アマツさんの大冒険 (死神 零@8928)
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霊峰篇
第一話 目覚め


アマツマガツチが好きすぎて書いてしまいました。

注意点
誤字の可能性
オリジナル設定
文才皆無
そもそも完結する可能性(低)


それでもいいという方はゆっくりご覧ください


ユクモ村。

とある東の地域に存在する自然美しい村。

 

この村は昔、嵐龍【アマツマガツチ】の襲来により、壊滅の危機に瀕していた。

 

だが、このユクモ村に所属する名も無き英雄が渓流の最深部、霊峰にてアマツマガツチの討伐に成功する。

 

嵐龍が絶命するのと同時に荒れていた天気が晴れ、快晴が差し込む。

 

それはまるで、ハンターを祝うかのように……。

 

こうして、アマツマガツチの絶命により、ユクモ村壊滅危機は逃れたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー逃れた、のだが……。

 

 

 

霊峰の奥地に一つだけ大きな卵があった。

その卵は純白でやや黒ずんだ模様が見られる。

 

 

ーコンコンッ…

 

 

その卵が揺れ始め、中から何かを叩く音が聞こえる。

 

 

ーコンコンッ……コンコンッ……!!

 

 

その音は次第に大きくなるのと同時に卵の揺れも大きくなる。

 

 

ーパキッ!!

 

 

そして卵に限界が来たのか、割れ始めた。

 

割れ目から顔を出したのは、短い髭に短い角を生やし、黒い小顔、全身を覆う黒い甲殻に白い鰭。

 

そう、二代目となる嵐龍アマツマガツチが生まれた……。

 

……生まれたのはいいが、卵の殻が頭に被り、何も見えずにキョロキョロと左右を見る。

 

だが、結局何も見えないため首を傾げる。

 

こう見ると小さい、というのもあるので軽く可愛らしいと思うが残念ながらここは自然界。

 

人なんているわけが無い。

なので黄色い悲鳴なんて聞こえない。

 

それはさておき、このアマツマガツチ。

まだ自分に置かれた状況が把握出来てないのかよろよろと立ち上がる……のではなく、浮き始める。

 

だが、未だに卵の殻を被ってる状態なので前が見えるわけがない。

 

……つまりは…。

 

 

ーゴンッ!!

 

 

この通り、そこらに生えてる木に正面衝突してしまう。

けれど、これが幸運なのか頭に付いている殻が割れ、顔が見える。

 

だが、このアマツマガツチ。

通常の個体より違うものがある。

 

それは目の色。

通常は黄色をしているがこのアマツマガツチは水色になっている。

 

どうしてこのような色なのかは不明であるが、他は通常個体と同じである。

 

……いや、もう一つだけ違う部分がある。

 

それは【天候】だ。

 

本来、アマツマガツチは存在するだけで嵐を起こす。

そのため、【嵐の化身】という二つ名を持つが、このアマツマガツチは……まぁ、生まれたてというのもあるが全く嵐を起こさない。

 

それどころか快晴である。

 

ただ、微力であるが全身に風を纏わせている。

せいぜい彩鳥【クルペッコ】が羽ばたきに起きる風圧程度だ。

 

そんなアマツマガツチだが、何をしてるかと言うと……。

 

 

ーzzz…

 

 

なんと寝ている。

しかも木の枝の上に。

 

どうやら卵の殻を破るのに疲れたらしく、その鼾(いびき)はやや大きかった。

 

古龍とはいえ、生物だ。

寝ることだってある。

 

そっとしておくのが一番だろう。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

あれから数時間。

 

快晴だった天気が一変し、夜になる。

一部のモンスターが凶暴化する時間帯だ。

だが、霊峰は未だにしんみりとしている。

 

その中で昼寝していたアマツマガツチが目を覚ました。

そしてアマツマガツチは目を覚ましたのと同時にあるものを凝視する。

 

それはハンターに討伐された初代アマツマガツチの死体だ。

 

それを見てアマツマガツチはゆっくりと体を起こし、ゆっくりと低浮上しながら近付く。

 

……さて、突然話を変えるがこのアマツマガツチ、親の顔を知らない。

 

何せ親である初代アマツマガツチは討伐されたからだ。

 

つまり、何を言いたいかと言うと……。

 

 

ーガブッ

 

 

なんと、食べ始めた。

自分の親を、亡骸を容赦なく。

 

だが、これも生きるため必然なこと。

自然とは例え同族ですらも共食いするケースも少なくもない。

 

自然とはそれほど厳しいのだ……。

 

 

ーゴリッ!!

 

 

ある程度食事をしていると何か硬いものを噛んでしまい、違和感を覚えるアマツマガツチ。

 

その正体はアマツマガツチの希少素材【天空の龍玉】である。

 

普通のハンターなら「あぁ!!勿体無い!!」と思うだろうが、このアマツマガツチの場合「ん?何これ?食べちゃえ」的な感覚で食してしまう。

 

だが、それを食べると変化が起きた。

 

この天空の龍玉、効果があったのかどうか分からないが何やらほんの少しだけ纏う風の強さが加わった気がする。

 

それだけではなく、【飛膜】を食べれば鰭が、【尻尾】を食べれば尾が、【髭】を食べれば髭がやや大きくなった気がする。

 

知っているであろうか?

自然に生きる動物は人間より成長が早い。

それはモンスターでもハンターでも同じこと。

 

 

ー?

 

 

なにやら違和感を感じたアマツマガツチは頭を上げ、首を傾げる。

 

そのつぶらな水色の瞳はまるで子犬を連想させるが生憎口元が血塗れなのでホラーも漂わせている。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

一通り食べた彼(いや、彼女?)は再び木の上に上がり、体を丸めて睡眠を取る。

 

全てを食べずに立ち去るが、これは単に食べすぎて残してしまった、という訳では無い。

 

何日、いや何ヶ月かこの霊峰を拠点にするらしく、食料の分配を考え、敢えて残してるらしい。

 

それほどの知識を持ってるとなれば、やはりこのアマツマガツチは通常の個体より何かが違う。

 

 

ーzzz…

 

 

肝心な本人はまた睡眠を取る。

 

性格も通常とは異なり、温厚……というよりマイペースらしい。

 

それ故か良く寝る。

 

……ここまで来るとこのアマツマガツチの行動があまり読めない気がする。

 

嵐を纏わず、瞳が水色でさらにマイペース……。

 

……だが、それでも古龍種だ。

それなりの強さはあるだろう……多分。

 

そんなだらけ切った古龍アマツマガツチの真上には月が登り、優しく照らしている。

 

……アマツマガツチはその光に見舞われながら一眠りをするだけだった。

 

 

ー続くー




基本的三人称視点で書かせていただきます。

……というよりも文字が少ない気がする(´゚ω゚`)


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第二話 雷狼竜

アマちゃんも好きだがタマちゃんも好き。
タマちゃんも好きであればジンちゃんも好き。

基本的、渓流出身のモンスターが好きである~(˘ω˘ ~)


あれから半年が経つ。

霊峰は未だに快晴を保ち、絶景が広がっている。

初代アマツマガツチの死体は既に骨しか残っていない。

 

そして肝心の二代目アマツマガツチと言えば……。

 

 

ーzzz…

 

 

……また寝ている。

しかもいい夢を見てるのかいい顔をしている。

 

人間で言う「あ、もうそんなにこんがり肉食べれないよ」的な満腹状態のような顔をしている。

 

そんなアマツマガツチにも変化がある。

 

まず、体格が大きくなった。

生まれたばかりの頃はドスジャギィ並の大きさであったが、今となればロアルドロス辺りまで大きくなった。

 

また鰭も、尻尾も、角も、爪も大きくなり、より成体に近付いているし、何よりも纏う風の強さも大きく変化している。

 

まだ空の王者が出す風圧ではないが、ある程度の遠距離攻撃を弾くほどになった。

 

成長速度を見れば流石は古龍……と言いたいが相も変わらずマイペースな性格のため、威厳も何も感じない。

 

そんな若いアマツマガツチを他所に今日の霊峰も平和……とは言えなかった。

 

何故なら、至るところに雷が走っているからだ。

 

天気の影響ではなく、文字通り雷がバチバチと鳴らし、そこらを走っている。

 

この雷の正体は【雷光虫】。

ホタルに似た虫で体内に電気を溜め込んでいるという。

 

……さて、察しのいい人、というよりも大半の人が気付いてると思うが、この雷光虫が大量にいると言うことは当然、【あいつ】もいる。

 

 

其は大きな一対の角を持ちー

 

其は強靭なる四肢を持ちー

 

其は無双の狩人と呼ばれる者ー

 

 

寝ているアマツマガツチのそばにやって来たのは雷狼竜と呼ばれる牙竜種【ジンオウガ】である。

 

元々この霊峰はこのジンオウガの縄張りであったが、初代アマツマガツチの出現により、その縄張りを奪われてしまう。

 

しかし、今はその初代アマツマガツチは亡くなってる。

つまりはこの霊峰も徐々にジンオウガのものに戻りつつある。

 

だが、ジンオウガは気を荒くしていた。

 

無理もない、知らぬ内にまた新たなアマツマガツチが自分の縄張りにいるのだから。しかも寝てる。

 

それは怒る他ない事だ。

 

 

ーおいコラテメェ、こっから出ていけ。

 

 

まるでそう怒鳴るかのように威嚇するジンオウガ。

 

それに気付いたのかアマツマガツチは首を上げ、ジンオウガを見つめる。

 

 

ー………………。

 

 

だが、何も見ていなかったかのようにまた丸くなり、再び寝る。

 

……ここまで来たら本当に古龍なのか疑わしくなってきた。

 

 

ーブチッ!!

 

 

無視されたことに更に怒りを覚えたジンオウガはその場に湧いている雷光虫を溜め込み始める。

 

ここでジンオウガの生態について補足しよう。

 

ジンオウガの属性は雷であるが、その雷は微弱である。

だが周囲にいる雷光虫を集める事によって雷を補う事が出来る。

 

ジンオウガからすれば雷は攻撃にも使えるし、雷光虫からすれば天敵であるガーグァから身を守る事が出来る。

 

まさにwin-winのような関係が築き上げ、共存を可能にした。

 

そして最大まで雷光虫を溜め込んだジンオウガは大きな雷と共にその姿を変える。

 

甲殻と毛が逆立ち、より強力な雷を帯び、尻尾裏には青い光が鈍く輝く。

 

この状態をギルドでは【超帯電状態】と呼ばれる。

 

この状態になった、ということはジンオウガはアマツマガツチを敵とみなし、排除しようと決めたということ。

 

「どっからでもかかってこいや」とでも言ってるかのように再び威嚇するジンオウガだが、肝心のアマツマガツチは……。

 

 

ーん?

 

 

今気付いたらしく、再び首を上げ、浮遊して正面に立つ。

 

だが、寝起きのためか気だるそうにしてるのに加え、目が半開き状態。

 

再度言うが、こうなると本当に古龍なのか怪しくなってきた。

 

 

ーやっと起きやがったか。勝負しろ!!

 

ー………………。

 

 

まさにそんな雰囲気だった。

ジンオウガは威嚇してるが、アマツマガツチはただじっと見つめるだけで威嚇なんてしない。

 

その様子が気に入らないのか先に動いたのはジンオウガ。

 

自慢の四肢に力を込め、地面を蹴り上げる。

 

アマツマガツチに向かって飛び付き攻撃を見舞う……が。

 

 

ーフワッ

 

 

アマツマガツチはしなやかな体を使い、避ける。

 

飛び付き攻撃は失敗に終わった。

 

だが、無双の狩人の攻撃は終わらなかった。

 

今度は方向を回転し、強靭な前足でアマツマガツチを潰そうと飛びかかる。

 

けれど、浮いてるアマツマガツチは滑るかのようにスルリとそれを避ける……と言ってもただ単にタイミングを合わせて後ろに下がっているだけだった。

 

それでも攻撃は続き、間合いが空いたところにジンオウガは体を捻らせ、雷弾を発射。

 

曲線を描いてアマツマガツチの方へ向かう。

 

だが、アマツマガツチが空高く飛んだ事により、失敗に終わる。

 

しかもそのまま高い位置でジンオウガを見下す。

 

……いや、訂正しよう。

見下してはいない、見つめている。

 

ただ、その目からは「うわっ、何こいつめんどくせぇ」とでも言いたげそうな雰囲気が漂っている。

 

それを見たジンオウガの怒りボルテージはMAXになる。

 

怒り出したジンオウガに反応したのか雷光虫も活性化し、ジンオウガの全身が濃い青色に包まれる。

 

 

ーコンチクショウがああぁぁぁぁっ!!!

 

 

そう叫ぶかのように天に向かって大きな咆哮を放つジンオウガ。

 

もはや放たれるのは殺気しかない。

 

それもそうだ。

こちらは必死で攻撃してるのにも関わらず、相手は攻撃せず、ただ嘲笑うかのように避けているだけだから。

 

だが、肝心のアマツマガツチと言えば……。

 

 

ーそうだ、渓流に降りてみよう。

 

 

何か閃いたのか目を見開き、その場を後にした。

 

だがそれを逃がさまいとジンオウガは四肢に力を込め、力強く地を蹴り、大ジャンプするも届かない。

 

そして空中でバランスが取れず、体勢を崩したまま地面へと叩き落とされる。

 

ゴロンッという表現よりズドォンという表現の方がしっくりくるだろうが、今のジンオウガの姿を見ればはっきり言って哀れだ。

 

それを他所にアマツマガツチは知らんフリをして霊峰を出る。

 

……本当にマイペース過ぎる。

 

 

ーチキショオォォォォォォォォッ!!!!!!

 

 

と、言いたげそうに再び天へと叫ぶジンオウガ。

 

過去にアマツマガツチによって霊峰から追い出され、渓流に行き着いた際、天を泳ぐアマツマガツチを見上げ遠吠えを上げる事があったが、まさにシンクロしている。

 

とはいえ、邪魔者が消えたのかジンオウガは霊峰のど真ん中で犬の如く丸くなり、寝始める。

 

お前もか、と言いたいがこれは単に……不貞寝だろう。

 

そんなジンオウガはさておき、自分の思い付きで渓流へと降りようと決意したアマツマガツチだが、まさかこれが大きな冒険の始まりになるとは思いもしなかった。

 

 

ー続くー




展開が急するぎる気がするが私は悪くない、気分で行動するアマツマガツチがすべて悪い(汗)


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渓流篇
第三話 水を持つ者の集い


アマツさんって海竜骨格だから水の中に居ても違和感を感じないのは私だけだろうか?

訂正(2017.01.21)
内容
・ロアルドロスは雌ではなく雄で、ルドロスは雄ではなく雌でした。指摘ありがとうございます。
・タイトルにて数話の入れ忘れを訂正しました


突然だが、水獣【ロアルドロス】はジト目であるものを見て威嚇していた。

 

それは渓流エリア7にてそいつはいた。

 

嵐龍アマツマガツチ、その二代目は水竜【ガノトトス】がよく泳ぐと言われている水場に……浮いていた。

 

泳いでるんじゃない。浮いてるんだ。水面に。

 

頭は水面に浮き、下半身はだらし無く水に沈んでいる。

傍から見れば死んだ魚のような格好だった。

 

これはこれでシュールの光景だが、自分の縄張りに入ってる事に変わりはないと判断し、ロアルドロスはただただだらけ切ってるアマツマガツチを威嚇する。

 

それだけではなく、そこら辺にいたルドロス達も威嚇する始末である。

 

 

ー兄貴?アレなんすか?

 

ーシッ!!見ちゃいけません!!

 

 

……なにやらそんな会話が聞こえそうな雰囲気になっている。

 

そして肝心のアマツマガツチと言えば……。

 

 

ーzzz……

 

 

もうお決まりになってるのか寝ている。

 

もはや寝る場所があるならば問答無用で寝れると言ったところだと思いたいが流石に水面の上で寝るヤツが何処にいるのやら。

 

というよりも敵であるロアルドロスの前に寝れるその精神が凄いと思う。

 

そしてロアルドロスは痺れを切らしたのか追い出そうと水に飛び込もうとした、その時だった。

 

 

ー!!

 

 

アマツマガツチが突然、首を上げキョロキョロし始めたではないか。

 

その目は今までにないほどキリッとしており、その目つきは本来の古龍種に相応しいほど輝かせている。

 

突然のアマツマガツチの行動にロアルドロスはビクつき、警戒する。

 

やっと戦闘に入るのか?

 

……と思うだろうが、再び首をだらし無く下げて前足を伸ばし、戻す。

 

また伸ばしては戻すの繰り返しだった。

 

何をしてるかわからないと思うので説明すると、どうやら自分の角裏に痒みが起きたらしく、かこうとしても届かず、戻しては勢いをつけて伸ばそうと必死になってるだけだった。

 

つまり…アマツマガツチはロアルドロスの事なんて一切気にしてなかった。

というよりも視界に入ってない始末だ。

 

だが、この行動を繰り返していくうちに前進している。

 

それもそうだ。

今アマツマガツチがいる場所は水。

 

前足を前後に揺らすことで運動エネルギーが働き、その推進力で進んでいる。

 

もはや傍から見れば手漕ぎボートにしか見えない。

 

この様子を見たロアルドロスは呆れる事はなく、ただじっと見つめている。

 

ロアルドロスにとって、これは好機でしかない。

 

何故なら、このまま勝手にエリア9に流れ着く可能性があるからだ。

 

 

 

 

けれど、何でも上手くいかないというのが人生。

それもまたハンターだけではなくモンスターも同じだ。

 

 

 

ーザバァッ!!

 

 

もう少しでエリア9に流れる前に水面から何かが飛び出してきた。

その者はアマツマガツチを吹っ飛ばして現れる。

 

アマツマガツチはそのまま吹っ飛び、陸地へ落とされる。

 

だが未だに角裏をかこうと必死にバタバタと腕を振る。

 

そんなアマツマガツチを他所に水面から飛び出したのは魚と竜を合わせ持ったような姿をしている水竜【ガノトトス】である。

 

ガノトトスは飛び出す勢いと同時にアマツマガツチを吹っ飛ばしたんだろう。

 

突然の乱入者に驚いたルドロス達は「ひぃ!お助け」と言わんばかりに撤退する。

 

……ボスであるロアルドロスを差し置いて、だ。

 

だがボスの故、また元々の縄張りの主であるプライドなのかロアルドロスは退かない。それどころかガノトトスを睨みつけ威嚇している。

 

対してガノトトスも瞳孔のない目でロアルドロスを睨み、威嚇。

 

……アマツマガツチは未だに前足をバタバタさせ、エリア4から現れた泡狐竜【タマミツネ】にガン見されている。

 

 

ー俺の領域から出ていきな!!

 

ーうるせぇぞこのスポンジ野郎!!

 

 

なにやらロアルドロスとガノトトスの間からそんな会話が聞こえそうな気がする。

 

 

ー届かない……(´・ω・`)

 

ーなんだこいつ?

 

 

……なにやらアマツマガツチとタマミツネの間からそんな会話が聞こえそうな気がする。

 

そうこうしてるとガノトトスとロアルドロスは争いを始めた。

 

ロアルドロスはその立派なスポンジ状のトサカに含まれている水分を使い、ガノトトスに突進を仕掛ける。

 

しかし、ガノトトスは腹で滑り、それを避ける。

避けた後、ロアルドロスに体を丸め、勢いよく体当たりをする。

 

直撃はしたものの、怯むまでのダメージではないらしく、方向転換して水ブレスを撒き散らしながら突進。

 

今度はロアルドロスの攻撃がヒットする。

 

だがそんなの効かぬ、と言いたげそうに今度はガノトトスの尻尾がロアルドロスを捉える。

 

けれど、当たる寸前に大ジャンプ。

なんと飛び越えた。

 

 

ーこいつ……なかなかやりやがる。

 

ーテメェもな……。

 

 

再び互いを睨み合い、低い唸り声を上げる。

 

……アマツマガツチとタマミツネはというと…今度は仲良く魚を取り、食べている。

 

 

ー………………。

 

ー………………。

 

 

その様子をガン見する二頭。

 

そして意気投合したのか互いを見て頷くとそれぞれ口に水ブレスを仕掛ける。

 

ガノトトスがタマミツネに、ロアルドロスがアマツマガツチに命中する。

 

結果的にタマミツネは驚いて怯むものの、アマツマガツチは攻撃を当てられてるのにも関わらず餌を食べる。

 

……余程お腹が空いてたらしい。

 

だが、食事の邪魔をされて苛立ったのかタマミツネは桜色の鰭を真っ赤にさせ、咆哮を上げる。

 

けれど、その咆哮にビックリしたのかアマツマガツチが食べていた魚が一斉に逃げ出した。

 

 

ーあっ…( ´・ω・`)

 

 

それに反応したのかアマツマガツチは魚を追うように宙を舞い、水辺に向かう。

 

……もう一度言うがこのアマツマガツチ、本当にマイペース過ぎる。

 

そんなアマツマガツチを見てる暇なんてないのか三頭による乱闘が行われた。

 

アマツマガツチはただ魚を追うだけで興味が無いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乱闘は数時間で終わった。

 

まずロアルドロスは「もうどうにでもなれ」と言わんばかりに撤退。

後にエリア6を新たな縄張りにする。

 

対してガノトトスとタマミツネだが、勝者はタマミツネだった。

 

理由としては単純でタマミツネは海竜種であるが陸の活動に適応されており、そのしなやかな動きでガノトトスを翻弄していた。

 

対してガノトトスはどちらかと言えば水中で真価を発揮するタイプだ。

 

陸戦ではあまり力を出せなかった。

 

よって、タマミツネの思うがままにされ、絶命。

 

これによりエリア7は新たにタマミツネの縄張りとなる。

 

……ちなみに主役であるはずのアマツマガツチは道に迷ったのかエリア9の廃墟した寺子屋の上にて寝ていた。

 

 

ー続くー




察しの良い方なら気付いてると思いますが作者の好きな属性は水属性です。

だって音とか気持ちいいし、エフェクト好きだし(´・ω・`)


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第四話 その頃のユクモ村

ここからはハンター視線となります


「ア、アマツマガツチが現れた……だと!?」

 

 

ここはユクモ村にあるギルド。

そこにいるギルドマスターは声を荒らげる。

 

どうやら古龍観測隊があのアマツマガツチを目撃したとの事で報告したらしい。

 

しかも現れた場所が渓流。

霊峰ではなく渓流である。

 

信じ難い話ではあるが古流観測隊の目は確かだとギルドの連中は理解し、信用している。

 

なのでギルドはこれを緊急クエストとして依頼を発行、ユクモ村全域のハンターにそれを知らせた。

 

だが、相手は古龍。

生半可な装備や実力で向かっても死ぬだけだ。

 

それを恐れてるのか受注しようとするハンターは少なかった。

 

 

「ユ、ユカリさんは!?ユカリさんはどうした!?」

 

 

さて、ここでギルドマスターが言う【ユカリ】について説明させて頂こう。

 

過去にこのユクモ村は嵐による災害を恐れていた。

いや、正確にはアマツマガツチの災害、と言ったところか。

 

被害は大きく、村だけでなく渓流ですら荒れるのではないかと思われていた頃、一人のハンターが立ち上がった。

 

名を【ユカリ】。

人類初アマツマガツチの討伐に成功した第一人者である。

それ以来、彼女はユクモ村の英雄となる。

 

彼女は後にユクモ村所属の龍歴員一員となり、今も尚ユクモ村を拠点にし活動している。

 

 

だが、完璧という言葉は存在しない。

 

 

確かにユカリはハンターとしての腕はある。

骸竜と恐れられていた【オストガロア】の討伐にも成功しているほどだ。

 

けれどそんな彼女にも一つ【ある意味】欠点がある。

それは……。

 

 

「ユカリさんなら確か『渓流で釣りするから行ってくる』って言ったきり帰ってきてませんよ?」

 

「なんだと!?こんな時に限って……!!しかも渓流だって!?アマツマガツチがいる場所ではないか!?」

 

 

そう、彼女の行動は仕事以外の行動が【自由過ぎる】のである。

 

かと言って、ちゃんと限度してある。

せいぜい緊急事態の最中釣りに行くぐらいだ。

 

……いや、それもそれでどうかと思うが。

 

 

「と、兎に角ユクモ村全域に避難警報を出すんだ!!またあの災害が来る恐れがある!!村長さん、頼みましたぞ!!」

 

「あらあら、うふふ……」

 

 

どちらにせよ、まず村人の避難が優先だ。

ギルドは大慌てで行動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ギルドが緊急事態になっている同刻、渓流のエリア7にて。

 

 

「……今日の引き、悪いな……」

 

 

背に飛竜刀【銀】を担ぎ、ミツネSシリーズを身に纏う黒髪の美人が居た。

彼女の名が【ユカリ】、ユクモ村所属の龍歴員ハンターである。

 

彼女は釣竿を垂らし、ただのんびりと釣りをしている。

 

こう見えて過去に初代アマツマガツチを討伐した第一人物である。

 

ちなみに今日の引きはハリマグロ三匹、眠魚五匹、爆裂アロワナ二匹、そして大食いマグロ一匹である。

 

 

「せめてカジキマグロが来ないかね……」

 

 

いや、来るわけがない。

だってカジキマグロは凍土や氷海と言った寒地域にしか生息しない。

 

彼女がそう呟いていると……。

 

 

ーグググッ……!!

 

 

「っ!!」

 

 

竿が反応した……。

それも引き具合から見て大物と見ても良いだろう。

 

 

「よしきたッ!!」

 

 

そこから彼女の闘争心が燃える。

竿を掴み、必死に引く。

 

 

(お、重い……!!まさか水竜か!?)

 

 

だが予想以上の大物らしく、引っ張るとズッシリとした感覚が伝わっていく。

 

過去に彼女は水竜だけでなく、灯魚竜【チャナガブル】を、また釣れるはずのない海竜【ラギアクルス】までも釣り上げた経験がある。

 

これでもか、と言わんばかりに奮闘する。

その目は仕事をする時と同じ目つきだった。

 

そして竿が上がり、水辺から影が飛び出す。

 

 

「やっt…………は?」

 

 

歓喜を上げた彼女だが、釣り上げた者の姿を見て放然、そして声が漏れる。

 

そこにはあのアマツマガツチの姿があった。

 

そう、彼女は海竜だけでなく、等々古龍までも釣り上げてしまった。

 

恐らく、これが人類初の古龍一本釣りの瞬間だろう。

 

 

「アマツ……!?なんで!?」

 

 

やや警戒しながらも彼女は釣れたアマツマガツチを見つめる。そして三つの疑問が浮かんだ。

 

一つ、何故ここにアマツマガツチがいる?

本来なら霊峰のみにしか現れないアマツマガツチだが、何故ここ渓流にいるのだろうか?

 

二つ、何故嵐が来ない?

通常個体ならアマツマガツチがいるだけで嵐が巻き起こるはずだが、今の夜の渓流は快晴、それどころか満月が顔を出している。

 

三つ、ユカリはこれが一番気になってた。

 

 

「……なんだこいつ?」

 

 

そう、だらけ切ってる。

目の前にハンターがいるというのにも関わらずアマツマガツチは鼻先から尻尾の先端までビタンと地面につき、寝っ転がってる。

 

目は既に半開き状態。

さしずめ寝起き状態のようだ。

 

だが、その半開きの目だとしてもハッキリとユカリを捉えてる。

けれど襲う気が全くない。

 

……ユカリは思った。

 

 

(こいつ……本当にアマツマガツチか?)

 

 

咄嗟に手を回し、飛竜刀【銀】の柄を握ってた拳を離し、アマツマガツチに近付く……。

 

 

ー!!

 

「っ……!?」

 

 

近付いた瞬間、アマツマガツチは首を上げ、ユカリを凝視する。

その目は先程まで半開きだったものの、パッチりと目を見開いてる。

 

 

(や、やはりモンスターはモンスターか……!!)

 

 

警戒されたと思い、ユカリは再び飛竜刀【銀】の柄を握り、引き抜いて睨み付ける。

 

だらけ切っていた相手だとしても古龍は古龍。

命を落としてもおかしくない。

 

それに今のユカリの装備はプライベート用のもの。

ガチな装備ではなく、生半可な装備である。

 

武器はいいものの、防御力が劣ってるがため、被弾は許されていない。

 

思わず、ユカリは固唾を飲んだ。

 

 

ー……!!

 

「は?」

 

 

だが、その緊張感もすぐに解けてしまう。

 

次に行動したのがアマツマガツチ。

ユカリの正面に立つとその場に地面にヘタリ込み、じっとこちらを見つめている。

 

……しかもよく見れば舌を出して物欲しそうな顔をしてるし、尻尾をフリフリと可愛らしく振っている。

 

もはやそれは犬の伏せの姿を連想させる。

 

 

「危害はない……のか?」

 

 

これは流石にユカリも動揺しかねない。

 

だってモンスターがモンスターらしくない行動をするのだから。

 

 

「……まさか、これが欲しいとか?」

 

 

そこでユカリはある事を思い出す。

 

元々このアマツマガツチは水中の中にいた。

となれば、魚を追っていた可能性が高い。

 

そう思い、ハリマグロを取り出してみる。

 

 

ー〜!!〜!!

 

 

見せた瞬間「それ頂戴!!それ頂戴!!」と言わんばかりに前足をバタバタと揺らす。

 

ちなみに顔文字で表現すればこうなる。

⊂⌒っ´・ω・`)っチョーダイ

 

 

「わ、わかったわかった。ほら」

 

 

そしてユカリはハリマグロをアマツマガツチに向けて投げる。

 

宙を舞うアマツマガツチはそれを逃さず口でキャッチ。

 

一口でマグロを食した。

 

 

(一口で…!?なんてやつだ……)

 

 

いくら何でもマグロを一口で食うやつがいるか?

……いや、チャナガブルはマグロどころかエピオスを丸呑みにするだろう……。

 

 

「……お前、どうやら危害はないみたいだな」

 

 

その様子を見てユカリは危害のないモンスターだと分かり、引き抜いていた飛竜刀【銀】を仕舞う。

 

 

「まぁ、ギルドには報告しておくが……討伐対象にはならないかもな…大人しいし」

 

 

そしてそのままユカリは釣竿を仕舞い、帰宅する準備を始める。

ユカリは確かにハンターだが無駄な殺生を好まないタイプだ。

 

その性格故かこのアマツマガツチを敵とは認識せず、また味方だと認識せず、ただ単に野生に生きる大人しいモンスターだと認識したんだろう。

 

 

「じゃあな。また逢う日まで…」

 

 

ユカリはそれを言い残し、ここから立ち去った。

振り返るとそれを見送るかのように首を傾げて見つめるアマツマガツチ。

 

……この時、ユカリは完全にこのアマツマガツチに興味が湧いた。

 

もしかしたら…人の言葉さえも通じてるのではないのか?と。

 

二度と逢えないかも知れないけれど、ユカリはもう一度逢える事を信じ、渓流から出ていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

……と言いたい所だがユカリは困っていた。

 

後ろを振り返るとあのアマツマガツチがいた。

 

……単刀直入に言えば懐いたのか着いてきてる。

いや、着いてきてしまった、と言うべきか?

 

 

「…………」

 

 

それでもユカリは無視して再び前に進む。

だが前へ進めばアマツマガツチも着いてくる。

 

 

「…………」クルッ

 

ーピタッ

 

 

歩みを止め、振り返ると一定の距離を保ちながらアマツマガツチはピタリと動きを止める。

 

これじゃ、まるでダルマさんが転んだ状態だ。

 

 

「……くそっ、あまりこういうやり方をしたくなかったが……」

 

 

ユカリはそう言うとポーチからある魚を取り出し、アマツマガツチ目掛けて投げる。

 

宙を舞うその魚をすかさずキャッチするアマツマガツチ。

 

 

ーっ!?

 

 

その途端、変化が起きた。

 

アマツマガツチが驚いた表情を取ると……。

 

 

ースヤァ……。

 

 

……寝始めた。

だが、これは好きで寝ている訳では無い。

 

ユカリが投げたのは釣れた眠魚一匹。

それを食べてしまったため、睡眠状態になったんだろう。

 

……というよりもまだ未成体とはいえ、古龍ですら魚一匹のみで状態異常を起こすとは……恐れ入った。

 

 

「すまない……お前は連れていけないんだ。村のみんなが怖がる」

 

 

この自然のルールに関してはユカリも充分知っている。

モンスターが人に対して遊ぼうと表現しても人から見ればそれは襲って来てるようにも見える。

 

……人とモンスターの共存は不可能なのだ。

 

 

「じゃあな。水色のアマツマガツチ」

 

 

そしてユカリはその隙に渓流を出ていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、ユカリはアマツマガツチとの遭遇についてギルドに報告。

 

「やけに大人しく、恐らくはジャギィより大人しかった」と口で言うと全員唖然としていた。

 

……ちなみにあのアマツマガツチは通りかかったタマミツネに泡まみれにされ、遊ばれてしまう始末となる。

 

 

ー続くー




コメントで「可愛い」という言葉が来ました。
本当に感謝感激です~(˘ω˘ ~)スヤァ…


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第五話 奮闘アマツさん

高評価頂きました、ありがとうございます( *・ω・)*_ _))ペコリン
完結するか未定ですが頑張りたいと思います。

※今回はオリジナルが含まれてます。嫌な方はブラウザバック推奨します


「………………」

 

 

ハンター、ユカリは再び渓流にいた。

 

それは仕事のため……とかではなく、単なる散歩のためこの地へ踏み込んだ。

 

踏み込んだ……のだが、散歩ではなくなってしまった。

 

何故ならば、目の前の光景が答えだった。

 

 

 

ー戦ってるのだ、あのアマツマガツチとクルペッコが。

 

 

 

ただ、クルペッコは普通の個体ではない。

色は原種に近いが、いくつか異なる点がある。

 

まずはクチバシ。

異常にデカい、まるで拡音器のような形をしている。

一度鳴けば遠くまで響きそうなクチバシだ。

 

次に胸、これもまたデカい。

縮小時はあまり目立たないが一度膨らますと地面に付くほどデカい。

大量の空気を摂取して長い音波を発するために進化したものだと考えられる。

 

背に生える羽根は赤緑の鮮やかな羽毛に覆われ、尻尾はより扇のようにも見える。

 

そして最大の特徴は火打ち石……ではなくその二本の足。

 

硬そうな甲殻に包まれ、明らかに太かった。

 

このクルペッコは近年発見されたばかりで生態はまだ解明されてない。

 

ただ、戦闘経験のあるハンターの話では「狩り場の踊り子のような奴だった」だの「モンスターを呼び寄せ、怒らせたりしていた」だの「ステップを踏むような動きで相手を翻弄し、蹴りまでして来た」だの……まるで踊ってるような戦闘スタイルだったという。

 

この事からギルドはこのクルペッコを「舞う演奏師」と意味し【舞演師(ぶえんし)】という二つ名個体と認めた。

 

けど、ユカリが驚いてるのはそこじゃない。

初めて舞演師を目撃するがそんなのはどうでもいい。

 

何よりもビックリなのが……。

 

 

(アマツマガツチが戦ってる……だと!?)

 

 

そう、そこに驚いてた。

というよりも驚かざる終えない。

 

面倒臭がりのあのアマツマガツチが戦ってるのだ。

 

その目はキリッとしており、目の前にいる舞演師を威嚇している。

 

だが、やはり嵐を纏わない。

理由は不明であるがユカリはワクワクしていた。

 

あのアマツマガツチの戦闘スタイルが見られる、と。

 

そう思う内に動きがあった。

 

先に動いたのは舞演師。

得意とするステップ突進で距離を詰める。

 

恐らくは様子見と言ったところだろうか。

 

だが、アマツマガツチはそれを見てゆっくりながらも浮遊してそれを避ける。

 

避けた後に口に水エネルギーを溜め、発射。

直線状の水ブレスが舞演師を捉えた。

 

だが負けじと舞演師はステップで避け、胸を膨らませてクチバシを向け大きく息を吸い込む。

 

そして次の瞬間、音を発射。

轟竜には至らないが大きな音と空気玉がアマツマガツチに向かって飛ぶ。

 

その最中、アマツマガツチは身を回し、竜巻を形成させて空気玉をかき消す。

 

竜巻が晴れるとアマツマガツチが舞演師を睨み付けている。

 

 

(……ん?)

 

 

だが、ユカリはこの時気付いた。

 

アマツマガツチの視線を辿ってみると舞演師の羽根を見つめていることがわかった。

 

……まさかとは思うがあのアマツマガツチは舞演師の羽根を狙ってるのではないだろうか?

 

何故舞演師の羽根を狙ってるのか分からなかったが、しばらく観察を続けてみることにする。

 

少し間が開け、再びアマツマガツチは動く。

今度は前足をバタバタさせて前進する。

まだ空を飛ぶのには慣れてないのかフラ付きが見える。

 

それでも前進し、口を開いて噛み付いた。

……羽根目掛けて、だ。

 

 

ーブチッ!!

 

 

途端、何かが千切れる音が聞こえた。

 

その正体は舞演師の立派な羽根が何枚か千切れる音だった。

 

千切れたことにより、舞演師は驚き、怒りを覚え、胸を膨らませる。

 

対してアマツマガツチは……。

 

 

ー(*´ω`*)

 

 

寺子屋の上で一休み。

 

……戦闘中だというのに一休みをする、マイペースだというのは相も変わらずらしい。

 

しかも元々羽根が目的だったのか、フサフサの羽根を枕代わりにして寝っ転がってる。

 

……さらに顔。

めっちゃホッコリしてる。

 

もう、モンスターじゃないのか?と疑問になる程の満足気な顔だった。

 

だが、それを見逃す訳には行かないと舞演師は胸を膨らませて咆哮を放つ。

 

 

(ッ!!この鳴き声は……!!)

 

 

放たれた咆哮に耳を塞いでいるユカリは聞き覚えがあった。

 

このドスの効いた低い咆哮。

……あの方しかいない。

 

 

ードスッ!!ドスッ!!

 

 

地響きが鳴るとそいつは現れた。

 

恐暴竜【イビルジョー】。

しかも舞演師が放つ五月蝿さのせいか怒りに満ちている。

 

舞演師は嬉しそうにステップを踏み込みながら火打ち石を鳴らす。

 

しかもこの舞演師、厄介な事に特殊な音波を発し、呼び寄せたモンスターを操る事も可能としてる。

 

つまりは原種では乱入させても味方とは限らずとなるが、舞演師の場合は完全に味方。

一対二となってしまう。

 

流石に突然の乱入者に驚いたアマツマガツチは羽根から離れる……

 

 

ーzzz……

 

 

……のではなく、もうお決まりとなってしまったお昼寝タイム。

 

元々羽根のみが目的らしく、別に舞演師には興味が湧かないらしい。

 

 

ーイラッ…

 

 

その態度にイラついたのか舞演師はステップを行い、連れてきた暴走イビルジョーを強化させる。

 

そして再び特殊な音波を発し、イビルジョーに命令をする。

 

命令内容は単純だった。

「殺れ」と…。

 

それに答えるかのようにイビルジョーは大きな咆哮を放ち、寝ているアマツマガツチに向かっていく。

 

もう殺せると思い込んでるのか舞演師は挑発させるかのように左右にステップする。

 

そしてイビルジョーとアマツマガツチの距離が縮まり、その大きな口を開け喰らおうとする……その時。

 

 

ーヘクションッ!!!!

 

 

アマツマガツチがくしゃみをした。

そのくしゃみの反動により水ブレスが炸裂。

 

 

ー!?

 

 

突然0距離からのアマツマガツチブレス。

 

そんなの予想してないのかかの恐暴竜ですら動揺している。

 

そしてそのままブレスはイビルジョーの口から尻尾の先まで貫いた。

 

水は水でも高速で飛べばそれは鋭い刃となる。

どんなに硬い甲殻を持っていようと貫くこともあれば砕く事も容易いのだ。

 

流石に耐えきれず、イビルジョーはそのままダウン。

 

……まさかくしゃみだけで一撃で倒してしまうとは……。

 

 

ー( ゚д゚)

 

 

それを目の当たりにした舞演師は口を開いて唖然とする。

 

だが、仕方あるまいと言わんばかり、一度羽ばたき空を舞う。

 

そこから強靭にまで発達した足でアマツマガツチを踏み砕こうとする。

 

そう、これが舞演師最大の技、飛び蹴りである。

 

どういった原因でそこまで発達したのか分からないが、アレに踏み砕かれたら一溜りもない。

 

だが、アマツマガツチは起きる気配なし。

これはピンチである。

 

そして足がアマツマガツチに当たる瞬間……。

 

 

ーん〜……、尻尾〜……

 

ーアイエエェェェェェェッ!?

 

 

寝相のせいで勢いよく動いた尻尾が舞演師を捉える。

 

直撃した舞演師はそのままホームラン、吹っ飛ばされる。

 

まさに逆転サヨナラホームランみたいなものだ。

 

そしてやや遅れて尻尾の影響なのか風が吹き、水が弾け飛ぶ。

 

……こういう形でアマツマガツチは勝ちを収めた。

 

 

「なっ……!!」

 

 

……この時、ユカリはこう思った。

 

 

ーつ、強い……。

 

 

クルペッコとは言え、二つ名を一撃で倒す。

 

そこは流石古龍と言ったところだろう。

 

そしてそれと同時にある事を思い浮かべる。

 

 

ー戦ってみたい。

 

 

討伐はしない、ただこのアマツマガツチと戦ってみたい。

 

ただただそう思い、拳を作っていた。

 

こうしてアマツマガツチにライバルが出来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーちなみに吹っ飛ばされた舞演師は余った背羽根に巨木の枝に引っ掛かり、身動きが取れなかったということをここに記しておこう。

 

 

ー続くー




初戦闘がこうなっていいのか?と思う私です( ´・ω・`)

さて、初めてオリジナルモンスターを出してしまいましたが如何でしょうか?

もし、嫌というのであればコメントお願いします。



ー舞演師のステータスー

名前・舞演師クルペッコ
種族・鳥竜種クルペッコ属
属性・火
破壊部分・クチバシ、火打ち石、両足


生態

近年発見されたクルペッコの特殊個体。
クチバシと胸が大きくなり、色鮮やかな背羽根と扇形の尻尾、そして固く巨大化した両足が特徴。

胸の発達により大量の空気を摂取する事が可能となり、クチバシの発達のおかげでより遠くのモンスターを呼び寄せ、特殊な音波を発生させモンスターを操る事が可能とした。

そして最大の特徴となる両足。
この足でステップするような動きで相手を翻弄し、飛び蹴りを可能とした。
蹴りの一撃は重く、かの空の王者の火炎ブレスに匹敵するという。

この舞い踊り、演奏をする師という姿からギルドはこれを【舞演師】と名付けた。


素材
・舞演師の鱗
赤緑の美しい鱗。鱗としてはしなやかであるが、それなりの強度がある。

・舞演師の背羽根
舞演師の背に生える巨大な羽根。フサフサしており、触り心地が良い。

・舞演師の足甲殻
異常なまでに硬質化した舞演師の足。出来の良い武器ですら弾かれるという。

・舞演師の扇尾
舞演師の扇形の尻尾。これにより舞い踊ると共に長距離の飛行も可能としてる。


防具

舞演師シリーズ

・回避性能+1
・高級耳栓
・舞演師の魂(笛強化+風圧【小】無効)


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第六話 泡と嵐

今回は現段階でアマツマガツチと仲がよろしいタマミツネのお話です。

高評価&コメントありがとうございます( *・ω・)*_ _))ペコリン


※誤字修正・2017/01/23 00:47:13
内容・「状態」ではなく、「上体」。指摘ありがとうございます


泡とは……液体が空気を包んで出来たものだ。

 

それは時折、生物の摩擦を消し、身動きを制限させることも可能とする。

 

泡は時として武器にもなる。

 

その性質を利用して狩りを行うのがこの泡狐竜【タマミツネ】である。

 

現段階、タマミツネの生態は全体から特殊な体液を分泌させ、泡を形成させる海竜である。

海竜でありながらも水中より陸での目撃が多く、その身体を支える四肢はその身に合わぬ機動力を得ている。

 

ちなみに今は雄の個体しか目撃され、雌個体の目撃例は未だに0である。

 

まぁ、そのことはどうでもいいとしよう。

ただ、そのタマミツネなのだが……。

 

 

ー(*´ω`*)

 

ー(๑¯ω¯๑)

 

 

その大きな尻尾を器用に使い、アマツマガツチを泡まみれにしていた。

 

だが、これは縄張り争いでもなければ威嚇し合ってる理由でもない。

 

最近、アマツマガツチはタマミツネの泡が気に入ったのかよくタマミツネの縄張りに入っては泡を浴びている。

 

要するに、【シャワー】である。

 

最初はタマミツネも警戒はしてたものの、あの時の乱闘(第三話参照)前に共に魚を食べた仲だと思い出し、危害がないと判断したためこう受け入れている。

 

ちなみに、ユカリに眠魚を食べさせられ、寝てしまったところ、面白半分で泡まみれにした張本人でもある。

 

それ故か、アマツマガツチとタマミツネの関係がより深まった……気がする。

 

それと、アマツマガツチはシャワーの対価として風を起用に使って魚を摂取している。

 

この時のタマミツネとアマツマガツチの表情は……いや、説明しなくても大体想像出来るであろう。

 

そして今現在アマツマガツチはタマミツネシャワーを満喫している。

 

 

ーここがいいんか?ここがいいんか君は?

 

ーキャー、タマミツネさんのエッチー!

 

 

……的な雰囲気を感じ取れる。

 

古龍と海竜……これは決して交じる事の無い出来事であるが、それが現実になってしまった。

 

そして今タマミツネが洗っている箇所は角の裏。

 

以前、アマツマガツチが痒みを起こしていた場所である。

 

そこをタマミツネは尻尾で器用にゴシゴシと擦る。

 

それはまるで人間でいう背中をタオルで洗ってるような姿そのものである。

 

しかもそれだけじゃ飽きたら無いのかアマツマガツチはツルツルと滑り始める。

 

ハンターなら足元を取られ、武器が取り出せない状態になるであろうがアマツマガツチからすればこれは単に遊びとしか認識されてなかった。

 

……もうくどいと思うがもう一度言おう。

本当に……いや本当に古龍の威厳が見当たらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマミツネシャワーを終えたアマツマガツチは水辺へと飛び込み、水中で風を巻き起こす。

 

補足として説明させていただくが、このアマツマガツチはいつの間にか水中による適応能力を得ている。

 

つまりは、大海原に出ても問題ないと推測されている。

 

何故適応されたのかは分からないが……考えるのは後にしよう。

 

それで話を戻すがアマツマガツチは風を器用に使い、魚を浅瀬まで追い込む。

 

逃げる魚はそのまま浅瀬まで移動し、そこからタマミツネが食事をする。

 

それはまるで人間の漁である。

 

ちなみにタマミツネに気付き、逃げようとする魚はアマツマガツチが捕食する。

 

今日の魚は大量らしく、二頭とも満足な表情を取る。

 

……だが、それが仇となったのかある獣がここへ足を運ぶ。

 

 

ーっ!!

 

 

突然、タマミツネは顔を上げた。

 

何かの気配を感じ取ったらしい。

 

……対してアマツマガツチは魚の食事に夢中でそれに気付いていない。

 

そしてタマミツネは見た。

 

その者は紅き毛と甲殻を纏い、通常の熊より一回り、いや二回りの大きさを持つ巨体。

 

それが一歩一歩と足を運び、口から涎を垂らす。

 

その者の正体は青熊獣【アオアシラ】。

その特殊個体である【紅兜】と呼ばれる個体である。

 

何故ここに紅兜が来たのか?

それはタマミツネの縄張りを荒らしに来た、とかではなく……ただ単に腹を空かせたんだろう。

 

その証拠に口から涎を垂らし、魚の臭いがする水辺へと視線を合わしている。

 

それが気に食わないのかタマミツネは背を低くして甲高い咆哮を放つ。

 

……そのせいでアマツマガツチが捕食していた魚は驚いて逃走。

 

 

ーあっ……( ´・ω・`)

 

 

逃がすかと言わんばかり、それを追うアマツマガツチ。

 

……この光景、どこかで見たことがある気がするがあまり気にしないでおこう。

 

それはさておき、陸の方では激戦が繰り広げられていた。

 

紅兜は「やったるぞワレ!!」と言わんばかり大きく両手を広げてタマミツネ程ではないが大きな咆哮を放つ。

 

そしてそのまま四つん這いになり、突進を繰り広げる。

 

対してタマミツネは空中で回転し、それを避ける。

 

避けた後に泡が残り、紅兜はそこへ突っ込み、足を滑らせて顔を水面へと突っ込む。

 

 

ー(´°ω°)!?

 

 

そこへたまたま近くにいたアマツマガツチが驚く。

 

もちろんの事だが、水中にいる古龍に対して紅兜も驚く。

というか驚かない方がおかしい。

 

だがそれがどうしたと言わんばかり、紅兜は突っ込んでいた水面を抜き、タマミツネに振り返る。

 

ー振り返る、が迫っていたのは一粒の泡だった。

 

 

ー!!

 

 

それを咄嗟に腕を振るい、泡を割る紅兜。

 

その勢いにより、四連続のベアナックルをかます。

 

タマミツネは当たってたまるかと言わんばかりに後ろへ下がり、上体を起こす。

 

ボディプレスをするつもりだ。

 

だが、ここで誰もが想像出来ない行動を紅兜が起こす。

 

たまたま近くにあった巨木を持ち上げ、投げつけたのだ。

 

その姿はまさに金獅子【ラージャン】のようなものだった。

 

そしてそのまま巨木をタマミツネに投げつける。

 

軌道と重力を任せ、巨木はそのままタマミツネに直撃。

 

しかも胴体を上げたままなのでバランスが取れずに巨木と共に吹っ飛ばされてしまう。

 

さらに最悪な事に自分が纏っていた泡が足枷となり、滑らせてしまった。

 

結果、タマミツネは巨木の下敷きとなる。

 

それを見た紅兜は勝ち誇ったような目でタマミツネを見つめ、一歩一歩近付く。

 

そして立ち上がり、その大きな腕で押しつぶそうとした……

 

 

ータマさん見て見て!!

 

 

その時だった。

 

水中からアマツマガツチが飛び出した。

 

……やや小柄のガノトトスを口にくわえて。

 

 

ーふぁっ!?

 

 

突然の乱入者に紅兜は対応し切れず、その場に止まってしまう。

 

だが、それが返って仇となる。

 

 

ーツルンッ!グシャァッ!!

 

ーあっ……。

 

 

くわえていたガノトトスが暴れ出し、口を滑らせそのまま落下。

 

……紅兜の真上に、だ。

 

その結果、今度は紅兜がガノトトスの下敷きとなる。

 

しかもただ下敷きとなるだけでなく、ビチビチと跳ねるためダメージが加担されていく。

 

だが、これはアマツマガツチの攻撃ではなかった。

 

ただ単にこのガノトトスをタマミツネに見てもらいたくて持ってきただけ。

 

……本人はそのつもりだったんだろうが、それがまさか攻撃に転ずるとは誰も予想出来ない……多分。

 

マイペース過ぎる性格な故、行動が読めない。

 

それはつまり、戦闘にあたって最も適正された性格だと判断してもいいだろう……。

 

それは置いといて、アマツマガツチは巨木の下敷きになってるタマミツネの存在に気付く。

 

すぐに助けようと地面に身体をつき、向かう……

 

 

ーうわあぁぁぁっ!?

 

 

が、生憎泡が残っていたらしく、そのままズテーンと転び、滑る。

 

そのまま紅兜とガノトトスに直撃。

紅兜はひっくり返り、ガノトトスはショック死なのだろうかピタリと動かなくなった。

 

無関係のガノトトス……哀れなり。

 

その後、アマツマガツチは風で巨木を退かし、タマミツネを救援する。

 

タマミツネは再度紅兜を睨み付ける。

 

ちなみに今の紅兜の心境は……。

 

 

ー勘弁してくれぇ。

 

 

……補足として息絶えたガノトトスの心境は……。

 

 

ー俺が何したってんだ。

 

 

と、なるだろう。

 

だが、自然において容赦という言葉は存在しない。

 

弱い者は死に、強い者は生きる。

それが例え、弱者である通常個体が強者である二つ名個体の立場が逆転したとしても、だ。

 

タマミツネは自身に泡を纏い、突進。

 

アマツマガツチも吊られるかのように突進をする。

 

タマミツネは紅兜を捉え、アマツマガツチは死んだガノトトスを捉える。

 

そしてタマミツネは距離を取ったところ、サマーソルトで紅兜を更に吹き飛ばす。

 

そしてアマツマガツチはその鋭い牙でガノトトスの肉を食らう。

 

両者とも目的は違うが、その目は真剣だった。

 

タマミツネは紅兜を排除しようとする殺気を込めた視線にアマツマガツチは空腹であるためか腹を満たそうとする視線である。

 

そして勝負は決した。

 

紅兜は分が悪いと判断したのかエリア4へ撤退。

 

よってタマミツネとアマツマガツチが勝利を収める。

 

……アマツマガツチは何もしてないと思うだろうが、あのガノトトスを持ってきていなければ展開が変わっていたのかもしれない。

 

腹を空かせた二頭は仲良く揃ってガノトトスを食らうのだった。

 

 

……後日、渓流エリア7にてガノトトスの骨格が見つかるが、ギルドに回収されてしまうということをここに記しておこう。

 

 

ー続くー




毎度戦闘が酷い気がしてならない(´・ω・`)
そしてガノトトスさん可哀想(´;ω;`)


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第七話 旅立ちの時

アマツマガツチさんはどうやら旅立ちたいのか渓流から出てしまった……(´・ω・`)

誤字修正・2017/01/23 09:20:44


ー旅に出よう。

 

 

なんの前触れもなくそう決めたアマツマガツチ。

 

何故そのようになってしまったのかは謎が多いが、彼女(後に発覚したが、このアマツマガツチは雌である)の性格故かそうなってしまった。

 

渓流に行き着いて早三ヶ月。

彼女は色んな事を経験した。

 

時にエリア7にて乱闘……してはいないが様々なモンスターに出くわしたり。

 

一撃で倒してしまったが、二つ名モンスターという存在がいるという事を知ったり。

 

ユカリなどの強者ハンターがこの世にいることを理解したり。

 

その結果、アマツマガツチは一つの答えに辿り着く。

 

 

ーもっと強くなければいずれ死ぬだろう。

 

 

古龍である彼女だが、古龍は古龍でも死ぬのは嫌であろう。

 

それに少し大きくなっただけで未だに未成体。

 

攻めて準成体まで成長を遂げたい、と彼女は思う。

 

 

 

……そう考えつつも彼女は水辺で寝っ転がってる。

 

 

 

考えは素晴らしかったが、やってる事は相も変わらずだらしない。

 

しかも今日は流れが早いのか自動的にスーッと流れてしまってる。

 

それをたまたま見かけてしまうロアルドロスは「またこいつかよ」という視線を送り、タマミツネは何故か「すげぇ!水面に浮かんでる!!アマツマガツチさんマジ凄い!!」と言わんばかりに尻尾を振り、目を輝かせている。

 

……ロアルドロスはまだ分かる。

何せ同じ経験をしているのであるから。

 

ただ、何故タマミツネは逆に感心してるのか?

 

それはあの紅兜との戦闘の時だった。

 

自分が巨木の下敷きになってしまい、紅兜にトドメを刺されそうになった時、アマツマガツチはただガノトトスが捕れた事を自慢したく、やって来ただけだったが、それが自然的に攻撃方法となってしまい、結果的に助かった。

 

つまり、タマミツネはアマツマガツチを「自分の命の恩人」だと思い込んでいる。

 

その為か、アマツマガツチの大半の行動を感心してしまっている。

 

さて、タマミツネの説明も終えたところで現段階の状況に話を戻そう。

 

アマツマガツチは思っていたのだ、もう旅立つ時期ではないか、と。

 

また世界をもっとこの目で見てみたい、と。

 

……はっきり言ってマイペースな彼女がここまで興味を持つとは珍しい。

 

明日が嵐にならないことを祈ろう。

 

そして彼女は体勢を立て直し、空中に浮かび、空を見上げる。

 

ここで彼女の全身が変化してる事に気付く。

 

体格は前より大きくなり、チャナガブル並の大きさとなっている。

 

黒い甲殻は甲殻種には劣るが強度が付き、並の武器では弾かれるであろう。

 

纏う風はやっとの事か空の王者の互角の風圧を得ている。

 

そして極めつけは【ヒレ】。

 

本来なら汚れのない純白なヒレを持つが、彼女の場合、何故か薄い水色に覆われていた。

 

これが一体何を意味するのか?

……それは成体になるまで解けないのでお話はまだまだ先のこと……。

 

ロアルドロスは急に起き上がったアマツマガツチに【ある意味】驚き、その隣にいたタマミツネは旅立つ事を悟ったのかシュンとしていた。

 

それを見ていたアマツマガツチは水辺の上で身体を丸くして自分の出せる風力を貯めて高速回転させる。

 

結果的に竜巻が発生し、その変にいた魚が大量に巻き上げられ、地面へとへたりこむ。

 

まだ成体には劣るが自分が放つ竜巻は充分な威力を持っていた。

 

そしてその魚の雨だがロアルドロスもタマミツネも……そして臭いにつられてやって来たアオアシラや紅兜、そしてクルペッコとドスジャギィもそれを食す。

 

……多分、アマツマガツチはこの渓流の住民に対しての恩返しなのだろう。

 

そしてアマツマガツチは大きく咆哮を放ち、天に向かって泳ぎ出す。

 

その咆哮は人間でいえばこう言ってるんだろう。

 

 

ー行ってきます、と。

 

 

だが、全員魚に夢中のため咆哮には気付かない。

 

……いや、いた。一頭だけ。

 

あのタマミツネだ。

 

タマミツネも尻尾と前足を振り、見送っている。

 

……こんなモンスターの姿を人間は目撃出来ないだろう。

 

本来なら縄張り争いをする筈だが、この場にいるモンスターははっきり言ってどうでもよかった。

 

だって、大食いマグロがめっちゃいるからだ。

 

それは魚を食す者としては見過ごせない。

 

……ちなみに、さっきの竜巻でガノトトスまでも陸地に引きずり込まれてしまった。

 

みんなが食してる後ろでビチビチと暴れ回ってる。

 

アマツマガツチはそれを見た後、皆に背を見せ空を飛ぶ。

 

まだ自分が見ぬ世界を。

まだ自分が見ぬハンターを。

まだ自分が見ぬモンスターを。

 

そして自分自身を鍛え上げるため。

 

アマツマガツチは渓流を後にした……。

 

 

 

 

 

 

その後、食事を終えた者達は争いには発展しなかった。

 

理由としては食べ過ぎ。

全員腹いっぱい食ったのか寝っ転がってる。

 

ただ、ガノトトスはビチビチと跳ねているがやっと水辺に戻ることに成功し「あぁぁぁんまりだあぁぁぁぁ!!」と言わんばかりの高速泳ぎでトンズラする。

 

なお、このエリア7に起きた魚の大量発生は古龍観測隊が目撃し、ギルドに報告。

 

後にこれを【魚の雨怪現象】と呼ばれる噂が広まってしまった。

 

そしてそこに居たユカリだが……今もなお魚釣りをしている。

 

だが、例のアマツマガツチの姿が見当たらなかったので少しだけ哀愁感が漂っていた。

 

けれど彼女は諦めていない。

いつかまたあの古龍に会うと、いつかあの古龍と戦うのだと、そう決意した。

 

彼女は……空に浮かぶ月を眺めながらそう思っていた。

 

 

ー渓流篇・完ー




さて、世界をもっと見たいという理由に渓流を後にしたアマツさん。
一体どこへ行き着くのでしょうか(´・ω・`)


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森丘篇
第八話 森丘のアマツさん


行き着いた結果、アマツさんは森丘に着いたようです。

……最近低評価がチラチラと見える気がします、辛抱します(´;ω;`)


森丘。

正式はアルコリス地方に存在し、地名はそれぞれシルクォーレの森とシルトン丘である。

 

そのシルクォーレ森……つまりはエリア7にてそいつはいた。

 

あのアマツマガツチだ。

しかも渓流と同じように水辺の上で丸くなって寝ている。

 

それは無理もないだろう。

ユクモ地方からアルコリス地方までの距離は長い。

 

アマツマガツチは長旅で疲れていたのだろう。

 

なので疲れを癒すためこう寝ているのだ。

 

しかもここエリア7は日を遮る影が多く、寒すぎず、暑すぎずと丁度良い温度を保っている。

 

どうやらアマツマガツチはここが一番気に入ったらしく、のんびりしている。

 

しかもここは水辺。

つまりは魚が生息している。

 

食事にも持ってこいだろ。

 

ただし、ここは森丘。

ハンターで言うなら狩猟場の一つだ。

 

つまりは危険域だというのは変わりない。

凶暴なモンスターもいるのも必然である。

 

何が言いたいかと言うと……アマツマガツチの周囲にランゴスタの死体が降ってきたのだ。

 

それを見かけたドスランポスは死んだランゴスタに近付き、口をつつく。

 

だがドスランポスは気付いていない。

ドスランポスの上に緑の雷を纏った飛竜の存在に。

 

その飛竜はドスランポスを睨み付け、口にしていたランゴスタを喰らい終わった後、飛び出す。

 

その時にドスランポスは上を向いてその飛竜の存在に気付くが時既に遅し。

 

飛竜が持つ強靭な翼に叩き付けられ、骨が砕かれ、内蔵が潰れてしまった。

 

ドスランポスは呆気なく絶命。

その上にその飛竜が飛び乗り、ドスランポスの肉を喰らう。

 

奴が持つ特徴は二股に分かれた鋏のような尻尾に大きく鋭い一本角を持つが、最大の特徴はなんといってもその翼。

 

飛竜ではあるが故、その翼は大きいがサナギから孵った蝶のような翼膜をしている。

 

それは美しいが、奴の残忍なる性格故か凶暴性を発揮させている。

 

奴の名は電竜【ライゼクス】。

かの空の王者を地に叩きつける程の飛行能力と戦闘能力を持つ飛竜種である。

 

電竜は咆哮を上げ、すぐに水辺へと視界を移す。

 

そこには見慣れない姿をした龍がいた。

……まぁ、もちろんの事、あのアマツマガツチであるが。

 

ライゼクスの咆哮が小さいからとはいえ、ここまで起きないとは本当にのんびりとした性格である。

 

……だが、それが気に入らないのかライゼクスは威嚇もせずに電気ブレスを放つ。

 

電気ブレスは水辺へと着弾。

 

もちろんの事だが、水は電気を通す。

 

そのため、水辺にいたアマツマガツチが感電してしまう。

 

普通ならば感電死してもおかしくない状況であるが、このアマツマガツチはというと……。

 

 

ーん?

 

 

まるで寝起きのような子犬の如く、眠そうな顔をして平然とライゼクスを見つめる。

 

そこは流石は古龍と言ったところだろう。

 

だが、ライゼクスは翼を振り回し、やる気のある行動をする。

 

その姿はまさに挑発してるようだった。

 

 

ー……。

 

 

だが、もう知ってるだろうがこのアマツマガツチ。

ある程度の事でなければ興味を示さない程のマイペースだ。

 

つまりは……再び丸くなって寝始める。

 

 

ーカチッ…!

 

 

もう定番になってるがライゼクスはブチ切れた。

そっちから喧嘩売ってきた筈なのに勝手に切れるライゼクスは翼を広げ、大空に舞うと空中で体勢を整え、アマツマガツチへと急降下する。

 

しかし、アマツマガツチはいち早くそれに気付き、気だるそうに浮遊して避ける。

 

結果、ライゼクスは水辺へとドボォンッ!!と突っ込んでしまう。

 

だが、ライゼクスはすぐに羽ばたき、水辺から脱出し地に降り立つ。

 

それをただ睨……んでおらず「なんだこのジンオウガみたいなやつ」とでも言いたげそうに首を傾げて見つめるアマツマガツチ。

 

対してライゼクスは殺気を込めた鋭い瞳でアマツマガツチを睨み、威嚇。

 

ちなみに食いかけのドスランポスだが、たまたま近くにいた雌火竜【リオレイア】が回収して去っていった。

 

その雌火竜を他所にライゼクスは動く。

 

翼を振り上げてアマツマガツチ目掛けて振り落とす。

 

そしてアマツマガツチはいつものようにバックしてそれを避ける。

 

だが、ライゼクスの猛攻は続く。

 

今度はもう片方の翼で叩き付けるものの、アマツマガツチは避け、次に間合いが詰まったところに尻尾回転を見舞う。

 

 

ードゴッ!!

 

 

案の定、これはヒットした。

 

尾はアマツマガツチの頬を捉え、打撃する。

 

だが、何事も無かったかのように舞う。

 

舞った後、やや遅れて地に緑の電流が走った。

 

その正体はライゼクスの持つ二股に分かれた鋏型の尾から放たれたものだ。

 

そしてライゼクスに変化が起きた。

 

電流を流し終えた後、ライゼクスの尻尾が緑色の雷を帯びたではないか。

 

こう見ればジンオウガが持つ【超帯電状態】に似てるが、全く持ってこれは別物。

 

ライゼクス自体強力な電気を持つ。

 

それは部位を一定に動かす事により電力が貯まるという仕組みである。

 

雷を纏った部位の攻撃はより強力になり、雷属性を宿している。

 

……だが、アマツマガツチはどうでもよかったらしく、空中で身体を丸めていた。

 

……戦闘中だというのに睡眠を取る。

余程疲労してるとは言え、戦闘中に寝るというのはどう言ったことか……。

 

それが引き金になったのかライゼクスは羽ばたき、アマツマガツチに近付く。

 

飛行能力を持つライゼクスであるが、ハンターとの戦いではどちらかと言えば地上戦を得意とする。

故に、空の王者のように空からの攻撃はあまりしない。

 

だが、今回の相手は古龍。

しかも常に飛んでいる状態の古龍だ。

 

これは飛ばずには居られない。

 

まず、ライゼクスはブレスを放つ。

それと同時に運動エネルギーが溜まったらしく、頭とトサカに電気が走る。

 

音に反応したのかアマツマガツチは体勢を立て直し、水ブレスで相殺させる。

 

相殺させた後、ライゼクスはアマツマガツチに急接近し、尻尾で挟もうとする。

 

 

ー!!

 

 

この時、アマツマガツチは珍しく目を見開く。

 

上体を起こし、下半身を鞭のようにしならせ、上に向かって上げる。

 

これはアマツマガツチの攻撃の一種である【尻尾振り上げ】攻撃である。

 

突然の尻尾攻撃によりライゼクスは対応出来ず、自分の尻尾が当たる前に攻撃をくらい、よろめく。

 

ライゼクスはそのまま地に叩きつけられる前に受け身を取り、アマツマガツチを睨み付ける。

 

だが、アマツマガツチの様子がおかしい事に気付く。

 

なんと、アマツマガツチは自分の尻尾を噛み付いてるではないか。

 

なんでこうなったかと言えば……単に自分の尻尾先に痒みが来たらしく、かいてるだけらしい。

 

つまりは、先程の尻尾振り上げは攻撃のつもりではなく、そもそもこの為だけに振り上げたのだろう。

 

何というタイミングの良さ、そして運の良さなのだろうか。

 

けれど、ライゼクスは容赦なく攻撃を仕掛ける。

 

ブレスが無駄だと理解し、再び飛翔。

それと同時に電気が翼に帯び始める。

 

また接近戦へと持ち込むようだ。

 

 

ー!!

 

 

そこへまたアマツマガツチはライゼクスを見るなり目を見開く。

 

……いや違う。

アマツマガツチはライゼクスを見ていなかった。

 

なら何を見てるかといえば……この戦闘が起きる前、先制攻撃として仕掛けたライゼクスのブレスが水辺に着弾した影響なのか本来あまり見かけない【ドス大食いマグロ】がこんがりと焼けたまま浮かんでるものを見ていた。

 

それを見た瞬間、アマツマガツチは身体を丸めて方角を調節し、水辺目掛けて突進。

 

しかも何故か全身に水を纏っている。

 

その突進のせいでライゼクスは巻き添えに…地面へと叩き落とされるのと同時に電荷してた部位が全て元通りになってしまう。

 

だが、それを無視してひたすらドス大食いマグロを食らいつく。

 

久々に食べる大物に満足してるのかこれまでに無いほどの満足感に満たされた顔をしている。

 

……ちなみにライゼクスは諦めたらしく、大人しく撤退した。

 

だけどアマツマガツチはそれをも無視し、食事に夢中だった。

 

アマツマガツチよ、森丘に参られてもその性格は相変わらずであった。

 

 

ー続くー




お気に入りが50件突破しました!
本当にありがとうございます( *・ω・)*_ _))ペコリン


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第九話 空を飛ぶ者

ニンテンドースイッチを予約してしまった私です。
……モンハンが出ることを祈ってます(汗


誤字修正・2017/01/25 02:47:25


飛竜。

 

それはモンスターの代名詞と呼ばれる存在。

 

この種族には三つのタイプがある。

 

一つは後ろ脚と尻尾でバランスを取り、巨大な一対の翼を持つワイバーン型の骨格。

 

二つは飛行能力を犠牲にし、地上に特化した四足歩行型の骨格。

 

三つは【黒き神】と【白き神】が持つとされ、翼を持っていないが飛竜種と分類されるタイプ。

 

そのうち、前者が基本的な骨格である。

 

さて、皆さんは飛竜種と言えば真っ先に【あいつ】を思い浮かべるだろう。

 

そう、そいつは赤い鱗と甲殻、そして青い瞳に真っ赤な炎のような大きな翼を持つ【あいつ】……。

 

その異名は【空の王者】とも呼ばれている火竜【リオレウス】を思い浮かべるだろう。

 

そのリオレウスは何をしてるのかと言うと……。

 

 

ー……。

 

 

……ジト目であるヤツを凝視していた。

 

それは皆さん大好き(?)アマツマガツチが横たわってた。

 

しかも卵を守るかのように丸くなってる始末。

 

この異様な光景を見て、流石にかの火竜ですらジト目になるだろう。

 

だが、寝ているだけで危害はないと判断したのかすぐに攻撃する事は無い。

 

ただ、リオレウスはこう思うだろう。

 

 

ーえ?何こいつ?

 

 

……と。

 

取り敢えず、ボーッとしても仕方ないので叩き起してみる。

 

…とは言ってもどうしたものか。

 

リオレウスは考えていた。

 

もし、叩き起したとしても反撃が来るのではないのか?

というよりも第一起きない可能性も有り得るかもしれない。

 

そしてここは自分の巣である。

 

自分の巣の中で戦うというのは少し抵抗がある。

 

……時折侵入してくる絞蛇竜【ガララアジャラ】は撃退出来るが、どうしたものか……。

 

そう考えてるうちにリオレウスは考えを放棄したのか尻尾で叩き起してみる。

 

……だが案の定起きない。

 

我らがアマツマガツチはただいま夢の中をさ迷っている。

 

……またさしずめ大量のガノトトスを食してる夢でも見てるんだろう。

ヨダレを垂らしているし……。

 

だが、リオレウスも諦めない。

空の王者という名を持ってる為プライドが高い。

 

なので、こいつを無理にでも起こそうとする。

 

……さて、思い返してみれば何故アマツマガツチはここで寝ているんだろうか?

 

前まではあの涼しいエリア7にいたものの、ここ森丘に来て早数日で場所を変えた。

 

これにはちゃんとした理由がある。

 

その答えとなるのが……空から降ってきた。

 

 

ーっ!!

 

 

リオレウスは空から降ってきた奴を見て強く威嚇する。

 

それと同時にアマツマガツチは【この気配】を完全に熟知したのか咄嗟に起き上がる。

 

二頭の前に現れた者、それはあのライゼクスである。

 

察しのいい人ならこの時点でわかると思うがこのライゼクス、諦めが悪いらしく、アマツマガツチと初遭遇を境に何回も何回もアマツマガツチに挑んでくる。

 

流石のマイペース持ちのアマツもこれには耐えきれなかったのか敢えてこの場所を指定した、というわけだ。

 

ちなみにリオレウスが古龍であるアマツマガツチより同じ飛竜であるライゼクスに強く威嚇する理由は過去に空での縄張り争いにて地に叩き落とされ、痛い思いをしたからだ。

 

 

ーやっと見つけたぞゴルァ!!

 

 

そう言わんばかりにトサカを振るライゼクス。

 

ここまで来てしまったら最早ストーカーでしかない。

 

そして対するアマツマガツチはホッコリとした顔でもなく、眠りを妨げた怒りでもなく、寝起きの半開きの目でもない、ただただ真顔である。

 

ちなみにリオレウスは……

 

 

ー何この大乱闘フラグ

 

 

……何気に一番の被害者がリオレウスだと思われる。

 

何せ知らん内に自分の縄張りにアマツが入り寝、そして最終的にライゼクスも侵入してしまう。

 

可哀想な事この上ない。

 

あとモンスターが何故フラグの言葉を知ってるかは……触れないでほしい。

 

そして最初に動いたのはライゼクス。

 

翼を折り畳み、叩き付けながら突進する。

 

対してアマツマガツチは「やれやれ、仕方がない」と言わんばかりの球体型水ブレスを発射。

 

だが、水耐性の強いライゼクスではそんなものは無意味だったのか、直撃してもそのまま突進。

 

距離が詰まる一方で当たる直前でアマツマガツチはフワッと浮き回避を行う。

 

 

ーゴンッ!!

 

 

回避は出来たものの、代わりとして後ろにいたリオレウスと頭をぶつけるライゼクス。

 

当たりどころが悪かったのか二頭とも頭の上に星が回っている。

 

それを見たアマツマガツチは……笑ってるような気がした。

 

ライゼクスは首を振り、意識を戻しながら尚も突進。

 

その諦めの悪さはアマツマガツチを追い詰めている事を物語っている。

 

だからと言ってアマツマガツチも黙ってるほど馬鹿ではない。

 

どうやら逃げるとか寝るとか食事とかの選択肢を捨て、戦うを選んだようだ。

 

……何気にアマツマガツチが戦いに興味を持ち始めたのは初めてであるということをここに記しておこう。

 

それは何度も追われているものだ、嫌でも戦いになってしまう。

 

今までの鬱憤を払うように直線型の水ブレスを放つ。

 

どうやら突進させないように押し返す戦法ようだ。

 

だが、ライゼクスも馬鹿ではない。

 

水は電気を通すという性質を持つ事は既に熟知している。

 

ライゼクスはトサカを無我夢中に振り、運動エネルギーを貯め、無理矢理電荷状態にして電気を流す。

 

水ブレスを遡るようにライゼクスの緑の雷が迫る。

 

それに気付いたアマツマガツチは口を閉じ、電気がこちらに届く前にブレスをやめる。

 

けれど、ライゼクスはこれが狙いだった。

 

補足としていうが、確かにモンスターのブレス攻撃は強力である。

 

だがそれを引き換えに致命的な欠点が生まれる。

 

それは反動による一時行動不能になること。

 

リオレウスやリオレイアの放つ火球ブレスが良い例えである。

 

勿論のこと、ブレスを吐けるアマツマガツチもその欠点を持つ。

 

つまり、何が言いたいかと言うと……

 

 

ー!!

 

 

ブレスをやめた途端に大きな隙が出来てしまう、ということだ。

 

ブレスのタイミングを測ったのかライゼクスは急接近する。

 

そしてその強靭な翼で叩きつけようとする……

 

 

ードゴォンッ!!

 

 

……その直前にライゼクスの背中が爆発する。

 

背中に熱と衝撃を感じ、ライゼクスは振り返る。

 

そこには空を舞い、ライゼクスを睨む火竜【リオレウス】がいた。

 

口には微かに炎を噴出させてる為、ブレスのあとだろう。

 

だがよく見たら睨み付けてるのはライゼクスだけでアマツマガツチには一切視線を付けていない。

 

どうやら勝手に上がり込んで好き勝手に暴れてる事と過去に空の王者のプライドに傷が出来たことに対して怒ってるらしい。

 

その途端、ライゼクスはアマツマガツチからリオレウスへと標的を変更する。

 

まずは邪魔者でしかないリオレウスを排除しようと決めたらしい。

 

対してリオレウスも「掛かってこいや」と言わんばかりに尻尾を振るう。

 

……そして相手がいなくなってしまったアマツマガツチはというと……近くにいたランポスの群れに紛れ込んで観戦。

 

アマツマガツチ本人は襲う気はないが古龍のオーラに圧倒されてるのかランポス達はやや怯えてる。

 

それを他所に二頭の飛竜に動きがあった。

 

ライゼクスは空中にいるリオレウスに向けて電撃ブレスを放つ。

 

ブレスは一直線にリオレウスを捉えるがそれを旋回して回避する。

 

壁に直撃したブレスは壁に大きな穴を残した。

 

そのままリオレウスは旋回しつつライゼクスに急接近。

 

ライゼクスは叩き落とそうと翼で殴り掛かるが空中にいるリオレウスの機動力には勝てず、すぐに避けられる。

 

そして避けた背後にまた火炎ブレスを吐くがライゼクスはバックステップしてそれを避ける。

 

次にトサカを開き、そこからブレード状に伸びた電撃でリオレウスを切り込もうと前に出る。

 

だがリオレウスはすぐに着地し、尻尾で反撃。

 

尻尾攻撃はライゼクスの頭を捉え、ブレード状に伸びた電撃は消え去り、頭部は壁にめり込む始末となる。

 

そこへ追い打ちをかけるかのようにリオレウスは突進をする。

 

しかし、頭部の抜けないライゼクスは反射的に尻尾を振り回し、電流を流す。

 

電流はリオレウスに直撃。

 

脚が感電したのかその場で体勢を崩す。

 

……ちなみに今の電流に巻き込まれたアマツマガツチは電動マッサージでくつろいでる人のような振動に襲われてしまうとここに記しておく。

 

それを他所にライゼクスのターンは終わらない。

 

やっと頭を引っこ抜くことに成功し、折り畳んだ翼で倒れてるリオレウスを殴り付ける。

 

だがリオレウスも必死に抵抗し、寝っ転がってる状態で火球を放つもライゼクスは避ける。

 

標的を失った火球はランポスに直撃。

 

吹っ飛ばされ呆気なく絶命。

 

それを見た他のランポスは怯え、そそくさに巣から去る。

 

……アマツマガツチは未だに感電中。

だが、電気マッサージ的な感覚になってるのか分からないがホッコリとしている。

 

それは置いといて…両者激しい戦いに動きがあった。

 

ライゼクスが一度羽ばたき、二股に分かれた鋏型の尻尾でリオレウスの首を挟もうとする。

 

だがリオレウスはすぐに起き上がって回避。

 

ライゼクスの側面に回り込んで火球を放つ。

 

今度はヒットした。

 

ライゼクスは驚きと痛みで地に落ちるのと同時に電荷状態だった翼が元に戻る。

 

この好機を逃さないと再び飛翔。

 

今度はリオレウスがライゼクスの上に飛び乗る。

 

ライゼクスは翼での殴りつけであったが、リオレウスは毒が含まれてる爪脚で攻撃。

 

ライゼクスも負けじとジタバタと暴れるものの、リオレウスの押さえつけにより上手く体が動かない。

 

そしてとどめを刺すつもりなのかライゼクスの頭部に向かって火球を放とうとする。

 

この時、ライゼクスは危機を察知し、咄嗟に翼でリオレウスの頭部をぶん殴る。

 

ぶん殴られた衝撃でリオレウスの頭部が傾き、火球は別の方角へと飛ぶ。

 

その隙にライゼクスが無理矢理起こし、尻尾でリオレウスを薙ぎ払うがリオレウスはすぐに飛翔し、回避する。

 

間が空いたところで二頭は睨み合う。

 

……肝心のアマツマガツチと言えば……欠伸をしている。

 

それを他所にライゼクスは背を低くして突進を仕掛けようとするが……

 

 

ーバサッバサッ

 

 

ここでまた新たな乱入者が現れる。

 

その乱入者はリオレウスとライゼクスの間に降り立った。

 

その正体は雌火竜【リオレイア】。

 

リオレウスの嫁さんである。

 

リオレイアは降り立った後にリオレウスに近付き、ライゼクスを睨み付ける。

 

 

ー……。

 

 

それを見たライゼクスは分が悪いと判断し、飛び去って行った。

 

やっと一安心だと思っていたリオレウスはある事を思い出す。

 

 

ー……あのアマツマガツチは?

 

 

ライゼクスの戦闘によりアマツマガツチの存在を忘れていた。

 

すぐ振り返るが……そこは何もいなかった。

 

多分、知らぬ間に帰ったんだろう。

 

リオレウスは再び安堵の息を吐く。

 

そして彼はこう思った。

 

 

ー……今日は災難だ。

 

 

ー続くー




なんか終わり方がグダグダな気が……(汗

あと顔文字は使わないことにしました。
アドバイスありがとうございます


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第十話 獰猛

お気に入り百件超えました、ありがとうございます!
これからも精進します。


突然だが、獰猛個体について説明しよう。

 

モンスターが何らかの原因で獰猛化した個体を指す。

 

外見は至って大きい変化はないが体の一部に黒いモヤを纏っているのが特徴である。

 

そのモヤは一体につき二つあり、感情が高まるとモヤの位置が変化する。

 

なら、そのモヤはなんなのか?

 

それは【攻撃】が異常発達してる事を指す。

 

原因はまだ解明されてないものの、黒い部分で攻撃されると通常より大きなダメージを受けるという。

 

だが、逆にハンターがそのモヤ部分を攻撃すれば狩技ゲージが溜まりやすくなる利点もある。

 

そしてこの獰猛個体、何故こうなったのかといういくつかの仮説が立てられているが今現在最も有効な仮説が【筋肉膨張説】である。

 

筋肉が熱や高度の運動エネルギーを遂げると膨張し、蒸気を纏う事がある。

 

それと同じでモンスターも何らかの原因で一部位の筋力が上がってるため、黒いモヤを纏っているのではないか?という説。

 

……さて、獰猛化についてはここまでにしよう。

 

その獰猛化個体なのだが、アマツマガツチは眺めていたのだ。

 

黒狼鳥【イャンガルルガ】の獰猛個体と戦うハンターの姿を。

 

ハンターは一人でゼクスSシリーズを纏い、ランス【テリオス=ダオラ】を抜刀し、突いている。

 

イャンガルルガはさておき、ハンターの装備とそのランス捌きから見ればベテランだろう。

 

そして両者はボロボロであった。

 

恐らく、長い戦いが続いたのだろう。

 

 

「やっと足を引きずったね……!!」

 

 

顔はゼクスSヘルムに覆われてる為見えないが、苦虫を潰したような表情が伝わってくる。

 

…彼の名は【ギル】。

ココット村所属の龍歴員ハンターである。

 

腕はユクモ村所属のユカリと同じらしく、あの老山龍【ラオシャンロン】の進撃を一人で食い止め、討伐に成功したココット村の英雄である。

 

彼も後に龍歴員の一員となり、骸龍【オストガロア】の討伐に成功を収めている。

 

そんな彼は現在もココット村に滞在し、様々なクエストを受注している。

 

そして今現在、獰猛化したイャンガルルガが森丘にて出現したとの事でここにいる。

 

 

「ごめんね……これも仕事だから!!」

 

 

彼はそう言うとステップを踏みながらランスを刺す。

 

切っ先は嘴を捉えている。

 

だが、イャンガルルガは刺さる前に小さくジャンプし、着地と同時に強靭な嘴で地面ごと啄む。

 

 

「危なっ!!」

 

 

ギルはそれをギリギリのところで盾を構え、防ぐ。

 

防いだ事により、やや後ろに下がる。

 

けれどイャンガルルガの猛攻は止まらない。

 

左脚に黒いモヤがあり、ビリッと何かが破ける音と共に光出した。

 

 

「ちょちょっ!!」

 

 

その光にギルは見覚えがある。

 

獰猛化個体の黒いモヤが光り出すとその部位に関する攻撃が来ると言う意味である。

 

今回は左脚ということもあるため、突進攻撃が極めて危険である。

 

ギルはすぐに盾を再度構え直し、迎撃体勢に入るが耐えきれず、再び後ろへ。

 

イャンガルルガは突進の勢いあまりギルを通り越した後に腹から思い切って擦り付けてブレーキをする。

 

 

「今度はこっちからだよ!!」

 

 

その隙を見てギルは身体を捻らせながらランスを納刀し、距離を詰める。

 

これは狩技の一つである【絶対回避】。

 

読んで字の如く、絶対的な回避を行うこと。

 

回避にも使えるが、これを使用した際には必ず武器が納刀状態になる。

 

なので納刀に遅いランスやチャージアックス、はたまたヘビィボウガンに適応されている。

 

しかも大きく前進するため距離を詰める事も可能。

 

狩技をセットする時、迷ったらこれを選ぶハンターは多い。

 

 

ー!!

 

 

それを草陰で見つめるアマツマガツチは興奮してるのか前足をバタバタさせ、尻尾をフリフリと左右に振る。

 

どうやら人が持つ狩技に興味津々である……らしい。

 

 

「てりゃあっ!!」

 

 

距離が詰まり、ランスが届く位置に達したところで再びランスを突く。

 

直後、氷のエフェクトが発生した。

 

ギルが担いでるテリオス=ダオラは氷属性の武器であるため、このようなエフェクトが出てくる。

 

その氷にビックリしたのかイャンガルルガは羽根を広げ、バックステップする。

 

 

「むぐ……!」

 

 

発生する風圧を耐え凌ぎ、再び前進。

 

だがイャンガルルガはそれを許さない。

 

今度は頭に黒いモヤが帯び始めるとまた黒く光り出す。

 

そこから渾身の火球が飛び出した。

 

 

「チャンス、だね!!」

 

 

だが、ギルにとってそれはチャンスだった。

 

火球との直撃に間に合う時間帯の中でギルは盾を構え、防御体勢に入る。

 

そして火球が盾に直撃すると衝撃が走る。

 

その衝撃の反動を吸収し、槍に注ぎ込むと槍が赤く光り出した。

 

これはランスの狩技の一つである【ガードレイジ】。

 

盾でモンスターの衝撃を吸収し、その衝撃を槍に注ぎ込むことで攻撃力が上がるというものである。

 

……ちなみに再び狩技を見て興奮してるのかアマツマガツチの前足バタバタと尻尾フリフリは激しさを増す。

 

 

「行くよ……!!」

 

 

ギルは再び前進し、イャンガルルガと接近。

 

だがイャンガルルガは危険を察知したのかすぐにバックステップ、と同時にカラスに似た甲高い咆哮を放つ。

 

 

「っ!!」

 

 

ギルはそれを盾でガード。

 

けれど盾を緩めることはなく、そのままずっと構えている。

 

そしてやや遅れてイャンガルルガが滑空して急接近し、リオレイアの代名詞でもあるサマーソルト攻撃をする。

 

だが、ギルはこれを読んでおり、縦を構え続けていた事によりガードに成功する。

 

 

「うおぉぉぉっ!!!」

 

 

しかも距離が詰まり、ランスが届く距離となったため返って好都合である。

 

すぐに隙を見れば突く。

 

 

「あ!やばいっ!!」

 

 

だが、その槍はイャンガルルガで最も硬い部位である背中に直撃。

 

見事に弾かれ、僅かだが隙が出来る。

 

そこを逃さんとイャンガルルガの怒涛の突っつきが……!!

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

黒いモヤというのもあり、ギルは大ダメージを受け吹っ飛ばされる。

 

地面と着地するのと同時に受け身を取り、前を見る。

 

前を見るとイャンガルルガがギルに向かって突進を仕掛ける。

 

 

「まだまだっ!!」

 

 

それを見たギルはいち早く絶対回避で回避する。

 

回避した後、イャンガルルガはさっきまでギルが居た場所に思い切りクチバシで刺す。

 

勿論のこと、そこには誰もいないわけで、クチバシは地面深くに刺さった。

 

それ故か、突っかかったせいで抜けない状態になっている。

 

 

「これで……終わらせる!!」

 

 

それを見たギルはランスを後ろに回し、低い姿勢で身構える。

 

何かを貯めているようにも見える。

 

その最中、イャンガルルガはやっとの事で地面から抜け出せる。

 

……この途端、地中からクンチュウが飛び出してアマツマガツチの方へと転がっていったことは言うまでもない。

 

そしてイャンガルルガはギルの方へと振り返るが、それはもう遅かった。

 

 

「喰らえぇ!!!!」

 

 

次にギルから来たのは貫くような衝撃波だった。

 

これはランスの狩技の一つである【スクリュースラスト】。

 

ランス最大の攻撃用狩技である。

 

その威力は絶大にして多段ヒット。

ただし、一度使うと暫くはその場から動けなくなるのが欠点であるため、使用するには場面が限られている。

 

そのスクリュースラストから放たれる螺旋状の衝撃波がイャンガルルガを貫いた。

 

その瞬間、イャンガルルガの背中が、クチバシが、耳が壊れ、そのまま息絶えた。

 

 

「はぁ……はぁ……やった!!」

 

 

死んだことを確認し、喜びを露わにするギル。

 

こう見ると身長というのもあるが子供のようにも見える。

 

だが、喜んでるのはギルだけではない。

 

 

ー!!!

 

「えっ……!?」

 

 

ギルは見てしまった。

 

草陰からゴロゴロと転がるクンチュウとアマツマガツチを……。

 

 

ー続くー




バイオ7を買ってしまった…投稿遅れちまう(←

まぁ、それはさておき。
今回は初めてハンターの戦闘描写を書いてみましたが……相も変わらずグダグダ……(汗

さて、この後アマツさんはどうなることやら……


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第十一話 ココットの英雄とアマツさん

擬人化させようか迷っている作者です(汗

バイオ7全クリしてしまった……(白目


前回までのあらすじ。

 

アマツさん、狩技を目の当たりにしてしまうあまり、ゴロゴロと転がった結果ハンターに見つかってしまう。

 

 

「な、何でここに!?」

 

 

そのハンターであるココット村の英雄【ギル】はアマツマガツチを見て驚愕し、ランスを抜刀する。

 

まぁ、驚くにも無理はない。

 

何せ生息しないはずの地域でアマツマガツチがいるのだから……。

 

というよりも、驚かない方がどうかしてるレベルだろう。

 

 

「くそ……これは予想外だ。よりによって相性の悪い氷属性のランスを持ってきたからか……!!」

 

 

ギルは再び苦虫を潰したような表情を取り、目の前にいる相手を警戒する。

 

だがアマツマガツチは……。

 

 

ーん?

 

 

首を傾げてギルを見つめるだけだった。

 

しかも仰向け状態で。

 

 

「て、敵意は……ない?」

 

 

それを見たギルも首を傾げる。

 

 

ー大マグロー…

 

 

敵意どころか大マグロを期待してるのか尻尾をフリフリと振るアマツマガツチ。

 

……その尻尾振りによってそこらにいたクンチュウが転がり、ランポスが吹っ飛ばされる大惨事が起きてるがギルは気にしてない。

 

恐らくアマツマガツチの思考は【ハンターに出会えばなんか貰えるんだろう】的な感覚であろう。

 

その原因はユクモ村のユカリであろう。

 

何せ、彼女との出会いがアマツマガツチにとって初めてなのだから。

 

 

「え、えっと……どうしたのかな?」

 

 

どう反応すれば分からないギルは苦笑いしながらアマツマガツチに近付く。

 

近付くとアマツマガツチは仰向け状態からゴロンと転がり、伏せの体勢に戻る。

 

……このせいでたまたま隣にいたブルファンゴが巻き添えになり、倒れてしまった。

 

 

(なんだろう、このアマツマガツチは?目が水色だし、それに嵐が来ないし……普通の個体とは違うのかな?)

 

 

マジマジとアマツマガツチを見つめるギルは考え込む。

 

……そして一つの答えに辿り着く。

 

 

「……あ、思い出した。確かユカリさんが言ってたアマツマガツチってこの子のことかな?」

 

 

ギルは「きっとそうだ」と言いながら頷く。

 

実はこの時点でこのアマツマガツチの噂は世界に広まっていた。

 

きっかけはユカリである。

 

ユカリがギルドに報告した影響により、全世界のギルドに伝わり、噂となって広まっている。

 

だが、未だに生態が不明のため……いや、被害などが出ていないため討伐クエストなどには出ていないそうな。

 

その肝心なアマツマガツチはというと。

 

 

ー?

 

 

頭の上に?マークを浮かべていた。

 

当の本人もとい、本龍は自覚していない様子。

 

いや、いつもの事ではあるが……。

 

 

「へぇ、人を襲わない噂は本当なんだね。ビックリしたよ」

 

 

ギルはそう言いつつ、ポーチからあるものを取り出す。

 

それを見た瞬間、アマツマガツチは尻尾振りの激しさが増す。

 

……なお、これによりさっき吹っ飛ばされたランポスが親分であろうドスランポスを呼んだが、その尻尾振りにより往復ビンタを食らう羽目になっている。

 

 

「確か食いしん坊なんだっけ?これ食べる?」

 

 

と言ってギルが取り出したのは桃色の肉。

 

……みんな大好きモスジャーキーである。

 

 

ー〜!!!

 

 

それを見るなり舌を出して「それ頂戴!!」と言わんばかり腕をバタバタさせるアマツマガツチ。

 

その腕の反動で尻尾が大きく振り、後ろにいたドスランポスを吹っ飛ばした。

 

 

「おー、やっぱり欲しいのね。ほら、お食べ」

 

 

ギルはニコリと笑い、モスジャーキーをアマツマガツチの手前に置く。

 

その瞬間だった。

 

 

ーバクッ!!

 

「っ!?」

 

 

それは【早業】の一言に尽きる。

 

たった一口でモスジャーキーを食べてしまった。

 

だがそれを気にせず口をモグモグ……というよりもモキュモキュと動かし、御満悦なのかホッコリとしているアマツマガツチ。

 

どうやらモスジャーキーが気に入った御様子である。

 

 

「は、早い……でも可愛い」

 

 

ギルは思わずアマツマガツチの額を撫でてみた。

 

アマツマガツチは嫌がらず、尻尾を振って喜びのアピールをする。

 

 

「ははっ、君面白いね。本当に古龍かい?」

 

ー?

 

 

ギルの質問に対して首をコテンと傾げるアマツマガツチ。

 

……古龍だということを自覚していない様子だ。

 

 

「まぁ、君の事はギルドに報告しておくけど討伐しないよう上手く誤魔化しておくよ。僕、君に興味が湧いたし」

 

 

ギルが言う興味はユカリと同じ……という訳ではなく、このアマツマガツチの生態に対して興味が湧いている。

 

主食はなんなのか?

 

技はどのようなものなのか?

 

縄張りはどう取るのか?

 

その他全てにおいてギルは興味が湧いた。

 

……これもまた別の意味でライバルが出来てしまったアマツマガツチ。

 

だが、そんなことも気にしてないのか嬉しさのあまりゴロゴロとしている。

 

 

「ふふっ、本当に可愛いな君。でもそろそろ帰る時間だ。最後にもう一つどうぞ」

 

 

ギルはもう一度モスジャーキーを手渡す。

 

アマツマガツチは待ってましたと言わんばかりそれを食らう。

 

その隙にギルはその場から離れ、ベースキャンプの方角へ足を運ぶ。

 

ギルは理解していた。

 

アマツマガツチに餌付けをしても良いが付いてくるため何らかの対策が必要となる、という事を。

 

今のアマツマガツチはモスジャーキーに夢中のためかギルの事を気にしてなかった。

 

 

 

 

 

……で、食い終わった頃には。

 

 

ー?

 

 

今頃になってギルがいないことに気付くアマツマガツチ。

 

不自然に思ったのか首を傾げる。

 

そして結局「まぁいいや」的な事になり、その場を後にした……。

 

 

……だがアマツマガツチは気付いてなかった。

 

アマツマガツチが去った後に霧が覆い始め、その最中に半透明な【何か】が蠢いていることを。

 

そしてその【何か】がこの森丘の頂点に立つ者だということも。

 

 

ー続くー




更新お待たせしました(涙

さて、次回は……まぁこの時点で大抵の方は知ってるかと思われます(汗


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第十二話 アマツさん、ブチ切れる

アマツさんがブチ切れます。


※最近投稿ペースが遅くなり申し訳ありません。
後擬人化の件ですが時間がありましたら番外編でやろうかと思いますのでご了承ください。


訂正・2017/02/03 07:41:12


古龍。

 

読んで字の如く、太古から生きる龍。

 

それは生物の枠組みの外にある存在、と言っても過言ではない。

 

最大の理由としては古龍には【災い】があるからだ。

 

 

時に山の如き巨体を持ち、歩くだけで災害を齎す者。

 

時にあらゆる生物を喰らい尽くし、遺骨を我が武器とする者。

 

時に嵐を呼び起こし、縦横無尽に破壊し尽くす者。

 

 

……などがいる。

 

当然、アマツマガツチは古龍なので【嵐の災い】を持つ。

 

……一部除いては。

 

 

ーzzz…。

 

 

森丘に住み着いたアマツマガツチは絶賛お昼寝中。

 

古龍だって眠たい時は眠いもの。

 

だが、そのアマツマガツチの身体にも変化がある。

 

より体格が大きくなった。

 

これは成長の過程としては共通している。

 

だが、異なる点がある。

 

風だけではなく、【水】を纏うようになったのだ。

 

全身から風と水が渦巻いている。

 

原因は不明。

 

食事の影響というわけでも無ければ環境適応の影響というわけでも無い。

 

唯一有力な仮説を立てるとしたら【生まれつき特別な体質だった】としか言えない。

 

その証拠としてはこのアマツマガツチ、生まれた時点で目の色が水色なのである。

 

それと関係しているのかは……それも不明である。

 

 

ーzzz……。

 

 

そんな彼女は自分の変化に気付かずにお昼寝中。

 

マイペースの性格も未だ安定してる。

 

だが、そんな彼女を他所に森丘で異変が起き始めている。

 

……一言で言えば全エリアに【霧】が立ち込められている。

 

その霧は深く、視界で僅か数メートル先しか見えないぐらい深い霧だ。

 

先に思うであろうが森丘の天候の影響ではないか?とあるが、それは全く持って違う。

 

森丘の天候は極めて安定している。

 

昼も夜も合わせて快晴、一度も曇ったことがないという。

 

ではこの霧はなんなのか?

 

……それは【古龍】である。

 

それも全エリアに霧を覆わせる程の強者だろう。

 

 

ーん?

 

 

そこで彼女は起きて周りを確認。

 

だが霧のせいで良く見えていない。

 

 

ー……zzz。

 

 

だがそれがどうしたと言わんばかり二度寝。

 

霧には一切興味が無いらしい。

 

そんな寝ている彼女の傍、半透明な何かが横切る。

 

独特な動き、歩き方から見ればカメレオンだと思わせる。

 

赤の他人から見ればそこには何もいない。だが何かがいる。

 

そしてその者は姿を現す。

 

鼻先から伸びた立派な一本角に大きく平らな顔、左右には目玉がギョロリと開き、四足歩行の龍がそこにいた。

 

名を霞龍【オオナズチ】。

 

古龍の一種であり、この霧を発生させた張本人である。

 

オオナズチはその左右に分かれた目……いや、目玉をクルクルと回し、辺りを見渡す。

 

霧を出した張本人であるが故、霧の中でも視力は落ちていないようだ。

 

辺りを見渡すと巣穴から顔を覗かせ、怯えているドスランポスとその子分達。

 

モスとファンゴはすぐさま地中へ潜り、ランゴスタはどこか飛び去っていった。

 

対してオオナズチは満足そうに目をグルグル回す。

 

だが、一頭だけオオナズチを気にしてない奴がいた。

 

そう、我らがアマツマガツチである。

 

 

ースヤァ……。

 

ー…………。

 

 

今日もまたいい夢を見てるのだろうか笑顔で寝ているアマツマガツチ。

 

……ヨダレが垂れてるのは最早定番である。

 

オオナズチは「なんだこいつ」と言いたげそうな顔でアマツマガツチをマジマジと見つめる。

 

そして自慢の長い舌でベチベチとアマツマガツチの頭を叩いてみる。

 

 

ーんー……。

 

 

あろう事かアマツマガツチが起き出したではないか。

 

あのアマツマガツチがだ。

 

アマツマガツチを起こしたのはオオナズチが初めてであった。

 

 

ー………………。

 

 

のんびりとしてるアマツマガツチをまたガン見するオオナズチ。

 

決して交わることのない古龍二頭が見つめている(ただし、オオナズチのみ)。

 

そして起こされたアマツマガツチは……。

 

 

ージーッ…

 

 

見つめていた、水辺の魚を。

 

食事をしたいのだろうか?

 

目の前にオオナズチという古龍がいると知らずに魚を見つめるアマツマガツチ……。

 

この光景をシュールと言える他ないだろう。

 

そしてアマツマガツチは狙いを定め、大きめのマグロ目掛けて口を開き……!!

 

 

ーシュッ!!!

 

 

食べる……と思いきや横からピンクの舌が伸び、狙っていたマグロを取られてしまう。

 

アマツマガツチはややビックリしながら舌の伸びた方向へ振り向く。

 

……だが、そこには何もいない。

 

 

ー?

 

 

アマツマガツチは首を傾げて再度魚を見る。

 

今度は大食いマグロを狙うようだ。

 

そして再び口を……!!

 

 

ーシュッ!!!

 

 

……開こうとした瞬間に今度は目の前から舌が伸び、マグロを捉えていた。

 

そして再び取られてしまう。

 

アマツマガツチはすぐに正面へと目を向けるが……やはりいない。

 

だが、何かがいるのはわかる。

 

わかるのだが、生憎どこにいるのかが分からない。

 

 

ーフッ……。

 

 

キョロキョロと探すアマツマガツチを見て少し笑うオオナズチ。

 

勿論、アマツマガツチの食事を妨害してるのもこいつである。

 

 

ー……イラッ

 

 

ここでアマツさん、初めて怒る。

 

あのマイペースで知られてるアマツさんがだ。

 

さて、ここで少し古龍について追記させておこう。

 

古龍の感情が高まると環境が変化するケースが多い。

 

目の前にいるオオナズチも感情が高まる……怒り状態になるとより濃い霧で覆うことがある。

 

そしてこのアマツマガツチもそうである。

 

普通のアマツマガツチだと嵐が激しさを増し、あらゆるものを破壊する。

 

 

 

……だが、それはあくまで【通常個体】の話である。

 

 

ー出て来いいぃぃぃぃっ!!!!

 

 

と叫ぶように甲高い咆哮を上げる。

 

すると変化が起きた。

 

雨が降り出したのだ。

 

だが、それは嵐などに起こる暴風や暴雨でもなければ鋼龍が出す雨でもない。

 

ただ、静かな雨が降り出したのだ。

 

強すぎず、また弱すぎず……。

 

雨音が周囲を引き立て、ポタポタと落ち、霧をかき消した。

 

それにアマツマガツチの方も変化している。

 

本来通常個体なら赤の模様が浮かぶがこのアマツマガツチの個体だと水色の線模様が浮かび、目の色が濃い青に変わる。

 

人は今いないがもし居れば皆が口を合わせてこういうだろう。

 

 

ー世界で一番綺麗な古龍だ、と。

 

 

そしてその雨の影響か半透明なオオナズチが浮かび上がった。

 

 

ー!?

 

 

こんな事予想してないのか驚きを隠せないオオナズチ。

 

…対してアマツマガツチはというと。

 

 

ーえ?なにこれ?

 

 

初めて自分の出せる力に驚いてるのかポカンと口を開く。

 

……相も変わらずマイペースである。

 

だが、そんなのは後だとして再び前へと振り返る。

 

バレてしまったオオナズチは姿を現し、こちらを凝視して威嚇する。

 

オオナズチとして、この姿をバレる感覚はハンターが【ランダムボール】と呼ばれるアイテムを投げつけられた以来の驚きだろう。

 

 

ーチッ、バレたか。

 

ー良くも私のマグロちゃんをぉ……!!

 

 

二頭の間からそんな雰囲気が漂う中、互いを睨み合っている。

 

……それにしてもやっとである。

 

アマツマガツチが怒りを覚え、ガチな戦いを繰り広げるのは初めてである。

 

食べ物の恨みとは自然界にでも通用するとは……怖いものだ。

 

 

ーお覚悟ぉ!!

 

 

そして先に動いたのはアマツマガツチ。

 

口に充分なほど水エネルギーを溜め込み、一気に放出。

 

だが出されたのは見た目に反してやけに小さく、細い水ブレスである。

 

 

ー!!

 

 

それをオオナズチが避ける。

 

野生の勘が働いたのだろう、【避ける】選択をした。

 

そして避け終えた後、水ブレスはオオナズチの後ろにあった巨木に風穴が空いた。

 

その風穴から充分な威力を物語っている。

 

恐らく、直撃していたら頭が吹き飛んでいただろう。

 

だが、それで退くオオナズチではなかった。

 

古龍の名の故か、また森丘の支配者故か、どちらかはわからないがプライドが高かったらしく、退く選択などない。

 

寧ろ【反撃】の選択を選んだ。

 

無我夢中に水ブレスを放つアマツマガツチに対し、オオナズチはそれを冷静に避けつつ、背後に回る。

 

そしてそこから口に毒を溜め込む。

 

 

ーっ!!

 

 

そこでアマツマガツチと目が合ってしまう。

 

だがここまで来たのなら放つしかない……!!

 

そして毒ブレスを放…

 

 

 

 

 

ーヒュー…ゴスンッ!!

 

 

 

…つ直前に上から何かが落ちてきた。

 

その何かがオオナズチの頭に直撃し、そのままぐでり。

 

オオナズチも当たりどころか悪かったのかその場に崩れ落ちる。

 

 

ー?

 

 

何が起きたのかわからないアマツマガツチは頭上に?マークを浮かばせ、首を傾げる。

 

そのせいで怒りを忘れ、雨が止み、霧が晴れ、快晴に戻る。

 

快晴になった途端、オオナズチを沈めた正体が見えた。

 

ピンクの甲殻と鱗で身を包み、空のような翼膜を持ちいり、大きな耳とクチバシが特徴的な鳥竜種…イャンクックである。

 

だが当の本人も目を回してぐでってる。

 

……何があったか説明すると、アマツマガツチが怒りの際に発した甲高い咆哮により、たまたま上空を飛んでいたイャンクックがその音量にビビり、そのまま墜落。

 

そしてたまたまオオナズチの頭に直撃した、とのこと。

 

…これはアマツマガツチの持つ【運】……とでも言えるのだろうか?

 

 

ー!

 

 

アマツマガツチが疑問を抱えてるとイャンクックが起き上がった。

 

……オオナズチは未だにぐでっている。

 

対してイャンクックは首をキョロキョロと見渡し、状況を整理。

 

……そこへアマツマガツチは近付き、こう言う。

 

 

ー…先生って呼んでいいですか?

 

ークェ?クエェェェェェッ!!?

 

 

言った(ような雰囲気であったが)のはいいが、イャンクックは目の前にいる奴がアマツマガツチとオオナズチだとわかった途端、パニックダッシュで逃げていった。

 

 

ーあ…。

 

 

それを見たアマツマガツチはショボンとする。

 

……さっきの怒りはどこへやら。

 

そして次に彼女が取った行動はイャンクックの跡を追う……ではなく、オオナズチにとどめを刺す……のではなく、巨木の上で寝始めた。

 

やはり、眠かったんだろう。

仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以後、森丘の天候変化により、ギルドからハンターを派遣させた結果、オオナズチと遭遇し、討伐したとのこと。

 

だが、理由はわからないが通常個体のオオナズチとは異なり、何やらフラつきながら…いや、目眩を起こしながら戦っていたため、楽に狩れたという。

 

……もし、あのイャンクックがいなかったら森丘は一生霧に覆われてたのかもしれない。

 

アマツマガツチは相も変わらず寝ていた。

 

 

ー続くー




まさかの先生登場です。

いや、アマツさんも頑張ったから良しとしよう(自己解釈


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第十三話 切り裂く者

更新お待たせしました(汗

今回はオリジナル二つ名が含まれていますので苦手な方はブラウザバック推奨です。


突然であるがアマツマガツチはエリア10にて、ある物をガン見していた。

 

何を見ているのかと言われれば……説明がしずらい物体である。

 

赤緑の鮮やかな色をしており、まるでモンスターの甲殻のような物体が幾つも刺さっている。

 

こう見てみれば誰もが【ガララアジャラ】の物だろうと思うが違和感がある。

 

赤緑と言ったが、その二つの色は最も濃く、また甲殻の形がまるで鋭く尖った釘のような形をしている。

 

普通、ガララアジャラはまだ丸い甲殻を持つが今目の前にある物体は比べ物にならないほど鋭かった。

 

その鋭さは触れるだけで傷口が出来るんじゃないかと思われる程だ。

 

それが何個もエリア10にバラ撒かれてる。

 

これは流石に不自然だと誰もが思うだろう。

 

そしてアマツマガツチは意を決したのか触れようとした時ー

 

 

ーっ!

 

 

気配を察知したのか空を見上げる。

 

その瞬間、上からドスンッと何かが落ちてきた。

 

その何かを見てアマツマガツチは目を見開く。

 

そこには傷だらけのライゼクスがいた。

 

しかも至るところにあの物体が刺さっており、トサカは半壊し、翼膜に穴が空き、背の棘は欠けている。

 

そんな状態のライゼクスはアマツマガツチを見るなり威嚇をせず、足を引きずりながらせっせと逃げる。

 

あの残虐でアマツマガツチに何度も挑んできたライゼクスがだ。

 

自分でも命の危機だということを理解しているらしい。

 

だが、分かることはこの甲殻の持ち主はライゼクスよりも戦闘能力があるという事である。

 

なら他に何がいるのであろうか?

 

ライゼクスの上となれば、この前出現したオオナズチやどこにでも出現する恐暴竜【イビルジョー】ぐらいであろう。

 

だが、この二体ともこのような甲殻は出さないし、今現在この森丘にその二体はいない。

 

なら誰がやったのだろうか?

 

 

 

ードゴッ!!

 

 

 

……その答えとなる奴が地中から現れた。

 

 

 

そいつは見た目から見ればガララアジャラであるが、異なる点があった。

 

まずクチバシが発達していた。

 

そのクチバシは大きく、一噛みするだけでガチガチと鳴る。

 

また体格も通常種より大きく、色もやや赤くなっていた。

 

そして何より一番異なる点が…背の甲と尻尾の甲だ。

 

そう、デカイ。

 

甲殻の一つ一つがデカい。

 

まるで弾丸のようで、刃が生えてる特殊な甲殻だ。

 

恐らく、このガララアジャラがライゼクスを襲ったのだろう。

 

その刃のようで、弾丸のような甲殻を持つガララアジャラに名を付けるとすれば【飛刃殼(ひじんかく)】と呼ぶに相応しいだろう。

 

ガララアジャラもとい飛刃殼はアマツマガツチとライゼクスを見るなり大きな咆哮を上げる。

 

ガタガタと鳴る背中の甲殻と尻尾の甲殻に合わせ、そこらに刺さっていた殼が爆発する。

 

だが、厄介な事にこれは普通の爆発ではない。

 

かの千刃竜【セルレギオス】に似た裂傷爆発が起きたのである。

 

もし、これに触れてしまえば裂傷状態になるであろう。

 

……勿論の事だが、ガララアジャラから大きな音を立てると全ての甲殻が爆発する。

 

つまりはライゼクスに刺さっていた甲殻も裂傷爆発を起こした。

 

ライゼクスは斬撃の痛みに耐え切れず、大きく仰け反り怯む。

 

ちなみにアマツマガツチは……。

 

 

ーあ……。

 

 

もう何度も見た光景だろうか、咆哮のせいで食っていた魚が一斉に逃げ始めた。

 

ちなみに今回の主食は世にも珍しい鎧に覆われたマグロ【ヨロヒ大マグロ】を食っていたそうな。

 

勿論の事だが、飛刃殼とライゼクスに興味が無い様子。

 

そのアマツマガツチを他所に飛刃殼とライゼクスは争っていた。

 

ライゼクスは瀕死のためか足元がもたついているが負けんとばかりに頭と翼を振り回す。

 

だが蛇竜種が持つ機動力ではそんなもの通用しなかった。

 

長い身体を持つ飛刃殼はスルリとライゼクスの攻撃を避け、尻尾から自分の甲殻を飛ばす。

 

甲殻は真っ直ぐ飛び、ライゼクスの胸部に食い込む。

 

だがライゼクスは痛みを耐え、そのまま前進し頭に雷を宿す。

 

ブレード状に伸びた角が飛刃殼を捉えるが、尻尾甲殻によって妨害される。

 

ガキンッと重なる音が響くだけで終わった。

 

いや、終わりではなかった。

 

次に動いたのが飛刃殼。

 

飛刃殼はガラガラヘビのように尻尾の甲殻を重ね、特殊な音波を放つ。

 

 

ーっ!!

 

 

一度見た攻撃を知っていたからこそ、ライゼクスは「不味い」と言わんばかりの顔を表す。

 

 

 

ーその直後、ライゼクスの胸が裂け、多量出血を起こした。

 

 

 

大量の出血を出しながらライゼクスは前に倒れ込むが未だに生きている。

 

その証拠に立ち上がろうともがくが体力的に限界が来てるのであろう身体が思うように動かない様子だ。

 

飛刃殼はズルりズルりと前進し、ライゼクスに近付く。

 

最早ライゼクスは虫の息であった。

 

多量出血により死ぬのも時間の問題であろう。

 

 

ー……。

 

 

だが、飛刃殼はライゼクスにトドメを刺さずにアマツマガツチの方へ振り向く。

 

どうやらわざわざトドメを刺さずにでも勝手に死ぬだろうと理解したのだろう。

 

そして飛刃殼はゆっくりとアマツマガツチに近付く。

 

その後ろではライゼクスがもがく。

 

そのもがきは【痛みによる嘆き】でもなく、【まだ戦えるからこちらを向け】という意志的な事でもなく……アマツマガツチに向かって【逃げろ】と言ってるように見える。

 

だが悲しきかな、アマツマガツチはやっと存在に気付いたのか振り向いてしまった。

 

……口にカジキマグロをくわえて。

 

 

ーこっから出てけ、さもなくばこいつと同じようにしてやろうか?

 

 

的な雰囲気を醸し出しながら威嚇する飛刃殼に対してアマツマガツチは……

 

 

ー?

 

 

首をコテンと傾き、頭上に?マークを浮かべる。

 

 

ーあ、ダメだ。終わった。

 

 

……なお上のイメージはライゼクスである。

 

そして痺れを切らしたのか飛刃殼はアマツマガツチに向けて甲殻を飛ばす。

 

弾丸のようなスピードで飛ぶ甲殻はアマツマガツチの胸、左腕に直撃……

 

 

 

 

 

 

……するが弾かれてしまった。

 

 

ー!?

 

 

飛刃殼は目を見開いた。

 

それもそのはず、自分の代名詞である甲殻が貫かないどころか弾かれたのだから。

 

だがアマツマガツチが弾いたのは自身を纏う風でもなく、また水でもない。

 

ただ自分が持つ甲殻と鰭が飛刃殼の甲殻より硬かった、ただそれだけである。

 

なら何故ここまでの硬さを誇る甲殻を手に入れたのか?

 

それは単純明快である。

 

アマツマガツチが先程まで食べていた【ヨロヒ大マグロ】の効果である。

 

なんとこれ、ハンターでいう【忍耐の種】に似た防御力を上げる効果があるのに加え、甲殻をより硬くさせる効果もある。

 

今のアマツマガツチの甲殻は、甲殻というよりも【堅殼】と言った方がいいだろう。

 

だが、飛刃殼は混乱していた。

 

今まで自分が放つ甲殻を貫けない物なんて存在しないと思い込んでいたのだろう。

 

しかし、現れてしまった。

 

自分の自慢の甲殻を弾いてしまう存在を。

 

 

ーグオォォォォォォッ!!!

 

 

その悔しさを怒りに変え、大きな咆哮を放つ。

 

その咆哮は原種よりやや甲高いがハンターを吹っ飛ばすのに充分だった。

 

赤く染まった甲殻を再び放つ。

 

今度は非怒り時より圧倒的な甲殻の数でアマツマガツチ目掛けて襲いかかる。

 

……だが、それも全て弾かれるだけで終わった。

 

対してアマツマガツチは……また魚を食し始めている。

 

けれどそれで終わる飛刃殼ではない。

 

その隙に今度はアマツマガツチに接近し、その身体を締め付けようとする。

 

だが、それを許すアマツマガツチではない。

 

……いや、正確には【気付いていなかったアマツマガツチ】、と言ったところか。

 

 

ーあっ。

 

 

たまたまバクレツアロワナをくわえていたアマツマガツチだが、バクレツアロワナが暴れ出して滑って落としてしまった。

 

そしてそこへ飛刃殼が飛び出し、バクレツアロワナと接触し……

 

 

 

 

 

ーあっ……!

 

 

絶命を覚悟したバクレツアロワナはそのまま爆発した。

 

飛刃殼は気付いていたものの時既に遅し。

 

その爆風により、アマツマガツチと飛刃殼が巻き込まれてしまう。

 

 

ー…………。

 

 

その様子を見ていたライゼクスはただ口をポカンと開けて呆然としていた。

 

煙が晴れるとそこには鰭が焦げているアマツマガツチと甲殻にヒビが入っている飛刃殼がいた。

 

ダメージとしては飛刃殼の方が大きかったようだ。

 

対してアマツマガツチは鰭を焦がす程度で済んだ。

 

予測だが、恐らくヨロヒ大マグロによる甲殻強化に加え、自身が持つ【風と水を操る力】により、爆風を抑えたのであろう。

 

流石は古龍の持つステータスである。

 

……と言っても、自身は古龍だということに対して自覚はないが……。

 

 

ークソッタレが……!!

 

 

まともに爆風を受けた飛刃殼は分が悪いと判断し、逃走を図ろうと地面を掘ろうとする。

 

 

ーガシッ!!

 

 

だが、何者かによる挟みつけで妨害され、失敗に終わる。

 

 

ーおい、俺を忘れんな。

 

 

飛刃殼を妨害したのはあのライゼクスだ。

 

ヨロヨロと立ち上がり、息を荒くして尻尾の鋏で飛刃殼の胴体を挟んでいた。

 

 

ー離せぇ!!

 

 

飛刃殼は必死にもがく。

 

だがライゼクスも許さんとばかりにそれを対応する。

 

恐らく、これが彼の最後の力なのだろうか、今まで以上に鋏の攻撃が膨大している。

 

ギチギチと嫌な音を立てて飛刃殼を押さえ付ける。

 

ライゼクスも本気なのだろう、証拠に全部位が電荷状態になっている。

 

ただ、ほんの一瞬だけだが、緑色の雷が青白く光った……気がした。

 

けれどそれどころではない。

 

飛刃殼が暴れる度、甲殻が雨のように降り注ぐ。

 

形は違えど、これも飛刃殼の攻撃の一種である。

 

その雨のように降り注ぐ甲殻は周りにいたドスランポスを貫き、勿論の事ライゼクスにも刺さる。

 

だが、離さない。

 

痛みを無理矢理堪えてるようにも見える。

 

 

ーっ!!!

 

 

そしてその最中、飛刃殼は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーよくもバクレツアロワナをぉ!!

 

 

いつの間にか雨が降り出し、自分が食べようとしてたバクレツアロワナを失い、怒りのアマツマガツチがこちらに向かって水ブレスを放ってきている事を……。

 

 

 

水ブレスは飛刃殼の頭部を捉えていた。

 

水とは言え、圧縮された状態で高速で飛べば大岩でさえも切断する威力となる。

 

その水の嵐の中にいる飛刃殼の甲殻がピキッ!!と嫌な音を立て、ついには砕け散った。

 

……うん、自然界でも食べ物の恨みって怖い。

 

幸いにも飛刃殼の頭部のみに水ブレスが直撃してる為、ライゼクスに大きな被害はなかった。

 

……ただ、水の勢いが大きすぎたのか吹っ飛んだだけだった。

 

そして水のブレスが止むとそこには背の甲殻が綺麗さっぱり消え失せた飛刃殼もといガララアジャラがいた。

 

だが、目は白目を向いており、口を開けたまま倒れた。

 

二つ名とはいえ、古龍の怒り攻撃には耐えれなかったそうだ。

 

 

ー……。

 

 

それを見て安心したのかライゼクスはヨロヨロと立ち、ボロボロの翼を広げた。

 

その翼膜には、大きな傷跡が一線あったが、その翼の美しさは失っていなかった。

 

そして翼を羽ばたかせ、空に舞う。

 

だが、違う点があった。

 

それは目付きである。

 

今まではアマツマガツチが気に入らず、憎悪が込められたような冷たい目をしていたが今となれば感謝しているのか暖かな目をしていた。

 

……だが、アマツマガツチは無視して魚を食べているが……。

 

その変わらないマイペースさもライゼクスはやや呆れていたが、フッと笑ったような表情でこう鳴く。

 

 

ーありがとう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後、完全に完治したライゼクスはいつものようにアマツマガツチのいるエリア10へ向かった。

 

今度は殺し合いとかではなく、ただの力試しとしてだ。

 

……だが、そこにはアマツマガツチの姿がなかった。

 

あの気分屋でマイペースな彼女なら納得がいくだろう、恐らく旅立ったんだろう。

 

けれど諦めの悪いライゼクスはやはり諦めていない。

 

今度こそ力を示してみようと思う。

 

この青白く光る雷光で……。

 

 

ー続くー




まさかのライゼクス二つ名フラグ……。

けれど未だに詳しい生態が判明してないのでまだ遠くなりそうです。


ー今回のオリジナル二つ名個体ー

・名前 飛刃殼ガララアジャラ
・種族 蛇竜種
・属性 麻痺・裂傷
・破壊部位 頭部・腕・背殼・尾殼・後脚

生態
ガララアジャラの特殊個体。
原種とは異なり、背の殼、尾の殼が異常発達してるのが特徴で、飛ばすと刃が飛ぶように甲殻が発射され、そこから音量を放つと裂傷爆発が起こる。
対処法としてモスジャーキー、またはサシミウオ、こんがり肉を食えば治る。

素材
・尖ったクチバシ
飛刃殼のクチバシ。
原種より尖っており、触れるだけで軽い傷を起こす。

・飛刃殼の背殼
飛刃殼の背にある甲殻。
一つだけで非常に大きく、加工するには腕利きの職人でなければほぼ不可能。

・飛刃殼の尾殼
飛刃殼の尾にある甲殻。
背殼より小さいが、相手を傷つけるのには充分な鋭さを誇る。

・飛刃殼の腕
飛刃殼の腕。
唯一甲殻は存在せず、あるのは鋭い爪のみ。


防具
飛刃殼シリーズ

スキル
・麻痺無効
・裂傷無効
・飛刃殼の魂(捕獲名人+高級耳栓)


こんな所でしょうか(汗

あと報告させていただきます。
最近コメントが多くなって参りました。

非常にありがたいのですが、ほぼ全てに返信が出来ないことがありますのでご了承ください。

ただ、全てのコメントに目を通しております。

本当にありがとうございます。

では、次回に会いましょう。


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雪山篇
第十四話 雪山の頂上にて


今度は雪山に行き着いたみたいです。


自然界において強さが関わる一つとして、【体の大きさ】というのがある。

 

体が大きければ攻撃の範囲と威力がぐんと上がり、また相手にかけるプレッシャーも膨れ上がるだろう。

 

その巨大な身体についてだが、最も相応しいモンスターは巨獣【ガムート】であろう。

 

極寒という厳しい環境の元で暮らす牙獣種系草食モンスターであるが、牙、頭部、鼻、脚の全てが巨大であり、見るものを圧倒する。

 

大人しいものの、一度怒りを買えば飛竜に匹敵する程の強さと凶暴さを持ちいるとされている。

 

……そんなガムートであるが、一つの悩みがある。

 

それは……

 

 

ーzzz…

 

 

自分の身体の上に白く美しい布を纏ったような古龍が寝そべっているからだ。

 

勿論、正体はあのアマツマガツチである。

 

今現在いるのは極寒の地で有名なフラヒヤ山脈の一つの山、通称【雪山】の山頂であるためかガムートの毛皮の暖かさに惹かれ、ここに居座っているようだ。

 

だが、今のガムートはやや機嫌が悪い。

 

何せ、雪を毛布代わりにして睡眠しているところ、ブランゴ三匹が自分の腹下を洞窟だと間違い、睡眠を邪魔されたからだ。

 

かと言って、アマツマガツチを振り落とす動作はしない。

 

少し邪魔という認識だけで危害を加えないつもりだと理解しているのか、振り落とすどころかガン無視である。

 

……危害を加えるつもりがないというよりもアマツマガツチが寝ている時点で敵意がない気もするが……。

 

そんな最中、ガムートは歩みを進め……しばらく進んだ後、足を止めた。

 

そして長い鼻を伸ばし、周囲を警戒する。

 

野生の勘なのだろうか、何かの気配を察知したようだ。

 

 

 

ーその直後、それは空から飛び出してきた。

 

 

舞い降りた、というよりも飛び出すと言った表現が正しい。

 

その飛び出した者はガムートの背に乗り、その強靭な顎でガムートの胴体を容赦なく噛む。

 

だが先程言った通り、ガムートの身体の全身が分厚い毛皮に覆われているため、噛み砕くことが出来ない。

 

そのせいか、襲い掛かってきた者が何としてでも噛み砕こうと必死に顎を挟む。

 

だがガムートも黙っておらず、長い鼻を後ろに回し、その者の胴体を巻き付け、地面に叩き落とす。

 

同時に背に乗ってたアマツマガツチが落下し、そのまま滑ってしまい、頭から雪山へとズボッとハマる。

 

それを他所にガムートは突然襲ってきた者を睨み付ける。

 

その者の姿は四肢で退化した翼を持ち、全身を覆うオレンジ色と青い模様。

 

そして最大の特徴が【顎】と【前足】である。

 

大きく、岩ですら噛み砕きそうな顎であり、前足は後ろ足と比べ異常なまで巨大化し、その先には鋭い爪が立ち並ぶ。

 

その者がガムートを見ると上体を起こし、轟音のような咆哮を放つ。

 

その咆哮により、衝撃波が地を走り、周囲に舞っていた粉雪が吹き飛んだ。

 

その者の名は轟竜【ティガレックス】。

 

ハンターの間から【絶対強者 】と知られているモンスターである。

 

……そのモンスターの隣には雪に埋もれてる事に気付き、ジタバタしているアマツマガツチと「なんだこいつ?」と言わんばかりにガン見しまくってるブランゴ達がいるが、二頭は無視している。

 

先に動いたのはティガレックス。

 

その強靭に発達した前足を大きく使い、ガムート目掛けて一直線に突進。

 

対してガムートは避ける動作をせず、ドッシリと身構える。

 

避けるつもりは無いみたいだ。

 

そしてティガレックスとガムートの距離が縮まった瞬間、ガムートが動いた。

 

鼻を天高く上にあげ、振り下ろした。

 

振り下ろされた鼻はそのままティガレックスに直撃。

 

粉雪が舞うと共にティガレックスは下敷きになる。

 

この時、衝撃にビックリしたブランゴ達は退散。

 

アマツマガツチは未だにジタバタしている。

 

だが、驚く事にティガレックスは怯む様子がない。

 

四肢に力を込め、ジャンプした。

 

そのジャンプした衝撃により、鼻が弾かれ、ティガレックスは自由の身となったと共に再びガムートの肩に飛び付き、噛み砕く。

 

ガムートは地鳴りを鳴らしつつ暴れ出し、それを必死にしがみつき攻撃を仕掛けるティガレックス。

 

……そして今度はブランゴ達の親分である雪獅子【ドドブランゴ】にガン見されるアマツマガツチ。

 

そうこうしてるうちに戦いが動いた。

 

噛み砕く事が無意味だと悟ったティガレックスはその場から後退、距離を取る。

 

距離を取られ、やや遅れてガムートは頭に地面を付け、突進を仕掛ける。

 

その突進はまるで雪崩のような突進である。

 

だが、それでボーッとするティガレックスではない。

 

前足を大きく引き、地面を付けてそのまま地面を抉りながら前へと伸ばす。

 

その途端、大きな岩が三つ飛び出し、ガムートを襲う。

 

だが、ガムートからすればその岩もまた小石同然。

 

直撃したが、岩は呆気なく砕け散るだけでガムートの突進は止まらなかった。

 

それを見たティガレックスは仕方ないとばかりにバックジャンプをして再び距離を取る。

 

が、ふと隣を見ると未だにバタバタしてるアマツマガツチが視界に映る。

 

それと同時にドドブランゴは「あ、やべ」的な感覚でその場から撤退。

 

そして視界を前に戻すとガムートが接近してくる。

 

距離を取っても無駄だと理解し、再びジャンプする。

 

それと同時にガムートの突進は途絶え、前方に大きな衝撃波が走る。

 

……その衝撃により、アマツマガツチは脱出したが、ぐでりと伸びている。

 

それを他所に二頭の戦いは激しさを増していた。

 

ティガレックスは再びガムートの身体に乗り、ガムートはティガレックスを振り落とそうと鼻を激しく揺らす。

 

……そしてアマツマガツチは初めて見るのであろう、雪山草をジト目。

 

噛むことが不可能だと分かったティガレックスはその強靭な腕で叩き付ける。

 

今度は潰す作戦らしい。

 

だが、許さんとばかり、またガムートはティガレックスを巻き付ける……。

 

その時を待っていたと言わんばかりにティガレックスはガムートの鼻を思い切り噛む。

 

歯応えがあったのか、ガムートは悲鳴に近い咆哮を上げ、ティガレックスごと鼻を大きく揺らす。

 

確かに、ガムートの全身は外敵から、また極寒から身を守るため分厚い毛皮に包まれているが限度がある。

 

鼻が柔らかい理由としては食事をするため、雪山草を掴みやすいようにするため、また雪山草を掘り出しやすいようにするため柔らかいのだ。

 

だが、それが仇となり弱点となっている。

 

そしていつしか、ティガレックスは振り落とされ、地面に叩き付けられる前に前足でバランスを取り、着地する。

 

着地した後、ガムートは荒い息を吐きながら大きな咆哮を放つ。

 

ティガレックス程の音量ではないが、その巨体故か大音量である。

 

そしてガムートは前足を上げ、後ろ足でバランスを取りつつ上体を起こす。

 

一気に踏み潰す気だ。

 

流石にヤバイと思ったティガレックスはバックステップをして距離を空ける……のだが

 

 

ーっ!!

 

 

ここでティガレックスは気付く。

 

後ろが断崖絶壁になっていた。

 

いくら飛竜でも落ちたら命を落としかねない程の高さだ。

 

そして前方を見れば巨大な壁のように立ち塞がるガムート。

 

なのでティガレックスに打つ手がない。

 

 

 

ードゴォンッ!!!

 

 

 

地が割れ、轟音が轟く。

 

ガムートがただ上体を起こして振り下ろしただけでこの威力だ。

 

ガムートの足元には下敷きになっているティガレックスが……

 

 

……耐え抜いている。

 

自分を支える強靭な四肢で無理矢理持ち上げている。

 

そしてティガレックスに変化が起きた。

 

前足と頭に血管が浮かび上がり、目が血走る。

 

 

ーゴオォォォォォォォッ!!!!

 

 

そして野太く低い咆哮を放つ。

 

それは正しく大砲のような……いや、それ以上の大音量である。

 

これが【轟竜】と呼ばれてる由縁である。

 

 

ーっ!!

 

 

その轟音に巨体にも関わらず怯むガムート。

 

それなりの轟音なのだろう、轟竜の名は伊達ではない。

 

……ただアマツマガツチはポポと遭遇して躊躇なく仕留めてして食しているが……。

 

そしてティガレックスは怒りに身を任せ怒涛の突進。

 

一歩一歩前足が地面を付く度、地割れが発生する。

 

だが、それに似合わぬスピードでガムートに突っ込む。

 

対してガムートは再び巨体を起こし、ティガレックスを踏み潰そうとする。

 

……その瞬間、ティガレックスはニヤリと笑った……気がした。

 

待ってましたと言わんばかり、その場で急ブレーキ。

 

ブレーキをしても勢いが止まらずやや前進。

 

けれど、ティガレックスはその勢いを逆利用し高速回転する。

 

これはティガレックスの技の一つである【回転攻撃】である。

 

その場で勢いよく回転するのと少し前進してから回転する二パターンあるが、突進した後の回転攻撃は初めて見るだろう。

 

独楽のように廻るティガレックスの尾がガムートの後ろ足を直撃。

 

 

ーベキィッ!!

 

 

その途端、嫌な音を立てガムートの後ろ足の甲殻にヒビが入った。

 

ガムートは堪らずバランスを崩し、転倒。

 

その隙を見計らい、ティガレックスは飛び乗ろうとする。

 

……だが、ガムートの最大の弱点であり、最大の武器である長い鼻がそれを許さない。

 

ガムートは咄嗟の判断により、鼻を雪に突っ込ませ、吸い取る。

 

その後、飛び掛ってくるティガレックス目掛けて勢いよく雪を発射。

 

雪玉はティガレックスに直撃し、当たりどころが悪かったのかティガレックスは空中で撃墜され、地に叩き落とされる。

 

……対してアマツマガツチはポポノタンが気に召されたのかポポを出来るだけ生態環境を崩さない程度で仕留めていた。

 

ちなみに近くにはポポが逃走した後に出来た足跡に大量の雪山草が現れた。

 

そうしてるうちに二頭がムクりと起き上がり、睨み付ける。

 

ガムートは息を荒くさせながら、ティガレックスは般若の顔をしながら睨み付けている。

 

そろそろケリを付けたいらしく、二頭同時に咆哮を放つ。

 

 

 

 

 

ーねぇねぇ

 

 

そして互いに衝突する前に間に何かが入ってきた。

 

その何かによって二頭は足を止め、ガン見する。

 

何かーアマツマガツチは大量のポポの死体と大量の雪山草の上でクルクル回っていた。

 

 

ー……食べる?

 

 

どうやらお腹いっぱいらしく、余ったから上げようと提案したらしい。

 

それを見た二頭は……

 

 

ー………………。

 

 

さっきの怒りはどこへやら。

 

二頭揃って真顔である。

 

多分、ハンターが見たら笑ってしまうほどの真顔だ。

 

 

ーに、肉ぅ!!!!

 

 

その後、先に動いたのはティガレックス。

 

自分の好物であるポポの死体を見て大興奮していた。

 

ポポの死体に向かってダイブ。

 

 

ーぶふぇっ!?

 

 

その衝撃によりアマツマガツチがゴロンと転がり、勝手に雪だるま状態に……。

 

 

ー……。

 

 

対するガムートも自然と雪山草に向けて足を運び、食事を開始する。

 

二頭ともアマツマガツチの提供により争いを忘れ、食事を続けるのであった。

 

……そのアマツマガツチはというと……まぁ、ゴロゴロ転がってるわけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後、二頭とも満足したのか争いをやめ、離れ離れに。

 

雪だるま状態から解放されたアマツマガツチはやはりガムートの温もりが気に入ったらしく、ガムートの背にしがみつく。

 

こうなるとしばらくはガムートの近くにアマツマガツチがいる……のかもしれない。

 

 

ー続くー




すっかりガムートを気に入ってしまったアマツマガツチさん。

さて、雪山篇スタートです。


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第十五話 影

更新お待たせしました、そして本当に申し訳ありませんでした(泣

リアルが忙しい身で更新する暇もありませんでしたが、今ようやく落ち着いたため更新を続けていただきます。


我らがアマツマガツチが雪山に来て早三日が経つ。

 

アマツマガツチは相も変わらずガムートの背に乗って睡眠を、ガムートはこの状況にもう慣れたのか気にも止めずに雪山草を鼻で器用に摘んで口に運ぶ。

 

この二頭が現在佇んでる場所は雪山に生息するドスランポスのようなモンスター【ドスギアノス】が率いるギアノス達の縄張りだったが突然の乱入者達によって呆気なく去っていった。

 

さらに言えばアマツマガツチがこの地に降り立って最初に遭遇した雪獅子【ドドブランゴ】とブランゴの群れでさえ我先にと逃げ去っていく。

 

のんびりとした二頭だが、巨獣が持つ大きさと嵐龍から放たれる古龍としてのプレッシャー故か最早敵無しだった。

 

 

 

 

 

 

 

…ただ敵無しではあるが、中にはちょっかいを出す輩もいる。

 

 

 

 

今二頭がいる場所は薄暗く、ジメジメとした氷の洞窟。

 

つまりは…【奴】がいる。

 

 

ー?

 

 

何かの気配を感じたのかアマツマガツチは目を開き、キョロキョロと首を左右に振って辺りを見渡す。

 

それと同時にガムートも何かを感じ取ったのか鼻で摘んでいた雪山草を手放し、鼻を上に上げて匂いを嗅ぐ。

 

…結論から言えば二頭とも気配を感じるだけであってその気配の持ち主が誰なのか分からない。

 

ただ何かがいる、というのは理解出来ている。

 

時折トッ、トッ、トッという足音が聞こえればグチョグチョとした液体のような何かの音が聞こえる。

 

…間違いない、何かいる。

 

その答えは洞窟の上に佇んでいた。

 

いや、張り付いていた、と言った方が正しい。

 

それは鱗や甲殻を持たず、白いブヨブヨの皮膚を持つ飛竜【フルフル】である。

 

そのフルフルはヨダレを垂らしながら二頭へと頭を向ける。

 

フルフルは洞窟など暗い場所を好むためか目が極限に退化した代わりに嗅覚が極限に進化している。

 

スンスンと匂いを嗅ぎ、位置を特定し二頭の真上にのしかかろうとする。

 

 

ードスッ

 

 

しかし、もちろんの事だがガムートの上にはアマツマガツチがいる。

 

そのアマツマガツチの上にフルフルが乗っかる。

 

 

ー!!

 

 

ここでようやくフルフルの存在に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

…ガムートが。

 

ではアマツマガツチはというと…。

 

 

ーzzz…

 

 

…寝ている。

 

フルフルの下敷きにされてるというのにも関わらず睡眠を取っている。

 

フルフルは攻撃のつもりだったんだろうが、彼女からすればただ単に【掛け布団】のような感覚なのだろう。

 

 

ー離せぇ!!

 

 

そんないつもと変わらないアマツマガツチはさておき、突然現れたフルフルに対してガムートは当然の様に抵抗する。

 

鼻や頭、体を激しく揺さぶってフルフルを無理矢理引き剥がそうとする。

 

もちろんの事だがアマツマガツチも巻き添えを食らう…が、彼女には効果が無い。

 

何故ならしがみついているからだ、寝ている癖に。

 

そのアマツマガツチの上に乗っかってるフルフルも自身が持つ粘着力の高い皮膚を使って振り落とされてたまるかと言わんばかり必死にアマツマガツチにしがみつく。

 

そしてフルフルは抵抗し始めた。

 

体内にある電気袋を使って全身に電気を纏い始めた。

 

ガムート…いや、正確にはアマツマガツチの上に青い稲妻が走り、二頭とも電撃に巻き込まれる。

 

 

ー!!

 

 

ガムートは突然の電撃攻撃に驚いたのかやや怯んだ。

 

…対してアマツマガツチは効果が無いのか、また電撃攻撃に気付いてないのか、未だに睡眠中。

 

しかも律儀にヨダレがガムートに付着しないようにと体の外側から垂れ流している始末。

 

雷を直撃しても怯みどころか平然としてるところを見れば流石は古龍と言えるが、案の定睡眠中なので少しマヌケにも見える。

 

そうこうしてるうちにガムートは仕方ないとそのアマツマガツチごとフルフルを鼻で包み、そのまま地面に叩き付けた。

 

フルフルは地面に叩きつけられた事により転倒状態、一方のアマツマガツチはそれがどうしたと言わんばかり仰向け状態で睡眠中。

 

それを他所にフルフルは立ち上がり、ガムートを見上げながら威嚇する。

 

 

ーやんのかワレェ!!

 

ーアンタ誰よ!!

 

 

まさに二頭の雰囲気はそんな感じだった。

 

…それと言い忘れたが、このガムートは雌である。

 

そしてガムートは地面に頭をつけ、フルフルに向かって突進。

 

フルフルは体に電気を纏わせて飛びかかる。

 

…アマツマガツチはやっと目が覚めたのかブルブルと体を震わせて仰向けからうつ伏せに体勢を変える。

 

ガムートの頭にフルフルが張り付くが、ガムートはそれを無視して突進を続ける。

 

その突進の先には壁が…フルフルを挟んで潰そうという戦法だろう。

 

だがその戦法にいち早く本能で気付いたフルフルはガムートから一時離れ、別の壁に張り付いた。

 

そしてガムートはそのまま壁に激突。

 

力が強過ぎるせいか振動が発生し、壁に張り付いていたフルフルは無理矢理引き剥がされ、仕方なく大地に着地する。

 

対してアマツマガツチは振動によって巣から現れたランゴスタ数匹を見上げ、何故か尻尾をフリフリと揺らして眺めている。

 

…食べるつもりなのだろうか?

 

一方の二頭の争いは続く。

 

フルフルは再びガムートに飛びかかり、その巨体に張り付くと口をバチバチと雷を纏わせ、息を吸い込む。

 

電気ブレスを放つつもりだろう。

 

しかしガムートはそれを許さない。

 

首を左右に大きく振り、地面に叩き付ける。

 

大きな振動が走り、衝撃がフルフルまで伝わり、ブレスを放ったフルフルは大きく仰け反る。

 

その影響によりブレスは大きく外れ、天井に着弾すると三つの玉になって天井を駆け巡る。

 

一方アマツマガツチはランゴスタに興味があるのかその短い前脚でランゴスタに触れようとするも届かず、ジタバタと体を動かす。

 

しかし捕まってたまるかと言わんばかりランゴスタは高速飛行でアマツマガツチの周りを飛び回る。

 

 

ーギエエェェェェェェー!!!

 

ー!!?

 

 

次の瞬間、人間の断末魔のような咆哮が上がった。

 

咆哮を上げた張本人はフルフル、翼を折りたたんで首を長く伸ばし、口を精一杯大きく上げて咆哮を放つ。

 

その咆哮はかの轟竜とは違い、最早不気味としか思えない。

 

咆哮を食らったガムートは少し怯み、ランゴスタはその音量でフラ付き、アマツマガツチに至っては古龍の癖して頭をビクッと上げて驚いてるばかりだ。

 

そして耳を塞ぎたいのか短い前脚を自分の角裏に向かって伸ばすも届かず、またバタバタと上下に振る。

 

それを他所にガムートは体勢を立て直すと上体を上げて踏み潰す体勢に入る。

 

重力に身を任せ、そのまま上体を勢いよく下ろすガムート。

 

その重量ある前脚はフルフルを捉えた。

 

 

ーズドォンッ!!

 

 

攻撃は命中。

 

フルフルは流石に効いたのか痛がってるようなリアクションを取る。

 

だがガムートは待ってくれない。

 

この隙を使って頭を左右に振り回しながら突進を仕掛ける。

 

しかし、フルフルはいち早く体勢を立て直すと飛び上がって天井に張り付いた。

 

そしてそこから攻撃…ではなく、逃亡。

 

本能的に分が悪いと判断したのだろう。

 

それもそのはず、フルフルはさっきからあることを気にしていた。

 

フルフルは暗くジメジメした場所を好み、そこを自分の住処にしている故、目が極限に退化してるが嗅覚が異常と言えるほど進化している。

 

つまりフルフルは目で物を見る、のではなく鼻で嗅いで周囲を把握していたのだ。

 

フルフルはガムートの臭いを熟知していたが、問題はそこではない。

 

臭いを嗅いだことのないモンスターがいる、そのモンスターがいつ自分に攻撃するのか分からないため一度身を退くことを選択した。

 

そしてガムートは逃亡するフルフルを見て追跡せず、ただ息を荒くして威嚇する。

 

元は言え、ガムートは食事をするためにこの洞窟にやってきたのだ。

 

これ以上フルフルと争うのは無意味だと判断したのだろう。

 

 

ー………。

 

 

さて、勝手にちょっかいを出してきた厄介者を追い払うと放っていたアマツマガツチに目を向けるガムート。

 

彼女は未だにぐでーっと伸び、プルプルと体を震わせている。

 

…余程フルフルの咆哮が嫌いだったらしい。

 

 

ー………。

 

 

それをただ黙り込んで見つめるガムート。

 

ある意味、これはチャンスだ。

 

最初は驚いたものの、このアマツマガツチが背に乗っかかったため荷がやや重くなるのが気になっていた。

 

このままアマツマガツチを放っておけばまたいつものような荷が軽い生活が戻ってくる。

 

 

ー………。

 

 

そしてガムートは動いた。

 

ズシズシとアマツマガツチに近付くと…優しく鼻で体を包み込み、持ち上げて自分の背に乗せてあげた。

 

自らアマツマガツチを連れていくと決めたのだ、ガムートが。

 

それはただ単に連れていきたかったのか、それとも外敵から身を守るためなのか。

 

どちらか分からないがアマツマガツチに対して敵意がないというのは事実だ。

 

そして肝心なアマツマガツチは…言わなくてもわかるだろう、寝ている。

 

 

ー………ふっ。

 

 

その様子を見てガムートは少し笑った…気がした。

 

そしてアマツマガツチを乗せたガムートはそそくさに洞窟から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーだが、二頭は気付いてない。

 

洞窟の真上には穴が空いており、その先には夜空が広がっている。

 

その夜空に溶け込むように…黒い風を纏った龍が移動する二頭を見下すように見つめていた。

 

龍の足元にはその龍に似た姿を持つ抜け殻が乱暴に置かれ、その真上に龍が佇む。

 

 

ー………。

 

 

そして龍は無言で翼を広げ、夜空へと舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、二頭は洞窟にいたため気付いていなかったが、外は吹雪で荒れていたそうだ。




さて、皆様が期待していた(?)あの方がご登場です。

アマツさん、そしてガムートさんはどうなるのやら。


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第十六話 とある渓流の一日

今回はすぐにパッと思いついたネタがあるので書いてみることにしました。


渓流

 

そこは雪山、砂漠、火山とは違い、比較的環境が安定しておりどのモンスターが生息しやすいフィールドの一つである。

 

それ故かハンター達が知る危険なモンスターばかり生息する。

 

例えをあげるなら迅速の身のこなしを持ち、相手を暗殺するような動きを見せる【迅竜 ナルガクルガ】。

 

強靭な四肢を使って大地を駆け巡り、狙った獲物を息絶えるまで狩り続ける無双の狩人【雷狼竜 ジンオウガ】。

 

かつて太陽と月とも呼ばれた幻の飛竜【銀火竜 リオレウス希少種】に【金火竜 リオレイア希少種】。

 

最近ではかの海の王【海竜 ラギアクルス】や全てを喰らう【恐暴竜 イビルジョー】、妖艶なる舞【泡狐竜 タマミツネ】まで確認されるようになった。

 

美しいフィールドであるものの危険区域に変わりないこの場所で…一人の白髪の少女がいた。

 

…いや、いたと言うよりも…何故か体を丸くして寝ている。

 

何故こんな危険な場所に少女がいるのか、誰に聞いても返ってくる返事は「分からない」だろう。

 

 

ー誰だこいつ?

 

 

その少女の近くにジャギィとジャギノスを連れた【狗竜 ドスジャギィ】は威嚇をしながら少女を見る。

 

それに連れ、他のジャギィとジャギノスもギャアギャアと騒がしく少女に威嚇する。

 

 

ーむくっ

 

 

と、ここで少女は目を覚まし体を上げて辺りを見渡した。

 

腰辺りまで届くボサボサの髪で頭頂部にアホ毛が一本、目の色は水色で顔付きは美しいというより可愛らしいと言った方がいいだろう。

 

身長は約155cm辺りだろうか、やや小柄で白いワンピースを纏っている。

 

その少女は目の前にいるドスジャギィとジャギィ、ジャギノスの群れを見て…

 

 

「?」

 

 

…怯えることもなく、泣き叫ぶこともなく、驚くこともなく、ただただ可愛らしく首をコテンと傾げる。

 

…どうやらこの少女、言葉を発せない…というより言葉を知らないらしい。

 

 

ーな、なんだってんだいお前!!

 

 

しかしその様子が気に入らないのかドスジャギィはより低い姿勢で相手を睨み付け、威嚇を続ける。

 

だが少女は無言でドスジャギィを見つめる…というわけではなく、キョロキョロと辺りを見渡した。

 

そして次に自分の手や足を見る。

 

これには少し驚いたのか目を見開いていた。

 

となればこの少女、有り得ない話かもしれないが元々【モンスターだった】のではないのだろうか?

 

とは言え…ドスジャギィ、いやその連れであるジャギィとジャギノス達に視界が入ってないらしい。

 

むしろ興味が無い御様子。

 

それを知らずにドスジャギィはまだ威嚇を続ける。

 

 

ートットットットットッ。

 

 

それとは別に少女は立ち上がり、裸足でありながらも流れる川に足を突っ込みながら元気よく走る。

 

体の件についてはよく分かってないが、どうやらこの場所に見覚えがあるらしい。

 

 

ーえー…。

 

 

一方のドスジャギィ御一行はただそれをポカンと口を開けて眺める。

 

少女に全く相手にされない…哀れなり、ドスジャギィ御一行よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってエリア7。

 

ここは水が多く、タマミツネやガノトトス、ロアルドロスなどと言った水を好むモンスターがよく集まる場所。

 

エリアには現在体を丸めて気持ちよく寝てるタマミツネが。

 

そのタマミツネの近くに釣りを終えたのか大量の魚を抱えてご機嫌に帰るアイルー三匹。

 

内一匹が宙に舞う泡が気になって立ち止まると後ろにいた二匹が足を滑らせて転倒。

 

気がつけば足元には泡が展開され、摩擦が無いため三匹は前へ無様に流される。

 

…ここで異変を感じたタマミツネが起き上がった。

 

彼(一応雄)は自分の縄張りに近付いてきた外敵を追い払うため、グルグルと周囲を回っては振り向いて特大の泡を放つ。

 

その泡は三匹纏めて包み込み、ポヨンッと優しく割れた。

 

だが三匹は予期せぬ自体にパニクって魚を放置して無我夢中にタマミツネから逃げ出した。

 

追い払ったタマミツネは追跡せず、再び体を丸くして睡眠の姿勢へ…

 

 

 

…だが、眠れなかった。

 

 

 

何せ、目の前にはアイルー達が取っていた魚をむしゃむしゃと食べる白い少女がいるのだから。

 

ハンターがこんがり肉を食らうかのように両手で魚を持ち、腹を思い切り食らっている。

 

…しかも生で。

 

腹を壊さないのだろうか?

 

 

ー…やれやれ、仕方ない。

 

 

それを見たタマミツネは、やや呆れつつ再び泡を纏って少女に威嚇。

 

やや呆れつつ、と言っても所詮は竜。

 

人から見れば殺意があるようにしか見えない。

 

 

「?」

 

 

だが案の定と言うべきかなんと言うか。

 

少女はタマミツネを見るなり首を傾げている。

 

一見可愛らしいが口周りが血塗れなので普通にホラーである。

 

 

ー………。

 

 

対してタマミツネは背を低くして威嚇の体勢。

 

無駄な殺生を起こしたくないのか、彼の考えはアイルー達と同じように泡で追い返してやろうと思っている。

 

そんなタマミツネを見た少女は…。

 

 

「…?」

 

 

…近くにあった魚を手に取り、タマミツネに差し出した。

 

この少女は言葉を発せないどころか言葉を知らないため首を傾げるしかない。

 

だが意味は通用するだろう、人間の言葉で言うなら「これ食べる?」とでも言っているに違いない。

 

 

ーなんだ、この少女は…?

 

 

けれどタマミツネに動きはない。

 

何せ野生に生きるモンスターだ、人間が差し出すものには信用出来ない…。

 

 

 

 

ーキュルルルルゥ…

 

 

 

 

…途端、腹を空かせたような音が聞こえた。

 

その音の持ち主はタマミツネ。

 

寝起き故か空腹らしい。

 

 

ーあっ…。

 

「!」

 

 

タマミツネは自分の空腹に少し動揺し威嚇の体勢が崩れる。

 

対して少女はその反応が面白かったのか腕をバタバタと上下に振って笑っている…ような気がした。

 

言い忘れていたが、この少女は言葉も知らなければ表情も知らない。

 

常にポーカーフェイスだ。

 

だが真顔だったとしても十人中十人、否十二人がこちらに振り返るんだろうというぐらい可愛い顔付きをしている。

 

…少し話が逸れたが、タマミツネは渋々少女が持つ魚に近付いてスンスンと匂いを嗅いだ。

 

そして毒物が入ってないことを確認して口を開き、魚を食らった。

 

いや、食らったというより飲み込んだ。

 

タマミツネは歯が短く小さいため噛み砕くことが出来ないが喉が特化されてる為喉詰まりの問題は無い。

 

そしてタマミツネはお気に召されたのか別の魚にも口を開き、飲み込んだ。

 

少女も負けじと魚を持ってはガツガツと食らう。

 

いつの間にか周りには【水獣 ロアルドロス】や【水竜 ガノトトス】、挙句の果てには【恐暴竜 イビルジョー】まで集まってきたが、決して交わることのない一人と一頭の異様な光景をただただ見つめるだけで動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてしばらくして。

 

イビルジョーがガノトトスを喰らい尽くして去っていった頃、大量にあった魚を一匹残さず喰らい尽くした。

 

…元はアイルー達の物だが戻ってくる気配がないため問題は無い、多分。

 

それで少女はと言うと…

 

 

「zzz…」

 

 

…寝ている。

 

しかも寝方が仰向けになって寝る、という訳でもなく体を丸めて寝ている。

 

それはさながら海竜骨格のモンスターが睡眠を取る時と同じような姿勢だ。

 

 

ー………。

 

 

対してタマミツネはそっと少女に近付くと少女を取り囲む形で自分の体を丸めて睡眠を取る。

 

魚をくれた恩返しなのだろうか、どちらにせよ何やら和むような光景だ。

 

少女はタマミツネが持つ毛を抱きしめ、気持ちよく睡眠を…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーはっ!?

 

 

…ここである者が目を覚ました。

 

そのある者は今まで見たことがない夢を見て驚いてるのか目を見開いてキョロキョロと激しく辺りを見渡す。

 

そこは辺り一面銀世界で空には夜空が広がっている。

 

そして自分の下にはゆっくりと前進するガムート。

 

次に自分の腕を見る。

 

黒い堅殼に白い上鰭、水と風を纏った感覚。

 

ある者【アマツマガツチ】は現実に戻ってきた事を実感して安心したらしい。

 

まさか自分が人間になる夢を見るとは思いもしなかったのだろう。

 

そしてアマツマガツチが次にとった行動は…またも睡眠。

 

下の方ではギャアギャアとドスギアノス御一行とガムートが争っている。

 

それでもアマツマガツチは睡眠、しかも別な夢を見ているのかヨダレを垂らしている。

 

 

 

 

…そのマイペースさは相変わらずである。




アマツマガツチさん、まさかの擬人化。

しかしそれは夢の中であって現実にはならない。

人は人、モンスターはモンスター。

その種族の壁は通り来せないのだ…。


…的なことを考えて書いてみましたが如何でしょうか?

擬人化の話で当初はドキドキノコやらそういうのが原因で擬人化してユクモ村に迷い込んで祭りに巻き込まれる、という設定にしようかと思いましたがそれだったらなんか違うと思い始め、行き着いたのがアマツマガツチさんの夢の中のお話という事になりました。

もし好評でしたらこういうパートが続いたり、擬人化した時のイラストを貼ろうかなと思ったり…かも知れません。


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