デスノート A true new world starts (有山氏)
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新生
1


映画版の続きです。
心理戦、頭脳戦も、原作や、映画版に沿ったものになると思いますので、練られた展開ではない事に注意して読んでいって下さい。


かつて死神によって地上に落とされたノートがあった。

それは名前を書くと人を死に追いやる事ができる死のノート、デスノートである。

 

そのノートを拾った一人の天才である『夜神月』は、自らの正義を貫き、名前を書き込んで犯罪者のいない世界に変えていく。だが、それを阻止するもう一人の天才、『L』という世界的探偵が日本警察と協力しキラこと夜神月を追いこみ事件を解決させた。

 

そして10年後、再び6冊のデスノートが地上に舞い降り、新たなるキラ『紫苑』が犯罪者を裁き始め、同時に6冊のデスノートを集めだす。彼の策略を止めるべく、警察組織にいる『三島』とLの遺伝子を継ぐ『竜崎』が手を組んでキラ事件は終結した。

 

2度のキラ事件が発生したが、これらはまだ序章に過ぎなかった。本当の物語はこれからだったのだ。

 

 

 

 

「……お父さん、お兄ちゃん」

キラであった夜神月の妹である夜神粧裕は、夜神月と父である総一郎の遺影が飾られた仏壇の前で手を合わせていた。

 

目を開けるとゆっくり立ち上がり、リビングの方へ歩き出す。肩までかかる赤みがかった髪を揺らしてソファーに腰掛けた。

 

部屋は暗く、粧裕一人しかいない。

 

そして、粧裕は目を瞑り記憶を辿っていった。

 

数ヶ月前に世界中に拡散された映像によって、兄がキラではないのかと疑い始めた。その映像には兄である夜神月が映っていたからだ。

 

頭も良くてスポーツ万能で、優しく頼り甲斐がある兄がまさか10年前に世界を揺るがしたキラの筈がない。

 

粧裕は真実を確かめるべく、警察に押しかけ父と深い関係にある

『松田桃太』に会いキラ事件の極秘資料を渡され真実を知った。

 

その資料には、死神が存在する事、死神の使用物である死のノートがある事、そのノートに名前を書き込んで夜神月は犯罪者を裁き、最期は死神に名前を書かれ命を落とした、等が記されていた。

 

どれも信用できないものであったが、松田桃太の鮮明な詳細部分を聞いて認めざるおえなかった。

 

父からの教えは嘘で、兄は犯罪者を裁き続けたキラであった。

母は受け入れられず、ショックで倒れ精神科に入院する事になった。

 

それからは、キラ信者が押しかけてくるのが常になり家を離れた。キラの親族であるから無理だと思ったが、この世界はキラを受け入れているのがほとんどなのだ。

手回しをしてくれて今は新たな家に住み、戸籍を変えず一人で亡くなった父の遺産と在宅での仕事をなんとかこなして生活している。

 

 

辛い記憶から抜けて、目を開ける。

頭の中に浮かぶのは、母や父、そして兄の姿だ。

本当に兄はキラだったのか。

だとしたら、キラとして本当に世界を変えたかったのか。

 

「どうして……」

 

毎日が自問自答の繰り返しだ。それでも結局答えは見つからないのだ。

ただ、一人で辛い毎日を過ごしてくしかない。

 

瞳から涙が溢れてくる。拭っても拭っても涙は止まらない。

 

兄はキラである。死んでしまった兄の事なんてもう何も分からない。それでも粧裕は沢山の人間を死に追いやった兄の事が今でも大好きなのだ。大好きで尊敬する唯一無二の大切な存在なのだ。

 

 

だから、だから……。

 

 

粧裕は首を振った。

兄は死んだのだ。何をしたって事実は覆らないのだ。

それでも、考えてしまう。

もしも、人を死に追いやる死のノートが目の前に降ってきたら……。

 

兄と同じ行動にでるのだろうか。

兄のように世界を変えようとするだろうか。

兄の果たせなかった事をやり遂げようとするのだろうか。

 

大好きな兄だからこそ、深追いして想像してしまうのだ。

いや、それほどまで追い込まれているのかもしれない。

母の入院、父の死、兄がキラであるという様々な重圧によって。

 

側にあった鏡を手に取り自分の顔を見る。涙は大分薄れてきた。

 

粧裕の瞳は大きく、子供の様な顔つきをしている。沢山の重荷を背負っているが、それが驚く程顔にでていない。

不思議に思いながら、粧裕は鏡を元あった場所に置いた。

 

 

静まったリビングで響いてくるのは、時計の秒針が進む音だけだ。

 

カチカチ、となる音を耳にしていると、急に別の音がどこかに飛び込んできた。

それは、何かが落ちたような音だった。

粧裕はその音が気になり立ち上がった。リビングを見渡すが何かが落ちたような跡はない。

 

一体何なんだと疑問に思っていると、ある場所が気になった。仏壇が置かれている部屋だ。

 

粧裕はその部屋へ引き寄せられるように歩んでいく。

部屋の中を覗くと、黒いノートが置かれていた。

 

粧裕はまさかと思い、そのノートを恐る恐る手に取る。

刹那、後ろから異様な気配が漂ってくる。それは急に現れたように感じた。

 

ノートを手に持ちながら、後ろからする気配を確かめるためにゆっくりと振り返る。

 

そこには、人間でもない、別の生き物がニタニタと目を向けていた。姿は細々としているが、硬い筋肉で覆われていて威圧感がある。黒い模様が体に埋め尽くされている。顔は骸骨のように見えるが表情がある。

 

資料で見たあの死神だ……。

 

粧裕は驚きのあまり、手に持っていたノートを床に落とした。同時に理解した。目の前にいる何かが死神であると。

そして、今拾ったノートは死神のノートであると。

 

 

「……あなたは、死神?」

 

息を飲んで粧裕は口を開いた。

 

すると、クククククッと目の前の死神は粧裕から目を離し笑い出した。

不気味な笑い声で、表情の半分が笑みで埋め尽くされている。

 

粧裕は深呼吸して、死神に問いかける。

 

「何、笑ってるの……?」

 

死神は徐々に笑い声を抑えて、粧裕に目を向けた。

 

表情に浮かぶ笑みは更に刻まれ、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

 

 

 

「面白いから」

 

死神は再び不気味な笑い声を浴びせ始めた。

 




※文書を書き直しました。
苗字はどうしても変えたくなかったので、現実に考えれば不可能なのですが夜神のままにしました。そもそも兄がキラという事情を抱えて平常を保ってる事自体が厳しい話ですが、都合良く話は進んでいくので、すみません。。


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2

「お前はもうこの状況を理解しているようだな」

 

鋭い口調で人間でいう男の声である。

 

「……なら、このノートは」

 

粧裕はノートを拾いあけて、それを死神に向ける。

 

「人が死んでしまうノートなの?」

 

死神は笑い声を上げながら答える。

 

「そうだ。ノートに名前を書けれた人間は確実に死ぬ」

 

「このノートが……」

 

粧裕はノートに目をやる。

ただのノートに見えるのに、このノートには人を殺せる力がある。ページを開くと英文で書かれた使い方が載っている。

 

名前を書くと6分40秒、詳しい死の詳細を書く時間が与えられる。

何も書かなければ全てが心臓麻痺となる。

デスノートに書かれた事は変更する事がない。

 

ざっと読んだ感じそう記されている。

 

粧裕はデスノートを閉じて息を整える。

 

「おっ、もう読み終わったのか?」

 

「ただ確認しただけ」

 

デスノート関連は頭の中に入っている。

そして、目の前にいる死神の正体も名前も知っている。

 

「あなたの名前はリュークよね」

 

「良く知ってるな。どうしてだ?」

 

「キラ事件の資料を読んだ事があるから。そこに、あなたの姿をした絵が書かれていた。その名はリュークと記されていた」

 

「そういう事か」

 

「そして、あなたはお兄ちゃんの名前をノート書いた」

 

粧裕は鋭い目をリュークに向ける。

 

(どんな理由であっても、お兄ちゃんを殺した。)

 

警察に追い込まれたあの状況なら、死神リュークの判断は適切だったのかも知れない。けれど。

 

「それも知ってるのか」

 

死神は特に何も気にせず答えた。

 

「他に方法は無かったの?」

 

怒りを覚えながら質問する。

 

「ああ。あれで良かったんだよ」

 

粧裕は口を開かず話を聞く。

 

「面白くなくなったからな」

 

怒りの表情はまだリュークに向けられていた。

 

「残念だが、死神は殺せないぜ」

 

「そんな事は知ってる。半年前に起きたキラ事件は知らないけど、デスノートのルール、お兄ちゃんがキラとして裁いていた事件はすべて把握してる」

 

資料の内容は一回しか読んでないが、瞬間的に全てが頭の中に記憶された。松田さんの話も一字一句、間違えないで思い出せる。

 

「それは、すげえな」

 

淡々と話す粧裕にリュークは笑みを浮かべる。

 

「普通の女の子だと思ったらお前、やっぱり月に似てるな」

 

粧裕はそれを複雑に捉えつつ、兄に関する事情を聞く事をやめ、疑問に感じている事をぶつけた。

 

「あなたは、どうして私に?」

 

ノートをリュークに向けた。

 

リュークは頭を抱えて天井を眺める。

 

「ーー退屈だからだよ」

 

粧裕はそれがどういう意味なのか問いかける。

 

「どういう事?」

 

「キラの思想を持った人間によって今も犯罪者は裁かれてる。」

 

世の中の情報を遮断している訳では無いが、今の現状についてはあまり知らない。

なので、新鮮な思いでリュークの話に粧裕は耳を傾けたいる。

 

「そんな偽物じゃあ何も変わらない。退屈なままなんだよ。だからお前にノートを渡すんだ」

 

「退屈凌ぎにキラの妹に?」

 

「ああ。月がどう思ってるかは知らないがな」

 

リュークは声を上げた笑い上げた。

 

「でも良かったぜ。その様子だとデスノートには感心があるように見える。お前も使うんだろ?」

 

「それは……」

 

粧裕は口を逃した。

兄の思想を認める訳ではない。

でも、兄ができなかった事、果たせなかった事。

正義と悪の区別が付きにくい事だけど、兄を継ぎたいのは事実であった。

 

犯罪者のいない世界を創りあげる。

そして神として新世界を創造する。

 

そんな事を本気で考えていた兄に……いつのまにか憧れを抱いたのかも知れない。

 

粧裕は深呼吸をして整理し、ノートに目をやる。

このノートを受け取るか。手放すか。

 

目の前には兄を殺した死神がいる。

でもそれは仕方が無い事でもあった。死ぬ以外に兄が助かる道は牢獄の中。

 

それに兄の死の根本的な原因は、Lという探偵だ。

彼は兄を食い止めるために死んだ様だが、資料の中にはLの遺伝子から作られた後継者がいると記されていた。

 

(なら、お兄ちゃんのようにキラになって、私が、私が……Lを……世界を……)

 

粧裕は決意してノートを胸に抱き締める。

 

「私はお兄ちゃんを継ぐ。そして……」

 

リュークに目を向け、声を上げる。

 

ーー新世界の神になるッ……!」

 

 

(こいつ……月と同じ事を……)

 

リュークはニヤり笑みを浮かべ、大きく高笑いする。

 

 

 

 

 

 

「面白しれぇ。しばらくの間、楽しませてもらうぜ」




※文書書き直してます。

死神は人間がノートを使った39日以内に使った者の前に姿を現す、か……。
映画版ではミサがノートを使わずレムが直ぐ現れたので、映画版の続きという事でご勘弁を。
デスノートのルールって色々あるんですね………………。

展開速度はガンガンあげます!
デスノートの見所は天才達の頭脳戦です。登場人物が天才でないとデスノートでは無いので、夜神粧裕さんの天才的な描写を所々に入れました。

そして最後のセリフ、、許して下さい。


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3

粧裕は自室にある椅子に座っていた。

机にはデスノートが開かれて置かれている。

 

「おぉ、名前を書くのか?」

 

後ろにいるリュークが声を掛けてきた。

粧裕はリュークの方に振り向く。

 

「あなたは私が死ぬまでずっと憑いてるんだっけ」

 

「そうだ。俺が嫌いなのは分かるがルールだから仕方ない」

 

お兄ちゃんを殺した死神と同居生活、そんな事を考えていると粧裕は苛々してきた。

 

「面倒臭いルールね」

 

粧裕は前を向いてノートに目をやる。

 

どうする?殺す?

でもやっぱり……。

いや。きめたんだ。

お兄ちゃんを継ぐ。お兄ちゃんの目指した新世界を創る、そして、その為にはLを見つける……、粧裕は改めた決意した。

 

そして、PCを開く。

警察資料で読んだ兄のハッキング技術に沿って粧裕は警察の犯罪者が記されたデータベースに侵入していく。

 

「お前、やっぱすげぇーな」

 

気づくと隣にリュークがいた。

 

「お兄ちゃんのおかげ」

 

リュークは粧裕に一瞥し、笑みをうかべる。

 

粧裕はそれを見て不愉快になる。

 

「分かったら、消えてくれない」

 

リュークは大きく高笑いし後ろに下がってく。

 

「怖い妹だぜぇ」

 

粧裕は法で裁けない犯罪者、有罪なのに無罪となった犯罪者を調べる。

 

そこには何十人、何百人者の名前と顔が浮かんできた。

 

「こんなにいるなんて……」

 

法で裁かれない犯罪者の多さ、被害者の気持ちも考えず生きている犯罪者。粧裕は兄の気持ちを理解していくのを感じた。

 

怒りを感じながらペンを手に取る。

 

まずは犯罪者を裁いてく。日本、いや世界中の犯罪者を。

だが、同時に行わなければいけない事がある。

 

粧裕は握っていたペンを離した。

 

犯罪者の名前は簡単に書ける。犯罪者の名前を書いて理想の世界を造ろうと決意は胸にある。

 

でも、やはり躊躇ってしまう事がある。

 

Lの存在だ。

後継者がいるのは知っている。だが、その後継者もL同様の頭脳の持ち主だろう。

 

粧裕は考える。

 

お兄ちゃんを死に追い込んだ男の後継者。

どんな手を使うかは資料で読んでいる。でも後継者はどんな手を使うかは分からない。本当に未知数である。

 

粧裕は悩むが、兄の為ならと思いPCに映った犯罪者を見る。

 

「……一応言っとくが」

 

後ろからリュークが声を掛けてきた。

 

どうせルールの事だと思いながら粧裕は言葉を挟む。

 

「書く人物の顔が頭に入っていないと効果はないでしょ?

顔も名前もあるんだから間違える心配はないわ」

 

「今回、俺の出番は少なそうだなー」

 

粧裕は無視してノートに犯罪者の名前を書いていく。

できるだけ日本の犯罪者を多くしないといけない。

そうしなければ、理想とする世界が完成されないからだ。

 

粧裕は日本の犯罪者の名前をデスノートに書きながら呟く。

 

 

ーーお兄ちゃん、見ててね。

 




粧裕の天才というか賢さをだそうとすると、某有名小学生探偵に見えてきますが、ご了承を。

これで、粧裕編は終わりなので、次回は世界的探偵にスポットを当てる話になると思うので、よろしくお願いします。


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遺志
1


パソコンの光だけが灯されるその部屋で、地べたに座る1人の青年がいた。

 

覇気が無いような表情であるが、鼻筋は整っている。加えて涼し気な瞳をしている。

 

無造作でパーマがかった黒髪が眉まで降ろされ、肩まで伸びる襟足は跳ねている。

 

白の長袖シャツで、真っ黒なジーンズを履いていて裸足だ。

 

そんな彼は片膝を立てて腕を気だるげに下ろし、パソコンのスピーカー越しから聞こえる男性の声に耳を傾けていた。

 

『科学施設を経営する社長、クラス・ライナーが自宅の一室で心臓発作を起こした。遺体を検出した結果異常はないのだが、彼は心臓の持病を持ち合わせていない』

 

画面越しにクラス・ライナーの写真と事件の詳細が映し出された。科学の多機能性を期待して花の研究をしていると記されている。

 

青年は天然でカールがかった髪を触りながらパソコンに目を移す。

 

じっくり事件の詳細を確認すると、設置されているマイクに息を吹き込む。

 

「アメリカのFBIの方々の見解をお聞かせ下さい」

 

スピーカー越しからヒソヒソと会話を交えている。

恐らく青年の様子を伺っているのだろう。

 

『私達は事故ではないと思っている。他殺かもしれない。でも証拠がない。一つ言えるのは部屋は密室だった』

 

しばらくし、男性が応えた。

 

「なるほど。クラス・ライナーは科学分野で花の研究をされていたらしいですね」

 

『そうらしい。自宅にもスタンドの上に花が幾つか飾られている』

 

画面に自宅部屋が映し出された。スタンドは縦長でその上に鉢花が幾つか置かれている。だが、一つだけ花が添えられたいない鉢がある。

 

ここで、青年はある考えを思いつき、それに沿って話を展開させる。

 

「花も植えられていない鉢がひとつ置かれてますね」

 

『恐らく、枯れたか、新しく入れ直そうとしたのだろう』

 

「鑑識はスタンドの上の鉢花に手を回しましたか?」

 

『ああ。資料によると鉢や、中に入っている土を鑑識が調べたが何もでなかったと書かれている』

 

青年は吐息混じりに口を開く。

 

「確かに何も出るわけないですね」

 

その口調は敬語ではあるが、ため息混じりに発するためにだるそうに聞こえる。

 

『どういう事だ?』

 

スピーカー越しの男性の口調は少し尖っていた。

 

『よく鉢の中を見て下さい。植えられていた痕跡がありますね」

 

『確かにあるが?』

 

「枯れた場合でも、花を入れ替える場合でも、まず土を新しくします。しかし土はそのままに残っている。そのままの状態では衛生面で良くないですし、花に関して研究をされていた訳なのですから、そんな事は知っていた事でしょう」

 

『つまり、どういう事だ。』

 

「彼が死ぬまでは花は植えられていたんです。ですが部屋は密室だった。となると彼が死んだ後には花が自然に消滅したという事になります」

 

スピーカー越しから議論のこえが聞こえてくる。

 

『そんな事が可能だとして、それが今回の事件に繋がるのか?』

 

「はい。繋がります。消滅した花というのは微粒子に人間の体内にある酸素に触れると、自然に枯れ果て土と同化し跡形も無くなるクライダルという花です。クライダルは鑑識でも成分を確認できないほど特殊な花なんでしょう。そして、クラス・ライナーは欧米にあるクライダルの種を取り寄せて研究に入った」

 

スピーカー越しからキーボードを打つ音が聞こえる

 

『確かにその花は欧米の一部に咲いてるようだ。そしてこれは……』

 

スピーカー越しからの声が途切れたので青年が言葉を付け加える

 

「花には毒の成分を持つ微粒子があり、それを人間が吸い込むと血管が膨張し、最悪の場合は死に至る。そして、微粒子が人間の口から出る酸素を過多に接すると花は自然消滅する。もちろん、さっきも言った通り微粒子は認識できないので体内に入った微粒子も同様です」

 

スピーカー越しから納得のする声が多々聞こえ始める。

 

『君の推理は正しいようだ。つまり、彼を恨む誰かがバレないようにクライダルの外見を研究施設で加工して彼の部屋に持ち込ませたのか?自殺だとしたら態々こんな手を組んだ死に方はしないだろう?』

 

「はい。殺人でしょう」

 

彼を両腕を伸ばし、人差し指だけを使ってキーボードを打ち込んでいく。データベースに侵入にクリス・ライナーの情報を得ていく。内容を把握すると、キーボードから指を離し腕を下ろした。

 

「危険物とされたクライダルの研究に関わっていたのは、クラス・ライナーを含めて二人だけです。それ以外の者にはクライダルの存在を黙認していたそうです」

 

『なら、そいつが犯人か。そいつは誰だ?』

 

「副社長であり、弟のビル・ライナーです。彼がクラス・ライナーに加工したクライダルを部屋に置くように誘導したのでしょう。動機は研究施設の跡継ぎを早急に済ませて金を多く得たかったのか、資金源の調達に苦になったのか、色々ありそうですね」

 

『そうか。急いでビル・ライナーを捕まえる。今日は助かった。証拠も確証もなく我々は捜査に行き詰まっていたのに、君は良くこんな短時間で事件を解決できたな。流石だよ』

 

青年は左膝の上に左腕を乗せて自分の顔を支える。

そして右腕を顔に近づけて親指を唇に添え、彼は一言気だるげに呟くのだ。

 

 

 

「『L』ですから」

 




Lではありますが、松山さん演じたLでも、池松さん演じたLでもありません。※2人のLは大好きです!

今回の話は夜神粧裕と同様に彼の天才的な推理力を知ってもらうために書きました。推理トリックは意味不明で穴がありまくりですが、それを解いたLは天才であると理解して頂ければ、それで問題ないです。


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2

原作や前作を見てないと分からない部分があるので、見てない方には分かりにくいと思いますが、よろしくお願いします。


世界的名探偵として活躍する"L"は事件に関わる日々を過ごしている。

 

ーー簡単な事件、無能なFBIの連中だった。

 

先程の事件を振り返りながら、Lはバイクに跨り走っていた。ヘルメットを被り、羽織った黒の薄いコートが風に揺られる。

 

行き先はイギリスのウィンチェスターにある天才児用の孤児院「ワイミーズハウス」である。ワイミーズハウスは世界各地に点在する施設だ。ニアと呼ばれる少年に話があると言われLは向かっている。

 

ワイミーズハウスに着きバイクを停めて施設の中に入る

施設内はホテルのような場所で子供は見当たらない。

この時間は自室で勉を営んでるんだろう。子供に会いたくないLは敢えてこの時間を選んだ。

 

廊下を進んでいくと大きな扉が身構え、Lはその中に入る。

 

中央に大きな長机が置かれ、その周りは幾つもの椅子が並べられている。

 

この部屋は今は亡き創設者、ワタリの作業室であり彼を継ぐロジャーという初老が長机を挟んで更に奥に座っている。

 

その手前に地べたに座りパズルを解く少年がいる。彼がLを呼んだ人物で"初代"Lにタイで保護されたニアであり探偵でもある。

 

「どうも"三代目"L。久し振りだね」

 

パズルを解きながらニアが言う。少年なのだが頭を使っているかほぼ真っ白な髪色をしている。

 

「久し振りですね。ニア。ロジャーも」

 

ロジャーは頷いて、神妙な面持ちをする。

 

「三代目Lになって、どんな感じだい?」

 

ニアは笑みを浮かべそう言った。

 

「そうですね。Lの遺伝子を受け継ぐ者が他にもいるのに、私で良かったのかと今でも思います」

 

「今は亡き2代目L、"竜崎"が君を三代目に選んだからね。君は先代達と同等な頭脳の持ち主という事だよ」

 

「あなたはそう思うんですか?」

 

気だる気にLはニアに問う。

 

「竜崎が僕ではなく君を選んだという事が、何よりもそう思わせる事実だ」

 

ニアはパズルを解き終え、Lに目を向けた。

 

「なんだかすいません」

 

コートの紐を解きポケットに手を突っ込み、側の椅子に跳ねるように片脚を畳んで座る。

 

「君は遺伝子に欠落が無いし、ほぼ先代のLと言っても過言じゃない。だけど少し竜崎に似てる部分があるけどね」

 

ニアは解いたパズルをバラバラにしながら言った。

 

「竜崎と一緒に過ごしてきましたから」

 

人差し指を口元に当てて答える。

ニアはそれを見て不思議に思う。

 

「君は先代Lと会った事は?」

 

「ありますが、余り覚えていませんね」

 

Lとは似つかわしくない外見で涼しげな表情をする青年だがファッションも仕草も似ていて先代に似ていると深く感じた。

 

これまで黙っていたロジャーはよくやく口を開いた。

 

「思い出話は終わったかね。ニア、Lにあの話をしなさい」

 

ニアは目を見開きロジャーに頷く。

パズルを再び手に取りながらLに告げる。

 

「デスノートの存在は君も知ってるよね?」

 

Lは頷いて答える。

 

「そのノートに名前を書かれた人間は死ぬ、死神のノートですね」

 

「そう。10年前に先代Lがキラを食い止めるが、半年前に今度は6冊のデスノートが降ってきた。地上で同時に存在していいデスノートは6冊まで。これを封印しようとしたが失敗に終わり、2冊だけが、ここワイミーズハウスに保管されている」

 

Lは指を咥えるのをやめ、腕下ろし天井を見上げた。

 

ニアはそれを見て少し驚くが、構わず話を続ける。

 

「だから今も、何人かのキラの思想を持った者がデスノートを使用し、世界中で犯罪者を裁き続けている。そして、日本警察がキラが日本にいるというデータを得たようだ。ロジャー、あれをだして」

 

ロジャーはノートパソコンを打ち込んでLに向ける。

画面には死因が記された各国の死者の統計人数がグラフで出ている。よく見ると数週間前程前から日本だけ心臓麻痺で死んだ数が明らかに他の国と比べて突破している。そしてほとんど者が犯罪者だ。

 

グラフの水準を眺めてLは笑みを浮かべた。

 

それを見てニアは眉に皺を寄せながらLに告げる

 

「これ見て日本のデスノート対策本部が動きだした。正直このデータだけで動きだす日本警察には理解ができない。結局捜査が進んでいないらしい。そこで2代目同様、君に日本警察から協力要請がきた。日本以外の国から要請が来ないのは、キラがいる証拠が何もないからだね」

 

「なら、日本は優秀な国ですね」

 

「そうかな。で、どうする?二代目は君に関わってほしくないと言ってたけど」

 

Lは飛ぶように立ち上がり背中を向けて歩く。

 

「君は協力要請を受けるかい?」

 

 

「竜崎には申し訳ないがそうします。キラは"私を呼んでいるみたいですから"」

 

ニアは疑問に思いながら、Lの背中を見届けた。

 

いつのまにかニアのパズルはまた完成していた。

 

「彼はLに似ているな」

 

ロジャーがニアに問う。

 

「そうだね。Lの中に竜崎がいる感じもする。複雑なLだよ」

 

ロジャーは微笑しニアに話しをする。

 

「君はいつ彼の存在を知ったんだ?」

 

「竜崎から三代目の襲名の時だよ。その時は誰なんだと思ったが、難事件を幾つも解決したデータが竜崎の方から届いてね。存在を認識したよ」

 

「無理はない。彼は初代Lや二代目、我々が存在を隠してたからな」

 

「どうしてなんだい?」

 

「それは私には知らされていない。理由を知ってるのは他にワタリぐらいだ。結局、彼は身を隠して探偵となり」

 

「諸々な事情で竜崎からLの名を貰った、か」

 

ニアは呟くにように答えた。

 

ロジャーは頷くと、神妙な面持ちになる。

 

「ところで、竜崎の名を継いだ"三島"くんはどうなんだ」

 

ニアはパズルに目を向けながら答える。

 

「Lに協力要請がきたんだ。"彼は無能って事だよ"」

 

ロジャーは眉に皺を寄せる。

 

「竜崎はどうして"キラ"だった男に自分の名をあげたんだか」

 

「実際、竜崎は次のLには同じ事を繰り返して欲しくなかった。だからLではなく"竜崎"として"デスノートに精通する三島くんに自分の名をあげたんだろう」

 

「そうか。自分の名前を書いた相手なのに、そこら辺を気にしないのが竜崎らしい」

 

すると、ニアは苦笑を浮かべてパズルを壊す。

 

「それか、竜崎は最初から操られてたかもしれないね〜」

 

 

 

 

 

バイクを運転しながらLは思考する。

 

数週間前から心臓麻痺で死んだ犯罪者が日本の国だけ一気に増えていた。これだけで日本にキラがいると決めつけるのは早い。だが日本の犯罪者を集中的に裁いてるという事は、自分が日本にいる事を態と示してると解釈できる。これだけで日本にキラがいるのは確定的だ。

なら、どうしてキラは日本にいる事を意図的に示しているのか。それは目的があるからだ。自分が日本にいる事を認識させないと、その目的は達成されない。

考えられるのは一つだ。

名前も顔も知らない人物と出会うため。なら、その人物の事は知っている事になる。そして、キラはその人物が自分の存在を日本にいると察知できると考えている。つまり、デスノートを知らない人間は対象にはならない。となると、その人物はデスノート、キラ事件に関連する人物が対象だ。

警察組織なら、簡単に名前を探せる。

でも無理なら絞られる人物は恐らく"私"しかいない。

そう考えると名前や顔は知らないが私の事に怨みがある。

これまで起きたキラ事件に関わる人物がいればそいつがキラに。もう答えは見えたようなもんだ。

だがリスクを背負うその度胸は、面白い。

 

キラ、お前の勝負、受けてあげよう。

そして、自分を殺さず、お前に殺されず、

 

 

ーー全てのLを超えてみせる。




仕事が立て込んでて、遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
仕事の都合でこれから不定期になると思いますので、よろしくお願いします。

ーーーーーーーーーー


前作のLNWのパンフレットを見ると、Lの遺伝子を受け継ぐものは何人もいると書かれていました。その中で竜崎がもっとも優秀だと書かれてたので、彼と同等なLの遺伝子を継ぐ者がいたという事にしました。後付けです。ですが、この設定が良い感じに物語に絡んでくるので、楽しみにしてて下さい。

今回の話はLがメインですが、彼以外にも登場人物がいるので原作や前作を見ないと分からない部分があると思うので、ご了承ください。

それで、もう結構話詰んでね?って思われると思いますが、その通りです。映画でいうと2時間ぐらい分を描こうとしてるので話の展開は早くさせようと思います。


L編はこれで恐らく終わりなので、次回はもう一人のキラ、もしくは前作の登場人物になると思います。
何故迷ってるかというと、前作の登場人物については、余り物語に絡んでこないので、深くキャラを掘り下げるべきか考え中です。


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冀求


CIA所属の女性諜報員、ハル・ブロックはキラ対策としてハル・リドナーという偽名を使ってキラ事件の捜査に当たっている。

 

彼女は今、自宅の書斎室で捜査記録をまとめている。

キラは何人いるのか、どこにいるのか、どんな人物なのか、独自でプロファイリングを彼女は行っている。

 

でも、それらは全て虚構な事なのである。

 

「よくもまあ、嘘をそんなに並べられるね」

 

横から人間ではない異体が話しかけてきた。

その姿は、白の黒が螺旋状に埋め込まれ、柔らかそうな皮膚をし、人間のような瞳で、頭は真っ白な色をしている。

 

「シーラ。別に死神の貴方には関係のない事でしょ」

 

「でも気になる。だって貴方ーーキラじゃない」

 

シーラにハルは目を細める。

 

「キラなのに、嘘ばっか書いてよくやるよ。辛くない?」

 

ハルはPCから目を離す。

 

「何回言えばいいの。私はキラじゃない」

 

1番上の引き出しを開け、 二重になっている板を取り外し、そこに置かれてる鍵をとる。

そして、一番下の引き出しをその鍵で開け、ガラスケースを取り出す。その中には3冊の黒いノートが中に入っていた。

 

ガラスケースの蓋を開け、一冊のノートを手に取る。

 

「私の友人はキラの裁きに巻き込まれた。だから私はキラが憎い。キラではなく正しい捌きをするのは私の望み。だから私が裁くのは司法取引で自由に生きてる犯罪者、そして」

 

「デスノートを使用していたキラ信者、2人ね」

 

 

「ええ。これ以上キラ信者にノートを使わせないために、デスノートを使用するロシア人男性、中国人女性を探し出して、それぞれの自国まで行ってノートを奪うのは正直苦労したわ」

 

「女の異常性は怖いね〜」

 

「あんたも女でしょ。」

 

ハルはPCに目を移し、キラ事件をまとめたファイルを長官に贈り、アドレスの識別を替え、犯罪者の司法取引のリストがあるデータに入る。

 

そして、ぺンを手に取り、そこに載ってる名前をノートに書いてく。2人の名前を書き終えノートの入ったガラスケースを戻し鍵も同じ場所に戻す。

 

「おい、お前つまらない」

 

目の前で書斎の棚を見る異体が話しかけてきた。

全身がブクブクと膨らんでいて、人間でいうマックス級のデブだ。笑っている訳ではないが口が裂けていてそう見える。

 

「ごめんね、ミードラ。夜神月みたいなキラじゃなくて」

 

死神、ミードラは10年前に起きたキラのような存在を見つけてかったらしい。

 

「あのロシア人じゃなくて、もっと慎重にノートを落とせば良かった。そうすればお前に奪われず済んだのに」

 

ミードラは後悔しているが、風貌のため笑って見えておかひな死神にハルは感じた。

 

すると壁から全身目ん玉が埋められた巨大な頭が出てきた。

 

「同じ……あの中国人……」

 

「毎回、この話題になると、そこから出てくるね、ヌ」

 

ハルはヌの登場に毎回疑問に思う。

目の前には口が裂けてるデブと、目ん玉まみれの巨大の頭の死神二体がいる。なんともシュールな光景で思わず苦笑を浮かべる。

 

「何がおかしいの?」

 

横からシーラが話しかけてくる。

目の前の異様さに比べるとシーラは大分落ち着いた風貌の死神だ。

 

「別に。何でもない」

 

PCに再び目を向け、日本の死者の数が載ってるデータに飛ぶ。

データには先週数週間前から異様に死者の数が増えているグラフが載ってる。

 

「今度は、それか」

 

「ええ。このデータから察するに恐らく日本にキラがいる」

 

「なんでよ。もしかしたら日本にいると思わせてるだけじゃない。それかただのバカかもしれない」

 

「いいえ。思わせてるだけならなんで日本限定なの。他の国バラバラにやった方が捜査は難航しやすい。それにバカがここまで人を殺さない。数週間前から数えると5000人以上の人間が不審死を遂げてる。それも全員犯罪者。おそらくキラ信者ね」

 

「流石、キラ捜査の責任者ね。あなたがキラだけど」

 

ハルは再び顔を顰める。

 

 

「だからキラじゃない」

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラを書く力量はないので、申し訳ないですが既存のキャラにしました。
ハルを好きな方は申し訳ありません。
ドラマでは一応ハルとして悪役で出てた気がしたので、諸々の事情でハルをもう一人のキラにしました。


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「で、どうするの」

 

シーラがPCに目を向けるハルに聞く。

 

「キラを探すしかないわね。そして日本に行く」

 

「日本か。楽しみね」

 

「でも、そう簡単にはいかないわ」

 

「どうしてさ?」

 

「長官によると、日本にはあのLの後継者がいるみたいなの」

 

シーラは表情に笑みを浮かばせる。

 

「10年前の、あのL。いや、半年前に起きたキラ事件でLの後継者が死んだと聞いたが」

 

「それとは、また別のLなのよ。そのLとは昔、公には出てない事件に協力させてもらってね。まあそれを知ったのは事件が終わってからなんだけどね。」

 

「成る程ね」

 

「だから何もなしに日本には行けない。CIAの捜査員なんだし向こうが気づいたら怪しまれる」

 

「じゃあ、どうするんだい?」

 

「日本の対策本部に行くしかないわね。アメリカの捜査員かが調査として対策本部に加われるならだけど」

 

「難しいのかい?」

 

「ええ。国のトップが各国に捜査員を送ってる噂よ。今じゃ国との繋がりは怪しいもの。デスノートはそれほと危険なのよ」

 

シーラは微笑する。

 

「人間は欲が強いね」

 

「その通りね。だから、取り敢えずはキラが誰なのか見つけないとね」

 

「お、どうやって調べる?」

 

「でも、今回はこれまでのキラ達と違って調べる必要もないかも」

 

「キラは何千人者の犯罪者を捌いてる。なら敢えて日本にいると示してると考えても可能よ」

 

「そうなのかい?」

 

「ええ。つまり、示してるという事は見つけて欲しいからよ。キラは自分でデスノートはここにあるってね。なら、示したい相手はデスノートを知ってる人間。ならデスノートに関連してるのがキラ」

 

「あんた、流石ね」

 

ハルは微笑しキーボードを打ちはじめる。

 

「まあ、10年前のキラか半年前のキラの辺りね」

 

画面に、半年前にキラウィルスとして流れた夜神月の静止画が映る。

 

「随分と男前ね」

 

「そうなのかもね」

 

「あれ?あんた、キラの事が……」

 

ハルは夜神月の静止画を閉じる。

 

「キラの外見は別にしてキラが憎い事は変わらないわ」

 

「そうか」

 

ハルは再びキーボードを打って行く

 

「今度は何?」

 

「CIAの上層部に連絡してるの。日本の対策本部に入れないかってね」

 

「無理なんじゃない?」

 

「やるだけ、やるだけ」

 

 

 

 

 

数日後。

 

 

ハルはCIAの上層部の人間と電話越しで話している。

 

「はい。分かりました」

 

シーラがマスカットを齧りながらハルに聞く。

 

「どうしたの?」

 

「日本の対策本部に調査員として加わることになった」

 

「あら、それは凄いじゃない。これで日本に簡単に行けるわね」

 

「さうね。Lが手を回してくれないみたい」

 

「Lが?じゃああんたはLに好かれてるのね?」

 

「どうだろ……」

 

ハルは眉に皺を寄せ頬を摩る。

 

「何か不安?」

 

「いや、別に。私はもう支度を終えたから、日本で会いましょう」

 

ずっと黙っていたミードラが口を開く。

 

「おい、ハル、聞いてない」

 

「ごめんね、決まった事だから」

 

ミードラは嫌気がさしデスノートを手にとる。

 

シーラが急いでミードラに駆け寄り釘を指す。

 

「私達は夜神月のようなキラを見つけるために下界にいるの。そのキラの元所持者は次の死神大王になれる。彼女が夜神月を継ぐキラになるかもしれないの。あんたが殺そうとしたら、死神大王から罰を受けるかもよ

 

ミードラは不安げにシーラを見てデスノートをしまう。

 

「そうかもな」

 

ミードラが苦し紛れに言った。

 

「あんたやヌのデスノートはハルが持ってる。もしかしたら私達の内誰かか次の死神大王の可能性になるかもしれないんだから」

 

「分かった」

 

ハルは、その会話を耳にしながら支度する。

 

「死神も大変そうね」

 

「ああ。そうだよ。」

 

ミードラが苛立ち口調に答える。

 

「じゃあ、シーラ連れてけ。俺は空を飛べない」

 

「仕方ないね」

 

すると、ヌボッと死神ヌの頭が天井から飛び出してきた。

 

「ここ……いる」

 

ハルはヌに近づいていく。

 

「ごめんね。あなたも空を飛べないだろうし、私と行きましょ」

 

ヌは、仕方ないと答え、天井の中に入ってく。

 

「おい、なら俺も連れてけ」

 

ミードラが棘のある口調で言った。

 

ハルは黙って自室を出て振り向く。

 

 

 

「私を殺そうとした死神とは、いたくないわね」

 

部屋を出ていくハルを睨むミードラ。シーラはまあまあと宥めた。




ただ死神の可愛らしさを演出するために、空を飛べないとか独自設定をしました。


ミードラがメスというのはしってます。


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発出
1


夜神粧裕はサングラス、マスクの格好で傘をさして喫茶店に向かった。

 

家からそう遠くない喫茶店だが、生憎の雨だ。着くまでには服が雨で湿った。

 

喫茶店の中には客は1人もいなく、従業員がカウンターでヒマそうにしている。

 

端っこで窓から人通りが確認できる席につく。マスクを取り外し、従業員に声を駆けコーヒーが一つやってくる。

 

「おい、何で、こんな所にくるんだ。お前はキラの妹だぞ」

 

リュークが粧裕を見下ろし声を掛ける。

 

「あなたと話すためよ」

 

リュークは疑問に思う。

 

「まあ家には監視カメラと盗聴器がついてるから。ここにはカメラも、もちろん盗聴器はついてない。でもお前が俺と話したいなんて珍しいな」

 

監視カメラと盗聴器が家に付けられてから、1週間は経った。恐らく日本のデスノート対策本部、"L"の指示だろう。

 

予め家の中の背景を写真で取り、僅かなズレでも確認すれば、誰かが家に入ってきた事になる。

 

そこで恐らく兄のように監視カメラと盗聴器が付けられてると粧裕は分かり、リュークに数を数えさせた。

 

「話ってのは、アレよ」

 

「アレか。アレならもう完璧だ。安心しろ」

 

「そう。よかったわ」

 

「ああ。監視カメラや盗聴器がつく前にやっといてよかったな」

 

粧裕は微笑しコーヒーを啜る。

 

「だが、こんな所にいていいのか。お前家に閉じこもってんだろう。急に家に誰もいないとお前あやしまれんだろう」

 

「私もずっとじゃないわ。内職の関係でたまに外に来るわよ」

 

粧裕はキレ気味に答える。

 

 

「ーーそれに少しくらい怪しまれないと、ね?」

 

 

コーヒーカップをテーブルに置く。

 

リュークは粧裕の言葉に笑みを浮かばせる。

 

「面白え。やっぱりキラの妹だな」

 

リュークの声は流し窓から外の景色を眺める。

 

大粒の雨が降られ、ほとんど見えない。

 

この辺は人通りが少なく、居酒屋や喫茶店がある裏通りだ。

 

雨に埋もれる景色を見ていると、チャランチャランとドアを開く音がした。

 

時刻は3時ごろ。

誰か来ても可笑しくないが、雨が降っており、しかも敢えて人がいない喫茶店に来たのに客が来るなんて、粧裕は疑問に思いドアの方に目を向ける。

 

ドアが小さく揺られ閉まる。

中には誰もいなく従業員だけ。

 

気のせいなのかと思い、よく周りをみるが誰もいない。

 

粧裕は首を傾けながら、コーヒーを手に取り啜る。

 

「気のせいではないですよ」

 

後ろから男の声がした。

 

粧裕は一瞬驚きを見せるが、直ぐに平常を保たせる。

 

まさか、直接来た……?

 

粧裕は微笑し、後ろの男の声に答える。

 

「え、気のせいって?」

 

後ろを振り向くと、パーマがかった長い後ろ髪が目に映った。

 

皿には大量の角砂糖が置かれ、その男は角砂糖をコーヒーに入れると、それを啜る。

 

「あ、他にお客さんいたんだ。びっくりしましたよ。さっき見た時は誰もいなかったのに」

 

「そうですか。私は堂々とここに来ましたが」

 

粧裕は目を細め、その男から目を離して目の前のコーヒーカップを見る。

 

「まったく気づきませんでしたよ」

 

「そうでしたか」

 

後ろからコーヒーを啜る音が聞こえる。

 

「あなたは夜神粧裕さんですね」

 

粧裕はこれで後ろにいる男を横目で見る。

 

「そうですけど、あなたは?」

 

コーヒをテーブルに置く音が聞こえ、面倒草そうな息づかいをしている。

 

 

「ーー私はLです」

 

 

粧裕は目を見開くと、すぐに微笑する。

 

やはり後ろにいる男はL。

いや、正確にはLの後継者か。

 

直接来るとなると、やはりキラとして疑われてると粧裕は感じた。

 

だが、これでいいと納得して、何事もないようにLに答える。

 

「Lって。まさか、あのL?」

 

「はい」

 

淡々とする声が異様な冷たさを運んでくる。

やはり危険な男と感じながら粧裕は口を挟む。

 

「確かLは死んだ。あなたは後継者ですよね?」

 

Lはその言葉に苦笑する。

 

「そうです。私三代目のLです。それを知ってるとなると警察の資料をお読みで?」

 

「ええ、そうよ」

 

「なら、キラはどうやって人を殺してるか分かりますね」

 

「ええ、デスノート。死神のノートがあると資料に載ってました」

 

 

「ーーそれなら、話は速い」

 

 

粧裕はコーヒーを啜りLに質問する。

 

「で、何?私に会いに来たの」

 

「そうですね。」

 

「なら、私がどうしてここにいると分かったのかしら?」

 

粧裕は質問するが、大体の事には気づいてる。

 

ここまでくる間に誰かに付けられてる気がした。10年前にFBIの捜査員が殺害された事によりFBIは協力しないだろう。

 

そうなると、あの尾行はLだったんだと改めて認識させられた。

 

「尾行しました。申し訳ありません。幸い家から近くて、雨に余り濡れずすみした」

 

確かにさっき見た時は、髪など濡れてる気配は無かった。

 

「そうですか。とすると名探偵であるあなたが私の前に現れたという事は私は疑われてるですか?」

 

「はい。その通りです」

 

「酷い話ね。私がキラの妹だからかしら」

 

「それも疑いがかかる一つの理由ですね」

 

「単純な名探偵ね。なら他にも理由はあるの?」

 

「数週間から前から日本の犯罪者が集中的に異変死している。何故そんな事が起きたのか。それはキラは恨みを持つ人間がいるんです。その人間に会うためにキラは態と日本にいると示してる、そう判断しました」

 

「なるほど。そのキラが私と、あなたは考えてる?」

 

「はい」

 

「恨みっていうと私の場合は兄が死んだから復讐するとも考えられるわね」

 

「その通りですね」

 

「でもそれは理由というより憶測では?」

 

「はい。ですが私は99%、あなた、いやキラは私の考えてる通りに動いてると思ってます」

 

粧裕は相手から見えてないのにも関わらず眉に皺を寄せる。

 

「それは、凄い自信ね」

 

「まあ、そうですね」

 

さっきと比べてLの声は砕けた口調だ。

 

「後、私はキラの疑いがある事をあなたに伝えるためにここに来た訳ではありません」

 

「それは、何ですか?」

 

「それは言えません」

 

「残念ね。聞きたいわ」

 

2人の会話が途切れる。

 

粧裕は、後ろでコーヒーを啜る音が聞こえ再び話しかける。

 

「教えてくれませんか?他に何の理由があって私に会いにきたのか」

 

Lは膝の上に手を置いて顏を支え、口元に親指を添える。

 

「残念ですが事情があるので」

 

「まあ、そうですよね。しつこく聞いてすみません」

 

すると、後ろから不規則な音が聞こえた。いやさっきから聞こえていた。

 

短な音であったり、伸びる音。

 

雨の音や店内の換気扇の音で聴きづらい。よく集中しないと確認できない音だ。

 

それに交えコーヒーを飲む音が聞こえ、

 

 

 

「では、これで」

 

 

 

チャランチャランとドアの開く音が聞こえ、後ろを振り向くとLはいなくなっていた。

 

漫画のような速さで飛びでたのかと思いながらコーヒーを飲む。

 

「おい、今のLだな?」

 

「あら、リューク、忘れてたわ」

 

Lとの会話に夢中になりリュークの存在を気にしてなかった。

 

「酷えな。まあそれはいい。お前完全に詰んでるな?」

 

粧裕はその言葉に気にせずリュークに答える。

 

「いいのよ。これで」

 

粧裕は先程の音を携帯で調べる。

 

小さく不規則に鳴る音。

粧裕はこれをモールス信号と捉えた。

モールス信号とは、2つの組み合わせで構成された文字を伝える信号方である。

 

最後に聞こえた不規則な音を調べると、粧裕は、その音がなんのか分かった。

 

「分かったわ」

 

「何がだ?」

 

「数週間前に私が日本の犯罪者を裁き始めた頃、他の国で犯罪者が裁かれてたのにピタッと止まった」

 

「ああ、そうだったな」

 

「その後を調べると、他の国で犯罪者ではない人間が不審死を遂げ始めた。それらは不法取引を行う、トップ、司法取引で生きてる、法では裁かれない犯罪者達よ。ねぇ、リューク?」

 

「何だ?」

 

「デスノートは何冊地上にあるの?」

 

「6冊だ」

 

ニヤニヤしなからリュークは言う。

 

「なら何冊、あるいは全部のノートを奪い、悪を殺すキラもどきが使ってるという事ね」

 

「成る程な」

 

「そのキラが、ようやく見つかったわ」

 

「見つかったか。いや、だから、どうするだ。お前の目的はLを殺す事で他のキラには興味ないんだろ?」

 

粧裕は口元を緩め、天井を眺める。

 

 

 

「利用するなら別。これでやっと、デスノートをLの前で堂々と使えるわ」




本格的に物語が動き出しました。
次回もお楽しみに〜


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