑張るとしますか。

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

 

 

そんなこんで練習当日だよ。緊張で昨日よく寝れなかったけど仕方ないよね。

 

「始めまして、角谷杏仁です。コーチをすることになったのでよろしくお願いします」

 

「私の弟だからこき使ってね~」

 

目の前には女子高生が沢山いる、これだけでコーチを引き受けたかいがあったというものだ。

しかも全員かわいいっていうね、天国だよここは。

 

「あ、あの!コーチってもしかして一昨年の戦車道全国大会男子の部決勝戦で、敵車輌を全て単独で撃破しMVPになったあの角谷杏仁殿でしょうか!」

 

「お、さすが秋山ちゃん。その角谷杏仁だよ~」

 

モジャっとした娘の発言と姉ちゃんの同意でみんながザワザワしだしてしまった。

なにこれ恥ずかしい、妙にキラキラした目で見てくる。

特にコスプレ軍団からの視線がすごい、もはやギラギラしてる。

 

「ほら、アンタも挨拶しなって」

 

「あ~、ご紹介に預かりました角谷杏仁です。お手柔らかにお願いします」

 

みんなの自己紹介聞いたら、さっそく訓練を見ることになった。

最初は見てるだけのつもりだったのだが、いろいろあって生徒会メンバーの38tに同乗することに。

ただでさえ狭い戦車の車内がより狭くなった。

仕方ないので姉ちゃんを膝の上にのせて乗ることにする。正直姉ちゃんとはいえ女の子、膝の上と言っても密着してるのでお尻がほぼ股間に当たって困っちゃう。

心頭滅却しなきゃ、さもなくばシスコンロリコン変態野郎と言われかねない。

 

「てか姉ちゃんなんかしないの?さっきから干しイモ食ってるだけじゃん」

 

「私はいいんだよ、生徒会長だからね」

 

河嶋さんと小山さんに申し訳ない。

さすがに、このまま姉ちゃんの椅子としているだけというのもいたたまれないので、河嶋さんに射撃を教えることにする。

だってこの人センスなさすぎるんだもん。撃つ瞬間に力んで照準動かしちゃってるし、当たるわけねーだろそれで。

 

「河嶋さん、撃つ瞬間は余計な力を入れちゃダメですよ。ゴチャゴチャ考えないで冷静に、正確に、引き金を引いてください」

 

「わかった」

 

調度、1年生チームが射程に入る。河嶋さんは言われた通り冷静に、……あ、ダメだ息めちゃ荒くなってる。

……アドバイスなんてなかったんや。

敵が射程圏内に入った瞬間、ヒャッハーしやがったこのメガネ。あまりに下手くそなので、後ろから腕を回して補整する。しゃーねーじゃん、姉ちゃんがどうにかしろって言うんだもの。ロリっ子には勝てなかったよ……。

 

「こんなんじゃ試合には勝てませんよ、ちょっと我慢してください」

 

「なっ!?ちょっ!?」

 

「いいですか、相手の動きを読んで、どの程度先読みすれば当たるか冷静に判断してください」

 

「……ふぁい」

 

「一度大きく息を吸って、指先以外を動かさないようにしてながら撃ちます」

 

放たれた弾丸は、狙い通りに前部の車輪を破壊した。ボディーに当たると結構な衝撃だからね、紳士な男を目指しています。

ちょっと不安もあったものの、腕は鈍ってないようでよかった。いや、まぁ、特典のお陰でほぼほぼ外れることなんてないんですけどね。

どや顔をしながら河嶋さんを見てみると、ゆでダコみたいに真っ赤になってショートしていた。 うぶかよ、可愛いなおい。回してる腕に当たってる柔らかいものが最高です。

 

「河嶋さん?大丈夫ですか?」

 

「あ~、こりゃしばらくダメそうだね。アンタ顔だけはいいんだから気をつけなきゃ」

 

「顔だけってなんだこら、やんのかこらロリっ子が」

 

「誰がロリっ子だ!この童貞が!」

 

「テメェ……よりにもよって童貞はねーだろ!小山さんがへーみたいな顔しちゃってるじゃねーか!」

 

「だ、大丈夫ですよ、まだ若いんですし、その、ど、どーていでも……」

 

「無理して言わなくていいですからね?恥ずかしくて顔隠すぐらいなら聞こえなかったフリでよかったんですよ?」

 

うわぁ、姉の知り合いに童貞だと知られ、さらに同情の視線をもらうことになるなんて……。

 

「こんど秘蔵の干しいも食ってやる」

 

はしゃいでたら撃破された。

解せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続くかな?
m(__)m


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2話

2話だよ


「そんじゃ今の模擬戦見て気づいたこと言ってくよー、まずみんなに言えること。いや、Ⅳ号は別として、基本的な操作はちゃんとできてるみたいだか細かい部分はこれからの練習あるのみだね。あとは敵に見つからないような戦車の動かし方、それと戦闘になったときの動きを覚えるとだいぶ変わると思うよ」

 

秘技、それっぽく言ってアドバイスっぽくするの術。

いやぁ、姉ちゃんに聞いた話だとみんな初心者って話だったのに普通に動けててビックリしました。

つーか乗りはじめて2週間ぐらいであそこまで動かせるのはおかしいと思う、さすが主人公がいるだけある。

そう考えると俺が教えなくてもどうにかなるんじゃね?って思うんだけどどうなんだろ、バタフライエフェクト的な感じで負けちゃったりしないよね?

どうしよ、不安になってきた。

 

「あの~、コーチ?コーチー」

 

「あぁ、ごめんごめん。えーと、秋山さんだっけ?質問かな?」

 

「はい!先程おっしゃった戦車の運用方法というのは具体的にはどんなものか教えてもらってもいいでしょうか!」

 

「そうだね、今日のところは下校時間も近いから明日また戦車に乗って実演してみるよ。戦車毎にそれぞれ最適な動き方があるから興味がある人は帰って調べてみても面白いと思うよ」

 

まじで重要だからね、昼飯とか。

WOTやるなら必須技能だと思ってますはい。

 

「なるほど!了解であります!」

 

「あと、コーチって呼ばれるのはなんかこそばゆいから角谷弟とかそんな感じで呼んでもらえると助かります」

 

「角谷弟はちょっと……」

 

協議の結果、呼び方は杏仁君、さんに決まりました。

姉がいるからとはいえ同年代の女の子達に名前で呼ばれるのは恥ずかしいです、男の子だもの。

 

こんな感じで本日の練習は終わりとなりました。

反省会の間、河嶋さんがこちら側に戻ってくるとこはなかったけど大丈夫なのだろうか?

 

「んじゃ姉ちゃん、俺帰るけど」

 

「おつかれ~、私は生徒会の仕事ちょっとやったら帰るから先に帰っといて」

 

「おけ」

 

「あの!」

 

と、姉ちゃんとバイバイしようとしたら後ろから声をかけられた。

振り向いてみると、オレンジ色のロングヘアーの可愛らしい子がいました、たしか武部さんだったかな。

 

「ん?俺?」

 

「そう、杏仁君がもしよかったらなんだけど、これからみほの家で杏仁君のコーチ就任パーティーをしようと思うんだけど、どうかな?」

 

すこし恥ずかしそうにそう言う武部さん(カワイイ)の後ろではⅣ号に乗っていた、西住さん、秋山さん、冷泉さん、五十鈴さんの姿がある。

なにこれ、どゆこと?ドッキリかなんかかな。

 

「姉ちゃん、こういうときってどうすればいいん?」

 

「なにテンパってんの、大人しくついていけばいいじゃん。せっかくのお誘いなんだから」

 

なんだこのロリっ子ニヤニヤしやがって、行っちゃうぞ?ほんとにいいのか?

……え、マジで?

 

「え~と、迷惑じゃないんなら」

 

「もちろん!ね、みほ!」

 

「う、うん」

 

なん、だとッッッ!!!

JKの自宅に出会って初日でお呼ばれするだと!

しかも5対1!

 

「……姉ちゃん、俺コーチ引き受けてよかったよ」

 

「そりゃよかった、まぁはしゃぐのもほどほどにね~」

 

ここまで姉ちゃんに感謝したのは始めてだ、今まで偉そうなロリっ子だと思ってたけど考えを改める必要があるらしい。

 

「……なんか失礼なこと考えてない?」

 

「いえいえ滅相もございません杏様、お仕事頑張ってください」

 

「まぁ、いいけど。それじゃ武部ちゃん達、このバカよろしくね。なんかしたら殴っていいから」

 

そういって姉上は去っていかれた。

 

「そ、それじゃあ行こうか!」

 

「うん、ふつつかものだけどよろしくね」

 

「それはなんか違くない!?」

 

おっとパトスが溢れ出ちまった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

 

西住さんの家はいい香りがした。

おっと、じゃなくて綺麗に掃除されていた。

なんかボッコボコにされた熊のぬいぐるみがあるけど気にしない。

 

「それじゃあ料理ができるまで杏仁君は座って待っててよ」

 

「え、いいの?なにか手伝うけど」

 

「大丈夫!こっちは私達に任せていいからくつろいでててよ。ね?みほ」

 

「う、うん。あ!待ってるのも暇だろうからボコでも見てて」

 

そう言うと、西住さんはDVDをプレイヤーにセットしてアニメを流してくれた。

いい子達やでぇ、……開幕ボッコボコの熊が出てきて嫌な予感しかしないけどね!

 

一人暮らしのキッチンに5人も入るのは厳しいらしく、料理は武部さんと西住さんが作るらしい。

あぶれた4人でこのなんとも言えないアニメを見ている。

なんなんだろうこれ、バイオレンス物なのかな?

全体的に救いがないんだけど。

 

「…………」

 

よかった、俺が変なわけじゃないらしい。

だってみんななんとも言い難い顔で見てるもん、爆睡してる冷泉さんを除いて。

 

「……がんばれ、がんばれボコ」

 

と思ったら西住さんがめちゃくちゃ熱心に見てた、てか応援してた。

包丁持って。

 

「ちょっとみほ!?こっちこっち!料理中だよ!」

 

「あ!ご、ごめん」

 

謝りつつも気になるのかチラチラテレビを見てる西住さんカワイイペロペロ。

よし、ここはちょっくらいい人アピールしておこうかな!

 

「俺が変わるよ、西住さんはこっちに来て見なよ」

 

「え、でも」

 

「いいからいいから、なにも仕事しないってのも悪いからさ」

 

はい、西住さんとポジションチェンジ、包丁を受け取って武部さんの横に移動。

まな板の上には皮を剥きかけのじゃがいもが鎮座してた。

 

「これを剥けばいいのかな?」

 

「うん、そのあと四当分に切っておいてくれると助かるよ」

 

「了解」

 

こう見えて料理は得意なのだ!

転生する前も自炊はしてたし、転生してからもちょくちょく料理はしてるので姉ちゃんレベルにはなっている。

この俺にかかればじゃがいもなんて秒殺でござる。

あと武部さんいい匂いする。

いや、気になるでしょだって、童貞だもの。

いつの間にかコンタクト外してメガネになってるし、カワイイんだが?

 

「おぉ!皮剥くの早いんだね!」

 

「慣れてるからね、材料からして肉じゃがかな?」

 

「うん、それとお魚を焼いて和食にしようかなって。ごめんね?パーティーっぽくなくて」

 

「全然大丈夫だよ、女の子の手作りなんて始めてだからすごく楽しみ」

 

「よ、よーし!美味しくするからおとされないように覚悟しておいてね!」

 

うわぁ、カワイイなぁ。

ちょっと恥ずかしそうにしてるのが余計カワイイなぁ。

さっきからなかなか目を合わせてくれないけどカワイイなぁ。

 

「ふふふ、そちらはずいぶんと楽しそうですね。まるで夫婦みたいですよ」

 

「なッ!?」

 

五十鈴さんがからかってきおった、やりおる。

顔を真っ赤にしてショートしてる武部さんもカワイイ。

 

いろいろとハプニング(主に武部さんがショートした)はあったものの、料理が出来上がった。

机の上には、美味しそうな焼き色のついた魚、さやえんどうが乗って色鮮やかになったにくじゃが、ホカホカと湯気を立てているお味噌汁が並んだ。

やばい、美味しそう。

 

「うわぁ、美味しそう!」

 

「お二人共すごいです!」

 

「私もお料理の勉強をしようかしら」

 

「いや、ほとんど武部さんが作ってくれたから。俺はちょっと切ったぐらいだよ」

 

「そんなことないよ!杏仁君すごい手際がいいからビックリしちゃったよ。麻子も女の子なんだから寝てばっかりいないで杏仁君を見習いなさいよね」

 

「む、そんなことはいいからさっさと食べるぞ。冷めたらもったいない」

 

一理ある、ということでいただきます。

 

「…………」

 

武部さんメッチャ見てくるやん、それにつられてみんなもなぜか様子をうかがってるし、照れる。

ん~、じゃがいもはしっかり火が通っていて味も染みてる、調度いい塩梅ですな。

 

「すごく美味しいよ、武部さん」

 

「本当!よかったぁ~」

 

「もう私たちも食べていいのか?」

 

「いいよいいよ!どんどん食べて」

 

いやぁ、こんな美味しいご飯が、しかもJKの手作りが食べられるなんて、ほんと転生してよかったわ。

 

ご飯の後は食器の片付けをして、みんなで談笑してお開きになった。

特に戦車の話題が盛り上がった特に思う、主に秋山さんが。

すんごい食い付きだったもん、目がランランと輝いてたもん。

他のみんなも興味深そうに聞いてくれてよかった、WOTで鍛えた知識がちゃんと実を結んだよ。

クランのみんなに伝えてあげたい。

 

 

WOTしてればJKと仲良くなれるよ!って

 

 

 

 

 

 

 




2話だったよ


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3話

ハンバァァァァグ


戦車道全国大会第1回戦、大洗女子学園の対戦相手校はサンダース大付属に決まった。

西住さんクジ運ねーなと思ったのは俺だけじゃないはず。ちよ姉のとこはまぁいいとして、去年の優勝校のプラウダもいるし、借りに勝てたとしても決勝で当たることになるのは十中八九黒森峰だろう。

 

「これやばいんじゃね?実際のとこ戦車道なんて数が多い方が断然有利だぜ?」

 

「あんたがそれ言うか。……ま、どこが相手だろうと勝つ以外に道はないんだから、頑張るしかないって。あんたもコーチなんだから弱気なこと言ってないで作戦でも立てといてね」

 

「無茶言いやがる」

 

全国大会の1、2回戦の参加車両上限は10両。サンダースは金持ちだから余裕で10両なんて出してくるだろうが、うちはたったの5両。

フラッグ戦ってことが唯一の救いだなぁ。俺が出場できりゃ単騎特攻かましてワンパンなんだけどなぁ。

 

「まぁ、いろいろ考えてみるわ」

 

 

 

 

 

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ーーー

ーー

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、1回戦から強豪校と当たっちゃって……」

 

「いやしゃーないって、クジなんてどうにかしようとしてどうにかなるもんじゃないんだから西住さんが責任感じることないっしょ」

 

「そうですよ、西住殿はなにも悪くありませんよ」

 

さて、出場校の組合せも終わり現在俺はアンコウチームのみんなとスウィートゥを食べに来ている。誘ってくれたら断れないよね?まぁ同時に俺の財布も軽くなるんですけどね!

しかしね、ここね、女の子しかしないのよね、何が言いたいかと言うとね、視線がね、痛いのよ。

だって戦車道の競技者なんて9割9分女性なんだから当たり前なんだけどね。暇だったからついてくるなんて馬鹿なことした昔の俺を殴りたい。

 

「サンダースって強豪校なんだよね?大丈夫なのかな……」

 

「サンダースは沢山の戦車を保有していますからね、台数は上限の10両、つまりウチの倍の数で来るはずです」

 

なんで秋山さん嬉しそうなの?おバカなの?

 

「それって大変なことなんじゃ」

 

「普通に考えたらこちらに勝ち目はないな」

 

うん、冷泉さんの言う通り。だけどもうちょっとオブラートに包んで欲しかった、みんな暗い顔しちゃってるから。

 

「杏仁殿……」

 

秋山さんが空気にいたたまれなくなって子犬みたいな顔でこっち見てくる。つられるようにした全員もこちらに顔を向けるから困る。いや、冷泉さんは向いてねーや、ケーキに集中してる。

 

「……まぁ、ばか正直に真正面から行ったら勝ち目はないだろうけどね、そこは戦術でなんとかできると思うよ。戦う前から負けることなんて考えてたら勝てる試合も負けちゃうよ、ほら、ケーキ食べて元気出そう!」

 

慣れない発破はなんとか効果があったらしい。幾分か明るい表情になってくれてよかった、つーか冷泉さん早すぎね?次のケーキ選び始めてるんだが?

 

「相手の使ってくる車両がわかりゃ大分楽なんだがなぁ」

 

ぼやいた所でなにがわかるわけでもない、とりあえず今は目の前のショートケーキにパンツァーフォーする。

 

「あら?副隊長?」

 

と思ってフォークをイチゴにファイヤしたら横から声をかけられたらしい。

そこには西住さんとそっくりな髪型の女の子と、綺麗な銀髪の女の子がいた。つーか見たことあんな、国際強化選手かなんかだったような、どことなく似てるから西住さんのお姉さんかな?

銀髪の子もどっかで見た気がするんだよなぁ。

 

「いえ、元、だったわね」

 

煽りスキル高いなー。銀髪の子は俺は目に入ってないのか、気づいた様子もなくみんなを煽ってる。

と、仮想西住姉がこちらをジッと見ていることに気がついた。すごい、なにかを思い出そうとするかのようになにか喋るわけでもなくジッと見ている。

と、思い出したのか、ハッという顔をして口を開いた。

 

「あぁ、思い出した。確か角谷選手、だったか?」

 

「えぇ、そうですけど、そちらは見たところ西住さんのお姉さんですか?」

 

「はい、西住まほと言います」

 

「これはご丁寧に、角谷杏仁と言います」

 

いい人だった。

 

「……こっちには杏仁さんだっているんだから!あんた達になんか負けないんだから!」

 

「あんにんさん?誰だそれ……は……」

 

なんだか俺の名前が上がったらしい。なにかなぁと思って銀髪ちゃんの方を向いたら、俺を見ながら固まっていた。

状況が飲み込めないので武部さん達に視線を送るが、急に固まった銀髪ちゃんを怪訝な顔で見ていてた。いや、だから冷泉さんはそろそろケーキ止まれ、3個目行きそうじゃねーか。

仕方ない。

 

「あのぉ、俺の顔になんか変です?」

 

「……か、か、か、角谷さん!?」

 

「はい角谷です!」

 

ビックリしたぁ、いきなり大声で名前呼ばれたから思わず返事しちゃいました。

……あれ?なんかすごいデジャヴ感じる、前もこんなことあったような。……確か、中学の大会の後で、表彰終わって帰ろうとしたときに、銀髪の子が……。

 

「あぁ!あの時の!……確か、逸見……エリカ、さんだよね?」

 

「は、はい!お久しぶりです!」

 

そうだそうだ、思い出した。確かあの時のメチャクチャテンション高くてビビった思い出がある。

そうか~、あの時の子がこんな煽りスキルを身につけて、成長って早いなぁ。

 

「え?杏仁さん逸見さんと知り合いなの?」

 

「うん、前に1回声をかけてもらったことがあってね」

 

「あ、あの時はすいませんでした」

 

「いやいや、いいって。褒められて嬉しかったしね」

 

「あの、……角谷さんは本当に大洗女子のコーチをなさっているのですか?」

 

「うん、姉が生徒会長でね。それの手伝いでやらせてもらってるよ」

 

「そう、ですか」

 

俺がコーチをやっていると言ったら逸見さんは少し居心地が悪そうにしながら、モジモジしだした。可愛いなこの子、あれだな、俺が大洗女子教えてるのにさっきまで散々煽ったからばつが悪いんだな。

俺に対する逸見さんの態度と、あまりの変わりようにみんな驚いてただ見ている。いや、一人だけ違うけどもういいや。あ、それ美味しそう。

 

「角谷さんが教えているなら、す、少しは警戒する必要がありそうね。……あの、か、角谷さん。も、もし、よろしければ、私も、ご、御指導とか、お願い、できませんか?」

 

恥ずかしがりながらも、涙目の上目使いでそんなこと言われたら返事は決まったようなものだ。

 

「機会があったら是非、当たるとしたら決勝だろうけど、その時はお互い頑張ろう」

 

「は、はい!」

 

と、ここでようやくみんなが復活した。

 

「ちょ!ちょっと待って!あんたさっきと態度変わりすぎだし!杏仁君はうちらのコーチだし!御指導とかダメだし!」

 

「な!?なんでよ!そ、それにあ、杏仁君、とか、馴れ馴れしすぎじゃない?もっと敬意を払いなさいよ!」

 

「名前呼んで赤くなってんじゃないわよ!うぶか!」

 

「は、はぁー?う、うぶじゃないわよ!」

 

「ふ、二人とも、お店だからシー!シー!」

 

西住さんが懸命に止めようとするも二人が止まる気配はない。さっきまでとはうって変わって武部さんが逸見さんを攻めるターンのようだ。逸見さん顔赤くなってて可愛い。

ふと、気になって西住まほさんを見てみたら、二人の間でおろおろしてる西住さんを見てホッコリしてた。シスコンかな?

 

「杏仁君~」

 

西住からヘルプが来たので止めましょう、止めますとも!だって小動物感すごいんだもん。

ちなみに五十鈴さんは二人を見てニコニコしながらアラアラ言ってただけで、秋山さんは騒がしいのが楽しいのかすごい幸せそうな顔してフワフワしてた。冷泉さんは言うに及ばず、ちなみに今4個目。

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……」

 

 

 

 

 

ーーーーー

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ーー

 

 

 

 

 

あの後、なんとか二人を落ち着かせることができた。

逸見さんと西住まほさんとはお互いに連絡先を交換した。逸見さんが「き、聞きたいこととか、あったら、……連絡してもいいですか?」って上目使いで聞いてきたのはクリティカルヒットした。

西住まほさんの方は表向きの理由は、戦車道について相談をしたいから、しかし、実際は違う。俺にはわかる、だって「……戦車道のことだけでは疲れるかもしれない、世間話もたまにはいいと思う。……例えば、学校でのみほの様子とか、戦車道をしている時のみほの様子とか、……etc.」隠すの下手すぎかよ可愛いな。

 

「ぶー」

 

「よくわからんけどごめんね?」

 

「おやおや、ようやく愚弟にも春が来たのかなぁ?」

 

連絡先交換したら武部さんが拗ねたのは予想外だった。

みんな微笑ましい目で見てるけどどうすりゃいいかわかんなくて困ってしまった。

 

「武部殿ー、杏仁殿が困ってしまってますよぉ?」

 

「ふふふ、自称恋愛の達人の武部さんも、拗ねることがあるんですねぇ」

 

五十鈴さん結構武部さんのことバカにするの好きだよね?

 

「さおり!あんまり杏仁さんに迷惑かけるな!」

 

「まこはケーキ奢ってもらったからって態度変わりすぎだし!黒森峰の副隊長か!」

 

男気見せてケーキ代全額出したら冷泉さんになつかれた。バイト代が一瞬で溶けたけど後悔はしていない。

 

「しかし、いちゃつくのもほどほどにしてね~。コーチとしてサンダース戦に向けてしっかり仕事してもらわなきゃだしさ」

 

「へいへい、まぁ、帰っていろいろ調べてみるよ」

 

さぁて、いい思いもしたし、仕事しますか。

JKの悲しむ顔も見たくないし。

 

 




ハンバァァァァグ


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4話

4話


戦車道で勝つために必要なことはなにか?

西住流のような決して乱れない戦術か、はたまた島田流のような変幻自在な戦術か。

……まぁ、ぶっちゃけ初心者にそんなこと言ってもわかるわけないんだけどね、そもそも俺もわかんねーし。なのでここはWOTで学んだ知識を総動員してみんなに教えようと思っています。

 

WOTには当てれば一撃で決着をつけられる箇所が存在する、弾薬庫だ。ここに上手く命中すると、弾薬に誘爆して敵戦車を一撃で沈めることができるのだ。

しかし、戦車道ではここを狙うという戦術は使えない。

安全性を配慮して、乗組員に危険が及ぶような箇所の装甲は特に頑丈になっているためだ。

ならばどこを狙うべきか?それを考えたとき、俺は戦車道のルールを調べた。そして、ついに、最も効率的に敵を撃破する戦術を手にいれたのだ!

 

まず、戦車道において撃破するというのは、戦車に取り付けられた判定装置が撃破されたと判定しなければならない。この装置はその場で修理可能な軽度の故障であれば判定を出さない。

つまり、逆を言えば、その場で修理不可能なぐらいの損害を与えればいいだけの話だ。

ここでWOTの知識が役立ってくる。

WOTにおいて、部位破壊できる箇所は、主砲、砲搭、弾薬庫、履帯、エンジン、燃料タンク、視認装置、がある。

この中で、さっきも言った通り弾薬庫、燃料タンクは狙っても意味がない。しかし、他の部分については戦車道においても十分すぎるほど弱点になる。

相手の主砲を潰せば相手はただの動く的になり、砲搭を故障させれば相手の狙いはまともにきかなくなる、視認装置も同様で、履帯、エンジン、は言わずもがなだ。

 

そして、戦車道はWOTと違い、相手の使用する戦車は事前に調べればほぼわかる。後は戦車事の弱点の位置、そしてどの角度から砲撃すればより有効か、それがわかればこちらのものだ。

遠距離での撃ち合いではあまり役に立たなくとも、接近戦においては相手の弱点を知っているのは何倍も有利になる。

 

 

 

「……と、いうことで、みんなにはこの『これでチョロピー、サンダース大付属高校戦車攻略マニュアル』を暗記してもらいます」

 

「「「えぇーーーー」」」

 

すんごい嫌そうな声が返ってきた。

うん、わかってたけどね?しゃーないやん、俺WOTしか知らんし、この戦法で今までひたすらやってきたんだもん。

 

「ダメです、覚えるまで帰らせないなからね。じゃないと昨日の俺の徹夜が無駄になるからね、むしろ覚えてくださいお願いします」

 

「杏仁教官、質問がある」

 

「はいはいなんですかエルヴィンさん」

 

金髪美女のエルヴィンさんが綺麗な挙手で質問してきた。

……なんだろ、心なしか歴女達がヒートアップしているのを感じる。

 

「過去に教官が無双した際も、このように敵の車輌を全て調べたのか?」

 

なにこれ、歴女のみなさん達がランランとした目で見てくる、恐い。(でも可愛い)

 

「そうだよ、敵校の所有してる車輌を調べて頑張ったよ。……あれは辛い戦いだった」

 

「「「おぉ!!!」」」

 

「では!これを覚えることができれば私達でも一騎当千の戦果を上げられるということだな!」

 

「もちろんこれを覚えるだけじゃ足りない。でも、敵の攻撃を避けたり弾いたりする技術、敵の弱点に精確に命中させる技術。これら全てを君達が自分の物にしたとき、君達は一騎当千の古強者となることは間違いないだろうッッッ!!!」

 

「「「「おぉぉぉ!!!」」」」

 

うん、歴女達扱いやすいことに気がついてしまった。

あれだ、この人達興味ある方向に持っていければノリノリだわ。だってスゴいテンション上がってるもの、ノリノリだもの。

 

「じゃ、じゃあそんな感じでみんな頑張りましょう!質問があったらその都度聞いてくださいねー」

 

よ、よし、みんなやる気になってくれたみたいでよかった!1年生達が若干引いてる気がしなくもないけど気にしない、気にしたら敗けだと思う。

 

「教官!質問だ!」

 

「はいー、今行きますー」

 

 

 

 

 

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ーーー

ーー

 

 

 

 

 

 

歴女達の質問攻めがスゴかったでござる。

 

「これで我々も古強者に1歩近づいたな!一騎当千の杏仁教官の指導のおかげだ」

 

「一騎当千と言えばやはりスパルタクスだな」

 

「いや、宮本武蔵だろう」

 

「関羽も捨てがたい」

 

「やはりエーリヒ・ハルトマンだろう」

 

「「「それだ!」」」

 

左右に金髪美女と赤マフラー美女、向かいにはメガネ(巨乳)美女と鉢巻き(微乳)美女という布陣。ここが天国か。

はい、そんなこんなで現在歴女達とジョイ○ルで夕飯がてら雑談中。

なぜこんな幸せな感じになっているかというと、まぁ、歴女達が盛り上がりまくってそれに合わせてワイワイしてたら勢いそのまま来ちゃいました。少佐のセリフ言いまくったけど後悔はしていない。

まぁ、キャラは濃いけど可愛いから仕方ないよね?

 

「ということで、教官は今日からハルトマンだ」

 

「どゆこと?アダ名的な感じかな?」

 

「アダ名ではない、ソウルネームだ!」

 

ソウルネームらしいです。カエサルさんがキレ気味に言うんで間違いないですすいません。

 

「ハルトマンっていうと、確かに戦闘機で撃墜数がスゴかった人だっけ?」

 

「その通り、ハルトマンはドイツ空軍のエースパイロットで、前人未到の300機撃墜という偉大な記録を持っていければ人物だ。教官にぴったりだろう」

 

なにそれカッコいい、それだけ歴女達に認められたということだろうか。うれしい。

そしてさっきから気になってるんだけど左衛門佐ちゃん(鉢巻き)が梅昆布茶飲んでるの萌える、美味しいよね梅昆布茶。

 

「そういえばハルトマン教官が言っていた敵の攻撃を弾く技術とはいったいなんなんぜよ?」

 

「おりょうちゃんいい質問した、その技術を教えるにはまず、避弾経始の説明から始めよう。避弾経始っていうのは相手の砲撃を跳弾させる技術みたいなものだね」

 

「それは装甲の角度とは関係ないのか?」

 

「もちろん装甲の角度も跳弾には重要だけど、それ以外に車体そのものを傾けることで同じように跳弾させることができるんだ」

 

俺の言葉を聞くと、皆は考え込むような素振りを見せる。と、エルヴィンさんがハッと顔を上げた。

 

「つまり、敵のいる方向に合わせて車体をその都度傾けることで敵の砲撃を常に斜面で受けるようにするということか!」

 

「そう、戦車は側面の装甲が薄い機体が多い、だけどこの技術を使えばその弱点をカバーできる。それに、相手の砲撃を1度防ぐことができればそれは多きな隙になるからね」

 

「なるほど……」

 

あぁ、楽しいなぁ、WOTで身につけた知識をひけらかすの楽しいなぁ。しかもみんなメチャクチャ真剣に聞いてくれてるから話しがいがあるよねぇ。

 

「これを我々の間では昼飯の角度と言うよ」

 

「「「「昼飯?」」」」

 

「そう、敵のいる方向を時計の文字盤の12時とすると、車体を針に見立ててだいたい1時になるように傾けると調度いい角度になるからね」

 

「おぉ!なるほど、昼飯か」

 

「興味深い」

 

「わかりやすくていいな」

 

「確かにわかりやすいぜよ」

 

あとは豚飯かなぁ、みんなが昼飯できるようになったら教えるとしますか。あんまり1度にいっぱい教えると混乱しちゃいそうだしね。

 

「ん?しかし、我々の車体は砲塔が回転しないから角度をつけたら砲撃できないんじゃないか?」

 

「確かに、敵に砲身が向かないぜよ」

 

「ハルトマン教官、その場合はどうすればいいんぜよ?」

 

「…………」

 

「ハルトマン教官?」

 

……やべぇ、忘れてた。そうだったわ歴女チームⅢ突だったじゃん昼飯使えねーわ。

あぁ、みんなの視線がどんどん冷たくなっていく気がする。やめて、そんな目で見ないで!

 

「……実は昼飯の進化系として、豚飯というものがあってだなぁ」

 

「それは固定砲塔でもできるのか?」

 

「……」

 

「「「「……」」」」

 

ジト目がこんなに攻撃力あるなんて知らなかったよ。

致し方ない、ここは戦略的撤退をするしかないか。WOTだって時には背中を見せることもあるさ!

 

「あ!逃げたぞ!」

 

「しかも流れるように伝票を持って行ったな」

 

「ありがたいぜよ」

 

「自分でも申し訳ないと思ったんだろうな」

 

くそう、なにも聞こえないし。恥ずかしくなんかないし!

 

「これから教官のことはドジっ子ハルトマンと呼ぼう」

 

「「「それだ!」」」

 

それだ!じゃねーよ!?

 




4話でしたm(__)m


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