Tales of Rezar ~祈りが導くRPG~ (0maru)
しおりを挟む

あらすじ

世界は東と西、二つの大きな島で出来ていた。

 

二つの島は互いに多くの戦いを繰り返し続けた。

 

幾度となく続く戦いでいつしか世界はどんどん荒れていった。

 

人々はそんな世界でただただ助けを求め祈り続けた。

 

 

 

 

 

そんな中で男女二人の”巫”が現れる。

 

二人の”巫”は世界の中心で不思議な歌声を響かせ、

 

そして世界の繰り返されていた争いはその歌声と共に終わりを告げた。

 

 

 

争いの無くなった世界で、

 

二人の”巫”は再び争いが起きぬよう、

 

そしてもしも再び争いが起きた時の為にと、

 

それぞれ東と西へと別れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この話はもう何千年も前のこと……――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

『東の島』『西の島』と呼ばれる大きな島と幾つかの小さな島のある世界―――”ソルディビナ”。

 

島々の周りは大きな海で囲まれており、小さな島への行き来は島と島を繋いだ橋か、船を使っての移動でしか行けない…そんな世界。

 

そんな世界、東の島に住む青年”エンゼ・センヴィア”は、『エンリカ』と言われる緑豊かな森に囲まれた隠れ里に住んでいた。

その里には昔から選ばれし者のみが入れるとされている不思議な社があり、何人たりとも入ってはならないと小さな頃から言われてきた。

そんな里でエンゼは幼馴染みである”アルマ”と共に平和な日々を過ごしていた。

 

 

ある時、突然その里に数人の武者が現れる。

彼らは言った―――”巫”の命を頂戴すると。

 

"巫"という言葉に里の人々はただただそんな者はいないと言うが、その言葉に耳を傾けることなく、

 

「いないと嘘を申すならば、皆切り刻むのみ」

 

そう言い放ち里の者達を殺して始めてしまった。

 

逃げ延びるために里の者はやむを得ず、社へ向かう。

 

……が、里の者達は社の中へは入ることが出来なかった。

「ここで皆死ぬのか」「まだ死にたくない」「ああ神よ」…そんな叫び声が社の前で聞こえてくる。

 

そんな里の者の姿を見てエンゼは「俺がその社の扉を壊してやるっ…!!」と自分の武器で、この場に近づく武者からここにいる皆を助けるために攻撃しようとした。

 

 

 

―――――その時、

 

 

 

『歌え…―――』

 

 

 

そんな誰かの声が聞こえてきた。

そしてその声に導かれるかの様に…エンゼは無意識に歌い始める、歌など知らなかったはずの彼が…。

里の者達はただ呆然と、アルマは驚きながら、そのエンゼの姿を見ていた。

 

その歌声はまさに…。

 

 

そしてその歌声に応じたかの様に社の扉は開かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tales of Rezar テイルズオブレサル

 

   ~祈りが導くRPG~

 

 

―――"巫"……再びこの世界に現る…………

 




改めて、初めまして。
0maruと申します。

まだあらすじですが、一話として出させていただきました。
ちゃんとしたお話はメインキャラの設定を書いてから…と思ってますので、少々お待ちくださいませ。

(たぶん設定も書くの遅いので予めご了承ください…;ほんとすみません;;;)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

登場人物紹介

*1/11
エンゼ、アルマの挿絵(イメ絵)追加しました。
写真ですので見づらかったらすみません…。
また挿絵を追加したので、ちょっとした補足も増えてます←
…あまりお気にせずにm(_ _)m
*1/14
エンゼ、アルマの挿絵が見づらかったので少しだけ画像良くしました。(それでも見づらかったら申し訳ありません…)
またラミ、ソランの挿絵描けたので追加してました。


〇パーティーメンバー

 

▽エンゼ・センヴィア

 

【挿絵表示】

 

 

「おっ?あれ何だろ?行ってみようぜ!」

 

「お前…!絶対に許さない…!!」

 

「お、…俺が…巫(ミコ)…?」

 

性別:男 年齢:18 身長:170

クラス:術士 固有武器:大扇子

一人称:俺二人称:あんた、お前

髪:薄い水色

目:群青色

 

東の島にある隠れ里・エンリカ出身の青年。

年の割に好奇心旺盛で明るく、また行動力がある。

また困った人がいると直ぐ様声をかけていたりお人好しでもある。

大扇子を仰ぎ風を起こしたり、閉じたままで攻撃したり防御したりする。

また魔術も大扇子を仰いで放つこともできる。

 

ある時里が襲われた際、不思議な声の元、”巫”としての力に目覚めた。

自身のせいで里が再び襲われぬよう、身を隠すために幼馴染のアルマと共に里を出る。

*挿絵にて

首に付けている勾玉は序章では付けてません。

 

 

▽アルマ・カスティーユ

 

【挿絵表示】

 

 

「エンゼ!?何処まで行く気ー?!」

 

「もう、駄目じゃない!こんなに服を汚しちゃって」

 

「大丈夫よ、あなたは一人じゃないもの」

 

性別:女 年齢:20 身長:158

クラス:剣士 固有武器:大刀

一人称:私 二人称:あなた、君

髪:茶色

目:撫子色

 

隠れ里・エンリカ出身の女性。

背が低くよく少女と間違われるがれっきとした女性。

見た目とは裏腹に世話焼きな母親のように接する為、エンゼや他の人からオカンと呼ばれることも…。

自身の体程の大きな大刀を意とも簡単に振り回したり、斬ったりなどして攻撃する。

 

里が襲われた時に力に目覚めたエンゼと、その身を隠す為に旅に出ることになった。

 

 

▽ラミ

 

【挿絵表示】

 

 

「私はラミ。西の島から来ました」

 

「東も西も関係なく、ただ手を取り合い暮らす…そんなことは…やはり不可能なのでしょうか…?」

 

「精霊さん、…お願い。力を貸して…!」

 

性別:女 年齢:17 身長:165

クラス:精霊術士 固有武器:大鏡

一人称:私 二人称:君、さん付け(一部を除く年上のみ)

髪:薄黄色

目:薄黄緑色

 

西の島から来たという少女。

口調はほとんど敬語、気が弱い印象があるがやるときはやる。

小さな時から精霊と仲良くしていた為か、どんな精霊とも仲良くなれる。

大鏡を使い光・雷の魔術を放ったり、精霊を呼び攻撃する。時折、大鏡の光の反射を利用して火をおこしたり、相手の目くらましをしたりしている。

 

とある事情でへルクスと共に、西の島から東の島の武将の都フェカロレへ向かっているが…。

 

 

▽へルクス

 

「お前らがもし何かしようってんなら…容赦はしねーぞ」

 

「おーおー。なんか楽しそうにワイワイ騒いでるなぁ!」

 

「ラミも…もちろんお前らも…傷つけさせねー…!皆オレが守ってやる!絶対にだ!!」

 

性別:男 年齢:20前半 身長:180

クラス:槍使い 固有武器:槍

一人称:オレ 二人称:お前

髪:若草色(黄緑色)

目:橙色

 

ラミと一緒に行動を共にしている西の島出身の男性。

初めて会う者にはかなり警戒し、何かあれば直ぐに行動できるようにしている。

ただ、一度でも信用すると仲間として大切に接する。

過去の記憶が無いらしく自分が何処にいて何をしていたのか分からないが、そんな風には見えない程の根っからお兄ちゃん気質。

とにかくラミに甘い様。

背の高さ程長さのある槍で、素早い攻撃をする。

 

とある事情でラミと共に、西の島から東の島の武将の都フェカロレへ向かっているが…。

 

 

▽レイビス・クローズ

 

「あっはっは~!あたしは見ての通り、商人さ!」

 

「なんだいなんだい。これくらいのことでビビっちゃあ~これから先、やってけないよ!」

 

「まっ、知り合いがピンチになってんのを知らんぷりする…そんなことあたしにはできないね」

 

性別:女 年齢:31 身長:175

クラス:拳銃使い 固有武器:二等拳銃

一人称:あたし 二人称:お前さん、お坊ちゃん、お嬢ちゃん

髪:灰色

目:深紫色

 

商売をしながら旅をする放浪商人の女性。

豪快で尚且つ肝っ玉。どんなことがあってもあまり驚くこともなく、本人曰く「商売がてら色々あったからねぇ~!」とのこと。

二つの銃を使いながら遠距離から攻撃する。基本的には後衛だが、多少ならば前衛も可能。

 

商売をしながら、数千年も前のことを調べているらしい。

 

 

▽ソラン・ビィンデ

 

【挿絵表示】

 

 

「何?怪我したって?バカじゃないの?ほら、怪我した所見せて」

 

「僕より大人の癖に、僕より頭悪いって…バカじゃないの?」

 

「……嫌だっ…!お願いっ…一人にしないでよっ…!」

 

性別:男 年齢:13 身長:160

クラス:治癒士 固有武器:杖

一人称:僕 二人称:君、あなた、さん付け(一部を除く年上のみ)

髪:枯草色

目:右は金糸雀色(暗めの黄色)、左は薄い青緑色のオッドアイ

 

西の島の村・ラピアに住む少年。

両親は既に他界し、また双子の兄がいるらしいが行方不明になっているため、現在まで村唯一の医者の元で日々勉強している。

言葉遣いが少々刺々しく時折毒舌、けれどその裏には自身の本当の気持ちを隠す為と見える。

治癒術に長けており、簡単なものであれば直ぐに発動(無詠唱)もできる様。

 

旅の途中に立ち寄ったラピアで出会う。

 

 

▽セラピナ

 

「わぁー!お兄ちゃん、本物の巫様なの?すごいすごーい!」

 

「なんだろ?なんかね、マナの流れが変な気がするの…」

 

「へへーん♪セラのボールさばきに驚いたかー!」

 

性別:女 年齢:10代(見た目) 身長:135

クラス:精霊 固有武器:ボール

一人称:セラ 二人称:お兄ちゃん、お姉ちゃん

髪:浅葱色

目:浅葱色から翡翠色のグラデーション

 

旅の途中で魔物に襲われてピンチの時に助けてくれた海風(ウミカゼ)の精霊。

見た目とは裏腹にかなりの年月を生きており、仲間の中ではかなり年上。が、性格は見た目のままで子供っぽく、楽しいことが大好き。

自らの力で空中に浮かべたボールで攻撃する。

 

今まで生きていて初めて巫に会えた喜びからか、勝手に旅に着いてくるように。

 

 

▽ユニエリア

 

「我はユニエリア。ユニとでも呼ぶとよいぞ」

 

「ほぅ、巫がいるとはまた珍しい。どれ、我と話でもせぬか?」

 

「また…何かが起きるかもしれんのぅ…」

 

性別:? 年齢:12(見た目) 身長:140

クラス:猛獣使い 固有武器:鞭

一人称:我 二人称:そなた

髪:茄子紺色(濃い紫色)

目:紫色

 

旅の途中に魔物と共に現れた謎の子供。

見た目が中性的で独特な口調と雰囲気があり少年なのか少女なのか分からず、性別について聞くと本人曰く「さぁ?どちらにそなたは見える?」と自分からは言わずはぐらかす。

温厚で誰とも平等に接するが、一度切れると説教と称したお怒りがあり、止められなくなる。

鞭を使った中距離の攻撃をする。

 

エンゼ達と出会い、共に行動することになる。

時折、謎の言葉を口にし皆を困らすが…。

*キーキャラ

 

 

▽ウェルニカ

 

「おぉ、当たりじゃ!わしがウェルニカじゃよ」

 

「お主の頼み、必ずや成し遂げるぞぃ」

 

性別:男 年齢:外見50代(実際は103) 身長:183

クラス:戦士 固有武器:斧

一人称:わし 二人称:お主

髪:灰色

目:茜色

 

レイビスとは元商人仲間だったエルフの男性。

現在は情報屋として東の島にある情報の町と呼ばれるカスダムハで活動している。

報酬(主に酒)を渡せばどんなことでも情報を集めてくれる。

 

時折共に戦ったりと手助けしてくれる。(殆どはパーティーにはいない準パーティーキャラ)

 




登場人物はまず主人公とパーティーメンバーの紹介から!
と言っても設定ですが…;

世界設定は近い内に出したいと思います。
…リアルの事あるのでもしかしたら遅くなるかもですが…;
術技や敵キャラとかは物語の進行状況を見ながら出す予定です。


今日はとりあえずここまで…←エッ;
リアル事情が…でも今月中に一話くらい出せたらいいな…。
お話の方に早く取り掛かって出せる様に頑張ります。
少々お待ちください…!
*誤字あったらこっそり直しておきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

世界設定・用語

現時点での世界設定などです。
物語の進み具合で用語はまた追記として書いてきます。

*1/11
世界図(写真ですが)追加しました。
こんな形なのか程度に思って頂ければと。
村や里などの場所は小説の進行状況を見ながら、記入ものをまた出す予定です。


世界設定

 

・世界の名は”ソルディビナ”。

二つの大きな島、『東の島』と呼ばれる島と『西の島』と呼ばれる島、そして幾つかの小さな島のある世界。

二つある島には『東』『西』と大雑把に付けられているだけで名はなく、それが普通になっている。

島の周囲は海で囲まれており、小さな島への行き来は島と島を繋いだ橋又は船を使っての移動でしか行けない。

また、東と西の島は唯一繋がっている橋が一つありそこから徒歩で行き来ができる。

…が、現在は古びて来て危険だということで封鎖されている。

その為殆どの人は危険を避けてか船での長旅を得て移動している様子。

*ちなみに太陽は東から北へ登り、北から西へ降りる。(南半球と同じ動き)

 

*世界の図

 

【挿絵表示】

 

写真なので見づらくてすみません…。

一応0maruが書くこの小説の世界の全体図になります。

右が『東の島』、左が『西の島』です。

 

・東・西にはそれぞれ村、里、町といった人々が住む場所も多くあり、それぞれその島を収める『武将』『王』と呼ばれる存在がいる。

文化は昔の日本のような部分もあれば西洋のような部分もあり、二つが混ざったような感じ。けれどどちらに近いかと言えば、東の島は日本風、西の島は西洋風に近い文化と言える。

服装は殆ど和服(着物や袴のような服)を着ている者が多いが、時折和服に洋服を混ぜたような物や、全て洋服など様々。

村なども瓦屋根や藁の屋根の家だったり、土壁の家、レンガの家など様々。

 

・世界には魔術も普通に扱われており、生活の一部となっている。魔術の元はマナ。

種類はテイルズではお馴染みの『火』『水(氷)』『土』『風』『光(雷)』『闇』。

マナは世界中の海、山、大地にある植物(主に数百年以上長く生きている木々)から光合成によって作られている。

光合成により作る為一つの植物から出来る量は限られるものの、刈られたり、太陽の出ない日が続かない限り、世界から半永久的にマナがなくなることはない。

*過去に一度だけマナが無くなったという古い資料に記述があるものの、真実は今の所はっきりとしていない。

 

・種族は『人間』『エルフ』『精霊』『妖精』がいる。

他にも『水人族』と呼ばれる平均寿命140前後という水の中を生きる下半身が魚のような姿をしている種族(半魚)、『精獣』と呼ばれる神として拝められている精霊に似た存在の獣がいる。

ただし、精獣は拝められているというだけで実際にその存在を見たと言う者はいない為本当にそんな種族が存在かを確認することは出来ない。

が、その存在を拝める人々が少数ではあるがいること、また姿などが古い資料や壁絵(社だったり、その他の場所にて)で描かれていたりするのでおそらく存在しているのであろう。

資料や壁絵に描かれている精獣は全部で七体。

水人族と精霊、精獣以外の種族にはハーフも存在するらしい。

 

・世界にいる精霊は下級精霊しかおらず、上位精霊はいない。

精霊は世界に存在する水や風、火などの他に物に込められた想いなどから誕生する精霊もいると古き資料に記されている。

なお、資料によれば上位精霊は数千年も前には存在していたと書いてあるが、ただその資料以外ではその存在も名前も書かれてはいないとのこと。

そのこともあり、古い資料や壁絵に描かれた精獣は上位精霊に似た存在なのでは?とも言われていたりするのだが、精獣の存在は確認されていないこともあり実際は分からない。

 

・ソルディビナには伝説の話(おとぎ話)が存在する。

その伝説は数千年も昔、争いが絶えなかったこの世界を男女二人の巫(ミコ)が不思議な歌声で止めたという話。

二人の巫は東と西、それぞれの島に別れて行ったとされている。

ただし数千年も前のことで信憑性が薄かった事、そしてこの話を話し伝える者も少なくなり、今現在この話を知る者は極僅か。

伝説の話の中で『世界の中心』とあるのだが、この世界には島は二つしかなくそう言われる場所は存在しない為、その場所が何処を指すのか全くと言っていい程分かっていない。

巫が歌っていた唄は”オラシオン”と言われていたらしい。

 

 

 

用語

 

・伝説の話…数千年もの昔に起きたとされている出来事をおとぎ話にしたもの。

昔に争いが絶えなかったこの世界を二人の巫(ミコ)が不思議な歌声で止めたという話。

 

・数千年前の争い…伝説の話、そして古い資料に残されている昔に起きた戦い。

資料が残っている事もあり本当にあった出来事なのは確かだが、二つの島が争った理由は書かれてはいない。

 

・巫(ミコ)…伝説の話に出てくる人物。男女二人であったこと、”オラシオン”と呼ばれる唄を歌っていたということは分かっているが、どのような人物だったかや何故”巫”と呼ばれているのか、そして巫達の行方について知る者はいない。

 

・隠れ里エンリカ…緑豊かな森に囲まれた隠れ里。周囲は山々に囲まれており、豊かな森には動物や山菜、果物などそこで生きていくには十分なくらい豊富。

そこに数十人程しか住んでいる者はいないものの、皆血が繋がらなかろうと家族だと思っている。

その為か晩御飯は里全員で食す習慣がある。

里から山頂へと続く階段があり、そこには昔から選ばれし者のみが入れるとされている、何人たりとも入ってはならないと小さな頃から言われている不思議な社がある。

(里イメージは白川郷)

 

・社(ヤシロ)…エンリカにある古い建物。赤い鳥居と瓦屋根の建物が特徴。(神社の様)

昔からあったのだが、それが何の為に建てられたのか、何故その中に入ってはならないと言われているのか、現長老はおろか村人達も知らない。

社はエンリカの他にも存在する様で、古い資料はその中の幾つかの社で見つかっている。

 

・武者…正式には『守護武者』。東の島にある武将の都『フェカロレ』、そこにいる島を収めている武将を守る役目を担っている者達の通称。

西の島にも同じ役目の存在はいるがそちらの通称はまた違うようで、この通称は東の島の者のみ使う。

 

・武将…東の島を収めている一番偉い人物。温厚な性格、どんな人物でも受け入れる程の広い心の持ち主で、東の島の人々に慕われている。

現武将は第55代目、名は『リュウホウ・アキカゼ(龍鳳・秋風)』。

 

・精獣…古い資料や壁絵にて描かれている、人々(少数ではあるが)に神として拝められている獣。描かれているのは全部で七体。

このソルディビナにはいない上位精霊に似た存在が精獣なのでは、とも言われているが実際は不明で分からない。

 




世界設定と現時点出てきた用語を出させて頂きました。
第一話より先に書いていたのに、第一話より遅いっていう←(順番は入れ替えました)
…説明下手くそでごめんなさい;

とりあえず後で世界のイメージ図(世界地図的な絵)など追加します。(絵を貼るやり方がいまいち分かってないので遅くなるかもですが…)
あと、やっと登場人物のエンゼ、アルマの二人が描けたのでそちらも後々追加しますね。

*…そういえば南半球の太陽の動きって合ってるのだろうか…。
でも違ってても太陽の動きは書いてある通りになります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

序章
第一話 東の島の隠れ里


こんにちわ、0maruです。
…今月中に出来るかなとか言いながら、世界設定より先に書けちゃったので…先に出しまs((
目次で書いた通り、0maruは字間違いある&文才ないので分かりにくい所や意味の分からない部分があるかもしれません。
その際は申し訳ありません…気が付いた時に直しますね。
世界設定などについては書き終わり次第出します。(…早ければ今日か明日には出せるかと)

長々と失礼致しました…!
それでは第一話、どうぞ!




ここは東の島にある山々に囲まれた緑豊かな森の中。

たくさんの動物達と山菜や果物などの食物が豊富なこの場所で、何処からか足音が響いてきた。

 

 

―――タッタッタッタッ…

 

 

「こらああああ、待てえええっ!」

 

足音と木々をかき分ける音を響かせながらその森を颯爽と走ってきたのは、薄い水色の髪と群青色の瞳を持つ、青い和服を纏った一人の青年。

手には大きな扇子を持っている。

 

青年は何かを追いかけているようだった。

その何かは青年から逃れようと森の中をどんどんと駆けていく。

木々を退けながら走っていた彼は、その何かを必死に追いかけていたが…。

 

「あーもう!あいつ、何処に行った!?」

 

突然足を止めたと思えば今度は叫んだ。

どうやらその何かを見失ったようである。

青年は何処だと言いながら周囲を見回し探す。

 

と、また別の足音が森の中から青年の方へ近づいてくるのが聞こえてくる。

ガサガサと木々を退ける音と共に現れたのは、赤み掛かった桃色の和服を着た茶髪と撫子色の瞳の少女。…否、

 

「エンゼ、どう?捕まえられた?」

 

青年をエンゼと呼ぶこの少女は、少女に見えるがどうやら大人の女性のようだ。

 

「悪い、…途中で見失った」

 

「あらら…そう。…あーあ、今晩用のお肉は無しかしらね~」

 

そしてこの会話から、恐らく食料にする為何かの動物を狩ろうとして走り回っていたいたのだろうと推測できる。

 

「もう少し探してみようぜ?流石に肉無しはキツい…!」

 

「あら…。でもそれは駄目よ」

 

「え!なんで!?;」

 

「なんでって、もう…ちゃんと周りを見て?だいぶ日が落ちて暗くなってきたのよ?

そんな中でこの森に入るのは私が許しません」

 

「あ…本当だ…。最近日が落ちるの早いなぁ…」

 

彼女のいう通り、空は既に暗く、周りも森の木々のせいかかなり視界が悪くなってきていた。

このままだと一気に周りは真っ暗。何も見えなくなるだろう。

けれどエンゼは女性に駄々をこねる。

 

「で、でももうちょっと!もうちょっとだけ!お願いだ、この通り!」

 

「だーめ、お昼から狩りを始めたのに狩れてないのよ?

こういう時は無理しないの。ほら、諦めも肝心って言うでしょう?」

 

「うっ…」

 

女性はそんな彼を気にすることなく、早く戻るわよと彼に言ってその手を引き二人の住む里へと一緒に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!」」

 

辺りが徐々に暗くなる森をしばらく歩いていると、前方に何かの影を二人は捉えた。

 

「もしかして…動物か!」

 

「いいえ…よく見て。あれは…」

 

 

―――グルルル…

 

 

その陰の正体、それは魔物…ウルフであった。

この森によくいる魔物の一体だ。

数は三体。

 

「なぁアルマ、…今晩の肉…こいつらにしねぇ?」

 

「え………私は良いけど…」

 

アルマと呼ばれた女性は少しばかり間を空けて言う。

けれど顔は顰めたままで、エンゼは本当は嫌なのだと察し、それから手に持っていた大扇子を勢いよく開いた。

 

「どっちにしろ、こいつら倒さねぇと里には戻れねーし。ちゃっちゃと倒そう!」

 

「……そうね!」

 

エンゼが武器を構えたのを見て、アルマも背に背負っていた大きな刀、大刀を持ちそして構えた。

ウルフ達も二人が武器を構えたことで先程より更に唸りを上げ、今にも襲い掛かる体制になる。

 

 

 

 

 

 

そして…、

 

「行くぞ!アルマ!」

 

「ええ!」

 

先に動いたのはエンゼとアルマ。

 

とは言うものの、先にウルフ達へ向かい走って行ったのはエンゼのみだが。

 

「魔神風!」

 

大扇子を大きく、そして素早く仰ぐ。

するとそこから風圧によるものか、衝撃波が放たれた。

その攻撃はウルフの一体へと当たる。

 

他の二体はそれを躱し、一体が一気にエンゼへと近づいたと思えば、

 

「ガゥヴヴヴッ!!」

 

「っと!」

 

大きく口を開き噛みつこうとする。

エンゼは直ぐに大扇子を閉じてそれを防いだ…のだが。

 

「ア"ヴゥウッ!」

 

「げっ!?」

 

もう一体もエンゼの元へ向かっており同じく噛みつこうとしているのが分かったが、目の前のウルフを防いでいるのもあって躱したいが躱せない。

 

「…断激波!」

 

その時アルマが少しエンゼとウルフ達から離れた場所で大刀を地面へ振り叩き、魔神風のような衝撃波を放つ。

 

「キャンッ」

 

ウルフは避ける事叶わず諸に受け、そのまま離れた場所へ飛ばされた。

 

「もう一…発っ!」

 

アルマがそう言って同じように大刀を地面へと振り叩き、再び衝撃波を放った。

その衝撃波は先程よりも威力が低く見える。

それからそれはエンゼへ攻撃するウルフへと向かっていき、離れた場所へと先程のウルフのように飛ばした。

飛ばされた先に丁度エンゼが攻撃したウルフがおり、二体はぶつかって地面へ転がった。

 

「さんきゅ、アルマ!」

 

「どういたしまして!」

 

エンゼは彼女の方を見てお礼を言えば、アルマは彼に向けて笑う。

その間にもウルフ達はその場に立ち上がり、二人へ近づいているのが目に入る。

 

「ダメージはそこそこやったと思うし、…手っ取り早くあれやるか?」

 

「はぁ…そうね、じゃあエンゼ。上手く躱しなさいよ?」

 

「もう何回やってると思ってんだって!大丈夫だよ!」

 

何をする気か。

エンゼはまたウルフ達へと駆けていく。

同じように向かってくる彼に、今度は散開して二体はエンゼへと、もう一体はアルマへと攻撃を仕掛けてきた。

 

「落ちろ!…ライトニング!」

 

「…はぁっ!」

 

けれど今度は攻撃される前に攻撃。

エンゼへ向かった二体は魔術により、アルマへ向かった一体は大刀の攻撃を受ける。

 

「んじゃ後は任せた!…烈風陣!」

 

ウルフ二体に魔術を使った後直ぐに背後へ移動すれば彼は大扇子を大きく仰ぐ。

仰いだその勢いでウルフ達を中心につむじ風の様な風が起こり、二体はそのまま空中へ円を描く様にして吹き飛ばされた。

風は広範囲渡り起こり、アルマの元へ行ったウルフまでもがその風により空中へと舞う。

その姿を確認した後、エンゼは地面へ伏せる。

 

「任されたわ!」

 

空中へと吹き飛ばされたウルフ達を見ながら彼女は一言言うと、大刀を構える。

その間にウルフ達は風が止み、地面へと体制を立て直す事が出来ないまま落下してくる。

 

そして、

 

「行くわよ!刃魔一閃!」

 

大きく横切りに大刀を振り、落下してきたウルフ三体を同時に切り倒した。

 

 

 

 

 

 

「…」

 

ウルフ達との戦闘後、エンゼは手と手を合わせ目を閉じ、静かに祈る。

これは彼の癖。

こうして出会いこの手で消した命に対して安らかに眠れと祈るのだ。

魔物は出会ってしまえば攻撃してくる為応戦するしかない。

倒すか倒されるか、そうなればどちらかがその命を落とす。

 

けれど魔物と言えども生き物。

魔物も命を落とせば人や動物と違うもののその場で徐々に消えていく、…大地に戻っていく。

だから自己満足にしか見えないだろうが、彼は大地へと戻る魔物にもそうやって祈る事をしているのだ。

 

しばらく目を閉じ祈った後、エンゼは直ぐ後ろにいるアルマへ視線を向けた。

 

「もういいの?」

 

「ああ」

 

いつもの事だからか、祈りについてはその二言で終わった。

 

と、エンゼがふと笑って言う。

 

「それにしても、やっぱアルマの大刀すごいな!三体同時に倒せんだもん」

 

「ありがとう。

でもそうは言うけど、こういう森の中だとかなり扱いづらい武器なのよ?」

 

彼女はそう言うと視線を周りの倒れている木々へと向けた。

『刃魔一閃』、アルマの扱う刀が大きいから出来る中範囲の攻撃。

横一線に大刀を振ることで空中の範囲内にいる対象へ一気に攻撃が出来るのだ。

 

…ただし、範囲内にあるもの”全て”を斬ってしまうというものでもある。

そう、倒れている木々はこの攻撃の範囲に入ってしまい切り倒された可哀想な木達なのだ。

 

「…何回か同じ事あったんだもの、何を言いたいか分かるわよね?」

 

「あー…うん」

 

大きいからこそ出来る範囲の広い攻撃、けれどその欠点もある。

それが分かるかのような光景だと言えよう。

 

「この木、どうする?」

 

「いつもの様に長老様や皆に言って、明日にでもまき用の木にでもしましょう」

 

二人してため息をつくと、懐から小さな鈴の付いた紐を取り出し、切り倒してしまった木々の近くにある木の枝へと縛り付けた。

木の枝へ付けられた鈴はチリーンと心地よい音を響かせる。

おそらく明日この場所に来る為に目印として付けたのだろう。

 

これでよし、と鈴をつけた後二人は今度こそ里へ向かって歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

すっかり夜になり、真っ暗になってしまった森。

木々の合間に見える微かな光を頼りに森から抜けると、その先に灯りを灯す優しい雰囲気を放つ里が現れた。

そう、ここがエンゼとアルマの住む場所・エンリカと呼ばれる隠れ里。

数十人しか住まないこの小さな、けれどだからこそ里に住む人達は皆血は繋がらずとも家族と思っている。

そんな小さな里だ。

 

と、里の入り口に手に小さなランプを持った老人がおり、二人の姿を見るとふんわりと笑う。

 

「おぉ、戻ってきたか」

 

「ただいま、じっちゃん」

 

「只今戻りました、長老様」

 

「お帰り、エンゼ、アルマ」

 

エンゼとアルマに声をかけてきたのはこのエンリカの里の長、優しそうな雰囲気の長老である。

 

長老に狩りはどうだったんじゃ?と聞かれると二人は申し訳なさそうに見失ってしまった、と正直に話す。

二人の話を聞いても長老はそんな時もあるじゃろうて、と優しく笑いかけて二人の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

「あ!エンゼーお帰りー!」

 

「兄ちゃん姉ちゃん、今日はどうだったの?」

 

長老と共に里に入れば二人を見た子供達や里の大人達が近づいて話しかけてくる。

二人は里の皆にただいまと言い、それから今日の狩りの結果を報告した。

 

「悪いな、今日は駄目だった」

 

「はっはっは!そしたら今日は山菜尽くしの晩御飯にでもするかねぇ!」

 

「わぁ!おば様の山菜料理、私大好きだから嬉しいわ!」

 

「あら、そうかい?そう言われると腕によりをかけなくちゃならないねぇ!」

 

「えー…おばちゃんの山菜料理は俺も好きだけどさー」

 

「もう、エンゼったら!文句言わない!」

 

むすっとした顔で肉食いたかったーと言うエンゼにだから文句言わない!と拳骨するアルマ。

それを見て周りの皆は笑いだす。

明るく優しい雰囲気がその場全体に広がっていく。

 

「はぁ…こうなったら、明日の狩りは成功させないとな!」

 

「そうね!山菜料理尽くしでもかまわないけど、栄養が偏るもの」

 

「って結局アルマも肉食いたいんじゃん!」

 

また里に響く人々の声。

こうして彼らのいつもの平和な一日は今日も過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから近い内に何かが起きるとも、その時エンゼの運命が動き出すとも知らずに…―――




ど、どうだったでしょうか…。
今回の回はどういった所に住んでいるのかなんとなくでも分かればいいなと思って出しました。
…分かりましたか…?((不安…;
ちょっとだけ戦闘シーンありましたがやっぱり難しいですね。
頭の中ではこうやってこうやってこう動く!…みたいなイメージがあるのに、いざそれを書こうとすると書けないっていう…。
どうすればあのテイルズならではの戦闘シーンを書けるのか知りたいっス…。



長々として失礼しました…!
ということで今後もこんな文にはなりますが、よろしければよんでいただけたらと思います!
それでは!

*書き忘れてた事があったので先程追記しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 始まりの足音

―――チュンチュンチュン…

 

 

 

「ん…」

 

朝の清々しい光がエンゼの顔にふとかかり、眩しさを感じる。

そして鳥達の鳴き声を耳にしながらエンゼはその目を開けた。

 

「ふぁ~……!あーよく寝た!」

 

陽の光を体に浴びせながら体を伸ばす。

彼が今いるこの場所は緑豊かな森に囲まれた山奥の隠れ里エンリカ。

その里の中にある家の一つ、里の長の住む家だ。

 

エンゼは小さな頃に両親を亡くし、身寄りもこの里には既に亡くなっていなかったこともあり、今現在長老に引き取られ一緒に住んでいるのだ。

 

「さて・・・と、今日も一日頑張るぞ!」

 

彼はもう一度体を伸ばすと、寝間着からいつもの服へ着替え、そして長老の元に向かう。

 

 

 

「じっちゃん!おはよう!」

 

「おぉエンゼか、おはよう」

 

長老はエンゼの姿を見るとふっと優しい顔をして挨拶を返した。

いつもニコニコしていて優しい長老、名をクニヤス。

この里では皆から愛されている長老である。

・・・噂では優しい反面怒ると怖いらしいと聞く。

あまり怒られたことがない、また怒られた時そこまで怖いとは思わないエンゼはきっとそうか?と言うかもしれない。

 

そんな長老と話をしている時、彼はふと思い出す。

 

「なぁじっちゃん?

昨日狩ったあの鹿と兎の肉、余ってたら保存用に干しておこうと思うんだけどまだあったっけ?」

 

昨日狩った鹿と兎。そのうち鹿は久しぶりに狩れた大物だ。

こういった大物はこの数十人しかいないにとって御馳走なのだが、実は一匹でも量がある為か時折余ってしまう。

そういう時は里の習慣で、何があっても良いようにと日干しにして保存食にする。

この山奥ではそうした方が長く保存でき、更にそのまま食べるよりも旨味も増すしで良い事尽くしなのだ。

 

だから彼は長老に聞いてみた。

 

「はて…、わしには分からんの。そういう事は直接カルハに聞いた方が早いかもしれん」

 

あ、そっか。

彼は言われて気が付き、

 

「おばちゃんだな!そうだな、ならすぐ聞いてみる!」

 

そのまま駆けていくエンゼに後ろから長老があんまり急いで走っとると怪我してしまうぞと言っているのが聞こえ、彼は振り向き平気だって!と言葉を返しながら、カルハと呼ばれた女性の家へ向かった。

 

 

 

 

 

駆けているうちに目線の先に目的の家が見えてきた。

と、その家の前には見覚えのある後ろ姿。

 

「おんや、エンゼじゃないかい!おはようさん!」

 

「あ、エンゼおはよう!いつもより少し起きるのが早いじゃない」

 

「おはよう!おばちゃん、アルマ!

そうか?でも確かに今日はいつもより早いかもしれない!」

 

にっこりと笑う少しぽっちゃりとした女性がカルハ、そしてもう一人は幼馴染みのアルマだ。

エンゼは二人に挨拶をし、そしてカルハへ話しかけた。

 

「なぁおばちゃん、昨日の鹿肉と兎肉って余ってる?

ほら今日は天気が良いし、余ってるんなら保存用に日干しにしちゃおうかと思ってんだけど」

 

「ん~、昨日の肉かい?

今回はあんまり残ってないねぇ、あるのは骨に付いて残った部分と昨日余った少量のモモ肉くらいさ」

 

「骨の肉とモモ肉だけか」

 

うーん、と彼は考えると、

 

「うーん…、…ちょっと大変だけど俺やっておくよ」

 

「おや?いいのかい?」

 

「いいんだって!だっておばちゃんまだやる事あるだろ?」

 

「まぁねぇ。ならほれ!お願いするよ!」

 

「おう!ありがとう、おばちゃん!」

 

おそらく後でカルハ自身でやるつもりだったのだろう。

先程言っていた骨の入った袋二つとモモ肉の残りが入った袋が近くに置いてあり、それをそのままエンゼへ渡した。

 

意外に意外、中を確認しようと開けて見れば思ったよりもありそうである。

骨のせいでずっしりとした袋二つとモモ肉の入った袋を両手で持つ。

と、片方が軽くなった。

 

「エンゼ、干し肉を作るなら手伝うわ」

 

そう言ってアルマが袋の一つを持っていた。

 

「サンキュ、アルマ!」

 

「どういたしまして」

 

彼とアルマはカルハへ一声かけもらった肉を手に、里の広場へ一緒に歩いていった。

 

 

 

 

 

広場に着くと早速手に小さなナイフを持ち作業を始める。

骨にちょこちょこと付いている肉だけを丁寧に削ぎとっていく。

そんな単純作業なのだが。

 

「それにしてもエンゼ、だいぶ手慣れてきたわね」

 

「んー、そうか?」

 

ふと作業をしながらアルマが言った。

幼い頃からこの作業はしている彼にとっては手慣れてきていてもおかしくないのだが。

けれど実はアルマは二歳年上だからというのもあってかこの作業を彼よりも長くやっていた。

だから彼女にとっては彼の腕はまだまだ未熟と思っているのかもしれない。

 

「あ、そうそう」

 

作業をしながらアルマはふと何かを思い出したようでエンゼに向かって話を始めた。

 

「実はね、子供二人が社に無断で行ってたんだって」

 

「えっ?!社にか!?」

 

―――…"社(ヤシロ)"

 

古くからこの里にあるという里から続く階段の先、山の山頂辺りにある変わった建物の事。

赤い色をした鳥居というものとその先に瓦屋根の社と呼ばれる建物があるのだが、何がどうなってるのか不明だがその扉は固く閉じられておりどんなに力を入れて開こうとしても中に入ることのできない場所。

…選ばれた者にしか入れないらしいとか。

 

「…で、その子供は?どうしたんだ?」

 

「うん、中に入ろうとしたんだけど…やっぱり開かなくて戻ってきたって。

あんまり魔物がいないからって、社までの階段は急だから子供だけでは危ないし…本当に無事で良かったわ」

 

アルマは本当に安心したように言う。

元々里が少し高い位置にある為、急ではあるものの階段を登って行けばにそこまで時間は掛からず社に行けてしまう。

…のだが、アルマが言った通り階段は急であるのと、山の中である為もちろん時折魔物も現れるのだ。

なのでまだまだ魔物に対しての対処が分からない子供がもしも魔物が出くわしたら。

そう考えたら本当に怪我もせず無事で良かったと彼も思った。

 

「それにしても…懐かしいわね。

昔私達もやって、社に行く前に長老様に見つかって怒られてしまったっけ」

 

「ちょっ…それいつの話だよ!」

 

いつの話か。

二人が小さな頃、同じように中に入れないその社に興味があって行こうとしたのだ。

結局長老に見つかりバレてしまい、困り顔をしながら長老は怒った。

心配してくれたのだろうと今では思う。

…そういう事もあり、実は二人は魔物が現れたからとその時退治するのに社が見える位置までは登ったことがある…が、近場までというだけで遠目でしか社は見ていなかったりする。

 

それから二人は他愛のないような話をしつつ、どんどん作業を進めていった。

 

 

 

 

 

アルマの協力もあって作業は終わり、肉も天日干しを始めることができた。

 

「はぁー…終わった終わった!ちょっと疲れたぜ」

 

「そうね。私も少し疲れたわ」

 

予想よりも骨に残っていた肉の量に、流石に二人共疲れた様だ。

二人してグイッと背伸びをした。

 

空を見上げれば太陽は朝方よりも上へ昇っている。

朝目覚めた時の朝日のように清々しいその光を見て、今日もいい天気だなとエンゼは思った。

 

「エンゼ、少し休みましょう。

今日はまき割りもしなくちゃいけないし」

 

「そうだな。

昨日使ったからそろそろなくなりそうだし、…よし!休もう!」

 

エンゼとアルマは広場の隅へ移動しそこへ座る。

彼らが休むその場所へふんわりと風が通りずきていく。なんとも優しい風だ。

 

 

 

と、

 

「「ん?/あら?」」

 

里の入り口辺りからだろうか。

優しい風に乗ってガシャン…ガシャン…という聞き慣れない音が聞こえてくる。

 

「アルマ、これ…何の音だと思う?」

 

「そう、ね。…私の予想だと…鎧の音じゃないかと、思うのだけど」

 

鎧…、そこで頭に過ったのはこの東の島の都にいる武者、正式には守護武者という島を収める武将を守る役目を担った者。

自分達の知るその者達の鎧の音とは何処か違う気がするが、…もし武者であれば何のようだろうか。

普段武者達来る際は文や同じく武将を守る役目を担った精霊達の力を借り知らせを送ってくるのだが……それもなく来ることはおかしい。

何故ならそれが温厚で優しい心を持つあの武将の気遣いだと知っているから。

 

どちらにしろ頭で考えているより行動した方が良い。守護武者が何用か聞かなくてはならない。

 

「もう誰かしら行ってるとは思うけど、俺らも行こうぜ」

 

「ええ」

 

少しだけ疲れて重たい腰をあげ、彼ら達はおそらく入り口だろう音の主の元へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまり聞き慣れない音に、やはり里の入り口に里の人達が集まってきていた。

二人はそこへ行くと直ぐにその場にいたテルマという男性に声をかける。

 

「なぁテルマおじさん、守護武者が来たのか?」

 

「いんや?どーも違うみたいだぞ?」

 

「違う?」

 

「んだ、あんの鎧は…おそらく西(むこう)の守護武者だべな」

 

テルマの側にいた老人の女性、ヒサラがそう続けて言った。

 

西の島の守護武者。

こちらの島の守護武者同様、西の島の王と呼ばれる人を守る役目を担う人達。

この島に来るのは何十年ぶりか、何故そんな珍しい向こうの守護武者がこのエンリカへ来たのだろうか。

普通は武将のいる都へ向かいはしないだろうか。

 

「ここは隠れ里エンリカか」

 

一人、数人いる西の守護武者の一人がエンゼ達にそう聞いてきた。

…声からすれば、……女性…と思われる。

その女性?の守護武者へ長老が一歩前へ出て返答した。

 

「さよう、…して何用かな?」

 

あくまでもいつも通りの顔で、けれど警戒するように長老は西の守護武者へ質問をした。

…すると、西の守護武者は先程よりも低い声で一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……この里に"(みこ)"がいるだろう?…"巫"は何処にいる?」

 

 

"(みこ)"は何処だと…そう言った…―――――

 




…ということで第二話になります。
…いかがでしたでしょうか?(・・;)
なんとか今月中にもう一話出せてよかったです…!

今回も文にするのに苦戦しました。
…日本人としてそれどうなんだろ、自分;;;←
…もしかしたらこっそりと直してる、かもしれないです。(その際は一応追記でこちらに記入しときますね)

で…ですね、今回人物とか出てきたので、ちょっと補足的なものを書いておきます。
ただ里の人達(モブ)なので簡単にですけど。


〇隠れ里エンリカの人達
・長老…名は『クニヤス(邦靖)』。エンリカの長。
いつもニコニコ、優しいので里の人達から愛されてる。でも怒ると怖い…という話である。
両親、身寄りのいないエンゼを引き取り共に暮らしている。もちろん血は繋がっていない。

・カルハ…里の肝っ玉おばちゃん。皆のお母さん。
料理が得意で、夕食は必ずこの人が作っている。
アルマの世話好きな所はこの人の影響だったりする。

・テルマ、ヒサラ…里の住人。中年の男性がテルマ、老人の女性がヒサラ。


…です。

この用語…というか人物(モブ)紹介はこの先も出てきたらちょこりと書くので、もしたまってきたらそのうちにまとめて出します。(まだ先の気がする…)

またしても後書きが長くなってしまった…;
えっとですね、次回ですが今月は厳しいので来月に出させていただきます!
ちなみに次の第三話も序章ですが…一応序章はそれでラスト…の予定です。

それでは…ここまで読んでくださりありがとうございました!(*´v`*)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 社の導き

―――……この里に"(みこ)"がいるだろう?…"巫"は何処にいる?

 

 

"(みこ)"…?

 

里の者達は皆口々にその言葉を言う。

聞き慣れない言葉、聞き慣れぬ人の呼び名であったから。

だからこそ、この里にいる?とんでもない。

そんなヤツなんて聞いたことないし、いない。

そう彼らは同じ事を思う。

 

「…はて、そのような者はおらんが…。

お主、ここと別の里を間違えてはおらぬか?」

 

長老も同じく思い、里の代表として守護武者に問い掛けるが、

 

「隠そうとしても無駄だ、調べは付いている…。

(みこ)の命を頂戴する為に来たのだからな」 

 

「…!」

 

「い、命じゃと…!?」

 

「どういうこと?!」

 

里の皆はざわざわと騒ぎ始める。

命を?何故?冗談じゃない!!

数人がそう守護武者達へ叫ぶ声も聞こえてくる。

そんな中で女性?の守護武者はその被り物の下で笑っているのだろう。

楽しそうな声で言い放つ。

 

「そうだ、我が主の命により東の島の巫を殺せとの御達し。

…その命を果たす、…さぁ!巫をこちらに引き渡せ!」

 

彼女のここにいるという自信のある声に一瞬皆びくっと体を震わす。

何を根拠に、そして何の為にこのような事を言うのだ。

エンゼは彼女に対してそう思った。

 

「ふ、ふざけるな!!命を頂戴するだと?!

馬鹿な事を言うんじゃない!!」

 

「そうじゃそうじゃ!第一にこの里に巫などおらんわ!」

 

「そうさ!

それにいたってあんた達に言う義理はないよ!」

 

周りの人は口々に言い放つ。

誰も"巫"など知りはしない、そのような名は聞いたことがない。

けれどもしここにそんな者がいたとしても、もしその者の存在を知っていたとしても…誰が教えるものか。

 

そんなエンゼ達に何を思ったのか、突然高らかに笑う守護武者。

そして、

 

「ほぅ?"巫"を庇うか。

 

 

ならば…………仕方あるまい!!」

 

……突如彼女が己の背に背負っていた大きな大きな武器を、……長老へと向けた。

 

「じっちゃん!!」

 

叫んで走るけど、彼には間に合わない。

このままでは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ガキンッッッ!!

 

 

 

「っ!!」

 

「…ほぅ」

 

「っ!…アルマ!!」

 

間一髪、アルマが大刀で長老に向け振り降ろされた守護武者の武器を受け止めた。

それを見てエンゼは叫ぶ。

 

「ふっ、お前のような者が我がランスを受け止めるとはな」

 

「あら…そう、です……かっ!!」

 

「!」

 

力を思い切り込め、アルマは守護武者に向かって大刀を風の斬る音を立てながら振り回し距離を開ける。

 

「アルマ…」

 

「長老様、ご無事で?」

 

「…おぉ、お主のおかげでのぅ」

 

長老が無事である事を確認して安心した顔をし、けれど次の瞬間アルマは鋭い目を守護武者に向けた。

それを彼女は、

 

「ふっ、面白い…」

 

自分の攻撃を受け止め、更に距離を開け、そして今自分へ睨みつけてくる。

そんなアルマにニヤリと笑う彼女に里の皆も、長老も、エンゼもアルマ本人も薄気味悪く感じた。

 

それから、また突然守護武者の手が上へと上げたかと思うと、

 

「どうやらこやつらは"巫"を隠すつもりのようだ!しかもいないと吐かしている!

 

 

 

…いないと嘘を申すならば、皆切り刻むのみ!」

 

 

その言葉を待っていたと言うように、数人いた守護武者が一斉に動き始め、

 

「ザシュッ)うわああぁっ!!」

 

「ガッ)ぎゃあぁっ!?」

 

里の者を次々と斬りつけていく。

そんな光景を目にし皆は次々と逃げ回るが、それを逃さぬとばかりに追い掛けては斬っていった。

 

「やだぁぁああ!!」

 

「!」

 

エンゼはまだ幼い子供が斬られそうになっているのを目にし直ぐに動く。

 

「やめろおおおおおっ!!」

 

「っ!?」

 

アルマのように武器を今持っていないけれど、それでも黙ってはいられない。

皆を守りたい。

エンゼはその一心で守護武者にその身で向かってタックルする。

 

運良く、鎧が重かったのかバランスを崩した守護武者はそのまま倒れた。

その間にエンゼは子供に走り寄り、

 

「無事か?!」

 

そしてその手を引き守護武者から離れながら声をかける。

子供は恐怖と安心が入り混じったような顔で、けれどその目に涙をぽろぽろと流す。

 

「エ、エンゼお兄ちゃぁん…っ」

 

「泣くな!

…大丈夫だ、俺が何とかするから。

だからお前は皆と一緒に逃げろ!」

 

「で…でも何処に…」

 

あ、エンゼは瞬間何処に逃げればと考える。

けれどここは山々の中にある里、入り口は既に守護武者がいるせいで通れはしない。

どうすれば…。

 

 

 

 

 

「…っ!長老様!皆と共にお逃げください!」

 

と、突然皆よりも前に出たと思えば、アルマは守護武者に攻撃しながら長老や皆に聞こえる様に叫ぶ。

 

「な、何をする気じゃ!?」

 

「私が出来るだけあの人達を引き付けます、そのうちにお逃げくださいませ!

あの者達、私達を生かす気は元よりない…皆殺しにする気でいます!!」

 

アルマの言う通りだろう、じゃなければ敵意もなく逃げ惑う者達まで斬ろうとはしないだろう。

そんな彼女の言葉に促されたか様にエンゼは子供の手を引きながら彼女に近づき、

 

「…俺も残る!」

 

「なっ!?」

 

自分も残ると言い放った。

 

「今武器も持ってないあなたに何が出来るの!?

エンゼは長老様と一緒に逃げなさい!」

 

彼を心配したからだろう、彼女はいつもと違い声を荒げて言う。

実際に武器も持たぬ彼には何が出来るのか。

それは分からない、…けれど。

 

「一人でやるって?ふざけんなよ!

たった数人って言ったってアルマ一人でなんて無理に決まってる!

武器がない?ないならないで…」

 

近くに立て掛けてあった、本来は狩猟に使っている弓と数本の矢をを手に持ち、

 

「これで戦う!俺は魔術も使えんだ!

だから頼りないかもしれないけど、…でもアルマだけではやらせねぇ!」

 

「……」

 

扱いは自分の武器よりは下手だがまだないより良いだろう。

エンゼは弓矢を彼女に見せながら、自分も戦うのだと、一人ではやらせないと強く自分の意思を言う。

 

こうしてる間にも皆が殺されてしまう、ならばせめて自分に出来ることを、せめて皆が逃げる為の時間を。

 

「……、分かった。でも無茶はダメよ?」

 

「分かってるって!

じっちゃん!パゥリを頼む!」

 

アルマはため息をつきながらも少し笑って言う。

それにエンゼも答える様に笑って、

 

「落ちろ!ライトニング!」

 

長老に子供を頼むと直ぐ様魔術をこちらに向かってくる守護武者達を来させない様放つ。

魔術に当たりかけ避ける者に今度はアルマが大きく大刀を振り回し後退させる。

 

「…長老様、さぁ今のうちに…!」

 

「……、分かった。

じゃが二人共…無事でいるのじゃぞ!」

 

「「もちろん!/です!」」

 

 

そして長老は「皆社へ!社へ向かうのじゃ!」と叫んでいた。

そうか…社ならば。

逃げ道はない、けれどもしも助かる可能性があるとすれば…。

 

長老の声にエンゼはそう思いつつ、

 

「風よ、切り刻め!ウインドカッター!!」

 

「ぐっっ!!」

 

「刃魔一閃!!」

 

「ぐあぁあっ!?」

 

「くっ、この…!」

 

「アルマばっか見てっと怪我するぜ!」

 

「!」

 

大刀を振り回し、魔術を放ち、弓矢を放つ。

少しでも時間を稼ぎ、皆が社までつける様にとどんどん攻撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

が、

 

「断撃波!」

 

「うわあぁあ!」

 

「よし!」

 

守護武者にある程度のダメージを与えられた。

けれど、

 

「我が騎士達に攻撃したくらいで、笑わせるな」

 

「!」

 

 

 

―――ガキンッッ!!

 

 

 

「アルマっ!……ライトニング!」

 

「…ちっ」

 

あの女性?の守護武者がアルマへ攻撃。

直ぐに離そうと魔術を彼女に向け放ったおかげで距離を開ける事が出来たが…。

 

「あの人、厄介ね…」

 

「あぁ…」

 

エンゼはちらりと矢を見る。

もう残りも少なく、魔術も使ってだいぶ疲れてきている。

アルマも前へ自ら出て戦ってる。

体力はだいぶなくなっているだろう。

 

「エンゼ!」

 

「分かってるって!

 

 

 

……ウインドカッター!!」

 

風の刃を彼女に放つ。

先程から見ているとどうやら彼女は魔術への耐性が低い気がする。

先程からずっと当たらぬ様にと避けているから。

そして思った通り彼女は魔術を避ける。

 

「今の内よ!早く社へ向かいましょう!」

 

「ああ!」

 

その隙に二人は社への階段へ走る。

直ぐにこちらに向かって来るかもしれないが、あの鎧で階段を登ってくれば体力も多少削れるはずだ。

そう信じて、もう既に無事な者は全員いるはずの社へ駆け出した。

 

「ふっ…、おそらく逃げ道はない。

それを分かっていていながら……馬鹿な奴らだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――社(ヤシロ)

 

 

 

「「長老様!/じっちゃん!」」

 

「エンゼ!アルマ!無事じゃったか!」

 

長い階段を登り社に着くと里の皆が社の扉の前に集まっていた。

…これは、まさか。

 

「じっちゃん…やっぱり…」

 

「…見ての通りじゃよ。

こんな非常事態じゃ…もしや入れるのではと思ったが…、やはり無理であった…」

 

皆が社の前で集まっていたのは、やはり社の扉が開かないからだった。

ずっとずっと開く事のない社の扉。

二人も里の者達もそれは分かっていた、…分かっていたけれど。

この里から逃げられる場所はあまりない。

ここは既に山頂付近…、そして下からはあの守護武者がこっちに向かって来ているはず。

 

「わしらは…ここで殺されてしまうのか…」

 

「じっちゃん…」

 

「この里を、皆を守り過ごしてきてこんなことは初めてじゃ…。

何故…あの者達はこの里を…」

 

……あの守護武者が何故ここに来たのか。

ここは山奥で隠れ里と言われている里、東の守護武者とは言えども、来る事は大変であまりないのだと言うのに。

ましてや西の守護武者ならばこの場所を知ったとしても簡単に来れるはずもない。

 

「長老様…一つお聞きしても?」

 

アルマが控えめに長老に聞く。

 

「あの者達が言っていた"(みこ)"とは…一体何のことなのでしょう?」

 

……そう。

守護武者達は、あの女性は"巫"は何処にいると聞いてきた、そしてそれについて調べは付いていると…。

 

アルマの言葉を聞きエンゼも長老を見て答えを待つ。

けれど、

 

「…すまぬ。わしにも分からんのだ…。

前里長…わしの父であれば分かったやもしれんが…」

 

長老も分からないことだったらしい。

確かに今までそんな言葉も話も聞いたことがなかった。

もしもこのエンリカの里にいるのならそんな話の一つくらいあっても可笑しくはないのに。

それなのに何故?里の者も長老ですら分からないことを何故彼女らは知っていると言ったのだと疑問ができた。

 

…と、

 

 

 

 

―――ガシャン…ガシャン…

 

 

 

 

『!』

 

社の外、階段の方から鎧の音が響き渡る。

予想通り守護武者達がここへ近づいてきているのだろう。

さてどうする…。

 

その音を聞いたからか、皆が扉をどんどんと叩き始めた。

 

「お願い!開いて頂戴!!」

 

「くそーっ!なんで開かないんだよ!」

 

「ここで皆死ぬのか…っ」

 

「まだ死にたくないよ、ママ~っ!」

 

「 ああ…神よ…!」

 

色んな所から聞こえてくる苦痛の叫び声。

もし、もしもこの扉が開けば…この不思議な社なのだ…、皆助かるかもしれないと言うのに!

エンゼの心に悔しさが込み上げる。

助かるかもしれない、けれどこの扉をどう開ければいいのだ。

自分に何が出来る?武器もないのに…。

 

「…お…ん、…エンゼお兄ちゃん…っ!」

 

「…!パゥリ?」

 

近づく音に焦ってしまったせいかその声に気付かず、ハッとなる。

下を見れば先程助けた子供、パゥリがいた。

…その手には。

 

「エンゼお兄ちゃん、これ…」

 

「!

俺の武器?…パゥリ、お前…」

 

エンゼの武器が、大扇子があった。

目を見開き驚きながら自分を見ているのに気が付き、パゥリは話し始めた。

 

「あのね、皆と逃げてる途中で長老様の家の前に置いてあったのを持ってきたの。

エンゼお兄ちゃんの大事な武器だって前に言ってたから」

 

「…!」

 

「これ、お兄ちゃんの大事な武器なんでしょ?」

 

小さな子供には重いし逃げるのに階段を登ったはずなのに。落とさぬものかと、こんな状況で怖かったはずなのに必死にここまで持ってきてくれたのだろう。

よく見れば手が赤くなってしまっている。

 

エンゼはパゥリに合わせて屈むと、武器と彼のその手をそっと取る。

 

「…ありがとな」

 

そう言って笑いかける。

それに少しだけパゥリが安心したように笑ったのを見てから、エンゼは社の扉の前に走って皆に届く様に叫ぶ。

 

「皆退いていてくれ!

俺がその社の扉を壊してやるっ…!!」

 

その言葉に扉から離れる皆を確認してから、

 

「行くぞっ!!魔神風!」

 

扉へ攻撃する。

けれど放たれた衝撃波は当たらない。

 

否、

 

「…?!消えた…?」

 

当たる手前でまるで何もなかったように消えた。

その扉を壊させまいと、"何か"がその前に立ち塞がっているかのように、消えたのだ。

 

「っ!ふざけんな!

なんで…!なんでだよ!」

 

何度も何度も攻撃する、しているのに社の扉は壊せない。

 

「俺は…!」

 

それでも何度も何度も繰り返す。

 

「皆を…!」

 

何故なら、

 

「助けたいんだ!!」

 

         ――――……‥‥

 

里の皆を…大切な皆を…守りたいから。

殺されてしまった者達のように、これ以上皆を殺させない為に、その一心で。

 

既に守護武者達と戦った事で体力も魔力も削られている。

彼の息は上がっていた。

 

「エンゼ、これ以上は…!

あとは私がやってみる、だからあなたは」

 

「いい、俺が…俺がやる」

 

「エンゼ!」

 

ハァハァと息を吸って辛そうな彼を見てはいられない。

アルマはそう思って彼へ声をかけたが、彼はそれを拒んだ。

それでも自分がやると言って。

 

「…俺がやる。

…アルマ、お前は…あいつらが来ちまった時の為に備えててほしい」

 

「……、…分かった」

 

こうなったらきっと聞かない。

それが分かっている彼女だからこそ分かったと…その顔は納得していないけれど頷いた。

 

「……ありがと」

 

そしてエンゼはもう一度武器を構え、

 

「…皆を助けるんだ…、だから…壊れろよ!!」

 

再び攻撃しようとして…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――…歌え

 

 

 

 

―――…歌え、我が力…後継…よ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「……エンゼ?」

 

彼がが大扇子を構え扉を見たまま動かなくなった。

あれだけ声を上げ攻撃しようとしていたのにと不思議に思いアルマも皆も声をかける。

 

 

 

けれど…彼はそんな皆の声が……耳に入ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……、……〜♪…〜〜♪」

 

『…っ!?』

 

彼は、エンゼは…無意識に声を出し口ずさむ。

聞き覚えのない唄を、歌詞のないメロディーを。

 

何故だろう。

エンゼはただ不思議な気持ちが心の奥底から溢れてきた。

 

これは…。

 

 

 

 

 

「…〜…♪」

 

 

 

 

 

里の者達は初めて聞く唄に驚きを隠す事が出来なかった。

…初めてであったのだ。

彼が歌う事が。今まで唄というものさえ知らなかったはずなのに、彼が歌っている事が。

 

 

 

そんな中で状況が突然変わったのに気が付いたのはアルマだった。

 

「…!…ち、長老様っ!あれを…!!」

 

「な、なんと!?と、扉が…開いていっとる…っ!?」

 

固く閉ざされ開くことのなかった社の扉が……ゆっくりと、ゆっくりと…。

 

 

 

 

 

―――キィィイイ…

 

 

 

 

 

開いていたのだ。

 

「…!…まさかあの男が?」

 

おそらく異変に気付いたのだろう、ガシャンガシャンと音を立て、他の者を置いて女性?の守護武者が一人社へ来てその光景を目の当たりにした。

 

状況は更に変わっていく。

 

扉が開き切る前に"何か"が社の中からエンゼに向かって、光を纏いながら飛んでいった。

 

「!」

 

彼の前にふわりと浮きその場に留まるその光は優しかった。

眩しい訳でもなく、けれど暗く淡く光っている訳でもない。

ただただ優しい、そう思わせる様な光。

 

その光へエンゼはそっと手を伸ばす。

けれど光は意思があるかの様にその手をふわりと避け、自ら彼の首元に飛んでいくと…ゆっくりとその光を消していき、そして光が完全に消えその首元を見れば…。

 

「…これ、って……?」

 

いつの間にか丸みのある、けれど何処か不思議な温かさを感じる石がそこにはあった。

 

「!!

やはり、…あの男が…!」

 

ガシャンと音を立て彼女はエンゼへ向かって武器を構えながら歩き出す。

その音にやっと彼女が、守護武者が来ていた事に里の者達やアルマは気が付き、悲鳴を上げながら彼女から避けていく。

幸い彼女は一点を見つめたままで里の皆を殺す気配はないが…。

 

「…エンゼ」

 

その一点に、彼がいた。

 

「…!お前…もう来たのか!!」

 

「ふっ、何やら騒がしかったのでな。

我のみ先にここへ来た。

…先に来て正解だったがな」

 

「?」

 

彼女の言葉に疑問しか浮かばない。

何が正解なのだ?

 

そして、彼女は武器をエンゼへ向けながら周りにも聞こえるように言い放った。

 

「いないと言っていたが、今この時を持ってお前達は嘘を語ったと証明された!

その男が首元にかけている…"巫"の勾玉、"月詠ノ玉(つくよみのたま)"を持っているのがその証拠!

 

 

 

 

さぁ、"巫"よ!

我が手でその命を消させてもらおうか!!」

 

彼が、エンゼが……"巫"であると―――

 




はい、皆さん覚えてますでしょうか…??
最近リアルでチキン化してる0maruです←え"…
なんか今回だいぶ長くなってしまいました…;
こ、これって詰め過ぎ…ってことですかね??;(;^ω^)
と、とりあえず序章は予定通りこちらで終わります。
…って言って第一章からいきなり戦闘ですけども←
今回も少しだけあったんですけどやっぱり難しいですね〜…、頑張っても分かりにくいしよく分からないしよくわからなi(((殴←


今回もちょろりとモブさん名前出たのと、単語出てきたので簡単補足失礼致します。

▽モブ
パゥリ…エンリカの里の子供の一人。
泣き虫、エンゼお兄ちゃん大好きっ子。

▽単語
月詠ノ玉…読み方『つくよみのたま』。"巫"の勾玉と言われていた。が、現在の所それ以外不明。


…はい、意味不明ですね〜。
というか単語短い、説明短い←
でもまだ謎なモノなので色々と伏せておきます。

また色々長くなりましたがこれにて。
ここまで読んでくださった方々ありがとうございます!
次回も遅くなるかと思いますが、また読んで頂けたら嬉しいです!
…それでは!

*2/9 誤字発見したので直しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章
第一話 "力"


*ワンクッション的な←




…戦闘あります。
少々暴力的な表現あるので、苦手な方はご注意を(><;)





「お、…俺が…”(みこ)”…?そ、そんなわけ…!」

 

エンゼはかなり動揺していた。

自分の身に何が起きた?

自分は今何をした?

あの光が自分の元に来て、そして自分の首元に何かがある。

……”月詠ノ玉”。

そうあの守護武者は言ったが、…これは一体何だというのか。

 

そう考えていると彼女は言った。

 

「言っただろう。

その首元の勾玉、それは”(みこ)のみ”持つもの。

それを持つという事はお前は(みこ)だという証拠。

今更言い逃れは出来んぞ」

 

「だから俺は…!!」

 

「問答無用!!」

 

「……っ!!!」

 

女性?の守護武者は一気に詰め寄りランスを振り上げた。

それに対しエンゼは大扇子を閉じ受け止めようと構える。

 

…が、

 

「はああああっ!」

 

「!」

 

受け止める前にアルマが二人の間に入り、女性?へ大刀を大きく振り回した。

ちっと舌打ちをしながら彼女は後ろに一旦下がる。

 

「エンゼ、あの人はあなた一人で相手しちゃダメ。

あの人の武器の攻撃は一つ一つが重いから」

 

「…ああ」

 

里での戦闘で彼女は女性?と武器と武器とで交わってる。

だからこそ一撃の重さが分かる。

エンゼは素直に頷いた。

 

それを見てふっと笑う女性?。

 

「二対一か。

二人いようが我に勝てると思えんが」

 

明らかに馬鹿にしている。

否、力の差は明らかだ。

彼女にとって一人だろうがが二人だろうが関係ないのかもしれない。

 

それでもここには今、里の皆がいるのだ。

いずれ女性?を追ってこの場に他の守護武者達も来てしまう。

……その前に、

 

「そんなの、やってみなくちゃ分からないわ!…エンゼ!」

 

「ああ!…風よ、切り刻め!ウインドカッター!」

 

地面を蹴り、女性?へ向かうアルマ。

彼女を援護する為に風の刃を放つ。

 

「…また魔術か」

 

不快そうな声で一言言い、女性?はランスを構えたと思えば、

 

「…旋風槍!」

 

「「!」」

 

風には風を、ということか。

振り回した彼女のランスから放たれた真空波がエンゼの放った風の刃を相殺した。

それと同時に前に素早く前進。

 

「!」

 

「…瞬迅槍!」

 

「っ!」

 

アルマへ攻撃を仕掛ける。

アルマはそれに何とか受け止め、そしてまた押し返した。

けれど彼女の攻撃は止まる事はない。

何度も何度もアルマに仕掛ける。

 

「…ライトニング!」

 

「!」

 

雷を落とし距離を置かせようとしても直ぐにまた前進してくる。

 

おそらく分かっているのだ。

二人は疲れているのだと。

数人いた守護武者達を二人で相手していたのだ、体力がなくなっているのは無理もない。

それが分かっているからこそ彼女は魔術を放たれようが、大刀で攻撃されようが、先程のように様子を窺うなどせず反撃に出るのだ。

 

「っ、くそ…!魔神風!」

 

「はぁっ!断激波!」

 

「ふっ、当たると思うか?」

 

疲れた二人の攻撃は明らかに威力が落ちている。

それではどんなに攻撃しても意味がない、躱されてしまう。

 

「…はあっ!」

 

「なっ…!きゃっ…!」

 

「!アルマ!!」

 

ランスを大きく横へ振り回すと、そのままアルマを吹き飛ばす。

吹き飛ばされた衝撃でアルマは地面に叩きつけられた。

体の限界が近いのか、叩きつけられてしまった体が上手く動かないようだ。

地面に手を付け、力を入れようとしているのに入らない。

 

エンゼは彼女に駆け寄ろうとしたが、

 

「よそ見しているとは余裕だな!」

 

「っ!!」

 

鎧の面は女性?の顔を隠している。

けれどそれでも分かった。

 

彼女は”笑っている”と。

 

女性?は容赦なくランスを振り回す。

 

「ぐっ!」

 

上手く受け流そうとしたけれど、…やはり重い。

一つ一つの攻撃が重いのだ。

受けるだけで手が痺れそうで……これを何度アルマは受けていたのだろうか。

戦って、疲れて、それでもなお。

 

「……っ、ライトニ…」

 

「させるわけないだろう!」

 

「かはっ…!」

 

何度も攻撃されそれを受け止めた状態で魔術を放とうとして、彼が予想していなかった事をしてきた。

女性?は両手でランスを持っていた。

おそらくこのランスは重いのだろうと想像していた。

勝手にそうだと思っていた。

 

……そのランスを片手で持ち、…そして左手でエンゼの守りの薄い腹を殴ったのだ。

 

「…っ」

 

「ふっ、弱いな。

我に我が主直々に命じられたから巫というのは皆強いのかと思えば…こんなものか」

 

「がっ!!」

 

腹を殴られ疲れ果てた体は意識が飛びそうな程辛い。

それでも意識を保とうとしていたエンゼに、今度は女性?がその身を手加減なしに蹴る。

 

……一瞬でも意識が飛んだ気がした。

 

彼は仰向けになり、目を細め女性?に視線を向けた痛みに耐える。

まずい、これじゃやられる。

 

「あの小娘もそれなりに我の攻撃に耐えてはいたが、それだけでつまらん。

……ここには年寄りと何もできない女子供だけ。

まぁそんな所に我に勝てる程強い者などいる訳はないな」

 

「―――………」

 

なんだよ、…こいつ。

 

ただその言葉にエンゼは思った。

この女性?の主に命じられてここにきたとは言っていたが…、まさかこの女性?は…。

 

「お…前、は」

 

「なんだ?まだ喋れるのか」

 

もう言葉も話せない程痛めつけたとでも思っていたのか、彼女はエンゼへ目を向けて言う。

 

「お前は………まさか、ただ………戦う、為だけに…皆を」

 

「…、……悪いか?」

 

「!!」

 

エンゼの言葉に、彼女は肯定した。

つまり、

 

「我は強くあらねばならん。

だからこそ強者と戦う。それが我が強くある為に必要な事であり、そして生き甲斐」

 

強くなければいけない。

 

「それを主は分かっておられる。

だからこそ我に命じられる命は主にあだなすやもしれん強者を討ち取るというものばかりだ。

だというのに、この隠れ里にはがっかりだ。

 

……弱者しかおらんのだからな」

 

「…………っ!!」

 

ただ、…ただそれだけの為に、里の者が犠牲になったのか。

巫と、…”(おれ)”と戦う為だけに。

 

「ふざ、けんな…!」

 

そんなことの為に。

 

「お前の、お前の自己満足の為に…!皆を…!!」

 

痛みも忘れて、エンゼは大声で叫ぶ。

何故皆を、家族も同然の皆を。

 

 

 

 

 

けれど………怒りと同時に、それが自分のせいだということも理解した。

 

「…お前が巫だと隠していたからだろう」

 

「―――……っ!」

 

”巫”、そう…自分が”巫”という存在なのだという。

知らなかった。知りもしなかった。

両親は小さな頃にはもういなかったし、そんな話をされた記憶さえない。

違う、両親さえも知らない事だったのかもしれない。

 

だから知らなかった、知らなかったんだ。

だけどそんな理由で、そんな言い訳で…皆が帰ってはこない。

自分のせいで……殺されたのだから。

 

そう他でもない、”(おれ)”のせいで…―――

 

「さて、…下らん話はもういいだろう」

 

女性?はまたエンゼを思い切り蹴り飛ばす。

その勢いで彼の体は蹴った方へ転がった。

 

「か…っ、げほっ…」

 

息が蹴られた瞬間一気に吐き出され、彼は咳き込む。

その間にも足音は近づいているのが分かった。

 

ああ、自分はここであの守護武者にやられて死ぬのか。

嫌だと思うけれど、自分のせいで家族が殺された。

なら…自分がいなくなれば。

そうすれば皆殺されなくてすむだろうか?

(おれ)”さえいなければ…。

 

エンゼは自分を責める。

女性の自己満足もあるけれど、自分が一番悪いのだと、ならいなくなればいうのだと。

そう責めながら、彼に近づく足音を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けれど、…その足音が止まった。

 

そして何故か里の皆のざわめいた声がする。

それに気づきエンゼは視線を上げる。

そこには、

 

「………、……そこを退け」

 

「い……、いや…いやだ……!」

 

(……!パ、パゥリ…!?)

 

そこには必死に小さな両手を広げ、涙を流し、震えながら、けれど女性?へ目を背けることなく立ち塞がるパゥリの姿があった。

 

「もう一度言う、……そこを退け」

 

「やだったらやだ…!…絶対退かないもん!!」

 

「パゥ、リ…!やめろ、退くんだ…!」

 

「やだぁ!!」

 

女性?の言葉のみならず、パゥリはエンゼの言葉すら嫌と拒否した。

そして何処にそんな声がと思う程、彼は叫んだ。

 

「エンゼお兄ちゃん、何も悪い事してないのに…!

なんでいじめるの…?!

お兄ちゃんは僕達守ってくれてるのに!!

お、お兄ちゃんを……お兄ちゃんをいじめないでよ…!!」

 

(………、お前…)

 

怖いはずなのに、泣いて震えて逃げたい。

そのはずなのに。

 

この小さな体で必死に自分を守ろうとするその姿にエンゼは泣きそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、エンゼとパゥリの足元に影が一つ増えた。

それに続く様にまた一つ、また一つと増えていく。

 

そう、

 

「み、んな…」

 

里の皆が二人の前に立っていた。

まるで彼を庇う様に、守る様に。

 

よく見ればアルマの元にも数人傍に駆け寄っているのに気が付く。

 

「…巫を庇う気か」

 

「ここにそのような名の者はおらぬ」

 

その長老の言葉に周りも肯定する様に頷いた。

それに女性は少しばかり苛立った声で、

 

「先程から言っているだろう、今更隠しても」

 

けれど最後まで言う前に長老がそれを邪魔する。

あの優しい、いつもの顔で。

 

「隠すも何も、…ここにおるのはわしらの家族じゃ。

…お主らの探しとる巫ではない、”エンゼ”じゃ。

 

だからの、エンゼよ。

…………自分のせいだと、そう責める事はないのじゃ」

 

「…!」

 

また、…泣きそうになった。

その言葉が、ゆっくりと、じんわりと、心に染み入っていく。

 

知らなかったせいで皆を傷つけた、死なせてしまった。

それなのに。

 

「…何もする気配もなかった癖に、何を今更。

戯言まで言うとは…下らん」

 

「そうじゃな、お主の言う通りじゃ。

わしらはこんな年寄りが多い、だからずっと二人に頼ってしまっておった。

だというのに、わしらはエンゼが巫と聞いて、…この子がいたからと無意識に責めておったのかもしれん。

 

…じゃがの、その子に、パゥリに気付かされた。

……この子は何も悪くない。いつも一生懸命に、わしらを助けてくれた、守ってくれていた大事な家族じゃとな」

 

長老の言葉に、ついに女性?は下らんことをこれ以上いうな!と大きく振りかざした。

このままでは長老に、…けれどまた。

 

 

 

 

―――ガキンッ!!

 

 

 

 

「ちっ!」

 

「……やらせないわよ!」

 

エンゼの時の様に、アルマがそれを受け止め、そして弾いた。

先程まで動けない状態だったはず、それなのに彼女は再び女性?のランスを。

長老は自ら彼女に近づき心配そうに聞く。

 

「お主、怪我は…」

 

「回復術ならあたしにだって少しは出来るからねぇ!」

 

「…ということです」

 

「…そうじゃったな」

 

長老も他の者の皆、カルハが回復術を使えたということを忘れていた。

アルマはその彼女に助けられたという。

 

もう一度カルハへお礼を言うと、アルマは女性?へ向き言った。

 

「あなたみたいな人にエンゼは差し出さないし、やらせもしないわ」

 

それに答えるように里の皆が女性に向けて、そうだそうだ!、出ていけ!など言葉を投げかける。

そんな声にエンゼはこんな状況であるが嬉しいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――本当に俺が”巫”という存在なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――特別な何かがあるのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――お願いだ…、皆を…………助けたいんだ…守りたいんだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――だから、……だから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然彼の心の叫びに、彼の願いに答えるかの様にそれは起こった。

 

「…!エンゼ!?」

 

彼を包み込むような光、その光の元はあの勾玉からだった。

 

(あれ……なんだ?………体が軽い…?)

 

勾玉の力なのだろうか。

エンゼは先程まで動けない程ボロボロであった体の変化に目を見開く。

痛みが消え、体が軽い。

それだけじゃない、…体の中から何か、力が溢れるような…そんな感覚。

 

「…!まずい!…今すぐそこをどけええっ!!」

 

「っ!」

 

しまった…!そう思った時には遅い。

女性がアルマにランスを振りかざす。

 

…けれど、

 

「烈風陣!!」

 

その前にあの風が、つむじ風の様な風が起こった。

否…いつもとは比じゃない、これはもっと大きな、強い風。

その風に後方へ女性は飛ばされる。

今どんな顔をしているのだろうか、女性は一点を見つめ貴様!と叫んだ。

 

そして彼女の前に、ボロボロのまま立てずにいたはずの彼がいた。

 

「アルマ、サンキュな。

…あとは俺が自分でやるから」

 

そう一言彼女へ残して、エンゼは大扇子を広げる。

何が起きたのかは分からない。

先程の光は既になく、代わりに彼がここにいるのだから。

 

…彼の体がほんのりと光っている様に見えるのは気のせいだろうか。

 

「…俺の家族を、皆を傷つけたお前を、俺は絶対に……許さない!!」

 

「戯言を…!!…ここで死ぬがいい!!」

 

女性は苛立つその感情を隠すことなくそのまま突っ込んできた。

何を苛立ち、そして焦っているのだろう。

先程までの彼女とは違う冷静さのない行動にエンゼは驚くも、

 

「魔神風!!」

 

「っ!」

 

近距離での衝撃波、冷静を失っている今の彼女にそれは一瞬の隙を作るのに十分な攻撃だった。

 

「…なっ!」

 

衝撃波をぎりぎり躱した彼女は瞬間目を見開く。

女性が躱している間、その隙に彼女の懐にエンゼが入っていたから。

 

彼女の懐に入ったエンゼはこの好機を逃さない。

 

大きく大扇子を構えると、次の瞬間素早く上へと振り上げた。

 

疾風(はやて)っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――それは激しい、一瞬の風だった。




はい、今回は戦闘の回です!
…ちょっと(…以上に)暴力的な感じで申し訳ないです;;;
あとやっぱり戦闘シーンは難しい;
どう書こうか今回も悩みに悩みました…はいー…。


中途半端に終わってるのは、あとは回想でと思ったからです。
と言う事で、この後どうなったかは次の話でということで!
(もう出来てるので後々出しますです)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 旅立ちの夜 

チュンチュンと鳥達の可愛らしい声が聞こえる社に、一人エンゼはいた。

彼は遂に開かれた社の扉を見つめ、それからその中へと入っていく。

 

ああ、昨日の事が夢だったんじゃないかと、そう思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――昨日回想

 

 

 

激しく一瞬の風。

それは本当に一瞬だけ、けれど激しくその場で渦巻き吹いた風は重たそうな女性?の鎧をも飛ばす程だった。

 

もろに攻撃を食らった女性?は後方は飛ばされ、バランスを崩したのかそのまま倒れた。

ガシャンと音が響く。

けれどゆっくりとその場に立ち上がった。

 

顔の面はその時に外れたのだろう。

彼女の隠れていた顔が露わとなり、今どんな表情をしているのかがはっきりと分かる。

苛立った、怒りが見える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「…ちっ、あの程度の風に…我が」

 

あの程度、そう言える程の風ではない。

明らかに普段とは違う威力の上がった風。

けれど、彼女はなんて頑丈な体をしているのだろうか。

立ち上がり武器を構え、そしてエンゼを睨みつけている。

 

お互いに睨みながら、次の一撃をしようとじりじりと構える。

 

けれど、その次の攻撃をすることはなかった。

…何故なら、

 

「…隊長!!」

 

「「!」」

 

女性の仲間が現れたからである。

加勢でもする気かと思えばそうではなく、

 

「隊長、大変で御座います!」

 

「…なんだ」

 

「東の守護騎士がこちらに向かっているとの事です!!」

 

東の…、守護"騎士"。

向こうでは守護武者をそう呼ぶのかとエンゼは思った。

そして守護武者達がこちらに向っている、エンゼ達のよく知る東の守護武者が。

それを聞いて隊長と呼ばれた女性は更に顔を歪ませた。

 

「ちっ…予想よりも早く動いたな。

……、…仕方がない、撤退する」

 

「…はっ!」

 

そして次に出た言葉は…『撤退』であった。

けれど彼女は内心ではしたくないのだろう。

目の前に標的である巫がいるというのに、それを逃す事になるのだから。

女性は苛立つその心も、表情も隠す事なくそのまま素早く階段に向かい歩いていく。

 

エンゼ、そしてアルマ達里の者は少しだけホッとする。

撤退と言う事はこれ以上何もしてこないと言う事だから。

 

けれど女性は階段を降りるその前に振り向き一言。

 

「次は必ずお前のその命をもらう。

……覚悟しておけ、巫よ」

 

「…!」

 

そして彼女達西の守護武者は里から去った。

 

それから、無事!かと声を皆へかけながら東の守護武者達が現れたのはその数分後のことであった。

 

 

 

               回想終了―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の守護武者達が来たおかげで今日をまた迎えられた事に本当に感謝している。

もちろん何があったのかと聞かれたけれど、彼らはとにかく無事で何よりだと言ってくれた。

本当にそうだと思う。

………犠牲はあった、それでも…皆無事で良かった、と。

今も警護をすると残っている守護武者達に後々またお礼を言わないととエンゼは思う。

 

そういえばとふと彼は昨日のあの場面を思い出す。

 

あの場面、それはあの女性に再度立ち向かった時の事。

今思えば、よくあれだけの力を出せたと思う。

動けないくらいボロボロで酷かったのに。

 

「…この石のおかげ、なのか」

 

社の中から現れた光から出てきたこの勾玉。

不思議な温かさを感じる。

そんなこの石がエンゼの願いに応えたように光出し、そして彼の体を再び立たせた。

 

「……、ほんと何なんだろうな。

…あいつ、巫の勾玉とか言ってたけどさ…」

 

本当に不思議な石だ。

けれどこの石のおかげでなんとかあの守護武者、彼女達は騎士と言っていたが。

…彼女達を退けられた。

まぁ自分だけの力ではない、アルマや他の皆、守護武者達がエンリカの里に来てくれたおかげだけれど。

 

それでもこの石のおかげで持ち堪えられた、戦う事ができた。

石に、など変ではあるけれど、この石には感謝してもしきれないな。

そう思う。

 

 

 

 

 

 

社の中に入ると今まで開けたことがなかったからだろう、少し埃っぽかった。

けれどそれだけで、あとは不思議なくらい綺麗で。

木で出来た建物だ、何年もあれば多少なりとも壊れたり、木が虫に食べられたり腐ってたり、何かしらあってもおかしくないのに。

 

それから中に進んでいくと目に入ったのは大きな石版。

…いや、石版というよりも石に彫られた絵と言った方がいいかもしれない。

 

「これ…誰だ?」

 

描かれていたのは祈りを捧げているような姿の一人の男性。

自分達が着ているような服に似ているようで似ていない、何処か幻想的に見える服装。

男性の周りには何を表しているのか分からないが、七つの丸いもの。

 

そして、

 

「……。……これって」

 

男性の首元には、今エンゼも付けている石らしきモノがあった。

 

「…そうか。

…この人が……"巫"」

 

彼の言葉はおそらく正しい。

この勾玉は巫のみ持つもの、そう女性は言っていた。

そうなれば自ずと男性は誰か答えは出てくる。

 

そしてもう一つ、

 

「社の中に今まで入れなかったのは…これがあったからだったのかもな」

 

巫の勾玉、"月詠ノ玉"。

それを隠す為、守る為だと。

 

けれど何故自分に開ける事が出来たのだろう?

疑問が残る。

分かるとすれば、あの口ずさんだ唄だろうが。

 

歌うだけで開くものだろうか。

そんなに何か力を持った歌だったのだろうか。

ならば、何故自分にそれが出来たのだろうか。

 

結局何故自分に、と戻ってきてしまう。

 

「はぁ…考えても仕方ねーか…」

 

エンゼはため息をした。

流石に分からないことだらけ。

考えるだけ無駄かもしれない。

 

とにかく何か疑問の答えになるものはないかと彼は石版の周辺を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社の中を物色し始めてからしばらくして。

エンゼは古い本のような、紙を束ねたモノを発見する。

何の本だろうかと開いたのだが…、

 

「…………………………読めない」

 

昔の字なのか、全くエンゼには読めなかった。

 

けれど何かしら巫について書かれているかもと彼はその本を持つ。

…他にないかと思ったが、予想してたよりもこの中には何もない。

エンゼはもう出るかと言って里に向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いたいた!」

 

「…?アルマ?」

 

階段の方から彼女の声が聞こえ見てみれば、こちらに駆け寄ってくる姿が目に入った。

 

「もう!何処にもいないから探したのよ?」

 

「うっ…わりー!ちょっと気になって社に来てたんだ」

 

あははと申し訳なさそうにエンゼは謝れば、アルマは一言くらい言って頂戴!昨日の今日で怪我治ってないんだから!といつもの世話焼きが発動。

けれど、それを言うならアルマもではないだろうか?と彼は心の中で呟く。

 

ふと彼女が手に持っていた古い本を見ているのに気が付く。

 

「これ、社の中で見つけたんだ」

 

「社の中で?

…巫について書かれたものなの?」

 

「…だと思うんだけど、…読めなくて」

 

はいと彼女へ渡すとパラパラとそれを捲る。

けれど彼女にもやはり読めないようだ。

 

挙句に、

 

「…これ、落書きとかじゃないわよね?」

 

「……そう見えるけどたぶんちゃんと言葉になってると思うぜ、……………たぶん」

 

昔の字だと思うのだが、………自信なくなってきた。

アルマはエンゼに本を返すと私も中に入れるかしらと言って来たので、彼はじゃあ入ってみるか?と言ってみた。

 

その流れでまた彼は彼女と共に中へと入る。

けれど先程と変わらず、特に何があると言う訳でもなく、二人はそのまま里に戻る事にした。

 

その帰り際で、

 

「あの石版の男性、どうして祈りを捧げているような姿で描かれていたのかしらね」

 

「え?…分かんねー、どうしてだろうな?」

 

「あの人があなたの前の巫なら、きっと何か意味があると思うんだけど…。

でも気のせいかもね」

 

(祈りを捧げている、…それの………意味。

……意味、あるのか?)

 

さぁ早く戻りましょうと促され、彼は駆け足に彼女を追いかける。

アルマの言葉を、頭の片隅に残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ、じっちゃん?…と、守護武者の…」

 

「おぉエンゼ、アルマ。戻っておったか」

 

「こんにちは、エンゼ殿。アルマ殿」

 

「ただ今戻りました、長老様。

こんにちは、ユアマ様」

 

長老と共に話していたのは守護武者の一人、ユアマという男性。

二人の姿を見て挨拶する。

 

「それでじっちゃん、何かあったのか?」

 

二人の先程の様子、真剣に話していた。

きっと何かあったに違いないと彼は長老に聞く。

すると、

 

「ユアマ殿が先程、昨日の西の守護武者達を見かけたそうでの」

 

「あいつらが!?」

 

どうやら昨日の守護武者達がまだ周辺の森で身を隠しながら彷徨いているらしい。

幸い、ここには東の守護武者がいる。

手出しはしてこないだろうが…。

 

「……」

 

「…エンゼ」

 

「…大丈夫、俺は」

 

狙いは決まっている。

巫であるエンゼだ。

まだ彼女達は彼を殺す事を諦めてはいない。

きっと機会を伺っているのだ。

 

今は安全かもしれない。

けれど、ユアマ達がここにずっといれる訳じゃないのだ。

 

(………俺がこの里にいる限り…、皆は)

 

…彼はこの時、ある決意をした。

それは…、

 

(…俺が、俺がこの里にいなければいい。

…出ていけば、あいつらは俺を追ってくるはず)

 

この里を、故郷を出る事。

ここにいる限り、里の皆を傷つけられる可能性がある。

それでは昨日彼女達を退けた意味がない。

ならば自分を囮にすれば、そう考えての答えだった。

 

そして彼はすぐに実行しようと、長老達に気付かれる前にそれじゃあと言ってその場を立ち去った。

 

「……」

 

その姿を見て、その決意に気付いた者がいるとも知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、否。

既に時刻は真夜中を過ぎた頃。

里の者は皆眠りについている時刻。

唯一起きているのは、ここを警護してくれている守護武者達のみで。

 

エンゼはのそのそと起き上がる。

そして隠しておいた荷物を出し、物音を立てぬ様そっと動いた。

 

(…じっちゃん、……ごめん。

必ず、…必ず戻る。だから今は許してくれ)

 

自分を大事に思ってくれていた長老に心の中で謝る。

何も言わずに出ていくのだ、当然怒る…あるいは呆れるだろう。

それでも今の自分が出来るのとはこれしかないのだと思う。

 

エンゼはそして長老の家から出ていった。

 

 

 

「………必ず、…帰ってくるのじゃよ。……エンゼよ」

 

その姿を、彼から見えない所から長老は見守っていた。

気が付いていたのだ、彼の決意を。

けれど止める事はしなかった。

………止めても無駄と分かっていたから。

 

だから願う、必ず戻ってくる事を。

その願いはエンゼに聞こえることなく、宙にそっと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユアマさん」

 

「?エンゼ殿?こんな時間にどうしたんだい?」

 

「…別れとお願いを言いに」

 

真夜中を過ぎたというのに外に出ていた彼に不思議に思ったが、彼の言葉でユアマは瞬時に理解する。

 

「ここから出るつもりなんだね?」

 

「ああ、……あいつらの狙いは巫。

つまり俺だから。

俺がここからいなくなれば…きっとそれを追いかけて来るはず」

 

「……危険と知りながら、それでも行くんだね?」

 

エンゼは頷いた。

それにユアマはそうかと一言言って、…少しだけ沈黙。

 

そして、

 

「この先の森はおそらく危険だ。西の守護武者達が彷徨いている。

もし行くなら別の所からが安全だろう、…例えば」

 

「…え?」

 

視線の先、そこは社の方だった。

そして彼は驚く、…何故なら。

 

「アルマ…?」

 

社へ続く階段の前に彼女がいたから。

ユアマは少しだけ笑うと、

 

「彼女、ずっと寝ずに外にいたんだよ。

何故かと聞いても言わなかったから不思議に思ったけど……エンゼ殿の言葉で分かった」

 

「……」

 

「エンゼ殿。

………私達がいるまではこの里を守る。

だから安心して…行ってきなさい」

 

「…!

…………、ありがとう。ユアマさん…」

 

ユアマは返事の代わりに笑う。

それを見た後、エンゼはすぐ彼女の待つ階段へ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルマ」

 

「行くんでしょう?」

 

「!」

 

声をかければ、彼女はもうやる事は分かってるというようにいつもの笑顔で言った。

それを見て幼馴染の考えを理解した。

彼女は着いてくるつもりでずっとここにいたのだと。

 

「…ユアマさんが、別の所から里を出た方がいいってさ」

 

「私も同じ事を考えてた。

…だとすればやっぱり」

 

「…ああ」

 

二人の目線は社、…否。

社の山へと向けられた。

 

「この山を……越える」

 

この山は社以外人は立ち入っておらず、何があるか分からない。

魔物が時折現れる事もあった、だとすれば魔物に遭遇はしてしまう確率は高いだろう。

 

「………アルマ」

 

「何?」

 

「…本当にいいのか?着いてきて」

 

確認したかった。

きっと自分は命をあいつらに狙われる、退けてもきっとまた狙ってくる。

危険な目にあうかもしれない。

そう思ったからこそ彼は彼女へ聞いた。

 

けれど今更何をとでも言うように彼女はまた笑った。

 

「私はあなたの幼馴染よ?

どうせ皆が危険な目にあわないように、なーんて思ったんだろうけど。

 

でもね…あなたは一人じゃないの、私が…皆がいるのよ?

少しくらい頼りなさいよ」

 

「―――………」

 

「それにね、あなただけで行かせたらそれこそ危険だわ。

一人で突っ走ってしまうし、…なら私が一緒にいないとね!」

 

「…って!!俺だけだと危険って酷いな!!」

 

「はーい、静かにね」

 

「ボカッ)あたっ!?」

 

少しコントのようなことをして、その後に二人して笑った。

こんな状況でも、それでも笑えるのはきっと"一人ではない"、そう思ったから。

 

そして二人は駆け出す。

社あるこの山を越える為に。

 

 

一人ではない、………………二人で―――




はい、ということで一日で2話投稿しました!
………や、やっと旅立てたー←

ちょっと文才ないので分かりにくいかもですね…気をつけてはいますが…。
もしかしたらこっそりと分かりやすいよう変更してるかもです。
その際はまたこちらに書いて報告しますね。
それでは!次回も頑張ります!(おそらく次回は来月かもですが…;)

*題書くの忘れてたので書きました←…ほんとすみません;;;



*今回の人物と単語↓

▽人物(モブ含む)
女性守護騎士隊長…エンリカの里に現れた守護騎士の隊長。女性でありながら大きなランスを片手で持てる程力がある。
普段は冷静で真面目そうだが、実際は強くなる為に戦う事を好む戦闘狂らしい。

【挿絵表示】


・ユアマ…東の守護武者の一人。正義感のある優しい男性。
…結構感が鋭かったりする。

▽単語
・守護騎士…西の島の王を守護者達の通称。
西では東の守護武者も騎士と呼んでいる模様。

・石版…巫と思われる祈りを捧げているような姿の男性と、その周囲に七つの丸いものが書かれた石の絵。男性の首元には、エンゼが手に入れた同じ勾玉らしきものがある。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 蛍火の洞窟

・・・すみません、待ってないかもしれないですが・・・お待たせしました!
リアルに時間がない・・・時間ほしい;
合間合間で書いてるので意味不明な所もあるかもですが、楽しんでいただけたら幸いです・・・!


エンリカの里を出てから既に約半日が立った。

周りは徐々に太陽の光が差し明るくなっている。

 

「だいぶ明るくなったな」

 

「そうね」

 

夜の暗い中での移動。

社からその先、山の中をここまで進んできたはいいけれど何処まで進んだのか分からなかった。

だが周りが明るくなってきたおかげでやっとそれが分かる。

 

「ようやく半分、って所かしら…」

 

アルマは呟く。

どうやら山の丁度反対に来た所といった感じで、里の姿は見えず、代わりに見えるのは広い草原と遠くに見える人が住んでいそうな村々、そして更に遠くには武将の都フェカロレの特徴的な建物がぼんやりと見える。

 

里から出るのはこれが初めてという訳ではない。

東の島を収める武将の命で、数回エンリカ長老クニヤスと共にフェカロレに行った事がある。

その度にエンゼはよくはしゃいでいた。

もちろん共に来ていたアルマに静かにしてと怒られていたが。

 

「アルマ、・・・これから俺らどうなるんだろうな」

 

「分からないわ。

こんな事初めてで・・・どうなるかなんて」

 

今回の事で自分達がどうなるか分からない。

自分を狙った西の島の守護騎士達はおそらくもう里には手出ししないはず。

自分が里から出たから。

もちろんそれは可能性であって、実際は分からないが。

 

里の事は不安もあるがそれでもそう思って進むしかない。

 

けれど自分達は?

彼らはどうだろうか。

 

予想さえしておらず、里を襲われ、里の者を守る為に自ら出てきた。

ある程度の必要なモノは持ってきたが、長くもっても3日だろう。

 

「考えても仕方ないわ。

とにかく今はこの山を越える事が最優先」

 

「・・・そうだな」

 

二人は再び進み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてからの事。

エンゼとアルマはあれからまただいぶ進んで、あと二時間もあるけば山を下りられるだろうという所だった。

 

「「!」」

 

・・・足音。

自分達の他に足音が聞こえてきた。

距離はまだ遠い。

二人は互いに目を合わせると、木々の裏へと隠れた。

 

微かに聞こえる足音、声、そして・・・ガシャン、という何かの金属音。

 

(・・・まさか)

 

そうエンゼは思った。

その金属音には聞き覚えがある。

・・・つい最近に。

 

見つからぬ様静かにしていると、だんだんと話し声がはっきり聞こえてくる。

 

「本当にこんな山の中にいると思うか?」

 

「知らねーよ。

けどあの隊長が言うんだ、言う事聞いて仕事するしかねーだろうが」

 

「けどさ~、里に”巫”らしき奴が見当たらないからって反対側の山に逃げ込むとか思うか?

普通にたまたま見当たらなかっただけとか」

 

((!))

 

―――”巫”らしき奴。

 

聞こえてきた話し声に二人は驚く。

あの守護騎士はもう里から出た事に気が付いたというのか。

 

(アルマ・・・)

 

(ええ・・・)

 

とにかくここは何としてでも隠れ凌ぐしかない。

今ここでバレたらきっと自分達の命は危うくなる。

 

二人は話し声の主達が離れていくのはじっと待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

守護騎士達の声が遠ざかったのはそれからどのくらい経ってからだろうか。

息を潜め、隠れ、じっとしていた二人はやっと緊張を解いた。

 

「・・・まさかもうバレるなんてな」

 

「そうね、・・・たぶん守護武者があの里にいるから、見つからないようこそこそ隠れながら中の様子見てたのかもね」

 

そうじゃなければこんなに早くバレる訳がない。

・・・里の人がいないと騒いでいたなら、まだしも。

 

そこまで考えて、・・・二人は・・・あ、ありえそうと思った。

 

「あの人達がいたと言う事は他にもいるはずよ。

油断せずに移動しなくちゃ」

 

アルマの言葉にエンゼは頷いた。

・・・けれど、

 

「でも、他にもいるなら・・・違うとこから進んだ方が安全じゃねーか?」

 

「それも・・・そうね」

 

おそらく守護騎士達は比較的に歩きやすい場所を徘徊してるはず。

その成りでは急な斜面や足場の悪過ぎる所は避ける可能性の方が高いからだ。

 

それなら、

 

「俺らはあえてあいつらがいなそうな、危ねーけど急斜面の所とか行くか?」

 

「・・・確かに危険は高いけど、あの人達と会う確率は低いかもしれない。

・・・でも却下よ」

 

「なんで!?」

 

「もしそんな場所進んで怪我したら?

これから先あの人達から逃げるんだとして、ここで怪我でもしたら」

 

「なら・・・どうすんだよ」

 

「それは・・・」

 

どうすべきだろう。

ただでさえこの山に守護騎士がいると分かった、・・・簡単に山を越える事は出来なくなったと言うのに。

かと言え、彼らはこの山に入った事がない。

社のある山だが、社以外この山に入る事はない。

森の中のように何度も足を運んでいればなんとかなったかもしれないが、そうでないのだ。

さぁ、どうすべきか。

 

と、

 

「なんだ?向こうに誰かいるのか?」

 

「・・・!」

 

話し込んで気が付かなかった。

先程とは別の守護騎士の二人組が近くにいたのだ。

 

話し声に気が付いた二人組はこちらに向かって歩いてくる。

 

「・・・エンゼ!」

 

「・・・ああ!」

 

このままでは見つかる、隠れててもきっと・・・。

そう思った二人は、守護騎士とは逆の方向へと一斉に走り出した。

 

「!!あれは・・・!」

 

「本当にいたっ!?・・・お、おい!!見つけたぞ!!」

 

走り出す二人の姿を見た守護騎士達はハッとし、そして持っていた笛のようなものをピーッ!と吹いた。

それが彼らの合図なのだろう。

静かだったはずの山の中が、瞬間騒めき出した。

 

見つかればこうなるとは分かっていたが、二人は走り出して後悔する。

何故なら、

 

「アルマ・・・!この周辺あいつら何人かいたみたいだ・・・!」

 

「え、ええ・・・!気づかなかった・・・これなら隠れていた方が良かったのかしら・・・!?」

 

「いや、それだとこっち向かってきた奴らには見つかってただろ!」

 

判断ミス。

彼らの周辺にはまた別の者達が何人かいたのに気がづかなかった。

笛の音が響いた瞬間に聞こえてきた足音や声は二人や三人ではない、もっといる。

 

今更だが、おそらく彼らも・・・エンゼ達のようになるべく音を出さぬように行動していたのだ。

 

「追えー!!」

 

「必ず捕まえろ!!この際殺してでも構わんとの仰せだ!!」

 

「んなっ!?」

 

「・・・そこまでしてまで”巫”を殺したいってこと!?」

 

聞こえてきた叫び声に思わず驚く。

そこまでして何故?疑問しか湧かないけれど。

 

二人は走る。

生い茂る草木をかき分け、足場の悪い中を走る。

追いかけてくる足音はどんどん増えてくるが、それでも二人は前へ前へ走った。

後ろをちらっと見れば守護騎士達はその手に既に剣を持っていた。

 

「・・・!エンゼ!止まって!!」

 

「っ!」

 

アルマの声にエンゼは足を止める。

後ろを向いていた彼は前に視線を戻し、そして息を呑んだ。

 

・・・崖だ。

 

彼女が止まれと言わなければ危なかった。

きっと気づかぬままこの崖に真っ逆さまだったかもしれないのだから。

 

けれどどうする?

もう後ろからは守護騎士が近づいてきている。

けれどもう逃げ場はない。

 

「エンゼ・・・ごめん、私が考えなしに走ったせいで・・・」

 

「ちょっ・・・アルマが謝ることないって!

それにまだ手はあるはず、だから諦めんなよ!!」

 

「エ、エンゼ・・・」

 

諦めた表情になっている彼女に活を入れるように、彼はそう言った。

まだ、まだ何かあるはず。

考えろ、考えろ!

エンゼは頭をフル回転させ考える。

 

足音はもうすぐそこまで聞こえてきていた。

 

 

 

 

―――・・・ふわっ

 

 

 

 

「!」

 

崖に見えた何かに、エンゼはじっと目を凝らし始めた。

・・・なんだ?

 

「やっと追いついた!!」

 

「!」

 

ついに守護騎士は二人に追いつき、そして剣を構えた。

 

「さぁ、観念しろ。

お前らはここで死ぬんだ」

 

「そ、そんな簡単に死ねる訳ないじゃない!!」

 

「ふっ、こんな状況でか?」

 

「・・・っ」

 

この場にいる守護騎士は十数人いるだろう。

ここは崖、もう逃げ場がない中で生き残るには・・・。

アルマは考えてももう何も出ない。

ただエンゼへの謝罪の気持ちしかない。

 

と、急にアルマの腕が引かれた。

 

「エ、エンゼ!?」

 

「だーかーら!諦めんなって言っただろ?」

 

彼女の腕を引いたのは他でもない、エンゼで。

にっと、彼は笑った。

 

「諦めるな?はっはっはっ!

お前の頭は馬鹿なのか?ここは諦める所だろう!」

 

そんな声が聞こえるが、エンゼはその笑みを変える事はなかった。

それに気に障ったのか、一人の守護騎士が二人に向かって走り出す。

 

その者に対抗しようとアルマが大刀に手をかけようとして、

 

「・・・アルマ!飛ぶぞっ!!」

 

「・・・ってえぇ!?ま、待ってエン・・・っ」

 

「・・・なっ!?」

 

エンゼは掴んでいたアルマの腕をまた引っ張り、そしてあろうことか・・・崖へと飛び込んだ。

 

「うそおおおおぉぉぉ・・・っ!?!?」

 

まさか飛び込むとは思わなかったアルマはもう叫ぶしかない。

そんな二人の行動に守護騎士達もただ驚くしかできなかった。

 

けれど直ぐさま崖のぎりぎりの所まで来て、守護騎士の一人が下を覗き込んだ。

既に二人の姿は小さくなっている。

 

「・・・、・・・ふっ。

逃げられないと分かって、自殺行為をしやがったか」

 

もう助からないだろうと考えたその者は一言言った。

かなりの高さのこの場所は、飛び込めばもう助かる訳がない。

 

「・・・さぁ、隊長に報告するぞ」

 

「え・・・?た、隊長は『殺してでも連れてこい』と」

 

「この高さではもうあいつらは死んだも同然。

それに下を見ろ、あの森の中あいつらの死体を探すのはかなり時間を食うだろう。

ならばこの事をそのまま隊長に伝えればいい、きっと隊長も良くやったとおっしゃるだろう」 

 

何処からそんな自信が出ると言うのだろう。

一人の守護騎士はそう思った。

けれど強引に戻るぞという彼に従い、その場から離れていく。

 

その胸に一つの疑念を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、・・・てて」

 

「・・・~っ!エンゼ!!いきなり飛び込むなんて・・・何考えてるのよ!!」

 

「いでっ!?」

 

そう疑念を持った守護騎士は正解だった。

何故なら二人は生きている、無事だったのだから。

 

無事だったエンゼに、同じく無事だったアルマは少々目に涙を溜めながらエンゼを一発殴った。

 

「いってーな!

無事だったんだからいいじゃんか!」

 

「そうね、そうよね!無事だったわ!!

でも一言言わせてもらう・・・、ちゃんと言ってからこういう事はしなさい!!」

 

「言ったじゃん!」

 

「もっと事前に!!

あなたはいつも、いきなりこういうことするからこっちは身心が持たないのよ!」

 

そしてもう一発。

 

彼らは無事だった。

何故なら、エンゼには見えたから。

薄っすらと、けれどそこにあるのを。

 

「それにしても・・・よく分かったわね。

このつる植物があるって」

 

「ん?あぁ、なんか薄っすら見えたんだよ。

なんていうか、こう・・・ふわっとした光のおかげで」

 

「ふわっとした??」

 

沢山生い茂るつる植物。

少量ではあの崖の高さから落ちても無理があるが、二人の目線にあるのは、自分達が知るつる植物とは別物。

量が多い、・・・そして・・・つるの太さが・・・かなりあるのだ。

・・・自分達の腕くらいはあるんではないだろうか?

けれどその割にゴムのように弾力がある。

本当に・・・これは自分達のしるつる植物か?

 

・・・とにかく二人はそのつる植物があったおかげで無事だった。

 

「・・・見えたというのは分かったけど、そのふわっとした?光って何??」

 

「んー・・・上からは見えてたんだけど、・・・ないな」

 

「あのね・・・」

 

完全に信じてない目をするアルマ。

 

「・・・信じてないだろ!

本当にふわっとした感じの光だったんだってば!」

 

「ふわっとって・・・あ、これみたいな?」

 

「あっそうそう!そんな感じのひか・・・り」

 

「「・・・え?」」

 

二人の目の前にふわりと飛んできた何かに、思わず同時に声を出した。

 

それは光。

けれど何処か儚い、淡い光。

ふわふわと空中を漂うそれは一つだけではなかった。

 

その光が飛んでくる方へと徐々に向ける。

すると、そこには。

 

「あれって」

 

「・・・洞窟?」

 

淡い光で満たされた、『蛍火の洞窟』という後にそういう名と知る、小さな洞窟があった。







・・・どうでしたでしょうか?
かなり意味不明ですね、うん。

とりあえずやっと三話まできましたー。
次も遅くなるかもですが頑張りまっす!!(><)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 洞窟の案内人

・・・も、ももも申し訳ありません・・・;;;
あっという間に約四か月経ってましt(((
待ってる方いないかもですが・・・大変、たいっへんお待たせしました!
やっと四話になります・・・!
前回もですが、こちらも合間合間で書いてるので意味不明な所もあるかもです・・・。
ですが楽しんでいただけたら幸いです・・・!(><)


ふわふわと漂う淡い光。

そんな光で満たされたその洞窟に、二人はしばらく言葉を失う。

 

見た事がなかったからだ。

 

里のほぼ反対のこの場所に、こんな洞窟が存在するなど、今の今まで知らなかった。

もちろんこの山に入り、そして越える事自体が初めてであるが。

 

「エンゼ・・・これって一体・・・」

 

「俺に聞かれても・・・」

 

お互いの顔を見ず、ただただその洞窟を見て二人はやっと口を開く。

 

この光は一体何なのか見当が付かない。

ふわふわとただ漂っているだけ、けれど何処か意志があるかのようにも見えてしまう。

生き物なのか、それとも違う何かなのか。

 

・・・と、そんなことを考えている場合ではない。

二人は落ちた時の衝撃で痛む、座り込んだまま動かさなかった体を動かし、そしてその場に立つ。

目線はまだ洞窟に向けたままだ。

 

「アルマ、・・・この洞窟の中にちょっと入ってみないか?」

 

「入ってって・・・。

何があるか分からないのに?」

 

「うーん・・・この光、特に害はなさそうだし。

それに・・・あいつらはまだいるだろうし、見つからないように進むのを考えるならって思ってさ」

 

もしかしたら山の下まで繋がってるかもしれねーし、彼はそう続けて言う。

 

あいつら、というのは他でもない。

先程いた守護騎士のことだ。

もしも自分達を探してここまで来てしまえば・・・、そう思うとエンゼは危険があったとしても進みべきだと思った。

 

「・・・確かに何があるか分からないからってこのままいても仕方ない、か」

 

エンゼの言葉に、少しだけ間を空けて彼女は答える。

先程のエンゼの行動と言い、少々所か、本当にいくつ命があっても足りないくらい危険がありそうで心配ではあるが・・・。

それでも、守護騎士達に捕まるよりは何か行動した方がいいと考える。

先程自分が諦めて行動しなかった、それよりも。

 

「でも、いい?

もしこの洞窟が危険な場所だった時は必ず引き返す、いいわね?」

 

「ああ、分かってるって!」

 

・・・本当に分かってるのだろうか?

エンゼの嬉しそうな表情を見てアルマは瞬間思った。

もう少し考えてからの方が良かったのではないかと。

 

けれど彼はそのまま先に歩き出してしまう。

 

「・・・まぁ、私が注意してればいいか」

 

自分がしっかりすればいい、そして先程のような事にはならないように。

自分が”巫”として狙われてしまった彼を守らなければ。

 

そうアルマは決心しながら、既に洞窟へ入った彼の背を追いかけるように駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

淡い光が集まって明るい洞窟の中。

歩いて進むにつれて、二人はある事に気が付く。

 

「アルマ、これ見ろよ」

 

彼が指を指した場所にあるのはただの洞窟のごつごつとした石壁。

けれどその光景は不思議でしかなかった。

 

何故なら、この洞窟に満たされている淡い光が、その石壁から水が染み出るように出てくるからだ。

しかもそれは一つ二つどころではない。

洞窟内の至る所で光は出ていた。

 

「これ・・・この石壁から出ていたモノだったのね。

でも何故・・・?」

 

「さぁな。

でももしかしたらこの石壁、何か特別なモノなのかもな」

 

「・・・そう、なのかしら」

 

この石壁が特別なのか、それともまた別の・・・。

考えても仕方がないのだが、彼女が考えてしまうのも無理はない。

見た事のないこの光景は、今の二人には判断し難い事だから。

 

 

 

 

 

―――と、その時だった。

 

 

 

 

 

「・・・あなた達、誰?」

 

「「―――っ!?」」

 

突然に聞こえた第三者の声。

洞窟の中だからか響くように自分達の耳へと届く。

 

周囲を見回す。

すると、淡い光の中に一つポツンと影があった。

 

・・・小さい。

目がおかしいのだろうか。

その影の大きさがあまりに想像していたよりも小さい。

 

その影はエンゼとアルマの近くへ光と同じようにふわふわと近づいてくる。

 

「珍しい、こんな場所に人間が来るなんて。

・・・何十年ぶり?」

 

「え・・・」

 

小さな”それ”は二人を観察するように見た後にそう言う。

背には小さな蝶の翅。

体は小さいが人と同じような姿。

 

「この小さいのは・・・一体・・・?」

 

「小さいって失礼ね。

近頃の人間は礼儀を知らないの?」

 

「え、あ・・・わ・・・わりー・・・」

 

エンゼの言葉に”それ”はプンスカと表情を変える。

うん、実際小さいけれど・・・これは確かに失礼だ。

エンゼは申し訳なくなり謝る。

 

けれど謝った、謝らない関係なく”それ”は直ぐに元の表情に戻った。

そして、

 

「まぁいいわ、最近の人間は”妖精”を見た事ない者が多いし」

 

「・・・”妖精”?」

 

「・・・聞いたことはある。

確か昆虫の羽を持った種族だったかしら」

 

「ええ、そうよ。よく知ってわね」

 

―――”妖精”。

目の前にいる彼女はそういう種族らしい。

初めて見た二人はまた失礼だとは思ったものの、彼女をじっと見た。

自分達の住む里にはいなかった存在だから。

 

そんな二人にまた彼女は失礼な人間ね、と言って睨みつけてきた。

慌てて謝れば、またまぁいいわと元の表情に。

 

 

 

 

 

 

「・・・で?あなた達は何しにこの洞窟に?

宝探しなら帰りなさい、ここには何もないから」

 

「いや、宝探しに来たんじゃなくて・・・!

俺達は山を越えたくてここまで来たんだけど・・・、ちょっと理由があって降りるのが難しくなって。

そしたらたまたまこの洞窟を見つけたんだ!」

 

「もしかしたら山の下まで繋がってるかもしれないと思って」

 

何が理由で、というのは言わなかった。

もし、もしも。

彼女が守護騎士達に繋がっていたら、逆に違っていたとしても、彼女を巻き込んではいけないから。

あえて自分達は追われている事は言わない。

 

すると何か察したのか、妖精の彼女は口を開く。

 

「ふーん、理由は聞かないけど・・・あなた達も大変ね」

 

「え?た、大変ねって・・・」

 

「この洞窟はね、見つかりにくい場所にあるのよ。

たまたまで普通は見つからないの」

 

外から来たなら分かるでしょう?、彼女は言う。

 

そういえば、と二人は思う。

考えてみたら、洞窟の外、つまり自分達がいた場所にはあの以上につるの太いつる植物があった。

下から見上げて見たが、空はあまり見えないし、周囲はあの光がなければ恐らく暗く見えにくかっただろう。

つまりは、あの崖からこの場所を見つけるのはかなり難しいと言う事。

あの光がたまたまつる植物を照らさなければ、この場所を見つける事は出来なかったという訳だ。

 

納得した表情の二人を見て、彼女はふっと笑う。

 

「で、山を下りたいんでしょ?

ならこっちよ、ついて来なさい」

 

「え?ついてって・・・」

 

それから彼女は二人に背を向け、翅を羽ばたかせ飛んでいく。

急にまるで案内するよとでもいう彼女に固まる二人。

 

彼女は彼女で、二人がついて来ていない事に気が付き振り返って、

 

「何をしてるの?置いて行くわよ?」

 

「・・・!ま、待って!

ほら、エンゼ!行くわよ!」

 

「ちょっ、引っ張るなよ!!」

 

アルマはその声にハッとし、エンゼの腕を掴んで引っ張りながら彼女の後ろへ走った。

自分の声に焦り走ってくるアルマと、そんな彼女に引っ張られ少し焦りつつ来るエンゼにまた彼女は笑う。

 

「ほら、こっちよ。

ちゃんとついて来るのよ?」

 

「ああ。

・・・あ、そうだ」

 

「?何よ」

 

「あんたの名前、聞いてもいいか?」

 

そういえば彼女が妖精だと言う事以外、名前を知らない。

エンゼはふと思い、彼女に聞いた。

 

そして彼女はきょとんとして、それからそうだったと言う顔で、

 

「そういえば言ってなかったわね。

私はエーヌ。

・・・まぁ、この洞窟の案内人、と言った所かしらね」

 

そう名乗った。






若干微妙な終わり方ですみません;
でも長いのと、切りの良い所でと思いましてここまでにしてます。
・・・また遅くなるかもですが、頑張って書きます!!
という事で、また次回お会いしましょu(((殴←


*今回の人物・単語

▽人物
・エーヌ…『蛍火の洞窟』で出会った蝶の翅を持つ妖精の女性。
「洞窟の案内人」と自称している。

▽単語
・妖精…人間に昆虫の翅を付けた姿をした小さな種族。
微精霊、精霊などの傍にいる事が多い。
時折微精霊、精霊の傍におらず、一人でいる者もいるとか。
*小説内のみの設定(もしかしたら同じなのかもしれないですが;)がありますが、それは後々に…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 洞窟の主?(前)

・・・待っている人いないとは思いますが;
大変、大変お待たせしました・・・!
もう約半年以上経ってる・・・;本当に遅くなってすみません(><;;;)

とりあえず一つにまとめるには長かったので分けました。
けどまだ続きはもう少々かかるので出来次第出します、ご了承くださいませ;
遅くなってしまいましたが・・・楽しんでくださればと思います!





蝶の翅を持つ妖精エーヌの後を追ってからしばらく経った。

洞窟である事は分かっていたものの、歩き続けて気が付いた。

 

「・・・もしかしなくても、ここって結構広い?」

 

「あら、今更?

そうよ、この洞窟は自然に出来たものだからかなり広いし、移動もかかるわ」

 

「マジか・・・」

 

あれからもう既に小一時間程は歩いたのではないだろうか。

だんだんと足が重くなってきた。

 

そんな様子に、エーヌはふとその場に止まる。

 

「エーヌ?」

 

「疲れたのでしょう?なら少し休みましょ」

 

「え、でも」

 

そうしている間にも、もしかしたら守護騎士達が追って来てしまう。

そう思うと休んでいられない。

アルマは思わずそう言おうとした。

 

けれど、それを知ってか知らずかエーヌは言う。

 

「さっきも言ったでしょう?この洞窟はたまたまでは見つからないって。

それにね、疲れたのなら休める時に休みなさい」

 

彼女は小さいのに、まるで母親のように優しく微笑む。

きっと自分達を心配しているのかもしれない。

 

二人はエーヌの言葉に間は空いたけれど、それでも最後にはそれに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ?ずっと聞きたかったんだけど」

 

「何?」

 

「この光って・・・一体」

 

洞窟の石壁に背を預け、座りながら疲れた体を休めていた時。

ふとエンゼは先程から持っていた疑問を彼女へと言う。

 

この淡い光、ふわふわと今もなお石壁から現れては周囲へと生きているかのように漂う。

そして少し触れると温かさを感じるのだ。

 

光、それは見たままで。

けれどただの光ではない、そうも感じる。

 

これの正体は一体何なのだろうか?

エンゼの言葉に続く様にアルマも知りたいとエーヌへ行った。

 

「本当に近頃の人間って何も知らないのね」

 

少しだけ呆れたような表情と声に、思わず二人はうっと声を漏らす。

けれどそれも元の顔に戻すと彼女は言った。

 

「これはマナの光」

 

「・・・マナ?」

 

「ええ、あなた達人間も使っている魔術。

それを扱う時に必要な物でもあり、そしてこの世界で生きる全ての者にとって大切な物」

 

これが、マナ・・・?

確かに魔術を使用するにはそのマナが必要なのだとは知っていた。

けれど・・・、

 

「・・・マナって、目に見える物なのか・・・・?」

 

普通マナというのは目に見える物ではないと聞いていた。

そのはず、なのに。

 

今見ている物は、この光は全てマナだというのか。

 

「信じられない?」

 

「・・・見た事がなかったから」

 

アルマも彼と同じ様子だった。

 

「そうね、信じられないのは仕方ないと思うわ・・・だって通常マナは見えないもの」

 

「え?」

 

今、見えていると言ったのに。

そう思っていれば、

 

「でも、不思議な事にこの洞窟ははっきりと見えるのよ。

ずっと昔から、今現在まで。この光は消えることなくこの中を照らしている」

 

まるで灯のように、この中を照らし続けている。

そうエーヌは言った。

 

「・・・ねぇ、エーヌ。聞いてもいい?」

 

「・・・あなた達って質問が多いのね」

 

「あはは・・・」

 

また呆れ顔。

けれど話を聞いてくれる様子だった。

 

それを見てアルマは彼女へ質問する。

 

「私達の村の長老様が言っていたの。

マナは古くから世界中の海や山、大地に生きる植物から出来るって。

・・・けれどこの洞窟にはそれが見当たらない。

それなのにどうしてこんなにマナがあるの?」

 

それはこの世界に生きる者であれば知っている常識の一つ。

この世界でマナという物は世界中の植物の光合成によって生成されている。

そしてそれは植物は刈られたり、太陽がない日が続いたりして死してしまうまで、マナの生成は続けられる。

つまりなくなる事はない。

 

その常識を小さな頃から聞かされていたエンゼとアルマは、だからこそどうしてもこの洞窟のマナが不思議であった。

 

「・・・それは私には分からないわ」

 

「え?分からないって」

 

「何故石壁からマナが溢れてくるのかは分からない。

ずっとここにいたけれど、昔からこの場所はこうだったって聞いてたから」

 

「・・・ずっと?」

 

エーヌの言葉にエンゼは首を傾げた。

ずっと、ここにいるって・・・どういう。

 

それに気づいたのか彼女は言う。

 

「私、住む場所内からこの中に住んでるのよ。

もう11、2年くらいはいるかしらね」

 

そう言った彼女の顔は何処か寂しそうに見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして話をしつつ体を少し休めた後、またエーヌは洞窟の案内を始めた。

彼女曰く、まだここは出口から程遠い、洞窟の三分の一の場所に当たるそうだ。

という事は、・・・出口にたどり着くまでまだかなりかかるという事だ。

けれど、ちゃんと進んできているという事は先程よりは感じていた。

 

何故なら、少しずつ洞窟を下りていく形で進んできているからだ。

少し前までただ真っ直ぐ進んでいた石壁は今は下へ向かってきている。

という事は、きちんと自分達が進んできた山を下りて言っているという事で。

 

「二人とも、ちゃんとついて来ている?」

 

「「ああ!/ええ!」」

 

飛んでいるエーヌは時折こうして振り向いては二人の様子を窺う。

人間である自分達の体力を気にしてくれているようだった。

 

それでも先程休憩をしたおかげかまだまだ今は元気。

エンゼもアルマも元気よく彼女へ返事をすれば、ならもう少し進むわよとってまた翅を動かし進み始める。

それを追う様に二人は足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

先程よりも進み、今はほぼ斜めになった石壁のでこぼこ道を慎重に進んでいた時。

光により見えた先で、エンゼは不思議そうに声をあげた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、・・・少し先の方。・・・分かれ道があるなって」

 

よく見ると、道が分かれている。

それも一本や二本ではなく、もっと多い。

 

そして何よりも。

 

「これ・・・」

 

「自然に出来た道じゃ、ない・・・?」

 

辿り着いたその場所は洞窟にしては少し開けた場所で。

そして何本もある道、その中には少し違和感のあるものもあった。

 

「・・・私もよく知らないけど、昔人間が掘ったって聞いてるわ」

 

「え?」

 

「なんでも、・・・この洞窟で迷った人間が外に出る為に掘ったとか」

 

迷った・・・。

それを聞いて二人は納得する。

 

確かに、この場所までエーヌが案内してくれたが、その際も何か所か道があった。

けれど人の通れそうな道もあればそうじゃない道もあった。

となれば、人は通れない道を行くより通れる道を行く。

・・・けれど、実際彼女に案内された道はぎりぎりの場所を取ったりもした。

きっとそれが出口に進み為の道なのだろうけれど。

 

たぶん昔の人はこの洞窟に入り迷って、挙句に出口を探す為にこの場所で色んな場所を掘ったのかもしれない。

 

でもそれにしても、

 

「だからってこれは多過ぎだろ・・・」

 

逆にこれでは迷うのでは?

そう思う程にこの場所にはあるのだ。

 

「まぁ人間って言うのは焦ると何するか分からないもの。

外に出たくてがむしゃらに掘ったんでしょう」

 

呆れた顔で彼女は言った。

それから、

 

「エンゼ、アルマ。

こんな道の事はいいからさっさと進むわよ」

 

「え、あ、待って!」

 

人工的に作られた道とは違う自然に出来た道の一本にエーヌは向かって行く。

それを見た二人は慌てて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな三人を”何か”が見ていたとも露知らず。





ここまで読んでくださりありがとうございます!
いかがでしたでしょうか・・・?
相変わらずの文才のなさで申し訳ない;;;

そしてかなり長い事続きをかけなかった事も申し訳なく思ってます・・・(泣)
でも今後もこんな風に色々とあるとは思いますが、少しずつでも頑張るので!
よろしければ今後とも読んでいただけたら嬉しいです・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。