~読者達のあいんくらっどコメディオン~ (秋宮 のん)
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その1~3

その1 彼は魔物を狩る少女は落とせても時間渡航者は落とせない

 

「………くっそっ!」

 迷宮区のとある場所、ずっと共に戦ってきた仲間が、袂を分かつと言って去ろうとする中、タドコロは槍の矛先を地面に叩き付けた。

「ああ、そおうかよ!? 結局お前はそう言う奴なんだよなっ!? どんなに俺やサヤが気に掛けたって、お前にとってはどうでも良いんだろ!? 心配してた俺がバカだったよ!」

 普段は使わない一人称を口にしながら、タドコロは苛立たしい気持ちを振り返ろうとしない少女の背に向けて吐き捨てる。

「でもなっ! 俺は明日も来るからな! お前と一緒に迷宮区を攻略するぞ! バカだからな! 聞いてるのかよウィセ!? 俺は、お前の事が大好きなんだからなっ!」

 少女は足を止める。肩を震わせ、彼女は振り返ると、タドコロの元へ真直ぐ走り寄り、その胸に飛び込んだ。

「………ウィセ」

「タドコロ………」

 そして彼女は、ステータス上あり得ない力でタドコロの胸倉を掴み上げた。

 タドコロの脚が地面から離れ、じたばたと暴れる。

「ねえタドコロ? アナタは自分の人生が尊いモノだと思う? 思いますよね? 思うんだったら二度とそんな暴言を吐かないで?」

「俺の告白は暴言レベルですかっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その2 乙女な僕に見つめられる森の猟師くん

 

 

 ギルドにて、対面で食事中のケンとサヤ。

 無言で食事するケンをニコニコ顔でサヤは眺めている。

「………」

「(じーーーーーっ)」

「う、うぅ………」

「(じーーーーーっ)」

「は、うあ………」

「(じーーーーーっ)」

「な、なんで見つめてるんデス………?」

「だって、本当に美味しそうに食べるんだもん。ケン」

「ご、ゴメンナサイ………」

「あれ? どうして謝るの?」(ニコニコッ)

「い、イヤ、別に………」

「僕も明日はハンバーグにしてみようかなぁ~~♪」

「………~~~~ッ!!」

 席を立ち、一瞬で部屋の隅っこに逃げだすケン。

「み、見ないで~~~~~っ!!」

 通りすがりのカノンが訪ねる。

「アレは一体どうしたの?」

「さあ~♪ きっと中の人的な精神影響受けてるんじゃない~~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その3 まずはその黒歴史をぶち殺す

 

 ルナゼスとヌエはフィールドでモンスターを倒し、レアドロップアイテムをゲットしていた。

「それでナッさん。どんなアイテムが手に入ったんだよ?」

「ええっと、剣みたいだが………なになに? 『暗黒の光』………」

「はあ? なんだそれは? 闇なのか光なのかどっちなんだよ? しかもオブジェクトされた剣、刀身が黒いフランベルジュだな? 『闇の炎』ってか? はははは………」

「ふ、ふふふ………っ」

「? どうしたナッさん?」

「『ナッさん』ではない! ルナゼス改め『ダークフレイムマスター』と呼んでもらおう!!」

「何事ッ!?」

「ふはははははっ! この剣さへあれば、世界は俺の物だ! 手始めに………、そこの虫けらを狩るとするか?」

「え? 俺? ちょっと、どうした? ナッさん!?」

「消えるが良い! 我が嘗ての友よ! 『闇の炎に抱かれて消えろ』っ!!」

 ルナゼスの剣が黒い炎を纏い始める。

「よーし、解った。とりあえずその剣が、何かヤバいらしい。とりあえず………その幻想(妄想)をぶち殺す!!」

 ヌエは右手の拳で剣ごとルナゼスを殴り飛ばした。

 剣はバラバラに砕け散った。

「はっ!? 俺は一体何をっ!? ………あ、いや、憶えてる………。忘れろ~~~~っ!!  忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ~~~~っ!」

 額を地面に向けて撃ちつけるルナゼス。

「ええ~~っと、とりあえず、黒歴史もぶち殺しとく?」

「お願いしますっ!!」

 

 

 

 

 

――こんな感じで四コマみたいなネタ話が続きます――




ネタが解らない人のために
その1『カノン』『まどかマギカ』
その2『乙女は僕に恋してる』『オオカミさんと七人の仲間達』
その3『とある魔術のインデックス』『中二病でも恋がしたい』
ちなみに、全てアニメ参照です。


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その4~6

正直、中の人繋がりで合わせるのが難しいとは思ってなかった。
この企画はかなり時間を要したぞ。主に企画段階で。
MADを作ってる人の苦労が身に染みて解ったよ。


その4 リトルでバスターな僕は、お姉ちゃんに狙われている。

 

 集団戦中、サヤの槍が誤ってスニー肩に当たってしまった。

「きゃんっ!」

「あ、ごめんっ!?」

「もう~っ、サヤさんったら………、お仕置きで抱き付きの刑です♪」

 サヤを後ろから抱き締めるスニー。

 身体全体を逆立てて驚くサヤ。

「うきゃああぁぁ~~~~~っ! 触られるのダメ~~~~っ!!」

「うふふっ、今度は注意してくださいね♪」

「は~~い………」

 敵がひるんだ隙を見て前衛が道を開けるのに合わせて槍を振り降ろしたサヤ。

 その槍の柄がスニーの頭部を直撃した。

「いやんっ!」

「今のは避けてよっ!?」

「今度は抱っこの刑です♪」

 サヤを前から抱き締めつつ、首から顎に人差し指を這わせる。

「にぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!」

「うふふっ、今度失敗したらチューしちゃいますからね♪」

「もう失敗しない。絶対しない」

 敵がラスト一撃になったところでウィセの合図。

 指示に従ってサヤの『ソニック・チャージ』が発動。

 ひょいっ、前に出てくるスニーの背に直撃。

 スニーは素早くサヤの両頬を捕まえて唇を近づける。

「サヤさん………、目を閉じて♡」

「今、自ら当たりに行ったよねっ!?」

 スニーの額を押さえて必死に抗うサヤの姿にウィセは溜息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その5 戦線のリーダーと歌姫(?)

 

 ギルド≪ケイリュケイオン≫、作戦会議室。

 マフラーオフ・アルクは椅子に座って腕を組み、厳かに告げる。

「これより、次のオペレーションを伝える。作戦名、オペレーショントルネード」

「なあ、なんでウチの嬢ちゃんでも、お姫様でも無く、アルクが仕切ってんだ?」

 小声で訪ねるタドコロに、マサが返す。

「なんか、違和感無いから………」

 納得して皆黙りこむ。

「作戦内容は………ギルド保護対象メンバー、通称『一般生徒』から食券を巻き上げるっ!!」

「カツアゲかよっ!?」

 叫ぶヌエに対し、心外とばかりにアルカナは告げる。

「我らのギルドは、そんな恥知らずな行為には及ばん」

「おい、なんでアル坊がメガネかけて率先してアルクの援護してんだよ?」

 訪ねるタドコロに、マサは再び端的に答える。

「解んないけど、違和感無いでしょ?」

 皆納得して黙る。

 アルクは続ける。

「まずは食堂で歌を披露! 皆が盛り上がっているタイミングで風を起こし、食券を巻き上げるわよ! ―――っと言うわけで歌姫さんはこちら!!」

 呼び出された白髪のローブを着こんだ少女は、顔を真っ赤にして歌い始める。

「攻略組の生き様、覚悟を見せてあげる。アナタの胸に刻みなさい!」

 思わぬ美声に驚くメンバー。

 しかし、見た事の無い女性に皆首を傾げる。

 そこに用事を済ませて帰って来たウィセが、首を傾げて一言。

「カノン、そんな格好でなにしてるんですか?」

「聞かないでくれっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その6 何でもは知らないけど、アナタのエクスタシーは知っています。

 

「―――っと言う風に、我がギルドは、レベルが高く戦闘向けのプレイヤーよりも、レベルが低く非戦闘組だが、生産系のクエストなどに広く手を出している一般プレイヤーこそが主軸となる『要』と言える組織なんだよ」

 サヤの説明に感心するアルク。

「へぇ~~。この各階層のクエストを梯子する事で、大きな利益を手に入れられるルートも、アンタが個人で見つけたのかい? 凄いじゃないのさ?」

「最近はリンちゃんと観光スポット巡りも考えてるんだよ? 格安でアインクラッドの観光名所を安全確実に周れれば、みんな大喜びだし。何より心の憩いの場にもなるしね」

「人の心をよく知り、アインクラッドにも詳しくなくちゃできないね」

「そのためにも人員の適材適所も考えてるんだよ? こっちはウィセに協力してもらいながらだけど、意外に慣れていないだけで、適切な人とかもいるから、そこら辺は僕が指示出してたりするかな?」

「意外だね? アナタメンバーの事もちゃんと把握してんだ?」

「うん。そりゃあ、大事な仲間だもん。色々ちゃんと把握してるよ。ケンの面白い所とか、タドコロの急所とか、ウィセの弱点とか、アルクのエクスタシーモードとか」

「へ?」

「(ニコニコッ)」

 途端に冷や汗を流し始めるアルク。

「ア、アンタ………何デモ知ッテンダネ………?」

「何でもは知らないよ。知ってる事だけ♪」

 サヤは優雅に髪を払って見せた。

 




ネタ

その4『リトルバスターズ』『バカとテストと召喚獣』
その5『Angel Beats!』
その6『化物語』『リトルバスターズ』


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その7~9

リクエストに応えてみた。
自分的にはかなり無理がたたったような気がします………。


その7 ギルド荘のペットな彼女

 

 ギルドメンバーになる事になったキリト。

 多少怖気ながらも勇気を振り絞ってギルドホームに足を踏み入れる。

「だ、大丈夫だ。別に宇宙人やお化けが住んでるわけじゃないんだ。ビビる事無いって………」

 キリトがホームに入るが丁度留守なのか、誰もいない。

「不用心だな………、ええっと、俺の部屋は………?」

 受付に置かれた『キリトの部屋鍵』と書かれた立て札を見つけ、それを取ると、立て札に書かれた番号の部屋に向かう。

(大丈夫だ。既にギルメンになってるからアイコンは表示されてる。何か聞かれたらその時に自己紹介すればいいさ)

 部屋に辿り着くと、案外広い部屋に驚かされる。

「中々広い部屋だな。新人に対しては格別だぞ? ええっと収納は………?」

 

 カチャッ、

 

 近くにあった箪笥を開けて見ると、そこにはローブを纏った女が一人座り込んで―――、

 

 バタンッ、

 

「………俺、疲れてんのかな?」

 深呼吸してからもう一度開けて見ると、ローブを纏った女性が顔を上げ、緑の眼光を怪しく輝かせた。

「どわああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!」

 驚いて飛び退るキリトに、少女はタンスから出て、チャットを使って問い訪ねる。

「 お客様? 」

「え、あ、ああ………。今日からギルメンになったんだ………」

「 ラビット よろしく 」

「ああ、俺はキリトだ………。っで、なんでラビットはこんな所に居たんだ?」

 一拍間を開けたラビットは、徐にチャットを操作し始める。

「 最初から私しかいない。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でも、聞いて、それは私がここにいる理由、あなたがここにいる理由………、信じて 」

「いたよ宇宙人っ!!」

「 何処に? 」

「ここだっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その8 あの人が入ると途端に口数が増えます

 

 キリトと出会ったウィセが軽く挨拶を交わす。

「これからよろしくな」

「嫌だわ、まさかそんな軽い言葉で私と仲良くなろうなんて思ってるんじゃないでしょうね? 度し難い程に愚かだわ。私と仲良くなりたいなら、まずは完璧な土下座を学んでから、最高のお菓子を用意して、慎ましやかに挨拶をするべきだわ」

「自己紹介の時点でハードル高いなっ!?」

「とんでもないわ。こんなのはハードルとは言えないわ。アナタのために―――でもないけれど、便宜上、アナタのためにこんな厳しい事を言っているんじゃない?」

「便宜上とか言っただろ今!? 明らかに他人に対する思いやりとかねえっ!」

「そんな事よりゴミ………じゃなくてキリト」

「その間違え方おかしいだろっ!? 明らかにただの暴言だよなっ!?」

「銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラム、悪意九十七キロで私の暴言は錬成されているわ。ちなみに、照れ隠しは嘘よ」

「一番抜いちゃいけない物抜いちまったぁ~~~~ッ!!」

「それで? ただ挨拶などと言うくだらない事のために来たわけじゃないでしょう? 私に何か用かしら?」

「挨拶だけじゃダメなのか………、サヤから伝言を預かって―――」

 ウィセ、猛烈に動揺して、後ずさる。

「ど、どうしたウィセ? 急に動揺して?」

「ど、どど、動揺なんてしてないわ。キリトくんは一体何を言ってるのかしら?」

「お前が俺を君付け呼んでる時点でどうかしてるだろう?」

「べ、べつに、サヤさんについて動揺してるわけじゃないわよ!?」

「なんだよお前、サヤに弱みとか握られてたりするのか?」

「そんあn、そんな訳ないじゃない? わらひ、私がサヤさんに苛められてるとか言う事実はどこにもないわ」

「苛められてるのか!? お前がいじめられてる事も驚きだけど!? サヤがお前を苛めて事の方が驚きだよ!?」

「そんな事実、あるわけないじゃない。我がギルドに苛めはありません」

「何処の学校だよここはっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その9 世界の境界線上を超えて………

 

 サヤ、ウィセ、タドコロ、カノン、サスケ、ラビットが集まり談笑中。買い物帰りのルナゼスが会話に参加。

 

ルナ「おいおい皆、何やってんの?」

 

サヤ「ああ、ナッスー?」

 

サスケ「ルナゼス殿か?」

 

ルナ「ああ、俺おれ」

 

ウィセ「あら? 愚友? 貴方こそ今まで何をしてたのかしら? アナタは次のクエストを探しに行っていたはずでしょう? 二次元女性の購入に勤しんでいたらコンセントに――自主規制――して感電死すると良いわ!」

 

カノン「ひっ―――!?」

 

ルナ「おいおい、ねえちゃん? エロゲはもう卒業したぜ? クエストはちゃんととってきたぞ? パーティーメンバーの内一人をお姫様役に、皆が追っかけっこするクエストだ。勝利条件は、逃げ回るモンスターの上に乗った姫役をタッチする事だぜ!」

 

タドコロ「Tes.それでは姫役を誰かに選ばねばなりません」

 

サスケ「姫役でござるか………。サヤ殿はどうでござる?」

 

サヤ「僕?」

 

サスケ「ルナゼス殿? 姫役を触る時、触ってはならん場所はあるでござるか?」

 

ルナ「もちろんねえ!」

 

ウィセ「一瞬で男子の表情が緩んだ気がしますね? それが不潔だとどうしたらわかってくれるのかしら?」

 

サヤ「死ねば解りますよ」

 

カノン「姫役はラビットで良いでしょう? 我が王よ?」

 

ルナ「だな! それで良いか?」

 

ラビット「 自動人形に感情はありませんので、別に構いません 」

 

ルナ「なら決まりだ! 俺が世界の王になるだけだ! みんな、いっちょよろしく頼むわ!」

 

全員『Judge!』

 

キリト「………これは一体何だ?」

ワスプ「これが家のいつもの光景だ。慣れろ」

 




解らない人のネタばらし

その7『さくら荘のペットな彼女』『涼宮ハルヒの憂鬱』
その8『化物語』『傷物語』(やってるのは一人だが………)
その9『境界線上のホライゾン』『境界線上のホライゾンⅡ』(二つに分ける意味が無い気がするが………)


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その10~12

元ネタ無しです。
思い付きです。
作品の事実と異なる場合もあります。


その10 仕事は辛いよ………マジで

 

 タカシ、カノンを芝生に押し倒し、その上に覆いかぶさる。

「カノン………」

「ちょ………っ!? な、何考えてるんですか………っ! こんな事してどうなると………っ!?」

「俺を拒むのか?」

「そ、そんなつもりは………っ!」

 タカシ、カノンの顎を掴み、自分の方に向かせる。

「全て委ねろ………俺は絶対………お前を………」

「タ、タカシさ、ん………」

 二人が至近距離で見つめ合う中、次第に胸の奥から高まってくる物を感じる。それに耐えられなくなった二人は、同時に動く。

「「をぅぇぇぇぇ~~~~~~~~………っ!!!」」

 SAOでは吐瀉物は出ないが、それでも我慢できない二人は吐く真似だけを必死に続ける。

 それを見ていたシンが大声で叱責する。

「こらこらっ! ちゃんと最後まで続けろよ!? 次の広告の漫画に載せるんだから、ちゃんとやってくれないと困るぜ!? 今やケイリュケイオンのメンバーを元に創作した、ケイリュケイオン広告『アインクラッドレポート』の広告漫画が女性プレイヤーに大人気なんだからよっ!!」

「「そんな物のために付き合わされるこっちの身にもなれっ!?」」

「見て、書いてるこっちだって辛いんだからお前らも頑張れっ!!」

「「だったらやらせんな~~~~~っ!!」」

 

 

 その頃、サヤとウィセとスニーとヴィオ。

「うわっ! うわわ~っ!? キリトくんがマサくんとそんなぁ~~~っ!?」

「ウィセさんもどうですか一冊? こちらの百合ものなんて私達にも楽しめますわよ? コレなんてウィセさんと―――」

「それには及ばないわ」

 ウィセ、スニーが進めようとした本を胸の前に翳して見せる。

「既に持ってらっしゃったんですのね!? 素敵ですわっ!!」

「ふわっ!? ふわわぁ~~っ!! そ、そんなっ!? ナッツさんとルナゼスさんがヌエくんを巡ってなんてぇ~~~!?」

「………? ??? ………?? ………ねえウィセ、スニー? これって何がどうなってるの? 何だか見てると胸がドキドキするんだけど、見た事の無い形の組み合わさりで解んないんだけど?」

「良いんですわよサヤさんは知らないままで♪」

「アナタは知らない方が良い事よ。ヴィオの様に耳年増になってはダメ」

「誰が耳年増ですかっ!?」

 そう言いつつ、スニーから譲ってもらったヤオイ本を抱えるヴィオ。

 その時、遊びにやってきたクロンが入室してくる。

「サヤさんいますか~~? さっきクッキーを作って見たんですけど、よかったら―――」

「「「わあぁ~~~~~~~~~っ!!! クロンちゃんは見るのも早い~~~~~っ!!!」」」

 訳も解らずクロンはサヤと一緒に追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その11 もしもシリーズ(サヤがアナタの恋人編)

 

 

 目が覚めたら、隣で寝転ぶサヤの姿があった。

「おはよう」

 

 ―――なんで此処にいる?

 

「え? うん、起こしに来たんだけど、何だか気持ちや誘うに寝てるから、顔覗いてた」

 

 ―――そんなに面白い顔か?

 

「僕にとっては、“見る”事自体が特別なんだもん………」

 ベットから降りたサヤはアナタの事を誘います。

「さ、早く着替えて、御飯にしよう? 今日は僕の取っておきです!」

 

 ―――ああ、それは楽しみなんだが………。

 

「ん? なに?」

 

 ―――出て行ってくれないと着替えられない。

 

「??? うん………?」

 首を傾げながら素直に従うサヤ。

 

 

 

 着替えて階段を下りると、料理を用意していたサヤ。

 朝食フルコースの“卵かけご飯”。

「卵かけは醤油が命! “卵かけご飯専用醤油”なんて販売されてたけど、あんなのは邪道っ! 卵かけご飯が流行ったから作っただけの普通の醤油だよ! 卵かけご飯は子供でもできる火も包丁も使わない初歩料理! 故にこそ! 奥が深い調理法が隠されているんだよ!」

 卵かけご飯に思い入れでもあるのか、その後延々卵かけご飯の最も美味しくなる調理法を聞かされた。その調理法で出来た朝食が本気で美味しかった事に脱帽する。

 

 

 

 

「今日は珍しく非番なんだっ! 今日は君と一緒にいられるよ?」

 

 ―――そうか、じゃあ、どこかに出かけて見るか?

 

「あ、じゃあリンちゃんが教えてくれた観光スポット行きたい!」

 

 ―――さて、今日はゆっくり休むか。

 

「お出掛けどこ行っちゃったのっ!?」

 ショックを受けるサヤに、笑って「冗談だ」と頭を撫でる。

「ふわ………っ! ………ぅ~~~………、君が相手でも、やっぱり急に触られると緊張するよ………。でも、嬉しいから、なでなでは好きだよ?」

 

 ―――………お前ちょっと、犬のモノマネして見て?

 

「?? こう? ………ワンッ、ワンッ♪ ヒャンッ♪」

 犬の手で可愛らしく、そして意外と上手い鳴き真似をして見せるサヤ。不思議と頭とお尻に耳と尻尾が出てきたように錯覚する。

「ん? なに? 満足したの? ??? ………えっと、お出掛けは?」

 

 ―――ああ、解ったよ。行こう。

 

「うわ~~~いっ!」

 

 

 

 

「綺麗な川辺だね………。人も少ないし、ゆったりできるよ」

 

 ―――フウリンならもっと良い絶景スポット知ってたんじゃないか?

 ―――オレ達のレベルなら問題無かっただろうに、ここで良かったのか?

 

「こっちが良いよ。だって、君と一緒にゆったりできる時間が、僕には何より嬉しいから」

 静かに川辺を歩く二人。

 しばらくしてサヤが恥ずかしそうに俯く。

「ね………、ねえ? ………手、繋ぐ?」

 

 ―――良いのか? お前、触られるの………?

 

「嫌なわけじゃないんだよ? 相手だって君だし………。ただ、人より敏感だから、ちょっと緊張するだけだもん………」

 緊張した様子で、手を差し出すサヤ。

 驚かせない様にゆっくりと優しく握りしめる。

「………………………。…………………//////」

 きっちり十五秒後、真っ赤な顔になって、するりと手を放したサヤは、握られていた手を胸の中に抱いて、俯いたまま囁く。

「や、やっぱり………、まだ僕には………、~~~~~~~~……………」

 それ以上声にならないまま、サヤは腰が抜けて座り込んでしまった。

 

 

 

 

 帰ってきた二人。

「ごめんね。せっかくの休日だったのに、殆ど何もできなかったね?」

 

 ―――構わないよ。

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。………明日からまた攻略のために忙しくなっちゃうね。………あ、あのさ? ちょっとだけ、我儘言って良い?」

 

 ―――なんだ?

 

「あ、あのね………? 良かったら僕が寝つくまでね………、一緒に………」

 

 ―――!?

 

「一緒にお話でもしよう?」

 

 ―――………(ガクッ)

 

「なんで落ち込んでるの? ………何でも無いの? ………?」

 二人一緒に部屋に入り、サヤが眠くなるまで暗い部屋で互いの事を話し合う。

(ああ………、やっぱり僕には、君の声を聞くのが、一番の、子守、歌………)

 

 ―――お休み、サヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その12 そして僕は何を触った………?

 

 

 リアルでのサヤ。過去の話。

 姉との会話中。

「そうだ弥生! 面白いおまじないがあるんだけど―――」

「やらない。絶対やらない。何が何でもやらない」

「じゃあ止めて………、お姉ちゃん、友達からペット預かってきたら弥生に触らせてあげるドーンッ!」

「妹の了解も無しにこの姉は~~~っ!? ………何このペット? 犬? 猫ではない。長めの毛がふさふさして柔らかい。これはお鼻? ひくひくしてて可愛いけど、ちょっと濡れて―――ひゆんっ!? きゅ、急に舐めないで………っ!?」

「動物にそんな事言っても困るだろう? そして二匹目投入ドーン!」

「まだ一匹目の正体も知れていないのにっ!? そして今度のは明らかに手触りがぬるぬるっ! 気持ち悪いッ!! 感触がリアルに伝わってくる分余計気持ち悪いっ!!」

 

 ガジガジッ! キーーーッ!!

 

「なにっ!? 鳴き声!? なんか喧嘩してる!?」

 

 シャキーーーンッ!! グサグサグサッ! ギャベェーーーーッ!!

 

「あ、やべ………っ」

「お姉ちゃんっ!? 今何かあまり聞きたくなかったような、初めて聞く生々しい音が聞こえたんだけど!?」

「三匹目ドーン」

「謎を謎のままにこの姉~~~っ!! そして今度の感触は明らかに動物じゃないっ!! 何これ!? つるつるで固いけど生き物じゃないよね!?」

「いや、立派な生物」

「初めてヒントが返って来た!? そしてこれはなんなのっ!?」

「答え、スイカ」

「怯えて損しました~~~~っ!!!」

 

 ブンッ!! ぐしゃああぁぁぁ~~~~っ!!

 

「弥生、お前が投げたスイカで大変な事に―――」

「うん、ちゃんとお姉ちゃんに当たったのは音と臭いで解るよ」

「いや、その結果、私が預かっている一万匹のペットが一斉に私に屯してるんだ」

「何処でどれだけ連れてきたのっ!? こんな狭い部屋にどうやってそれだけの数を―――」

「教えてやるドーン」

「お姉ちゃん自ら―――いやあああぁぁぁぁっ!! なんかいる~~~っ!? なんかいる~~~っ!? お姉ちゃんに群がってる小さい大群が何かいる~~~~っ!!?」

「答え、カマドウマ」

「解んない!! 解んないよ~~~~っ!!」

 

 数分後。

 

「よしっ! 全部回収!」

「ふ、服の中に入ってきた時はどうなるかと思った………」

「いや~~、私も、弥生の大切な部分にカマドウマが密集していくところを見た時は、何のエロゲ―かと思ったぞ?」

「その原因は、スイカに塗れたお姉ちゃんが私に被さったからだよね?」

「違うなっ!」

「違わないよっ!!」

「それじゃあ、そろそろペット返してくるぞ?」

「一日で返すのか………なんで預かってたんだこの姉?」

「いや、預かってたペットはカマドウマとスイカだけだ。最初の二匹はその辺で適当に捕まえてきた。………もう一匹になったが」

「スイカペット!? 適当に捕まえたっ!? 二匹が一匹っ!? お姉ちゃん天才なのっ!? 異次元なの!? こっちの思考回路が全く追いつかなくツッコミ間に合わないんですけどっ!?」

「ああ、最初の奴な………、“アレ”が一番まともじゃない………」

 

 バタン………。

 

「な、なに触らせたんだよ~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!!!」

 

 

――ケイリュケイオン談話室――

「なぁんて感じで、お姉ちゃんったらホント面白い人でしょう~~♪ ね? ウィセ?」

「そうね………、サヤが既にお姉さんに毒されて壊れた事は良く解ったわ………」

「? ウィセ? 何か泣いてない?」

 




サヤの過去話は事実です。


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その13~15

久しぶりの投稿。
まさか五日連勤で書く暇が本気でなくなるとは思わなかった………。
短い時間でちょこちょこ書きためたぜ!

………いや、本編書けよ俺っ!?


その13 キリトがケイリュケイオンでいつも見せられている光景です

 

 

 必死に廊下を走る少女を、クロノは悠然とした歩みで追いかけ、少しずつ追い詰めていく。

「く………っ!?」

 少女はピックを投げつけ、敵の進行を食い止めようとするが、ピックは紫色の障壁に阻まれ、全て地面に落ちていく。無駄と悟り、少女は再び走り去る。

「はっはぁ! 逃げろ逃げろ! その分だけ長生きできるってもんだぜ? 追い付かれたらゲームオーバーだ!」

「く………っ!!」

 如何な攻撃も彼には届かず、その歩みを阻害する事も妨害する事も出来ない。

 次第に道は限られ、ゆっくりと行き止まりに追い詰められていく。

「よォ? まだ逃げんの? つってもそっちは行き止まりだぜ?」

 クロノの言う通り、行き止まりに来てしまった少女は、壁に背を付け、逃げる事が出来ない。

「もう逃げらんねぇぞ? 後はどっちか選びな? 毒手か? 苦手か? それとも………両方か?」

 手を伸ばすクロノに、少女はなす術もなく捕まる。

 

 タッチ

 

「 一つ一つのプログラムが甘い。側面からの情報封鎖も空間封鎖も甘い。だから私に気付かれる。侵入を許す。 」

 追われていた少女、ラビットは、先程と打って変わって、悠然とした態度で、チャットを打ち込む。対するクロノの方が怯え気味に後ずさる。

「 統合結合を解除する。情報結合の解除を申請する。パーソナルネーム『クロノ』を適性と判定。当該対象の連結を解除する。 」

「うおわああああぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!!」

 逃げ出すクロノ。追いかけるラビット。

 それを部屋から出てきたばかりのキリトが渋面で尋ねる。

「何してるんだ………?」

「 「鬼ごっこ」 」

 二人はそれだけ告げて走り去った。

「………二度寝するか」

 キリトは部屋に戻り、安眠の時へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その14 結果どうなった?

 

 とある部屋に、マソップ、ヴィオ、ルナゼスが揃っていた。

 マソップが真剣な面持ちで手紙を二人に渡す。

「これを見てくれ。“マスター”から新しいクエストの依頼が届いたんだが………」

 受け取ったルナゼスが読み上げる。

「なになに………? 『クエスト名:絵画の御使い。(PCの似顔絵を描いて依頼人に届けると、絵の上手さに比例したアイテムを譲渡される)』だと? 女性の似顔絵だと更に上乗せされるみたいだな?」

「でも、なんか変なクエストですね? 今までこんなクエスト無かったような………?」

「このSAOは『秋宮のん』と『読者諸君』の所為で、かなりおかしな事になってるからな」

「色々混ざっちまってるわけか? 仕方ない。じゃあ俺達で何とかしよう?」

「それは良いんですけど………、誰が似顔絵を描くんですか?」

 ヴィオの質問に椅子に片足を乗り上げたルナゼスが紙とペンを手に言い放つ。

「大丈夫ッ!! 何を隠そう、俺は似顔絵の達人だッ!!」

「ええっ!?」

 ヴィオが驚いている間にペンを走らせたルナゼスは、マソップの似顔絵を描いて見せる。

「一筆入魂ッ!!」

 渡された絵は、線がしっかりして、陰影の強い、とても彫りの深い逞しい顔のマソップが書かれていた。

((上手い………ッ!? けど、なんか違う………っ!!))

「よしっ! この絵を持っていくぞ!!」

「待てルナゼス! この絵じゃダメだ!」

「なんでだよ?」

「ここに『女性の似顔絵だと更に上乗せ』と書いてあるだろう? ここでヴィオをモデルにしなくてどうする?」

「なるほど」

 男子二人に見られたヴィオが、びくりっとしながら、ただ絵を描くだけだと言い聞かせて苦笑いを作って見せる。

 すかさずルナゼスがスタンバイ。マソップがヴィオに指示を出す。

「よしっ! まずはそこの台に乗ってくれ!」

「こうですか?」

「おおっとっ!? 顔が見難いか? 用意した台も高過ぎたようだ!? 悪いが四つん這いになって、もう少し顔を突き出す様に見上げてくれるか?」

「こ、こうですか?」

「もっと脇をしめてくれ! 腰は引いた方が良いなぁ! もっと見上げる様にっ!」

「こ、こう………ですか?」

 豊満な胸を腕で挟んでしまうので、ちょっと苦しげになるヴィオ。その隙にマソップの指示が飛び、ルナゼスは何も考えずに似顔絵を描く。

「あ、ルナゼス。もっと全体を描いてくれ。似顔絵と言っても全体があっちゃダメって事は無いらしいぞ? なら、せっかくだから全身描いてくれ」

「そうか? まあ、いいか?」

「う~~ん、ちょっと今一だなぁ~~………? ヴィオ! その服だと風に揺れて描き難いだろうから外してくれ!」

「へ? はい………?」

 言われた通り肩に掛ける装備を外し、腰の飾り布を外す。

「スパッツもダメだ! 足のラインが解り難い!」

「は、はい………!」

 恥ずかしいと思いながらも、別に脱ぐところを見せるわけでも、中を見せるわけでもないと必死に言い聞かせ、装備を外す。足元が何だかスースーしてきた様な気がして、急に落ち着かなくなる。そこに至って、ヴィオは自分がしている格好に気付く。

 台の上で、女豹のポーズをして、胸を腕で挟んで強調し、上目使いで相手を見ている。おまけに息苦しさで息が上がり、ほんのりと頬がピンク色に染まっている。心なしか目も潤んでいて実に魅惑的だ。

「よ~~~しっ!! そのまま今度は口を大きく開けて見よう! バナナでも咥えるつもりで!! それだと息がし難いだろうから、胸を締め付ける装備は全部はずしちゃおう!! いっそこのまま全裸に―――おぶぅっ!?」

 マソップが叫ぶ途中で、ヴィオは≪震脚≫を側頭部に当て、黙らせた。

「えっちぃのはキライです………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その15 もしもシリーズ(ウィセがアナタの恋人編)

 

「―――さい。起きて―――い」

「起きてく―――。―――さい」

「まったく………。こう言う時はタドコロ辺りに聞いた起こし方の方が良いのでしょうか? ………」

 

 ―――?

 

「おーきーろー!」←(棒読み)

 

 ドスンッ!

 

 ―――ッ!?

 

「起きましたか? まったく、アナタはこう言った起こされ方をされないと素直に起きる事も出来ないのですか?」

 目の前に憮然とした表情のウィセが居る。

 どうやら朝起こしに来てくれたようだ。

「どうしたんですか? そんな間抜けそうな顔をして?」

 

 ―――お前、なんで起こしに来たんだ? 仕事は良いのか?

 

「問題ありませんよ。今日は非番ですから。起こしに来たのは、それが恋人として当然な手法だと聞いたからです」

 

 ―――………。そうだった。俺達付き合いだしたんだったな?

 

「なんですか? その言い方は? まるで私と付き合う事になって残念なように聞こえますが?」

 

 ―――そんなんじゃないよ。ただ、幸せすぎて実感が湧かないんだ。

 ―――俺、まだ夢見てるんじゃないかって思えるぞ?

 

「朝から歯の浮く様な台詞がよくも出てきますね? そんな事は良いので、はやく着替えて降りて来てください」

 そう言って立ち去ろうとするウィセ。

 付き合う事になっても、彼女が俺に対する反応は、あまり変わらな―――、

 

 ガツンッ!

 

「………った!?」

 

 ―――………大丈夫かウィセ? 扉は開いてから通る物だぞ?

 

「わ、解っています! ちょっとノブを掴み損ねただけです!」

 ほんのり頬を染めて起こったウィセは、そのまま部屋を出て行った。

 

 

 

 

 着替えて一階に降りると、ウィセが朝食を用意してくれていた………のだが………。

 目の前には、黒焦げになった物体が幾つも皿の上に乗っかっていた。

 ウィセは、苦い表情でこちらに頭を下げてきた。

「すみません………。恋人の手料理は必須だと聞いて作ってみたのですが………やはり錬度が足らなかった様子で………。私のスキルではこんな物しか作れませんでした………」

 

 ―――いや、ウィセが作ってくれた事自体は嬉しいよ。

 ―――どれ? 意外と見た目だけと言う事も………。

 

「やめてくださいっ! SAOで黒焦げになった物体が美味しいなんて事あるわけないでしょう!? そんな物食べて、アナタのステータスに異常が発生したらどうするんですっ!?」

 

 ―――そんな物なんて言うなよ。ウィセが作ってくれた物なんだぞ?

 

「そんな物はそんな物です! それは捨てますから、前もってサヤに作ってもらった、こっちのを食べてください………」

 

 ―――ウィセが俺のために作ってくれた飯なら、なんであれ食べたかったんだけどな。

 

「………。ありがとうございます。でも、私は自分の彼氏に毒を盛る様な行いはしたくありませんよ?」

「せっかくの思い出です。やっぱり、綺麗な方が嬉しいじゃないですか?」

 

 ―――ウィセ………。

 ―――ウィセも俺との思い出を嬉しいと思ってくれるんだな?

 

「………」

「そんなの当然のことですよ。さあ、ふざけてないで朝食を―――」

 ウィセが操作を誤って朝食ではない物をオブジェクト化した。

 

 ―――なんだ? これは布? ハンカチ………にしては………?

 

「!? 取ろうとしないでくださいっ!!」

 

 ズドンッ!

 

 ―――ぎゃああぁぁぁぁぁぁ~~~~~っ!?

 

 

 

 

 お昼。迷宮区。

「はっ!」

 

 ズバンッ!

 

 パリーーンッ!!

 

「これで、あらかた倒しましたかね?」

 

 ―――………なあウィセ? 今日は非番なんだよな?

 

「はい? そうですけど………」

 

 ―――じゃあ、なんで俺達攻略してるんだよ?

 

「え………? いえ、やっぱり私達が行くならこの方が良いかと?」

 

 ―――確かに俺たちらしいけど、攻略とデートは違うだろう?

 

「そ、そんな事言われましても………」

「………」

「すみません。私もどうして良いのか解らなかったんです。それでつい、無難な選択肢を………」

「だって………、初めてだったんですよ? 私に友達が出来たの。信頼できる仲間達が出来た事も。それだけでも奇跡的な出来事だったのに………、あなたと、恋人になるなんて………私には、解りません」

 

 ―――気負わなくて良いよ。

 ―――俺だって、恋人なんて初めてで、ちょっと焦ってたのかもな?

 ―――お互い初めて同士で、何したらいいのか解らないだろうけど………。

 ―――それなら、一緒に探して行こうぜ?

 

「………。はい。あなたと一緒になら、私はずっと歩み続けられます」

 ウィセが差し出してきた手を握り返す。

 ウィセの頬がほんのり赤くなり、照れているのが解る。

「なんでしょう………? この胸にともるモノは………? この“何か”も、アナタは一緒に探してくださいますか?」

 この答えは、もちろん頷いて応える。

 

 

 

 

「今日は結局、私が振りまわしてしまいましたね………。せっかくの非番を攻略に浸かってしまって申し訳ありません」

 

 ―――いや、俺はウィセと一緒に居られた事が嬉しいんだ。

 

「本当に、歯の浮く様な言葉がどんどん出てくる人ですね? ………一体そのテクニックでどれだけの女性を騙したんですか?」

 

 ―――そんな事してないって!

 

「どうでしょう………? アナタは意外とキリトに似た雰囲気を感じるんですよね………」

「でも………、結局私はアナタを信じます」

「アナタは今、私の隣に立ってくれているのだから」

 

 ―――ウィセ………。

 

「それではそろそろ、お休みなさい。………なんでしたら、一緒に寝ますか?」

 

 ―――ッ!?

 

「さすがに冗談ですよ。そんなに慌てないでください」

 

 ―――え?

 

「え?」

 

 ―――いや、メッチャクチャ嬉しいんだけど………。

 

「え? あ、そんな………」

 

 ―――………ダメ、かな?

 

「………」

「だ、ダメです。そう言うのはまだ早いです」

 ウィセは、恥ずかしそうに視線を逸らしながら続ける。

「そう言うのは………現実に戻ってからです」

「だから、必ず一緒に帰りましょう? 現実の世界へ」

 




ネタバレ

13『とある魔術のインデックス』『涼宮ハルヒの憂鬱』
14『Angel Beats!』『武装連金』『Toらぶる』

15
ウィセは百合キャラらしいので、男性とのお付き合いでは冷静さが先立つ感じで描いてみました。
無名の恋人キャラは、ゲームの主人公なんでしょうねきっと。
あなたの願望を叶える恋人イベントを―――! なんてキャッチコピーで生まれて来たに違いありません。
もしくはアニメ版『アマガミ』『フォトカノ』『ヨスガノソラ』みたいなノリで、SAO女性メンバーと恋人フラグをルート分岐で選べるんでしょうね!
くっそっ! ゲーム化してみたい!


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その16~18

久しぶりの投稿。
時間がなかったので本編には手が進まん………。
まあ、それまで、皆さんも気休めになればと思います。


その16 待てお前等、これは本番じゃない!

 

 アインクラッド、とある階層の空中庭園。

 白い花が咲き誇る中心で、サスケとサヤが向き合っていた。

「さ、サヤ殿! 拙者、サヤ殿の事がすいれぇ(、、、、)―――ッ!!」

「“すいれ”?(今噛んだ?)」

「す、睡蓮の様に御美しい方と思ってござった!」

「色で言ったら何色ですか?(噛んだんじゃなかったのか?)」

「し、白で………っ!」

「………はっ! だ、だめだよ………! 僕はギルドのリーダーで、僕には責任が………!」

「構わぬ!」

「多くの人の恨みを買う事になるかもしれないんだよ!?」

「構わぬっ!」

「だ、だけど………」

「くどいっ!」

 サスケはサヤの肩に両手をお―――こうとして、本気で怯えられたので諦めて、大きく息を吸って思いのたけを叫んだ。

「自分! サヤ殿の事がすりれる(、、、、)っ!!」

 サスケの言葉が『好きです』だと言う事に気付くのに一瞬かかり、顔を赤くしたサヤが両頬に手を当てて照れながら返事をする。

「『私もです………』」

 互いに顔が近づき、目を瞑る。次第に距離は狭まり、互いの息遣いまで感じられるようになる。

 次の瞬間、唇が重なる一歩手前。そこで止まった二人は同時に離れて満面の笑みを向け合う。

「いや~~~~っ! サヤ殿! 告白の練習に付き合ってもらってすまなかったでござるよ~~~っ!」

「あはははっ! ちょっと僕もドキドキしちゃったよ~~っ! でもだいぶ良くなったよね~~! 最後で噛んじゃったのはいけなかったと思うけどさ!」

「ぐうっ!? そこは確かに痛恨事でござる………。まだまだ修練は必要と言う事でござろうか? ………サヤ殿! また頼めるでござろうか!?」

「別に良いけどなんで僕が相手なの?」

「なんとなく、サヤ殿に告白するのがとても自然な事のように思えたのでござる」(他意は無い)

「ふ~~~ん………?」(解ってない)

 

 

 

 空中庭園、サスケ達から離れた建物の影にて。

「殺す………殺す………殺す………殺す………殺す………殺す………」

「ふふ………っ、サスケったら、自分が何をしているのか解っているのかしら? 無関係な人間を巻き込んでいると言う事を教えてあげるべきよね?」

 偶然見ていたワスプとウィセが、尋常ではない殺気を放ち、サスケをPKしようと武器を構えていた。

「待てお前等! 落ちつけ! アレは練習だって聞こえただろっ! ほんと本気で落ち着いてくれっ!?」

 それを止めようとしてヌエが居合刀を構える。彼の足元には、既に止めようとしたマサ、タドコロ、ルナゼス、フウリン、ラビット、キリト、アスナが、死屍累々と倒れ伏していた………。

「「知った事か………っ!」」

「なんだこの状況はっ!? なんでこのギルドはいつもこんな騒動を勃発させまくるんだよっ!?」

 その後、ヌエ達がどうなったのかはさておき、サヤとサスケは、裏でこんなやり取りがあったなどとは一生知らぬままで過ごすのだった。

 

「ふ、不幸だ~~~~~~~~~っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その17 奥さん属性なのにどうして私には………っ!?

 

 ケイリュケイオンに、『使い道に困るちょっと変なアイテム』が大量に持ち込まれ、検分する事になった、ヌエ、スニー、キリト、ロア、ヴィオ。

「メンドくせぇ………。変なアイテムが急激に増えたな………なんでだ?」

「『読者達のあいんくらっど~コメディオン~』その13 マソップ発言を参照」

「そうかよ………」

 ヌエの台詞にロアが的確に返す。

 ヌエ、とあるアイテムを手に取り、試しに使ってみる。

「なんだ? ………ああ、コレ他人が別人に見えるメガネなのか………? どうせなら透視メガネとかの方が使いようもあっただろうに………」

「うふふっ、ヌエさん的には≪透視メガネ≫で女性の裸体を眺める事をご希望だったのかしら?」

 スニーの微笑みに対して、ヌエは何故かとびっきりの驚愕を得た。

(何故だ? 何故かスニーがすごく身近な誰かに思える………!? 逆らえない………っ!?)

 別のアイテムを調べていたヴィオが、とあるアイテムを手に取って苦笑する。

「『十分間増乳されるアイテム』? うぅ~~………、こんなのいりませんよ~~………、どうせなら胸を小さくするアイテムとかあればいいのに………」

 刹那、隣で何かのアイテムを使ってしまったキリトが、猛烈に反応。

「何考えてんだテメェはっ!? 巨乳キャラの胸をわざわざ小さくするだとっ!? 巨乳キャラから胸を取ったらただの“ハズレキャラ”だろうがっ!? 余計な事しようとしてんじゃねえよっ!? ………僕はおっぱいが好きなんだぁ~~~~~っ!!」

 思いっきり叫んだあと、静まり返る室内。

 次第にキリトの言葉を理解していったスニーが瞳に一杯の涙を浮かべる。

「私のおっぱいは、私のおっぱいは………、ケイリュケイオンの“ハズレおっぱい”だったんですね~~~~~っ!?」

 泣きながら外へと走り去るスニーに対し、慌ててロアが追いかける。

「俺は大好きだ~~~~~っ!!!」

 彼も、何かのアイテムを使ってしまった可能性はある。

 その後、アイテムによって性格改編が行われたメンバーは、全員ヌエの右手で元に戻ったが、全員、トラウマを抱えて数日引き籠る事になったとか………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その18 子供には自慢できないシーン

 

 SAOが始まる前のタドコロ。

 とある喫茶店で高校時代の友人を呼んで相談していた。

「よく来てくれた二人とも! お前等にどうしても聞いて欲しい案件があるんだ!」

 言われた男女の二人が答える。

「アンタが俺達に相談とは珍しい………、一体なんだよ?」

「言っとくけどさ? いくら幼馴染でも、お金の相談は乗らないわよ? 私」

「紗里奈さんに告白しようと思うっ!!」

「―――ッ!!」

「お~~い? しっかりしろ『幼馴染』? 完全に石になっとるぞ~~~?」

「な、なななな、なっ!? こ、ここ、コイツが、恋………っ!? か、叶うわけないじゃない? 何バカな相談しちゃってるの?」

「どうした? もう空のコーヒーカップを何故混ぜる? 『幼馴染』?」

「うっさい『日記』! ツッコミ入れながら他人の観察日記記録すんの止めろっ!」

「だって『ピエロ(タドコロの事)』の周りって面白いやつばっかりなんだもんよ?」

 相談役二名が二人だけで話しているのも無視してタドコロは続ける。

「俺は本気だ! 超本気だっ!! どのくらい本気かと言うと、この歳になって女の子のスカートめくりに挑戦してみても良いと思う程本気だ!」

「普通に犯罪で捕まるな………」

 『日記』男が呆れる隣で、『幼馴染』女がビシリッと指を突き差しタドコロへと告げる。

「どうせ口だけでしょっ!? 本当に本気なら、その証拠として『幼馴染』に一品奢ってみなさいよっ!!」

「すみません店員さん!! ここで一番高いスイートを彼女にっ!!!」

 ジャイアント・テラ・スイートパファ・クリーム・ア・ラモード。税込一万円が『幼馴染』の元に置かれた。

「………っ!!」

「『やり過ぎた』って顔するくらいなら言うなよ。『ピエロ』は本気になると上限ないんだから………」

「く………っ! これだけじゃ信用しないわよっ!? その本気を信じて欲しかったら、私を………、ね、熱烈に抱きしめてみなさいよ………っ?」←(途中から減速)

 タドコロは、『幼馴染』の後ろに回ると、肩に優しく手を置き、そして情熱的に強く抱きしめた。

「………~~~~~~っっっっ//////////!?!?!?」

「思考回路飛ぶの解ってんだからさせんなよ………」

 『日記』男は、呆れて突っ込みながら、しっかり愛用の日記手帳にその姿を描き込んでいく。

「さて! お前等に相談したいのは他でもないっ! どんな告白をすれば紗里奈さんに気に入ってもらえるかっ!? 告白の方法を相談しに来たんだっ!!」

 完全にゆで上がってグロッキー『幼馴染』を無視してタドコロは元の位置で再提案する。

「それは普通にしたんで良いんじゃないか?」

「普通に告白とかただのギャルゲ―じゃんっ!? エンターテイナーにそれは許されねえよっ!?」

「じゃあ、グラウンドに大きく『好きだ』の文字でも掘ってみる?」

「青春ラブコメでどうすんだよっ!? 俺らしい面白み0だろうがっ!?」

「そんなら歌はどうだ? バラードとかでラブソング歌えばそれなりに様にはなると思うぞ?」

「そこはせめてヒップホップだろうっ!? なんでお前はそんなに普通なんだよっ!?」

「さっきから俺、一つたりとも間違った事言ってないよねっ!? ツッコミとボケが逆になっている気がするのは俺の気の所為っ!?」

「エンターテイナーがツッコミなわけねえだろうぅっ!?」

「真面目に告白する気あるのかよっ!?」

 

 タドコロは、近くの女性店員のスカートを風の如くめくって見せた。しかも女性店員には見つからずに戻ってきてドヤ顔をして見せる。

 

「時々俺はお前が凄い奴に思えるよ………」

 机に突っ伏し悔しそうに呟く『日記』男。だが、その手はもちろん日記を取ることを止めていない。

「だったら私がとっておきの方法を教えてあげるわっ!!」

 復活した『幼馴染』女が、二本指でタドコロを指して告げる。

「これから世界の何処かにある伝説のランジェリーをゲットして、それを頭につけてコサックダンスしながら『好きだ』と叫ぶのよっ!!」

 稲妻が落ちた様にショックを受けたるタドコロ。

 彼はしばらく硬直した後、徐にサムズアップ。

「さすがわ俺だけ(、、)の『幼馴染』だっ!!」

「ぶっ!?」

 吹き出す『幼馴染』を無視して、タドコロは伝票を持って走り去っていく。

「ちょっくら世界の果てまで伝説のランジェリーを探してくるぜっ!! あとロシアにも行かねえとなっ!」

「いやおいっ!? ホパーク(コサックダンス)の本場はウクライナだぞっ!?」

「よし解ったっ!!」

 『日記』男のズレたツッコミを処理しないまま、タドコロは会計を済ませて立ち去って行った。

 残された『日記』男は、呆れた視線を『幼馴染』へと向ける。

「………好きなら好きと素直に言えば良いのでは? もう学生じゃないんだしさ?」

「う、ううう、うっさいっ! 私は別にあんな奴の事、嫌いでもないわよ! ただの幼馴染! 『幼馴染』なんだからっ!!」

「『ピエロ』も何故にこの解り易い奴を見落とすのかねぇ………?」

 呆れた溜息を吐きながら、やっぱり『日記』男は日記を書き続ける。

 

 

 そして半年後、頭に伝説のランジェリーを被って、見事なホパークを見せながら、氷を張った池の上を、ペキリッ、パキンッ、と、危なげな音を鳴らしながら前進し、紗里奈に告白するタドコロの姿があった。

「好きだ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!! 俺と付き合ってくれぇ~~~~~~~~~~~~っ!!!」

「はいっ♡」

「うっそん!? マジで良いのっ!?」

 即答だったと言う。

 




ネタバレ

16『境界線上のホライゾンⅡ』『とある魔術のインデックス』
17『とある魔術のインデックス』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』『クラナド』


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その19~21

なんか、一休みついでに書いてたら書けたので出します。
良いのか私? 本編は?

とりあえず19は未来編終了記念です。


その19 何気に未来編に辿り着くのは大変だった………。

 

 

 数多の戦いを潜り抜け、ついに50層のボスを倒す事に成功した≪ケイリュケイオン≫。

 その中でも特に、千切れかけた絆を強く結び直したワスプとサヤ。

「サヤさん、僕は過去を忘れる事はできない。無かった事にもできない。だから、もしかすると、またサヤさんに嫌われる様な事をしてしまうかもしれません………。それでも、やっぱり僕にはアナタしかいないから、これからも一緒に居てくれますか?」

「ワスプ………。………。………うん、いいよ。僕も、これから一杯我儘言うから、ワスプもずっと、僕に付き合ってくれる?」

「もちろんです」

 そうして二人は、長い長い時間を掛けて、ついに結ばれた………。

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 ≪バンダースナッチ≫との対決中、敵リーダーに殺され掛けるサヤをマサが助ける。

「守るって言ったじゃないか………!」

「マサ………!」

「俺が皆を………サヤを守る!!」

「―――っ!」

「俺が君の盾になる。だから君は―――!」

「………うん。僕がマサの矛になる!!」

 敵を退けた二人は向かい合い、やっと心を重ね合わせた。

「サヤ、俺が君を守るから、ずっと俺と居てくれる?」

「うん//////」

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 知りたくなかった事実を悟り、自ら命を投げ出そうと飛び降りかけるサヤ。

 そんなサヤを、カノンが腕を掴んで必死に引き止める。

「はなしてよ………カノン………」

「放さない………っ!」

「こんな事しても、僕はもう………、生きていられないんだよ?」

「それでも、放さない………っ!」

「お願いだから………っ! もう放してよっ!」

「放せるわけないでしょうっ!? ………一番好きな女の子が、目の前で死のうとしていて、なんで放っておく事が出来るって言うだっ!?」

「カノン………」

 カノンはサヤを引き寄せ、腕の中へと抱きしめる。

「もう自分の何もかもを捨てると言うなら! その残りは僕が貰うっ!! 残ったサヤちゃんの時間、僕が全部幸せにする! 生きていた事を………! 君が生まれて来てくれた事を、誰にも否定させたりなんかさせない!!」

「カノン………////////」

 やがてサヤは、カノンの胸に顔を埋め、その背中に手を回した。

 曖昧だった二人の時間が、やっと重なった。

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 薄暗い夜の街、人通りの無い路地裏で、アマヤとサヤの何度目かの密会。

「………僕もサヤも、リアルじゃ色々問題だらけだな」

「うん、そうだね………、僕は眼が見えないし、アマヤは耳が聞こえない………。だから―――」

 サヤは少し怯えながらアマヤの手に指先をくっつける。

「こうして、触れ合っていく事が、僕達には一番必要な事なんだよね?」

「………僕も、そう思う」

 アマヤも躊躇いがちに指を触れ合わせ、二人はぎこちなく指先だけで触れ合いを楽しむ。

 やがて、それだけで充分な気持ちが伝わったと言う様に、二人の顔は近付いて行った。

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

「ゼロ~~! はやくはやく~~!」

 丘を駆けるサヤの後を追って、ゼロは微笑を浮かべながら、ゆっくり追いかける。

「サヤさん、本当に良かったんですか? 自分のギルドを他人に譲ってしまって?」

「ん? 別に良いよ。君と一緒にいられるなら」

 無邪気な笑顔で、でも本当は少しだけ惜しむような表情で答えるサヤに、ゼロはこれ以上何も語るまいと決める。

「その変わり、ゼロは現実に戻ったら、ちゃんと立派なお医者様になってよ? それで、僕のこと治してもらうんだからね!」

「ええもちろん、愛するアナタの事を、必ず救ってあげますよ」

 そう言ってゼロは、無防備なサヤの腕を捕まえ、自分の方に引っ張り寄せる。

 不意を突かれたサヤは、バランスを崩し、ゆっくりとゼロの方に倒れて行く。

「だからこれからも、アナタの事を一人占めさせてくださいね?」

 そのままサヤは、ゼロに引き寄せられるまま、彼と唇を重ねる。

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 迷宮区を歩くアレンは、ずっと付いて来ているサヤへと振り返る。

「もう一月だぞ? やっぱり付いてくるのか?」

「うん。だって決めた事だし」

「ギルドを作るんじゃなかったのか?」

「結局、仲間を集められなかった僕の失敗だもん………。だけど、君だけは追い続けるよ」

「なんで?」

「君と僕は、絶対解り合えるって信じてるから。そしていつか、君が僕の事を見て欲しいから」

 そう言うサヤに対し、アレンは視線を逸らす。ずっとずっと、ただの一度も挫けず、どんなに傷ついても付いて来てくれる少女に、さすがの彼も根負けした。いや、受け入れたいと、望んだ。

「だったら隣を歩いてくれよ。後ろより………その方がずっと近いだろう?」

「………! うん!」

 笑顔になったサヤは、彼の隣へと走り寄る。

 そして二人は、まるでそうするのが自然であるかのように、指先だけで手を繋いだ。

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

「うふふっ! サ~ヤさん!」

 事務仕事中のサヤの後ろから抱き付くスニー。慌てるサヤ。

「わわわっ!? ス、スニー!? 驚かせないでよ………」

「ごめんなさい。でも、朝一番にサヤさんの匂いを嗅ぐのが(わたくし)の日課ですから」

「知らない人が聞いたら凄い意味だよね………?」

「ス~~~………、はい、今日もサヤさんの良い匂いです。死亡フラグ無しで何よりですわ♪」

「時々スニーがリアルに怖い………」

「うふふっ、サヤさん………」

「もう、スニー、いつまで抱き付いてるの?」

「いつまでも、時間が許す限りですわ………。だってアナタは、私の命その物なのですから………」

「うん………、僕はスニーの命だよ。だから、ずっと一緒に居てくれなきゃダメなんだよ?」

「はい、いつまでも一緒に。我が主」

 

「………くっ!」

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 とある絶景スポット候補で、落石のトラップに掛って逃げ回るサヤとフウリン。

「わわわっ! 本気で死んじゃう~~~っ!」

「あはははっ! コイツはすごいね~~~!」

「なんでリンちゃん余裕で笑ってるの~~!?」

 何とか罠を掻い潜る二人。

「ぜえ、ぜえ、リンちゃんの絶景スポット探しはなんでいつも命がけになるのかな?」

「なんでだろうねぇ~~? でも、おかげで沢山宝箱ゲットだよ! コレすごくない!?」

「こう言うのは“観光名所巡り”じゃなくて“トレジャーハント”って言うんだよっ!?」

「いつからそう言う感じになったんだろうね? サーヤがウチのギルドに異動してから?」

「まるで僕の所為みたいに言わないでよっ!?」

「まあまあ、成果もあったし、そろそろ帰ろう! ………あ、≪転移結晶≫忘れた?」

「ちょっとっ!? ≪転移結晶≫は自分が持っていくから僕は持たなくて良いって言ったのリンちゃんだよ!?」

「てへっ♪」

「可愛い顔してもダメ~~~! ………もう、リンちゃんは僕がいないと危なっかし過ぎるよ」

「サーヤがそれを言うか………!?」

「言う程なんです! ホントにもう………、目が離せないなぁ」

「あははっ! そんなに言うならさ? サーヤが私の嫁になってよ!」

「………。もう、そうしちゃおうかな?」

「え………、本気?//////」

「どうして欲しい?」

「あ、う………////// 嫁で………///////」

「はいはい。じゃあ現実に戻ったら、ちゃんと僕の事迎えに来てよ? 僕探しにいけないんだから?」

「お、オーケー………!///////」

 

「………。くぅ………っ!」

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 嘗て仲間だったクラディールを殺し、頽れるサヤを、キリトはきつく抱きしめ、唇を重ねる。

「俺の命は君の物だ! この先何があろうと、俺の命がある限り、俺が君を守り続けるっ!!」

「ホントに………? ホントに守ってくれる………?」

「ああ! ずっと守る! もう、君には何も背負わせない!」

「うん、うん………、ずっと一緒に居てよ? もう、僕を………()の事を、置いて行ったりしないでよ?」

「絶対しない! もう二度と置いて行ったりしないよ! ずっと俺の傍にいてくれ………っ!」

「約束………ですよ………」

 二人はもう一度キスをして、その後も感情が求めるままに抱き締め合った。

 

「………もう、誰も信じない。誰にも頼らない。私一人で………」

 

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 アインクラッド100層、ボス部屋前、一人の少女が門番であるかのように陣取っていた。

 真っ赤な城造りの≪紅玉宮≫に、全身赤と黒の戦衣を纏い、長い黒髪を無造作に垂れ流している少女は、覇気に満ちていながら、生気をまったく感じさせない。

 最早、このアインクラッドに≪攻略組≫と言われたプレイヤーは一人もいない。

 ラスボスとして城で待ち構えるヒースクリフの所にまで辿り着いた者も一人もいない。

 門前で、長き戦いに疲れ切った武士の様に座り込む、赤黒い少女が、その手で全て殺してしまった。

 その少女の元に、紫苑の着物を纏う少女が、ゆっくりと近づく。

 赤黒い少女はゆっくりと起き上り、紫苑の少女を確認する。

「来たねウィセ………。もう、このSAOを解放できる可能性は君一人だけだよ」

「サヤ………」

「でもね、君を行かせるわけにはいかない………。現実に戻れば、何もできない役立たずの僕に戻ってしまう………、そんなのは耐えられないから………」

 呟いたサヤは、ここに陣取る様になって、いつの間にか発現したユニークスキル≪連結槍≫の仕掛けを外し、その手に二槍を構える。

「どうしてこうなってしまったの? 繰り返せば繰り返す程、あなたと私の心はずれていく………、言葉も届かなくなって………」

 ウィセはその場に頽れると、涙を流して絶叫する。

「何度繰り返してもアナタを救えない(落とせない)っ!!」

「うをぉ~~~い? ウィセ~~~?」

「約束するわ! 絶対! 絶対アナタを救って(落として)見せる!!」

「ええ~~~~………?」

 ウィセは装備していたバックラーを回した。

 

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 私は繰り返す、繰り返す、繰り返す。何度でも………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その20 サチがキリトの妹になると………?

 

 ユイの遊びで、キリトとサチが兄妹設定を演じる事になった。

「キリト………、私妹とかよく解らないんだけど?」

「とりあえずサチが思う通りにやってみれば良いんじゃないか?」

「うん、それじゃあ………心が赴くままに………」

 めい一杯考えたサチは、まるで恥ずかしさを紛らわす様に叫ぶ。

「お兄さんっ!! 相談があります!」

「なんでキレ気味なんだよっ!?」

「あ、その前に手錠掛けてください」

「なんで手錠!?」

「そんなのお兄さんと二人っきりで部屋にいるなんて怖いからに決まってるじゃないですか?」

「だからって手錠は無いだろう!? 危機感持ってるウィセでも、部屋に招いておいて手錠掛けたりなんてしないぞっ!?」

「私と話してるのに、なんで他の女の子の話するんですか? それともその女がいけないんですか? じゃあ、殺しちゃいましょうか? その泥棒猫?」

「待て待てサチ! それは妹とか言う属性とは何か違うっ!? むしろ他人だろうっ!?」

「あれ? 設定間違えた? 何か正しい気がしたんだけど?」

「と、ともかくやり直そう………」

「うん、じゃあ………」

 サチはもう一度、自分は妹だと自己暗示を試みる。

「私! お兄ちゃんが大好き!」

「うっ! ま、まっすぐでついドキリとしてしまったが、これは確かに妹―――」

「だって聞いて! お兄ちゃんってね、カフェイン0なのよ!」

「―――かと思ったらやっぱり斜め方向だったぁ~~~!」

「ミネラルだって豊富だし! 健康にとっても良いのよ! 毎日飲んでも飽きがこない。これってまるで麦茶の様だと思わない?」

「って言うか麦茶その物だよね!?」

「そう! お兄ちゃんは麦茶の様な人なの! そして、麦茶はまるでお兄ちゃんなの!」

「戻ってこいサチ! お前一体どんな妹想像してんだよ!? やっぱりアレか!? このギルドか!? ≪ケイリュケイオン≫に係わったら皆おかしくなるのかっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その21 使い魔パニック

 

 とある階層で使い魔によるイベントが開催されると聞き、やってきたキリト。

「やっぱり、ビーストテイマーと言ったらシリカだろう?」

「はい! キリトさん! がんばるので見ていてくださいね!」

「シリカとピナなら優勝間違い無しだな」

「それはどうかなっ!?」

 突然ゼロとマサが現れた。

「僕らも新しい使い魔を手に入れたぞ!」

「この二人が使い魔!? 既に≪ケイリュケイオン≫のメンバーと言う時点でツッコミの準備をしてしまう!?」

「行くぞ!「試験召喚(サモン)!!」」

 ゼロの元にゼロソックリの首無しデュランが現れた。片手で頭を抱えないといけないので、手に持っている剣がやたらと重そうだ。

 マサの元には、妖怪≪迷ひ神≫が出現した。

「って、なんで召喚してるんだよ!? SAOにそんなシステムは無いだろうっ!?」

「それがあるんデスヨ。このコメディオンでは!」

 ケンが現れ、身体中から黒いオーラを放つ。そして、彼は声高に己が使い魔を呼ぶ。

「来いっ! ≪(くろがね)≫!!!」

「 闇より深き深淵に 祖は 科学が落とす暗き影 」

 何処からか意味深な声が響くと同時に、真っ黒な鎧タイプのゴーレムが、ケンの後ろから現れる。

「SAOの使い魔領域間違ってんだろ!? なんでフロアボス並みに巨大なモンスターを使い魔にしてるんだよ!?」

「ふっ、皆すごいじゃないか! 俺も負けてられないな!」

「マソップ!? って、こっちはなんでSAOなのに携帯持ってんだ!?」

「≪白虎≫!!!」

 巨大で白い虎が現れた。

「一番まともそうに見えるな………、携帯で呼び出してる時点でアレだが………」

「やれっ! ≪白虎≫!!」

 白い虎は雷撃を放ち、デュランに先制攻撃した。

「ぎゃああああぁぁぁぁっ! フィードバックがぁ~~~っ!」

 ゼロが倒れた。

「なんだよ今のっ!? やっぱりこの虎もツッコミどころかっ!?」

「あぁんっ!? 上等だこら! 私らの力思う存分思い知らせんぞぉピナ!?」

「ギュビイィィッ!!」

「え!? シリカ!?」

「ん? どうしたんですキリトさん?」

「きゅう?」

「え、えっと………」

(今、シリカが別人になった様な気が………! ああ、もうどうすりゃいいんだよっ!? ≪ケイリュケイオン≫は変態ばっかか~~~っ!?)

 苦悩するキリトの背後で、滅多に御目にかかれない使い魔バトルが繰り広げられている。

 




ネタバレ

19『魔法少女まどか★マギカ』
20『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』『絶対防衛レヴィアタン(たき火劇場)』
21『バカテス』『アスラクライン』『DEVIL SURVIVOR 2』『アクセル・ワールド』


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その22~24

その22 大和撫子(サヤ様)七変化

 

「ライラです! 突然ですけど、サヤちんにコスプレさせたくなりました!」

「ちょっと、いきなり何始めようとしてるんですかっ!?」

「俺がここに居る理由はツッコミ役として定着しているからなのか?」

「ウィセさんとキリトっちの反応無視して猫耳カチューシャを装着!」

「あ、サヤっ!」

 猫耳カチューシャを付けた瞬間、サヤの髪が真っ白に変色した。

 

「ああん? にゃんだお前等? オレ様を呼び出して一体にゃんのつもりにゃ?」

 

「「「………。性格まで変貌っ!?」」」

「猫キャラは私と被るからダメっ!! 犬耳に変更!」

「「そんな理由で―――っ!?」」

 犬耳装着サヤ。髪がピンク色に変色。

 

「なんでしょう? 突然ボール遊びがしたくなってきました~~♪」

 

「突然可愛らしくなりましたね?」

「人畜無害なのは元々変わらないにゃ」

「キリト~~~! 遊びましょう~~!」

「え? えっと………お手?」←(思わず)

「はい♪」←(抵抗なく)

「おかわり………」

「はい♪」

「サヤ、イイ子イイ子~♪」

「なんでしょう~~? これだけの事なのにとっても嬉しいです~~~♪」

「とりあえずキリトを叩きのめし、ますっ!!」

 

 ゴギャアッ!

 

「ぐほ………っ!?」

「なんか面白いので次はメガネにゃ!」

 メガネ装着サヤ。髪が黒に戻る。

 

「ケアレスミスって憧れる」

 

「「サヤの発言として最もおかしいっ!?」」

「面白いのでトントン行くにゃ!」

 サチがいつも頭につけているメイドカチューシャを装着。

 

「私も身籠りたいです~~~♪」

 

「「ぶふぅっ!?」」

「危険な発言出てきたにゃ!?」

「キリトが間違いを起こす前に別のに交換です! はいサヤ! こっちと交換です!」

 丸帽子を装着すると、髪が赤みを帯びた。

 

「ラ~ララ~~♪ ラ~ララ~~♪」

 

「急に歌い始めたな?」

「あ、今キリト、私の事『綺麗な声だ』って思ってくれたね?」

「なんで解ったっ!?」

「ウィセったら………、『サヤは何をしても基本可愛い子ですね』だなんて………」

「ふ、ふえぇっ!?」

「あ、ライラはそんな二人を見てて本当に楽しいんだね。でもちょっと私に嫉妬してる?」

「なんか心読まれ始めたにゃっ!? 変更変更!」

 普通の赤いカチューシャを装着。髪が栗色に変色。背中に羽付きバックも出現する。

 

「うぐぅ………、こんなにキャラをコロコロ変えられると僕も疲れちゃうよ」

 

(((あ、やべえ………、これ普通にサヤっぽい………)))

「変更しますにゃ!」

 何故か女子高生制服。

 

「ちゃらら、ら~~ん♪ ちゃらら、ら~~ん♪ はい! 今日の夕飯は………ニラ玉です!」

 

「私のキャラ付けに対していい度胸してるにゃ? サヤちん?」

「解りました! 私、犬さんは止めて猫さんになります!」

「サヤが何を言っているのか俺には解らない」

「干支じゃないですか? サヤは戌年じゃなかったと思うんですが………?」

「ほい次!」

 機械的な耳アンテナと箒を持たされた。

 

「はわわ~!? きょうすけさ~~ん!」

 

「ダウトッ!!」

「どうしたウィセ ッ!?」

「サヤは人間じゃないといけないと言う、私の本能がこれを否定してるんですっ!?」

「サヤちんは人間止めてないにゃよ?」

「ともかく変更!」

 メガネ+エルフ耳。髪が緑色に変色。

 

「こんにちわ、私セレス・ルーブ―――」

 お辞儀してメガネがずれた。

「はわわっ!? メガネメガネ~~!?」

 

「アウトだっ!!」

「どうしたんですキリトッ!?」

「このネタを解ってしまうと、『ハーメルン』から追い出される気がするっ!!」

「じゃあ変更にゃ」

 髪を炎髪に、瞳を灼眼にしてみた。

 

「うるさいうるさいうるさいっ!」

 

「「初代ドラマCDッ!?」」

「どうしたにゃ二人とも?」

「このネタを解る人がいませんっ! 読者迷惑です!」

「解ったとしても『俺はこっち派じゃねえっ!』って批判殺到だぞっ!?」

「よく解らんにゃけどチェンジ」

 単純に、髪の毛をピンクに染めて、髪紐を解いた。

 

「不思議ミステリー~~~~~~っ♪」

 

「まずいっ! サヤが何処かにミステリーを探しに行こうとしているっ!?」

「いや、アレ単に、これ以上キャラ変えられたくなかったんじゃにゃい?」

「じゃあ、もうコスプレ終了にしてあげましょう」

 コスプレを全て排除した。

 

「あなたのハートにエンジェルビーム!」

 

「「「『天たま』っ!?」」」

 

「御後がよろしいようで♡」←(戻った)

 

 アナタはいくつ解りましたか?

 全部解ったアナタは『堀江』さんの究極ファンだ!

 ※注:ネタが悪いとか言わないで………。解ってるから………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その23 もしもシリーズ(スニーがアナタの恋人編)

 

「………さいな。………起きて………くだ………」

 枕元で誰かの声が聞こえる。

 彼女が起こしに来てくれたのだろうか?

「起きない様ですから、一発刺してみましょうか?」

 

 ―――!?

 

 ガバッ!

 

「あら? やっと目が覚めましたか? うふふっ♪ おはようございますわ♪」

 

 ―――お、おはようスニー………。今何しようとした?

 

「特別な事はなにもありませんでしたわ。ソードスキルで起こす画期的な方法を試そうかどうか迷っていただけですわよ♪」

 

 ―――起きて良かった………。

 

「では、早く着替えてしまいましょうね」

 

 ―――ああ、………スニー? なんでまだいるの?

 

「うふふっ、なんででしょう~~?(ニコニコッ」

 

 ―――き、着替えたいんだけど………?

 

「どうぞ♪」

 

 ―――そんなにマジマジと見られたら着替えにくい………!

 

「そうですか? それでは扉の向こうから覗いていますので、どうぞご存分にお着替えください♪」

 

 ―――見てる事には変わりないだろう!

 

「もうっ! なんですか? せっかく私(わたくし)が起こして差し上げたのに、恋人らしいお礼とかはないのですか? 彼女に着替えの一つくらい見られたからってなんですの? 羞恥心に悶える彼氏の顔を恍惚とした表情で眺めるくらいいじゃないですか!」

 

 ―――それが本音かっ!?

 ―――………。解った。恋人らしいお礼が欲しいんだな?

 

「あら? (わたくし)を満足させられる何かを思いついて―――ッ!?」

 

 ガバッ!

 

 いきなりスニーを抱き寄せるあなた。

 彼女の耳元でそっと囁く。

 

 ―――おはよう。起こしに来てくれてありがとう。

 

「~~~~~~ッ!!? ////////////」

「やぁ………っ! その………っ!? えと………っ!////////////」

「さ、先に下で待っていますわね!/////////////」

 

 余裕を失った緩み顔を、耳まで赤くしたスニー。

 慌てた様子で先に一階へと向かった。

 

 

 

 

 

「ま、まったく………! 私にあんな無礼を働くなんて! 私の彼氏でなかったらお仕置き物でしたわよ!///////」

 

 ―――解ったよ。それより飯にしよう。

 

「待ちなさい」

 

 ―――どうした?

 

「今日の朝食はパン一つです」

 

 ―――………。まあ、≪料理≫スキル取ったの、付き合い始めてからだもんな。

 

「そこで(わたくし)は一つ、試してみたい事がありますの?」

「愛情は料理の隠し味と言います。どのくらい効果があるのか、せっかくなので実証してみましょう? そうでなければパン一切れの(わび)しい朝食など堪えられませんもの♪」

 

 ―――………、別に良いけどね………。

 

「どうせですから勝負にしましょう。負けた方は勝った方の言う事を今日一日何でも聞くと言うのでどうでしょう? 断っても構いませんけど、その時は(わたくし)がアナタをウィセさん並みに冷ややかに見つめるだけですわよ♪」

 

 ―――よぉ~~しっ! お兄さん頑張っちゃうぞ~~っ!

 

「では、ルールとして、互いに拒むのは無しとしましょう。お互いパンを食べさせあって、より多くデレた方の負けですわよ」

「それでは私から………」

 スニーはパンを胸に抱いて、目を瞑り幸せそうに笑った。

 人肌で温めたパンに軽く口付けすると、それをアナタに向かって差し出してくる。

「私の愛情そのままですわ。私の肌と同じ柔らかさで、同じ温もりのパン、好きなだけアナタの口で味わって下さいまし♡」

 

 ―――ッ!

 

「うふふっ、どうですの♪ お味は?」

 

 ―――正直、堪らなかったんだが………。

 ―――なんでだろうな?

 ―――なんでかスニーがやると裏があるんじゃないかと疑ってしまった。

 

「ちょっ、ちょっと! それはあんまりですわよ! ………本当に愛情だけを込めましたのに/////////」

 

 ―――悪かったよ。

 ―――それじゃあ、今度は俺の番な。

 

 アナタはパンを一口サイズに千切ると、スニーの頬に片手を添え、優しくいつくしむ様に撫でながらパンを差し出す。

 

 ―――はい、あ~~ん。

 

「へぇ………っ!?///////」

「えっと………、あ………、ん………/////////」

「あ、あ~~ん………//////」

 

 パクッ、もぐもぐ………。

 

 ―――はい、もう一口?

 

 優しく顎を撫でながらもう一つ千切って差し出します。

「あ………っ!? あ~~~ん………っ!!/////////」

 抵抗しないと言う約束なので、耳まで顔を赤くしてもじもじと悶えるスニー。

 目を瞑って羞恥心を堪えながら一生懸命にパンを粗食する。

 

 ―――はい、もう一つ。

 

「も、もう結構ですわ………! もう、お腹と言いますか………胸が一杯なんですっ! 充分に立証されましたから!///////////」

 

 ―――抵抗しないの。はい、あ~~ん。

 

「はあぁ~~………っ! あ、あ~~~んぅ~~~………っ!!////////////////////」

 

 ―――はい、もう一つ。

 

 後ろに回り込み、片手でスニーの髪を弄びながら耳元で囁き、パンを食べさせてあげる。

「ふわぁぁ………っ! ふわああぁぁ~~~んっ!!//////////////」

 最早何も考えられないスニーは、されるがままにパンを食べ続けた。

 スニーがパンを食べ終わるのは、まだまだかかりそうだ。

 

 

 

 

 悪戯し過ぎてすっかりへそを曲げてしまったスニー。

 デート中で外泊していると言うのに、拗ねたようにプイッ、とそっぽを向いてしまっている。

 

 ―――そろそろ機嫌直してくれないか?

 

「知りません………っ!」

 そっぽを向いたまま許してくれないスニー。

 困り果てるアナタは、何か奢る事で許してもらう事にする。

「………? ………!」

「よろしいですか? 少し向こうを見ていてくださいます?」

「………、はい、もう良いですわよ?」

 振り向いたアナタの前で、店で売っていたスティックパンを咥えたスニーがいた。

「ん………っ」

 スニーはアナタにしな垂れかかり、口に咥えたスティックパンの先端をあなたへと差し出す。

 その目が「食べてくれたら許してあげます」と語っていた。

 

 ―――………ッ!

 ―――え、えっと………。

 ―――~~~っ!!

 

 彼女に許してもらうために、意を決したアナタは反対側を咥える。

 

 ―――ッ!?

 

 刹那、強烈な刺激が口内を覆い、味覚の全てを麻痺させた。

 

 ―――辛ぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!?

 

 辛さに悶えるあなたを、悪魔の微笑みを浮かべる少女が満足そうに見つめていた。

「うふふっ♪ 先程の不作法のお返しですわ♡」

 彼女の手にはエギル商店で作ってもらった特性(すぎる)香辛料をちらつかせていた。

「もちろん♪ まだまだ食べてくださいますわよね?」

 さらにアスナ(逆の意味で)特性調味料、サヤ制作実験中(失敗)調味料、ウィセ適当(に作らせた)調味料(?)、タカシ&ジャスの必殺調味料(圏内で毒化立証済み)を取り出して見せ、スティックパンを咥えるスニー。

 その笑みは、久々に見る小悪魔が如き可愛らしさ満面の笑みだった。

 

 

 

 

「はい、今日はお疲れさまでしたわ」

 

 ―――せっかくのデート、最後は殆どお仕置きレシピのフルコースだったんですけど?

 

「未練がましく思うのでしたら、今度からは御痛(おいた)が過ぎない様に心がけてくださいな」

 渋々承諾したアナタにスニーはとても満足そうな笑みを作った。

 しかし、普段からスニーにはやられてばかり。

 恋人として接している時にしか見せてくれないスニーの姿をもう少し見たいアナタ。

 ふと、約束を思い付いて提案してみる事にした。

 

 ―――スニー、あの時の約束、俺のお願い聞いてもらって良いよね?

 

「ふえ………っ? あ、約束………ですわね?」

 

 ―――今日は一緒に添い寝してくれない?

 

「ふぇ? ふええええ~~~~~~~~っ!? /////////」

「い、いい、一体何を言い出すのですか!? /////////」

 

 ―――何でも言う事を聞く約束でしょ?

 

「そ、そうですけど………!」

「………///////」

「そ、添い寝だけですわよ………? ///////」

 

 

 

 スニーと共にベットに入り就寝を迎える。

 真っ暗な部屋の中でも向き合ったスニーの顔が赤くなっているのが解る程、互いの距離は近い。

「へ、変な事をしてはいけませんわよ?」

 

 ―――触るのもダメ?

 

「ダ、ダメですわ! 絶対、変なところを御触りになるでしょう!?」

 

 ―――って言うか、目の前に好きな女の子が一緒に寝てるわけだし。

 ―――これで手を出さない方が苦しいわけで?

 

「では、そのまま苦しんでいらしてくださいっ! そもそも添い寝は許しましたけど、(しとね)まで許したつもりはありませんわよ!」

 

 ―――ここまで来たらあまり変わらない気がするんだけど?

 

「この距離でも短剣装備ならソードスキルを打てるかもしれませんわね? 口の減らない殿方に見舞ってみるのも上等でしょうか?」

 

 ―――ごめんなさい。それは勘弁してください。

 ―――でも、せっかく添い寝してるんだから少しくらいは良いだろ?

 

「まだ言いますの!?」

 

 ―――そうじゃなくて、手を繋ぐとか、肩を寄せ合うとか、そのくらいって事。

 

「そ、それもダメですわよ! ………少し許したら、どうせ調子に乗るのでしょう?」

 

 ―――スニーは俺と一緒はそんなに嫌?

 

「え?」

 

 ―――俺は好きな女の子と一緒に居たいし、触れ合いたいって思ってるよ?

 ―――スニーは俺と触れ合うのは嫌なのかな?

 

「………」

「………嫌なんて、そんな事………」

「あるわけがありませんわ///////」

 スニーは柔らかく微笑むとアナタの胸に顔を埋めます。

「本当は恥ずかしくて、心臓がドキドキ言いっぱなしで、一緒に居るだけでも緊張して、全然寝られる気がしませんでしたのよ? ………でも、こうなってしまうと、逆にくっつき合ってる方が安心できる気もしますわね」

 二人、温もりを確かめ合いながら、この上ない安心感の中、眠りに入る。

「うふふっ、お休みなさいませ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その24 お金が動く世界ではありそうだ………

 

 

 SAOでリズベット、テイトク、アスパラの三人と言えば、強力な武器を創り出す有名な鍛冶屋だ。

 しかし、キリトやヴァジュロンと言った鉱石収穫を手伝ってくれる常連を持つリズ。

 ユニークスキルにより、あらゆるレア装備を創り出すテイトク。

 この二人に対し、アスパラの製作する武器は、今一ピンとこない代物が多い。

 アスパラはライバル心を刺激され、新たな境地に達しようとしていた。

 

 

 

「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

 

 気付けば彼の口から言葉が漏れ始めていた。

 

「―――Steel is my body,(血潮は鉄で) and fire is my(心は硝子) blood」

 

 一心に槌を振るい続けながら、彼はライバル達に勝つ事だけを願った。

 

「―――I have created over a(幾たびの戦場を越えて不敗) thousand blades.

     Unaware of loss.(ただの一度の敗走もなく、)

     Nor aware of gain(ただの一度の勝利もなし)

 

 戦闘用職を全て廃し、ただ鍛冶屋としてのみに費やした人生。

 それが無駄であった筈がない。無駄になど絶対にさせない。

 

「―――Withstood pain to create(担い手はここに孤り。) weapons.

      waiting for one's(剣の丘で鉄を鍛つ) arrival」

 

 彼の執念に応える様に、炉の炎が、振り下ろす槌が、打ち付けられる鉱石が、ありえない輝きを放ち、その形を変えていく。

 

「――I have noregrets.This is the(ならば、わが生涯に意味は不要ず) only path」

 

 SAOの世界観さえ塗り替える如く、彼は誰も辿り着けない境地へと達した。

 

「―――My whole life was“unlimited bl(この体は、無限の剣で出来ていた)」」

 

 ついに完成した剣は≪エリュシデータ≫≪ダークリパルサー≫≪マルミアドワーズ≫≪イノセントルーラー≫などと言った贋作ばかりだ。

「だがな、偽物が本物に劣るなんて道理はないんだ」

 アスパラは立ち上がると、それらをストレージに仕舞い、戦場へと向かう。

「行くぞ強敵(とも)よ! 武器の貯蔵は充分か!」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「―――っと言うわけで、今後SAOでも“著作権侵害”を適応しようと言う話に相成りました」

 ワスプが手元の資料、SAOルール要請願書を読み上げると、対応していたウィセとクロンが苦い笑みを作る。

「まあ………、さすがにこれは………」

「一つ残らず贋作で、オリジナル0ですからね………」

「ユニーク装備持ちにとっては不愉快でしょうし………」

「レア度も失われて、他の鍛冶職人にとっても『代表作品』などの宣伝対象が無くなっちゃいますしね?」

「そう言うわけでアスパラ? これからは著作権を当人達に確認してから仕事をしてください」

 

「なんでさ~~~~~~~~~~っっっ!!」

 




その22ネタばらし
1・『化物語』
2・『DOG DAYS』
3・『化物語』
4・『ゼロの使い魔』
5・『D.C.』
6・『カノン』
7・『フルーツバスケット』
8・『To Heart』
9・『パステルチャイム』
10・『灼眼のシャナ』
11・『魔探偵ロキ』
12・『天使の卵』(ラジオ)

その24
『Fate』










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その25~29

何と四本立て!
………なのだが………25はいらなかったかもしれない………。


その25 もしもシリーズ。男女逆転(タドコロ、マサ、ケン)

 

タドコロ「いきなりだが、男女性転換ネタだってよ………」

 

マサ「ああ、今、私達のキャラが男女逆転した状態なんですね?」

 

ケン「ミタイ?」

 

タドコロ「なんであたしらがこんな事を………、って言うか絵がないから解りにく過ぎるだろう? この企画は失敗してるって?」

 

マサ「私もそんな気がしますね。性格が多少変わってはいるんですけど………、はっきり言って解らない………」

 

タドコロ「あたしの身体がポニーテールの高校生っぽいのなんて、男女ネタで人気が出てしまったある人をモデルにしているとしか思えん。中の人繋がりだからか?」

 

マサ「どうなのかなぁ~? 私も白い騎士甲冑の美少女設定にしてもらってるんだけど………。こっちは元ネタないよね? おかげで逆に解り難い………」

 

ケン「シッパイ………?」

 

マサ「そんな気がします」

 

タドコロ「ケンは逆に何処にでもいそうな普通の女子高生になったな? おかげで逆に表現しずらい………」

 

マサ「辛うじてメガネする様になったと言うところですか? それもあまり目立ちませんけど………」

 

ケン「フツウ?」

 

タドコロ「そうだよ。はあ………、キャラもそんなに変わらねえし、この企画は完全に失敗だろう?」

 

マサ「そうかもですね………。………? ………!」

マサ(タドコロさんが一度もボケないッ!? おかげで話のテンポが上手くいかないっ! こんな所に凄い変化があったっ!?)

 

ケン「………?」

 

マサ(ケンも口数が極端に少なくなって、表情変化も少ないから、今みたいにちょっと首を傾げたりとかの仕草がとっても可愛く映る!? 小さいながらもしっかり変化があった!?)

マサ(変化してないのは私だけだったんですね………)

 

≪モンスターが現れた≫

 

マサ「っ! させません! 私の仲間は………私が護って見せます!! やあぁ~~~~!」

 

 一切休まぬソードスキルの連射。防御なんて完全に忘れている。ともかく怒涛の攻撃を仕掛けまくっている。

 

タドコロ(この子、女の子になると言葉の割に結構攻撃的になったな………)

 

ケン「エセ平和主義?」

 

タドコロ「ああ、それだな」

 

マサ「酷いですっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その26 ケリュケイオンは不滅だ!

 

 75層、フロアボス、ボス撃破後、ヒースクリフの正体が判明!

「よくぞ私の正体を見破ったキリトくん。褒美として、今ここで一対一で戦う事を許そうじゃないか」

「望むところだヒースクリフッ! 必ず勝って、皆と一緒に現実に戻って見せる!」

 

「キリト~~~!」(クライン)

「キリトくん!」(アスナ)

「キリト様………♡」(サヤ)

「ちょ………っ!? キリト………ッ?」(ウィセ)

「おっしゃぁイケイケキリトーーーッ!!」(ライラ)

「替れっ! 替ってくれっ! こんな面白い場面、俺に譲ってくれっ! お願いしますっ!」(ナッツ)

「ジュースはいらんかい~~~っ? メニュー画面でお金と交換してやるよ~~?」(ジャス)

「一つ貰おう」(タケ)

「あっ、俺も」(クライン)

「目薬ってあります? 大事な場面なんで」(アスナ)

「まいどあり~~♪」(ジャス)

 

「「お前等、動けないからって観戦モード入ってんじゃねえっ!!」」

 倒れる皆の熱い声援に、二人は心の内から叫び声を上げた。

 それはもう、悲痛な程に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その27 君の命は貴重なんだ。

 

 ラストバトルの激戦が続く中、キリトの最後の技、≪ジ・イクリプス≫が失敗。ヒースクリフの最後の一撃を受けてしまう。

「そ、そんなっ!? キリトが………!? なんでだっ!?」(テイトク)

「俺達は………っ! 大切な奴を失っちまった………っ!?」(コウ)

「私が悪かったですっ! 戻ってきてくださいキリトっ!」(ウィセ)

「キリトくんっ! ダメだよ………っ!?」(アスナ)

「戻って来いっ! キリト~~~~っ!!」(マソップ)

「アナタが居ないと、この世界に―――ッ!」(サチ)

 

「「「貴重なツッコミ役が居なくなるっ!?」」」

 

「うるせぇーよッッッ!!! いい加減にしないと俺もぶっ壊れるぞっ!!」

 キリトは無傷で復活した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その28 桐ケ谷和人は神殺しである。

 

 キリト復活。

 関心顔のヒースクリフ。

「一体何をしたんだい? そんな設定は無かったはずだが?」

「ふっ………、どうやら、ついに俺にも来ちまったみたいだな………」

「なるほど。そう言う事か………。ならば今のが君の権能だな!」

「ああっ! 『御羊』を使って冥府から舞い戻って来たのさ! 来ちゃったのさっ!!」

「よかろうキリトくん! こうなったら私もとことん付き合おうではないかっ! これが私の真の力だっ!」

 ヒースクリフの姿が激変。

 西洋龍の様に長い首と尻尾、大きな翼を持ち、鱗を持た無いツルツルの肌をしたモンスターに変身した。

 

「「「「「「「「「「ル○アッッッ!?!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」(傍観者皆さん)

 

「随分でかくなったじゃねえか! それなら俺も手加減無用だなっ!」

 剣を捨てたキリトが両手を空に掲げて聖句を述べる。

「背を砕き、骨、髪、脳髄を抉り出せっ! 鋭き近寄り難き者よ! 契約を破りし罪科に、鉄槌を下せっ!!」

 何もない空間が割れ、突然現れた巨大な≪猪≫が、ルギ○となったヒースクリフ目がけて突進する。

『甘いぞキリトくんッ!!』

 ヒースクリフは口からモンスター限定スキル≪エアロブラスト≫を放射する。

 ≪猪≫は一撃で吹き飛ばされてしまう。

「くそっ! まずはそのでかくなった体をどうにかしないといけないようだなっ!?」

 キリトは≪猪≫を引っ込めると、新たな権能を発動する。

「我は言霊の技を持って世に義を顕す! これらの呪言は、雄弁にして強力! 強力にして勝利を齎し、強力にして癒しを齎す! 我は神魔調伏の剣を持って悪を捌く! 悪なる者、義なる我を破るにあたわず! 退け! ○ギアッッ!!」

 キリトの手に黄金の剣が握られ、その背には幾千幾万の黄金の剣が輝き始める。キリトの第十の化身≪戦士≫の力だ。

『言霊の剣かッ!? 面白ッ!! 行くぞキリトくん!』

「ヒースクリフ~~~~~~ッッ!!」

 

「「「「「「「「「「貴重なツッコミ役が―――ッ!!!???」」」」」」」」」」(傍観者全員)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その29 困った時は彼女にお任せ

 

 ヒースクリフとキリトの戦いが

「おい、どうすんだよ? キリトがああなったら色々アウトだろ?」(タドコロ)

「正直、キリト様のツッコミ無しでは生きていけない………」(サヤ)

「私はいつの間にサヤがキリトを『様』呼びする様になったのかすごく気になるの。気になるの。気になるのよっ!?」(ウィセ)

「これはもう………、バックラー回してもらうしかないんじゃないですか?」(スニー)

「正直、私もやり過ぎた感があります。反省してます」(アスナ)

「 私も、自分の口で喋った場面ないし、やり直しを要求する 」(ラビット)

「おっぱい揉むまでSAOを終わったりなんてできないしな(キリッ」(マソップ)

「死」(セリア)

 

 ドスンッ!!

 

「ぶはっ!?」(マソップ)

 

 パリン………ッ!

 

「アア、マソップ………」(ケン)

「ついに、この作品で犠牲者が………っ!?」(マサ)

「色々ダメ過ぎなんじゃないかな? 本気でヤバいよこれ………?」(クローバー)

「チェンジで」(ゼロ)

「俺やってもいいけど?」(ルナゼス)

「たぶん、ここなら俺もやれる」(テイトク)

「今までの思い出がなんか勿体無い気はするがな………」(ヴァジュロン)

「諦めも必要さ」(ゼニガタ)

「くそっ! ここなら何気ない顔で出る事も出来ていたのに………っ!」(エンド)

「なぁ~? 居ても全然文句言われなかったのになぁ~?」(レン)

「忘れられてるんじゃないかとヒヤヒヤしてるくらいだったしね………」(バン)

「ホント何でもアリだなここは………」(アルク)

 

「まだだっ! まだ私は終わっていないぞキリトくんっ!」

「コイツで最後だ! 我が元に来たれ! 勝利のために! 不死なる太陽よ! 我に輝ける駿馬を使わしたまえ!霊妙にして俊足なる馬よ! 汝の主たる降臨を解く運べっっ!!」

 

「ちょーっちょーっ!? マジでまずいって! キリトの奴アインクラッドごと破壊する気満々ですよっ!?」(アルカナ)

「いやっ!? むしろ俺たち事だっ!!」(クライン)

「キリトの奴、この前、イカサマしてまきあげた事、まだ根にもってやがんのか!?」(エギル)

「それ、普通に根に持たれますよっ!?」(クロン)

「ウィセ! バックラー回転回転!」(サチ)

「俺、これが終わったら彼女と結婚するんだ………」(キャスト)

「無理矢理死亡フラグ立てんじゃねえよっ!? ウィセ~~~~ッ!!」(ナッツ)

「パンツ見せてください!」(マソップ)

「死」(セリア)

「ぐは………っ!?」(マソップ)

「まだ生きてたんですかこの人っ!?」(カノン)

「も、もう太陽来てるってっ!?」(ワスプ)

「ああ~~………、はいはい。どうせまたサヤは私以外のところですよ。何度だってやり直しますよ………」(ウィセ)

「もう、ウィセっちよりも、サーヤが円環の理に見えてきたよ………!」(フウリン)

「それではみなさんご一緒に………」(シン)

 

 カチッ、カシャンッ。ギュイイィーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネタバレ

その28『カンピオーネ』『ポケットモンスター』
その29『まどか☆マギカ』




作者から
ラストバトルネタがこんなに早く挟まれても問題無い。安心の『まどマギ』ネタ。
これに頼りすぎたらいつか火傷しそうな気がしてきました。
それにしてもコメディオン………、一体何処に向かっているのか、作者自身にも解らなくなってきました。
コメディオンの明日はいつのどこだっ!?


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その30~33

今回はヴィオを主役にした学園モノにしてみました。


 その30 ヴィオの愛倉学園 ~遅刻寸前の曲がり角~

 

「きゃうぅ~~~~!? 遅刻遅刻~~~っ!?」

 私はヴィオ。今日から愛倉学園の生徒になる転入生です。

 でも、転入初日にどうやら遅刻してしまったらしいです!

 おかしいなぁ? 起きた時はかなり余裕があると思ってたのにぃ~~!?

「でも、こうしてパンを咥えて全力疾走とか、前時代的な事をやってると、曲がり角とかで素敵な出会いなんて起きたり―――」

 

 ドガンッ!

 

 ぶつかりました。

「きゃあああぁぁぁぁ~~~~~っ!? 女の子が車に轢かれたぁ~~~っ!?」

 私の運命のお相手は轢き逃げ交通事故でした。

 

 くるっ、………スタッ。

 

 世の中、上手い事いかないよね~~………。

「轢かれた女の子が、空中で体勢を立て直して見事に着地したぞ~~~っ!?」

「すげぇっ! 無傷だっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その31 ヴィオの愛倉学園 ~まだ慌てる様な時間じゃない~

 

「ん?」

 着地した時、後ろに気配を感じ、振り返ってみると、赤い顔をした男の子が、気まずそうにこっちを見てました。

 わっ! 絶対着地する時、スカートの中見られた!?

 慌ててスカートを抑えて振り返ると、男の子は優しそうに笑います。

「女の子がそんな格好ではしゃぐのはいけないと思いますよ?」

「あ、あわわぁ………!」

「大丈夫です。俺も見えなかったから、セーフです」

 そう、優しく笑ってくれるイケメンさん。私がホッとしようとしたんだけど―――、

「おっ? マサ! 乳のデカイ白パン娘と何話してんだよ~~?」

「きゃああぁぁぁ~~~~!?」

「………、ナッツ………」

「よし、白パン娘、俺の挟め」

「なんですかこのストレートすぎる変態さんは~~~~~っ!!」

「ごめん………、俺の友達。大丈夫。有害な奴だけど、何かしようとしたら俺が君を守るから」

 そう言いながらマサさんがナッツさんをしっかり捕まえます。ナッツさん、なんかされるがままなんですが、本当に仲が良いみたい?

「って、遅刻寸前でした!? 急がないと先生に怒られちゃいます!」

「は? いやまだ全然余裕だろ?」

「何言ってるんですかそんな事………っ! ………。あ~~~~~っ!? 私の腕時計止まってました~~~~っ!?」

「「なんで携帯持ってないんだよ………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その32 ヴィオの愛倉学園 ~ジャンル~

 

 慌てる必要がないと知って落ち着いた私は、転入生である事を伝え、お二人と一緒に登校です。

 それにしてもマサさん、とっても優しくて、まるでナイトの様にさり気無く私の事を守ってくれるイケメンさんで、ナッツさんは無神経だけどとっても親切で博識で、ワイルド系のイケメンさんです。

 こんな二人に転入早々挟まれてしまっている私は、注目の的になっています。恥ずかしい………。

「おはようございます。おや? そちらの方は誰ですか?」

 三人で歩いていたら、今度はメガネを掛けた、Sっ気のありそうな笑みを浮かべたイケメンさん、ゼロさんが―――!

「おいっ、お前等集まって邪魔だ………」

 クールな事を言っておいて、さり気無く私を横切る車から庇ってくれたロアさんと、次々とイケメンさんが集合していきます!? わ、私、こんなイケメンさんに囲まれ………っ! この先の学園生活! 乙女ゲーの主人公ルートだったんでしょうかっ!?

「ところでヴィオさん? アナタの制服赤いですけど………? 愛倉学園が、普通科の≪K.K.O(ケイリュケイオン)≫とエリート科の女学院≪K.O.B(血盟騎士団)≫の二つに分かれてるのは知ってますか?」

「えっ!? あれぇっ!?」

 私、≪K.O.B≫の生徒でした。

 女子しか、いません………。

 乙女ゲーの、主人公………?

 は、恥ずかしいぃ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その33 ヴィオの愛倉学園 ~真ヒロイン~

 

 分かれ道でイケメン四人とお別れです。

 なんで私はあんなところでイケメンさんに出会ってしまったのか?

 おかげで恥ずかしい目に遭いました。

 はっ!? もしかしてこれが最初の出会いで、再び出会い、乙女ゲーの運命にいざなわれると言う事でしょうか!?

 などと考え振り返ってみると………。

 

「おっはよう~~~! 四人とも今日も屯ってるね~~!」

「「「「フウリン」」」さん」

 突然現れたフウリンと呼ばれた天真爛漫少女に、マサさんもナッツくんもゼロさんもロアさんも、女の子にしか解らない微妙な変化で、皆嬉しそうな笑顔になりました。

「おはようフウリン。今日も元気いっぱいだね?」

「もっちろんだよ! マサん! 私はいつも元気なのです!」

「はっ! その癖落ち着きの無い奴だからな? またどっかで転んで怪我でもしてたんじゃねえだろうな?」

「ナッツん酷い! 私はそんなにドジっ子属性は無いので―――あ痛ッ!?」

「さすがフウリンさん。言われた傍から校門の柱にぶつかるなんてめったにできません。そこが可愛らしいのですけどね?」

「不本意な褒められ方なんですけど? ゼロ~~!」

「またこけるぞ」

「わわっ!? ………子供じゃないんだから手なんか繋がなくても平気だよ? ロア?」

 

「「「 (おのれロア、上手くやりやがったな………!) 」」」

 

「………ふっ(ニヤリ」

「?」

 

 ………。

 うん、解った。乙女ゲーの主人公は彼女だ………。

 




学園の敷地内に入る前からこんな状況のヴィオです。


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その34~36

愛倉学園の続編です。


 その34 ヴィオの愛倉学園 ~最初の友達~

 

「―――っと言うわけで転入生のヴィオさんです。皆仲良く―――しなければ市中引き回しですよ?」

 

「「「「「「「「「「は、はいっ! 全力で仲良くさせていただきますっ!!!」」」」」」」」」」

 

 担任教師のシナド先生のユニークなご紹介を貰って、無事自分のクラスに辿り着いた私です。とりあえず近くの席の子に御挨拶です。

 まずは右隣りに御挨拶しました。

「よろしくお願いします」

「ええ、よろしくね。私はアルクよ」

 次に左隣に御挨拶。

「よろしく! 私はリズベットよ」

 お二人とも明るい性格でとても頼り甲斐がありそうです。最初の友達としては良い人達に巡り合えたと思います!

「それではHRを終わりますね。………あ~~、アルクさんとリズベットさんは、再々々々々々々補習をしてもらいます。これに落ちたら市中引き回し―――」

 

 ダダッ!! ←(同時に席を飛び出す二人)

 

 バシャンッ!! ←(窓を破って逃走)※ここは二階

 

「淑女ならもっと上品に逃げなさいっ!! そして私の≪馬術スキル≫から逃げられると思っているのですか~~~っ!?」

 突然現れた馬に乗って教室を飛び出し、二人を追いかけるシナド先生。

 私の最初の友達は、エリート学校の問題児だったようです。私の学園生活、この先大丈夫なんでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 その35 ヴィオの愛倉学園 ~その地雷は私が踏んだわけじゃないですっ!?~

 

「うふふっ、私はスニーと申します。委員長をしていますので、よろしくしてくださいましね♪」

 ふわふわ髪のスニーさんは、とってもお嬢様っぽいです! この学園に見合う本物のお嬢様に巡り会っちゃいました!?

「あら? ヴィオさん、タイが曲がってますわよ?」

 そう言いながらさり気無く私の胸元に手を伸ばし、タイを直してくれるスニーさん! まさか私は、乙女ゲーじゃなくて百合ゲーの世界に入り込んだんでしょうかっ!?

 

 ふにょぉぉ~~んっ! ←(意図していないのに当たってくる胸の柔らかさ)

 

「………♪」←(笑顔で硬直するスニー)

「………スニーさん?」

「………、デカイ事が美少女の必須条件ではございませんわよ♪」

 

 ギリギリ………ッ!

 

「ああ………っ!? く、苦しい………っ!? ちょっ、ちょっとスニーさん………っ!? タイをそんなに引っ張ったら首が締まって………っっ!?」

 よく解りませんが、“地雷”が“起爆”したみたいです。理不尽です………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その36 ヴィオの愛倉学園 ~私はこの為に生徒会長になった!~

 

 全校集会。体育館で新生徒会長になった三年生が壇上に上がって御挨拶しています。

「皆さんおはようございます! 本日生徒会長に当選しました、アスナです! 投票率100%の栄誉と共に生徒会長になれた事、皆様への感謝の気持ちが止まりません!」

 100%!? 本当にすごいですっ!? アスナ生徒会長はすごい人望がある人なんですねっ! 見た目も美人で、成績も良いらしいですし、学園を代表する優秀な生徒会長さんですっ!

「付きましてはさっそく、皆様に約束していました校則の変更をお知らせしたいと思います! まず、教室のガラスを強化ガラスに変更し、生徒の脱走を強く罰する物とします!」

 さっそく、私の友達二人がショックを受けてます。ごめんなさい。友人としてごめんなさい。

「罰則の市中引き回しに、キャラバンの使用を許可します!」

 罰則上がったっ!? 怖いっ!? シナド先生が「ふっ」と満足そうな笑いを漏らしたよっ!?

「その他、規律を強め、淑女として正しい姿になる様、皆さんにも確固たる意識を持ってもらえるようにお願いいたします!」

 な、なんだかキツキツの内容なんだけど、これで支持率100%って一体どう言う事なんだろう? もしかして、何か裏があるのかな?

「そして最後に、我が校が最も重く考えている不純異性交遊についてですが―――!」

 うわっ、なんだろう? もしかして男の人を見るのもダメですとか言うんだろうか?

 

「『不純異性交遊』の完全廃止をここに宣言しますっ!! 大いに恋愛を謳歌しましょうっ!!!」

 

『『『『『『『『『『キャアアアアアァァァァーーーーーーーーーーーッ!!!!!』』』』』』』』』』

 

 体育館の窓が全部割れるほどの黄色い歓声が木霊した………。

 皆一様に携帯を取り出し、次々に隠れ彼氏に御連絡。「これからは大手を振って付き合えるよ~~!」みたいな事を口にしていた。

 ………え? いいの? ここまですごい校則キツキツにしてたのに、ここだけ緩めちゃっていいの? どうなの生徒会長さんっ!?

 

「あっ!? キリトくんっ!? やったよ私生徒会長になったよっ! 『不純異性交遊』撤廃したよ!? これからはもう隠れてお付き合いする必要無くなったよぅ~~~っ!!」

 

 アンタもか生徒会長っ!?

 

 




彼女の学園生活はこれからだっ!

………イヤマジで! 打ち切りじゃないからっ!

サヤ「皆様ご愛読ありがとうございました~~♪」

だからまだ連載するからねっ!?


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その37~39

本編が進まない事に自分でも焦りつつ、時間稼ぎにこっちを書いてみたり?


 その37 ヴィオの愛倉学園 ~あの名探偵は実在したっ!?~

 

 初日を終え、私はエリート科の敷地内に存在する女子寮へとやってきました。

 今日から此処が私の家です。

 三階建ての古風な雰囲気のある西洋風な作りの建物。玄関から入り、声を掛けたけど、誰も出てきません。皆さんの留守なのでしょうか?

 疑問に思って居間の方に入ると、食事用なのか大きな長方形のテーブルがあり、その上座的なところで、一人の女生徒がこちらを背にする形で座っているのが見えました。

「いらっしゃい。君が噂の転入生だね」

 女の子が背を向けたまま言いました。黒いロングの髪をうなじの辺りで纏めている事以外は特徴としてあげる事が出来ない様な、そんな後ろ姿です。でも、振り返らなくても私の事が解るみたいです。すごい。

「ヴィオです! よろしくお願いします!」

「僕はサヤ。この女子寮の寮長をしている者です。だから僕の言う事を聞かない悪い子には、酷いお仕置きをする権利があるんですよ」

「あははっ、気を付けます」

「それではさっそく一つ要求するね? ………脱げっ」

「………へ?」

「脱げっ、そして胸を晒せっ。解り易く言ってオープン・ザ・おっぱい」

 余計意味が解りません。

「そ、そんな命令、聞けるわけないじゃないですかっ!?」

「僕の言う事に逆らうの?」

 当然だと即答しようとした時、………ビチャリッ、と足元に赤い液体が流れ込んできました。赤い液体はどうやらテーブルの下から流れて来ている様ですが、その正体はテーブルクロスに阻まれ、確認する事はできません。

「先程も、新入生が一人………ね?」

 その一言に戦慄した私は、怖くなって何も言えなくなってしまいました。

 逆らったら私どうなっちゃうんでしょう!? 新入生は一体どんな目に遭わされたと言うのでしょうっ!? と、ともかくここは言う事を聞かないと!!

 怯えて震える手を伸ばし、私は胸元のタイやボタンを手間取りながら外していく。左右のシャツを掴み、恥ずかしさに勝る恐怖に突き動かされ、一気に開け―――!

「………お義姉さん? 寝ているサヤのテーブル下でなにをやってるんですか?」

 

 バサァッ! ←(テーブルクロスがオープン。血糊を持った女性が登場)

 

「おおぉっとっ!? ウィセっち! ネタバレするのはいけないとお姉さん思うよ~~!?」

「寝ている妹で腹話術しながら新入寮者をからかう人がそれを言いますか?」

 …………。

 なんか色々騙されましたっ!? Σ(ーД-)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その38 ヴィオの愛倉学園 ~平凡な自己紹介の中に既にネタがっ!?~

 

 寮生が全員揃い、改めて自己紹介となりました。

「先程はお義姉さんが失礼を………、私はウィセです。学園の風紀委員長をしています。こっちで未だに寝ているのはサヤ。部屋は一階の103号室です」

「よ、よろしくお願いします」

「私はサヤの姉っ!! 名は名乗らん! お前も私を姉と呼べ! 何しろ私は本当に寮長だからな! そして脱げっ!」

 ビシリッと指を突きつけるお姉さんは、私が反応する前にウィセさんからハリセンを頭に受けて机に突っ伏しました。部屋はサヤちゃんと同じく一階の101号室だそうです。

「クロンです。私はサヤさんと同じ一年生です。部屋は二階の203号室です」

 明らかに小学生な方に丁寧なお辞儀をされてしまったのですが、本当に一年生でしょうか? もう本当、色んな意味で。

「僕はカノンです。『おねえさん』同様三年生です。部屋は三階の端305号室です」

 とってもお姉さんな美少女が丁寧にご挨拶してくれました! なんて美しい方でしょうっ!? 何だか二つ名でも持っていそうな雰囲気のある美人さんです!

「それと最後に、その端で蹲って必死に存在感を消そうとしているのがラビットです」

 ウィセさんの紹介で部屋の隅に視線を送ってやっと気付きました。何だか建物と一体化した薄い気配の女性が、カーディガンを頭から被って震えていらっしゃいました。怯えた目でこちらを見る仕草が名前の通り兎っぽいですが、暗がりにいる所為でむしろ自縛例の類に見えますよっ!?

「と、ともかく、これからもよろしくお願いしますっ!」

 必死になってお辞儀する私に、皆さん温かい拍手で迎え入れてくださいました。

 良かったです、どうやら今度は恙無く終えられそうです。

「…………」

「くししっ! カノン、お前三年間騙し通せそうだな?」

「突っ込まれたら困るんだけど、突っ込まれないのはかなりに苦しいですよ? お姉さん………」

 あれ? カノンさん、なんで床に突っ伏してるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

その39 ヴィオの愛倉学園 ~24時間労働もへっちゃら!~

 

 寮生活初めての朝、朝食は全員で食事をとる事になり、投稿は皆好きな時間帯に出るらしいです。

 ウィセさんカノンさんは朝が早く、ラビットさんに至ってはいつの間に居なくなったのかも解りません。そんな訳で登校は、車椅子のサヤちゃんと、そのお姉ちゃんの三人一緒になりました。

「それにしてもサヤちゃん、朝もぐっすりですね? サヤちゃんっていつも寝てばかりなんですか?」

「ああ、サヤは二年前から寝たきりよ」

「へ?」

「交通事故でね、意識を失って以来、ずっと植物状態まま」

「そ、そんなっ!? でもそれならなんで学園に登校を? 病院にいた方が良いんじゃ?」

「それで二年間も目を覚まさなかったから、こっちから行動してるの。こうやって色んなところに連れ出して、面白おかしくやっていれば、その内サヤの方から目を覚ますんじゃないかな? って思ってね………」

 ま、まさかこの二人にそんな重い設定がっ!? お姉さんの破天荒な所は、妹のためにやっていた事だったんですねっ!?

「―――って、何を話を盛ってるんですか? サヤが昼間寝ているのは単純に夜型だからと言うだけでしょう?」

「ウィセっち朝から昇降口前で風紀委員のお仕事ご苦労様ぁ~~♪ そして私は嘘は言っていない! サヤが夜型になったのは二年前からだし、寝てる内は何をしても起きないので病気と言って差し支えな~~いっ!」

「その病気の原因は、お義姉さんが夜中遅くまでサヤを遊びに付き合わせているからですけどね………」

「…………」

 また私騙されたっ!?

 ん? でも、あれ? 夜中遅くまで遊びに付き合わさてるから、サヤちゃんは夜型になってるんだよね?

「え? じゃあこの人なんで元気なの?」

「ん? 何がだ?」←(目の下にクマすら存在しない。お肌もつやつやのお姉さん)

 




ご希望だったサヤちゃんをちょっとだけ登場。
何だかブーイングの予感がする………。


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