【HCS】 星のカービィ -DARKWARS- (黒廃者)
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設定

まとめました。


いろいろまとめ 

 

独自設定とか世界観とか

 

 

・世界観

平行世界という概念はなく、『星のカービィ』『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダーゴースト』『戦姫絶唱シンフォギアGX』『Fate/staynight』『ブラック★ロックシューター』『艦隊これくしょん』はすべて同一世界としてそれぞれ君臨しています。

 

 

時代背景?こまけえこたぁいいんだよ!!(暴論)

 

 

 

・時系列

『カービィ』 一応最新作辺り

 

『エグゼイド&ゴースト』 平成ジェネレーションズ後

 

『シンフォギア』 魔法少女事変の同冬

 

『Fate』 本編(2004年)から13年後

 

『ブラック★ロックシューター』 時期不明(各メディアで設定がバラバラのため)

 

『艦隊これくしょん』 アニメ劇場版の同冬

 

 

 

ライダー勢に関してはあえてパラレル扱いをしています。

グラファイトが生存しているけどドラゴナイトハンターZを使いこなしてるあたりがパラレルです。

 

 

 

・独自設定のようなもの

 

カービィは地球言語話せません。でも意思疎通はできちゃうご都合主義設定

 

今作のダークマター(ゼロ)はわりとなんでもやります。なんでも言います。支配者面しまくります。原作のあいつ自身から受けた印象をそのままあのキャラに落とし込みました。

カービィ含めボスキャラまで喋らないとなると話が進めづらいためああいう形になりました。もちろん本体球の登場も予定しております。

なにか違和感を感じたなら遠慮なく「ゼロはこうじゃないか」など言ってください。読者のみなさん、私と理想の「ゼロ」を目指していきましょう!←もはや別ジャンル

 

 

手下として出したDのみなさんのモチーフはお気づきだと思いますが、それぞれ

 

Dミラクル → ミラクルマター

 

Dマインド → ダークマインド

 

Dソード → 剣士ダークマター

 

となっています。マインドとミラクルさんは公式でダークマター扱いされてませんが今作では関連付けています。

 

 

 

 

おまけ

 

・四話までの補足(ネタバレ注意)

本編内で時空管理局だの銀河連邦警察だの気になる名前が出てきますがこれらは今回話に関わってきません。スルーしていいです。ただの趣味ですごめんなさい。

一応この二つも同世界という扱いですが……。もしかしたら今後シリーズで出てくるかもしれません。

 

 

冒頭でゼロに皆殺しくらった不憫な財団Xのみなさんは特にキーパーソンではないです。なので財団だから仮面ライダーWが出るのではと期待したら負けです。

ダブルだと思った?残念、冬映画に続いてエグゼイド&ゴーストでした!(殴

 

 

原作のゼロとゼロツーの関係性は明かされていませんが、今作では同一人物として扱うことにしました。なので四話でゼロツーっぽいリングと羽根が出てきます。

 




なにか質問ございましたら遠慮なくコメントしてください。可能なかぎりお答えします。


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暗闇の鼓動

知っている方はお久しぶりです。
予定通り新作を投稿する形になりました。こちらは必ず完結させられる目処が立っているので温かい目で見ていただければ幸いです。


 それは、遡ること一週間前――――――

 

 

 

 

 山と海に囲まれた地方都市「冬木」。強い霊脈が流れる穏やかな土地の山中から出土したのは、いわゆるオーパーツだった。

 いや、オーパーツと呼称するのはいささか語弊があるかもしれない。

 なぜならば、生命を宿していることが確認されたからである。

 

 

 そんな未知の四面立方体を入手したのは、財団X。『死の商人』とも噂される謎の団体である。

 これまでに、ガイアメモリやアストロスイッチといった超常技術開発のスポンサーとして暗躍し、最終的にその成果の一部を手に入れる秘密結社としての姿が確認されているが、その本質や目的を知っている者はいない……。

 

 

 

 ――――心臓と思わしき鼓動を確認。魔術回路なし。

 ――――引き続き分析。聖遺物とも異なる異端技術(ブラックアート)による代物と思われます。

 ――――すごいな。まさにブラックボックス、いやダークマターというべきか?

 ――――魂を転写する器となるホムンクルスの準備完了。転写を実行しますか?

 ――――すぐに始めろ。宝箱の中から宝石を引きずり出せ。

 

 

 

 今回、オーパーツを回収・解析の指揮と管理を任せられた壮年の男性が細く微笑む。

 自分より歳の離れ、なんの力もない財団構成員とはわけが違い、彼は魔術師としての素質も兼ね備えていた。

 だからなのか、男性の瞳の奥底には財団の利益を考えるのではなく、己が魔術師としての探究心からなる野心が秘められている。請け負ったオーパーツには、人類が到達できないほどの莫大な神秘が眠っていると、魔術師としての勘が告げていた。

 部下達がオーパーツに眠る魂をアインツベルンの技術を模倣して製作されたホムンクルスを転写する所業を、緊張を抱きながら見つめる男性。

「!! 数値に変動あり!」

 PC画面を凝視しながら、部下の一人が焦燥と共に叫んだ。

 すると直後、オーパーツが一人でに振動を始めており、傍らで待機していた者たちが慌てて距離を取る。

 男性は部下に冷静に問いただす。

「なにごとだ?」

「原因不明!これ以上は何が起こるか……」

「仕方ない。一度、転写を中止…………!?」

 刹那的閃光と、鼓膜をつんざくような破裂音が財団の人間たちを襲った。

 男性はいち早く意識を覚醒させ、状況を把握しようと試みた。

「い、いったいなにが……」

 

 

 

「んっ……」

 

 

 

 男性は見た。用意した『少女』のホムンクルスが動いている。声を発している。

 一糸まとわぬ生まれたての赤子のように、床にぺたんと座り込み、腰まで届く長い白髪に隠れた両の瞳を動かし、周囲を見渡していた。

「おおっ!」

 驚きと嬉しさを合わせた感情に、男性は心躍らせた。成功だ。未知の存在を手中に収めた。そう確信した。

 呆然とする部下を押しのけて、男性は状況が把握出来ていないであろう少女を上から見下ろすように立った。

 

 

「やったぞ……これで私は「時計塔」にも匹敵するほどのっ」

 

 しかし……。

 

 

「五月蝿い」

 

 

「は?」

 そんな、短い言葉と共に、腕が突き出された。筋肉と骨と、最後に心臓をも突き破る。

 男性は、何が起きたのか理解することなく、財団Xとしても、魔術師としても名を残せぬままに生涯を閉じた……。

 

 

『マスカレイド!』

 

 

 そして、ゆらりと少女は立ち上がる。周囲の者達は、護身用のガイアメモリを起動し、マスカレイド・ドーパントへと変貌を遂げ「ソレ」を取り囲む。

「……なんだこの姿は?」

 少女…いや、少女の肉体を得た「ソレ」は、取り囲むマスカレイド達を気にも留めず、自らの変化に僅かながら戸惑う。

 10秒程度の沈黙の後に、「ソレ」は自分の身に起きたらしい事実を認識すると、邪悪な笑顔を浮かべた。

「はははっ。まさか再び、現世に黄泉還ってくることになろうとは!」

「ソレ」は声を上げて笑う。無垢な笑い方ではなかった。

 直後、空間が裂けた…………。

 

 

 

 

 

 

「しかし、この姿では以前のような力は出んな。原因は…この肉体のせいと……」

 久方ぶりに目覚めた瞬間にも感じた憎悪が、「ソレ」の思考を阻害する。かつて宇宙の覇者であり、数多くの惑星を暗黒に染め上げてきた生の中、ただ一つの、最初で最期の汚点があった。

 標的とした惑星「ポップスター」において、自分を負かした存在がいた。それを思い出し、沸騰しそうなほどの憎悪が胸を焦がす。

 しかし今、自分は復活を果たした。偶然ではあるが、これはチャンスだ。

 ピチャリ、ピチャリと、先程までそばにいた人間達が流した血の海の上を進み、破壊しつくされた研究所から、一歩外に出た。

 雲ひとつない空に、「ルナアタック」という事件以来欠けたままの月から光が降りている。光に照らされた少女の形の白い肌は、とても淫靡であると共に人としてあまりにも歪な雰囲気を宿していた。

 

 

 

「待っていろ。この私が必ず貴様を殺してやる……星の、カービィ!!」

 

 

 

「ソレ」の右の瞳だけが、血のように赤黒く染まっていた。

 




文才ないですがどうぞよろしくお願いします。


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復讎と再臨の序曲

平成ジェネレーションズ二回目観た。控え目に言ってやっぱり最高だった。


超常災害対策機動部タスクフォース―――『S.O.N.G』は、一週間に冬木市にて高エネルギー反応を感知。調査員を派遣すると、山中より破壊された仮設研究所を発見した。

詳細は不明だが僅かな手がかりから備品は財団Xのものであることが判明、政府の承認と共に調査を開始。そして本日、B県に遺る廃病院にて微量ながら一週間と同様のエネルギー反応を確認した……。

 

 

不気味な廃病院の前に、いくつもの車と黒服の男たちがやってきた。全員、『S.O.N.G』所属のエージェントである。

黒服たちの中心には、サラブレッドの少女『雪音クリス』が佇んでいた。

(イヤな感じだ……さっきから肌がピリピリする。何かあるなこりゃ)

胸騒ぎを覚えつつも、クリスは気持ちを入れ直し黒服たちに続いて廃病院内部を目指す。

だが、先行した二名の黒服が亡骸となって外に放り出されたために足を止めざるをえなかった。

「!!」

 

 

「不法侵入は犯罪ですよ、みなさん。非常に困りますねぇ~」

 

 

すると、不気味な雰囲気をまとった胡散臭い笑顔の男が姿を見せる。

それに続き、剣を携えた青年、大柄の男、最後に真っ白な髪に黒い着物のような服装の少女がぞろぞろと姿を現した。

全員が屈強な黒服たちを前にしながら、平然と彼らと相対している。死体が転がり、黒服たちが拳銃を構えているにも関わらず表情は変わることがない。それはクリスが一つの結論に至るには十分だった。

「てめぇらか、冬木で財団Xの研究所を破壊した奴らってのは!」

首に下げたペンダントに触れつつ彼女が吠えると、少女が一歩前に出て声を発した。

「―――躾がなってないな。【イチイバル】の装者雪音クリス」

「! なんであたしのことを知ってんだ?」

「知っているさ。シンフォギアのことも、『S.O.N.G』のことも。高度な知的生命である私にかかれば、この惑星の情報など容易に把握できる」

「高度な知的生命?惑星?いったい何の話をしてやがる!?」

「これ以上の問答は不要だ」

少女―――ゼロの強い一言の後、胡散臭い笑顔の男は懐から眼魂を取り出し側面の可動部を押し込むんでその姿を百目の異形へと変える。

「変、身!?」

驚愕する『S.O.N.G』の面々。それに構うことなく異形『Dミラクル』は両拳に暗黒エネルギー溜め込み数十もの黒い丸物を生成、それをクリスらへ向けて解き放った。

 

 

 

 

すべてを粉塵と化すほどの強烈な爆発の連鎖が襲った。

衝撃により固いコンクリートもろとも吹き飛ばされるクリス達……。

「ダークマタープラントは?」

「はい。細かい調整はまだですが試運転がてら既に稼働させております」

「しかし居場所がバレました。どうされますか?」

「そうだな……予定より早いが、すべての始まりの地に向かうとしよう。我らが目的を果たすための、一族再臨の地へ」

すでに絶命する者もいる中、間一髪でシンフォギアを装着したクリスは朦朧とする意識の中で、こんな声を聞いた。

 

 

 

「―――ポップスターよりヤツは引き寄せた。さあ、復讎と侵略を始めよう」

 

 

 

少女の「眼」が怪しく光り、四人がその場から消失すると共に、空を何かが覆い尽くし始めた……。

 




クリスちゃんは犠牲に……なってませんのでご安心ください。早速かませになってごめんね。

そして全然文字数書いてないのは区切りのいいところで細かく分けていこうと思ってのことです。長くなりすぎるとダレるからね、しょうがないね。←


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DoctorRider‘s & StarWarrior

ついに邂逅。
先に言わせてもらうと基本的にカービィとエグゼイドキャスト以外はそんなに出番ないと思うのであしからず。
あとデデデ大王、ごめんね。


 ゼロの復活から、少だけ前のこと。

 

 地球から遠く離れた、時空管理局や銀河連邦警察でさえその存在を観測できないほど果てにある惑星――――ポップスター。

 生命に溢れ、十人十色な種族が暮らす星の中に、国・プププランドはあった。

 広大な領地に自然が溢れ、生命体は自由奔放に、それでいてしっかりと秩序が保たれた生活を営んでいる。すべては偉大なるデデデ大王の功績……などではなく、国民たちが自ら望み、選んだ生命の営みだ。

 一見平和な国に見えなくもないが、実は幾度となくこの国は侵略者の魔の手に晒されてきた。

 その度に住民は恐怖に震え、困窮疲弊を余儀なくされていた……。

 では、そんな危険な場所が、どうやって危機を乗り越えてきたのだろうか。国家として成立していながら軍隊は存在せず、多少特殊な力はあれど、決して強大な侵略者に敵うはずもないこのプププランドが、いかにして今日まで平穏を保ち続けているのか……。

 答えは単純明快。至ってシンプルで分かりやすいものである。

 

 

 プププランドには、勇敢な一人の戦士がいるからだ。

 

 

 え、デデデ大王?冗談はよしてくれ三流の分際で。byインクレティブルレモン

 その日も彼は大量のマキシムトマトをカゴに入れて、呑気に丘の上でそれを食していた。

 大食漢である彼は、マキシムトマトを口径吸引によってほぼ一口で平らげる。小さい体の、いったいどこにそんな大量のマキシムトマトが収まるのかは、定かではない……。

 しかし彼はまだ満足していない。ブラックホールな胃袋は早く食わせろと奔放な獣のように唸っていた。

 彼は立ち上がった。そして、見つけた。

 なぜかは分からないが、ご馳走であることには違いないショートケーキがいくつも落ちている。こんな無防備の甘いスイーツを腹に入れないなんて、彼のとっては天と地がひっくり返ろうともあり得なかった。

 一つ、また一つ……。綺麗に並べられたショートケーキを平らげていく。

 最後の一つを、口に放り込んだ瞬間……。

 

「!」

 

 彼は本物のブラックホールに吸い込まれていく……。

 

 

 その日、星の戦士『カービィ』がプププランドから姿を消した――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖都大学附属病院の地下には、電脳救命救急センター…通称「CR」が存在する。CRはゲームから発生した正体不明のバグスターウイルスから人々を守りながら、ウイルスの根絶を目指す組織だ。

 

「ポッピーピプペポピッポッパッポ、ポッピーパピペポピプポー!」

 

 小児科研修医『宝生永夢』は、バグスターと戦う仮面ライダーの一人である。彼の傍ではライダーをサポートするキャラクター『ポッピーピポパポ』がクルクル回りながら歌を歌っていた。

「……明日那さん、やけに楽しそうですけど、どうかしたんですか?」

「永夢知らないの?今日は世界的アーティスト、風鳴翼のライブ中継があるの!楽しみで仕方ないのは全人類共通の姿だよ~!」

「は、はぁ……」

 永夢は曖昧な返事しかできない。風鳴翼がどのような人物なのか知らないが、常にハイテンションのポッピーがいつにも増してベリーハイテンションなところを見ると余程の人物なのだろう。

(そういえばもうすぐ任天堂から新作ゲームが発売するんだよな…バグスターがいつ現れるかもわからないし、今日のうちに予約しに行こうかな)

 永夢は立ち上がると、舞い上がって周囲が見えていない明日那に一声かけてからCRを出た。ちなみに、ポッピーは気がついていない……。

 

 

 

 

 

 永夢は白衣姿のまま、わくわくしながら街の中を走る。今日は小児科の仕事はないし、バグスター出現の気配もない。彼が望む平和そのものだ。

 バグスターウイルスの脅威がなくなること、そして何よりも患者が笑顔になれるよう懸命に勤めている永夢にとってこの光景は理想的である。

(今日も何事なく、終わってくれるといいな)

 心の中で思う永夢。だから夢にも思わない。その願いは呆気なく崩れ去るなどと……。

 唐突に、街から太陽の光が消えた。

 永夢や周囲の人々が異常をきたした空を見上げる。

 

 

『闇』が、青空を消し去るように広がっていた。

「! なんだあれ!?」

 次の瞬間、目を疑った。『闇』の中から小さな目玉を黒い衣で覆ったような生物が地上へと降り注ぎ建物へと突っ込んでいくではないか。

 唐突の破壊活動に、人々はパニックになって逃げ惑う。

「バグスター!でも、なんで空から!?」

 考えていても仕方がない。アレらが人に危害を加える前に倒さなければと、永夢はゲーマドライバーを装着しガシャットを起動させた。

『マイティアクションエーックス!』

 現実に人気ゲーム「マイティアクションX」を再現したゲームエリアが展開する。

 

 

「変身!」

 

 大きくポーズをとり、ガシャットをドライバーに挿し込んだ。

 

 

『ガシャット!レッツゲーム・メッチャゲーム・ムッチャゲーム・ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!』

 

 

 キャラクターセレクトのエフェクトが消失すると共に、宝生永夢は仮面ライダーエグゼイド アクションゲーマーレベル1へと変身を果たす。

「いくぜ!」

 ガシャコンブレイカーを手に、エグゼイドはバグスターと思しき存在へ立ち向かう。

 あちこちに出現したブロックを踏みつけながら、次々と対象を叩き落としていくエグゼイド。その俊敏かつ豪快、それでいて精密な動きは彼の異名、天才ゲーマー「M」としての才能あってのものだ。

 だがバグスター?の数は減るどころか、どんどん増えている……。

「あの暗雲が発生源になってるのか!」

 戦いながら、エグゼイドは空を覆った『闇』がバグスター発生装置のような役割を果たしていることに気がついた。現に、奴らは『闇』の中から途絶えることなく降下してきていた。人間に直接危害は加えていないようだが、建物を破していく際に二次被害が出る可能性もあった。

「とにかく全員が逃げ切るまでこいつらを引き付けないと……ぐあ!」

 エグゼイドは再び戦闘を始めようとしたが、突如衝撃に襲われ大きく地面を転がった。

「う……いったい、なんだ?」

 エグゼイドの眼前に、大柄の男が佇んでいた。この男は拳を突き出しており、エグゼイドは殴られたのだと理解する。明らかに、民間人ではない。

「仮面ライダーエグゼイドだな?」

「お前誰だ!?この黒い奴らの仲間か!?」

「俺の名はDマインド。我が主の野望のため、貴様には消えてもらう」

 そう言うと、男…Dマインドは眼魂の可動部を押し込んだ。

「あれは、タケル君の……」

 エグゼイドは、男が手に持ったアイテムに見覚えがある。あれは以前、Dr.パックマンこと財前美智彦を妥当すべく、共に戦った仮面ライダーゴーストの変身アイテム「ゴースト眼魂」に酷似していた。

 正確にはゴースト眼魂ではなく眼魔眼魂だが、エグゼイドがそんなことを知るはずもない。

 瘴気に覆われたDマインドの身体を、RPGに出てくる魔王のような甲冑が包み、彼の周囲に四対の鏡が出現した。

「!」

 エグゼイドは、Dマインドのただならぬ殺気に肌を震わせる。

「視えるぞ。ダークミラーを通じて、貴様が戦慄している姿が」

 Dマインドは、浮遊しながらスターバレットを連続射撃してきた。

 エグゼイドはそれらを紙一重で躱し切り、ゲーマドライバーのレバーに手をかけた。

「大変身!!」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!』

 

 ゲーマドライバーとライダーガシャットを用いたシステム最大の特徴…それはレベルアップ。

 

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティ・マイティアクションエーックス!!』

 

 

 患者からバグスターを切り離すオペの役目を果たすレベル1の装甲は外れ、エグゼイドは敵を駆逐するためのレベル2へとレベルアップ。

 ガシャコンブレイカー ブレードモードを手に、Dマインドと激しい戦闘へと突入する。

 

 

 

「な、なにこれ空が……」

「いったい、何が起こってるというんだ?」

 その時、騒ぎを聞いて駆けつけたポッピーピポパポこと人としての姿である仮野明日那と、永夢と同じCR所属の外科医『鏡飛彩』は事の大きさに戸惑いを隠せなかった。

 上空を『闇』が埋め尽くし、目玉のような生物が建物を破壊している。極めつけはエグゼイドが魔王のような怪人と激闘を繰り広げているのだから、無理もない。

 

 

「ありゃあ何だ、新種のバグスターか?」

 

 

 戦場と化した街に、また一人の男が現れる。その名は『花家大我』。かつてCRに所属していた仮面ライダーの一人であり、闇医者。

「! 大我!」

「花家大我……」

「そう怖い顔すんなよ。今はいがみ合ってる場合じゃないはずだろ、お坊ちゃん?」

「…………端から貴様など、相手にするつもりはない。俺はオペを完遂するだけだ」

「ああそうかよ。なら好きなだけお医者さんごっこしてろ」

 険悪なムードになりながらも、飛彩と大我はお互いにガシャットを構えた。

 

『タドルクエスト!』

『バンバンシューティング!』

 

 ゲーマドライバーを装着し、ガシャットを起動。

 

「「変身」」

 

 飛彩はRPG「タドルクエスト」の騎士をモデルとした仮面ライダーブレイブに、大我はSTG「バンバンシューティング」の銃士をモデルとした仮面ライダースナイプへと変身すると、すかさずレバーに手をかけて、

「術式レベル2」「第2戦術」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!タドルメグル・タドルメグル・タドルクエストー!!』

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!ババンバン・バンババン・バンバンシューティング!!』

 

 

 レベル1をすっとばしてレベル2に。

 エグゼイドがDマインドと戦う隙に、残りの敵を狙いに向かおうとする。

 

 

「やらせん!」

 

 

「!?」

 しかし横から剣を構えた青年が二人の行く手を阻んだ。

「仮面ライダーブレイブ、仮面ライダースナイプ。私が相手だ」

 青年『Dソード』は左手で眼魂を起動し、単眼の剣士のような怪人へと変貌する。

 

 

 

 

 一方のエグゼイドは、Dマインドのワープ能力を駆使した変則的な射撃とダークミラーによる反射攻撃に苦しめられていた。

「どうした、その程度か!」

「くっ……舐めるな!」

 負けじとガシャコンブレイカーで斬りかかるが、寸でのところで背後にワープされスターバレットの集中砲火に晒される。

「ぐああああああ!!!!」

 吹き飛ばされたエグゼイドの身体が跳ね、地面にクレーターを作る……。ライダーゲージがレッドゾーンにまで減少し、危険を知らせるアラームがスーツから流れた。

「永夢!」

 明日那も気が気でならない。これ以上攻撃を受け続ければ、ゲーマドライバーが許容できるダメージを超えれば……ゲームオーバー。すなわち生命活動の停止を意味する。

「クソッ!」

 エグゼイドはキメワザスロットホルダーに装備されている「ドラゴナイトハンターZガシャット」に手をかける。レベル5のガシャットであれば、Dマインドを倒せるかもしれない。だが、ダメージを顧みずただひたすら敵の殲滅に特化するこのガシャットでは、倒す前に自分が死ぬ可能性がはるかに高い。

 ブレイブとスナイプはDソードと戦っていた。二人にもエグゼイドを救出できる余裕はない。まさに、絶体絶命……。

「終わりだ仮面ライダー!」

 Dマインドが再びスターバレットを放とうとする。今度は小細工なしの直線放出……エグゼイドが行動不能だからだ。

 

 

 刹那、『闇』を切り裂くようにして流星が瞬く。

 

 

『それ』は、エグゼイドとDマインドを遮るように落下してきた。

「!?」

 Dマインドの攻撃の手が止んだ。彼だけではない。Dソードも剣を下ろし、落下物に注目していた。

 エグゼイドと明日那は呆然する。ブレイブやスナイプは新手かと身構える。

「むっ……こいつは!」

 終始冷静だったDソードが、驚愕の声を上げた。

 地面に墜落してきた輝き…その中から現れたのは、ピンクで、丸い……。

 

 

 

「ぽよ?」

 

 

 

 ――――カービィだった。

 




ちなみにわかりにくいですがポッピーの歌のリズムはドレミファビート(のつもりです)


感想・意見、お待ちしてます。←いまさら


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新たなる脅威の胎動

かなり遅くなってしまいすみませんでした。


世界観的には仮面ライダーエグゼイドが主軸になってますが時系列はパラレルであることを示すために
・グラファイト生存してるけどドラゴナイトハンターは制御済み

となっております。


「こいつが噂の、星の戦士!」

 エグゼイドは、地に降り立った存在の後ろ姿に目を丸くする。

 一瞬奴らの仲間かとも思ったが、どうやら違うらしい。

「……何だありゃ?」

「随分とファンシーな……」

「かわい~~!」

「あれって……」

 ドクター達が思い思いに呟く中、カービィはきょろきょろと周囲を見渡し、自らに起きた状況を理解しようと努める。

 ブラックホールに吸い込まれたかと思えば突然大空に放り出されて、一緒に吸い込まれてきたであろうワープスターに捕まり不時着した……。

 しかし場所がダメだった。自分にも負けず劣らずのポップな容姿をした者たちと、なんだか既視感を覚える形をした二体の怪人が戦う真っ只中に落ちた。どう考えてもスルーされるわけがない。無言でこの場から離れればすべてなかったことになるなんて考えられない。

 カービィは困惑しつつ、頬にこびりついていた生クリームを舐め取った。

 

 

「手合わせ願おうか!」

 

「!!」

 

 クリームの甘味が喉を通ったのも束の間、Dソードが瞬時にカービィの懐に潜り込んできた。

「危ない!!」とエグゼイドが思わず叫ぶ。

 しかしカービィは繰り出される剣筋を紙一重で後退しながら躱してていく。

「ふははは!やるようだな、次は俺の番だ!」

 Dソードと入れ替わるようにDマインドが拳を突き出してくる。

 さらに左右からはスターバレットの変則攻撃が追い打ちをかける二段攻撃。これには流石の彼も躱し切れずに蹴り飛ばされた。

 ボム、ムギュ、などの柔らかそうな音を出しながらコンクリートの上をボールのようにバウンドする。

「他愛もない……」

 しかしカービィは負けなかった。吹き飛ばされながらも彼はエグゼイドのゲームエリアのブロックを器用に破壊する。

 すると、本来であればライダー達に様々な効果をもたらすエナジーアイテムと呼ばれるメダル型のアイテムを落とすブロックから出現したのは、見たこともない星型のアイテムだった。

「え……?」

 これにいち早く気がついたのはエグゼイド。いつものアイテムでないことは一目瞭然。それがなんなのか、今彼が知る術はない……。

 カービィは星型アイテムを大きな口に吸い込むと、Dマインドへ向けて勢いよく吐き出した。

「!?」

 初めてまともな攻撃が通った。完全に油断していたDマインドは装甲から火花を散らしながら尻餅をつく。カービィはその隙を見逃さず、次々とブロック、宝箱、ドラム缶をパンチやキックで破壊しアイテムを吸い込んでは吐き出してを繰り返す。最初こそ優勢だった二体はそれぞれ攻撃の隙間をぬって反撃を仕掛けるがことごとくかわされ、翻弄され始めていた。

「す、すげぇ!」

 エグゼイドは感服した。目の前の生物は、戦い慣れている。天才ゲーマーの血がカービィを賞賛せずにはいられない……何をどうするかなどほとんど考えていない、すべての行動は頭にインプットされ、感性の領域で発揮されていた。

 事実、カービィ自身も深く思考してはいなかった。

 とにかくこの状況から脱して食後の昼寝がしたい、その感情に尽きる。

「ぐっ!」「私としたことが、侮ったか!」

 

 

 

「それがそこの超生物だ」

 

 

 

 被弾したDソードとDマインドが膝をついた時、『ソレ』は、現れた。

 ガシャリ。と、崩れた瓦礫を踏みつける音が近距離で聞こえ、カービィは振り返る。

 

 

 

『闇』が溢れ、蹂躙され尽くした街の中に佇む暗黒の象徴。星々から輝きを奪取し己らの一族を除く全ての生命を一滴の落涙すら有さず屠る者。

 黒い着物のような格好をした、白髪紅眼の少女……。

「ゼロ様!」

 唐突にDソードが剣を仕舞い、Dマインドと共に膝を折り服従の姿勢を取る。

 カービィはキョトンとし、エグゼイドもブレイブもスナイプも異様な光景に固唾を呑む。

 そうしている内に、少女―――ゼロはカービィへと向き直った。

「しばらくぶりだな。カービィ。コピー能力すら使わず我が配下を追い詰めるとは、実力は直接やり合った時以上のようだな」

「―――?」

 カービィは少女の歪んだ笑顔に眉を細める。

 ゼロは、カービィが自らの正体がわかっていないことを悟った。

「ああ、この姿では分からぬのも無理はないな」

 ゼロが紅い右眼を光らせながら独り言のように呟く。すると今度は、エグゼイドの方に身体を向けた。

 明日那を庇いながら、エグゼイドは喉を震わせて言う。

「そいつらの仲間……やっぱバグスターか!?」

 ゼロは答える。

「違う。我らはダークマター一族」

「ダークマター一族だと?」

「そして私はゼロ。全宇宙の覇者たる資格を持った、大いなる存在だ!」

「お前らの目的はなんだ!?」

「無論。地球をダークマターのモノにする」

「要するに侵略ということか」

「そんなこと、させるか!俺達仮面ライダーがいる限り、お前らの好きなようにはさせねぇぜ!」

 エグゼイドがガシャコンブレイカーを突き出しながら一歩前へ出た。明日那は後ろで大きく頷いていたが、ブレイブとスナイプは仮面の下で「巻き込むな」と言わんばかりのうんざりした顔をする。

「……威勢だけは結構なものだ、エグゼイド。だがこれを見て同じセリフを吐くことができるかな?」

 ゼロが口角を釣り上げ、両手を広げた途端、眼前のライダー達は驚愕し、戦慄する。

 紅眼が深化し、頭の上に輪のような物体、背中には、根元は白、先端が赤の二対の板状が翼のように形成されていく。美少女と称して差し支えない容姿のゼロに付属した三つのパーツは天界から舞い降りた天使の如き神々しさを放っていた。

(このエネルギー、尋常じゃないっ!)

(チッ……口だけじゃねぇってか)

 カービィは眩しさに目を瞑り、エグゼイド、ブレイブ、スナイプは膨れ上がる敵意を目の当たりにする。

 本音を吐露する……こいつはヤバイ。

 

 

 ―――始まる異変。

 

 

 ゼロの表情が、一瞬だけ歪んだかと思えば、輪と翼は粉々に砕け散り跡形もなく消滅する。

「「!!」」

 DマインドとDソードが、急に力が抜けたかのように膝をつくゼロを支えた。

「いけません。あなた様の力は未だ不安定なのです!」

「まだ時は満ちていません。星の戦士を屠りたいお気持ちはわかりますが、ここは退くべきかと」

「……致し方あるまい」

 呼吸を荒くし、苦悶の表情でありながら、ゼロはカービィを睨みつけ、

「お前は、必ずこの手で……!」

 それだけ言い残し、闇の瘴気と共に姿を消すダークマター達。するとどういうわけか、宙を漂っていた大量のダークマター達も『闇』の中へと去っていき、街に静寂が訪れる。

 エグゼイド達は脅威の消失に安堵した。しかしそれは、決して良い気分にはさせてくれない。彼らは運良く見逃されたに過ぎないのだ。

 

『ガッシュ~』

 

 三人は変身を解除する。飛彩と大我が神妙な顔で未だ上空に留まる『闇』を見上げている中、永夢だけはすぐさまカービィの前へ走っていった。

「ありがとう、助かったよ」

 永夢がカービィに礼を言うと、彼は振り返る。

 永夢は警戒心を薄め、背後で表情を固くする飛彩と大我を無視してカービィに話しかけた。なぜかはわからないが、悪い存在ではない気がすると、彼は本気で思っている。

「!」

 すると『気にしないで』と言わんばかりに、カービィは小さな手をふりふりした。言葉は離せないが、友好的な相手とわざわざ敵対する必要はないのだ。

「やっぱりかわいいい~!」

 その姿が可愛くて、明日那も頬を緩めていた。飛彩と大我は不貞腐れたようにそっぽを向いているが、二人もカービィを敵とは認識していない。

 しかし未だ空には『闇』がある。解決しなければいけない。これは新たなる、人類の危機なのだ。

「! はい明日那です……」

 明日那のスマホが鳴る。話を聞くと、どうやら聖都大学附属病院長が、急遽CRに戻ってこいと騒いでいたらしい。

「一旦CRに戻るぞ。ダークマターといいその妙な生き物といい、分からないことが多すぎる」

 飛彩に言われ、永夢と明日那は頷く。大我は姿を消していた。

「あの、この子も連れて行ってもいいですか?ゼロって子は、明らかにこの子に対して敵意をむき出しにしていました。また狙われるかもしれません」

「そうね、CRにゲーム病患者以外の部外者は入れちゃダメなんだけど、私も永夢に賛成する」

「はぁ……好きにしろ」

 飛彩は、カービィに完全に心を許した二人に呆れながらも許可を出した。永夢に抱かれたこの生物が事件に関わっていることはよく理解している。手元に置いておかない理由はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 エグゼイド達とゼロ。そのやりとりの一部始終を観察していた者達がいた。

 ゲームから生まれ、ゲームによって現実を支配せんと企むその者達の名は、『バグスター』……。

『グラファイトバグスター』は胸中に渦巻く苛立ちを隠せないでいた。

 ダークマター……宇宙からの侵略者が自分達に代わって世界を征服するなど、図々しいに程があると、抑制できない憤怒をコンクリートに叩きつけた。

「ダークマターだと?この世界はいずれ俺達バグスターのものになるというのに勝手なことをしてくれる!俺が叩き潰してやる!!」

「まあそう急くなよグラファイト」

「パラド!奴らを野放しにするつもりか!!」

 そんなグラファイトを宥めながら、参謀『パラド』はニヤリと笑う。

「突然の乱入バトルはゲームには付き物さ。ま、でも……」

「?」

 パラドは、片手間にクリアしたゲームから視線を離すと、『闇』を見上げる。

「この心が踊る世界(ゲーム)をつまらないものに変えられるのはイヤだなぁ。だから頑張ってくれよ、永夢。そして――――星のカービィ」

 無邪気に笑って、彼は再びゲームに没頭した……。

 

 

 




次回は簡単な世界観や独自解釈をまとめたものを投稿しようかと。


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一緒に戦おう

長らくお待たせしてしまいすみませんでした。テスト終わったので一発目です。


 永夢はカービィを抱きながらCRへと帰還した。

「遅い!何をしていたんだ!」

「す、すみません……」

 飛彩の父、灰馬がしかめっ面で永夢に食ってかかったかと思えば、

「おお飛彩。よく帰ってきたな。無事で嬉しいぞ」

「…………」

 この待遇の差である。永夢はうんざりしながらカービィを地に降ろした。

 カービィが微笑む。彼なりの運んでもらった礼だろうか。「どういたしまして」の意を込め、永夢も微笑み返した。

「親父。慌てて俺達を呼び戻した理由はなんだ?」

 当然の質問と同時。一足先に席につき、飛彩はショートケーキを準備する。

「ああ。それはだな……!?」

「なにっ!?」

 すると突然、フォークとナイフを突き立てようとしたケーキが、飛彩の下から逃げた。

 正確には、引っ張られたと表現した方がいいかもしれない。

 飛彩は咄嗟にフォークを突き立てるも空振り、机に穴が開く。

 ショートケーキは、そのままいつの間にか机上に乗っかっていたカービィの大きな口の中へ吸い込まれて胃の中へと溶けていった……。

 永夢の顔がみるみる青白くなる。天才外科医鏡飛彩は何よりも糖分摂取にこだわる男。そんな彼の至福の時を邪魔したとなれば、例え誰であろうとも許さない。

「貴様っ」

 案の定、大切なケーキを丸ごと奪われた彼は糖分が不足していることもあってかカービィに迫る。

 カービィは鬼の形相を目の当たりにし、慌ててCR内を駆け回る。

「危ないから走っちゃダメ~!!」

「お、落ち着いてください飛彩さん!?」

「おのれ~、よくも飛彩のために買ってきたケーキを!!」

 永夢と明日那が止めようとする中、常に息子至上主義の灰馬は一緒になってカービィを追い回し始めた。そんな大事な息子の邪魔にしかなっていないのは秘密である。

 

 

 ―――しばらくして。

 鏡親子が疲れ果て、ようやく騒動は決着を見た。

 カービィの圧勝である。変幻自在なすばしっこさで逃げ回る彼を生身の人間が捕まえられるわけがない。

 しかしあのクールな飛彩がここまで激怒するとは……永夢はなんだか親しみを感じると同時に絶対に糖分摂取の邪魔をしないことを独り心に誓った……。

 

 

 

「ふふ、相変わらず騒がしいな、元気で何よりだ諸君」

 

 

 

 声がした。全員がそちらを見ると、スーツを着た若々しい男性が壁に背を預けながらこちらを見ていた。

 灰馬が焦りながら、声を上げる。

「そうだ!幻夢の社長がお前達に会いたがっていたんだ!!」

「それを早く言ってくださいよ!!!」

「まあまあ。私は気にしていないよ。それより、話を進めたいのだが、いいかね?」

「! は、はいすみません!」

 永夢はバツが悪そうに、男性―――『檀黎斗』に頭を下げた。

 黎斗は大手ゲーム会社「幻夢コーポレーション」を担う若社長。彼の打ち出した数々のゲームは全てにおいて一定の人気を博している。

 同時に、幻夢は衛生省と協力関係にあった。永夢達ドクターがバグスターと戦うために必要なゲーマドライバーとライダーガシャットの開発を主導したのが、他でもない黎斗なのである。

『俺はずっと待ってんだ。早くしろ』

「大我!」

 不機嫌そうな催促する声と共に、モニターに大我の顔が映し出された。どうやら黎斗は彼にも声をかけていたらしい。

 黎斗は全員の顔を見渡し、最後にカービィをしばし見つめると、ついに口を開いた。

「君たちに収集をかけたのは他でもない、ダークマター騒動の件についてだ。あのような存在が現れるとは、私自身も正直驚いている。あれはバグスター以上の危険性を孕んでいると推測できる。早々に我々で対処する必要があるだろう。そしてもう一つ……」

 黎斗は再び、カービィを見た。今度はカービィの方からも視線を向け、頭の上に疑問符を浮かべている。

「君たちが最も気になっているであろうその生き物―――カービィについての情報を提供するためだ」

 

 

 

 

 

「おやおや……大丈夫ですか、ゼロ様?」

 誰も立ち入ることのない場所に、朽ち果てた教会があった。

 ここは今、ダークマター達の根城としての役割を果たしている。

 ゼロはDマインドに担がれ、ボロボロの椅子に座ると、独り「作業」を続けていたDミラクルに進捗状況を尋ねた。

「問題ない。それよりも、ダークプラントは完成したのか?」

「ええ。昼方の試運転を経て調整が完了しましたよ。勿論、主様が力を行使してもその華奢で可愛らしい不完全な肉体が耐えられないなどということがないように、十分な『闇』も備蓄してあります」

 気味の悪い喋り方で余計な言葉を付け足すDミラクルにゼロはイライラさせられるが、今はそんなことを思うよりもやることがある。

「ご苦労であった。では早速『闇』を私に寄越せ」

「しかし、先程お力を使ったのです。少しお休みになられては?」

「気遣いは不要だ。私は一刻も早く力を取り戻さなければならない。あの忌々しい存在を消すためにな……」

 ゼロの紅い瞳が、より一層強烈な光を放つ。意志の強さを垣間見たダークマター達は互いに頷き合うと、Dミラクルが教会最奥の建造されたダークマター発現装置『ダークプラント』を起動した。

 ダークプラントは、ゼロ達ダークマターが地球の技術で造り上げた一族起死回生の切り札。カービィに敗れ、落ちぶれてしまった一族の汚名を晴らすべく必要な力を蓄える装置だ。

 ゴウンゴウンと大きな音を響かせながら、プラントの中央の空洞が開いた。そこから、現在東京上空を覆い尽くしているものと同一の『闇』が生まれ、その殆どがゼロへとまとわりつく。

「ぐっ!!う……がぁああああああああああ!!!!!!!!」

 少女の姿をした支配者の絶叫。『闇』がホムンクルスの肉体を、ゼロが扱うに相応しいものにするべく細胞レベルの改造を施しているのだ。

 少女の身体を蝕む激痛はまるで留まるところを知らず、たった一秒でさえ永遠に感じる程、ホムンクルスの痛覚神経を刺激し続ける。

 危険を感じ取ってか、浮き出る脂汗、上昇する熱量。

 ゼロの臣下達も固唾を飲んで経過を見守る……。

 

(この痛みは”罰”だ……あの時敗北した自分への”罰”に他ならないっ!)

 

(耐え難い屈辱だった。どのような戦士が現れようとも圧倒的な力でねじ伏せてきた私が、あんなマスコットキャラクターのような外形の生物に負けるとは……!!)

 

 脳裏に過ぎるのは敗北の記憶。刻み込まれた最初にして最大の汚点。

 

(今こそ雪辱を晴らす時だ。カービィをこの手で倒せるのならば、私はどんな”罰”にも耐えてみせる!!!)

 

 瞬間、『闇』は全て、ゼロへと吸収されていった。

 完了したのだ。

 荒い呼吸を整えながら、ゆっくりと立ち上がるゼロ。

「成功です」

 Dミラクルがそう呟くと、右の瞳が妖しく輝く。これまでとは比較することが無駄である程に……。

 

 

 

 

 

 その日の夜――――

「あぁあああああああああ!!!!!!風鳴翼のライブ中継わ~す~れ~て~たぁあああああああああ!!!!!!うわぁあああああああん!!!!!!!!」

 ポッピーがCRで叫び散らしていた。

 ダークマターの一件について黎斗の得た情報を共有しその整理を任されたためにドタバタしていたせいで、今夜生中継の世界的アーティスト風鳴翼のライブ生中継をすっかり忘れていたためだ。

 彼女は気がついた。が、時すでに遅し。テレビを点けた時、ライブは終わり、観客の熱のこもった歓声をBGMに風鳴翼がやりきった顔で退場していく姿だけが映っていた……。

「ピヨる……ピヨるよ……」

 四肢を床にペタリとついて、この世の終わりのような表情を見せるポッピーピポパポ。普段のテンションが高い彼女を見ていれば分かると思うが、この落ち込みよう、相当である。

 しかも誰もその嘆きを聞き取る者はいなかった。悲しみを誰かと分かち合うことも出来ず、ポッピーは寂しくゲーム画面の中へと引っ込んでいった……。

 

 

 

 

 

 聖都大学附属病院は既に消灯時間を迎え、電気は殆ど点灯していない。永夢は自宅に帰らず、灰馬に許可をもらってカービィと共に屋上に来ていた。

 いつもは星空がよく見える屋上。しかし、今日はそれが叶わない。

 ダークマターの『闇』が星、月光すらも遮っているのである。

「驚いたよ。君が遠い宇宙の惑星からやってきた生き物だなんて」

 カービィのことは、黎斗からすべて明かされた。

 ポップスターという惑星の生命体であること、そしてダークマター一族と何度も激戦を繰り広げ、あのゼロを一度倒していること……。

 なぜ幻夢コーポレーションがそんなことを知っているのか気になったが、問いただす間もなく黎斗には逃げられてしまった。

 そして黎斗はこうも言っていた。

 

 ダークマターと戦う為には、カービィが必要不可欠であると。

 

 ……本当にカービィを巻き込んでも良いものかと考える。

 彼は今回、巻き込まれた被害者なのだ。いくらカービィが戦士であろうとも、協力を求めるのは些か身勝手が過ぎると思う。

 チラリと横を見ると、カービィは永夢が買ってきたお菓子を次々と平らげていた。相当な食いしん坊であることは分かっているが、やはり丸い体のどこに大量の食糧が貯蔵され消化されるのか、仮にも医者の端くれであるためか不思議でならず、苦笑する。

 何かを食べている時のカービィの表情は、とても幸せそうだ。

「そうだ。この星にはもっと美味しいものがたくさんあるんだ。ダークマターを何とかしたら、街を案内するよ。どうかな?」

 だから永夢は思い切った。こちら側の都合で巻き込んでしまう代わりに、めいいっぱい地球を楽しんでもらいたい。そう思ったからだ。

「!!」

 美味しいものがあるという言葉にカービィは目を輝かせた後、強く頷き賛同した。

「ありがとう!一緒に戦おう」

 永夢が差し出した手を、カービィは快く握った。

 カービィとて仕方なしに協力を了承した訳ではない。地球の食べ物がポップスターに負けず劣らずのクオリティだったからこそ、滅ぼされることを拒絶するのだ。それを永夢が知るのは、もう少し先になる……。

 

 




飛彩先生がかなりキャラ崩壊している気がしてならない。
あの親だからね、多少変なとこ似せてもいいよね!←だめです。


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一蓮托生の絆、廻天の悪意

筆が乗る時は乗る気分屋です。


 夜を覆う深き『闇』―――太平洋の小さな無人島からもくもくと増殖したそれの中心に、ゼロは浮遊していた。

 ダークマター達の拠点とは、この人間達に手付かずの無人島であった。

 ゼロの頭と背には天使のようなリングと羽が途切れることなく邪悪なエネルギーを煮えたぎらせ今にも海に破壊と殺戮をもたらさんと揺れている。

 数時間前のような、不完全なものではない。人間達の恐怖と不安を含んだ『闇』を取り込んだことで、完璧に力を取り戻すまでに至った結果がこれだ。

 そして、ゼロの下の凄惨な光景も、その圧倒的なまでの力がもたらした事実であった。

 そもそもこの無人島はダークマターが根城として占拠するまで、深海棲艦と呼ばれる海の怪物達が利用していた。自分達以外の存在が島を占領することなど、認めるはずがない。だが、少女の姿をした支配者が力を取り戻した瞬間、深海の者達は後悔と共に沈まざる負えなかった。

 漆黒の海に広がる、青黒い血液……の無残な亡骸。

 本来、艦娘と呼ばれる希望と激闘するはずであろう深海棲艦。バグスターや眼魔同様、人類の脅威と認識される彼女達でさえも、ゼロは赤子の手をひねるように蹂躙してみせた。

「弱い……地球の”敵”というのはこれほどまでレベルが低いのか」

 残念がるようにゼロはため息をついた。

 これではリハビリにもならないと、落胆の意も含めて。

「なら、この先にいる艦は如何程ものもか……」

 何十キロも先を、ゼロは裸眼で視認できる。その眼には、艦娘達の拠点である鎮守府がしっかりと映っていた。

「夜の哨戒に出ている者が数隻……残りは呑気に眠っているのか。元はただの兵器のくせに、随分といい身分のようだ」

 途端にゼロの表情が笑顔で歪む。無論、悪意に満ちていた。

「少し脅かしてやろう」

 悪戯好きな子供のように言った瞬間、ゼロが放出した破壊光線は海を割りながら、鎮守府工廠に甚大な被害を生み出す……。

 爆音による衝撃で、艦娘が慌てふためきながら次々と外へ飛び出してくる。

 工廠は艦娘達の艤装を保管・整備を行う大切な施設……慌てない娘がどこにいるか。

 しかし黒のセーラー服とスカートという風貌の艦娘『吹雪』だけが、焼かれる工廠に目もくれず、ゼロを見ていた。正確には、ゼロの破壊光線が飛んできた方向。距離が距離だ、見えるはずがない。

「ははは!愉快だ!」

 ゼロは気が付かずひとしきり笑うと、島の中へと身を引いていく。

 そのことには気が付かずとも、吹雪は夜の『闇』を見据え、確信する。

 

 

「あの方向には、確か―――」

 

 

 この些細な幼心から放った一撃が、後に自分の命運を分けるきっかけになるなど、ゼロは思いもしなかった…………。

 

 

 

 

 

 

 その日の朝――――

 東京都区内の一角に、大きくて立派な寺がある。

 そこは『大天空寺』……先代住職、天空寺龍の時代よりゴーストハンターを生業とする者達が住まい、街で発生する不可思議現象を解決へと導き人々の平穏を守ってきた、それはそれはありがたいお寺なのである……。

 

 

「いったいどこにいってしまったんじゃ~!!」

 

 

 先程から寺の庭で頭を抱えうろうろしまくっている白髪の老人がいた。傍から見れば不審者極まりないその正体は眼魔世界「元」長官『イーディス』もとい『仙人』。寺の関係者たちからはもっぱらおっちゃんの愛称で親しまれている男だ。

「おっちゃん何やってるの?」

 すると、仙人の下に一人の高校生が駆け寄る。優しそうな顔立ちの高校生に気が付くと、仙人は途端に泣きついた。

「うおおおタケル!学校はどうした?」

 彼は現役高校生であり大天空寺跡取りのゴーストハンター―――仮面ライダーゴーストとして異世界の民、眼魔と死闘を繰り広げた男『天空寺タケル』。幾度となく殺されながらも仲間達の、人間の思いの力を糧に現世へ舞い戻ってきた奇跡の存在。

 仮面ライダーとしての使命を全うし、エグゼイドと共にゲノムプロジェクトの野望を打ち砕いた後、仲間達と共に再び日常を謳歌していた。

 タケルは仙人をなだめつつ居間へと連れて行き、話を聞く。

「深夜に鎮守府が謎の爆発起こしたの知ってるだろ。あれのせいで昨日から出てる『闇』のこともあって、都内全部の学校が急遽休みになったんだよ。それよりどうしたんだよおっちゃん、そんなに慌てて?」

「聞いてくれるかタケル。実は……わしが保管しておった完全自作の試作型眼魔眼魂三つを外出した時にうっかり紛失してしまったようなんじゃ!」

「あーはいはい、おっちゃんももう歳だもんね。物忘れが酷くなってきたんじゃない?部屋探し直してみたら?」

「誰が認知症じゃ!!馬鹿にするのも程々にせい!!!わしはまだまだ現役じゃー!!!」

「わわっ、悪かったから暴れないで!危ないよ!!」

「うっ!!?」

 鈍い音と共に、仙人が床に伏した。タケルは慌てて支える。

「だ、大丈夫おっちゃん!?」

「ぎ……ぎっくり腰じゃ」

「ほら言わんこっちゃない……」

 タケルは呆れながら仙人を寝室に連れて寝かせる。

「あとは俺が探しに行くから、おっちゃんは大人しく寝てて」

「す、すまんタケル。あとは、たの、む……ガクッ」

「いや、死んでないでしょ」

「テヘッ☆」

 鬱陶しい。ウザすぎる。殴りたいこの笑顔。

「冗談はこのくらいにして、とにかく頼んだぞ。あれは通常の眼魂に比べても強大なパワーを宿している。もし邪悪な意志を持った者達の手に渡っていれば大変なことになる」

 先程までとは打って変わって真面目な顔つきで語る仙人に、タケルは慌てて表情を取り繕う。

「うん、分かった。それじゃあ早速行ってくるよ」

 着替えを済ませ、英雄眼魂を懐にしまい込み、大天空寺を飛び出した。

 眼魂の事もそうだが、それ以上に、タケルにはまだ気がかりなことがある。

 東京上空を覆う『闇』だ。あれは依然都民に不安をもたらす、不可思議現象に他ならない。

 アカリや御成など、彼の仲間達は揃って出かけている為頼れない。仙人があの有様では、タケル独りで行動する他なかった。

 なくなった眼魔眼魂、上空の『闇』、狙われた鎮守府……今回も一筋縄ではいかなそうだ。

(イヤな予感がする。Dr.パックマンの時以上に危険な予感が……わっ!)

 その瞬間、体がぐらついた。考え事をしていたせいで足を踏み外したのだ。

 勢い余って躓きそうになる。

 だが、偶然通りかかった男性に支えられ事なきを得た。

「す、すみません!」

「いや、いいさ。気をつけろよ」

 男性は三十代くらいに見えるが、少年のような朗らかな笑顔で言う。

「はい!あ、俺急いでるんでこれで!」

 再び走り出すタケル。

 彼はまだ知らない。眼魂は既にダークマター一族の配下に利用されていることを。

 そして寺の出入り口ですれ違った男が、とある贋作使いであったことを……。

 

 

「彼が凛の言っていた、”ゴースト”か……」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、CRでは鎮守府工廠が破壊されたというニュースをドクター達が緊張を覚えながら黙々と朝食を口にしていた。

 カービィはいつもの調子で大量に用意されたフルーツや野菜を容赦なく吸い込んでいく。

「ねえ、永夢。これって……」

「多分ですけど、きっとゼロです。もう動き出したのか……」

 永夢の拳がわなわなと震える。

 これは見せしめだ。宣戦布告だ。

 先日、ゼロと名乗った少女は恐ろしい力を宿していた。その一端を垣間見た自分だからこそ、この破壊活動の根源にあるあいつの意志を読み取ることができる。

 明日那も何となくは察していたようで、表情を恐怖で歪ませる。

 敵はいつでも、世界を滅ぼす準備は出来ていると言わんばかりの行為に、永夢は黙っていられない。

「行かなくちゃ……今すぐにでもあいつを止めないと!!」

「ちょっと、行くって何処に!?衛生省から対応策の通達も届いてないし、なにより居場所だって分かってないんだよ!?」

「それでも!このままダークマターを放っておくことなんて出来ませんよ!!また市民に被害が出るかもしれないんですよ!?今動かなくちゃ!!」

「永夢!!!」

 明日那の制止を振り切り、彼はCRを飛び出してしまった。

 その後を、カービィはフルーツを口に詰め込みながら慌てて追いかけていく……。

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと……すみません、ちょっとわかんないです」

「そっか。ごめんね呼び止めて」

「いえいえ!それより大丈夫でした?結構な勢いだったと思うんですけど」

「ああうん。大丈夫。いつものことだから」

「私もおっちょこちょいなんでよくやりますよ……気をつけてくださいね」

 そう言って、少女は永夢の下を離れていった。

 少女が見えなくなった頃、大きなため息をつく。

 立ち往生は目に見えていた。何の手がかりも手中にない現状、永夢に出来ることと言えば、途方に暮れることだけだ。

「はあ……何やってるんだろ僕は」

 街中を散々駆け回って、得られた成果は一つとしてない。疲れ果てた永夢は片隅に座り込んで頭を冷やしていた。

 気持ちばかり逸って明日那の言葉に耳を傾けなかった自分のせい。それは分かっている。けれど、心が待つことを拒んでいた。

(こんな時、タケル君や先輩の仮面ライダーならどうしたのかな……)

 ゴースト、ドライブ、鎧武、ウィザード――――”平成ジェネレーションズ”として語り継がれるあの戦いを思い出す。

 宝生永夢は仮面ライダーとなってまだ三ヶ月と経っていない。言ってしまえば、未熟な戦士だ。

 故に弱音を吐きそうになることも少なくない。

 その時、目の前から真っ赤なトマトが差し出された。

 不思議に思って前を向くと……。

「カービィ!」

「!」

 カービィがいた。自分を追いかけてきたらしい。

 再びトマトを差し出してくる。

「くれるの?」

「!」

 微笑むカービィ。どうやら、彼なりの励ましのつもりらしかった。

 カービィにまで気を使わせてしまうとは……反省する永夢。

「心配させちゃったかな。ごめんね。僕は人の命を救うドクターなのに……」

 謝罪すると、カービィふるふると体を横に振った。

 永夢は思い出す。自分には、仲間がいたことを。

 実を言うと、怖かったのだ。ゼロという強大な敵の出現が。先日の邂逅を思い出すだけでも肌が震える程の敵意が。そのせいで焦ってしまった……。

 でも、もうそんなことはない。彼の隣には、カービィがいる。明日那がいる。ドクター達も思いは異なれど、目的は同じはずだ。

 永夢はトマトを受け取る。励ましの想いが詰まったトマトだ。

「ありがとうカービィ」

 永夢は精一杯の笑顔で感謝の念を送る。

 

 

 カービィは思う。感謝しなければならないのはむしろ、自分の方だと。

 彼は訳も分からないまま地球に飛ばされた。しかし永夢は、優しく彼を受け入れてくれた。美味しい食べ物があることを教えてくれた。そのことに感謝しないわけがない。

 言葉は全然わからない。容易に意志は伝わない。けれど……。

 二人の絆は、言葉などなくとも紡ぐことができる。

 昨夜と同じように、永夢は手を差し出した。

「一緒に戦おう」

 

 

 

「仲睦まじいことだな、カービィ、エグゼイド」

 

 

 

 より強固な絆で結ばれた二人の前に、悪意が現れる。

 




次回から戦闘開始です。結構重要な部分なので、感想や指摘待ってます。


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Liar Hero, Finally Appearance

みんなのトラウマが女の子になってはっちゃけている姿を想像してごらん?
反省はしている。後悔はしていない。


そしてお待ちかね、みんな大好きあの人の登場です。


 聖都大学附属病院 個室

 そこに雪音クリスはいた。と言っても決して重病や重症などではない。頭部に打撲や腕に擦り傷を作り大袈裟に包帯を巻かれてはいるものの、元気に病院食を食べている。

 ダークマターと名乗る一団に仲間ごと一杯食わされた後、『闇』の出現によって同じく事態を重く見た衛生省の日向恭太郎の計らいで、『S.O.N.G』は怪我人に十分な療養施設を提供してもらっていた。勿論、死亡者の遺体の管理も。

「あー、クソまじい。ったく、いつになったら退院出来るんだよ!」

 無造作に皿を放ると、クリスは枕に後頭部を叩きつけるように寝そべり、退屈を紛らわす為眠りに入ろうとする。

 

 

「おっはよぉうクリスちゃん!!」

 

 

 そんな軽快な挨拶と共に、一人の少女が病室の扉を開いた瞬間、クリスは再び上半身を起こすハメになった。

「うるせぇよ!ここ何処だと思ってんだ!!」

「あ、ごめんね。寝てた?」

「いやまだ寝てねぇけど……それよりもお前、また来たのかよ。見舞いはもういいって言っただろうが」

 クリスがそう言うと、少女は当然のように応えた。

「友達が入院してるんだから、毎日お見舞いにくるのは当たり前だよ」

 なんだか照れくさくなって、クリスはそっぽを向く。

 心の中で、親友―――『立花響』とはこういう人格者であることだったと改めて思い知らされながら。

 その時、再び扉が開かれる音がする。

 響とクリスが同時に視線を向けると、そこには見慣れない若者が立っていた。

「……誰だあんた」

 医者とも看護師とも思えない人物。無論、『S.O.N.G』の関係者でもなさそうな出で立ちに、クリスは声色を低くする。

「あんたらがシンフォギア装者の立花響と雪音クリスか?」

「はい、そうですけど……」

 若者は図々しくも病室に一歩進入すると、不敵に笑って言った。

「そっちの指揮官とは日向審議官が話をつけてくれてる。ダークマターの一件、あんた方にも協力してもらうぜ」

 ―――ダークマター

 その言葉を聞き、二人は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 檀黎斗は『闇』広がる空の下、自らがCEOを務める「幻夢コーポレーション」社長室内のPCを叩いていた。

 繋がれたいくつものコードの先には、まだ見ぬライダーガシャットが突き刺さっている。

「それは?」

 ゲーム世界から現れたパラドが興味深くガシャットを見つめ、問う。

「かの大手企業の技術班と秘密裏に提携して作ったガシャットさ。向こうにも「上」が気に入らない連中は山ほどいるようでね」

「へぇ。ま、そんなことどうでもいいけど」

 パラドが目を離した瞬間、データインストールが完了。機械からガシャットを取り出し、まじまじと眺める黎斗。

「このガシャットはデンジャラスゾンビの前身となる『レベルXシステム』、そして複数のゲームを一つのガシャットに組み込んだ『ギアデュアルシステム』の試験的運用を目的としている。これをライダーの誰かに使用させ上手く機能すれば、私の計画はさらに先へと進むだろう」

 その心理に正義はどこにもない。有るのは己の野望を実現せんとする悪の意志。

 パラドはそんな黎斗を見て、楽しそうに呟いた。

「心が躍るなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのままほっこりエンドかと思った?残念、私の登場だ!」

 カービィと永夢の前に現れたゼロは、先日とは一線を駕していながら、それ故に異様な姿をしていた。

 長い白髪を紅いリボンでひとつに束ね、ポニーテールにしている。

 服は悪意に満ちた暗黒の改造和服ではなく、紺色を基調としたブレザーに同色のスカートを着用。

 短いスカートから伸びる足はニーソックスに包まれ、一部の人間には堪らないであろう格好……すっかり現代社会に溶け込んでいた。

 慣れた手つきでスマホを操作しながら、某人気喫茶店のフラペチーノを啜る姿はまるで現役女子高生さながらの出で立ちである。

 珍妙な台詞と共にゼロは二人の前に立つ。

 研修医は(満喫しているな……)という拍子抜けしてしまったために浮かんだ感想を喉の奥に押し込み、強引に緊張感を引っ張り上げた。

「まあそんな顔をするな。大好きなゲームの舞台ならば今すぐ用意してやる」

 そう言った途端、空の『闇』が蠢いたかと思えば、再び無数のダークマターが出現し、建物を攻撃し始めた。

 人々は恐れおののき、散り散りに逃げ回る。

「やめろ!!関係ない人を巻き込むな!!」

 永夢は吠えるが、ゼロはフラペチーノを飲み干して平然と答える。

「関係ないわけないだろう。私がこの惑星に君臨するために、必要な犠牲であり、必要な資源だ」

 資源―――その不可解な言葉の意味を理解するのはすぐだった。

 ダークマター達は建物を破壊しながら、明確に人を狙っている。

 一体の小さなダークマターが逃げ惑う一般人の『中』へ吸い込まれていった。

 すると一般人は突如落ち着きを取り戻すが、その目は既に正常なものではなかった。

「我々ダークマターは他の種族に憑依し、意のままに操ることが出来る。地球の文明は素晴らしい。安易に滅ぼして知識と技術を失うのは惜しいからな。有意義に使わせてもらうとする。人類ダークマター化計画の始動だ!」

 その一言が永夢の琴線に触れた……。彼はわなわなと拳を震わせながら、ガシャットを取り出す。

 弱き者は駆逐され、意思を奪われ、傀儡と化していく……。それはある意味、ただ死ぬことよりも恐ろしい地獄絵図。

 永夢には理解出来ない。なぜ、こんな悪魔の所業を成せようか、理解したくもない。

 だから叫ぶ。許容するはずがない。

「僕達人間は資源なんかじゃない!ゼロ、お前の好きなようにはさせない!!!」

「ならばどうする天才ゲーマー!?」

「許さねぇ……ノーコンテニューでお前を攻略する!!いくぞ、カービィ!!」

「!!」

 ゲーマーMとしての人格の永夢の合図に、同じ正義感を抱くカービィが合意する。

『マイティアクションエーックス!!』

「変し、ぐっ!!?」

 

「ふん!!」

 

 変身を試みた永夢の腹部に鋭い衝撃。

 次の瞬間、カービィにも回し蹴りがクリーンヒットする。

 二人は目にも止まらぬ速度で接近していたゼロによって、逆方向へ蹴り飛ばされた。

「変身を待ってやれる程、私はお決まりのキャラクターではない」

 ゼロの手中には、永夢のマイティアクションXのガシャットがあった。あの一瞬の隙に奪われていたのだ。

 横目に街を見ると、DマインドとDソード、そして初めて見るDミラクルまでもが現れ、生身のまま市民の避難を任されていたであろう警官隊を蹂躙している。

「か、返せ!!」

 事は一刻を争う。永夢は生身のまま、ゼロへ接近しガシャットを取り戻そうとする。

 その全ての動きは、ゼロに読まれ、軽々とあしらわれる。

 右から突き出した拳も、背後からの回し蹴りも、死角からの組み伏せも、何一つとしてヒットしない。Mとしての人格が表に出、普段の何倍も闘争心が強くなっているにも関わらずだ。

「どうした。そんなものか宝生永夢。人間達を救うのではなかったのか?」

「ぐあ!!」

 頬に裏拳をくらい、倒れこむ。

「そろそろこちらの番だ」

 ゼロは容姿を一瞬で以前のものへと変化させると、容赦なく永夢に四肢をぶつける。

 立ち上がろうとしたところを蹴り転がし、汚れた白衣の襟を掴み上げると邪悪な笑顔で腹部に膝を叩き込み、放り投げた。

「私という絶対的存在を前にした今、お前に全てを救う術はない。仮面ライダーとして市民を守護することも、医者として患者を治すことも、清らかな人間としてかけがえのない友を笑顔にすることも出来ない!」

 罵倒に次ぐ罵倒。そして物理的殴打。人間の根底である二面を同時に攻め立てる。

 カービィは自分にまとわりつくダークマターを倒しながら、一方的にやられ続ける永夢を助けようとするが、包囲網を抜け出せない。

 散々痛めつけ、ゼロは彼の耳元で囁いた。

「……お前は記念すべき最初の犠牲だ」

 再び永夢を放り投げ、紅眼が深化し輝いた時、眼を中心に赤黒いエネルギーが渦のように生成されていく……。

「特製のレーザー(・・・・)だ。真っ直ぐその心臓を射抜いてやる」

 血にしか見えないそれは、どう考えてもレーザーなんて生易しいものではない。

 本能が、危険を感じ取り、肉体に回避の命令を出すが、痛めつけられた体は簡単には動いてくれない。

「絶望に堕ちて死ね、エグゼイド!」

 カービィが走り出す。しかし距離が開きすぎていた。今思えば最初の一撃から既に計算されていたのだ。ゼロは自分より先に厄介者の排除を優先した。肉体を失い復讐に囚われながらも、心は最善を勝ち取るために理性を宿している。

 ゼロは、やはり小者ではない。戦う以前と何ら変わらぬ狩猟者であった……。

 

 

 

 まさに永夢に死を手向けんとしたその時、ゼロは迫る気配に身を退いた。

 

 

 

 赤ジャケットを肩に羽織った男の勢いのある飛び回し蹴りが、ゼロの頬を掠める。

 大きくバランスを崩し集中力が途切れ、収束していたエネルギーは霧散しガシャットは男の下へ飛んだ。

「お、お前は……」

 永夢は、男を知っている。男もまた、永夢を知っている。

 それはつい先程、響とクリスと面会した人物だった。

 男はガシャットを拾い上げ、空いた片手で永夢の手を取り立ち上がらせる。

 ガシャットは再び永夢の手に渡った。

 男はサングラスを外して、子供のようにはにかんだ笑顔を見せた。

 

 

 

「よっ、名人。助っ人に来たぜ」

 

 

 

 男の名は―――監察医『九条貴利矢』。

 




次回、本格戦闘開始。そして―――


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星輝の消滅 前編

半月もお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした。
言い訳をさせてもらえれば、将来の準備とか勉強とかで執筆の時間が取れなかったのですはい。


長くなったので前後編に分けました。


 助っ人にきた―――貴利矢はそう言って永夢の前に立っている。

 友人のこと、黒いエグゼイドのこと……これまで多くの嘘が付きまとってきた貴利矢の言葉は信用するに値しない。しかしなぜだろう。共通の敵を前にしているためか、危機を救ってくれたからなのか。

 今だけは心から信じてもいいと、永夢は思った。

「あんたがゼロ?話は聞いたぜ。大層な事企んでるみたいだな」

「貴利矢さん!?どうしてここに!?」

「ポッピーピポパポから名人と、カービィだっけ?お前らの監視を任されたんだよ。ていうか、これだけ大騒ぎな事件、黙ってるわけないじゃん」

 ああそうかと、永夢は納得する。飛び出した自分をカービィが追いかけてきたということは、外に出たカービィがゼロの標的にされる可能性は大いにあった。そう考えて明日那が手を回してくれたということかと理解し、彼が責任を感じて俯いていると、貴利矢に背中を叩かれた。

「しゃんとしろよ。敵は目の前だぜ。嘘ならともかく、失敗した分は、取り返せる」

 貴利矢は爆走バイクのガシャットを持って笑う。

 

 

『爆走バァイク!』『マイティアクションエーックス!』

 

 二人は、ガシャットをベルトに挿入した。

 

 

「大変身!」「変身」

 

 

『ガシャット!レッツゲーム・メッチャゲーム・ムッチャゲーム・ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!』

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティ・マイティアクション!エーックス!!』

 

 

「いくぜ名人!」

「おう!」

 永夢扮するエグゼイド レベル2と、貴利矢扮する仮面ライダーレーザー レベル1は言い合うと巨悪の前に立ちはだかる。

 しかしゼロは退屈そうに欠伸をすると、ついに輪と羽を顕現させた。

「「うわ!?」」

 その余波だけで吹き飛ぶエグゼイドとレーザー。ダークマターを片付けエグゼイドの下へ駆けつけようとしていたカービィも、感じたこともない圧迫感に足を止める。

 これは、以前戦った時よりも、ずっと……。

「……人の皮を被り地球の恩恵を受けたことで、皮肉にも私の力は増している。今こそ復讐を果たす時だ。覚悟せよ、星のカービィ!!」

『闇』への宣誓が木霊し、再び相まみえる戦士と支配者。

 翼を肥大させ猛スピードで突撃するゼロをかわし、カービィは風圧で吹き飛ばされそうになりながらも上空から自身の愛機―――ワープスターを呼び寄せ掴み乗った。

 ワープスターはカービィの移動手段としてあまりにも優秀過ぎる性能を誇る。プププランドから地球へ来るという惑星間の移動など容易いものだ。

 カービィは旋回し東京のビル群をぬうようにして、ゼロと逃走劇を開始する。

「仮面ライダーの相手は任せるぞ」

「「「はっ!」」」

 飛び去り際、ダークマターに告げたゼロはすぐさまカービィを追跡する。

「カービィ!」

「行かせませんよぉ。お二人の相手は我々が致します」

 カービィを助けようと走り出したエグゼイドだったが、Dミラクル、Dマインド、Dソードが命令通り、エグゼイドとレーザーの前に立ち塞がったためにそれは叶わない。

 DマインドとDソードと戦闘経験のあるエグゼイドは三体の強敵から逃れられないことを悟る。戦って勝つしかない……レーザーがいるとはいえ、彼はレベル2ではまともに戦えない状態だ。

 覚悟を決め、ガシャコンブレイカーを手にするエグゼイド。

 

 

『タドル・メグル・タドル・メグル・タドルクエスト~!!』

 

『ババンバン!バンババン!yeah!バン・バン・シューティング!!』

 

 

 エグゼイドとレーザーの前に、新たな戦士の影が現れる。

 鏡飛彩―――ブレイブと、花家大我―――スナイプ。二人の仮面ライダーが、エグゼイドとレーザーの下へ集った。

「ブレイブ、スナイプ!」

「こいつらは研修医には荷が重い。下がっていろ」

「大丈夫なの?おたくら、昨日かなりボコられたって聞いてるけど?」

「てめぇは口にチャック付けて寝てろレーザー。足でまといだ」

「何でもいいじゃねえか。四人同時プレイだ!」

 エグゼイド、ブレイブ、スナイプ、レーザー……四人のドクターライダーが一堂に会した。その会話から絆は感じられない。しかし、悪を打倒すべく集ったことは紛れもない事実である。

 Dミラクルはライダー集結を訝しく表情を歪めながらも、胡散臭くニヤけながら言った。

「いいでしょう、全員まとめて、殺してあげますよ」

 三体のダークマターは、手にした眼魂で異形の姿へと変貌する……。

 単眼剣士の如きDソード。

 甲冑を纏う魔王の如きDマインド。

 全身が無数の眼で覆われた百目の如きDミラクル。

 相手にとって不足はない。

 エグゼイドは左腰のキメワザスロットホルダーから、狩猟ゲーム『ドラゴナイトハンターZ』のガシャットを取り出した。

「超協力プレイで、クリアしてやるぜ!!」

 

 

『ドラゴナイトハンター!ゼェェェェット!!!』

 

 

 ガシャットの起動と同時に、重甲な装備を携えたドラゴンが空を悠然と飛び回った。

 すると残りの三人の手にも同じガシャットが出現し、それぞれが起動する。

『ファング!』『ブレード』『ガン!』『クロー!』

 

 

「大大大大・大変身!」

 

「術式レベル5」

 

「第5戦術」

 

「5速!」

 

 

『『『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!アガッチャ!ド・ド・ドラゴ・ナ・ナ・ナ・ナーイト!ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター!!』』』』

 

『エグゼイド!』『ブレイブ!』『スナイプ!』『レーザー!』

 

 

 エグゼイドは胸部から頭部にかけてドラゴンの頭と翼が合体。

 ブレイブは右腕右足に、スナイプは左腕左足にそれぞれパーツを装着。

 レーザーはレベル2が特殊ゆえ両腕両足にブレイブとスナイプと同様のものが収まった。

 

 ――――ハンターゲーマー レベル5

 

 

 現時点の、ライダー達の最強形態だ。

 

 

『ステージ!セレクト!』

 

 

 

 

 

 

 遠目から見て、それは紅と黄金に輝く人魂が粒子を撒きながら凌ぎを削っているようだった。

 ワープスターに搭乗したカービィは星型の弾幕を射出しながら追撃をかわしていくが、ゼロはそんな牽制をものともせず一気に差を詰めると、思い切り蹴り飛ばす。

 しかしビルに激突する前になんとか体勢を立て直し、互いに距離を計りながら再び鬼ごっこを始めた。

 ゼロはカービィの背後に迫りながら次々と弾幕を繰り出す。

 カービィは巧みにワープスターを操ってビル群を駆け抜けていく。

「いつまで逃げるつもりだ?」

 背後から、ゼロが問いかけてくる。しかし攻撃の手は緩めない。

「逃げてばかりでは守ることなどできないぞ?」

「!」

 分かりやすい挑発だ。素直に乗ればゼロの術中に嵌るだけ……マイペースなのはカービィの短所であり、長所でもある。相手や状況に流されない強固な精神力は大きなアドバンテージだ。

「私は容赦しない。生物は等しく資源だ。邪魔する者は皆殺しだ」

「っ!!」

「他者の命の為に自分の命を張るなど、愚者の極みだ。愚か愚か愚か愚か!戦う価値すらない。そうだな……エグゼイド、宝生永夢だったか。我らに反旗した愚者として、一生笑い話にして語り継いでやろう」

 しかし、友達を侮辱されて冷静でいられる程、彼は完璧な戦士ではない。

 急ブレーキと同時にゼロに向き直り、怒りを露わにする。本気で対峙することを覚悟する。

 永夢は大切な、思いやりに満ち溢れた、大切な友達なのだ。

 

 嘲笑など、許容してなるものか!

 

「―――こい!」

「!!」

 ステージを地球に変えて、三度ゼロと激突する。

 初手は共に同じ。弾幕を張りながらの突進だ。

 ゼロの拳がカービィに届く直前、彼は直角に急上昇、急降下を連続で行い真上からゼロを叩く。

 しかしゼロは衝突を左翼で防御し逆に弾き飛ばす。

 カービィは衝撃に耐えながらも、周囲に目を配りバンバンシューティングのゲーム内アイテムのドラム缶を破壊し、出現した星を吸い込むと勢いよく吐き出した。

 ゼロはその攻撃を避けることも、かわすこともせず肉体で受け止め切り余裕の表情を露わにする。異常な耐久力は健在、否、全てがパワーアップしていた。

 カービィは考える。ゼロと戦うには、現状あまりにも力不足だ。出来る事は限られている。なぜならここは地球。住み慣れた故郷とその周辺宇宙惑星とはあまりにも異なる環境だ。唯一の頼みは、ライダー達のゲーム内アイテムの中に秘められた自らと呼応する星型アイテムのランダム出現である。なぜかは分からないが、ライダーガシャットには故郷と似たような物質を作り出すデータが詰まっているようだ。

 ならば、ここは……。

 カービィは、一旦ゼロから距離を取り、アイテム破壊を実行する。

 一つ、また一つと破壊していくと、通常とは色の異なる星が出現した。まるで、燃え盛る炎を表すような……。

「!」

 これだ。これを待っていた。言わんばかりに吸い込むカービィ。

「……ああ、貴様にはまだ、それがあったな」

 ゼロが呟くのとほぼ同時に、カービィは口に含んだそれを、飲み込んだ。

 すると、カービィの姿に変化が起こる。

 体全体にめらめらと炎がまとわりつく。しかしその炎がカービィを焼き尽くすことはない。むしろ、肉体そのものであるかのように、一体化していた。

 カービィには、唯一無二の特殊能力がある。

 

 

 それはコピー能力

 

 

 飲み込んだ物体・生物等の特性をそっくりそのままコピーする力。

 そして今、カービィが飲み込んだ星には『バーニング』が宿っていた。すなわち、今のカービィは烈火の力を持ち合わせる。

 自らが炎の塊となって、カービィはゼロに突進した。

 ゼロはそれを真正面から受け止める……。

 



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星輝の消滅 後編

 エグゼイドはステージセレクト機能によってダークマター達共々炭鉱へと転移することに成功し、ブレイブ、スナイプ、レーザーと共に三体のダークマターへ迫った。

 ブレイブはDソードへ。スナイプはDマインドへ。エグゼイド並びにレーザーはDミラクルの撃破へ向かう。

 一箇所に固まっていた七体は、それぞれが動きを見せる。

 ブレイブはDソードと鍔迫り合いながら炭鉱の入り組んだ最奥地へ。

 スナイプはDマインドのスターバレットをかわしつつ銃撃で牽制しながら障害物の多い建物内へ飛び込んだ。

 残るエグゼイドとレーザーは、未知なるDミラクルに不用意に近づかず、様子を見る……。

「初めまして。ゼロ様の忠実なる下僕、Dミラクルと申します」

「名乗るなんて律儀な奴だな」

「ええ。私、紳士ですから」

「その割に見た目がグロテスク過ぎんだろ」

「そうなんですよぉ。そこがコンプレックスでしてね?……だから」

 

 

「指摘されると無性に腹が立つのですよ」

 

 

「「!!!」」

 唐突なる爆撃。しかしエグゼイドはファングから火を吹いて防ぎ、レーザーは後退することで難を逃れた。

「やるじゃねえか。次はこっちの番だ!」

 エグゼイドは度重なる爆発を全て火炎弾で相殺すると、Dミラクルに接近戦を仕掛ける。

『マッスル化!』『高速化!』

 エナジーアイテムによる身体・俊敏性の強化を行うエグゼイドとレーザー。対しDミラクルは、属性変化により『ボム』から『アイス』となって迎え撃つ。

 Dミラクルの周囲を守るように氷の浮遊物体が出現し、エグゼイドの火炎放射とぶつかりあった。

 その合間を縫うようにレーザーが突撃し、Dミラクルと組み合う。

 本来の法則に従うのであれば、氷は簡単に溶けてしまうであろうが、なんせダークマターの氷である。炎とやり合うだけの性能は持ち合わせている。

 しかしエグゼイドも負けていない。レベル5+エナジーアイテムの付与、なにより自身の気力が、Dミラクルの冷徹な氷を溶かし、全ての障害を撥ね退けると、ついに腹部に拳が入った。

 これは、Dミラクルとて面白くない。表情が曇る。

「どうだ!」

 反対にエグゼイドは得意げに指を鳴らした。

「……やりますね。流石は仮面ライダー。少々甘く見ていたようです。恐らくこのままではDマインドもDソードも、そして私も負ける可能性が出てきました」

「随分と素直な奴だな、そう思うなら諦めてやられてくれると嬉しいんだけど?」

「それは叶わない相談ですねぇ。なぜなら貴方達にはもう、ダークマター一族を、ゼロ様を止めることは出来ません。勿論、カービィにも」

「「!?」」

 瞬間、二人のライダーは邪悪の波動に飲み込まれ大きく吹き飛ばされた。

 地面に激突した衝撃でくらくらしながらも、素早く目を凝らし状況を確認すると、衝撃の光景が飛び込んできた……。

「!! カービィ!!!」

 エグゼイドの目の前には、ボロボロになり、満身創痍のカービィが力なく横たわっていた。

 バーニングのコピー能力は既に解除されており、炭鉱の石炭の山にワープスターが撃墜されている。

 一体誰が……そんなことは、考えるまでもない。エグゼイドはカービィを抱きかかえながら、眼前から放たれる体の芯から震えてしまう程の暗黒瘴気の中にいる、ゼロを見た。

 仮想フィールドをぶち破るとは、恐れ入る。

「ゼロ……よくも!」

「私が強くなったとはいえ、もう少し保つかと思ったのだがな。まあ、星の恩恵補正がない地球での戦いにしてはよくやったと褒めてやれ。どちらにせよ殺すが」

 ゼロの下に、三体のダークマターが集結し、並び立つ。

「絶対にお前を倒す!」

 カービィを寝かせ、エグゼイドは立ち上がる。彼の下にもレーザー、ブレイブとスナイプも駆け寄った。

「私一人でやる。お前たちは先に戻ってプラント拡大を進めろ」

「「「はっ」」」

「独りで俺達全員と戦うつもりか!?」

「ああ。独りでも十分過ぎる戦力だがな」

 そう言って輪と羽を引っ込めるゼロ。

「舐めてんじゃねえぞ白髪(しらが)女」

 スナイプの言葉を皮切りに、4ライダーが肉薄した。

 レベル5のライダーが四人……それでもゼロは表情を崩さない。

 ブレイブとレーザーの剣技を蛇のようにすり抜け、スナイプのガンを蹴り上げて封じると、エグゼイドを掌底突きで牽制。

 再び向かってくるレーザーの両武器を掴み、背後のスナイプの銃撃をレーザーを蹴り上げて体を回転させることでかわし、着地した瞬間にブレイブを蹴り飛ばした。

「能力を使わずとも、貴様らなど赤子の手をひねるよりも容易い」

 圧倒的。強力なバグスターを相手にしても怯む事のなかったドラゴナイトハンターの力が、まるで通用しない。

 ならばとエグゼイド達は並び立ち……。

『がっしゅ~』

 四人はガシャットをスロットホルダーに挿入し、二度、ボタンを押す。

 

 

『『『『キメワザ!ドラゴナイト・クリティカルストライク!!』』』』

 

 

 収束する膨大なエネルギーから、ライダー達の最強奥義が放たれる。

 

 

 

 ――――しかし超越する『闇』の力。

 

 

 

「なん、だと……」

 最早、呆然とするしかなかった。

 会心の一発がいとも容易く『闇』に飲み込まれ、消滅してしまうのだから。

 そして、さらに莫大なエネルギーの塊へと変換されて、自分達に大ダメージを与えたのだから……。

 もれなく全員が、変身解除せざる負えなくなり……。

 その場に崩れ落ちた。

 貴利矢が、大我が、飛彩が、そして永夢が、一方的な敗北を喫した瞬間だった。

「さて……」

 ゼロは、この結果が視えていたかのように、さも当然の如く呟きながら、倒れ伏した永夢を見下ろす。

「言っただろう。私がここにいる今、全てを救う術はないと」

「ぐ……うう……」

 永夢はガシャットに手を伸ばすが、既に戦う力は削がれている。体は、石のように動かない。

「さらばだエグゼイド。地球は、ダークマターに任せてもらおう」

 無慈悲なる、邪悪が輝いた。

 

 

 

 ――――永夢を庇うように飛び出してきたカービィを、真っ直ぐに貫いて。

 

 

 

「カー……ビィ?」

 一瞬、理解が出来なかった。

 ゼロに敗北して、死を待つだけだったまさにその時、カービィが、飛び出してきて……。

 

 

「うわぁああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 永夢の目の前で、一つの大切な命が、消えた。

 絶望の叫びが、木霊する…………。

 




駆け足で殴り書きしたのでいつも以上に雑な気がする……。
おかしなところがあればご指摘ください。
ついでに感想などもよければどうぞ。


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失意と、危機と、準備と

うわっ、私のやる気、なさすぎ!?

また遅くなったよ!ごめんなさい!!!


言い訳をさせてもらうとガルパンと蟲師を一気視聴とかしてたらまた半月たっていたのです!←殴

今回も長くなったので二分割。タイトル違うけど。


 永夢は聖都大学附属病院の特別個室で目を覚ます。

 ひどい外傷のせいで、起き上がる際、節々が悲鳴を上げた。

 しかしそんなことに気を向ける余裕はない。

 なぜ自分が病室にいるのか、理由を考え、記憶を手繰る。

 レベル5をもってしても手も足も出なかったゼロ。敗北の後、死を待つだけだったその時……。

 

 

「っ!!!」

 

 

 逃れられない確かな事実(カービィの死)が、永夢の心を思い切り締め付ける。

「カービィを守れなかった……命を、救えなかった……!!」

 悲泣と後悔と自責の想いが形となって、真っ白な布団を濡らしていく。

 永夢の心は、信念は、砕け散っていった…………。

 

 

 

 

 

 

 

『……『闇』が再び拡大し始めてまる一日が経過した。ダークマターに取り憑かれた人々は皆、昏睡状態に陥っていて危険な状態だ。……最早、一刻の猶予もない。奴らが本格的に活動を再開する前に、根源を叩かなければこの国は、いや、この世界は支配されてしまう』

 CRのモニター画面を通して、永夢を除くドクターライダー達と明日那、灰馬はとある人物と対面していた。

 その人物に敬意を払ってか否か、灰馬は勢いよく立ち上がると、胸を張って言う。

「無論、承知しておりますとも!特に!ドクター達の先頭に立って世界救済というオペを完遂するのは!この不肖鏡灰馬の優秀な息子である……」

「親父」

「ん?」

「うるさい」

「ガーーーーン!!」

 真っ白に燃え尽きた灰馬に代わり、息子の飛彩がその人物―――衛生省の衛生大臣官房審議官『日向恭太郎』へ発言する。

「お言葉ですが日向審議官。ダークマター一族の長たるゼロの力は、最大戦力であるレベル5を容易く退ける程に強大です。早急に手を打たねばならない状況であることは理解できますが、今、こちら側から仕掛けるにはあまりにもリスクが大き過ぎると思うのですが?」

 それは誰もが至っていた結論だ。飛彩は、ただ当たり前の事を口にしたに過ぎない。

 日向は、その反論が挙がることを想定していたのか、表情を変えずに、対する解答を述べる。

『勿論、その為の対策は既に用意してある。私の知人に、『S.O.N.G.』と繋がりのある人物がいてね。私の方から彼を通じてコンタクトを取ってもらったところ、快く協力することを約束してくれた』

「『S.O.N.G.』って、確か……」

『そうだ。超常災害対策機動部タスクフォース―――Squad of Nexus Guardians。超常的な事象に対処する組織で、ある意味君たちと似たような目的の為に組織された団体だ。ここ最近の出来事だと、魔法少女事変(アルケミックカルト)が記憶に新しい。これよりCRには『S.O.N.G.』のシンフォギア装者達と協力体制で事件解決に向かってもらう。そろそろ、そちらに使者が到着するはずだが……』

 

 カツン、カツン。

 

 噂をすればなんとやら……日向の言葉通り遣いの者であろう少女が一人、階段を上がって現れた。

 頭と頬には包帯や絆創膏で患部を保護してあるものの、それでもサラブレッドの整った顔立ちは見る者の目を奪うには十分なクオリティだ。

 堂々と立ち、少女は名乗る。

「あんた達がCRのドクターだな?雪音クリスだ。よろしくな」

「な、なんだね君は!子供がなぜこんな所にいるのだ!出ていk」

「どう考えても『S.O.N.G.』の関係者でしょうが!!」

「え、そうなのか飛彩!?」

「親父」

「ん?」

「もう喋るな」

「ガーーーーン!!」

 クリスがCR面々の自由な様に呆れていると、唯一沈黙を貫いていた大我が軌道修正を図り本題を口にする。

「……それで、協力するにしても結局具体的にどうするってんだ?」

 大我の周囲の人間にあまり良い印象を抱かせない一匹狼のようなぶっきらぼうな言い草に、クリスは何となく親近感を覚えながら彼に続く。

「それはあたしも聞きたい。こっちも捜索はしてるが廃病院でドンパチやられて以来、一向に手がかりがなくてな」

 ゼロが日本国内の何処かに潜伏している可能性は極めて高い。恐らく何らかの小細工を施し地球技術での追跡を封じているのだろう。

 つまり、このまま敵の潜伏先が掴めない場合、絶対に後手に回ることになる。かといって闇雲に捜していては、仮に居場所を突き止めたとしても時間と労力が割に合わない。

 そして、次にダークマター達が動きを見せた時は恐らく……本気で世界を支配する為の準備を整えてしまっているだろう。

 そうなれば完全に詰み。ジ・エンドだ。

 人類は勝利の為の絶対条件として、敵の先手を取る必要に迫られた……。

『申し訳ない。まだこちらもダークマターの所在は掴めていないのだ。現在進行で『S.O.N.G.』と共に全力で情報を収集している』

 しかし、頼みの綱である衛生省も『S.O.N.G.』も、目的を果たせず立ち往生している。

 言葉のままに、崖っぷちだった。

「分かりました。それでは俺達の方でも、微力ながら捜索を始めさせてもらっても構いませんか?」

『ああ。よろしく頼む。本来であれば、ドクター諸君には傷が癒えるまで安静にしておいてもらいたかったのだが』

「気にしなくて下さいよ日向審議官。そこら辺の奴よか、頑丈に出来てるんで」

『うむ。貴利矢君、雪音君達との仲介役を買って出てくれた件は本当に感謝しているよ。それでは諸君、よろしく頼む』

 それから面々は各々行動を始めるべく、CRを出て行った。

『ポッピー』

「はい?」

 各々がCRから出て行った後、寂しくなったCRで、日向は部下である明日那に話を切り出した。

『永夢は、どうしている?』

 その質問は、彼自身にとっても明日那にとっても辛い。

 明日那の表情は見る見る陰を作る。それだけで、今の永夢の状態を察するには十分だった。

『永夢はドクターを志してから今日に至るまでの中、実際に命の灯火が消える様を見たのはこれが初めてだろう。純粋で正義感に溢れた彼にとって、カービィの命を救えなかったショックの大きさは想像に難くない。しかしドクターである以上、いつまでも同じ場所に立ち止まることは許されない』

 しかし日向の予想に反し、明日那―――ポッピーピポパポの表情は明るかった。

「大丈夫ですよ。永夢はきっと立ち上がります。だって永夢は、天才ゲーマーで、そしてドクターですから!」

 それは、永夢を心から信じていることの証。

 かつてドクターとして永夢の命を救い、彼がドクターを志す道しるべを作った日向。

 彼は知っている。宝生永夢はここで終わるような弱い人間ではないことを。だから彼も、信じることにした……。

 

 

 

 

 

 

 飛彩と大我と貴利矢は、初めてダークマターと邂逅した現場に足を運んでいた。

 何か重要な痕跡が残されていないか、調査をするためだ。

「研修医は立ち直ると思うか?」

 唐突に、飛彩は大我に向けてらしくない質問を投げかけた。

「はぁ?知るかよ……ってか、お前がエグゼイドの心配をするとはな。昨日の戦闘で頭のネジがどっか飛んじまったのか?」

「俺は至って正常だ。心配などしているつもりはない。今は一人でも多くの人手が必要な状況だ。仮にも奴は仮面ライダー、貴重な戦力だからな。こんなところで脱落されては困ると思っただけだ」

 大我の軽口に対し不機嫌そうに返す。

「……ドクターってのは、命が消えていくのを誰よりも近く、そして多く見なきゃならねえ仕事だ。これで心が折れるようなら、所詮その程度の奴だったってだけだろ」

「無免許医のお前がドクターを語るとはな」

「忘れたか?俺も五年前はドクターだったんだぜ?」

 飛彩にとって大我は忘れようにも忘れることのできない、ある意味での敵であった。

 彼の恋人・小姫は五年前、バグスターウイルスに感染し、そして命を落とした。

 そんな彼女のオペを担当したのが、かつてCRのドクターだった大我なのだ。

「俺が小姫を救えなかったドクターを、忘れるものか!」

 しかし大我はバグスターを倒せなかった。小姫に感染したグラファイトバグスターは当時のプロトガシャットでは手に負えない程に強過ぎた。

 しかしだからといって飛彩は納得しなかったし、大我もあの出来事は自身の人生の大きな転換期だった。

 その後、飛彩は渡米し失敗しない天才外科医に、大我は免許を剥奪され無免許医となり、二人のドクターはそれぞれの道を歩み始め、そして現在、交わった。

 無言の睨み合いが続くが、決して手を出すことはない。ただの言い合いで感情的になったならば、それこそドクターとして永夢のことを言えなくなるだろう。

 永夢が今、ドクターとして大きな岐路に立たされていることを理解しているから。

「まあ、あいつがどんな選択をするかなんて、俺達が考えることじゃねえだろ。俺としてはここで脱落してくれるんなら大助かりだがな」

 そう笑って、大我は飛彩に背を向ける。

「研修医の選択、か……」

 飛彩はポツリと呟いてから、反対方向へ歩き出した。

 すると、珍しく黙って二人のやり取りを傍聴していた貴利矢が最後に言う。

 

「名人のことが心配なら素直にそう言えばいいのに」

 

「バカを言うな!ありえん!!」「監察医は黙って監察でもしてろ!!」

 

 

 それからは全員無言のまま、街の探索を続けた……。

 




どうでもいい報告すると超スーパーヒーロー大戦観ました。




チームエグゼイドのやりとりに館内でずっとクスクス笑っていました。


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決戦直前 ~再起の時~

カービィの消滅は構想段階から決まっていました。
永夢ってまだ実際に命を救えなかったってことはなかったと思ったので、ここで取り入れてみました。

再起の仕方はいろいろと考えていましたがこういう形をとらせていただきました。


キャラクターの消滅というのは賛否あるものだと覚悟しています。多くの方に満足していただけるよう、これからも精進いたしますので、何卒よろしくお願いいたします。


 その頃、響は聖都大学附属病院の院内マップとにらめっこしていた。

 実はクリスと共にCRの施設へ向かう予定だったのだが、アプリ版マイティアクションXに熱中していたためにはぐれてしまったのである。

 加えて残念なことに、CRや仮面ライダーの存在は秘匿されているためマップには記載されていなかった。

『S.O.N.G.』から渡された経路図は見舞いに訪れた際クリスに託してしまったため、かれこれ小1時間院内を歩き回っている……。

「うぅ、どーしよ。クリスちゃん絶対怒ってるよね……」

 後悔しようが後の祭り。響はとぼとぼとその場を後にしようとした時、何となく見覚えのある青年の顔を見つけた。

「あれ?」

「君は、確か街で」

 向こうも響に気が付いたようで、生気のない声色をしぼり出す。

 病院服を着て、顔や腕に傷があるが、間違いなく彼―――永夢とは先日出会っている。

「やっぱり、昨日の転んでた人ですよね!」

「えっと……一応宝生永夢って名前があるんだけど」

「あ。ご、ゴメンなさい宝生さん!私、立花響って言います!」

 永夢と響……再びの邂逅だった。

 二人は、中庭のベンチに場所を変えてゆっくり話をすることとなった。

「響ちゃんだっけ……昨日はいきなり変なこと聞いちゃって、ごめん」

「いえいえ。こちらこそ情報持ってなくてすみませんでした!」

 なんて明るくて優しい娘なのだろう。永夢は率直にそう思った。

 ここにはこんなにも素敵な人間がたくさんいる。自分はそんな者達の笑顔の為に戦っていた。その全てを守るために。確かにそのはずだった。

 

 

 ――――お前に全てを救う術はない。

 

 

(っ!)

 はたして希望は砕かれた。

 永夢はカービィを救う事が出来なかった。ドクターとして、仮面ライダーとして。

 彼の笑顔を、もう二度と目にすることは出来ないのだ。

 永夢は、戦う意味を完全に失っていた。

「あの、なんだか辛そうですけど大丈夫ですか?」

 顔に出ていたのだろうか。響が覗き込むようにして永夢を心配する。

「いや、何でもないよ、何でも……」

 

 

「何でもなくないですよね」

 

 

 他人に迷惑をかけまいと、心を否定した。しかし響は強い口調で、真剣な眼差しを自分に向けてきたことに、彼は驚いた。

 心の中を見抜かれそうになって、何となくだけど、永夢は話すことに決めた。

「響ちゃんはさ、もしも絶対に勝てない存在によって目の前で友達を永遠に失うことになって、そしていずれ世界も終わりを迎えてしまうとしたら、どうする?」

 それは全て現実に起きた真実で、そのまま永夢とカービィと、ゼロの関係にぴったりと当てはまる。

 個人名を濁したとは言え、永夢は底抜けの明るさを持った少女にダメだと理解していながらも自分の絶望を吐露した。

 響はしばしの無言を破って、答えた。

「友達は大切な存在。私だったら多分、耐えられなくてみっともなく泣いて、しばらく家に引きこもっちゃうと思います。それこそ世界の終わりなんて知ったこっちゃないって感じで……」

 当然の答えだ。誰しも、友達に限らず大切な者を失った時の悲しみは、日常で受ける些細な悲しみの比ではない。

 例え明日に終焉が訪れようとも、気持ちを切り替えて世界の為に戦おうと決意するなんて、少なくとも今の永夢には、超難易度のゲームより遥かに至難の技だ。

「でも……」

 正しいはずの答えの後に、逆接を用いてきたその瞬間、永夢は思わず顔を上げ響を見た。

 

 

 

「私は、世界を守るために戦うと思います」

 

 

 

 彼女は、優しく微笑みながら、真っ直ぐな眼差しを向けてそう言い切った。

 聞きたい。その先の答えを。

「どうして?友達を失ったショックから、その辛さから立ち直れるの!?」

「立ち直る?まさか」

 ケロッと言ってみせる響に、開いた口が塞がらない。ふざけているわけではないのは分かっているのだがどうにも納得がいかなかった。

 困惑する永夢を差し置いて、響は続けた。

「私には友達がいます。あ、名前は小日向未来って言うですけどね!笑って、泣いて、怒って……いつも傍にいてくれて。だから、一緒にいられるこの世界が大好きなんですよ」

 立ち上がり、空を見上げる。『闇』が太陽の輝きを遮り、とても良い世界とは思えない雰囲気が漂っている。今にもダークマター一族による地球支配……終焉が始まってしまいそうだ。

 いや、既に始まっているかもしれない。

 それでも少女の瞳は絶望に染まってなどいなかった。ゼロにかかれば、響も、その未来という友達も、簡単に殺せてしまうというのに。

「例え永遠に友達がいなくなってしまったとしても、綺麗な景色がたくさんあって、美味しい食べ物もたくさんあって、他にもたくさんのものを分かち合った世界だから、私は守りたいと思うんです」

 その瞬間、永夢は頭にゲンコツをくらったような気持ちになった。

(僕は……なんて馬鹿だったんだ。カービィは地球のことを自分の故郷と同じくらい大好きになってくれていた。誰よりもこの世界を大切に思ってくれていたから、命をかけて僕を、救ってくれたんじゃないか!)

 自分を恥じて、拳を握り締める。ずっと傍にいながら、友達の真意すら分からなかったなんて、大馬鹿野郎と自分自身を罵倒する。

 永夢はいつまでもふさぎ込んでいるわけにはいかないと、勢いよく立ち上がった。傷口が痛んだが、知ったことか。

「響ちゃん、ありがとう!君のおかげで、僕はまた戦える!!」

「え?あ、はいそれはどうも……?」

 笑顔で礼を言って、永夢は走り出した。響はいまいち彼が何を言っているのか分かっていないようだったが、何となく納得して、その背中を見送った……。

 

 

 迷いも、恐れも、全てが吹き飛んだ。

 カービィの意志を継承し、仮面ライダーエグゼイドは立つ!

 

 

 

(必ず、守ってみせる――――!!)

 

 

 

 

 

 

 かつてこれほどまで、嬉しさで周りが見えなくなることがあっただろうか?

 否

 これが初めてである。

「ハハ……ハハハハハハハ!!!!」

 大声で笑わずにはいられなかった。口から心臓が飛び出さんばかりの勢いで、歓喜に身を震わせる。

 腹を抱き、笑い過ぎで涙も出てきた。

 成し遂げられた復讐。ゼロ自らの手で屠られたその存在は星屑へなって消滅していった。

 では、その最期の姿はいかなものであったか……。

 

 

 他者を庇って死んだのだ。

 

 

 これほどまで滑稽で、無意味な行為はない。

 ぐるりと周囲を見渡したあと、ゼロは羽を広げて浮き上がった。

「地球よ、そして全宇宙よ!ついに復讐は果たされた!残る余生、せいぜい怯えながら過ごすがいい!!!!」

 復讐を達成したことが、幸いしてか、残る人類は寿命が引き伸ばされた。

 しかしそんなものは時間の問題でしかない。

 ゼロはすぐにでも、侵略を始めるつもりだ。

 するとダークマターに憑依された人々が、次々と力なく横たわっていく。その意識は既になくなっていた。

 まもなく明日那と救急隊が到着し、ドクター達を含めた人々は病院に運ばれていった……。

 

 

 

 

 

 ダークマターの拠点は異様に様変わりしていた。

 朽ち果てていた筈の無人島には人間からして見れば不気味極まりない建造物で埋め尽くされている。

 中央の教会はさらにその全長を伸ばし、魔王の住まう塔のようにそびえ立っていた。

 まさに悪の本拠地だ。

 そんな外観である建物の内部では、ミスマッチ光景が繰り広げられている。

 そこには不思議空間によって新造された広大なプールが存在していた。

 髪型をツインテールにして布面積が際どめの黒ビキニを纏ったゼロが、仰向けになって空中を悠々と泳ぐダークマター達に慈母のような眼差しを向けている。

 外観の空気を読まずに、一族は世界をエンジョイしている模様。

「ところでお前たち、微妙にボロボロだな?何があった?」

「はっ!実はここに帰ってくる最中、幽霊のような姿をした戦士に襲われまして」

「かなりのやり手であったな。確か、我々の力を増幅させるために白髪親父の下より強奪した眼魂を取り返しにきたようでした」

「ふーん……まあ、放っておいても問題はない。それよりミラクル!あれを持って来い。あの、なんだっけ……三本の矢みたいな名前の炭酸飲料!」

「三〇矢サイダーですね、只今ご用意致します!」

「十秒で持ってこい」

「御意!」

 Dミラクルに命令を下したゼロは水から上がった。

 プラスチック製のイスとテーブルが取り揃えられた位置に座ると、Dミラクルが頑張って十秒で用意した三〇矢サイダーをごくごく飲む。

「楽しんでおられますね、主」

「ぷはぁ!やれやれ地球の下等生物は侮れんな。娯楽を作らせれば宇宙で右に出る惑星はないぞこれは」

「こんな優秀な惑星がゼロ様が復活なされて最初の支配下になるとはつくづく運が良いですな」

 Dソード、Dマインドと交互に語り合う。

 そうだ、今日が審判の日だ。

 ゼロは立ち上がり、『闇』ごとダークマター達を招集した。

「憎き宿敵カービィは常闇に堕ちた。我々に仇なせる者はもういない。今こそ、ダークマター一族は全宇宙を手中に治める時だ!!」

 声は上がらない。ダークマター一族にはまともな発声器官がないからだ。しかし、縦横無尽に激しく動き回る姿は一族達の士気がハイボルテージに達している事を表している。

 紅き右眼をより深紅に染めて、ゼロは声高らかに

「しかし、愚かな人類は私達に最後まで抵抗するだろう。特にこの惑星の戦士―――仮面ライダーエグゼイドは、カービィの仇討ちに乗り出すに違いない。全員覚悟しろ。ダークマターと人類の生存を掛けた闘争……DARKWARSが始まるぞ!!!」

 その時、ダークマター達の拠点から、複数の光柱が湧き出した……。

 

 




それと謝罪がもう一つ。

タケル殿の描写を入れるといったな、あれは嘘だ。


文才がなかったんです許してくださいなんでもしますから!←なんでもするとはいっていない。


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希望を託す者達

深夜テンションやばいです。しかし進まないな話……。
そして落ちるクオリティがやばい。

それと活動報告の方でも載せましたがtwitterの垢を作ってみました。よろしければ見てやってください。

@hi_black5826


 日向との通信が終了し、独りCRのゲームの中に居座るポッピーピポパポ。

 その表情には、不安が表れていた。

 日向にはああ言ったものの、やはり永夢が心配でならなかった。彼の純粋さは長所であり短所でもある。

 誰かの支えが必要だと思った。

「よーし……こうなったら私が!」

 自分はエグゼイドのサポートを任された存在……こんな時こそ自分の真価を発揮するのだと、ポッピーはゲームから飛び出し一気に螺旋階段を駆け下りた……。

 

 

「「いたぁ!!!?」」

 

 

 突如全身に衝撃が襲いかかる。階段を駆け上がってきた人影と接触したのだとすぐに気づいたポッピーは階段で尻餅をついてしまい、額を抑えながら目を開けると、

「え、えむぅううう!!?」

 今まさに自分が何とかしようと思っていた相手が階段の下まで転がり落ち、白目を剥いているではないか。

「永夢!しっかりして、死んじゃだめぇ!!」

 

 

 

 

 

 永夢は腰に手を当てながら椅子に掛ける。超幸運なことに打撲や擦り傷はなく、先日の怪我が悪化するようなことにもならなかった。

 一息ついた後、ポッピーは頭を下げる。

「ごめん永夢。よく前見てなかったから……」

「いえ、こっちも勢いつけて登っていたからお互い様ですよ」

 はははといつもの笑顔を見せる永夢に、ポッピーは困惑した。てっきり塞ぎ込んで病室から出てこないものと思っていたから、あまりにいつも通りな態度に素直に喜ぶことができない。

 心理が掴めず、どういう会話をすればいいか分からなかったのだ。

「あの、永夢……その」

「わかってます」

 ポッピーの気まずそうな言葉をぴしゃりと遮って、永夢は答える。

「明日那さん……いやポッピー。心配かけてごめん。もう大丈夫だから、僕は戦うよ。カービィのためにも、絶対にゼロの野望を止めてみせる」

 その言葉を聞いた時、ようやくポッピーは心の底から安堵した。

 

 

 

 

 

 応急手当を簡単に済ませ、病院服からいつものTシャツへ着替え終えると、ドクターとしての証たる白衣とゲームスコープを身に付ける。

 最後にゲーマドライバーとライダーガシャットを懐に入れ、ポッピーと共に病院の外に出た。

「でも、どうするの?まだ手がかり見つかってないんだけど」

「うーん……そうなんですよね」

 しかし早速足踏み。当然である。永夢が立ち直っただけで、大元の問題は何も解決していないのだから。

「いったいどうすればいいのー!?」

 ポッピーは頭を抱え、オーバーリアクションでその場に蹲る。

 正直永夢にもゼロの居場所には見当が付かない。しかしなんだろう、この頭の片隅に引っかかるような、微細な違和感は……。

 そして違和感の正体をぐるぐると考え、やっとの思いで手繰り寄せた結果、彼はある一つの過去の出来事に行き着いた。

「…………鎮守府。そうだ、鎮守府だ!!」

「え、どういうこと?」

 永夢が思い出したのは、先日の鎮守府工廠で起きた大爆発事故。あの後すぐに頭に血が上ってゼロ捜しを始めた為にすっかり忘れていた。

 表向きは事故として処理されていたが、永夢はあれを勝手にゼロの仕業だと解釈していた。

 事実、事故に繋がるような物的証拠は何も見つかっておらず、真相は現在闇の中。

 ……手がかりになる可能性は、十分にある。

「ポッピー、急いでみんなを集めて!」

 ポッピーは永夢に急かされ、やたらカラフルなスマホを操作しCRのドクター、『S.O.N.G.』、衛生省知りうる限り全てに永夢の言葉を伝えた……。

 

 

 

 およそ十分程で永夢の下に飛彩、大我、貴利矢、灰馬、響、クリス、そして衛生省からの使者としてなんと日向自らが集った。

 

 

「ちょっと待ってください」

 

 

 いざ、話をしようという時、永夢は待ったをかけて響を見た。

「あれ、宝生さんってお医者さんだったんですか!?」

「響ちゃんこそ『S.O.N.G.』の関係者だったなんてびっくりなんだけど」

「えっと、じゃあ改めて自己紹介するね。仮面ライダーエグゼイドの宝生永夢です」

「私は【ガングニール】のシンフォギア装者、立花響です!」

「なんだお前ら知り合いか?」

「いいからさっさと話を始めろエグゼイド。戦う気がないんならガシャット寄越せ」

 二人ががっちり握手したところで、周囲の催促も相まって慌てて説明を始める……。

 

 

 

「ですから先日の鎮守府で起きた爆発。僕はそこに手がかりがあるんじゃないかと思います」

「なるほど……行ってみる価値はあるかもしれん」

「では、鎮守府には衛生省の方から連絡を入れておこう。ルート案内はポッピーに一任する」

「ピプペポ了解!みんな私についてきてー!」

 鎮守府まではそれほど距離があるわけではない。このまま走って向かっても時間はかからないどころか、自動車を用意するよりも早く着く。

 ポッピーを先頭に灰馬と日向を除く全員が走り出し、永夢も後に続いた。

「永夢!」

 その時、日向が永夢を呼び止める。そして強く口にした。

「頼んだぞ」

「……はい!」

 会話にして十秒にも満たないが、気持ちは通じ合っていたから、これでいい。

 日向は永夢の再起をしっかりと確認した。あとは、彼らに望みを託すだけだ。

「鏡院長。私も事の顛末を、この病院で祈ることにするよ」

「へ……は、はい!ただいまお部屋をご用意致します!!」

 そう言って、日向は鎮守府の連絡先を調べ始めた……。

 

 

 

 

 

 

 鎮守府を目指して五分くらい経った頃、大事をとって『闇』の下にいた人々はシェルターへの避難が完了しており、現在の街は人の営みはなく、薄暗い廃墟のように静かであった。

 認定特異災害ノイズが跋扈しなくなってからめっきり使用されることのなくなったシェルターが再び日の目を見ることになろうとは……。その異常性は、誰もが想像を絶する脅威に晒されているのだと理解することは難しくない。

「見えてきたよ鎮守府!」

 ポッピーの指差す先に、赤レンガ倉庫の立ち並ぶ施設が存在していた。

 世界大戦時の特徴的な建物を模して造られた鎮守府に間違いないだろう。

 刹那、上空の『闇』に変化が起きた。

 足を止め警戒する一同。

 目玉生物(ダークマター)は永夢達の行く手を阻むヴィランとして次々と彼らの前に立ち塞がる。

 加えて、目に見える大きな変化を遂げていた。

 成人男性と同程度の人間的な黒い肉体を形成していたのだ。

 しかし顔には大きな単眼が宿り、ぎょろりと蠢いている様はグロテスクで耐性のないポッピーは顔をしかめる。

「人型!?」

「あと少しなのに!」

「俺達の邪魔する気満々だねぇ」

「ポッピー、隠れてて!」

 永夢、響、クリスが着地と共に間髪入れず攻撃を仕掛けてくるダークマター達を蹴り飛ばす。

 飛彩、大我、貴利矢はなんと自ら群れの中に飛び込み、身体能力の高さを活かして翻弄し始めた。

 しかし一体ずつの戦闘能力は低いものの、いかんせん数が多く、ゴールは目の前にも関わらず、無尽蔵に現れるダークマターの壁を突破できない。

 加えてダークマターが活動を始めたということは、ゼロが行動を起こしていることを意味する……。

「くそっ!どけぇ!!」

「キリないよもう!」

 背中合わせに拳を構える響とクリス。悪態をつきながらもその耳が捉えたのは、プロペラの音だった。

 遅れてドクター達もあるはずのない音に気がつき、揃って上空を見上げる。

 

 そこにいたのは、一台の軍用ヘリコプター。

 

 ヘリは呆然とする一同の真上までやってくると、どこに着陸するわけでもないのにその高度を保ったまま、ハッチが開いたかと思えば……。

 

 

 ――――そこから人を乗せたバイクが飛び降りた。

 

 

「え、嘘!?」

 敵を突き飛ばしながら、永夢は驚愕に目を奪われた。パラシュートもないしにバイクがかなりの高度から飛び降りたのだ。驚くなと言う方が無理な話である。

 バイクを操る人物は、臆することなく近くのビルの屋上に降り立ち、再びそこから背の低いビルへと、何度かその行為を繰り返しながら下へと降下を続ける。

 やがて地上5メートル程の小さな倉庫から完璧に地上に着地して見せた。

 まるで外国のパフォーマンスを見ているようで、唖然とするドクター&ポッピー。

 バイクの人物は休むことなく、今度はダークマターに向かいアクセルを切っていく。

 その巧みなテクニックはビルを降下してきた時と同じく、大群の敵を前にしながらもまったく衰えない。

 前線にいた十数のダークマターをすべて蹴散らして戻ってくるバイク。

 すると彼女(・・)はヘルメットを脱ぎ、青い髪を左右に振って払いながらその正体を見せた。

 

 

「立花、雪音、待たせたな!」

 

 

 現れたのは、凛々しい顔立ちの少女だった。

「え、えええええええ!!か、風鳴翼ぁあああああ!!!!???」

 ポッピーが出したこともないような大声で叫んだ。

『風鳴翼』……世界でその名を轟かせる超人気アーティストの一角。

(そういえば一昨日、ライブがどうのって言ってたっけ……)

 響とクリスの名を知っているということは、彼女も『S.O.N.G.』なのだろうか……。

 興奮気味のポッピーを抑えながら、そう永夢が疑問に思う内に二人は翼に近づいていた。

「ったく、来るなら先に連絡入れろよ、先輩」

「そ、それよりも世界ツアーはどうしたんですか、っていうかわざわざ戻ってきたんですか!?」

「次の公演まで12時間ある。それまでに間に合えばいいさ。それに、仲間の危機だというのに私が駆け付けないなど、あるわけがない」

【ガングニール】立花響、【天羽々斬】風鳴翼、【イチイバル】雪音クリス。

 フィーネの野望と、その結果によるルナアタックを阻止した三人のシンフォギア装者が、ついに出揃った。

「再会の水を差すようで悪いんだけど、敵さんまだまだくるぜ?」

 ダークマターはその数をさらに増やした。確かに余韻に浸らせるつもりはないらしい。

「仕方ない、先に行け研修医!」

「え、でも……」

「時間がねえっつってんだ。うちの馬鹿並にお人好しだなあんた」

「ちょっとクリスちゃん馬鹿って私のこと!?」

「ば、馬鹿じゃないです!ていうかこんなことしてる方が時間の無駄じゃないですか!」

「立花、お前も行け。ここは私達が食い止める!」

「え、でも!」

「お互い馬鹿には苦労するな」

「「馬鹿じゃないです!!」」

 飛彩と翼が右を、大我とクリスが左にダークマターを引きつけ、中央に僅かながら道が生まれた。全速力なら、一気に突破することができるかもしれない。

「じゃ、送り届けるのは自分の役目ね。変身!」

 

『爆走バァイク!』

 

「一気に二速!」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!爆走・独走・激走・暴走!爆走バイクゥ!!』

 

 そこで可能性を引き上げるのは彼の役目だ。

 貴利矢は唯一のバイク形態レーザー レベル2となって永夢を呼ぶ。

「早く乗れ、永夢!」

「……わかりました。ここは任せます!!ポッピー行くよ!」

「あっ、待って待って!翼さぁあん!ずっと応援してまーーす!後でサインくださーーーーい!!!」

 引っ張られながらも、翼に熱い想いを届けるポッピー。

 翼は、それにトップアーティストとして最高の笑顔で応えた。

「あぁああああカッコイイーー!!!」

「もう、自分で歩いてくださいよ!」

 やっとの思いで永夢が運転席、その後ろに響が乗り、さらに彼女におぶさる形でポッピーが無理やり搭乗した。

「え……あの、流石に三人は定員オーバーなんだけど」

「お願いしますバイクさん!」

「いや、バイクさんって何」

「行きましょう貴利矢さん!!」

「あの、自分の話聞いて欲しいんだけど。無理だってあーーーーーー!!!」

 レーザーの主張を聞かず、永夢はアクセルオン。

 一気に敵の中央突破を敢行した。少しでも前輪が浮けばバランスを崩して倒れる危険な行為なので良い子は真似しちゃいけません。

 

 

 

 

 飛彩と翼は互いに目配せする。なんとなく似た雰囲気を持つ者だと感じ取った。

「俺のオペの邪魔はするな」

「防人の力、侮らないでいただきたい」

「はっ、お坊ちゃんには荷が重いだろうから、俺が手伝ってやるよ」

「じゃ、あたしは先輩の手柄横取りさせてもらうとしますか」

「「言ってろ」」

 二人の下に大我とクリスも集結し、四人は100をゆうに超えるであろう軍勢を前に堂々と立った。

 

『タドルクエスト!』

 

『バンバンシューティング!』

 

 ドクターはガシャットを、装者はシンフォギアシステムを起動し、聖唱する。

 

 

「術式レベル2」

 

「第2戦術」

 

「―――Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「―――Killter Ichaival tron」

 

 

『タドル・メグル・タドル・メグル・タドルクエストー!!』

 

『ババンバン・バンババン!year!バン・バン・シューティング!!』

 

 

 希望は託した。彼ら彼女らに、後退の選択はない……。




勢いで書いたのでおかしなところがあれば指摘お願いします。


twitter始めました←しつこい

@hi_black5826


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勃発までのCount Down

さーて今回はタグにありながら唯一出番のないキャラが一人だけいるぞ!みんな探してみよう!!(やけくそ)

そして再び深夜投稿するカスはここです。


どうでもいい報告:平成ジェネレーションズのガシャット付きサントラがまだ売ってたんで衝動買いしました。
人生初ガシャットがプロトギリギリチャンバラとはこれいかに。


 短い赤毛に焼けた小麦色の筋肉質な体を持った男は海の見える断崖絶壁から、ただ一点を注視していた。

 そこには何もない。あるはずのものが、通常の視覚では捉えられないように細工されているのだ。

 

「あれか……よっと」

 

 何を思ったのか、男は崖から飛び降りる。しかし、男はこの程度で死ぬような弱者ではなかった。

『正義の味方』を志して早十数年、少年の頃より焦がれた夢を現在も抱き、『衛宮士郎』は今日も誰かの為にその命を使う。

 今宵の悪は……ダークマター一族だ。

 

 

 

 

 

 背中に確かな覚悟(・・)を感じながらも、永夢は引き返すことはしなかった。

 なぜ実力のある飛彩と大我が前座でしかない戦場に残ったのか、分からない永夢ではない。

 それはゼロを倒すのが永夢であると、そうでなければならないという一つの確信を持っての行動に他ならないからだ。

 つまり、普段から厄介者扱いで協調性などまるでない二人が珍しく永夢を信用しているということ。

 その信頼に答えるためにも、永夢は先に進むと決めた。

 しかし、またもや『闇』から現れたダークマター軍団は再び彼らを妨害せんとする。

 鎮守府の入口は目と鼻の先だというのに、彼らを執拗に妨害する行動はまるでボス戦直前の雑魚ラッシュのようだ。

「しゃーねぇ、先に行けお前ら」

「貴利矢さん!?」

 

『ガッチョーン』

 

 レーザーはレベル1となって、永夢の背中を強く叩いた。

「ここは自分にまかせろって。お前がやんなきゃダメだろ?カービィのためにもな」

「貴利矢さん……ここはお願いします!」

「おう。すぐに合流するから待ってな」

 そう言うと、レーザーは車輪を地に着け逆立ち回転蹴りをピンボールのようになりながらダークマターに浴びせ、道を切り開く。

 永夢、響、ポッピーはレーザーの作った道から鎮守府まで一気に走り抜ける。

 彼らを追従するべくダークマターも視線を鎮守府へ向けるが、そうは問屋が卸さない。

「さーて、ノリノリでいくぜ?」

 レーザーは鎮守府に繋がる道を守るように、ダークマターに立ちはだかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 敵陣を突破し、ついにやってきた鎮守府で待ち受けていたのは、一人の平凡な少女だった。

 白黒のシンプルなセーラー服に身を包み、黒髪を後ろで一つにまとめた素朴な姿は真面目で勉強熱心な女学生のようだ。

「お待ちしていました、CRと『S.O.N.G.』のみなさん。現在別件で不在の最高責任者である司令官……じゃなくて、提督に代わって接待をさせていただく、特型駆逐艦娘の吹雪と申します」

 少女、否、艦娘の吹雪はそう言って丁寧に腰を折る。死にかけの貴利矢を除いた三人も釣られて頭を下げた。

「CRのドクター、宝生永夢です。あの、いきなりで悪いけど、昨日の事故のことで話を聞きたいんだ。いいかな?」

「はい!それでは中へ。歩きながら話します」

 吹雪はそう言って背中を向け、永夢達の追従を許可した。

 アポ済とは言え、わざわざ部外者を内部へ入れる。これは脈アリ……ダークマターに関する手がかりを掴める可能性が大いにある、という解釈をしていい。

 一行は頷き合うと、永夢、響、ポッピーと、順に鎮守府に足を踏み入れる……。

 

 

 

 

 案内されたのは、原型を留めていない工廠の前、そのさらに先に広がる、母なる海。

 吹雪は、引き込まれそうになるほどの水平線を指差した。

「表向きは事故ということになっているんですけど、爆発の瞬間を偶然目撃した川内さ……えっとここに所属している艦娘の話によるとですね。工廠はこの先から真っ直ぐに飛んできたビームのようなものによって破壊されたそうなんです」

 ビーム……先日ゼロと対峙した際、奴はレーザーと称して赤黒い血のようなエネルギー光線を放とうとしていたことを、ふと思い出す。この話が本当であるならば、目の前に広がる大海原の何処かにダークマターの拠点があるということになるが……。

「広すぎるよ……」

「う~~ん、流石に泳いでは捜せないよね」

 仲間に後を託されたにも関わらず、まだまだ道は遠かった。遠すぎた。

 思わず肩を落とす永夢。

 手がかりはあった。しかし決定打には程遠いという現実。

(いったいどうすれば……)

 思考は、これ以上の有益な情報をもたらすにはいたらなかった。

 

 

 

「あの……もしかしたらなんですけど、見当付いています、私」

 

 

 

 その時聞こえた吹雪の一言は、まさしく暗雲の中に射した一筋の光だったと言っても過言ではない。

 ポッピーが吹雪に顔をぐっと寄せ、尋問のように肩を揺する。

「どういうこと!?」

「わわっ、落ち着いてください!ちゃんと話しますから!!」

「あ、ごめん……」

 びっくりしたためか、吹雪は呼吸を整えてから口を開く。

「私、太平洋の航路はほとんど覚えているんですけど、ビームが飛んできた方向には一つの無人島が存在するはずなんです。そこ以外に陸の生き物が隠れることが出来るような場所はありません。海中だったらまた違ってくるんでしょうけど」

「けど吹雪ちゃん、それだと偶々ダークマターがそこにいただけって可能性もあるよね?」

「根拠はもう一つあります。その島は本来であれば深海棲艦に占領されている海域の中にあるので、毎日偵察部隊が動向を監視しているんですけど……ここ数日の間に、深海棲艦の動きが全く確認できなくなりました。私達はまだ侵攻していませんし、移動したという事実も確認されていません。けれど深海棲艦が一度占領した海域から突然消滅するということも有り得ないんです。だから」

「ダークマターが深海棲艦を倒して、海域ごと自分達の拠点に……?」

「はい。あくまで推測ですけど」

 永夢は確信した。

 彼女の推測が正しければ、ダークマターはこの先にいるということになる。いや、必ずいる。

「……行くんですか?」

 吹雪が険しい表情で問いかけてきた。

「うん。友達の為に、ここまできたんだから」

 吹雪はそれを聞くと、柔らかい笑顔を向けて、

「分かりました。すぐに船を用意します。少しだけ待っていてください」

「いや、これ以上君達に迷惑をかけるわけには……」

「協力させて下さい。私達も大切な工廠をめちゃくちゃにされたんです。黙っているわけにはいきません!」

 吹雪は走り去っていく。

 距離が離れ切る寸前、くるりと永夢を見て微笑んだ。

「友達の為に戦える……それってとっても、凄いことなんですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの瞬間、立ち上がらなければならないと思った。

 目の前で起きたのは、戦闘などという表現は当てはまらない、一方的な蹂躙。

 倒れ伏す人間達。この世界を支配しようとする悪から守ろうと挑み、傷ついた者達がついに地に両手をついた。

 自分は地球の住人ではない。守る義務なんて負っていない。命を賭す必要なんてない。

 でも―――と彼は当然を否定する。

 生命溢れるこの場所には、自分の故郷と同等の美しさがある。平和がある。美味しい食べ物がある……。

 

 

 そして何より、大切な友達がいる。

 

 

 だったら、やることなんて一つしかないじゃないか。

 心の中で『ごめんね』と、謝罪の念を強くしながら、彼は傷ついた体を引きずり、立ち上がる。

 

 

 星のカービィは、最愛の友・宝生永夢を守るためにゼロの放った最悪の一撃を受け止めると、どこか納得したように小さく微笑みながら星屑へと還った…………。

 

 

 

 

 ――――本当にそれで満足?

 

 

 

 

 目覚めると、カービィは真っ白で退廃的な空間にいた。

 そこは足が着き、感覚もあって、まるで現実の世界そのもの。

 自分は消えてしまったはずなのに、どうして?

 もしやここが死後の世界というものなのだろうか……。

 困惑しながらもカービィはとにかく歩いてみることにする。自分が向かう先は本当に真っ白で、何も見えなかった……。

 いや、何かがぼんやりとだが見えてくる。

 ソレ(・・)は、人間の形をしているとすぐにわかった。

 さらに距離を詰めていくと、そのシルエットから詳細がよく認識できた。

 ソレ(・・)は、全体的に白黒だった。

 ソレ(・・)は少女の姿だった。

 左右非対称のツインテール。黒衣のパーカーを羽織り、そのスレンダーな肢体を直接覆うものは黒いビキニとホットパンツ、手袋にロングブーツ。その黒ばかりの格好は周囲の白さと相まって余計に目立っていた。

 しばらくカービィは音を発することなく呆然とソレ(・・)と視線を交錯させていた。

 

 

 ――――君はだれ?

 

 

「私は…………」

 

 

 カービィの心の声が聞こえるのか、少女の姿をしたソレ(・・)は無表情のまま口を開く。

 

 

 

「――――ブラック★ロックシューター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに傾いていた天秤に変調が起こり始める。

 

 はたして勝者は誰と成り得るのか。

 

 微笑むのは神か悪魔か、それとも…………。

 

 

 




衛宮士郎の容姿はFGO概念礼装「リミテッドゼロオーバー」のイメージです。


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進入

話自体は全然進んでないけど許して←



 挨拶など無用 剣舞う懺悔の時間 地獄の奥底で 閻魔殿にひれ伏せ!

 

 

 一つ目は撃つ! 二つ目も撃つ! 三つ四つ面倒くせぇ絆! 

 

 

 

「舐めるでない!!」「舐めんじゃねぇ!!」

 

 

 

 翼が断つ、クリスが射抜く。

【歌】によってシンフォギアのフォニックゲインを最高まで高めながら、二人の装者は戦場を駆ける。

 その女子とは思えぬ猛撃の数々に、ダークマターは打つ手なく空へ還る他ない。

「おらおらどうしたぁ!?こんなもんかよ!!」

『BILLON MAIDEN』『CUT IN CUT OUT』『MEGA DETH PARTY』――――クリスは様々な銃器の形となった【イチイバル】を四方八方へ撒き散らしダークマターを蜂の巣にしていく……。

「この程度では、私の剣は折れんぞ!」

『逆羅刹』『蒼ノ一閃』『千ノ落涙』――――翼は多くの刀を形成した【天羽々斬】で洗練された滑らかな動きでダークマターを斬り伏せる……。

 

 誰しも道を選ぶ時がきて そして全部が――――

 

「平等ってわけには、いかないがっ!!」

 

 必ず孤独じゃないってことだけ――――

 

「忘れずその胸に、夢と共にっ!!」

 

 雪にも! 風にも! 花にも! 誰にも! 負けない!

 

 そうして彼女達に立ちはだかる敵は、たった一体のみとなった。

 

 自分の色で戦い泣く勇気のハート!

 

 その最後の一体を、銃弾が胴体を貫き、剣が真っ二つに両断する。

 

「「ひとりにはしない!!」」

 

 

 追いつかねばならない相手がいる。彼女達が立ち止まることは、ない。

 

 

 

 一方、ブレイブとスナイプの戦いも、決着がつこうとしていた。

 

『タドル・クリティカル・フィニッシュ!!』

 

『バンバン・クリティカル・フィニッシュ!!』

 

 それぞれのガシャコンウェポンにガシャットを挿入し、背中合わせとなって全方位から迫ってくる40近い数のダークマターに必殺の一撃を見舞う。

 

「ライダーは俺一人で十分だ」

「俺に切れないものはない」

 

 炎氷の剣戟と必中の銃撃が、全ての敵を消し飛ばした。

 

『会心の一発!!』

 

 

 全てのダークマターを蹴散らして、四人はそのままメンバーの後を追う。

 

 

 

 

 

 

「ぐおおお!?ちっ、やっぱひとりじゃキツいか……」

 一方、終始優勢に戦いを制した彼らとは打って変わって、レーザーは苦戦を強いられていた。

 敵の戦力はその数30程。決して多くはないにも関わらず彼が辛い戦いを余儀なくされているのには、他のライダーと違い単独での戦闘に不向きな装備であることが挙げられる。

 レーザーレベル2は先ほど見た通り他者の力を借りねば性能を発揮できない使いづらい代物で、まともに戦う為にはレベル1でなければならないのだ。

 しかし本格的な戦闘を目的にしていないレベル1。相手が雑魚と言えど、数に圧されてしまう。

「だったら!」

 ならばと新たなガシャットを構えるレーザー。

 しかし起動する前に、目の前のダークマターは全て消滅してしまった。

 

 

 

『チュ・ドーン!』

 

 

 

 紫色の光弾によって。

「なに……?」

 自分の関与しない不自然な決着を不審に思い、周囲を見回す。

 しかし何もない。静かな街並みが広がっているだけであった……。

 

 

「監察医!」

 

 

 丁度その時、飛彩、大我、翼、クリスがレーザーの下に到着する。

『ガッシュ〜』

「あいつらなら先に行かせた。自分達もすぐに追いかけるぞ」

 貴利矢の姿へと戻った彼は4人と同時に頷き合うと、後を追うため鎮守府へと入っていく

 ……。

 

 

 

 

 

 

 突き出た枝木ように一箇所、余分に伸びたコンクリートの先……すなわち桟橋の横には、船乗りが魚の網漁で使用するようなシックなデザインの漁船が波で上下に揺れて、停泊していた。

 その影からヌッと現れたのは、深海棲艦に対抗しうる唯一の兵器「艤装」をまとった凛々しい佇まいの吹雪だ。

「お待たせしました。ってあれ?」

 船に乗員するであろう者達は、既に桟橋に集合していた。

 彼女はその姿を認識するや、思わず間抜けな声が漏れる。

 それもそのはず。先ほど船を用意して牽引してくる前まで3人しかいなかった人数が戻ってくると8人に増加していたのだから。

「……これで全員揃った。吹雪ちゃん」

「は、はい。現地までは私が護衛に付きます。本来であれば六隻編成でなければなりませんが、工廠が破壊されたせいで艤装をまとえる艦娘は限られていますので、ごめんなさい」

「いや、十分だよ。ありがとう。それからポッピー」

 永夢はポッピーに向き直った。

「君はCRに戻るんだ。ここからは本当に危険な戦いが待ってる」

 そして、強く言い聞かせる。

 ポッピーは、少し俯いて唇を噛んだ。それから……。

「……うん、わかった。絶対ダークマターを倒してね」

 自分が非戦闘員であるために足でまといになることを理解できない彼女ではない。もともとポッピーの役目は、鎮守府までのナビゲート。ここから先は、彼らの舞台。

 その結末を祈ることが、ポッピーに出来るたった一つだけの大仕事だ……。

 

 

 

 

 

 

 漁船はそのノスタルジックな外見にも関わらず、最新鋭の科学技術が搭載されていた。

 特別な運転技術を持ち合わせていなくとも、必要な設定を入力しておいて乗っていれば自動で目的地まで連れて行ってくれるハイテクな代物だ。

 7人全員が船に乗り込むことを確認すると、吹雪は先頭に移動して海を見渡す。

 幸い波は穏やかだ。この先に強大な存在が待ち受けているなど、露にも感じさせない。

 吹雪が発進可能の合図を出すと、戦士達を乗せた漁船はゆっくりと海水を掻き分けながら動き始めた。

「距離から考えて、1時間と言ったところか」

「ちょいと間が開くと気分がダレるな。とは言え、一眠りする時間もねぇか。……ん?」

 船頭でクリスがボヤいていると、背後から小さないびきが。

 怪訝に思って後ろを振り向くと、

 

 

「ぐー……ぐー……」

 

 

 響が寝ていた。

「おいなんで寝てんだこいつ」

「マイペースなんだね、響ちゃんは」

「うぅん……んあ?」

 船は、心なしか和やかな空気に包まれながら進んでいく。

 大事な時に何を呑気な。と、傍から見ると戸惑うかもしれないが、張り詰めた心の状態で日常的なコミュニケーションを無意識に行えるというのは、単にその者の実力が高い位置にあることを表すと言っていい。

 適度な余裕を持ち、時と場合に応じてメリハリをつけられる人間程、どの分野においても戦力として優秀な人材はいない。

 野良深海棲艦が出現することもなく、戦士達を乗せた漁船はゆったりと、さらに海を進んでいく……。

 

 

 ――――そして、彼らは未知の領域へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 彼らが目指す先にある『闇』によって隠された無人島は、等間隔に天まで伸びた光の塔によって四方を囲われていた。

 これらが全て『闇』を生み出し、より濃密な暗黒を作り出しているのだ。

 さらに空中を漂っているのは『闇』のみならず、数えることもおっくうになる程のダークマター。

 まさに悪夢城と呼称するに相応しい世界が構築されていた。

 教会を魔改造した帝王の座で、ゼロは背もたれに体重を預けながら静かに眠っている。可愛らしい吐息を定期的に漏らしてはいるが、その身からは隠しようもない邪悪なオーラがゆらゆらと現実世界を侵食していた……。

 ありとあらゆるものが、我々の住む世界とは正反対の属性で出来上がったゼロの世界では、我々の常識は総じて異物と認識される。

 一度異物が紛れ込もうものであれば、微細な『闇』の僅かな違和感が統べる王であるゼロへと瞬時に伝達されるように出来ていた。

 そもそも異物が紛れ込まないよう細工を施し、マイペースで地球の支配を目論むつもりであったゼロにとって、その感覚は設定していながらも実際には感じる予定ではなかったものだ。

「!?」

『闇』の僅かな揺らめき。

 完全なる世界と化したこの場所に、確かに異物が紛れ込んだと確信した。

「……馬鹿な」

 想定外の事態に一瞬焦りを覚えたが、眼を開いて立ち上がる、すぐさま意識を『闇』へ溶け込ませ、異物を探る。

(1、2、3…………8か)

 異物の正体までは分からずとも、その非常識にも光輝く魂を感じ取ることはできた。

「エグゼイド共か?まさかここを嗅ぎつけられるとは思わなかったな。慌てて無意味な対策を講じている奴らを思い切り蹂躙してやろうと思っていたのに……」

 残念そうに肩を落とすゼロ。しかしすぐにその表情は邪悪に歪む。

「まあいい。この空間のシステムを解き明かさない限り(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、奴らの絶望が拝めることに変わりないのだからな」

 そう言って、ゼロは玉座から姿を消した……。

 

 

 

 

 

 



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『闇』を切り裂くShooting Star

ま た せ た な(二つの意味で)


個人的な目標として一話分の締切を七日間に設定しているのですがまともに守れてないですね。頑張らなきゃ……。


FGOのCCCコラボが楽しみだけどまだキャメロットすらクリアできてないマン。


 島に上陸する前から、一向は眼前に見える唯ならぬ雰囲気に心臓を鷲掴みにされているような、窮屈な気分に陥っていた。

 中央付近には異様な形をした西洋の古城を彷彿とさせる建物があり、周辺にダークマターがうようよと漂っている。

 生え揃えられた木々の葉は全て例外なく枯れ落ちて、歪な形をした枝が不気味にその先を伸ばす。

 そして何よりも彼らの意識を惹き付けたのは、等間隔にそびえ立つ4本の光……。

 今のところ敵が襲い掛かってくるような気配はないが、警戒を解かずゆっくりと上陸を始めることにした。

 船底が浅瀬の浜に引っかかることのないギリギリの位置で漁船を止め、そこからは備え付けの救命ボートで浜まで移動する。

 

 

『私はここで待機しています。何か御用があればこの無線で連絡を下さい』

 

 

 永夢達の耳元から、極小のノイズと共に吹雪の声が聞こえてきた。

「わかった。君も命の危険を感じたら僕達に伝えて。最悪、僕達のことは構わず離脱していいから」

『了解しました。すみません、私も皆さんと一緒に戦えたらよかったのですけど……』

 艦娘は、陸では非力だ。艤装を外し一度少女として役割から解放され、人としての生を謳歌する時、その身は唯の人となってしまう。

 魂が世界大戦時の『艦』であるからこそ、彼女達はどこまでも大海原を駆ける存在でしかない。

 誰かの力になりたいと願いながらその想いが叶わず俯く吹雪に、全く異なる舞台で戦う彼らは笑顔で答えた。

「気にしないで吹雪ちゃん。吹雪ちゃんは重要な役目を十分に果たしてるよ!」

「そうだよ。こうしてダークマターの居場所を発見出来たのは君のお陰なんだ。ありがとう」

『いえ。こちらこそお役に立てて光栄です。……武運長久を』

 最後に吹雪は海軍式の敬礼と共に勝利の祈りを、消えていく戦士達の背中へと贈った……。

 

 

 

 

 

 

「まるで魔王を討伐しに来た伝説の勇者みたいな気分だぜ」

「実際似たようなもんだろ?見た目はガキでも中身は悪の親玉だって話じゃねえか」

「つまるところ我々は、世界の命運を託された希望というわけだ」

「英雄になど興味はない。俺はドクターとして、オペをするだけだ」

 童話の中にあるような恐ろしい木々の合間を縫いながら、中央の巨大な城を目指す。傲慢な者は皆、世界の中心で一番高い所に立ちたがるものだ。十中八九あそこにいるだろう。

 しかしここは既に敵の本拠地。これまでのように、お気楽道中というわけにはいかないらしい。

「おっと、お出ましだぜ」

 続々と、彼らを古城へ行かせんとするべく、人型ダークマターが姿を現した。

 その総数は計りかねるが、ざっと街中で戦った時よりも多く感じる。

 

『マイティアクションエーックス!』

 

「敵も本気だ……」

 全員戦闘態勢へ。永夢もガシャットを起動する……。

 

 

 

 

 

「野放しにしておくとすぐに暴れまわるじゃじゃ馬共め」

 

 

 

 

 

 瞬間、忌々しそうな台詞が木霊したかと思えば、

 

『!!?』

 

 飛彩と翼、大我とクリス、そして貴利矢、響までもが、順に闇色の球体に取り込まれ消失した。

「!? みんな!!」

「安心しろ。バラバラの箇所へ飛ばしただけだ」

 ふわりと、少女の姿をした魔王が永夢の前に降り立つ。

「ゼロ……!」

「この場所を突き止めるとはやるじゃないかエグゼイド。だが悲しきかな。苦労してやってきたみたいだが無駄なことだ。世界は私達ダークマターのものになる」

「無駄なんかじゃない」

 永夢は、一歩前に踏み出した。支配に抗うように……。

 その両目が赤く光る。

 ゲーマーモードの永夢は、静かに怒りながら淡々と覚悟を告げた。

「カービィは俺に託したんだ。俺がお前を止めるって信じてくれたから、あの時守ってくれたんだ……だから俺はその想いに答える。世界の運命は、俺が変える!!!」

 

 

『ガシャット!レッツゲーム・メッチャゲーム・ムッチャゲーム・ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!!』

 

 

 もう下は向かない、後ろは振り返らない。全力で前に進むことだけが、未熟なドクターで仮面ライダーである自分に出来る、たった一つの事実だ。

 永夢は、エグゼイドに変身する……。

『ガシャコンブレイカー!』

「いくぞゼロ!」

 向かってくるダークマターをガシャコンブレイカーで全て打ち落としながら真っ直ぐゼロへ迫るエグゼイド。

 しかしゼロは無防備にも構えない、微動だにせずその場に立っていた。

(なんだ……なぜ動かない!?)

 不審に感じながらも、このチャンスを逃すまいとエグゼイドはガシャットをブレイカーに挿入する。

 

『ガシャット!マイティ・クリティカル・フィニッシュ!!』

『マッスル化!』

 

 さらにエナジーアイテムのバフを受けてその威力を上げた一撃を、叩き込む。

「うぉおおおおおおおお!!!!」

 ゼロは最後まで、エグゼイドの攻撃を防ごうとも避けようともしなかった。

「ぐぁあああああ!!!」

 地と水平になって振り上げられたガシャコンブレイカーはゼロの肉体に直接大ダメージを与えた。その証拠に、これまで聞いたことのなかった苦痛の叫びが、その口から発せられる。

 木々を木っ端微塵に吹き飛ばしながら、ゼロは連続的な爆発と共に岩の壁に激突した。

 特徴的な和服は正面が焦げ落ち、胸の辺りから腹部にかけて人間ならば致命傷と見て間違いな程の痛々しい傷を作っている。

「やった、のか……?」

 初めて攻撃がまともに通った。手応えもあった。間違いなく大きなダメージだ。

 しかしなぜか、エグゼイドは腑に落ちなかった。

 あんな見え見えの正面からの大技を、対応する隙はあったはずだというにも関わらず何もせず甘んじて受けたようにしか感じられなかったからである。

 ただの慢心……そうであって、ほしかった。

 

 

 

「いい一撃だ。だが無意味だ」

 

 

 

 嫌な予感は望まずとも的中してしまった。

 ゼロは何事もなかったように、すくっと立ち上がる。

 服が破れ、女性としての肢体が扇情的に見え隠れするが、生々しい傷跡が気まずい気分を相殺させる。

 突如、光の柱がより一層強く輝いた。

 光は曲線を描きながらゼロを覆い、その傷を瞬く間に癒していく……。

「なんだと!?」

 エグゼイドが驚いた頃には、服も完璧に直してしまったゼロがそこにいた。

「今の私は絶対に死ぬことのできない領域まで達している。最初に攻撃を受けたのは、貴様に抗いようのない絶望を植え付けるためだ!」

 なんと、えげつないことだろうか。

 絶対的な「差」はなおも健在どころか、さらに大きく、壁となって隔てられていた。

 もはやエグゼイドに勝機はないだろう。例え響達が再び集ったところで、倒せないのであればいずれこちらが死ぬだろう。

 ゼロは胸の高鳴りを必死でこらえながら仮面の下で青ざめているのであろうエグゼイドを見据えていた。

 今の自分は10人いれば10人とも命惜しさに(かしず)く程の影響力を保有していると確信していた。

 まだ笑うな。笑うのは、全宇宙を手に入れてから……。

 

 

 

 Hit!というダメージエフェクトと共に、ゼロは僅かに驚愕する。それは自らの支配を拒む者が抵抗していたという証だ。

 しかし解せない。ゼロは理解できなかった。

 それは攻撃そのものに対する困惑ではなく、なぜ目の前の男はなおも自分の前に立ち塞がるのかということに対するものだった。

「――だったら、どうした?」

 ドスを効かせた声色で、エグゼイドは言う。

「さっきも言ったぞ。お前の運命は俺が変える……お前が引き起こそうとしている最悪の絶望すら変えるってな!!」

 眼前の戦士は、諦めていなかった。

 理解不能、解読不能。弱者であるにも関わらずなぜ跪かない?いつまで抗う?

「!」

 そこでゼロは初めて気がついた。

 自分が、一歩後ずさっていた事に……。

 つまり、一瞬にもゼロはエグゼイドを恐れたということになる。支配者であるはずの、宇宙最強の種族を束ねる長が、小さな惑星の小さな戦士に、敗北のビジョンを描かされたのだ。

 すると幻覚のように、エグゼイドの姿が一人の星の戦士――カービィと重なって見えた。

 憎悪が『闇』の底から沸き上がってくる。マグマのように、ぐつぐつと煮え滾るのを感じ、唇を噛み締める。

 それは、たった一度の敗北が生んだ、屈辱への恐怖故か……。

「貴様は私を怒らせたっっ!!」

 右の瞳を深紅、否、深血に染め上げながら、莫大な『闇』を島全体から吸い上げてエグゼイドにぶつけようとする。

 これはやばいと感じたエグゼイドはチョコブロックを伝い距離を取ろうとする。だが、恐らく無意味だ。ゼロは島ごと破壊するつもりでエネルギーを充填しているのだから。

 

 

 

「い、いけません主!ダークプラントまでお釈迦になってしまう!!」

 城の中で顛末を観戦していた三体の側近は、慌てて主の暴走に危機感を覚えていた……。

 

 

 

 

 

『レベルアーップ!マイティジャンプ・マイティキック!マイティ・マイティ・アクション!エーックス!!』

 

 逃げられないことを悟ったエグゼイドは受けて立つことにした。

 レベル2となって、キメワザスロットホルダーにガシャットを挿入し二回ボタンを押す。

 

『キメワザ!マイティ・クリティカル・ストライク!!』

 

 可能であれば相殺……いや、不可能だろう。それほどの一撃であることは、天才ゲーマーの勘が告げている。

 それでも逃げはない……カービィの願いを、無駄にしないために!

 

 

 

 周囲の事など知るものかと、破滅の『闇』が爆発せんとしたまさにその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――エグゼイドは見た。友として隣にいた星の瞬きを……。

 

 

 

 ――――ゼロは捉えた。復讐の心に従い屠った筈の星の気配を……。

 

 

 

 

 

 

 

 電光石火の如きシューティングスターは、『闇』を容易く霧散させた。

 そしてゆっくりと、エグゼイドの前にやってくる……。

 光に包まれて確認できなかった姿が、地に降りたことで少しずつ露わになる。

 いや、それがしっかりと姿を見せる前から、エグゼイドとゼロには正体は分かっていたのだろう。そうでなければ、信じがたい事態を二人が唖然と眺めることなど、出来はしないのだから……。

 

 

 

 

 エグゼイドににっこりと微笑むそれは、丸かった。

 

 エグゼイドの胸に勢いよく飛び込んだそれは、ピンク色だった。

 

 

 

 

 

「おかえり!」

 

 

 

 

 

 思わず感極まりエグゼイドが抱きしめ返したそれは――――星のカービィだった。

 




復活の詳細は次回に持ち越しです。




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戦士の集結 ~Dream Team~ 前編

自分の作品読み返したりすると文章ひどすぎで才能のなさに軽く病むレベル。
時間があれば修正したいです。


 この世界では、どうやら現実の世界というものがよく視えるらしい。

 まるでフィクションの中で頭に輪っかを付けた天使が下界の様子を覗き見るような格好で、カービィは永夢達がダークマター一族の居城へ突入する様を眺めていた。

 彼の背後には、体育座りで反応待ちをしているブラックロックシューターの姿があるのだが、カービィは光景に夢中になって中々話を振り返してこない。

 根気強くさらに五分程待ってみる。しかし場面はエグゼイドとゼロが遭遇というところ。カービィが彼女に意識を向ける気配は微塵も感じられなかった……。

 仕方がないので立ち上がり、自分から話しかけに行く事にする。

 本来は自分から話を振るような性格はしていないのだが、相手は明日の滅亡より今日の食事を重要視するあのカービィだ。かのブラックロックシューターでも、こればかりは折れるしかなかった。

「あとはゆっくり眠るだけだと、本当に思っているの?貴方にはまだ未練がある、そうでしょ?」

「…………」

 そう、カービィは永夢と『約束』を交わしていた。ダークマターを倒し、地球の美味しい食べ物を一緒に食べて回るという、至って平凡で、それゆえに幸せな『約束』を。

 

 

 

 ――――戻らなきゃ!

 

 

 

 ようやく、カービィはブラックロックシューターと向き合った。

 彼女はふう、と一息ついてから、

「じゃあ、あっち」

 と言うと、指差す方向に、見覚えのある1UPアイテムが落ちているではないか。

「!」

 しかもその先には、彼が今覗き見ているエグゼイドとゼロの死闘の真っ只中へ続く道が出現していた。

 驚くカービィの隣に、ブラックロックシューターが並ぶ。

 そういえば、この少女はなぜ自分を助けたのだろう。消滅を待つしかなかった自分を、あっちとこっちの狭間へ留めたのだろう。

 気になって、心の声を聞かせると……。

 

 

 

「貴方はまだ、あっちの世界に必要な存在だから」

 

 

 

 とだけ、言った。

 その瞬間に視界が歪み、カービィは世界に吸い込まれるようにして…………。

 

 

 

 

 

 今、エグゼイドの前に現れたのだった。

 

 

 

「…………なぜだ!!」

 エグゼイドがカービィを地へ下ろすと同時に、ゼロは憎悪と困惑と他にも様々な感情を織り交ぜながら咆哮する。

「貴様は確かに!!!私が殺した!!!殺したんだ!!!!有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない!!!!」

 白髪をわしゃわしゃとかき乱しながら、カービィとエグゼイドを紅い瞳でギロリと睨みつけた。

 その手には『闇』で構築された漆黒の刃が握られている。

「生き返るのであれば、何度でも殺してや……!?」

 しかし、怒気を孕んだ一言が完遂されることはなかった。

 突如ゼロの左鎖骨辺りから腹部にえぐり込む一刀と共に、非対称のツインテールが重力に反し浮き上がる。

 

 

 ――――ブラックロックシューターが、ゼロを両断したのである。

 

 

「がはっ!」

 突然の乱入者に、ゼロ、そしてエグゼイドも驚愕を隠せない。

「だ、誰だ……」

 少女の右手の得物を素早く引っ込めると、ゼロの反撃を華麗に回避してカービィとエグゼイドの近くまで後退する。

 しかし、やはりゼロの肉体は瞬く間に修復されていった。

「…………どいつもこいつも、私の邪魔ばかりしやがって。もういい!そんなに死にたければ!!すぐにあの世に送ってやる!!!地球と共になぁ!!!!」

 自暴自棄に近い叫びを散らすと、ゼロは姿を消しす……あの様子からして、恐らく本気だろう。今の今まで傲慢で余裕ばかりを見せていたダークマターが、ついに全力で惑星を取りに来るつもりだ。

「早くあいつを止めないと」

 エグゼイドは焦りつつも、まずは意識を目の前の少女に向ける。

「お前誰だ?味方、なのか?」

「…………」

 ブラックロックシューターは多くを語らない。というか、何も喋らない。

「おい、聞いてんのか」

 コミュニケーションが取れずやきもきしていると、今度はカービィが必死に何かを訴える。

「私はブラック★ロックシューター。よろしく、仮面ライダーエグゼイド」

「え、ちょ……は!?」

 いや待て、さっきまでなんの反応も示してくれなかったのにカービィの言うことには素直に答えるのか。と、エグゼイドは釈然としない気持ちでもやもや。

 恐らく自己紹介してあげてとでも伝えたのだろう。彼がフレンドリーな対応しているところ、どうやらこの二人、知り合いらしい。

 

『がっしゅ~』

 

「ねえカービィ、いなくなってた間、この子と何があったの?」

 

 

 

 

 

 

 Dの名を冠したゼロの側近であるダークマター達は、戸惑いの視線を向けたまま帰還してきたゼロを出迎えた。

「ミラクル、今すぐ『闇』を地球全体に広げろ。終わらせるのだ」

「よろしいのですか?急激な『闇』の増幅はこの惑星の生物は耐え切れず死に絶えます。それでは貴重な技術力が」

「構わんと言っている。早くダークプラントを動かせ。そして消せ、我ら一族以外の全てを……消去しろ」

 DミラクルはDソード、Dマインドと顔を見合わせ、無言で頷き合う。

 我らの主は、もはや何もお考えになっていない。この世全てに憎悪を向けて、全てを破壊し尽くしたとしてもその欲が満たされることはないだろう。

 それでも我らは忠義を尽くそう。それが、我らの生まれた意味なのだから…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永夢とカービィ、そしてブラックロックシューターはとにかくゼロが逃げた先……城内を目指していた。

 途中何度か散り散りとなった仲間達に通信を呼びかけたものの、ノイズが酷く反応がない。

 みんなの安否が気がかりだが、今は先に進むしかなかった。

 あれ以来、ダークマターが襲ってくることは一度もないが、油断は出来ない。

 そしてついに城の入口にたどり着いたその時、ブラックロックシューターが抜き身の刃を茂みに向けた。

 

 

「ぷはぁ!」

 

 

 ガサガサと揺れる茂みから姿を現したのは、立花響であった。

「響ちゃん!無事だったんだね!」

 永夢は慌てて彼女に駆け寄り、歓喜しながら葉っぱや泥を払う手伝いをしてあげた。

「先生こそご無事で何よりです。いやぁ参りましたよ、島の反対側に飛ばされちゃったみたいでダークマターはわんさか出てくるし何度も道間違えるしで……ってあれ、そっちの子達は?」

「こっちの丸い子がカービィ。それでこっちが、えっとブロックロック……?」

「ブラック★ロックシューター」

「あ、ごめん……」

 響にカービィ復活の経緯を話すと、彼女は手放しで喜んだ。本当にいい子だ。

「よし、それじゃあ行こう!ゼロを止めないと!」

「待って」

 意気込む永夢達を制止したのは、意外や意外、ブラックロックシューターだった。

「倒しに行く前に、問題が一つある」

「問題?」

「ゼロには脅威的な再生能力が存在している。あの能力を取り除かない限り、倒すことはほぼ不可能。戦闘に時間をかける猶予もない状態で、このまま突入するのはよくない」

「そんなこと言われても、敵の能力の正体も分からないし、どうすれば……」

 

 

 

「随分遅かったじゃないか」

 

 

 

 全員が、一斉に声のした方向を向くと、そこには一人の男が木にもたれかかるようにして立っていた。

 短めの赤毛に高い身長、十二分に鍛え上げられた少し焼けた筋肉質な肉体は服の上からでも分かる程であるが、不思議と威圧感はなかった。むしろその瞳は優しく、慈悲に溢れた者であることを示しているようだ。

「あなたは……?」

 しかしこんな場所にいる人間が只者であるはずもなく、永夢達は警戒する以外の選択肢はない。

 男はその様子に苦笑しながら両手を上げて敵意のないことを示しながら、名乗った。

「まあそう身構えないでくれよ。俺は衛宮士郎。三流の魔術師だ」

 カービィと永夢は思わず顔を見合わせ、そしてしかめる。

 魔術師とは何だろうか、比喩だろうか……少なくとも永夢はそんなワードは聞いたことがない。

 当然である。魔術師は基本的に、表舞台に姿を見せることはないのだ。

「話すと長くなるから単刀直入に言わせてもらうとだな……俺は味方だ」

 笑顔でそう言う『衛宮士郎』なる男であったが、判断材料が少ないであろうことは彼自身理解していた。

 もともと独りで戦うつもりであった士郎にとって、他分野の戦士の参戦は嬉しい誤算だった。屈強な外見に似合わずお人好しで他者と手を取り合う性格なこともあり、カービィらに接触したのも必要と考えてのことだったが、少々甘かったか……と頭を掻いた。

 しかし、リーダー格であろう宝生永夢の対応は、予想していたものとは多少異なっていた。

 再確認のためなのか、あくまで慎重に、彼は口を開いた。

「…………信じても、いいんですね?」

 その台詞に士郎は少しばかり面食らった。目の前のドクターは、士郎を心から信用するつもりでいた。

「正体不明。無条件に彼の言葉を鵜呑みにするのは危険」

「でも、僕はこの人が悪い人には見えないよ」

「私も、疑うよりは信じたい。だってその方が気持ちいいじゃない、ブラックちゃん」

「!」

 ブラックロックシューターは最も正しい答えを示したつもりだが、どうやらこの場では、彼女の方が間違っていたらしい。カービィと響にも賛同されては彼女に勝ち目はない。

 だが、決して嫌いな考え方じゃ、ない……。

 

 

(まるでセイバー達と出会ったばかりの頃の俺を見ているようだな)

 愚かで、純粋で、美しい心の持ち主であることを、何となく悟った士郎は安心して言う。

「ああ。少なくとも地球に限れば、俺は人類側だよ」

 




Vシネ「仮面ライダースペクター」観ました。最高だった。









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戦士の集結 ~Dream Team~ 後編

ここまで長かった、そしてここからが正念場だ(絶望)





 それは、士郎をパーティメンバーに加えてすぐに始まった。

 空間を包み込んでいた『闇』が、これまでにないほどに大きな動きを見せている。イヤな気配だ。

 それに呼応するかのように、ダークマターが島の外に向かって勢いよく飛んでいくのが見えた。

「!! 世界に攻撃を仕掛けるつもりか!?」

「まずいな……みんな、とにかく城の最上階を目指そう。そこにゼロがいるはずだ」

「でも、ゼロに攻撃は効かないも同然なんですよね?」

「そう。戦っても勝ち目はない」

「いや、勝算ならある」

 城内への扉を潜った先で、士郎が言う。

「奴の驚異的な再生能力は『闇』に依存している。島から発生している光の柱があるだろ。あれこそが供給源だ」

「つまりあの光を壊すことができれば……」

「ゼロの再生能力は失われるはずだ」

 地球の性質を得た『闇』の実態は、魔力に近しいものである可能性が高いというのが士郎の(正確には彼の友人の)見解だ。霊脈から得られる魔力は無限ではない。恐らく体内に循環している魔力以上を柱から供給することで傷の再生を可能にしているのだろう。

 電源を落とすのではなくコンセントを引き抜くことで元根から断ち切れば……希望が再び見えてくる。

 しかし問題は、どうやって光の柱を破壊しに向かうかである。

 どの柱も城からは離れた位置にあり、手分けして今から向かうには時間がかかる。そうなってはダークマターが本土に到達する前に決着をつけることが難しくなってしまう。

 その時、ザザザ……と、無線の僅かなノイズを永夢と響は感じた。

 

 

 

 

 

 

『そういうことなら俺達に任せな名人!』

 先程はまるで繋がらなかった無線から、貴利矢の軽快な声が響き渡ってきた。

 

 

『立花!柱のことは我々が何とかしよう!お前達はゼロを倒せ!』

『美味しいとこは全部譲ってやっから、必ず勝てよ!』

『オペは迅速に済ませろ、研修医』

『チッ、仕方ねぇな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、波打つ浜より少し離れた位置で漁船と共に待機していた吹雪にも、島の異変は見て取れた。

 やがて航空隊の如き勢いで島から飛び出してきた多数のダークマターの敵影を確認するや、彼女は戦闘を決断する。

「行かせません!!」

 あれらが本土に上陸すれば、地上は未曾有の危機に瀕するだろう。

 強化改造を施し幾度となく死闘をくぐり抜けて来たとは言え、たかが駆逐艦に出来ることは少ない。しかし吹雪は10cm連装高角砲を敵機に放った。

 例え意味がないとしても、それは何もしない言い訳にはならないから。

 かくして砲撃は数機のダークマターを捉え空中で爆発四散。これが戦闘開始の合図となって、ダークマター軍団のおよそ4割が吹雪を撃破対象と見なし、攻撃を仕掛けてきた。

 水上を統べるようにジグザグに航行しつつ敵の攻撃をさけ、再び砲を向ける吹雪。

「うあっ!」

 だが死角から迫った二体のダークマターが、背中に背負った艤装を傷つける。

 たった数撃を受けて吹雪は小破し、海面に打ち付けられてしまった。

「やっぱり、私一人じゃ……」

 追い打ちをかけるように、容赦なく迫るダークマター。

 吹雪は傷ついた体で立ち上がり、それと対峙する。

 MI作戦では正規空母・赤城らの運命を、そしてアイアンボトムサウンドでは自分自身の運命と戦った吹雪。永夢には逃げてもいいと言われたが、そんなこと出来るはずがない。

 誰かが絶望する運命を変えられる可能性があるのであれば、吹雪は戦うことを選択する。

「――諦めない……人の運命は変えられるんだ。その心には無限の可能性が眠ってる。今戦っているみなさんのように、私も!守ってみせるんだから!!」

 

 

 

 

「その通りだ!!」

 

 

 

 

 そんな若い青年の声と共に、空飛ぶ幽霊船――――キャプテンゴーストが吹雪の背後から姿を現した。

 吹雪が目を丸くしている間に、キャプテンゴーストは彼女を狙っていたダークマターを全て消し去ってしまうと、その先端部には先ほどの声の主であろう一人の青年が立っていた。

「人の可能性は無限大だ。その心と想いを踏みにじるダークマターは絶対に許せない!」

「あ、あなたは?」

 吹雪が問いかける。

 

 

「俺は天空寺タケル、一緒に戦おう!」

 

 

 青年――タケルの腰にゴーストドライバーが出現すると、カバーを開いてオレゴースト眼魂を押し込んで、眼魂をドライバーにセットしカバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!』

 

 するとドライバーからパーカーゴーストが飛び出し、軽快にタケル周囲を飛び回り、変身させまいと卑怯にも攻撃を繰り出してくるダークマター達を守るように叩き落としていった。

 

 

「変身!!」

 

 

 一定のポーズを経て、ドライバーのレバーを押し込むと、パーカーゴーストがタケルに覆い被さって、その姿を幽霊へと変える。

 

 

『カイガン・オレ!レッツゴー・覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!!』

 

 命を燃やして戦う――――仮面ライダーゴースト オレ魂

 

 

 

 

 

 

 

 島の東の方角にある柱には、九条貴利矢ことレーザーがただひとり向かっていた。

 どうやらこっち方面に飛ばされたのは彼だけだったようで、他の面々はブレイブと翼、スナイプとクリスが合流してそれぞれ北と南向かった模様。

「早いとこかたつけねえとな……!」

 レーザーはブレーキをかけレベル1となる。

 彼の眼前には、人型ダークマター達が柱への道を守るように立ち塞がっていた。

「門番ってか?いいぜこいよ!」

 

 

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!!』

 

 

 

 レーザーが紫の光弾を見たのは、これで二度目だ。

「!! お前は……」

 だが前回と異なる点は、ダークマター達を正確に射抜いた者が、ふらりとレーザーの前にやってきたこと……。

 

 

「ダークマターは私にとっても有害な存在。今回は君達と共に戦おうじゃないか」

 

 

 黒いエグゼイド――――仮面ライダーゲンム。その正体である檀黎斗は、仮面の下でニヤリと微笑んだ後、ガシャコンバグヴァイザーでダークマターの迎撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 拳を振りかぶるダークマターを、士郎が蹴り飛ばす。

 背後から掴みかかってくるダークマターを、ブラックロックシューターが殴り倒す。

 ここは城の上階を目指すための螺旋階段。

 上記二名を先頭に下ってくる人型ダークマターをちぎっては投げちぎっては投げ、ついに五人は最上階へと到達した。

 ゲームのラスボスを目の前にした緊張感……この扉の先にいる者の敵意が、ビリビリと伝わってくる。

「……開けるよ」

 永夢が一歩前に踏み出して、扉をグッと、押し込んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 踏み入れた魔王の玉座には、当然のように白髪紅眼の少女が存在していた。

 しかしその表情はこれまで見慣れた余裕と愉悦に満ちたものとは程遠い、ただ憎悪を撒き散らすだけの悪意あると()成り果てている。

 ゼロはゆっくりとカービィ達の正面へ歩み立ち、彼らを一通り見渡し、

「…………また、害虫が増えてるな」

 吐き捨てるように言って、うんざりする。

 いつの間にかゼロの左右にはDミラクル、Dマインド、Dソードが集結しており、同様に忌々しそうな視線を突き刺した。

「ゼロ……」

「なんだエグゼイド?まさかこの期に及んで、こんな事止めにしないか等と宣うつもりではなかろうな?」

「…………」

「私は止まりはしない、止まれはしない。侵略なくしてダークマターを率いることなどできないのだ。決着をつけよう、エグゼイド、そしてカービィ。今度こそ、私は宇宙を暗黒で染め上げる!」

 瞳が紅く光り出し、ダークマター達は眼魂を起動して怪人態へと変貌する。

 永夢は拳を握る。戦うしかないことを理解する……。

 

 

 

 ――――その手に、カービィが優しく触れた。

 

 

 

「!」

 ハッと視線を向けると、彼が笑顔を向けてくる。

 その瞬間、勇気が湧いてきた。

「絶対にお前を倒す!」

 

『マイティアクションエーックス!』

 

 白黒の少女は、その左腕に、巨大な岩石砲『ロックカノン』が出現。

 

『ガシャット!』

 

「――トレース、オン」

 正義の味方を夢見た男は、彼を魔術師たらしめる唯一の魔術『投影魔術』を発動させ、両手に陰陽二振りの短剣、『干将・莫耶』の贋作を生み出す。

 

『レッツゲーム・メッチャゲーム・ムッチャゲーム・ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!』

 

「――Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 奇跡を宿す少女は、【ガングニール】のペンダントを握り締めて、起動聖唱を実行、シンフォギアをその身にまとう。

 

「大変身!!」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!マイティジャンプ・マイティキック!マイティ・マイティアクション!エーックス!!』

 

 ゲーマーでドクターである青年は、仮面ライダーエグゼイドに変身。

 

 

 そうして、星の戦士を中心に並び立つ英雄達。

 

 

 

 星のカービィ

 

 仮面ライダーエグゼイド

 

 立花響

 

 衛宮士郎

 

 ブラック★ロックシューター

 

 

 

 相対するは、暗黒の化身ダークマター一族。

 

 

 最終決戦が、幕を開ける――――!

 




平成ジェネレーションズと劇場版艦これの円盤発売はよ。




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仲間達の反撃、絶対論の崩壊

次回作のプロット作りにあたってブレイブウィッチーズ見返そうと思ってるんだけど折角なら円盤の修正版で見たいなーと思って何度もレンタルビデオ店に足を運ぶも大体貸し出し中で泣きそう。


あ、それから今回、文字数がいつもの倍くらいあるけど内容的にはそんな進んでません。
それからこのサイト、歌詞載せるのあんま良くないっぽいんで今回は自重。響は表現抑え目でちゃんと歌わせるつもりです。



 ――――城壁が爆音を有しながら、風船ガムのように弾け飛んだ。

 

 

 

「!? なんだ?」

 同じ柱を目指していた仮面ライダーブレイブと風鳴翼はダークマターと交戦しつつ、異変の起きた城を見上げている。

 彼らだけではない。島の中心部で起きた異変は、その周囲にいる者全てに等しく知れ渡っていた。

 仮面ライダースナイプと雪音クリス。仮面ライダーレーザーと仮面ライダーゲンム。仮面ライダーゴーストと吹雪……。

 それぞれの戦いを繰り広げながらも、誰もが理解する。

 

 

 最終決戦が、始まったのだと……………。

 

 

 

 

 

 

 先制攻撃を仕掛けてきたゼロによって最上階部分……正確にはカービィ達が登ってきた螺旋階段側が崩された。

 五人は衝撃で地上40メートルの高所から重力に従い落下していく。

 さらに上からは三体のダークマターが自ら飛び降りてきて追撃を図ろうとしている。

 バランスが取れず空中でぐるぐると回り続けるカービィとエグゼイドの腕を、士郎が掴んだ。

 

「世界を救ってこい!!」

 

 そして、力を入れにくい体勢にも関わらず、思い切り城の中へ放り投げた。

 ダークマター達の脇を通り過ぎ、転がるようにして城壁に不時着した二人は急いで落ちていく三人を見下ろす。

「みんな!!」

 既にその安否は確認出来なくなっていた。信じるしかない……。

 はやる気持ちを抑えて、カービィとエグゼイドは背後のゼロに向き直った。

「……ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!!」

「!!」

 二人は、同時に飛び込んだ。

 ゼロはそれに真正面から受けて立つ。

 エグゼイドの飛び蹴りを右に回転をかけつつ左にかわし、生み出した刃をまま背中に叩きつけると、背後より迫ったカービィを左眼で認識するや膝を曲げてしゃがみ込み、アッパーで突き上げるように吹き飛ばした。

 隙を与えてはならないと、ガシャコンブレイカー ハンマーモードでエグゼイドがゼロを狙う。ゼロの視線がカービィから外れたのを見計らい、彼は飛び退いて傍のチョコブロックをブレイカーで叩き壊した。

「そぉら!」

 中から飛び出してきた星型のアイテムをホバリングで上空に浮き上がったカービィに向けてフルスイング。

 溜め込んだ空気を一気に吐き出して、着地と同時にそれを吸い込み飲み込んだことで、彼固有のコピー能力によって『バーニング』の性質を得た。

 カービィは火の玉となってゼロに突撃する。

 

『ジャ・キーン!』

 

 さらにブレードモードへと変形させたガシャコンブレイカーを構えるエグゼイドが挟み込むように斬撃を繰り出し、両者同時にゼロを狙う。

 一撃目は避けられた。だがエグゼイドの攻撃はヒットし、ホムンクルスの肉体が斬られた肩から出血する。

 だがやはり、『闇』がゼロの傷口に収束して見る見るうちに塞がれてしまう。

「無駄だ……私に攻撃は通らない」

 悪どくも口角を釣り上げるゼロ。『闇』が永続的に供給されている限り、絶対的優位が崩れることはない。

 しかし先ほどとは打って変わり、エグゼイドは仮面の下で動じることはなかった。

 カービィも同様であった。少しは苦しそうな顔をしてもおかしくないというのにだ。

 いくら諦観することをやめ、覚悟を固めて挑んでこようと、こればかりは覆しようのない要素のはず……。

 怪訝な表情のゼロに、エグゼイドは言った。

「確かに俺達だけだったならお前を攻略出来なかったさ。けど、俺達には心強い仲間がいるんだ」

「仲間だと?雑魚の集まりじゃないか、そんな連中に何ができると言うんだ」

「今わかると思うぜ」

「そんな虚仮威しが通用するとでも…………!?」

 

 

 

 瞬間的な違和感という前触れが訪れた時、ようやく理解する。

 

 

 

 

 自分はもはや、取り返しのつかない程に、地球を舐めすぎていたのだと。

 

 

 

 

 ガシャアン!!!!!

 

 

 

 

 崩れた城壁の先に、ゼロにとって信じがたい光景が広がっていた。

 

 四つの柱――ダークプラントが音を立てて、一つ残らず砕け散っていったのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、カービィとエグゼイドがゼロと相対する直前の頃。

 柱のすぐそばまでたどり着いた仲間達は、背水の陣となり決死の覚悟で攻勢を増すダークマターと激闘を繰り広げていた。

 

 

 ブレイブと翼は共に『剣』を武器としており、本人達の頭の回転が速いこともあってか、近接戦闘での連携にはぎこちなさを感じさせない。

 柱の方に視線を向けると、未だ100体以上のダークマターが塊となって守護しているのが分かる。

「この用意周到さ……」

「どうやら当たりのようだな!」

『天ノ逆鱗』により周囲から敵を取り除くと、翼は胸のイグナイトモジュールに手をかけ、ブレイブは新たなガシャットを取り出し起動する。

  『ドレミファビート!』

 

「イグナイトモジュール――抜剣!」

「術式レベル3!」

 

 

『ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!タドル・メグル・タドル・メグル・タドルクエストー!!アガッチャ!ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド・OK!ド・レ・ミ・ファ・ビート!!』

 

 シンフォギアの暴走を意図的に発動・制御した黒き鎧【イグナイトモジュール】に包まれた翼とビートクエストゲーマー レベル3へとレベルアップしたブレイブはお互いに並び立ち「剣」を構えた。

 さらに翼はギアの歌唱曲……所謂持ち歌の『Beyond the BLADE』をメリハリよく歌い、力をさらに増幅させる。

 それに合わせるように、ブレイブも肩のスピーカーから流れる音楽(メタ的な話をすると番組主題歌アレンジ)をバックに、心肺蘇生法のリズムに乗り始めた。

 より威力を増した剣技に、ダークマターはもはや木偶の坊でしかない。

 剣士達の猛攻により、柱を守るおよそ半数が消し飛ばされた。

 自分達では撃退することが出来ないと悟ったダークマター達はせめて柱だけは死守しようとその身を『闇』へと還元し、巨大な壁となって二人を阻んだ。

 

『ドレミファ・クリティカル・フィニッシュ!』

 

『風輪火斬・月煌』

 

 高温を表す青い炎を纏った翼の剣と、音ゲーのパワーを込めたブレイブの剣。

「「はぁああああああああ!!!!」」

 ダークマター達の決死の思いも虚しく、二つの斬撃がダークマターの壁ごと柱を消し飛ばした……。

 

 

 

 

「ったく、鬱陶しいったらありゃしねえぜ」

「なんだあんた、口だけか?」

「黙ってろ白髪頭」

「はあ!?もういっぺん言ってみやがれ、ドタマぶち抜くぞ!!」

 一方クリスとスナイプは互いに火力重視の乱暴な火薬一辺倒。

 しかし大量の敵を相手にする場合は、懐に飛び込むよりも効率良かったりする。

 互いに罵倒し合いながらではあるものの、その銃弾が打ち抜くものは例外なく一撃で沈んでいく。

 一定数を撃破し終えたところで、ブレイブ&翼チームと同じく『闇』の障壁で柱を守るダークマター達……。

 だが、この程度の装甲で二人の弾丸は防ぎきることは出来ない。

 

 

『ジェットコンバット!』

 

「イグナイトモジュール――抜剣!」

「第3戦術!」

 

『ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!ババンバン・バンババン!year!バン・バン・シューティング!!アガッチャ!ジェット・ジェット・インザスカーイ!ジェットジェット!ジェットコンバ~ット!!』

 

 

【イグナイトモジュール】を纏ったクリスは『TRUST HEART』を激しく歌い地上から、コンバットシューティングゲーマー レベル3となったスナイプは上空からダークマターをガトリングで一掃すると、間髪入れず柱に狙いを定めた。

 

『ジェット・クリティカル・ストライク!』

 

『MEGA DETH FUGA』

 

 これまで以上に大火力なミサイル砲撃が、柱を粉々に砕いた……。

 

 

 

 

 

 

「……え、柱?はい、了解しました。私達もすぐに向かいます」

『達?それはどういう』

 島に上陸した面々からの無線連絡により、天に伸びる4本の光の柱のうち最後の1本を破壊する使命を帯びた吹雪。

 簡易的な艤装のチェックを終えると戦闘の音でかき消されたため失礼を承知で無線を切断する。

 岩陰に身を隠しながら、少女はその目にしっかりと捉えていた。

 

 

 ――かつて一度命を落としながらも戦い抜いた、一人の英雄の姿を。

 

 

 

 

 吹雪の助っ人に現れた仮面ライダーゴーストは、ガンガンセイバーを振るってダークマターを斬り落とし、撃ち落としていく。

 浮遊能力や消失能力も駆使する姿は、まさに幽霊(ゴースト)そのものだ。

 フードをたなびかせ、一体のダークマターを足場に蹴り上がると、空中に浮き上がったままドライバーのレバーを操作した。

 

『ダイカイガン!オレ・オメガドライブ!!』

 

「ハァァァァァ!!!」

 

 必殺キックがダークマター達に炸裂し、連鎖爆弾のように消滅していくのを見送ることなく、

「武蔵さん!」

 浜辺に降り立つと眼魂を抜き取って、続いて迫るダークマターに対処するべく別の新たな眼魂と換装、かつてこの世界にいた英雄をパーカーとして憑依させる。

 

『カイガン!ムサシ!決闘・ズバッと・超剣豪!!』

 

『ダイカイガン!ムサシ・オメガドライブ!!』

 

 15の英雄の中で最もゴーストとの絆深き剣豪・宮本武蔵の力を借りてムサシ魂へと形態変化、次々とダークマターを斬り伏せていった。

 しかしまだまだゴーストは止まらない。

 

『一発闘魂!アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!闘魂カイガン!ブースト!俺がブースト・奮い立つゴースト!!』

 

 敬愛する父の力・闘魂ブースト魂へと強化変身したゴーストはサングラスラッシャーで敵を牽制しつつ必殺技を発動。

 

『闘魂ダイカイガン!ブースト・オメガドライブ!!』

 

 灼熱の思いが力となり、ダークマターを灼き尽くしていった。

 すると状況を不利と判断したのか、ダークマター達の主勢力はゴーストに背を向けて一斉に外界を目指し始める。

 

 

 

「させません!」

 

 

 

 しかし忘れてもらっては困ると言わんばかりに、吹雪が一団に砲撃を浴びせたことで隊列が乱れた。

 彼女一人では心許無い戦況が、ゴーストの出現によってひっくり返ったため、吹雪は落ち着いて自分の戦いに集中出来ている。

 ダークマターは海面に接触しているわけではないため酸素魚雷こそ通らないが、駆逐艦には航行(あし)の速さがある。素早く攻撃を回避しゴーストの取り零したダークマターを一掃していくのが、彼女の戦い方として今この瞬間に確立していた。

 

 

 

「よし……みんな、いくよ!」

 ゴーストはアイコンドライバーGを取り出し、ゴーストドライバーごと換装する。

 

『グレイトフル!ガッチリミーナ・コッチニキナー!ゼンカイガン!剣豪発見巨匠に王様侍坊主にスナイパー!大変化~!!』

 

 ゴーストは吹雪の無事を確認しながら、死闘を経て心を通わせた15の偉人の力を一つに収束させたグレイトフル魂へと変身。ガンガンセイバーとサングラスラッシャーを二丁拳銃の様に扱い、ダークマターに風穴を開けていった後、ゴーストの鎧から偉人達が一斉に飛び出して、共に空へ舞い上がる。

 

『全員集合!メガ・オメガフォーメーション!!』

 

「はぁあああ!!」

 ゴーストと偉人……計16人の必殺キックが立て続けにダークマターを襲い、海面に叩きつけられていった。

 

 進軍勢力の第一波を見事退けたゴーストと吹雪は合流し、喜びを隠すことなく海上でハイタッチ。

 吹雪はオレ魂へと戻ったゴーストに柱のことを簡単に説明する。

 

「わかった。あれを破壊すればいいんだね」

「はい。時間がありません、行きましょう!」

「ああ!」

 

『ムゲンシンカ!』

 

 決意を露わにしたゴーストはその精神からムゲンゴースト眼魂を出現させ、ドライバーにセットした。

 

 

『バッチリミナ~・バッチリミナ~!』

 

『チョーカイガン・ムゲン!Keep on Going!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴッド・ゴースト!!』

 

 

 その姿は天空寺タケルの無限の可能性を具現した、紛れもないゴースト最強形態・ムゲン魂。白いゴーストとも称され、圧倒的な美しさを誇るその存在感には、吹雪も目を奪われる程だ。

 

 

 

 程なく柱の前に辿り着くと、やはり『闇』が障壁となって立ちはだっていたがそんなものは意味をなさない。

 ゴーストはレバーを押し込み、吹雪は連装砲を構えた。

 

 

『チョーダイカイガン!ムゲン・ゴッドオメガドライブ!!』

 

 

「私がやっつけちゃうんだから!」

「命、燃やすぜ!」

 吹雪の砲撃が『闇』を崩壊させ、その隙間から無限の紋章と共に飛翔したゴーストのオメガドライブが、柱本体を捉えると、パリンと音を立てて弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 さも当然のように仲間面するゲンム――檀黎斗に不快感を抱きつつ、レーザーは戦闘に集中していた。

 永夢達はゲンムの正体を知らない。現時点で黎斗であることを知っているのは貴利矢ただ一人でありそれ故にというわけだ。

 チラリと見ると、ゲンムはなんだか楽しそうだ……未知との遭遇に少年心がくすぐられるのだろうか。

 

「ブゥワハハハハハハハ!!ダークマター、実に興味深い!しかぁし、私の理想と相容れない存在は、消し去るのみだ!!!」

 

 ……なんだろう、よくわからないが滅茶苦茶キモい。

 さっきから高笑いしながらグニャグニャした動きでガシャコンバグヴァイザーでエグったりチャリで轢きまくっている。

 ゲンムがダークマターを翻弄している間に、レーザーもレベルアップ用のガシャットを取り出した。

 

『ギリギリチャンバラ!』

 

『シャカリキスポーツ!』

 

「3速!」

「グレード3」

 

『ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!爆走・独走・激走・暴走!爆走バイクゥ!!アガッチャ!ギリ・ギリ・ギリ・ギリ・チャンバラ~!!』

 

『ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!!アガッチャ!シャカリキ・シャカリキ!バッド・バ~ッド!シャカッと・リキッと!シャカリキスポーツ!!』

 

 仮面ライダーレーザー チャンバラバイクゲーマー レベル3

 仮面ライダーゲンム スポーツアクションゲーマー レベル3

 

 レーザーはガシャコンスパローを装備すると、宿敵ゲンムと共に柱を見据える。

 

『ギリギリ・クリティカル・フィニッシュ!』

 

『シャカリキ・クリティカル・ストライク!』

 

 二人は同時にガシャットを挿入し、ガシャコンスパローとスポーツゲーマの後輪を構えると必殺技の体勢へ。

 

 二人の仮面ライダーの多段攻撃の前に、柱は呆気なく崩壊していった……。

 

 

 

 

「ひゅ~。決まったぜ」

 レーザーが勝利に酔いしれていると、ゲンムが彼の正面にやってくる。まさか戦う気かと身構えるレーザーだったが、どうやら違うらしい。

 何かをスッと差し出してきた。

「私がこの場に現れたのは、ただダークマター一族が気に入らなかったというだけではない。頑張っている君達にプレゼントをしようと思ってね」

 そう言ってゲンムが手渡してきたものは、彼が制作していた新たなガシャットだった。

「これは……」

「有効に使ってくれ」

 そう言い捨てて、問いただす間もなくチャリ漕いで何処かへと去っていくゲンム。

 変身を解いて、その怪しげなガシャットを貴利矢は見つめる。

 はたしてこのガシャットが何をもたらすのか、彼にはわからない…………。

 




ゴーストの連続フォームチェンジがやりたかっただけ。






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小休止

はねやすめを兼ねて予てより考えていた短いやり取り。本編は進まない(無慈悲)




 何事も休みが必要だろう。これは小休止だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 鏡灰馬は聖都大学附属病院の近隣にある公園で大きなため息をついた。

 明日那が帰還したためCRに居残る日向審議官の対応を一任し、自分は少し休憩するため外出している。

 だが、空には今も『闇』が渦巻きとても気分が良くなるような状態ではなかった。

 灰馬の気落ちの原因は、それだけに留まらない。

 CRと衛生省を繋ぐ中間管理職のこと、息子のこと、そして何より多方面から自分の存在が蔑ろにされている気がしてならないのだ。

 実際、何か良かれと思って発言すれば飛彩と明日那から煙たがられるのが日常と化している。そこ、実際に鬱陶しいとか言わない。

 最近めっきりエグゼイド本編でも見かけないのはこうしていることが多いからである。かつてはちょこちょこCRにいたが本編の盛り上がりが最高潮に達している今、余計出ていきにくくなってしまった……。(時間軸的にはまだ1クール目)

 はたして自分の存在価値はあるのだろうか。気づけばネガティブな思考ばかりが頭を支配する。

「「…………はぁ」」

 再びため息がこぼれた。

 その時、彼は声が重なったことに気が付く。

 ふと隣のベンチに目をやると、腰を抑えて苦痛に顔を歪ませる初老の男性が座っていた。

「いたたたたた……こりゃいかんもう限界じゃ。早いとこ病院にいかんと」

 どうやら腰を痛めているらしい。

 灰馬はこれでもドクター。流石に放っておくわけにはいかないので、恐る恐る声をかけることにした。

「あのー、大丈夫ですか?」

 初老の男性――仙人が灰馬を見る。

「うん?お前さんは?」

「あ、これは失礼。そこの病院で院長をやっているものですが、よろしければお連れしましょうか?」

「おお、それは助かるわい!いやぁ湿布貼って寝ていても治らんので自力でここまで歩いてきたんじゃが限界での」

「それはそれは。では、手を貸しましょう」

 仙人は灰馬にしがみつくようにしてゆっくり立ち上がる。

 しかし灰馬も灰馬で結構歳がいっている方なので、大人の男一人支えるのも一苦労。

 フラフラしながら公園を出たところで、仙人が愚痴るように口を開いた。

「まったくタケルはともかくだーれも年寄りのことなんぞ忘れてどこかへ出かけおって……こちとら『平成ジェネレーションズ』にも『スペクター』にも出れなくてストレス溜まりまくりんこじゃ。どうなっとんの、このわしあっての『ゴースト』じゃろうに」

「は、はあ……何を言っているのかさっぱりですが、ご愁傷様です。うおっとととと!?」

「いたぁ!?」

 よろけてバランスを崩した灰馬に引っ張られてさらに腰を痛める仙人。

 もはや長官の威厳もくそもないただの老人は申し訳なさげに青ざめる灰馬を見て、恨めしげに、

「お主も覚悟せいよ?今は出番をもらっているかもしれんがいずれ存在すら忘れ去られる日も近かろう。きっと今年の平成ジェネレーションズ第二弾にはオファーが来ないなんてことも有り得るぞはなまる」

「ひぃいい!!そ、それだけはご勘弁を!!!」

 ……とまあ少々メタで危なげなやり取りをしながら人気のない街を往くおっさん二人。実際に最終回以降関わりのある作品に影も見なくなった先輩からのありがたーい忠告に後輩は恐怖しつつ、医者としての責務くらいは果たして株を上げておかねばと決心、仙人を覚束無い足取りで病院へと連れて行くのだった…………。

 




ギャグって難しいですね。



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決着 ~レジェンド編~

私が執筆をサボっている間にいろいろなことが目まぐるしく変化していって作品の独自解釈設定が歪む歪む(主にエグゼイド)

時間かけた割に今回も粗が目立つかも知れないので違和感を感じられたらご指摘ください。


 ブラックロックシューターはロックカノンを突き出し黒い岩石を射出して、追跡してきたDソードを城壁の一部ごと木っ端微塵に吹き飛ばした。

 Dソードは爆風と爆煙にまみれながらも空中でバランスを取って華麗に着地する。

「ゆけ!」

 そして周囲に人型ダークマターを呼び寄せ、剣先をブラックロックシューターへと向けて戦隊へと号令。

「…………」

 先兵隊となって走ってくるダークマターに、黒衣の少女は表情を変えなかった。

 ただその左眼には、淡い青炎が宿っていた……。

 ロックカノンをしまうと共に右手に刃を持って、ブラックロックシューターはダークマター達の横をすり抜けながら斬り伏せていく。

「いざ尋常に……」

 その瞳の先に映るのは、単眼の騎士。

「勝負!」

 ついに交わる刃。

 Dソードの剣技は、翼やブレイブに勝るとも劣らない実力があった。

 若干、本当に若干ながら、ややブラックロックシューターは劣勢である。

 ついに剣を巻かれ、その刃が彼女の首を狙う。

 しかしブラックロックシューターも負けず、Dソードの胸を蹴って上半身を後ろへ逸らしながら攻撃を回避すると共に牽制することに成功した。

 一回転しながら地に足を付け、再びロックカノンを左腕に装着し砲先をDソードへと向け、放つ。

「くう!?」

 連続的に襲い来る砲撃に、たまらず地面を転がった。

 しかしすぐに体勢を立て直し『闇』のエネルギー波を剣にまとわせ、斬撃として飛ばす。

 ブラックロックシューターはそれをロックカノンで撃ち落とし切る前に地を蹴ってDソードへ肉薄、勢いを保ったまま押し切った。

 大きく後退するDソードはそのまま城壁に激突どころかめり込んだ。

 よろよろと壁から抜け、数歩前へ出るものの、ブラックロックシューターが容赦なくその体を下から斬り上げ、空中へと放り出された。

 右手にあったはずの剣はなかった。先の一撃で、何処かへ吹き飛ばされていた。

 自由落下に従って落ちていくDソード。

 その真下には、普段のものより何倍も大きなロックカノンの射出準備を行う少女の姿。

 ブラックロックシューターの左眼は、さらに強い青炎を宿す。

 そして、上空のDソードへロックカノンを放出した。

「……お見事!」

 それは騎士道精神故か、Dソードは散り際にそう言い残し消滅した……。

 

 

 

 

 

 

 

 葉を付けていない雑木林の中では、衛宮士郎がDマインドの攻撃から逃げ回っていた。

「ふははは!どうした、そんなものか!!」

 士郎は会敵してから、まだ一度も攻撃を仕掛けていない。当初こそDマインドは慎重だったものの、まるで反撃してこないためか余裕が生まれ、得意げに高笑いする。

 さらに勢いを増すミラーを配置したスターバレットの四方位変則攻撃を短剣で弾き飛ばしていくうちに、士郎の干将と莫耶はひび割れ、ついには粉々に。

 それを見て、さらに心の高揚を露わにするDマインド。

 真に限りなく近い『贋作』を投影する士郎の魔術。それを破壊するということは、決して弱い存在でないことが伺える。

「……なるほど」

 しかし士郎は冷静に心を落ち着かせると、再び二振りの短剣を握った。その意志に、未だ敗北はない。

「これで終わらせてやろう!!」

 それに気づいているのかいまいのか、Dマインドはマントの内側に仕組まれた禍々しい目玉のような物体を露出させると、破壊光線を放つ。

 周囲の景色を一変させる程の強烈な一撃が士郎を襲い、Dマインドの勝利が確定……。

 

 

「――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

 

 することはなかった。

「なに!?」

 彼は無傷であった。信じられないと言いたげに表情を歪ませるDマインド。

 士郎の身を守ったのは、花弁のように展開する七枚の結界宝具だった。

 投擲に対しては絶対的な防御力を誇る、原作はギリシャ神話に登場するアイアスの盾である。

「さて、ここからは俺の番だ」

 言って、干将と莫耶で左右から現れたダークマターを全て蹴散らすと共に、ついに、士郎は初めて攻撃に転じた。

 地を蹴り一直線にDマインドを目指す。

 動揺のままに放たれるスターバレットは一撃すら当たることはない。

 一気に懐に飛び込んだ士郎は三度の投影による必殺技「鶴翼三連」でDマインドの鎧に傷をつけていく。

「ぐあああ!!!」

 いや、卓越した戦闘技術は鎧など容易に砕き直にダメージを与えていた。

 だがやはりというべきか、贋作者(フェイカー)の武器は攻撃に耐えられず砕け散る。その度に新たな贋作武器を作り出すことで、絶え間なく攻め立てていた。

 干将・莫耶を強化したオーバーエッジで鎧を完全に破壊すると、英雄フェルグスの剣に彼なりのアレンジを加えた「偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)」を止めに突き立て、Dマインドは後方へ転がるように吹き飛んだ。

「おのれぇ!」

 悪態付きながらよろよろと立ち上がる。しかし……。

 

 

「――体は剣で出来ている(I am the bone of my sword.)

 

 

「!?」

 

 詠唱が、始まっていた。

 

血潮は鉄で、心は硝子(Steel is my body,and fire is my blood.) 幾度の戦場を越えて不敗(I have created over a thousand blades. )

 

 Dマインドは何事か困惑する。

 

ただ一度の敗走もなく(Unaware of loss. ) ただ一度の勝利もなし(Nor aware of gain. ) 担い手はここに独り(Withstood pain to create weapons, ) 剣の丘で鉄を鍛つ(waiting for one's arrival. )

 

 敵を前にして、何やらぶつぶつと呟いているのは何ゆえか……。

 

ならば我が生涯に意味は不要ず(I have no regrets.This is the only path.)

 

 ついに疑問を経て、気付く。これは、自分を仕留めるためのものだと。

 

 しかし時既に遅し。

 

この体は(My whole life was )……」

 

 

 士郎の瞳が、ゆっくりと開かれると共に、世界が一変する。

 

 

 

「――――無限の剣で出来ていた("unlimited blade works" )

 

 

 

 

 

 気が付けば激しい闘争の後に、全てが終焉を迎えてしまったかのような光景が広がっていた。

 荒野に突き刺さる無数の武具。

 そこは、衛宮士郎の心相世界……固有結界の中であった。

 

 

無限の剣製("unlimited blade works" )

 

 

「な、なんだこれは……」

 絶句するDマインド。次に彼がとった行動は、やけくそに四方八方へばら蒔くスターバレット。

 しかしそれらは全て、数多の贋作たちの前に撃ち落とされ、最終的に士郎自らが持った弓矢が鏡を穿った。

 もはや全ての攻撃が無意味であることを悟ったDマインドは、無謀にも己の肉体を使っての突貫を仕掛けた。

「うおおおおおおお!!!!」

 士郎はその場から動くことはしなかった。ただ、その手に、愛した者の武器を投影する。

「人類の命を脅かしたお前らを、許すことはできない」

 ゆっくりと、静かに、騎士王の聖剣(エクスカリバー・フェイク )を振り下ろした。

「あ……が……」

 文字通り真っ二つにされたDマインドは、完全に消滅。

 士郎はふう、と緊張を解いた。

 ふと、目に止まったDマインドのダークミラー……ひび割れ、消滅を待つだけであったその鏡に、士郎は驚愕なものを見る……。

 

 

「セイバー……!?」

 

 

 戦いですら一切の焦りを見せることのなかった士郎が、今、動揺を隠せないでいる。

 鏡の中には、かつての聖杯戦争で彼の使い魔だった甲冑の少女が映っていた。

 まるで鏡は別の世界を写しているかのように、現実の景色と相対していなかった。

 少女はその両手で聖剣を握り、異形の者共と対峙している。

 よく覗き込むと、少女の他にも様々な戦士が戦っているようであった。

 しばらくの間その光景を凝視していた士郎だったが、巨大な盾を持った少女らしき後ろ姿が映ったところで、ついに鏡は消滅してしまった。

「…………」

 今のは、なんだったのだろう。

 こことは異なる並行世界の出来事が、偶然写りこんだだけなのか……。

 気になるが、干渉の術を失った今、士郎にはどうすることもできない。

「それでも、あいつが幸せであるのなら……」

 密かな想いを胸に仕舞い、彼はこの戦いの結末を見守るように、城の方へと戻っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ガングニール】は伝承通りであれば槍である。

 歴代装者の天羽奏もマリア・カデンツァヴナ・イヴもアームドギアは槍であった。

 しかし立花響が纏った時、それは槍どころか武器としての形を成さない。

 争いを望まない響の心理を反映した結果、彼女は生粋のインファイターとなった。

 彼女のアームドギアは、己自身だ。

「はぁあああああ!!!」

 人型ダークマターを全て殴り飛ばし、Dミラクルに立ち向かう。

「懐に入りたがっているのが見え見えですよ!」

「くっ!」

 一方、Dミラクルはカービィのコピー能力と酷似した特殊能力を持っていた。

 体術の届かない距離を保ちながら、『カッター』や『ボム』を駆使して響を近づけさせない。

 それでもえぐり込んできた時は『アイス』や『ニードル』を展開してしっかり防御、彼女を苦戦させる。

「どうしましたぁ?さっきまでの勢いがなくなりましたねぇ?」

 わざとらしい猫なで声で挑発するDミラクル。

 響は、一直線にDミラクルを再び狙いにいく。

 体の力を抜き、ただ一点を狙って、攻撃の瞬間に、拳に力を込めた。

「ふう……な!め!る!なぁああああ!!!」

「な!?」

 フォニックゲインが高まり、『ストーン』を発現するDミラクルを殴り飛ばした。

 大ダメージには至らなかったものの、Dミラクルは予想以上のパワーに目を白黒させた。

(こ、これほどとは……)

 しかしバチバチと『スパーク』を発現させ、地を蹴った。

「全力で叩き潰してあげましょう!」

 

 ――奇跡が宿った機械仕掛けのこのアームには意味がある

 

 響は【歌】と共に拳を握り、正面からDミラクルと対峙する。

 

 

『リトルミラクル–Grip it tight-』

 

 

「普通の日常、何でもない日々。そんな夢の為だと!」

 Dミラクルの突進を跳躍で躱し、『スパーク』の射程範囲外距離を保ちながら、足で地面を削って砕けた岩を蹴り上げる。

「正義を信じ、握り締めよう!やり直せばいい、壊れたって!!」

 岩石に対処すべくDミラクルは『スパーク』から『バーニング』へ能力を変化、岩石を一撃で粉砕する火の玉となって響の拳と真っ向勝負に挑んだ。

「もうへいきへっちゃら!ハート響かせ合い、なけなしの勇気、だって『勇気』。泣けるほどギュッと!愛になる!」

 二人の戦場は爆発的なエネルギーに耐えられず、衝撃で徐々に崩壊していく。

「私は奇跡の名を冠するダークマター!あなたのようなものに負けることなどありえないのです!!」

 ジリジリと、『バーニング』が響の右拳を焼いていく……それでも、彼女は拳を引かなかった。

「馬鹿ですねぇ。このままでは右腕が使い物にならないくなりますよ?苦痛も尋常ではないはずだ」

「……今、街の人達は苦しんでいる」

「ん?」

 膨大なエネルギーのぶつかり合いの中で、響は呟く。

「私の友達も、お父さんもお母さんも、不安と恐怖と戦ってるんだ。翼さんやクリスちゃん、他のみんなだって!」

 Dミラクルは気付く。

(! 押し返されている!?)

「だから、私は逃げるなんてことはしない!!」

 それはまごう事なき、心優しい少女の、正義の叫びだった。

「うわぁああああああ!!!!」

 ついに押し負けたDミラクルが地面を転がる。

 響は痛々しい右手を、なんら平気そうに突き出して言った。

 

 

「このくらいの痛み、へいきへっちゃらだ!!!」

 

 

 直後、首下にあるイグナイトモジュールに左手をかける。

「イグナイトモジュール――抜剣!!」

 

 

『限界突破G-best (IGNITED arrangement)』

 

 

「一点突破の決意の右手 私と云う音響く中でぇええ!」

「ぐはっ!」

 暴走状態を管理下におき、決意を固めた響にDミラクルは為す術もなく拳を食らう。

『ストーン』の防御力を無視した一撃に、目玉の一つを潰された。

 

 奏でられる【歌】の中で、Dミラクルは特殊攻撃を尽く打ち潰され、響の連続パンチが炸裂する。

 

「高鳴れ!G-best!!」

 

 メーターをガンと! 振り切れ!

 

 この両手で この歌で 守り切ってやる!

 

 目にも止まらぬ速度で繰り出されるマシンガンパンチ、そしてキック……攻撃は最大の防御の言葉通り、Dミラクルはまともに逃げることすら叶わない。

 

「貫け!G-best!!」

 

 信念を 燃えろ! 激しく!

 

 強烈なアッパーカットが決まり、満身創痍となったDミラクルは、情けなくひいひい言いながら後ずさる。

「そ、そんな……私はまだ!」

 高く、高く飛び上がり最後の一撃を振りかぶる響を見て、ついに背を向けた。

 

「限界なんていらない知らない……ぜったぁああああああい!!」

 

 

 

「ぎゃあああああああ!!!!!!」

 

 

 

 上空からの渾身の一撃が、Dミラクルの体を地面深くに沈み込めた…………。

 

 

 

「繋ぎ離さない!!」










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決着 ~DARKWARS編~

サイトの人気作品とか漁ってると、やっぱりみんなTS転生とか憑依とか大好きなんだなぁって思います。


私も何かやろうかしら……(フラグ)


 奴はこの宇宙に生まれ落ちた瞬間から破壊者であった。

 何色をも飲み込む『闇』……それは奴が操る力であり、奴自身でもあった。

 

 

 

 

 

 

 ゼロが放った闇色の弾幕が全てを破壊し尽くす。

 それを、火の玉が打ち消しながら、本体を狙う。

 火の玉――『バーニング』のコピー能力を得たカービィが切り込んだ。

「小賢しいっ!」

「ここだ!」

「!?」

 突撃をかわすため、体を左に傾けたゼロ。だが、そこを思わぬ伏兵――エグゼイドのガシャコンブレイカーに狙われた。

 ゼロはカービィを弾き飛ばした後、『闇』のシールドを前面に張ることでエグゼイドの攻撃を防ぐ。

 ゼロの注意がエグゼイドに向いている隙に、飛ばされたカービィはゼロの背後にあったブロックを破壊し、新たなコピー能力を吸い込んだ。

『カッター』の特性を得たカービィは、無防備なゼロの背中に鋭いブーメラン型の刃物を射出する。

 舌打ち、シールドを解除してエグゼイドの首に掴みかかり放り投げ、『カッター』を弾き返した。

 間髪入れず、続け様にコピー能力『アイス』を獲得したカービィが凍てつく息吹を噴射する。

 

 

『ゲキトツロボッツ!』

 

「大・大・大変身!!」

 

 

『ガッチョーン!ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティ・マイティアクション!エーックス!!アガッチャ!ぶっ飛ばせー!突撃!激突パンチ!ゲ・キ・ト・ツ・ロボッツ!!』

 

 

 響く軽快な電子音声。

 同時に、エグゼイド ロボットアクションゲーマー レベル3のロケットパンチがゼロを捉えた。

 それだけならば、ゼロにとって脅威ではない。しかしカービィの『アイス』が地面と共にゼロを凍らせることで動きを制限させ、単調なパターンになってしまうエグゼイドの攻撃を支援することで、彼らはゼロの十分な脅威となって畳み掛ける。

「そら!」

 ついにその豪快な機械の左腕がゼロにクリーンヒットし、砕けた氷を辺りに散らしながら後方へ吹き飛んだ。

 両足のつま先でなんとか踏ん張るが、ダメージが修復されることはない。

 それは、仲間達の奮闘の賜物だ。

「よし、効いてる!」

 攻撃に確かな手応えを感じたエグゼイドは、カービィとアイコンタクトすると、巧みなコンビネーションでゼロを翻弄する。

 コピー能力『スパーク』がゼロの光弾を相殺し、その合間を縫うようにエグゼイドが懐に攻め入ってはダメージを受ける前に後退するヒット&アウェイを繰り返し、少量ダメージを確実に与えていく。

 同じ戦法を繰り返すため、徐々に攻撃が防がれる確率が高くなっていくが、今はそれで十分だった。

「……!?」

 ゼロは肉体に違和感を覚える……それが左足に蓄積されたダメージによる筋力低下であると気づいた時には、エグゼイドは仮面の下でニヤリと口角を釣り上げていた。

 その時、『スパーク』から『ニードル』へと能力を変化させていたカービィが、一瞬だけ気が逸れたゼロを牽制。

 

 

『ゲキトツ・クリティカル・ストライク!』

 

 

 隙を見つけたエグゼイドは、すかさずガシャットをスロットホルダーに挿入。それに呼応するように、カービィも新たに『ストーン』の能力を発現させてその身を岩石へと変化させ、エグゼイドのすぐ前に落下していった。

 なぜ敵ではなく味方のすぐそばに落ちるのか、その解答は、すぐに得られた。

「はぁあああああ!!!」

 ロケットパンチの推進力を利用した岩石激突である。

 唸るように『闇』のシールドを貫通し、ゼロが吹き飛んだ。

 カービィとエグゼイドの合体技が見事に炸裂した瞬間だ。

「ぐ、う……」

 粉塵を巻き上げ、地球に復活した中で最大級の傷を負いながらも、ゼロは倒れなかった。

 ゼロのダメージは、微々たるものでしかない。

 だが解せない。

 レベル5にも勝利した、カービィをも圧倒できる程にパワーアップを果たした……客観的に考えて、ゼロが二人に苦戦を強いられる要素はないはず。

 確かに精神こそ乱れてはいるものの、そんなものくらいで覆るほどの力量差ではない。ではなぜか。単純な力や能力ではない、別の要因があるからだ。

(”覚悟”の差だとでも言うのか……)

 そんなもの、認められるはずがない。

 感情論など馬鹿馬鹿しいと一笑に伏せて、より一層の殺気を放つゼロ。

「ああ、本当に貴様ら……小賢しいぞっ!!!」

『闇』こそが全て、『闇』こそが絶対。

 憤慨と共に巻き起こる大爆発。

 二人は体勢を崩しつつ何とかそれから逃れきると、再び戦闘態勢に入った。

 

 

『ドラゴナイトハンターゼェェェット!』

 

「大大大大・大変身!!」

 

 

『レベルアーップ!ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター!ゼェェェット!!』

 

 

 エグゼイドはハンターアクションゲーマー レベル5……そのフルドラゴン状態へと強化変身を遂げると、『パラソル』のコピー能力を得たカービィと共に、自ら黒煙の中へ飛び込んで、二刀の刃を手にしたゼロと荒々しく接近戦を始める。

 しかしやはりというべきか、ゼロは手強かった。

 フルドラゴンのエグゼイドの攻撃は当たっているにも関わらず、それを意に返さずゼロも反撃する。

 カービィも手に持った『パラソル』でいくらか応戦するも全て弾かれてしまっており、これまでの余裕に満ちた傲慢な戦闘スタイルとは打って変わって、標的を殲滅することだけに特化した殺戮兵器のようだ。

「ぐっ!」

「私を愚弄した罪、地球と共に償ってもらおうか!!」

「こっちも負けてたまるか!うぉおおおおお!!!」

 

 

『ドラゴナイト・クリティカル・ストライク!』

 

 

 雄叫びの中で、エグゼイドとゼロの技が拮抗する。

 二人から発生した莫大なエネルギーによる衝撃波が豪勢な城内装飾を塵へと変え、コンクリートは砕け飛ぶ。

 拮抗していたエネルギーはお互いがその威力に耐え切れず、すぐに二人を巻き込む形で大爆発を起こし、両者ともボロボロになって地面を転がった。

「はぁ、はぁ……」

 結果、エグゼイドはドラゴナイトハンターZガシャットがドライバーから外れ、レベル2の姿で地面に倒れていた。

 カービィは崩れた瓦礫の中から這い上がると、急いでエグゼイドの下へ駆け寄り心配そうに見つめる……。

「へへ……なんとか大丈夫」

 幸い、エグゼイドはすぐに起き上がって、カービィに仮面の下で笑ってみせた。

 

 

 

「……なぜだ!!!」

 

 

 

 カービィの手を借りてエグゼイドが立ち上がると、同じくボロボロになったゼロが傷口を押さえながら、よろよろと前に足を踏み出す。

「私はダークマターだぞ!神にも等しい存在なのだ!!それがなぜ、貴様ら如きにぃ!!!」

 これまで同様、ゼロが強い存在感を放っていることに違いはない。だが今は、子供のように駄々をこねて、たった一つの事実を否定し続けるその様を、哀れと感じるのであった……。

 最早支配者としての傲慢さすら消え失せたゼロに、エグゼイドは告げる。

「俺達は、独りで戦ってるんじゃない。みんなの想いを背負ってここにいる」

 響、士郎、ブラックロックシューター、ポッピー、飛彩、大我、貴利矢、翼、クリス、吹雪、日向、灰馬――――みんなが、二人の勝利を信じてくれている。

 それは、二人の力となって、今、ここにある。

「一族の為だなんて言いながら、結局自分が頂点に立つことしか考えていないお前の独善的で自分勝手な野望の前に俺達は屈しない!みんなと一緒に戦う俺達が、お前なんかに負けるわけないだろ!!!」

 だから、強い意志の下に言えた。

 一人一人では決して適わなくとも、誰かと一緒なら救える命があるから……。

 

 

「言わせておけばぁああああ!!!」

 逆上するゼロ。

「いくぞカービィ!」

「!!」

 ワープスターにカービィが飛び乗り、その背後ではエグゼイドがクリティカルストライクを発動させる。

 みんなの想いが力となって、カービィ&エグゼイドは流星となる。

 それは『闇』をも照らし尽くす、二つの希望。

 心身一体となった輝星が、巨大な悪を打ち貫く!

 

 

 

 

 

「ぐぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 支配者の断末魔が消えていくと、『闇』が晴れ、世界は青空を取り戻していく……。

 

 

 

 

「わぁ!空が見えてきた!」

「どうやら、やったみたいだな」

「…………お疲れ様」

 

 

 

 

「終わったのか」

「随分待たせやがって」

「やるじゃん、名人」

「つっかれた~!とっとと帰ろうぜ」

「うむ。見事な晴天だ」

 

 

 

 

「見てください!『闇』が晴れていきますよ!」

「ああ!」

 

 

 

 

「おお、『闇』が消えていく!流石私の息子だ!」

「む?眼魂の気配が消えおった……」

「よくやってくれた、永夢!」

 

「やったんだね。カービィ、永夢!」

 

 

 

 

 

 二人は地に足を付けると、途端に緊張が解けて地面にへたりこんだ。

 ガシャットを抜き取って、永夢はカービィと共に取り戻した青空を見上げた。

(終わったんだ、全部……)

 本当に苦しい戦いだった。

 カービィを失って絶望しかけたこともあったけれど、みんなのおかげで、ついにダークマターを倒すことができた。

 カービィとボロボロの顔を見合わせて、永夢は微笑んだ。

 

 

 事態を知る誰もが、危機は去ったのだと確信していた。

 

 

 

 それが誤りであると理解したのは、笑顔があふれ始めた、まさにその直後だった。

 

 

 

 

 突如、先ほどまでゼロがいた位置から大量の『闇』が間欠泉の如く吹き出した。

 

「「!?」」

 

 突然の事態に驚愕するカービィと永夢、そして仲間達……。

 やがて大量の『闇』は霧散し、その内部より現れたのは、巨大な白い球体。

 

 

 

 

『全ての命に終焉を。全ての惑星に破滅を』

 

 

 

 

 木霊と共に、球体の中央の割れ目がパッと見開かれる。

 血液のようなどす黒い紅色の液体を流したそれは、目玉だった。

 島にいた者達も、遥か遠くにいるポッピー達も瞬時に理解する。これが、この姿こそが……。

 

 

「ゼロの、真の姿なのか……!?」

 

 

 

 

 再び、戦いが始まる…………。

 




もう少しでこの作品も完結です。どうか最後まで温かい目で読んでやって下さい。









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新たな力

ライダー映画でよくあるオリジナルのあれ。


 カービィとエグゼイド――二人の戦士の奮闘によって、ゼロは敗北を喫した。

 東京上空を覆っていた『闇』も消失し、全てのダークマターも共に消え去った。

 だがしかし、それでゼロの増幅された執念までもが無くなることはなく。

 微かに残留していた『闇』がゼロの思念に呼応し、それは生前の、あるべき姿を形成したのだ。

 つまり、今、戦士達の眼に映る存在はゼロそのものではなく、言わば、怨念。

 敗走による屈辱、その対象への憎悪、宇宙を支配したいという欲望。

 ホムンクルスの肉体が朽ち果てたことで、その死と共にゼロを縛り付けていた拘束具もまた、なくなったのだ。

 故に、剥き出しになったゼロの思念は、従順に、そして極めて単純に、宇宙の全てを無へと変貌させるという行為によって、かつて自らが心に抱いていたものを解消するべく動くだけである。

 

 

 

 

 

 

 人の姿でないものに恐怖するのはなぜだろうか……そんなもの、自分に分かるはずもないというのに、永夢は、ぎょろりと向かれた眼に身を震わせた。

 これまで人間という規格の中の枠組みに当て嵌められていたゼロの真の姿が露わとなり、改めて自分が相手取っていた存在の大きさを思い知らせる。

 だが、臆してはいられない。負けるわけにはいかない。

 ギュッと拳を握り締めて、永夢はゼロと視線を交わす。

 その隣では、カービィが同じようにゼロを前にしながらも、地球を守るべく対峙の姿勢を崩していなかった。

 

 

 

 敵意を察知したのか、浮遊する巨躯の球体がついに動き出した。

「「!!」」

 刹那、放たれる閃光……それは一番近くにいた永夢とカービィを容赦なく吹き飛ばす威力を持っていた。

 

「うわぁあああああああ!!!」

 

 問答無用で城の外へ放り出され、絶叫と共に落下していく。

 このまま落下を続ければカービィはともかく、変身していない永夢は地面にキスしてゴー・トゥー・ヘヴン。

 まさに地面と激突しそうなその時、虹色の輝きを纏った光が二人の腕を掴み、間一髪のところで救出に成功した。

 光は二人を抱えたままふわりと地に降り立った。

 永夢は、その光り輝く姿に見覚えがあり、あっと表情を驚かせる。

 以前は一瞬しかその形態を確認できなかったが、紛れもなくそれは、永夢がよく知る人物であった。

「ゴースト……タケル君!!」

「久しぶり、宝生先生!」

 光の正体――仮面ライダーゴースト ムゲン魂は仮面の下でニコリと微笑んだ。

「どうしてタケル君がここに?」

「あー、その話は後で。今はあいつをなんとかしないと」

 気になることは山ほどある永夢だったが、ゴーストが指差す方に目をやると、そこにはより一層破壊活動を目論むゼロが、生命溢れる陸地へ向けて移動しようとしている。

 このまま島の外へ出すわけにはいかない。

「お、追わなきゃ……!」

 急く思いとは裏腹に、足を何度か前に進めたところで、永夢の体は悲鳴を上げ倒れてしまった。

「先生!」

 変身を解いたタケルが慌てて支え起こす。

 もともと傷ついた体でゼロと激闘を繰り広げた永夢の体は、既に限界を迎えていた。常人であればとっくに病院のベッドの上である。

「もうボロボロじゃないですか……」

 タケルがそう言うが、永夢は止まろうはしない。無茶をすることはタケルにも多々あった為に強くは言えない。だが、これが友人達が戦いに赴く自分を見て感じていた思いと同質のものであるならば、是が非でも止めたくなるのが分かる。

 永夢自身も、体が限界なのは一番よく理解していた。だが、そんな理由では潔く諦めるという結論には至らない。

 かつてタケルが幼馴染を救う為に、一時的に変身出来なくなっていたにも関わらず、自らの命を賭してまで敵に立ち向かったように、彼にも守らなければならないものがあるのだ。

 タケルの手を振り払って、なおも先へ進もうと、フラフラな足取りで歩いていく中で、永夢の白衣から何かがポロリとこぼれ落ちた。

「!」

 いち早くそれに気がついたカービィは、それを拾い上げると、永夢の前へ走っていき、何かを訴えかけるように飛び跳ね始める。

「カービィ、いったい、どうし……」

 永夢はカービィが持ったそれ――街でもらったトマトを見て驚く。

 そう言えばすっかり忘れていた。しかし、生のトマトがなぜ今の今まで潰れもせず残っているのだろうか?

 呆然としつつも、カービィからトマトを受け取ると、奇妙な違和感に脳内で疑問符を浮かべ、呟いた。

「これ、普通のトマトじゃない……?」

 貰った時は、確かにどこにでも売っているものだったトマト。だが、なぜか今は大きく『M』とイタズラ描きされたような黒いマークが存在しており、なんだか若干、サイズも大きくなっているような気がした。

 ふとカービィに視線を戻すと、何やらモグモグと口を動かす仕草で訴えかけてきている。

 そのジェスチャーは、すぐに理解できた。

「食べろってこと?」

 永夢は、カービィを模倣するように、トマトをそのまま一齧りする……。

 

 

 

「!!!!!????」

 

 

 するとどうだろうか、永夢のボロボロだった体が、見る見るうちに健康体へと戻り、感じていた痛みと疲労は、すっかりどこかへ吹き飛んでしまった。

「えぇええええ!?あれ、なんで!?」

 あまりの出来事に困惑する永夢、そしてそれを見ていたタケルも唖然とする。

 カービィだけが笑顔で永夢からトマトを奪って、残りを食べると、同じようにカービィの体も元通りに。

 それもそのはず、どういうわけかあのトマト、カービィの接触を受けて彼の故郷に存在する体力完全回復食料、マキシムトマトへと変化していたのだ。

 これは友情を深めた奇跡か。

「でも、これで戦える!」

「!」

 互いに頷き合うと、急いでゼロの下へと向かう……。

 タケルは、あえて二人を追うことはしなかった。

 今回世界を救うのは、自分ではない。

 自分がおらずとも、二人ならばきっと絶望を砕くことが出来ると、心から信じているから…………。

 

 

 

 

 

 道なき道を走り抜けていく二人を待ち受けていたのは、九条貴利矢だった。

 気づいた永夢は彼の下まで駆け寄って、無事を喜ぶ。

「貴利矢さん!」

「よう。どうやら倒し損ねたみたいだな」

「うう、すみません。まさか復活するなんて……」

「別に責めちゃいねぇよ。それに、今から倒しにいくんだろ?こいつも持っていけ」

 子犬のようにはしゃぐ永夢をたしなめつつそう言うと、貴利矢はゲンムから預かったガシャットを差し出した。

「これは……?」

「お前の力になってくれる筈だ。多分な」

 一瞬戸惑う永夢であったが、快くガシャットを受け取り、信用の意を込めて強く頷く……。

 貴利矢(正確には檀黎斗扮するゲンムだが)に託された未知なるガシャットを構え、永夢は変身する。

 

 

 

『大乱闘スマッシュブラザーズクロスエーックス!』

 

 

「変身!!」

 

 

 任天堂から発売されているオールスター出演作品シリーズの中でも、まだ発売されていない新作ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズXX(クロスエックス)』ガシャットを起動し、ゲーマドライバーに挿入し、レバーを引いた。

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!』

 

 

 

『俺もお前も~大乱闘!We're!スマッシュ・ブラザーズ!クロスエーックス!!』

 

 

 

 誕生せし新たなるエグゼイド。

 その名も仮面ライダーエグゼイド スマッシュブラザーズゲーマー レベルX

 

 

 任天堂の数々の名作達をイメージしたカラフルな装飾を引っさげて、エグゼイドは決戦に臨む。

 

 

 

「…………」

「ん?どうしたカービィ?」

 それを傍で眺めていたカービィは、何を思ったのか、エグゼイドのスロットホルダーからマイティアクションXガシャットを抜き取り……。

 

 

「はむ!ゴクン!」

 

 

 ――飲み込んだ。

「「な!?」」

 エグゼイドと貴利矢の目玉が思わず飛び出そうになる。

「ちょ、ちょっとぉおおおおお!?俺のマイティ!!!」

「お、おぉう……確かに外国のキャンディっぽく見えなくないけども……」

 何ということだ。新たなガシャットを手に入れたかと思えば愛用しているガシャットが代償に胃袋の中へ消えていく結果に。

 エグゼイドは貴利矢を睨みつけて、『やっぱり信用するべきじゃなかった』と言葉にはせず、視線で訴える。

 対し貴利矢は『自分は知らない!自分は悪くない!!』などと供述しており、互いの主張は平行線を辿った……。これは第三の目を用意して客観的に状況を判断してもらわねばならないだろう。勃発エグゼイドVSレーザー。今話執筆時期のニチアサ本編的に笑えない冗談である。

 

 

 と、あくまで将来的に素晴らしい相棒漫才を繰り広げている間に、カービィの体に変化が起きていた。

 

 

 頭部に生えるトサカのような髪。目元を覆うゴーグル。さらに胸部と思わしき部分にはゲームコントローラーのようなコマンドキー。

 その姿を見て、誰もがカービィ版エグゼイドだと答えるであろう。

 

 

 

 コピー能力『エグゼイド』

 

 

 

 カービィがマイティアクションXガシャットを吸い込むことで誕生した、奇跡のコピー能力。

「う、うわぁああああ!!カービィがエグゼイドに!?」

「というよりは元キャラのマイティに近いな。背格好的に」

 カービィは驚くエグゼイドの手を掴み、『さあ、行こう』と引っ張った。

 

 

 

 

 いざ、最終決戦の舞台へ――――!




音声はダブルアクションゲーマーが原曲。








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カービィ&エグゼイド ~Forever~

追記

時系列が合わないことを承知して、且つ公式設定との差異が生じる可能性も覚悟でとあるキャラの台詞を一部改変しました。


『ステージセレクト!』

 

 

 

 

 ――――視界が、全く異なる世界を映し出す。

 現在ゼロだったものが見ている景色は、地球の大海原ではなく宇宙を彷彿とさせる仮想空間。

 かつて望んだものによく似ていて、その静寂の中に自分だけの世界が広がっているようで思わず見惚れ、動きを止める……。

 だがそれもすぐに終わる。

 キラリと光る二つの希望が、一直線に自分のところへ駆け抜けてきたから……。

 

 

 

 

 

 カービィはエグゼイドのようにチョコブロックを足場にしながら、そしてエグゼイドはカービィのように大きなサイズのワープスターに搭乗して、ゼロと同じ目線までやってこようとしていた。

 ゼロはそれを見るや、文字通り血相を変えて全身からエネルギー光線を射出する。

 無差別に放出された光線が空中で次々と大爆発を起こす中、カービィとエグゼイドは器用にそれらを避けてゼロ本体に狙いを定めた。

 カービィはガシャコンブレイカーを手にすると、天才ゲーマー「M」と同等の身のこなしを披露しゼロの側面を斬り込んでいく……。

 しかし当然ゼロがその程度で怯むはずがなく、すぐに反撃を受けそうになり距離を取るためバックステップで後退した。

 それとほぼ入れ替わるようにゼロの頭上に飛び込んだのはエグゼイド。

 彼は大乱闘スマッシュブラザーズXX内に名を連ねる名作『ゼルダの伝説』に登場する戦士・リンクのマスターソードを突き刺した。

「うぉおおおお!!」

 振り落とされそうなのを、左手で深く突き刺さった剣を掴み何とか持ちこたえながら自由な右手に高電圧の電気エネルギーを収束させ、一気にゼロを殴りつける。

『ポケットモンスター』を代表する人気キャラ、ピカチュウの十万ボルトだ。

 全身を駆け巡る電撃に、ゼロは目に分かる程に悶える。

(どうだ!)

 一瞬手応えを感じたエグゼイドであったが、電撃を浴びながらもゼロはさらに多くの光線を弾かせていく。

 思わず剣から手を離し、エグゼイドは空中に待機させていたワープスターに飛び乗ってカービィと共に様子を見ることにした。

 やはりこの程度では終わらない。ゼロは先程よりも力を増しているように見える……。

 思いの力は、どこまでも生物の可能性を進化させるようで、それはゼロも例外ではないようだ。

 しかし……。

「何度だってやってやる!!」

 二人とて、覚悟は負けていない。必ずみんなを助けるという誓いは、そう簡単には砕けない。

 深紅に染まったより高密度のエネルギー光線が屈折しながら二人を狙う。

 カービィはロボットアクションゲーマーとなり、エグゼイドが操る『スターフォックス』のアーウィンの先端に乗っかると光線が飛び交う真っ只中に特攻を仕掛けた。

 しばらくゼロの周りを旋回し、光線を次々と撃ち落としていくが、追尾能力を備えた攻撃にアーウィンの翼がついにもがれる。

 エグゼイドはすぐさま消滅するアーウィンから脱出すると、カービィが作り出したブロックに着地して新たな力を発現させた。

 ブロックがゼロ目掛けて一直線に展開されたのを確認すると、全力で駆け出す。

 エグゼイドを狙う光線の数はかなりのものだ。

 しかし迷うことなく、右手に炎を纏わせて、エグゼイドは自分やチョコブロックを破壊する数多の攻撃の雨を掻い潜って距離を詰めていく。

 

 

「ファルコォォォォンパァチ!!!!」

 

 

 そうして、ゼロ距離まできたエグゼイドが繰り出したのは、レースゲーム『F-ZERO』に登場するキャプテン・ファルコンのスマブラオリジナルにして知名度の高いパンチ攻撃。

 炎を纏った重い一撃は、ゼロの巨大な球体を押し退けるまでに至り、追い打つ勢いでカービィのロケットパンチが立て続けにクリーンヒット。球体がパキッと音を立てて僅かにひび割れ、その箇所から濃縮された、ゼロを形成しているであろう『闇』が空気のように漏れ始めた。

 それを見たエグゼイドは、『光神話パルテナの鏡』のピットが授かった神弓を召喚。

 ドラゴナイトハンターZ(フルドラゴン)のカービィと共に、パルテナの神弓による遠距離からの全方位攻撃を繰り出した。

 それにより、ゼロから全体から少量ずつではあるものの、力の源である『闇』が失われていく。それに伴い、ゼロの攻撃の激しさをナリを潜め、今では数える程度の光線しか放てなくなっていた。

 漏出過多による『闇』が、肉体を構成することで精一杯でそれ以外に力を回せないでいるのである。

 それでも、ゼロの奥底にあった執念は、並大抵のものではなかったのだろう。もはや本人が死んでいようとも、何も成し遂げることが出来ないであろうとも、ゼロの思念体はこの世界に留まることを止めない。

 否、止められないのだ。ダークマターの頂点として生まれたゼロ……それは生まれながらに支配者であることを運命付けられた存在。それ以外など価値がないとでも言うように、唸り声を上げる。

 

 

 

 

「…………もう、終わらせよう」

 静かに、エグゼイドは呟いた。

 ゼロが何を思っているのか、エグゼイドには分からない。単純に立場が違うのだから当然のことだ。

 けれどゼロの唸り声を聞いて、奴もまた、自分達と同じ規格の生物であったのだと理解する。

 だからこそ終わらせる。もうこんなことを繰り返させないために。

 カービィも同じことを思っていたようで、エグゼイドの呟きに無言で頷いた。

 

 

 

『スマッシュ・クリティカル・ストライク!』

 

 

『マイティ・クリティカル・ストライク!』

 

 

 

『スーパーマリオブラザーズ』の主人公・マリオがそうするように、ジャンプでエナジーアイテムを次々と獲得、極限まで能力値を引き上げた状態となって、二人はクリティカルストライク――必殺のダブルライダーキックを放った。

 

 

 ライダーキックはゼロの中心……即ち本体である血眼を真っ直ぐ捉えると、内蔵されていた『闇』が全体から一斉に噴射され、崩壊を始める。

 そして、二人のキックがゼロを貫通し切ると共に、ついに支配者の思念は木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 

『『会心の一発!!』』

 

 

 

 

『終わるのか、何もかも……。だが、何故だろう。ひどく、清々しい………………』

 

 

 

 

 完全に消滅する間際。

 

 

 

 カービィとエグゼイドは、そんな声を聞いたような気がした…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……エナジーアイテムと眼魂、それにダークマターのデータ回収が出来ればと考えていたが、艦娘か……実物はとても興味深いな」

 無人島から遠く離れた崖の上に、白服を着た異国の女性が立っていた。

 その手には、どういうわけか携帯端末の他に起動済みのストップウォッチが握られている。

「魔術師であるあの男の失態は財団の損失であったが……それを補ってあまりある収穫だな」

 端末にはダークマター、シンフォギア、エナジーアイテム、眼魂の他、ドライブシステム、ロックシード、魔法石……数多の情報がまとめられた資料が表示されており、女性は細く微笑む。

 女性は特に艤装や艦娘、深海棲艦といったものに関わる資料を重点的に確認すると、足早に海を背に歩き出す。

「ダークマターのデータを手土産にして、パヴァリア光明結社への投資会議の時にでも再提案してみるとするか……」

 

 

 財団Xの女性――ネオン・ウルスランドは呟くと、ストップウォッチを止める。

 その数字は、19.45秒を示していた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……今回、我々を襲った脅威は完全に取り除かれた。取り憑かれた人々も、ダークマターの消滅に合わせるかのように目覚め、既に日常に復帰している。これも諸君の努力のおかげだ。本当にありがとう』

 

 

 ダークマターとの戦いから数時間の時が流れ、人々は再び平穏を取り戻そうとしていた。

 事件に関わったCRと『S.O.N.G.』、協力してくれた鎮守府に、名も知らない戦士達……。

 ここにいない者も含めその全てに感謝の意を込めて、日向恭太郎はCRのモニターから告げた。

「滅相もございません日向審議官!これも私の優秀な息子である飛彩のオペのおかげ……」

「親父黙れ」

「院長が喋るとロクなことにならないから黙ってて!」

「アカシックレコード!?」

 CRにいたのは、鏡親子にポッピーピポパポだけ。

 大我と貴利矢は部外者であるためここにはいない。

 響、翼、クリスの三人は挨拶を済ませるや否や、慌ててCRから出て行ってしまった。

 何でも欧州で開催される翼のライブがゆっくりしていては間に合わなくなるとか。

 翼のファンであるポッピーはサインをもらい損ねたことに後から気が付き泣き喚いたとかなんとか。

 ひとしきり涙を流し落ち着きを取り戻すと、彼女は今この場にいない二人の事を思う。

「二人共、楽しんでるかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの戦いを終えてすぐ、エグゼイドが使っていたスマッシュブラザーズXXガシャットは壊れてしまい、カービィが飲み込んだマイティアクションXガシャットは排出されて永夢の手に戻った。

 緊張が解け、地面にへたり込んだ二人の身を案じて真っ先に駆けつけてくれたのは響だった。

 同じ船でやってきた面々とタケルは、既に帰りの準備を整えているという。

 士郎とブラックロックシューターの行方が見当たらないことを響に問いかけたが、彼女も自分の戦いが終わった後、その姿を見ていないそうだ。

 挨拶もなく何処かへ去っていってしまい、少しだけ残念に思う三人。

 でも、平和が戻ってきたのだ。今はそれを喜ばねば、自分達の行いが嘘というものである。

 そして、彼らは無人島を後にする……他の仲間達と喜びを分かち合うために……。

 

 

 

 

 

「約束だよカービィ。一緒に美味しいものを食べに行こう!」

 日向達の歓迎を受けた後、みんなと別れた永夢はカービィにそう切り出して、戦いの疲れも忘れて夜の街へと繰り出した。

 街はダークマターのせいでボロボロであったが、幸い小さな建物などは被害が少なく、カービィの望む店を次々と食べ渡り歩いた。

 それは待ち望んだ幸福な時間。突然の出会いから始まり、熾烈な戦いを乗り越えてようやく勝ち得た、友達との大切な時間。

 そしてそれは光の速さで過ぎていく……この時ばかりは、時間の流れが本当に恨めしいと思った。

 

 

 

 

 

 

『闇』が晴れ、宇宙の星の輝きがよく見える高台へやってきた二人。

 お腹をパンパンに膨れ上がらせて、よいしょとベンチに腰掛ける。

 高台の広場には二人しかおらず、美しい夜空を二人じめだ。

 しばらく眺めていると、不意に永夢は口を開いた。

「僕、カービィと出会えて本当に良かったと思ってる。たくさん美味しいものを食べ歩いたり、こんなに素敵な空を誰かと一緒に見た経験、なかったから」

 嘘偽りのない胸の内を、今ここで打ち明ける。共にいた短い時間とは裏腹に、二人の絆は深く、深く心に刻まれていたから。

 だから今、言っておきたかった。

 別れが近いことを、何となくだが永夢は感じていた……。

「「!」」

 その瞬間、夜空に一筋の流れ星が煌めいた。

 流れ星はだんだん二人に近づいてきて、輝きを保ちながら高台の広場にゆっくりと降下してくる。

 流れ星の正体は、ワープスター。カービィの愛機だ。

 カービィはベンチから体を下ろすと、ワープスターまでてくてくと歩いていく。

 ついに来てしまったのだ、別れの時が……。

 

 

「カービィ!!」

 

 

「!」

 ワープスターに手をかけた時、永夢に名を呼ばれ、カービィは振り返った。

 永夢の顔は、胸の内から湧き出る何か必死に我慢しているような表情で、可笑しく歪んでいた。

 それがどういう感情からなる表情であるのかを、カービィは瞬時に理解する。

 地球とポップスターは、あまりにも距離が離れており、近所の友達の家に遊びに行く感覚で会うことは出来ない。

 ここで離れ離れになるということは、もう、永遠に会うことが出来なくなるかもしれないということだ。

 一度紡がれた絆は、どうしてこんなにも正しさを拒むのだろう。

 二人の視線は、少しの間だけ交錯していた。別れたくないという、ささやかな抵抗だ。

 でも、ずっとこのままではいられない。だから……。

 

 

 

 

 

「――――また、ね」

 

 

 

 

 

 永夢は、笑顔で再開を約束する。

 カービィもまた、それを受け入れて笑顔で頷いた。

 

 

 

 カービィを乗せたワープスターがゆっくりと夜空に浮かび上がり、お互いの距離が遠くなっていく。

 けれどもそれで二人の絆が消えることはなく、むしろ約束のおかげでより強固なものになっているから何の問題もなかった。

 最高峰の輝きを誇る流星となったカービィは、夜空の中を突っ切って宇宙へと飛び出す為に速度を上げていく。

 その星輝は、この戦いに関わった者達だけでなく、街の人々をも注目させて……いや、恐らくは世界すら覆うほどの光を放ちながら消えていった……。

 

 

 世界はその一瞬の奇跡を観測すると、再びあるべき姿へと戻っていく。

 永夢は途端に訪れた孤独感に胸をギュッと締め付けられるも、顔を上げて広場を後にした。

 

 

 

 ダークマター一族との戦争は終わりを告げた。

 しかし、バグスターの根絶、自らに秘められた謎、仮面ライダークロニクル……まだ見ぬ激闘が待ち受けている。

 

 宝生永夢は戦う。ドクターとして、仮面ライダーエグゼイドとして、患者の笑顔を取り戻す為に…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星輝の奇跡が届いた、何処かの世界――――

 

 

 

「……あっ、流れ星だぁ!」

「え、どこどこ!?」

「もう探してもおせぇだろ。にしてもラッキーだなひかり、近々何か良い事あるかもしんねぇぞ?」

「本当ですか!?えへへ~、何か起きるといいなぁ」

 

 

 

 

 

 See you Next Crossover

 




エグゼイド本編ではきりやさんが帰還し、ムテキゲーマーが登場した本日、記念すべき第一作である本作も一応の完結となります。

およそ半年間、本作を読んでいただき本当にありがとうございました。


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