名探偵コナンfeat怪盗山猫 (十代vsゴーシュ)
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怪盗探偵山猫

とある一室。男が鼻歌を歌いながら金庫を開けている。そこへ1人の少年がフッと姿を現す。

「お兄さん。そんなところで何してるの?」

「あ?ここはガキが来るところじゃねぇんだ。分かったら大人しく帰りな。」

「そうしたいのは山々だけど。」

少年がそう言うと外からパトカーのサイレンが鳴り響く。

「お前何者だ?」

「江戸川コナン。探偵さ。」

 

俺は高校生探偵工藤新一。幼なじみの毛利蘭と遊園地へデートに行ってる途中、 怪しい男の取り引き現場を目撃してしまった。取り引きを見るのに夢中で背後から来るもう一人の男に薬を飲まされ意識を失い目が覚めたら、体が縮んでしまっていた。俺の正体が奴らにバレたら周りに危害が及ぶ。俺の正体を隠すため、とっさに江戸川コナンと名乗った。奴らの正体を暴くため父親が探偵をやっている幼なじみの毛利蘭の家に居候することになった。真実はいつも1つ。

 

とあるホテルのレストラン。ニット帽を被ったサングラスの男がやや銀髪で長髪のアメリカ人女性と煙草を吸いながら食事をしている。

「貴方の噂は予てより聞いてるわ。怪盗探偵山猫君。」

「何だよ。俺の正体はとうの昔に知ってますってか?いやぁ、怖いねぇ。まさか、アメリカの大女優と言われたアンタが実は黒の組織と言う殺し屋の仲間とはねぇ。」

「あら。そこまで知られちゃ生きて帰す訳には行かないわね。」

「あ?お前本気で俺に喧嘩売ってるのか?」

「冗談よ。本気にしちゃったかしら?」

「そんなんじゃねぇよ。で?その殺し屋の女が俺に何のようだ?」

「実はね。」

女はそう言うと1枚の写真を男に見せる。男は写真を手に取ると口笛を吹いて笑みを浮かべる。

「ほぅ。面白ェ。」

男がそう言うと取り引きは終了した。この取り引きはこれからのお話のほんの始まりの序章である。

 

数日後。テレビのニュースでは大企業の社長が殺された事件が報じられている。その企業の社長は表向きは経済の発展に大きく貢献しているが、その裏では違法賭博、拳銃密輸、通貨偽造などありとあらゆる闇の顔を持っている。今回この社長が殺された事件で不自然になった点は金庫の中のお金が全て奪われており、さらにはお金が奪われたことにより社長の悪事が表向きへ知れ渡ってしまったこと。一見単なる資産家を狙った強盗殺人に見えるが、実は資産家のお金を盗んだ犯人と資産家の命を奪った犯人は別にいる。そう疑う輩も少なくはない。そのニュースを少年は、知り合いの発明家の家で、その発明家と、その家に同居している少女と見ていた。

「なあ。お前この事件どう思う?」

「さあね。彼らの犯行にしては殺された人の素性が全て明るみになってるから彼ららしくはないと思うけど。」

「まさか、この事件奴等が1枚噛んどるのか?」

「今はまだ何とも言えねぇよ。ただ、金庫から金を盗まれた時に不正が全て明るみになったってのが気にかかってな。」

「あら。それなら私も同じこと考えてたわよ。ほら、ネット記事にもたくさん書いてあるでしょ?現代の悪徳企業からお金を盗みついでに悪事を暴く現代版ネズミ小僧。人呼んで、怪盗山猫。」

「怪盗山猫。悪徳企業ばかりを狙う大泥棒か。だけど山猫は人を殺さない。そんな話もあるんだろ?」

「そうね。だからこれだけは言えるわね。あの社長の金庫からお金を盗んだのは山猫とした場合。」

「真犯人は別にいる。だがその真犯人がまだ奴等と決まった訳じゃない。」

「私も彼らじゃないことを祈るわ。もし最悪の場合、その山猫って人消されるわよ。」

「何消させやしねぇよ。両方とも捕まえてやるさ。」

 

そして、ここは駅の繁華街の地下にあるバー『STOREY CAT』お客さんは頻繁にたくさんの人が飲みに来るくらいだが、時たま珍しい客が来ることがある。そして今日はまた珍しい客が訪ねてきて、髪型は茶髪で少しパーマかかった髪型をしており眼鏡をしている。そのお客はカウンターの女性にお酒を頼んだ。

「バーボンをロックでもらおうか。」

「はいよ。しかしバーボンをロックとは珍しいお客さんだね。」

「最近はどうもこれ一筋でしてね。」

「そうなの。それは珍しい。」

「いろいろありましたから。」

男は、バーボンのロックを飲み干すとお店を静かに後にして行った。

 

そして、ニット帽を被ったサングラスの男は煙草を吸いながら社長が殺されたニュースをラジオで聞いていた。

『お前の中のコアは何だ?核だよ核!!お前がこの世で一番譲れねぇ物は何だって聞いてんだよ!』

煙草で一服吹かすと手に持っていた新聞紙の切り抜きを見てた。

「俺の仕事はあくまで金を盗むことだ。人の命までは取りはしない。」

男はそう言うと立ち上がり一人歌を歌いながら街を歩いていく



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新しく配属される新刑事

この日警視庁に新しい刑事が3名配属されることとなった。1人は管理官直属の補佐に任命され残る2人は警視庁捜査1課に配属された。捜査1課では新しく配属される刑事についての噂話が広まっている。

「高木さん。知ってます?今日新しく配属される刑事のこと。」

「ああ。そのことだろ?知ってるよ。何でもある人を追っているとか。」

「そうなんですよね。確かその人が追ってる人の名は・・・。」

「山猫でしょ?最近巷で有名なコソドロの。」

「佐藤さん!?てか山猫をご存知だったのですか?」

「あれだけ世間を騒がせてりゃ嫌でも耳に入ってくるわよ。でも、その山猫を追っている刑事もかなりの曲者って噂よ?」

捜査1課の刑事たちがヒソヒソ噂話をしているのも束の間、捜査1課の部屋に警部が新しい刑事を連れてやってくる。その警部はハットを被っており太った体型をしている。

「えー、皆知ってると思うが本日より捜査1課に配属されることになった霧島さくら君だ。」

「霧島さくらです。よろしくお願いします。」

「そしてもう1人捜査1課に配属されることになった・・・。」

と、警部が言いかけたときだった。扉が突然『バンッ!!』と開いたかと思うと強盗犯がボコボコにされて吹っ飛ばされてきた。そして、牛乳パックを片手にソフトモヒカン?にパーマをかけた感じの派手な身なりの男が姿を現した。そして、男は皆の前で強盗犯の胸ぐらを掴んだ。

「おい、あまり調子に乗ってんじゃねぇぞ?」

男の派手な登場に皆は唖然としていた。そして霧島さくらはそんな男を見るなり呆れたように頭を抱えている。一瞬ポカーンとしつつも警部は男の名を呼ぶのであった。

「あの、犬井君?」

「あ、どうも。本日付けで捜査1課に配属されることになりました犬井です。」

「そう言う訳でまだ分からないこともあるだろうから皆しっかり教えてやってくれ。」

一瞬周りが唖然とするも警部による新人紹介は終了する。

「あの、かなりの曲者とは聞いてましたが想像以上でしたね。」

「千葉、俺もそれを言おうと思っていたところだよ。」

 

そして管理官の部屋では管理官と管理官の補佐に任命される男が話している。管理官は白髪で眼鏡をかけた強面の顔をしており、顔に火傷を負っている。眼鏡の片方のレンズは黒くなっており、何かの事故で目を負傷し片方が義眼であると噂されている。そしてこの度管理官の補佐に任命された男は40過ぎのダンディな感じの男である。

「君の話しはいろいろと聞いているよ。関本君。」

「これはこれはご丁寧にどうもありがとうございます。黒田管理官殿。」

「しばらくは慣れないだろうがこれからもよろしくな。」

「いえ、こちらこそ。」

黒田管理官と関本補佐の挨拶のやり取りは互いにどこか笑みを浮かべ合っていた。まるで何かの取り引きをするかのように。

 

そして、ここはとある喫茶店。この喫茶店は共同の建物の1階に設けられており、2階には探偵事務所が設けられている。この日喫茶店に髭を生やし背広を着た男性と長髪の女性と眼鏡をかけた少年の3人が食事をしに来ていた。髭を生やした男性は新聞を片手にコーヒーを飲みながら先日殺害されたどこかの企業の社長の話をしていた。

「しっかし、どう見てもこりゃ強盗殺人にしか見えないがな。」

「私も最初はそう思ったけど、山猫が関係しているかもしれないと聞いて状況が変わったって言ってたよ?」

「山猫って言えば最近巷で有名なコソドロか?何でも盗みを働くと同時に悪事を暴く現代版のネズミ小僧ってもっぱらの噂じゃねぇか。」

「でも変だよね?山猫が関係しているかもしれないってなった途端に強盗殺人の線は薄くなったんでしょ?容疑者は上がってるのに、盗んだ犯人と殺した犯人が別にいるって決まっちゃうなんてさ。そんなの絶対おかしいよ。」

「フン。それにはちゃんとした理由があるんだよ。」

そして、男性が理由を述べようとした時だった。金髪で色黒の肌をしておりエプロンを身に付け、その喫茶店でバイトしている男性が少年に耳打ちをした。

「山猫は決して人を殺さない。そう言われているからだよ。コナン君。」

「安室さん。」

「安室さんも山猫を知っているのですか?」

「えぇ。と言っても噂を耳にした程度で実際に会った訳ではありませんが。」

「そうなんですね。私も安室さんと同じ程度しか知らないからまだ半分は都市伝説だと思っていますけどね。」

「それは仕方ありませんよ。蘭さんも実際にお会いした訳ではありませんから。」

「えぇ。」

「何にせよ、何かモヤモヤするんだよな?この事件。この妙な胸騒ぎがするか何と言うか。」

「それは僕も同じですよ。毛利さん。」

皆が疑いを掛ける中、コナンと呼ばれる少年もまた同じ事を考えていた。

「何だ?このとてつもなく嫌なことが起こりそうな感じは?とにかくこれはただの殺人じゃねぇぞ。」

そして、コナン達が食事をしている席から離れた席ではジャケットを羽織った男がコーヒーを飲んでいる。男の耳にはイヤホンが付けられていた。

 



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それぞれの思惑

夜の都会の道路を黒いポルシェが走っている。中には黒いスーツに黒いハットを被った男が2人乗っている。その内運転している男はサングラスをかけており、助手席に座っている男は金髪で長髪である。

「いいんですかい?兄貴。例の社長の事件かなり広まってるみたいですぜ?」

「フン。バラしたヤツのことなんざ知ったことか。それよりも問題は山猫だ。今回の事件で何を企んでるか知らねぇが奴が1枚噛んでるんだろ?」

「神出鬼没の怪盗探偵。その名も山猫。悪党の金庫から金を盗むついでに悪事を暴くと噂されてるふざけた奴ですね。今回の事件も既に金庫から金が盗まれてましたし。」

「問題はそこじゃねぇ。ヤツが金庫から金と一緒に我々の情報を盗んだかもしれないと疑わしくてな。」

「考えすぎじゃないですかい?」

「フン、だといいがな。どの道ヤツも生かしちゃおけねぇしな。」

「疑わしきは罰せよってヤツですね。」

「ああ。俺は山猫をシロだとは思ってねぇからな。」

不穏な会話をしている2人組を乗せたポルシェはそのまま夜の都会を過ぎて行った。そして、その頃とあるビルの屋上から隣のビルの部屋を歌を歌いながら双眼鏡で覗いている男がいる。その歌はかなり音程がずれており周りの人間がとても聞けたものじゃないと言うほど酷いものだった。男は歌い終わると仮面ヤイバーと言うオリジナルヒーローのお面を被りビルに潜入。男はどこか仮面ヤイバーのお面を気に入っているようだ。

「なかなかいいな。このお面。」

ビルに潜入するとお面を外し、お面の中からサングラスをかけた男が姿を現す。ビルから少し離れたミニバンの中では幼顔の女子高生がノートパソコンを使って何かをいじくっている。彼女はハッキングと言うシステムを使いビルのセキュリティを操作して全て解除してしまう達人。まぁ所謂ハッカーって奴だ。

「準備出来たよ。」

「おう。」

彼女のハッキングにより男はとうとう金庫に到着する。すると同時に男はいとも簡単に金庫を開けてしまう。金庫の中には札束がビッシリと入っていた。

「Oh!Fantastic!!」

男がそう言って感心しているのも束の間だった。男の前に1人の女性が姿を現す。

「あら。何処から入ってきたか知らないけど悪いネズミがいるようね。」

女性がそう言うと男は口笛を吹きながら答えた。

「またアンタか。相変わらず読めない女だねぇ。」

「それはそれはどうも。山猫君。」

「どうしたの?」

「問題ない。すぐに終わるさ。」

「あなた達の邪魔しちゃったかしら?」

「何、気にすんな。どうせ大した話じゃねぇだろ?」

「そうね。あなたが前にどこかの社長の金庫からお金と一緒にUSBも持ち出したでしょ?返してくれる?そこには私たちの個人情報とかたくさん入ってるの。」

「ああ。いいぜ。俺の目的はあくまで金だ。アンタらが裏で何をコソコソやってるか知ったこっちゃねぇからな。」

男はそう言うとポケットからUSBを取り出して女性に渡す。女性はそれを受けとるとウインクしてその場を去って行った。

「ありがと❤じゃ幸運を祈ってるわ!!GoodLuck!!山猫君。」

女性が去っていくとビルの外からパトカーのサイレンが鳴り響いていた。

「山猫!!」

そう言うと数人の刑事が無数の警官を連れてビルの中に突入する。そんな中、1人の警官がその網を縫うようにビルから立ち去る。そして顔を剥ぎ取ると先程男と話していた女性の顔が現れる。無論男もビルを脱出してミニバンの中に駆け込んでいた。運転席にはバーの経営者の女性が座っている。後ろの席には女子高生とジャケットを羽織った男性が座っている。

「アンタにしちゃ遅かったわね。」

「何、ちょっとアクシデントが起きただけだ。大したことじゃねぇよ。」

「本当に大したことじゃない?」

「ああ。」

「山猫さん。僕の方も無事に仕事終わりました。」

「おう。お前にしちゃ珍しく無事じゃねぇか。」

「勘弁してくださいよ。危うく死ぬかもしれないところをある人に助けてもらったんですから。」

「ある人だと?」

「はい。色黒で金髪の男性ですけど、たまたま彼も同じ場所に潜入してたみたいでして。まさか山猫さんの知り合いですか?」

「は?そんなヤツ俺が知るわけねぇだろ。」

そんなコントのようなやり取りを他所に待機していたミニバンは出発した。その一方で先程の女性は堤防でまた1人別の男と待ち合わせをしていた。

「どう?そっちは上手く行った?」

「えぇ。少々トラブルに巻き込まれてしまいましたがこれも想定の範囲内ですよ。」

「そう。ならいいけど。」

「そう言うあなたも最近山猫とコンタクトを取っているみたいですが一体何を吹き込んだんです?」

「そんな大したことじゃないわよ。それよりも今の話ジンの耳には入れないでおいてくれる?勝手なことされたら困るし。」

「えぇそれは構いませんよ。」

それぞれの思惑が漂う中、アジトのソファーで横になる男は1枚の写真を見ていた。

「全く、掴めない女だぜ。ベルモットさんよぉ。」

男の手に持っている写真には、眼鏡をかけた少年が写っており、『Silver Bread』とマジックで書いてある。

「silver Breadか。面白ェ。」

男はそう言うと静かに眠りについたのであった。



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PUT ON MASCARA

名探偵コナンをアニメしか見てない方は多少ネタバレが入っていますので注意下さい。なおネタバレは少なめに投稿しましたので悪しからず


その日、少年はとある科学者の家である事件を調べていた。事件の内容は17年前、アメリカのホテルで将棋の棋士が何者かに襲われて死亡したと言うものだった。一件ただの殺人事件に見えるがそうではない。何故なら先日その殺された男性に対しこんな話があったからである。

「あなた知ってる?羽田浩司。」

「ああ。七冠王に一番近いと期待されてた天才棋士だったけど、趣味でやってたチェスの大会に出場するために渡米してて、その最中に何かの事件に巻き込まれて亡くなったんだよな?ってその棋士がどうかしたのかよ?」

「その名前、見た覚えがあるのよ。APTX(アポトキシン)4869を飲まされた人物リストの、あなたの名前の2つ下にね。」

APTX(アポトキシン)4869。それはカプセル状の薬で飲んだ人間を死に至らしめる恐怖の毒薬である。だが稀にその薬を飲んで幼児化してしまう人間がいる。少年もまた然りその薬を飲まされた人物であり、その話を持ちかけた彼女もまた同じである。

「部屋はかなり荒らされていて殺される際、羽田も抵抗したようだが直接の死因は不明。同日、同じホテルの別の部屋で亡くなっていたアメリカの資産家、アマンダ・ヒューズの死因も分かっておらず、アマンダが羽田の大ファンでこうりゅうがあった事や、その日以来、アマンダが帯同していたボディーガードが姿を消している事から、アマンダが浅香と呼んでいたボディーガードを最重要容疑者として行方を追っているがその消息はつかめていない。」

17年前に殺害された2人は互いに顔見知りで交流があったようだ。その内の1人アマンダ・ヒューズに至ってはアメリカの連邦捜査局であるFBIやアメリカの中央情報局であるCIAとも顔が利く人物であると噂されている。やがて少年が記事をスクロールしていくとある写真にたどり着く。その写真には割れた鏡が写っておりそこにはPTONと書かれていた。PTON、このままでは意味が分からない少年に対し側で見ていた少女が呟いた。

「入っていた文字は多分、PUT ON MASCARA。」

PUT ON MASCARA。それは当時マスカラに手鏡を付けて売り出して大ヒットを果たしたとある化粧品メーカーの品である。その割れた手鏡の写真の隣に被害者の右手の写真が写っており、そこにはハサミを握りしめていたあとが残されていた。事件の真相が事細かく写し出されているのもまた、誰かが定期的にアップしているからである。まるでこの謎を解いてくれと言わないばかりに。そして、ハサミを握りしめていたと言う言葉に側にいた科学者が反応を示す。どうやら、今朝殺人事件があり、被害者がその科学者の発明したハサミを握って亡くなっていたと言うことで、ハサミの説明をするために現場に呼ばれていたそうである。これから事件現場に向かおうと言う時に1人の男性が話に割って入る。

「よろしければその事件の現場、私も同行させてもらっても構いませんか?」

「す、昴さん何で!?」

「少々肉じゃがを作りすぎてしまったのでお裾分けに。」

「い、いやそうじゃなくて何で事件現場に?」

「その事件、気になることがありまして。」

「んじゃ早くその現場に行ってみようぜ?」

こうして、少年と科学者と男性の3人は事件現場へと足を運ぶ。事件現場は被害者の実家のお屋敷の離れにある風呂場の脱衣所で死因は鈍器による撲殺。離れの別の部屋で襲われたあと風呂場の脱衣所に逃げ込むも扉を破られて止めを刺されたそうだ。被害者の手には科学者が発明したハサミが握られている。扉の入り口にはガラスの破片が散らばっており、ガラスには文字が入っているようだ。ちょうど同じものと思われるコップが現場の洗面台に置かれている。状況説明をしているのも束の間現場にまた1人警視庁の幹部と見られる男が入ってくる。

「おう。入るぞ。」

「関本補佐!?どうしてあなたがこちらに!?」

「ちょっと気になることがあってな。しかしこりゃ派手に争ったみたいだな。」

関本補佐が現場に立ち入り辺りを見回すと外へ出ていった。

「あの、もうよろしいのですか?」

「ああ。ちょっと別件があってな。あとは任せたぞ。」

そう言って姿を消す関本を少年と男性は何処か怪しげな表情で見ていた。そして科学者が警察に尋ねる。

「あの?今の方は?」

「ああ。彼は関本さんと言ってな。先日黒田管理官の補佐として警視庁に配属された警部だよ。」

「そうですか。」

程なくして警察と少年たちによる事件の捜査は再開される。被害者の名前は樋山邦寿と呼ばれる男で不動産会社の社長を経営している。かなりの悪質な地上げをやっていたため周囲の評判はよろしくなかった。事件の状況を聞く内に1人の男性はあることに気付いた。そう。この事件は17年前の羽田浩司殺害事件の内容と酷似していたのであった。その一方で関本は事件現場から少し離れた場所で誰かと電話していた。

「ああ。少々殺人事件があったみたいでな。何すぐに解決するさ。」

程なくして事件が解決し、少年と男性はスマホとタブレットを取り出すとある文字を入力している。

「PUT ON MASCARA。そこからPTONを取り除き残る文字は、U、M、A、S、C、A、R、A。やけにAが多いな。」

「そこから並び替えると、ASACA。CAは恐らくKA。残る文字を並び替えると。」

『RUM』

夕方関本はとある男と会っていた。

「随分遅かったな。オッサン。」

「悪いな。やっと目処が付いた所でな。それでそっちはどうだ?」

「ああ。こっちはいつでも準備OKだ。あまりに暇だったから昼間聞いた事件の謎も例の暗号もとっくに解いちまったくらいだからな。」

「そうか。」

とある男。彼もまたPUT ON MASCARAの暗号を解いていた。暗号に記された、ASACA、RUM。それらの正体を知るのはまだ先の話となるだろう。



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眠りの小五郎の知恵袋

とあるホテル。そこでは殺人事件が発生した。しかし事件はしばらくして解決。犯人は警察に連行されて行った。その事件があったホテルの一室で2人の女性が話している。

「しっかし、さすがママだね!コナン君の蝶ネクタイのメカ!すぐに使いこなしちゃうなんてさ!」

「ああ。ダイヤルに印が付けられていたからな。あの探偵の声を頻繁に使っていたのだろう。それにしても、あんな簡単な操作で色々な人物の声が出せるとは、様々な場面での使用が想像できて心が踊るな。」

「(心が踊るって顔してないけど。)」

「で?堀田が入手した情報は何か分かったか?」

「連行される前に古栗って人が言ってたよ。姿を消したボディーガードの浅香があの手鏡を持ってる所を見た人がいて、浅香は女だって事を堀田がつかんだみたいだって。羽田浩司の霊を呼び出して『女だーっ!女に殺されるー!!』って叫ぶつもりだったってね!」

「そんな事か。くだらん。それより荷作りをしろ!根城を変える。」

「え?もう!?せっかくコナン君にホテル教えられてラッキーって思ってたのに。」

「暗がりに鬼を繋ぐが如く。江戸川コナンに気を許すな。10年前に会ったあのボウヤとはまるで別人なのだから。」

「う、うん。」

どうやら、このホテルで殺害された被害者は羽田浩司の死の真相をテレビで公開しようとしていたようだ。だが不運にも真相が語られることなくこの世を去ってしまった。羽田浩司の死の真相を求め、ホテルに駆け付けた者は少なくはない。そしてその真相を追う者の1人であるこの男もまた事件現場に遭遇していた。

「浅香はボディーガードで女。黒ずくめの組織のNo.2だとしたら、灰原が言ってた『女のような男』っていうのは『女だけど中身は男のように強い』って意味か?17年前にボディーガードをやってたんなら、もう結構いい年になってるはずだけど、オレと同じ薬で中学生ぐらいまで年齢が巻き戻ったのなら、疑わしいのは、世良が『ママ』って呼んでた、この女。何者なんだ?」

男のスマホの画面には中学生くらいの女の子の画像が写し出されていた。そしてその真相を追う者はこの男の他にも数名いる。別の男もまたホテルの殺人事件の話を電話で聞いていた。

「堀田がテレビで公表しようとしていたのはこんな所ですね。」

「そうか。あまり期待はしてなかったが、収穫はボチボチか。」

「それよりも、もっと凄いビックニュースがあるんですよ!山猫さん!!」

「あ!?何だよ!?勿体振らずにさっさと話せ!!」

「今朝のその事件!何と解決したのはあの眠りの小五郎なんですよ!」

「眠りの小五郎だと?」

男の脳裏に浮かぶ眼鏡の少年の姿。男はタバコを吸うと笑みを浮かべて呟いた。

「面白ェ。俺も会ってみたくなったぜ。」

男はそう言うと電話を切り、懐からUSBを取り出しノートパソコンを起動した。どうやら先日の大企業の社長が殺された時に金庫に入っていたUSBとは別の代物を既に受け取っていたようだ。

「何々?」

男はUSBに保存されているメッセージを静かに読み上げて行った。

 

親愛なる怪盗探偵山猫様

 

君がこの文面を読む頃には私はこの世にはいないだろう。私はどうやらとんでもない奴等を敵に回してしまったようだ。私に残された時間はあとわずか。後は山猫。君に託す。私の金庫の中にUSBが入っている。だがそれは奴等を欺くためのダミーだ。本物はこのUSBに保存してある。時間がない。この謎を解いてくれ。

 

文面の下には羽田浩司殺害の記事が保存してあり、ガラスの破片が写っている写真が掲載されている。男が文面を読み上げると画面に映っていた物は全て消滅した。

「コンピューターウイルス闇の男爵。なるほど、読んだら自動で消える仕組みになってるのか。手の込んだ社長さんだねぇ。」

男はそう言うとパソコンの電源を切り、蓋を閉じた。

一方、警視庁にある管理官の一室。管理官が事件の整理をしている。そこへ補佐が姿を現す。

「管理官。少しお休みになられては如何ですか?」

「そうだな。今日の事件も眠りの小五郎が1枚噛んでたようだ。」

「ほう。眠りの小五郎ですか?」

「君は知ってるかい?眠りの小五郎の知恵袋を。」

「眠りの小五郎の知恵袋ですか?」

「いや、知らないならいい。忘れてくれ。」

「はあ。」

補佐はそう言うと管理官の部屋を後にした。

「眠りの小五郎の知恵袋か。」

眠りの小五郎の知恵袋。その言葉に何処か興味を抱いている補佐の姿がそこにあった。



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裏切りの制裁

とある深夜、一人の男が廃屋の階段を駆け上がる。事態はより深刻な状況を迎えていた。

「悪い降谷。奴らに俺が公安だとバレた。逃げ場はもう、あの世しかないようだ。じゃあな、ゼロ。」

男が必死に階段を駆け上がるも虚しく、一発の銃声が鳴り響く。男が屋上に到着した時、二人の男がそこにいる。一人は拳銃を片手に所持しており、もう一人は壁にもたれ掛かるようにして倒れていた。男の到着に気付いたと同時に拳銃を所持している男は口を開き、こう呟いた。

「裏切りには、制裁をもって答える。だったよな?」

そして、夜の道路を一台の車が走っている。

「バーボン?ちょっとバーボン?」

「え?」

「え?じゃないわよ。さっきの交差点右折しないと。」

「すみません。少し考え事をしていたもので。」

「あら、らしくないわね。じゃあさっきの話、聞いてなかったの?」

「聞いてましたよ。ソレが公になる前に探りを入れて、必要とあらば潰せばいいんですよね?」

「相手は大物。接近しにくいなら関係者に変装させてあげるけど?」

「いえ、ご心配なく。相手の懐に入るアテならありますから。」

怪しげな会話を他所に一台の車は夜の道を走り去って行く。翌日、とあるホールにてライブのリハーサルが行われると言う話を聞き四人の男女がホールを訪れていた。ちなみに、そのリハーサルの内容は、波土禄道と言うロックミュージシャンが新曲『アサカ』をライブでお披露目するためのリハーサルである。

「でもそのタイトルって変わってるんだよね?」

「変わってるとは?」

「アルファベット表記でネットに発表されたんだけど、アサカのカの字がKAじゃなくてCAでさぁ。」

「KAがCA?」

二人の男の脳裏にある文字が過った。

『ASAKA RUM』

そして、少年が血相を変えて聞いた。

「ねぇ何で!?何でKAがCAなの!?」

「さ、さぁ。」

「絶対何か理由があるはずだよ!!思い当たらない!?」

「そんなに知りたいなら本人に聞けば?今度ウチら、その波土禄道のライブの前日のリハーサルを見学に行くから連れてってあげるよ。」

「少しぐらいならお話できるかもね!」

「ホ、ホント!?」

「よろしければそのリハーサル私も見学してよろしいでしょうか?」

「え?昴さんも?」

「波土禄道の大ファンなので!」

「はい!喜んで!」

「ちなみに、ネットにそのタイトルが発表されたのはいつ頃ですか?」

「つい先週だけど。」

「五年ぶりの新曲だからネットのニュースの上位になってて。」

「となると、もうすでに!奴らの目にも、触れてるってワケか。」

ライブホールを訪れた四人だが、どうやらトラブルがあったらしくリハーサルの見学が出来なくなった。マネージャーの話によると、新曲の歌詞が完成していなく、ステージの上で誰もいない客席を眺めながら書くから二時間、一人にさせてくれと言うことらしい。四人と少し離れた場所で一人の女子高生がスマホを片手に誰かと連絡を取っている。

「そう言うことで正面からの潜入は少し厳しくなったかも。どうする?」

ホールの裏口にワンボックスカーが停まっており、男がそこにもたれ、タバコを吸いながら電話をしている。どうやらその男が女子高生の電話の相手のようだ。

「分かった。俺が行く。俺がそこに着くまでお前はそこで待機してろ。」

「了解。」

電話を切ると女子高生は四人の内の一人の少年をチラッと見る。そして、普通の少年とは少し違うことを何となく感じていた。程なくして電話の相手の男が警備員に扮して女子高生の元にやってくる。

「よぉ、交代だ。あとは俺がやる。」

「それはいいけど、あの眼鏡の少年見た感じ普通の少年と少し違うみたいだから気を付けた方がいいかも。」

男がその少年を見た瞬間、あることを思い出すと口笛を吹いて笑みを浮かべた。

「そうだな。確かにアイツはお前じゃ無理だ。俺に任せな。」

男が女子高生にそう告げると女子高生がその場を去っていく。すると、更に二人の男女がホールにやってくる。どうやらそのうちの一人の男が四人にホールに来ようと誘った男のようだ。そして、もう一人の女性。少年はその正体を察していた。

「やっぱりコイツ、ベルモット!!」

そして、もう一人女性の正体をベルモットを察した男がいた。

「この独特の感じはアイツか。下手に変装して近付いた所ですぐに見抜かれるのがオチだ。さて、お手並み拝見と行こうか。」

程なくして消防設備点検の係員がホールを点検しようとしていた時に事件は起きた。波土禄道がステージの天井から首を吊っていたのだった。

「チッ、事件か。巻き込まれたら面倒だ。しばらく俺は隠れて様子を見るとするか。」

男はそう言うとコソッと何か細工をして姿を消した。しばらくして事件が解決した。事件の真相は、波土禄道自身が首を吊り、それを見つけたマネージャーが殺人に偽装したというものだった。マネージャーは17年前、波土の子供をお腹に宿しており、生まれてくる子の為だとデビューした波土は連日の徹夜で作曲し続けていた。それをやめさせるべく駆け付けたマネージャーがスタジオの前で倒れお腹の子を流産させてしまい、この事は波土に秘密にしていた。その時生まれてくる子どもの為に作った曲がASACAであり、17年間歌詞が付けられずお蔵入りになっていた。その事情を知った彼は自分のせいで亡くなった子どもの為に歌詞を書き新曲として発表しようとしたが、どうしても書けずに『ゴメンな』というメッセージを残し死を選んだということだった。ちなみに、アサカのカがCAの理由は、妊娠のことを徹夜明けの『朝、カフェ』で聞いたから。アルファベットで書くならCafeのCAを取ってASACAと書くそうだ。

事件が解決し、とある男はあることを思い出していた。廃屋の屋上で二人の男がやり合っており、一人の男が拳銃を向け、もう一人は両手をあげている。

「さすがだなスコッチ。俺に投げ飛ばされるフリをして俺の拳銃を抜き取るとは。命乞いをするわけではないが、俺を撃つ前に話を聞いてみる気はないか?」

「け、拳銃はお前を撃つために抜いたんじゃない。こうするためだ!」

そう言うとスコッチという男は自分の胸元に銃口を当てた。

「無理だ。リボルバーのシリンダーをつかまれたら、人間の力でトリガーを引くのは不可能だよ。自殺は諦めろスコッチ。お前はここで死ぬべき男ではない。」

「何!?」

「俺はFBIから潜入している赤井秀一。お前と同じ奴らに噛み付こうとしている犬だ。さぁ、わかったら拳銃を離して俺の話を聞け。お前一人逃がすぐらい造作もないのだから。」

「あ、ああ。」

その時、誰かが階段を駆け上がる音が聞こえ、赤井とスコッチがそれに気付く。その一瞬を着いてスコッチは拳銃で自殺した。

「なるほど、拳銃を奪ったのはこれを壊すためだったのか。家族や仲間のデータが入っていたであろうこの携帯を。」

そして、屋上に一人の男が辿り着くと赤井はこう呟いた。

「裏切りには、制裁をもって答える。だったよな?」

事の全てが終わった頃、警備員に扮した男と、とある女性が話している。男はタバコを吸いながら静かに言った。

「まさかアンタに出くわすとはな。さすがに想定外だったぜ。もう俺の正体に気付いてんだろ?ベルモットさんよぉ。」

男にそう言われると女は静かに変装を解いた。

「さすがね。怪盗探偵山猫君。事件に関わるのを避けて姿を隠してたようだけどしっかり盗聴器で会話は聞いていたようね。」

女にそう言われると男も警備員の変装を解いた。

「何もかもお見通しってワケか。相変わらず食えない女だねぇ。」

「それはお互い様でしょ?それよりどう?シルバーブレッド君を生で見た感想は。」

「ああ。聞いていたよりも面白いガキでちょっと気に入ったぜ。」

「これからどうするつもり?」

「さぁな。言うだろ?山猫は人を殺さねぇってよ。でもどこかで会う機会があったら会ってやってもいいぜ。」

山猫はそう言うとベルモットの元を去っていった。

 



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