灼眼のシャナ Ⅳ(リターン) (無明星)
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《序章》そして再び
~新たな世界で~


はじめまして、無明星です。この話はあくまでも私個人の勝手な想像と願望の作り出した話です。若干、キャラや設定がずれていることもあると思います。その時は、指摘して頂けると助かります。そして、こんな話もあるのだなということを思いながら読んで頂ければ嬉しいです。
それでは、そろそろ本編へ参りましょう。どうかお楽しみください。


 新世界『無何有鏡』、人間と徒が共存する世界、そして坂井悠二が望んだ世界。今はまだ人間と徒が完全に共存しているとは言えないが、いつの日かその日が来ることを信じ、今も闘い続けている。

坂井悠二は自身の過ちに強く責任を感じていた。彼の過ちとは人間と徒が共存する世界を創るために、多くの人間やフレイムヘイズを殺したことだ。その罪悪感もあり、彼は人間と徒の共存に尽力している。そのの横には常に〈天壌の劫火〉アラストールの契約者、〈炎髪灼眼の打ち手〉シャナがいる。彼らは共に困難に立ち向かうと旧世界で誓い合っている。

 

 

 

 

 

 『無何有鏡』創設から3年が過ぎた東京のとあるラーメン店、カウンター席に悠二と〈驀地祲〉リベザルがいる。

 

「久しいな、〈廻世の行者〉。仕事の方は順調なのか?」

 

「久しいって、つい最近会ったじゃないか。まぁ、仕事の方はそれなりに、かな」

 

「まったく、俺たちに声かけてくれりゃ、それなりのことはやってやれるんだからよぉ、もう少しあんた自身を大切にしてやれよな」

 

2人の会話は仕事帰りのサラリーマンの会話のようなものだった。

 

「君と会うといつもその話になるけど、それ以外の話はないのかい?」

 

坂井悠二とリベザルは『無何有鏡』に来てからよく会う仲になっていて、最近は週に1回は会うようなこともある。

 

「まぁ、それもそうだな。ところで、姫は今天道宮か?」

 

「うん。まぁ、いつものことだけどね」

 

「天道宮にはあんたは入れないからな。仕方あるまい」

 

「へい、チャーシューラーメンと醤油ラーメン、お待ち!」

 

店員が注文したメニューを持ってきた。

 

「お、きたか」

 

「ん?リベザル、焼豚好きなの?」

 

悠二はリベザルの注文したラーメンを見てそういった。

 

「あぁ、これか?たまたまこれを食おうと思っただけだ。嫌いではないからな」

 

「へぇ」

 

そして、2人ともラーメンを食べ始め、長い沈黙が続いた。

 

 

 

 

 

 時は同じく、天道宮では、

 

「ただいま、ヴィルヘルミナ」

 

シャナが紅蓮の双翼でベランダから入ってきた。

 

「お帰りなさいませ」

 

「お、贄殿のじゃねぇか。お~い、ユストゥス、贄殿が来たぞ」

 

迎えてくれたのは、〈夢幻の冠帯〉ティアマトーの契約者〈万条の仕手〉ヴィルヘルミナと〈糜砕の裂眥〉バラルの契約者〈輝爍の撒き手〉レベッカ、〈両界の嗣子〉ユストゥス。天道宮に住まうものたちである。

 

「とりあえず、奥に。話はそこで」

 

「そうだな。じゃ、行くか、ユストゥス」

 

そう言いながら、奥のダイニングルームへと向かった。




今回、初めて投稿をしたのでまだまだアマチュアなところばかりですが、楽しめるように今後も作って行きますので、これからよろしくお願いいたします。質問や要望があれば、遠慮なく申し付けください。可能な限りで答えていくつもりです。
そして、次回作ですが、予定日は2/20とさせていただきます。今回は最後まで読んで頂けたことを心より感謝します。次回作もよろしくお願いします。


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~それぞれの道~

皆さんこんにちは、無明星です。
今回も私の妄想全開のストーリーに仕上がっています。もちろん、皆さんが楽しんで頂けますよう試行錯誤しました。
それでは、そろそろ本編に参りましょう。では、お楽しみください。


 天道宮のダイニングルーム、ヴィルヘルミナが入れた紅茶を飲みながら話している。

 

「ところで贄殿、旦那はどうした?」

 

「む!?」

 

レベッカの一言はヴィルヘルミナに突き刺さったようだ。

 

「今はリベザルと一緒」

 

「またか、最近そればっかだな」

 

「まぁ、彼ら仲がいいみたいだから、そういうこともあるだろう」

 

〈糜砕の裂眥〉バラルが口を開いた。

 

「確かにそうだが……」

 

「彼らは情報交換だけが目的ではないのでしょう。彼らはかつての戦友同士、無理もありません」

 

「一蓮托生」

 

ヴィルヘルミナの推測に賛同するようにティアマトーは言った。

 

「まぁ、そう考えりゃ納得がいくわな」

 

「あくまで推測だけどね」

 

「納得したらそれでいいじゃねぇかよ、バラル。あんまり深く考える必要ねぇって」

 

「事の発端は君にあるということ、忘れてはいないかい」

 

バラルの一言でレベッカはしばらく黙り込んだ。

 

 

 

 

 

「ヴィルヘルミナ、今の外界宿の状況は?」

 

と、シャナは訪ねた。

 

「今現在、活動中の外界宿はサンフランシスコの総本部『オーバーエイジ』と東京の『大黒堂』の2つので、大半が活動停止状態にあります」

 

「そう……」

 

「今の時代、外界宿やフレイムヘイズの最大の役目とも言えるものが無くなったのだ。仕方あるまい。」

 

2人の時間を斬るようにアラストールが入ってきた。

 

「そうだな、俺も贄殿のように何かしねぇとなぁ」

 

レベッカは退屈そうに言った。

 

「君の場合、この新世界を探索するだけでも充分だと思うけどね」

 

「そんなことより贄殿の、最近の徒の様子はどう何だ?」

 

「そんなことって……」

 

バラルは少し寂しそうに呟いた。

 

「2ヶ月前の〈ルベリンの仕者〉以来、特に目立った動きはない。少なくとも、私達が見た限りではね」

 

〈ルベリンの仕者〉、ドイツの外界宿、中枢機関の襲撃を企てた張本人。仮装舞踏会の諜報員の情報により、未然に防ぐことに成功。

 

「あれから2ヶ月か、懐かしいなぁ」

 

「そんな呑気な事じゃないだろ?あの一件が未然に防がれたから良かったものの、実際に起きたら大変だろ?」

 

バラルの言っている事は間違いではない。確かに、あの一件が起きたら、大惨事では済まなかっただろう。

 そんな話の最中、ヴィルヘルミナの顔は何かただ事ならぬ不安に溢れていた。

 

「ヴィルヘルミナ、何かあったの?」

 

シャナが訪ねると、

 

「……やはり、言っておくべきですね」

 

と、口を開いた。

 

「先日、外界宿から届いた報告書に少し気になる報告がありまして……」

 

「して、その内容とは?」

 

アラストールが再び訪ねると、

 

「3日前、ドイツ全域の外界宿との連絡が途絶えたのであります」

 

「音信不通」

 

それを聞いた瞬間、場は一気に静まり返った。




最後まで読んで頂けたこと感謝します。そして、次回作から《1章》となります。今後、新キャラ登場予定です。投稿予定日は4/1とさせていただきます。今後もどうかよろしくお願いいたします。
次回作同様、感想・質問・意見・要望があれば、お気軽に


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《1章》忍びよる脅威
~襲撃~


皆さん、こんにちは。今作の投稿日が4/1ということでエイプリルフール。なので、投稿時間を半日遅らせました。エイプリルフールも嘘をつけるのは午前中まで、もし午前中嘘をついて回っていた方は午後に嘘だと言うことを伝えるのを忘れないでくださいね。
さてさて、投稿時間は嘘をつきましたが、作品そのの方はちゃんと作りましたので最後まで読んでいってください。


 ヴィルヘルミナの言葉に対して半信半疑を抱いた。

 

「ドイツの外界宿全域って、あのヨーロッパ総本部もか!?」

 

レベッカは訪ねた。

 

「報告によれば……」

 

外界宿総本部、各エリアの外界宿を総括し、中枢を担う最重要機関である。世界でたった5つしか存在しない最重要機関である。

 

「現在、〈鬼功の繰り手〉と〈極光の射手〉が現地へ急行及び、調査に当たっているはずであります」

 

「サーレとキアラが?たった2人で?」

 

「はい」

 

レベッカが驚くのも無理はないだろう。何しろ、ヨーロッパの中枢機関で起きた奇妙な出来事を2人だけで調査するというのだ。

 

「不安になる気持ちも分からなくはないが、彼らの腕は確かなものであるのもまた事実。心配に及ぶことはないだろう」

 

「でも、もしもの事がないという可能性が0っていう訳でもない…ヴィルヘルミナ、他にも誰か向かわせてるの?」

 

「いえ、皆手が空いておらずあの2人しかいないのであります」

 

「そう……」

 

そう言って少し考えるシャナ。

 

「取り敢えず、私も様子を見て来る。ヴィルヘルミナは外界宿と連絡をとって情報の整理と何か関連性のありそうな資料を調べて」

 

「了解であります!」

 

「ちょっと待って贄殿!」

 

レベッカがダイニングを飛び出そうとしたシャナを引き留めた。

 

「うちが様子を見て来るから、贄殿は旦那と合流しな。その方がいいだろ?」

 

「 わかった。何かあったらすぐ連絡して!いい?」

 

「あいよ!」

 

マシンガンのような早さの会話を後にしてシャナは部屋を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

  その頃、ドイツ外界宿総本部『スタールチュロッセ』に向かった2人は、

 

「連絡がつかねぇつってたが…こりゃひでぇな……」

 

サーレは跡形もなく粉々になっていた『スタールチュロッセ』を見てそういった。外界宿総本部というだけ、それなりに頑丈に出来ていた建物が今では道端に転がっている石ころに相違ないほどの有り様になってしまった。

 

「こんなになるほどの事がここであったってことなのかな?」

 

「キアラの言う通り、ここまで酷い有り様ってことは相当厄介なやつの仕業なんだろうね」

 

「そうなると、急いで報告した方がいいじゃない?」

 

〈破暁の先駆〉ウートレンニャヤと〈夕暮の後塵〉ヴェチェールニャヤも少し慌てているようにも思えた。

その時、うっすらとした影が見えた。それを見てサーレは口を開いた。

 

「ん?あれは…人か?生存者なのか?」

 

少しずつその影は近づいて来る。それにつれ、妙に胸騒ぎがするのを感じた。そしてふと、ある1つの可能性が頭を過ぎった。

 

「ま、まさか…これをやった…張本人?」

 

 キアラが口に出した一言で空気がガラリと変わった。そして、奥から近づいく影がわずか一瞬で目の前に飛んできた。まるで、ミサイルが飛んでくるかのように…

一瞬の出来事だった。

その影は2人の目の前で急停止しサーレとキアラを殴り飛ばした。2人は後方100mまで吹き飛ばされ、崩れた外界宿の瓦礫に身体を何度も打ち付けた。一般人ならまず、死んでいただろう。

 

「ガハ!!ゲホ!ゲホ!」

 

全身が瓦礫で傷だらけになり、あばら2、3本ポッキリ折れたようにサーレの身体はボロボロだ。

 

「ふん!!」

 

さらに、胸骨辺りにもう一発。そのまま、瓦礫の海に叩きつけられた。

圧倒的な力で叩きのめされた。死んでもおかしくない状況。諦めかけた次の瞬間、強烈な光と衝撃音がしたと思いきや、遠くで瓦礫の海に落ちる音がした。目を開けてみると、サングラスの男が立っていた。その男の視線の先では、煙を上げてガラガラとたびたび音がした。サングラスの男はこっちを見て聞いてきた、

 

「ふぅ。あんた、立てるか?」




皆さん、最後まで読んでくださりありがとうございました。今作から新章となります。楽しんで頂けるよう頑張りますので、今後もよろしくお願いいたします。
次回作の投稿予定日は5/10となります。それでは、今回はここまでとさせて頂きます。
本当にありがとうございました。


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~激昂の衝拳~

どうも、無明星です。前回新たに出てきた新キャラも登場します。今後もいろいろ出す予定なので、楽しみにして頂けると嬉しいです。
前回前置きが長々となってしまったので、今回は手短にさせて頂きます。
さあ、そろそろ本編へ参りましょう。


『スタールチュロッセ』から10km圏内のところにある山小屋まで運ばれた2人、

「取り敢えず、ゆっくり休んでな。俺は茶でも淹れてくるわ」

と、サーレに言い残し奥の方へいってしまった。

 

 

 

 

 

 

ほんの30分前の話、あの影に殺されかけたあの時、目の前が真っ白に光った思ったら、激しい衝動音と共に遥か遠方で凄まじい音がした。何が起きたのか理解出来なかった。ゆっくりと目を開けてみると、ついさっきまで影のいた場所に1人の男が立っていた。そこからは、少々記憶が曖昧になっている。途中、意識が飛んだときもあった気がする。ただ確かなことは、あの影はこの事件と何らかの繋がりがあることと、そいつと対峙する存在と思われる男に俺達は保護されたということだけだ。しかし、これだけでも充分有力な情報であろう。だが、今はそれを本部に伝達する手段がない……。なぜなら、報告に使う道具一式を奴の攻撃を食らったときに、使い物にならないほど無惨な姿と変わり果ててしまったからだ。今すぐ戻ろうにも、キアラが目覚めない限り本部に戻ることが出来ない。ましてや、今この体で向かったとしても、途中で力尽きてしまう恐れがある。 そうなった場合、今度こそあの影に殺され兼ねない……。今は安静にしているのが賢明だろう。

 

 

 

 

 

 

かれこれ頭を整理していると、男が湯呑みを3人分持って戻って来た。

 

「ほれ、これでも飲みな」

 

と湯呑みに入った緑茶をサーレに手渡した。

 

「これはどうも。助けていただいた上に、お茶まで出していただいて……」

 

「気にするな!それに、そこまでかしこまる必要もない、もっと気を楽にしな。緊張は身体に毒だぜ?」

 

「では、お言葉に甘えて」

 

男は俺が腰掛けているソファーの真正面にある肘掛けつきの椅子に座り、右足を上にして足を組んだ。そして、湯呑みの緑茶を二口ほど胃に放り込み尋ねて来た。

 

「ところで、御前さんはあそこで何を?」

 

「ドイツの外界宿総本部跡地の調査だ。日本の外界宿から来た」

 

「なるほど……、因みにあんたの名は?」

 

「サーレ。〈鬼功の繰り手〉サーレ・ハビヒツブルグだ」

 

「〈絢の羂挂〉ギゾー。宜しく頼む」

 

「〈蒼麟の煌畫〉ハバルスキー、以後お見知りおきを」

 

「ルギー・クランクリットだ。〈激昂の衝拳〉と呼ばれている。宜しくな、サーレ!」

 

ルギーの容姿は髪が青く上下左右に跳ねている。サングラスを掛けていて瞳は見ることが出来ない。体型はサーレに似ていて、若干ルギーの方が筋肉質なくらい。服装はオレンジ色のシャツに上下黒ベースのジャケットを着ている。

そして、首に下げているメダルのようなものが、〈蒼麟の煌畫〉なのだろうと思いながら、サーレは緑茶を口にした。

 

 

 

 

 

 

……さて、どうしたものか……

今回の件の報告もそうだが、彼が何故あそこにいたのかが気になって仕方がない。直接聞こうにも、中々そういった空気でないような気がしてならない……。しかし、この沈黙が続くのも正直つらい……。

 

「ところで、は此処に1人で?」

 

「あぁ、此処には俺だけだ。まあ、誰も来ないってことはねぇがな」

 

そんなことを言うとちょっと自慢気に笑い声を放った。

なんだ、けっこう話しやすいな。そう思ったが故につい口が滑った。

 

「あんたは何で此処にいるんだ?」

 

「ん?」

 

あ、やっちまった……地雷を踏んでしまったかのような空気が漂った。俺は一瞬死を覚悟した。




皆さん、GWはどのように過ごしましたか?最大9日の休息、仕事をしてた人もいれば海外へ行った人もいるでしょう。しかし、どちらもトラブルに注意したことでしょう。GW明けのこの時期も『サーレ』たちのようなトラブル(そんなに起こらないと思いますが……)に巻き込まれないようにお気をつけてください。
次回は6/5とさせて頂きます。最後まで読んでくださりありがとうございました。引き続き、『灼眼のシャナⅣ(リターン)』を宜しくお願いします。


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~ルギーの目的と深まる謎~

 皆さんこんにちは、無明星です。新キャラ『ルギー』のイメージボイスが決まりました。イメージボイスは細谷佳正です。これから新キャラも増える予定です。楽しみにしていてください。
 それでは本編をお楽しみください。


「何で……か」

 

あぁ、一瞬にして空気が重くなっちまったよ……やべぇよ、何か指先が白く見える。っていうか、マジで白い……身体めっちゃ震えてるし、目の前が霞んできた。

 

「御前さんは何故だと思う?」

 

「エ?ア、ハイ……」

 

どうしよう、まともに話せねぇ……ルギーさん威圧半端ねぇ。超こえぇよ、マジこえぇよ。取り敢えず、何か答えなきゃ。

 

「し、仕事とか、任務……ですか?」

 

「……」

 

何なんだ、この沈黙は。俺、不味いことでも言ったのか?

 

「……御前さん、良い勘してるぜ」

 

え?『良い勘してる』?何か良くわからんが……

 

「確かに、俺は()()()()()来ている」

 

「ん?それはどういうことなんですか?」

 

「俺はある依頼で此処に来た。そして、目的は御前さんとほぼ同じだ」

 

「目的が同じ?ってことは、『スタールチュロッセ』の調査に来たのか?」

 

俺はルギーさんに聞いてみた。

 

「そうだな。だが、少し違う。俺はあの影を追って来たんだ。奴は『スタールチュロッセ』の消滅事件の張本人だ」

 

っ!やはり、そうなのか……あの影が……ルギーさんはあの影について知ってるのだろうか?そんなことを思った。しかし、ルギーさんも詳しくは知らないようだ……

 

 

 

 

 

 時は同じくして、シャナと坂井悠二が合流した。

 

「悠二!今からドイツに向かう!説明は後でするから急いで!」

 

早口ではあるがはっきりとして緊迫した状況が伝わってくる。

 

「『スタールチュロッセ』のことか!?」

 

「知ってたの!?」

 

「それについては後にしよう」

 

「うん。取り敢えず今は……」

 

「「現場に向かう(おう)!」」

 

2人はそう言って成田空港に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 数時間前の話、とあるラーメン店。〈廻世の行者〉と〈驀地祲〉の会話。

 

「で、何かあったのかい?リザベル」

 

「……『スタールチュロッセ』が落ちた」

 

これには悠二も驚きの隠せなかったようだ。仕方ない、世界有数の巨大外界宿が落とされたのだ。普通なら誰でも驚くだろう。

 

「いつ誰にやられたかわかるか?」

 

「つい3日前だ。やった奴は見たようなんだが……わからんようだ。見たのは影くらいだって」

 

それを聞いた悠二は席を立ち、

 

「わかった……何かあったら連絡を入れてくれ」

 

とリザベルに言い残す。

 

「いくのか?」

 

「あぁ、まずはシャナと合流する」

 

「……気を付けるんだぞ」

 

「わかってる……」

 

そして、悠二は店を出た。

 そんな事をシャナに話していた。

 

「なるほど。私もちょうど同じ話をしていたの」

 

「そっか、じゃあ()について何か情報はあるか?」

 

そう悠二は聞くがシャナは無言で首を横に振る。それを見て少し考え込む悠二。搭乗アナウンスが右耳から入って左耳から出ていく。シャナに声を掛けられて初めて気づく。そして、ドイツ行きの飛行機に乗り込む。




 謎に包まれる影、その謎を解明するためシャナと悠仁はドイツへ。影の正体とは一体何なのか?
 次回の投稿予定日は7/5です。おそらく、ドイツでの話になるでしょう。次回も楽しみにしていてください。
 皆さん、最後まで読んでくださりありがとうございました。


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~いざ外界宿へ~

皆さんこんにちは、最近はいろいろと立て込み執筆の時間をやや削り気味です。ですが、予定日には間に合うよう、尚且つ納得の行くよう努力してでき上がった作品となりました。
 くだらない前置きはこの辺にして、本編に参りましょう。


 ドイツに降り立ったシャナたちはまず近くの外界宿の現状を調べるつもりだ。とりあえず、情報収集のため地域の人々に聞いて回るがさすがにこれといった情報は得られなかった。

「どうする?今の俺たち、この辺の外界宿の場所は分かんないし……」

「うん。どこかにこの辺の外界宿の場所を知ってる人が居ればいいんだけど……」

しかし、一般人がそんなこと詳しく知っているわけでもないのもまた事実。近くのベンチに腰掛け少し頭を悩ませていると、

「あの~、すいません。ここ何処ですか?」

考え事をしていたせいか声をかけられて少し驚く。どうやら、目の前の男の人に尋ねられたようだ。見た目はヨニクロで売ってるような白シャツに七分丈の黒パンツ、藍色で脇腹に白線が2本引かれたコートを着こんでいて髪は真っ白で瞳は鮮やかな蒼色だ。身長はシャナより少し高いくらいで悠二に負けず劣らず細身の体格である。持ち物は左手の地図帳だけで旅人としては軽装過ぎる。

悠二はここの場所を彼の地図帳に指差して教える。この近くには国際空港があるのに現在地がわからなくなる奴もいるんだなと2人は思っただろう。

「ありがとう。お陰で目的地に向かえるよ。何かお礼をさせてくれ」

「なら、ここら辺の外界宿に用があるんだけど、何処にあるのかわからなくて……知らないかな?」

すると、彼は少し間をおいてから笑いだした。

「そっか、君たちも外界宿に用があるのか。いいよ、案内してあげる。そもそも俺もそこに行くつもりだし、一緒に行くか」

「ありがとう、助かるよ」

「先に助けてもらったのはこっちだ。とりあえず、行くか」

 

 道中でいろんな話をしているうちに悠二と道を聞いて来た彼が意気投合し盛り上がっている2人をシャナは不満気に見ていた。

「そういえば、君たちは外界宿に何の用があるんだ?」

「ちょっと調べたいことがあってね。そう言う君は?」

「つくづく気が合うな、俺も同じだ」

2人の話は大半がどうでもいいような話ばかり、そんなのをかれこれ30分ほど続けている。シャナから見れば、つまらないことこの上ないことだろう。

 そうこうしているうちに目的地にたどり着く。そこまで名の知れた場所ではないが、建物の外見は立派なものだ。

「……なあ、妙じゃねぇか?」

目の前の外界宿を睨み付け彼は言った。

「えぇ、存在の力が()()()()()()()

「ざっと1000人分くらいだろう」

シャナと悠二も異常な様子に神経を尖らせる。

 この外界宿はせいぜい100人あたりがいいところ。その10倍となると敷地は人で溢れ返っているはず。にもかかわらず、人1人見かけない。

「ここまで存在の力が集中することなんて今までなかったよね?」

「うん。でも……」

「待て!」

悠二たちの会話を遮る彼。視線の先には妙な生物……とも言い難いものがいる。真っ黒に染まっており、外形ははっきりとせず消えたり歪んだりしている。それは実体の存在しない“影”そのもの。奴はこちらの存在に気づくと殺気を剥き出しにし武器らしきものをとる。さらに、奴と同じような奴が次から次へと現れ、気がつけば囲まれていた。

「話はこいつらをとっちめてからだな。そっちの方は任せるが問題ないよな?」

彼はこちらに背を向けたまま問いかける。

「問題ない!そっちこそ、先に脱落なんてしないでよね!」

「無論、そのつもりだ!」

その一言と同時に3人は影共に向かって走りだす。戦闘開始だ。




 今回初登場した近くに空港があるにもかかわらず道に迷った彼はこの作品の主要人物です。名前やその他の情報は後々明かしていくつもりです。近いうちに行うつもりです。
 次回作投稿予定日は8/5です。本日も最後まで読んでくださりありがとうございました。


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~驚異の獣~

皆さん、お久しぶりです。無明星です。
今回はバトルシーンを書きました。しっかり書けているかちょっぴり心配です。皆さんに伝わるように努力したので暖かい気持ちで読んでいってもらえると有りがたいです。
それでは本編をお楽しみください。


 無数に湧いてくる影を次々と倒していく。大して強くないので1体を倒すのにそこまで苦労はしないが、数が数だけに苦戦を強いられる。

「チッ!こいつらどんだけ出てくんだよ!」

道に迷っていた彼は近寄る影を刀で凪ぎ払いながら愚痴をこぼす。だが確かに厄介だ。このまま潰していくだけではきりがない。

「もしかしたらだけど、親玉っぽい奴を倒せばこの状況を打開できないかな?」

「他に策はないし、それが最善策だな」

「うん。じゃあ、それで行こう!」

悠二の案に他の2人も賛同する。多分、この状況下ではその方法が妥当だろう。あたりを見回し、親玉らしき奴を探す。

「あいつじゃねぇか?こいつらの中で存在の力が頭ひとつ抜けてるぜ」

そう言った先には他の奴より実体がはっきりしていて、見た感じ熊に似た姿をしている。その右手には鋭い刃を両端に備えた斧がある。刃の部分は縦30横45厚さ2.5センチで刃は鉄の塊の中心から半径22.5センチの弧を描いている。柄は75センチくらいだ。

 先に奴の懐に飛び込んだのは刀を振り回す彼だ。親玉影が振り下ろす斧を刀一本で弾き返す。奴にほんの少し隙が生まれるが彼もまた隙が出来ている。おそらく、あの攻撃はかなりの威力があり、まともに食らえば真っ二つにされるだろう。

「おっも!化け物かよこいつ!」

1人でどうにか出来る相手ではない。悠仁はそう思った。

「シャナ!僕たちも行こう!」

「言われなくても!」

悠二たちも親玉影と交戦を開始する。3人がかりでやっと攻撃が届くくらいだ。奴は攻撃は単発で1パターンだが、それをカバーするだけの攻撃力がある。さらには体力も桁外れに高く、奴を倒す前に3人が先に潰れそうになる。そして、決着が着いたのはそれから10分後のことだった。

 奴は力無く地面に倒れ込み、ズシンと重々しい音と衝撃を放つと体がみるみる透けていき、終いにはその姿は無きものとなった。

 

 あとに残った影は攻撃を止め、親玉影を追うように薄っすらと姿を消していく。

「あ~、疲れた……あんな化け物とは二度と戦いたくねぇ」

「同感ね」

「まったくだよ……」

3人とも地面に座り込み一息つく。

「しかし何者なんだ?やたら強力だったが正体については一切情報なしときた」

「確かに……一体何者なん……」

「あれ?カトラスじゃねぇか!」

悠仁の言葉を遮った声の主は彼らが通って来た道の方にいた。

「ルギー!?なんだ、来てたのか」

カトラスと呼ばれた彼は久しぶりに友人に会うかのように返事を返す。悠二とシャナは彼の名がカトラスだということを今この瞬間、初めて知った。名前を聞くタイミングならいくらでもあったが、話に夢中になっていたり、それを見て嫉妬したりとすっかり忘れていた。そして同時に自分たちも名乗っていなかったという現実が2人の脳に痛々しく突き刺さる。

「そういえば、まだ名前言っていなかったね。僕は坂井悠二、よろしく」

「シャナよ、そしてこっちがアラストール」

「アラストール、『天罰神』といえばわかるであろう」

悠仁たちが自己紹介すると彼もまた、忘れていたという顔した。

「俺はカトラス。よろしくな!悠二、シャナ、アラストール」

彼も自分の名を語る。そして、しばらく彼は硬直状態になった。何か記憶を探っているように見える。

「悠二?あんたが、坂井悠二?」

「そうだけど……」

そう答えると彼は唖然としていた。何度か目を擦り、頬をつねり、何度も悠二の顔を睨み付ける。

「えぇぇぇぇぇぇ!?あんた、〈廻世の行者〉なの!?本物!?」

彼は目を飛び出させ驚いた。さっきまで地に足をつけていた彼からはとても想像もできない。

「ってことは、あんたが〈炎髪灼眼〉か!俺、あんたたちに会いたかったんだよ!」

彼のテンションはやけに上昇している。いや、今も上昇し続けている……この瞬間、2人はこう思っただろう。

『『なんか、面倒くさそうだな……』』




 最近、なにかと忙しくなり大変な時期に差し掛かってきているので、投稿日を少々遅らせる予定ですのでご了承ください。しかし、そんな大変なことも吹き飛ばす勢いで戦いはますます激化していきますのでこれからもよろしくお願いします。
 次回は9/10投稿予定です。最後まで読んで下さりありがとうございました。


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~情報交換~

皆さんこんにちは。本日も『灼眼のシャナⅣ(リターン)』を読みに来てくださりありがとうございます。
話が過激になるのはもう少し先になりそうです。
それではそろそろ参りましょう。


 とりあえず、カトラスを落ち着かせる。多少興奮状態だがある程度落ち着いた。

 

「ルギー・クランクリット。こいつとはダチだ。まっ、よろしく頼むわ」

 

青髪のサングラス男も自己紹介したところで、さっそく本題に入る。

 

「まずは御前さんたちの目的を知りたい。ま、此処に来たってことは大方……」

 

「察しのとおりです。僕たちはこの辺り一帯の外界宿の調査に来たんです」

 

悠二が答える横でシャナは首肯く。

 

「やはりそうか。数時間前に御前さんたちと同じ目的でこの地に来たって言う者たちに会ってな、そのお二人さんも御前さんたちが闘った影にやられちまったって話だ」

 

「あれ?何で僕たちが影と闘った知っているのですか?」

 

「そりゃ、見てたからだろ。とは言えど、見たのは丁度影共が消えていくところだったがな」

 

すまない、という顔をしながら話す。

 

「そうだったのか。それで、2人を襲った影は?」

 

「隙を突いて一撃いれたが……恐らくはまだ何処かに潜んでるだろうな。結構本気でやったが、さっきの奴らのように薄っすらと消えていきやがったからな」

 

ルギーは拳をギリリと鳴らし、悔恨している目がサングラス越しに見えた。

 

「そう……でしたか。あの、襲われた2人は……」

 

「無事だ。奴が止めを刺す前にぶっ飛ばしたからな。意識ももう戻った」

 

その言葉を聞き、話を聞いていた者たちはホッとした。

 

「ちなみにその2人って誰?」

 

シャナが安堵した表情をまた固くし訪ねた。

 

「ん?サーレとキアラだが……知り合いか?」

 

「うん。それで、2人は?」

 

「ここから少し離れた場所に小屋がある。そこで安静にしていてもらってる。ここもある程度調べたし、続きはそこでやろうか」

 

全員が頷き、その小屋に移動する。

 

 

 

 

 

 

 15分も経たずに目的地に到着した。どうぞとひと言かけられ立派な木造建築物に入っていく。

 

「あ、ルギーさん。どうでした?」

 

「ダメだった。少なくとも、俺の方はな」

 

そう言って悠二たちに視線をやる。

 

「あれ?〈廻世の行者〉に〈炎髪灼眼〉じゃないか。あんたらも来てたのか」

 

「ええ、やられたと聞いて心配したけど、大丈夫そうね」

 

「ところで〈極光の射手〉は?」

 

キョロキョロとしながら悠二はサーレに聞く。

 

「奥の部屋でぐっすりと。そっちも問題なしだよ」

 

そう言って親指を立てて後ろを指す。

 ソファーの左側から悠二、シャナ、サーレと並び、右にカトラス、左にルギーが椅子に腰掛ける。

 

「早速本題だが、影についての情報は一切無し。肉体・精神の疲労はともかく生死も不明だ」

 

「さすがに厄介な奴らね」

 

「おまけにあの強さときた。あれは人間技じゃねぇよ。殺戮兵器も同じだ!あんな攻撃、普通なら一撃であの世行きだ」

 

影の情報について話すも肝心の“正体”が分からない。人間なのか、徒なのか、あるいは霊魂なのか。それを知るのはもう少し先の話になるだろう。

 

「そう言えば、レベッカはまだ来てないのかな?」

 

「え?レベッカ、来てるの?」

 

「うん。そう言ってたんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 一方、レベッカはと言うと……

 

「飛行機、乗り遅れた……」

 

「はあ~、だから時間の確認をした方がいいって言ったのに……昼食で乗り遅れるなんてことする人は普通いないだろう」

 

羽田空港に取り残されていた……




 最後まで読んで下さりありがとうございました。皆さんも、時間には気をつけてくださいね。
 次回作の投稿予定日は10/20です。次回もよろしくお願いします。


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~願わぬ再会~

どうも、無明星です。
まず、最近この作品に興味を持っていただく方々が増えていることにとても喜んでおります。これまで愛読してくださっている方、最近読み始めたばかりの方、皆様に心より感謝します。
これからも『灼眼のシャナⅣ(リターン)』をよろしくお願いいたします。


 5分もしない内に影について彼らが持っている情報は尽きた。

 

「……ここまで謎が多いと中々厄介だな」

 

「正体がわからない以上、こちらの打つ手は無しと言ったところか……」

 

カトラスとルギーの言う通り、このままでは八方塞がりだ。

 

「ねぇ」

 

そんな中、シャナが口を開く。

 

「その『スタールチュロッセ』に案内して。疑ってる訳じゃないけど、直接見ておきたいの」

 

「わかった。何かわかるかもしれねぇしな」

 

そして、シャナたちはルギーに案内してもらうことになった。

 

 

 

 

 

  程無くして、『スタールチュロッセ』に着いた。

 

「これは、酷いね……」

 

「見る影もないな……」

 

「……」

 

それぞれ思うことはあるだろう。しかし、全員が一致して、このような有り様にしてしまう者は今までの中で最も危険な輩だと考える。

 そして、ルギーとカトラス、シャナと悠二に分かれて調査をする。

 

「ルギー、ここはどうだったんだ?」

 

「いや、ハズレだ。手がかりになりそうなものは何1つ無かった」

 

カトラスたちが何を話しているのか気になりながらも辺りを調べるシャナ。とは言っても、調べる建物は見る影もない石ころの山。調べようにもここに全ての瓦礫をひっくり返していたら日が暮れるどころの話ではない。

 しかし、策が無いと言うこともない。存在の力の残渣をたどれば、ある程度の異変とは繋がるのだ。それだけでも今の状況においては有力なものとなる。

 

「どう?そっちは何かある?」

 

「ダメだ、反応無し」

 

カトラスたちの方も駄目だったようだ。これだけ派手にやられたのにも関わらず、存在の力は微塵も残っていない。

 

「……」

 

「悠二、さっきからどうしたの?」

 

ここに来てからずっと唸っている悠二にシャナが問い掛ける。

 

「う~ん……これをやったのが奴らなら、なんでサーレたちと遭遇したのかなって思って」

 

「ここにいたからでしょ?」

 

「何故?」

 

「何故って……」

 

悠二の問い返しにシャナは言葉を詰まらせる。

 

「……ちょうどここを破壊しに来ていたから、じゃないの?」

 

数秒考えたのち、出した答えを口にする。

 

「いや、多分違う。ここに来る前、ここら辺一帯からの連絡が途絶えたってヴィルヘルミナが言ってただろう」

 

「うん」

 

「多分、その時には既にここは落とされていたと思うよ」

 

悠二の見解は恐らく当たっているだろう。だが、だからこそ謎なのだ。

「じゃあなんで奴らはその時までここにいたんだ?」

 

先ほどまで遠方にいたカトラスがこっちに移動しながら悠二に聞く。

 

「これは例えの話だけど、奴らにとって重要な場所だったとしたら?」

 

「なるほどな、影ども(てめぇら)の領地を汚す輩を排除しに来たってやつか。しかも、略奪の地でそれを行使するとはいい度胸じゃねぇか!」

 

左手に拳を打ち、ルギーは言う。そして、何かに反応したのか眉をピクッとさせる。

 

「どうやら、当たりかもしれねぇな」

 

「やっと見つけた」

 

「と言うより、帰ってきたってところか……」

 

シャナとカトラスもその存在を感じ取り言葉を発する。

 悠二も1テンポ遅れて認知する。4人はその存在の方向に目を向ける。

 しばらくしてその姿が見えてくる。視線の先にはお目当ての“影”の姿がある。その数は以前対峙したときの倍はいる。そして、その奥に一際大きい“影”がいる。

 

 

「よし!外界宿総本部奪取戦だな」

 

「そりゃ、単純でいいや。要するに先に全滅した方が負けってこったな」

 

「こっちは4人、敵は数十体、かなりのハンデね」

 

ルギーたちに次いで悠二も言う。

 

「よし、行こう!」

 

その言葉は戦争の開幕を告げる。




次回はいよいよ過激な戦闘話です。ここまで引っ張って来て申し訳ありません。次こそは手にあせ握る戦いを繰り広げていきたいと思います。(予定では……)
次回作は12/1予定です。今作も最後まで読んでくださりありがとうございました。次回もお楽しみに


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~影獣~

皆さんこんにちは!無明星です。時間によってはおはようございます、こんばんはかもしれませんが……
とうとう12月、1年も終わりですね。冬も本番、風邪等気をつけてお過ごしください。そんななかでも『灼眼のシャナⅣ(リターン)』は熱くしていくつもりです。燃え尽きるまで頑張りますよ!
余談はこの辺にして本編に入りましょうか。


「よし!行こう!」

 

悠二の言葉と共にシャナたちは影に突撃する。

 最初に攻撃したのはルギーだった。光の如き速さで飛び出し、黄金に輝く剛拳が敵前衛のど真ん中を突き穿つ。敵兵は空に身を放られ地に叩きつけられている。

 次いで仕掛けたのはシャナだ。『真紅』が影たちを握り潰し、焼き尽くす。遅れながらも悠二とカトラスも1体ずつ確実に倒していく。1分近くで3割ほど制圧していった。

 しかしそう簡単に行くわけもなく、影たちは束になり数で圧倒する策にでる。シャナとルギーに関してはさして問題ないが、悠二たちは劣勢に立たされる。

 

「悠二!」

 

シャナが加勢に行こうとしても次々と集まってくる敵兵に時間をとられてしまう。隙を見て悠二たちの様子を見る。

 悠二とカトラスは背中合わせになり、迫り来る影たちを隙を見せずに確実に仕留めている。シャナはそれを見て安堵すると同時に少し不満を抱く。

─なんで私とはやってくれないのにあいつとはやるのよ!─

 不満に満ちた『飛焔』が影たちを真っ二つに切り裂き、シャナの前に立ち塞がっていた黒い壁は薄っすらと姿を消していく。

 シャナの『飛焔』で影は3割り近く減り、残り僅かの奴らを倒すのも時間の問題だろう。

 

「よし!一気にけりをつけるか!」

 

ルギーはそう言って、右拳をギリギリと鳴らし爆音じみた轟音を放って、最後の集団に飛んでいく。光の矢は影どもを1体残らず、ものの見事に消し去った。

 

「これで全部か?呆気ないな」

 

ルギーの言うとおりだ。ここが影たちにとって大切な領域であれば、こんなに易々と倒されるのもおかしい。悠二の仮説が外れているのならば納得できるが、当たっているのであれば…………

 そう思ったのか悠二は慌てて辺りを見回す。シャナたちは不思議に思い、彼の近くまで寄る。彼の目には写っていないようだが……

 周りは先程の戦闘前と様子はあまり変わってはいないようだ。しかし、何かあると感じ取った悠二は微々たる変化を探す。

 

──何か、何か見落としているはずだ。とても重要な『何か』を──

 

とてつもない焦躁に駆られながら視界を巡らす。すると彼らの足もとにある『あるもの』が目に入り込む。

 

「あれは……」

 

()()だ。なんの変哲もない小さな瓦礫で出来た小さな影だ。にもかかわらず、何か嫌な予感がする。殺気じみたような……憎悪ににたような……澱んだ意気。気づいたときには彼は叫んでいた。

 

「避けろ!!!」

 

3人は反射的にその場を離れる。次の瞬間、小さな影から鋭く尖った黒い一線が先程シャナがいたところを貫く。かなり驚いていたがすぐに立て直す。

 1直線に伸びた影は液体のように溶け、だんだん形を作っていく。脚、胴、腕、頭と朧げな型はみるみるとはっきりとしたものとなっていく。その姿は強靭な大狼そのもの。ばねのように縮んだ脚はいつでも勢いよく飛んでいけそうなもので、腕は岩をも楽々持ち上げれるよう太く、体は全体的に筋肉質で、それを覆いつくす体毛は黒1色であろうとも1本1本はっきりとしている。大狼は鋭利な歯牙を上下に動かす。

 

「見事にやってくれたな、忌まわしきフレイムヘイズども……」

 

重々しい声が大狼から聞こえた。初めて意志疎通出来そうな影に会った。その事実に全員が驚いた。

 

「……しゃべれた、のか?……」

 

先に動いたのは悠二だった。

 

「然様、しかし先のものはそのような芸当は会得しておらん」

 

「お前、いったい何者?」

 

シャナの問いかけに対して大狼は声を張り答える。

 

「我はイルフィス。影獣十四神が1柱」

 

「影獣……それがお前らか?」

 

「正確に言えば、そう呼ばれているだけ。我らに食われしものたちはそう呼んでいた」

 

影獣……それがやつら、この騒動を引き越した元凶、こいつらは危険だ。そう感じた故か、場の空気は一層圧がかかる。

 

「さあ、我らの殺戮(エサ)になってもらうぞ!」




最後まで読んでくださりありがとうございます。何と、今作で10作目更新です!今まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
次回作は1/10予定です。次回も読んで頂けるよう善処しますのでよろしくお願いします。
それではまた次回作で!


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~ルギーVSイルフィス~

皆さん明けましておめでとうございます!無明星です。
『灼眼のシャナ Ⅳ(リターン)』更新してから1年が経ちました。意外と早い感じもしています。
さあ、新年一発目の更新です。それもあり張り切って書き上げたら、いつもの倍くらいになりました。
それでは本編に参ります。


 影獣十四神、その謎の一団の一角イルフィス、今まで戦ってきた影──イルフィスのいう影獣──とは違い独特の覇気を放っている。見た目は人型とほぼ一致した影とは異なり、大狼人と獣に相応しい姿をしている。

 それに加え、言語を話すことができるようだ。ならば、知能もより優れているのであろう。そう考える悠二たちは意識を高めイルフィスを注意深く捉える。

 対してイルフィスは、緊張感を全く感じさせないが、代わりに計り知れないほどの圧迫感を放つ。

 痺れを切らし先に動いたのはカトラスだ。彼は刀を大きく振りかぶり猛スピードで突進する。悠二たちもそれに追随する。

 

「くたばれ!!」

 

カトラスが大きな叫び声と共に刀を勢いよく振り下ろす。刃はイルフィスの頭を捉えた。しかし、真っ二つに切られる様子はない。

 イルフィスは額の寸前で刀身を握っていたのだ。刃は指を切り落とすどころか、傷1つつけることができないままピクリともしなくなってしまった。イルフィスが腕力と握力は想像以上に高い。

 その剛力がカトラスの左頬に激突した。たちまちカトラスは吹き飛ばされ瓦礫の上を痛々しい音をたて滑っていく。

 シャナも同様に攻撃をいとも容易く防がれると右脇腹に高速で1回転してきた左足が直撃。10mほど飛ばされてしまう。

 

「シャナ!うぉぉぉ!」

 

「甘いな」

 

大きく吸血鬼(ブルートザオガー)を振り上げた悠二の腹部にイルフィスの拳が入る。蹌踉めいたところをさらに回し蹴りで体は宙に浮きそのまま背中から叩き落とされる。身動きにがとれない悠二にイルフィスは矛先を向ける。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

 イルフィスが止めを指す直前にルギーが爆音を放ち強力な一撃を打ち込む。

 

「んぐっ!?」

 

イルフィスは1m後ろまで押し飛ばされた。

 

「チッ、どんだけ頑丈なんだ。他のやつは10mくらい吹き飛ぶぜ」

 

「あのような雑魚と一緒にしないでもらいたいな。俺は影獣を総統する影獣十四神の第9柱だぞ、それなりの力は存在する」

 

「第9柱?」

 

ルギーが聞き返すと悠二たちにも聞こえるくらいの声で説明し始めた。

 

「俺たち影獣十四神はそれぞれ『ランク』と『クラス』が与えられる。『ランク』はさっきの第○柱と小さいほど上位に位置するのさ」

 

ということはイルフィスは影獣十四神の中で9番目に位置するということになる。

 

「『クラス』はその影獣を表すもの、言わば名称ということだ。影獣十四神、第9柱、『ラドン』のイルフィス!それは俺のことだ」

 

 そういうと、イルフィスの姿が徐々に変化していく。毛が消え硬く艶やかな鱗に、鉤爪は更に磨きがかり、体は倍以上に巨大化し、背には大きな翼、牙は鋭さを増し、その姿は伝承の幻獣、龍そのものだ。

 

「我が『クラス』にかけて、貴様らの悪事を見過ごす訳にはいかんな」

 

大きな3つの顎はそれぞれ規則的に上下し悠二たちを狙う。迂闊に動けば今度こそ、死ぬだろう。緊張感の針積めたなか、イルフィスが問いかけた。

 

「冥土に行く前に1つ聞こう。グラクタスを殺ったのは貴様らか?」

 

「グラクタス?誰だ?」

 

「大斧振り回してたあの怪力モンスターだよ、貴様らが殺ったのではないのか?」

 

悠二たちがドイツに来て、最初に訪れた外界宿(アウトロー)にいたやつのことを言っているのだろうと思った悠二が答える。

 

「君が言っている影獣は僕たちが倒した影獣と多分同じだと思う」

 

「……やはり貴様らだったか」

 

さっきまでの圧迫感を放っていた姿が少し寂しさに変っていた。しかし、一瞬で元の覇気を取り戻す。

 

「あいつを倒したことは誉めてやろう。だがあいつは第14柱、『ミノタウロス』、影獣十四神の中で一番下に位置するものだ。そいつより上の奴はざらにいるってことだ。俺を含めてだ」

 

それを聞いた悠二は愕然とする。あれだけ苦労して倒した奴の上に13体もいるのだ。その事実にはシャナでさえも驚きを隠せないほどだ。

 

「あれが他にもいるってのかよ、無茶苦茶だぜ……」

 

どうやらカトラスも同様のようだ。そして、追い打ちをかけるようにイルフィスは喋り出す。

 

「そうだ、貴様らが苦労して倒したあいつでさえ、今回のために特別に影獣十四神の1柱に加わったのだ。他にもう1柱も臨時で加わっているが、それ以外の十二柱の実力は本物だ。貴様らでは手も足も出まい」

 

「それはどうかな?」

 

割って入ってきたのはルギーだ。

 

「俺はその『ミノタウロス』は見たこともねぇし、どれくらい強ぇのかも知らねぇが、少なくとも簡単にやられるつもりはねぇし、そう負けるとも思ってねぇよ」

 

「ほう?貴様のような男は今までやってきたつもりだが、そやつら同じではあるまいな?」

 

その問いかけを聞いたルギーはフッと鼻をならす。

 

「そりゃ、試してみてばすぐわかる……だろ!」

 

ルギーは轟音と共に飛び出しイルフィスの顎を捉える。その時の衝撃は辺りの瓦礫を舞い上げ、大地を裂くようなものだ。流石のイルフィスもこれには堪えきれない。ルギーの10倍近くある巨体は宙に浮き頭は胴体より後ろにまで飛んだ。

 その頭は地に着くと激しい音と衝撃を生み出す。とてつもなく痛そうな音だ。瓦礫に沈んだ巨体はすぐに起き上がる。

 

「フッ、やってくれる。この姿の我を吹き飛ばしたのは貴様が初めてだ。これは久しく潰しがいのある奴に出会えたものだ」

 

「そりゃどぉも。なら、もう一発くらうか!」

 

「面白い!受けて立とう!」

 

ルギーは再びイルフィスの頭を目掛けて一直線に飛んでいく。あと一瞬で右腕が届くというところで薄く透明な壁に阻まれた。ドラゴンをも吹き飛ばした衝撃はきれいさっぱり消滅していた。これには驚きを隠せないようだ。しかしそれもつかの間、イルフィスは間髪いれずルギーに頭突きする。隕石が直撃する威力がルギーを押し返し、瓦礫の地面に突き落とす。

 

「これが我の力だ。過去、この障壁は破った者はない。貴様に破れるか?」

 

「上等だ!俺がぶち破る前に潰れんじゃねぇぞ!」

 

再びイルフィスに光の如き速さで飛んでいく。何度も仕掛けるが障壁に阻まれ、その都度強撃をくらい叩き落とされる。しかし、ルギーは果敢に挑み続ける。

 見かねたシャナは刀を構えるが動こうとはしない。攻撃が通らない以上、無謀に飛び込むのは得策ではないと考えているのだろう。そこへルギーの言葉が飛んでくる。

 

「こいつは俺が倒す。余計なちょっかいは遠慮してもらおうか」

 

少々腹立たしくはあるがシャナは何も言わず首を縦に振る。

 

「いいのか?別に2VS1でも構わんぞ」

 

「いや、1VS1だ」

 

そう言いきるルギーを見て、イルフィスは笑い出す。

 

「随分安く見られたものだな。しかしその割には、我が守りを一度たりと越えられておらんが?」

 

「心配せずとも、すぐぶち抜いてやるよ」

 

そう言うと、ルギーはまた飛び出していった。イルフィスの頭を目掛けて突進するも、あと僅かのところで左腕は障壁に阻まれてしまう。そして、頭突きの体勢をとり、頭を大きく後ろに引く。

 

「残念だったな。くたばりな!」

 

「そうはいかない……さ!」

 

頭突きが当たる寸前、ルギーが光速の如き速さの剛拳をイルフィスの額に打ち込んだ。遂にイルフィスに攻撃が通ったのだ。空から殴り落とされた衝撃で轟音をたて塵が舞う。

 地面に叩きつけられたイルフィスは砂ぼこりと瓦礫を巻き上げ飛翔する。宙に舞った塵が飛翔するイルフィスの体に纏わりつくように垂直に伸びる。

 

「驚いた。まさか()()()()()()を狙われるとはな……やはり貴様となら、いい運動になるようだ」

 

「いずれ、その口も叩き割ってやるよ。そんときになって後悔するなよ!」

 

「笑止!この我を後悔させられようものなら、我が守りを破るのだな。一度当てた程度で浮かれていられるほど、我もこの守りもヤワではないぞ?」

 

最早、次元の違う戦闘の予兆とも言える域のレベルだ。少なくも、悠二はそう思った。

 その時、突如2人の間に1つの影が浮かんだ。戦闘体勢だった2人はその緊張感だけを残し自然体になる。

 2人の間に現れた影はゆっくりと、落ち着きのある声で喋り始める。

 

「イルフィス殿、主殿より帰還の指示が下されました。早急に、本部にお戻りください」

 

「すぐだと!?」

 

「はい、本作戦の第3フェイズに移行とのことです」

 

それをきいた瞬間、一気に固まった。

 

「そうか……命拾いしたな、我らがまともにやり合えばお前らは確実に消し飛んでいた」

 

悠二たちに向け、言い放つ。視線を戻すと、

 

「そして貴様、名を聞こう」

 

「ルギー・クランクリット、〈激昂の衝拳〉とも呼ばれている」

 

「ルギー……覚えておこう!我が好敵手よ、再戦の時を楽しみにしているぞ!」

 

 そう言い残し、巨龍は遥か上空へと姿を消した。

 ルギーはシャナたちを連れ、山小屋へと向かった。その後、あの地には瓦礫の海と静けさだけが取り残されていた。




最後まで読んで下さりありがとうございます。
今回で1章は終了となります。次回からは2章に入ります。今後の展開もぜひ楽しみに待っていてもらえたら嬉しいです。
次回作は2/20を予定しております。次回もお楽しみに!そして、今年もよろしくお願いいたします。


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《2章》影獣十四神
~広がる深淵~


どうも、無明星です。
今作より新章となります。今だ明かされない謎の多い影獣との白熱のバトルもこれから増やしていくつもりなので楽しみにしてください。
さて、新章1話目に参ります。


 悠二たちは影獣、イルフィスについて話し合っている。その話を聞いていたサーレが訪ねる。

 

「そのイルフィスってやつ、何者なんだ?」

 

「あんたらを襲ったやつの親玉だ。まあ、あいつの上にもいるようだかな。あとは……」

 

その後もルギーが簡潔に説明する。

 

「なるほどな、状況は大方理解した」

 

「それで、なにか思い当たることはある?」

 

悠二は訪ねるが、サーレは首を横に振る。う~んと全員が唸る。すると、シャナが突如何かを思い出し、あ、と声を漏らす。

 

「どうしたの、シャナ?」

 

「そう言えば、あいつらの気になること言ってた」

 

「気になること?」

 

「うん。『ランク』とか、『クラス』とか」

 

「確か影獣十四神の奴らにそれぞれあるって言ってたな」

 

カトラスの言うとおり、戦闘中にイルフィスが言っていた。

 

「だが、『ランク』はいいとして、『クラス』は何なんだ?」

 

「奴は『ラドン』だったな。そもそも何なんだ?」

 

ルギーとカトラスが言う。それに答えたのは悠二だ。

 

「以前に本で読んだことがあるんだけど、ラドンはギリシャ神話に出てくるドラゴンのことなんだ」

 

へぇ~と全員が唸る。

 

「そして、ラドンは黄金の林檎の樹の守護者として書かれているんだ」

 

「ははぁん、それであのバリアか。これは厄介だな」

 

カトラスの言うことは正しい。あのバリアをどうにかしない限り勝機は無いだろう。

 行き詰まったそのとき、シャナのケータイの着信音が鳴り響いた。電話だ。手早くとると、相手の声が飛んできた。

 

『もしもし?贄殿か?』

 

「何?爆弾女」

 

『よし、贄殿だな。手短に話すぞ!正体不明の敵襲で空港がパニック起こしてる。一般人を避難させてんだが、向こうの数が多すぎて手に負えねぇ。加勢頼む!』

 

「今どこにいるの!?」

 

『フランクフルト空港だ!黒い奴らが玉になってるからすぐわかる』

 

「わかった、すぐ行く!悠二!大至急フランクフルト空港に向かう!」

 

「わかった」

 

疾風の如く悠二たちは山小屋を飛び出していった。

 

「ルギー、黒い奴らって……」

 

「ああ、()()だ。俺たちも行くぞ!」

 

カトラスとルギーもすぐ行動に移す。それにサーレがぎこちない口調で呼び止める。

 

「すまねぇが俺は……」

 

「御前さんは相方の側にいてやれ」

 

そう言い残して、空港へ向かう。

 

 

 

 

 空港にたどり着いたシャナたちはエントランスに溢れかった黒い奴らを見つける。

 

「シャナ!あいつらって……」

 

「間違いない、影獣!」

 

シャナたちの気配に気づいた数体の影獣が振り返った瞬間、その影獣の体はシャナと悠二によって真っ二つに斬り裂かれる。その後も、次々と斬り倒していく。

 

「グォアァァァ!」

 

悲痛の声が轟くが2人の耳には入らない。一方的に圧倒していく2人の後にカトラスとルギーも到着する。

 

「ヒュ~、こりゃ俺らの出る幕なしかな?」

 

かもな、とルギーに返すカトラス。緊張感の無い話をしているにも関わらず、警戒を怠ってはいないようだ。

 その習慣のおかげか、或いは察知していたのか、音もなく背後から現れた影獣に反応する。襲いかかろうと近づいてきたところを、ルギーが肘打ちでダウンさせる。

 

「さて、俺たちも行くか!」

 

カトラスは刀を構えるとおう!、とこたえる。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
ドイツ全域で沸き上がる影獣の脅威に市民は大混乱。得体の知れないものと激突するシャナたち。果たして勝つのはどちらなのか!といった興奮を巻き起こすお話は乞うご期待の方針で。
次回は3/30更新予定です。今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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~最悪の状況~

どうも!無明星です。
この時期は忙しくて大変でしたが何とか書き上げることができました。急いだため、確認しきれない部分もありますので、もし誤字等あったときは暖かい目で読み進めてもらえると嬉しいです。勿論、誤字訂正・感想を頂けると更に嬉しいです。
前置きが長くなりましたが、そろそろ本題へ参ります。どうぞお楽しみください!


 溢れ返った影獣を片っ端から斬り倒していく。次々と沸き出てくる速度よりも速いため、みるみる減っていく。

 エントランスにいた半分を倒したところで、悠二がシャナに問いかける。

 

「シャナ!一際存在の力が高い奴を探そう!」

 

「そうだね、このままじゃ切りがない。私は右、悠二は左から!」

 

「わかった」

 

 2人はそれぞれの方向へ駆けていく。勿論、邪魔な影獣は切り崩していく。

 

 

 

 

 エントランスに溢れ出た影獣に追われ、奥へと逃げていく人々。異形のものが現れたことによりパニックを起こしているのだ。

 混乱の最中、レベッカたった1人影獣に立ち向かっていた。

 

「ぶっ飛べ!!」

 

 爆撃を受けた影獣は為す術なく宙に舞い、灰のように消えていく。

 だが、一向に減る様子はない。

 

「おいおい、一体どんだけいんだよ、こいつらは」

 

「さあね。しかし、本当にまずいなぁ」

 

 レベッカとバラルが嘆いている間にも、爆撃で出来た空間は最早埋め尽くされてしまった。それだけ多いということだ。

 レベッカは死を覚悟した。その瞬間、紅の太刀が遥か遠方で立ち上がった。それは膨れ上がった影獣を一刀両断した。忽ち影獣はその姿を失い、なきものとなった。

 紅の太刀を携えた少女はレベッカの姿を見つけると安否を確認ししてきた。レベッカ無事だと伝えると少女は安堵した。レベッカたちは今までの出来事と現時点の状況を互いに手短く伝える。

 

「なるほどな。つまり、あの影共に関しては何も分からず、そんな中でぶっ飛ばせって話か」

 

「端的に言うとそう。でもさっき話した通り、中には強力なものもいる。そいつも含めて討伐しなければいけないとなると、かなり戦力が必要になると思う。だからあなたも力を貸して!」

 

「おうよ!全部まとめて吹き飛ばしてやんよ!」

 

 レベッカはそう言うと、残った影獣を爆撃で消し去る。さっきまで黒で埋め尽くされていた地面はきれいさっぱり消え去った。

 

「よし、じゃあいくか!獣狩に」

 

 そう言い、レベッカは駆け出す。

 

「ちょっと!どこにいるのかわかるの?」

 

 レベッカは自信満々に答える。

 

「っんなもん勘に決まってンだろ!」

 

「そうだろうと思った……」

 

 呆れながらレベッカの背中を追いかける。

 

 

 

 

 悠二は只管存在の力が強い奴を探し回っていた。その際すれ違った何十の影獣を斬り倒しては空港内を駆け巡っていた。

 気が遠くなる程影獣を切り裂き走った頃、深部へ到達した。

 そこは部屋の至るところまで機械で埋め尽くされていて、中には人の倍以上の大きさのものもある。入口の上の看板には電気室とかかれている。

 中を見回してみると、誰か人がいるのを見つける。少し近づこうと足を踏み入れる。すると、中から声がしてきた。

 

「お前、誰だ?」

 

 ギョッとしたが、すぐに落ち着かせ質問に答える。

 

「さ、坂井悠二……」

 

奥から記憶を探るように復唱するのが聞こえる。程なくして思い出したように唸る。

 

「あぁ~、〈廻世の行者〉か。噂には聞いているよ。あの〈炎髪灼眼〉の想い人か」

 

 こんな状況にも関わらず少々照れている様子だ。

 

「これなら炎髪も十分食いつくだろうな」

 

 気の抜けた空気から一転、重圧の空気が広がる。

 この時、悠二は中にいるのが人ではないと悟った。それと同時に、最悪の状況かにいることを知る。




今作も最後まで読んでいただきありがとうございます。
そろそろ桜の時期ですがお花見のご予定はありますか?私『花より団子』ならぬ、『花より執筆』と花には無関心で、花見の予定はありません。その分、小説の方はそれこそ『花より団子』、内容の濃いものに仕上げますのでご期待ください。
次回の投稿予定日は5/10とさせていただきます。最後までありがとうございました。


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(トラップ)

どうも、無明星です。ゴールデンウィーク、楽しんで来ましたか?
知っている方も多いかもしれませんが、GWは昔、日本の映画業界によって産み出されたものなんですよ。この期間に映画を上映したところ、売上が跳ね上がり、それをキッカケにGWと名付けたと言われてるようです。それが現代でも大連休として続いてるということですね。
そんなGW明けの1発目の投稿です。どうぞお楽しみください。


 最悪の状況かに置かれた悠二は戦闘体勢をとる。

 

「やめておけ、君如きでは相手にならん」

 

 暗闇の奥に潜む声が悠二を押し潰す。まだ戦っていないにも関わらず、圧倒的すぎる力の差に手が震える。

 ましてや、姿も見えないこの状況下でこれだけの威圧感の持ち主だ。まともに渡り合える相手ではないことを悠二は悟った。

 

「なら、このまま逃げるのが正解かな?」

 

「それは不可能。もし逃走を試みた場合、即座に始末する」

 

 脱却の道も絶たれ、万事休す。

 その時、悠二の後ろから微かに足音が聞こえてくる。その音は徐々に近づいてくる。悠二が振り返った視線の先に、赤々ともゆる髪をゆらしたシャナが駆けてきた。

 

「きたか」

 

 未だ姿を見せない何者かが呟くのを聞き取ったのか、シャナはその者を睨み付け、右手に持った大太刀を構える。太刀は熱をおび、紅蓮に染まる。

 それを確認した瞬間、奥に潜む気配は薄っすらと消え始める。シャナは逃がすまいと、速度を上げる。

 超特急で発電室に飛び込んだその時、強烈な爆発が起きた。爆炎は発電室と入口前にいた悠二を飲み込む大規模なもので、2人の姿は炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 カトラスたちが空港の中に入ったその時、突如轟音と衝撃が響いた。

 

「なっ!?」

 

「何が起きた!?」

 

 2人して驚いた。そこから冷静に戻るのは早かった。

 

「爆撃か?どこからだった?」

 

「地下だ!多分2層ぐらい下だ」

 

 カトラスが地面を軽く叩き答える。

 

「この下には…………電気室か!」

 

「おいおい嘘だろ?」

 

 ルギーの口からでた言葉にカトラスは耳を疑う。

 

「あいつら、ここで何かおっ始める気かよ!」

 

「わからん。だが、ただ事じゃ済まねぇぞ!とにかく、電気室がやられた以上ほぼ全てのシステムがストップしちまったんだ。中に残ってるやつがいないか調べるぞ!」

 

「あいよ!」

 

 カトラスがそう叫ぶと、また地下で大きな振動が起きた。

 

「なっ!?またか!」

 

「今度は近いぞ!」

 

 2人がそう言うや否や、再び爆破した。今度はルギーとカトラスの目の前の床が吹き飛び、ポッカリと穴が開いた。

 

「何をするつもりだ?」

 

 ルギーが呟き、穴の中を警戒した。カトラスも同様だ。ゆっくり近づき、覗くと人影が見えた。

 2人は素早く戦闘体勢に入る。しかし、その人影からは思いもしなかった言葉が出てきた。

 

「お~い、こいつら引き上げてくれ!」

 

 人影は両手を振り助けを求めてきた。

 よく見ると、腕に奇妙なブレスレットをつけた女性、レベッカだった。その足下には、倒れたシャナと悠二がいた。

 

「わかった。カトラス、近場に引っ張りあげられるものないか?」

 

「探してくるわ」

 

 探しにいく彼に向け頼むと言い、次に穴の底にいる女性にもう少し待ってくれと叫ぶ。

 

 

 

 

 

 5分後、カトラスがロープを持って帰ってきた。それを使い、穴から3人を引っ張り上げた。

 

「こいつら爆破に巻き込まれたんだろ。大丈夫か?」

 

 燃えてボロボロになった悠二たちを見て、カトラスは尋ねる。

 

「この2人なら大丈夫だろ!ま、すぐに救い出したってのもあるだろうけど」

 

 電気室は今でも火の海だ。あと少し遅れていたら、助からなかったかもしれないのだ。

 

「……ところで、あんたらは?」

 

 とレベッカは尋ねる。

 

「俺はルギー、そして隣がカトラス」

 

「どうも!カトラスだ。あんたは?」

 

「レベッカだ。よろしく!」

 

 手短に自己紹介を済ませる。

 

「とりあえず、周りに敵はいなさそうだな。後は中にいる人の避難だな」

 

「こっからは俺たちがいく。レベッカは2人の様子見だ」

 

「あいよ、任せとけ!後は頼むぜ、ルギー、カトラス」

 

 レベッカはルギーに親指をたてて送り出す。2人も同じポーズで答え、空港の奥へ入っていく。

 中にいた人たちはルギーとカトラスの誘導で安全に脱出し、30分で建物内の人は全員避難した。その間にシャナと悠二も目を覚まし、フレイムヘイズ全員が生還した。




最近シャナたちがやられ過ぎではないのかと私自身思うことがあり、今後のパワーバランスがおかしくなるかもしれません。そうならないように出来るだけ努力しますが、もしおかしくなっていましたら、暖かい目で見守っていただけるとありがたいです。
次回作は6/20を予定しております。リアルも忙しく、至らぬところもあるかもしれませんが、何卒よろしくお願い致します。
最後まで読んでくださった読者様、ありがとうございました。


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~動き出す計画~

どうも!無明星です。
もう夏ですね。灼熱の太陽照りつける中、青々とした海で水遊びする時期。白い砂浜でスイカ割り、波に乗り海をかけるサーフィン。そして、十人十色の水着姿。ここでもやりたいな~と思いつつ、続きを考えていました。
何はともあれ、本編はしっかり完成させたので、どうぞお楽しみください。


 崩壊寸前の空港から脱出したシャナたちはサーレたちが待つ山小屋へ退いた。悠二とシャナは戦いの最中受けた傷を癒すことに専念し、奥の部屋で眠りについた。残りのメンバーは現状について議論中だ。

 

「まさか、あの『炎髪灼眼』に深手を追わせるとはな。御嬢さん、レベッカと言ったか。何か見なかったか?」

 

 ルギーの問いに、レベッカは首を横に振り答える。

 

「いや。俺がいったときには、すでに爆破のあとだったよ……」

 

「なるほど、向こうに爆弾使いがいるってことか」

 

「おいおいどうすんだよ、このままノープランで当たりに行けば全滅は回避できねぇぞ」

 

 カトラスの言うとおり、遠距離爆破や遠隔爆破が可能ならば近づくことすら出来ないということもあり得る。そうなれば、完全に劣勢にたたされてしまう。ルギーは暫く悩むと、重い口を開く。

 

「ここは、爆弾のプロの知恵を借りるしかないな」

 

 そう言って、レベッカの方に視線を送る

 

「俺が得意としてるのは、自在法を飛ばすのと照射するのだ。どっちも爆破する場所はある程度はわかると思うぜ」

 

「そうか。向こうも同じ条件なら、回避は可能だな。だが問題は……」

 

 この場にいる全員がそれを察する。相手がこちらの知らない自在法を使ってくる可能性があることを。

 まず、レベッカが先に話す。

 

「俺が出会った中では、そんな奴はいなかった」

 

「そうか、初見でどこまで見切れるか」

 

 ルギーがそう言うと、全員揃って唸る。

 すると突然、勢いよく開かれた扉から人影が飛び出してきた。

 

「うわっ!?なんだ!?」

 

 レベッカが驚いて声をあげる。

 その人影は、膝と思しき部分に手を当てリズミカルに上半身を上下させる。そして、途切れ途切れの声を出す。

 

「ルギー、さん、大変、です……」

 

「成瀬か。どうした、何かあったのか?」

 

 成瀬と呼ばれた女性は息を切らしたまま話を続ける。

 

「スイス、フランス、その他5ヶ国、各地に点在する外界宿(アウトロー)、その大半が……か、影たちによって…………陥落しました」

 

 場の空気が、一瞬にして重くなった。

 

「とうとう本格的に動き出したか……現地にいた奴らはどうなった?」

 

「先程よりコンタクトをとっていますが、未だ応答はありません。恐らくは……」

 

「わかった、それ以上は聞かないでおこう。影共は、まだそこにいるのか?」

 

 成瀬は頷き、答える。

 

「現在、襲撃を受けた位置より10㎞圏内を警戒域とされ、未だ出てきたという連絡は入っていません」

 

「援軍は?」

 

「暫くかかると……」

 

「そうか。あんがとな」

 

 そう言うと、ルギーはレベッカたちの方へ顔を向ける。

 

「聞いての通り、各地で暴れまわってるようだ。ここは俺らで迎撃するぞ!」




夏期特別編を出そうかなと思っていますが、今は未定です。ボツになるかもですが、もし出すと決めたときは早急にお伝えいたします。
次回は7/30に更新予定です。ですが、遅くなってしまうこともあり得ますので、ご了承ください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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~悪魔の歌声~

どうも、無明星です。
最近、なにかと忙しくてバタバタしてましたが、何とか間に合いました。
では早速、お楽しみください。


「俺らで迎撃する!カトラスとレベッカは俺と一緒にフランスへ向かう」

 

「あいよ!俺が全部ぶっ飛ばしてやるよ!」

 

「オーケー、面白くなってきた」

 

 レベッカとカトラスが意気揚々に答える。

 

「成瀬は、徐々に警戒域を縮小するよう他の場所に伝えろ。何かあればすぐ知らせろ。ここには固定電話もあるからそれで足りるな」

 

「はい、お任せを」

 

 それを見たルギーは頷く。そして、迎撃隊の2人に向けて叫ぶ。

 

「よし、行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

 

 

 

 フランス、とある外界宿の入口付近に1人の女性が居座っていた。

 その彼女の容姿は、三大美女にも劣らぬ美貌に完璧すぎるほどの顔立、と絵にかいたような美しさをその身に宿していた。まさに、彼女の姿は美の具現化そのものだ。

 今ここに生きた人間がいたならば、彼女の魅力に引き寄せられていただろう。そう、()()()人間がいたならば。

 

「おい、誰かいるぞ」

 

 襲撃の連絡を受けたルギーたちが飛んできた。そして、3人が目にしたものに驚愕した。

 視線の先には、なんとも美しき女性がいた。同性に対しても、魅了するに十分すぎるだろう。そして、眼を奪った女性の周りには、人が山積みになっていた。何十もの人の骸が彼女を取り囲んでいた。

 

「な、なんだよこれ……」

 

 あまりの様子にカトラスは言葉を漏らす。

 

「……これは、御前さんの仕業か?」

 

 ルギーが表情には出さないものの、恐る恐る尋ねる。こちらに気づいた女性は、淡々とした表情で答える。

 

「そう、驚いた?」

 

「何者だ?」

 

 ルギーの質問に、彼女はまたしても同じ表情で答える。

 

「エスター・レオッサ。影獣十四神の第13柱、『セイレーン』のクラスを与えられし者よ」

 

「そうか、お前も影共の頭か」

 

 カトラスは構えながら喋る。

 

「正確には『仮の』だけどね。私と『ミノタウロス』は今回のために十四神の座についたにすぎない」

 

「そういえば、イルフィスもそう言ってたか」

 

「そう……じゃあ、貴方たちがイルフィスを退けたっていう」

 

 エスターは仄かに興味を示した。そして、出てきた言葉が、

 

「貴方たちは私を満たしてくれる?」

 

 3人は意味不明な問いに困惑すると同時に、強烈な悪寒を感じる。

 エスターは大きく息を吸い込むと、名歌手並の美声で歌い始める。先程感じた悪寒とは裏腹に、体の芯に溶け込んでいくような和やかなものだ。

 

「……なんのつもりだ?」

 

 彼女にはカトラスの言葉は届かず、戦場のど真ん中で歌い続ける。

 

「ッ!耳を塞げ!」

 

 突如、ルギーが慌てた様子で叫んだ。レベッカとカトラスは反射的に耳を塞いだ。そのつぎの瞬間、エスターの周りの人たちがよろよろと起き上がり始めた。そして、ルギーたち目がけ襲い掛かっていく。

 

「おいおい、どうなってんだよこれ!?」

 

「死んでる奴がいきなり襲ってくるなんて、ホラー系でしか見たことねぇんだけど」

 

「全くだ。これは面倒だな……」

 

 声はあまり聞こえない状況なのだが、何故か3人は言葉を交わしている。微妙に緊張感の感じられない会話をルギーは一転させる。

 

「敵の攻撃法は不明だが、十分気張れよ!じゃねぇと多分彼奴等の二の舞になるぞ」

 

「もとより承知の上だっての!」

 

「応ともよ!」

 

 強気なのか、端に馬鹿なのか、カトラスとレベッカは自信過剰に答える。その意気を見たルギーは頷き、

 

「まず、やることは……」

 

「「アイツをぶっ潰す!!」」




いよいよ夏本番です。ルギーたちのように熱くなるのもいいですが、熱中症にはご用心を。
次回投稿予定日は9/10です。十四神戦楽しみにしていて下さい。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。


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~音無の狙撃手~

どうも無明星です。
以前お話した夏限定版の作品ですが、忙しくて出来なかったのともう少しメンバーがほしいという理由でボツになりました。楽しみにしてくださっていた方々には申し訳ありません。来年は出来たらいいなと思っていますので、どうかご理解いただきたい所存です。
では、今作をお楽しみください。


 エスターが歌い始め、山積みになっていた人たちがゾンビのような動きで、ルギーたちに襲いかかる。

 

「どうすんだよ!耳を塞いだままじゃまともに戦えねぇぞ」

 

 カトラスの言葉は他の2人には 聞こえないが、同じことを思っていたところだろう。

 攻撃がノロノロなために回避はできるが、それも時間の問題。数が増えてしまえば、万事休すだ。

 

「くッ……」

 

 突如、エスターがよろめき、腕を押さえた。その瞬間、襲ってきた人たちは、糸が切れた操り人形のようにバタバタ倒れていった。

 

「なんだ?歌がやんだのか?」

 

 ルギーは耳から手を離し、様子を確認する。レベッカとカトラスも同じく辺りを見回す。

 すると、ケータイのベルが鳴り出した。ルギーのものだ。胸ポケットから取り出し、2つ折りのケータイをパチンと開く。

 

「俺だ。どうした?」

 

『援護に来た。って言いたいとこだけど、カノちゃんが撤退させるよう言われたからさぁ。そんで、私がバックアップに来たわけ』

 

「わかった、すぐに下がる。感謝するぞ」

 

『へっ、いいってのよ。早く戻ってきなよ』

 

 ルギーはぃと答え、電話を切る。そして、間髪入れず2人に伝える。

 

「撤退だ。この隙に逃げきるぞ!」

 

「え?でも、今こそ狙い時じゃ?」

 

「指示が出てるらしいから、それは仕方ない。急ぐぞ」

 

 カトラスの気持ちはルギーにもわかるが、それ以上に危険な感じがしたのだろう。3人は来た道を戻る。

 

「……逃げられると思わないことね」

 

 

 

 

 5kmほど後退したルギーたちは、救援に来た者と合流する。

 

「いたいた。ルギ~、無事で良かったよぉ!」

 

「すまないな、野々宮。助かったぜ」

 

「いいのよ。カノちゃんも、こっち向かってるらしいよ」

 

「わかった。ありがとな」

 

 レベッカはルギーに話しかける。

 

「なぁなぁルギーさんよ、その人は?」

 

「あぁ。こいつは野々宮佐代、さっき救ってくれたやつだ」

 

「よろしく!」

 

 佐代は2本立てた指を額に当てウインクして挨拶する。

 

「お転婆なとこはあるが、狙撃の方は敏腕だ」

 

「へぇ~、俺はレベッカ。爆撃なら俺に任せろだ!」

 

「自己紹介は済んだかしら?」

 

 声の方を振り向くと、エスターがいた。

 

「おまッ、いつからいた!?」

 

「ん~、つきいさっきかなぁ」

 

 のんびりとした声で答えるエスターに、一同は警戒心を高める。

 

「あら、そんなに睨まないでよぉ。ん?そこの子はさっきはいなかったわよね?」

 

 佐代のことを指しているのだろう。そう思った彼女は自分を指差し首をかしげる。

 

「そうそう。もしかしなくても、私を撃った子でしょ?」

 

「うっ、知ってたのか……」

 

「ふふ、さあどうかしら」

 

 笑みのある声とは裏腹に、よどんだ空気が漂う。

 

「でも、ただやられたままで終わらないけど」

 

 次に出てきた言葉は、今までのものとは比べ物にならないくらいの殺気が詰まっていた。

 

「みんな気をつけて!あの女の歌声に魅了されたら、虜にされちゃうから!」

 

 佐代が慌てて伝える。それを聞き、全員耳を塞ぐ。

 

「あら、よく知ってるじゃない。でも、私は歌のエキスパートよ。何も魅了するだけじゃないこと教えてあげる」

 

 そう言うと、息を吸い込み叫ぶ。

 

「うっ、ぐがぁぁ!」

 

「耳が、裂けそう……」

 

「なに、が、起きてる、んだ?」

 

「これは……重低音か」

 

「せいか~い」

 

 エスターは指をならしルギーを指す。

 

「いくら耳を塞いでも、振動数の少ない低音はそれを掻い潜れるのよ。あとは、それで直接壊しに行くだけ」

 

 そして、攻撃を再開する。これには、為す術がない。

 

ドォォン!

 

 突如、凄まじい音と光が辺りを包んだ。エスターは叫びをやめ、耳を押さえた。

 

「うぅ、炸裂音?何が起きたの……」

 

 彼女は苦しそうにしている。何が起きたのかルギーたちにもよくわからなかった。そこへ1本の電話。

 

「俺だ」

 

『すぐに下がて、あとは私がやる』

 

 そう言って、ボルトアクションする音が伝わってきた。

 

「離れろ!」

 

 ルギーが慌てて叫ぶと、みんなエスターから遠退いた。電話からは引き金を絞る音と共に、ひと言聞こえた。

 

『チェックメイト』




最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今回初登場のキャラについては次回辺りで話していこうと思いますので、そこはもう少しお待ちください。
次回は10/20投稿予定です。次回も楽しみにしていてください。


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~セイレーンの涙~

どうも、無明星です。
今回は新キャラの説明をしますと、前回の最後辺りで言いましたが、あまり詳しい説明ができてないこと、大変申し訳ありません。ですが、重要な回になりますので、どうか最後まで読んでくださるとありがたいです。
最後の方も長くなりますので、ここで本編に入らせていただきます。でわ、今作もお楽しみください。


 エスターを撃ち仕留めた彼女は、ルギーたちのところにやって来た。

 

「カノちゃんすごい!」

 

「そうでもないよ。佐代さんも十分の腕前だよ」

 

「いやぁ、そういわれると照れるなぁ」

 

 佐代は頭をかくと、レベッカに彼女を紹介した。

 

「この人はカノちゃん、成瀬歌音。私のお師匠さんで、『音無の狙撃手』って言われてるんだよ」

 

「ちょ!?そんなことまで言わなくていいよぉ。成瀬歌音です。レベッカ・リードさんですね。お噂はかねがねお伺いしています」

 

「あれ?あんた、あの山小屋に駆け込んできた奴か?」

 

 レベッカは少し驚いた様子だった。はい、と答える歌音は少し恥ずかしそうにしていた。この時の様子は、山小屋に駆け込んできたときとまるっきり同じ雰囲気を放っていた。

 

「さて、教えてくれるかしら?エスターさん、だったかな」

 

「わ、わざとヘッドショットしなかったのはことためね……」

 

 地面で野垂れるエスターに話しかける歌音は、電話越しに感じた凄みのある雰囲気に変わっていた。

 

「で、わたしにききたいことは?」

 

「あなたたちの目的、話してもらうわよ」

 

「……」

 

 エスターはしばらく黙り混むと、重い口を開いた。

 

「いいわよ、おしえてあげる」

 

 すでに虫の息の彼女は深く息を吸い、話した。

 

「このせかいの、支配よ」

 

「どこにでもいるなぁ、そういうことする奴」

 

 口を挟むカトラスをルギーが制した。

 

「いま、存在の力をあつめて、勢力を、ふやしているの。やがて、すべてを飲み込むほどに、ね」

 

 存在の力を大きく感じたのは、影たちが蓄えていたかららしい。

 

「そう。なら、全員叩き潰す他無さそうね」

 

「ふふ、そうするといいわ。でも、ひとつだけ、おねがいがあるの」

 

「別に聞く義理はないけど、言ってみなさい」

 

 歌音は膝をつき、エスターに顔を近づけた。エスターは、手を震わせながら歌音の服の裾をつかんだ。涙を流し、震える声でエスターは懇願した。

 

「あのひとを、ユーサを助けて。あのひとは、だまされてるの。あの女のせいであのひとは、あのひとは……」

 

「落ち着いて話なさい。しっかり聞いてあげるからさ」

 

 エスターの裾を握りしめた手を、彼女はそっと包み込んだ。

 

「教えて、一体何が……」

 

 彼女の言葉を鈍い音が断ち切った。気づけば、エスターの体に棒状のものが突き刺さっていた。場所は人間の心臓部だった。

 裾を握る手は歌音の手をすり抜けて、スッと地面に落ちた。

 

「ちょっと!しっかり!」

 

 歌音はエスターの肩をさするが、返事はなかった。まだ小さく息は聞こえたが、もう限界だったろう。

 ルギーが辺りを見回し、叫んだ。

 

「あそこだ!2人いるぞ」

 

「おやおや、どうやらこちらの存在に気づいたそうだ。どうするかね?ニザー・リリス殿」

 

「どうするもなにも、今のあの子達じゃ相手にすらならないわ」

 

 ルギーの指す方向の先には、一軒家の屋根に立つ2つの影だった。ひとつは、背丈ほどの魔法棒を持った老人。もうひとつは、屋根に腰掛けるドレス姿の長髪女性のものに酷似していた。

 老人の影が先に動いた。

 

「はじめまして。私は〈賢者〉アルヴァトロ、十四神においては第5柱に座する者です。以後お見知りおきを。そして、彼女は〈魔竜の女皇〉ニザー・リリス。十四神の座は第3柱である」

 

「アルヴァ、何勝手に私のことも紹介してるわけ?ま、手間が省けたからいいけど」

 

「それは、本当か?」

 

 ルギーが目を見開き、彼らに問いかけた。

 

「如何にも、私はアルヴァトロであるが」

 

「なぁ、何かあったのか?」

 

 レベッカの問いに少し渋る様子を見せたルギー。意を決したルギーはゆっくりと話した。

 

「彼らは、元フレイムヘイズだ」

 

「ま、マジかそれ!!?」

 

 驚愕の事実に、驚きを隠せなかった。敵がフレイムヘイズだってことももちろんあるが、彼らが得体の知れない者になってしまったことに衝撃を受けた。

 

「さて、今回は君たちの抹殺に来たわけではないし、ここで君たちと戦う理由もない」

 

「そうね。エスター(あのこ)の始末は済んだことだし、何より早く帰って寝むりたいわ」

 

「そういうことで、私たちはこれで失礼するとしよう。次に会うときは、恐らく決着をつけるときだろう。それまで、暫しの別れだ」

 

 出来ることなら2度と会いたくないと思った 一同。

 アルヴァトロとニザーは一瞬にして消え去った。




 皆さん最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
 次回より新章へ参りますが、キャラ説明が追い付いてない辺りに関しては申し訳ありません。次回辺りにはある程度説明できるように致しますので、どうかそれまでお待ちください。
 次回作更新は11/30の予定になります。これから戦闘は佳境にはいるつもりなので、バトルシーンを楽しみにしてくださっている方もそうでない方も楽しんでくれたら幸いです。
 長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。


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《3章》超新星《ノヴァ》
~特訓~


皆さんお待たせしました。無明星です。
いろいろ事情が重なり手をつけるのが遅くなってしまい、更新時間をオーバーしてしまう事態になってしまいました。お待たせしてしまい、本当にごめんなさい。
次に、本編の話に移りたいと思います。今作から新章突入となります。新たな展開に乞うご期待。
それでは、本編に参ります。


 エスターを看取ったあと、一行は山小屋へと帰還した。 そして、シャナと悠二に事の顛末を話した。

 

「そう、そんなことがあったの」

 

「影と言っても、一概に悪霊という訳ではないのか」

 

 悠二の問いにルギーが返した。

 

「どうだろうな。正直な話、あいつのことを信用しきれるわけじゃないからな」

 

 実際、エスターのあの言葉が本心かなど、分かりはしない。疑うのにも無理はない。しかし、歌音がそれを否定した。

 

「あの子は、本気だった。心の底から救ってほしいって、言ってた。私は信じる」

 

「相変わらずだな。ま、俺も同じ意見だけど」

 

 カトラスも歌音に賛同した。

 

「カノちゃんとカトラスさんは情が深いですからね。ああいうのは放っとけないんですよね~。さっきはああ言ってたルギーや、私も含めて」

 

「理論的に考えたらの話さ。あの状況で疑うほど、俺もひねくれてはいねぇさ」

 

 結局、全員彼女のことを信じているようだ。

 

「ところで、影側にいるフレイムヘイズはいったい何者なんだ?」

 

 そう悠二が訪ねた。ルギーはそれについて語りだした。

 

「あいつらは、俺のかつての戦友だ。〈魔竜の女皇〉ニザー・リリス、そして、〈賢者〉アルヴァトロ。2人とも相当の実力者だ。とくに、アルヴァトロの方が厄介だ」

 

「でも、彼は第5柱で、〈魔竜の女皇〉より低かったよね?」

 

 さらに悠二が問いかけ、ルギーもそれに答えた。

 

「確かに、純粋な実力勝負じゃあいつには劣るが、仮にも〈賢者〉だ。戦闘においては、数倍の実力に等しいだろうぜ」

 

 〈賢者〉と言うだけあり、戦闘技術、戦略、戦況への対応力が遥かに高いということを示しているということだ。ワンパターンで襲ってくる化け物より、多彩な策略を持つ敵の方がよっぽど強い。

 おまけに、実力でいえば、その上にまだ4人もいると言うのだから、戦況はかなり厳しくある。

 そこで、ルギーが提案を持ち出した。

 

「そこでだ、今からあんたらには強くなってもらう。このままじゃ、またやられるのがオチだ」

 

「確かに、強くなって、あいつらと対等以上に渡り合えないとどうにもならないしな」

 

「そうだ。ってな訳で、今から特訓してもらう。〈炎髪灼眼〉と〈廻世の行者〉は剣術を、〈輝爍の撒き手〉には体術を鍛えてもらう。2人の方は、カトラス、お前さんに任せていいか?」

 

「あいよ~。最近どうも体が鈍ってたところだしちょうどいいわ」

 

 カトラスは張り切った様子で肩を大きく回した。

 

「で、〈輝爍の撒き手〉の指南は俺がやろう。今の倍は強くなってもらう」

 

「おう、望むところだ!」

 

「悠二、私たちも頑張るよ」

 

「わかった。カトラス、よろしく頼む」

 

「あぁ、任せろ」

 

 全員、意気込んだところでルギーが合図した。

 

「よし、さっそく特訓、開始だ!」




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。そして、更新が遅れましたこと、申し訳ありませんでした。
ところで皆さん、今年も冬がやって来ましたが、例年とは異なり暖かい日が多いですね。ちなみに、この作品の季節は初夏辺りの設定で進めています。この作品を書いていると、そういえば今は冬なんだなと思ってしまうことが多々ありました。これから寒くなっていく時期、皆さん体調にはお気をつけください。
次回の投稿予定日は年明けの1/10とさせていただきます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
それでは少し早いですが、よいお年を!


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~~イクリプス計画~~

どうも皆さん、無明星です。
この作品も気づけば2周年を迎えました。しかし、何かと忙しかったりで、記念作品を作る余裕がありません。申し訳ありません。ですが、このシリーズは必ず完結させるので、どうかよろしくお願いします。
それでは、本編へ参ります。


 カトラスと悠二は剣を交差させ、互いに力を込める。

 

「だいぶついてこれるようになったな、悠二。だが!」

 

 カトラスは言葉に力を込めるのと同時に、剣の力を抜いた。悠二は勢い余って前に体制を崩した。その隙を逃さず、カトラスは悠二の背中を軽く峰を当てた。

 

「あたっ!」

 

「まだまだ甘いぞ。あんまり単調になりすぎんなよ」

 

「それくらい、わかってるよ」

 

 そう言って、悠二は立ち上がった。

 

「はいはい、タイムアップよ。結局、10本中悠二が取ったのは0本ね」

 

 シャナの合図で、ふたりは戦闘を終了した。

 

「せめて1回は勝ちたかったな」

 

「まぁ、最後は中々よかったんだけどな」

 

 カトラスは刀を鞘に納めた。悠二も吸血鬼(ブルードザオーガ)を栞へ格納させた。

 特訓を始めてから、約30分くらいたった。まず、シャナとカトラスが5分間戦い続けた。その次に、悠二とカトラスが5分間戦い続けた。そして、最後に悠二とシャナが戦い、間に休憩を若干挟んでそれを繰り返した。

 ここまで、シャナはカトラスに4勝7敗1分、悠二はカトラスに0勝12敗1分で、シャナとは0勝7敗2分だった。

 悠二はふたりに一方的に叩きのめされ、シャナはカトラスの動きにはついていけたものの、力勝負となると彼に部があった。

 ふと、気になった悠二がカトラスに尋ねた。

 

「カトラスは、その戦闘術はいつぐらいから身に付けたんだ?」

 

「さぁな、正直戦いに身を投じる以前のことは覚えてないしな」

 

「じゃあ、最初からそんな強さだったのか」

 

「まさか、初っ端は敗走なんてしてたぜ。半分以上無茶しすぎたせいだけどな。それでも、今の力には及ばなかったかな」

 

  彼は一拍おき、話した。

 

「そんな俺を、ルギーさんたちが鍛えてくれたってわけ。そして、戦い方のイロハを教えてくれたのが、さっきの話で出たアルヴァトロだ」

 

「それじゃあ、その人はカトラスのお師匠さんなのか?」

 

 悠二の質問に、カトラスは無言で頷いた。

 

「……つらく、ないのか?」

 

「つらいさ。でも、あの人は昔俺に言ってた。『ひとつひとつの行動に、それぞれ意味がある』って。あの人は意味のないことはしないさ。例え、俺にその意味がわからないとしてもな」

 

 

 

 

 

 暗い闇の中、長テーブルを囲うように14の座席が置かれ、そこに座る12の影があった。その内の1体が喋りだした。

 

「おいおいボス、俺らを集めてどうしたよ?つい先日も集まったろ」

 

「五月蝿いぞイルフィス。リーダーが緊急だといっているのだ。黙って聞くこともできんのか」

 

「うるせぇのはお前も同じだろ!俺より上だからって指図するな、バサロ」

 

「お二方、早急に会議を始めなければなりません故、そこまでにして頂きたい」

 

 以前、ルギーとイルフィスの戦いに割って入った声がふたりを止めた。

 

「では、はじめようか……我らが世界を手にいれる、イクリプス計画を」




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
いよいよ、シャナたちと影獣の本格的な対決になります。皆さん、期待していてください。私も、その期待に答えれるよう力を尽くします。
次回の投稿予定日は2/20です。最後まで見てくださり、ありがとうございました。次回も楽しみに!


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~嵐の前の静けさ~

どうもみなさん、無明星です。
そろそろ季節の変わり目、いろいろ忙しくなる時期ですね。この時期は疲労が溜まったり、体調を崩しやすいです。私の周りでもそういう人もいましたので、みなさんもお体にはお気をつけください。
それでは、本編に参ります。


 シャナたちが特訓を始めてから、すでに1週間経とうとしていた。その間、影獣が攻めてきたという報告は一切ない。シャナたちは疑問を抱きつつも、特訓を続けるのだった。

 

「うん。だいぶ、動きがよくなったな悠二」

 

「カトラスのスパルタのお陰でね!」

 

 激しい打ち合いを繰り広げる2人。特訓の成果もあって、悠二の剣術はみるみる上達し、今ではカトラスと互角に打ち合えるくらいになった。

 悠二の大剣とカトラスの刀が火花を散らし、ふたつの軌道は交錯する。それをシャナたちが端から見ていた。

 

「彼、ずいぶん成長したね」

 

「カノちゃんの言う通り、初めの頃とは見違えるよ」

 

「悠二は努力家だから、こういう特訓はよく合うタイプなの」

 

 シャナの言葉に、成瀬歌音と野々宮佐代は納得したように頷いた。

 

「よし!終わりだ」

 

「あぁ、わかった」

 

 そう言って、2人の白熱の戦いは終了した。戦い終えた悠二とそれを見ていたシャナは互いに歩み寄った。

 

「お疲れ様、悠二」

 

「ありがとう。シャナ」

 

 2人は暫く見つめ合うと、何も言わずに手を叩いた。

 

「まったく、見せつけてくれるよ」

 

 少し離れた場所で、カトラスが小さく愚痴をこぼした。そんな彼に、歌音が近づいていった。

 

「仲睦まじくていいではないですか」

 

「ま、確かにその通りだな。見てて悪い気はしないな」

 

「あの2人も、安心して過ごせる日々が来るのを願うばかりですね」

 

「そのためにも、強くなってもらわないとな」

 

「あの2人のことだし、そこまで心配しなくても大丈夫よ」

 

 佐代も彼らの話に混ざってきた。

 

「そうだな。悠二は十分についてこれてるし、シャナは素質がいい。それでいて実践経験も数多くこなしてきたわけだからな。今回の件で以前より遥かに強くなってるはずだ」

 

「あとはルギーさんの方ですね」

 

 3人が話していると、轟音が伝わってきた。彼らはその方角へ視線を向けた。そこでは、激しい光の柱がたっていた。それに次いで、今度は爆発音と共に爆炎が立ち上った。

 呆気にとられた3人は脱力しきった声を出した。

 

「あっちは問題なさそうだな……」

 

「えぇ、そうみたいね……」

 

「お、お師匠たちがそういうのなら、心配ないね……」

 

 

 

 

 山小屋を挟んでシャナたちと反対側の岩場では、ルギーとレベッカがいた。2人は大岩の多くあるここで特訓していたのだ。

 

「どりゃぁ!」

 

 レベッカが爆破を付与した蹴りで大岩を粉砕した。

 

「まだまだ、塵になるまで玉砕するんだ。こうだ!」

 

 続いてルギーが光輝く拳を大岩に放った。たちまち、光の重圧に押し潰され、岩は粉々になった。

 

「なんの、まだ行けるぜ」

 

 このあと数時間の間、轟音と激光が岩場に降り注いだ。




ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
最近、ここで何を話したらいいのか悩んでいます。正直、影獣十四柱とシャナたちの決戦を書こうと思ったのですが、シャナたちの強化をしておきたくてこの話を書きました。大変長らくお待たせいたすこと、ここでお詫びいたします。次回は影獣十四柱登場させますので、どうかもう少しだけお待ちください。
次回の投稿予定日は3/30です。みなさん最後までありがとうございました。次回もよろしくお願いします。


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~決戦の開幕~

皆さんどうも、無明星です。
まず、今回更新が遅れてしまったこと、大変申し訳ありませんでした。楽しみにしてくださった皆さんには謝罪の一言と感謝の言葉しかありません。
大変長らくお待たせいたしました。本編、どうかお楽しみください。


 あれから特訓を重ねたシャナたち。以前よりも遥かに強くなっていた。今の彼女たちなら、影獣十四柱と渡り合えるであろう。

 そして、いよいよ決戦の時が近づいていた。

 

「成瀬、あれから動きはあったか?」

 

「今のところ無いわね。とりあえず、各地で地元の見張りの部隊をつけてるから、動きがあったらすぐに知らせが入るはず」

 

 歌音は携帯を持ち上げ、そう言った。

 

「そろそろ、奴等も動きを見せんだろう。こちらも、それなりの心構えをしておかないとな」

 

「だが、こっちから何もできないのは、いたいよな。しかも、向こうの戦力は未知数。結構不利な状況だぜ」

 

 カトラスの言葉に誰もが唸った。

 

「やっぱ、頭数増やすのが一番の最善策か」

 

 とルギーは顔をしかめて言うのだった。

 

「私たち、他の組織とあんまり関わりないからね」

 

 歌音はため息をつくのだった。

 

「あはは……そう言い切っちゃうところ、さすがカノちゃんというとこだよ。私だったら心メッタメタにされてるとこだよ……」

 

「と、言うわけだ。こっちには宛がないんだ。つまり、悠二頼みになるんだが……」

 

 カトラスは悠二の方を見つめ、答えを待っていた。

 

「う~ん。フレイムヘイズの軍勢が加勢してくれるだろうけど、それだけじゃ足りないよね」

 

「そうね。出来ればその倍の軍勢で迎え撃ちたいところだわ」

 

「そうだね。中々厳しいかな」

 

 悠二とシャナは顔を見合わせ話し合った。そこにルギーが割って入った。

 

「因みに、どのくらいの戦力になるんだ?」

 

「ただの影獣相手なら、空港にいた50倍はなんとかなる

 

「マジか!?十分戦力の補填になるぜ」

 

 ルギーは興奮のあまり、勢いよく立ち上がった。カトラスは換気の表情を浮かべながら、真剣に話を進めた。

 

「あと問題は、残りの十四柱だな。残り12体もいるんだ。気を引き締めないと、一気にやられることもあり得るからな」

 

「そこは、特訓の成果でなんとかなるさ。そのために、努力してきたんだからよ」

 

 レベッカは気合いの入った拳を突きだし、言った。

 その時、着信音が鳴り響いた。歌音の携帯に電話が入ったようだった。歌音はそれをとった。

 

「こちら、成瀬。…………なるほど、すぐに伝えます。では、ご武運を」

 

 そう言って、歌音は電話を切った。

 

「何てきたんだ?」

 

「各地で影獣が数千体、及び、巨大な存在の力の出現を確認。私たちはその巨大な存在の力の反応があった現場に赴いてほしいとの連絡です。場所はドイツ外界宿総本部、『スタールチュロッセ』」

 

「一番最初の被害現場か。よし、全員出撃するぞ!」

 

 ルギーの掛け声に、各々答えた。

 

 

 

 

 

 一行は、変わり果てたスタールチュロッセの前まで来た。

 

「いつ見ても、ひでぇとしか言いようがないよな」

 

「カトラスのいうこと、よくわかるよ」

 

「散々にやられたようね」

 

 悠二とシャナはここに来るのがはじめてであるため、こんな惨状になっているとは知らなかった。

 

「んで、どうだ成瀬。何か感じるか?」

 

「以前来たときより、嫌な空気が漂ってる。多分、影獣十四柱が近くにいる。それも、10体くらいは」

 

「ここに、敵の最高戦力が揃いに揃ってるわけだな」

 

 佐代からいつものお気楽な様子は伺えなかった。それほどまでに、緊張感が漂っているのだ。それを訴えるように、歌音が叫んだ。

 

「くる!」

 

 直後、地面から十数本の影が立ち上がった。それらは、徐々に形になっていった。

 

「いよいよだね、シャナ」

 

「うん。行こう、悠二!」




ここまで読んでくださりありがとうございます。
最近、季節や年度の変わり目などで、それについていけなくなり、更新が遅くなってしまいましたこと、お詫び申し上げます。
気づけば年号も変わり、ここ数日で時代の流れを感じました。皆さん、これからもどうぞよろしくお願いします。
次回は5/20投稿予定です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。次回もお楽しみに!


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~地獄の番犬~

 影獣との決戦がとうとう始まった。姿を表した影獣はそれぞれなんとも言いがたい威圧感を持っていた。

 

「来やがったな。ずいぶんと強者揃いで出てきたな」

 

 カトラスは体をこわばらせ、言った。

 彼らの中には、以前フランスでエスターと対峙したあとに現れたアルヴァトロとニーザ・リリスの姿もあった。そして、ルギーと激闘を繰り広げたイルフィスもいた。

 

「会いたかったぞ、ルギー」

 

「それはこちとら一緒さ、イルフィス。再開早々やるか?」

 

「いいぞ。また我を楽しませてくれ」

 

 そういうと、2人は飛び去っていった。

 

「全く、あの方は勝手すぎるのだから」

 

 聞き覚えのある声がした。イルフィスとルギーの対決を止め、一時撤退を促したものだ。そいつはメガネをかけ直すように、鼻と眉間の間に中指を当てた。

 

「さて、このままおとなしく引き下がる気は……無さそうですね」

 

 落ち着きのある可憐な声が重みを増した。

 

「あなた方をこのまま帰すわけにもいきませんし、ここで始末するとしましょう」

 

 そういうと、奴は指をならし合図した。すると一瞬にして、奴の周りに影獣が9体集まった。そのどれもが、並外れた迫力を放っていた。

 そのうちの、背中を丸めた大男の影がシャナたちを見下ろした。

 

「おうおう。呼ばれてきてみれば、なんだよただのガキどもじゃねぇか」

 

「そういうなよサリファ。案外手のかかる奴かもしれないだろ。だからこそ、呼ばれたんだろうし」

 

 意気がった口調を宥めたのは、これまた長身の男の影だった。奴は味方に警戒させると同時に、シャナたちに恐怖に似た感情を植え付けた。

 

「そういうバサロも、戦いたくてウズウズしてんだろ?」

 

 それに彼、バサロは答えなかった。

 

「なぁ、参謀官。あいつら、まとめて喰っていいんだよなぁ?」

 

「えぇ、好きになさい。しかし、油断はなりません。サリファ殿とて、軽んじてよい相手ではありませんから」

 

「んなもん、わぁてるよ。要は勝ちゃいいわけだ!」

 

 サリファは聞く耳を持たない。バサロも呆れた声で彼女に声をかける。

 

「参謀官よ、もう彼に何をいっても無駄だよ」

 

 それに同感したかのように、彼女は何も言うことなく顔を伏せた。

 

「さて、この〈暴者〉リ・サリファに喰われたい奴から相手してやるぜ。言っておくが、束になってこようとも、『ケルベロス』の俺にはハンデにもならねぇからな」

 

 そして、サリファはケルベロスの姿へと変化した。

 

「ケルベロス……」

 

 悠二は息を飲んだ。ケルベロスという生物は、相当有名な幻想種だ。3つ首の狂犬で、伝説上では冥界の番犬であったとされている。それこそ、狂ったような強さと気性を持った猟犬だ。そんな称号を持っているだけあって、サリファの存在の力は一際高い。

 すぐさま戦闘体勢をとる悠二。そんな彼の前にカトラスが出た。

 

「ここは俺が行く。久々に燃えてきた」

 

 そういうと、彼の存在の力が桁外れに跳ね上がった。これには、敵兵も驚きを隠せなかった。

 

「さあ、地獄のイヌヤロウ、覚悟しろよ。こっからさきは、俺の領域(エリア)だ!」



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