アキバ神拳伝承者の異世界譚(ハイスクールDxD+A) (グリムリッパー02)
しおりを挟む

終焉

始まりのみ、ちょっとシリアス。
いいか?ここだけだ。


「ぐああっ……くっ!」

 

「やった……」

 

 ラジオ館、

 アキバを魔骸者と夜咬の為の街にしようとした張本人、輝月 宗牙を俺達はやっとの思いで倒すことが出来た。

 

 目の前には、服を奪われ弱点である日光に晒される宗牙の姿があった。

 

 終わったのだ。

 これで、この街を暗躍していた黒い事件の全てが。

 そう思うと、急に身体の力が抜けていく。

ハハハ、俺としたことが緊張の糸が緩んだかな?

 

 「お疲れ様」

 

 そんな俺に、ご主人様。ーー刻風 雫ーーはいつものように、しかし今まで見たことのない様な晴れやかな表情でニコリと微笑だ。

 俺を助けてくれ、そして、彼女の協力がなければ俺達は最後までアキバを救うことは出来なかっただろう。

 彼女には、返しきれないほどの恩が出来てしまった。

 

 「あぁ、お疲れ様」

 

 そう言って俺達はハイタッチを交わした。

 なんにせよ、これでいつも通りのアキバに戻るんだ。

 そうだ!こんどRinに復活祝いのライブをやってもらおう。

 志遠さんにもセッティングして貰って今までで一番デカいライブを開こう。

 きっとみんな喜んでくれる。

 

 あぁ、楽しそうだ。

 楽しそうだなぁ。

 

 

 俺は最後の力を振り絞って立ち上がる。

 そして、雫を抱き寄せる。

 

 「…え?」

 

 急な事態に反応出来ず、雫の顔に赤みが差す。

 こんな顔も出来るんだな。

 彼女の意外な一面を目の当たりにしつつ、その腕に力を入れる。

 そのせいで彼女がどれだけ華奢な身体なのかが分かってしまった。

 これだけの細い身体に夜咬の運命を背負って長い間頑張ってきた。

 俺にはその苦労は想像もつかない。

 

 

 「じゃあな」

 

 

 そう言い、俺は彼女の身体を窓の外へと投げ飛ばす。

 普通の人なら死んでしまう高さだが、彼女ならかすり傷も負わないだろう。

 下にはRinもいることだしな。

 

 そうして、誰もいなくなったラジオ館の中で俺は独り振り返り、睨みつける。

 この事件の元凶。

 未だ稼働中の魔街発生装置。

 宗牙が倒されれば止まると思っていたこの装置だが、むしろ抑えが効かなくなったようにさっきから膨張し続けている。

 雫は、気づいてなかったみたいだ。

 まぁ気づかれないよう抱き寄せたのだけれど。

 

 

「………。」

 

 

 なんにしても、だ。もうこの装置がどうやったら止まるのか俺には分からない。

 唯一知っているであろう宗牙はもう紫の灰になり、その上にやつの愛刀が突き刺さっている。

 

 俺はもう爆発しそうなその球体を睨めつけ、歩き出す。

 

 アニメは確かに面白い。

 これから先ももっと面白いアニメが出るだろう。

 ゲームだってマンガだってそうだ。

 イベントだって色々あるだろう。

 そうやって思い出されるのは、仲間達との思い出だ。

 一緒にストプリを全話見て、コスプレして、Rinのライブで盛り上がって、ゲームして、そして、一緒にアキバを守った仲間達。

 アニメもゲームもマンガもイベントも、色々な人達との繋がりで出来上がったものだ。

 例えスタッフロールに書いていなくても、そこにはそれを楽しんだ全ての人が繋がっている。

 

 だから言う、『皆でやるから面白いんだ』と。

 

 だとしたら、

 だとしたら。

 ここでそれを終わらせる訳にはいかない。

 

 「最後まで付き合ってもらうぞ」

 

 そう言い、俺は宗牙の剣を引き抜く。

 

 目の前には爆発寸前の機械。

 手には剣を携えて、身体は満身創痍でもボロボロ。

 目だって霞んでるし、立っていられるのがやっとの状態だ。

 ハハハ、これなんてアニメ?

 

 だとしたら、オタク冥利に尽きるというものだろう。

 

 下から雫達の声が聞こえる。

 最後まで振り回してしまった。

 だったら、俺は彼女達に精一杯の気持ちで、最後まで振り切るのが、俺なりの礼儀だろう。

 

 息を目一杯吸い込んで、走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アキバの街は!!!俺が守る!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、アキバの街を照らし尽くすような眩い光が天へと登った。




何度も言う。シリアスはここまでだ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トイレに女神様がいるなら、アキバにだって神様はいるだろう??

本気出す(出すとは言っていない)


ピコピコと、電子音が鳴り響く。

 

その音はどこか懐かしく、俺の耳に安らぎを与えてくれる。

あぁ、そういえば婆ちゃん家の近くの駄菓子屋にこんな感じの筐体があって、よくナナと一緒に日が暮れるまでタケノコ掘りとかして遊んだっけかなぁ。

 

 

「って、ゼビ〇スじゃねぇか!!」

 

なにがピコピコだよこんちくしょう。

どこだ!?どこだゼビウ〇!!

めっちゃやりたい!!

 

 

「んぉ!?びっくりしたぁ。さっすがアキバの救世主。BGMなしでも気づくとは」

 

と、そこにいたのは腰まであるロングヘアー、野暮ったいメガネ。そして手の届く範囲に欲しいものが置いてある布団(理想郷)の上で胡座をかいて6台のモニターとにらめっこする少女の姿だった。

 

いや、なにこれ。お兄ちゃんなんでロリの女の子部屋で寝てたの?

しかもよく見たら俺の布団と彼女の布団隣同士じゃないですかやだー。

え?いや、マジで、これってあれですかね?朝チュンですかね?いや朝なのかどうかすら怪しいけども。

どうしよナナちゃんお兄ちゃん汚されちゃった。

 

 

「いやいや、流石に私もそこまではしてないって。っていうか助けてあげた命の恩人に対して失礼じゃないかねキミ!」

 

「あ、その節は大変お世話になりました」

 

「うむ!!わかればよろしいのだよっ!」

 

 

なぜか少女相手に土下座している高校生と、高校生に土下座させて満足げに腕を組む少女の図がそこにはあったとさ。

 

いや、でも此処は何処なんだろうか。

さっきはゲームに夢中で気づかなかったけど、此処は異常だ。

なぜならここにはさっき言ったもの以外何も無いから。

壁も、天井も、明かりも、何も無い。

ただあるものだけがまるで光を当てているかのようにはっきりと見える。

 

これじゃ、まるで…

 

「さて…と。どっから話すっかなぁ」

 

そう言いつつ少女は位置こそ動かず片手を伸ばしポテチをとる。

その間もゲームからは目を離さいあたりかなりの手練、熟練の自宅警備員のようだ。

 

バリバリとポテチを食べる彼女、俺はそこで、初めてそのモニターを見た。

 

「よっし!くりあー!やったーー!!」

 

その画面にはclearの文字。それが全部で6個。

そして彼女の手には6個のコントローラ。

 

それを彼女は、片手で全てこなしていたのだ。

 

「お前は…いったい」

 

「ん?あたし?んー、そうだねぇ。とりあえず自己紹介から始めようか」

 

そう言い、彼女は指先をぺろりと舐めとる。

そんなどこか妖艶な唇から、彼女は言葉を発する。

 

 

「私はアキバ神。君の住んでいた、君が守ったアキバの神様だよ」

 

 

そう、言い放った。

 

 

~〇✕△□〜

 

 

アキバ神様が言うには、俺の身体は既に滅んでしまったらしい。

俺は最後、決死の覚悟で魔街発生装置に突貫し、その爆発を全て自分の身で押さえ込んだ。

そうして、アキバの街は守られた。

しかし、それは俺の身体を犠牲とするもので、しかも夜咬の眷属になっていた俺の魂は簡単にあの世へ行くことも無く、燻っているところをアキバ神様に拾われたらしい。

 

 

「ま、マジかよ…」

 

 

全てを聞いた俺は愕然としていた。

まさか、あの時の決断がこうなるとは…

 

 

「まぁ、確かに魂云々の話しは信じられないかもしれないけど」

 

「あ、いや。そこは完全に理解した。大丈夫だ」

 

「アッハイ」

 

 

オタクの理解力を舐めないでほしい。時として、それはアカシック・レコードにすら匹敵する。

 

 

「俺が愕然としたのは、まぁなんだ。

死ぬ覚悟は確かにあったけど、まさかこういう形になるとは思わなくてな。死んだ後の世界とか、そこそこロマンがあったんだけど、まさか死んでも死にきれないとは」

 

「それはキミとその夜咬の相性な余程あってたんだろうね。運命論とかはあんまし好きじゃないけど、キミはある意味なるべくして夜咬の、刻風 雫の眷属になったんだよ」

 

「…そうか、」

 

 

これは彼女なりの慰めなのかどうなのかはわからないが、それでも今の俺には十分すぎるほどだった。

最初は騙されたとはいえ自分の不始末で、そこを助けられ、死にそうなところも助けられ、ずっと恩を返したいと思っていた。それが、ちゃんと果たされてよかった。

ゲームにもアニメにも漫画にも、最終回があるように、ここが俺の最終回だということだ。

ならば、大人しく成仏できる。

 

 

「まぁ、どうあれこうあれキミは生き返らせるんだけどねぇ」

 

「あっれぇ??おっかしいぞぉ??」

 

 

さっきまでの俺のシリアスはなんだったのか。

10年に1度くらいのシリアスくらいちゃんとやらせてほしい。

いや、なんとなく展開的には察しがついてたけども!!

 

 

「キミにはアキバを救ってくれた恩があるし、つかぶっちゃけアレはバグみたいなものでさ。元々はあのダンディなおっさん倒したら装置も止まるはずだった。

でも装置は止まらず、映像バグみたいに残ったもんだから普通死ぬはずじゃないキミまで死んじゃった。それは神として許されないからねぇ」

 

 

一人云々言っているがつまり生き返れるということでよろしいんでせうか?

 

 

「あー、ただしキミが生き返るのは別の世界ね。同じ世界に既に滅んだはずのキミの身体があると色々めんどくさくて、パラドックス的な色々が」

 

「まぁ、色々あるんですね。分かりました」

 

 

別の世界というのは、少し残念だが、まぁそこはそれで頑張るしかないのだろう。

さっきの口ぶりからすると、どうやら生き返れるのではなく、生き返らなければならないって感じだし、拒否権はない。

 

 

「んで、まぁ生き返るにあたって色々とキミには恩やら迷惑をかけちゃった部分があるので特典なんかをあげちゃおうってことなんだけども、なにがいいかな?

人間に戻るとかでも可能だよ?太陽の光浴びれないのは辛いでしょ?」

 

「いや、身体は出来ればこのままがいい。俺はこの身体に後悔はないし、繋がりの証明みたいなものだから。だから別ので頼みます」

 

「なるほど、おっけー。

じゃあどんなのがいいかな?キミだと…元々のスペックはいい感じだし…それを生かすって意味で……よし、こんなかんじでとうかね?」

 

 

そう言って彼女はなにか古めかしい紙、(たしか羊皮紙)を渡す。

そこには以下のようにかかれていた。

 

・以前の世界の武器、服をそのまま移転

・好きな時、好きな場所で開ける4次元ポーチ

・身体能力強化

・完全な夜咬化

 

 

「身体能力強化っていっても、急にチートになる訳じゃないよ?ただある程度の限界値をとっぱらっただけで、生活中に力出しすぎて困ることは無いと思うよ」

 

「この完全な夜咬化っていうのは?」

 

「キミは今のところ眷属って扱いだからね。それをモノホンの夜咬にしてあげるんだよ。まぁ自分が眷属作れる以外特に変わったことはないけどね。強いて言うなら人間じゃない分老いるスピードがめちゃくちゃ長いくらいだよ」

 

 

なるほど、まぁその分未来のゲームやらアニメやらを楽しめるとおもえば、それはそれでいいか。

 

 

「さて!めんどくさい手続きはここまでにしておいて、そろそろキミを送り出さないとね」

 

 

そう言ってアキバ神様は手を振りかざす。

すると何も無かったはずの空間にはいつの間にか仰々しい扉が出来上がっていた。

 

 

「ホントはゲームとかしたいところなんだけど、まぁそんな時間もおしい。さぁ行きたまえ!」

 

 

そう言って彼女はニコリと微笑む。

その顔はよく見た、アキバの人達の笑顔とそっくりだった。

 

 

「…いつも、アキバを見守ってくれてありがとうございます」

 

 

俺は一言そう呟いて扉に向かう。

 

まだ見ぬ世界。まるで自分が主人公になったかのようだ。

前の世界でも色々あったけど、新しい世界でも色々あるんだろう。そんな気がする。

でも、こわくはない。むしろワクワクしているのだ。

 

 

「さぁいくぜ!」

 

 

高鳴る胸を押さえ、扉を開いた。




主人公。
未だに名前が無い。次も出ない。

アキバ神。
アキバの守護神。アキバの人間の願いや想いから生まれたため神様業界ではかなりの強さを誇る。
ただしアキバの人間から生まれたため基本ゲームなどにしか興味が無い。
因みに「ゼビ〇ス六画面クリアは俺もできる」とどこかの名無しさんが言っていたらしい。
CVイメージは悠〇碧さん。だってかわいいやん


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サイリウムを振る時は周りに気をつけよう

短い気もする。


夕日が山の裏へと沈んでいく。

空は赤く紅く朱く染まっていき、やがて黒へと変わるだろう、そんな幻想的な風景を、俺は高度1000mから落下しながら見ていた。

 

え?なんで?こんなことになってるかって?

それはね……

 

 

「知らねぇよ!!」

 

 

知らねぇよーーーー

らねぇよーーーー

ねぇよーーー

よーーー

 

 

叫んでみても声が山彦のように響くだけ。

あ、地面が見えてきたやだ怖い。

 

 

『あーもしもし聞こえるかね二等兵』

 

「この声は、アキバ神様!?っかおいコラこの状況なんだこれ!!」

 

『いやぁメンゴメンゴ。ちょっと間違えちゃった(´>ω∂`)』

 

「死に晒せこのアホンダラァ!!」

 

 

うごっ、酸素薄いのに叫びすぎて気持ち悪くなってきた。

 

 

『まぁ目的地にはちゃんとつくし、死なないよう直前で失速させるからさ。

それまで楽しんで!じゃ!!』

 

 

そう言って、彼女の声は聞こえなくなった。

 

まぁそういうことなら悲観的にもなってられない。少し楽しんでみよう。

 

わーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ無理だぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」

 

 

 

ザッパーーーーーン!!

 

 

 

「うごっ、げほっ、飲み込んだ、うぉえ!!」

 

水を飲み込んだせいで盛大に噦く。

鼻に水が入ってめっちゃ痛い。これ地味に痛いんだよな。

まぁ、身体がバラバラにならなかったってことは、失速とやらは上手くいってたんだろう。

今頃ドヤ顔してるんだろうな。あー、殴り飛ばしたい。

 

にしてもここどこだ?水辺っつってもメチャクチャ浅いし。つかこれコンクリじゃね?失速しても死ぬだ………ろ?

 

「……………」

「……………」

 

 

なんか、目が合った。

目の前には黒い羽を持つちょっとクールっぽい美少女。

なにより清楚な黒髪と、その身にまとっているドスケベな超露出ボンテージがかなりのギャップ萌を生んでいた。

 

ここはどうやら公園らしく、俺は噴水に墜落したらしい。

 

公園、翼、ボンデージが生み出す結論。

それは…

 

 

「あ、すいません。なんか撮影会の邪魔しちゃって。すぐカメラとってきますんで」

 

 

つまるところレイヤーさんの撮影会だったんだろう。納得だ。

いやぁ、異世界でもレイヤーさんは熱心なんだな。なんだかアキバ民として胸が暖かい気持ちになる。

と、こうして入られない。こんなレベルの高いレイヤーさんなんてそうそういないんだ!

早くカメラをとりに行かなくてわ!!

 

 

「………たな…」

「ん?」

 

 

いま、なんか言いました?

 

 

「貴様見たなぁぁぁあ!!!生かしてはおけん!!」

「えええええええ!?!?!?」

 

 

ちょ、激おこじゃないですか!?

いや、許可とか会員限定なら謝りますって!

って、なんかあの人浮いてない?手とかバチバチいってない?

って、なにあの棒。長いサイリウム??

 

 

「死ねぇ!」

「よっ、」

「!?、馬鹿な!人間が私の槍を躱しただと?!」

 

 

なんかよく分からんが、めちゃめちゃ驚かれてる。

いや、あんたサイリウム投げつけちゃいかんでしょ。

 

 

「ならば、これならどうだ!!」

 

 

と、今度は二本の腕をバチバチさせ、そのまま投げつける。

さっきのサイリウムが二本に増えていた。

 

 

「だから投げちゃダメだってば!!」

 

 

俺はそれを難なく掴む。

 

 

「なっ?!」

 

 

レイヤーさんは( ゚д゚)みたいな顔してるが…まったく、オタクとしての境地がなってない。

周りに迷惑をかけずに楽しむのが立派なオタクだろうが。

そんだけレベル高いのに、お兄さん悲しいよ!

 

 

「チッ、どうやらただの人間ではないようね」

 

「いやまぁ、ただの人間(オタク)じゃないけれど。ちょっと降りてきて貰えませんかね。そのロルもやめてさ」

 

「まぁいいわ。あなたは力をつけてから存分にやってあげる」

 

「聞けよ」

 

「それまで、今回のことは貸しにしておいてあげるわ」

 

「聞けって」

 

 

そう言ってレイヤーさんは空の彼方へ消えていった。

どうやらこの世界のレイヤーさんの技術は空も飛べるらしい。

あ、あといつの間にか掴んだサイリウムが消えていた。

サンリウムもなにか俺の時代とは違った技術力で作られてるらしい。

 

 

「まぁいいか。帰ろ」

 

 

とりあえず公園を後にする。

なんか色々と疲れた…早く飯食って寝たい。

 

 

 

そうして俺の異世界1日目は幕を閉じたのだった。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?俺の家ってどこ?」

 

 

 

多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

「ふふふ、まさかこの子に続いてもう1人、面白い子を見つけるなんて、ついてるわね」

 

 

 

 

to be continued?

 




主人公。
まだ名はない。決まってない。次あたりには出る。

レイヤーさん。
黒い翼とどスケベボンテージに身を包んだ本格派なレイヤーさん。
しかし、マナーは悪い。

???
いったい何グレモリーなのだろうか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

(コイツ直接脳内にっ!!)

【速報】家はあった。

 

公園を後にしてしばらく適当にぶらぶらしているとアキバ神様から『私は今、お前の脳に直接語りかけている』があったので家とかその変諸々聞いみた。あとついでにファミ〇キくださいと言っておいた。

 

するとどうやら都心からそんなに離れてないあたりに家を用意してくれたらしく、戸籍やらなにやらも神様パワーでなんとかしてくれたらしい。

かみさま の ちから って すげー 。

 

んで、その家とやらに行ってみたんだが、三階建ての一軒家が堂々とそびえたっていた。

 

 

いや、デカすぎ。

 

 

正直こんなにいらないんだけれど、頭の中でドヤ顔を映像として送ってくる神様がウザいのでとにかく入ることにした。

 

 

「よ!遅かったな」

 

 

そのドヤ顔は玄関前にあった。

 

とりあえず登子に教わったチョークスリーパーをかけておいた。

ファ〇チキはテーブルの上に置いてあった。

無駄に律儀な神様だ。

 

んで、色々と説明を聞いて(説明したらアキバ神様は帰った)、その日は飯食って寝た。

 

 

 

そして、朝である。

 

俺は駒王学園という高校の制服を着ていた。

めっちゃ、暗い気分で。

 

いや、この時期に転入とか、嫌に決まってんだろ。オタクってのはそこら辺繊細なんだぞ。

 

んで、

 

「あー、学校行きたくねぇ」

「…キミ、それ先生の前で言うかね?」

 

 

来てしまった学校。しかももう教室の前だ。

別に超スピードだとか催眠術とか断じてそんなもんでも、別段恐ろしい片鱗でもないぞ。

 

とはいえ、先生も苦笑していらっしゃるわけだし、そういえば以前引きこもりな妹に学校へ行ってみろなんて行ったことあったし、

遠く離れた異世界とはいえ、妹に情けない姿を見せるわけにはいかん。

お兄ちゃんは妹にとってかっこよくなければ。

 

よし。

 

 

「えー、今日は転入生を紹介する。入ってこい」

 

 

先生の呼びかけと共にガラガラと扉が開く。

オタクならオタクらしく、俺は俺らしく、散るならば、一花咲かせて散ろうじゃないか。

 

開き放たれた扉、一言踏み込み、息を吸う、

 

 

「アキバ出身、七瀬 七志。ただの人間には興味ありません。この中にアニオタ、ゲーマー、腐女子がいたら俺の所に来い!以上!!」

 

 

言ってやった。

 

 

 

 

~〇✕△□~

 

 

「はぁ~~~~…」

 

「あー。大丈夫か?」

 

 

あまりの意気消沈っぷりに隣の男子くんが声をかけてくれる。

 

 

「大丈夫だ。問題ない……わけないだろ…」

 

「だよな…ははは」

 

 

ネタにキレがないせいか男子くんもやや苦笑だ。

いや、だってよぉ。

 

 

「それにしても驚いたぜ。あんなことにするなんてな」

 

「あぁ、まぁな。悔いはない。が…」

 

「あぁ、その後だよな。まさか」

 

「あぁ、まさか」

 

 

「「まさか、先生も含めクラスの全生徒が生徒が流れに乗っかるなんてな」」

 

 

まさか、クラス一同声を合わせて「これ、笑うとこ?」と来くるとは思わないだろ。

しかもその後例のエンディングテーマを歌いだしたり踊り出すとは。

因みに踊っていたのはこの学校のダンス部らしい。道理でキレッキレなわけだよ俺も混ざったわ。

 

 

「まぁ色々あったけどなんかお前とは仲良くなれそうだぜ。俺の名前は兵藤一誠。イッセーでいいぜ」

 

「俺の名前は七瀬七志だ。ナナシでいいよ」

 

「ハハッ、変わってんのかそれ?」

 

「馬鹿野郎。変わってるだろニュアンス的なものが」

 

 

そういってガッシリと握手する。不思議だ。

こいつからはモグラの奴らと同じような、大切な仲間になる。そんな予感がする。

 

 

「因みに、俺は朝〇奈さん派だ。しかも未来版」

 

「ハハッ!俺は長〇派だ」

 

 

その日の午前は先生をも巻き込んだ熱い討論会が開かれたそうだ。

 

 

 

 

 

~〇✕△□~

 

 

 

???side

 

「…入りにくいな」

 

 

この日、とある金髪のイケメンが昼休みを他クラスの前で過ごしたことは、

誰も知らない。

 

 

to be continued?




主人公改め七瀬 七志くん。
やっと名前がもらえた。
やったね!ナナシくん!呼んでもらえるよ!

イッセーくん
空前絶後の超絶怒涛のおっぱい星人。
全ての乳を愛し、これから乳に愛される男。

???くん
実はクラスの女子には気づかれていたイケメンくん。
クラスの腐女子からは既にイッセー×???くんで大量のウ=ス異本が制作されているらしい。

クラスメイト+先生
クラスの殆どがオタクでできたクラス。
ナナシくんが来るまで、まさか横の人がオタクだとは思っていなかったとか。
彼ら彼女らの伝説は、今始まる。

かもしれない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロリコンってどこまでがロリなのか教えて欲しい。

次は長さを伸ばす。多分


学校が終わり、放課後となった。

学校ではイッセーと、それからイッセーの友達の松田と元浜と知り合った。

2人とも中々面白いヤツらで、ゲームやアニメも嗜んでいたから話が盛り上がった。

…最終的にクラス全体の討論会になったけれど……

 

それから3人はその変態性でかなり嫌われ者、というより煙たがられているらしい。

犯罪者にはなるなよ?

 

とはいえ、なんだかんだ面白いクラスではあるし、友人もできた。

これからの学校生活も楽しそうだ。

 

 

「んで、ここがスーパー…っと」

 

 

そう呟きつつ、この当たりの地図を確認しつつ、スマホ(ついさっき契約した)の地図アプリと今来た道を見比べる。

今は家周辺の地理を覚えてる真っ最中。マッピングは基本だ。

 

 

「えーと、次が…おわっ」

 

「……ふにゃっ」

 

 

振り向きざまに突然、小さな子にぶつかってしまった。

その子もまさか振り返るとは思っていなかったのか、盛大に尻餅をついてしまっている。

 

 

「す、すまん!!大丈夫か?怪我ないか?」

 

「…………」

 

 

よく見れば少女のようで、その輝かしい白髪とは裏腹に表情は暗く、一点を見つめている。

ま、まさか、ホントに怪我を追わせてしまったんじゃ……

 

 

「………アイス」

「へ?」

 

 

少女の視線の先には崩れてしまった棒アイスが見るも無残な姿で地べたに転がっていた。

あー、なるほど…

 

 

「ご、ごめんね。せっかくのアイスを」

「……いえ、気にしないでください。前を確認しなかった私も悪いですから」

 

 

そうはいうが、彼女の面持ちは暗いままである。

うーん、まぁ仕方ない。

 

 

「それじゃ、俺が新しいの買うよ。どれがいい??」

「ほ、ホントです…あ、いえ。大丈夫です」

 

 

一瞬、その目を輝かせたが、しかしまたもや俯いてしまう。

なんだろう、このずっと欲しかったフィギュアを見つけて一応予算内ではあるんだけど、これ買っちゃうと今度出る新作ゲームが変えないなぁみたいな。

欲と欲のシーソーゲームに囚われたような、そんな見たことある目をしている。

 

 

「じゃあ代わりにこの辺のことを教えてくれ。安いスーパーとか軽食屋とか。俺この辺に越してきたばっかでよく知らないんだ。頼む!」

 

 

と、どこかで見た主人公の真似事をしてみる。

流石に不注意でぶつかってしまってアイスも落としてしまったままというのは、目覚めの悪い話だ。

というより、元とはいえ、アキバ自警団のメンバーとしてそんなことは許されない。

アキバじゃなくても、俺たちはその誇りを忘れたりしない。

 

 

「……まぁ、そういうことなら」

 

 

と、少女もどうやら許してくれたらしい。

 

 

「良かった、俺の名前は七瀬七志。君は?」

 

「塔城小猫です。宜しくお願いします」

 

 

なんとも礼儀正しい子だ。

 

とりあえず、彼女にこの辺のこと教えてもらう途中で新しいアイスを買おうと、心に決めたのだった。

 

 

 

 

「…あ、一応言っておきますけど私、貴方と同じ駒王学園の生徒ですからね?1年生です」

 

「マジで?!」

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

小猫side

 

すこし、変なことになりました。

いえ、変なこと、と言ったら失礼ですね。変わったことになりました。

 

私は今、少し前から気になっていた喫茶店に来ています。

前々から、そのthe 喫茶店といった雰囲気は気になっていました。静かそうなのも、気になっていた理由の一つです。

ですがひとりじゃありません。

先ほどあった先輩、七瀬先輩。

彼に駒王町を案内している最中、「よってみないか」と誘われました。

私も気になっていたので驚きました。

でもそれより…

 

 

「…すごく、食べるんですね」

 

「ん?あぁ、これな。夕食前の軽い腹ごしらえだ」

 

 

テーブルの上にはサンドイッチからパスタ、ハンバーグやカレーなどの大量のご飯が並んでいます。

明らかに軽い腹ごしらえの量じゃないんですけが…

 

 

「にしても、さっきは悪かった。俺も不注意だったよ」

 

「いえ、さっきも言いましたけど私も悪いですから。それにパフェ奢ってもらってますし」

 

 

そういう私の前には大きなパフェが置いてあります。

先輩の奢りで、ここの看板メニューだそうです。

 

 

「いいさこのくらい。それに誰かと一緒に飯を食うのはいいもんだろ?」

 

「…はい。

…そういえば先輩は最近お引越ししてきたんでしたよね。

1人でここに来たんですか?」

 

「あー、まぁな。元々は妹がいたんだがちょっと訳ありでな」

 

 

ここに来るまでに先輩の話は色々聞きました。

なんでも急な家庭の事情で昨日駒王町に来たそうで、今日も初めて駒王学園に行ったそうです。

どおりで私のことを知らないわけでした。

 

 

「ま、これからもよろしく頼むよ。塔城」

 

「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

なんにしても、あまり会話が得意じゃない私でも話しやすくていい人だと思います。

そういえば、面白いアニメとかも教えてもらいました。

契約者さんの中にはアニメ好きの人もいましたし、少し見てみましょうか。

 

 

「さて、んじゃ食うか!」

 

「……ほんとに食べるんですか、」

 

 

先輩はものの数分で食べ終わってました。

早食いコンテストにでたら優勝間違いなしですね。

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

 

「いやぁ、食ったなぁ」

 

 

塔城と別れた後、俺は家に向かって歩いていた。

ここに来てまだ2日だが中々に面白い街だなぁ。アキバには劣るけども。

そういえば、、ここにもアキバあるよな?

週末には行ってみようか。

そん時は塔城誘うのもいいかもしれない。

なんかあの子、雫に雰囲気が似てるんだよな。

 

 

「ッ!」

 

 

突然、背後に殺気を感じて飛び退く。

見れば、この前のサイリウム?

 

 

「あっれぇ?アタシはずしちゃったっスか?」

 

「なッ!?」

 

上空、普通なら声がしない筈であろうところからの声に視線を上げ、絶句する。

ま、まさか……アレは!!

 

 

「まぁでもぉ、次当てれば関係ないっスよね!!」

 

「き………」

 

「ん?なんっスか?命乞いっスか?悪いけど聞いてらんないんッスよね」

 

「き、き………」

 

 

 

 

 

「金髪ゴスロリツインテールっ娘キタ━(゚∀゚)━!」

 

「なんでだぁぁぁぁああああ」

 

 

絶叫しながらサイリウムを投げてくる。またもやめちゃくちゃレベルの高いレイヤーさん。

って、だから危ないって言ってるでしょ!!

とりあえず掴む。

 

 

「ほんとに槍つかんだ!?チッ!レイナーレ様の言う通り変なヤツっスね」

 

「失敬な!!超紳士な俺に向かって何を言う!!」

 

「超紳士は光の槍なんて掴まないだろうが!!…アレ?超がついてるからもしかしたら掴めるの?」

 

 

なんかよく分からんが悩んでらっしゃる。

普通サンリウムくらい掴めると思うんだが。

まぁ確かに速度は殺人級だとはおもったけれど、

それと光の槍って、この人はあっちの世界(中二病)の方なのだろうか。

 

 

「まぁ、それよりよ、とりあえず降りてきてくれないかな」

 

「なんっスか?あ、もしかしてビビっちゃったんスか?そーっすよねぇ、怖いっすよねぇ!!アタシ堕天使ですしぃ〜、そりゃ普通の人間はビビっちゃうっスよね〜」

 

「いや。その…あの……」

 

 

あぁ、ある意味俺はビビってる。

下手したら俺は死んでしまうだろう。

彼女の雰囲気からして、そうなのだろう。

だとしたらここの判断を誤れば、俺は確実だ地獄行きだ。

 

 

「やっぱり命乞いっスか?イイっすよ!このミッテルトちゃんが聞いてあげるっすよ〜」

 

 

……覚悟を決める。

アキバ自警団は何者にも負けないんだ!!

 

 

「その………」

 

「なんスか?ほれほれ言ってみるっスよー」

 

 

 

 

 

 

「パンツが丸見えなんですが…」

 

「……………」

 

 

あ、降りてきた。しかも膝を正座見たいに抱えたまま、ぺたんって。なにあれ可愛い。

そしてやっぱあの羽いいなぁ、俺も欲しい。

 

 

「……………」

「……………」

 

 

目が合う。

真っ赤だ。めっちゃ真っ赤だ。

そしてすごい気まずい。

 

 

「見てんじゃねぇよ!!!」

「ええええええ!」

 

 

いや、飛んでたのそっちじゃん!!

ミッテルト?ちゃんは真っ赤な顔を、更に白黒させながらブンブンと手を振る。

なんだろう、起こってるんだけどものすごい可愛い。

 

 

「ばーか!ばーかばーか!!変態!鬼畜!エロ魔人!!あ、ああああんたなんか殺す価値もないわッ!このタコ!」

 

 

そう言いいながら半べそ書いて走り去っていくミッテルトちゃん。

飛ばないのはさっきのことがあるからなのだろうか。

 

そして、一人取り残された俺。

 

 

 

「………帰るか」

 

 

 

何故か少し、寂しい気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅぅ、絶対!絶っっっっ対ッ殺してやるっス!!」




七瀬七志くん。
野生の幼女(見た目)ハンター。
泣かした幼女は数しれず、なんてことはなく妹もいるので基本子供好き。

塔城小猫ちゃん。
お菓子大好きな我らが白髪ロリ!!
ナナシくんの事は気に入った模様。さて、このあとどうなることやら。


ミッテルトちゃん。
槍を掴まれパンツまで見られちゃった不憫な子。
何故か馬鹿な子になってしまった。しかし反省も後悔はしていない。
人知れず、ナナシくんに復讐を誓う。
彼女の明日はどっちだ!



感想をくれた皆様、改めてこの場で御礼申し上げます。
何分飽き性なものでこの小説がいつまで続くかわかりませんが、それてまも皆様の応援の元頑張っていきたいと思ってます!!


あ、感想これからも待ってます!!見ると作業スピードが3倍になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オタク訪問

「やぁ、こんにちは」

 

 

異世界生活3日目。学校生活だと2日目の今日、俺とイッセーは目の前のイケメンくんに呼び出されていた。

 

それから何故かクラスの方から黄色い声援が止まらない。いや、黄色ってより腐った声援が止まらない。

内容??知らない。知らないったら、知らない!!

 

 

「リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ」

 

 

え?リアスなんだって??

俺は知らない名前に首をかしげる。

よく見ればイッセーの方は驚きもしつつ、合点がいったような納得したような顔だ。

え?なにまたハブなの?昨日に引き続きまた取り残されるの?

 

 

「えっと、七瀬七志くん、でいいんだよね。キミにもついてきてほしい」

 

「お、おう。OK」

 

 

あまりのイケメンスマイルについつい英語で返してしまった。なんなのこの人ほんとに日本人?爽やかすぎるだろ。

 

「それじゃあ行こうか」というイケメンくんを先導に、俺とイッセーは後を付いて行った。

それを見た松田がイッセーにエロビデオを掲げていたが、あいつの周りに配慮しないその姿勢はオタクとして、ある意味見習うべきところかもしれない。

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

 

「ここに部長がいるんだよ」

 

 

連れてこられたのは校舎の裏手にある旧校舎、そのとある一室だ。

見た目に反して綺麗にしてあり、壊れたところもない。わりと頻繁に掃除がされているらしい。

そしてここにそのリアス某がいるらしいのだが、部長ってことは何かの部活の勧誘なのだろうか。

 

 

そのまま歩を進め階段を上がり、更に進む。

どうやら奥の部屋に行くようだ。

扉には「オカルト研究部」とかいてある。

 

 

「部長、連れてきました」

 

 

イケメンくんが中に確認をとり扉を開ける。

そこには………

 

 

「…七瀬先輩、昨日ぶりです」

 

 

中は薄暗く、これでもかと魔法陣が辺りに書き連ねられており、端々にはオカルト系のグッズが並んでいた。

中々本格的なようだ。

 

そして中央の机には、昨日会った後輩、塔城小猫がいた。

ここの部員だったのか。オカルト研究部って柄ではないように見えるけれど。

お菓子研究会でお菓子食べてる方が似合いそうだ。

 

 

「…先輩失礼なこと考えてませんか?」

 

「いや、全然」

 

 

ただお菓子を黙々と食べる白髪ロリは絵になるなと思ってただけだ。

決してそこにやましい気持ちなどない!

純粋な萌への探究心のみだ!

 

 

「おいおい、ナナシ!いつの間に学園のマスコット、塔城小猫ちゃんとお近づきになったんだよ!」

 

「昨日この街を案内してもらったんだよ。つか離れろ近い」

 

 

胸ぐらをつかみ悔し涙を浮かべるイッセー。こいつはどんだけ女に飢えているんだろうか。

そういえば朝、松田たちがイッセーがめちゃくちゃ美人な女の人と一緒に登校してきたとか言ってたはずだが………

 

 

シャーー

 

と、そこで水の音に気づいた。

どうやらこの部室はシャワーまでついてるらしい。

いや、ついてたところで入らないだろ、誰だよ入ってるの。

 

 

「部長、これを」

 

「ありがとう、朱乃」

 

 

と、部屋の端で黒髪の女性がタオルを渡していた。

 

 

「いやらしい顔…」

 

 

塔城の呟きにイッセーをみると鼻の下を伸ばしていた。

シャワーの音でこれなのか。

 

 

「まぁイッセーだしな。仕方ない」

 

「うるせぇやい!」

 

「変態」

 

「エロ魔人」

 

「鬼畜」

 

「全女性の敵」

 

「ねぇ君たち何か俺に恨みでもあるの!?」

 

「あらあら仲がよろしいですわね」

 

 

いえーいと塔城とハイタッチ。

当の本人は泣き崩れてしまった。

と、そこでシャワーの音が止まる

 

 

「ごめんなさいね。イッセーの家に泊まったからシャワーを浴びてなかったの」

 

 

そう言い、カーテンの奥から赤髪、いや紅い髪の女性が出てきた。

湯上りのせいか髪は湿っており制服に張り付いている。頬にも赤みが刺さっていた。

 

 

「………先輩も変態さんですか」

 

「そりゃ人並みは、な」

 

「………そうですか」

 

 

塔城にこずかれる。軽く痛い。

 

 

「全員揃ったようね」

 

 

紅髪の女性はあたりを見まわし、全員がいるのを確認したあと、俺たちに向き直る。

 

 

「ようこそ、オカルト研究部へ。私の名前はリアス・グレモリー。貴方達ふたりを歓迎するわ」

 

 

そう言うと、イッセーを含めた俺以外の背中から、コウモリのような羽が飛びだした。

 

 

「────── 悪魔としてね」

 

 

 

 

…最近のコスプレイヤーはホントにすごいな。

 

ってかやっぱりハブられてんじゃんか。

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

曰く、自分達は悪魔である。

曰く、悪魔は普段冥界、地獄で生活しており同じく冥界で生活している堕天使と覇権争いが行われている。

曰く、更にそこに神の命で、問答無用で悪魔と堕天使を消し去りに来る天使が天界、天国にはいて、まさに三竦みの状態である。

曰く、三種族は大昔の対戦でその数を減らし、悪魔側は打開策として人間を悪魔に転生させる技術を開発。

それを使い、イッセーは死にそうなところを悪魔に蘇ることで助かったという。

 

 

 

つまり、

 

 

 

「あの時のあの子達はレイヤーじゃなかったのか……」

「…そこじゃないと思います」

 

 

愕然とする俺に塔城からの鋭いツッコミが飛ぶ。

まぁそう言われた方がそこそこ納得なんだけどもね。

なんでレイヤーさんは空飛べるのに一般人は飛ばないんだろうかとか色々考えてたところだし。

そんな漫才をしつつも、ちらりとイッセーの方を覗く。

 

 

「…………」

 

 

と、やはりその表情は暗かった。

 

【天野夕麻】

 

イッセーに出来た初めての彼女で、少し前まで付き合っていた女の子らしい。

が、その正体は堕天使。イッセーに近づいた理由は彼を殺すため。

そしてその殺人現場に、俺は出くわしてしまったらしい。

 

 

「…辛いかもしれないけれど、これが現実よ。貴方も、理解が及ばないかもしれないけれど……」

 

「いや、俺の方は大丈夫だ。ちょっと訳ありでこういうことには慣れてるんでな」

 

「そ、そう……やっぱり変わってるわね」

 

 

最後のつぶやきは聞かなかったことにしよう。

 

 

「あの、」

 

 

と、そこでイッセーが口を開く。

全員の視線がイッセーの方へ向けられる。

 

 

「なんで、俺が殺されるはめになったんですかね、なにか理由があったんですか?」

 

「……そうね、まだそれを話してなかったわ。あなたが殺された理由はあなたが持っている特別な力によるものなの」

 

「特別な力?」

 

 

確かに、イッセーは見たところ普通の人のように感じる。

だが、実は隠された力というのがあるらしい。

 

 

「それは、見てもらった方が早いわね。

イッセー、貴方が1番強いと思うものを、その存在を真似なさい。弱くではなくて強く思うのよ」

 

「強く、思うもの………」

 

 

そう言い、掌を見つめるイッセー。

あ、どっかからか電波を受信したぞ。

 

イッセーはその両方の掌を上下に合わせて腰の方へと持ってくる。

その瞬間、俺の中で何故か熱いものがこみ上げてくる。

イッセー、お前まさか…!

 

 

「ドラゴン波!」

 

 

シーン…

 

 

勢いよく突き出された掌。そして何も起こらないことでプルプル震えるイッセー。

でも俺にはわかる。

イッセー、お前は男だ。

誰だって一度はやったことのあるそのポーズ、ドラグ・ソボールの主人公、孫悟空の必殺技。永遠の男の夢。

 

そしてそれをこの静かな部屋で、しかもみんなが見ている前で高らかと叫ぶお前のその姿勢…。

負けたよ、お前がナンバーワンだ。

 

 

「さぁ目を開けて。この部屋の魔力なら神器も容易に発言するはず」

 

 

カッ!!

 

 

「うぉぉぉぉおおお?!」

 

「な、なんだこれ!!」

 

 

リアス・グレモリーの言葉に呼応するかのように、イッセーの左腕が光り出す。

 

その光は部室全体を満たし、そして光がやんだその先には…

 

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁあ」

 

 

イッセーの左腕が赤い籠手で覆われていた。

試しに触ってみるが金属のように硬い。

どうやらマジで籠手が出てきたようだ。

 

 

「それが神器(セイクリッド・ギア)。一度発言すればあなたの意思で自由に出せるようになるわ。って七瀬くん、あなたは何してるのかしら??」

 

「ん?あぁ、俺にも出ないかなとドラゴン波を撃ってみてるんだが、んー、一向に出ないな」

 

「そ、そう」

 

 

素振りのようにドラゴン波を撃っているんだが、それらしいものは出なかった。

 

ボッ!

 

あ、ちょっとドラゴン波が出た。こっちは出るのかよ。

 

 

「…まぁいいわ。とにかく、貴女はその力を狙われ堕天使に殺された。そして、私の眷属として生まれ変わったのよ」

 

 

手に持っているのは、チェスの駒だろうか。紅く光っていて彼女に似合っているとは思う。

アレが悪魔に転生させる悪魔の駒《イーヴィルピース》ってやつなのだろう。

 

 

「改めて紹介するわ。祐斗」

 

俺たちを案内したイケメンくんが一歩前に出てスマイルを飛ばす。

 

 

「僕は木場祐斗。君たちと同じく2年生だよ。えーと、悪魔です。よろしく」

 

「………1年生。塔城小猫です。……悪魔です。七瀬先輩羊羹食べますか?」

 

「お、ありがとう」

 

 

貰った羊羹を一口食べて頂いたお茶を飲む。

うん、なんともMIYAVIな感じがいいよね。

 

 

「三年生、姫島 朱乃ですわ。一応、副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」

 

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくねイッセー」

 

 

そう言いリアス・グレモリーは笑う。

その顔は自身に満ち溢れており、カリスマ性が見て取れた。

なるほど、王を自称するのも頷ける。

 

 

「は、はい!!兵藤一誠です!えっと、いつの間にか悪魔になってましたけど、よろしくお願いします!!」

 

 

イッセーの方もそのカリスマ性に押されて改めて自己紹介をした。

いやぁ、何はともあれめでたしめでたしでいいのかな?

 

うん。本人達満足そうだしきっとそうに違いない。

 

良かった良かった。

 

 

 

「で、」

 

 

 

そう呟いたリアス・グレモリーの視線が真っ直ぐ俺を貫く。

や、やめろよぉ。そんな目で見るなよ。泣きたくなっちゃうだろ。

 

 

 

「あなたはいったい何者なのかしら?教えてくれるわよね?七瀬七志くん」

 

「………おぅふ」

 

 

 

どうやらまだまだオタク訪問は終わらないらしい。

 




七瀬七志くん。
説明会に少し眠くなってきた主人公。
因みにこの世界の有名なアニメは既に網羅している。
次回はナナシのターン!

兵藤一誠くん。
孫悟空に憧れる少年。
今回は彼メイン。


リアス・グレモリーさん
我らがオカルト研究部の部長。
原作見てて思ったけど、イッセーの家から帰って直ぐにシャワーを浴びれば良かったのでは?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

first strip

ナナシくん。脱がせます


「………………ふぅ、」

 

 

お茶を飲んで心を落ち着ける。

辺りには異様な静けさで満たされており、全員が全員、俺の言葉を待っているようだ。

 

 

「さて………話す前に」

 

 

あたりを見回す。

窓はあるもののカーテンが閉じらており外の確認はできない。

入ってきた扉も今は閉ざされている。

入ってきたときに確認したがここは2階。

周りにここ以外で人がいる気配はない。

 

俺は、静かに口を開く。

ゴクリと、生唾を飲み込む音が聞こえる。

 

 

「すんません、お茶のお代わりお願いできますか?」

 

 

ずっこけた。

それはもう使い古された芸風の様に綺麗に。

いや、正直オタクにこの手の緊張は厳禁なんだって。

あの咄嗟に声をかけられた時、教室で先生に質問を当てられた時、あの独特の雰囲気はオタクにとってまさに毒と言える。

喉が渇くのも仕方ない。

 

 

「……七瀬先輩真面目にやってください」

 

 

ごめんね塔城!!でもできる限り空気をソフトにしないとお兄さん持たないんだ。

 

 

「どうぞ」

 

「あ、どうも」

 

 

と、横から姫島さんが追加のお茶を用意してくれる。

うん、上手い。カティが煎れてくれるお茶も美味しかったけれどこの人が煎れるお茶も負けてはいない。

 

 

「さて、それじゃあ話してくれないかしら。流石に堕天使の光の槍を掴んでおいてタダの人間ですじゃ済まされないのは分かるわよね?」

 

 

そういうグレモリーさんの目がきつくなる。

うぅ、そういう目が苦手なんだがなぁ。

 

んー、この際ある程度ホントのことを話していいかもしれない。

その方が疑われなくて楽になりそうだ。

 

 

「まぁ、まず第一に俺は人間じゃない。それは確かだ」

 

「ではあなたは何者?あなたからはあまり変な気配を感じないんだけれども」

 

「俺は夜咬という種族だ。と言っても、俺もそこまで詳しいわけじゃない」

 

「どういうこと?」

 

 

首を傾げるグレモリーさん。俺は一度お茶で口を濡らす。

 

 

「俺も元は人間だった。とある事件が原因で人間をやめて、そこから夜咬になったんだ」

 

 

あの日、フィギュアにつられて変な工場へと連れていかれた日。

俺は人間から魔骸者になった。

ベットに縛られ、天羽から廃棄処分されそうになった時、俺を助けてくれたのが何を隠そう雫だったんだ。

 

 

「正確には夜咬の眷属になって、その後正式な夜咬になったんだけどな」

 

「…悪魔以外にもそうやって種族を増やす者達がいたのね。その夜咬というのはどういう種族なの?」

 

「基本的には、和風吸血鬼って言えば大体あってると思ってくれていい。

太陽の光が苦手で全身に光を浴びると消滅しちまう。

それ以外だとめちゃくちゃ長命らしいけどな。

身体能力だって人間以上だし、グレモリーさんが見たのはその夜咬の力だ。

吸血鬼と違うのはニンニクだとか十字架が弱点じゃないところ。

血じゃなくて人の生命エネルギーや過度な食事で賄えること。

それから服さえ来ていれば日中でも動けるところかな」

 

 

実際に吸血鬼を見たわけじゃないからなんとも言えないけれど、伝承とかアニメに出てくる吸血鬼との相違点だとこんな感じだろう。

 

 

「俺は、いや、俺と俺の主人。そして元々俺の仲間だったメンバーは魔骸者と呼ばれる人造の吸血鬼達を狩り、元の人間に戻すため戦っていた。

色々あって今は別れちまったが、それでも俺達は切っても切れない仲間だ」

 

 

と、こんなところだろうか。

話し終え倒れは再びお茶を飲む。

やっぱり長い間話すのは好きなアニメやゲームを語る時に限るな。

素面では辛い。

とはいえ、流石にアキバのことを話すとこの世界のアキバと相違点が出てしまうから伏せておく。

嘘は言ってないしな。

 

 

 

「夜咬…魔骸者…私の聞いたことない種族だけれど、それならあの力にも納得ね。

…ところでその魔骸者って聞いていると大した弱点もなさそうに聞こえるのだけど、どうやって戦っていたのかしら?」

 

「ん?いや普通に服を剥ぐだけだが?」

 

「ん?」「は?」「へ?」

 

 

真面目な雰囲気だった部室の空気が途端に軽いものへと変わる。

あれ?俺なんか変な事言ったっけ?

 

 

「…ごめんなさい。も、もう一度だけ聞いてもいいかしら?どうやって倒していたの?」

 

「だから服を脱がすんだよ。身ぐるみ全部」

 

「「「「………………」」」」

 

 

今度は黙り込んでしまった。俺はそんなに変なことを言っただろうか。

服を脱がさなきゃ倒せない敵だから脱がす。

当たり前のことだろう?

 

 

「……あなたもしかしてふざけてるのかしら」

 

「??なんでそうなるんだよ」

 

 

なんかお怒りのようだが、なぜだろう。

あ、まさかそんな芸当が出来るとは思われてないのかな?

まぁ脱がすとは言えそう簡単なものではないし、

最初の頃は俺も戦闘しながら脱がすって難しかったけな。

 

 

 

 

よし。ならば実践してみせるか。

 

 

 

イッセーside

 

 

ナナシが言ったことは俄には信じ難いものだった。

服を、脱がすだと!!??

見れば部長の顔にも青筋が浮かんでいる。

 

た、確かにふざけた戦い方だけどもしそれが本当ならなんて素晴らしい能力なんだ!!

もし本当なら俺はナナシに弟子入りを懇願しているだろう。

それほどやつの技は恐ろ…いや、夢とロマンで溢れている!!

 

 

(まぁ流石に冗談だよな。俺でもそんな巫山戯た戦い方しないぜ)

 

 

そうしてナナシの方を見れば、何故か目が合った。

 

「………」

「………」

 

ニコリと微笑むナナシ。俺もニコリと返しておく。

何故だろう、すごく嫌な予感が………

あのナナシさん?なぜ指をパキパキ鳴らしてるんでせうか??

 

 

「悪いなイッセー」

 

「………へ?」

 

 

その瞬間、ナナシの身体がブレる。

いや、比喩なんかじゃなく、本当にその場から、なんか残像のようなものを残し消えた。

あれ、なんか力が抜け………

 

 

バタン

 

 

俺の身体は重力に従う様にうつ伏せに崩れた。

な、何故…いや、それよりも。この肌に触れる感触、ゴワゴワと、しかし少し柔らかいこの感触は…絨毯!!そして背中を撫でる冷たい外気。

それらがまるで直に触れているかのような感触。

まさか!!

 

 

「って脱がされてるぅぅぅぅうううう」

 

 

マジか!?ホントにあの一瞬で脱がされた!?

ってか起き上がれないんだけど?

力が身体に入らない。なんだこれ?

 

 

「いやぁ悪いなイッセー。お前が一番脱がしやすそうだったんだ」

 

 

その声の方を見つめれば、ナナシが俺の服を持っている。

あ、どうやらパンツは残っているらしい。良かった。美少女達の前でアレなんか晒したらお婿に行けなくなるところだった。

 

 

「あなた…まさか本当に…!?」

 

「驚いたね。まさかこの僕でも動きを捉えきれないなんて」

 

「あらあら、凄いですわね」

 

「…神業」

 

「いや、なんかめっちゃ賞賛してるけど俺全裸だからね!?動けないからね?!ちょ、マジで動けない何しやがったナナシぃー!!!」

 

 

倒れた俺には目もくれず、みんな思い思いの感想を述べていく。

いや、ホント動けないんですけど?!どうなってんのこれ。

つか寒っ!!

 

 

「あー、普通の人間だと生命エネルギーを少し持ってくので終わるんだが、悪魔とかだと別のを持ってくのか?まぁなんにしても、ごちそうさん」

 

「あぁ、それは多分魔力ね。悪魔の力の源でもあるの。今イッセーからすごい量の魔力が抜けたわ」

 

 

はぁ!?それじゃあ俺の魔力?食べられちゃったのかよ!

それでこんなに身体がダルイのか?

服と一緒に魔力も持っていくって、それ考えるだけで悪魔キラーなんじゃないか?

 

 

「それにしても、本当に服を脱がす戦闘スタイルなんて驚いたわ。最初はなんの冗談かと思ったわよ」

 

「まさか。この場で冗談言う度胸は俺にはねぇよ」

 

「…結構言ってると思うのだけれど…まぁいいわ。七瀬くん。いえ、親しみを込めてナナシと呼ばせてもらうわよ?」

 

「あー、呼び方はなんでもいいぞ」

 

「そう、ならナナシ。あなた私の眷属にならない?」

 

 

!!

まさかナナシを眷属に誘うなんて!

 

い、いや俺もいまいち眷属ってのがよくわかってないけどそんなにホイホイ誘ってしまっていいものなのだろうか?

それとも、ナナシは部長から見ても凄い能力を持ってるってことなのだろうか?

俺も気づいたら脱がされてたし……

っていうかそろそろ誰か助けてくれないかな?

俺、指一本も動かせなられないからずっとパンツ一丁で床にうつ伏せ状態なんだけど………。

 

 

「あー、悪いな。眷属は無理だ。俺の主は1人だけだからな」

 

「まぁ無理強いはしないわ。私こそ自分の居ないところで私の眷属がスカウトされてたらいい気はしないもの。誇らしくは思うけれどね。

貴方、余程その主様を大切に思っているのね」

 

「あったりまえだろ?俺の命を二度も救ってくれた、俺の大切な仲間だ。裏切るわけにはいかないさ」

 

 

そう言うナナシの目は、どこか遠くを見据えながらも場数を踏んできた漢の目をしていた。

それだけでわかる。コイツは本当に心から仲間を思って信頼していたんだってことが。

いつもは軽い調子だけど、こんな顔もできるんだな。

 

 

 

※今イッセーくんは地べたにうつ伏せで這いつくばっています。

繰り返します。イッセーくんは地べたにうつ伏せで這いつくばっています。

大事なことなので二回言いました。

 

 

 

「でも、貴方にはオカルト研究部には入ってもらうわよ?

貴方が人外ってことはそこまで知られてないにしても、もう堕天使にマークされている可能性もあるわ。

ここだと堕天使の情報も、いち早く入手出来る」

 

「イッセーも居て塔城も居るんだ。断る理由はねぇよ。それにここは楽しそうだしな」

 

 

そう言ってニカッと笑う。

さっきまでの真面目な雰囲気や今のノリのいい雰囲気。どちらもナナシで、それがこいつのいい所だと、俺は思う。

本人も一度殺されかけて人間じゃなくなってる筈なのに、それでも俺みたいに悲観的になる理由(ワケ)でもなく現状を楽しんでいるようだった。

俺もこいつを見習わなくちゃな。

 

 

「そう、その返事が聞けてよかったわ。改めてよろしくねナナシ」

 

「あぁ、よろしく。部長さん」

 

「よろしくね、七瀬くん」

 

「うふふ、よろしくお願いしますね、七瀬さん」

 

「…よろしくお願いします、七瀬先輩。あと私のことは小猫でいいです」

 

「おぉ、木場も姫島さんもよろしく。それから小猫もな。俺のこともナナシでいいぜ」

 

「じゃあ僕もナナシくんって呼んでもいいかな?」

 

「あらあら、それでは私も」

 

 

ワイワイガヤガヤと部員達が会話に花を咲かせる。

本当は悪魔と吸血鬼みたいな人外らしいけど、今この光景を見たらホントにただの部活動のようだ。

あぁ、微笑ましい。美少女美女の微笑む姿は美しい。

うん、大変美しいんだけどもね………

 

 

「いい加減、誰か助けてくれぇぇええええ!!」

 

 

「「「「「あ、忘れてた」」」」」

 

 

どうやら本格的に忘れられていたらしい。

このことは絶対根に持つ。

根に持つからなぁ!!!!

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

ナナシside

 

「いやぁ、楽しかったな」

 

「…先輩はちょっと楽しみすぎです」

 

 

すっかり夜も深けた頃、俺と小猫は帰路についていた。

まさか悪魔とか堕天使とか、そんな超展開が待ってるとは夢にも思ってなかったわけで、俺としてはまるでアニメの世界に入ったような、そんな高揚感が消えないでいる。

 

なぁ、みんな。

これからまた、面白くなりそうだ。

お前らは何してるんだろうな。

 

そんなことを、遠い遠い星を見ながら思うのだった。

 

 

 

 

 

「ところで小猫くん?」

 

「なんですか先輩?」

 

「キミはどこまでついてくるのかな?確かキミの家はこっち方面じゃなかった筈だけど?」

 

 

昨日別れた時は確か逆方向に歩いていった気がするんだが…?

そういう俺をよそに、小猫は驚いたように少し目を見開いた。

結構無表情が多いから、珍しい表情だ。

 

 

「…部長に何も聞いてないんですか?」

 

「??特に何も聞いてないけど?」

 

「…そうですか、それじゃあ」

 

 

そう言ってクルリと振り向く。

その特徴的な白髪が、月光に照らされてより一層輝いて見える。

 

 

「本日付で先輩の家に住むことになりました。不束者ですがよろしくお願いします」

 

 

ペコリと会釈。完璧な45度会釈だ。

これはどうもご親切に。

 

 

 

ん?

 

 

「はぁぁぁぁぁああ??!」

 

 

〈ウルセェーゾ!ナンジダトオモッテル

〈スンマセンッ!!

 

 

「それじゃあ早く行きましょう。お腹も空きました」

 

「え、おいちょっと待てよ!!」

 

 

…ほんとに大丈夫なんだろか。

いや、妹もいたし、俺がなにか手を出すなんてことはないけれど。

しかし、小猫自身は不安とかないのだろうか。

部長のことだから、案外楽しんで企画したものかもしれないけれど。

 

ずかずかと先を行く小猫の後ろ姿を見つつ、これから起こることを想像する。

まぁ、でももっと楽しくなりそうだ。

そう思う自分が、確かにそこにはいた。

ならば、何も問題ないだろ。

 

 

 

 

 

「あ、そういえば先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「先輩が仲間になってくれて、嬉しいです」

 

 

……問題ない。多分、もしかしたら、、うん。

 

…見惚れるくらいは許して欲しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、家はそっちじゃなくてこっちだぞ」

 

「!?!?」

 

 

 

うん。大丈夫だと信じたい。

 




七瀬七志くん。
我らがシリアスブレイカーにして最強のアキバ神拳伝承者。
彼にかかれば素人の服を瞬き一つで奪い去ることなど造作もない。
「可愛い女の子(を脱がす)だと思った?残念イッセーでした!」

因みに眷属入りさせる案もありましたがボツとなりました。(使いにくいとか言えない)

使った技・ノーマルストリップアクション

兵藤一誠くん。
今回の被害者。
この後イッセーくんには毛布が渡されました。(だって動けない男子高校生に服を着せるのも…ねぇ)
神器とか悪魔とか色々あったのに、完全にナナシくんに食われちゃった可哀想な子。
強く生きてください。

塔城小猫ちゃん。
祝。メインヒロイン決定。
最後まで悩み続けた結果メインヒロインは彼女の手に。
ツッコミ役としても頑張ってもらいます。
彼女の活躍に期待あれ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大きいお友達はだいたい友達。

元々書いてた話を急遽番外編に回したので遅れました。
番外編は明日本編とともにだします。


「契約ですか?」

 

 

放課後、いつものように集まったオカルト研究部の部室にイッセーの声が響いた。

 

 

「えぇ、悪魔は人間と契約して対価を貰うものなの。昔は魔法陣を書いたりしてそれに悪魔が答えていたのだけれど、今はもうご丁寧に魔法陣を書く人間はいない。そこで私たちはチラシを配って望みのある人間が悪魔を簡単に呼びさせるようにしたの」

 

 

そう言って部長さんは魔法陣の書かれたチラシを出す。

ここ最近、イッセーはあのチラシを配る仕事をしていた。

最初は少しげんなりとしていたが、やっているうちにそういった表情も見せなくなっていった。

変態だけど根は真面目なんだろう。変態だけど。

 

 

「小猫に予約契約が二件入ってしまったの。両方行くのは難しいから、片方はあなたに任せるわ」

 

「は、はい!俺、頑張ります!!」

 

「ふふふ、いい返事ね。イッセーはいい子だわ」

 

 

そう言ってイッセーを抱きしめ頭を撫でる。

当のイッセーは鼻の下を伸ばしきっていた。

 

 

「ホント、イッセーはいい子なのだけれど………」

 

 

そう言い、呆れた目で見つめる。その先は……

 

 

「(  ゚∀゚)ハァーハッハッハッハ!! 誰か俺の速さに追いつけるものはいないのか…!!」

 

「くっ…流石だねナナシくん。だけどその1位、僕が貰う 「……えい」 っ小猫ちゃん!?その赤甲羅はナナシくんに打つものじゃ…!」

 

「あらあら、でもごめんなさい。雷もいきますわよ」

 

「あ、あはは。まいったな…はぁ」

 

 

「…何をしてるのかしら」

 

「何をって決まってるだろ!マリ〇カートだ」

 

 

そう言って手持ちの画面を見せる。

まぁはい。俺たちですよね。

だって暇だったんだもん。

 

 

「やりますか?」

 

「やらないわよ!」

 

 

ありゃりゃ、拒否されちった。

あ、因みに今やってるのは3d〇のやつで、小猫以外の他のメンバーの3d〇は俺の物だ。

複数持ちは何かと便利だよな。ポ〇モンの交換とか

 

 

「まぁこれがファイナルラップだから小猫の仕事までは間に合ッ…!この先を読んだ緑甲羅の狙撃…まさか!」

 

「ふふふ、よそ見してる暇などありませんよ。ナナシくん」

 

「やっぱり姫島先輩か。アンタならここまで来ると思ってたぜ」

 

「ふふふ、逃がしませんわよ」

 

「だがこのまま振り切らせてもらうぜ!気づいているか?俺はこのレースが始まってから1度もアイテムを使っていないっ!!」

 

 

その瞬間、俺の機体は一瞬にして速度をあげる。

姫島先輩との距離がどんどん離れていく。

 

 

「アッハッハッハッハッ!!一位は貰ったァ!」

 

「あらあら…………逃がさないと言いましたわよね?」

 

「なにっ!?」

 

 

離れていた距離が、見る見るうちに縮まっていく。

まさか!

 

 

「私もキノコを持っていたんですわ。気づきませんでした?」

 

「くっ、やりやがるぜ」

 

 

そうしてコースは最終カーブを曲がる。

後はゴールに向けての直線のみ。

技量と技量。己の腕をかけたラストスパートだ。

 

 

「うぉぉぉおおおおおおお!!」

 

「はぁぁぁあああああああ!!」

 

 

両者スピードば互角。僅かな差で俺がリードしている。

この勝負、負けられない。

 

 

「勝つのは、俺だ!」

 

「……いいえ私です」

 

 

姫島先輩以外の声に、ふとマップを覗く。

だが気づいた時にはもう遅い。

俺の上には羽の生えた青甲羅。名をトゲゾー。

一位を殺すためだけに作られた最強の下克上アイテム。

 

 

「しまっ…!」

 

 

姫島先輩が慌ててハンドルを切るが、もう遅い。

 

どぉぉぉぉおおおん…

 

爆発音と共にドーム状の青い炎が巻き起こる。

 

 

「……最後まで手は取っておくべきです」

 

 

その声の主は…小猫!!

まさか3位になるまで青甲羅を抱えているとは……

だが、まだ甘い。

 

 

「っらぁぁあ!!」

 

「青甲羅を躱したした…!?」

 

「ふっふっふ、誰もキノコが一つなんて言ってないだろ?」

 

 

そうしてそのままゴール。

1位は俺。2位が小猫。3位は姫島先輩。木場は一つ遅れて5位だった。

木場は大人しがったがあんまりゲームはやらないのかな?

 

 

「……終わったかしら?」

 

 

おっと、忘れてた。

部長さんは青筋を立てて腕組みしてらっしゃる。イッセーはその後でアワアワしていた。

おぉう、オーラが凄い。なんか迸ってる

 

 

「まったく、やるなとは言わないけど次に契約者が待ってるのよ?朱乃も、何熱くなってるのよ」

 

「うふふ、ごめんなさい。ナナシくんがあんまり強いものですから、つい」

 

 

頬に手を当て微笑む姫島先輩。しかし、ホントに強かった。頭数が足りなかったから誘ったのだが、ありゃ普段から結構やり込んでるな。

 

 

「はぁ……まぁいいわ。結果的に時間には間に合ったわけだし。ところでナナシ、このあと時間は空いてるかしら?」

 

「ん?このあとは特に予定は無いが?」

 

 

そう告げると「そう」とニコニコ笑う部長さん。

なんだろう、背筋に薄ら寒いものを感じるのだが、気のせいだよな?

そんな俺の肩を、部長はガッシリっとつかむ。

 

 

「ナナシ。貴方には小猫についていって契約をとってきて貰うわ。拒否権はないわよ?」

 

 

そう言って誰もが見惚れる絶世のスマイルで死刑宣告されたでござる。

 

orz……!

 

 

 

〜〇✖□△〜

 

 

「んで、なんで俺は自転車を漕いでるんでしょうかね?」

 

 

もう普通の人なら家に帰って晩御飯を食べ終わり、そろそろ寝るかと風呂に入っているであろう時間、俺は小猫荷台にのせ自転車を漕いでいた。

 

 

「…転送用の魔法陣は眷属しか使えないので、しょうがないですね」

 

 

そう言う小猫さんは随分楽そうですね。

まぁ女の子に漕がせたりしないけども。

 

 

「…つきました」

 

 

お、もうか。

見たところフツーのアパートって感じだ。

悪魔を呼び出すって聞いたからもっとそれらしい洋館とかだと思ったんだがな。

 

自転車を止めて階段を上っていく。どうでもいいけど玄関から現れる悪魔ってどうなんだろう。

 

そんなこと思っていたらもう契約者の部屋の前に着いた。

小猫チャイムを押す。ぴんぽーん。

 

 

「…こんばんは。悪魔グレモリーの使いの者です」

 

『ん?今日は魔法陣の中からじゃないのかい?』

 

「…今日は少し事情がありまして」

 

『まぁいいよ。こうして小猫ちゃんが来てくれるならなんでも構わないさ。今開けるね』

 

 

スピーカーから聞こえてきた声は男の声。

どうやら小猫の常連さんみたいだ。

少し待っているとガチャという音とともに扉が開く。

 

 

「いやぁ、待ってたよ。今日は着てもらいた」ガチャカチ

 

 

閉まった。ついでに鍵も。

 

 

「「………………」」

 

 

おい、これどうすんだよ。

どうしたらいいの?え?俺のせい?

 

 

ぴんぽーん

 

「…こんばんは。悪魔グレモリーの使いの者です」

 

 

おぉう、そこからやり直すのか。何気に強い心臓してるよな。

 

 

『ちょ、誰だいそこの男!!僕は小猫ちゃんを呼んだんであって野郎を呼んだつもりは無いぞ!』

 

「…協力者です。今日は見学に来ました」

 

『きょ、協力者?見学ぅ?』

 

「はい。森沢さんとの契約状況を見てもらうのが1番と思ったので」

 

 

お、うまい。さり気なく持ち上げた。

 

…………ガチャ

 

 

「……ほんとかい?」

 

「はい。本当です」

 

「そ、そうか!!いやぁまさかそこまで悪魔さん達に思われてるとは思わなかった。ハッハッハ。

キミもよく見ておくといいよ!」

 

「はい。ありがとうございます。森沢さん」

 

「うんうん!それじゃ中に入ってくれ。お茶も用意しよう」

 

「ありがとうございます。失礼します」

 

「…失礼します」

 

 

そう言って中に入る。森沢さん、チョロい。

 

 

 

 

 

 

中に入って俺は唖然とした。

何故かって?見ただけでこの部屋が戦士の部屋だってことがわかったからさ。

壁に貼られたポスター。

ガラスケースの中に陳列されたフィギュア達。

本棚に並べてある漫画、DVD達。

その他にも、部屋の隅済みにグッズが目立つ。

しかもそのどれもが、ただのグッズではない。

これらは全て彼の魂の結晶だ。

彼が生涯をかけて集めた宝物。

年代の違いや保存状態の良さから、彼がこれらの為にどれだけ費やしてきたかがわかる。

 

 

「君は……泣いているのかい?この部屋を見て」

 

 

気づけば俺は泣いていた。

久しぶりに見たんだ、同士を。

この世界に来て、久しく感じていなかったこの感じ。

同じものを追い求め、時には奪い合い、時には譲り合い。笑い、泣き、叫ぶ。そんな熱の篭った人間が作りだした理想郷。

探求者(オタク)の魂の結晶を。

 

 

「森沢さんッ!!俺は感動した!アンタは本物の、戦士だ」

 

「〜〜ッ!!君は、分かってくれるのかい?この部屋の素晴らしさが」

 

「あぁ!わかる。わかるよ!この部屋は、アンタの理想郷だ!アンタの夢と希望と人生の詰まった、最高の理想郷だ!!」

 

 

俺の言葉に、森沢さんの頬を涙が走る。

分かるに決まっている。

俺だってそうだからだ。

フィギュアを求めて人外に改造されちまうような大馬鹿野郎だ。

でも、大馬鹿野郎だからこそ、この部屋の素晴らしさを理解してやれる。

俺たちは、気づけば握手していた。

涙を流しながら、それでも固い握手を。

言葉はいらない。

お互いの趣味(人生)を理解し合ったのなら、

 

それはもう、仲間だ。

 

 

「君に会えてよかった。さっきはすまなかった、ぞんざいに扱ってしまって」

 

「いや、気にしなくていい。俺達はもう、仲間だからな」

 

 

そう言って笑い合う、そんな些細なこと水に流すさ。

俺たちの友情はそんなことでは壊れたりしない。

 

 

「……そろそろいいですか?」

 

 

と、その声に振り向けば…白い目でこちらを見る小猫の姿。

あっ…やっちまった。

今日は小猫の付き添い出来てるんだった。

俺ばかり盛り上がってしまった。

 

 

「ごめんな、小猫。もう大丈夫だ」

 

「そうですか、それじゃあ森沢さん。今回の依頼内容を教えてください」

 

「あ、あぁ、そうだね。今回の依頼内容は……これさ!!」

 

 

そうして取り出したのは…制服。

でもただの制服じゃない。

長〇有希のコスプレ制服だ。

 

 

「森沢さん。あったって人はっ!」

 

「君も長〇派だろ?見ていればわかる。小猫ちゃんは雰囲気も似ている。

彼女がこの服を着ている姿が見たくないかい?」

 

「超見たいです!!」

 

 

行き良いよく首を縦に振る。

物静かで無表情な小猫には長〇の制服が良く似合うことだろう。

本人もめちゃくちゃ美少女だし、そこらのレイヤーの引けを取らない筈だ。

 

 

「………はぁ、」

 

 

盛り上がる俺達をよそにため息をつく小猫。ごめんね!でも許してヒヤシンス。

 

 

それから俺たちは小猫の長〇コスを鑑賞し、更には俺が新しくコスを取り出し、満更でも無くなってきた小猫の撮影会をしたり、アニメ鑑賞会なんかを開いたりした。

 

 

 

あ、因みに契約はちゃんと成功した。

それと、個人的にまた遊びに来いと言われた。

今度は彼を俺の部屋に招待するのも悪くない。

 




ナナシくん。
携帯ゲーム機は常に鞄に持ち歩いてる系主人公。
据え置きでの対戦でも、人数分のテレビとゲーム機を用意する筋金入りのゲーマー。
因みにまだ本気を出していない。

今回は森沢さんという同士を見つけた。やったねナナシくん。同士が増えるよ!


小猫ちゃん。
ゲームとかは人並みにやる系ヒロイン。
ナナシくんとの共同生活から、よく対戦しているため最近はメキメキと実力を伸ばしている。
ナナシくんと一緒にアニメを見たり、マンガを借りたりしているので最近はオタクの道に片足を突っ込みつつある。


姫島先輩。
実はゲームとかよくやる系女子。
ドSな性格から対戦ゲームでは鬼と化す。


木場くん。
不憫。



森沢さん。
戦士。ナナシくんの新しい同士。
原作ではイッセーが彼のところに行ったけど、どうしてもナナシくんと合わせたかった。許してヒヤシンス。


イッセーくん。
契約初日だと張り切った彼。
魔法陣のが使えないなどトラブルもあったけれどそれにめげずに向かった先はとあるマンション。
意気揚々とインターホンを押す。
「悪魔グレモリーの使いの者ですが、呼び出された方のお宅で間違いないでしょうか?」
「はーい。いま開けるにょ」

その後、彼の姿を見た者はいない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 白の日常 その1

前回本編も一緒にあげると言ったな。
あれは嘘だ

いや、すいません。リアルが忙しくて作業が遅れてます。
ごめんなさい


小猫side

 

 

「ふぁ……」

 

 

朝、カーテンから差し込む陽の光に起こされます。

短く欠伸。

そしてあたりを見渡します。

 

 

「……流石に人の家というのも慣れましたね」

 

 

先輩、ナナシ先輩の家に住み着いてもう1週間が過ぎました。

最初は男の人と同棲ということもあり、私なりに緊張もしていたのですが…

やはりそこはナナシ先輩の出す独特なオーラというのでしょうか?

その雰囲気の影響でいつの間にか素の自分で接することが出来ていました。

本人はどうしようもないオタクですけれど…

 

それから意外にもナナシ先輩は紳士でお風呂の取り決めなんかも進んでしてくれました。

まぁ家が大きくてあまり心配もいりませんでしたけど……なんでこの家1階と3階にお風呂があるんですか。しかもすごく大きな。

他にもゲームルームや漫画ルーム。映画ルームなんてのもあったりするです。

一般家庭の、しかも一人暮らしの高校生が住む家じゃないと思います。

 

とにかく、ナナシ先輩には謎が多いです。

 

私は、軽く伸びをし、部屋の鏡で軽く髪を梳かしたあと部屋を出ます。

私の部屋は3階なので目的の1階へ行くには少し降りることとなります。

階段を降りている最中、鼻腔をくすぐるいい匂いが漂ってきました。

これが問題の謎、一つ目です。

 

 

「お、小猫おはよう。朝飯はもう出来てるぞ」

 

 

そういう先輩は眼鏡をかけ、パソコンを開いていました。

その横にはコーヒーと、まるでタワーのように積み重なったサンドイッチ。どうやら待たせてしまったようです。

 

 

「…おはようございます。先輩。すいません、お待たせして」

 

「いやいいさ。丁度作業も終えたところだしな」

 

 

そう言ってパソコンを閉じる先輩。あ、眼鏡も外してしまいました。

朝のこの時間しか見れないのでもう少し見ていたかったのですが残念です。

 

…………なにか自分が変なことを口走った気がしますけど気のせいですね。

とにかくこれ以上待たせては行けないので朝ご飯にしましょう。

 

先輩は私が席に着くのを見て手を合わせます。

私もそれに続いて手を合わせます。

 

 

「「いただきます」」

 

 

そうして私はサンドイッチを口に運びます。

中にはシャキシャキのレタスとトマト。それからこれは炙ったチキンでしょうか……

多分自家製であろうマスタードもいいアクセントになっていて、しつこくなく、朝の食事に適しています。

 

流石に先輩程多くは食べれませんが。

私も、この体型の割に食べるほうだと、恥ずかしいですがそう思います。

それでも先輩の食べる量は異常です。

別に汚く食べている訳では無いのにあぁも早く無くなっていくサンドイッチを見ると、やはり魔法かなにかなのでは?と思ってしまいます。

 

そして何より、このサンドイッチがナナシ先輩の謎その1です。

先輩は料理がすごく上手なのです。

一緒に住み始めた初めての日に知ったことなのですが、なんでも元々妹さんと二人暮らしで料理は先輩が担当していたらしいのです。

しかし先輩が今の体質になって物凄く燃費が悪くなり、しかも行きつけの喫茶店の料理はそんなに美味しい訳では無い。

そこで料理を一から勉強し直したそうです。

先輩の境遇はあの後も少し聞きましたが、先輩は完全に被害者でした。

それでも明るく前向きに過ごしている姿を見ると、少し羨ましくも思えます。

能天気とも言えますけど。

 

 

「ごちそうさん。それじゃ俺は準備してくるわ」

 

「あ、はい。食器は洗っておきます」

 

「おー、いつも通り終わったら置いといてくれ」

 

 

そう言って先輩は自分の部屋に入っていきました。

この家では家事は分担して行うようにしています。

最初は先輩も私も自分が負担すると言って聞かなかったのですが、最終的に分担して行うことになりました。

大体は当番制で日毎に交代して行うのですが、料理は先輩が、その後の後片付けは私がしています。

先輩の料理が美味しすぎるのが悪いんです。

 

お皿を洗った後は私も準備をします。

先輩は紳士なので制服に着替えてる時も覗いたりしません。

前に間違って着替え中に鉢合わせした時も床に穴が開くほどの勢いで土下座していました。

ただ、顔は赤かったので、別に私に女としての魅力がないとか、そういう話ではないようです。

………別に女としての魅力があってもなくても変わりませんね。

何を言ってるんでしょうか私は。

 

と、先輩を待たせても行けません。

私は手早く準備を終えて玄関に向かいます。

 

玄関ではもう先輩が準備を終えて待っていました。

お気に入りのパーカーの上に制服のブレザーを羽織っています。お気に入りの格好らしいです。

 

 

「んじゃ、行くか」

 

「はい。先輩」

 

 

「「いってきます」」

 

 

そう家に告げ学校へ向かいます。

これがいつもの朝の流れです。

それからは一緒に登校します。

最初は嫌じゃないかとも聞かれましたけど、ナナシ先輩はなんというか、気を使わずに話が出来るので私としても話すのが楽しいです。

 

とはいえ、流石ナナシ先輩と言いますか、登校も一筋縄ではいきません。

というのも………

 

 

「あ、お婆さん。それ持ちますよ。何処までですか?」

 

 

道行くお婆さんの荷物を運んだり。

 

 

「ほーら怖くないよ〜。降りといで〜」

 

 

降りれなくなった猫を助けたり。

 

 

「きゃー!ひったくりよ!」

「任せろッ!!」

 

 

果てはひったくり犯を捕まえたり。

 

まぁ何が言いたいかというと、ナナシ先輩は困っている人を見捨てられないみたいです。

これも以前のお仲間さん達の影響らしいのですが、自警団として街をパトロールしていた時のことが癖になってしまって、人助けが趣味のようになってしまったらしいのです。

これもナナシ先輩の謎の一つです。…いえ、美徳でしょうか。

 

でも、そんな先輩も素晴らしいと思います。

まだ先輩と出会って数日しかたっていませんが、先輩の人となりは理解できました。

超がつくようなオタクですけど、凄くお人好しで、物事をいつも楽しんでいて、変なところ紳士的で本人はそんなことないって言いますけど、すごく優しいくて、まるでお兄さんのような人です。

 

そういえば先輩には妹さんがいると言っていました。

妹さんのことを話す時の先輩は凄く楽しそうで、世間一般ではああいうのをシスコンというのでしょう。

聞いている分だと、その妹さんもブラコンのようですけど。

でも、先輩がお兄さんならなんとなくわかる気もします。

頼り甲斐があって、優しくて、まるであの頃の姉様のよう。

 

 

…………黒歌姉様…今一体どこにいるんでしょうか。

私は、姉様がいるだけでよかったのに、それだけで幸せだったのに、

力に飲まれた姉様は、姿を消してしまいました。

私を捨てて。

 

先輩も、いつかそうやっていなくなってしまうのでしょうか?

 

 

 

 

「おーい。小猫ー?小猫さーん?」

 

「………」

 

「おかしいな。おい小猫。ほっといたのは悪かったから機嫌直してくれよ」

 

 

「……?、ナナシ先輩?」

 

「おぉ。良かった。やっと気づいてくれ ーーー どうした?なんかあったか?」

 

 

…ッ!!

そういう、察しがいいところも、姉様にそっくりです。

 

 

「……大丈夫です。なんでもないですよ?」

 

 

あぁ、私はちゃんといつも通りの顔が出来ているでしょうか。

先輩は少しの間真面目な顔で私の顔を見つめていましたが、やがて「そっか」と呟きまたいつもの笑顔に戻りました。

 

多分バレているのでしょう。

それでも言わないのは、多分私から話すのを待っていてくれてるんだと思います。

 

 

「………でさ、そん時の主人公がすげぇかっこよくてさ。ドリルは俺の魂だって生身で敵のボスに殴り掛かるんだぜ?ロボットアニメなのによ。あれには痺れたね………」

 

 

先輩は変わらず楽しそうに話しています。

 

 

大丈夫です。

いつかちゃんと話します。

だから、先輩。待っていてください。

それまでは、先輩を見習わさせて下さい。

私も先輩のように、自分の境遇にまけず、笑っていられるように…

 

 

 

そう心に誓い、先輩と一緒に学校へと向かいます。

とりあえずは、今日をめいいっぱい楽しみましょう。

 

そうすれば、いつか先輩のようになれますよね?




小猫ちゃん。
番外編の主人公。
ナナシくんの独特な雰囲気が気に入っているご様子。
気持ちに気づくのはいつになることやら。


ナナシくん。
今回はサブ。
割となんでもできるハイスペック主人公。
ただしオタク趣味と妹が絡まない限り人並みかそれより少し出来る程度。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

金髪とシスターさんの組み合わせはまさに黄金コンビだと思うんだが?

日にちが空いてしまって申し訳ない!!
徐々にではありますが連載再開します。



ダンガンロンパV3やりたい(1.2リロードやりながら)


契約、もとい熱い討論会から数日がたったある日の朝。俺は珍しく一人で登校していた。

 

というのも小猫は今日日直らしいのだ。真面目だねぇ。

そういうわけで、朝早くに出ていってしまったため今日は久しぶりの一人登校というわけだ。

はいそこ、ボッチとか言っちゃったキミ。後で職員室に来なさい。

 

と、そこで見覚えのある後ろ姿を見つける。

 

 

「よぉ、イッセー。おはよう」

 

「あぁ……ナナシか…おはよう」

 

「…随分やつれてんな。なにかあったのか?」

 

「昨日、また指名が入ってな」

 

「……あぁ、例の」

 

 

イッセーも色々あった。

初契約の日に気合い入れて行ったはいいものの、まさかの転送魔法陣が使えないというトラブルが発生。

なんでも魔力が足りないらしい。

結局、自転車で契約先まで行ったらしい。

わかるぞイッセー。俺も自転車で契約しに来る悪魔ってどうなのってずっと思ってたからな。

 

更にはその契約先がまずかった。

遥々自転車を漕いで行った先で待っていたのは、なんと2mを超えんとする世紀末覇者。

その身に纏うのは別に肩ギザギザのピッチりスーツとかではなく、なんと魔法少女のコスプレ。(しかしピッチピチ)

 

契約は取れなかったらしいが、アンケートでは「また来て欲しい」など前代未聞の成果を収めたらしく、部長も頭を痛めていた。

 

アキバにもいろんなレイヤーさんがいたが、写真だけで殺しに来てるようなレイヤーを見たのは初めてだった。俺のオタク道もまだまだってことか。

 

そういえば木場が

 

「兵藤君にはそういう感じの人に選ばれる魔力があるんだろうね」

 

と爽やかスマイルで言っていたが…うん。類は友を呼ぶって奴だな。

 

 

 

 

 

「はわう!」

 

後方からのソプラノボイスに振り返る。

そこには大の字で顔を倒れている少女の姿が。

が、大事なのはそこではない。

その少女の出で立ち。

圧倒的な清楚感。

穢を知らず、欲を抱かず、渾身的であり慈愛を振りまく、ある種の理想の極言。

 

 

「あうぅ。何故転んでしまうんでしょうか…」

 

 

シスターさんがそこにはいた。

 

 

いや、いたじゃない。早く助けないと。

とりあえず、見惚れていた俺とは逆に先に動いていたイッセーに少女を任せ、俺は倒れた荷物の方を拾っていく。

お、結構重い。

 

 

「大丈夫ッスか?」

 

「ふぇ?あ、ありがとうございます」

 

イッセーが手を取ってシスターが起き上がる。

 

シスターさんが起き上がった瞬間、風でヴェールが飛んでいく。

ヴェールで隠されていた髪は風で靡き、美しい金髪がキラキラと光る。そして翠色の瞳と相まって、彼女の持つ清楚感を何倍にも跳ね上がらせていた。

なんていうんだろう、the シスター。

彼女はシスターになるべく生まれてきた様な、そんな気がした。

 

と、ヴェール返さないとな。

 

 

「ほらこれ。飛んで行っただろ」

 

「はぅ、ありがとうございますぅ」

 

「あ、えっと、その」

 

 

イッセーはというと、完全に見惚れて動揺していた。分かる。わかるぞイッセー。

思えば宗教関連の人を見たのなんて闘技場にいたアントワネットさん以来な気がする。

…いや、あれは宗教ってわけでもないか。

 

なんにしろ、あの擬態完璧オカマさんしかそれぽいものを見てなかった俺があぁなったのだ。

最近は世紀末覇者漢ノ娘しか見てなかったイッセーにとってはそれこそ砂漠の中のオアシスにも等しいだろう。

 

 

「あの、お連れの方はなんで涙を流しているんでしょう?どこか怪我でもなされているんですか?」

 

「あーある意味心の方に深い重症を負っててな。大丈夫。君を見てたら多分そのうち治るから」

 

「そ、そんな病気があるんですか?!

わ、私でお役に立てるなら」

 

 

信じちゃったよこの子。純粋だなぁ。

そんなに純粋だと、お兄さんいけない気持ちに……まぁなりませんけどね。

えぇ。妹に誓ってなりませんとも。

 

 

「ハッ!俺はなにを?」

 

「おぉ、帰ってきたか」

 

 

どうやらイッセーも無事に冥府の底から帰還したらしい。

ところでシスターさんは何故こんなところに?

旅行、ってのは考えにくいよな。修道服だし。

ってことは普通にお仕事とか?

 

 

「はい!そうなんです。実はこの町の教会に今日赴任することになりまして……あなた方はこの町の方なんですね。これからよろしくお願いします」

 

 

ぺこりと頭を下げる。

彼女からはレイヤーさんとは違う、本物の熱を感じる。

レイヤーさんはレイヤーさんで独特の熱というか雰囲気を感じるんだけどね。

でも彼女は本物のシスターだとはっきりわかった。レイヤーさんじゃない本物の婦警さんに何度も追いかけ回された俺が言うんだから間違いない。

 

 

「この街に来てから困っていたんです。その…私って、日本語うまく喋れないので…道に迷ってたんですけど、道ゆくみなさん言葉が通じなくて…」

 

 

イッセーが言葉を理解出来てるのは悪魔の力の一つらしい。

なんでも悪魔に転生するのは人間に限ったことではないらしく、音声言語だけならどんな国の言葉でも話せるし、どんな国の言葉でも聞き取れるようになっているんだとか。便利だねぇ。

俺?米版ゲームをするために鍛えた俺の英語スキルを舐めちゃいけないよ。ストプリ海外版だって聞き流しして理解できるレベル。

 

と、そんなことを考えていると話はどんどん進み、どうやらシスターさんを教会まで案内することになったようだ。

どうでもいいけど、ドジっ子シスターって王道でいいよね。

 

 

「それじゃ行こうか。」

 

「ほ、本当ですか!あ、ありがとうとございますぅぅ!これも主のお導きですね!」

 

と天に祈りを捧げてた。

それだけで神々しいオーラが幻視できるほど、彼女は本当に神様を信じているんだろう。

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁん」

 

教会に向かう途中の公園で子供の泣き声が聞こえてきた。

お母さんらしき人があやしているが泣き止まない。どうやら転んだようだ。

 

俺はその場から一歩飛び出し少年に駆け寄る。

が、それより先にシスターさんが駆け寄って行った。

シスターさんは少年の元で膝をつき目線を合わせニコリと微笑んだ。

 

 

「だいじょうぶ。男の子ならこのぐらいのケガで泣いてはダメですよ」

 

 

言葉は通じていないだろうが表情は優しさに満ち溢れていた。

 

シスターさんが自身の手を子供の怪我にあてると、淡い光がみるみるうちに怪我を治していく。

数秒もしない内に怪我は元通り治ってしまった。

 

あまりに現実離れした現象に俺もイッセーも面食らってしまう。

俺も怪我の治りはめちゃくちゃ早いけど、人の怪我を治すことは出来ない。

出来るとすれば多分……

 

 

「…その力……」

 

「はい。治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」

 

 

神器。ってやつなんだろう。

イッセーを見るとどうやら向こうもそれに感ずいているようだった。

ただ、素敵だという割にはどこか寂しげな表情を浮かべているのが少し気になった。

 

 

 

キーーンコーーンカーーンコーーン

 

 

 

「あ」

「やっべ」

 

 

チャイムが鳴る。どうやら遅刻してしまったらしい。

とは言え、まだ一時限目までは時間がある。

今から全速力で行けば間に合う。

 

 

「俺は今から学校に行く。先生に話も付けとくよ」

 

「任せたぜナナシ!!うまい言い訳考えといてくれ!」

 

「任された!お前はちゃんと送り届けろよ!」

 

 

そう言い、脚に力を込め思いっきり跳ぶ。

身体は宙に浮き、屋根の上へ。

そのまま屋根を伝って更に跳ぶ。

こういう時、身体能力が高いのはいいよね。振り切るぜ!!

あ、太陽近くて気持ち悪い。

 

 

 

 

「お連れの方は本当に人間なんでしょうか?」

 

「あ、あははは……どうだろうね」

 

 

そんな会話が聞こえた気がした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺何もしてねぇ

「もう教会には近づいちゃダメよ」

 

 

その日ちょっと遅れて部室に行くとイッセーが部長さんからめちゃくちゃ怒られていた。

なにを言っているか分からねぇ(ry ……なんてことはなく、大方今日会ったシスターさんの事だろう。

よく考えなくても悪魔が教会に行くのは不味いよな。

まぁ俺もあとから思ったわけだけども。俺も怒られちゃったりとかするんだろうか。やだなー。

 

 

「やぁ、ナナシくん。こんばんわ」

 

「よ、木場。まだアレかかりそうか?」

 

「あーまぁね。下手したら戦争とかにもなってたかもしれないから」

 

 

マジかよ。そんなに物騒なの教会って。

 

 

「まぁ早々そうなりはしないんだろうけど。…そうなれば僕としても好都合なんだけどね」

 

「ん?悪い最後の方なんて言ってるか聞こえなかった」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

なにやら木場から不穏な空気を感じた気がしたんだが、気の所為だったらしい。

いつもの爽やかイケメンな木場だ。

ってかさっきの俺なんか難聴系主人公ぽくなかった?

 

 

「ところでこのあと一勝負どうだい?やっぱり速さで負けるって言うのは悔しくてね。

あれから僕も少し練習したんだ」

 

「お、いいねぇ。かかってこ 「部長」 どわっ」

 

 

木場からの勝負を受けようとしたところで突然後ろから突き飛ばされる。

いや、ドアの前にたってた俺も悪いけどさ、そんなに勢い良く開けなくてもいいじゃない。

 

開けたのはどうやら姫島先輩のようだ。

あらあらごめんなさいとこちらに微笑むが、その顔はすぐにキリッと真面目な顔に変わる。

何かあったのだろうか。

部長さんも説教をやめてこちらを見つめていた。

てかまだ続いてたのか。

 

 

「どうしたの?何か問題?」

 

「はい。実は、大公さまからはぐれ悪魔の討伐任務が届きました」

 

 

はぐれ悪魔??はぐれメタルの親戚??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔。

 

もちろんはぐれメタルの親戚なんかじゃなく、読んで字の通り、はぐれた悪魔の総称らしい。

曰く、主を裏切り、または殺し『主なし』の状況に置かれ逃亡した悪魔のことを指すそうだ。

この状態の悪魔は非常に危険で、己の欲のため一般人を襲うこともあるらしい。

そのため、見つけ次第報告と消滅ってのが鉄則となっているそうだ。

 

 

「「血の匂い…」」

 

 

件のはぐれ悪魔の根城に向かう途中、あまりの匂いに俺と小猫が鼻を抑える。

鉄錆のような、それよりももっと生物じみた嫌な匂いが漂っている。

うぇ、吐きそ。

 

 

「夜咬は嗅覚もいいの?」

 

「まぁな。五感は普通の人間よりいい。にしてもこれは……うぇ」

 

「…何日も置かれた腐った匂いがします」

 

「そう。みんな、各自警戒態勢でいくわよ」

 

「「「了解」」」

 

 

そうして根城にしてるという館にはいる。

そこにいたのは、

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?あまいのかな?苦いのかな?」

 

 

出てきたのは上半身女性、下半身四足歩行の化け物だった。両手には槍らしき獲物を持っている。

しかし、驚くべきはそこではなかった。

 

 

「は、裸だと…ゴクリ」

 

 

そう、相手が裸なのだ。

いや、イッセー。流石にあの化物まで守備範囲に入るのはどうかと………いや。しかしよく見れば案外そんなことはなんか行けそうな気がしてきた。まって、なんか開きそう。

 

まぁそんなことは置いといて。相手が裸なら俺が出る場がない。

今回は大人しく見学しよう。

 

 

「はぐれ悪魔バイサー。主の元を逃げ、己の欲を満たすためだけに暴れ回るのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪のように、鮮血に染めてやるるわぁぁあ!」

 

 

部長さんの言葉に化け物ーーーバイサーは激昂する。

こういってはなんだがどっちもどっちで王道なセリフである。

 

バイサーはその巨体の割には素早く、手に持つや槍で部長さんを穿とうと振りかぶる。

が、当の部長さんは意に求めず、こちらに振り返る。

イッセーはアワアワしているが、俺は視界の端に移った影を見落とさなかった。

 

 

「祐斗!」

 

「はい!」

 

 

短い返事と共に木場の身体は更にスピードを上げ、バイサーの片腕を一息で切り落とした。

 

 

「さて、イッセーとナナシはいい機会だか悪魔の戦い方をレクチャーしようかしら。

悪魔にはそれぞれ与えられた駒の特性があるのよ」

 

 

部長さんが話している間も、木場は着地と加速を繰り返し、等々もう片方の腕も切り落として見せた。

見事な手際である。

 

 

「悪魔の駒の特性と祐斗の役割は、騎士(ナイト)、特性はスピードそして祐斗最大の武器は剣」

 

 

血を吹き出しながら悲鳴を上げるバイサーの足元に小柄な人影…小猫だ。

 

 

「次は小猫。あの子は戦車(ルーク)。戦車の特性は…」

 

 

と、化け物はそのまま小猫を踏み潰す。

その振動と地響きに息を呑むが、その巨体は徐々に浮きはじめ、否。持ち上がり始めた。

 

 

「戦車の特性はシンプル。バカげた力。そして、屈強な防御力。あんな悪魔の踏みつけで小猫は沈まない。それに、」

 

 

小猫はそのまま化け物を持ち上げる。

 

 

「……先輩が見てる……吹っ飛べ!」

 

「今日は気合が入ってるわ」

 

 

そのまま化け物は投げられ吹っ飛ぶ。

吹き飛んで落ちた先には、待ってましたと姫島先輩が浮かんでいる。

 

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 

 

姫島先輩はそのまま笑いながら倒れている化け物へと歩みだす。

気の所為か、その顔がどこかのセカンドさんのように恍惚な表情に見えた。

 

 

「朱乃は女王(クイーン)。王の次に強い最強の者。すべての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

 

女王。何故だろうものすごい似合うと思ってしまった俺がいる。

バイサーは戦力差を自覚したのか、その場から逃げようとするが、その先に姫島先輩が降り立った。

 

 

「あらあら。まだ元気みたいですね?それなら、これはどうでしょうか?」

 

 

そうして天に向かって、手をかざす。

刹那、空気を震わせる程の轟音と、目の前を覆い尽くす光が落ちる。

い、今のは雷か…?

 

 

「あらあら。まだ元気そうね?まだまだいけそうですわね」

 

 

バイサーはプスプスと煙をあげているが、それでもまだ動いていた。

手を切り落とされ投げ飛ばされ雷落とされ、それでも動くそのタフさは正直敵ながら賞賛に値するが、

無常にも姫島先輩の手は更にかざされる。

 

二度、

 

三度、

 

雷で照らされるその表情はまさに感無量。

今まで見たことのない笑顔がそこにはあった。

 

 

「朱乃は魔力による攻撃が得意なの。そして何より究極のSよ」

 

 

我々の業界でも拷問です。

イッセーなんて小鹿みたいに怯えてやがる。

姫島先輩は怒らせないようにしよう。命がない。

 

 

「大丈夫よ、朱乃は味方にはとても優しいから。問題無いわ」

 

「あら、まだ死んではダメですよ?トドメは私の主なのですから。オホホホホッ!」

 

 

それなら安心だ。

そう言えないのが人の恐怖心だ。

だってめっちゃ怖いもん。

そんな間にも姫島先輩の雷攻撃は続いた。

もうどっちが悪役か分からないもの。是非もないね。

 

 

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 

「殺せ」

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

冷徹な一言と共に、部長は手のひらにドス黒いオーラの様な塊を出現させ、それをバイサーにぶつける。

部長の言葉通り、バイサーの身体は跡形もなく消し飛んだ。

 

 

「さて、帰りましょうか」

 

 

ぽんと手を叩き微笑む部長。

戦闘の時は怖くとも、この人も基本仲間思いなんだろうな。

 

なんにしても、悪魔というのは色々と便利そうだ。特に魔法とかは憧れるな。

俺もやってみたい。なんというかロマンがあるよね。「我は放つ光の白刃」とか。

 

案外やってみたら出来ないだろうか?

 

 

「あのー、ところで部長」

 

 

姫島先輩あたりにダメもとで習いに行こうか、いやスパルタそうだからやめとこうとか思っていると、イッセーがおずおずと手を挙げた。

 

 

「あら、どうしたのイッセー」

 

「俺の駒って、結局なんなんですか?」

 

 

イッセーは顔に汗を浮かべる。聞いていながらなんとなく分かってしまった。みたいな表情だ。

 

 

「あなたの駒は兵士よ。イッセーは兵士なの」

 

 

その言葉にイッセーは泣き崩れた。

いやいや、兵士って強いからね。

そんなこと言っても今は慰めにもならなそうだし、面倒臭いのでやめた。

 

 

 

 

あ、俺なんもしてねぇ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

しょうがないにゃあ

ダンガンロンパV3尊すぎて……心が痛い。



今回すこし真面目


俺は基本、夜の部活には参加していない。

というのも、あれは悪魔的な活動が主になるので俺は自由参加となっている。

もちろん森沢さんから指名された時は俺と小猫で向かったりすることはあるし、差し入れで夜色を持っていくこともある。

 

しかしまぁそこは自由参加なので、基本俺は夕方の部活が終われば家に帰り、晩飯を作ったりアニメ見たりゲームしたりで過ごしてるわけだ。

 

週末も勿論俺に部活は無く、そもそもオカ研の部活動なんてこれといって決まったものでもないため集まってゲームする程度。

偶には1人でやりたいゲームもある。

そんなこんなでグータラと過ごした週末が開けた月曜日のことだった。

 

 

「ん?イッセーいないな」

 

 

学校に来るとイッセーがいなかった。

イッセーの登校時間は大体俺より早いか同じぐらい。以外寝坊とかはない。

なんでも日替わり萌シチュ目覚まし時計を使ってるらしい。聞いて俺も同じの買ったら朝起きるのがめちゃくちゃ楽になったよ。

やっぱ萌って偉大だわ。

 

 

「イッセーなら今日は休みだぞ」

 

「ん?元浜。それに松田か」

 

 

教室に入ると松田と元浜がいた。どうやらイッセーは休みらしい。

アイツが風邪をひくとは。明日は槍でも降るのだろうか。

…というか悪魔って基本風邪とか引くのだろうか。

 

 

「まぁアイツはエロを拗らせ過ぎたんだろうな」

 

「最近麗しのグレモリー先輩や姫島先輩。塔城小猫ちゃんとお付き合いしてたんだから当然の報いだ!」

 

「その通りだ元浜よ!」

 

「お前らなぁ…」

 

 

酷い言いようだけれど、こいつらも本気で言ってるわけじゃないんだろう。なんだかんだ、こいつらの友情は本物だと思う。

 

 

「時にお前ら。金髪のシスターさんの噂は知ってるか?」

 

 

金髪のシスター?と言われればこの前イッセーが送っていったシスターさんのことだろうか。

 

 

「フフフ…当たり前だろォ?この街の外れにある教会に赴任してきたってシスターさんだろ?」

 

「さすがだな松田」

 

「当たり前だ。俺は情報と脚の速さには自信がある」

 

 

そう言って気持ち悪いドヤ顔をかます松田。

聞くところによると中学の頃は写真部だったとか。

そのまま続けてれば………いや、なんかセクハラ写真のとる口実を与えるだけな気がしてきた。

どっかのフォト部みたいに。

……もう1回やりたいなぁ、フォト〇ノ。

 

 

「んで、そのシスターちゃんと一緒にいたのを目撃されてるのが、アンタと兵藤なのよねぇ」

 

「桐生か」

 

 

現れたのはメガネと三つ編みが特徴的な少女、桐生 藍華だ。

女子のにしては比較的イッセー・元浜・松田の三馬鹿トリオに絡んでいく変わり者で、本人自体も自他ともに認める変態。

女版元浜みたいなやつだ。

 

 

「そう、それなんだよ!おいコラナナシィ!イッセーもそうだがお前らはまだ美少女が足りないとでも言うのか!!」

 

「そーだそーだ!!俺らにもエロエロライフを味合わせろ!!」

 

 

いや、イッセーはどうかしらんが俺は別にエロエロってわけじゃ……

……小猫のパンツ、可愛かったな。

 

 

「まぁまぁその辺にしときなよ。噂はそれだけじゃないんだからさ」

 

 

騒がしい元浜達を桐生が窘める。しかしそれだけじゃないとはいったい?

 

 

「なんでもそのシスターちゃんが赴任してきた教会って何年も前に潰れちゃってるらしいのよ」

 

 

教会が、既になくなっている?

 

 

「しかもその子、つい最近兵藤にあってるらしいのよねぇ…」

 

「それはついては間違いない。俺がゲーセンに行ってた時に見たからな。あの野郎グレモリー先輩だけじゃ飽き足らず……!!」

 

「それ、他に誰かいたか?」

 

「え?……………………………………1人だが?」

 

「お前じゃねぇよイッセーとそのシスターさん以外誰かいたかって聞いてんだ」

 

「いや、いなかったと思うぞ。側からみてもあれはで、でででで……デートしてるように見えたからな。ゴフッ」

 

「元浜、よく頑張ったな」

 

 

……イッセーがシスターさんと二人でデート?

あんだけ部長さんに絞られといてあいつがそんな軽率な真似するか?

それよりもシスターさんの教会が既に潰れているってどういうことだ?

見た感じ、あの子にそんな様子はなかったかのように思えたが……

 

 

「……それっていつの話だ?」

 

「確かあの後1日中お宝DVDを見てたから……土曜日だな。…どうしたんだ?そんな険しい顔して」

 

 

土曜日…そういえば金曜も土曜も小猫の帰りはいつもより遅かった。

なにかあったのかとは思っていたが…どうもきな臭くなってきたな。

今夜は部活に顔を出してみるか。

 

 

「……いや、なんでもない。それよりもしイッセーの見舞い行くんだったら明日にしてくれ。今日は多分部活メンバーで行くことになるからな」

 

「なっ!?グレモリー先輩達がくるなら俺達も行くぞ!!」

 

「そうだ!せっかくの美少女とお近づきになれる貴重な機会だろうが!それを奪おうってのか!?」

 

「考えてもみろ。お前ら病気で苦しむイッセーの世話を甲斐甲斐しく焼く部長さん達なんてみたら、どうなるか考えなくてもわかるだろ」

 

「…………死ぬな」

 

「あぁ、きっと絶望のしすぎで死ぬだろうな」

 

「分かってくれたなら何よりだ」

 

 

それはそれで見てみたい気もするけど…とにかくこれでこいつらが今日イッセーの家に行くことはなくなった。

もしかしたら重症を負ってるかもしれないからな。

病気で休んでるなら、それは見ない方がいいだろう。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

チャイムが鳴り担任が教室に入ってくる。

とにかく今日は部長さん達に話を聞こう。

それにしても嫌な予感がする。

 

こういうのはフラグが立つから嫌なんだけどなぁ……

 

 

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

「部長、ちょっと話が …」 パンッ!

 

 

夜、話を聞こうと部室を訪れたら目の前でイッセーがビンタされていた。

ありがとうございま……ってちげぇ。なにこれどういう状況なの?イッセーは出てきて大丈夫だったのか?

つか俺が部室に来る度にアイツ怒られてない?

 

 

「……ナナシ先輩?」

 

「よぉ小猫。今日も遅くなりそうだな」

 

 

伏し目がちになる小猫。黙っていたことが少し申し訳ないといった表情だ。別段気にしなくてもいいのだが。

 

これで…状況はある程度理解出来た。

 

 

「なんど言ったらわかるの。あのシスターの救出は認められないわ」

 

 

部長さんの声が響く。明らかに怒気を孕んだその声にも、イッセーは臆することなく前を向く。

 

 

「なら俺1人でも行きます」

 

「行けば確実に殺されるわ。それにあなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ!」

 

「なら俺を眷属から外して下さい」

 

「そんなことできるわけないでしょう!」

 

「俺はアーシアと友達になりました。友達は見捨てられません!!」

 

 

何よりも…自分の信念と困っている人を味方する。

イッセーのこういう姿は初めて見たはずだが、どこか懐かしい既視感があった。

きっと、こいつもアイツらと一緒なのだ。

なら……

 

 

「行かせてやればいいじゃないか」

 

「…ナナシ」

 

「…あなたいつから」

 

「イッセーの頬に強烈な一撃を御見舞したあたりからだ。お説教に夢中だったみたいだからな」

 

 

ポリポリと頭を掻く。

重なってしまった。なら仕方ない。

 

 

「ナナシ、あなた勝手に……」

 

 

怒りの矛先が俺に向いたところで、姫島先輩が部長に耳打ちする。

 

 

「大事な用事ができたわ。私と朱乃これから少し外に出るわ」

 

「ッ!部長、まだ話は…!」

 

「イッセー、あなたに話すことがあるわ。あなたは兵士の駒を1番弱いと思っているわよね?」

 

 

その言葉にイッセーは無言で頷く。

確かに兵士は弱い。前にしか進めない。

捨駒、足軽。そんな代替品が兵士だ。

 

しかし、部長は言葉を紡ぐ。

 

 

「それは違うわ。兵士にはプロモーションという特殊能力があるわ。それともう一つ神器は想いの力でうごくわ。これだけは忘れないで兵士でも王は取れるのよ」

 

 

それだけを言い残し部長と姫島先輩は魔法陣で姿を消した。

イッセーは先ほどの言葉の真意を図れてないのか、何を言っているのかわからないと言った様子だ。

 

やれやれ。俺が動くか。

 

 

「おい、イッセー」

 

「なんだよナナシ」

 

「チラシ配り手伝ってやる」

 

「は?」

 

 

突然の言葉に首を傾げるが、やがて意味がわかったのか口の端を吊り上げる。

良い顔するじゃないか。主人公の顔だぜ。

 

 

「んじゃ、半分よろしくな」

 

「あいよ」

 

「それより四人でやった方が効率が良くないかい?」

 

「…そうですね。その通りです」

 

 

木場、小猫も立ち上がる。

なんだみんなついてくんのかよかっこつけて損したぜ。

 

 

「いいのかよ。ビラ配りは新人悪魔の仕事だろ?」

 

「初心忘るべからず、ってね。それに僕にとっても彼らは好きじゃなくてね。それこそ憎いまでに」

 

 

一瞬、木場の瞳から何か嫌な感情が漏れた気がした。

こいつの過去にも色々あったんだろうか。

 

 

「小猫はいいのか?正直、手伝うだけ骨折り損のくたびれもうけだぞ?」

 

「…いえ、私だけいかないのも悪いですから。

それにナナシ先輩がいくなら誰が今日のご飯を作るんですか?」

 

 

……ぷっ、

 

 

「はははははっ!おーけ。今日は少し豪華にいこうな」

 

「…楽しみです」

 

 

さて、役者はそろった。

後は舞台に乗り込んでハチャメチャに暴れてやるだけだ。

 

部長さんのツンデレサービスには悪いが俺達(夜咬)の聴覚を舐めちゃいけない。

 

 

「んじゃ、四人でパパッと終わらせちまおうぜ!!そんで、最後には皆で打ち上げだ!!」

 

「「おう!(はい!)」」

 

 

こうして、俺達の四人は教会に向かって動き出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ストリップアクションするときはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。

イッセー side

 

既に外は暗く、街灯の光が道を照らす時間となっている。

俺とナナシ。木場、小猫ちゃんの四人は教会が見える位置で様子を伺っていた。

全身を悪寒が走る。木場に聞くと、間違いなく堕天使はここにいるらしい。

堕天使がいるなら、アーシアもいる。

早くしないと、奴らに何されるか分かったものじゃない。急がないと…

 

 

「焦っても仕方ないよ。これ、図面だよ。まぁ敵地に乗り込む時のセオリーだよね」

 

 

にこやかに笑うイケメン。

いつもならその細やかなフォローにもイラッとするところだが、今はこれほどありがたいものは無い。

 

 

「さて、それじゃあ行くか「待ってください」ぶべら!」

 

 

踏み出した瞬間に小猫ちゃんに捕まれ顔面を強打する。痛ったーーッ!!

 

 

「ちょ、なにするの小猫ちゃん!危うく俺敵陣地入る前にゲームオーバーになるところだったよ!?」

 

「…その割には元気だね」

 

 

うるせぇ!めっちゃ痛いわ!

当の小猫ちゃんは流石にあそこまで盛大にコケるとは思っていなかったのか、申し訳なさそうな顔をする。

うっ…!これがナナシが言っていた『可愛いから許しちゃう』ってやつか。

めっちゃ可愛い。

 

 

「いえ、その……

 

 

 

 

 

ナナシ先輩がいないんですけど?」

 

 

 

は???

 

 

 

あたりを見回しても、ナナシの姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

リアスside

 

 

「はぁっ!」

 

 

撃ち出した滅びの魔力で敵の光の槍を消滅させていく。

もう既にな何度も繰り返した光景。

……少々敵を侮っていたようね。

 

 

「くっ、厄介だな。グレモリーの娘というのは」

 

「でもでも、このままいけば割と楽にいけそうっすよ?」

 

「そうだな。このまま数で押し切れば、勝てる」

 

 

そう言って先程よりも多くの光の槍を投げつける。

この三人、戦いなれている。

一人一人は下級堕天使程度の力しかないもののコンビネーションが良く、こちらに反撃の隙を作らせない。

光は当たれば致命傷。迂闊に魔力を貯めることも出来ずジリ貧になっていく。

このままじゃちょっと辛いわね。

朱乃には結界に集中してもらってるし、どうしようかしら。

 

 

「辛そうだな。手を貸すぜ?」

 

 

後方、林の奥から聞こえない筈の声が聞こえる。

嘘っ、なんでここに…

 

 

「ナナシ!どうしてここに…………は?」

 

 

後ろを振り返り、そして止まる。

敵もあまりの事態に止まっていた。

だって、だってしょうがないじゃない。

あれは………

 

 

「さぁて、ボッコボコにしてやんよ!!」

 

 

ーーーーそう言うナナシの右腕には、立派な長ネギが握られていた。

 

 

 

 

 

「「「「「「なにそれ!?!?」」」」」」

 

 

 

 

 

その場にいた全員がツッコミを入れたのは、しょうがないと思うのよ。

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

ナナシside

 

 

皆で教会へやってきた後、微かな音を感じて部長さん達がいる方へやってきた。

は、いいのだが、なにそれとは失礼だな。

 

 

「なんだ部長。長ネギを知らないのか?」

 

「知ってるわよ!知ってるから聞いてるんでしょ!?なんでそんなもの持ってきたのよ」

 

「なんでって、武器に決まってるだろ?」

 

「………………」

 

 

こめかみに手を当てる部長さん。

おい、その「こいつもうダメだ。早く何とかしないと」みたいな表情はやめてもらおうじゃないか。

 

 

「フハハハハッ!これは傑作だ!グレモリーの娘はピエロも飼っていたか」

 

 

笑い声が響く。

空には黒い翼をもった人間、堕天使が三人。

それぞれ腹を抱えて笑っていた。

 

 

「フフフフ、いや、もしかしたら私達を油断させる罠かもしれんぞ。フフフ」

 

「アハハハハ!やめてぇ、お腹痛いぃ!ってかアンタ!この前の変態じゃないッスか!」

 

 

あ、確かミッテルトちゃんだっけか。

……ふむ、今日は黒のレースか。中々大胆な。

 

 

「み、見てんじゃねぇッスよ!」

 

「ッ!ナナシ、避けなさい!」

 

 

二度目のご対面がよほど恥ずかしかったのか、サイリウム改め光の槍を投げてくるミッテルト。

この前とはちがって威力も高そうだなぁ。

 

………まぁ、

 

 

「ほいっと」

 

 

パシィンッ!!

 

 

「なっ!アタシの光の槍が…」

 

「………嘘」

 

 

当たらなければければどうということはない。

 

飛来してきた光の槍をネギの真芯で捉え、文字通り霧散させる。

もちろんネギには傷一つついてない。

敵の顔が驚愕に包まれる。どうやらあいつらはネギに含まれるβカロテンの量を知らないらしい。

 

 

「さて、それじゃ次は俺からいくぜ!!」

 

 

 

瞬間、俺の身体は一気にトップスピードに跳ね上がる。狙うはシルクハットの男。

 

 

「まずはお前からだァ!」

 

「なっ!?」

 

 

飛んでいる奴らのところまで跳び上がりその脳天めがけてネギを振り下ろす。

べキャリと音を立ててシルクハットは鼻血を出しながら墜落した。

 

まずは1人。

 

 

「ドーナシーク!! きさまァ、よくも!!」

 

 

仲間がやられたことに激昂し、手に二本の槍を携え突貫してくる。

俺の着地を狙ったいい起き攻めだが、些か遅い。

俺はネギを構え、それを最小限の動きで躱す。

 

 

「くっ、ならばこれならどうだ!」

 

流れるような二撃目。だがこれも躱す。

 

三撃目、躱す。

 

右。右。左。前。下段。左。小ジャンプ。サイドステップ。バックステッポゥ。

 

嵐のような連撃を尽く躱す。甘い甘い!!

 

 

「ちょこまかと!?」

 

「無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄ァ!」

 

 

回避と同時にカウンターをかます。

跳ね上げられた身体は宙を舞う。

 

 

「しまっ…!?」

 

「オラァ!!」

 

 

すかさず腹に一撃。逃がすかぁ!

相手を地面に落とさないよう、さらに攻撃を重ねる。フハハッ!ずっと!オレの!ターン!

 

 

「ぐっ、ぼっ、ぐべっ、くさっ!?」

 

 

殴る度に長ネギの香りが辺りに充満する。

これこそが俺と妹との共同作業によって完成した神の長ネギだ。

魔改造によって攻撃力と臭いを増大させてたコイツは殴る度に鼻にもダメージを追加し、さらに匂いが染みることで涙で前も録に見えなくさせる。

まさに最強の長ネギなのだ。

 

 

「カラワーナを離せ!」

 

「これでも喰らえ!」

 

 

ミッテルトちゃんとドーナシーク?が両手に光の槍を創り出し投げつける。

その工程を何度も繰り返し、大量の光の槍に襲い来る。

 

 

「ナナシ!!」

 

「ハッ!しゃらくせぇ!!」

 

 

長ネギを振り回し、それら全てを撃ち落とす。

落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす打ち返す打ち返す落とす落とす落とす落とす落とす落とす落とす打ち返す落とす打ち返す落とす。

 

時には打ち返し、光の槍と光の槍で相殺。

 

 

「これでも、喰らっとけ!」

 

 

そして最後の1本を奴ら目掛けて打ち返す。

まさかあの数を捌けるとは思っていなかったのか、反応が遅れた堕天使はその爆発に飲み込まれた。

 

 

「くっ、なんて強さ…」

 

「もう、無理なのか…」

 

 

膝をつく堕天使たち。しかし1人だけ、まだ立ち上がる者がいた。

ミッテルトだ。

 

 

「まだ…ウチは負けねぇッス…」

 

 

ボロボロの身体を引き摺りながら、それでも尚、諦めない心がその目には宿っていた。

 

 

「ウチは…レイナーレ姉様の為にも負けるわけにはいかないんス。ここで任されたんッスから…グレモリーの娘とそのクイーンを止めろって、任されたんスから。

あの人からすれば、ただ部下に命じただけかもしれないッス。けど、ウチを拾ってくれたレイナーレ姉様の為にも、負けるわけにはいかないんスよ!!!!」

 

 

ミッテルトは吼える。誰でもない、自分自身に向かって。

ボロボロの脚に力を入れ、槍を支えにしながらも立ち上がる。

その姿は敵であるが感嘆させられた。

 

俺はネギを捨てる。

 

 

「!?、どういうつもりッスか?!まだ終わってねぇッスよ!」

 

「あぁ、わかっている。お前のその戦意を評して、我がアキバ神拳の奥義で葬ろう」

 

 

ミッテルトの覚悟は分かった。

ならば俺も本気で迎え撃つ。

それが、古今東西あらゆるアニメゲームにおいて打ち砕くものの務めだ。

構えをとる。

しばしの静寂。

緊張からか、ミッテルトの額に汗が滲む。

 

そうして、汗が地面に落ちた瞬間!

 

 

「ハァッ!」

 

 

ミッテルトが動いた。

獣のように両腕の槍を構え、噛みつかんと突貫する。

だが、遅い!

 

 

「フッ!」

 

「なっ!?」

 

 

一息で懐に入る。見せてやろう。アキバ神拳、その奥義を!!

 

 

「アキバ神拳奥義『早着替えテクニック集』!!」

 

 

俺は懐に入った勢いを殺さず回転し、ミッテルトの服に手をかける。

そして………

 

 

スッポーン!!

 

 

 

「……………ひぇ!?」

 

 

服を脱がした。

突然自分の服が脱げたことに狼狽し、顔を紅く染めるミッテルト。パンツとお揃いの黒いブラが顔を出している。

だが、これで終わりじゃないぞ!

 

回転したまま次に狙うのは足。

脱がした反動を利用し、さらに加速して足払いを食らわせる。

きゃっと可愛い悲鳴と共に宙に浮くミッテルト。

 

スポポーン!!

 

すかさず今度ばスカートを剥ぎ取る。

 

 

「きゃーー!?!?」

 

「ラストォ!」

 

 

未だ空中に浮いたままのミッテルト。その頭のヘッドドレスに手を伸ばす。

俺としては敢えてヘッドドレスは残しておく派

なのだが、勝負とは時として非常なのだ。許せ、ミッテルト。

 

スポポポーン!!

 

最後のヘッドドレスを奪いさり、ミッテルトは地面に倒れふした。

 

 

 

「…貴様の服、確かに頂いた」

 

 

 

倒れたミッテルトに動く気配はない。

どうやら俺のアキバ神拳は堕天使にも通用するらしい。

 

 

「…あなた、意外と容赦ないのね」

 

「あらあら、いたいけな少女の服を剥ぐだなんて、酷いですわ」

 

 

一息ついたところで、部長さんと朱乃先輩に声をかけられる。

部長さんは呆れながら、朱乃先輩は言葉の割には微笑みながら俺のところまで歩いてきた。

って、別に俺はやましい気持ちがあったわけじゃないんですが…………。

目の保養にはなってるけれど。

 

 

「さて、後は…」

 

「あそこの2人だけですわね」

 

 

部長さん達の目は残りの堕天使2人に向けられる。

依然、敵意は消えてないがその身体はもうボロボロで戦える状況ではない。

 

俺は一歩前に踏み出す。

 

 

「「ひっ!!」」

 

 

……いや、俺だって元人間だからね?心はまだ人間だからね?

そんな怯えた顔で後ずさりされると結構傷つくんだけど…。

ってかさっきまでの威勢のいい目はどこいったよ!そんなウルウルさせやがって。

特におっさん!アンタのそんな顔需要ねぇよ!

 

 

「…ま、最後まであなたに任せるわ」

 

「了解」

 

 

まぁ、勝負って残酷なものだから。

ジリジリと躙り寄れば、その分後ろに下がる堕天使達。

なんだろう、ここまで怖がられるともう逆にそそるものがあるよね。

 

 

「大丈夫。痛くしないから」

 

「「い、いやぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」」

 

 

その夜、駒王町には若い女とおっさんの叫び声が響いたと言う。




ナナシくん。
アキバ神拳伝承者。今日も愛刀のネギを片手に悪を断つ。
今回なぜか悪者っぽくなった子。
「武器」
長ネギ
「ストリップアクション」
早着替えテクニック集

イッセーくん。
本編主人公。この裏ではちゃんと本編通りのかっこいい活躍してるんだからね!


ドーナシーク
需要ない。

カラワーナ
3人の中で一番強い設定。

ミッテルトちゃん
今回の主人公。
皆がミッテルトちゃんを(メイン)ヒロインにしろって言うんだもん!!俺は悪くねぇ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

※亀甲縛りではありません

 

「…………うっし!これでいいな」

 

 

グッとロープを引っ張り固く結ぶ。

目の前では下着以外を綺麗にひん剥かれて気絶して、ロープでぐるぐる巻きにされ堕天使三人組の姿があった。

 

 

「本当はイッセーを虐めたこの子達にはそれ相応の報いを浴びせなきゃいけないんだけど…」

 

「流石にこの姿以上のことをするのは憚られますわ」

 

「おい、なんか俺が酷いことしちゃったみたいな言い方すんやめてくれまいか」

 

 

こっちとしては真面目に戦っただけなんですけど?

 

 

「まぁ、ね」

 

「正直、相手に同情すら覚えますもの」

 

 

………そんなにひどいことしたかな?アキバじゃ普通だったんだけど…。

 

まぁいいや。とにかく勝ったんだから。勝てば官軍負ければ賊軍ってな。

勝てばよかろうなのだァ。

 

 

パリーン。

 

 

「ん?」

 

 

何処かでガラスの割る音がする。

どうやら教会の裏手のようだ。

俺達はミッテルトちゃん達をとりあえず抱え、音の下方へ向かった。

 

 

「ん?小猫じゃないか」

 

「……ナナシ先輩?」

 

 

そこにいたのは小猫だった。なんか女の人を引きずってる。

まさか…

 

 

「食べるのか…」

 

「違います」

 

 

パシィンとハリセンで叩かれた。

割と痛いのはもしかして駒の力を使ったからだろうか。

でも、じゃあなんでこんなところに?

 

 

「これは、堕天使のレイナーレじゃない。どうしてこんなところに?」

 

「イッセー先輩がぶっ飛ばしました」

 

「ッ!?…そう、イッセーが」

 

 

感慨深く呟く部長さん。

確かによく見てみれば最初にこの世界に来た時に襲ってきたレイヤーさん。もとい堕天使だった。レイナーレとレイヤーって似てるよね。似てない?あ、そう。

 

しかしイッセーがなぁ…

アイツは自分の過去と立ち向かうことが出来たようだ。

 

 

「それじゃ、シスターさんも無事だったのか?」

 

「………それは…」

 

 

言いよどむ小猫。

……まさか。

 

 

「…とにかく、来てください」

 

 

小猫の言葉に俺達は黙って頷いた。

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

教会の中は酷い有様だった。

元々ボロっちかったのだろうが、中にあるソファはボロボロに壊され、壁のいたるところに傷跡がついている。

祭壇の下には隠し通路っぽいものが見受けられた。

そしてフロアの中央、ステンドグラスからの月光が降り注ぐ中で、イッセーは泣いていた。

その腕に金髪の少女を抱いて。

横にいる木場も、なんと声をかけたらいいかわからないと言った表情だった。

 

 

「…よぉ、イッセー」

 

 

俺の声に振り返り、慌てて涙を袖で拭う。

 

 

「よぉナナシ。お前今までどこに…ってうぉい!なんだその下着姿の女の子とおっさん!?

お前まさか…!?」

 

「おいお前までそんな顔すんのかよ。つかお疲れ。ほれ、褒美にこのおっさんをやろう」

 

「要らねぇよ!!」

 

 

元気よく返すイッセーだが、無理してるのが丸わかりだった。

やがてその元気もなくなったのか、へたりと地面に膝をつく。

 

 

「………ごめん、ナナシ。俺、アーシアを守れなかった」

 

「…ま、その話は後だ。まずはコイツをどうにかしないとな」

 

 

ポロポロと悔し涙を流すイッセーの前に、レイナーレー置く。

イッセーの気持ちも、わからない訳では無い。

悔しいのだ。アーシアを奪っていった奴らが。そして何より、自分が守ってやれなかったことが。

これに、気にすんなと返すのはとても簡単だ。

だけどそうじゃない。

男にとって守れなかったって言うのは、一生の傷なのだ。

だから、そんな簡単なことで癒えたりしない。

 

 

「とりあえず、アレから話を聞きましょうか。朱乃」

 

「はい。部長」

 

 

姫島先輩が魔力で作り出した水をレイナーレにかける。

気絶していたところに水をかけられ、レイナーレは咳き込んだ。

 

 

「ご機嫌よう。レイナーレ」

 

「…グレモリー一族の娘か…」

 

「はじめまして私はリアス・グレモリーよ短い間だけど、お見知り置きを」

 

 

部長さんは和かにあいさつするが、レイナーレは部長さんを睨んだままだ。

 

 

「してやったりとおもってるんでしょうが私が危なくなった時に協力者たちが私をーー」

 

「無理だ」

 

 

レイナーレの前にミッテルトちゃんたちを置く。

レイナーレの顔は驚愕の表情に包まれた。

 

 

「そうね。三人の堕天使はナナシが倒してしまったもの」

 

「う、嘘だ!!たかが人間にそんなこと…」

 

「でも事実よ」

 

 

部長さんの言葉にレイナーレは口を紡ぐ。

その時だった。

 

 

「…う、うぅ…ここは…?」

 

 

ミッテルトちゃんが起きた。

まぁ一番最初にストリップさせたし、そろそろ時間だったんだろう。

 

 

「ミッテルト!!」

 

「ッ!?レイナーレ姉様!?」

 

 

ミッテルトちゃんはレイナーレに近づこうと前のめりになるが、ロープが引っ張ってそのまま倒れてしまった。

だが、レイナーレはそんなことはお構い無しと、ミッテルトに詰め寄った。

 

 

「ミッテルト!あなた早く私を助けなさい!!」

 

「……すいません、姉様。ウチもう力が出なくて…」

 

 

申し訳なさそうに声を落とすミッテルト。

だが、それはこのレイナーレの為に戦った結界だということを、俺達は知っている。

あの姿は、敵であるにもかかわらず俺を熱くさせた。

 

だが、レイナーレは違った。

 

 

「何言ってんだッ!!いったいなんのためにお前を拾ったと思ってる!!この役立たずの死に損ないがッ!!」

 

「………すい、ません…」

 

 

吼えるレイナーレに、ミッテルトはただ涙を流す。

見ればわかる。こいつの中には、ミッテルトのような想いは欠片もなかったのだ。

 

 

「…哀れね」

 

「なによ!言っておくけど今回は偶然負けただけよ!私が油断しただけ。そうでなければ…この傷を今すぐにでも癒してあの坊やもお前も殺してやる!」

 

「無駄よ。あなたじゃイッセーに適わないもの」

 

 

部長さんがイッセーの左手の籠手に視線を向ける。

 

「…赤い龍。レイナーレ。この子の神器はただの神器ではないわ」

 

 

部長の言葉にレイナーレが怪訝そうな顔になる。

 

 

「『赤龍帝の籠手』ブーステッド・ギア。神器の中でもレア中のレア。十三種確認されている神滅具の一つ。言い伝えでは10秒ごとに力を倍加させいずれは神や魔王すら屠る力を与えられる」

 

「赤龍帝の籠手…!?あの忌まわしい神器がこんな小僧に宿っていたというの!?」

 

 

レイナーレは目を見開かせ、恐怖で身体を震わせる。

神滅具、ってのは確か部長さんから聞いた話にもあった。

現在、十三種確認されていてその全てが神や魔王といった頂上的な存在に対抗出来るだけの力を備えているチート級アイテム。

それがイッセーの中に眠っていたってことか。

 

 

「それじゃ、最後のお務めをしようかしらね」

 

 

部長さんの目が鋭くなる。

 

「消えてもらうわ、堕天使さん」

 

 

部長さんはレイナーレに近づきそう言い放った。

冷たく、殺意のこもった一言だ。

 

 

「待ってくださいッス!」

 

 

それに待ったをかけるものがいた。

言わずもがなミッテルトだ。

ミッテルトは身体を震わせながらも、言葉を紡いでいく。

 

 

「こ、殺すなら、アタシにして欲しいッス」

 

「……さっきの彼女の言葉を聞かなかったわけじゃないと思うのだけれど?」

 

「聞いたッス。それでショックも受けたッス。それでも!」

 

 

ミッテルトは顔を上げ部長に向き直る。

ここからでも部長さんの殺気はビンビンかんじるのに、ミッテルトはそれに真正面から向き合った。

 

 

「それでも…大好きだった人には死んで欲しくないんッスよ」

 

 

その言葉に部長さんも手が止まる。

…ここは俺の出番かね。

俺は部長とレイナーレの間に割り込む。

 

 

「部長、俺からも頼む」

 

「ナナシ!?」

 

「正気かい?」

 

「…堕天使の肩を持つというの?」

 

 

底冷えするような部長の声。怖い。

が、ここで引いては男が廃る。

 

 

「何も堕天使の方を持つってわけじゃない。何も殺さなくてもいいって言ってるんだ。

それにこれがお前達の戦争の火種になるかもしれないだろ?そこら辺、部長さんはなんて報告するんだ?」

 

「一応、堕天使との小競り合いと報告するつもりよ。場所も捨てられた廃教会だし、特に問題は無いわ」

 

「それは悪魔側の事情だろ?小競り合いで戦争のなった例なんて歴史が幾らでも物語ってる。向こうがいちゃもんつけてくる場合もあるからな」

 

「それじゃ、この堕天使はどうするの?」

 

「こいつら含めて正当な施設で幽閉させるのが無難だろう。もしかしたら堕天使側の情報が引き出せるかもしれない。

殺すよりかは、そっちの方がメリットが高いはずだ」

 

 

勿論、これはただの建前に過ぎない。

本音はミッテルトの言葉に胸打たれただけだ。

けれど、こういう時は建前の方がよく効く。

 

 

「…はぁ、まるで私が悪者みたいじゃない。わかったわ。そうしましょう」

 

 

その言葉に顔を明るくさせる俺とミッテルト。

つか悪魔なんだから悪者は当たり前…って痛い!部長さん無言で頬をつねらないで!!めっちゃ痛い!!

 

 

「イッセーも、それでいいかしら?」

 

「あ、はい。俺は一発殴ったんでわりとスッキリしました。でも……」

 

 

そういうイッセーの視線の先には、先ほどと同じようにシスターさん、アーシアさんの姿があった。

 

 

「アーシアは、もう……」

 

「その件だけど…」

 

 

そう言って部長さんは一つの駒を取り出す。

 

 

「その子、生き返らせられるかもしれないわ」

 

 

そうしてウインクした。

なんだかんだ、部長さんも甘い性格だと思う。

 

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

翌日。

俺と小猫は朝からオカ研へと向かうため登校していた。

 

その途中。

 

 

「あの、ナナシ先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「先輩はどうしてあの時あの堕天使を助けたんですか?」

 

「あー、それな」

 

 

まぁ聞かれるよな。

どう言っても、俺がミッテルトを助けたことは明白だろうし、レイナーレを助けることになったのも事実だ。

あの場ではああいう事になってしまったが、本音は確かに助ける気満々だったし。

 

言うか言わまいか迷ったいたのだが、身長差から繰り出さられる小猫の上目遣いに負け、ついつい口を開いてしまった。

 

 

「べつに大した理由があるわけじゃない。ただ、かっこよかったからな」

 

「かっこよかった…ですか?」

 

「おう。アニメでもゲームでもよ、かっこいいキャラって敵であろうとなんだろうと応援したくなっちまうんだよ。

だからあの時はミッテルトのあの真摯な姿がかっこよく見えてついな」

 

 

…やばい。結構言ってて恥ずかしくなってきた。

何語ってんだ俺?

 

 

「………ぷっ」

 

「おい何も笑うことはないだろう」

 

 

笑われたことでさらに恥ずかしさが増す。

ちょっと小猫さん酷くないですか?

 

 

「いえ、すいません。余りにも理由がおかしかったので」

 

「………うるせぇよ」

 

「でも良かったです。先輩が………」

 

 

そこで小猫の言葉は切れた。

ん?先輩が?なに?

 

 

「…いえ、なんでもありません」

 

「んな、気になんだろ!先輩がなんなんだよ!」

 

「先輩がおかしいって話です」

 

「それはもういいって!」

 

 

小猫は教えるつもりは無いと頑なに躱していく。

こんな時間も、楽しいと思えてしまってるあたり、俺がこの世界に来たことは間違ってなかったのだろう。

 

そうやってじゃれ合いつつ部室を目指していると、木場と姫島先輩に出会った。

 

 

「あ、おはようナナシくん。小猫ちゃん」

 

「おはようございます、2人とも」

 

「おぉ、おはよう二人共」

 

「おはようございます」

 

 

俺たちは並んで部室へ行く。

何気ない会話していると、部室についた。

姫島先輩が手を伸ばしたところで、ピタリと止まる。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

「シー。ですわよ」

 

そう言って手招きする姫島先輩にしたがってドアに耳を澄ます。

 

 

…あぁ、なるほど。

 

俺たちは皆で顔を見合わせた。

 

「もう少し外で待ってるか」

 

「……ですね」

 

そう言って皆で笑あった。

 

 

部室では、三人の楽しそうな声がひびいていた。




ナナシくん。
人を憎まず罪を憎む系主人公。

イッセーくん。
影ながら壮大なバトルを繰り広げていた本編主人公。

ミッテルトちゃん。
可愛いとかっこいいは正義系主人公


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お留守番はクリームの味がする

体調不良と首をやってしまって2日も空いてしまいました…ごめんなさい!!



気づけばお気に入りが99…ある意味100より凄いんじゃなかろうか


「あー、暇だなぁ」

 

 

堕天使騒動から数日が過ぎた今日。

俺はやることもなく学校をプラプラと歩いていた。

 

部活は?と言う奴もいるかもしれないが、今日は休みである。

というのも、話は数時間前に遡る。

 

 

 

〜・〜・〜・〜・〜・〜

 

 

「使い魔、ですか?」

 

 

イッセーの疑問の声が聞こえた。

 

放課後、いつものようにみんなで俺の持ってきたゲームをしたり、俺の持ってきたお菓子を食べたり、俺の持ってきた漫画を見たりと、思い思いの部活動に励んでいた。

え?ここ何部だって?オカルト研究部に決まってるじゃん。

 

アーシアも、ここ最近では部活どうにも慣れ、漫画の知識から日本語を勉強している。

 

『ナナシさん!ここの俺の右手が疼くってどういう時に使うんですか?』

 

『右手がかゆい時に使うんだ』

 

『アーシアに変なこと教えんな!!違うからなアーシア!』

 

うん。人が頑張る姿は立派だね。

 

まぁそれでもとの話にもどるのだが、

 

 

「そう、使い魔。あなたとアーシアはまだ持っていなかったわよね」

 

 

そう言って部長達は自分の使い魔を見せる。部長はコウモリ、姫島先輩は小鬼、小猫は白猫、木場は小鳥だ。

 

 

「小猫は猫なんだな」

 

「……シロです」

 

「可愛いなぁ」

 

 

頭を撫でてやると目を細めて喉を鳴らす。

俺は犬派か猫派、どっちかっていうと猫派だ。

 

 

「…よかったねシロ」

 

「にゃう」

 

 

返事をするように鳴く白猫。

なるほどこれが使い魔か。

 

 

「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから、情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に扱えるから、二人とも手に入れないといけないわね」

 

「使い魔さんですかぁ……」

 

「使い魔かぁ………」

 

 

イッセーもアーシアもまだ見ぬ自分の使い魔に思いを馳せているよだ。

イッセーの場合、アダルティなゲームでよく見る触手だったり服だけ溶かすスライムだったりを使い魔にしそうな気もする。

もはや魔王間違いなしの所業だな。って、悪魔だからむしろそれがいいのか。

 

なんて思考を巡らせていると、視界の端が赤色に光った。

前に見た魔法陣だ。確か転送用とか言ってたけど、どこかに行くのだろうか。

 

 

「部長、準備整いましたわ」

 

 

姫島先輩が部長へ報告する。準備ってことはやっぱりどっかいくっぽいな。何も聞いてないけど、どこいくってんだ?

 

イッセーとアーシアも小首をかしげている。どうやら向こうも聞いてないらしい。

 

 

「というわけで、さっそくあなたたちの使い魔をゲットしにいきましょうか」

 

 

笑顔出そう告げる部長さん。

有言実行が我らがオカ研部長なのだ。…なんてな。

とはいえ、行くことに決まってるなら準備しないといけない。

使い魔ってどんなところにいるんだろうか。モンスターの王者になってバトルロードとか出ちゃったらどうしよう。

逸る気持ちを抑え俺も準備に取り掛かる。つっても、大して持っていくもんもないけどね。

こういう時四次元ポケットって便利だよね。

神様万歳!

 

 

 

「あら、ナナシは何をしてるのかしら?」

 

「何って、行く準備に決まってるだろ?」

 

「……………あっ」

 

 

 

おい、なんだそのたっぷり間を置いた『あっ』てのは。

体育祭とか終わってクラス会やろうって流れになったけど、別に呼んでなかった奴が来ちゃったみたいな。おいやめろ俺!なんで自分から死のうとしてんだよ。辛い。

 

部長さんはポリポリと頬を掻きつつ、どうしたものかと呟いた。

おい聞こえてんぞ。独り言はもっと相手に聞こえないようにして傷つくんだから。

 

 

「ごめんなさい。この魔法陣眷属用なの」

 

「お、おう。つまり?」

 

「えっと、その〜」

 

 

珍しく視線を泳がせる部長さん。

……なんとなく察してしまった。

 

 

「ナナシはお留守番ね」

 

 

そう言ってウインクした。

(´・ω・`)そんなー。

 

 

〜・〜〜・〜・〜・〜・〜・〜

 

 

というわけで、絶賛お留守番中なのだ。

 

クソッ、部長なんてオークにでもあって「くっ殺」してればいいんだい!!

いや、べつに部長さん悪いわけじゃないけど。

 

とはいえそういうことなら初めから言ってくれれば俺も期待せずに済んだのにという気はある。

 

 

「あー、何しようかなぁ」

 

 

誰もいない部室で静かにゲームってのもなんだかつまらなかったので、こうして学校を体験しているのだが……そうそう楽しいことなんてないよなぁ。あ、今のがフラグになったりしないかな。

 

つーかこの学校ってどんだけ広いんだよ。森まで学校の一部とか……。

いくら小中高大で一貫の学校だったとしても広すぎるだろ。

……やっぱりこれも部長さんのマネーパワーのなせる技なんだろうか。

あの人貴族らしいし、実際あの旧校舎使ってるのってオカ研だけだしな。

学校側に悪魔であることがバレてても可笑しくない。

つか、むしろ実権握ってるのが悪魔だったりして。

 

 

 

 

『きゃっ!』

 

 

 

歩くこと数分。

突然どこからか女の子の悲鳴が聞こてきた。

短い悲鳴だったし、学校だしでそんなに心配はいらないかもしれないが、困ってるのなら助けに行きたい。

ちょっと遠くだが、気になる。

 

 

「探しに行くか」

 

 

気になった俺はとりあえず声の主を探すことにした。

べつにフラグが立ったことに期待したわけでも、暇だから何が起こってほしいとも思ったわけじゃない。

違うよ?違うからね?違うったら違うんだからね!

 

とにかく、俺はその場から駆け出した。

 

 

 

…………………。

 

 

 

「確かここら辺だったと思うんだけど」

 

 

校舎の中をキョロキョロと見渡す。

ここら辺は理科室等の特別教室があるところだ。

にしても、マジで広い。ここに来るまでにもう迷ったんだけど…。

 

まぁとりあえずそれは置いといて、今は声の主を探そう。

なにか危険なことに巻き込まれた可能性も少しはあるしな。

 

そうして耳を澄ます。

あたりの音を少しでも拾いやすくするために目を瞑り、呼吸を整える。

そうして夜咬の五感をフル活用させる。

 

そうして意識を集中させていた。その時だった

 

 

ドカーン!!

 

 

「!? ば、爆発!?」

 

 

僅かだが空気を震わせる爆発音が響いた。

ここから結構近い。

もう1度耳を澄ませると、今度は女性の声。

なんと言ってるかは聞き取りずらいが、とりあえず生きてはいるらしい。

 

 

(もしかしたら、虫の息とか…)

 

 

嫌な予感に冷水をかけたような冷や汗が背中を滑り落ちる。

だが、今ならまだ間に合うかもしれない。

その場から駆け出し、音の方向へと向かう。

 

 

「ここだ…」

 

 

ついた先は家庭科室だった。

額を垂れる冷たい汗を拭い、勢いよくドアに手をかける。

 

ガラッと音を立てて開かれるドア。

 

そこにいたのは……

 

 

「え?」

 

 

身体中が白濁とした液だらけになっていた眼鏡姿の少女だった。

 

 

 

〜〇✕△□〜

 

 

 

 

「見苦しい所をお見せしました」

 

「あ、いや。こっちこそ急にドアを開けて、悪かったな」

 

 

深々と頭を下げる少女。見たところ怪我はなさそうだ。

 

とはいえどうしてあんな姿でこんなところにいたのだろうか。

というか、この人はいったい??

 

 

「私は支取蒼那と言います。この学校の生徒会長をしているものです」

 

「あ、ご丁寧にどうも。俺は七瀬七志です。って、生徒会長さんだったんですか?!俺そうとは知らず……」

 

 

慌てて頭を下げる。

まさか年上で、しかもこの学校の生徒会長さんだったとは…。そうとは知らずにタメ口で話しちゃったよ。

 

 

「あ、いえ。お気になさらず。貴方は見たところ2年生ですよね?あまり顔は見かけたことありませんが…」

 

「あぁ、俺ここ最近ここに転入してきたばかりなんですよ」

 

「そうなのですか?…あぁ、最近噂になってる転入生とは七瀬君のことだったのですね」

 

 

う、噂?俺なんか変なことしたかな?

いや、割とでかい学校だし俺以外の人かも…

 

 

「なんでも転入早々クラス全体を巻き込んで討論会を開いたり、道行く困ってる人を助けて回ったり、夜中にネギを背負って街を徘徊したりしている凄い転入生がいるとか」

 

「色々とすいませんでしたァァァァア!!」

 

 

それ俺しかいないやん!!ネギとか俺ぐらいだろ!アキバにはめっちゃいたけど!!

 

つかなんでそんな有名になってるのん?

クラスのことはさておいて、他のことは別に見られてる気配もなかったのに……人の噂ってこええ。

 

 

「いえ、べつに謝らなくてもいいんですよ。討論会やネギ?のことはともかく人助けのことに関しては住民からも感謝の言葉が学園宛に寄せられているくらいなのですから。

今度生徒会室に来てください。貴方宛の手紙やメールが沢山来ているんです」

 

 

そう言って生徒会長さんは穏やかに微笑む。

まるで自分のことを褒められた様に嬉しそうに。

多分、この人はこの学校が大好きなんだろうな。だからこそ、この学校の生徒が褒められると自分が褒められた様に嬉しいんだろう。

 

今度生徒会室に行かないとな。

 

 

しかし、それはそれとして、だ。

 

 

「あの、つかぬことをお聞きしますが生徒会長さんはどうしてこんなところに?しかもエプロン姿で」

 

 

そう、問題はそこだ。

さっきの爆発音といいその前の悲鳴といい、何かやっていたことは間違いないんだが、どうしてもそれが今の状況と当てはまらない。

いったい何をやっていたというんだろうか。

 

それを聞くと生徒会長さんはすこし気恥しそうに顔を染め、明後日の方向を向く。

ちょっと可愛いと思ってしまった。

しかし、何がそんなに恥ずかしいのだろう?

 

 

「実は、ケーキを作ろうと思ったのですが、失敗してしまって」

 

「ケーキですか?そりゃまたなんで」

 

「実は生徒会に新しいメンバーが入ったのでその歓迎会をしようと思ったのです。それで私がケーキを焼いてお祝いしようと思ったのですが」

 

「失敗してしまったと」

 

「えぇ。まさか爆発するとは」

 

「爆発!?」

 

 

ケーキで爆発って何入れたらそうなるんだ?ベーキングパウダーでもそうはならないだろ。

 

 

「空気を入れすぎたのかしら…」

 

「さ、さぁどうでしょうかね」

 

 

流石にあなたの作り方が間違っているのでは?とは言えなかった。

とはいえケーキか。そういえばアーシアの歓迎会をした時も部長さんがケーキを作ってきたな。

この学校の部長は歓迎会にケーキを作る習わしでもあるのだろうか。

 

 

 

「……やはりやめた方がいいのかもしれませんね」

 

「え?」

 

 

生徒会長さんはどこか寂しそうに、ため息とともにそう漏らす。

 

 

「素人の作ったケーキなんて、あの子達が食べても喜ばないでしょう。それよりも買ってきたケーキの方がきっと美味しく食べてもらえる」

 

 

言葉の割に表情は暗い。

きっとこの人も自分で作ったものを食べてもらいたいに決まってる。

それにこの表情には見覚えがあった。

 

 

「…………。」

 

 

あたりを見渡す。

材料は多めに買ってきていたのかまだ割と残っている。

少なくともあと1回のケーキを作るには十分な量だ。

………よし。

 

 

「………なにをしているのですか?」

 

 

俺は袖をまくりボウルなどの道具を念入りに洗っていく。

拭く際も水っけが残らないよう綺麗に拭き取った。

他にも使う材料や道具をわかりやすく綺麗に並べた。

 

 

「何ってケーキを作るんですよ」

 

「貴方がですか?」

 

「これでも割と料理は得意なんです。でも今回作るのは生徒会長さんです。俺はその手伝い」

 

「私がですか?」

 

 

驚いたように目を見開く。

貴方が作らないんじゃ誰が作るっていうんだ。

一通り道具を揃え終えた俺は近くにあった予備のエプロンを着る。よし、これで準備万端だ。

 

 

「誰かに食べてもらいたいって気持ちは俺もよく知ってますから。だから生徒会長さんも諦めず頑張りましょう。

大丈夫です!サントアンヌ号に乗ったつもりで任しといてください!

ちゃんとフォローしますから」

 

 

そう言って笑いかける。

誰かに美味しいものを食べてもらいたいって気持ちは俺だってよく知ってる。

ナナの喜ぶ顔が見たくて、それでも最初の頃は何回も失敗した。

でも諦めずに挑戦していけばきっと成し遂げられるんだ。

 

 

「だから生徒会長さんも頑張りましょう」

 

「………フフ、そうですね。私としたことがこの程度で弱音を吐くとは」

 

 

お、割と負けず嫌いなんだなこの人。ノリノリじゃないか。

 

 

「それじゃよろしくお願いします。七瀬くん」

 

「任されました!」

 

 

そうして、俺達のケーキ作りが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「できた………」」

 

 

そうして、出来上がったケーキを見て呟いた。

え?過程?んなモン全カットだよ。わざわざケーキ作りも小説で見るくらいならクックパッド先生で事足りるだろ。

 

 

「にしても、割と見栄えよくできましたね。飾り付けとか完璧じゃないですか」

 

「そ、そうですか?ありがとうございます」

 

 

出来上がったケーキは形も悪くなく、どこからどう見ても美味いケーキと言った風だった。

特に最後の飾り付けは生徒会長さんが頑張ったお陰か、プロ顔負けの出来になっている。

流石だ。

 

 

「とりあえずはこれで完成ですね」

 

「えぇそうですね。ありがとうございました」

 

「べつに俺は大したことしてないですよ」

 

「いえ、七瀬くんがいてくれなければここまで綺麗に出来なかったでしょう。それに、多分あそこで諦めていました。なのでこれは七瀬くんのお陰です」

 

 

……。そこまで真っ直ぐに褒められると、中々恥ずかしいものがあるのだが、まぁそこはありがたく貰っておくとしよう。

 

 

「あの、七瀬くん?」

 

「はい?なんですか生徒会長さん」

 

「その、ずっと聞きたかったことなのですが、何故生徒会長さんなのでしょうか?」

 

「??? だって生徒会長なんでしょう?」

 

「それは、そうですけど……はぁ」

 

 

何故かため息を吐く生徒会長さん。俺何が悪いことしただろうか。

もしかして実は生徒会長ではなかったとか…?

は、ないか。流石に。

 

 

「まぁいいです。今度からはソーナと呼んでください。それから敬語もいりません」

 

「へ?なんで?」

 

「なんででもです!いいですか?」

 

「えー。わ、分かった。これでいいか?」

 

「はい。それでいいです」

 

 

そうしてニコリと微笑んだ。

うーん、気を許してくれたってことでいいんだろうか。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

と、そんなことをしていると完全下校のチャイムが流れる。

もうこんな時間か。結構作るのに集中していたんだな。

 

 

「いけませんね。もうこんな時間ですか」

 

「だな。片付け手伝うよ」

 

「いえ、それくらいは私一人で大丈夫です」

 

「そうか?」

 

「はい。今日はありがとうございました。また今度生徒会に遊びに来てください」

 

「おう、絶対いくよ。ソーナもお疲れ様。ケーキ喜んでもらえるといいな」

 

「はい!」

 

 

最後に花のような笑顔を咲かせて、彼女は片付けへと戻っていった。

ずっとここにいると気を使わせそうだし、俺はそろそろ帰るか。

夕飯の支度もあるしな。

 

そうだ。今日は試しにケーキでも作ってみよう。

小猫は甘いもの好きだし、多分使い魔探しで疲れてるだろうからな。

 

ここに来た時とは違って晴れやかな気分で俺は家庭科室を後にした。

今日のご飯は何にしようかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のオチ。

ソーナside

 

 

現在、私は使った食器や道具を片付けています。

今日は色々ありました。

まさかリアスが言っていた『ナナシ』くんとこういう形で出会うことになるとは。

 

夜咬。聞いた話だと東洋の吸血鬼のような存在。

太陽の光にめっぽう弱いのと繁殖能力が低いこと以外はまさに人外そのもの。

この前の堕天使との一件でも、彼は堕天使三人を相手に立ち回ったという。

正直、どんな化け物なのかと思っていましたが、実際はただのお人好しな青年で少々肩透かしを喰らった気分です。

お陰で眷属への勧誘をするタイミングを逃してしまいました。

 

まぁ今回は偶然会っただけですし、それに…………。

 

私は出来上がったケーキに視線を落とす。

 

 

「借りが出来てしまいましたね」

 

 

誰もいない家庭科室でそう呟く。

と、こんなことをしてられませんね。そろそろ生徒会室に戻らないと準備を任せている椿姫達に申し訳ないですね。

そうしてボウルを持ち上げようとした時、そこにつ映っていた自分の顔に驚いた。

 

笑っていた。私が?

 

これでもいつでも凛と構えていようと心がけているつもりなのですが、どういうわけか顔が緩んでいました。

何故?考えても分かりません。

 

しかし、悪いことだとは感じません。

この理由がいつかわかる時が来るのでしょうか。

 

 

「〜♪ 〜〜♪」

 

 

私は片付けを再開させました。

すこし鼻歌交じりですが、誰も見ていませんしたまにはいいですよね?

 

夕日が差し込む教室で、私と彼が作ったケーキは輝いて見えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日行われた歓迎会でとあるケーキを食べたある生徒会書記の男子生徒が笑顔のまま倒れたという事件が発生したのだが……それはまた別のお話。

 




ナナシくん。
伝説のフラグメーカー。主人公とはフラグを建てる戦士である(某グラップラー風)

ソーナちゃん。
見た目が良くなったせいでショック作用が強くなり凶悪性が増した。
原作では元々形は悪くなかったと思いますが、そこはそれ二次創作のご都合設定ということで。

匙くん。
未登場。死亡(気絶)

小猫ちゃん。
今回の勝ち組。
ケーキはぺろりと平らげました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クーデレっていいよね

今回短め。
焼き鳥編突入じゃぁぁぁぁあ


ソーナと出会って数日がたったある日。

朝日が眩しく照りつけ、吸血鬼体質にはちっとばかし厳しい今日このごろ。

俺はいつものように学校に来ていた。

 

桜は散ってしまったとはいえ、季節的にはまだ春だ。

心地よい春風がパーカー下の髪を撫でる。

日差しは億劫だがこの風は、嫌いじゃない。

平和だ。そう感じる。

 

 

「おや、ナナシくんではありませんか」

 

「ん?お、ソーナじゃないか。おはよう」

 

 

登校途中、ソーナに出会った。

いつも通りキリッとした姿はさすがは生徒会長様だと印象を改められる。

 

 

「早いですね。日直ですか?」

 

「まぁな。そういうソーナこそ早いな。やっぱり生徒会長と王の二足の草鞋生活は忙しいのか?」

 

 

並んで登校しながらそう問う。

そう。なんとソーナは悪魔だったのだ。

しかも眷属の王。部長さんに聞くと悪魔の中でも貴族の出で将来を期待されているらしい。

ケーキの件から2日後、ソーナ達は悪魔としてオカ研の部室へやってきた。

なんでもソーナは俺が夜咬だということも知っていたらしい。

だったら早く言ってくれればいいのに。

そしてそこで眷属にならないか?とも聞かれた。

周りのソーナの眷属は驚いていたが、丁重にお断りさせていただいた。

やっぱり俺の主は雫だけだからな。

それからいつの間にか呼び名が七瀬くんからナナシくんに変わっていた。

まぁ俺としてもナナシの方が言われなれてるからいいんだけどね。

 

そういえば、あの時来てたソーナの眷属から何か変なことを言われたんだよな。

「形だけ良くなっても意味無いのよ!」だったけか。

なんのことだったんだろうな。

 

 

「そういえば、最近のリアスの様子はどうですか?」

 

「部長さん?別にどうってことねぇと思うぞ?強いていうなら少しピリピリしてるくらいか」

 

「そうですか。やはり……」

 

 

そう言って顎に手を当てて何か考え事を始めてしまった。

やはりってことはなにか気になる節でもあるのだろうか。

 

 

「なにかあったのか?」

 

「……まぁ、ナナシくんなら大丈夫ですか。実はリアスにお見合いの話が来ているのです」

 

「お見合い!?でも部長さんはまだ高校生だろ?」

 

 

一般的な高校生が出すお姉様オーラとはかけ離れているが。特に胸部装甲。

 

 

「えぇ。ですが悪魔の上流階級ではよくある話なのですよ。親同士の決めた結婚相手。

家の為、名誉の為の政略結婚。

私達が生まれる前から決まってる場合もあります」

 

 

それはなんとも、息の詰まる話だ。

普通の一般市民からすれば、それは怒りすら抱く事態だが、彼女達貴族は違うのだろう。

アニメやゲームでもよく見るがそういうもの。生まれ持った抗いようのない設定の様なものなのだと思う。

 

 

「お前にもそういうのあるのか?」

 

「私は、ついこの前チェスの対戦で相手を打ちのめしてしまったので破談となりました。しかしリアスの相手は……」

 

 

おい。今なにか不穏な言葉が聞こえたんだけど?

なに?打ちのめした?

 

 

「リアスの相手はとある上流階級の貴族で、名のある大物悪魔の三男です。

相手はリアスをいたく気に入っているのでそう簡単に破断することも出来ないでしょう」

 

「そいつが今すぐにでも部長さんを貰いに来ると?」

 

「その可能性が高いとしか、今は言えませんね」

 

「……そいつの名前は?」

 

「ライザー・フェニックス。元72柱フェニックス家の悪魔で炎と風を操る不死の悪魔です」

 

 

不死の悪魔……?

つか悪魔なのに名前がフェニックスって…

フェニックスって確か聖獣の名前じゃなかったか?大丈夫なのそんな名前で。

滅せられたりしない?

 

 

「不死とはその名の通り死なない能力。伝承のフェニックスのように彼はどんな傷でも瞬時に治すことが出来ます」

 

「まさにチート乙って感じだな」

 

「フフ、そうですね」

 

 

そう言って笑うソーナ。

なんとなく二人の時はよく笑う気がする。もっと眷属の前では笑ってやればいいのに。

特に匙くんとか。明らかに好意を持ってたぞ。

恋愛ゲームマスターの俺が言うんだから間違いない。

 

今どこかで「君がいうんじゃない。いつも好感度教えていたのは僕じゃないか」って声が聞こえてきた気がした。

 

 

「何か変なことでも言ったか?」

 

「あ、いえ。……貴方ならリアスの縁談も、私が思いもつかない方法でご破産にしてしまうのでしょうね」

 

「……なんか過大評価が過ぎないか?俺は人間じゃない以外は普通のオタクだぞ?」

 

「いえ。順当な評価ですよ。それにもしかしたらオタクだからこそ出来ることがあるのかもしれません」

 

 

オタクだからこそ、ねぇ。

まぁ確かに、知り合いの女の子がピンチ。相手は結婚を迫る貴族。その女の子を颯爽と助けるなんてカッコイイ妄想、オタクなら1度はするだろうけどな。

 

ソーナ突然頭を下げる。え?どしたの急に。

 

 

「お願いします。どうかリアスを助けてあげてください」

 

「…………」

 

「リアスは、この縁談には乗り気ではありません。私としても、親友の殿方には心から愛する人になってもらいたい。

私が頼むのも、筋違いなのかもしれませんが…お願いします」

 

 

必死に頼み込むソーナ。普段のクールな姿からは想像出来ない姿だ。

それほど部長さんを友人として大切に思っているのだろう。

まったく、そんな顔されたら断れないじゃないか。断る気もないけどな。

 

俺はソーナの頭を撫でる。サラサラと綺麗な髪だ。

 

 

「大丈夫だ。任せとけ。俺がなんとかしてやる」

 

 

そう言って笑いかける。お前のその願い、アキバ自警団の誇りにかけて叶えてやるぜ!

 

 

「あ、ありがとうございます。ただ、その…………頭を撫でるのは

……」

 

「あ、悪い!つい妹にやるくせで」

 

 

慌てて手を離す。でも綺麗な髪だったな。

なんかずっと撫でていたくなるようなそんな髪だった。

 

 

「い、いえ別に撫でていてもいいのですが……」

 

「ん?そうか。ほれ、よしよし」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!?!?」

 

 

か細い声が聞こえたのでご期待に応えて頭を撫でる。

「そこは聞き流す場面じゃ…?」なんてのも聞こえたけど、生憎と夜咬は耳がいいんだ。

 

そうして撫でること数十秒。

 

 

「も、ももももうこんな時間ですね。い、急がなければ」

 

「え?おい!!」

 

 

急にソーナが走り出してしまった。

呼びかけた時には既に遠く、豆粒のようになっていた。は、はええよホセ。

僅かに見えた赤くなった耳は、多分見間違いだと思う。

 

 

「………にしても、縁談か」

 

 

ふとつぶやく。

ソーナと約束してしまった以上、なんとかしてぶっ壊さなければいけないが…どうするべきか。

部長さんの親御さんが決めた以上、どうしてもその親御さんの顔に泥を塗る結果が想像に難しくない。

どういう御両親か知らないが、最悪の場合部長さんの居場所や援助が無くなってしまう可能性がある気がする。

 

 

「まぁ今考えても仕方ないか」

 

 

事態は一刻を争う。わけでもない。

ソーナもその可能性があると言っていただけだし、そのライザー・フェニックスのことも何も知らない。

そもそも情報が少なすぎる。

実際に動いた後で、「余計なお世話です。本当にありがとうございました」なんてことになったらそれこそ大変だ。

 

と、ホントにもうこんな時間か。

俺も日直の仕事があるし急がないとな。

 

そうして走ろうと思ったその時だった。

 

 

ドドドドドドッ!!

 

 

何かが猛スピードでこっちに来る。

え?なにあれ怖っ!!

なにかは直前で止まるとズザーッと前で停止する。

あれ?これってイッセー?

 

 

「聞いてくれナナシ!!俺部長に夜這いされた!」

 

 

勢いのまま肩をつかんでくるイッセーに頭を抱え、早く手を打たなくてはと目を瞑りこれからのことを考えることにした。

 

 

 

あぁ、せっかくの平和が……音を立てて崩れていくのが聞こえた気がした。

 




ナナシくん。
フラグ回収のはやい主人公

ソーナちゃん。
ヒロイン入り?を果たしたクーデレ系メガネ美少女。
「わ、私の影がどんどん薄く」とは某白猫さんのセリフ。

イッセーくん。
寝言は寝て言え。



気づけばお気に入り数も100件を超えていました!これもみなさんのおかげです!!
目標の100件を超えたし、今後はのんびり更新していこうかと思います!
あ、活動報告の方にアンケートを載せてるのでそちらも是非お願いします!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。