FGO 宮本武蔵と二天一流inカルデア (詩七喜)
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開幕
1話 二天一流の後継者と開祖


「お前の先祖には宮本武蔵がいたとされている。お前は刀を振り続けろ。二本の刀を自在に操れるようになった時こそ、平成の宮本武蔵と呼ばれるような男になる」

そう祖父から言われたのは俺が幼い日、俺が小学校からいじめられて帰ってきた時だった。それが真実かはわからないが俺はそれを信じた。

その時の祖父は何処か厳しく、悲しい優しさのこもった声をしていた。

何故かわかったのは俺が宮本武蔵の流派、二天一流を学んでいた時だ。祖父や母の教えで刀は触れるようになった。もちろん竹刀だが重さは本物の日本刀の重さの物を振っていた。

そう。俺の力ではその重さの刀を2本同時に片手で持ち自由自在に操ることができないのだ。

 

二刀流は今の俺には操れない。

 

同じように祖父や母も操れない。というかあの人達は刀と刀という事をしない。

母は少しは刀をしているが本業は、妖術?と言っていたがよくわからない術を使う。なんか急に酔ったりするしわけわからん。

祖父はそれを知っていてあの時、優しさの中に悲しみがあるような声になったのだろう。

祖父は、弱かった俺に生き甲斐を、強く生きていく生き甲斐をくれたのだ。

そして二天一流を教えてくれたのは、一族が平成まで密かに繋いだ流派を廃れさせないためだ。

ただ、型は覚えたが操れない。

 

二天一流は宮本武蔵にしか操ることのできない型だったのだ。 それに気づいたのは半年前だった。

筋トレをしても意味がないことに気づき祖父に尋ねたところそういうことだった。

父の先祖は武家ではない、姫様奉行というものらしい。家紋はあの井伊直弼と同じものを持ってはいるがあまり関係がないらしい。

だから父は俺の相談にすぐにのってくれる。

もちろん型についてや技については祖父や母に聞く方が良いのだが父からは別のことを学んでいる。

「二本の刀を操れない」父にそのことを話すとこう言われた。

「タツキ。俺にはよくわからないが、お前に二天一流が操れないのなら、お前なりの二天一流を編み出せ。宮本武蔵の二天一流は刀と刀の二刀流だ。俺なら刀と他の何かを合わせて二天を一つに纏めるがな」

父はそういう人間だ。

型にはまらないというか、一般的な考え方をあまりしないというか、だからそういうことを言う。

だが、理には叶っていた。

二天一流の二天とは何も刀と刀ではないのだ。

 

ただ宮本武蔵が刀と刀を二天で繋いだだけだ。

 

なら俺はーーー。

 

 

ーーー

 

 

「すぐにマスター適性のある人間を集めて!レイシフト実験を実用に移します!カルデアスの光を取り戻さない限り、人類に未来はないわ」

 

白髪の髪の女性の発言により、マスター適性のある人間を集める計画が始まった。

 

ーー

 

「おめでとう。貴方は此度のマスター適性有とみなされました。本日より、此方に来ていただきたいと思い、お伺いした次第です。」

茶色の髪の毛、黒い服、デザインとして服の中心は水色のラインが入っている嘘くさい男、それが初めの印象だった。

「あー。そういうの、いらないんで。めんどい。」

タツキはただ流し、その場を去ろうとした。

タツキは現在、実家を出て修行をしながら大学に通っていた。

現在は大学へ通う通学途中だ。

「まあまあ。君は選ばれた。だからこそ来なければならない。君のご家族にお話したところ、学んでこいということで快く快諾していただいた。」

「は?まじで言ってんのか?」

「はい。これを授かって参りました。」

そう言って渡されたのが、二本の刀と二本の小太刀、そして黒色の袴だった。

「まあ。刀とは今時古いとは思ったのですが、いちよう。」

どうぞと言われ、それを渡された。

そしてその男が何かを呟き、俺の意識はどんどん遠ざかっていった。次に俺は目が醒めると、俺は、

 

【人理継続保証機関カルデア】

 

という場所にいた。

 

量子ダイブというやつをやらされたりといろいろ説明された。

大まかな説明は先ほど俺を連れてきたやつからなんとなく説明された。その男はまた人材探しとかでその場から立ち去った。

俺の部屋には四本の刀に黒色の袴、そして白色の服に黒いズボン、制服らしい。

俺はサーヴァント?というやつと契約をして、地球を救う?らしい。

ただし補欠らしいので活躍の場があるかは不明とのこと。

なんのこっちゃ。

2016年12月31日までに救わなければ、人類の未来はないらしい。

まったく嘘くさい話だが。なんとなく真実なのだとわかってしまう。

それほどまでにこの場所で行われているものは、規模が大きかった。

そしてこれから制服を着てブリーフィングと呼ばれる講義を受けなければならないらしい。

制服は高校に通っている時に何度も着ていたがまったく。どこに行っても制服はあるものだ。

俺はブリーフィングを受けるために、制服を着て自分の部屋から出た。

うん。わからん、どこへ行けばいいんだ。

とりあえず歩こっ!?!

「うわっ!」

「おっと」

なんとなくで行動してしまったため、何かとぶつかってしまった。

「すまない、大丈夫かい?」

「あ、ああ、はい」

深緑色の高帽子をかぶり、深緑色のスーツを着たもじゃもじゃ髪の男だった。

 

男だった。

 

ヒロイン的な展開は何処へ行ってもないらしい。

「うん?君は?」

そういうと、その男は腕にはめていた銀色の何かをタッチし此方を見た。

「ナンバー46......あぁ。一般採用の子だね。悲観することはない。今回のミッションは全員の力が必要だ。ああ、私はレフ・ライノールここの技師の一人だ」

「はあ。宮本タツキです。よろしくお願いします。」

悲観することね。俺的には同世代の中では群を抜いて刀は強かったんだけどな。それでも補欠とか他の奴らは一体どんな連中だよ。

「ところで行かなくていいのかい?遅刻すると所長に睨まれるから気をつけたまえ」

「ええと、非常に言いづらいのですが、ブリなんとかを受けるための場所を教えてもらいたいと思っておりまして」

「それならーーー」

レフさんという男から場所を聞きその場所へ向かった。

エレベーターのようなもので下へ降りていき、ほぼ埋まった席の中から空いてる席を見つけそこへ座った。

「つーかアレなんだ?エレベーター......だよな?」

見慣れない物は、少し興味が湧いてしまう。

 

ブリーフィングでは初っ端から所長に「最低5分前には来なさい!次は許さないわ!」といきなり怒られた。

講義は進んでいき、途中で所長に怒られ追い出されるやつもいたりと普通に進行はしなかったが、なんとか終わり、俺はその場を去った。まあ。めんどい。帰ろうと思う。何故?決まってる。言ってることが意味わからん。

俺らのことを道具とか言いやがって。それで納得してる連中も連中だ。まあ、所長も納得がいかないなら去れと言っていたし、部屋を出て行く前にレフという男に一瞬睨まれたが、何もなく俺はその場を去った。

刀と袴は家宝だからそれを回収して帰るか。

 

自分の部屋へ入った瞬間、俺の顔の横を何かが走った。

「私の刀を奪うなんてやるじゃない」

うーん?俺の顔ギリギリを俺の刀が貫き壁に突き刺さった。

青い着物に桃色の羽織、桃色がかった、白色の髪を右だけ長く、後ろで束ねた女の子が俺の部屋にいた。

「私の刀を返してもらうわ」

「めちゃくちゃ言うんじゃない、それは俺のだ」

「へー。刀を使うんだ。なら、私のもう一対の刀を貸すわ、やりましょう立会い」

そういって俺の刀を貸すと言って渡された。彼方さんは俺の刀を使うらしい。その腰に帯刀している刀は何なんですかね。

「あぁ、いいぞ、やってやるよ、クソ甘」

「二天一流・継承者 佐藤立樹宮本玄三 手加減はしない、女としてではなく一人間として相手をする所存、覚悟去れよ」

「へー。なるほどねぇ、縁とはこういうものなのかもねぇ」

何か訳のわからないことを言っている女。

「おい!お前も名乗らないのか?見た目はアレだが、太刀筋からするに、刀に自信があるんだろ?」

「そうね、じゃあ名乗るわ、新免武蔵藤原玄信、どう?驚いた?」

 

「何に?」

 

「へ?」

俺の答えに、何処か拍子抜けと言った反応だった。

「わけわからないこと言ってないで、始めるぞ、ルールは片方が負けを認めるまでってのはどうだ?」

「なるほどねぇ。タツキだっけ?あなた、タチ悪いわね」

「なんだよ、わかったのか?」

「わかるわよ。そのルールだと私が貴方を殺しても勝ちにはならない、何故なら負けを認めてないから」

「なんだよ。気づいたのかよ、つまんねー」

「ふふっ、ほんっと上手いわね、でも私には効かないわ」

「私も流派を名乗らないとね、我が流派は二天一流!開祖である私が伝承者である貴方を試してあげるわ」

開祖?つまり始めた人?え?二天一流をはじめた人?それって

「なんだと?なら、あんたはまさか宮本武蔵なのか?」

「まあ、そういうことになるわね。じゃとりあえず始めましょうか」

そう言って刀を構える自称宮本武蔵。

「いや待てよ、ならあんたの本気は二刀流ならこそだろ、二本持てよ、あんたの脇差使いな」

「その言葉お返しするわ、貴方こそ、二刀流が刀一本でいいのかな?」

「ああ、構わない、俺が使う二天一流は俺の二天一流だからだ。立会の時には刀と刀の二天一流は俺は使わない」

「へぇ!面白いじゃない!貴方最高!」

「始めるよ!開始!」

 

宮本武蔵を名乗るだけの事はある。一閃の速さは異常だ。

宮本武蔵なのか確かではないが、わかることはこいつマジで強い。

先ほどから受けて避けるので精一杯だ。

真剣を使うのは初めてなのに馴染むのは、あの竹刀がそれほどまでに出来の良い竹刀だったのだろう、それもあり、この真剣を自在に操れている。

一本なら負けることはない。せめて引き分けなら。

「引き分けに持ちこもうとしてる?」

「いいんですか?鍔迫り合いの時に話すなんて阿呆ですよ?」

「言ってくれるわね、じゃあお言葉に甘えて二刀流やらせていただくわ」

そういうと宮本武蔵?は脇差を抜き二刀流の構えをとった。

そう、この後の太刀筋でわかる、二刀流は宮本武蔵本人にしか使えない流派だからだ。

「いくわ」

一太刀目は先ほどと同じくよけた。

先ほどと同じくだと?

太刀筋に鈍りがない、片手で振ってることを忘れてしまっていた。

やばいもう一太刀来る、腰に収めていた鞘を咄嗟に抜き二太刀目を止めた。

「鞘で止めるなんて、負けを認めたようなものよ?」

「わかってるさ、でも勝つためにはってやつだよ」

宮本武蔵の腹に蹴りを入れた。

「イッ!」

「しゃっべってばっかで、足元に注意を払えてなかったな!こっちだって二天一流なんだ、負けるわけにはいかねーよ」

ポチッと。

タツキが部屋の壁のスイッチを押すと部屋の灯りが消えた。

そして、先ほど宮本武蔵(多分本人)がいたところの後ろへすり足で周り込み、見えない敵を全力で斬った。

悪く思うなよ、俺はこういうやり方が正しいと思ってる。

「へぇ、案外、私好みなことするじゃない」

「なっ!?」

タツキの刀は空を斬っていた。

「ふふふ、私だってよくやるもの灯り落とし。」

「なっ!正面から闘えよ!」

「なっ!貴方だってやってるでしょ!」

暗闇の中声をあげ、お互いはお互いの場所をなんとなく把握した。

きっとあいつは感で斬りつけてくる、きっとそれは避けられない。

立っていればだ。

刀を持ちゆっくり腰を下ろし床に伏せ、匍匐前進で前へ進んだ。

そして足を斬る。

 

ゴチン!

 

「イッテェえええ!」

 

「イッタアアアア!」

 

お互いの頭がぶつかり二人してその場で転げ回った。

「何してんだよ!戦ってる時に寝てるとか何考えてんだ!」

「それもこっちのセリフよ!なんなのよ!全く同じこと考えてるじゃない!」

「この辺にしないか?」

「そうね、貴方を認めるわマスター」

「は?」

「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上した。よろしくマスター」

武蔵は刀を収め膝をつき俺の目を見てそう言った。

「?よくわからんがよろしく頼む」

「ねぇ、聞いていいマスター。貴方は何と何を結んだの?」

「俺は刀と何でもやるずるさを結んだ。なんとでも言え。これこそが俺の二天一流だから否定はさせない」

「いいえ、否定はしないわ、でもその代わり刀があの程度じゃ駄目よ、もっと修行しなさい、せめて私と打ち合える位にね」

「そうだな、宮本武蔵さんは俺に修行してくれるのか?」

「君が私に飽きるまで自称宮本武蔵が精一杯相手をしましょう」

「自称ってwそらそーか宮本武蔵にそんなバカデカイ栄養袋が二つもついてるわけないしな」

「デカイ栄養袋?......?なっ!?!?殺すわよ?」

「ごめん!冗談!だって俺の世界じゃ宮本武蔵って男だぜ?」

「そうなんだ。まあいつかわかる時が来るわよ」

「じゃあまあ、お互い、自らのために一蓮托生しますか」

「で?宮本武蔵さんはなんて呼んだらいいんだ?俺はタツキでいいけど」

「そうねぇ、もう武蔵でいいわよ、マスター」

「なあ、そのマスターって何?キモいんだけど」

「なっ!?信じられない!貴方が私の刀まで用意して召喚したんでしょ!」

「はっ!?そんなことするわけねぇだろ!」

「えぇ!?何それ!」

「それはこっちのセリフだ!」

「じゃ、なんかよくわからないけど、でも貴方が私のマスターなのは確定なんだけど」

 

「タツキでいいぞ?」

 

「マスターが私のマスターで確定なんだけど?」

「タツキって呼べ?」

「マスターが」

「令呪よ、こいつに俺のことをタツキって呼ばせるようにしろ」

俺がそういうと右手に刻まれていた赤色の刻印が一つ消えた。

「は?タツキあんた馬鹿じゃないの!阿呆よ!阿保!タツキは阿保だよ!」

「いいだろ別に!マスターとか気持ち悪い言い方されるの嫌だっつーの!」

「それに俺はもう此処から去るんだぞ?」

「それはいいんだけどさ、タツキ多分出られないわよ」

 

「え?」

 

ゴオオオオオオオ

 

という轟音の後

 

警報器の音が鳴り響いた




FGOにて190連爆死

宮本武蔵さんと出会えず、今回はFGOにて出会うための作品。
こんな感じに何気なく出会えたらいいのですが......。

まあそれはそれとして、
マシュではなく、宮本武蔵さんとの出会いで始まる物語です
マシュは藤丸立花さんのところにいるので奪えないです笑

二天一流を継承する主人公の物語

↓こちらオリジナルキャラクターのタツキのイメージイラストです
絵は苦手なので申し訳ないですが
少しでもイメージとして持っていただければ幸いです


【挿絵表示】


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2話 二天一流の後継者と開祖2

『 緊急事態発生 ー』

 

警報の音が鳴り響いている。

宮本タツキはそれの内容をほぼ理解できていなかったが、理解できたこともある。

それは、この原因が管制室で起きているということだ。

 

宮本タツキは脳裏でこんなことを考えていた。

 

【 今、首を突っ込まなければ、巻き込まれないのではないか?これはあきらかに異様だと判断できる。それに何より危険だ。何もせず見過せば良いのではないか?】

頭の中で声がする。俺に逃げろといっている。

「タツキ?しっかりしなさい!」

武蔵はタツキに声をかけたがタツキからの反応はない。

「俺がやる必要があるのか?」

タツキは武蔵にではなく己の頭の中へ問う。

 

【 構うな。見過ごせ。お前には関係ないことだ。そして事が済んだら、ここを去ればいい。当たり前だ。お前なんかがどうこうできる話じゃない。敵は理解の及ぶ領域にはおらぬ】

「タツキ!......聞いてない。ねえ!先行ってるから!」

自動ドアが開き武蔵は走って行った。

 

【 よし。あの女も行ったな。無視だ。 無視をするんだ。】

 

『助けて』『もうやめてくれ』『命だけは』『お前が殺してくれ』 『最後にもう一度』

『これだから武士は』『才能の差なんだよ!』『お兄様、私は気にしておりません。ただ、お兄様と同じ場所にいたかった』 『僕は戦いますよ。たとえこの身が果てようとも』 『ここから逃げろ!今すぐに!』『故あって助けることにした』

 

タツキが無視すると決めようとした瞬間、タツキの頭の中にありとあらゆる別の人の声が聞こえてきた。それは全て等しく何かを諦めた者の声だった。

なんだこれ…なんなんだこれは!勝手に話すな!お前ら!俺の意識をグチャグチャにするな!出て行けよ!

 

《 起きろ。二天を継ぐものよ。戦え。お前にはそれしかない 》

 

あぁ?......はぁ。なるほどな。これは二天一流を継いだが故に起こる現象ということか。何かはわからないが、やってやるって気にさせる何かを脳が感知した。

それはわかっていたが。どうにもこれは、やるしかなさそうだ。とタツキは理解した。

何故ならタツキ自信が闘志を抑えきれないほど、燃えていた。

 

刀を取り、袴の中に入っていたバッグを持って自動ドアを出た。ここの制服には刀を収める事ができないので、手で持っているが、タツキの手には太刀と小太刀の二本しか握られていなかった。

4本も持てるか!ドアを開けると女の宮本武蔵がタツキを待っていた。

 

「行くよ」

「おう」

そう言って走り出した武蔵の後ろを「ああ」と返し走って行った。少し走ると大きな扉の前に辿り着き、二人は足を止めた。

「ここか」

「そうみたいね」

「行くぞ」

扉まで一本道を走り出したところで男とすれ違った。オレンジ色の髪の男だ。必死な形相で走り去って行った。扉の前まで行くと自動扉が開き、中へ入ると

 

炎が燃え上がっていた。

 

そこには元の形は存在しておらず。何もかもが崩壊した後だった。近づくと、先ほどまで一緒に講義を受けていた、人達が倒れていた。

「おいこれ」

タツキから出たそれは、声として出たものだったのか……きっとそれは、何かを言おうとして発言したものではないだろう。

「まずいわね」

武蔵はポツリと呟いた。

何がまずいのか。その理由は俺にはわからなかったがサーヴァントである武蔵にはある程度理解ができたのだろうか。

ただ呆然と立ち尽くすタツキ達を嘲笑うかのように燃上がる炎の海の館内放送にて人類の未来を保証できないと告げられた。

 

そして90秒のタイムリミットが告げられた。

「武蔵……」

「何?」

「生きてるやつを探せ。一人でもいいから、俺たちがここに来た理由を探そう。俺は悪い人間だ。だから死ぬかもしれないなら、死ぬ気で助けたという、記録が欲しい」

「タツキ。素直じゃないね」

「やるぞ」

「ええ」

わかっている。意味はない。無駄死にだなんて思いたくない。だから一人でも探そうとした。

 

でも、そこには絶望が広がっていた。

 

『量子変換を開始します』

 

『レイシフト開始まで』

 

『3』

 

『2』

 

『1』

 

 

『全行程クリア、ファーストオーダー実証を開始します』

 

 

【 安心しろ。お前がどのような選択をしようと俺がお前を死なせない。この選択をするというのなら俺はその力をお前に完全に渡す。見事に使いこなせ。二天の男】

 

俺に逃げる選択肢を出していた声が聞こえていた。

 

ーーーー

 

 

「 起きなさい!タツキ!」

武蔵の叫び声に叩き起こされる形で目が覚めた。空は赤黒く、周囲の街は終末を思い起こさせる街並みだった。

「うん?ここは?」

「わからないけど、どうやら生きてたみたいよ私たち」

「そうか、で、あれは?」

宮本武蔵の前には武器を持った骸骨兵が進行してきていた。世紀末だろ。武器を持った骸骨とか気持ち悪いな。

「わからないけど敵よ」

「へぇ」

骸骨達の行動は単純だった。

骸骨なのに走る。骨で音を立てて笑ってるかのような音を出したりと、芸達者なものだと思った。

そして問題はこいつら、味方の死に何も感じないのだ。

そりゃ骸骨だから既に死んでるか。とその思考は直ぐに捨てた。

 

まあ敵対しているなら、徹底して斬り倒していくしかない。

「ハアアアアアアア!」

タツキの刀が骸骨を両断した。

うん。俺の刀が通用するか心配だったが十分のようだ。

動きも俺の方が早いし、見切りや1対多の戦い方もしっかり通じる。

「セェエエエイ!」

タツキに呼応するようにして武蔵が骸骨を両断する。

「こいつらいくら斬っても切りがないんですけど!」

「タツキ口を動かしてないで手を動かしなさい!」

「はいよ!」

ハアアアアアアアアアアア

 

セェエエエイ

 

ハアアアアアアア

 

セェエエエエエエエエエイ

 

 

「はあはあ」

「ひと段落ね、タツキ」

「タツキ。スタミナ無さすぎじゃない?」

「うっさい。この制服が動きづらすぎるんだ」

カルデアの制服とかいって渡されたから着ているが動きづらい。袴はいてこればよかっただろうか。

「服のせいにするの?」

ニヤニヤと顔を近づけてくる武蔵の顔にデコピンをして「うっせぇ」と言っていると、ピピピと腕にはめてあるリングから音がなった。

このリングは制服と同じく渡されたものだったので一様つけてきていた。うーんこれがまさか通信機とはな。発展しすぎじゃない?

『 もしもし?聞こえるかい?』

「あ、オレンジ色の髪の男」

そこから映し出された映像にオレンジ髪の男が映し出された。

見えているのは青色の映像なので色合いは見えないが先ほどすれ違って見ていたし名前も知らないこともあり、オレンジの男と言った。

『僕を知っているのかい!』

「いや、まあ、すれ違っただけですけど」

『君たちもよく耐えたものだ。ほんとついてた』

「耐えた?」

『いやすまない、今は現象を説明するのが最優先だろう』

『僕はロマ二・アーキマン。ドクターロマンと呼んでくれ』

『現在カルデアはその機能の八割を失っているんだ、そして君たち意外にもそちらの世界に3人が行っているから、危険かもしれないができることなら合流してほしい』

「わかりました、できるだけ善処します」

生き残ったやつらがいたのか。本当に運のいいことだ。

ロマンとの通話が切れた後、そのことについて、考えながら歩いていた。

「武蔵、どこにそいつらがいるかわかるか?」

「わからないけど、ちょっとマズイわよこれ」

「は?」

ガンッ

「イッテ。石?」

何かにぶつかった。

「なんだこ......れ?」

あまりにもリアルに再現された絶望した人の石像だった。

 

何かが風を切る音がした。

 

何かが来る?

 

「やべぇええええええ!!!!」

 

タツキは咄嗟の判断で自らの身体を道の横、土手の下へ飛び込むように投げた。タツキはそのまま土手を転がり落ちた。

「タツキ!?!?」

武蔵がタツキの行動を見て衝撃を受けていた。そして、重なり衝撃を受けた。先ほどまでタツキが立っていた場所に鎖が突き刺さった。

「あっぶねぇな。クソが。不意打ちなんて詰まらねぇことしやがって、誰だよ!出てこい!」

タツキはすぐに起き上がり、刀を二本とも抜き鞘は、はめるものがないので、仕方なく地面に置いた。

「残念。獲物を逃してしまいましたか」

「見知らぬサーヴァントに。見知らぬマスター?ああぁあ、なんて瑞々しいのかしら」

どこから現れたのかわからないが、黒い布を被った多分女と思われる人間が現れた。

「私の所有物を蹴り飛ばしておいて、その代わりになりたいのかしら?」

「所有物?なんのことだ。」

「これよ」

そういうと先ほどタツキがぶつかった絶望した人の石像をもち、それを破壊した。するとそこから赤き水が飛び出した。

 

「血?」

「えぇ、そうみたいよ。あれは元人間ね」

武蔵が土手から飛びタツキの隣に来た。

この距離をジャンプで着地とかマジで人間じゃないんだな。

「石化の能力を持ってるってことか」

「えぇ、ですからご心配なく、一体減ってしまいましたが、新しく二体加わりますので」

二体ってのは俺と武蔵のことだよな。

「へぇ。やってみろよ。武蔵、あいつは俺に喧嘩ふっかけてきたんだ、俺がやる」

「えぇわかった......わ?ハィ!?!? タツキ!何言ってるの!あれはサーヴァントよ!サーヴァント!しかも聞いてたの石化の能力持ちよ!」

武蔵が驚きタツキの肩をブンブン振った。

「ああ、わかってるって、な。それにサーヴァントの脅威がどんなものか初見で味見しておきたい」

「初見で死ぬ可能性が高いんだけどな」

武蔵は何かをつぶやいたが「わかった」と言って納得してくれた。

俺は武蔵に「頼む」と言って土手の上からこちらを見下ろす、フードのサーヴァントに対峙した。

「貴方。マスターのくせに戦うの?」

「悪いか?」

「いいえ?サーヴァントと戦うのは初めてかしら?」

「さあな」

「まあ。いいわ。力の差というやつを教えてあげる!」

そういうと敵サーヴァントはタツキ目掛けて一突き、タツキは軽くそれを避け、敵の槍を見た。槍と判断していたがまさか、鎌だったとはな。

 

ちょっとこれは考えものだぞ。

「言動には気をつけなさい?戦うと口にしたらもう始まっていますから」

消え!?!?

(殺気後ろ!)

(鎌が相手だ、中間距離は不利、前に出る小太刀先で止められたら太刀で斬り落とす)

ガキンッ!!

タツキは何も見ないでただ後方へ踏み込み斬り込んだ。

チッ!二本で止めないと止まらないか。

「な!?」

「甘いよ。テメェみたいな奇妙な武器の対処法は知ってんだよ!」

「ふっ飛べ!」

女の腹へ蹴りを入れた。

感触が無い?いや違う、鉄を蹴ったんだ。

「は?」

鎖が腹への蹴りを防御した。

「なあ、姉さんや、姉さんの髪の毛は鎖へ変化したりしますかねぇ?」

「足を絡めとって固めてしまっても良かったのですが、楽しみを直ぐに絶ってしまうのはあまりにもつまらないので」

「ああ。そうですか!ご好意ありがとう!」

刀で鎌を弾き、後方へ走った。

「逃げるの?いいわ!さあ!逃げなさい!さあ!」

髪のせいで遠距離での戦いに持ち込まれた。

 

まずったな。

あいつあそこから一歩動いてくれないかな。

「おら!ババア!こっちまで来てみやがれ!」

「ババアですか?その安い挑発に乗って差し上げましょうか?」

「ははは。お願いしてもいいか?」

「わかりました」

「ババアですってぇえええ....あ?」

女が叫びを上げ一歩前へ踏み込んだ、瞬間、女の足に牙がめり込んだ。

 

トラップ。トラバサミ。

 

その上を進行した者の行動を絶つ罠。鞘を置いた時にオマケで設置させてもらった。

因みに持ち運びできる簡易型のトラバサミのため、普通のトラバサミより威力は落ちるが麻痺毒が塗られているからこれで終わりだ。

 

 

ちなみにトラバサミは使用してはいけません。

 

 

足の骨を砕くに値する威力があり、現在では使用することはできなくなっているが、ここはもはやその世界とは違う。

俺の父は謎にそう言ったアイテムを作るのが上手いのだ。これもそのアイテムの一つ。携帯型トラバサミ。先程ルームを出る時に持ち出した鞄は父親からの物だとすぐにわかったし、中を見て感激したね!

「イタイ!イタイ!イタイ!何よ!アンタ!」

「フッ。甘いって言っただろ?、さっきさ、あんた、瞬間移動みたいなことして、俺の後ろに回っだろ?そん時にはさもう仕掛けてたんだよね。つか飛んでくるのは想定外だったから意味ないかなーって思ったんだけど」

「許さないわよ!こんなもの。」

そう言い、トラバサミを手で握るとバキンと砕き割った。

「おいおい、マジかよ。」

それに麻痺毒も効かないのですね。

「逃がさないわよ!」

女のピンクの髪が伸びタツキを囲むようにして、鎖のフィールドを作り出した。

「おいおい、そんなことしなくても逃げないぞ?」

「あらそうなの?でももう終わりよ」

サーヴァントはタツキまでの距離を一気に詰め、鎌で切り掛かった、それをタツキは先ほどと同じように距離を詰めて止めようとした

「甘いわよ!」

女は鎌を瞬時に回転させ鎌の持ち手で突きを繰り出した。そしてタツキが見たのは先端がただの持ち手ではなく。

突きに特化している、槍であると気づいた時には槍は身体をめがけて穿たれていた。

( まじかよ!おい!やらかした!鎌と槍の両刀かよ。どうする?対処法はあるにはある。だがこれは危険だ。でも突き刺されるよりはましか?わからねぇ!!!!やってやる!)

タツキはできる限りの力でバックステップを踏みながら後方へ避けつつも槍の切っ先を自らの右の肺の位置へ調整した。

( ハズレたらシヌゥうううううう!えぐい!こんなかけ!かけになってねぇって!)

「 死になさい!」

タツキの身体を光が包み込んだ。そしてそれは同時におこった

「ハァアアアアアアアアア」

「なアッ!」

宮本武蔵の上段切りが鎌使いのサーヴァントを消滅させた。

「がっはッ!エッグェエ、いてえええええぇ!」

身体が動かない、指が動かない、地に倒れたままただ天を仰いでいるだけだ。

呼吸もままならないとは、まあ閃光玉をゼロ距離で破裂させたのだから仕方ないといえば仕方ない。

 

緊急時に使うように常備している閃光玉はこういった局面で使ったことはないので、正直ビビった。怖かった。

死を覚悟してたし、それに武蔵ならわかってくれると信じていた。

最初の段階から意思疎通のみで決めていた。

やつが俺を本当に殺そうとするとき、その時だけは隙うが必ずできる。

1対1はあくまで、そう見せていただけ、狙いは最後の一瞬の一撃必殺のための布石。

 

「タツキ大丈夫?」

「大丈夫じゃないから担いでくれません?」

「はいはい」

「なんでその担ぎ方?」

「お姫様にはそれ相応のおもてなしができる武蔵ちゃんなのよ?」

「下ろしてくれません?」

「なんでよ」

「お姫様抱っこは恥ずい」

「そう」

そう言って武蔵はタツキを下ろした。

 

「殺されないように見守っててくれませんかね。少し休んだら動けるようにはなると思うから」

「わかったわ」

その時だけは宮本武蔵から優しさが伝わってきた。それはきっと、師匠が弟子に与えるものなのだろう。厳しさと優しは師匠により異なる味を出すものだ。

俺の師匠である、あのジジイにはほぼもらったことがないがな!

要は今の俺と宮本武蔵はマスターとサーヴァントという関係でもあるが、師匠と弟子のような関係でもあるのだろう。

先代ほど参考になる師匠がいるはずはない。

「ああ。それと、ナイス」

だが、共に戦う仲間でもある。互いを讃えるのは悪いことではないだろう。

 

「タツキもね」

お互い剣と剣を打ち勝利を讃えた。

「鞘拾って来てほしい」

「空気読みなさいよ。小次郎破れたりっていうわよ?」

あれですか?巌流島のやつですかね?

「鞘捨てるしか無かったんだから仕方ないだろ」

 

 

あれ?意識が朦朧として......

「武蔵がいっぱい」

「ある何言って?あれ!?タツキ!?」

そう言って俺は意識が途絶えた。

 

 




お久しぶりです
宮本武蔵を全力で召喚させていただきました。

そして絶賛お月見イベント中ですね。
りんごが100をついに切ってしまい、焦りを感じはじめています。

技名はオリジナルで作っていこうかなと思います

ペース遅いですが申し訳ありません
読んでいただいている方ありがとうございます


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3話 二天一流の後継者と開祖3

【 稀代の天才と呼ばれた者がいた 】

 

佐藤立樹

 

彼は高校の1年まで敗北を知らなかった。

その無敗記録は彼自身あまり気にしていなかった。

何故?

それは彼自身が勝つことが当たり前だと思っていたから、敗北は死だと思っていたからに他ならない。

だが。彼の無敗記録は高校1年の春訪れた。

 

「 一本 」

審判のその一言が会場に響いた。剣道春大会、準々決勝。

その時立樹の心を支配したのは( これは何だ? )ただそれだけだった。それまで敗北を知らなかった彼には、敗北とは何なのか考えたこともなかった。

ただ、それが敗北だとわかったのは、家に帰り立樹が思考するということを再び始めた時だった。

 

その時彼の心は揺れ動いた。どうすればいい!俺は何をしたらいいんだと彼は壊れ始めていた。

二刀使っていなかったというのは、言い訳にすぎない。

「お前を負かした者に会って来い。それもまた強さになる」

父にそう言われ、俺は準々決勝で戦った相手を探した。

彼を負かしたのは近藤春馬(こんどうはるま)という人間だった。

立樹は相手の情報を部活の顧問から聞き、直ぐにその人が在籍する高校へ足を運び、再戦を申し込もうとした。

 

しかし、彼はそこにいなかった。

そして、立樹が知ったのは、彼が3年で先の大会が最後だったということ。

 

そして。

 

彼は......彼女は男装をして、全ての者を騙し高校3年間大会へ出ていたことだった。

それは一部の人しか知らなかったらしい。

この事を教えてくれたのは、その学校のコーチをしていた人だった。

 

彼女はより強い相手を求めていたらしい。

そして、稀代の天才を負かした後はもう部活へ参加すらしなくなったそうだ。その女が今どこにいるのか知っているものはいなかった。

 

その時、立樹はこう思った。

『 強くなってやる。勝ち逃げは許さない。待っていろ。 名城 静 』

その後からだろうか、一刀流の技の練度が飛躍したのは。

 

ーーーーー

 

何年も前の夢だな。

今更思い出すようなことでもないだろうに。

「うっ......うーん?」

「目が覚めた?」

何がどうなって?

「タツキ、目が覚めたのね、よかったわ」

気がつくと俺は見知らぬ男の背中にいた。

服装は俺と同じカルデアの制服であることから同じくこちらへ来ていたマスターの一人と想定できる。

 

「俺寝ていたか?」

そもそも何で俺は意識を飛ばしてたんだ?

「違うわよ。タツキの身体が限界を感じたんでしょうね、話してる途中でいきなり意識無くしたのよ。死んだかと思うじゃない」

隣を歩く武蔵に謝罪をしてから、俺を背負ってくれている彼について聞いた。

「そうか、悪いな。それで俺を背負ってくれている君は?」

「俺は藤丸立香よろしく」

「宮本タツキ。よろしく。」

もう一人知らない子がいる。誰だろう。

と、その子を見ていると、目があった。

「私はマシュ・キリエライトです。よろしくお願いします」

黒い鎧姿に大きな盾を持った桃色の髪で片目を隠している女の子。

よろしくと言って、挨拶を交わす。

「私は宮本武蔵よ、よろしくね〜」

「全く。何でこう。はぁ。」

この声は。

「あ、所長......。」

所長だった。ものすごく口が悪いという印象しかない。

高飛車なお嬢様といった印象を受けている。

「あ、じゃないわよ!あ、じゃ、何であんたの隣にサーヴァントがいるの!その子に聞いても理解を得ないわ」

武蔵の事か。なんか勝手に部屋にいたとしか言えないしな。

「いや。そんなの俺に聞かれてもねぇ」

武蔵に質問を流した。

「えぇ、私もさっぱりよ」

武蔵はそれを綺麗に受け流した。

「はあ。なんなのよ!もう!」

所長は所長で心労が溜まっていそうだ。

 

「俺はキャスターのサーヴァントだ」

「え?」

サーヴァントって言った?この青い髪の杖を持った男。

「そこの坊主と仮契約を結んだんでな」

坊主とは藤丸の事か。

「へ、へぇ」

理解できん。仮契約?なんだそれ......。

キャスター?コロコロ転がる?あれもキャスター。

この場合は確か講義の時に......あー術者か!

「それでそこの坊主。さっきのランサーとの戦い見てたけどなんだありゃ?アホか?」

今度の坊主は俺っぽいな。

「は?何がだ?」

「てめぇ、マスターのくせにサーヴァントの戦いに手を出して死にかける。マヌケとしか言いようがねぇ」

その通りだわな。

「マヌケでもいいよ、勝てば官軍さ」

「それはそれでもいい、だがお前が戦うよりそこのセイバーの嬢ちゃんが戦うことが最善だった」

「そうだな、まあ。やりたいからやったってだけだ。悪いなその辺は多分こっちの常識と違う」

 

「それよりタツキ?そろそろ歩ける?疲れるんだけど」

先ほどからずっと背負って歩いてくれてたのだから悪いことをした。

「悪いな、歩ける」

タツキにおろしてもらい、自らの姿を見て衝撃を受けた。

上半身何も衣類をまとっていなかった。

「なんでえええぇええええええええ!?」

「武蔵!ねぇ!武蔵!俺の服は!服!上半身裸なんだけど!ま・さ・か!?武蔵酷いわ!僕はまだドウテ」

武蔵に飛びつき理由を聞き出そうとした(冗談まじりで)

「な!?なによ!?いきなりどうしたの!?」

武蔵は困惑していた。そりゃそうだろう。今さっき会ったばかりの上半身裸の男に抱きつかれたらドン引きものだ。

「服は!服!」

「タツキ、あなたさっきの戦いの時に自らの爆破で炸裂させたじゃない。」

爆破?

「あー。ああああ!そうか、よかったー。いやーよかった。てっきり脱がされたのかと思ってしまったよ」

「脱がされると都合が悪いの?」

その話を聞いていた所長から質問が飛んできた。

あーこれ冗談で返したら殺されそうな感じだなー。

冗談を真面目に返されると返答に困るよね。

まあ真面目に答えたら済む話だけど。

 

「悪い。むしろ都合がすごく悪い。服の中ってのはさ武器の隠し場所。俺にとっては武器庫と同じ意味を指す、だから脱がされると、その時に何を持っているかとか全てバレる。」

「仲間を信じてないのか?」

藤丸からの質問。

そう。仲間にすらそれを見せたくないと発言し、この理由を話すとイコールの繋がりで、仲間を信じてないということになる。

「信じないことはない。だが今は信じないだけだ」

「そうか」

「ああ」

「俺は信じるよタツキ」

藤丸にそんなことを言われてしまった。俺は驚いて少し唖然としてしまった。

会って間も無い連中を信じるなんてできるか。まあ武蔵は一度刀を交えたし信じてるが他は違う。

 

「なぁ、坊主俺と来い」

キャスターが突然そんなことを言い出した。

「は?嫌だよ!俺よくわからんけどお前苦手だし」

「ツレねぇなぁ、いいじゃねぇか、それに戦い方も少し教えてやるぜ?お前からしたらそれだけでも来る価値はあると思うが?」

キャスターはニヤリと笑う。

「なんて奴だ。卑怯だぞ。俺を戦略でつる気か?」

「タツキ?そんなのにつられないわよね?」

所長の目が怖い。

「タツキ?君はそういうのにつられるのかい?」

「タツキ。学んでくるのもいいと思うわ」

藤丸と武蔵のジト目。嫌だな。

「ま、まあ?行ってやらないことはないが......」

餌につられましたとさ。

「決まりだな、ちょっとこいつ借りてくぜ?」

 

ジー

ジトー

ふふ

皆さんそんな目で見ないで!

すると突然キャスターに肩を掴まれキェ?

消えた。

 

目が醒めると全く別の場所にいた。

「まあ、なんつーか、教えるとかよりもお前なら味わって覚えた方が早いだろ?」

「へ?」

「そらよ!」

挨拶がわりの爆破と共に、教育という名の一方的な攻撃が始まったのだった。

 

それから数分の模擬レクチャーを受けてわかったことは、彼の使うルーン魔術なる技は、ルーン文字と呼ばれる字を配置しその文字により多数の現象を発現させるというもの。

そしてそのルーン文字はところどころではあるが、アルファベットに対応しているらしい。

わかることはあまりないが幾つか覚えておいてもよいかもしれない。

「と、まあこんな感じだ。てめえが勝手に死に急ぐのは止めやしねぇ、だがな、目的があるならそれを優先しろとだけ伝えておいてやる」

「はい。師匠、ありがとうございました」

つーか魔術って本当にあるんだな。

神秘の秘匿がなんとやらって言ってたし、頑張って隠してきたんだろうな。

 

「師匠か、俺が。。。まあ悪くないな」

「え?」

「なんでもねぇよ、行くぞ」

「はい」

ルーン魔術か。

学んでみる価値は大いにある

「ていうか、どこへ行くんだ?」

「合流する、嬢ちゃん達にはこの世界のセイバーの居場所を教えてある、そこに合流するって言いたいが、俺たちの役目はアーチャーの始末だ」

「へ?アーチャーって、弓兵のことだよな、俺剣士だぞ?」

弓を持つ敵と戦うならある程度の奇襲をしたり、矢を避けて、その瞬間に接近するなど、色々あるが戦場次第ではそれが出来ないため、事前準備が必要だ。

「安心しろ、あいつは弓兵でも弓兵ではない」

「??意味わからん」

「まあ、会ってみりゃわかる、それでついてくるか?助けてやることはできねぇぞ?」

「ああ、そこは気にしなくて大丈夫ですよ師匠。ただ、上半身裸ってのは防御面で心許ないんだが、何かないか?」

そういうと、キャスターは自らが纏っていたフード付きの服を渡してくれた。

「ありがとう、助かる」

「気にすんな、行くぜ」

「了解」

 

「というかさ、俺にそんだけアドバイスしてくれてるけどさ、いいのか?俺の予想だけど盾の女の子、マシュ?だっけあのこの方がよっぽど」

先ほど見ただけだが、彼女はまだ未熟というより、何かが欠けているという違和感を感じる。

「いつから人のこと気にするほど余裕ができたんだ?まあ、あの嬢ちゃんには伝えるべきことは伝えた。俺だって事の順序はわきまえているつもりだ」

「なんだ、気づいてたのか、流石は師匠」

キャスターに連れられ、アーチャー退治へと向かった。

ーーー

 

 

「 ちょっ!? 師匠アーチャーのサーヴァントってのは、あの藤丸達の前にいるやつか?」

洞窟の洞穴を背に立つ藤丸達の前に、白髪の男がいた。

わかりやすく手には黒い弓を持っている。アーチェリー系か。弓道をイメージしてしまっていたな。だが不思議なことに矢がない。

彼がもう片方の手で持っているのは明らかに剣だ。

「ああ、あいつはセイバー絡みじゃないことでは動かねぇ」

「つーか俺的に、そのセイバーってのが気になるんだけどさ、セイバーって剣士だよな?」

 

「ああ、そうだ」

「俺そっちとやりたいんだか?」

「安心しろ坊主!あのアーチャーはセイバー顔負けの剣技を操りやがる」

「はあ?」

俺とキャスターは近くの森の中から様子を伺っていた。

なるほど、藤丸達はいわば囮って訳か。

「信奉者って呼び方が今のあいつにはお似合いだ」

「じゃ、嬢ちゃん達に死なれると困るんで、俺は行くぜ」

は?

「ちょ!?おい!」

キャスターはその場所から消えると、次の瞬間には藤丸達の前に姿を現した。

「キャスター?」

突然現れたキャスターに所長達は驚いているようだった。

「おう、相変わらず聖剣使いを守ってんのかてめーわ!」

「信奉者になったつもりはないがね、つまらん来客を追い返すぐらいの仕事はするさ」

突然現れたキャスターに驚くこともなく、アーチャーは言葉を交わした

 

アーチャーの言葉の中にあった、信奉者という言葉は先ほど俺と話していた時のキャスターの台詞。つまり俺の場所もバレてるじゃん。

「要は門番じゃねーか、何からセイバーを守ってるか知らねーが、ここらで決着つけよーや」

そう言いキャスターが構えた。

「悪いがそこまで暇ではない!」

先ほどまで片手に持っていた剣を矢のごとく弓に番え、そしてそれを放った。

その矢は藤丸達を、いや、正確にはマシュを狙った攻撃だった。

一同は驚き固まっていた。

やべぇとタツキが思い動き出すより早く、キャスターが魔術により、その矢を焼き払った。

「流石だ師匠」

タツキはそう呟き、森の奥に気配を消した。

ま、多分一度バレてるからほぼ見つかると思うけど、少しでも誤魔化せたらそれでいい。

 

「寂しいこと言いっこなしだぜ、アーチャー、それとも」

「俺の相手は自信がねぇってか!」

キャスターの魔術による火球がアーチャーめがけて数発飛ばされた。

アーチャーは矢を構えてはいたが番えることができず、それをジャンプをして避けた。

「今の内に行け!セイバーはあの中だ!」

キャスターが藤丸達を洞窟の中へ進むように促しているのが聞こえている。

( はあ。俺そこにいないんだよなぁ。俺もセイバーと戦いたかった )

 

足音が複数遠ざかっていく。藤丸達が洞窟へ入っていったようだ。

アーチャーはそれを追おうとするが、キャスターがそれを魔術により足止めをしていた。

「 俺もやるか 」

アーチャーはどこにいるかなって、は!?

 

飛んでますね。あれ。

なんでてすかねー。不意打ちできるいい感じに場所取りしたんだけどねぇ。空を飛ばれたら手が出せねぇって。

森の中からアーチャーの行方を伺いながら、キャスターの攻撃の邪魔にならないように、立ち回るのすごくめんどいんだけど!師匠!

アーチャーが着地したのは神社?みたいな建物のを屋根の上だ。

俺がいる位置から少しだけ離れているが、アーチャーはキャスターに集中している。

少しだけ、無理するか。

 

「 抜刀……」

 

タツキは脇差を2本抜いた。

二本の小太刀は手によく馴染む。日本の刀は俺が師匠に連れていかれる前に武蔵から貸してもらっていた。

俺が先程まで使っていた刀は鞄の中に入っていた刀用のベルトで腰に巻きつけ帯刀している。

流石は親父だ。必要なものは入れてくれている。

武蔵は必要ないと言っていたが、大丈夫だろうかと少しは不安になるが、施行により自分の動きが悪くなるのは最悪だと、割り切ることにした。

 

二刀流( 小太刀ver )

日本刀の長さだと俺には操れないのはわかってる。

『 二天一流−師走其の一初白雪 』

俺の二天一流の一つ師走其の一は初雪をイメージした技。

嫌なもの、嬉しいもの、懐かしいもの、何処か切ないもの。

消えてしまいそうな一瞬を生み出す太刀筋は、見切ることは不可能。

何故ならそれは。

「なっ!?」

「お、おい!」

屋根の上に飛び乗りすぐさま弓を構えていた、アーチャーの方向へ踏み込んだ。

「チッ!」

アーチャーの舌打ちが聞こえた。

狙いを即座に変え放たれた矢は、タツキに避ける間すら与えず、貫いた。

見破ることは不可能。何故ならそれは。

 

俺自身が作ったフェイクだから。

 

フェイクは上手くなればなるほど、恐ろしさを増す。それは魔術のように事象が改変されたかとすら錯覚してしまうほどの、高度な詐欺技術。

タツキの初白雪はそれを型に取り入れ、一つ目のフェイクを踏んだ相手を本物のタツキが切るという、初見殺しの域にまで磨き上げた。

( 初白雪 )

弓兵が踏み込まれたら負けだろ。

しかし、二刀の刀の刃が止まった

「ふっ、なかなかやるな」

「は?」

二刀の刀を止めたのは、アーチャーが両手に持っている二本の短剣だった。

「チッ!弓兵のくせに短剣の二刀流ってか?」

蹴りをかましたが、アーチャーはそれを後方へ飛躍して避けた。

「おい!坊主!邪魔すんな!」

「邪魔はしねぇ!」

「君はキャスターのマスターか?」

「違うっつの。お前、アーチャーのくせに剣なんか使うのかよ!」

「悪いか?」

「いいや悪くない、キャスターの言った通りだ!楽しめそうじゃないか」

屋根を蹴り、アーチャーのいる場所まで駆け( 初白雪 )を使う。今度はフェイクに惑わされることなく、アーチャーは本物の俺を見ていた。

「二度は通じん」

(知ってる。だからやった。)

「二度はないのはお前だアーチャー」

『 一刀−星命 』

二刀を地に捨て、抜刀していなかった太刀を抜刀と同時に、上段から斬り下ろす。

居合の抜刀術だ。

「 ふっ、やるな」

刀と剣が交錯し、鈍い音を立て刀は止められた。

なっ!? 抜刀の速さは本来の斬りおろしとは格段に違うはずだ。

なのに何故、防御が間に合った。

二本の剣をクロスにし、上段で構えタツキの刀を止めたのだ。

「驚いているのかい?」

「は?驚く?俺が?そんなわけないってーの!」

刀を手放し、即座にしゃがみ込み足払いをした。

アーチャーはそれを避けるために飛躍。

 

危ない。

刀を止められた状態だったらやばかった。

一刀の技は溜めが必要だったりするし、あの場面を作るなら二刀は必須。

今の局面でアーチャーが避けようとしなければ負けていた。何故なら刀を捨て、しゃがみ込みんだんだ。結果的に避けてくれて助かったそれど、空中は俺の間合いではない、任せたぜ、師匠。

落とした刀を納刀し、先に落とした二本を構えた。

 

「仕方ねぇ、そらよ!大仕掛けだ!」

キャスターが魔法陣を展開させた。そして、飛躍するアーチャーを空に描かれたルーンにより、撃ち落とした。

流石だ師匠。

抵抗できず落下しているアーチャーめがけて、タツキは二刀を構えた。

『 二天一流−神無月其の二 神通刃(じんつうじん)

神の通り道そのものを描く二刀、空中落下するアーチャーの片腕を弾き飛ばした。

「グッ!」

アーチャーをそのまま地へ叩き落とした。

「師匠、多分もう無理、後は任せる」

「おう」

着地と同時にキャスターの後方へ走りその場を去った。今のあいつには俺の力は通じない。

それは二度、技をぶつけてわかった。最後の神通刃も本当は首を落とそうとした。だがやつは弱点への攻撃をさせなかった。

そういうのはなんとなくだがわかった。首へ行ったらカウンターがあったはずだ。

 

 

だから。俺は撤退する。

 

 

後は任せたぞ。師匠

それと師匠の着地のサポート完璧だった。振動なく無事走ることができる。

「空中にルーン文字を固定したのか......」

「ああ。」

「それにしても師匠と呼んでいたがまさか弟子を取ったのかい?」

「成り行きだ」

そこからはアーチャーとキャスターの接近戦が始まった。

アーチャーは片腕を失いながらもキャスターとまともに打ち合っている。

それより驚いたのはあのキャスター、術者のくせに戦闘能力が並の術者を遥かに超えていると思う。

だがこの違和感はなんだ?

何故アーチャーは片腕を失い、ほぼ勝ち目のない戦いをする…?

 

何故?

 

見ていて明らかに防戦一方ではないか

「勝負あったな、鈍ったんじゃねーか?てめぇ」

キャスターがアーチャーを追い詰めているのは変わりない。だが?何か胸騒ぎが......

「まったくだ。ここにきて他人の心配とはな」

は?

片腕が?やべぇ!

先ほどきりとばした片腕から剣が勢いよくキャスターめがけ放たれた

「おい!!!キャスターアアアアアアァ!!」

一瞬だった。キャスターがその剣に気づきはしたものの反応が遅れ、アーチャーがキャスターの後ろをとった。

そしてキャスターの喉元に剣が押し付けられている。

( 助けに行かないと )

そう思いタツキが一歩足を進めた時だった。

タツキを死の嵐が襲った。動くと死ぬ。

 

ここから一歩でも動くことを許さないその殺気は、アーチャーから放たれているものだと気づいた時には、タツキはその場に座り込んでいた。

「武器の性能で負けてるなら知恵で補うのが人間じゃねーの?」

キャスターが何かを弾きそれが輝きを放ち弾けた。

アーチャーの剣が喉元から外れた瞬間にキャスターは離脱を試みた。

しかし。

アーチャーの剣がキャスターの背を突き刺した。

「 し、しょう?」

そしてアーチャーが勝利を確信し笑みを浮かべた。

 

しかしその瞬間、それは起こった。

 

アーチャーの剣がキャスターの体から抜けなかった。

そしてそれどころか、キャスターの体は黒くく染まり、まるで孵化のように、外殻のように、先ほどの体が割れた。そして上半身裸のキャスターが現れた。

「森の賢者を舐めんじゃねぇ!」

「悪いねこっちは全部が新ネタでよ」

キャスターが杖を振ると地面から現れた巨大な手がアーチャーを掴み地へ叩きつけた。

 

 

キャスターの勝ちだ。

 

 

「おい、いつまで隠れてんだ、行くぞ坊主」

そう言われるまで俺は森の中の茂みの中に身を潜め息を殺していた。

あれほどまでに強烈な殺気を浴びたのは初めてだ。

やばかった。意識が外れていたら確実に戦闘に加わっていた。

それほどまでに滾る戦いだった。

「あ、ああ。なんとまあ。魔術ってのは恐ろしいな」

「なんか言ったか?」

「いや何でもねぇよ、流石だ師匠ってな」

「そうかよ」

キャスターの移動能力により、直ぐに藤丸達の元へ向かった。

 

『 見ていてください マスター 』

それは壁だった。

俺たちが戻り最初に目にしたのは、黒色のビーム?を放つ騎士とそれを受け止めるマシュと藤丸だった。

そして、マシュがビームを弾き返した。

マシュの体にはかなりの負担がかかっているように思える。その証拠にマシュが出現させた壁が消えかけている。

 

『 エクスカリバー......』

追撃?まずい、藤丸達が

「坊主、お前さん。さっきはよく戦った」

「え?」

そういうとキャスターはその場から姿を消した。

「 我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社。倒壊するはウィッカー・マン! 」

先ほどの巨大な手の本体か、 巨大な傀儡が出現しセイバーを取り込み炎に身を包んだ。

とても巨大な傀儡が消えると、セイバーが何やら藤丸達に話しかけているように見えた。

 

そしてセイバーは消えていった。

そして、キャスターも消えた。

「次は一つ手合わせをしたいものだ」

キャスターはそう言い残した。

誰に言ったのか、それをわかったものはただ一人だった。

「ああ。やろう、アイルランドの光の神子。クー・フーリン」

タツキはそう答えを返し鯉口で音羽鳴らした。

 

 

「おい武蔵?」

隠れていた直ぐ近くに、ピンク色の何かがチョロチョロしていた。

「よかった!タツキよく戻ってきたわね!」

「当たり前だ」

「おい。武蔵。お前なんで手伝ってやらなかったんだ?」

「そんなの。これはあの子達の物語だからかな?」

そう武蔵は悲しげに真実をタツキに告げた。

そうこれは、タツキの物語ではないと武蔵は言う。

 

タツキはあくまでそこにいる仲間の一人。主役は藤丸、マシュだ。

 

だから

「気にするな、知ってるし、それに、俺は俺なりに楽しんでいくさ」

「そう」

そして、時を同じくして、裏切り者であることがわかったレフ・ライノールの手により、所長、オルガマリーが殉職した。

そこに響いていたのは所長の悲痛な悲鳴だった。ただ何も出来ず見ていることしかできなかった。

レフ・ライノールは......アレは。人ではない。

「マスター適性がないから見逃してやったのに、それとそこで隠れている、逃走者、何故ここにきて参加しようとする?なぜ人間というのはこうも.......。」

「改めて自己紹介をしよう」

その声はここまで聞こえるように発言されたものだった。

 

「私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様達人類を処理するために遣わされた、2016年担当者だ。聞いているな?ドクター・ロマン?ともに魔導を研究した学友として、最後の忠告をしてやろう」

「未来は消失したのではない。焼却されたのだ」

「カルデアスの磁場でカルデアは守られているだろうが外はこの冬木と同じ末路を迎えているだろう」

カルデアの外が焼却された?

 

家族が?

 

友人が?

 

全て?

 

「お前達は進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのでもない。」

「自らの無意味さに!」

「自らの無能さ故に!」

「我らが王の寵愛を失ったが故に!」

「何の価値もない紙屑のように跡形もなく、」

 

「燃え尽きるのだァ!」

その笑みは愉悦そのものだった。

「この特異点もそろそろ限界か」

地震?のような現象がおこり、天井が崩壊し始めていた。

「聖杯を与えられながら、この時代を維持しようなどと余計な手間を取らせてくれた」

「では、さらばだ、ロマ二、マシュ、そして、48人目の適正者......あぁ、それと逃走者の剣士とそのサーヴァント」

そう言い残し、レフライノールは空間へ消えた。

『 タツキ君!直ぐに藤丸君達の元へ行って!レイシフトを始めるから!』

「はい!」

そして俺の意識は消えていった。

 

 

 

 

ここは?部屋?

あぁ。戻ってきたのか。

「疲れ......?あれ動かねえ」

体がいてぇ。筋肉痛ですかね。そんなの俺の体にはもう起きないと思ってたのにな。

「ああ、起きたのタツキ」

「やあ、武蔵、ずっとそこにいてくれたのか?」

ベッドの隣にある椅子に桃色の髪の女の子、宮本武蔵が座っていた。

夢じゃないんだな。

「ええ。一応は、タツキのサーヴァントだし?」

「はは。すまないな、頼りないマスターで」

「ほんとよ!頼りない!でも、よろしくね、タツキ」

「ああ。よろしく頼むよ」

再び、いやこの誓いはきっと、終わらない永遠の誓いだ。あの時のものとは違う。

 

俺と武蔵は無言で鞘を合わせた。

 

『ゴホン』

 

ビクッ!?!?

「なっ!?」

『えーと、いいかな?とりあえず管制室に来てくれ、話したいことがある。』

「わ、わかりました」

ロマンからの命令が出たので、筋肉痛の体を無理矢理起こし、部屋を出ようとした。

部屋を見ると先日、爆発により飛散した服が新しく作られていた。

それを着ると少しは動きやすく作り直されていた。

感覚でわかる多分これは一般剣士用に調整されたのだろう。

やるじゃないかカルデア

「それじゃ、行こうか武蔵」

「ええ」

 




序章はこれにて完結です
FGO早く新鯖追加して欲しいですね〜笑


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第一特異点
4話 邪竜と聖女と二天一流


宮本タツキはとある部屋の前にいた。

 

 

管制室

 

カルデア局員達が仕事をしている部屋だ。

 

そこに用はないが、そこにいる人物に用がある。

 

ドクターロマン

 

彼に尋ねたい事があるのだが、現在絶賛仕事中な上、最初の特異点へ向け準備をしているとかで、連日忙しく動き回っていた。

 

体調を崩さないか心配になるほどだ。

 

「うーむ。困った。」

 

一人管制室の前でタツキは考えていた。

 

さほどの用でもない限り邪魔しないに越したことはない。

 

さほどの用でもない訳ではないが、仕事を増やすはめになるのは確定だ。

 

「でもなあ。知りたいんだよなぁ......」

 

タツキはこう考えていた。

 

ロマンならルーン魔術に関する本か何かを持っているのではないかと

 

先日の戦いでキャスターからレクチャーしてもらったものの、ルーン魔術の意味を覚えられていないのでそれを、早く知りたいと思っていた。

 

魔術師との戦いで近距離戦しか出来ないのでは不利だと理解したからこその判断だ。

まあ実際距離を詰めれば勝てるとかそう考えてはいるがそんな甘くないのも理解してるし、敵が使う魔術ってのを少しは知っておく必要があるだろうと考えた。

 

できるかできないかはやってみてから考えるのがタツキのやり方だ。

 

「まあ、実際できないことの方が多いのが理不尽な世界だよなあ」

 

「出来ないからこそ楽しいものじゃないか?」

 

突然話しかけられた声に咄嗟に体が反応し警戒態勢を取ってしまった。

 

お姉さん?

 

見た目だけでいうならば

 

巨乳、美人、太もも

たが俺の感覚器官はこいつは女なのか?と疑問を呈している。

おかまかな?

 

そして何より不愉快なのは俺が後ろに立たれて気づかなかったこと。

 

これだけは決してあってはならないのだ。

 

まあ、色々と考え込んでいたし仕方ないか。

 

「ここの人か?にしては変な服」

 

そう、局員が着ている服と明らかに違う。

赤いドレスのような格好であり、ここにいると明らかに違和感がある。

 

武蔵も派手で目のやり場に困るような服着てるけどね。

 

「私こそダヴィ......いやここは」

 

「うん?」

 

「私はここの局員のレオさ!よろしく」

 

うーむ怪しい

 

「俺は宮本タ......宮本武蔵とかと仲の良い、カゲアキと言います!よろしくお願いします」

 

宮本景昭は祖父の名前であるが、相手が偽名っぽいのでそれに乗ることにした。

 

「ヘェ〜それで?ここで何をしているのかな?」

 

「あー、ドクターロマンに用がありましてね」

 

「ロマンなら中にいるんじゃないか?」

 

「まあそうなんだけど、仕事増やすことになるかなーってさ」

 

「なるほどねー、で?どんな用事?」

 

「ルーン魔術についてなんだけど、あんたじゃわかるわけないよなあ」

 

「わかった。じゃまた覚えられたら私の元へ来なさい。良いプレゼントをあげようじゃないか」

 

「はあ」

 

「信じてないね?」

「信じてませんよ。」

 

「じゃ、そのことについてはロマンに伝えといてあげるよ、特異点への準備もだいたい終わりに近づいてきてるから準備しておいてね〜」

 

「ありがとうございます」?

 

やばい。この人

 

 

やりづらい!

 

なんていうかキャッチボールしてるのに、永遠落差のあるフォークボール投げられてる気がする。

 

 

「じゃねータツキ君」

 

「あ、はい」

 

そう言うとレオは管制室へ入っていった。

 

「ッて!俺の名前知ってんじゃねーか!」

 

一人タツキの声が館内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

それから1日が過ぎ

 

 

「キミ達にやってもらいたいことは、特異点の調査及び修正。その時代における決定的なターニングポイント。決定的な事変。それが何であるかを調査・解明して、これを修正しなければならない」

 

管制室へ集められた、藤丸、マシュ、タツキ、武蔵はロマンから、特異点の調査にあたり、説明を受けていた。

 

「さもなければ2017年は訪れない」

 

へー。2017年が来ないのか......

 

 

は?

 

 

「そして、聖杯の調査、おそらくだけど、特異点の発生には聖杯が関わっている」

 

聖杯?

 

「聖杯については、簡単に言うと願いを叶える魔導器の一種でね、膨大な魔力を有しているんだ、何らかの形でこれを手に入れたレフが悪用したと考えている」

 

「というわけで、それを破壊もしくは、手に入れなければならない」

 

「あとはまあ、レイシフトの後に召喚サークルを作って欲しいんだ、補給物資の転送などに利用するためにね」

 

「やり方は前と同じようにマシュの宝具をセットすればそれが触媒となり発動される、そうすれば君たちもサーヴァントを召喚できるよ」

 

「前のを見てないから、藤丸任すけどいいか?」

 

「え?ああ、大丈夫だよ」

 

「じゃ、藤丸君、任せるよ」

ロマンもその方針で良いと判断してくれたためその辺は任せることにした。

 

「はい!」

 

「こらこらタツキくん、面倒ごとを押し付けるのはよくないよ」

 

なんだと。。。

 

その声は忘れることはない

 

なぜならつい先日なんか色々言って去っていったわけのわからん女だ。

 

「おい!テメェこら!レオっていったか?ここは関係者以外立ち入り禁止なんだ!ほらほら」

レオと名乗ったあの女を部屋から追い出すように扉の方へ押していった。

 

「私は関係者よ?」

 

「レオ?」

 

ロマンが少し不思議そうな顔をした後

 

「紹介するよ、彼......いや、彼女......いや、ソレ?いやダレ?」

 

「いや知らないですよ」

ロマンに聞かれたが俺こそ聴きたい。こいつは誰だ?不審者か?

 

「だよね〜、ともかく、そこにいるのは、我がカルデアが誇る技術部のトップ、レオナルド氏だ」

 

「は?技術部のトップ?......?は?」

 

「そうよ!私は技術部のトップ!わかった?列記とした関係者!」

 

「嘘だ!こんなわけのわからん奴が技術部のトップ?ロマン!嘘だろ!?」

 

「まあ、見た目通り普通の性格じゃない。というか人間じゃない。説明したくない」

 

「サーヴァント?先輩!大変です!この人サーヴァントです!」

 

と藤丸の隣でマシュがそう言った。

 

「正解!カルデア技術局特別名誉顧問、

レオナルドとは仮の名前。私こそルネサンスに誉れの高い、万能の発明家、レオナルド・ダ・ヴィンチその人さ」

 

ダーン!と胸をはり高々と名乗りを上げた、レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

「マジで!?俺でも知ってる有名人じゃん!?」

 

「気楽にダ・ヴィンチちゃんと呼ぶように」

 

「レオでいいよ。今から変えるの大変だし、それに自業自得ってやつだ」

 

「何?タツキ拗ねてるの?名前隠されたから?」

 

「それとも名前見透かされてたから?」

 

「はいはい。わかりましたよ!ダヴィンチちゃん」

 

テキトーに流してタツキは意識を内側へ集中した。

 

そうしていると周りから、ダヴィンチが女についてだとか、モナリザになっただとか、気になるワードが出てきたがタツキは一切を断ち切り一人意識の中へ

 

『戦う準備はできたのか?』『怖い』『手の震えが止まらない』『ぶった切って終わらせる』『なにもないさ、ここで待っていてくれ』『帰ったら結婚しよう』『行ってきます』『旅の始まりだ!行くぞ』『あなたと共に』『行く。ただそれだけ』『君も僕とともに来い』

 

 

《 心の整理はついたか?二天を継ぐものよ、ならば行け》

 

 

「よし、今回もバッチリだ」

 

「ヘェ〜タツキそうやって気合入れてるんだ」

 

武蔵に話しかけられ少し驚いたことは、今の自分の変化を瞬間に察したことだ

 

「気づいたのか?」

 

「えぇ、こんなに近くにいたら気付くに決まってるでしょ」

 

「俺たちは俺たちのやり方で」

「私たちは私たちのやり方で」

 

そう呟きお互いの覚悟を確認した

 

そして、話がひと段落したらしくいよいよ始まるのだった。

 

【 アンサモンプログラム スタート

 

霊視変換を開始 します

 

レイシフトの開始まで

 

あと

3

 

2

 

1

全工程 完了

 

グランドオーダー 実証を 開始 します 】

 

その瞬間タツキたちの体は光に包まれた。

 

 




久しぶりの投稿です
1.5章とても楽しみです
CMのぐだ子すごくかっこいい!


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5話 邪竜と聖女と二天一流2

目を開くとただただ広い草原にいた

 

「無事成功したのか?」

タツキは身体についた草を払いながら近くにいたマシュにきいた

 

「はい、そのようです、前回は事故による転移でしたが今回はコフィンによる正常な転移ですので」

 

「へー、コフィン様々だな」

 

「はい、そうですね」

 

「フォーウ!キュー」

フォウと呼ばれる猫のような動物もついてきたらしい

 

「フォウさん!?またついてきてしまったのですか!?」

マシュの反応からしてかってについてきてしまったみたいだ。

 

(なんて自由な子ッ)

 

「フォウもレイシフトできるのか?」

藤丸も無事成功したみたいだ

 

「そのようですね、この中の誰かのコフィンに忍び込んだのでしょう」

 

(何それ。フォウさん忍者!?)

 

「幸いフォウさんに異常はありません、私たちの誰かに固定されているのですから、私たちが帰還すれば自動的に帰還されます」

 

「そういうことなら問題ないか」

 

「はい」

藤丸とマシュの会話を聞いていると

 

「ねえ!ねえ!タツキタツキ!」

そう言いながらタツキの肩をドンドン叩いてくる何かがいた

 

「肩叩きはもっと優しくお願いします武蔵さん。で、どうした?」

 

「空見て空!なんかすごいわよ!」

 

「空って、ただ青いだけ......じゃ?」

光輪、光の輪、とても大きな光の輪がそこにあった

 

「なっ」

 

「え?」

 

マシュと藤丸もそれをみて言葉を失っていた。

 

『やっと繋がった!って?どうしたんだい?いきなりみんなしてそらをみやげちゃったりして」

 

「ドクター、映像を送ります」

マシュがすぐにその映像をロマンに送ってくれた。

 

「ロマン、あれはなんだ?この時代の空にはこんなにデカイ光輪があるのか?」

 

「光の輪......いや、何らかの魔術式か?とんでもない大きさだ...... タツキ君1431年にこんな現象は起きてないよ。間違いなく未来消失の理由の一端だろう。これはこちらでかいせきしておくよ。キミたちは本来の目的に集中してくれ」

 

「えーと、でここは」

タツキの問いにマシュが答えた

 

「えーとですね、ここは1431年のフランスです」

 

「百年戦争真っ只中ということですね、ですがこの時期はちょうど休止期間のはずですよ」

 

「ありがとう」

 

「周囲の探索と、この時代の人との接触、召喚サークルの設置やるべきことはたくさんありますよ!」

マシュが藤丸や俺たちへ今後やるべきことを大まかに説明してくれたところで

 

「藤丸、分担とかするか?」

 

「いや、得策じゃないんじゃないかな?まだ慣れてないしこういう時は集まっていた方がいいと思う」

 

「私もそう思います」

 

「了解」

 

「タツキーなんか来たわよー」

 

「どうやらフランスの斥候部隊のようです」

 

斥候か。偵察したり追跡したりする役割をこなす部隊のことだっけか。

 

時と場合によっては攻撃してくることもある。

 

「先輩、接触してみますか?」

 

「そうしよう」

 

「ああ、危険だからやめておくのが......は?!おい藤丸何考えてんだ?」

 

「いやきっと大丈夫だよ、それにほらもうマシュ行っちゃったし」

 

マシュを確認するとフランス兵の前に進んで行っていた

 

「ヘーイ!エクスキューズミー!こんにちは!私たちは旅の者です」

 

......。おい。挑発にしかきこえないのだが。

 

「藤丸さんや。あれは何ですかな?」

 

「いやぁ。タツキ殿。儂も予想外じゃ。」

 

「藤丸!走るぞ!マシュが危険だああ」

 

「わかってる!」

 

マシュのコンタクトの結果は周りを囲まれ

 

「敵襲!!!!」

 

と騒がれることになった

 

 

『ええ!?なんでいきなり周りを囲まれてるんだい!?!?』

 

「ロマン、それはマシュに聞いてください!」

 

「すみません、私の失敗です。挨拶はフランス語でするべきでした......」

 

「違うね」

「違うね」

 

「そもそも言葉通じたのか?」

 

「もちろんです!そうしてこうなって戦闘回避は困難だと断言します!」

 

「断言しちゃったかー」

 

「藤丸!コントしてないで集中してくれ」

 

「悪い悪い!」

何その笑顔!

よゆーですねー

 

『いきなり荒事か!しかもフランス精鋭』

 

『まあ、何が起きようとタイムパラドックスは発生しないから、彼らとここで戦闘になっても問題ないだろうけど』

 

「ドクター!こんな状況を回避できる、ナイスなフランスジョークはないんですか?」

マシュってこんな子だったのか。。。

意外な一面

 

『知るもんか!ぼっちだからね!でも何か考えさせてくれ!』

 

「考えるんですか!?」

 

『思いついたよ!その帽子ドイツんだ!なんてどうかな!』

 

「総員構えよッ!何か怪しげな声がする!早急に仕留めろ!」

 

「ロマンさーん、なんかめっちゃ敵さん達が戦闘モードになりましたよ」

 

『ええい!こうなったら峰打ちだ!極力流血はナシの方向で!峰打ちでいこう!』

 

「先輩。敵がバタバタと倒れていっているのですが......」

 

マシュが言うように敵が端から地に倒れていっていた。

 

あ。

 

武蔵さん忘れてた。

 

「別に構わないけどね!無視されるのわ!でもなんかイラつくわ!」

 

峰打ち

峰打ち

峰打ち

峰打ち

蹴っ飛ばしてぶん殴ってぶん殴っていた。

 

「悪い武蔵!加勢しようか?」

 

「いいわよ!別に〜!私一人で充分!」

 

「だってさ、藤丸どうする?」

 

「マシュ峰打ちだけど、盾でいけるのか?」

 

「なんとかします」

 

そう言うとマシュは走って行った

 

「ふぅ〜終わったわね!マシュお疲れ様!」

 

「武蔵さんもお疲れ様です、ですが、すみません打ち込みが甘かったのか逃げられてしまいました」

 

「別にいいわよ?私だって甘く打ち込んだしね?」

 

「え?」

 

「逃げる先は親の元、そこを打つのよ?」

 

「なるほど!」

 

『マシュくれぐれも次はフランス語で話しかけるんだぞ?』

 

「ボンジョール」

 

「武蔵悪い戦闘任せちまった」

 

「いいわよ」

 

「で、タツキはどう思うのさっきのやつら」

 

「ああ。消耗し切っている感じだった」

 

「私もそう思うわ。あと、タツキはあまり戦わない方がいいわね、こういう長丁場の戦いはどれだけ体力を温存できるかだから、基本は私に任せておいて」

 

「ああ、そうするよ」

 

「で?タツキ、今回は4本も刀持ってきて私の真似?」

武蔵さんはニヤニヤと自らの刀を指差した

 

「は?ちげーよ!」

今回は4本持ってきている理由は、長丁場での刃こぼれなどを直す時間がないのではと考えあらかじめ複数持ってきておいたのだ。

 

「えーでもタツキ2刀振れないわよね?」

 

「振れるぞ?」

 

「やってみてよ」

 

タツキは無言で小太刀を2本抜いた

 

「プッ」

 

武蔵はそれをみて吹き出した

 

「イラつくわあ〜」

 

「はいはい二天一流は貴方のようなニ刀触れない人も歓迎してるわよ」

 

刀を鞘に収め

 

「そりゃどうも」

 

と言いながら武蔵の頭を小突いた

 

「髪が崩れるじゃないの!」

 

「悪い悪い」

 

『タツキくん?武蔵。藤丸くん達もう行っちゃったみたいだよ?』

 

「へ?」

 

「え?」

 

「武蔵さん行きますわよ」

 

「ええ、タツキさん?ほら行きなさいよ」

 

「いやいや、お先にどうぞ?」

 

「いやいや、ここはタツキからどうぞ?」

 

そう言う武蔵は拳を握りながら、構えているのだ。

 

「お前後ろからぶん殴る気だろ。」

 

「そんなことはしないわよ?」

 

「じゃその拳はなに。」

 

「タツキをぶっ飛ばすの」

 

「......」

 

「?」

 

「ロマンさーん。武蔵が危険だ!」

 

『』

 

「おーい!ロマン!ロマン!なんだあいつ!逃げやがった!」

 

「じゃ行くわよー!」

 

ブハッ。

 

「じゃマシュ達のところへ行きましょうか」

 

「ゆ、ゆるさん。」

 

武蔵に担がれながらタツキは運ばれた

 

理由は簡単。グーパンがお腹にクリーンヒットして動けませんでした

 

『タツキくん!急いでくれ!敵だ!』

 

「わかりました、武蔵降ろしてくれ」

 

「動けるの?」

 

「当たり前だ、運び屋ありがとさん」

 

「どうも〜」

 

「それじゃ、行くか」

 

「了解」

 

「武蔵!敵は武装した骨共だ、マシュ達は戦闘に入ってる!加勢するぞ」

 

「一気に行くわよ!」

 

「おう!」

 

武蔵は右へ、タツキは左へ走り

 

抜刀した

 

「片っ端から斬り刻む!」

 

カギャ!

「うるせぇぞ!」

シュンと一瞬にして骸骨の頭は半分に切り裂かれた。

 

「ふん」

タツキは骸骨達からターゲットを集めると移動することなくその場に来た骸骨から切り裂いていった。

 

骸骨達の攻撃は単調で読みやすかったため、戦闘は一瞬にして終わりを迎えた

 

「悪い藤丸、マシュ遅れた」

 

「いえ大丈夫です、気にしないでください」

 

「大丈夫だけど、タツキ?喧嘩しちゃだめだよ?」

 

「わかってるって」

 

「あんたらよくあんな奴らと戦うな」

 

「ああ、あんたはさっきの、で?」

 

「あ、ええと理由を説明して私たちが敵ではないことを理解してもらいました」

 

「なるほど」

 

「それで事象を聞いてもいいですか?」

 

「さっきも言ったがジャンヌダルクが蘇ったんだ。それも悪魔として......」

 

ジャンヌダルク......たしか教科書では聖女って説明されてたっけ?

 

その後もこの時代の説明がされていたのを聞いていると

 

ガギャアアアアアアアアアア!

 

何者かの方向が響き渡った



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6話 邪竜と聖女と二天一流3

おいおい。こっちの世界にはドラゴンなんておっかない生物がこんな普通に空を飛んでるのかよ

 

骸骨を倒したタツキ達の前に現れたそれはドラゴンと呼ばれる生き物で、空を飛び炎を吐き、人や村を襲うといわれている危険生物だ。

 

「ドラゴンって洒落になってねーぞ」

 

「あれは、ワイバーンと呼ばれる竜の亜種体です」

 

「いつでも冷静な説明をありがとう!」

 

「いえ」

全くこの子は何処まで肝が座ってるのやら。

 

「で、ロマンさん?ワイバーンなんてのがこの地球に生存なんてしてたんですかね!!」

 

『そんなはずはない!十五世紀のフランスに存在しているわけがない!』

 

「左様ですか!」

 

「タツキ!来るぞ!」

 

「兵達よ!水を被りなさい!彼らの炎を一瞬ですが防げます」

 

亜麻色の髪の大きな旗を持った女性が突然現れた。

彼女の発言からするに、敵ではない、そしてワイバーン戦に知識があるということがわかった。

 

「私と共に武器を取り戦ってください!」

 

『サーヴァントだ!しかし、反応が弱い。彼女は一体......』

 

「行きます!」

マシュがその女性に続いて走っていった。

 

「武蔵、ドラゴンは2匹だ!1匹は俺らでやるぞ!」

 

「了解!」

 

「武蔵!俺が落とす!始末は任せる」

 

「わかったわ!」

 

さあ!ワイバーンといっても飛行中、突然光ったりしたらその高度も保ってられないよな!

 

先行型手榴弾ー閃光玉

 

タツキは制服のポケットから取り出し、栓を抜いた。

 

「ほらよ。土産だ!受け取れ!」

 

全力投球された閃光玉は飛行するワイバーンの直前で破裂した。

 

ギャヤ

 

ワイバーンはそれに衝撃を受けホバリングを忘れ落下してきた。

 

「任せた」

 

「死になさい!」

武蔵は落下するワイバーンは真っ二つに切り裂いた。

 

「ふぅ。ナイス」

 

「流石ねタツキ!判断が早いのはいいことよ!」

 

「こっちも終わりました、お疲れ様です」

マシュ達も終わったらしくこちらと合流した。

 

『よくやったぞ!諸君!ああ!ゴマ饅頭を握りつぶしてしまった!?』

 

ん?

 

「ドクター。それは私が用意したものです。」

 

『え?あ?そうなの!?お茶と一緒にあったから......』

 

「ええ。現地で活躍した先輩方用だったのですが......」

 

「よし、ロマンを帰ったら殴ろう!」

「タツキの言う通りだ!殴ろう!マシュの饅頭の恨みは大きい!」

 

『何を言っているんだい!?物騒なことはやめたまえ!もしゃもしゃ』

 

『それにしても美味しいね』

 

「ロマンよ。これ以上罪を重ねるな」

「俺たちは本気ですよ?」

 

『君たちふたりはもっと大人になるべきだ!』

 

「マスター。私も殴ろうかと思います。エネミー登録された者がいますので」

 

「わかったよ」

 

「マシュ、もしかして私の分も饅頭あったの?」

 

「え、ええ、もちろんです!武蔵さんの分も作っていましたよ」

 

「ねぇ、ロマン?後何個残ってるの?」

 

『......』

 

「タツキ、私も参戦するわ!」

 

「いいねぇ!そうこなくっちゃ!」

 

『君たち!本来の目的がずれてきてるよ‼︎‼︎』

 

「ま、ま、魔女がでたぞ!!逃げろ逃げろ!魔女がでた!」

突然兵士達が騒ぎ出し、魔女がでたと兵士達が見てるのは先ほどの亜麻色の髪女性

 

「おい、あんた!あいつが魔女なんだ!なんとかしてくれ!」

 

一人の兵士がタツキの両肩に手を置き頼み込んできた。

 

(嘘をついてる様子はない。それどころかこれは本物の恐怖だ)

 

「まあ、ちょっと話は聞いてくるよ」

 

「ロマン、大丈夫だよな?」

 

『大丈夫だと思うよ、彼女さっきは味方してくれたみたいだしね』

 

ロマンに確認を取るとタツキは亜麻色の髪の女性の元へ歩いて行った。

 

「あの、先ほどは片方を請け負っていただきありがとうございます」

亜麻色の髪の女性から話しかけてきてくれた。

 

「いや、気にしないでくれ」

 

「それよりさ、魔女って呼ばれてるんだけどさ、君はサーヴァントだよな?名前聞いてもいいか?」

 

「ルーラー。私のクラスはルーラー、真名をジャンヌ・ダルクと申します」

 

先ほど兵士達が言っていた名前と一致した。

悪魔、魔女か......。何故だろうか。この子はそんな風には見えない。

隠しているのか?それだとしたら相当な手練れだぞ。

 

「お、俺は宮本タツキです」

やべ。警戒心が出た。

 

「あのさ、ジャンヌダルクさん、俺たちはさ、貴方が魔女になったって聞いたんだけど?」

 

「その話は後で。彼らの前で話すことでもありませんから」

ジャンヌ・ダルクはそう静かに言った。

こちらの警戒心があるのはわかっているのだろう。

 

「こちらに来てください。お願いします」

それなのにこう頼まれた。

 

「ジャンヌダルクさん、ちょっと待ってもらっていいか?俺たちの司令塔は藤丸なんだ、カルデアのマスターなんだあいつが」

 

「え?ええ、わかりました。」

 

そう言うとタツキはジャンヌの前から去り、藤丸達の元へ向かった

 

「彼女の真名はジャンヌ・ダルク、クラスはルーラーとか言ってたかな?それでこっちに来てくれって言われたんだけど、藤丸はどうする?」

 

「ついていこう」

即答か。

やっぱこいつは優しいんだ。疑うということをしない。

 

『ボクも賛成だ。弱まっているようだけど彼女だってサーヴァントだ。この時代の詳しい話を聞いてみよう』

 

藤丸やロマンの意見でジャンヌ・ダルクについていくことになった。

 

 

 

藤丸達の少し後ろを俺と武蔵は歩いていた。

 

「武蔵はどう思うよ」

 

「私はタツキと同じよ?でもなんの情報もないのも事実だし、ここは乗るしかないんじゃない?」

 

「まあ、そうなるかー」

 

「タツキ、気をつけて骸骨よ」

 

「藤丸達も襲われてるみたいだな、あっちはマシュがいるから安心か、あとジャンヌダルクも」

 

「5体、タツキ右から来る2体任せる」

 

「はいよ」

 

太刀を抜き骸骨の顔の骨を叩き割った。

 

ガキャゴ

 

「遅すぎだよ」

 

太刀の軌道により真空が生まれ太刀に触れることなくもう片方の骸骨は砕けた。

 

「技使うか、太刀が刃こぼれするかなら、技使う方がマシなんだよな」

 

「いっちょあがりね!」

 

「流石としか言いようがないな。」

 

2体と3体だったのに、倒したタイムが同じか。

 

「タツキー!大丈夫かー?」

戦いを終えた藤丸が心配をして声をかけてきてくれた

 

「大丈夫だー!」

それに返事を返した

 

「此処なら落ち着いて話せますね」

ジャンヌがそう切り出したので皆その場に座った。

 

タツキ達もそれを見てそこに混ざった

 

「まずは貴方達の名前を聞かせてください」

ジャンヌがそう言うと、マシュ、藤丸、武蔵の紹介が終わった

 

「そして藤丸さんは私のマスターにあたります」

 

「いちようタツキは私のマスターよ」

 

「いちようは余計だけどな!」

 

「マスター?この聖杯戦争にもマスターがいるのですね」

 

なるほどそれでさっき俺のマスター発言に疑問を抱いていたわけか

 

「いえ、聖杯戦争とは無関係です、私はデミ・サーヴァントにすぎません」

 

「デミ・サーヴァント?」

ジャンヌの疑問は俺も初めは理解できなかったし、今でも理解できているとは言えない

 

たしか、正規のサーヴァントではないサーヴァントだっけか。

 

「私は本来、与えられるべき聖杯戦争に関しての知識が大部分存在していません」

 

「え?」

 

「いえ、知識だけならまだよかったのですが、ステータス面でもランクダウンしています」

 

「なるほど。てことはジャンヌさんは魔女ではない?」

 

「ジャンヌで大丈夫ですよ?タツキ、ええ、私も先ほど現界したばかりなので。どうやらもう一人ジャンヌ・ダルクがいるようです」

 

「......?ドッペルゲンガー的なことか?」

 

『うーんそう言うことではないね、同じサーヴァントが召喚されたという例もあるとは思うけれど』

 

「なるほど、そのもう一人のジャンヌがフランスで暴れまわって、魔女だの悪魔だの言われてるわけか。」

 

「そのようですね、そしてシャルル7世が死に、オルレアンが占拠された。」

 

『つまり。それは。フランスの崩壊を意味する』

 

「な。それは歴史と違うということか?」

 

『そういうことだ。つまり文明の停滞に繋がるわけだから、その歴史のまま進む未来は中世と同じ生活をしていたかもしれない』

 

「は?!」

 

「声?何ですか?今のは魔術ですか?」

 

『おっと、僕はロマ二・アーキマン、皆からはロマンと呼ばれています』

 

『彼等のサポートを行っています』

 

自己紹介が終わり、マシュが俺たちの目的の説明をしてくれた。

 

大方の説明が終わり、魔女ジャンヌのことについての話し合いが始まった

 

大まかな内容は

・ワイバーンを操っているのが彼女

・聖杯を使用している可能性がある

・魔女ジャンヌを排除する

 

「私たちは貴方の助けになりたい、これから協力者としてその旗の下で戦う事を許してくれますか?」

 

「ああ、俺たちも協力させてくれ」

 

「こちらこそお願いします!どれほど感謝しても足りないほどです」

 

ゴギャガ

 

「では早速旗本で戦わせてもらいますか!」

 

毎度おなじみになってきた骸骨とワイバーンセットが攻めてきた。

 

「よゆーだな」

 

「慢心はだめよ?タツキ」

 

「わかってる」

 

「それでジャンヌ、これからどうする?」

 

「はい、暫くは斥候に徹します」

 

「妥当か。砦を攻め落とすのは困難だろうしな」

 

『魔女ジャンヌ......黒ジャンヌということにしようか、まずはどんなサーヴァントが調べておきたいしそれがいい』

 

「ジャンヌさん、私たちの他にサーヴァントの反応は?」

 

「わかりません。スペックが落ちているためサーヴァント探知機能が使用不可です」

 

「サーヴァント探知機能?」

 

「はい、ルーラーにはあるのです」

 

「え?黒ジャンヌはルーラー?」

 

「アッ!」

 

「迂闊でした。その可能性はあります」

 

「な。それはまずいな。その機能が使えたら奴からはこちらの位置が把握できてしまう」

 

「明日の早朝に出発しましょう。お二方は人間ですし眠ったほうが」

 

「そうだな。もう夜だし、寝るか」

 

「ジャンヌは?」

 

「私なら大丈夫です、見張りも必要ですしね」

 

「ありがとう」

 

ジャンヌの案で藤丸とタツキは眠りにつくことにした。

 

 

 

 

ーーー

 

 

「ジャンヌ、交代よ、流石に一人で一晩は厳しいでしょう」

 

宮本武蔵は一人見張りをするジャンヌとマシュの会話を少しだけ聞いていた。

それを聞いている途中で寝てしまったが、2時間後に目が覚めるとマシュは眠りについており、ジャンヌ・ダルクが一人見張りをしていた

 

「貴方は、武蔵さん。気にしないでください、これは私の役目ですので」

 

「気にするわよ、英霊の新人の気持ちなんでしょ?」

先ほどのマシュとの会話の内容の一部分だ。

 

「聞かれてたのですか?」

 

「ちょっとだけね?耳に入ってきた。だから!先輩である私に任せなさい」

 

「横暴ですね」

 

「悪い?」

 

「いえ、安心します、貴方のような周りをしっかり見ていてくれる方がいると」

 

「褒めても何も出ないわよ」

 

「お優しいのですね」

 

「優しくなんか」

武蔵が最後まで言う前に

 

「いえ、わかりますよ」

 

「なんで?」

 

「その傷を隠しているところです、貴方のマスターに気づかれないようにして、頑張って、気を使わせないように振舞ってる。」

 

「はあ。バレてたの?この傷は前の戦いでちょっとしくじっちゃってさ、でも私は優しいんじゃないよ、見栄だよ」

 

「見栄ですか?」

 

「そう、なんの運命か私とタツキ......マスターは先祖なのよ、だから孫みたいなものなのよ、だからそういう子の前では私は負けるわけにはいかないの」

 

「やはり、お優しいではありませんか」

 

「はいはい!わかったから寝てきなよ!」

 

「わかりました、ではお言葉に甘えますね」

 

「そうしな」

 

ジャンヌがその場を去った後、武蔵はまだ回復しきっていない傷が本来ある場所を眺めた。

 

「ほんと魔術って便利だわ」

 

武蔵は独り言を呟き、見張りに専念した。

 



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7話 邪竜と聖女と二天一流4

「ほらタツキおきなさい、朝よ」

どれほど良い夢を見ていたとしても、その夢から目覚める時は来る。

そして今俺を起こそうとしている誰か。

その者は俺の腹を何か硬い物でガンガンと小突きながら、乱暴に起こそうとしている。

 

母さんだったら良いのに......

 

あんな世界で戦っていたのは夢であってくれないだろうか。

 

ほら、目覚めたら自室のベッドでしたーみたいなさ。

 

「タツキ〜みんなもう起きてるわよ!タツキだけよ!早く起きなさい」

 

武蔵さんですねこれ。ほんとに。夢であってくれないだろうか。

 

「先輩?え!先輩!!」

 

「藤丸くん?え!?」

 

「静かにしててください!」

 

ふふふという声がした後、俺の顔の上を何かが何度か通った。

 

「おい!!!!」

危険な予感がして飛び上がるように起きたタツキは自分の顔を確認しようにも鏡がないためできなかった。

 

「おはようタツキ」

 

「おはようございます」

 

「おはよう」

 

武蔵、マシュ、藤丸が目の前にいてそれぞれに挨拶を交わし、そばで見守っていたジャンヌにも挨拶にいった。

 

「ジャンヌ、おはよう」

 

「ええ、おはようござ......おはようございます」

 

・・・。

 

「何か顔についてますか?」

 

「い、いえ、何も?」

ふふふ

 

「怪しい!」

 

「ほーらタツキ、それ朝ごはんよ、食べなさい、もうみんな準備できてるのよ?」

 

「あー悪い、いただきます」

 

手を合わせ、朝色はコンビニおにぎりが2つ用意されていたのでそれを腹に入れた。

 

食べ物は転送できるようになるまでの分を少し持ってきていたため、今のところ空腹に襲われることはなさそうだ

 

「ごちそうさまでした」

 

「よし、じゃ行きましょう!」

 

「えーと武蔵さん、少し待ちましょう、時間があまりないのは事実ですが、食べた後すぐに動くのは」

藤丸が俺の心配をしてくれてそう提案してくれたが、そもそも寝坊したのは俺だ。

 

「藤丸、大丈夫だ、俺が寝坊したのが悪いわけだしな」

 

「そうかい?」

 

「ああ、じゃ、ジャンヌお願いします」

タツキはそう言って刀を持ち立ち上がった。

 

「わかりました、ではまずはこの森を抜けます、その後はオルレアンに直接乗り込むのは現実的ではないので、周りの砦や街で情報を集めましょう」

 

「了解」

 

ジャンヌが先頭で歩き、その後ろに藤丸、マシュがいて、少し離れた場所で武蔵とタツキがいる。

 

「 武蔵ここからどうする?流石に情報収集まで、共に動いてたんじゃ効率悪いと思うんだが?」

 

昨日ジャンヌから聞いた話によれば、ここら一帯には幾つも街や砦があるらしい、それらを一つずつ調べていたら時間がかかる、そのため俺は別行動して効率良く集めようと思っていた。

 

「そうね、情報を集めるのに手分けはしても良いと思うわ」

 

「ロマンはどう思う?」

 

『そうだね、藤丸くん達にはジャンヌが付いてるから、大丈夫そうだし、お願いしてもいいかい?』

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

『じゃお願いしようかな、いや!ちょっと待ってくれ!ラ・シャリテからサーヴァント反応だ!』

 

「!?」

 

「藤丸!」

 

「タツキ走るよ!街が燃えてる」

武蔵がそう言ってタツキの手を握り走り出した。

とても速かった。

 

「な!?」

 

目の前の街から煙が上がっていた

 

『サーヴァント反応が消えた』

 

「逃げたのか?」

 

『わからない!』

 

「くそ!調べに行くしかないか!」

 

タツキ達が走っているのを追いかける形となった藤丸達もラ・シャリテへと向かった。

 

「武蔵、奇襲にだけは備えておけ」

タツキは武蔵の手を離し自分のペースで走ることにした。武蔵はタツキのペースに合わせて走っている。

 

「わかってるわよ!」

 

周囲が騒がしい状態や、収拾がつかない状況での奇襲の成功率は通常時に比べ上がるためこういった場面での警戒は怠らないのがタツキだ。それに先手を取られるのは戦況を一気に傾ける形になる。

 

街に入ると街中から煙が上がっており、見たところ人間の影は見えなかった。

 

「ロマン、人は?」

 

『その街には命が残っていない』

 

「わかった、じゃこいつらは敵ってわけだな」

 

『え?』

 

「なんか変な歩き方した兵隊がこっちに向かってきててな」

 

「先輩!リビングデッドです!」

 

タツキとマシュの会話が聞こえてきたため、ロマンの回答を聞くまでもなく、タツキは飛び出した。

 

「死体は死体のまま眠ってろや!」

タツキがリビングデッドを自らの間合いに入れると、罵声と共に抜刀しそのままリビングデッドの首を刎ねた

 

「タツキ口悪い!」

飛び出したタツキを追って武蔵がタツキが倒したリビングデッドの後方にいた3体を二刀の刀で倒した。

 

「はあ、はあ」

 

タツキはジャンヌが肩で息をしていたので、それが少し気になった。

 

すぐにジャンヌにマシュが近寄り声をかけに行っていたのを見て、マシュの全体を把握する早さに驚いていた。

(任せる)

タツキはそう呟き敵を見た。

 

グオォオオオ!!!

 

轟音が鳴り響きそちらを見ると数匹のワイバーンが死体を食べていた。

 

「おいおい、そんなもの食ったら腹壊すぞ」

 

「タツキ。そこじゃないと思うけど」

 

藤丸がタツキにツッコミを入れているのを横目にマシュ、ジャンヌがワイバーンの元へ走って行った。

 

「タツキも行くわよ!」

 

「はいよ、じゃ、藤丸引き続き指令頼むわ」

 

藤丸は戦闘時は皆の目として活動している、状況把握や、戦況報告など、多数の仕事を受け持ってくれている。

 

「まずは1匹狩りますかね!」

タツキは一気に走り出したところで、

「タツキ!!!!左だ!!!」

 

藤丸の声が響いた

 

瞬時の判断でタツキは左側へ刀を向け防御の体制をとった

 

「ガギャ」

 

建物の影に隠れていた、リビングデッドの不意打ちをギリギリのところで受け止めたが、走っていたため、別方向への力が働きそのまま、横へ飛ばされた。

 

「いってぇ……」

 

肩から地に落ちたが、怪我はない。

肩も動く。

奇襲にだけは備えてか。

 

チッ

 

タツキは自らの愚かさに舌打ちをした後、近づいてくるリビングデッドに対し、刀を鞘に収め、小太刀を二刀抜いた。

 

「不意打ちありがとう。すごくウザいわ」

 

一瞬にしてリビングデッドが八つ裂きにされた。

 

《 二天一流ー卯月其の三 八重桜》

 

タツキの技の中でも上位に位置する技の一つ

小太刀の扱いやすさを利用した8連斬り

普段なら、八重に同じ箇所を斬るのだが、今回は斬撃をズラしてリビングデッドを八つ裂きにした。

 

グオォオオオオオオオオオ

 

赤色のワイバーン

上位種か?先ほどまでの灰色のワイバーンは大量に存在したがこいつは初めてだな

 

その場所へ向かおうとしたが行く必要はなかった。

跳躍したマシュが、ワイバーンを打ち落とし、武蔵が斬り裂いた。

 

戦いを終えた武蔵達が戻ってきた際、

「あれ?タツキ?何してるのこんなところで?」

 

「まあ、何?見学」

 

不意打ちを食らったなんていったら恥ずかしいので、見学ということにしておいた。

 

藤丸の元へ戻り「助かった」と伝えると「危ないところだったね、不意打ちには気をつけないとね」と笑顔で藤丸が答えてくれたのだが

 

武蔵がこちらを見てニヤニヤしているのをなんとなくで感じていた。

 

恥ずかしくて武蔵の方なんて見れませんよ。

「奇襲にだけは備えておけ」なんていった張本人が奇襲されたんですからね。

 

「周囲の敵影なし」

マシュがそう言ったので、剣を鞘に収めた

 

「これをやったのは恐らく私なのでしょうね」

 

ジャンヌが悲しげにそう言った、それは確かではないが、本人はわかってしまっているのだろう。

 

だからマシュや藤丸がそう決まったわけではないと言っても、否定する。私なのだと。

 

「わからないことは、どれほど人を憎めばこのような所業を行えるのでしょう。私にはそれだけがわからない」

 

そう言った。

 

これほどのことをしたのが恨みや憎しみだけが原動力とするならばそれはもはや憎しみでは済まされない。憎悪に近い何かではないか。タツキはそれを考えていると、それを理解しようとする何かがタツキの中にあることに気がつかなかった。

 

この憎悪を理解してはならないと、タツキの本能がそれを止めたからだ。

 

『待った!先ほど去ったサーヴァントが反転した!まずいな、君たちの存在を察知したらしい!』

 

「な!?逃げたのではなくただの撤収だったってことかよ!」

 

『そうみたいだ!冗談じゃない!五騎もいる!速度が速い!これは、ライダーか何かか!?と、ともかく逃げろ!』

 

「戦力的にも5対5。だが、サーヴァントが5とサーヴァント3と人間が2。こっちが不利だな」

 

「それに俺は戦えないから実質5対4」

藤丸はそう言った。

 

「逃げるしかないか」

タツキは少し残念そうに呟きその場を去ろうとした。

 

『早く撤退するんだ!』

ぐだぐだしていた一同にロマンから急げと鞭を入れられた。

 

「ジャンヌさん!サーヴァントがやってきます、すぐにー」

マシュがジャンヌにそれを伝えて撤退をしようとした。だがそれを聞いたジャンヌの目にはそんな気はさらさらないと言った目をしていた。

 

「......逃げません。せめて、真意を問い質さなければ......!」

ジャンヌはその本質を知りたいのだ。なぜこのような事をするのか。

 

だが。この場面での全滅は最悪だ。それを考えなければならない場面だ。だがそれが考えられないほど敵さんへ問いただしたいことがあるのだろう。

 

『ダメだ。もう間に合わない!ともかく!全力で逃げることだけを考えるんだ!』

 

 

 

 

ズゴォオオオオンという落下音と共に5人のサーヴァントが姿を現した

 

白髪に長い槍を持った長身の男

仮面をはめ、際どくド派手なドレスを着た女

帽子を被った、華奢な体つきの女の子

でかい十字架を持った青っぽい髪の女

 

そしてジャンヌと全く顔の女

だが、ジャンヌと反するのは鎧や旗が黒い。

 

本当に黒ジャンヌってか。

 

「なんてこと!?ねぇ!お願い!誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかしくなりそうなの。」

 

なんだこいつ。

やばい。なんだこの濃密な殺気は。

 

「あまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう」

 

発言に狂気を感じる

 

「こんな小娘にすがるしかなかった国とか、ネズミの国にも劣っていたのね!」

 

小娘とはこっちのジャンヌのことだろう。

こいつが先ほどから言っているわけのわからないことは全てジャンヌへの発言なのだろう。

 

「ねえジル、貴方もそうーーって、そっか。ジルは連れてきていなかったわ。」

 

何言ってるんだこいつ。ジル?ジルって何。こいつらにはまだ仲間がいるってのか。

 

「貴方は......貴方は誰ですか!?」

 

「それはこちらの質問ですが......そうですね、答えてあげましょう、私はジャンヌ・ダルクですよ、救国の聖女ですよ?もう一人の私」

 

......本当にジャンヌが二人?なんだこれ。

 

「馬鹿げたことを。貴方は聖女などではない。私がそうでないように。それより、なぜこの街を襲ったのです」

 

「何故か?貴方なら理解していると思いますが?属性が反転するだけでここまで鈍くなるものですか」

 

「理由.....そうですね、単にフランスを滅ぼすためです。物理的に全部潰す」

 

発言の一つ一つがぶっ飛びすぎている。何なのだろう。

武蔵が苛立ちを露わにし始めたのを感じ取り、武蔵に目で訴えた。

(今ではない。時を見て一瞬で)

武蔵に伝わったのかはわからないが武蔵が軽い会釈をしたのをみて、再び二人の会話を聞くことにした。

 

「いつまでも聖女気取り、憎しみも喜びもに見ないフリをして、人間的成長を全くしなくなったお綺麗な聖処女さまには!」

 

「な!?」

 

え?なにこれ。何でジャンヌ照れてんの?

 

話を少し聞いていない間に結構進んだらしい。

 

『いや、サーヴァントに人間的成長ってどうなんだ?それをいうなら英霊的霊格アップというかー』

 

「ロマンさーん。めっちゃ睨まれてますよ。」

 

『え?』

 

黒ジャンヌはその声のする方をキッと睨み

 

「うるさい蝿がいるわね。殺すわよ?」

 

『ちょ!?コンソールが燃えだした!?睨むだけで相手を呪うのか!?』

 

睨むだけで相手を呪うとか何それズルじゃん。こいつとだけは戦いたくねーわ。てか負ける。

 

「貴方には何の価値もない。ただ過ちを犯すために歴史を再現しようとする、亡霊に他ならない」

「バーサークランサー、バーサークアサシン。その田舎娘を始末なさい」

 

「雑魚ばかりでそろそろ飽きたところでしょう?喜びなさい、彼らは強者です。」

 

「よろしい。では私は血を戴こう。」

白髪の男がそう言うと

 

「いけませんわ王様。私は彼女の肉と血、そして、臓を戴きたいのだもの」

隣の仮面の女性が話した。

 

「強欲だな。では魂はどちらが戴く?」

 

「魂なんて何の益にもなりません」

 

「よろしい。では魂は私が戴こう!」

 

敵が雑談のようなものに浸り出した。

誰が何を戴くかそんな会話が聞こえてくる。

 

(今だな)

 

一瞬で腰を沈め、地を蹴り、白髪の男との距離を詰めた。

 

「ほぉ?」

 

「ハロー」

 

《一刀–星明》

 

刀を一瞬で抜き、上段から斬り落とした。

 

「不愉快だ」

 

星明を槍で止められた、だが、直ぐに片手に持ち替え小太刀を抜き、そのまま、体を削ぎにいった。

 

グッ

 

小太刀をその男は無理やり手で止めると

 

「何とも興味深い、人間にしてこれほどとは」

 

「おっさん、いいのかよ、食うんだろ?魂。できんのか?」

タツキの太刀がおっさんの体を狙う。それを槍で止め、次の小太刀は素手で止めた。

 

「ヒュ〜すげーな」

 

「あまり、我を舐めるなよ」

 

「舐めてないって、俺がサーヴァント相手に舐めてかかるわけねーよ」

 

「ふむ」

 

男は槍で刀を弾き、すぐさま返しに槍の突きが飛んできた。

 

「ほお?」

 

男が突き刺した瞬間タツキが消えた。

それは幻の様に姿そのものが

 

《二天一流−師走其の一初白雪》

フェイントは一瞬の隙にかけてこそ意味があるとはよく言ったものだ。

 

「甘いな」

一瞬で居場所がばれ槍の突きが穿たれた。

 

断ち切れ武蔵

(ハッ!)

 

「ナァ!」

 

男の体にクロスに斬撃の跡が刻まれた。

 

「俺はマスターだぞ?サーヴァントの相手は基本サーヴァントに任せるっての」

タツキはそう言って一歩前へ踏み込んだ。

 

武蔵の斬撃により、多大なダメージを、受けた男は怯み、グラついた。

ダメ押しを決めることはあまりしないが、サーヴァント相手に躊躇してはならない。

「じゃ俺も行きますよ《二天一流−卯月其の三 八重桜》」

八連の斬撃が追撃となって男の体を斬り刻んだ。

 

「我を出し抜くとはな」

地に落ちた男にまだ話す力が残っていることに驚きを覚えた。

 

何故ならこの男は胴体が腰から下がないのだから。

八連斬りで同じ部位を刻むことで、部位を分断するのが本来の技の形。

 

「俺はお前たちに勝てるなんて思ってないさ、勝てたとしても思わない。そして不意打ちで倒すのには意味がある。」

 

「ほお?」

 

「お前の発言は敵を弄ぶ奴らと同じだった。ならば、最初から本気ではこない、本気になった時に本来の力を発揮するのかもしれない。そうなったら勝ち目はないかもしれない。が、それさえさせず、手を抜いている時に削りきる。どうだ?いい作戦だと思わないか?」

 

「なるほどな、我はお前の策にまんまとはまっていたというわけだな」

 

「まあ、そうなるかな、おっさんの相手してるとあっちの仮面と戦ってるマシュが結構ピンチそうなので、って、あの仮面も手を抜いてんのかよ。」

 

「ヴラド公ともあろうお方が」

仮面がこちらを見て驚き、声を上げた。

 

「ヴラド?お前の名前か?」

 

「エリザベート......いや、カーミラめ。敵の前で真名を明かすとは、不愉快だ!実に不愉快だ!」

 

「おい、おっさん、なんか体から黄色の粒子でてるけど?」

 

「我はここで終わりのようだ、まさか最初の敗退者になろうとはな」

 

ヴラドが光に包まれ消えた

 

「な」

黒いジャンヌは場面が理解できなかったのだろう。手を抜いたヴラドが一瞬にして撃たれたこと。

 

「マシュさん!逃げてください!ここは私が食い止めます!」

 

敵が呆気に取られているのを好機と見たジャンヌが前線に出て皆を逃がそうとした。

 

黒ジャンヌは直ぐに冷静さを取り戻し、後ろにいた3騎に命令した

 

始末しろと

 

『今度は後ろの三騎をけしかけてくる気か!?』

 

「ドクター落ち着いてください!一点突破で撤退します!みなさんついてきてください!」

マシュがそう言うと発言通り一点突破で進行を始めた。

 

こいつらの周りに湧いていたワイバーン達が直ぐにそれを阻止しようと周りを囲い始めたがマシュの勢い止まらずそのまま一点突破で直進した

 

「くっ」

 

しかし、一点突破は止められた

 

「みなさんやはりここは私が!」

 

ジャンヌが前に出た瞬間

 

ーシュンー

 

 

ガラスの薔薇が戦場に突き刺さった。

 

「何だこれ。」

 

「優雅ではありません。その戦い方、この町の有様、思想、主義もよろしくないわ!」

 

「善であれ悪であれ人間ってもっと軽やかにあるべきじゃないかしら?」

 

唐突現れたデカイピンクの帽子を被った、長い白髪の女の子、ピンクのドレスにミンクの手袋と、ピンクづくしだ。

 

「これが正義の味方として名乗りをあげる、というものなのね!」

 

「貴方が誰なのかは知っています。強さも恐ろしさも知っています。私は今までで一番怖いと震えています。」

 

「それでも、貴方がこの国を侵すなら、私はドレスを破ってでも、貴方に戦いを挑みます」

 

「貴方は?」

先ほどまで無口だった、帽子を被った女の子が話し出した。

 

「あら?私の御存知?」

 

「ヴェルサイユの華と謳われた少女。マリー・アントワネット」

そう言った。

 

「はい!ありがとう!」

 

「マリーアントワネット?確か......我儘姫様?」

 

「失礼ね!まあ、そうね!その役割がわたしの役目ね」

 

「マリーアントワネット……。」

 

なんというか。楽しいサーヴァントだな。

 

まあ、俺のッても奴らの殺気は消えてないあたり、隙は見せられないんだよなあ。

 

話は横耳に入れておくくらいで、俺は俺のできることをする。

 

そういうのは藤丸がやって、俺がやるのは単純な戦いだけ。それに頭を使う。

 

「それにしてもタツキ、ここまで戦場がごちゃごちゃすると、やりづらいわね」

武蔵に声をかけられた。

 

「確かにな、誰でも隙をつけるし、隙を突かれる。それに俺たちの不意打ちは一度見せたし、もう効かないだろう。できれば撤退すべきだよな」

 

「ええ、あの女がわけのわからないことを言い出して戦いにならなければいいけど」

 

「我儘お姫様だからなあ。どうなることやら」

 

「サーヴァント達!あの鬱陶しい!姫様を始末なさい!」

黒ジャンヌの命令により、敵サーヴァント達のターゲットが俺たちからマリーへと移った。

 

「周りの者は他の連中を始末なさい!」

その命令によりリビングデッドや、ワイバーンのターゲットが俺たちへ向いた。

 

とりあえずは雑魚の一掃をするとしますか。

 

さっさと終わらせてあのお姫様の手助けしないとならんだろうしな

 

 

 




アーサーペンドラゴン欲しいですね
カッコいい


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8話 邪竜と聖女と二天一流5

「ふぅ〜」

 

「はあ、はあ、」

 

「なんとか持ち堪えました」

 

雑魚の一掃に少し手間取ったものの、なんとか踏みとどまり、皆でマリーの元へ向かった。

 

「すみません、任せてしまって」

 

「いいえ、きにしなくてもいいわよ!」

 

では、とマリーがジャンヌへ向いて声をあげた。

 

「貴方は世界の敵、では、何はともあれ殺れた人々への鎮魂が必要不可欠、アマデウス、機械みたいにウィーンとやっちゃって!」

 

突然マリーが訳のわからないことを言ったかと思うと

「任せたまえ、宝具『死神のための埋葬曲(レクイエム・フォー・デス)』」

 

うるせぇええええええ!!!

 

突然鳴り響いた音楽

 

そして突然現れた男

 

「それではごきげんよう皆様。オ・ルヴォワール!」

そう言い捨てるとマリーは街の外へ向かって走り出した

 

オルヴォ?

 

「オルヴォわーる!」

 

姫様にならって一様タツキも言い捨てた。

 

「撤退って意味?何それ!」

マリーが走り出したので、それに続いて逃走に移ったタツキは武蔵に意味を聞いたが

 

「タツキ全然言えてない。」

と返された。多分武蔵も意味は知らないんだろうな

 

「仕方ないだろ!初耳だったんだから」

 

 

街を出たあとはマリーを先頭に走り続けていた。

 

「武蔵、ちょっと待て」

タツキが急に止まり武蔵を呼び止めた。

 

「え?何?」

 

「一つの案として聞いてほしいんだけどさ、ここに残って、近くで潜伏して、やつらの動きをみたいんだが」

 

「それは意味あるのかわからないわね、あいつらにはルーラーがいて、こちらの居場所がバレてるんでしょ?」

 

「それなんだがな、俺の考えだとその能力で、察知できる範囲がある程度決まっているんじゃないかって思うんだよ、そうじなきゃ、俺たちが街に入ってから急に襲ってきた理由がわからない」

 

「それもそうね、でも何で偵察?......あ。」

 

「そういうことだ、ある程度の範囲が決まっていて、俺たちが逃げたら、間違いなくあちらも偵察兵を寄越してくるだろ?」

 

「なるほど!それを叩くわけね!」

 

「そういうことだ!で、ロマンはどう考える?」

 

『いいんじゃないかな、偵察兵なら二人でも余裕を持って戦えるだろうし、藤丸くん達には僕から伝えておくよ』

 

「ありがとうございます」

 

「で、なんだけどさ、隠れるって言ってもどこに隠れるつもり?」

 

「ああ、それなら地に伏しているだけでいいさ、ここまで街の入り口から離れていればこっちに近づいてこなければ、バレることはないし、通り過ぎるのを待って後ろから奇襲ができる」

 

「なるほどね、なら少し離れましょうか」

 

作戦が決まり残った俺たちはその場所から少し離れた草原の地へ伏した。

 

「なあ、武蔵、お前の服さ何でそんな派手なんだよ。見つかりそうで怖いんだけど」

 

「えー、いいじゃない!」

と、武蔵は自らの服の袖など、鮮やかな色合いの着物をピラピラと振って見せた。

 

「まあ、可愛いんだけどさ、潜伏には向いてないなーって思っただけだ」

 

「可愛い!?うへへ」

 

何だこれ。何だこれ。何だこれ。

初めて見た顔だ。まさかこいつ、褒められるのに弱い?

 

「そう、可愛いと思うぞ!めちゃくちゃに可愛い!」

 

「なっ////」

 

顔面真っ赤だ。こいつやっぱ褒められるのに弱いんだな。

 

「突然どうしたの!?今日のタツキ変よ!死なないかしら!死の予兆ってやつじゃないわよね!」

 

「物騒なこと言うんじゃないって」

 

「めちゃくちゃ可愛いといえば、あの子!敵のセイバーの子!すごく可愛くなかった?」

 

突然ハアハアと目がおかしくなった武蔵に近寄られてドキッとしてしまった。

 

「敵のセイバー?ああ、可愛かったかな?あんま見れなかったけど」

 

「すごく可愛かったわよ!あの男の娘!」

 

「そうか......は?男の子?」

 

「ええ!男の娘!可愛かったわよねぇ!」

 

「待て待て!あれは女だろ!どう見ても!」

 

「馬鹿ねぇ!タツキ、この世にはね男の娘って言葉があるのよ?」

 

「男の子?」

 

「違うわよ、子が子供の子じゃなくて娘って字の方よ」

 

男の子→男の娘ってか?

 

「フザケンナ!あれは女だ!」

 

「タツキ目が腐ってるんじゃない?あれは男の娘よ!」

 

「いいか?そんなもんは実際はいないんだよ!夢の中での登場人物だ!」

 

「いるわよ!実際いたじゃない!」

 

「あの......」

 

「いないって!じゃあ次会った時に聞いてみるか?男ですか?女ですか?って」

 

「コホン......」

 

「いいわよ!聞いてみなさいよ!男って返答が来るだけだから!」

 

「貴方達はここで何をやって」

 

「ちょっと待ってて、今タツキと、とても重要な話をしてるの!貴方は後で」

 

「は?」

 

「お前の話なら後で聞く、今は武蔵に現実を叩きつけてやらねばならんのだ!」

 

ガランと手に持つ十字架を地に落とした

 

「今回はこっちでやりたい気分ですね」

 

手を合わせそれをゴキゴキと鳴らしている者がいた。

 

「だーかーらー!あれは男!」

 

「あの、そろそろ、いいですか?」

 

「馬鹿か!あんな可愛い男がいてたまるか!」

 

「衝動を抑えるのが限界です、まったく貴方達は人の話を聞けって言ってん

 

 

のォオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 

 

ドコォオオオオオンという爆音がタツキ達の真横で鳴り響いた。

 

「何ごと?!」

 

武蔵が咄嗟の出来事に瞬間的に後方へ跳躍し被害を回避したが、タツキはというと

 

「イッテテェエエエエエエエ!そしてうっセェエエエエエエエエエ!」

 

真横で怒鳴られた後に女が地を殴りつけたことで爆砕された土の塊を身体中にくらってしまっていた。

 

「タツキごめん、助けるの忘れてた」

 

「忘れるなってか!誰だこんなことしたやつ!」

 

転んでいたタツキが顔を上げると、青髪に修道服、青い瞳のお姉さん。

 

「あっ......どうもぉ〜」

 

「タツキこの人って......」

 

『タツキ君!何があったんだい!?』

 

「ええとですね、突然サーヴァントに襲われました、相手は暴力団員じゃないですかね?乱暴ですよ、乱暴」

 

『タツキ君達が無視したからだと思うんだけど』

 

「無視なんて......あ。武蔵テメェのせいだろ!」

 

「なっ!?違うわよ!タツキのせいでしょ!」

 

「貴方達はいい加減私を無視するのをおやめなさい!」

 

ズゴォーンとタツキと武蔵の目の前を空気の塊が通過した。

 

「うわ、凄い拳圧だな。」

 

青髪のサーヴァントが右の拳を振り抜いたことで起きた空気の塊

 

作戦変更だな。

 

「えーと君は何故俺らの所へ来たんだ?偵察なら俺らじゃなくてあっちだろ?」

 

「監視が役割だったのだけれど、あのヴラドを倒した貴方達を試したくなった。貴方達の敵は竜の魔女。究極の竜種に騎乗する、厄災」

 

「究極の竜種?なんだそれ?」

 

「それは教えることはできない、ただ、私ごときを乗り越えられなければ、彼女を打ち倒せるはずはない。わたしを倒しなさい、躊躇なく、この胸を貫きなさい」

 

なんだこの女。言ってることがやばい。何がやばいかって聞いてるだけなら自殺死亡者もしくは究極のドMだぞ。

 

「私の真名はマルタ、さあ、始めるわよ」

 

「えーと、ですね、自殺死亡なら藤丸たちの方へ行ってもらえません?というか是非そうして欲しいんだけれど」

 

「何故です?」

 

「いや、藤丸達にさっきの話してから逝ってくれない?俺たちだけその話しされてもさ」

 

「はあ、全く。わかりました。では失礼します」

 

「はいよ」

 

そう言い残し、マルタは歩いて行った。

 

「タツキあんなの藤丸達のところへ向かわせてもよかったの?」

 

「駄目に決まってんだろ!あんなやばいやつ向かわせられるか!」

 

「え?じゃなんで?ってまさかタツキあのサーヴァントを背後から襲うつもり?」

 

「せいかーい!流石武蔵だ、だってあんな発言絶対カウンター型の技持ってそうな発言じゃん?そんなもんくらったらやばいって、あの威力のパンチだぞ」

 

「そうね、その方がいいわね」

 

「じゃ、追跡と暗殺と行きますか」

 

「了解」

 

「暗殺ですか、物騒なことを、正々堂々と戦ってくれた方が安心して、逝けるのに」

 

「なっ!?」

 

「安心してって、殺されるのに安心なんてあるかよ」

 

「あるかもしれないわよ?」

 

「タツ......キ」

 

「ははは、変なことを言うなー、まあ、それはそいつがもし、この世から逃れたいと望んでいた場合くらいだろ」

 

「私は望んでる、聖女に虐殺とかさせるんじゃないってぇの」

 

「いつから武蔵は聖女になったんだよ!」

 

「タツキが今話してるの、私じゃなくてマルタ」

 

「知ってる。途中から気づいてた」

 

「全く、卑怯な男ね、背後から襲うだなんて」

 

「チッ!聞かれたか!てかお前なんで戻ってきてんだよ!」

 

「忘れ物を取りに来たんですよ」

 

ほら、とマルタが指差したのはデカい十字架。

 

そんなのもってきてたな。

 

「じゃもう面倒だからこっちから行くからさっさと勝ちなさい!」

 

マルタが急に戦闘態勢になり、拳を振るってきた

 

「おい、待てって!お前クラス何だよ!殴るとか、乱暴すぎんだろ!」

 

「えぇ!本来はライダーですよ?ですが貴方達はこの私を無視してくれましたからね」

 

「怒ってんのかよ!てかライダーのクセにパンチの破壊力馬鹿かよ!」

 

パンチを避ける度にズゴォという音が耳の隣で鳴っている。

 

「武蔵チェンジ、こいつの相手任せた!」

 

「させません!来なさい!タラスク!」

 

マルタがそう言うとゴウォオオオオオオオオという轟音が地から鳴り響いた後地面の中から、角が生え、背にはデカい甲羅を持った地龍が現れた。

 

「タラスク!そのサーヴァントの相手任せた」

 

「おい!待て待て!お前ライダーってまさかあれに乗ってんのかよ!」

 

「ええそうですが?」

 

「あっぶねー、俺あっちの相手だったら負けてたかも」

 

「へぇ、私に勝ったつもりですか?」

 

「いやそんなことはない、でもお前とならやり合えるだろうってな!」

 

「セェァアアアアアア」

 

「残念でした」

 

マルタの拳を避け、マルタから一歩退く、刀を抜いて斬り込んだ。

 

マルタの腰辺りを低めの姿勢から襲い、マルタの腰に刀がめり込んだ

 

タツキは続けて斬り返そうとしたが、そうはならなかった。

 

「キイッタッ!でもこれで避けられないですね」

 

とマルタがタツキの刀を手で握った、マルタの手からは血が溢れている

 

「おい、待てって、お前、俺の身体みたら、わかるだろ?そんな刀手放しても二本目があるんだっての!意味ないぞ?」

 

「離した瞬間にへし折りますよ?それでもいいのですか?」

 

「俺の話聞いてた?あるんだって!スペアが!」

 

「見た所、貴方の腰にはデザインが同じ鞘がはありません、もし、これが一本物だとするならば、最初に抜いたということは一番扱いやすいものなのでは?」

 

チックしょおおおおお!なんかバレてるんだけど!こいつ、マジ悪女だ!性格悪すぎるだろ!なんでそんなやつが修道服なんかきてんだよ!意味わからん

 

「図星、のようですね、では無視された分、きっちりもらって頂きますよ」

 

「タツキーー!!そんな刀折られたっていいでしょ!」

武蔵はそういうがなあ、あれが一番馴染んでるんだよな。俺の最初の刀だからってのが大きいけど

 

「セェァアアアアアア!」

 

 

ああもう!仕方ない!

 

 

「え?」

 

マルタの拳は空を切った。

「折ってくれて構わない、だが、この勝負はもらった」

マルタの拳を刀を手放して避けたタツキは二本目の刀を抜いていた。

 

《一刀 輪廻》

 

弧を描くような軌道の斬撃はマルタの体を大きな傷を与えた。

 

「悪いな。俺のその刀も大事なんだけどさ、ここでやられるわけにはいかないんだよ」

 

「ふふ、そうですね、これで私は終わり、最後に教えといてあげる。竜の魔女が操る竜に貴方達は絶対勝てない。あの竜種を超える方法はただ一つ。リヨンに行きなさい。かつてリヨンと呼ばれた都市に。竜を倒すのは古来からドラゴンスレイヤーと相場が決まっているわ。」

 

「ドラゴンスレイヤーか、ロマン聞いてたか?この話を藤丸達に伝えといてくれないか?あとリヨンも任せるって伝えといて」

 

『わかったよ』

 

「タツキだったかしら、これは返すわ」

 

マルタが俺の刀を返してくれた。

 

「折らないのか?」

 

「ええ、ただ、力を試しただけですので、刀を人質に取られて相手の言う通りにしているようなら、本気で倒しにいってました」

 

「本気じゃなかったってことか?」

 

「ふふ、それはどうでしょう?」

 

「次はまともに召喚されて、貴方達と出会いたいものです」

そう言いながらマルタは微笑み

タラスクと呼ばれた竜はグワッっと吠えた。

 

そして一人の聖女と地竜は光に包まれ消えていった。

 

「中々手強かったわね」

 

「お疲れ武蔵、地竜の相手はどうだった?」

 

「なんだか知らないけれど、あの竜、体の所々が拳型に凹んでいたわよ。」

 

「マルタってあいつやっぱ、やべーな。」

 

『タツキ君?』

 

「何ですか?」

 

『君たちはこれからどうするんだい?』

 

「近くの街に行きます、襲われていないとも限らないので」

 

『了解、藤丸君達にも伝えておくよ』

 

ふぅ。

 

とりあえず。

 

「武蔵ー疲れたわー」

タツキは地に背を預けた。

 

「タツキさ、戦うの好きでしょ?」

 

「好きじゃなきゃやってられねーって、相手はライダー語りながら拳で戦ってきたりするやつらだぞ?正気の沙汰じゃやってられん」

 

「それもそうねー」

 

「タツキ、寝てないで行くわよ、街の調査!ほら、立ちなさい」

 

「はいはいっと」

 

とりあえずは近くの街から見ていきますかね

 



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9話 邪竜と聖女と二天一流6

自称ライダーを名乗っていた修道服を倒した後、周辺の街や村を訪ねてみたものの、ワイバーンやら動く骨やらを始末して生きている人間を探しては情報を集めていた。

 

「とりあえず、リヨンってのは滅んだ街で現状では避難民たちの逃げ場として使われてるみたいだな」

 

リヨンへ向かうという者が多かったため理由を聞いたところこのような理由だった。

 

「そうね、マシュちゃん達、上手くやれてるといいけど」

 

「だな、まさかリヨンが滅んだ後だとはな。それで、その大きな剣を持った騎士?ワイバーンやらを蹴散らしてた英雄がいるからリヨンに行けば助かるねぇ。武蔵はどう思う?いると思うか?」

 

「えぇ、いたのは確かのようね、そうじゃなくては、あの人たちが死の危険を侵してまで、リヨンに向かわないでしょ?ただ、今はどうかはわからない」

 

「そうか。となるとまずは」

 

「そうね」

 

「ワイバーンを始末しよう」

「お団子を食べましょう」

武蔵とは同じ言葉を発するつもりでいたのだが、何と別の、それも全く関係のないことを発したように聞こえた。

そのため俺は己の耳を疑った。

 

「は?」

 

「なに?」

 

「おい武蔵さん、今何て言った?」

 

「だからお腹が空いたからお団子食べましょう?」

俺の耳は正常に機能していたようだ。

 

「まずな。金がない。あとそんなもんここに売ってない。無理だ」

急に何を言い出すのだ。

日本ではないのに団子なんて売ってるわけがあるか。

 

「タツキの刀売りましょうよ!みたところ私の受け継いでいないみたいじゃない?」

俺の刀と武蔵の刀は、色以外は似ているため、以前武蔵に盗んで色を変えたのでは?と疑われたことがあった。

 

「ああ?却下だ!却下!これはと特注品だ!俺専用に作られた物だ」

 

「へー、そうなんだ、だからあんな大切そうにしてたの。それでその刀の名前は?」

 

「この紅色の鞘の刀が【 紅刃命要(こうじんみょうよう) 】紅き刃によって使命付けることを必要とする。要は敵を断つ時には未来を据えて刃を振るうという意味らしい。名付け親はこの刀を打ってくれた人、 紅色の小太刀が【 紅刃烈滅(こうじんれつめつ) 】 この刀の意味は何て言ってたか、めちゃくちゃに切り滅せ?だったかな。んで、こっちの黒鞘の刀が【 (めい) [秋]】。それで黒鞘の小太刀が【(めい)[闇]】だ。これの意味は無いらしい」

 

「タツキの刀を打った人も相当な人ね、病んでるわ」

 

「病んでるよ。あれは中二だとは思ってる。だが理想が高すぎて、極まってしまったらしい。でもあいつがつけたんだから、この刀の名前はこの名前なんだ。まあ呼ばないけど」

武蔵がへぇと言って俺の刀をジロジロ見て来たのでいちよう

 

「あげねーぞ?」

と言っておいた。

 

「いらないわよ」

あ、そうですか。

業物なのになぁ。

 

「キャアアアアアアアアア」

 

「悲鳴!」

 

「行くわよ!タツキ」

 

悲鳴のした方へ走って行くと、ワイバーンが一人の男を嚙り、その男の身体が半分に嚙り切られていた。

そしてその前で、腰を抜かせている女が悲鳴をあげた張本人だろう。

 

「ワイバーン多すぎだろ」

 

「早く終わらせましょう」

 

「おう」

 

ワイバーンと正面から対面していた、タツキが建物の影に隠れるようにして接近し、武蔵はいっきにワイバーンとの距離をつめてワイバーンの翼を切断した。

 

「ギャォアアアアアアア」

ワイバーンが悲鳴をあげホバリングして空へ逃げようとしたところへタツキが閃光弾を合わせホバリングを狂わせ地に落ちたワイバーンを武蔵が両断した。

 

「武蔵おつかれ」

 

「ええ、それより」

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああ!主人が。主人が。主人が。主人が。」

 

先ほどの女性が気が狂ったかのように叫び始めた。

 

「おい!落ち着け!おい!主人が死んだからといってお前の人生が終わるわけではない!なんとかして生きようとするんだ!この世界ではそうやっていかないとお前まで」

 

「私はもういいのよ。貴方達も気づいてるでしょう!この街は、いえ、この国はもう終わりよ。国を守る兵たちは賊に堕ち、ワイバーンやゾンビまで好き放題、挙げ句の果てに魔女よ!こんな世界でまともに生きるなんて無理よねえ?そう思うでしょおおおおォオオオオオオオオオォオオオオオオオオオォオオオオオオオオオォオオオオオオオオオォオオオオオオオオオ」

 

そう叫び、その女は気を失った。

タツキと武蔵はその女があまり外敵から目につかないように建物の影に寝かせてその街を去った。

 

生きることを諦めるなんて、馬鹿だと俺は思う。

俺は生きることに関してはトコトンまでやって生き抜くつもりだ。

 

「狂ってるのは国であり、その中で生きている者も狂ってるか。言ってることは正しいかもしれないが、俺は違うと思う。それなのに反発しないなんて」

 

「無理なのよ。国が変わると役目が終わるの。それを踏み外すことはできないのよ。やろうとしても大きな力に拒まれるから」

 

「え?」

 

「私の歴史よ。宮本武蔵の生き様の果てはそんな感じなのよ。だから、この世界では私たちはその力に拒まれないで立ち回れる。やるわよ。絶対に」

 

そう言った武蔵の目からは恐ろしくも勇ましい覇気が感じられた。

 

宮本武蔵は武士の時代の最期の武士の一人だったか、なるほどな。

力ではどうにもできなくなる。江戸幕府が立ち上がってからはそうなる一方だっただろう。

 

あ、だから芸術の道に進んだのかな?

 

「やることはやるだけなんだけどさ、全くもって理解できないよな。あの人はリビングデッドに身体を売ったのか。いや違うか。世界に身体を売ったって感じか」

 

「ま、チナ。さ、い」

 

「せっかく助けてやったのに。俺らが助けて俺らが始末しろってか。クソな世界だ」

 

先ほどの女性がリビングデッドの、集団を連れて俺たちの後ろから付いてきていた。

 

「あーもうッ!ムカつくわね。ねえタツキ。お願いがあるの。あいつら私に任せてくれない?」

 

「え?いいけどなんで?」

 

「いやちょっとね。ああいうことするやつ私、大嫌いなの」

 

武蔵はそう言い残し腰を落とした。瞬間消えた。光の速度の加速で移動しリビングデッドの首を刎ねあげた。それにリビングデッドは反応すらできなかった。魔法ではなく正真正銘の身体能力か。サーヴァントだからなのか、それとも本来のものか。

 

「貴方。命を無駄にするのはこの命を最後にしなさい、次があればその命を大切に」

 

スパンと女性リビングデッドの頭が飛んだ。

 

「鬱陶しいですね。嫌になる程の正義。私は恐怖を喰らう者。あなた方のような者からも例外なく頂く」

 

全く持って予期せぬ事態だ。何故こいつが。いや今は考えるなまずは。武蔵との連携を......って

 

「武蔵ッ!!!」

 

「悪いわね、ちょっと無理」

脇腹あたりを手で押さえながら地に蹲っていた。

 

血?何をやられたんだ?さっきの動きが身体に影響をもたらしたってか?やばい。

 

「ふぅ。ここは俺がやるしかないみたいだな」

 

「愚かな。貴様に何ができる人間」

 

「見てただろ?ヴラドってやつの時よ、あれをやったのが人間なんだぜ?」

 

「それはサーヴァントあっての結果。今は違う。未来は決まったようなもの」

 

「ああ、そうかよ。武蔵。後で理由は聞くからな」

 

「」

 

「返事なしか」

 

カーミラ?だっけか、やつとの距離はまだ地を蹴っても間合いには入らない。つまりこのままの間合いでは戦えない。

 

なら

 

「おい、お前さ、なんでこんなことしてんだ?意味ないだろ」

一歩ずつ前へ進む

慎重に

バレないように

 

「意味なんていらないわ、それが使命」

 

「使命ねー、変な趣味してるよお前」

 

「貴様の好きにできると思わないことね」

 

「はい?」

 

カーミラが杖を振った瞬間

 

弾丸のようなものが弾き出された。

 

魔術!?!?

 

咄嗟に右へ飛び回避し、後続の弾丸を予測してさらに飛び、建物の影へ飛び込んだ。

 

「武蔵置いてきちまった。あークソ!出るしかねーけど、仕方ない!」

 

まずは閃光弾を投げてっと

 

ボォンという音と共に閃光が弾けた

 

刀を抜き一気に建物の影から出た途端

 

ーーシュンーー

 

顔の横を光弾が通過した。

 

「あぶねー。てか閃光喰らって目が見えてんのか?」

 

「ええそうよ?効かないわ」

 

ハッタリ。嘘だ。

何故なら見えていたなら隙だらけで飛び出してきたやつを取りこぼすか?

場所がわかっていたから、感でそこに打ち込んだだけって感じだろ!

 

ならばその茶番のってやるさ。

 

「ありえねぇだろ!閃光だぞ!何でだよ!クソ!」

 

「愚かな、さあ終わりよ」

 

「嫌だ!いや!嫌だああああああ」

 

タツキは後ろ向きに逃走をはかった。

 

「無様ね、絶望を歌いながら惨めに死ぬのよ」

 

カーミラがそう言いながら、一歩踏み出した瞬間

 

ピカッと周囲が光った。

 

その瞬間にカーミラは気づいた、あの男が後ろを向いて走った理由、それは

 

( 光から目を守るため!)

 

(はめられた)

「ガァ!」

閃光を喰らいカーミラの喉から裂けるような声がした。

 

カーミラは自身の声だけが自身の耳に入ってくるだけで他の音が聞こえない。

 

この男わかっている。声を出した瞬間に気づかれることをだからこそ、無音で斬撃を繰り返している。

そして足音が聞こえないですって。

殺気すら感じられない。

この男何者!?

 

ですが

 

あと少しで目が慣れ......な?

 

「煙?いや、まさか!?」

 

二重の目眩し

 

「しまっ!ガハッグッ」

腹に衝撃が走った。

 

カーミラが気づいた時タツキは、二本の小太刀を抜きカーミラの硬い鎧をぶち壊し、すぐにその場を離れまた別の場所を壊す。そうして穴が空いたら次はその穴に斬撃を飛ばす。

 

攻撃された直後にカウンターを決めたはずなのだが、感触はなかった。

(初白雪)

目くらまし+フェイント技+殺し技

完璧なまでに俺の舞台へようこそ。カーミラ。

舞台はクライマックスだ。

 

無音のまま斬りつけられることへの苛立ちと見えているのにそこにいない苛立ちがカーミラの思考を鈍らせる。

 

カーンと音がなり、カーミラの持つ大きな杖が地に落ちる音がした。

タツキが腕を斬り飛ばしたのだ。

 

「グッ!ハアハア、チィ!」

 

カーミラが突然走り出したのを見て、タツキは追うのを少しためらったがトドメをするためカーミラを追った。

 

「逃げるんじゃねぇ!」

 

カーミラが逃げ込んだ民家の扉を蹴り破り中を見ると女性の身体を手に持ちその口には大量の血が付いていた。そしてカーミラの身体の斬撃の傷のほとんどが消えていた。

 

「おい、まさかお前。」

 

捕食だと?

 

「しつこいわね。しつこくされるのは嫌いなの」

 

(やばい!)

 

咄 何かを感じ、後方へ飛び続け様に後方へ後退した。すると空間から棺のようなものが現れ先ほどタツキがいた場所を襲った。

 

何かわからないがやばいとだけ感じた。

 

「おいお前、何してんだよ。」

 

「これかしら、吸血よ?貴方カーミラという名前を知らないのかしら?」

 

「知らねーってか、聞いたこともないんだが」

 

「そ、それなら貴方に負けることはないわね、これの意味がわからないなんて」

 

「まあ、そんなことはどうでもいいんだけどよ、一般人巻き込むとかお前何考えてんだよ」

 

「悪いのかしら?この、女達はこう言っていたわ、殺してくださいとね」

 

「許さねぇ、それでもその人達はしっかり生きてたんだそれを、簡単に......

 

これだけは言っておくぞ!! 」

 

瞬間

 

カーミラの首が飛んだ。

 

「な、んで、」

 

「 最後の方の台詞さテキトーなんだ、要はこれだけは言っておくって言ったら大体のやつは皆それを聞こうとするだろ?そうしたらその瞬間は集中がこっちに映る、身体への防御など、全てをその一瞬はしなくなる。俺はそれを斬る。俺は全てとは言わないがそうやって考えて戦いを構築しないと勝てないと理解しているから。ってもう消えてんじゃん」

タツキの目の前には光の粒子が細かく浮いていた。

 

家の中なんて一振りの間合いで居合を外す事は無い。

居合なんてタツキはあまりやらないが必要と思えばできるのがタツキという人間である。

 

カーミラを倒せたのはよかったが、問題は武蔵だ。あいつ何があったんだよ。

 

「タツキ。ごめん遅くなった、敵は?」

タツキの記憶が夢であったかのように今まで通りの武蔵が俺の前に現れた。

 

「おい、大丈夫なのか?」

 

「全然平気よ?」

 

「嘘つけ!なら脇腹見せろ!」

 

「変態!タツキ何!?私の身体が見たいの?」

 

「ちげー!ああもう!」

 

「この特異点が無事終わったら説明してもらうから。絶対」

 

「ええ。ありがとう」

 

『タツキくん、そろそろ、藤丸くん達と合流しようか、あちらも色々進展があったようだ』

 

「了解」



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10話 邪竜と聖女と二天一流7

「陽が落ちてきた、とりあえずこの辺で休息を取ろうか」

 

タツキの案により武蔵とタツキは先ほどの街から少し歩いた森の中で野宿をすることにした。

 

「武蔵は休め、少しでも動けるようになるまで回復しろ」

 

「いいえ、タツキが休みなさい、私はサーヴァントでマスターはタツキ。優先されるのはマスターの命よ」

 

「いいやこれは命令だ、なんなら令呪を行使しても構わない。武蔵頼むから休んでくれ」

 

「令呪を......。わかったわ。休ませてもらうわね」

 

「ああ」

 

タツキは武蔵が眠りについたのを確認した後、周囲一帯に警戒の意識を張り巡らせていた。

 

「ロマン聞こえてるか?」

タツキは独り言のように呟いた

 

『ああ、聞こえているよ。それで何の用かな?』

 

「藤丸達はどうなった?無事に竜殺しと合流できたか?」

 

『ああ、合流できたよ』

 

「よかった。それであっちは変化ないか?」

 

『黒ジャンヌが新たにサーヴァントを召喚した、それと彼女達はファヴニールを使役している』

 

「そのファヴニールを倒すための竜殺しってわけか。」

 

『そういうことになるね、彼の伝承自体がそのものだからね』

 

「なるほどな、すごい竜殺しなんだろうな、ロマン、こちらの事情は最悪に近い。武蔵がなんだか知らないがやばい。理由わかるか?」

 

『僕はね。でもタツキ君には言えない。それが彼女との約束だからね』

 

「チッ。あーもう。わかったよ。ならあいつは動けるのか?今まで通りに」

 

『そうだね、彼女次第かな』

 

(無理してまで戦いに出したくはないんだよ)

タツキは一番言いたいことを噛み締めた。

それを言うのは何処か違う気がしたから。

 

ロマンにそれを言っても仕方ないのだ。

 

「わかりました」

そう一言言うとタツキは通信を切った。

 

(敵だな。数は4匹くらいか。移動速度からして、ゾンビだな)

 

タツキの警戒網に4匹のゾンビが進入したが、タツキは動くことはしなかった。

 

奴らの位置はこの近くではない。少し離れてるな、警戒網のギリギリを通過しているようだ。ここは戦闘をしてバレたくない。

 

潜むべきタイミングだろう。

 

「ねえタツキ、聞いてもいい?何でそんなに冷静でいられるの?タツキの世界は平和な世の中なんでしょう?」

唐突に武蔵に話しかけられた

起きてたのか、それとも今起きたのか。

 

「俺の周りは平和じゃなかったからかな。修行の一環でなマジで殺されかけたこともあった。死んだら死体は地下に埋めるとか言いやがる。そんな家庭だったんだよ」

 

「へー、ねえタツキ良い機会だし、どんな修行したのか少し聞かせなさいよ!ほら子守唄!子守唄!」

 

「子守唄ってなあ。俺の修行の話が子守唄になるわけ」

 

「いいじゃない!ほら!」

 

「まあいいけど。」

 

ーーー

 

【 修行・1ヶ月間 門下6人から生き延びよ】

 

内容

 

・宮本が所持する3つの山が範囲

・門下6人が毎日二人ずつ各山へ配置される

・門下は決められた山から別の山への移動はできない

・食事は自炊、もしくは1日に一回補給スポットにて非常食が配布される。時間はタツキにのみ全て開示されている。(門下はこれを食べることは禁止)ただし補給時の攻撃は可能。

・門下はその日の夜に支給される

・門下は本気でタツキを殺すために行動。殺しても構わない。

・タツキは武器を所持してはならない。

 

成功条件

1ヶ月後生きて帰ってくる

 

失格条件

死ぬ

門下への直接的な攻撃

 

報酬

タツキ専用の刀の作成

 

《 これは索敵や、反射などの修行の最終段階である 》

 

ーーー

 

 

「タツキよ、明日から開始じゃ、今日中にスタート地点へ行っておくように」

祖父から渡された、試練内容の紙を読みタツキは唖然としていた。

 

「武器を持てないだと」

 

「ああそうだ、簡単じゃよデカイ山の中で二人から逃げ延びればいいのじゃから」

 

「やるしかないのか?」

いくら門下といえど、彼等も殺人の技を修練する者達だ。油断したら死ぬ。

 

「門下に負けることを認めることになるぞ?」

 

「わかった」

宮本タツキという立場上敗北は許されない。

勝つことが当たり前。この道場の看板であるタツキは最強でなければならないのだ。

門下達が、信頼をよせ、頼りにしているのはそんなタツキだからだ。

 

「ふむ!よく言った!門下6人は強さ順に上から6人だ、お前のよく知るやつらじゃよ、軽くひねってやればよい」

 

「ひねってやるって俺は武器を持て」(ないんだぜ?)

と最後の台詞を言うよりも前にあることに気がついた。

 

武器を?刀をは持てない、直接的な攻撃は禁止。

 

つまり武器は直接的ではない攻撃、何かが結果的に攻撃になったりすることだとすれば。

 

「では今晩から1ヶ月間が楽しみじゃな」

 

ーーー

 

「まあ、こんな感じでいろんな修行をやってたわけだ」

 

「タツキの叔父って、やばいわね。発想がぶっ飛んでる」

 

「だろ、俺もそう思う。でもやったんだよ。そういうのがあったから、俺は結構この世界でも自信を持って戦える。だがな俺の二天一流は一つでも天が結ばれなくなったら終わりなんだ。頼りにしてるんだから、しっかり休んで回復してくれよ」

 

「はいはい。じゃおやすみ」

 

武蔵はその後何度かうなされるようにしていたが、タツキはそれをただ見ていることしかできなかった。

 

服をめくって確認することもできただろう。

 

でもタツキは話を聞くと約束したため、それはやらなかった。

 

一晩中寝ることなく見張りをやるつもりでいたのだが、3時間位経過した時に武蔵が目覚め変われと言われたので仕方なく変わった。

 

2時間後タツキは目覚めすぐに出発した。

 

「程よい休憩に睡眠をとるけれどあの時間って無駄だよなー。なんか人生無駄にしてる感ハンパない。」

 

タツキが独り言のように、武蔵に話を聞かせるように呟いたが、武蔵は聞く耳を持たなかった。

 

「何だろうな、何で寝なくてはならないんだ?あれ完全に人生の大半位使ってるだろ?バカなんじゃないかって思いたくなる」

 

タツキは武蔵に話しかけた、が武蔵は聞く耳を持たなかった。

 

「睡魔はなおさらタチが悪いよなー、勝手に襲って来て、勝手に逃げていきやがる。何だかなーって感じだよなー」

 

「ねえ、タツキ。言い訳は聞いていないのだけど」

 

「言い訳って......。まあ。はい。すみません」

 

そう、タツキは夢で出てきた武蔵と見張りを変わっていたのだ。

 

要は見張り中に寝落ちしてしまって、夢の中で武蔵と変わって、変わってないのに、見張りを変わったつもりでいたわけだ。

 

「夢ってさー、よくもまあ、人の欲望を上手く再現するよなー」

 

「いい加減にして、あれ。許すつもりないから」

 

付け加えると、俺より先に起きたのが武蔵で目覚ましにはなんと、ググやらゴワやらと、言ったエゲツナイ声が周りから聞こえてきたので危険を感じて起きたところ周りをゾンビに囲まれてだってわけだ。

 

目覚めから20匹近くのゾンビを一人で葬り去り、尚も睡眠を続けている者をフルパワーキックを炸裂させタツキを叩き起こし、武蔵はタツキに罵詈雑言を吐き捨てた。

 

「夢は儚いものじゃなあ」

 

ゴファ

 

武蔵の肘がタツキの脇腹を襲った。

 

「痛いです。武蔵さん。痛い。」

 

「全く!安心して任せてられないわよ。昨日の話は何だったのよ。嘘なの?山籠り!」

 

「いや、あれ結構死にかけてさー、寝ちまった時に何回も襲われたんだよねー周りに罠仕掛けてたからあの時は何とかなったんだけどさーははは〜」

 

「学ばないの!あんたの頭は何も学ばないの?!」

 

「睡魔は俺の中では魔王クラスだと思ってる!」

 

「そんなことドヤ顔で言わないで」

ハァと呆れたように武蔵がため息を吐き捨てた。

 

『タツキ君、藤丸くん達の元へ案内するから従ってくれ』

 

「りょーかい」




今回は少し番外編のような感じの回になりました。
ぐだぐだ本能寺が復刻し4だったノッブの宝具を5にすることができ満足しております。ノッブのボイスが追加されていてくだくだ2なのか?と楽しみに待っています!



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11話 邪竜と聖女と二天一流8

『タツキ君!急いでくれ!サーヴァント2騎と藤丸君達が接触!』

 

ロマンからの緊急連絡を受けタツキ、武蔵は全力で平野を駆け抜けていた。

 

「タツキそんな急いだら体力が持たないんじゃない?」

武蔵はタツキの心配をしながら走っていた。

実際にタツキは数十分もの間休むことなく走り続けていた。

 

「気にするな、俺は、ハァハア。平気だ」

 

くそ。血の味が口いっぱいに広がる。

粘着性のある唾液が口に回る。

気持ち悪い。

 

「私が先に行ってるから、タツキは後から来なさい!」

 

「断る!」

 

二度とサーヴァント......いや。武蔵一人で無茶はさせない。

信頼していない訳ではない。

 

ただ。嫌だからだ。俺はこいつと共に何度も戦った。そんな仲間が俺がマスターとして不出来なばかりに負けたとしたのなら、その責任は俺にある。

 

ああ、でもこれは武蔵のことを信頼していないことになるのだろうか。

 

「タツキ止まりなさい」

突然武蔵の声が落ち、とても低い声で呼び止められた。

その威圧に驚きタツキは足を止めた。

 

「私、負けたのよ、あの黒いセイバー、アーサー王に。マシュちゃん守ろうとしてさ、しくじった。逆に守られちゃったのよ。その時にさ、マシュちゃんからこう言われたの。

 

「ごめんなさい、守りに出るのが遅れてしまい。武蔵さんに怪我を」ってさ、やらかしたなーって思ったわ。でもねタツキ。二度もミスはしない。どうせタツキのことだから、マスターである俺がーとか考えてんでしょ?」

 

「え?......いや。あの」

 

突然の暴露に思考が追いついていなかった。

ただそれを耳に収めることだけしかできなかった。

 

「タツキ。貴方が信じれないのはサーヴァントである宮本武蔵なのよね。タツキの前にいる宮本武蔵はサーヴァントの宮本武蔵?違うわよね、タツキが私と出会った時に命令したのはその関係が嫌だったからじゃないの?」

 

( 俺のことをタツキって呼ばせるようにしろ)

 

フッ。

不意にタツキの口に笑みが浮かんだ。

 

何だ。そんなことを忘れていたのか。

 

「そうだな、俺の前にいるのは俺と共に肩を並べて戦い、俺の技の究極点にして原点。宮本武蔵だったな。」

 

「待ってるわよ、タツキ」

「ああ」

 

武蔵は疾風のごとき疾走で駆け抜けていった。

 

残されたタツキはただ一人空を見上げていた。

 

『一杯食わされたね』

 

「ダヴィンチちゃんか、まさか俺の命令を逆手に取られるとはな」

 

『タツキ君もまだまだってことだね〜』

 

「ですねー」

 

『なんだ、今日は随分素直じゃないかい?』

 

「まあ、そんな日もありますよ、で、武蔵は無茶しても大丈夫なんですか?」

 

『結論から言おうか。無理だ。何故ならあの王の聖剣をほぼ直撃している、彼女の体は魔術により、傷は消えている。」

 

「消えているか。」

 

『そう、癒えてはいない。本来なら今回の特異点に連れて行くべきではなかった。この特異点が無事終わり、次の特異点までに回復が間に合わないようなら次の特異点ではカルデアに残ってもらおうと思う』

 

「おい、そんな未来のことはどうだっていいんだよ、今だよ!無理なのかよ!ちくしょう」

 

マスターである俺の性能不足の責任だろうな。

でもそのことをあえて言わないでくれているのか。

 

一度足を止めてしまった足はガクガクと震え、再度走ることを拒む。

喉が水分を求め

体が休息を求めているのがわかる。

 

「なあダヴィンチちゃん。令呪ってさ、前に使った分が回復してるんだけどさ、これってどれくらいの周期で回復するんだ?」

 

『突然の質問だね、藤丸君の場合は1日一角みたいだ。タツキ君の場合は7日に1角だね』

 

「ありがとうございます」

 

『でもそれを聞いてなにッ』

 

タツキは通話を切った。

回復ペースは魔力センスとかの問題なのだろうか。だが7日に1角回復するなら十分だ。

 

確かこいつは自分の肉体への強化をできるらしいからな。

 

(令呪よ我が肉体を強化せよ)

 

タツキが念じると一角消滅し、タツキの肉体に力が漲った。

 

「これは強化ってレベルじゃねーな」

 

そう感じさせるほどのエネルギーが溢れ出していた。

 

リヨンはもう少し先か。

 

タツキは足に力を入れ走り始めた。

 

走り始めて10分程度経過した。

タツキはこの辺は影が多いから走りやすいなと思いながら足を進める。

 

その違和感に気づいたのはそれがタツキの目の前に降りてきた時だった。

 

武蔵のことで頭が一杯になりタツキは一番大事な周囲への警戒を忘れていた。

 

忘れていた、というよりは周囲を自分の都合良い方向で考えることにしたのだ。

 

そして

 

《グガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!》

 

爆発音のような轟音が空で響きそれを見るため空を見上げるとそこには

 

「島?いや違う。あれは龍?ワイバーンなんて可愛く見えるぞ」

 

巨龍はタツキの目の前に降下してきた。

 

「貴方は確かあの連中の中にいた、ランサーを滅ぼし、アサシンも貴方なのでしょう?その事でお礼をしに来たわよ」

 

白い方のジャンヌと同じ声でここまで圧が違うのかよ。

 

黒ジャンヌ......いやたしか、こう呼ぶんだっけ

 

「ジャンヌ・ダルク・オルタ。」

 

「はい。では始めましょうか」

 

「なあ、ここは一つ俺とお前で一対一ってのはどうだ?その龍は休ませておいてさ?」

 

「本来なら断るところですが。まあ良いでしょう。少し苛立ちめいたものを晴らすというのも」

 

乗ってきた。

 

「晴らせるかどうかはやってみなきゃわかららないだろ?」

 

「愚かな」

 

一気に攻め滅ぼさないとやべぇかな。

こいつの纏ってる殺気は尋常じゃない。

 

《初白雪》

 

突風

抜刀と共に刀を抜き去り、ジャンヌダルクオルタの視界に入った時にはその切っ先が閃光の如くジャンダルクオルタの首を搔っ切らんと走っていた。

 

「ふん」

 

ジャンヌオルタの槍はその一閃を狂う事なく正確に振り払った。

 

しかしそれは

 

(フィエク)

 

喰らえや《初白ッ......ああ?なんだこれ。」

 

タツキの右腕に黒く漆黒の槍が突き刺さっていた。

 

「ふっ、ふふふ。っはははははははははははははははははははははははは!やばいわ、貴方まさか本当にランサーの時と同じ事をしてくるとは思わなかったわ」

 

なっ、見てただけであれがわかったのか!?そもそもあんなみる価値はない戦いをこいつは見てたというのか

 

この槍はどこから......

 

魔術か。

 

「その大きな槍は見せかけで本当はこっちがメインってことか。姑息な手段だな、元聖女様」

 

「見せかけですか。何を言っているのです?どちらも私の武器で本物ですよ」

 

「そうかよ、あ、そうそう、聖女様。こんな至近距離で話さない方が身のためだぜ?」

 

「はい?何故でしょう?」

 

小太刀は片手で振り抜けてこの距離なら抜刀と共に切り裂けるからだよ!

 

居合の抜刀術である。

 

タツキは小太刀へ左手を伸ばしたが左手が動かなかった。

 

「なっ」

 

「ですから、何故でしょう?教えてくれないのですか?それとも、まさかとは思いますが左手なら動かせるなんて思っていたのではないでしょう?」

 

この漆黒の槍に刺された所が動かないとか、なんだよこれ

令呪での肉体強化してんだぞ。

 

「ですが、おかしいですね。何故でしょうか?何故そのように平然と話せているのでしょう。これに貫かれた時点で発狂物なのですが」

 

「痛くはねーからな!動かないだけだ」

 

令呪での肉体強化のおかげか?だが効果が切れた時がやばそうだ、さっさと抜け出さねーと

 

「そうですか。まあいいでしょう。一本一本身体に突き刺していきますか」

 

「一本一本?一体何本あるって.....は?あ?」

 

ジャンヌオルタが空を指差したので見上げるとそこには無数の漆黒の槍が浮いていた。

 

「これが私の宝具、吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)さあ始めましょうか」

 

無数の漆黒の槍がタツキめがけて飛んできた。

 

やばい。

 

令呪よ残り2角全てかけるから、俺の体を最大強化しやがれ!

 

タツキの手の令呪が全て消えた

 

「 ああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアあああああガハバア」

 

途絶える事なき槍の雨はタツキに逃げる隙すら与えなかった。

 

「あ あ

あ?ああ。が? 」

 

生きてるか。俺。生きてるな。なら最後に一仕事やらねーと。

 

体を縛る槍が消えたんだ。

 

刀を持って振り抜け

 

何してんだよ

 

動けよ、足

 

動いてくれ、手

 

なにしてんだ。タツキ!

 

頼むよ

 

「あっけなかったわね」

 

( 不意の閃光 )

 

「なっ!?」

 

「グバア」

 

ジャンヌオルタと巨龍は視界を奪われた。視界が戻った時には周りは煙幕で覆われていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここは森の中か?視界が安定しねぇ。身体が動いてよかった。何かに支えられたような感覚だったが。なんだったのか。

 

令呪の効果が切れ始めてる。体への負担が大きくなってきた。

 

駄目だこれ。

 

逃げれたのに。

 

逃げれたのに。

 

逃げれたのに。

 

逃げれたのに。

 

武蔵に後から行くと言ったまま死ぬのか。

 

ダメだ。

 

ちくしょう。。。

 

「どうしました?と問う必要すらありませんな。皆の者。この者を救いなさい。」

 

 

銀色の鎧の騎士がそこにいた。



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12話 邪竜と聖女と二天一流9

「これが私の宝具、吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)さあ始めましょう」

 

フフとジャンヌオルタが笑みを浮かべ宝具を発動させた。

 

無数の漆黒の棘がタツキめがけて飛んできた。

連続して放たれる漆黒の棘は撃ち落としたところで無意味だと思わせるほどの数だった。

 

敗北か

タツキはその時自らを突き刺さんと降り注ぐ棘を見ながらそう思った

 

負けるのはいつぶりか。確かあの時も突然負けたんだっけ。

 

敗北は突然突きつけられることは稀だが、それはない訳ではない。現に今俺は負けを確信している

 

だから、今回も、あの時と同じで終わった後に喪失感に襲われるのか。

 

いや今回は違うか

 

敗北とは死だ。

 

漆黒の棘がタツキ目掛けて降りかかる中、タツキの思考回路は異常なまでに早く働き色々なことを考えられていた。

 

タツキが走馬灯というものを見るのは二度目

 

一度目は剣道での大会の時、敗北の決まる瞬間、俺の思考回路は今と同じように......

 

そしてこれが二度目

 

あの時と違うのはこの敗北は死という結果がついてくるのだ。

 

令呪は使った。

 

今、俺ができることはやった。

 

後は。

 

タツキは目を瞑った。

 

生きていられることを願いただ漆黒の棘が自らの身体に突き刺さるのを待った。

 

( あー長い。とても長く感じる。今目を開けたら、目の前にあの漆黒の棘があるのだろうか ハハハ。可笑しくて笑いたくなる。武蔵との二天の繋がりはここで断ち切られるのか )

 

 

【 それは 嫌だ 】

 

 

 

 

『 仕方ない。今回だけは未契約だが出てやるしかなさそうだ。未契約時に強制的に操作するのは負担がかかるのじゃが。仕方あるまい』

 

 

 

 

タツキは叫んでいた。

 

何故?

 

タツキの意思ではない何かが宮本タツキを支配している

 

タツキはいつの間にか目を開いていた。

タツキが見えているものは確かに俺の視界の筈だが何かが違う。俺が俺を見ているような、ゲームの中の操作キャラを操っているかのような、そんな感覚だった。

 

「 ああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアあああああガハバア」

 

タツキは咆哮の如き声を上げ、身体の動きを止めていた漆黒の棘を握り潰した。

 

自由になった身体で、すぐさま小太刀を抜刀し、目の前に迫り来る漆黒の棘を打ち払った。

 

「割に合わぬな、じゃが、まだ終わらぬわ!この程度、全て弾いて見せよう!」

 

タツキは小太刀を鞘に収め、腰に二本存在する太刀【 紅刃命要 】、【 名《秋》】を抜いた。

 

「ほお、中々の業物よ、少しの間だが、頼むぞ」

 

「貴方は誰?」

突然の豹変にジャンヌオルタも気づいたらしく訝しんでいた。

 

「儂か?儂はお主に現在殺されかけておる青年じゃが?」

タツキの身体を操る何者かがそれに冗談で返した

 

漆黒の棘の雨が降ってきている状況で冗談を言える程の余裕にジャンヌオルタは危機感を感じていた。

 

「ファヴニール!やりなさい!」

ジャンヌオルタは何かが起こる前に先ほどタツキが記したルールを無視し、ファヴニールに攻撃命令を下した。

 

ファヴニールは命令に従い、タツキ目掛けて攻撃を行う構えを見せたが、攻撃を実行することはできなかった。

 

「蜥蜴よ。それは約束が違うだろう?てめぇはこの戦いに参加しない約束の筈だが?」

 

計り知れぬ量の殺気

 

その殺気はジャンヌオルタにさえ届き得るのではと思わせるような底の見えぬ憎しみや殺意の塊だった。

 

ファヴニールはそれを浴び身体が固まってしまっていた。

 

「黒い娘よ、お主と戦うのも面白そうじゃが、すまぬな、今回はそうはいかぬようだ」

 

ジャンヌオルタやファヴニールに警戒へしながらタツキは全ての棘を弾き飛ばし終えた。

 

「さて、棘の雨は止んだとして、お主らからそう簡単に逃げることはできなそうじゃの」

 

「そうね、必ず殺します」

 

「ブォアアァアアア」

 

流石、巨大蜥蜴といったところかの、もう馴染みやがったか。

 

確かこいつはいつもポケットに

 

これじゃな。

 

「では、やらせて貰うとするかの」

タツキは刀を鞘に収め腰を少し落とし抜刀の構えを取った。

 

「二天一流・秘伝!」

 

その一言でジャンヌオルタは一瞬だが騙された。すぐにその言葉に意味はないと気づいたのだがその一瞬が大きかった。

 

その一瞬をついたタツキは閃光玉を破裂させた

 

あたり一面を覆った光はすぐに収まり、そして光が消えた後に視界を奪ったのは煙だった。

 

「なっ!?」

 

「グバア」

 

逃げ出したタツキの身体から血が溢れているのをタツキは見ていた。

 

何の痛みも感じないし、それに今の行いは俺の意思ではなかった。

 

タツキはただそれを見ていただけだったのだ。

 

「儂の中の......タツキじゃったか。今回は助太刀したが、二度目はない、二度目を要求するなら契約を成せ。安全な場所までは逃げてやるから安心せい」

 

( あんたは誰だ?)

 

「儂か?儂は......そうじゃな、こう名乗ろうか、儂は弁助というもの」

 

(弁助?何故あんたは俺を助け......)

 

何だこれ視界が白くなって

 

「潮時じゃな、全く、ヘマするならあの時の用に死ぬことはない程度でやれよ、死んだら元も子もない、さらば」

 

タツキは森の中で突然力を失ったかのように倒れた。

 

そしてタツキは騎士団に拾われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『タツキ君!大丈夫かい!?タツキ君!何があったんだ!?』

 

 

なんだこれ。

 

 

ロマン?俺は

 

 

「お、お目覚めですね」

目を開けるとそこは森の中だった。

 

「すみませんね、至急救護に当たらせたために、街に戻ってから手当をさせてもよかったのですが」

 

俺が寝ている隣で話しかけてきているのは銀色の鎧を身に纏った、顔色のあまり良くないと言っては失礼だろうが、そんな印象を受けさせる男だった。

 

「ああ、失礼私はジル・ド・レェと申します、現在はフランス軍にて指揮を取らせてもらっています」

 

「俺は、宮本タツキです、よろしく、助けてもらったことには感謝する。だが俺はすぐに行かないと」

 

「ああ、知っています。偵察兵からの情報によりますに、貴方は異国からの者だとか。ですが、そのような状態で、行かせるわけには行きません」

 

大丈夫だって言いたいが両腕が痛む。

 

「ならば、どうしろって?ここで寝てろってか?」

 

「武器は取れますかな?」

 

 

ジルドレェの質問を疑問に思ったが、寝ている状態から起き上がりジルドレェが指差す先にある刀をとった。

 

感触はある。

 

スッと刀を鞘から抜き、一振り、腕に痛みを感じるが触れなくはない。

 

「ああ、問題ない」

 

「そうですか、よかった、では貴方をこのフランス軍が援護しましょう」

 

「は?いやいや、そんなことしてもらう必要はないんだが!?」

 

突然のジルドレェの案に驚きを隠せず、驚き半分でジルドレェをとても疑うようになった。

 

何故なら人に優しすぎる。

 

「遠慮なさらず」

 

「遠慮......。俺だってあんたを信用しないわけではない。だが、嘘をつくというのなら、まだ分かる。だが、何もなしに俺を助けるというのはあまりに不自然だ」

 

「そうですか。では、現在フランス軍の兵達は著しく減ってきています。理由はタツキも分かっていると思いますが」

 

「竜の魔女。」

 

「ええ、それもありますが、ワイバーンや死者抜け殻から蘇ってくる屍達。我々だけでは、防衛するのがやっと。そこにタツキが加わればこちらから、打って出る事ができます」

 

「なるほどな。嘘半分、本音半分ってとこか。分かった。じゃ、俺がフランス軍に入ればいいんだな?」

 

「ッ!? そうなりますか。なるほど。貴方は面白い方だ」

 

「あんたに任せるさ、隊長に俺の行方はな。あんたがやりたいことをやってくれ、俺はあんたの部下だ。やりたいことがあるのだろ?」

 

「あ、ああ。そうですか。それでいいのですか......。感謝を」

 

そういうとジルドレェは部隊の仲間がいるところへ行った。

 

「ロマン聞いてたよな?てことで俺少しの間フランス軍の一員になっちまったんで、よろしくー」

 

『全く。急に通信が切れたと思ったら、フランス軍に所属って。それでタツキ君は無事なのかい?うちの技師がすごく心配していてね〜』

 

『心配?なんのことだい?遊び道具がなくなる心配はしたがね?』

 

「あーはいはい。知ってますよ〜じゃ、無事ってことで」

 

通話を終わらせタツキは太刀2本、小太刀2本を腰に収め軍の人たちのところへ向かった。

 

軽い自己紹介を済ませ、皆と共に食事をしたのち、兵の一人が見回りに行くということだったので、それについて行くことにした

 

「この森はお前らの根城って感じか?」

 

「いえ、違います、本来は城や街や砦などを拠点としているのですが、魔女が現れてからというもの、城は奪われ、街は襲われる始末、タツキさん達と同じように危険が少ない場所といえば森ということになるのですよ」

 

「なるほどな、それでお前はいつも偵察兵なのか?」

 

一瞬その兵は驚いた表情を見せたがすぐに戻った。

 

「ええ、私はいつもそんな感じですかね。弱いんですよ、僕。力はないし、剣の腕もない、銃を使っても敵に当たらないんです。そんな僕はこれしかなくて」

 

「何故フランス軍に?」

 

「憧れてたんです。ジャンヌダルクに。しかし、僕が入隊してすぐに彼女はいなくなったんです」

 

「というとお前は最近入ったのか?」

 

「ええ、偵察兵としての腕を買われたんです。そんなにすごかったのか?ジャンヌダルクってのは」

 

「ええ、すごいなんてもんじゃないですよ。彼女が戦場に現れてからというもの、フランス軍が覚醒するかのように強くなったんです。私の父は当時フランス軍でジャンヌダルクと共に戦っていたので、その話によればですが」

 

「当時?ってことはもう軍は退いたのか」

 

「いえ、敗死です。ジャンヌ亡き後のフランス軍は一気に弱くなりました。ジルさんはああやって指揮を高めていますが、あの人ほどジャンヌダルクのことを悔いた人はいないはずです。あの人から聞くジャンヌダルクの話はいつも希望が見え、そして次第に絶望に変わって行くような気がしてならない。そんな話方をされます」

 

「父はそんなジルさんが絶望に堕ちかけている時に彼を救ったとジルさんから聞きました。だからですかね。僕が入隊できたのは」

 

「いや、お前の実力だろう。人には向き不向きがあり、お前は偵察面では優秀なんだ、自信を持てよ」

 

「全く貴方ほどの実力者に言われると嫌味に感じるのを通り越しますね」

 

「そうか?ならよかったじゃないか」

 

「それよりですね、タツキさん。このまま森を進むと屍達と遭遇します、行きますか?」

 

「見えるのか?」

 

「いいえ、足音です。木々を踏む時になる音です」

 

「やっぱり、お前は優秀なんだよ。ぶっ潰してくるのもいいんだけどな。ちょっと隠れるか」

 

タツキと兵は近くの木の裏に隠れた。

 

「そういえばお前名前」

 

「僕ですか?僕はレコンです。」

 

「レコンか、わかったよ。よろしくなレコン」

 

「来ます」

 

レコンが言ったタイミングと同時に屍達はタツキ達の隠れる木の前を通り過ぎようとしていた。

 

「行くわ」

 

「はい」

 

タツキは木から音を最大限に消し、一気に屍達との距離を詰めると真横から屍を斬り倒した。

 

続く屍達が反応するより早く左手で小太刀を抜きもう一体の屍を斬り伏せた。

 

「すみません数を教えておくべきでした」

 

「気にするな、まあ2体だったから一瞬驚いたくらいだ」

 

「偵察は終わりですね、戻りましょうか」

 

「もう終わりなのか?」

 

「ええ、実際タツキさんがしっかりと戦えるみたいでしたので」

 

「?おいまさか。偵察って」

 

「はい!タツキさんの偵察です!」

 

ととても笑顔でレコンは答えた。

 

「ジルさんに報告した後、タツキさんは軍での戦いになります。軍では指揮官の命令に従ってください。軍での自由行動はッて!タツキさん」

 

タツキは太刀を鞘に収めたらすぐに来た道を戻り出していた。

 

 

「全く」

 

レコンはため息をつきタツキの元へ小走りで向かった



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13話 邪竜と聖女と二天一流10

フランス軍のキャンプへ戻ったタツキとレコン。

タツキはジルドレェにより配属された軍の者たちと少し交流をしていた。

 

「それでタツキという男は信頼に値するか?」

 

キャンプの奥ジルドレェが待機している場所でレコンとジルドレェは話していた。

 

「信頼はできると思います、しかし。多少、彼は自由すぎます。ですので、彼らの隊を最前線にするのが良いかと」

 

「なるほど。一人暴走されては困るりますね。わかりました。では、デュア隊に配属しましょうか」

 

デュア隊とは現フランス軍の中でも最も気性が荒い者たちの集まりで毎度最前線に立っている者たちの集まりだ。

 

働き手が無い、荒くれ者どもがこぞって入隊を希望した時に作られた部隊。隊長のデュアは前騎士団長で引退していた身だが、ジャンヌダルクの死などフランス軍の危機を知らされ戻って来た。そして即荒くれ者達をまとめ上げた。

 

「デュア隊ですか。タツキさん、大変ですね」

 

レコンはタツキのいるデュア隊の方を見て、苦笑いを浮かべた。

 

「では、レコンはいつも通りお願いしますよ」

 

「了解です」

 

レコンは森の中へ姿を消した。

 

 

 

ジルドレェからデュア隊キャンプへ向かうように言われデュア隊キャンプへ来たタツキは呆然としていた。

 

「俺はデュア・ロ・クリュア。デュアと呼んでくれて構わん。俺はこの軍を指揮している者だ。お前がこの軍に配属されるというのなら自由に動いてもらっては困る。命令は絶対だ!」

 

壁。

 

そう感じさせるような男だ。

鎧を纏っていないにも関わらず、その身体の分厚さは恐ろしいものだ。

分厚い胸板、ガッチリとした腕や足、とても太い首、頭には髪は無くそれが尚更この人から恐ろしさを感じる要因の一つとも言える。

 

「俺はタツキです、よろしくお願いします」

 

いつも通りの挨拶のはずが、声が上擦り、手からは手汗をかいていた。

 

「うむ、ではジルのところへ集合だ」

 

デュアの指示に従いデュア隊の皆が動き出した。デュア隊は見た感じは40人ほどの軍隊だ。そして各々が纏うオーラの様な物はどれも武人としての威嚇には十分と言えるものだ。

 

「早く行こーぜ、遅れるとデュア隊長に殺されかねない」

 

話しかけて来たのは、金髪の青年。彼からは恐ろしさは感じなかった。だが、タツキは気づいた。こいつは、自らの殺気や狂気といった全てを内側へ内包しているということに。

 

「お前は?」

 

「俺はこの隊の、切り込み隊の一人なんだけどね、いやーまじ怖いでしょあの人」

 

「切り込み隊?この隊そのものが切り込み隊では無いのか?」

 

「まあ、そうなんだけどさ、基本的には銃撃戦なのよ、俺らの戦い方ってさ、でもまずいことに今のフランス軍には銃弾が足りて無い。」

 

「は!?」

 

「だから。今はジルさんが指示した時以外は銃は使ってはならないんだよ」

 

「まじか!?」

 

「でもそれが大変なのよ。運搬隊の人達は毎度、銃を持っていっては使わず。みんな早く終わってくれと思ってるのさ」

 

「そりゃ大変だな。そういえば、なんで皆ジルさんっていうのにデュアはジルって言ってたんだ?あいつ、元叛逆者とかか?」

 

先ほどのジルのところへ行くという発言でタツキが疑問に思っていたことを聞いて見た

 

「ああ、それはデュアさんは元々ジルさん達の上に立ってた人なんですよ、軍退いた後にジルさん自らが頼みに行くほど彼は信頼されてるみたいですよ」

 

「まじか」

 

「まじです」

 

 

 

「我々の敵は、魔女、そして邪竜のみ!見つけ次第砲撃の許可を出す!遅れをとることはあってはならん!出撃」

 

 

「「「「オオオオオオオオオオオオ」」」」

 

森の中に人の雄叫びが響き渡った。

 

 

 

出撃から1時間

 

 

「それでタツキ、お前の得意とする武器はなんだ?」

 

デュアの隣をタツキは歩いていた。

 

「自分の得意技晒すって愚かじゃ無いですかね?」

 

「ハハッ、そりゃそうだ、だが、その腰につけている4本の和の国の剣が武器というのはわかっておるがな」

 

「まあ、こんな堂々と帯刀してたら気づきますよね、そうですよこの4本が俺の武器ですね」

 

「俺の武器はこいつ」

 

そういって見せつけられたのは、というか先ほどから目に入ってるのは。もうほんとはこの人を体現したかのようなゴツい大剣だった。

 

そしてこの人は先ほどより大きくなっているように見えるのは銀色に輝く鎧を纏っているからだ。

 

「諸刃の剣ってやつですね。剣の両面に刃とですか」

 

「そうだ、その方が効率よく敵を倒せるだろ?」

 

「そうですね」

 

まあ、諸刃の剣ってのは力負けしたきにそれは自らを襲う。だからこそ、使う人はあまりいない。

 

 

「デュア隊長!ワイバーンの複数、二足歩行の狼複数が接近!接触まで約20分です!」

 

 

「うむ。」

 

《 デュア隊よ!敵はワイバーンと狼!20分後に戦闘が始まる!準備をせよ!》

 

デュア隊に向かいデュアは大声で知らせを伝達した。

 

突然現れた、レコンにより敵の接近を知らされたデュア隊は各々が戦闘準備にはいった。

 

「レコン!?」

 

「あ、タツキさん、最前線ですね〜頑張ってください」

 

そういうとすぐに隊の中に消えていった。

 

彼は人からの注目を消すのが上手い、タツキは知っていても見失ってしまった。

 

20分弱、ワイバーンの群れと戦闘が始まった。

 

「盾を持つものは攻撃を弾け!剣を持つものは一撃で羽を捥げ!弓を持つものは一矢で目を抜け!」

 

「「「了解」」」

 

デュアの命令に皆が当然であるかのように了解を出した。

 

「ギャシャ」

 

ワイバーンの群れの前線にいたもの達が下降しながらその鉤爪で隊に突進を仕掛けてきた

 

「弾きます」

 

突進に合わせ盾を持つ10人が各々3人チームを組みワイバーンと激突した

 

盾を持っていたもの達は後方へ弾き飛ばされたが命を賭したものはいなかった。

 

ワイバーンは突進を止められた後すぐにホバリングを始めようとしたが、突進を仕掛けたワイバーンの羽は全て一瞬にして捥がれていた。

 

「隊長!次来ます!」

 

「盾ども!働ェエエエエエ!」

デュアは後方へ弾かれ、倒れていた者たちを鼓舞した。

 

「「「はい!」」」

 

 

「ウォオおおおおオオオオ!」

 

ガンッ!!

 

という破砕音と共に盾兵達は後方へ弾かれた。

 

「行けェエエエエエ!」

 

剣を持った者達がすぐにワイバーンの羽を捥ぐ、これが繰り返されていた。

 

「デュア!これはあまりにも」

 

「あまりにも?何だ?」

 

そのデュアの目にはより恐ろしい覇気があった。

 

「盾の奴らが可哀想だ・・・と?損な役回りだとでも言いたげだな」

 

武人である前にタツキは一様は平成の人間だ。弾かれ吹き飛ばされ、ゾンビのように繰り返す。こんなのは非道だと感じていた

 

「悪いか」

 

「悪い!彼らの勇敢さ、気高さを馬鹿にしているようなものだ!彼らは自らが志願してそこでやりたいと言った者達だ!彼等はそれを誇りにしている!ならば、この俺が、隊長がすることは決まっている!何も気にせず使ってやることこそが!彼等の望みだとは思わないか!」

 

「そ、そうだぜ。新入りよ。俺らはこれに全てかけてんだ。だから、弾いた後は任せてんだぜ。」

 

盾持ちの一人がタツキの肩を叩き、そう言い残し最前線に出た。

 

「どうだ?まだ文句があ」

 

「無いね。何も。俺の勘違いだった。悪いことをした。前線に戻る」

 

タツキはデュアの言葉を最後まで聞かず、自らの答えを述べデュアの元を去った。

 

「切り替えが早いというのだろうか。あいつは何を見てきたのか。」

 

その一瞬のその会話がタツキという男の本質を、フランス軍隊員ではなく武人としての宮本タツキを見せた。

 

最前線に向かうと言ったタツキは走行中にタツキより離れた横の中で何かが通った。

 

タツキは即動きを止めそれを見た。

 

そこには複数の武装した二足歩行で走る狼が中衛ラインまで接近を始めていた。

 

そしてワイバーンに気が向きすぎて、それには誰も気づいてはいなかった。

 

後方はジルドレェ

前線にデュア

 

中衛はそう言った指揮官はいるのか!?

目に見えるだけで三十匹はいるぞ。

 

「弾くぜ!」

 

動きをタツキ止めていたタツキを狙ったワイバーンの攻撃を盾持ちの一人が弾いた

 

「タツキ!任せタァ!」

 

後方へ弾かれたのは先ほど少し会話をしていた、金髪の男だった。

 

その一瞬でタツキは思考を一度リセットし、弾いたワイバーンに目標を定めた。

 

《 一刀−輪廻 》

 

綺麗な弧を描く斬撃はワイバーンの身体を切り落とした。

 

ただの斬撃で羽を落とすのもいいがその時はタツキの中で少し後悔があった。

 

突っ立っていなければタツキならあいつに盾をやらせずにすんだだろうと。

 

だからこそ、技を見せた。

 

タツキは抜刀した刀を黒色の鞘に収め、横後方へ走り出した

 

(間に合え!間に合え!間に合え!)

 

奇襲だけはされてはならない。軍隊に綻びが生じてしまう!

 

「タツキ!?」

 

金髪の盾持ちの男は突然走り出したタツキを見てすぐに弾かれ倒れていた状態から起き上がり、タツキを追った。

 

「指揮官を少し外れる。大丈夫か?」

タツキが走ったのをみたデュアは隊の一人にそう伝えると、言われたものはタツキの暴走をみていたので、これはヤバイと思いながらも

 

「だ、大丈夫です!」

 

「では」とデュアは地に突き刺していたその大剣を持ち上げると、タツキとは逆方向に走り出した。

 

「えぇ!?!?」

 

てっきりタツキが怒られると思っていた隊の者達は驚愕を隠せないでいた。

 

 

 

タツキは潜伏しながら、接近する狼の後方へ刀を突き刺した。

 

 

奇襲を仕掛けようとしていた狼達は突然の奇襲に隊列を乱していた。

 

タツキは後方からタツキの存在に気づけなかった狼を一掃した。

 

タツキの両手には小太刀が握られていた。

 

だが、奇襲が成功したとはいえ狼が武装しているということはこの狼の中にも手練れはいるようで、タツキが来たことにより前方の狼が中衛ラインに一気に攻め込もうとしているのが見えていた。

 

「クソッ!」

 

タツキは敵一体につき2秒かからず倒していたが、手練れのやつらは10秒はかかってしまう。このタイムロスは大きい。

 

ここで閃光を弾けさせたら見方にも影響が出てしまう。

 

何より身体が重い

 

技一回につき身体が悲鳴をあげているのがわかる。

 

身体がタツキへ危険信号を出しているということだ。

 

令呪はもう無いため無理やり身体を強化することはできない。だからこのスピード以上は無理

 

「そんなにできてても満足できないって顔してんな」

 

「は?」

 

「助っ人でーす」

金髪の男だった。

 

「盾は効率が悪い下がれ、それに今は守ってもらわなくても戦える」

 

こいつがマシュのような盾での攻撃をできるとは思えない。ならば下がっていてもらう方が邪魔にならない。

 

「ま、その辺は理解した上で来てるんだよ。俺元々は個人専門の暗殺者だぜ?」

 

「は?」

 

そう言った瞬間前方にいた狼の首が落ちた。

 

「ワイヤーか」

 

「流石タツキさん目がいい!そうですよ〜、まあ一回で気づかれたのは悲しいんですけどね」

 

「いや、それ初見殺し系だから気づいた時には死んでね?」

 

「まあ、そうですかね?」

 

盾にワイヤーをセットしてその先を先ほどこいつが動きの中、気づくことができないレベルの速度で何かを投げたのは見えていた、その何かを敵の首にワイヤーが当たるような軌道で投擲する。

 

「証拠となるワイヤーは盾から切り落とせばいいか。まじで暗殺者かよ」

 

「そうですよ〜、まあ国がこうなっちまった以上、暗殺とか意味なくなっちまったんでねー。こんな感じで軍で盾やってるんですよー」

 

「なんで盾。お前なら他のもできそうだけどな」

 

「いや、そりゃ暗殺者として暗躍してたことバレたら処刑されちゃいますよ。だから、バレないように盾なんです」

 

「・・・?バレないように?。お前!バレてないのか!」

 

テヘ?と舌を出して笑いやがった、次の瞬間前方の狼、8匹の首が落ちた。

 

「ほら、タツキさんおしゃべりしてないで、手動かしてくださいよ!」

 

「何言ってんだ?もう狼は隊長みたいなやつ以外いないぜ?」

 

「は?何言って......」

 

9匹の狼の身体が切り落とされていた。

 

「ワイヤーっすか。タツキさんもできたんすね」

 

「流石本職だな、気づくのが早い。まあ、できるけど、普段はやらない、今回はお前がやってるのみて久しぶりにやってみたくなったんだよ」

 

「なんでやらない?」

 

「まあ、理由はいくつかあるが、ワイヤー使いなら俺が動いた方が早いんだよ」

 

「あーなるほど〜、そりゃそうですねえ」

 

「じゃ、あのいかにもお頭感の出てるやつを倒して前線復帰しますかね」

 

「俺は盾やりましょうか?」

 

「好きにしてくれ」

 

「わかりましたー」

 

 

一閃

 

 

大将と思わしき狼は一瞬にしてタツキに倒された。

 

 

「ま、わかっちゃいましたけど、タツキさん本当に盾の役割奪いますよね」

 

「はは、悪いな、じゃ戻るか」

 

 

タツキと金髪は狼を始末し前線復帰した

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハハハハハハ!」

 

 

時を同じくして、タツキとは逆方向に潜伏していた狼部隊は恐怖を感じていた。

 

「なぁに、怯えんでも良いぞ?俺は一人、お前達は30以上、数だけで言えばお主らの勝ちであろう?」

 

狼達の目の前に立つのは巨人

 

ではないが、そう思わずにはいられなかった。

 

この人間はヤバイと本能が察しているが、足がその場から離れようとしない。

 

恐怖が狼達を支配していた。

 

「そう慌てるなや、1匹ずつ綺麗にしてやるから」

 

頭の禿げた巨漢は手に持つ大剣を存分に振り回していた。

 

それもとても楽しげに

 

 

 

 

 

「これで全てだな」

 

タツキ達は前線に戻りワイバーン達を全て倒した。

 

「タツキさん、この先で、タツキさん達の仲間の方々と竜の魔女達が戦闘を開始しようとしています!急いでください」

 

「武蔵達か!」

 

タツキが隊を抜け出そうとした時だった

 

「タツキ、待ちなさい! レコンの話によればそこにジャンヌがいる可能性があるという。我々の最大出力を持って加勢に加わる!フランス軍よ!進軍せよ!発泡の許可をする!」

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ」」」

 

 

タツキのいる前衛部隊、デュア隊隊長はジルドレェのその指示があったことを聞いた途端、全力疾走で荒野を駆けて行った。

 

そしてそれに続くように、デュア隊の隊員達が走り出した。

 

「タツキ!遅れるな!今から始まるぜ!楽しいフランス軍の戦いがな!」

金髪がそう言い残し走って行った。

 

タツキはすぐさまそのもの達に続き走ることにした。

 

「おい!なんでデュア隊は走ってんだ?」

 

走りながらすぐ近くに話したやつに声をかけた

 

「今から砲撃が可能になった、我らデュア隊は前線で戦う者達だ、先に行って出来る限り殲滅するのさ!」

 

「なるほどねぇ」

 

タツキ達の目の前に現れたのはワイバーンの群れ、そして、その中でも目を引くのは、ファヴニール。巨龍だ。

 

「おいおい、竜殺しはどうなったんだよ」

 

先陣を切って走っていた、デュア達がワイバーンと交戦を始めた。

 

 

「 撃てェエエエエエ!ここがフランスを守れるかどうかの瀬戸際だ!全砲弾を撃って撃って撃ちまくれ!狙いは巨竜のみ!ワイバーン共はデュア隊が始末する!全ての弾を巨竜へ撃ち込め!恐れることはない!嘆くな!退くな!人間であるならば、ここでその命を捨てろ!もう一度言う!恐れることは決してない!何故なら」

 

と、怒涛の怒鳴りを上げていたジルドレェが一度言葉を切り

 

 

「我々には!聖女がついている!」

 

 

ジルドレェのその一言により

 

フランス軍は今までで最高の雄叫びを上げた。

 

 

「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」

 

 

タツキはすぐにフランス軍を抜け、ジャンヌダルクと黒いジャンヌダルクがいるところへ向かおうとした。

 

 

「宮本タツキさん」

 

「え?」

 

突然、ジルドレェに話しかけられた。

 

 

「貴方とはここでお別れです、あまりにも短い時間でしたが、面白かった。狼の時は特にね、楽しませてもらったよ。それでだが。タツキに最後に一つ頼みがある。」

 

「頼み......か。叶えるのは無理だと思う、俺はこの時代の人間じゃないんだ」

 

「そうでした。ではこうしましょう。もし貴方がここにいる間に私が私で居られなくなった時は、迷わず私の首を刎ねてください。」

 

「は?」

 

「信じられないかもしれませんが、わかってしまうのです。この身はいつか、闇に侵食されるのが。だからもし貴方がいる時にそうなった時は」

 

「わかったよ。フランス軍宮本タツキとしての最後の仕事。期間内であれば成し遂げる」

 

「では、さようなら」

 

 

タツキはすぐに最前線の前にある者達の元へ向かった。

 

 

カルデアの宮本タツキとして

 



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14話 邪竜と聖女と二天一流11

フランス軍を抜けたタツキはまずはジャンヌの元へ走った

 

「ジャンヌダルク!黒い方もいるな。で、ジャンヌはあの黒いの担当って感じでいいのか?」

 

「はい、そういうことです」

 

「助太刀したいが、この戦いの勝敗はあのデカイ竜を倒せるかだと俺は考えてるんだが、ジャンヌはどう考える?」

 

「はい、同意見です」

 

「なら俺はあの竜殺しの助太刀に行くよ、それで武蔵はどこにいる?」

 

「彼女なら、あそこです。。。怪我をなさっているのであまり動かない方がといったのですが」

 

竜殺しやジャンヌ、藤丸達に近づくワイバーンが一匹もいないのは武蔵が一点に引き受け始末しているからだった

 

「あっちにいった方がいいかな」

 

「あ、それなんですが、タツキさんが来たらこう言っておいてと言われました『合流するのが遅い。待ってたわよ』らしいです。それと『やるべきことをやってきなさい』らしいです」

 

「ジャンヌありがとう」

 

「はい」

タツキはジャンヌに頭を下げ、すぐに竜殺しの男の元へ向かった。

 

「おいそこの竜殺しの男、共に戦うことを許可してもらえないか?」

 

男はタツキに呼ばれ、タツキを見てその腰に帯刀されている4本の刀を見て一人頷いた。

 

「剣士か、構わん。今は人手が多い方が良い」

 

「すまない」

 

「それは私のセリ......」

ジークフリートは何かをボソッと呟いた。

 

「え?」

 

「イヤなんでもない」

 

「そうか、藤丸、任せたぜ」

 

「タツキ!やっときたか心配したよ」

 

「俺は死なないさ!多分!」

 

「ははは、怖いな」

 

「まさか、三度。貴様と相見えることになるとはな」

 

「三度?」

 

「そうだよタツキ、彼は竜殺しジークフリートさ、あのファヴニールを倒したことで有名な英雄だよ」

 

「まじか!あれを倒したとか」

 

「ファヴニール!邪悪なる竜よ!俺は此処に居る!」

 

「ブォオオオオ」

 

ジークフリートの宣言にファヴニールが反応を示した。

 

「サーヴァント達よ!前に出よ!」

 

「やあ、君達!」

 

「あああああああ!お前!おい!お前!男か!女か!どっちなんだ!」

 

「失礼だね、それは何方でも良いこと、私はシュヴァリエ・デオンそれだけだ」

 

「武蔵!ワイバーンはフランス軍の援護もあるから無理しすぎるなよ!」

 

武蔵に聞こえるぐらいの声で叫び、タツキは前を向いた。

 

「シュヴァリエデオンとかその他諸々は藤丸任せていいか?」

 

「ああ、それはいいがタツキは?」

 

「もちろんあの竜を倒すしかないだろ?」

 

「そうか、わかった、任せろ」

 

「サンキュー!」

 

タツキはジークフリートの隣へ向かった

 

「ジークフリートって言うんだってな、俺はタツキよろしく頼む」

 

「よろしく」

 

「早速だが、竜討伐とでも行きますか」

 

「そうしたいところなんだが、敵のサーヴァントが多すぎる」

 

「そんなの勿論、急行突破しかないじゃないですか?」

 

「成る程。やるか?」

 

「勿論!お前はメインだろ、俺の後ろに退がってついてこいよ」

 

「俺が?俺は守られる立場には無いんだがな」

 

「まあ、今回は役割分担ってやつさ」

 

「すまない」

そう言ったジークフリートは何処かドヤッとしていた。

 

「なんだ、そのドヤ顔。。。」

 

「気にするな」

 

「じゃ、行きますぜ!お客様」

 

タツキは二本の小太刀を抜き全力で走り出した。

 

「行かせない!」

 

シュヴァリエが阻止しようとタツキよ前へ割り込んできたがタツキは気にすることなく走り続けた

 

(任せたぞ)

 

「行かせません!」

 

シュヴァリエの前にマシュが立ち塞がった。

 

「ナイスだ!マシュ!」

 

「頑張ってください!」

 

シュヴァリエはマシュを振り払おうとするもマシュは鉄壁だった。

 

流石だ

 

「一気に走り抜けるぞ、竜様がお待ちですよ!」

 

「ああ!」

 

「ブォオオオオアアアアア」

 

ジークフリートの接近にファヴニールが反応を示した

 

ファヴニールの前に着いたタツキとジークフリートは辿り着くまで何体かの骸骨達を始末したものの無傷で辿り着くことができた。

 

「タツキ、これだけは言っておく、俺が前回こいつに勝てたのは無数の敗北からわずかな勝ちを拾い上げたようなものだ、覚悟はできているか?」

 

「覚悟とは?俺がお前の無数の敗北分の時間を稼げってことか?」

 

「違う、それでも戦う覚悟はあるのかと聞いているんだ」

 

「なければ来ないだろ。それに俺がさっき言った事は違わない、俺はお前の無数の敗北分を引き受けてやるよ」

 

「何を!?」

 

「見てろよ、それと見落とすなよ」

 

タツキは小太刀を二本とも鞘へ納め。紅色の鞘の刀【 紅刃命要 】を抜いた

 

「久しぶりだな、蜥蜴野郎!」

 

「ブォオオオオ」

ファヴニールもタツキと事を忘れてはいなかった。

一瞬とはいえ、ファヴニールは彼に畏れをなしてしまったのだから

 

「ブォオオオオオオオオ」

 

ファヴニールは方向の直後、その足で踏み潰さんとタツキへ向かい振り下ろした

 

タツキはそれを避け、返しでファヴニールのその足を斬りつけた

 

「ブォ‼︎」

 

タツキは一本の刀を何回も切返し、ファヴニールの右前足を斬りつけ続けた。

 

ファヴニールはそれを回避しようと翼を広げた

 

「ジークフリート!今!」

 

「任せろ!」

 

広がった翼をチャンスを伺っていたジークフリートが切断した

 

「ブォゴオ‼︎」

 

ファヴニールは少し後退をしたが、直ぐにジークフリートへめがけ左前足を上げた

 

「しまっ!?」

 

ジークフリートは着地地点を少し誤っていたため完全にファヴニールに潰される未来が見えた。

 

「いや、任せたんだったな」

 

「そうさ!任せろって言ったろ?」

 

《 一刀−滝登り》

斬り上げの攻撃の中でもタツキの滝登りは剛の技、ただ力一点に絞られた技であり、この技は隙が大きい分威力に関しては申し分ない

 

ファヴニールの足はタツキの斬り上げにより着地地点をズラされた。

 

「ジークフリート!」

 

「ああ!」

 

ズラした足の逆足にジークフリートが斬り込んだ

 

二本の足を同時に意識して動かすのはそう簡単な事じゃないだろう

 

苦戦を強いられたファヴニールは空に向け何かを吐き出した

 

「なんだあれ?」

 

「タツキィイイイイ!回避ィイイイイ!」

 

ジークフリートが突然叫んだが遅かった。

 

吐き出された何かが弾け、周辺を花火の如く拡散したブレスが襲った。

 

「ジークフリートさん!」

 

後方から藤丸の指示により飛び出してきたマシュがジークフリートを守った。

 

しかしタツキはジークフリートとは真逆の足を狙っていたため完全に回避するしかなくなった。

 

「タツキさん!」

 

「マシュはジークフリートを守れ!」

 

「ですが!」

 

タツキはブレスを避け続けたが、こういう時に襲ってくるのが傷というやつで

 

タツキの動きはファヴニールという強大な敵を前にアドレナリンが放出され、痛みを感じていなかったが、それが切れ始めタツキの動きは鈍かった。

 

「やべぇ!こいつのブレスが花火のように拡散するとか聞いてねぇ!」

 

タツキは全力で地を走り回りそして、同時にファヴニールへの注意を忘れてはならないという状況は続いたが直ぐに終わった。

 

ファヴニールのブレスによって

 

「おいおい、なんだよその口にで光ってるやつはよ!」

 

「マシュ!宝具展開!」

 

「はい!」

 

藤丸の指示によってマシュが宝具を展開した

 

《ロード・カルデアス》

 

展開された巨大な盾の宝具

 

あそこに行けば守られるんだよ!もっと早く動けっての!

 

タツキは自らの足を鼓舞し全力でマシュの方へ走ったがファヴニールがそれを許すはずが無く

 

《ブォオオオオオオオオオオオオオ》

 

閃撃

 

と呼ぶには軽すぎるか

 

ファヴニールの口から放出されたブレスは狂い無くタツキを襲った

 

 

「タツキィイイイイ!」

 

「タツキさん!!!!」

 

「タツキッ!!」

 

藤丸、マシュ、ジークフリートの声が耳に入ってくるのがわかったがこれはやばいというか死んだ

 

 

タツキはそれを見ていることしかできなかった。

 

 

 

数分前フランス軍

 

 

「ジルさん、あんなこと言っていいのですか?殺されるんですよ?」

 

タツキが去った後、ジルドレェの隣にレコンがいた。

 

「構わない」

 

「ジルさんもカルデアに行きたいって感じですね、いや、カルデアというより、ジャンヌダルクの元へ。ですか?」

 

レコンの言葉にジルドレェはフッと笑みを浮かべ

 

「今、共に戦えているでしょう。それ以上は望みません」

 

・・・

 

レコンはその台詞に違和感を感じた。

 

「それが、貴方を良からぬ方向へ連れて言ってしまうということをお忘れなきよう」

 

「フフフ、わかっていますよ。レコンさん無駄話をしている暇は無くなって来ましたよ」

 

ジルドレェが指差す方向はタツキと竜殺しと呼ばれていた男がファヴニールと戦闘を開始していた。

 

「行かなくてもよろしいので?」

 

「え?いやいや、行っても役に立ちませんよ!」

 

「もう芝居は良いのですよ、貴方も彼らと同じなのでしょう?」

 

「あらら、バレていましたか」

 

「はい。彼の息子はレコンという名前ではありませんからね。しかし、証言だけは確かなものでした。ですのでフランス軍へ配属を許可しました」

 

「何故、信じたのですか?」

 

「それほどまでにあの時のフランス軍はギリギリだったのです。貴方の偵察力などがありフランス軍はすごく助かりました。ありがとうございます。さてお別れです。最後に本当の名前を伺うことはできますか?」

 

「そういうことだったのですね、上手く騙せていると思っていたのですが。ですが申し訳ありません。私に真名は無いのですよ。本来僕のような者はサーヴァントとして召喚されません。僕は各国で暗躍していた、偵察者の集合体のような者なのです、だから、彼の息子の記憶もその中にあった。」

 

「なるほどわかりました。reconnaissances偵察者から取ってレコンですか、安易ですね、ですが気づきませんでしたよ。ではお気をつけてレコンさん」

 

「今までお世話になりました」

 

レコンはその場で姿を消した。

 

「やはり彼を誘ったのは過ちでは無かった」

 

ジルドレェは彼に裏があることには気づいていた。それでもジルドレェは彼をフランス軍へ配属させた。

 

そしてそのようにして配属させた人間はもう一人いた。

 

 

 

「タツキさん、大丈夫ですか?」

 

ファヴニールのブレス攻撃がタツキを襲う直前、タツキをレコンが拾いその場を離れていた。

 

「は!?レコン!?お前今の動き......。」

レコンのその動きは速いをはるかに超えていた。

 

「ははは、まあ僕は一様タツキさんのサーヴァントなんで」

レコンはタツキを地面におろしながらそう言って微笑んだ。

 

「え?今なんて」

 

「話してる暇はなさそうですね。竜殺しさんもいるみたいですし、一気に行きましょうか」

 

「レコン、事情の説明は今はいい!そして俺たちがやることはジークフリートの動きに合わせてジークフリートへの直撃を全て弾くことだ!」

 

「ジークフリート......。なるほどわかりました」

 

レコンはそういうとファヴニールに向かって走り出した

 

そのレコンの身体からは黄色の粒子が溢れ始めていた。

 

「ジークフリート!お前のやりたいように動け!今までは俺一人だったが、今はこいつがいる!こいつは頼りなさそうに見えるが信頼していい!」

 

ジークフリートは首を縦に振り、了解と示した。

 

タツキは手に持っていた、刀《紅刃命要 》を鞘に収め小太刀を二本抜いた。

 

「ここで終わりにしよう、蜥蜴野郎」

 

「無事でよかったです」

 

「タツキ心配させすぎ!」

 

「タツキ、すまない」

 

「タツキさん、勝ちますよ」

 

《 二天一流-皐月其の一 稲妻 》

 

突きからの斬撃は其の傷跡が稲妻のように見えることから稲妻と名付けた技

 

ファヴニールの胸に刻まれた、輝く刻印に稲妻の刻印が刻まれた

 

《「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る。撃ち落とす、 幻想大剣・天魔失墜バルムンク! 》

 

《僕の全てを力に》

 

「マシュ!」

 

「はい!先輩」

 

連続された大技はファヴニールという伝説を打ち倒した。

 

「倒せた......?」

 

『 ファヴニールの完全沈黙を確認!凄い』

 

「ああ、やったなタツキ」

 

「先輩!ワイバーン達が!」

ワイバーン達はボスの消滅により統率が取れなくなっていた。

 

「なっ......!」

 

ジャンヌオルタはそれを受け入れられないというように呆然とそれを眺めていた。

 

「お戻りあれ、ジャンヌ!」

 

そうジャンヌに声をかけたのは、首に大きな花のような赤黒の物を巻き、目の視点があっていない目をしており、肌はとてもいい肌色とは思えない男だった

 

「ジル!」

 

は?

 

「・・・ジル?」

 

「......ジル......!?」

 

タツキと同じくその一言にジャンヌが反応した。

 

「まずはこの監獄城に帰還を!態勢を立て直しましょう」

 

「わかりました」

 

「まちなさい!」

 

撤退しようとしたジャンヌオルタをジャンヌが呼び止めたが撤退を阻止することはできなかった。

 

「ジル......か。」

 

「タツキさん、貴方はジルと同じ場所で戦っていたのですよね」

 

「そうだ、フランス軍に助けてもらったからな」

 

「では、あのジャンヌが言っていたジルって」

 

「ああ、それは俺も思った。確かにジルと呼ばれて......まさか。」

 

「何か?」

 

「いや、なんでもない、わからないことは考えすぎない方がいいよ、俺が言えた立場じゃないが迷いは戦いを鈍らせる」

 

「はい、わかりました」

 

またフランス軍として戦わないと行けないかもな

 

そういえばフランス軍といえば

 

「レコン!?」

 

「あ、タツキさんすみません」

 

レコンは地に足をつき下を向いていた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないですよ、ははは、やりすぎてしまいました。」

 

「何処もやられてないだろ!しかもお前サーヴァントって真名もまだ聞いてないぞ」

 

そう言ってる間にもレコンの身体は黄色い光に包まれていっていた。

 

「僕は真名がないんです、だから本来は召喚されない。タツキさん貴方の二天により繋がれたんです。我々名もなき偵察兵が。そして我々は力を使う度に霊力を失います。今ので最後でした。ですので、お別れですありがとうございました、タツキさん」

 

レコンはタツキに笑顔を見せた

 

「ありがとうレコン」

 

タツキはレコンにそう言った

レコンは笑顔でそれに返答し消えた。

 

レコンはサーヴァントではありサーヴァントではない。これが最後。彼は二度と召喚されることはないのだろう。

 

だからこそ。そう言った奴との別れに涙はタツキは流さない。

 

「タツキ、次がここでの最後の戦いになる。気を落とたなんて言わないでよね」

 

武蔵がタツキの肩に手を置き、タツキを武蔵なりに励ました。

 

「武蔵......なんか久しぶりだよ」

 

「タツキ、泣きそうになってる」

 

「泣かないんだよ。少しの間でも仲間だったやつが全うしたんだよ、俺が涙なんて流したら悲しくなるだろ」

 

「タツキは優しすぎるよ」

 

武蔵がタツキに抱擁した

 

タツキは何故か武蔵の肩に顔を埋めた。

 

タツキは初めてだった、

 

死にそうになること

 

一人で知らない軍に行くこと

 

仲間と別れてしまうこと

 

その仲間が死ぬかもしれないこと

 

そして仲間との別れ

 

そう言ったものが武蔵の慈愛のこもった台詞によってタツキが隠していた高校生としての宮本タツキは を引き出した。

 

タツキは少しの間武蔵の肩に顔を埋め続けた。

 

武蔵はタツキの頭をを我が子のようにずっと撫でていた。

 

「ジャンヌさん。追撃は少しだけ待ちましょう」

 

「そうですね。アレを見せられたら無理やり行こうなんていえません」

 

マシュやジャンヌ全てのメンバーがタツキと武蔵を見ていた。

 

タツキはここで一度に経験した数々を忘れないだろう

 

だからタツキが泣き崩れることはもう無い

 

藤丸はそんなタツキをやっと人間らしいところを見せてくれたと思いながらみていた。



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15話 邪竜と聖女と二天一流12

おいおい、俺は何してんだよ

 

宮本タツキは自分という存在を後ろから見る形でそれを見ていた。

 

宮本タツキが宮本武蔵の肩に顔を埋め泣いている姿を。

 

今のタツキは弁助という男が乗り移った時と同じ感覚だった。

 

周りが暗い世界

 

ただ自分の背中だけが見える世界

 

「おいまたかよ。弁助流石に今回のこれは怒るぞ」

 

タツキの声色には怒りが混じっていた

 

あんなこっぱずかしいことされて次会う時なんか変な感じになるだろ。

 

「弁助ェエエエエエ」

 

タツキはその暗い世界で叫んでいた。

 

「五月蝿いやつじゃのぉ。儂に何か用か?」

 

突然話しかけられたタツキは咄嗟に振り返って刀を抜こうとしたが、タツキの腰には獲物がなかった。

 

よってタツキは腰に手を当てただけという不思議な体勢になっていた。

 

「エゲツネェ警戒心じゃ。不意に話しかけられたら刀を抜けとでも教えられてきたような振る舞いじゃな」

 

タツキの背後にいたのは初老の男だった。

姿は黒色の袴を着ており、その腰には二本の刀と二本の小太刀

髪は断髪されていない上に髷という風来坊のような雰囲気があった。

 

「お前が弁助ってか?」

 

「左様、儂が弁助じゃが?」

 

「人の事言えねぇよ。お前こそ、話しかけたら殺すというような殺気放ちやがって」

 

弁助はフッと笑みを浮かべた

 

「それで、儂に何かようか?」

 

「あったりまえだ!おいテメェ!俺の身体使って勝手な事やってんじゃねぇ!」

 

タツキは映し出されている、宮本タツキin宮本武蔵の肩を指差しながら文句を投げつけた。

 

「ああ、あれか。あれは儂ではない」

 

「あ?」

 

「そ、あれはそこの爺さんじゃないさ」

 

弁助の後ろから突然、赤色の袴、顔立ちはキリッとしていて、人を殺すかのような目の女性が現れた。

 

「あんたは誰だってか、なんかわけわかんねーんだけど」

 

タツキはいろいろな事が同時に起こり過ぎたため、理解が追いついていなかった。

 

「お主、頭悪かったのか?」

 

弁助がふむというように顎に手を当てながらそんな見解を出した

 

「弁助あんたは馬鹿か、こんな状況理解できるかっての」

 

「ま、理解できないってのが普通よね」

 

女はそういったのち手にどこから出したのか一瞬で二本のクナイを出現させ

 

「私は、二天一流を継いでいたもの輝夜よ。それで今貴方の身体に入ってしまったのが菊丸、彼は最年少で二天になり、二天の中では最年少でこの世を去った」

 

「は?」

 

タツキは今の言葉を聞いて衝撃を隠せなかった。

 

てことはこの女はまさか俺の先祖?

 

それであそこで勝手に俺の身体を乗っ取って泣いてるやつも!?

 

それじゃあまさか。

 

タツキは弁助を見て「こいつもか」と呟いた

 

「そうじゃが?」

 

と弁助は悪戯な笑みを見せた。

 

「じゃ、なってしまったのは仕方ないな、なんで戦闘でもないのにあいつが俺の身体に入ったんだ?」

 

「母性に触れたから?かしらね。あのまだ子供だから。」

 

「そうじゃな、子供だからしかたあるまい!タツキよ、恥ずかしがらずこの先も行きたまえ!」

 

「......遊んでるだろ」

 

「遊んどらんぞ?」

 

「それじゃの、タツキ〜精々頑張るんじゃぞ」

 

弁助は手を振りながら歩いていった。

 

「あの人あんなだけど、すごい人だよ、それと菊丸も少しは許してあげてね。私なら恥ずか死にそうだけど」

 

フフッ

 

と笑いながら輝夜は消えた

 

「ああそうそう、あの子とあんたは正式契約でもなければ仮契約でもないからすぐ戻るさ」

 

そう言い残していった

 

 

 

ハッと一瞬意識が飛んだかと思うとタツキの顔は武蔵の肩に埋まっている。

 

憑依していた菊丸とかいうやつが追い出されたってことなのだろう。

 

だがここからの展開を考えていなかった。

 

それに以外と武蔵の包容力が高いことにタツキまでも飲み込まれそうになったりしていた。

 

「なあ、武蔵。やっぱ風呂入ってないから臭くなるよな」

 

タツキの放った一言により、たった今まで存在したはずの包容力が一瞬で殺気へと変化した。

 

「ねえタツキ。私はサーヴァントなの。刀なんて無くてもね......」

 

グゥギャッ

 

武蔵の包容力......いや、圧迫力が急にましタツキの身体は締め上げられていた。

 

「ちょちょぢょちょぎゃあああああああああああああ」

 

タツキの身体は無様に地に捨てられ、武蔵はマシュ達の所へ歩いて行った。

 

『タツキくん。デリカシーって大事だよ。。。』

 

ロマンの声と

 

『プフッ』

 

というダヴィンチの笑い声が耳に残った。

 

「ふじまるー!助けてぇ、死ぬ、うごけねー!」

 

「全く。いい雰囲気かと思ったら、何したらああなるのさ」

 

藤丸はタツキの元まで小走りで行き、タツキに手を差し出した

 

「サンキュ」と言いタツキはその手を取り、起き上がりながら「まあ、いろいろと」と苦笑いを浮かべた。

 

「ほら、今から攻め込むから準備しろよ」

 

「わかってるって、クソォ武蔵にあんなことされなかったらもっと動けたのになー」

 

「ねえ、タツキ?何か言った?」

 

武蔵がタツキの元まで笑顔でやって来て、冷めた笑顔で質問してきたがタツキにはそれに耐える勇気はなかった。

 

「お、俺はマシュの所へ行くよ」

藤丸ゥ!裏切りか!

 

一人残されたタツキは

「No!No!無い!無い!いい感じに疲れが取れたなーって言っただけ!」

 

「ならいいわ」

 

武蔵はそう言って去り際に

「タツキ。集中力切れてるわよ。入れ直しなさい」と呟いてマシュや藤丸達の所へ向かった。

 

 

全く。バレてんなぁ

 

タツキは武蔵の後ろを追いながら「その時までこのままでいさせてくれ」と言った。

 

集中するのは体力使うし、連戦や負傷などにより、タツキの身体はボロボロだった。

 

辛うじて動けてはいるが、こんな所で集中して戦闘態勢に入ったら直ぐにガス欠起こしてしまうだろう

 

武蔵はああ言ってくれたが多分俺の体力を過大評価してくれてるんだろうな

 

もっと強くならないとな

 

タツキは改めてそう決意した。

 

武蔵の隣へ戻りタツキは気になっていたことを聞いた。武蔵が冬木の特異点にて負った傷について約束したため武蔵は答えたくなさそうだったが、嫌々だったが話す気になってくれた。

 

「戦闘面では負けてなかったのだけどね、あいつ宝具使ってきたのよ。あーやらかしたわって思った。そしたらマシュが助けてくれたんだけど、死を免れた程度でダメージは大きかったってだけよ」

 

「じゃ、次戦う機会があれは俺たちで勝つぞ」

 

タツキはそれ以上の言葉を言わなかった。それだけで良かった。

 

タツキは自分が武蔵への理解を出来ているとは思っていない。ただ剣士として、武士としてならわかる。

 

直感のようなものだ

 

「そうね。二回も負けたんじゃ二天一流の恥よ」

 

「てかさ、武蔵。あのセイバーに男か女か聞いたか?」

 

「あッ!忘れてたわ!」

 

「倒すの早い!藤丸よ」

 

「そこに文句言われるとは思ってなかったよ、でもまあ知らない方が良いこともあるよ」

 

藤丸はタツキの絡みを綺麗に受け流すと、作戦会議を始めた。

 

「これから俺たちは竜の魔女を倒しに行きます、そこでここにいるメンバーの中でここに残る組と、討伐組で分かれようと考えているんだけど、どうかな」

 

「なるほどな。妥当な判断だ」

タツキは即、答えを出した。

 

「ここは任せて欲しい、清姫、エリザベートは連れて行け」

 

ジークフリートも直ぐに答えを出し、着物を着た女の子と悪魔コスをした女の子を討伐組へ推薦した。

 

この二人とは話したことがないタツキは一様自己紹介をしに行くことにした。

 

清姫からは、よろしくお願いしますねと言われ、エリザベートからは私の始末をありがとうと言われた。

 

タツキには何のことかさっぱりだったがタツキは「あ、おう!」と答えていた。

 

「それはいいけど、ねえ、どうして私たちなの?」

 

エリザベートの質問は当然なものだ。この二人が相当の腕を持っていない限り、真っ先に推薦はしないはずだ。

 

問われたジークフリートは何やらそっぽを向いて「お前達が妥当だ」とだけ呟いた。

 

(宝具を使われると耳が痛い)

(敵味方関係なく炎を吐かれたら困る)

 

「なあ、あんたもサーヴァントか?」

夕焼け色の鎧に獣の顔?のような物が肩にくっついた変な鎧の男にタツキは話しかけた

 

「俺はタツキ、なああんた何でそんなあの二人を此方へ送りたがる?」

 

「此方?ということは貴方も討伐組に?あの者達は両者共に宝具がですね。」

 

コソコソと耳元で囁かれた言葉から察するに彼女達の宝具は何やら恐ろしいものらしい。

 

「じゃ俺は行くよ、教えてくれて助かった」

 

「気にしないでくれ」

 

タツキはふと気付いたが藤丸のやつこんなに多くのサーヴァントと契約を交わしたのか。

俺は武蔵一人で......なんかレコンも俺のサーヴァントのようなことを言ってたけど。やっぱ藤丸はすごいな

 

「行きましょうか!皆さん!」

 

マシュによって出撃が開始された

 

藤丸、マシュ、ジャンヌ、タツキ、武蔵、エリザベート、清姫というパーティー編成となった。

 

ジャンヌオルタが撤退した城へ攻め込み、というかジャンヌがすごい急かすので皆結構全力で走った。

 

「急ぎましょう!遅れてしまえば、また新たなサーヴァントが召喚されてしまいます!」

 

「マジかよ!そんなポンポンサーヴァントとか召喚できんのかよ」

 

「タツキは別行動をしていたから知らないかもだけど、出来るみたいだよ」

 

「マジか!急がないとな」

 

ていうかこの城。臭い。

血腥い。

全く。死者の始末くらいしろってんだよ。

こんなんだからゾンビが沸くんだよ。

ああマジで臭い

 

「前方よりゾンビ複数接近してます!」

マシュの声に反応してタツキ、武蔵が飛び出した

 

「迅速に始末してくるわ」

 

「行ってくる」

 

タツキは小太刀を二刀抜刀し、ゾンビを片っ端から乱暴に斬り伏せた。

 

倒し損ねたゾンビは武蔵が直ぐにフォローに回り一瞬で片がついた。

 

「タツキ!雑よ!雑!私に残り物掃除させないでくれる!」

 

「仕方ないだろ!こんな城の廊下で戦ってんだからさー」

 

「言い訳しない!」

 

「タツキー行くぞ〜」

「武蔵さんも行きますよ」

 

二人の会話に付き合ってられない者達が直ぐにほっていこうとする。

 

「放置するなよ」

 

タツキと武蔵は刀を鞘に収め、あとを追った。

 

『その先にサーヴァントがいる!気をつけて!』

 

頼れるサーチマンことドクターロマン!流石!

 

「おやおや、お久しぶりですな。」

 

オールバックの髪型。血の気のない肌。ローブのような服に赤と黒の大きな何かが首の周りについている。手には本をもち、気持ちの悪い笑みを浮かべている。

 

「藤丸の知り合いか?」

 

「ジル!!」

 

と思ったらジャンヌの知り合いか......!?

 

ジルって言った?え?この気持ちの悪い男に対してジルって言った?

 

「まさかファブニールを倒しオルレアンまで乗り込んでくるとは感服しましたよ」

 

「しかし!しかしだ!聖女よ!その仲間達よ!なぜ私の邪魔をする!私の世界に土足で踏み込み、あらゆるモノを踏みにじり、あまつさえジャンヌダルクを殺そうとするなど!」

 

あーやはりこいつ。ジルドレェなのか。。。

 

「その点に関して、私は一つ質問があるのです。彼女は本当にジャンヌなのですか?」

 

「あれは確かにまぎれもないジャンヌダルク!その秘めたる闇の側面そのもの」

 

「ジャンヌたとえ貴女といえども。その邪魔はさせませんぞ!」

 

「あー盛り上がってるところ悪いけどさ、お前ジルドレェって事で間違いないな?」

 

「突然会話に割り込むなど、なんたる無礼!その通りですが何か?」

「やはり、そういうことか。って思ってな。なあ藤丸先に行けよ」

 

「は?ちょっとタツキ!?」

 

武蔵に肩を掴まれたがタツキは振り向かなかった。

 

「この世界でやり残したことがあるとするなら、フランス軍での宮本タツキの仕事なんだよ」

 

「なんです?貴方フランス軍の方ですか?」

 

「ああ、そうだぜ?ジルドレェ、久しぶりだな」

 

「記憶にございませんね」

 

「そうかよ、まあそりゃそうかって事でここは俺に任せてくれて構わない」

 

「では、ご武運を」

 

ジャンヌは直ぐに走り抜けようとしたがジルドレェがそれを阻止しようと動こうとしたのをタツキと武蔵が一瞬の動きでそれを止めた。

 

【 動けば殺すという圧力がジルドレェを襲った 】

 

「まったく。仕方ありません。まずは貴方方から始末しましょうかね」

 

ジャンヌ達を止めることを諦め、タツキと武蔵に対し臨戦態勢に入った。

 

「武蔵も行けって事だったんだけどな」

 

「今のタツキじゃ勝てないわよ」

 

「バレてんの?」

 

「当たりまえよ。頼りなさいよ」

 

「じゃ武蔵メインで動いてくれ、俺はサポートしか出来そうにない」

 

「わかったわ」

 

「行け!」

 

ジルドレェがそう言うとどこに隠れていたのか、大量のワイバーンやゾンビが大量に現れた。

 

「おいおい。まじか」

 

タツキは小太刀を二刀抜刀し臨戦態勢に入った。

 

「ちょっとヤバイわね。こいつら相手にしながら、あの男に警戒を払い続けないといけないってのは」

 

「ロマンちょっと藤丸達に伝えてくれ、もしかしたら後方から何体かそっちに行くって」

 

『わかった、伝えておくよ』

 

「ジルドレェ!やってやろうじゃねーかアアアああ」

 

「てか建物の中で狭いんだからさ考えて出せよ」

 

タツキと、武蔵はジルドレェにより召喚されたモノ達を片っ端から斬り伏せていた

 

「クソ!ウゼェ!」

 

「タツキさーん。フランス軍での自由行動のやり過ぎには注意を」

 

え?

 

金髪の青年が突然タツキ達の前に現れた。

 

武蔵は突然の出現に後方へ飛び、様子を伺うようにしていた。

 

「タツキさん、久しぶりですね、ッて言っても俺ももう終わりなんですけどね、こんなにやったら。流石にこの霊基は崩壊するんすよ。だから最後なんで、あー、そうそう、俺もタツキさんのサーヴァントですよ?ちなみに真名はありません、各国の名も無き暗殺者の集合体みたいなものなんで、あーじゃ早速終わらせますんであとお願いしまーす!」

 

「は?ええと?何?終わらせるって何を?」

 

「やだなータツキさん。そんなのこの雑魚共の始末に決まってるじゃないですか」

 

《 終わりなき繋がりを断ち切る者達 》

 

「道を切り開きますね、では後は任せます」

 

金髪が腕を縦と横へ交互に振った瞬間、周りを埋め尽くしていた、モノ達の身体が切断された。

 

「俺の霊基そのものを使った宝具ですよ、ははは、ほんと割りに会ってないですね。タツキさんの番ですよ」

 

金髪はそう言うと光の粒子となって消えた。

 

「なんです今のは!?!

 

「武蔵行け!」

 

「わかってる!」

 

ジルドレェが唖然としている瞬間に武蔵がジルドレェへ突進した。

 

「ハッ」

ジルドレェも元は騎士だからか直ぐに意識を戻し、武蔵に対して魔力の玉?のようなものを放ち続けていた。

 

「チッ!めんどい!タツキ!」

 

「おう!」

 

タツキはポケットに隠された煙玉を投げ周囲を隠した

 

「そのようなモノ!」

 

別の魔法なのか、ジルドレェの放った魔法により煙が直ぐに霧散した。

 

しかしその瞬間には武蔵の接近は止められなくなっていた。

 

武蔵の斬撃がジルドレェを斬り裂いた

 

「アアアアアアアアアア!」

 

ジルドレェは身体を抱え蹲りながら後退りを始めたが、武蔵は更に追撃を仕掛けんと一歩踏み込んだ瞬間ジルドレェの口元が歪む

 

突然地から青色の触手が飛び出し、武蔵は咄嗟の判断で交代しようとするも武蔵の足が絡め取られた

 

「しまっ!」

 

武蔵が吊り上げられ、ジルドレェが愉悦を浮かべ嘲笑に浸りかけた時、ジルドレェはとあることに気づいた。

 

あの男はどこに行った?

 

『 気づくの遅い 』『 武蔵さんに何すんだタコ野郎』 『 弱点こいつだろ 』 『バレバレ 』 『なんかこいつうざい 』 『ったく。仕方ねぇな』 『遠慮なく行け!』 『楽しめよ。俺』『これで終わりだよ』

 

《 気に食わぬ。徹底的にやれ!》

 

「ここだよ。ジルドレェ」

突然声をかけられ振り返るとタツキの姿があった。

 

そしてそれを見た途端ジルドレェは驚愕した。

 

誰だこれは。とそう感じた。

 

先ほどまでの男とは段違いの殺意と威圧感を持っている。

 

危険だ、直ぐに始末せよと、身体が反応したが触手は動くどころか、武蔵の離脱を許してしまっていた。

 

「な、なぜです!?」

 

ジルドレェは突然の出来事に対処しきれないでいた

 

「ジルドレェ。お前にもう腕はない。そしてさっきまで握ってた本は斬り捨てた。もう終わりだ」

 

ジルドレェは自らの右手を見るとそこには肘から先というものがなかった。

 

そしてその目線の先にはバラバラに斬り刻まれた、本があった。

 

タツキは戦闘に集中している二人から隠れるようにジルドレェの裏へ回り込み、そして斬られたという認識すらないレベルでの斬撃を持ってこれを成した。

 

「フランス軍にお世話になった時に約束したことだから悪く思うなよ」

 

「オノレェ!オノレェオノレェオノレェ!」

 

ジルドレェは突然叫び出し藤丸達が向かった方向へ走り出した。

 

「武蔵!」

 

「勿論!」

 

全力疾走で追いかけたが タツキの読みではジルドレェはあの本がなければ魔法が使えないのではと見ていたが違う可能性もあるため不用意に近づけないというのもあり、一定以上の距離を自然と、とってしまう。

 

「タツキさんと言いました?ここは私が抑えておきます」

 

「そうね、ラスボス戦の援護に向かってやって」

 

ジルドレェを挟むようにして向こう側からエリザベートと清姫が歩いてきた。

 

「なんで?って顔ですね。貴方方が雑魚を取りこぼさなければこんなことしなくても......」

 

「ほら先に行きなさいって、こいつの担当は任されるわよ」

 

「助かる」

 

「感謝するわ」

 

タツキと武蔵は悩むこともなく直ぐにジルドレェを二人に任せ藤丸の後を追った。

 



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16話 邪竜と聖女と二天一流13

「タツキさっきは助かったわ」

 

さっきとはジルドレェの触手に身動きを封じられていた時のことだろう

 

「気にするな、そういう作戦だろ?えーとまさか。相手が術師なのにも関わらず罠の類が無いなんて考えて突っ込んだんじゃないよな?」

 

タツキは笑顔で武蔵を煽ってみた

 

「と、当然よ!囮作戦に決まってるじゃない?」

 

「だよなー!」

 

「「ハハハハハ」」

 

心からの笑いではない笑いが生まれた。

 

「武蔵!あの奥の部屋みたいだな。一気に突っ込む......って出来そうにないな」

 

「みたいね」

 

廊下を進むと一人の人間が廊下の真ん中に立っていた。

 

カルデアの制服?

 

カルデアの制服を着て、髪は後ろで束ねられている。顔つきからすると20代前後。目は少しツリ目気味の女だった。そして腰には日本刀が2本あった。

 

「仲間?じゃないよな?」

 

「あの殺気で仲間だったら文句言ってるわよ」

 

「久しぶりね。立樹君、あの時は男装してたし気づかないのかな?私よ?近藤春馬」

 

「は?」

 

タツキの思考が停止した。

 

近藤春馬といえば高校1年の時に唯一タツキに黒星をつけた男だ。

 

「え?静?あなた、静なの!?」

 

「私の知り合いかしら?私は貴方とは初対面よ?」

 

「武蔵よ。宮本武蔵」

 

「あぁ。そういうことね。貴方が私の中にいたあの五月蝿い女。。。これは運命さえ感じるわね!フヒッ」

 

奇妙な笑みを漏らした近藤春馬こと名城 静は

 

「私は二天一流・門下 名城静 宮本正嗣......始めましょう?立樹君。リベンジがしたかったのでしょう?」

 

名乗りを上げられたら応えるしかないのだが、タツキは現象を把握できていなかった。

名城静がここにいる?何故?二天一流門下?

 

何がどうなって......ってそれよりも

 

「そんなことしてる場合じゃないんだ、手合わせしたいのは山々なんだが、今は別にやることが」

名城の抜刀と突進が同時だった。

 

《 一刀−流星群 》

 

突進、連続の突きが合わさった技、中間距離の間合いでの突進技の一つ

 

《 二天一流−卯月其の三 八重桜 》

 

全ての突きをタツキは切り返した

 

この時両者共に相手の技量を計り損ねていた。

 

名城は八連撃の突きを繰り出せばそのうちの何回かは直撃させられると思っていた。

 

タツキは突きを払いのけ続く連撃で名城を斬り落とそうとした。

 

しかしお互いが設定して繰り出した連続技は互いが相殺して終わった。

 

「流石ね〜タツキ君」

 

名城はフフッと笑みを漏らした

 

「八連撃の突きとかマジかよ」

と、驚いたように見せながら、タツキは足を気付かれないように踏み込み

 

《 二刀–流星群 》

 

突進と連続の突き。先ほど名城が見せた技をタツキは二刀流で打ち込んだ。

 

「フッ。タツキ君、貴方の間合いに私がいるように、私の間合いにも貴方がいるのよ?」

 

《 虚空 》

タツキの見たことのない技だった

一刀

ただそれだけで全てを終わらせる技を彼女は見せてきた。

それだけはわかった。

しかしタツキは突進を始めている。

名城は勝利を確信した。

 

スパッと名城の一刀はタツキの首を落とすことは無く、空を切った。

 

「え?」

 

《 二天一流−師走其の一 初白雪 》

 

「偽物!?」

 

名城の表情が一瞬にして歪み、タツキの場所を探そうとしたが、それよりも早くタツキは名城の横腹を回し蹴りで蹴り飛ばした。

 

「アガッ」

名城は腹を抑えながら立ち上がると刀を拾い上げ再びタツキのいる方向へ歩き出した。

「オリジナルの技……貴方も使うのね」

 

「静!あんた何して!」

 

「武蔵。これは私とタツキ君の決闘よ。邪魔しないで、あの時のように邪魔したら許さないから」

 

「静!」

 

「五月蝿い!」

 

名城は武蔵へ斬りかかった。

名城の表情は壊れていた。

 

武蔵は直ぐに反応し、一刀で止めると鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

「意味わからない!武蔵なんで邪魔するの!」

 

「静が間違っているからよ、なんでそんなことしてるの」

 

「私を助けてくれた人がそれを望んでいるからよ!悪い?武蔵だって私から離れて行ったじゃない!」

 

「タツキ!行きなさい!ここは私に任せて!早く行きなさい!」

 

タツキは直ぐに承諾を示し走った。

 

「ロマン!今の聞いてたか?藤丸達の方しか把握してないのなら後で説明するが、聞いてたなら答えてくれ、何故あいつがカルデアの制服着てるんだ?」

 

『 彼女はマスター適正者として選ばれていた一人だ 』

 

そういうことか。彼女もやはりあの場にいたのか。

俺が選ばれて、俺を負かしたあの女が選ばれない訳は無いよな。

 

「なるほどな。わかった。とりあえず考えても意味なさそうだから藤丸達のサポートに向かう!」

 

『 気をつけてくれ 』

 

タツキは通話を切ると、走るスピードを上げた。

 

「楽しかった」

 

タツキは不意に笑みがこぼれていた。

 

ーーー

 

「えぇええ!タツキ君行かせちゃったの!?詰まらないよ!詰まらない!詰まらない!詰まらない!」

 

「私じゃ力不足ってこと?」

武蔵は気合を入れて推し飛ばした。

 

「違うわ。私はタツキ君にしか興味無いだけ。それにタツキ君の実力もある程度把握できたし、今武蔵と戦うのは面白味に欠けるわね」

 

「静?」

武蔵からさらに距離を取り、名城は刀を鞘に収めると空間に穴を開け其の中へ入っていった。

 

武蔵はそれを追うことはしなかった。

 

其処が危険過ぎるということが武蔵にはわかってしまった。

 

「全く。面白くないわね」

武蔵はその穴が閉まるのを確認しタツキの後を追いかけた。

 

武蔵は心の中では武蔵vs名城の対戦カードを楽しんでいた。

 

それはタツキも同じだっただろう。

 

タツキvs名城

 

タツキはまた戦えるとは思っていなかっただろうし、それを楽しまない訳がないのだ。

 

その答えが最後の蹴りだ。

 

相手に負けを言い渡すのにタツキは殺しはしなかった。

 

「リベンジ達成」

タツキは拳を握り喜んだ。

 

ーーー

 

 

ああクソ!

 

あとちょっとで追いつけるのに何なんだよこいつら!

 

形を持たないサーヴァント。

 

シャドウサーヴァント達がタツキの進行を妨害していた。

 

 

「ああめんどい!」

 

 

《 一刀-流星群 》

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

シャドウサーヴァント達の群れに正面突破で突っ込んだ。

 

「ムゴオオオオオオ」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「邪魔ダァ!」

 

 

タツキはそのまま中央突破を決めると藤丸達が戦う元へと向かった。

 

 

「藤丸!戦況はって、ここにもこいつらがいるのかよ」

 

シャドウサーヴァントや、ワイバーン。そしてジャンヌオルタ。

 

「タツキ無事だったか?」

 

藤丸は戦況を見ながら声だけで質問した。

 

「もちろん」

 

「ならタツキ、あの黒いやつらを任せてもいいか?ジャンヌオルタは俺たちが引き受ける」

 

「任せろ」

 

タツキは【 秋 】を抜刀し、シャドウサーヴァントに斬りかかった。

 

こいつら一様サーヴァントなんだよな

面倒な強さを与えられてやがる

 

「タツキさん!任せます」

 

ジャンヌダルクが相手をしていた、シャドウサーヴァントを引き受けると、ジャンヌダルクは藤丸の元へ行った。

 

「ハァッ!」

 

タツキの刀はシャドウサーヴァントを片っ端から斬り落とした。

 

「タツキさん!危ないっ!」

 

ガッ!という炸裂音がしたかと思うとマシュがタツキの後方から迫っていたシャドウサーヴァントの攻撃を弾いていた。

 

「すまん」

 

タツキはすぐに後方へ振り返り、マシュが弾いたシャドウサーヴァントを斬り伏せた。

 

「マシュも行って構わないよ」

 

「わかりました」

 

そういうとマシュも藤丸達の方へ向かった。

 

 

「今度こそ決着の刻です。竜の魔女!」

 

ジャンヌダルクの声が響き渡った。

 

「黙れ!ならば、勝負だ。絶望が勝つか、希望が勝つか!あるいは殺意が勝つか、哀れみが勝つか。この私を超えてみせるがいい!ジャンヌダルク!」

 

そう、ジャンヌオルタが言い放った言葉で彼方で戦いの幕が開けた。

 

「藤丸。任せたぞ」

 

タツキはそう呟くと周りに湧いていいる、ワイバーンの始末に向かった。

 

「このヤロォ!待てコラ!」

 

ワイバーンはジャンヌオルタのサポートをしようとタツキの無視して藤丸達の元へ向かおうとする。

 

「ヤロォ。」

 

タツキは一刀を槍投げの要領で放り投げた。

 

「ギャォ」

 

ワイバーンが突然の攻撃に動きを少し止めた瞬間タツキはそのワイバーンの羽を斬り落とした。

 

「全く。逃げんなよ」

 

タツキは放り投げた【 闇 】をワイバーンから抜くとすぐに近くにいたワイバーンに向かい放り投げた。

 

 

《ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン》

 

《リュミノジテ・エテルネッル! 》

 

「チッ!なら!」

 

ジャンヌオルタの宝具はジャンヌダルクの宝具により完全に封殺されていた。

 

だがジャンヌオルタの視線は不意に近くのワイバーンを始末し続けるタツキに向いた。

 

「前回は始末できなかったけれど、今なら」

 

「ハァ!」

 

漆黒の棘がタツキの背中を目掛け放たれた。

 

突然の出来事にマシュは間に合わないし、ジャンヌも連続で宝具を使えない。

 

「タツキィイイイイ!!!!」

 

藤丸が叫んだことでやっとタツキは後ろを向いた

 

「なっ!?」

 

タツキは瞬間的に握っていた、【 闇 】で受けた

 

バンッという破砕音と共にタツキの刀の一つである【 名 《闇》】が砕けた。

 

タツキはすぐに砕けた刀の鍔をを放り捨て続く棘を体全体で横へ飛び込み回避したが、残りを止めることができないと判断した。

 

棘一本につき刀一本とか。そんな事したら戦えなくなるという思いがあるためタツキは刀を抜けなかった。

 

そしてタツキはまたもや、棘がタツキを襲うのを見ているしかできなかった。

 

「タツキ。武士なら迷わず刀を抜きなさい。刀のことを気にして負けるなんてあるまじきことよ」

 

「見せてあげるわ。タツキ天眼を」

 

 

そう言って武蔵は現れタツキの前に立ち刀を抜いた。

 

 

武蔵は迫り来る棘を目に見えぬ速さの斬撃で斬り裂いた。

 

タツキはそれを見て衝撃を隠せないでいた。

 

無駄が一切なく、時間や空間といった、理すらも凌駕するその太刀筋はタツキの心に一瞬にして染み渡った。

 

 

( すごすぎる )

 

タツキは子供が何か憧れたものを見るようなそんな目をして目の前の宮本武蔵を見ていた。

 

 

 

「ハァ!!!!」

 

タツキの心配は要らないと判断したジャンヌダルクがジャンヌオルタへトドメの一撃を決めた。

 

「そん、な。馬鹿な!有り得ない。嘘だ。私は聖杯を所有している!そんなはずは!」

 

ジャンヌオルタは敗北を認めないといった態度で藤丸達を見ていた

 

「おお、ジャンヌよ!なんという痛ましいお姿に......!」

 

まじか。

 

タツキはその声で誰が来たか分かってしまった。

 

「ジルドレェ。。。」

 

「ジ、ル......」

 

そう言ったジャンヌオルタの言葉には力がこもっていなかった。

 

「このジルドレェが参ったからにはもう安心ですぞ。さあ安心してお眠りなさい」

 

そういってジルドレェは微笑んだ。

 

「でも、私は、まだフランスを、滅ぼせては......」

 

「私に全てお任せを」

 

「眠りなさい。目覚めた時には私が全て終わらせています。」

「そうよ、ね。貴方が戦ってくれるなら安心して」

 

そういうとジャンヌオルタは光の粒子となり消えた。

 

これで、勝ったのか?

 

いや。まだか。

 

「やはりそうだったのですね。」

 

ジャンヌがジルドレェを睨みそう言った。

 

「勘の鋭いお方だ。」

ジルドレェは微笑んで返した。

 

「あ!此処にいた!」

 

「いきなり逃げ出すとは」

 

エリザベートと清姫がジルドレェの後を追って来たのかやっと到着した。

 

「任せたのに......」

 

タツキは聞こえない程度の声でそう呟いた。

 

ジルドレェってめっちゃ面倒そうだし、相手にしたくないんだよなあ

 

「聖杯を持っているのは竜の魔女ではありません。いえ、そもそもあのサーヴァントは英霊の座には決して存在しないサーヴァントです」

 

「私の闇の側面でない以上そう結論せざるを得ません」

 

「その通り!竜の魔女こそが!我が!願望!」

 

「即ち!聖杯そのものです。」

 

「な......!?」

 

「え!?どゆこと!?竜って聖杯なの!?じゃあアタシも!?」

 

ジャンヌダルクが聖杯を手にして悪事を働いていたのではなく」

 

一同がジルドレェの解答に衝撃を受けた。

 

 

「貴方は。ジャンヌダルクを作ったのですね。聖杯の力で」

 

「心の底から貴女を蘇らせようと願ったのです。心の底からですよ。しかしそれは聖杯に拒絶されました。それだけは叶えられないと」

 

 

「だが!私の願望など貴女以外に無い!ならば!新しく創造する!そうやって竜の魔女を作り上げたのです!聖杯そのもので!」

 

そういった、ジルドレェを見てタツキは思った。あの時のジルドレェが危惧していたこととはこういうことか。だから殺せと命じたのか。あの人は気づいていたのだと、タツキは改めてあの人の凄さを感じた。

 

「そう。彼女は最後までそのことを知らなかったのでしょうね」

 

これはジャンヌがフランスを憎んだわけではなく。

 

ジルドレェがフランスを憎んだのだ。

 

だからこそ。暴走した。

 

ジャンヌはそれを許せた。

 

しかしジルドレェにはそれが許せなかったのだ。

 

そして今、間違った道を突き進むジルドレェをジャンヌが止めようとしている。

 

それはジャンヌダルクとしてか、ルーラーとしてかはわからない

 

だが、元々は仲間だったのだ。

 

ジャンヌはそれを全力でやるつもりだ。

 

ならば

 

俺だって元々は仲間だったんだ。そして最後の任務を果たそう

 

 

「決着をつけよう!ジャンヌダルク!」

 

「望むところ!」

 

「マスター聖杯を確認しました。指示をお願いします!」

 

「みんな!これが最後の戦いだ!気合い入れて頑張るぞ!」

 

藤丸が皆を鼓舞した。

 

「マシュキリエライトー行きます!」

 

「タツキ行けるか?」

 

「もちろんさ、指示任せる」

 

「わかった」

 

藤丸、マシュ、ジャンヌ、エリザベート、清姫、タツキ、武蔵

 

各々が各戦い方で藤丸の指示に従い動いた。

 

タツキは俺たちの目である。

 

だからそれ以上は心配いらない

 

後方から触手の攻撃が来たとしてもだ。

 

それは別の誰かが弾く

 

そうこのように

 

「ハッ!」

 

武蔵が斬り落とした。

 

左方からの触手もだ

 

エリザベートが弾いた

 

 

そしてタツキはジルドレェの真正面まで辿り着いた。

 

「久しぶりです。ジルドレェ。貴女からの命令ですよ?覚えてますか」

 

タツキはそう言いながらジルドレェを斬りつけた

 

「ウッ」

 

ジルドレェは後方へ下がるとその手に持つ本を前に出した。

 

身体が再生してやがるのかよ。

 

聖杯の力ズルくねーか?

 

「タツキ!バック!」

 

藤丸の指示が出たのでタツキは後方へ下がった。タツキへの追撃はマシュが弾き、マシュへの攻撃をタツキが斬った。

 

そしてタツキと入れ替わりで武蔵が突っ込み、その入れ替わりでジャンヌや、清姫と交代しながらジルドレェは徐々に押し始めた。

 

 

「なっ......」

 

「終わりです」

 

ジャンヌが最後の一撃を与えた。

 

運命というやつだろうか。

 

「聖杯の力を以ってしても届かなかっただと......そんなはずは。。。そんな理不尽があってたまるか!」

 

そういった、ジルドレェにジャンヌは優しく話しかけた。

 

 

ありがとうと、そして在るべき時代へ戻ろうと

 

 

ジルドレェは笑顔で地獄へ落ちるのは私だけでと答えた。

 

 

《 聖杯の回収を完了した!これより時代の修復が始まるぞ!レイシフトの準備は整っている、直ぐにでも帰還してくれ》

 

「了解しました」

 

そして藤丸達とそのサーヴァント達は別れ話を始めた。

 

タツキにはそういったサーヴァントがいないためタツキはここはと席を外した。

 

「全く。別れってのは。。。」

 

「そうですね、別れと離れないものです」

 

「え?」

 

そこには銀色の鎧を身に着けた。男がいた。

 

「ジルドレェ?」

 

「はい、ありがとうございます。しっかりと任務を果たして頂けたみたいですね」

 

「いんや、果たしてないさ、現に貴方はこうして正常だ」

 

「何を」

 

「貴方は貴方だ。ジルドレェ。俺が部下になったのは貴方ですよ。」

 

「そうですか、では私が思い込みすぎただけという事でしょうか」

 

「俺はそういうことにしておいた方がいいと思うけどね、アレは貴方とは思いたくないよ」

 

「そうですか」といいジルドレェは微笑んだ。

 

「では、ありがとうございました。タツキさん」

 

そういうとジルドレェはジャンヌの元へ向かった。

 

「タツキって意外と味方増えるわよね」

 

ジルドレェと入れ替わりで武蔵が来てタツキの刀を見た。

 

「やっちゃったわね。」

 

タツキは鞘を触りながら

 

「やっちゃったな」

 

「でもね、タツキ。刀はタツキの命より価値は低いから、そこのところは忘れんじゃないわよ」

 

「分かったよ。」

 

 

「タツキー!そろそろレイシフトするぞー」

 

藤丸に呼ばれたのでタツキは武蔵と共に藤丸の元へ向かった。

 

ーーー

 

 

「おかえり」

 

ほんとに帰って来たんだな

 

タツキは改めて帰還したことを実感した。

 

 

「初のグランドオーダーは無事遂行された」

 

「おや、おかえりって、だいぶん疲れているようだね」

 

「ロマンちょっと部屋で休んでいいか?疲れすぎて休みたい」

 

「あ、ああそうだね、藤丸君は平気かな?」

 

「ええ大丈夫です」

 

「じゃ、言いたいことは藤丸君に伝えておくし追々、聞いてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

タツキは管制室を出ると、自分の部屋へ向かった。

 

やばいなこれ、視界が暗くなってきてる

 

安心したからか、一気に抜けていく

 

やべぇ身体に力入らない

 

「ほら!タツキしっかりしなさい、部屋まで歩けないなんてどれだけ気を抜いてるのよ」

 

「武蔵?ああ、よかった」

 

タツキはそのまま気を失った。

 

その後、武蔵はタツキを部屋まで運び荒療治で叩き起こし、タツキを風呂へ入れ、服を着替えさせ、カルデアのメディカルルームへ連れて行き、部屋で寝かしてあげてと言われたので、再びタツキを部屋まで運びベッドへ寝かせてあげた。

 

「全く。しっかりしなさいよ、マスターなんだから」

 

 

タツキはそのまま1日中眠りについていた




メルトリリス様欲しいですね
私は50連ですが出ませんでした

↓こちらオリジナルキャラクターのイメージイラストです。
名城になります。少しでもイメージとして持っていただければ幸いです

【挿絵表示】




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第二特異点
17話 ローマ帝国と二天一流


カルデア

 

第一特異点から帰宅後数日が経ち、タツキ達は次の特異点へ出発するまでの時間を潰していた。

 

タツキは自室でカルデアの制服に着替え、刀を帯刀するためのベルトを巻き、三本の刀を帯刀し、部屋を出た。

四本あった刀の一本は折れてしまったため、今は三本しかない。

 

今日のタツキの予定はダヴィンチちゃんの工房?に赴き、ルーン文字の勉強方法が書かれた本と、折れてしまった刀の代わりとなる刀をダヴィンチちゃんに作成してもらうように頼んでいたのでそれを取りに行く。

 

武蔵は黒いセイバーにやられた傷を回復するため霊体化し、身体を再構築しているらしい。何でも霊体化とは危険を伴うらしく戦闘中やレイシフト中は避けていたらしい。てっきり傷が治らないのかと思っていたが、治るのであればよかった。

 

しかし、少しの休暇を貰えたので、修行に付き合ってもらおうと考えていたが、それはまたの機会にしよう。

 

実際、トレーニングは欠かしてはいない。第一のレイシフトの時にわかったことは、サーヴァント相手にも、ある程度は戦える。だがそれはあくまで先手必勝に限る。戦いがもつれるにつれ、不利になって行くのは俺の方。

 

まったく、呆れるほどに強いやつらだ。

 

などと考えているうちにダヴィンチちゃんの工房に到着した。

 

タツキは扉をノックすると自動ドアが開きタツキは部屋の中へ入った。

 

「出来たって聞いたから来たけど。。。それは?」

 

タツキは部屋に入ると己の目を疑った。

ダヴィンチちゃんの手に握られている刀は赤黒く輝いており、ダヴィンチちゃんは徐ろにその刀をこちらに向け、「エクスカリバー。なんちゃって」と言った。

 

しかし、なんちゃったのはダヴィンチちゃんの言葉だけで、赤黒い輝きはタツキに向かい放たれた。

 

うん。やばい。

 

タツキは咄嗟に刀を抜刀し、刀を赤黒い輝きに合わせた。

 

《一刀-流波》

 

本来は相手の刀を流す技だが、緊急事態のためこの技を選んだが結果としてそれは吉と出た。

 

そしてダヴィンチちゃん的には凶と出た。

 

タツキに上手く流された赤黒い輝きは部屋に置かれていた、奇妙な形の木で作られたような車を破壊した。

 

「なああああああああああああああ!!!」

ダヴィンチちゃんは手に持っていた、刀を放り投げると破壊された車の元へ足を運んだ。

「ごめんよ。スピンクスメギド号。ごめんよ。必ず蘇らせてあげるからね」

あああああと膝を地につき手でその残骸をすくい上げた。

 

タツキはそれを横目で確認しながら、先ほどダヴィンチちゃんが落とした刀を拾い上げた。

 

重さは前の俺の使っていた刀と遜色はない。だが、なんだこの刀の柄に空いている星型のような穴は。

そして問題はこの刀が先ほど赤黒い輝きを放ち攻撃したことだ。

エクスカリバーと言っていたが。。。

「エクスカリバー?」

「ああ、あれは冗談だ。厳密にはルーンによる攻撃ということだ。君がルーンの勉強をするというならそれに特化した刀を一本作ってみようと思ってね」

「なるほど、それは考えてもなかったな。それに重さ的にも少し軽いくらいだから、違和感はあまりない、完璧だ」

「まー待ちたまへ、少し軽いくらいだったら完璧ではないだろ?」

そういうとダヴィンチちゃんは虹色に輝くゴツゴツとした石をタツキに渡した

 

「これは?」

「それは聖召石と言ってね、高価なものだが、作れないことはない。一度のレイシフトにつき5個くらいまでなら渡せる。そしてそれをその柄の窪みにはめてみてくれ」

「これを?」

タツキは聖召石を柄の窪みに入れると聖召石が丁度全てが埋まる大きさだった。

 

そして驚くべきことにその石をはめた瞬間刀の重量が俺の前に使っていた刀の重さとの差が感じられなくなった。

「完璧みたいだね。それじゃ先ほどの赤い光をイメージしてケンと言ってみてくれ」

 

タツキは一つ息を吐き、そして

 

「ケン!」

 

タツキの言葉に反応し、聖召石が輝きそして、刀の刀身が赤く輝きを放った。

 

「振ってみて」

 

「りょーかい!」

タツキはテンションがマックスになっており、少し考えなしに、刀を縦一文字にに振り切った。

 

ズサーンと、いう斬撃の後にブォンという爆破音

壊れ果てていた車がさらに酷い姿へと変わった。

 

「んー?」

「なっ......」

 

「タツキ君。限度ってわかるかな?」

「は、はい。そうですね。はい。」

「次やったら君に幸運はないと思いたまへ。」

「わかりました」

 

「わかってくれればいいんだ、ま、とりあえず説明を済ませよう。それは君の魔力ではない。君はあまり魔力を使うのに慣れていないようだったから、その聖召石がある。それは一度使うと砕けてなくなる。だが一度だけ君の代わりに魔力を生み出してくれる。その証拠に君は今魔法を使えた。そしてその代わりに砕けてなくなっているだろ?」

 

タツキは柄を見るとそこには窪みがあり、石は無くなっていた。

 

「とりあえず3つ渡しておく。今2つ使ってしまったからね、聖召石の使い道は慎重にね、それじゃ、また次に呼ぶ時には新たなる発明を期待しておいてくれたまへ」

「流石。期待しておくよ、ちなみにこの刀に名前はあるのか?」

「好きにつけてくれて構わないよ」

 

「裏斬にするよ」

「なるほど、いいんじゃないか?」

「ちなみにルーン文字は3種類、彫っておいたからそれ以外は使えない、まずはその3種から学ぶことを進めるよ」

「ありがとう」

 

タツキは裏斬を腰のベルトへ入れ、部屋を出た

 

タツキは部屋へ戻り、ダヴィンチちゃんから貰った、【 ルーン魔術攻略本 これで一流貴方もルーン魔術師 】という胡散臭さMAXの本を読むことにした。

 

 

 

読んでいてわかったことは、以前クーフーリンから学んだことの内容に近い、つまりはクーフーリンが口頭のみで説明してくれたあの内容。あの人はわかりやすく端的に教えてくれていたことになる。

 

それに比べこの本は。。。

 

 

アンスズの対応アルファベットでAです。アルファベットでもいいならその方が覚えやすいと思いますよ!

まあ一度やってみよう!

Aの文字を書いて、アンスズと言うだけ!

これで貴方もルーン魔術が使えますよ!

多少魔力を取られますが貴方ならできるでしょう!

え?どんなことが起こるか?それはやってみてからのお楽しみというやつですよ!

ほら!まずはやってみる!ルーン魔術!

 

 

タツキはイライラと本を持つ手に力が入るがそっと緩めると、ベッドで横になった。

しっかり読むから流し読みスタイルに変え、本を流し読みした。

 

うん。これはアレだ。

信用してはいけない系のやつだ。

中身がない。

やり方と結果のみが書かれた本。

簡単にいうなら3+3x3=12という答えをそれはそうなると教えられている感じ。

掛け算を先にするという説明がないという、とても危険な説明しかない。

応用が効かない。

でも、その問題は答えることができる。

ダヴィンチちゃんはこの本をどこから取り入れたのだろうか。

 

作者は誰だと思い作者欄を見ると

 

《 作: 戦闘センスしかない男 》

《 内容解説: 戦闘馬鹿 》

《 試し撃ち: 戦闘センスしかない男 》

 

ははは。

 

ビリという音と共にその本は破り捨てられた。

 

ルーンの意味は把握できた。

そしてどうなるのかも。

だが、応用ができない。

そして所々に書かれていた言葉が、イメージすることが重要だ。という一文句。

 

いざという時にしか使わないでおこう。

 

ちなみに裏斬に掘られていた文字は、K、H、Iの三文字だった。

 

裏斬の柄に聖召石をはめ込んでおけば、重さ自体は、慣れ親しんだ重さになる。

 

ルーン魔術を使うかは置いておいて、とりあえずはいつも通りで行くか。

 

別の問題として、こちらに持ってきていた戦闘アイテムが底をつきかけてる。あれは親父に作ってもらってたことが多かったため、タツキ自身では量産はできないし、それに。作るために必要な素材がない。

 

一様ダヴィンチちゃんには頼んでおいたけれど、先ほど渡してもらえなかったところから察するに、まだ作成中なのだろうか?

俺的にはレイシフトまでに間に合わせてくれたらいいのだが、感覚的に不安が残る。

 

などと考えていると、タツキの部屋の扉が開いた。

 

「タツキー!暇?復帰したから、相手頼める?」

武蔵がドンと入ってきた。

回復したというのに、その矢先にそんなことして

 

「怪我しても知らないぞ?」

「へー?タツキが怪我をするの間違いじゃない?」

「ははは」

「ふふふ」

 

《一刀-袈裟斬り》

一瞬の笑いの後、タツキは刀を抜刀と共に武蔵に向かい何の躊躇いもない、斜め切りをした。

 

武蔵は片手で瞬間で抜刀し、袈裟斬りと自らの刀を当て、受け身なしで、物理法則に従い横へ飛ばされた。

 

しかし、その横飛びに合わせ足を出した。

 

タツキは技を止められた反動でそれを回避できず、武蔵の蹴りがタツキの肩を蹴り飛ばした。

 

「ぐっ」

タツキは後ろに倒れたがすぐに体制を、立て直し、武蔵を確認すると、武蔵も同じく体制を立て直しこちらを見ていた。

 

タツキは肩を少しだけ動かし、動くことを確認し、息を吐いた。

 

あぶねー。肩を狙うとか、ズリィ!

片手が上がらないとか負け確定。

 

じゃ、こっちも相手の片手を奪いますか。

 

「タツキ、肩は平気?」

「安心しろ、お陰様で平気だ」

「そうなの!?残念」

「おい、てめ、こちとら一般人だぞ!サーヴァントじゃないんだから回復遅いんだ馬鹿!」

「これは真剣勝負よ」

「わかってるって!」

 

《 一刀-衝撃剣-天 》

 

見た目は何の変哲も無い、上段斬りをタツキは行なった。

 

何か別の技が控えてるとかってわけじゃなさそう?

「え?何それ。流石にそれは舐めすぎ......」

武蔵は片手の刀で受け止め、もう片方の刀でタツキを斬り伏せようとした。

 

スッ

 

一瞬、武蔵の目に恐怖が過ぎり、武蔵は受け止めようとした刀を引き、身体を半身にし刀を避けた。

 

「何故?避けたんだ?」

「危ない気がしたからよ」

「正解だ」

「やっぱりね」

 

武蔵は刀を鞘に収めると、まあまあねと呟きタツキの部屋のベッドのうえで寝転がった。

 

「疲れたあー。タツキー、団子もらってきてー」

「は?お前が行けよ、あとそれ俺のベッドだ」

「いいじゃない、減るものじゃないし、それに病み上がりよ、早く団子」

「はいはい。わかったって。たく。」

タツキは刀を鞘に収めると、部屋を出て行った。

 

「全く。小細工ばかりしてるかと思ったら、危険な技まで持ってるっていうのが、腹立たしい」

武蔵はあの刀を受け止めていたらどうなったのか想像しようとはしない。

それが見れるときを楽しみにしているから。

 

タツキは部屋を出ると、また手を抜かれたと思った。あの蹴りは普段ならやらないだろう。武蔵の戦闘センスならあのまま斬撃を繰り出せたはずだ。

試されてるのはわかるけど、ああもわかりやすく手加減されると、流石に。

 

いつか見返してやる。

 

てか、衝撃剣を見抜かれるとはな。

 

ちなみに衝撃剣とはタツキがたまたま読んだ漫画のキャラクターが使っていた技をタツキなりにやってみたらできたという、漫画から盗んだ技である。

 

 

 

そして、タツキがみたらし団子を持って部屋に帰ってきたので、二人でそれを食べた。

 

そしてその日が終わった。

 

 

そして、次のレイシフトが始まる。

 




お久しぶりです
夏ガチャは頼光ママを宝具5にするために頑張りました


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18話 ローマ帝国と二天一流2

「負けられないわね。行くか!」

 

二刀流使いの女が鎧を装備した敵を倒している。

圧倒的だった。

 

初めて見る夢だ。

 

この二刀流使いは、名城?

 

いや、どうだろう。

 

服装がカルデアのものではない。

袴というわけでもない。

 

その服装は青や赤の色味があり、綺麗な色合いをしていた。

 

それはどこか武蔵の、衣装を連想させるものだった。

 

だが武蔵の衣装より、赤要素が強い気がする。

 

ーー

 

 

ジジジジ

 

うるさい。

 

タツキは寝ぼけながら、ベッドから起き上がり、耳元で鳴る、時計のボタンを押すと音は鳴り止んだ。

 

「朝か」

 

タツキはヨロヨロとベッドから降り、部屋を出た。

 

「おはよう、タツキ」

 

「武蔵か。おはよう」

 

部屋の前で待っていた?武蔵と挨拶を交わし、タツキはパジャマのままであることを武蔵に指摘されすぐに部屋に戻り、カルデアの制服に着替え、腰に四本の刀を帯刀し、ポーチに残り少なくなった、戦闘用の道具を入れた。

 

「よし!」

タツキは気合いを入れ、部屋を出た

 

部屋を出たタツキを見て、「よし」と武蔵が頷き、管制室へ向かった。

 

途中、武蔵から「何か夢を見なかった?」と聞かれたが、見たのは確かだが、内容をあまり覚えていなかったため、「覚えてないな」と答えると「ならいいか」と返して来た。

 

何でも、サーヴァントとマスターはたまに同じ夢を見ることがあるらしい。

 

不思議な話だと思いながらもタツキは、見た夢を思い出そうとするも、記憶から出てこなかった。

 

管制室に入るとロマンとダヴィンチちゃん、そして、藤丸とマシュが俺たちが来るのを待っていた。

 

「タツキ寝坊か?」

「ちげーよ」

 

藤丸と少し言葉を交わすとロマンがコホンと話を始める合図を出したので、二人でそちらを見た。

 

「既にレイシフトの準備は整っている。今回向かう先は一世紀のヨーロッパだ」

 

ヨーロッパね。

 

わからないな。未知だ。行ったこともなければ、歴史を学んだことも......あったかもしれないが覚えていない。ローマか?ローマだった、気がする。

違うか?わからん。

 

「タツキ君が悩んでいるようだから、より具体的に言うと、古代ローマだ」

 

「ローマ。古代?」

ローマとわかったが、古代とおまけが付いた。

お風呂か?いやあれは映画だな。

 

「イタリア半島から始まり、地中海を制した大帝国だ」

 

「ロマン。タツキが混乱してます」

藤丸がロマンにそう言うと

「その辺のことは言って見て確かめてくれればいいよ。特にタツキ君はその方がいいだろう」

と言われた。

 

「タツキ君、案内係として私も行こうか?」

ニヤニヤしながら、ダヴィンチちゃんに言われ、タツキがいいのか?と返そうとした瞬間にロマンから頭にチョップを食らった。

 

「君にはこちらの仕事がある。タツキ君もあまり調子に乗りすぎないように!」

 

「チッ」

「チッ」

 

タツキとダヴィンチのダブル舌打ちが鳴った。

 

「ローマ皇帝と話したかったのに」

「ローマ皇帝ってのは王の類か?」

「まあそんなところだね、特にカリギュラ帝や、ネロ帝はきっと趣味が合う」

 

カリギュラ帝とネロ帝か。

覚えておくか。

 

コホン

 

ロマンが再び話を戻す合図を出した。

 

「いいかな、藤丸君、タツキ君。転移地点は帝国首都であるローマを予定している。

地理的には前回と近似と思ってもらって構わない」

 

「ん?てことは聖杯や、歴史の変化的な面もってことで合ってるか?」

 

「そうなるね。済まないね。観測精度が安定していないんだ」

 

「てことは、今回も俺たちが陰で動いて、藤丸達が攻略班って感じになるな」

 

「そこは君たちに任せるよ、こちらからの指示があまり出せないから、君達には負担をかけることになる」

 

「最初は共に行動して、役割があれば離れるって感じでやるよ」

 

「作戦の要旨は前回と同じ、特異点の調査及び修正。そして、聖杯の調査、並びにその入手、破壊だ」

 

「どうか今回も成功させて無事に帰って来るように」

 

「わかってるって!それに俺は今回新武器を使えるからな!楽しみでならない」

タツキは腰に収めている、裏斬を触ると、ダヴィンチちゃんが「あ!」と手を叩き、タツキに袋を渡した

 

「これは君から頼まれていたものだ、君の父上のレシピを見て作って見たが、私なりにアレンジもしているからね、それと支給のタイミングで必要であれば言ってくれれば送ることもできるから存分に使ってくれ」

 

タツキは渡された袋を見ると要求したアイテムが全て中のケースに入っていた。

 

「流石です。ダヴィンチ様!」

 

「次回作を楽しみにしておきたまへ」

「当たり前だ!」

ハハハハハと二人で笑いあっていると、藤丸とロマンとマシュと武蔵が

「いつからあんなに仲良くなったんですか」

と藤丸

「わからないけど、タツキ君は楽しそうに発明品を使うからね」

答えるロマン

「意外ですね、堅い人かと思っていました」

とマシュ

「タツキは堅い時もあるけど、集中してないとただの一般人だからね」

と武蔵

 

皆から呆れ顔で見られていた。

 

 

「先輩。作戦遂行のためには先輩の力が必要です」

マシュが藤丸の話しかけているのを横目で見て、タツキは武蔵に。

「武蔵も頼ってくれて構わないぞ?」

「どっちのセリフよ」

「さあな」

 

「ま、作戦遂行のためなら、タツキに頼ることもあるから、その時は頼むわよ」

 

「もちろん」

 

「あーでも、きっと、ローマにも召喚されたサーヴァント達がいるだろうから、可能であれば、彼らの力を借りるように」

ロマンの言葉にタツキは

「可能で無ければ?」

「敵対する者に対しては、君達に判断を任せる」

「任せる?ということは、俺の場合は問答無用で叩き斬るって結論になるけどいいのかな」

「タツキ。あまりロマンを困らせるなよ」

「藤丸に判断は任せるさ。どうしてもの時以外は、指揮官である藤丸が決めることだからな」

「重要だな」

「ま、頑張ってくれ、マスターさん」

「一様、タツキもマスターだからな?」

「無能マスターでごめんなさいね!」

「本当だよ」

「肯定したらダメなところだからな!」

ふっ、と二人は笑って話していた。

 

「てか敵対するサーヴァントが、見分けられたらいいんだが」

ロマンをじーっと見つめるタツキ、藤丸にマシュ

「え!?あー。うん。すまない。少なくとも現時点では不可能だ」

「ま、仕方ないか」

 

「シバとトリスメギストスを併用しても、現在は生体や魔力の反応を読み取るのがせいぜいだ。敵対しているとかっていうのは、多分精神的なものに区分されるからね」

 

「現時点では不可能か、てことは状況によっては最悪の展開も予想しないといけないか」

 

「すまない」

 

「ロマン。では敵対かそうでないかは状況から判断ということになるだろうから、ある程度の推測は任せる」

「わかったよ」

 

「危険度は高いまま......か」

少しは楽に動けるかとも思ったが甘い考えだったか。

「可能な限りこちらもサポート、バックアップはするからよろしく頼むよみんな」

 

「じゃあさっそく!レイシフトと行こう!」

 

!?

何そのテンション。

「ロマン?」

 

「なーに!精神的なバックアップも大切だろ!」

 

「はあ。」

 

「ささ、準備準備!」

 

「了解!」

 

 

【 アンサモンプログラム スタート

霊視変換を開始 します

 

レイシフトの開始まで

あと

3

2

1

全工程 完了

グランドオーダー

実証を 開始 します 】

 

タツキ達の身体は光に包まれ消えた。

 



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19話 ローマ帝国と二天一流3

《またこれから始まるのか》《まだ終わらないか》《まだまだこれからだろ》《一撃で仕留める》《選択の余地は無いか》《俺は約束を果たす》《寝返ったのか》《気合い入れてくれ》《逃さないわ》《始まるわね》

 

 

【 次の戦いも油断せずに行くぞ 】

 

 

タツキが目を開けると、またもや野原だった。

無事レイシフトに成功したみたいだ。

一瞬で時代を移動したと言われても実感がないのだが、流石にもうそのことに関しては考えないようにしている。

考えても仕方のないことだろう。

 

「無事成功したな」

藤丸も目を開け、それを確認したみたいだ。

「そうですね」

マシュも目を開け確認した。

「あれ?タツキ集中してる?行く前は違ったのに」

武蔵が来るやいなやそんなことを言って来た。

 

集中とはタツキが戦う気になった時に起こる現象の結果のことだ。

頭の中で何人もの声がして、その後、一気に気合が入る。

 

タツキが集中している時は感じ方が違うらしい。武人として何か感じるものがあるのだろうか?

 

「さっき集中だけしておいた、流石に集中しないでレイシフトはナメ過ぎだろうしな」

「そーね、後で言ってあげようとしてたけど、その手間が省けたわね」

「言われなくてもやるよ」

「そーね、そうしてもらわないと、マスターとしては働けないんだから、そこはしっかりしなさいよ」

「はいはい、わかってますよー」

 

タツキは武蔵と少し言葉を交わし、通信機を手にしてロマンに話しかけた。

「なあ。ロマン。いちよう聞くが、ここが首都ローマなんだよな」

 

「その筈だよ?」

通信機からロマンの声が聞こえて来た。

通信機は通常通り機能しているようだ。

 

「丘陵地だぞ」

「そうですね。タツキさんの言う通り丘陵地帯です」

 

俺の言葉にマシュも重ねて伝えてくれた。

 

『本当かい?おかしいな。転送位置は確かに固定した筈なんだけどな......』

 

「まあ、ミスは仕方ないですよ、それでロマン。ここはどこかわかりますか?」

藤丸の切り替えは最もだった。

 

言っていても仕方のないことは言わず、必要な情報を貰う。

効率的と言うかなんと言うか。

 

『ローマ郊外に当たるところみたいだ。時代は正しいからそこは安心してくれ。しっかりとローマ帝国第五代皇帝!ネロ・クラウディウスが統治する時代だよ』

 

「時代まで違ってたらどうしようもないわな。場所のズレくらいなら何とかなるか」

時代移動なんてのは俺たちだけの力じゃできないが、場所の移動なら出来る。

まあ人の力で出来る範囲であればだが。

 

「ねえ、タツキ。青空が綺麗だと思って見たんだけど、またあるよあれ」

と武蔵が空を指差したので見ると、フランスでも見かけたデカイ輪がここローマの空にも存在していた。

 

「ロマンまたあるぞ。光の輪」

 

『こちらからは何も観測できないんだ。でも引き続き調べておくよ。気になるからね』

 

「ヒャッ」

突然マシュが声を上げたのでそちらを見ると胸元からフォウ君がひょっこりと顔を出していた。

 

「また付いて来てしまったんですね」

マシュはフォウの頭を撫でてフォウと話し合っている。

 

言葉が通じているかのようにフォウは頷いたり、首を振ったりするので、本当に理解しているのではないかと思ってしまう。

 

 

「戦いの音がするな」

 

 

ただその言葉が口から出ていた。

「え?戦いの音ですか?」

マシュに聞き返された。

「いや、えーと?」

何でそんなことを口走っていたのかはわからない。

 

フランスでの戦いを終えた後は集中状態になっていなかったからだろうか。

 

久しぶりの感覚に身体が燃え上がっているのがわかる。

 

要は「暴れ足りない」の感情が感覚を尖らせ、遠くの戦闘の音を拾ったのだろう。

 

「そうね、よく聞こえたわね。私も言われるまでわからなかったわ」

武蔵が遠くを眺めながら、そう返してくれたので、やはり空耳ではなかったと確信した。

 

『戦闘の音?どのくらいの規模かわかるかい?その時代で隊を組んでの戦いはありえないんだ』

 

「近づいてもいいか?」

 

『そうだね。何が起こっているのか気になるし、お願いするよ』

 

ロマンの答えが出ると同時にタツキは地を蹴った。

「タツキ!?」

「タツキさん!?」

「あー!もう!先走んなっていつも言ってるのに!」

 

藤丸、マシュ、武蔵の順番で声が聞こえたが、タツキは気にすることはなく地を蹴る。

 

試し切りになるといいが、さあ、お相手さんはどんなやつらかな!

 

少し走るとすぐに声は近くなった。

「「「ウォオオオオオオオ」」」

 

隊を組んでの戦いじゃねーか。

 

「おい!ロマン聞こえるか!隊を組んでの多人数での戦いだ。片や大部隊、もう片方は少数部隊だ。真紅と黄金の意匠.....デザインが分かれているな。少数部隊は防衛戦って感じだな」

タツキは戦いが見える場所まで行き、止まりロマンに現状の報告をした。

 

『多人数戦闘!?やはり変だ。歴史に異常が起きているとしか思えない』

 

「なるほどな。じゃ参加した方がっておいおい。少数部隊の真ん中で一騎当千してる女。かなりやるぞ。一人で何人もの相手をしてやがる」

タツキの目にあったのは金髪ドレスの女だった。

 

「首都へ雪崩れ込もうとする軍団をたった一人で」

 

追いついて来たマシュもそれを見て驚いているようだった。

 

「え?あの顔.....」

追いついて来た武蔵もそれを見るとその女を見て驚いた顔をした。

 

「どうした?」

「あいつ。冬木の......」

「あーなるほど。そういうことね」

 

「ロマン。あの金髪女って冬木にいた聖剣使いで間違いないか?」

 

『間違いあるよ。アーサー王がいるわけはない。それにその人は人間だよ。サーヴァント反応を感じない』

 

「だってさ、他人の空似ってやつだよ武蔵」

 

「わかってるわよ、私だってサーヴァントとして呼ばれたんだから相手がサーヴァントなのかってのはわかるわよ。私が驚いたのは世界に同じ顔が3人はいるというけどまさかここまで似てるとはって思ったのよ」

 

「なるほどね、そりゃ驚くか。因縁の相手と同じ顔で戦場で戦ってたら」

 

『ゴホン!ともかくだ!ありえない戦闘が行われている。それならやることは決まってるね』

 

「助けるならあの女の方だな。そんな気がする」

 

「そうですね。フォウさんも賛成みたいです」

 

「タツキ、マシュ、武蔵!バックアップは任せろ」

 

『相手はサーヴァントや怪物ではないようだけれど規模が規模だ。注意したまえ!』

 

「了解ッ!」

 

マシュが前進したのに合わせてタツキと武蔵も出た。

 

マシュが軍隊に突撃を仕掛け怯んだ敵を武蔵が斬り落とす。

 

さあお披露目と行きますか【 裏斬 】の斬撃を。

 

マシュと武蔵の連携で開いた道を突き抜け

タツキは一気に戦闘の中心にいる女の隣まで行くと目の前に立った。

 

「助太刀する」

「首都からの援軍か?」

「首都?カルデアからの援軍だ」

 

(燃え上れ。炎よ。イメージするわ焼き尽くす炎)

「ケンッ!」

 

「ブラスタァァアアアアアアア」

 

タツキの刀は燃え上がり、そしてその炎を纏う刀をタツキは一振り。その一振りにより刀に纏われていた炎は前方へ襲いかかる

 

「なんだ貴様!?」

「火?」

「やべーぞ!」

 

やっぱ言葉はわかるんだな。

 

炎が大軍を駆け巡った。

 

と同時に刀に埋め込まれていた聖召石が砕けた。

 

死者はゼロ

多数が火傷を負ったが、死者はゼロだった。

 

俺のイメージした炎は料理に使う時に出る炎だったのだ。

だが、見た目は限りなく炎の斬撃であった。

 

「聞けェエエエエ!今の一撃は加減したものだ。次は全力で焼き尽くす!恐れを知らぬならばかかってこい!」

 

沈黙だった。

 

あれだけ雄叫びをあげていた者達が沈黙した。

 

「はったりだ」

 

一人の男がそう呟き、一人武器を取り、前に出た。

 

瞬間男の腕から武器が消えた。

 

いや正確には男の手が消えた。

 

そして赤き水飛沫が周りの元達にかかった。

 

皆、戦場に生死の戦いをしに来てはいる。だが、それでも死にたいと思っているやつはいないだろう。

 

それほどまでに武蔵の一閃は壮絶だった。

 

そして武蔵が俺の隣に立った。

 

「殺してはいないわ。すぐに手当てすれば命は助かる。さあ選びなさい。戦うか、撤退するか」

 

武蔵の眼光が敵軍を貫いた。

 

タツキは再び刀の穴に聖召石をはめ込むと刀を構えた。

 

「剣を収めよ!!!!」

 

後方から声が響いた。

 

先ほどの金髪赤ドレスの女だった。

 

「勝負あった!もうよい!やめよ!」

 

女は敵軍のを率いていた者を見つめた。

 

それに反応しその男が「撤退」と叫んだ。

 

すぐさまその場を離れたかったであろう、前列の者達の顔からは安堵が伺えた。

 

「すっかり首都は封鎖されていると思ったが、まあ良い。褒めてつかわすぞ。たとえ元は敵方の者であっても構わぬ。余は寛大ゆえに、過去の過ちぐらい水に流す!そして今の戦いぶり、評価するぞ」

 

「余と轡を並べて戦うことを許そう。至上の光栄に浴すがよい」

 

「なあ。武蔵。自分のことを余なんて言うってことはこの人は偉いさんなのかな?」

「そうなんじゃない?それより!なんなのあの技!火よね!火!もしかしてだけどタツキって究極点に至ってたりする?」

 

「究極点?なんだそれ。アレはダヴィンチちゃんプレゼンツ。火を噴くルーンブレイドこと裏斬!かっこよかっただろ?」

 

「なにそれ!使ってみたいんだけど!」

「まあ貸して欲しかったら貸すけど、これ今回あと2回しか使えないぞ?」

「回数制限あるの?ま、あと2回なら一回ずつってところね!」

 

「ゴホンッ!貴公ら。余の話を聞かぬか」

「あ、悪い!ついつい」

「ごめんね。タツキ馬鹿だから」

「お前だよ!」

 

「ゴホンッ!」

マシュが此方を睨んだ。

 

「可愛いよねマシュ」

「は?」

「え?可愛くない?」

「可愛いと思うぞ?」

「だよね〜」

「お前そっち系?」

「そっちって何?」

 

「タツキ、武蔵。少しくらい黙ろうな」

 

藤丸の笑顔により、二人は黙った。

 

( なんだろうな。藤丸の笑顔ってたまに怖い時があるんだよな )

 

その後の話は報償を出すと言うことと、今は何も無いのでローマについて来てくれってことだった。

 

 

俺たちはその女について行くことで意見が一致したので、おじゃますることにした。

 

 

 

 

究極点......。つまりは究極の一。

 

他の追随を許さないモノ。

 

そういえばあの発言からするに武蔵も究極には至っていない?

 

おかしいな。

 

五輪の書。

 

あの本には《 無 》について記されていた。

 

やはり俺の知ってる宮本武蔵とは違う存在ということか。

 

俺が二天一流を正式に次ぐには究極の一は不可欠。親父達はいつかわかると言っていたが、実際のところは、サッパリだ。

 

俺の使う技は二天一流後継者達が残してきた技を少しだけ自己流にアレンジしただけの技やそのままの技が多い。

 

いくつかオリジナルはあるがあまりに、未完成なためほとんどは使う機会がない。

 

そして究極の一。

 

無の境地。

 

先代の武蔵は至ったという。

 

俺の祖父は至れなかったと言っていた。

 

だが、その祖父は俺に可能性を見た。

 

だが、無の境地には至らなかった。

 

俺がこの特異点を巡ることを否定しないのはそのためだ。

 

なんの報酬も無いだろう。

 

だが俺の目的が果たせるなら俺はいくらでも力を貸す。

 

なら同じ立場の藤丸はどうなのだろうといつも考える。

あいつは何故この危険な冒険を進んでやるのだろうか。

 

「タツキ?」

 

ん?

 

ぼーっとしていたみたいだ。

 

どうも深く考えると周りが見えなくなる。

 

「なあ、藤丸、お前ってさ......」

「うん?」

 

「あーいや、あの女の人、好みか?」

 

「可愛いよね」

 

「だよな」

 

話を逸らしたのは今は聞くべきでは無いと何故か思ってしまった。

 

本当に無欲でただそれを成しているのであれば多分俺は情けなくてたまらなくなる。

 

俺には、報酬の無い死闘は出来そうに無い。

 

だからいつか聞く。

 

その時の俺は多分きっと、納得できる。

 

 

そう自問自答しながら皆の後を追った。



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20話 ローマ帝国と二天一流4

報奨の前に流石に俺達の事が気になるようで、女から色々と質問された。

 

もちろん質問に答えたりするのはカルデアの頭脳?というかレイシフト先では最早任せきりだが、その辺は藤丸がとても上手いので、任せている。

 

「未来です」

「なんと。真実だとしたら難儀なことよ。心中察するぞ。しかし、階段から転げ落ちでもしたか?」

まあそうなるわな。

どこから来た?と聞かれ、未来からと答えたら頭がおかしいとしか思えない。

 

「「「ウォオオオオオオオオ」」」

怒号をあげ、先ほどのやつらの仲間が攻めて来た。

 

全く、飽きない連中だな

「武蔵行くぞ」

「はいよ!」

「藤丸こっちは任せろ」

敵兵の第二波とでもいうべきか、そりゃ火で威嚇しただけだから全員が怯むわけないよな。

「マシュはそこの女の人の身を御守りしてくれ」

「え!?は、はい!」

うーん。流石に強いといっても女の子に護衛なしではな......。

「余に盾などいらぬ!」

「いやいや。流石にいるでしょう」

「行くぞっ!」

と言って真っ先にドレスを纏った女の子が飛び出した。

全く!無茶な!

「そこの、なかなかな姿をした少女よ!余の盾役を命じよう!」

「わ、わかりました!」

結局盾役としてマシュを起用する訳ね。まあそれなら安心だな。

 

「ねえタツキ。アレ多分だけど、タツキに仕切られたのがお気に召さなかったんじゃない?」

 

......。

 

「ありえるな」

 

「すまぬ。剣が滑った」

ぬん!?

「ハァ!?滑るって何!?イヤイヤ怖い怖い!死ぬんだけど!?」

目の前を赤色の剣が貫いたんだけど!危ない死ぬ、敵は味方の中にってレベルじゃない!

 

「避けるでない。余からの報奨だぞ?」

 

それは報奨とは言いません。

 

「わかりましたよ。すみません。それで、俺はどうすればいいですか?」

 

「そうだな。とりあえず戦え」

 

「わかりましたよ」

 

ま。それならいつも通り

 

「武蔵。ほらコレ使いたいんだろ?いいぞ」

俺は武蔵にルーンブレイドの裏斬(りざ)(聖召石埋め込み済み)を渡した。

 

「ありがとう!やってみるわ!」

武蔵はニヤリと笑うと刀を抜いた。

 

「普通に炎イメージして、ケンッて言えば反応して火が出るはず。ダヴィンチちゃん曰く初心者にも使いやすくなってるんだって」

 

「わかったわ!いっくよぉ!」

そう言って武蔵は上段に構えた裏斬を振った

 

「ケェエエエエエン」

 

 

ズゴォォオオオオ

 

 

ビームが出た。

辺り一帯を焦土と化す熱の光線だった。

「な!?なにこれ!タツキの時と違うじゃん」

武蔵の目がキラキラと輝きを放ちながらこちらを見て来た。

 

「俺に言われても知らん」

そう本当にそれはわからん。サーヴァントだからなのか?それとも火のイメージの問題なのだろうか。

 

「武蔵さん?これはそのやりすぎというか」

マシュがそのビームが通った跡を見てそう呟いたのも無理はない。

 

何故ならそこ一直線が焦土と化しているのだから。

 

そこに先程まで人が居たことなど無かったかのように無慈悲にその光は全てを焼き殺していた。

 

そしてそれを見た、連中は既に戦うという意思はおろか、逃げるということすら出来ずにいた。

 

数の利を一瞬にしてかき消す一撃だった。

 

「タツキこれ、すごいよ。力が漲るっていうか多分さっきまでここに嵌ってた石みたいなヤツが関係あると思う。急に魔力が漲ったのよ」

 

「つーかあの威力に耐えられるこの刀もどうなってんだよ」

 

「あのタツキさんはこの光景を見て何とも思わないんですか?」

マシュからの質問だった。

質問の意図はどこにあるのか、この残酷なまでの光景のことか?

いや。それしかないか。

現に藤丸は目を丸くし手が震えている。

 

「思う事はない。何故かはわからないけど、俺は不思議と何とも思わなかった」

 

「そう、ですか」

そう言ってマシュは藤丸を見た。

 

『 近くにサーヴァント反応だ!先程の一撃で気づかれたのか!?警戒してくれ!』

 

「気づいています!」

マシュがそれに答え、マシュと武蔵が警戒態勢を取った。

 

仕方ないか。

 

「藤丸しっかりしろよ。お前が潰れちゃ困るからな」

 

「え。あ。ああ。悪い。少し驚いただけだ」

藤丸が無理に笑顔を作ったのがわかった。

 

「いやそれが正しい反応だ。俺が異常なんだと思う。だが今は切り替えてくれ。司令塔は藤丸しかいない」

 

「ああ。そうだな!」

良し。準備OK。さあ敵さんの姿はと。

 

おっさんか。

黄金の鎧に赤いマントのおっさんだった。

 

いつも思うけどさ。サーヴァントって言われてもこいつが誰なのかすらわからないんだよな......

 

「叔父上!?いや、今は敢えてこう呼ぼう。カリギュラ!」

ドレスの女の子が真っ先にその名を呼んだ。

 

どこかで聞いたような聞かなかったような。うーん?歴史疎すぎてテンション上がらないんだけど。というか伯父上?

 

ダヴィンチちゃん辺りなら喜びそうなワードではある。

 

『今何と言った!?カリギュラと言ったのか?』

 

ロマンさんもテンション上がってる?いやこれは違和感といった感じの声のトーンだな。

 

「はい。そう聞こえました。この時代に生きる人間がサーヴァントと血縁?」

マシュの返答で何となくわかった。

この子とカリギュラは家族なのか。

 

家族喧嘩的なこと?

 

「で、ロマン結論は?倒してもいいのか?」

 

『その子の言葉からしても敵対しているようだ、それにサーヴァントだ。手加減は無用だよ』

 

「よし!やるか」

裏斬を腰の鞘へ納め、もう一本の刀、秋を抜いた。

 

 

「全てを捧げよ!」

 

カリギュラが唐突に声を荒げた。

 

何だ?急に。

 

とりあえず、これでもくらえ。

 

無形からの踏み込み。

 

カリギュラが自分の間合いに入るまで構える事は無く、間合いに入った瞬間に構える事なく斬りつける。

 

二天一流-水無月其の一 水無しの夕立

 

突然の雷の如き斬撃

 

型が無く、一切の無駄な動きをせずただ斬るだけの技。だがただ普通の斬撃と違うのは梃子(てこ)の原理の利用など、その一太刀の速さを突き詰めた技である。

 

「グアァアアア!」

 

は?刀が筋肉で止められただと?

 

いや違う。こいつ今右腕の肉を断ち切る斬撃に反応して腕を少し引き、アームガードがある部分にわざと当てさせたのか?

 

これはまずいな。

 

ガハッ

 

カリギュラの左膝蹴りがタツキの脇腹に直撃した。

 

そのダメージに耐えられず、刀を落とし、膝を地についたタツキの顔面をカリギュラはその足で蹴り飛ばそうとした。

 

やはり思考はそこまであるわけではないようだ。

敵をただ倒すだけ。バーサーカーとみた。

 

武士は正座した状態からの技を持つという。

それは不意の攻撃に対応するためのものとして。

 

むしろ正座のその座り方の元を辿れば、武士の室内での暗殺などを防ぐためだとされる。

 

このように膝を地につき、納刀された刀が腰にある状態は武士にとっては好都合なのである。

 

二天一流-霜月其の二 地神送迎

 

小太刀での抜刀下段切り

 

霜月は神を送り届ける月だという。それ地の神を天界へ送るのもまた神送りだろう。

 

神を送り届けるのに障害は不要だ。

 

カリギュラの足を刀で殴りつけた。

 

斬れないなら力を利用して倒す。

 

斬るでは無く、押す。やったことはあまりないがやろうと思えばできるのだ。

 

カリギュラは蹴りを行なっていた足をその力を返して押されたため地に尻をつき倒れた。

 

「武蔵頼む。厳しいわ」

 

「はいはい。世話のやける弟子ね」

 

尻をついたカリギュラに斬りかかる武蔵の二本の刀をカリギュラはギリギリのところで頭を引き避け立ち上がり武蔵へ拳で牽制するも武蔵はその突き出した拳を避け腕を斬り裂いた。

 

「頑丈ね。腕を斬り落とせ無かった」

 

「アアアアア......あり得んッ!」

カリギュラが頭を抱えてこちらを睨むが、武蔵は気にすることなく足進めた。

 

カリギュラはただ呆然と近づいてくる武蔵を睨むだけだった。

 

そして武蔵が最後の一太刀を浴びせんと刀を振り込んだ。

 

その首を刀が飛ばすと思っていたがなんとカリギュラはその手で刀を受け止めた。

 

もちろん綺麗に止められてはおらず手のひらからは血が流れているがカリギュラはそれに眼もくれず、武蔵めがけ蹴りを行なった。

 

ガンッ!

 

「ナ!?」

 

「武蔵さん、お守りします」

 

カリギュラの足へマシュが綺麗に盾を合わせ、攻撃を受け止めていた。

 

「ありがとう、マシュ」

武蔵はそう言って、刀をカリギュラの手から抜きその場から距離をとった。

 

「お願いします!」

 

マシュは盾でカリギュラを弾き、後ろから駆けつけていた女の子と交代した。

 

「任せろ!」

 

女の子はその赤き剣を振り抜いた。

 

カリギュラはその剣を先程とは違う手で受け止めた。

 

「!!我が、愛しき、妹の子よ!」

 

「美しい、な。美しい。奪いたい。貪りたい。引き裂きたい」

 

おいおい突然どうしたよ。

カリギュラの反応が変わった。

やはりこの子への感情が強いのか。

 

(おいマスター。お前の身体を借りるぞ)

 

は?

 

脳内への直接的な言葉、その言葉の後、俺の意識は別の世界へと落ちた。

 

以前、黒ジャンヌとファヴニールから逃げる際も起きた現象だったし、それ以外にもあった。

 

(また来たのか。久しいの若造)

 

おっさんか。確か弁助と名乗っていた。

 

(おっさん。またあの小僧か!俺の身体を玩具みたいに使うなっての)

 

(いやいや。此度の憑依はお主の為の憑依じゃよ?まあ見てみよ)

 

うーんやはりこの自分の姿を別の感覚で見るというのは違和感しかないな。

 

それにしても俺のためってどういうことだよ。

 

 

「お前!しゃがめぇ!」

 

突然タツキが藤丸の方を向いて叫んだので思わず藤丸は命令通り頭を低くした。

マシュや武蔵、女の子も突然叫んだものだから驚いてこちらを見た。

 

瞬間、先程まで頭があったところを日本刀が空を切った。

 

「え?避けられたの?惜しかったな」

朱色の髪の女の子だった。

その子の特徴としては

 

「カルデアの制服?君は一体?」

 

藤丸は今自分を殺そうとした相手に質問を投げかけたが、相手は聞く耳持たずその刀を振り回した。

 

「敵の大将を先に殺すというのは戦術的にはとても良いな。でもそれは詰まらない」

 

「え?」

 

女の子の振り回した刀をタツキが指で受け止めた。

指からは血は一切出ておらず完璧に捉えていた。

 

(これ俺の力の訳ないよね。刀を指で止めるって漫画でしか見たことねーよ)

 

(ははは。そりゃあの。あの子の力じゃからな)

 

(ただその器はお主のものじゃよ)

 

(うん?どういうことだ?)

 

(いずれ分かる。ははは)

 

 

「殺意はあるが意思のこもっていない刀に価値はない。洗脳の類か?これ程までに、殺意と意思がズレているなんてのは変だ。お前、何者だ?」

 

「私は藤野 律。以後お見知り置きを。それと洗脳云々は半分当たりかな。この刀は私のじゃないんだ。名代ちゃんの刀貸してもらったの!君が名代ちゃんの言っていたカルデアの剣士マスター?すごいねぇ刀を指で止めるなんて」

 

「あ?訳わからん。藤丸下がれ」

 

「分かったよ......」

藤丸はその場から離れようとして止まった。

 

「なんだ?」

 

「お前は誰だ?」

藤丸はただタツキの目を見てそう呟いた。

 

「流石だな。カルデアのマスター。名乗るとしようか。サーヴァント・バーサーカー、宮本菊丸。見参」

 

『 ええええ!?何何何!?どういうこと!?急にサーヴァント反応が増えたと思ったらタツキ君がサーヴァントになったの!?』

 

「これうるさいな。耳障りだ。壊してもいいか?」

タツキは耳に埋め込まれたインカムを指でカンカンと突いた。

 

『ああああああ!ダメダメ!分かった。とりあえずは黙る。先ずはそちらを優先してくれ』

 

「分かったよ。それに早くやらないと都合が悪いのは俺の方だからな」

 

 

(どういうことだ?)

 

(あぁ。菊丸は若さ故に無邪気な性格のまま剣鬼になった。

 

若さゆえに恐れを知らぬ。

 

故にあの子にとっての戦いは遊びだった。

 

そしてそれは他者からすれば一種の狂気に見えたじゃろう。

 

そしてあの子が十の歳で亡くなる時に既にあの子には常識的な理性がなかった。

 

殺すことだけを行う子供になっていたんじゃよ。

 

だからの。十分があの子が冷静に戦っていることのできる制限時間。その後は徐々に狂い始め、そして最後には生きるもの全てを殺す存在となる。

 

我々は皆、お主により存在を認められている者達だ。

 

そのぐらいの覚悟はある。

 

むしろ感謝しておる者が多い)

 

(感謝?何故)

 

(それもいずれじゃ。はははは)

 

(ハァ。左様ですか)

 

「菊丸君と言うのか。よろしく頼む。よくわからないことだらけだけど今は君を頼るよ」

 

「おう!任せろ!ま。でもとりあえずお前は邪魔だ」

菊丸はそう言い、藤丸の身体を担ぎ上げ後方へ投げた。

 

「そこの盾の子〜任せたよ」

 

「え?な!?マスター!」

 

宙を舞う藤丸が地に落下する前にマシュがギリギリ受け止めた。

 

「ナイスキャッチ!」

 

(「無茶苦茶な!」)

マシュの台詞と俺の台詞がリンクした。

いやまあ多分アレを見ていたら誰でもそう思う。

 

「それじゃあ、お姉さん。覚悟はいい?戦場は遊び場だけど、覚悟の無い人は来たらダメだよ」

菊丸は刀を抜かずボクサーのように構えた。

 

「何それ。ボクサー?刀使わないの?」

そう言って藤野は菊丸に斬りかかった。

菊丸はそれを避け、藤野の刀を握る手へ手刀を入れ、藤野が刀を落とすと、顔面へ裏拳を入れ、よろけたところに右足で押し飛ばした。

 

「いてて......女の子を殴ったりしたらダメなんだよ」

頭を抑えながら藤野は起き上がるやいなや

「そうなんだ」

菊丸は藤野が落とした刀を拾い「重い」と呟くと

それを投げつけた。

 

「危なっ!?」

 

ギリギリそれを避けた藤野だったがその瞬間に菊丸は接近、避けたがバランスがうまく取れていない状態の足元を足払いし、藤野を転かし、トドメとしてその手を刃物の様に尖らせ藤野の腹へ刺突

 

「危なっい!」

 

「令呪か。ずるいなーもう」

令呪による肉体強化。以前俺もやったがアレによる加護は絶大だった。

 

菊丸の刺突は強化された藤野の肉体を貫くことは出来なかった。

 

「頑丈なら叩きつけても問題ないよね」

 

菊丸は藤野の襟首を掴み、力技で持ち上げるとそのまま地面に叩きつけた。

 

「ガハッ」

藤野は叩きつけられ自然と呻き声が出た。

「肉体は強化されても衝撃波系のダメージは通ってるのかな?」

 

菊丸はジリジリといたぶる様にダメージの与え方を探しては試した。

 

その顔でその体でなんとも自由にやりやがってくれるな。

 

俺がそんな趣味があると思われたらどうするんだよ。

 

(おいジジイ!菊丸を撤退させろ!やりすぎだ!相手はただの人間だぞ!)

 

 

(やはりお主も平和の世で生きた人間か。

 

一つだけ言うぞ。

 

戦場に自らの足で踏み入ったなら、そこに善人も悪人も関係なく殺される。

 

故にそこにサーヴァントであれ、人間であれ関係のないこと。

 

菊丸はそれだけは理解できている。

 

お主にはそれができていないらしい。)

 

(は?ちが......)

 

違わないんだ。知っている。だから嘘でも言い返すことはできなかった

 

 

 

「さて次はどうやってダメージをあた......!?」

 

空を切った。

 

菊丸の目の前を刀が横一文字を描いていた。

 

「お待たせしました。マスター」

 

「剣士。いやその刀の形。同じ国の人......だよね」

日本刀を持った女性。

特徴は何よりも乳がでかい。

あのデカイ乳を強調するような紫色の服とも相まって、破廉恥だ。そして長く艶やかな黒髪。

 

「私のマスターを傷つけた事覚悟してくださいね。剣士君」

 

「俺は君を知らない。でも強いことはわかった。やろうか」

 

「俺は二天一流・門下 宮國(みやぐに)菊丸 宮本 義景(よしかげ)。さあ、始めようか!」

 

 

「なるほど、二天一流ですか。では失礼して、サーヴァント・バーサーカー、源頼光。いざ参る」

 




久しぶりに書きました。
待ってくださっていた方がいましたら遅れまして申し訳ありません。
年始の福袋情報なども出て、私は三騎士の方をやはり武蔵ちゃんの宝具を重ねたいので狙おうと思っています!

ちなみにですが、藤野 律ちゃんはFGOの女主人公の顔になります。


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21話 ローマ帝国と二天一流5

( は!?今 源頼光って言った!?)

 

( ナニィ!?おい!小僧!儂に変わらんか!)

 

(ウルセェジジイ!俺の体だから俺にやらせろ!)

 

(お主では役不足じゃ!)

 

( ああ?俺だって、戦って見たいんだよ!)

 

 

「おっと。危ない危ない」

頼光の一閃の太刀を、かろうじて避けた菊丸は、小太刀を二本抜いた。

 

瞬間、菊丸の目の前を再び一閃。

 

菊丸は抜刀した刀で受け止めた。

「あらら〜刀に悪いダメージが入っちゃったか」

菊丸は刀を見てあららと項垂れた。

 

「刀の心配ではなく、御自分の心配をなされたらどうですか?」

 

「俺の心配?何で?言っておくけど、君がどれだけ強くても俺は負けないよ」

 

勝つではなく、負けない......か。

 

「左様ですか」

 

続けて頼光は刀を打ち込むが、全て避け、いなしていた。

 

(凄いな)

不用意に近づかず、距離を取りながら避けれる時は避け、刀へのダメージを減らしている。そしていなせる時はいなす。

 

(器用じゃな。だが勝とうとしとらん。全神経守備へ回しとるように見える)

 

(だろうな。負けないとは言ったが勝つとは言ってないからな、あいつ)

 

(うん?......ほぉ!なるほどな!負けない、つまり勝つことはないが負けることもないということか!なるほど理解した)

 

(そーゆーこと。ただ何で今そんなことする必要あるのかってのがわからないんだよな)

 

(はて?そんなの簡単だろうに。お主と女武蔵に相手の動きを見せるためにだろう。勝てない相手とは戦わないのが儂らじゃからな。菊丸では勝てん。あやつはそれをよくわかっとる。お主と女武蔵に託すということだろう)

 

へぇ。面白いじゃないか。

 

「君さ、戦う気ある?さっきから一辺倒だけど、マスターを守ってたりする?大丈夫だよ。その子に攻撃したりしないから」

 

源頼光の攻撃は常にマスターの前を開けないように戦っていたため、一辺倒になりがちだった。

そして存分に戦いたい菊丸はそう指摘したのだが

 

「信用に足りませんね。貴方は約束を平気で破りそうですので」

 

「あっそ。じゃあそのままやれば」

 

へ?

 

( おぃいい!俺の刀投げてんじゃねぇ!)

 

約束とは何だったのか、見事に敵のマスターめがけ菊丸は小太刀を投げた。

 

「なっ!やはりですか!」

ガンッという鈍い音と共に投げられた刀は頼光の刀により叩き落とされていた。

 

「そう来るよね」

 

菊丸はマスターを守るために刀を振り抜いていた頼光の左手の籠手(こて)を切り裂き落とした。

 

「うーん、やっぱり腕は無理か」

籠手止まりで肉を切れなかった事を少し悔やみながら頼光と距離を取った。

 

「卑怯ですね」

頼光は一層険しい表情で菊丸を睨みつけるが、やはりマスターの前に立ち、守りを重点に置いて戦っているようだ。

 

「悪い?君強いから普通にやったら勝てないでしょ?だからなんだけど。まあ卑怯って言えば卑怯か」

 

 

「許しません。死んでください」

 

 

「え?」

 

(は?)

 

(なんだと!?魔力放出による加速か!)

 

俺と菊丸と弁助のジジイが同時に声を出していた。

 

頼光の足元紫色の雷光が弾けたかと思った瞬間、頼光はその場所にはいなかった。

 

頼光は一瞬にして菊丸の横にいた。

 

いや、正確に言うなら菊丸は斬られた。

 

そうなるはずだった。

 

が武蔵がその攻撃を見えていたかのように、ギリギリのところで刀で受け止めていた。

 

「あら?貴方は」

頼光は攻撃が止められたため、マスターの前へと戻り、こちらの様子を伺った。

 

「危ないわね。さっさとタツキに体を返しなさい。貴方では勝てない」

 

「え、何が起こって......」

 

「さっさと帰れ!お前じゃ力不足って言っての!」

武蔵が叫んだ。

その表情はどのような感情かわからないが、穏やかではなかった。

 

「え、えと、わか、りました!」

 

(は?)

「なっ!?」

唐突の帰還に上ずった声が出た。

 

「おかえり。立ちなさい。お相手さんは待ってくれないわよ」

 

意識が戻ってる。菊丸が返したのか。

 

「ただいま。はぁ。全く。やっと帰ってきたって感じだけど、まさかこんな状況で返還されるとはな」

 

「無駄口はいい。それで準備はできてるのよね?」

 

「無理だ。あのアホが俺の刀投げやがったから、俺の小太刀二刀系の技が使えない」

 

「だから戦えないって?」

武蔵に睨まれたからでは無いが、この状況で冗談は流石にまずかったな。

 

「ふぅ。よし」

 

深呼吸をし、前進

 

刀を抜き、走って来るタツキを見た頼光も刀を構えた。

 

「無謀ですね」

頼光がそう呟いた瞬間

 

閃光が走った。

 

「なっ!?」

 

俺はそもそも小細工の方が得意なんでな。

 

閃光弾を破裂させ頼光の視野を奪い、一気に接近して、先ほど菊丸が砕いた籠手側の腕に刀を振り抜いた。

 

「甘い!」

 

しかし頼光は感覚だけでしっかりと俺の位置を捉えて斬り返してきた。

うーん、感覚でやられたら初白雪使ってたのに意味ないんだよな。

 

返し刀を紙一重で避け、左足蹴りを頼光の左足の脹脛(ふくらはぎ)へと入れた、がバランスを崩すことはできなかったので、その勢いのまま右回転で体を捻り、続く頼光からの追撃を避けた。

 

「ふぅ。危ない危ない」

一連の戦闘が終わり、ふぅと一息をつき武蔵の方を見た。

 

「武蔵完璧」

 

「当たり前よ」

 

「なんです?」

そう言って武蔵の方向を見た、頼光は絶句した。

 

「ます......たぁ」

 

頼光のマスターの首に刀を当て、動けば殺すと言わんばかりに武蔵が頼光を見ていた。

 

「主君取りは一番警戒すべきことだったわね。源頼光」

 

「卑怯者ッ、マスターを解放してください」

 

「ダメよ。目的を言いなさい。同じカルデアのマスターよね。私達を狙う目的は何?」

 

「そうですね。ですがこれでは取引にはならないですよ。しっかりと注意深く警戒していないとダメですよ。マスターは特に」

 

「え?タツキ!」

武蔵がこちらを向いて顔を歪め叫んだ。

 

刺突。心の臓を貫くように放たれた一突きは空を突いた。

タツキが何故か気づいていたかのように体を反らしたために。

 

「まさか、同じ顔の奴から攻撃されるとはな宝具か何かか?ま。関係は無いが」

槍を持った源頼光がそこにいた。

 

槍を避けられ隙だらけの頼光の身体をタツキは容赦なく斬り落とした。斬るとそれは消滅した。

 

しかし

 

「先輩ッ!」

 

な!?

 

斧を持った、源頼光が藤丸の隣に立っていた。

 

「流石に武士の様なマスターさんには避けられましたか。ですが、あの方は人質として交換材料になるのでは無いですか?」

 

「そうね。わかったわ解放しなさい。こちらも解放するから」

 

「信じれると思いますか?そちらからしてください」

 

「ダメよ。同タイミングでの解放が条件」

 

「仕方ありません。五つ数えます。それで解放ということで」

 

「わかったわ」

 

「5、4、3、2、1」

 

本当に同タイミングで武蔵は藤野を頼光は藤丸を解放した。

 

( 武蔵、もう一人いる。弓兵だろうな。刀と槍と斧と弓。油断するな)

 

( 了解 )

 

マスターとサーヴァントはこうやって意識で会話できるって便利だよなと改めて思いながら、タツキはマシュにアイコンタクトでウインクをした。

 

マシュはきょとんとした顔をしたが直ぐに自分の方へと歩いて来る藤丸を見て、弓兵が潜んでいると予測する場所と藤丸の間に上手く入った。

 

「まあ」

頼光はそれを見てそう呟いた。

 

武蔵は頼光へと警戒を払いながら、その弓兵の場所へ注意を払う。

 

頼光はマスターへ危害が加えられない様に、武蔵へそして俺へ警戒を払っている様だ。

 

 

 

「グサ」

 

 

 

は?脇の下を刀が通過した。

 

 

気づかなかった?

 

あり得るか?こんなに接近されて刀まで通されるまで気がつかないなんて

いやそれよりもこの状況を打開しなくてはならない。

俺が人質になったらそれこそ形勢逆転だ。

 

だが、最早どうすることもできない。

 

「久しぶりかな?タツキ君と武蔵」

 

「名代静。やはりあんたも絡んでるか」

 

「そーだよー。そこのマスターちゃん。と頼光さんの仲間だよー。ま、今は戦う気が無いからそんなに警戒しなくてもいいよ」

 

それは事実らしい。殺気が感じられない。

 

 

「でも危なかったね。私が殺す気があったら君死んでたよ」

それはない。人が人を殺す時に殺気を完璧に消すなんてのはそうできるものでは無いだろう。

今回はその殺気が無かったから反応できなかっただけだ。

 

「殺すよ?」

「急だな」

「嘘嘘」

 

寒気がする程の殺気が身体を襲ったが直ぐに止んだ。

 

「ま、今回はそんな気は無いんだけど。ほら帰るよ。カリギュラも撤退させたし、あんたら遊びすぎ。ほら早く」

 

「まあ、名代さん。わかりました」

 

そういうと頼光は霊体化し消えた。

 

「静ちゃん。ありがと。ごめんしくじっちゃった、テヘッ」

 

「あんたねぇ!テヘッ!じゃない!」

 

そういうと二人はそのまま歩いて行った。

 

「ダメね。すっごい警戒されてる。静は呆れる程に呑気ね。それと、タツキは、後ろに気をつけなさい!1回目は見事だと褒めるわ!でもね!2回目もあると何故警戒しないの?未熟者!」

武蔵の怒りの矛先は俺へと向いた。

 

「その通りです。面目無い」

 

「まあいいわ。とりあえず無事切り抜けたし、藤丸も無事みたいだから、とりあえずはみんな生きてるってことで及第点といったところね」

 

藤丸の元へ行き大丈夫か?と聞いたら大丈夫だと答えたので、マシュにもナイスガードと伝え、先ほど菊丸が放り投げた小太刀を拾いに行った。

 

「たくッ。雑に扱いやがって」

小太刀を拾い、砂を払い刀の状態を確認し、鞘に収めた。

刃に傷が......。

はぁ。テンション下がる。

 

「ねぇタツキ少し話したいからゆっくり歩いて」

「え?ああ。わかった何だ?」

真剣な顔をした武蔵から話しかけられたので少し怖かった。

 

「アレはタツキじゃないって事で当たってる?」

 

アレとは先ほど頼光と戦っていた俺の事だろうか。

 

「当たってる。たまに俺の中で話しかけてくる連中がいるんだけど、その中の一人なんだ」

 

「なるほどね。とりあえずはわかったわ。でもねタツキ。一言だけ言っておくわ。アレが戦うのであれば貴方自身の方が強いわよ」

 

「え?」

 

「未完成のタツキと未完成の誰かが貴方の体を使うのであれば決まって貴方の方が強いに決まってるじゃない」

 

「そう......なのか?」

 

「連中って言ってたから他の存在はわからないけど、さっきの子よりは強い。後ね最後に一つ」

 

「何?」

 

 

「私のマスターはタツキだけだから。他のは認めない」

 

 

そう言って武蔵はマシュ達の方へと足を進めた。

 

何というか。

 

本当に。

 

俺の事を分かってくれてるんだよな。

 

 

タツキじゃなければならないってのがタツキの中では本当に心強い言葉だった。

 

 

「タツキ少し話したい」

続いて藤丸だった。

 

「さっきはごめん。せっかく人質として取引ができそうだったのに」

 

「アレは俺達のミスだから気にしなくていい。それに藤丸は藤丸の役割があるだろ」

「それだよタツキ。俺の役割って言ってるけど、実際のところ俺はあまり役に立てていないんじゃないかな?」

 

「藤丸あまり、自分を卑下するなよ。役割ってのがあるんだよ。それに、俺には実際関係はなくともサーヴァントとの契約は全て藤丸に任せっきりだし、レイシフト先での人間関係も任せっきりだ。ほら、ただの戦闘員の俺より、藤丸の方が必要だろ?」

 

「そ、そうなるのかな」

 

「ああ、そうなるんだよ」

 

「おい。アレはなんだ?突然現れたり消えたりと、理解できぬ。それにしても伯父上のお顔をまた見ることになるとはな」

アレがこの子の伯父上様には見えないけどな。

『バーサーカークラスのサーヴァント祭りだったね。そしてあちら側にもマスターがいるのか』

 

「先程から見えぬ男がいるな。魔術師の類か?」

「ロマンさんのこと言われてますぜ?」

『そうだね、話が早くて助かる。そう!僕とその子達はカルデアという組織のー」

「すまん長い。俺はタツキカルデアの剣士、こっちは武蔵、これまた剣士、そんでこっちがマシュ、カルデアの守護神!それでそれで!こっちは我らがカルデアのボス!藤丸様であらせられる!」

胸を張って声をあげたのだが、場はシーンとなった。

 

 

......

 

「まぁよい。何はともあれ皆の者褒めてつかわす!余は必ずや帝国を再建してみせる。そう、神々・神祖・自身、そして民に誓った者!余こそ、ローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウスである!」

 

マシュも藤丸も、うんそんな気はしてたって顔してるんだけど。俺は歴史疎すぎて知らんかった。

つーかなんで俺の自己紹介にはあんなに冷たかったの?あれ?今冬だっけ?

というかおぉ〜って言ってる武蔵も名前言われても絶対知らねーだろ。

 

『タツキ君諦めなさい。多分そのノリは間違えていたんだよ。お互いに』

「だな。」

 

ロマンは味方です!

 

そして俺達は街へと案内された。

 

 

街の中は活気に溢れていた。

 

ネロは歩きながら街について色々説明してくれた。

ここがネロ帝の世界最高の都であること。

七つの丘(セプテム・モンテス)という場所から全てが始まったこと。

あとネロ帝は店に立ち寄っては商品を貰っていくというのに、店主は笑顔で「陛下とローマに栄光あれ!」と言うこと。

ちなみに俺と武蔵と藤丸は林檎を頂きました。すまん店主腹の減りには勝てんかった。

マシュは遠慮して食べなかったが美味しいから食べれば?と誘ったが気持ちだけと一点張りだった。

 

ネロ帝は俺達のことを理解できていないが正直者であると見てくれている。

というのが俺は逆にすごいと思う。未来から来たとか言ってる奴らを信じてくれてるのだからそれだけでありがたい。

「サーヴァントだの、マスターだのよくわからん」と呟いていたので引っかかることはあるみたいだが。そこは忘れようと言ってそれで終わらせた。寛大過ぎませんかね。俺だったら理解できるまで問い詰めるだろうな。

 

「それで余を助けるのが目的ーそう言っていたな?」

「はい、その認識で間違いありません」

「ならよい」

凄すぎません?結論だけ出して過程は無視ですって!奥さん!私はビックリですよ。

「タツキ〜一人で百面相してないで、逸れないようについて来なさい」

「武蔵は俺の母親か!言われなくても迷子には......?よく考えたら、なるかもな。ここどこか知らないし」

「ハァ。だからさっさと来る!」

うーん。腕を引かれて連れて行かれる子供の気持ちを人生で初めて体験しました。

俺の母親は、そんな自由を許してくれなかったのです。

(タツキ!来なさい!)

ボコ!

ヌハ!

パチーン!

ギャッファ!

スパン!

え?スパン!?

まあ擬音を使っての説明じゃないと結構やばい内容なのでそんな感じです。

ははは。アレ、よく考えてみたら虐待だよね?

生まれてからそれだったから常識がそれだと思っていたけど、常識ってのは今の俺の状況的なやつだよね。

 

『世界の中心にして、世界そのもの。世界に君臨せし最大の帝国にして都の名でもあるローマ。この時代、首都が脅かされるはずはない。やはり聖杯の影響で事象に狂いが生じているんだろう。恐らく、このでの特異点とはすなわち、史上類を見ない大帝国たる古代ローマ帝国の存在なんだ。後世の人類史に多大な影響を与えた帝国、その崩壊を防ぐことが、恐らく、特異点の修正となる。』

 

ロマンが説明してくれたがネロ帝は

「す、すまぬ。よくわからぬ。もちっと余に分かる範囲で話すがよい。」

 

「そうだよくわからぬ。餅と世に分かる範囲で話すんだ」

『ネロ帝がわからないのは仕方ないが、タツキ君は流石にそろそろ勉強して欲しいんだが?それとネロ帝が言ったのはもーちょっとつまりもちっとだ。後、世は世界ではなく一人称だ。餅と世にではないからな?そこ変にボケてもツッコミはしないからね』

「武蔵〜ロマンが冷たい!あれ?今日は皆んな俺に冷たい?」

「タツキ安心しなさい!私もわからない!」

「だな!俺達は剣士だ!考えることは戦うことだけさ!」

「そうだそうだ!」

『君達......ハァ。』

「だからアレだろ?聖杯取ってこいって話だろ?」

『まぁそうなんだけど」

 

「ネロ帝!俺達は聖杯って呼ばれてる願望器、なんでも願いをかなえたり事柄を狂わせたりもうめちゃくちゃな器の回収が目的なんだ」

「めちゃくちゃな器?」

「あ、ええと!お二人は両極端過ぎます!

聖杯とは特別な力をもった魔術の品です。それはあるだけで多くの事柄を狂わせます。現在ローマを蝕んでいるのはこの聖杯である可能性が高いのです。」

マシュがわかりやすく丁寧に説明してくれた。

さすがはマシュだ。頼りになる!

 

「なるほど。聖なる杯が、世のローマをか」

 

「意味わからんだろうけど、事実なんだ」

まあ理解はできないのは無理はない。俺もその原理を理解できてないから。

 

「いや、不思議と違和感はない。特にその聖なる杯という言葉は、妙に、気にかかる......というか。。。いや!なんでもない!世の杞憂であろう。いつかそんな悪夢を見た気がしただけだ。よしではこれより、我が館に案内しよう!」

え!?皇帝の館?豪華そうだな。

 

「オイ!テメェ!何しやがる!」

 

!?

 

突然市場の方から声が上がった。

 

「余のローマで、余の民に対して何たる!敵の工作か?何であれ許されぬ!参るぞ!」

そう言ってネロ帝は駆け出した。俺たちも後を追い敵を制圧した。

 

サーヴァントは居らずか。

 

兵のみだったので問題なく制圧することができた。

 

 

 

そしてネロ帝の館へと案内された。

 

 

『武蔵ちゃん。タツキ君は任せたよ。彼、今完全に集中切れているみたいだから』

ロマンは他者へ聞こえないようにして武蔵へと連絡を取った。

 

「わかってる。それにタツキは戦う時はふざけないから心配しなくてもいいわよ。それとひとつ調べて欲しい事がある。タツキについて。あの時別の誰かがタツキと入れ替わっていたらしい。その点詳しく調べられない?」

 

『わかった。調べているよ。そこは僕も気になっているところだからね』

 

「任せたわよ」

そういって武蔵は残りの林檎を口へ放り込んだ。





バレンタインイベントにて金フォウ君が2000、2000の武蔵ちゃんが誕生しました!
次は誰に金フォウ君を捧げるか検討中です。


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22話 ローマ帝国と二天一流6

「二天一流の技を操る青年、宮本タツキ。全く彼は一体何者なんだ。あれ程の力があれば一般採用なんてありえないと思うけどね」

ロマンは先程の宮本武蔵との会話後、宮本タツキこと佐藤立樹の個人情報の書かれた資料を確認していた。

カルデアの総力を挙げ調べさせたものなので、カルデアへ呼ばれたレイシフト適正者の情報は裏の情報まで事細かに書かれている。

 

「全くと言っていいほど情報がない。書かれているのは【一騎当千の神】、【戦場の闇】、【死を呼ぶ悪魔】なんだこれ。中二病みたいな感じか?本当にカルデア職員は一般採用として偶々スカウトしたみたいだし、一体彼は何なんだ」

 

「それを言うなら、同じく一般採用の藤丸君の方が異常だと思うがね。カルデアのバックアップがあるとはいえこれ程とはね」

ダヴィンチがロマンの独り言に答えた。

ロマンは再び頭を抱え「一般採用とは何なんだ」とうな垂れた。

 

ーーーーーー

 

タツキ達は現在ネロ帝の家(馬鹿でかい城)に来ている。

 

「さて。余のローマは、今、危急の時にある。栄光の大帝国の版図は、今や、口惜しくもバラバラに引き裂かれているのだ」

城へ着き、大広間に一同が集まったところでネロ帝が話しはじめた。

「かたや、余が統治する正統なるローマ帝国。この首都ローマを、中心とした都市だ。かたや、何の先触れもなく突如として姿を見せた余ならぬ複数の「皇帝」どもが統べる、連合だ。【 連合ローマ帝国 】かの者どもはそう自称し、帝国の半分を奪ってみせた」

うん?

「は?待て待て!この国、半分も奪われてたのか?」

「あぁ。連合の実態もよく判らぬし、斥候を放てど、いずれも戻っては来ぬ。守りの態勢で待つことしかできぬからな」

徐々に奪われていってしまうというわけか。

「マジかよ。敵の拠点の把握はできてるのか?」

「分からぬ」

これはアレだ。敵からはこちの拠点がわかるのにこちらからは仕掛けることすらできない。

完全に受け戦になっている。

守るより攻める方が強いのは時と場合によるが、この場合は守る方はとても弱くなる。

敵の主戦力を引きつけて、敵の本陣へのカウンターも狙えないのではどうすることもできない。

 

「武蔵。現状のパワーバランス的に一気に押し切られることはないと見ているがどうだ?」

このまま待つだけではどうすることもできないが俺達がここを抜けた場合、こちら側の守りがより手薄になるのだ。

「それは大丈夫よ」

「そうか、じゃ俺ちょっと出かけてくr」

「待ちなさいタツキ。索敵に行くのは必要だろうけど、斥候を出したのに戻らないというのも気になるところだし、今ここを離れるリスクを考えると、それは悪手よ」

「やっぱ俺一人でも抜けるとマズイか」

「そうね。一様タツキも戦いになれば頼りになるしね。戦いになればだけど」

「頭悪くてすまんね。アホだから皇帝さんの話聞いてもわからん」

 

「皇帝か。所詮は僭称(せんしょう)に過ぎぬ。有り得ぬことではないのだからな」

僭称か。

身分を超えた称号なんて、俺には沢山与えられたけどな。

【二天を継ぐ者】【一騎当千】【平成の武蔵】【守護者】【打ち破れぬ者】などなど。俺と戦った奴らが変な異名を広げたせいで俺の実力以上のパワーワードが俺にのしかかってきた。まあでもかっこいいし、気に入っているのもあったりするけどな。

打ち破れぬ者は名代(なしろ)に負けた時は武術家達の中で波紋を呼び、道場破りが多発した時に一度たりとも負けなかったことから呼ばれはじめた異名だが、そもそも名代に負けてるんだよな。

 

「何か気になることでもある?」

藤丸がネロの表情を見て、違和感を悟ったらしくすぐに反応した。

先輩!と藤丸の言葉に少し失礼があるのではないかと心配になったマシュが止めようとしたがネロが「構わぬ」と言ったのでマシュは引き下がった。

あの反応的にマシュも気づいていたのか。

 

「そう言えば先刻、ともに目の当たりにしたな。連合の敵将カリギュラ。其方達が来る前、余の軍勢を単身で屠った男。あれは「皇帝」を名乗る連合の大逆者のひとり、そして、この余の伯父なのだ」

『既に死んでいるはずの人間。そうだね?』

「そうだ。姿の見えぬ魔術師よ。我が宮廷魔術師も、伯父カリギュラの手に掛かったが、生きていれば、そなたと話が合ったかも知れぬ。かの魔術師は死を乗り越えたと嘯いてな。事実、大した魔術を余にみせたこともある。しかし......。死なぬはずの魔術を修めたかの者が容易く死した」

『この時代の魔術師を容易く倒す。通常の人間じゃない。サーヴァントだ』

 

歴史に影響があるレベルのことだということはわかった。

この時代にあるべきではない力がここに存在している。

「聖杯の力か」

聖杯の恐ろしさは何となくわかった。

それと共にそれが人を魅了し支配する程の魅力があることも。

『可能性は高い。それがこの特異点の原因になっているんだ』

その後も話しは続き、俺は聞き専に徹していた。

 

ネロ帝は国のほぼ全ての力を注ぎ込み各地の暴虐を収めようと動いたらしい。

総督や将軍クラスも派遣されたようだ。

だが、それでも勢いは納まらなかった。

そして先の戦いは首都を落とさんと攻め込まれていたようだ。

そして多勢の敵に対してこちらは少数の勢力で応戦する必要がある。

故に、とネロ帝は言った。

「余の客将となるがよい!ならば聖杯とやらを入手する目的、余とローマは後援しよう!」と

もちろん俺達と目的は同じであり、願っても無い申し出、断ることは無く、協力することになった。

そしてなんと藤丸は総督の位を与えられた。

 

その後、宴をするとのことだったのだが、俺は疲れたのでと一人寝室へ案内してもらった。

 

高級そうなベッドだな。

そう思いながらベルトを外し、刀を机の上に置き、ベッドに横になった。

 

「ハァ疲れたぁ」

心からの疲労が声に出た。

 

敵側に魔術師がいるらしいし、前線で戦う強大な魔術を操る奴もいるらしい。それってサーヴァントだろうか。

現状俺はあの敵の頼光に勝てない。

武蔵は戦えていたので、武蔵に任せることになるが、もし万が一、そのタイミングで魔術師と戦うことになればマズイ。魔術師相手の戦い方なんてほぼ知らない。魔術の基礎も知らない俺からしたら何が起こるかわからない敵と戦うのは毎回生きるために刀を振ることしかできなくなる。

 

ロマンはレフが敵側にいるとみて藤丸を最前線に配置するようにお願いした。

ネロ帝はそれを受け入れそこに俺も同じく配置された。

 

ベッドの上で座禅し、瞑想する。

 

1日の反省と、改善点を記憶のみで探し、改善された形を妄想する。これは余裕のある時にたまにやることだ。

 

コンコン

 

「宴の準備が整いましたが、如何しますか?」

 

全く邪魔なお誘いだこと。

 

しかし先程俺を部屋へ案内してくれたのは男だったが今回は女の声だな。

 

「案外突然暗殺されたりしてな」

そんな事を呟きながら、あるわけないかと吐き捨て、扉に向かい「遠慮しておく」と答えた。

 

「わかりました」

とだけ言い残してその者は立ち去った。

 

少しして俺は眠りについた。

 

この時、藤丸やマシュ、武蔵は戦いに出ていたのだった。

 

タツキの油断が招いたミスは、潜入していた敵側の者と城の使用人が入れ替わり、緊急報告を伝えに来た男は殺され、代わりに潜入していたものがなんでもない報告をして去って行っていたのだ。

 

先程タツキが感じた、死の予感はタツキへ向けられたものでは無く、扉を隔てた向こう側で城の使用人へ敵方の潜入者が向けたものだった。

 

 

 

 

 

『きくん』

 

『きくん!』

 

煩い。誰の声だ?聞き覚えのある声だな。

脳に響く声に煩いと思いながら寝返りをうっていた。

 

しかし、その声は尚も叫び続けている。

 

一体何なのだ。

 

「うぐざい」

煩いと言ったつもりだが、寝ぼけており、しっかりと発音されなかった。

 

尚も頭に響く声。

 

徐々に意識が戻り始め、その声が「タツキ君!起きてくれ!」と言っているのがわかった。

声の主はロマンだ。

その声から緊急事態なのはすぐにわかった。

飛び起きるように体を起こして「すまない、寝ていた。どうかしたか?」

 

『やっと繋がった!どうかしたか?じゃないよ!藤丸君達は昼間からずっと戦場に出続けているんだ!そろそろ限界が来るかもしれない!君も参加してくれ!』

 

全く。どうかしたのか?ではないな。

 

「了解」

そう言って、すぐにベルトを巻き刀を帯刀し、鞄から10個の指輪を指にはめ、部屋を出た。

部屋を出ると死臭がした。

先程、俺をこの部屋へ案内してくれた男が血まみれになり死んでいた。

斬り殺されたのか?

傷口からナイフのような刃物で斬られたと予想できる。気づくのがもう少し早ければ助かっていただろう。

 

チッ!

 

舌打ちをして、その場を通り過ぎた。

 

あぁくそ!やらかした!

 

すっかり夕暮れの空模様だ。

 

外からは戦いの音が聞こえて来る。

 

「ロマン!場所を教えてくれ!」

『首都外壁の東門前だ!現在サーヴァントらしき影はないが、長く続くとそれだけ藤丸君に負担が大きい、急いでくれ!」

「了解」

 

東門めがけて一直線に駆け抜け、戦場へと出た。

 

まだまだ敵さんは士気が高いな。

 

刀を抜き、敵陣の中へと突っ込み、周囲の敵を斬り捨てた。

 

「な、何だこいつ!危険だ!隊列を組め!まずはこいつから始末する!」

「「「「了解!」」」」

 

タツキの無双を見た兵の一個隊の隊長らしき人物が命令を下すと、俺の目の前で盾兵が壁を作り、後方より弓矢で狙撃するという体制をとられた。

 

流石は攻めてくるだけあって判断力はいいな。

 

だが、今の俺はそんな物に止められるわけにはいかないんだ。

 

放たれた矢は矢は12本。

タツキはそれを確認すると駆け抜けた。

周囲に降り注ぐ矢の雨。

タツキの周りに綺麗に降り注ぐ矢はタツキにかすりもしなかった。

「何なんだこいつ。まるでどこに飛んでくるかわかっているような動きじゃないか!」

盾の一人がそう言ったのが聞こえた。

 

わかるじゃなくて動き回ってるからお前達の、狙いがブレブレなんだよ。

引きが弱くなって放たれた矢は通常よりも速度が落ちる。

 

初白雪でのフェイク込みだからまあ見分けつきにくくしてるってのはあるけどな。

 

一瞬のフェイクを複数織り交ぜたタツキの動きを捉えられる者はおらずいとも容易くその盾の壁は突破された。

 

「この隊の隊長はお前だな?」

「いかにも」

「覚悟はできているようだ」

「ああ。戦場に足を踏み込んだ以上はできているとも」

「良い心得だ」

タツキの刀が男の頸動脈を斬り裂いた。

 

 

 

タツキの近くに立っている人の姿は無くなった。タツキは返り血を浴び赤く染まっていた。

 

その理由はその隊全てを斬り捨てた、ためである。

 

「次」

 

タツキの視線の先には別の隊が見えた。

タツキはそこをめがけて足を進めた。

 

「一人でどうにかできるほど甘くないぞ、小僧」

「そうか。じゃ返し刀で言い返そう。俺をお前ら程度でどうにかしようとか思わない方がいいぞ」

「自惚れるなよ!」

「お互い様だろ」

 

部隊によって主とする武器が違うのはどこでもある事だが、この部隊は長い槍をメインに構成されていた。

 

日本では見ないタイプの槍だが、想定される使い方は

 

「槍投げしかないわな。そんな柵で自分達は籠って敵に槍をぶつけて殺すとか陰気くせぇことするなよ」

 

タツキがそう言うと、「黙れッ」と叫びながら敵の一人が槍を投げた。

それを見たもの達もまた槍を投げ始めた。

 

タツキはそれを全て綺麗に避けてみせた。

 

「馬鹿者ガァ!しっかりと狙わぬか!槍は有限じゃ!無謀者一人始末できずして何ができるッ!」

「すみません!全然当たりません!」

「まるで飛んでくる場所が見えているように避けられます!」

過大評価ありがとう。

ただ馬鹿みたいに目で見えるものしか見えていないようじゃ昇格はできないぞ?

投擲武器に対抗するには細かく動き続けるのが対策としては一番簡単でいい。

 

タツキのその細かな変化は幻覚すら見せる美しい奥義の様なものだった。

無駄な動きが一切なく、美しい動きだった。

 

「馬鹿な。それでもこやつも人の子。ミスはあるはずだ!狙うな、とにかく撃て!奴は場慣れしているように見える!狙うことの方が愚かな行為だ!」

 

「隊長が取り乱したらダメだろ。狙うことの方が正しいっての。狙いもしていない投擲武器は各々がぶつかり合って勝手に落ちる。ほらな」

投擲された槍は他の兵の投げた槍とぶつかり合い弾きあう始末。

隊長は歯ぎしりをしながらそれを眺めていた。

そして「突撃ダァ」と叫んだ。

判断を誤ったな。

「剣の間合いは死の世界だぞ?」

「え?」

一番先に突っ込んだ男の腕が飛んだ。

いとも容易く斬り捨てる。

「悪魔め」

「悪魔か。なら悪魔らしく殲滅しますかね」

一言、言い捨てた男が死んだ。

そしてそれを聞いていた者達もまた「悪魔め」と憎しみの目でこちらを見て突進。

山積みにされていく死体。

隊長はそれを見て後退

「逃げんなよ」

「悪魔め!この快楽主義者ガッ!格下を殺して楽しか?もはやそんな奴は人間ではない!悪魔だ、この悪魔!滅さ......れ、ろ?」

男が最後に見たものは首のない己の体だった。

「突撃命令は悪手だ。少なくとも柵の中にさえいれば俺が無理やりこじ開けない限りは死ぬことはなかった。それとな。格下でも戦場に出て来たのなら関係ないんだよ」

まあ投槍は全部視えるから意味ないけど。

 

さぁ。こっから投擲ゲームの始まりだな。敵軍とこちら側の軍が入り乱れてるから判断しづらいがまあでもあの隊列組んで戦況を見ている、あの後列の奴らは少なくとも敵だろうな

槍の数は全部で28本。盾が8と剣が8

剣は日本では見ない形だし持った感じしっくりこないのでこれも投擲しようか。

全部で投げたら44発。まあそんなに投げたら体がもたないから最低限の数で切り開こうかな。

 

令呪肉体強化。

 

そう言うとタツキの右手の甲の刻印が一画消えた。

 

「よし、やっぱすごいな。これで簡易型令呪なんだから本物は相当エグそうだな」

 

タツキは槍を一本拾い、先程の敵兵同様に構えて後列部隊に向かい投げ込んだ。

「せぇええええの!」

タツキは休むことなくドンドン槍を投げ込んでいった。

「はははははははははは!おらおらおらおら!行ったラァ!」

 

バタバタと人が倒れていくのがわかった。

 

「ウォオォオオオオ」という叫び声と共にその部隊から十数名こちらへ向かい走ってきたのを確認し、槍を構えそちらへ投げ込む。

隊列を組まれる前に仕留める。

避けながらこちらへ接近するのは困難だろうよ。

 

だが何故奴らは飛んできた槍を盾で弾かないんだ?あんな馬鹿でかい盾持ってるんだからわざわざ避けながら走ってこなくてもいいだろうに。

 

あ。もしかしたらこの槍は突きがメインじゃなくて貫通メインで相手ごと地などに貫き刺して行動不能にするのが目的の槍なのか?

 

タツキはそう考えて、実験として、盾を投げ込んだ。するとそれを前列3人が止まり陣形を取って盾を3つ横並べに並べてそれを防いだ。

説は5割くらいは正しいと判断。

 

次は剣で試す。

剣を投げるとそれは盾で余裕を持って弾かれた。

 

立証。槍は危険という認識を持っているが他は防げるということ。

 

槍投げはしたこと無いから見様見真似だが、二天の才能というべきか、こと戦闘に関しては勘だけでできてしまう。まあ飛距離は令呪ありきだけどな。

 

己の才能が恐ろしい。

 

「グハッ」

タツキにより投げられた槍はそれを避けようとした兵を盾ごと貫いた。

死には至らないがまあ動くことはできなくなったか。

 

「逃げてきた兵の一人が言っていたが、お前が悪魔か」

 

一人の男が俺を見てそう言った。

一人を失い12名となった隊がタツキの前で陣形を組む。

前衛が2名の盾、その後ろに3名の剣と盾持ち、その後ろに4名の弓兵、その周りに3名の手に長槍を持つ騎馬兵うち一人は部隊長らしき男。

 

「俺、誰一人逃さず殺したはずだけど?」

「腕を斬り落としたくらいでは人は死なぬぞ」

「あらら〜気絶せず、自分の足で歩いて逃げたのか。やるなそいつ」

「許さんよ。敵討ちというわけでは無いが、一騎当千の悪魔などこの国を滅ぼす元凶になりかねん」

「いやいや、それいうならお前らも同じだろうよ」

「我らは国のために戦っている!行くゾォ」

「行くって何処へだ?」

「敵を煽って動揺を誘うのが得意らしい。だがその手には乗らんよ」

「あぁ。そう」

タツキは左手5本の指を手前へ引いた。

ガンッ!という鈍い金属音が鳴り、後衛にいた弓兵3人が倒れ、騎乗していた騎士が1名馬から落ちた。

 

「何が起きた!?」

「盾です!先ほど投げられた盾がこちらへ向かって飛んで来ました!」

隊長は後方を見ると弓兵が盾の下敷きになっていた。

そして同時にタツキは一人の騎馬兵を斬り落としていた。

 

「糸を大量に盾に取り付けそれを引いて盾を飛ばしたか。そしてそれに気を取られている隙に盾兵に守られていない騎馬兵を討つか。してやられたの」

隊長は部隊の横面に立っていたタツキの姿を睨みつけた。

「立てるな?」

「す、すみません。一人は意識を完全に失っています」

「寝かせておけ。お前達二人は弓を構えろ」

「申し訳ありません。背負いの矢が折れてしまっています!」

「なっ......。クソッ!」

ダメだな〜油断しちゃ。盾に繋がれている糸を切らなければ同じことの繰り返しということがわからないのか?

「ナッ!?」

ブフォアア

盾持ちの隣にいた騎馬兵一人の馬に盾を当て馬を暴れさせた。

馬の機動力は邪魔だから先に落とす。

「馬鹿者ガァ!先に盾に繋がれている糸を切らぬか!」

馬鹿はお前だ。

「味方の混乱に気を取られすぎてお前自身の警戒がなくなってるぞ?」

 

「な、に......を?」

 

隙ができた隊長を見逃すことなくタツキは斬り落とした。

 

隊長の死に動揺を隠せない連中は連携が乱れ、タツキに向かい突っ込んできたのでタツキはそれをいとも容易く斬り捨てた。

 

各指輪に付いているボタンを押すとワイヤーは全て指輪は収納された。

これぞワイヤー収納武器リング(父親作)

以前は指でワイヤーを持ったためすごく痛かったので、確かそんなものがあった気がして鞄を探したら入っていたので一様持ち歩いてはいた。

 

「ふぅ。とりあえずひと段落かな」

タツキの周辺には斬り捨てた者達の亡骸が転がっており、他者から見れば返り血を浴びたその男は悪魔と呼ばれるにふさわしい光景だっただろう。

 

刀を鞘に納めたところで、ロマンから通信が入った。

 

『タツキ君。すまない。君に負担をかけすぎたかい?』

「気にするな。俺が寝坊したのが悪い」

『そうか。こっちでも人を殺してたように簡単に殺すから殺してたのでは無いかと怪しんでしまうよ』

「神秘の秘匿だっけか?それがあるように俺らにも色々あるかもしれないぞ?」

『怖い事を言うな〜流石に冗談だよね』

「......まあな?」

『え?!何?!?どう言うこと?』

「ロマン。俺の事なんて調べがついてるんだろ?わざわざ聞くなよ。つけられて不名誉な称号しか残ってないんだよ」

『称号?まさかあの死を呼ぶとかってやつかい?』

「死を呼ぶ?聞いた事無いな。まさかまーたなんか増えてたのか。厄介な」

『あれ自分でつけたわけじゃ無いのか』

「当たり前だ!あんなもん呼ばれるだけで鳥肌が立つってのにここでもあのローマの連中に悪魔呼ばわりされるし、何なんだよ!」

『たしかに敵から見ればタツキ君は悪魔かもね』

「まあこれだけは言っておくが、本当に人は殺してないぞ?ただ俺の二天の伝承者さんが殺してたのはたしかみたいだがな。そことの繋がりがあるから全然考えないでそれを行えてしまったことに初めは驚いたけど、それが普通なんだと身体が知っていたって感じだ」

『そうか。不思議な話だね。わかった、今後は油断なく頼むよ』

「はいはいもう寝坊したりしませんよ」

そこで通信は切れた。

 

 

敵が撤退した頃には

日はくれすっかり夜になっていた。

 

「しぶと過ぎ!うぜぇ!」

「それよね!ありえない!お腹空いた!」

「それだ!寝起きで何も食べてないままなんだぞ!朝御飯を出せ!」

「タツキ。それは朝御飯とは言わないわよ」

「なっ!?」

「先輩お二人が疲れ切って駄々をこね始めたした。どうしますか?」

「流石に二人に負担がかかり過ぎたかな」

「安心せよ!宴の準備をさせている。歓迎するぞ」

「まじか!行くぞ!武蔵」

「おーよ!」

 

「まてぇい!」

 

「藤丸。俺を止めるな」

「藤丸。私を止めるな」

俺と武蔵は同時に藤丸に振り返ってそう言った。

藤丸は俺達の姿を見てあははと笑ってこう言った。

「君達、お風呂入ってきた方がいいと思うぞ?血糊を落としてきてから食事を頂こうよ」

そういえば俺と武蔵は返り血で血だらけになっていた。

 

 

そういえば風呂とローマといえば......

「映画じゃん!」

 

「タツキ?」

 

「そうだよ!ローマってどっかで聞いた事あると思ったら映画だよ!映画!ローマといえば風呂!さぁ!出発だ!」

 

「浴場へは一人案内人をつけよう、疲れと血を落としてくると良い!お主らも行くか?」

 

「いえ、私達は宴の準備を手伝います」

「そうだな、俺もそうするよ」

マシュと藤丸は残るそうだ。

来ればいいのに。

 

「そうか?じゃ行くぞ!武蔵!。......そういえば混浴なのか?」

「なっ!?斬り落とすよ」

「何をですか!?」

武蔵の視線が精神的ダメージをタツキに与えた。

 

「其方らの国では別々の風呂場があるのか?そもそも女子が風呂に入るという習慣そのものがあまりないのでな。そこは我慢してほしいものだ。だが!見事な働きっぷりだった其方なら何なら貸切にしてやっても良いぞ?」

ネロ帝が腕を組みどうする?と聞いてきたので、そこは甘えさせてもらうことにした。

 

「助かる、お願いしてもいいか?」

「え?タツキ?」

「いやあれだよ。俺は別にいいけど、一様武蔵は女の子だからさ。武蔵は気にしないかもだけど、俺は気になる」

「わかったわ。そういうことならお願いするわ」

「うむ!ではそのように手配しよう」

 

「タツキ。素直じゃないな。お前武蔵ちゃんの素肌を野蛮な男達の前に晒したくなかっただけだろ?独占欲か?」

藤丸がコソコソと耳元でそう囁いた。

「なっ!?バッカ!お前!そんなわけあるか!ってか男のツンデレとか意味ないから、変なこと言うな!」

(あっとるじゃろ)

(正論だな)

(仕方ないわよ。この歳でどーt)

「ウッセェええええええええ!!武蔵先に入ってくれ、俺はちょっと用事があるから武蔵の後に入る。あ、あとネロ帝、俺の時は浴場開放してくれて構わない」

「うむ、わかった」

 

脳内ジジイ、ガキ、ババアがウルセェ!

さっきから脳内でヒューヒューとか騒いでやがる!

 

「普通に嫌じゃない?相棒の女の子が舐めるように見られるなんて絶対嫌なんだけど」

(ひゅうひゅう)

(完全にデレましたな)

(男のツンデレって価値があるのかしら)

「おいこらテメェら!うっせぇぞ!」

( おいどんはもう寝るぞい?風呂を覗いてもおいどんらは知らんぞい?)

「テメェは誰だ?急に初見さん来んな!」

(おいどん悲しい)

「うっせぇ!」

(一言言うていいか?お主周りからヤバいものを見る目で見られとるぞ?)

 

「え?」

 

街に入り先程借りた部屋へ戻ろうとしている道中で独り言を他者へ聞こえる声で発していたために、周りはこちらをコソコソと隣の者と何かを言いながら奇異の目で見ていた。

 

俺、即帰る。

 

歩くスピードを速め、自室へ向かった。

 

 

俺の仕事はまだ続いてる。武蔵を先にした理由はもう一つ。

まだ血を浴びるからだ。

俺をハメたあの女。

アレは潜入者だ。帰られる前に殺す。

 

「逃がさない」

 

再びタツキの目に殺意が現れた。

 

輝夜。先に俺を罠に嵌めやがったやつ、場所わかるか?

 

輝夜はタツキの脳内で話しかけてくる女の剣士だ。

 

(わからないわ。ただ近づけばわかるわよ?一度嗅いだ人の匂いは忘れないから)

 

じゃ俺が歩き回るから近づけば教えてくれ

 

(わかったわ)

 

 

その後俺はあらゆる場所を歩き回った。

 

そしてその女はいた。

 

(あの花瓶を持ってる女ね。上手く召使いに成りすましてるけど、臭いは同じだから間違いないわ。あと少しだけど血の匂いもするわね)

 

了解

 

殺気を感じ取った女は花瓶を置き、胸元に仕込んでいた小刀を抜こうとした

 

 

「なん.....で。ごめんなさいマスタァ」

 

その手ごと背面から刀が女を貫いていた。

 

だが、返り血は飛ばず、そこから光の粒子が溢れ出した。

 

「俺を騙したんだ、生きて帰れると思うなよ。ん?てか、マスターってお前サーヴァントだったのか?」

 

「え?その声......」

 

そう言って女は此方を向いた。

 

短髪のおとなしそうな顔の子が微笑んだ。

 

「よかった......生きていたのですねマスター」

 

「は?何言ってんだお前?」

俺をマスターと呼んだのか?

 

「私は占いに長けた者達の集まった出来損ないのサーヴァントです。占いに貴方が血だらけになってやられている姿が見えたので、睡眠の薬を部屋に流し込み、眠っていただきました。身勝手をお許しください。ですがやはり未来は変えられませんでしたか」

 

そう言って女は俺の顔についていた血を手で拭った。

 

「訳がわからない!何を言ってる?お前は敵の潜伏者で俺を嵌めたんじゃないのか!?」

 

「あ、あぁ。そう言うことでしたか。身勝手な行いには罰があるものですね。私達、占師というものは騙されたと罵られ詐欺だと言われその結果、殺されるんです。名も残らず○○の場所にいた占師としか残りません。そして我々は皆、正しいと思いそれを成します。今回も正しいと思っていたのですがどうやら私の誤りのようでした。返り血ですか。マスターの血じゃなくてよかった」

 

そう言ってその子は光の粒子となり消えた。

 

後にはただ、血だらけのタツキが、廊下の真ん中で膝を床につき理解ができないと頭を抱えていた。



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23話 ローマ帝国と二天一流7

タツキの精神状態が乱れた時と同じくして

 

「戦いに紛れて忍び込むのなんて容易いものだな」

黒服の男が藤丸やネロ達のいる建物内へ侵入していた。

騒ぎに紛れて侵入したのだ。

 

「ボス!ネロの首を落とすためにはまずあの剣士と盾兵が厄介かと。先程の戦いでも有能な者達が手に負えない程の強さでした」

 

「信じられんな。だが本当なのだろう。其奴らに見つからぬように潜り込むぞ。下手な戦闘は避けるように」

 

「「了解」」

 

3ん人組は建物内へ忍び込むと周囲を確認しながら足を進めた。

 

 

 

同刻

 

 

「タツキ達が戻るまでに準備を終わらせておきたいね」

 

「そうですね。タツキさん達は頑張ってましたから」

 

『寝坊してたけどね』

ロマンはタツキの精神状態が良くないことをモニターで把握していたがタツキの現状を藤丸達には報告しなかった。

タツキのことを思い藤丸はそのことを聞いたらまずこの場所を飛び出しタツキの元へ向かうだろう。

そうなれば、タツキ自身がそれを見られたくないと思っていたら最悪の展開になりかねないと判断していた。

 

「タツキらしくないよね」

 

 

「其方らはそのタツキという者を好いておるのだな」

藤丸とマシュの会話に疑問を持ったネロが声を掛けた。

その問いに藤丸は唐突だなと思いながら問いに対して問いで返した。

 

「どうしてですか?」

 

「寝ていて戦場に出れなかったなど、許せるものではない。それを其方らは何も咎めることをしていないのでそう思ったのだ」

 

「いや、それはタツキ自身が一番理解してるから俺達が何かいう必要は無いんですよ」

 

「ふむ。そうなのか。少し席を外す」

ネロの表情が少し険しくなり部屋を出て行った。

 

 

「侵入者め」

 

 

ネロは建物内へ賊が忍び込んだことを連中から少し漏れた殺気や敵意により気づき、それを始末するために部屋を出た。

 

 

 

風呂場

 

「へー本当に貸切にするとはねぇ」

武蔵は貸切にされた風呂へ入った。

 

「それにしてもタツキは何でああも一人で片付けようとするかなー。サーヴァント戦の時は私に頼る癖に。まさかサーヴァントじゃなくて同じ人になら勝てるとか自惚れてるんじゃ......自惚れてそうね。。。」

武蔵は湯船に顔をつけ湯船でブクブクしていた。

 

武蔵はタツキが現在、侵入者の始末をするために先に風呂へ入ってくれと言ったことは気づいていたがその後に起こることは予測できていなかった。

 

 

同刻

 

 

『タツキ君!大丈夫かい!』

 

タツキはその場所にうなだれて思考を巡らせていた。

 

何が起きたのかを把握するために深呼吸して精神を安定させようと必死だった。

 

そのタツキにダヴィンチちゃんは必死に声を送っていた。

 

『タツキ君!』

 

「ああ。大丈夫」

 

そう呟いたタツキの声からはとても大丈夫とは思えなかった。

 

「なあ。ダヴィンチちゃん、侵入者って敵だよな。例えそれが敵か味方かわからないとしても侵入して何かをしようとしたら敵だよな」

 

『え?どういうことかな?』

何が起こったかわかっていないダヴィンチは返事ができなかった。

 

「いやなんでもない」

 

そう言って通信を切った。

 

 

「そのお漏らしのように漏れてる殺気は何だ。殺気漏らしてる時点でお前らは敵だよな」

 

そう言ってタツキは殺気の漏れている場所へ向かった。

 

 

それは僅かな差であった。

 

タツキが族を見つけるやいなや刀を抜き溢れ出る殺気に族は気づきタツキを視界に入れた。

 

そして硬直した。

 

そこにあったのは死だった。

 

生きて帰れないと思わせる程の殺気がタツキから溢れていた。

 

「逃げ......」

逃げるぞと言おうとしたであろう族のリーダーの首が飛び、それを見て短剣を一人の男は構え、一人は足早にその場から去ろうとした。

「逃げんなよ」

タツキは小太刀を抜き逃げた男の背目掛けてそれを投げつけた。

小太刀は見事に男を背中から貫いた。

 

「お、おい!お前!俺はこの件から手を引く、だから許し......」

 

「手を引くとかそんなもんどうでもいいんだよ。侵入した時点で手を引くとかその次元は超えてんだ」

タツキは冷静に死を与えた。

 

そしてタツキの身体には返り血が飛んだ。

「ああくそ。ネロ帝にバレたら俺も殺されるかな。壁とか床が血だらけだよ。とりあえず死体の処理からするか」

 

そう言ってタツキは門へ向かった。

 

 

 

タツキが族を見つけて殺しにかかるのと同時にネロは族の姿を確認した。

 

来る方向が同じであれば話し合いの余地はあったかもしれない。族を拷問するという結論もあったかもしれない。

 

ネロが見つけた時には既に3人の前に死を体現したような男が刀を抜き走っていた。そして次の瞬間族の首は飛んでいた。

 

ネロは壁に隠れて様子を伺っていた。

 

族の様子ではなくタツキの様子だ。

 

「本当に死神のようなやつだな」

 

人を殺すことに対して何の感情を持たずただ当たり前の様に殺している様子は異様だった。藤丸という人間が信じる様なタイプでは無いとネロは思った。

 

アレは命令されればもしかしたら藤丸ですら殺すのではないかと。そう思わざるを得なかった。

 

 

全く。壁も床も血だらけだ。

 

死体をぶら下げて何処へ行くつもりだ?

 

ネロはタツキの後を追った。

 

ーーーーーー

 

タツキは門へ向かい、門番の一人へと話しかけた。

 

「すまんちょっといいか?」

 

「何だい?って!?血だらけだ!?」

門番の一人がタツキを見て驚いた。

そしてもう一人の門番が此方へ向け槍を構えた男の足元に族の首を投げた。

 

「悪い。族が侵入してたので三人ほど殺したんだ。始末頼む。それにお前らだって侵入を許したとなったら立場、危ういだろ?廊下に死体転がってるから早急に始末してもらってもいいか?」

 

「どうする?信じるか?」

 

「俺が門を守るからお前行ってきてくれ。流石に2人共行くのはまずいだろうしな」

 

「了解」

そう言って、最初に槍を構えていた、男が死体の処理へと向かった。

 

「さて、俺も風呂にでも行くか」

そう言ってタツキは人のいない平野へと出た。風呂とは真逆だ。街から出るのだからそんなところに何かがあるわけがない。

 

つけられてるな。

 

最初はただ偶然かと思ったが、俺の後ろをチョロチョロされるのはイラつくな。

 

(殺す)

 

タツキは後方へ殺気を飛ばした。

 

「余に殺気を向けて何のつもりだ!」

 

タツキが後ろを振り向くとそこには赤ドレスの女の子ネロ帝がいた。

 

「ネロ帝!?何の用ですか!?」

 

突然のネロ帝の登場にタツキは驚きを隠せなかった。

 

「まずは先の潜入者共の、始末感謝するぞ」

 

「見られてたのか。気にしないでください。通りかかった時にたまたまいたので」

 

「そうか。其方、余と立会いをしてみる気はないか?」

 

「剣での立会いですか?いいですけど手加減はした方がいいですかね?」

 

「もちろん無くて良い。余も本気で行くぞ」

 

「わかりました」

 

そう言ってタツキは太刀の秋を抜き構えた。

 

「うむ?二刀流とやらは使わぬのか?」

タツキが二本の刀を抜かなかったことに疑問を感じたネロから質問があった。

 

「俺は決闘とか剣士としての勝負では二刀流は使わないんだ。手抜きとかじゃないぞ?なんていうか己へかけた制約のようなものだ」

 

「そうか。だがそれは手抜きと余は見るぞ」

そういうとネロは赤と黒の異様な形をした剣を構えた。

形状からして突きがメインの剣か。

 

「悪いな。手抜きでは無いんだがそう思われても仕方がないと思っている」

 

「そう思うのであれば二本目を抜くが良い」

 

「抜かない」

 

そう答えると同時にネロは剣を構え飛び上がった。

 

は?

 

そして剣を上段から振り下ろしタツキめがけて叩きつけてきた。

おいおい。全体重ののった一撃かよ。それ避けられたら隙ができるのに。

 

二天一流-神無月 孤独剣 [ 撃墜 ]

タツキは振り下ろされるネロの剣を自分の刀で受けた。

そしてその受けた刀を左後ろへと引いた。

刀に全体重を乗せていたネロはバランスを崩しタツキの左後方へと転倒しかけたところをタツキが流した流れのまま刀の先でネロの背を狙い刀を突いた。

 

確実に必中コースだったのだが

 

「甘い!」

 

バランスを崩していたネロは左足でタツキを蹴り飛ばした。

 

「ってぇよ。皇帝様がずいぶんと派手な戦い方をなさる」

 

タツキは蹴られた左足を少し動かし問題ないことを確認すると、構えを解いた。

 

「二本抜く気になったのか?」

 

ネロは剣を構えることなく自然体のままこちらを伺っていた。

 

「そうだな、二本抜いてもって考ッ」

二天一流-水無月 其の一 水の無い夕立

無形からの斬撃。型がない故に隙を見せたら斬る。二天の技の中で一刀でも使える技だ。

 

「なっ!?」

 

ネロはギリギリのところでその技を避けていた。

 

いや違う

 

見られていた?

 

やばい!

 

タツキは反射的に首を後ろへ引き、ド派手系イナバウアーみたいになっていた。

そしてその上を赤い閃光が走った。

 

やべえ

 

タツキは必死に体制を起こし刀を振った。

 

しかしネロはそれを容易く避けそして追撃の斜め斬り。

 

タツキはそれに合わせて身を剣の方へ寄せた。

 

「なっ」

 

鮮血が弾けた。

タツキが自ら剣へ体を寄せたことにより最大の威力でのダメージを避け、そしてネロは思いもよらないタツキの動きに一瞬動きを止めた。

剣士にとって間合いの内側のさらに内側。そこへ敵の侵入を許すことはあってはならない。何故なら剣を振るうよりも前に敵に攻撃されるから。つまりこの距離は剣を振るうよりも拳の技の間合いとなる。

 

タツキはその隙を見逃すことなく一撃を振り抜いた。刀ではなく

コンパクトにただ単純に相手捩じ伏せる左拳

でネロの腹を打ち抜いた。

 

タツキがどおだ!と思った瞬間ネロは怯むことなくタツキの顔を左手で後方へ力強く押した。

 

「は?」

 

タツキは一瞬何が起こったのか理解できなかった。ネロはタツキをただ強く押しただけ。

だが、それによりバランスを崩し後方へバランスを崩したタツキの立つ場所はネロの剣の間合いであった。

バランスを崩したタツキは剣を振るうことはできない。

 

よって避けることのできない一撃がタツキを襲う。

 

ネロの剣が振り抜かれた。その剣には確実に殺気が込められていた。いや、この瞬間ネロは加減を間違えたのか、それとも鼻から決闘での敗者は死という考え方だったのかはわからない。だがこの一撃は確実にタツキを殺す軌道で殺意を込めて振り抜かれていた。

 

避けることなどできようもない。

 

俺の負けだ。と感じ取ったタツキを動かしたのは幼い頃から体へ叩き込まれてきた反射だった。

 

熱いものに触れた時すぐに手を離すようなものでタツキの場合、死にそうになった時身体はなんとしても生きるように動く。

 

ガンッという鈍い音と共にタツキの身体にネロの剣が振れる前に止まった。

 

「余の勝ちだな!」

ネロは叫んだ。

 

「殺すつもりで来てんじゃねーよ」

正直タツキは驚いていた。自分の反射がアレに反応できるとは思っていなかったからだ。

 

そして驚いていたのはネロも同じまさか止められるとは思っていなかった。

 

「すまぬ。其方に対して手を抜くことはできなかった」

ネロは殺気を消し、普段通りの状態へと戻った。

「余の勝ちでよいな?」

 

「二刀目を抜いたから俺の負けってか?まあそうなるか」

 

そう。タツキはネロの攻撃を止めるために左手で二刀目の刀を抜いてそれを防いでいた。

タツキの意思を無視し身体が二本目を抜いたのだ。

 

「少しは気が晴れたか?其方に一つだけ。怪しい動きをした者は今後も味方を惑わす。其方の判断は正しいと余は考えるぞ。では宴に遅れるでないぞ」

ネロはそう言い残しその場を後にした。

 

なるほど、それを伝えるために。その言葉を相手に納得させるために己の力を見せたのか。

 

流石皇帝様だ。

 

「風呂に入ってから参加するよ」

 

ネロは手を振り歩いて行った。

 

タツキは刀を鞘に収め、地面に尻をついた。

 

「あぁああああ。疲れたぁ。久しぶりの決闘楽しかったぁ。ま、負けちまったけど、学ぶことは多いな。つーか反射的に二本目を抜いちまったじゃねーか!」

何より一刀の制約は楽しむために俺がつけた掟だ。

それは二刀は敵を殺すために教え込まれた刀であり、一刀はタツキが名代に負けた後から本格的に学び出したため、タツキからすると決闘は殺しではなくお互いを高め合い認め合うものという認識のため、タツキは決闘において二刀は使わないとしていた。

 

「まさか咄嗟に抜いてしまうとはな。つーか女の子ってなんなの!って感じなんですけど。腹パンしたのにすぐに追撃して来たりさ、もう手に負えないっての」

 

タツキはその場に寝転がり空を見た。

 

「風呂に行きたいけど、疲れて動けません」

 

「なら運んであげようか?」

突然の返答に驚き声の方を見ると、タツキと空の間に顔を出したのは武蔵だった。

髪を束ねていない武蔵はレアだ。

「髪かわいいなそれ」

 

「なっ!?え!?タタタタタタツキ!?」

武蔵は顔を真っ赤にしてすぐに髪留めをつけた。

「もったいない」

 

「タツキ。怒るよ」

と言いつつも武蔵は若干嬉しそうなのか照れてるのかわからないが嫌ではなさそうだった。

 

「ごめんごめん。つーか運んでくれるなら頼むわ」

 

「了解」

そう言って武蔵は軽々とタツキを担ぎ上げた。

 

そうお姫様抱っこで。

 

「なんでその持ち方なんだよ!」

 

「えぇ?恥ずかしいのぉ?」

 

「はず!?恥ずかしいわけないだろ!ほらさっさと風呂まで運べ!」

武蔵がニヤニヤとこちらを見て来たのでタツキも引くわけにはいかない。

いやでもあれだよ。成人してる男に対してその二つの山が当たるというのは此方としても我慢せざるを得ない状況だがきついよ?ふわふわしてるし。重力を感じちゃうし

 

「タツキ。また負けたのね。最近負け越してない?」

急に武蔵の顔が暗くなりタツキの目を見て話してきた。

 

「うっせ!腹パンしたのにすぐに追撃されるとか思わねえよ」

気まずいのでタツキは武蔵の目から目を逸らし進む先を見た。

 

「あっちも歴史にその名を残す英霊になる人物だからね。それくらいはできる。それにね、ネロはあの瞬間少しだけ身体をタツキの方へ寄せたのよ?気づいてた?」

 

「は?それって」

 

「そ、タツキがネロの剣に対して行ったそれをタツキのパンチに合わせて行った。上手く返されたわけよ」

 

「ハァ。そんな奴らばっかかよ。もう疲れた。早く風呂へ連れて行ってくださいな」

 

「はいはーい。寄り道観光しながらお連れしますよ」

 

そう言った武蔵は門へ行き、ネロ宅へ行き、広間へ行き、藤丸、マシュの前を通り、街のど真ん中を通り、そして先程通り過ぎた場所へと戻り浴場へと到着した。

 

「着いたわよ」

 

「おいこら!ここさっき通っただろうが!」

 

「?何のこと」

ふふふと武蔵は笑いながらタツキをおろした。

武蔵的には楽しかったのだろうか?

呑気なやつだなーとタツキは思いながらも自分の顔に笑顔が溢れていることに驚いた。

 

「あーもういいですよ!運んでくれてありがと!じゃ風呂堪能してきますよ」

 

そう言ってタツキは浴場へと入った。

「たく!お世話様だよ!」

タツキは一人でそう呟いた。

 

「それじゃ私もご飯いただきましょうか!」

武蔵はご機嫌に鼻歌を歌いながら、藤丸やマシュのいる会場へと向かった。

 

 

 

ーーーーーー

 

ネロは歩きながらふと自分の首筋を触れた。

 

そこは先程一瞬だがヒヤリとした感覚が触れた場所。

そうネロがタツキに二本目を抜かせた際、タツキはもう片方の刀でネロの首を確実に落とす軌道で振り抜いていたのだ。

 

だがネロの首筋にふれる瞬間ネロが叫んだのだった。

 

「余の勝ち......か」

 

あれは死ぬと思ったから咄嗟に出た命乞いとも取れてしまう発言だった。

 

ああ言った瞬間タツキは右手に持つ刀を引いた。

その時のあの者の目は驚きの目をしていた。それまで見せていたその集中力が切れたような、全く別の目だった。

 

そうタツキは、はなから、殺すつもりはなかったということだ。

殺すつもりでやっていたのは最後の瞬間、タツキの目が急に殺意のこもった恐ろしい目になったあの瞬間だけ。あの時に嫌な予感がして叫んでしまった。形式上勝ちとなっているが、実際は喜びは無かった。

 

何故ならこの決闘が意味するものは

 

ーーー実戦なら殺されていたーーー

 

ということだからだ。

 

実際は実戦では無いし、勝ちは勝ちなのだが。

 

あれが殺し合いなら彼が二本目を抜いた瞬間余は首を斬られていた。

 

ネロは少しだけだが彼らがタツキを仲間と信頼する理由がわかった気がした。

タツキは実力を持ちそして信念の元戦っている。

 

二本目を抜けば負けとは。それでは二刀流の意味がないではないか。

 

ネロは少しだけだがタツキを認めることにした。

 

「それにしてもあの目......好かぬ」

 

ネロはそう言った時ネロの横を通り過ぎたのは、名は宮本武蔵と言ったか?其奴に担がれたタツキの姿だった。

 

タツキと宮本武蔵は楽しそうに話しながら街を走っていた。

 

「其方。切り替え早くないか。。。」

ネロはハァとため息をこぼした。

 

それにしても勝つためには何でもやるあの目が好かぬが、逆に良い。

 

ネロは何故かタツキとは上手く連携が組める気がした。

 

面白くなりそうだとネロの口元に笑みがこぼれた。

 

 



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24話 ローマ帝国と二天一流8

風呂場

 

 

貸切風呂というのはなぜか高揚するものだ。

そんなことを考えながらタツキは風呂場へ入った。

 

が。

 

そこは既に貸切ではなくなっていた。

 

 

おっさんどもが群がっとる。

 

「おぉ!来たな!異国の若いの!お前さん凄かったなァ!あれぞ正に一騎当千というべきか!」

湯船に浸かっていたおっさんが此方を見てそう叫んだ。

 

すると風呂場にいた者達が「あれが噂の」「あの子が?若いのにすごいな」などなど、すぐに出たいと思う程に注目を浴びていた。

 

「なんじゃこら。ネロ帝め。やりやがったな」

 

「なんじゃ?入らんのか?」

風呂を眺めながら立ち尽くすタツキを見て、おっさんが不思議そうにしていた。

 

「いや、予想と結果がズレていたのでその修正を」

 

「何を言っとるかわからん。まあええわ、好きなタイミングで入れ」

 

「そうさせてもらう」

掛け湯をして誰もいない端にゆっくり入った。

 

「ああぁああ」

うむ。気持ちが良い

 

本当に男しかいねーな。

周囲を見渡しても女子はいない。

つまり俺の選択は正しかった。

褒めてつかわす!過去の俺!

 

そういえばネロと戦った時、咄嗟に二本目抜いちまったけど、あの瞬間のあの一太刀に関しては俺の意志での一刀だった。

だが、守りの太刀で二本目を抜いたのは完全に反射的に体が反応していた。

 

あの時一瞬だが世界が歪んで見えた。

 

いや、歪むと言う表現は違和感がある。

 

分裂して見えたと言うべきか。

 

 

いや、もっと正確に表現するなら、いくつもの世界が同時に見えたと言うべきか。

 

 

その中のいくつかは俺はネロの剣で死んでいた。

 

走馬灯ではない。

 

あれは多分だが、別の選択をした場合の俺の姿だろう。

 

記憶に残るのは斬られて落とされる俺の姿。

 

そして俺は二本目を抜いていた。

 

俺の思考や意志を押し付け、反射が生き抜くことを選んだのだろう。

 

武蔵にはこのことは話すべきか。

 

それともダヴィンチちゃんに聞いてみるのもいいかもしれない。

 

これは本当にただの反射なのか?

 

そんな疑問を頭に抱えていると、ふと視線を感じ辺りを見回した。

 

「おいこらめテメェら!見てんじゃねぇ!」

 

「まあまあ坊主!皆お前さんのことが気になってんだよ!立会いたいってやつも多いんだぜ?そう怒んなよ」

先ほどから俺に話しかけてくるおっさんだ。

いつのまにか俺の隣まで来ていた。

 

不覚にも考え過ぎていて、こいつの接近に気づけなかった。

「あーそう。じゃ俺はもう上がる」

 

「そうか?じゃあ最後にだ、お前さんが何処から来たかはわからないが俺達からしたらお前は立派な戦士だ。頼りにしてるぜ?」

 

「好きにしろ」

そう言い残して風呂場から出た。

 

 

さて、宴に行くか。

 

カルデアの制服を着て刀を帯刀し、街へ出た。

 

 

宴ではネロやその他の人間達と少しだけ話してから部屋へ戻った。

 

明日からは遅れを取るわけにはいかない。

 

今日は早めに寝るか。

 

タツキはそのままベッドへと向かい、そのまま眠りについた。

 

 

 

この日以降タツキの眼にあらゆる可能性がはっきりと意識して見えることは無かった。

 

その一回は何かの偶然なのか必然なのか、その力があることを気づかせるためにあえてはっきりと見せた。

 

何者かはまだタツキにはわからない何者かが。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

タツキは誰よりも早く起きた。

 

そして制服を着て刀をベルトに帯刀、小太刀と太刀を抜刀し振り抜いた。

 

「調子が良いな」

 

二天一流の基礎の型をいくつか振った。

 

五輪書通りの修練を積んでいた頃はよく振っていたが、そこに自己の意思を入れて考え始めてからはあまり振っていなかった。

 

二天一流の構えには上段、中段、下段、右の脇、左の脇の五つからなる五方の構えというものがある。

 

個人的に左の脇、右の脇は苦手であるが、できないわけではない。

 

構えは状況に応じて変えれるくらいはできる。

だが苦手であるのでこういった時間にその構えを取って修練を積む。

 

少しづつレベルを上げていくのがタツキの最近の特訓である。

 

以前ダヴィンチちゃんからレイシフト中にハードな特訓メニューを組むのはダメだと言われたのでそこは守っている。

 

実際、レイシフト中に無駄に疲れるのは好ましくはない。

そのため身体を温める、精神を落ち着けるくらいにしている。

 

『練習か?精が出るなー?』『落ち着いて振れ』『もう一歩踏み込め』『叩っ斬るだけだろ』『おむすびか?すまんな』『娘さん元気そうで何よりだ』『すまんな助かったよ』『かけがえのない日々だからな』『私にもできます』『気持ち?そんなもの考えたことないよ』『僕のことは気にしないでよ』

 

『さて、始めようかの。戦いを』

 

 

タツキの頭の中で人の声が聞こえた。

その声の後、タツキの精神をより安定した、形でより戦える状態へ導いた。

 

よし、安定したな。

 

タツキはカルデアの制服を着て、制服の内ポケットにあらゆる小道具を入れた。

 

これはダヴィンチちゃんにお願いして改造を施してもらったことで内ポケットが左右合わせて12ポケットある。

そしてそこに入れたものの感覚と重さをわからなくできる作りにしてあり、即出すには不便だが持ち歩きには便利である。

そして制服をメンテナンスに出す度に柔軟性がよりタツキ専用の形へと改造されているのもわかる。

以前より動きやすくなっているからだ。

 

そしてタツキはいくつか技の型の練習をし時間を過ごした。

 

そして時間は過ぎ、ネロと藤丸、マシュ、武蔵の集まる部屋へと向かった。

 

 

部屋に入ると俺以外は全員集まっていた。

 

「お、タツキちゃんと起きたな」

藤丸が俺をみてそう言った。

寝坊しないか心配されていたらしい。

「おはよ。起きるよ。マシュも武蔵もネロ帝もおはよう」

タツキの到着を確認すると通信が入った。

 

『おはようございます。皇帝陛下。おはようタツキくん。皇帝陛下に実はひとつ大切なお願いがございます」

お願い?なんだ俺は聞いてないな。

藤丸達は知ってるみたいだ。

「うむ、何でも言ってみるがよい。余は寛大だぞ?」

「この時代に於ける我々の活動を安定させるためにエトナ火山へと参りたいのです。我々にとって、重要な霊脈があの火山には存在しているんです」

うーむ?とりあえず簡単にすると、活動をしやすくするために火山に行くということだな。把握した。

 

「エトナか。宮廷魔術師もエトナにはよく行っていたな。ふむ、なぜだ?」

「うむ。何故でしょうな」

「タツキは知らんのか?」

「皇帝陛下、私どもがらそのようなこと知っているはずありませんよ?」

「すみません。タツキはそういうのに関心が無くて。理由は戦力の確保の為です」

なるほど?戦力の確保ね。

「なるほどな。よくわからぬが、貴公たちの申し出は認めよう。貴公たちがエトナへと赴けば、それが余のため、余のローマのためになるのであろう?」

「らしいですね〜俺にはよくわからんのだけど」

「あいわかった!余は連合帝国の調査があるゆえ同行はできぬが、好きにするがよい。道中、連合の兵と見えた時には油断するなよ。それとタツキはもっと学んだ方が良いぞ?」

「善処します」

 

 

 

ーーー

 

「ふむ」

「フォウ」

「こうもあっさり到着できてしまうと拍子抜けだな」

『そうだね。この一帯は連合にとって重要な地域じゃないのかな』

「いえ、お二人共どうやら霊脈には既に何かが群がっているようです」

 

え?

うん?

うーん?

霊脈にはって言った?

「つまりあのごちゃごちゃしてるのが霊脈?」

「そうですね。そのごちゃごちゃしているのは怪物ですが」

「オバケかな?」

「お化けではないかと」

『死霊系の怪物かな?自然発生してるとしたら、大した霊脈だぞ!』

「タツキ意外だな。お化け苦手だったりするのか?」

藤丸が不思議そうにこちらをみた。

 

「心外だな。俺だって怖いものはある。そうだな斬れない奴は苦手だ」

 

「それどこぞの強者の台詞なんだけど」

 

「そうか?でも実際アレは斬れるし問題ないがな」

 

「そう?じゃ頑張って」

 

「おう!行くぞ武蔵」

 

「了解」

 

タツキと武蔵が先陣切って飛び出したのをみて、マシュとネロも戦闘へ加わった。

 

「クソか!さっさと落ちろ!」

斬れるのはいいが、謎に耐久値が高いな。

 

先程から斬っても斬っても敵が消滅することはない。マシュや武蔵の攻撃では普通にダメージが通っている。

 

ただの斬撃ではダメージが少ないのか?

お化けだから?

なら、魔術での攻撃なら届くだろうか。

 

要はルーンブレイドの裏斬(りざ)に聖召石をはめ込んで叩っ斬れば

「フンッ!」

お化けはその斬撃により消滅した。

なるほど。通常の斬撃よりかはダメージがあるみたいだ。

聖召石ははめ込んでいるだけなので消費はされないし、このやり方をするならこの最後の聖召石は失うわけにはいかないな。

 

 

 

「よし、これで全部だな」

タツキと武蔵は刀を鞘に収めた。

 

「戦闘終了しました。ではターミナルポイント、作成します」

とマシュが作業を始めたので俺達はそれを見学しながら、周囲の警戒ということで周囲にいる連中の把握を行いながら作業が終わるのを待っていた。

 

そして効率よく作業は進み

「召喚サークル、確率完了しました。これでこの時代でも戦力が確保できるはずです」

マシュのその一言で俺は警戒態勢を解除し、マシュの元へと戻った。

 

「お?完了したか、剣士いるかな。剣士なら手合わせ願いたいな」

「そうね、私が先やるわよ」

「ハァ?武蔵は後だ!」

「何言ってんの!昨日先に皇帝と戦ったじゃない!」

 

「え!?待って待って!タツキ!ネロさんと戦ったの!?」

 

「なんだ藤丸。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。まあ負けたけどな。マシュも豆鉄砲でも食らったか?」

藤丸とマシュがとても変な顔をしていた。

 

「い、いえ。あの、平常運転で何よりです」

 

「だ、だね。いつも通りで何よりだよタツキ」

 

「そうか?お前ら、俺を戦闘狂とか思ってそうだな」

 

「違うんですか!?」

「違うの!?」

 

「なっ!?違うわ!俺はただ強いやつと戦ってみたいだけだ!」

 

(それを戦闘狂っていうんだ)

(それを戦闘狂っていうんです)

 

二人から無言で見つめられた。

 

「ま、いいや、とりあえず。武蔵さん?その煩い鯉口を黙らせないか?」

武蔵が鯉口でタツキを挑発して、ニヤニヤとしている。

 

「あれ?そっちこそ、煩い鯉口じゃない?ねえタツキ」

タツキも挑発で返し、二人の視線が交差した。

 

「「ははは」」

 

『あの二人は大丈夫かそう?』

ロマンがそう言った。

「えと、多分危険です」

「はい、少し避難をします。彼等が真剣にやり合うと思います。先にサーヴァントと戦う権利を賭けて」

そう言ってネロを二人が少し避難させた。

 

『待って待って!二人とも!まだ魔力反応があるみたいだ!サークル確立より前に霊脈から漏れていた魔力に引き寄せられたのか』

 

「武蔵勝負!」

「受けた!」

 

「ちょ!二人とも!敵が来てるのにそんなことやってる場合じゃ」

藤丸の心配は必要がなかった。

何故なら二人が同時に敵めがけて駆け出し、我先にと敵を斬り倒し始めたからだ。

 

「ウォオオオリャアアアアアアアア」

タツキが二刀を抜き片っ端から敵を追いかけ回して斬り倒していた。

羊を追いかけるように端から中心へ追い込むように。

敵を敵と思っていないみたいに。

 

逆サイドでは、武蔵が同じように羊狩りのように追いかけ回していた。

 

「似た者同士すぎる」

 

「どうしましょうマスター。私も戦闘へ加わった方がよろしいでしょうか?」

 

「そ、そうだな。群れから逃げたひつじ、じゃない!敵を倒して」

 

「ひつ?わかりました」

そう言ってマシュは群れから逃れた羊ではなく敵を倒しに参戦した。

 

 

 

 

「ふぅ、終了か」

「タツキ、せーの!」

タツキの武蔵は互いで笑みを浮かべそしてお互い数字を放った。

 

「18」

「17」

 

なんだと。

一匹負けた。

「私の勝ちね」

「チクショォ何匹か外側へ逃がしてしまったからカァ!あ、マシュナイスプレー、取り溢れの補給助かった」

「い、いえ、お二人こそ、流石です」

 

( うん!?敵意?)

突然気配を感じ、敵意のした方を見ると先程の取りこぼしが一匹逃げようとしていた。

 

それを見つけるやいなやタツキは地を蹴った。

 

それを見た武蔵は叫んだ。

 

「マシュちゃん!その獲物倒して!」

 

「え!?」

マシュは目を丸くしてそれを見ていた。

 

「させねぇええええええ!これは俺の獲物だ!藤丸どけぇええええええ」

 

「な!?ちょ!タツキ!?」

まさに猪突猛進の攻撃。

いや暴走だった。

 

敵めがけて真っしぐら、マシュがその敵に最も近かったが武蔵の声に反応したマシュは戦闘態勢には入っていなかった。

 

「任せます」

とだけすれ違い様に言われた。

「おう」

と答えて突進。

 

斬撃の技もなくただただ、全力疾走からの突進突きで敵を消し去った。

 

「しゃおらああああああ!武蔵!同点だな」

 

「タツキ。それ暴走っていうのよ」

 

「え?。あ。すまん」

 

藤丸、マシュはまあいつものことだからと許してくれた。

 

『ちょっといろいろあったけど、兵士たちがいないか注意しながら下山しよう』

ロマンにそう言われて帰宅することにした。

 

「連合ローマ帝国。サーヴァントを擁した勢力であるようですが。一体首魁は何者なのでしょうか。レフ・ライノールであるのか、それとも」

 

「あちら側にはマスターも付いてるようだし、厄介だな。名代は俺が相手できればいいけど」

『ボクの方では何も掴めていないけど、サーヴァントとマスターがいるなら戦闘は避けられないだろうね』

 

「マシュと武蔵には頼ることになるな」

「任せなさい!」

「頑張ります!」

 

『こんなに堂々とサーヴァントという存在が戦場に投入される。明確なまでの異常事態だ』

 

「相手がサーヴァントかどうかって見極められねーからロマンその辺頼んでいいか?もし万が一俺がミスってサーヴァントと対面した時はすぐに教えてくれ。まあ多分教えてもらわなくても何となくでやべえってのはわかると思うが」

普通に喧嘩売りたくはない敵の部類ではあるしな。

武蔵がいてくれれば頼りになるが武蔵も戦っててこちらは加わらない時は逃げなければならない場合もある。

 

『タツキくんだけを見てるわけにはいかないからその辺はボク以外に任せておくよ。ダヴィンチとかね』

 

「ダヴィンチちゃん?頼りになるな」

 

『任せておきたまへ』

 

「頼むわ」

ダヴィンチちゃんもそんな暇ではないのによく俺のサポートしてくれるなと思いながら頼ることにした。

 

『でも、キミたちがいなければきっと皇帝陛下も殺されてしまうだろう。どうか頑張ってくれ』

 

「「「「了解」」」」

 

 

その後、俺たちはネロ帝の待つローマへと戻った。

 




2部始まりましたね。
武蔵ちゃんの活躍がこんなに早く見れるとは思いませんでした。
とても嬉しいです。


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25話 ローマ帝国と二天一流9

俺たちは現在ネロ帝の待つローマへと戻っていた。

 

「ただいま、ネロ帝」

 

「おお、戻ったか。戻ったばかりですまないがこれからガリアへと遠征を行おうと思う。無論、余、自らが出ねば意味がない。苦戦する配下を助けつつ鼓舞するのが目的だ。其方らには供を頼みたい。どうだ来てくれるな?」

 

「ガリアってのがどの程度重要な場所なのかってところだな」

俺の問いに答えたのはロマンだった。

『連合との戦いに於ける最前線のひとつらしいよ』

「なるほど、なら行かざるを得ないわけか」

「仕方ないね」

「私もそう思います」

 

「決まりだな!皇帝自らの遠征である!直ちに支度せよ!」

 

「ははっ!」

ネロの命に従いローマ兵は即準備へ移った。

 

そんなこんなで準備も直ぐに完了し、出発となった。

 

ーーーーーー

 

出発してから数時間が経過し森道を歩いている。

 

「こんなに歩くとは。刀が重く感じてきたぞ。スタミナがないのではない。想定以上に歩くとなんか重く感じるんだ」

 

「タツキ。シャキッとしなさい」

武蔵に背中を叩かれ、ハァとため息が出る。

 

出発してから何時間が経過した?

部隊での移動となると己のペースでとはいかないので余計に疲れる。

 

「タツキと藤丸は馬には乗るか?」

とネロに問われた。

 

タツキと藤丸は顔を合わせてとある記憶が蘇る。

 

 

そうそれは数時間前、出発の準備をしている時にローマ兵から馬の準備をしたので乗ってみてくださいと言われ、武蔵とマシュは平気ですとのことで未経験の二人が試乗に行った時のことだ。

 

「馬だな」

「馬だよ」

 

二匹の馬が俺達を待っていた。

一匹は黒馬でもう一匹は茶色の毛の馬だった。

藤丸が茶色の毛の馬に乗ると言ったので俺は黒馬に乗ることにした。

 

馬に乗って手綱を握り少し動いてみようとしたその時だ。

 

「うわぁあああああああああ」

藤丸の叫び声がしたかと思うと藤丸が馬の上でブンブン振り回されていた。

 

えぇ。早くない?

 

此方も自分のことで手一杯なので、手助けしてやることができないのでどうにか自分で体制を戻してくれと願いつつゆっくり進もうとしたその時だった。

 

「タツキ!よけろぉおおおおおお!!」

 

は?

藤丸が落馬しそうになりながら必死に馬にしがみつき、その馬が此方めがけて走って来た。

「なっ!?」

 

いやいや知らん知らん!避け方とか知らん!

 

「おい!黒馬よ!避けろ!やばい!やばい!」

そう言って黒馬の腹を蹴るとヒヒィン!と叫び真っ直ぐに走り出した。

 

「え?」

早い早い。止まり方?知らん。

「ギュァアアアアアアアああああ」

手綱を思いっきり身体ごと後ろへ引きながら必死に叫んだ「止まれェエエエエ」と。

 

その甲斐あってか馬は無事止まってくれた。そして直ぐに俺は兵に馬を渡し、今も尚振り回されている藤丸の元へ走った。

 

もう落馬してもおかしくないのに必死に耐えていた。

 

「カモーン!藤丸!俺の胸へダイヴだ!」

タツキは手を横に大きく広げた。

「ちょ!?え!?無理無理無理!」

「だよな」

「一瞬止めるからまあ多分藤丸も怖いと思うから、馬が止まったら即降りてくれ」

「え?あ、ああ」

「じゃやるわ」

 

(ブチ殺すぞ、馬野郎)

タツキが殺気を馬めがけて飛ばした瞬間馬はピタリと止まった。

 

まあ藤丸にも殺気は貫通してるわけで頑張れ藤丸。

 

ボテと藤丸が馬から落ちたのを確認し、即ローマ兵に馬を任せ、藤丸に肩を貸し、その場から去った。

去り際に馬はどうします?と聞かれたので「結構だ」と答えた。

 

ということで俺たちには乗れない!

 

 

「武蔵ならできる」

という答えが正解だろう。

 

「其方ではないのだな、藤丸はどうだ?」

 

「マシュなら。。。」

 

「わたしは騎乗スキルがありますが、その、先輩はあまり馬に慣れていませんので」

 

「私も、もちろん乗れるよ」

マシュと武蔵は乗れるのなら乗ればいいのにと思いながら共に歩く二人を見た。

その横を藤丸がゼエハアと息をしながらも弱音を吐かず歩いていた。

 

「藤丸、よく弱音も吐かず歩けるな。これ半端ない距離だぞ」

「俺が弱音を吐いてる訳にはいかないからね。マシュは平気?」

「わたしは問題ありません。デミ・サーヴァントですから、体力は凄いんです」

「サーヴァントってその辺半端ないよなー」

「戦闘面だけ見るならタツキはその部類に足を踏み込んでいるよ」

「まじか?」

「俺視点ではだけど」

「藤丸君〜タツキを甘やかさない!タツキはまだまだ」

「左様ですか。。。」

 

『二人とも馬に乗ればよかったのに』

とロマンが通信で言ってきた。

『あれかな?先程の馬騒動がトラウマになったかい?』

「アホか!お互い怪我してないんだからセーフだ!」

「俺は精神的にダメージ食らったけどね」

「先輩!?何があったんですか!」

「タツキの殺気に当てられただけだよ」

ボコッと頭を叩かれた。

「タツキ。遊びで殺気を飛ばすのは許せないな」

武蔵にめっちゃ怖い目で見られた。

「い、いや!違う違う!タツキは俺を助けるためにだから!」

「それならそうと早く言ってよ〜ごめんなさいタツキ」

「おいこら武蔵、結構本気で殴っただろ。

タンコブできたじゃねーか」

「え!?できてないけど」

「比喩表現だっての!それくらい痛かったんだよ!」

武蔵に頭を確認されタツキの頭にタンコブができていないことが発覚した。

 

『楽しく会話中のところ悪いんだが、前方に生体反応、サーヴァントではないけど、敵のようだ』

 

「楽しく聞こえたならロマンの感覚を疑うね!殺伐としてるからな」

 

『タツキ君、お話は後にして早くしないと左右からの挟撃ちにされるよ。ってもうされてるんだけど』

 

「アアァン?言うの遅せーよ!」

 

「いや、タツキよ。そうでもないぞ。余の斥候より早いとは見事だぞ」

ネロさんロマンのフォローなんてしちゃダメよ。

まあ、敵が来るのがわかるだけで、すごくありがたいんだけど。

 

「藤丸!左の敵は任せたぞ」

と言ってネロは右側へ走り出した。

 

「俺はどっちに行けばいいのかしら?」

 

「タツキの行きたい方でいいんじゃない?私はそれについて行くから」

 

「なら真ん中かから突っ込んで敵の左翼と右翼を攻撃するか。俺は左翼で武蔵は右翼な」

 

「了解」

 

「それじゃ藤丸、行ってくるわ」

 

「任せたよ!」

 

「おう!お前らも遅れを取るなよ」

 

「もちろん」

 

タツキと武蔵はそのまま前へ走り出した。

 

そしてある程度敵の面影が見えてきたところで気がついた。

「敵って人じゃんか。ローマ連合かよ」

 

「敵が来るって言われると何かわからないから厄介よね。それじゃ右に行くわね」

 

そう言って武蔵は右側へ走り出した。

 

よしなら俺も始めるか。

前線は戦闘が始まっているみたいだしな。

 

 

「へい!ローマ兵さん俺とあそぼーぜ」

そう言って一人目を斬り殺した。

 

「なっ!?誰だ!?お前......まさか。悪魔だ!悪魔が出やがった!撤退しましょう!こんな奴相手にしていたら命がいくつあっても足りません!」

近くにいたローマ兵が叫んだ。

だが、リーダー的なやつの答えはこうだった。「数で押しつぶせ」

 

その声を聞いた連中の顔色はどんどん青くなっていった。

恐れさせた時点で戦況はこっちに向いている。ま、その隙を見逃してやるほど余裕のある戦いでは無いんでな。

タツキの刀がまた一人斬り落とした。

「準備はできてるか?」

 

「な、やめ、やめろ」

 

「やめないな。ブチコロスッ!!!!」

 

「エイヤャァアアアアアアアアアァ!」

 

タツキは叫んだ、相手を威圧するように、弱めの殺気を混ぜてその反応を見る、やや動いたやつは反応ができているので先に殺す、反応できず固まっていたやつは雑魚だ、後回しにする。

 

そうして見極め、最短でその中の強者を倒し尽くした。

 

「ひぃ!」

そう言って男は逃げ出した。だが目の前の木にぶつかり倒れた。

「俺が逃すと思うか?場の支配は二天の分野の一つだぞ?」

タツキはただ追ってる様に見せて敵を道から森の木々の茂っている方へ追い詰めていた。

 

男は倒れながら剣を振った。

タツキはそれを弾き飛ばして男の頸動脈を斬った。

 

「部隊長!逃げましょう!無理です」

 

「ぬぅ」

 

「部隊長!決だ.....ん。アレ?」

バタリとその男が地に倒れた。

「おいおい、逃げようとすんなよ」

 

誰々さんがやられた!という叫び声が各場所から聞こえたので強者狙いの作戦は狙い通りだったと言えるだろう。

 

その時反対側から悲鳴が聞こえた。

 

「悪魔ダァあああああ」

 

武蔵だな。

 

つーか悪魔湧きすぎだろ。

 

「さあさあ、部隊長さんはお前か?」

 

「な、なぜ、あれだけいた軍隊が!前線は!」

そう言って前線をみると前線も崩壊していた。

 

「あ〜前線はカルデア軍師と盾使いがいるからな〜持ちこたえられないんじゃないか?」

 

「なるほどな」

そう言って隊長は馬から降り槍を構えた。

 

「覚悟は?」

 

「できている。行くゾォ!」

部隊長は槍を前方へ向け突進した。

「ヤァッ!」

タツキが全力で走り出し、男めがけて突進した。

(なっ!?リーチでは此方が勝っている何故だ)

部隊長は突進の際そう考えてしまった。

その一瞬の思考の濁りが部隊長の攻撃の拍子(リズム)を狂わせた。

 

赤き飛沫が飛んだ。

 

「拍子させ狂わせてしまえば、あとはただ避けて斬るだけだからな。こっちのは無謀な突進に見えてその裏に意味があるんだよ」

 

部隊長が殺られたため、こちら側にいた敵軍隊は撤退を始めた。

「ロマン、撤退を確認。追って始末するか?」

『いや、撤退しているのなら構う必要はないよ』

「了解」

タツキは二刀を鞘へ収めた。

 

タツキは撤退する敵を横目に藤丸の元へ戻った。

 

「アレが悪魔だ。二度と戦場で出会いたくない」

「ただ剣を二本振ってるだけじゃないのか?」

「そんな次元にアレはいないから悪魔なんだ」

「そ、そうか」

 

そんな会話を耳にしながら歩いた。

俺の噂が変に過大評価されて益々悪魔化していってるな。。。

 

「マシュ、藤丸。お疲れ〜あっち側ももう終わったようだな」

 

「敵が悪魔が出たって叫んでたけど、あれタツキだよね。ここに来て間もないのに知名度上がったな」

 

「上がって欲しくないわ」

 

「あの連合の手練れたちを雑兵扱いか。本当にその手勢の数でよくやるものだ」

 

「いや、此方にはマシュと武蔵さんと一騎当千の桁外れの悪魔がいるようですので」

 

「いや、そこを巧くついて前線を崩したのは藤丸の指示だろ?言っとくけど前線に置かれる勢力って主戦力が置かれる場合もあるからな?タチ悪いねぇ〜」

 

「な、タツキには言われたくないな!左翼と右翼を壊すとか恐ろしい事言い出して前線を俺達に任せて走り出すんだもん。驚いたよ」

 

「ふむ。どうだ?客将と言わず、余のものとなるか?この世の栄華を余の傍で味わうことができるぞ?無論、連合帝国を討ち果たして後のことだが」

ネロが突然、藤丸にそんなことを言い出した。

 

「考えさせて下さい」

藤丸の答えに俺とマシュは!?となった。

(おい!マシュ、藤丸が取られるぞ!)

(とら!?い、いえ、先輩が決めたことでしたら......決めたことでしたら・・・。)

 

「即答したくともできぬとは、奥ゆかしいではないか。よいよい、こっそり前向きに考えるが良い。連合征伐の暁にはガリアはおろかブリタニアをも与えて構わぬ。余は気前の良いことで知られているが、ここまでの大盤振る舞いは珍しいのだぞ?な、そうであろう。そこな兵士?余は歴代皇帝の中でも、抜きんでて豪華よな?」

ネロに突然問いを投げられた兵は即回答した。

 

「はっ。仰る通りでございます!今日という日は、ローマの輝ける太陽がさらに眩しく輝いておられます!」

 

兵も大変だな。とタツキは思ったのであった。

だがだ、まずいぞ。

ネロは完全に藤丸をものにしようと動いてきた。

 

(よし、マシュ。藤丸監視体制に入った方がいいぞ)

(そうですね。そうしましょう)

 

『お二人さん?何の相談をしているのかな?』

 

「何でしょうドクター?」

「何の用だ?」

 

『い、いやなんでもないよ。マシュはわかるけど、タツキ君は何故起こるのかな』

 

「俺はこの件に関してはマシュの味方をすると決めた。勝手に就職とか許さん。しかも領土付きとか許せんな」

 

『なるほど、タツキ君は就職できず、道場破りでお金稼いでいたそうだからね』

 

「仕方ねーだろ!実家があの家族ってわかった瞬間びびって雇ってくれねーんだよ!」

 

「そんなにも有名だったんですか?」

 

「まあ、いちよう?俺の家、道場だからさ。しかも真剣振り回してたりしてめっちゃ目つけられてたんだよ」

 

「誰にですか?」

 

「さつに?」

え?とマシュは目を丸くした。

 

『警察を困らせちゃダメだろ』

 

「さつの奴らも依頼しにきてるくせに酷いよな」

 

「依頼?なんの依頼ですか?」

マシュが聞いてきたので素直に答えた。

 

「闇討ち」

と。

 

「え?」

「は?」

マシュと藤丸が目を丸くした。

ロマンはまあ知っていたのだろう。反応はなかった。

 

「あれ?武蔵は?」

 

そういえば武蔵が帰還していなかった。

 

 

 

「ごめん!遅れた〜なんかちょっと先に沸いてたので倒してきました」

へへへと笑いながら恐ろしいことを言う武蔵さん。

 

一人で何軍隊倒してくるんですかね。

俺よりよっぽど悪魔だろ。

 

「そ、そっか。お疲れ」

 

「つーかさ。あと何回こんな戦闘をしながら進むんだ?流石に疲れるぞ」

 

『いや、心配ないよ。目的地はすぐそこだ』

 

「ほんとか!目的地が見えると急に体力が回復した気になるな」

 

「長旅ご苦労様だったな。既にガリアの地に入っているぞ。ガリア遠征軍の野営地は目と鼻の先。しばらくぶりにゆっくりと寝所で休めるぞ」

 

「ハァ。まじで疲れた。敵と戦うのは疲れないが歩くのが疲れるんだよ」

 

「敵と戦うのは疲れない?戦闘狂でも味方にいたか?」

「いえ、先輩アレはタツキさんです」

 

「おいお前ら。今は疲れてツッコム気にもならんから許してやる」

 

「相当お疲れの様ですね、お疲れ様でした」

 

「マシュもな。藤丸監視はしっかりな」

 

「もちろんです」

 

さてもうキャンプが見えてきた。

馬の乗り方絶対覚えようと決めたタツキであった。

 



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26話 ローマ帝国と二天一流10

 

野営地

 

 

キャンプが建てられており、到着した俺たちは、各々が少し身体を休めようとしていた。

 

「皇帝ネロ・クラウディウスである!これより謹聴を許す!ガリア遠征軍に参加した兵士の皆、余と余の民、そして余のローマのための尽力ご苦労!是よりは余も遠征軍の力となろう。一騎当千の将もここに在る!この戦い負ける道理がない!」

 

「余と、愛すべきそなたたちのローマに勝利を!」

ネロの演説とも言える言葉にローマ兵達は歓声を上げた。

 

「すごいな、流石は皇帝様だ」

ふとタツキの口からそう漏れていた。

タツキはネロの立つ場所より少し離れた位置でそれを聴いていた。演説の邪魔にならないためだ。少し離れた俺の位置までハッキリとその意思と熱が伝わってきた。

 

「剣の腕だけじゃ民はついてこない。それをするにはそれ相応のカリスマ性が必要になる。ネロ・クラウディウスのカリスマ性がよく出ているってことね」

武蔵も演説を聴いてそのカリスマ性を評価したようだ。

 

「つーかさ、ここまで人の心を鷲掴みにできる人なら何では暴君なんて言われてるんだ?」

以前ダヴィンチちゃんと話していた時にそんな事を言っていた気がする。たしかネロって人のことを話していた時だったような。

 

『だめだよ、タツキ君。過去を生きる人間に未来を知らせない。それが方針だ』

ロマンの発言によって考えることはやめた。

 

「そうだな。後のことは、その時を生きる連中の判断だからな。今のことだけを考えるようにするよ」

 

『でも僕も気になるのは気になるんだけどね』

 

「気になるんかい!」

 

ロマンも気になるのは気になるか。そりゃそうだよな。

気になるものは気になるのだ。

 

「おや?思ったよりお早いお越しだったね。君は見たところ悪魔と言う通り名を残した人かな?」

そう言って女性が俺の隣に来た。

 

???

誰だ?と思って振り向いた瞬間だった。

 

赤毛の女の子。白い服で胸元が大きく開いており、その豊満な乳が今にもはみ出しそうな......って!

なんじゃこの人!すごく際どい服装なんですけど!

 

まあそれよりも一目で俺の技量をある程度把握したのを見ると強いなこいつ。

「俺は悪魔じゃないよ。悪魔って呼ばれてるのはこっち」

ここでは謙虚に悪魔の汚名を譲ることにしよう。

 

タツキは武蔵を親指で指したが女は「それもあるけど君のその手と足を見ればわかるよ」と言われた。

バレバレか。

 

そして女は藤丸達の方へと歩いて行った。

 

「んーと。そっちの、頑張ってる男の子が噂の客将かな?見かけによらず強いんだってね」

女性は藤丸に話しかけながらこちらをチラリと見た。

 

「い、いや、俺はやれることをやってるだけで」

藤丸、照れなくてもいいのに。

何故そう遠慮がちなのだろうか。

 

「ネロ・クラウディウス皇帝陛下。お待ちしていました」

そう言ってネロに挨拶をした。

つまりある程度は身分の上のものなのだろう。

それにしてもあの服装。サーヴァントってのは何でこう際どいんだ。

「ゴホン。タツキ。女性は当てられる視線には気がつくものよ」

武蔵にそう言われた。

 

「目線のことは気にするな」

タツキは恥ずかしくなったが、武蔵にはバレまいと、既にバレているのに隠そうとしたが、照れ隠しが失敗した口から出た言葉は肯定を意味する言葉だった。

そして見続ける宣言とも取れてしまう言葉だった。

 

あ!?と思いタツキが訂正しようとしたが武蔵がハァとため息をつき

 

「タツキ。何でそうなの」と言った。

 

武蔵にそのように言われ、タツキの悪戯心のスイッチがONになった。

「武蔵の方が可愛いよ」

とタツキは平気な顔で武蔵の目を見て可愛いとほめた。

俺は知っている!武蔵は褒められるのに弱い!顔やスタイルのことに関しては特に!

「なっ!?」

武蔵の顔が真っ赤になるのがわかった。

 

計算通り!エロガキなめんな!

 

「冗談だけど」

そして最後にこの台詞を置いて終わり。茶番はここまでとばかりにタツキは言い捨てた。

 

 

スンと何かがタツキの左右真横を通り過ぎた。

「タツキ。死にたい?手加減は必要?」

二刀を即座に抜いてタツキの体スレスレを通り、地面に突き刺さった刀。そして武蔵さんの目が鮮度100%の殺気を灯しておりもう怖すぎた。

「ごめんなさい!おふざけが過ぎました!」

そう言ってタツキは刀を地面に置き土下座をした。

「二度は無い」

そう言って武蔵が刀を鞘に収め刀から手を離した瞬間タツキは動いた。

 

(甘いぜ!武蔵!土下座つまり俺の手は武蔵の隙だらけの足を掴みそのまま転かす事ができるポジションにいるのだよ!武蔵が刀を納刀し刀から手を離した瞬間、武蔵からのカウンターの恐れは無くなった!つまり!もらったァアアアアアアア)

 

武蔵の足を掴み手前に思いっきり引っ張っり、バランスを崩した武蔵の身体へ、突進を仕掛けたら完璧だ。マウントをとって形勢逆転。

 

ただで俺が負けると思うなよ!

 

ガシッとタツキは武蔵の足を掴んだ。

「「「なっ!?」」」

タツキの思いがけない行動に一同が驚いた声が聞こえた。

 

武蔵を除いて。

 

まだ驚くのは早い何せここから俺の逆転劇が!

逆転劇が!

逆転げきがぁあああああ!

 

「逆転......げき」

 

足が動かない。

 

武蔵は驚いていなかったのだ。それすらも計算通りと言わんばかりに。

 

「逆転劇がどうしたのタツキ」

こいつ動かねェエエエエ。体幹良すぎだろ!知ってたけど。

そして何より気づかれてたァ!

タツキは顔を上げ愛想笑いを浮かべ呟いた。

「褌かぁ」

 

ズゴンと一撃いい拳が顔面に入りました。

 

 

ザブン!

 

タツキはローマ兵により水をかけられ意識を戻した。

「ほんと武蔵ごめん。悪ふざけが過ぎた」

「仕方ない。許す」

(可愛いのは本当なんだけどな)

「え?何か言った?」

「いや何も言ってない」

「そう」

武蔵はそう言ってタツキに手を差し出し、タツキは手を取り立ち上がった。

 

ーーーーーー

 

〜カルデア〜

 

「タツキ君って多重人格みたいだな」

ロマンはそう呟いていた。

 

それに答えたのはダヴィンチだ。

 

「それは私も何度か感じたことはある。けれどそれは彼の強さでもあるからね」

「それもそうだ。タツキ君の強さの秘密の調査は秘密裏に継続だね」

「まったく。彼は面白い子だ」

ダヴィンチは笑顔でそう言った。

「えらく気に入っているね」

「まあね〜、彼といると楽しいし退屈しないからね」

 

「あ、あの。調査の件ですが、何度か彼の魔力反応が著しく上昇する場面があるのですが、まるでサーヴァントがそこにいるかのように」

タツキのバイタルチェックを担当しているカルデア職員が話を投げかけた。

 

そうなのだ。

以前は武蔵と同じ場所で戦っているからその反応だろうと思っていたが違っていた。

 

オルレアンの時に、彼が邪竜とジャンヌオルタと対面した時彼は確かにサーヴァントに近い力で逃げ切ったのだ。

 

「まったく。問題児を拾って来たものだな」

ロマンはタツキのとてもリラックスした精神状態のモニターを見てそう言った。

 

ーーーーーー

 

「あはは、元気だね。それに仲が良いこと。遠慮はるばるこんにちは。あたしはブーディカ。ガリア遠征軍の将軍を努めてる」

と先程の女が自己紹介をした。

 

将軍とは驚いた。

強いのは雰囲気でわかっていたがまさか将軍クラスとはな。

タツキは水をかけられ濡れた服を脱ぎ乾かしてもらっており現在は黒のシャツ一枚で過ごしていた。

 

藤丸の制服と俺の制服はデザインは同じものの、性能に多少違いがあり、藤丸の制服は生活面や身のこなしに特化しており、俺の制服はダヴィンチちゃんの改造を何度も重ねるにつれ、生活面での性能を削り、より戦闘に特化した制服になっている。

 

そのため濡れたら乾くまでが普通の服と同じで遅いし防水効果もない。

藤丸の服は、その辺は防水完備なのだ。

初期の頃の制服は動きにくいとダヴィンチちゃんに文句を言ったものだ。

それが今では戦闘時にまったく違和感がない。

 

「ブーディカ?」

マシュがその名乗りを聞いて反応した。

 

はいまたですか。俺一人だけこの名前が理解できないのは。

有名人?聞いたことない。歴史の授業で習った?

 

「そう。ブーディカ、ブリタニアの元女王ってヤツ。で、こっちのでっかい男が」

元女王ね。つまり?ネロに負けたのか?

 

うんそいつは気になってたけど見て見ぬふりをしていたのに、やはり関係者なんですね。

筋骨隆々な青白い肌、全身を拘束具で縛りあげた金髪の大男。

身長2m20くらいありそうだな。

 

「戦場に招かれた闘士がまたひとり。喜ぶがいい、此処は無数の圧制者に満ちた戦いの園だ。あまねく強者、圧制者が集う巨大な悪逆が迫っている。叛逆の時だ。さあ共に戦おう。比類無き圧政に抗う者よ」

は?

 

(おい!ロマン!現誤訳がめちゃくちゃになってるじゃねーか?なんかよくわからんぞ?)

『い、いやそんなことはないよ。聞き取った通りの内容さ』

(まじかよ)

ロマンにコソコソと通訳が壊れていると伝えたのだが、この通訳内容で正しいらしい。

(ねえタツキ。何言ってるかわからないのだけど)

(武蔵。同じくだ。理解できない)

 

「え、え?うわぁ。珍しいこともあるんだぁ。スパルタクスが誰かを見て喜ぶなんて、滅多にない。あ、ううん。訂正。他人を見て喜んでるのに、襲いかからないなんて滅多にないわ」

ブーディカはそう言ったがこの人もこの大男の言葉を理解しているのだろうか。

 

簡潔にすると。

大男の名前はスパルタクス。

スパルタクスは本来は笑いながら人を殺しにかかるやばいやつ?ってことか?

『みんな彼はサーヴァントだ。反応がそう言ってる。そこにいるのはサーヴァントだ』

ロマンからそう言われスパルタクスを見た。

まあそりゃあそうでしょうな。

「えーと。クラスはバーサーカー?」

『多分そうだと思う』

 

「叛逆の勇士よ、その名を我が前に示す時だ。共に自由の青空の下で悪逆の帝国に反旗を翻し、叫ぼう」

は?何、何?どういうことですか?

 

「藤丸立花です」

 

藤丸が名乗った。

 

え。今、名前を聞かれたの?というか藤丸はスパルタクスの言葉の内容を理解しているのか。

 

『この時代にもはぐれサーヴァントが存在するのが証明されたか。何やらの理由でボクらに敵対するサーヴァントとは別に、自由意志を持って、時代の側に立って戦う者もいる。きっとすべての特異点の時代でもそうなんだろう』

 

「うーん。召喚という手段以外にもこうして仲間が増えるのか」

それで味方になった者は信じられるのだろうか。

信じるしかないのはわかっているが、俺からしたらどうも考えてしまう。だからこその藤丸なのはわかっているが。

藤丸は人を信頼しすぎるしな。

人を心の底から信頼するというのは難しい事なのだ。

 

「自己紹介まだでしたね。俺は藤丸立花です。よろしくお願いします」

藤丸が今度はブーディカに挨拶をした。

ご丁寧なことだ。

「マシュキリエライトです」

マシュが自己紹介をしたのに次いで俺達もする。

 

「俺は宮本タツキ、さっき俺をいじめてたのが宮本武蔵」

「タツキが迷惑かけたら言ってね、私がしめておくから。よろしくね〜」

「あー怖いこれだからゴリッアウ!?」

「タツキダメだ!危険信号は真っ赤だ。それ以上の発言は危険だよ!」

藤丸が俺の口を押さえつけ発言を止めた。

武蔵さんの髪が一瞬逆立ったように見えたけど気のせいですよね。

ゴリラ女は禁止用語と。

 

『ゴホン!失礼彼らは仲が良すぎてね、僕はロマンだ』

 

「見えない魔術師ね、わかったわ。そこの藤丸君が皇帝陛下のお気に入りの子ね」

 

そう問われたネロだがバツが悪いと言った感じに目をそらした。

 

どうしたのだろうか。

「ネロ帝、体調悪いのか?」

俺はネロ帝に、尋ねたがネ帝は心ここに在らずといった感じで何も返答がなかった。

俺たちはそんなネロ帝をジーと見ているとネロ帝はこちらに気づき

 

「......ん。な、何か言ったか?少し疲れたようだ。ブーディカ客将たちを頼む。ガリアの戦況について教えてやってくれ、余は頭痛がひどい。少しばかり床につく」

ネロは頭痛だと言ってブーディカに任せてキャンプの方へ歩いて行った。

 

「わかったよ」

ブーディカはそう返事をした。

なんか雰囲気悪いな、ギクシャクしてる。アレは体調不良ではなく、例えが難しいが、倒した道場破りを介護している気分になっているのだろうか。

 

アレは本当に大変だ。何故って向こうから攻めて来た癖に負けてその場で泣かれたりしたらもう見てられない。(タツキは昔、道場破りには本気で相手するという謎の思い違いがあり、半殺しにしたことがある)

勝った方が気まずくなるんだよなぁ。

なんなのだろう。

 

ま、でもこの例えは何となく違う気がする。

 

というか。さっきからコソコソコソコソと鬱陶しいな。

斥候か何かだろうか。味方ではないな。敵意や殺気がやや漏れてるしな。

こちらに気づかれないように動いているのか、それでよく斥候が務まるものだな。

 

「数人離脱」

タツキは武蔵にそう言った。

武蔵は「わかってる」と返して来たので、それ以上の会話は不要。

 

情報を抜かれる危険があるから始末するか。

「武蔵」

「了解」

その瞬間武蔵が猛スピードで走り去って行った。

 

「え!?」

「なっ!?」

「なんですか?!」

突然武蔵が走り去ったため、藤丸達は唖然としていた。

 

「いやちょっとな。野暮用を思い出したらしい、俺もちょっと野暮用を思い出した」

タツキもその場を離れようとしたが、そうはいかなかった。

 

「その必要はないよ。離脱しないで潜伏した敵は、こちらの兵でなんとかなる」

ブーディカにそう言われた。

 

ブーディカは最初こそ何が起こっているかわからなかったようだが流石は将軍を務めるだけあって状況の把握が迅速だった。

そしてすぐに離脱時にこちらに残った数名の始末に取り掛からせていた。

 

「申し上げます!敵斥候部隊を発見!このままでは離脱されてしまう可能性が!」

兵士が報告に来た。

 

「その心配はないよ、恐ろしい殺気を纏った女の子が向かったからね。でしょタツキ君」

「あ、ああ」

タツキはそう言い、その場を少し離れキャンプの建てられたスペースの裏に来ていた。

「調子狂うなぁ」

ブーディカって人いい人なんだろうけど、なんか俺とは合わないかな。

 

ま、こっちの相手は任せてくれたみたいだけど。

 

「やめてくれねーか?その殺気で人を誘うの」

タツキは誰もいない森へ言葉を投げた。

 

「君は誘いに乗ってくれると思っていたよ。タツキ君」

名代静。こいつだけはここの兵だけでは何とかならない。だから俺が行くことにした。

 

「やり合うか?」

タツキは殺気を込めて一言だけ確認を取った。

「いいえ、今回は提案をしに来たの。私達と組まない?」

予想外の質問にタツキは呆然としてしまった。

 

「は?」

組むって何だ?俺にカルデアを裏切れと言うのか?理解できないな。

 

「あーそうかー。こっちの事情知らないもんね。聖杯戦争って知ってる?まあコレは真似的なものだけど、レフさんが私達6人の中で最後まで勝ち残った人にに聖杯くれるって言ったのよ」

名代はニヤニヤと言葉を紡いだ。

「聖杯......戦争?」

タツキは聞き慣れない言葉の数々に戸惑いながらも隙は見せず警戒しながら名代の放つ言葉を飲み込んだ。

 

「そうよ。藤野ちゃんはバーサーカーのマスター。私と手を組んでる。他の5人を倒すまでは」

藤野ってのはあの源頼光のマスターか。

 

他の5人ね。うん?

「5人?」

先程6人って言ってたが5人を倒すまではということは、名代、藤野で2人残りは4人のはずだ。だが残り5人だと計7人いないと話が合わな......まさか!?

 

「お、気づいた?君が7人目。セイバーのマスターってこと。私も一人のマスターではある。でも私達と貴方との違いはカルデアのバックアップがあるかないか。だから私達の天敵は君になる。でも他のマスターは生き残るために狙ってくるわ。何故なら負けたら殺すと言われてるからね。聖杯を取ると命ともう一つ願いが付いてくるの。皆んな必死よ」

 

「何故そこに俺が含まれている?そっちでやっておけばいいんじゃないのか?」

 

「それは、レフさん曰く君がそっちに味方するだけで運命はそちらにより傾く。そのための6人だって」

俺がカルデアにつく事がそんなに状況を良くするとは思えないがな。

 

あ、そっか武蔵か。

俺ではなく武蔵のことね。

武蔵は強いしなー。仕方ないな。

「うん?なら6人で俺を叩けばいいだろ」

 

「わからないの?レフさんの本来の目的は別にある。君を殺せるかどうかなんてどうでもいい。ただ邪魔になりそうだから先に始末しようってわけ。でも藤野ちゃんみたいにこんな状況でも人を殺せない甘ちゃんもいる。だから聖杯戦争って名付けて6人を騙し結果的に君を始末することにした。それに彼からしたら6人が手を組んで脱走されたりするのが一番最悪な展開だろうからね。聖杯という餌を吊るしておけば逃げられないでしょ」

 

「でもそれだと味方同士の殺し合いもあるんじゃないのか?」

 

「何言ってるの?私達6人は敵同士よ?味方なんていない。藤野ちゃんだって最後は敵になる。それにね魔術師なんてやつらは己の欲のことしか考えてない連中よ。手を組んでも裏切られるのが目に見えている。その点藤野ちゃんは一般枠の子だから関係ないんだ」

なるほどな。

一理ある。俺がそちらの立場なら魔術師と組むと言う選択肢はしないだろう。

 

「じゃあ何故お前はあちら側に付く?」

 

「簡単よ」

名代の口の端が上がり、ニヤリと微笑んだ。

 

 

 

「強者と戦えるから以外にある?」

 

 

「は?」

タツキは耳を疑った。

名代の言葉に狂気が見え隠れし始めたのだ。

 

「タツキ君を誘ったのは、私の味方になるようならきっと他の連中に誘われた時に、そっちにつく可能性があるでしょ?正直そうなると詰まらないしめんどくさいから。それに武蔵とは決着つけなきゃだし。あーあと、もし仲間になるって言ってたら即殺すつもりだった。

 

君の超人的な反射を超える領域の攻撃でね」

 

は?

その瞬間悍ましい程の殺気がタツキの全身を襲った。

なるほど、これはキツそうだ。

 

(アーチャー。帰るわ)

何かを呟き名代は手を振りながらその場を去る名代の背中に向けタツキは言い返すように言葉を発した。

 

「戦える以外に理由はないな。俺だって仲間になっちまったらお前と殺しあえないだろ?それにお前にもサーヴァントがいるんだろ?戦わないと損する」

 

名代は微笑み、タツキも微笑み二人はこう思った。

 

(( 楽しくなって来た!))

 

 

 

『おーい。タツキ君。そこはテンション上げるところじゃなくて、対策を考えるところだからね。まさか敵側にマスターが6人もいるとはね』

「カルデアからいなくなった、レイシフト適性者の数と一致するか?」

『そうだね。一般枠から2名。Bクラスから4名だ』

なるほど。Aクラスは優秀な奴らが多いから手駒にできないと御し易すそうな一般枠とBクラスを連れ去ったわけか。

 

「ロマン名代のサーヴァントが近くにいただろ?位置はどの辺だった?」

『気づいていたのか。反応からすると百メートル程離れた場所かな』

「なるほどな。遠距離系の攻撃ができるサーヴァントなわけか。刀で戦う俺らとは分が悪いな」

『そういう問題じゃなくて......あーもう!わかったよ。戦いは君に任せて僕は今後の方針を考える』

「今まで通りだな!ははははは」

『はぁ。とりあえず戻ろうか』

 

「あ、それと最後に確認。レイシフト適正者は敵対する場合、殺してもいいのか?」

これだけは聞いておかねばならないだろう。

 

 

『無茶なのはわかるが、できれば、拘束して連れて帰ってもらいたい』

ロマンはそう答えたがわかっているはずだ。

 

それは不可能なことが。

 

「善処する」

 

何故なら戦場に出て敵を生きたまま捕まえることは殺すことより難易度が上がる。相手にサーヴァントがいるならマスターを殺すという手を使えないことはハンデにしてはデカすぎる。

 

それに。

 

俺以外のメンバーで殺し合いをすることもあるだろうに。

 

 

タツキは藤丸の元へ戻り「ちょっとトイレに行ってた」とだけ答えてその場で待機していた。

 

そして数分後

 

「タツキおまたせ、部隊ごと全滅させてきたけどよかった?拷問とか」

武蔵が何もなかったかのように戻ってきた。

「すまんブーディカ、拷問しなくてもよかったか?」

「情報が抜かれなければそれでいいよ、ありがとう」

「いえいえ〜」

「お疲れ武蔵」

「タツキもいい判断よ。あのタイミングを逃すと数人逃げられた可能性あったしね」

「またまた〜武蔵がそんなヘマする事はないのは知ってるが、まぁ褒められたなら素直に受け取っておくよ」

 

「ブーディカさんお話が」

マシュの一言によりその件はそれで終わりになった。

マシュがブーディカに俺たちの現状を話し始めた。

 





ぐだぐだイベント復刻しましたね。
ぐだぐだの3があるのかが気になります。
魔神セイバーなんて来たらとても欲しいですね〜

1ヶ月ぶり位の投稿になりますが読んでいただいた方ありがとうございます。


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27話 ローマ帝国と二天一流11

 

「と、言う訳です。しばらくはお世話になると思います」

マシュがブーディカに現状の説明を終えた。

 

「へぇー、異教から。そっかぁ。そういうこともあるのかぁ」

 

「理解が早いんだな。流石はサーヴァントと言ったところかな?」

タツキの不用意な発言は、マシュに止められたが、ブーディカがそれをいいよと言って、やめさせた。

 

「気遣って貰わなくても。あたしは本当ならもう死んでるはずの人間」

あー。そういうことか。俺の発言をマシュが焦って止めようとした理由がわかった。

 

「不思議って顔してるわね。女王ブーディカがどうしてローマの将軍に、って」

その問いは俺には理解ができなかったが、マシュは理解していた、

「はい。私の知る歴史では、あなたは」

 

「皇帝ネロとローマをあたしは絶対に許さない。そう、ケルトの神々にも誓いもした。そんなあたしが、現界した。まさか、自分が死んだ直後のこの時代に」

 

ブーディカは女王だったのか。そしてローマに滅ぼされたのかな?

そして許さないと決めた場所に直ぐに呼び戻されたと。サーヴァントととして。

 

あぁ。それは、なんというか。

 

「復讐を果たせるな」

 

「え?」

タツキの発言に、ブーディカは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

 

「だってそうだろ?許さないと誓った場所に、サーヴァントという力を得て再び呼び戻されたんだ。復讐をしようとするのが普通じゃないか?」

 

「復讐をね。そうも思ったんだけど。連合に食い荒らされる此処(ローマ)を見てたら......体が勝手に動いちゃって。ネロ公のためじゃない。其処に生きる人々のためにね」

 

ブーディカの発言は俺には想像もつかないものだった。

 

「優しんだな。己が神に誓うほど許せない其れを、貴女は助けようとしている。その結果として、本意ではなくとも貴女は......ネロ帝を助けることになる」

 

「まあ。そう、なんだよね。あはは。辛いね。まーでも。もしかしたら、だけど。復讐のために殺し尽くしたはずのロンディニウムの連中に、すまないと思っていたのか」

 

「ブーディカさん。貴女は俺の直感だがよ。復讐には心の部分が向いてないと思うぞ。力の部分は復讐を果たすためにあるとしても、其処に貴女の心が付いて行って無いんじゃないか?」

復讐した相手に罪悪感を覚えるなんて、それは最早、復讐を果たしたとは言えないだろう。

達成感を得てこその復讐だ。

 

「守るために戦う性格なんだとあたしも思う。それがいちばん向いてるっぽいのよね」

 

「自分でわかってるのか。すまない。余計なことを言ったな」

 

「いいえ。真実に近いですからね。だから、ネロ公があたしのことを【生きた好敵手】と勘違いしてるうちは、悪いんだけど、あたしが死んだ事は黙っていてほしい」

 

「ネロ帝は強い女の子だって思っていたんだけどな。でも脆さもあるみたいだ。その案は俺も賛成だ」

「タツキ。俺もその意見は賛成です」

 

「ありがとう。なんかあいつ、前以上に危なかしいから。余計な気遣いとかさせたら、何するかわからないし」

 

(ブーディカ。貴女はやはり、優しいよ。復讐なんて、貴女には向いていない)

タツキはそう心の中で思っていた。

 

貴女は英雄だ。

 

悪を倒し、人々を救う。

 

 

タツキの顔に笑みが溢れていた。

 

「えと?タツキさん?お話が難しかったでしょうか?途中までは、お話に参加されていたので、理解されていると思っていたのですが」

マシュに気を遣われてしまった。

今回の話は俺にも理解できた。

 

「理解できてるよ。ただ、ブーディカさんがカッコいいなと思っただけだから」

 

「ん!?た、ただの気まぐれなんだけどね」

 

「気まぐれでも人を救えるなら、俺はカッコいいと思う」

 

「そ?ありがと」

俺は毎回毎回レイシフトする度に思うことがある。英雄といわれる人物は、やはり、魅力的な人ばかりだ。

 

 

「ブーディカさん達が味方なのは心強いです。オルレアンの時と同じで、複数のサーヴァントが現界している。けれど、全てが敵ではない。意思を以て、こうして時代の修正の側に立つ人もいる」

マシュの言葉に答えたのは、スパルタクス。例の大男だ。

 

「はははははは!見るがいい、この肉体こそが叛逆の証。圧制者達は知るだろう。与えた傷こそが力なのだと」

やはり理解ができないが、つまり、与えられた傷を糧にして、叛逆を成すということか?

 

「ほら、スパルタクスも照れるってさ」

ブーディカの発言に一同は驚愕した。

 

「今のどこに照れる要素あった?物騒な要素はあったが」

 

「うん?俺は理解できてるよ」

うんぬ!?

藤丸さんマジスカ。

 

「それじゃ、そろそろ始めよっか」

「え?何をですか?」

突然そんなことを言い出した、ブーディカにマシュは驚いた顔をした。

俺も何が始まろうとしているのかわからないし、武蔵も藤丸も知らないようだ。

 

「あなたたちの腕を疑う訳じゃないけど」

「疑ってるだろ?」

「ははは、タツキ君だっけ。ハッキリ言うね。まあそう。疑ってるかな?」

「だろ?理由を教えてくれ」

 

「ガリアは今、大半が連合の支配下だ。あたしたちでも攻めきれない。ガリアの支配者ー【皇帝】のひとり、あいつは強い。精神(こころ)肉体(からだ)贅肉(むだ)一つない。ちょっと見た目と性能がかけ離れた英傑よ」

 

「つまり。それと俺たちが戦える力を持っているか、試すと言う訳だな?」

 

「そう。援軍程度に留めておくべきなのかもしれないしね。戦えるなら戦ってもらけど」

闘気というか、やる気満々って感じだな。ブーディカさん。

怖いほどの何かを感じ取れる。

 

『うえ!?理知的な女王かと思ったら、やっぱり剣で語る系の女傑なのかい!?』

 

「アホかロマン。試すってのは俺達が無駄死にしないかの判断をするってことだ。仲間が死ぬのは誰でも辛い。それをあくまで、試験だって言って、言葉にしないようにしてくれているのにだな」

タツキが小声でロマンに説教をした。

『ああぁ!もう!わかっよ!そうだね!』

「雑に流すなよ」

 

「あははは、わかってるじゃないか、それじゃ、やろうか」

 

『うん?わかってるじゃないかって言ったよ?タツキ君。案外僕の意見が当たっていたんじゃないか?』

 

「あれれ〜おかしいぞぉ?どうしたことだ。まさか本当に剣で語ろうとかそういうことだったのか?」

 

「それじゃ、いくよ。真名ブーディカ、クラスはライダー!あたしの戦車はすっっっごく硬いんだから!」

 

え?殺気?この人、マジでやる気だ。

 

そしてあの大男も戦闘態勢に入りやがった。

 

本気で試そうってのか?

 

「二天一流・継承者 佐藤立樹宮本玄三 !二天一流の申し子也!」

タツキは吠えた。

そしてタツキから殺気が迸り、ブーディカも少し驚いたようだった。

 

「マシュ・キリエライト行きます」

 

「そっちのサーヴァントちゃんは無しね〜貴方が強いのは知っているから」

そういってブーディカは武蔵を指差した。

 

「つまらないなー、ま、タツキ、マシュちゃん頑張って!」

武蔵さんや。貴女は私のサーヴァントなんですからもうちょっと、駆け引きしましょうよ。

 

「タツキ、マシュ。俺が指示できる範囲でサポートできる範囲ではするけど、二人の連携は必須だからな」

藤丸に言われて、理解した。ブーディカが武蔵を外した理由。あちらが二人で、こちらも二人という、2vs2の戦いなのだ。

個での強さでは、チームを組んで戦う相手には勝てないと普通はそう思う。だが違う。

下手なチームワークは個よりも弱くなる。

 

つまりチームを組んで練習していない俺たちは、必然的にタイマン勝負必須。

タイマン勝負に持ち込めば、チャンスはある。

 

「マシュ少し耳貸して」

「え?あ、はい」

俺はマシュに耳打ちでとある事を伝えた。

「本当にそうなるでしょうか」

「わからんけど、なった時は俺かマシュが死にかけてるだろうな」

「死?」

 

「作戦会議はもういい?」

ブーディカに問われ、大丈夫だと答えると武蔵が間に立った。

 

「始め!」

武蔵のコールにより、お互いが飛び出した。

 

「ブーディカさん、貴方が前に来るとはね」

俺はてっきりアタッカー役のスパルタクスが、前に来ると思っていたが、この人が前とは少し驚いた。

 

俺は横目でスパルタクスを見た。

いつ攻めて来るのか、そう思ったのだが、彼はただ、立ち尽くし、こちらを見て笑っていた。

 

どういうこと......

 

「だ!?」

よそ見をした隙に、ブーディカに腹を殴られたのだ。

 

「戦いの中でよそ見をするなんてダメだよ」

 

「御教授ありがとう。あの男は戦わないのか?」

 

「まだ、ね」

「あっそ」

 

「うっ!」

ブーディカの嘆声をあげた。

マシュがブーディカの脇腹を盾でぶん殴ったのだ。

「イッタァ」

あまり効いてはないか。

タツキはすぐに怯んだ、ブーディカの首めがけて、刀を振り抜いた。

 

その時だった。

 

「フハハハハハハハ!圧制者よ!我が愛を受け取り給え!」

 

突然動き出した、スパルタクスの武器、グラディウスにより、タツキの刀を弾き飛ばされた。

 

イテェな!おい!どんだけ馬鹿力なんだよ!

 

タツキは即、もう一本の刀を抜き、距離を取り、中断で構えた。

「大丈夫ですか?」

「ああ、平気だ。だが、どうやらここからが本気らしい。どういうわけかスパルタクスが動き出した」

「予測ですが、私達が、ブーディカさんを圧倒しかけたからではないかと思います」

「つまり、ブーディカはある程度手を抜き、俺達に圧倒され、スパルタクスを動かしたわけだな」

「その可能性は高いかと思います」

 

「じゃ、俺も本気を出す。ロマン聞いてるか。サーヴァントはどれだけ怪我をしても、退界しなければ、回復できるんだよな?」

 

『あ、ああ。藤丸君と契約して貰うつもりだから、大丈夫だ』

 

「おーけぇ。じゃ、二天の真髄見せますか。マシュサポート頼む」

「りょ、了解」

マシュは少しゾッとしていた。

タツキから溢れ出る殺気は、敵に向ける者のように感じた。

つまり、タツキさんは本気で殺すつもりで、やるのだと、理解できてしまった。

 

「ハァアアアアアアアアア」

タツキは雄叫びをを上げ、走り出した。

 

「圧制者よッ!!」

スパルタクスの一振りを容易くかわし、刀を振り抜いた。

 

ガン!

 

タツキとスパルタクスの間にブーディカが割って入り、タツキの刀を止めた。

「ウザいっすよ」

「そう?」

タツキがブーディカと距離を取り、すかさず、斬り込んだ。

 

「圧政!」

「止めます!」

ガン!とスパルタクスのグラディウスを受け止めたマシュとアイコンタクトを取り、直ぐに入れ替わり、マシュはブーディカを抑えに入り、俺はそのままスパルタクスの後方へ走った。

 

「マシュどういうことかな?」

「秘密です」

ブーディカはマシュから離れられなかった。マシュが上手にブーディカを押し込んでいたのだ。

 

タツキはその隙にスパルタクスとタイマンに入った。全力で走り二刀ですかさず、スパルタクスの脹脛の肉を斬り裂いた。

「オォオオオオ!剣豪の如き、少年よ!汝を護る其の力、そして!汝の持つ剣の才、それを扱う技術!まさに叛逆するに相応しいッ!」

 

「あーそうかよ。なら死ねよ」

タツキの刀は問答無用で、スパルタクスの巨体の下に身体を入れ、内太腿を斬り裂いた。

 

「アアアアアァ!いい!これはいい!さア、圧制者よ!汝を抱擁せん!」

スパルタクスはタツキを、その巨躯にて、掴もうとしたが、目の前からタツキは消えた。

 

(二天一流・師走其の一・初白雪!)

タツキは、身体を曲げていたスパルタクスの頸動脈を狙いすまし、一刀の元に斬り捨てた。

「見事」

スパルタクスは倒れる瞬間にそう、タツキを称えた。

 

「ふぅ。マシュ、そっちは無事か?」

 

「え、ええ。何とか!」

マシュとブーディカの二人の一騎打ちはどう見ても、泥沼化していた。

だがこれは2対2の戦いだ。

片方が倒れたからといって、加勢しないなんていう選択肢は無い。

 

タツキはマシュと戦うブーディカの元へ足を進めようとした、瞬間、タツキの足を掴む者がいた。

「圧制者よ!此処より叛逆の始まりだ!覚悟を決めろ!」

なっ!?こいつまだ戦えるのかよ!消滅ギリギリで生存するように斬り裂いたというのに、これは

 

「ぬぁあああああああああああああああ」

「フハハハハハハハハハ!愛!愛!愛!」

タツキを手で持ち上げ、振り回しながら、スパルタクスは笑っていた。

 

「タツキさん!」

「マシュ!よそ見は禁止」

「なっ!?」

ブーディカによりマシュが弾き飛ばされるのが視界に少しだけ映った。

 

ああ!くそ!俺が足を引っ張ってどうすんだよ!

 

「ぬああああああああああああああ」

いやいや、マシュの事考えてる暇は無かった。

やばいやばいやばい!何も考えられないぞこれ。酔う。死にそう。吐きそう。スパルタクスが足をしっかりと掴んでいるため、骨折しないのが唯一の救いだ。

 

だが、何とかしなければマジで殺される。

 

「マシュ、そろそろ、終わりにしない?タツキの方も多分限界だろうし」

ブーディカはタツキの現状を見て、マシュにそう切り出した。

 

「え?でもよかったのですか?実力試しだったのでは?」

マシュは肯定するでは無く、質問で返した。

 

「ええ、わかったわよ。タツキの方も一度スパルタクスを追い込んでいるし、タツキは殺すつもりでって言ってるけど、殺さないところで止めてるのがわかった。でもそれってスパルタクスからしたら逆効果なの」

 

「え?ではタツキさんは勝てない戦いだったという事ですか?」

 

「んー。まぁ。そうなっちゃうわね。ごめんね。まさかタツキがそこまでやるとは思ってなかったの」

ブーディカはスパルタクスの方へ行き、戦いを止めようとした瞬間だった。

 

ブーディカは気づいていなかった。

 

マシュは戦いをやめる事を一度も肯定していない事を。

 

タツキが辛うじて、一太刀スパルタクスの手首に入れたが、アレでは効かないとブーディカは思った。

 

その時

 

スパルタクスの身体を何かが襲った。

 

マシュだ。

 

ブーディカの横を素早く走り去り、マシュが全力で、スパルタクスを強襲する突進を決めていた。

 

「ぬぅ!」

 

スパルタクスはよろめいた拍子に、振り回す手が止まった。

 

(二天一流・卯月-其の三 八重桜)

 

タツキはその隙を見て、最大手の技で、スパルタクスの指を斬り落とした。

 

タツキはスパルタクスの手から解放されて、落下した。

 

タツキの落下はマシュが直ぐにサポートに入り、タイミングよくキャッチしていた。

「ナイス!」

「はい!」

 

(二天一流・卯月-其の二・遅咲き桜)

 

予め斬り込みを入れていた部位が、ある1箇所を起点として、繋がり、血の桜を咲かせる。

 

一刀のもとに仕留められれば使わない技だが、相手に気づかせないほど小さな、切れ込みを無数に入れる。特に相手が巨体の時や、精神を乱している時などは、隠しやすく、仕込みやすい。

 

「マシュ頼む!」

「はい!行きます!トヤァアアアア」

マシュはブーディカめがけて、タツキを放り投げた。

 

「なっ!?」

ブーディカは驚いて、盾を構えたが、タツキの着地地点はブーディカの少し前だった。

 

「え?はっ!?しまっ」

た、とブーディカが言うよりも前にタツキの刀がブーディカの首を触っていた。

激突なんて無謀なことはしませんよ。

 

「満開の桜、咲かせましょうか?」

タツキは微笑みながらそう問うと、ブーディカは遠慮しておくわと答え手を挙げた。

 

「マシュずるいなぁ。どうせタツキの作戦でしょうけど」

ブーディカは剣を鞘に収めると、こちらの作戦について話し始めた。

 

「まあ、俺の作戦だけど、その通りに動いた、ブーディカのおかげでもあるかな」

 

(マシュ、もしブーディカとマシュが1対1で戦うことになって、ブーディカからこの辺で終わりにしましょうと言われて、その時こちらが劣勢だっだら)

 

(肯定をせず、質問で返して、話を有耶無耶にしてほしい)

 

「ぇ。どうしてですか」

 

(つまり、敵の隙を突く。ブーディカはこちらの実力を確かめいと言っていた。なら本気で勝ちに行く。汚い手と言われようがな)

 

「わかりました」

 

(嫌なら他の作戦を持ち出すが、良いのか?)

 

「いえ、甘い事は言っていられないのも事実ですので」

 

「んじゃ最後に一つ。その時は助けてくれよな」

 

「はい?わ、わかりました」

マシュはその助けてくれの意味がわからなかった。だが、その状況になってはっきりとわかった。

 

この戦いの流れは、彼が読みきっていたのだ。

 

「悔しいな、まさか肯定されていなかったことに気づかないとは。それにタツキの作戦通りっていうのも腹立つ」

 

「ま、本気でやりあったら負けてたかもだけど。お互い全力じゃないから、こんな下手な作戦が成功するんだけど」

 

「そうだ。早く藤丸と契約して、身体の傷回復させてもらってくれよ。死なれたら俺後悔してしまうからな」

 

「あたしは平気だけど、スパルタクスはそうしてもらわないとね。何処かの剣士君が死ぬギリギリまで追い詰めたからね」

 

「いんや、俺的にはブーディカ先がいいかな。俺以外の誰か、もしくは何かの拍子にって事もあるし」

 

「え?」

 

「身体の節々を見てくれないか?」

タツキがそういうと、ブーディカは己の体を見て、驚愕していた。

 

「切り傷......まさか」

 

「そう。満開の血の桜咲かせましょう」

ブーディカは冗談と思いつつも少し思いつめた表情になったので、タツキはしまったと後悔した。

 

和ませようとしたんだが。

 

「ただのイタズラ。すまん冗談だ」

ゴファ!!

ブーディカにより盛大に腹を殴られた。

 

「いや、だって。俺、ブーディカと勝負ついてなかったから、なんか俺の方が勝ってるみたいな雰囲気出したかったみたいな?」

 

イッタァあああああああ

 

ブーディカに頰を抓られた。

 

「驚かせないでよ。まったく。でも認めてるけど、戦った後にすぐに冗談が言えるなんてね」

「いやぁそこ認められてもねぇ」

『お互い、ちょっと本気でやりすぎかな。お互い節度は必要だよ』

ロマンがため息混じりに通信をしてきた。

 

「いやあ、正直ここまでやるとは嬉しい誤算ね。あんたたちの腕は見せて貰った。ありがとね。旅の疲れも残ってたろうに」

 

「そう思うなら、手加減して欲しいものだ。本気で殺しに来るとは思ってなかったぞ」

 

「それはお互い様でしょ。タツキは首とか、脈とか、関節部とか、確実に仕留めに来るんだもん。でもその分読みやすかったかな」

「おお、突然のアドバイス。そっちの連携も流石だった。攻めと守りが一心同体っていうか」

「それに引けを取らない君達がすごいんだけどね。マシュ?あんたはある盾の英霊なんだね、すっごく気に入った。守るためだけの武器はいびつだって分かってるけど、奪うためのものよりよっぽどいい」

 

「っていうか、タツキの動きによく合わせたね」

 

「い、いえ。タツキさんの戦いはいつも参考にしている部分もあるので、それにタツキさんは私の実力以上のことは、させないように動かれてますし」

 

「謙虚だね。なら、もっと褒めようか!マシュはそんなにか細いのにたくましい!」

 

「!? た、たくましい、ですか?」

マシュの頰にほんのりと赤味が増した。

 

「ああ。盾を構えて踏ん張るところなんて、地面に根を下ろしてるみたいだった。ネロ公が火の激しさなら、マシュは大地の豊かさだね。あんたはどの英霊とも相性がいいと思うよ。現にそこの剣士君とバッチリ連携取れていたしね」

 

「......はい」

マシュは照れ臭そうに返事をした。

その様子を見て、ブーディカさんは満足そうに笑顔で答えた。

「いい返事。うん」

 

「うんうん」

 

「うん」

 

「うんうん」

 

何だこれ。ブーディカさんが突然マシュを見つめながらうんうん言い出した。

 

「よく見たら、何だそうか。そーいうことか!あんた、それならそうって言ってくれればいいのに!」

ブーディカさんの中で何か解決したそうです。

もう本当に英雄さん達は自由な人多いですよね。

 

「いろいろ複雑なコトになってるんだねぇ。こっちだって......あ、それによく見たらめんこいねぇ」

 

「ほら、こっちおいで〜ほらよしよし」

何だこれ。酔っ払いか?酔っ払いだな。

俺の母親も酔っ払ったらこんな絡み方してきたし、ブーディカさん酔っていたのか?

 

いや、まさか。

 

これが素のブーディカさん!?

 

「武蔵さんやぁ、和みますなぁ」

「そうですなぁタツキさん」

タツキと武蔵はその光景にほんわかと笑顔で見たていた。

 

「あっ!?な、なんでしょうかブーディカ、その、わっ!突然、どうして!」

わお。マシュがブーディカさんに......

「あたしには、あんたは妹みたいなもんだ。あんたたちは、かな。よしよし」

 

( 立樹君、お母さんにいっぱい甘えていいのよぉ?ほらおいで〜。どうして逃げるの〜。頭ナデナデしてあげるわぁ)

 

うぇえええ。ブーディカさんとマシュの絵面を見ていたら、やばい記憶の扉が開いてしまった。

 

「あ、あのっ、む、胸で......息が......」

マシュの顔にブーディカさんのたわわなお胸が......

「うん。あれは辛いな。本当に息ができないんだ」

「うえ!?タツキ、経験あるの!?」

しまった!つい口に出してしまった。

いや、ただ母親になんて恥ずかしくて言えない。

「いや妄想の話だ」

「それはそれで痛くない?」

武蔵に冷たい目で見られてしまった。

 

「いい子いい子」

なんか和むなあぁ。お母さんと娘みたいだ。

 

「今夜は私がたっぷり料理をご馳走しちゃう!お姉さんはねえ、ブリタニア料理がとっても得意なの。食べてくれるでしょ?」

 

「はい、是非」

藤丸は元気よく答えた。余程お腹が空いていたのだろう。

俺も実は腹が空いていたし、ご馳走になろうか。

 

「嫌がったって無理矢理食べさせてあげましょうとも!」

 

( お母さんの作った料理が食べられないっていうの!?......立樹君が遂に反抗期を迎えたのかしら!? お父さん!立樹君が遂に反抗期よ!ケーキ!ケーキを買いましょう!)

うぇえええ。何だこれ。ブーディカさんが母親に被るからか?記憶の中に封印しているものが顔を出してくるのですが!

 

それはタツキにとって、母親としては恥ずかしいくらいな、実母との記憶だった。

 

 

 

 

「そうだ。藤丸、マシュ、武蔵。ロマンからも説明してもらうつもりだが、言わなければならないことがある」

食事を終えだ俺は、藤丸、マシュ、武蔵の3人を誘い、話をすることにし俺はそう切り出した。

 

「単刀直入に言うと敵側にマスターが、6人いる」

 

「なっ!?」

「本当ですか?」

マシュと藤丸が驚き武蔵はニヤリと笑っていた。

 

「ああ、事実だと思う。ロマンに調べてもらっているがBクラスから4名と一般枠から2名だ。名代と藤野は一般枠、それ以外にも4名いる。ただ奴らの狙いは俺なんだが、巻き込まれるかもしれない」

 

「待ってください。タツキさんを狙う理由は何ですか?」

マシュに問われた。

マシュの意見は俺にもわからないところが大きい。

 

「正直俺がピンポイントで狙われる理由はわからないが、俺を含めて7名になり、そこにサーヴァント7騎が加わって擬似的に聖杯戦争の様な形になっている」

 

「サーヴァントが7騎ですか!?え、えと。連れ去られた彼等はサーヴァントと契約しているのですか?」

 

「そうみたいだ。ちなみに俺はセイバーのマスターらしい。俺のサーヴァントが武蔵って事だ」

 

「レフ・ライノールは何を考えているんだ。タツキ、巻き込まれるなんて考えないでくれ。俺も手伝う。勝つつもりなんだろ?」

藤丸は手伝うと言って、俺を支えてくれた。

 

『待って待って!話が綺麗に進みすぎているけど、人理修復の邪魔をされるのは、藤野 律とバーサーカーに攻撃されたところから見て確かだ。つまり彼女達の中にレフの見方をする者もいる』

ロマンが通信を繋げ、話に加わった。

 

「厄介ですね。人質も平気で取る連中の様ですので、俺が結構足を引っ張るかもしれません」

藤丸は落ち込み気味にそう言った。

「安心してください!先輩は私が守ります。ですが、向こう側にはサーヴァントがいるということは、あの名代さんにもいるんですよね」

名代と対面したマシュも藤丸も分かっていた。

名代は平気で人を殺せるということを。

「名代静ね。人がガラリと変わっていたのよね。私の知っている静はあんな雰囲気ではなかった」

武蔵がそう言った事に俺は驚いていた。

武蔵は前から知っていた様なので、名代の狂気っぷりは知ってると思っていたが、まさか知らなかったとは。

 

いや、武蔵と離れた後に何かが起きたのか。

 

どちらにせよ俺には関係のない話だ。

 

「名代にもいる。俺はさっき本人からこの話を聞かされたんだ。その時に確かに名代の後方に何者かが構えていた。雰囲気的にそこから狙えるという感じだった」

 

「そうですか。強敵ですね。魔術士では無いとはいえ、あの人の刀捌きは脅威です」

 

『あの距離ってところでクラスの判断は付かないんだよね。バーサーカーと、セイバーは外すとしても、アーチャーなら狙撃はあり得るし、ランサーなら槍を投げたりできる。ライダーでもアサシンでもキャスターでも言えるからね。ただ一つだけ確定しているのは、役100メートルの距離を置いて攻撃ができるという事だ』

 

ロマンの考察は確かに恐ろしさを感じさせるものだ。

 

常に注意を払うのは難しいにしても、100メートルの距離を置いて攻撃されたら、俺や武蔵には厄介な敵になるのは確かだし、マシュにしても守るとこは出来ても、敵に対して、守りながら接近は危険だ。

 

『いずれにせよ、その話は直近ではあまり問題はないと見るしかない。サーヴァント反応に関して注意はしておくよ。まずは明日、頑張ってくれ』

ロマンが締めくくり、武蔵達は自分のキャンプへと戻っていった。

 

寝坊するわけにはいかないので、タツキは直ぐに床へ着いた。

 

 

 




帝都聖杯奇譚始まりましたね。
私は以蔵さんに聖杯を捧げてレベル90にしました。
スキルマに素材沢山使ったので、杭が無くなりました......


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28話 ローマ帝国と二天一流12

 

「なんてこった」

「パンナコッタ?」

藤丸の言葉に俺は軽く冗句で返したのだが、なんの返答も貰えず悲しいことになった。

とまあそんなこんなで、カルデア&ローマ軍はピンチです。

そうローマ軍が半壊しました。

 

敵サーヴァントによる一斉射撃により。

 

 

「藤丸達は先に行ってくれ。こんなところで時間取られてる暇はないからな」

「いやでも、敵にはサーヴァントがいるんだ。共に戦った方がいいんじゃないか?」

「任せろって。こっちにも宮本武蔵っていう最強の剣豪がいるんだ。そう簡単にはそっちには行かせない」

「ま、敵は鉄砲使ってきてるから、不利なんだけどね」

武蔵はそう言いながらも笑っていた。

「言ってる言葉と、表情が一致してないよな。ま、俺も剣士って時点で敵が銃使ってくるとか不利でしかないけど」

「ええと。タツキさんも武蔵さんも何故そんなに感情が高揚してらっしゃるのでしょうか」

マシュに問われ俺と武蔵は目を見合わせて答えた。

 

 

「あいつ日本のサーヴァントだと思うぞ」

 

 

「そう、そして戦国時代のサーヴァントに違いない」

そうなのだ。敵のサーヴァントは完全に日本のサーヴァント。そしてそれも俺達に馴染みの深い。よく知る名前の人物しか候補に挙がらない程の、日本では有名な英雄なのだ。

「火縄銃だからそうだろうとは思っていましたが、やはり戦国時代の英雄なのでしょうか」

「ま、真名捜査は俺に作戦があるし、多分あっちも短気だったらすぐにボロが出る。ま、任せてくれよ」

「それじゃあたし達も残りましょうか」

ブーディカとスパルタクスも残ると言ってくれた。だがそうなると藤丸達の方が戦力が劣ってしまうので、断った。

「いんや、ここは俺と武蔵に任せてくれ」

 

俺は武蔵に耳打ちした。

 

(4つのワードを2つに分けて担当して、敵のサーヴァントの真名を炙り出す

ワードはこの4つ。

【うつけ】【ハゲ】【クソざる】【うんこたぬき】)

イメージの話なのだが、多分あの戦国4大有名人の誰かではないかと思うのだ。

 

織田信長、明智光秀、木下藤吉郎、松平元康

 

さて誰かな。鉄砲隊で有名な戦は長篠の戦いだからこの候補なわけだ。

「わかったわ。それじゃ私はハゲとタヌキを担当するわね」

武蔵はそう言って、刀を抜き、走り出した。

 

......

 

えぇ。

ハゲとタヌキって間違いようないじゃん。

一番の地雷はクソざるだからね?多分ほとんどの人は言われたら、怒るよ?

候補出したのは俺だけれど!

それじゃ俺も行きますか。

 

というかなんで日本のサーヴァントがこんなところに召喚されてるんだ?

ロマンの話では、この地に所縁のあるサーヴァントが召喚されるのではなかったのか?

それとも今回の特異点に関わりのある存在だったりするのか?

他の候補とすれば、敵側のマスターのサーヴァントだが、マスターらしき影は見えないんだよな。

 

武蔵はすぐに飛び出して敵の兵隊を倒してるし、あの敵サーヴァントさんは味方の兵の動きを見て、武蔵を狙うが武蔵は綺麗に交わしていた。

俺のいる場所は射程の外なので、此方は狙われていない。

よしそれじゃ俺も参戦するか。

 

「ダメだよ?タツキ君」

殺気ッ

咄嗟に刀を抜刀し後方へ振り抜いた。

タツキの刀と相手の刀がぶつかり火花を散らす。

 

「名代 静」

こいつは本当によく裏から出てくるな。

今回は殺気に反応できてよかった。

が、まずい体制が悪すぎる。

身体を返していたら斬られた可能性があったので、腕を後方に振り抜いたため、身体は名代の方を向いていない。

 

「やっほー。昨日ぶり?こっちのサーヴァントさん、動きたくないそうなんで〜来ちゃったよ!あーちなみにあそこの鉄砲撃ってるのが私のサーヴァント。アーチャーだよよろしくね」

そう言いながら目にも留まらぬ速さで、3回の切り返しを含めた技を打ち込んで来た。

 

受け止めるのは無理。

 

避けるが懸命な判断だ。

逃げるはない。刀の間合いから抜けることは無理。

つまりこの体制から、避けなければならない。

だが避けられる。

それはわかった。

俺は身体を上手く捻り、刀で弾き、足捌きにて、相手の間合いを拍子を変えて、避けきった。

 

「やっぱ。君の目は凄いねぇ。よく見えているよ」

こいつ。試してきたな。俺が殺気に反応していると読んで、最後の一撃は俺を狙うつもりなんてなかった。

殺気が込められていなかった。だが振り抜きの途中で殺気が宿り、太刀筋が変化した。

 

その刀に当たれば、俺は殺気に反応していると判断し、それを避ければ俺が目で見て避けていると判断する、か。

 

正解だ。

 

しっかり見えている。

 

「セヤァアアアアアアアアアアアア」

一度攻撃のリズムを止めたならば、そこから返してこちらのリズムを作らねばならない。

先手を取られる事は、それだけ不利になる。だが、一度でもリズムを掴めたらこちらのものだ。

 

「いっ!」

フェイク、本筋、本筋、切り返し、フェイク、目線誘導、太刀筋の変化、足での攻撃、塚での攻撃、投剣。

 

数多の攻撃を用いて、名代を圧倒した。

 

「つっよいなァ」

ガン

名代が振り抜こうとした、刀を此方の刀で押さえつけた。

「力強ッよ!」

 

「タツキィイイイイイイイイ!!!」

 

え?

 

それは弾丸だった。

 

後方を見ると、アーチャーが武蔵と対面している武蔵はアーチャーの弾を避けながら接近したのだろう。

アーチャーと武蔵は距離を図りながら、動いていた。

そして俺の場所が火縄銃の射程に入っていた。

 

敵のアーチャーの宮本武蔵を狙った弾丸は、武蔵が避けた瞬間、武蔵と直線上に並ぶ形になっていた、タツキを狙う弾へと変わったのだ。

 

アーチャーの顔に笑みが浮かぶ。

 

確実に仕留めたという顔だ。

 

ああ、これは避けられない。

 

 

そう。避けられない。

 

 

 

 

だからどうした?

 

 

 

ーーー我は生きる事をヤメナイーーー

 

 

 

え?

 

世界が広がる。

脳裏に描かれるは何通りもの、未来だ。

タツキはほんの少し身体を逸らし、顔を動かす、それだけで、アーチャーの弾丸はタツキの頰を掠めるだけで終わった。

 

「反応した?それはおかしい。確実に直撃コースだった。見ていない?ただその動きをした事により、偶々弾丸が外れたというの」

名代が目の前のタツキを見てそう言った。

「タツキ......まさかやっぱり」

武蔵は何か思うところがあるらしい。

「ふむ。避けるか小僧」

アーチャーはそう言って、詰まらなそうに腕を組んだ。

俺はというと。

(何が起きた?)

これが正直な感想だ。

あの瞬間、時間が凝縮されるような感覚、走馬灯だと思った。

だがあの瞬間、確かに俺はあの弾丸をこの目で見ていた。

そしてこうしたら避けられると判断して避けた。

 

名代、アーチャー、そして武蔵も手を止め、その光景を見ていた。そのため場の優位や先手を取られた不利がリセットされていた。

 

作戦開始だ。

 

刀の峰で、唖然としていた名代を叩き、気絶させた。

隙を見せればいくら強くても、弱者と変わらない。

武蔵の元へ駆け寄り「やるぞ」と言って、俺はアーチャーめがけ走った。

 

数秒遅れて、武蔵が走り出す。

鉄砲の弾の雨の中を剣士が走り抜けるというのは、異様な光景だった。

「小僧が宮本タツキじゃな。静の奴が気にする理由がわかったわ。お主の眼は只の眼ではないな?」

アーチャーの言葉を無視して、俺は叫んだ。

「クソ猿!!」

うーんどう考えても、小学生レベルの悪口だよなぁ。

そう思った瞬間だった。

 

数百という数の火縄銃が宙に展開され、同時射出された。

銃弾が地を打ち撃ち轟音をならす。

タツキの前に武蔵が入って全て弾き飛ばした。

「死ぬかと思った」

 

「ハゲ!」

武蔵も続いて口撃した。

俺は武蔵の後ろに隠れて敵を見た。

「猿は儂じゃないわ!それにハゲとらんわッ!バカモノォァアアアアアアア」

アーチャーは帽子を脱ぎ捨て、頭を見せてこう言ったのだった。

うっそー。そんな反応なんですか?

明智さんかな?

武蔵が女だし、女でも不思議ではないけど。

でも何よりも

「武蔵無理死ぬ。俺を抱えて逃げてくれ」

武蔵に言うと武蔵は直ぐに、俺を抱えて走ってくれた。

まあ事もあろうにお姫様抱っこなのですが。

「明智さんかな?」

「違うんじゃない?ハゲって言われて怒っただけだと思うけど」

「ですよね」

ある程度射程から離れた所まで行くと武蔵が「それじゃあ、行ってくる」と言ってアーチャーの元へ走って行き叫んだ。

「うんこ狸!」

その瞬間、宙に浮かぶ火縄銃の数が増して、地を砕く爆砕の轟音と共に弾が放たれた。

 

「それは儂のあだ名ではなァアアアアアアアい!」

なんとも楽しい、アーチャーですこと。

 

「外したわね。さ、次はタツキよ」

笑いながら武蔵がそう言ってくる。

ああ武蔵もこの現状を楽しんでいるな。

戦いを楽しむとは違う。

これはそう。

クイズを楽しむ的な、遊びを楽しむの方の楽しむなのだ。

「行ってくるぜ!」

俺は走って弾丸を避け、アーチャーの近くまで行き叫んだ。

 

「この大うつけ!」

 

その瞬間アーチャーの顔から笑顔が消え、冷たく冷酷な表情に変わり、刀を抜いた。

 

「そうじゃな。もうよかろう。儂こそは、尾張のおアッ!?」

突然アーチャーの口元に後方から手が当てられた。

 

「アーチャー。ダメよ〜勝手に自己紹介なんてしたら。私が困る」

名代静だった。

だが少し違和感がある。

先程まで着ていたカルデアの制服ではなく、紺色の雅な陣羽織で身を包んでいたのだ。

 

「何をする!静!離さぬか!これ!」

暴れるアーチャーを無理矢理抱きかかえて、「帰るわね」と言って帰って言った。

「謀反か!謀反じゃな」

というアーチャーの声が最後まで聞こえていた。

「なんだったんだ?」

「と言うよりあれもう答えじゃない?戦国の世で天下人を目前にして、本能寺にて破れた武将。織田信長」

武蔵の意見に俺も同意だったのだが、問題はその性格だ。

イメージとかけ離れすぎていて、信じがたいのだ。

『織田信長ね。また大物が敵になったものだ。決まったわけではないが、ほぼ確定だろう。タツキ君。宮本武蔵。気をつけてくれ。何をやってくるかわからないのが織田信長の恐ろしい所だ』

ロマンから通信が入りそう言われた。

「了解」

俺と武蔵は通信を切ると走った。

 

先に行った藤丸達の事が心配だ。

 

 

少し走ったところで周りの景色を見てそう思った。

走っても追いつけないか。

ゴーレムの残骸やら、負傷者達、何者かがこの場所を中央突破していったようだ。

「私達の出番なしか〜」

武蔵はつまらなそうに頭の後ろで手を組んで言った。

「だが、見えたぞ。何やら壮絶な戦いをしているようだ。サーヴァントか?」

剣と剣がぶつかり合う音が聞こえてきた。

目の先には1人の人を取り囲む、3人。

マシュ、藤丸、ネロか。

ここまで伝わってくるよ。闘気がな。

魔力を感知はできない。だが、わかるものはある。

「行くぞ武蔵」

「ええ」

二人の顔には笑みが溢れていた。

その理由は簡単だった。

 

((敵は剣士(セイバー)だ))

 

これほど胸踊る戦いはないよ!

セイバーの敵なんて、楽しそうじゃないか!

「さぁ、お手並み拝見!」

 

マシュが防いで、ネロが攻撃という布陣はそう簡単に破られない。

相手のセイバーはなんと太かった。

ええとアレで動けるのだから凄いよね。

左腕は巨大な白い鎧のような物が装備されており、右手に持つ金色の剣の細さと比べるとバランスが悪い。

だがその剣戟は器用な物だ。

「私は来た! 私は見た! ならば次は勝つだけのこと」

セイバーがそう叫んだ瞬間、寒気がした。

だが次に繰り出された一撃は平凡なものだった。

セイバーと剣を交えていたネロも同じように感じただろう。

寒気は増した、嫌な気配はした。

だが、ただの一刀でしかない。

避けられる。そう思ってしまう程に。

 

「ネロさん!」

 

マシュの駆け声で、ネロが反応しセイバーの攻撃を避けようとした瞬間、その攻撃がネロに直撃した。

「なっ!」

ネロはその場で蹌踉めき、続く二撃目を避けることはできず、剣でそれを弾いた。

「やるな」

ネロはそう言いながらも、続く一撃を剣で受け止めることしかできない。

連続の剣戟がネロを襲う。

 

黄の死(クロケア・モース)

『カエサルの宝具か!』

ロマンが突然そう言ったので、俺は咄嗟に反応して前に出た。

 

さて、お手並み拝見だ。セイバー。

「ふん!」

「ぬぅうう!?」

タツキの二刀がカエサルの剣を止めていた。

「初めまして、俺はカルデアのタツキよろしくな。セイバー」

「セイバーか。ならば私も名乗ろう。他の者達には既に名乗ってある。私はガイウス・ユリウス・カエサルだ」

知らん。だが多分有名人なんだろう。

ならば全力で相手してほしいものだ。

「なるほど。ガイウス・ユリウス・カ」

俺の言葉を聞こうとしていた、セイバーの一瞬の隙を見逃さない。

敵の前で話すということはリスクを負うという事。

例えば、その言葉の途中で、撃たれるとか。

「ヌァア」

デカイ図体しているんだから、隙を見せれば打つ。

 

タツキの刀はユリウスの腹を斬っていた。

ユリウスは反撃し、刀を振るもタツキはそれを避けて、敵の右腕を斬った。

「面倒ダ」

なんだ?動揺しているのか?でもそれは悪手だ。

「今の打ち合いでわかったよ」

「何をだ?」

「ユリウスの戦い方はこんな風に、タイマン勝負することにはないんじゃないか?その証拠に剣技に関しては俺が優っている」

ユリウスの剣を避け、もう一度右腕を斬り、左手の刀でユリウスの剣を受け止めた。

「やっぱりな。この戦い方。向いていないんじゃないか?」

「うむ。俺が一兵卒の真似事をするのは無理があるのはわかっている。しかしだ。そこまで言われたんじゃ、見せてやらねばなるまいな」

ユリウスから、先程同様の寒気がした。

 

「私は来た! 私は見た! ならば次は勝つだけのこと」

 

振り抜かれたのは、やはり平凡な一撃、どうしてこれがネロには避けられなかったのだろうか。

不思議でならない。

少し動けば避けられ

「ふん!」

なんだと、身体が動かない、いや違うこれは不可避の一撃なのか!

クソッタレ!

その剣が俺に直撃しようとした瞬間、割って入るように誰かが間に入ってその一撃を受けた。

 

「大丈夫ですか!」

 

マシュだった。

「マスターがあの一撃は避けられないって言っていたので、もしもの為に控えていました。やはり不可避の一撃のようですね」

マジかよ。藤丸は先のネロへの一撃のみで、その可能性を感じていたのか。

「助かった」

黄の死(クロケア・モース)

マシュの盾に目掛けて二撃目が入ろうとした瞬間、その剣は止まった。

 

「マシュちゃん無事?それとタツキは油断しすぎ」

武蔵が二撃目をシャットしていた。

「ハァッ!」

俺の刀はユリウスの心臓を貫いていた。

「いい剣だ」

俺はそう言って刀を納刀した。

 

「む、やった、のか?」

ネロの前ではユリウスのが蹌踉めきながら、ネロを見ていた。

『ああ、反応が弱くなっているが観測できている。君たちは勝利したんだ、おめでとう』

ロマンに言われて、勝ったんだと確信する。

 

「あなたの剣は強力な攻撃でした。けれど、先輩の指示さえあれば守り切れます」

マシュの最後の防御は本当に助かった。

まさか不可避の攻撃だったとはな。

「うむ、うむ。美しい女たちに負けるのも悪くはない。まったくあの御方の奇矯(ききょう)には困ったものだ」

ユリウスは然程、悔しいというわけではなさそうだ。

それよりも誰かに呆れている?

「あの御方?」

ネロの問いに、ユリウスは答えた。

「そうだ。当代の正しき皇帝よ。連合首都であの御方は貴様の訪れを待っているだろう。正確には【皇帝】ではない私だが、まあ死した歴代【皇帝】さえも逆らえん御方だ。その名と姿を目にした時、貴様はどんな顔をするだろうか。楽しみだ」

ユリウスの言葉はネロに向けられている。

「嫌味で言っているのではないぞ。貴様は美しい。どんな表情を浮かべても、等しく......」

何かを言おうとしたのだろうが、その言葉は無く、光の粒子となって消えていった。

 

俺達の勝ちだ。

 

 





さて、3周年ですね!
英霊旅装はもちろん武蔵ちゃんにしました
もう一人が悩みます。。。


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29話 ローマ帝国と二天一流13

「それじゃ戻るぞ」

ネロの言葉に藤丸やマシュ達は賛同して、歩き始めた。

しかし俺と武蔵は止まっていた。

 

「タツキ〜行くぞー」

「無理だな。敵のアーチャーによってこちらの軍はほぼ壊滅だ。これは非常にマズイ。ガリアを取り戻したはいいが、またすぐに奪い返されたなんて笑えないだろ」

「え?あぁ。そうか。考えてなかったな。二人に任せてもいいのか?」

「任せろって。というかそのつもりだしな」

「わかった。任せるよ」

「おう」

 

 

藤丸達が行ってから俺たちは、動ける者達を集め、救急活動を始めた。

息のある者達に応急手当てをして、もちろんやり方は素人なので、その場の男達に教えてもらいながらになるが。

だが現状を見て、銃弾を受けている者が多い。

敵のアーチャーによる一斉射撃だ。

計算外過ぎた。

それにもう少し到着が遅れていれば、全滅。俺達がここに到着した時には死体しかないなんて最悪な状況まで考えられた。

「タツキさん。駄目です。役6割が戦える状態ではありません。その中には死者も出ています。出血死による者が多数です。それよりアレはなんでしょうか。何が起きたのかわからぬ間に仲間が倒れていきました」

彼はトレネス。この軍の中で生存していて、怪我が最も少なかったため、軍の状況調査を頼んでいたのだ。

 

「6割か。火縄銃っていう武器だ。火薬により鉛の弾を飛ばしてるって言えばいいかな」

 

「ほぉ。タツキさんはよく知っていますね。それにお強い。あの火縄銃ってのも避けていましたよね」

そういえばそうだった。あの時誰かが頭の中で話していたんだよな。

弁助とか輝夜って雰囲気ではなかったんだよな。

一体誰だったのだろうか。

 

「タツキさん?タツキさん!」

 

「おっ!すまない。少しぼーっとしていた」

「お疲れでしょうし、もう休みますか?」

「いやいい。まだお前達も動いているだろう。俺が寝るのはお前らの仕事がひと段落した時だ」

「そうですか?寝ていただいても構いませんが、では此方も仕事に戻りますね。まだ皆さんの体調チェックなどありますので」

「おう」

そういうとトレネスは走って行った。

ガリア近辺に敵は少しはいるものの、攻めてくる気配はない。むしろ戦意喪失といった雰囲気で、自陣にも戻れなくなっているのだろう。

 

俺はそういった奴らに対して警戒をしながら、キャンプを見て回り、動けるもの達で、当番制にして、見張りをしようという話を切り出していたりする。

 

そして今は俺の当番なのだが、どうにも20時間以上一睡もしていないからか、体に疲れが出てきている。

 

誰にもバレてはいないから、バレないまま次の当番まで回せたらいいが、しかし他の連中を休ませるためとはいえ10時間も担当を持ったのは失敗だった。4時間交代という話が出ていたのだからそれに乗ればよかったと少し後悔をしていた。

 

「タツキ〜。タツキ!」

「あ、武蔵か。すまんぼーっとしてた」

武蔵は怪訝な顔をして、突然俺の手を掴み引っ張られた。

「来て」と言われてそのまま武蔵のキャンプまで連れていかれた。

 

「ちょ、何?今俺の当番なんだが!後4時間!」

「いいから!」

「はぁ!?」

キャンプに入り、俺は武蔵の布団の上に座らされ、武蔵に言われた。

「ゲームよ。3分当てゲーム。目を瞑って3分で目を開けたらタツキの勝ち。いい?3分ね」

「は?何を」

「スタート!」

武蔵に急かされ俺は目を瞑り、数え始めた。

いち、に、さん、し、ご

何がしたいのだろう。ゲームって何だろう。

全く武蔵は偶に理解できないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「あれ?武蔵さん?タツキさんは?」

確かこの子はトレネスって言ったっけ?

この軍を今は管理している子よね。

 

「タツキは今は休憩。私の当番だからね」

 

「あれ?そうでしたっけ?では変わりますね武蔵さん。4時間の間警備お疲れ様でした」

トレネスに言われて、腰をあげる。

 

「うぅー!疲れたぁお腹空いたぁ」

伸びをして、キャンプの方へと歩き始めた。

「武蔵さん、少しですが、食事を用意してありますので是非」

「いただくわね!」

食事かーサーヴァントとしてはいらないのだけど、やっぱり食べたいわよね。

仕方ない!

 

8時間も担当していたのだからね。

 

自分のキャンプへ向かうとそこには先人が座っていた。

あららお目覚めか。

 

私のキャンプの前に座る男。

宮本タツキだ。

いちおうは私のマスターなんだけど、彼は私を師匠として見ている始末で、まあそれを受け入れたのは私なのだけど。

 

「どうしたの?」

タツキは不機嫌そうな顔をして、今さっき起きたのだろう。寝癖がついており、目も若干寝ぼけているようだ。

タツキは立ち上がると私の耳元で恥ずかしそうに呟いた。

 

「ありがと」

 

言ってすぐさま、顔を逸らして、自分のキャンプの方へ歩いて行った。

 

悪い気はしないか!

実際怒るかなとは少し考えていたのが無駄だったな。

この辺は素直なのよねタツキは。

 




3周年来ましたね〜
福袋はセイバーを引きました!
武蔵ちゃんの宝具を重ねたかったのですが、シグルドさんでしたね......。

さて今回は、0.5話の様な雰囲気のお話でした。
ちょっと最近見ているアニメで良いシーンがあったのでそれを使いたくて......申し訳ありません衝動でした。


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30話 ローマ帝国と二天一流14

 

「いつまでああしているんだろうな?」

俺の見据える先にいるのは、敵の兵士である。先日の生き残りでやる気が無いような奴ではなく、隙あらば撃つというような殺気を突きつけてくる。

 

見張りの連中も気づいていたようだが、こちらから手を出して、戦いにでもなったら現状負傷者が多いこちらが不利だ。

そのため現状維持で凌ぐことになったのだが、日に日に潜伏する兵が増えてきており、何処から増えてきているのか不思議な程に、目の前の森の茂みに潜んでいるのだ。

 

「タツキ変わるわ。お疲れ様」

交代の時間になり、次の担当であった武蔵が来た。武蔵と少し話すため、俺はその場に武蔵を促して座らせた。

 

「倒しに行くか?ちょっと変だ。ありゃ人間には見えない。なんていうか感じ方が違う。殺気の質っていうのかな。なんていうか、肌には触れるが、人の放つ殺気とは少し違う気がする」

「同意よ。アレはもしかしたらサーヴァントの宝具の類かもしれない。タツキ油断は禁物。でも攻めるのは無し。トレネスも言っていたように、戦争になれば私達だけの問題では済まない」

「わかってる。意見だけ聞いておきたかった。戦争にならずに一方的に倒してしまうのはアリなのかナシなのか、な」

 

武蔵の顔を見てタツキは言った。その顔には闘志が湧いていた。

「ナシよ。一人ではね。行く時は言って。私も戦う」

「頼もしいね。んじゃ俺休憩するわ〜」

そう言い残して俺は、見張り番を代わった。

 

ーーーーーー

 

3時間後武蔵が見張りの交代をして、俺のテントに来た。

「やっと終わった〜お腹空いたし何か食べてくるわね。敵の様子だけどどんな感じだった?」

武蔵が見張りをしている間、俺は例の人ではない人型の連中の様子を探っていたのだ。

 

「いんや、動きはない。目的はこっちにないのかもしれないな。そもそも使用者らしき者の姿も無い。とりあえずはこの辺をウロウロしている奴らは倒せる」

「んじゃ、私が腹拵えをしたら、行きましょうか」

「あんまり食べすぎるなよ。動けなくなるぞ」

「サーヴァントだから関係ないって」

 

サーヴァントは飯を食う必要性も無いんじゃないのか?と思ったが、まあ人間生きていれば、何も食べなくてもいいと言われても食べたくなるものだろう。と思ったので言わないでおいた。

 

しかし敵に見られていると言うのは、何とも言い難い緊張感がある。

 

何故動かないのか、いつ攻めてくるのか、何かを待っているのか。いくつもの不確定要素が頭を支配し、常に緊張感を持っていなければならないのだから。

倒すのが早いに越した事はないな。

「すみません。少しいいですか?」

テントの外から声がしたので、外に出るとトレネスが立っていた。

 

「どうしたんだ?」

「少し気になることがあるのですが、見張りの時にお気付きになられたかもしれませんが、敵が複数潜んでいるようなんです。何人か斥候を送り込んだのですが、帰って来ず、隊を編成して戦おうにも、現状では打って出ることができないので、どうしたものかと」

 

現状ここに残る連中で戦える者は少ない。織田信長らしき英霊による射撃でやられてしまっているからだ。

 

即死しなかっただけマシと考えてはいたが、今攻められると、ここの守りの要は唯一の英霊である武蔵ということになる。

「俺と武蔵で後で見に行く予定なんだ」

 

「本当ですか?なら心強いですね。ですが、大丈夫でしょうか。私の考えなのですが、アレに引き寄せられて、ここの守りの要とも言える武蔵さんとタツキさんが出てしまえば、その隙をついて狙われる事もあると考えているのですが」

盲点だった。その可能性は大いにある。いやむしろそれが狙いで、複数の敵が攻める事なく、バレるように待機していると言われた方が納得がいく。

 

「トレネスその意見は無かった。どうしようかな。トレネスからしたら俺は守りの要と見えているかもしれないが、それはあくまで人と戦った時だけなんだ。武蔵級のやつと戦う場合は、様々な条件が整わないと勝てない。むしろ防戦一方になる」

 

「人と戦えば守りの要になると言える辺り流石ですね。武蔵さんクラスの敵ですか、その可能性は少ないですが、その可能性を外すわけにはいきませんね」

 

「それを考えると、武蔵に行かせるよりも俺が行く方がいいな。俺一人倒れた所で問題はさほどないだろうが、ここが落とされるのは最悪の展開すぎる」

「ですが!それでは万が一の場合タツキさんが」

トレネスは声を荒げて俺の心配をしてくれた。

 

「気にするな。人にはその役割がある。特に戦場ではその役割が変わる事なんて良くあるし、戦場に出た以上はそこで死と隣り合わせなんだ」

「最近不吉な言葉を聞くんです。戦場の悪魔が出るそうでその悪魔はいくつもの部隊を鎮めているそうなんです。ですのでどうかお気をつけて」

戦場の悪魔って......俺か武蔵の事かな?すげえ噂されてるな。

 

そこへ食事を終えて帰ってきた武蔵が合流した。

武蔵は満腹満腹とお腹をさすりながら、笑顔で歩いている姿は、逆にこの拠点の食料危機を意味するのではないかと不安になる。

 

「何?食べ過ぎてはないわよ」

「そ、そうか?ならいいが」

「では、タツキさんが調査に向かうということでよろしいでしょうか?」

「ああ。武蔵もそれでいいか?」

武蔵は顎に手を当て少し考えた後、俺の耳元で呟いた。

 

「任せるわ。あと任せて」

何故小声で言う必要があるのかと疑問に思ったが、任せると言われたので、ガリア周辺を散策する事にした。

「任せる」

と小声で返しておいた。

 

ガリア近辺は荒野が広がっているだけで、所々に森はあるが、人が隠れる場所として候補に上がる場所は、先の見張りの時に敵が隠れていた塹壕の中だけだ。

後は森くらい。

荒野では奇襲を対策する必要はほぼ無い。何故なら見渡せるからだ。

 

ガリアを出て1時間程が経過した。周りは荒野でどこに向かうでもなくただ歩いているだけだ。

奇襲は何度か受けたが、先も言ったように奇襲になっていないので、斬り伏せておいた。

そんな時だった。

 

(やっと結界を抜けましたか。撤退を勧めるマスター)

突然、頭の中に声が響いた。弁助や輝夜とは違った印象を受ける声の持ち主だ。声質は落ち着いた男の声で、俺の事をマスターと言った。

「初めましての人か?俺をマスターと言ったか?」

独り言を話している様は見られたら、危ない奴扱いを受けるだろうが、俺は気にしない。

 

(初めましてですね。私の事は平兵衛(へいべえ)とお呼びください。私は貴方様に身体を借りている身故にマスターでございます)

平兵衛ね。了解だ。いつの間にか俺の頭の中で何人もの人格が現れている事は、不思議に感じるが、不快には感じない。

 

「それでどうして撤退なんだ?」

(はい。罠でございます。仕掛けた者は一人。内側から好機を狙い、好機と見るや一気に攻め落とすつもりでしょう)

「うん?理解を得ない。0から10までしっかり説明しろ」

(御意。まずは裏切り者の名前から。私の見解では裏切り者はトレネスです)

 

「なっ!」

(驚かれるのは無理ありません。彼は本当に上手く馴染んでおられる)

「いやいや変じゃ無いか?だったら味方の誰かが気づいて」

そう言うことか。だから負傷者が

(ええ、その通りです。負傷者の中で唯一動ける者の存在。そしてその者は下っ端だったと言えば、連中もそれを信じるしかありません。1000人いる味方の顔を全員覚えているなんてあり得ないでしょう。隊長クラスを敵が全員殺したのはその為だと思います)

 

そういえば隊長クラスの戦士は全員戦死していた。だから動ける者から隊を纏める者が選ばれた。

その時、唯一ほぼ怪我をしていなかったトレネスを。

「成る程な。トレネスについては把握した。

次の問いだ。何故攻め落とされる?陣地には武蔵がいる。ならば逆に俺を残して武蔵を送る方が得策だと考えるはずでは?」

 

(そこに関しては彼の判断ミスと言わざるを得ません。彼は気づいていますよ、マスターが戦場の悪魔であること。ですが、それをあえて口にして、マスターに自信を持たせた。女武蔵殿を彼は下に見たのです。マスターや女武蔵殿の戦いをほとんど見ていない彼からしたら、男か女で選んだのでしょう。サーヴァントなど知るはずもありませんから)

 

「じゃ別に撤退する必要はないんじゃないか?」

 

(違いますよタツキさん。結局はどちらでも良かったんです。ある程度の強さの二人から弱い方を選んだというだけ。つまりは敵の隊長が攻めてくるはずです。そしてそれはマスターの考え通り、先の人ではない人型の何かを作り出していたサーヴァントでしょう。サーヴァント対サーヴァントの戦いの中、女武蔵殿は拠点を、怪我人を守れるでしょうか。敵のサーヴァントによって作られる人型兵器から)

 

「なっ」

(ガリアさえ落としてしまえばいいのです。別に女武蔵を、マスターを倒す必要などありません。それに向こう側にはアーチャーも参加しようとすればできる場所にいるはずです。ネロ帝達は帰還された。今ガリアを落とされると正真正銘の詰みです)

はめられたか!ヤバイな。急ぎ戻る、だが1時間程度は歩いたから走っても40分はかかるだろうな、間に合うか。

というかそんなに走ったら、ロクに戦えん。

 

(マスターは召喚はできないのですか?私を召喚してくだされば、ライダーのクラスを持つ私の騎乗性を活かせば、すぐに着きますよ?)

「召喚?何だそれ?武蔵のようなやつか。武蔵は何か突然出てきたんで知らない。それにほとんどは藤丸がやってるしな」

 

(いいえ違います。私共に、そのような力は無い。私どもは本来名も無き戦士です。名は残さずとも、数名、数十名、数百名の人の記憶に残る英雄が私達です。私達は相性が合う依代が無いと現界できません)

「つまりは依代ってのは俺の体で、召喚ってのは弁助や菊丸がやっていたあの憑依みたいなやつか?」

 

(違います。アレは外法。論外です。マスターの意思すら乗っ取るなどあり得ません。私が言っているのはマスターの身体に私を呼び出して、マスターがマスターの意思を持ったまま、私の力とマスターの力を合わせて使うと言うことです)

「はい?そんなことが出来るのか?なら早くやって欲しいんだが」

 

(いえ、それには特別なアイテムが必要になるのですが、名代殿が使っておられたあのカードです)

「カード?そんなの使っていたか?」

 

(ああ、成る程。見えていなかったのですね。名代殿をマスターが倒す瞬間に、名代殿はカードを使ってそれを交わしました。その証拠に最後は服装がカルデアの服から変わっていましたよね)

確かに突然服装が変わったから驚いていたがそんなカラクリがあったのか。

 

「つまりは俺には無理か。なら俺の身体乗っ取れよ。いいぜ、仕方なしだ」

(外法だと言いましたが)

「それしか無い、さっさとやれ」

 

(私が返さないと決めれば、それは第一人格の意思になり、貴方は第二人格のままになりますよ?この法を許可するとはそういう事ですから)

「やれよ。話して見てわかったから、お前はしないだろ平兵衛」

(はぁ。わかりましたよ。この戦、勝ちましたら共に夢について話しましょう)

え?

瞬間意識が身体から抜けた。

俺の意識は暗闇に落ち、俺という身体を俯瞰で見る形となった。

弁助の時や菊丸の時と同じだ。

 

しかし今回違っていたのは俺の近くに馬も出現ていたのだ。

「私の愛馬です。マスターは魔力をうまく使えないようですので、使わせていただきます。では見ていてください!そして無事に救い、勝利の酒を飲みましょう!」

ぬん?

 

(何か嫌な予感がするのだが、もしかして平兵衛って俺の頭の中でいつも変なフラグ立てていたあの男か?)

 

(左様じゃ!ぬははははははは!平兵衛に身体を渡すとはのぉ〜余程死にたいと見える)

声の主は弁助だ。爺さんの姿をしており、とても強そうには見えないがこれがまた強いのだ。

 

(死にたい?あいつそんなに弱いのか?)

(いんや?強いさ。ありゃあ時代が違えば名を残せたじゃろうて。江戸の中期に生まれた為に戦は無く、山賊狩りや盗賊狩りを生業にしておったのじゃがの?その強さが凄まじく、盗賊も山賊も平兵衛のいる近くには出なくなったんじゃ)

めちゃくちゃ強えじゃねえか!

 

確かに戦国最後の世代の宮本武蔵以降の、二天一流は、本物の戦を経験している方が少ないのか。

(なら別に問題ないんじゃないのか?)

(いんや違うさ。彼奴の異常な所は別にあってな。悪魔に好かれとる)

 

......。

 

悪魔ねぇ。なんか最近その言葉なんども聞くな。悪魔のバーゲンセールじゃないか、

 

(真剣に聞かんか!彼奴がその言葉を使うと悪魔はその言葉を達成させんとあらゆる手段を用いてそれを止めようとする。帰って来たら結婚しようと違って出て行った彼が帰った時には家は山賊に襲われていた。帰ったら必ずお前に薬をやると言って家を出た彼が薬を買って家に帰った時には既に妹は亡くなっておった)

 

やはりあのフラグ建築士かよ。

(つーかそれ普通フラグってその人に作用するんじゃねえの?)

聞いた話は全て彼では無い、他者が被害を受けている。

 

(それはな。平兵衛が強すぎて盗賊と間違えて悪魔憑きの人も何人か悪魔ごと屠ったからじゃよ。彼からしたらちょっと強かった敵という認識なのじゃろうが、悪魔からしたら規格外。だが、イタヅラはしたい。どうしようと悩んだ末、他者に矛先を向けたのじゃ。だがそれもどういうわけか彼なフラグを立てた時にのみ現れる)

 

(ん?でもそれなら今回は被害者いないんじゃ無いか?だってあいつ自分の中の俺と話して......え?まさか?)

(そうじゃな。そのまさかじゃ平兵衛がフラグを立てたのはタツキじゃな。フハハ。ま、平兵衛が身体を返したら気をつけるのじゃよ?平兵衛が好きな悪魔にからかわれぬようにな)

(迷惑すぎる!)

 

 

ーーーーーー

 

 

「行け!我が愛馬!フラッグデビル」

タツキ(in平兵衛)が乗った黒馬は全速力で荒野を駆け抜けていた。

(フラッグデビル?旗の悪魔?おい平兵衛さん。知ってて名付けたんじゃないだろうな?)

「何がですか?タツキ殿!勝ち戦に勝利の旗は付き物、それに私は盗賊達から悪魔と呼ばれた故、そう名付けました」

(あ、はい。そうですか)

「フハハハハハハハハハハハ!盗賊、山賊は私の飯ダァ!私の銭の為に死んでくれたら助かるなァ」

(タツキ殿。彼はな。馬に乗ると悪魔に取り憑かれたように人格が豹変する。まさに馬の悪魔。と旗の主人じゃな!)

(笑えねぇ!!!馬の悪魔に乗り、旗を振るう主人ってまんまじゃねーか!)

 

疾風の如き速さで馬はガリアへとたどり着いた。

ガリアからは煙が上がっており、人々が戦う音が聞こえてきた。

「キタキタァ!私の飯ぃ」

そう言って、平兵衛の腰には見たこともない刀が出現した。

 

【宝具】〈 馬の悪魔と旗を振る主人 〉

 

え?宝具?

宝具って確か、サーヴァントの持つ切り札なんじゃ?

宝具が発動されると、俺の腰に出現した刀が形を変えて、長き持ち手とその先には二つの槍頭という姿に変わっていた。そしてその槍には旗が付いており、旗には恐ろしき角が生え、牙が伸びた、悪魔の顔が描かれていた。

 

彼の乗るフラッグデビルも形を変えており、馬の頭から青色に輝く大きなツノが出現し、体には青き炎を纏っていた。

 

「いきますよ」

疾風怒濤。馬が駆け抜ける度に、敵の兵達は倒されていく、倒された敵は消えていくので、敵のサーヴァントによる能力で確定だろう。

「弱い弱い!私の魂が満足しねぇ!」

「いえいえ、オロ君。暴れすぎですよ。敵を見てください。アレ人じゃないですよ。倒すと消えるなんて人ではありません」

「ンァ?何だこれ?魔術の類か?めんどくせぇなァ!魂が食えねぇじゃねえか!」

 

馬が声を出して、平兵衛と話し始めた。

敵を倒す度に馬の青色の炎は小さくなっていくのがわかる。敵の人を殺した時には炎が強くなっていたので、あの炎は魂なのだろう。魂を燃やして戦っているのだと予測がつく。

 

それにフラッグデビルなのに、オロ君って言ったか?何だそれ?悪魔の名前か?変な二天一流使いがいたものだな。

 

まあでも、少しは理解できる。勝つためには何でもする二天一流において、勝つために悪魔と契約したということか。納得だ。

 

(タツキ殿。そこは納得なされるな。儂の考えた二天一流において何でもする事はわかるがアレはもはや別の生物になっとるじゃろ!)

(いやでも勝つためだしさ?仕方なくない?)

(その辺タツキ殿は、考え方が柔軟じゃな。儂には到底考えられぬな。老いた証拠じゃわい)

 

「アレ?タツキさん?如何されたんですか?」

タツキ(平兵衛)の前に立ちはだかったのはトレネスだった。

 

「君は確か、トレネス君だったかな?」

「え、ええ。帰還していただいて助かりました!緊急事態なんです!敵が攻めて来て、武蔵さんも相手の強者を押さえつけるので手が一杯で」

トレネスは必死に状況を説明していた。それを平兵衛はニヤニヤとしながら眺めていた。

 

「ど、どうされたのですかタツキさん。というか、そのような馬いつから、それにその武器は」

「いえ、お気遣いなく。では女武蔵殿を助けに行きましょうか」

そう言った瞬間トレネスの顔に一瞬だが、緊張感が垣間見えた。

 

「い、いえ!それよりもタツキさんには街の方に行ってもらいたいです。怪我人が何人も怪我をしたまま戦っているので」

「ふむ。そうですか。ではそうしましょうか」

そう言って平兵衛は馬を街の方へ走らせようと方向を変えた。

その一瞬のトレネスの心の緩み、顔に出た安堵を見逃さなかった。

 

「トレネスさん。最後に忠告です。その安堵が何から来たものかはわかりませんが、あまり私を怒らせないでくださいね」

「な、仲間達が助かるからですよ!」

「では何故、先程まで敵しかいなかったこの場所に貴方は居て、尚且つ無傷で生きているのでしょうね。私には不思議でなりませんよ」

(裏切り者ってさっきまで言ってなかった?)

「ははは。いやぁ〜実際会ってみるとその答えが正しいのかわからなくなるものですね」

そう言いながら平兵衛は、馬から飛びのいて何かを避けた。

 

見えたのは小さな針だった。

 

「やはり正しい選択でしたね。毒殺ですか。針に毒を塗っていたことから、身体を麻痺させた上で確実に殺すという可能性もありますね。ですが、殺気を漏らせば自然とわかります。残念でしたね」

トレネスは針を外し、その表情がみるみる絶望に彩られていく。

 

「裏切り者で確定したな。その魂喰いたいナァ」

ブラックデビルが声を発して走り出し、トレネスの心臓に食らいついた。

 

「ガッァ」

フラッグデビルは何かを引きちぎるように、牙を向けたが、トレネスからは血が流れていなかった。

 

さてはトレネスも敵によって作られた人間かと思ったが、そうではないとすぐにわかった。

「まあまあの味だナァ」

フラッグデビルはそう言って、己の青い炎をより強く燃やした。

 

魂を喰ったのだ。

 

「全くお下品ですよ。人を殺さず、魂だけ食べて、身体を残すというのは酷いです。しかし裏切り者には罰が必要ですので仕方ないでしょう」

そう言って、平兵衛はフラッグデビルに乗り、先程行ってくれと言われた逆方向へ馬を走らせた。

 

 





今回から本格的にタツキの中にいる二天一流の、継承者達が戦いに参戦していきます。
ネロ祭来るのか......来て欲しいですね!素材とQPと種火欲しいんです!
BBちゃん爆死しました......辛い。


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31話 ローマ帝国と二天一流15

馬を走らせていると、その男と遭遇した。

「レフ・ライノールさん。でしたか。全てを焼き払ったカルデアの一人だった方ですね」

モスグリーン色のタキシードとシルクハットを着用した、男性だ。

カルデアを爆破した犯人であり、オルガマリー所長を抹消した敵だ。

 

「おや。君は確か。あぁそうそう一般枠にいた剣士だったな。しかし何だその姿は。まるでサーヴァントのようではないか......ああなるほど。そういうことか」

「撤退すべきだ。こいつ只者じゃないナァ」

黒馬が後退りしながら、そう言った。

「マスターよ。だそです。引きますか?」

(こいつが此処にいるってことは、逃げるというのはガリアを捨てるって事になる。だが勝てる見込みは無いんだな?)

「フラッグデビルよ。勝率はどれほどですか?」

「私の感が正しけりゃ、もう一つの宝具でも勝てねぇな。ありゃバケモンダゼェ。見た目で判断すべき敵じゃあネェ」

 

「フラッグデビル?下等な人間が付けた名か?それを許容するとは驚いたよオロバス」

オロバスと呼ばれた途端、黒馬の様子が豹変した。

平兵衛を突き落とし、平兵衛とレフの間に平兵衛を守るように立った。

「平兵衛。これはマズイ。こいつ何者かは知らないが、私の事を知ってやがる」

 

「マズイとは。貴方は此方側でしょう。愚かな選択をしていることに気がつかないとは。全く愚かだ」

レフが足を進めると、フラッグデビルいやオロバスはその姿を変えた。

 

「本気で戦うしかなさそうだナァ。平兵衛逃げてもいいゼェ。私が時間稼ぎくらいしてやるよ」

 

「いんや。私も戦いますよ。仕方ないですね。では契約です、私の未来を授けましょう!オロバスよ真なる力にて我が望みを叶えたまへ」

 

「契約が成された。平兵衛の未来は喰らった。いつも通りフラグは喰っておいてやったゼェ」

 

「助かるよ。フラグを立ちたままにしてしまうとマスターに怒られるだろうからね」

 

「気にするなヨォ!私に必要なものは無い。お前と戦えるならそれが楽しいのでナァ!さぁ行こうか平兵衛!」

途端、オロバスを包み込むように、黒色の煙が上がった。

煙は数秒の後晴れた。

そしてそこには別の個体が立っていた。

 

黒色の鎧を纏い、手には斧を持った二足で立ち、馬の頭をした魔物がそこにいた。

 

「さて、始めますよ平兵衛」

その魔物は落ち着いた声色で、平兵衛に話しかけた。

「久しぶりに見たな。オロバスのその姿。よしでは戦うとしようか」

平兵衛は旗槍を構えた。

 

「行きます」

「ええ」

 

オロバスが突っ込み、それをレフが止める。

「魔術による障壁か?」

 

「愚かだ。オロバスッ」

オロバスの腹に魔術の球が被弾する。オロバスは吹き飛びながらも、斧を投げた。

 

レフがそれを綺麗に避けた。

「ハァッ!」

レフの後方で飛んできた斧をキャッチした、平兵衛がそのまま斧を振り抜いた。

 

「フッ」

レフが斧を手で受け止める。

「いいのですか?相手は二人ですよ?」

「セェアッ」

旗槍を持ったオロバスが、レフ目掛けて突っ込む。

平兵衛はレフの後方へ素早く回るために、槍を置いたまま動いていたのだ。

武器が飛んでくる事を予め聞かされていたように、動いていたのだ。

 

「魔術師だから接近戦ですか。考えが甘い」

レフが突っ込んでくるオロバスに向けて手を開いた。

その途端オロバスが吹き飛ばされ、その片手間で、平兵衛を魔術による攻撃で吹き飛ばした。

 

(危険信号だな。武蔵よ。マスターである宮本タツキが命じる。宝具を使用し、我が身を助けろ)

二人掛かりでも余裕を持って、戦うレフを見て、タツキは判断を下した。

 

意識の中で、そう告げると平兵衛の手の甲にある令呪が1画消えた。

 

さて、はじめての武蔵の宝具。見せてもらおうじゃないか。

 

(それと平兵衛時間切れだ。身体返してもらう)

 

「私が至らぬばかりに申し訳ありませんでした、マスター。オロバス撤退です」

 

「仕方ないナァ」

そういうと、オロバスは消えた。そして旗槍と斧も消え、タツキの肉体はタツキに返された。

 

「さて、レフ。俺が相手になる」

タツキが小太刀と太刀を抜き、中段で構えた。

 

「その状態で戦うというのか?だが、所詮は人間。始末して終わりだ」

「ああ。どれだけ強くても、所詮は人間の極致にすら達していない俺だ。戦えば負けるのは確定だろうな」

 

「では何故と聞くまでもないか。来たなセイバー」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()》》

 

 

全力のスピードで駆けつけた武蔵の背後には、黒色の四本腕にそれぞれ刀を持つ仏の姿が見えた気がした。

 

 

()()()()()()()()() ()》》

 

 

武蔵が刀を振り抜くと、光の光線がレフ目掛けて襲いかかった。

光の光線というよりは、魔術により肥大化した刀?なんなんだこれは。

 

周囲を巻き込む宝具の威力は凄まじく、離れていたタツキの元にまで、その風圧は届いた。

身を低くして刀を地に突き立て、吹き飛ばないようにしなければ、身体が持っていかれそうだった。

砂煙が舞う中、タツキは決して宮本武蔵から目を離すことは無かった。

全てを視界に収め、それが何なのか。しっかりと記憶したいと思ったからだ。

 

「これが武蔵の宝具」

俺の口から自然とそう漏れていた。

武士ではない。これがサーヴァント・セイバーとしての宮本武蔵の本気の一撃なのか。

「待たせたわタツキ。にしても宝具の使用を許すなんて、何事かと思ったけど、まさか親玉が出て来てるとはね」

武蔵の背後にいた仏は消え、いつもの武蔵がそこにいた。

 

「すまん。宝具の重要性は理解していたつもりだが、相手が相手なだけにな。だがまあそう簡単には倒れてくれないか」

レフのいたところを見ると、二つの影があった。

一つはレフ。そしてもう一つは

 

「ここまでか。申し訳ありませんマスター」

金色の鎧を纏った、赤みがかった髪の男だった。

「セイバーの足止めを命じたはずだが?みすみすこちらへの加勢を許し、宝具の身代わりになって消滅するか」

「はははこれは手厳しい。ですが申し訳ありません。御武運をマスター」

そう言い残し、金色の鎧の男は消えた。

 

「これだから使い魔は。仕方ない引きますか」

そう言ってレフは消えた。

サーヴァントを失ったのに、そこに対する感想は無いのか。

後悔とかするものじゃないのか?俺は武蔵を失ったらすごく後悔する。でもレフは違うのか。使い魔って言ったか。

つまり彼にとってのサーヴァントはその程度の認識でしかない。

 

英雄という認識ではなく、単なる使い魔の一つということか。

本当にカルデアの連中は何であんなやつを、いや違うか。あの時はあの人がいないと成立しなかったって言ってたな。

「それにしてもレフを守ったあのサーヴァント。何者だったのだろうな」

 

「ああ、ランサーね。たしか、スパルタの王?って言ってたかな?しつこく付きまとって来たのよ。それとタツキ。頼光が来てるわよ」

スパルタの王?

知らない場所ですね。スパルタクスの王様でしょうか? 違いますねはい知ってます。

 

「了解。それで逃げろと?」

「もちろん。手合わせするに決まってるでじよ?」

「当たり前だ!憑依かなんか知らんが、俺全然戦えてないんだよ!だから頼光さんと戦いたい」

「憑依?またアレやってたの?だから俺の身体を守れみたいなこと言っていたのね」

「まあな。武蔵が来るとわかってから、戻ったけど。俺的には武蔵と連携は楽しいから、それを俺の身体を使って別のやつにやらせたくないからな」

 

「なっ!?そう正面から照れるなぁ」

武蔵ははにかみながら、そう言うのだが、こちらとしては、そう照れられると俺も恥ずかしいのだよなあ。

 

『失礼。盛り上がっているところ悪いが、その近辺のサーヴァント反応は消えたよ。バーサーカーも撤退済みだ。ガリアの防衛お疲れ様。藤丸君達は現在女神と出会っているんだが、そちらもまたややこしくてね。あまりタツキ君達を見てられなかった。レフ・ライノールと戦ったそうだね』

ロマンだ。連絡もよこさないから藤丸達の方が大変なのはなんとなくで、予想していたのだが、女神と来たか。

出会って見たかったとは思う。神様なんて出会える事がまず無いからな。

 

「まあ戦うためではなさそうだった。ガリアを潰しに来たって感じだと思う」

 

『何か他の目的がありそうだから、気をつけてくれ。とりあえずは藤丸君達が戻るまではガリアの防衛をよろしくタツキ君』

 

「了解」

ロマンとの通信が切れて、俺はその場で座り込んだ。

 

「はぁー!しんどぉ〜。ないわぁ。ここの防衛なんて今攻めてこられたら無理に決まってんじゃんよ〜!兵士が半数近く怪我人だったのに、死者まで増えて管理職のトレネスは裏切り者ってもうさ〜」

「タツキ。同意よ。でも立ちなさい。ある程度の復興はしないと藤丸君達が戻って来た時申し訳が立たないわよ」

武蔵は相変わらず能天気というか、前向きというか。本当に精神面でも支えてくれるよな。

 

「申し訳が立たない...か。カルデアの剣士二人で守ってて、守り切れなかったなんて言われないようにしないとな」

 

「実際やられちゃったけどね」

あははと武蔵は笑いながら、俺に手を差し出した。

 

「それはこれからある程度は直せるだろう。というかさ、武蔵一人で守ってたんだよな?」

 

「え?ええまあそうね」

「成る程な。武蔵。俺の前で本気を見せた事無いだろ?」

 

俺がそう問うと、武蔵は一瞬怖い顔をしたのち、刀を握ってこう言った。

 

「タツキがまだそこに至ってないから、マスターのサーヴァントである私の本気は解放されていないという意味ではそうなるかな」

 

返された返答は、俺の思っていた答えとは違っていた。

本気を見せていないというのは、バーサーカーとランサーを相手に立ち回って、ピンピンしているというのが、驚きだったのだ。

 

先のランサーが武蔵の宝具から、ランサーは敗退はしたが、レフを完璧に守ったところを見て、あのランサーは守りに徹する時に力を発揮するのではないかと予想した。

 

そこにバーサーカーがいるならば、連携を組めば、矛と盾。武蔵からしたら最悪のコンビだったのではないかというところから来た質問だったのだ。

 

「いやそうじゃなくてだな。それも気になるけどさ、バーサーカーとランサー相手によく立ち回ったなって事」

武蔵はポンと手の平を叩いて、そっちか!と言った。

 

「連携されなかったからね。それにできもしない連携はただの愚策よ」

 

「成る程。まあそうか、あのバーサーカーそういうの苦手そうだもんな」

 

「苦手かはわかりませんが、私一人でも守りを固めて戦えば、時間稼ぎは出来ました」

 

「時間稼ぎねえ。まるで助けが来ると予測しているような事をするな」

 

「タツキが来るじゃない」

うは!武蔵さんそういうところですよ!過度な期待はしないでほしいな。嬉しいけど!嬉しいけど!嬉しいわ!

 

「行くけどね」

ポーカーフェイスを作り、内面の喜びは隠して話を続けた。

 

「それで俺が至っていない云々は?」

 

「それはね。私多分だけど生前に空位に至ったと思うのよね。これは予想とか慢心とかじゃなくて、確信に近いかな。それをハッキリと説明することはできないのが辛いところなんだけど」

 

「つまりね。タツキが空位に至るとサーヴァントである私も本来の力を取り戻せるって事だと思うわ!だからタツキ期待してるから、至りなさい空位に」

何という事だ。

俺のせいで武蔵の力に制御が掛かっているのか。だが空位に至れって簡単に言われてもな。意味がわからん。

空位って何だよ。武蔵は空位に至ったって言うが、どのようにって部分を忘れているのだろう。

俺へのアドバイスが出来ないようにってところか。

 

何故そのような試練を俺に与えるのか。

 

「いずれ至れる日が来たらさ、武蔵。俺と本気の戦いをしないか?」

武蔵の目に殺気が灯る。

きっと俺の目にも殺気が宿っていたのだろう。

武蔵は俺の目をしっかりと見て、答えた。

 

「望むところよ。ただ私がこの場所に留まっていられる間に至りなさい。私はその約束を破る事はしないから」

留まっていられる?ああそうかサーヴァントは役割を終えたら、座に帰るんだっけか。

 

「了解。目標さえあれば、俺は強くなれる」

タツキと武蔵はその日、お互いに殺し合いをするという約束を形は違えど成したのだ。

 

空位に至った者同士の本気の立ち会いは殺し合いを意味し、勝者が決まれば、切り捨てられるという事だ。

 

 

 

 



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32話 ローマ帝国と二天一流16

『タツキ君起きて!タツキ君!』

 

うう。

 

誰かが俺を起こしてくれている。

寝ていたのか。

 

俺は瞼を開け、顔を覗き込んでいた人物と目が合う。

モニター越しに。

 

「ロマン」

『大変だったみたいだけど、大丈夫?』

「ああ。まあでもガリアは守りきったから防衛線は俺達の勝ちだ」

『疲れているところ悪いけど、最後の戦いに向かってもらいたい。連合帝国首都を落とす』

「という事は、藤丸達も上手くいったようだな」

『そうだね』

 

俺はその一言を聞いて、重い体を起こす。

キャンプの中に脱ぎ散らかしてある、制服を着て、ズボンを履いて、刀を帯刀する。

 

「準備完了だ」

『疲れは取れかい?あまり休めてなさそうだけど』

「そんな事はない。サーヴァントは休憩がいらないからってここのところずっと武蔵が見張りで俺が休憩だったからな。ある程度は動ける」

 

そういえば、最後の聖召石が砕けたんだよな。

平兵衛を憑依した時に使ったって事だろう。

ダヴィンチちゃんにまた貰っておこう。

いつまた憑依されるかわからないからな。

 

「行くよタツキ。覚悟はできてる?」

 

キャンプの中に武蔵が顔を出した。

 

「俺にそれを聞くか?勿論だ」

「その様ね。じゃ行くか!」

「おう!」

 

 

俺と武蔵はガリアを出た。

 

 

『既に向こうの偵察は終えている』

 

現在は走りながらロマンから情報を得ていた。

 

「は?敵の拠点がわかったのか?」

『ああ。思わぬ収穫だった。だから今から言う場所に向かってほしい。既に戦いは始まっている』

「は?早くそれを言えよ!武蔵スピードあげるぞ!戦況は?」

「わかったわ」

「え?」

 

武蔵は俺を軽々と肩に抱えた。

 

「サーヴァントの私に任せなさい!」

「うえ!?ちょ!」

 

武蔵は俺を担ぐと、全速力で走り出した。

 

『ええと、有利かな。破竹の勢いで連合首都へ進撃しているよ』

 

 

「タツキ!なんか来た!」

「うん?......うん?」

 

タツキは武蔵に降ろされその光景を見て絶句した。

 

「これはアレだな。来たと言うより」

 

「待ち伏せ...ね」

「ああ。まんまと合流前を狙われたな」

『タツキ君達の前にいる生命体反応は150だ。大丈夫かい?』

「タツキ」

「ああ。わかってるその1人だけ俺が受け持つ。他の雑魚は武蔵に任せる」

「了解」

 

武蔵はそういうと一瞬で、敵の軍隊に攻撃を仕掛けた。

武蔵は一騎当千。早々と敵を倒していった。

 

「さて、こちらも始めようか。槍使いのサーヴァント」

 

巨大な槍を持った、鎧姿の女性。

紫水晶の目、美しい青白い髪の人だ。穏やかに微笑むと一瞬で

 

「はっや!」

 

距離を詰め、巨大な槍がタツキを突き刺さんと、放たれた。

 

「困ります...そんなに、私を見つめないで」

 

巨大な槍を軽々と振り回し、その度にタツキは全力防御を余儀なくされた。

 

ほんっと、サーヴァントってのは規格外だ。こんな威力の出るような槍を、片手で軽々と振り回してくるのだから。

 

槍使いって事はランサーだろうな。

ランサーは淡々と槍を振るい続ける。

なんと掛け声も無く、ただ淡々と。

 

「死んでください」

 

たまに口を開くと、物騒な事を言う。

 

だけどこいつ、本気じゃないな。

 

ま、ならこっちは本気で行こうかな。

 

 

 

タツキは刀を構えて、ランサーめがけて斬りかかる。

ランサーはソレを虫でも払うかのように、槍で振り払った。

 

「え?」

 

ーーー槍は空を割いたーーー

 

 

 

(初白雪。貰った!)

 

タツキの刀がランサーを捉えようとした瞬間だった。

 

青い炎が弾けた。

 

「は?」

 

ランサーの身体から青い炎が上がり、不意をついたタツキに向かい襲いかかった。

 

タツキは咄嗟に身を投げ、地面に転がりソレを避け、そのまま数度回転し、ランサーを見ると、メラメラと青い炎を槍が纏っていた。

 

「あー。これはアレだ。作戦変更だな。むさ....おっと。セイバーそっちはどうだ?」

「マスターらしい人はいない」

 

俺は敵の部隊と戦っている武蔵に声をかけて、その答えを聞いて納得する。

 

「マスターは安全圏にいるのかよ。ま、なら好都合だな」

 

「余所見はいけません」

「お互い様だな」

 

敵のランサーの一撃をタツキは、身体を後方へ倒して避けた。

 

「お前の相手は人間じゃないだろーよ」

「え?」

 

ランサーの身体を切り裂く一撃。

タツキを囮にし完璧に不意を突いたその人物こそ、タツキのサーヴァント。

 

「くっセイバー」

「芯を外されたかー」

「ま、仕方ない。殺気に反応されてたからな」

 

ランサーは直ぐに俺たちと距離を取り、その直ぐ後に撤退した。

 

 

「タツキ。行くわよ」

「おう」

 

 

それにしても敵側のマスターは連携をしていないのだろう。

様子見の攻撃と見て間違いない。

あのランサーは全然本気を出していなかった。

武蔵に不意を突かれた瞬間、少しだけだが膨れ上がる何かを感じた。

 

 

『タツキ君!急いでくれ!王宮でレフライノールと戦闘にな、何だこれ!』

「は?ロマン?どーした?おい!応答してくれ!」

「タツキ、やばい気配がする。全力で行くわよ」

「ああ、任せた」

「えい」

「ま、そーですよね」

 

武蔵は軽々と俺をお姫様抱っこして、走り出した。

 

 

 

武蔵さん。恥ずかしいです。

 

 

 

 

 

 

王宮へ突入すると、その気配は嫌でも感知できた。

禍々しい気配が王宮内に漂っており、そしてその部屋に入ると、そこにいたのは。

 

 

「何だこの気持ち悪いやつ」

「レフじゃなかったの?」

 

俺と武蔵の目の前にいたのは、太く黒い触手のような体に、大きな赤い目を持った魔物だった。

 

「藤丸。これはどういうことだ?」

「タツキ、危険を承知で言うよ」

「何だ?」

「アレがレフだ」

は?あの気持ち悪い奴がレフだって?

人間やめてるじゃねーか。

 

「だから全力で戦って欲しい。今のままだとカルデアが後手に回りつつある。タツキ、名代の敵を頼みたい」

「名代?」

 

藤丸の先にいたのは、紺色の雅な陣羽織を着た名代だった。

名代はレフの攻撃を上手くかわしながら、ネロやマシュに攻撃を仕掛けているのだ。

 

レフにとって名代は味方じゃない。

巻き込んでも構わない存在。

名代は何故向こうについたのか。

 

何となくわかってきた。

 

悲劇?

 

そんなことじゃないだろうな。

何故名代がいて、アーチャーがいないのか。

 

答えは至って簡単だろう。

 

「そんなに笑顔で死闘をやってんじゃねーよ!」

 

抜刀と共に踏み込み、名代を真横から叩き斬る軌道で刀を抜く。

 

名代は容易く避け、手に持つ大太刀で切り返してきた。

 

二刀流じゃないんだな。

 

(初白雪)

「見えてるよ」

 

フェントには見向きもせず、俺を目で追い斬りかかって来る。

 

そこへ煙のような魔力の塊が俺と名代を巻き込む形で、襲いかかって来る。

 

「武蔵!」

タツキがそう叫ぶと、武蔵がタツキの元へ来る。

 

「宮本武蔵。マスターを助けてばかりで本気になれなあわね。そんな子の子守ばかりしッ」

 

血飛沫が上がった。

 

武蔵が名代の身体を下から上へ、抜刀術により斬り裂いた。

 

「致命傷には至らないか。上手く避けたわね」

「宮本武蔵、何故タツキ君を助けない?」

「タツキの目は助けろとは言っていなかったから」

 

 

 

ゴォオオオオ

 

 

俺と武蔵、名代を黒い煙は巻き込んだ。

 

「ま、耐えられるか」

「なわけないでしょ!」

 

寸前の所で武蔵に抱えられ、煙を避けた。

 

「流石〜」

「攻勢に出るわよ」

「もちろん」

 

 

武蔵に下ろされ、煙を避けながら走り、武蔵がレフ幾つもあるの目の一つを斬り、続いてタツキが切り裂いた。

 

マシュやネロ達も各々別の角度から、攻撃を行っていた。

 

 

幾度も繰り返される攻撃は、レフの身体をボロボロにしていた。

 

 

「もう少しだ!」

 

藤丸がそう言った時、レフの身体に変化が生じた。

 

その柱のような身体に目が増えたのだ。

 

その瞬間、明らかに先程までとは違う威圧感を感じた。

 

タツキは黙って後方へ下り、それを見た武蔵がマシュやネロに下がるように指示をした。

 

タツキは他者に危険を伝えるより先に、危険から逃げる事を選んだ。

 

いや、意思とは裏腹に勝手に選んでいたというべきかもしれない。

 

現にタツキは後方に下がった後に、前に出ようとしたが、出れないでいた。

 

ある一定の範囲に入ろうとすると、体が自分の物ではなくなったかのように動かなくなったのだ。

 

 

「藤丸!こっちに来い!」

「え?」

「いいから早く!」

「わ、わかった」

 

一番近くにいた藤丸にそう命令し、藤丸は急ぎ足でタツキの後ろに入った、その瞬間、複数の目が光った。

 

 

 

【焼却式】

 

 

 

 

先程までの煙とは違い、魔力の柱のような光が周囲を覆い尽くした。

 

 

タツキの目の前で、その柱は高々と天井を貫いており、藤丸が先程いた場所はその魔力の中だった。

 

「助かったよ。ありがとうタツキ」

 

その魔力の柱が消えると、レフの目は先程の数に戻っていた。

 

 

タツキはすぐに武蔵を視認し、無事である事を確認すると飛び出した。

 

一番早く飛び出しタツキに反応し、武蔵、ネロ、マシュも合わせて飛び出した。

 

4方からの同時攻撃。

 

 

「ハァ!」

「ヤァ!」

「セェイ!」

「ハッ!」

 

 

大技を使った後の隙を捉えた、4人の攻撃は的確にレフの身体を捉え、打ち倒した。

 

 



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33話 ローマ帝国と二天一流17

「終わりだな」

タツキの刀が、人の姿に戻ったレフの首に当てられていた。

 

「はい!」

俺の言葉に隣にいたマシュが答えた。

 

「馬鹿な....たかが英霊ごときに我らが御柱が退けられるというのか?」

 

レフは俺たちを見ながらそう言った。

 

「そうだったみたいだな」

 

「いや、計算違いだ」

「あ?」

 

レフは何やら1人でブツブツと言い出した。

 

「なにしろ神殿から離れて久しいのだ。少しばかり壊死が始まっていたのさ」

 

「負け惜しみだな」

レフの言う内容の半分以上は理解ができない内容だったが、負け惜しみであることは理解できた。

 

「負け惜しみ....言いたければ言えばいいさ。私も未来焼却の一端を任された男だ。万が一の事態を想定しなかった訳でもない」

 

「は?何言ってんだお前」

 

「タツキ!早くそいつを斬りなさい!」

「え?」

武蔵が叫び、俺はとっさに刀を振った。

レフの首を頸動脈を斬り割いた。

 

『聖杯の活性化を感知した!また何かが起きるぞ!』

 

「も、もう遅い!これこそ真にローマの終焉に相応しい存在だ」

 

死にかけのレフの発するその台詞から、死に際の台詞とは感じられない重みを感じた。

 

「来たれ!破壊の大英雄アルテラよ!!!!!!」

レフが叫ぶと空間が光り輝いた。

 

ヤバイのが来る!

タツキは瞬時に察しその場から後退した。

 

「ははははは!終わったぞ!ロマニ・アーキマン!人理継続など夢のまた夢!このサーヴァントこそ究極の蹂躙者!アルテラは英霊ではあるがその力は」

 

「せめてお前だけは殺す!レフ!!!」

 

タツキは再び刀を構え踏み込もうとした時だった。

 

 

 

 

「黙れ」

 

 

 

え?

 

 

 

目の前でレフが真っ二つにぶった切られた。

 

突如現れたその女性。アルテラと呼ばれた英霊によって。

 

白髪に褐色肌の女性だ。

手に握る剣は赤や青や黄色に発光していた。

 

「仲間....割れか?」

『何が起きてるんだ?』

「彼は....召喚したサーヴァントに両断されました。真名はアルテラ、恐らくセイバーです」

 

マシュがロマンに説明をしている中、1人のサーヴァントがその不意を突いていた。

 

「セヤァア!!!」

 

ガン!

 

武蔵の真後ろからの不意打ちをアルテラは手にした金色の器で弾いていた。

 

アレは先程レフの体から溢れ落ち、アルテラが抜き取っていた物だ。

 

まさかアレが

 

 

「聖杯っ」

 

武蔵はそのまま後方へ飛び距離を取った。

 

そしてその攻撃を受け止めた聖杯は、そのままアルテラの手に吸い込まれていった。

 

 

「私は、フンヌの戦士である。そして大王である。この両方世界を滅ぼす破壊の大王」

 

 

「破壊のーーーー」

アルテラがそう言った途端、周囲が空間が震えた。体にヒリヒリとした感覚があった。

 

何が起こるのかはわからない。ただ唯一わかることは。

 

とてつもなく危険だということだ。

 

「タツキ!こっちにこい!マシュ、宝具使用だ!」

「武蔵!後退だ」

 

「ああもう!わかってるわよ!」

 

武蔵はすぐにこちらまで来るとマシュの後ろに隠れた。

 

 

 

 

涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトン・レイ)!」

 

アルテラの剣の柄から放たれた赤色の光が天井を貫き、天に突き刺さる。

そしてその光が突き刺さった空に幾重にも重なる魔法陣の様なものが展開された。

 

そしてその魔法陣に収束されたエネルギーが光の柱となり、タツキ達のいる城を襲った。

 

 

擬似展開/人理の礎(ロードカルデアス)!」

 

それに合わせてマシュが宝具を展開する。

巨大な光の盾が出現し、タツキ達を守るように展開された。

 

 

 

約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)!」

 

そこへ走ってきた、ブーディカが状況を察し、すぐに宝具を展開した。

車輪が宙に出現し、アルテラの宝具を守るべく展開される。

 

 

そして宝具が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で何が起きたのか、全く見えなかった。

 

ただ久し振りにサーヴァントの本気のビームを見た気がする。

 

なんて気楽に考えている場合ではないが、生きているという奇跡を噛みしめるには丁度いい。

 

 

『ああ、対城宝具の解放を間近にしながら、君たちが死んでいないのがボクには不思議なくらいだ」

 

 

「あと、ブーディカ来てくれたんだな」

「ギリギリだった」

 

「ロマンとりあえず、喜ぶのは後にしよう。問題のアルテラってのがいないんだが?」

 

俺は周囲を見渡すもその存在を確認できずにいた。

宝具により城は壊され、俺達は現在、荒野に放り出されていた。

 

それなのにその存在が視認できないということは。

 

「移動したのか?」

『ああ、方角から見て恐らく、首都ローマを目指すつもりだろう」

「だってさ皇帝様」

「余はローマをくれてやるつもりはない」

「ならば決まりだな。藤丸はどうする?」

 

「もちろんやるさ」

 

『と、言ってるそばから邪魔が入ったぞ。大型の魔力反応。アルテラと繋がった聖杯の魔力に呼び寄せられたのか。幻想種ワイバーンだ!』

 

ロマンの声を聞くや否や、俺と武蔵は飛び出した。

 

俺たちの役目を全うするか。

 

「おい、お前たち!」

藤丸は俺たちが飛び出したことに驚くがすぐに、呼び止めるのをやめた。

 

「任せたよ」

 

「任せろ!」

「任せなさい!」

 

俺と武蔵は答えて、敵の群れに突撃した。

 

「ぬああああああああああ」

 

「セヤアアアアア!」

 

俺と武蔵は敵のワイバーンを一太刀で切り落とし、続けて何体も始末していく。

 

「武蔵!狙うぞ」

「わかってる」

 

タツキは走りながら、敵を切り足を止めることなく進んでいく。

武蔵も同じくだ。

 

ガッ!

 

 

「ッブネェな!ゴーレムか」

 

いつのまにか現れたゴーレムが岩を投げて来たのでタツキは少し、足を止め横に飛んで、それを避けた。

 

そしてタツキはそのゴーレムめがけて走り、ゴーレムの胸に何かを貼り付けた。

 

「まあ試しにやってみるよ。簡易爆弾」

 

電源を入れて、対象に貼り付けると20秒後に爆発するってダヴィンチちゃん言ってたっけ。

 

ゴーレムなんて切れるかわかんねーし、モノは試しだ。

 

俺はそれを設置するとその場から走って一直線に進んだ。

 

すると後方からそのゴーレムが追って来ているのがわかる。

速度は遅いが充分に距離を置いてから爆発してほしいのに、近づいてくるなよ。

 

タツキはそう思いながらもワイバーン達を無視して走った。

 

「20秒」

 

タツキがそう呟いたと同時に後方で爆発が起きた。

 

近くにいたワイバーンを数匹巻き込みゴーレムは砕けた。

 

「威力たかっ!」

 

初めてみるその威力にタツキは驚きながらも、目的の人物を見つけ、後方を振り返ることはなくなった。

 

 

「武蔵!」

「いざ、参る!」

 

俺と武蔵がやろうとしていたことは、雑魚の始末なんかではない。

 

敵のボスの首を取ることだ!

 

 

「覚悟しろ!アルテラ!」

 

「破壊する」

 

俺の刀とアルテラの剣が交差した。

 

 

 

 

対面して数分が経とうとしていた。

 

 

アルテラの注意の八割は後方から隙を伺う、セイバーに注がれていた。

 

アルテラ自身、目の前の人間が脅威とは思ってない。

 

ただ煩わしいだけだ。

 

だからと言って無視はできない。

 

この人間は弱くないからだ。

 

隙を見せればアルテラを殺す程度には強い。

 

隙を見せなければ防戦一方だ。

 

しかしこれが決定的にアルテラが攻めきれない理由でもある。

 

無駄に攻めようとしてるならば、やりようはある。

 

この人間の目的は、仲間が到着するまでの時間稼ぎと、私の足止め。

 

そして私が無理にこの人間を抜こうとすれば、後方のセイバーにやられる。

 

この人間を殺すという選択肢もあるが、それは私の死を意味している。

 

後ろに控えているセイバーは、私がこの人間を打った瞬間の隙を見逃さないだろう。

 

だからこそこの配置はタチが悪い。

 

逆であれば、セイバーを倒して後ろから来た人間も倒せる。

 

きっとそれも考えられた上なのだろう。

 

マスターを倒せばセイバーは消える。しかしマスターを倒すのと私が切られるのは同時に起こるだろう。

 

この人間は自分を囮にして、私を取りに来ている。

 

そして先程から私の警戒がこちらの人間に向かられつつある。

 

剣を交える度に、こちらの手の内を明かしているようだ。

もちろんアルテラもそんなつもりはない。だがこの人間は剣を交える度にその鋭さを増していた。

 

やはり考えるばかりでは何も変わらない。

 

分が悪くなる一方だ。

 

やはり。

 

私は考えることは苦手だ。

 

 

「私は破壊するだけだ」

 

アルテラはその一言を口にすると。

 

目の前の人間を斬り伏せんと、その剣を振り抜いた。

 

鞭のように振り抜かれた剣が、鮮やかな弧を描きタツキの身体を襲った。

 

タツキはいきなり全力を出したアルテラを前に、一瞬行動に移すのが遅れた。

 

いや、遅れたではなく

 

反応できなかった。

 

「しまっ」

 

タツキの反射神経ではその剣を止めることはできない。

 

そうアルテラは読んでいた。

 

そしてそのまま後方へ切り返して、迫り来るセイバーの動きを一度でも止めれば、セイバーはマスターを失い消える。

 

考える必要などなかった。

 

はずだった。

 

 

目の前の人間がブツブツと何かを口にした途端、その動きが変わった。

 

まるで人が変わったように、その殺意が増しアルテラの剣を弾き返していた。

 

そしてこの人間と目が合った時ゾッとするものを感じた。

 

私と同様の目だった。

 

ただ壊す事だけを目的とした者の目だ。

いや、違う。この目はただの人間の目ではない。

 

「魔眼か」

 

 

そしてアルテラ自身が後方への注意を怠っていたと気付いた時には、アルテラの身体に深々と刀傷ができていた。

 

「セイ、バァ」

 

タツキに剣を止められた反動と驚きによる衝撃二つの出来事から生まれた硬直は、アルテラに致命的な隙を作っていた。

 

その隙を後方から狙っていた武蔵が斬り捨てたのだ。

 

「御免」

 

武蔵はそう言って抜刀した二本の刀を鞘に収めた。

 

 

武蔵が鞘に収めたと同時に、アルテラは光の粒子となり退界した。

 



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