もしマリスビリーがさらに一歩踏み込んだ外道だったら (ハナネット)
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もしマリスビリーがさらに一歩踏み込んだ外道だったら

ニーアオートマタ体験版プレイ→2Bってマシュっぽい容姿してるなぁ→量産型って話やけどそういやとあるのミサカシリーズもそんな感じ→マシュも元はと言えばホムンクルス的出自・・・マシュ量産型いてもいいのでは?→本作


 

 

 私、ぐだ子こと熊沢多美香は廊下で寝ていた所をここ、人理保障継続機関カルデアの職員の少女、マシュ・キリエライトさんに助け起こされ案内されていた。その途中、前方を歩く人影を見とめるとキリエライトさん、(いや彼女の提案通りでマシュと呼ぼう)、マシュは少し躊躇した仕草を見せたあと意を決したように声をかけた。

 

「えっと、こっこんにちは『姉さん』!」

 

 姉さん?私はマシュが呼び掛けた相手を見ると、そこにはマシュよりも頭一つ分長身の彼女が成長したらこうなるだろうと思わせられる女性の姿があった。髪はマシュより長くお下げにして肩から垂らしており、戦場で着るようなゴツい戦闘服を纏い、右太もも部分にこれまたゴツいハンドガンらしきものを装着している。研究所じみた空気のあるこの場所にまるでそぐわない雰囲気なんだけど・・・。

 

「こんにちは、マシュ・キリエライトA班隊員。身体情報の解析を実行中・・・バイタル正常値を確認。ミッションに臨むにあたって望ましい状態であると思われます。それと、私は『姉さん』ではなく『キリエライト005番』、または『ファイブ』のコードがマリスビリー前所長、またはドクターロマニ・アーキマンの承認により与えられています。ミッション時の混乱を招く恐れがあります。呼称の変更を提案します。」

 

 マシュそっくりのその女性は小難しい言葉を早口に抑揚のない調子で返してきた。えっと、要するに「こんにちは、お元気そうですね。けど姉さんじゃなくて名前の方で呼びなさい」ってことかな?

 

「で、でも・・・私よりも年上ですし、私はもちろんドクターもその方が姉妹らしくていいと言ってましたので。あ、すみません先輩、紹介が遅れました。こちらはここカルデアでの警備全般を引き受けてくださっている警備部主任の『ファイブ』さんです。少々難解な言葉遣いで慣れない内は話しづらいかもしれないですが、本当はやさしい方なんですよ」

 

  勇気を振り絞るようなマシュの言葉に何か感じたのか、ファイブさんは鉄面皮を少し崩し、困ったような顔で物わかりの悪い生徒を諭すように言葉を返した。

 

「訂正を提案します、マシュ、私とあなたは姉妹ではない。現所長のオルガマリー・アニムスフィアの権限によりあなたはカルデア所属の『人間』として再定義されており、キリエライトシリーズの登録ナンバーから抹消されています。我々は《あの》プロジェクトの為に選別されたサンプルのあなたとは違い、カルデアの『道具』です。それと、私はやさしいのではありません。ミッションでの損失を抑える為に無駄を無くすよう尽力しているだけです。では、他の部署に配属されたナンバーズの監督がありますのでこれで失礼します。」

 

 そう言って、ファイブさんは私たちから離れて行った。私たちも再び歩き出したのだけど、意気消沈し悲しそうなマシュの様子が気になる。あの人は何であんな頑なにマシュを認めようとしないの?

 

「・・・私たちのことはカルデアが触れてほしくない案件なので、来たばかりの先輩に詳しく話す権限が私にはありません。ですが、どうか姉さんのことを誤解しないであげてください。あの人は、訳あって自分のことを『人間』として認識出来ないだけで、職員の皆さんや私をとても大切に思ってくれている『人』なんです。前所長が解除コードを開示してくれさえしていればこんなことにはならなかったのに・・・」

 

 ここまで見てきた彼女らしくないどんよりとした恨みのこもった様子が見ていられず、空気を変えるために別の話題を振ることにした。

 

「えっと、説明会の会場ってとこまであとどれくらいなのかな?」

 

「あっ、すみませんでした、先輩。この扉を開けた先です」

 

 マシュはそう言って扉を開けようとしたところで、振り返り申し訳なさそうに私に言った。

 

「入る前に、先輩は驚いて・・・いえ、驚き過ぎて会場の空気を壊してしまいそうなので先に言っておきます。姉さん以外にも私の姉妹がいると思いますが、あまり気にしないでくださいね」

 

 マシュが扉を開けた。そこは予想以上に広々とした空間に巨大な地球儀のようなものとそれを囲う金属製の三重のリングのモニュメント、顔に苛立ちを隠せない壇上に立つ白髪の女性、その正面に座る私と同じ参加者の人達、そしてその後ろには・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどのファイブさん同様物々しい恰好で銃やらナイフやら刀やらを装備したおそらく総勢100名いるであろう「マシュ達」が休めの姿勢でずらりと並んでいる光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・マシュのお母さんって頑張り過ぎじゃないかな!?」

 

「せ、先輩!声大きいです!ほら、所長がすごい顔で睨んできてますから!!」

 

「いいからはよ座れ、遅刻組」

 

 騒ぐ二人の横で扉前で番をしていたキリエライト255番、通称「ニココ」は呆れた調子で呟いた。 

 

 

 

 

 

・キリエライトシリーズ

 デミサーヴァント計画前にマリスビリーがカルデアの実験体、防衛を担当する人員の安価な生産、育成、配置を実行する為にマシュ・キリエライトを生み出した元の遺伝子情報から生み出した大量生産型の人工生命。人工の孵卵器内で用途ごとの年代まで成長を促進、体が出来たところで学習装置を用い必要な知識や遵守する命令、制約、生存目的をインプリティングされた後、先に製造されたナンバーズの指導の下肉体改造が行われ、実用に耐えうると判断された個体から各用途へと選別、使用される。オートメーション化した生体プラントシステムによって「製造される」マリスビリーにとっての木偶人形。マリスビリーの自殺、マシュの解放に次いで秘匿されていた生産プラントの存在を発見したロマンとダ・ヴィンチによってプロジェクトは中止され、生み出されたキリエライトシリーズも解放されたが、マリスビリーが設定した感情抑制、命令遵守の制約からは解放出来ず、他の生き方を選べない彼らは製造目的に従いカルデア警備部としての役職を得て施設を守る人員として配置された。

 制約処置によって表情には出せないが、全個体に個性は存在する。全員にドクターロマンによるニックネームあり。全員その名に納得していないもののマリスビリーの設定した上位権限所有者にロマンもリストに挙がっているため拒否出来ないクソな仕様となっているのだが、ロマンはそのことに気づいていないのだった。(上位者権限所有は上からマリスビリー>ロマニ>オルガマリー)

 

・ファイブ(キリエライト005番)

 シリーズ初期製造個体の中で戦闘用個体として正式に実用が確定した初の個体(それ以前の個体は実験用として使い潰されている)。シリーズの中で最も古株であることから警備部主任としての役職を与えられている。部下への気遣いがよく周りからの評判はいいが、本人は「無駄を減らしたいだけ」と言って聞かない。周囲のことにはよく気が付くが自分のことを周りよりも分かっていない朴念仁。マシュに「姉さん」と言われて満更でもないのだが、彼女が『道具』である自分と同一であると認めることは失礼だと無意識に感じており素直に聞いてあげられない女性。ファーストオーダーの時点で残り寿命があと半年持つかどうかの状態。イメージは初登場時のシオン・エルトナム・アトラシア、戦闘服はSF漫画家の弐瓶先生の代表作「BLAME!」の主人公、霧亥の服。

 

 

 

 

 

 

 

 




 というわけで新年早々の一発ネタでした。すいません、決してマシュが嫌いではないのですがこんな電波が飛んできました。ちなみにマシュは姉妹がいることから原作よりも情緒豊かです。
 最終決戦は本当に良かったですね。バルバトス・・・惜しい魔神柱を亡くしました・・・。
 それはそれとして、2月発売のニーアオートマタが楽しみです!皆、鬱りましょう!


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キリエライトシリーズの日常

 なんか思いついて書いた。時系列とかは無視して色々並べていく予定。


 カルデアへの破壊工作、その後の冬木特異点で繰り広げられた激闘と波乱に満ちたカルデアのファーストミッションは、多美香ちゃんやマシュの尽力によって特異点を産み出していた聖杯の回収を以て完遂された。

 しかし、事態はそれだけでは終わらなかった。冬木の特異点消失と同時にカルデア以外の世界が消失、いやレフ・ライノールの言葉を借りれば焼却され、今やカルデアは人類最後の生存圏と化してしまった。この事態の打開の為に僕たちに課された解決策、それは特異点となった七つの歴史上重大な分岐点の事象を修正、改変された歴史を正しいものへと戻すこと。カルデアはこのミッションを「グランドオーダー」と呼称、総力を挙げて取り組むこととなった。 

 残された人員はカルデア最後の希望であるマスターの多美香ちゃんとデミサーヴァントのマシュ・キリエライト、カルデア最高の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ、爆破を免れた局員20数名、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生き残ったキリエライトシリーズ501名(内意識不明の重症個体1名)

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・マリスビリー、もし生き返ってくれるなら今の僕の立場を全部丸投げさせてくれないかい?娘のような子に個人的な関心があったのは確かだけど、いくらなんでも多すぎだよ・・・・・・。

 

                         ロマニ・アーキマンの日記より抜粋

 

 

 

 

 

 

ケース1:キリエライト255番マスター護衛班員の憂鬱

 

 

 

 

 

 

 青々とした草の高原、ピクニックでもしたら心地好いだろう快晴の空の下・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 バックステップでその場から回避した瞬間、ドンッ‼という地響きと共にさっきまで私がいた地面が圧壊され瓦礫が周囲に飛び散った。破壊を巻き起こしたのは巨大な爬虫類の足、爪一本一本が人一人分に相当する巨大な足だ。見上げればそこに大迫力で私を見下ろす巨大な爬虫類の顔が迫って来るのに気づき慌てて間を置かず飛び上がりそれを避ける。

 この怪獣の正体は現代においては姿を消した幻想種、ドラゴン。それも5階建てのビル程もある巨大種だ。今のところブレスを吐かれないだけマシとはいえ、踏み込みだけで地面が陥没する衝撃、ドラゴンの足や頭だけでなくその破片まで避けねばならない弾幕ゲーな状況がめんどくさい。

 早く帰って積みゲーやりたい・・・。

 

 

「ニココちゃーん、もう十分時間は稼げたから戻ってー。マシュ、宝具準備、お願~い」

 

「はい、先輩。ニココちゃん、こちらに!」

 

 私が護衛するマスターこと熊沢多美香とマシュ姉さんの呼びかけに応じ、彼女達の元に戻った。

 その次の瞬間、ドラゴンから高魔力収束を確認、ドラゴンブレスが私たちを襲うもマシュ姉さんの宝具、ロード・カルデアス(命名オルガマリー・クズヤロウヨリマシ所長)が完全に防ぎきり無傷でやり過ごす。

 そんな私たちを見てイラついたのかドラゴンが前進して私たちに近づいてくる。

 

 

 

 誘導完了、目標はポイントに到達した。

 

 上空を飛行している私のドローンポッドのカメラからの映像を網膜上より確認した私は多美香へと報告する。

 

 

「多美香様、目標の幻想種が予定ポイントに到達しました。指示をお願いします」

 

「オーケー。じゃあエルメロイ先生・・・・お願いします!」

 

「二世を付けたまえ、全く・・・」

 

 

 キャスター、諸葛孔明の宝具が発動。その効果によって完全に行動を停止し、身悶えするドラゴンに対し続けて多美香は私たちの後方で待機していた第二のサーヴァントへと指示を出す。

 

 

「礼装発動、攻撃力強化・・・ヘラクレス、ナインライブズ‼」

 

「■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 

 バーサーカーとなったギリシャの大英雄による絶殺の九連続の斬撃が神話の如く竜の巨体をバラバラに切り裂いた。

 

 

 やっぱり英雄は破格だ、山叩き割ったとか誇張じゃなくて生前やっていたとはいえ、この様で弱体化しているとか逃げ回っていた私としては複雑な心境だ・・・。この人、逸話考えれば怪物相手には最強だし。

 

 

 

 

 

「では、今から逆鱗回収開始!!いい、絶対見逃したらダメだからね!もう一度言うけど、いい!!?」

 

「「「イエス、マム‼」」」

 

「■■■■!」

 

「PiiiiickuuuuUaaaaaaapuuuuuuu!!」

 

 

 鬼気迫るマスターの号令に答え、バラバラの竜の体の鱗を剥がし出す作業を始めるサーヴァント達+元警備員現マスター護衛班員こと私。ここは人理修復がなされた後でその残滓が残る第三特異点の竜の住む島。そう、今日の目標はドラゴンが一枚だけ持っているレア素材の「竜の逆鱗」採集を目的としたレイシフトである。先ほどまでの光景は飽きるほど続けているルーティンワークの一環。

 

 

 

 ぶっちゃけた話、私たちは現在リアルモ●スターハンターというクソゲーに駆り出されている。戦力増強のため仕方ないとはいえ、低確率ドロップで何回もやる羽目になるの面倒臭いです。オ・ノ・レ・ショ・ウ・ジ・・・。

 

 

 

 

「ありましたぞ魔術師殿!しかも珍しいことに二枚も!」

 

「ッッしゃーーーーー!!!!やった!十数回周り続けてついに!二枚!!やった、やったよぉマシュ~」

 

 

 アサシン、呪腕のハサンの報告を聞き、あまりの興奮に涙ながらにマシュ姉さんに縋りつく人類最後の希望。

 

 

「本当に良かったですね、先輩!これでずっと再臨待ちだったバサスロットさんもついに報われますね」

 

「Aaaaaaaa・・・・・・・」

 

 

 そんなマスターを抱きしめ頭を撫でるデミサーヴァントな姉。その隣で申し訳なさそうに頭を下げる黒い甲冑のサーヴァント、バーサーカーのランスロット。それはともかく・・・

 

 

「状況は終了、素材の回収も目標数を達成しました。管制室へと連絡しカルデアへの帰還を提案します。よろしいでしょうか?」

 

 

 早くカルデアに帰らせて。現実なんてクソゲーやって私はもう疲れているのです・・・・。

 

 

「あっごめんね、ニココちゃん。みんなも本当にありがとう!お陰様で無事鱗もとれたしホント助かりました!」

 

「それじゃあ皆さんも疲れているようですし戻りましょう、先輩。お疲れ様、ニココちゃん。帰ったら一緒に食堂で何か食べに行きましょう」

 

「いいね、それ!エミヤに頼んでちょっと豪勢に焼肉パーティとか開こう。竜の肉とかこんなあるしね!」

 

 

 多美香と姉さんの言葉に「焼肉・・・幻想種の肉で・・・現代ではどれだけ金を積んでも手に入らない貴重なドラゴンのそれで・・・」と孔明先生が頭を痛そうに押さえているんですが、そんなことはこの二人には関係ないですよね、そうですよね。

 あの人も最近召喚されたばかりでまだここの雰囲気になれていないのだろうから仕方のないことである。私はいい加減もう慣れた。

 多美香の要望に応えヘラクレスが斧剣で豪快にドラゴンの肉を切り捌いているのを見ながら、私はそんなことをぼんやり思った・・・。

 

 

 

 

 これが今の私の日常。カルデア爆破事件によって全てが変わり、変わってしまった全てを取り戻す為の旅の道中。キリエライトシリーズで唯一特異点へのレイシフトが可能な私ことキリエライト255番、ニココにとってうんざりするほど憂鬱で、だけど嫌いでもない日々の一幕。

 

 

 

 

 

 

ケース2:キリエライト423番カルデア観測班員の葛藤

 

「それで、結局肉は特異点から持ち出せないことに気づいて落胆したマスターを励ますパーティに付き合わされて飲み食いして疲れ切った状態なのに今この部屋でビデオゲームをして無価値な時間を浪費しているのですか?理解できません。明日も警備部主任主導の警備部合同トレーニングがあるのは確認済みのはずです。早く就寝することを進言します」

 

 

 カルデア内職員用個室内。自分に背を向けてベッドの上で座り込みHMDを頭部に装着して手元のコントローラーをカチャカチャと操作している私の姉にあたる個体、キリエライト255番の合理性を欠いた様子に思わず溜息が漏れた。

 かつて戦闘個体として最高の性能を与えられていながらインプリンティング不良の欠陥品として軽視され、落ちこぼれの扱いを受けていた彼女はしかし、様々な偶然や条件が重なった結果とはいえ今では姉妹の中で唯一人類最後のマスターとレイシフトを可能とする戦闘個体として貴重な戦力の一つとなった。

 キリエライトシリーズの数ある制約の一つに「一部条件を除いたレイシフトの禁止」があり、私たちは基本として製造段階で目的に必要となる場合以外はレイシフトを行おうと思っても体が実行に移せない。今回マスターについていた戦闘個体群は当初よりマスターとの運用を前提に製造されたことからレイシフトが可能だったのだが、そのほとんども爆破によって破壊された。ゆえにこそ彼女は特異点に出撃したくても出来ない私たちの希望でもあった。

 その彼女はというと、ドクターロマニ・アーキマンに影響された結果暇さえあればビデオゲームばかり漁り遊んでばかりいる残念な個体でありこの様だ。私にはどうにも納得できない現実であった。

 

 

「うるさいです、どんなに疲れていようが私のライフワークです。ケチつけられる謂れはないです。本当なら訓練だってサボってこの部屋からも出ずに引きこもってたいんですから・・・・おのれ、マリスビリー・ドアクマシニヤガレ・・・制約なんて面倒なものアイツが残しておかなかったらファイブ姉さんの命令にだって無視出来たのに・・・ってかもう死んでましたよチクショウ」

 

 

 私たちの存在目的はカルデアの保全にあるのでは?話しながらも彼女の手は一時も止まることなく滑らかに各ボタンやコントロールパッドを操作している姿に呆れる。最高性能の肉体が最高に無駄に生かされている。創造主であった人間に対しての暴言が出てくるあたり明らかに本来の私たちとは異なる思考が見え隠れしている。

 

 

「そうであれば、パーティを辞退すればより時間を捻出できたはずでは?私たちは合理的判断に重きを置くよう学習装置によって刷り込まれているはずです。不良品とはいえあなたも相応に常識的な知識は備わっているはずです。なぜそんな無意味な行いを?」

 

「・・・いや分かってはいたんですけど、なんかあんなしょんぼりした様子見せられたら一人だけ参加しないのは悪いような・・・でもゲームしたかったのは本当で・・・でもなんかアイツのこと放っておけなかった感じでしたし・・・なんでなんでしょうか?フォトサン、どうしてか分かりますか?」

 

「あなたがわからないのであれば私にわかるはずもありません。あなたほど他の姉妹は異常(正常)ではないのですから・・・それとその名前はやめてください」

 

 

 彼女は量産品の中で偶にみられるどうしても発生してしまう不良品とみる姉妹は多い。学習装置の故障か、それとも個体形成時で不備があったのか。製造過程のログを辿ってもそのような事実がなかったことから自然発生したとしか思えない。ほとんどの姉妹たちがインプリンティングによって行動を制限されている中、その制限が緩くなっていた不良品の個体であったからこそ特異点へのレイシフトが可能であったのは皮肉な結果であった。

 同時に、シリーズ間で危惧していることも共通している。私たちよりも感情的側面に思考が寄っているこの個体が何かの間違いでマスター殺害を企てることがあるのではないか。もしレイシフト中にそれが行われればレイシフトの出来ない私たちにはそれを防ぐ手段が現場において存在しない。カルデアの保全を存在の命題として植え付けられている私たちにとってそれは絶対に防がねばならない事態だった。

 そのために宛がわれたのが私である。管制室においてレイシフト中の彼女の観測担当チームの責任者であり、彼女専属の健康維持管理者兼監視員、キリエライト423番。彼女のバイタルや思考パターンを余さず観測し、もし問題となる行動、危険思考などが観測、尚且つマスターに対し実行される可能性が極めて高いとされた場合、彼女に対する観測を停止、意味消失による存在の消滅を実行する権限がファイブ主任より認められている。

 そのために私はこうしてミッション後の彼女の健康診断と報告会を通し彼女のバイタルデータや思考パターンのサンプルを収集することでより密な観測を行えるようにしているのですが・・・

 

 

 

「ああああ!ぁぁぁぁ・・・・。あ・ん・のクソバイドがぁぁぁぁ!あとちょっと、もうほんのちょっとなんだからなんでそこくるかなぁ・・・。変な質問するからミスっちゃったじゃないですかぁ」

 

 

 

 もうこの人が反逆するなんてないんじゃないかと思ってしまいそうになる自分と戦ってばかりいる気がする。基本の思考パターンは分かりやすい。今のところゲーム出来るかそうでないかでモチベーションの上がり方が違う。

 マスターやマシュ・キリエライトへ危害を加えるどころか逆に避けようとしており、それも嫌悪からではなく本人にも分からない曖昧なものからくるものらしく判断に困る。逆にこっちが彼女から相談される始末である。

 この人のカオスな思考は今まで接してきたシリーズでは考えられず、私にとって彼女はまさに超難解な問題そのものであった。だからこそ判断に迷う。本当に彼女を、危険視し排除の対象とし続ける意味はあるのかどうかを・・・。

 

 

 

「R-type VR」と題されたゲームに一喜一憂している自分の傍らで、健康管理者兼命綱の妹が無表情の下で悩み続けていることを、ニココは知らない。

 

 

 

 

 

・キリエライト255番(ロマン命名:ニココ)

 キリエライトシリーズ戦闘特化に振り分けられた個体。インプリンティング不良を起こしていることから感情抑制、思考抑制がうまく機能していない「人らしい」個体。しかし基本無表情は他の姉妹と変わらない。落ちこぼれ扱いを受け待機を命じられ、トレーニングだけをこなし部屋に籠り続けていたところをロマニ・アーキマンに発見、シリーズのメンタルカウンセリングの一環で自分の趣味を紹介していた彼からビデオゲームを見せられたことからゲーマーとして目覚め、アクション、シューティングゲームにどっぷりのめり込むこととなった。

 イメージはマシュの眼鏡なし、髪がゆるいパーマのかかったロングで所々でくせっ毛がはねた状態。やれば出来たジナコ。

 自己を「道具」と認識させられているシリーズの中では彼女を不良個体と下に見る姉妹は多いが、実際は制約による障害が緩いことから現場においての柔軟な判断力、行動力はシリーズの中でトップであることを本人はもちろんファイブ以外のシリーズの個体は理解できていない。

 今の状況を生み出したマリスビリーのことを蛇蝎の如く嫌っている。

 別にシリーズ共通の事務的口調をする必要はないのだが、コミュ障なことから素直な反応が上手く出来ず親密でない相手に対し使ってしまう。今回のレイシフト後にエルメロイⅡ世とゲームという共通の話題で少し意気投合するものの得意ジャンルが異なる為遊びに誘われた際のシミュレーションゲームでは彼に負け越し、人生初の対戦での悔しさという感情を実感している。

 

・キリエライト423番(ロマン命名:フォトサン)

 キリエライト255番のレイシフト観測担当班員責任者であり彼女専属の健康維持管理者、と同時に監視員。マシュそっくりの眼鏡と局員用制服の女性だがまな板である。オーソドックスなシリーズにありふれたモブ。

 元々は実験用個体群の振り分けの為特殊な能力はなく、現在の知識や能力はシリーズ解放後に配属された部署であるレイシフト観測班で培われたもの。戦闘用個体以外の個体の多くはモルモット用に製造された経緯の為カルデアでもその扱いに困ったものの彼女たちの多くが知識や技術の習得が優れていたことを知りカルデアの各部署へと配属、優秀な局員として扱われている。

 感情表現豊かな255番の姿に振り回されながらも感化されている自身に気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 人理修復の旅のある一幕。


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