奉仕部で駄弁るだけ (ひょっとこ_)
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一駄弁り

いらっしゃいませ。
会話文のみのお送りになります。ご了承ください。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすっかり冬って感じだねー。朝学校来るときちょー寒いの」

 

 

「そうね、冬だもの」

 

 

「……ああ、冬だからな」

 

 

「それでね、あたし、冷え性なんだけどさ。冬って毎年ヒビとかアカギレになっちゃったりするの、あれ困るんだー……」

 

 

「それは大変ね……。もしかして今もそうだったりするのかしら」

 

 

「あ、うん、あはは。実はそうなんだー……」

 

 

「そうなの……」

 

 

「…………ほら、ハンドクリーム。使えよ」

 

 

「わ、ヒッキー。こんなの持ってるんだっ」

 

 

「あー、まぁ、ちょっとな。小町もよくやるんだよ、ヒビとか」

 

 

「本当、マメというかなんというか。いえ、ただの妹脳ね……末期だわ……」

 

 

「わ、悪かったな。……使いたきゃお前も使えよ」

 

 

「……ええ、そうね。ありがたく、厚意に甘えさせてもらうわ」

 

 

「……おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ヒッキー。これ、ありがとう」

 

 

「構わねぇよ」

 

 

「にしても、由比ヶ浜さん」

 

 

「なぁに、ゆきのん」

 

 

「いえ、たいしたことでもないのだけれど、あなたも女の子なのだし、肌には気を配ったほうがいいというだけの話よ」

 

 

「あー、うん、お母さんにも言われてて、あたしも保湿クリームとかよく使ってるんだけどねー……」

 

 

「洗い物とか、水仕事してたらどうしてもなっちまうもんじゃねぇの」

 

 

「うん、そうそう、そうなの。ゆきのんも一人暮らしで家事とかしてたら、経験ない?」

 

 

「いえ、私はない、わね……」

 

 

「……まぁ、お前、綺麗な肌してるもんな」

 

 

「い、いえ、それほどでも、ないわ。ええ」

 

 

「むぅ……」

 

 

「ん、どうかしたのか、由比ヶ浜」

 

 

「なんでもなーいー」

 

 

「なにヘソ曲げてんだよ……」

 

 

「大丈夫よ、由比ヶ浜さん。あなたも十二分に綺麗な肌をしているわ」

 

 

「わっ、びっくりしたー。ゆきのん、肌スベスベー」

 

 

「ちょっ、く、くすぐったいわ、由比ヶ浜さんっ」

 

 

「ここー? ここがいいのかなー?」

 

 

「くっ、ふふっ……や、やめっ……!」

 

 

「お、おい、由比ヶ浜、もうやめとけって。後が怖ぇよ」

 

 

「あ、うん」

 

 

「おい、大丈夫かよ」

 

 

「ふーっ……ふーっ……」

 

 

「ゆ、雪ノ下……? こ、怖ぇよ? そ、そんなにじり寄ってくるなよっ。ていうか、由比ヶ浜っ、俺の後ろに隠れてんじゃねぇ!」

 

 

「あ、あははー……」

 

 

「お前……!」

 

 

「ゆきのん、ごめん……!」

 

 

「あっ、逃げやがった……!」

 

 

「…………比企谷君」

 

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 

「…………今度、由比ヶ浜さんの弱点(・・)を教えてあげるわ。ふふっ、ふふふ……」

 

 

「こ、怖ぇよ、お前……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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二駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし小町に彼氏ができたとしたら、俺はいったいどうなってしまうんだろう」

 

 

「ドストエフスキー屈指の傑作小説を読み終えた感想がそれなの?」

 

 

「そんな冷たい目でこっち見んな。悪かったな、妹脳で」

 

 

「小町さんを思う気持ちはよしとして、それを傘に着て変なことを考えている可能性を考慮してのことよ」

 

 

「ねーよ。さすがにそこまでは」

 

 

「いえ、そうとも限らないわ。よくニュースでも報道されているじゃない。ついカッとなってやってしまったとか、ね……」

 

 

「ねぇ、なんでそんなに情緒たっぷりに言うの? 怖いんだけど」

 

 

「まぁ、それはそれとして」

 

 

「えぇ……」

 

 

「由比ヶ浜さんの姿が見当たらないのだけど」

 

 

「あー。あいつはどうも、家族の誰かがインフルエンザだとかで、看病するとかで即行で帰ったよ」

 

 

「あら、そうだったの、気の毒ね……」

 

 

「まぁ、俺たちが気を揉んでもしょうがねぇ話でもあるけどな」

 

 

「身も蓋もないことを言わないでちょうだい。まったく、そんなだからヒキガエルだなんて言われるのだわ、嘆かわしい……」

 

 

「そ、そこまで言いいますかそうですか……」

 

 

「悔しかったらもうちょっと気の利いた紳士を目指してみればいいんじゃないかしら」

 

 

「くそっ、なんだあの挑発的なポージング。あいつノリノリじゃねぇか……」

 

 

「ふふっ、やはり、比企谷君には酷な要求だったかしら……?」

 

 

「……やってやろうじゃねぇか、この野郎!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、どうぞお掛けください」

 

 

「……ええ」

 

 

「お茶はいかがですか?」

 

 

「……いただこう、かしら」

 

 

「では、僭越ながら、私がお淹れします、お嬢様」

 

 

「…………」

 

 

「……お嬢様、ダージリンでございます」

 

 

「ありがとう……」

 

 

「いえ」

 

 

「……おいしいわ」

 

 

「恐縮です」

 

 

「比企谷、君……」

 

 

「お嬢様、お辞めください。どうか、八幡と。私めに敬称など不要でございますれば」

 

 

「……は、はち、八、幡……」

 

 

「なんでしょうか、雪乃(・・)お嬢様」

 

 

「っ……」

 

 

「お嬢様……? どうされました、お嬢様」

 

 

「い、いえ、なんでもないわ。ええ。まったく。ぜんぜん」

 

 

「それは、よかったです。雪乃(・・)お嬢様」

 

 

「っ、だから、もうっ。それ、卑怯よ、比企谷君……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、しかし驚いた。顔真っ赤にして、涙目なんだもんよ」

 

 

「うっ……わ、忘れてちょうだい。早急に……」

 

 

「善処する」

 

 

「馬鹿……」

 

 

「ていうか、お前、そんなに俺に下の名前で呼ばれるの嫌だったの……? ちょっと傷ついちゃうんだけど」

 

 

「べ、べつに! そ、そういうわけじゃない、けど……」

 

 

「な、なんだよ。急にでかい声出すなよ……」

 

 

「いえ、ごめんなさい……」

 

 

「お、おう……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「あの、比企谷君……」

 

 

「……なんだ」

 

 

「よければ、だけど……また、紅茶を淹れてもらえる、かしら……?」

 

 

「…………まぁ、また今度な」

 

 

「え、ええ……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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三駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカンってさ、皮剥いてるとたまに身が裂けて果汁が飛んでくるの」

 

 

「……まぁ、わからんでもないが」

 

 

「でね、酷いときはそれが目に入っちゃってさ。それであたしが悶えてるの見て、お父さん、笑うんだよ? 酷くない?」

 

 

「そうだなぁ……。が、この寒いのにやっぱり炬燵とミカンは外せないだろ」

 

 

「んー、それもわかるけどさぁ……」

 

 

「……思うに、ミカンの皮に対して力みすぎなんじゃないかしら、由比ヶ浜さん」

 

 

「え、そうなのかな……」

 

 

「食い意地張ってるってこと、」

 

 

「ヒッキー、うっさい」

 

 

「あ、はい」

 

 

「にしても、この時期になると皆が皆、炬燵炬燵と言い出すけれど、実際のところ、そんなにいいものなのかしら」

 

 

「え、なに、お前、炬燵入ったことねぇの?」

 

 

「ええ、まぁ、そうね。ないわ」

 

 

「はぇー、そうなんだ……」

 

 

「それはもう、あれだな。人生の四割損してるぞ、雪ノ下」

 

 

「残りの六割も底が知れるわね。……でも、そうね。そこまで言われるとさすがに興味が湧いてくるわ」

 

 

「あ、じゃあさ、部活はもう切り上げて、ヒッキーの家で勉強会しない?」

 

 

「え、なんで俺の家、」

 

 

「いい考えね、由比ヶ浜さん。期末も近いことだし、いいんじゃないかしら」

 

 

「拒否権はないんですかそうですか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔するわね、小町さん」

 

 

「小町ちゃん、やっはろー」

 

 

「雪乃さん、結衣さん! いらっしゃいです!」

 

 

「悪いな。勉強会するんだと」

 

 

「お兄ちゃん、おかえりー。いいよいいよ。なんなら、小町も一緒に勉強しちゃうまであるよー」

 

 

「ああ、いいんじゃないか。俺も文系科目なら見てやるんだが……。なぁ、雪ノ下。小町の勉強、見てもらえねぇか?」

 

 

「ええ、構わないわよ」

 

 

「悪い、サンキュな。じゃあ、居間で炬燵入っててくれ。なんか飲み物持ってくる」

 

 

「ありがと、ヒッキー」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだよ、雪ノ下。人生初の炬燵は」

 

 

「……そうね。やはり、一個人で日本という国の伝統文化に抗うことは、土台、無理な話だったのよ」

 

 

「……ちょっと、くっ殺せって言ってみてくんない?」

 

 

「は? くっ、ころ……?」

 

 

「あ、もういい。悪い。俺が悪かった」

 

 

「なにを言っているのかしら、この男は……」

 

 

「それはさておき。この状況、どうしたものかね……」

 

 

「そうね。一個人だろうと、四人集まろうと、伝統文化にはやっぱり勝てないのよ」

 

 

「ああ、そうみたいだ。まさか、四人全員で根落ちなんてな。笑えねぇ」

 

 

「……ねぇ、比企谷君」

 

 

「なんだよ」

 

 

「夕飯、ご相伴に預かっていってもいいかしら」

 

 

「あー、まぁ、いいんじゃねぇか。小町も、喜ぶだろ」

 

 

「ふふ……そうね。では、お台所を借りるわね。夕飯、私が作らせてもらうわ」

 

 

「いいのか?」

 

 

「ええ。だから、できあがるまでにその子たち、起こしてあげてちょうだいね」

 

 

「了解。……ったく、起こし辛ぇ。幸せそうな顔して、寝こけてんじゃねぇよ。まったく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう! 女子の寝顔見るなんて、ヒッキー、サイテー!」

 

 

「悪かったって」

 

 

「あ、雪乃さん。このおひたし、すっごくおいしいです」

 

 

「そう? よかった。由比ヶ浜さんは?」

 

 

「おいしいっ。おいしいけど……! ゆきのぉん!」

 

 

「ふふっ、よかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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四駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪ノ下はいねぇの?」

 

 

「ゆきのん、インフルエンザだって。陽乃さんからメール来てて……」

 

 

「ほーん、そうなの……。……あれ、やめてよね。次俺じゃん」

 

 

「たはは……。あたしもこの前なっちゃったもんね……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……心配、か」

 

 

「そりゃ! そう、だけど……」

 

 

「つっても、インフルってんなら見舞い行くのもあれだからなぁ」

 

 

「でも、だけど……」

 

 

「……まぁ。じゃあよ、部長もいないことだし、部活はもう切り上げて、どっか行こうぜ」

 

 

「え……?」

 

 

「ほら、カバン持てよ。おいてくぞ」

 

 

「あ、ちょ、まっ、ヒ、ヒッキー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうする? 不肖この比企谷、今なら大抵のお願いは聞き入れられるぞ」

 

 

「……ん」

 

 

「あ? クレープか?」

 

 

「ん……」

 

 

「よっしゃ、わかった。じゃあ、待ってろ」

 

 

「…………」

 

 

「……ほら、味聞くの忘れてたから、どっちか選べよ」

 

 

「こっちがいい……」

 

 

「ん、ほら」

 

 

「……ありがと」

 

 

「……うまいか?」

 

 

「ん……」

 

 

「そうか……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「ヒッキー……」

 

 

「なんだよ」

 

 

「……そっちのも、食べさせて?」

 

 

「んぐっ……」

 

 

「ダメ、なの……?」

 

 

「……ったく。ほら」

 

 

「ん、あむ……。おいし……」

 

 

「そうかよ。よかったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ヒッキー」

 

 

「なんだよ」

 

 

「……ほんとはあたしの罪悪感とか、あたしが考えてること、ぜんぶわかってたんだよね……?」

 

 

「…………」

 

 

「あたし……あたしが、インフルエンザを持ってきちゃったから……」

 

 

「…………」

 

 

「でも、ヒッキーはあたしに、そうじゃないって言いたい、んだよね?」

 

 

「そう、だな……。そうだ。これは、お前がそう悩む筋合いの問題じゃない。どうしようもない、のっぴきならないことだ。なにせ、ウィルスだ。お前や、まして俺や雪ノ下ですら、どうにもならないもんだ」

 

 

「…………」

 

 

「だから、俺たちは、あいつが快復して、そんで登校してくんのを迎えてやるだけでいいだろ。そうじゃねぇか?」

 

 

「……うん、そっか。そう、かな……?」

 

 

「ああ、そうだ。だから、今日家に帰ったら、あいつにメールでもしてやれ。早くよくなりやがれってな」

 

 

「うん……。うん、そうする……」

 

 

「おう。じゃあ、もう大丈夫だな」

 

 

「えへへ……。ありがとね、ヒッキー……」

 

 

「べつに。クレープ奢って、話聞いただけだ。気にするな」

 

 

「うんっ。じゃあ、また明日! ヒッキー!」

 

 

「おー、じゃあな。気をつけて帰れよ」

 

 

「わかってるっ。バイバーイっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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五駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなー、焼き肉食べたいかー!?」

 

 

「おー! ほら、ゆきのんも! おー!」

 

 

「……おー」

 

 

「今日ちょっと家があれなんで、帰っていいすかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやね、最近、なんだか貯金しているのも馬鹿らしくなってきてな。たまには教え子たちと親交を深めるのもいいかと思った次第さ」

 

 

「はあ……。ていうか、事情はわかったので、羽交い絞めはやめてください。逃げませんから」

 

 

「……おい、雪ノ下、由比ヶ浜。戸塚を呼べ。ちょうどテニス部も練習を終えた頃だろう」

 

 

「貴様! 卑怯だぞ!」

 

 

「ふはははっ、なんとでも言い給えよ!」

 

 

「……ヒッキー、楽しそう」

 

 

「そうね。でも、放っておいて早く戸塚君を誘いに行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、平塚先生。本当に僕も一緒でいいんですか……?」

 

 

「ああ、構わないよ。そのほうが、そこのぶーたれているやつも喜ぶだろうさ」

 

 

「えっと、その……うん、僕も八幡と焼き肉、食べたいな……」

 

 

「平塚先生。飛ばしてください。一刻も早く、焼き肉屋へ!」

 

 

「……ヒッキー、食い気味だ」

 

 

「もうやだこの人たち……」

 

 

「おー、すごい。めっちゃ速いよ、ゆきのん」

 

 

「ゆ、由比ヶ浜さぁん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず生で」

 

 

「いや、飲まないでくださいよ。あんた一応引率で、しかも車で来てるんでしょうが」

 

 

「ちっ……。じゃあ、ノンアルコールで」

 

 

「んー、ゆきのん、どうする?」

 

 

「由比ヶ浜さんに任せるわ。……その、恥ずかしながらこういう店はあまり経験がないの」

 

 

「へぇ、薄々知っていたけど、雪ノ下さんって本当にこう、箱入りって感じなんだね」

 

 

「遺憾ながら、ね……。戸塚君はなにを頼むのかしら」

 

 

「うーん、どうしよっかな。……でも、こういうのって、こうして悩むのが楽しいんだよね」

 

 

「あ、それ、あたしわかるよー」

 

 

「さ、君たち、早く注文したまえ。焼く係は私と比企谷が務めよう」

 

 

「え、俺普通に食べた、」

 

 

「八幡、ありがとね」

 

 

「よぉぉしっ、どんどん焼いてやらぁ!」

 

 

「この男、チョロすぎないかしら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひきがやぁっ、ほら、おまえものめーっ! にゃははは!」

 

 

「うわっ、酒くせぇ! ノンアルコールじゃなかったんすか!?」

 

 

「……その人、だいぶ前から生を飲んでるわ」

 

 

「なんで止めないの!?」

 

 

「いえ、家の人間を呼ぶから、構わないかと思ったんだけど……」

 

 

「あ、そうですか……」

 

 

「はい、八幡。こっちの、焼けたよ」

 

 

「あ、ああ、サンキュ。ていうか、戸塚、結構焼くの様になってるよな」

 

 

「え、そうかな。えへへ」

 

 

「ヒッキー、レモン取ってー」

 

 

「おう、ほら」

 

 

「ありがとー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たまにはこういうのも、いいかもな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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六駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではでは、先輩、よろしくでーす」

 

 

「ああ……」

 

 

「彼女、今度はどんな要求を?」

 

 

「うん、なんか、今度の日曜に外出に付き合えって」

 

 

「……だんだんと建前もなにもなくなってきてるわね。もはや隠す気ないのね、あの子」

 

 

「……なにがだ?」

 

 

「……ここは一つ、がつんと年上の格を見せつけてやるのはどうかしら、比企谷君」

 

 

「あ、おい、なんだよこれ。なんかの、受信機……? おい、雪ノ下っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、先輩、今日はずいぶんと早いんですね」

 

 

「ああ、お前に寒い思いさせるのもアレだしな」

 

 

「なるほど、なるほど。非常にグッドな心がけです」

 

 

「そりゃどーも。……それと、その服、似合ってるな。特にそのヘアピン、俺は好きだぞ」

 

 

「あっ……えへへ。そういうの、ポイント高いですよ、先輩」

 

 

「……おう。じゃあ、行こうぜ」

 

 

「え、あの、せ、先輩? 手、つ、つなぐんです、か……?」

 

 

「いいだろ、べつに」

 

 

「は、はい……」

 

 

「行くぞ」

 

 

「……はひ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、このネックレス、お前に似合うんじゃないのか」

 

 

「はい、か、かわいいですね……」

 

 

「だろう。よし、会計してくる」

 

 

「はい……」

 

 

「…………ん、戻ったぞ。とりあえず、この店は出るか」

 

 

「えっと、じゃあ、あの、少し座りたい、かもです……」

 

 

「わかった」

 

 

「すみません……」

 

 

「なんだ、やけにしおらしいな」

 

 

「だって、先輩が……」

 

 

「俺が? なんだよ」

 

 

「え、えっと、その……。いつにもまして強引というか、なんというか……。あう……」

 

 

「声小っちゃくて、なに言ってんのか聞こえねぇよ。……ほら、座るぞ」

 

 

「はひ……」

 

 

「……ん、ほら、こっち向けよ」

 

 

「ふぇ……?」

 

 

「よ、っと……。これで、いいか……? うん、似合ってるな」

 

 

「え、あの、先輩……?」

 

 

「買ってよかった。そのネックレス、やっぱり似合ってるぞ」

 

 

「ふぇっ!? ……あ、あの! えっと! あ、ありがとうございましゅ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっく、くふふ……」

 

 

「……先輩、笑いすぎです。もういい加減、忘れてください」

 

 

「あ、ああ、悪い……。くふっ……」

 

 

「…………」

 

 

「くっくっく、そう怒んなよ。ちょっとした、いつも意趣返しだって」

 

 

「……先輩が、今、私にやるのは洒落になりません」

 

 

「どうやら、そうみたいだな……。ふっふっ……」

 

 

「……もう! 先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうかしら、楽しめた……?』

 

 

「……程々にな。ただ、お前、俺の演技力を過大評価しすぎじゃねぇ? あんな事細かに、しかも急に指図されても、咄嗟に動けねぇよ」

 

 

『そういうわりに別段大根でもなかったし……。ふふっ、案外才能、あるんじゃないかしら』

 

 

「やめろ、空恐ろしい……。あと、雪ノ下。お前、今度一色に謝りにいくの、付き合えよ?」

 

 

『ふふふっ。ええ、考えておくわ』

 

 

「ホント、頼むぞ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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七駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここに俺は、目玉焼きにはソースか醤油かの論争における、第三の意見を提唱したいと思う」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「俺は……。俺は、オーロラソース派だ」

 

 

「あたし、ポン酢かなぁ……」

 

 

「私は塩胡椒にレモンをかける、というのが多いわ」

 

 

「……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、アレだわ。キノコかタケノコかって言ってたら、唐突にメルティキッスが降ってきた気分だわ……」

 

 

「ごめんなさい。ちょっとなに言ってるのかわからないわ」

 

 

「でも、目玉焼きになにかけるかなんて、家ごと、個人ごとに違ったりするのに、言い争っても仕方ないのにねぇ」

 

 

「そう言われればそうなんだが……。まぁ、各々譲れないものがあるんだろ」

 

 

「そんなものかなぁ……」

 

 

「ああ。そんなもんだ」

 

 

「でも、そうね。譲れないものといえば、私、将来猫を飼いたいと思っているわ」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「今住んでいるマンションなのだけど、あそこ、ペットが禁止なのよ……。じゃあ、引っ越そうかってなっても、少なくとも高校を出るまではあそこにいろと一蹴されてしまうし……。はぁ、ままならないわ……」

 

 

「……ほーん、そーなのかー」

 

 

「た、たはは……。あ、ああっ、そういえば! あたしもあるよ! 譲れないもの!」

 

 

「あら、そうなの?」

 

 

「うん。えっとね、サブレの散歩コースはいつも絶対変えないんだ」

 

 

「あ、そうなの?」

 

 

「そうなんだよ。でも、サブレはもう飽きちゃったみたいで、よくどっか行こうとするんだけどね。たはは……」

 

 

「ふぅん。いろいろ皆、こだわりがあるもんなのな」

 

 

「だねー。それで、ヒッキーはなにかないの? そういう、こだわりみたいなの」

 

 

「んー、あー……。あれかね、日曜朝の、プリキュア」

 

 

「ヒ、ヒッキー……」

 

 

「やはりダメね、この男は」

 

 

「なんでだよっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? こだわり?」

 

 

「うん、そうそう。優美子と姫菜はそういうの、あるのかなーって」

 

 

「んー、こだわりねぇ……。よくわかんないけど、あーし、夕飯の後はいつもアロエヨーグルト食べるんだ。あれ、ちょーおいしいし」

 

 

「おー、なんか可愛らしいこだわり。んふふ、私はねー、寝るときはいつも仰向けだよー」

 

 

「海老名、それなんか普通すぎておもしろくないんだけど」

 

 

「えー」

 

 

「た、たはは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、こだわりねー」

 

 

「ええ。人の家に、しかもこんなに夜遅くに訪ねてきたのだから、せめて駄賃代わりに答えていって、姉さん」

 

 

「ふふん! ならば教えて進ぜよう! 不肖、この雪ノ下陽乃のこだわりとは! ブラはフロントホックのものしか着用しなっ!? ……もがもがっ」

 

 

「な、なななにを言ってるのかしら、この人は!? って、酒臭っ!? 酔ってるわね、あなた!」

 

 

「よ、酔ってないもん……。うぇっぷ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そんな話してたんだぁ」

 

 

「ああ。それで、お前なんかこだわりあんのかよ、小町」

 

 

「うーん……。あっ」

 

 

「ん、なんかあんのか」

 

 

「うんっ。小町のこだわりはね、お兄ちゃんとお揃いのこのアホ毛だよ!」

 

 

「ほーん……」

 

 

「いやー、毎朝セットするの、わりと大変なんだよー?」

 

 

「……って、ええ!? それ、自前じゃねぇの!?」

 

 

「くふふっ。冗談だよ、お、に、い、ちゃ、ん」

 

 

「……ったく。八幡的にポイント低い」

 

 

「珍しくビックリしてるお兄ちゃんは、小町的にポイント高かったよ」

 

 

「……可愛くねぇ」

 

 

「えー、またまたぁ」

 

 

「はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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八駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕方にあいつらが来たのは、まぁなんとなく予想できてましたが、まさかあなたもとは、思いもしませんでした……」

 

 

「ああ、やはり、あの子らも来ていたのか。今日は誰も部室の鍵を取りに来なかったからな」

 

 

「そうなんすか……。ごほっ……」

 

 

「いや、すまないな。連絡はもらっているのだが、こうも顔を見ていないとやや心配でね。こうして、つい来てしまったよ」

 

 

「……彼女か、あんたは。いや、べつにいいすけど」

 

 

「ふむ。もう体調のほうはいいのかね」

 

 

「まぁ、よくはないですけど、昔から熱とかには強いほうなんで」

 

 

「……君な、病人というなら、それらしくしていたまえよ。ましてや、インフルエンザともなればなおさらだろう」

 

 

「や、でも先生いるし……」

 

 

「ふふっ。私のことは気にしてくれるな。今日は先生じゃなく、君の知人である一個人、ただの平塚静として会いに来たんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、比企谷。聞けば、今夜は両親不在に妹も外泊というではないか」

 

 

「ええ、まぁ。それで、夜まで看病するっていう心配性をさっき、やっと帰らせたとこです」

 

 

「そういうわけで、今夜は不肖この私が、君の看病を務めよう。体よく、明日は土曜日。私も仕事はない」

 

 

「……はい?」

 

 

「うん、大船に乗ったつもりでいてくれ」

 

 

「…………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷ー。なにかすることないのかー、比企谷ー」

 

 

「いや、まぁ、特には。ほとんどあいつらが片していってくれたんで……」

 

 

「つまらないぞー、比企谷ー」

 

 

「あんたホントなにしに来たんだ……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……チャイムが、鳴ったぞ」

 

 

「まぁ、そうですね……」

 

 

「……誰だろうな」

 

 

「……誰でしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっれー、静ちゃんじゃん。どうしてここにいるの?」

 

 

「いや、それはこちらのセリフだぞ、陽乃」

 

 

「私? 私はフツーに雪乃ちゃんから比企谷君のこと聞いたから、からかいに、もとい看病しに来てあげたんだよ」

 

 

「……本音、隠す気ないだろ、陽乃」

 

 

「な、な、なんか増えてやがる……。ごほっ、ごほっ……」

 

 

「あ、比企谷君。ひゃっはろー」

 

 

「俺がなにしたってんだ……。恨むぜ、神様……」

 

 

「こんなに綺麗なお姉さん二人の、いったいいなにが不満なんだかねー」

 

 

「それは、まぁ、私と陽乃だからの一言で解決する疑問じゃないのか?」

 

 

「あはっ、それもそっか」

 

 

「わかってんなら、帰れよぉ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げほっ、げほっ……。ずびーっ……」

 

 

「ほらほら、大声出すから。横になって、あったかくしようね」

 

 

「うぅ……」

 

 

「汗拭いて、冷えピタ貼って。ついでに熱も計っとこっか」

 

 

「……はい」

 

 

「……うん。八度五分。ダメだよ、静ちゃん。ちゃんと寝かせてなきゃ」

 

 

「あ、ああ。面目ない」

 

 

「行きしなにポカリとアイスも買ってきたから、欲しかったら言ってね」

 

 

「じゃ、じゃあ、ポカリ……」

 

 

「はいはーい。ポカリね。……はい、どうぞ。ゆっくり飲みなね」

 

 

「す、んません……。げほっ……」

 

 

「いいよ、いいよ。君、病人だし。私、お姉さんだし。ほら、じゃあ、目閉じて、もう寝ちゃおう。ね」

 

 

「は、い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、驚いた。存外に献身的な看病をするのだな、陽乃」

 

 

「そりゃ、ねぇ。うん、病気のときくらいはね」

 

 

「そうか。私にはできないことだったから、少し感心したよ」

 

 

「まぁ、なにもできなくても、誰かがそばにいてくれるだけで気が楽になることもあるし」

 

 

「そう、か……」

 

 

「さて、お台所借りて、なんか作ろうよ。明日土曜だし。実はお酒持ってきてたんだー」

 

 

「ふむ。やれやれ……」

 

 

「えへへー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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九駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ……」

 

 

「うわぁ……」

 

 

「なんで……。こんなとこ、いるのよ……」

 

 

「なんでって、そりゃお前、スーパー来てんだから、買い物しかないだろ……」

 

 

「……べつにそんなの、聞いてないし」

 

 

「聞いただろ、今……」

 

 

「「はぁ……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ちょっと。白菜はそれより、こっちのがいいよ」

 

 

「あ?」

 

 

「こっちのが、新鮮で、身も大きい。はい」

 

 

「お、おう」

 

 

「ん……。……って、こ、こっち来るなっ」

 

 

「……お前が行く先々にいるんだろうが」

 

 

「な、なによっ」

 

 

「お前がなんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出汁は出来合いのよりも、水炊きのがいいよ」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「好みによるけど。一回やってみれば? 案外、その、ハマるかもね……」

 

 

「おう、わかった」

 

 

「うん……」

 

 

「……なぁ、ところでよ」

 

 

「なに……?」

 

 

「なんで俺たち、一緒に買い物してんの?」

 

 

「なんでって、あんたんとこも鍋するんでしょ?」

 

 

「そうだが……」

 

 

「じゃあ、いいじゃん。べつに」

 

 

「ああ……? いい、のか……?」

 

 

「いいの。うっさい」

 

 

「あ、おい、相模っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、鶏肉もいれるんだ」

 

 

「ああ、水炊きだし。ごまだれかけたら、うまそうだと思ってな」

 

 

「そうだね」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……さて、買い物も終わったし、じゃあな」

 

 

「あ、うん……」

 

 

「…………」

 

 

「……あのっ! 比企谷!」

 

 

「……なんだよ。大声で呼ぶな。恥ずかしい」

 

 

「ご、ごめん……」

 

 

「……それで?」

 

 

「え、っと、あの……。比企谷ってさ、いつも、ここで買い物してるの……?」

 

 

「あー、まぁ……。妹とかに頼まれたときとかは、な……」

 

 

「そう、なんだ……うん……。……じゃ、じゃあ! またね!」

 

 

「お、おう……。なんだったんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ということが、以前あってだな」

 

 

「ヒッキー。それもう相模さんの欠片もないよ……」

 

 

「だよな。俺もなんか会話してて、こう、相模っぽさというか、女子力? っていうかおかん力のが高かった気がしてならないんだよ」

 

 

「お、おかん力……?」

 

 

「んー、なんか、女子高生っぽくない買い物知識を持っていてだな。野菜とか魚の鮮度の見分け方とか、割引シールがいつ来るかとか、いろいろ知ってんの」

 

 

「そ、相当通いつめているのね、そのスーパーに」

 

 

「みたいだな。俺も頻繁に使っているところなんだが、今までまったく気がつかなかったのが不思議なくらいだ」

 

 

「それで、ヒッキーはさ。今もそのスーパー、使ってるの?」

 

 

「あー、まぁ。たまに、小町に買い物とか頼まれたときとかにな……」

 

 

「ふぅん……」

 

 

「なんだよ……。べつに、それだけで場所変えるのも面倒だろうが……」

 

 

「ふぅーん……」

 

 

「な、なんでしょうか……」

 

 

「べぇっつにぃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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十駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あーしはべつにっ、あんたのこと、き、嫌いじゃない、から……!」

 

 

「あ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ? 優美子の様子がおかしかった?」

 

 

「ああ。なんか、ぶっ壊れてたってか、キャラ崩壊ってか……」

 

 

「いつもと様子が違っていた、と」

 

 

「まぁ……」

 

 

「……どうしたのかなぁ。そういえば、今日はいつもよりケータイさわってる時間多かった気がするなぁ」

 

 

「そんな日もあるだろ……。あいつに限れば、なんかの罰ゲームとかって線もないよな」

 

 

「ということは、なんらかの心変わりがあったとか、頭を強く打ったとか、そのあたりかしらね」

 

 

「えぇっ!? それ、病院とか行ったほうがよくない!?」

 

 

「……あの、由比ヶ浜さん。頭を打った云々っていうのはあくまで例え話よ」

 

 

「そ、そっか。たはは……」

 

 

「……まぁ、なんにせよ、由比ヶ浜。お前の連れなんだから、気にかけてやれば?」

 

 

「うんっ、そうする!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ? 素直になりたい?」

 

 

「そ。あーし、あんま自分の気持ち言葉にすんの、得意じゃないの。隼人にふられたのは、また違う理由なんだろうけど、この機会にちょっとだけ自分を変えてみよっかなって」

 

 

「えぇ……。……ていうか、お前、ふられてたの?」

 

 

「なに、あんた知らないの? ……結構噂になってるけど」

 

 

「知らねぇよ。興味ねぇし」

 

 

「……あっそ」

 

 

「それで、その変えてみようって第一歩が昨日のアレか」

 

 

「ま、そういうことだし。ほんとのとこは、嫌いじゃないけど、好きでもないって感じだけどね。あーいうの、男子は好きなんでしょ?」

 

 

「……嫌いじゃねぇ、ってだけ言っとく」

 

 

「ふふっ、なにそれ」

 

 

「気にすんな、皮肉だ。……で、その自分を変えるのを手伝えってことでいいのか?」

 

 

「なに、いいの?」

 

 

「それが、奉仕部への依頼だってんならな」

 

 

「……んー、じゃあ、奉仕部のあんたへの依頼ってことにするし」

 

 

「……了解した。で、いつからやる?」

 

 

「…………」

 

 

「……三浦?」

 

 

「じゃあ、今からどっか行くし」

 

 

「は……?」

 

 

「いいっしょ、べつに。これは依頼なんだし、素直なあーしに、あんたは逆らえないし」

 

 

「おっ、い、待て! それはなんか、違くねぇ!?」

 

 

「違わないし。ほら、行くよ」

 

 

「おい、三浦!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、ウィンドウショッピングにブティック、なんか洒落乙な喫茶店に加えて、挙句アクセサリーまで買わせやがって。気はすんだのか?」

 

 

「うーん、まぁ、ぼちぼち?」

 

 

「お前な……! ……はぁ。で、もう、いいんだな?」

 

 

「……やっぱ、わかる?」

 

 

「そりゃ、知らなかったとはいえ、当人から聞かされりゃ、察しもつくだろ」

 

 

「そ、っか……」

 

 

「戸部とかでよかっただろ。なんでわざわざ俺に付き合わせたんだよ……?」

 

 

「……隼人を除けば、だけど。ヒキオ、あんたが一番マシだって、思っただけ……。それだけ……」

 

 

「……そりゃ光栄だな」

 

 

「ん。なんだかんだでほら、こうして馬鹿みたいな女の気晴らしにも最後まで付き合っちゃってさ……」

 

 

「まぁ、お前みたいな、今にも泣き出しそうなやつがなんか言ってきたら、気にはなるだろ……」

 

 

「……声かけなきゃ、ガンスルーなくせに」

 

 

「よくわかってんじゃねぇか」

 

 

「ふふっ。バーカ……。……バーカ」

 

 

「……ほら、帰るぞ。そんで、飯食って、風呂入って、とっとと寝ちまえ」

 

 

「……うん、そーするし。じゃね、ヒキオ」

 

 

「おう」

 

 

「……ありがと!」

 

 

「……なんだよ。ただの口実かと思えば、ちゃんと素直になってら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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十一駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そういえばっ!」

 

 

「お、おう」

 

 

「……あんたがあのとき言った、あ、あ、愛してるっていうのは、その、どういう意味だったわけ……?」

 

 

「……は?」

 

 

「え、いや、だから、愛してるって……」

 

 

「俺が? 言ったの?」

 

 

「そうだよ……」

 

 

「……マジで?」

 

 

「マジだよ……」

 

 

「……まっさかぁ」

 

 

「ホントだって言ってんの!」

 

 

「おおうっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、悪いが、まったく覚えてない」

 

 

「な、なんでっ?」

 

 

「そう言われてもな……」

 

 

「じゃ、じゃあ、あたしばっかりが気にしてたわけ!?」

 

 

「ま、まぁ。そうなる、かな……」

 

 

「っ……。バッカみたい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、川崎」

 

 

「なによっ!?」

 

 

「べつに、愛してるとまでは言わねぇけど、俺はお前を好ましく思っていないわけじゃないぞ」

 

 

「ふぁっ!?」

 

 

「ふぁって、おま……。くくっ……」

 

 

「比企谷、うっさい!」

 

 

「悪い、悪い。で、川崎」

 

 

「なに……?」

 

 

「だから、俺はべつに、お前のことは嫌いじゃない」

 

 

「あぅ」

 

 

「そして、黒のレースは個人的にどストライ、」

 

 

「死ねぇっ!」

 

 

「っクぅぅ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ということがあったんだが」

 

 

「それでこんなところで、鼻血の中に倒れてたんだね……」

 

 

「まぁ。どうもそうらしい。いまいち前後の記憶が定かじゃない」

 

 

「まったく、もう。倒れてる八幡を見て、僕がどれだけ肝を冷やしたか」

 

 

「……悪かった。次からは殴られないように気をつける」

 

 

「えっと、僕的には、その、し、下着のことを口にしないのをお勧めする、かな……」

 

 

「え、でも、黒のレースだぞ?」

 

 

「く、黒のレース……」

 

 

「黒の、レースだ」

 

 

「……あぅ」

 

 

「初心かよ。かわいいな。とつかわいい」

 

 

「もう、八幡っ。怒るよ……?」

 

 

「悪い。もうしない」

 

 

「……ん、じゃあいいよ。……まぁ、でも、僕も川崎さんのことは好ましいと思う、かな」

 

 

「黒で、レースだからか?」

 

 

「ち、違うよ!?」

 

 

「違うのか……?」

 

 

「……ん。……ちょっと、だけ」

 

 

「ほーん」

 

 

「……でも、やっぱり、男の子っぽいところが憧れるかな」

 

 

「気が強いとこがってことか?」

 

 

「それは違うかな。……川崎さん、弟さんのためにアルバイトしてたんだよね」

 

 

「あー、そんなこともあったか……」

 

 

「それってきっと、すごく頑張ってたってことだと思うんだ」

 

 

「まぁ。そう、かもな」

 

 

「うん。でも、それをさらっと助けちゃう八幡も、僕はかっこいいと思うよ」

 

 

「え、天使?」

 

 

「え?」

 

 

「え? ……んんっ。まぁ、その、サンキュ」

 

 

「うんっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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十二駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、比企谷?」

 

 

「……なんでだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しー。っていうか、初かな。初詣で比企谷のこと見るの」

 

 

「まぁ、いっつも家で寝正月やってっからな」

 

 

「なにそれ、ウケる」

 

 

「いや、ウケねーよ。……なに、お前、一人なの?」

 

 

「んー、まぁね。いくら大晦日の夜っていっても、か弱い女子高生には変わりないからさ。皆、帰っちゃった」

 

 

「……そうか」

 

 

「ん……。比企谷も、そういえば一人みたいだけど……」

 

 

「まぁな。妹は早々に寝ちまったし、両親は泥酔中。あんま眠くもねぇから、たまにはと思っただけだ」

 

 

「なんだ。じゃあ、ホントに奇遇なんじゃん」

 

 

「そうだな」

 

 

「……。……ねぇ、比企谷。送っ、」

 

 

「折本、送ってやるから、もう帰ろうぜ」

 

 

「え……?」

 

 

「なに、帰らないの? ここ、寒いよ?」

 

 

「……ウケるんだけど」

 

 

「あ……?」

 

 

「なぁんでもないよっ。……ねっ、比企谷! おみくじ、引いていこーよ!」

 

 

「やだ。帰る」

 

 

「子供みたい。ウケるんだけど。ね、いいじゃーん、引いていこーよー」

 

 

「寒いんだよ。早く帰りたいの」

 

 

「引ぃーくーのー」

 

 

「やだこの子めんどくさい」

 

 

「知らなかったの?」

 

 

「まぁ、なんとなくわかってた」

 

 

「なにそれ、なんか上からなんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだったー? あたし、末吉ー。ウケるー」

 

 

「…………」

 

 

「……比企谷?」

 

 

「……凶」

 

 

「え……?」

 

 

「凶」

 

 

「ウ、ケ、る……!」

 

 

「いや、ウケねぇよ……」

 

 

「くふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。あたしの初笑い、比企谷に奪われちゃったなぁー」

 

 

「なんか、それ、人聞き悪くねぇ?」

 

 

「……くふっ」

 

 

「さてはお前、確信犯か」

 

 

「あっ、それ。確信犯って、ホントの意味は別だって知ってる?」

 

 

「知ってるっつーの。現国だけは、学年三位の俺だぞ」

 

 

「えー、ホントにー?」

 

 

「ウソついてどうすんだよ」

 

 

「だよね。ウケるー」

 

 

「ウケねぇよ? お前、ウケすぎじゃない?」

 

 

「んー、癖、みたいな?」

 

 

「……うけるー」

 

 

「あー、真似すんなよなー」

 

 

「ったく……。おい、折本、ここ、どっち曲がるんだよ」

 

 

「んー、こっちー。早くー」

 

 

「お前な……」

 

 

「えへへー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ありがとね、比企谷」

 

 

「……構わねぇよ」

 

 

「あ、お茶とか飲んでく……?」

 

 

「遠慮しとく」

 

 

「そ、っか……」

 

 

「ああ。じゃあ、帰るわ」

 

 

「うん、バイバイ……」

 

 

「おう……」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……ねぇ! 比企谷!」

 

 

「……はーぁ。 んだよ!」

 

 

「今年はさ! いい一年になりそう!」

 

 

「そうかよ! よかったな!」

 

 

「うんっ! バイバイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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十三駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、なんでここにいるの、小町ちゃん」

 

 

「え、威力偵察?」

 

 

「威力っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、全国のお兄ちゃんのラブリーエンジェルこと、比企谷小町でーす」

 

 

「全国のお兄ちゃん……」

 

 

「わー、小町ちゃん! やっはろー!」

 

 

「いらっしゃい、小町さん。紅茶は飲むかしら?」

 

 

「え、なんで歓迎ムード?」

 

 

「結衣さん、雪乃さん、やっはろーです! お紅茶、いただきます!」

 

 

「ええ、わかったわ。あら、そこのぬぼーっとした彼は、昨日のことさえ覚えていられないほどなのかしら……。粗大ゴミ扱いも視野に入れるべきかしらね」

 

 

「やだ、捨てるのにさえお金掛かっちゃうあたり、俺マジ金食い虫」

 

 

「その上、無駄飯食いだわ。さすが、ふふっ。ヒッキー、というだけあるわね」

 

 

「まぁ、引き篭もりはあんまし否定できねぇな」

 

 

「あ、ちょ、ゆきのん!? ち、ちち違うよ!? ヒッキーっていうのはそういう意味じゃなくてっ! えっと! と、とにかく違うの! もうっ、ヒッキーのバカ!」

 

 

「なんで俺……」

 

 

「相変わらずだね、お兄ちゃん」

 

 

「おう。で、お前はなにゆえここにいるの?」

 

 

「高等学校見学の一環です。だってほら、小町来年ここに入学するからさ」

 

 

「妙に自信ありげだな」

 

 

「そりゃね。お兄ちゃんの妹だし」

 

 

「お、おう……」

 

 

「む。平塚先生の許可もちゃんともらってるし、いいよね!」

 

 

「おう。わかった、わかった……」

 

 

「むぅ……」

 

 

「なんだよ……」

 

 

「あ、ん、な、い! して!」

 

 

「……雪ノ下の紅茶、飲んでからな」

 

 

「ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっても、そんなに広いわけでもねぇからな。ほら、今ので一通りは見て回ったぞ」

 

 

「そうね。……後は、あそこくらいじゃないかしら」

 

 

「だねー。あ、今、ちょうどいい時間なんじゃない?」

 

 

「ええ。行きましょうか、由比ヶ浜さん、小町さん」

 

 

「うんっ」

 

 

「はいっ」

 

 

「あ、なに、まだどっかあったっけか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、なんでまた俺のベストプレイスに」

 

 

「ベストプレイス……。まぁ、いいわ。ぼっちのあなたは知らないのだろうけど、ここ、結構景色もいいし、物好きな輩がよく居座っているので噂高いわよ」

 

 

「え、マジか……」

 

 

「あはは、一応あたしも、ここ、好きだよ」

 

 

「そうだったのか……。てっきり、俺だけが知ってる場所だと思ってたのに……」

 

 

「唯一の居場所を奪われてしまったのね。かわいそうな比企谷君」

 

 

「……口元吊り上がってるぞ、これ以上ないくらいに」

 

 

「デフォルトよ。今だけの」

 

 

「……さいですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。お兄ちゃん、風が止んだよ……」

 

 

「夕凪だな。いつも風が吹き抜けていくここだと、感じられやすいのか。俺も初めて知ったわ」

 

 

「ね、結構いい場所だよね」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

「……はい、あたしも気に入りました」

 

 

「なら、よかったわ」

 

 

「だねー」

 

 

「はい、これで勉強のモチベーションも維持できそうです!」

 

 

「うん、頑張れ! 小町ちゃん!」

 

 

「はい、結衣さん!」

 

 

「……さ、日も落ちてきたし、帰ろうぜ」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

「おー、帰ろー!」

 

 

「ですー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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十四駄弁り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――奉仕部は今日も駄弁る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん! お花見、行きまっしょい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小町、この包み、重いんだが……」

 

 

「えー、せっかく小町が丹精込めてお弁当作ったのにー」

 

 

「込めすぎだ……。もっと軽くてもよかったんじゃねぇの? 俺とお前しかいないわけだし」

 

 

「もー、やだなーお兄ちゃん。お兄ちゃんとだけだったら、小町、お弁当なんて作らないよー」

 

 

「…………」

 

 

「やだ、ちょっと。冗談だってば。急に立ち止まんないでよ」

 

 

「……わ、わかってたし。お兄ちゃん、小町の嘘くらい、見抜けるから! 見抜けるから!」

 

 

「……ガチ落ち込みだったじゃん」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……。でね、今日はあたしとお兄ちゃん以外にも、人が来るんだよ」

 

 

「そうなのか。誰が来るんだよ?」

 

 

「なんとなく察せられてるくせに、それ聞いちゃうあたりがホントお兄ちゃん」

 

 

「ほっとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、小町さん。今日はお招き、ありがとう」

 

 

「やっはろー、小町ちゃん! 差し入れにお菓子とかいろいろ持ってきたよー!」

 

 

「わぁ、ありがとうございます! あ、もしかして手作りとかです?」

 

 

「ふっふっふ、実はその通り! 期待しててね!」

 

 

「楽しみです!」

 

 

「……おい、雪ノ下」

 

 

「大丈夫、大丈夫よ。だって、私がきちんと最初から最後までサポートしたもの。ええ、きっと」

 

 

「そ、そうか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、八幡。小町ちゃんも、こんにちは。今日、絶好の花見日和だね」

 

 

「いらっしゃいです、戸塚さん!」

 

 

「うん、いらっしゃいました」

 

 

「おう、こっち座れよ」

 

 

「いいの?」

 

 

「悪いことあるか」

 

 

「ふふっ、じゃあ、お邪魔します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。せぇんぱぁい。奇遇ですねー」

 

 

「おう、一色か。なに、お前も花見に来たの?」

 

 

「ですです。じゃあ、せっかく会ったわけですし、一緒に、」

 

 

「そうか、じゃあな」

 

 

「ちょっ、先輩っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほら、けーちゃん、大志、挨拶」

 

 

「「おじゃまします!」」

 

 

「おう、よく来たな。まぁ、座れよ」

 

 

「ありがとうございますッス、お兄さん!」

 

 

「お兄さんじゃねぇ」

 

 

「はーちゃん、ありがとー!」

 

 

「おう、けーちゃん。いらっしゃい。……川崎もテキトーに座れよ」

 

 

「うん。……その、誘ってくれてありがとね」

 

 

「この際だからってだけだ。気にすんな」

 

 

「……そ」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。どうやら、私たちが最後のようだぞ」

 

 

「そうみたいだねー」

 

 

「先生も、陽乃さんも、ビール買ってきてるのはいいですけど、あんまり飲みすぎないでくださいね」

 

 

「わかっているとも。では、邪魔するぞ、比企谷兄妹」

 

 

「もう、固いよー、隼人ー」

 

 

「俺はいつもこうですよ」

 

 

「んー、それもそうね。……ふふっ。じゃあ、比企谷君っ、カンパイしよー!」

 

 

「え、ちょ、それビール!?」

 

 

「気にするなー!」

 

 

「しますよ!?」

 

 

「……やれやれ。じゃあ、俺も失礼します」

 

 

「イッキ! イッキ!」

 

 

「いい大人が囃し立てないでくださいっ、平塚先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、皆さん。お飲み物を手に取っていただいて、不肖この小町の音頭に合わせまして……いきますよー?」

 

 

『カンパーイっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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