仮面ライダースロットル〜転移ノ章〜 (菊川 数時)
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失われた英雄

久しぶりです。少々スランプというかオリジナル作品の方の執筆でこちらの方に顔を出すことができませんでした。すいません、許してください。何でもしますから(何でもするとは、行ってない)


 地獄を歩いた。地獄に嘆く人を見た。手を伸ばし助けを求める人を見た。

 

 全てを見捨てて、『生きている』

耳を塞ぎながら誰かの助けを求めても真っ赤な世界を、歩き続ける。

 

 空を見上げると漆黒の太陽が、『死』を吐き続けていた。  

 

 ただ純粋な絶望が街を、命を、願いを、星を。

 真っ黒な泥が飲み込んでいた。

 

 幼い自分は瓦礫の中を歩き続きるのは無理があった。こと切れた人形の様に地面に倒れる。

 

 命が、魂が少しずつ蝕まれていくのがなんとなくだがわかっていた。 

 

 

 

   死は近い。

 

 

 死神が嗤った。

 

 

 

『良かった、良かった。生きてた、生きていてくれた!!』

 

 そんな自分を瓦礫の中から見つけ出してくれた『人』(ヒーロー)がいた。その人はおれを大事なもの見つけた子供のように優しく力強く抱きかかえてくれた。

 

『ありがとう、ありがとう。』

 

 その人は泣きながら俺に感謝していた。なんでた助けてくれたのはアンタなのになんでアンタが感謝してるんだ?

 

 その人はただ泣きながら感謝をしていたのだ。

 

そのあり方に、その思いに、俺は………。

 

 

 『憧れ』を抱いていた。

 

 

 

 

 

 そんな俺の希望を嘲笑うように真っ黒の太陽が俺ら目掛けて死の泥を吐いてきた。それに気づいたその人は俺をその泥から守るように抱きしめた。

 

 その人の肩から見える迫る来る死は頼もしいこの人の背中を容易く打ち砕くのが直感で分かった。

 

 だからまた、祈った。

 

 物語のような御都合主義の塊

 

 そう『ヒーロー』の登場を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それは叶った。

 

 

 

 

 

 

『Slot Charge』

 

 瞬間、七色の閃光が世界を叩き切った。

 

 その一閃は泥を吹き飛ばしたのにとどまらず、真っ黒な太陽さえも消滅させた。

 

 衝撃は程々な領域であったが、周囲の煙や炎を掻き消した。一瞬にして街はいつも通りの夜の帳を取り戻していた。

 

 そんなだからか、星が点々輝いている夜空に負けないようにその人は立っていた。

 

 黄金のライダースーツに走るように引かれる白銀の装飾。首には真っ赤なマフラー、振り向いて見せてくれた七色の複眼を持ったバッタのような仮面。

 

 俺は……………。

 

 

 

 

 

 

 

『ヒーロー?』

 

『…………違う、【仮面ライダー】だ』

 

その日俺は、《運命》に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜を通り過ぎたあと、俺は切嗣の爺さんの元に転がってきた。あの夜を超えて人々は復興へと踏み出していた、その中にあのRIDERがいた。

 

 最初、俺が誰なのかわからなかったようで少し困惑したように頭を掻くのをよく覚えていた。俺もどう説明したものか分からず二人であたふたしていると爺さんが助けに来てくれた。

 

『爺さん、この人だよ。俺たちを泥から助けてくれた人!』

 

『士郎………、それは本当かい?この人なのかい、そのRIDERって人は?』

 

『ちょっと待てよ、疑問がいくつかある。なんでお前仮面を付けてた奴が俺だって言い切れるんだ?それに…』

 

 

 二人の質問合戦が俺を止めどなく襲いかかる、だってあの時の光が、厳密にはベルトだけどこの人の懐から光が、溢れ出てるんだよって答えたら苦笑いされた。どうして?

 

 

 でもそれをきっかけに兄さん、九条誠一とのくらしが始まったんだ

 

 

 

 

 

 





裏話

『君がどういう存在で、どうしてその力を行使するかなんて興味ない。』

『だったら夜中に呼び出して、背後から銃を突きつけてんじゃねぇよ切嗣』

『…………ハハ、君の言動には興味はないけど。それは信用しているって訳ではないからね。用心だよ、用心』


『…………士郎のことか?』

『分かっているようで話が早い、あの子の特異性は正直言って危うい。あの子の力が教会の奴らに知られたら間違いなくホルマリン漬け待ったなしだ。』

『それで?俺にその教会をぶっ潰して来いってことか?』

『そういう事じゃない、士郎の事を頼みたいんだ』

『…………、てめぇがやればいいじゃないか?人に押し付けんな』

『……、僕はもうそろそろ死ぬ。』

『…………泥か』

『多分もう長くない、士郎にまだ魔術のまの字も教えられていない事とか色々と心残りがあるけど、でももう僕は死ぬんだ』

『ふざけやがって、あいつはもう家族はいねぇんだぞ!!お前が死んだあとアイツは誰に頼るんだ!!』

『それを!……………それを、君に託したいんだよ。』

『………俺には決着の付けなくてはならないことがある。ずっと士郎の世話は出来ない。』

『それでもいい、少しの間だけでもいい。一緒にいてあげて欲しいんだ』

『…………アイツはお前の後ろを追っている、あの時お前が士郎を助けたお前を理想にしている。その代わりを俺にしろっていうのか?』

『フッ、よく言うよ。君こそ"その力"にあの子は理想を抱いている、僕もこう思うくらいだよ。あれこそ全てを救済する力だって。』

『………、俺たちって、駄目な大人だな。ガキに力でなす救済は本物だって思わせちまった。』

『あぁ……、ほんとに最低だよ。正義も希望も。』


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第零廻

処女作です、平行して【憑依の章】も書きます


 第零廻

 

 荒野に一人、青年が立ち尽くしていた。

 

 青年の足元には数多の異形のモノ達が転がっていた。

 

 青年はただ、それを無機質な眼で眺めていた。

 

 彼の世界に十七の世界の化け物が侵略してきた

 

 《グロンギ》

 

 《アンノウン》

 

 《ミラーモンスター》

 

 《オルフェノク》

 

 《アンデット》

 

 《魔化魍》

 

 《ワーム》

 

 《イマジン》

 

 《ファンガイア》

 

 《大ショッカー》

 

 《ドーパント》

 

 《グリード》

 

 《ゾディアーツ》

 

 《ファントム》

 

 《インベス》

 

 《ロイミュード》

 

 《眼魔》

 

 《バクスター》

 

 その全ての敵が現れ、人類は蹂躙されかけた。

 

 そこに十八の世界に存在する【仮面ライダー】と呼ばれる戦士の力を携えた青年

 

 九条誠一(くじょうせいいち)が現れた。

 

 しかし、

 

 

 

 

 

 彼は間に合わなかった・・・・。

 

彼は自身を憎んだ

 

彼の記憶には数々の【仮面ライダー】達の激闘の記憶が巡る

 

彼らは激しい戦いの末に全てを救っていった、しかし自分はそれができなかった

 

「・・・やっぱり、俺はニセモノってことか」

 

少年の嗚咽が荒野に虚しく響き渡る

 

 

「・・・もう・・・疲れたや」

 

 そう呟くと彼は意識を闇へと沈める。

 

 そして世界から青年が消えた・・・・。

 

 

 

 彼は番外だと、世界の破壊者は笑う。

 

 

 

 

 

九条誠一が目を覚ましたのは燃え盛る街の中だった

 

彼は困惑した、自身は荒野の上で倒れたはずだ。

 

それ以前に自分の世界には人類が残したありとあらゆる物は全て消滅したはずだった

 

「・・・時間を遡ったのか?」

 

それは可能なことだった、彼が持ちうる【仮面ライダー】の力の一つを使えばできることだった

 

「でも、俺が最後に“当てた”のは【鎧武】だからなぁ〜」

 

ポケットから小刀が付いた黒いバックル【戦国ドライバー】を取り出す

 

その時だった。

 

『キャーーー!』

 

遠くから女性の叫び声

 

それを聞いた九条は街を駆けていた

 

 

 

 

 

星の海の上、一人の少女は足で星を弄ぶ

 

「・・・たどり着いたかなぁ〜?」

 

「・・・お前が『■■』か・・・」

 

少女が振り返るとそこにはマゼンダ色の二眼レフカメラを首にぶら下げた青年が居た

 

「あぁ、『世界の破壊者』か・・・どうだい、最近の旅は退屈してないかい?」

 

嘲笑う表情の彼女が気に入らないのか青年は顔を顰める

 

「なんで、奴を解放してやらない」

 

「分かってることを言わないでくれたまえよ、門矢 士くん?」

 

「・・・捻くれた愛はお前も滅ぼすぞ」

 

「いいんだ、もう狂ってるから」

 

■■の狂った笑い声が星の海に響き渡る。

 

「・・・しかしアイツは腐っても『仮面ライダー』だ」

 

それでも士は皮肉に染まった笑顔を返す

 

 

 

 

 

彼が訪れたのは一つの演目。

 

その名は・・・

 

特異点F 炎上汚染都市 冬木

 

 

 

 

 

運命は廻り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




批判、感想お待ちしております。次は二週間後くらいかなぁ〜


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斯く云え彼らの禁断の立証が始まる。
第一廻 激動


久しぶりだね、うん、ゴメンネ。遅くなって………
うん。


私、藤丸立香は平凡な女子高校生である。

 

 学校の成績は平均のちょっと上くらい、友人関係はあまり多い方ではないが親友と言える存在は居る。家族構成も両親と私だけという平凡的な一世帯である………

 

 しかし、その私には『夢』と言える物は無かった。

 

 なにも変わらない日常、段々と過ぎていく時間。無性に『抜け出したい』と思っていた。そして私の元に転機が訪れた。

 

『…………藤丸立香。はじめまして、だな』

 

 そこに立っていた。夕焼けが昇り空に星空を魅せる誰も知らない場所で、彼に出会った。

 

『………あなたは?』

 

『それは後で、教えてやる。今はもっと大切な話をしよう』

 

彼は草原に腰を掛け、私に隣に座るように催促していた。断る理由が無いので彼の隣に座る。

 

『……………なあ、お前って【夢】はあるか?』

 

唐突に彼が聞いてきた。

 

『…………………ない、かな』

 

苦笑を浮かべている自分は彼にどう写ったのだろうか、彼は私の瞳をじっと見つめていた。

 

『そうか、……実はさ俺も無いんだわ、【夢】。』

 

驚いた、彼にそれが無いってのはありえないそう思っていたからだ……………でもなんで私はそう思っていたのだろうか?

 

『なんでだろうな、夢は昔あったんだ。でも何かの拍子で壊れたんだ』

 

彼の表情には哀しみが感じられた、それでも彼は笑っている。ーーーなんで、なんで?あなたはいつも無茶して傷ついている、それなのになんで『笑って前に進める』の?

 

『…………難しいことじゃ無いんだわ、これが。俺はただ単に俺を支えてくれた《仲間》がいただけなんだ、だから怖くない、だから笑える。大切なのは《自分の道》を信じるだけなんだ』

 

 彼はそんな風に穏やかな笑顔で私を見つめた。彼の瞳は真っ直ぐに私だけを見ていた。どれだけの時間が流れたかは分からない、彼は一息付けて立ち上がった。

 

『お前は、お前の信じる道を行け………立香。』

 

『待って!?行かないで!!』

 

 彼の身体が段々と薄くなって消えかけている、手を伸ばせば届く距離なのに身体がその場に固定されたかのように動けない。

 

『カルデア、そこにお前の進むべき道がある。けど気をつけろ、お前が進む道は茨の道。ずっと戦い続けるだろう』

 

『待って、私を置いて行かないで!!■■!!』

 

『それでも、お前は戦い、勝利しなきゃならない。でも大丈夫。お前は諦めずに誰かの為に戦うやつだからな』

 

彼は今にも消えそうなのに未だに笑顔を耐えさない、駄目なの、私は、貴方を、まだ知らない!!

 

『ん?俺が誰かって?』

 

彼は私の様子から私の意図に察したようだ。彼は私に向かって、何かを差し出した。

 

「ーーー通りすがりの仮面ライダーだ、よーく覚えておけよ!!」

 

そこで私は目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

○○○○♤○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、私はそんな事を思い出したのだろうか。なんでこんな燃え盛る街に立っているのだろうか?

 

 

 人類史の観測・保持を使命とする『人理継続保障機関』、カルデア。

2015年、何の前触れもなく観測されていた未来領域が消失。計算の結果、人類は2016年で絶滅する事が判明―――いや、証明されてしまう。

 

 そこで集めたのがサーバントを使役するマスター資格を持ち、特異点へレイシフトできる四十八人のマスター候補生達、その中に藤丸立香はいた。

 

 彼女は「素質」だけの素人だったが、数合わせの一般公募によってカルデアにやって来た。

 

 初日にして所長オルガマリー·アニムスフィアの演説中に居眠りしてしまって、ファストミッションから外されてしまった。

 

しかし、そこが運命の分け目であった………

 

 レイシフトの実験中に原因不明の爆発事故が起きる。立香は自分の事を先輩と呼ぶ、少女マシュのことが頭を過る。彼女を探しに燃え盛る炎と瓦礫を乗り越えて、そして見つけたーーーいや、遅かった。彼女の身体半分は瓦礫に埋まって、血の湖の上に横たわっていた。

 

ーーーあれは、もう助からない。

 

 直感的にそれを理解した。立香は運命を恨んだ、この少女は青空も見たことも無いのに死んでしまうことが立香には許せなかった、でもそれと同時に自分の無力感を叩きつけられた。だがら、少女の弱々しい手を握るしかできなかった。そして、次の瞬間光に呑まれた………

 

 目が醒めるとそこは燃え盛る街のど真ん中であった。そして、死んだと思っていた彼女マシュが巨大な縦を携えていた、とうやら『ナニカ』と契約して英霊の力を手に入れ《デミ·サーバント》になったらしい。

 

ーーー良かった、生きてた

 

安堵もした束の間、遠くに叫び声が聞こえた。助けに行かないと私たちは走り出した。そこにいたのは竜牙兵と呼ばれる魔物に襲われかけているオルガマリーだった。

 

 

●●●●✫●●●●

 

 

 

ーーー何故こんな、記憶が私の頭の中を行き交うのだろうか?

 

藤丸立香の世界にはあまりにもスローな時間が流れていた。眼前に迫る鋼の刃が自身の首元に伸びている、横目で見ると必死な形相で手をこちらに伸ばすマシュの姿。

 

ーーーあ、いまのが走馬灯って奴か……………

 

理解は早かった、後ろに迫るサーバントに気付かなかった自分の落ち度をただ嘲笑った。諦める事しかできなかった。ここで都合よく誰かが助けてくれるわけがない、これで終わり、心残りはマシュが自分が死んでしまったことで泣いてしまうだろうということだけ。

 

『お前は、お前の信じた道を行け…………立香。』

 

 ………………それでも、助けて欲しいのだ。 

 

「たす、けて………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブゥゥゥゥゥンッ!!轟音と共に現れたのは一つのバイク《サクラハリケーン》だった。敵サーヴァントを吹き飛ばし、それは私達の前に舞い降りた。

 

「な、バイクッ!?」

 

私の後ろで所長が驚いた声で叫んだ。それは私も同じであった。でも、私は彼を知っている。

 

「………………おい、お前らか?この街を壊したのは」

 

 バイクから一人の青年が飛び降り、青年は先程の吹き飛ばした長椀のサーヴァントを睨みつける。

 

「…………ダトシタラ、ドウスル」

 

「………………………ぶっ潰す!!」

 

 青年は黒いバックルを腰の真ん中に当てる、バックルはベルトとして自動的に腰に巻きつけられた。そして、右手にオレンジの形を模した錠前を構えた。

 

「変身ッ!!」

 

《オレンジ!!》

 

 謎の電子音が鳴り響くと共に青年の頭上から空間が裂け、オレンジの鉄鋼物が現れる。青年はベルトに錠前をロックオンする。

 

《ロックオン!!》

 

 それと同時に辺りに法螺貝の壮大な音楽が鳴り響き、そしてベルトに付属されている小刀を下に振り下ろす。

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジアームズ!花道オンステージ!!》

 

次の瞬間、オレンジの鉄鋼物がライダースーツの頭部にオレンジ色の果汁を撒き散らしながら収まり、花が開くように鎧が展開されていく。

 

かの戦国武将をモチーフとした仮面のフルーツ鎧武者。

 

ーーーその名は!!

 

《仮面ライダー鎧武·オレンジアームズ》

 

「こっからは、俺のステージだッ!!」

 

今、カチドキが鳴り響く…………………!!

 




次回、鎧武。
運命は廻り始めた………。


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第二廻 鎧武

現在、九条が所有する《ロックシード》は以下の通りになっています。

オレンジ、パイン、イチゴ、スイカ、レモンエナジー、ピーチエナジー、チェリーエナジー、カチドキ、極。


九条誠一は知っていた。

 

この眼前に立ち塞がる敵を何となく理解していた、斯く言う彼もそれに『近い』存在であるからだ。

 

 この街の悲惨な状況に彼の中の一種のジレンマが呼び起こされた、それによりとても腹立たしく感じた。愛用のバイク《サクラハリケーン》で駆けるその街の光景が懐かしく思えてしまった。

 

ーーームカつく。

 

 彼は激昂していたが、しかし頭の中ではとても冷静沈着であった。彼が最初に考えたのは敵の『解析』だった、彼が戦闘において最も重要だと考えているのは敵の『存在解明』だと思っている。九条が存在していた『世界』では多種多様な化物、即ち怪人と一日中戦っていたのが嫌な記憶だ。

 

 しかし、運が良かった。と九条は安堵した

 

 何しろ今戦っている敵は初めての相手だ、相手がどんな戦い方をしてくるか分かったものじゃない。だからそんな状況にも即座に対応できる《鎧武》の力が今回の週で引き当てたのは、幸運と言ってもいいだろう。

 

 すると無意識(●●●)に戦わせていた現実の自分がアームズウェポンの《大橙丸》で長椀の男を上から下へと切り裂いた。

 

「危ないッ!!」

 

 盾を持った女が叫ぶ、知ってる後ろから襲おうとしてる奴のことだろ?すでに認識済みだ。九条の行動は早かった。左腰に装備されている《無双セイバー》を引き抜き、それを自身の脇を通るように後方に突き出す。硬い肉の感触、確実に当たった事を確認し、背後に居た長身の半裸の男を長椀の男の方に蹴り飛ばす。

 

ーーー決めるか

 

 想定はできた、後はさっさと終わらせるだけだ。九条はオレンジの刀身の小刀《大橙丸》と《無双セイバー》を合体させ、《無双薙刀》に変化する。そしてベルトにロックオンさせていたオレンジロックシードをオープンした状態のまま取り外し、そのまま《無双ナギナタ》に取り付ける

 

《イチ、ジュウ、ヒャク、セン………》

 

 電子音がカウントダウンを始めた、『大橙丸』にオレンジ色のエネルギーが注がれるのがわかる。男たちは本能的に何か危機を察したのか撤退をしょうとする。しかしそれを簡単に逃がすわけには行かない。

 

 九条はナギナタの《無双セイバー》からオレンジのエネルギー体を吹き飛ばす。それに捕らえられた男たちはなんとか抜け出そうと足掻くがそれは無意味になる。

 

《オレンジチャージ!!》

 

「そりゃあッ!!輪切りにしてやるぜッ!!」

 

 《大橙丸》にパワーが充填された、それと同時に九条は男たちの元に走り出した。そしてオレンジのエネルギー体ごと男たちを……

 

 斬ッ!!斬ッ!!と切り伏せた。

 

次の瞬間、男たちは光の粒子と成り、空へと還っていった。

 

 

「…………さて、色々と話してもらおうか」

 

そう言って彼女らの方へと向き直った。

 

●●●⬛●●●

 

 

『………現在、カルデアは機能の八割を失っています。残されたスタッフだけでは出来る事が限られています。なので、こちらの判断で人材はレイシフトの修理、カルデアス、シバの現状維持に割いています』

 

ドクターロマニが虎視眈々に言う、それを真剣な表情でオルガマリー所長が聞きやる

 

『外部との通信が回復次第、補給を要請し、カルデア全体の立て直し………と言った所でしょうか』

 

「結構よ。わたしがそちらにいたとしても同じ方針にしたでしょう………………はぁ。ロマニ·アーキマン、納得いかないけど、私が戻るまでカルデアを任せます。私たちはこのままこの街…………特異点Fの調査を続けます」

 

『ウェ!?所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンの癖に!?』

 

「…………ほんっとうに、一言多いわね貴方。帰りたいのは山々だけどレイシフトの修理、時間がかかるんでしょ?それにこの街にいるのは低級の魔物と言うのは分かったし、デミ·サーヴァント化したマシュがいれば安全よ……………それに、ね」

 

所長が横目で彼を見やる、彼はバイクに寄っかかってこちらを見ていた。

 

「………ねぇ、アンタ名前なんて言うのよ?」

 

「……………九条、誠一。」

 

「と、言うことでこの九条誠一も協力するからなにも問題ないわ」

 

 所長が誠一なる青年を指を指し、ロマンに告げる。ロマンは一瞬呆気に取られたが、すぐさま驚きの表情に変える。

 

『しょ、所長!?なにを考えているですか、彼は現地の一般人ですよね!?魔術の魔の字を知らない子を戦力としていれるのですか!?』

 

「それに関しては問題ないわ、彼は魔術を一切使わずサーヴァント二体相手に圧倒し撃退したわ。戦力としては申し分ないはずよ」

 

『………彼、実はサーヴァントなんじゃないんですか?生身の状態でしかもサーヴァント二体を倒したなんて、並の魔術師には真似できませんよ』

 

「…………俺はその《サーヴァント》って奴じゃないし、死んだ覚えもない、それに《偉業》を成したことも無いしな」

 

「…………にしては、身の丈の合わない《力》を使うわね?」

 

疑いの眼差しを向ける所長に、知るかといって誠一は身体の凝りをほぐすように背伸びをする。

 

「………ということで、藤丸立香、マシュ·キリエライト、九条誠一ら三名を特異点探索員と任命します。………あとのことは任せたわよ、ロマン。」

 

『あ、はいわかりました。ご健闘を願います……』

 

 その言葉をあとにロマンの声は途切れた、訝しげそうにため息を付き所長は誠一を睨みつけた。

 

「………………。取り敢えず、今のところはあなたは力を貸してくれる『協力者』として扱うけど、その後は……………覚悟はしときなさいよ」

 

「………………肝に銘じとくよ、所長さん。」

 

 険悪な空気があたりを凍りつかせた様に感じた、少しの間睨み合っていた二人に仲裁の仕様のない私達は何がなんだかよくわからなかった。そんな私達の事を察したのか所長さんがこちらに来るように手招きする。

 

「あの、なんでしょうか所長……」

 

「いいから、黙って聞いて二人共。」

 

 真剣な声音で囁く様に耳元で話し始めた、少し混乱したがすぐさま私は聞き入り込んだ。チラチラと誠一の様子を観ている、誠一は辺りを見渡しているようだ。

 

「…………イイ、二人共。アイツはあんまり信用しないで」

 

「え、どうしてですか所長。彼は先輩の命の恩人ですよ」

 

「………よく考えて、マシュ。カルデアが人為的な破壊工作によって、現在の機能の八割が停止されていること、そして未だにその犯人は分からない、そこに現れたアイツ。なにが何でも出来すぎよ。」

 

「で、でもあの人が犯人だと決めつけるはおかしいですよ。それ以前にあの人は、九条さんはカルデアにいなかったじゃないですか、それだったらどうやって九条さんが爆弾なんて仕掛けられるんですか!?」

 

「…………アイツが使っていた魔道具?みたいな物を使った時、空間が裂けて鎧が現れたわよね?」

 

 そういえば、なんか《オレンジ!!》とか言って頭上から鉄のミカンが出てきた。とてもシュールで少し呆気に取られたけど

 

「それが、どうしたのですか?」

 

「それが問題なのよ、アイツは一切魔力を使わず、空間移動の力を使った。それはつまりカルデアでも察知できないような未知の異能。それを使えば誰にも気づかれず破壊工作をすることはできるの……」

 

 未知の存在、それだけで誰かを疑うのだろうか。憤りが拳に集まる、たとえ彼がカルデアを襲った張本人だとしても私はどうしても、彼のひたむきな瞳の奥に燃える熱い思いが嘘だと思えない。

 

「おい、そろそら行くぞ。奴さんがぞろぞろとこっちに向かってきている」

 

 彼が指差す方向には先程の二倍はある大量の竜牙兵だった、流石にあの量は捌ききれないそう私達は判断し、その場から走り逃げ去った。私は、後ろから着いて来る彼を見やって何かを安心させようとした。

 

 

 

 

 

 

 




次回、協同
運命は廻り始めた………


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第三廻 協同

遅れてしまいました、申し訳ございません!!近日中には憑依の方も投稿します。駄文であると思いますが……。何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


 

 

「ハァハアハァ………どうやら、撒いたようね」

 

 竜牙兵達から逃走し続け、私達は海岸沿いの遊歩道へと辿り着いた。流石に長い距離走っていたので息が上がる、マシュの隣で私は地面に腰をつける。

 

「…………ほれ、早く立て。次が来ないっていう可能性は無いんだから」

 

………なんで、九条さんはあんなに走ったのにピンピンしているのだろうか。あれか、この人は元オリンピック選手なのだろうか?

 

「ハアハア…………、貴方は、…何故疲れてないんですか?」

 

「無駄に鍛えているからな」

 

「デミ·サーヴァントでもあるマシュの体力を超える程の鍛え方なんかあるかッ!?」

 

 ヒステリックに叫ぶ所長を知らん顔で九条さんは海岸の方へ振り向いた。息を整えるには数分もあまり掛からず、私達は再び特異点の探索を続行した。

 

「そういえば、九条さん」

 

「…………なんだ?」

 

 隣を歩く九条さんは訝しげな表情を見せていた。……それほど私と話したくないだろうか?

 

「………え、えっとですね。その、バイクはどうしたんですか、さっきの所に置いてきちゃいましたよね?」

 

 九条さんは首を傾げたがすぐさまに何かを納得した表情をした。するとポケットに手を突っ込み何かを探すように漁っていた。マシュがその様子を見て九条さんを睨みつけていた。

 

「これ、バイク。」

 

 簡単な二言、九条さんが私に突き出したのは大きな黒い錠前、中心には桜のシンボルが刻まれていた。冗談でしょ、疑いの視線で九条を見やるがその表情は至って真剣なものだった。

 

「……。それがあのバイクなんです、か?」

 

「冗談だと思うなら開けてやろうか、その時お前はバイクの下敷きになるがな」

 

 それには丁重にお断りした、しかしそういう技術力をこの人はどうやって手に入れたのだろうか……。ますます疑惑が深まる。そんな思いで話が進む中、息を整えたのか所長が九条さんとの距離を詰めた。

 

「………………アナタ、聞いてなかったけど。あの力は何なの、正直な意見アナタはとても怪しいのよ。もしあなたがカルデアを襲った張本人だとしたら………………我々は貴方には対して全勢力を以って、排除するわ」

 

 敵意と疑惑の意志が所長のその声音で解った、マシュが武器を構え、戦闘態勢を取る。

 

 ………………沈黙が痛い、居た堪れない感情が心を巡る。九条さんは呆れた様に頭を掻く、そしてその口を開く。

 

「…………………………《鎧武》」

 

「《鎧武》?それがあの力の名前なのね、それじゃああの錠前はなんなのよ、それに錠前を使った時に空間が裂けたその先の森みたいのはなんなの?」

 

 ガンガンと質問を繰り出す所長に対して嫌そうな表情で対応をする九条さん。

 

「錠前は《ロックシード》、種類は豊富で《ロックシード》によって異なる武装が出現する。しかし《ロックシード》単体では効果は無い、この《戦国ドライバー》を使わなければ使用もままならない」

 

 九条が見せてくれたの小刀が付けられていた黒いバックル。所長は不思議そうにあちこち触っている。

 

「《ロックシード》は《森》に実になっている果実を毟るとドライバーの何かしらの力が作用してできる、詳しい原理はよく知らん」

 

「《森》?どこの森かしら」

 

 所長のその質問に九条さんは言葉が詰まってしまう、でも私は見ていたその時の九条の表情を。憎しみと哀しみの混じった苦しみの表情を。

 

「……………。《ヘルヘイムの森》」

 

「《ヘルヘイムの森》?『ヘルヘイム』と言ったら、北欧神話の死者の国の名前ですよね?」

 

「その森に有る果実は普通の人間が食べてしまうと、身体全身の細胞が一気に変質し、【インベス】というバケモノになってしまう。」

 

「【インベス】?つまり、この特異点の異常はその【インベス】が原因なのですね?」

 

「それは違う」

 

「?。それはどういう事?」

 

 

 

 

 

「俺が全部、皆殺しにした。」

 

 

 

 

 

 

 端的に、それも理解しやすく彼は言った。九条さんの話す素振りがあまりにも無感情過ぎて、恐怖を覚えてしまった。隣のマシュも所長も皆が息を呑んだ、得体も知れない恐怖だけが体の芯を少しずつ貪っていく。その時私は失禁しかけてしまった、しかし何とか女の子の尊厳のためにそれを断固として阻止した。

 

 

「……だから、アイツらがここにいるわけが無い。それに【森】自体、全く別次元に存在するからこの世界に干渉してくることはもう絶対ない」

 

 機械的で冷たい瞳が逸らされ九条さんは再び私達の前を歩き出した。声なんて掛けられなかった、私の本能がアレに触れてはならないと警鐘している。だから私は一歩下がった所を歩き始めた。

 

 

 

●●●●⬛●●●●

 

 

 

 

ーーークソ喰らえ。

 

 悪態をつかずにはいられない、後悔の念が九条誠一の頭の中を満杯する。信用されていないことは知っていた、それは得体の知れない力を持ったやつを怪しまないのがおかしい。

 

 自分も彼女らのことを信用しているわけでは無かった、けれども彼女らと共に行動する事でこの異変が収まるのであれば、それは止む終えないと判断した結果これだ。

 

『死にたくない、死にたくないよオッッッッ!!?!』

 

 頭の中でフラシュッバックする戦いの記憶。それを振り払うように首を振った。ここから見える燃え上がるような赤い光が街を包み込んでいるのがよくわかった、似てるのだこの景色は。

 

 《世界》が終わる景色に。

 

 立ち上がれるだろうか?再び。その答えは誰も答えてけれない、結局自問自答の道。彼が選んだのはそういう道だ。誰もが通った道、先輩方が歩んだ過酷な世界、だったら行ってやろうじゃないか。意気込み、そして握りしめる。

 

 

 

 

「これ、なんだろ?」

 

 藤丸の声が耳に入った。どうやら景色を見ながら歩いていたら立ち止まっていたようだ、鎖だ。道を阻むように鎖が編み込んだ蜘蛛の巣のように張られていた。藤丸が不思議そうに手を伸ばす。

 

ーーーヤバいッ!!

 

 本能的なものが危機を知らせた。鎖が捕まえようと藤丸目掛けて伸ばしていた、一瞬の内に藤丸の服の襟を掴み後ろに放り投げる。その代わりに自身の右腕に鎖が食い込む。

 

ーーーッ!!

 

 捉えられた瞬間、ものすごい力が自分を喰らおうと引っ張ってくる。脚に力を入れてなんとか踏ん張るが、それでもズルズルと引き込まれる。

 

「九条さんッ!?」

 

「来るなッ!!お前も引き込まれるぞッ!!」

 

 不要に近づいて来ようとする藤丸に怒号を飛ばす、たじろぐ藤丸を他所に腕の肉に食い込んでくる鎖が血管を破壊した音が聞こえた。激痛、腕を伝って赤い血ーーーいや、緑色(···)の血がコンクリートに零れ落ちる。

 

「なに、それ」

 

 オルガマリーの動揺が声になって伝わってくる。

 

『おや、どうやら獲物を一匹捕らえたと思ったら………見慣れない《人外》を捕らえたようですね』

 

 心の奥底まで囁かれている様な悪寒が体を駆ける、全員がそれの発生源を見つけ出した。

 

「嗚呼、見知らぬマスターに見知らぬサーヴァント。そして………見知らぬ人外、なんて瑞々しい。」

 

 黒いローブを纏った長身の女性、その手には鎌のような形状の槍が収まっている。只者ではないその身から発せられる存在誇示は人のそれとは比ではない。しかし、誠一が注目したのはそこではないその背後にある無数の石像だ。遅れて藤丸もそれに気づいた。

 

「てめぇ、それの後ろのやつはなんだッ!?」

 

 九条は叫ぶ。答えは目に見えている、しかし問うのだ答えが出た瞬間怒りで痛い思いをしないために。盾を構えているマシュの後ろに居る藤丸も同じ様な目をしていた。

 

「ーーー………《人間》ですが何か?私の領域に入った獲物をどうしょうと私の勝手でしょッ?」

 

 瞬間、近くにあった石像の人間の頭を弾き飛ばした。

 

「ゑ?」

 

 藤丸の間の抜けた呟き。石像からは無くなった頭に送る血液が噴水の如く、燃え盛る街に飛び散った。

 

「一つ、無くなってしまいましたが………どうやら新しく四人はいるようですね」

 

 

 

「てめぇツツツツツツツツツツッ!!」

 

 怒りの爆発力が九条を動かせる。その怒号は街に響き渡り、地面を揺らした。驚愕の表情が藤丸たちに浮かんだ。それもそのはず、九条はその一瞬で捕らえた右腕を自力で引きちぎったのだ。緑の鮮血が辺りを舞う、無くなった右腕は熱い何かを感じた。

 

 純粋な怒りが九条の脳内のドーパミンを大量に排出してい、九条の痛覚を一時的にカットしていた。全ての目に映るもの全てがスローモーションの世界になる、その中を行くのは九条ただ一人だった。

 

 疾走る、走る、奔る。不敵な汚い笑みを浮かべているこいつを殺す!!左腕で《戦国ドライバー》を装着させ、掌から《オレンジロックシード》を出現させる。

 

 

 

「変身ッ!!」

 

《オレンジッ!!》

 

 九条の頭上からクラックが出現、現れたのはオレンジの鉄鋼。《ロックシード》を《戦国ドライバー》にロックオン!!

 

《ロックオンッ!!》

 

《ソイヤッ!!》

 

《オレンジアームズ!!花道オン·ステージッ!!》

 

 花開くように鎧が展開されていく、次の刹那には九条はアームズウェポンの《大橙丸》で斬りかかった。しかし女はその手にある槍で受け止めた。

 

「なんて初々しい、瑞々しい。あなた達、サーヴァントと戦うのは初めてかしら?なら先輩として色々と教えてあげましょうッ!?」

 

 九条の攻撃を受け止めた槍を女サーヴァントは押し返し、九条を藤丸の下に吹き飛ばす。

 

「九条さんッ!!」

 

「うっせぇ!!ちゃんと前を見ろ!!」

 

「応戦します、先輩指示を」

 

「言論には気をつけなさい、『する』と言ったからには

もう、すでに『行為』は始まっているのですからッ!!」

 

 瞬時に女サーヴァントが加速する、それに即座に対応した九条はマシュの前に出る。左手の《無双ナギナタ》で女サーヴァントの攻撃を捌いていく、しかし。

 

「左手だけでは、戦闘もままならない様ですねッ!!」

 

「ぐっ!?」

 

「ッ!?九条さん!!どりゃあああッ!!」

 

 力及ばず吹き飛ばされた九条、入れ替わるようにマシュがお得意の盾で突進を仕掛ける。しかし、激突する前に女サーヴァントは回避し、後退する。怪訝そうな表情の女サーヴァントが顎に手を当てて、暫し考える。

 

 

「…………瑞々しいのも癪に障りますね」

 

 女サーヴァントが紫の髪の毛をたくし上げる。するとそれは蛇の形をもち、次の瞬間藤丸達を囲う一つの檻と化す、逃げ道を完全に絶たれた瞬間だった。見下ろすように鎖の上から女が嘲笑う。

 

「このままでは不利です、先輩逃げてください」

 

「えっ!マシュを置いてなんか行けないよ!?」

 

「纏めて私の髪で絡め取ってあげましょう!!」

 

 絶望的な状況、右腕しかない自分、戦闘不慣れのマシュ、戦う覚悟もできていない藤丸、戦う技術はあるが膝が笑っているオルガーマリー。

 

 覚悟した、自分の死ではない。《禁断の一片》を使うことに対してだ。いつの間にか握られていた黄金の鍵を強く握りしめた、その瞬間。

 

『小僧はまともに動けないで小娘は未熟だが、中々の兵たちじゃねぇか。これじゃあ助けない道理はねぇな』

 

 何処からか声がした、援軍かと思ったが女の慌てた様子を見ると違うようだ。

 

「何者です!?」

 

「何者って、オイオイ忘れちまったのかよ同郷!!」

 

 現れたのは青いローブを着た青い髪の爽やかな青年、その手には木製の杖を携えていた。不敵に笑う青年に対して女サーヴァントの表情が一転し自分の旧来の憎敵に出会ったような目をしていた。

 

「キャスター、何故漂流者の肩を持つのです!?」

 

「あぁ?決まってんだろ、お前らよりマシだからだ!!」

 

 瞬間、キャスターが空中でなぞった文字が特大の炎へ変化し女サーヴァントに轟ッ!と直撃する。咄嗟のことに対応しきれない藤丸の前に降り立つキャスター。

 

「譲ちゃん、アンタは腕は未熟だが意気込みは負けてねぇ。気張っていけ!」

 

「は、はい!」

 

「坊主!女を守るために腕を差し出したのはイイ判断だが、その珍妙な力をまだ出し切ってねぇだろ?もっと本気でいけ!」

 

 見破られていたようだ、なんとも気の抜けない奴だ。と感嘆する自分がいた。そしてキャスターは次に藤丸を横目で見た。

 

「アンタがマスターか、故あって奴とは敵対中でね……敵の敵は味方って言うしな、仮契約だが俺があんたのサーヴァントになってやる。指示をしな」

 

「え、でも…」

 

「譲ちゃんのマスターなら、覚悟をしろぉッ!!」

 

 戸惑う藤丸にキャスターが喝を入れる、盾を構え勇敢にも立ち向かうマシュの姿が何かを琴線に触れたのだろうか藤丸は後退しかけていた足をザッと前に繰り出した。その表情には先程までのような弱々しい藤丸は居ない。

 

「………こういう時なんて言うのかな、そう『こっからは俺達のステージだッ!!』」

 

《イチゴ!!》

 

 頭上からチャックが開くような音がし、クラックが開封される。現れたのはイチゴの形の鉄鋼。九条の左手にはイチゴの形を模した錠前が解錠されていた。そして《オレンジロックシード》を外すと同時にオレンジアームズが霧のように霧散する。

 

《ロックオン!!》

 

《ソイヤッ!!》

 

 ベルトの法螺貝の音楽を待たず、カッティングブレードを降ろす。イチゴの鉄鋼は九条の頭に覆いかぶさり、花が開くように上半身に鎧が展開される。特徴的な右肩のイチゴの緑の葉。その手には《イチゴアームズ》のアームズウェポン、《イチゴクナイ》が握られていた。

 

《イチゴアームズ!!》

 

《シュシュッと、スパーキングッ!!》

 

『鎧武·イチゴアームズ』

 

 それが今の鎧武の名前だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、イチゴッ!?」

 

「今更だろ」

 

 

 

 

 




次回の《仮面ライダースロットル》は!?




「俺達の聖杯戦争はいつの間にかすり替わっちまった」

「この空にも『青空』はあったのでしょうか?」

「じゃあ、私がマシュの『夢』手伝ってあげる」

「何者なの、九条誠一?」

「王の選定、岩の剣の二振り目」

「彼ら、いやアレらは世界を滅ぼす『害悪』にしかなりかねん」

「それでも俺は、俺達は【変身】するッ!!」



次回、『かつてのモノ』

運命は、廻り始めた………。


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第四廻 かつてのモノ

遅れてしまいました、もしかしたらこれから一ヶ月投稿になるかもしれません


「初めは原点自体見えない虚空と幻想から生まれた」

 

「1971年にすべてが始まった、『昭和』」

 

「そして、今へと繋がっている」

 

「『平成』という名の今に」

 

「平成の一周期の締めくくりは『世界の破壊者』だったように」

 

「また、『平成』は終わろうとしている」

 

「そう、世代交代というやつだ」

 

「しかし、違えてはならない」

 

「『彼』はそれはない、伝わるものは何もない」

 

「正しくは、何も『彼』は受け継がれていないと言う訳だ」

 

「それもそうだ、彼は『騎乗者(ライダー)』では無いのだから」

 

 

 

 

「それでも、アイツは俺らのように進む」

 

 ライドブッカーの引き金を引く音ともに弾丸が発射された。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほざけっ!!」

 

 姿を改にした九条の啖呵を聞きすぐさま女ランサーは髪をかき揚げ巨大な鎖の塊として叩きつける

 

 それを横に回避し、キャスターと共に走り出す。

 

「喰らえっ!!」

 

 九条がイチゴアームズのアームズウェポンの『イチゴクナイ』をランサーの眼前に投げつける。

 

「無駄ぁ!!」

 

「こっちも構ってくれよ!!同郷!!」

 

 鎌の様な槍でイチゴクナイをはたき落とされた同時に青髪のキャスターがルーン文字を操り豪炎を叩きつける。

 

「ッ!?」

 

 咄嗟のことだったのか直撃を免れぬと察し、右腕をガードに使った。そのお陰で右腕以外は無傷であった。

 

《ロックオン》

 

《イチゴチャージ!!》

 

 しかし、九条はそんなこといざ知らず。無双セイバーにイチゴロックシードをセットし、空中へと巨大なイチゴクナイのエネルギーを飛ばす。

 

「クッ、させるかァっ!!」

 

 それに危機を感じ取ったランサーはそれを撃ち落とそうと鎌を振るう。しかし、イチゴクナイのエネルギーは分裂しイチゴクナイの雨が降り注ぐ

 

「グヮアツツ!!」

 

 さすがのランサーでも直撃は免れなかった様だった。

 

「………やったか?」

 

「いやまだだ、小僧!!」

 

 瞬間、砂煙の中から槍が九条の心臓目掛けて飛んできた。九条は刹那の出来事に対応が追いつかず回避行動が間に合わなかった。

 

「クッ、ちゃんとやれぇ!!」

 

 キャスターの怒号が耳によく響き、九条の体はキャスターが横へとふっ飛ばし強制的に回避させた。しかし、そのせいでキャスターの胸に黒い槍が突き刺さる。

 

「あ、青髪ィィィィィッ!!」

 

「キャスターさん!?」

 

「叫ぶ暇が有るなら、さっさと決めろォ!!」

 

 再びキャスターの怒号がマシュ達に飛ぶ、キャスターの覚悟を察したのか九条はイチゴロックシードを手早くパインロックシードに切り替える。

 

《パインアームズ 粉砕!デストロイ!!》

 

「盾ぇ!!上げろぉ!!」

 

「!、了解!!」

 

 マシュは九条の意図を察し、自身の盾を奔ってくる九条の方に向ける。九条は盾を踏み台に空中へと飛び出した。

 

《パインオーレ!!》

 

 カッティングブレイドを二回振り下ろし、九条は『パインアイアン』を空中で蹴り、バイナップルのエネルギーがランサーたちを拘束する、九条はそのまま蹴りの姿勢に入る。

 

「は、離せ!!」

 

「いや、無理だね。俺でも抜けられないんだからよ」

 

「セイハッーーーーーーーーー!!」

 

 掛け声とともに九条は右足に黄色の果汁の様なエネルギーを纏い、ランサーと激突する。

 

バゴォッンッッッッッ!!!

 

 衝撃とともに爆発が起きる。その中でランサーが穏やかそうに光になるのを藤丸は見ていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい、大丈夫か!!青髪!!」

 

 変身を解いた九条は倒れ伏せるキャスターに駆け寄る。ニヒリと笑うキャスターが九条を待っていた。

 

「ッ!……………おい、シャッキリしろよ!?」

 

 何となく九条は分かってしまった。キャスターが見せた笑顔は幾度も見た逝く前の表情だと言う事に。そうキャスターは九条を庇ったせいで死ぬのだ。

 

「……それはこっちのセリフだぜ坊主、お前がどんなモノだろうがこの先あの譲ちゃんを護らなきゃならないんだぜ。そんなお前が、そんなんじゃ満足に任されねぇよ」

 

「……………分かってるさ、だからこそーー」

 

「それに、俺は英霊だ。また召喚すればまた会えるさ…………。それまで」

 

「任せろ、こんな程度の異変何度クリアしたか………………。ノーコンティニューでクリアしてやるぜ」

 

「それだ、その勢いだ。英霊と負けず劣らずの覚悟だ」

 

「キャスター!!」

 

 

 そこに藤丸たちがやってきた、藤丸はキャスターの様子を見て顔を苦しそうに歪めた。きっとキャスターが長くないことに気づいたのだろう。

 

「譲ちゃん、アンタはこれからこの異変の核と戦うことになる」

 

「あなた、この異変の原因を知ってるの!?」

 

「そうだぜ。奴さん、セイバーは水を得た魚のように暴れまくった。その挙句聖杯を手に入れてこの土地、いやこの世界を聖杯の泥で沈める気だ。そしてそれを止めようとした。ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー、全員が倒され泥に汚染されちまった。結果、さっきのランサーよろしく、暴れまわるようになった」

 

「そのセイバーは、一体?」

 

 息を呑みながらキャスターに問うオルガマリー。

 

「……………聞いたことあるだろ、王の裁定、岩の剣の二振り目。」

 

「それって!!」

 

「そう、最強の幻想。『聖剣エクスカリバー』つまりセイバーは騎士王『アーサー王』さ」

 

 それを聞き、オルガマリーは絶望の表情を浮かべ地面に膝を付ける。

 

「ーーーーそんなの、勝てるわけないじゃない!?!」

 

「でも、やるしかねぇんだ!!」

 

 オルガマリーの嗚咽をかき消すように九条が叫ぶ。オルガは九条の顔を見る。九条の表情は強く熱く覚悟に満ち溢れた顔だった。その意志を感じ取ってか藤丸がキャスターの手を両手で強く握りしめ、見つめた。

 

「ーーーだいじょうぶ。私達が人類の『最後の希望』になるよ」

 

 その言葉にキャスターは一瞬呆気に取られたがすぐに笑顔を見せた。

 

「……全く、女はいつだって恐ろしく強くなりがるな」

 

 やれやれと言わんばかりは表情のまま、キャスターは宇宙へと光と成り消えていった。

 

「……………、うおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 唐突に九条が叫ぶ。ズカズカと九条は落ちている右腕の元へと歩きそこらへんの廃材を刺し右腕に無理矢理に接着する。まるで怒りを痛みで紛らわすような姿は藤丸達に痛々しく写った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………キャスターが逝ったか…」

 

「そのようだ、所詮犬畜生だということだっただけだ」

 

 黒い鎧の少女が深く呟くと白髪の青年が皮肉そうに言い放った。

 

「しかし、アレはなんだ?この世とは思えない、体にしても『力』にしても………」

 

「……。《仮面ライダー》か…」

 

「知っているのか、アーチャー」

 

 怪訝そうなアーチャーの様子を見て、セイバーは問うた。

 

「ーーーーーあぁ、あれは。いやアレらは『害悪』の種だ」

 

 アーチャーの脳裏に映るのは一人の猫舌の青年。世界中の洗濯物を真っ白にする夢を持っていた儚い夢の守護者のことを………。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 私達はその後聖杯を探すためにあらゆる場所を巡りました。幾度も戦闘があり、その度に誠一は変身し私達を守ってくれました。

 

 いまは一息付けるため高校で休憩中です。

 

 

 

 

 

「どうしたの、マシュ?」

 

「あ、先輩。いや少し空を見ていて……」

 

 

 学校の廊下で空を見上げているマシュに声をかけると私の方に笑って見せた。私も空を見上げて見るが分厚い雲に覆われていてどんよりしていた。

 

「空が、どうしたの?」

 

「いえ、此処はカルデアより低い位置にあるのに『青空』が見えないなって……」

 

 確かにと藤丸は思った、何かの力によって空は閉ざされているこの世界はあまりにも綺麗なものが無い。むしろ目を背けたくなるものばかりだ、覚えたくないような人間だったモノが焼ける匂いと血の池。今も思い出すたびに吐き気を催す。

 

 しかし誠一はそれらに目を背けることなく、前へと突き進んでいた。その姿はとても尊く哀しいモノだったことを抱かずにはいられなかった。

 

「先輩?」

 

「ん!?どうしたのマシュ?」

 

「いえ、何か物耽っていたのでどうしたのかと思って……」

 

「なんでもないよ、それよりマシュは『青空』が見たいの?」

 

 

 

 私はその問を投げかけるとマシュは悲哀に満ちた表情を見せ、空を見上げた。

 

 

「………私は、私はカルデアで生まれ育ってきました。」

 

「あそこは、いつも暑い雲と吹雪で空が閉ざされています。」

 

「ですから私は幼い頃から、『普通』の人が必ず見るであろう『青空』を夢見ていました」

 

「いつもいつも、画面の『青空』を眺めて私は何度か思ってしまったのです」

 

「『嗚呼、私は籠の鳥だと』」

 

「だから、それを『夢』にしました。」

 

「『夢』は朧げで遠いモノだから諦められる、そう思っていました。」

 

「でも、先輩とこの時代に来て私、期待しちゃったんです。嬉しかったんです。」

 

「不謹慎ですよね、自分の『夢』が叶うかもしれないからって『人類を救う旅』に私情を持ち込むなんて……」

 

 

 

 

 

 

「それは違うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬 マシュが哀しそうな笑顔がとても私には気に食わなかった。だから私も言うのだ、言ったのだ。

 

 

「マシュがマシュの『夢』の為に生きちゃいけない訳がない」

 

「それが『人類の救済』を目的とした戦いだとしても、マシュはマシュの為に戦っていいんだよ」

 

「人類を救うのはもちろん大切だよ、けどそれを理由に自分の『夢』を汚いモノだと一度だって思っちゃいけないんだよ」

 

「人は一度しか生きれない、夢を見れるのも叶えるのもたった一度だけなんだよ!!」

 

「勿体無いよ」

 

「もしマシュが、マシュの為に『夢』を叶えるのが罪だとしても………。」

 

 

 一息空白を作る、これは覚悟のある言葉なのだから慎重に言わなきゃならないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がその『罪』、全部背負う」

 

 

「マシュの『夢』は私が叶えるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシュ·キリエライトは知った。この少女の覚悟と意志の強さを………………

 

 藤丸立香は覚悟した。これからどんな困難があろうとマシュと共に戦い抜くと……………………

 

 

 

 

 

これより、この場で彼女らの『共犯者』が始まった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

『この先だ、この先に大きな魔力が感知した』

 

 通信機の向こう側のドクターが私達に告げる。

 

 私達は今、冬木の洞窟の前へとやってきた。この先にこの事件の黒幕が居るらしい、いや居る。

 

「…………ドス黒い気配がビンビン臭ってきやがる」

 

 険しそうに表情を浮かべる誠一の発言には私も賛同せずにはいられない。洞窟から黒い何かが溢れているのがなんとなくだが理解できた。マシュや所長も固唾を呑んでいる。

 

 

「……………行くぞ、ここにいても何も変わらない」

 

 そう言って誠一は私達の前をあるき出した、だがその瞬間誠一の足元に剣が飛んできた。それは一瞬にして形を留めず爆発した。

 

「誠一!!」

 

 私はマシュの盾によって守られて無事だった。砂煙が段々と晴れていくと誠一が爆発地点から少し離れた場所からムクリと現れた。どうやら咄嗟に回避したらしい。

私は誠一が無事だと分かり一息つく。

 

「ーーーやれやれ、さすがの『仮面ライダー』もこの程度では殺せんか」

 

 男性の声。私はすぐ様振り返るそこには白髪の青年が赤い弓を番えていた。

 

ーーーアーチャーだ

 

 その結論に達するには簡単だった。しかし今このサーヴァントは『仮面ライダー』と言ったか!?

 

「…………テメェ、明らかに俺だけ狙いやがったろ。さっきから俺だけに殺気を飛ばしやがる」

 

「わかるかね?それは失礼をした出来ればそこのマスターとサーヴァントを始末したかったが、いかんせん『仮面ライダー』が相手にいるのであれば優先的に狙うのは妥当だろ?」

 

 皮肉げに話すそれは自信があっての言動なのだろう。マシュはさっきから警戒を強めているのがその証拠だ。

 

「…………藤丸、先行け。」

 

「ハァッ!?何言ってるの!?誠一を一人で戦わせる訳にいかないよ!!」

 

「そういう問題じゃねぇ、効率の話を言ってんだよ。それにアイツは俺だけに用があんだとよ」

 

 

「ーーー藤丸、行きましょう」

 

「所長!?」

 

「わかってるじゃねぇか、ビビリ」

 

「う、うっさいわね!!それよりあんたこそ勝ち目はあんの!?」

 

 所長の言葉に不敵に誠一は微笑う。

 

「舐めんなよ、これでも『仮面ライダー』だ」

 

 その宣言は何より信頼を置けるモノだと私はふと思ってしまったのです。そしてそんな考えを浮かべてしまった自分の不甲斐なさを実感した。

 

「………………頼んだよ、誠一さん」

 

「お、やっと『さん』を付けやがったな」

 

 私達はそのまま振り返らず洞窟の奥へと走り出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、一丁いいかな。アーチャーくん?」

 

「ーーーなんだ、手短にしてくれよ」

 

「いや、なに一つ質問するだけなんだよ」

 

 何気ない態度で友人と接するように話しだした誠一。

 

「ーーーお前、『本物』にあったのか?」

 

 『本物』、それが指し示すものをアーチャーは理解していた。

 

「……………そうだと、言ったら?」

 

「ーーーハァ、なんだアレだ。だから俺を狙ったのか」

 

 少し面倒くさそうな様子で頭をかく誠一はこの時にアーチャーがしつこく自分に敵意を向けてくるのか理解した。だからこそ卑屈になってしまいそうだった。

 

「俺は、異物か」

 

「当たり前だろ、貴様ら『仮面ライダー』は存在した瞬間から『悪』が生まれだすのだから。」

 

 否定はしない。『仮面ライダー』が生まれる世界は必ずと言っていいほどそれに対抗するための『敵』が生まれるということになる。

 

 『仮面ライダー』が『悪』を作り出したと言っても過言ではないだろう。

 

 

 

「正直言って、この世界から出ていってほしい」

 

「断る。見ちまった以上、俺が関わった時点で『お前ら』の負けだ。『仮面ライダー』ってのはーーー」

 

「ーーー『人々の自由と平和を守る戦士』」

 

 ニヒリと誠一が微笑う。

 

「わかってるじゃねえか、だったら分かるよな。」

 

「あぁ、なら私も全力を持って貴様を潰す!!世界のために、《正義の味方》として!!」

 

 お互いに引けない、二人は戦うべき存在だ。譲れない物のためにぶつかり合う。それはそれぞれの《正義》のカタチの在り方故に。どちらかが負けた瞬間それを砕くことになる、それはとても罪深いことだろう。

 

 

ーーーしかし……。

 

 

 

「ああ、それでも俺は『変身』するッ!!」

 

 誠一は右手にオレンジロックシード、左手にブルーのレモンエナジーロックシードを構える。

 

 アーチャーは黒白の夫婦剣を構える。

 

 

「『変身』ッッ!!」

 

 

『オレンジッ!』

 

『レモンエナジィッー!!』

 

 

 

 

 

 

 今、ぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、『旅の始まり』

運命は廻り始めた!!


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救国を駆けるが竜騎士
第五廻 旅の始まり


遅れました、多分これからもっと遅くなります!!


 彼との出会いはとある国の紛争地域で彼が一人で子どもたちの服を洗濯していた時だった。

 

 彼の眼つきは何というかそこら辺にいるような不良みたいに鋭く、怪しさ満点だったというのがはじめての印象だった………。

 

『…………お前誰だ』

 

 ふと彼が話しかけてきた。警戒しこちらを睨んでくる。俺はちょっとした自己紹介とここに来た経緯を掻い摘んで話した。

 

『……………お前、物好きだな。まぁ俺も言えたことじゃないけど』

 

 

 彼は自嘲するように言ってみせた、もしかして彼も同じように『人助け』をしに来ているのだろうかと思い質問する。

 

『そんな大層なもんじゃねぇよ』

 

 じゃあ、何のためにここに来た。

 

『………………夢なんだよ』

 

 夢?

 

『そう、夢だ。俺は世界中の洗濯物を真っ白にするのが夢なんだよ、笑いたきゃ笑え。バカにしたけりゃバカにしてろ』

 

 馬鹿になんてできるわけが無かった。彼の瞳は覚悟に燃えている目をしていた。そんな瞳をしている人物を笑うことなんて許されないと自分の中で理解されていた。それ以前に俺も同じような『夢』を抱えている。

 

 そんな彼の風貌に共感してか俺は彼に手を前に出していた。

 

 君の名前は?

 

『…………乾巧だ』

 

 愛想も無い声音で手を握る彼の様子はなんというか少し可笑しかった。

 

 

 彼との邂逅こんなものだった……………。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ソニックアローの斜線上に一瞬重なるアーチャーを見逃さず矢を放つ。しかし、アーチャーも同じように宝具を投影し、向かい撃つ。

 

 このような攻防がかれこれ十分以上は続いている。これでは埒が明かない、そう判断した九条は足早にアーチャーの元へと走り出す。木々を掻き分けてアーチャーへとソニックアローの刃の部分を叩き込む。

 

「ぐっ!?」

 

 しかし、アーチャーとてやられっぱなっしではない。弓を捨てどこからか白黒の双剣でソニックアローの刃を凌ぎ、その勢いを利用し広々とした空間へと吹き飛ぶ。

 

 アーチャーが双剣を握りしめ九条を見据えて、微笑う。

 

「ーーー誘ってるのか、まどろっこしいことは無しですか」

 

 九条にはわかっていたアーチャーが誘っていることに。だからこそ行く、九条には時間が無い早く藤丸のもとへも行かねばならないのだから。

 

《チェリーエナジー!!》

 

 九条はレモンエナジーを外し入れ替えるようにチェリーエナジーロックシードに切り替える。

 

《ソイヤッ!!ジンバーチェリー!!ハハッハー!!》

 

 その風貌は戦国時代の副将のような袴で、チェリーの文様が刻まれていた。

 

「………………近接攻撃型か、高速移動型か。まぁどっちにしろ倒すがね」

 

 見破られていた。ジンバーチェリーは高速戦闘型のフォーム。しかし、動揺はしない。相手は『仮面ライダー』に出会った存在だ。その程度は予想はできるだろう。

 

「ーーーなぁ、アーチャー」

 

「何かね、辞世の句なら聞く気は無いが」

 

 皮肉タップリの言葉を吐き出すアーチャー、九条は構わず言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

「ーーーお前何が、『怖く』て『悲しい』んだ?」

 

 

「ーーー……………………何?」

 

 突然の言葉に混乱するアーチャー。

 

「俺にはわからないんだ、お前がどうしてそこまで敵対してくるのかわからないんだ。だってお前は出会ったんだろ『本物の仮面ライダー』に」

 

「…。貴様何を言ってーーー」

 

「はぐらかすなよ。『正義の味方』さん?」

 

「…………」

 

「あの人たちは、俺が知っているあの人たちはお前にとって大きいものだ。それは絶対だ。それなのにお前は矛盾してるんだ、さっきだって藤丸たちを先に行かせる満々だったろ、なのに俺だけは絶対通さないそれどころか殺す気。訳がわからねぇ」

 

「俺が『異物』で世界に害悪を齎す。しかしそれだけじゃ殺す意味にはならない、それに『仮面ライダー』は害悪を齎すが同時に世界を救い出してきた」

 

「それはお前にとって都合が良いものだろ。なのに狙ってくる。」

 

「お前は『世界』が救われるのを望んでないのか?」

 

 決定的な言葉、確信と言っていい真実。九条はそれを既に持ち合わせていた。アーチャーが自嘲する、自身の矛盾に嗤っている今更気がついた意志。それはアーチャーの表情を苦しめるものに変える。

 

「ーーーそうだ、そうなんだよ。ほんとに訳がわからなくなる、矛盾だらけではないか!!」

 

 瞬間、アーチャーの姿がぶれる。九条は咄嗟にソニックアローを構えるがアーチャーの夫婦剣によって弾き飛ばされ、九条は腹部を切り裂かれた。

 

「ぐっ!?」

 

「『理想』を再び誓ったのに、それに反する事をしている自分が情けない、情けなくって堪らないっ!!」

 

 それだけでは終わらない。双剣の追撃は留まることを知らず。連撃の如く叩きつけられる。さすがのアームドでもこの攻撃は耐え難い痛みを通していた。

 

「なぜなんだ、ナセなんだ!!なぜ彼が死ななければならなかった!!なぜ…………『世界』は彼に残酷なんだ?」

 

 悲痛の表情を見せるアーチャー、《正義》を持ちながら《世界》を憎む彼の姿はとても痛々しいものだった。九条は八つ当たりにも近いその行為を甘んじて受けていた。変身は解け地面を転がる。

 

「…………なぁ『仮面ライダー』、何故、ナゼ彼は『乾巧』は死ななければならなかった?彼はナゼ自分の為に生きてはならなかった。」

 

「彼は世界を幾度も救った《正義のヒーロー》だろ、その彼がナゼ、何故ーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『あんな、悲劇があっていいのか?』とか言うんじゃねぇぞアーチャーッ!!」 

 

 

 

 アーチャーはハッと九条を見る、九条の表情は怒りに狂った表情をしていた。怪我を庇いながら九条はアーチャーを睨みつける。

 

「…………あの人は、『オルフェノク』だ。いつかは死ななければならなかった「ならっ」黙れ。それ以上は許されないぞ、憐れむことはあの人の遺志を貶す事になる」

 

 ぐっと息を呑むアーチャー。

 

「『四号事件』あれは誰の記憶にも残らず忘れ去られてしまった戦い。でもあれは、あの戦いを悲劇とは言わせない。いや言えない!!」

 

「あの人は、変えたんだよ。ハッピーエンドにやってのけたんだよ!!自分の命を投げうっても、消えてしまう《正義》だとしても、アイツは、乾巧は戦って勝ったんだ!!『死という現実』にッ!!」

 

 たとえ何度時間を繰り返そうと乾巧達は戦った。残ることはない歴史だとしても、ただ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かの祈り、夢を護る為に……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーアァ、そうか俺は、『怖かった』のか」

 

 

 アーチャーの瞳から哀しみの雨が流れ落ちる。

彼は何度も立ち上がって行くうちに恐れたのだ。

 

 

ーーーいつか、自分のしたことが意味のないものに変わっていくのが。

 

 

 

 

 

 

 正義の味方は所詮人間、《正義》は誰の心に存在するが《彼自身の正義》があるわけではない。それはとても恐ろしく忌々しい。

 

 

 

 

 

 

 

だがーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーそれでもあの人の意志は受け継がられている。」

 

 

 いずれ平成は終わるだろう。『仮面ライダー』はいつかは消えていくだろう。しかし忘れてはいけない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー《正義の心》は永遠に受け継がれていくことを!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー覚悟は決まったよ巧」

 

 アーチャーの表情にはもうすでに迷いはなかった、双剣を構えると『ウジウジしてんじゃねぇぞ』と乾の声が聞こえた気がした。

 

 

「…………そうか、でまだ戦うか?」

 

「ああ、彼女の命令でね。簡単にはいかないのさ」

 

「めんどくせぇな」

 

「そう言ってくれるな、彼女にも考えがあっての事だ」

 

「そうかい、なら本気でやらせてもらう!」

 

 すると、九条は巨大な橙色のロックシードを掲げる。

 

「『変身ッ!!』」

 

《カチドキッ!!》

 

 空間を裂き現れたのは今までとは規模が違う大きさの橙色の物体だった。

 

《ソイヤッ!!カチドキアームズ!!いざ、出陣!!エイ!エイ!オッー!!》

 

 勝鬨が流れ現れたのは重装の鎧武者。背中には二振りのカチドキ旗、その手にはDJディスクが搭載された火縄DJ銃。

 

ーーー仮面ライダー鎧武·カチドキアームズ

 

 

 

 

 

「行くぞぉッ!!アーチャー!!」

 

「ウォッツーーーー!!」

 

 

 

 双剣を構え突撃するアーチャーに応戦するように九条は背中のカチドキ旗を抜き、奔る!!

 

「くっ!!力が段違いだ!!」

 

「当たり前だ、馬鹿野郎!!」

 

 カキンッ!!と二人の獲物が空中に吹き飛ぶ。アーチャーは弓を、九条は火縄DJ銃を構えた。

 

 双方の吹き飛ぶ。相討ちに近いだろう。

 

ーーーしかし…。

 

《カチドキチャージ!!》

 

「なっ!?」

 

 砂埃の中から九条が火縄DJ銃大剣モードを振りかざしながら現れた。

 

 咄嗟の状況にアーチャーは追いつけず迫る九条を眺めることしかできなかった。橙色の濃いエネルギーが一閃を描き、アーチャーを振り切る。

 

 二人は背をお互いに向けながら立つ、すると九条は変身を解いた。それと同時にアーチャーが地面に膝を付く、そして身体から光の粒子が溢れ出ていた。

 

 勝ったのは九条だった。

 

 二人は無言のままお互い背を向け続けた。そこには語る言葉を無かった。二人にしか分かり合えない思いが伝えあっていた。

 

 

「ーーーありがとう、『仮面ライダー』」

 

 アーチャーのか細い声が風とともに聞こえた。

それ以上はただ寂しい風の音が聞こえるだけだった。

 

「……………」

 

 そして、九条は何も言わず振り返ることもなく藤丸の元へと走り出した。

 

 

 

 真っ暗な空に青いモルフォン蝶が飛んでいた……。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 一方、藤丸たちは墜ちたアーサー王に苦戦を強いられていた。

 

「……………どうした?貴様の『護る力』とやらはその程度か?」

 

「クッ!!?」

 

 何度目かの暴力、吹き飛ばされては立ち上がりまた吹き飛ばされるの繰り返し。既にキャスターはやられボロボロのマシュだけが戦っていた。藤丸は唇を強く悔しく噛む。何もできない、ただマシュがボロボロになっていくのを見てるしかできなかった。

 

ーーーマシュの『夢』を護ると誓ったじゃないか!!

共に背負うと誓ったではないか!!それなのに何だこの体たらくは!!無力感は!!

 

 

「フンッ、遊びはもう終わりだ」

 

 冷血な表情のままセイバーは黒き聖剣を掲げ、漆黒の力を満たす。

 

ーーーあれは駄目だ!!

 

「マシュ!!逃げてッ!!」

 

 藤丸が叫ぶ。しかし、マシュにはもう既に攻撃を回避するのも盾で防御する力さえなかった。

 

「『約束された勝利のーーー(エクスカリ)

 

《カチドキスカッシュ!!》

「ムッ!?」

 

 そこへ間を割るように橙色のエネルギーがセイバーに直撃する。

 

「遅れたなッ!藤丸!」

 

「ッ!?遅いょぉッ!」

 

 カチドキアームズを身に纏った九条が倒れているマシュを抱えあげようとしたとき。

 

「背中がガラ空きだぞっ!!」

 

「なっ!?ウグぁッ!!」

 

 飛んできたセイバーの聖剣を背中から直撃してしまう。背中の厚い鎧がいとも容易く剥がれ破壊されてしまった。

 

「クソッ!!」

 

 しかし、九条だってやられぱなしではない。火縄DJ銃の引き金を引く、弾はセイバーを一直線に飛んでいくがセイバーはそれらを聖剣で切り裂いていく

 

 次の瞬間には九条の目の前までに迫っていた。なりふり構ってはいられない、九条は火縄銃を捨て腰の無双セイバーで応戦する。

 

「………………温いッ!!」

 

 しかし、しかし。聖剣の刃は無双セイバーをたたっ斬られてしまう、唖然もする余裕を許さずセイバーの剣は九条の鎧を容赦なく斬り伏せる。

 

「その程度か『仮面ライダー』。」

 

 セイバーは嘲笑う様に九条を踏み付ける。その行為に満足したのか藤丸たちに狙いを付ける。

 

「次は貴様らだ」

 

「ヒィッ!?た、助けてレフゥッ!!」

 

 圧倒的な力量の差。藤丸は蛇に睨まれた蛙の気持ちを初めて理解した。ヒョロヒョロのマシュがなんとか盾を持ちながら藤丸たちの前に立つが頼りない。

 

 一歩、また一歩。死が近づいてくる…………。

 

 死を覚悟した。いや、覚悟なんてできてるわけがなかった、どうにもならない一般人な私はこうして叩きつけられている理不尽な現実に抗えず怯えているだけなのだから。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 『THE END?BADEND?HAPPYEND?』

 

 選択肢が俺の頭の中で展開されていた。

 

 いつかだったか、こんなことがあったか。

 

 

 

 『THE END?BADEND?HAPPYEND?』

 

 同じ選択肢だ、あの時と。

 

 END、とか言うならこれを乗り切れば終わりなのか。

 

 

 

  

 『THE END?BADEND?HAPPYEND?』

 

 ーーー違う。これは只の幻にしか過ぎない。

 

 俺の戦いに終わりはない。あってはいけない。

 

 

 

 『THE END?BADEND?HAPPYEND?』

 

 うざったい、この声も。結果も。未来も。

 

 大丈夫だ、まだ立てる。

 

 

 

 

 『THE END?BADEND?HAPPYEND?』

 

 そうだ大丈夫だ。なんたって俺を今まで支えてくたのは《拾八の道の人》なのだから。

 

 『護るのも壊すのもお前次第だ』

 

 「だったら、ぶっ壊して繋いで見せる《未来》を」

 

 「旅の始まりだ。気をつけろよ」

 

 

 《フルーツバスケットッッッッッ!!!!!》

 

 

 黄金の鍵は握られた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

《フルーツバスケットッッッッッ!!!!!》  

 

 

 甲高い音声が洞窟中に響き渡る。セイバーは咄嗟に九条の方へと振り返ろうとするがセイバーに何かが衝突する。それはやむなく毎に行くども幾度も繰り返される。

 

 藤丸たちはその何かを目撃していたと同時に唖然していた。先程の音声とともに十一個のフルーツがセイバーを襲っているのだから。

 

 九条は黄金の鍵《極ロックシード》をカチドキロックシードに接続する。そして、勢いよく下へと捻る!!

 

《ロック·オープン!》

 

 十一個のフルーツ、オレンジ、バナナ、ブドウ、マツボックリ、ドングリ、ドリアン、クルミ、レモンエナジー、チェリーエナジー、ピーチエナジー、メロンエナジーが九条を中心に集まり、そして虹色の果汁と共に合体する。

 

 

《極アームズ!大·大·大·大·大将軍!!》

 

 

 大鎧をモチーフとしたカチドキアームズから一変し、西洋様式の鎧を思わせる白銀色の姿となった。

 兜飾りは鎧武のシンボルマークの形、複眼は虹色。

胸部にはオレンジ、バナナ、ブドウ、メロン、イチゴ、スイカが描かれている。

 

 

ーーー仮面ライダー鎧武·極アームズ!

 

 いま禁断の力が開放された………!!

 

 

 

 

「大将軍!?」

 

「な、なんなのよアレは………?」

 

 

『な、何だ何なんだコレ!?九条君が大将軍になった瞬間彼の体中から神代レベルの神秘が満ち溢れている!計器がイカれちゃうよ!!』

 

 

 困惑と驚愕が入り混ざった感じが中々抜けない、でも私には分かっていることがあった。

 

 

ーーーもう、セイバーは勝てない。と

 

 

 

 九条は威風堂々と立ち振る舞う様に極ロックシードを捻る。

 

《大橙丸!》

 

 すると、九条の手元にオレンジアームズのアームズウェポンの大橙丸が現れる。

 

「見せかけだ!」

 

 セイバーが地面を強く踏む。勢いに乗り聖剣で九条の首を狙う。しかしヒラリと躱すと同時にセイバーに一太刀、川の流れのごとく斬りつける。

 

「グワハァッ!?ーーーまだまだぁっ!!」

 

《マンゴーパニッシャー!》  

 

 次の瞬間、セイバーの顔面にマンゴー型の重量型メイスに吹き飛ばされる。しかし、これは転機と思ったセイバーは魔力を噴出し、体制を立て直そうとするが。

 

 

「そんな時間がやると思うか?」

 

《影松!影松!影松!影松!影松!》

 

 空中に現れる五本の黒い槍。それはセイバーの四肢を貫き地面に縫い付けられてしまった。

 

「ーーーまだ、やれんだろ?」

 

 九条の挑発するような表情が手に取るように分かった。だからこそセイバーの騎士の魂を貶されたと理解していた。静かに怒る、一瞬に感覚を研ぎ澄ます。武器を一つも持っていない九条を見て、さらに怒りを増す。

 

 

ーーーそして、銃弾のように放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だったな、詰みだ」

 

《極スカッシュ!》

 

 次の瞬間には手遅れだった。バナナの形をしたエネルギーが地面から生えセイバーを拘束した、セイバーはその時見た。九条の手元にバナスピアーが召喚されたことに。

 

 

《火縄DJ銃!無双セイバー!》

 

「ッ!?」

 

 九条が大剣を携えて、セイバーの元に一歩また一歩と、近づく。セイバーは何とか拘束から逃れようと藻掻く。しかし、エネルギーは絶えなくセイバーを捕える。

 

 近づく、藻掻く。

 近づく、藻掻く。

 近づく、藻掻く。

 近づく、藻掻く。

 近づく、藻掻く。 

 近づく、藻掻く。

 近づく、藻掻く。 

 近づく、藻掻く。

 

 

 

そしてーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーこれで終わりだ!!」

 

《極オーレ!!》

 

 虹色の光が闇を切り裂いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「聖杯、確保しました。ミッション達成!」

 

『やったね!!いや、ホントに!!まさかアーサー王に勝つなんて!!すごかったなぁ極アームズ!!』

 

「疲れた」

 

「大丈夫?肩揉む?」

 

「頼む」

 

 各々が勝利の美酒に酔いしれていた。絶望的状況から大逆転というのはとても気分が良いものだろう。ただ一人オルガマリーは不穏な表情で居た。

 

「ーーー何してんの?」

 

「ヒャッ!?ちょ、びっくりさせないでちょうだい!只考え事をしていたのよ!!」

 

 ヒステリックに喚き散らすオルガマリー、九条には少し引っかかってあることがあった。それはセイバーが消えるときに言った。

 

「『グランドオーダー』」

 

 その言葉が何を指すのかまだ分からない、いずれ分かることだと納得させた。今はただこの状況に浸かりたいそんな気分だった。

 

ーーーしかし、それは容易く打ち砕かれた。

 

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチ  

 

「ッ!?」

 

 突如聞こえた拍手の音皆が警戒した、音の発生源にはーーー。

 

 

「ーーーレフ?レフなの?」

 

 

 生存の望みが薄いとされていたレフ·ライノールその人がいた。オルガマリーは感極まった、頼れる人に。依存している存在に。再び出会って嬉しくないものはいない。

 

 

 すぐさま駆け寄ろうとした時、九条に手首を強く握られ阻止される。

 

「ちょっと!何すんのよ!!」

 

「行くんじゃねえぞ、アレは人間じゃねえぞ」

 

「はあっ?何言ってのアンタ。ほらレフ何とか言ってよこのバカに」

 

「…………………。」

 

「ーーーレフ?どうしたのレフ?何とか言ってよ。」

 

 

「ーーー全くどうしてこんなにイレギュラーのことが起きる。とても腹ただしい」

 

 

 見えた。奴の本性が、獣のように鋭く憎しみが込められた姿が。オルガマリーは変わり変わってしまった想い人を見て子鹿のように震えていた。

 

「ーーーそれがお前の本性か?」

 

「それを見破ったところでどうする?私がカルデアを爆破した真実は変わらんぞ」

 

『「「は?」」』

 

 誰もが息を忘れた。飲み暇など衝撃によって阻害されてしまうばかり。今、今やつはなんと言った?カルデアを爆破しただと?

 

「う、嘘よねレフ?」

 

「オルガ、そのうるさい口を閉じとけ。今私はそこのやつと話している」

 

 理想と儚い恋心が粉微塵となった瞬間だった。

 

「さて、要らない邪魔が入ったところでーーー、貴様何者だ?」

 

 レフが九条だけを見据えて睨みつける。

 

「ーーー意味によるな、またはどんな『ライダー』にもよるが」

 

「ふん、答える気はないという訳か。まぁ良いだろうそこまでの脅威ではない、さて諸君改めて自己紹介しょう。私はレフ·フラウロウス二千年担当だ。」

 

「何言ってるの?何言ってるのかワカラナイヨォッ!!!」

 

 オルガマリーが膝を抱え倒れ込む、その様子を見てレフは卑しそうに嗤う。

 

「オルガ、何苦しむことはない貴様は既に死んでいるのだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーまさか、気づかなかったのか?これは滑稽だ!私が爆弾を仕掛けたのなオルガ、君の足元なんだよ。君は以前からレイシフトの資格を持っていなかっただろう?それが死んで霊体というちっぽけな残りカスになったおかげで君は今ここにいる」

 

 

「いやぁ、いやぁ、いやぁ。」

 

 

「そう何度も言ってやろう!!オルガマリー·アムにスフィア、貴様はとっくの等に死んでいる!!」

 

「イヤァーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

「テメェェェェェェ!!!!!!!!」

 

《フルーツバスケットッッッッッ!!!!》

 

《ロックオープン!!極アームズ!!大·大·大·大·大将軍!!》

 

《大橙丸!バナスピアー!》

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 怒りに身を任せて突進する、なりふり構っていられないこのクソ野郎をこの世から消さなければならない!!

 

 

 

ーーーーしかし。

 

 

 

 

 

 

 

「下賤な、これだから人類は愚かなのだ」

 

「ぐっ!!!」

 

 見えない力が突如として九条を襲う、一瞬にして壁にめり込まされる。

 

「誠一!!」

 

「さて、オルガ。せっかくの別れだ、最後に君が愛したカルデアスを見せてやろう」

 

 パチンっと指を鳴らすと同時に空間に大きな穴が開く、空けた空間の先には真っ赤に染まったカルデアスがあった。

 

「カルデアスが…………。」

 

「これが指す意味共に学を学んだロマニ·アーキマン分かるであろう。人類は文明の衰退や戦争によって終わったのではない、焼却されたのだ!!我が王の寵愛を受けられずに貴様らは自らの無力を思い知り絶えるのだ!!」

 

『ーーーーレフ教授、これらの所業全て貴方の仕業だったか!?今外部と連絡がつかないのも応答がないのでなく応答する相手がいないそういうことなのですね!!』

 

「くどい、何度も言わせるな。オルガ、君のカルデアスだろ?最後のお別れをするが良い」

 

 スイっとレフが指を振るう。するとオルガマリー見えない力で持ち上げカルデアスに近づけさせようとする。

 

「所長ッ!?」

 

「駄目です、先輩!!」

 

「やめてレフ!カルデアスなのよ触れたらどうなるか!!」

 

「ああ、太陽と変わらない出力をもつ物質の塊だ。触れれば体は一瞬にして分解され永遠の苦しみを味わうことになろう」

 

 なんて素っ気ない態度で話すレフ、恐怖で顔が歪んでいるオルガ。この状況は良いものでない、悪魔のようなあの男にとっても彼にしても。

 

「させるかァァァァァァァァァァァァッッッッ!!」

 

 そこに勢い良く飛び手を伸ばす九条の姿があった。

 

 

 ただ、ダダ必死に手を伸ばす。泣いている彼女を救うために、飛ぶ。飛ぶ。

 

 

 

ーーー届け、届け、届け!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、その思いは届かなかった。

 

 

 

「キァッアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 オルガマリーの断末魔が響き渡る。なす術なく地面に墜落する九条、オルガの涙が九条の頬に触れた。それと同時に、地面が激しく動き出す。天井から瓦礫が幾つも落ちてくる。

 

「む?そろそろこの特異点も限界か、さてカルデアの諸君残りの時間を怯えながら暮らし給え!!」

 

 そう言うとレフは光とともに消えていった。

 

『ヤバイ!もうこの空間が崩壊を始めてる。ギリギリのレイシフトになるかもしれないッ!!』

 

「誠一!!」

 

 

 九条は只項垂れめいた。脳裏にオルガマリーの悲痛な表情がこびりついていた。まただ、また救えなかった。また、届かなかった。

 

 降り積もる後悔の中、次第に怒りが湧いてきた。

 

ーーーレフ·ライノール。奴は俺が殺す!!

 

 殺意が絶え間なくその身を駆け巡る。

 

 

そしてーーー!!

 

 

 

「ぜってぇー、許さねぇぞ!!レフ·ライノールゥゥゥッッッッッ!!!!!!!」

 

 

 怒号ともに九条達は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーさぁ、旅の始まりだ。存分に掬うが良い

 

 

 

        『仮面ライダー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次章『救国を駆けるが竜騎士』

運命は廻り始めた!!


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第六廻 項垂れている時間は無く

遅れました、短いですがご了承を。


 皆の笑顔を守った。

 

ーーー変身!!

 

 自身の記憶を失っても神さえ倒した。

 

ーーー変身!!

 

 戦いを終わらせるために生き残り続けた。

 

ーーー変身!!

 

 夢を護るために戦った。

 

ーーー変身!!

 

 友のために人外になった。

 

ーーー変身!!

 

 後の世代のために戦い続けた。

 

ーーーハァッ!!

 

 己の大切な人の為に世界さえ敵に回した。

 

ーーー変身!!

 

 時を護るために五人で戦い続けた。

 

ーーー変身!!

 

 

 愛する人のために戦った。

 

ーーー変身!!

 

 自身が何者であるか、それを知る為に世界を巡った。

 

ーーー変身!!

 

 愛する街を護った。

 

ーーー変身!!

 

 救いたい欲のために戦い続けた。

 

ーーー変身!!

 

 友のために宇宙を駆けた。

 

ーーー変身!!

 

 誰かの希望のために戦い続けた。

 

ーーー変身!!

 

 人類を信じ、未来を信じ、神になった。

 

ーーー変身!!

 

 刑事として、『仮面ライダー』として、人々のために戦った。

 

ーーー変身!!

 

 限りある命の為に魂を燃やした。

 

ーーー変身!!

 

 患者の運命を変えるために。

 

ーーー変身!!

 

 

 

 皆が皆、変身した。

 

 誰かのために。

 

 人々の自由の為に。

 

 平和のために。

 

 幾度も挫折し、

 

 命を削った。

 

 

 

 それなのに………。

 

 そんなすごい人たちの力が有るのにーーー。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、誰も助けられないんだ」

 

 

 九条誠一はベットの上で体育座りしながら、悔やむ。

 

 オルガマリーに手が届かなかった、あの一瞬は脳裏に焼き付きフラッシュバックの様に瞼の裏で繰り返されている。

 

 だから、眠るのが嫌だった。

 

 かれこれ、3日は寝ていなかった。

 

 しかし、体調には変化はない。至って平常だった。

 

 

 

「アンデット化のおかげか、またはオーバーロード化のおかげか……………。」

 

 つぐつく人間離れしてきていると九条は自嘲する。

 

 彼は幾度もなく戦い続けた。

 

 理由もなければ、決意さえ固まっていなかった。

 

 それでも、九条誠一は戦わなければならなかった。

 

 彼以外に戦える者(仲間)はいなかったからだ。

 

 何度もやめようと思った。逃げようともした。

 

 しかし、彼ら(仮面ライダー)はそれを許してくれなかった。

 

 強敵とかち合えば希望(絶望)の意思が身を奮わせた。

 

 恐怖で動けなくなったら戦う理由(自分にはない)を脳裏に反響させられた。

 

 体もそれに追いつくように強い体(改造)にさせられていった。

 

 

 心が折れれば折れるほど、すぐ様何かで補修され強化されていく。自分とは関係ないものでもそれは強制的に押し付けられて、いつの間にかそれが当たり前のようになってしまった。

 

 

 大切な者を守りたい。愛する街を守りたい。

 

 世界中の人々の笑顔を守りたい、希望を護りたい。

 

 九条にはそんな推敲な信念はなかった。

 

 それでも、責任は背負い続けている。

 

  矛盾し続ける彼の姿は他者さえも傷つけられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、スピーカーから音声が流れてきた。

 

『ピンポンパンポン。え〜、カルデアの職員諸君。お昼休みに申し訳ない『特異点』だ。スタッフはすぐ様配置に付いて、それとマスターとサーヴァント達はコフィンまでに至急集合すること。』

 

 

 そういって放送は終わった。すると部屋の前を何人かの人々がドタバタと音を立て通りすぎて行った。

 

「ーーー行かなきゃ。」

 

 ベットの脇に置いてあった、白金のスロットルドライバーを腰に巻きつける。

 

 やらなきゃいけないことがある内は立ち止まれない、そう決心しながら部屋の外へと歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「急で悪いが、君たちには1431年のオルレアンに向かってもらいたい」

 

 私達を出迎えたドクターの最初の言葉は次の旅の案内だった。

 

「あのぉ〜、オルレアンって何処ですか?」

 

「ーーーフランス、丁度百年戦争の真っ只中の時だね」

 

 そこに現れたのは絶世の美女と百人中百人が思う姿をした、レオナルド・ダ・ヴィンチ。その人だった、何故性別が違うのかというとモナリザが好き過ぎて自身がそれになってしまおうと試みた結果らしい。

 

 

「君たちにはやってもらいたいのは2つ、『特異点の調査及び修正』と『聖杯の調査』だ。レフがあらゆる時代に聖杯を送り出し数々の異変を起こしている。それを君たちが解決するんだ。」

 

 

 

「ーーーあのさぁ、なんで一つ一つずつ解決しなきゃなんねぇんだ。別働隊に別けて2つずつ攻略してきゃいいんじゃないのか?」

 

 そこに遅れてやってきた九条誠一が訝しげにドクターに問いかけた。

 

「別働隊って、まだこのカルデアには分断できるほどの戦力はないよね?」

 

「何言ってんだ、俺がいるだろ。俺が一人でその『特異点』とやらを攻略すればいい」

 

「君を一人で戦わせるなんて、できるわけ無いだろ!!」

 

「ーーー甘ったれってんじゃねぇぞ。今は一刻も争うときだ、一人が巨大な戦力を誇っているのにそれを活用せずしてどうする!?」

 

「そっ、それは…………」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。ここで言い争っても仕方ないじゃん」

 

「その通りだ。それに九条誠一、貴様は作戦に付いてああだこうだ言える権利はないと思うがね」

 

「……………どういうことだ、エミヤ」

 

 最近、召喚して出てくれた赤い外套のアーチャーさんを誠一さんは睨みつけた。  

 

「どうもこうも、君はミーティングに参加していないであろう。今まで部屋に篭りっきりの人間の意見をなぜ聞き入れなくてはいけない?」

 

 一理ある。しかし、納得できないモノもある。そんな顔をしていたのだ誠一さんに

 

「それに、特異点は7つは観測はできたけど膨大な魔力の嵐で詳細まで確認できなかった。つまりーーー」

 

「一つずつ攻略してこい、というゲーム嗜好に凝ったレフからの挑戦状さ」

 

 

 ダビンチちゃんがドクターの言葉に解答を付けた。

 

 遊ばれている。私たちはレフに弄ばれている、とても悔しいが歯を食いしばって皆は耐えている。怒りに、悲しみに、無力感に。

 

 

「ーーーいいぜ、行こう。こんな巫山戯たゲームサッサと終わらせるために」

 

「ーーーそうだね。」

 

 旅は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 足掻くことは当に諦めた、つもりで居たよ。

 

ーーー復讐は何よりも『不正義』だ。

 

 信じれば信じた程、しっぺ返しは恐ろしく重かった。

 

ーーー余りにも、理性的ではない。

 

 教会で教えてもらったのはただの文字の羅列だけだ。

 

ーーー君と私は信じて進むしかない、その理想(幻想)を抱いて。

 

 信仰は形の無い詐欺と同じだ。そして、それを振りかざす神は詐欺師でもあるわ。しかし私が復讐したいのはそんなモノじゃない。

 

ーーー『国』か。

 

 やつらは私を聖女と奉り人民の心理を掌握した。しかし、いざ自分たちに都合が悪くなったら魔女と呼び、私を陵辱し挙句の果には燃やし殺すなんて!!

 

ーーー到底許されるものではない。

 

 そうよ、そのとおりよ!!だから私はこの国をーーー!!

 

ーーーしかし、それは君を縛り付ける鎖でしかない。

 

 何?

 

ーーー逃げなさい。貴方は仮でも新たな命を授かった、のであれば以前の生に縛られてはいけない。

 

 でも!!

 

ーーーどちらにしろ失敗します。『奴』が来るから。

 

 『奴』?

 

ーーー『奴』は理想の体現者、そのガワを被っている罪人。しかし、その仮面を着けているだけあってか『この世の悪』を根絶する法則を身に秘めています。どちらにしろ勝ち目なんて最初からないのです。

 

 なら、なら!私のこの燃えたぎる怨念をどうやって晴らすのよ!!

 

ーーー…………私が、『俺』が晴らしましょう。あなたの代わりに。

 

ーーー『俺』があなたの意志を完遂させてみせましょう。だからあなたはそれを間近で見ていてほしい。私は貴方みたいな人が『悪』と呼ばれるのが悔しくてたまらない。

 

 

 貴方は、一体?

 

《Darts on!!》

 

 不意に少年が腰の黒曜石の色をしたベルトの赤いボタンを三連打する。ベルトから発せられた音声ともに少年を中心に様々な紋章が飛び回る。その光景は少年が黒い暗幕から出てくる前の主役俳優のようにスポットライトで歓迎されていた。

 

「俺の名前は十条 誠(……)、またの名を………」

 

《リュウガ》

 

「仮面ライダーダーツだ。」

 

「変身」

 

 龍のエンブレムが刻まれた黒いカードデッキをVバックルに差し込む。その瞬間3つの影が重なり一つになる。現れたのは黒い竜騎士。

 

[仮面ライダーリュウガ]

 

 龍騎の反転した悪のライダー。

 

 

 今、オルレアンに立つ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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