この素晴らしい少年に祝福を! (ねこたつむり)
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第一章 少年、学校へ行く
ようこそ、紅魔の里へ!


※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々


「山中祥太さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。」

目の前にいたのは青い髪の美少女でした。これが女神と言うやつか・・・。しかし、俺の目はこの美少女の性格は癖があると見ている。

「あ、そうですか」

俺は登校中にプラットホームから転び落ちた5、6歳ぐらいの女の子を助けた後に線路に足が挟まってそのまま電車に轢かれた。

 

「それで、俺は天国なんでしょうか?それとも地獄なんでしょうか?」

「はぁ?あんた何言ってんの?死んだら天国でお爺ちゃんみたいな生活か、生まれ変わって新しい人生を送るしかないのよ?」

「マジか・・・、じゃあ、生まれ変わるでいいy・・・」

「ちょっと待った!ねぇあなた異世界に興味ない?」

「そんなものに興味はない。だから生まれ変わりを・・・」

「あのね、異世界では今魔王軍の侵攻でピンチ・・・」

「早く生まれ変わりさせてくれ!」

「待って待って、お願いよ、話しでも聞いてよ!」

「・・・しょうがねぇなぁ」

俺は泣きついてくる女神の話を仕方なく聞くことにした。

「ぐすっ、ありがとね。」

涙脆いな・・・

 

「こほん、えーっと、さっきも言い掛けたように魔王軍のせいでその世界かピンチなのよ。しかも、その世界で死んだ人たちってさ、魔王軍に殺された訳じゃない?もうあんな死に方するのはヤダって言う人がほとんどで、生まれ変わりも拒否しちゃうのよ。」

「成る程、それで人口も減ってその世界がピンチだと・・・」

「そういうことよ。あんた飲み込むが早いわね。」

「でもさ、俺みたいな一般人がその世界に行ってもすぐにの垂れ死ぬんじゃないか?」

「そこで、何か一つだけ。向こうの世界に好きなものを持っていける権利をあげているの。強力な特殊能力だったり。とんでもない才能だったり。神器級の武器だったり。なんでもよ。どう?行く気になっ・・・」

「生まれ変わりをお願いします。」

「なんでよ、ここまで聞いたら普通行きます!って言うでしょう?何が不満なの?」

「ただ単純にめんどくさそう・・・」

「そんな理由で!?お願いよ、今月のノルマがピンチなのよ!」

女神にノルマとかあんのかよ、大変だな女神も。

「わ、わかったから泣きつくなよ!」

「あ、ありがどうね、これ参考までのカタログ。」

そう言って涙を拭きながらカタログを渡された。

なんだろう、この通販みたいなカタログは・・・

「ふーん、《怪力》に《超魔力》、《聖剣アロンダイト》《魔剣ムラマサ》・・・なぁ、ここに乗ってないやつでもいいのか?」

「いいわよ?」

「じゃあ、自分と共に成長する刀って無いかな?」

「ちょっと待ってね、今創造するから」

すげぇな、ほんとに女神なんだな・・・

そう思っていたら

「出来たわよ?はい刀。名前はまだ無いから自分で決めてね。あと成長するっていう性質なんだけどその刀を使っていくうちに特殊効果が付いていくわ。でも、最初のうちはただの刀だから注意してね?」

なんかすごいチートが出てきました・・・まぁ、頼んだのは俺なんですけどね?

「ありがとうございます!」

「じゃあ、魔方陣からでないようにして暴れないでね?」

「了解」

「それでは山中祥太さん。あなたをこれから、異世界へと送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人といて。魔王を倒した暁には、神々から贈り物を授けましょう。」

「・・・贈り物?」

「そう。世界を救った偉業に見合った贈り物。・・・例えどんな願いでも。たった一つだけ叶えて差し上げましょう。」

「おい、最初にそれ言っとけば誰でも行くんじゃないのか?」

「え?あ、そ、そうね。べ、別に思い付かなかった訳じゃないのよ?ただ欲にまみれた人が行くのを防ぐためにあえて最後に言ってるのよ?」

「はいはい、そうですか」

「もういいわ、さあ、勇者よ!願わくは、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒すことを祈って・・・あ・・・」

 

嫌な予感がする。

 

「おい、なんだ今の『あ・・・』は?おい!目線を反らすな!」

女神は一向に目線を合わせようとしない。しかもなんか震えてる・・・

「えっと、御武運を願っております。もし死んだら・・・ごめーんね」

「は?ふざけんなよ!お前謝る気全くないだろ!?」

「それでは山中祥太さん、いってらっしゃーい!」

「どっかのアトラクションのお姉さん見たいに言うなー!」

光に包まれながら俺は人生初のツッコミをした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を開けるとそこにはだだっ広い平原だった。

「取り敢えず命は無事みたいだな。しかしここはどこだ?てっきり町とかに転送されると思っていたが・・・あ、あっちに人らしき影があるな、あの人に聞いてみるか・・・」

俺はなんの警戒心もなくその人影に歩み寄っていた

向こうもこっちに気付いたのか近づいてきた。

 

ある程度距離が近くなってから俺の本能的な危険センサーの音が頭の中で鳴り響いた。しかし、すでに遅かった。

「こんにちは!ねぇ、お兄さん。あたしと良いことしないかい?」

「お断りします」

即答した。

多分こいつは見た目的にオークだろ

何てこった、第一村人がオークとは・・・

あの女神め、転送ミスりやがったな・・・

「あらそう、残念ね。あたしは合意の上での方が良かったんだけど」

合意の上とか何言ってんだこいつ?

とか思っていたらオークが飛び掛かってきていた。

とっさに腰に下げてる刀を掴み居合切りをした。

その時、不思議な感触がした。肉を斬ったはずなのに手応えがなくまるで触れた雪が消えるような感覚だった。

振り返ってみたらオークの上半身と下半身が綺麗に別れている。

 

首をかしげながら刀を鞘に納めて歩み始めようとした道の先にはオークの群れが・・・

「うん、無理ゲーだわ・・・」

後ろを振り替えって走り出した。

いくら武器持ってるからってこの数は無理だろ!

あの女神今度あったらただじゃおかねぇからな!

いくらここで愚痴を言っても状況は変わらず、どうする考えでた答えは・・・

「助けてー!」

思いっきり叫んだ。

 

しかしその声はむなしくもこだまするだけで助けなんて来るはず・・・

「『インフェルノ』!」

来たみたいです。

その呪文?の後業火に焼かれるオークの群れがあったのでした。

すげぇな、俺もこんな魔法使いたいな・・・

そんなことを思っていたらさっきの魔法の持ち主らしき人が声をかけてくるた。

「大丈夫か君?叫び声が聞こえたから飛んできてみたが・・・おい、しっかりしろ!」

安心したせいか眠るように気を失ったとさ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を覚ましたのは夕方だった。窓から指す夕日の光がやたら眩しい。

体がとてもだるい。たが、なんかスッゴク生きてる事を実感出来た。

「ここは誰の家だ?まさかっ!?いや、オークの群れは焼かれたはず・・・ということはあの魔法使いの人の家か」

寝ていた部屋を見回していたら。

ガチャ

「お、目を覚ましたか。からだの調子は大丈夫か?」

ドアを開けたのは助けてくれた中年の魔法使いだった。

「はい、なんとか。まだちょっとだるいですけど・・・」

「そうかそうか。」

その人は笑いながら答えた

「どうだ?下で冷たいお茶でも飲んで話さないか?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

夕日に照らされて暑いのに冷たい飲み物が要らないわけがないのでありがたくもらうことにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぷはぁ~、癒される~」

この世界に来てはじめて飲んだお茶は今まで飲んできたどのお茶よりも美味しかった。

「ハッハッハ、おっさんじみたことを言うな君。ところで君の目の事なんだが・・・」

目?あ~あれを見たのか。

「あー、俺は興奮すると目が紅くなって身体能力とか上がるんですよ」

そう、俺の目は元々黒目をしているんだが怒りや恐怖等々平常心が保ててないときに紅く輝く。この目のお陰で周りから忌み嫌われたりしたものだ・・・

身体能力が上がるとか謎過ぎるわ。

「ほう、まるで我々紅魔族みたいだね。あ、ちなみに私が紅魔族の族長だ。」

ぞ、族長かぁ、なんか暴走族みたいだな・・・

「ところで君はあんなところで何をしてたんだい?あんな所に居たからには相当なレベルの冒険者だとは思うんだけど・・・」

「いやぁ、悪い人に引っ掛かってしまってあんな所で放り出されてしまったんですよね・・・お陰で帰るとこもなくなり・・・」

うん、間違ったことは言ってない。

あー、でもこれからどうすっかな・・・

「それなら家で面倒見てもいいがどうだい?」

「お父さん、今日の晩御飯何がいいですか?」

俺は早速第二のお父さんお見つけた。

 

「そういえば君、冒険者カードを見せてくれるかい?」

冒険者カード?なんだそれ。身分証明書みたいなもんかな?

「いや、持ってないですね。なんですかそれ?」

「冒険者カードを知らないのかい?冒険者カードというのは身分証明書みたいなもんだよ。持ってないなら今から発行しに行くかい?」

うーん、持っても損はないだろうし・・・

「じゃあ、発行します。」

 

 

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「ここをまっすぐ行けば発行所だ。私はちょっと用事があるから先に行っててくれ。」

「了解です。」

俺は発行所につき受付の人に声を掛けた。

「すいません、冒険者カードを作りたいんですけど・・・」

「はいはい、冒険者カードですね?じゃあ、まずここに身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をしてください。」

身長170cm、体重65kg、15歳、黒髪に黒目を時々紅目・・・

「はい、どうぞ。」

書き終えた書類を提出した。

「はい、ありがとうございます・・・あの~時々紅目というのは?」

「あ、こうゆうことです。」

俺は目に集中して目を紅くした。

「おおぉ・・・あなたの今の姿は仮の姿・・・その力が放たれるときこの世界に数多の災厄が降り注ぐだろう・・・」

俺はここで学んだことがひとつある・・・

それは、

「収まれ、封印されし力よ。この世界はまだ平和すぎる・・・」

周りに合わせたらなんとかなる。

俺の目は紅目から黒目へと戻った。

この目をするとしんどいんだよなぁ。

 

この目は前に言ったように自分の身体能力を上げる。しかし、この行為は人間に掛かってるリミッターを外すようなものだ。映画とかで出てくるゾンビのような感覚がないモノはリミッター外れている事は問題がないけど、感覚のある生身の人間がやると体が潰れてしまう。

そんなリスクがあるのでこの目は持って四分弱だ。

勿論、これを試したのは服装がジャージで素手で喧嘩したときだ。

防具や武器なんて持ったらもっと短くなる。

そう考えると限界を引き伸ばしたい。

 

「では、こちらのカードに触れてください。」

しかし、紅魔族の人達は顔が整ってるよなぁ。

まぁ、自己紹介と名前はあれだけど。

ここに来る途中でスッゴイ美人の人に会った。

 

~回想開始~

「あら族長さん、こんばんは。そちらの子は?」

「やぁ、そけっと。この子は今日からうちで預かることになったしょうた君だ。」

「そう、我が名はそけっと!アークウィザードにして上級魔法を操る者。紅魔族随一の占い師!よろしくね。」

なんだろう、これ乗った方がいいやつなのかな。

なんか期待された目で見られている・・・

「こほん、我が名はしょうた!この妖刀を操る者。そしてゆくゆくは紅魔族随一の剣の使い手となる者。よろしくお願いします。」

目を爛々と輝かせいい放った。

「「おおぉ・・・」」

なんだろう、とっても癖になりそうだ・・・

~回想終了~

 

あれはとってもスッキリしたなぁ。

「はい、出ました。ええと・・・え!なにこの数値?!筋力と体力と敏捷性は平均値を軽くこえてますよ!?知力と器用度後幸運値もそこそこ高いですし、あれ、でも生命力が平均よりかなり低いですね・・・後は魔力が平均ですねこれだと魔法職とクルセイダーにつけないですけど・・・それ以外なら何でもなれますよ?」

 

「え?魔法使えないんですか、俺?」

 

いきなり魔法が使えないと言うハプニングが起こってしまった。

『インフェルノ』とか使いたかったんですけど・・・

「使えないこともないんですが・・・最弱職の冒険者になりますけど?」

 

最弱職だと?

 

「ちなみに冒険者にメリットとかありますか?」

「メリットですか?強いて言えばすべてのスキルが所得可能ですかね?でも、本職より劣ってスキルポイントの消費が大きいですよ?」

 

あれ?結構万能職なのでは?

 

「じゃあ、冒険者でいいですよ。」

魔法が使えるなら願ったりかなったりだ。

「え?ほんとですか?それなら良いんですけど。」

こうして俺は晴れて冒険者になれました。

 

「良かったのかい?冒険者なんか選んでしまって。ソードマスターとかあったんだろ?」

用事が終わって合流した族長さんが不思議そうに聞いてきた。

「良いんですよ、俺魔法が使いたかったし。魔法使っていた族長さん・・・いや、父さんに憧れてるから・・・」

うわっ、これめっちゃ恥ずかしいな。

「そ、そうか、それを聞いて父さんは嬉しいぞ。」

あー、そっか・・・俺こういうことに憧れてたんだ。

父さんとこういうこと話すことに・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「ただいま」です。」

「おかえりなさい。あら、その子が出掛ける前に話してた子?」

 

族長さんの奥さんらしき人が出てきた。

やっぱ紅魔族って美人さんが多いですね・・・

 

「あぁ、さっき養子の手続きをしてきた。」

なるほど、さっきの用事はその事だったのか。

「初めまして、山中祥太といいます。ご迷惑をかけると思いますがどうぞよろしくお願いします。」

「ふふ、そんなにかしこまらなくていいのよ。私の事は気軽にお母さんと呼んでほしいわ。」

おっと、呼んでねっと頼むのではなく呼んでほしいと願望をぶつけられるとは思ってもみなかった。

「おい、母さん。ゆんゆんはどうした?」

「あの子なら部屋に籠ってますよ?」

ゆんゆん?族長さん達の子供かな?

まぁ、いきなり家族が増えるってなったら色々心に来て引きこもるかもしれないな・・・

俺だってそうなるもん。

「どうして部屋に籠ってるんだ?また人見知りか?」

「それもあるんですけど、多分人と目を合わすイメージトレーニングでもしてるんじゃないかしら?」

 

引きこもってる理由が別にあったか・・・

というより、一人でどうやって目を合わすイメージトレーニングをしているのだろうか・・・

とっても気になります。

 

「まぁ、晩御飯には降りてくるだろ。それはそうとしょうた、お前学校へ行く気はないか?魔法を使えるようにするためにも。」

「学校ですか・・・行ってみたいです。」

 

魔法を使えるようになるための学校か・・・

ホグ○ーツみたいなところかな?

 

「そうか。いや実はな、手続きはすでにしているんだよ。だから明日からでもすぐに行けるぞ。娘のゆんゆんも明日からそこに通うから仲良くしてやってくれ。」

「了解です。」

もし、俺が行きたくないって言ったらどうするつもりだったんだろう。

「あ、しょうたの部屋はあの部屋でいいかい?」

「はい、問題ありません。じゃあ、部屋にこいつ置いてきます。」

俺は刀を部屋に置いてこようとすると。

「しょうた、君はこの家族の一員になったんだ。敬語をを使わなくてもいいんだよ?先程みたいに『父さん』って。」

族長さんは恥ずかしそうに頭を掻き言った。

「そんなのお父さんだけずるいわ。私も母さんって呼ばれたいわ。」

突然、声をあげて奥さんは言った。

何て微笑ましい光景なんだろう。こんな光景を見せられたら呼びたくなるな(笑)

しかし、今日のところは我慢していただこう。

「言いたいのは山々なんですけど、今日は族長さんと奥さんで呼ばせてください。自分なりのけじめみたいな感じです。急に呼び方を変えると頭が追いつかなくて・・・」

呼び方がごっちゃになるのは避けたい。一回寝て頭をスッキリさせないと・・・

「そ、そうか・・・無理言ってすまないな・・・」

落ち込みながら族長さんは言った。

すごい罪悪感がある・・・

「あ、明日からは必ず呼びますから。じゃあ、部屋にいきます。」

「ご飯が出来たら呼ぶわね。」

「ありがとうございます。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

族長さんがくれた部屋に入ろうとすると、隣の部屋から声が聞こえた。

「・・・はゆ、ゆんゆん。・・てはこ、紅魔族のお、長・・・者。こ、これから・・・くお願いします・・・」

どうやら自己紹介の練習をしているらしい。

しかしなんだ、紅魔族にしては声が張れてないというか、恥ずかしがってるというか・・・

常識人がここに居た。

この子とは是非仲良くならないとな。中二病ばかり相手にしていると身が持たないしな。

・・・俺、誰に言い訳してんだ?

とりあえず、ゆんゆんの部屋のドアをノックする。

 

コンコンコン

 

「ひゃ、ひゃい!?」

上ずった声で返事が来た。

「あの、この家に急遽居候することになった山中祥太って言うんだけど、ちょっといいかな?」

ドアが少し開き隙間からゆんゆんが目を覗かせた。

「な、なんでしょうか?も、もしかしてうるさかったですか?そ、それで文句をいいに来たんですか?それならごめんなさい・・・」

スッゴイオロオロしてる・・・

なんか、愛玩動物みたいだな・・・すごく庇護欲に刈られる。

「い、いや、文句をいいに来たわけじゃないから安心して?ただ、挨拶がまだだったしやっとこうかなーって」

不安な顔をしているゆんゆんにを安心させるように言う。

すると、ドアを完全に開け部屋にいれてくれた。

「ど、どうぞ・・・」

こんなに簡単に男子を部屋の中に入れていいのか?いや、別になにもしないけどさ。もう少し警戒心をもってほしい。

ゆんゆんは恥ずかしそうに口を開いた。

「で、では、わ、我が名は・・・」

「あ、無理してそれしなくていいよ。それ恥ずかしいでしょ?俺の名前はさっき言ったように山中祥太。これあらよろしく。しょうたって呼んでくれたらありがたい。」

ゆんゆんは目を輝かせながらこっちを見ていた。

あぁ、やっぱり常識人だったな。

「わ、私ゆんゆんって言います。よ、よろしくです。」

もじもじしながら自己紹介してくれた。

なんかもう、たまりません。あ、手は絶対に出しませんよ・・・?

 

多分・・・

 

歳は顔だけみたら中一ぐらいか・・・

しかし・・・いいものをお持ちですね・・・何がとは言いませんが。

「いきなりこんなことになってごめんな。迷惑だろ?」

半笑いで居候のことについて謝る。

「いえいえ、め、迷惑だなんてそんな事ないです。むしろ、話し相手が増えて嬉しいです。今までお父さんとお母さんと友達のサボちゃんしかいなかったから・・・あ、サボちゃんって言うのはねこの子のことです。」

ゆんゆんが生き生きとして見せたものはサボテンだった。

 

もう一度言おう、サボテンだった・・・

 

どうしよう、この子色々と手遅れかもしれない。

「あのー、しょうたさんは何歳なんですか?」

そんな哀れみの視線を送っている俺にゆんゆんは質問してきた。

「15だな。そっちは?」

「12です。」

12でそれをお持ちなんですか?ヤバイですね。

「それにしても、ゆんゆんは紅魔族にしては珍しいタイプだよな。」

「うっ、やっぱり私って変わり者なんですかね?」

あー、なるへそ。

人見知りもあるけど、そのネガティブシンキングのせいで友達ができなかったのか・・・

「まぁ、ここではそうかもしれないけど俺が居たところでは普通だと思うよ。」

でも、俺は紅魔族のノリが好きなんだけどね。

「そ、そうなんですか。」

「でも、明日からは学校へ行くんだからあの自己紹介のやつは練習しとかないとな。」

「う、う~」

顔を赤くしたゆんゆんを横目で流して立った。

「さてと、部屋に戻るわ。改めてゆんゆん、これからよろしくな。」

部屋から出ていく俺を名残惜しそうに見送っているゆんゆんに言った。

つーか、部屋が隣なんだからそんなに名残惜しそうにしなくてもいいんじゃないか?

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺は天井を見上げながら考え事をして居た。

「ゆんゆんのあれ、凄かったな・・・ハッ!?」

ボソッと声に出してしまい、慌てて口を塞いだ。

どうやら誰にも聞かれてないようだ。

そんなことを考えてる場合じゃなかった。

いや、確かにどうでも良いことではないけど・・・

マジで俺どうしたんだろ?

さっさとこいつの名前を決めてあげないと・・・

「オークを斬ったときの感触がどうにも肉を斬った感触じゃなかったんだよな・・・手で雪をさわった感覚に似てたな。『スッ』って溶けるような感覚。しかもあのでかい肉塊を一瞬で断ち切ったもんな・・・雪のように柔らかく一瞬でさばく。雪、一瞬・・・せつな・・・?よし、今日からお前の名前は雪那だ。」

 

次の瞬間、刀身の根本に《雪那》と刻まれた。

 

「これからよろしく、雪那。」

そう言うとそれに返事をするよう光が反射した。

 

「ご飯ができたわよー!」

当分この家族にお世話になるな・・・

「はーい、今降りまーす!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ちなみに今日の晩御飯の献立

・カエルの唐揚げ

・キャベツの炒め物

・パン

・ネロイド

しょうた「なにこれ?カエルがこんなに美味しい分けない・・・何でたかがキャベツの炒め物がこんなに美味しいんだよ・・・この飲み物シュワシュワじゃなくてシャワシャワしてるんだな。よくわからん感覚だわ・・・」

ゆんゆん「それネロイドって言うんですよ。捕まえたらニャーってなくんです。」

しょうた「(゜ロ゜;へ!?」




どうも、ねこたつむりです。
えーっと、今回初めて書かせて貰ったんですが、如何だったでしょうか?
数多の至らぬ点がありますが目を瞑ったり指摘してもらえたらなぁと思っています。
基本的にご都合主義です。
後は、質問希望等があれば言ってください。
気に入れば採用させていただきます。
では、この辺でノシ


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一人一人の個性

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
なんか書けば書くほど下手になっていくのは何故なんでしょうか?


小鳥のさえずりで目が覚めた。

見慣れない天井に一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出した。

「うーっん、よく寝た・・・もう一眠りしよっと。」

布団に再度潜り込もうとしたら・・・

コンコンコン

「しょうたさん、起きてますか?朝御飯が出来てますよ。」

とんだ邪魔が入った。

「寝てるよ。起こさないで。」

「ふざけないでください!早くしないと遅刻しますよ!」

遅刻・・・?なんのことy・・・あ!

そうか、学校か。昨日言ってたな。

「今行く。」

そう言って、昨日貰った紅魔族のローブを着た。このローブは昨日、族ty・・・父さんが買ってきてくれた。このだぼっとした感がとってもいい。

ガチャ

「おはよう、ゆんゆん。」

「!?・・・お、おはようございます。」

なにやら恥ずかしそうにしている。そんなに恥ずかしがらなくても良いんじゃなかろうか。

「あ、あのー」

「ん?どした?」

「ズ、ズボンは穿いた方がいいと思います・・・」

おっと、パンツ丸出しじゃないか・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

パンチライベントの後、ゆんゆんと一緒に居間に降りた。

え?そんな嬉しいイベントじゃないって?よし、今そう思ったやつ表出ろ。

「お父さん、お母さん、しょうたさん起こしてきたよ。」

「父さん、母さん、おはよう」

「「「!?」」」

三人同時にギョッとした。

ゆんゆんはともかく、二人に驚かれたらとりつく島がないと言うか・・・

つーか、あんたたちが呼んで欲しいって言ったんだろ・・・

「お、おはよう。しょうた」

おい、なに動揺してるんだ?

「しょうた、おはよう。目玉焼きは塩派?それとも醤油派?」

母さんが嬉しそうにテンプレを言った。

お決まりですよねこれ。

「うーん、今日は塩がいいや。」

と言いながら椅子に座った。

「ちょ、ちょっと待って。今しょうたさんお父さんとお母さんのこと『父さん』『母さん』って呼んだ!?」

まぁ、普通はそうなるわな。突然居候することになった奴が突然自分の親のことを『父さん』『母さん』と呼んだら驚くよな。

「ゆんゆん、何を驚いているんだ?しょうたはうちの養子になったんだから父さんと呼んでもおかしくないだろ?と言うよりそう呼んでもらいたい。」

何でこの人たちってこう願望をさらっと言うんだろう・・・

「え、という事はしょうたさん、私のお兄さんになるの?」

「ま、そういうことになるな。お兄ちゃんって呼んでもいいんだぞ?(笑)」

ほんの出来心でからかったら。

「お、お兄ちゃん・・・」

顔を赤くしながらボソッと言った。

「ハッハッハ、こらしょうた、ゆんゆんをあまりからかわないでやってくれ。・・・しょうた?おーい。しっかりしろ!!母さん水をくれ。」

五分後に意識が回復しました。

 

 

 

~十分後~

「お兄ちゃん大丈夫?」

その呼び方が気に入ったらしいのかもう、しょうたさんとは呼ばなくなっていた。ついでに敬語もなくなっていた。なぜに?

「あぁ、もう平気だ。ありがとう。」

「っ!・・・べ、別に」

おい、いつの間にこいつにツンデレの成分が含まれたんだよ!

あれか?お兄ちゃんって呼ばせたからか?言葉の力ってスゲーな!

お兄ちゃんという言葉にこんな効果があんのかよ・・・

「さてと、そろそろ学校行くか。」

雪那を持ってゆんゆんと学校に向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ようこそ我が校へ、しょうた君。君を歓迎するよ。」

俺はといえば、現在校長室に来ている。

校長先生はとても優しそうでいい先生っぽい。

しかも、チューリップを大切にしている。

「それで君のクラスなんだが、手違いで君は女子のクラスの名簿に名前が乗っていてね・・・変えるのがめんどくさいからこのままでいいかい?」

今この人めんどくさいって言った?ふざけてんの?俺は勿論変えてもらうように言おうとしたとき。

「校長先生!ぷっちん先生が自己紹介の練習をしていたら花壇のチューリップのところに落雷して・・・」

この学校の先生だろうか?

「あ゛?ぷっちんの野郎またやりやがったのか!?」

校長先生がドスの効いた声で言った。

「あいつには後で罰をやる。で、しょうた君。変えなくてもいいかい?」

俺だって人間がして良いことと悪いことは区別できる。

ましてや男子が単身で女子のクラスに入るなんて言語道断。

それを踏まえて出した答えは・・・

「はい!大丈夫です。女子のクラスでも問題ありません!」

ハッキリ言い切った。だって怖いんですもの。

 

ここが俺のクラスの教室か・・・

ただでさえ新しいクラスに入るとき緊張するのに、女子しか居ないことを考えると余計緊張して吐き気がする。

ガラガラガラ

教室に入ると、視線が一気にこっちに向いた。

その目は、珍しいものを見たようなものだったり、好奇の眼差しだったり、あるいは異物を見るようなもの等様々だった。

そんな目線に足がすくみ立ち往生していると後ろから、

「お前が校長先生の手違いでこのクラスになったしょうただな?俺はこのクラスの担任ぷっちんだ。男同士仲良くしようぜ。ほら、席につけよ。ゆんゆんの隣だな。」

俺は言われるがまま席につきようやく隣がゆんゆんということに気づいた。

「よ、まさか同じクラスになるなんてな。友達の一人二人はできたか?」

ゆんゆんは落ち込みながら首を横に振った。

そ、そっかー。そうだよな。サボテンと友達になるような社交性の低い娘だったな。

こればかりは自力で何とかしないとどうしようもないな。

「さてこれからこのクラスで過ごしてもらうに当たってお互いを知る必要がある。そのためには自己紹介が手取り早い。それでは俺から。ごほん、我が名はぷっちん。アークウィザードにして、上級魔法を操る者。紅魔族随一の担任教師にして、やがて校長の椅子に座る者!では、あるえから。」

「我が名はあるえ・・・」

各々の自己紹介が始まった。俺は男子のせいなのか急に入学したからなのかは定かではないが、一番最後だ。トリとかやりたくないんだけど。

ゆんゆんの方を見る。緊張しているのか目が虚ろだ。

緊張をほぐしてやるために頭を軽く撫でてやった。日本での妹にやった方法だ。確か作文だったかな?参観日に親が行けなくなって学校休んで行ったんだっけか・・・相当シスコンだったんだな、俺。

しかし、さっきから暑いな・・・夏じゃないだろ今。

横を見るとゆんゆんの頭から湯気が出ていた。原因こいつかよ。どんだけ緊張してるんだか・・・

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして、爆裂魔法を愛する者!」

もう、ゆんゆんの目の前まで来ていた。しかし、このクラスには色々いるんだな。作家希望だったり、居酒屋女将だったり、ブラコンに爆裂魔法・・・爆裂魔法ってなんだ?

「わ、我が名はゆ、ゆゆ、ゆんゆん。」

ゆ多いな。大丈夫かこれ?

「や、、やがては紅魔族の長となる者・・・」

良く頑張った。お兄ちゃん嬉しいぞ。

おっと、アホなこと思ってないで次俺の番か・・・

「我が名はしょうた。紅魔族随一の居候にして、この妖刀を操る者!」

「以上12名。みんな仲良くな。俺はこれから校長に呼ばれているから教室を出るが、お前たちは教室で待機しておけよ。」

御愁傷様です。

ぷっちんは気分が良さそうに教室を出ていった。

教室から出るなって言われてもな・・・やることが無さすぎる。

「ねぇ、君。ゆんゆんの家に居候してるって本当かい?」

作家願望のあるえが突然聞いてきた。

いや、おいおい、マジかよ。校長先生の話では俺意外全員12歳って聞いてたけど、こいつもそうなのか?ゆんゆん以上のモノを持ってらっしゃるようだ。何の事とは言わないが。

それよりも、どっから漏れたその情報?

不思議がってる俺を察したのか、胸を張って答えた。いや、すごいっすね・・・

「昨日、君と族長さんが一緒に歩いている所を目撃したんだよ。」

あ、そういえば漏れてても不思議はなかったな。そけっとさんに会ったもんな・・・

人の話を右から左へと流していると、

「ほうほう、貴方が最近噂の居候ですね・・・」

噂って。俺昨日来たばっかだよね?

そんなことを思いながら話しかけられた方を見る。

あ、うん。そうだよね。普通12歳って言ったらこれが妥当だよね。妹もこんなんだったし・・・

「おい、今失礼なことを考えなかったか?」

「考えてないよ。ただ人それぞれなんだなぁって。」

「いいでしょう、その喧嘩買おうじゃないか。」

確かこいつは、爆裂魔法のめぐみんだっけか。

あるえが飛び掛かろうとしているめぐみんを押さえてるのを横目で見ながら、ゆんゆんに聞いてみた。

「なぁ、爆裂魔法って何?」

「え?ば、爆裂魔法?確かスキルポイントをバカみたいに食らうネタ魔法で、火力に関してはオーバーキルにも程がありすぎて、しかも、爆裂魔法の習得は難しい上に習得できても魔力が足らず撃てないのがほとんどで、もし撃てたとしても一発限定のネタ魔法だったはず・・・」

そ、そんなもんをこいつは覚えようとしてるのか?

「なぁ、めぐみんだっけ?とりあえず頑張れよ。」

「え?あ、はい・・・」

どうしてかわからないが、こいつは大物になる予感がした。

「それにしても、さっきから気になってたんだけど、その腰に下げてる物は一体なんだい?」

あるえは俺の刀を指していった。

「こいつは・・・俺の半身だ。」

中二病的な事を言ってみた。言ってみたかったんだよなぁ、こんな事・・・

「おおぉ・・・」

あるえが感嘆の声をあげた。

「んっ、んっ、この剣抜けませんね・・・」

めぐみんがいつの間にか刀に触れていた。

「ひゃっ、お、おい、そんなに引っぱっ・・・あふっ、ば、バカやめろって。くすぐったい・・・」

別にやましい事はしていませんよ?腰に下げてる雪那を引っ張られてくすぐったいんです。

「しかし、鞘から抜けないんじゃ武器として役に立ちませんね・・・」

「いや、抜けるだろ?ほら。」

当たり前のように鞘から雪那を抜く。

その透き通った刀身はいつ見ても見とれてしまう・・・

どうやらそれはみんなも同じようだ。

「「「き、キレイ・・・」」」

三人が声を揃えて言った。

「こ、これは見事な業物ですね・・・」

「私の目で見る限り神器級の魔力を感じるね・・・」

「お兄ちゃん、どこでそんなものを・・・」

「「お、お兄ちゃん!?」」

雪那を鞘に納めてアホな顔をしている二人を眺めてるいると、

「はぁ~」

「どうしたんですか?地獄の底から出たような声を出して。」

疲れきった顔をしているぷっちんに声をかけた。

「いや、花壇のチューリップをダメにしたから一週間校長室の掃除をしろだってさ。」

そんだけで済んだのなら喜べばいいのに・・・

 

「後、今月の給料50%カットだって・・・」

 

それはきつい。

「御愁傷様です。」

そんなことがあり、今日の学校は終わった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今俺たち四人は喫茶店にいる。

なぜこんな事になったかというと・・・

 

~回想開始~

「おい、ゆんゆん。お腹すいたからなんか食べようぜ。」

今日自己紹介と『お兄ちゃん、どこでそんなものを・・・』以外口を開かなかったゆんゆんに話しかける。

「え、じゃあき、喫茶店とかどう?」

そんな洒落たものがあるのか・・・

「じゃあ、そこにしますか。」

それに肯定するめぐみん・・・ん?めぐみん?

「うわっ!?急に出てくんなよ・・・というかお金持ってきてんの?」

急に食べに行こうぜとなっても『ごめん、今日金持ってきてないわ』とかあるあるだ。

あ、でもこいつはこの案に肯定したわけだからあるk・・・

「何言ってんですか。そんなものあるわけないじゃないですか。」

何言ってんだこいつ・・・

「つまり奢れと?」

「そうです。こんな美少女とご飯が食べれるのです。奢るのは当然じゃないですか。」

「美少女って・・・ふっ」

「あ!」

めぐみんが鼻で笑った俺の胸ぐらを掴み揺さぶってると、

「楽しそうだね、よかったら私も混ぜてくれないかい?」

あるえがこっちに来た。

「え、えっと、み、みんなでご飯を食べに行こうってなって・・・」

おいまて、いつみんなになった?

「良かったら、私も一緒に行っていいかい?」

「も、もちろん!」

俺を揺さぶるのをやめためぐみんが、

「では、さっさといきますよ。」

おい、何でお前が仕切ってんだよ?密かな疑問を抱きながら歩いた。

~回想終了~

 

「ったく、今回だけだからな?」

仕方なくめぐみんに奢ることにした。

俺の手持ちは三千エリス。二人分くらいならなんとかなるだろう。バイトでも始めるか・・・

なぜ俺の財布にお金があるのかというと。

これはあくまで俺の推測だが、たぶんあの女神が俺の財布に忍ばせてくれたのだろう。

駄女神みたいだったが有り難く思っておこう。

「すいません。」

注文するのが決まったのかめぐみんが手を挙げていった。

「らっしゃい!紅魔族随一の、我が喫茶店にようこそ!お、ひょいさぶろーさん家のめぐみんじゃないか。外食とは珍しいな。で、注文は何にするんだい?」

ひょいさぶろーってどんな名前だよ。紅魔族のセンスはやっぱわかんねぇな。

「カロリーが高くて腹持ちの良いものをお願いします。」

女子の注文じゃねぇ・・・てかさっきメニュー見てたじゃねぇか。そういうおれは、

「この店のオススメってなんですか?」

オススメを聞いていた。無難に聞いた方が選ばなくて楽だ。

「お、兄ちゃん。見ない顔だな。まさか君が族長さんのところの居候かい?」

『そうです。私が居候です。』とどこかの大御所芸人がやりそうなことを心のそこでやって、

「我が名はしょうた。紅魔族随一の居候にして、この妖刀を操る者!以後お見知りおきを。」

「いいねぇ兄ちゃん。外から来たから変わりもんだろうなと思っていたけど。中々やるじゃないか。」

店の人が機嫌が良さそうに言った。俺の社会性適応力も中々のもんだな・・・

「そうそう、店のオススメだったな。今日のオススメは『暗黒神の加護を受けしシチュー』と『溶岩竜の吐息風カラシスパゲティ』だな。」

ここの人のネーミングセンスはどうにかならないものだろうか・・・

「じゃあ、シチューをお願いします。」

「じゃ、じゃあ、私はカラシスパゲティで」

「私も同じものを頼むよ。」

「私はメニューにある『魔神に捧げられし子羊肉のサンドイッチ』を下さい。」

おい、カロリーが高いのはどうした?いや、高いんだろうけども・・・

「あいよ!暗黒神の加護を受けしシチューと溶岩竜の吐息風カラシスパ二つと魔神に捧げられし子羊肉のサンドイッチだな。ちょっと待ってな。」

店の人が調理場に行った。

「しょうた君、ちょっといいかい?」

「ん?いいけど。」

「君はどこから来たのか教えてくれないかい?」

あるえが口を開いたらとんでもないことを聞いてきた。

「うーん、別にいいんだけど。何で知りたいの?」

別に教えても何ら支障もない。ただ言いづらいだけだ。

理由を知りたいのは『君の事を知りたい』等と出たらこの巨乳っ子とのフラグが立つからであってなんもやましい事なんて考えてない。あ、この考えがすでにやましい物だった・・・

「強いて言うなら小説に使えたらなと思って。」

フラグが立ちませんでした。さいですか。

「そっか、俺が住んでたところは日本って言うところなんだ。」

思い出すように話した。

話しているうちに料理が来て食事しながら話を続けた。

文明が進んでいたことや、馬車以外の移動手段があること、魔法なんて誰も使わないことも。

三人とも興味を持ったのか真剣に聞いていた。

「君はそこに帰らないのかい?」

「帰りたくても帰れないんだよな・・・ま、別にいいけどさ。」

こっちに来てまだ二日目だがこっちも中々楽しい。

「行ってみたいなぁ。そのニホンっていうとこ。」

連れてってみたいな、こいつらを。目を丸くして驚くだろうな・・・

「何ニヤニヤしてるんですか。気持ち悪いですよ。」

食べ終わったのか寝そべってのお腹をさすりながらめぐみんが言った。

「何が気持ち悪いだ。お前はもうちょっと女子らしくしろよ!」

コーヒーをすすりながら反論した。

「失礼ですね。それが女の子に対する口の聞き方ですか?」

「お前のどこを見て女子だと判断するんだよ!あるもんがないじゃないか。」

「ぶっ殺」

「すいません!会計お願いします!」

俺の財布からエリスが飛んでいくのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

二人と別れ、ゆんゆんと帰路に着いた。

「はぁ、なぁ、ゆんゆん。どっかに良いバイトない?」

「うーん、服屋さんとかは?確か魔力が高い人を探してたような・・・」

「あ、それは無理だな。俺魔力平均でアークウィザードになれなかったから。」

「そっか・・・えっ!?じゃあ、何になったの?平均じゃウィザードにもなれないし・・・」

「冒険者だ。魔法職に就けないんだったら魔法の使える冒険者を選んだ。」

「最弱職と言われてる冒険者に!?」

信じられないものを見ているような目で見てくる。

そんな目で見るなよ。悲しくなるだろ・・・

「そっかー、じゃあ、定食屋さんは?あそこ店主のおじさん一人で切り盛りしてるし昼間混んでるから人手がほしいと思うよ。」

「お、そこなら俺も働けそうだな。明日でも面接にいくか・・・」

俺は働くことを決意した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ゆんゆんと家に帰った後、一人で森に入った。

「素振りでもしないと腕が落ちるからな・・・」

俺が刀を選んだ一つの理由。

それは扱いに慣れているからだ。幼い頃から剣道をやっていた。もちろん、剣道と戦いで使う技は異なる。しかし、間合い等は役に立つ。

「この辺で良いかな?」

森が開けたところに来た。

準備運動をして落ち葉を集め山をいくつか作り、雪那を抜いた。

山をを蹴りあげて落ち葉を舞い上げた。

降ってきた落ち葉を斬るのではなく、突いた。

全てとはいかなかったが六割程度突けた。落ち葉の串刺しの出来上がりっと。

中々の出来だ。ちゃんと茎を裂いてる。それはまるで整列したかの様にキレイに向きが揃えられている。

次にしたのは落ちてくる葉を斬った。

「ふぅ、次はリミッター解除するか・・・様子見で三十秒。『バーストモード』」

落ち葉の山を蹴って八割。残り二割は落としたのではなく、一枚一枚十字に斬った。

「『バーストモード解除』はぁはぁ、んっ、はぁはぁ・・・」

いつも通りの感じだ。それがとても違和感を感じさせた。

武器を持ったバーストは素手でのバーストとは訳が違う。

それなのに雪那を振り回した時と素手での時の感じが全く同じだった。

「おいおい、マジかよ・・・」

ヤバイ、にやけそうだ。あの女神に感謝しないとな・・・

その日の寝る前にあのどうしようもない女神に祈りを捧げた・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「すいません。ここであるバイトしたいんですけど・・・」

俺は今定食屋でアルバイト出来ないか聞くために来ている。

「はいはーい。おや、君は・・・?」

「始めまして、族長さんの家で居候しているしょうたと言います。」

「君が噂の子か。どうぞ中に入って。」

そんなに俺は噂されてるんだろうか?

「さて、うちで働いても良いけど魔道具屋等見たいに高いお金は払えないぞ?」

「はい、大丈夫です。」

「そうかい。うーん、じゃあ、学校終わったら七時半までと休日の昼間に働いてくれるかい?」

「はい、了解です。」

「じゃあ、それでよろしく。バイト代は月に10万エリスでいいかい?」

そんなにもらえるのか?

「喜んで!」

俺バイト始めました。




どうもねこたつむりです。
書けば書くほど下手になるってなんだか働けば働くほど貧乏になるウィズさん見たいですね(笑)
さて、色々急展開がありましたね、ゆんゆんが妹になったりツンデレになったり主人公がバイトしたり昨日までこんな予定は組んでなかったです。
今回も読んでくださり有り難うございます!
次回も読んでくださると嬉しいです。


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天才とぼっちと巨乳と少年

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ゆんゆんがぼっちじゃない。
こうなる予定ではなかった。以上。


「ハッ!」

俺は今定食屋で知り合ったぶっころりーさんと森に来ています。

「『カースド・クリスタルプリズン』」

やっぱ上級魔法ってすげぇな。

凍ったファイアードレイクを眺めながら思った。

せめて苦しまずに逝ってくれ。

「せいっ!」

声も上げずに死んだファイアードレイクに祈りを捧げる。

「優しいよな、しょうた君って。普通、モンスターに祈りなんて捧げないよ?」

「そうかもしれないですけど、生きてるものを殺してそれを糧にレベルを上げるんですから、俺的には祈りを捧げたいです。」

祈り終わって振り返りながら言った。

「ところで、今のでレベルは幾つになったんだい?。」

「えっと、お陰さまで21になりました。有り難うございます。」

そう、俺はぶっころりーさんに手伝ってもらって養殖をしていた。

お陰でスキルアップポーションと合わせて上級魔法まで後5ポイントになった。

「しかし、君の剣さばきはいつ見ても惚れ惚れするね・・・まるでそけっとみた・・・げふんげふん。」

誤魔化しきれてないが言わないであげておこう。

「有り難うございます。それにしてもぶっころりーさんは相変わらずそけっとさんが好きですね。」

誤魔化すとか言ったな、あれは嘘だ。

「そ、そんなことないよ。・・・そけっと可愛いよ。」

最後の方聞こえないように言ったつもりだろうが俺の聴力を舐めてもらっては困る。

しっかりと聞き取りましたとも。しかし、この人将来ストーカーにならないか不安だな・・・

「今日で目標のレベルまで達成しました。本当に有り難うございました。これ今日の分です。」

俺はぶっころりーさんに五万エリスを渡した。

「いや、いつも悪いね。また養殖したかったら声を掛けてくれよ。」

ぶっころりーさんと別れて冒険者カードを見た。

『スキルポイント35』

俺は冒険者だから上級魔法に必要なポイントは40・・・

アークウィザードって良いよなぁ。必要なポイント30だぜ?もう越してるっちゅうの。

「はぁ、さてと、バイトに行きますか!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「しょうた君、これとこれを二番の席に持っていって!あと五番の席の人の注文とってきて!」

流石定食屋さん。昼の混み具合が半端ない・・・

「了解です!」

料理をもって、

「はい、お待たせいたしました。日替わり定食にカエルの唐揚げ定食!」

ポケットからメモ用紙を取りだし、

「お待たせいたしました。ご注文をどうぞ。・・・はい、・・・はい、親子丼と刺身定食ですね。では、千四百エリスになります。はい、ちょうどお預かりします。」

 

「店長!親子丼1と刺身定食1入りました!」

「了解!それ三番の席に!」

「了解です!」

「すいません。こっちに水を下さい。」

「はい、只今!」

 

そんな感じで着々と仕事を進めていき気づけば客足も少なくなってきた。

「しょうた君、今日もお疲れさま。相変わらず良い仕事をっぷりだね。」

「有り難うございます。ここは働き甲斐があって良いですね。」

「ははは、君は変わり者だな。」

バイトってしたことがなかったけど、案外楽しいもんだ。それに、

「客足も少なくなってきたみたいだし、今日は何が良い?」

「そうですね、魚のさばき方をお願いします。」

そう、料理を教えてくれる。

「そうか、じゃ、テーブルを拭いてから厨房に来てくれ。」

「はーい。」

 

「そう、そこをそうやって・・・中々上手いじゃないか。鶏肉をさばく時も思ったけど、しょうた君は包丁さばきが上手いね。」

「んっ、いつも雪那を振ってるんで、ふん、刃物の事は大体、っ、分かるんです。ふぅ、どうですか?」

「上出来だ。料理スキルもなしでここまで出来るならうちで欲しいくらいだ。」

「へへっ、有り難うございます。冒険者で行き倒れそうになったらここに雇われに来ますよ。では、皿を洗い終わったら上がります。お疲れさまでした。」

「おう。お疲れ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただいまー。」

「お、帰ったか。今日な王都行ってきて面白そうな物を買ってきたんだ。」

父さんがウキウキしながら言ってきた。

「何買ってきたの?」

ちょうどゆんゆんが今に降りてきた。

「これだ。」

それは良く見たことのあるもので、誰もが遊んだことのある物だった。

「何それ?」

「トランプって言うらしい。今王都で流行ってる遊びだそうだ。」

そうか、日本の誰かが持ち込んだのか・・・

「どうやって遊ぶの?」

ゆんゆんが目を輝かせながら言った。

「教えてもらったのはババ抜きと神経衰弱っていう奴の二つだ。他にもあるらしいがなんせ忙しかったからな、その二つが限界だったよ。」

すごくメジャーなものが出てきたな。まぁ、ルールが簡単だしな。

俺は大富豪が好きだな。一度大富豪になったら負けなしだったからな。それでどれだけお金を巻き上げふんげふん

俺はニホンで良い子でした。いいね?

「よし、やってみるか。しょうたもやるか?」

「うーん、疲れたから今日は観ておくだけにしておくよ。」

「そうか。やりたくなったら言うんだぞ?」

「はいはい。あ、やるんだったらババ抜きじゃなくて神経衰弱にしとけよ。」

この人どんだけ子供大好きなんだよ・・・有り難いんですけどね?

親子で神経衰弱を微笑ましく見ていると、

「ほんとにやらなくて良いの?」

「ひゃっ!?」

マジでビックリした・・・心臓飛び出るかと思った。

母さんはクスクス笑っている。俺が後ろから耳元で囁かれるのを苦手と分かってから、最近ずっとやってくる。俺をいじめないで欲しい・・・

「もう、母さんってば、それやめてっていつも言ってるよな?何でするかな?」

「だってあなたの反応が楽しいんですもの。」

悪戯っ子のように笑う。そんなのされると怒れない。紅魔族の女性ってセコいと思う。

「で、何で参加しなかったの?」

どうやらバレてるらしい。

「親子水入らずの時間があっても良いんじゃないかなって」

「あなたも親子でしょ?」

「ほら、俺は養子だからさ・・・」

「そんなことは関係ないでしょ?私たちはあなたたち二人ともに分け隔てなく愛してるわ。私たちに壁を作らないで?」

「やめてよ、涙が出てくる・・・」

「ふふ、いつも大人ぶってるあなたよりそういう子供っぽいあなたの方がお母さんは好きだけどなぁ。」

ほんとこの人達優しいよな。少し甘えても・・・いや、やっぱりよしておこう。この人達にはゆんゆんがいるんだ。

「ありがとう、母さん。部屋にもどって雪那を磨いてくる。」

うれし涙をこらえて言った。

「いつでも甘えて良いからね?」

あぁ、涙が込み上げてくる。人前では泣かないって決めたのに。

「やった!お父さんに一組差で勝った!」

「くそぅ、ゆんゆん、も、もう一度だ。もう一度勝負させてくれ!」

空気を読まない親子だな、全く・・・

「ふっ、ふはは」

思わず笑ってしまった。久しぶりかもしれないな心のそこから笑ったの・・・

「お兄ちゃんが笑ってるの初めて見た・・・」

「はは、え?そ、そうだったか?はは・・・」

「ふふふ・・・そうよ、あなたがここに来てから一度も笑ってるのを見てないわ。せいぜい愛想笑いぐらいよ。」

笑いながら母さんは言った。そうか、俺はそんな失礼な事をしていたのか・・・

「ははは、そ、そっか、ごめんな。」

笑いながら謝るのもどうかと思うが止めることが出来ない。

「ははは、そうだぞ、私はしょうたが笑わなくて心配してたんだ。この子には笑うことが出来るんだろうかって。」

「はは、ひ、ひでぇ。」

父さんも笑い出した。

「あはは、そ、そうよ、お父さんひどいわよ。はは・・・」

ゆんゆんまでもが笑った。

あぁ、ようやく俺も家族の一員になれたんだな・・・壁はもう要らないか。

「父さん、他のトランプの遊び方知りたい?」

今の俺はみんなにどう写ってるだろう?

「何!?お前トランプの事知ってたのか?」

どう思ってるんだろう?

「俺が前住んでた所にあった。」

最愛の息子と兄であって欲しいな・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヤバイ、ここで終わらせたい感がすごいする。でも短すぎるから終わらせませんけど・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう。」

「おはようございます。今日はやけに早いですね。あれ、しょうた?雰囲気変わりました?」

「いや、知らねぇよ。もともと俺はどんな雰囲気なんだよ!」

「そう言われたら、変わってないような気もしないです。」

どっちなんだよ・・・

呆れた目でめぐみんを見てると、

「いや、確かにしょうた君の雰囲気は変わってるよ。こう角がとれたと言うか、柔らかくなったと言うか。取り敢えず、前よりかは話しやすいよ。」

「そうです。なんか前よりやわっこくなった気がします。」

「なんも言えてないやつに言われてもな・・・」

「うぐっ!」

「もしかしてゆんゆんと何かがあったかい?」

「当たらずとも遠からずだな。それよりトランプしようぜ。」

ポケットからトランプを出す。

「そういえば今日はゆんゆんと一緒に来てないんですか?」

「俺だけ早めに家出たからな・・・」

多分今頃走ってきてるかな・・・

「で、そのトランプって奴はどうやって遊ぶんだい?」

「待てって今教えるから。」

 

「お兄ちゃん!勝手にトランプ持っていったでしょ!?」

顔を真っ赤にして教室に入るなり俺を怒鳴った。

「やっと来たか。遅いぞ、ゆんゆん。」

「何が『やっと来たか』よ、あ、おはよう。めぐみん、あるえ。」

「「おはよう。」ございます。」

「さて、とっとと始めるか大富豪。ゆんゆん、早く席につけよ。」

「もうルールはバッチリですよ。」

「早く始めようよ。次は負けないから。」

めぐみんとあるえがヤル気満々でほざいてる。

「え?もしかして早く来てたのって大富豪のルールを教えるため?」

驚いた顔をしてる。

「さぁな?早くやろうぜ、20連敗中のゆんゆんさん。」

「こ、今度こそは絶対に負けないから!」

「それ20回目な。」

「ムキー!」

ムキー!っていうやつ初めて見た・・・

「ゆ、ゆんゆん。ここは冷静にいきましょう。」

「そうだよ、しょうた君を倒すには三人で力を会わせることが必要だと思うんだよ。」

なんか俺が敵みたいじゃないか・・・

「そ、そうだね。みんなで力を合わせてお兄ちゃんに勝とう!」

「「「いざ、尋常に勝b・・・」」」

ガラガラガラ

「はーい、席につけー。」

相変わらず空気に読めない担任だ。

この学校に来て一ヶ月が過ぎた。

時間ってものは早く過ぎるもんだな・・・

「では、前回のテストの結果を発表する。三位以内の者はスキルアップポーションを渡すので前に来るように。」

あと5ポイント・・・

「三位、ゆんゆん!」

ゆんゆんがポーションを取りに行く。

「次、二位、めぐみん!」

「チッ・・・」

あいつ俺見ながら舌打ちしやがった。

一位が俺とは限らn・・・

「そして一位、しょうた!」

はい、俺ですよ。必死で勉強したんだから負けてたまるか・・・

「お前も大変だな、冒険者だからスキルポイントも多くいるし・・・」

喧嘩売ってんのかなこいつ?

「さて、授業を始めるぞ。」

 

~放課後~

「さて、朝は先生が来たから出来なかったけど。しょうた君、今回こそは勝って見せる!」

あるえの言葉に同意するようにゆんゆんとめぐみんが頷く。

「あの、三人ともヤル気満々なのは良いんだけど・・・」

「どうしたのですか?まさか怖じ気づいたんですか?」

「いや、そういう訳じゃなくてバイトの時間だからさ・・・」

三人とも忘れてたとでも言うような顔をしている。

「あ、明日学校休みじゃん?誰かの家でやろうぜ・・・な?」

「そ、そうね。誰の家にする?」

「私の家はダメだよ?原稿で一杯だからさ・・・」

「手土産を持ってきてくれるなら私の家でも良いですよ?」

手土産狙いかこいつ・・・

「じゃ、じゃあそう言うことで。」

「バイト終わるのが二時くらいだから二時半集合な。」

「「了解」です。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お兄ちゃん、迎えに来たよ?」

定食屋で待っていた俺に声をかけた。

「じゃあ、行くか。」

いつもより上機嫌なゆんゆん。初めて友達の家に行くもんな。

「お兄ちゃんは何を持ってきたの?」

俺が手に下げてるものが気になるらしい。

「照り焼きサンドイッチ。キャベツましまし。」

「ふ、ふーん。」

なぜか羨ましそうにサンドイッチを見てた。

「そう言うゆんゆんは何を持ってきたんだ?」

「一昨日お兄ちゃんと作ったクッキー。」

あー、お菓子の作り方を教えて欲しいって頼まれたときのか・・・

てか、女子より女子力高いってどうなんだ?

そんなことで悩んでたら、

「やぁ、ゆんゆんにしょうた君。」

「よっ、あるえ」

「あるえ、こんにちわ」

めぐみんの家に行く途中あるえと合流した。

「あるえは何持ってきたんだ?」

袋からボトルを出して、

「ネロイドだよ。」

なんとまぁ、飲み物とお菓子とちょっとしたご飯が揃ったな。

まるで誰かがあつらえたみたいだ。

そうこうしてるうちにめぐみんの家に到着した。

コンコンコン

ガチャ

出てきたのはめぐみんをちっさくしたようなちびめぐみんだった。略してチビめぐ。

「もうみっかもたべてないんです。」

・・・へ?

「はい、サンドイッチ。ハッ!?つい反射的に・・・チビめぐ恐るべし。」

チビめぐは貰ったサンドイッチを頬張った。

「お姉ちゃんいるかな?」

「姉ちゃーん、女の子を二人連れたスカしたやろうがきたー!」

「おい、ちょっと待てぇい!」

 

「うちの妹がすみません。ほらこめっこも謝るのです。」

「ごめんなさい。」

めぐみんによると最近変な言葉ばっかり覚えてくるらしい。ちっさい子というのは覚えたての言葉を使いたがる。仕方のないことだ。

「いや、いいよ。別に悪気があった訳じゃない。ただ教えたやつは誰か知る必要があるけどな。こめっこちゃん?誰にその言葉教えて貰ったんだ?」

「ぶっころりー」

なるほど、あとで親にチクるか。

「じゃあ、もうみっかもたべてないんですっていうのもぶっころりーさんなんだ。」

ゆんゆんが納得したかのようい頷いてると、

「それは姉ちゃんから!」

「こ、こめっこ!?」

この姉にこの妹ありか・・・

「そろそろ大富豪を始めないかい?、こめっこちゃんもやるかい?」

「うん!」

俺はまた一からルールを説明することになった。

「大体わかった!」

「賢いぞこめっこ。」

「「「「いざ、尋常に勝負!」」」」

「しょーぶ!」

 

「うそ、だろ?」

何が起こったかと言うとこめっこに負けた。

「さすが我が妹です。」

「大貧民が何をいってる。」

「なっ!」

「お兄ちゃん、相手はこめっこちゃんだし次のゲームは都落ち無しにしない?」

「そうだね、その提案私は賛成だよ。」

何を思ったか知らないがそんな提案をしてくる。

「いいのか?お前らが勝てる勝率が低くなるぞ?」

「いいのいいの。だってこめっこちゃんがお兄ちゃんを倒す確率が高くなるから。」

満面の笑みを浮かべるゆんゆん。

これが普段ならば可愛いもんだが今は恐怖すら感じる・・・

「じゃ、じゃあ、配り直すな。」

ガードシャッフルしみんなの元へ配る。

「しかし、しょうた君のシャッフルはいつ見てみ気持ちがいいね。」

「ほんとですよ、もしかしたらイカサマを・・・「「ハッ!?」」」

何を勘違いしてるんだこのバカどもは・・・

いや、確かに出来るよ?それで日本では金を巻き上げふんげふん。

再度言うけど、俺はニホンで良い子でした。いいね?

「やったらつまらないだろ?」

そう、俺がイカサマをやるときはポーカーと早くゲームを終わらせたいときだけだ。

「そ、そうよね。お兄ちゃんは変なとこで真面目だもんね。」

おいそれを聞く限り俺はいつも真面目じゃないと聞こえるんだけど・・・

「だいひんみんカードちょーだい!」

姉が妹にたかられる現場に直撃しました。

「こ、こめっこ・・・いつも通り姉ちゃんって呼んで欲しいのですが。」

「・・・やだ!」

悩んだ結果これか、それとも悩んだふりしたのか。もしそうだとしたらこいつは大物になるな・・・

「じゃあ、ゆんゆんくれ。」

渡されたカードを見ると。

「あ、これ勝ったわ・・・」

「「「えっ!?」」」

 

「ねぇ、本当にイカサマしてないの?」

「してねぇって。」

揃った手札はイカサマの時に揃う手札だった。

それでストレート勝ち。疑われても仕方ないが・・・

「しょうたお兄ちゃん、ほんとにしてないの?」

「やってないよ、こめっこ。」

「わかった!信じる。」

純粋って良いよな・・・人間成長したら汚くなっていくんだな・・・

「もう良いではないですか。しょうたがやってないっていうことにしときましょう。次は私がカード配りますから。」

「まて、ほんとにやってないんだけど・・・もう、いいや・・・」

「はいはい、配りますよ。」

 

~結果~

俺とこめっこの大富豪の争奪戦。

残り三人は平民になったり貧民、大貧民になったり悲しい結末に・・・

 

時はすでに夕方。

「もう、やめようぜ・・・疲れた。」

「つかれた。」

こめっこが膝の上で言った。

こめっこは十回過ぎた辺りで試合を放棄して膝の上に乗ってきた。

「まだです、何か必勝法が・・・」

誰だこいつ?

「や、やめようよ、めぐみん。」

ゆんゆんも疲れきったような顔していった。

「それにしてもこのクッキーすごく美味しいよ。」

ゆんゆんが持ってきたクッキーをかじっていった。

「あ、ありがとう。実はそれお兄ちゃんと一緒にt・・・」

「特にこのアーモンドのアクセントが絶妙に効いてて・・・」

アーモンド?

「ア、アーモンド?お兄ちゃん、そんなもの入れたっけ?」

「い、いや、あのクッキーには入れてな・・・おい、ゆんゆん。それ冷蔵庫の何段目から取った?」

「えっと確か四段目立ったかな?」

「バカ野郎!俺たちが作ったの三段目に入れただろ?お前が持ってきたのは母さんにあげるやつだったんだよ・・・」

「え!?そんな、ごめんなさい。」

「やってしまったのは仕方ない。しかしどうすっかなぁ?母さんにバレずにキッチン立つの大変なんだよな・・・」

「そ、それじゃあ、今度私の家に来るかい?そ、そのクッキーの作り方知りたい・・・」

なぜか頬を赤く染めてあるえが言う。

「こ、今度と言わず、今日ここで作りましょう!」

慌てて提案するめぐみん。何?俺があるえを食うとでも思ってんの?

「じゃあ、材料買いにいってくる。」

 

「あとはバニラエッセンスとアーモンドっと・・・ん?俺の目がおかしくなったのか?川で採れたてのバナナ?バカにしてんのか!?」

会計を済ませめぐみん宅へ向かった。

 

「ただいま・・・」

俺の目の前には180cm位の男の人が立っていました。

「お前、今なんて言ったんだ?」

「えっと・・・ただいま?」

「帰れ!」

「えぇ~」

「何が『えぇ~』だ。なんだお前?わしの可愛い娘のめぐみんの婿のなったt・・・」

「しょうたお兄ちゃんお帰りー!」

こめっこが飛び付いてきた。随分なつかれたものだ。

「こ、こめっこ!?貴様!まさかめぐみんではなくこめっこが狙いだったとはな!」

「お父さん、何いってんですか。その人は族長の所の養子のしょうたです。今日はゆんゆんと一緒にうちに遊びに来ただけですよ。か、勝手にむ、婿だの夫だのと言わないで下さい。」

「いや、夫とは言ってなかったぞ?」

「う、うるさいです。さっさと中に入って作り方とやらを教えるのです!」

その言い方は色々と誤解を招きかねないのでやめてほしい。現にお前の父ちゃんがプルプル震えてるから。

「お、お前!娘に何を教える気だ!?」

「クッキーの作り方ですよ!ほら、ここに材料あるでしょ!?」

「むむむ・・・し、仕方ない、入れ。」

何かを我慢するように言った。てか何が仕方ないだ・・・

 

「えっと、ではクッキーの作り方を説明するぞ。まず・・・」

やりにくい・・・非常にやりにくい!

何でめぐみんのお父さんこっちガン見してんの?監視くらいなら分かるけど、そんなにガン見しなくても良いんじゃないですかね?

 

ふぅー、なんとか生地まで出来た。後は型を取って魔導オーブンで焼くだけ。

袖を引っ張られそっちを見た。

「わたしもやりたい。」

純粋って良いなぁ

生地を半分千切ってこめっこにあげた。

「はい、次は好きな形に型どらせて。形は手でも良いが、こういう型を使うのもありだ。」

みんな思い思いの形を作っている。こめっこに関しては型を使って生地をくりぬくのに夢中だ。

 

こめっこが型のくりぬきが終わった頃には全員終わっていた。

「次はあらかじめ予熱で温めておいたオーブンにいれて30分くらい焼く。焼き終わったら冷まして冷蔵庫に保存以上。」

オーブンは思ったより大きかったので無事全員分入れることが出来ました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

30分暇だったんでみんなにトランプを使ったマジックを披露していた。

魔法使い相手にマジックなんて受けないだろうと思ったがものすごい反響だった。

「え?今のどうやったんですか!?」

俺は相手が引いたカードを当てるという単純なマジックをやっていた。

「むむむ、一体どうなってるんだ・・・?」

どうやらめぐみんのお父さんも興味を持ってくれたらしい。

「ゆんゆん、あの仕組みが分かるかい?」

「さ、さっぱり・・・」

どうやらあるえとゆんゆんもお手上げらしい。

「さて、そろそろ30分か。オーブンを開けるぞ。」

「クッキー、クッキー。」

「「「あ、待って」」ください!」

「開けます。せーのっ。」

ぶわっと熱気が来た、と同時に香ばしい良い匂いがした。

「「「「うわぁぁあ!」」」」

そこには黄金色い焼き上がったクッキーがあった。

「よし、良い出来だ。」

「あら、良い匂いね。」

声がした方を見ると、めぐみんのお母さんらしき人が立っていた。

「あ、キッチンお借りしてます。」

「いえいえ、お構い無く。」

「ねぇねぇ、これ食べて良い?」

早く食べたいのかこめっこに聞いてきた。

「まだやわっこいからもうちょっと後な。」

「そっかー。あとでまた食べようね?」

純粋って良いなぁ

本日三回目の感想を思いながらと片付けをした。




どーも、ねこたつむりです。
お気に入り件数が20件になっていました。
感謝感謝です。
家族のくだりとか正直いれる予定とかなかったです。はい。では、今回も読んでくださってありがとうございます!
次回も読んでくださるとありがたいです。


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そして卒業

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
長いのに内容が薄いです。こんな小説なくなればいいと思います、はい。でもこれしか書けないので載せときます。
この話の方向がわからなくなってきた。何を目的にしてるんでしょうか?私は・・・



~主人公のステータス~

筋力、体力、敏捷性共に平均値より大幅に高い。

幸運度、器用性、知力共にそこそこ高い

魔力平均値

生命力平均値より大幅に低い。

レベル21 スキルポイント35

スキル

武器 雪那 効果『見切り』『魔力伝導』『共鳴』『魔力増加level1』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ガタッ

その物音で目覚めた。

くそ、誰だよ。気持ちよく寝てたのによ・・・

目を擦り布団から起き上がる。そこに居たのは、俺の冒険者カードを持ったゆんゆんだった。

「お兄ちゃん・・・これどういうこと?」

俯きながら聞いてきた。

「どういうことって何が?」

訳がわからん。どうしてゆんゆんが気を落としてるのか、何で俺の冒険者カードに疑問を抱いてるのか、どうしてぷっちんがあんなにも問題を起こすのか・・・さっぱりわからん。

「スキルポイントが35も貯まってる・・・ねぇ?どうして?入学してまだ一ヶ月しか経っていないのに・・・」

「なんだよ、そんなことか・・・」

「そんなことって・・・」

「養殖したんだよ。レベル見てみそ?」

「21・・・」

「早く魔法使いたいからな。結構頑張ったんだぞ?」

へへへと笑いながら言った。

「・・・らなく・・・たのに。」

「ごめん、聞き取れなかった。」

「頑張らなくて良かったのに!」

顔をあげて叫んだゆんゆんは泣いていた・・・

「おい、何で泣いて・・・っ!?」

ゆんゆんが抱きついてきた。

「ずっと一緒にいようよ。毎日一緒に登校してご飯を食べてトランプしたりそれから・・・」

「その気持ちは嬉しいが俺はずっと居候する気はない。」

その一言でゆんゆんはさらに涙をこぼした。

「でも、お前が卒業出来るまでここに居てやるよ・・・」

ゆんゆんが俺を見上げる。

「ほ、ほんとに?」

「あぁ、だから涙拭けよ。」

親指でゆんゆんの涙をぬぐった。

「約束よ?しょうた。」

今まで見た中で一番の笑顔で言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「遅かったな、しょうたにゆんゆん。朝ご飯出来てるぞ。」

父さんがコーヒーをすすりながら言った。

「どうしたのゆんゆん?目が腫れぼったいわよ?あ、しょうた。何かしたんじゃないでしょうね?」

「強いて言うなら養殖。」

「そう、なるほどね・・・」

流石母親、理解が早い。それに比べてこの父親は、

「何で養殖なんかで泣いてるんだ?あ!レベルが低すぎて悔しくて泣いたのか?」

アホそのものだな。

「お父さんは少し黙って。」

おっと、これは怖い。この世界で何が怖いかって怒った母親ですよね。

「あ、はい。」

萎縮した父親を見て絶対こうはならないでおこう。と決意を固くした。

ちょっと重たい空気で今日も一日が始まる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・めぐみん!ゆんゆん!しょうた!よし、今日も全員いるな。では、授業を始める。」

今日も学校は平常運転。だが、隣にいるやつがまだ立ち直れてない。約束したときの笑顔はどうした?

いかんいかん、授業に集中しなければ。

「・・・なのでリッチー等のアンデットが使う特有のスキル『ドレインタッチ』には要注意する事。では、ここで問題だ。『ドレインタッチ』にもっとも魔力を吸収されやすい場所は?この性質を知っていれば被害を最小限に抑えられる。これは難問だから『スキルアップポーション』をやろう。」

なんだと・・・?即座に手を挙げた。普段ならめんどくさいので流すが『スキルアップポーション』が貰えるとなれば話は別だ。

「お、しょうた解るのか?」

「はい、本で見たことがあります。確か心臓に近い部分ほど吸収の効率が上がると。」

「正解。『スキルアップポーション』やろう。前に取りに来い。」

「ありがとうございます。」

ポーションを受け取り席に帰るとゆんゆんが不安そうな顔でこっちを見てくる。

そんな目で見ないでほしい・・・

 

「さて、これで一時間目は終了だ。二時間目は養殖だから校庭に集合。遅れるなよ。」

養殖か、運良くレベルが上がればスキルポイントゲットだな・・・

ゆんゆんが席を立ち教室を出ていった。

それを見計らったようにめぐみんとあるえが近づいてきた。

「しょうた、ゆんゆんと何かあったのですか?」

「後ろから凄い負のオーラが漂ってたよ。」

「ちょっとな・・・」

「まさかしょうた、ゆんゆんにセクハラでもしましたか?」

「なぁ、俺がセクハラするやつに見える?」

「うーん、そうだねぇ、時々邪な目で私とゆんゆんを見てるよね?」

バ、バレてたのか。

「おい、なぜ私のことを邪な目で見ないのか説明してもらおうか!」

「見てたのは認めるけど、手を出そうとは思わねぇよ。」

「無視をするな!」

うるさいな・・・

「じゃあ、何があったんだい?」

「原因は俺が養殖したことだな・・・」

「「あぁ~」」

「そろそろ校庭に行こうぜ。」

俺達は校庭に向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

校庭には既にゆんゆんが居た。

「よし、揃ったな。これから養殖を始める。このために暇なニートたちを引き連れて危険なモンスターを駆除してきた。だから安全だとは思うが気を付けるように。お前らはここにある武器を使ってモンスターを狩ってもらう。」

モンハンかな?

「今日はあるゲームをしようと思う。それは討伐数がもっとも多い者がこれを手にすることが出来る。」

今日は大出費だな。なんと景品は例の如く『スキルアップポーション』だった。

雪那があれば楽勝だな。

「しょうた、その剣は置いていけよ?」

マジですか?

「お前もこの中から武器を選べ。」

この中って俺らの身長よりでかい武器のことですか?って軽っ!?

「では、よーい。どん!」

真っ先に走ったのはゆんゆんだった。あんなアグレッシブだったか?

とりあえずてっぺんとれるように頑張りますか・・・

 

始まって30分が経過した。俺は既に17体糧に出来た。しっかりと祈ることは出来なかったが感謝の言葉は口に出してた。後でしっかりと冥福を祈ってやろう。

「しょうた君、調子はどうだい?」

「あるえか、順調。17体ってとこだ。」

「凄いね、私なんか6体だよ。」

「そっか、めぐみんは?一緒じゃないのか?」

「めぐみんなら3体目辺りでリタイアしたよ。」

貧弱な体してんな。今度差し入れしてやるか。

「それよか、ゆんゆんは大丈夫かな?あいつやけに気を張ってたけど・・・」

まぁ、ぷっちんは危険なやつは駆除したって言ってたから大丈夫だろ・・・

「しょ、しょうた君はさ、ゆんゆんのことどう思ってんの?」

どしたいきなり?顔真っ赤にして。

「どう思ってるって、妹だろ?」

「そ、そう言うのじゃなくてさ、異性としてどうなのかって聞いてるんだけど・・・」

「何色気付いてんの?」

「う、うるさいよ。でどうなんだい?」

「うーん、良くわからんがたまにドキッて来ることがある。」

「そ、そうか・・・」

「でも、それはゆんゆんだけじゃなくてあるえやめぐみんと一緒にいるときでも起こる。だからそういうのじゃないと思うけど?」

「へ、へ~そっか、そうだよね。じゃあ、まだいけるか・・・」

「つーか、何でそんなこと聞くんだ?」

「べ、別に。じゃあ、頑張ってね。」

走ってどっか行くあるえを見ながら、

「わかんねぇな。」

 

「もうすぐ時間切れか。これぐらい狩ればいけるかな?」

モンスターの数は30を超えてた。

帰ろうとすると、

「きゃあー!」

ゆんゆんの悲鳴が聴こえてきた。

「ゆんゆん!」

声がした方へかけていった。

たどり着いたら今まさにゆんゆんに殴り掛かろうとしてる一撃熊が・・・

「『雪那』来い!!」

ヒュゥン!

空から降ってきた『雪那』を掴んで、

「おりゃぁあ!」

「ギャウン!?」

片腕を丸々斬られた一撃熊は悲鳴をあげた。

「大丈夫か?ゆんゆん!」

「お、お兄ちゃん!」

「ぷっちんの野郎、後で怒鳴り散らしてやる。お前はさっさと逃げろ!」

「お兄ちゃん雪那を持ってきてたの?」

「その話は後で良いか?こいつを先に殺らないと・・・ということでさっさと逃げろ。」

「嫌!お兄ちゃんが逃げないなら私も逃げない。そしてお兄ちゃんが死んだら私もしっ!?」

ゆんゆんの頭を撫でた。

「お前はどんだけブラコンなんだよ。そんなこと言われたら余計死ぬわけにもいかねぇな!」

「ガルルルッ」

「ほっといて悪かったな。すぐ終わらしてやるよ!『バーストモード』!」

リミッターを解除して走ったのと同時に一撃熊は右手を振りかざした。

一気に距離を縮め間合いに一気に入った瞬間一撃熊の右手が真横に来た。

「お兄ちゃん!!」

右手が振り切った。が、それは空振りに終わった。勢いをつけ過ぎたのかバランスを崩して転倒した。

俺はといえば、一撃熊の上空で大きく雪那を振りかぶって居た。

「うおぉー!」

こんなに勢いをつけたのにやっぱり斬った感触がしない。これはある意味欠陥商品だ。

一撃熊は呻きもせず死んだ。ついでに肝を持っていくか・・・

「お兄ちゃん!」

「っ!?おいこら、抱きつくなって!」

「嫌!それにしても、何であの熊の動きが見切れたの?」

「俺の動体視力と『雪那』のお陰だ。」

「動体視力とは分かるけど『雪那』のお陰?」

「俺の動体視力を底上げしてくれる効果を持つって言った方が早いか。そのお陰であいつの殴るスピードも見えたしタイミングもわかっていた。だから間合いに入った瞬間、地面を蹴って後ろに下がって上へ跳んだ。」

「そっか、でもせこいよね。雪那を持って森へ入ったのって・・・」

「もって入ってないぞ?」

「え、だってそこにあるじゃない。」

「呼んだ。」

「呼んだ?」

「見とけよ?悪い雪那、投げるぞ?」

雪那を投げ30mくらい離れた。

「『雪那』来い!」

ヒュゥン!

パシッ

雪那が飛び俺の元へ来た。

「す、凄い。」

「俺はこれを『共鳴』って呼んでる。」

「じゃあ、動体視力は?」

「『見切り』」

「まんまだね。」

「まんまが一番。」

二人で笑ってると。

「おーい!大丈夫かー!?」

ぷっちんの声だ。多分誰かがゆんゆんの悲鳴を聞いて先生を呼んでくれたんだろう。

「ここでーす!」

「居た居た。大丈夫か?」

「はい、なんとか。」

「しかし何があった?」

「一撃熊ですよ。危険なやつは駆除したって言ってませんでしたっけ?」

「ほ、ほんとかそれ?それで?そいつどうした?」

俺は一撃熊から手に入れた肝を見せた。

「いや、雪那が無かったらヤバかったですよ。」

「そ、そうだよ、お前のその剣、急に飛んでいくもんだからビックリしたよ。」

「先生、言いませんでしたっけ?俺とこいつは一心同体って俺はいつでもこいつを呼べるんです。」

「言ってないよ。そんなこと。」

「そうでしたっけ?」

「で、お前らは何体狩ったんだ?」

「わ、私は32体です。」

マジかよこいつ・・・あんなに大人しかったゆんゆんが?

「おい、レベルはどれだけ上がったんだ?」

「えっと、12になったよ。悪いけどお兄ちゃん、今回は私が勝ったから。」

おう、マジですか。

「で、お前は何体なんだ?しょうた。」

「えっと36体ですね。レベルも1上がってスキルポイントも1増えました。」

「えー!?何でよ!何でそんなに倒せてるの?」

「やろうと思ったらやる子なんだよ俺は。」

「そうか、じゃあ、これはしょうたのだな。」

「アザっす。これであと2ポイント。」

 

無事養殖の授業も終わったが一撃熊戦の疲れもあり、次の授業というわけにもいかず、保健室への許可が出た。

「お疲れ様、一撃熊を倒したんだってね?」

保健室の先生が出迎えてくれた。

「疲れが取れるまで休んでていいから。私は今から校長先生にこっぴどくしかられたぷっちん先生の手当てしに行くから。誰もいないからって横の子には手を出したらダメよ?」

「出しませんよ。」

「ふふ、じゃあ、行ってきます。」

「行ってらっしゃーい。」

保健室の先生っていいよな・・・

ましてやここは紅魔の里。美人さんが多いんです。

「何デレデレしてるんですか。」

「何だよめぐみん起きてたのか。」

「何だよとは何ですか。というより私がいるって知ってたんですね。」

「あたりまえだろ、それじゃなきゃ手を出しませんなんて言えn・・・!?待てめぐみん!落ち着けって!・・・め、めぐみん?」

めぐみんが俺に飛び掛かり胸ぐらを掴んだが、その手の力徐々にが弱まって肩を震わせていた。

「どうして・・・どうしてゆんゆんやあるえは邪な目で見るのに私は見ないのですか!?」

そう訴えるめぐみんの目には涙が浮かんでいた。

「お前、相当ヤバイこと口走ってるぞ・・・?」

「分かってますよ。分かってて言ってるんですよ!」

へ?

「そうなるとお前の意思が分からないんだけど・・・」

「何でわからないのですか!?この鈍感!」

ひどい言われようだ。

「じゃあ、この鈍感にも分かるように説明してくれよ!」

「っ!」

そう言うとめぐみんが一瞬怯んだ。

「い、良いでしょう、言いますよ。私は貴方に・・・!?」

タイミングいいのか悪いのか分からないが保健室の先生が帰ってきた。

「だから手を出すなって言ったのに・・・」

呆れた目で見てくる。

「俺何もしてないですって!」

「何を言ってるんですか。私がここに居ることを知ってて手は出さないって言ったんですよ?宣戦布告じゃないですか?」

「じゃあ、何か?手を出して欲しかったのか?」

「はい、はい、二人ともそこまで。仲が良いのは分かったからさっさとベットに戻りなさい。」

「「はーい。」」

俺達は素直にベットに戻った。

「ふふ、仲が良いって所は否定しないのね。」

「めぐみんとはゆんゆんやあるえと一緒に遊んだりするから仲が良いってのは否定できません。」

「そう、あら?めぐみんさん、耳が赤いわよ?熱でもあるんじゃない?」

「な、ないです!ほっといてください。」

「そう、それじゃあ職員室に戻るから仲良くね。」

保健室の先生が出ていった。

「しょ、しょうた。さっきの聞きます?私が何を言いたいのかってやつです。・・・しょうた?しょうっ!?」

「すかー」

「この人ときたらっ。ふぅ、今回は見逃して上げますよ。」

 

目覚めたのは放課後だった。

「ふわぁ~あ。疲れた。今何時くらい?あ!ヤバッ!バイトに遅刻する!教室に物取りに行くのもめんどくさい!『雪那』来い!」

ヒュゥン!

俺は急いで定食屋に向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ありがとうございましたー!」

客が帰ったテーブルを片付けてると、

「今日ぐらいは良かったのに。聞いたよ。一撃熊を倒したんだって?大したもんだよ。」

「いえいえ、仕事はしっかりやらなくちゃ。給料貰ってるんだし。それに雪那がいなけりゃ倒せませんでしたしね。」

店に立て掛けてある雪那を見る。

「まるで、あの剣が生きてるみたいに言うね。確かにただ物ではないだろうけど。」

「最近思うんですよ。こいつには意思があるんじゃないかなって。」

『共鳴』がそう思うひとつの理由だ。

「じゃあ、俺はこの辺で。」

「今日もお疲れ。」

「お疲れ様です!」

店を出て数歩歩く。ヤバい、結構体に堪えたみたい・・・

ドサッ

意識がとお・の・・い・・・て・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を開けて最初に写ったのは紅目と見知らぬ天井だった。

「やっと目を覚ましたね。私のお父さんが君を見つけて運んできたんだよ。」

「あるえのお父さんが運んできてくれたのか・・・後で礼を言わなくちゃな。」

多分あのまま放置されてたらきっと朝まであのままだっただろう。

「今何時だ?」

「え?えっと四時だよ。もちろん朝の。」

まだ夜も明けてないな。あれ?

「なぁ、もしかして俺が起きるまでずっ看病してたのか?」

あるえが顔を赤くしてコクと頷く。

「それは悪いことしたな。今出て行く!?あ、無理っぽいわ。体が動かん。唯一動くのは手だけか。」

そりゃあ、35体も蹂躙した後にバーストモードを使って一撃熊を相手したもんな。

「あるえ、寝ないのは健康に悪いし、でも俺今動けないし・・・ていうことで悪いけど一緒に寝ろ。」

俺はあるえをベットに引き込む。

「っ!?だ、ダメだよ。こんなこと・・・」

「なに言ってんだよ。寝ない方がもっと悪いだろ?」

何でこいつモジモジしてんだ?

「な、なにもしないかい?」

「するも何も体が動かないからそこの本棚に入ってるような本の内容みたいなことはしないよ。」

「え!?な、何で知って・・・じゃなくて、な、なんのこと?」

隠しきれてないぞ。しかし、カマをかけてみたが分かりやすい反応するな。

「エロガキめ。」

「い、いや、あ、あれは・・・ほら、小説書くのに必要というか・・・」

「はいはい、そういうことにしといてやるよ。」

「ほ、ほんとだって!」

「そんなに叫ぶと近所迷惑だろ?」

「だ、大丈夫だよ。この部屋、サイレントが掛けられてるから。」

「何で!?」

サイレントとは中の声が外に漏れないようにするために使う魔法だ。

「親がいつもうるさいからっあああ!?なにもしてないよ?なにもしてないけど・・・」

マジか、大人しそうなやつでもやってるんだな。

「もう分かったから寝させてくれ。」

「そ、そうだね、悪かったね。」

「おやすみ。」

「お、おやすみ。」

あるえが抱きついてきたような気がするが気に掛けれるほど気力はなく、気絶するようの眠った。

 

六時半辺りだろうか?あるえはまだ寝てる。てかやっぱし抱きついてたんだな・・・

起こさないように起きて部屋を出た。

居間に出るとそこにはあるえのお父さんらしき人が居た。

「よく眠れたかい?」

「はい、転がってるとこを助けていただきありがとうございます。」

「娘はどうだったかい?」

「どうと言われましても一緒に寝たぐらいで・・・あ、もちろん手は出してないですよ?動けませんでしたし。」

「そうかい、じゃ、気を付けて帰るんだよ。」

「はい、お世話になりました。」

 

体だるい。今日も保健室にお世話になるか・・・

「ただいま・・・」

「しょうた、今までどこで何してたんだ?」

父さんが静かな声ながらも怒って言った。

「路上で倒れた所をあるえのお父さんに拾ってもらったらしく、あるえの家で寝てました。」

「そうか、それならよかった。体の方は大丈夫か?」

安心したような顔で聞いてきた。

「ちょっとだるいけど、大丈夫。心配かけてごめん。」

自室に戻り、ベットに倒れこんだ。

「お兄ちゃん!」

あ、忘れてた。この家で誰よりも心配してきそうな妹が居たことを。

「どした?ゆんゆん?」

「どうもこうもないわよ!体大丈夫なの?」

「まぁ、なんとか。」

「その状態で言われても説得力がないんだけど?」

俺はうつ伏せのまま答えてた。

「あのさ、お兄ちゃんが好きなのは分かったから、そういうの後にしてくれる?体力が回復しきってないんだ。」

「そう、じゃあ、後でね。」

ゆんゆんが部屋を出ていった。

「あいつ、否定しなかったな。」

ポツリと呟き寝ました。三度寝って最高っす。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あの後、学校に行ける程度まで回復し学校に来た。

「えーっと、昨日しょうたが倒した一撃熊はあの一帯の主だったらしい。」

そのぷっちんの言葉に教室がざわつく。

「でだ、その功績を称えて『スキルアップポーション』を二個贈呈するらしい。」

え!?じゃあ、俺卒業?ここに来て一ヶ月ちょっとで?

あと二ヶ月はかかると思ってた。

「では、しょうた。前に来い。」

行こうとすると服が引っ張られた。

「ゆんゆん・・・」

無理に振りほどきたくない。

「言っただろ?お前が卒業するまでここを離れないって。」

そう言うとゆんゆんが離してくれた。

俺はポーションを受け取りその場で二個とも飲み干した。

そしてカードを取り出して白く書かれてる上級魔法を覚えた。

「おめでとう、これで卒業試験を受けれるな!」

え!?なにそれ?覚えてはい終わりじゃないの?

「昨日校長と話し合ったんだ。結果しょうたにだけ卒業試験を課せようって。その方が盛り上がるからな。」

ちくしょう!俺紅魔族何て嫌いだ!

「試験の内容は俺と勝負して勝つことだな。ハンデとして俺は中級魔法しか使わない。」

あー、よくあるパターンか・・・今日は勘弁してほしい。

「試験日は今日、と言いたいところだが、昨日も疲れもあるだろう。明日にする。」

それを聞いて即座に保健室に向かった。

 

保健室で寝てたあるときのこと。

「あらめぐみんさん、今日も貧血?それともお見舞いに来たのかしら?」

「ち、違います。いつも通りのやつです。」

「そう、じゃあ、ごゆっくり。」

保健室の先生が出ていった。

「しょうた、起きてます?」

「何だよめぐみん、ほんとにお見舞いにでも来たのか?」

「ち、違いますよ。あの、隣いいですか?」

なに言ってんだこいつ?ここにはベットが二個しかないのに隣も何もないんですが。

「いいよ。」

「そうですか、それでは失礼します。」

そういってめぐみんは俺が寝てる布団に入って来るやいなや後ろから抱きついてきた。

え!?何?最近抱きつくことがブームなの?てか隣ってそっち?隣のベットのことじゃなくて?

「おい、何してるんだよ。」

「何って隣で寝てるだけですよ。」

「そういうことを聞いてるんじゃなくて・・・」

「しょうたがここを卒業したらこうして寝る機会がなくなると思いまして。」

「お前、何回か一緒に寝たみたいなこと言ってるけどこれ初めてだからな?」

「しょうた、あるえと何かありました?」

へ?

「しょうたのローブからあるえの匂いがします。」

「何かあったって一緒に寝たぐらいで・・・」

「そうですか・・・」

無言が空気を制圧した。

 

あれからどのくらい時間が立ったのだろうか。

俺とめぐみんはあれからミリ単位も動かずにいた。

そんな空気を壊したのは、

「めぐみん」

「しょうた」

「「っ!?」」

俺とめぐみんだ。しかし、同時に口を開くってほんとにあるんだな。

「めぐみんからどうぞ。」

レディーファーストってやつだ。普段は絶対に使わない言葉だ。

「しょうたは卒業したらどうするのですか?」

「最初はすぐ出て行くつもりだった。」

そう、魔法を覚えたら居候をやめて自立するつもりだった。

「でも、ゆんゆんのやつがあんなに泣くとは思わなかったから、あいつが卒業するまでここに残る事にした。」

「そうですか・・・ゆんゆんには感謝ですね。」

「は?」

「では、次はしょうたの番です。」

多分アホな顔している俺に言ってきた。

「いや、何でゆんゆんに感謝するんだよ?」

「そんなことはどうでもいいではないですか。」

いや、俺にとってはどうでも良くないんですけど・・・

「そうなのか?まぁ、俺が聞こうとしてたことも同じ様なことだ。お前、卒業したらどうやって生きていくんだ?」

「え?」

「爆裂魔法について調べてみたんだが、あれを覚える気か?」

「何を今さら、当たり前に決まってるじゃないですか。」

「パーティーに入れてもらえるとでも?それとも行く宛でも?」

「うぐっ・・・」

「やっぱりな、後先考えてから行動しろよ・・・」

「諦めろと言うんですか?」

めぐみんが震えてるのを背中で感じる。

「言わねぇよ、やりたいことやって何が悪い。」

今まで法律に触れない限りやりたい放題やって来た俺が諦めろなんて言うわけがない。ていうか言えない。言えた立場でもない。

「そこで提案。卒業した後、臨時的にパーティー組まないか?」

「へ!?」

「お前をしっかり面倒見てくれる奴が見つかるまで。」

「良いんですか?」

「使い捨てスクロールが出来たと思えば何でもない。」

「酷いこと言いますね・・・でも、ありがとうございます!」

あ、今めぐみん、めっちゃいい笑顔してるんだろうな。凄くみたい。あ、ロリコンとかではないです、はい。

「今凄く失礼なこと考えました?」

「考えてないよ。」

抱き締める力が強くなっていく。あれ、何か痛い。凄く痛い。

「痛い痛い痛い痛い!千切れる!腹から上下に千切れるって!」

「はぁ、どうして私はこんな・・・」

「ん?何か言った?」

「いえ、では私は教室に戻ります。明日、頑張ってくださいね。」

そう言い残してめぐみんは出ていった。

「さて、放課後まで寝るか・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ただいまー」

保健室でぐっすり寝てバイトし終えて帰ってきた。

「おかえり、聞いたぞ。明日卒業試験を受けるらしいな。弁当作って母さんと応援に行くよ。」

「運動会かよ!?」

「なんだそれ?」

「何でもない。母さん、今日の晩御飯は?」

「最近息子が冷たいです。」

しょうもないことをほざいてる父親をほって居間に転がった。

「今日はサンマの塩焼きよ。今朝畑から取れた物だから新鮮よ。」

今なんて?

「待って、今畑から取れたって・・・え!?」

冗談をあまり言わない母が珍しくも冗談を言った。

「そうよ、畑からとれるのよ?」

え、マジ?俺まだバナナが川から釣れるの信じてないんだけど。そんな次々に珍○景みたいなこと出てきても脳が追い付かない・・・

いや、もしかしたらサンマと言うだけであって違う野菜かもしれない。

「出来たわよ。」

そうだ、別に魚と決まった訳・・・

どう見てもサンマだこれ・・・

「もう嫌だ、この世界・・・」

 

とんだカルチャーショックを受けて二時間後風呂も入って自室でゆっくりしていたら、

コンコンコン

「お兄ちゃん起きてる?」

「起きてる。」

ガチャ

おい、入っていいとは言ってないぞ。別にいいんですけど。

「どうした?」

相変わらずモジモジしてるゆんゆんに何が目的か聞いてみた。

「今日、一緒に寝てもいい?」

・・・・・・ハッ!?一瞬固まってしまった。

「え、いきなりどうした?」

このまま一緒に寝ても朝起きたら拘束されて『ふっふっふ、これでお兄ちゃんはずっとここに居る。』って呟いてるゆんゆんを見てる自分の姿しか考えられないんですけど・・・

「そ、その、私だけ遅れをとったら嫌だなーって。」

「は!?」

「あ!?い、今の忘れて!とりあえず一緒に寝るだけでいいの。」

「まぁ、寝るだけならいっか」

俺たちは早めの就寝とした。

「ほんとに卒業しても私が卒業するまで残ってくれるの?」

「あぁ、たまにどっか行くかもしれないけど、必ず戻ってくる。」

俺だって冒険家業をしてみたいんだ。

「約束ね。」

「何回約束したら気がすむんだよ。」

「まだ二回目よ。」

俺の中では三回やってるよな・・・

「そうですか、じゃ、おやすみ!」

「おやすみ・・・明日頑張ってね。」

今日何度目かの頑張ってを最後に意識が落ちた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今日の調子は好調。天気は晴れ。試験開始まであと二分。緊張?ここ連日の出来事に比べれば何てことない。

この試験は里中に広まってるらしい。見物客も多い。

『雪那』の状態も良好。

昼寝したい。

そう思ってるとぷっちんが出てきた。

「調子はどうだ?しょうた。」

「誰かのくそみたいな提案で機嫌は良くないですけど、お陰さまで調子は好調ですよ。」

『試験の開始時間です!二人とも出てきてください!』

アナウンスが流れた。

「行くか・・・」

「何カッコつけてるんですか・・・」

ウオォォ!

予想以上の盛り上がり方だ。

こんなに人が・・・仕事大丈夫なんかいな?

『選手の紹介しましょう。こちら側から見て右。我が校誇る問題教師ぷっちん!』

「え!?」

心外だという顔をしてますが否定はできない。

「ごほん、我が名はぷっちん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者!そして、紅魔族随一の担任教師にして、やがて校長の椅子に座る者!」

おい、それ口外していいのか?

ウオォォ!

何でこいつら盛り上がれんの?

『続いて左側!我が校最速の卒業者!颯爽と現れた少年しょうた!』

何かかっこいいっすね。

「こほん、我が名はしょうた!冒険者にしてこの妖刀と上級魔法を操る者!そして、紅魔族随一の居候にして、やがて魔王を倒すもの!」

ウオォォ!!

ぷっちんの時より二倍くらいでかいな・・・

『それでは試験開始!』

「『ライトニング』!」

先に魔法を唱えたのはぷっちんだ。

「行くぞ『雪那』、『アース・シェイカー』!」

飛んできた『ライトニング』を『アース・シェイカー』で地面を隆起させ止めた。

「『ファイアーボール』!」

「『トルネード』!」

「しょうたよ、所詮お前の魔力じゃあ俺の魔法は跳ねか・・・」

『ファイアーボール』が『トルネード』に吸収され炎の渦になりぷっちんへと迫っていった。

「いい忘れてたが『雪那』には『魔力増加』っていう効果が付いてる。こいつのお陰で俺の欠点の一つ魔力不足を補うことができている。」

「くっ、『ウインドカーテン』!」

炎の渦を掻き消した。

ぷっちんが、

「『ライトニング』!」

が、その魔法は空振りに終わった。

多分ぷっちんは『トルネード』とで立った砂ぼこりで前が見えなかったのだろう。しかも、『アース・シェイカー』で土が舞いやすくなっていたので余計だ。それで俺がいたとこに向けて『ライトニング』を撃った。

それを外したことにより軽いパニックに陥る。相手がどこに居るか、わからない状況だ。当然っちゃ当然か。

バチバチバチ

異様な音が鳴る。

いまだにぷっちんの周りから砂ぼこりが舞っている。その原因は『ウインドカーテン』だ。本人はパニックに陥ってるので気付かないらしい。

後は、

「お疲れ様です。『黒電斬』!」

説明しよう!『黒電斬』とは『カースド・ライトニング』を『雪那』にまとわせ『魔力増加』させて繰り出される斬撃である。

「グハッ!?」

ドサッ

あ、もちろん掠らせただけですよ?マジで当ててたら死んでしまいますって(笑)

砂ぼこりがなくなり、そこには倒れたぷっちんの姿が・・・白目向いて向いてますやん・・・

『しょ、勝者、しょうた!』

ウオォォォォ!!

作戦勝ちってとこですかね・・・

『ライトニング』を『アース・シェイカー』で防いだのも作戦なんですよ?

普通の人なら『カースド・ライトニング』とかで応戦しますけど『トルネード』で砂ぼこりをより立てるためにやったことですから。

『ウインドカーテン』は正直予想外ですね。あれがなくても『バーストモード』で後ろから一気にやってましたし・・・

ということで無事卒業できました!

「よーし、帰ったらパーティーの用意だ!」

父さん、あんたはただ酒が飲みたいだけだろ・・・

「私からも何か差し入れさせてください。」

て、店長・・・

「こうなったら里全体でパーティーですね。」

と校長が言う。

ねぇ、どうなったら全体でパーティーすることになるの?

おかしくない?おかしいよね?卒業するの俺一人だよ?

めぐみんが近付いてきて、

「なんだか大事になっちゃたみたいですね。」

それお前が言う必要ある?それどっかのヒロインが言うセリフだよね?

普段のお前が言うのは百歩譲って分かるよ?でも今のお前は食べ物のことしか考えてないだろ!?

よだれ垂らすなよ!せめて隠せ!女子らしく振る舞え!

「しょうた、料理手伝ってくれる?」

母さん、これ誰のためのパーティー?俺のだよね?

断ったら怖いから断らないけど、これ俺のためのパーティーだよね?祝われるやつがパーティーの下準備するとか聞いたことないよ!

「お兄ちゃん、おめでとう!」

やっとまともなのが来ましたよ。よくやった妹。

「そ、そのパーティーの途中で抜け出さない?」

は?お前も?お前もヒロインのセリフ吐いちゃう?

「しょうた君、後で話があるんだ。パーティーが終わってからでいい。学校で二人で話そう。」

お前も何言い出してんだ?

なんなん?お前ら俺のヒロインになりたいのか?二年出直してこい!

この世界に来てツッコミしかしなくなったな・・・

心の底で強く思った。

 

その後パーティーでやけ酒を飲んでイベントをぶち壊しにしました。

 

この素晴らしい少年に祝福を!




ども、ねこたつむりです。
はい、駄文でしたね。書いてるうちにない書いてるんだろって思って思い直してみたら、自分の願望じゃねぇかって一人でツッコんでました。
何か最終回っぽいですけどまだまだ続きますよ!
はい、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでいただけるとありがたいです。(更新スピードが劇的に遅くなると思います。)


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第二章 新たな始まり
王都見物


※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
第二章始まりました。といってもあまり変わらないと思いますが。
今回は王都編。何が起こるか想像できている人は居ますでしょうか?
では、スタートです。


めでたく学校を卒業した俺ですが現在絶賛暇中です。

バイトの時間を増やそうかと思いましたが断られました。

これじゃまるでニートじゃん・・・

そんなことを考えながら布団にくるまってぬくぬくしてると、

「しょうたー!ちょっと降りてきなさい!」

おとん、うるさい。

「今行く!」

仕方なく着替え居間に降りていった。

 

 

居間に降りたらそこには、

「久しぶりですね、しょうた君。」

「校長、久しぶりっていってもまだ二週間ですよ?」

「まだそんなにしかたってないんですね。感覚的には一ヶ月あってない気がしますよ。」

年を取ると時間が早くなるって言うけどなぁ・・・

「今日来たのは君にある提案をしたかたんですよ。」

暇人の俺はその言葉に目が反応したらしい。

勝手に出てこられたらは困るんだけど・・・

「お、その目はやる気だね?その提案と言うのは・・・」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ、しょうたが卒業してからと言うもの・・・ゆんゆんが元気ありませんね。一緒に住んでるのでしょ?何が不満なんですかね?」

めぐみんが呆れた顔で言った。

「そういうめぐみんこそ、最近元気ないよね。」

「な、何を言うのですか、あるえ!わ、私はあんな男居なくて清清しますよ!」

めぐみんがそう言い放った時、

「悪かったな、あんな男で!」

「「「っ!?」」」

「お久しぶりです。」

「何でお兄ちゃんが此処に!?」

「校長がさ、このクラスの監督をやってみないかって。」

どうやら俺が卒業して以来この三人が腑抜けになったらしい。

監督っていっても日本で言う生徒指導みたいな物だ。

給料もスキルアップポーションをくれるって言ってたし・・・

「お前ら俺が居ないからって腑抜けてるらしいじゃないか。寂しかったのか?(笑)」

「さ、寂しいわけないじゃないですか・・・」

言葉が尻すぼみになっていく。

「わ、私は寂しかったよ。しょうた君が居ないとつまらなかったし・・・」

「お、おう。そ、そうかい。」

ストレートに言われると恥ずかしい・・・

ゆんゆんの方を見たが目を反らされる。

最近はいつもこうだ。家でも喋らなくなってちょっと寂しい。

さっきはどうして此処に何て聞いてくれたのに・・・

「はい、みんな席につけ。お、しょうた来てたのか。授業中は俺の補助をやってくれ。」

「了解っす。」

こうして俺の新しい日常が始まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「しょうた。今日王都に行ってみないか?」

父さんがそんなことを言ってきた。そういうことは早く言ってほしい。今日はたまたま定食屋が休みで行けるけど。

「んじゃ、行く。」

しかし、父さんはちょくちょく王都行ってるけど何しに行ってるんだろ?

「なら、行く準備してこい。準備出来次第出発するぞ。」

「へーい。」

 

 

おぉぉ・・・ここが王都か。

初めて見る光景に圧倒した。祭りのような賑やかさ、商人達の飛び交う声、どこからか知らないがいい匂いまでする。

まるで映画のセットみたいだ・・・

「ほら、ボーッとしてないで行くぞ。」

最初に来たのは市場みたいなところだ。

「父さん、ここで何買うんだ?」

「うーんと、今日は鉱石類だな。鍛冶屋からお使いを頼まれた。」

それはただのパシリでは?

 

 

「もう一声!!」

俺は鉱石を買うのに値切りをしていた。

「お、お客さんそれ以上は・・・」

「何言ってんだよ?まだ行けるだろ?あんたの目からはまだ余裕を感じる。」

「こ、これならどうでしょうか?」

「はぁ、父さんダメだ。俺らで取りに行った方が良さそうだ。」

「ま、待ってください。こ、これでいかがでしょう。これで満足いただけなかったらマナタイトをお付けします。」

「うーん、とっても美味しい話だとは思うんだけど、今マナタイトは欲しくないんだよね?てかそれ付けることが出来るならさ。もっと下げれるよね?」

「う、じゃぁ、これで。もう勘弁してください!」

「おい、しょうたもうやめておけ。店主が涙目だぞ。」

「わ、分かったよ。じゃあ、店主さんそれで承諾してやるからその嘘泣きやめなよ。」

「え!?」

父さん、何驚いてるんだよ。

「いや、バレてましたか。流石あれだけ値切った人だ。あ、だからといってもう値切りはしないでくださいね?さっき承諾したんですから。」

「そこまで落ちぶれちゃいないよ。」

「おい、しょうた。どう言うことだ?」

「父さん、覚えといた方がいいよ。商人が本気で泣くのは普通二三度目から、そっからは人を見る目がものを言う。」

「ほう、そこまで知っていらっしゃいましたか。あなた良い商人になれますよ。この人材はもったいない。どうです?うちで働きませんか?」

「すみませんね、その気は全く無いんで。では、俺たちはこれで失礼します。」

「そうですか。またのお越しをお待ちしてます。」

俺たちは店を後にして役所に向かった。

「いや、お前を連れてきて正解だな。まさか予算が半分以上浮くとは・・・しかし、商人とは怖いな。今までどれだけ取られたか考えるのも恐ろしい。」

「商人も商売だからね。相場より高くするのは当たり前だよ。」

日本でもよく電気屋さんのお姉さんを何度も泣かせてたっけ・・・泣き顔よかったすね~

「で、役所なんかで何すんの?」

「魔王城の監視の経過報告だ。月に二回ほど報告することになってる。」

そんなことしてたのか・・・

 

 

父さんがお役所仕事やってる間待ち合いで待ってると、

『魔王軍襲撃警報、魔王軍襲撃警報!騎士団はすぐさま出撃。冒険者の皆様は、街の治安維持の為、街の中へのモンスター侵入を警戒してください。高レベルの冒険者の皆様は、ご協力をお願いします!』

何か物騒なことが聞こえたんだけど・・・

父さんがこっちに走ってきて、

「おい、しょうた!行くぞ!」

「えっ、ちょっと待って。行くってどこに?」

「何処って魔王軍を迎え撃ちに決まってるだろ?」

この父親はバカなのに無駄に正義感が強い。仕方ない、付き合ってやろう。

 

 

「えっと、ヤマナカショウタさん、ですか?すいません。上級職でない限り、レベル30以下の方は危険のため参加は認めてないんです。出来れば街の警備に・・・」

「大丈夫だ、こいつは私の息子でな、そこら辺の魔王軍なんかには負けはせんだろ。」

受付の人の言葉を遮って父さんが出てきた。

「あ、あなたは紅魔族の族長さんではないですか!?」

「何?紅魔族だと?」

「紅魔族かいりゃぁ、百人力だぜ。」

どっかからそんな言葉が聞こえた。もしかして紅魔族って結構すごいの?

受付の人が、

「息子さんって事はこの子も紅魔族?でも・・・」

俺は目を輝かさせた。

「はい、分かりました。特別に参加を認めましょう。」

受付の人は納得いったように言った。

こんなことで認められるのか・・・

「魔王軍討伐隊、出陣せよ!」

白スーツの短髪美人が号令をした。この世界は綺麗な人が多いですね・・・

 

 

なんだこいつら・・・

ホントにこんなやつらが相手なのか?

クッソ弱ぇ~

俺は敵陣に突っ込み『雪那』に『インフェルノ』纏わせ敵を蹂躙してました。

「おい、今回ヤバイやつが居るぞ!」

「なんだよあれ、見たこともない剣に炎を纏わせて突っ込んできてる!」

「なぁ、あいつの顔、笑ってないか?」

「お、俺ここから逃げ出してぇ・・・」

「おい、あっちに居るのって紅魔族じゃないか!?」

「何でこんなとこに紅魔族が居るんだよ。」

「な、何か詠唱してるぞ!に、逃げ「『カースド・ライトニング』!」ぐぇっ・・・」

「怯むな!紅魔族ったって一人だ!みんなで一斉にかかれば問題な・・・」

「ひぃ!?さ、さっきの剣使いの目を見てみろ!紅く光ってやがる!あいつも紅魔族だ!?」

「紅魔族二人相手なんて俺たちには出来ねぇよ。ん?あんなところに一人で戦ってるやつが居るぞ!あいつを人質にしろ!」

魔王軍どもがさっきからやかましい。人質に取る?こんなところに一人で来るやつなんて俺みたいなバカしか居な・・・居た。

視線の先にはさっきの美人さんが魔王軍の一人を相手にして戦ってた。

その人の後からこれを見逃すまいと加勢が加わろうとしている。

「ホント、この世界の人は・・・『バーストモード』!」

一回切ったバーストモードをもう一回入れ直す。人命が懸かってるんだ。一ヶ月くらい体を動かせなくても構わない。

「へへ、姉ちゃん。悪いが人質になってもらうぜ。」

魔物が白スーツの人に襲いかかる。

「何!?」

その声は白スーツの人のだろうか?通る声をしてますね。

キーンッ

「へへ、魔物のオッサン。悪いが肉片になってもらうぜ。」

「ば、バカな!?お前さっきまであそこに居たじゃねぇか。」

「走ってきた。あまり時間がないから・・・悪いな。」

ヒュンッ

風を切る音がする。相変わらず不良品だな・・・

目に前には先程まで驚いてた魔物のオッサンの真っ二つに斬れた死体が転がってる。

白スーツの人も相手をしてた魔物を片付けたようだ。

最後は、「「『インフェルノ』!!」」

俺と父さんでありったけの魔力で残党を蹴散らした。

「『バーストモード解除』」

一気に体が悲鳴をあげる。

「グアァァ!?」

マジで悲鳴をあげた。

意識失うにも失えないほどの痛さだ。

トンッ

「!?」

父さんが手刀を俺の首に当てた。

こんなこと出来る人ってホントにいるんだな。そう思いながら気を失った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目覚めたのは昼過ぎだろうかそれと同時に身体中筋肉痛の痛みが襲ってきた。

「っ!?つ~。」

声に出来ないほど痛い。痛がる前にしなければならないことがあるので痛がってられないって言うのに。

ある程度痛みに慣れれたら、周りを見た。

「え!?ここマジで何処?ヒントって言うヒントがない。」

全く見当がつかない。この部屋の感じからすると貴族なんだろうけど、貴族の知り合いも居ない。

コンコンコン

ガチャ

「失礼する。あ、起きてたのか。体の具合はどうだ?」

部屋に入ってきたのは、白スーツの人だった。

ということはこの人は貴族なんだろうか?

「あ、なんとか大丈夫です。お気遣い感謝します。」

俺は満面の笑顔で言った。

「命の恩人に対して当たり前のことをしているだけだ。」

しかし、間近で見るとすごく綺麗な人だよな、そう綺麗なんだけど、どっかの女神と同じで癖があるみたいだ。

『・・・』

ん?今なにか聞こえたような気が・・・

こう脳内に直接話し掛けられたような・・・

ま、いっか。

「すいません、俺ここでどれくらい寝てました?」

「確か一週間位だったか。」

そんなにもか・・・いや、短いか。そうなるとリミットが伸びてるな。

『バーストモード』自体時間も延びている。今回は仕方がないから使ったけど、二回目発動とか今までこんなんじゃ済まなかった。

骨は疲労骨折手前筋肉は断裂状態。俺はここで死ぬんだって覚悟してたもんな。

「そうですか。ところでずっと気になってましたけど、ここは何処なんですか?」

「ここは我がシンフォニア家の屋敷のなかだ。自己紹介が遅れて申し訳ない。私はシンフォニア家長女のクレアだ。」

「俺はショウタって言います。看護していただきありがとうございます。」

「ん?」

「どうしました?」

「ショウタ殿は紅魔族なんじゃ・・・」

「うち色々と訳ありなんですよ。でもどうしてそんなことを?」

「い、いや、紅魔族は自己紹介がアレだと聞いてたんだが・・・でも、訳ありなら納得がいった。」

「そうですか。一応やっときますか?アレな方を。」

「いや、いい。それよりも腹は減ってないか?ここに食べやすそうなものを持ってきたぞ。」

「ありがとうございます。でも、今は食べれないですね。手が動かないんで。」

「何か食べないと体調の回復が遅くなる。手が使えないのなら仕方ない。私が口に運んでやろう。」

え?いいの?こんな俺にそんなご褒美良いんですか、神様?

「それじゃあ、お言葉に甘えて。」

クレアが口に運んでくれてそれを食べようとしたとき、

「しょうた、お見舞いに来てやったぞ。」

ホント、父さんは空気が相変わらず読めない。神様、お預けプレイはご所望じゃないです・・・

俺とクレアは何もなかったように振る舞った。

今思うとどうしてだろう、やましいことなにもしてないのに・・・

「こ、これはショウタ殿の、」

「父親です。いやぁ、息子がすっかり世話になってるようで申し訳ない。」

「いえいえ、ショウタ殿は恩人ですから当然のことです。」

「良い娘さんだね。息子にもこんな良いお嫁さんが見つかれば良いんだが・・・」

そいや父さんはクレアに敬語を使ってないけどだい・・・今このクソ親父がフラグ的な何かを立てた気がする・・・やめてよね、人の人生狂わすような発言するのは・・・

「見つかると思いますよ。ショウタ殿は見知らぬ私を我が身を考えず助けてくれたのですから。」

水を指すようで悪いが、考えたよ?自分の身体の事はしっかりと考えたよ。

「そうだと良いんですが。いや、こいつはやることは立派ですが性格に難がありまして。」

おい、そんなことを思ってたのか。俺の何処が性格に難がある?

「それは意外ですね。好青年に見えるのですが・・・」

「いや、うちの里で紅魔族殺しって言われてるんですよ。」

なにその物騒な通り名・・・

「こ、紅魔族殺し?何ですかそれは?」

「いわゆるたらしですね。この一ヶ月半と言う短い期間で三人もたらしこんでるらしいですよ。」

「おい、バカ親父。その話をじっくり聞かせろ。」

「じっくりってことの詳細はお前がよく知ってるんだろ?」

「知らねぇよ!俺がいつ、何処で、誰をたらしこんだよ?」

「あれ!?しょうた、本当に何も知らないのか?」

「知らないよ・・・」

「でもなぁ、火がないところには煙がたたないと言うし。」

「あの、もしやショウタ殿は天然のたらしではないでしょうか?」

クレアさんが父さんに耳打ちした。

「な、なんと!?それはそれでたちが悪いな・・・」

父さんとクレアがこっちを見る。

「な、なんだよ。二人してこっちを見るな!」

俺はその視線から逃れるように布団の中へ沈んでいった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それでは、私はこの辺で。次は一週間後に来るからな。それまで身体を治しとけよ。」

やっと父さんが帰ってくれた。何で俺のことを洗いざらい話していくんだ・・・

体が動けないからその話から耳を塞ぐことも出来ないし・・・

「まさか、ショウタ殿がそんなに活発だとは・・・」

いや、あの戦い方を見てどんな性格だと思ってんの?

「先程の態度からは考えられないな・・・」

大抵の人が敬語を使えばそうなるだろ。

「ショウタ殿、頼みがあるのだが・・・」

「嫌です。」

「な、何故だ!?まだ内容すら言ってないのに・・・」

「どうせ活発な面が見たいとか言うんでしょ?」

「うっ!?私はこれでも名のある貴族だぞ?」

あ、こういうの無理。俺先輩だからとかいうの無理。理性に合わん。

「あのな!貴族だからってなんなんだよ!?そりゃあ、立場だって俺より遥か高いだろうよ。でも、言ったらたったそれだけで人が嫌がる事をするのか?それは人間的にどうなんだよ!?」

「そ、それは・・・」

クレアがどもる。

「はぁ、もう疲れたので寝ます。おやすみなさい。」

「しょ、食事は?」

「せっかく作って貰ったのであとで食べます。」

「そ、そうか・・・さっきはすまなかった。」

そう言って部屋を出ていった。

言い過ぎたかなぁ・・・

一回寝て謝ろっと

再度寝た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おいしい・・・」

7時間後俺は起き、なんとか体が動かせるようになってクレアが持ってきてくれたお粥みたいなのを食べていた。

一週間ぶりのご飯は今まで食べたものよりずっと美味しかった。

ベットから出て軽くストレッチをした。

「イテテテテ、あー、体が完全になまってる。」

ガチャ

「!?ショウタ殿、もう起きて大丈夫なのか?」

はとが豆鉄砲食らったような顔しているクレアが言った。

「あ、クレアさん。はい、なんとか。あの、昼の時はすみませんでした。」

「いや、私にも落ち度はあったしな。」

「あ、これご馳走さまでした。」

「あ、味の方は口に合ったか?実はそれ、私が作ったのだ。料理人達は今出払っていて、作るのが私しか居なくてな。」

「美味しかったですよ。お嫁さんに来て欲しいくらいに。」

「っ!?そ、そんなことは気軽に言うもんではないぞ!もっと相手を選べ!」

えー、何で怒られてんの?褒めたのに理不尽じゃん。

「相手って、そう思ったんだから仕方ないじゃないですか・・・」

「しょ、ショウタ殿と私には身分の違いが合ってだな・・・」

あれ?味の話してんのに何で俺とクレアの立場の話をしてるんだ?何処でそうなった?

そんなことを考えてると、

「しかし、ショウタ殿がそう言うなら明日も作ってやらんこともない。」

若干上から目線なのは気になるが・・まぁ、いっか。

「いや、明日は俺が作ります。色々世話になったんだし。」

「え、し、しかし・・・」

「偏見はダメですよ?男だって料理くらいしますし、秋刀魚だって畑からとれます。」

「そ、そうか。でも、流石に秋刀魚が畑から取れるなんて・・・」

「俺だって最初は信じたくもありませんでした。でも、畑から秋刀魚が生えてるのを見たら何が起こっても不思議じゃなくなりましたね・・・」

俺は遠い目をした。あんなものみたくはなかった。

「時に思うのだが、ショウタ殿はいったい何処から来たんだ?」

おっと、あまり触れられたくない所に食いつかれた。

「そんなことはどうでも良いじゃないですか。話すと長くなりますし、もう夜遅いんですから。あ、もしかしてもっと話したいから長そうな話のネタを選んだんですか?一緒に寝ます?」

「ふ、ふざけるな!誰が一緒に寝るか!」

軽くからかっただけなのに・・・

「そうですか、それではお休みなさい。」

クレアが部屋を出ていきドア越しでおやすみなさいと言ったことは明日からかってやろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さすが貴族の台所・・・素晴らしく使いやすい。

調理器具も業物ばっか、もうここに住みたい。でも一つ不満なのが、台所とダイニングが一緒じゃない所かな・・・

朝御飯を離れたところに持っていかなくちゃいけないし、何より家族との会話が少なくなる。それだけは我慢ができない。

さて、人様の家に愚痴を言ってないで調理しますか!

 

 

ふぅ、こんなもんかな?料理が冷めないうちに持って行こ。

コンコンコン

ガチャ

あ、まだ来てないのか。うーん、そんなに早い時間じゃないと思うんだけどな・・・

現在の時刻7時半。普通ですよね?

仕方がないのでテーブルを拭いたり花瓶の水を入れ換えたりして暇を潰してた。

10分後

ガチャ

「あ、おはようご・・・ざいます?」

クレアの姿を見て一瞬固まってしまった。あのプライドが高そうなクレアが寝癖をつけて眠そうな目を擦ってくまさんのパジャマを着て入ってきた。そう、くまさんのパジャマ・・・

可愛すぎだろ・・・これがいわゆるギャップ萌えってやつか?

改めて、

「おはようございます、お嬢様。今日も一段と可愛いですね(笑)」

「へ・・・?」

俺の姿を認識するなり顔が赤くなっていく。プライドが高い人が崩れていく姿っていいな~

「な、何故ショウタ殿がここに?」

「何故と言われましても・・・昨日のこと覚えてます?」

どうやら寝ぼけてるらしい。

「昨日は確かアイリス様の寝息を短めに20分位聞いて、それからその日にアイリス様がお召しになった洋服の残り香を嗅いで帰宅して、それから・・・」

おい、こいつは思ったよりヤバイ人なんじゃないだろうか?すごいストーカー臭がする・・・

「あ!そうか、それでショウタ殿はここに居るのか。」

謎が解けたみたいな顔をされてもその格好が・・・

「さ、朝御飯を食べましょ?」

「ちょっと待ってくれ、き、着替えてくる。」

「え、いいですよ、そのままで。可愛いですよ?」

「そ、そう言うことは気軽に言うもんじゃない!」

「あと、料理が冷めちゃうんで。」

「うっ、それはそうだが・・・」

「はいはい、席についたついた。」

「お、おい待て押すな押すな!」

クレアの背中を押して席につかせる。

「はい、今日の献立は白ご飯に味噌汁、ネギ入り卵焼きにとろろを用意させていただきました。」

そう言いながら席につく。

「おい。」

「はい?」

「何故隣に座るんだ?」

「え、何故って言われましても、普通隣じゃないんですか?」

「普通は向い合わせじゃないのか?」

「俺は隣がいないと寂しいのでいつも誰かしらの隣に座って食べてますけどね。」

「そ、そうか。まぁ、いいか・・・」

「「いただきます」!」

そう、今日の献立は思いっきり和食だ。魚が足りないって言われそうだが朝から魚は食べたくないし重い。

「なぁ、このとろろというやつはどうするんだ?」

とろろはこの世界にも流通はしているのだが、あまり普及してない。だから、安く手に入った。

「それは醤油をかけるなりポン酢をかけるなりしてください。俺はポン酢の方が良いですかね。どっちもおいしいけど。それからそのまま食べるかご飯にかけちゃってください。」

クレアが俺の手順を見て真似をし、一口食べる。

「!?お、おいしい・・・」

どうやらとろろは貴族の口に合ったようだ。

「それはよかった。」

食事してる人の顔はいつ見ても良いものだ。幸せそうな顔をしてる。そういった意味ではこれがやってるバイトは天職なのかもしれない。バイト長い間休んでるけど大丈夫かな?

「この料理はショウタ殿の国のものか?」

「そうですね。」

まじまじととろろかけご飯を見ている。

それにしてもフライパンとかすごかったな、へばりつかないし焦げ目も良い具合につくし・・・

「ここに住みたいなぁ・・・」

「え!?」

「へ?どうしました?」

クレアがすごく驚いた顔をしている。

「今、ここに住みたいって・・・」

「え!?声に出てました!?」

クレアが頷く。

嘘~、普通声に出すか?ここに住みたいなって、アホだろ・・・

「そ、その、ここのキッチンがあまりにも素晴らしくてここに住みたいなって思っただけで、あ、でもここのキッチンにもちゃんと譲れない欠点があったので安心してください。」

人の家に欠点があると言ったのは失礼すぎると思った。

「ゆ、譲れない欠点?ま、まぁ、参考までに来ておこう。あくまで参考だからな?」

いや、分かっとるよ。二回も言わんで良いやん。おっと、知らぬ間に心の奥底に封印してた方言が出た。

「じゃあ、参考までに言っときますね。キッチンとダイニングが一緒じゃないところです。これじゃあ、家族の会話が少なくなるので絶対に譲れません。クレアさんの所は料理人ですが同じ方が新密度も上がり朝が楽しくなります。」

いや、何言ってんの俺?

「な、なるほど。ショウタ殿はダイニングキッチンが良いと・・・」

あの、あくまで参考ですよね?

 

 

「「ご馳走さまでした。」」

「やはり、人と食べるっていいな・・・」

クレアがポツリと言った。

「んっ、ふぅ。そういえばクレアさんのご両親は?」

コーヒーすすり、聞いた。和食のあとにコーヒーってミスマッチと思ったやつ、いいだろ別に。コーヒーは何でも合うんですよ!おっと、誰に言ってるんだか・・・

「父と母は外交中だ。長く家に帰ってきてない・・・」

「そうですか・・・」

コーヒーすする音だけが部屋に響いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

部屋に戻り雪那を拭いていると、

コンコンコン

「ショウタ殿、ちょっといいか?」

「いいですよ。」

ガチャ

「お前に言うのを忘れてた。アイリス様がお前に会いたいそうだ。」

あれ?何気にショウタ殿以外で呼ぶの初めてじゃない?そんなことはどうでも良い?あ、そうですか・・・

「へ?」

「この間の戦いで一番活躍していたのはお前とお前のお父様だ。」

何でうちの父さんのことお父様って言うんだ?

「ふーん。」

「それでお前に一言お礼を言いたいらしい。・・・羨ましい・・・」

おいこいつ今羨ましいって言わなかったか?

「そうですか、そういうことなら行きます。」

「しかし、体は大丈夫なのか?」

確かに、今まで気にならなかったけどあまり痛くない。

「あれ?おっかしいな、まだ筋肉痛が続くと思ってたんだけど治ってる・・・」

確かに微かに痛いが戦闘においても支障はない位には治ってる。

「そうか・・・良くなったならよかったな。」

なんだ、今の間は?

「さて、じゃあ、会いに行きますか。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これはクレア殿。ご苦労様です。そちらのかたは?」

城門の門番の人だろうか?

「ご苦労様、こちらは・・・」

「どうも、いつも家内がお世話になってます。主人のしょ・・・痛いって悪かった一度こんな冗談を言ってみたかったんだよ。ねぇ、謝ってるじゃん!」

「な、仲がよろしいんですね・・・」

「よろしくなんか・・・おい、何で否定しない?」

「え、だって今朝だって一緒にご飯食べて笑いながら話してた!?だから痛いって言ってるよね!?」

怒られながら城内に入っていった。

「全くお前というや・・・つは?」

クレアが固まった。

「どうしたんだ?」

「お前、いつの間に敬語を止めたんだ?」

「あ、確かに。これは申し訳がないです。」

「い、いや良いんだ。さっきの方が楽だった。」

「そう?そういうんだったら呼び方もちゃんとクレアさんからクレアにしないとな・・・」

自然に敬語がなくなってるなら自然と呼び名も変えれるだろう。

「それじゃあさ、クレアも俺のことショウタ殿じゃなくてショウタって呼んでくれないか?ショウタ殿ってなんかむず痒い。」

「わ、わかった。ショウタ。」

そんなことを言っているうちに謁見の間についた。

「いいか?ないとは思うがくれぐれも無礼な態度をとらないようにな。」

「了解。」

スーッハー

深呼吸で息を整える。

ガチャギギギギ

大きな扉が開くと中から大量の光が漏れてきた。

「っ!?眩し・・・」

「冒険者ヤマナカショウタ、お待ちしてもしたよ。」

その声の主はたった10歳くらいに見えた。

「ほら、挨拶をしろ。」

クレアが耳打ちしてくる。

「えっと、この度はお招きいただきありがとうございます。」

深くお辞儀をした。

「あなた様のご活躍は私の耳にも届いております。この度は魔王軍に対するご活躍、それと大切なクレアを守っていただき感謝の意を表します。」

「あぁ、アイリス様。立派になられて・・・」

横でクレアが涙目になっている。おいおい、泣くほどか?

「ここに今回の報酬があります。どうかこれ受け取ってください。」

「い、いりません・・・」

この一言で空気が一瞬凍った。

「おい、ショウタ!お前どういうことだ!」

クレアが怒鳴ってきた。

「いや、お金のせいでうちの家族はバラバラになったものですので、出来れば割引券とか商品券、旅行券の方がいいです。」

日本の父親が借金癖がついていて何百万の借金があった。そのせいで両親が離婚。その二年後、精神的なダメージで母が死去。俺と妹は受け取り手がいなかったのと施設に行きたくなかったので二人暮らしをすることになった。マジお金怖い。

「そ、そうですか。それは申し訳ないことを・・・」

王女様が謝ってきた。

「いえ・・・」

嫌なことを思い出したな・・・

「では、後日何かしらの物を贈りいたします。今日のところはここを我が家のようにくつろいでください。今晩は魔王軍がここ一週間も来なかったためそれを表してパーティーを開きますのでそれまでゆっくりしていってください。」

一週間もって、魔王軍の人達にトラウマを埋めつけてしまったかな?

「ショウタ、また夜にな。」

そういってクレアは王女に付いて行った。

俺はメイドさんに部屋を案内してもらっていた。

「ショウタ様の活躍は私どもの耳に入っております。魔王軍の兵士達を蹂躙、そしてピンチのクレア様を決死の覚悟で助けた。もう英雄ではないですか!」

決死って、死を覚悟した訳じゃないんだけどな・・・

部屋につき、

「それでは夜までごゆっくり体をやすめてください。では。」

メイドさんが出ていった。

ドサッ

ベットに倒れこんだ。神経がすり減った・・・

コンコンコン

「ショウタ殿の部屋はこちらであってますか?」

ちょっと上ずった声だ。

多分兵士だろう。

「合ってますよ。」

「あの、もしよろしければ我々騎士団の剣術をご教授を願いたいのですが・・・」

「多分、教えれるって言うほど上手くないと思いますが・・・」

「いえ、あれほどの数を相手に無傷で帰ってきたものはいませんよ。」

そんなすごい人は筋肉痛で一週間戦闘不能でしたけどね・・・

「うーん、じゃあ、少しだけ・・・」

「ほんとですか!?では、早速ご案内いたします。」

嬉々として案内してくれた。

「ここのところ、騎士団ではあなたの話でもちきりなんですよ。どこで剣術を習ったのかとか騎士団に入る気はないかだの。」

この人たちは15歳の少年に何を求めてるのだろう・・・

「皆!ショウタ殿をお連れしてきたぞ!」

おぉぉぉ!

うわぁめんどくさそう・・・

 

 

「腕で斬るんじゃなくて手首を使ってこう。こうすることで後ひと伸びする。」

「「「「「なるほど・・・」」」」」

俺は騎士団のひとにちょっとしたコツを教えていた。

「ショウタ!ここにいたのか。部屋にいないからしんp・・・また良からぬことをしてるのかと思ったぞ。」

今何を言いかけた?

「あ、クレア殿。いえショウタ殿は我々に剣術をご教授してくださっただけで、良からぬことは一切していません。」

「ていうか、いつ俺が良からぬことをしたんだよ。」

「お前、昨日の夜と今朝のことを忘れたのか?」

「?昨日の夜と今朝のこと?あ、俺がクレアに一緒に・・・」

「あああ!黙れ!聞いた私がバカだった!それよりちょっと来い。話がある。」

「え、あ、ちょっと待てって。引っ張るな!腕が千切れる!」

クレアに引っ張られて行った。

 

 

「で、話ってなんだよ。」

「それはな、?お前疲れてないか?」

「え、まぁ、あれだけの人に物事を教えたら疲れる。」

「うちの者達が悪かったな・・・」

「いいよ、それより続きをはよ。」

「あぁ、そうだったな。実は両親が帰ってきてた。先程会ってきた・・・」

「良かったな・・・おいそれって俺まずくないか?貴族の家にどこの馬の骨かわからない奴の荷物があったら・・・ヤバイ、バレる前に早く持ってこないと・・・」

クレアはいま一人暮らし。そんなとこに男の荷物なんかがあったら・・・死刑かも・・・

「それはもうバレてる。」

「え?」

終わった。俺の人生終わった。

「あ、でも、命の恩人って言ったらワンチャンあるんじゃ?」

「そ、それが・・・」

クレアが顔を赤くする。おい、ここでそんな乙女みたいな反応するなよ。

「嫌な予感しかしない・・・」

思わず口にしてしまうほど嫌な予感がした。

「私だって年頃の女だ。そろそろそういう相手が居てもおかしくないわけだ。」

あー、ダメだ。あの親父帰ったら覚えておけよ。

「両親が勘違いをしたと?」

コク

クレアが頷く。何ですか、その仕草?今朝の寝癖だったりパジャマだったり、殺しに来てるんですか?

「それでお前は何て言ったんだよ・・・」

もう答えは目に見えてる。が、少しの希望にかけて聞いてみた。

「うっ、両親のあの期待の眼差しを裏切れなくて、つい交際相手ですって・・・」

分かった、希望も糞もないことがよく分かった。

「はぁ、ついじゃねぇよ。」

「す、すまない。あと、今日のパーティーにも参加するらしい。」

「仕方ねぇな、振りすればいいのか?」

「え?」

「交際相手の振りをすればいいのかって聞いてんの。それしか方法はないしな。」

「やってくれるのか?」

「一週間も面倒見てもらったんだ。それにやらなきゃ殺られる・・・」

「あ、ありがとう・・・」

「全く、年下に助けてもらってばっかりだな。」

ほんと、この世界は15歳の少年に何を求めてるんだか・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

紅魔族の正装って言ったら、やっぱこのローブになるのかな?

そんなこと思いながらローブに袖を通した。

コンコンコン

「しょ、ショウタ。準備はできたか?」

「声が上ずってるぞ。準備ならすんだ。」

ガチャ

ドアを開けるとそこには、いつも男装しているクレアが白いフリルのドレスを着ていた。顔が赤いのは慣れないからだろうか?しかし、やっぱギャップってスゴいですね。

「いつものふ服はどうしたんだよ?」

「今日はこれを着ていけって母が・・・ど、どうだろうか?」

「ど、どうって、に、似合ってるんじゃないか・・・」

何この会話?

「そ、そうか。」

心なしか喜んでるように見える。

「ふふ、嬉しそうだな。」

「な、そんなことあるか!でも、褒めてくれてありがとう・・・」

俺この世界に何しに来たんだっけ?

「お、お前のそのローブも中々なものだぞ?それ、紅魔族が常に身に付けてるやつなんだろ?どうして今まで着なかったんだ?」

確かに紅魔族はこのローブを年中身に付けている。一応正装なんですけどね・・・

「これはこっちに来てから初めて父さんに貰ったものなんだ。だから大切に使わないと・・・」

「そうか・・・」

 

 

『では、これより祝勝会を開催いたします。では、まず今回の立役者ヤマナカショウタ殿に言葉をいただきましょう!』

司会の人がどうぞどうぞって言ってきた。

ごめん、それ初めて聞いた。いや、どうぞどうぞすんな。

拡張器みたいな魔道具を渡され壇上へ押された。目の前には五百人はいる景色を目にした。

『えっと、こんなとこで俺がしゃべっていいのか分からないけど、皆さんお疲れさまでした!皆さんの活躍があってこその俺の活躍ですから。本当の意味では皆さんが今回の立役者だと俺は思います。以上です。』

歓声が上がった。すごい緊張した。うん、俺頑張った。

まだ緊張している俺をほぐそうとしたのかクレアが背中をさすってくれた。

「ショウタ様、大丈夫ですか?」

アイリス様が心配そうに聞いてきた。

「はい、こういうのにあまり慣れてないもので・・・」

「そうなんですか。」

日本でもあまり人前に立たないように努力してきたが、ここでそれが仇になるとは思いもしなかった。

「ショウタ、これを、」

クレアが水を持ってきてくれた。

「あ、ありがとう。」

水をもらい飲み干した。

「君、ちょっといいかな?」

俺に話しかけたのはイケメン剣士だった。

「僕の名前は御剣響夜。君は日本って言う場所を知ってるかい?」

まさかこいつ日本から送られてきた転生者か?

「ということはお前もそうなのか?」

「あぁ、僕はこの『魔剣グラム』を貰ったんだ。君は?」

「俺はこの『雪那』を貰った。」

このあと、ミツルギと日本について語り合った。

 

 

ミツルギと別れたあとベランダで涼んでいた。

「ここに居たのか、探したぞ。」

「アイリス様はいいのか?」

「もう、お休みになられた。」

「寝息が聞けなくて残念だな。」

「全くだ・・・な、なぜお前が知っている!?」

「いや、今朝さらっとその事言ってたぞ。」

「そ、そんなことは今はいい。それよりそろそろ・・・」

時間か・・・

クレアに案内された。

「君がクレアの・・・」

「はい、お付き合いさせて貰っている、ヤマナカショウタと言います。いつも娘さんにはお世話になっています。」

この人達がクレアのご両親か。パッと見40代後半ってとこか・・・

「ねぇ、あなた。中々の顔立ちではないですか?」

「うーむ、そうだな・・・」

夫婦で何か話している。聞こうと思ってら聞けるが聞くのはどうかと思ったので聞かなかった。

「ショウタさんといいましたか?先程のお言葉、とても素晴らしかったわ。」

先程のって壇上での言葉か・・・

「いえ、あれは本当のことを言ったまでで、大層なことではありませんよ。」

「さて、ここからが本題だ。君は何故家に泊まっているのかね?」

来た、こっからが正念場だ。

「それは、魔王軍との戦いで体に支障が出たので泊まらせていただくことになりました。」

「それは、家で泊まる理由になるのかね?」

そうなりますわな・・・

「なりますよ、お父様。彼は身を呈して私を守ってくれました。これでは理由にならないでしょうか?」

クレアナイス!

「そうか、娘を助けていただきありがとうございます。」

「いえいえ、俺にとっても大事な人なので助けるのは当然のことですよ。」

すると、クレアのご両親が二人で話し合っている。

「ここまでクレアのことを大切にしてくださるもの。いいんじゃないかしら?」

「そうだなぁ、後一つだけ確かめたいことがある。それを聞いてから決めても遅くはなかろう。」

クレアのご両親が姿勢を正し聞いてきた。

「ごほん、これが最後の質問だ。」

お、もう最後か。案外ちょろかったな・・・

「君はクレアのどこが好きなんだね?」

・・・最後の最後までちょろい。

「そうですね、全てと言うのは反則なので数点あげさせていただきますね。まずはこの一見クールそうな性格ですがちょっとしたことで照れたり、恥ずかしがったりするとこが好きですね。後、いつもは凛としているのにたまに見える可愛げな仕草をしたときには、この人は俺を殺す気なんだろうかと思うぐらいキュンッて来ましたね。後は、これが最大の点ですかね。この間の戦闘で一週間俺は意識不明でした。その時に甲斐甲斐しく看病してくれる、そういう優しさが一番好きです。」

クレアが赤くなっている。そりゃそうか、俺だってこんなに褒めちぎられたら死にたくなるほど恥ずかしいし。

クレアのお父さんは納得が行ったように頷いて、

「そうか、君は娘のことをそんなに思ってくれてたのか。いや、良かった。娘にいい人が見つかっていて。娘はこんな性格だから相手が見つからないんじゃないかと心配していたんだよ。これで安心して余生を過ごせる。」

なんか悪いことをしたな・・・

クレアを見た。こいつも同じことを思っているらしい。

「「あ、あの、」」

クレアと俺が同時に言い出した。

「さてと、帰るとするか。ショウタ君、もし本当に娘が行き遅れたら貰ってやってはくれないかね?」

「そうですね、でもそれまでにショウタさんが結婚してそうですね。こんなにいい人なんだから。」

「「え!?」」

クレアも俺も驚きの声をあげた。

「わしが娘の嘘を見抜けないとでも思ってたか?最初から知っていたさ。予想外と言えばショウタ君がクレアのことを嘘を言ってなかったことぐらいだ。」

「え!?」

クレアがこっちを見てくる。そんな目で見るな。恥ずかしくなるだろ。

「知ってたなら酷いですよ。こっちがどれだけ恥ずかしい思いをしたか・・・」

「ショウタ君。」

「はい。」

姿勢を正す。

「娘をよろしく頼むよ。」

「行き遅れた場合によりますけどね。」

クレアのお父さんは安心したかのように帰っていった。

パーティー会場はまだ騒がしい。

ご飯でも取りに行こうとしたら、

「ショウタ。」

「どうした、クレア?」

「一曲踊らないか?」

「踊れないんですけど。」

「嘘をつくな、多少はお前の嘘も見破れるのだぞ?」

「はぁ、では、御手を。」

俺とクレアは誰も見てないところで踊った。

「やはり・・・は、たら・・・」

音楽で全然聞こえなかった。

「悪い、聞き取れん。もう一回言って。」

「も、もういい。」

こうして世が更けていった。

 

 

クレアと共に帰路に着いた。

「なぁ、クレア。今日一緒に寝るか?(笑)」

昨日みたいに冗談を言ってみた。

「ん、いいぞ。」

「え!?」

「何を驚いている。お前から言ってきたんだろ?」

いや、こう返ってくるとは思ってなかった。引くに引けない。

「ふっふっふ、ショウタが逆境に弱いの・・・」

「じゃあ、部屋に来いよ?」

「へ!?」

「どうしたんですかクレアさん?はとが豆鉄砲を食らったような顔をしてますよ?クレアこそ逆境に弱いだろ。」

「お前と言うやつは、この無礼者!」

 

このあと、ほんとに二人で寝たのは俺とクレアだけの秘密。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ショウタ君、君は何でも出来るのかね?この料理はとても美味しいぞ。」

今日の朝御飯は炊き込みご飯とネギ入り卵焼きとしじみの味噌汁です。何度も言いますが朝に魚は重い!

「ショウタさん、本当に家に来てはくれませんか?」

「俺が行き遅れたらその時はよろしくお願いします。」

俺は父さんが来るまでの一週間をこんな感じで過ごした。ほんとにここに嫁いできてもいいかもな・・・

 

 

一週間後

「では、お世話になりました。」

別れの挨拶をした。

「またいつでも来てくださいね。」

「ほんと、息子がお世話になりました。」

「いや、まさかショウタ君のお父さんが紅魔族族長だったとはね。最初にショウタ君に会ったときは紅魔族とは分からなかったよ。目が黒色だったからね。まさか目の色が変わるなんてね。」

珍しいものを見る見たいに言った。いや、珍しいんですけどね?

「ショウタ、またな。」

「あぁ、行き遅れたときはよろしく。」

父さんが詠唱を終えたらしい。

「では、『テレポート』」

 

 

目を開けたらそこは懐かしい紅魔の里だった。




どうも、ねこたつむりです。
クレアさん可愛くないですか?
個人的にはbest5以内に居ますね。というか優劣がつけれなくて困っています。
次回はちゃんと紅魔の方で話を進めていきますので。
では、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。

そろそろ感想とかほしいな 壁┃・)チラ


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ただいま、紅魔の里!

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
お父さんの扱いが最近ひどくなってる気がする。


「「ただいま~」」

「お帰りなさい。しょうた、体大丈夫?」

心配そうに聞く母さん。

「あぁ、大丈夫だよ。」

なるほど、校長の言ってたことが分かる気がする。

一週間しか会ってないのにかなり会ってなかった気がする。

「そう言えばゆんゆんは?」

「おかしいわね、しょうたが帰ってきたら飛んで降りてくると思ったのに・・・」

「最近あいつおかしいんだよな。前も学校で目を合わさなかったし。そのくせ、こっちをチラチラ見てくるし。どうしたもんかね?」

前までかなりアグレッシブだったのにな・・・

「何の話をしてるんだ?父さんも交ぜてくれよ。」

「父さんには分からない話だよ。」

「そうね、お父さんには一生分からないことだわ。」

「二人とも最近当たりがきつくないか?」

最近あんたがアホになってきたからだろ。最初に会ったかっこいい凄腕魔導士はどこ行った?

 

 

二階に上がりゆんゆんの部屋のドアをノックした。

コンコンコン

「俺だけど今大丈夫か?」

「え!?お、お兄ちゃん!?ま、待って、今はダメ!あ、ひ、ひゃっ!?」

ドテン!

今盛大に転んだ音がした。

ガチャ

「おい、だいじょ・・・」

バンッ

何も見なかった。俺は何も見てない。

ガチャ

「み、見た?」

何て答えるべきなんだろうか?正直に言うべきなんだろうか?それともこいつのために言わないでおこうか・・・

「誰をズリネグフッ!?」

溝内にグーパンを入れられました。

「お、お兄ちゃん何てもう知らない!」

バンッ

素直な気持ちって大事だと思うよ。時と場合によるけど・・・

しかし、こんな真っ昼間からやることじゃないだろ・・・

ガチャ

「どうした?」

「うん、それよりいつまでそこに転がってるの?」

現在俺はお腹を押さえてうずくまって倒れている。

「そのうち立ち上がる。で、どうした?」

「ちょっと部屋に入ってくれる?」

「ごめんもうちょっと後で・・・お腹いたい・・・」

さすが生命力が平均以下。妹のグーパンでここまで食らうとは・・・

「だ、大丈夫?でも、さっきのはお兄ちゃんが悪いわよ?」

「いや、でもまさか昼間っからしてるなんて思わないだろ。」

「だって寂しかったし・・・」

寂しいだけであれをやりますかね?

っと大分お腹がましになってきたな。

「部屋に入ればいいのか?」

起き上がっていった。

「う、うん。」

「失礼します。」

さっき転んだせいか大分散らかってる。

「片付けを手伝ってほしいのか?」

ゆんゆんが首を振る。

「まぁ何せ、とりあえずここを片付けようぜ。」

俺とゆんゆんは片付けにはいった。

よくもまぁ、転んだだけでこんだけ散らかしたな・・・

ん?なんだこれ?

落ちていたのは写真らしきものだった。

それが何の写真か確認する前に取り上げられてしまった。

「これはダメ!」

それを胸元に持っていき大事そうに抱えた。

それから写真らしきものは出てこず、何の収穫もなく部屋の掃除が終わった。

「やっと片付いたな。」

「そうね。」

「しかし、しっかり者のお前が部屋を散らかすなんてな、熱でもあるんじゃないか?」

ゆんゆんの額に触れた。

うーん、熱はないみたいだけ・・・あれ?だんだん熱くなってきてる?

「おい、ゆんゆん。大丈夫か?あ、こいつ気絶してる・・・母さん!ゆんゆんが気絶したから氷枕持ってきて!」

 

 

「ん、うっ、お兄ちゃん?」

「お、起きたか。おはよう。」

ゆんゆんは眠たそうなめをこすって起きた。

「お兄ちゃん、もしかしてずっとそばにいたの?こんなに長い間?」

ただいまの時刻午前六時。

ゆんゆんが倒れてから約半日、ゆんゆんが目覚めるまでずっとそばにいた。母さん曰く気絶したのは俺のせいらしい。それを聞いて罪悪感でゆんゆんのそばを片時も離れなかった。

「気にすんな。」

正直言ってくそ眠い。

「お兄ちゃん、眠たいでしょ?」

「うん、めちゃくちゃ眠い。」

「ふふ、そこは強がるもんよ?普通。」

「人生普通じゃない方が楽しいだろ?」

「ね、眠たいなら一緒に寝る?」

「んじゃ、寝るわ。」

「え!?普通そこは恥ずかしがるものじゃないの?」

「恥ずかしいよりも先に眠いが来る。恥ずかしがるのは起きてからでいいや。欲望に忠実であれ。おやすみ。」

「おやすみなさい。」

 

 

30分か・・・それぐらいがちょうどいいだろ・・・

ゆんゆんの方を見る。静かに眠っている。

俺はそっとゆんゆんの頭をなで、

「こいつのことしっかり考えないとな・・・」

そう呟いたら、

「お兄ちゃん・・・?」

紅い目がこっちを見ていた。

「悪い、起こしたか?」

「ううん、自分で起きた。」

「そうか、ならよかった。」

そう言って布団に潜りゆんゆんを抱き締めた。

「お、おお、お兄ちゃん!?」

「悪い、二週間分のゆんゆん成分が足りない・・・」

ゆんゆんの心臓の音が聞こえる。すごく強いし、なんか早い・・・

「も、もう、しょうがないんだから・・・」

八時になるまでずっとこうしてました。

 

 

「あら、ゆんゆん。今日は機嫌がいいわね?何かあった?」

いや、おかん。ゆんゆんに聞いてるんだから俺の方見るな。

「そう?まぁ、強いて言うならお兄ちゃんに立派なことを教えてもらった。」

へ?そんなの教えたっけ?

「何教えてもらったの?」

「欲望に忠実であれって言葉。」

あ、言ったわそんなこと。

「そう、じゃあ、吹っ切れたのね?」

ここで何が?と聞くのは止めておこう。後がこw・・・

「何が吹っ切れたんだ?」

アホ親父がやらかした瞬間でした。

みんなの目線が冷たいものとなっていく。

「え、どうしたんだみんな?」

「あんたは学習能力ないのかよ・・・」

「あなたはもう少し空気を読む努力をしてほしいわ・・・」

俺と母さんの辛辣な言葉に、

「家出しよっかな・・・」

としょげる父。

そこまで落ち込むな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「しょうた君、王都はどうだった?」

バイトに来ていた俺は客足も少なくなってきたので皿洗いをしていたら、店長がそんなことを聞いてきた。

「大変でしたよ。聞きます?」

「ああ、頼むよ。最近の楽しみはしょうた君と話すことだからね。だからこの二週間はちょっと物足りなかったかな?」

「そうですか、それは申し訳ないことをしましたね。えっとどこから話しましょうか。たしかあれは・・・」

俺は王都での出来事を話した。

 

 

「いや、面白かったよ。まさかその短期間で貴族の令嬢の相手役をさせられるとはね。」

「全くですよ。最後には行き遅れたらその時は・・・何て言い出すんですよ。まぁ、ありがたい申し出なんですけどね。」

「いや、さすが紅魔族随一のたらしだけではあるな。」

おい、今なんて言った?

「店長、今聞き取れなかったんですけど、紅魔族随一のなんですっけ?」

「え、たらしだよ。里では君をそう読んでる。」

「マジですか?誰がそんなことを・・・」

ガラガラガラ

「ちょっと店長お邪魔するよ。例のたらしの件順調に広まってるか?」

「あんたが主犯か!?」

店に入ってきたのはひょいさぶろーさんだ。

「俺がいつ誰をたらしこんだんだよ!?」

「なんだ、貴様いたのか・・・」

呆れたような目で俺を見る。あんたに俺をそんな目で見る資格はないと思う。

「いつかは知らんが誰なら言ってやろう。貴様はすでに四人もたらしこんだんだ!」

なんか人数が一人増えてないか。

「まず一人、あるえだ。」

いや、あれはたらしこんだんじゃない。一緒に寝ただけだ。でもこれをここで言うと立場的にまずくなるので言わないでおこう。以上心の中の反論でした。

「二人目は族長の所の娘ゆんゆんだ!」

あー、これに関してはなんも言えませんな・・・

「そして、三人目は私の大事な長女めぐみん!」

「いや、おかしいだろ?」

思わず口が出た。

「何がだ?」

「あいつには何もしてないはずだ。」

あ、しまった。墓穴を掘ったかな?

「ほう、めぐみんをパーティに誘っておいてなにもしてないと言い張るのか。」

いや言ったけど。それカウントする?普通。

「あいつはそれをわしや母さんに嬉しそうに話したんだぞ?これを黙ってみてられるか!?」

なるほど、今回の件は大方めぐみんのことがあって広めた感じかな?でも、自分の娘なら最後に持ってこないか?何で三人目なんだ?

「そして最後!わしはこれが一番許せない。お前は年端もいかないわしの娘、こめっこ!」

な、なるほど。あれは大分なつかれてたもんな。

「こめっこは次いつ貴様が来るのかを楽しみにしておる!」

「そうですか、では、次回はケーキを焼いていきますね?」

「お、おお、貴様の作る菓子は美味しいから・・・って違う!」

お褒めいただき感謝です。

「これでも貴様はたらしこんでないと言いきれるのか?」

「俺別にあいつらを取って食おうとはしてませんよ。」

「嘘をつけ!お前の目からは邪な気しかみえん。」

まぁ否定はしませんよ。

「それはそうとお客さん、注文は何にしますか?」

「おい、話をそらすな。」

「いや、そもそもここ定食屋ですから。早く注文してくださいよ。」

「・・・」

多分ひょいさぶろーさんは現在手持ちがないのだろう。

「注文しないんだったら店から出って行ってもらいます?」

「まだ話はっ!」

「話する前に注文していただけますかね。注文するんですか?しないんですか?しないなら出ていってください。」

「こ、これで勝ったと思うなよ。」

何にだよ。

ふぅ、危なかった。あのまま話してたら確実に負けていた。

「しょうた君、さっき君が『あいつには何もしてない』って言ってたけど他の子には・・・」

「さて、皿洗いの続きをしなくちゃ!」

「しょうた君!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

バイトからの帰宅途中何やらさとが騒がしい・・・

「何やら貴族の人が来たらしいぞ。」

「マジか、こんなところに何しに来たんだろ?」

俺の横を過ぎていく人達がそんんことを言っていた。

野次馬になっていきますか!

 

 

ガヤガヤ

かなり人がいるな。おっ。

「よう、あるえにめぐみん、ゆんゆん。」

「あ、しょうた。お久しぶりです。」

「これ何の集まり?」

「どうやら、貴族の御令嬢が里に来ているらしいんだ。」

「ほーん、それで?」

「私たちは興味本意だけど他の人たちは・・・」

ゆんゆんがそこまで言うと大体分かった。

「里のニート達は逆玉を狙ってるわけか・・・ほんとどうしようもねぇ奴らだな・・・」

そんなこと考えてないで働けつーの。

そんなことを思いながらもどんな人か見てみることにした。いや、逆玉とか考えてないからね?

毎度お馴染み誰に向けての言い訳か分からないものを言いつつその御令嬢とやらに目を向けた。

そこに立っていたのは、

「あれ、クレアじゃないか。」

紅魔族の野次馬にオロオロしていた。ほんと、逆境に弱いっすね・・・

「あ、ショウタ!」

嬉しそうに駆け寄ってくる。そんなにこの状況が嫌だったのか・・・

「しょうた、この人とはどういう関係ですか?」

おい、なぜそんなに敵意剥き出しなんだよ。

「ちょっと訳ありな恩人だよ。」

「しょうた君、その訳ありな部分を詳しく・・・」

「やだ。」

「お兄ちゃんまさか・・・!?」

「ショウタ、やっと会えた。・・・その子達は?」

昨日別れたばかりだけどな。それそうとクレアが何かを察知したらしい。若干敵意が出てきてるよ?あの、俺の周りで戦争とかしないでね?

「はいはい!野次馬どもは帰れ!見せ物じゃないぞ!で、クレアは何の用で来たんだ?」

こっちを見ている野次馬を追い払った。

「あ、そうだった。お前この間の報酬を受け取らなかっただろ?それを渡しに来た。それと・・・」

なに赤くなってんだ?

「おい、いい加減その人との関係を話してもらおうか!」

え、何急にめぐみん怒ってるの?

「話せと言われてもな・・・」

どう説明しようか悩んでいると、

「お兄ちゃん、王都で何があったの?」

その目はやめていただけますか?めっちゃ怖いです。ゆんゆんの目からは光と言う光がない。

「強いて言うなら私はショウタと一緒に寝たことぐらいだ。やましいことは一切していない。」

何を思ったか知らんがクレアがとんでもないことを口走った。

「おい!あれのことはお前から秘密にしようって言い出しただろ?何で速攻お前が言ってんの?秘密は何処に行ったの!?」

「ほう、それは聞き捨てならないね・・・」

何でか知らんが、もうすでにめぐみんとゆんゆんが怒ってんのにあるえまで何怒ってるんだよ!

「ねぇ、何でみんな殺気立ってんの?」

「「「「うるさい(ですよ)、この天然たらし!」」」」

マジでなんなのこいつら・・・?

 

 

どうしてこうなった。

現在俺たち五人は広場で大富豪をしている。

理由は簡単だ。誰かがこれじゃあらちがあかないから大富豪で勝負を決めようと言い出した。俺が参加している理由はこの意味がわからん争いを保留とさせるためだ。

どうやらこいつらは俺の強さを忘れているのか潔く承諾してくれた。

「はい、俺の勝ち。この話はおしまい!」

「うっ、私としたことが迂闊でした。この男は何よりも大富豪が得意なことを忘れてました・・・」

大富豪が何よりも得意って、それ褒めてるのか?

「お前らこれ以上いがみ合うなよ?で、クレア。報酬ってなんだ?」

「これだ。」

渡してきたのは封筒だった。

帰ってから開けよう。

懐に封筒をしまった。

「で、もう一つの用は何だ?」

「そ、それは、こ、これを受け取ってはくれないだろうか?」

クレアが手に持っているのは手のひらサイズの箱だった。しかもその箱にはシンフォニア家の紋章が描かれていた。

「なぁ、お前らこれでケーキの材料買ってきてくれないか?めぐみんの家で作ろう。」

紅魔三人組にお金を渡し頼んだ。

「け、ケーキですか!?ケーキを作ってくれるんですか!?行きましょう、さ、早く行きますよ二人とも!」

「え、ちょっとめぐみん!?ひ、引っ張らないで!」

「しょうた君のケーキか・・・」

めぐみんが二人を引っ張っていった。

紅魔族ちょろい。

「ふぅ、で、それなんだ?」

箱を指差した。

「これは私の父からの贈り物だ。」

なぜかクレアが恥ずかしそうに言った。

箱を受けとりなかを取り出した。

「ネックレス・・・?」

そのネックレスには箱と同じシンフォニア家の紋章が型どってあった。

「冒険者を生業とするなら面倒ごとにも巻き込まれるだろう。それがあればある程度は自由に動けるだろうと父がお前に贈ったものだ。」

「そうか、俺も大分好かれたな。わざわざありがとう。」

「あ、後、そ、その気になったらうちに来いと・・・」

・・・・

「それはお前と俺の気持ち次第だな・・・でも、確かなのは、今は無理だな。」

「そ、そうか・・・」

分かりやすいほど落ち込んでるな。

「今決めるのは早すぎる。今の俺にはそれよりも先に片付ける問題がある。」

「それはもしかして・・・」

「しょうた!ケーキって何ケーキを作るんですか?」

「待ってよめぐみん。」

「何のケーキ作るか分からないから材料を何買ったらいいか分からないよ。」

「好きなケーキの材料にしろ!」

「あの子達のことか?」

「さぁな?」

これから先がどうなるか分からない。でもそれにしっかりと向き合うつもりだ。

「じゃあ、『テレポート』で送るよ。」

俺はこの間の魔王軍戦でレベルが上がり『テレポート』を覚えた。

俺は詠唱を始めた。

「これで当分会えなくなるな。」

詠唱を終えた俺は、

「何だ寂しいのか?(笑)」

「あぁ。」

軽くクレアが微笑んだ。不覚ながらっもドキッとされた。

「そうそう、親御さんがせっかく帰ってきたんだ。親孝行でもしたらどうだ?」

「あぁ、そうさせてもらうよ。」

「では、『テレポート』!」

さて、めぐみん邸に向かいますか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

めぐみん達とはめぐみん邸に向かってる途中で会い、一緒に向かった。

「今帰りました。」

「「「お邪魔しまーす。」」」

「なぜお前がいる?」

俺たちを迎えてくれたのはひょいさぶろーさんだ。まぁ、俺は迎えてはくれてないだろうが・・・

「昼間言ったようにケーキの材料を買ったんでいっそのことここで作ろうってなりまして・・・」

「早い!行動が早すぎる!」

「しょうたお兄ちゃんだ!」

こめっこが飛び付いてきた。

ひょいさぶろーさんはまだ何か言いたげだが無視して用意しよう。

「で、お前らは何ケーキを作ってほしいんだ?」

「これです。」

三人はケーキのカタログをもって指を指した。

「ふーん、レアチーズケーキね。了解。」

まずはヨーグルトを・・・・

俺はなれてる手つきで作業をしていく。

「お兄ちゃんって何でもできるよね・・・」

「そうですね、これが男ではなく女子なら性格以外文句なしのお嫁さんですよね・・・」

「私は今のままでも十分何処に出しても恥ずかしくないお嫁さんになれると思うよ。」

「何勝手に人の性別を変えて想像してるんだ。俺はちゃんと男として婿にいきたい。」

「「「・・・」」」

おい、何黙ってるんだ。

「しょうたお兄ちゃん、お嫁さんってなあに?」

「ん?お嫁さんってのはな男の人と結婚してずっと一緒にいる人のことだ。」

離婚とかしなければの話だが・・・

「えっとじゃあ、しょうたお兄ちゃんのお嫁さんって好きなときにお兄ちゃんのお菓子食べれるの?」

「まぁ、忙しくなければ作ってやる。」

こっちに来てから『雪那』を拭くことと料理が趣味になってきている。作ってほしいと言われれば作るだろ。

「うーん、じゃあ、私の、しょうたお兄ちゃんのお嫁さんになる!」

「「「「え!?」」」」

ひょいさぶろーさんとめぐみん、あるえにゆんゆんが声をあげた。

ゲホゲホ

むせた、いきなりそんなことを言われたら驚くわ。

というよりあまり軽率にそういう発言は控えてほしい。お前の父ちゃんが怖いから・・・

「こめっこ、嘘だといってくれ。こめっこがそんな輩の所に嫁ぐなんて考えたくもない。」

「そ、そうですこめっこ。そんな男の所へ行っても何も良いことなんてありませんよ。」

ひどい言われようだ。俺だって人だ。傷付くことだってある。

「そうよこめっこちゃん。この人は変態なんだから、け、今朝だって私の・・・だ、だからそういうのが発達してる人がお兄ちゃんのお嫁さんにふさわしいと思うのよ!」

誰に訴えかけてるんだろう、この子は・・・

「そ、そういうことだったら、わ、私の方が・・・」

もう、聞かないことにしよう・・・

「な、わ、私だって統計学的に言うともっとこうなるんです!」

三人がわーわー言っている。そんなことはどうでもいい。ひょいさぶろーさんの目が怖い。そんな目で見ないでくださいお願いします。

「はぁ、真面目にクレアのとこ嫁ごっかな・・・」

空気が凍った。

俺はそんなことを気にせず作業をもくもくと続けた。

「やはり、あの女は始末すべきでした。」

おっと、とんでもないことを口走ってますね。

「しょうた君はこんなところに他の女性の名前を出すもんじゃないよ、普通。」

お前らの会話の方が普通じゃないっての。

「もう、ほんとにお兄ちゃんのことを拘束しようかしら・・・」

ヤバイやつがここにいた。

「お前らがうるさいからあんなことを言ったんだよ。まだ何処にも行かねぇから安心しろ。」

「そ、そうですよね。よく考えてみれば私たちの方が異常でしたね。」

「そうだね、結局最後は本人の意思だもんね。」

ゆんゆんは自分がすごいことを口走ったことに気づいて、顔をうずめている。

さっさと完成させてこの修羅場から脱け出したい。

 

 

後はこれを冷蔵庫に入れてっと。終わったー!

現在居間にみんながいる。どうやらトランプで遊んでるようだ。大富豪ではこめっこに勝てないと見たためかババ抜きに移行している。

結局運が絡むんじゃ意味ないと思ったやさき、

「あがりー」

やっぱりこめっこが勝つ。

もうお前らトランプやめとけよ。後片付けが終わった俺は居間の方へ顔を出す。

「しょうたー、一回イカサマをやって見せてくださいよ。」

「イカサマって・・・カードを揃えるだけでいいか?」

トランプの一枚一枚ざっと見て覚えるとシャッフルし二ヶ所にトランプを五枚ずつ配りそれらを裏返した。

「「「「おおぉ!」」」」

そこには5の5カードとスペードのロイヤルストレートフラッシュが揃っていた。

女子三人と大人一名が声をあげ、残り一名のこめっこさんは冷蔵庫を見ていた。

そんなに早く食べたいのか。後30分くらい時間がかかりまっせ。

「あら、またいい匂いがするわね。」

めぐみんの母、ゆいゆいさんの御降臨だ。

「「「お邪魔してます。」」」

俺とゆんゆんとあるえが頭を下げた。

「いえいえ、今度は何を作ったのかしら?」

「レアチーズケーキです。」

「まぁ、ケーキを!?いつもありがとうございます。」

「いえいえ、こっちとしては台所を使わせてもらってるので、礼を言うのはこちら側です。」

前も言ったが母さんが台所に立たせてくれない。

日本の男子高校生に例えたらゲームを没収されたのと一緒だ。

「そういえばお兄ちゃん。さっきの報酬ってなんだったの?」

そういえばまだ見てなかったな。家で見るのもここで見るのも同じか。

懐から封筒を取り出して封を開けた。

中身は、

『アルカンレティア宿泊券×4』

後手紙が同封されていた。

『ショウタ様、あれからお元気でお過ごしでしょうか?この間の報酬の件で旅行券などが良いと申されましたのでアルカンレティアで最高級の宿を取らせていただきました。ショウタ様のご家族は四人と聞いていたので、二泊三日分の券を四名分の同封しておきます。日頃の疲れを癒してください。王女アイリス』

うん、お金より断然こっちの方がいい。しかし、

「なぁ、アルカンレティアってどういうとこだ?」

その場にいた人が固まった。




はい、ねこたつむりです。
次回はお察しの通り、温泉回です。
ここの主人公はオープンスケベではなくムッツリスケベです。
そういうことに興味がありつつもない振りをするというね、でも性格もひねくれてる部分もあるのでそういうことをネタにして悪感情を生み出すというどっかの悪魔さんがやりそうなこともします。
何が言いたいかというと、主人公が遊ばれたり遊んだりします。
余談ですがシンフォニア家の紋章の部分は前回の話に入れたかった・・・
このアイディア今日思いついてしまったからこの話に無理くり入れるという荒作業をしました。ほんとはクレアとの別れの時に渡すということがやりたかった。
というわけでここでやってみましょう!


「どうしたんだ、こんなとこに呼び出して。」
俺は今、クレアに呼び出されて屋敷の裏庭に来ている。
「きょ、今日でお前とは最後だから、渡したいものがあって・・・」
そう言ってクレアは自分の首からネックレスらしきものを外し俺に渡してきた。
「それはシンフォニア家の家宝みたいなものだ。それがあればある程度は自由に動けるだろう。」
「そんなもん俺なんかに渡してもいいのか?」
「お前だからだ。これはその・・・お守りみたいなものと思ってくれていい。お前を守りたい・・・だからこれを預かってくれ。」
俺はそれを受け取り、
「ありがとう、これは俺が冒険者を辞めるときに必ず返し来る。」
「あぁ、必ずだぞ?」
それは別れの挨拶でもあり再開の約束でもあった。


みたいな感じですね。
では、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。


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アルカンレティアは天国?地獄?

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
もはやどうしたらいいか分からなくなった。


「なぁ、アルカンレティアってどういうとこだ?」

この一言にどれだけの威力があるかは分からないが少なくともこの場では核爆弾並みの威力を持っていたことは明らかだ。

あんな騒がしかったこの場が一瞬にして静まった。

最初に口を開けたのは、

「ケーキまだ?」

こめっこさんでした。

「ちょっと待っててな。後十分冷やそうな?」

「わかった。」

純粋って(以下ry

それよりも、

「何でみんな黙ってるんだよ?」

「アルカンレティアというのは水と温泉の都です。」

「何だよ、普通に良い所じゃないか。」

「おい、貴様。それを聞いてどうするつもりなんだ?」

何でこの人怒ってんの?

「いや報酬で宿泊券貰ったしそういうところならなら行こっかなって。」

「そこじゃない、誰と行くつもりなんだと聞いている。」

あ、なるほどねー、そういうことで怒ってたんだ。へー。

「冗談じゃない!どうしてあんたの妄想はそこにたどり着けるほど豊かなんだよ!まぁ、家族ではいきたくないのは確かだが・・・」

あのアホなおとんを連れていきたくはない。

それに連れていくなら俺のお金で・・・

「お、温泉かぁ。」

ポツリとあるえが呟いた。

「行くか?」

「「え!?」」

ゆんゆんは分かるがなぜめぐみんが反応した?

「い、いいのかい?」

驚いた顔をしている。

「うちの親は連れていきたくないし、かといってゆんゆん一人を連れていくのもな。券が余るし。」

「え!?お兄ちゃん、私は最初から連れていく気だったの?」

「え、ダメだったか?」

「う、ううん、そっか、ちゃんと私の事も・・・」

何かぶつくさ言ってるがまぁいい、となると自然的やっぱりめぐみんもってなるが・・・

「あぅ・・・」

めぐみんが寂しそうにこちらを見ている。こいつこんな顔も出来たんだな。

「許さんぞ、わしのかわいい娘をこんな奴に預けることはできん!」

だろーな、どーすっかな。

「取り合えずチーズケーキ食べます?それともご飯にします?」

俺が提案した。一応こうなることを予想しといて鍋の具材を買ってきてた。

 

 

「お肉!お肉!」

「チッ」

ひょいさぶろーさんが舌打ちをした。

おい、予想以上にうまいからってその態度はないだろ。

この世界に本だしなんて便利なもんはないし、ましてや鍋のもともない。だから鍋の汁は各家庭で美味しかったりそうでなかったりとまちまちだ。

ちなみに今日の味付けは鶏ガラスープに塩をいれただけという単純な味付け。しかし、配分を間違えたらしょっぱくなったり味がしないという事件が起こり楽しくない鍋ができる。

俺は配分の黄金比を知っている。秘伝のレシピだ。これは我が家だけで伝わっている門外不出のものだ。

「しょうたさん、うちに来ませんか?」

前にも誰かにこんなことを言われた気がする。

めぐみんの母、ゆいゆいさんがとんでも発言をした。

「な、何をいってるんだ母さん!」

「あら、良いじゃないですか。料理できますし、こめっこもなついているみたいですし・・・」

現在こめっこは俺の膝の上にいる。ここ最近のお気に入りらしい。大富豪の時も座ってたよな・・・

「どうですしょうたさん?」

「考えときます。」

こういったときに便利な言葉『善処します』や『前向きに検討します』等は覚えておいて損はない。

カチャ

めぐみんが一瞬挙動がおかしかった。

「そういえばさ、しょうた君が出来ないことってあるの?」

「どうした急にそんなこと聞いて?」

「だってお菓子作りも料理も世渡りも出来るからさ、出来ないことなんてあるのかなって。」

なるほどな、確かに聞いてたらハイスペック人間だ。だが俺にだって欠点はある。

「空を飛ぶことかな・・・」

「「「「「ぶっ!」」」」」

こめっこ以外の人が吹いた。

「けほけほ、そんな真顔で言わないでよ。吹き出してしまったじゃないか。」

全員がむせている。

そんなに面白かったか?

「しょうたさんにはユーモアもあることが分かっただけよしとしましょう。」

いや、空を飛ぶって結構真面目に言ってたんだけど・・・

「もう、しょうもないこと言わないでよね。」

お兄ちゃん結構マジだったんだけど?

「そっかー、しょうたお兄ちゃん、そら飛べるように頑張ってね?」

こめっこ、ありがとう。

「それでお父さん。」

「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」

「めぐみんを温泉へ連れて行かせてくれないですかね?」

めぐみんが目を輝かせてこっちを見た。

「ふぁめふぁ!おまふぇふぁんふぁにむふふぇふぉ・・・」

めっちゃ鍋食ってるやん。

「食べるかしゃべるかどっちかにせい!」

ゴクッ

「ダメだ!お前なんかに娘を任せれるか!」

「時に思うんですがひょいさぶろーさん、俺のことどう思ってるんです?」

・・・・

何で沈黙が流れてるの?すぐに答えれるんじゃないの?

「ど、どうって、たらし?」

「あんたそれしか出てこねぇな。」

要するにあれだ、ひょいさぶろーさんは別に俺を悪く見てる訳じゃない。ただ、娘を思うがために俺から遠ざけたい一心で俺をたらしと言ってるのだろう。

「ひょいさぶろーさん、娘さんを思う気持ちはわかりますが、僕が手をを出すような人に見えますか?」

「むむむ・・・」

「改めて、めぐみんを旅行に行かせてあげてください。」

「断る!」

「このくそったれが!」

このあと、チーズケーキだけはべた褒めしてくれました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

はぁ、ひょいさぶろーさんは頑固だなぁ。

昨日行くことが決まり準備も色々あるということで出発は明日になったが、

「はぁー」

めぐみんがすごく落ち込んでいる。無理やり連れさらうって言う手もあるが後が怖い。

「お兄ちゃん、めぐみんのことで一杯だね?」

「あ、うん。友達と旅行に行けないのは辛いからな~」

なんとかならないかな?

「おい、めぐみん。取り合えず明日の準備はしておけ。いざとなったら無理やり連れ出すから。」

「しょ、しょうた。ありがとうございます!」

今日も交渉しに行ってみるか・・・

「ほら、席につけ!しょうた前に来て手伝え。では、授業を始める。」

 

 

「何度言ったら分かる、ダメだ。」

「何でなんですか!?過保護にもほどがありませんかね?」

俺はバイトが終わったらすぐにめぐみん宅に向かいひょいさぶろーさんと話をしていた。

「過保護で何が悪い!大体年を考えてみろ。まだ12だぞ?」

日本でそれだとこの言い分は通るかもしれない。だがここは日本じゃない!

「何言ってるんですか!14歳で成人ですよ!?もう十分な年だと思いますけど?」

「もう十分な年だと!?お前に何が・・・」

「『スリープ』」

ドサッ

へ?

「しょうたさんごめんなさいね。この人が頑固で・・・」

「い、いえ・・・別に・・・」

え、この人身内に魔法かけたよ?ものすごく怖いんだけど・・・

「明日は何時に出る予定なのかしら?」

「そ、そうですね・・・六時ぐらいでしょうか。」

俺的には朝早くから行って、温泉に浸かってそのままお昼寝するっていう計画があるので早く出たい。

「そうですか、それまでに娘をそちらに寄越しますので・・・」

「あ、ありがとうございます。」

そう言って家に帰った。

この世で一番怒らせてはいけないものが母さんから紅魔族の女性に変わった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

朝の六時前、おれたちはテレポート屋の前で待っていた。

「めぐみん来るかな?」

ゆんゆんが不安そうにいった。

「大丈夫だろ。ゆいゆいさんがいるし・・・」

この世で一番怒らせてはいけないものというのは逆にこっちにつかせればこの世で一番頼りになるものになる。

「あ、来たよ。」

あるえの視線の先には走ってくるめぐみんの姿があった。

「お、お待たせしました。」

息を弾ませながらそう言った。

「それじゃあ、行くか。すみませんね朝早くから・・・」

テレポート屋の人に謝った。

「いやいや、しょうた君の頼みなら断る理由もないよ。」

「お兄ちゃんって普段何してるの?」

「慈善活動。」

「じゃあ、体の力抜いて魔法に抵抗しないように。では、『テレポート』!」

 

 

目をを開けるとそこには朝早いせいかあまり人がいなかった。

「さて宿屋にいきますか。」

俺達は宿泊券の裏面に描かれてる地図を見ながら道を進んだ。

「めぐみん!あそこにお饅頭屋さんがあるから後でいこうよ。」

「わ、分かりましたからそんなにはしゃがないでください。」

「私はあそこのアイスクリーム屋に行きたい。」

後ろでガチャガチャうるさい。遠足の引率の先生の気分だ。

「はいはい。そういうのは旅館で話し合え。今からはしゃいでたら体力なくなるぞ。えっと、地図だとここの路地を曲がって・・・」

角を曲がった先には・・・

「はぁはぁ、やっと捕まえたぞ。」

「この野郎、ちょこまか逃げやがって。もう観念しろ!」

「あ、あなた達、こんなことをして許されると思ってるの!?」

どうやらプリーストらしき女の人が絡まれてる。

めぐみん達がが困惑したような目でこっちを見てくる。

そんな目で見るなよ・・・

「はぁ、おい、あんた達。よってたかって女性に迫るのはどうかと思うが・・・」

いきなり声をかけたからか絡まれている女性含めビクッとなった。

女性はこっちを見るなり走って俺の後ろに来て、あ、いい匂い。

「助けてください!この人達がいきなり『へへへ、姉ちゃんいい体してるじゃねぇか。ちょっとこっちに来てもらおうか。』って私を何処かへ連れていこうとしたんです。」

そんな状況だったのにその台詞を覚える余裕があったんですね・・・

「「し、してない。」」

うーん、どうしよう。このお姉さんが嘘をついてる可能性が出て来たわけで、でもそれが嘘と決まった訳じゃないし、あ、これ使うか。

「これが何だか分かるか?」

俺は首にかけていたネックレスを見せつけた。

「「「そ、それは!?」」」

この人達はこれがなんなのか分かっているようだ。

「し、シンフォニア家の家紋・・・まさかあなたは・・・」

「俺だって事を荒立てたくない。このままここを離れてほしい。」

「わ、分かりました。」

男の人達はその場を去った。

「あなた、シンフォニア家の方?ということはお金持ちかしら?」

あんなことがあったのにそんなことを聞いてくるこの人は間違いなく加害者側だろう。

「はぁ、なぁ、あんた。何処に行ったらさっきの人達に会えるか知ってるか?」

「それより私とお茶しませんか?いい喫茶店知ってるんですよ。」

ダメだこの人、話を聞いてくれない人だ。

「あの、連れがいるんでさっきの人達の場所を教えてくれよ。」

そう言いながら後ろを指すと、

「え!?何ですかここは?天国ですか?」

いきなり声をあげるなりめぐみん達へ近づいてった。

あれは危ない人の目をしている。

「ろ、ロリっ子がこんなにも・・・」

まぁ、顔はロリっ子だが身体は・・・一人だけ完全ロリっ子だな。

「おい、今しつ・・・な、何をするんですか!?だ、抱きつかないでください!」

「おい、離れろ!警察連れていくぞ?」

「そ、それだけは止めて!最近警察に幾度に蔑んだ目で見られるのよ!」

知らんがな。

俺達はその人を警察に預けて旅館に向かうとした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぅ、広いな。」

さすが、アイリス様が取ってくれた宿だ。一人で泊まるには十分すぎる広さだ。

なぜ一人かというと、そりゃ年頃の女子とは寝れないからな。

一回寝てるじゃんとかいうクレームは受け付けておりません。

「うーん、風呂入りたいけどあいつらだけで歩かせるのも不安だな・・・」

さっきの事を思い出すと色々怖い・・・

ここは平和な温泉の都じゃないのか・・・?

 

 

「お兄ちゃん、昨日は朝温泉に入って惰眠を貪るって言ってたのにどうしたの?」

「いや、今朝の事を考えるとな・・・」

俺達は温泉街を観光していた。

「しょうた!あそこに温泉卵が作れるところがありますよ!」

今朝ゆんゆんのはしゃぎっぷりを見て呆れた目をしていた奴の目じゃないぞそれ。

めぐみんはとってもはしゃいでいた。子どもか!あ、子どもだったわ・・・

俺達は温泉卵を作るため卵を買い、その場所にいった。

「温泉卵が出来るまで30分掛かるらしいよ。」

あるえが作り方を見て言った。

「そんなに掛かるのか。浸けてる間、どっか近場を見て回ろうぜ。」

そうやって観光を続けていると、

「アクシズ教に入りませんか?アクア様を共に崇めましょう!」

そう誘ってきたのは今朝めぐみん達にセクハラしたプリーストだった。

「あ、あんたは!?」

顔をひきつらせた。

「あ!あなたは、ロリっ子を引き付けてる羨ましい人!」

その覚え方気に入らない。

「何ですか?私に会いに来たんですか?」

「いや、たまたまだ。」

「またまた~、照れなくていいんですよ?そこでお茶でもします?」

ほんとなんなんだこの人は・・・

「ていうか、あんた今朝警察に渡しただろ?何でここに居るんだよ?」

「え、警察の人に絡んだらすぐに解放してくれたわ。」

警察もお手上げかよ・・・

「では、これで・・・おい、放せよ。」

プリーストの人は俺のローブを引っ張った。

「いやよ、放して欲しければ入信書にサインするか私養うかしなさい。」

いや、俺一応キリスト教なんですが・・・まぁ、なんちゃってなんでそんなに気にすることもないですはい。

「どっちも無理です。」

俺は無理矢理掴む手を振りほどいた。

「そもそもアクシズ教って何なんですか?」

「「「「え!?」」」

その場にいためぐみん達までもが声をあげた。

「しょうた、本当に知らないのですか?アクシズ教は変人ばかりが居るということで有名なんですよ?」

「そ、そんな風に思われてたなんて、お姉ちゃん悲しい。」

何自分でお姉ちゃんとか言ってるんだこの人は・・・

「お兄ちゃんってほんとにどこから来たの?ここの常識も知らなかったし。」

「お、お兄ちゃん!?何て羨ましい。」

なるほど、この人の追い払い方を思い付いた。でも、これをやるのはちょっと・・・

「なぁ、めぐみん・・・」

めぐみんに耳打ちをした。

「え、嫌ですよ。」

「お願いだ。でなきゃ俺がやるはめになる。」

ゆんゆんに頼んだらやってくれそうだが再起不能になりそうでめんどくさい。あるえは多分演技ができない。となるとやっぱりめぐみんだ。

「それでいいんじゃないですか?私もしょうたのその姿を見てみたいですし。」

こんにゃろー

「何々?何の相談?」

「あの、一つ名前を聞いていいですか?」

俺は後ろを向いたまま聞いた。

「まさか惚れちゃった?ふふふ、いいわよ。私はアクシズ教団の美人プリースト、セシリーよ。」

自分で美人とか言っちゃうかー、いや、間違ってはないんですけどね。

「そうですか、こほん。」

俺が今からやろうとしてることはこの年にもなっても近所のお姉さま方にやらされていたもので、ずいぶんと鍛えられた。今思えばあの人達もおかしな人ばっかだったな・・・あーこれするとしばらく顔が子供っぽくなるんだよな。普段使わない筋肉を使うせいか。では、

「セシリーお姉ちゃん、お菓子がほしいなぁ」

セシリーの方へ振り向き全力営業スマイルで言った。

まだ15歳のためか顔にはあどけなさが残っている。

「はぅ、いいわ!お姉ちゃんに任せなさい!」

といって走り去っていった。

後ろからの視線が痛いです。

「しょうた、そのままの顔をキープしたままこっちを向くのです。」

「嫌だ。」

俺は顔をもとに戻した。

「さて、観光に戻るか。」

俺達は観光に戻った。

「しょうた君、少し幼くなった?」

うっさい。

 

 

「んーっ、温泉卵美味しいですね。」

30分後、温泉卵を食べに戻った俺達は近くのベンチで座って温泉卵を堪能してた。

「お兄ちゃんはこれ作れないの?」

「なんだ?そんなに気に入ったのか?」

「お風呂につけたら出来るんじゃないのかい?」

そんな簡単に出来るわけがなかろうが。

黄身の凝固点が確か65~70度だったか。これは温度計がなけりゃ作れねーな。

「温度計があったら作れる。」

俺はこの世界に来てから温度計を見てない気がする。

「そっか、じゃあ今度作ってね。」

その反応ではこの世界にも温度計はあるらしい。

「しかし驚きましたよ。まさかしょうたがあんなに可愛らしい声が出来るなんてね・・・」

その話題には触れてほしくない・・・

「そうよ、あの声を聞いたらこう、庇護欲が駆られたわ。」

「あぁ神様、もう一度しょうた君の声を・・・」

この街で神様とか言わないでほしい。

「ほら、アホなこと言ってないで行くぞ。」

「「「はーい」」」

 

 

観光を終え旅館に戻ってきた。

さて、温泉温泉♪

鼻歌を歌って浴場の前にやって来た。

「うっ、こ、これは・・・」

俺に目の前には女風呂と男風呂、そして混浴があった。

「どっちに入ろう・・・?」

もちろんそんな邪な気持ちで迷ってる訳じゃない。いやまぁちょっとはあるけど。

混浴の方は今日限定レモン風呂らしい。男風呂の方は蜜柑風呂、そして女風呂は柚子風呂・・・

あ、女風呂は全く入る気無いですよ。一応説明しただけですはい。

取り合えずフロントに聞きに行った。

「すいません、今日限定の奴っていつまでやってるんですか?」

「えっと、深夜の三時までですね。」

「そうですか。ありがとうございます。」

それじゃあ、深夜に混浴の方にいきますか。

 

 

カポン

「ふぅ、癒されるぅ。」

ここの宿の温泉は炭酸風呂らしい。効能は肩凝りとか冷え症に良いらしい。

風呂に浸かりながら温泉街の温泉を眺めていた。

「ほう、色々あるな。単純、塩化物、硫黄・・・なんだこれ?アクア様の煮汁風呂?入りたくない。」

はぁ、明日は温泉巡り。久しぶりの休みも・・・最近休んでばっかな気がする。店長に悪いな・・・

そんなことを考えていると、

「あれ?しょうたが居ませんね?絶対入ってると思ったのに。」

隣からめぐみんの声がする。

「だから居ないって言ったじゃないか。めぐみんもこっちにおいでよ。」

ちょっと離れたところからあるえが言った。

「おい、めぐみん俺をなんだと思ってやがるんだ。あとお前ら、他の人も居るんだから静かにしろ。すいませんね。うちの連れが。」

他のお客さんに謝る。

「つまらないですね。」

お前はここに何しに来たんだ・・・

そう思い蜜柑の香りに包まれながら軽く一眠りした。

 

 

「ふぅ、さっぱりした。そっちの柚子はどうだった?」

晩御飯の時間になってご飯を食べに降りてきた。

「良かったよ、柚子の香りが心を落ち着かせれた。」

軽くゆんゆんを匂って、

「そうか。出来たら入りたかったな。」

そう言って席についた。

「待ってください、何でゆんゆんだけ匂ったのですか!?ほら、私も匂うのです。」

どうしたこいつは?

「俺がゆんゆんを匂っても問題にはならないがお前を匂ったらひょいさぶろーさんに殺されるだろ。」

あのとき手を出すような男に見えますかって言ったので軽率な行動には出られない。

「だったら私は匂っても問題ないんだね?」

あるえがいきなりそんなことを言い出す。

問題はないと思うが社会的にどうかと思う。

「ま、まぁまぁ、二人とも落ち着いて。」

「何ですか!一人だけ匂われたからっていい気になって。」

「そ、そんなことないから!」

そう言いながらにやけてますよ、ゆんゆんさん?

「お、お客様、他のお客様に迷惑をかけますから静かにお願いします。」

「ほんとすみません・・・」

あぁ、修学旅行の先生の気分だ・・・

そんな気分でも料理は美味しくいただけた。

どれも新鮮でとっても美味しかった。そう、どれも新鮮。オクラの天ぷらに攻撃されました。鼻痛いです。揚げられても生きてるとか逞しすぎる。その生命力分けてください。

 

 

晩御飯のあとはめぐみん達の部屋に行き大富豪、出はなくダウトをやった。

ゆんゆんがダウトって言ったらめぐみんが『私たちの事、そんなに信用してなかったんですね。友達に思っていたのに・・・』とか言って取り消しさせたり、それが嘘だと分かって押しきってダウトって言ったら本当だったり、散々な目に遭った。最終的には泣いて俺に甘えてきたりしてた。お兄ちゃん的には嬉しかったが。男としては心臓バクバクもんでした。ありがとうございます。まぁ、それ見てめぐみんが羨ましそうだったりあるえがねだってきたりなど大変でした。こいつらのこと真剣に考えなければならないことを思うと考えなくてもいいかなって思いました。

作文!?

 

 

俺は部屋に戻り十二時になるのを待った。今から行けば人が居そうで行きたいけど行きたくないです。

チャリッ

俺結構ヤバイもん渡されたかな・・・

ネックレスを見て思った。

多分だけどこれがあったら権力乱用出来るんだよな、そんなもん俺に渡すって相当信用されてんのかな?あの一週間で?

そんなことを悩みながら時間は刻々と過ぎていった。

あ、もう十二時前かそろそろ用意して行くか。

今から混浴に行くこと考えたら、もう心臓バクバクですよ。

浴場に向かってる途中、

「あ、あるえ。その格好、お前も風呂にいくのか?」

「え、あ、まぁそうだね。」

まずい、このまま一緒に行って混浴の浴場に入るとこを見られてしまったら、世間的に終わるかも・・・

いや、待て。俺は別にやましいことをしているわけではない。レモン風呂がとても気になるだけだ。そう、けして邪な気持ちがあるわけでは・・・

ああぁ、毎度恒例の誰かに向けての言い訳をしても無理だ!そうだ、効能をよく読んでいる振りをしてあるえが女風呂に入った後で混浴に入ればいいのか。これなら楽勝だぜ。

よし、浴場の前についた後は効能をよく読んでいる振りを・・・え?

隣には俺と同じく効能を読んでるあるえが居た。そ、そうだよね。読むよね。

 

 

五周ぐらい読んだだろうか?まだあるえは動かない。どうするこれ?

もう、いいかな潔く入ろうかな?

俺が移動すると安堵したかのようにあるえが息をついた。

そのやさき、

ガラガラガラ、ピシャッ

「え!?」

俺が浴場に入ってすぐあるえの声が聞こえた。

もしかしてあいつもここに入るつもりだったのか?

ガラガラガラ

「おいあるえ。」

「な、なんだい?」

「一緒に入るか(笑)」

「え、え!?その、いいのかな?」

え?前半は予想通りの反応だけど後半は予想外だった。

「え、あ、い、いいんじゃにゃいか?」

しまった!何か緊張して噛んだ。

「そ、それじゃあ失礼するよ。」

なんだろう、なんだろうこの感じ。勝手に妹みたいな扱いしてきたけど、こういうことになったら妹として見れないというか、いや、完全には見れてなかったけど、世界観が変わるというか、俺自身の何かが変わった気がする。

日本の妹の時はこんな感じじゃなかったのに・・・

ガラガラガラ

温泉の方へ移動した。

ほう、これがレモン風呂か。いい香りだ。蜜柑よりいい。

体を洗うと温泉に浸かった。

あるえはまだ髪を洗っている。長いからなあいつ。

「あの、しょうた君。視線をすごく感じるんだけど・・・?」

シャンプーしてるせいかあるえは目を瞑っている。

「自意識過剰か?」

いや、しっかり見てます。いつも服の上からですけどタオル一枚だけで見ると凄みがさらに分かるな・・・

「ち、違っ!」

おっと、慌てたときの揺れすごかったです。

今ここがレモン風呂じゃなかったら、俺の理性は保てれていません。

流石に体を洗うとこは見れません。そんな勇気も度胸も精神力もありません。

「しょうた君?」

俺の姿が見えなくなったのが不安なんだろうか、声が震えてる。そんなに俺信用ない?

「ここだよ。」

岩影に隠れて手を振った。

「そんなところに・・・」

安心したような声をだした。

体を洗い終わったのかこっちに来て、

「と、隣いいかい?」

さっきまで見られるのを恥ずかしそうにしてた奴の言葉じゃないだろ。

「え、あ、ああ。」

そういうとあるえが隣に入ってきた。

俺はあるえを横目で見ていたら、

「しょ、しょうた君?視線がチラチラとこっちを見てるんだけど?」

「俺だって思春期真っ只中の男の子だ。視線が嫌だったら離れてくれ。」

「別に、嫌って訳じゃ・・・」

もじもじしながらあるえが言った。

何この状況?

しばらく沈黙が続くと、

「しょうた君はそ、そういうことに興味はあるの?」

「そういうことって温泉の効能のことか?」

確かに興味はあるが入る前に熱心に読んでたのは目的が違う。

「違うよ!そ、その、えっちなことのこと・・・」

「何?お前、襲われたいの?」

「しょ、しょうた君にだったらいいかな・・・」

ヒュウー

今日は風が強いな。

「じゃ、先に出るわ、もうそれ以上のぼせんなよ。」

風呂から出ようとすると、

「ま、待ってよ!さっきまで私のことを邪な目で見てたのにどうしてすぐに冷めるんだい!?」

「覚めるもなにもないだろ!?おい、やめろ!お、落ち着けって取り敢えずタオルを引っ張るな!ヤバイヤバイ、俺の方もヤバイがお前の方がもっとヤバイから!」

何かこぼれそうですよ!?

 

 

いや、前々からは何となくそうなんじゃないかと思ってたよ?俺もそこまで鈍感じゃないわけだし。でも気のせいかもしれないで納めてたからこう、改めてこんな行動をとられると困るんですよ。昔この子とフラグでもっていってた自分がバカでした。妹と同じ年の奴に手を出すって相当ヤバイな、みたいな言い訳を考えてみたこともあるけどゆんゆんも妹としてはあまり扱えてない気がする。どうしたらいいと思います?

「しょうた君は私のことが嫌いなのかい?」

「嫌いじゃない。」

俺とあるえは一回風呂に浸かり直し話し合うことにした。

「じゃあ、好き?」

上目使いやめろ!答えにくいわ!もとから答えにくい質問をさらに答えにくくするな!

「お前のこと、多少は意識したことはあるよ?でもやっぱり妹と同じ年って考えると・・・」

「でも、ゆんゆんはほんとの妹じゃないよね?」

あまり痛いとこを突かないでくれますかね。

神様助けてください、お願いします。

祈ったら、

ガラガラガラ

「あ!やっぱりあるえだけ抜け駆けを!許しませんよ!」

「お兄ちゃん、なにもしてないよね?」

めぐみんとゆんゆんが風呂場に入ってきた。

「はぁ、何でタイミング悪く入ってくるのさ。」

あるえが悔しそうに言った。

「何のタイミングですか!?もしかしてあと一歩遅かったらしょうたの初めてが・・・」

顔を赤らめてめぐみんが言った。

「と、取り敢えず俺出るわ。・・・おい、そこどけよ。」

めぐみんとゆんゆんが風呂場の入り口を塞いでる。

「嫌ですよ。私達だけしょうたとお風呂に入れないとか不公平ですよ。」

何言ってんだこいつ?

「そうよ、私とお兄ちゃんは二ヶ月も一緒に暮らしているのに、一度も一緒にお風呂入ったことないじゃない!」

当たり前じゃないのかそれ?

「なんですかゆんゆん。それは私達に喧嘩でも売ってるんですか?」

「特に一緒に暮らしてるの部分が気に入らなかったよ。」

おーい、負のオーラ巻き散らかしてるぞ。止めてくれ。

「な、何よ。めぐみんは卒業後のパーティーに誘われてるし、あるえは一緒に寝ようって誘われた上に一緒にお風呂に入ってるじゃない!」

「あれは臨時です。それに私はまだしょうたと一晩過ごしてないんですよ?」

これ何の張り合い?

「めぐみんは親公認をすぐにでも貰えるじゃないか!」

いや、ひょいさぶろーさんが居るから貰え・・・ゆいゆいさんが無理矢理するか。

「取り敢えず風邪引くから風呂に疲れよ。俺出るからさ。」

「何言ってるのお兄ちゃん。この状況で。」

俺居ない方がいいと思うんだが・・・

「ほら、さっさと浸かりますよ。」

「わ、わかったから!引きずるな!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ、昨日は散々な目に遭った。気づいたら俺の良いとこを多く言った方が勝ちみたいなゲームしてたけど、結局十個もでないで終わったし。何なんだよ、俺を苛めたいのか?食堂でコーヒー貰いに行こ。」

食堂は一階にあるので階段を下りていたら、

「はい、シンフォニア様ですね。こちらの部屋になっております。」

え!?

体が金縛りに遭ったかのように固まった。

「ありがとう、お父様荷物をお持ちします。」

「おお、悪いなクレア。」

もう、嫌だ。

階段で固まっていると、

「おぉ!ショウタ君ではないか。こんなに早くも再会するとは嬉しいよ。」

俺も一人旅行だったら嬉しいだろう、でも今回ばかりは戦争になりかねないので気が重い。

「え!?ショウタ!?お前、どうして・・・?」

こっちが聞きたい。

「報酬の中身が温泉旅行四人分だった。」

「そ、そうなのか。私はお前が提案してくれたので親孝行に温泉旅行をと思って。」

神様、俺をどうしたいの?もう、泣きたい。

「で、お前は親御さんと一緒に来ているのか?」

そうクレアが言ったそばから

「あ!居ましたよ!もう、こんなところで何や・・・何でこの人がここに居るんですか?」

早速敵意剥き出しですね。

「めぐみん、待って・・・お兄ちゃん?」

何かがあったら俺の名を疑問系にして聞くな。

「何二人とも負のオーラを・・・仕方ないか・・・」

何が?何が仕方ないの?

「ショウタ君、君がいい人なのは分かるけどこれはちょっと・・・」

クレアのお父様これは違うんです。言い訳は出てこないけど違うんです。

「お、お父様。彼は天然たらしなので悪気はないのですが・・・もうちょっと自覚をしてほしいですね。」

「誰がたらしだ!それに何を自覚するんだよ!」

「お前は自然と女性を・・・」

そこまで言ったとき、

「あ!こんなところに居た!合法ショタっ子!」

何それ?

「おい、ショウタ。お前ってやつは・・・」

待て、今回はマジで俺は悪くない。

「もう、どれだけ探したか、一件一件の宿をしらみ潰し。お陰で出禁になったわよ。」

一体何をしたらそうなるんだ?

「さ、お姉ちゃんと一緒に帰りましょ?」

「お断りします。」

「もう、素直じゃないなー」

「帰れ。」

「嫌よ、もう一度あの天使に会わないと気がすまないわ。」

「やりたくない。」

「あの、天使とは一体?」

クレア余計な口を叩くんじゃない。

「しょうたは全力営業スマイルでショタっ子になれるんですよ。まぁ、私も見たことはないんですが。あのお姉さんがそこまで固執するならきっとスゴいものなんでしょう。」

めぐみん、お前まで余計な口を・・・

ゴクリッ

「おい、クレア今期待したか?」

「し、してない・・・」

嘘つけ、顔を隠してから言え。親が見てるぞ。

・・・何か親御さん、諦めた顔してるなぁ・・・

「ねぇ、一回だけ先っちょだけでいいから。」

先っちょってなんだよ。

「もう、帰ってください。」

「セシリーお姉さん、負けてはいけませんよ。あの人はだいぶ疲れてるはずです。あと少しです。」

おい、めぐみん。お前はどっちの味方なんだ?

「セシリーさん、頑張ってください。」

ゆんゆんまで・・・

あ、あるえは・・・

「しょうた君早く見せた方が楽だよ?私も見たい。」

おい、願望をさらっと言ったな。

「セシリー殿、あと一押しで行けます。さぁ!」

クレア、お前はわかってた。絶対そっちに行くだろうって思ってた。

「み、みんな。お姉ちゃん頑張るね。」

ホント何これ?

クレアの親御さんはいつの間にか居なくなってるし・・・

五対一って無理ゲー。

「お、お客様、他のお客様にご迷惑が・・・」

「ホントにすみません!今静かにさせますので。」

はぁ、温泉旅行、これだったら家族で来た方がましだったかなぁ。

顔を俯かせ一息ついた。

「ふぅ、これで最後にしてくれますか?」

「今日のところは最後にしてあげるわ。」

明日も来るの?嫌だよ。でも、今日は絡んでこないって言ってるし。いっか。

吹っ切れました。

「お姉ちゃんたち、お店の人に迷惑だから静かにしようね?」

この世界に来てから早くも二回目の全力営業スマイルをした。

「「「「「!?」」」」」

五人はその場に固まって俺はコーヒーを取りに行きました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺は朝御飯を六人で食べてました。なぜ増えてる?

クレアの親御さんは食べ歩きに行ったらしい。そっちに付いていきたかった。

で、六人・・・

えっと、俺、ゆんゆん、めぐみん、あるえにクレア、そしてセシリー。何で?

「おかしいだろ!?何であんたここに居るんだよ!?」

セシリーは首をかしげた。

「何でって、この流れはあなたのハーレムに加わる感じでしょ?」

「そんなもん作った覚えはない!」

「全くこれだから天然は・・・」

その天然の意味絶対違う意味だろ。

「俺は魔王を倒すのにこっちに来たの。別にハーレムを作りに来た訳じゃない。」

もとはといえばあの駄女神がミスったからこんなことに・・・

「ショウタ、魔王を倒すために来たのか?わざわざわざ、何でそんなことを・・・」

クレアが不思議そうに言ってきた。

「ある人に魔王を倒したら何でも願いを叶えてくれるって言われたんだよ。」

「ほう、それはいい話ですね。で、その願いとは何ですか?」

みんなが身を乗り出した。

え、言わなきゃならないんすか?

「えーっと、だらだらしていても怒らず甘えさせてくれるお嫁さんが欲しいって言う願い。」

なんと言うくそみたいな願望だろうか。自分でもそう思う。でも、これが最も叶えたい願望だ。

「そんなことなら、セシリーお姉ちゃんが存分に甘やかしてあげるわ!」

「そ、それくらいなら我が家に来ていくらでもだらだらするがいい。」

「わ、私はしょうたが何してようが怒りませんし甘やかせる自信があります。」

「私はお兄ちゃんが何をして欲しいかすぐに分かるわ。」

「私もしょうた君の願望を叶えられると思う。」

一斉にそんなこと言われても・・・正直困る。

何でだろう、こんなに美人に言い寄られてるのにちょっとしか嬉しくない。

みんな、ダメ人間だからかな・・・

「はぁ。」

「「「「「あ!!」」」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「まだ午前中なのに疲れた・・・」

俺は一人で部屋に戻り布団に伏せた。

コンコンコン

「開いてますよ。」

ガラガラガラ

「どした、クレア。」

そこにはいつものクレアではなく浴衣姿のクレアがいた。

夏限定のガチャみたい。

そんな失礼なことを思いながら見ていたら、

「よかったら、外を歩かないか?」

浴衣デートですか・・・

「行く。」

 

 

「そういえば、他のやつらは?」

旅館を出てふと思った。

「他の人は部屋にいって何かを語るとか言ってたような。」

あのメンバーで何を語るんだ?

「クレア、行くとこ決まってんのか?」

「いや、決まってない。」

「どうして俺の周りには後先考えないで行動する人がいるのかなぁ。」

どしようかな、温泉は一人で行きたかったしな・・・

「あ、あそこ入ってみようぜ。」

そこは足湯だった。

温泉は一人でしか入れないけど足湯は二人で入れるもんな。

そこに行き温泉饅頭を頼んだ。

「これが足湯と言うものか・・・」

物珍しそうに足を見ている。

「ほんとは今日は温泉行くつもりだったんだが・・・」

「お、温泉!?その、まだ早いような気もするが、お、お前がどうしてもって言うなら・・・」

「いや行かねぇよ。行っても別々になるんじゃ意味ないだろ。ていうか、何が早いんだ?」

「な、何でもない!」

プイッと顔を逸らした。

なにその行動。以下ry

この人は俺のツボを分かってるんじゃないのだろうか?

「しかし、足湯っていうものは足だけ暖めて風邪を引かないのだろうか?」

「うーん、大丈夫だろ。人間っていうのは体を暖めるために手足の熱を使うらしい。だから、足を暖めただけでも体は暖かくなると思う。」

「そうなのか?それだったら安心だな。」

クレアが自分の足を眺めていった。

「それにしても、お前の足ちょっと綺麗すぎるのでは?」

クレアが俺の足を見て行ってきた。

「うるせぇ!気にしてるんだからほっとけよ。」

俺は足の毛が薄いと言うより無い。別にガムテープで剥がしたわけでもない。遺伝ってやつだ。

「はぁ、こうして休むのは久しぶりだな・・・」

「俺はここんとこずっと休みっぱなしだ。」

ニートでもないのにどうしてだろう?

「そういえばお前、アイリス様のもとを離れて平気なのか?」

こいつは異常にアイリスに対する執着が激しすぎる。丸一日離れるだけでも大変だと思うが・・・

「最初は不安だった。ここに来る途中何度王都に帰ろうかと思ったか。しかし、両親とまたいつ会えるか分からないからな。ここは我慢するべきだと自分に言い聞かせてた。」

その短時間でそこまで行くか?こりゃ半日も持たんな。

「でも、旅先でお前に会えた。それだけで心が軽くなった。」

俺は心が重くなったがな。半分戦争起きそうだったし。

「そうか、お役に立てて何より。」

「お待たせしました。温泉饅頭です。」

店員さんが饅頭を持ってきてくれた。

「ありがとうございます。」

「デートですか?良いですね。二人で足湯なんて仲がいいんですね。」

「え、いやそういう訳じゃ・・・」

「なに恥ずかしがってんだよ。」

「彼女さん、大切にしてあげてくださいね?では。」

頭を下げ下がっていった。

「か、彼女・・・」

クレアがなぜか震えている。

「おい、そこまで動揺しなくてもいいだろ?」

「逆になぜお前はそんなに落ち着いていられるんだ!?」

「諸事情あり。あまり聞かないでくれ。」

昔お姉さま方に遊ばれたのが関係しているので話したくも思い出したくもない。

「そ、そうか、お前にも色々とあるんだな。」

何となく察してくれたクレアは饅頭をかじった。

「お、おいしい。」

口から漏らすほどおいしいのか?

一口かじってみた。

あ、思ったよりふわっとしてる。日本で食べたのとは違うからこっちは温泉の水を使ってるのか。

俺が日本で食べたのは群馬県のものでちょっと固かった気もする。確か温泉饅頭って温泉で売ってるから温泉饅頭って言うやつと温泉の水を使って温泉饅頭って言うものがあるらしい。温泉饅頭に使える温泉はある程度重曹が入ってないといけないらしく、その源泉は少ないらしい。流石は温泉の都と呼ばれるだけあるな。

「そろそろ行くか?」

「そうだな・・・ふぁぁっ」

それはまた大きなあくびですね。

「眠そうだな。」

目を擦っているクレアに言った。

「思ったより気持ちよくてな。」

満足そうな顔をして言った。

やがて大通りに出て歩いてると、

「あれ?久しぶり!わたしわたし!ほら、同級生の同じクラスだった。覚えてる?あれからアクシズ教に入信して、大分変わったから分からないかもね?」

この世界には詐欺まがいなことまで浸透しているのか。こういうメールよくあったな。

そのうち車もこの世界に入ってくるかもしれないな・・・

俺達はその場をUターンし立ち去った。

「おい、良かったのか?さっきのやつ知り合いじゃないのか?」

あれをまともに信じているのかよ。世間知らずにも程があるぞ?

「あれは知り合いじゃない。知り合いを装って入信させるという悪質な手だ。」

「なんだと!?」

凄い驚愕してますね。

「ああ言うのに引っ掛からないようにな。」

「しかし、もしほんとにあれが知り合いだったら・・・」

そんなことは絶対無い。俺はこの世界に来て知り合った人数は数えきれるぐらいだ。

「知り合いだったとしてもデート中に話し掛けられても無視するようにしてるから心配すんな。」

「い、いつこれがデートだと言った!?」

「え、違うの?男女二人で出掛けることをデートだと思ってたんだけど。もしかして俺ってずれてる!?」

まじか、そんな事実は知りたくなかった。昔お姉さま方と・・・なにもなかった。いいかあの事は忘れろ。なにもなかった。いいね?

自分にそういい聞かせ『だーくさいど』に陥るのを阻止した。

「そ、そういうものなのか?私はてっきりカップルがするものだと・・・」

そんなことを話ながら街の観光を続けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

観光から帰ってきた俺はすぐさま風呂に直行した。

「ここは毎日限定風呂してんのか?」

浴場の前でまた足を止めていた。

女風呂は薔薇、男風呂はさくら、混浴はすみれ

「どうしたものか・・・」

「ショウタ、どうしたそんなとこに立ち尽くして。」

「え、いや別に。」

クレア来たし深夜に入ろ・・・

「ふーん、一緒に入るか?」

「へ?」

いきなり何言ってるんですか?

「どうした?入りたくないのか?」

もう、この旅館に俺の居場所は部屋だけなのかな?

「入りたくないこともないが・・・ほ、ほら、こういうのって段階を踏んでさ・・・」

「段階も何も、一緒に寝た上にデートまでした。段階は十分踏んでると思うが?」

「そ、そうなんですけど。その、こ、心の準備と言うのがありまして・・・」

あかん、向こうのペースに飲まれてつい敬語が・・・

「ほらいくぞ。」

「ちょっと、クレアさん!?」

クレアは俺を引っ張って浴場に入った。

入ってしまったのは仕方ない。もう混浴でいいや。

ガラガラガラ

「「おぉ!」」

俺とクレアは感嘆の声をあげた。

昨日とは違いすみれのいい香りがする。

レモンもいいがこっちもいいな。

「し、しかし、誰もいないな・・・」

おっと、クレアの声が少しだけ震えたな。さっきの仕返しをさせていただこう。

「この時間だからな、どうした?怖じ気づいたのか?」

「な、何を言ってる!あ、あまりに人が居ないから驚いてるだけだ。」

目が泳いでますよ。

「そっか、せっかくだし背中流そっか?(笑)」

「へ?そ、そんなことは・・・」

「俺を風呂に引きずり込んだ割にはそんな度胸ないんすね。」

「うっ、お前と言うやつは・・・よ、よし、それじゃあ流してもらおう。」

「了解。」

「え?」

「え?どうした?」

「は、ハッタリじゃなかったのか?」

「そっちはハッタリだったんですね。」

「はぁ、今日はお前を負かせれると思ったのだが・・・」

何の勝負をしてるんですか?

「まぁ、嫌がることはしないんでご心配なく。」

「流さないのか?」

「へ?流して欲しいのか?」

「い、いい。」

「そっか・・・お姉ちゃん、背中流してほしい?」

後半ショタ声で言ったら、

「お願いします!」

この人も欲望に忠実なところがあるよな・・・

「なぁ、クレア。アイリス様には手を出してないだろうな?」

「大丈夫だ。匂いだけでいける。」

何が?

俺はクレアの背中にタオルを押し当てる。

「ひゃっ!?」

「変な声出すなよ。何かイケないことをしてる気分になる。」

「い、イケないこと・・・」

おい、頬を染めるな・・・

にしても、こんなに背中狭かったか?

指で背中をなぞって計ってみた。

「ひっ、お、お前、な、何をしている!?」

「いや、思ったより背中が小さかったもんでちょっと計ってみた。」

計ってみた結果そんなにだった。

「じゃあ、やるぞ。」

クレアの背中洗っていく。

「力加減はどうだ?」

「あぁ、いい感じだ」

ふと思った。何で俺達熟年夫婦みたいなことしてんの?

背中を洗い終わり、

「ありがとう、次はお前の背中を流してやろう。」

「いや、いいです。」

「私だけあんな恥ずかしい思いさせてお前だけしないなんてずるいぞ!」

「ずるいも何もしてほしいって言ったのはお前じゃん!」

「あれはお前があんな声を出すから条件反射みたいなもので・・・」

条件反射ってヤバくないか?それ、かなり重症じゃ・・・

「と、とにかく、お前の背中を流させろ!」

「や、やめろ!あ、当たってる!何か当たってるから!それ以上やると生理的反射が起きるから!」

ヤバい、何がとは言わないが、とてもヤバい。

「う、うわっ!」

俺は足元を滑らせて倒れた。

クレアが俺にまたがり、

「ふっふっふ、これでもう逃げられまい。」

こいつ、顔がヤバいほど恍惚してやがる・・・

お父さん、お母さん、今までありがとうございました。俺今から・・・

「ショ、ショウタ?お前、涙が・・・」

「え?」

指で目の付近をさわった。

あ、ほんとだ。涙が出てる。

たぶん倒れたときに出たものだろう。

「そ、そんなに嫌だったのか?すまない。」

ん?こいつ勘違いを・・・

「お前がそんなに嫌がるとは思わなくて・・・」

いや、俺のあれがヤバかったということだけで、別にあんなじゃれあう程度なんとも・・・

「私はお前に嫌われたくない。」

クレアの目には涙が浮かんでいる。

「あ、安心しろ。俺はお前を嫌いになんてならないから。涙を流したのもたぶん倒れたときに出たやつだ。」

「ほ、ほんとか?私のこと嫌・・・」

ガラガラガラ

「「「「あっ・・・」」」」

タイミング!今そのタイミングじゃない!

しかも、よりによって、

「まぁ!」

「そうか、ショウタ君。我が家に来ることを決心したんだね?」

「ちょ、ちょっと待ってください!これは誤解です!」

「いや、いいんだよ。私は君を認めてるんだから。」

「ショウタ、こ、ここは諦めて私とひ、一つに・・・」

「おい、何勝手に先走ってんだよ!段階を飛ばしすぎだ!」

「では、私達は後でゆっくり温泉に入ろうか。」

「そうですね、邪魔してはいけませんもの。」

「「では、ごゆっくり。」」

「おーい!行かないでください!」

「そうか、段階をちゃんと踏まないとな。」

「もう、誰でもいいから助けてくれ!」

ガラガラガラ

入ってきたのは透き通るような白髪、例えるなら雪のような髪で目の色は淡い水色の女性だった。

髪の長さは肩に当たるか当たらないかで顔に少しだけあどけなさを感じる。たぶん俺と同年齢か一個下ぐらいだ。

クレアは知らない人が入ってきたからか俺の上からどいてくれた。

その入ってきた女性は真っ直ぐ俺のことを見ている。

どうしてだろう、俺はこの世界に来てこんな子に出会ったことがない。すれ違ったこともない。すれ違ったら気付きほど可愛いし・・・

しかし、そんなことを思いながらにもこの子とは初対面じゃない気がする。

「・・・雪那?」

無意識に口から出た。

「お、お前雪那は刀の名前じゃ・・・」

クレアがそう言ったら、

「はい、雪那です。ご主人様。」

その子はにっこりと微笑みかけてきた。

 

 

「えっと、説明お願いできる?」

俺達は一旦気持ちを落ち着かせるために温泉に浸かり一息ついて聞いた。

「はい、えっと、私の能力に『共鳴』ってあったじゃないですか?」

「あるな。飛んできてくれる奴。」

「刀が勝手に飛ぶのか?信じられない・・・」

今こうして目の前に雪那がいること事態を受け入れてんのに?

「それの段階?まぁ、レベルみたいなものが魔王軍戦で上がったんです。一度呼び掛けてみたんですよ?」

「え?マジで?ちょっと待って思い出してみるわ・・・あ!もしかして脳内に直接!?みたいな奴か?」

確かそんなのがあった。聞き取れなかったけど・・・

「はい!それです!あのときはご主人様の体の状態がよろしくなくて聞き取れなかったんだと思います。その時からはすでに擬人化は出来ました。」

「それだったら何で今日なんだ?前から出来たんならもっと早く出てきたら良かったのに。」

「そ、その、タイミングを計ってたと言いますか・・・」

モジモジしながら雪那が言った。

なるほど、この子は紅魔族の影響を受けたのか・・・

いや、待て。ということはこの子に俺が夜中ゴソゴソしてたのを見られてたのか?

「だ、大丈夫です!ご主人様がしようとしたら見たいけど極力見ないようにしてたんで!」

「何で心の中が分かる・・・え?今見たいって言った?」

「言ってません。それに常に一緒に居れば分かりますよ。」

絶対言ったよね。

それじゃさておき、そうだよな。こいつを女性としたら一番近いのはこいつだもんな。

「で、どうして今日なんだ?昨日も助けを求めたんだけど・・・」

出来るなら昨日、もっと早く来てほしかった。

「えっと、その、声を出されてなかったので・・・後めんどくさかったです。」

あれ?最後小さな声でめんどくさいって・・・

「そっか、確かにめんどくさいよな?」

俺だってそんな案件首も突っ込みたくない。気持ちは分かる。でもな・・・

「ひぃ!?すみませんでした!行こうと思ったら行けました!でも、力があまりでないんですよ。」

「え、どゆこと?」

「心で助けを求めるのと声で助けを求めるのでは私に行く力が倍くらい違うんですよね・・・これもレベルを上げればなんとかなりますよ。」

そっか、そんな事情が・・・

「でも、声に出すときは精神的に余裕がある時で声が出ないときの方が余裕がないんじゃ・・・」

クレアがそう言った。

そうだよな、声にならないほどの恐怖ってあるもんな。

「やっぱり不良ひ・・・」

「それやめてください。傷付くんですよ?仕方ないじゃないですか斬った感触がないほど切れ味がいいんですから。」

涙目で雪那が訴えかけてきた。

それは確かにそうだけど・・・

「それにしてもご主人様、あなたはもっと自覚するべきです!あなたは今六人もの人を魅了しているのですよ!?」

確かに多い・・・ん?六人?

「おい、六人って一人多くないか?たぶんその数セシリー入れての数だろ?それだったら五人じゃ・・・」

「え、何言ってるんですか?めぐみんさんにゆんゆんさん、あるえさんにクレアさんにセシリーさん、そして私です。」

「「え?」」

俺とクレアが思わず声を出した。

ちょっと待って、今自分の刀に告白されたの?ちょっと複雑・・・

「私を毎日毎日大切に拭いてくれて・・・とっても嬉しかったんです!あと『こいつは俺の半身だ』や『一心同体だ』なんて、照れちゃいますよ。」

そんなことも言ってたっけ・・・

ちょっと待て、そうなると俺これから雪那と一緒に寝れなくなるじゃないか・・・気持ち的にね?

「だから皆さんが羨ましかったんですよ?ご主人様の料理を食べれたり人として添い寝をしたり、クレアさんに関しては二人でデートに行ったり、どれだけ邪魔をしたいと思ったことか・・・分かります?腰に下げられている傍観者になる気分。」

だんだん目から光を失っていく雪那。

お、おう、それは辛い。

「ちょっと待ってくれ、私に関してはと言ったか?雪那とショウタはずっと一緒にいるんだったな?ということはショウタの初デートの相手は私ってことになるのか?」

「おい、嬉しそうに言うなよ・・・」

「切り崩しますよ?」

おっと怖い怖い。

「ところで雪那。ずっと気になってたんだが。」

「はい、何でしょう?」

「何でチラチラ俺に腰を見てるんだ?」

こいつは会ってからずっと五秒に一回くらいの回数で俺の腰辺りを見てくる。

「え、えっと、ずっと今まで私の聖地がそこだったんでつい・・・」

聖地?

「要約するとここに下げられてたからただ気になると?」

「そうですね。」

つまり、友達と移動中に自分の家を見るとつい目がいってしまうみたいなあれか。

はぁ、今回色々起きすぎだろ。疲れたわ。

そう思いながら温泉に浮かんだ。

「大丈夫か?お前のぼせてるんじゃ・・・」

クレアが聞いてきた。

「大丈夫だ。長風呂には慣れてる。」

湯船にはいつも30分くらいは浸かっているので大したことない。

「はぁ、脱力感満載のご主人様。可愛いですねぇ。」

こいつも相当変人だな。

ぷかぷか浮きながら思った。

 

 

晩御飯の時間も近づいてきたので風呂から上がり浴場から出た。

「なぁ、ホームシックみたいなのか分からんけど、ペタペタ腰を触らないでくれる?」

雪那が腰を服着たときから触ってくる。

「いいじゃないですか。いつも触れてることですし。」

そうなんだけどな・・・

「おい、ショウタが迷惑そうだからいい加減に・・・」

「何ですか?羨ましいんですか?」

「そ、そんなことない・・・」

「ほうほう、あんな大胆なことをしといて羨ましくないと・・・」

「うっ・・・」

クレアが赤くなり黙った。

「おいおい、あまりいじめないでやってくれよ。」

「はーい。」

しかし、こいつをあいつらに会わせるのはどうなんだろうか・・・

戦争しか起きなさそう。

「じゃ、また七時に食堂で。親御さんも連れてこいよ。」

「あぁ、分かった。」

一旦部屋に戻るため別れた。

ガチャ

「はぁ、いい湯でしたね。」

「そうだな。」

ふぅ、あと一時間どうしよっかな?

「ご主人様、私とイチャイチャします?」

「しねぇよ。」

「もう、そう言って布団に入ってるじゃないですか。体を正直ですね。」

「いつもの習慣だろ!お前いつも見てるだろ!」

「知ってますよ。それでいつも寝過ごしてしまうこともありますよね?」

「う、うっさい!」

俺の生活を隅々まで見られているこいつにどう対処すればいいのか分からない。

「ご主人様、トランプしませんか?」

「お前、マジで言ってんのか?」

「はい、スピードなんてどうでしょうか?」

「いいな、最近やってないし。」

あいつらに教えたのは大人数でやるものだけだ。だからスピードや戦争など二人でやるものはご無沙汰だ。

「というか、ルール知ってるのか?」

「必要知識は予め入っています。そこら辺のことは企業秘密でお願いします。」

そうですか。ま、一応神器ですしね。

「では、勝負。」

 

 

「うっ、やはりご主人様には勝てそうにもありません。『見切り』まで使ったのに・・・」

「お、お前せこいな・・・」

「持てるものを全て出し尽くす。戦いにおける鉄則です。」

たまに俺舐めプしてるのは黙っておこう。

「ん?ご主人様。どうしました?手をソワソワさせて。」

「え、い、いや、何でもない。」

「そういう時は大抵嘘ついてますよね?まぁ、ソワソワさせてる理由は分かりますが。」

「つ、ついてない。じゃあ、そのソワソワしている理由を聞かせてみろよ。」

「ふっふっふ、簡単です。それは、『わたし』ですよね?」

「っ!」

「あなたはいつも『わたし』に触れています。でも今は触れることが出来ないのでソワソワしている。つまり、『わたし』依存症ですね。」

嬉しそうに言うな。

でも、事実だから仕方ない。手元に『雪那』がないと不安を感じる。

俺の左手を雪那が掴んで、

「私はここに居ますから。安心してください。」

やっぱりこいつは『雪那』なんだと実感させられた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なぁ、お前いつ戻るの?」

俺達は食堂に向かうべく階段を降りた。

「寝るときには戻ります。」

話によると現段階では擬人化するのには俺が呼ばないとなれないらしい。戻ることに関しては自分の意思で戻れるとのこと。なお、『共鳴』のレベルを上げれば自分の意思で出てこれるらしい。

うーん、やっぱり不良ひ・・・

「やめてください。」

「はい。」

怒られてしまった。

食堂につくとすでに他のみんながついていた。

「しょうた!こっちです!こっ・・・おい、隣の娘について話してもらおうか。」

いい加減それやめろよ。

「お、お姉ちゃんというものがありながらも他の子にてを出すなんて・・・しかもかなりの美少女、羨ましいわ。」

おい、何でお前まだ居るんだよ。

「ショウタ君、さっき君はうちの娘と・・・」

「お、お父様!これには事情がありまして。」

「しょうた君、クレアさんと何かあったのかい?」

静かに怒るのやめていただけますか?

ゆんゆんに関してはもう、触れたくもない。

「もうめんどくさいから自分で説明しろよ。」

「あ、はい。えっと、私は雪那と言います。」

「え、せ、雪那!?お兄ちゃんの剣と同じ名前じゃない!?」

ゆんゆんが驚く。

「偶然・・・ではなさそうですね。魔力の感じが同じです。」

流石めぐみん。現主席なだけはある。

「つまり、擬人化、という奴かい?」

「そうです。私はご主人様に助けを求められて出てきました。」

「ふぅ、それなら良かったです。また新たな敵が増えたのかと思いましたよ。」

「増えた?何を言ってるんですか?私は元々ご主人様のことが好きですよ?」

ガタッ

俺とクレア以外が動揺した。

「な、何を言ってるのですか?あなたはしょうたの剣ですよね?それが持ち主に恋をするなんて聞いたこともありませんよ。」

「聞いたことがなくてもここにそういう事実があります!」

「くっ!」

「ショウタ君、君は大変な立場にいるようだね・・・」

クレアのお父さんが耳打ちしてきた。

「ご理解感謝です。」

「ねぇねぇ、雪那ちゃん。わたしのことお姉ちゃんって呼んでくれる?」

この人はぶれないな・・・

「はい、お姉ちゃん。ご主人様のことは諦めてほしいです。」

こいつもぶれない。

「あら、残念。アクシズ教徒は欲しいものは絶対に諦めないわ。」

諦めは肝心って言葉知ってるか?

「待って、もし、しょうた君が誰かと結婚したとして雪那ちゃんはどうなるだい?」

「え、あ、その場合はこの感情を押し殺してご主人様の相棒として生きていきます。」

勝手に俺の結婚の話はしないでほしい。

「そろそろ晩御飯食べない?」

というより、こんな無駄話に止めてくれ。と言いたい。

「そうね。こんな話を今しても仕方がないよね。」

「雪那はご飯を食べれるのですか?」

「はい、食べれます。でも、人の食事を食べるのは初めてですね。」

何でこいつらはすぐに切り替えれるんだ?

「雪那はさ、空腹の感覚とかあるの?」

もし、これがあったら長いことお腹を空かせてたことになる。

「これ食べたいなとかはありますけどお腹は空いたことがありません。」

「そっか、食べたいときは言えよ。出してやるから。」

「は、はい!」

雪那が満面の笑みを浮かべた。

「出たよ・・・」

「出ましたね・・・」

「出たね・・・」

「そうだな・・・」

「あれが噂の」

「「「「「天然たらし」」」」」

おい、聞こえてるぞ。今どこで垂らしたんだよ・・・

 

 

「はふぅ、人の食事ってこんなに美味しかったんですね。」

雪那はすごい量食べてた。

「せ、雪那ちゃん。そんなに食べて太らない?」

恐る恐るゆんゆんが聞いた。

「大丈夫です。わたし元々刀なんでエンプティカロリーです。」

「う、羨ましい。」

「ご主人様は、そんなに食べてないんですね。」

雪那が俺の皿を見て言った。

「俺はご飯よりデザート派だから。」

「デザートはご飯の代わりにはならないよ・・・」

呆れた目で俺を見てくるあるえ。

「しかし、しょうたの作った方が美味しかったですね。」

「おいこら、そういうことを言うんじゃない。」

「私はショウタが作ったデザートを食べたことがないんだが、どんな感じなんだ?」

「あれは、しょうたのことを嫌ってる私の父でさえべた褒めしてましたからね。人の気持ちを変えるくらい美味しいとだけ言っときましょう。」

「そんなになんですか!?ご主人様!私も食べたいです!」

「ねぇ、もしかしてショウタさんってお姉ちゃんよりも女子力高い?」

「もしかしてじゃなくて、絶対あんたよりは上だと思う。」

パン

クレアのお母さんが何かを思い付いたかのようのに手を叩いた。

「そうだわ、来週クレアの誕生日なの。その時にケーキを焼いて貰えないかしら?」

貴族の誕生日パーティーだから随分でかそうだが・・・

「因みに奥様。規模はどのくらいでしょうか?」

「あ、そんなに大きくないのざっと百人くらいかしら?」

おい、それで大きくないのか?

そんなに多いんだったらバイキング形式のケーキか・・・十個ぐらいか・・・

一週間もあれば行けるけど、仕事を休まないといけなくなる。これ以上は休めない。

どうしよ・・・

「お兄ちゃん、お母さんに頼んで見たら?家だったら仕事を休まずに出来るんじゃない?」

「そうするしか方法はないか。嫌だなぁ。お母さんの仕事を取らないでって涙目で言われそうだし・・・」

そもそも何故台所に立たせて貰えないかというとゆんゆんとクッキー作ったときに母さんがそのクッキーを食べて、それ以来何故か立たせてくれない。

「それ、見たことあります。泣きついてた奴ですよね?」

雪那がいつの間にか取ってきたケーキを頬張りながら言った。

「お前、気持ち悪くならないか?」

「もんふぁふぃないふぇふ。ふぁふぁふぁれふふぁふぁ。」

「飲み込んでからしゃべれ。」

ゴクッ

「ふぅ、問題ないです。刀ですから。」

便利ですな・・・

「取り敢えず引き受けます。もしかしたら数が足らなくなると思いますが・・・」

「ショ、ショウタ。無理しなくていいのだぞ?」

「大丈夫だ。無理なんかしてない。」

「その言葉だけ聞いたら頼もしいのですが、しょうた。クレアの目をまっすぐ見てから言ってください。」

「正直母さんを説得できる自信がない。」

駄々こねそうでめんどくさい。

「しょうた君ってお菓子作ってるイメージしか浮かばなくなってきたよ。」

それな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

晩御飯を食べ終え各々解散して部屋に戻った。

「ご主人様、どこに行くんですか?」

「俺の行動わかってるなら聞くなよ。」

「また一緒に入ります?」

「いい、男風呂に行くし。」

「そうですか、なら行けませんね。」

「あ、これ預かっといてくれ。」

俺はネックレスを雪那に預けた。

「はい。いってらっしゃい。」

はぁ、やっと休める。

ガラガラガラ

ケーキ、なんの種類作ろう・・・

プカプカ浮きながら考えた。

生クリームだろ、フルーツもいいな。あ、卵アレルギーの・こと・・・も考え・・・

 

 

バシャッ

「あ、考えてたら寝てた。今何時・・・二時間も寝てたのか。」

風呂を出ようとしたら、

「な、何をするんですか!?」

隣から雪那の声が聞こえた。

「へへ、良いじゃねえか。一人でここに入ってたと言うことは誘ってんだろ?」

「ち、違います!ご主人様がもしかしたら入ってるかもしれないから来ただけです!」

「残念ながら居なかったようだな。代わりに俺らがご主人様になってやるよ。」

「や、止めてください!」

バキバキバキッ

「な、なんだ!?」

混浴と男風呂を隔ててる竹で出来た塀が折れた。

「おい、人のモノに勝手に触れんな。」

俺は目を紅く輝かせていった。

相手は四人か・・・

「なんだお前?ただのガキじゃねえか。」

「おいおい、気を付けた方がいいぜ?俺らはちょっと名が知れた貴族の御曹司だ。俺らに何かがあったらお前なんてこうだぜ?」

男の一人は親指を立てて首を切る真似をした。

「で?それがどうした。まぁ、仮にだ。仮にお前らに俺を殺せる権力があるとしよう。そい・・・」

「あるに決まってるだろ!お前、昨日ここの宿に入るところ見たぜ?紅魔族の女子を引き連れた気取った冒険者だよな。お前みたいな冒険者風情くらい簡単に処刑に出来るさ。」

「人の話も最後まで聞けないのか?この低脳め。」

「このやろう!マジで俺らを舐めてたら痛い目見んぞ?」

「どうせ口だけだ。ビビって俺達には手を出さない。野郎は女を庇ってヒーロー気取りをしたいだけだろう。」

ほう、ほんとに手を出さないと思ってるんだろうか?もしそうだとしたら頭の中お花畑ですね。

「残念だったな、姉ちゃん。俺らは四人しかも貴族だ。それに比べてあっちは一人だけ。勝ち目ないぜ。」

「寝言は寝てから言ってくださいよ。あの人をなんだと思ってるんですか?」

「この尼!舐めた口を利きやがる。まぁいい、後でたっぷりと可愛がってやる。」

「おい、さっきからきたねぇ手で雪那に触れんなよ。気持ち悪い。」

後でしっかり拭かないと。

「何の身分もない奴にが俺らにそんな口利いていいと思ってんのか?」

「多分、俺はお前らよりかは身分は高いと思うぞ。」

「ふん、抜かせ。どうせハッタリだ。」

まだ雪那から手を離してない。一発入れるか・・・

「おい、行こうぜ。ほら、お前もこゴフッ」

ドサッ

俺は雪那の手を握ってるやつを殴った。

おい、ヘボ過ぎやしないか?貴族はいろんな血を混ぜてるから強いって聞いてたけど。

「お、おい、何やってるんだ!お前、死刑になるかもしれないんだぞ?」

「そんなの知らん。例え俺が死刑になるとしてもこいつには手出しさせねぇから。」

「気取りやがって。例えってなんだ!お前は絶対死刑になる!冒険者風情が貴族に歯向かうこれだけで十分死刑だ!」

そんなんでなるわけないだろ。やっぱ低脳だな。

「お前らがどれだけ名が知れてるか知らんがお前らは俺を死刑に出来ない。雪那預けたもの持ってるか?」

「はい、ご主人様に渡されたものは肌身離さず持っています。」

雪那からネックレスを受け取った。

それを見た貴族たちは目を見開いた。

「これがなんだか分かるか?」

「ど、どうしてそれを・・・」

「おい、あれシンフォニア家の家紋じゃねぇか?」

「ヤバイよ、なぁどうするよ?」

さっきと凄い変わり様だ。

「大丈夫だ。こっちは三人向こうは一人。恐怖心を植え付けたら親にも言えないだろ。」

「それもそうか。あいつを気絶させたら後は・・・」

「お楽しみって訳か、よーし。」

「ご主人様?」

不安そうにこっちを見てくる。

「安心しろ。ご主人様を信じろ。」

久しぶりだな、素手の喧嘩。

「かかれ!」

 

 

コンコンコン

「クレア居るか?」

ガチャ

「どうした?・・・!?お前それ・・・」

俺は貴族達を運んでクレアの部屋に来てた。

「いや、雪那に手を出そうとしてたからつい。」

「すみません、私のせいで・・・」

「それは後で話す。」

「それにしても外傷は無いようだが・・・」

クレアは伸びてる貴族を見て言った。

「凄かったんですよ!ご主人様が相手の腹を殴ったと思ったらもう伸びてて・・・」

「雪那、少し黙ろうな?」

「は、はい・・・」

「で、クレア。こいつらのこと分かるか?」

「うーん、多分フェンダー家の者だろう。確か財力で成り上がった貴族だ。」

成る程、どうりで弱かったわけだ。

「成金貴族か。」

「この事は私の方から伝えておこう。」

「ありがとう、雪那帰るぞ。」

「はい。」

雪那が部屋を出ていった。

「なぁ、ショウタ。」

「ん?」

「もし私が雪那の立場にいたらどうしてた?」

「・・・ほんと、しょうもないこと聞くな。」

「う、うるさい。」

「助けたよ。全力で。」

「そうか。」

嬉しげにクレアが言った。

「じゃ、おやすみ。」

「おやすみ。」

ガチャ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい、雪那。」

「は、はい。」

俺は部屋に帰ると雪那に正座させていた。

「どうして一人で混浴なんて行った?」

「も、もしかしたら入ってるかもしれないと思って・・・」

消えそうな声で答えてきた。

「男風呂入るって行っただろ?」

「でも、ご主人様が道中めぐみんさんとかに会ってたらからかわれて入るかもしれないじゃないですか!」

否定できないのが辛い。

「でも、一人でなんて絶対に行くな!俺があの場に居なかったら、お前は・・・お前は!」

俺は雪那に泣きながら抱きついた。

「ご、ご主人様。泣かないで下さい。」

雪那は俺をなだめてくる。

やがて俺は泣き疲れ雪那の腕の中で眠りに落ちた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・様。ご主人様。起きてください。朝ですよ。」

「ん、雪那?おはよう。」

「おはようございます!ご主人様。」

あのまま寝てしまったのか。

「すまない、寝れなかったよな。」

「何言ってるんですか?刀は眠らないんですよ?」

雪那は目の下に隈を作って言った。

「ほんとのこと行ったら、帰ってプリン作ってやる。」

「眠いです。いや、このままご主人様を抱いて寝ようかなって思いましてけど、ヨダレがこぼれたら申し訳ないと思って起きてました。」

そんなにプリンが食べたいのか?

「寝るか?」

「朝御飯を食べたいです。」

食欲が強い奴だな。

コンコンコン

「お姉ちゃんが起しに来たわよ!」

ガチャ

セシリーは勝手に部屋に入ってきた。

そう言えば鍵閉めてないな。

「さ、今日のショタっ子声を聞かせて。」

いつもなら断るが今は機嫌がいい。

「お姉ちゃん、おはよう。」

「はぅ、どうしたの?昨日みたいに嫌がらないの?まぁ、私はそっちの方がいいんだけど。」

「よく喋るな。はい、今日のショタっ子声おしまい。下行こうぜ。」

「それはいいんだけど、いつまでも雪那ちゃんとくっついてるの?」

おっと、このままでしたか。

雪那は顔を赤くしている。

昨日、あれだけ散々煽ってた奴が何赤くなってんだよ。

「ほら、早く行くぞ。」

 

 

「色々とご迷惑をかけました。」

俺は旅館の人に謝罪に行ってた。

「いえいえ、騒がしい二日間でしたけど他のお客様も少しあれを楽しみにしていたらしいので。」

何故か、あの騒がしいのが影で好評だったらしい。物好きも多いな。

「あ、後竹の塀の事申し訳ありませんでした。」

「まぁ、あれはシンフォニア家が弁償して頂くことになりましたのでいいですよ。幸い男風呂の方でしたし。」

クレアには頭が上がらないな・・・

「では、これで失礼します。」

「またのお越しをお待ちしてます。」

 

 

クレア達と別れを言った俺は旅館から出てきた。

「あ、ショウタが出てきました。」

「もう、遅いよ。早くお土産を買いにいこうよ。」

「はいはい。」

「お兄ちゃん、雪那ちゃんは?」

「ここで寝てる。」

腰に下げた『雪那』を見せた。

「それじゃ、お土産を買って紅魔の里に帰りますか!」

こうして俺達の温泉旅行は幕を閉じた。

 

全然休めた気がしない・・・




こんにちは、ねこたつむりです。
なんか書いてるうちに方向性を見失ったです。
紅魔組が少なかった気がします。
あと、セシリーをヒロインに追加するか迷ってます。
あ、そう言えば雪那が擬人化しましたね。白髪美少女ですね!このすばのカズマは死んだら生き返れるのでエリス様に会えますが、ショウタの場合死ねません。よって雪那はエリス様の代わりですね。
さて、次回はこの話に出てきたように、クレアの誕生パーティです。作者クレア大好きすぎますね。何故かサブキャラばかり好きになっていくのが不思議です。
あと、主人公もう冒険者をやめてパティシエにでもなったらどうですかね?
では、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでくれるとありがたいです。

最近、タブレットの調子が悪い・・・
気付いたらお気に入り件数が100を行ってて夢かな?と疑問に思いました。


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主人公のパティシエ日記。

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
サブタイまで訳が分からんことに・・・


「はぁ、はぁ、ご、ご主人様。大好きです・・・」

ご主人様は私が擬人化出来ることを知ってから何度も私を求めてきた。

「あ、ちょっと、ま、待ってください。きゃっ!?」

ご主人様が私を押し倒してきた。

「も、もう、ご主人様はいつも強引に・・・」

ご主人様、私もう・・・

「・・・ご、ご主人様?い、いつからそこに?」

私はベットで仰向けになって部屋の入り口に立っているご主人様を見て恐る恐る聞いた。

「お前が架空の俺にキスしてるところからだ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「ただいま!」」

「おかえりなさい。」

俺達はアルカンレティアでお土産を買ってすぐ『テレポート』を使って帰ってきた。

「母さん、父さん居る?二人に頼みたいことと言うよりお願いがあるんだけど・・・」

「リビングに居るわ。何かしら、しょうたのお願いって。」

いつも俺が遠慮がちなせいか母さんは嬉しそうだった。

「あ、それと別に母さんだけにお願いがあるんだ。」

「私だけに?ふふふ。」

不敵の笑みを浮かべた。

時々、いや、頻繁に思うのだが俺の周り変人多くないか?

「お父さん、二人が帰ったわよ。」

「おぉ、お帰り、どうだった温泉旅行は?」

二日ぶりに娘息子に会えて嬉しいのか声が弾んでる。

「楽しかった。色々あったけど・・・」

ゆんゆんが答えた。

「そうか、それはよかった。しょうたは?」

「休めた気がしない。」

今回色々ありすぎたんだ。体を休めるどころじゃない・・・

『ご主人様、おはようございます。』

その一つの元凶が今お目覚めのようだ。

「父さん、母さん。取り敢えず座って。」

「どうしたんだ?」

父さんは、言われるがまま座り、母さんは楽しそうに座った。

「えっと、雪那の部屋をくれない?」

「「え!?」」

二人は何言ってるんだこいつみたいな目で見てきた。

「え、えっと、もう一度いいか?」

なんだ?難聴にでもなったのか?

「雪那の部屋をくれない?」

「しょうた、あなたの言ってる意味が分からないんだけど・・・」

「あ、そっか。いきなりそんなこと言われてもわかんないな。雪那、出てきて。」

腰に下げてる『雪那』が光だし腰から離れ雪那になった。

「初めまして、雪那です。」

父さんと母さんは口を開けてポカーンとしてる。

「ご、ご主人様。私何か変でしたか?」

困った顔で雪那が聞いてきた。

「いや、そもそも擬人化が珍しいんだろ。」

「お兄ちゃん、あ、雪那ちゃん出てきてたんだ。おはよう。」

ゆんゆんが自室に荷物を置いて降りてきた。

「ゆんゆんさん、おはようございます。」

ペコリと頭を下げた。

「ちょっと待ってくれ、頭が追い付かない。」お父さんが凄く困惑している。

「それじゃあ、この旅行中に何があったか説明するな。」

俺は旅先で何があったか、隠すとこは隠しつつもしっかり伝わるように話した。

「お、お前も大変だな・・・」

同情の目をして父さんが言った。

クレアの父ちゃんもこんな目をしてたな・・・

「お父さん、別にいいんじゃないかしら?一人増えたぐらい何ともないと思うんだけど。」

母さんは了承をしてくれるらしい。

「そうだな。分かった。その子に部屋をあげよう。しょうたの部屋の向かい側を使うといい」

「ありがとう、父さん。あ、それと、母さん。頼みって言うのは台所を使わせてくれないかな?」

それを聞いた父さんは、

「なんだ、そんな事か、いいよな?母さん。」

「あら、ダメよ。母さんの仕事無くなっちゃうじゃないの。」

予想通りの反応が返ってきた。

「ど、どうしてなんだ?たかが台所を使うだけだろ?」

「お父さん、しょうたのお菓子食べたことある?」

「あぁ、前にゆんゆんと一緒に作ったやつな。あれは絶品だった。」

褒めてくれるのは嬉しいけど、今はやめていただきたい。

「それよ!しょうたのお菓子があまりにも美味しすぎるからよ!どうして?どうして母さんよりも女子力高いの?」

そんなこと言われても困る。

「が、母さん落ち着け。しょうたが作ったと言ってもゆんゆんが手伝ったんだろ?」

「「「え?」」」

「あれ?どうした?」

この人マジで言ってるんだろうか?

「お父さん、私お兄ちゃんに教えてもらったんだけど・・・」

「むしろ、ゆんゆんが初めて作ったお菓子があのクッキーよ。」

「そ、そうなのか?」

こいつ親失格だな・・・

「しょ、しょうた。ゴミを見るような目は止めてくれないか?」

ゴm・・・じゃなかった父さんはオロオロしながら頼んできた。

「まぁ、そう言うことだから、しょうたには悪いけど台所を使わせる訳にはいかないの。」

強情の母だ。別に仕事をとる訳じゃないのに・・・

「か、母さん。あのしょうたが凄く悲しそうな顔をしてるぞ・・・」

「そ、そんな顔したって無駄ですからね。」

あ、行けるわ。

「お、俺は別に母さんの仕事を取るつもりは無いのに・・・た、ただ知り合いにケーキをと思っただけなのに・・・」

「うっ、な、泣かないで。わ、分かったから。台所を使わせてあげるから、泣かないで。」

「ほ、ほんとに?ありがとう、母さん!」

心の中でガッツポーズをとった。

『ご主人様、ゲスいですね。』

雪那が脳内会話をしてきた。

だまらっしゃい。

「でも、使うのは、晩御飯の後だけだから。これから一週間毎日。」

「「え?」」

父さんと母さんが声をあげた。

「お兄ちゃん、貴族の人に誕生日ケーキ頼まれたの。だから十個は作るって言ってたよ。」

「心配要らないだろ。消音と消臭魔法を使えば問題ない。」

魔法って便利。

「そ、そこじゃないわよ。連日ケーキ作るんでしょ?しんどくない?」

「問題ないんじゃない?趣味をぶっとうしでやる訳だし。苦ではない。」

夜通しゲームやるみたいなもんだろ。

「何かあったら遠慮なく言ってね?」

「了解。」

さて、バイトに行きますか!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ありがとうございました!」

最後の客も帰り、皿洗いをしていた。

「いや、しょうた君が戻ってきてくれて助かったよ。しょうた君がどれだけ仕事していたか分かるね。」

「いや、申し訳ありませんでした。まさかこんなに休むことになるなんて思ってなかったですから。」

「ご主人様、テーブル拭きました。」

「ありがとう、雪那。」

俺はこれまでの埋め合わせをする為に雪那にバイトの手伝いをさせてた。

神器をバイトに使うってどうなの?って声が上がっても、俺のものだからどう使おうが文句の言われようがないと反論する。

「いや、まさかあの剣がほんとに生きてるとわね・・・」

そう言えば前にこんな話をしたっけ。

「でも、いいのかい?バイト代一人分で。」

申し訳なさそうに聞いてきた。

「いいんですよ。私はご主人様と一緒に居るだけで幸せなので。」

「流石紅魔族随一のたらし。自分の神器までたらしこむとは。」

「それやめて頂けませんか?」

ほんと不名誉な通り名はやめて欲しい。

「悪い悪い。でも、しょうた君は実際色々な人に好かれてるんだよ。」

まぁ、慈善活動してますしね。

してるうちに仲良くなったりするもんだ。

「じゃあ、店長。俺達上がりますね。」

「お疲れ様。」

「「お疲れ様です。」」

店を出て家に向かった。

「いつも壁に立て掛けられて見てましたけど。やっぱりあそこの仕事、大変ですね。」

「お前が居るから少しは楽になるかと思っていたけど、いつもより客が来たから変わんなかったな・・・」

そう、いつもの倍ぐらい客が来てた。最初はそんなにだったけど気付けば店の前に長蛇の列が。

「理由はお前だろうな・・・」

「え!?何でですか?」

可愛いウェイトレスが接客してくれるとなったら男が群がるのは当然。セミが鳴くのと一緒だ。

「も、もう、ご主人様ったら。可愛いだなんて・・・」

「え、声に出してた?」

「いえ、心を読みました。」

バシッ

「い、痛い!」

「勝手に読むな。」

前に雪那はある程度の期間持ち主と一緒に居たら持ち主の考えが分かると言っていた。この事を詳しく聞くと持ち主の考えを読み取って戦いやすくするための機能らしい。だが、こいつは私欲の為に使うからめんどくさい。しかも、これは一方通行で俺はこいつの考えが読めない。読みたくもない。

「はぁ、欲求を満たすために能力を使う神器がどこに居るんだよ。」

「欲求不満はよくありませんよ。ご主人様の欲求も満たしてあげましょうか?」

今の欲求か・・・

「いいのか?」

「え!?」

「何驚いてるんだよ。お前が言ったんだろ?」

「い、いや、いつものご主人様なら叩くか罵声を浴びせるか照れるはずなんですが・・・」

雪那が赤くなって言う。

「で、どうするんだ?」

「や、やります!やらせてください!」

「じゃあ、メロンパン買ってこい。」

「・・・え?」

こいつは肝心なときに考えを読むこと忘れる。

「え、じゃない。欲求を満たしてくれるんじゃないのかよ。」

「この!何ですか!何で乙女心を踏みにじるんですか!?こっちは凄く期待したのに!」

お前の場合、乙女心じゃなくてただの欲望だ。

「勘違いしたのはお前だろ?俺は自分の欲求を言っただけだ。」

「欲求ってそういう欲求じゃなくて性的欲求のことを言ってたんです!」

「お、お前!?大声でそんなこと言うな。」

外でこんなことを叫ばれたら近所迷惑だし何より変な目で見られるかもしれない。

「そもそも、この里にパン屋さんってありましたっけ?」

ない。喫茶店や定食屋。食料品店とかならあるがパン屋はない。まぁ、自宅で作るか喫茶店で食べるかの二択だろ。

「メロンパンがマジでほしい。」

「王都にもありませんでしたしね。」

俺は前、メロンパンを求めて王都に言ったがパン屋さんにはメロンパンがなく泣き崩れたことがあった。

「はぁ、あのときのご主人様も可愛かったなぁ。」

恍惚してるこの変態が俺の『雪那』だなんて知りたくもなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「ただいま」もどりました。」

「お帰り、お兄ちゃん。雪那ちゃん。」

ゆんゆんが出迎えに来てくれた。

「今日はロールキャベツか・・・」

ロールキャベツ。この世界にはコンソメやらなんやらの調味料はなくトマトを煮込み塩胡椒、鶏ガラ等入れる。しかも、肉を包むときにキャベツが暴れるので非常に手間の掛かる料理だ。

「匂っただけで分かるの?」

普通分かるだろ?

「いや、ご主人様の嗅覚は異常ですよ?普通美味しそうな匂いで止まりますし。」

「そうなのか?他人と比べたことがないから分からん。」

そう言いながら食卓についた。

「さぁ、今日は雪那ちゃんが家に来た記念としてキャベツロールを頑張って作ったわ。」

なるほど、だからそんな手の込んだ料理を。てか、量が多くないか?品数も相当ある。

「あ、ありがとうございます!お母様。」

雪那が目を輝かせて言った。

「お、お母様なんてやだわぁ。普通にお母さんって呼んでほしいわ。」

もうツッコまない。

「はいはい。早く食べようぜ。」

でなければケーキが作れん。

「もう、急かさないの。焦らなくても御飯は無くならないわよ。」

何呑気に言ってるんだこの人は。

「いや時間!ケーキ作る時間が無くなるわ!」

「あ、そうだった。しょうたはケーキを作らないといけないのよね。忘れてたわ。」

あ、この人の目。忘れてなかったな。

多分、雪那のこともあるだうが半分は俺のケーキ作りを邪魔してるのか。

「はぁ、そけっとさんの所行ってくる。」

「ま、待て。私が悪かったわ。変な意地張ってごめんさい。」

このまま帰ってこないと思ったのか、速攻土下座に入る母さん。

しかし、日本の文化ってここまで浸透しているのか・・・

そんなことを思いながら仕方なく、

「しょうがないな、今回は許してあげる。でも、次はない。」

「は、はい。」

母さんが消えかかりそうな声で返事した。

しかし、こんなに作られたらケーキ作るどころではない。

「でも、やっぱり今日はそっけとさんにお世話になってくるよ。」

「そ、そうね。流石に母さんもやり過ぎたと思ったわ・・・」

俺はタッパーにロールキャベツその他を詰めた。

「お兄ちゃん、どうしてそけっとさんなの?」

不審なものを見る目で見てくる。そんな目で見ないでほしい。

「前に慈善活動してるって言ったろ?あれの一つにそけっとさんに料理を教えることが入ってるんだ。それがきっかけでそけっとさんは俺の台所事情を知ってる。そういう意味では一番頼みやすい人だから。」

「ふーん。」

まだその目をするか。後でしばくぞ?

「ご主人様、私も行きましょうか?」

「お前居ると作業進まなくなるだろうし、それに今日はお前のためにこれだけの料理を作ってくれたんだ。しっかり食べろよ。」

「わ、分かりました。」

雪那は頬を軽く染めて言った。

「じゃ、行ってくる。」

まさかこんなにも早く外に出るとは思いもしなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

コンコンコン

「は、はーい。」

あれ?慌てる声がしたな。お取り込み中だったのか?それだったら子供の俺は帰った方がよさげなんだけど。

そう思った瞬間。何で慌ててたのか分かった。

ガチャ

「どちら様・・・あ、しょ、しょうた君・・・」

俺の姿を確認するやいなや目を逸らされた。

「そけっとさん、何で目を逸らしたんですか?」

理由は分かってる。

「い、いえ、別にやましいことなんて・・・」

「誰もそこまでは言ってないんですけど・・・料理、失敗したんですね。」

焦げた臭いがする。それもカリッカリに。

どうしてそんなことになるか聞いてみたい。

「し、師匠!ほんのちょっと、ホントにほんのちょっとだけ目を離したらあんなことに・・・」

そけっとさんは料理のことに関するときは俺を師匠と呼んでいる。別に呼ばせたわけではない。勝手に呼んできたんだ。

「取り敢えず何を作ろうとしたんです?」

「カエルの照り焼きです。」

前にやったやつか。

「それを焦がすって相当ですよ?」

そけっとさんはどうやら料理が苦手らしい。俺が教える前は毎朝うどん生活。それを聞いたときにはちょっと涙が出た。

「因みに目を離したのってどのくらいですか?」

「確か、焼いてる間に少し他の家事をやってたら止まらなくなって結果ほとんどの家事をやってたら焦がして・・・」

「下手したら火事が起こってたじゃねぇか!?」

家事をやって火事起こすって親父ギャグにもならないぞ・・・

「料理中は絶対に目を離すな!」

「でも師匠。師匠は焼いてる最中に他の作業をしてますよね?」

不思議そうに聞いてきた。

「あれは焼き時間に組み込まれてるから。」

「な、なるほど・・・あ、そういえばしょうた君。どうして私の所に?」

切り替えすごいな。

俺はさっきの出来事を話した。

「そういうことだったのね。いいわ。台所を好きに使ってちょうだい。その代わり・・・」

その代わり?

「晩御飯を作ってください!」

えー、やりますけど、えー。

「そのろくでなしを見ような目やめて。心に刺さるから・・・」

ゴミのように見られるのよりかはましだと思うが・・・

「じゃあ、冷蔵庫見させてもらいますね。」

カチャ

バタン

今の何?野菜しか見えなかったんだけど・・・

「そけっとさん、お肉は?」

「えっと、今日このカエルのお肉が初めて買ったお肉なの・・・」

なんだと・・・!

今まで教えてきたのは何だったんだ?

取り敢えず八宝菜擬きを作った。

片栗粉はこの世界にもあった。

「やっぱ師匠凄いですね。」

こんなの母さんでも出来る。

持ってきたロールキャベツ+その他をテーブルに並べた。

「「いただきます。」」

 

 

晩御飯を食べ、ケーキの準備に入った。

「一体どんなケーキを作るの?」

「最初は無難に生クリームケーキかな。」

そう言いながら計量をやっていく。

「しょうた君ってさ、よく完璧なお嫁さんになれるって言われない?」

椅子の背もたれに手を乗っけてその上に顎を乗せて言った。

「言われますね。ここ最近は女子力が高いだのとかも言われてますね。」

そもそも料理が出来るからって女子力高いのか?

「しょうた君、家に来ない?」

は?

「料理も出来るし面倒見がいい。完璧じゃない。」

「俺はだらだらしても怒らないお嫁さんがほしいので遠慮しときます。」

それにぶっころりーさんが怖い。

「そっかぁ、やっぱり私って魅力ないのかな?」

いや、そんなことないです。凄く綺麗ですし。

「皆からしたら高嶺の花なのかもしれませんね。」

「うーん、ねぇ、もし私が行き遅れたら貰ってくれない?」

何を悩んだと思ったら問題発言をしないでください。

「ありがたい申し出ですけど、行き遅れた場合の先約が居ますので・・・」

これ以上何かと増えたらめんどくさい。

「え!?もう先約が居るの!?嘘、年下の子に抜かされてる・・・」

俺の人生が変なだけです。

出来た生地を作り終わり、型に流し込んだ。

後はオーブンで焼くだけ。

「大丈夫ですよ。そけっとさんにはきっと大切にしてくれる人が現れますよ。」

ちょっと重症ですが・・・

「そうだといいなぁ。自分のことは占えないなんて何にかの嫌がらせみたいね。」

そけっとさんは自分のことを占っても何も出ないらしい。皮肉なもんだ。

オーブンに生地を入れて焼き始めた。

ふぅ、後は待つだけ。

「そういえば、どうしてケーキなんかを?」

「知り合いの人に頼まれたんです。娘の誕生日にって。」

「知り合いの人ってことは外の人?」

「そうですね。」

そう言って目を瞑った。ちょっと眠い。

「そけっとさん、30分後に起こしてください。ちょっと仮眠します。」

流石に今日は疲れた。旅行帰りが一番しんどいと思う。

「分かったわ。」

「ありがとうございます・・・」

仮眠しました。

 

 

「・・・・て、30分経ったわよ。」

「んっ、はぁ。おはようございます。」

軽く寝ただけでも先程の疲れは取れたようだ。

あと少しでスポンジが出来る。出来具合を見てどういう風に飾るか考える。飾るのは前日に屋敷にいって飾ろうと思う。

さらに時間が過ぎスポンジが焼き上がった。

「うわぁ、いい匂いね。」

思ったより分厚く出来て満足した。

後片付けをしっかりとした。

後はこれを冷まさないといけないので、

「『フリーズ』」

極力小さな声で唱えた。

そう、俺は初級魔法を覚えたのだ。初級魔法は火力がないものの使い勝手がよろしい。

便利な魔法だと思う。

ケーキは程よく冷えた。

さて、家に帰ろう。

「では、帰ろうかと思います。」

「もう帰るの?もう少しゆっくりしていけばいいのに。」

名残惜しそうにそけっとさんが言う。

「また料理教えに来ますから。あと、これあげます。」

渡したのはケーキと一緒に密かに作ったカップケーキだ。

「台所のお礼です。それにはチョコチップと愛情がたっぷりつまってるので味わって食べてくださいね?では。」

俺はそけっとさんの家を後にした。

 

 

家に帰ってき、風呂に浸かった。

「ふぅ、取り敢えず土台が完成したな。あと九個ほどあるけど・・・」

このペースじゃ間に合わない。でもまぁ、仮眠とかしてたしいけるか。

湯船に顔を半分沈めると、

「ご主人様!一緒に入りましょ。」

バシャッ

「ゴッフ!?ケホッケホッ。あ"ぁ、い、いきなり入ってくんな!?水飲んだだろ?」

むせながら言った。

「そ、そこなんですね・・・またてっきり『入ってくんな!』って言いながら殴るか罵声を浴びせるか照れるかすると思ったんですが・・・」

こいつ殴られたいのか?

「照れるご主人様は可愛いですからね・・・」

欲望為に自分を犠牲にするか普通?

「仕方ないです。一緒に入るだけにしますか。」

「いや、出ていけよ。」

何こいつ自然の流れで入ろうとしてんの?

「いいじゃないですか、私はあなたの神器です。何をしてもご主人様には責任がありませんよ?」

こいつ今スゴいこと言ったな。

「では、失礼して。」

「いや、入ってくんな!助けて!雪那に犯される!」

「な!?まだしてないです!」

「まだってことはお前!?」

雪那が目を逸らした。

「大丈夫ですよ。痛くしませんから・・・」

「おい、真面目にヤバい!助けてくれ!」

雪那が手をワキワキしながら近付いてきた。

「せ、雪那ちゃん!?な、何してるの!?」

助けがきた・・・?何でゆんゆんバスタオル体に巻いてんの?

「ぬ、抜け駆けは絶対にダメ!」

「ちっ、邪魔が入りましたね・・・」

今こいつ舌打ちしたな・・・

「おい、ゆんゆん。何で体にバスタオル巻いてんの?」

「え、い、一緒にお風呂に入ろうと・・・」

こいつも雪那と同じか・・・

「ふぅ、仕方ないですね。三人で入りましょうか。」

「仕方なくない。出ていけよ。」

「いいですか?ゆんゆんさん。ご主人様は押したらなんとか行けます。ここで負けてはいけませんよ?」

何言ってんだこいつ?

「わ、分かったわ。」

何が?

怖いんですけど・・・こいつらの目が怖いんですけど。

「「失礼します。」」

「おい、お前ら!」

ザー

三人で入る程は広くない。

「こ、これがご主人様の生肌・・・」

「ちょ、雪那ちゃんずるい!」

もう、嫌。雪那に関しては恍惚を越えてる。ゆんゆんは顔を赤くしてるだけだ。

ヤバい時のゆんゆんが凄くましに見える。

「も、もう、ペタペタ触るな!」

いつも癒しの風呂が一番疲れました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「何だろ。最近酷い目にしか会ってない。」

温泉に続き、昨日も酷かった。

はぁ、今日は学校の方休ませてもらおう。

別に居なくても変わらんし・・・

また布団に潜ろうとしたら違和感を感じた。

なんかいつもより狭い・・・

バサッ

そこには、

「・・・ゆ、ゆんゆん?」

幸せそうな顔で寝てるゆんゆんが居た。

「ん、あ、おはよう、お兄ちゃん。」

目を擦りながら言った。

「おい、自然な感じでおはよう言うな。」

軽くツッコむ。

「やっぱりお兄ちゃんの隣は落ち着く。」

そう言われるのは嫌じゃない・・・て、違う!

「何でお前がここに居んの?」

「え、えっと。寝付けれなかったから来てみた。」

あ、なるほどそう言うことか。

「納得いくわけないだろ?」

「えー、でもホントだし・・・」

別に疑ってる訳じゃない。ただ納得がいかないだけだ。

「分かったから、早く出ていってくれ。もう一眠りする。」

「え!?学校は?」

「休む。ぷっちん先生によろしく。」

「はーい。」

ゆんゆんが物足りなさそうに部屋を出ていった。

「はぁ、後30分寝よ。」

 

 

「・・・・おい、雪那。出ていけ。」

目を覚ましたら目の前に雪那の顔があった。

「いいじゃないですか、ゆんゆんさんと一緒に寝たんでしょ?」

「いや、あれはお前のように邪な気持ちがないだろ?」

「邪な気持ちがあった方が楽しいですけどね・・・」

こいつと居たら危険な感じがする。

「バイト行くわ。」

「私要りませんか?」

「昨日客が思ったより来たからな。今日は休め。」

あれは雪那に軽く手伝ってもらう予定だったがあんなに大変になるとは・・・

あんまり雪那にも迷惑かけたくないんだよな。

「ご主人様、私のことは気にしないでくださいね?」

こいつまた・・・

ま、いっか。

「ちゃんと休めよ。じゃ、行ってくる。」

「気を付けて。」

雪那は俺を見送ってくれた。俺の枕離せ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ、つ、疲れた・・・」

「お疲れ様。いや、今日も多かったね。」

客足のピークを越えてやっと休めていた。

「まさか雪那目当ての客が多かったなんて思いもしませんでしたよ。」

昨日の反響が今日まで続いていた。

この里の男の人たちの回路はどうなってるんだろうか。

紅魔族は綺麗な人が多いのに何で雪那なんか・・・

あれ?もしかして俺やきもち妬いてるのか?

「しょうた君。今日の接客に少しトゲがあったよ?特に雪那ちゃんの話が出たとき。」

「ホントですか?自覚ないな・・・」

そんなにトゲがあったのかな?

ガラガラガラ

「あ、いらっしゃいませ。」

こんな時間に珍しいな。

「あれ?おい居ないぞ?」

「おかしいな、兄ちゃんが言ってたんだけどな。凄く可愛い店員が入ったって聞いたんだけど・・・」

男子二人が入ってきた。パッと見ゆんゆん達と同じくらいか。

「あぁ、一回で良いから見てみたいよな。」

「兄ちゃん、今日店員ってこれだけ?」

こいつらも雪那狙いか。

「そうだな、今日はあいつに来るなって言ってるからな。」

「余計なことすんなよな。クラスで誰が先に声を掛けれるか勝負してるんだから。」

「だからこうして学校を抜けてきたのに・・・」

しょうもない勝負だな・・・

「あの、お客様。人のモノで勝手に勝負しないで頂けます?迷惑です。」

「ひ、人のモノってもしかしてあんたその人の彼氏・・・?」

「んな訳あるか。」

「じゃあ、いいじゃねぇか。彼氏でもない人にそんなこと言われたくない。」

「はぁ、一緒に働いてるからって自分のモノ扱いって・・・こんな人と一緒に働きたくな・・・」

ガラガラガラ

「ご主人様、やっぱり店とご主人様のことが心配で来ちゃいました。」

「雪那、今日は休めって言っただろ・・・」

「でも、昨日の今日で客足が少なくなるとは考えれなかったんで・・・ご主人様が倒れるかもと心配で・・・」

「お前、そんな俺が柔に見えるか?」

「でも、ご主人様。こっちに来てから二ヶ月ちょっと、二回も気絶してますよ。」

そうでした・・・

苦虫を潰したような顔をしていると、

「ご、ご主人様?」

「まさかひ、人のモノってそういうこと・・・?」

その言葉に雪那が反応した。

「私とご主人様は主従の関係にあります。だから私はご主人様のモノで例えどんなことされても全て受け入れれます。いつでもウェルカムです。むしろこっちから襲いたいくらいです。」

「黙れ変態。そんな度胸もないだろ。それにその話は子供の教育に悪いだろ。」

そんなことを言い合ってると、

「ご、ご主人様って・・・」

「お、襲うって・・・」

「「見せつけんな!リ、リア充爆発しろ!」」

おい、どこでそんな言葉覚えた!?

男子二人は走っていった。

「リ、リア充ですって!」

喜ぶな。

「雪那、今日は見ての通り客がもういない。来てくれて悪いけど帰ってくれ。俺はまだ皿洗い残ってるし、このあとの用事もある。」

「わ、分かりました。では失礼します。」

雪那が出ていき俺は洗い物に取り掛かった。

 

 

バイトを上がり買い物をしていた。

卵アレルギー用も作らないといけないよな・・・

といってもこの世界にはホットケーキミックスがない。

「自作か・・・喫茶店で少し教えて貰わないと・・・」

バナナを眺めながら呟いた。

このバナナ使いたくないな・・・

果物の定義を覆す存在だ・・・

そう思いバナナを篭に入れた。

 

 

家に戻り、買った物を冷蔵庫に入れるなりして自室に戻ろうとした。

自室の前に来て違和感を感じた。

扉が少し開いている。

おかしいな、絶対最後まで閉めたのに。

ドサッ

中で物音がした。

そっとドアを開けて見たらそこには、ベットに座ってる雪那の姿があった。

何であいつ俺の部屋に入ってんの?

てか何やってんの?キスの練習ですか?

「はぁ、はぁ、ご、ご主人様。大好きです・・・」

成る程、架空の俺相手にキスしてたのか・・・こいつの妄想力スゴいな・・・

「あ、ちょっと、ま、待ってください。きゃっ!?」

多分、今の俺の目は他人から見たら光を失ってるだろう。それくらい呆れている。

こいつはもう手の施しようがない。だって架空の俺にキスされて押し倒されてるシーンに憧れてるんだぞ?引くわ。

そう思いながら我が神器を眺めてた。

「も、もう、ご主人様はいつも強引に・・・」

雪那がちょうど扉の方を向いた。

勿論目が合う。

「・・・ご、ご主人様?い、いつからそこに?」

恐る恐るそんなことを聞いてきた。

「お前が架空の俺にキスしてるところからだ。」

それをいったら目を逸らした。

「目ぇ逸らすな。こっちを見ろ。」

雪那は頑なに目を合わせない。

「おい。」

「はい。」

「何でここでそれをした?」

「最初は自分の部屋でやろうとしたんですけど、物足りなくて・・・」

「おう。」

「それでご主人様の匂いが染み付いてる布団の上でやってみようと思いまして・・・」

「おう。」

「部屋に入って布団の上に座ってみたら、さらに欲情しまして・・・」

「おう。」

「この上でしたらアレが布団に染み付いたらきっとご主人様はそれに気付かずその上で寝ると思ったら止まらなくなりましてここでしようと決心しました!」

バシッ

「い、痛い!?今本気でしばきましたね!?」

「うるさい。妄想爆裂娘。」

「こんなに強くしなくてもいいじゃないですか・・・」

涙目で訴えてきた。

「でも、ご主人様。普通、一般男性は自室で可愛い女の子があんなことしてたら襲いますよ?何で襲わなかったんですか?」

襲って欲しかっ・・・こいつそういうやつでした。

「俺が一般男性じゃないからじゃない?」

知らんけど。

「え、ご主人様ってこっちだったんですか?あ、それはないか。私たちにしっかりと欲情してますし。」

「し、してねぇし!?自惚れんな!」

「あ、照れてますね?そういう顔が見たかったんですよ。もう可愛いなぁご主人様は。」

自分の神器に弄ばれて悔しい。

「なぁ、俺ってそんなに好きになれるほどの人間か?」

ふと思った。俺は自分でも自覚してるぐらい性格がネジ曲がってるし、肝心な時にヘタレだ。それに今振り返ってみるとひょいさぶろーさんが言うようにたらしなのかも知れない。

そんな俺のどこがいいんだ・・・?

「そんなのいっぱい・・・あ、いっぱいありますよ。」

前半軽い気持ちで言ってたのか俺の真面目な顔を見てから、いや、考えを読まれたのかもしれない。真面目な声で言ってくれた。

「私の場合ですけど、ご主人様を好きになったのは九割がご主人様自身です。」

「九割?後の一割は?」

「似てたんです。前のご主人様と。」

前の、持ち主と?

「いや、お前を作ってくれって頼んだのは俺だぞ?」

そう、俺が頼まなかったらこいつは存在しなかったはずだ。

「そうです。でも、私にも前世というのがあります。私は昔紅魔族のある魔導師に杖として作られました。その人が前のご主人様です。」

そうか、こいつは昔から紅魔族を知っていたのか。だから出てくるタイミングがどのこうのって言ってたのか。

「今の私の能力はほとんど前と同じなんです。その人に合わせた能力を取得する。そう言った能力なんです。」

こいつを作ったやつ天才かよ・・・

「その結果。前のご主人様は英雄となりました。そりゃそうですよね。神器級の魔道具を作れる人なんですから。」

しかし、どうしてそんなこいつがここに居るんだ?元の杖に宿ったまんまじゃなかったのか?

「やがてご主人様は暗殺されました。理由はある貴族が私を欲しがってたからです。結局私は前のご主人様に思いを伝えれず終い。凄く後悔しました。」

こいつが気持ちを伝えれなかった?何かの冗談か?

「その後は、一時期はその貴族の人の元に献上させられましたが、ある盗賊、いや、ある女神様が私を救い出して私の魂を杖から取りだし杖を封印しました。その後は次役に立つまで天界に居ました。」

ある女神ってまさか!?

「あ、違いますよ?あの人ではありません。あの人はたまたまあなたが天界に来たときに私と話してて、あなたがあんな要望を言うから、もう一度あの世界に行かないかと提案され、あなたの顔を見た私は行くことを決心して、その旨を伝えたら、私を神器『雪那』として作り変えてくれた人なだけです。」

そんなことが・・・

「そんなに俺は前の持ち主と似てるのか?」

「はい、特に目が凄く。」

世界には自分と同じ顔が三人いるって言うから似てる奴ぐらいゴロゴロ居るか・・・

「それが俺を好きになった一割か。」

「そうですね。その一割がなかったらあなたには付いていってなかったです。」

その一割がなかったら残りの九割もなかったってことか。

「そうか、でもお前は何で前の持ち主に気持ちを伝えれなかったんだ?俺にはあんなに言ってくるのに。」

もしかしたら本気度の違いかもな。俺のことが好きでも前の人程ではないって言うことかもな。いつも好き好き言われて毛嫌いしてるけど、こう考えてしまったら何か悔しいな。

「あなたが私を変えてくれたんです。ご主人様。」

「え?」

俺がこいつを変えた?

「私は最初あの一割で動いていました。つまり前のご主人様とご主人様を重ねて見てました。でも、ご主人様と過ごしていて前のご主人様とは確実に違うところが幾つかありました。」

そりゃ、一人一人個性がありますからね。

「一つは優しさです。前のご主人様も優しいのは優しかったです。でも、何かが違いました。ご主人様はなんか優しさが滲み出てる感じがしました。」

俺から煮汁とったら優しさが出るのかね・・・?

「二つ目は社交性です。前のご主人様は無口というか気難しい人でした。とても内気で人とはあまりしゃべってなかったです。友人も少なく、周りからは近づき難い雰囲気を出していました。」

なんか昔の俺みたい・・・

「そして三つ目。これが私を変えてくれた大きな要因です。三つ目は私を道具として見なかったことです。ご主人様は幾度となく私にも話し掛けてくれました。まだ共鳴も出来ないのに。前のご主人様とは話しはしましたが生きているモノとしては決して見てくれませんでした。それが私の気持ちを伝えれなかった大きな理由です。物として見てる奴に好意を持たれても気持ち悪いですからね。気持ちを抑えることしか出来ませんでした。でも、ご主人様は私をまるで生きているかの様に扱い、大切にしてくれました。それで私はご主人様に気持ちを抑えることもなく伝えることが出来てるんです。」

そうか、こいつにはそんな過去が・・・

ちょっと待てよ。つまりあれか、結局この変態を作ったのは俺なのか・・・

「ごめんな、辛いこと思い出させてしまって。」

「そう思うなら抱き締めてくださいよ。ほら。」

雪那が両手を広げて言った。

こいつほんとぶれないよな。

俺は雪那を抱き締めて布団に倒れこんだ。

「え!?ご、ご主人様?」

雪那が驚いた声をあげた。

「ん?どうした?」

「え、いや、いつものご主人様なら無視すると思って・・・」

「俺はそこまでネジ曲がってない。」

「も、もう、ご主人様はセコいです。」

俺と雪那はしばらくそのままでいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

クレア誕生日パーティー一日前

なんとパーティーの招待券が家族とあるえ、めぐみんの分まで来てた。

あいつらは分かるけど何でうちの親が呼ばれてんの?

「じゃ、しょうた。気を付けてね。」

母さんが見送ってくれてる。

俺はケーキの土台を十分作り、後はクレアの屋敷で仕上げることにしていた。

今出来ているものと言えばチーズケーキ類のものだろう。

こいつらは母さんに無理を言って今日の昼間に作り終わらせた。

「分かった。行ってくる。『テレポート』」

 

 

「ふぅ、一週間前はもうここには当分来ないと思っていたが、まさかこんなに早く来ることになるとは・・・」

クレアの屋敷に着いた俺はそんなことを口に漏らした。

「すいません。」

俺は屋敷の門番の人に話し掛けた。

「なんだ貴様は?ここはお前のような冒険者が来るとこではないぞ。」

警戒しているのか言い方が強い。

『何ですかこの人?ご主人様に対してこの態度。切り崩してやる。』

雪那さん。恐ろしいこと言わないでください。

「えっと、これ見せたら入れて貰えますかね?」

首元から例のネックレスを出した。

「そ、それをなぜ貴様が!?」

それを見た門番が声をあげてるともう一人の門番が近付いてきた。

「あ、もしかしてあなた様はしょうた殿ですか?」

どうやらこの人は俺のことを多少知っているようだ。

「しょ、しょうた殿ってあの?」

あのって何?あのの部分を詳しく聞きたいんですが・・・

「ご主人が言ってたから間違いない。特徴は黒目でシンフォニア家の家紋を持つ男だそうだ。」

「確かに他に一致する人物は居ないだろうし・・・ごほん、失礼しました。あなた様がしょうた殿ですね。どうぞ中へ。」

門を開き中に入れてくれた。

屋敷の中に入ったら、

「あ、やっと来たか。待ってたぞ。」

クレアが出迎えてくれた。

「ずっと玄関に居たのか?」

「な、たまたまだ。」

目を泳がせながらクレアは言った。

「でもさっき、やっと来たって!?」

叩かれた。

「つ~、いきなり叩くなよ・・・」

「お、お前が余計なことを言うからだ。それより早く荷物を置いてこい。前、お前が使っていた部屋だ。まだケーキの準備があるのだろ?」

「あぁ、ありがとう。」

俺は部屋に荷物を置いて厨房に向かった。

そこでは屋敷の料理人たちが忙しなく明日のための準備をしていた。

「あなたがしょうた殿ですか?」

料理の一人が近付いてきた尋ねた。

「はい、そうです。この度は奥様からケーキのことを頼まれまして、こちらを使わせてもらっても構わないでしょうか?」

「伺っております。どうぞこちらへ。」

案内されどこに何があるのかを丁寧に教えてくれた。

「あなたの料理の腕前は聞いております。明日のケーキ、楽しみしてます。」

そう言って料理に戻っていった。

「さて、やるか。」

チーズケーキの種類はなのであと作らなければならないのは7つ卵アレルギー用三つノーマル四つ

卵アレルギーとノーマル共通の味が生クリーム、チョコ生クリーム、チョコケーキの三つ。

ノーマルの余り一つは変化球のイチゴタルト。これはもう俺の好みです。

ということで今日することは、生クリーム作りとチョコの湯煎、それにタルト作り。

たったそれだけなので特に問題なくケーキが出来た。

クリームが余ったので今日のおやつとしてシュークリームを作った。あとこの間雪那と約束したプリンも。

作ったシュークリームは屋敷の人たちに配った。

あれ?これ嫁いできた嫁がやることじゃね?

 

 

部屋に戻り雪那を出した。

「どうしました?性処理ですか?」

ニヤニヤしながらそんなことを言って来る。

「そんな馬鹿なことでお前を呼び出さん。そんなことじゃなくてこれ。」

俺は作ったプリンを雪那に渡した。

「へ?覚えてくれたんですか?てっきり忘れられたものかと・・・」

そこまで脳は腐ってない。

「忘れるわけないだろ。約束したことは絶対守る。」

「ご主人様はやっぱりセコいです。」

「なんとでもいえ。」

ベットに転がりながら言った。

「ではいただきますね。」

目に涙を浮かべプリンを頬張った。

「う、お、おいじいです。凄く凄くおいじいです。」

泣きながらそんなことを言う。

「おいおい、泣くほどか?」

呆れた顔をする。

「ご主人様には分からないです。私はこんなご主人様に仕えれてほんとに幸せです。」

「そうかい。」

雪那の幸せそうな顔を見て微笑んだ。

 

 

翌日、朝から凄い人が居た。

「何これ・・・」

「ご、ご主人様。人が蟻みたいです。」

これ百人で収まらなくね?ケーキまだ要るくね?

そんなことを思っていたら、

「ごめんなさいね、ショウタさん。思った以上に人数が多くて・・・」

クレアのお母さんが謝ってきた。

多分、思った以上に招待する人が居たんだろう。

「いや、大丈夫です。あと二、三個作れば問題ないですから。」

雪那に手伝わせよ・・・

「本当にごめんなさいね。」

そう言って立ち去っていった。

はぁ、めんどくさいな・・・

「ご主人様、ファイトです!」

「お前も手伝うんだぞ?」

「え!?」

「はいはい、驚いてないでさっさと来る。」

雪那を引きずり厨房へ向かった。

 

 

ケーキが無事完成しパーティーが始まろうとしていた。

「あ、お兄ちゃん!」

呼ばれた方を見るとそこには紅魔組が居た。

「これが貴族のパーティーか・・・」

父さんが会場を見渡して言った。

「しょうたの作ったケーキは何処ですか?」

めぐみんの頭の中には食べ物のことしかないのか?

「まだ出てこない。ある程度時間がたった後に出てくるからそれまで待っとけ。」

「まさかしょうた君の腕が貴族のパーティーにお呼ばれすることになるなんてね・・・驚いたよ。」

それは俺も同じ。まさか趣味程度の物がここまで来ることになるとは思っても見なかった。

その時照明が落ち、壇上にスポットライトの光だけが残った。

そこにクレアのお父さんが出てき、

「皆様、この度は我が娘の誕生パーティーにお集まりいただき、誠にありがとうございました。今日はここが我が家だと思ってごゆっくりお過ごしください。」

拍手にが起こり照明が点いた。

さて、どうしよ。生憎今はお腹が減ってないし、クレアに会いに行こうにも行列が出来てるし・・・

「うーん。」

「ショウタ君、ちょっといいかね?」

「え、あ、はい。大丈夫です。」

俺はクレアのお父さんに連れられ、個室に入った。

「そこに座ってくれ。」

「えっと、大丈夫なんですか?お父さんが居なくて。」

「問題ないだろう。で、君を呼んだのは娘のことについて話したいからだ。」

え、何?早く結婚してくれとか?そんなの今は無理だ。

「その、娘に言い寄る輩を追い払ってほしいんだ。」

えー、この間この性格のせいで云々言ってたのはどこ行った・・・?

「き、君の気持ちは分かるよ。この間は娘に相手が見つからないなんて言ってたからね。しかし、全く輩が近付いて来ないわけではないんだ。娘は気が強くて上手くあしらうことが出来ないんだ。」

「そういうことでしたか。分かりました。」

「ありがとう。君には世話になりっぱなしだな。」

「いえいえ、俺はいつもこれに世話になってるんで・・・」

ネックレスを指しながら行った。

「そうか、役に立ってるのなら何よりだ。」

「では、俺はこれで。」

立ち上がり、ドアの方へ歩いた。

「あぁ、娘を頼むよ。」

「はい。」

俺はその部屋を後にした。

 

 

「クーレア。」

「ん?なんだお前か・・・」

クレアはホッとしたように言った。というかまたドレス着てるんですね。似合ってるからいいけど。

「大丈夫か?顔色悪いぞ?」

大人数に話し掛けられたせいか疲れてるよう見えた。

「シンフォニア卿、どうか私にもう一度チャンスを。」

貴族らしき人がクレアに言い寄って来た。

「また貴様か、何度もいw・・・」

「はいはい、残念。クレアさんは俺と交際しているのでお引き取りを。」

クレアの言葉を遮って言った。

「お、お前、何を!?」

「あなたは!?前の魔王軍との戦いで大いにご活躍された。ショウタ殿!?」

そこまで有名になってるの?

クレアを口説きに来た貴族がその言葉を口にした瞬間、周りがざわつき始めた。

「あれが噂の・・・」

「私、紅魔族って聞いてましたけど・・・」

各々が口にしていた。

「是非とも一度お会いしたかったんですよ。いや、そうでしたか・・・シンフォニア卿をお助けになったあなたなら納得できます。どうかお幸せに。」

そう言ってさっきの貴族は去っていった。

いいやつなんだろうな・・・

「お前と言うやつは!」

おっと、クレアさんがご立腹のようで。

「でもお前、口角上がってんぞ?」

「っ!?」

顔が赤っかったのがさらに赤くなった。

「お前の父ちゃんに頼まれたんだよ。クレアは上手くあしらうこと出来ないからって。」

「そ、それでもさっきのはどうかと・・・」

声がだんだんと小さくなっていく。

「何今さら恥ずかしがってんだよ。アルカンレティアではあんなことをしでかしたのに。」

あれと比べればこんなの何倍もましだ。

「あ、あれはその・・・場の雰囲気のせいで・・・」

は?場の雰囲気でこいつはとんでもないことをするのか?

「あ、やっぱりショウタ様がいらっしゃってたのですね。」

「あ、お久しぶりです。アイリス様。」

突如話し掛けてきたのはこの国の第一王女アイリス様だった。

「その節はありがとうございました。温泉旅行には行かれましたか?」

おっと、さっきの話し聞いてたんじゃないかと思うくらいのタイミングですね。

「行きましたよ。しかも行ったらたまたまクレアg!?んーんー!?んーんーんー!」

「ク、クレア!?どうしたの?」

クレアが俺の口を塞いできた。

「い、いえ別に。こいつが無礼なことを言いそうだったもので。」

「そ、そう?それならいいんだけど。では、ショウタ様。また。」

そう言ってアイリス様は立ち去った。

「あぁ、アイリス様・・・」

こいつはぶれないな・・・

つーか、いい加減離せよ!

「んーんーんー!」

「あ、悪い。」

「ぷは、はぁはぁ。おい、締めすぎ。」

「わ、悪かった。でもお前が余計なことを言いそうになるから・・・」

「余計なこと?たまたま会っただけの話だろ?別にいいと思うけどな・・・」

「お、お前はどうせ会った日の夜のことを言うつもりだったんだろう?」

バレてましたか・・・

「おい、視線を泳がすな。こっちを見ろ。」

嫌です。見たら目で殺されそう。

「でも、温泉のことは俺は悪くないし。言われたくないことをする方が敗けだと思う。」

これで目を見れたら完璧なんだけどな・・・見れない。

「うっ!?」

引き分けだな。

「おっと、誕生日プレゼントとをやらないと。」

あぶない、すっかり忘れるとこだった。

「お前のことだからどうせろくでもない物なんだろう?」

こいつ・・・!

「ひどいな、ろくでもない物なんて。そもそも物じゃないし。」

「え?」

そう俺が用意したのは物じゃない。

「あー、あー。こほんこほん。」

喉の調子を整えた。ここまで来たら何をするか分かったらしい。

凄く顔がヤバイことになってる。

「クレアお姉ちゃん。お誕生日おめでとう!」

全力営業スマイルで言った。

「グフッ!?ありがとうございます!」

いつまで出来るか分からないからこれをプレゼントとにした。

毎日やってたらいつでも出来るだろうけど努力はしたくない。

「いつまではぁはぁ言ってんだよ。発情期か?あ、現在進行形で発情してたんだな。悪い悪い。」

「お、お前・・・」

自分でも自覚してるから強く言えないらしい。

『皆様、御待たせしました。ケーキの方が準備出来ましたのでどうぞお召し上がり下さい。』

アナウンスが流れてドアが開き、ケーキが押されて入ってきた。

なんかこうして自分が作ったものが並べられると恥ずかしいな。

「あ、あれ全部お前が作ったのか?」

「大変だった。思ったより人数が多くて急遽三つ作った。その分雑だと思うが。」

「ど、何処が雑なんだ。まるで店で買ってきたような整ったケーキだ・・・」

店も人が作ってるからね?

「因みにどれがおすすめだ?」

「え、どれって言われても全部食えば?」

「わ、私はこれでも一応乙女なんだぞ?そんなに食べると後々不安が・・・」

「気にせず食べてるやつがあそこに一人。」

雪那を指差した。凄くがっついてる。もうちょっと味わって食べてほしい。

「あ、あれは刀だからカロリーエンプティって言ってたから・・・」

「じゃあ、あれは?」

めぐみんを指した。

あいつもあいつで貪ってやがる。

「・・・」

どうやら呆れてるらしい。

「今日ぐらいはいいだろ。どうせ一個が小さいんだ。一口サイズだぞ?」

そう、人数が多いのでバイキングによく出て来る正方形の形をしている。

「じゃ、じゃあ、全部食べようかな・・・」

何かに負けたらしい。

「クレア、欲望に忠実にあれ。」

そう言ったら何かが吹っ切れたような顔をして、

「そ、そうだな。食べてくる。」

小走りでケーキを取りに行った。

限度は決めろよ・・・

「ふぉふふぃんふぁふぁふぁふぁふぇ・・・」

「何回言わせんだよ。飲み込んでからしゃべれ。」

こいつには学習能力がないのか?

ゴクッ

「ご主人様は食べないんですか?」

「うーん、雪那が手伝ったものだけ食べるわ。せっかく手伝ってくれたし。」

「ご主人様、そういうとこですよ?」

「え、何が?」

「もういいです。それにそういうとこも好きですから。」

「ごめん、なんの話をしてるの?」

「何でしょうね?」

こいつたまに意味わからんこと言うよな。

「ふーん、ま、いっか。ケーキ取りに行こうぜ。」

「はーい。」

ケーキを取りに行った。

「ねぇ、奥様。このケーキはどの店で作って貰ったのかしら?ご紹介してくれません?」

一人の貴婦人がクレアのお母さんに聞いてた。

「店じゃないんですよ。知り合いにお菓子作りが趣味の人が居まして、その人に頼みましたの。」

それを聞いたのかどこからか男の人が出てきて、

「その人のことを詳しくお聞きしてもよろしいですか?」

「いえ、その人はほんとに趣味程度って言ってたので詳しくは・・・」

感謝しますお母さん。

「こんなにいい腕を持ってるのに勿体ないことを。もし店を立ち上げていたなら援助を惜しまないのに・・・」

貴族の人の考えがいまいち分からない。俺から言わせてみたらこのケーキより断然店の方がうまいんだけど・・・

「大繁盛間違いなしですのに・・・ちょっとでいいですので教えていただけません?どんな人かでも・・・」

お金怖い・・・

「それぐらいなら大丈夫かしら?」

一瞬こっちを見た気がする。

多少は問題ないと思う。

「どんな人ね・・・娘のお婿さんの第一候補かしら?」

その場にいた人が一斉に俺を見た。

普通考えれば分かるよな。クレアと仲がいい男って俺しか居ないもんな。

何でそうほぼほぼ答えみたいなことを言うかな・・・

「何で皆さん、俺の方を見るんですか?」

とりあえずとぼけてみた。

「娘さんと仲がいいと聞いたので・・・」

ごもっともです。

「あ、あなたがこのケーキを作ったんですか?」

いいえとは言えない。嘘は極力吐きたくないし、でも、そうですとは言いたくない。どうしたものか。

そう考えてたら、

「しょうた!」

この声はめぐみん!ありがとう、このピンチを助けt・・・

「このタルトスッゴく美味しいです。また作ってください。」

うわぁ、スッゴくいい笑顔。そのタルト俺も好きだよ。でもタイミングを考えてほしかったな・・・

「やはりあなたが!?料理も腕が立つのですね。」

「そ、そんなことは決して・・・」

趣味程度の物を褒めないでほしい。

「ご謙遜なさらずに堂々としてください。こんなに美味しいケーキ初めて食べました。」

店の方が・・・

「それに卵アレルギーの方も食べれるケーキを作るなんて何て気が利く人なんだ。」

当たり前のことだと思いますが・・・

「是非店を開いてください。」

「嫌です。」

「それはどうしてですか?」

次々に質問が飛んでくる。ここは言葉のバッティングセンターですか?

「本業を冒険者で副業として定食屋でバイトと学校の生活指導をしてるんでそんな余裕ないです。」

生活指導の方は最近やってないけど。

「そ、そうですか。それは残念です。」

でも、冒険者を辞めたときには趣味でやるのも有りかな・・・

質問攻めが終わりそう思った。

 

 

パーティーは長く続き、気が付けば日が暮れて夜になっていた。

どうやらこのパーティーは晩御飯も用意してくれるらしい。

夜風に当たるために外に出てた。

中とは違い外はとても静かだった。

中庭に行き前ここでお世話になったときによく昼寝をしていた所に行った。

ここは日中でも木の下だから木陰になっていていつも涼しい。でも今日は夜のせいか少し肌寒い。

ドサッ

体を地面に投げて転がり夜空を見上げた。

この世界も悪くないかな・・・

そう思ったら、

「やっぱりここに居たか。」

「なんだクレア?俺の安らぎタイムを邪魔しに来たのか?」

クレアは先程のドレスから一転いつもの白スーツに着替えていた。

「いや、お前と一緒にその安らぎタイムとやらを堪能しようと思ってな。」

クレアが俺の横に転がった。

「そういえば今日で何歳になったんだ?」

失礼な質問かもしれないが好奇心でつい聞いてしまった。

「そうだな、17になった。」

二つも上か・・・

「年が離れちゃったな・・・」

「お前は何歳なんだ?」

「俺はピチピチの15歳だ。」

ピチピチというよりまだ未熟かもしれんけどな・・・

「二つも違うのか。しかし、たまにお前が年上のように感じることがある。」

それはまた不思議ですな・・・

「ショウタ。行き遅れなきゃダメなのか?」

クレアは抱き付いて言った。

「優柔不断な俺がしっかり道を決まるまで待っててほしい。」

抱きついてるクレアの手を握り言った。

「今夜、また一緒に寝ていいか?」

「雪那を何とかしないとな・・・」

 

 

パーティー会場に戻ったら料理がすでに出来ていてある程度の人は帰ったらしい。

「ご主人しゃま、おかえりなしゃい。」

「お前、凄く眠そうだな。」

ろれつ回ってないぞ。

「ほら、雪那ちゃん。しっかりして。」

ゆんゆんが雪那に肩を貸している。

「しょうた。私達はそろそろ帰ろうと思うがお前はどうする?」

父さんが聞いてきた。

「ケーキも片付けもあるし明日帰るよ。ついでに雪那も連れて帰って。ここに残っても迷惑かけるかもしれないし。」

「かけましぇんよ!」

「眠いだろ?早く帰って寝ろ。」

「わ、分かりました。」

雪那は仕方なさそうに言った。

「じゃあ、明日。」

「あぁ、「『テレポート』」」

俺と父さんが唱えた。

「さて、遅めの晩御飯を食べようか。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

コンコンコン

「どうぞー」

ベットに転がりながら言った。

「ショウタ君、今日はありがとう。」

入ってきたのはクレアのお父さんだった。

「いえいえ、大したことはしてませんよ。」

俺は今日ご飯を食べてケーキを食べてコーヒーを飲んだだけしかしていない。感謝されるようなことは一切してない。

「いやいや、輩を追い払ってくれたそうじゃないか。」

「でもあの人、いい人そうでしたけどね・・・」

「しかし、娘が気に入った人一緒にしてあげたい。」

何て娘思いなんだ・・・

「そんな人が見つかるといいですね。」

「寝言は寝て言いなさい。」

嫌です。

「まぁいい、君にも君なりの考えがあるのだろう。一番苦労しているのは君なんだから好きなようにしなさい。それではゆっくりと休むといい。」

「はい、おやすみなさい。」

部屋からお父さんが出ていった。

好きにしろって言われてもな・・・

誰かが幸せになったらその分誰かが不幸になるかもしれないのに好きにできない・・・

皆が幸せになる方法はないのかな・・・

コンコンコン

「ショウタ、起きてるか?」

クレアの声だ。

「夜這いにしては早くないか?」

「ば、バカ!よ、夜這いなんか・・・してもいいのか?」

何言ってんのこいつ?

「い、いや、冗談だから。本気にすんな!というかさっさとは入れよ。」

「軽く重い冗談を言うな。」

そういいながら部屋に入ってきた。

「軽いのか重いのかどっちか分からん。紛らわしい言い方するなよ・・・」

頭が混乱してくる。

「それで、私はどうすればいい?」

「いや、お前から誘ってきたんだろ。何しにここに来たんだよ。」

「では、失礼して。」

布団の中に入ってきた。

「二週間前ぶりだな。あのときはまさかほんとにクレアが部屋に来るとは思わなかった。」

帰り道で無礼者!って叫んでたからてっきり来ないこと思っていたのに・・・

「そ、そうなのか?その割には平然としてたが・・・」

「驚きすぎて、声も上がらず表情にも出なかった。」

ああいうことってあるんだなと思いながら目を閉じた。

「三週間前までこんなことになってるなんて思いもしなかっただろう。」

「そうだな、俺も二ヶ月前は女子と布団に入るなんてこと考えたこともなかった。」

日本で女性と布団に入ったことなんて・・・・なかった。いいか、あれはカウントされない。いいな?

また『だーくさいど』に陥らないように言い聞かせた。

「大丈夫か?」

クレアがいつの間にか俺の手を握ってくれてた。

「え、あ、うん。」

「いきなり小刻みに震えだしてどうしたんだ?」

「昔のトラウマだよ。たまにふと浮かんでくる。怖くて仕方がない。」

「お前にもそういう過去があるのだな・・・」

クレアは、ホッとしたかのように言った。

「俺だって人だ。トラウマの一つや二つある。その一つとしてアルカンレティアの・・・」

「ああ!もう分かったから、その話はやめてくれ・・・」

クレアは顔を隠すように布団に潜った。

「はいはい、じゃ、おやすみ。」

「お、おやすみ・・・」

こうしてまた慌ただしい一日が幕を閉じた。




こんにちわ、ねこたつむりです。
今回は雪那の過去だったりクレアの誕生日の二つありました。
まぁ、特に言うこともありませんが・・・
ちなみにあの盗賊・・・女神様はもちのろんであの人です。
後はタブレットの調子が悪く更新が遅れたことですかね。
何回も工場出荷前に戻しても立ち上がったりなかったり。
もう嫌です。
では、今回も読んでくださってありがとうございます。
次回も読んでくださるとありがたいです。
お気に入り登録150突破したぜヒャッハー!
あ、すいません。


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過去へ向けて

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
雪那がどんどん重症になっていってる・・・


「ないな・・・」

俺は学校の図書室の古代文庫の棚に居た。

なぜ俺がこんなとこに居るのかというと、雪那を作った人物を調べるためだ。

理由は個人的に興味を持ったのと何故かその人に親近感を持っていたからとか色々ある。

「はぁ、ここを探しても無いとなるともう少し新しいのか?」

悩んでいたら、

「しょうた君、何かお探しかい?」

「あ、あるえか。いや、ちょっと昔の人について調べてて。」

「ふーん、どんな人か分かる?」

そういえばこいつは小説家を目指してたんだっけか。本のことはこいつに聞くのが一番か・・・

「なんか、紅魔族の英雄らしく、凄腕の魔導師らしく神器級の魔道具を作れたらしい。」

「二、三十年前にならそんな人が居た気がするけど・・・」

「に、二、三十年前!?そんな最近なのか?」

驚きだてっきり百年ぐらい前だと思っていた。

「君が探してる人とは限らないけどね。」

「いや、助かったよ。ここにあるやつ全部に載ってなかったから焦ってたんだ。」

「え!?ここのやつ全部に読んだの!?少なくとも二百はあるよ?いつから読んでいたのさ?」

「えっと、クレアの誕生日が終わってすぐだから・・・二日前からか・・・」

「そ、そんな短期間でこれ全部?」

本棚を見上げて言った。

「とりあえずありがとう。お礼に喫茶店でもどう?」

「え、いいのかい?でも、このあと定食屋のバイトがあるんじゃ・・・」

「そっちは雪那に任せてる。」

当分は行かせないつもりだったが、気にしないでと言われたのでその言葉に甘えることにした。

「そっか・・・」

「さて、本を探すか。」

 

 

「ふぅ、あるえが居たお陰ですんなり見つかったな。」

本を探し終わって喫茶店に来てた。

あるえはこの本を前に読んだことがあるらしくすぐに見つかった。

「いや、大したことないよ。でも、どうしてその人のことを調べる気に?」

「なんとなく気になっただけだ。」

「ふーん、変わってるね。」

ジュースをすすりながら言った。

「軽く読むからなんか注文しといて。」

「はーい。」

何故かつまらなそうに返事をした。

本によるとこの英雄の名前はひでりう。紅魔族の名前ってまじなんなん?

この人は若くして暗殺されたらしい。十中八九この人で間違いないだろう。

どうやらとてつもなく優秀だったらしい。全てのステータスが大幅に平均値を超えていたようだ。羨ましいなおい。

その後は雪那が言った通りのことが書かれてた。が、ある文に目が行った。その文とは、

『この英雄の友の一人に現族長の・・・・』

ガタッ

「え!?どうしたの、しょうた君?」

「なぁ、これが書かれたのっていつだ?」

「確か、三年ほど前だったかな。」

「その時の族長ってまさか・・・」

「今と変わらず、しょうた君のお父さんがやっているよ。」

これがいわゆる灯台もと暗しですか・・・

「帰ったら根掘り葉掘り聞いてやろう。」

「あぁ、確かその人の友人一人に君のお父さんが居たね。」

「お待ちどうさま、ケーキセット二つ。後、このメニューの名前を募集中。では、ごゆっくり。」

そのままの名前でいいじゃないか・・・

「それよりしょうた君、もうそんなとこまで読んだの?」

「いや、あらかた知ってる内容だったから、軽く飛ばした。」

雪那の話を細かく書いたようなものだった。

気になるのはその人が亡くなってる所まで来たのにまだ数ページ残ってる。死んでから何があったんだ?読み進めると、

『暗殺された後、犯人は特定出来ず、愛用の杖も無くなっていた。その後、紅魔の里に遺体が運ばれた。しかし、不思議なことに数日後には遺体は跡形もなく消えていた。』

遺体が消えたのか?とんだ変態趣味のお持ちのようで。

『不思議なことはそれだけではない。十数年後にその遺体が現れた。消えた前と変わりない状態だったらしい。』

腐敗せずに十数年後に現れたのか?どう考えてもおかしい。例えば遺体を凍らせて保存したとしてもその後に現れた意味がわからん。どうなってんだ?

「しょうた君も遺体のことに引っ掛かってるんだね。でも、それは解明出来ないと思うよ。ここの人達が血眼になっても分からなかったからね。」

あるえはケーキを食べながら言った。

俺もケーキを食べよっと。

「後は、父さんに聞いてみないと分からないか・・・」

ケーキを口にいれた。

やっぱり店の方がうまい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「雪那、お前さ、父さんのこと知ってたんだな。」

家に帰って、何故か俺のベットで転がってる変態に聞いた。

「あれ、何でその事知ってるんですか?私言いましたっけ?」

「いや、調べた。ちょっと気になってることがあったから。」

ふーんと言いながら変態は布団に潜った。

「で、何でお前はここに居るんだ?」

「・・・趣味?」

しばくぞ。

「でも、ご主人様。調べて何か分かったんですか?一番身近に居た私が知ってることを話したんですから、収穫はそれほどなかったと思いますが。」

「一つだけあった。前の持ち主の遺体が十数年間消えてたらしい。」

「え、消えてたと言うことはまた出てきたってことですよね?おかしくないですか?」

「そうなんだよ。遺体が消えるケース何て人が持ち運ぶかモンスターに食われるしかないのにな・・・」

「いや、まだ一つだけありますよ。」

「え!?」

「肉体ごと転生する方法です。」

そんなことが出来るのか?

「前に女神様がやったことがあると。」

「それいつの話だ?」

「ご主人様が来る五年ほど前ですかね。」

「五年か・・・曖昧だな。」

というか、そもそもこっちで死んだ場合って転生できるのか?

「まぁ、詳しいことは聞いてないですけどね。」

布団に潜りっぱなしで言った。

「ていうか、出ていけ!」

布団を取り上げた。

「ひゃっ!ご主人様ってば乱暴。」

一回死んだらいいんじゃないかな、こいつ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから四日がたった。

今日は珍しく母さんもゆんゆんも居ない。

俺がリビングでくつろいでると、

「しょうた、ちょっといいか?」

いつもにまして真面目な顔をしている。

いつもそんなかんじでいてくれればいいのに。

「うーん、いいよ。俺も聞きたいことあるし。」

あの事について聞かなければならない。

「そうか、まず私からでいいか?」

「どうぞ。」

「まず、お前が最近調べてることがあるらしいな。」

「あぁ、ちなみに俺もその事を話そうとしてた。」

よく分からないところで意思疏通が出来るものだ。

「なら話は早い。そいつについて何故調べている?」

「実はその人が雪那の前の持ち主だったらしい。」

「ほんとか?と言うことはあの杖が・・・」

何かを思い出すように言った。

「もう一つ理由がある。それはその人に何故か知らないけど親近感が沸いた。」

「しょうた、お前をここに置いた理由がそれに近い。」

「ん?話が見えてこないんだけど。俺に親近感が沸いたの?」

「それに少し似ている。お前はあいつに似ていたからなんだ。」

「それ雪那も言ってた。目が凄く似てるって。」

「私もそう思う。特に真剣な顔をしている時は特にな。」

そこまで言われると他人とは思えなくなってくる。

「それがお前をここに置いた一つの理由だ。さて、次はお前が話す番だ。」

「その人が暗殺された後、遺体が消えてたんだよね?」

「あぁ、あいつの遺体はこっちに来てから二、三日で跡形もなく消えていた。」

「誰かが運んだ可能性は?」

「そんな趣味を持ってるやつも居なかったし、何せあいつは無愛想だったから交友関係も少ない。」

はぁ、となるとやっぱり雪那が言ってた転生しか無いのか・・・

「やっぱりかぁ、なんの手がかりも無し。父さんありがとう。」

俺は部屋に戻りながら考え事をしていた。

俺が転生したのはこっちの人口が減ってきた等とさまざまな理由がある。

仮にあの人が転生をしたのなら、どうしてこっち側からできた?どうしてもう一度遺体が現れた?

それと、この胸のモヤモヤはなんなんだ・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「では、授業を始める。今回は古代文字の解読の仕方を教える。」

俺は教室の後ろの隅っこでぷっちんの授業を見ていた。

俺、ここに居る意味あんのかな?

確かに前まではこの三人の情緒が若干不安定だったが、今はなんともない。そろそろと辞め時かもしれん。

席を立ち、教室を出て校長室へ向かった。

コンコンコン

「入りたまえ。」

ガチャ

「失礼します。校長先生。、ちょっといいですか?」

「なんだ、しょうた君じゃないか。どうしたんだね?」

チューリップに水をあげていたのか、ジョウロを手に持って振り返って聞いてきた。

「俺ここに要ります?」

ここに居たってなんも仕事ないし、ぷっちんの手伝いはさせられるし、メリットがない。

「そうだなぁ、あの子達もそろそろ落ち着いてきたから・・・辞めるのかい?」

「えぇ、冒険者として活動したいですし・・・」

俺がこの世界に来てからしたことと言えば学校に行き、魔王軍と戦い、あとはお菓子を作ったり・・・

何この生活?

「というわけで辞めさせてもらえませんか?」

「まぁ、いいだろう。」

「ありがとうございます。」

立ち上がり部屋を出た。

バイトの方もそろそろ辞めないとな・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いらっしゃ、あ、ご主人様!」

「あれ、しょうた君。学校の方はどうしたんだ?」

定食屋に入ると雪那出迎えてくれた。

「今日で学校の仕事は辞めました。」

「え!?まだ二ヶ月しかやってないですよね?辞めるの早すぎません?」

「そろそろ、冒険家業もいいかなと。」

席に着きメニューを見ながら言った。

「ということは、うちの方もそろそろということかい?」

「心苦しいですけどそうなりますね。」

ここを一人で切り盛りするのはとても大変だろう。

以前なら問題なかったと思うが今は確実に客が増えて、雪那のピークよりはましだが仕事が増えている。

そこを辞めるとなると店長のことが心配だ。

「しょうた君がそんなに気に病むことはないよ。元々はバイトなんだ。好きなときに辞めるといい。」

「あ、ありがとうございます。」

「ところでご主人様、どうして急に冒険者として活動しようと?」

不思議そうに雪那が聞いてきた。

「ん?そうだな・・・一つは犯人探しかな・・・」

そういうと雪那の目が険しくなった。

「犯人って何の犯人ですか?」

「勿論、前の持ち主を手にかけた犯人。」

すると、突然雪那に胸ぐらを掴まれた。

「何考えてるんですか?相手は貴族なんですよ!?それも暗殺出来るだけの権力を持つ!この間のチンピラ貴族とは違うんですよ!?下手したら殺されちゃいます。」

「何でそんなに怒ってるんだよ。意味わからん。」

「私、私はもう大切な人を失いたくないんです!私のためなんかにそんなことしないでください!」

「バカか、お前は俺の半身なんだ。だから俺のためでもあるんだよ。」

「ご、ご主人様・・・」

「でもしょうた君。そんな簡単に見つかるものなのかい?暗殺出来るだけの権力を持っているなら、その事件を握り潰す権力だってあるはずだ。そう簡単には行かないんじゃないのかい?」

話を聞いてた店長が眉間にシワをつくって言った。

「その辺は俺が神器を持ってるていうことを噂で・・・」

「だ、ダメです!そんなことしたら本当に殺されちゃいます。」

涙目で言ってきた。

「分かった・・・いい考えだと思ったんだけどな・・・」

もし暗殺を命じた貴族が神器を集める趣味だったら一発で行ける。

「何がいい考えですか。自分を犠牲にするのは止めてください。」

お前だって私欲の為に自分を犠牲にしてるじゃないか・・・

「何はともあれ無理はしないでくれよ。」

「大丈夫です。この世界でメロンパンを食うまでは死ねません。」

「毎回思うけどめろんぱんってどんなパンなんだい?」

「美味しいパンです。作り方が分からないから今は食べれないけど・・・」

作り方調べとけば良かった・・・

「じゃあ、ご主人様に一生メロンパンを食べさせなければ死にませんね。」

おいおい、怖いこと言うなよな・・・

「それじゃあ、しょうた君はめろんぱんを食べるの禁止だね。」

「食べるに食べれないんですけど・・・」

メロンパンが無いんじゃそんなの意味ないと思うけどな。

「願掛けってやつですね。」

成る程・・・

願掛けしても意味がなかったことが大半なような・・・

あれ?それって俺死んじゃうの?

「俺は願掛けが無くても雪那が居れば死なないからメロンパンがあったら食べる。」

そんな願掛けなんてゴメンだ。

「わ、私さえ居れば・・・ぷ、プロポーズですか!?」

何処でそうなった・・・?

「も、もう、こんな公の場で大胆な・・・」

「プロポーズなんてしてない。クネクネすんな気持ち悪い。」

体をクネらせている雪那に言った。

「ひ、ひどい!?乙女の事を気持ち悪いなんて・・・」

心外だとでも言うような顔をしている。

「はっはっは、痴話喧嘩は他所でやってくれよ。」

「て、店長・・・」

冗談は止めてほしい。

「ち、痴話喧嘩ですって!」

「痛い痛い!叩くな!」

バシバシ雪那に叩かれた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お兄ちゃん、ご飯出来たよ。・・・何してるの?」

どうやら俺を呼びに来たようだ。

「何って裁縫だよ。」

俺はボロっちくなった日本の唯一の品『制服』を修復していた。

「それ、お兄ちゃんの街の服なんだよね。」

俺はここに来る時、登校中だったので制服でこの世界に来た。

格好は半袖カッターシャツだった。

今はほつれた部分を直している。

「はぁ、どこまで女子力高めれば済むのよ・・・」

呆れたように言った。

高めたんじゃない、元から高いんだ。

「しかも、縫い目が人が作ったものじゃないし・・・」

「俺は料理より裁縫の方が得意なんだよ。」

針でチクチク作業をするのが楽しい。

「冒険者より主夫の方が向いてるんじゃないの?」

「うるさい。」

でも確かに家事の技能はそこら辺の主婦に負けない自信はある。

「んー、先食べといてくれる?もう少し掛かると思うし。」

目立たないように縫うのは少々時間が掛かる。

「ほぅ・・・」

「ゆんゆん?」

どうやら俺の手元に見とれてるらしい。

「へ?」

「へ?じゃない。先にご飯食べとけって言ったんだ。」

「う、うん。それはそうと何でその服を直してるの?」

「え、ボロっちくなったから。」

「でも、それ着るのってモンスター狩るときだけだよね・・・?」

俺の制服は可動域が広くとても動きやすい。だからよく狩りに行くときに着る。

「どっか行くの?」

「っ!?ちょっと冒険に。」

流石に隠しきれる自信がない。

「そう・・・気を付けてね。」

「あぁ、ありがとう。」

思いのほかすんなり納得してくれた。まぁ、前に冒険がしたいって言ってたからな。

「必ず帰ってきてね?」

「了解。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今は朝の六時半。

「じゃあ、いってきます。」

「しょうた、どのくらいで帰ってくるんだ?」

「分からない。でも、長くて半年ぐらいかな。」

ゆんゆんが卒業するまで帰ってきたい。

短く見積もってゆんゆんが卒業できるのがそのくらいだろう。

「何かあったらすぐに帰ってくるのよ。」

「分かった。」

父さんと母さんに見送られて小さな旅に出た。

 

 

俺はテレポート屋に頼み、王都には行かず中堅冒険者が集まる『スプリット』に訪れた。

雪那曰く中堅の街の方が安全でかつ情報が集まりやすいのこと。

俺としては王都で一暴れして犯人に気づかれた方がいいと思ったのだが・・・

『まだ不満なんですか?』

後々考えたら中堅の街で無双してる方が気付かれやすいと思った俺は雪那に気付かれないように渋々承諾したように見せかけた。

雪那の欠点、それは私欲の為に能力使うのにこういった比較的重要なときには使わない。

「いや、そういうわけでは・・・」

全くない。

『ご主人様はもっとご自身を大切にした方がいいですよ。』

「大丈夫だって、前も言ったように雪那が居ればそう簡単に死なないと思うし。」

『あまり私を過信しないでくださいね?でも頼りにされてることは嬉しいですが・・・』

そんなことを話してるうちにこの街のギルドに到着した。

朝だと言うのに中からは活気のある声が聞こえてくる。

ギギギィ

扉を開けた瞬間、熱気のこもった風が体を包み込み、それと同時に料理や酒の匂いが漂った。

ギルド内の人全員がこっちを見た。

多分この服装のせいだろう。

その視線の中を歩き、受け付け窓口に向かった。

『ご主人様、なんか見られてませんか?』

「こんなローブ着てるんだ。目立たない方がおかしい。」

紅魔族のローブはすごく目立つ。動きやすくて便利なんですけどね。

「すみません。ここのギルドに登録してほしいんですが。」

窓口まで来た俺は受付嬢の人に声をかけた。

「登録ですか?冒険者カードはお持ちでしょうか?」

ズボンのポケットからカードを取り出して見せた。

「ちょっとご確認させていただきますね。えっと、ヤマナカショウタさん。・・・え?」

え?なんか問題でもあったのか?小心者の俺にその『え?』は結構来るんですけど・・・

「このステータス、ソードマスターになれるのに何故冒険者なんかに・・・」

文句あるんですか?と思いながらもその意見には反対できない。

普通の人なら迷わずソードマスターを選ぶだろう。しかし俺は、魔法が使いたいというだけの為に冒険者を選んだんだ。そんな疑問を持たれるのは当たり前だ。

「何か不具合でも?」

取り敢えず固まってる受付嬢さんを動かすために聞いてみた。

「あ、いえ、失礼しました。登録料に千エリス必要です。」

財布からお金を出し支払った。

「はい、確かに。これであなたはここでクエストが受けられます。あそこにある掲示板がクエストを張り出している所です。で、そちら側がパーティー募集の掲示板です。」

ギルド内のことは丁寧に教えてくれた。

「では、あなたのご活躍を期待しております。」

決まり文句のように言った受付嬢を後に朝御飯を食べるために席についた。

『あ!ご主人様ズルいです!私も食べたい!』

「お前をここで出したら色々まずいだろ。」

『でも・・・』

「また今度食べさせてやるから我慢しろ。」

『うぅ・・・分かりました。』

食べるものを決めて注文し、待っていたら、

「隣いいかな?」

二十代前半くらいの男が話しかけてきた。

「別いいですけど・・・」

他の席も空いているのに相席をするって・・・

「君は何処から来たんだい?」

「えっと、紅魔の里です。」

「こ、紅魔の里だって!?じゃあ、君は紅魔族なのかい?」

「形式上そうなってますけど紅魔族の血は流れて無いんで魔力は平均値ですよ?」

「え?そうなのかい?じゃあ、あの受付嬢さんが驚いてたのは・・・」

「はい、カエルの唐揚げ定食です。」

話していたら料理が来た。

それを一口食べ、

「俺の冒険者カード見ます?説明するの面倒なので。」

カードをその男の人に差し出した。

「それじゃあ、失礼して・・・へ?」

カードをみるやいなやぽかーんと口を開けていた。

「それが驚いてた理由です。」

ここのカエル味濃い・・・

「どうしてこのステータスを持っているのに冒険者なんか・・・」

「魔法が使いたかったんですよね。」

「そ、それだけの理由で最弱職に・・・?」

「お陰さまで上級魔法が使えるようになりました。」

「じょ、上級魔法!?」

どうやら上級魔法は取得するのが難しいらしい。

「君、うちのパーティーに来ないか?ちょうど魔法が使える人を探してたんだよ。」

「誘ってくれたのは嬉しいんですけど、最初の方はソロでやろうと思いますので・・・」

「そ、そうかい。パーティーを組みたくなったらいつでも言ってくれ。」

そう言って男の人は去っていった。

『良かったんですか?かなり腕が立ちそうでしたけど・・・』

「そうだけど・・・まずは今の俺の限界を知ってからだ。」

ご飯を食べ終わり、立ち上がり手頃なクエストを探しに行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あぁあ、囲まれた。」

『何やってるんですかご主人様。遊びすぎです。』

現在俺は初心者殺し二体に囲まれている。

知能が高いと聞いていたけどここまでとは思わなかったな。

交代で攻撃してきたと思ったら誘導されて、気が付けば挟み撃ちの状態に・・・

「下手しなくても雪那よりは賢いな。」

『な、何ですか!言い返せないのが辛いです!』

言い返せないんかい。

さて、このにらめっこ状態をどうにかしないと。

下手に動けば喉元に食らいつかれるな・・・

襲ってくるなら同時に襲ってくるはず、こいつらは思ったより俊敏だから避けるのは難しい。

となると『バーストモード』か・・・

タイミングはほんの数コンマ、やるしかないか。

一歩前に足を出した瞬間、二匹同時に飛びかかってきた。

まだだ。まだ間合いが遠い。もう少し引き寄せて・・・今だ!

「『バーストモード』!」

後数センチの所で発動させ初心者殺しの後ろに回った。

「『零氷斬』!」

この技はスキルでも何でもない。ただ『カースド・クリスタルプリズン』を『雪那』に纏わせてるだけだ。

しかし、こうすることによって魔力増強+雪那の切れ味が格段に上がる。

その出来事は一瞬だった。

俺に飛び掛かってきた初心者殺し二体が向かい合わせになったまま一刀両断された。

ドサッ

「ふぅ、安らかに眠ってくれ。」

俺は初心者殺しの目を閉じさせた。

『ご主人様、舐めプはダメですよ。』

「別に舐めプした訳じゃないただ予想外だったd・・・」

『舐めプだったら私にしてください!あ、舐めプってそういう舐めプじゃないですよ?物理的に舐め・・・』

「黙れ変態不良品。」

『へ、変態は自覚してますけど不良品ではありません!』

変態は自覚してんのな。

『それより、これでクエスト完了ですね。』

「こんな街の近くに住み着かなかったよかったのにな・・・」

この初心者殺し二体はつがいらしく最近この辺りに住み着いたらしい。ギルド曰く繁殖期がどうのこうのって言った。食料が必要なのは分かるがわざわざ危険な街の近くに来るなんて。

「モンスターも生きるの大変だな。」

『何言ってるんですか。ほら、早く報酬を貰いにいきましょうよ。』

「はいはい。」

雪那に急かされ街へ戻っていった。




はいはい、ねこたつむりですよ。
主人公が小さな旅に出ましたね・・・もちろんこんなの予定にありませんでした。
予定外のことが連続しているので元の路線が見えてこなくなってきた。
では、今回も読んでくださってありがとうございます。
次回も読んでくださるとありがたいです。
前回と前々回が長かったから今回凄く短く感じる。


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冒険者

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
最近文章をどうやって書けばいいか分からなくなってきた・・・
あ、高校卒業しました。


「『カースド・ライトニング』!」

断末魔が響き渡った。

「おいおい、これがホントに冒険者の力かよ・・・」

「最弱職と言う言葉は何処に行った?」

「ショウタ君凄い・・・」

俺は今あるパーティーとダンジョンに潜っている。

「いや、ショウタ君を誘ってみてよかったよ。」

 

 

~一日前~

『はぁ、今日も疲れましたね。』

ここに来て一週間がたった。

ギルドに報告して晩御飯を注文した。

「あぁ、今日の『見切り』の発動のタイミングバッチシだったぞ。」

ここ数日雪那との連携を強化している。

戦闘中は心に余裕がなくなることがあるので、いくら俺の考えが読める雪那でもそうなったら何も出来ない。

そうならないように今のうちに鍛えておくことにした。

『そうですか?それはよかったです。』

晩御飯を待ってると、

「やぁ、最近の調子はどうだい?」

話しかけてきたのは前俺をパーティーに誘ってくれた人だった。

「まぁまぁですかね。」

「そうか、ところで僕達は明日ダンジョンに潜るんだけど、一緒にどうかな?」

「ありがたいんですけど、どうして俺なんですか?盗賊スキルは持ってないから使い物にならないと思うんですけど・・・」

暗闇ならなんとか俺の視力があれば見えるがその事はこの人は知らないはず。

「僕は君の実力が凄いことを知っているんだ。実際に遠目から戦いぶりを見たことがある。その事をメンバーに話したら荷物係にちょうどいいから連れていこうと言うことになって・・・」

どうやら俺は荷物持ち係に推薦されたらしい。まぁ、一回くらいならいいかな・・・

「ふーん、まぁいいですけど。最近討伐ばっかで暇でしたし。」

「そ、そうか。ありがとう。」

 

 

で、現在に至る。このダンジョンは最近発見されたらしく、調査依頼を受けてきていた。

最初は大人しく荷物持ちしていたんだけど、途中から雲行きが怪しくなり出してこうして手をついつい出してしまった。

「ふぅ、今日は散歩程度で済ますつもりだったのに・・・」

小さく呟いた。

「あの量をこの一瞬で・・・」

パーティーの一人が呟いた。

「こんなやつに俺達は荷物持ちをやらせてたのか。」

「さて、さっさと進みましょう。」

いつまでもここに留まってはモンスターがわらわら集まってくる。

「な、言っただろ?ショウタ君は凄い実力者だって。」

俺なんか父さんなんかに比べたらまだへなちょこなんだろうけどな・・・

あのアホの父親は戦闘になるといつものアホじゃない。

「いや、紅魔族には変わり者しかいないと聞いてたけどやっぱり噂は噂でしかないな。」

「俺以外全員変わり者ですよ。」

「そ、そうなのか?それじゃあ何故ショウタ君だけ・・・」

「生まれた所が違うんですよね。戸籍上紅魔族ってなってるけど、紅魔族の血は流れてないし・・・」

「わ、悪いこと言ったな。」

「あぁ、大丈夫ですよ。辛い記憶何てないし。それよりそろそろ休憩を入れてみたらどうです?そちらの方が少し疲れてるように見えますよ。」

このパーティーのヒーラーを務めている女の子の方を見て提案した。

藍色の目で髪は黒、髪の毛の長さは肩までは遠く及ばないが決して短いと言うわけではない。いうなら顎よりは下の方にある。

「い、いえ、私は平気ですから・・・」

明らかに無理をしている。疲れが見え始めてると言うことはかなりしんどいはずだ。

「ちょっとの間灯りを落としてもらえます?」

「え、別にいいけど・・・」

そう言って灯りを消した。

目に集中した。

この先に少し開けたところがある・・・モンスターらしき影はいないか・・・

「オッケーです。灯りを付けてください。」

「一体何をしたんだ?」

灯りを付けながら聞いてきた。

「ちょっと遠くを見てました。ここを真っ直ぐ行ったところに休憩出来るところがあるのでそこで休みましょう。」

「マジで?この暗闇の中が見えるのか?」

「多少は。」

昔から暗闇に慣れてたせいか灯りがなくとも不自由なく生活できる。眼科医曰く、俺の目は常人の三倍くらい光の収集力が強いらしい。

「わ、私のことは気にしないでいいですから。休憩だなんて・・・」

何を気を使ってるんだか・・・使う方は俺の方だっつうの。

「気を使わないでください。休憩ついでに皆さんのことを聞こうとしてるのが本音なんで。」

俺達はちゃんとした自己紹介を出来ていなかった。

「そ、そう言うことでしたら・・・」

休憩に同意してくれた。

俺達は開けたとこに出、テントを張った。

テントを張った理由は声でモンスターを呼ぶのを避けるため消音魔法を使いたいからだ。

ついでに消臭、屈折魔法を使った。

「ショウタは何でも出来るんだな・・・」

一人の人が感心するように行った。

「さ、中にどうぞ。」

テントは六、七人が入れる大きさなので余裕がある。

「さて、取り敢えず改めて自己紹介をしようか、僕の名前はノーツ。歳は20でこのパーティーのリーダーをやっている。職業はソードマンだ。」

人当たりの良さそうな顔をしているノーツが言った。

年齢予想的中っと。ギリギリですけどね。

「次は俺だな。俺の名はフロット。歳はノーツと同じで20。職業はナイトをやっている。」

金髪ヤンキーチックな人が言った。

「俺の番か。俺はゼテリスって言うんだ。歳は19。盗賊をやっている。」

この人はバンダナがモチーフで茶髪だ。

この人の盗賊スキルはすごい便利だ。いつか取得してみたい。

「わ、私はロア。16歳です。プリーストをやっています。」

一人だけ年が離れてるな・・・どうりで顔にあどけなさが残ってる訳だ。

「皆さんは幼なじみみたいなものですか?」

「まぁ、そんな感じだ。じゃあ、次はお前の番だ。」

フロットが言ってきた。

「えっと・・・あ、紅魔族式と普通のがありますけどどちらにします?」

「「「「普通の方で!」」」」

そんなに強く言わなくても・・・

「そうですか。えっと、名前はショウタって言います。歳は15。知っての通り冒険者です。」

そう言ったら皆が驚くような顔をしている。

「じゅ、15?てっきり年上かと思ってた・・・」

ロアが言った。

「え?俺は皆さんの目にはどう写ってるんですか?」

「いや、老けては見えないんだけど、何て言うか雰囲気が大人びてると言うか。」

ノーツが言った。

「私はてっきり17、8かと思ってた・・・」

「どんなことしたらそんな年であの腕を磨けるんだよ・・・」

フロットが信じられないものを見る目で言ってきた。

「紅魔の里付近で養殖・・・レベリングをしてたらいつの間にか。」

「こ、紅魔の里ってお前さん、高レベルモンスターがうじゃうじゃ居るとこじゃねぇか・・・」

ゼテリスが恐ろしそうに言った。

確かにあそこのモンスターはこの辺りのモンスターと比較出来ないほど強い。

よくコテンパンににやられたものだ。ぶっころりーさんが居なければ死んでいた。

懐かしむように思いにはせてると、

「ショウタ君。」

ノーツに呼ばれた。

「なんです?」

「君は前紅魔の里で生まれてないと言ったよね。生まれた所のことは覚えているのかい?」

「覚えてますよ。かなりそこに住んでいましたから。」

「そこについて教えてくれるかな?僕達はスプリットから他の街へは行ったことがないんだ。」

まぁ、確かに他の街からスプリットは遠いもんな。

「いいですけど、行こうにも行けない所に在るんで行きたいと思っても行けませんよ?」

「大丈夫だ、別に行こうなんて気も起こさない。」

フロットが言った。

「そうですか、じゃあ、・・・」

前にゆんゆん達に話した内容と同じことを話した。

四人とも興味津々聞き、信じられない等と声を漏らしていた。

「魔法もモンスターも存在しない国ね・・・ホントにそんなとこあるのか?」

ゼテリスが疑うように聞いてきた。

「ありますよ。ちゃんと。」

「羨ましいね。モンスターも居なくて平和な国。魔王軍に怯えることもなく暮らせるのか・・・」

ロアが憧れを持つかのように言った。

「でも、魔王軍が居ないからって平和な訳じゃないです。」

「え、でも、モンスターも居ないんだろ?」

ノーツが声をあげた。

「もちろん居ないです。ここは魔王軍と領地を争ってますよね?でもそこには魔王軍が居ません。となると何が起こると思いますか?」

「え、平和に暮らせるんじゃないのか?」

フロットが当たり前にように言った。

「そうだったら良かったんですけど。人間同士の争いが起こるんです。互いの領土欲しさに。」

そういうと四人は固まった。

「に、人間同士が戦うのか?」

口を開いたのはフロットだった。

「そうです。同じ種族なのに殺し合うんですよ。でも、どこもかしこも争いばっかと言うわけでもありませんしね。同盟を組んだりして安全な所が増えていますし。」

お隣の国はヤバイですけど・・・何処とは言いませんよ。

「そ、そうなんだ・・・」

ロアが小さく呟いた。

「すみません。変な空気にしちゃって。次はノーツさん達の話を聞かせてください。」

「あ、いいよ。気にしないでくれ。えーっと、僕達四人は幼い頃から・・・」

ノーツが流れるようにしゃべってたまにフロットが入ってきたり、ゼテリスが裏話をしたり、ロアが話を剃らさせようと頑張ったりしてた。

なんかこういうのいいなぁ。日本じゃこういうのがあんまりなかったもんな。

彼らの話によると共に育ってきた彼らは親同士が仲良くいつの間にか一緒にいるようになったらしい。

「では、そろそろ行きます?」

大分休憩が出来た。

「どうだい、ロア?」

「もう大丈夫。ショウタ君、ありがとね、気を使ってくれて。」

「いえ、皆さんの話が聞きたかったですし良い機会でした。」

そう言って笑い返した。

「おい、ゼテリス。あれがモテる男の行動だ。」

「あぁ、俺達も見習わないとな。」

フロットとゼテリスがこそこそ話してるが聞かないようにしよう。

「さて、ダンジョン探索に戻ろうか。」

「「「「はーい。」」」」

俺達はダンジョンの奥へと進んだ。

 

 

──────ッッッ!!

表現できない音がダンジョン内に響き渡った。

「お、おいおい、どうしてこんなダンジョンにドラゴンゾンビが居るんだよ!?」

ほう、これがドラゴンゾンビか・・・勝てる気がしない。

でかすぎるだろ。

ダンジョンの天井すれすれまで高さがある。

『はわわわ、た、戦いましょう、ご主人様!』

今までの敵が案外弱かったのか強そうなドラゴンゾンビを見て嬉々としてる雪那。

「うるせぇ!こんなのと戦ったら死ぬわ!」

「ショ、ショウタ君?」

皆がこっちを見ている。

しまった、思わず叫んでしまった。

あぁもうこれどうすんだよ。

「今、誰に向かって叫んだの?」

ロアが聞いてきた。

「その事はあとで説明しますんで・・・先帰って貰っていいですか?」

こんな危険な目に遭わすわけにはいかない。

「な、何を言い出すんだ君は!パーティーメンバーを置いていくなんて出来ないだろ!」

ノーツが叫んだ。

「そうだ、今日はお前に助けられっぱなしだからな・・・」

フロットが足をガクガクさせながら言った。

「おいおい、フロット。足ガクガクさせながら言うんじゃねぇよ。」

ゼテリスがフロットを冷やかした。

「わ、私も足を引っ張らないように頑張るから。」

ロアが声は震えてたが真っ直ぐな目をして言った。

「皆さん、死にますよ?」

「お前、そこは普通ありがとうとかあるだろ。」

フロットにつっこまれた。

「では、作戦を提案します。まずロアさんが後ろで補助、俺がドラゴンゾンビを引き付けるので、ノーツさん、フロットさん、ゼテリスさんは懐に潜り込んで攻撃、どうですか?」

「ノーツ、考えてる暇はない!こいつの作戦でいこうぜ!」

「あぁ、分かった。ショウタ君、無理はしないでくれよ。」

「了解です。」

俺はそう言いながら正面に突っ込んだ。

ドラゴンゾンビが前肢を振りかぶった。

こいつはゾンビだからリミットが解除されている。まともに食らったら死ぬだろう。

そう思った瞬間前肢が通るラインが見えた。

雪那ナイス!

雪那が『見切り』を発動させてくれた。

走る速度を緩めた。

ズドンッ!

ダンジョンが揺れた。

ドラゴンゾンビの前肢が目の前を通り過ぎ地面にぶち当たっていた。

その衝撃に耐えながら前肢を駆け上がった。

ズルッ!

「うおっと!?」

肉が腐っていてぬかるんでいた。

ベチッ!

バランスを崩した俺は立て直すために足をドラゴンゾンビの表面に叩きつけて走った。

数秒後、俺はドラゴンゾンビの頭上に居た。

ドラゴンゾンビは俺に視線を向けるために上を見た。

その瞬間、下の警戒はほとんどなくノーツ、フロット、ゼテリスの三人が楽々懐に潜り込めれた。

「『パワーライズ』!」

ロアが俺達に攻撃力アップの補助魔法を掛けた。

俺はドラゴンゾンビが口をパックリ空いてるとこに、

「『ライト・オブ・セイバー』!」

『雪那』の刀身輝きそこから光の刃が飛んでいった。

────ッ!?

痛覚が無いのでどうやら物理的衝撃に怯んだらしい。

首をうねらせて悶絶していた。

その隙に三人はありったけの力で連撃を放っていた。

俺は着地した瞬間、タイミングが悪く、うねらせていた首が俺に直撃した。

「グハッ!?」

リミット解除されている力は俺にダメージを与えるだけで収まらず、俺を軽々と吹っ飛ばした。

ベシッ!ドサッ。

岩肌に叩きつけられ、地面に落ちた。

「「「「ショウタ」」君!?」」

声が聞こえるが体が動かない・・・

『ご主人様!しっかりしてください!』

雪那の声が聞こえるってことはまだ意識はハッキリしている。

が、体がこうじゃなんも出来ない。

「『ヒール』!『ヒール!』『ヒール』!」

ロアが必死になって俺に回復魔法を掛けてくれた。

徐々に体が動かせる程度まで持ってこれた。

もう『雪那』を使った攻撃は出来ない。

さっきの魔法と三人の攻撃でなんとか体力は削れたらしい。

三人は引き付け役の俺が居ないため攻撃できずこっちに戻ってきた。

「大丈夫かい?」

「ええ、なんとか。」

「全く、タイミングが悪かったな。」

「で、どうする。あと一押しで行けると思うけど、お前さんがこの状態じゃな・・・」

悩む三人。

「それは問題ありません。雪那、出てこい。」

ヒュゥゥン

腰に下げられていた『雪那』は輝いて腰から離れ雪那になった。

「この体久々ですね。」

雪那は伸びをしている。

その場にいた俺以外は何が起こったか分からないでポカーンとしている。

ドラゴンゾンビはこっちを真っ直ぐ睨んで様子を見ている。

「説明はあとでします。雪那行けるな?」

「はい、問題ないです。」

俺は雪那の手を握り魔力を込めた。

「「『ダブル・カースド・ライトニング!』」」

俺と雪那の手から黒い雷が放たれた。

放たれた雷は轟音を出して真っ直ぐドラゴンゾンビへと飛んでいった。

バチュウン!

ドラゴンゾンビは胸に大穴を空けられて倒れた。

今行ったのは雪那の能力『魔力伝導』『魔力増加』を利用したもので通常の『カースド・ライトニング』よりも三倍以上の威力を誇る。雪那は擬人化状態にときは俺と何かしらの形で繋がっていれば上級魔法を。単独でも中級魔法までは使えるらしい。

「た、倒したのか?」

「俺達、ドラゴンゾンビ相手に生きてる・・・」

ノーツとフロットは震えてそんなことを言った。

「こいつのせいでとんでもない目に会わされたぜ。」

俺を見ながらゼテリスは言った。

「それにしてもこの子は一体?」

雪那を見ながらロアが聞いてきた。

「一旦街に帰ってから話します。怪我の手当てもしたいですし。」

『ヒール』を掛けて貰ったとはいえ傷口が塞がれてはいない。

「雪那。」

「了解です。「『テレポート』!」」

普通のテレポートは四人が限度だが、雪那がいれば軽く十は行けるらしい。

 

 

目を開けたらそこにはスプリットの街並みが広がっていた。

俺はノーツ達の方を借りながらギルドまで歩いた。

ギルドに入ると、

「あれ、ノーツ達じゃねぇか。そいつは・・・最近ここに来た最弱職の奴か、お前らの足を引っ張った結果怪我までしたのか?情けなぇな。」

笑いながら柄の悪そうな男が近づいて来てそんなことを言ってきた。

雪那が殴り掛かり、

「雪那!止めとけ。」

「っ!?は、はい。」

雪那は悔しそうに言った。

「このお嬢ちゃんは見かけねえ顔だな・・・どうだい?そんな男に付いていくんじゃなくて俺達の所に来ないかい?」

「私はご主人様以外の人に付いていくつもりはありませんし、それ以上この人を馬鹿にするようであれば容赦なく殴りかかりますよ?」

「まぁまぁ、雪那ちゃん?落ち着いて。」

ロアが雪那をなだめた。

「あんた言っとくがショウタは足なんか引っ張っちゃいない。むしろ助けられたぐらいだ。」

フロットが庇ってくれた。

「お前たちが最弱職に助けられた?お前達、そんなに弱くはないだろ?」

驚いたように男は言った。

「俺達はダンジョンの調査依頼を受けてダンジョンに潜った。そこで出会ったのはドラゴンゾンビだった。」

ノーツは静かに言った。聞きようによれば怒っているようにも聞こえる。

「ど、ドラゴンゾンビだと!?あれって確か王都付近に居るモンスターじゃねぇか・・・」

確か王都は上級者達が集まるんだっけか。

「そうだ、ショウタ君が居なければあれに勝つことはできなかった。」

逃げることはできたんですけどね。うちのバカがホントに申し訳ないことを・・・

いや、俺にも責任はあるのか。あそこで無視をしとけば・・・

そんなことを思っていたら、

「ご主人様は悪くないですよ。私が全て悪かったんです。」

「いや・・・ここでそれを話したら水掛け論だ。後でゆっくり話そう。」

気が付いたら絡んできた男は居なくなっていた。

「僕はギルドに報告してくるからショウタ君の手当てをしといてくれ。」

ノーツは窓口に向かった。

「はぁ、ショウタ。気を悪くするなよ。冒険者の間柄では『冒険者』ていうのはこういう扱いなんだ。俺達はお前の実力を知ってるからそんな風には扱う気はないけど。」

フロットが申し訳なさそうに謝ってきた。

「別に気にしてないですから。」

「そんなことよりお前さんの武器について話してもらうぜ。」

ゼテリスは雪那を見ながら言った。

「ノーツさんが帰ってきたら話しますよ。」

その後ロアが持ってきてくれた道具で傷口の手当てをした。

「でも、ドラゴンゾンビが力が強いとはいえ、首が当たっただけでこんなダメージを受けるとはね・・・」

フロットが身震いしていった。

「いや、俺がこんなダメージを受けたのはステータスのせいだと思います。」

カードを机に上に出した。

「えーっと、何々・・・生命力低っ!?これロアより低いぞ。」

フロットがそんな声をあげたら自分も見たいのかゼテリスとロアが覗いた。

「おいおい、こんなので囮をしてたのかよ・・・」

「敏捷性が高いからダメージを受けずにすむかなっと思いまして・・・」

ヘヘって笑いながら言った。

「お前が生きてられたのはこの体力が多いからか・・・全く無茶をする奴だぜ。」

フロットが呆れたように言った。

「お待たせ、今回凄い報酬だったよ。ドラゴンゾンビが出て討伐したことを報告したら、上乗せで五十万も貰っちゃった。」

報告が終わったノーツが席について言った。

「ご、五十万も!?」

フロットが腰を抜かしていた。

正直俺も度肝を抜かれた。五十万って言ったらバイトの五ヶ月分だ。

「じゃあ、元々十万立ったのが六十万になったの?」

ロアが嬉々として聞いた。

「それじゃあ、今回は五人だから一人当たり十二万か・・・」

そう呟いたら、

「いや、ショウタ。お前さんは二十万持っていけよ。」

ゼテリスがが言った。

「そうだな。今回はショウタが居なけりゃこのクエストも達成出来なかったしな。」

フロットが頷きながら言った。

「それに危険な囮役を引き受けてくれたし。」

ロアが申し訳なさそうな顔をして言った。

「い、いや、あれは適材適所でしたし、皆さんの力があったから倒せたわけで・・・」

俺だけそんなに貰うのは申し訳ない。それにそんな大金を持っていたら、いつ襲われるか分かったもんじゃない。お金って怖い。

「でも、最終的にはショウタ君が居なかったら勝つどころか負けてただろうし。」

いや、あんた達には逃げるって言う選択肢があったんだよ・・・

心のなかでそう思っていたら、

「あの、ご主人様がいいって言ってるので諦めた方が先決かと・・・」

雪那が口をはさんだ。

「君は・・・ショ、ショウタ君の剣でいいのかな・・・?でも、ショウタ君が居なかったらドラゴンゾンビに出会うどころか死んでたかもしれないし、貰っても可笑しくないんだけど・・・」

ノーツは戸惑いながらも答えた。

「でも、ご主人様は強情ですし・・・」

言い返す言葉が見つからなかったのか声が小さくなっていく。

「では、ノーツさん。今回は受け取らせて頂きますが、もし次にこういう状況になったら、その時は均等にお願いしますね。」

ここで水掛け論をしても時間の無駄だと思い、その提案を飲んだ。

「そうか、分かったよ。じゃあ、これ今回の分。」

そう言って二十万エリスを渡してきた。

それを受け取り財布に仕舞った。

「さてと、その子のことを話してもらおうか・・・」

フロットが雪那を見て言った。

「えっと、こいつは紛れもなく俺の武器です。こいつには人格って言ったらいいのかな?まぁ、そんな感じのがあるんですよ。」

こいつの説明が思ったように難しい。

「じゃあ、そいつは意思表現が出来るのか?」

フロットが食いぎみに聞いてきた。

「らしいです。こいつの能力に『共鳴』って言うのがあるんですけどそれが強化されてこうなりました。」

「お前さんはこんな優れものを何処で手に入れたんだ?」

ゼテリスが興味津々に聞いてきた。

「なんと言うか・・・貰ったんですよね。だから何処でこいつを手に入れたかまではわからないです。」

女神やら転生やら言っても理解が出来ないだろうと思った俺は限りなく近い事実をしゃべった。

「そうか・・・」

唸りながらそう言った。

「あ!そうそう。ご主人様。『共鳴』がレベルアップしたんですよ!」

いきなり大声を出した雪那。

そのキラキラさせてる目を見るだけでろくでもないことが分かる。

「嫌な予感がする。」

そう呟いた。

「なんと、自分から擬人化出来るようになったんですよ!」

やっぱり・・・

「とてつもなく嫌だ。」

「な、何でですか!?」

胸ぐらを捕まれて揺さぶられた。

待って、苦しい・・・力が強すぎ・・・

「せ、雪那ちゃん。ショウタ君が気を失うよ!」

ロアが顔を青くさせて言った。

「あ、すみません。つい力が・・・」

手を離して謝ってきた。

「けほっけほ。全く、怪我人に何てことするんだ・・・」

「あぁそうでした。私のせいでご主人様が・・・」

さっきまで怒っていた雪那が一変して目に涙を浮かべている。

女子って何でこう切り替えが早いんですかね?

「気にすんな。」

軽く頭を撫でた。

「ごほん、俺達がここに居ることを忘れんなよ。」

フロットが咳払いをしていった。

「忘れてませんよ。」

笑いながら返すと、

「ショウタ君。」

ノーツが真剣な顔をして呼んだ。

「な、なんですか?」

突然の真剣な顔に驚きながら聞いた。

「改めてお願いする。僕達のパーティーに入ってくれないか?」

数秒間の沈黙が生まれた。

「お、おい、ノーツ。こいつは俺達のせいで怪我をしたようなもんだ。あんなことがあったのにパーティーに入ってくれはないんじゃないか?」

「お前さんがショウタを入れたい気持ちは分かるが・・・」

「そ、そうだよ。ショウタ君、こんな怪我させられたのに・・・」

「いいですよ。」

「「「え!?」」」

三人は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして声をあげた。

「ほ、ホントかい!?」

ノーツ一人が身を乗り出して聞いてきた。

「嘘は言いませんよ。」

「ショウタ、よく考えろ。」

「フロット、君はショウタ君に入ってほしくないのかい?」

「入ってほしいさ。でも、こいつは俺達なんかと組んでいい玉じゃないだろ?」

「俺のこと過剰評価し過ぎですよ・・・」

「いや、妥当な評価だ。お前はもっと上のやつらと組むべきなんだよ。」

何を必死になってるんだこの人は・・・

「誰とパーティーを組むかは俺自身が決めます。俺は今までソロでやって来ました。それはパーティーを組みたいと思わなかったからです。でも、今回は何故か組んでもいいかなって思ったんです。」

ホントにどうしてか分からない。

「ホントにいいのか?」

確認するようにフロットが聞いてきた。

「はい、パーティーを組まさせてください。」

「そうか、お前がいいならいいか。でも、もう敬語は使うな。パーティーで敬語を使うなんて聞いたことないからな。」

ニヤッと笑いながら言った。

「了解。」

「でも、こうなるとノーツ。お前さんの役割が危うくなるな。」

ニヤニヤしながらゼテリスが言った。

「え?どうしてなんだ?」

「優秀なアタッカーが入ってきたからさ。」

俺を見ながら言った。

「あ!」

盲点だったと言わんばかりにノーツが声をあげた。

「だ、大丈夫、出来るだけ後ろで魔法撃っとくから・・・」

「ショ、ショウタ君!目を合わせて言ってくれ!」

ノーツの視線を感じるが目を合わせてはいけない気がする。

「ご主人様嫌ですよ。魔法だけなんて私ホントにただの飾り。」

雪那が抗議してくる。

「ショウタ君、まさか回復魔法までは取得してないよね?」

不安そうにロアが聞いてきた。

「安心しろ。俺が使えるのは剣術と攻撃魔法だけだ。」

「よ、良かった・・・」

ロアが安堵の息を漏らした。

チラリと雪那の方を見た。

どうやらノーツと役割について言い争いをしているらしい。

フロットとゼテリスは笑いながらそれを見て酒の宛にしてる。

はぁ、これから大変になりそうだ・・・

もしあの駄女神が見ているなら、

「この素晴らしい仲間に祝福を・・・」




第二章完!
初めましてねこたつむりと申します。
この春から大学生です。(なれるとは限らない。)
主人公がパーティーを組みましたね・・・
もう、予定外の創造主にでもなろっかな・・・
はい、と言うことで今回も読んでくださってありがとうございました。
次回も読んでくださると跳ねて喜びます。


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第三章 追憶
紅目の死神


※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
どうしたもんだこれ・・・


「ノーツ!」

「ああ!」

「「うおぉぉ!ジャンケンポン!」」

「しゃっ!今日は俺の勝ちだな。」

ここに来て二ヶ月がたった。

俺とノーツと言えば、朝っぱらからギルドでジャンケンをしていた。

雪那のわがままでジャンケンでその日のメインアタッカーを決めることになっていた。

「なんか、割合的に君の方が多くないかい?」

悔しそうに言うノーツ。

「別にいいだろ。最近ちょっとパーティーの方に参加出来なかったんだからさ。」

ここ二週間ソロ活動をしていた。

「おいお前ら。朝っぱらから騒がしいんだよ・・・ショウタ、久しぶり。」

眠そうな目を擦りながらフロットが言った。

「久しぶり、フロット。相変わらず寝ぼけた顔してんのな。」

「うっせい、生まれつきなんだよ。」

久しぶりのパーティーメンバーとの会話も悪くない。

「あ、ショウタ君だ。久しぶり。」

ロアが微笑みながら言った。

「よっ、久しぶり。元気してたか?」

「おいおい、ショウタ。俺には皮肉しか言わねぇのにロアにはその態度かよ。」

「お前にこの態度を見せてなんの得があるんだよ。」

「ハハハ、違いない。」

俺とノーツが笑った。

「お前らホント仲いいな。」

呆れたようにフロットが言った。

アタッカー同士だからだろうか、ノーツとは気が合う。

『ホントですよ、そこまで仲がいいと妬いちゃいますよ。』

雪那が文句を言った。

「雪那ちゃんのショウタ君へ対する感情と僕の感情は全く別なものだから妬かなくてもいいんじゃないかな・・・?」

はい、皆さんここで疑問を抱きませんでしたか?刀状態で雪那が他の人と喋れるようになりました。

なんでもまたまた『共鳴』がレベルアップしたらしく俺が指定した人と喋れるようになれるらしい。

「雪那が抱いてる感情にはろくなものがないからな・・・」

「そりゃそうだ。」

フロットが肩を上下させていった。

「あれ、ショウタ帰ってきてたのか。」

ゼテリスが遅れてやって来た。

「よう、今日からまたよろしくな。」

そう言って今日のクエストを決めにいった。

 

 

「いや、冬だから一杯あるね・・・」

一般的に冬には冒険者は活動しないらしい。寒いからどうのこうのだと。

「なぁ、この雪精ってなんなんだ?一体につき十万って破格にもほどが・・・」

そう言ったら皆が顔を険しくした。

「ショウタ君、雪精を知らないのかい?」

信じられないものを見る目で言ってきた。

「雪精はふわふわしててよわっちぃ奴だ・・・」

よわっちぃならそんな顔をしなくても・・・

「でも、その雪精を討伐していったら、雪精の王冬将軍が出てくる。」

身震いしてゼテリスが言った。

「その強さから危険視してる魔王幹部の討伐金より少ないけど二億はくだらないらしいよ。」

ロアが夢を見るように言った。

「ふーん、雪精だけ倒して帰ればいいんじゃない?」

「「「「うーん・・・」」」」

唸る四人。

「多分、ショウタ君はそれだけじゃ満足いかないと・・・」

ロアが口を開いた。

「そうだよな、冬将軍はその・・・」

腰に下げてる『雪那』を見てフロットが言葉を詰まらせた。

「もしかして刀持ち?」

「ショ、ショウタ。目を輝かせんな。いや、物理的にも光ってるから!」

ゼテリスが慌てて言った。

「そういうことなら一人で行く。」

「あぶねぇっつうの。一人なんかで行ったら確実に死ぬわ!」

フロットに怒られた。

「ショウタ君は妙に子供っぽいとこがあるよね・・・」

ノーツが笑いながら言った。

いや、子供ですし・・・

「危なくなったら『テレポート』使うから問題ないんじゃ・・・」

その言葉を聞いた四人は、

「「「「・・・」」」」

黙りコクられても・・・

「しょうがねぇな・・・」

フロットが呟いた。

「あ、ありがとう。今日のメインアタッカーは俺だから冬将軍が出たら皆は下がっといてくれれば助かる。」

「「「「了解・・・」」」」

他のみんなもしょうがないと言うかのように了承してくれた。

「やるからには大儲けするぞ!」

フロットが叫んだ。

「「「「おおぅ!」」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ホントに雪精ってよわっちぃんだな。」

俺達はロアの補助魔法で雪精を根絶やしにしていた。

「俺が八匹でショウタが十匹、ノーツが九でゼテリスが六、そしてロアが、」

「三だな。まぁあいつは戦闘特化型じゃないからな。」

雪精を必死に追いかけてるロアを見て言った。

「こんだけ倒したんだからそろそろ・・・」

フロットがそう言ったら側から、吹雪が吹雪いた。

「おでましか・・・皆!下がれ!」

吹雪の中から野生の冬将軍が現れた!

戻れ!ノーツ達。

ゆけ!ショウタ!

「おい、誰がポ○モンをやれと言った・・・?」

すいません。

『雪那』を鞘に戻しながら誰かにツッコミをいれて冬将軍と向き合った。

「お願いします。」

静かに礼をした。

「ショ、ショウタ何を・・・っ!?」

フロットはそこまで言って、言葉を詰まらせた。というより驚いているんだろう。

相手は冬将軍。モンスターの前に武将だ。俺の礼に答えるように礼を返してきた。

『雪那』を抜いたのが合図かのように斬りかかってきた。

キーンッ!

一応太刀筋は防げたが、力で押される。

「くっ!『インフェルノ』!」

冬将軍はそれを避けるように後ろへと跳んだ。

今度はこっちから仕掛ける。

さっきとは逆の立場になった。

成る程、力は五分五分なんだ・・・上と下では力の掛かり方が違う、だからさっきは押されたのか。となればスピード勝負か・・・

後ろへと跳び、

バサッ

「ロアこれよろしく。」

ローブをロアの方へ投げた。

「おいショウタ、どうしてかロアの方なんだ?明らかにこっちの方が近いだろ。」

フロットが抗議してきた。

「この状況でなにバカなことを口走ってんだよ。理由は簡単。男より女の人にローブを暖めてもらいたい。」

「どっちがバカなことを口走ってんだよ!」

「まぁまぁ、でもショウタ君。寒くないのかい?どう見てもそれ半袖だろ?」

そう、現在俺は半袖カッターシャツの格好をしている。

「問題ない。昔故郷で、年中半袖着てる変態って呼ばれてたから。」

人間カイロとも呼ばれていた。

「さて、『インフェルノ』」

例のごとく『雪那』に『インフェルノ』を纏わせた。

地面を強く蹴り冬将軍との間合いを詰めてその勢いで斬りかかった。

勿論防がれたが予想していたので連撃を繰り出した。

「おいおい、ショウタの奴あの長身の剣をあのスピードで振り回せれるのかよ・・・それに合わせる冬将軍も凄いな。」

冬将軍は俺の連撃に合わせて防ぎ、その中でも攻撃を交えていた。

俺の連撃は無双用ではなく、余裕を持たせている。だから、冬将軍の攻撃はさばけている。

が、その余裕が無くなるくらいの多さだ。

きっちぃ・・・これ以上早くされたら向こうのペースに持っていかれる。

あれやるしかないのか・・・制限時間一分半。

「『バーストモード』!」

同時に雪那が見切りを発動していた。

手数が倍以上になり、冬将軍が押され不利と思ったのかまた後ろに跳んだ。

「逃がさねぇ!」

直ぐに間合いを詰め、斬りかかろうとした。

が、冬将軍は下がった後直後に姿勢を低くして迎え撃ってきた。

「っ!?」

すぐさま斬りかかるのを止め、防ぎに入ったが体勢を崩された。

その隙を中でも逃さず冬将軍が猛追してきた。

場面はさっきと真逆、押される側になった。

「くそっ!右手が邪魔だ。スピード重視なら左手だけで十分だ!」

本来長身の刀は両手ではないと振れないだろう。しかし、幼い頃から剣道で鍛えられたお陰で片手でも軽々と振れる。

勿論左手が利き手でないので力は弱いが剣さばきはこっちの方が得意だ。

徐々にこっちのペースに持っていきやがて冬将軍に攻撃が当たるようになってきた。

「あいつ、一人で行っても死ぬことなかったんじゃないか・・・?」

フロットがボソッと言った次の瞬間。

「っ!?手数が増えてきた・・・?」

冬将軍の手数が今までの三倍以上に増えてる。軽く押し返され攻撃が俺に掠り始めた。

『ご主人様!もう時間が限界です!』

くっ!

「『ボトムレス・スワンプ』!」

ギリギリ冬将軍が入る範囲に泥沼魔法を撃って、その場から走り出した。

「皆!一ヵ所に固まれ!雪那!」

『了解です。』

と言って擬人化した。

「冬将軍!この借りはいつか返すからな!覚えとけ!」

泥沼から抜け出し始めてる冬将軍に叫んだ。

「「『テレポート』!」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「「「かんぱーい!」」」」

雪精の討伐報酬を貰い、ギルドで打ち上げをしていた。

「おい、ショウタ。そんな辛気臭い顔するなよ。生き残れただけでも儲けもんだろ。」

「そうだよ。冬将軍と互角に戦えるなんて凄いことなんだよ?」

フロットとロアが慰めてくれてた。

「互角、なんかじゃなかった・・・」

あいつはまだ余裕があった・・・完全に負けた。

「取り合えず飲めよ。お前の腕のお陰で俺達は生きてこうして大金を稼げたんだ。」

そう、雪精討伐報酬は計三百六十万エリスだ。こんな大金をたった一日で稼いだ。でも、そんなことより冬将軍に負けた方がでかい。勿論俺が一番強いなんて思ってない。でも、あそこまでハッキリとされたら・・・

「ご主人様、勝てる見込みも無かったのにいつまでもメソメソしてるんですか?」

「せ、雪那ちゃん。そこまでキツく言わなくても・・・」

「いえ、この人にはこれぐらい言わないと。」

自分の神器に怒られるって情けねぇ・・・

「おらぁ!今日はやけ酒だ!」

「ショ、ショウタ君。ほどほどにね・・・」

ノーツが言った。

「そう来なくっちゃ!ショウタ。今日は飲むぞ!」

フロットが便乗。

こうして夜が更けていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「えっと、雪那さん。これはどう言うことでしょうか・・・?」

飲んだ次の日俺とフロットが縄で縛られてた。

「どう言うことですって!?昨日のこと覚えてないんですか!?」

とてつもなく怒ってることだけは分かるが・・・

「全く覚えてない。ノーツ、ゼテリスそれにロ・・・ア・・・?」

何があったのか聞こうとしたが、ノーツとゼテリスは呆れた目をしていて、ロアに関しては顔を赤くしてモジモジしていた。

その瞬間、顔から血の気が引いたのが分かった。

え、う、嘘だろ?酒に飲まれたのか・・・?

「な、なぁ、雪那。俺とフロットがロアになんかした訳じゃないんだよな・・・?」

「しっかりとセクハラをしましたよ。変態さん。」

お前だけには言われたくないが言い返せないのが辛い。

「おい、フロット。さっきから黙ってるがお前もなんか言えよ。俺だけ悪いみたいじゃんか!」

「もう、慣れてるから・・・」

諦めた目をしているフロット。

慣れてる?何に?セクハラに怒られるのに?

「で、どうして欲しいですか?日頃あなたは私に何もしないのにロアちゃんだけにセクハラなんて・・・許せません!」

そこ!?え?怒るとこそこ!?

「私にだってセクハラを!」

「黙れクソ変態。」

「言える立場じゃないですよね?」

あぁ!いつもの二割増しうざい!

「もうお前はすっこんどけ!ロアごめんな、多分俺、ヤバイことした気がするから・・・」

「い、いいんです。気にしてませんから・・・」

顔を赤らめながら言った。

絶対気にしてるだろ・・・どうすっかな・・・

「つーか、フロット。お前も謝れよ。」

「何も言えねぇ・・・」

こいつ、そこまでやらかしてんのかよ・・・

取り敢えず土下座を・・・

「い、いいです。そこまでしなくても!顔を上げてください!」

上げるわけにはいかない。それだけのことを俺はしたんだから。

「ぐ、具体的に俺は何をしたんですか?」

「ロアちゃんの服を脱がさせました。『バーストモード』まで使って。」

そこまでしたのかよ・・・

「フロットは?」

私達が止まるのを止めました。

あれ?実行犯俺だけじゃん・・・

「それじゃあ、俺が捕まってる意味は?」

アホな事を言い出すフロット。

「いや、共犯みたいなもんだから捕まって当然だろ。」

ゼリテスがゴミを見る目で言ってきた。

いつも父さんにこんな目をしてたのか・・・次からは控えよ・・・

「ヤマナカショウタさん!ヤマナカショウタさんは居ますか!?」

ギルド内に受付嬢の声が響き渡った。

「ここに居ますよ!」

「こんな所に。あなた宛に手紙が・・・何があったんですか?」

縛られてる俺とフロットを交互に見て聞いてきた。

「気にしないでください。で、俺宛の手紙とは?」

「えっと、第一王女様から直々に召集が掛かっています。」

「「「「だ、第一王女!?」」」」

俺と雪那以外がこれ以上ないくらい驚いている。

「ショウタ君はそんなに凄い冒険者だったのかい?」

「昔ちょっと世話になったぐらいだから、そこまでじゃない。」

と言いながら、手紙を受け取り読んだ。

内容は魔王軍がこれまで以上に強いから手伝ってくれというやつと、王都でちょっとした事件があるから解決してくれとのこと。

俺は何でも屋じゃねぇぞ?

詳しい事情は向こうに行かないと教えてくれないみたいだ。

行かないと殺されるかな・・・主にクレアに。

「はぁ、ちょっと王都に行ってくる。」

「わ、私も王都に行ってみたい。」

ロアがそんな事を言い出した。

「・・・王都内に居れば安全か・・・ノーツ達はどうする?」

「え、じゃあ、僕達も行こうか。スプリット以外にも行ってみたいし・・・」

「そうだな、他の街がどんなとこか見てみるのも悪くないな。」

「俺はお前さん達について行くよ。」

どうやらみんな行くらしい。

「じゃあ。旅の準備して来い。ここで待っとく。」

みんながギルドを出て行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こ、ここが王都か・・・」

なんかデジャブ感。

隣で感嘆してるノーツを見ながら思った。

目の前にはいつもと変わらない賑やかな街並みが広がっていた。

「さ。早速城に行くぞ。」

城に向けて足を動かした。

 

 

『おいおい、あれあいつじゃないか?』

『あのローブ、あの剣。間違いない。ここしばらく見てないと思ってたんだが帰ってきてたんだな・・・』

行き過ぎて行く人がそんな事を口にしていた。

「ショウタ君ってもしかして王都でも有名なのかい・・・?」

「かなり・・・」

前のクレアのパーティーで名が知れてる事を知り、話を聞いてみると結構有名になっていた。

「ノーツ、今更こいつにビビってんじゃねぇよ。あんだけ入れたいって言ってたの何処のどいつなんだよ?」

「ま、まさかここまでだとは・・・」

見定めは大事ですよ。

ようやく城に着き、門番をしている兵士に話しかけた。

「久しぶりです。」

「あ、あなた様は!?久しぶりです。話は伺っているのでどうぞ中へ。」

すんなりと中に通らせてくれた。

四人は呆然とその光景を見ていた。

謁見の間まで来、深呼吸をし、ドアを押し開けた。

「お待ちしていましたよ。ショウタ様。」

相変わらず入り口と椅子が遠い。よくそこから声を響かせれるな。

傍まで行き、挨拶をした。

「久しぶりです。アイリス様。それにクレアとレインも。」

「ショウタ。その四人は?」

クレアが俺の数歩後ろでオロオロしてる四人を指した。

「現俺のパーティーメンバー。ここには俺の意思で連れて来たから文句無いよな?」

「べ、別に無いが・・・」

何故目をそらす?

「ところで、解決して欲しい物とは?」

「ここ、王都では最近義賊が出始めたのです。」

ほう、義賊とな?そいつを捕まえろってか。ゼリテス連れて来て良かった・・・

「成る程、次のターゲットは決まってるんですか?」

「いえ、でも、狙われてるのはその・・・噂が・・・」

「悪評があるとかばかりなんですね?」

「え、えぇ。」

「相手は単身ですか?」

「そうみたいですね。」

「ゼリテス。」

「ん?どうした?」

「お前ならどういったとこを狙う?」

「俺、そんな事やった事無いから分かんねぇよ。でも、やるとしたらそこそこ力がないとか狙うかな・・・守りが薄そうだし・・・」

確かに、そうなると・・・

「悪評があって、力がそこそこ無いところか・・・サーチス家はどうだ?あそこは金はあるが力はあまりって感じだが・・・」

クレアがそんな事を言った。

「じゃあ、そこにする・・・」

『魔王軍襲撃警報、魔王軍襲撃警報!騎士団はすぐさま出撃。冒険者の皆様は、街の治安維持の為、街の中へのモンスター侵入を警戒してください。高レベルの冒険者の皆様は、ご協力をお願いします!』

もう一つのお仕事が来たようだ。

「お前らはここに居ろ。」

「ど、どうしてだい?」

「俺をここに呼んだって事は王都の冒険者ではちょっとキツくなったって事だ。そんな中にお前らが入ったら運が悪けりゃ死ぬ。」

「ノーツ、ここはショウタに従っておこうぜ。俺達が出る幕じゃねぇ。」

「わ、分かった・・・」

「別にお前の実力が低いって訳じゃない。ただ相手の実力がここより上だから安易に行かせる訳にはいかない。」

ノーツが頷いた。

「じゃ、行ってくる。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『おい、あれ。』

『うわっ、ショウタじゃん。戻って来たっていう話は嘘じゃなかったんだ・・・』

『あいつが居れば、今回は何とかなるかもな・・・』

そこまで酷いのか・・・

「ショウタ、今回の魔王軍は今までより数段上だ。多分、お前とお前のお父様を警戒してのことだろう。甘くみるなよ?」

「分かった。」

「あ!合法ショタっ子のショウタさん!」

今スッゴく会いたくない人の声が聞こえたんだけど・・・

「ねぇ、お姉ちゃんの方を向いてよ。」

「何であんたがここに居るんだよ・・・」

「あのね、好きな人にそんな目されると辛いのよ?」

知らん。

「ショウタ、セシリー殿には回復要因として来てもらってたのだ。でもよく考えると呼ばない方がよかったのか・・・私はちょっとやることがあるから先に行かせてもらうが、セシリー殿、ショウタに何もするなよ?」

怖い目付きで言い走っていった。

「私を誰だと思ってるのかしら・・・アクシズ教徒よ?何もしないわけないじゃない。さぁ、取り敢えず今日のショタ声を!」

「嫌だ。」

「もう、相変わらず素直じゃないんだから・・・」

素直に言ってるんですけど?

「もしショタ声を出してくれたらお姉ちゃんを好きにしていいわよ?」

「嫌です。」

「そう言いながらも目が私の胸元に行ってるんだけど?」

クスクス笑いながら言ってきた。

「み、見てない・・・」

顔が熱いのが分かる。いつから俺はこんなエロガキになったんだ?あ、もとからか・・・

「またまたぁ、顔が赤いわよ?もう可愛いんだから。」

何故か抱き締められた。何で避けなかったんだろう。男の本能?でも、雪那の時は・・・避けないな。

「もう、分かったから離れろ。」

「嫌よ。」

「これから魔王軍と戦うんだろ?こんなことしてる場合じゃないって。」

セシリーを押し退けた。

「もう積極的な所も嫌いじゃないわよ。」

何が?押し退けたことが?

もう無視して集合場所に行った。

門が開門し、

「魔王軍討伐隊、出陣せよ!」

クレアの号令と同時に冒険者は魔王軍へと突撃した。

 

 

戦況は五分五分と言ったところだろう。俺は温存の為『雪那」だけで戦っている。それでも敵陣に乗り込むことが出来ていた。

『しかし、今日もあの紅目が居ねぇな。』

『ここ数日居ませんでしたからね。』

『居ない方がいいだろ。なんせ魔王軍で通り名が付いたぐらいだからな・・・』

『あれだろ?『紅目の死神』ってやつ。あいつにピッタリだよな・・・』

そんな通り名が付いてたのか・・・

「ちょっと失礼しますよっと。」

「うぉっ!?なんだ貴様は?一人でノコノコと敵陣に乗り込んできて・・・!?その目は・・・!?」

「どうも、『紅目の死神』です。」

笑みを浮かべながら言った。

悲鳴も罵声も聞こえなかった。既に斬られていたからだ。

「さて、本気行きますか!『インフェルノ』」

無惨に斬り落とされていく魔王軍。

確かに強くはなっていたが俺だって成長しない訳じゃない。

「あれ?シルビアさんじゃないっすか?幹部がこんなところで何を?」

そこに居たのは二週間前のソロ活動の時に出くわした、魔王幹部のシルビアだった。確かにこいつなら魔法耐性が高いから俺達の対策には持ってこいか・・・でも・・・

「え?あ、あなただったの?『紅目の死神』って・・・」

顔を青くして言うシルビア。

「らしいですね。どうします?逃げますか?めんどくさいから追いかけませんよ?」

前、こいつと会った時は激戦の果て、シルビアが戦略的撤退をした。

「ちなみに、昨日冬将軍とやり合いました。」

顔を引きつらせた。別に勝ったとは言ってない。

「に、逃げさせてもらってもよろしいでしょうか?」

「もう王都に来ないなら・・・」

「全軍引くわよ!」

「え?シルビア様!どう言うことですか!?」

魔王軍兵士達が各々声をあげた。

「ここは引いた方が身の為なのよ!」

そう言って魔王軍は魔王城への帰路に着いた。

あんなんで魔王幹部やってられるのかよ・・・

「ショ、ショウタ?どう言うことだ?魔王軍があっさり引いていったぞ?」

クレアが走って近付いてきた。

「利害一致。交渉で手を引いてもらった。」

「お前、まさか魔王幹部じゃ無いだろうな・・・?」

「まさか。ただの『紅目の死神』だ。」

力もそんな使わなくて済んだし、これで義賊の方にも手が出せる。

首を傾げてるクレアと城に戻った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あれ?意外と早く終わったんだね・・・」

ノーツが拍子抜けしたような顔をしている。

「ちょうど話が通じるやつで、早く終わった。」

「ショウタ、今日は祝勝会があるがどうする?」

「俺はサーチス家に行こうかと思ってる。クレア、手配してくれないか?」

「そうか、分かった。サーチス家には私から説明しておこう。」

「ノーツ達は俺と一緒に来てくれ。」

「なんだ?寂しいのか?孤高の剣士だった奴が寂しがってんのか?」

「ああ、悪いか?」

「あ、いや、ごめん。」

すぐさま謝るフロット。

「ショ、ショウタ。さ、寂しいなら私が・・・」

アホなことを言うクレア。

「ご主人様には私が居るじゃないですか!」

こんな変態と二人っきりはやだと思う俺。

「ショウタさん、今晩暇?」

「暇じゃないから帰れお姉ちゃん。」

何処からわいたか知らないがそこにセシリーがいた。

「その声でお姉ちゃんって言われるのも悪くないんだけど、やっぱりショタ声で舌足らずで呼ばれたいわ。」

「ショウタ君、お姉さんが居たの・・・?」

ロアが俺とセシリーを見比べていった。

「見たら分かるだろ。この人はただの変態。」

「変態じゃないわ。欲に従って生きてるだけよ。」

「それを変態って言うんだろ。ていうか帰れよ。」

「嫌よ、今日は祝勝会があるんだから!」

つまりあれか、酒を飲まなきゃ帰れないってか。

「それはそうとショウタさん。今晩・・・」

「用事。義賊捕まえんのに忙しい。」

「ふ、不公平だと思わない?めぐみんさん達とは寝てて私とは寝ないなんて・・・」

「ショ、ショウタ・・・お前もしかして股掛けてるのか?」

「フロット。俺がそんな糞野郎に見えるか?」

「見えないから聞いてるんだろうが。その反応じゃ掛けてないようだな。」

今すごく心に染みた。

「でも、ショウタさんは実際に六人も落としてるんだからしっかり後始末をして貰わないと・・・」

今それ考えると気が重くなるから止めてくれ・・・

「ショウタ、お前さん今いくつだったっけ?確か15って言ってなかったか?そんな年で六人も・・・」

今考えれば凄いことだ。日本じゃ女性経験が全くと言っていいほどない。そんな俺がこっちに来て六人に好かれるなんて・・・

「たらしだ・・・」

ノーツが口からそんなことを漏らした。

「おい、誰がたらしだ、誰が。」

笑い声が広間に響き渡った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふわぁ、眠い。」

「んー、一時か・・・来るとしたらそろそろ来るかな?」

現在俺達はサーチス家に居る。

見張りは二時間交代制。

今は俺とゼリテスが起きている。

「しかし、貴族の家って言うのはこんなんばっかなのかね?」

家具や部屋を見ながら言った。

「金だけはあるからな・・・?」

今確かに物音がしたような・・・

「ゼリテス、ここら辺で見張りよろしく。」

「あ、気を付けろよ。」

背を向けながら手を振り、音の鳴った方へ向かった。

『おっかしいなぁ?こないだ下見に来たときはこんな魔力無かったはずなんだけど・・・』

人の声がする。声質的に女?

「『バーストモード』」

次の瞬間俺は義賊の背後を取り、そのまま腕を掴んだ。

「捕まえた。」

「へ!?」




こんちわ、ねこたつむりです。
セシリーの久しぶりの登場。しゃべり方がよくわかりませんね・・・
そして、ついにお頭登場ですね。
では、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。


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真実

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
とりあえず読んでいってください。


「へ!?」

驚きの声をあげる義賊。

「さて、今日の仕事終わりっと。さっさと城に連れてって寝よ。」

「ちょ、ちょっと待って。離してよ。」

「嫌だ。犯罪者を離すわけないだろ?」

『ちょ、ちょっとご主人様!?待ってください!』

「何だよ、こっちは眠いんだよ。」

「えっと・・・君は誰と話しているのかn・・・っ!?」

その人は俺の腰にぶら下がってる『雪那』を見て息を飲んだ。

「君、それってまさか神器・・・?」

信じられないと言うような顔で言ってきた。

「一目見てこいつが神器だと分かるのか?凄い鑑定眼してんな。」

普通分からんだろ・・・

「成る程、だからここに反応があったのかぁ・・・」

この状況で何を納得してるんだろうか。

『ショウター。大丈夫か?』

帰るのが遅いことを気にしたのかゼリテスが聞いてきた。

「ああ、問題ない。いm!?」

いつの間にか出てきた雪那に口を塞いできた。

『どうした?』

「だ、大丈夫です。ちょっとご主人様が躓いただけです。」

とっさに機転を利かせて言い訳を言う雪那。いつもそのくらい機転を利かせてもらえばいいのに・・・

『そ、そうか。そろそろ交代だから帰ってこいよ。』

そう返ってきたのを聞いて安堵する義賊と雪那。

「ご主人様、今からこの手を離しますが、絶対に叫ばないでください。」

何で?と言う疑問は抱きつつも取り敢えず頷いておく。

「ぷはぁ、おいこら、どういうつもりだ?」

「その人を捕まえるのを止めて欲しかったんです。」

「すまん、理解ができん。」

「あの、そろそろ離して貰えると助かるんだけど・・・」

「離すわけないだろ。捕まえたこそ泥を逃がすってどういう神経してんだよ。」

「だ、だよね・・・」

半笑いで諦めたような顔をしている。

「ご主人様、この人は女神様です。」

「「え!?」」

俺と義賊は思わず声をあげてしまった。

「えっと、その意味はストレートに女神って言ってるのか?」

「そうです。」

「な、何言ってるの?あ、あたしがエリス様な訳ないよ。」

「誰もエリス様とは言ってない。」

軽く墓穴を掘った義賊、いや、女神エリスに言った。

「ほ、ほら、女神って言ったらエリス様が思い浮かぶから・・・」

目を泳がせながら言い訳をほざいていた。

「俺は女神と言われたら俺をこっちに連れてきた駄女神が思い浮かぶけどな・・・」

「あ、アクア先輩は駄女神なんかじゃないよ。そりゃあ、ちょっとはやらかすこともあるけど・・・っ!?」

確定。この人はどうやら本物の女神様のようだ。

「女神が義賊ってどうよ?一応犯罪ですよ?」

「こ、これにはちゃんとした訳があるんだよ。」

「じゃ、その訳をしっかりと署で話そうな?」

「ご、ご主人様。お願いです。今回だけはその人を見逃してください。」

「そう言われてもな・・・犯罪者だよ?」

「ご主人様、その人は女神様です。もしかしたらご主人様が知りたがってることを知ってるかもしれません。」

「あ、そっか。じゃあ取引してくれる?」

「と、取引・・・?」

「今日は見逃してやるから明日、ちょっと話聞かせろ。」

「ほ、ホントに?それだけでいいの?」

「ああ、それだけの価値はあるし。」

「そ、そうかい。それじゃあお言葉に甘えてその取引に応じさせてもらうよ。明日の晩辺り君のとこに訪ねるから。」

そう言って入って来たであろう窓から出ていった。

「二ヶ月長かったですね・・・」

雪那がポツリと言った。

「そうか?俺は楽しかったから短く感じたけど・・・」

「はぁ、ご主人様。ホントに紅魔族ですか?今のは場の空気的に言うのが相場でしょ?空気読みましょうよ。」

いや、生まれも育ちも紅魔族じゃないし・・・

「ショウタ。何してるんだ。交代の時間が来たぞ。早く仮眠しろ。」

しびれを切らしたのかゼリテスが俺を呼びに来た。

もう来ないと思うけど、それをこいつらに言うと厄介だからこのまま仮眠に移らせて貰おう。

 

 

「結局来なかったね・・・」

ノーツがちょっとガッカリしたように言った。

そんなノーツを見ていると罪悪感を感じる。

昨日は見逃したが次は絶対見逃さない。

「まぁ、良いじゃねぇか。被害に会わなかっただけましだ。」

フロットが励ますように言った。

俺達は報告のため城に向かっていた。

「なぁ、ショウタ。昨日戻ってくるのが遅かったが、お前さん何してた?」

ゼリテスが耳打ちしてきた。

「別に、雪那が昨日言ったように暗くて躓いただけだ。」

「嘘を言え、お前さんが暗くてもしっかり見えてることは知ってるんだよ。普段なら別に躓いてもおかしくはないが、昨日は義賊の侵入を防ぐためかなり神経質になってるはずなんだ。そんなときにお前さんが躓くなんてへまはやらない。それに躓いたって言ったのは雪那だしな。普通雪那をあの状況で出すわけない。」

「勝手に出てきたんだ。」

「そこまで空気が読めない嬢ちゃんでもないだろ。」

「何が言いたい?」

「お前さん、義賊に会っただろ?」

「・・・はぁ、お前には隠し通せなさそうだ。確かに昨日、義賊と対面した。」

「お前のことだから普通に捕まえると思ってたんだが、その状況だとしたら雪那に邪魔されたみたいだな。」

「邪魔された訳じゃない。捕まえないでくれと頼まれた。」

「ふーん、それで捕まえなかったと。」

「その後も色々あったがまぁ、そんな感じだ。」

「なるほどな・・・あ、安心しろ。理由なんか聞かないからよ。そんな顔をするなって。」

「そ、そうか。」

そんなに顔に出てたかな?

自分の顔に手をやりながら考えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうか。昨日は空振りだったか。」

城に着き、クレアに結果報告をしていた。

「悪いな、力になれなくて・・・」

「い、いや、いいんだ。昨日はどこも被害もなかったし・・・」

そりゃそうだわな。こっちに来たんだから。

「ショウタ様、気にやむことはありません。だから、元気を出してください。」

顔を俯かせてるのが落ち込んでると思ったのかアイリス様が励ましてきた。

「あ、いえ、別に落ち込んでる訳では・・・」

まさか、この年に慰められるとは思わなかった。しっかりしすぎてるだろ・・・

「今夜は昨日、ショウタ様達が祝勝会に出れなかったので、些細なことですが夕食をここでとってください。内容は豪華にしますので。」

「そこまでしなっ!?」

フロットに脇腹を突かれた。

「子供は大人しくありがとうございますって言って甘えとけばいいんだよ。何大人ぶってんだか・・・」

「そうだぞ、昨日のお前の活躍が無かったら、また多くの被害者が出ただろう。その遠慮がちな性格を何とかしろ。」

クレアに忠告された。お前に関しては性癖の遠慮無さに飽きるけどな・・・

 

 

夕食では今まで俺達がどんな活躍したのかアイリス様に根掘り葉掘り聞かれた。

俺は口下手だから説明をフロット達に任せていた。

「・・・で、そこでショウタが『皆さん、死にますよ?』って言うんですよ。おかしくないですか?『お前、普通そこはありがとうとかだろ。』って思いますよね?」

どうやら今は俺がずれているという話をしているらしい。そんなにずれてるかな・・・?

「確かにそれはおかしいですね。仲間の想いに感動して涙を流してもいいはずです。」

いつになく元気なアイリス様。それを見て発zy・・・喜んでるクレア。それを見て苦笑いのレイン。

平常運転だ。

「そうでしょ?後は・・・一昨日の冬将軍のことかな・・・」

「「「ふ、冬将軍!?」」」

向こう三人が叫ぶように驚いた。

え、そこまで驚くことなの?そんなに手を出さないモンスターだったの、あれ?

「はい、こいつが冬将軍と戦いたいって駄々をこねましてね・・・いつも大人ぶってるくせに子供っぽいことを言いまして、普通の冒険者なら絶対に近付かないようなやつに近付いていくんですよこいつは。」

三人がこっちを凝視してきた。俺がおかしいの?

「ショウタ、お前は命知らずなのか?」

クレアに呆れて目ををされてしまった。

「冬将軍相手に生きてることが奇跡みたいなものですよ。」

レインが久しぶりに口を開いた。本人はあまり目立たないことを気にしてるらしいが、常識人で別にいいと思うが・・・

「流石、『紅目の死神』と呼ばれるだけはありますね。」

アイリス様まで広まっていたか・・・

「ショウタ君、『紅目の死神』ってなんだい?」

「ん?俺が魔王軍にそう呼ばれてるんだ。ちょっとかっこよかったから通り名にさせてもらった。」

あれ?ちょっと待って、魔王軍に通り名をつけられてるってことは賞金首になってるんじゃ・・・

「ショ、ショウタ君?大丈夫?顔が青ざめてるよ?」

ロアが俺の顔をに覗き込み言ってきた。

ヤバい、下手したら年中命を狙われるんじゃ・・・

「ま、魔王軍がそう呼んでいたのか・・・となると安易にお前には手を出せないな。」

クレアが気になることを言った。

「え?賞金首になって年中狙われるんじゃないのか?」

「何を言ってる。さっきの話にも出てきた冬将軍のように賞金が掛かっていても手を出さないのが普通だ。それだけ強いってことだからな。それをそっくりそのまま魔王軍にも言い換えれる。魔王軍の連中も命は欲しい。むやみにお前には手を出せないだろう。」

それを聞いて安心した。寝首をかかれることもないのか。

「それで、冬将軍との戦いはどうなったのですか?」

結末が余程気になっていたのか凄い前のめりで聞いてきた。

「最初は五分五分で押したり押されたりしてたんですけど、途中こいつが無理と判断したのか泥沼魔法で中断させて逃げて帰りました。帰った後はこいつが完全に負けただのとグチグチ言って落ち込んでましたね・・・」

「そうですか、でも冬将軍と戦って生きて帰ってきたものは多くないので凄いことだと思いますよ。」

「そう思いますよね?それなのにこいつはまだ根に持っていやがる。」

俺を見ながら言った。

仕方ないだろ、あんな完全に差を見せ付けられたら誰でもへこむぜ・・・

その後はこのパーティーの日常生活等と色々話していた。

 

 

「皆様、今日はありがとうございました。とても有意義な時間を過ごしてもらわせてもらいました。今日は我が城でごゆっくりとお休みください。」

アイリス様が丁寧な挨拶をして自室の戻った。

「いや、第一王女って言うもんだからもうちょっと固苦しいのかと思ったけど、気を使ういい子だったな。」

王女の姿が見えなくなったのを確認してからフロットが言った。

「そうだね、ピリッとしてる印象を持ってたけど話してみるとそうでもなかったね。」

ノーツが同意した。

各々与えられた客室に戻っていった。

ガチャ

「やあ、待ってたよ。」

そこには昨日の義賊ことエリス様がいた。

「城に不法侵入って凄いですね。でもどうしてここが?」

「あたしを誰だと思ってるんだい?それに敬語は止めてよ。こっちでは盗賊クリスとして生きてるんだから。」

昨日の今日で敬語って普通だろ?

「ハイハイ、まずは本題に入る前にどうして女神様であろうあんたが盗みを働くかについてなんだけど。」

「えっと、それは・・・何て説明したらいいのかな、君も日本からの転生者なんだよね?その時に貰う神器が持ち主を失うとどうなると思う?」

「この世界のやつらが手に入れるなりなんなりするだろう。」

「うん、その通り。でも大抵の神器は本当の持ち主じゃないと強い効果が得られないんだけど、中には弱体化しても危険すぎる神器だってあるのさ。」

「あぁ、何となく分かった。要するにそんなものは財力のある貴族が手に入れやすいから回収に当たって貴族を狙ってたのか・・・」

「その通りだよ。」

確かにそれは真っ当すぎるくらいの理由だ。でも・・・

「それはいいんだが、義賊って呼ばれてるくらいだから当然神器以外を盗んでるんだろ?」

「うっ!そ、それは・・・ついつい不当なお金を見るとこれでどれだけの子供が助かるだろうって思ってついやってしまいました。」

心は女神だがやってることはな・・・一応犯罪なんですよね・・・

俺にはこの案件ジャッジ出来ないわ。

「そっすか・・・じゃあ、本題に入らせて貰う。雪那。」

「ふう、ちょっと心が踊りますね。」

まぁ、たぶんこの人が恩人だろうしな。

「君は変わった神器を持ってるね。」

「オーダーメイドだからな。っと本題本題。多分三十年くらい前になるのかな?ひでりうって言う人を知ってるよな?」

「え!?そ、そりゃあ知ってるよ。当時彼はこの世界の英雄だったからね。」

「その人の使っていた神器のこと覚えてます?」

「あれはたしか自我がある神器級の杖だったね。それが原因で彼は暗殺されたようなもんだよ。あれに関しては誰でも扱えるからね。速攻で回収に回ったよ。」

雪那の手を握る。今こいつは自分のせいで前の持ち主が殺されたと思っている。そんなことはない。殺したやつの性根が腐りきってるだけだ。

「実はこいつはその時に回収された神器の自我なんだ。」

「あ、あのときは本当にありがとうございました。」

ペコリと頭を下げた。

「え!?で、でも確かその自我は天界放して・・・まさかアクア先輩が!?」

当然驚く女神エリス。

「あの駄女神がやらかしてくれました。」

「ど、どうしてそんなことを・・・っ!?ま、まさか・・・き、君、その子に前の人に似てるって言われない?」

「こいつだけじゃない、他の人にも言われました。そんなことは今はいいとして、暗殺を命じた人分かりますよね?」

「・・・それを知ってどうするの?」

「軽く締める程度かな。」

「相手は貴族って分かってる?そんなことしたら君は死刑かもしれないよ?それにいくらその子の前の持ち主だからといって、そこまでする必要は無いんじゃないかな?」

「そうなんだけど、なんか引っ掛かるというか、ほっとけない出来事だと思うから。」

「ふーん、さっきの話。ほら、前の人に似てるって言う話。それに関係すると思う。」

「そうかもしれない。他人の出来事じゃないような気がするんだ。おかしいよな赤の他人で絶対に関わりがないのに。」

「絶対ではないよ・・・」

「いや、無理がある。さっきあんたが言ったように俺は日本からの転生者。その人と関わることはあり得ない。」

「・・・それがあり得るといったら?」

真剣な眼差しで言ってきた。

おいおい、前雪那が言ってた肉体転生か?

「なぁ、その人が亡くなった数日後に遺体が消えてた理由ってあんた分かるか?」

「分かるよ。肉体転生って言うのが原因だと思う。」

雪那の推理が当たりやがった。

「こっちからの世界でも転生が出来るのか?」

「偉業を成し遂げた人、英雄になった人には死後に特別な報酬があるんだ。あの人はどちらも成し遂げてるからどんな願いでも叶えることになったんだ。」

「その内容は?」

「争いのない平和な生活がしたい。というものだった。」

「その転生先が日本?」

「うん、こっちから向こうへ行くにはちょっと大変なんだ。そのため肉体ごと転生する必要があった。だから遺体が無くなった。」

成る程、納得はいった。争いのない平和な国が日本って言うのはどうかと思うけど。

「でも、それと俺が感じてる違和感がどう関係しているんだよ?」

「君、鈍いのか鋭いのかハッキリしてよ。ここまで来たら分かるでしょ?その子はすでに分かってると思うよ。」

口元を押さえてる雪那を見ていった。

「嘘、こんな偶然があるんですか・・・?」

え、超気になる。

「君がこっちの人にあの人と似ているって言われたんでしょ?それと君が他人とは思えない感情。それにその人は日本に居たという事実。これを掛け合わせて考えられる答えは一つ。」

・・・まさかな・・・

「君はその人の息子なんだよ。」

「っ!?でもあの人のステータスを知ってるだろ?俺には魔力の平均値しかない。あり得ないよ。」

「いや、君があの人に子供である確実な証拠があるよ。その紅く輝いてる目だよ。」

「こ、この目は遺伝だったのか・・・?人間のリミットを解除するものだと思っていた。」

「多分、リミッター解除って言ってるけど実際には本来の力が出ているんじゃないかな?紅魔族としての。でもその分普通の人間として体の器が小さすぎるから疲れたり倒れたりするんだと思うよ。」

「そう、なのか・・・」

「多分、目が輝いてる時の君の魔力は桁違いだと思うよ。」

確かにこれがすべて雪那の恩恵とは考えられない威力が出るときがある。それはこれが理由だったのか・・・

「じゃあ、英雄と謳われてた人はとんだ糞人間だったんですね。」

借金を作って消えたんだもんな。

「君はその話を信じているの?おかしいと思わない?残った借金は誰が払っていたのさ。」

た、確かに。前の母さんは父さんが居なくなった後、精神が限界で働くことが出来なかった。

祖父も祖母もすでに他界していて・・・借金が何百万あるとは聞いていたが借金取りが来ることもなかった・・・

まさかの嘘?どうしてそんなものを・・・

「多分、君のお母さんはお父さんが異世界の住人だったことは知っていたんじゃないかな?向こうに行っても魔法は使えるし・・・」

なんだと?向こうに行っても魔法が使えるのか?

「君がお父さんに未練を持たないようにわざと嘘を言ったんだと思う。すでに居ないお父さんを求めることがないように。」

「・・・」

「ご主人様?」

「・・・誰なんだ?」

「「え?」」

「父さんを手にかけたやつは誰だと聞いてるんだ。」

「軽く締めるだけなんだよね?」

「感謝の意を込めて殺す。」

「だ、ダメだよ。人を殺すなんて絶対にしてはいけないことだよ。そんな人には教えられない。」

「ご主人様、正気に戻ってください。あなたが人を殺すなんて言うはずがありません。」

「俺は正気だ。その貴族のお陰で俺はここに居れる。だけど、そいつは俺の肉親を殺したんだ。それに雪那にも多大な責任を負わせた。それだけのことされて頭に来ねえやつは居ねぇ!」

「い、今のあなたは正気じゃありません!目が、目が優しくないです。お願いですからいつものご主人様に戻ってください。」

「教えろ!」

俺はクリスに掴み掛かった。

パシッ

頬が痛い。

「あなたはいったい何をしてるんですか!?そこまでして人を殺めたいんですか!?」

俺は何をしようとしてたんだ・・・人殺しを?

寒気が襲ってきた。人殺しを平気でしようとしてたのか?

「ちょっとあなたに失望しました。少しの間離れさせてもらいます。」

雪那が部屋を出ていった。

待ってくれ、置いていかないでくれ・・・

「君の気持ちは分からなくもないけど非人道的な事を考えるのはもうよしなよ。今度会ったとき、君がもうその気持ちを抱いてなかったらその人を教えてあげる。」

そう言ってクリスことエリス様が部屋から消えた。

ははは、やっちまったな・・・

自分の神器に愛想つかされて、人殺しをどうとも思わなくて、どうしようもない人間だな。

ガチャ

「ショウタさん、お姉ちゃんが夜這いにき・・・どうしたの?」

「帰ったんじゃないのか?」

昨日の祝勝会で帰ったと思っていたセシリーが部屋の入り口の前にいた。

「ショウタさんと寝ないと帰れないなって思ってたんだけど、何かあったの?」

「別に・・・」

「もうホントに素直じゃないんだから。何もなかったら涙なんか流さないわよ。お姉ちゃんに話してみなさい。」

俺は水が流れるように今までのことを話した。

「そう、その気持ちは仕方ないと思うんだけど、やっぱりよくはないわよね。でも人間なんだから別にそれでいいのよ。多分、雪那ちゃんもそこのところしっかり分かってると思うの。今はあなたに立ち直る時間が必要だと思って離れたんじゃないかしら?」

誰だこの人?

いつも煙たがってるこの人が今は凄く傍にいて欲しい。

「セシリーさん、今晩暇ですか?」

セシリーは優しく抱き締めてくれた。

 

 

まず最初に感じたのは解放感、とうより直接布団に触れている感覚。

バサッ

「俺は寝るときにズボンは穿かない時はあるが上半身真っ裸で寝る趣味は無いぞ・・・」

隣を見る、すぐさま目をそらす。

?????

え?待って。何が起こったの?昨日の夜セシリーが来たのは覚えて一緒に居てくれって頼んで寝たのは覚えてるけど、これは知らない。

横にはチラリとしか見てないが多分産まれた状態で寝ているセシリーが居た。

取り敢えずもう一度寝よう。もしかしたら夢かもしれない。

ドサッ

倒れこみ、目を閉じる。

・・・・うん、夢じゃないな。眠くないもんな。あんなの見たら眠れないよな。

取り敢えずご本人に聞いてみないと分からない。

「すいません、セシリーさん?起きてください。今とんでもないことになってるんですよ。」

状況ことんでもないが下もとんでもないことになりかけてる。というか敬語になってる時点で結構焦ってるな。

「ん、あ、おはよう。」

なにさらりと挨拶出来てんだよ。

「この状況なんです?」

「え!?昨日のこと覚えてないの?あの後ショウタさんが私の服に手を掛けてそのまま・・・」

顔を赤くしながら言うセシリー。

「そ、そんなの覚えてない!」

「というのは冗談で、私は元々服着ないで寝る人で、ショウタさんの場合は寝苦しそうだったから脱がせただけよ。」

よ、よかった・・・間違いなんか起ころうものならホントにこの人を養わなくてはいけなくなる。

「危うくセシリーさんを養わなくてはならなくなるとこだった・・・」

「え?一回するだけでそうなるの?」

「そうじゃないんですか?」

「な、何て純情なのかしら・・・あ、もちろん私の体は清いままよ?心配しないでね?」

「誰もそんな心配はしていない。それより・・・早く服を着てください。」

まともにセシリーを見れない。

「うーん、どうしようかしら。あなたのその反応が可愛くて止めたくないんだけど・・・」

「恥ずかしくなんですか!?」

「恥ずかしいに決まってるじゃない。」

色々矛盾してるぞこの人。

「じゃあ早く着てください!」

「あの、普通の男性ならグヘヘ、良い体しやがって。少し触らせろよとか言うものよ?」

どこの変態だそいつは?

「そんなこと普通は言いませんから。早く着てください。」

「もう分かったわよ。」

何で俺の周りには変態・・・・雪那・・・

「はい、着替えたわよ。」

「ありがとうございます・・・あの、触れても良いですか?」

「っ!?ど、どうしたの急に。別にお姉ちゃん的にはスッゴく嬉しいんだけど・・・やっぱり触りたかったの?」

「人肌が欲しい。」

俺はセシリーに抱きついていた。少し焦ってたがセシリーは優しく返してきた。

ホント、どうしたんだろ。心のどこかに開いた穴を何かで埋めるのに必死になってる。

今さら自分の非人道的行動に恐怖を感じた。

まだ、殺したいと思ってはいるもののそれを行動に移すなんて出来ない。でも、少なくとも昨日の自分はそれが出来たのだろう。何の躊躇もせずに殺せたんだろう。

「人って自分自身でも分からない部分があって当たり前なの。それが殺人者の一面だとしても。それを受け入れて成長するものなの。ショウタさんなら多分すぐに受け入れられると思うわ。だってショウタさんは私が見込んだ人だもの。」

出会った当初はロリを引き連れてる羨ましい人だの言ってきてたのにどのタイミングでそうなった?

でも今はその言葉がありがたい。

 

 

あれから一時間くらいか時間がたった。

「ありがとう、もう大丈夫、離して。・・・早く離せ!」

「何言ってるの?こんな美味しい状況逃すわけないでしょ?」

こいつぶれないな!

「さっきまでは凄くいい人に見えたのに台無しだな!」

コンコンコン

「ショ、ショウタ君。起きてる?」

上ずったロアの声が聞こえた。

「お、起きてるけど何?」

「少し話したいことがあって・・・部屋に入ってもいい?」

「い、今はちょっと・・・」

こんな状況見られたらあらぬ誤解が生まれる。

『え?う、うん、分かった。』

あれ?誰と話してんの?何が分かったの?

と、ドアに手をかける音が聞こえた。

え、ヤバい!何で勝手に入ってこようとしてんの?

ガチャ

「失礼します。え・・・」

「入ってくんなって言ったのに・・・」

「せ、雪那ちゃんがこういうときは強引に入った方が特をするって・・・」

ロアは手に『雪那』を持っていた。

すぐに擬人化して、

「ご、ご主人様!浮気ですか!?」

「ち、違っ、そもそも浮気もくそもなねぇだろ!俺達は別に付き合ってるわけでもないだろ?」

「でも、どう見てもご主人様が抱いてるように見えるんですけど?」

「ち、違うくはないけど・・・でもそんな気持ちは無い!」

「でも昨日は『今晩暇ですか?』って誘ってきたじゃない。」

「!?もしかしてご主人様の初めてがこの人だなんて・・・」

「んな訳ないだろ。セシリーも紛らわしい言い方するな。」

頭が痛くなる。

「ショウタ君大丈夫?」

「はぁ、ロアと結婚しようかな・・・」

心配してくれる常識人ロアを見ていった。

「「「え!?」」」

「私というものがありながら何を言ってるんですか!?」

お前は俺のなんだ?確かにこいつは容姿は完璧だ。しかし、こいつの妄想力に俺に対する執着するド変態っぷり・・・ダメ神器だ。でも、何だかんだで俺を大事にしてくれ、よき理解者だ・・・あれ?けなそうとしてたのにいつの間にか褒めている・・・?

「も、もうご主人様ったら・・・」

頬を染めて体をくねらせている。またこいつは・・・

「勝手に読んでんじゃねぇ!」

枕を投げつけた。

「投げるならご主人様が使ってた方を投げてくださいよ!」

こいつもぶれないな。

「せ、雪那ちゃんってアクシズ教に向いてるとは思わない?」

ワクワクしながらセシリーが言ってきた。

「向いてたとしても入れさせないから安心しろ。」

正直、俺の周りにはアクシズ教に向いてる奴等が多い。(現パーティーメンバーを除く)

「それよりショウタさん。」

「何だよ?」

「あの子固まってるけど大丈夫なのかしら?」

セシリーが指を指した先にはショートしてるロアがいた。

「え!?ろ、ロア!大丈夫か!?あ、気絶してる。」

え?どこに気絶する要素があったんだ?

ロアを横にさせ膝枕をした。

「取り敢えず『フリーズ』っと。」

顔が熱かったので手に冷気を纏わせて顔に当てた。

「あ!ロアちゃんずるい!ご主人様!私にもしてくださいよ!」

「こんなところでわがまま言うな!」

「ショウタさん、私にはしなくていいから代わりに抱きつかせて。」

「あんたの願望はさっき叶ってただろ!?」

「じゃあ、私の願望も叶えてくださいよ。」

「嫌だ。」

ギャーギャー騒ぐ雪那を横にロアを冷やし続けた。

 

 

あれから十分が経過した。

雪那は騒ぎ疲れたのか俺の肩に顔をもたれさせてる。

セシリーといえば、

「ショウタさんって面倒見がいいのね。」

俺の横で微笑みながらそう言った。

「何を今さら。アルカンレティアの時も紅魔族三人連れて面倒見てただろ。」

「そうなんだけどね、でもこうして近くで見ると改めて思っちゃうのよ。」

感慨深そうに言った。

「いつものそんな感じだったらセシリーこと好きなったかもしれないのにな・・・」

「あら嫌だわ、ショウタさんにはありのままの私を好きになって欲しいもの。それに、皮を被って生きていたら楽しくないでしょ?」

「確かにな。」

日本で皮を被りまくってた俺にとっちゃ一番わかる感情だ。人の顔色を見て態度を変える。もうあんな生活はしたくない。

「ん、んー。」

ロアが目を覚ました。

「おはよ、ロア。」

「え、あ、おはよう。」

状況が飲み込めないのか取り敢えず挨拶をしようみたいな反応をとっていた。

「私にもそんな素敵な顔でおはようって言われたかったなぁ。」

あの状況で笑えるほど余裕があるやつはいないと思う。

「あんたに関してはアルカンレティアでショタ声で言っただろ。」

「あれも良かったんだけど、美少年に微笑みながらおはようって言って貰いたいのよ!」

セシリーが喚いてる中、ロアがキョロキョロして状況飲み込めたようで、

「え!?あ、あのう、ショウタ君?ど、どうして私の顔に手を・・・」

「顔が熱かったから冷やしてたんだよ。具合はどうだ?」

「大丈夫・・・へ!?」

俺の足の付け根を見ながら声をあげた。

「ん?どうした?」

「ひ、膝枕・・・?」

今さら気付いたのか。

「ああ、冷やす時に楽だしな。」

手が軽く届くので自然体でもロアの顔を冷やせれた。

「はわわわ・・・」

「おい、大丈夫か?また熱くなってきてるぞ。」

『フリーズ』をまた纏わせて顔に当てた。

「ひゃっ!?し、失礼しました!」

飛び起きるなり颯爽に部屋を出ていった。

「冷たすぎたのかな・・・?」

「「この天然たらしめ・・・」」

いつの間にか起きてた雪那とセシリーが言った。

「た、たらしじゃねえし!」

 

 

「ご主人様、もう心の整理はできましたか?」

「ああ、悪かった。そしてありがとな、雪那。」

軽く顔に手を当てた。

「こほん、ショウタさん。私もここに居るのをお忘れなく。」

「わ、忘れてない。これは・・・そう、犬と飼い主のスキンシップみたいなもんだ。」

「ご主人様・・・?」

後ろを振り向くのが怖い。

「結局ショウタさんはその人を殺したいって今も思ってるの?」

「ああ、でも殺れるほどの度胸は今の俺にはない。」

一瞬雪那の顔が強ばったがすぐに安堵の息を漏らした。

「でも、いつかは絶対に殺らなきゃいけないと思う。その時は、雪那。俺を許さなくていいから見守っといてくれ。」

「・・・はい、分かりました。」

笑顔で言ってくれた。

コンコンコン

「ショウタ。起きてるか?」

ノーツ達と思ったがノックしたのはクレアだった。

「起きてる。」

ガチャ

「朝食の準備が・・・せ、セシリー殿!?昨日の内にアルカンレティアへ帰ったのでは・・・?」

「いや、ショウタさんと寝たかったからつい・・・」

「あれほどショウタには手を出すなと言ったのに・・・!」

「お陰様で裸のお付き合いが出来たわ。」

「「な!?」」

「おいセシリー!誤解を生むような発言するなよ!こいつらの妄想力は凄まじいんだから。」

慌てて雪那とクレアの誤解を解いた。

「だとしても・・・」

「何?クレア、お前に関しては俺を風呂に連れ込んで襲っただろ?」

「「え!?」」

今度は雪那とセシリーが声をあげていた。

「クレアさんって思ったより大胆なのね?」

「ご、ご主人様が他の人にそんなことを・・・」

「お前も言えた立場じゃないからな?お前は家で風呂に犯す気満々で入ってきただろ?」

「うぐっ!?」

クレアとセシリーは驚きもせず納得している。

「ふ、二人とも!何で驚かないんですか!?」

「いや、雪那がやってもおかしくはないなと・・・」

「そうそう、雪那ちゃんってショウタさんに凄い執着心があるからいつかはやると思っていたから・・・」

「ひ、酷いです!私をそんな風に見ていたなんて・・・いいですよ。お二人がそう思っていたなら仕方がない。これからはいつでもご主人様を襲いますからね!」

「や、止めろ!」

ほとんど悲鳴に近い声をあげた。

「せ、雪那ちゃん。落ち着きましょ?さっきのは言葉の綾というか・・・!」

「そうだ、そこまでショウタのことを思ってるというか・・・!」

どう考えても言葉の綾ではないと思うが・・・

「ふふふ、冗談ですよ。そこまで必死にならなくてもいいじゃないですか。」

必死になってる二人に対して余裕の笑みを浮かべてる雪那。

「そ、そういえばクレア。あいつ等は?」

その場の空気を打開しようと言った。

「え、あぁ、ノーツ殿達は先に食べてると思うが、ロア殿は部屋に籠っていて・・・」

「ご主人様のせいですね。」

「ショウタさんのせいね。」

二人揃って言った。

「何でそうなるんだよ!」

「え、どう言うことだ?」

「ご主人様の癖ですよ。」

「あぁ、あれな。」

冷ややかな視線がこっちに向けられた。

「な、なにもしてない!」

「「「これだから天然は・・・」」」

その天然の意味をよく教えてもらいたい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

朝食を食べ終わって一息ついてたら、

「ショウタ様、ちょっといいですか?」

見計らったようにレインが話しかけてきた。

「どうしたんです?」

「その、アイリス様の剣の稽古に付き合っては貰えないでしょうか?」

 

 

「せいっ!」

うおっと!?マジかよ、これが11歳の力かよ・・・

現在俺はアイリス様と木剣で試合をやっている。

しかし、アイリス様の剣の腕がここまでのものとは思いもしなかった。下手したら兵士よりも強い。これが血筋ってやつか・・・

しかし、まだ柔い所がある。重心の使い方や間合いの感覚等が所々不足している。

こう軽くずらせば・・・

「え!?ああぁ!」

「よっと、大丈夫ですか?」

勢いに乗りすぎてそのまま倒れそうになったアイリス様を抱え込む。

「え、ええ。ありがとうございます。それにしても何故今バランスを崩してしまったのでしょうか・・・?」

「俺が崩させたんですよ。」

「そ、そんなことが!?い、一体どうやってやったのですか?」

前のめりになって聞いてくるアイリス様。

「え、えっと。アイリス様の剣術は素晴らしいものなんですが、重心の使い方や間合いの感覚がまだ未完成なんです。今回の場合はアイリス様が過剰に前に重心を置いたことや、俺との間合いが少し遠かったんです。だから、こう剣を斜めに傾けてアイリス様の剣を滑り落とさせました。それに加え、間合いがもう少し近ければ上手く相手に重心を掛けることが出来て崩れることもなかったと思います。」

「す、素晴らしいです!この短時間でそこまで分かるなんて・・・それに剣を傾けて滑り落とす技術、普通の人は出来ませんよ。」

「慣れれば出来るようになりますって。では、まず重心から教えますね・・・」

アイリス様の剣の稽古は今日限り俺が指導することになった。

 

 

「今日はありがとうございました。」

「いえいえ、こちらも貴重な体験が出来たので・・・」

稽古が終わりアイリス様との挨拶をしていた。

「ショウタ様、今日は無理を言って申し訳ありませんでした。」

「いえ、今日は一日暇でしたし。」

この人は貴族なんだからもうちょっと気を張ってもいいと思うんだが・・・

姿勢が低いレインを見て思った。

体を動かしたから喉が渇き、今朝朝食を食べたところに何か飲み物がないか見に行った。

「あれ、ロア。今ごろ食べてたのか。」

そこには遅めの朝食を食べてるロアがいた。

「ショ、ショウタ君!?どうしてここに?」

「どうしても何も、何か飲み物あったらなぁって。」

「そ、そっか。」

可笑しな奴だな・・・

「なぁ、隣いい?」

「え!?」

「一人で食べてたら寂しいだろ?」

「・・・うん。」

それを聞くとロアの隣に座って水を飲んだ。

スッ

ロアが若干離れた。

俺嫌われてるのかな?

「ショウタ君、雪那ちゃんは?」

どうしてそんなことを?と思ったがまぁ、いつも一緒にいて今日はいないから不思議なんだろう。

「部屋でゴロゴロしてるんじゃないかな?」

俺が今朝使った枕を嗅いでそう。

「そうなんだ・・・」

ススッ

離れてた距離がもとの距離、いや、近くなってる。

よかった、嫌われてなかった・・・

「そういえば今朝のやつ。大丈夫だったのか?」

一瞬ロアがピクッと動いた。

「ロア?」

「も、もう、大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね?」

「迷惑だなんてそんな。いつもロアには世話になりっぱなしだからな。回復とか補助魔法、それに心の癒しになってくれるし。」

二ヶ月前まではダメ人間に囲まれた生活だったから、ロアみたいな常識人との交流は精神的に助かる。そういった意味ではホントに癒される。

「!?そ、それが本当なら嬉しいな・・・」

「ここで嘘言っても何の特にもならんだろ?」

「そ、そういうことじゃなくて!もう、やっぱりショウタ君はずれてるよ。」

「えー、そんなにずれてる?自覚がないんですけど・・・」

「もっとショウタ君は色々と自覚した方がいいよ。」

「そんなこと言われてもなぁ・・・」

一体何を自覚すればいいのやら・・・

「ごちそうさまでした。ショウタ君、このあと暇?」

「うーん、うん。暇だな。」

このまま部屋に戻っても惰眠を貪るだけだしな。

「そ、そう、それじゃあ王都を案内してよ。」

「いいけど、俺もそこまで詳しくないぞ?」

基本父さんと歩いた所しか知らない。

「ショウタ君が知ってるとこでいいよ。」

 

 

「もう一声!」

「ど、どうしてこうなったの・・・?」

「お、お客さん、これ以上は・・・」

例のごとくNEGIRIをやっていた。

軽い気持ちで市場を通ったらマナタイトを見かけ、血が騒いで思わず値切っていた。

「まだ行けるはずだ!その値段だと三個・・・いや、四個だな。」

「!?」

「決まりだな。その値段で四個貰おう。」

「ショ、ショウタ君。その値段はちょっとお店の人がかわいそうだよ。」

「そうか?案外平気そうな顔に見えるけどな。」

俺だって鬼じゃない。まだ利益が出るくらいでおさめてるはずだ。

「はぁ、あなたには負けましたよ。いいでしょうその値段で売らせてもらいます。」

「ええ!?いいんですか?こんなの破格ですよ?」

「ま、まぁ、かなり損はしますが利益がとれない訳じゃないですし・・・」

「だろ?」

思いもしない買い物をした俺たちは市場を抜けて飲食店が建ち並ぶ街道へ出ていた。

「うわっ、人がうじゃうじゃ居る・・・もう昼時か。なんか食べるか?」

「え、あ・・・」

「え、あそっか。さっき朝食食べたばっかなんだよな・・・そうなると、あそこかな。」

路地にある隠れ家的な喫茶店を指した。

「よくあんなところにある店を見つけれたね・・・」

「前に王都に来たときに見つけたんだ。暇があれば行こうと思って。」

カランカラーン

ドアを開けて中に入った。

中は外と違い静かで、今にもクラシック曲が流れそうな雰囲気を醸し出している。

ワックスを丁寧に掛けられている木の床に自分の顔が写った。

良いとこを見つけたな・・・

「いらっしゃいませ、こちらの席にどうぞ。」

出向けてくれたのは初老の男の人だ。ついマスターと言いたくなってしまう。俺達はカウンター席に案内された。

客は多くないが確実に常連の客がいそうだ。

「こちらがメニューです。御決まりになりましたら、そちらのベルを鳴らして下さい。では。」

そう言って立ち去った。

どうやら店員が他にいない所を見るとあの人がマスターなのだろう。

ゆっくりメニューを眺めていると、

チーン、チンチンチーン!

どこかのアホが場の雰囲気を壊すような音を鳴らした。

「呼んでるんだから早く来いよ!こっちは腹空かせてんだよ!客を待たせてるんじゃねえよ!」

今時居るんだな、こんな典型的なチンピラが・・・こんなに居たら迷惑なんですけどね・・・

チンピラは四、五人居た。

「お待たせしました。」

律儀に対応するマスター。

「おっせぇよ!たいして客がいないんだからもっと早く来いよ!」

マジなんなんあいつら?一発入れていいっすかね?

「ショウタ君?」

ロアが肩を叩いて話しかけてきた。

「ん?どうした?」

「えっと、その、ちょっと怖い顔してたから・・・」

そっか、顔に出てたのか・・・気を付けないと喧嘩とか売られそうだな・・・

チーン

少ししてからメニューを決めベルを鳴らした。

「はい、何でしょうか?」

「このクリームスパゲティとブレンド一つ。ロアは?」

「えっと、このサンドウィッチセットを。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

マスターがカウンター越しで料理をし始めた。すると、

「っまっず!?なんだこの料理?コーヒーもにげぇし。こんなもんに金が払えるか!おい、帰ろうぜ。」

さっきのチンピラ風情共等が喚きだした。

「お、お客様。お会計を・・・」

「あんな物に金を払えだぁ!?頭湧いてるんじゃねえのか?」

もう殴っていいかな?いいよね?

ガタッ

「おい、お前ら!さっきからうるさいんだよ!折角の雰囲気が台無しじゃねぇか!」

「ねぇ、君達!さっきからうるさいよ!折角の雰囲気が台無しじゃないか!」

一瞬ビックリした。まさか同時に文句が言う人が居るとは・・・

「なんだ、兄ちゃん達!気取ってんじゃねぇぞ!?男二人ががりでもこの人数に張り合おうってのか?」

いや、文句を言っただけだし別に喧嘩しようなんて・・・いや、殴ろうとしてたのは事実ですけどね?

「お、男!?ね、ねぇ、あたし女だよ?」

隣の人が少し動揺してる。あれ?そう言えばこの声、どこかで聞いたことのあるような・・・

「嘘つけ!どっからどう見て女に見えるんだよ!確かにかわいい顔はしているけど。」

褒めるとこは褒めるんだな・・・それなら料理もしっかり褒めろよ・・・

「とりあえず金を払っていけ。そしたら殴らずにいてやる。」

「なめんなよ!こっちは五人、そっちはたったの二人。勝ち目あると思ってんのかよ!?」

あるだろ。

「そっかぁ、それじゃあおやすみなさい。」

結局、チンピラ五人は地べたに寝そべっていた。

「き、君凄い・・・あれ!?」

「え、あ・・・」

なんと一緒に文句を言った人はこともあろうかあの女神エリスだった。

「エリ・・・」

「こほん、クリスだよ。」

「く、クリス。どうしてここに?」

目で殺された俺は疑問に思ったことを聞いた。

「王都に居るときはよくここに居るんだよ。こっちに知り合いが居る訳じゃないし、行く宛もないから。」

そっか、この人は神器回収の為にこっちに来てるんだよな。

「普段は『アクセル』って言う街で活動してるんだ。もしよかったら今度来てよ。」

「暇があったらな。」

伸びてるチンピラ五人を縄で縛りながら言った。

「所で君はこんなところで・・・ははーん、なるほど・・・」

クリスはロアを見て何かを納得していた。

「何が成る程なんだ?」

「いや別に。」

なんだこの人?

「いや、お客様方。ありがとうございました。」

マスターがお礼を言ってきた。

「いえいえ、はい、これこの人達の分。」

俺はチンピラから財布を取り、代金を支払った。

「それ窃盗罪に入らないのかな・・・?」

「入らんだろ。そんなの言ったらあんたがやってる・・・」

「わああぁ!分かったよ。お願いだからそれを軽々しく言わないでよ・・・」

「あ、ありがとうございます。では、お二人には新作のコーヒーをサービスさせてください。」

代金を受け取ったマスターがそう言ってくれた。

「え、じゃあお言葉に甘えて。」

「あ、あたしはいいかな・・・」

「まぁまぁ、折角のご好意だから貰っとけよ。」

クリスの背中を叩いて席に戻った。

「あの人知り合い?」

「ちょっとしたな。拝んどけりゃなんか良いことあるかもしれないぞ?」

「な、ないよ。何言ってんのさ。」

そう言って俺のとなりに座った。

「それにしてもショウタ君凄いね。息をつく間もなく倒しちゃうもんね・・・」

気絶してる五人を見てロアが呟いた。

「よっぽど対人戦に慣れてないとこれは無理だよ・・・」

そうかな?敏捷性があれば行けると思うけどな・・・

「警察遅いな・・・」

そろそろ到着すると思ってたけど結構遅いもんだな。

「苦っ!?」

コーヒーをすすっていたロアが顔をしかめていった。

「無理するなよ。砂糖でも入れたら?」

「ショウタ君はよく平気で飲めるよね・・・」

「慣れてるからしゃーない。」

カランカラーン

「失礼する。店で暴れた被疑者の身柄を確保しに来た。」

暴れたって・・・暴れたの俺ですけどね・・・

「どーぞ。そこに転がってる人たちです。」

「うむ、確かに。いやぁ、こいつらは無銭飲食の常習犯で逃げ足が早く困ってたんだ。ご協力感謝する。」

そう言って警察の人が五人組を引きずっていった。

「あれ、将来のお前の姿な。」

「な、なんて事言うのさ!」

「あの人にも将来世話を掛けるんだから今の内に挨拶しとけよ。」

「き、君って奴は!」

「な、何の話をしてるの?」

放置されてご機嫌斜めなのか、声が若干低いロアが聞いてきた。

「いやこいつがぬs!?んーんー!」

「な、何でもないからね?そんなことより二人は付き合ってるのかな?」

無理矢理話題を変えようとするエリス様。

いくら話題がないからってそんな話を振られても困る。

「へ!?そ、そそそ、そんな、つつつ、付き合ってるだなんて・・・!」

おい、動揺しすぎてないか?

「んーんーんー!」

「ダメだよ。君はまた余計なこと言いそうだから、しばらくこのままね。」

何言ってんの、この人?

女神様がこんなことしていいものなのか?

「そっかぁ、その反応は付き合ってないんだね。」

コーヒーをすすりながら言った。

「んーんー?」

「もう、しょうがないなぁ。余計なことを喋らないって約束するならいいよ。」

しょうがないなぁってふざけんなよ。

俺は離して貰うべく仕方なく了承した。

「ぷはぁ、最近口を塞がれることが多い気がする。」

「余計なことをするからだよ。それよりホントに付き合ってないの?」

なぜこの女神様はこんなに興味津々で聞いてくるんだ?

「ああ、さっきのそいつの反応通り付き合ってない。」

「ふーん。」

なんだその目は?

「そう言うクリスはどうなんだよ?」

「それがさ、何でか女の人ばっか言い寄られるんだよね・・・」

「そ、それは・・・ドンマイ。」

いつも何も感じないコーヒーが苦く感じた。

「そ、それより。さっきからクリスのせいでロアがショートしてるから何とかしといて。」

本日二回目のショートをしたロアを指して言った。

「え!?あたしのせい?」

驚いてるクリスを見ながらどうやって犯人を聞き出すか考えた。

極力嘘はつきたくない。というかついたところでばれそうな気がする・・・

「なぁ、クリス。犯人教えてくれないか?」

ロアを介抱してるクリスに聞いた。

「・・・君はそれを知ってホントに殺すのかい?」

急に険しい顔になった。

周りの空気が重く感じられる。

「今は出来ない。でも、いつかは殺らないといけない気がする。」

「殺しはダメだよ。でも、君が自分の親の犯人を知らないって言うのは可愛そうだから教えてあげるよ。でもホントに殺っちゃダメだからね?そんなことをしようとしたら女神の力で直ぐにこの世界に降りて止めるからね。」

そんなに念を押されても・・・

「止めれるなら止めてくれ。俺だって殺りたくない。でも殺らなくちゃならない衝動に駆られる。」

不思議な気持ちだ。表では殺りたくないって思ってるけど心のそこでは殺らなくちゃいけないと思っている。

「分かったよ。必ず止めるからね。で、犯人なんだけど・・・アクセルの領主アルダープ。」

思ったより大物だった。

「・・・そうか。ありがとう。そのうち、必ずそのうち、そいつの家で会おう。」

そう言って気絶してるロアを抱えて、

「マスター、これ勘定。」

代金を支払って店を出た。

最後にクリスが少し笑ったような気がしたが気のせいだろう。

「さて、これどうしたものかな・・・」

気絶、いや、健やかに眠ってるロアを見て考えた。

領主アルダープ。必ずお前に制裁を下してやる!

顔も知らない憎き相手に向かって心の中で強く叫んだ。




はーい、ねこたつむりですよ。
最近紅魔組が出てきてないですね・・・
あらすじに紅魔族と楽しく過ごす物語はどこへ行ったのやら・・・
はい、ということでなんと主人公が実は紅魔族ということが発覚しました!
あ、これは予想外とかではなくちゃんとした予定通りの設定ですよ?嘘じゃないですよ?
お父さんがバリバリの最強ステータスだったのに主人公の魔力と生命力が少ないのはきっと母親が少なかったんですかね?まぁ、そんなことは知りようもないんですが・・・
てことで、今回も読んでくださりありがとうございます!
次回も読んでくださるとありがたいです。


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ひでりう

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
サブタイ通りひでりうさんメインのお話です。


私の名はひでりう。一応紅魔族の一人なんだが・・・

「我が名はぷっちん!紅魔族随一の新米教師にして、やがて校長の椅子に座る者・・・!」

お前が座るのはトイレの便器ぐらいがお似合いだ。

私には少し、いや、大分紅魔族の感性とやらが備わっていない。いや、別にいいんだけどね?

「よう、ひでりう。最近の研究の調子はどうだ?」

「・・・なんだ、次期族長じゃないか。」

「その呼び方やめてくれないか?」

「やだ断る。」

「・・・まぁいいだろう。で、どうなんだよ。前に話してた杖、出来そうか?」

「その杖ならもう完成している。中々良い出来だ。ほら。」

私は既に持っている杖を見せた。

「おおぉ!これは凄いな。魔力が溢れ出しているのが分かる。というかこれ神器並みじゃねぇか。」

確かにそれほどの魔力を感じる。まぁ、本気で作ったんだからこれくらいじゃないと困るんだが・・・

「流石は紅魔族随一のアークウィザードだな。これなら邪神も屠ることが・・・」

何言ってんだこいつ・・・

妄想に浸ってる奴はほっといてさっさと用事を済ませておこう。

「お、おい。待てって!」

なんだ?まだ付いてくるのか?

「聞いたぞ。お前、明日ここを出るらしいな。」

「・・・ああ。」

この杖が完成したので里に残る理由もなくなった。

「何も言わないで出ていくなんて酷いじゃないか。」

「どうせ、また会えるんだ。言う必要性が感じられない。」

「どうしてお前はそう無愛想なんだ。そんなんだとろくに仲間も見つけられないぞ。」

呆れた目をする次期族長。

「心配いらない。一人でもやっていける。」

何処から沸いてきたのかそんな自信があった。

「はぁ、そんな性格してるから友達がっ!?わわ、悪かったって!そんな目をするなよ。」

とりあえず目で殺した。

「友人は確かに必要だが多くなくて良い。頼りになる友人が一人でも良い。お前みたいなやつとか。」

「!?そ、そんなこと言って恥ずかしくないのか?」

俺からすればお前らの自己紹介の方が恥ずかしい。

「問題ない。それじゃあな。」

「ちょっと待ってくれ。ほらこれ。」

そう言って渡してきたのは紅魔族のお守りみたいなものだった。

「こ、これは・・・私にはそんなに友人がいないと思うんだが・・・」

結構な量の髪の毛が入っている。

「お前はそう思ってるかもしれないが、案外お前は里のみんなから慕われてるんだ。まぁ、そんな性格だから近づきがたいんだろうけど。」

「そうか・・・ありがとう。」

そう言ってその場を立ち去った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい、あんたもしかして紅魔族か?」

私は里を出て早一ヶ月が過ぎようとしていた。私は現在王都に拠点を置いている。

「・・・そうだが。」

「良かったら是非うちのパーティーに来ないか!?」

「おいおい、抜け駆けは無しだぜ。兄ちゃん俺のとこ来いよ。こいつらのとこよりは面子が揃ってるぜ。」

成る程・・・

「何言ってるんだ。君のとこはプリースト以外脳筋だろ?しかもそのプリーストも気が付いたら前衛に突っ込んでる始末・・・そんなのとは違う僕のパーティーに来ないかい?」

紅魔族の野郎共が里を出たがらない理由がわかった。この人等めんどくさい・・・

「すまんな、私はパーティーを組みたい訳じゃないんだ。他を当たってくれ。」

残念だなぁ等々を言い残して散っていった。

『良かったんですか?ご主人様一人でやっていくのは無理かと・・・』

いきなり脳内に直接話しかけてくる奴がいた。

その正体は私が作り出した杖だ。名前は決めてない。というか道具に名前をつけるのもおかしな話だ。

「いいんだ。私は金稼ぎで冒険者をやってる訳じゃないし・・・」

そう、私は趣味程度で冒険者をやってる。そんな奴が本気で稼ごうとしている奴等に紛れたら迷惑きわまりない。

『そうですか、では今日のクエストは・・・』

「一撃熊二体同時討伐だ。」

『結構お手軽な奴を選びましたね。』

「はぁ、うるさい。少しは黙れ。」

『は、はい。』

 

 

グガァァ・・・

ズーンッ

「クエスト完了。骨がないな・・・」

そう言ってテレポートで王都に戻った。

「どうぞ、これが今回の報酬です。でも、凄いですね。一撃熊をこんなにあっさりと倒すなんて。しかも二体もですよ!?」

嬉々として声をあげる受付嬢。

「そんな大したことでは・・・失礼します。」

昼食を食べるため席についた。

『魔王軍襲撃警報、魔王軍襲撃警報!騎士団はすぐさま出撃。冒険者の皆様は、街の治安維持の為、街の中へのモンスター侵入を警戒してください。高レベルの冒険者の皆様は、ご協力をお願いします!』

はぁ、昼御飯はお預けか・・・

私が王都に身を置いてる理由は魔王軍と戦うためだ。平和な世界でのんびりと暮らしたい。

もちろん紅魔の里はアークウィザードが多くいるので滅多に魔王軍は来ないが何時来てもおかしくはない。なら私が魔王軍を叩けば・・・というくだらない発想に至った。

 

 

「『インフェルノ』!」

この杖の効果は使用者の魔力を底上げしてくれる。

よって、

「全軍撤退!これ以上の負傷者を出すな!」

魔王軍の司令官だろうか?そんな指示を出している。

「逃がさん!『カースド・ライトニング』!」

黒い稲妻は広範囲にわたり魔王軍を薙ぎ倒していた。

「こ、こんなの人間がやることじゃねぇ!?この悪魔!鬼!バニル様程ではないが鬼畜!」

バニルって誰だ?それに魔王軍にそんなことを言われても・・・

杖を構えた。

「ひぃ!?に、逃げ・・・!?」

「『トルネード』!」

暴風が辺りを吹き荒らす。

なんと言うか、呆気なかったな・・・

 

 

ギルドに戻り臨時報酬を貰っていると、

「あ、あんたすげぇな。その若さにしてあの魔法。どうやって詠唱なしに撃てるようになったんだよ?」

「え、あ、生まれつきかな・・・?」

いきなり声を掛けられてビックリした。

「遺伝って奴なのかい・・・羨ましいねぇ・・・」

そう、私は12の時には魔法が使えるようになっていて詠唱要らずだった。

そのせいか周りから距離を取られて神童やら天才などと呼ばれていた。距離を取られるならこんな才能要らないと思ったがある時、

『お前、すげぇな!俺と友達になってくれよ。』

初めて友人が出来た。それがあの次期族長だ。私にとっては大切な友人だ。

そんな思い出に浸っていると、

「ひでりう殿はおられますか!」

ギルドの扉が開くなりそんな声が響き渡った。

声の主であろう兵士は私を見つけるなり近付いて来、

「国王様があなた様に会いたがっています。私との同行をお願いしたい。」

えぇ、昼御飯食べたいのに・・・仕方ない、逆らうわけにもいかないので我慢しよう。

「分かりました。」

『残念でしたね、ご主人様。』

ホントに黙れ。

 

 

兵士に連れられて謁見の間に入った。

「よく来てくれた。ひでりう殿。貴公は魔王軍との戦いに置いて素晴らしい功績を残したのでここに呼ばせてもらった。どうだ?私と一緒に食事でも。」

よくこの距離で声を響かせれるな・・・

それにしても、昼御飯を食べれるなら問題ない。

「では、お言葉に甘えて御一緒させていただきます。」

深くお辞儀をした。

そうすると連れてきた兵士が、

「それでは、ご案内させていただきます。」

連れられたのは豪勢な食事が並んだところだ。

ぎゅるるる・・・

「・・・・すみません。」

大きく腹がなった私は恥ずかしくて思わず謝ってしまった。

「はっはっは!若い者はそれで良いんだよ。さ、席に着きたまえ。」

意外にも優しい国王様に感動しながら席についた。

「さて、君の話でも聞こうかね?」

「そんな。私みたいな人生はそこら辺に生えている雑草のようなものです。聞く価値などないと思いますが・・・」

「何を言う。人の人生はどんな人であろうとも決してそんなことはない。だから話してみたまえ。」

「そう、ですか・・・では、・・・」

私は今までのことを話した。

「そうか・・・君は良い友人を持ったな。」

結局たどり着いたのはあいつの話だ。

「ええ、彼はこんな私でも気軽に接してくれ、すごく感謝しています。」

「いやぁ、いい話が聞けたよ。何か報酬をやらないとな・・・」

ガタッ!

「そ、それなら私を最前線に連れてって貰えないでしょうか!?」

すごい勢いで言ったので国王様もビックリだ。

「そんなことで良いのかい?確かに君のような戦力があれば助かるが・・・」

「問題ないです!」

こうして私は最前線に行くことになった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから三年が経過していた。いつの間にか私は英雄として崇められていた。そんなたまでもないんだが・・・

「ご主人様、今日もお疲れさまでした。」

私が作った杖は二年ほど前から擬人化の能力を取得していた。

当初はどうしてこんな能力がと思ったが、現在はこいつと共に魔法を発動させると威力が増すのでこれはこれで良いかなと思っている。

「はぁ、疲れた・・・」

「あの貴族めんどくさいですね。」

今日は貴族のアルダープという奴に呼ばれて会いに行っていた。

これは三ヶ月ほど前からかその男に他の高級な杖をやるからこの杖を寄越せと言われたのだ。当然そんなことも出来ず、今まで断り続けてきた。

「そろそろ諦めてくれないかな・・・」

「どうしてそんなに私に固執するんでしょうかね?」

多分理由はこいつが擬人化という特殊すぎる能力を持っているからだろう。こいつは杖の癖にかなりの美少女の姿をしている。

「でも、今日のあの貴族の顔はヤバかったですね。何かするんじゃないかと思いましたよ。」

確かに今日の顔は一見平常に見えたがよく見ると何かを決意したような顔をしていた。

「はいはい、変なこと考えないで寝る。杖に戻れ。」

「はーい。」

ふてくされたような顔をして杖に戻っていった。

私は布団に潜り目を閉じた。

 

 

目を開けたらそこはなにもない空間。いや、目の前にエリス様が座っていた。

「ひでりうさん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。」

何を言い出すんだこの女神は・・・

「えっと、私死んだんですか?何で?」

エリス様は凄く同情するように、

「あなたはアルダープの手先により暗殺されました。」

ほう、あの野郎、あの杖を手にいれるのにそこまでするか。人間のクズめ。

「あなたはあの世界で神器級の魔道具を作った他、英雄として活躍という功績を残しておりますので、願いを何でも一つ叶えて差し上げます。」

「何でも?」

「はい。」

「では、争いのない平和な生活を送りたいです。」

魔王軍と戦っていたのはそのためでもあるんだ。

「分かりました。あなたを日本という異世界に送りますがその際に注意点があります。一つは向こうでは魔法が使えますが、絶対に使ってはいけません。向こうの人は魔法という物に慣れていないからです。二つ向こうには何かしらの仕事に就かねばなりません。助言するならあなたは料理店で働くと良いでしょう。最後に向こうで生活出来る期限は十五年間です。それを過ぎてしまうとあなたの体は消滅してしまいます。つまり十五年後の日本時間、9月16日にあなたは向こうで消滅します。良いですね?」

「要約すると魔法禁止、働く義務、十五年間の生活で良いんですね?」

「はい、向こうにはモンスターなど危険な生物も居ませんし、安全に暮らせるはずです。」

「ありがとうございます。」

そんなところがあるんだな・・・

「では、魔方陣から出ないようにしてくださいね。」

「了解です。」

「あ、忘れてました。最後に一つ。あなたには戸籍がありません。こちらで用意させていただきますが、もうあなたの『ひでりう』という名前は使えません。英俊と名乗りなさい。」

ひでは残るんですね。そう思いながら頷いた。

「ではあなたに加護があらんことを。」

私の周りから光が溢れ思わず目をつぶった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こ、ここがニホンか・・・」

周りには凄く高い建物があったりどういう原理で動いてるか分からない物が大通りをかけていった。

「魔法がないとしたらどうやってあれを・・・!?」

今さら自分の服装が変わっていることに気付いた。周りの人はと何ら変わらない服装をしている。確かにローブなどを着ていたら目立ちすぎただろう。女神様のご好意だろうか?元の服は持っていた袋のなかに詰められている。

「それじゃあ、職探しをしますか。」

片っ端から飲食店を回ったが笑われて軽くあしらわれた。

「どうしてこうなった?」

普通は電話して面接の約束をするもんだと言われた。

電話って何?

思い詰めて公園のベンチに座っていると、

「隣良いですか?」

見上げると女の人が尋ねてきた。

「良いですけど・・・」

断る理由もない。それより仕事を何とかせねば・・・

「あなた、仕事を探してるのかしら?」

「へ!?何で・・・」

「私ね、さっきの店に居たのよ。で、あなたの格好を見てこれは何かあるなと思って付いてきたのよ。だってスーツでバイトの面接の約束もろくにせずにおかしいでしょ。」

笑いながらそう言った。

「し、仕方ないじゃないですか。右も左も分からないんですよ。」

「そこであなたに相談。うちで働かない?」

おいおい、いくらなんでも訳の分からない人にそんなことを頼むか?

でも私も困っていたところだ。騙されたと思ってやってみるか。

「私なんかでよければ・・・」

「良かったぁ!実は料理が出来る人を探してたのよ!」

「待ってくれ、料理が出来るってどうして知ってるんだ?」

「え、だってあなた、さっきの店で料理には自信がありますから・・・って言ってたじゃないの。」

おう、そうだった。

「それじゃあ、これからよろしくお願いします。」

こうして晴れて仕事を見つけることが出来ました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぅ、もうこんな時間か。そろそろ店仕舞いだな。」

雇われて早二年。あの人は山中美琴と言い、雇われた所は小さな料理店で、どうやら美琴さんの親父さんがやっていたらしいのだが、病気で店に立つことが出来なくなったらしく、料理が出来る人を探していたらしい。お袋さんは既に他界しているらしい・・・

「親父さん。店閉めましたよ。」

「おおぉ、英俊君。ありがとう。君のお陰で店が復活できた。ホントにありがとう。」

「いえいえ、こちらとしては住み込みで働かせて貰ってることに感謝してるんです。礼を言うのはこちらです。」

深く頭を下げた。

「それで、英俊君。君に相談があるんじゃが・・・」

「な、何ですか?」

何かを決めたような目をしていた。多分今から言われることはとてつもなく大きいことだろう。

「娘を貰ってくれないか?」

・・・今何っていった?

「えっと、貰うって・・・結婚してくれと・・・?」

「うむ、ワシももう長くないじゃろ・・・それなら、それなら娘の花嫁姿を一目みたい。」

確かに美琴さんはいい人で綺麗だ。でも自分なんかが釣り合うのだろうか?

「娘と一緒にここを切り盛りしてくれないか?」

それに私には後十三年しか時間が残されていない。それだけであの人を幸せに出来るのだろうか?

「英俊君。お願いだ。娘を、娘を幸せにしてくれ!」

ドサッ

後ろから何かが落ちる音がした。

振り返るとそこには、

「お、お父さん!な、何言ってるのよ!英俊さんが困ってるでしょ!?」

「み、美琴さん!?」

「そ、そりゃあ、うちに来てもらったら助かるけど・・・で、でもやっぱり英俊さんに迷惑は掛けられないわよ!」

「お前は英俊君は嫌なのかい?」

「嫌じゃないわ。でも私なんかより・・・」

「み、美琴さん!」

気付けば美琴さんの肩を掴んでいた。

「ひ、英俊さん・・・?」

呆気にとられている美琴さん。

「わ、私で良ければけ、結婚してくれますか?」

してくださいと言うつもりが思わず聞いてしまった。

それを聞いた美琴さんはクスッと少し笑って、

「はい。」

笑顔で返してきた。

それから私は山中家に女神様が用意してくれた籍を入れ、晴れて結婚することになった。

 

 

あれから三年。店が忙しくなり平和な生活を送りながらそれが終わるのがあと十年になってしまった。

お父さんは娘の花嫁姿を見れて満足したように逝ってしまった。

後十年。そろそろあれを言わなくてはならないと思った。

「あなた、ただいまぁ。」

買い物から帰ってきた美琴が言った。

「そろそろ店仕舞いするか。」

「え!?まだ早くない?」

「君に話したいことがある。奥で待っててくれないか?」

「そう、私もあなたに話があるの。」

少し嬉しそうな顔をして奥へ行った。

あんな顔をしているのに私はそれを潰そうとしているのか・・・

店を閉め、奥に言った。

「座って。まずは君から話してくれ。」

私達はちゃぶ台越しに向かい合うように座った。

「えっと、何と私達に子供が出来ました!」

幸せそうに言う美琴。

涙が溢れてくる。現実は非常すぎやしないか?

「あ、あなた。嬉しいのは分かるけど泣くほどじゃないでしょ?」

確かに嬉しい、だがその気持ち半分だ。

「み、美琴。私はお前に言わなければならないことがあったんだ。もっと前から、プロポーズする前に一言言うべきだったんだ。許してくれ・・・」

「え、な、何よ。今さら・・・今からでも遅くはないでしょ?」

遅い確実に遅いんだ。

「私は後十年したら消えてしまうんだ。」

「え・・・」

場が沈黙で制された。いや、私のすすり泣くような音だけはしっかり残っている。

「ま、またまたぁ、あなたがそんな冗談言うなんて珍しいわね・・・」

「冗談じゃないんだ。これを見てくれ『ティンダー』」

私の指に小さな炎が灯る。

「何それ・・・?」

「これは魔法だ。私は元々この世界の住人じゃないんだ。」

「わ、訳が分からないわ。魔法?そんなものがあるわけないじゃない。それどういう手品なの?」

信じていないように言っているが本能的に分かっているだろう。涙が流れている。

「手品じゃない。私は違う世界で一度死んでいるんだ。そしてこの世界に転生してきた。」

「そんなファンタジーのような話を信じろとでも言うの?」

「信じてもらうしかない。『テレポート』」

私は美琴の手を取り『テレポート』を使用した。

「え!?こ、ここは・・・」

何が起こったかわからず周りをキョロキョロしている。

「ここは私と君が始めて出会った公園だ。覚えてるかい?あそこのベンチで項垂れてた私を君が拾ってくれた。」

「お、覚えてる。ほ、ホントにあなたは・・・」

どうやら信じてもらえたようだ。しかしもっと早く言っていれば子供が出来るのを防ぐことが出来たかもしれない。あるいは私がもっと気を付けてれば・・・

「それじゃあ残された時間は大切に使わなくちゃね。この子のためにも。」

思いもしない反応だ。もっとこう泣き崩れるとか想像していたんだが・・・

「いいのかい?こんなことを隠していたのに・・・」

「良いも何も無いわ。この責任は必ず取ってよね。」

笑顔で彼女は言った。

「・・・ああ、この十年間君とその子を大事にするよ。」

そう心にも刻んだ。

 

 

第一子が産まれる日が決まった。

「なんて?」

「だから、来月の9月16日!何度言ったら分かるの?」

何て言うことだ・・・自分が消えるのと同じ日だなんて・・・いや、まだ九年近くは残ってるんですけどね?

「そうか・・・名前は何にする?」

「最近人気の翔太って言うのもありなんだけど・・・」

「周りと被るのは良くないよな・・・じゃあこの字はどうだ?」

『祥』

「何て言う意味?」

「少しは勉強しろよ。異世界の奴より漢字に疎くてどうするんだよ。」

「へへ、ごめんごめん。」

「この字には幸せって言う意味が込められているんだ。」

「『祥太』。幸せが太い・・・いいんじゃない?」

「これにするか・・・!」

こうして私の息子。『山中祥太』の名が決まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから五年がたった。後四年。

二年前には第二子の女の子が産まれていた。祥太と言えば、

「おとーさん。早くぅ。」

週末の日課、料理を教えてもらうべく台所に居た。

「おい、こら。勝手に入るなって言ってるだろ。」

全く誰ににたんだか・・・美琴か。

目は美琴曰く私に似ているらしい。それに祥太は時々紅目になる。目に関しては私の遺伝を引き継いでるらしい。

遺伝と言えばこの子も詠唱無しで行けるのだろうか・・・?

ふぅ、変なことを考えてるな・・・この子が魔法を使うことは絶対あり得ないのに。

「さて、今日は何を作ろうか。」

決まり文句のように言った。

 

 

「そろそろ九年が立つね・・・」

「いきなりどうした?」

「いや、あなたが消えるまで後一年。この一年を悔いなく過ごせたらなって。」

「できる限りのことはやろうな。」

「ええ。・・・そういえばあなたが消えた後の言い訳どうする?」

「嫌なこと言い出すなよ。」

美琴はたまに性格の悪いことを言い出す。こんなところが祥太達に似られては困る。

「ふふふ、あなたに未練が残らないような言い訳を考えなくちゃね。そうでなきゃあの子達はきっとあなたを探してしまうわ。」

確かにやりかねないな。

「そうね。数百万の借金を作って逃げたとかはどうかしら。」

「ひ、酷いな・・・」

思わず顔がひきつる。

「消えない可能性は無いのかしら・・・?」

「・・・さぁ。もし消えなかったらここに帰ってくるよ。」

消える一日前に私は家を出ることにしていた。

「うん。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あなたは良い人生を送れたのですね。」

エリス様は水晶を持って言った。その水晶には私の十五年間が写っていた。

「はい、ありがとうございます。あなたのお陰で幸せな最後を最後を送れました。」

エリス様が静かに頷くと、

「あなた魂とあなたの家族に祝福を!」




ねこたつむりですはい。
えーっと、今回ひでりうさん過去のお話をさせていただきました。
それと、追加設定です。ひでりうさんが詠唱無しで魔法が撃てるという設定にしているので自動的に主人公も撃てることにしときました。
まぁ、世間一般的に言うこじつけと言うやつです。
前に『主人公は詠唱無しで魔法が撃てるのはおかしい』と言うご指摘が来て『あ、忘れてた・・・・』ということになり急遽後付けで入れさせてもらいました。ご指摘ありがとうございます!orz
また後々こういうことがあるかもしれないのでそこは目をつむっていただけるとありがたいです。
では、今回も読んでくださりありがとうございます
次回も読んでくださるとありがたいです。


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ボッチ剣士と仲間達

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
だらだら書いてたらこんなことに・・・三万字だそうです。


「・・・君。ショウタ君。起きてよ。」

目を開けると、

「うわっ!?眩しっ!?今何時だ?」

目にいきなり光が飛び込んできた。

「五時前だよ。ほら起きて。」

ロアに促されながら体を起こした。

「何かすごい長い夢見た気がする。日本?国王様?何でこんなのが頭の中に・・・」

頭がスッキリしない。

「『クリエイト・ウォーター』」

水を作り出し顔に掛けた。

「な、何してるの?」

「眠気覚まし。ロアもいる?」

顔を左右にブンブン振った。

それにしても何でこんなとこで・・・あ、喫茶店を出てロアが目覚めるまでこの丘で待ってたら、いつの間にか寝てたのか。

「んーっと。帰るか。」

伸びをして言った。

「え、うん。そうだね。」

立ち上がって城へ足を向けた。

 

 

「ご主人様!どこほっつき歩いてたんですか!?」

城に入るなり雪那が飛び付いてきた。

「っ!?いきなり飛び付くな。離れろ!」

「ダメです!もうちょっと成分を補ってから・・・」

こいつ・・・!

「おいおい、仲が良いのは分かるが場をわきまえろよ。」

「うっせい!フロット!好きでやってるんじゃないから!」

「ところでショウタ。お前さん今日はどうするんだ?またどこかの貴族のとこに張り込むのかい?」

「んー、正直言って手掛かりが少なすぎる。今回は見送りという形で・・・それで良いか、クレア?」

「・・・え!?あ、ああ、分かった。」

おい、今何処見てた?雪那を見てなかったか?

「そっかぁ、ショウタさんが帰るなら私もここに残る必要性は無いわね・・・」

「あんたは元々ここに残る必要性がなかったわ!迷惑だからとっとと帰れよ!」

自然とその場に溶け込んでいたセシリーに言った。

「ふふふ、ショウタ様はとても良い人たちに囲まれているのですね。羨ましいです。」

微笑ましく言うアイリス様。

「いや、この人に関しては何でここに居るか分からないですよ!?良いんですか?勝手に泊まってますけど!?」

セシリーを指差して言った。

「セシリーさんは私に色々な知識を教えてくれたので許可していますよ?」

にこやかに笑うアイリス様。

そっかぁ、それなら問題なしかぁ・・・・

「いや、待て!色々な知識って具体的に!?」

「アクシズ教の教えや生きていく上での大切な知識よ。生きていく上での大切な知識は特に性ちs・・・」

「この人を死刑にしてください!」

「な、お姉ちゃんは何も悪いことはしてないわ!?この知識は生きていく上での最も大切なものだと思うの!将来私とショウタさんにも起こることなのよ!?」

「勝手に話を進めんな!アイリス様にはまだ早いだろ!」

「そんなことないとないと思うわ!ショウタさん。あなたはいつからアレをし始めましたか?」

「っ!?」

「ほら見たことですか!別に早くはないんです!」

どうしよう、言い返せない。

「アイリス様。セシリーさんが言ったことは全部忘れてくださいね?」

ロアが内容を把握したのかアイリス様に言った。

「わ、私にはそんなに害があるような物には思えませんでしたが・・・」

そんなことを言う心優しいアイリス様。

「ほら見なさい!アイリスちゃんだってこう言ってるじゃない!」

「お前が教えたのはどう考えても有害物質だ。」

「ひ、人を汚染物質みたいに言わないでほしいわ!」

「似たようなもんだろ。」

「あの、その・・・ゴミを見るような目は止めてほしいわ・・・」

さっきまで威勢がよかったセシリーが縮こまって言った。

いけないいけない。つい癖で・・・

目を擦った。

「さて、帰るか。雪那。」

「分かりましたよ。」

ふてくされて俺から離れた。

「では、皆さん。お世話になりました。」

ノーツがパーティーを代表して礼を言った。

「セシリー、さっさと帰れよ。」

「わ、分かったわよ。」

「では、「『テレポート』」」

 

 

目を開けたら一日しか離れてなかったのに懐かしく感じるスプリットの街並みが広がっていた。

「帰ってきたな。」

フロットが感慨深そうに言った。

「明日からまたクエスト再開か?」

「当たり前だろ?僕達は冒険者なんだ。」

ゼリテスの問いに当然のことを言うようにノーツが答えた。

今の時期は冒険者は冬ごもりしてますけどね・・・

「じゃあ、今日は飯でも食って寝るか。で、ロアとショウタは何処まで進展したんだ?」

「え?」

思わず声をあげた。

「し、進展なんてしてないよ・・・」

「ご主人様、浮気はダメですよ。」

毎回思うのだが俺はこいつに浮気と呼ばれる筋合いは全くない。こうなりゃ俺にも考えがある。かなり前から一体こいつをどうやって大人しくするか考えてた。その結果、

「なぁ、ゼリテス。『スキルバインド』持ってるか?」

「え、ああ、持ってるけど・・・」

「え、ちょ、ご主人様・・・?」

「それちょっと教えてくれよ。」

「あ、謝ります!ご主人様の彼女気取りしたのは謝りますから!どうかそれだけは・・・」

この反応を見て分かった。どうやらこいつには『スキルバインド』が効らしい。

「や、止めろよ。泣きつくな!」

「そのスキルを習得するのは止めてくれますか?」

なんだその上目使い。可愛・・・いけないいけない。何時こいつに読まれてるか分からんからな。

「ご主人様!その続きを!」

やっぱり読まれてた・・・

「ほら、雪那と遊んでないで飯食いにいくぞ。」

「遊んでない!」

フロットにからかわれちょっと苛立ちながらもギルドに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう一杯!」

フロットは一昨日のの一件で懲りてないのか今日もしこたま飲んでいる。

「ふ、フロット。そろそろ止めとけ。昨日みたいに起こられるぞ。」

ノーツが止めに入る。

「もう一杯、後一杯だけだから!」

酔っているせいかいつもの五割増しうるさい。

「ご主人様ぁ~抱っこしてくださぁい。」

雪那が頬を紅く染めて言い寄ってきた。

「お前が酔わないの知ってるからな?」

「ちっ」

今こいつ舌打ちしなかったか?

マジでゼリテスに『スキルバインド』を教えてもらおう。

「ショウタ君は一昨日みたいに飲まないんだね。」

「もう懲りたからな・・・ロアこそ飲まないのか?」

このパーティーに入ってからロアが飲んでいる姿は見たことがない。

「前に一回飲んだことあったんだけど、全然飲めなくて・・・」

苦笑いで答えた。

俺は普段は飲まれない筈なんだけど前の一件でちょっと酒が怖くなってしまった。

「もう一杯!」

またフロットが騒ぎだした。

「もういい加減にしてくれよ・・・」

ノーツが疲れ果てたような声をあげた。

ギルド内の冒険者たちは気の毒そうにノーツを見ていた。

どうやらここで一番酒癖が悪いのはフロットらしい。

「はぁ、『スリープ』」

ドサッ

睡眠魔法をフロットに掛けた。前に身内に魔法かけることをどうのこうの言った気がするが、今はそんなことはどうでも良い。今はこれが最善策と判断した。

フロットはクソでかいいびきをかいている。起きても寝てもうるさいのかこいつは・・・

「ホッ、ショウタ君、ありがとう。フロットは一旦酔うと酔いが覚めるまでずっとああなんだ。」

「因みに俺が酔ってたときは?」

「君は・・・酔ってたのかどうか分からなかったね。顔色も変わってなかったし、呂律もハッキリしてた。でもやることがね・・・」

『バーストモード』でセクハラとかマジすぎるだろ・・・

自分のした行いに今更後悔をしていた。

「そういえばノーツとゼリテスは酔わないんだな。」

さっきから結構飲んでるように見えるが全然酔ってる感じがしない。

「フロットとお前さんとは違って強いからな。」

小バカにしてくるゼリテスにいらっと来たが、実際飲まれてしまったことがあるから言い返せない。

「ゼリテス、いい加減その人を小バカにする態度をどうにかしたらどうだ?」

おや、いつもはまぁまぁとか言って宥めるノーツが若干ご立腹でございますね。

「わ、悪かったって。」

「そこに正座しろ。」

へ?

「ちょ、ちょっと待てってノーツ。」

「聞こえなかったのか?正座しろって言ったんだ。」

「は、はい。」

いつもとは違うノーツそこにいた。

「ろ、ロア。これは一体・・・?」

ノーツに聞こえないようにロアの耳元で聞いた。

「えっと、ノーツはお酒が入ると気が大きくなって性格が真逆になるんだよね・・・」

つまりいつもは優しいノーツだけど今は鬼のノーツなのか・・・

ある意味こいつも酒癖悪いな・・・

「ほんとに君は・・・」

怒られてるゼリテスを見て気の毒に思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ハックシュン!」

「フロット風邪かい?」

「バカは風邪を引かないって聞いてたけど、アレは迷信だったのかな?」

ノーツとゼリテスは今日も平常運転だ。

「ばか野郎!お前らが朝まで俺をギルドに放置していたせいだろ!」

若干鼻声で訴えかけてきた。

「いや、自業自得だろ。」

そう言い放ってクエストを選びに行った。

「ろくなクエストがないね・・・」

『冬眠に目覚めたつがいの一撃熊』、『白狼討伐』、『雪精討伐』。

「それな。一撃熊二体とか考えたくもないし、白狼は犬好きな俺にとっちゃ酷な話だし、雪精に関しちゃもうこりごりだ。」

「思いきって一撃熊行こうぜ。」

何を言ってるんだ。あんなのとはもう戦いたくない。紅魔の里で一回やりあった以来もう戦いたいと思ったことがない。一匹でも大変なのに二匹同時とか無理。

「フロット、そんな無茶なクエストはまた今度にしようぜ。」

「でもよ、他に行けるクエストもないだろ。」

「雪精はこの間行ったもんね。」

「となると・・・」

「無理無理。犬を討伐するのは生理的に無理。アレは愛でる生き物だよ?」

「・・・お前、二ヶ月前に初心者殺しを殺ってたよな?アレはどういう目で見てたんだ?」

「・・・」

「ショウタ君。目を合わせようか?」

いや、アレは人に危害を・・・白狼も加えるじゃねぇかバカ野郎!

「世の中は理不尽だ・・・」

「諦めて討伐しに行こうぜ?」

 

 

そんな感じで押しきられて今森の中に入っていますはい。

「も、もうそんな顔しないの。ほら、シャキッとしなさいシャキッと。」

ロアにまで怒られる始末。

「おい!しっかりしろ!白狼のお出ましだぞ!」

ウオォォン!

目の前には六体ほどの群れを成した狼・・・あれ山犬並みの大きさじゃね?ほらジ○リのものの○姫に出てくるやつ。

「なぁ、この世界ってあんなのが普通なの?」

「はぁ?何ワケわかんないこと言ってんだよ。白狼はあれぐらいの大きさだ。」

そのうちモ○とか出てきそうだな。

はぁ、動物愛護団体に怒られそう。

『ほらご主人様!構えてください。』

カチャ

何が嬉しくて犬と戦わにゃならんのだ。

「来るぞ!」

先頭を率いてた一匹が俺達を軽々飛び越え背後に、次に二匹が左右に別れ、残った三匹が前方に・・・

つまり挟み撃ちという形に・・・

「運動神経良すぎやしないかあの犬?」

「はいはい、余計なとこに突っ込まない。それよりどうする。五体六じゃちょっと分が悪いぜ。」

「ショウタ君、良い案はないかい?」

いやいきなりそんなこと言われても・・・

「雪那を出しますか?」

「え、でもそんなことをしたら君の武器が・・・!?」

俺はズボンの裾から剣を出した。

「こいつがあるんで。やっと膝を曲げれる。」

俺はこんなこともあろうかと細めの剣を発注していた。

『えぇ!?ご主人様それはホントに浮気に入りますよ!私があるのに他の剣に走るとか・・・』

「大丈夫だって。どうせそんなに使う機会が無いんだ。これはお前が擬人化して戦ってるとき専用の武器だから安心しろ。」

この剣には特に特殊効果もない。本当にただの剣術だよりのものだ。

「はぁ、こうやって私の出番が無くなっていくんですね。」

何をしょげているんだか・・・愛刀はお前しか勤まらないのにな。

「ご、ご主人様ぁ。」

またこいつ・・・!

「ほ、ほら!二人ともイチャついてないでしっかりしてよ!」

何故か怒るロア。というか今一方的に雪那がしゃべっただけだよね?お前まで俺の心の中が読めるのか?

「仕方ないですね。」

そう言って詠唱を始めた・・・あれ?詠唱?

・・・あれ?

「どうした!」

「あ、いや。」

「ボーッとするなよ。いくぞ!」

その掛け声に合わせてロア以外が白狼に突っ込んでいった。

俺と雪那は三匹相手にすることになった。

「『ファイアーボール』!」

雪那が牽制として撃った。

流石にそれでやられるわけでもなく避けられたがその避けた先には、

「残念だったな!」

ザスッ

ギャウン!?

横一文字斬り、一匹の目を失明させることが出来た。斬りつけられた白狼は後ろに跳びはねた。

「斬った感覚ってこんな感じなんだな・・・」

小さく呟きながらその距離を軽く詰めて、

「ごめんな。オリャァァ!」

ザクッ

脳天に突き刺した。

ドサッ

倒れた瞬間、

ギャウ!

もう一匹が跳んできた。

キーン!

「クッ!この剣細すぎだろ・・・!」

間一髪防げたが完全に力負けしてる。魔法って言うてもありだが雪那がいなけりゃ威力半減、『バーストモード』を使っても良いがそれだとこの武器のせいで活動時間がぐっと減る。今さら雪那の恩恵を見に染みて分かった。限界の分からないことを実践ではやりたくない・・・

ピキッ

え?ヒビが入った?ヤバイこのままじゃ・・・

「『ライトニング』!」

バチュン!

横から雪那が助けてくれた。

「もう、ご主人様は私がいないとダメですね?」

ニヤニヤしながら言ってきた。

「お前の方はどうした?」

「片付けました。いや、すばしっこくてなかなか照準が定まりませんでしたよ。」

「雪那。」

「了解です。」

俺は『雪那』を手にし、立ち直った白狼に向かって走り出した。

ウオォォン!

白狼は一度遠吠えをし、突っ込んできた。

瞬間すれ違い・・・

「クッ・・・足が・・・」

片膝を地面に着けた。

ドサッ

背後で何かが倒れる音がした。振り返らなくてもわかる。白狼が口から尻尾にめがけて上下に真っ二つに斬られている。

なんで俺が膝を着けたかと言うと。

「おい、ショウタ。大丈夫か?」

「やられたのかい?ロア、こっちに来てくれ。」

「あ、違うから。その・・・足が吊った・・・」

「「「「はぁ!?」」」」

各々笑うのを堪えてるのか肩を上下に震わせている。

あんな力に対抗してたら吊っても可笑しくはなかった。

「も、もう笑うな!」

「わ、悪かったって。そ、そう言えばお前さん。戦う前少し固まっていたがどうしたんだ?」

「え、ああ。俺さ、雪那が詠唱しているのを見て思ったんだけど・・・俺普段詠唱どうしてる?」

雪那を見てすごい疑問になった。普段のテレポート以外詠唱している記憶がない。

「して・・・ないな。すぐに発動してるな。」

「嘘・・・無意識でやってたわ・・・」

「ホントに・・・?それじゃあ暴走してもおかしくなかったの?」

青ざめた顔でロアが言った。

暴走。そんなものあったな・・・学校で習ったことを思い出して気分が悪くなっていった。下手してたら死んでた。

「あ、その点は大丈夫だと思いますよ。」

また勝手に出てきた雪那が言った。

「ど、どう言うことなんだい?」

「えっと・・・どう説明したら良いんでしょうか・・・?ご主人様が居た国には魔法は存在しないんですが、ご主人様のお父さんはベルゼルグ出身だったんですよ。どうやってあっちの国に行ったかは知りませんが・・・それでその人は遺伝で詠唱破棄が出来たんです。おそらくそれがご主人様にもあるのではないかと・・・」

おとんそんなチーターだったんですか?

「そこまで来ると紅魔族を越えてくるね・・・」

紅魔族なんですよ。実は・・・

「はぁ、それにしても・・・新しいの買わないとな。」

ヒビが入った剣を見て言った。

「流石にそれは細すぎやしないかい・・・」

「急ぎだったからな・・・今度はオーダーメイドにしよっかな。」

「でも、ショウタ君の腕だったらスプリットの鍛冶屋で作る剣はちょっと役不足なんじゃないかな?」

「でもロア。他にあるとしたら王都だけど昨日の今日で行く気にはなれない。」

何と言うか気が乗らない。

「それだったら『コーレス』の鍛冶屋はどうかな?」

「おいノーツ。あそこは頑固な店主だったじゃねぇか。結局お前の剣は作ってれず仕舞い。しかも、貴族の仕事でさえ受けない。あそこに行ったって無駄足だぜ。」

「フロット。その話詳しく。」

「冒険者になってそれなりに経験積んだくらいだったかな。ちょうどこの街に結構有名な冒険者が来てたんだ。その人が使ってる剣がそのコーレスって言う町の鍛冶屋が作ったって聞いて、ノーツが作って貰うためにそこに行ったんだよ。」

「俺達はその時ちょうどレベリングしてたんだっけか。」

確かに前衛のノーツとフロットだけがレベルが上がりやすいしな。

「それでコーレスに着いたのは良いんだけど、そこの鍛冶屋の人が僕には作るほどの価値がないって門前払いを受けたんだよ・・・」

その人がお客を何だと思っているんですかね?価値ってふざけるなって言いたくなりますね。

「その後も何度も頼みに行ったんだけど首を縦に振ることは無かったぜ。」

「で、君の実力なら作ってくれるんじゃないかなって。」

「そんなに頑固ならサブの剣を作るって言ったら帰れって言われそう。」

正直その人が『雪那』以上の剣を作れる何て考えられない。一応こいつも神器だし。『雪那』をぶら下げてるのを見た瞬間それこそ門前払いだ。

「い、行ってみるだけでもどうかな?」

どうしてノーツはそこまで固執するんだ。

「そうだなぁ・・・」

チラリと雪那を見た。

「私は私がメインで使われるなら問題ないです。」

そう言いながらも少しふてくされている。

行ってみるか・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「コーレスまでどのくらいかかるんだ?」

スプリットからコーレスまで馬車で行けるらしい。

「隣町だから三時間位でつくよ。」

この世界の隣町の規模はでかすぎる。馬車の時速が20kmとかなり飛ばす。それでも三時間ていうことは軽く60kmは離れている。

ロアはあまり外に出ないせいか身を乗り出して外の景色を眺めている。

そんな珍しい物なんだろうか?

そんな微笑ましい光景を目にしながら意識を飛ばした。

 

 

ガタッ

ゴツッ

「いって!?」

どうやら頭をぶつけたようだ。何て乱暴な運転何だ・・・

「も、モンスターが現れたぞ!護衛の冒険者さんお願いします!」

金のない冒険者が移動ついでの護衛をするのは珍しくない。護衛料だって貰えるし目的地まで運んでくれる。一石二鳥ってとこだ。

「何をもたもたしてるんだ君たちは!?」

ノーツが蒼白の顔で言ってきた。

俺達は護衛でこの馬車に乗ってる訳ではない。客としてお金を払っているんだ。

「おいおいノーツ。お前さんは少し落ち着け。いいか?俺達は客としてこの馬車にに乗っているんだ。護衛じゃない。」

ゼリテス若干憤っているノーツをなだめている。

「人の仕事を取ることはしたくない。それにめんどい。」

「多分君は後半が大体の理由なんだね・・・」

ノーツが俺を呆れた目で見ている。

良いじゃねぇか。払ってるものは払ってるんだから。

のんびり馬車でゆっくりしていたら、外からジャイアント・アースウォームがどうのこうのや走り鷹鳶が・・・など聞こえたが、走り鷹鳶って何なんだ?

そんな疑問を抱きつつも馬車は確実にコーレスへと向かっていた。

 

 

「「「「「ありがとうございました。」」」」」

馬車がコーレスに着き、御者の人にお礼を言った。

「いえいえ、良い旅を。」

馬車は次の街を目指して走り去った。

「で、鍛冶屋はどっちだ?」

「あっちの方にあった筈・・・いや、こっちだったかな?」

おいおい、無事にたどり着けるんだろうな?にしても町というより村・・・だよな?

「しっかりしろよ。あっちの方だ。」

フロットはしっかり覚えてたみたいだ。もしかするとノーツは方向音痴なのかもしれないな。

新たな一面を見れたことに満足し頷くと、

「そうか、早く行って門前払いされに行こうぜ。」

「まだ門前払いを食らうって決まったわけじゃ・・・あ、待ってくれよ!」

ボソボソ言ってるノーツを置いてフロットが言った方向に歩いた。

「しかし、その鍛冶屋はどうしてこんなところでやってるんだろうな・・・王都でやれば儲かると思うんだけどな。」

「あ、ここだ。着いたよ。」

ここか・・・!?この鍛冶屋の看板、『漢字』じゃん!?

「変な文字の看板してるから間違いないよ。」

「何て読むんだろ?」

ここの店主日本人なのか?

「すみません。」

「うん?お前は・・・去年辺りに来た若造じゃねぇか。また来たのか。一年たったからって作ってやらねぇぞ。」

出てきたのは三十代そこらの男の人だった。

「今回は僕じゃないですよ。彼です。」

ノーツは俺を指して言った。

「ど、どうもです。」

「・・・名前はなんというんだ?」

何かを察したような顔で聞いてきた。

「山中祥太と言います。字は示偏に羊と書いて祥。太は太いと書きます。」

これでこの人が日本人かどうかがわかる。もし違うかったら、

「ショウタ君、君は何を言ってるんだ?」

こんな反応になる。

「そうか、お前も俺と同じって言うわけか。ふーん、それがお前が貰った特典か・・・わざわざそれ貰ったのに何の用だ。」

「剣を打ちに貰いに来ました。」

沈黙が流れる。少しして、

「ふぅ、まぁ日本のよしみだ。中に入って話だけでも聞いてやるよ。」

そう言って茶の間の方に引っ込んでいった。

「ちょっと悪いがお前達はここで待ってて貰えないか?」

多分特典や日本の話になるだろう。それを一々聞かれそうなのでそう提案した。

「別に良いけど・・・それじゃあ、あそこの茶屋に座ってるな。」

フロットがみんなを連れていった。

「お邪魔します。」

「とりあえず座りな。他の連中はどうした?」

「まぁ、説明し難い話もするかなぁと思って外で待ってもらってます。」

ちゃぶ台のを囲んでいる座布団の一つに座りながら言った。

「この世界の住人に特典の話をしても説明するにが難しいからなぁ。で、お前は何故そんな神器を貰ってながらも俺に剣を打って貰いたいんだ?」

そう言ってお茶をくれた。

「実は・・・」

あらかたの説明をし、反応をみた。

「そんなことが出来るのか・・・要は切り札が欲しいのか。ちょっとステータスを少し見せてもらって良いか?」

冒険者カードを差し出した。

「ふーん、お前、変わり者だな。」

否定はしない。

「成る程・・・まぁ、良いだろ。打ってやるよ。」

マジで!?貴族の仕事でさえ受けないって話なのに?

「良いんですか?噂では仕事を中々受けない頑固店主って・・・」

「巷ではそんな風に言われてるのか・・・」

笑いながら茶を飲んだ。

「あの三つほど質問があるんですけど・・・」

「何だ?」

「一つは何でこんなところで鍛冶屋を開いてるんですか?王都の方が儲かると思うんですが。」

「そんなことか。理由は簡単だ。日本のRPGとかでこう言う辺鄙なところに凄腕鍛冶屋があるのは基本だろ。」

何言ってるんだろ、この人・・・

「それにこう言うところだとわざわざ来てくれる客はRPGだと勇者候補って言うのが相場みたいなもんだ。」

マジで何言ってるんだろ・・・

「そ、そうですか。じゃあ、二つ目。あなたは何を特典にして貰ったんですか?普通は日本からの転生者って神器を貰って前衛を張ってるイメージを持っているんですが・・・」

ミツラギのような・・・

「俺は運動神経が疎くてね。唯一の取り柄が器用さだったんだよな。そんな俺が日本で夢見てことがあったんだ。剣を打ってみたいという夢を。だから、剣を打つ技術を貰ったんだ。ただそんだけよ。」

剣を打つチートって・・・本気出せばひでりうさんのように神器級の剣を作れるんじゃねぇの?

「もしかしてえーっと、そう言えば名前を聞いてませんでしたね。なんと言うんですか?」

「俺は松井って言うんだ。ま、気軽にまっさんとでも呼んでくれ。あと敬語もやめてくれ。俺はそんな玉じゃないからな・・・」

「じゃあ、まっさん。まっさんに剣を作って貰うのって高い?」

「そうだなぁ、今お前に作ろうと考えてたのは150って所だな。」

かなり高い。でもまあ、払えない額じゃない。今貯金で二百万ちょっとだ。これをはたけば・・・

「そうか、それならなんとか。それで、最後の質問なんだけど、どうして俺の仕事を受けようと?」

「理由は単純だ。直感だ。お前には何かビビってくるものがあった。受けるだけの価値があると思った。ただそれだけよ。」

そんなもんか。凄い人の考えることは分からんな。

「作るのは日本刀で良いのか?」

「あ、西洋剣でお願いしたいんだけど・・・」

「え、でもお前は・・・」

刀使いだろと言われる前に、

「西洋剣も使いたいんだ。」

「そうか・・・分かった。ところで一つ気になってたことがあるんだが・・・」

「どうぞ。」

「お前は何で上級魔法を使えるんだ?普通、上級魔法を教えて貰える人なんて中々居ないだろ。」

まぁ、アークウィザードくらいしか取得できないしな。

「言ってなかったっけ?俺は紅魔の里に住んでいたんだ。」

物理的に目を輝かせていった。

「その目・・・お前日本人なんだよな?」

目を見開いて聞いてくる。

「この目は生まれつき。俺はちゃんとした日本人だ。」

半分紅魔族らしいけど・・・

「そうか。剣は三日後に出来る。その時に取りに来い。」

「了解。じゃあまた。お茶ご馳走さまでした。」

鍛冶屋を出て、皆のいる茶屋に向かうと、

「ちょっと兄ちゃん。今そこの鍛冶屋から出てきたよな?」

これはまた柄の悪そうなお人たちで・・・

「そうですが、何か?」

「ここの鍛冶屋は全く仕事を受けないで有名なのは知ってるよな?兄ちゃんのその様子だとどうやら仕事を受けて貰えたんだろ?そこで頼みがあるんだよなぁ・・・」

ふーん、こいつらが言いたいことは大体分かった。

「その剣をこっちに回してくれねぇかな?」

下卑た笑みを浮かべて言った。

「それは無理な話だ。」

「兄ちゃん、譲った方が身のためだぜ?」

「身のためって・・・笑わせんな。それは俺の台詞だ。今身を引いた方が身のためだぜ。」

「このガキ・・・!」

沸点低すぎるだろ・・・

「まぁまぁ、落ち着けって。なぁ坊主。俺達は王都でちと名の売れてるパーティーなんだ。しっかり相手を見定めろよ。」

「見定めろか・・・そう言えば王都では俺も名が売れてるな。『紅目の死神』として。」

「あ、紅目の死神ってあの・・・」

「魔王軍を蹂躙していたっていう・・・」

「そう言えばそいつ対人戦が得意って聞いたことがある。や、ヤバいって。」

え、なにそれ、身に覚えはあるけど聞いたことない。

「お、俺も聞いたことある。目的のためなら何でもやりかねないって。」

もはや身に覚えのないことが・・・

「おい、ずらかれ!」

一目散に絡んできた人達が逃げていった。

一体俺は王都でどんな風に思われてるんだろう。不安に思ってきた・・・

「おーい、ショウタ!」

振り返ると慌てて走ってきたのかフロットがはぁはぁ言いながら近付いてきた。

「だ、大丈夫だったのか?絡まれたみたいだったけど。」

わざわざ心配して走ってきてくれたのか?涙でそう。

「まぁなんとか。なんか通り名を言ったら血相変えて逃げていった。」

「お前どれだけ怖がられてるんだよ。」

悪いことなにもしてないのに・・・

「それで、そうだったんだ?剣の方は。」

「三日後に取りに来いって。」

そう言うとフロットが目を見開いて、

「やったじゃねぇか!あの頑固店主がこうもあっさりと受けてくれるとは思ってもみなかった!」

自分のことのように喜ぶフロット。

こいつにこんな一面もあったんだな。

「ほら、早くしろよ。みんなに報告するぞ。」

「お、おい待てって。剣ごときでそんなに喜ぶなよ。」

いつもよりはしゃぐフロットを追いかけて茶屋に入った。

 

 

~三日後~

「まっさん。話が違う。」

「違わねぇだろ。しっかり剣は作っただろ。」

今俺はまっさんのとこに頼んだ剣を取りに来てたのだが、

「いや、そこじゃねぇ。これのことだよ。」

手に持ってる紙切れを見せた。

「四百万って言ってた額と違うじゃねぇか!」

一気に目をそらすまっさん。

「い、良いじゃねぇか。性能は折り紙つきだぜ。」

そこじゃない。別にぼったくりと疑ってる訳じゃない。

「百五十万という話は何処行った?」

「いや、久し振りに剣を打てると思ったら気合いが入ってな。素材をふんだんに使ってしまったんだ。」

そんなことが起こるんだったらもっと仕事とれよ。

「というより今久し振りって言ったよな?普段どうやって生活してるんだよ?」

「作ってはいないが修理とかはしてるからやっていけてるよ。」

なんだろう、感覚がずれてるのかな?日本人ってこんなんだっけ?

「はぁ、もういいよ。分割で良い?利子とかとるなよ?」

「それでいい。いや、悪かったな。その分性能は良いから。」

「で、問題の剣は?」

「これだ。」

渡されたのは黒い鞘に収まっている剣だ。

おいおい、こいつ見た目に反してかなりの重さだな。

鞘から剣を抜いた。

「うわっ、まっさんガチで作ったな・・・」

刀身は黒と赤の二色で刀身の中心に黒が来て両端に赤という配色だ。

「お前の目を見て構図を変えたんだ。どうだ?ピッタリだろ。」

全く余計なことしやがって・・・

「素材は何で作ったんだ?」

「ベースはアダマンタイトでそれに紅輝石ってのを使ってる。刀身にはマナタイトも使っているから魔力が伝わるぞ。」

チョロっと流してみた。

うーん、『雪那』の方が通りが良いな。まぁあれはチートだし・・・でもこれはこれで魔剣クラスだな。

「と言うかそんな良い素材使ってんのにその値段で良いのか?」

予想ではあと二百は上乗せしないと元がとれない筈だ・・・

「ん?ああ、大丈夫だ。素材とかは値切って仕入れてるから問題ない。」

この人もか・・・

「まぁ、凄い良い剣だと思う。これ取り敢えず。」

そう言って余分に用意していた二百万エリスを渡した。

「あと半分はコツコツ払ってくれれば良いよ。こっちが悪いんだし。」

「いや、魔剣クラス作って貰ったし、文句はない。」

最初は鋼の剣程度だったのが魔剣クラスに変貌。どうしてこうなった状態。

「そいつの名前なんだがこちらが勝手に付けさせて貰った。」

「別に良いけど。何て言うの、こいつ。」

一拍おいて、

「『レッド・エンジェル・オブ・デス』」

俺の通り名じゃん。

直訳でいくと紅い死神。

「一つ質問良いですか?」

「どうした?」

「これどういう経緯でこの名が?」

「いや、最近王都の方で有名になってる冒険者の通り名を拝借させてもらった。お前の雰囲気にぴったしだったからな。」

そりゃそうでしょう。俺の通り名なんだから。

「そう言うことだったのか。」

よし、こいつを『死神』って呼ぶことにしよう。

そう思いながらその剣を背中に背負った。

持った感じ3kgちょっと位か・・・

「じゃあお金が入り次第支払いに来るから。」

「おう、待てるぜ。」

店を出てスプリットに帰った。

『良かったですね。魔剣クラスの剣が手に入って。』

何こいついじけてるんだ?

『ご主人様。私と手合わせお願いできますか?』

今日の晩御飯はシチューかな・・・ちょうどカエルあるし。

『・・・話聞いてます?』

いや、やっぱ鶏肉かな?

やっぱりシチューは鶏肉のイメージがあるし・・・

だったら今日は普通に照り焼きでいっか・・・

『あの・・・無視しないで欲しいです。』

「・・・どうしてそんなことをしなきゃいけないんだよ。」

『その剣がどんなものか知りたいです。』

変な対抗心燃やしてるなぁ・・・

「手合わせってどうやるんだよ。」

そもそも相手がいない。

「こうやるんです。」

また勝手に擬人化して正面に立った。『スキルバインド』の必要性を十分に感じた。

雪那から魔力が溢れ出して気が付いたら手に『雪那』らしきものを持っていた。

「これは私の魔力が具現化したものです。威力は十分ですが、長い時間は持ちません。フルでは一分半が限度です。その時間まで持ちこたえるか、時間以内に私を押し倒すかでご主人様の勝ちが決まります。」

ぶれないなぁ・・・

「はぁ、一回だけだ。行くぞ。」

『死神』を引き抜き構えた。

「え、あ、ちょ、ちょっと待ってください。」

いきなり焦る雪那。まさかハッタリだったってことはないよな?

「そのぉ、こちらから申し込んだんですけど・・・私、剣握ったこと無いんですよね・・・」

・・・はぁ。

「仕方ないなぁ、また今度勝負してやるよ。」

「普通この流れだと『俺が教えてやるよ。』とか言うもんじゃ・・・」

お前基準に話すの止めてくれますかね?

「嫌だよ。めんどくさいし。」

「出ましたね、ご主人様口癖のめんどくさいが。というより教えてもらえなきゃ今度なって言われても勝負できませんよ。」

「お前、いつも一番近い所で見てるくせに教えて貰えないと出来ない子なのか?それでもお前『雪那』か?」

「言ってくれますね。いいでしょう。私の力を見せてあげますよ!」

それが合図だったかのようにお互いに飛び出していた。

くっいつもより思いからスピードが乗りにくい。でも、

カーンッ

乗ったらこっちのもんだ!

雪那が横一文字に斬りかかってきた刀をすり上げた。

「あっ!?」

雪那が声を上げた。

その勢いで上がった刀を弾き飛ばそうとしたが、雪那はすり上げた刀に身を任せてそのままジャンプしていた。

「ちっ。ギリリーチが足りない。」

雪那が思ったより高い位置にいたので掠りもしなかった。

そのまま俺を越えて後方に跳んでいった。

何でいつも俺は背後をとられるんだよ。

『死神』の遠心力を使って方向転換をし、振り向いた瞬間、すぐ目の前に雪那が迫っていた。

こいつこんなに早かったのか・・・

キーンッ

音が高い、つまり今の攻撃は軽いもの。となると次の攻撃は連撃か・・・

この重い剣であの連撃全てには対応が出来ない。だとしたら、六撃目と七撃目の間にある微妙なタイミングの変化を突くしかない。

予想した通り、次々斬りかかってきた。

よし、次で・・・っ!?

六撃目に備えたら一瞬雪那が笑い、

ギーンッ

鈍く重い音がした。

連撃なら軽く流して受け止めれたが、重い一撃だったからバランスが崩れた。

「嘘・・・だろ?」

軽くショックだった。確固たる自信の読みが外れたからだ。でも逆に言えば軽いショックですんだということだ。これが雪那以外の相手だったら立ち直れないだろう。

バランスを崩しながらも距離をある程度とった。

「全く、何度言ったら分かるんだよ。勝手に読むなって言ってるだろ?」

こいつは多分俺の考えを読んでの行動だったのだろう。こんなのチートだぜ・・・

「バレましたか・・・」

苦笑いで言ってくる。

はぁ、攻撃しても読まれるんじゃ意味ないな・・・作戦は戦いながら考えるしかないか。

と思ってると、雪那が突っ込んできた。

その数コンマの内に考えを立てていく。今あいつには読む余裕がないはずだ。いくら考えが読めるからと言ってそれ全てに対応出来るわけないよな。つまり、『バーストモード』でギリギリ防げるスピードで殴ればいいのか。

今回は斬るのが目的じゃない。雪那をこかせばいいんだよな。

ガンッ

雪那の刀を止め鍔迫り合いの形に持ち込んだ。そして一旦手元を引いた。するとまるでお手本のように食いついてきた。それに合わせるように引いた手元を出した。

「ひゃっ!?」

雪那は後ろに軽く飛ばされた。

「『バーストモード』!」

するとそれに反応するかのように『死神』の紅輝石の部分が光だした。

この剣、急に軽くなりやがった。

離した距離を詰めて、連撃をした。

徐々に雪那の体勢がキツくなり、

ドサッ

とうとう押し倒した。あ、そういう意味ではないですはい。

「はぁ、負けちゃいました・・・」

「ふぅ、なんとか勝てたわ。中々強かった。」

「何ぼさっとしてるんですか?早くこの続きを!」

何言ってんだこいつ?

「女の子を押し倒したらあんなことやこんなことをするまでが鉄則でしょう!?」

うちの神器はいつだってぶれない。

「これはあくまで予想だけど、ホントにそんなことしたら慌てふためいて、やっぱりなしってなりそうなんだけど。」

いつもこいつは必ず安全なマージンをとっている。ホントにヤりたいんだったら俺が寝ている間に襲っとけばいい話だ。

「そ、そんなことありませんよ!今からでもご主人様を襲いたいくらいです。」

「ほう、やってみろよ。」

「え!?で、でもここは街中ですし・・・」

結局慌てふためいてる雪那。こういう一面は可愛いよな。

「冗談だよ。本気にすんな。」

雪那の頭叩きながらいった。

「うぅ、一瞬ドキドキしたのを返してください!」

おい、どこにトキメク瞬間があったんだ?っと、さっきの『バーストモード』の代償が今来たか。

「雪那、悪いけど肩貸してくれるか?いつもより重いのを振ったから結構体に来てるんだわ。」

「だ、大丈夫ですか?いつもならあんな程度じゃ息も乱れないのに・・・」

「そりゃあ、雪那と俺の体の相性がピッタシだからだろ。」

女神が俺専用の神器を作ったんだから当たり前か。

「ご、ご主人様の体と相性がいい・・・」

こいつ、またなんか違うことを・・・

「ほら、しっかり支えてくれよ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今お前なんて言った・・・?」

『死神』が出来て四ヶ月がたった。もうすっかり手に馴染んで使い方が分かってきた。

「今日限りでこのパーティーを抜けたいと思ってる。」

それはゴブリン狩りのクエストが終わって昼御飯を食べてるときだった。

「一体どう言うことだい、パーティーを抜けるだなんて。」

「俺は冒険者の活動に期限を決めていたんだ。長くても半年って。」

沈黙が流れる。

この半年は楽しかった。ダンジョンに潜ったり、避け飲んでバカ騒ぎをしたり、張り込みやらと色々したな・・・

「だからってパーティーを抜けることはないだろ。」

「悪い、フロット。多分もうこの街に戻ってこれないと思う。」

俺だって抜けたくない。でも・・・

「何処の街に行くの?」

「一旦里に戻ると思うけど、次は多分アクセルかな・・・」

「「「「あ、アクセル!?」」」」

何でこいつらそんなに驚いてるの?

「アクセルって言ったら駆け出し冒険者の街だぞ。お前さんのレベルじゃ除け者扱いされるぜ。」

そうだったのか。でも今回は冒険者として行くんじゃない。それにめぐみんにとってもいいところだろう。

「そっか、私達が付いていくのは無理そうだね。」

何かを我慢しているようにロアが笑って言った。

「お前らはこれからどうするんだ?この街に残るのか?」

今となればこのパーティーの平均レベルは30後半。この街の平均レベルは20前後。それなのに一撃熊のクエストとか出すなよ。

「お前らなら王都でも活躍出来ると思うんだ。」

「・・・僕達はここから離れることは考えてないんだ。」

「そうか・・・」

王都に居たら会える機会があるかなと思ったんだが。

「また会いに来たかったら『テレポート』で来いよ。」

「ああ。」

「さて、話はまとまったみたいだし、クエストに行こうか。」

「今日が最後ならこのクエストを楽しく過ごそうじゃねぇか。」

何やらノーツとゼリテスが盛り上がっている。

おい待て、お前らが手にしてるクエストって・・・

「次は一撃熊二頭討伐クエストをするよ。」

あのクエストまだ残っていやがったのか。一撃熊二体なんて無理だ・・・

泣いていいですか?

 

 

ああ、生きた心地がしない。

「ほら、最後のクエストになるんだからもっと元気をだそうよ。」

ノーツが元気に言ってきた。

人生の最後ってか?ふざけるな。何明るく言ってんだよ。

「おい、ショウタ。作戦考えとけよ。」

いつから俺は作戦係になったんだよ。考えるけどさ。

「このパーティーで頭いいのお前さんしかいないしな。」

そう、意外にもこのパーティー脳筋である。ロアはあまり前衛に出ないが他三名がガンガン攻めていく。ゼリテス関しては盗賊なのにだ。これでよく生き残ってこれたものだ。そこはロアの実力のお陰か・・・ロアの回復魔法はアークプリーストにも劣らないものだ。そろそろアークプリーストに転職出来るのではと思っている。

「ここら辺が目撃された場所らしい。いくつかのパーティーがやられてるから、気を付けていこう。」

ノーツはこんなこと言ってるけどほんとの所はなぁ・・・まぁゼリテスが敵感知スキルを使ってるから奇襲はないだろうけど・・・

ガサッ

「!?」

グオォォッ!

一撃熊は仁王立ちで腹に響くような低く重い方向が響き渡った。

「おい、ゼリテス!敵感知は!?」

「あ・・・忘れてた。」

まじかこいつ。

最悪の場合は二匹同時遭遇、次に戦闘中にもう一体と遭遇。まぁ、まずこれはあり得ないと思う。そしてもっとも好ましいのは片一方が巣に籠ってることだ。こいつらはつがいだからそろそろってこともなくはない。

「ゼリテス!周りにまだいるか!?」

『雪那』を抜いて構えて一撃熊とにらめっこしながら聞いた。

「い、居ない!こいつ一匹だ。」

そうか、なら、

「それならいつも通り俺が囮役をやらせてもらう!ロアは後ろで援護、ゼリテスはロアの近くで敵感知を、ノーツとフロットはその隙に叩け!」

走り出して言った。

「「「「了解。」」」」

一撃熊はまだこちらの様子を見ている。これなら・・・

そう思って斬りかかった。

「おい、ショウタ!敵感知あり!すごいスピードでお前さんの真横に!」

何!?

真横を見るとそこには突っ込んでくるもう一匹の一撃熊が・・・

ヤベッ!

思わず『雪那』を遠くに投げた。

『ご主人様!?』

バキバキッ

周りの木が折れていく音がした。

「「「「ショウタ」」君!」」

土埃が舞い辺りが見えなったが、すぐに視界は開けた。

俺は咄嗟に『死神』を引き抜いて持ちこたえていた。

「くっそ、早くにこいつを引き抜くことになるとは・・・」

『死神』はさほど太くはないが『雪那』に比べたら二倍ほど太い。だから、防御にはいつもこいつを使っている。盾を買えば?とよく言われるが『雪那』と『死神』は一応両手剣の部類に入っている。いくら片手で振り回せるからって盾は重すぎる。

「この熊っころがぁ!」

『死神』と目が光り、一撃熊を押し返した。

さっきの熊はこれを狙ってたのか・・・頭のいい奴だ、囮作戦なんて人間か初心者殺ししかしないと思ってたぜ。

「雪那!魔法でノーツ達を援護!」

「分かりました!」

俺hその指示を飛ばしてもう一匹の熊を皆から離した。

「お前とはさしでやらしてもらう!」

くそっ、さっき一瞬リミットを外したから少し疲れてるな・・・

まるであの時のようだな、違うのは『雪那』じゃなくて『死神』ということだ。『バーストモード』にも限界があるし、『見切り』も使えない。

一撃熊が突進してきた。

「ちっ、『カースド・クリスタルプリズン』!」

それは一撃熊の四肢を固まらせただけだった。それと同時に脱力感を感じる。

くそ、『雪那』が居ないと威力も出ない。魔力の底が浅すぎる。

マナタイトを消費して魔力を回復させた。

「動くんじゃねぇぞ。一瞬で終わらせてやるからな・・・」

ジリジリ近づいて行き、一撃熊の目の前にたった。

氷を割ろうと必死でもがいてる。

パキッ

嘘だろ?こいつ自力で割りやがった。

「『バーストモード』!」

この熊、甘く見てたらやられる

グオォ!

大きく腕を振り下ろしてきた。

早い!?

ガリッ

爪と刃が当たった音が鳴った。

現状俺は熊と互角に張り合えてるが、持って後40秒。これ以上長引かせると、また気を失うことになる。この状態を早くなんとかしないとな・・・

しかし、この状態で出来ることがない。どう考えても魔法は魔力が足りない。マナマイトの残量はあるが取り出せない。これが絶対絶命って奴か・・・

ガツッ

何かが当たる音がした。

グルルル・・・

一撃熊が顔を後ろに向けた。

後ろに何か居るのか?

すると、すぐに振り返り前足を振りかぶった。

その刹那に見えたのは黒髪と藍目だった。

「ロア!」

次の瞬間、一撃熊が滅多斬りにされて悲鳴を上げていた。

俺の手からは皮膚が裂けて血が流れてた。『雪那』でもここまで振り回したことがない。

一撃熊からは血が噴き出していた。

ザクッ

最後は脳天に『死神』を突き刺して留めをさした。

ドサッ

一撃熊が倒れた訳ではない。俺が倒れたんだ。

「ショウタ君!」

「怪我は無いか?」

「それはこっちのセリフだよ。」

まさかロアに助けられるとはな・・・

「俺は大丈夫だ。少し体が動かなくなっただけだ。」

改めて『雪那』の凄さを実感した。

「ロアありがとな。」

ロアを無意識で撫でようとしてた。

「あ、ごめん。血が付いてたな・・・」

ふと自分の手を見て気付いた。先の戦いで血を流してたのを忘れてた。

「!?ロア?」

ロアは引っ込めようとした手を掴んで自分の顔の所まで持っていった。

「おい、汚いぞ・・・せめて血を拭いてから。」

「ううん、大丈夫。私の為に流してくれた血が汚いわけないよ。少なくとも私にとっては。」

だからと言って顔に手を持っていくことはないだろ。

手の感覚が麻痺してきたのか触られてる感覚がなかった。しかし、一つだけ感じるものがあった。それは染みる痛みだ。傷口にロアの涙が触れている。いつもなら泣いてるのかとからかうんだが、今はそんな気分じゃない。

「そろそろ傷の手当てしなくちゃね。」

思い立ったかのように言い、救急セットを取り出した。

嫌だなぁ、消毒とか絶対染みるじゃん。ロアの涙の時は我慢してたけど今回は我慢出来ない。

「とりあえず血を拭くね。」

ロアが自分のハンカチを取り出そうとした。

「え、ちょっと待て。俺の使えよ。わざわざお前のを使う必要もないだろ。ローブの右ポケットに入ってるから。」

流石に俺の血で人のものを一生汚すわけにはいかない。血とかって確か塩基性の液体に浸けて洗わないといけないから手間がかかったはず・・・

「え、でも・・・うん、分かった。」

一瞬何かを考えて納得した。

「いてて・・・もうちょっと優しく触ってくれ。」

触れられただけでも痛い。さっきロアに触れられてもあまり痛くなかったのにな・・・

「うーん、この傷の深さは私のヒールじゃちょっと治らないね・・・」

血を拭いて傷口を見たら皮膚どころか肉まで裂けていた。

「ここまで酷いとはな・・・」

「一応ヒール掛けとくけど気休めだから、包帯巻いとくね。」

「全治半年って所か。しばらく剣が握りづらくなるな。それに、少し魔力が通りづらいな・・・」

巻かれながら魔力を流してみていった。

「うーん、後で魔力の通りやすい包帯買おっか。」

「そう言えば他のやつらは?」

「向こうで休憩してるよ。みんなへばっちゃってるよ。」

雪那までへばってるのか。どんだけ強かったんだよ、そっちは。

「ふぅ、じゃあ戻るか。」

ヒールのお陰で手は治らなかったが、体は動かせるようになった。

「しかし、自分がやったというものの、惨いことをしたな。」

一撃熊の亡骸に手を組んでいった。

いつもは一刀両断だが、今回はそうはいかなかった。肉は削ぎ落とされて骨が見えている。

「おーい、お前らが大丈夫か?」

遭遇した場所に戻り、安否を確認した。

「おお、ショウタか。無事だったんだな。」

「怪我はしちまったけどな。」

木にもたれかかってるフロットに包帯を巻いた手を見せていった。

「大丈夫なんですか、その傷?」

地面に伸びてる雪那が顔だけこっちを向けて言った。

「お前が伸びてるとこって珍しいよな。」

「今ならイタズラできますよ?します?」

こいつ以下略。

「この四人をこんなにヘトヘトにさせるってどんだけ強いんだよ。」

そこら辺にぶっ倒れてる一撃熊を見ていった。

「私は最初、ご主人様の指示通り魔法で援護射撃してたんですが、埒が空かなくて・・・」

「僕とフロットは前衛で戦ってたんだけど・・・」

力負けしたんだな・・・

「俺は潜伏スキルとか使用して背後から攻撃してたんだ。でも・・・」

そもそも盗賊は攻撃専門職じゃないからな・・・

「それで、私が奥の手を・・・」

だからぶっ倒れてんのか。

「いや、雪那ちゃんがあんなにすごい戦い方するなんて思わなかったよ。」

感心するように言うノーツ。

あんなのはただの猿真似・・・あれ、雪那って猿並みの知能あったのか。

「ご主人様。魔力が切れてても読めることは読めるんですからね。」

何でこいつは聞かれたくないことを考えてるときに読むんだよ。タイミング良すぎだろ。

「さて、そろそろ街に帰ろうか。」

「なぁ、ショウタ。疲れたからテレポートしようぜ。」

「無理だ。雪那がこんなんじゃ定員オーバー。我慢して歩け。」

「たまにお前さんが鬼に見えてくるよ。」

「そりゃどーも。ほら雪那捕まれ。」

もう刀に戻る魔力もないのかずっとだらけてる。

「いや、嬉しいお誘いなんですけど、もう手も足も動かせません。だからお姫様だっこをしていただけるとあり・・・」

「よし、雪那は一人で帰れるらしいからテレポートしようぜ。」

「ああ!ま、待ってください!俵抱えでいいですから置いてかないでください!」

涙目で訴えてきてるであろう雪那を見た。今何故仮定形なのかと言うと、すでに雪那は顔をあげる力もなく伏せているからだ。

「うそうそ。お姫様だっことはいかないが・・・よっと、これならいいだろ。」

そう言って雪那を背負った。

「へ・・・?あ、あの、こう急に優しくされたら恥ずかしいんですが・・・」

全くこいつの羞恥のポイントはどこにあるんだろうか・・・

「ま、まぁ、これはこれでご主人様の鼓動が感じれるから安心できるのでいいんですが・・・」

何でこいつはこう俺のピンポイントを突いてくるんだろ・・・こういう台詞には弱いんだよな・・・

「それより、さっきからロアさんの方から強いご主人様の匂いがするんですが・・・」

俺の匂いってなんだよ。俺はさっきから血の臭いしかしないぞ。

「え?・・・あ、これのことかな?」

ロアのポーチから綺麗に折り畳まれてたハンカチが出てきた。もちろん血がべっとり付いてる俺のハンカチだった。

「あ、そう言えば返してもらってなかったな。そのハンカチもう使い物にならんな。新しいの買うか・・・」

「それじゃあ・・・このハンカチの後始末は私がしていい?」

言葉を慎重に選ぶようにロアが言った。

「ん、別にいいけど・・・」

「ロアさんってたまに私よりスゴいこと言いますよね・・・」

「それどういう意味だ?」

ハンカチの後始末をしたいって言っただけだろ?

「いえ、ご主人様は気にしないでいいですよ。」

ワケわからん。

「おーい、そこだけで盛り上がってんなよ。」

前の方を歩いてたフロット達が振り替えって文句らしきものをいってきた。

「盛り上がってない。それよりは今回の報酬はどんなもんなんだ?」

「確か色んな冒険者が挑んでも無理だったから上乗せされて六百万だったかな?」

・・・は?六百万?そんなの受けたの?こいつバカなの?

「なんか最初は四百万だったらしいよ。でもつがいだからなのか、連携が凄くてね。さっきショウタ君がやられたようにやられたんじゃないかな?」

囮作戦のことだな。あんなに狡猾だとは思わなかったな。一瞬判断が遅かったらミンチにされてただろう。

「そのせいで特殊個体として扱われたんだ。」

一撃熊は元々群れない習性だ。例えつがいであろうとも一緒戦闘すること事態珍しいのに連携で戦うなんて考えられもしない。

「成る程、それなら報酬が高いわけだ。これでこの剣の支払いは終わるわけだ。」

この四ヶ月の間にこまめに貯金して現在百二十万は貯まってる。今回の報酬を足すと二百四十万。残りの二百万を支払える。

「・・・今回で最後なんだな。」

フロットがしんみりと言った。

「・・・うん。」

「ショウタ君。今までありがとう。楽しかったよ。またいつでも会いに来てくれ。」

「うん。」

ヤバい、目を合わせられない。

「おい、泣くなって。お前さんの泣き顔なんて見たくねぇよ。」

髪がぐしゃぐしゃになるほどゼリテスが撫でながら言った。

「な、泣いてなんか・・・」

「無理するなよ・・・グスッ・・・」

「おいおいフロット。もらい泣きか?」

「う、うるせい!ゼリテス!お前も涙目じゃねぇか!」

「な、何を言ってるんだよ。これはその・・・あ、汗だ。」

そんな意味わからん言い訳すんなよ・・・

「ショウタ君・・・また会えるよね?」

ロアが俺の体に身を寄せて言った。

「いつかはな。」

「こほん、二人ともくっつきすぎですよ。」

背中にいる雪那が言った。

「お前が言えた立場か。」

「私はしょうがないですもん。でも、今回は見逃してあげます。」

じゃあ、最初から言わなければいいじゃないか。

「グスッエッグ・・・」

異様な嗚咽が聞こえた。そっちの方を見ると、

「「「「「ノーツ(さん)、号泣じゃん・・・」」」」」

一斉に言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そうか、あのパーティーを抜けるのか。」

俺はまっさんのとこに来ていた。

「まぁな、それで今日はお別れ会だとよ。」

昨日号泣してるノーツを皆で宥めた後、何もしないのは嫌だからお別れ会をしようとロアが。

「愛されてるねぇ。」

「人望は厚い方だからな。あちっ!『フリーズ』」

お茶を飲もうとしたが思いの外冷めてなくてビックリした。

「おいおい、折角の熱いお茶が勿体ないじゃないか。」

「俺猫舌なんだよ。」

「でも、お前この間・・・ああ、飲んだの大分後だったな。」

お茶を飲んで寝転がった。

「・・・くつろぎやしないか?」

「まだ疲れが残ってるんだよ。それよりさ、こいつのことなんだけど。」

ガタ

俺はちゃぶ台に『死神』を置いた。

「『レッド・エンジェル・オブ・デス』がどうした?」

そう言えばそんな名前でしたね・・・長ったらしい。

「こいつに特殊能力とかあるのか?」

「いや、なかったはずだが。どうしてだ?」

「いやな、俺がリミッター解除・・・目を紅くさせたときにこいつもこの紅輝石のところが輝いて、こいつが軽くなったんだよ。」

「ふーん。そうだなぁ、まず紅輝石について説明しようか。紅輝石はいわゆる魔石と言う奴だ。それはマナタイトとはちょっと違うくてな。波長って言うのがあるんだ。多分その波長がお前の言うリミッター解除との波長があったんじゃねぇかな?だから輝いたんだと思うぜ。まぁ、あくまで推測だがな。そいつは世間一般的に色んな鉱石と相性がいいから、装飾品や配色に使われる鉱石として使われる。魔石と言われてる理由は多量の魔力があるからだ。でもその魔力をマナタイトのように取り出せないし燃料としても使えない。あまり解明されてない鉱石なんだ。もしかしたらお前が初めて魔石の魔力を使える人間じゃないか?」

そうなのか・・・

となるとリミッター解除時の魔力がとんでもないことになってたのか・・・

じゃあ、あのとき普通にこいつ通して魔法を撃っとけば良かったじゃないか・・・

魔力が通りにくかったのは魔力を通りやすいマナタイトと通りにくいアダマンタイトと紅輝石の比が通りにくい方をが大きかったからだ。それに反して波長があった場合、紅輝石が通りやすいものに変わり比が逆転する。ちょっと違うけどコイルみたいだな・・・コイルは最初は自己起電力というもののせいで電流が流れないが、それが0に近づくにつれて電流が流れ始めるといった性質を持っている。

「つまりあれか、リミッター解除してる時は魔力が桁違いになってるということか。」

「まぁ、感覚的にはそうなんじゃないですか?ご主人様が『バーストモード』を発動してる時は、私に魔力を流してるときよりも膨大な魔力を感じましたからね。」

「「うわっ!?」」

いつのまに出てきたのか、いきなり喋りだした雪那を見てまっさんと俺は驚いた。

「祥太。この子が前に言ってた・・・」

「雪那といいます。」

「いきなり出てくんなよ。でも、多分全開にして魔法を使ったら20秒も持たないだろうな。」

今では雪那なら全開でも3分は戦える。この数値は俺が動けなくなる寸前の数値だ。気絶覚悟で戦うなら10分が限度だ。時間が伸びてるだけじゃない。全開という言葉を使ったように幾つか段階を切り替えれるようになっていた。前までは全開垂れ流しだったが、微調整が効くようになった。

「そうですね。剣術だけなら1分が良いとこですね。」

「ケースバイケースだな。お前を使うかこいつを使うかは・・・」

「上級魔法か爆裂魔法って感じですね・・・」

上手い例えじゃないか。

「何にせよ、これで支払いが終わった。また用があったらいつでも来いよ。」

「はーい。じゃあ、帰るな。雪那いくぞ。『テレポート』」

 

 

「ご主人様、そろそろ起きてください。時間ですよ。」

「ん、もうそんな時間か。」

この部屋にはもう自分で用意した家具などない。デフォルトのテーブルと椅子、そしてベットだけだった。

「今日がこの宿が最後だな。」

「なんか寂しいですね。」

椅子から立ち、背伸びをした。

「さ、ギルドに行きましょ。」

「ああ。」

『死神』を背負い部屋を出た。

 

ギギギィ

変わり映えしない重いドアの音。開けた瞬間に吹き付けてくる暖かい空気と御飯と酒の香り。いつも当たり前だったことが今は特別なものに感じた。

「ショウタが来たぞ!」

ワァァァ!

・・・・・へ?

「さぁショウタ君、こっちに。」

「待て、状況把握が先だ。」

ギルド全体が俺のお別れ会みたいな雰囲気になっている。想像してたのはもうちょっといや、大分こじんまりしたものだったのだが・・・

「何って、君のお別れ会だよ。」

「うん、それは分かってる。いやしかしな、この人数はなんだ?」

俺の目の前にはこの街の全冒険者が集まってるように見えるんだが・・・

「いやぁ、ギルドの人にちょっと頼んだらこんなことになっちゃって・・・」

何を頼むんだ?いつもドンチャン騒ぎしてるギルドに一体何を頼む必要があるんだ?

「えっと、パーティー料理を作ってくれるように頼んでたら、近くにいた仲がいい人に聞かれて目的を言ったらこんなに人数が・・・」

まぁ、多少は面識のある人も居るが・・・七割方知らない。

「早く席につけよ!主役が席につかねぇと始まんないぜ!」

いつになく喚くフロット。

「はぁ、分かったよ。」

全く昨日まで泣いてたのが嘘みたいだな。

「ご主人様も泣いてましたよね?」

「お前も泣いてたのは知ってるからな。」

ビックっとした雪那。気づかないとでも思ってたのか。後ろで肩を震わせてたのをしっかりと感じ取っていた。

俺は皆に急かされながら席についた。それを確認したノーツが、

『では皆さん。今宵はお集まり頂きましてありがとうございます。』

こいつらはただバカ騒ぎがしたいだけだろうがな。

『今回は知っての通り、我がパーティーの一員であるショウタ君との別れを惜しむ会です。この機会に最後の挨拶や、今まで言えなかったことを伝えてください。では、乾杯をショウタ君に。』

またか、またこういうのを振られるのか。前もこんな無茶ぶりをさせられた。流石に今回は仕方がないけどさ。

『えー、代わりましてショウタです。今回は俺なんかの為に集まっ・・・いや、あんた達は騒ぎたいだけなんだよな。つーことで今日は騒ぎ立てようぜ!かんぱーい!!』

ワァァァ!!

こうしていつもより大きめのドンチャン騒ぎの火蓋が切って落とされた。

それからは大変だった。ノーツがいきなり号泣したり、フロットが暴れたりしていた。俺はといえば、

「あんたには一度助けられたことがあるんだぜ。あんたは自覚してないだろうがな。」

一人の男に絡まれてた。

「へぇ、どんなことしたんですか?」

「あれは俺たちのパーティーがクエストを終えてこの街に帰ってるときだったかな。街の近くまで来たときに背後から初心者殺しが迫ってきてな。戦闘で消耗してたからヤバいと思って皆で駆け出したんだ。でも人間が初心者殺しに足で勝てるわけねぇ。もうそこまで来たと思ったらドカァーンってでけぇ音がしたんだよ。その音に反応して初心者殺しがそっちの方に向かったんだよ。その時の音の主があんただったんだ。あの時はありがとう。」

あぁ、魔力を何とかして上がらないかと魔法を無駄撃ちしたやつかな?確かあの後初心者殺しが向かってきたな。

「いえ、あの魔法が無駄撃ちじゃなくて良かったです。」

そう言って頭を下げた。

「それじゃ、向こうでも元気でやれよ。」

男の人は席を立ち手を振って去った。

ふぅ、こんなに人と話すなんてクレアの誕生日以来だ・・・

シュワシュワを一口飲んだ。レモン酎ハイが欲しい。レモンジュースでもいい。いっそのことポッ○レモンでも・・・

「あ、あの・・・!」

「ん?どうした?」

そこには俺より二つぐらい年下の白髪碧眼の男の子がいた。

「そ、その、ぼ、僕ショウタさんみたいな剣の使い手になりたくて・・・!それで、その・・・」

「んー、ま、いいだろ。俺もそろそろ夜風に当たりたいと思ってたからな。その剣を持ってついてこい。」

「え、いいんですか!?」

目を輝かせて言ってきた。

「早く外にいくぞ。」

俺達は少し開けた場所に来た。

「先に言っとくが俺の技術は特殊だぞ。」

この世界は異世界。日本の剣道の剣術なんてものはない。

「は、はい!」

妙に威勢のいい返事をした。

「取り敢えず俺にかかってこいよ。」

今雪那はギルド内で食べ物にがっついてるので『死神』を引き抜き構えた。

「そ、そんな。僕なんて・・・」

「別に勝てなんて無茶いってないだろ。俺は攻撃ないし全力で斬りかかってきたらいいんだよ。」

「う、うん。じゃ、じゃあいきます。」

キーンッ

うん、ちょっと待って。この子何?いきますって言った瞬間にもう斬りかかかってたよ。予備動作見えんかったわ・・・

間髪入れずに連撃を放ってくる。

この子アイリス様より強くね?

カーン

「ああ!?」

毎度のごとくお得意のすり上げをした。剣はそのまま上空へ飛んでいき、やがて遠くの地面に落ちた。

「はぁ、はぁ、酒が入ってたとはいえ、こうも追い詰められるとは・・・」

軽く見るつもりが本気で教えたくなった。もしかしたら俺の代わりに・・・

「やっぱりショウタさんは強いんですね・・・僕なんてまだまだだ。」

「いや、お前は強いよ。正直追い詰められてたしな。ちょっとこっち来てくれ。」

「な、何ですか?」

「これ振ってみろ。」

「!?お、重い・・・」

俺は少年に『死神』を貸した。

「それをさっきのスピードの六割で振れたら上出来だ。剣の持ち方を教えてやる。」

「も、持ち方ですか・・・?」

「ああ、それで大抵は何とかなる。」

それから十分後に俺は口が開いていた。

六割だと思ってたのが七割五分で振れているのだ。

まさにここまでやるとはな・・・

「オーケー、まず左手だけで持て。」

「左手?こうですか?」

「ん、もうちょいこう、縦に持つ感じだ。」

「そ、そろそろ腕が限界です・・・」

まぁ、重いしな。

「よし、右手を添えろ。」

「そ、添えるだけなんですか?」

「メインは左手だからな。そっちの方が右半身をうまく動かせる。」

「うーん、他の人は右手お中心にしてたような。」

「だから特殊って言ったろ。次は体さばきだな。」

それから三十分が経過した。

何でだろう。もう少し時間がかかると思ったのにもう習得してやがる。

「ふぅ、ここまで飲み込みが早いとは思わなかった。じゃあ、最終レッスンだ。一分間俺の攻撃に耐えろ。」

俺はその子が最初に使ってたロングソードを拾い構えた。

「む、無理ですよぉ。」

「死ぬ気で頑張れ。大丈夫。危なかったら寸止めしてやるから。行くぞ!」

「ひ、ひぃぃ!」

 

 

「ううう・・・」

「二分ちょっとか良いタイムだな。」

「一分間って言ったじゃないですか!?」

「悪い悪い。んー・・・」

こいつ『死神』を本気で使ってるとき少しだが魔力上がったよな・・・波長が少しだけ合ったということか・・・

「あの、この剣ってどこで手に入れたんですか?」

「コーレスの鍛冶屋で打って貰った。でもあそこ高いし止めといたほうがいいぞ。」

俺なんて日本人だから作って貰ったようなもんだし。

「そっか・・・」

「お前はこんなに重いもん使うんじゃなくてちゃんとしたやつ使えよ。」

「なんだ、人が打ったもんにケチつけてんのか?」

聞き覚えがある声が・・・つーか今日も聞いたわ。

「まっさん。何でこんなとこに居るんだよ。」

そこにはまっさんがしかめっ面で立っていた。

「俺もこの会に招待されててよ。さっき着いたばっかだ。それでギルドの方に歩いてったら、珍しくお前が人と話してるんでな。」

「人に友達いないような口を叩くなよ。」

「ろくにパーティーメンバー以外の人と話せないやつがよく言うぜ。」

んにゃろー・・・

「ショウタさんって人見知り何ですか?さっきはあんな明るい乾杯をしてたのに。」

「元々俺は根暗人間だ。表があれでも裏ではこんなもん。それよかまっさん。」

「ああ、さっきから見てたから分かるぜ。魔石関連だろ?」

「魔石?」

「話はその時になったらまっさんから聞いてくれ。で、どう思う。」

「多分さっきの感じだと紅輝石と波長は合わないらしいな。」

「パターンは同じだと思う。じゃなきゃ反応がない。」

「でも、魔石って呼ばれてんの紅輝石ぐらいしか今のところないぜ。同じようなものがあるって推測されてるだけだ。」

「片方があるならもう片方があるはずだろ。パズルみたいにさ。」

「確かにな。・・・!そう言えば来月大発掘を行うって情報があったな・・・」

「そんときに見つかるかもしれないってか。仕入れ額が大変なことになるな。」

「それに参加すれば発掘報酬で貰えんだけどな。」

「じゃあまっさん参加しろよ。俺は当分用事だし。」

「えー、ふざけんなよ。もう年だつーの。」

「まだ三十代だろうが。まだ現役だろ!」

「最近腰が痛くてな・・・」

運動不足だろ・・・

「あ、あの。その話、僕も関係がありそうなので発掘、僕がやりましょうか?」

若いもんはすげぇなぁ・・・

「まっさん。こいつがこんなこと言ってるんだ。あんた動けよ。」

「そうだなぁ、それじゃあ君。名前は?」

「僕レイと言います。」

「レイ君か・・・いい名だな。」

「おい、まっさん。何でレイの時だけ君付けんだよ。俺の時はいきなりお前って言ったじゃないか。」

「歳が違うだろ、歳が。」

「そんな変わんねぇだろ。レイ、お前何歳だ?」

「え、13です。」

「二つしか変わんねぇじゃん!」

「「え?」」

「じゃあ、お前15なのか?」

「逆に何歳だと思ってたんだよ。」

「「17、8・・・」」

「俺そんなにふけてるかな・・・?」

合法ショタっ子の名が泣くぜ・・・あ、別に自負してる訳じゃないですよ?

「いや、ふけてるとかじゃなくて、雰囲気が子供じゃないと言うか大人びてるというか・・・」

「目が据わってる感じがするんですよ。」

目が死んでるってか?

「そうそう。だから子供扱いには出来ないって感じだ。」

成る程。分からん。

「で、まっさん。動くのかよ?」

「動くさ。レイ君は手伝ってくれると嬉しい。」

「も、もちろんです。」

「くれぐれの怪我させんなよ。」

「分かっとるわ。そう言えばレイ君はパーティーを組んでるかい?発掘自体が一、二ヶ月掛かるから、パーティーに入ってたら迷惑掛ける可能性があるし、そう言うのは話をつけとく必要があるぜ。」

「あ、いえ、今はソロでやってます。」

こんな凄腕が放置されてんのかよ。珍しいな。

「そうか、それなら問題ないな。でも、いつまでもパーティーを組まなかったらどこかのボッチ剣士になりかねないぞ。」

「おい、そのボッチ剣士が誰か教えてもらおうか。俺はちゃんとパーティーを組んでたぞ。誰だそんな昔話を流したのは・・・」

「じ、実話だったんですね・・・」

「そ、そんなことより、レイは何の職業に就いてるんだ?ソロ活動してるからには使い勝手のいい職業だろうけど。」

「アークプリーストをやってます。」

「「あ、アークプリースト?」」

この歳でアークプリースト?ロアでもちょっと無茶なレベリングでようやく就ける役職だぞ・・・

「回復も出来て、剣術も腕が立つ。普通ほっとかないだろ。」

「子供だからですかね?ショウタさんは何の職業に?」

「・・・それ聞く?」

冒険者だなんて言いたくない。

「え、聞いちゃダメなんですか?」

「ハハハ、こいつ変わり者だからな。就いた理由もしょうもなかったし。」

「しょうもないとか言うなよ・・・こっちはその事実を突きつけられたときは軽くショックだったんだから。」

「うーん、上級魔法を使えるからアークウィザードかなって思ってたんですけど、その反応じゃ違うみたいですね。となると・・・ぼ、冒険者!?」

何でそれに気付いたときに皆信じられないものを見る目をするんだろ・・・

「そんな目で俺を見るなよ・・・」

「あ、すいません・・・」

「でも、祥太は冒険者でも王都で活躍できる位の実力の保持者だから気にすることはねぇぜ。『紅目の死神』何て目じゃねぇ。」

本人目の前でそれ言うかね?

「僕もその人のこと聞いたことあります。何でも紅魔族なのに冒険者に就いててそれで・・・それで剣術も・・・凄いって噂が・・・」

レイが俺の方を見ながら言った。

「何で俺の方を見てるんだよ。」

「いや、ショウタさんと似てるなぁって。」

「そう言えばお前も紅魔の里に居たんだっけ。でもこいつは紅魔族じゃねぇな。」

「でも、前になんちゃって紅魔族って聞いたことが・・・」

なんちゃって紅魔族・・・もうすでになんちゃってじゃない件について。

「はいはい、変な詮索はしない。と言うわけでまっさん。こいつの事よろしくな。」

「お前は保護者か。」

「ツッコミありがと。じゃ、戻るわ。魔石の説明しとけよ。」

ギルドに向かって歩き出すと、

「ショ、ショウタさん。ありがとうございました!」

「おう。あ、そうそう、もし、お前がパーティーに加わりたいなら・・・俺の代わりにノーツ達の所に入ってくれ。もうすでにプリーストはいるがあいつらは脳筋だ。お前が俺の代わりにあいつらを守ってくれ。」

背を向けたまま頼んだ。

「なんだ?パーティーのリーダー気取りか?」

「いいや、保護者気取りだ。」

振り返って笑いながら答えた。

 

 

「ただいまぁ。って誰もいないよな。」

一応、会は終わったが二次会だ!とか言い出すバカがいた。同じとこでやるんだから二次会もくそもないだろ。俺は疲れたと言って帰ってきた。全く誰のためのものだったのか。雪那はまだ飲み足りないと意味不明なことを口走っていたので置いてきた。あいつ酔わないだろ。

ドサッ

レイ、受け入れてもらえるかな・・・?

流石にあの提案は勝手すぎた。でも、あいつらをほっといたらいつか潰れるかもしれない。

コンコンコン

誰だ、こんな時間に・・・

「どちら様でしょうか?」

「ロアだけど。ちょっといいかな?」

「開いてるから勝手に入って。」

ガチャ

「どうした?」

「えっと、さっき別れ際ゼリテスに『スキルバインド』教えてもらってたよね。」

そう、俺はお土産にゼリテスからこれから必須スキルである『スキルバインド』を教えてもらってた。もちろん用途は『雪那』に使うためだ。『マジックキャンセラー』という魔法もあるのだが、スキルポイントが少しばかり高いのでこっちにした。

「それがどうした?」

「そ、それだったらこれもいるかなぁって。」

ロアが冒険者カードのスキル欄を見せてきた。そこには、

「『セイクリッド・ブレイクスペル』・・・お前・・・ついにアークプリーストになれたのか。良かったな!」

思わず抱きついた。

「え、ショ、ショウタ君!?」

「あ、悪い。酒臭いよな。」

「そ、そこ!?今そこ気にする!?」

よくわからないが何か喚いてるロア。

「で、俺が自分で『スキルバインド』掛かればいいのか?」

「この状況なのにあっさりそっちに持っていくんだね。」

何に不満なのか分からないがふてくされてるロアが言った。

「何言ってるか分からんが『スキルバインド』!」

自分にスキルバインドを使うやつなんて俺が初めてなんじゃないだろうか。

「ちょっと待ってな。『クリエイト・ウォーター』」

コップに手をかざして唱えたが発動しなかった。

「よし、掛かってるな。どうぞ。」

「うん。『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

何処からか光が差し、俺の体を包み込んだ。

パリンッ

何かが割れる音がした。

「これで『スキルバインド』は解除されたのか・・・おっ、ちゃんとスキル欄にある。ありがとう、ロア。」

冒険者カードを取りだし見て、再度懐に直した。

「今習得しないの?」

「したいけど、ポイントが10程足らん。また今度だな。」

先はなげぇなぁ・・・

「大変だねぇ・・・・・あ、あの、ショウタ君!」

「!?いきなり声をあげるなよ。ビックリするじゃねぇか。」

「あ、ごめん。」

「まぁいいけど。で、何?」

モジモジしてるロアに聞いた。

「そ、その・・・こ、今晩一緒に寝ませんか!?」

どうしよ、開いた口が塞がらない。今日何度口が塞がらなければ気が済むんだろ?

ロアは顔を真っ赤のして答えを待ってる。

「・・・ね、寝るだけなら・・・いいかな?」

何だろう、この世界に来てドキドキする展開が多すぎる気がする。

「ほ、ホントに?ど、ドッキリとかそう言うのじゃないよね!?」

こっちがドッキリ食らってる気分だわ・・・

「違うから。そもそも誘ってきたのそっちだろ?」

「そ、それじゃあ失礼して。」

先にベットに潜るロア。

「ふぅ、寝れるかなぁ・・・」

ロアが一瞬動いた。

「そ、それは今晩は寝かせねぇよ的な奴ですか?」

こいつの中で今何が起こってるか分からんが普段使わない敬語を使ってる所を見る限り、こいつも緊張してるんだろうか?その前にどういうわけかとんだ勘違いをしてる。

「ち、違うから。そういった意味ではなくて・・・」

もちろん俺も緊張してる。今までもこんなことはあったが、全員が色物枠と言ってもいい。それに比べてロアは常識人。常識人と言うだけでこんなドキドキするものなんだろうか・・・

「来ないの?」

掛け布団から目だけを覗かせ言ってきた。

「失礼します。」

一応ベットには入ったが、恥ずかしさのあまり背を向けた。一方ロアも背を向けていた。

でも、背中合わせて互いの呼吸を感じるのがなんか心地がいい。

「ショウタ君がパーティー抜けちゃったら戦力が下がっちゃうね。いつも状況を把握して、皆の安全を確保してくれる、無謀だけど頼りになる人が。」

「その事なんだけど、俺の代わりと言っちゃなんだけど、新しい子を入れてみたらどうだ?俺に劣らないくらいの剣使いをさ。」

「私にとってのショウタ君の代わりなんていないよ・・・」

パーティーのことを言ってたんだけどな・・・

「でも、やっぱり入れなきゃお前らの事が心配だ。」

「・・・その事は後でノーツ達と話し合うよ。それよりこっちを向いて。」

ゴソゴソ音がなった。どうやらロアがこっちを向いたらしい。

「どうした?」

「その・・・私・・・」

「ロア?」

途中で言葉が詰まったのかロアが喋らなくなった。

「ねぇ、フロットとかがまた来いって言ってたけど、また来る可能性はあるの?」

「・・・正直かなりの低いと思う。来たとしても十年後、いや、もうちょっと先かもしれない。」

魔王を倒すまで・・・俺に退廃的な夢を叶えるまでここには帰ってこないかもしれない。用がない限りな。

「そっか・・・じゃあ、これが最後かもしれないんだね。」

そう言って深呼吸した。

「ショウタ君。私はあなたの事が好きです。」

・・・・・・・は!?突然すぎて意識が飛んでしまった。今ロア、俺の事好きって言った?

「それはどういう意味で捉えたらいいんだ?」

「この状況でそれ言う?異性として好きって事・・・」

どう答えたらいいんでしょう・・・?

「俺の事をそんな風に思ってくれてありがとうな。でも、それの答えを出すのは後でいいか?俺には抱えてる問題が多すぎる。それが解決できたら、その時期が来たら返事をしていいか?」

「・・・断るならはっきり断ってほしいよ。」

「断りたい訳じゃない。ロアは可愛いし性格もいい。前も口にしたようにロアと結婚しても苦はない。でも、俺には今ほっとけない人達が居るんだ。そいつらの事がしっかり出来たら答えを出しに来てもいいか?」

「そう言えばショウタ君は天然たらしだったんだね。それなら仕方ないか・・・」

たらし・・・

「天然って誰から・・・あいつしか居ないか・・・」

雪那の野郎。余計なこと言いやがって。

「雪那ちゃんもその内の一人に入ってるの?」

「・・・うん。」

「やっぱりショウタ君を好きになって良かった。」

わけわからん。

「じゃあ、さっきの答えなくていいから、一つだけお願い聞いてくれる?」

吸い込まれるような藍色の目を覗かせていった。

「ああ。」

「わ、私を抱き締めて。」

「う、うん。」

俺はぎこちない動きでロアの肩に手を回して、引き寄せた。ロアの顔が俺の胸に当たった。

「心臓の音が強くてゆっくりしてる。この状況でもこんな脈拍がゆっくりなんだね。」

これでも速い方だと思うけどな。

「落ち着く・・・ショウタ君。」

「うん?」

「あのハンカチ大事にするね?」

・・・・ハンカチってあの血まみれのハンカチか?なるほど、雪那が言ってた意味が今わかったわ。あれを大事にするのか?これは喜んでいいのか?

「まぁ、後始末を頼んだし、好きにしろよ。」

複雑な心境で言った。

「ありがとう・・・」

それを最後に俺は意識を落とした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「わざわざ見送りになんか来なくても良いのに・・・」

朝飯を済まし、『テレポート』をしようとしたところに皆が集まってきてた。

「何言ってるんだい。僕達はパーティーメンバーだろ?」

抜けるって言ったのに。

「お前の泣き姿を見に来てやったんだよ。」

いや、フロット。泣きながら言われても逆に泣き顔を見せに来たの間違いになるぞ?

「泣きすぎなんだよフロット。お前さんの顔強面の癖に涙脆すぎるだろ。」

うん、お前も言えないよな?

「ショウタ君、元気でね。答え待ってるから。」

「ああ。」

手をロアの頭に持っていった。

『はぁ、ご主人様。またですか?あなたは何人落とせば気が済むんですか?』

無意識だから仕方がないと思う。

「ショウタさーん!」

「レイじゃないか。お前も見送りに来たのか?」

「はい、例え一夜だけでもショウタさんは僕の剣の先生でしたから。マツイさんも・・・あれ?」

レイが振り返った所には誰も居なかった。

「あれじゃないか?あそこでへばってるおっさん。」

俺が指を指した先には、ゼェゼェ言ってるまっさんの姿があった。

「れ、レイ君足が速すぎるんだよ。」

「運動不足だろ・・・」

「ショウタ君。この子は?」

ノーツが興味津々に聞いてきた。

「こいつはレイ。アークプリーストにして、俺同等の技術を持つ者!」

「・・・ショウタさん。それ完全に紅魔族風ですよね・・・」

たまにはやらせろ!

「ショウタ君と同等の技術を・・・!」

「でも、アークプリーストだぜ?うちにはもう居るじゃねぇか。」

「誰が入れる話をしてるんだ。お前さんは先走りすぎる所があるんだよ。でも、ショウタが居なくなることを考えたらこの子を入れたいな・・・」

「いいんじゃないかな?私も一人じゃ皆を支援できるか不安だし・・・」

何故かロアは俺を見ながら言った。こいつ気付いてるのかな?

「ロアがいいんだったら良いけどよ。」

「じゃあ、決まりだね。レイ君と言ったかな。君、うちのパーティーに入らないかい?」

何だろう、我が子が旅立っていく瞬間を見てる気がする。

「え、でも・・・いいんですか?」

「レイ。遠慮することは無いぜ。こいつらはお前を欲しがってる。俺もそれを願っていた。その為にお前を教えたようなもんだ。」

「えっと、じゃあ、よろしくお願いします。」

「レイ君よろしく。」

「やっぱりショウタ君が一枚噛んでた。」

「ロアにはヒントやってたもんな。」

「おい、さっきから理解しがたい言葉が飛んでるんだけど。答えやらヒントだとか、お前らのいつそんな話をしたんだ?」

「秘密♪」

ロアが口元に人差し指を立てて言った。

「はぁはぁ、ヤバイな。ホントに年を感じ始めやがった。」

ようやくまっさんの到着。

「だらだら自堕落な生活を送ってるからだ。ちょっとは外に出ろ。そんなんじゃ発掘調査が持たねぇぞ。」

「はぁ、体力作りしなくちゃな・・・祥太、困ったことがあったらいつでも来いよ。」

「ショウタさん。いつか僕、ショウタさんとパーティーを組めるように強くなります。だからそのときはよろしくお願いします。」

うん、泣きそう。

「そうだな、もし俺とパーティーを組めるくらい強くなったら王都に来い。もしかしたら会えるかもしれない。」

「ショウタが『紅目の死神』ならレイは『蒼目の天使』な。」

「なんかレイの方がかっこよくないか?」

なんか少し嫉妬するわ・・・

「え、ちょっと待ってくれ。王都で有名な『紅目の死神』って祥太だったのか!?でもこいつ紅魔族じゃないよな?」

「なんちゃって紅魔族ですよ。形式上そうなってるらしいです。」

「ショウタさんがあの有名な・・・」

なんかむず痒い・・・

「さて帰るわ。皆、今までありがとう。」

「ああ、僕達の方こそパーティーを組んでくれてありがとう。」

「俺らが居ないからって泣くんじゃねぇぞ。」

「泣くのはお前さんの方だろ。ショウタ、『スキルバインド』有効に使えよ。」

「ショウタ君。あまり雪那ちゃんをいじめないであげてね。」

「ショウタさん、僕に色々くれてありがとうございます。」

「祥太、俺の打った『レッド・エンジェル・オブ・デス』で魔王をぶっ倒してくれよ。」

『「「「「「「長い・・・」」」」」」』

雪那も含めて一斉に口にした。

「ほら、雪那も挨拶しろよ。」

「ぐすっ、皆さん今までありがどうございまじた。皆さんと過ごした時間を忘れません・・・」

多分一昨日のノーツより泣いてる。

「え、あの・・・今目の前で凄いことが起こったんですが・・・」

レイがポカンと口を開けて言った。

「説明はあの人たちに聞いてな。では、皆。さよなら!『テレポート』」

涙を目に浮かべながら紅魔の里に飛んだ。

王都で会ったエリス様。

どうかこの素晴らしい友人達に祝福を!




へーい、ねこたつむりである。
えーっと、少し遅れたのは理由がありまして・・・
まず絵を描いてましたねはい。
次にタブレットが不調子だったんです。
最後に丸四日ぐらいベットから動いてません。
これらの理由によりいつもより投稿が遅れました。
あ、どうでもいいですねはい。
主人公がいよいよ紅魔の里に帰ります!
紅魔組を待ち遠しにしてた皆さん。お待たせしました!(居たのかな?)
まぁ、ぶっちゃけ『爆焔』の時系列にショウタを乗っけるだけなんであまり大したことがない気もします。まぁ、書かないことには分かんないって感じです。何て言ったって僕は予想外の創造主ですから・・・
今回も予想外がありましたよ。『死神』やらレイ君やら魔石等々・・・
くそっ、一度も予定通りにいったことがない!
では、今回も読んでくださりありがとうございます。
次回も読んでくださるとありがたいです。


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第四章 爆焔シリーズ
帰郷


※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
やっぱり無理やりオリ主を入れるって難しいですね。多分色々矛盾してることがある気がします。(読み直してないからわかんにゃい)
あ、後ゴットイーターオンライン始めました。


「先生先生先生先生ーーーッ!!」

それは清々しい朝・・・森にふにふらとどどんこの叫び声が響き渡った。

「めぐみん、アレは知り合い?なんか、思いっ切り狙われてるんだけど・・・」

知り合いな訳ないじゃないですか、アレは私に秘められた力を恐れし、魔王の尖兵か何かで・・・「ほ、本当に、なぜ私を追いかけてくるんですか!」

「めぐみんの日頃の行いが悪いからよー!こないだ、エリス教の祭壇に置かれてたお供えかじってるのを見たんだからね!?」

あれを見られたのですか・・・しょうがないじゃないですか、どうせあのお供えは誰も食べないのですから飢えてる子の栄養になった方がエリス様も喜ぶと思います。

そんないいわけを心の中でして、飛んで追いかけてくる漆黒の悪魔から必死で逃げていた。

しかし、なぜ私だけなんでしょうか。他の生徒もちらほら居るのにそれに目もくれず私だけを見据えている。やはり私の魔力が膨大過ぎて・・・やっぱりお供えを食べたことで罰が本当に当たったんじゃ・・・、?背中に何かモゾモゾしている・・・

それは剥がされまいと必死で爪を立ててるクロだった。

閃いた!

背中に張り付いてるふてぶてしい毛玉をつかみ、

「仕方ありません、この毛玉を差し出しましょう!どうです?私よりも美味しそうでしょう!我が妹がごはんにしようと言い出す程ですから!」

「流石は首席、発想が違うね!」

「酷すぎる!そんな事ばかりしてるからモンスターに追われるのよ!」

何やらゆんゆんは文句があるようだ。自分の使い魔が自分の身代わりになるのは当然だと思うのだが。

問題のモンスターはゆっくり目の前にに降りて私と対峙した。

と、ゆんゆんが短剣を引き抜き私とあるえを庇うようにモンスターの目の前に立った。

あるえは冒険者カードをちらりと見た。強力な魔法を覚えられないか確認したのだろう。

私なら上級魔法が覚えられる。でも、そうしたら・・・

そう思った瞬間、なぜかゆんゆんが短剣を構える後ろ姿があの人に見えた。

どうしてこんなときに居ないのですか。助けてくださいよ!

心の中で叫んだ。

「『双斬・雷切裂』」

突然そのモンスターの腹から二本の形状の異なった剣異様な音を立てながらが突き出し、上としたに真っ二つに分かれた。モンスターは声もあげずに崩れ落ちた。

私、いや、私達は目を疑った。その場に悠々と立っていたのは紛れもないあの人だった。

「「しょうた」君!?」

「お兄ちゃん!?」

「久し振り。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

視界がぼやけてる。涙のせいか・・・

涙を拭って改めて目の前の景色を見た。

「ただいま、紅魔の里。」

懐かしい景色が目の中に飛び込んできた。グリフォン像や、商業区。

「あれ、師匠・・・しょうた君じゃない。お帰り。」

「ただいま、そけっとさん。」

第一村人はどうやらそけっとさんのようだ。しかし・・・

「そけっとさん。少し顔色悪くありませんか?」

明らか血が足りてない・・・

「え、そ、そうかな・・・?」

多分、うどんしか食べてないんだろうな・・・

「昨日何食べました?」

「・・・ひ、久しぶりにうどんを食べたわ。」

チーン

皆さん今の音が分かりますか?そうです。あの嘘を感知する魔道具です。お土産に買ってきたのをスイッチを入れたまま放置してたらしい。

「ほう、久し振り?」

「・・・あ、一ヶ月前にも食べたっけなぁ?」

チーン

「「・・・」」

往生際の悪い。この魔道具があるの分かってるのに嘘をつこうとするなんて・・・

「はぁ・・・」

「その地獄の底から出そうな溜め息は止めてほしいな・・・」

「嘘をつかなければこんな溜め息出ませんよ・・・」

どうしたらいいんだこの人は・・・

「何で作ろうとしないんですか?」

「あの一件以来トラウマになりまして・・・」

焦がしただけでトラウマかよ。

「自信持ってくださいよ。余計なことさえしなければ焦がすことなんて無いんですから。」

「・・・しょうた君、うちに・・・」

「面倒事は結構ですので。これ以上問題を抱えさせないんでください。」

「ねぇ、しょうた君。どのくらい行き先があるの?それ考えると笑えないんだけど・・・」

俺も笑えん。

「そう言うことなので。では、家に帰らせていただきます。」

頭を下げて家へと向かった。

 

 

ガチャ

「ただいまぁ」

居間の方からすごい勢いで走ってくる音が聞こえた。

「しょ、しょうた!?お帰りなさい!」

俺の姿を見るやいなや抱きついてくる母さん。

「ちょ、ちょっと苦しいって・・・!」

「あら、ごめんなさい。」

いくら久し振りだからと言ってここまできつくしなくてもいいんじゃなかろうか・・・

「父さんは?」

「今朝から王都に報告しに行ってるわよ。それより・・・」

目線を俺の手に移した。包帯が巻かれてるから気になるんだろうか?別に今はそんなに痛くないから心配はいらないんだけど。

「その包帯、凄くかっこいいわね!」

俺は紅魔族を少しばかりなめてたようだ。ここまで中二病に陥ってるとは・・・

母さんは珍しく目を輝かせて言った。

「部屋に荷物置いてくる。」

そう言って自室に向かった。

『あぁ、久し振りですねこの部屋。』

「そうだな。でも、久し振りにしては暖かくないか?」

半年も空けてたんだ。この部屋には人が入ることは掃除以外にない。部屋は人が使うから暖かくなるのでここは寒い筈なんだが・・・

「ご主人様のベットに少しばかりの暖かみを感じます。」

「勝手に出てきて布団に入るな。」

こいつに今すぐにでも『スキルバインド』を掛けたい。でも、解除魔法をまだ覚えてないから安易に掛けられない。

「それにしてもご主人様、こっちに戻ってきたらニートですね。」

「に、ニート・・・は、働くし!しっかり働くし!」

そうと決まれば善は急げ。定食屋にお世話になりに行こう。

「あ、待ってくださいよ!」

 

 

定食屋に向かってる途中だった。

「うーん・・・?」

「森から変な魔力を感じますね。」

「お前も分かるのか?なんか嫌な感じの流れ方だよな・・・」

俺は最近『雪那』の『魔力伝導』のお陰で魔力に対してかなり敏感になってた。

「行ってみますか?」

「ああ。」

俺は『雪那』を手に森の方へ入っていった。

 

 

「なぁ、雪那。あれ悪魔じゃね?かなり強そうなんだけど・・・」

『上位とまではいきませんが、確かに一筋縄ではいかないですね。』

俺は邪悪な魔力を辿ってその持ち主らしきモンスターを見つけ、岩影に身を隠していた。

「・・・!?ちょ、ちょっと待て。あれの目の前に居る奴らゆんゆん達じゃねぇか。」

それを目にした瞬間、俺は『雪那』と『死神』を引き抜いて走り出していた。

何やらゆんゆんが短剣を構えてるようだ。あのバカ。勝てるわけないだろ。

モンスターの背後に近付き、

「『双斬・雷切裂』」

静かな声に反してその威力は絶大だった。明らかに刃を通さなそうな肉質をしてるモンスターにスッと入り、真っ二つに分かれた。別に斬った訳じゃない。刺して雷撃で弾け飛んだんだ。

声もあげずに崩れ落ちるモンスター。その亡骸越しに見えたのは目を丸くしてる三人組だった。

「「しょうた」君!?」

「お兄ちゃん!?」

「久し振り。」

「ひ、『久し振り』じゃないですよ。何も言わずに何処かに行ってしまうなんて・・・」

「そう言えばお前らには直接言ってなかったな。悪い。」

めぐみんとあるえに謝った。

「帰って来るなら帰って来るって連絡をしてくれたって良いじゃないか。」

何やら少しご立腹のあるえさん。

「突然帰ってきた方が感動的だろ?そもそもあれから半年。そろそろ帰ってくるんじゃないかとそわそわしてたんじゃないか?(笑)」

「まぁ、今思い返してみれば、最近ゆんゆんの様子がおかしかったですしね・・・」

チラッとゆんゆんを見てめぐみんが言った。

「な、何言ってるのよ。めぐみん!べ、別にそわそわなんか・・・!」

「むきになってるとこが余計に怪しいよ。それに一週間前から朝早く里の入り口で立ってるって言う話もちらほらと・・・」

「あああああ!そ、そんなこと・・・あ、あれはただ朝の散歩の休憩場所なだけだから!」

そんなに必死になって誤魔化さなくてもいいんじゃなかろうか。

「そっか、一週間も前から待っててくれたのか。ありがとな。」

ゆんゆんの頭を撫でながら言った。

「っ!?・・・」

「「・・・」」

おう、物凄い形相で見てきますね。

「はぁ、ところでその剣は一体何なんですか?『雪那』と同等位の魔力を感じますけど。」

めぐみんが『死神』を指していった。

「とある鍛冶屋で作って貰った。」

「君は神器級の魔道具を集めるのが趣味なのかい?」

「いえ、全くそんな趣味はありません。」

神器を集めるのが趣味な奴って貴族かどっかの盗賊女神しかいないだろ。

「はぁ、全くタイミングを狙ってたのに教え子に先にやられるとはな・・・」

場違いなセリフを吐く教師がやって来た。

「久し振り、ぷっちん先生。」

「ちょ、ちょっと待ってください。先生は私たちをいつでも助けれたのですか?」

「ああ、詠唱も終わってたし、後は一番格好いいタイミングで助けるだけだった。」

「あんたホントろくな教師じゃないな。」

「何をいってるんだ。俺はいずれは校長の座に座る者だぞ。」

「あんたはトイレの便座がお似合いだよ。」

「・・・十数年前にも同じようなことを言われた気がする。」

誰もがそんな前からこの人の本性を見抜くなんて見る目がある人ですね。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。それよりお前のさっきのタイミングといい技といい、俺は教師として鼻が高いぞ。」

「は、はぁ・・・」

もうこの人には呆れてものが言えんわ・・・

「にゃー」

にゃー?

鳴いた方を見ると、

「何その愛くるしいねこは?」

めぐみんの肩に俺を興味津々に見てくるねこを指した。

「私の使い魔のクロ(仮)です。」

「仮名なんだ。よろしくな。」

「にゃーん。」

あかん、可愛すぎる。

「しょうたの顔が少し、いや、かなりヤバイ顔になってるのですが・・・」

めぐみんがが若干引きながら失礼なことを言った。

「おい、人の顔にけちをつけるな。」

クロ(仮)を撫でながら反論した。

『ご、ご主人様。私も!私も撫でてください!』

「・・・ついにお前がペット枠だと言うことに気付いたか。」

『ひ、酷い・・・!』

「あの・・・さっきから雪那の声が聞こえるのですが・・・」

めぐみんが辺りをキョロキョロして雪那の姿を探してる。

「あの、お前必死に探してるが雪那はここだぞ?」

腰に下げてる刀を触った。

『はふぅ。』

・・・・・。

「え、えーっと、前までその形で喋れなかったよね?」

聞かなかったことにするらしい。ゆんゆんが戸惑いながらも聞いてきた。

「ああ。迷惑なことに『共鳴』のレベルが上がったらしく自由に出入り出来る上に声を聞かせる相手を俺の任意で聞かせることが出来るらしい。」

『め、迷惑とは何ですか!?どこで迷惑を掛けたんですか!?』

「勝手に出てくるところ辺り。」

そのせいでこっちはいつも驚かされて心臓に悪い。

「しょうた。そっちの剣は自我を持ってないんですか?」

さっきから気になってたのかめぐみんがチラチラと『死神』を見ていた。

「幸いこいつにはめんどくさい自我は付いてない。その代わりに使う際にかなりの負担がかかるがな・・・」

前の『雪那』は良かった。卒業時辺りが一番良かった。魔力は劣るが精神的に楽だと思う。

『何文句いってるんですか?確実に戦力は上がってるんですから。それにその子m・・・』

「ほら、積もる話は後にしたらどうだ?一応授業中だしさ。」

雪那を遮るように珍しくもまともなことを言うぷっちん。

「あ、そうか。養殖中だったのか。またお前どやされるな。」

「恩師に対してお前呼ばわりするな。おいこら、ちょっと待て!」

喚いてるぷっちんを後に森からの脱出を図った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よーし、お前らよく聞けー。邪神の墓の封印が解けかけていた事は話したな?今朝の野外授業で、変わったモンスターに出くわしただろう?ほら、そこに突っ立ってる俺の見せ場をかっさらっていった奴が倒したモンスターの事だ。」

ぷっちんは俺を指差し、少しばかり睨んできた。

見せ場って、そんなことならタイミングを計らずとも魔法をぶっぱなせば良かったのに。

「・・・いや、いつまでも俺を睨むな!さっさと続きを言えよ。」

「・・・ごほん。それで調査の結果、アイツは邪神の下僕である可能性があるとの事だ。封印の欠片を探しているのだが、相変わらず欠片は見つかってないそうだ。急いで調査を進めないとマズい。という訳で俺も、今から駆り出される事になった。昨日に引き続いてモンスター狩りだ。しょうた、お前も手伝ってくれと言伝てを預かってるぞ。」

「残念ながら、先の戦いで我が封印されし力を少しばかりの解放してしまい、その代償が体に来てるため、今回は参戦出来ないようです。まぁ、俺が居なくともぷっちん先生の秘められし力があれば十分だと思われます。」

流石に二本同時に魔力を流すと疲れが出てくる。『死神』に関しては流れやすいように『バーストモード』を発動させたのだから、負担が大きい。

「そうなのか。まぁ、俺のこの力があれば行けるだろう。」

紅魔族チョロい。

「よって、今日も午後の授業は無しだ。先日も言ったが、墓の再封印がなされるまでは一人で帰らず集団で下校するように。以上だ!」

ぷっちんはその事を伝えたら直ぐに教室を出ていった。

邪神とか物騒だな・・・

「にゃーん」

「どしたぁクロ?ご主人から離れていいのか?」

足元に近付いてきたクロ(仮)を抱き上げた。

「めぐみん。・・・あ、あの・・・きょ、今日も・・・」

どうやらゆんゆんがめぐみんに一緒に帰ろうと誘いたいらしい。

まだあいつコミュ症をこじらせてたのか。半年前までは普通に話せてただろうに。

そう思ってその光景をクロ(仮)を撫でながら眺めてると、

「・・・ゆんゆん、一緒」

「ねえ、ゆんゆん、一緒に帰ろう!ていうかさ、ちょっと話があるんだ!それと、さっき置いて逃げちゃった事を謝りたくてさ!」

めぐみんの言葉を遮るように、ふにふら達がゆんゆんを誘った。

俺はその光景を目の当たりにしてポカーンとしてた。

あのゆんゆんに話しかけてくれる人が出来ただなんて・・・しかも一緒に帰ろうって誘われてる・・・あ、ヤバイ、涙出そう。

最近涙腺がゆるゆるだ。

「えっ!?あ・・・、う、うん。」

めぐみんと帰るつもりがふにふら達と帰ることになったゆんゆん。押しに弱いのは知ってるが、流石に自分の意見を押し殺すのはどうなんだろう。そのうち土下座されたら何でもやりそうなうちの妹が怖い。

「えっと、じゃ、じゃあねめぐみん。また明日・・・」

そう言って何処か寂しそうな表情をして教室を出ていった。

残されためぐみんにあるえが近付き、

「・・・寝取」

「それ以上言ったら、その忌まわしい巨乳をエライ目に遭わせますよ!」

俺が居なくなって大分変わったもんだなぁ・・・

 

 

ガラガラガラ

「いらっしゃい!ただいま満席の・・・おおぉ!しょうた君じゃないか!いつ帰ってきたんだい?」

俺は再度雇ってもらうために定食屋に来ていた。

「今日の朝です。しかし、繁盛しすぎでは?」

いつ来ても満席。外には長蛇の列。ここの里の人は昼御飯を大抵ここで食べるのか・・・?

「ははは、ところで今日はどうしたんだい?」

「俺がここに来る目的は一つしかないでしょ。」

 

 

「では、合計千八十エリスとなります。」

めでたくバイトを再開することが出来ました。

「やっぱりご主人様のエプロン姿は良いものですね・・・」

「働けよ・・・」

雪那はカウンターで頬杖つきながら俺を見てた。

「いっそのこと写真集を・・・」

売れないと思うんだけど。

どうしてこいつはしょうもないことしか思い付かないんだろ?

「しょうた君、これ二番テーブルの。」

「了解です。」

ガラガラガラ

「いらっ・・・お金持ってます?」

「!?貴様、いつ帰ってきた・・・?」

俺はめぐみんの父親であるひょいさぶろーと睨め合った。

「今朝帰ってきた。それで注文は何にします?」

「カエル定食を一つ。」

・・・ん?

「お客さん失礼ですがお金持ってます?」

「馬鹿にしてるのか?こないだ丁度客が来てな。久し振りにお金が入ったんだ。」

「へぇ、そう言えばひょいさぶろーさんは何をしてるんですか?」

かなり前から気になってた。めぐみんの家がお金がない理由は?と。この人が仕事してない訳じゃないだろうし・・・

「魔道具の職人だ。まぁ、少し値が張るから売れないんだがな。」

ひょいさぶろーが乾いた笑をした。

「ひょいさぶろーさんの魔力は桁違いですからねぇ・・・強力な反面高いのは仕方ないですわ。」

「お陰で家族を養うのが難しくってなぁ。」

知ってます。あなたの娘さんにたかられましたから・・・

「またお菓子やらなんやら作って持っていきますよ。」

「いらん。貴様にうちの敷地を踏ませる訳にはいかん。」

「何でやねん・・・」

思わず素でツッコんだ。

「しょうた君。カエル定食出来たよ。」

「はーい。」

「ご主人様、なんやかんやでひょいさぶろーさんと仲良くありませんかね・・・?」

何言ってるんだこいつは。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぅ、やっぱあそこのバイトは忙しいな・・・」

湯船に浸かりながら今日を振り返っていた。

「やっぱり限界値増やさないとな・・・『バーストモード』」

俺は10%程度でリミットを解放した。これを体にならしとけば時間が徐々に伸びていく。体力作りみたいなものだ。

10%程度なので目が通常の紅魔族の紅目になる。

「ご主人様。一緒に入りましょ。」

「『スキルバイン』」

「『マジックキャンセラー』」

数コンマ雪那の方が早かった。

「おい、ふざけてんのか?入ってくんなよ。」

「良いじゃないですか。一度やったことは二度三度やっても同じなんですから。」

なんというビッチの考え方・・・

「それよりご主人様。目が紅いですけど・・・もしかして怒ってます?」

「え、あぁ、大丈夫。ちょっと特訓をな・・・」

「今でもかなり強いのにまだ上を目指すんですか?」

「おいおい、一応最終目標は魔王討伐だぞ?今のままじゃ確実にリンチされてミンチになる。」

「まぁ、ご主人様の生命力は一般人以下ですからね。体力はお化けなのに・・・」

「正直言って体力は『バーストモード』の為にあるものだからな。」

ふーんと言いながら体を洗い始めた。

・・・目のやり場に困るな・・・

「ふふーん。ご主人様。別に見てもいいんですよ?あるえさんとゆんゆんさんには劣りますがどうです?結構自信があるんですよ。」

別に胸張って言えわれてもなぁ・・・いや、確かにまぁまぁだとは思うよ?でもなぁ・・

「だ、ダメだ。見たくても見れない。あるだろこういう経験。」

「ああ、確かに。ご主人様の」

「はい、ストップ!それ以上はいけない。」

雪那がとんでも発言をしようとしてたので全力で止めた。

いや、まさかあれを女子の目の前でやってたなんて恥ずかしいにも程がある。

「ふぅ、異性に見られるなんて死にたくなるレベルだぜ・・・そう言えばお前の体ってどうなってんの?」

前にこいつは俺のベットを汚そうとしたことがあった。つまりそういうものが出るということだ。こいつは刀でDNAもくそもない。その辺がとても気になる。

「き、気になると言われましても・・・見ます?」

顔を赤くしながら近付いてきた。

「そ、そう言うのじゃない。ほ、ほら遺伝子的なレベルの話。」

「・・・そんなの分かりませんよ。子供も出来るか分からないですし。もし出来ない体だったら完全にご主人様専用オ○ホですね。」

・・・マジで死ねばいいと思う。

「あのな、そういう重い下ネタは良くないと思うんだ。軽いのいこうぜ軽いの。う○ことかさ・・・」

「小学生ですか?と、ちょっと失礼しますよー。」

ザバー

雪那が入ったところで狭くなる訳でもないんだが・・・

「くっつきすぎ。」

「そうですか?いつもこのくらいくっついてますけどね。」

それお前刀の時だろ?

「あれ、ご主人様。肩の後ろに刺青がありますよ?いつの間にそんなものを・・・?」

「え、マジで?俺からじゃ見えんな・・・」

「形状は縞々で端的に言えばバーコード見たいですね。でもこれどっかで見たことあるような・・・」

風呂から出たら父さんに聞いてみよ。

「全く身に覚えがないんだけどな・・・」

「・・・あ!思い出しました!それゆんゆんさんにもありましたよ。流石にそれが何かは聞きませんでしたが確かにありました。とするとそれは紅魔族が持つ刺青と言うことになるんですかね。」

「ひでりうさんには無かったのか?」

「昔はこんなに積極的では無かったですもん。ちょっとおしゃべりなだけでしたし・・・」

俺もそれぐらいが良かったよ。

「もしこれは紅魔族のものだとしてだ、何で今出てきてるんだ?前も雪那とゆんゆんで入ったことあるけど気がつかなかったじゃないか。」

「あれじゃないですか、『バーストモード』。確かあれは紅魔族としての潜在能力がどうのこうのってエリス様が。」

「なるへそ。じゃあ目が紅くなるのと一緒でこの刺青も出てくるのか。」

そりゃ気づかねぇわ。

「いやぁ気付いて良かったですね。もしその刺青の事聞いてたら大変なことになってましたよ。」

「ホントに。」

危うく実は紅魔族の血筋を引いてることがバレてしまう。そうなれば俺が誰の子かなんて直ぐにバレてしまうだろう。そうなればどう考えても時系列的にズレが起きる。

「褒めてくれてもいいんですよ?・・・・ご主人様?」

「すーっ」

「ね、寝てますね。・・・しかも器用に『バーストモード』を発動させたままで。・・・少しだけなら良いですよね。」

 

 

「あぁ、ヤバい。切らずに寝てたわ・・・どれく・・・せ、雪那さん?」

「あ、おはようございます。」

雪那は声に気付き顔を上げた。

「えっと、そのおはようございますじゃなくてどうしてそんなところに・・・?」

今まですやすや寝てた俺だが目を覚めるとそこには俺の足にまたがって胸へともたれ掛かってる雪那の姿があった。

「どうしてって言われても、欲求のままに行動したらこうなりました。」

「良かったよ、お前の欲望がこんなもんで。」

思ってたほどこいつはわいてないのかもしれない。

「強姦しても嬉しさ半減でやっぱり合意の上でヤりたいですよね・・・」

前言撤回。やっぱりわいてやがる・・・

「というわけでどうですか?」

「・・・何言ってんの?ヤるわけないじゃん。そういうのは魔王討伐してからだ。」

「討伐したらヤらせてもらえるんですか?」

「・・・その前に色々決断しないと・・・」

最近色々あったせいで願い事が若干ではあるが揺らいできてる。たまにこいつらの一人と楽しく過ごすのもありかなって思うときがあったりもする。

「ご主人様はハーレム願望は無いんですね・・・」

「そんなの願ったって皆が不幸になるかもしれないだろ。そんなの願わない。」

「その割には気が多い気がしますけどね。」

すみません。

「ま、いいんですけどね。」

「それはそうと雪那さん。そろそろ離れて欲しいんですけど・・・」

「嫌ですよ。最低でも後五分はこうしとかないと気が済みません。」

「俺が寝てからどれくらい経った?」

「ざっと40分でしょうか?」

「十分じゃね?」

そう言って雪那を引き剥がした。

「いやん、エッチ・・・」

「ええエッチじゃねぇーし!どどどちらかと言うとお前の方がセクハラだからな!?」

「ふふふ、ご主人様ったら焦っちゃって、ホントに可愛いですね・・・」

今日もまた神器に弄ばれた。

 

 

「いや、自分の部屋に行けよ。」

「嫌ですよ。」

風呂から上がった俺達は自室の前で言い合ってた。

「何のためにお前の部屋を用意してもらったんだよ。申し訳ないだろ。」

「私はご主人様の物に指定されてこの世界に来たんですよ?だったら私はご主人様の所有物でご主人様の部屋にあっても可笑しくないんです。」

「いいか、俺は今のお前を物として扱ってない。一人の人として扱ってるんだ。女子が男子の部屋に入ろうとするんじゃありません。」

「ご、ご主人様・・・!」

目を潤ましてこっちを見てきた。

え?何でこいつ泣きそうなの?俺何か悪いこと言った?

「私嬉しいです。私を物として見ずにゆんゆんさん達と同じように一人の人として見てくれてることが凄く嬉しいんです。」

そう言って抱きついてきた。

「そ、そうか。良かった、もしかして気にさわることを言ったんじゃないかと・・・」

「ご主人様。」

俺の言葉を遮った。

「何?」

「やっぱりご主人様のことが大好きです。今日のところは諦めます。ではおやすみなさい。」

分かってたけど改めて直接言われるのは恥ずかしいな。

雪那は少しだけ頬を赤くして自分の部屋に戻っていった。

「はぁ、一番辛いのはあいつなんだよなぁ・・・」

ガチャ

自室に戻ると、

「・・・明らか布団に誰か入ってるよな。あれか遂に雪那が瞬間移動でも覚えたか?」

そんなわけないか。

バサッ

「すぅー、すぅー。」

まぁ、予想はしてたけどさ。

「おいゆんゆん。起きろ。俺の寝るとこがない。」

「ん、・・・」

俺の顔を見るなり赤くなる。

「え?ど、どうしてここに?」

「いや、ここ俺の部屋だろ?」

「・・・あ!そうだった。ここ半年の習慣が・・・」

「半年の習慣?」

「な、何でもない!」

「まさかお前ここ半年ずっとこの部屋で寝てたってことはないよな?」

「・・・」

さっきよりもさらに赤くなってしかも目まで光りだしてる。

「どうりで部屋が暖かかったわけだ。お前は使ってたんだな。」

コクリとゆんゆんが頷いた。

「寂しがりにも程が・・・!?」

ゆんゆんが抱きついてきた。

「雪那ちゃんの匂いがする。さっき抱きつかれたの?」

鼻をスンスンならして言ってきた。

あいつに匂いとかあるのか?一応刀だし付いてたとしても俺の匂いだと思うんだが・・・

「ま、まあ。それより早く部屋に戻れよ。」

「もう少し。後10分このままで居させて。」

朝は遠慮がちだったのにここに来てアグレッシブになったなぁ。

そう思いながら10分という短い時間を過ごした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめん、今何て言った?」

定食屋の席に着き、ぷっちんに聞き返した。

「だから、最近あの邪神の下僕と思われるモンスターが里でも目撃されたらしい。そこで邪神の再封印の為に人を集めようってことになったんだが、そこにお前を入れたいと思ってるんだ。」

何言ってんだこの人。

「あのですね、封印にはとてつもない魔力が要るんですよね?俺の魔力どんなものか知ってます?平均ですよ平均。俺なんか頼むよりそこら辺で油売ってるぶっころりーさんとかぶっころりーさんとかに頼んだ方がいいと思いますがね・・・」

ニートだし暇もしてるだろう。

「いや、あいつは頼めば直ぐ来てくれるから後回しにしてるんだ。」

ぶっころりー、甘く見られてる・・・

「でもそうか、それなら仕方がない。他を当たるとする。悪かったなバイト中に。ご馳走さま。」

「いえいえ、またのお越しをお待ちしてます。」

ぷっちんが出ていき食器を流しに持っていくと、

「しょうた君の魔力って雪那ちゃんで強化されるんじゃなかったけ?」

店長ちょっと鋭すぎやしませんかね?

「・・・そう言えばスプリットのカエルの唐揚げが凄い濃かったんですよ。あれなんでですかね?」

「しょうた君!?」

詰まってる排水溝に無理矢理水を流すように話を流した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「くうううう!こ、ここっ!このマスに、『ソードマスター』を前進させれるわ!」

現在俺は芝生の上で訳の分かんないチェスの試合を観てた。

「このマスに『アークウィザード』をテレポート。」

「めぐみん、テレポートの使い方が嫌らしい!・・・ねぇ、『アークウィザード』は使用禁止にしない?」

「しません。ほら、そうこう言ってる間にリーチですよ。」

「ああああ、待って、待って!」

このあとゆんゆんがボロ負けしたのは言うまでもない。

そもそも何でこんな芝生の上で遊んでるかというと、どうやらゆんゆん達が昨日糞にーt・・・げふんげふん。ぶっころりーさんに相談があると言われ、ここで待機してる。

「なぁ、俺必要なのか?ぶっころりーさんには若い女の子にしかできない相談って言われたっんだろ?これって場違いなやつじゃ・・・」

「何言ってるんですか。もしかしたら色々と危ない相談かも知れないんですよ?」

あの糞ニート・・・ぶっころりーさんにそんな度胸ないと思うけどな・・・

「大丈夫だって。お前に需要があるのはごく一部だっ!?ま、待て!止めろ、あ、謝るから首締めるな!」

めぐみんが切れて襲いかかってきて馬乗りされた。

「め、めぐみん。まだ勝負中よ!」

「ちょっとうるさいです。この男に制裁を下さなければ・・・!」

制裁って何だよ。全く需要が無いって言った訳じゃないだろ?

「わ、分かった。今度喫茶店でサンドイッチ奢るから!」

「ふん、食べ物でこの私を釣れるとでも?サンドイッチとシチュー、それに飲み物を追加で。」

バリバリ釣られてんじゃねぇか。

「交渉成立ということで、どいてくれない?」

「仕方ないですね。では、これをそのマスに。」

何事もなかったようにゲームに戻り出すこの切り返しっぷりはなんだよ。

「にゃう」

「お前も大変だな。」

クロ(仮)を抱きながら寝転がった。

ぶっころりーさん早く来ねぇかな・・・

「や、やった、このままいけば何とか勝てそう・・・!さあめぐみん、これで終わりよ!このマスにクルセイダーを・・・」

「エクスプロージョーン!」

酷い光景をみた。駒が盤から宙に舞って、盤はひっくり返った。

「あーっ!めぐみんズルい、盤をひっくり返すのはズルいわよ!」

「でも、このルールブックにちゃんと書いてありますよ?・・・」

ルールブック片手に説明するめぐみん。て言うか、そんな糞ルール作ったやつは誰なんだ?普通エクスプロージョンとか思い付かんだろ。

 

 

「もう一回!ねぇめぐみん、もう一回お願い!」

このチェスみたいなのを始めて三時間半。いい加減諦めたらいいと思う。だが・・・

「何度やっても私の勝ちですよ。」

少し調子に乗ってるめぐみんを凹ましたい。

「しかしこのゲームは面白いですね。」

「おいめぐみん。一回俺とそれで勝負しないか?」

「ほほう。冒険者ごときがこの知力の高いアークウィザードに挑むのですか?」

「お前の知力がどんなものかは知らんが俺だってそこそこ高いって言われてるんだ。そもそもお前。学校でいつも二番手だったじゃねぇか。舐めんな。」

「っ、いいでしょう。あのときの雪辱晴らさせて貰います!」

~五分後~

「ふっふっふ。元一番手の実力はそんなものですか。大口叩いた割には大したこと無いですね。これならゆんゆんの方がまだ強いですよ。」

「冒険者をそのマスに。クラスチャンジでソードマスターに変更。」

「そんなとこに置いてなんn・・・!?」

「やっと気付いたか。お前がこのアークウィザードに気を取られ過ぎて気付かなかったんだな。次お前がどう動いてもここにクルセイダーを置いてチェックメイトだ。」

「わ、私としたことが・・・!も、もう一回です!」

「嫌だよ。一回って言ったじゃん。にしてもぶっころりーさん遅いな。」

聞いたところによると集合は朝ということであまり時間は限定されてない、が、今は昼前だ。どう考えても朝の時間ではない。

「呼びに行ってみる?」

「そうするか。」

俺達はゆんゆんの提案を受けてぶっころりー宅へ向かった。

 

 

「あれ、しょうた君達じゃないか。みんな集まってどうしたんだい?」

「あるえか。いやな、こいつらが昨日ぶっころりーさんに頼み事をされてな、不安だから付いてきて欲しいて言われて現在に至る。」

「ふーん。そう言えば雪那ちゃんはどうしたんだい?」

「あいつなら多分寝てるんじゃないかな?寝てる間にスリープ掛けたし。」

寝てる相手にスリープを掛けると睡眠時間が伸びる。

「ところであるえはどうしてこんなところに?いつもなら家で小説を書いてると思うんですが・・・」

俺もめぐみんと同じことを思ってた。せっかくの休日なのだから趣味に没頭するのが普通だ。あ、因みに俺も運良くバイトが休みです。いわゆる定休日って奴ですね。祝日と被るとか嬉しい。

「たまには外に散歩に出てもいいかなぁってね。」

「ねぇめぐみん。あるえにも付いてきてもらわない?」

「そうですね。ぶっころりーも若い子が増えたら喜ぶでしょう。」

相談相手が増えるからだよな?

「しょ、しょうた君。とても嫌な予感がするんだけど。」

「大丈夫だって。そんなお前が想像してる事なんて起こらないから。」

「そ、想像なんかしてない・・・!」

一気に顔を赤くするあるえ。

やっぱりこいつムッツリなんだなぁ。

「あるえ、何を想像してたの?」

あるえの顔を覗き込むようにゆんゆんが聞いていた。

「え、あぅ・・・」

止めてやってくれそれ以上追求したらオーバーヒートするぞ。

「ゆんゆんかなりえげつないことしますね・・・」

めぐみんまでもが若干引いてる。

「そ、そうかな?」

「ああ、いくらいつもお前がそんなことを想像してるからと言って他人に聞くのはどうかtごふっ!?」

いきなり溝内に拳をねじ込まされた。多分この世にHPゲージがあるとするなら、きっと今はイエローゾーンに差し掛かっているだろう。この生命力の低さを改めて実感した。

「な、何バカなこと言ってるのよ!?」

バカなことと思うなら殴る必要はないと思う・・・

「しょうたぁ、生きてますか?」

とりあえず親指を立てて生きてることを示した。

「そうですか、はぁ、ゆんゆんの気持ちも分からないこともないですがいきなり殴るのはどうかと思います。せめて一言言ってから殴りましょう。」

そこ?殴るの絶対なの?

「立てるかい?」

そう言ってあるえが手を差し出してきた。

「ん、あぁ、お腹痛い・・・」

朝食べたものが出てきそうだ。

「まぁ、しょうたもしょうたです。言葉をもうちょっと選んで発言してください。」

「はい・・・」

まさかめぐみんに怒られる日が来るとはな・・・

「で、あるえは来るのですか?」

「うーん、暇だし、みんなと一緒なら大丈夫だと思うから行くよ。」

大丈夫ってなんだよ。ぶっころりーさんはどういう風に見られてるんだ?

そんな疑問を抱きつつ歩き出した。

 

 

「ごめんください。ぶっころりーはいますか?」

「おっ、めぐみんじゃないか、らっしゃい!せがれならまだ寝てるぜ。」

ここは里随一の靴屋さん。まぁ、この里には靴屋なんてここしかないんだけども・・・

しかし、約束があるっていうのに寝てるって糞野郎だな。

めぐみんが目元をひくつかせて、

「すいません、起こしてもらっていいですか?実はぶっころりーから、『いたいけな少女の君達に相談があるんだよ、はぁ、はぁ!』とか言われまして。」

おっとそれはあんな風に見られても仕方がない。

「あの野郎!」

うわっ、物凄い勢いで飛んでいったな・・・流石にあんなことを息子が言ってたらな・・・

「ちょ、ちょっと!ぶっころりーさんが言ってた事とは、大体合ってるけど大きく違うわよ!」

「人を呼びつけといて呑気に寝ているニートには、このぐらいしてやらないと。」

大体合ってるなら良いじゃないか。

ぶっころりーさんの悲鳴を聞きながら思った。

「ひいいっ!ああっ、めぐみん!酷いじゃないか!親父に、『このロリコン野郎!』とか怒鳴られて・・・ねぇ、めぐみん。何でこいつが居るのかな?」

明らか敵意剥き出しでこっちを見てくる。なんかしたっけ?

「こいつとはしょうたのことですか?それは私達の護衛みたいなものです。そんなことよりさっさと行きますよ!」

「あっ、rちょっと待ってくれ!俺、まだ着替えてもいない!」

 

 

着替えを済ませたぶっころりーさんと俺達はお決まりの喫茶店に入っていた。

「ゆんゆん、あるえ。好きなのを頼んでください。ぶっころりーの奢りなので遠慮することはないですよ。あ、私はカロリーが一番高いパフェをお願いします。」

それ女子の注文じゃないよね?

「それって俺が言う事じゃないのか!?金なんてほとんど無いのに・・・」

「まぁまぁ、ここは俺が払っとききますから。」

「も、申し訳ない。」

さっきの敵意は何処へ行ったのやら。

「それじゃあ本題に入ろうか。相談ていうのは他でもない。実は俺・・・好きな人が居るんだ。」

うん、知ってる。

「ええっ!」

「ニートのクセにですか!?」

ゆんゆんとめぐみんは驚いてるがあるえはそうでもないらしい。『ふーん、で?』みたいな顔をしている。

「ニートは関係ないだろ!ニートだって、飯も食えば眠りもするし、恋だってするさ!」

その前に働けこの糞ニートが。

「こ、恋バナだ!ねぇ皆、恋バナだよ!」

何が嬉しいのか目を輝かせてるゆんゆん。そんなに恋バナがしたいならお前の全てを洗いざらい話すぞ。

「う、うるさいですよゆんゆん。しかし、相手は気になりますね。誰なんですか、そのニートのハートを射止めたのは?私達の知ってる人ですか?いえ、もしかしたら私達の誰かだとか・・・」

この里の人口少ないんだからほぼほぼ知ってる人だろ。

「おい、可笑しな事言うなよ。自分の年齢を考えてくれ。俺はロリコンじゃ・・・」

次の瞬間ぶっころりーさんに拳が三つ飛んできた。

めぐみんはともかくゆんゆんやあるえもロリコンに反応するとはな・・・今度から気を付けよ。

「さ、三人とも容赦ないな・・・それで、俺が好きな人って言うのは・・・」

 

 

「あのですね、月とすっぽんっていう言葉知ってますか?」

ぶっころりーに意中の相手を聞いためぐみんがそんなことを言い出した。

「何それ?」

まぁ、知らなくて当然か。日本の言葉だもんな。

「本で読んだんですが、遠い異国の言葉で月の様に綺麗なものとすっぽんのような醜いものを天秤にかけたときに使う言葉です。」

俺はすっぽんかわいいと思うけどなぁ・・・

「そこまで言う必要はなくないか?鋼の精神を持つ俺でも流石に傷付くんだけど。」

「まぁまぁ、それよりそけっとさんの家まで来たのはいいけど、これからどうするんだい?」

「手っ取り早いのはぶっころりーさんがお客になって会話を弾ませるって言うのがセオリーだと思うんだけど・・・」

そこまで考えれるならゆんゆん。もうちょっと友達増やそうぜ。

「そこまで社交性があったらニートなんてやってない。それにそんなお金があったら毎日のように通い詰めてるよ。」

「もう私達帰って良いですかね?」

そうめぐみんが言った瞬間、

「あ!!良い案がある。これなら会話も弾みやすいし、何より共同作業ができる。」

共同作業という言葉に反応する紅魔族。

「おいお前ら。何を想像した?」

「しょ、しょうた。その目で見ないでください。」

「死んだ魚の目だよそれ・・・」

「べ、別に変なことなんて想像してないから!」

「そ、そけっととの共同作業・・・」

もう駄目だこの人・・・

「はいはい。考えを言うから良く聞けよ。とりあえず今から食材を買いに行こう。」

「「「「え!?」」」」

「俺が得意なものは何だ?」

「トランプゲーム」

「イカサマ」

「たらし」

「殺戮」

泣いていいかな?

「違うだろ!?料理だよ!料理!」

「あ、成る程。私の家みたく料理教室みたいなものをやろうと言うわけですね。」

流石現主席。頭良い。

「そうか!お兄ちゃんそけっとさんに料理をちょくちょく教えてたから簡単には出来るのよね。」

「そ、そうだったのか。俺はてっきりしょうた君とそけっとが・・・」

な、成る程ぉ。だから敵意剥き出しだったのか。

「全く、年を考えてくださいよ。流石に二十代の人とは付き合えないですって。」

思いっきり守備範囲外だ。そもそもあの年代の人にはトラウマしか・・・

「そうと決まれば早速市場に行こう。」

どことなくあるえが楽しそうに言った。

 

 

で、再びここに戻ってきたわけだが。

「留守みたいですね。」

どうやらそけっとさんは不在らしい。

「どうしよっか。せめてどこに行ったかだけでもな・・・」

そうぼやいたら、

「そけっとの事なら俺に任せてくれなんせ俺とそけっとの仲だからね、まずそけっとは朝七時に起きるんだ、健康的だよね、その後シーツを洗濯かごに・・・・・こっからは書く気が失せたので省略させていただきますorz・・・・・まあそれはいいとして、今の時間帯だとそけっとが店に帰ってくるまであと二時間ちょっとってとこかな、このまま待っててもいいんだけどね。・・・どうする?」

あまりにも濃い情報過ぎる。俺が心配してたことがついに起こった・・・

「そ、それってストーカ・・・」

「おっとゆんゆん、それ以上言うのはいくら族長の娘でも許さないぞ。」

「いや、もうあんたが人間として許されないよ。でも、あと二時間か・・・それは長すぎる。早く居場所を知って誘わないと食材が・・・」

「大丈夫さ、行き先なら見当がついてるんだ。」

その自信がどこからくるんだろう。凄い自信満々に道案内をされた。

「なぁ、俺はどうすれば良いの?ぶっころりーさんを凄いと思ったら良いのか通報したら良いのか、どっち?」

「確実に後者ですね。」

里にある随一の雑貨屋さんにそけっとさんが居た。

「でもまぁ、ここなら普通に誘いやすいんじゃない?」

「じゃあ、ゆんゆん。お前行ってくるか?」

「ななな、何言ってるのよ!そ、そんなこと出来るわけないじゃない!」

流石コミュ症。俺も言えた立場じゃないけどな。

「はぁ、仕方ないですね・・・ここは私が・・・」

「いや、お前はいい。色々問題を起こしてきそうだ。」

「な、私を何だと思ってるのですか!?」

「・・・ふっ、言わせんなよ。」

「ぶっ殺!」

摩擦係数ゼロ何て言えるわけないだろ。

「ここは張本人のぶっころりーさんお願いできますか?」

「俺の社交性の低さを舐めるな。」

何を自信満々に言ってるんだこの人は。

「あるえは・・・」

「私はそけっとさんとあまり面識がないからね。話し掛けるのには無理があるよ。」

この中で唯一まともかなぁって思ってたやつも無理。

「仕方ねぇなぁ。」

「やはり私の力が必要なようですね。」

「俺が行くわ。めぐみん、お前は戦力外だ。」

「こ、紅魔族随一の天才の私が戦力外・・・」

「お兄ちゃん大丈夫なの?」

「まぁ見とけって。」

そう言って雑貨に向かって歩いた。

「おっちゃん!ハリちょうだい。」

「お、しょうたじゃねぇか久しぶりだな。ちょっと待っとけ。」

「あれ、し・・・しょうた君。奇遇ね。」

「あ、そけっとさん。こんにちは。今日はどうしたんですか?」

「まぁ冷やかしみたいなものね。しょうた君は?」

「裁縫道具を買いに。」

「お待たせ、はいこれ。」

「ありがと・・・おっちゃん。これハリじゃなくてヤリだよね?」

「ははは、男たるものヤリは常に常備してないとな。おっと、もう既に付いてるか、ガハハハ。」

俺はその辺に立て掛けてあった木刀を掴み、

「辞世の句を聞こうじゃねぇか。」

「じょ、冗談だって。な、一旦その木刀を置こう。そうしよう。」

「はぁ、そこまで怖がらなくても。それより早くハリを。」

「はいはい。これ。」

「どうも。あ、そうそう。そけっとさんこれからあそこに居る奴らに料理を教えるんですけど、良かったら一緒にどうです?まぁ、場所はまだ決めてないんですけどね。」

木の陰から覗いてるめぐみん達を指した。

「うーん、そうね。じゃあご一緒させて貰おうかしら。」

 

 

「はい、と言うことでそけっとさんが参加してくれる事になりました。」

「たまにしょうたが本気を出したら何れくらい釣れるのか試したくなるんですが。」

何その異物を見るような目は・・・

「それより、今日は何を作るの?」

「今日はこの広場でお好み焼きを作ろうかと。」

「「「「「おこのみやき?」」」」」

どうやらお好み焼きはこの世界には無いようだ。

「これはとても簡単だから教えやすいんだよ。まずは・・・」

鰹から出しを取って小麦粉、水の中に放り込んで混ぜた。

「取り敢えずこんな感じで生地を作って。めぐみん、ゆんゆん、あるえで組んで、そけっとさんとぶっころりーさんは二人で組んでくださいね。」

 

 

「ちょ、ちょっとめぐみん。クロちゃんが鰹節をかじってるんだけど!?」

「わ、我が化身の破壊欲は誰にも止められないのです。こ、こらそれ以上かじられると使う分がなくなるから止めるのです!」

鰹節かじれるってどんな顎の持ち主だよ・・・

「ああっ!そけっと、沸騰しすぎてお湯が無くなってるよ!どうしてこんなんになるまでほっといたのさ!?」

「あ、ご、ごめんね。そう言えば洗濯物を畳んでなかったなと思って・・・」

「い、いや、俺もちゃんと見てなかったのも悪いしな・・・」

何だかんだであんたらお似合いじゃないか?

「しょうた君。ダマが出来るんだけど・・・」

「一気に入れすぎだ。こう少しずつだなぁ・・・」

ふるいがあったらなぁ・・・

「次に卵を入れて。」

グシャッ

「ゆんゆん、もしかして料理下手ですか?」

「・・・経験が浅いだけよ・・・」

「私もほとんど未経験だから気にやむことはないよ。しょうた君に教えてもらって以来してないからね。」

「私は経験豊富ですからね。どんな男でも直ぐに落とせますよ。」

未経験とか経験豊富とかあまり言わないでもらえるかな?ちょっと危ないからさ。

「ちょっと、卵を握り潰してどうするのよ!?」

「あ、ごめん。つい・・・」

ついって何?その前に卵って握り潰せたっけ?物理的に無理なんじゃ・・・

こんな感じで色々あり、精神を削られていった。

 

 

「・・・あのさ、俺な、お好み焼きにこんな時間掛かったこと無いんだよ。」

生地や具の準備するのに一時間ちょっと掛かっていた。

目の前には鉄板の上でジュウジュウ音をならして焼かれている生地がある。

「もうちょい手際よくやれなかったのか?」

「「「「「すいません・・・」」」」」

まぁ本来の目的はあの二人の接点を作ることだから本腰を入れなくても良かったんだけど・・・入れないとプライドが許さなかった。

「はぁ、ま、最後は出来たし良しとするか。」

「ご主人様!」

それが聞こえた瞬間、その声の持ち主に抱きつかれた。

「!?せ、雪那、寝てたんじゃないのか?」

「いやぁ二時間ほど前までは寝てたんですけど、起きたらご主人様が居なくて探すのもあれですし、さっきまではご主人様のお布団を楽しんでいました。」

俺の布団には何かあるのかな?

「しょうた、もうこの子は駄目なんじゃないでしょうか?」

「今更感。こいつにはもう疲れたよ。」

「酷い言いぐさですね。」

「いい加減離れろ。ひっくり返せないだろうが。」

このままではお好み焼きが焦げてしまう。

「あ、すいません。」

意外にも素直に聞いてくれた。

「よいしょっと。出来た。これに・・・」

自作のソースとマヨネーズを掛けた。

「「「「「「おおぉ!」」」」」」

ソースとマヨネーズが焼ける音が辺りに響いた。

「さ、どうぞ。」

各々好奇の視線でお好み焼きを食べた。

それを雪那が眺めている。さっき来たばっかだから雪那の分は無い。

「雪那、ほら半分やるよ。」

「え、あ、ありがとうございます。」

「ほうほうこれがツンデレ・・・」

「つ、ツンデレじゃねぇし!?何ふざけたこと言ってるんだよあるえ!その口閉じないとお前のアイデンティティーをえらい目に遭わせるぞ!」

これを叫んだ瞬間、一瞬だけゴミを見るような視線を浴びせられました。

 

 

「はぁ、あ、そうだそけっとさん。ぶっころりーさんを占ってくれないかな?」

「え?別に良いけど。」

「しょうた君。いきなり何を言い出すんだい。俺は別に占ってほしくは無いんだけど。」

ぶっころりーさんが俺で囁いてきた。

「いいですか?今回ぶっころりーさんが占って貰うのは未来の恋人についてです。」

「み、未来の恋人!?」

「ちょ、いきなり叫ばないでください。もしそれでそけっとさんが映ればそのまま付き合うことも出来るし。」

「あ、頭良いなぁ・・・」

「と言うわけでそけっとさんよろしくお願いしまぁす!」

「それじゃあ何を占ってほしいの?」

懐から水晶を取り出していった。

それいつも持ち歩いてるんですか?

「え、えっと、み、未来の恋人について・・・」

俺から見たら面白い光景だが当の本人からしては生き地獄だろう。目を白黒させて言っていた。

「分かったわ。もうすぐこの水晶に将来あなたと結ばれる可能性がある女性が見えてくるわ。でも未来は変えられるもの。だからその人が絶対だよは言えないけれど・・・っと、そろそろよ。」

水晶から淡い光を放って・・・

「何も見えないんだけど・・・」

そこに写ったのは虚空だった。

「あ、あれ!?」

カエルを焦がした時と同じ顔をして慌ててるそけっとさん。

「これは・・・ぶっころりーさんには彼女が出来ないってこと?」

「どんな人でも一人は映る筈なんだけど・・・あ、だ、大丈夫よ。占いは絶対じゃないから。私が子供の頃に天気を占って、曇りって結果が出たけれど五分ほどににわか雨が・・・」

それはもうほとんど当たってるんじゃなかろうか?

「止めてくれ!占いの精度を自慢してるのか慰めてくれてるのか分からないよ!」

「そ、そけっとさんは自分の恋人について占ったことは?」

話題を切り替えなくては。

といっても切り出した話がまずかったかなぁ。

「そ、そうね、あるんだけど。」

あるんだ・・・

「占い師は自分を占えないのよ。私が関わってると水晶には何も映らなくて・・・」

・・・ほう。

「お兄ちゃんにめぐみん。ニヤニヤしてどうしたの?」

どうやら頭の良いめぐみんは気づいたらしい。

「「いや、釣り合いが取れないなっと思って(思いまして)」」

周りは釣り合い?と首をかしげてる。

まぁ何はともあれお幸せに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

バイトからの帰りで夜道を歩いてる時だった。背筋が凍るような感覚に襲われた。

すぐさま振り返ってその場から距離を取った。

「・・・誰もいない?でも今の魔力の感じは・・・」

『気のせいじゃないですよ。私も感じましたし。』

どうやら雪那も感じたらしい。

あの感覚、この前のモンスターに似てるな・・・

「・・・まったく!せっかく、今日は良い一日で終わりそうだったのに!めぐみんは毎日何かをやらかさないと気が済まないの?将来、絶対に加入したパーティーの人達に迷惑かけそう!」

「何を言うのですか。私が爆裂魔法を覚えた暁には、パーティーの最大火力になって魔王の幹部ですらぶっ飛ばしてやりますよ。それに最初のパーティーは安心して私を任せられます。出来れば臨時ではない方が良いんですけどね。」

「そ、それは困るわ。お兄ちゃんは絶対に渡さないんだから。それに私もめぐみんと・・・」

カーン、カーン

紅魔の里に鐘の音が鳴り響いた。

ゆんゆんの顔が赤くなっている。

やっぱ中途半端は恥ずかしいよな。

あ、さっきからゆんゆん達を影から見てます。ストーカーじゃないです。変質者でもないです。お願いですからその携帯電話を置いてくれるとありがたいです。・・・誰に言ってるんだ?

しかしさっきの鐘は緊急事態を知らせるものだったんだが・・・

「すいません、鐘の音で最後の方が聞こえなかったのでもう一度・・・ゆんゆん?」

ゆんゆんはめぐみんの後方の空を見て怯えていた。

そちらの方を見ると、無数のモンスターの群れが。

隠れてる場合じゃねぇ。

「お前ら走れ!こっからじゃめぐみんの家が近いだろ!」

「「あ、あれ!?しょうた(お兄ちゃん)!?いつからそこに。」」

お前ら仲良いな。

「通りかかったらお前らの話し声が聞こえたから来てみたらこの有り様だ。それより早く。」

「お兄ちゃんはあれを倒せないの?」

「数が多すぎる。全滅は出来ない。」

俺達は走ってめぐみんの家に向かって走った。

『ご主人様、私を通して上級魔法を撃てば・・・』

「だまらっしゃい!」

出来なくもないがめんどいからやりたくない。

「え!?い、今雪那がとても気になることを言ったのですが・・・もしやしょうた。あれを一掃出来るのですか?」

「あああ!うっせいな!お前もくだらない爆裂魔法を諦めて上級魔法を覚えたら一掃ぐらい出来るだろ!?」

「く、くだらないとは何ですか!?いいですか?爆裂魔法と言うのは・・・」

「ふ、二人とも。こんなときにしょうもない喧嘩しないでよ!あ・・・もうダメ、追いつかれ・・・!・・・あれ?」

「通りすぎていったな・・・」

モンスター達は俺達に一瞥もくれず飛んでいった。

頬にビリビリと伝わってくるものがある。振り返ると後方の空に青白い光がいくつもあった。

「紅魔族って世界征服できるんじゃね?」

「さぁ?一人では無理かもですけど十数人集まれば半分くらいなら出来るのではないでしょうか。まぁ、爆裂魔法には及びませんがね。」

「一発屋が何を言ってんだか。」

小さく呟くと、

「何か言いましたか?」

「いいや、何も。」

「そうですか。それはそうと二人は今日は家で泊まると良いです。」

「と、泊まり!?い、良いのかな?」

「良いも何もこんな状況でどうやって帰るつもりですか?この人はもう役に立たないですし・・・」

その言いぐさやめろ。そもそも今『死神』持ってないから勝ち目ねぇんだよ。

「パジャマは私のを使うと良いです。胸が窮屈だとか丈が短いとか言ったら裸で寝させますからね。」

何だと・・・?

「い、言わないから。お兄ちゃんも反応しないで!」

「は、反応してねぇし!?」

『そんなに裸が見たいなら私に頼めばいくらでも見せてあげますのに・・・』

「それはなんか違うだろ・・・」

雪那に呆れながらめぐみんの家がそろそろ見えてくる所まで来た。

「それはそうと俺入れてくれるかなぁ・・・」

そう、俺が一番気にしてるのはひょいさぶろーさんだった。

追い出されたりしないかな、ちょっと命の危機を感じる。

「それについては安心してください。今家にはお腹を空かせながらも戸締まりをして一人でこめっこが留守番をしているはずです。両親二人は封印の儀式を手伝ってあそこに居るのではないでしょうか。」

めぐみんは後方の森の方を指していった。

「こめっこ一人で居るとか危なくないか?」

「まぁ、家はボロ家ですけどしっかり戸締まりをしとけばあのモンスターでも・・・」

多分侵入は出来ないと続けたかったのだろう。しかし今目の前には無惨に潰されためんぐんの家のドアがあった。しかも中から物音が。

「・・・こめっこ?」

 

 

「落ち着けめぐみん!」

「でもこめっこが!こめっこが!」

俺達は音のなるめぐみんの家に入り、こめっこを探したが家の中には居なかった。ついでに音のならした犯人らしきものの影もない。

「大丈夫、大丈夫だ。こめっこは必ず生きてる。あいつはそう簡単に殺られるたまじゃない。」

めぐみんを抱き締めて安心させるように言った。

しかし俺もそう言いながらも不安は隠しきれないらしい。

「お兄ちゃん、大丈夫?体が震えて・・・」

「言うな。それ以上不安になるようなことは言わないでくれ。」

「・・・そうです。我が妹はそう簡単にはモンスターの餌さなんかにはならないはず。探しましょう。」

「探すったって何処を・・・」

探すんだよと言おうとしたら後ろからあの魔力の流れを感じた。

急いで振り返るとそこにはくちばしを着けた爬虫類のようなあのモンスターが立っていた。

「うおぉっ!」

その姿が目に入った瞬間、何も考えず斬りかかっていた。

いや、こいつらを守らないとという思いはあったかな。

ギャァァァッ!

思いの外軽く刃が入り、肩口からかけて腰までバッサリと斬れた。

そのまま倒れ、黒い煙になって跡形もなくなり消えた。

物音の犯人はこいつだったのか。でもどこに隠れてた?

「前もこんな感じで消えたな。一体どういう原理だ?」

『多分構造は私が魔力で生み出す刀みたいなものですかね。魔力そのものを具現化するといった感じです。』

成る程。実際の肉体はないということか。しかし、こんなものを無尽蔵に生み出すって黒幕はどんな魔力の持ち主なんだよ・・・

「た、助かりました・・・ありがとうございます。」

「まさかこんなにあっさり殺れるとは拍子抜けだ。」

でも数で来られたら押されるだろうな。

「とりあえずここに居てもこめっこが出てくるわけでもない。めぐみん。心当たりはないか?」

「心当たりですか・・・うーんと、無いんですけど何か引っ掛かることがありまして・・・あ!」

どうやらそれが何か分かったらしい。

「ももも、もしかしてこめっこはあそこに・・・!」

「ねぇ、めぐみん落ち着いて。一体それはどこなの?」

「と、とりあえず付いてきてください。事情は向かいながら話しますから・・・」

そう言いながら家を出ていこうとしためぐみんが立ち止まった。

「おいめぐみん。どうした・・・」

めぐみんの目線の先にはめぐみんの鞄を裂くモンスターがいた。

「クロちゃんがっ!?あの鞄の中には、確かクロちゃんを入れてたでしょ!?」

おいそれまじか・・・あんなとこにクロを入れてたのか?

「も、もうあの子はダメです、諦めましょう!私達の尊い犠牲になったという事で、ちゃんとお墓も作ってあげますから!大丈夫、あの子はこれからも共に生きるんです。そう、私の心の中で、ずっと一緒に・・・」

「生きてるよ!ちゃんと見てよ、あの子まだ生きてるよ!諦めるの早すぎでしょっ!?」

ゆんゆんが指した方向には裂かれた鞄からもぞもぞ這い出してくるクロの姿があった。

鞄を裂いたモンスターは俺達の存在に気づいてるにも関わらずクロを見つめて抱き抱えた。

「おいめぐみん。お前の使い魔が丁重にもてなされてるように見えるのは俺だけか?」

「お、お兄ちゃん。そんなことあるわけないでしょ?」

いやでもクロが特段嫌がってるわけでもなく、すごく落ち着いてるんだけれども・・・

「きっとあのモンスターはクロに危害を加えるつもりはないのでしょう。家の教育の結果、あの毛玉は身の危険に対しては敏感になってますから。」

それどういう教育?

「ねぇ?何で二人ともそう冷静なの!?クロちゃんがさらわれそうなのよ!?」

「でも、今あのモンスターからクロを取り上げたら反撃が来そうで怖いんだけど・・・」

「そうです。あの毛玉が危機を感じてないなら今はこめっこが優先です。」

「ひ、人でなし!」

酷い言われようだな・・・

「はぁ、仕方ないですね。二人とも逃げる準備してくださいよ。ちょっと失礼しますよ。」

めぐみんがゆんゆんの腰に下げてある短剣を引き抜き、

「その子を持って行かれると、成長を心待ちにしている我が妹に恨まれそうなのです!我が投擲術を見るがいい!」

そう言いながら投げた短剣は見事に明後日の方向へと飛んでいった。

「ああっ!」

そう叫んだのはゆんゆんだった。

そりゃ自分のものを勝手に投げられた上にあらぬ方向に投げられたのだからこうもなるだろう。

「・・・ふっ、風の魔法壁を纏っていたとは。中々やりますね・・・あいたっ!?」

「お前がノーコンなだけだろ。その前にゆんゆんに謝れ。」

俺はめぐみんの頭にチョップを入れて言った。

「す、すみません。ってそんな事をしている間にクロがっ!」

俺らがしょうもない事している間にクロがモンスターに抱えられ空高くへと連れ去られた。

 

 

「・・・とりあえずこめっこから手をつけるか。」

「そうですね。」

「ほんとなんで二人とも冷静なのよ!?」

何か不満なことがあるのかゆんゆんが喚いてる。

「いいか、今回の事は多分繋がってるんだと思う。めぐみんの家に居たモンスターとクロをさらったモンスターは同系列のものだ。こめっこは何らかの形であのモンスターに接触したか、あるいはめぐみんの心当たりとあのモンスターが関係してるかだ。それとクロの事を並列して考えるとこめっことクロが一緒に居る確率もある。まぁ俺の勘だがな。」

「妄想もいいとこですね。でもその妄想に賭けたいです。」

「お兄ちゃんの勘は当たるからなぁ・・・」

「と言うわけでめぐみん。案内よろしく。」

 

 

「ねぇ、めぐみん。こんなところにこめっこちゃんは居ないと思うんだけど。」

めぐみんの後ろをついていってたどり着いたのは邪神が封印されてるという墓だった。

今思えばこの原因は邪神の下僕達がどうのこうのってぷっちんが言ってた気もする。ほとんど信じてなかったけど。あれはマジだったのか。

「とりあえずそこの茂みから覗いてみましょう。」

草影から顔を出すと、

「・・・居ましたね。」

「・・・居たね。」

そこにはさっきのモンスターと対峙してるこめっこの姿があった。

「・・・マジでクロ居るじゃん・・・」

自分でも驚いた。あんなポジティブシンキングが当たるなんて思ってもみなかったのだ。それより凄い気になるものがある。

「なぁめぐみん。こめっこが持ってるパズルって何?」

そう、こめっこは何かしらのパズルを持っているのだ。普通のパズルならどうでもいいと思って見落とすが、何かしらの魔力を発してるあのパズルは見落とすことができない。

「し、知りませんよ。」

「お前心当たりあるんだろ?もしかしなくてもそれってあれの事だよな。」

めぐみんは目をいっこうに会わせようとしなかった。

「おい・・・まぁいい。幸い今は一体だけだ。あれなら行ける。こめっことクロを回収してくる。」

俺は茂みから一気に飛び出して、

「こめっこ!クロ!無事か?」

「あ、しょうたお兄ちゃん。私のご飯がアイツにとられた!」

「「ご、ご飯って何!?」」

俺とゆんゆんの声が重なった。

ご飯?こめっこはクロを食べ物として見ていたのか?そりゃあ危機察知能力も高くなるわ・・・

ご飯という言葉を聞いてクロがビクッてしたのを確認しながら納得した。

「とりあえず、せいっ!」

クロを抱えてたモンスターを首ちょんぱした。

クロはそのモンスターが煙と化する前に俺に跳び移った。

「クロ、フードの中に。こめっこほら。」

そう言いながらこめっこをおぶってその場から立ち去ろうとした。

次の瞬間、

ギヤァァ!?

モンスターの威嚇らしき声が空から聞こえた。

「・・・あの数は無理だ。一匹ならともかく五体は無理だ。逃げろ!」

そう言いながら駆け出した。

 

 

「ハァハァハァ・・・」

森を半分くらい走ったところか、まだモンスター達は追いかけてくる。

このままじゃ・・・

「めぐみん、ゆんゆん。こめっこを!」

おぶって居たこめっこを前に持っていき、めぐみんに渡した。

「こいつらの狙いは明らかにクロだ。俺がクロを連れて逃げ回りながら何とか攻撃を仕掛けてみる。」

「で、でもあの数相手じゃ無理って先程・・・」

「仕方ないから本気を出すんだよ。じゃあな。」

別れを告げ脇道に入り、モンスター達を引き寄せた。

「・・・なぁ雪那さんよぉ。敵増えてないか?」

明らかに数十匹はいる。

『戦力をここに集中させたんでしょうかね?この数は流石に無理なのでは・・・』

「はぁこんなことなら『死神』を持ってくるんだったなぁ。あれがお前だったら『共鳴』で一発なのに・・・」

『・・・』

いや、なんか答えて欲しいんですけど。いつもみたいにバカな発言をして和まして欲しいんですけど。

『・・・とりあえず現状でやれるとこまでやりましょう。念のため『バーストモード』は無しでお願いします。ぶっ倒れたら元も子もありませんからね。』

「?マジで言ってんの?」

『はい。本気と書いてマジです。』

いつもと違う雪那に戸惑う。

「はぁ、まさか神器に課題を提示させられるとはな・・・」

『雪那』を引き抜き構えた。

「死なない程度に頑張りますか!」

そう言い放った瞬間、地面を強く蹴り数十相手に向かっていった。

 

 

「くそっ!こいつらのスピード速すぎる。」

今まで倒してきたのはほとんど不意討ちみたいなものだ。だから俺はこいつらの実力を知る余地がなかった。そして今正面でぶつかり合って分かったことは無茶苦茶速い。攻撃速度、回避速度全てにおいて数枚上手だった。魔法なら倒せないこともないが『バーストモード』禁止イコール体力を使うなという事。つまり魔力の低い俺なんかは魔法を使うことを制限されてる事になる。『雪那』を通しても消費は激しい。何が言いたいかというとかなりピンチです。

「何これ?リンチ?俺、リンチとか初めてなんだけど・・・」

俺が倒せた数は十数体。全体の1/3位だ。相手の攻撃を避ける事に気を取られて体力も少しばかり消耗している。

「いつまで続くんだよ。これじゃ拉致がごふっ!?」

一瞬気を散らしたせいで腹にきついのを一発食らった。

クロに関してはローブのフードにしっかり掴まってるらしく激しく動いても落ちない。

俺はクロを庇うように地面に叩きつけられる向きを変えて顔面から突っ込んだ。

「っつぅ・・・」

俺は強打した顔を押さえて立ち上がり焦点を合わせた。

「回復魔法をロアから教えてもらうべき・・・っ!?な、何で・・・?」

俺が焦点を合わせた先にはそこにはあるはずの無いものが・・・

「どうして『死神』が・・・」

数メートル前方に『死神』が地面に刺さっていた。

『・・・!?ご主人様!ボケッとしてないで早くあれを何とかしないと!こっからは手加減無し、本気で行ってください。』

「それは『バーストモード』込みで?」

『はい。』

「そうか、じゃあ雪那は見物しといてくれ。一気に片付ける。」

刺さってる『死神』を手に取り、

「『バーストモード』」

暗い森に紅い光が放たれた。

 

 

ヒギャァァ!

最後の断末魔が聞こえ、何とか生き残ることが出来た。

「ふぅ、もう歩くことしか出来ないな。足元フラフラだ・・・」

ハハハと笑いながら地面にヘタレこんだ。

『肩貸しましょうか?』

「そうだな、お前にも聞きたいことがあるしな・・・!?雪那、気のせいだよな?」

『・・・残念ながら気のせいじゃありません。先程とは言いませんがかなりの数が上空に居ます。』

もう無理だ・・・何が魔王討伐だ。こんなとこで死にかけてるんじゃ到底無理だ。

諦めて目を閉じた。

「『エクスプロージョン』!」

聞き覚えのある声が最後に聞こえた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「っう・・・ここは・・・死後の世界ではなさそうだ。」

見覚えのある家具。何度も使わせてもらった台所。

「めぐみんの家か・・・」

時間的に早朝、六時前と言ったところか・・・

「すぅ、すぅ・・・」

隣で雪那が寝ていた。

「何があったか聞きたいけど起こしちゃ悪いな。」

「あ、しょうた。起きてましたか。」

声をした方をみるとそこにはパジャマ姿のめぐみんが居た。

「おはよう、お前朝早いんだな。」

「まぁ早起きですからね。」

「寝る子は育つとはよく言ったものだ。」

「・・・黒より黒く、闇より暗き漆黒に」

「や、止めろ!そんな詠唱するんじゃねぇ!」

今のは多分だが爆裂魔法の詠唱だ。十中八九こいつはもう爆裂魔法を覚えたんだろう。昨日聞いた声は幻聴じゃ無かったわけか。

「とりあえずめぐみん。爆裂魔法の習得おめでとう。それに助かった。ありがとな。」

「い、いえ、別に礼を言わなくても・・・これからはパーティーとしての仲間なんですから・・・」

不覚にも照れるめぐみんに心をときめかされた。

「とりあえずこれからどうするかだな。街はアクセル辺りがいいと思うんだが・・・」

「私もそれがいいと思います。まずは初心に戻ってですから。」

「良い仲間が見つかると良いな。」

「・・・そ、そうですね。」

少し寂しそうな顔をしてうなずくめぐみん。

「そんな顔するな。またパーティーを組める機会だってあるさ。それにしばらくはアクセルに残るし。」

「ほ、ほんとですか!?」

「ち、近い。ほんとだから一旦離れろ。」

「でも、どうしてアクセルに残るんですか?しょうたのレベルじゃモンスターを根絶やしにすることだって・・・」

「・・・さぁな。また今度教えてやるよ。」

人を殺すためとか言えない。

「そうですか・・・あ、しょうた。ものは相談なんですが・・・」

めぐみんは頬を軽く染めながら切り出してきた。




こ、こんにちはです。ねこたつむりです。
思ったより期間が空いてビックリしてます。毎日更新出来てる人って凄いですね。
今回は爆焔まんまって感じですね。違うとこと言えば冒頭のめぐみん達のピンチをぷっちんが救うのではなく主人公が救うことと、そけっとさんとぶっころりーさんの所でぶっころりーさんが色々しでかすのではなく、しっかりと仲良くしてもらった事。そしてゆんゆんは中級魔法を覚えず上級魔法で卒業できることですかね。
めぐみんとゆんゆんの学校生活についてですが、原作と変わりません。ゆんゆんが勝負を仕掛け、弄られ涙目になっています。主人公が居るからと言って百合百合しい事は変わりません。でも、ガールズラブでは無いですはい。


~雑談~
最近ゴットイーターオンラインをし始めました。キャラクターネームはこの物語の主人公でもあるしょうたの名を借りてます。まぁ表記は物語上漢字、カタカナ、ひらがなと色々あるんで一括してローマ字のsyouta916ってしてるんですけど・・・サブアカは雪那の名を拝借を・・・武器はショートとロングしか使ってません。雪那に関しては氷刀固定です!間違いないです!なんたって雪那は刀と雪ですから!ちなみに表記は*雪那*です。
何が言いたいかというと、フレンド募集です!見かけたら気軽に話しかけてください!常一人でウロウロしてるんで。レベルはsyouta916がlv47。*雪那*がlv11です。


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付き添い

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
え?遅れた理由?そんなんゴッドイーターしてたからに決まっとるだろーが!orz
いや、マジすいません。


「「いらっしゃいませ!」」

俺はいつも通りバイトに、そして目の前には接客をしているめぐみんが居た。

めぐみんのバイトので出しは可もなく不可もなくと言ったところだ。どちらかと言えば不可に近い。接客中に詠唱しだすは、近くのお客さんのおでんを取ろうとするはでいちいち目を光らせなければならなかった。一応俺が止めに入ったのでめぐみんはクビにならずにすんでいた。

そんないつもに増して慌ただしいバイトも終わり、客席についてめぐみんと話していた。

「マジで問題を起こさなきゃ気が済まんのかお前は。」

「あれは完全にふにふらとどどんこに非がありますよ。」

「いや、分かるよ。分かるけどさ、限度があるだろ?他の客に迷惑をかけんなよ。・・・しかしまぁ、まさかお前と一緒にバイトするとはな・・・てっきりお前は魔力を使うバイトをすると思ってたわ。」

アルカンレティアまでテレポートで行った後、アクセルまでの馬車代を稼ぐためにめぐみんはバイトをしていた。

「ふっふっふ、我が魔力はそんなものに使うためにあるのではないのです。」

「要するに魔力が強すぎて厄介払いされたんだな。」

「うっ・・・」

「それよりだ。ここのところ里で爆発魔が出てるらしいがお前なんか知ってるか?」

「ギクッ」

「それとゆんゆんがたまにぐったりして帰ってくるんだが・・・まさかお前・・・」

「・・・」

無言で目を反らしていく。

「あいつはまだ卒業出来てないんだから危ないことに誘うなよ・・・そんなに撃ちたいなら俺に言えばどっかその辺にテレポートして撃たしてやるから。それともゆんゆんとそんなに一緒に居たいのか?お前らほんと百合百合しいな。」

「な、そ、そんなことないです!ゆんゆんに付き合ってもらってるのは・・・そ、そう、チョロくて扱いやすいんですよ。」

「そうそう、ゆんゆんは凄くチョロいからすぐ男に優しくされたらホイホイ着いていきそうだもんな。」

「ほんとですよ。全くそちらの家庭の教育方針はどうなってるんですか?あれではいくら心配してもしきれま・・・」

軽く罠にはまってくれるとこ好きですよ。

ニヤニヤしながらそう思った。

「そうか、めぐみんはゆんゆんの事がそんなに大事か・・・」

「ち、ちち違います!今のはただあなたの誘導に乗せられただけであって本心では・・・」

そこまで言ってその先は言わなかった。

「またまた、じゃなきゃあんな相談しないって。」

 

 

~邪神滅亡日(紅魔族制定)後の早朝~

「そうですか・・・あ、しょうた。ものは相談なんですが・・・」

「どうした?」

「その、臨時パーティーにゆんゆんやあるえもいれませんか?」

・・・ふっ。

「そりゃまたどうして?」

「何故か私だけしょうたの近くにいるのは反則かと思いまして・・・」

「それを言うならこいつはバリバリの反則だぞ?むしろレッドカードを出しても良いくらいだ。」

雪那を指差していった。

「れっどかーど?赤いカードに何か意味でもあるのですか?」

おっとそうか。この世界にはサッカーが無いんだな。

「まぁ違反切符みたいなものだ。」

「ふーん。まぁこの子が一番辛いでしょうしそこは良いですよ。」

どうやらこいつは思ったより現状を把握しているらしい。

「ま、あいつらを連れていくことには反対しない。」

「ありがとうございます。」

こいつも数少ない友達と離れるのが嫌なんだなぁ。

 

 

という事があった。

「あ、あれはホントに私だけ抜け駆けみたいなことは出来ないと思い・・・」

何こいつ律儀にやってんだ?

「じゃあ何時あいつらを出し抜くんだよ。抜け駆け出来ないんだったら出し抜けないだろ。」

「ちょ、ちょっと待ってください。しょうたは自分の立場を分かって発言してるんですか?まるで他人事のように言ってますけど一番関わっていますからね!?」

「どうせ結果が出るのは数年後だ。それなら傍観者気分でお前らの奮闘ぶりを楽しませてもらう事にしてるんだ。」

ここまでオープンで来たらそうするしか逃げ道は無いし・・・そうしないと男子としての何かが切れそうで怖い。

「神経が図太すぎやしませんか?」

「逆だ。そういう風にしないと精神が持たない。」

「そ、そうですよね。私が言うのもなんですけど今のしょうたの状態は明らかに異常ですよね。」

ここ最近神経が麻痺してきた。もしかしたら俺が女神から貰った特典って『雪那』じゃなくて『天然』だったのではと思えてくる。

「そういえばこの前の事件の時、『死神』でしたっけ?どっからあれを持ってきたんですか?別れる直前は持ってなかったですよね。」

「・・・あれな・・・」

 

 

~また回想入りまーす~

「もう一回説明してくれる?」

それはあの無数のモンスターから生還した次の日の夜の事だ。

俺はあの時に聞こうとしてた事を雪那に聞いた。そしたらめんどくさい回答が返ってきた。

「だからですね。元々この子には私と同じ能力を持ってるんです。多分マツイさんがそうしたんじゃないでしょうか。ご主人様がより使いやすくするために。剣を作るチート能力者ですからその程度は朝飯前ってことでしょう。」

ボリボリ

余計な事を。でもあの人何も特殊効果ないって・・・

「無意識じゃないですか?私の話を聞いた後だったんで無意識にそんな効果が付いたとか。真相は定かじゃないですが。でもまぁ、ご主人様の体に合わすことは出来ませんでしたけれど。その代わりに紅輝石で魔力を底上げですから。」

ボリボリ

地力は同じってことか。でもそれはたまたまなんだよなぁ・・・

「で、その結果『共鳴』が付属されたのか。」

「そう言う事になりまふね。」

「・・・あのな。ちょっと真面目な話なんだから煎餅食いながら喋るなよ。」

さっきからボリボリうるさい。

「私にとってはそれ真面目な話じゃなくてじゃなくてめんどくさい案件なんですよねぇ。」

俺もめんどくさいわ。

あれだろ。また面倒事が増えるんだろ・・・

「で、お前は何時からその事に気づいたんだ?」

「一目見たときからなんとなく気づいていました。」

だからかぁ、だからあの時変な勝負持ち掛けてきたのかぁ。

「そんな事だったらサブとして扱いにくいな・・・」

「っ!?そんなの困ります!というより嫌です。私の一番幸せな時間を失うなんてそんなこと・・・!」

一気に顔色を変え、とても悲しそうな顔をして叫んだ。

何も言えない。これ以上こいつに辛い思いをさせたくない。

「・・・悪い。自分勝手すぎるよな。でもあれをお前と重ねると可哀想になるんだ。」

「それはそうですが・・・そうですね、それじゃあ一つだけお願い事を聴いて貰えますか?」

「あまり過激なのはよしてください・・・」

「寝るときは貴方の側で寝たいです。」

これがいつもみたく『ご主人様の~』みたいだったら断るが『貴方の~』と言われると断れない。それだけ真剣だという事なんだ。

「分かった。」

 

 

「以上が『死神』についてだ。」

「後半はあなたと雪那の個人的なものなんですが・・・そもそも後半の件は要りましたか?」

「無かったら後でお前がどういう事かと尋問してくるだろ。そん時のための先手だ。」

紅魔族はチョロいけど怒ったら怖いからなぁ。特にこいつなんか怒らせたら爆裂魔法で木っ端微塵だ。めぐみんと将来パーティーを組む人の安否が心配だ。

「ふぅ、しかし困りましたね。また敵が増えるのちょっと・・・私的にも作者的にもきついですね・・・」

作者って誰だよ。

「いや、まだ性別が女子って決まった訳じゃないから。もしかしたら男子かもしれないし。」

もしそうだったら俺の今までの愚痴を聞いて貰おう。

「・・・雪那の口振りから察するに女子ですよ。めんどくさいって言ってたんでしょ?」

「え、めんどくさいって神器の後輩が出来るからめんどくさいって言う意味じゃないのか?」

俺だったらその状況はめんどくさい。物事のいろはを教えないといけないし・・・

「ま、分かりませんけどね。・・・しかしゆんゆん達遅いですね。」

俺達が席に座って話してるのは臨時パーティーについてゆんゆん達に話す事が主旨にあったからだ。

「んー今頃雪那を布団から引き離す作業でもやってんじゃない?」

「それってもう私達が行った方が早くないですか?」

「もう少しゆっくりしようぜ。鍵預かってるし。」

俺は店の鍵をちらつかせながら言った。

というかそもそも魔法で『アンロック』ってあるんだから鍵をかける意味がないんじゃ・・・

そして沈黙の時が流れる。

ここまでならいつもあることだ。だが、

「・・・何さっきからモジモジしてんの?」

「も、モジモジなんかしてませんよ、してませんよ!」

明らかに気まずそうに体を揺らしていた。

分からなくもないよ?そうなるのは仕方がないと思うんだけど、ずっと目の前でそうしてられると凄く気になる。

「じ、ジロジロ見ないでください!恥ずかしいじゃないですか・・・」

「お前もそうや可愛くって照れるときもあるんだな。」

「っ!?い、いきなりなんですか!?撃ちますよ!いいんですか、撃ちますよ!?」

何で褒めたのに死なにゃきゃならんのだ。理不尽すぎるぞ。

「照れ隠しも程ほどにしろよ。隠すんだったら平然を装え。」

「という事はしょうたも何処かで照れたりするんですか?そう言うのを顔に出さないのでてっきり無神経なのかと・・・」

「よっぽどの事がない限り顔には出さないからなぁ。」

日本で俺はそういう生活をして来た。感情を表に出さない。常に愛想笑いか真顔だった。でもこの世界に来てからは少し感情的になれた気もする。

「こ、これならどうですか?」

何を思ったのか俺の拳をめぐみんが握ってきた。

「なぁ、恥ずかしいならやるなよ。」

めぐみんの顔が真っ赤だ。それに対して俺は、

「な、何で照れないんですか・・・」

「内心心臓バクバクもんだ。でも平然を装える程度のものでもあるから。」

例えば急に抱きつかれるとかされたら平常心が保てなくなったりする。こっちから仕掛けるのには問題ないが主導権があちら側にあるとやられ放題だ。

「なんか悔しいですね。その程度ものとかバカにされてる気分で。」

負けん気の強いこいつの性格に火を着けたらしい。

これはヤバイ。完全に主導権を握られそうだ。

「はいはい、この話はおしまい。いい加減手を離せ。」

「ここで私が引くとでも?」

そう言ってめぐみんは更に俺に近寄って来て、

ガラガラガラ

「遅くなってごめんね。雪那ちゃんを引き剥がすのに手間取って・・・二人とも何してるの?」

ドアを開けたのはゆんゆんとあるえ、それに不貞腐れてる雪那だった。

ナイスタイミングと言って良いのか分からないが取り敢えず助かった。あのままでは何されるか想像がつかなし、あまり想像したく無い。

「いや、ちょっとめぐみんの魔法の事で揉めてな。」

「その割にはめぐみんの顔が赤いんだけど、しょうた君が何かやったんじゃないのかい?」

「何もやってない。逆にめg痛い!?何するんだよ。」

「余計なことは言わなくていいです。さっさと本題に入りましょう。」

こいつ!自分がやったことをなかったことにしようとしてやがる・・・

「ねぇ、余計なことって何?とても気になるんだけど・・・」

「万年ボッチがうるさいですよ。なんですか、またこんなに盛って!見せつけてるんですか!?」

ゆんゆんの胸を鷲掴みして叫んだ。

「痛い痛い痛い!止めてめぐみん!」

「こんな胸こうしてやりますよ!」

バシッ

「お前が話を逸らしていってどうすんだ。」

めぐみんの頭を叩いて言った。

「話が進まない・・・」

あるえがポツリと言った。

 

 

「さて、ようやく本題に入れる。ほらめぐみん。」

憤るめぐみんをなんとか静めて、皆でテーブルを囲んだ。

「え、私が言うのですか?てっきりしょうたが言ってくれるものだと・・・」

「お前の案だろ。サクッと言えって。」

たまにこいつに度胸があるのかないのか分からないときがある。

「そ、そのですね・・・ああ!やっぱり無理です。しょうたお願いします、しょうたから伝えてくれませんか?」

若干頬を染め、涙目で上目遣いをしてくるめぐみん。

聞きようによっては誤解が生まれかねんからそんな言い方しないでほしい。ほら、ゆんゆんの目が怪しくなってるからさ。

「はぁ、えっと、めぐみんが伝えたい事はな一緒にパーティーを組んでくれって言うことなんだ。どうもこいつは思ったより寂sごふっ!?」

「よ、余計な事は言わないで良いです。そろそろ本気で撃ちますよ?」

ここに帰ってきてから殴られること多くない?スプリットではそんなこと無かったのに・・・

「ロアが恋しいわ・・・」

あいつなら常識人の反応らしく照れて軽く叩くぐらいだろうに・・・

「「「・・・ロアって誰(だい)(ですか)?」」」

・・・この場合やらかしたと言える状況何でしょうか?

「ロアさんと言うのは向こうで一緒にパーティーを組んだ女性冒険者で・・・落としてきた人でもあります。」

ジト目でこっちを見んの止めろ。

「しょうた君もそろそろ自覚してきたとは思ってたんだけど・・・自覚しても落とすんだね・・・」

あるえが向けていたそれはどこかのご令嬢の親が娘を見ていた目に近いものだった。

「この人の事は今に始まった事ではないですよ。」

冷ややかな視線をめぐみんから送られてきた。

それ分かってるんならそんな目で見ないでほしい。

「こ、これ以上増えたら私に勝ち目が・・・」

そんなことを小声でいってるゆんゆん。

「も、もういいだろ。本題に戻れ。」

元はと言えば俺がロアの名を呟いたのが悪かったんだけどな・・・

「そ、そうね。いつまでもグチグチ言っても仕方がないよね。」

「はぁ、もっと早く行動を起こせば・・・」

うん、あるえはアルカンレティアでやらかしてるよな?

「じゃ、じゃあ答えを聞こうか。な?めぐみん。」

「え・・・・・あ、はい。」

今こいつ本題が何か忘れてたな。

「改めて、お前ら臨時パーティーに入らないか?」

「わ、私は入ってもいいよ。そ、その・・・めぐみんともパーティーを組みたいし・・・」

おう、百合百合しい・・・

「うーん、私も行きたいけど・・・やっぱりこっちで小説家を目指すよ。まずは自分の夢を叶えたいからね。」

「そうか。何か書けたら俺達に見せてくれよ。アクセルに居るから。」

あるえは頷き少しへらっと笑った。

「うん、あ、そうだ。その代わりに・・・」

口元を俺の耳に近づけてきた。

何これ、何かドキドキする。とんでもないことをお願いされる気が・・・

「月に一回一度だけでいいから私に会いに来てくれないかな?」

・・・少しドキドキした気持ちを返してくれ・・・

「それくらいの事ならいいよ。」

そのくらいの事なんだけどあるえにとっては結構大きな事だったのだろう。かなり顔を赤くしていた。

「何の話をしてるのですか?」

めぐみんが不審な目をして聞いてきた。

「別に大したことじゃない。あるえが官能小説を俺だけに見せたいって。」

「そ、そそんなこと言ってない!」

「ほう、中々あるえも攻めますね。」

「だから言ってないって言って・・・」

「そういえばさ、あるえの部屋の本棚にエr・・・」

あるえの言葉を遮るように言ったら、

「ああああ!も、もう止めてよ!変なこと言わないで!」

あるえも遮るように叫んだ。

いつも落ち着いてる?あるえが焦るのが新鮮で面白い。

「そうですかそうですか。あるえも意外とムッツリなんですね。アルカンレティアの時から薄々片鱗を見せてましたが・・・」

ニヤニヤしながらめぐみんがあるえをいじめてる。

「あの時は俺も少し覚悟したわ。もう少しお前らが来るの遅かったらホントに初めてが・・・」

多分あのまま押しきられてたら・・・

「も、もうその話はよそうよ!」

恥ずかしいのか目に涙を浮かべて抗議してきた。

「ご主人様にめぐみんさん。もうよしてあげましょう。」

あるえが少し可哀想だと思ったのか雪那が止めに入ってきた。

「そうだな、そろそろここ出ないといけないしな。」

さっきから明らか眠そうなゆんゆんを見ながら言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・」

「何じっとその子を見てるんですか。」

「やっぱり自我があると思うと今まで通りに過ごせないというか・・・何か気まずいみたいな・・・?」

ある日の昼下がり。今日はバイトは早上がりで家で『死神』を眺めていた。

「訳分かりません。そもそもご主人様は私達を生きてるモノとして扱ってたんですからいつも通りでいいのでは?」

「その筈なんだけど・・・」

お前みたいなのが生まれるのは嫌だからなぁ・・・

「さ、流石にそろそろ自重しないといけないとは思いますけど・・・」

自覚してんのな。

「・・・いや、お前はそのままでいいよ。いきなり自重されたら気持ち悪い。お前が変なことを口走ったら速攻それを撃ち落とすから。」

「ご主人様♪」

「こ、こら、くっつくな。」

雪那が肩にもたれ掛かってきた。

『警告、接触多量。』

そんな声が聞こえた気がした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

定休日。それはその店が定期的に休む日の事である。そこで働いてる人はその日に日頃の疲れをとるために一日中惰眠を貪ったり、はたまた趣味に没頭、日帰り旅行、散歩等と自分の自由時間を確保できる。

そんな日に俺は何をしているのかというと、

「『エクスプロージョン』!」

骨の髄に響くほど重い音、頬に感じる空気の振動。

「また威力上がってないか?」

そう、俺はめぐみんの爆裂に付き合っていた。

「ふっふっふ、どうやら我が溢れる魔力は留まることを知らないようです。」

「そのわりにはぶっ倒れてるけどな。」

「背負ってくださいお願いします。早くしないとモンスターが・・・!」

俺がこのめんどくさい爆裂に付き合ってる主な理由は、

ギャァァ!

めぐみんの爆裂による音で誘き寄せられるモンスター達にあった。

「も、もうレベル上げはいいんじゃないでしょうか!?このままでは私の行き先がアクセルではなくあのファイアドレイクの胃袋になりそうです!」

何を焦ってるんだこいつは。

「大丈夫だって。案外ファイアドレイクの中は暖かいかもしれないぞ?」

「時期を考えて発言してください!今夏ですよ!?あの中に入ったら溶かされるだけではなく蒸し焼きになりますよ!」

「ったくしょうがねぇな。『リフレクト』」

めぐみんに屈折魔法を掛けてモンスターから姿を見えなくした。

「誰が魔法を掛けろと!?背負って逃げましょうって言ったんですよ!?言葉を通じてます!?」

「可笑しいな、周りには誰もいないのに声がする・・・」

「あなたが屈折魔法掛けたんですよ!何ボケた振りしてるんですか!」

俺は『死神』に手を掛け、

さてと、そろそろ片付けますか・・・

 

 

「・・・もうモツは食べれません・・・」

確かに色んなモノが出てたと思うよ。血とか小腸とかレバーとか。でもそこまでひどくはないだろ・・・

「ほら、背負ってやるから捕まれよ。」

「そんな血がべっとり付いてる手で触られたくありません。」

「しょうがねぇな・・・」

手に巻いてる包帯をほどき、ローブを脱いで、素手を差し出した。

「その下にはそんな傷があったんですね。どんなことしたらそんなものが・・・」

そうボソボソ言いながら手に掴まり背中に掴まった。

やっぱ軽いなこいつ。

そんなことを思いながら里に向かってると、

「でも、いつも付き合ってくれてありがとうございます。」

珍しくもめぐみんが礼を言ってきた。

「レベル上げの特典でもなきゃやってられないけどな。」

そう言うとめぐみんは顔を青くして、

「あんな光景は二度と見たくありません。」

「見たくないなら爆裂に誘わなきゃいいだろ。」

「そ、そう言うわけにもいきません・・・」

「あれか?お前は爆裂を週に一回撃たないと死ぬってか?」

「いえ、ほんとは一日に一回は撃たないと気がすみません。でも、それとは別に理由があるんですよ。」

別の理由?

「あ、ほんとはモンスターが無惨に斬られる光景が好きなんだろ?サイコパスだなぁ。」

「さいこぱすって何ですか?そんな非人道的じゃありませんよ。」

爆裂魔法をぶっ放して何を言ってるんだこいつは?

「でも、近くはないですけど遠くもないです。」

「じゃあモツを見るのが好きなのか?やっぱサイコパスじゃねぇか!」

「ち、違いますよ!それにさっきからさいこぱすって何ですか?使ってる意味合い的には非人道的みたいな意味でしょうけど。」

「まぁそんな感じだ。しかしモツじゃなかったら・・・」

「ま、あなたには到底分からない答えですけどね。」

「そうか、ならいいや。」

「あ、あの、もう少し食いついてくれませんか?何かそう簡単に引き下がられると釈然としません。」

分からないものを一生懸命に考えても仕方ないと思うんだけど・・・

里への帰り道は理由を考えることを強いられた。

 

 

「・・・・」

「・・・・」

「あ、あのですね、お父さん。これには訳がありまして・・・」

「訳なんてどうだっていい。わしはお前を動けない状態で運んできていること事態気に食わん。」

そう毎度恒例俺はひょいさぶろーさんと睨み合っている。

「あのですね、お宅の娘さんが動けなくなってるのを運んできただけですよ?気に食わんとか意味わからんこと口にしないでくれますか?下手したらめぐみんはモンスターの餌になってたとこですよ。」

「ああ、そうだな。このままでは貴様のエサになりかねんな。」

「誰がモンスターだって?」

「貴様だ。獣のような目をしてるだろう。」

「失礼な、獣のような目だって!?ふざけんな、俺の目は邪眼なんだ!獣の目と同じにしてほしくない!」

「貴様が言ってるのは邪眼は邪眼でも邪な目だろ。」

否定はしない。だが、

「そうだとしてもめぐみんには向けねぇっイデデデッ!?めぐみん痛い痛い!肩が潰れる!」

思いっきりめぐみんに肩を握られた。

「それはどういう意味ですか?意味次第ではあなたの持命が縮みますから。」

どうしよう、こんなシチュエーション前にもあったような・・・

「貴様どういうことだ!わしの娘に魅力がないとでも言うのか!?確かに母さんの遺伝で慎ましい体ではあるgごふっ!?」

そこまで言ってひょいさぶろーさんの呻き声が聞こえる前にガツンという鈍い音とドスッという重い音、二つが聞こえた。

後半の音はめぐみんが腹を蹴った音だろうが前半の音は・・・

ドサッ

ひょいさぶろーさんが倒れた後ろにはフライパンを片手に冷笑を浮かべたゆいゆいさんが。

「ひょいさぶろーさーん!」

あの巨体のひょいさぶろーさんがこうも簡単に・・・

「あらやだわ。こんなとこで寝てしまうなんて。それにしても何の話をしてたのかしら?」

その冷笑のままゆっくりとこちらに近づいてくる。今まで感じたどの恐怖にも勝るものをだった。

「え、えーと、そろそろおいとましようかな・・・」

そう言いながらドアに手をかけると、

「『ロック』」

こんちきしょう!

「そ、そのですね、コンパクトで環境に優しいからdグフッ!?」

俺はゆいゆいさんに見事な回し蹴りをこめかみに食らいその場に倒れ気を失った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「困ったらこれを使いなさい。いいわね?」

「あ、あのこれは?」

「使ってみれば分かるわ。じゃあね。『ロック』」

「あ、ちょ・・・」

そんな会話で俺の意識は戻った。

「うっ、つぅ・・・まだ頭が痛いな・・・」

頭を押さえながら上体を起こした。

とりあえず状況を確認するために見回したら、そこはいつしかトランプで遊んだことがある場所、つまりめぐみんの部屋だ。そして部屋のドアの前になにやら魔道具、いわゆるスクロールを持っているめぐみんがドアの前に立ち尽くしていた。

「めぐみん、それなんのスクロール?」

「あ、目が覚めたんですね。それが困ったときに使いなさいとしか言われてないので分からないです・・・」

そうかと呟きながら周辺を探った。

「何してるんですか?」

「ん、『死神』とローブを探してる。何処に置いたか知らない?」

「それならさっき母が居間に持って行きましたよ。」

「なんで!?」

「さぁ?」

「さ、さぁって・・・まぁいいや。それよりやっぱそのスクロールが凄く気になる。発動させてみようぜ。」

「な!?そんな事しませんよ!これは母が用意したものですよ?何が起こるか分かったもんじゃないです!それに・・・」

いや、そこまで疑わなくても死ぬわけじゃあるまいに・・・

何か小さくぶつぶつ言っているめぐみんの隙を見てスクロールをとって、

「スクロール発動!」

「ああっ!何勝手にやってるんですか!?」

そのスクロールから発動された魔法は・・・

「寒っ!?何これ?すげぇ寒いんだけど・・・部屋中氷で固められてるんだけど!これ『フリーズ』か!冷却機構頭おかしいんじゃないのか!?お前のおかん何がしたいんだよ!?」

流石に寝起き?半袖でこんな温度の所に居たら寒いに決まってる。何か寒さを凌げる物は・・・あ、あった。

「分かりませんよ!あの人の考える事は時々不可思議なんです。って何勝手に人の布団に入ってるんですか!?」

「寒いから仕方がない。風邪でも引いたら最悪の場合死に至るかもしれないだろ?」

風邪を拗らしたらゲームオーバーの世界って誰が創ったんだよ・・・

「だからと言って無断で入るのはどうかと・・・それに私が寝れません。」

「一緒に入ったら?」

「ななな、何を言ってるのですか!?」

「何今更そんな反応してんだよ。だいたい俺が保健室で寝てる時に、お前が見舞いに来て布団に潜り込んで来ただろ・・・」

「み、見舞いじゃないです!保健室に栄養剤を貰いに行っただけです。」

「でも布団に入って来ただろ。」

「あ、あれはなんというか・・・すいません。言い訳が思いつきませんでした。」

思いつかなかったんかい。

「というわけで一緒に寝るか、我慢するか、力尽くで俺をどかすかだな。」

「実質一択じゃないですか!我慢なんて出来るはずがないですし、あなたを力尽くで動かせるわけがないですよ。」

「ま、そうなるわな。しかしゆいゆいさんはマジで何がしたかったんだよ・・・」

「まだ言ってるんですか?いくら考えてもあの人の考えることは分かりませんよ。」

そう言ってめぐみんは布団に入ってきた。

人肌ってあっけぇ…それに女子特有のなんかこう柔らかさ・・・こ、これは・・・

気分はエクスタ・・・

これ以上言ったら何処ぞの変態なんとかじゃないか。しっかりしろ俺。

「あ・・・」

突然めぐみんが何かに気付いたような声をあげた。

「どうした?クロにご飯でもあげ忘れたか?」

「え、あ、まぁそんなとこです。」

まじかよ。クロ(仮)大丈夫かな・・・?

 

 

「・・・しかしゆいゆいさんはマジで何がしたかったんだよ・・・」

「まだ言ってるんですか?いくら考えてもあの人の考えることは分かりませんよ。」

全くあの人は私達を氷漬けにでもしたいんでしょうか?

母の考えることは奇抜すぎて理解しかねませんね・・・

そう思いながら布団に入ると、

こ、これは普段はあまり感じることのないしょうたの肌の温もり・・・

この男は常上に何かを羽織ってるのでなかなか肌に触れることがないんですよね・・・

「あ・・・」

分かってしまいました。母の思惑が理解できてしまいました。

これも血のせいでしょうか?母と娘の意志疎通ってやつですかね。

「どうした?クロにご飯でもあげ忘れたか?」

思わず声を出したみたいだ。しょうたがこちらを見て聞いてきた。

とりあえずそういうことにしておこう。

「え、あ、まぁそんなとこです。」

焦って詰まってしまった。

まぁいいでしょう。一旦母の考えを整理してと、まず母はしょうたが私を家まで背負って来てることを知っていたはず。しょうたが家に来た時にお礼とでも言って中に入れさせる。そのあとは『スリープ』掛けるやなんやりして私の部屋に入れる。そして私にあのスクロールを渡して・・・あれ?そもそもどうやってあれを発動させるつもりだったんでしょうか?んー・・・ま、たまに母も抜けてる所がありますしね。現に母の思惑通りになってますし・・・

「・・・めぐみん?」

どうしたのでしょう?珍しくもこの状況に見合う気の利いた言葉でも・・・

「くっつきすぎ。流石に暑いわ・・・」

そんなこともなかったですはい。

「仕方がないじゃないですか。この布団は一人用で狭いんですから。」

「いや、だからと言って身体を押し当てるようにくっつかなくても・・・それに・・・」

あれ?少ししょうたの顔が赤い・・・もしかして・・・

「そうくっつかれると何がとは言わないがハッキリして少し悲しい気持ちになるから・・・」

「・・・黒より黒く、闇より暗き漆黒に」

「ストップ!ストォォップ!謝る、悪かった。頼むからこんなとこでその魔法を放たないでください。」

何だか普段大人びてるしょうたが凄く焦って可愛く見える。これはこれで眼福だ。

「ふふふ、大丈夫ですよ。今日はもう撃てないですし。」

「それは魔力があったら撃ってたと言うことでよろしいのでしょうか?」

「その事については置いといて、寒いのでもっとくっついてください。」

「いや、こっちは暑いって言ってんだろ!?」

そう言いながらも少し寄ってきてくれたのであった。




おひさー、みんな元気にしてるぅ?ねこたつむりだよ!orz
と言うことでね、えー、ほんとに申し訳ないっす。一ヶ月以上も空くなんて思いもしなかったでござる。
遅れた理由は主にゴッドイーターをしてたのと、大学生活らへんのごちゃごちゃを解消してましたはい。
ま、言い訳はこの辺りにしてと、あ、まだ謝りが足りねぇ!って人は感想の方かメッセージの方でお願いします。丁寧?に謝らさせていただきやす。
では、今回の振り返りっと。
なんとあの『死神』パイセンが自我持ちということが判明。擬人化も遠くはないとのこと。それにめぐみんの付き添いでレベリングもしてるから剣としてのレベルも上がってるので色んなスキルが付与されてたりしなかったり・・・
ま、こんな感じで『死神』の名前を募集したいと思います。詳しくは活動報告にて。
では、今回も読んでくださってありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。


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夏のある日

・・・すみませんorz


・・・あぢぃ。

まだ朝にもかかわらず外でうるさく鳴いているセミが聞こえる中での目覚めの一言がそれだった。それもそのはず昨日の夜中に張り巡っていた氷が溶けて、気温も戻り三十度前後。そんななかで布団をかぶりなおかつめぐみんとこれでもかと言う位にくっついて寝ていたんだ。こんな布団さっさと出たいんだけど・・・

「・・・ふっふっふ、これが爆裂魔法のいりょk・・・・」

この変な寝言を言ってる爆裂狂にしっかりとホールド喰らってるので動こうにも動けない。『フリーズ』でもぶっかけたろうか・・・

いや、そんなことをしたらこっちにも被害が被る。大人しく待つしかないか・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~昨夜 自宅にて~

おかしい。いつも通りの時間戻ってこない。確か今日はめぐみんさんの爆裂魔法に付き合ってるんですよねご主人様は。はぁ、早く帰ってきてこの頭を撫でてほしい・・・いっそのことそのまま抱いて・・・あ、いけない鼻血が・・・鼻血が出るんだったら私に血が流れるってことですよね。やっぱり遺伝子的なものがあるんですかね?そもそも分泌液が出るんだしありますよね絶対。ということはご主人様との子供も・・・今はそんことはどうでもいいですね。ご主人様が帰ってくるまでご主人様の枕を堪能しますか。

「雪那ちゃん。枕に鼻血がついてるよ・・・」

「ひゃっ!?ゆんゆんさんいつの間にそこに・・・」

「え、えっと、お兄ちゃんの部屋を熊のように歩いてたところ辺りかな・・・」

「ほぼほぼ最初からじゃないですかやだー。」

「そんなことよりどうするのそれ?」

ゆんゆんさんが指差した先は私がさっきまで顔を埋めていた枕だった。

「・・・この血を見てご主人様、発情しますかね?」

「し、しないと思うよ!?そもそも血で発情する人とかいるわけないじゃない!」

「・・・そうですかね?過去にそんな人がいたような。」

ロアさんとか。

「い、居たの!?い、いや、今はそんなこといいよ。それよりは早くその枕の血を落とさないと・・・」

「前にご主人様言ってましたよ。血は簡単には落ちないって。なんかえんきせいの何かをかけないとダメだって。それがなんのことかあ分かりませんが。」

「?簡単に言ったら漂白剤掛けたらいいんじゃないの?」

「ひょうはくざい?なんですかそれ?」

「えーっと要するに色を落とす洗剤よ。」

「そんなものが!?でもどうしてご主人様は簡単に落ちないなんて・・・」

「さぁ?」

ご主人様にも所々抜けてる所があるんですね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いい加減にしろ!」

「あいたっ!?」

「いつまで寝てるんだこの爆裂狂!」

俺はいつまでたっても起きないめぐみんに痺れを切らせて布団ごとひっくり返した。

こいついったい何時間寝たら気がすむんだ。

「うぅ、いきなり何するんですか!?勢いで頭をぶつけてしまいましたよ・・・」

「今何時だと思う?」

「へ?」

「今何時だと思うか聞いてるんだ。」

「八時くらいでしょうか?」

「十時じゃボケ!店長に迷惑かかるだろ!さっさと支度して表に出てこ・・・」

そこまで言って俺はあることに気づいた。

「?どうしました?急に顔を赤くなんかして。」

「と、とりあえずめぐみん。しばらく布団を被ってくれ。具体的には俺がこの部屋を出るまで。」

「流石にこの暑さの中は嫌ですよ。誰が好き好んで暑い中布団に潜るんですか。」

「っい、良いから早く布団を被ってくれ。すぐ終わる。すぐ出ていくから。」

今、俺がこの部屋を出ようとしたらめぐみんの背後にあるドアを開けなければならない。そうなるとあれがあれしてしまう恐れがある。

「・・・さっきからどうして私を見て話さないんですか?物事を人に頼むときは相手の目を見て言うべきでしょう?それともなんですか、見れない理由でもあるんですか?」

俺はそっとめぐみんを指差し、

「汗でシャツが透けてる・・・」

そういくら昨日の夜にこの部屋が氷漬けにされてたからと言って、少なくとも二時間程度はこの暑い中布団の中で人二人が密着してたんだ。そりゃ、汗が出ないわけがない。

その結果、めぐみんのシャツは汗で透けて見えてはいけない部分だって見えてるはずだ。あまり見てないからわからんがな。少なくともシャツが透けて身体に張り付いてることは確認できた。大丈夫だ。見えたのはそれだけで他には何も見てない。

「ひゃっ!?ああああ、も、もう!そ、そそ、そう言うことは早く言ってくださいよ。なんだか私がしょうたに見せつけてるみたいじゃないですか!」

めぐみんは顔を真っ赤にして急いで布団の中へと戻っていった。

「わ、悪かったな、すぐ出るから。」

そう言ってドアに手をかけ、

ガタッ

開かない。

「え、ちょっ、ゆいゆいさん!?開けてください!お願いします、開けて!ゆいゆいっお母さm」

「『アンロック』」

やけに早くないか?

ガラガラ

「『スキルバインド』!」

俺はドアを開けるや否やゆいゆいさんに向かってスキルバインドを全力でぶちこんだ。

もちろん理由は再度ロックを掛けられるのを防ぐためだ。

「え!?」

いきなりスキルバインドを喰らって現状把握が出来てないようだ。

これで向こうに主導権を握られることは無くなったかな?

「と、とりあえずめぐみんは支度を早く済ませろ。ゆいゆいさん、俺のローブと『死神』どこにありますか?」

「え、えっと居間に一式置いてますけど・・・」

「どもです。」

駆け足ぎみで礼を言って居間に向かった。

「・・・今後あいつの顔、まともに見れるかなぁ?」

居間でひょいさぶろーさんがまだぶっ倒れてたのはまた別の話。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~同時刻 自宅にて~

・・・流石に一日連絡も無しで帰ってこないなんておかしいです。もしかしたら爆裂魔法に巻き込まれ・・・いや、それはないですかね。だとすると誘き寄せられたモンスターに・・・100%ないですね。うーん、魔力切れでどこかでぶっ倒れてるんでしょうか?いやでも、もう十時ですし戻ってきても可笑しくないと・・・あ、そのままバイトとかに行ってそうですね。八割方それでしょう。そうと決まれば定食屋さんに行くのは後にして、あと二時間ぐらいご主人様の布団に埋もれましょう。はふぅ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

何とかバイトに間に合った俺達は熱中症予防の為打ち水をしていた。

「・・・しょうた君。」

「はいなんでしょう?」

「君さ、何でそんなにずぶ濡れなの?」

どうやら店長は俺が水に滴ってるのが気になるらしい。別に打ち水で遊んだ訳じゃないからね?水に滴るいい男というわけにもいかないかな?いきませんねわかります。

「ちょっと汗かきすぎたんでクリエイトウォーターで汗を流したんですよ。」

めぐみんが今朝汗だくだったということは、当然一緒に寝ていた俺も汗だくだった。めぐみんの家でシャワーを借りるという手もあったんだが、それだと時間が掛かるしな。めぐみんもシャワーしなければならなかったし、一緒に入るということはできないので外で水浴びをしたというわけですね。妙にゆいゆいさんにシャワーを勧められたのもその理由の一つだ。絶対何かあるだろ・・・

「少し野生的や過ぎないかい?」

「そうですか?俺の地元ではこのぐらいの時期になると水の掛け合いですよ。こう打ち水してると誰かg」

バシャッ

・・・生身は濡れてるからいいけどよ。制服はまだ濡れてなかったんだよな・・・

「・・・おいめぐみん。何のつもりだ?」

「しょうたの住んでいた所はこれが普通だったんですよね?じゃあ問題ないじゃないですか。」

喧嘩を吹っ掛けてきてんのかこいつは?

軽くウィンドブレスで服を乾かして、

「俺とやり合おうってのか?上等だ。」

「え、ちょ、二人ともまだバイト中!そう言うことは終わってからにしてね。」

おっとそうだった。

めぐみんを睨むのを止めて、

「今日上がったら仕切り直しな。」

「ふっふっふ、望むところです。これまでの雪辱を晴らしてやりますよ。」

それ前のチェス戦でも言ってなかったか?

「前と同じように返り討ちにしてやる。」

 

 

「どうしてこうなった。」

バイトが早く上がり、

今俺の目の前にはめぐみん、ゆんゆん、あるえがいる。対するこっちは俺、クレア、セシリー。

もう一度言おう。

「どうしてこうなった。」

「ご主人様、何回も同じこと言わないでくださいよ。」

今日は傍観者の気分だと意味不明な供述をしてた雪那は広場にあるベンチに座ってぼやいた。

何処から話そうか。そうだな、まずクレアについて話そう。

確か昨日辺り父さんが一日泊まりで王都に出向いていた。何でも紅魔の里に関する重要な会議が行われたらしい。俺は最初にそれを聞いたときはあの話かなと思ったんだがどうやら違ったらしい。

ま、そんなことがあり、今日父さんが帰ってきたんだけど、何故か知らんがクレアが付いてきたらしい。それで案の定クソ父がバイト先につれてきた。ホント何故なんだ。俺自身クレアに何でこっちに来たのか聞いてみたところ、

「最近魔王軍が本腰をいれてきてな。こちらもそろそろ本格的に体制を見直すことになって、その中に魔王城の監視も見直すということで私が来たわけだ。」

なんとも真っ当な理由だ。しかしだな、お仕事で来た人がこんなところで水遊びをしてもいいんですかね?

次にセシリー。

この人は「ショタ成分が足りない、そうだ紅魔の里に行こう。」と訳わかんない理由で来たらしい。アルカンレティアにもちびっこは居るだろうと言ってみたが、

「あそこではもう私は子供に近づくことが許されないのよ。」

遠い目をしてそんなことを返してきた。

この人何やらかしたんだろう。

とりあえずそんな感じでいろんな人が集合していた。

え?ゆんゆんとあるえはどうして来たかって?めぐみんが戦力補充として集めてきました。

いやあ、この世界の人はアホなのかな?水掛合戦って言っただけで目を輝かせてさ。ノリが中高生かよって・・・・・・そんなノリめっちゃ好きです。

セシリーなんて、

「私には水の女神アクア様が付いてるから勝ったも同然よ」

ってその付いてるは憑いてるじゃないかな?あれは駄女神だからな・・・

っとここでどうやって水掛合戦をやるのかとご説明を。まず転移魔法の下位魔法『ディスプレイスメント』を使い、だだっ広い池に繋げて水を補給する。この魔法は物体を短距離の間を瞬間移動させるものだ。当たり前だが人や動物、魔物は移動させることが出来ない。距離も半径二キロと微妙なものだ。街同士が点々としてるこの世界ではあまり需要がない魔法のひとつだ。その魔法を各チームのバケツに繋げてある。水の掛け方は基本的に打ち水の時に使う釈を使う。まぁ何を使っても良いんだがな。もちろんこの掛け合いに勝ち負けなんかありゃしない。ただ遊ぶだけなんだが・・・

「今日こそはしょうたにひと泡吹かせてやりますよ。」

凄くやる気満々のめぐみんが居る。

いや、今日こそはってそこまで勝負事してないんじゃなかろうか。

「ね、ねぇ、私達ってこの格好じゃなきゃダメなの・・・?」

そう言ったのは大胆な所があるのに恥ずかしがり屋なちゃっと矛盾しちゃってる子、ゆんゆんだった。

「別に良いけど・・・濡れたり汚れるぞ?そのTシャツ一枚でいいんじゃ無いのか?」

そう今この場にいる全員がTシャツを着ている。

「そ、そうじゃなくて下に何も穿かなくて良いのかってこと!」

「え?今お前ノーパンなの?」

「ち、違っ!?」

「ゆんゆん、流石にそれは引きますよ。」

軽くゆんゆんから距離を取ってめぐみんが言った。

「違うから!私が言いたかったのはズボンとか穿かなくても良いのかってことなの!」

なんだそんなことか俺はてっきりゆんゆんが痴女に目覚めたのかと・・・

「仕方無いだろ。この辺に軽く穿けるもの何てないんだから。制服が汚れてもいいって言うんならそれでも良いけど。」

「それは確かに嫌だけど・・・」

「というよりゆんゆんは何を恥ずかしがってるんだい。お風呂だって一緒に入ったことだってあるんでしょ?今更感だよ。」

「い、いやそれはこんなパブリックな場所じゃなかったし・・・」

確かに風呂はプライベートな空間だもんな。最近はそんな概念がどっかにすっ飛んでたけどな。

「んもう!つべこべ言わずにさっさと始めましょう!いい加減にしてくださいよ。大体あなたは大胆なのか繊細なのかハッキリしてから文句を言ってください。そんなんだからあなたの胸は中途半端何ですよ。この世は0か100なんですよ!」

ついにめぐみんが自分を0だと認めた。これはもう自他共に認める摩擦力係数ゼロ・・・

「ま、まぁ私はこれからバインバインになる予定ですし。」

急いで自分のことを否定し始めるめぐみん。

お前もお前で中途半端だよな・・・

そんなしょうもないやり取りを眺めていると、

「ちょっとショウタさん?後どのくらいかかりそう?そろそろ暑くて死にそうなんだけど・・・」

そう言ってセシリーはTシャツで仰ぐように首もとをはたつかせた。

いや、その何気ない仕草なんですけど、汗でシャツがへばりついたり、チラチラ胸元が見えたり、なんかもう色々とエロいです。

「ん?今ショウタさん、いやらしい目で私のこと見てたかしら?」

「大丈夫っす。見てたとしても曰く付き物件には手は絶対出しませんから。」

「あら、酷い言われようね。」

こんな軽い冗談を飛ばしていたらどうやら紅魔族組の言い合いは終わったようだ。

「全く、下らないことで時間を潰してしまいましたね。」

「毎回思うけど全部めぐみんが長引かせてるからね!?」

「はいはい、さっさと定位置につけ。スタート合図は雪那な。スタートは一分後。各チーム作戦会議でも開いてくれ。以上。」

さっくり指示をだし、クレア達の元へ向かった。

「ショウタ、作戦会議と言っても何に対して立てるんだ?私は魔王軍との戦いにおいての作戦ならある程度立てれるが、こういった遊びごとに関してはあまり関われて来なかったからどういう風に動けばいいか・・・」

「そう、これは遊びなんだ。だから作戦と言ってもそんなに真剣に考えなくてもいいんだよ。別に命張ってる訳じゃないからな。ただ少し位は策を張ってた方がいいだろ?ちょっと二人の冒険者カードを見せてくれ。・・・ん、ありがとう。うん、このステータスなら・・・」

俺は二人のステータスを参考にしながら作戦を伝えた。

 

 

「開始十秒前です。・・・・五、四、三、二、一、スタートです!」

雪那の合図と同時に両チーム地面を蹴り、走り出した。

「二人とも。ショウタを潰せば勝ち同然です。一点集中で叩きますよ!」

成る程、めぐみんが司令塔か。まぁあいつは体術は得意じゃないからな。だからと言ってめぐみんを狙うのはよくないかな。あるえもゆんゆんもトップ3に入ってたもんな。頭は良いはずだ。どいつを倒しても司令塔は成り立つしな。となると・・・

「めぐみん以外を先に片付けよう!やり方は各々好きにしてくれ。」

「はーい。」

「分かった。」

さてと、俺が狙うのは・・・

「ちょ、三対一っていじめよね!?」

どうやら他の二人もゆんゆんを狙うようだ。

「んー、ステータス的に考えたら先に倒したいのはゆんゆんさんってなるしこうなるのは予想がついたんじゃないかしら?」

「というわけですまないがゆんゆん殿。最初の犠牲者になってくれ。」

「理不っ・・・ねぇ、お兄ちゃん。手に持ってるのは何に?」

「どうみてもバケツだろうが。」

「酷いっ!ゴボゴボゴボ・・・」

俺はエンドレスバケツをゆんゆんにぶっかけた。

ゆんゆん戦意消失で離脱!

「ショウタ、それはやり過ぎというより鬼畜の所業なんだが・・・」

「良いかクレア。気を抜いてたら死ぬぞ・・・」

「どうしてだ!?」

「もう私たちは死線に居るってことね。お遊びじゃ生き残れないわ・・・」

「お前たち戻ってきてくれ!」

しょうもないやり取りをしている間に第二の刺客が来たようだ。

「セシリー一等兵とクレア二等兵はあるえの相手をしてやれ。俺は司令塔を潰しにいってくる。」

「ラジャー、大佐。」

「こ、これ私も乗った方がいいのか・・・?」

「どうしたクレア二等兵!返事が聞こえないぞ!」

「ら、ラジャー・・・」

「何言ってんのクレア?」

「そんなこと言って恥ずかしくないのクレアさん?」

「うぅ、もうお前たちは一回死んだら良いと思う・・・」

クレアを涙目にしたところでさっさと終わらせにいこう。

「そうだ、このバケツを持っていけ。弾切れじゃ笑えないからな。」

「え、でもショウタはどうするんだ。」

「良いかこの世は勤勉な奴が勝つんだ。そしてこの勤勉な俺はこういう魔道具だって作ったりするんだ。」

そう言って俺が取り出したのは日本で誰もが使ったことのあるであろう水鉄砲らしきものだ。見てくれは同じようだが中身が全く違う。まずひとつ目は補充がいらない。中で水を生成する機構がある。要するにクリエイトウォーターが埋め込まれている。次に圧縮機構だ。これは技術的に頑張った。ほんとに頑張った。時には本体が破裂したり水の歯止めが聞かなくなったり色々あった。その結果いい感じに銃内の空気を圧縮して水圧を上げることが出来た。圧縮する際は銃の後ろに付いてるレバーを押し下げればいい。後はトリガーを引いて弁を開けるだけ。こう圧縮された水が出てくるって訳です。難点を上げればレバーがくそ重いってことぐらいだ。どれぐらいかと言うと指が真っ赤になるぐらい。本気で押さないと中々下がってくれない。人によれば両手じゃなきゃ下げれないかもしれない。

「それは一体なんだ?見たことがない魔道具だが・・・」

「水圧式遠距離砲。加減ひとさじで威力が全く違う。」

補足説明をしておこう。レバーは段階式だ。大まかに言うと五段階ある。一段階目は普通の水鉄砲の威力だ。痛くも痒くもない。二段階目は少しお高い水鉄砲。圧縮式とまではいかないがそこそこ威力のある。当たったら「あ、当たったな。」というレベル。三段階目は皆さんご存じの圧縮式の水鉄砲。飛距離が数十メートルというモンスターだ。あれ当たったらいたいですよね・・・ここまでは力の無い人でも指を真っ赤にして片手でレバーを下げれる。次が問題だ。四段階目は人が気絶するレベルの衝撃をだす。実際にぶっころりーさんが気絶した。そして最後の五段階目は岩をも砕く威力を持つ。実際に砕いた瞬間を見たときにはこれを封印しようと思った。圧縮機構がキチガイ過ぎた・・・もちろんそんな威力でやりませんよ?せいぜい三段階目までで止めときますから。

「というわけでサクッとやってくる。」

俺は先程までめぐみんが居た場所に向かった。

「隠れて奇襲でもする気なのか?」

辺りを見回したがめぐみんの姿はそこにはなかった。

「動かないでください。」

え?いつの間に背後とられたんだ?・・・いや、屈折魔法か。そういえばゆんゆんもあるえもこの間卒業したんだっけか。

俺はめぐみんにお釈とバケツを突きつけられていた。

「エンドレスバケツでもやる気か?」

「あの行為に名前などあったんですね。でもまぁそんなとこです。」

「そうか。」

俺は銃のレバーを一気に押し下げた。

「で、俺をこうやって脅してる理由は?」

「そうですね、寝返りをお願いしに来たんですよ。流石に私とあるえではあなた達に勝てないです。」

めぐみんは遠くでクレア達と戦闘をしているあるえを見ていった。

いや、お前の目的は俺を倒すことじゃなかったのかよ。

「今あなたは私に疑問を抱いてますね?お前の目的は俺を倒すことじゃなかったのかよと。」

「エスパーか!?」

「その目的はあなたが私たちに加勢することで達成します。あなたが私の要件を飲んだ時点であなたは作戦的に私の負けになりますからね。」

なるへそぉそういうことか。

「ま、いい作戦だと思うよ。相手が丸腰の俺であればの話だが。」

俺は銃口を地面に向けた。

「そんな魔道具で何ができるんですか?見たところ水を発射するようですが・・・」

「見とけばわかる。」

そう言いトリガーを引いた。

次の瞬間俺の体は四、五メートルはね上がった。

空中でレバーを三段階にチェンジしてバケツを持っている手元に照準を当て、

「あっ!?」

射出し、思わずめぐみんは手をバケツからはなし、バケツが転がった。そしてもう一度五段階に入れ直し、バケツを撃ち抜いた。

「チェックメイトだめぐみん。」

俺は銃口をめぐみんの眉間に当て言った。

「ふふふ、何が『チェックメイトだめぐみん。』ですか。その魔道具を使うときにかなり親指に力がいるようですね。手が震えてますよ?」

俺の手は無意識に震え、親指にはくっきりとレバーの跡がついている。この有り様なら三段階目にいれるのも怪しいな・・・

「あれだけの威力ですから相当な反動が手に来るはずですよね?つまりあなたは今武器を無くした状態ではないのですs」

カチッぴゅー

「・・・なんですかこれ?」

「誰が武器がないって?」

確かに地力では三段階からはこいつを使えない。でも一段階二段階は使える。

「っふ、そんなちゃちぃ攻撃なんとm」

カチカチッびゅー

「さっきからなんなんですか!?人がしゃべってる途中で!それとさっきより少し威力上がってないですか?そっちがその気なら!」

そう言って腰に手を回し取り出したのは、

「お前ずっとそんなもの隠し持っていたのか?」

ミニバケツだ。

「私があれだけの武器であなたに挑むとでも?」

「め、めぐみんが爆裂魔法以外のことで頭を使っただと・・・?」

「一体あなたは私をなんだと思ってるんですか!?」

「いやだって朝の寝言で『ふっふっふ、これが爆裂魔法のいりょk』って言いながらよだれを垂らして寝て」

「や、やめてください!」

めぐみんが口元を押さえてそう言った。

カチカチッ

「「・・・・・」」

それが合図かのように互いに動いた。

めぐみんはバケツをこちらにやるように構え、俺は地面に伏せ、

「なっ!?」

多分今めぐみんの目に写ってるのはバケツを持ったクレアだろう。

バシャッ

流石にエンドレスバケツはやらなかったようだ。

カチッ

それはかすかだったが確実にレバーが入る音がなった。

俺は標準を定めて、

「さ、ほんとにこれで詰みだな。」

「先程程度の威力で詰みですか。私も舐められたもんd」

バシュッ

「痛いっ!?ど、どうして・・・先程の奴が限界だったのでは?」

「まぁな、俺単体ならさっきの奴が限界だな。」

「で、ではどうして今の威力がっ!?はっ!まさかしゃがんだときに地面に当てた・・・?」

そう、俺はしゃがんだときに勢いをつけて地面にレバーを当ててもう一段階圧縮した。そして、

「『バーストモード』」

カチカチカチカチッ

「この四段階目はクソニーtじゃなかったぶっころりーさんが気絶した威力を持っている。降参するなら今のうちだぞ。」

「大人げないですよ。奥の手を引っ張ってくるなんて・・・」

諦めたように両手をあげてめぐみんが降参した。

「それにしてもクレアさんがここに来たということはあるえが負けたということですか?」

「いや、私は途中抜け出してこっちに来たから勝敗は分からないが・・・まぁ、少なくともセシリー殿があっさりやられることはないだろうな。」

逆にシャツが透けてウキウキしてそうだな。

そう思い、先ほどまでセシリー達が戦闘していた場所に目を移した。

「あれ?移動したんですかね?」

人影が全くない。耳をすませると戦闘音はなく、足音が聞こえる。それはここからだと少し遠い林の中から聞こえた。

足音は1人くらいか?しかも足が重いな。かごでも背負って誰かが山菜でも取りに来たのか?いや、そんなことはどうでもいい。あいつらの何かしらの音も聞こえないのはおかしい。

一方、林の中から聞こえてくる音はこちらに近づいて来る。

うるさい・・・雑音を聞こえなくするようにその音を意識から消す。

聞こえてくるのは川の流れの音と風が林をすり抜ける音、そして木々の葉がこすれ合う音だけだった。

聞こえてきたのは息づかいだ。これは、俺の前に一、二・・・めぐみんとクレアだな。遠くから雪那とゆんゆんの息づかいまで微かに聞こえてくる。それと、俺の後ろに二つ息づかいがある。それらの持ち主は誰と言わずとも分かるだろう。

直ぐ様振り返ると、

バシャッ!

俺は行きなり大量の水をかけられ、その水を飲んでしまった。

「ゲホッゲホッ・・・あるえはまだ分かるとしてセシリー、お前が何で俺に水をかけるんだよ。」

セシリーはいたずらっ子のような笑顔で、

「だってショウタさんがあまりにも濡れてなかったからこれじゃ面白くないなぁって。」

「いや、お前の目的は何なんだよ・・・」

「ショウタさんの濡れ姿を間近で見ることかしら。」

駄目だこの人・・・

それよりもだ。

「それはいいとして、いや良くないけども、どうやって俺の背後を取ったんだ?耳を澄ませても一人の足をとしか聞こえなかったが。」

そう聞くとセシリーは自慢げに、

「私って結構力あるのよ。冒険者カード見たでしょ?」

あ、そういえば接近戦がまぁまぁ出来るぐらいはあったな。

「そこで私があるえさんを負ぶって森の中をかき分けてここまで来たのよ。」

な、なるへそぉー。だからあんな足音が・・・

「・・・セシリー。お前よくそれで精神保てたな。」

「何とか我慢できたわ・・・体が大人でも顔がこれじゃ襲じゃなかった可愛がりたくなるもの。これがめぐみんさんだったら完全にアウトだったわ。」

「今襲いたいって言いそうに」

「なってないわ。」

俺がそう言いかけたら即否定されてしまった。

「ちょっと待ってください。今聞き捨てならないことが聞こえたんですが。」

「気のせいだろ?俺は何も違和感を感じなかったぞ。」

「それは宣戦布告と受っとってもよろしいので?」

「お前は何に対して怒ってるんだ?」

ほんと女子ってわからん。

「無自覚!?ほんとに分かってないんですか!?分かりました。普段あなたが私をどう思ってるのかよーく分かりましたよ。」

摩擦係数ゼロのことか?今の流れでよくそれが分かったな。

「大丈夫よめぐみんさん。人にはそれぞれ良さがあってね、めぐみんさんのその凹凸のない体だって良さの一つだわ。」

「慰めになっていませんよ。」

待って、いつセシリーの精神我慢からめぐみんの発育に関しての話題になったの?

「だ、大丈夫よめぐみん。き、きっとそのうち大きくなるわ。多分・・・」

「もっと力強い言葉をくださいよ。何ですか、やっぱりあなたは中途半端な人間だったんですね。そんな事してるからいつまで経ってもはっきり伝えられないんですよ。」

「そ、それは今関係ないでしょ!?だ、だいたいめぐみんだってはっきり言ってないじゃない!」

その本人がいる目の前でそんな話するかね普通・・・

「わ、私はタイミングをですね・・・」

「はいはい二人ともそこまで。今ここでその話をしても意味はないよ。」

あるえ先輩止めるんならもうちょっと前で止めてくださいよ。

「皆さんいつまでそこで話してるんですか?終わったなら早くこっちに戻って来ておやつ食べましょうよ。」

待つことにしびれを切らしたのか、気だるそうに雪那がこっちに歩いて来た。

「あぁ、悪い。例の如くこの2人が言い合ってな。しかしおやつなんかあったか?」

「それは、今からご主人様が作るんですよ。」

何を言ってるんだこいつは・・・

「.おいおい、流石に疲れてる時にそんなこと頼むなよ。食べたければ自分で作ればいいじゃないか。」

「いや、自分のためにおやつ作るとかめんどくさいじゃないですか。」

何という自己中な奴め。だったら・・・

「俺はお前が作ったやつを食べてみたいけどな・・・」

「っ!?ほ、ほんとですか?じゃあ今から速攻で作って来ます!」

そう言って雪那はどこかに走り出した。

・・・そういえばあいつってお菓子作れたっけ・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「す、すいません・・・」

俺達は雪那が少し心配になって自宅に帰ってきた。そして案の定焦がしたり配分を間違えてたりと色々しでかしていた。

「い、いや、俺も気づいてやれんかったとこにも非があるしな・・・」

クレアのパーティーの時に手伝ってもらったこともあったがあの時はクリームを混ぜてもらったり塗ってもらったり飾りつけをしてもらったりなどを任せていた。

とりあえず一口食べてみるか・・・

少し黒いクッキーをかじった。

「あ、ご、ご主人様食べちゃダメですよ!」

・・・いや、そこまでまずくないぞ。

「いけるいける。若干粉っぽいけど最初にしては上出来だ。焦げも一つのアクセントとして考えたら悪くないし・・・」

「ちょっといいですか?」

とめぐみんが脇から手を伸ばしてそのクッキーに手を伸ばした。

「ふむ、こんなもんなんじゃないですか?そもそも比べる相手を間違えてはいけませんよ。この人の料理は貴族の下をうならせるものです。」

「そ、そうなんですかね。」

めぐみんのフォローもあり雪那も少し機嫌を取り戻した。

その後は雪那の作ったクッキーを囲んでトランプなどをして遊んだ。もちろん俺はその輪から省かれた。これがいわいるいじめってやつなんですかね。

 

 

「おい!そろそろいい時間だ。お前ら帰れよ。」

時刻は夜の八時。良い子はみんな寝ている時間だ。何と悲しいんだろうか・・・というよりそもそもこの世界は早寝早起きは普通らしい。どこかの家庭はもうすでに全員寝ているかもしれない。

「そうだな。そろそろ帰らないとアイリス様が心配だ。」

「そういえばクレア。お前今日半日ずっとここに居たけど仕事とか大丈夫なのか?」

もともとこいつは紅魔の里を視察に来たはずなのに、俺達と水遊びをしていた。これじゃ監視の視察もあったもんじゃない。

「そこについては問題ない。今日の仕事はここの視察だけだ。それも今朝片付けた。」

んー?それってもうすでにクレアはここに用無しだったのか?じゃあ何でこいつここに残ってんの?

「ほう、それじゃあなたはわざわざしょうたに会うためにここに残ったのですか?」

「そ、そういうことになるな・・・」

いや、何クレアさん照れてるんですか?その姿見てるこっちまで恥ずかしいじゃないですか。

「しょうた君。何照れてるんだい?」

おっと、あるえさん。目がガンガン光ってますよ?

「ねぇねぇ、私もしょうたさんにわざわざ会いに来たんだけど?」

「いや、あんたは来ても何とも思わないというか、本能で生きてるような人だからしょうがないかなと・・・」

セシリーに関しては何も感じない。もちろん最初はかなり驚いたがそんな驚きは全員集合していることに驚いたことに掻き消された。そもそもこのショタロリコンが紅魔の里に来ないことが不思議なんだよな・・・

「本能で生きてる何て失礼だわ。欲望で動いとると言って。」

そっちの方が失礼じゃないか!?

「それじゃあ、そろそろお暇しましょうか。しょうた私とあるえを送ってください。」

「えぇ、めんどい。」

「め、めんどいとは何ですか!?こんなか弱い乙女を二人だけで帰らせようと?途中で襲われたらどうするんですか!?」

あるえに関しては襲われそうだがめぐみんはなぁ・・・

「おい、今失礼なことを・・・」

「しゃーない。送ってやるよ。」

「では、ショウタ。私とセシリー殿にテレポートを。」

「別に私は送らなくてもいいわよ。今晩はショウタさんとこに泊めてもらうから。」

「いや、全力で帰すから。」

これ以上俺の精神を削らないでほしい。

「雪那。手伝って。」

「はーい。」

俺と雪那で二人をテレポートで王都とアルカンレティアへと送った。

「さて、お前ら帰る準備は・・・そもそも何も持っててきてなかったな。じゃあゆんゆん。送ってくるわ。」

「いってらっしゃい。なるべく早く帰ってきてね。」

そんな言葉を背に家を出ながら、

早く帰ってくるメリットでもあるのかな・・・?

と思ってしまった俺である。

 

 

「しかし、夜でもやっぱ夏って熱いな・・・」

軽く顔を流れる汗をぬぐいながら言った。

「そうですね、相変わらず蝉もうるさいですしね。夏はあまり好きに離れません。」

「でもかと言って冬も寒いからねぇ・・・」

「やっぱ秋だよな。気温とかちょうどいいし、ピクニックに行きやすいし。」

「ピクニックに行って何をするんですか?お弁当を食べながらキャベツでも眺めるんですか?」

「キャベツ?いや、なんでピクニックまで行って畑を見に行かなきゃならんのだ。紅葉とか色々あるだろ。」

「畑?しょうた君が何を勘違いしているかわからないけど、キャベツは秋には畑にはいないよ?」

「い、いない?それはあれか?収穫されているってことか?そもそもキャベツを見に行かねぇって。」

「いや、逆だよ。収穫されまいと抵抗すかのように誰も居ない地へと飛んで行くんだよ。」

ナニソレ?

「キャベツッテトブノ?」

「何言ってるんですか。そんなの当り前じゃないですか。ホントにしょうたはここの知識が無いですね。何者なんですかホントに・・・」

めぐみんに呆られるように言われた。

もうこの世界の常識怖い。

とたわわ・・・たわいもない話をしているうちにあるえの自宅に到着した。

「じゃあ、しょうた君めぐみん。また明日。」

「おう、またな。」

「また明日。」

別れを告げめぐみん宅へ足を向けようとしたその時。

「あ、しょ、しょうた君。ちょっと耳を貸して。」

「いや、俺耳ちぎれないから貸せないよ!?」

「そ、そっちの意味じゃない!」

「あ、何だそっちか。最近体の部位が無残に飛び散っていくモンスターを見ていたからてっきり・・・」

そう言い、少ししゃがみ耳を傾けた。

「一体君は何をしてるんだい・・・」

そう言って俺の顔まで近づいつ来た。

何の話だろうか。また自作の小説か?いや、それだったら耳打ちする必要もない。となると、あ、あれか、人の耳に息を吹きかけるつもりかこいつ。そうはさせるか、させるもんか・・・

 

ちゅ

 

そんな事を考えてると不意に頬に何かが触れる感触がした。一瞬何が起こったか分からなかったがすぐに分かった。

「い、今はこれくらいしか出来ないけど、いつかはもっと先の事を・・・」

俺の頬から離れたあるえはそう言った。

えっと・・・一つ反応するとしたらお前、アルカンレティアでしでかそうとしたこと忘れてるだろ・・・

「あ、あああるえ!な、なな何をしてるのですか!?」

そしてパニクってるめぐみん。そんな中俺は、

「しょうた君?」

思考回路が停止してました。

一拍置いて再起動した俺は、

「ごめんなあるえ。時が来たら答えるから。」

いつも通り最低な言葉を使った。

「うん、待ってるから。おやすみ。」

「おやすみ。」

俺は完全に使い物にならないめぐみんを引き、その場を後にした。

 

 

めぐみんを引っ張りながら歩いて数分。流石に人1人引っ張るのはしんどい。猫の手も借りたいわ。という訳で、クロじゃなかった。ちょむすけだっけか。どうやらめぐみんがこいつを正式に使い魔にするらしく新たな名を与えられたらしい。俺には紅魔族のネーミングセンスが一ナノメートルも分からない。それはそうとちょむすけや。俺の肩から降りてお前の主を一緒に引っ張ってはくれまいか?と、俺の肩で偉そうに寝ている黒い毛玉に向かって心で訴えた。が、その思いが届く訳もなく、黒い毛玉は欠伸をしてリラックスしている。なんだこいつ。可愛いな。

しかし、可愛いものを見てもしんどいのは変わらず、

「おい。そろそろ歩け。俺もう疲れた。」

本当に疲れてきてるらしい。助詞すら言えてない。

「あ、あるえに先を・・・」

まだ言ってるよこいつ。

そもそも頬にキスしただけだろ。そんなことほかのやつも・・・あれ?待って、あるえが初めてじゃね?なんかそう考えたら気持ちわかるかも。たしかに小さいことではあるが大きく先を越されたな。となるとこいつの性格から考えると・・・ないわー。度胸あるように見えてあんまりないもんな・・・それを裏付けるようにさっきからこっちの様子をうかがってる。てかそんな余裕があるなら自分で歩いてほしんだけど。

めぐみんを引っ張り続けながら結局めぐみん宅が見えてきた。それと一緒にめぐみん宅のドアの前で立ち往生しているフードの人が目に入った。

こんな時間に誰だ?どうみても紅魔族ではない。てことはひょいさぶろーさんの客かな・・・

「おい、めぐみん。お前の家の前に誰かいるんだけど知り合いか?」

「え、いえ、あんな人は見たことないです。そもそも私たちのの家に用がある人なんて居ませんよ。」

悲しいこと言うなよ・・・

しかし、中々の魔力の持ち主だな・・・アークウィザード並だな。

と考えながらその人を見ていると、こちらの視線に気づいたのかこっちを見てきた。すると何を思ったのか走ってこっちに向かってきた。

「偉大なる我が主。こんな所にいましたか。このアーネスどれだけ探したか・・・さ、お迎えにあがりました。」

と、深々と頭を下げて言った。俺の前で・・・

「なんですか。しょうたの知り合いでしたか。はぁ、またあなたは・・・」

「いやいや、今回は違うぞ!?こんな人知らん!あ、あの、人違いじゃないですかね?俺は手下をつけた覚えはないんですけど…」

「?あなたは何を言ってるのです?私が主と呼んだのは貴方の肩で丸くなられてる御方ですが?」

もしかしなくともそれはちょむすけの事か?つまりこの人はこの毛玉の家臣的な何かなのか?この猫何者なんだ・・・?

「さ、ウォルバク様をこちらへ。」

そう言ってアーネスがこちらへ出してきた。

いや、そう言われても困る。俺の癒しを取り上げられるのはとても困る。

「さっきから聞いていたら私の使い魔を寄越せ、そう言ってるのですか?そうは行きませんよ。そういうのは私を通して下さい。勿論許可しませんが。さ、ちょむすけこちらへ。」

めぐみんがちょむすけに手を伸ばすとそちらの方へ飛び移った。

「ちょ、ちょむすけ?ちょむすけ!?まさかとは思いますが、それはウォルバク様ことを指しているのですか?その方はウォルバク様です。勝手に可笑しな名前をつけないでください。さ、ウォルバク様。私と共に参りましょう。」

するとちょむすけが、アーネスの方を一瞥し、めぐみんの腕の中で丸くなった。

「ウォ、ウォルバク様!?」

心外だと言わんばかりにアーネスが驚いた。

「ふっ、どうやらちょむすけはそちらに行く気はないようですね。」

「アーネスだっけか?ちょむすけが行く気ないんだったら諦めたらどうだ?みんなこいつが急にいなくなったら困ると思うし、まぁ特に俺がだけど。」

「困りましたね・・・あっ ・・・」

あの、俺の話ガン無視ですか・・・?

「それなら、タダではとは申しません。ウォルバク様を今まで保護していただいたお礼も兼ねて・・・」

金を渡すから寄越せと申されるのかこの人は・・・

そんなもでめぐみんが動くとでも思ってんのか?

そう思いながらも少し不安に感じ、めぐみんの顔を見た。

うん、大丈夫そうだ。こいつも渡すまいという顔をしている。これなら俺の癒しも手を離れることもない・・・「そうですね、今手持ちが三十万エリスしかないんですが・・・」

「いえいえそんな、十分ですよ。ほらちょむすけ、この人が新しい保護者です。達者に暮らすのですよ。」

いや、心変わりするの早すぎるだろ。さっきまで待たすもんかって顔してたじゃねぇか。

めぐみんがちょむすけを抱き上げ、アーネスに差し出すと、それに抵抗するようにちょむすてがめぐみんの服に爪を立てた。

「あ、あの・・・。ウォルバク様がかなり嫌がっておられますし、お別れなどもあるでしょうから、また明日伺います。今夜一晩、最後の時を過ごしてはいかがでしょうか?」

そう言いアーネスは立ち去った。

「さて、お金も手に入ったことですしさっそく明日にでも出発しますか。」

「いやダメだろ。ちょむすけを売った金で行くとか頭おかしいんじゃねぇの?そもそもちょむすけ嫌がってただろ。」

「わ、私もただお金につられた訳ではありません。これから私たちは冒険家業をするために里を出るんです。安定しない生活、モンスターとの激闘、その中でこの小さな体のちょむすけが狙われるのは目に見えてます。それならいっそアーネスとやらに渡したほうが安全ではないかと・・・」

「お金の話が出てから渡すと言ったその訳は?」

「・・・さて、冒険に出る準備でもしますか。」

それ俺がよくする逃げ方!

その日の夜はちょむすけとめいっぱい遊ばせてもらいました。




ハイ久しぶりっす。ねこたつむりっす。
まさか二か月も伸びるとは思わなかったです。
書こう書こうとはしてるんですけど部活で加工加工ばっかしてたんであまり時間が取れませんでした。そしてだんだん思ってきたことがオリジナルも書きたいなぁって思うようになってきたんですよ。もうね、雪那のことで頭いっぱいになりすぎてヤバイです。
あ、そういえば天華百剣っていうゲームをさわり始めました。イベントボスが強すぎて死にそうです。そのゲームを始めた原因が雪那でもあったりする・・・
というわけで、今回予定してたところまで進みませんでしたが妥協して投稿させていただきました。もう話の内容がちゃんとしてるかどうかも分からなくなってきましたよ・・・またご指摘があればよろしくお願いします。


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旅立ちの前に

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
・・・お久しぶりです。


にゃー。

「・・・しょうた。そろそろその子を離してはどうですか?こころなしかちょむすけも少し苦しそうなんですが。」

もう少し、あともう少しこの毛玉感を味わさせてくれ。

「あと五分・・・」

「いや、そろそろ来るはずなので離して欲しいのですが。」

「・・・やだ。」

「子供ですか!?貴方そこまで聞き分けが悪かったですか!?」

コンコンコン

あ、時間切れか・・・

ガチャ

めぐみんがドアを開け、俺からちょむすけを取り上げ、

「どうぞ、この子は魚が好物です。この子をよろしく頼みます。」

めぐみんも辛いのだろう。相手の顔を見ずに差し出している。人にお願いする時はしっかりと相手の顔を見て頼もうな。じゃないと、

「え!?急にどうしたの?ちょむすけが家に?めぐみんどういうつもりなの?」

人を間違う。

そう、めぐみんはちょむすけをアーネスではなくゆんゆんに差し出していた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ゆんゆんに昨夜の事をあらかた話すと、

「2人ともバカなんじゃないの?お金の為にちょむすけを売ろうとするなんて。」

「いや、俺は否定したけど。」

心の中だけだけどな!

「で、でもですよ。このままずっとちょむすけと一緒というわけには行かないでしょう?私はこの子の事も考えて仕方なく譲ろうと・・・」

「さっきの話からだとお金の話が出てから心変わりしたみたいだけど?」

ゆんゆんがぐっとめぐみんに顔を近づける。

スゥとめぐみんが目をそらす。

2人の間に空白の時間が流れる。

「ふわぁ」

「ふにゃぁ」

俺とちょむすけがあくびした次の瞬間。

「この人でなし!」

ゆんゆんがめぐみんの肩を持ちこれでもかというくらいに揺らした。その際にゆんゆんのモノがすごく揺れたということは伝えておこう。

気が済んだのかゆんゆんが揺らし終え、

「でも、ちょうむすけを大事にしてくれそうな人なら、その方がいいのかな・・・」

 

「ちょむすえではありません。ウォルバク様です。」

 

いつからそこに居たのか分からないが玄関先に訝しげな眼をしているアーネスがそこに立っていた。

「おっと、来ましたか。ゆんゆん、こちらの方がちょむすけの里親です。」

「・・・ちょむすけではありません、ウォルバク様です。あと里親でもありません。・・・我が主がずいぶんなつかれていますがその方は?」

ゆんゆんの方を見てアーネスは言った。

その視線を受けたゆんゆんは人馴れしてないためか少し警戒している。

「めぐみん達と一緒にその子を保護していたものです。あなたは、何の目的でこの子を欲しがるんですか?それに、主って何ですか?」

「・・・ウォルバク様を保護してくださったことには感謝いたします。ですが、あまりこれ以上詮索しないほうがよろしいですよ?さあウォルバク様、参りましょうか。」

アーネスが少しピリピリとした態度をゆんゆんに取る。

ゆんゆんにとってはこの態度は辛いだろう。気圧され少し震えている。

「さあ、こちらに渡してください。」

言葉遣いは丁寧だがゆんゆんの反応に苛立てているのか、雰囲気が少し荒い。

ゆんゆんはおずおずとちょむすけを差し出した。

「ありがとうございます。ウォルバク様はこの私が大切に保護いたしますので、どうか安心・・・あっ!?ウォルバク様?痛たたた、ウォ、ウォルバク様、どうかお止めください、お戯れを!」

アーネスの手に渡ったちょむすけはそれを拒むかのように暴れだし、アーネスの腕から抜け出した。

「ええっと、どうしたものでしょうか。えらく嫌がっているみたいですが、かといってこのお金を返すのも・・・」

「「そんなものとっとと返しなさいよ(返してしまえよ)めぐみん!」」

「えらく仲がいいですね二人とも。」

俺たちがそんなことをしている間に、

「・・・こんなに嫌がっているのなら、何でしょうか?ウォルバク様はまだ記憶が戻られておらず、警戒しているのです。私と共に来れば、やがて記憶を取り戻すでしょう。さあ、どうかこちらに・・・」

アーネスはそんな独り言を言って、アーネスはちょむすけを捕まえようとして屈んだ瞬間、被っていたフードが取れ、アーネスの頭部が露になった。赤い髪から生えている二本の角と共に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あーあ・・・どうしたものかしらね。・・・・あなた達、口は堅い方?」

アーネスの言葉にめぐみんとゆんゆんは無言のまま、慌てて頷いている。

悪魔族。学校の図書館で読んだことがある。確か人間の感情を糧としてこの世に存在する種族で、グレムリンと言ったザコから、討伐するのに上級職が何人もの数がいる上位悪魔までピンからキリまでいるらしい。

こいつの魔力から察してまず間違いなく上位種だ。

「あら、でもそちらの方はそうでもないそうだけど・・・私とやりあう気?」

俺は手元にある「死神」構えて、

「ちょむすけを置いていくって言うならその気はない。」

「ちょ、しょうた!?相手は上位悪魔なのですよ!?あなた一人で敵う相手ではありません!」

「ふむ、だれが一人だって?」

「そうですよ!私だっています!」

そう言って俺の傍らにいたのは雪那だった。

「もうなんで私じゃなくてその子を使ってるんですか・・・!」

「そう怒るなよ。お前が外にいてくれた方が戦いやすいんだよ。」

「もう、ご主人様ったら。傍にいてほしいならそう言ってくれれば・・・」

また勘違いをして・・・

くねくね変な動きをしている雪那を見て何度も思ったかこの言葉。

これが俺の「雪那」だなんて知りたくなかった。

「上位悪魔相手に随分余裕ね。たった二人で何ができるのかしら?」

「何ができるって?それはだな。」

雪那は魔力で刀を作り出し構えた。

次の瞬間。

「っ!?」

コンマ僅かもなかった。俺と雪那は一瞬でアーネスとの間を詰めて喉元に切先を突き付けた。

「こんなことが出来るんですよ。」

勝ち誇ったような顔をする雪那。

そういやこいつのこんな顔初めて見たな。これはこれで可愛・・・

「・・・こっちみんな。」

ニタニタした顔で雪那がこっちを見ていた。

その顔には余裕と言わんばかりの表情も交じっている。

「え?何です?そんなこと言ってないで戦いに集中してください。」

こいつぅ・・・

「よ、予想以上ね・・・でも、貴方結構限界なんじゃない?」

「それは見当違いじゃないかな・・・」

限界ではないけど、そう決して限界じゃないんだけど体力と時間的にかなり厳しい。朝っぱらから「死神」で80%バーストモード。これで体力が半分以上持っていかれた。まだまだ全開バーストモードは実戦では役に立たないな。

「強がりもいいとこね。まぁいいわ、それならそれで面白いことになるから。」

アーネスがそう言った瞬間。アーネスの頬を一筋の閃光が掠めた。その閃光は真っすぐめぐみんの家へと向かった。

「ああぁ!我が家がぁ!」

めぐみんが項垂れているがそんなことは後回しだ。

俺が上位悪魔相手に余裕ぶっていたのは何も自分を過信していたわけじゃない。ここは紅魔の里。上級職のアークウィザードがゴロゴロいる里だ。

アーネスは頬の血を拭い、振り返る。

「騒がしいから何事かと思えば、この紅魔の里に、悪魔が一体何の用だ?」

そこには上級魔法を容易く扱えるアークウィザードの集団がいた。

アーネスのが先ほどと違い獣が獲物を狩る眼へとなった。

「・・今私に魔法を放ったのは誰だ。」

怒りを込めた深い声が響いた。

しかし紅魔族の皆様はそんなことお構いなしのようだ。

「今の魔法は俺が撃ったが、それが何か?というかこいつ、里を騒がせている例の爆裂魔じゃないのか?めぐみんの言った特徴と一致するぞ。ムチムチとした体で角を生やした女悪魔だと言ってたよな?」

「「えっ!?」」

その言葉にアーネスだけではなく俺までが驚きの言葉を上げた。俺はめぐみんの方を振り返った。

一瞬めぐみんは何のことかわからない顔をしていたが直ぐに分かったような顔をした。

こいつごまかすために嘘を吐いたのか・・・

「そういえば、確かめぐみんが激戦の末に逃げられたって言ってたな。・・・なるほどなー。ここに居るって事は、わざわざめぐみんに復讐しに来たのか。」

まぁ何というか、アーネスさん少し同情します。

上位悪魔は高い知能を持っている。それでもなおこの状況を呑み込めないアーネス。アーネスの状況を簡潔に言うと、自分の主を取り返すのにここに来たのにいつの間にか爆裂犯に仕立て上げられている。うん、なんとも理不尽な・・・

「ちょっとあんた。よくもまあここ最近、夜中に魔法を連発してくれたわね。おかげでこっちは、夜な夜な山狩りとかさせられたんだからね。」

「えっ・・・えっ?」

アーネスがこの状況に戸惑っている間に辺りは紅魔族だらけになっていた。

「おいコラお前、ここをどこだと思ってるんだよ。」

「あんた、どこの誰だか知らないが、良い度胸してるよな・・・魔王幹部クラスですら、この里の中には一人でノコノコやって来たりはしないぞ?」

まだ何が起こっているのか理解してないアーネスが、

「あ、あの・・・」

「ここは魔王軍すらも近づかない紅魔の里。」

「悪魔がこんな所にホイホイやってくるとは、よほど自信があるのか馬鹿なのか・・・」

そんな誰かの声にアーネスは汗をかきだし、次第に涙目に・・・

その後悪魔と紅魔族の鬼ごっこが始まったのは言うまでもなかろう。

アーネスさん、ドンマイです・・・

 

 

アーネスさんが涙目で里を去った後、めぐみんの家の修復等色々した。

「まったく、何だったのよあの悪魔は。でも、引き下がってくれて良かったね。ちょむすけも無事だったし。」

あの状況引かなきゃ確実に殺られてただろ。

「うーんでもちょむすけを引き取ってもらうのはホントにありがたかったんですよ。冒険家業をやりながらこの子を連れていくのはどうかと思いますし。」

「・・・なぁめぐみん、俺アクセルに行く目的って冒険家業じゃないって話したっけ?」

「ええ・・・あ、そういうことですか。」

「出来ればだけどな。その時に俺が手に用事ごとが無ければ預かっても良いかなって」

「それは助かります。でも、しょうたって何かしら抱え込んでますからね。軽い気持ちで期待しときます。」

「じゃあ、出発は明日の朝にでもするか?」

「私は良いですけど、ゆんゆんはどうですか?」

めぐみんが喜々としてゆんゆんに聞いた。

「え?明日!?急すぎない?悪魔だって逃げちゃったしお金が・・・ああ!?」

銀貨の詰まった袋を持っているめぐみんを見て声を荒げた。

「どうやら忘れて行ったみたいですね。これを使わせてもらいましょう。」

「いいのホントにそれでいいの?お兄ちゃん良いの?」

「見なかったことにしようそうしよう。」

置いてい居た人が悪い・・・うん、この事実を知っているのは俺達しかいないしな。

「大丈夫だゆんゆん。心配するな!」

「そ、そういわれても・・・」

まだ何か納得いかない顔をするゆんゆん。

「もう、明日出発するんですか?しないんですか?」

「す、する・・・」

めぐみんに迫られたゆんゆんは出発の決心をした。

「さて、旅立ちを決意した二人の為にお別れ会的なものを開いてやろう。」

「一緒に出ていく人が何言ってるんですかね。」

「め、めぐみん!お、お別れ会だって!」

「ううう、相変わらずうるさいですね。それだからいつまでたってもボッチなんですよ。」

「あ、でも私たちの為なんかにいいのかな?いきなり呼ばれて迷惑じゃないかな?」

相変わらず人のことを気にするボッチゆんゆん。

「と、とりあえずゆんゆんはめぐみんの旅の準備を手伝ってやれ。その間にセッティングしとくから。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

とりあえず、あるえやふにふらとどどんこを誘い、暇を弄んで作ったケーキを用意し軽く料理をして、めぐみん達を呼んだ。

「でも、めぐみん達が旅に出るなんてねー。めぐみんに関しては喧嘩っ早いあんたに、冒険者なんてできるの?」

「まず、パーティー組んでくれる冒険者を探すのに苦労しそうよね!」

まぁ、一般的に考えるとそうだよな。臨時パーティーいつまで続くかねぇ・・・

「その時は俺が無理やりでも組ませるから。」

「何ですか?この私に受け入れ先がないと思っているのですか?」

職業、ステータス、容姿には問題ないのだが、性格、取得魔法などを考えると確実にマイナスだな。

「・・・せっかくの料理だ。冷める前に食べようぜ。」

「ほい。むりひゃり」

「食べるか喋るかどっちかにしろ!」

こいつの食い気はならんのか・・・

そんなめぐみんに呆れてるのはどうやら俺だけではないようだ。

「・・・ちょっとあんた。最後ぐらい食うのはやめて話しなさいよ。あんたには人の情とかないの?」

「ていうか。いちあうめぐみんも、女の子のカテゴリーに入るんでしょ?食い気よりも、ちょっとはオシャレでもした方が良いんじゃない?」

こいつにそれを求めるのは間違ってると思うなぁ・・・

密かにそう思っていた俺だった。

そして、一番目に入れて痛いのがゆんゆんだ。

「あっ、ねえあるえ。ジュースのおかわりはいる?ふにふらさんはグレープよね。ちょっとめぐみん、何か飲まないと喉を詰まらせるわよ?」

何も自分の家に人が来たからってそんなにテンションを上げなくても良いんじゃないだろうか。

「なあ、ゆんゆん。そんなにテンションをぶち上げてどうした。発情期か?」

「っ!?は、発情期じゃないわよ!」

「あ、悪い悪い。人間ってもんは常発情期だったな。」

その言葉を言ったらゆんゆんの拳がまたもや溝内に入った。

何でこの子はこんなに近接が強いのかな。

その場に崩れながら思った。

「はぁ、しょうたには学習能力が無いのですか?物事言う前にしっかり考えてから発言してください。」

「善処します・・・」

「ところでめぐみん達はどこを拠点にする気なんだい?まぁ、しょうた君が一緒ならどこでもやっていけそうだけど。」

「いえ、しょうたも冒険稼業は少し控えるらしいのでここは基本に倣って、駆け出し冒険者の街アクセルに行こうかと。私もゆんゆんもまだ駆け出しですから、同じ駆け出し冒険者を仲間にした方が良さそうですしね。」

「お前のその謙虚さが学校でも発揮れてたら、もうちょっと友達が増えたと思うんだけんぐっ!?」

「さっきも言いましたよね?発言するならしっかり考えてからしろと。それにもかかわらずこれですか?なんですか、そんなに嬲られたいんですか?」

めぐみんは横たわっている俺を踏みつけて言った。

「そんな趣味は無い!俺はただ思ったことをそのまま言っただけだ。」

「あなたはその思ったことをすぐに言う癖はなんとかならないんですか!?」

「お前の方こそすぐにキレる癖を直せよな。」

睨み合う俺とめぐみん。

そんなやりとりに呆れたのかふにふら達が、

「はいはい、痴話喧嘩はそこまでにしておいて。はい、これ私たちから」

「誰が痴話・・・!おお、何ですかこれは、餞別ですか?というか触った感じ魔力の流れが凄く伝わりやすいです。高かったのではないですか?」

ふにふら達が手にしているのは杖だった。

魔法使いにとっては杖は魔力増幅させるためのもので魔法職には必要不可欠なものだ。俺に例えると「雪那」みたいな存在だ。

「もう、必要不可欠だななんて・・・私もご主人様が必要不可欠ですよ。」

もうツッコまないでおこう。

「いいや、お値段はプライスレスだったよ。魔道具職人のふにふらのお父さんが

作った杖でね。ちなみに、杖の材料は二人が取ってきたんだよ。」

その言葉にふにふら、どどんこの二人はどこか自慢げにしていた。

「里の近くの森に入って、魔力の・・・」

ふにふら達が説明しているのをしり目に見て、

「まぁこいつらはまだ上級魔法覚えてないから俺とあるえの四人で森に入ったんだけどな」

「二人なんてモンスターに会うたびに悲鳴を上げて・・・」

「「あるえー!」」

あるえの言葉をふさぐように叫ぶ二人。

うん、持つべきものは仲のいい友達だよな・・・

そんなことを思いながらお茶を口にした。

 

 

「じゃ、俺からも何か物をやろうかね。」

三人のプレゼントを渡し終わった後に思い付いたかのように言った。

「え、しょうたからもらう物ってろくなものじゃない気がするんですが・・・」

「お前は俺を何だと思っているんだよ。」

「笑顔でモンスターを狩る殺戮マシーンですが?」

「よし今からお前が内で思ってることを包み隠さず暴露してやる。」

「ちょ、待ってください。謝るのでそれだけはどうかご勘弁を・・・・」

どんだけ嫌なんだよ。そこまで大したこともなかろうに。

「それでお兄ちゃんからのプレゼントって?」

「ん、まずゆんゆんにはだな・・・」

そう言ってあらかじめ持ってきていた紙袋からルーンスタッフを取り出した。

「はい、お前まだ杖持ってなかっただろ?だからこれ。」

「あ、ありがとう。大切にするね・・・」

恥じらいながらルーンスタッフを受け取るゆんゆん。

何この可愛い生き物・・・

「ご主人様?ここにもその生き物がいますよ?」

するりと横から顔を出して雪那が自分の顔を指さし言った。

「はいはいそうですね。」

「とうとう相手にもされなくなった!?」

視線をめぐみんへと移し、

「お前にはこれな。」

そう言って魔法使い用のローブを渡した。

「これを私にですか?」

めぐみんは不思議そうにローブと俺を交互に見て言った。

「お前さ、いまだに学校の制服を私服代わりに来てるだろ。それじゃ冒険者として不憫そうだから新しい衣服をだな。」

「ありがとうございます。大切に来ますね。」

笑顔でお礼を言われ思わず見入ってしまい、一瞬だが意識が飛んだ。

ギャップってすげぇ・・・

その時にその一言が心の中に刻まれたのは確かだった。




おはようございます。ねこたつむりです。
えーっととりあえずすみません。ここ最近はいろいろあったのでなかなかこっちに手が回りませんでした。
今後ももしかしたらこれくらいのスパンが開くと思いますが、どうか何卒末永く見守ってください。


というわけで次回はとうとう紅魔の里から出てます。
まぁ、さっさとカズマ達と会わせたいんですけどね。いつになることやら・・・
あ、苦情や文句はメッセージなどでよろしくです。謝罪三割と雑談七割でお返しいたしますw
では、今回も読んでくださってありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。
やっぱ他のSSって面白いなぁ・・・


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Closed Memory

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない

こんちわ、前回のことを反省して頑張って執筆しました!
今回のサブタイトルはどうして英語なんだろう・・・
ショウタ「ただの中二病だろ・・・」
ゆんゆん「この人の乗りはもう病気じゃないかな・・・」
雪那「そもそも前書きに私たちを登場させるなんて・・・」
めぐみん「ネタがないのでしょう。」
あるえ「でもサブタイトルは私たちの琴線に触れまくってるね。」
ショウタ「・・・ねこたつむり紅魔族じゃねぇだろうな・・・」



ピピピッピピピッピピバキッ

「・・・あ、またやっちまった・・・」

ベットから起き上がり止めたはずの目覚まし時計を眺めた。

「永遠に止めるるつもりはなったんだけどな・・・」

無残にも真っ二つに割れている目覚まし時計に黙禱をして、リビングに降りて行った。

「あ、お兄、おはよ。」

声をした方を見るとソファーの上で寝そべっている我が妹、「こよみ」がいた。こよみは現在中学一年、

俺の二つ下だ。容姿はは黒髪ショート黒目、スラっとしていて男受けが良いらしい。俺にはこいつの良さがわからん。ちなみに血縁のせいなのか俺たち兄妹は気持ちが高揚すると目が紅くなる。

「お兄の部屋から凄い音が聞こえたんだけど、あの音ってまたやっちゃった系?」

この「また」を聞くたびに耳が痛くなる。

そう。俺は月二の割合で目覚ましを壊している。

「ああ、また買いに行かないとな・・・店員さんまた同じ人なのかねぇ・・・」

俺が目覚まし時計を買いに行くときは決まって同じ女性店員さんなのだ。そろそろ向こうも呆れてるかもしれない。

「あ、そういえばゆず姉が遊びに来るって言ってたよ。」

・・・

「よし、今から兄ちゃんは用事が出来たからお前が軽く相手しておけ。大丈夫、晩御飯には間に合うように帰ってくる。」

この家には家庭の事情により俺とこよみしかいない。したがって食事に関する家事は全部俺がやることになっている。親権に関しては叔母辺りが持っているが俺たちの好きなようにさせてくれるので今は気持ちが落ち着くまでこよみよ二人暮らしだ。

「お兄、用事って何?」

お、何だ?珍しく俺の用事に興味津々じゃないか。と言っても用事なんてないんだけども・・・

「んー、今は決まってないけど今後決まる予定だから。じゃ」

「そっかぁ、用事がないのにこよみちゃんに私の相手を任せるんだぁ。」

不意に後ろから声が聞こえた。その声は俺が今、最も恐れる人の声だ。

「いらっしゃい、ゆず姉。」

「・・・ゆず姉、いつからそこに?」

俺は恐る恐る振り返りゆず姉に聞いた。

「祥太君が今から用事が出来たって言ったところ辺りからね。」

ほとんど最初じゃん・・・

「こよみ・・・お前ハメやがったな・・・」

俺はソファーでふんぞり返っている愚妹を睨んで言った。

「だってお兄はいつもゆず姉から逃げてるじゃん。何でこんな美人から逃げるの?」

そう、ゆず姉は容姿端麗、黒髪ロング少し紅みがかった瞳を持っている。おまけに家庭的で評判らしい。

「お前はこの人の怖さが分からないからそんなこと言えるんだよ。」

「もう、祥太君ってばひどいこと言うなぁ。私は何もやってないじゃない。」

「あんたは人を舐め回すのが当たり前なのか?皮膚がが溶けたらどうするんだよ。」

一昔前、俺はゆず姉が率いるグループに拉致られて色々とされた・・・もう思い出したくもない。

「あんなのスキンシップじゃない。」

「じゃああんたはそこら辺の男子にあんなことできるのかよ!」

「無理に決まってるでしょ!?」

即答かよ・・・

まぁいい、用事って程でもないけど朝壊れた(壊した)やつを使って逃げるか。

この場から脱出する為の案が浮かび微笑を浮かべていると、

「あ、そういえばゆず姉。デパートで期間限定のクレープ売ってるの知ってる?私あれが食べたい。」

こよみの発言は俺に大問題をもたらした。ゆず姉に提案することは別に問題ではない。何が大問題かというと、デパートに行きたいっていうこと自体が問題だ。俺は目覚まし時計を買いに行くのは決まって同じデパートだ。というか他に何でも揃うしついでに買い物もできるしデパートが良いのだ。何が言いたいかというとデパート以外で買い物はしたくない。つまりだ、俺がこの場で目覚まし時計を言い訳にしたらもれなく余計な二人がついてくる。

仕方ない、適当な嘘を・・・

「お兄も目覚まし時計を買うのにデパートに行くみたいだしみんなで行こうよ。」

・・・こいつ確信犯だ・・・

その証拠に、にやつきながら勝ち誇ったようにこよみが俺を見ている。

はぁ、俺の考えてることはお見通しってわけか・・・

「そうなの?それじゃあ祥太君が着替え終わったら行こっか。」

「このままじゃダメなの?」

寝間着を見ながら聞いた。寝間着といったって半ジャージだ。デパートならこの格好で行ける。

「お兄、女子と歩くんだよ?それで歩かれるとこっちが恥ずかしいよ。」

「私的にはその格好でも・・・あ、いや祥太君の無防備な服装を周りの輩なんかに・・・」

約一名自分の世界に入ってしまったようだ。

しかし、こよみが言うからにはあまり逆らえないな・・・

仕方なく自室に戻り、着替えようとした。

「ゆず姉、のぞくなよ?」

「!?そ、そそそ、そんなことするわけが・・・」

「こよみ、男女の付き合いにもある程度の礼儀は必要だよな?」

「ん、ま、そうだね。ゆず姉。こっち。」

「で、でも・・・」

「こっち。」

「は、はい・・・」

借りてきた猫のようにおとなしくなるゆず姉。

この家庭で権力が強いのはこよみのようだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

蝉の声が行きかい、むっとした熱風が体に吹き付ける。

流石夏だな、死にそう。

そんなことを思っていると、

「ふふふ、こうやってお兄と出かけるのっていつぶりだろ。」

こよみが微笑みながらそう言った。いつもより機嫌が良いのか軽くスキップもしている。

「さぁな。それよりあまりスキップするなよ。手をつないでるこっちの気持ちにもなれ。」

「手をつないでるのは私も同じじゃん。お兄はゆず姉を少し見習ったら?なにも文句言わずに手をつないでくれるよ?」

「これって周りからどう見られるのかな?兄弟?いやもしかして夫婦と娘・・・?きゃ///」

「こよみ、今のゆず姉には話しかけるなよ?」

「う、うん・・・」

流石のこよみも今回のゆず姉には引いているらしい。

俺達はこよみを真ん中に三人で手をつないで歩いている。

「しっかしいやってなるほど熱いな。こう暑かったらそのうち俺らの頭もゆず姉みたいになるな・・・」

「祥太君、さすがにそれは言いすぎじゃない?」

ゆず姉がじっと俺を睨みながら言った。

こう普通に話してたら綺麗で可愛い人なんだけどなぁ。不覚にも睨んでいるゆず姉に見惚れていた。

「にしてもお兄。半月に一回のスパンで目覚まし時計を壊さないで。こういうちょっとした支出が痛いんだよ。」

「なんか最近自分の力の制御ができないんだよなぁ・・・」

思いのほか力が入り、ドアも壊したこともある。人間でも辞める時が来たのかねぇ・・・

「ねぇ、そろそろ場所変わらない?私も祥太君と手をつなぎたいんだけど・・・」

何を思ったのゆず姉があほなことを言った。

「ダメ、お兄の手を握るのはまだゆず姉には早すぎる。今お兄の手を握ったら何するかわかったもんじゃない。」

こう見えてこよみはゆず姉のことをよく理解している。

理解してるんだったらもう少しゆず姉に厳しくしたらどうなんだろうか。例えば家に上げないとか・・・

「全く、お兄はまだ中二なんだから高二のゆず姉は手を出したらだめだよ。せめてお兄が高一になってからにして。」

「こよみちゃん。それって祥太君が高一になったら認めてくれるということなの?」

おいおい、何口走ってるんだこよみ・・・

「その時にお兄がフリーだったらね。」

「いや、何勝手に決めてくれちゃってんの?」

「お兄は口を挟まない!」

「それはおかしい!」

その叫びは晴天の空へと吸い込まれていった。

 

 

俺達学生は現在夏休み真っただ中。そのおかげか平日の昼ということもあってデパート内は人は多くない。多分ほとんどが学生かと思われる。

「クレープって屋上だっけか?」

なんとなくこよみに聞いた。

「そうだね。お兄は時計だからその下でしょ?私、ゆず姉と服を見たいから買ってきてくれる?」

「おう、そのつもりだったから聞いたんだ。じゃあ、買ったら連絡するな。」

そう言って上の階へあがろうとすると、

「祥太君、ちょっと待って。」

ゆず姉が呼び止めてポーチを探り、

「はい、これで買ってきて。」

渡されたのはかわいらしい小銭入れだった。

「え、いいよ。こよみのわがままなんだし俺が払うよ。」

「だーめ!ここはお姉さんに任せときなさい。」

・・・ここでムキになっても意味ないか。

「分かったよ。」

小銭入れを受け取りシャツの胸ポケットに入れた時、不思議な光景を見た。男の集団がぞろぞろ入ってきた。それが作業着や、スーツ。学生の集団らしきものだったら気にも留めなかっただろう。その集団はこの時期にもかかわらず黒のセーターを着ていた。しかも大荷物を抱えてだ。登山にでもいくのかね?

そんなことを思いながらエスカレーターで電気屋まで登って行った。

 

 

・・・やっぱりかぁ・・・

レジにはいつものことながらその店員はいた。

この階にも人がおらず清掃のおばちゃんといつもの店員しかいなかった。

俺はサッと目当てのものを見つけ、レジに持って行った。

「これください。」

目を合わせまいと、地面をガン見しながら言った。

「はい、2100円になります。」

店員はこちらに気づいていない様子で淡々と業務をこなしている。

俺は用意していたお金を出し、その場を立ち去ろうとした。

「お客様もすっかりここの常連ですね。目覚まし時計しか買わないかど。そんなに朝の目覚めが悪いんですか?」

微笑を浮かべ、そんなことを聞いてきた。

「・・・やっぱ気づいてたんですね。いや、間違えて時計を叩き壊してしまうんですよね・・・お陰でうちの家系は大赤字っすよ。」

乾いた笑い方をして答えた。

「もう壊さないでくださいね。」

「それは分かんないで・・・」

パンパンッ

そこまで言った後、何処からか炸裂音が聞こえた。その後に悲鳴が聞こえ、すぐに静かになった。

「何かしら?ちょっとそこでじっとしててね。」

店員がそう言うとどこかに電話を掛けた。

「・・・?おかしいわ、繋がらない。」

俺はすぐに携帯でゆず姉に掛けてみた。

コールが鳴る。

おかしい、いつもならワンコール以内で出てくるのに。

とうとう留守電に入る。

電話を切り、思わずため息をした。

何が起こっている?さっきの炸裂音に悲鳴、そしてワンコールで出ないゆず姉。

明らかに非常事態だ。

必死に考えていると、エスカレーターから黒い人影が見えた。

とっさにレジの裏にもぐりこんだ。

「ちょ、ちょっと!?」

「ちょっと静かにしください。それと身を隠して。」

俺がそう言うと訝しげな顔で屈んでくれた。

「あのね、私遊んでる暇ないの。とりあえず状況確認したいから下に降りるわよ?一緒に来て。」

店員さんがそう言った後、

「ちょっとこっちにこい!」

いきなり怒鳴る声がフロアに響いた。

様子を探るために少しカウンターから顔を出すと、

黒セーターの男が掃除のおばちゃんを引っ張り下りていく姿が確認できた。

・・・えー、あの人そういう趣味なの?引くわー、ドン引きですわー

と冗談はさておき、ドラマみたいな展開だな。

そんなことを思っていると放送が流れた。

『あーあー、テステス。よし、ちゃんと流れてるな。えー、このデパートは我々が占拠した。貴様らには悪いが命はもう無いと思っていただきたい。我々の目的は日本の警察がどれほど無能のかを全国に知らしめることだ。今の日本の体制では・・・』

放送はまだ続き、これまでの経緯をご丁寧に話してくれる。

これはテロ目的なのか・・・

となると、今ここで何もしなかったらこのデパートにいる全員は死ぬってことか。

ここって無駄にセキュリティが高いからなぁ。防犯シャッターとか普通じゃ壊せない。それこそグレネードがいるくらいだ。警察は当分入ってこれないだろう。

さて、ここを占拠したと言うことはこのデパートは奴らの監視下にあるんだよな。下手に動くとバレるし、監視カメラない場所を行くしかないか。例えばそこの吹き抜けから飛び降りるとか。

『・・・という事で、警察には助けれると言う希望を持たせて貴様らを殺すことになる。淡い希望とかは持たないことだ。無論我々に反抗しても勝ち目はない。我々は元軍人だ。体術には特化している。』

何を自慢げに言ってるんだろこの人。

でも確かにまともに一般人が敵う相手ではないな。

ふむ、じゃ、こよみとゆず姉を迎えに行くか。

俺はレジから出て掃除のおばちゃんが使ってたモップを手に取る。

「・・・よし。」

覚悟を決め、手すりに足をかけた。

「ちょっと君!?何をする気?」

「家族を助けに。お姉さんはそこで隠れといて。意外と奴ら疎いみたいだから助かるよ。と言っても全員助かるんだけど・・・」

そう言い、改めて吹き抜けの下を見下ろした。

ちょうど一階に人溜まりがある。

着地するならあそこか・・・

人溜まり前方にスペースがある。そのさらに前には5人くらいの人影が見える。そのうちの一人は捕まった客らしい。目を凝らすと、その人物はゆず姉であることがわかった。

思わず手に力が入る。

俺は考えるより先に飛び降りてた。

俺が飛び降りたのは4階からだ。勿論これで無傷の人間はいない。

「リミット解除『バーストモード』」

落ちながら静かに呟いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ゆず姉・・・まったく、お兄は何処ほっつき歩いてるの。私一人じゃ無理だよ・・・」

ゆず姉が捕まった今、私は心細かった。知らない人の中一人。それを考えるだけで胃液が逆流してきそうだ。

気持ちを落ち着かせるために深呼吸をしてみた。すると僅かながら風を切る音が聞こえてた。

ふと見上げると、人が落ちてきている。

お兄?

あぁ、あのお兄は半ギレだ。マジでヤバイやつだ。

 

 

「グエッ!?」

おっと、誰かの頭に着地したらしい。

足元を見ると黒いセーターが伸びている。

よかった、この人がたまたまクッションになってくれたおかげで無傷で済んだ。

カチャ

流石元軍人といったところか。急な事にも動揺せず銃口を俺に向け冷静に対処している。

「おいガキ。膝をつけ。」

この場を威圧する程握力のある声が響いた。

「とりあえず、俺に命令する前にゆず姉を離せ。」

パンッ

炸裂音が響き渡る。

ドサッ

崩れ倒れる音がする。

「だ、っく、たいちょー・・・」

後ろにいた奴が倒れた。

「嘘だろ・・・弾丸を避けるなんてそんな馬鹿な話・・・」

「もう一度言う。ゆず姉を離せ。」

「銃弾をたった一発避けただけで図になるなよ。」

カチャ

構わず銃口を向けられる。今回は三方向からだ。

そのうち一人はアサルトライフルを所持か・・・

となると、

「各員中央ホールに集まれ。ガキを確実に仕留めたい。」

リーダーらしき者が無線で応援を呼んだ。

カランカラン

持っていたモップを地面に落とし・・・

「お、おい、ガキが消えたぞ!?」

「嘘だろ・・・さっきまでここにうっ・・・」

紅い二つの光が線を描いている。

「お、おい!グフッ」

短時間の間で二人が崩れ落ちる。

「ハァハァハァ、さて、残るはお前だけだな・・・」

「さて、それはどうかな?」

複数の足をとが聞こえる。

さっき呼んでいた応援が来たんだろう。

「見たところ多少はやれるようだが、もう息が上がってるじゃないか。そんな状態で私を相手出来るとでも?」

「あ、その言い方はちょっとやめてください。なんか卑猥です。そっちの趣味とかないですから。軽くドン引きです。」

「ち、違うわ!・・・ふっ、軽口を叩けるぐらいが精一杯なのだろ?ガキ一人で我々を倒せるとでも思ったか?浅はかな考えっ!?」

「辞世の句はそこまでか?」

俺はモップを拾い上げて喉元に突きつけていた。

相手の銃口はこちらに向いたまま。

「とっととゆず姉を離してくれるかな?」

「そこまでだ!」

その声が聞こえ、周りを見た。

どうやら包囲されてるらしい。

人数は10人前後。

「武器を下ろせ。」

・・・

四方八方から銃口を向けられ抵抗のしようもないな。

そう思い、銃の数、弾丸の入射角、空気抵抗諸々の計算を始める。

「聞こえないのか!武器を下ろせと言ってるんだ!」

ダメだ。ゆず姉がいるんじゃ不可能だ。となると・・・

俺は喉元に突きつけていたモップを離し、リーダーが持っていた銃をはたき落とす。

その時にバキッと音がしたのは放っておこう。

「アガっ!?」

その出来事は一瞬で誰も反応できなかった。

ゆず姉を捕らえてた力が緩み、ゆず姉を奪還した。

その次の行動に迷いは無く、モップを一直線に包囲している一人に投げ、その隙間にゆず姉を放り込んだ。

そこには待ってたと言わんばかりのうちの自慢の妹、こよみが立っており、見事ゆず姉をキャッチ。

これで気兼ねなく戦える。

もう少し持ちこたえてくれよ、俺の体。

数秒遅れて、銃の弾幕が張られる。

最速で反撃するために、最小限のダメージを受け、銃弾を躱す。

その一連の動きでモップを拾い上げ、一人二人、薙ぎ払う。

身体のあらゆる所にかすり傷を作りながら進んでいく。

銃弾の数が減る一方、こちらの動きには全く変化はない。徐々に銃弾を躱しやすくなり、気がつけば残り3人となっていた。

もう稼働限界はとっくに来ている。力を抜けば確実に昏睡状態に陥る。

「ば、バケモンだ・・・」

一人がそう呟く。

3人は戦意を失ったのか銃を撃たなくなっている。

だからと言ってここで手を抜くのは違う。俺が気を失ってしまったら確実に仕留められる。

どから、手を緩めずに殴りかかった。

 

 

「ハァハァハァ、じゅ、銃の回収と拘束をお願いします・・・」

気を失う前にそう言うと、

ガタッ

まだ力を抜いてないと言うのに膝をつく。

「お兄!」

こよみが走って近づいてくる。

「お兄のバカ!ここまで無茶しなくても私を頼ればいいのに・・・」

何も返せない。言葉が出さない。

「祥太君、その、助けてくれてありがとう。でもね私のために傷つくのは違うと思うの。だから次からはもう」

そこまで言ったらゆず姉後方から殺気を感じた。

バンッ

ゆず姉の身体がビクンッと跳ね、胸から紅い華が咲く。

何が起こったのかわからない。分かっていることはゆず姉が血を流して生き絶えそうなこと。

「・・・ゆず姉?」

その言葉しか出ない。

胸の奥から沸々と湧き上がってくる感情。

自我が保てなくなっていく。

最後に見た光景は銃を構えて微笑を浮かべているリーダーだった。

 

 

「死傷者17名。その内15名が犯行グループ。重傷者15名、死者2名。被害者1名重傷、1名死亡、か。」

「人質にされた人達は口を合わせてあの少年が助けてくれたと言ってますが・・・」

通報があり、現場に直行したもののデパートのバリケードのせいで入れないと思いきや。二、三分後には解除されて人質が出て来た。

その中に一人ボロボロの少年と生気を感じられない少女が運ばれて来た。少年は体のあらゆる箇所に弾丸のかすり傷がつけられ、身体全体疲労骨折をおこしているようでもあった。少女は胸に一発銃弾が撃ち込まれ即死。

一旦少年は病院へと運ばれ、少女の遺体は司法解剖に回された。

「ふぅ、にわかには信じられないな。この子の親族は?」

「妹が一人。親は居ません。親権は叔母が持って居ますが、同居せず、教育費だけを送っているみたいです。特にめぼしい情報はありません。」

そういえば救急車にお兄とか言いながら同伴した少女がいたな。

「そうか・・・しかしこれはひどいありさまだな・・・」

デパートの駐車場では搬送待ちの負傷者が転がっている。

それぞれの傷は痛ましいものだった。

骨折は当たり前で、ある者は内臓を破壊されていたりなど人間のなす業ではなかった。

一番酷かったのはすでに搬送された犯行グループのリーダーの遺体だ。

あれはもはや傷ではない。何せ顔の原形をとどめていなかったのだ。そのことについて人質は恐ろしくて目をそらすことしかできなかったという。

「後で少年には詳しく話は聞くとして、少女の遺族には・・・」

 

 

守れなかった・・・

ゆず姉を守れなかった。

後悔と自責の念が渦巻いていく。

あの時目覚まし時計を買いに行かなければ・・・いや、目覚まし時計なんかを壊さなければ・・・

こんなことならゆず姉のわがままを聞いてやればよかった・・・

ごめん、ごめん。ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん・・・




どうもーねたつむりです。
いやぁ、十一月ですね!ポッキーの日ですね!
まぁ私はポッキーじゃなくケーキをハーフホール食べてたんですけど・・・
おかげで少し気持ち悪いです・・・
ということで今回は祥太の過去について触れてみました。
ゆず姉設定。前々からは考えていたもののまさかほんとに使うとは・・・
この設定を使うと色々矛盾が生まれてくるような気がする・・・
とまぁ、そんなことを考えてた私ですが結局使うことにしました。
そんなこんなで文句や批評があればどんどん寄せてください。お願いします!
では、今回も読んでくださってありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。





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再びアルカンレティアで・・・

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
遅れた上に完全にネタがないし、おまけに日本語がおかしいです。
と言うわけでどうぞ!


「ごめんごめんごめんごめん」

「んもう!朝からぶつぶつとうるさいですよ!」

ドスッ

「グヘッ!?」

「めぐみんの方が朝から大声出さないでよ・・・」

徐々に腹部からの痛みが無くなり、目の焦点を合わせると何やら機嫌が悪いめぐみんとそのめぐみんを宥めているゆんゆんが居た。

「しかしゆんゆん。朝からごめんごめんごめんと謝罪しながらうなされてるのを聞いてるこっちの身も考えてほしいものです。」

「それはそうだけど・・・」

二人が話している間に辺りを見回し、

そっか、昨日確かアルカンレティアに来てそれで・・・

「お兄ちゃん?」

「・・・」

「しょうた、聞いてますか?」

「・・・え?何?」

頭が回らない。まるで脳が深く考えさせないようにしているみたいだ。

「だから、セシリーさんが朝ごはん出来たから降りて来てって・・・大丈夫お兄ちゃん?」

「ん、ああ。それよりさっきうなされてったって。」

「そうですよ。朝起きたら隣でごめんごめんと連呼して・・・」

不機嫌そうにしているがその眼には少し心配している様子が見られた。

「・・・心配してくれてたんだな。」

感慨深くすつぶやくと、

「な!?そんなことありませんよ!何を言ってるんですか、キモチ悪い・・・」

頬を赤く染めてそっぽを向いた。なんかこの感じ懐かしいな・・・

「ほんとに大丈夫?顔色が少し悪いよ?」

ゆんゆんが俺の顔を覗き込んでくる。

「いや、大丈夫だ。ただ昔の・・・あれ?何の夢を見ていたんだ?」

思い出せない。大切な夢だったはずなのに、絶対に忘れてはいけないはずの夢だった気がする。多分・・・

「はぁ、もうボケ始めたのですか?この先が思いやられますね。」

「ま、思い出せない夢なんだからそれまでってことなんじゃないのかな?」

「そうなのかな・・・」

そんな気はしない。俺は絶対に忘れてはいけない過去があるはずだ。しかしそのことについて考えると頭のに靄がかかったような感覚になり、気が付いたらお姉さま方に遊ばれていた記憶にたどり着く。

ぶるりと身震いをして悪寒が襲う。

「とりあえず、ご飯を食べるか。」

 

 

「・・・あのセシリーさん。」

「何かしら、改まって。」

「ニマニマしながら俺を見ないでほしいです。なんか食べづらい・・・」

「いいじゃない、減るものじゃないし。」

「減るわ!俺の食欲が減るわ!」

さっきから見られていてすごく呑み込みにくい・・・

「しょうた。ごふぁんふぉふぁふぇふぇふぃる」

「食べながら言ってるんじゃねぇ!」

朝からなんで俺はこんなに叫ばなきゃならんのだ。

俺達は今アクシズ教の本部にお泊まりをしている。

ことの発端は簡単だ。セシリーが俺たちの匂いを嗅ぎつけた。

いやマジなんだって。テレポートで着て、馬車乗り場を探そうとしたら、目の前にはセシリーが立っていた。

俺達はその魔の手から逃げきれずに捕まってしまい現在に至る。

チャプチャプ。

朝ごはんを食べ終わりする事もなく、めぐみん達の支度が終わるまで食卓である液体を眺めていた。

「ふわぁ、ご主人様おはようございます。」

今まで部屋で寝ていたのか眠そうな目をこすりなが雪那が起きて来た。

「ん、おはよ。よく寝てたな。」

「んー、どうしてかここ凄く心地いいんですよ。」

「お前頭沸いてんじゃねぇの?どこが心地いいんだよ・・・」

少なくとも俺は心地よくはない。ここに居たら凄く身の危険を感じる。

「おや、これはこれは。ショウタ殿ではありませんか。どうしましたかなこのようなところで。ハッ!?もしや私を待って居たので?それならそうと言って下ればいいものの。さ、私にどのような要件ですかな?因みに今晩の予定は空いてますよ。」

「ハッハッ。ヤダなぁゼスタさん。俺がそんな事する訳ないじゃないですか。俺はそっちの気は無いです。今度余計なこと言ったら骨という骨を粉々にしますよ?」

危険人物その1。アクシズ教最高司祭ゼスタ。

俺達をここに暖かく迎え入れてくれた人だ。そんな人に何故俺は危険視をしているかと言うと、言っちゃえばこの人はどんな奴でもイケる口らしい。実際昨日の風呂はヤバかった。俺の違う初めてが奪われるかと思った。まぁ、雪那が助けに来てくれたが良かったけど・・・

「ご主人様から離れてください。」

珍しくも雪那が怒っている。

自分のために怒ってくれてると思ったらなんか嬉しくなるな・・・

「ご主人様の初めては私が全部貰うんですから!」

・・・は?

「ファーストキスは勿論のこと、童貞や、ば、バージンだって!」

「先走んなこの変態がっ!」

ガツンッ!

「いだいっ!」

『死神』の柄で雪那の頭を小突いた。

「あのさ、まじであんまり変なこと口走ってるとブッチすんぞ。」

「ブッチって何をブッチするんですか!?堪忍袋の尾ですか!?それとも私との主従関係をですか!?あ、そ・れ・と・も・私の処女」

ゴツッ!

今度は鞘で殴る。

「オーケー。お前の命を絶たせてやるよ。」

「せ、せめて死ぬ前に一発やらせて下さい!」

「あ、おいバカやめろ!そんなとこ触るな!ひゃ、や、やめてっふふっく、くすぐったい!あ、ちょ、タンマタンマ変な声出るからぁ。」

雪那にベルトを外されそうになりそれに対抗しようともがいて居たら、

「「「・・・」」」

冷たい視線を背中で感じ取った。その視線の先にはゆんゆん、めぐみん、セシリーの三人が立っていた。

「雪那ちゃん?」

第一声をあげたのはゆんゆんだった。

「え、あ、あのこれには訳がありましてね・・・」

「・・・」

「も、申し訳ございませんでした。」

雪那がしたのはそれはそれは見事な土下座でした。

 

 

「ところでしょうた。その手に持っているポーションはもしや・・・」

「うん、ひょいざぶろーさんから貰ったスキルポーション。あの人曰くこれで3ポイント入るらしい。」

いや、まだ信じられないんだけどね・・・

「もう許してくださいよぉ」

「ふん。雪那ちゃんなんて知らない。」

どうやらゆんゆんはまださっきの雪那の行動にご立腹なようだ。頬をぷくっと膨らましてるのが可愛らしい。

「そんなぁ・・・あ、じゃあ普段ご主人様は敏感で寝ててもすぐに目を覚ましますが熟睡して目を覚まさない時間を教えるのでどうかお願いします。」.

「その話を詳しく。」

・・・なんか不吉なことが聞こえたんだけど。まぁ、ゆんゆんは手を絶対に出さないし良いとして。雪那には後で俺が熟睡している間に一体何をしてるのか問いただすことにしよう。

「それで・・・って私の話聞いてます?」

「あ、うん」

「本当ですかね?それなら良いんですけど。あれ、どこまで話しましたっけ?あ、そうそう。父が作る魔道具はしっかりとその効果は現れますが何かとデメリットがあるですよ。そのせいでうちの家計は大変なことなってしまい仕方なくしょうたやゆんゆんにご飯をたからなければならないことに・・・おっと話が逸れましたね。」

お前、ゆんゆんにもそんな事してたのかよ・・・

「何ですかその目は?文句があるなら父に言ってください。とにかくそのポーションを飲むと間違いなくスキルポイントは入りますが何が起こるかわかりませんよ。」.

「そこまでのことは起こらないだろ。せいぜい毒とかだろ?」

それに『セイグリット・プレイクスペル』まであと2ポイントなんだ。これを飲んでしまえば雪那を自由にコントロールできる。

キュポン。

小瓶の蓋を開けたら薬臭いにおいがが漂う。

「本当に飲むんですか?」

「もし倒れてもここ教会だし何とかしてくれるだろ。」

小瓶に詰められたポーションを一気に飲む。味は、まぁ良くない。しょっぱいのか辛いのか苦いのか分からない味だ。

冒険者カードを取り出しスキル欄とポイントに注目した。

『セイグリット・スペルブレイク』の文字が白く映っている。

よしっと呟いてカードにタッチする。

多分これでスキルは取得できたんだろう。しかし、

「・・・何も起こらないな・・・」

「え?そんなはずは無いと思うんですが・・・吐き気とかしません?なんかこう体調が悪いみたいな。もしくは魔法が使えないっ!とか」

ふむ。

「雪那。ちょっとこっち。」

「はい、何ですか?」

とピョコピョコとこっちに歩いてきた。

「『スキルバインド』!」

「えっ、あ!」

雪那の身体が光り、

ガチャン。

『雪那』が地面に落ちた。

「使えないってことはないな。普通だ。」

「おかしいですね・・・これでは父がまるで成功品を作ってしまったみたいじゃないですか。」

それはひょいざぶろーさんは絶対に失敗しないといけないみたいじゃないか・・・

『雪那』を拾い上げたその時ふとある違和感を感じた。

あれ?こいつこんなに重かったっけ?

その感覚は僅かだったが微かに重く感じる。

最近こいつを持ち運んでないからか?擬人化ばっかで手に持ってなかったから違和感を感じるのか・・・

いかんな。こいつに頼ってしまってばかりだと鈍ってしまう・・・

「『セイグリット・プレイクスペル』!」

『雪那』の上に魔法陣が映し出され、

パリンッと音がなる。

その瞬間、

『いきなり何するんですか!?わたしがなにかしましたか!?』

脳内に直接怒鳴り声が響き渡る。

こればかりは周りに迷惑を掛けれないので範囲を自分だけにする。声を聞いただけで顔を真っ赤にして怒っている雪那が目に浮かぶ。

『まじでごめん。ひょいざぶろーさんのポーションを飲んだらスキルが使えないかもって言われて・・・何も聞かずに掛けてごめん。』

しかし、アークプリーストの上位魔法はしんどいな・・・使っただけで身体が少しだるい。

これじゃあまり使えないかもな。ロア教えてもらってなんだけど・・・ごめんなさい。

「さてと、そろそろ馬車乗り場に行こう。流石に今日は出ないとな。」

「ふっふっふ。ここを出たかったら私を養うか、アクシズ教に入信して私を養いなさい。」

あぁ、この人めんどくさい。

嬉々としているセシリーに訝しげな眼を向け、セシリーと対峙していると、

「アクシズ教最高責任者、ゼスタ殿!出頭命令が出ております。我々と共に署までご同行願います。」

入り口に女騎士を引き連れている数多の警察が立っていた。

「・・・これは一体どんなプレイでしょうか?」

「ぷ、プレイではない!」

あの人もゼスタの被害者か。大変そうだな。

警官がゼスタの両脇に立ち腕を捉えて、連行しようとする。

その状態にキョトンとするゼスタ。

「ちょっと待ってくれ。罪状が無い上にいきなり逮捕は横暴過ぎやしないか?まだ朝っぱらだしこの人がやったことといえば俺に対するセクハラだけだと思うんだが。」

少し不服に思った俺は警官達に抗議に入ろうとする。

「ゼスタ様!今度は何をやらかしたのですか!?あれほど、斬新な一人遊びはほどほどにと申しましたのに!」

「ちょっと待って。ゼスタ様。今ショウタさんからの口からセクハラって聞こえたのですけれど。いくらゼスタ様でもそれだけは許せません。警官さん!今すぐこの人を連行してください!」

「セシリーさん!?」

素っ頓狂な声を上げてゼスタが叫んだ。

「そういえばこないだ、『水の女神アクア様に使える私以上に、プールの監視員に相応しい者がいるのかね!?幼子を!我に幼子を見守らせたまえ!』って役所に怒鳴り込んでたから、その件じゃない?」

「『女性が男性用の下着を買っても特に疑問に思われないのに、男が女性用の下着を買ったら後ろ指さされるのは男女差別だ!』って演説してたからじゃあ・・・」

スッ

「どうそ。もう二度とこのような悪事が出来ないようにしたください。」

俺は抗議するのをやめて扉の方へと手を向けた。

「ご協力感謝します。」

女騎士に会釈をし、そのまま部屋に戻ろうとすると、

「ショウタさん、ここで見捨てるなんてあんまりではありませんかね!?昨日は共に裸の付き合いをした中ではないですか!」

「おいおっさん。今すぐ俺が処刑してもいいんだぞ・・・」

「ゼスタ殿。そろそろ真面目に聞いてもらいたい。今日は今までのように説教だけで済む問題ではないのです。」

「つまり、監獄プレイをご所望ということですか?」

もうだめだこのおっさん・・・

女騎士を困らせて楽しむおっさんが最高司祭とかほんとに大丈夫なのかこの教団は。

頭を掻きむしっている女騎士さんを見ながらため息を吐いた。

 

 

女騎士さんからの話によると近頃温泉宿から次々と苦情が来ているそうだ。その内容の八割がたが温泉の質に対する苦情なんだとか。俺はそれよりも残り二割の苦情が気になってしょうがない。と、その話は置いといて。なぜ温泉の質の苦情がアクシズ教団に来ているのかというと、アクシズ教団はこの街「アルカンレティア」の温泉の水質管理を担っているらしい。

「・・・?そういえば書類山の中にそんな報告書が混ざっていたような。セクハ・・・邪教徒のへの妨害や、迷える子羊への勧誘で忙しかったので後回しにしていましたが・・・よろしい、私たちの方で源泉の調査を行いましょう。」

「その必要はない。」

高圧的な言葉で女騎士がきっぱりと言い張り、一枚の紙を突き出した。

「ゼスタ殿、貴方には外患誘致の嫌疑がかけられている。」

「外姦誘恥・・・?何ですか、そのいかがわしいような罪は?」

「いや、文字をちゃんと読めおっさん!」

この人はおかしなことを言わないと死んでしまう病気を患ってるのか?

 

「・・・こほん。という訳だからご同行を願おう。」

話を要約するとこうだ。

紅魔の里の占い師が近々ここアルカンレティアの温泉に異変が出るらしい。その犯人は源泉管理者で魔王に通じているものとまで出ている。要するにそけっとさんが占った訳ですねはい。まぁあの人の占いはすげぇ当たるから信じる人も多いんだろう。となれば矛先は当然管理しているアクシズ教の最高司祭になる訳だが・・・

「私が魔王に通じてる!?アクシズ教団の教訓に魔王しばくべしとあるんですよ!?この私が魔王に通じてるなんてある訳がない!そんなことを言うのはこの口か!?チューしてくれるわ!」

とまぁ大変ご立腹な訳で・・・

「もういっそ連行されるのもありですよ?何もやってないなら無実は確実なんだし・・・」

わざわざ濡れ衣を被せる必要性もないからな。

「ショウタ殿は私を見捨てるつもりか!?」

悲痛な声を上げて涙目で訴えてくるゼスタに対して俺は。

「むしろあんたが何もやってないと思ってるから助言しているんだけど・・・」

セクハラ云々は別に置いてだけどな。

それを聞いたゼスタは少し悩んだのか唸って、

「よろしいでしょう。私を連れて行きなさい。そこで無実を晴らして見せましょう。」

と潔く連行されて行った。

「・・・さてと、最高司祭がいない間ここの管理って誰がするんだ?」

あまり興味はないが連れて行かせたのは俺だから後始末ぐらいはしないとな。

「それはみんなで手分けしてやればいいわ・・・ねぇ誰かゼスタさんがいつも何をしているか知っている人いるかしら?」

「事務じゃないのか?」

「事務関係は全部秘書がしているんじゃない?」

「懺悔は・・・懺悔を聞く係りの人がいるし・・・あれ?普段ゼスタさんがやっていることといえば・・・」

そうやって皆さんで考えた末にセシリーがパッと笑顔で俺に、

「ゼスタさんがいなくても問題がないことがわかったわ!」

「・・・え?最高司祭が居なくて問題ないってここほんとに大丈夫なのか?」

「代表者が居なくなるだけだからもしもの時の為に代表者を決めないといけないけど・・・」

その言葉に一瞬だけだが場の空気が変わった気がした。

しかし問題がないなら良いか。これで心置きなく出発出来るしな。

「それじゃ俺たちはそろそろ行くか。」

「そうですね。アクセルまでまだ距離ありますし早めに出発たいですし・・・」

「え、もう行っちゃうの?もう少しゆっくりしてからでもそれに手伝って欲しいことがあるの。」

うわぁもう嫌な予感しかしない・・・




おはようございます。そしてあけましておめでとうございます。ねこたつむりです。
もうね、このすばの中にショウタが入れる隙間がないような気がして来ましたよ。
あ、そういえばもうすぐ初投稿から一年が経ちますね。
長かったようで短い一年でした。・・・サボってた記憶しかねぇ・・・
こんな人ですが今年もよろしくお願いします。


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Let's調査!

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
四か月は長かったですね・・・・
許してとは言いません。だからだから許してください!
ショウタ「おーい、矛盾してるぞー」


手伝ってというセシリー。

それを断りたい俺。

その間には言葉ではなく視線で会話が成り立つほどに睨み合っていた。

「そりゃショウタさん達だって早くアクセルに行きたいのはわかるわよ。でもね、美人プリーストの私が困ってるのよ?少しは助けようとは思わないのかしら?」

「俺もセシリーがただの美人プリーストだったら助けたと思うよ。でもあんたただの変態だろ?」

といつまでたっても平行線で話が進まない。

「も、もうお兄ちゃん1日ぐらいどうってことないんだし少し手伝ってあげない?ここに泊めてくれた恩もあるし。」

「ゆんゆん・・・だからお前はチョロいって言われるんだ。よく考えてみろ。ここに連れて来たのは誰だ?セシリーだろ。セシリーがここに連れて来なかったら今頃馬車に揺られてアクセルに向かってたんだよ。」

「ちょ、チョロい・・・」

チョロいという言葉にかなりのショックを受けているらしい。

その場にヘナヘナと座り込んでしまった。

「はぁ、ほんとにあなたは言葉を選んでから喋った方がいいですよ。そのうち返り討ちにあいますから。」

呆れたかのようにめぐみんが口を開き、続けて

「1日ぐらい良いじゃありませんか。私もそこまで急いでるわけじゃありませんし。」

二人にこう言われるとなぁ。

「分かったよ。二人がセシリーを手伝いたいと言うんだったら手伝ってやるよ。」

「さっすがぁ!それじゃあ今から作戦考えてくるから明日の朝ね!」

と猛スピードで自室にセシリーが部屋へと向かっていった。

・・・え、今から考えるの?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

淡い日差しが俺の顔を照らした。ほんのり暖かくてそして地味に眩しい。

のそりと体を起こし伸びを一つ。

部屋を見渡し、

「四畳半程度の部屋に四人は狭いわ・・・」

俺の右に雪那その右にゆんゆんその次にめぐみん。

もうこりゃ人間すし詰めだな・・・

ローブに腕を通し部屋を出た。

さてと、体感的に5時半ぐらいか。

雑魚狩りもいいけど、うーん。

頭を悩ませるとドンッという大きな物音がした。

朝一のこともあり体が過剰に反応してすごいビクついてしまった。

少し怯えながら物音がした方へ歩いていくと少し隙間が空いた戸があった。

物音はここからか?

慎重に中を覗いてみると少しアルコールの匂いが漂ってきた。雑に置かれた服や毛布がある中にすぅすぅと気持ちよさそうに寝ているセシリーがいた。

どうやらベッドから転げ落ちたらしい。

物音の正体がわかり安心し、さっきまで怯えてた自分が少し恥ずかしくなり、少し顔に血が上ってるのが分かる。さっさと外に出よう。

そう思った瞬間にあるものが目に入った。

セシリーの頭あたりに赤い液体が広がっている。

バッと扉を開けて急いでセシリーの頭を抱きかかえる。

あれ?濡れてない・・・?

床に広がっている赤い液体を嗅いでみると、

・・・これワインだ。

多分転げた拍子にこのワインが溢れたんだろう。てか紛らわしいわ!頭打って血を流してるかと思ったわ。

はぁ、とため息を吐き出しそのままセシリーを掛け布団にくるみ抱えてベットに転がし、ぐるりと部屋を見渡してみる。

流石に散らかしすぎだな・・・

あちこちに書類らしき紙が散乱して、酒瓶なども転がっている。おまけに服だけじゃなく下着も散らかってる。

「よくこんなとこで生活できるな・・・」

声を漏らし呆気にとられた。

やる事も無いし、一応世話になってるし部屋片付けるか・・・

と、誰に向かっての言い訳かそう呟いて部屋の片付けをし始めた。

まぁ酷かった。いつ飲んだのか分からない酒瓶が10本以上出てきたり、よれたTシャツが何枚もあったり・・・

この人ほんとにダメ人間だな。

ちらりとセシリーの方を見た。

憎たらしいほど気持ち良さそうに寝ている。日差しがセシリーの顔を照らしいつもより2倍増しに綺麗に見える。

この人顔は綺麗なのに何であんな性格なんかね・・・

残念な人にしか出会えないこの世界はどうかしてるんじゃないのだろうか・・・

さて、サクッと残りを片付けてこの部屋を出ないと。この部屋に入ってるとこを誰かに見られでもしたら収集がつかなくなりそうだし。

ある程度物の分別は済んでいたのでそこからはすぐ終わった。後はゴミを捨てる場所なんだけど、まぁ知らないんだよな・・・

適当にメモでも残して後はセシリーに任せるかな。確かベット付近にメモ帳が・・・

メモ帳を取ろうとその場で振り返るとさっきまで寝息を立ててたセシリーが目を開けてこちらをニヤニヤ見ていた。

「・・・えっとですね。いつから起きてました?」

俺の中で恥ずかしさと焦りが出てきた。そもそも俺はこの部屋に無断で入ってるわけですし、しかも異性の部屋であるわけで・・・つまるところ完全にアウトという訳だ。何もしていないにしろ通報されたら一発アウト。まぁ、この人はそんな事よりもっと別のことをするからその心配は無いんだけど。その別のことがロクでもないことなのでアウト。逃げ道なんでない。

背中に変な汗が流れるのを感じながらセシリーが口を開くのを待っていた。

「ついさっきよ。ショウタさんがゴミ袋を縛ってるあたりで目を覚ましたわ。部屋を見たところ片付けてくれてたのは分かるんだけど・・・まぁ女性の部屋に無断で入ってくるのには変わりはないわよね?」

ニマニマしながらよからぬことを考えているであろうセシリーに対して俺は、

「ま、まぁ、その話は後にするとして服きてくれませんか?ろくに顔を上げれないんですけど?」

「あら、全裸のお姉さんはお嫌い?」

「場合によりけりです。今はあまりです。」

「今のところは恥じらって『そ、そんなこと聞かないでくださいっ!』って言うのがセオリーでしょ?」

文句を言いながらセシリーは服に着替えている。

「俺がそんなこと言わないの分かってるくせに。」

「言わなさそうだからこそギャップ萌えがあるんでしょ?全く分かってないわねぇ・・・」

「いや、分からなくもないですよ?分からなくもないからこそ俺はあっち側のサイドになれないって言ってんの。ああいうのは自覚しなくて出せる人特権だからな。」

あれ?なんの話ししてんだ?

「さて、世間話はここまでにしてと。ショウタさん?通報されたくなかったら分かるわよね?」

着替え終わったセシリーが人差し指を俺に指してにやける。

「はい、お姉さん。ここで言い訳してもよろしいでしょうか?」

「お姉ちゃんって呼んでくれたら無かったことにしてあげたんだけど。お姉さんかぁ・・・言い訳ぐらいなら聞いてあげるわよ?」

畜生!選択ミスった。この人のこと考えればそっちの方が効果あることわかるじゃねぇか!こんな時に昔の弊害が邪魔を・・・

「そ、それじゃあまず俺がこの部屋に入ったのはセシリーがベットから落ちた拍子に頭から血を流してると思ったからであって決して、そうけっして!やましい気持ちがあった訳じゃないから。」

「そこまで否定されるとお姉ちゃん悲しいんだけど・・・でも頭から血なんて出てないわよ?」

「まぁ俺が勝手に勘違いした訳なんだけど、血だと思ったのは赤ワインだったんだなこれが・・・」

「プッ、プフフフ。そんなベタなことが実際に起こるなんて、プフフフ」

「う、うるさいなぁ。事実なんだからしょうがないだろ・・・とまぁ、そんなことがあり部屋に入ったんだけど、予想以上に散らかりまくってたから片付けたい衝動にかられまして、現在に至る感じです。」

「なんで最後が敬語になったのは不明だけど。要するにショウタさんは私のことを心配して部屋に入ったってこと?」

セシリーは俺に近づき問うた。

その目は何かを期待するような目で頰も少し赤らんでいる。

当の俺は。

「・・・お好きに解釈してどうぞ。」

とこのヘタレっぷりである。正面切って肯定するのはあまりにも恥ずかしすぎる。かと言って否定するのも違う。

「そう?それじゃあ勝手に想像させてもらうわ。ふふ、ふふふふ・・・」

不気味な笑みを浮かべて布団にもぐっていくセシリーを横目に部屋を出ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時間は朝、と言っても時間帯的に言うと十一時頃。

昨日とは違い静まり返ったここ本部は今俺とめぐみん、ゆんゆん、セシリーしかいない。

静かに遅めの朝食を食べているとめぐみんが、

「なんか静かですねー」

おいばかやめろ。

「みんな最高司祭の件で出払ってるんじゃないかしら?」

「なんだかんだで皆さんゼスタさんの心配してるんですね。」

「ゆんゆんさん、何を言ってるのかしら?多分みんなは自分が最高司祭になれるよう選挙活動してると思うわよ?」

だろうとは思ってた。明らかに昨日のみんなの目つきが違ってたしな。

「・・・え?ゼスタさんの無実の罪を晴らすため、街で聞き込みとかそういったことは・・・」

「どうして私達がそんな面白くもなさそうなことを?心配しなくとも無実ならのうのうと帰ってくるわよ。」

最高司祭の扱いが雑だなぁ・・・

逃げ回ていたキャベツの葉をやっと捕まえ、むしゃむしゃ食べながらそう思った。

「というわけだからショウタさん達には私の選挙活動のお手伝いをしてもらいたいの。勿論バイト代も弾むわ。私の場合、いろいろやらかしているから阿智の人に顔を覚えられているから、普通に声をかけただけで警戒されちゃうのよ。その点あなた達なら・・・!」

「そんなのんきなこと言ってる場合ですか!?ほらめぐみんも何とか言って・・・」

「バイト代はお幾らくらいなのでしょうか。」

「そうね・・・。私に票を入れてくれる人が一人増えるごとに一万エリス・・・」

「・・・・・」

俺の隣からものすごい魔力が漂ってくるのが感じられた。

「お、おいゆんゆん個々で魔法はやめろ!」

「待ってください、分かりました!ゆんゆん分かりましたから魔法を唱えるのはやめてください!」

「お、イねぇちゃんのハム一切れ分けて上げるから!落ち着いてえ!」

 

荒ぶったゆんゆんを落ち着かせて街を歩き回り約一時間。ちなみに雪那はまだ寝ていたのでおいてきた。

ゆんゆんを筆頭に街を歩いていたわけだが・・・こりゃ何も考えないで街に出たな。それ以前に何回かこっちを振り返って様子をうかがっているし・・・

「な、なぁゆんゆん?俺が思うに苦情があった温泉宿の人に事情を聴くっていうのはどうだ?ほら、俺たちまだ温泉に関しての苦情がどういったものか知らないだろ?まずは何が起こったのかを聞くのも手だと思うんだ。」

「なるほど、それもそうですね。ゆんゆん、そうで勢いで出たはいいものの行く当てもなくどうしようか困ってた頃でしょう?ここはショウタの案で進めてみませんか?」

「そ、そんなことは・・・あったけど。」

ゆんゆんは顔を赤くし俯きながらもじもじした。

「ああもう可愛いわ!この赤くなった恥じらいの顔!なんて可愛いの!?」

「・・・と、とりあえず被害にあった温泉宿を探そうぜ。」

もうこの人にツッコミを入れるのはあきらめよう・・・

 

「いらっしゃいませ!ご宿泊でしょか?」

俺達がまず向かったのは前に泊まった旅館だ。

「あ、いえ、ここのところ街の温泉宿で苦情が相次いだものでその調査に。」

「あ、そうなんですか、でもうちでは何の異変も起きてませんけど・・・ってあれ?あなた方半年前くらいにお泊りになったお客様じゃありませんか?」

「ははは、その節はどうも。」

あまり覚えていてほしくなかったな・・・

「ぜひまた機会がありましたらうちにお越しくださいね。それで温泉の苦情の件なんですけども、うちは源泉自体がここにありまして教団が管理している源泉とは全く関係ないんですよ。あ、でも同業者からはいろいろ話を伺っていますよ。なんでも温泉がところてんスライムに変わったとか。しかも温泉だけじゃなく蛇口まで・・・誰かが源泉にところてんスライムを投げ込んだんだって言ってましたよ。」

と、ところてんスライム?

いや、存在も味も知っているといううかメッチャクチャ美味い。、特に冷やした時なんてプルプルとした書簡が何とも言えない。勿論味はグレープが最強ですとも。

「よし、これは現場を見てみないとわからないな。」

「そうね、苦情を受けたアクシズ教団のものとしては、綿密な調査が必要だわ。」

「・・・ゆんゆん、あの二人なんか目が輝いていませんか?」

「そ、そうね・・・」

俺達は急いでその旅館を後にし、オアシs・・・被害のあった温泉宿に向かった。

 

「え、ええ、そうよ。あのつるんとして美味しいヤツ。なぜだか源泉の蛇口をひねるとっところてんスライムが出てくるし温泉もところてんスライムに変貌・・・」

「ぜ、ぜひ現場を!」

俺の希望もとい提案を受け宿の主人は、

「は、はぁ・・・ではこちらへどうぞ。」

「ちなみに味は!?ところてんスライムに味は、何味ですか!?」

「グ、グレープだと思いますが・・・」

「「それは素晴らしいですね!!ところてんスライムはグレープ味が最強ですとも!」」

俺とセシリーは宿の主人に言われたとおりに奥へと向かう。

 

 

「なんでだよ!なんでお前ら止めるんだよ!蛇口ひねってところてんスライムが出てくるとか全世界の人類が夢見るもんだろ!?」

「そんな人類はいません!大体源泉から出てくる美味しい飲みもになんて、毒でも入ってたらどうするのですか。・・・というかところてんスライムというのは結局何なのですか?飲むと美味しいのらモンスターですか?」

俺達は宿の主人に連れられ現場に行くとそこには溢れんばかりのところてんスライムが出てきた。当然のごとく俺とセシリーはテンションが上がり、そのまま直行しようとしたが無理やりにもめぐみんとゆんゆんが俺とセシリーにつかみかかって宿から引っ張り出されたわけだが・・・

「ところてんスライムっていうのは食用のスライムの寒天質を集めてそれを乾かして粉末寒天にして、味付けしたもののことを言うんだ。味はいろいろあるがやっぱりグレープが頭一つ飛びぬけてるな。で、その粉をお湯に溶かすとなんとも言えないとろみが出てくるんだ。ちなみにこれはあんかけのあんにも代用できる。そして冷やせばプルプルと固まる飲料になるんだ。これを利用したスイーツは結構あってだな・・・」

「ゆんゆんこれは・・・」

「うん、流石に事故じゃないわね。」

「ええ、何者かが源泉にところてんスライムの粉を投入したのは間違いなさそうですね。」

「蛇口を捻るといつでもどこでも飲めるように・・・」

 

 

「「なんて頭の悪い妨害工作なの」でしょう・・・」

 

 

「というう感じにケーキにも代用できる。前にクレアの誕生会の時のイチゴタルトもジャムとところてんスライムを使ってだな・・・」

「すいません、なんだかバカらしくなってきたので、もう帰っていいですか?」

「気持ちはわかるんだけど!もしこれがホントにそけっとさんの占いの、温泉の異変って奴なら・・・」

「それはない。魔王軍が徹底的にここを潰すんなら毒を混ぜるはずだ。それに比べところてんスライムなんかで妨害工作をしたらどうだ?この街のアクシズ教徒・・・いや全人類は大喜びするはずだろ?そうなりゃところてんスライムの湧き出る温泉で一躍有名・・・ハッ、その手の商売があったか・・・」

「なに全人類皆がところてんスライム大好きと決めつけているんですか?あと変な商売案を考え付かないでください。」

変な考えとは失礼な。でもだとすると犯人がゼスタってことになりかねない。さてどうしたものか・・・

「とりあえずその源泉があるとこに行ってみますか?」

「いや、どうせ警察が調べつくしてるだろ。とすれば行くべき場所は警察署だな。」

そう言って足を警察署絵と運んだ」。

 

「えっと一昨日の源泉の証拠ですね・・・はい、この袋の中にところてんスライムの粉とこれを厳選の施設に持ち運ぶゼスタ殿の姿が目撃されてます。」

と、警察受付の人は証拠品を見せてくれた。中に残った粉を少し舐めてみると、

「おお、しっかりグレープ味。」

「ちょっと、ショウタさんだけずるいじゃない!私も舐めるわ!」

「お二人とっもこれは証拠品なのですよ!?舐めちゃいけません!」

警察の方は少し怒鳴り気味で証拠の袋を下げてしまった。

セシリーは舐めれなかったことに不服なのか警察の方につかみかかろうとして、それをゆんゆんとめぐみんに抑えられている。

うん、気持ちはわかるぞセシリー。しかしこうも証拠をそろえられたらな・・・

「なぁ、セシリーなんでゼスタさんは施設なんかに行ったんだ?」

「え?それは施設の掃除しに行ってたからじゃないの?もともと交代制で掃除をしていて一昨日は私が掃除当番だったけどゼスタさんと交代してそれで掃除をしに行ったのよ。」

「その交代の話はどっちから持ち出したんだ?」

「もちろんゼスタ様よ。普段あの人は掃除はしないんだけど一昨日は掃除を変わってくれるって言ってくれたのよ。」

なんてこったこれじゃあまるでゼスタが犯人みたいじゃないか・・・

「・・・もう、済んでしまったことは仕方ありません。魔王の手下で犯罪者とはいえ、まぁ、根っこの方は悪い人ではなかったと思います。きっと、罪を償って再び舞い戻ってきますよ。」

「外患誘致罪は、確か死刑だったんだと思うんだけど・・・」

そうだ、外患誘致つまりこの世界でそれは魔王軍の手先という事である。王都に攻めてくる魔王軍が無残にも倒されていく者と同じ。与えられるのは死という結果のみ。

それを意識したらいやな汗が頬をたどる。いや、でももしホントにゼスタがやってないとしたら最終手段で・・・

 

と、その時。

 

「だから言ったのですよ!敬虔なるアクシズ教徒である!この、私が!そう、この私がですよ!?この、アクシズ教団最高責任者である私が、魔族なんかに手を貸すわけがないではありませんか!」

やたらと私が私がと強調してゼスタの声が聞こえてきた。

「すいません、ゼスタ殿!どうか、もうその辺で・・・」

館内にはゼスタさんの声と女騎士さんの声が響き徐々にこちらへ近づいてき、廊下の奥からゼスタさんの姿が・・・

「ゼスタ様!?」

「謝って済むならあなた方の仕事は無くなりますな!仕事が無くなって無職になったら、いつF¥でも我が教団にお越しくだ・・・おや、セシリーさんではありませんか。もしや私が釈放されるのを待っててくださったのですか!」

ぐったりした様子の女騎士さんに連れてこられた、なんだか少し肌が若々しいゼスタさんが居た。

「どうやら向こうの最終手段に助けられたようだな。」

「ちょっとショウタ、どういう事か説明してもらえますか?」

状況がいまいちの見込めないのかめぐみん含む三人が俺とゼスタさんの顔を見た。

「この世界・・・ここでは・・・相手が中々罪を認めないときに用いる魔道具があるな。チンチン鳴るあの魔道具。もしゼスタさん人だった場合これが鳴るはず、だけど今回は鳴らなかった。そんな勝つ確率があるのも関わらず俺が結構マジで調査していた理由は何者かがアクシズ教団最高司祭を潰すために裏で警察を操っている可能性があったからだ。でもこうしてゼスタさんが釈放されたって事はまぁ平和的な解決で済んだって事。」

「といううことですな。こほん、嘘を見抜く魔道具をどや顔で持ってきた、眼鏡をかけたあの検察官!あの人にはくれぐれもお礼を言っておいてくださいね!おかげで嫌疑が晴れましたよ!自信満々だった冷酷そうなあの顔が、徐々に泣き顔になるのは大変ご馳走様でした!」

何それ見たかった。

「ぐぐ・・・っ!あ、あの者はじきにアクセルの街へ異動になる予定の検察官です。私共々、ゼスタ殿には不快な思いをさせてしまい、申し訳・・・」

・・・アクセルねぇ。俺達もアクセルに行くんだけどこんな偶然もあるんだな。お世話にならないようにしっかり健全に生きよう。

この後ゼスタさんが調子に乗って女騎士さんと警察の方々を散々いじめたのは言うまでもあるまい。最後に女騎士の人は殺意むき出しだったけど・・・

 

「はぁ、結局根本的な解決には至ってないですね・・・」

何故か悔しそうにめぐみんがつぶやいた。

俺の中では一本の仮説が立ってるんだけどまだ足りないものがなぁ・・・

「確かに今回の嫌がらせの犯人は分からず仕舞いでしたな。確か紅魔族の占いでは、魔王の手のものが関係しているとかなんとか。」

「魔王の手先と言えば・・・悪魔、とかでしょうか?」

何だろうゼスタとセシリーが真面目に話してると違和感しか感じない。

「悪魔ですか・・・ううむ、以前から微かに感じるこの臭い。もしや、悪魔臭・・・?」

っ!?

「雪那!」

とっさに振り返り本部に置いてきた雪那を呼ぶ。その訳は・・・

 

「さてこの私を置いていった理由は後で聞くとして・・・まずはこの尼を滅すべきですね。」

・・・とうとうこいつ俺のもとに瞬間移動で飛んできたよ。

めぐみん達も俺が叫んだ時に振り返ったのだろう。今俺が見据えている相手、俺が気付くほどの膨大な魔力、依然戦ったことのある相手を目に入れてちょむすけをポツリと落とした。

 

「こんなところまで来るなんて、お前も随分と慕われていますね。」

 

ローブを目部下に被ったアーネスが悠々とそこに立っていた。




お待たせしましたねこたつむりです。
言い訳を一つ。全話で時間系列をしくじったので考えるのがめんどくさかったです。いや自分のせいなんですけどね。あと、ショウタがホントに入るスキがない。もうサブキャラでいいんじゃないですかねw
といううわけで第21話どうでしたでしょうかショウタが入る余地がなかった分雪那が入る分なんて勿論微塵もなかったです・・・
そんな訳で次回はアーネスとの再戦に!?
次はもっと早く更新したいな。てなわけでこのまま作業を続行ですねw
ではでは今回も読んでくださり有り難うございます!
次回も読んでくださると嬉しいです。



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アクセル道中膝栗毛

※注意、この小説には以下の成分が含まれております。
・下手な日本語
・クソ文才
・ご都合主義
・紅魔族
・中二病等々
・ぼっちがボッチしてない
…お久しぶりです。


「しかしちょむすけがこんなにモテるとはな・・・」

 

薄い笑みを浮かべているアーネスを睨みながら皮肉をとばした。

 

「久しぶりだねぇ。いやぁこないだはよくもやってくれたね。そこの坊やも・・・ん?坊やひょっとして」

少し驚いたような顔をしてそこまで言うと

「何ですかこのけしからん娘さんは!」

 

ゼスタが場違いなことに喚く中、アーネスは余裕そうな笑みをこぼしていた。

 

「雪那。」

「はい。」

 

俺は『雪那』を静かに構えてめぐみん達の前に達、壁になるかのように立ちはだかった。

 

「こんな公の場に出てくるとは偉く自信があるようだな。」

「ショウタさん、巨乳をこれ見よがしに見せつけてくる娘さんとは一体どんな関係が!?」

「ふっ今回はあの忌々しい紅魔の連中はいない。本来なら貴様らを捻り潰してもいいのだがここでウォルバク様がなついている貴様らを始末するのも」

「ショウタさん答えてください!どうしてこんな、破廉恥な恰好をしているのですかこの人は!しかも、羽織っただけのローブでそれを隠しているのがけしからん!けしからんですな!・・・はっ!もしやショウタさんこの娘さんといかがわしい関係が・・・」

「「あるわけがないだろ!」」

 

俺とアーネスが口をそろえて言い放った。

 

「いいか貴様ら、痛い目に遭いたくあなければ・・・」

「あなたに痛い目に遭わされたい場合はどうすればいいのでしょうか?」

「ぜ、ゼスタさん・・・」

 

ゆんゆんがこれ以上は不味いと思ったんか静止に入るが。

 

「変わったヤツめ。お望みどおりに・・・!」

 

 

アーネスは腕を振り上げ、

 

 

「痛い目に遭わせてやるよ!『ファイアーボール』!」

 

その腕を振り下ろして手先から火球が放たれる。

 

『ご主人様!』

 

その声は球をはじけと言ってるんだろうか。だったらそれは無駄な行動だ。

火球は真っすぐ俺の左にいるゼスタに向かって飛んでいき、

 

「悪魔っ子だったのか・・・」

 

残念そうなため息とともに、スッと手を前へかざし、

 

「『リフレクト』!」

「ッ!?」

 

『リフレクト』魔力で光の壁を作り出して魔法を反射させる呪文。この呪文はプリーストの呪文だ。

跳ね返された火球はアーネスの方向へ、それを避けたアーネスは驚いた顔でゼスタを見る。

アーネスの頭には呪文を売った際にローブがはだけたため角は露出していた。

 

「へぇ、タダの変なおっさんかと思ってたけど、中々やるもんだねぇ。」

 

その光景に驚いているのはアーネスだけではなくめぐみん達も同様のようだった。

 

「ああ・・・悪魔っ子か・・・」

 

そういえばここの国教エリス教とその先輩にあたるアクシズ教の戒律で『悪魔殺すべし』ってあったっけ。

ゼスタは口元をゆるましているが、その眼は誰が見ても笑っていない。

 

「ふん、たかがプリースト如きに上位悪魔の私に何ができる?」

 

 

「その人はあなたを葬り去ることができます。」

 

 

「ッ!?」

 

いつの間にか背後に回ってセシリーが佇んでいた。

この二人からはさっきのふざけた雰囲気は全く感じられない。それでもアーネスは余裕な態度を崩すことはなく、

 

「面白いことを言うね!偉大なるウォルバク様に使える、この」

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

『セイクリッド・ハイネス』この呪文は呪文の上での最上級のモノを表している。この呪文はアークプリーストのみ使う事が出来、効果は悪魔祓い。つまりアーネスにとっては致命的な呪文だ。

白い炎がアーネスの頭の横を掠めた。掠めた部位からは魔方陣が浮かび上がり、まばゆい光が上空に向かって突き上げて行った。

それを目にしたアーネスは先ほどの余裕は消え、口元をパクパクしている。

 

「申し遅れましたアーネスさん。」

 

ゼスタに呼ばれたアーネスはビクリと反応した。

 

「わたくし、アクシズ教団最高司祭を務めさせてもらっている、アークプリーストのゼスタと申します。」

 

とたんにアーネスの額から汗がぶわっと吹きで始める。

 

「アクシズ教団内で私以上のレベルのアークプリーストはいないと自負しております。」

 

その言葉はアーネスをさらに追い詰め後ずさりをする。

 

「同じく。アクシズ教団の美人プリースト、セシリーと申します。」

 

後ろにいたセシリーが声を発したことでアーネスは後ろのセシリーの存在を思い出したのかまたビクリと震える。

 

「セシリーさん、どうやらこの一件はこの悪魔っ子が元凶のようですね。」

「そのようですね、この悪魔のせいでゼスタ様はあのような目に遭わさたのでしょう。」

 

あ、このパターンどっかで・・・

 

「何だ?貴様ら何の話をしている。私はただこの街に来てウォルバク様を探しに来ただけであって・・・」

 

アーネスの声は完全に上擦っていて、もう泣きそうな顔をしている。

何だろこの理不尽な光景は・・・

ここまで来たら同情のほか言葉が出てこない。

アーネスの否定の言葉はゼスタたちの耳には届かず。

ダっとゼスタが走り出した。それから逃げるためアーネスは体を翻してセシリーの脇をすり抜けた。

 

「セシリーさん追いかけましょう。悪魔になら何をやってもいい。アクシズ教団の手で悪魔に生まれてきた事を後悔させてあげましょう。」

「了解ですゼスタ様!悪魔は吊るせぇ!」

 

そんなことを叫びながら涙目のアーネスを追いかけて行った。

 

『あれ?もしかして私今用無しになりました?』

「まぁ、そういう事だろうな。さてと、教団本部に荷物取りに戻って出発するか・・・」

「結局犯人分かりませんでしたね。あのアーネスもちょむすけだけが狙いだったようなのでこの一件とは無関係なのでしょう。」

 

そもそもこの事件に犯人なんて・・・

 

「ところでしょうた。ずっと気になってたんですが、なぜアクセルに行こうと?」

「え?」

「しょうたはここでの基本的知識が圧倒的に足りないですよね?キャベツが飛ぶことも知らないですし。」

 

いや、普通はキャベツ飛ばないんだけどなぁ・・・

 

「それなのにしょうたはアクセルという初心者にはピッタリな街を選び出しました。」

「それは里を出てた頃に・・・」

「里を出てた頃に知った。ですか?そうですね、それなら普通の人なら通せるでしょう。でも私はあなたの性格を少なからず普通の人より知っています。今回は私が冒険者として初めての旅です。普段のあなたなら行き先は私に決めさせるはずなのです。でも、今回は提案をして来ました。先にも言いましたようにあなたにはここの知識が全くと言っていいほどないのですよ。それならば他に場所があると考えるはずです。答えてください、アクセルにあなたは何を・・・」

「め、めぐみん!それくらいしときなさいよ。その言い方じゃまるでお兄ちゃんを疑ってるみたいよ?」

 

雲行きが怪しくなって来たと思ったのかゆんゆんが止めに入って来た。

そのことを察したのか、

 

「そ、そうですね。すみません、最近のしょうたが神妙な面持ちをしてたので少し心配だったのです。」

「そんな俺の顔変だったか?」

 

自分の顔をさわりすこし頬を引っ張てみる。

少し頬の筋肉が少し強張っていた。気づかないうち力んでいたみたいだ。

 

「きっとあれだな。これから爆弾魔みたいなやつと一緒にパーティー組むからかな。」

「だ、誰が爆弾魔ですか!誰が!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・」

「ご主人様?自分の腕なんか眺めてどうしたんですか?」

 

俺達はいったん本部に戻ったのち出発の準備をしていたら、折角だからともう一泊していけとゼスタに言われ、各々部屋に戻ていた。俺は昨日の朝に感じた体の違和感が気になり、少し腕を眺めていた。

 

「いや、雪那。俺の腕見てどう思う?」

「・・・す、凄く、大きいです・・・」

雪那は顔を俯かせ、赤面させながら、目だけがこちらをうかがっていた。

「うん、ネタは良いとして。前と比べて少し細くなってないか?」

 

前に比べると二回り小さくなっているようにも見えなくもない。

 

「筋力ステータスは見てみたんですか?」

「いや、そういえば見てないな。最後に見たのは・・・セイクリッド・スペルブレイクの時か。でもあの時ってスキル欄しか見てなかったからな。」

 

そう言いながらポケットから冒険者カードを取り出す。触り慣れたカードの質感。取り出したカードには見たことのある数字が並んでいた。その数字を見た瞬間声が出なくなっていた。

 

「・・・・・」

「珍しいですね、ご主人様がそんな間抜け顔するなんて。何を見たんですか?筋力デバフみたいのが掛かってましたか?・・・っ!?」

 

雪那は俺の冒険者カードを覗くなり、声ならぬ声が出た。

 

「「れ、レベルが初期値になってる・・・!?」」

 

声をそろえた同時に、骨にズシンと響く振動が響き渡る。正体は見なくても分かる。

 

「これは一体どういう事なんでしょうか?」

「振動のことじゃなくてレベルのことだよな?さっぱりわからない。身に覚えが・・・あ、あるわ。」

 

一つだけ、この現象が起きる起因がある。それは・・・

 

「ポーションだな。ひょいざぶろーさんから貰ったスキルアップポーションだな。」

 

あの人の作った魔道具で副作用がなかったのは少しおかしいと思ったんだ。これではっきりした。あの薬の副作用はレベルの初期化。それをわざとなのかそれとも偶然の副産物なのか。ほんとひょいざぶろーさんすげぇわ。

 

「あまり落ち込まないんですね。レベル上げ直しが始まるのに。」

「逆に考えるんだよ。またレベリングが出来る。見たところスキルはそのまま残っているし・・・ある意味チートじゃね?」

 

再度レベリングが出来るならスキルポイントも再度獲得できるはずだ。

 

「でも、レベルが下がったてことはステータスが下がったわけで。そうなれば絶対的に魔力も下がって・・・」

「あ、そっか。魔法があまり打てなくなるな。体力も落ちてるんだろうし・・・て、なんでお前はそんな目を輝かせてるんだ?」

「え、だってご主人様魔法と兼用ばっかりで、私単体であんまり使ってくれないじゃないですか。」

「お前以外にも剣はあるんだけど?」

「あぅ・・・」

 

あからさまに落ち込む雪那。

 

「ほら、もう夜も更けるし、早く寝ようぜ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

朝。好意にも馬車代をアクシズ教から貰った上に送り届けてくれるという手厚い見送りをされている。

 

「あの、ほんとに馬車代良かったのか?」

「ええ、あなた方には大変お世話になったのでこれくらいのお礼をさせてください。」

 

確かに迷惑はかけられたがそれなりに楽しかったわけで・・・

 

「しかし、めぐみんさんが爆裂魔法の使い手だったとは思いもよりませんでしたよ。あれだけ広いお風呂なら教会内の全員で入れますよ。」

「混浴にはしませんよゼスタ様。」

「混浴というのはですね互いの絆を深めるものでして・・・」

「混浴にはしませんよゼスタ様。」

 

ぶれないな・・・てかやっぱり昨日の振動はめぐみんの仕業か。

 

「んじゃ、俺たちはもう行くな。元気で。」

 

めぐみん達を馬車に乗せ、俺も遅れて乗ろうとすると、セシリーが名残惜しそうに近づいてき、

 

「ほんとは私も一緒についていきたいんだけど」

「来なくていいです。」

「・・・ついていきたいけど、本部を離れるわけにはいかないから。」

 

といってずっしりと重い袋を渡してくる。普通の人ならここで餞別なんだろうけど、この人アクシズ教徒だからなぁ。

 

「コレイラナイデス。」

「いいのいいの。若い子が遠慮なんかするものじゃないわよ。」

「イヤイイデス。」

 

袋を押し返し、そのまま馬車の扉をしめた。

 

「アクセル行きの便出航しまーす!」

 

俺達はアクセルへと一歩足を伸ばした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

馬車に乗るのはこれが二回目か。相変わらず眠くなる乗り物だな。

アルカンレティアかえあ二時間ぐらいだろうか。馬車に揺られながらゆんゆんとめぐみんが何やら騒いでるのをしり目に睡魔を迎え入れようとするが。

 

「お前ら少しは静かにしてくれ。他の人に迷惑かけるだろ。」

 

馬車の席は向かい合わせで、向かいには五、六歳の子とめぐみん達より二つ上くらいの子の女の子と、彼女らの母親らしき人が微笑みながらめぐみん達を見て座っていた。少女らはお揃いの栗色の髪の毛と茶色い瞳が姉妹だと言うことを物語って居た。馬車内にいる乗客のほとんどの視線が俺達へと集まって居た。

 

「ふふ、お嬢さんたち。随分と仲良しねぇ。」

「え、あ、いや・・・」

 

ゆんゆんは恥ずかしくなったのかその場に縮こまってしまった。

そろそろ対人耐性を付けてほしいものだ。饒舌とは言わないが、問題にならない程度に。

 

「お嬢ちゃんたちこれ食べる?」

 

と婦人の隣に座っていた女の子が差し出してくれたのは焼き菓子だった。こんがり焼けた表面、これはなかなかの・・・

 

「すいませ・・・」

「いただきます。」

「おい。」

 

すぐさま手を出そうとするめぐみんの頭に手刀を落とす。

 

「あぅ!?」

「もらう前にお礼を言え。すぐさま手を出すな。」

「だ、だからと言って・・・」

 

頭を押さえながら涙目で訴えかけてくる。

力はそんなに入れてないはずだが、打ち所が悪かったのか?

 

「ほら、貰うんだったらお礼を言ってから貰えよ。」

「うう、ありがとうございます。」

 

めぐみんは涙目ながらにもお礼を言って、焼き菓子を受け取る。

 

「そっちの子もどうぞ。」

「す、すいません。ありがとうございます・・・」

 

ゆんゆんが赤面しながら焼き菓子を受け取る。

うん、ほほえましい光景を見た。

 

「はい、貴方にもどうぞ。」

 

女の子は俺にも焼き菓子を差し出してくれた。

 

「ああ、ありがとう。これは君が焼いたものなのか?」

「は、はい。お口に合えばいいんですけど・・・」

「心配はいらない。こっちが合わせに行くよ。」

「しょうた?あなたホント懲りてないですね?」

「全くそろそろ学習ってもんを知ってよね。」

「そろそろマジでお前ら何のこと言ってんのかな?」

 

そう言いながら焼き菓子をかじった。

・・・え、美味しい。

 

「あなた達アクセルに向かっているということはアクセルの冒険者かしら?」

 

この目線は、俺に聞いてるのか。そりゃ年長者に見えるかもしれんが・・・

俺はひとかけら焼き菓子を割りめぐみんの膝の上で丸くなっているちょむすけにやりながら、

 

「いや、こいつらはこの間里を出たばっかで冒険者になろうとアクセルを目指してるんですよ。」

「私たちはともかくしょうたに関しては冒険者経験ありですからね。」

「うん、まぁそうなんだけど・・・これでも見てくれ。」

 

俺はポケットから冒険者カードを取り出す。

そこにはやはり俺の初期値が乗っている。どうやら現実は変わらないようだ。その数値を見ためぐみん達は昨日雪那と同じような顔をしていた。

 

「え、あれ?お兄ちゃんレベルって・・・」

「おう、初期値に戻った。原因は多分ひょいざぶろーさんのスキルアップポーションだろうな。」

「やっぱり副作用があったんじゃないですか!」

「大きい声を出さないでくれ・・・少し俺も反省してるんだからさ。」

 

俺に詰め寄ってくるめぐみんを抑えるように反省の色を表す。

それが分かったのか、ため息をこぼした落ち着く。

 

「ということはしょうたは今魔法がろくに使えない戦力外ということですか?」

「戦力外は少しひどくないか・・・」

「だ、大丈夫よ。お兄ちゃんけ、剣技があるし・・・そ、それにもし危なくなったら私が守るから!」

 

ゆんゆんよ。その言葉は俺が言うべきであってお前が言う言葉じゃないし、それに目をそらしながら言われても説得力が・・・

 

「お嬢さんたちのその瞳は紅魔族かしら。さっきそちらのお嬢さんがお兄ちゃんと慕っていたのだけど、貴方も紅魔族なの?」

「あ、まぁそんなもんです。一応目ももほら。」

 

と言って目を紅く染める。

ステータスが落ちているので稼働時間が短くなっているが、訓練のおかげかある程度までしか弱体化していないようだ。

その会話を聞いていた、馬車内の乗客達は途端に騒ぎだす。

 

「紅魔族」?紅魔族が乗り合わせているのか!?」

「しかも三人ともか!?今回の旅は俺たちの出番はなさそうだな。」

「そもそもこんな大所帯の商隊を襲うモンスターなんて滅多にいないさ。」

 

そんなににフラグを立てないでくれ・・・

あと俺達は普通にお金を払ってるんだからあまり戦闘には参加したくはないんだけどな。

 

「ご安心を、この私は紅魔族随一の天才アークウィザードですからどんなモンスターでも屠って見せましょう!」

 

 

と大口をたたいている大馬鹿がいるが後で後悔しそうなのでフォロー入れとくか・・・

 

「馬鹿、お前は最後の切り札なんだからそうやすやすと魔法を使ってもらわれたら困る、。出来るだけ温存しとけ。」

「ふっふっふ。確かに我が魔法は大地すらも砕く・・・」

 

なんかよくわからない事を言っているがこれで戦闘には積極的には参加しないだろう。

 

「ということは紅魔族は戦闘に参加しないって事か?」

 

すこし不穏な顔をしながらこっちを見てくる。

そりゃ上級職についてるのに参加しないのは確かに不満はあるだろうな。

 

「んじゃ、ゆんゆんがメインで戦ってくれるか?俺はそのな、この辺じゃ多分ワンパンやと思うんよ。」

「お兄ちゃんそれ何語?でも、まぁお兄ちゃんが私を頼ってくれるなら頑張る・・・」

 

照れながらも承諾するゆんゆんを見て乗り合わせている冒険者たちは、

 

「紅魔族が居れば百人力だぜ。」

 

となんやかんや盛り上がっているが、まぁ放っといていいか。

 

 

あれからさらに三時間が経過。今は馬を休ませるための昼休憩といったところだ。俺達は芝生に座りながら弁当を食べていた。

 

「ホントこの世界って平和だよな。魔王軍ってホントにいるのか?いやいるにはいるんだけど・・・」

「まぁここは王都から随分と離れていますからね。」

「でも油断はしちゃダメよ。モンスターに襲われないように警戒を・・・」

「大丈夫だゆんゆん。こんな大勢のとこに特攻してくるモンスターなんかいない・・・」

 

そこまで言うと地響きが聞こえていく。もう嫌な予感しかしない。

 

「モンスターが出たぞ!」

 

そんな冒険者の怒号が聞こえたとさ。

 

 

「もう!お兄ちゃんが変なこと言うからぁ!」

「うーん、最近の俺は調子が悪いのかな?」

「調子とかそういう問題じゃなくてっ!?」

「はぁ、もう分かったよ。お詫びとしてゆんゆん、お前に手柄をやろう。頑張って。」

「なんでお兄ちゃんの尻拭いをしないといけないの!?」

 

ゆんゆんは涙目になって訴えかけてくるが、やる気はあるようだ。

そもそもここにまともな戦闘が出来るやつってゆんゆんぐらいだしな。

 

「紅魔族の先生方!本来お客さんのあんたちに頼むのは道理じゃないんだが、どうにもモンスターの数が多すぎるんだ!助けてくれないか!?」

「先生!?しょうた、ゆんゆん聞きましたか!?先生方って呼ばれましたよ!?」

「お前喉の琴線に触れたんだそれは・・・それとお前の魔法は周りを巻き込むから駄目だ。それに、今の地響きからするとジャイアント・アースウォームだろうな。地中にもぐる巨大ミミズだ。地中にいる時点でめぐみんの戦力外通告なわけで、ゆんゆん、お前しかいないわ。」

 

さわやかな笑みで言うと、

 

「何がお前しかいないよ!ミミズなんていやよ!」

 

さっきからゆんゆんは涙目しかしないなぁ。いやこれが普通の反応なのか?

 

「大丈夫だって、作戦ぐらいあるって。いいか・・・」

 

・・・こうして俺はゆんゆんに作戦を伝えてゆんゆんの初デビュー戦を遠巻きに観戦するのであった。勿論めぐみんも連れて。

 

 

平原には今ゆんゆん一人だけが立っている。その姿は誰がどう見ても勇姿に見えているだろう。

まあ、実際には緊張と恐怖で震えているんだろうけど。

護衛の冒険者達には被害が出ないように避難させている。モンスターが潜んでいる平原に少女が一人という場面は誰もが肝を冷やすだろう。現に護衛の人たちも目を白黒させながらゆんゆんを見守っている。

 

「お、、紅魔族の兄ちゃん。ホントに大丈夫だろうな・・・」

「問題はないはずだ。」

 

淡々と答えるがそれでもまだ落ち着かないらしい。

地響きが徐々にゆんゆんを中心として近づいていく。近づいていくにつれ、四方八方土の表面が盛り上がっていく。もうゆんゆんの詠唱は終わっている。

 

「っ!『アース・シェイカー』!!」

 

ゆんゆんは地属性魔法を唱え、地面を振動させ、隆起させる。地面にもぐっていた大量のジャイアント・ウォームの群れが飛び跳ねるように出てき、地面でうねうねともがいている。

 

「っう・・・」

 

その光景に誰もが気味悪さを覚えるが、ゆんゆんはすぐさま魔法詠唱に取り掛かっていたのか、もう詠唱が終わりそうだった。

 

「あいつ、メンタル強くなったなぁ・・・」

「いや、今のゆんゆんはただ周りが見えてないのでは・・・」

 

ゆんゆんのワンドから魔方陣が浮かび、

 

「『インフェルノ』っ!!」

 

もがいているミミズの群れに業火が襲う。その業火は遠く離れている俺達にも熱風が届くほどのモノだった。爆裂魔法ほどではないが、俺からしたら十分な派手さだ。

 

「す、すげぇ、あの生命力が高いジャイアント・アースウォームを一網打尽に・・・」

「これが紅魔族の実力か。噂よりすごい・・・」

 

ゆんゆんはほっとしたかのようにこっちに走ってくる。その表情は安心と嬉しさが混じっている。

 

「やったわお兄ちゃん!」

「おう・・・」

 

正直素直に喜んでいるゆんゆんを見ると気恥ずかしくなるもんだ。これでゆんゆんも少しは自分に自信を持ってくれれば後が楽なはずだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「しかしこんな若い子がジャイアント・アーサーウォームを一人で屠るなんてな・・・」

「い、いえ、あれはお兄ちゃんの策があっただけなので・・・」

「お兄ちゃん?あぁ、あんたを一人であんなとこに置いた野郎か。そういえば野郎はどこ行ったんだ?」

 

その冒険者は少し言葉に怒りを交えていた。まあ、それが一般的な反応なんだろうな。俺でも流石に思うところはある。

そんな俺は今馬車から少し離れたところで寝っ転がっていた。

今回の旅。俺のレベルが初期化したって事は色々警戒しながら進まないとダメだよなあ。そもそも今日のジャイアント・アースウォームだっておかしい話だ。普通あのミミズは何な大群で移動なんかしないし、ゆんゆんを一人だけ狙うのもおかしい。俺だってあの時馬車の方にも来ると思ってたから馬車の方のお守りに回っただけであって・・・

 

「一人で悩み事かしら?死神さん?」

 

聞き覚えのある声が足元から聞こえてきた。相手に敵意は感じられないので、寝ながら相手をする。

 

「アーネスだっけか?何こんな時間に。夜這い?」

「ち、ちがっ!?じゃなくて、少し取り引きをしたくてね・・・」

 

月光がアーネスに注ぎ、瞳が怪しく光る。

 

「やだ断る。」

「即答!?いや、悪い話じゃない。私はただウォルバグ様を取り返したいだけだ。」

「だからと言って馬車にモンスターを引き合わせなくていいだろうに・・・」

「・・・いつから気がついていた?」

「モンスターの習性からしておかしいなぁとは思ってたんだけど、あんたが声を掛けてきた辺りで確信を持った。で、取り引きを断った俺にまだなんか用でも?」

 

顔を起こしアーネスに顔を向ける。視線があい、互いににらめ合う。

 

「引く気がないなら一つ俺の仮定を聞いてもらってもいいか?」

 

アーネスは目を閉じてその場に座り込む。その行動を肯定と受け取り、

 

「ちょむすけ、あー、そっちじゃウォルバグだっけか。あれって本体なのかなって思うんだよな。」

 

拍子が抜けたかのような表情をするアーネスに俺は続ける。

 

「俺はさ、ある程度の魔力が分かるんだ。あんたもめぐみんも、ゆんゆんのだって分かる。もちろんちょむすけのも。ちょむすけが邪神って言うならあれは低すぎだと思うんだ。神様のレベルは知らんけど少なくともアークウィザードよりは上なんだろ?つまり邪神様は完全体じゃないということにならないか?」

 

アーネスはそのまま黙っている。

 

「俺達に構う前にもう片側を探した方がいいんじゃないか?」

「貴様の言い分は一理ある。しかしそれが貴様達から手を引くと言う理由にはならないはずだ。私を倒せるほどの力が・・・」

「爆裂魔法。」

「!?貴様、今なんて言った?」

 

目を見開いて声を荒げる。動揺しているように見えた。

 

「うちのバカが爆裂魔法を使える。どこで知ったのかは知らんけどな。その様子だと爆裂魔法は驚異みたいだな。あんまケンカ売らない方がいいぞ?」

 

起き上がり、体全体に力を入れる。それの呼応するかのように腰にささっている『雪那』と背中にある『死神』が煌る。刀身から魔力が溢れんばかりの量を感じ取れる。

 

「私とやり合うかか?」

 

額に浮かべてるのは脂汗だろうか。ツゥっと額から頰にかけて一筋流れる。

 

「そちらにやる気があるなら・・・」

 

二本に手を掛ける。その動作に意図はない。

 

「っ。分かった。今日のところは引いてや・・・」

「ごっしゅじんさまー!あっちの方でジャイアントバットがわらわらしてたので掃除してきましたー!」

 

雪那が笑顔で駆け寄ってくる。その笑顔は誰もが見惚れる笑顔だった。そう、返り血さえ無ければ・・・

 

「・・・お、おつかれ。あ、アーネス?せっかく用意してくれたコウモリなんだけど・・・」

「き、気にしないでくれ・・・」

 

顔を引きつりながら暗闇へと消えていった。

魔物をここまで引き連れるのには苦労したろうに。

 

「ところでだ。雪那よ。いつのまにお前は刀身を残したまま擬人化出来るようになったんだ?」

「いやぁ、それは最初から出来ましたよ?ただやる必要がなかったからやらなかっただけです。そもそも私が抜けた方などなんてご主人様に反応するだけの道具ですから。」

 

なんというカミングアウト。

確かに使わない能力かもしれないけど、そういうことは早くいって欲しかった。

 

「この能力デメリットの方が多いですからね。無駄に魔力使いますし、その上実力の5割強ほどしかでない・・・ほんと欠陥・・・こほん。ほんと人数が増やせる便利な能力。」

 

こいつ今自分で欠陥品って言いそうになかったか?

えへへと笑ってる雪那を見ていると何も言えなくなるなホント。

いつのまにか腰の『雪那』が消えていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

小刻みの馬車の揺れが眠気を誘う。

車内では相変わらずゆんゆんが英雄扱いだった。それにどう反応していいか分からないのか、俺の方を向いて助けを求めてる。

獅子も子を谷底に落とすって言ってるし、放っておこう。

そのまま流れるように瞼を閉じて・・・

 

「お兄ちゃんは戦えないの?」

 

向かい側の席に座っている幼女が問いかけてくる。

純真で聞いてきているのだろうが、母親は失礼だと思い口を塞いでいた。

 

「こら、そんなこと聞くものじゃないでしょ?ごめんなさいね、失礼なこと聞いちゃって・・・」

「いえいえ、気にしないでください。そうだなぁ、お兄ちゃんが戦わないのは二つ理由があるんだ。まず、あのお姉ちゃんに自信を持たせてあげたい。」

 

俺はちやほやされているゆんゆんの方を指をさした。

 

「そのお姉ちゃんは?」

 

女の子は横で寝ているめぐみんを指差す。

 

「このお姉ちゃんは自信に溢れてるから必要なし。そもそもこのお姉ちゃんは最終手段だしな。」

 

気持ちよさそうに眠るめぐみんに髪が目にかかっているのでそれを払うように髪に触れる。

 

「そ、それで、あと一つは?」

 

と、もう一人興味津々で姉の方が聞いてくる。

 

「興味ある?て言っても大したことじゃないけど。ほら、俺レベル1だからさ。戦うにも足手まといになるんだよ。」

 

冒険者カードを少女に渡し確認させた。少女は項目欄に目を通しているが、いまいちピンと来てないらしい。

 

「簡単言ったらあのお姉ちゃんと、このお姉ちゃんよりも弱いってこと。」

 

情けない笑みを浮かべる。

しかし、レベル1になろうがこいつらだけは無事でいさせる気持ちは変わっていない。

 

「ゴブリンの群れだ!!」

 

一人の冒険者が叫ぶと、それを聞いた冒険者達はすぐさま戦闘準備をして外に出て行く。

ゴブリンくらいならなんとかなるか?

俺は『雪那』を手に取り、馬車の外へ。そこで目にしたのは、数十、いや、100以上のゴブリンだった。

 

「なんだよこの数・・・」

「・・・ゴブリンってのは10体位で群れるのが普通だろ・・・」

 

さすがの俺も光景には開いた口が塞がらない。まばらにいるため魔法攻撃でも一網打尽には出来ない。となると・・・

 

「ゆんゆん、ごめんな。」

「別に謝ることじゃないじゃない。それに、お兄ちゃんはゴブリンを1箇所にまとめてくれるんでしょ?」

「ちょっくら行ってくる。『バーストモード』・・・」

 

文字通り目の色を変えた俺はゴブリンの群に突っ込んでいく。




皆さんお久しぶりです。
えっと、忘れてたわけじゃないですよ?少し時間が取れなかっただけです。
はい、ということで今回は…なんの話してたっけ。とりあえずアクセルに向かってるということは分かったんですけど…
あ!そうそうショウタのレベルが初期値に戻ったことぐらいですかね!
多分それがメインのお話だった気もしなくもなきにしもあらずです。
ということで大変遅くなりましたが読んで下さりありがとうございます!次回もまた呼んでくれると嬉しいです!


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