ラブライブ! オーブ‼︎ (ベンジャー)
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第1話 『その名はオーブ』

光ノ魔王獸 マガゼットン
風ノ魔王獸 マガバッサー
登場。


薄暗い・・・・・・夜の森の中、そこでは1体の光の巨人と、1体の魔獣・・・・・・「光ノ魔王獣 マガゼットン」が激しくぶりかりあっており、光の巨人はマガゼットンの放った火球を喰らい吹き飛ばされてしまう。

 

『グゥ、ウア!?』

『ゼッ・・・・・・トン』

 

倒れ込んだ光の巨人の首をマガゼットンは掴みあげるとそのまま光の巨人の腹部を殴りつけようとするが光の巨人はマガゼットンの腕をどうにか振りほどいて回し蹴りを喰らわせる。

 

『シュア!』

 

そしてそんな彼等の戦いの様子を、1人・・・・・・「青い目をした少女」その光景を見つめており、少女は光の巨人に向かって何かを叫んでいるようだった。

 

するとマガゼットンは光の巨人へと向かって先ほどよりも強力な火球を撃ち込もうとするが光の巨人はそれに対し、巨大な大剣を出現させ、マガゼットンの火球を切り裂いた。

 

『ハアアア、シュア!!』

 

そして光の巨人はその大剣で円を描くように振るうと大剣にエネルギーが集まり、マガゼットンに向かって強力な光線として発射し・・・・・・その直撃を受けてマガゼットンは身体中から火花を散らす。

 

すると光の巨人が握っていた大剣が消滅し、マガゼットンは火花を散らしながら・・・・・・爆発、そしてその爆発は周囲一帯を巻き込み、あの少女もその爆発に巻き込まれてしまう。

 

それから爆発が収まると・・・・・・その中央部には傷だらけでボロボロの男性が立っており、息を荒げつつも腰にあるカードケースのようなもに1枚のカードを収納した後、彼はこの焼け焦げた場所を見回した。

 

「俺の・・・・・・せいで・・・・・・。 俺の・・・・・・うわあああああああああああ!!!!!」

 

そして男性は両手で頭を押さえ、悲痛な叫びをあげるのだった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、うぅ・・・・・・また、あの夢だ・・・・・・」

 

ここは「高坂家」という一家が経営する和菓子屋「穂むら」そこに暮らす高坂家の長女、茶髪のサイドテールが特徴的で「自分が夢の見た少女とよく似た青い瞳」をした少女、「高坂 穂乃果」が上体だけを起こして起き上がると、穂乃果は未だに重い瞼を手でこすりながら先ほどまで見ていた夢の内容を思い返していた。

 

「ホントによく見るなぁ、あの夢・・・・・・」

 

彼女はあの光の巨人と巨大な怪物が戦い、その戦いに1人の少女が巻き込まれてしまうという夢をよく見ていった。

 

特に、何時も黒いモヤがかかって顔はよく見えなかったが、あの夢の中で悲痛な叫び声をあげる男性を見ると、穂乃果はなぜだか何時も胸が苦しく、辛く、悲しい気持ちとなり、どうしてだか分からないが何時もそんな感覚に見舞われていた。

 

なぜあんなにも自分がよく見るあの夢はこんなに悲しい気持ちになるのか、自分が決まって同じ夢を何度も見るのは何か意味があるのだろうかと疑問に思い、少しばかりそのことについて考え込む穂乃果だったが・・・・・・。

 

(う~ん、それよりも眠い・・・・・・)

 

元々頭の出来がよくないこと、未だに眠気が強いことから彼女は自分が幾ら考えたところで答えなんてできないだろうと思い、穂乃果は再び布団の中に潜り込むとそのまま二度寝を決め込む。

 

しかし、穂乃果が二度寝を決め込んだ直後・・・・・・。

 

「朝食の時間だオラァ!!」

 

と言いながらドアを蹴破ぶるような真似をしながら穂乃果の扉を開くと、彼女と同じように髪の色が茶髪で彼女の兄でもある青年「高坂(こうさか) 紅葉(もみじ)」が現れ、穂乃果を起こす為に彼女の部屋へと入って来たのだ。

 

「気持ちよさそうに呑気に寝やがって。 おい、学校遅れるぞ!」

「うーん、後3000万年後までぇ~」

「どんだけ長い時間寝るつもりだよオイ!? 早く起きないとまた海未に怒られちまうぞ? お前だけが怒られるならまだしも『あなたがちゃんと起こさないのも悪いんですよ!』なんて言われて俺まで怒られるんだからな?」

「う~ん、もう・・・・・・分かったよぉ~。 ふあぁ・・・・・・」

 

欠伸をしながら穂乃果はどうにか起き上がるのだが・・・・・・彼女の頭は髪がボサボサで寝癖ばかり、紅葉はそんな彼女は溜め息を尽きつつ彼は「早く顔洗ってこい、髪直すの手伝ってやるから」と言うのだが・・・・・・。

 

穂乃果は未だに眠そうな顔をしていて目を離したらすぐにまた寝てしまいそうな雰囲気があったため、紅葉は穂乃果の手を引っ張って洗面所まで連れて行き、顔に水をかけてやったおかげで未だに半分寝ていた穂乃果は驚いてようやく完全に目を覚まし、いきなり冷水をかけられたことに穂乃果は怒ったが・・・・・・。

 

「何時まで経っても起きない穂乃果が悪い」

 

と軽いチョップを頭に受けながら言われてしまい、穂乃果は「ぐぬぬ~」という声をあげるだけで何も言い返すことができず、途中で顔をひょっこり覗かせた紅葉と穂乃果の妹である「高坂 雪穂」は「またお姉ちゃん、お兄ちゃんに起こして貰ったの?」と呆れたように言われてしまう。

 

「うぅ~。 そもそも学校が早い時間にあるのがいけないんだよ!」

「無茶を言うなよ。 ほら、髪直してやるからこっち来い」

「はぁ~い」

 

それから髪を直して穂乃果は部屋に戻って学校の制服に着替え、朝食を食べた後、紅葉と一緒に家を出た後に穂乃果の幼馴染み兼親友でもある2人の少女・・・・・・「園田 海未」と「南 ことり」と道中で合流して学校へと向かって到着し、教室に向かうため4人は廊下を歩くのだが・・・・・・その途中掲示板に貼られてある張り紙のある文字が4人の目に止まったのだ。

 

その文字というのが・・・・・・「廃校」の2文字、それを見た瞬間穂乃果と紅葉は「はぁ!?」と声をあげ、海未やことりも目を見開いて驚いた表情を見せた。

 

「廃校って・・・・・・!」

「つまり、学校が無くなるってことですか!?」

 

穂乃果はその張り紙を見た瞬間、せっかく高校生活で受験も無くて1番遊べる時期である2年生になったばかりなのに・・・・・・いきなり廃校、学校が無くなってしまうという事実があまりにも衝撃的過ぎて・・・・・・大ショックを受けてしまう。

 

穂乃果がどのくらいショックを受けたのかというとゼットンに破れたウルトラマンみたな倒れ方をするくらいにショッキングな出来事であり、そしてその倒れそうになった穂乃果をことりと海未が慌てて支え、2人は穂乃果の名を何度も叫ぶように呼ぶのだが・・・・・・穂乃果の耳には全く入ってこなかった。

 

「わ、私の・・・・・・! 輝かしい高校生活がぁ~!」

 

そのまま「がくっ!」と気を失った穂乃果を見て紅葉は・・・・・・。

 

「誰かゾフィーさん呼んできてくれ! 命持って来てって!」

 

なんてことを口走ったりしていたが、穂乃果が今の言葉を聞いてたら「勝手に殺すなぁ!」と怒っていたところだろう。

 

「こんな時になに言ってるんですか紅葉!? ゾフィーって誰ですか!?」

「もしかして紅葉くんも紅葉くんでパニくってる!?」

「妹が目の前で倒れたらそりゃ慌てるだろ!!」

 

兎に角、穂乃果はただショックを受けてその衝撃が強すぎたせいで気を失っただけなので保健室に連れて行こうということになり、保健室に寝かせた後、紅葉達は教室で授業を受け・・・・・・3時間目くらいの授業の終わり・・・・・・休み時間に暗い顔をした穂乃果が教室に入ってきたのだ。

 

尚、紅葉が穂乃果達と同じ教室にいるのは穂乃果とは兄弟とは言っても「同い年」だからだ、つまり、紅葉の方が高坂家の子供になるのが早かったということである。

 

未だに元気が無さそうな穂乃果を心配してことりが「穂乃果ちゃん、大丈夫?」と心配そうに尋ね、穂乃果も「うん・・・・・・」と頷くが・・・・・・やはり誰がどう見ても穂乃果に元気はなく両手で顔を覆い隠しながら学校が無くなることを泣きながら嘆いていた。

 

「穂乃果ちゃん、凄い落ち込んでる。 そんなに学校、好きだったなんて・・・・・・」

「違いますよことり、あれはきっと勘違いしてるんです」

「う、うぅ! どうしよう! 全然勉強してないよー!!」

 

いきなり立ち上がったかと思うと穂乃果はそんなことを叫びながら蹲り、ことりはそんな穂乃果の言葉に「えっ・・・・・・?」と疑問を浮かべて首を傾げた。

 

「だって学校無くなったら別の高校入らなくちゃいけないんでしょ!? 受験勉強とか編入試験とか!」

 

穂乃果のその言葉を聞いた瞬間、海未とことり、紅葉は顔を見合わせて「やっぱりか・・・・・・」という顔を浮かべ、ことりは今回の「廃校」についてのことを説明しようとするのだが・・・・・・。

 

「おい、まだ言うな。 面白いから少し黙ってようぜ?」

 

なんてことを小声でことりと海未にこっそり悪戯っ子のような笑みを浮かべながら伝える紅葉、それに対して海未とことりは「えぇー」という感じであまりノリ気ではなかったが・・・・・・。

 

「あの涙目の顔を見てみろ、捨てられた子犬みたいで可愛いし、もう少し見ていたいと思わないか?」

「「それは確かに」」

(このほのキチ共が・・・・・・。 まぁ、良いけど。 ノってくれるみたいだし)

 

尚、穂乃果は未だに廃校のことでわんわん泣いており、紅葉達の会話は全く耳に入っていない。

 

取りあえずことりは一旦穂乃果に落ち着くように言うが穂乃果は「海未ちゃんやことりちゃんにお兄ちゃんは良いよー! そこそこ成績良いし、でも私はー!!」と自分の学力の低さに今ほど絶望したことないと言いたげな程泣きじゃくる。

 

「そこそこって・・・・・・まぁ、俺は確かにそこそこだけど海未やことりは結構勉強できる方だろ? 特に海未」

「普段から勉強してないからそういうことになるんです!」

「今は海未ちゃんのお説教なんか聞きたくないよー!!」

 

流石にそろそろ本当のことを言おうかと思い、海未は「先ずは落ち着きなさい」と声をかけた後、紅葉が「俺達が卒業するまで学校は無くならねえよ」と穂乃果に伝えられ、それを聞いた穂乃果は「へっ?」とつい気の抜けた声が思わず出てしまう。

 

そこで丁度予鈴が鳴り、一度話は中断となって続きは昼食を中庭で食べながら行うこととなり、そして廃校と言ってもそれは今いる生徒が全員卒業してからの話であり、早くても3年後らしい。

 

「要するにお前の早とちりって訳だ」

「なんだぁ、良かったぁ~」

 

それを聞いた穂乃果はほっと一安心し、穂乃果と紅葉は購買部の購入したパンに2人はほぼ同じタイミングでかじりつくようにして食べるのだった。

 

「「いやぁ、今日もパンが美味い!」」

「太りますよ・・・・・・? っていうか、あなた達食に関するところはホントよく似てますよね?」

「「食べる物が美味しいんだから仕方が無い」」

 

廃校の話に戻るが、つまり廃校になるのは早くても3年後ではあるのだが・・・・・・それはつまり、今の1年生には後輩ができないことを意味しており、そのことに少し寂しさを穂乃果達は感じるのだった・・・・・・。

 

その時、穂乃果達の元にこの学校の生徒会長でもある金髪の少女「絢瀬 絵里」と紫の髪をした少女「東條 希」が現れ、絵里は「ちょっと良いかしら?」と穂乃果達に、正確にはことりに話しかけてきたのだ。

 

「だ、誰・・・・・・?」

「生徒会長ですよ」

「何時もお勤め、ご苦労様です生徒会長さん」

 

穂乃果達は絵里に話しかけられて少し驚きながらも立ち上がったのに対し、紅葉は特に慌てた様子もなく立ち上がり、笑顔を見せながら礼儀正しく絵里と希に挨拶をし、絵里はまさかそんな丁寧に挨拶されると思っていなかったのかちょっとだけ驚いたような表情を見せたが・・・・・・すぐに「えぇ、ありがという」と返した後、再びキリっとした表情へと切り替え本題に入る。

 

「南さん、あなた確か理事長の娘よね?」

「は、はい」

「理事長・・・・・・なにか言ってなかった?」

「いえ、私も・・・・・・今日知ったので・・・・・・」

 

それを聞いた後、絵里は「そう、ありがとう」とだけ言い残しその場を立ち去ろうとするのだがそこで穂乃果が「本当に学校、無くなっちゃうんですか!?」と問いかけると絵里は「あなた達が気にすることではないわ」と返されるのだった。

 

「気にするなって言われてもなぁ・・・・・・」

「ごめんなぁ~、ちょっとキツい言い方で」

 

希がボソっと紅葉に苦笑しながら両手を合わせて絵里の代わりに軽く謝罪した後、希は絵里について行くように彼女もその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから放課後、学校中を見て周り穂乃果達は廃校をどうにかすることが出来ないのかと考え、廃校に関する詳しい情報などを集めどうすれば廃校の危機を脱することができるのか、それをみんなで考えようということになったのだ。

 

先ず廃校が決まるのは入学希望者が定員を下回った場合、廃校にせざる終えない場合であり、入学希望者が定員を逆に少しでも上回れば廃校にはならないということで穂乃果はならばこの学校の良いところをアピールして生徒達を集めれば良いのだと考えたのだが・・・・・・。

 

「良いところって例えばどこです・・・・・・?」

「えっと、歴史がある!」

「あぁ・・・・・・! 他には?」

「他に・・・・・・!? えっと、伝統がある!」

 

見回りを終えた後、教室に戻って来てそんなことを言う穂乃果に、海未は呆れたような視線を送りながら「それは同じです」と返し穂乃果は頭を抱えて悩んだ結果・・・・・・「ことりちゃ~ん!」とことりに話を振るうのだった。

 

「うーん、強いて言えば~古くからあるってことかなぁ?」

「ことり、それ・・・・・・穂乃果が言ってたのと同じ内容だからな? 言い方変えただけだからな?」

「ことり、話聞いてましたか?」

 

結局殆ど穂乃果と同じことを言い出すことりに紅葉、海未、穂乃果はなんとも言えぬ表情になるが・・・・・・「あっ、でも部活動では少し良いところ見つけたよ!」とことりは様々な部活動の記録が記されている紙を取り出したのだが・・・・・・。

 

珠算関東大会六位、合唱部地区予選勝利賞、そして最後はロボット部書類審査で失格・・・・・・最後の1つだけ「良いとこ?」という感じだが特に目立ったようなものはなかった。

 

「考えて見れば、目立つところがあればもう少し生徒も集まってる筈ですよね」

「うん、そうだね・・・・・・。 家に戻ったら、お母さんに聞いてもう少し調べてみるよ」

 

その時、目立つところが何も無くて落ち込んでいた穂乃果がボソッと「私、この学校が好きなんだけどな・・・・・・」と小さく呟いたのだ。

 

「私も好きだよ?」

「私も・・・・・・」

 

そんな暗い雰囲気になる3人を見かねたのか、紅葉はそっとポケットからハーモニカにも似た楽器、「オーブニカ」を取り出すと紅葉はオーブニカを吹き、綺麗なメロディーを奏で始める。

 

教室でいきなり音楽をそんな風に鳴らすのはどうなのかと思うかも知れないが、意外にもこのメロディーは教室内では人気があり、誰も文句を言うものはいなかった。

 

そしてそれを見た穂乃果はそのメロディーに合わせるように、彼女は紅葉の隣である歌を口ずさんだ。

 

「相変わらず、綺麗な音色ですね」

「穂乃果ちゃんの歌と合わせるとさらによくなるね」

 

先ほどまで少しだけとはいえ暗い表情を見せていた穂乃果達は自然と笑みを浮かべ始める。

 

「まだまだ時間はあるんだ。 慌てることはない、湿気たツラすんのはまだ早いだろ?」

「うん、ありがとうお兄ちゃん・・・・・・。 やっぱりその曲を聴くとなんだか元気になるよ!」

 

笑顔を取り戻し、満面の笑みを浮かべる穂乃果の頭を紅葉は優しく撫でる。

 

「お前はそうやってバカみたいに笑ってる方が似合う」

「もう、一言余計だよ!」

 

しかし、紅葉が余計な一言を口にし、それに当然、穂乃果は頬を膨らませて紅葉に怒るのだった。

 

すると、穂乃果は紅葉の肩に寄りかかり、そのまま彼女はオーブニカのメロディーを再び歌い始め、そんな自分に寄りかかり穂乃果の姿を見て、紅葉は一瞬脳裏にある光景が思い起こされる。

 

『お兄さん!』

「っ・・・・・・」

 

それは自分のことを「お兄さん」と呼ぶ少女と、森の中で今の自分と穂乃果のように一緒にオーブニカでのメロディーを奏でている時の光景・・・・・・。

 

その光景を思い出した紅葉は、胸が苦しくなるのを感じ、彼は自分の頭を抑える。

 

(最近、こんなのばっかりだな。 記憶が戻ってから時折・・・・・・。 なんで『あの娘』と、穂乃果の姿が・・・・・・重なり合うんだ)

「お兄ちゃん?」

 

そんな紅葉の様子のおかしさに気付いた穂乃果が首を傾げながら、心配そうに彼の顔を覗き込むと、それに気付いた紅葉は「すまん」と謝り、席を立つ。

 

「どこか具合でも悪いんですか?」

 

そんな紅葉の姿を見て、海未もどこか体調でも悪いのだろうかと尋ねて来るが紅葉は「そういう訳じゃない」とだけ応える。

 

「体調が悪いとかじゃないんだ。 ただちょっと、なんでか分かんないけど、ふっと昔あった辛いこと思い出してな・・・・・・」

「「辛いこと?」」

 

苦笑しながらも紅葉は別に体調が悪いわけではないので心配しなくて良いと伝え、それに戸惑いつつも辛いことなら無理に聞き出さない方が良いだろうということもあり、海未やことりもそれで納得するのだが・・・・・・。

 

「えいっ」

 

穂乃果だけは・・・・・・そんな紅葉を放っておかず、彼女は突然後ろから紅葉の背中に抱きついたのだ。

 

「うおっ!? 何してるんだ穂乃果?」

「んっ? ハグだよ!」

 

満面の笑顔でそう応える穂乃果だが、なぜハグがいるのかというのが疑問な訳で・・・・・・。

 

「だって、お兄ちゃん急に元気がなくなるから・・・・・・こうしたら、元気出るかなって!」

 

だから別に気にしなくて良いと紅葉は言ったのだが、話を聞いていなかったのだろうかと疑う紅葉達だったが・・・・・・。

 

別に話を聞いていないという訳ではないらしく、むしろは話はちゃんと聞いていたらしい。

 

「だって、お兄ちゃんが悲しい顔するの・・・・・・私いやだもん! だから、こうしたら元気出るかと思ったんだけど・・・・・・」

「そっか、ありがとな、穂乃果。 もう大丈夫だ」

 

穂乃果は彼女なりに、自分のことを励まそうとしている姿を見て紅葉は思わず笑ってしまい、穂乃果を優しく自分から引き離すと、彼女の方へと振り返って頭を撫でるのだった。

 

「おかげさまで、元気になった」

「そう? なら良かった! えへへ~」

「俺は良い妹を持ったよ」

「兄妹仲良いのは微笑ましいことこの上ないのですが・・・・・・あなた達、廃校のこと忘れてませんよね?」

 

そこで海未からの指摘が入り、紅葉と穂乃果は2人揃って「あっ!!」と驚愕した声を出すのだった。

 

そしてそんな2人に苦笑を浮かべるとことりと、呆れる海未であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果と紅葉は家に帰宅し、2人は家の居間に入るとそこでは雪穂が先に帰っていてくつろいでいたのだが・・・・・・。

 

穂乃果の方はりまだ廃校のことが少しショックなようで、そんな元気がない穂乃果を見て雪穂は気を効かせたのか分からないが穂乃果に「チョコ食べる?」と尋ねてきたのだ。

 

「あんこ入りだけど?」

「ありがとう・・・・・・んっ!? ってこれあんこ入ってんじゃん!!」

「言ったよ!?」

「あぁんもう!! あんこ飽きたー!!」

 

そのままその場に倒れ込んで穂乃果は腕をバタバタさせ、雪穂は「白あんもあるよー?」なんて言っていたが穂乃果は「もっと飽きたー!!」とさらに腕をバタつかせる。

 

「和菓子屋の娘があんこ飽きたとか言うんじゃないの! お店に聞こえるじゃない!」

「うぅ、はーい、ごめんなさーい」

 

そんなことをしていたものだから、母親にそう言われ、穂乃果はと怒られてしまった。

 

「俺は未だに飽きないがなぁ、これ。 宇宙一美味い和菓子屋のあんこだと思うぞ俺は?」

「お兄ちゃん表現がちょっとオーバー過ぎじゃないそれ・・・・・・?」

 

雪穂が紅葉のオーバー過ぎる表現に若干引いてしまったが、彼女はすぐに再び寝転がって雑誌を読み始め・・・・・・その時、穂乃果は雪穂のすぐ側に「UTX」と書かれた学校のパンフレットが置かれており、穂乃果はそれを手に取って読み始める。

 

「これなに?」

「あー、UTX? 私、来年受けるんだー」

「ふーん」

 

穂乃果はパンフレットをパラパラと捲りながら読み始め、その隣で紅葉がパンフレットを覗き込み、2人は声を揃えて「へぇ、こんなことやってるんだ」と感心し雪穂曰く今1番人気がある学校でどんどん生徒を集めているらしい。

 

「「へぇー・・・・・・ってんっ?」」

 

そこで穂乃果と紅葉は先ほど雪穂が言ったある言葉に、今さらながら気がつき、穂乃果は襲いかかるように雪穂に飛びかかってそれを見た雪穂は慌てて退いたために背中に壁を打ち、穂乃果は雪穂の両サイドを両手で壁をバンっと叩いて逃げ道を無くす。

 

「ひい!?」

「って雪穂アンタ音ノ木坂受けないの!?」

「時間差過ぎだよ!!」

「穂乃果、壁ドンは今更古いと思うぞ・・・・・・」

「お兄ちゃんはどこを気にしてんの!?」

 

穂乃果は母を呼んで「雪穂が音ノ木坂受けないって言ってるよー!!」と叫ぶのだが・・・・・・既に母は承知済みらしかった。

 

「ウチはお婆ちゃんもお母さんも音ノ木坂でしょー!!?」

 

さらにそう叫ぶ穂乃果だったが・・・・・・そこで雪穂が口を開いた。

 

「っていうかさ、無くなっちゃうんでしょう? 音ノ木坂?」

「えっ、もう噂が!?」

「みんな言ってるよ? そんな学校、受けてもしょうがないって。 お姉ちゃんの学年なんて2クラスしかないんだよ!?」

 

それに対し、穂乃果は「でも3年は3クラスあるし!」と返すが・・・・・・「1年生は?」と聞き返されると穂乃果は言いづらそうに「1・・・・・・クラス」とぎこちなく答え、徐々に追い込まれていく穂乃果。

 

「それって来年は0ってことじゃん」

 

雪穂にそう言われてしまい、穂乃果は一瞬言葉に詰まるが・・・・・・。

 

「で、でも私とことりちゃんと海未ちゃん、それにお兄ちゃんで学校が無くならないように考えてるもん! だから無くならない!」

「はぁ、頑固なんだから・・・・・・。 でも、どう考えてもお姉ちゃんがどうにかできる問題じゃないよ?」

 

流石に、穂乃果はそれ以上雪穂になにも言い返すことができず言葉を詰まらせたが・・・・・・今まで黙っていた紅葉が雪穂と穂乃果の2人の間に立つといきなり2人の頭を両手で撫で始めた。

 

「いきなり何すんのさ・・・・・・」

「いや、どっちも面倒くさい妹達だと思ってな。 穂乃果は頑固で雪穂は素直じゃないんだからそりゃ面倒くさいだろ?」

 

穂乃果が頑固だと言うのは分かるが自分が素直じゃないってどういうことだと首を傾げる雪穂に対し、紅葉は苦笑いを浮かべながら「本当は行きたいんだろ?」と問いかけ、雪穂は「はい?」と声を漏らした。

 

「穂乃果もお前も、昔から音ノ木坂の生徒達に憧れの眼差しを何時も向けてたのを覚えてるよ、そしてそれは今もお前等の中にあるってのもな。 本当はUTXよりも音ノ木坂に行けるんだったら行きたいんじゃ無いのか?」

「それは・・・・・・そう、かも・・・・・・しれないけど・・・・・・」

「どうにかできないなんて言われたら、余計にどうにかしちまいたくなる。 お前のためだ、意地でも廃校になんかさせねえ。 だから音ノ木坂受けろ、雪穂」

 

そんな紅葉に対し、雪穂は自分が言ってる言葉が割と滅茶苦茶なことに気づかないのだろうかと少しだけ呆れたが・・・・・・取りあえず、「まぁ、考えとくよ」とだけ返事を返し、雪穂は自分の部屋へと戻ろうと居間を出て行くのだったが・・・・・・。

 

その時の雪穂の表情はどことなく・・・・・・嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝・・・・・・。

 

「お兄ちゃん起っきろー!」

「ぐはぁ!?」

 

気持ちよく眠っているところを穂乃果に飛びつかれて無理矢理叩き起こされた紅葉は額に青筋を浮かべながら抱きついてる穂乃果を無理矢理引き離し、「なにすんだ!?」と怒鳴るが・・・・・・「良いから行くよ!」と言って紅葉の腕を掴んで起こし、紅葉はなにが何やら分からず困惑気味だった。

 

フッと紅葉は部屋の時計を見てみると「午前7時」を時計の針は指し示しており、穂乃果にしては随分と早起きだなと少し感心してしまった。

 

「ってちょっと待て、一体どこに行くんだよ?」

「UTXだよ! 一体音ノ木坂とどう違うのか・・・・・・もしかしたら廃校を阻止できるヒントあるかもしれない!」

「まぁ、参考にするっていうのはアリだな。 でもそれにしたって穂乃果が早起きだなんて・・・・・・お兄ちゃん嵐が起きないか心配だよ」

 

そんなことを言われて穂乃果は「ぷぅー」っと頬を膨らませて「ひどーい!」と軽くぽかぽか紅葉をたたくが、「ほら、UTX行くんだろ?」と言われて穂乃果は叩くのをやめて「うん!」と頷き紅葉に学校の制服を投げ渡す。

 

「じゃあ下で待ってるから早く着替えて行こう!」

「はいはい」

 

そして紅葉は着替えを終え、2人で早めに朝食を取った後に海未とことりに先に学校に行っておくようにとだけメールを送った後、2人はUTXへと向かうことになったのだった。

 

それから2人がUTXへと辿り着くとそこはビルのように大きく、中もなんだか最新設備といった感じで穂乃果も素直に「凄い」と思わず声を漏らしてしまい、さらにUTXに備えられた巨大なモニターにはアイドルのような3人が「UTX学園へようこそ!」と言った感じで映っており・・・・・・音ノ木坂と比べるとやはりかなり目立つ学校だった。

 

「あの3人・・・・・・確かパンフレットにも載ってたよな?」

「有名人かな?」

 

するとその時、穂乃果の隣に黒髪でツインテールで・・・・・・サングラスとマスク、もう春なのに厚着にマフラーをした不審者・・・・・・もとい小柄な少女が現れ、穂乃果と紅葉は流石にぎょっと驚いてしまう。

 

(無言の腹パンされそうな格好・・・・・・いや、する方か?)

「あ、あのー」

(えっ!? 話かけるのか穂乃果!?)

 

不審者スタイルの少女に話しかける穂乃果に紅葉は驚き、一方で話しかけられた少女は少し不機嫌そうな感じで「なに!? 今忙しいんだけど!?」と返されてしまう。

 

「あの、質問なんですけど・・・・・・あの人達芸能人かなにかなんですか?」

 

恐る恐る、穂乃果が不審者少女に尋ねると不審者少女は「はぁ!?」と驚きの声をあげ、穂乃果は思わず「ひぃ!?」と怯えた声を出してしまう。

 

「アンタそんなことも知らないの!? そのパンフレットに書いてあるわよ! どこ見てんの!?」

「す、すみませぇーん!」

「A-RISEよ、A-RISE。 スクールアイドル」

 

不審者少女の言葉に穂乃果は不思議そうに「アイドル?」と首を傾げると不審者少女曰くスクールアイドルと言うのはその名の通り「学校で結成されたアイドルグループ」とのことでそれを聞いて穂乃果と紅葉は「へー」と感心の声をあげ、A-RISEと呼ばれたアイドルのライブ映像が丁度流れ始めそれを見ると・・・・・・。

 

周りにいた人々はライブを見て歓声をあげ、そして穂乃果もそのライブを見てなにか衝撃を受けたような感覚となって思わずパンフレットを落としてしまい、紅葉はあまり表情こそ変化は無かったが・・・・・・一瞬なにかを思いついたような表情を見せた後、隣にいる穂乃果へと声をかける。

 

「穂乃果・・・・・・俺と同じこと考えてるか?」

「うん・・・・・・」

 

そして穂乃果と紅葉はお互いに互いを指差し・・・・・・。

 

「「これだ!!」」

 

と2人声を揃えて言い放ったのだ。

 

その直後、2人は急いで学校へと向かってその場を立ち去り・・・・・・。

 

しばらく経つとA-RISEのライブ映像が終了し、UTXの周りにいた人々もその場を次々と去って行く。

 

その中に混じってライブを観ていた2人の少女「小泉 花陽」と「星空 凛」も流石にこれ以上は学校に遅れてしまうため急いで学校へと向かおうとするのだが・・・・・・。

 

その途中、角を曲がったところで花陽がコーヒーカップを持った紳士風の格好をした男性とぶつかってしまい、男性が持っていたカップの中からコーヒーが飛び出し、服にかかってしまう。

 

「ぴゃあ!? あっ、ご、ごめんなさい!」

「かよちん大丈夫!?」

「わ、私は大丈夫だけどこの人が・・・・・・!」

 

花陽は頭を下げて男性に謝るが男性は特に気にした様子は無く、男性は笑顔を浮かべて「いえ、気にしないでください」と言ってその場を立ち去ろうとするが当然、花陽はそれでは申し訳なくて仕方が無いとなにかお詫びをと言うのだが・・・・・・。

 

その時、突然「ゴオォ!」という大きな風が吹く音が鳴り・・・・・・先ほどまで晴天だった空がいきなり曇り始めたのだ。

 

「ぴゃっ!? さっきまであんなに晴れてたのに・・・・・・」

「変な天気だね・・・・・・嵐でも来そうにゃ」

「ふーん。 でも、僕は嵐が好きですけどね・・・・・・。 退屈な世界から心を解き放ってくれますから。 それに、嵐が来てくれた方が地球も嬉しそうでしょう、地球の洗濯をしてくれるんですから」

 

花陽と凛は「不思議なことを言う人だな」と男性を見て思い、さらにその時・・・・・・一瞬雷が鳴り響き、その際に一瞬男性の背後に異形な姿をした怪物のようなものが映ったのだが・・・・・・。

 

花陽と凛は雷の光で思わず目を瞑ってしまい、再び目を開けるとそこにはあの男性がどこにもいなかったのだ。

 

「あれ? あの人どこ行ったんだろ?」

「なんか不思議な人だったにゃー」

 

だが本当におかしな天気で雨でも振り出しそうなため、花陽と凛は急いで学校へと向かおうとするのだが・・・・・・突然、目の前に「竜巻」がまるで落下してくるように落ちて来たのだ。

 

「にゃああああ!!?」

「ひゃあああ!!?」

 

いきなりの出来事に花陽と凛は思わずその場で尻餅を突いてしまい、よく見れば空には巨大な暗雲が出来ていてその中心には巨大な穴のようなものがあり、その中の中から次々と竜巻のようなものが街中に放たれていたのだ。

 

一方でその異変には学校に登校中だった紅葉や穂乃果も気づいており、穂乃果はあんな台風見たことないと驚きを隠せないでいた。

 

「あれは、風ノ魔王獣の仕業か・・・・・・」

「ふぇ?」

「いや、こっちの話だ。 穂乃果は先に学校に行っておいてくれ」

「えっ!? でもお兄ちゃんは!?」

 

穂乃果の問いかけに対し、紅葉は苦笑いしながら「忘れ物しちまった」と返して穂乃果の返答を待たずにどこかへと駆け出していき、穂乃果は「どこ行くのー!?」と叫ぶが紅葉の耳には全く入っておらずすぐにその場からいなくなってしまう。

 

「もう、お兄ちゃんったら!」

 

そして紅葉は人気の無い場所へと向かい、どこからか「オーブリング」と呼ばれるアイテムを取り出すと腰にあるカードホルダーからカードを1枚取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

するとカードは光の粒子となり、それが光の巨人・・・・・・「ウルトラマン」が姿を表す。

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

さらに紅葉は別のカードを新たに取り出してそれをリードさせると同じようにカードは粒子となり、超古代の光の巨人「ウルトラマンティガ」が姿を現す。

 

「光の力、お借りします!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

そしてオーブリングを高く掲げるとオーブリングの左右が展開され、ウルトラマンとティガの姿が紅葉を中心に重なり合い紅葉はウルトラマンとティガの姿を合わせたような形態・・・・・・「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身したのだ。

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

『俺の名はオーブ! 闇を照らして・・・・・・悪を討つ!!』

 

また、離れた場所でオーブの登場を見た穂乃果はというと・・・・・・。

 

「光の、巨人・・・・・・!?」

 

オーブの姿を見た穂乃果は脳裏に自分のよく見る夢の中に出て来る光の巨人を思い浮かべ、その光の巨人と少しだけ似ているように見えるオーブの登場に、彼女は驚きを隠せないでいた。

 

オーブは上空の巨大な穴のある暗雲を見上げるとそこに向けて両目から隠れた敵を見つけ出す光線「透視光線」を放ち、敵のいる場所を確認。

 

敵を確認したオーブは両腕を広げてエネルギーを貯めて放つ「スペリオン光輪」を右手に出現させ、それをさらに巨大化させて空の中にいる敵へと投げつける。

 

『スペリオン光輪!!』

 

投げたスペリオン光輪は嵐を切り裂き、そのままこの竜巻を発生させている「元凶」へと直撃させるとそれは悲鳴をあげながら地面へと落下し、そのためは各地で発生していた竜巻は収まりその「元凶」が姿を現した。

 

『やはり風ノ魔王獣、マガバッサーだったか!』

 

それは青い鳥のような姿をした怪獣・・・・・・「風ノ魔王獣 マガバッサー」であり、オーブはマガバッサーに向かって駈け出すとマガバッサーにストレートキックを叩きこむ。

 

「グアアア!!」

 

オーブの攻撃に多少たじろいたマガバッサーだったがマガバッサーはすぐに自身の巨大な翼を振るってオーブを叩きつけた後、その嘴でオーブの肩を突いて引き離す。

 

『グオ!?』

「ギシャアアア!!」

 

オーブはジャンプして跳び蹴りをマガバッサーに喰らわせようとするがマガバッサーは空中へと飛び立ってオーブの跳び蹴りを回避し、マガバッサーは急降下キックをオーブへと喰らわせてオーブは蹴り飛ばされてしまう。

 

『ウアッ!?』

 

倒れ込んだオーブに向かってマガバッサーは何度も足でオーブを踏みつけ苦しめるが・・・・・・一瞬の隙を突いて立ち上がるとオーブはマガバッサーの足を掴み身体の赤い部分を発光させて「ウルトラマンティガ パワータイプ」の力を使いマガバッサーを地面へと強く叩きつけ激突させる。

 

『ウオリャア!!』

「ギシャアアア!!?」

 

そのまま倒れ込んでいるマガバッサーに殴りかかろうとするオーブだったがマガバッサーはオーブの攻撃を避けて立ち上がり、空中へと飛び立ってオーブの周囲を高速で飛び回る。

 

『ッ・・・・・・!』

 

どこから攻撃が来るか分からず、オーブは一瞬マガバッサーの姿を見逃してしまい隙を生んでしまいマガバッサーはその瞬間を逃さずオーブの背後から体当たりを繰り出して突き飛ばす。

 

『ジュア!?』

「うわぁ、すごーい」

 

一方・・・・・・オーブとマガバッサーの戦いを穂乃果は思わず感心の声を漏らしながら、2体の戦いを少し興奮気味に見ていたのだ。

 

「なんだろう、あれ・・・・・・!?」

「・・・・・・ウルトラマンオーブ・・・・・・」

「ほぇ?」

 

いつの間にか、穂乃果の隣に花陽と凛が先ほど出会った男性が立っており、穂乃果は不思議そうに男性を見つめる。

 

「ウルトラマン・・・・・・オーブ?」

「あぁ。 輝く銀河の星、光の戦士だ。 分かりやすく言えば・・・・・・正義の味方、ってところかな?」

「正義の味方・・・・・・なんか、カッコいいですね!」

「果たして、そうかな・・・・・・?」

 

するとその瞬間、不意に大きな風が巻き起こり、思わず穂乃果を目瞑り、風が止んだのを感じて目を開くと・・・・・・そこには既に、ラグナの姿が無くなっていたのだった。

 

「あ、あれ!? あの人・・・・・・どこに行ったんだろう?」

 

男性が消えたことに穂乃果は疑問に思いつつも、彼女は再びオーブとマガバッサーの戦いに目を向けるのだった。

 

そして、オーブと戦うマガバッサーはというと・・・・・・。

 

マガバッサーは巨大な翼を大きく羽ばたかせて突風を起こしオーブを近づけさせずにいた。

 

『グゥ・・・・・・ウォ・・・・・・!?』

 

どうにか踏ん張るオーブだが・・・・・・その時、マガバッサーの起こした突風のせいで穂乃果の後ろの方に建っていた巨大なビルが破壊され、大量のビルの瓦礫が彼女目がけて落ちて来たのだ。

 

「えっ、きゃあああああああ!!!!?」

『っ!? 穂乃果!!?』

 

オーブはマガバッサーの突風攻撃を右に飛ぶことでなんとか抜けだし、スピードに優れた「ウルトラマンティガ スカイタイプ」の力を使い、素早く穂乃果の元まで走り出す。

 

そして、ビルの瓦礫が穂乃果に降り注ぐ寸前・・・・・・オーブが穂乃果を手の平の上に乗せ、オーブはすぐさまそこから離れた場所に移動し、ゆっくりと穂乃果を地面に降ろすのだった。

 

「・・・・・・助けて、くれたの?」

 

穂乃果の言葉に、オーブはゆっくりと首を縦に振って頷くと、オーブは立ち上がり、再びスカイタイプの力を使ってすぐさまマガバッサーの元まで行き、オーブはマガバッサーに向かって駈け出すが・・・・・・。

 

再びマガバッサーは翼をはためかせて突風を起こし、そのマガバッサーの起こし突風は強力でオーブは吹き飛ばされてしまう。

 

さらにマガバッサーはオーブが吹き飛ばされたその隙にマガバッサーは再び雲の中に隠れ・・・・・・竜巻を使ってオーブを攻撃しようと考えるのだが・・・・・・。

 

『こうなったら・・・・・・!』

 

インナースペース内にいる紅葉は新たなカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『マックスさん!』

『ウルトラマンマックス!』

 

カードをリードさせるとそれは粒子となり、最強最速の巨人「ウルトラマンマックス」が現れる。

 

『ティガさん!』

『ウルトラマンティガ スカイタイプ!』

 

そして再びティガのカードをリードさせ、ティガが姿を現すが・・・・・・先ほどとは違いティガは紫色の姿「スカイタイプ」がその姿を見せ、紅葉はオーブリングを再び掲げる。

 

『速いやつ・・・・・・頼みます!』

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ スカイダッシュマックス!』

 

するとオーブの姿が変わり、「ウルトラマンティガ スカイタイプ」と「ウルトラマンマックス」を合わせたような姿・・・・・・「ウルトラマンオーブ スカイダッシュマックス」へと変わる。

 

『輝く光は疾風の如し!!』

 

スカイダッシュマックスとなったオーブはマガバッサーを追いかけて空中へと飛び立つとその速さはマガバッサーを上回り・・・・・・あっという間にマガバッサーを追い越すとそのままマガバッサー目がけて高速で接近し、拳をマガバッサーの顔面に叩き込む。

 

『グアア!?』

 

体制を崩したマガバッサーにすかさずオーブは腹部に連続蹴りを次々に叩き込んでいき・・・・・・マガバッサーは地面へと激突する。

 

『ギシャアア!!?』

『スペシウムゼペリオン!』

 

そしてオーブは再び「スペシウムゼペリオン」へと戻り、地面に降り立つが・・・・・・その時、胸のカラータイマーが赤く点滅し・・・・・・フュージョンアップが解けそうになる。

 

『グゥ・・・・・・最後の勝負だ、気合い入れないとな。 ファイトだ! 俺!』

 

そしてオーブは立ち上がったマガバッサーを見て右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを貯めた後、十字に組み直して放つ必殺光線「スペリオン光線」をマガバッサーに向かって発射。

 

『スペリオン光線!!』

「ギジャアアアアアア!!!!?」

 

スペリオン光線の直撃を受けたマガバッサーは悲鳴をあげ、身体中から火花を散らしながら倒れ爆発したのだった。

 

そしてマガバッサーを倒したオーブは空中へと飛び立って去って行くのだった。

 

「わーい! やったぁ! 勝ったぁ! 助けてくれてありがとう、オーブ!!」

 

穂乃果はオーブが勝ったことにぴょんぴょん跳ねながら喜び、助けてくれたことにも彼女はお礼を言うのだった。

 

またオーブは紅葉の姿へと戻り、マガバッサーの破片がある場所へと行くとオーブリングをその破片に向かってかざすとその破片が粒子となり・・・・・・1枚のウルトラマンのカードへと変わった。

 

「マガバッサーを封印していたのは、ウルトラマンメビウスさんでしたか。 お疲れ様です」

 

紅葉はそう言いながらメビウスのカードに笑顔を向けて労いの言葉を送り、カードホルダーへとしまうと「急がないと学校遅れちまうな!」と慌てて学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでねそれでね! そのウルトラマンオーブっていうのが怪獣をバーンってやってドカーンってやってぐわーってやって凄かったんだ!」

 

学校では当然と言えば当然であるが・・・・・・今朝あったオーブとマガバッサーの戦いが話題となっており、穂乃果は実際にその光景を目にしたため、海未とことり、紅葉にそのことを興奮気味に話していたのだが・・・・・・正直、興奮しすぎてるせいか穂乃果がなにを言ってるのかサッパリ分からない3人だった。

 

「それよりも、穂乃果・・・・・・海未やことりに話があるんだろ? 今日は今朝の騒動のせいで学校は午前中までだから早めに話しとけ」

「話・・・・・・?」

「あっ! そうだった!」

 

紅葉に言われて穂乃果は「ハッ」となって慌てて自分の鞄の中を漁ると、出てきたのはスクールアイドルが載っている雑誌であり、海未とことりは不思議そうにそれを見る。

 

「アイドルだよアイドル! こっちは大阪のスクールアイドルでこっちは福岡のスクールアイドルなんだって! スクールアイドルって最近どんどん増えているらしくて人気の娘がいる高校は入学希望者もどんどん増えてるんだって! それで私、考えたんだ・・・・・・ってあれ? 海未ちゃんは?」

 

穂乃果が気がつくといつの間にかその場に海未がおらず、海未はいつの間にかこっそり教室を出ていることに気づき穂乃果は海未を呼び止める。

 

「わ、私はちょっと用事が・・・・・・」

「良い方法思いついたんだから聞いてよー!」

 

そんな穂乃果に対し、海未はどこか呆れたように溜め息を吐くと「私達でスクールアイドルをやると言い出すつもりでしょ?」と穂乃果の考えを当て、穂乃果は「海未ちゃんエスパー!?」と驚くが・・・・・・そこまで言われたら誰だって気づく。

 

「だったら話は早いね! 今から先生のところに行ってアイドル部を・・・・・・!」

「お断りします・・・・・・」

「なんで!?」

 

穂乃果は必死に「一緒にアイドルやろう!」と食いかかるが・・・・・・海未は「そんなことで本当に生徒が集まると思いますか!」と言い放たれてしまう。

 

「その雑誌に出てるアイドルはプロと同じくらい努力し、真剣にやってきた人達です! 穂乃果みたいに好奇心だけで始めても上手く行く筈がないでしょ!」

 

さらに怒鳴られてしまい、彼女の指摘に穂乃果は何も言えなくなってしまう。

 

「ハッキリ言います、アイドルは無しです!!」

「でも、現状これしかないんじゃないか? 他に良い方法があるなら聞くけど・・・・・・」

「それは・・・・・・でも、やっぱりこんなの無茶ですよ紅葉!」

 

そう言い換えされ、紅葉は頬をポリポリと軽くかいた後、海未に言葉を返した。

 

「無茶かもしれないけど・・・・・・無理じゃないだろ」

「っ・・・・・・」

「せめてもう少しだけ考えてやってくれないか? ことりも頼む」

 

紅葉は海未に頭を下げ、海未は「やめてください頭をあげてください!」と慌ててしまう。

 

「ま、まぁ・・・・・・そんな風に頼まれたら。 少しだけですよ? 少しだけ、考えるくらいは・・・・・・」

「うん、ま、まぁ・・・・・・ちょっと考えてみようかな?」

「感謝するよ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、穂乃果と紅葉は屋上に行き・・・・・・穂乃果はまさか海未に断られるとは思っていなかったため彼女は少しだけ落ち込んでいた。

 

「良い方法だと思ったんだけどなぁ・・・・・・」

「でもまぁ、2人とももう少しだけ考えてみるって言ってくれたしまだ希望はあるさ」

「うん・・・・・・」

 

するとその時、どこからか誰かの歌声が聞こえ・・・・・・紅葉と穂乃果は「んっ?」と首を傾げ、その歌を釣られるように歌が聞こえる方向へと向かっていくと・・・・・・。

 

歌が聞こえるのは音楽室からであり、扉についてある窓を穂乃果と紅葉は覗き込んで中の様子を見ると・・・・・・そこで赤い髪の少女・・・・・・「西木野 真姫」がピアノを弾きながら歌を歌っていた。

 

「綺麗な歌声だな」

「うん、すっごく綺麗!」

 

そして曲が一通り終わると真姫は「パチパチパチ」という音が聞こえ、「んっ?」と音のした方を見るとそこでは紅葉と穂乃果は拍手をしており真姫は思わず「う゛ぇえ!?」と驚きの声をあげてしまう。

 

「すごいすごいすごーい! 感動しちゃったよ!」

「べ、別に・・・・・・」

「歌上手だね! ピアノも上手だね! それに、アイドルみたいで可愛い!」

 

穂乃果に「可愛い」と言われた瞬間、顔を真っ赤にする真姫・・・・・・。

 

すると真姫は椅子から立ち上がって教室を出ようとするが・・・・・・。

 

「あ、あの・・・・・・いきなりなんだけど、あなたアイドルやってみたいと思わない!?」

「・・・・・・なにそれ、意味分かんない!」

 

穂乃果の勧誘にごもっともな返答をした真姫は今度こそ教室へと出て行き、紅葉は「そりゃ普通そうだわな」と苦笑し、穂乃果も「だよねー」と苦笑していた。

 

 

 

 

 

 

 

一方・・・・・・海未とことりはというと・・・・・・海未は今日は午前中で終わりだが、少しくらいなら弓道部の部活に出れるかと思い練習していたのだが・・・・・・。

 

どうにも海未は練習に身が入らず、今はことりと気分転換も兼ねて2人で外を歩いているところだった。

 

「はぁ・・・・・・紅葉と穂乃果のせいです、全然練習に身が入りません」

「それってスクールアイドルにちょっとは興味があるってこと?」

「あっ、いえ……それは! でも、やっぱり上手く行くとは思えません」

「・・・・・・でも、こういう事って何時も穂乃果ちゃんが言ってたよね」

 

不意に、ことりがそんなことを言うと彼女は昔……穂乃果が大きな木を登ってみようと言いだした時のことを話しだしたのだ。

 

「私たちがいつも尻込みしちゃうところを何時も引っ張ってくれて」

「そのせいで散々な目に何度もあったじゃないですか! 大体穂乃果は何時も強引すぎます!」

 

ことりに話を振られ、当時のことを思い出しながら海未は穂乃果に対しての不満を口にするが……。

 

「でも海未ちゃん、後悔したこと……ある?」

「っ!」

 

ことりにそう聞かれ、海未は木に登った時に見た綺麗な景色を思い出したのだ。

 

確かに、ことりの言う通り、穂乃果には強引なところがある。

 

でも彼女は絶対に自分達に後悔なんてさせなかった。

 

あの時見た景色が、幼い頃に見た景色にも関わらず鮮明に覚えているのが何よりの証拠だろう。

 

だからこそ、海未はことりの言葉に何も反論できなかった。

 

それが事実だからだ。

 

そしてそのまま海未はことりに案内された場所に辿り着くとそこには穂乃果が1人、紅葉の手を借りながらも一生懸命にダンスの練習をしているのを見つけ、穂乃果は何度コケても立ち上がり練習を繰り返していたのだ。

 

「ワンツースリーフォーファイブシックスセブンエイト・・・・・・」

「うわっとっと!?」

 

紅葉はリズムを取るために手を叩いて穂乃果を手伝っていたが、ダンスをしている穂乃果はターンを決めようとしてバランスを崩し、お尻を強く打ってしまう。

 

「ねぇ、海未ちゃん、私・・・・・・やってみようかな?」

「えっ・・・・・・?」

「海未ちゃんはどうする?」

 

笑みを向けられながらことりにそう尋ねられた海未は戸惑う表情を見せるが・・・・・・何気なく、再び視線を穂乃果の方に向けると・・・・・・。

 

穂乃果はダンスの練習をしてまた転んで、お尻を打ってしまう姿が見え、そんな穂乃果を見て、海未はなぜだか自然と身体が動き・・・・・・涙目で倒れている穂乃果に手を差し伸べたのだ。

 

「あっ・・・・・・海未ちゃん?」

「紅葉がいるとはいえ、ダンスの練習を1人でしていては意味がありませんよ。 やるなら、3人でやらないと!」

「っ・・・・・・! 海未ちゃん・・・・・・」

 

そんな海未に穂乃果は目尻に涙を溜めつつ嬉しそうな笑みを浮かべ、それに紅葉もとても嬉しそうな顔を見せる。

 

「よし、そうと決まれば・・・・・・じゃあお前等! 行くか!」

「行くって・・・・・・どこに?」

「決まってんだろ、部活申請だよ!」

 

そう言って紅葉は穂乃果と海未の腕を掴んでぐいぐい引っ張り、ことりはそんな3人を見て嬉しそうに笑いながら穂乃果と海未の背中をぐいぐい押すのだった。

 

「ちょっとことり押さないでください!?」

「お兄ちゃん引っ張らないでよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

それから生徒会長室で絵里にスクールアイドル部設立を認めて貰うために部活申請書を提出したのだが、部活を設立するにはせめて紅葉を入れても後1人必要とのことで新しいメンバーを見つめてその場は立ち去ろうとした穂乃果達だったが・・・・・・。

 

去ろうとする穂乃果を絵里が呼び止め、彼女はなぜこの時期に部活をやろうと彼女達が言いだしたのかを尋ねてきたのだ。

 

「待ちなさい。 どうしてこの時期にアイドル部を始めるの? あなた達2年生でしょ?」

「廃校をなんとか阻止したくて・・・・・・。 スクールアイドルって、今凄い人気があるんですよ! だから!」

 

穂乃果はその理由を話したのだが……それでは例え部員を集めても部を認めることができないと絵里は言い放ってきたのだ。

 

「えっ、どうして・・・・・・?」

「部活生徒を集めるためにやるんじゃない。 思い付きで行動したところで状況は変えられないわ」

 

そんな風に、穂乃果達の言葉は絵里に一蹴されてしまったのだった。

 

「変なこと考えてないで残り2年自分のためになにをするべきか、よく考えるべきよ」

 

しかし、そんな絵里の言葉に、紅葉が反論する。

 

「変なことかどうかは、やってみないと分かりませんよね?」

「・・・・・・なにが言いたいの?」

「なにもしなければ確かに状況は変わりません。 でも、なにもやらないよりかはマシだと思うんです。 少なくとも、なにかが変わるのは確かだと思いますから」

 

絵里の言葉にそう言葉を返す紅葉だったが、絵里は厳しい顔つきで「それでもこんなものは認められないわ」と相変わらずアイドル部設立は認めようとはせず、穂乃果達もそれに不満げな表情だったが紅葉だけは口元で笑みを作って余裕げな表情だった。

 

「みんな今日は帰って日を改めよう。 それと生徒会長?」

「なによ?」

「ピリピリすんのは分かるけど、し過ぎるのは身体に毒ですよ? 糖分摂取した方が良いと思います。 でないと頭に白髪生えちまいますよ?」

「生えないわよ!!」

 

机をバンっと叩く絵里に紅葉は「逃げろー」と言いながら穂乃果達の背中を押して生徒会室を出て行った。

 

「あははは、紅葉くんって面白い子やねー」

「どこがよ、全く・・・・・・」

 

絵里の隣にいた希の言葉に呆れながら、彼女はふて腐れた様子で椅子に座り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その後・・・・・・紅葉はそうでもなかったが穂乃果達はまさか部活が認められないなんて言われるとは思っていなかったため、3人は落ち込んだ様子で校門を出るとこのままでは部室も講堂も借りれず、アイドルとしての活動ができないことに思い悩むが・・・・・・。

 

「まだチャンスはあるさ。 諦めるにはまだ早い、だろ? 穂乃果?」

「・・・・・・うん! だって、私・・・・・・可能性感じたんだもん! 私、やっぱりやりたい! やるったらやる!!」

 

きっとチャンスはまだあると信じ、絶対にやってみせると穂乃果は強く、宣言するのだった。




オマケ

紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー~」

穂乃果
「うぇーい!(ぱちぱちぱち」

不審者少女
「いやその前に言いたいことあるんだけど? 私だけ他の娘達と違って名前の表記不審者少女のままなんだけど!?」

紳士風の男性
「俺も出てないぞ?」

不審者少女
「いや、アンタはまだマシでしょうが!」

紅葉
「今回の隠れたサブタイはウルトラマンガイア第7話『地球の洗濯』だ!」

不審者少女
「いや、無視してんじゃないわよ!」

穂乃果
「花陽ちゃんと凛ちゃんと会話する紳士風の男性の台詞の中にあった台詞だよ!」


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第2話 『ラグナ』

土ノ魔王獸 マガグランドキング
登場。


今朝の学校にて・・・・・・穂乃果、海未、ことり、紅葉はファーストライブを行うための会場として講堂を借りようと思い、そための許可証を書いてアイドルのことは伏せておいて生徒会室に提出したのだが・・・・・・。

 

絵里はそれを見るや否や「朝からなに?」とどこか不機嫌そうだ。

 

「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして!」

「部活動に関係なく、生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳に書いてありますので」

 

希が許可証の紙を除くと使用した時間帯は新入生歓迎会の放課後を指定しており、絵里は「なにをするつもり?」と尋ねると海未は「それは・・・・・・」と冷や汗をかいてしまう。

 

アイドルのことはできれば伏せておきたいのでライブをやりたいなんて言ったら絶対反対されると思い、海未はどう誤魔化そうと考えるのだが・・・・・・。

 

「「ライブです!!」」

 

穂乃果と紅葉は普通にライブをやりたいと言い出し、海未は「なんでそれを言ってしまうんだ」と2人に呆れた視線を送る。

 

「3人でスクールアイドルを結成したのでその初ライブを講堂でやることにしたんです!」

「あっ、ちなみに俺はマネージャーってとこですかね? って訳で、よろしくお願いします生徒会長?」

 

そこでことりが「まだ出来るかどうか分からないよ?」と穂乃果と紅葉に戸惑い気味に言うが・・・・・・穂乃果は「えー、やるよー!」と絶対にやるとかなり意気込んでいる。

 

「はぁ、出来るの? そんな状態で? 新入生歓迎会は遊びじゃないのよ?」

「4人は講堂の使用許可を取りにきたんやろ? 部活動でもないのに生徒会が内容までとやかく言う権利はない筈や」

 

希がそこで絵里にそう述べ、実際にその通りであるため生徒が「講堂を使いたい」と言うのであれば基本的にどんな内容であれ文句などを言うことはできないので希の助け船もあり使用許可を貰うことができたのだった。

 

その後、昼休み前にて・・・・・・海未は穂乃果と紅葉に「ちゃんと話したじゃないですか! アイドルのことは伏せておいて講堂を借りるだけ借りておこうと!」と言いながら2人に怒っており、怒られた穂乃果と紅葉はランチパックを食べながら「ひゃんで~?」と尋ねる。

 

「あなた達、またパンですか・・・・・・」

「甘いな、俺は穂むらの団子もデザート用に持ってきた!」

「ウチ、和菓子屋だからパンが珍しいの知ってるでしょ?」

 

海未は「はぁ」と溜め息を吐き、彼女は穂乃果の隣に座り込む。

 

「お昼前に、太りますよ? 穂乃果も紅葉も。 っていうか紅葉は団子も食べる気ですか」

「俺、幾ら食っても太らない体質だから」

 

それを聞いた瞬間、海未と穂乃果にキッと睨まれたが紅葉は構わずデザートの団子にかぶりつく。

 

すると「お2人さーん!」と誰かが呼ぶ声が聞こえ、声のする方に視線を向けるとそこには同じクラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカの3人がいたのだ。

 

「掲示板見たよ?」

「スクールアイドル始めるんだって?」

「海未ちゃんがやるなんて思わなかった~」

 

3人の言葉に海未は「えっ?」と首を傾げ、海未は穂乃果に掲示板になにか貼ったのかと問いかけると穂乃果は元気よく頷き、ライブのお知らせを張ったと言い出したのだ。

 

当然、勝手にそんなことをした穂乃果に海未はご立腹、時間も時間なので海未は穂乃果と穂乃果を止めてくれなかった紅葉に怒りながら3人で教室へと戻る。

 

「勝手すぎます! あと一ヶ月しかないんですよ!? まだなに1つできてもいないのに見通しが甘すぎます! 大体、なんで紅葉は知ってて止めてくれなかったんですか!?」

「追い込んだ方がやる気出るかなって・・・・・・」

 

それに対して海未は「追い込まなくて良いんですよ!! 兄なら妹のこういうところをちゃんと怒って注意してくださいよ!!」と紅葉に指を指して注意するのだが・・・・・・。

 

「すまない海未、俺はシスコンだから穂乃果や雪穂を怒ることができないんだ・・・・・・。 特に穂乃果に怒ったら泣きそうになるし、俺そんなの見てられない」

「だってお兄ちゃん怒るとお父さん並みに怖いんだもん」

 

それを聞いた海未は「自分でシスコン言いますか!?」とツッコムが確かにあの父親は和菓子屋の店主なのになんか格闘技とかやってそうな雰囲気がある上にかなり厳格な感じがあるので穂乃果が言う「お父さん並みに怖い」というのも何となくは分かる。

 

実際、小学生6年生くらいの時に穂乃果がイタズラなんかをしてそれで紅葉が注意を兼ねて彼女に怒ったことがあったのだがその時に穂乃果が大泣きしてしまい、近くにいた雪穂もそれにビビって穂乃果と一緒に大泣きし、それ以降紅葉は滅多のことで穂乃果や雪穂を怒鳴って叱ったりすることが無くなってしまったのだ。

 

「自分でも甘いとは思ってるんだがなぁ・・・・・・」

 

紅葉は苦笑いしながら穂乃果の頭をポンポンっと軽く撫で、穂乃果も「えへへ」と嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

(まっ、本当はそれだけが理由じゃないんだけどな・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

教室へと戻るとそこではことりがなにやらスケッチブックに何かを描いており、海未は前の席に座ると「なにをしてるのですか?」と尋ね、ことりはそこで丁度絵を描き終えたらしく早速自分が描いた絵を穂乃果達に見せる。

 

「ここのカーブが難しいんだけど、なんとか作ってみようかなって」

 

そこにはことりが考えたライブ用の衣装が描かれており、その衣装の絵を見て穂乃果や紅葉は「かわいい!」と絶賛するのだが・・・・・・。

 

「あの、ことり・・・・・・ここのスーッと伸びているものは?」

 

海未が指を指しながらことりに説明を求めるとことりは「足よ?」と答え、海未はギョッとした表情を見せる。

 

そう、ことりの考えた衣装はスカートが短めであり海未は自分の両足を見つめると、穂乃果が海未の膝の上に両手を乗せて「大丈夫だよ!」と声をかける。

 

「海未ちゃん、そんなに足太くないよ?」

「人のこと言えるのですか!?」

 

穂乃果に言われて立ち上がり怒鳴るように言い放つ海未、その言葉に穂乃果は自分の足を触って太さを確認した後ガッツポーズを取り・・・・・・。

 

「よし! ダイエットだ!!」

「あっ、穂乃果は足が太いのか。 2人ともそんなに分かんないと思うけどなぁ」

 

紅葉の言葉にはことりも同感らしく、「2人とも大丈夫だよ?」と海未と穂乃果にあんまり気にすることは無いと言い、穂乃果は「うーん、そんなに言うならそこまで気にしなくて良いのかな?」と一度椅子に座り込む。

 

「他にも決めておかないといけないこと沢山あるよねー。 サインでしょ? 街を歩く時の変装でしょ?」

「穂乃果、幾らなんでもそれは気が早すぎないか?」

 

確かにそんなのは有名になって人気が出てからでないと意味がないし海未にもそれは却下されたため、先ずはことりの提案でグループ名から考えることになり、放課後図書室で名前を考えることになったのだが・・・・・・。

 

全く良い案が思い浮かばず、穂乃果、海未、ことりは性格も3人バラバラで穂乃果の案では3人の名前をそのまま使って「穂乃果海未ことり」という名前にしてみようかとも思ったのだが「漫才師っぽい」ということで却下。

 

その次に出た海未の「海」、ことりの「空」、穂乃果の「陸」という「陸海空」という名前にしようかなんて案も出たのだが「アイドルっぽくない」ということで却下。

 

紅葉もまた名前の案を出すことには出そうとはしたのだが・・・・・・穂乃果、海未、ことりの頭文字を取って「ウルティメイトフォースHUK」とかどうかなということになったのだがこれも「パクリくさい」ということで却下。

 

「そもそもなんですかウルティメイトフォースって」

「俺の先輩がちょっとそんな名前のチーム作ってて・・・・・・参考にしようかと思ったんだけど」

「参考っていうか殆どパクリだよねそれお兄ちゃん?」

 

そして大いに思いに悩んで悩んで悩み抜いた結果・・・・・・掲示板に貼られた「初ライブのお知らせ!」と書かれたチラシの真下にグループ名募集の箱を置き、完璧に他人に丸投げすることに・・・・・・。

 

ちなみにこれは穂乃果の案である。

 

「まぁ、どうしても思いつかないときはこの手に限るよな」

「限るのかな・・・・・・?」

 

だがこっちの方が案外みんな興味持ってくれるかもしれないということでむしろこれはこれで良いのでは考え、次は歌とダンスの練習をするためにダンスの練習場所を探すことになったのだがどこもかしこも他の部活の生徒などが殆ど貸し切っており、こうなれば空き教室でも使わせて貰おうかと思い職員室に行って担任に空き教室の鍵を借りに行ったのだが・・・・・・。

 

「空き教室を? なんに使うんだ?」

「えっと、スクールアイドルの練習に・・・・・・」

 

少し言いづらそうに穂乃果が説明すると担任は穂乃果達を見て「お前等がアイドル・・・・・・?」と首を傾げたあと、「フフッ」と鼻で笑われてしまった。

 

「あぁ!? 鼻で笑った!?」

「この!! 先生今に見てろよ! こいつ等は絶対世界一のスクールアイドルになって鼻で笑ったこと後悔させてやるからな!」

「ちょっ! だからなんで紅葉はいちいちハードルあげるんですか!? 追い込まなくて良いって言ってるでしょ!?」

 

それから・・・・・・結局空き教室を使わせて貰うことができず、使えそうな場所と言えばもうあとは学校の屋上くらいしか残されておらず雨などが降ったら使えなくなってしまうがこの際贅沢は言えないということで練習場所は屋上に決定したのだった。

 

そして穂乃果、海未、ことりは先ずは歌の練習をするために3人並ぶのだが・・・・・・。

 

「「「・・・・・・」」」

「・・・・・・?」

「・・・・・・曲は・・・・・・?」

 

ことりのその言葉に紅葉は思わずガクッと肩を落とし、彼は「用意してなかったのかよ・・・・・・」と苦笑いを浮かべててっきり穂乃果が用意しているものだと思った紅葉は彼女に「曲はどうしたんだ?」と尋ねると穂乃果は冷や汗をかきながら「ない・・・・・・」と答えた。

 

「オイオイ、これグループ名よりも先にどうにかすべき問題だろ」

「あ、あははは・・・・・・ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その放課後、スクールアイドルに関しての話し合いの続きはまた穂乃果と紅葉の家でやろうということになり、海未は部活動の弓道部の練習があったため遅れて紅葉達の家に行くことになり、その時穂乃果や紅葉の母が団子を勧めて来たがアイドルを始めるに当たってダイエットしなければならないためそれを断り穂乃果の部屋へと彼女は向かったのだが・・・・・・。

 

「よし行くぞ穂乃果!」

「バッチコーイ!」

「わー♪」

 

そこでは紅葉が手の平に乗せたチョコを指で弾いて弾かれたチョコを全て口でキャッチして食べる穂乃果の姿と普通に団子を食べながら手をパチパチ叩いてることりの姿があり、海未はそんな3人の光景を見て「はぁ」と溜め息を吐いた。

 

「あなた達・・・・・・ダイエットは?」

 

海未に言われるまですっかり忘れていたらしく、穂乃果とことりは少し絶望したような表情を見せ、紅葉も穂乃果がダイエットしようと言っていたことを忘れていたらしい。

 

「はぁ・・・・・・それで曲の方はどうなりました?」

「あぁ、任せろちゃんと宛てがある。 この前穂乃果と会った赤髪で髪の毛クルクルする癖がある1年生だ」

「後半部分がよく分からないんですけど・・・・・・」

 

要するに1年生に凄くピアノが上手い娘がいるということであり、その娘に作曲して貰えないか明日穂乃果は聞いてみようと言うのだ。

 

「うん! もし作曲をして貰えるなら作詞はなんとかなるよねってさっき話してたの!」

「・・・・・・なんとか・・・・・・ですか?」

 

すると紅葉、穂乃果、ことりはなぜかジッと笑みを浮かべて海未を見つめ始め・・・・・・彼女はなにか嫌な予感がしたのか思わずその場から後ずさってしまう。

 

「海未ちゃんさぁ、中学の時ポエムとか書いてた時あったよねぇ~?」

「えっ・・・・・・!?」

「読ませて貰ったことも、あったよね~?」

「あ・・・・・・あ・・・・・・!」

「大丈夫だ海未! 俺の先輩なんか悪役デビューやらその彼女は手紙やら置き手紙やらで黒歴史残してるからそれに比べれば全然恥ずかしいことなんかないぞ!」

 

紅葉のそれはなんのフォローにもなっていないのでは・・・・・・とことりは少し思ったが、今は海未に首を縦に振らせることが優先、3人はジリジリと海未に詰め寄ってくるが・・・・・・耐えきれなくなった海未は思わず立ち上がってその場から逃げ出して部屋から出て行ってしまった。

 

「あっ! 逃げた!」

「任せろ!」

 

部屋から出てそのまま逃げだそうとした海未だったが、紅葉が海未以上の速さで走って彼女の頭上を飛び越え、海未の前に立ち塞がって彼女の逃げ場を無くしてしまう。

 

「悪いな、ここから先は通行止めだ。 俺から逃げられると思ってんのか?」

「ちょっ!? くっ・・・・・・あんなにいっぱい下手したら穂乃果以上に食べてる癖になんであなたは昔からそんな常人離れした動きができるんですか!?」

「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」

 

結局、紅葉が逃げ道を塞いだ結果、穂乃果とことりに捕まって部屋へと戻されてしまい、再度穂乃果とことりは彼女に作詞を頼んだのだが・・・・・・。

 

「お断りします!」

 

の一点張りであり、本人曰く「中学の時のだって恥ずかしくて思い出したくないから」とのことなのだが・・・・・・ことりは衣装の製作もあるため、正直作詞を頼めるのは海未しかいない。

 

それに対して海未は言い出しっぺの穂乃果かもしくは紅葉がやれば良いだろうとも思ったのだが・・・・・・穂乃果が昔書いた作文などの「おまんじゅう、うぐいす、もうあきた」という感じの出来から察するに、ことりも紅葉も口を揃えて「無理だと、思わない?」と言ってきたため、穂乃果の線は無し。

 

なので海未は今度は紅葉に視線を向け、紅葉は「はぁ」と溜め息を一度吐くと「仕方が無い」と言った感じでシャーペンと紙を用意し、作詞をしてみようとしたのだが・・・・・・。

 

「カレーパン食いたいなぁ・・・・・・」

 

お腹を「グゥ~」と鳴らし、そこで海未は頭を抱える。

 

「そうでした、紅葉はすぐにいきなり話が変わったりして作文などでは穂乃果以上に壊滅的でした・・・・・・」

「少女よ、これが絶望だ。 お前に残された道はたった1つ、選ぶまでもないだろ?」

「どこの魔王ですか」

 

紅葉のボケに海未が冷ややかにツッコミを入れた後、穂乃果やことりが「お願い!」と海未に頼んで3人は「自分たちも手伝うから!」と説得しようとし、穂乃果はせめてなにか元になるものだけでもと彼女に頼むのだが・・・・・・それでもどうしようかと思い悩み海未は困り顔を浮かべていた。

 

「っ・・・・・・んっ?」

「海未ちゃん・・・・・・」

 

するとそこでことりが握りしめた左手を胸に当て、潤んだ瞳で・・・・・・。

 

「おねがぁい!」

「・・・・・・っ!?」

 

と、海未にお願いをすると・・・・・・。

 

「もう、ズルいですよ、ことり・・・・・・」

 

余程先ほどのことりの「おねがぁい!」が効いたのか、遂に海未は折れることになったのだった。

 

それに穂乃果とことりが嬉しそうに笑みを浮かべ、紅葉はポンっと海未の肩に手を置いて彼女は紅葉の方に顔を向ける。

 

「あんなの誰も勝てねえよ・・・・・・俺でも即ノックアウトファイターだよ」

「でしょうね・・・・・・私も勝てる人なんていないと思います・・・・・・」

 

すると海未はそこで立ち上がると穂乃果とことりに向かって自分が作詞をする条件としてライブまでの練習メニューは自分が作ると言いだし、一度穂乃果の部屋のパソコンを立ち上げてA-RISEのライブシーンをみんなで見ることに。

 

「彼女たちは楽しく踊っているように見えますがずっと動きっぱなしです。 それでも息を切らさず笑顔でいる、かなりの体力が必要です。 穂乃果、ちょっと腕立て伏せして貰えますか?」

「えっ?」

 

穂乃果は海未に言われた通り、腕立て伏せの準備をした後、海未から次に笑顔を作るように指示されて言われた通りに笑顔を作ったのだが・・・・・・次に「そのまま笑顔を崩さず、腕立て伏せをしてください」という彼女の言葉に従い腕立て伏せをしようとするのだが・・・・・・すぐに顔を引きつらせていき、最後はバランスを崩して穂乃果は鼻を打ってしまった。

 

「いったーい!! 痛い痛い痛い痛いぃ~!!?」

「よーしよし、見せてみー?」

 

紅葉が鼻をぶつけた穂乃果の鼻を優しく撫で、怪我をしていないかを確認。

 

「うん、ちょっと赤くなってるけどすぐ治るだろ。 それより、海未が言いたいのは弓道部でそれなりに体力のある海未は兎も角、穂乃果とことりは楽しく歌えるだけの体力をつけないといけないってことか?」

「そういうことです!」

 

ということで明日の朝早速、体力作りのため近くにある神社の神田明神という場所に集合ということでこの日は解散となるのだった。

 

それから海未とことりが帰った後、紅葉と穂乃果は居間でテレビを見ながら談笑することに。

 

「明日は早いぞ? 穂乃果起きれるか? あっ、でも穂乃果が早起きしたら今度は雪でも降るんじゃ無いか? この前本当に嵐が来たし」

 

紅葉がニヤニヤとした顔で穂乃果にそう言うと彼女は「ぷく~っ」と頬を膨らませ「そんなことないもん!」と両手をバタバタさせて怒り、そんな穂乃果に紅葉は思わず笑ってしまう。

 

「雪なんか絶対降らないもん! お兄ちゃんのいじわる!」

「はは、悪い悪い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、神田明神に集まった穂乃果、ことり、海未、紅葉は穂乃果とことりにそこの階段を使わせて貰い階段を何回か下から上って走らせてそれで体力をつけて貰うことに。

 

だが当然、あまり運動などをしていない穂乃果やことりは2回目の時点でかなりキツそうな表情を見せており、穂乃果は息を切らしてその場に倒れ、ことりは尻餅をついてしまう。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・もう、キツいよぉ・・・・・・!」

「もう足が動かないぃ~」

「なんだよ2人ともだらしねえな」

 

尚、紅葉も2人と同じように「少し楽しそうだから俺もやる!」と言って一緒に階段を上って走ったりしていたのだが・・・・・・紅葉の場合は穂乃果やことりよりも走るのが速い上に既に10週もしていたりする。

 

「お兄ちゃん相変わらず化け物並みの運動神経の良さだよね」

「褒めるな照れる」

「褒めてないと思うなぁ・・・・・・」

 

そこで海未が穂乃果とことりに「それでここでは毎日歌とダンスの練習とは別に基礎体力をつける練習をして貰います」と告げられて穂乃果とことりは「一日2回も!?」とこんなことをするのかと思ったが・・・・・・海未は「やるからにはちゃんとしたライブをやります!」ということで反論もできないし、まさしくその通りだと思ったので穂乃果は「はーい」と答え、もうワンセットして基礎体力のこの練習は今朝は終わりにしようとしたのだが・・・・・・。

 

「君たち・・・・・・」

 

突然、聞き覚えのある声が聞こえ、声のした方へと顔を振り向かせるとそこには巫女服姿の希の姿があり、なんで巫女服なんて着てるんだと思ったが希が言うにはここでお手伝いをさせて貰っているらしい。

 

「神社は色んな気が集まるスピリチュアルな場所やからね? 4人とも、階段使わせて貰ってるんやからお参りくらいしていき?」

「それもそうですね。 いやしかし、それにしても・・・・・・」

 

紅葉がジーッと希を見つめていると希は「んっ?」と首を傾げて「どないしたん?」と問いかける。

 

「いえ、巫女服って良いなって思って」

「あぁ~、男の子はそういうの好きやって話よう聞くしなぁ。 やっぱり紅葉くんもこういうの好きなん?」

「嫌いではないですね、なんていうかロマンを感じます」

 

そんな紅葉の言葉に希は「あはは、面白いこと言う子やねぇ」と笑い、その後は紅葉、穂乃果、海未、ことりはお賽銭を入れて「初ライブが上手く行きますように」とお願いするのだった。

 

それから体操着から制服に着替えた穂乃果達はそのまま学校へと向かうことに。

 

「それにしても穂乃果がちゃんと早起きできてるからやっぱり雪降るかもなぁ」

「まだそんなこと言ってるの!? もうお兄ちゃんのバカ!」

 

穂乃果は頬を膨らませて紅葉をポカポカと叩き、海未は「またこういうことしてる」と少し呆れたような表情を浮かべ、ことりは微笑ましそうにそんな2人のやり取りを見つめているとその時、この場所からでも見えるくらいに少し離れた場所にある大きなビルが突然沈むように消えてなくなり、4人はいきなりのその出来事に唖然としてしまう。

 

「えっ!? ビルが、沈みましたよ!?」

 

紅葉はそれを見て険しい表情となり、穂乃果達に「悪い! 忘れ物したから先に行っといてくれ!!」と言ってすぐさまそのビルへと向かって駈け出して行く。

 

「えぇ!? 紅葉くん!? って早い!? あんなに走ったのに!?」

「とことん化け物染みてるねお兄ちゃんの体力・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどビルが沈む事件で異常事態と被害者多数が出たこともあり、すぐに警察が出動し安全が確認できないためあっという間に辺りは関係者以外立ち入り禁止区域となったのだが・・・・・・。

 

そんな中、紅葉はこっそり立ち入り禁止区域にちゃっかり侵入し、街に出来た巨大な穴の前まで誰にも気づかれないように行くとその巨大な穴に右手をかざして目を瞑る。

 

するとそこから感じる邪悪の軽輩に紅葉は「やはり魔王獣か・・・・・・」と小さく呟くとそこに警官の1人が「君! なにやってるんだ!!」と紅葉に注意しようとするのだが・・・・・・その時、また新たに巣に少し離れた場所にあるビルが沈み、どこからか視線を感じた紅葉は警官の言葉を無視して辺りを見回すと見覚えのある顔を見かけ、その人物は紅葉に対して一瞬笑みを見せるように浮かべた後、背中を向けてその場から去って行った。

 

「待て!!」

 

紅葉は警官の「君待ちなさい!!」という声も無視してその人物を追いかけて走り出す。

 

しばらくその人物を追いかけているとその人物がビルの中へと入っていくのを目撃し、紅葉も同じようにそのビルの中へと入っていくのだが・・・・・・入っていった直後に目的の人物を見失ってしまう。

 

「あの野郎・・・・・・一体どこに・・・・・・?」

 

同じ頃数分後、紅葉が追いかけていたのはとあるビルの地下に前回花陽や凛、穂乃果に話しかけてきた紳士風の男性であり、男性はそのビルの地下1階でオーブリングに酷似した黒いオーブリング、「ダークリング」に「地底怪獣テレスドン」という怪獣が描かれた怪獣カードをリードさせ、それらのカードは全て地面の中へと吸い込まれていく。

 

「・・・・・・テレスドン。 アントラー・・・・・・」

 

テレスドンの次に「磁力怪獣アントラー」のカードをリードさせようとした時・・・・・・ハーモニカーのメロディーが聞こえ始め、そのメロディーに男性は苦しそうな表情を浮かべて頭を押さえる。

 

「っ・・・・・・相変わらず、酷いメロディーだな・・・・・・紅葉」

 

そこにいたのはオーブニカを吹いている紅葉であり、紅葉はオーブニカをしまうと男性を睨み付ける。

 

「お前も相変わらず、この曲を聴くと偏頭痛を起こすみたいだな。 頭痛薬でも飲んだらどうだ? なぁ、『ラグナ』・・・・・・」

「久しぶりに会ってもその減らず口も変わらないみたいだな」

 

すると紅葉は「ラグナ」と呼ばれた男性へと殴りかかり、ラグナはそれを受け流すように避けて紅葉の背後に回り込むと後ろ回し蹴りを紅葉へと叩き込む。

 

それによって怯んだ紅葉に飛びかかって拳を振るうが紅葉はその腕を掴んでラグナの腹部を蹴りつけ、紅葉は再びラグナを殴ろうとするがラグナは後方へと飛んで回避するとそのままどさくさ紛れにアントラーのカードをリードしてカードは地面の中へと吸い込まれる。

 

「もう随分待ったぞ? お前と遊びたくてずっとウズウズしてたんだ」

「やはり、土ノ魔王獣を目覚めさせるために地底破壊工作みたいなことをしてたのはお前だったか! お前がどれだけ魔王獣を蘇らせようと・・・・・・俺が全部ぶっ倒す!!」

「クク・・・・・・アッハハハハハハ!! カッコイイじゃん紅葉!! クァーハハハハハゲホッゲホッ!!」

 

笑いすぎてラグナは咳き込んでしまうが息をすぐに整える。

 

「次はお前の学校が終わった後くらいに龍脈を破壊してやるよ。 そっちの方がお前にとって都合が良いだろう?」

「お前にとっては都合が悪いようにも思えるがな?」

「そうでもないさ、俺はお前と対等な条件で勝負がしたいんだ。 それに俺は・・・・・・お楽しみは後にとっておくタイプなんでね」

 

「それじゃ応援してるよ」と皮肉を込めた言葉だけを言い残してラグナはその場を去って行き、紅葉もラグナをすぐに追いかけようとしたがその時、大地が大きく揺れて紅葉はすぐにこのビルが沈もうとしているのだということが分かり、ラグナの追跡は諦めてすぐにビルから脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラグナが復活させようとしている土ノ魔王獣は地底にある4つの龍脈を破壊することで復活することができ、紅葉も一応それを理解はしているのだが・・・・・・何分その龍脈のある場所が分からず、警察にそのことを教えるとしても信じて貰えるかどうか分からないため、紅葉は手の内用がなく困り果てていた。

 

このまま学校を休んでラグナの目的阻止に全力を尽くすべきなのだろうが・・・・・・穂乃果達のことも気になって仕方が無いしズル休みは両親に申し訳ないので紅葉は学校に向かいギリギリ1時間目の授業に間に合うことができた。

 

それから紅葉は1時間目の授業が終わり休み時間になると穂乃果達の元へと戻り、穂乃果達から「どこへ行ってた」と色々と怒られてしまったがそれはどうにか誤魔化し、昼休みにライブについてのことを話し合うことになったのだが・・・・・・。

 

「逆効果? 会長がそんなことを言ってたのか?」

「うん、『スクールアイドルが今まで無かったこの学校でやってみたけどやっぱりダメでしたとなったらみんなどう思うかしら?』って」

 

それは少しキツい言い方かもしれないが、絵里だって学校が無くなって欲しくない、だからこそ絵里はそんな簡単に考えて欲しくないのだ。

 

そしてそれを言われて穂乃果も「そうかもしれない」と思い、少し簡単に考え過ぎていたのかもしれないと思ったのだ。

 

「やっと気づいたのですか?」

「でも、ふざけてやろうって言った訳じゃないよ? 海未ちゃんのメニュー全部こなしてるし、おかげで足は筋肉痛だけど」

「確かに頑張っているとは思いますが、生徒会長が言ったことはちゃんと受け取らないと」

 

そこで話を座って聞いていた紅葉は立ち上がり、3人を見て微笑む。

 

「確かに会長が言ったことは正しいかもしれない。 だけどそんなことは後から考えれば良い、失敗したって気合いがあればなんとなる! 失敗は成功の元って言うからな、それが人間ってやつだ!」

「でも紅葉くん、ライブをやるにしても歌う曲くらいは決めないと・・・・・・」

 

ちなみに穂乃果達は紅葉が学校に来る前に真姫に作曲を頼んだらしいのだが「お断りします!」海未みたいな言い方をして断られてしまい、今から作曲者を探している時間もないため、海未は別のスクールアイドルの曲を使うしかないかと思ったのだが・・・・・・。

 

「もう1度頼んでみないか?」

「ふぇ?」

「今度は俺と穂乃果で、あの娘に頼んでみよう? 3度目の正直って言うだろ!」

 

それにことりが「まだ1回しか頼んでないけど・・・・・・」と苦笑しながらツッコまれた。

 

それから穂乃果は「グループ名が入ってるかどうか確認してくる」と言って一度別れ、残された3人は先に教室に戻ることなったのだが・・・・・・。

 

「あったよー!! 1枚!!」

 

割と早めに穂乃果はグループ名が書かれた紙を1枚だけ持って現れ、紅葉や海未やことりもワクワクした様子で穂乃果の元へと行き、穂乃果は折りたたまれたグループ名が書かれた紙を開くとそこには「μ's」という文字が書かれていた。

 

「ユー・・・・・・ズ?」

「成程、ユーズか」

 

どこからか「ブッブー! ですわ!」という声が聞こえてきそうな読み間違えをする穂乃果と紅葉だが、海未が「多分、『ミューズ』と読むのではないかと」と指摘したため、穂乃果と紅葉は「あぁ! 石鹸か!」と言うのだが即座に海未が「違います!」と否定した。

 

「恐らく、神話に出てくる女神からつけたのだと思います」

「「へぇー・・・・・・」」

「良いと思う! 私は好きだな!」

 

どうやらことりを始めとして穂乃果や紅葉、海未も「μ's」という名前が気に入ったらしく、グループ名は「μ's」に決定した。

 

「よし、グループ名も決まったことだし・・・・・・次!」

「あの娘のとこだね!」

 

ということで穂乃果と紅葉は今度は2人で真姫にもう1度作曲を頼むため、1年生の教室へと向かったのだが・・・・・・既に放課後ということもあり、教室には誰もいなかった。

 

「あぁ~、誰もいない」

「一足遅かったかもな」

 

すると穂乃果と紅葉の後ろから「にゃん?」という声が聞こえ、穂乃果は普通に振り返ったのだが・・・・・・なぜか紅葉はそこから飛び退くように離れて思わず身構えてしまう。

 

「なにしてるのお兄ちゃん?」

「ハッ! あ、いや・・・・・・そこの君の声が昔の知り合いと似ていたもんでな・・・・・・」

 

凛と穂乃果は紅葉の言っている意味が分からず「なにそれ?」と首を傾げ、紅葉は凛に「一応聞くけど君パーテルって名前じゃないよな?」と尋ね、それに対し彼女は「凛は凛だにゃ」と答えた。

 

「そんなことよりも、ねえ君、あの娘知らない?」

「あの娘・・・・・・?」

「西木野さんのことですよね? 歌の上手い」

 

すると、凛の後ろにいた花陽がおずおずと穂乃果の質問に答え、穂乃果は花陽に「もう流石に帰っちゃったかな?」と問いかけると今度は凛が「音楽室じゃないですか?」と答える。

 

また凛が言うには真姫はみんなとはあんまり話さない娘らしく、休み時間も何時も図書館で放課後は何時も音楽室にいるというのだ。

 

(それボッチって言うやつじゃ・・・・・・)

「そっか、分かった! ありがとう!! 行くよお兄ちゃん!」

 

穂乃果は紅葉の腕を掴んで引っ張り、音楽室に行こうとするのだが・・・・・・そこで花陽が「あの!」と呼び止め、穂乃果は花陽の方へと振り返る。

 

「が・・・・・・頑張ってください! アイドル・・・・・・」

「あっ・・・・・・うん!! 頑張る!!」

 

花陽に応援され穂乃果は満面の笑顔でガッツポーズをして頷き、彼女は紅葉の腕を引っ張りながら音楽室へと向かうのだった。

 

2人は音楽室へと向かうとそこではまた真姫が歌をピアノを弾きながら歌っており、歌い終わった真姫は教室の扉を見ると前回と同じようにまた拍手してる穂乃果と紅葉がいたことに驚き思わず「ヴェエ!?」と声をあげてしまう。

 

「何の用ですか?」

「やっぱり、もう1回お願いしようかと思って」

「今度は俺からも頼むよ、作曲できないかな?」

「しつこいですね!」

 

そう言われて穂乃果は「あはは、海未ちゃんにもよくそう怒られるんだー」と苦笑いしてしまう。

 

「私、ああいうアイドルみたいな曲一切聴かないから。 聴くのはクラシックとかジャズとか」

「へぇー、どうして?」

「軽いからよ! なんか薄っぺらくて・・・・・・遊んでるみたいで」

 

それを聞いた紅葉は「見てもいないテレビ番組を批判してるみたいだ」と少し思い、また穂乃果も「私も最初はそう思ってんだー」と真姫に言い、穂乃果はスクールアイドルはお祭りみたいにパーッと盛り上がって楽しく歌ってれば良いかなと自分も思ってたいたと真姫に伝える。

 

「でもね、結構大変なの。 ねえ、腕立て伏せできる?」

 

唐突にそんなことを言われ、真姫は「はぁ!?」と声をあげるが紅葉と穂乃果に「あっ、できないんだー」というニヤけ顔にイラついた真姫は「それくらいできるわよ!」と言って上着を脱いで腕立て伏せをすることに。

 

(チョロい・・・・・・)

 

そして腕立て伏せをする真姫を見て穂乃果は「おぉー、すごい私よりできる!」と感心の声をあげ、真姫も「当然でしょ!」と自慢げな表情を見せるが・・・・・・。

 

「ねえ、それで笑ってみて?」

「えっ? なんで?」

「良いから!」

 

一応、穂乃果に言われた通り笑顔を浮かべてそのまま腕立て伏せをすぐに笑みが崩れてくる。

 

「やっぱり笑顔固定すんの難しいよな。 でも俺はできるけどな、12345678910!!」

 

一方で真姫の目の前で笑顔のまま腕立て伏せをする紅葉に、真姫は対抗しようとするが・・・・・・既に笑顔のまま30回腕立て伏せをしてからそれを終えて立ち上がる。

 

「な、なんであなたはそんな笑顔が意地できたまま腕立て伏せなんてできんのよ!」

「お兄ちゃんは運動神経がハルク並みに化け物染みてるから」

「それは言い過ぎだろ穂乃果」

 

穂乃果の言葉に少しショックを受ける紅葉だが、そんな彼は無視して穂乃果は真姫に「ねっ? アイドルって大変でしょ?」と言うが真姫にはこれがどうアイドルと関係するのかサッパリなため「なんのことよ!」と怒鳴る。

 

それから腕立て伏せを終わらせて立ち上がった真姫に海未が作詞した歌詞を「一度読んで見てよ?」と彼女に差し出す。

 

「だから私は・・・・・・!」

「読むだけなら良いでしょ? 今度聞きに来るから! その時ダメって言われたらスッパリ諦める!」

「・・・・・・答えが変わることはないと思いますけど」

 

真姫はそう言って一応歌詞を受け取り、穂乃果は「だったらそれでもいい! そしたらまた歌を聴かせてよ!」と言われて真姫は「えっ?」と首を傾げる。

 

「私、西木野さんの歌大好きなんだ」

「うん、確かに綺麗な歌声だったしな、俺も結構好きだよ?」

「だよね! あの歌とピアノを聴いて感動したから、あなたに作曲お願いしたいなぁーって思ったんだ!」

 

それから紅葉と穂乃果は毎日朝と夕方で神田明神でトレーニングしてるかるから良かったら遊びに来て欲しいと言い残して2人は音楽室を出て行くことに。

 

「・・・・・・」

 

真姫は2人が出て行ったのを確認すると彼女はジッと歌詞が書かれた紙を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果、海未、ことりは放課後も神田明神で基礎体力を作るための練習をすることになったのだが・・・・・・3人とも家に取りに行くものがあったため全員一度家に帰ることとなった。

 

また紅葉もまたなにか用があるということで4人は一度それぞれ別れることになったのだが・・・・・・、家に帰る途中穂乃果は前回一緒にオーブとの戦いを見ていた男性・・・・・・ラグナが目の前を歩いているのを発見。

 

穂乃果は一応、話しかけるべきかどうか悩んだが・・・・・・。

 

(そうだ! あの人にもできればライブに来てくれるようにお願いしよう! これもなにかの縁だし!)

 

別にライブを見に来れるのは学校内の生徒だけという訳ではなく、普通の一般人なども見に行けることは見に行けるため、彼女はここで会ったのもなにかの縁だと思い、まだ約束の時間まで結構あるのでライブを見に来てくれるように頼もうとラグナの後を追いかけていった。

 

のだが・・・・・・追いかけていたラグナの姿を穂乃果はいつの間にか見失ってしまい、気づけば周りに人気は無く、目の前に立体駐車場があるだけ。

 

穂乃果はラグナがどこに行ったのだろうとチョロチョロ辺りを見回すと丁度ラグナが駐車場の中へと入って行くところを目撃し時間がないので帰ろうかと思ったが・・・・・・。

 

(海未ちゃんに怒られちゃうかもだけど1人でもお客さんここでゲットはしておくべきだし、よし行こう!)

 

そう判断して穂乃果はラグナの後を追いかけて駐車場の中へと入っていくとラグナは階段を使って地下1階へと向かいある程度進むとそこでラグナはやっと立ち止まり、穂乃果はそこで声をかけようとしたのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・ゴモラ」

 

ダークリングと怪獣カードを取り出し、ゴモラのカードをリードさせるとカードは黒い煙のようなものに包まれて地面の中へと吸い込まれていく。

 

「っ!?」

 

その光景を見た穂乃果は思わず声を出しそうになるが・・・・・・すぐに両手で口を押さえて声が出るのを堪え、彼女は物陰からじっと様子を伺うことに・・・・・・。

 

(えっ!? なにあれ・・・・・・!? なんなの、あの人・・・・・・?)

 

穂乃果は先ほどの光景に驚いていると突如、自分の持っていたスマホに電話がかかってきて音が鳴り響き彼女は慌てて電源を切ろうとするのだが間違って通話に出るボタンを押してしまう。

 

『穂乃果! もう練習の時間ですよ! なにしてるんですか!?』

 

相手は海未からだったが穂乃果は「ごめん海未ちゃん!」と心の中で謝りながらすぐに携帯を切り、嫌な予感がした穂乃果はすぐにそこから逃げだそうとしたが・・・・・・。

 

「やあお嬢さん! またお会いしましたね?」

「ひゃあ!?」

「痛っ!?」

 

いきなり肩に顎を乗せてくるものだから穂乃果は思わず振り返りざまにラグナの頬を「パシーン!」と引っぱたいてしまい、すぐにラグナから逃げようと走り出すがラグナに腕を掴まれてあっさりと捕まってしまい穂乃果は抵抗するが力が強く振りほどくことができない。

 

「やだ離して!」

「こういう時はなんて言うか、お嬢さんは知ってるかな? 『見られたからには消えて貰おう』って言うんだぞ・・・・・・? クハハハハハア! ハァーハァ!! ゲホゲホッ!?」

 

また笑いすぎて思わずラグナは咳き込んでしまうがラグナはすぐに邪悪な笑みを浮かべて掴んでいる穂乃果の腕にさらに力を入れていく。

 

「痛い痛い! 離してぇ!!」

「おい!!」

 

その時、ラグナや穂乃果に取って聞き覚えのある声が聞こえ、2人は声のした方へと視線を向けるとそこには紅葉が立っており、穂乃果は紅葉を見て嬉しそうに「お兄ちゃん!」と呼んだ。

 

「俺の可愛い妹を離せ。 そいつを少しでも傷つけてみろ、アンタを許さない・・・・・・」

「お兄ちゃん、この人と知り合いなの・・・・・・?」

「妹? そうか、お前が紅葉の妹だったのか・・・・・・。 フヒヒヒヒ! 中々可愛らしい妹じゃないか、なぁ紅葉?」

 

ラグナは嫌らしい手つきで穂乃果の頬を撫でると穂乃果は「ひぃ!?」と怯えた表情で目尻に涙を浮かべるが・・・・・・その瞬間、ラグナは穂乃果の両肩を掴んで紅葉に向かって放り投げ、紅葉は放り投げられた穂乃果を両手で受け止める。

 

「大丈夫か穂乃果!?」

「う、うん、大丈夫だよ・・・・・・お兄ちゃん、ちょっと怖かったけど・・・・・・」

 

するとラグナは新たな怪獣カードをリードしてカードが地面の中へと吸い込まれると地響きが鳴って建物が揺れ始め、紅葉は穂乃果を抱きかかえてすぐに建物から急いで出て行く。

 

建物から抜け出すと同時に駐車場は地面の中へと沈み、それを見た紅葉は「クソ!」と悪態をつく。

 

「あうぅ・・・・・・。 お、お兄ちゃんもう降ろして・・・・・・?」

 

そこで穂乃果がお姫様抱っこの状態なためか恥ずかしそうに顔を赤くし、紅葉は言われた通り穂乃果を降ろす。

 

取りあえず、海未かことりに連絡して穂乃果を迎えに来てくれるように頼んだ後、紅葉は「あの野郎を止めに行く」とだけ言って穂乃果の制止も聞かず足も速いためすぐにいなくなってしまいラグナを追いかけてどこかへと行ってしまった。

 

「もう! お兄ちゃんのバカ!」

 

紅葉はラグナをくまなく探すが中々姿を見つけることができず、一方でラグナは最後の龍脈のある場所へと辿り着いており、ラグナは怪獣カードを2枚ダークリングにリードして最後の龍脈を破壊する。

 

「紅葉、お前のメロディーよりも良い音色を聞かせてやる、魔王獣の雄叫びをな!!」

 

そしてラグナはすぐその場から出て行きその瞬間、そこにあった建物は沈み・・・・・・獣のような大きな雄叫びが聞こえると4つの龍脈があった中心部分が赤く輝きだし・・・・・・そこから「土ノ魔王獣 マガグランドキング」が出現し復活したのだ。

 

「グアアアアアアアアアアア!!!!!」

「クソッ! 間に合わなかったか・・・・・・!」

 

マガグランドキングが復活し、それに対して紅葉もオーブリングと2枚のカードを取り出し、オーブリングに2枚のカードをそれぞれリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

するとカードは光の粒子となり、それが光の巨人・・・・・・「ウルトラマン」が姿を表す。

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

さらに紅葉は別のカードを新たに取り出してそれをリードさせると同じようにカードは粒子となり、超古代の光の巨人「ウルトラマンティガ」が姿を現す。

 

「光の力・・・・・・お借りします!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

そしてオーブリングを高く掲げるとオーブリングの左右が展開され、ウルトラマンとティガの姿が紅葉を中心に重なり合い紅葉はウルトラマンとティガの姿を合わせたような形態・・・・・・「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身したのだ。

 

『俺の名はオーブ! 闇を照らして・・・・・・悪を討つ!!』

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

オーブは身体の紫の部分を発光させると「ティガ スカイタイプ」の力を一時的に引き出して高速でマガグランドキングに接近し、マガグランドキングは接近してきたオーブに腕を振るって殴ろうとするがオーブはスカイタイプの力で素早く回避し、身体の赤い部分を発光させ「ティガ パワータイプ」の力を一時的に引き出し、力強い拳による攻撃をマガグランドキングの頭部に叩きこむ。

 

『シュア!!』

「グルルルル!! グアアアアア!!!!」

 

しかしマガグランドキングの装甲はとてつもなく堅く、スカイタイプとパワータイプの力を交互に使い分けてマガグランドキングの攻撃を避けながら自分は攻撃を当てていくが・・・・・・マガグランドキングには攻撃が一切通じていない。

 

「わわわ! 海未ちゃんにことりちゃんオーブの攻撃が全然あの怪獣に通じてないよ!」

 

またオーブの戦いの様子を穂乃果と、紅葉の連絡を受けて穂乃果と合流した海未とことりが離れた場所で見ており、穂乃果はこのままではオーブが負けてしまうのではないかと不安になるが・・・・・・。

 

「あの堅い装甲をどうにかできれば勝機はあると思うのですが・・・・・・」

「でも、どうやって?」

 

オーブはマガグランドキングの頭を掴んで膝蹴りを叩きこむがやはりマガグランドキングには大したダメージはなく、全身からのエネルギー放出によって周囲を吹き飛ばす「マガ一閃」を繰り出し・・・・・・至近距離でそれを受けたオーブは身体中から火花を散らして吹き飛ばされてしまう。

 

『グアア!?』

 

倒れ込んだオーブを踏みつけようとするマガグランドキングだったが、オーブはスカイタイプの能力で地面を転がって攻撃を回避し、立ち上がると同時にエネルギーを単発チャージではあるが両腕を十時に組んで放つ必殺光線「スペリオン光線」をマガグランドキングに放ち・・・・・・直撃を受けるマガグランドキングだったが・・・・・・。

 

マガグランドキングは両腕を振るって光線をかき消してしまい、お返しとばかりに胴体から「マガ穿孔」というレーザー光線をオーブに向かって放ち、オーブは紙一重で避けるがオーブの後ろにあったビルがマガ穿孔によって貫かれ、ビルには巨大な丸い穴が空いてしまう。

 

マガグランドキングはさらにマガ穿孔をオーブに撃ち込んで行き、オーブはどうにか避けていくが・・・・・・遂には一発マガ穿孔を喰らってしまい、オーブは大ダメージを受けて吹き飛ばされてしまう。

 

『シュア!?』

 

倒れたオーブに容赦なくマガ穿孔をオーブへと撃ち込んで行き、オーブは素早く立ち上がってどうにか避けるがマガグランドキングは執拗にオーブを狙ってマガ穿孔を放ち、オーブは咄嗟に両手を広げて「スペリオンシールド」というバリアを張り巡らせてマガグランドキングの攻撃を防ぐ。

 

『グウ・・・・・・ウォ・・・・・・!?』

 

その時、オーブはスペリオンシールドがマガグランドキングの放つマガ穿孔が反射していることに気づいたオーブはスペリオンシールドが砕ける前にシールドの位置を調整し、マガ穿孔そのものを跳ね返してマガグランドキングに喰らわせようとする。

 

しかし、マガグランドキングの放つマガ穿孔の威力はかなりのものであるため、オーブは中々位置調整ができずこのままではマガ穿孔を跳ね返す前にシールドが砕けてしまうと思ったオーブだったが・・・・・・。

 

「オーブ頑張れえええええええ!!!!」

 

自分を応援する聞き覚えのある声が聞こえ、オーブは顔だけを声のした方へと向かせるとそこでは穂乃果が手を振って自分に声援を送っていたのだ。

 

「頑張ってオーブさん!!」

「頑張ってください!!」

 

さらに穂乃果だけではなく、海未やことりもオーブに声援を送り・・・・・・オーブはそれに応えるように頷く。

 

『根性・・・・・・根性・・・・・・!! ど根性ォ!!!!! ファイトだ!! 俺ええええええええ!!!!!』

 

オーブがそう叫ぶと同時にマガグランドキングの放っていたマガ穿孔はオーブがシールドの位置をどうにか調整したためマガグランドキングにそっくりそのまま跳ね返り、マガグランドキングの腹部に直撃し・・・・・・マガグランドキングに巨大な丸い大穴が空いた。

 

そしてオーブはその大穴に向かって右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを貯めた後、両腕を十時に組んで放つ必殺光線「スペリオン光線」を撃ち込む。

 

『スペリオン光線!!』

「グル・・・・・・ギシャアアアアアア!!!!?」

 

スペリオン光線を内部から受けたマガグランドキングは身体が膨れあがり、爆発して粉々に吹き飛び・・・・・・オーブはマガグランドキングが倒されたことを確認するとオーブは空へと飛び立っていくのだった。

 

それからオーブは紅葉の姿へと戻り、マガグランドキングの破片がある場所へと向かうとそれにオーブリングをかざし、その破片が粒子となり・・・・・・1枚のウルトラマンのカードへと変わった。

 

「やはり封印していたのはウルトラマンタロウさんの力でしたか! お疲れ様です!」

 

紅葉が笑みを浮かべて「ウルトラマンタロウ」のカードに向かってそう言うと紅葉はカードホルダーへとしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから・・・・・・穂乃果とスクールアイドルの話をしたせいか、彼女たちがアイドルをやるためにどんな活動を行っているのか少し気になった真姫は先ほど穂乃果に言われた神田明神へと向かい、そこを影からこっそり覗くとそこには階段の上でへばっている穂乃果やことりの姿があり、海未は「まだ2往復残ってますよ!」と言って2人を叱っているところだった。

 

紅葉はなにか用でもあったのか見当たらない。

 

するとそこに真姫の背後からこっそりとある人物が近づき・・・・・・そして・・・・・・。

 

「きゃーーーーーー!!!!?」

 

その人物に胸をわしわしされて思わず真姫は叫び声をあげてしまった。

 

尚、真姫をわしわししたのは巫女服姿の希であり、丁度遅れてそこにやってきた紅葉が真姫の胸をわしわししてる希に呆れたような視線を向ける。

 

「アンタ、なにしてんだよ・・・・・・」

「な、な・・・・・・本当になにすんのよ!!?」

 

顔を真っ赤にして真姫は希の腕を振り払って彼女から離れ、紅葉は希に「女性同士でも痴漢は捕まりますよ?」と言うが希は「こんなんスキンシップやん♪」と笑って言葉を返す。

 

「それにしても、君はまだ発展途上といったところやな? でも望は捨てなくて大丈夫や、大きくなる可能性はある!」

「なんの話!?」

「恥ずかしいなら、こっそりと言う手もあると思うんや」

 

恐らくだが・・・・・・いきなり話が変わったことに真姫は「だからなに!?」と不機嫌そうに希に言い放つが・・・・・・希は「分かるやろ?」とだけ言い残してその場を去って行った。

 

「希先輩って・・・・・・なんか変わってますね」

「君に言われたくないわ~」

 

最後に紅葉とそんなやり取りを残して。

 

「さてと・・・・・・おーい! みんな差し入れ持って来たぞー! ほらラムネ!!」

 

そして紅葉はキンキンに冷えてるラムネを穂乃果達へと持って行くのだった。

 

翌朝、雪穂がポストに「μ'sへ」と書かれた封筒を発見し、それを受け取った穂乃果は学校で海未やことり、紅葉と一緒に学校の屋上へ行ってノートパソコンに封筒に入っていたCDを再生すると1つの曲が再生された。

 

「これって・・・・・・この歌声と歌詞・・・・・・」

 

歌詞は間違いなく海未が書いた作詞のものであり、曲を歌っているのも間違いなく真姫であり、穂乃果達はちゃんとした歌になっていることに驚き同時に感激した。

 

「私達の・・・・・・」

「私達の・・・・・・」

 

これによってさらにやる気を出した穂乃果は勢いよく立ち上がる。

 

「よし、練習しよう!」

「「うん!!」」

 




紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!」

穂乃果
「いぇーい!(パチパチ」

紅葉
「みんな分かったかな今回のサブタイが隠れてる場所!」

穂乃果
「今回はお兄ちゃんが言ったウルトラマン第22話『地底破壊工作』だよ!」

ラグナ
「これは俺と紅葉の会話の中にあった台詞だ」


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第3話 『入らずの森の魔王獸』

水ノ魔王獸 マガジャッパ
一角超獣バキシムデストロイヤー
悪質宇宙人 メフィラス星人ノストラ
暗殺宇宙人 ナックル星人ナグス
幻覚宇宙人 メトロン星人タルデ
光波宇宙人 リフレクト星人レクター
水棲怪人テペト星人 テルス
登場。



ある日、絵里は各高生徒会代表による連絡会に特に報告するような重要なことも無かったので今日は1人で来ており、連絡会が終わると彼女は書類を纏めてすぐに帰ろうとしたのだが・・・・・・。

 

その時、UTXの生徒会長が絵里に向かって話しかけてきたのだ。

 

「あら、絢瀬さん。来てくれてよかったわ、今日はお一人?」

「えぇ、今日はウチの方からは報告することがなかったから」

「そう、なら良かった。 実はこの前も音ノ木坂からUTXに生徒の編入手続きがあってね? 1年生ですごく可愛い子よ。 だから、生徒会の方もてっきり絢瀬さん一人になっちゃったんじゃないかって心配しちゃった」

 

どことなく・・・・・・いや、明からに相手を見下したような態度でそう発言するUTXの生徒会長に絵里は思わずイラっとしてしまうが・・・・・・。

 

「そんなことはないわ。 少なくとも生徒会を維持できるくらいは人はいるし、私達はこれからも現役で活動していくつもりだから。 ご心配、ありがとう。 ウチからそっちに移った生徒のことよろしくね?」

 

と絵里はこのように特に感情的になることもなく冷静に返し、相手も絵里が想像していた反応と違ったせいか少しだけ動揺したような様子を見せる。

 

「そう言えば、学園祭の日程はいつにずらす事になったのか決まったの?」

「・・・・・・? 別に学園祭の日程についてそんな話は出てないけど? 学園祭は予定通りに・・・・・・」

 

するとUTXの生徒会長は「えぇ!?」とワザとらしく驚いたような声をあげ、UTXの生徒会長が言うにはそのまま予定通りに進めばUTXの学園祭と日時がそっくり被ってしまうらしく、UTXの生徒会長は新年度初めての連絡会がそのことが分かって絵里はてっきり予定を変更するのだろうと思っていたらしい。

 

「だって同じ日に開催したりしたら私達は良いけど音ノ木の方が集客が・・・・・・」

 

言葉だけなら音ノ木坂のことを心配しているように聞こえるだろうが、UTXの生徒会長の顔はどことなく人をバカにするような笑みを浮かべており、他のUTXの生徒会の生徒2人もクスクスと笑っている。

 

「なにそれ、私達の方がお客さんが集まらなくて困るって・・・・・・そういうこと!? UTXにお客を取られて・・・・・・!!」

「別に、そこまで言ったつもりはないけど、ウチの方は年々来客数が増えてて、もう今年から入場制限の話も出てるくらいなの。 だから、同じ日に同じ地区でやって音ノ木坂がガラガラになったら私達申し訳ないなっておm・・・・・・」

 

すると、その時のことである。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!!」

 

とか言いながら紅葉が扉を開けていきなり部屋に入ってきたのである。

 

「「「「はっ・・・・・・?」」」」

 

あまりの突然の出来事に、UTXの生徒会の3人と絵里は突然のことについて行けず思わず素っ頓狂な声をあげてしまうが・・・・・・絵里はブンブンっと首を振って「あなた、何しに来たのよ!?」と苛立った様子で紅葉に向かって声をあげ、その様子は旗から見れば紅葉に八つ当たりしてるように見えるが、UTXの生徒会長達にあんな風に煽られた後では仕方が無いのかもしれない。

 

「っていうか呼ばれて飛び出てとか別に呼んでないし!!」

 

いや、そこをツッコムのか、ツッコムポイントがちょっと違くないかとUTXの生徒会長は思ったがそんな彼女等のことなどお構いなしに部屋にズカズカと入ってくる紅葉。

 

「まぁ、それよりもだ。 さっきから部屋の外で黙って聞いてれば、随分とウチの学校のことを散々言ってくれますね」

「あら、別に私達はそんなつもりは・・・・・・」

「無かったとしても、そう聞こえるんですよ俺達には。 生徒会長っていうのは生徒の模範になるような人のことじゃないんですか? そうやってバカにしたように笑うような態度が生徒の模範になるんですかね? ウチの学校は確かにそちらの学校と比べれば大きく劣ってるかもしれません、ですがそれを見下すような態度や発言は生徒会長としてどうなんでしょうか?」

 

紅葉にそう言われてUTXの生徒会長は「別に私達は見下してるつもりはない」と言おうとしたのだが、それを言うよりも先に紅葉が口を開いた。

 

「『見下してるつもりはない』とでも? ですが周りから見れば十中八九そうは見えないと思います。 名門であるUTX学院の生徒会長なのですから、そういった態度や発言は気をつけるべきだと思います」

 

紅葉は取りあえず相手に喋る隙を与えず、「じゃあ帰りましょう絵里先輩!」と彼女の腕を掴むと、絵里は「ちょっと!?」と驚くが紅葉は構わず引っ張ってそそくさと部屋から出て行こうとするのだが・・・・・・一度扉の前で立ち止まってUTXの生徒会長達に振り返ると・・・・・・。

 

「あ、後・・・・・・文化祭ですけどあなた達が思っている以上に人が来るかもしれないですよウチ? なんせウチの学校には切り札がありますから!」

 

紅葉はそれだけ言い残して今度こそ絵里と共に部屋から出て行き、残されたUTXの生徒会長は先ほどまでの態度とは打って変わりイライラした表情を浮かべており・・・・・・「なんなのよアイツは!!」と怒鳴りあげるのだった。

 

 

 

 

 

UTX学院を出てからしばらく紅葉と絵里は2人で同じ道を歩いており、絵里は紅葉のおかげで先ほどまであったイライラは解消してスッキリしたものの正直、彼に助け船を出されたのは絵里にとっては複雑な心境だった。

 

そもそも・・・・・・なぜ生徒会でもない彼があの場所にいたのかと尋ねると絵里にどうしても渡したいものがあったらしく、副会長の希に聞いたらUTXで開かれる連絡会に行ったと言われたため、ワザワザここまでやってきたらしい。

 

「っていうか、あなた一体どうやって入ってきたのよ?」

「受付の人に聞いたらあの部屋の前までワザワザ案内してくれました」

 

それを聞き、なんだかどっと疲れてしまった絵里は「はぁ・・・・・・」と一度溜め息を吐く。

 

「それで私に渡したいものってなに?」

 

少し怪訝そうに絵里が紅葉に尋ねると彼は右手に持っていた袋を絵里に差し出したのだ。

 

「これウチの和菓子の名物のほむまんです! 良かったらこれお礼に! 生徒会の皆さんで是非食べてください!」

 

満面の笑顔で差し出されるその袋を見て絵里は「はい?」と訳が分からず、ついつい彼女は思わずそれを受け取ってしまい、彼女は「お礼? なんのお礼なのよ?」と首を傾げる。

 

「いえ、なんか色々生徒会長には無理言っちゃったみたいですから。 講堂を借りる件とか、生徒会長の反対を押し切って穂乃果達がスクールアイドルやろうとしてることとか、色々迷惑かけてるみたいなんでそのお礼とお詫びです!」

「お礼にお詫びって・・・・・・」

 

別にお礼をされるようなことなんてなにもしていないと思う絵里だったが、折角持って来てくれた上にそんな良い笑顔で渡されたのでは拒否できる訳も無く、絵里は素直にそれを受け取る。

 

「まぁ、一応ありがたく頂いておくけど・・・・・・こんなことしたって私はスクールアイドル活動を認めるつもりはないわよ?」

「構いませんよ、今日はお礼がしたかっただけですから! あと、もし気に入って貰えたなら今度は是非ともお客様としてウチに来てくださいね!」

 

「いや、お店の宣伝しに来たのあなた?」と呆れた視線を紅葉に向ける絵里、とその時・・・・・・。

 

「あれ? えりちに紅葉くんやん?」

 

とある大きな公園の入り口前を通りかかった時、偶然にも帰宅途中の希とバッタリ会い、希は絵里と紅葉を交互に見るとニヤニヤとした笑みを浮かべる。

 

「おんや〜? もしかしてえりちったら後輩とデート中やったん?」

「ちょっと希、変な冗談言うのやめてくれる?」

「もう、ツレへんな〜えりちは」

 

するとその時、紅葉と絵里の前に1つのボールが転がってきた。

 

公園の中を見ると公園の中には複数の少年少女がそこで遊んでおり、その内の1人の少女が「すいませーん! ボール取ってください!」と手をあげながら言ってきてるのが見え、紅葉は笑みを浮かべてボールを拾い上げると少年に向かってボールを投げ返す。

 

少女はボールを受け取ると「ありがとうございます!」と頭をぺこりと下げて友達の元へと戻っていくのだった。

 

「あっ、そう言えばえりちに紅葉くん知っとる? この公園の中にある森の噂」

「噂・・・・・・?」

「うん、なんでも昔から色々と言われてたみたいでな〜。 その森はなんでもさる方の高貴なお墓だって言う言い伝えがあって江戸時代から入らずの森と言われて1度入ると誰も出てこれなくなるんやって。 しかも最近ではこの森の中に入っていくUFOを目撃したなんて話も・・・・・・」

 

紅葉は希のその「入らずの森」の話を興味深そうに聞いていたのだが・・・・・・紅葉がふっと隣に立つ絵里を見ると僅かにだが肩が震えており、少し顔が引き攣っているように見えた。

 

「・・・・・・会長、もしかして・・・・・・」

「えっ? なによ? べ、別に幽霊なんて信じてないわよ私は? ムー大陸はあると信じてるけどね」

「・・・・・・あっ、森の方に足のない女が手招きしてる」

 

紅葉は公園の中にある森の方に指差しながらそう言うと絵里はその辺にあった自販機のジュースが出てくるところに慌てて頭から入ろうとする。

 

「・・・・・・なにしてんのえりち?」

「いや、あの・・・・・・ムー大陸の入り口が・・・・・・」

「会長クールな人だと思ってたけど・・・・・・意外とかわいい一面あるんですね」

 

紅葉にそう言われると絵里は顔を真っ赤にし、怒鳴りあげるように紅葉に反論する。

 

「うるさい!! 幽霊なんて怖くないしそもそも信じてないし!! ムー大陸の入り口あると思ったから自販機に頭突っ込んだけよ!!」

 

とかなり苦しい言い訳をする絵里に紅葉は思わず笑ってしまう。

 

ちなみに希はそんな絵里と紅葉のやり取りを見て必死にお腹を抱えて笑うのを堪えている。

 

「希はなに笑ってるのよ!?」

「い、いやだって・・・・・・ムー大陸の入り口があっても普通頭突っ込まんやろって・・・・・・くふっ・・・・・・!」

「あなたがあんな話するからでしょ!?」

 

紅葉はまさか絵里にこんな一面があると思わず、希のおかげでなんとなく少しだけ絵里と仲良くなれた気がしてどこか嬉しい気持ちになるのだった。

 

だが・・・・・・ただ1つ気になるのは先ほどの希の言っていた話で出てきた「UFOを目撃した」という話・・・・・・幽霊の目撃情報はどうか知らないがもしかしたら宇宙人があの森の中に潜んでいるのかもしれない。

 

念のために調べる必要はあるだろうが・・・・・・先ずはあの森の中に入って直接確かめるよりあの森についての情報から集めるべきだろうと考えた紅葉は希にもう少し詳しい話を彼女から聞くことにしたのだった。

 

ただ絵里はこれ以上聞きたくないようなのでそこで別れて早足に帰って行ったが。

 

 

 

 

 

その頃。

 

とある宇宙船の中にて・・・・・・。

 

そこでは玉座のような椅子に座る「悪質宇宙人メフィラス星人 ノストラ」を始めとした4人の宇宙人・・・・・・「暗殺宇宙人ナックル星人 ナグス」と「幻覚宇宙人メトロン星人 タルデ」「水棲怪人テペト星人 テルス」「光波宇宙人リフレクト星人 レクター」が集まっていた。

 

『では、状況を聞こう』

『はっ、偉大なるドン・ノストラ。 私とレクターで行っていた幻覚タバコ作戦ですが・・・・・・』

『喫煙者の減少により計画は遅々として進まず・・・・・・作戦は中止にせざる終えないかと・・・・・・』

 

それを聞いてノストラは溜め息を吐き、そんなノストラを見ていっそのこと大暴れした方が手っ取り早いのではないかとナグスが提案するが・・・・・・。

 

『だが地球にはウルトラマンオーブがいるぞ? 奴をなんとかしない限りお前さんのお得意の殺戮と破壊はできないのではないか? だからこうして細々とした作戦を・・・・・・』

 

テルスの言葉にナグスは「あぁもううっせえなぁ!! 分かってんだよんなこたぁ!」と怒鳴りあげるが・・・・・・その時、ナグス達は誰かが宇宙船の中に入ってきたのを感じ取り、ナグスは「誰だ!?」と警戒しながらホルスターから光線銃を引き抜いて気配のした方へと素早く構える。

 

そして、ナグスの銃の先にいたのは・・・・・・ラグナだった。

 

ラグナは不気味な笑みを浮かべて「惑星侵略連合」であるノストラたちに挨拶をしようと口を開くのだが・・・・・・。

 

「惑星侵略れんごぶぅ!!?」

 

唇を「ガリィ!」と噛んでしまい、ラグナは涙目になりながら口元を押さえつつも「わ、惑星連合の皆さん、お初にお目にかかります」と挨拶する。

 

『いや、挨拶は良いんだけど大丈夫かお前? 涙目だぞ?』

『よく見るとちょっと口から血出てますね。 『ガリィ!』って言いましたよ』

 

ナグス達の言葉に対し、ラグナは「ご心配なく」とナグスとレクターに言葉を返した後、ノストラが「君の噂は聞いている。 なんの用だ?」と問いかけてくる。

 

「えぇ、何やらオーブのことで思い悩んでいるそうなのでちょっとばかし手助けをと思いましてね。 あなた方に、魔王獣のお力をお貸ししましょう・・・・・・クフフ・・・・・・!」

 

 

 

 

その日の夜、紅葉は夢を見ていた。

 

光輝く巨人と光ノ魔王獣マガゼットンと激闘を繰り広げる夢・・・・・・そして、巨人の放った光線によって周囲が爆発し辺り一帯が焼け野原となった光景・・・・・・。

 

大切なものを守れなかった、それどころか・・・・・・自分がその大切なものを壊してしまったという事実、それに耐えきれず叫ぶ自分の姿・・・・・・。

 

そして・・・・・・。

 

「くぴー・・・・・・」

(・・・・・・なんか目覚めたら天使がいるんだけど)

 

目の前に飛び込んできたやたらと可愛らしい寝顔・・・・・・というか穂乃果の寝顔である。

 

どうやら紅葉はそこで目を覚ましたらしく、目を開けたらなぜか自分の隣で穂乃果が眠っていたのだが・・・・・・まぁ、なんとなく大体予想はできる。

 

恐らくトイレかなにかに行って自分の部屋に戻ろうとしたのだろうが寝ぼけていたせいで間違えて自分の部屋に入ってきてそのまま自分と同じベッドの中に入ってきたのだろう。

 

というか割とこういうことがよくあるし、穂乃果のことだから部屋が間違ってることに気づいたとしてもそこからまた部屋に戻るのが面倒だと思ってそのままベッドの中に潜り込んだのだろうと紅葉は考えたが・・・・・・正直悪い気はしなかった。

 

「ちょいとばかし、悪い夢見てたからな。 お前のおかげで朝からテンション下がるなんてことはなさそうだ」

 

しかし、悪夢を見たのと穂乃果が自分のベッドの中に潜り込んだせいか少しばかり汗をかいてしまい、外を見ればもう朝なので眠気覚ましにシャワーを浴びようとベッドから起き上がり部屋を出ようとするのだがパジャマの袖を穂乃果がグイっと引っ張って引き止められてしまう。

 

「むにゃ・・・・・・お兄ちゃぁ〜ん」

「・・・・・・可愛いから写真撮っとこう。 あとで海未とことりにも送ってやろう」

 

穂乃果の手をそっと離させてパシャリとスマホで穂乃果の寝顔の写真を撮った後、ことりと海未にも写真を送信。

 

しばらくすると2人から「b(グッ」と書かれた文字だけが返信されてきた。

 

それから紅葉は汗を洗い流すために風呂場へと行き、服を脱いでシャワーを浴びようとしたのだが・・・・・・。

 

「ってなんか臭いな。 なんだこの臭い? シャワー壊れちまったのか?」

 

一度シャワーの水を止めて一度風呂場を出て持って来ていた服に着替えるとシャワーが壊れたことを両親に伝えようと居間にいるであろう母と父の元へと向かったのだが・・・・・・。

 

「って臭!? 紅葉アンタどうしたのその臭い!?」

「えっ?」

 

紅葉は自分の身体をクンクンと匂うと確かに少し臭いが・・・・・・。

 

母のようにそこまでオーバーなリアクションをするほどの臭さだろうかと紅葉は疑問に感じたのだが、・・・・・・よくよく考えれば自分にとっては「この程度」の臭いだとしてもこの匂いは普通の人間ならば確かに耐えられる臭さではないことに紅葉はそこで気付いた。

 

「お、お兄ちゃんシャワー浴びに行ったのになんで逆に臭くなってんのさ!?」

「いや、なんかシャワーが壊れたみたいで・・・・・・」

 

両親と一緒に雪穂に近寄って説明しようとする紅葉だったが・・・・・・。

 

「うぷっ! ゲホゲホ! ちょっ、お兄ちゃんごめんあんまり近づかないで!! 幾ら何でも臭すぎる!」

 

雪穂にそう言われた瞬間、紅葉は「ガーン!」と頭に鈍器でもぶつけられたかのようなショックを受け、顔を俯かせて部屋の隅っこに行き膝を抱えてどこぞの鏡の騎士ばりの体育座りをする。

 

「う、うぅ・・・・・・! 雪穂に近づくなって言われた、臭いって言われた・・・・・・ううぅ・・・・・・!」

「ちょっ、泣かないでよお兄ちゃん!? ごめn・・・・・・って臭ッ!?」

 

あまりにもショックを受けすぎてる紅葉の姿を見てすかさず雪穂は謝ろうと思わず紅葉に近づいてしまったため、彼女は思わず鼻を摘まんでまた「臭い」と言ってしまい、それを受けて紅葉はさらに「ずーん」という効果音が聞こえそうなくらい落ち込んでしまう。

 

そんな時、「ふぁ〜」と眠たそうに欠伸をしながら穂乃果が居間へと丁度入ってきて穂乃果の姿を見た紅葉はきっと穂乃果なら雪穂みたいに「臭い」とストレートに言わない筈だ、きっと優しく受け止めてくれる筈だこの傷つけられた心を癒やしてくれる筈だと期待したのだが・・・・・・。

 

「って臭ッ!? なにこの匂い!? 一気に目が覚めたんだけど・・・・・・!?」

 

自分に取って最後の希望とも言える穂乃果にも「臭い」と言われてしまい、ますます紅葉は落ち込んで部屋の隅っこに再び体育座りをしてしまい、それを見た穂乃果は「まさか・・・・・・」と思い家族の面々と視線を合わせると雪穂達は一斉に頷く。

 

「そうだよお姉ちゃん、この匂いは・・・・・・お兄ちゃんからしてるの・・・・・・」

 

鼻を摘まみ涙目になりながら雪穂は穂乃果にそう伝えると穂乃果はあわてふためき始める。

 

「あわわわわ!? 臭いなんて言ってごめんお兄ちゃぁーん!!」

 

慌てて穂乃果は紅葉に駆け寄って謝ろうとしたのだが・・・・・・あまりの悪臭に穂乃果は「臭ッ!?」と思わず鼻を摘まんでしまい・・・・・・。

 

しかもその際に足を滑らせて転んでしまい・・・・・・しかもその先が丁度紅葉の背中に抱きつく形となってしまった為、穂乃果は至近距離で紅葉から放たれる悪臭を結果的に嗅いでしまうこととなり・・・・・・彼女は「気絶」という名の深い眠りに再び入ってしまうのだった。

 

「きゅう〜」

「あああああ!!? お姉ちゃん!!?」

「ほ、穂乃果!!?」

「お、おい穂乃果しっかりしろ!!」

 

紅葉は気を失った穂乃果の身体を揺するが母に「むしろアンタが近くにいると逆効果だから今すぐ離れて!!」と悪気も悪意がないのも分かるが割と心にグサッとくることを言われて紅葉はまたも俯きながらすぐさま穂乃果から離れるのだった。

 

また一部始終を見ていた父はあたふたと慌てており、穂乃果も心配ではあるが心に大きくダメージを受けた紅葉も心配なため、父はどうすれば良いか必死に考えるが・・・・・・母が「穂乃果は私達に任せて紅葉の方に行ってあげて」と言われたため、父は紅葉を励まそうとポンッと彼の肩に手を置くのだった。

 

勿論、鼻を摘まみながらであるが。

 

「逆に辛くなるんだけど・・・・・・その励まし方・・・・・・」

 

紅葉にそう言われてその励ましが全くの逆効果であることに気付くと、父は「ガーン!」とショックを受けてしまうのだった。

 

それからというもの・・・・・・店から1ケース分くらいの消臭スプレーを買ってきてそれらを全てを使い切っても紅葉の身体に染みついた匂いは一向に取れることはなく全く効果がなかった。

 

そこで母が最後の手段として提案したのが・・・・・・。

 

「あの・・・・・・母さん? なにこれ・・・・・・?」

「なにって・・・・・・生姜だけど?」

 

紅葉の身体にはビッシリと生姜がそこら中に貼り付けられており、紅葉はだからなんで生姜なんだと疑問に思ったのだが母曰く「生姜には匂いを消す成分があるからね!」とのことらしいのだが・・・・・・それでもやっぱりまだ匂いが完全に取れることはなかった。

 

(そう言えば他のところも同じような現象が起こってるみたいなんだよな。 しかもこれだけやっても取れない匂い・・・・・・1つ心当たりがあるな。 仕方が無い、雪穂と穂乃果にこれ以上避けられないためにちょっくら行ってくるか!! つーか俺の考えた通りの奴が原因なら絶対この匂いの原因の奴をぶっ飛ばす)

 

 

 

 

 

 

それから数分後・・・・・・。

 

「・・・・・・」

 

絵里は今日は学校の休日で特にやることもなく久しぶりに街に出て最近学校のことやらなんやらで忙しかったため、全てを忘れて買い物でもしようかと思い外に出てきたのだが・・・・・・街の方に向かって歩いていると昨日も訪れた例の公園の前を通りかかり、昨日の希の話をなるべく思い出さないようにしてすぐに公園を通り過ぎようとしたのだが・・・・・・。

 

公園に・・・・・・しかも昨日希が話してた森の前に全身に生姜を身につけた不審者がいることに気がつき、しかもそれが見知った顔だったのだから彼女は思わず足を止めてしまった。

 

「あなた・・・・・・なにしてるの? そんな格好で・・・・・・?」

「おぉ! 生徒会長、どうしたんですか?」

「いや、どうしたって・・・・・・あなたの方がどうしたのよ? 全身生姜だらけなんだけどって臭ッ!?」

 

公園に入って紅葉の元へと駆け寄り話しかける絵里だったが、やはり絵里でも紅葉が発せられる匂いはキツいらしく、思わず鼻を摘まんでしまいそれに紅葉はまたショックを受け、隅っこの方で指でのの字を書き始めてしまう。

 

「どうせ・・・・・・俺なんか、臭いですよ・・・・・・。 かわいい妹達からも『お兄ちゃん臭い!』って言われて・・・・・・。 ここに来る途中に海未とことりにも会ったけどあいつ等にも悪気がないのは分かるけど臭いって言われて・・・・・・う、うぅ・・・・・・ぐすっ」

(意外にもメンタル弱ッ!?)

 

少し癪な気もするが謝ろうとした絵里だったがいきなり紅葉はスクッと唐突に立ち上がると「絶対になんとかしてやるからなぁ!!」と彼は叫びながら例の噂の森の中へと入っていくのだった。

 

「えぇ!? ちょ、ちょっと!?」

 

絵里の制止も聞かず、紅葉はズカズカと森の中へと入っていき・・・・・・それを見た絵里は追いかけるべきか悩んだが・・・・・・。

 

(って別に私がワザワザ彼を追いかけていく必要なんてないじゃな・・・・・・)

 

とそこで絵里は昨日希が言っていた「その森はなんでもさる方の高貴なお墓だって言う言い伝えがあって江戸時代から入らずの森と言われて1度入ると誰も出てこれなくなるんやって」という言葉を思い出し、絵里は「まさか」と思い思わずその森の中へと紅葉を追いかけて足を踏み入れてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

しかし・・・・・・。

 

絵里は紅葉を追いかけて森に入ったは良いもののあっという間に彼の姿を見失ってしまい、入って数分としない内に彼女は森の中で迷ってしまったのだった。

 

「ここどこよぉ・・・・・・」

 

しかも森の中ということもあって辺りは日が出てるにも関わらずそこそこ暗い。

 

絵里は「しかもここ暗いぃ〜」と少し肩を震わせつつも一旦引き返して誰か大人の人を呼ぶべきだと思い森を出ようと絵里は歩き続けるのだが・・・・・・。

 

「全然森から出れない。 どうなってるのよ一体・・・・・・?」

 

まさかあの「入らずの森の噂は本当だったのか?」なんて思い始める絵里だったが、彼女は首を横にブンブンと振ってそんなことある筈ないと否定し、再び歩み出そうとしたその時のことである。

 

後ろから妙な視線を感じた絵里は冷や汗を流しつつもそっとゆーっくりと後ろを振り返るとそこには白い服を着た女性がジーっとこちらを見ており、彼女は一瞬「ひっ!」と声を漏らしてしまったがすぐに冷静さを取り戻し「幽霊なんている訳ない、あの人に道を尋ねよう」と思って白い服の女性に道を尋ねようとしたのだが・・・・・・。

 

白い服の女性はすぅーっとみるみる内に身体を半透明にさせてその場から完全に文字通り「消え」去ってしまったのだ。

 

「・・・・・・えっ?」

 

目の前で起きた出来事が信じられず唖然とする絵里だが、数秒後には彼女の目尻には涙が浮かび上がり・・・・・・。

 

「ま、まままままままさかまさかまさか!! い、今のっておおおおおおおばおばおば・・・・・・!!」

 

するとその時彼女の後ろの方で「ガサッ」という音が聞こえるや否や絵里はその音に驚いて「ひぃ!?」と小さな悲鳴をあげて飛び上がるとすぐさまその場から逃げ出すように全力疾走。

 

「いいいいいいやああああああ!!!!!? エリチカおうちかえるううううううううう!!!!! ダレカタスケテエエエエ!!!!」

 

 

 

 

 

 

一方その頃・・・・・・。

 

「かよちんどうしたにゃ?」

「なんだろう、今なにか凄く大切なものを奪われた気が・・・・・・」

 

どこかの生徒会長は花陽から大切なものを奪っていきました、それは彼女の台詞です。

 

 

 

 

 

場所を戻し、絵里は「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・」と肩で息をしながら木にもたれかかって休憩しており、本当なら休憩などせずに今すぐにでもこの森から出て行きたいのだが先ほどまで何分かずっと全力疾走していたせいで一気に体力を使い果たしてしまい、体力を回復するまで彼女は今はこの場でやむなく休むことにしたのだ。

 

徐々に呼吸も楽になってきた時、絵里はこの辺りになにか帰るためのヒントになるものでもないだろうかと思い辺りを念のため見回してみるのだが・・・・・・周辺には草木があるだけでこれといった目立ったものはなく、後は強いて言えば辺りが「薄暗い」ということだけだろうか。

 

(この程度の暗さなら平気なんだけど・・・・・・もしも夜になったら・・・・・・)

 

ちなみに彼女、暗い場所も大の苦手であり、もしも夜になっても帰れなかったらと思うと怖くてたまらず、せめてこの恐怖心だけでもどうにか和らげる方法はないかと考えていると絵里はパッとなにかを思いつき明るい表情を浮かべる。

 

「そうだわ! こんな時はドラ〇もんの歌でも歌いましょう!」

 

ということで絵里は早速今思いついた方法を実行するべくドラ〇もんの歌を恐怖心を和らげるために歌い始めることに。

 

『オイ、なんかあの女・・・・・・ドラ〇もんの歌を歌い始めたんだが・・・・・・どうすんだこれ? 完全に出て行くタイミング逃しちまったぞ』

 

一方・・・・・・そんな絵里の姿を、木々に隠れながら、黒服スーツを着た部下2人とレクターを引き連れたナグスが若干引き気味で「どうすりゃいいんだこれ?」と彼女の様子を伺っていたのだ。

 

実は絵里のいるこの森は侵略者である自分達の宇宙船を隠すために使っており、この森が「入らずの森」と呼ばれているのも彼等の宇宙船から発せられる特殊フィールドの影響で森から出られなくなり、森の中に侵入した人間は万が一のことを考えて主にナグスが口封じのためにその人間を始末していたからというのが真相。

 

尚、黒服スーツ2人からは「別にタイミングとか気にしないでパッパッとやればいいのでは?」と言われたがナグス曰く「どうせならかっこ良く登場したいだろうが!!」ということでもうしばらく様子を見ることにし、再びナグスはそーっと絵里の方に気づかれないように彼女の様子を見ると・・・・・・。

 

「ふっふっふふふふーん♪ ふっふっふふーん♪」

 

2番の歌詞があんまり思い出せないため、殆ど鼻歌で歌って誤魔化していた。

 

『2番の歌詞うろ覚えじゃねえーか!! 殆ど鼻歌で誤魔化してるじゃねーかぁ!!?』

「えっと・・・・・・えぇっと・・・・・・なんだったかしらこの後・・・・・・?」

『おい、しかも詰まったぞ』

『別にドラ〇もんの歌を歌ってよーが関係無いでしょう? この森に入った人間は生きて帰す訳にはいきません。 さっさとあの地球人を始末しますよ』

 

レクターに言われてナグスも「まぁ、確かにそうだな」と頷き、レクター、ナグス、黒服スーツ2人はそれぞれ別れて四方から絵里に気づかれないように彼女の周りを囲み、レクターのかけ声でナグス達は一斉に絵里の前に姿を現す。

 

『それ突撃イイイイ!!!!』

 

レクターのそのかけ声を合図に一斉にナグス達が絵里の前に姿を現すのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・あっ! そうそう2番はそれでしたっけ? 助かりました! この辺出てこなくて困ってたんです・・・・・・」

『・・・・・・えっ?』

『オイイイイ!! なんかただのドラ〇もんの歌の歌詞教えて貰った人みたいになってるじゃねえか!!』

 

というか、絵里はなぜこの状況で全く自分達にビビっていないのだろうかと首を傾げて疑問に思うナグス。

 

見たところ絵里はパニクってるようにも見える、そのせいで今がどんな状況なのかがイマイチ彼女は把握できていないのかもしれない、そう思ったナグスは銃を絵里に突きつけながら気を取り直し・・・・・・。

 

『おい!! お前今がどんな状況が分かってんのか! 俺達宇宙人だぞ!? ちょっとは驚けよ!!』

「えっ? 宇宙人・・・・・・?」

『そう宇宙人! しかも侵略者のバリバリの悪者さ!!』

 

これで少しはビビっただろうと思うナグスだったが、絵里はというと・・・・・・。

 

「なによ宇宙人くらい!! 幽霊よりマシじゃない!!」

 

とか言い出して全く怖がる素振りすら見せず、そんな絵里に対してナグスは「はぁ・・・・・・」と小さく溜め息を吐くと彼女の顔の横をナグスが放った光弾が通過し、その先にあった木に直撃し・・・・・・その木は折れて大きな音を立てて倒れたのだ。

 

「・・・・・・うぇ?」

『これで少しは状況が飲み込めたか? お前は今、命の危機に晒されてんだよ!』

 

ナグスがそこまでやって絵里はようやく冷静になり、今がどんな状況かを辺りを確認して把握すると彼女は冷や汗を流し・・・・・・ナグスが再び絵里に銃口を向け、それに彼女は凍り付き、動けなくなってしまう。

 

「ひっ!?」

『そうだ怯えろ、悲鳴をあげろ!! 人間狩りはやっぱりこうでないとなぁ!!』

『相変わらず悪趣味な人ですね〜』

 

すぐさま絵里はそこから走って逃げだし、そんな絵里をナグスは笑いながらレクター達と一緒に走る絵里を追いかけ、絵里は森から出ようと必死に走り回るが・・・・・・いつの間にかナグス達が前からやってきていた。

 

(さ、先回りされたの!?)

 

ナグスは右手に持つ銃から、レクターは両腕の盾に収納された銃口からそれぞれ光弾を絵里に向かって発射し、絵里は頭を抱え悲鳴をあげながら反対方向へと逃げ出す。

 

『っていうかレクター、人のこと悪趣味とか言ってお前も案外人間狩り楽しんでねえか?』

『バレました? テへ☆』

『キモッ』

 

視点を絵里へと戻し、彼女は全力で森の中を走っている中、その時、絵里がなにかに躓いて転んでしまい、地面に倒れた彼女は服が汚れたこともあって「もう、なに!!?」と怒りながら立ち上がって足下にあったものを見るとそこには・・・・・・古墳らしきものがあったのだ。

 

「なに? これ・・・・・・? なにか書いてある、玉響姫?」

 

絵里が興味深そうにその古墳を見ているとそこへナグス達が現れて彼女はナグス達に囲まれて逃げ場を失ってしまい、ナグスは「鬼ごっこはもうおしまいか?」と少し残念そうな声を出しながら銃を絵里に向けて構える。

 

「はっ・・・・・・!? しまった!?」

『私としてはもう少しハンティングを楽しみたかったのですがね。 所詮はその程度の獲物ですか・・・・・・』

 

レクターはどこか呆れたような残念そうな様子で腕の銃口から光弾を放とうとするのだが・・・・・・。

 

その時。

 

『~♪』

 

あるハーモニカのメロディーがどこからともなく聞こえ始め、ナグスやレクター、黒服スーツ2人はそのメロディーの音色を聴いて突然頭を抱えて苦しみ出す。

 

「高坂くん!!」

『ぐあああ!? なんだこのメロディーは!?』

『頭が、割れるようです・・・・・・!!』

 

そしてオーブニカで音楽を奏でながら木の影から紅葉が現れ、ナグスは「何者だテメェ!!?」と問いかけると紅葉は演奏をやめて、「お前みたいなのに名乗る名前はない!」と言い返す。

 

『っていうか、あなたなんかカッコつけて出てきましたけど・・・・・・生姜まみれって・・・・・・。 というか臭ッ!? こっちまで匂いが漂って来ますよ?』

「うっさいわ!! こうなったのもお前等の仕業だろ!?」

 

レクターの言動にイラッときた紅葉は額に青筋を浮かべながらナグス達に向かって駈け出し、ナグスとレクターはすかさず光弾を紅葉に向かって放つが紅葉はそれらを全て避けてレクターに跳び蹴りを喰らわせた後、すかさずナグスの顔面に回し蹴りを喰らわせる。

 

『ぐあ!? この野郎!!』

 

今度は黒服スーツの2人が紅葉に同時に殴りかかるが紅葉はしゃがみ込んでそれを回避し、黒服スーツの1人の腹部に拳を叩き込み、もう1人の黒服スーツにはラリアットを喰らわせて殴り飛ばす。

 

そこでレクターとナグスは紅葉を挟み撃ちにして光弾を撃ち込もうとするが紅葉はジャンプして躱すことで光弾はナグスとレクターにそれぞれ直撃。

 

『ぐおっ!? テメーしっかり狙え!!』

『あなたこそ!!』

 

紅葉はナグスとレクターが喧嘩をしている間に絵里の腕を掴んで「こっちだ!!」と彼女を引っ張り、戸惑う彼女を余所にそこから逃げだし、それに気づいたナグス達は急いで紅葉達を追いかける。

 

やがて紅葉は絵里を連れて森の中にある湖に出ると紅葉は「しまった・・・・・・」という表情を浮かべ、彼は一度絵里の方へと振り返るのだが・・・・・・絵里は涙目で必死に鼻を摘まんでおり、そんな彼女の姿に紅葉はまた若干凹んでしまう。

 

「助けてくれたことには感謝するけど・・・・・・ごめんなさい、もう少し離れて貰えるかしら?」

「・・・・・・はい・・・・・・」

 

そう言われて紅葉は絵里との間に一定の距離を置くことに。

 

するとその時、大地が揺れ始め・・・・・・湖からタツノオトシゴの様な顔をした怪獣・・・・・・「水ノ魔王獣マガジャッパ」が出現し、それと同時に湖からとてつもない悪臭が放たれ絵里は思わず気絶しそうになるが・・・・・・なんとか堪える。

 

「な、なにこの匂い・・・・・・? まるで洗ってないザリガニの水槽のニオイだわ」

「流石に、本体から直接発せられるだけあって俺でも・・・・・・。 洗ってない雑巾みてえなニオイだな」

 

そしてマガジャッパはというと・・・・・・特になにをする訳でもなく、そのまま湖に浸かってまるで風呂にでも入ってるような様子を見せ、それを見た紅葉はというと・・・・・・。

 

「おい!! ちゃんとかけ湯してから入れ!! マナー違反だぞ!! お前のせいで俺は風呂に入りたくても入れないんだぞ!!」

(えっ!? ツッコムところそこなの!?)

 

そんな紅葉にマガジャッパは「うるせぇ!!」とでも言うよう頭部先端から放たれる黄色い高圧水流による攻撃「マガ水流」を彼に向かって放ち、紅葉は絵里を慌てて押し退かし、自分は足下にマガ臭気が直撃しそれによって大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐああああ!!?」

「高坂くん!!」

 

さらにその時の衝撃でオーブリングも地面に落としてしまい、紅葉はすぐにそのことに気づいてオーブリングを取りに行こうとするが・・・・・・いつの間にか現れたラグナに先にオーブリングを拾われてしまう。

 

「えっ、だ、誰・・・・・・?」

「ラグナァ・・・・・・!!」

「オイオイ、大切なものだろコイツは? しっかり持っとかないとなぁ〜」

 

嫌らしい笑みを浮かべながらオーブリングを見せびらかすようにするラグナ。

 

そんな彼に対して紅葉は「そいつを返せ」と言うがラグナは「自分で取り返してみろよ」と答える。

 

「こいつだけじゃない。 昔のお前自身もだ」

「・・・・・・」

 

紅葉はオーブリングを取り返そうとラグナに向かって駈け出して行き、殴りかかるがラグナはそれを受け流して回し蹴りを紅葉に喰らわせる。

 

「ぐっ・・・・・・!」

「俺は本気のお前と戦りあいたいんだよぉ!! それなりに待ったんだ、ガッカリさせるな紅葉ぃ!!」

 

今度はラグナが紅葉に向かって殴りかかるが紅葉はラグナの拳を受け止めて彼の腹部を蹴りつけ、それによってラグナが怯んだ隙を狙いオーブリングを持つラグナの右手に膝蹴り喰らわせ空中に飛んだオーブリングを掴み取る。

 

「フヒ、フヒヒヒ・・・・・・!! フヒッゲホォッ!!? ゴホゴホッ! はぁ、成程な、ブランクはあったがそこまで錆び付いちゃいないって訳か? っていうかさっきから思ってたけど臭ッ」

「お前まで言うか!? それに元はと言えばお前がどうせ元凶だろうが!!」

 

するとそこに丁度ナグス達が駆けつけ、ナグスは紅葉と絵里を見つけるや否や「見つけたぞ!!」と言いながら銃を絵里に向かって構えるが即座に右手を紅葉に蹴り上げられ、さらに顔面を殴りつけられたことで軽く吹き飛ばされるナグス。

 

『ガア!?』

「会長!! 逃げろ!!」

「で、でもあなたを置いて行くわけにはいかないわ!! 私は生徒会長なのよ!? 同じ学校の生徒を置いて行くなんて・・・・・・!!」

「俺なら大丈夫だ!! 信じろ!!」

 

紅葉は絵里に襲いかかろうとする黒服スーツ2人の攻撃を避けながら腹部に連続で拳を叩き込んだ後、その内の1人の腕を掴んで背負い投げをしてレクターの方へと放り投げ、後ろから羽交い締めしようとしてきたナグスも後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「会長!! 早く逃げろぉ!!」

「わ、分かったわ。 すぐに助けを呼んでくるから!!」

 

絵里は戸惑いつつもは紅葉に強くそう言われ、彼の言葉を信じてそ再び森の中へと向かって走り出し、ナグスはラグナに「逃がすな!!」と指示を出すとラグナは「了解♪」と敬礼した後、ダークリングと1枚のカードを取り出し、カードをダークリングにリードさせるとそのカードに描かれた「一角超獣 バキシムデストロイヤー」が実体化して出現。

 

「キシャアアアア!!!!」

 

ダークリングから呼び出されたバキシムデストロイヤーは森の中へと消えた絵里を追いかけ始めたのだ。

 

「ひい!? 幽霊に宇宙人に怪獣・・・・・・なんなのよぉ、今日はいったい〜!!」

「怪獣じゃない、超獣だ」

 

絵里の叫びを訂正するラグナだったが、次の瞬間紅葉に投げ飛ばされた黒服スーツの1人がラグナに激突し、ラグナはバランスを崩してマガジャッパが浸かっている湖に落っこちてしまう。

 

「うぐあああ!!?」

 

なんとかすぐに這い上がってきた時ラグナだったが、這い上がって来た時にはそれはもう、マガジャッパが直接臭くしている湖だけあってラグナに染みついたその匂いは紅葉以上の臭さとなっており、若干距離を開けているラグナ達にもその匂いが漂ってきて気を抜いたら失神するレベルとなっていた。

 

「お、俺より酷い匂いしてんぞ。 お前・・・・・・!」

 

紅葉ですら鼻を摘まんでおり、ラグナはなにか悲しくなったが・・・・・・。

 

「マガジャッパ!! お前もあの小娘共を追いかけて踏み潰しちまいなァ!! お前にあの小娘共が守り切れるかな? 正義の味方さん♪ 受けてみろよォ!! 水中からの挑戦をなアァ!!」

 

もはやヤケクソ気味に叫んでいるんじゃ無いだろうかと思う紅葉だったが、今はそんなことはどうでも良いと考え、紅葉はオーブリングを構えて2枚のカードを取り出すとそれらをそれぞれリードさせる。

 

「アグルさん!!」

『ウルトラマンアグル!』

 

1枚のカードをオーブリングにリードするとカードは粒子となって青い海の力を持つウルトラマン、「ウルトラマンアグルV2」が姿を現す。

 

「ヒカリさん!!」

『ウルトラマンヒカリ!』

 

さらにもう1枚カードをリードさせると同じようにカードは粒子となり胸にスターマークと呼ばれるものがある青いウルトラマン、「ウルトラマンヒカリ」が姿を現す。

 

「青く輝く光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

そしてオーブリングを高く掲げるとオーブリングの左右が展開され、アグルとヒカリの姿が紅葉を中心に重なり合い紅葉はアグルとヒカリの姿を合わせたような青き形態・・・・・・「ウルトラマンオーブ ナイトリキデイダー」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! ナイトリキデイダー!』

 

変身を完了させたオーブは右手からナグス達に向かって光弾「ブレードスラッシュ」を放って吹き飛ばした後、絵里を追いかけるバキシムデストロイヤーとマガジャッパに向かって走り出し、ジャンプしてバキシムとマガジャッパの前に絵里を守るようにして立ちはだかる。

 

そして両腕に装備された武装から光の剣「ナイトアグルブレード」を出現させてバキシムとマガジャッパの身体を斬りつける。

 

『ナイトアグルブレード!!』

「「ギシャアア!!?」」

「あっ、ありがとうオーブ!」

 

オーブは絵里の方へと顔を向けると絵里は自分を助けてくれたオーブに戸惑いながらも助けてくれたことに対してお礼を言い、それにオーブは頷き、ある方向を指差す。

 

「向こうに行けってこと・・・・・・?」

 

絵里の問いかけにオーブは「そうだ」と言うように頷くと、絵里は「オーブって人の言葉が分かるのね・・・・・・」と少し驚いたがそんな場合ではないとすぐに考えを切り替え、オーブが教えてくれた通りの方向へと走っていくのだった。

 

「ギシャアア!!」

 

そこで起き上がったバキシムが頭部のミサイルを3発オーブに向かって発射した後、さらに連続で右腕に装着された主砲から砲弾を何発も発射するが・・・・・・オーブは両腕のナイトアグルブレードでそれらを全て切り裂く。

 

『影を払いし、光の刃!!』

 

そこからオーブは一通りバキシムの攻撃を捌き、剣を仕舞うと右手を前に突き出して手をクイクイとさせて相手を挑発し、それを見たバキシムは雄叫びをあげながらオーブに向かって駈け出しオーブに右腕を振るって殴りかかるがオーブはそれを受け止め、左拳をバキシムの腹部に叩き込む。

 

そこに続けてマガジャッパが突進を繰り出しオーブはそれを両手で受け止めるが・・・・・・マガジャッパは力尽くでオーブを突き飛ばし、オーブは吹き飛ばされてしまうがどうにか地面に着地。

 

しかしマガジャッパの頭部先端から放たれる黄色い高圧水流による攻撃「マガ水流」を受けて再びオーブは吹き飛ばされ地面に激突してしまう。

 

『グアアア!!?』

 

さらにそこへバキシムが倒れ込んだオーブに向かって両手から火炎を放つがオーブは素早く立ち上がってジャンプして回避し、バキシムに向かって跳び蹴りを叩きこむ。

 

「キシャア!!?」

「ギアアアアア!!!!」

 

そこにマガジャッパがオーブの隙を突いて口から放たれる臭気ガスによる攻撃「マガ臭気」を吐きだし、思わず怯んでしまい匂いを振り払おうと手をブンブンと振るオーブ。

 

『うわぁ!? くっせぇ・・・・・・!!』

 

それによりオーブが怯んだところを狙ってマガジャッパはオーブに掴みかかって動きを封じ、マガジャッパがオーブの動きを封じてる隙にバキシムはオーブを攻撃しようとするがオーブは向かって来るバキシムに対して両足を振り上げることでバキシムを蹴りつけることに成功し、その際にどうにかオーブはマガジャッパの腕を掴みあげて背負い投げを繰り出す。

 

『デアアアア!!』

「グルゥ!!?」

 

だが、今度はバキシムが腰部に装着された装備から魚雷のようなものを落として地面の中に沈ませ、魚雷がオーブの足下に来ると爆発しオーブはバランスを崩して膝を突いてしまう。

 

『ウグアアア!!?』

 

それを狙い、マガジャッパはマガ臭気を、バキシムは腕の主砲から砲弾と両手のミサイルを同時に発射してオーブを攻撃し・・・・・・攻撃の際に起きる煙でオーブの姿が見えなくなるまでバキシムとマガジャッパは攻撃を続け・・・・・・「もうこれぐらい攻撃すれば良いだろう」と判断した為か、一度攻撃の手を緩める。

 

そしてマガジャッパとバキシムは煙が晴れるのを待ち、オーブを倒したかどうか確認するのだが・・・・・・そこには攻撃を耐えきったオーブの姿があり、それを見たマガジャッパとバキシムは驚いたような仕草を見せる。

 

攻撃を耐えきったオーブは立ち上がり、両手を頭部の上でXの字に組んでエネルギーを集約してさらに腕を上下に伸ばし敵に向けて放つ光の刃「クラッシャーナイトリキデイター」を放つ。

 

『クラッシャーナイトリキデイダー!!!!』

 

直前にマガジャッパは身体を透明化させてその場を離脱したがバキシムはオーブの放ったクラッシャーナイトリキデイダーを喰らって身体を切り裂かれ、火花を散らして倒れて爆発したのだった。

 

「キジャアアアアア!!!!?」

『マガジャッパはどこに・・・・・・』

 

バキシムを倒し、残るはマガジャッパのみとオーブが辺りを見回していると、突然マガジャッパはオーブの背後から姿を現し、両手の吸盤部分から放つガスで敵を包み込んでそれを再び両手で吸引し、敵の身動きをとれなくする「マガ吸引」でオーブの捕えて動きを封じるとそのままマガジャッパはマガ臭気を吐きだしてオーブを苦しめる。

 

『ぐあああああああ!!!!? や、ヤバい・・・・・・意識・・・・・・が・・・・・・ッ!』

 

オーブを捕まえたままマガ臭気を吐き出し続けるマガジャッパ。

 

やがてオーブも意識が徐々に朦朧としてきて倒れそうになったその瞬間・・・・・・。

 

「コラーーーーーー!!!! この怪獣!! オーブを離しなさーーーーーい!!」

 

そこへ、なぜか戻ってきた絵里がマガジャッパに向かって必死に石を投げつけてる姿がオーブの目に映り、朦朧とする意識の中でオーブは「なんで戻ってきたんだ・・・・・・!!」と驚愕する。

 

「この変顔怪獣!! 早く離しなさいよ!! この変顔怪獣ーーーーーー!!!!」

 

絵里はマガジャッパに悪口を言いながら石を投げ、言葉の意味を理解しているのかマガジャッパは額に青筋を浮かべて「誰が変な顔だこのヤロー!!!!」とでも言うようにオーブを突き飛ばすと絵里に向かってマガ水流を放つ。

 

「きゃあ!?」

『危ない!!』

 

だが・・・・・・その時、絵里の目の前に突然あの時の白い服の女性が現れ青いバリアのようなものを張り巡らせるとマガジャッパのマガ水流を受け止めて攻撃を防いだのだ。

 

「あ、あなたは・・・・・・」

『・・・・・・』

 

そして女性は絵里の方へと少しだけ振り返って彼女の無事を確認すると女性はそのまますぅーっと消え去るのだった。

 

『今のは・・・・・・。 いや、それよりも!!』

 

絵里のおかげで完全に意識を取り戻したオーブは立ち上がってジャンプするとそのままドロップキックをマガジャッパに叩きこんで蹴り飛ばし、オーブは絵里からマガジャッパは引き離させる。

 

『マガジャッパ・・・・・・!! お前は会長を攻撃しようとしたことで完全に俺の怒りを買った!! 俺の怒りの炎を見せてやる!!』

 

そして紅葉はに新たに2枚のカード・・・・・・を取り出し、最初に「ウルトラマンタロウ」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『タロウさん!!』

『ウルトラマンタロウ!』

 

続いて紅葉はもう1枚のカード「ウルトラマンメビウス」のカードをオーブリングにリードさせ・・・・・・。

 

『メビウスさん!』

『ウルトラマンメビウス!』

 

そしてオーブリングを高く掲げる。

 

『熱いやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ!』

 

オーブリングの左右が展開され、カードから現れたタロウとメビウスは紅葉を中心に重なり合い紅葉はタロウとメビウスの姿を合わせたような「ウルトラマンオーブ バーンマイト」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! バーンマイト!』

 

バーンマイトへと姿を変えたオーブは空中へとジャンプして空中で何度もひねりや回転を加えてから繰り出すキック「スワローキック」をマガジャッパへと叩き込む。

 

「グルアアア!!!?」

『紅に燃えるぜ!!』

 

戦闘BGM「バーンマイトのテーマ」

 

マガジャッパは口からオーブに向かって「マガ水流」を放つがそれに対してオーブはマガ水流を避けて素早くマガジャッパに接近し、両手に炎を宿した「ストビュームナックル」でマガジャッパの顔面を何度も殴りつける。

 

『お前だけは絶対許さねえぞ!! ウチの学校の生徒会長に攻撃を加えたこと!! お前のせいで海未とことりからも臭いとか言われたこと!! なにより1番許せないのはぁ・・・・・・!! お前のせいで俺の可愛い妹2人に『お兄ちゃん臭い』って言われたことだああああああああ!!!!!!!』

 

オーブは怒りのストビュームナックルによるアッパーカットをマガジャッパの顎に決め込み、マガジャッパは空高く吹き飛んだ後、地面に激突。

 

「グギャアアアアア!!!!?」

 

倒れ込んだマガジャッパはフラフラっとしながらもどうにか立ち上がり、マガ水流をすかさずオーブに向かって放つがオーブはそれを素早く回避してそのままスライディングキックをマガジャッパに決めて倒れ込ませるとオーブはマガジャッパの両足を掴んで力いっぱい持ち上げて投げ飛ばす。

 

『デアアアアア!!!!』

「ガアアア!!?」

 

投げ飛ばされたマガジャッパは地面に強く叩きつけられ、フラつきながらもどうにか立ち上がるが・・・・・・。

 

『これで決める!! ストビューム・・・・・・ダイナマイトォ!!!!』

 

その瞬間を狙い、オーブは全身に炎を纏って相手に体当たりし、抱きついて爆発させる必殺の「ストビュームダイナマイト」をマガジャッパへと繰り出し、それを喰らったマガジャッパはオーブの炎に身体を燃やし尽くされ爆発したのだった。

 

「ギシャアアアアアア!!!!!?」

 

ストビュームダイナマイトによって、オーブはマガジャッパを倒したことを確認するとオーブは空を見上げて空中へと飛び立って去って行くのだった。

 

 

 

 

 

その後、オーブは紅葉の姿に戻りマガジャッパの破片からウルトラマンのカードを回収すると今回出てきたカードは「ウルトラマンジャック」のカードが彼の手に渡ったのだ。

 

「こいつを封印していたのは、ウルトラマンジャックさんでしたか。 お疲れ様です」

 

紅葉はジャックのカードに向かって笑みを浮かべながらそう言うと彼は急いで絵里の元へと向かうことに。。

 

また一方でラグナもダークリングを使い、倒されたマガジャッパのカードを回収していた。

 

「これで魔王獸はあと一体・・・・・・感謝するぜ? 紅葉? 割と今回は半分くらいは本気で」

 

そう言いながらその場を去って行くラグナであったが、途中で何回かマガジャッパの匂いが取れたかどうか腕の臭いをクンクンと嗅ぎながら彼は確認していたりしたのだった。

 

 

 

 

 

 

それから絵里と紅葉は無事に森を抜け出すことができ、絵里は散々な1日だったと思い返し、「はぁ」と大きな溜め息を思わず吐いてしまった。

 

「っていうか会長なんで戻って来たんですか? オーブが『あっちに行けば出られる』みたいな動作してませんでした?」

「い、いやぁ・・・・・・その・・・・・・。 オーブに教えられた通りの道を進んだんだけど・・・・・・結局道にまた迷っちゃって・・・・・・。 その時丁度オーブがピンチそうだったから、助けられた借りもあった訳だし・・・・・・」

 

さらに絵里も今自分達がいる場所がどこか分からず、また迷ってしまいその時オーブもピンチのようだったので思わずあのように彼を助けるようなことをしてしまったらしい。

 

それを聞いて紅葉は「成程ね」と一応は納得。

 

「でもあんまりそんな無茶しないでくださいよ?」

「私だってもう二度とあんなのごめんよ」

「取りあえず今日は疲れたでしょ? もう帰りましょう送ります」

 

と紅葉は絵里に向かって言うのだが彼女は「別に良いわよ、1人で帰れるわ」とだけ返しスタスタと公園から出ようとするのだが・・・・・・途中で彼女がピタっと止まると紅葉に向かって振り返る。

 

「そ、その・・・・・・あなたが私を助けてくれたことは感謝するわ。 ありがとう」

 

どこか照れ臭そうに言う絵里に、紅葉は思わず笑うも「いえ、会長が無事で良かったです」と言葉を返したのだ。

 

「でも、だからってあなた達の活動は認めるつもりはないから。 それだけは覚えておいて」

「はい、分かりました。 でも、諦めません!!」

 

最後に紅葉がそれだけを言うと今度こそ彼女は複雑そうな顔を浮かべつつ公園を出て家に帰るのだった。

 

(・・・・・・あの怪獣が倒されて、臭いも落ちたし。 折角だからあそこ久しぶりにみんなで行るか)

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんのあの匂いどうにかなって良かったぁ〜」

「ネットでのニュースでは水が臭くなったのは怪獣の仕業とのことですね」

「それをオーブさんが倒したおかげで水の匂いも元に戻ったんだよね〜」

 

そんな話を銭湯の風呂場で話をするのは紅葉に「久しぶりにみんなで銭湯いかないか?」と誘われ、それに応じた穂乃果と海未とことりであり、彼女達はお湯に浸かりながら談笑していたのだ。

 

そして男湯の方でも紅葉は服を脱いで早速風呂場へと入るのだが・・・・・・そこには壁をよじ登って女湯を覗こうとするラグナの姿があった。

 

「くっ、後もう少し・・・・・・!!」

「フンッ!!」

 

だが、そうはさせまいと紅葉が桶をブーメランのように投げつけて見事ラグナに直撃し、ラグナは壁から叩き落とされた。

 

「こんなところでなにしてんだお前・・・・・・?」

「紅葉・・・・・・こんなとこで会うとは奇遇だな。 なにしてるかって? 愚問だな、銭湯に来てやることって言ったら決まってるだろうが・・・・・・覗きだよ!!」

「銭湯は風呂に浸かりに来る場所だ!! 女湯を覗くための場所じゃねえ!!」

 

そんな彼等2人が口喧嘩をしている時、隣の女湯から穂乃果達の声が聞こえてきた。

 

『うーみちゃん♪ おっぱい大きくなった?』

『なっ! そんなに変化はないですよ!!』

「「・・・・・・」」

 

そんな話し声が聞こえてきたせいか、思わず黙り込む紅葉とラグナ・・・・・・。

 

『穂乃果ちゃんは・・・・・・牛乳大好きだからきっと大きくなってるよね? それ♪』

『うひゃああ!?』

『全くもう、昔からすぐ触ってくるんですから・・・・・・』

『しょうがないよ。 2人のことが、だーいすきだもん♪』

 

隣から聞こえてくる話し声のせいで顔をみるみる赤くする紅葉とラグナ。

 

「ってあれ? 1つ聞き覚えのある声が聞こえてんな。 もしかしてお前の妹も来てるのか?」

「えっ? あぁ、そうだけど・・・・・・」

「よし、覗こう。 他の奴等は知らんが1人は確実に得をするな俺が」

「絶対させてたまるかぁ!!」

 

とここでまた紅葉とラグナによる言い争いが勃発し、風呂に入りながら女湯の方では海未が「隣がうるさいですねぇ・・・・・・」と呟くのだった。




紅葉
「お待ちかねサブタイを探せ! のコーナー!!」

穂乃果
「イェーイ!」

不審者少女
「ねえ、なんであたし未だに出番ないわけ? 名前すら出てないんだけど」

紅葉
「今回は会長のメイン回な上に数合わせのためのエピソードだから全員出すのはちょっと無理があって・・・・・・」

穂乃果
「真姫ちゃんも今回出番ないし」

不審者少女
「あたしよりマシでしょうがそれでも!!」

紅葉
「大丈夫大丈夫、次回はちゃんと出番も名前も出るから」

穂乃果
「それじゃ今回の隠れたサブタイはー?」

紅葉
「ウルトラセブン41話から『水中からの挑戦』だ!」

穂乃果
「ラグナさんがヤケクソ気味に叫んでたシーンで言った台詞だよ! あっ、そうだ!」

紅葉
「んっ? どうした穂乃果?」

穂乃果
「その、ごめんね? お兄ちゃんのこと臭いって言って落ち込ませちゃったこと・・・・・・(手合わせて上目遣い」

紅葉
「可愛いから許す」

穂乃果
「雪穂や海未ちゃん達も後で謝りに来るって!」


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第4話 『μ's、START:DASH!!』

最初に言っておく!



穂乃果ちゃん誕生日おめでとう!!



火ノ魔王獸 マガパンドン
登場。


早朝……神田明神では穂乃果と海未がことりの合図で階段を駆け上がって何時もの基礎体力作りを行っており、海未はまだしも最初は息を切らしていた穂乃果だったが、今ではすっかり走りながら笑みを浮かべるほどに体力がついており、3人でやるダンスの練習も大分纏まってきていた。

 

そして早朝の練習が終わり、穂乃果達は水分補給し……紅葉はカレーパン補給していた。

 

「ふごふごふぐ……!」

「紅葉、食べながら喋らないでください! はしたない……。 せめて食べるか喋るのかどっちかにしてくださいよ!」

 

海未にそう注意されたため、紅葉はカレーパンを食べるのを優先して水で一気に流し込むと先ほど言おうとしたことをもう1度穂乃果達に言う。

 

「3人とも大分いい感じになってきたな。 穂乃果やことりも体力それなりについてきたんじゃないか? 最初の頃と比べたら疲れの色もあんまり見えなくなってきたし」

「確かに、随分できるようになったかも」

 

紅葉の言葉にことりも賛同するように言い、海未は「まさか2人がここまで真面目にやれるとは思いませんでした」とちゃんと2人が……特に穂乃果がここまでしっかりと練習していることが意外だったらしく、さらに言えば穂乃果はてっきり寝坊してくるものとばかり思っていたので感心していた。

 

「大丈夫! その分授業中はぐっすり寝てるから!」

「穂乃果~! ちゃんと真面目に授業受けないとダメだぞ~!」

 

とその場で寝転がる穂乃果に注意しながら紅葉は彼女の脇腹をくすぐり始め、穂乃果は思わず「あはははは! やめ、くすぐったいよぉ……!?」とくすぐられて笑いだすが……次の「うぅ、お兄ちゃんやめてよぉ……! くすぐったいってばぁ……!」と涙目で訴えられてすぐに彼はくすぐるのをやめた。

 

「なんか、今の俺凄く犯罪くさい……」

 

と若干膝を抱えて落ち込み、一部始終を見ていた海未はスマホを取り出し「通報しなくては(使命感」と言って警察に通報しようとする。

 

「ちょっ、やめてくれない海未!? 俺すぐやめただろ!?」

「まぁ、冗談ですよ、冗談」

「心臓に悪い冗談だよちょっと……。 ってん?」

 

するとその時、紅葉は階段の方で誰かがこちらの様子を伺っていることに気づき、それに穂乃果も気づいたのか急いで階段の方へと行ってみるとそこにはこっそりと階段を降りてその場から離れようとしていた真姫の姿があり、穂乃果は「西木野さーん!!」と彼女の名を呼び、さらにいきなり「真姫ちゃーん!!」と穂乃果に下の名前で呼ばれたためそれに思わず「ヴェエ!?」と真姫は驚きの声をあげてしまう。

 

「大声で呼ばないで!!」

 

真姫はそう怒りながら穂乃果の元へと行き、穂乃果はどうして大声で呼んじゃダメなのか分からず首を傾げるがすぐに真姫は「恥ずかしいからよ!」と少しだけ頬を赤くして叫んだ。

 

するとそこで穂乃果は「そうだ!」となにかを思いだし、1つの音楽プレーヤーを取り出すと「あの曲、3人で歌ってみたから聞いてみて?」と真姫にお願いしたのだ。

 

「っ……! だから、私じゃないって何度言えば……!」

 

どうやら以前にも似たようなことがあったのか、前々から高坂家に届けられた曲は自分が作ったものではないと真姫は否定していたらしい。

 

しかし、曲に入っていた歌声は誰がどう聞いても真姫のものであり、ウルトラマンである紅葉の聴力で聞いても真姫の声に間違いがないため、全く誤魔化せておらず海未も「まだ言っているのですか?」とバレバレなのに頑なに否定する真姫に思わず苦笑していた。

 

「証拠は上がってんだよ! いい加減白状しろう!」

「紅葉くんなに? その刑事ドラマみたいなノリ……?」

 

ことりからそんなツッコミを受ける紅葉、するとその時穂乃果がプルプルと肩を震わせ「ガオ~!!」と雄叫び(?)をあげながら真姫にしがみつき、徐々に怪しい笑みと笑い声を浮かべながら顔を近づけていく。

 

「え、えぇ!? なにやってんの!? ちょっと……イヤアアアア!!?」

 

真姫は突然のことに少しビビってしまい、叫び声をあげるが次の瞬間、自分の耳に音楽プレーヤーのイヤホンがつけられ穂乃果は「いよーし! 作戦成功♪」とプレーヤーをつけた彼女は真姫から離れ、流石にここまでされたら聞かない訳にもいかないだろうと思い、真姫は観念して彼女達の歌を聴くことに。

 

「結構上手に歌えたと思うんだ! 行っくよー!」

「μ's!」

「ミュージック!」

「「「スタート!!」」」

 

その3人の言葉を合図に穂乃果はスタートボタンを押して曲を流し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、朝の基礎訓練を終えて穂乃果、海未、ことり、紅葉の4人は制服に着替えて学校に登校していると後ろの方から「ねえ、あの娘達じゃない?」という声が聞こえ一同が「なんだろう」と思い声のした方へと振り返るとそこには3年の女生徒の先輩が2人おり、先輩の2人は「ねえ、あなた達もしかしてスクールアイドルやってる娘達?」と尋ねてきたのだ。

 

なんでも妹がネットでμ'sのことを見かけたらしく、先輩方の2人は「明日の放課後にライブやるんだよね? ちょっと見せてくれないかな?」と頼んできたのだ。

 

流石に「今ここでですか!?」とことりは戸惑っていたが「ちょっとだけ」ということで穂乃果が怪しい笑みを浮かべてそれを了承する。

 

「ふふふ、良いでしょう! もし来てくれたらここで少しだけ見せちゃいますよぉ? お客さんにだけ特別にぃ……!」

「なんか怪しい勧誘してるみたいだな穂乃果……」

 

またことりも「お友達を連れて来てくれたらもう少しだけ見せちゃいます!」ということで先輩の2人は「ホント!? 行く行く!」とワクワクした様子を見せて穂乃果とことりは肩を合わせて頭のところだけをやろうとしたのだが……。

 

「……あれ? 海未は?」

 

とそこで紅葉が海未がいなくなっていることに気づき、それと同時に紅葉は「そう言えば海未って意外と人見知りなとこあったのを忘れてた」と彼女が人見知りであったことを思いだし、やむなくダンスを中断し先輩方に謝罪をした後、3人は海未を探しに行くことに。

 

そして探しに行った結果、彼女は屋上まで逃げ込んで体育座りをしながら「無理です……」と酷く怯えた様子で嘆いていた。

 

「えーっ!? 大丈夫だよ! 海未ちゃんなら歌もダンスできるよ!」

「穂乃果、海未が言ってるのは多分ダンスのことじゃなくて……」

 

穂乃果が海未に「絶対できるよ!」と説得するのだが、紅葉の言う通り海未は「歌もダンスはできます。 これだけ練習してきましたし」と答えたのだが……ただ海未にとって1番問題なのはそれではなく、「人前で歌うのが恥ずかしくて緊張してしまう」ということだったのだ。

 

そんな海未の穂乃果とことりは顔を見合わせて困ったような表情を浮かべ、そこで紅葉が「緊張するなら人を野菜だと思えば良いんじゃ無いか? もしくは手に人って書いて飲み込んだりとか」とアドバイスし……海未はそれを想像してみるが……。

 

『みんなー! いっくよー!』

 

と周りが野菜だらけ……というかもう野菜畑でライブをする自分の姿を想像した海未はさらに怯えた様子で「私に1人で歌えと!?」と驚愕していた。

 

「いやそこ!?」

「お前それ、穂乃果やことりまで野菜になってるだろうが! 想像力意外と豊かだな海未!?」

 

そんな海未に穂乃果達は困り果て……ことりも「海未ちゃんが辛いならなにか考えないと……」と彼女がどうにか人前で歌える方法はないかと考え、海未は頭を抱えて怯えた様子で「人前で無ければ歌えるんです!!」と嘆くがそれではあまり意味がない。

 

すると穂乃果は「こうなったら!」という感じで海未の手を掴んで強引に立たせる。

 

「色々考えるより慣れちゃった方が早いよ!」

「つまり、習うより慣れろってことだな穂乃果!」

「そういうことだよお兄ちゃん! じゃあ、放課後行くよ海未ちゃん!!」

 

海未は穂乃果の言葉の意味が理解できず、「はぇ?」と首を傾げるが……なにをするかは学校が終わってからのお楽しみということで今はなにをするかを伏せておくのだった。

 

そして全ての授業が終えた後、紅葉達は街の一通りの多い場所へとやって来てみんなでライブのチラシを配ることに……。

 

だが当然人見知りの海未にとってこれはかなり困難な難関であり、海未は「ひ、人がこんなに……!」と明らかに怯えた様子を見せていた。

 

「当たり前だよ! そういうところを選んだんだから! ここで配ればライブの宣伝にもなるし、大きな声を出して行けばその内慣れると思うよ?」

「まぁ、頑張れ海未! これも学校を廃校から救うためだ!」

 

穂乃果やことりからも「海未ちゃん頑張って!」とエールを送られ、最初に穂乃果、ことり、紅葉が先ずは手本として道行く人々にチラシ配りを開始し、海未も自分だけしない訳にも行かないしライブも成功させたいので必至に想像力を働かせて「お客さんは野菜お客さんは野菜……!」と目を瞑り自己暗示をかけて目を開きいざチラシを配ろうとすると……。

 

道行く人々の顔が全てキュウリやトマトといった野菜に海未の脳内で変換されたのだが、その光景はまさしく……。

 

「いや怖ーよ!! ホラーじゃねえか!! そりゃ怖いだろうよ!!」

 

海未がなにを考えたのか察した紅葉はそう言い放ち、紅葉の言うように海未の脳内で変換されたその光景はまさしくホラーであり、海未はしゃがみ込んであまりの恐怖心にガチャガチャを回す始末。

 

「あっ、レアなの出たみたいです」

「って海未ちゃーん!?」

「おい大丈夫か海未!? って言うかなんか病んでない!?」

 

ということでこのままでは海未が再起不能になりかねない上に流石に海未にとってあそこはハードルが高すぎたと反省し、ならば馴染みのある場所ならばと思い一同は学校へと戻り、「ここなら平気でしょ!?」と穂乃果に言われ海未も戸惑いつつも「まぁ、ここならば……」と不安そうな表情は消えないものの少なくとも先ほどの場所よりかはマシだろうと彼女は思い、穂乃果やことり、紅葉も再び学校の生徒達にチラシ配りを行う。。

 

「えっと、あ……あの……えっと、お願いします!」

(おぉ! 遂に海未が自分から!)

 

どうにか勇気を振り絞ってチラシを黒い髪のツインテールの少女……「矢澤 にこ」へと差し出すのだが……にこは少し冷たい口調で「いらない」と言い放ってその場を去って行こうとしたのだが……。

 

「ちょーっと待てぇ!!」

 

紅葉が海未が差し出したチラシを掴むとにこの目の前に素早く回り込むと彼女に無理矢理チラシを渡そうとする。

 

「折角海未が勇気出したんだ! せめて受け取るくらいしてくださいよ先輩!!」

「は、はぁ!? いらないって言ってんの! 私は忙しいんだから退きなさいよ!」

「そ、そうですよ紅葉! 気持ちは有り難いですけど無理矢理というのはよくありませんよ……」

 

紅葉は「海未がそう言うなら……」と紅葉は「邪魔してすいませんでした」とにこに謝った後、道を開けてにこを通し、紅葉は海未に「もっとハキハキして声出さないとダメなんじゃないか?」と言うが……そう言われても海未は中々それをすることができないのだ。

 

そんな彼女を見かねてか穂乃果が海未の元へと「ダメだよそんなんじゃ!」と注意しながら駆け寄る。

 

「紅葉や穂乃果は良いですよ、店の手伝いで慣れてるでしょうから……。 でも私は……」

「ことりちゃんだってちゃんとやってるよ? ほら海未ちゃんも! それ配り終えるまでやめちゃダメだからね!」

 

穂乃果にそう言われて思わず海未は「そんな無理です!」と声をあげるが……穂乃果はニヤリとした笑みを浮かべてそんな彼女に「海未ちゃん私が階段を5往復できないって言った時なんて言ったっけ?」と言われてしまい海未は何も言い返すことができなくなってしまう。

 

(確か、『やるからにはちゃんとしたライブをやります!』だっけ? そりゃなにも言い返せないな。 やるな穂乃果のやつ……)

「っ……! 分かりました! やりましょう! μ'sファーストライブやりまーす! よろしくお願いしまーす!!」

 

とそこで海未は今度はしっかりとハッキリとした声でチラシ配りを開始し、紅葉はその様子を見て穂乃果が上手いこと海未のハートに火をつけたなと感心していた。

 

するとそこに「あ、あの……」と少し弱々しい声で誰かが穂乃果に話しかけ、声のした方へと顔を向けるとそこには花陽がおり、穂乃果も彼女のことを覚えていたらしく「あなたはこの前の……」と声をかけた。

 

「は、はい! あの、ライブ……見に、行きます……」

「ホントぉ!?」

「来てくれるの!?」

 

ワザワザ、ライブを見に来てくれることを直接言いに来てくれるとはなんとも律儀な娘だと紅葉は思ったが……それでもやはりこう直接「ライブを見に行き来ます」とハッキリ言われるとなんとも嬉しいものがある。

 

「では1枚2枚と言わずこれを全部……!」

 

とそこでどさくさにチラシを全部花陽に押しつけようと海未がしてきていたが「海未ちゃん……?」と当然ながら穂乃果が彼女を注意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、明日のライブについての話し合いをするために穂乃果と紅葉の家に集合することとなったのだが……ことりはお店で最終調整して貰ったライブの衣装を取りに行くため遅れて来るとのことで先に穂乃果達は家へと向かうのだった。

 

そして穂乃果の部屋で3人は参考までにネットに上がっているA-RISEの動画を視聴しており、やはり自分達と比べると動きのキレが違うなと穂乃果は動画を見ながら感心していた。

 

「うーん、やっぱり動きのキレが違うよねぇ……。 こう? こう? こう!」

「おー、可愛いぞ穂乃果ー!」

 

と突然立ち上がった穂乃果はアイドルっぽい動きを色々と試し、そんな彼女に紅葉はどこからか取り出したオレンジのサイリウムを降り出す。

 

「紅葉、なんですかそれ? サイリウム……?」

「あぁ、そうだよ? アイドルファンの人とかがよく持ってる感じのアレ。 折角だから作ってみたんだ。 これは穂乃果をイメージしたやつで海未とことりの分もあるぞ!」

 

紅葉はそう言いながら青と白のサイリウムを取り出し、それを見た海未は「それ自作なんですか!?」と驚きの声をあげていた。

 

するとその時、穂乃果が何かに気づいてパソコンをジッと見つめ……海未は首を傾げて「どうしました?」と尋ねると穂乃果は「ランクが上がってる!」と嬉しそうに声をあげた。

 

「きっとチラシで見てくれた人が入れてくれたんだね!」

 

とそこへ丁度ことりが「お待たせ~」と言いながら衣装を取りに行っていたことりが部屋へと入ってきて穂乃果はことりにもほんの少しではあるがランクが上がったことを教え、ことりも「わぁ! 凄い!」と嬉しそうにしていた。

 

「んっ? ことり、もしかしてそれが明日のライブでやる衣装か?」

「あっ、うんそうだよ紅葉くん!」

 

紅葉がことりの持っている袋に気づき、そう尋ねるとことりはそれに頷いて袋から明日のライブで着るピンク色のアイドルの衣装を取り出し、それを見た穂乃果と紅葉は「おぉ! かわいい!」と高評価だったのだが……海未はなぜか驚愕したような表情を浮かべていた。

 

「本物のアイドルみたい!」

「流石ことりだな! って海未? どうした?」

 

紅葉も海未の様子がおかしいことに気づき、海未は肩をプルプルと振るわせつつ「ことり、そのスカート丈は?」と問いかけるとことりは「あっ……」となにか気まずそうな顔を浮かべる。

 

というのも実は前もって海未から「良いですか!? スカートは最低でも下膝までしか履きませんよ! いいですね!?」と釘を打っていた筈なのだが……今、ことりが持っている衣装はどう見ても膝下まで無く、むしろどちらかと言えばスカートは少し短い方である。

 

そしてそんなことりの両肩を掴み「言ったはずです……! 最低でも膝下までで無ければ履かないと……!」と彼女を睨み、そんな海未に穂乃果は「だ、だってしょうがないよアイドルだもん!」と言うが海未は「アイドルだからと言ってスカートは短くという決まりはない筈です!」と反論されてしまう。

 

しかし今から直せる筈もなく、それに怒った海未は「そういう手に出るのは卑怯です! ならば私は1人だけ制服で歌わせて貰います!」と言い放って部屋を出て行こうとする。

 

「ま、まぁまぁそう言わずに……。 海未も絶対似合うって!」

「似合うとか似合わないの問題じゃないんですよ! そもそもあなた達が悪いんですよ! 私に黙って結託して……」

 

そんな風に怒る海未に穂乃果は頬を膨らませ、「だって、絶対成功させたいんだもん……」と彼女に訴える。

 

「っ……」

「歌を作ってステップを覚えて……衣装も揃えて……。 ここまでずっと頑張ってきたんだもん! 4人でやって良かったって! 頑張って来たってそう思いたいの……!!」

 

すると穂乃果は突然窓の方へと走り出して窓を開けると彼女は外に向かい……。

 

「想いたいのー!!」

 

そう叫び海未は「なにをしているのですか!?」と驚き怒鳴るが、そこでことりも穂乃果の意見に同意し「私も4人でライブ成功させたい!」と海未に訴え、そんな2人を海未は交互に見る。

 

「海未、観念しなって。 俺だってライブを成功させたい。 だから多少恥ずかしくてもやれることは全力でやろうぜ?」

「いつもいつも、ズルいです……」

 

穂乃果、ことり、紅葉の言葉に海未は遂に折れたらしく「分かりました……」とあの衣装でライブを行うことを約束し、そんな海未に穂乃果は想わず笑顔となり彼女は「だーいすき!」と海未へと抱きつき、そんな2人にことりや紅葉も思わず笑顔になってしまう。

 

「ねぇ、これからみんなで明日のライブの成功を祈って神社に行かない?」

「あっ、いいね行こう!」

 

ことりの意見に穂乃果は賛同し、海未と紅葉もそれに同意して神社に向かおうと穂むらから外へと出るのだが……その時突然、既に暗くなりかけていた空が昼のように明るくなり、突如空に灼熱の炎に包まれた球体が出現し……同時に辺り一帯の気温も急上昇し急激に熱くなっていく。

 

「あっつーい!? なにあれ!?」

「太陽……? な訳ないですよね……」

 

紅葉はウルトラマンとしての透視能力を使い火の球体を見つめるとその中に双頭の赤い怪獣が球体の中にいることが確認でき、紅葉はそれが「火の魔王獣 マガパンドン」であることを見抜くと紅葉は穂乃果達に急いで家の中に戻るように言い、穂乃果達は言われた通り穂むらへと戻ることに。

 

「俺はちょっと外の様子を見てくるから!!」

 

しかし紅葉だけは穂むらへと戻らずに外へと飛び出していき、穂乃果は「ちょっとお兄ちゃん!? 危ないよ!?」と呼び止めようとしたが既に紅葉はその場にはおらず、紅葉は人気のない場所へと行くとオーブリングとウルトラフュージョンカードを取り出す。

 

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

最初に「ウルトラマン」のカードをオーブリングにリードさせ、その後、「ウルトラマンティガ」のカードを紅葉はオーブリングにリードさせる。

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

そして紅葉はオーブリングを天に向かって掲げるとオーブリングの左右の部分が展開される。

 

「光の力……お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

ウルトラマンとティガの姿が紅葉と重なると紅葉はウルトラマンとティガの姿が合わさったような姿「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

オーブは飛行してマガパンドンの元へと行き、穂乃果達は家から少し遠く離れた位置ではあるが穂乃果の部屋からオーブとマガパンドンの戦いを眺めていた。

 

「あっ! オーブだ! 頑張れー!!」

「あれも怪獣なのかな……?」

「恐らくはそうでしょう。 でも、きっとまたオーブが倒してくれますよ!」

 

オーブはマガパンドンの元へと辿り着くと先ずは炎を消そうと両手を合わせて大量の水を噴射する「オーブ水流」を放つのだが……。

 

マガパンドンの炎は全く消えず、オーブはならばと思いオーブは両腕を広げてエネルギーを貯めてから放つ「スペリオン光輪」を自身の身長ほど巨大化させて放つが……マガパンドンの炎は直撃を受けたにも関わらずスペリオン光輪はあっさりと砕かれてしまった。

 

『水がダメなら氷ならどうだ!?』

 

するとオーブのインナースペース内にいる紅葉はオーブリングにティガのカードを再度読み込ませる。

 

『ティガさん!』

『ウルトラマンティガ スカイタイプ!』

 

さらに紅葉は別のカード……「ウルトラマンマックス」のカードをオーブリングに読み込ませる。

 

『マックスさん!』

『ウルトラマンマックス!』

 

そして再び紅葉はオーブリングを天高く掲げると今度は紫の姿の「ティガ スカイタイプ」と「ウルトラマンマックス」の姿が紅葉と重なり合い、オーブはティガ スカイタイプとマックスの姿が合わさったような「ウルトラマンオーブ スカイダッシュマックス」となる。

 

『速いやつ……頼みます!』

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スカイダッシュマックス!』

『輝く光は疾風の如し!』

 

オーブはその超スピードでマガパンドンの周りを残像が幾つも残るくらいに超高速で動き、右手を突き出して放つ冷凍光線「スカイダッシュブリザード」を全方向からマガパンドンへと放つ。

 

『スカイダッシュブリザード!!』

 

やがてマガパンドンとそのマガパンドンの作りだした炎の球体はスカイダッシュブリザードによって氷付けにされ、それを見た穂乃果達もオーブの勝利を確信したが……マガパンドンは内側からさらなる強力な炎を発生させてあっさりと氷を溶かしてしまい、それにはオーブも思わず驚いてしまう。

 

(なに!? もう時間もない、こうなったら最後の手段だ!)

 

オーブは地上に一度降りると再びスペシウムゼペリオンへと戻り、両手を広げてバリアである「スペリオンシールド」を展開しながらマガパンドンへと突撃し、「ティガ パワータイプ」の力も合わせてマガパンドンをこれ以上被害を増やさないためにも地球から遠ざけるためオーブはマガパンドンを宇宙へと力尽くで運び出す。

 

『シュアアアアアアア!!!!!』

 

しかし宇宙にまで運び出せたのはいいもののオーブの活動限界である3分が来てしまい、カラータイマーと瞳から光が消えるとオーブは力尽き……地上へと炎に包まれながら落下してしまう。

 

『ウッ……グァ……!』

 

最終的にオーブは地上へと落下してしまい、その場には巨大なクレーターが出来上がりオーブは紅葉の姿へと戻ってしまい、その中央には苦しみ悶える紅葉の姿があった。

 

「うあ……! ぐはぁ……! はぁはぁ……!」

 

するとそこへ……。

 

「お前の実力はこんなもんじゃないだろう? 紅葉……? 俺を失望させるな……」

 

そう言いながら現れたのはアロハシャツを着てサングラスをかけて氷が大量に入ったジュースを飲んでいるラグナだった。

 

恐らくラグナも熱かったのだろう。

 

紅葉はそんなラグナの格好に色々とツッコミたかったが正直、そんな元気などある筈もなく「ラグナ……!」と彼を睨み付けながら名を呼ぶのが精一杯だった。

 

「お前は光の戦士なんだろぅ……? だったらもっと頑張れよお前ぇ……! もっと俺を楽しませろよ紅葉くぅ~ん?」

 

嫌らしい笑みを浮かべながらラグナは紅葉の胸ぐらを掴みあげて立ち上がらせるとラグナは力いっぱいに紅葉を建物の壁へと投げつけ、壁に叩きつけられた紅葉は苦痛に満ちた声をあげて地面へと落下し、彼はそのまま気を失ってしまう。

 

「がぁ……!?」

 

そのままラグナは「マガパンドンはまたすぐに戻って来るぞ?」という言葉を残した後、彼は煙と共に消え去るのだが……。

 

「ゲホォ! ゴホォ!!?」

 

煙が口の中に入り込んだせいで咳き込んでしまうのだった。

 

また一方でオーブが地上へと落下してしまったのを部屋の窓から見ていた穂乃果達はというと……彼女達はオーブが負けてしまったことが信じられず、驚愕していた。

 

「そんな……オーブが……」

「負けた……?」

 

すると穂乃果が突然立ち上がり……「よし行こう!!」といきなり言いだし、その言葉を聞いた海未とことりは「まさかオーブのところに行くつもりじゃ……」と不安に思っていたら案の定穂乃果は「オーブのところに行くよ!!」と言って2人の手を引っ張り強引にオーブの落下した場所へと走って行くのだった。

 

「ちょっと穂乃果ちゃーん!?」

「なんでオーブのところに行くんですかー!?」

「だって放っておけないよ!」

 

穂乃果はそう言って海未とことりの2人を強引に外へと連れだし、オーブが落下したと思われる場所へと急いで向かって行くのだった。

 

尚、マガパンドンが少しとはいえ地球から離れたためか気温は先ほどよりも下がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして穂乃果達がオーブの倒れたと思われる場所へと到着するのだが……そこには当然、既にオーブの姿はなく、変わりにオーブが倒れたと思われる場所には巨大なクレーターが出来上がっており、穂乃果達はオーブはどこだろうと辺りをキョロキョロと探し始める。

 

するとその時、穂乃果が倒れ込んで気を失っている紅葉の姿を発見し穂乃果は「お兄ちゃん!?」と驚きの声をあげて3人は急いで紅葉の元へと駆け寄る。

 

「お兄ちゃん!! お兄ちゃんどうしたの!? しっかりして!!」

「穂乃果、大丈夫です。 紅葉はどうやら気を失ってるだけのようです! 兎に角、紅葉を連れて一旦穂むらへと戻りましょう!」

 

海未の言葉に穂乃果とことりは頷いて3人で紅葉を穂むらまで運び、彼を部屋のベッドへと寝かせた後、穂乃果は濡れたタオルを持って来てそれを紅葉の額に乗せ、彼女達は3人は紅葉の看病を行っていた。

 

「病院はどこも熱中症の患者でいっぱいみたいだから……紅葉くんしばらくはこのままだね……」

「熱中症の患者でいっぱいって……たった数分しかいなかったのにとんでもない被害を出しましたね……あの怪獣……」

 

もしもあのままオーブが地球からマガパンドンを遠ざけなければ一体どうなっていたことかと思うと恐ろしいと海未は考え、思わず身震いしてしまった。

 

一方で紅葉は……またあの時の……昔の夢を見ており、夢の中の紅葉はオーブニカを吹きながらそのメロディーに合わせて自分の隣で歌を口ずさむ少女と一緒に楽しげに過ごしていた。

 

だがある時、そんな2人の楽しげな光景を壊すようにマガゼットンが出現し、彼女を自分とマガゼットンの戦いに巻き込んでしまい、彼女を守れなかった時の夢を……紅葉は見ていた。

 

また現実の世界では穂乃果が「お兄ちゃん……」と心配そうな表情を浮かべており、紅葉の額に乗せていたタオルがすぐに乾いてしまったことに気づいた穂乃果はタオルを変えようとそれに手を伸ばした時、突然紅葉が穂乃果の手を握りしめたのだ。

 

「ふぇ!? お、お兄ちゃん……!?」

 

突然のことに穂乃果は思わず驚いて顔を赤くしてしまったのだが……その紅葉の手は非常に熱くなっており、穂乃果は「ちょっ、熱い熱い!?」と必死に紅葉の手を振りほどこうとする。

 

すると紅葉は目を覚まし、彼は穂乃果の手を離すと紅葉は辺りを見回しそこが自分の部屋であることに気づく。

 

「穂乃果……?」

「良かったぁ……。 海未ちゃんことりちゃん! お兄ちゃん目を覚ましたよ!!」

 

紅葉が目を覚ましたことに穂乃果はホッと安堵し、それを聞いた海未もことりも同じように「良かった……」と安心した表情を浮かべ、紅葉はベッドから起き上がって立ち上がろうとするが穂乃果に「まだ安静にしてないとダメだよ!?」と注意され無理矢理寝かされてしまう。

 

「ぐっ……。 そう、だな……しばらくは……」

 

紅葉はそこまで言いかけるとまた眠りに入ってしまい、穂乃果は「もう遅いし、海未ちゃんもことりちゃんもそろそろ帰った方が良いんじゃ無い? お兄ちゃんのことは大丈夫だから」と2人に言い、海未もことりもその通りだと思い彼女の言うように取りあえず今日は帰ることにした。

 

穂乃果と別れの挨拶を済ませた後、海未とことりの2人は穂むらを後にしたのだが……その帰る途中、ことりはフと気になったことを海未に尋ねてみた。

 

「ね、ねえ海未ちゃん……。 ことりの考えすぎかもしれないんだけど、オーブの消えた場所に紅葉くん倒れてたよね? それに穂乃果ちゃんから聞いた話だけど……あの鳥の怪獣が現れた時、紅葉くんがどこかに行った後にすぐにオーブが現れたって……。 だからもしかして……」

 

ことりがそこまで言いかけて海未はことりがなにが言いたいのかを察し、恐らくことりはオーブの正体が紅葉ではないのかと考えているのだろうが……海未はそれを否定した。

 

「それはあり得ないと思いますよ? あの大きさから推定するとオーブは約5万トン、質量法則の保存から言っても人間がオーブであることは考えられません……」

「うん、そっか……。 海未ちゃんがそう言うならきっとそうだよね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後、紅葉は未だに目を覚まさず、まだ熱もあったため彼は学校を休むこととなり、穂乃果は紅葉が心配だったがここで立ち止まっていたら紅葉に怒られると自分に言い聞かせ、絵里の新入生歓迎会の挨拶が終わった後、放課後に穂乃果達は午後4時からのファーストライブに向けてチラシをみんなで配って宣伝活動を行っていた。

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

その中でも特に海未はあれだけ恥ずかしがっていたのに今ではすっかりと笑顔を振りまいてチラシ配りを行っており、それに感心した穂乃果やことりも負けてられないと思い3人はチラシ配りを頑張るのだが……一瞬だけ、穂乃果はどこか暗い表情を浮かべてそれを見たことりは小首を傾げて「どうしたの?」と穂乃果に問いかける。

 

「うん……。 折角の初ライブ……やっぱりお兄ちゃんにも見て貰いたかったなぁ……って思って……」

「穂乃果ちゃん……」

「でも! だからこそファーストライブを成功させないとね! この後に続くライブをお兄ちゃんにも見て貰うためにも!」

 

穂乃果はガッツポーズをしてそう言い放ち、それにことりも「うん!」と笑顔で頷き、2人は再びチラシ配りを再開する。

 

しかし……そんな彼女達の努力を嘲笑い、打ち消すかのようなタイミングでマガパンドンが再び活動を開始……マガパンドンは宇宙から再び地球へと向かって落下してきていたのだ。

 

それと同時に穂むらで眠っていた紅葉はそれを感じ取ったのか目を覚まし、外を見てウルトラマンとしての視力を使って上空を見上げると紅葉はこのまま真っ直ぐマガパンドンが地球へと戻って来ていることが分かり、紅葉は「クソ!!」と思わず壁を殴りつけてしまう。

 

そして紅葉はフッと部屋の時計を見ると時計の針は午後3時を刺しており、このままマガパンドンの被害が広まれば穂乃果達のファーストライブが中止になってしまうのではないかと思い紅葉はどうにかマガパンドンを倒す方法を必死に考える。

 

「せめて街の方から遠ざけることができれば……!」

 

紅葉は今所持しているウルトラフュージョンカードを全て取り出し、でマガパンドンに対抗できそうなカードがないかを見つめていると……フッとメビウスとタロウのカードに目が止まった。

 

「タロウさんとメビウスさんのバーンマイトは炎……。 炎には炎で……そうか! この手があった!!」

 

打開策を思いついた紅葉はオーブリングを取り出し、最初にタロウのカードをオーブリングにリードさせる。

 

「タロウさん!!」

『ウルトラマンタロウ!』

 

続いてさらにメビウスのカードを紅葉オーブリングにリードさせる。

 

「メビウスさん!」

『ウルトラマンメビウス!』

 

その後、紅葉はオーブリングを天高く掲げるとタロウとメビウスの姿が紅葉と重なり合い、紅葉はタロウとメビウスの姿を合わせたような「ウルトラマンオーブ バーンマイト」へと変身する。

 

「熱いやつ、頼みます!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! バーンマイト!』

 

オーブへと変身した紅葉はマガパンドンのいる場所へと向かい、マガパンドンの元へと到着すると既にマガパンドンは昨日と同じくらいの空の高さで制止しており、マガパンドンはオーブの姿を見るや否や火の玉の中から幾つもの火球を放つ。

 

戦闘BGM「バーンマイトのテーマ」

 

『あいつ等の……穂乃果達のファーストライブの邪魔してんじゃねえ!! ライブが始まる前にお前を倒してやる!!』

 

オーブはそれを炎を宿した拳で弾き飛ばし、オーブは両腕で巨大な火球を作り出し敵に放つ「ストビュームバースト」をマガパンドンに向かって繰り出す。

 

『この一撃に怒りをこめて……! ぶっ飛べ!! ストビュームゥ……バァーストォ!!!!』

 

オーブの放ったストビュームバーストがマガパンドンに直撃して爆発するとマガパンドンの炎が吹き飛ばされ……炎の球体の中からマガパンドン本体が出現し、地上へと降り立つ。

 

『これが爆風消化ってやつさ!』

 

爆風消火とは爆弾を破裂させてその爆風で火を消したりすることのことであり、オーブはその要領でマガパンドンの炎を消し飛ばしたのだ。

 

そして姿を現したマガパンドンに向かってオーブはジャンプすると空中で何度もひねりや回転を加えてから繰り出す跳び蹴り「スワローキック」をマガパンドンに叩き込み、さらにマガパンドンの胸部に拳を叩き込む。

 

「クジャアア!!」

 

しかし負けじとマガパンドンもラリアットをオーブへと喰らわせ、それによって怯んだオーブに体当たりを繰り出してオーブを吹き飛ばし、倒れ込んだオーブに向かってマガパンドンは身体を回転させて左右の口から火球を放ち、オーブを攻撃する。

 

『デアアア!!?』

 

するとオーブの中にいる紅葉はタロウのカードを再びオーブリングにさせる。

 

『タロウさん!』

『ウルトラマンタロウ!』

 

続いて紅葉は今度はメビウスとは別のカード……「ウルトラマンマックス」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『マックスさん!』

『ウルトラマンマックス!』

 

そして紅葉はオーブリングを天高く掲げるとウルトラマンタロウとウルトラマンマックスの姿が紅葉と重なり合い、オーブはバーンマイトからタロウとマックスの姿を合わせたような「ストリウムギャラクシー」へと姿を変える。

 

『最大級の爆発パワー、頼みます!!』

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! ストリウムギャラクシー!』

 

挿入歌「オーブの祈り」

 

『宇宙の悪に立ち向かう光!!』

 

オーブはマガパンドンが放ってくる火球を手で弾き、そのままそっくりマガパンドンに火球を全て正確に打ち返し、自分の火球を喰らったマガパンドンは身体から火花を散らして倒れ込んで動きを止める。

 

そのままオーブはマガパンドンにマウントを取り、素早い動きで何発も拳をマガパンドンの頭部に叩きこんでいく。

 

『シュアアアア!!!!』

「グルアアアア!!!!」

 

しかしマガパンドンはオーブはどうにか押し退かし、体当たりを仕掛けるがオーブはそれを真正面から両手で受け止め、マガパンドンを両手で持ち上げるとそのまま投げ飛ばし地面へと叩きつける。

 

『ジュア!!』

 

叩きつけられて倒れ込むマガパンドンだが……マガパンドンはすぐさま立ち上がり、反撃しようとするがそれよりも早くオーブの繰り出された強烈な拳が右の嘴に叩きこまれ、マガパンドンは思わず悲鳴をあげてしまう。

 

オーブはマガパンドンの腹部に膝蹴りを叩きこんだ後、左腕をあげてエネルギーをチャージし、身体を一瞬虹色に輝かせた後、腕をL字に組んで放つ必殺光線「ストキシウムカノン」をマガパンドンへと撃ち込む。

 

『これで終わりだ!! ストキシウムカノン!!』

「グルアアアアア!!!!」

 

しかしマガパンドンはそれでも尚、光線を受けながらこちらに向かって進行し始め……オーブは一瞬それに驚くが……オーブは諦めずマガパンドンに光線を撃ち込み続け……その結果、マガパンドンは遂に力尽き、倒れ爆発四散した。

 

「ギシャアアアアアア!!!!?」

 

その後、紅葉は倒したマガパンドンの破片にオーブリングをかざすとその破片が粒子となり1枚のウルトラマンのカード……「ウルトラマンゼロ」のカードへと変わった。

 

「マガパンドンを封印していたのは、ウルトラマンゼロさんでしたか! お疲れ様です! さて、それじゃ行きますか!」

 

また同じ頃、ラグナもダークリングを使いマガパンドンのカードを回収しており、ラグナは「マガタノゾーア」「マガゼットン」「マガバッサー」「マガグランドキング」「マガジャッパ」「マガパンドン」のカードを手に持ち見つめ……不気味な笑みを浮かべていた。

 

「感謝するぜ? これで全ての魔王獸は揃った……。 あとは……クフフフ……!! フフッゴホォ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で音ノ木の方では怪獣の騒ぎがあったものの即座にオーブが倒したために中止になるようなことはなく、ヒデコ、フミコ、ミカの通称ヒフミトリオの3人も手伝ってくれたおかげで準備も問題なく進んでおり、ライブの時間が近づくと穂乃果、海未、ことりの3人は衣装に着替え既に彼女達はステージへとあがっていた。

 

最も海未が衣装に着替えた際にスカートの下に恥ずかしがってジャージを履くというトラブル(?)がありはしたが……。

 

尚、まだステージのカーテンは閉まっており、今はまだ穂乃果達にはライブに来てくれたお客さんの姿は見えていなかった。

 

「……いよいよだね……!」

 

穂乃果が小さくそう呟くとことりは「うん」と頷いたのだが……穂乃果は隣で海未がガチガチに緊張していることに気づくとそんな彼女の震えた手を安心させるように握りしめ、穂乃果はことりとも手を繋ぐ。

 

「大丈夫! 私達がついてるから!」

「穂乃果……」

 

そんな風に自分を励ましてくれる穂乃果を見て安心したのか、海未は少し落ち着きを取り戻した。

 

「でも、こういう時なんて言うのかな?」

 

とその時、ことりが疑問に思ったことを口にすると穂乃果は海未とことりの手を握ったまま「μ's、ファイト、オー!!」と両腕をあげてかけ声をあげるがそれを海未に「それでは運動部みたいですよ?」とツッコまれてしまい、穂乃果も「だよね~」と思わず笑ってしまう。

 

とそこで「あっ、思い出した! 番号言うんだよ確か!」とこういう時に言う言葉を思い出し、ことりも「面白そうだね!」ということで3人は番号を言っていくことに。

 

「じゃあ行くよー!! 1!」

「2!」

「3!」

 

それぞれが番号を言い終わり、穂乃果達は互いを見てついつい笑ってしまい、穂乃果は「μ'sのファーストライブ、最高のものにしよう!」と宣言すると海未とことりも力強く頷き、ライブ開始の音が鳴るとカーテンが開き……彼女達は会場をワクワクした様子で見ると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには……誰もいなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰1人として……いなかったのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、頑張ったんだけど……」

 

そこでミカが必死に客を集めようと頑張ったのだが……結局、誰1人として来なかったことを謝罪し、穂乃果は誰もいないステージを見て唖然としていた。

 

そんな穂乃果を見て海未やことりも彼女と同じような表情を浮かべ、チラシ配りから帰ってきたミカも結局誰も呼ぶことができず、穂乃果は泣き出しそうになるのをグッと堪えて笑みを見せる。

 

「そりゃそうだ! 世の中そんな、甘くない!!」

 

だが、すぐにまた泣き出しそうになってしまい……ことりや海未も辛そうな表情を浮かべてしまう。

 

「なんで……あいつ等、あんなに頑張ったのに……」

 

また紅葉はこっそりと講堂の中を伺っており、彼もまた誰もライブを観に来ていないことに衝撃を受けていた。

 

「せめて……せめて俺だけでも観に行かないとな……」

 

紅葉はそう言って講堂へと入ろうとしたのだが……その時、こちらに向かって誰かが走って来ていることに気づき、その人物を見た紅葉は目を見開き……口元に笑みを浮かべ「そうか、そうだったな」と呟き講堂へと入る。

 

「穂乃果!! 海未!! ことり!! 忘れたのか……お前等の1番のファンの顔を!!」

「フォ……じゃない! 紅葉!?」

「紅葉くん!?」

「お兄ちゃん!?」

 

学校を休んでいる筈の紅葉が来たことに穂乃果達は驚き、海未は「ファンってもしかして紅葉のことですか?」と問いかけるが紅葉は首を横に振る。

 

「俺は強いて言えばファン0号ってところかな? 俺が言ってるのは彼女のことさ……」

 

そう言いながら紅葉が講堂の入り口に目をやり、釣られるように穂乃果達もそこに視線を映すと丁度そこへ息を切らして走ってきた花陽が講堂へと入ってきたのだ。

 

「花陽ちゃん……?」

「あ、あれ? ライブは……? あれぇー?」

 

そんな花陽を見た穂乃果はどこか一瞬嬉しそうな表情を見せた後、高く言い放った。

 

「やろう! 歌おう! 全力で!! だってその為に今日まで頑張って来たんだから!! 歌おう!!」

「「……っ!」」

 

穂乃果のその言葉に海未もことりも力強く頷き、彼女達はたった1人だろうが観客の為に……全力でライブを行う。

 

ライブの曲は……「START:DASH!!」

 

またライブを行っている時、途中で凛も入ってきて花陽と一緒に思わず彼女達のライブに見惚れてしまい……さらに静かにこもまた講堂の中へと入ってライブをこっそりと見ており、また講堂の外では真姫と希がおり、音響室には絵里が来ていた。

 

そしてライブが終わると凛と花陽、紅葉、途中で入ってきた真姫、ヒフミトリオは最後までライブをやり抜いた3人に拍手を送り、穂乃果達もとても嬉しそうにしていた。

 

するとそこへ絵里が階段を降りながら現れ……絵里は穂乃果達に向かって「どうするつもり?」と問いかける。

 

「……続けます!」

 

その問いに穂乃果は力強くそう答え、その返答に笑みを浮かべ紅葉は「だよな」と呟いた。

 

「なぜ? これ以上やっても意味は無いと思うけど……?」

「やりたいからです!! 私、もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます!! きっと、海未ちゃんやことりちゃんも……。 こんな気持ち、初めてなんです! やって良かったって本気で思えたんです!! 今はこの気持ちを信じたい、このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない……。 でも、一生懸命頑張って届けたい! 今、私達がここにいるこの想いを!!」

 

穂乃果はそう高らかに宣言し、そして……。

 

「いつか……いつか私達、必ず……ここを満員にしてみせます!!」

 

拳を強く握りしめ最後にそう言い放ち、講堂の外にいる希は「完敗からのスタートか……」と呟いた後、講堂を去って行くのだが……紅葉はその超人的な聴力で希の声が聞こえていた。

 

「確かに完敗かもしれない……。 でも、失敗じゃない……!」

 

紅葉は新たに決意した穂乃果達を見てそう言いながら笑っていた……。

 




紅葉
「今日は穂乃果の誕生日だ!! おめでとー!!」

穂乃果
「えへへ、ありがとうお兄ちゃん!」

紅葉
「あとで海未達も呼んでパーティーもやるからな! ちゃんとプレゼントもあるから楽しみにしといてくれ!」

穂乃果
「わーい!」

紅葉
「それじゃやることやろうか! サブタイを探せ! のコーナー!」

穂乃果
「いぇーい!」

紅葉
「いやそれにしても良かったなファーストライブ……」

穂乃果
「ホント!?」

紅葉
「あぁ、3人とも可愛かったしな!」

にこ
「っていうか……やっとの私の名前出たわね……。 全く4話までかかるとかなに考えてんのかしらこの作者は……!」

紅葉
「それはほら、にこ先輩弄られキャラだから!」

にこ
「だぁれが弄られキャラよ! ったく、それより今回のサブタイは?」

紅葉
「今回のサブタイは俺がマガパンドンの炎を吹き飛ばす時に言った帰ってきたウルトラマン第46話の『この一撃に怒りをこめて』だ!!」

穂乃果
「みんな分かったかな? そう言えばお兄ちゃんとラグナさん率高いよねこれ……」





ちなみに自分は……穂乃果ちゃん押し


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第5話 『アイドル・ヒーロー』

悪質宇宙人 メフィラス星人ノストラ
地底怪獣 テレスドン
金属生命体 アパテー
暗黒星人 ババルウ星人ババリュー
にせウルトラマンオーブ
登場。


花陽、真姫、凛のいる1年の教室にて……そこでは今現在授業が行われているのだが……花陽はどこか思い詰めたような表情を浮かべており、机の上には教科書やノートに隠れてμ'sの「メンバー募集中」と書かれた紙が置いてあった。

 

それを見つめながら花陽は「どうしよう……」と呟いており、それと同時にその昔、自分が友人達と将来何になりたいかなどを話していた時のことを思い出していた。

 

友人の1人に『花陽ちゃんはなにになりたいの?』と聞かれた際、花陽は恥ずかしがって口ごもってしまったがそれを彼女の代わりに答えるかのように凛が「凛知ってるよ、かよちんはアイドルになりたいんだよね!」と言い、それを聞いた友人達は凛含めて「頑張ってね」と応援してくれたのだが……。

 

その時、教師に指名されて教科書読むように言われ、花陽は「は、はい!」と慌てて立ち上がって教科書を読むのだが……声が小さかったために教師から「声もう少し出して!」と言われ花陽はなるべく大きな声を出そうとしたのだが……声の大きさは先ほどとはあんまり変わっていなかった。

 

そして教師がすぐに次の生徒に教科書を読むように指示し、花陽は小さな溜め息を吐きながら席へと座り込んだのだが……その表情はどことなく暗い。

 

(……無理だよね、こんなんじゃ……)

 

同じ頃……惑星侵略連合の宇宙船では……。

 

『おいおいどういうことだラグナさんよぉ! お前が魔王獸を復活させてその魔王獸達をオーブと戦わせてオーブを倒すつもりだったのに、マガパンドンもマガジャッパも見事にやられちまってるじゃねーか!』

 

マガパンドンもマガジャッパを利用してオーブを倒す筈が……逆に魔王獸が倒される結果となってしまったためにナグスは苛立った様子で銃をラグナへと突きつけるが……それをノストラが「やめろ」と止めたため、ナグスは銃を下ろす。

 

『ウルトラマンオーブの強さの理由……それは、人間達の絆の強さ。 人々の希望が奴に力を与えている』

「ですが……それは同時にオーブの弱点でもある訳です。 奴は戦ってる最中、人を傷つけることを恐れています。 つまり、そのオーブと人間達の絆を断ち切れば良いのです」

 

ラグナの言葉にノストラは「確かにな」と頷き、ノストラは「ならば」と言いながら右手をあげると「出でよ! ババルウ星人ババリュー!!」と名前を呼び、それに答えるように現れたのは金髪の宇宙人……「暗黒星人ババルウ星人 ババリュー」であり、ノストラはババリューに「貴様の変身能力でオーブに化け、地上を攻撃してオーブと人間の信頼関係を壊して来い」と指示し……命令を受けたババリューは「了解!」と頷く。

 

するとババリューが一度顎に手を当てたあと、身体が眩く輝き……光が収まるとそこにはババリューが化けた偽物のスペシウムゼペリオンのオーブ……「にせウルトラマンオーブ」が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休憩時間にて……紅葉達は自分達の活動をちゃんとした部活として認めて貰うためにあと1人足りないメンバーを探していたのだが……途中でことりが寄りたいということでなぜか一同は黒と白のアルパカのいるアルパカ小屋に立ち寄っており、ことりはうっとりとした目でアルパカを見つめていた。

 

「ことりちゃん最近毎日来るよね?」

「急にハマったみたいです……」

「ふごふごふがふが……!」

 

穂乃果と海未がそんなことりのことについて話し合っており、紅葉も何か言いたそうにしていたがカレーパンを食べながらだったので全く何を言っているのかサッパリ分からず、当然海未から「食べるか喋るかのどっちかにしてください!! はしたない!!」と前回とほぼ同じ注意をされてしまう。

 

「っていうかなんでまたカレーパン食べてるんですか!?」

「お兄ちゃんカレーパン好きだから……。 それよりもことりちゃんそろそろチラシ配り行くよー?」

 

穂乃果はメンバー募集のためのチラシを配りに行こうとことりに言うのだが……ことりは「あとちょっと~」と未だにアルパカ小屋から離れようとせず、海未も「5人にして部として認めて貰わなければ私達はちゃんとした部活ができないのですよ!」と注意するがそれでもことりは「うーん、そうだよね~」とマイペースな言葉しか返って来なかった。

 

「ダメだこりゃ、聞いてない……」

 

ことりは物凄く可愛いものを見る目で見つめており、そんな彼女の様子を見て穂乃果は「かわいい……かなぁ?」と首を傾げると黒アルパカがその穂乃果の言葉に反応するように大きな鳴き声をあげて思わず穂乃果と海未は驚いてしまう。

 

「えぇ~!? かわいいと思うけどなぁ! 首の辺りとかふさふさしてるしぃ~。 はぁ~、幸せ~」

「ことりちゃんダメだよ!」

「危ないですよ!」

 

穂乃果とことりは白アルパカに触ることりを注意するが……その時白アルパカがことりの頬を舐めてことりはそのことに驚いて倒れそうになるがそれを紅葉と穂乃果が支える。

 

(こいつ……一部の人が羨ましがりそうなことを……)

 

紅葉がそんなことを考えているとこれに慌てた海未が「どうすれば……ハッ! ここは1つ弓で!」等と言いだしそれに紅葉が「動物虐待反対!!」と海未に注意し、そんな海未の言葉に怒るかのように黒アルパカがうなり声をあげる。

 

「ほら海未ちゃんが変なこと言うから!」

 

そんなとき、体操着を着た花陽がやってきて黒アルパカを撫でて落ち着かせ……ことりは「アルパカさんに嫌われちゃったかなぁ~」と不安そうにしていたがそれを花陽が「大丈夫です、楽しくて遊んでただけだと思うから……」と教えてくれたため、ことりは「良かった~」と安堵した。

 

そこで花陽はアルパカ小屋の水が切れていることに気づいて新しい水を付け替えようとすると後ろから穂乃果が「アルパカ使いだね~」と感心した様子で花陽がアルパカの世話をしている姿を見つめていると……穂乃果はそこで彼女がライブに来てくれた花陽であることに気づき「おぉ~!」と声をあげた。

 

「ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!」

「いやぁ、ありがとうな。 君が来てくれたおかげでこいつ等最後までライブをやりきることができたよ!」

 

紅葉は花陽に頭を小さく下げてお礼を言い、花陽は「そ、そんな……!」と両手をブンブン振って「私は……見に行った、だけですから……」と言葉を返すのだが……その時穂乃果がガッシリと花陽の両肩を掴み、満面の笑顔を浮かべると……。

 

「ねえあなた! アイドルやりませんか?」

 

とあまりにもいきなりの勧誘をし始めた。

 

これにはことりも思わず「穂乃果ちゃんいきなりすぎ」と苦笑しつつツッコミを入れられた。

 

「君は輝いている! 大丈夫! 悪いようにはしないから!!」

 

その様子を見て紅葉は「それ悪いやつが言う台詞だぞ? 穂乃果……?」と呆れ、海未も同じように「なんか凄い悪人に見えます」と言われてしまうが穂乃果はそんな2人に対し「でもこれくらい強引に頑張らないと~」とあながち間違っていないことを言われたため、紅葉も海未もそれに反論できなかった。

 

「あ、あの……西木野さんが……」

 

とそこで花陽が何かを言おうとしたのだが、よく聞き取れなかったため穂乃果は「あー、ごめんもう1度言って貰える?」と耳を花陽の方へと傾け優しくお願いすると花陽は「西木野さんが……良いと、思います。 凄く歌、上手なんです……」と真姫を推薦し穂乃果はそれに激しく同意した。

 

「そうなんだよねー! 私も大好きなんだ! あの娘の歌声!」

 

それを聞いて海未は「だったらスカウトに行けば良いじゃ無いですか?」と尋ねると穂乃果は紅葉と一緒に既に勧誘しに行ったのだが……真姫から返って来た答えは「絶対やだ」というものであり、キッパリとメンバー入りを断られてしまったのだ。

 

「えっ? あっ、ごめんなさい私余計なことを……!」

「ううん、ありがと!」

 

穂乃果は申し訳なさそうにする花陽の手を握ってお礼を言い、その時後ろの方で「かよちーん!!」と花陽を呼ぶ声が聞こえ、声のした方を見ると凛が「早くしないと体育遅れちゃうよー?」と手を振って花陽迎えに来ており、花陽は「失礼します」と頭を下げてから急いで凛の元へと駆け寄る。

 

(あの娘……どことなく、μ'sにちょっと入りたそうに見えたのは……気のせいかな……)

 

紅葉は去って行く花陽を見つめながらそんなことを思っていたのだが……自分達もそろそろ授業が始まるために4人は教室へと一度戻ることにしたのだった。

 

その一方で絵里は希を連れて理事長室へと訪れており、この学校のことりの母親でもある理事長にμ'sのファーストライブの結果を報告していた。

 

「生徒は全く集まりませんでした。 スクールアイドルの活動は音ノ木坂学院にとってマイナスだと思います」

「学校の事情で生徒の活動を制限するのは……」

 

理事長が絵里にそう言いかけた時、絵里は「でしたら学院存続のために生徒会も独自に活動させてください!」と頼むのだが理事長は「それはダメよ」と断ったのだ。

 

「なぜですか!?」

「それに、全然人気がない訳じゃないみたいですよ?」

 

そう言いながら理事長は自分のパソコンを絵里と希の方へと向けるとそこにはμ'sのファーストライブの光景が動画として流れており、それを見て希は「誰かが撮ってたんやなぁ~」とチラっと絵里の方に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の授業が終わり、花陽が帰宅の準備をしていた時のことである。

 

後ろから「か~よちん♪」と彼女を呼ぶ声が聞こえ、花陽が振り返るとそこには凛が立っており、凛は「入る部活決まった? そろそろ決めないとダメみたいだよ?」と彼女に尋ねてきたのだ。

 

「えっ、えっと……そうだっけ? 明日……決めようかな……?」

 

そんなオドオドとした様子の花陽に凛はムスっとした表情を浮かべ「そろそろ決めないとみんな部活始めてるよ!?」と凛は忠告し、花陽は戸惑いつつも「う、うん」と答えるのだった。

 

「えっと、凛ちゃんはどこ入るの?」

「凛は陸上部かなー?」

「陸上……かぁ……」

 

どこか何かを悩んでそうな花陽に凛は「あっ、もしかして~? スクールアイドルに入ろうと思ってたり?」と問いかけると花陽は「ふぇ!?」と驚きの声をあげ「そ、そんなことない……!」と指を合わせながら否定するのだが……凛から見ればそれが彼女の嘘であることはすぐに分かった。

 

「ダメだよかよちん! 嘘つく時必ず指を合わせるからすぐ分かっちゃうよ~! 一緒に行ってあげるから先輩達のところに行こう!」

 

凛はそう言いながら花陽の腕を掴み穂乃果達のところへと連れて行こうとするが花陽は席を立とうとせず、「ち、違うの! 私に……アイドルなんて……」と自信の無さそうな表情を浮かべ穂乃果達のところに行くのを拒否する。

 

しかし凛は「かよちんそんなに可愛いんだよ!? 人気出るよ~」と花陽を立ち上がらせようとするが花陽は必死に「でも待って!!」と言い、凛は花陽の言われた通り待つことにして「しょうがないな~? なぁに?」と彼女の話を聞くことにするのだが……。

 

「もしね、私が……アイドルやるって言ったら一緒にやってくれる……?」

 

もし凛が一緒ならば自分もスクールアイドルをやれるかもしれないと思ったのだが……凛は両手を振って「無理無理無理! 凛はアイドルなんて似合わないよ!」と断ったのだ。

 

「ほら、女の子っぽくないし~。 髪だってこんなに短いんだよ?」

 

そんな凛に対して花陽は「そんなこと……」と言いかけたのだが凛は昔、小学生の頃いつもズボンを履いていたのだが……たまには女の子らしくスカートを履いて見たことがあったのだ。

 

それに花陽は「凛ちゃん可愛いよ! スカート凄く似合うよ!」と褒めてくれたのだが……同年の男子生徒達から「あっ、スカートだ~!」「スカート持ってたんだ~!」「いつもズボンなのに!」とからかわれてしまったことがあったのだ。

 

『や、やっぱり凛……着替えて来るね!』

 

結局その後凛は一度家に帰ってズボンに履き替えて来たということがあり、それらのことから凛は「自分は女の子らしくない」と考えるようになってしまい、自分はアイドルなんて絶対に無理だと花陽に彼女は話す。

 

するとその時……突然教室の扉が「バァーン!!」と力強く開き、思わず花陽と凛はそれに「ビクッ!」と肩を震わせてしまう。

 

「おい、そいつ等の住所教えろ。 それと星空、今もスカート持ってんなら今すぐスカートを履いたオシャレな格好して来い!! そいつ等に見せに行くぞ!!」

 

そう強く言いながら入って来たのは紅葉であり、ズシズシと凛に詰め寄ってそう言い放って来たのだが凛は「今の話聞いてたのならスカートは凛には似合わないって言った筈にゃ!?」と言葉を返すのだが紅葉は……。

 

「そんなこと知るか!!」

「えぇー!? ちょっと無茶苦茶にゃ! この先輩!」

「女の子が女の子らしい格好して何が悪い!! それと小泉も星空も2人とも可愛い!! 絶対にスクールアイドルできる!!」

 

どうやら紅葉は2人のことを勧誘しに来たらしく、その際に2人の話をついつい聞いてしまい、紅葉は「星空バカにした奴等見返しに行くぞ!!」と凛にその男子生徒達の住所をもう1度聞こうとするのだが……その時……。

 

音ノ木の近くで突如光輝く柱のようなものが現れ、それが消えるとそこには「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」が立っていたのだが……無論、これはババリューが化けた偽物である。

 

凛は話題反らしの意味も込めて「あーっ! オーブにゃー!」とにせオーブの方を指差し、花陽もにせオーブを見て「ぴゃあ!?」と驚きの声をあげ……紅葉に至っては唖然とした表情を浮かべていた。

 

「確かにオーブ……だけど、怪獣もいないのにどうして……?」

 

そしてにせオーブはノストラの「地上を破壊しろ!!」という命令を実行しようとしたその時……突如地中が揺れ始め大地から「地底怪獣 テレスドン」が出現したのだ。

 

『うえ!? ドン・ノストラ……! これはどういうことですか!?』

『分からん……。 これは想定外の出来事だ……』

 

これはにせオーブやノストラにとっても全くの偶然の出来事であり、にせオーブはノストラにどうすれば良いのかと聞くのだがノストラは「自分の身は自分で守れ!!」とババリューに丸投げしてしまう。

 

『そ、そんなぁ~!』

 

しかしそうしている間にテレスドンは背後からにせオーブに体当たりを喰らわせ、テレスドンはにせオーブへと掴みかかって攻撃を繰り出しにせオーブは膝を突かせ……その時、凛はにせオーブとテレスドンの戦っている場所の近くにまだ幼い子供が2人いることに気づいた。

 

「あっ! あそこに子供が!!」

「なに!?」

 

それを見た紅葉は花陽達の教室から出てオーブに変身しようと思ったのだが……膝を突いたにせオーブが立ち上がるのとテレスドンの火球が放たれるのがほぼ同時であり、その結果にせオーブは火球を喰らってしまうのだがそれが偶然にも子供を庇う形となったのだ。

 

『あっつ! あっつぅ……! もう許さねえぞお前!!』

 

これに怒ったにせオーブはテレスドンの方へとジャンプして掴みかかり、左手で頭を掴んで右肘でテレスドンの頭部を何度も必死に殴りつける。

 

「オーブってあんな戦い方だったかにゃ……?」

「いやそんなことは……ない……筈……」

 

最後にヤクザキックを喰らわせてテレスドンの顔に拳を叩きこみ、テレスドンは地面へと倒れ込んで地中へと帰って行き、助けられた子供達は「ありがとうウルトラマンオーブ!」と手を振ってお礼を言うのだが……思った以上に体力を消耗してしまったためかにせオーブは元のババリューの姿に戻りかけ、ババリューは「やべぇ!」と慌てて姿を消すのだった。

 

「ここからオーブが消えた場所は近いにゃ! オーブの正体を見に行くにゃかよちん!!」

「えぇ!? 私も!?」

 

凛はそう言って強引に花陽の腕を引っ張ってにせオーブが消えた辺りの場所へと向かって走り出し、最後には花陽の「ダレカタスケテエエエエ!!!!」と大きく響く声だけが残った。

 

「……あっ! あいつ逃げやがったな!」

 

そして姿を消したババリューはというと……にせオーブの姿からババルウ星人としての姿に戻った彼は「酷い目にあった……。 これからどうすっかなぁ……」と呟きながら途方に暮れていると「いたにゃー!!」という声が聞こえババリューは慌てて金髪の地球人の姿へと変身する。

 

(うおぉ!? あぶねえ!!?)

「あなたがウルトラマンオーブですよね!!?」

 

そこに走ってやってきたのは花陽を連れた凛であり、彼女の後ろには「ぜぇー、ぜぇー!」と肩で息をする花陽の姿もあり、ババリューは「なんの……ことだ?」と凛の質問にすっとぼけてその場から去ろうとするが……凛は素早くババリューの前に回り込んで立ち塞がる。

 

「とぼけても無駄にゃ!! あなたがウルトラマンオーブなのはお見通しにゃ!!」

(オーブはオーブでも偽物なんだけどなぁ……どうすっかなぁこれ)

「せめて名前でも聞かせて欲しいにゃ」

 

凛のその言葉にババリューは「な、名前!?」と戸惑うが少し考え込んでから「馬場……竜次」と名乗り、凛は首を傾げて「馬場……竜次?」と思わず聞き返してしまう。

 

「あっ、分かったにゃ! 正体が分かっちゃうと活動がやりにくいんだね!」

「ま、まぁ……そんなところかな? そっちの娘にも黙っておくようにあとで言っておいてくれるかな?」

「分かったにゃ! 凛とかよちんと馬場さんだけの秘密にゃ!!」

 

ババリュー改め、馬場は凛に「お、おう! 俺とお前達だけの秘密だぞ!!」と彼女等と約束し、凛は「それで馬場さんに相談があるんだけど……」と言いかけたところで馬場は「わ、悪い俺ちょっとこのあと大事な用事があるから!!」と言って急いで馬場はその場を走り去っていくのだった。

 

「あっ、行っちゃった」

「はぁ、はぁ……。 凛ちゃん、あの人……本当にウルトラマンオーブなのかな……?」

「きっと間違いないにゃ!」

 

一方、そんな彼女達の様子を少し離れた位置から真姫が眺めており、また別のところでは紅葉がその光景を見つめていたことには誰も気づかなかった。

 

そしてノストラのいる船に帰ってきた馬場は再び本来の姿であるババルウ星人としての姿に戻り、ノストラの「それで、これからどうするんだ?」という質問に対しババリューは「勿論、任務を遂行します!」と答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、ババリューは馬場の姿になって音ノ木坂の校門前に訪れており、馬場は事前の情報からオーブがこの学校に通っているというのを聞いたため、ここでせオーブの姿となり、彼が大切にしている学校を破壊しようと考えていたのだ。

 

今朝は色々と用事もあって来ることはできず、今は放課後のようだが情報によればオーブは部活動をしているので今はまだ学校に残っている筈であり、運が良ければ人間の姿のオーブを瓦礫の下敷きにでき、本物を現れなくさせることも可能だろうと思い馬場は早速にせオーブに変身して学校を破壊しようとするのだが……。

 

「ちょっと!!」

「うおっ!? な、なんだよ……?」

 

そこに馬場に対して誰かが話しかけ、馬場は声のした方へと顔を向けるとそこには真姫が立っており、彼女は馬場を睨み付け……それに馬場は冷や汗をかきつつ「な、なんだよ?」と問いかけると真姫は静かに「昨日、見たのよ……」と答えた。

 

「見たって……なにが?」

「オーブがあなたの姿になったところ」

 

そんな真姫の言葉に馬場は「昨日会った女達以外にも見られてたのか……」と頭を抱えるが、問題はそこではなかった。

 

「でも、あなたはオーブじゃないわね? 今の姿になる前に金色の宇宙人みたいな姿になってたでしょ? あれがあなたの正体なんでしょ? オーブの姿になって一体なに企んでるの?」

 

本当に真姫が見たのはオーブが人間の姿に戻ったところではなく、にせオーブがババリューの姿になり、その後に馬場の姿になったところもバッチリと目撃されていたらしく、馬場は思わず黙り込んでしまうが……。

 

「正体を完全に見られたからにはここでこの女を始末すべきか?」と考えるのだが……その時、花陽を連れた凛が「馬場せんぱーい!!」と馬場と真姫の間に割って入てきたのだ。

 

「馬場先輩何してるんですか!? あっ、西木野さん! この人、凛の中学時代の先輩なんだ! 話してるところ悪いんだけど馬場先輩これから用事があるから借りて行くね!!」

 

凛はそう言いながら馬場と花陽の手を掴んでそのまま真姫の「ちょっと待って!?」という制止の声も聞かずすぐさまどこかへと走り去ってしまうのだった。

 

その際また花陽が「ダレカタスケテエエエエ!!!!?」と叫んでいたが。

 

それから凛はとある公園へと馬場と花陽を連れて訪れ、馬場は「あっぶねぇ~! 助かったぜ」と凛にお礼を言うのだが……凛は「みんなこっちだよー!!」と声をあげると突然、大勢の子供達が馬場の元まで走って来たのだ。

 

「うわわ!? なんだよこのガキ共……子供達は!!?」

「みんな~、この馬場 竜次さんがウルトラマンオーブにゃ!!」

「ちょっ、お前約束破りやがったな!!? 俺とお前達だけの秘密って言ったのに!!」

 

それに対して花陽は慌てて「ごめんなさい! ごめんなさい!!」と涙目で謝り、それに罪悪感を感じた馬場は「い、いや君じゃなくてそこのショートカットの方……」と凛に視線を向け、凛も「ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝るが凛曰く「この子達、ウチの近所の子達でそれであなたに助けられた子達でどうしても馬場先輩にお礼がしたいって言って聞かなかったんだにゃ」と説明する。

 

自分の周りを囲んで騒ぐ子供達に馬場は困ったような表情を浮かべ、「お、おい助けてくれよ!!」と凛に助けを求め、凛はすぐさま子供達に一度馬場から離れるように言うと子供達はそれに素直に従う。

 

「それじゃ質問ターイム!! 馬場先輩になにか質問がある人!!」

 

凛がそう言うと子供達は一斉に「はーい!! はーい!!」と手をあげ、凛が「じゃあそこの君!」と子供の少年の1人を指名すると少年は「僕、逆上がりできないんですけどどうしたら良いですか?」と尋ね、それに馬場はどう答えて良いか分からず口ごもってしまう。

 

「そんなの決まってるにゃ! 諦めないでやることにゃ!! ですよね馬場先輩!?」

「あ、あぁ。 そうだよ、諦めずにやればきっとできるさ」

 

すると続いて別の少年からの質問で「僕もウルトラマンみたいなヒーローになれますか!?」と質問し、馬場は「流石にそれは無理があるんじゃ……」と思ったが凛は「なれますよね!」と馬場の肩を軽く叩く。

 

「う、うん。 慣れるよ。 諦めずに夢とか勇気を……強く持ってれば……。 君のなりたいものにきっとなれる」

「そうにゃ!! お父さんやお母さんの言うことをしっかり聞いて食べ物も好き嫌いしないように!!」

「でも凛ちゃんは好き嫌いあるよね? 魚、苦手だよね?」

 

そんな花陽の言葉に凛は「ギクッ」となり、そんな凛を見て子供達は思わず笑ってしまい、凛は誤魔化すように「ほら、かよちんも馬場先輩になにか質問とかあるでしょ!?」と花陽に振り、花陽は突然のことに「うぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「そ、そんな……私は、特に……」

「もう! だったら凛がかよちんの代わりに質問するよ!」

 

すると凛は花陽は昔からアイドルが好きで、アイドルになるのが夢で……今流行のスクールアイドルも大好きなのだが……学校でできたスクールアイドル部にも興味がある筈なのに「自分に自信がない」という理由からその部活に入るか入らないか未だに悩んでいるのでどうすれば花陽に自信が持たせることができるか、凛は馬場に質問したのだ。

 

(スクールアイドルって確かタルデが最近ちょっとハマってた気がするな……)

 

馬場はスクールアイドルは本物のアイドルとは違い、「やりたい」という気持ちさえあれば誰でも入ることが可能だった筈だと思いだし、馬場は花陽を見て凛の質問に対し答えた。

 

「別に……自信が無いとかじゃないだろ。 やりたいって思うならやれば良いじゃねえか」

「ほら、かよちん! 馬場先輩もこう言ってるよ!」

「で、でも私……どうしても、勇気が……出せなくて……」

 

そんな花陽に対し凛は「かよちんはアイドルにりたいんでしょ!? これくらいの勇気、出さなくちゃ!!」と応援し、凛は「そうだよね馬場先輩!?」と馬場にも同意を認める。

 

「あ、あぁ……。 そう、だな。 そんなんじゃ何時までも立っても何も変わんねえとは思うけどよ……」

「そうだよかよちん!! 勇気出して!!」

「う、うん……」

 

花陽は一応は頷くもののそれでもやはり彼女の中には未だに迷いがあるらしく、その後、馬場は子供達に付き合われて今日一日中遊ぶこととなってしまったのだった。

 

そして夕方……遊び疲れた馬場は椅子に座って休んでおり、凛は「これ子供達からのプレゼントです!」と言って花陽と一緒に子供達が書いたオーブのイラストやお菓子といったものを彼女は馬場に渡し、馬場はそれに「なんだよこれ?」と驚きつつもそれらを受け取る。

 

「あ、あの……さ……。 ヒーローってそんなに良いもんかな?」

「そりゃそうにゃ!! ヒーローっていうのはみんなの憧れだもん!! 凛も好きだし……。 まぁ、それで昔ちょっと無茶して怪我したこともあったんだけど……」

 

凛は照れ臭そうに頬を掻きながらその昔、ちょっと無茶をして怪我をした時、父親に言われたことを彼女は馬場に話した。

 

「『ヒーローはワザと危ないことするものじゃなくて地味で目立たないことでも誰かのために一生懸命頑張るのがヒーローなんだ』って教えられたにゃ」

「そうか……」

「まぁ、でもそんなんだから凛は女の子らしくもないし……可愛くもないのかもしれないけど……」

 

苦笑しながらそう呟く凛に花陽は「そんなことないよ!」と否定し、「凛ちゃんはかわいいよ!?」と花陽は言うが……凛は首を横に振る。

 

「いや、俺もどう見てもお前は可愛いとは思うぞ?」

「ふえ!?」

 

馬場も花陽と同じく凛のことを「かわいい」と評し、凛は初めて異性に「かわいい」と言われたせいか思わず顔を赤くしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の日のことである、凛は用事があるということで今日は花陽は1人で帰ることになったのだが……その際、真姫がμ'sのポスターを見つめているところに出くわし、花陽は思わず隠れてしまうのだが……真姫は何かの紙を1枚鞄の中に仕舞うとそのまま立ち去っていき、花陽は真姫が「あんなところで何をしてたんだろう?」と首を傾げて彼女がいた場所に行くのだが……。

 

その際、床に生徒手帳らしきものが落ちていることに気づき、中を開くとそれが真姫のものであったことが判明。

 

(届けなちゃ……だよね)

 

そう思い、花陽は生徒手帳を真姫に返すため手帳に書かれていた住所を見て彼女の家まで向かったのだが……真姫の家に辿り着くのだが……。

 

「ほ、ほえぇ~!?」

 

真姫の家が大きくて豪華な家だったため、花陽は「す、すごいなぁ~」と驚きの声をあげる。

 

花陽はチャイムを鳴らすとすぐに真姫の母親と思われる女性の声が聞こえ、花陽は少し緊張したが「あ、あの……真姫さんと同じクラスの……小泉、花陽……です」と自己紹介し、真姫の母は「真姫は今病院に顔を出している筈だから」ということで花陽を自宅にあがらせてお客様用の部屋に案内され、椅子に座って真姫が帰ってくるまで待って貰うこととなった。

 

「病院?」

「あぁ、ウチは病院を経営していてあの娘が継ぐことになっているの」

「そう、なんですか……」

 

すると真姫の母は「良かったわ、高校に入ってから友達1人遊びに来ないからちょっと心配してて……」と花陽に話していると丁度真姫が「ただいま~」と言いながら帰宅し、真姫は「誰か来てるの?」と母の元へと行くと花陽が来ていることに彼女は気づき、真姫は少し驚いた様子を見せた。

 

「こ、こんにちわ。 ごめんなさい、急に……」

 

真姫は「なんの用?」と尋ねながら鞄を置いて自分も椅子に座ると花陽は「これ……落ちてたから」と言いながら真姫が落とした生徒手帳を差し出す。

 

「な、なんであなたが?」

「ご、ごめんなさい……」

「なんであなたが謝るのよ? でもまぁ、ありがとう」

 

真姫は照れ臭そうな表情を浮かべながらそう花陽にお礼を述べる。

 

「あ、あの……μ'sのポスター、見てたよね……?」

 

しかし花陽の質問に真姫は「わ、私が? 知らないわ!」とシラを切り、「人違いじゃないの?」と言うのだが……。

 

「でも、生徒手帳もそこに落ちてたし……」

 

さらに言えばあの時真姫が鞄にしまっていた紙もμ'sのチラシであり、そのチラシが鞄のポケットからはみ出していて花陽の視線もそこに行くと真姫は顔を赤くして慌てて立ち上がるのだが……勢い余って膝をテーブルにぶつけてしまい……彼女は椅子ごと転んでしまう。

 

「いっ……たぁ!?」

「あっ、大丈夫!?」

「へ、平気よ! 全くー……。 変なこと言うから!」

 

そんな真姫の姿を見て、花陽は思わず笑ってしまい、真姫はそんな花陽を見て「笑わない!」とムスっとした表情を浮かべる。

 

それから……。

 

「私がスクールアイドルに?」

 

2人は真姫の母が用意してくれた紅茶を飲みながらスクールアイドルについての会話をしており、花陽は真姫の問いかけに「うん」と頷く。

 

「私、放課後いつも音楽室の近くに行ってたの……西木野さんの歌聴きたくて」

「私の?」

「うん、ずっと聞いていたいくらい好きで……だから……」

 

すると真姫は「私ね、 大学は医学部って決まってるの。 だから、私の音楽はもう終わってるって訳」と花陽に話し、花陽は「そうなんだ……」と少し残念そうな表情を浮かべるが……。

 

「それよりあなた、アイドル、やりたいんでしょ? この前のライブの時、夢中で見てたじゃない?」

「えっ? 西木野さんもいたんだ……」

「いや、私はたまたま通りかかっただけだけど! やりたいならやれば良いじゃ無い! そしたら、少しは応援……してあげるから」

 

また照れ臭そうな表情を見せる真姫に花陽は笑みを浮かべ、「ありがとう」とお礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから紅茶を飲み終わり、その途中で花陽の目に穂むらが映り、「お母さんにお土産におまんじゅう買っていこうかな」と店の中に入るとそこには……。

 

「チクショオオオオ!!!! 行きつけのパン屋のカレーパン売り切れてたぁ!!」

「よーしよし、また買いに行けば良いじゃんお兄ちゃん! なんだったらコンビニとかで……」

「あそのカレーパンじゃないとダメなんだよおおおおお!!!!」

 

そこには泣きべそかいて割烹着を着た穂乃果に頭を撫でられて慰められてる紅葉がいた。

 

(どういう状況!?)

 

無論、穂乃果と紅葉がいたことに驚く花陽だがそれ以上に2人のやり取りに花陽は驚いて固まってしまうのだが……紅葉と穂乃果はすぐに花陽の存在に気づき、2人は声を揃えて「あれ? 花陽ちゃん?」と首を傾げた。

 

それから3人は色々あって「少し部屋でお話しない?」ということで花陽を家に上がらせ、穂乃果は「私店番あるから私の部屋でちょっと待ってて」ということで花陽は紅葉の案内もあり、2階にあがるのだが……。

 

「あっ、そうだ。 案内ついでに雪穂に貸した漫画返して貰おう。 おーい雪穂ちょっと」

 

紅葉はそう言いながら部屋の扉を軽くノックして開けるとそこには顔にパックを付けて、胸をよせ必死に寄せようとしているバスタオル姿の雪穂がいた。

 

「ぐぬぬぬぬぬ……! こ、これくらいになれれば……!」

「……」

 

それを見て紅葉はそっと扉を閉じる。

 

「お見苦しいところをお見せしました」

「い、いえ……」

「でもああいうところ可愛いでしょ? ウチの妹」

「アッハイ……」

 

すると隣の部屋から歌声のようなものが聞こえ、紅葉は「海未の声?」と首を傾げながら隣の部屋をそっと開くと……。

 

「ラララララ~ン♪ ジャーン!! ありがと~!!」

 

1人ノリノリでアイドルの決めポーズなどを取っている海未の姿があった。

 

「……」

 

それを見て紅葉はまたもやそっと扉を閉じる。

 

「お見苦しいところをお見せしました」

「い、いえ……」

「一応この部屋で待って貰うつもりだったのに……海未のせいで入りづらい……」

 

紅葉と花陽の2人は顔を見合わせ、「ど、どうしよう……」と悩んでいると扉が勢いよく開かれ、左右から海未と雪穂が険しい表情をしながら出てきて2人で花陽と紅葉を挟み込む。

 

「「見ました……?」」

「「え、えっと……はい……」」

 

それから紅葉が雪穂と海未の2人を落ち着かせたあと、穂乃果もやってきて4人は部屋に入って座り、花陽は最初に「ごめんなさい……」と海未に謝罪したのだが……。

 

「いやいや、君が謝ることじゃないだろ。 むしろ扉を開けたのは俺だしな」

「そうだよ花陽ちゃん! こっちこそごめんね? でも海未ちゃんがポーズの練習してたなんてね~」

 

穂乃果はそう言いながらニヤニヤした顔で海未に視線を向け、それに気づいた海未は頬を赤くして「穂乃果が店番でいなくなるからです!!」と怒鳴る。

 

「あ、あの……!」

 

花陽が何かを言いかけようとしたのだが……そこで「おじゃましま~す」とことりが部屋に入ってきて花陽はことりと視線が合うと慌てて「お、お邪魔してます!」と頭を軽く下げて挨拶する。

 

「えっ!? もしかして本当にアイドルに!?」

 

ことりはてっきりこの場に花陽がいるので彼女もスクールアイドルを始めるのかと思ったのだが……すぐに穂乃果が「たまたまお店に来たからご馳走しようかなって」と説明し、穂乃果は店の名物であるほむまんを取り出す。

 

「あっ、そうだ穂乃果ちゃん、パソコン持って来たよ?」

「ありがとー! 肝心な時に限って壊れちゃうんだ」

 

すると花陽はことりがパソコンを取り出すのを見てテーブルの上にあるせんべい等を持ち上げ、ことりは「ありがとう」と花陽にお礼を言った後、ノートパソコンをテーブルに置いて起動させ、ある動画サイトを開くとそこには自分達のファーストライブの光景が動画で流れていた。

 

その動画は誰かが撮ったものであるらしく、再生数も凄まじいものだったのだ。

 

「しかし盲点だったな。 これだけの再生数ならリアルタイムで動画を流すって方法も取るべきだった」

 

紅葉は前回のファーストライブで「こうすれば良かったかもな」と反省するのだが……その際、紅葉が花陽も動画を見ていることに気づき、「すまん、見づらかったよな」と謝って退こうとするのだが……。

 

その時、紅葉や穂乃果達は花陽が真剣な眼差しで自分達の動画を見ていることに気づき、海未が「小泉さん!」と少し大きめの声で呼びかけると花陽は慌てて「は、はい!」と返事をする。

 

「スクールアイドル、本気でやってみない?」

 

穂乃果にそう誘われ、花陽は「えっ!?」と戸惑いの声をあげるが花陽は「でも、私、向いてないですから……」と苦笑つつそう答えるが、そんな花陽に対し海未は「私だって人前に出るのは苦手です、向いているとは思えません」と話し、ことりも「私も歌を忘れちゃったりするし運動も苦手なんだ」と彼女に話す。

 

「私は凄いおっちょこちょいだよ!」

「なんでちょっと自慢げなんだよ穂乃果……」

 

するとことりは立ち上がり「プロのアイドルなら私達はすぐに失格!」と言いながら立ち上がる。

 

「でもスクールアイドルなら、やりたいって気持ちを持って自分達の目標を持ってやってみることはできる!」

「それがスクールアイドルだと思います」

「だからやりたいって思ったらやって見ようよ!」

 

ことり、海未、穂乃果の順で花陽にそう言い放ち、海未は「最も練習は厳しいですが」と付け加えるがそんな海未にすぐに穂乃果が「海未ちゃん?」とハードルをあげる海未を睨み、彼女もそれにハッとなって「あっ、失礼……」と反省する。

 

「ゆっくり考えて、答え聞かせて?」

「私達は、何時でも待ってるから!」

 

穂乃果とことりにそう言われ、花陽は戸惑いつつも「は、はい……」と頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからノストラ達のいる宇宙船へと帰ったババリューは椅子に座ってジッと子供達の書いたオーブのイラストを見つめており、そこに丁度「どうした? ババルウ?」とナグスとレクターが現れ、ババリューは「いや別に!!」と慌ててイラストを後ろに隠す。

 

『な、なぁ? あ、あのさ……人に憎まれるより喜ばれる方が何倍も気持ちが良いと……お前等、思ったこと……ないか?』

『はぁ? 気色悪いこと言わないでくださいよ。 誰かに喜ばれることなんて虫唾が走ります』

『レクターの言う通りだな。 人の悲鳴を聞いてる方が俺は何倍も気持ちが良いぜ?』

 

ナグスとレクターの返事にババリューは大方予想通りの返答が返ってきたため、彼は「そ、そうか。 変なこと聞いて悪かったな」と謝罪し、ナグスとレクターはそんなババリューを見て「変な奴」と言いながらその場からいなくなるのだった。

 

『……あっ、そうだ』

 

ババリューは子供達のイラストをしまい、タルデが最近ハマっているというスクールアイドルについて尋ねようと思い、ババリューはタルデの元へと向かい、彼と会うとババリューは早速「なぁ、スクールアイドルってそんなに良いもんか?」と尋ねたのだ。

 

『あぁ。 彼女達は本物のアイドルではないが、だからこそライブを見ると彼女達の頑張りなどが伝わって来ると言うか……。 これを見てると地球人も捨てたものではないと思えてくる。 ドン・ノストラにも地球を侵略してもこれだけは消して欲しくないものだな。 アイドルにハマったかつての我が同胞の気持ちも少しは分かる』

 

それにタルデは「最もだからと言ってドン・ノストラを裏切るような真似はしないつもりだが」と呟き、するとタルデは「あっ、そうそう!」と言って何かを思い出したらしく、ババリューに「そう言えば最近、新しいスクールアイドルが出来たという話を聞いたな」と言い、タルデはどこからかタブレットのようなものを取り出し、それにそのスクールアイドルの動画を画面に映してババリューに見せる。

 

『まだ結成したばかりの素人なのだが……中々可能性のある娘達だと思ってな? 音ノ木坂学院のμ'sというのだが観客1人のために最後までライブやる心意義は良かったと思うぞ』

『はぁ……。 そう、なのか? って音ノ木坂……?』

 

ババリューはタルデの持つタブレットのμ'sのライブの動画を見つめ、このμ'sというのが花陽や凛が言っていた彼女達の学校のスクールアイドルなのだと理解した。

 

『成程……なっ。 なんか、楽しそうに踊ってやがるな……』

 

そしてμ'sの動画を見てババリューは静かにそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、ババリューはまた馬場 竜次としての姿になり、今日は休日ということで今は朝から公園で花陽や凛と一緒に子供達みんなで一緒に遊んでいたのだった。

 

その際、公園の前に真姫と紅葉が偶然通りかかり、紅葉は「あっ、真姫ちゃん……。 よっ!」と手を上げて挨拶し、真姫は戸惑いつつも「どうも……」と挨拶するのだが……その時、紅葉と真姫は馬場が公園で子供達と遊んでいる光景を目撃。

 

「ちょ、ちょっとあなた達なにやってるの!!?」

 

馬場の正体を知っている真姫はすぐさま子供達を馬場から引き離そうと思い、馬場の元へと向かおうとするが……それを紅葉が彼女の肩を掴んで引き止める。

 

「何するのよ!? 止めないでアイツは……!」

「偽者のウルトラマンオーブ……って言いたいんだろ?」

「っ……。 あなたも、見てたの?」

 

真姫の問いかけに紅葉は頷き、真姫は「だったら早くアイツをなんとかしなくちゃ! アイツはなに考えてるか分からないし、子供達が危ないかもしれないわ!」と紅葉に言うのだが……紅葉から見れば楽しそうに子供達と遊ぶ今の馬場はとても邪悪な存在には思えなかったのだ。

 

「あんなに楽しそうに子供達と遊ぶアイツは……俺には悪い奴には見えない」

「でも……!」

「どちらにせよ、しばらくは様子を見るべきだろ。 下手したら俺達の方が悪者になっちまう」

 

見たところ、子供達は馬場のことを本物のウルトラマンオーブだと思っているのだということを感じた紅葉は真姫にしばらく物陰に隠れて様子を見るべきだと言い、真姫は言われた通り紅葉と一緒に物陰に隠れて様子を伺うことになったのだった。

 

「ババリューさん! 僕、ババリューさんの言う通り諦めないで頑張ったら逆上がりできるようになったよ!」

「僕もババリューさんのおかげで嫌いなにんじん食べられるようになったよ!」

 

子供達は苦手なことを克服できたことを馬場へと報告し、それを聞いた馬場はなんだかついつい自分までも嬉しい気持ちとなり、彼は思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「よーっし、次はピーマン食えるようにならないとなぁ~。 それと凛も魚食べられるようになろうか」

「にゃっ!? それ今関係あるにゃ!?」

 

そんな馬場と凛のやり取り子供達は笑い、花陽もそんな2人のやり取りを見て思わず笑ってしまう。

 

(人から感謝されるって……やっぱり、気持ちの良いものなんだな……。 俺……、このままウルトラマンオーブになるっていう人生も、ありなんじゃないかな……)

 

子供達の笑顔を見ていると馬場はついついそんなことを思ってしまうのだが……そこで馬場は「あっ!」と花陽に言うことがあったのを思いだし、彼女へと話しかける。

 

「あっ、そうだ花陽。 あのさ……俺、昨日知り合いからお前の学校のスクールアイドルのことちょっと教えて貰ったんだけどよ。 確かに……なんか楽しそうだったよ。 スクールアイドルって出来るかどうかじゃないんだろ? ただ……やりたいかどうかじゃ……ないのかな?」

「それは……」

 

そんな未だに悩んでいる様子の花陽に対し凛は「もぉー!! 馬場さんがここまで言ってくれてるのにまだそんなこと言ってるのかよちん!?」と頬を膨らませる。

 

「だ、だって……」

「まぁ、無理にとは言わねえけどよ……。 けどさ……諦める必要もないだろ? それに……」

 

馬場がそこまで言いかけたその時、突如空中にノストラ達の乗る宇宙船が現れ……ノストラはテレパシーを使い馬場に「何時になったら破壊作戦が決行されるんだ!? もう待ちきれんぞ!!」と伝え、馬場はノストラが明らかに怒っているのかが分かり、彼はなんとも言えない表情を浮かべる。

 

「なにあれ……?」

「馬場先輩、もしかしてあれって悪い宇宙人の宇宙船にゃ!?」

 

凛の疑問に馬場は「あ、あぁ……」と答え、するとそれを聞いた子供達は「ババリューさんやっつけて!!」とそれぞれが口にし、馬場は戸惑いつつも宇宙船の方へと駈け出して行き、彼は両手を交差して広げると身体を眩い光が包み込み、その光の中から馬場が変身した「にせウルトラマンオーブ」が現れる。

 

「頑張れー!! オーブ~!!」

「悪い宇宙人なんかやっつけちゃえ!!」

 

にせオーブの出現に子供達は声援を送るのだが……ノストラは非情にもそんな声援を送る子供達を先ずは手始めに踏み潰せと命じたのだ。

 

『っ……それは……』

『なんだか知らんが随分と仲良さそうにしていたではないか? お前がその子供達を踏み潰せばその分オーブも憎まれるというのものだ! さぁ! 早くやれ!!』

 

しかしにせオーブから返ってきた返答は……。

 

『……できません。 そんなこと、俺にはできません!! こいつ等を裏切るようなこと、出来る筈がありません! 俺は今、ウルトラマンオーブなんです!!』

『何を訳の分からないことを……!! お前は偽者だ!! ババルウ星人だろ!!?』

『確かに俺は悪の星の元に生まれた暗黒星人だと思ってました。 でも、こいつ等が教えてくれたんです! 運命は変えられる、俺だってヒーローになれるって!!』

 

にせオーブ……ババリューはノストラにそう断言して言い放ち、それを聞いたノストラは深い溜め息を吐き、側にいたラグナに「奴を処刑しろ!!」と命じ、ラグナは口元に笑みを浮かべて怪獣カードを1枚取り出し、それをダークリングにリードさせる。

 

「行ってこい、アパテー」

『アパテー!』

 

そして宇宙船から飛び出した怪獣カードが金属の鎧を纏った騎士のような怪獣……「金属生命体 アパテー」が出現しにせオーブは臆せずにアパテーへと駈け出して行く。

 

『うおおおおお!!!! こんのヤロオオオオ!!!!』

 

アパテーの身体に何発も拳を叩き込むにせオーブだがアパテーの身体は金属で出来ているため、逆ににせオーブは拳を痛めてしまい、怯んだところを狙いアパテーはにせオーブの胸部を殴りつけて吹き飛ばす。

 

『ぐああああ!!!?』

 

しかしにせオーブは倒れ込んだものの負けじと立ち上がってジャンプし、アパテーに跳び蹴りを繰り出すがアパテーはにせオーブの足を掴みあげて地面へと叩きつけ、右腕を剣に変化させてそれをにせオーブに振り下ろすがにせオーブは白刃取りでどうにか攻撃を受け止めて防ぐ。

 

『オリャア!!』

 

にせオーブは剣を押し退かしてアパテーの腹部に蹴りを叩き込み、立ち上がるとアパテーに掴みかかるが……アパテーはにせオーブの腕を振り払って剣を横一線に降るってにせオーブを斬りつける。

 

『ガアア!!!?』

『クオオオオオン!!!!』

 

さらにアパテーは身体を幾つもの槍に変化させるとそれらがにせオーブの周りを囲むように地面に突き刺さり、にせオーブの周りを囲んだ槍は幾つもの電撃を放ってそれをにせオーブに喰らわせる。

 

『うわああああああ!!!!?』

「馬場先輩!!」

「馬場さん!!」

 

凛や花陽、子供達は苦戦するにせオーブを心配そうに見つめ、槍状態のアパテーは元の人型に戻るとにせオーブを殴り飛ばし、にせオーブは地面へと倒れ込む。

 

さらにアパテーはなんとノストラが「そんなにその子供達が大切なら目の前で消してやる!! やれ!!」という指示を受けたため、今度はターゲットを子供達に定め、右腕の剣を振り上げ、子供達はそれを見て悲鳴をあげる。

 

それを見た紅葉は流石に自分が行くべきだと思ったのだが……その時、アパテーの振り下ろした剣をにせオーブが身を挺して子供達を庇い、子供達の変わりに剣による攻撃を受けたのだ。

 

『ぐっ……があっ……!!?』

「かよちんオーブが……!」

「私達を守って……!」

 

アパテーはにせオーブを蹴り飛ばし、蹴り飛ばされたにせオーブは地面に転がって倒れ込むと今まで受けたダメージによって遂ににせオーブの姿を意地することが出来なくなり、にせオーブは本来のババルウ星人 ババリューの姿へと戻ってしまったのだ。

 

当然、それを見た子供達や凛、花陽は唖然とした表情を浮かべ……それを見たババリューは彼女等に申し訳無さそうに「すまねえ……」と謝る。

 

『俺はウルトラマンじゃねえ。 暗黒星人ババルウさ……。 お前達をずっと騙していたんだ。 本当に、すまなかった……。 俺は所詮偽者……』

 

そこへアパテーが立ち上がろうとするババリューに向かって蹴りを叩き込み、倒れるババリューを何度も踏みつける。

 

(やっぱり、ダメなのかな……? 俺なんかが、ヒーローになんて……)

「頑張れー!! ババリューさーん!!」

 

すると、そこへババリューを応援する子供の声がババリューに聞こえ……さらに公園で一緒に遊んで他の子供達も次々とババリューに向かって「頑張れー!!」「負けるなー!!」という彼を応援する子供達の声援が聞こえ、花陽や凛も子供達と一緒にババリューに声援の声を送る。

 

「そうにゃ!! 諦めたらダメにゃ馬場先輩!! あなたが誰だろうと関係ない!! 馬場先輩が言ってくれたんだよ!! 夢を追いかければいつかはヒーローになれるって!! みんなに!!」

「そうです!! 馬場さん!! あなたは、私の夢を……応援してくれたりしたじゃないですか!! 諦めるなって言ってくれました!! だから……馬場さんも諦めないでください!!」

 

そんな花陽や凛、子供達の姿を見ていた真姫もババリューが子供を庇い、そして彼に声援を送る花陽達を見て彼女もまたババリューに声援を送っていたのだ。

 

「そうよ……! 子供達を庇ったあなたはヒーローじゃない……。 頑張りなさいよ!! 立ち上がって!!」

 

みんなからの声援を受けたババリューはギュッと拳を握りしめる。

 

『そうだ、お前等の言う通りだ……。 こんなところで……!! 諦めてたまるかああああああ!!!!!』

 

ババリューはそう言い放ちながら自分を踏みつけるアパテーを押し退かして立ち上がり、「よぉーし!!」と気合いを入れ直す。

 

挿入歌「コドクの回廊」

 

ババリューはアパテーの方へと振り返り、アパテーに向かって駈け出すとアパテーの顔面に向かって右拳を突き出し、殴りつける。

 

当然、金属で出来たアパテーを殴ったため、かなりの激痛が拳に走ったが……それでもババリューはもう1度今度はさらに力を込めて右拳でアパテーを殴りつけ、それを喰らったアパテーは軽く吹き飛ばされる。

 

さらにババリューはジャンプして跳び蹴りをアパテーに繰り出し、アパテーは両腕を交差してガードし、それによってババリューは地面に落下して背中を強く打ち付け、アパテーは倒れているババリューに向かって拳を振り下ろすがババリューはそれをどうにかかわす。

 

どうにか立ち上がったババリューはアパテーに向かってタックルを繰り出すがアパテーは右腕の剣を元の右手に戻して両手でそれを真正面から受け止め、膝蹴りをババリューの腹部に叩き込み、ババリューの頭の髪を掴みあげてババリューの顔を殴りつける。

 

『ぐああああ!!!?』

『クオオオオ!!!』

 

アパテーは再び右腕を剣に変化させ、膝を突くババリューに向かって容赦なく剣を振り下ろし……それを見たババリューは「これで一貫の終わりか……」と呟き、自分の死を覚悟し、子供達や花陽や凛が悲鳴をあげるその時……。

 

既にこっそりと真姫から離れた場所に移動していた紅葉がオーブリングと「ウルトラマン」のウルトラフュージョンカード1枚を取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

続いてさらに「ウルトラマンティガ」のカードを紅葉オーブリングにリードさせる。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ!』

 

その後、紅葉はオーブリングを天高く掲げるとカードによって出現したウルトラマンとウルトラマンティガの姿が重なり合い、ウルトラマンとティガの姿を合わせたような「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと紅葉は変身する。

 

「光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

光の中から現れたオーブはアパテーの振り下ろした剣を両手を交差して受け止め、身体の赤い部分を発光させて「ティガ パワータイプ」の力を一時的に引き出して押し返し、そのままパワータイプの力を使った拳を何発もアパテーに叩き込んでアパテーを後退させる。

 

『クオオオ!!?』

『闇を照らして、悪を討つ!!』

 

オーブはババリューに振り返り、「後は任せろ」と言うように首を縦に振るとババリューも「任せたぜ」と言いながら頷き、オーブはアパテーに向かって行く。

 

挿入歌「オーブの祈り」

 

アパテーは向かって来たオーブに剣を振るって攻撃するが今度は「ティガ スカイタイプ」の力を使って素早く回避し、続いてパワータイプの力を使った強力なパンチを顔面にアパテーは喰らう。

 

『新しい力を見せてやる!!』

 

すると紅葉は新たに手に入れたカードである「ウルトラマンジャック」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『ジャックさん!!』

『ウルトラマンジャック!』

 

さらにそれに続いて「ウルトラマンゼロ」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『ゼロさん!!』

『ウルトラマンゼロ!』

 

そしてオーブリングを天高く掲げる。

 

『キレの良いやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!』

 

カードによって出現した「ウルトラマンジャック」と「ウルトラマンゼロ」の姿が重なり合い、ジャックとゼロの姿を合わせたような「ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ」へとオーブは姿を変える。

 

『光を超えて……闇を斬る!!』

 

アパテーはオーブに向かって剣を振るうがオーブは回し蹴りでそれを弾き、さらに連続で風を纏わせた鋭い蹴りをアパテーに喰らわせる。

 

するとアパテーは身体を4つの槍に分裂し、オーブの周りを取り囲もうとするがオーブは頭部から光の刃「オーブスラッガーショット」を放って4つの槍を全て撃ち落とし、撃ち落とされたアパテーは再び人型に戻ってしまう。

 

「クオオオオオオ!!!!」

『オーブスラッガーランス!!』

 

さらにオーブはオーブスラッガーショットを合体させて三又の槍の武器「オーブスラッガーランス」を取り出し、アパテーは剣、オーブはオーブスラッガーランスを振るい、2体の武器は激しくぶつかり合う。

 

だがオーブはテレポートしてアパテーの背後に回り込み、オーブスラッガーランスを振るってアパテーの背中を斬りつける。

 

『シュアアア!!!!』

 

それにたじろくアパテーだったが今度は6本の槍に変化して真っ直ぐオーブに向かって行くのだが……オーブはオーブスラッガーランスを高速回転させて竜巻を起こし……槍を全て吹き飛ばしてしまったのだ。

 

しかしアパテーは空中で元の姿に戻り、急降下して剣をオーブは振りかざすのだが……オーブはオーブスラッガーランスでそれを受け止め、オーブスラッガーランスのレバーを1回動かし赤いボタンを押すと槍の先端から光線を発射する「オーブランサーシュート」が放たれ、アパテーの右腕の剣を破壊する。

 

『オーブランサーシュート!!』

「クオオオオオオ!!!!?」

 

そしてオーブスラッガーランスを続けざまにアパテーの胸部に突き刺し、オーブスラッガーランスのレバーを2回動かし赤いボタンを押すと高エネルギーを送りこんで内側から爆破する「ビッグバンスラスト」をアパテーに放つ。

 

『ビッグバンスラスト!!』

「クオオオオオオオン!!!!?」

 

それを喰らったアパテーは内側から爆発し、オーブがアパテーを倒したところを見ていたババリューは安心したように溜め息を吐き、彼は地面へと倒れ込んだのだ。

 

『はぁ……。 ハハハハ、やっぱ、本物はスゲーや』

 

するとババリューの身体が光輝くと彼はそこから姿を消し、それを見ていた凛と花陽は急いでババリューの元へと向かったのだった。

 

そしてババリューは……今は等身大となってフラフラと歩いていたのだが……そこに子供達を何人か引き連れた凛と花陽が「待って!!」と彼の元へと駆けつけたのだ。

 

「ありがとうババリューさん!」

「ありがとー!!」

『へへ……』

 

ババリューはそんな子供達を見てどこか満足そうにしており、彼は子供達に向かってガッツポーズをしたのだ。

 

『花陽……』

「は、はい!」

『勇気出して夢を叶えろ……。 夢を見る勇気をな……。 それから凛、お前はきっと女の子らしいぜ? だから、花陽の側にいても……大丈夫だ……』

 

ババリューはそれだけを言い残すと顎に手を当てた後、花陽達の目の前から薄らと姿を消してしまい、凛と花陽は「馬場先輩/馬場さん!!」と彼を追いかけようとしたがそれを紅葉が引き止める。

 

「行かせてやれよ。 ヒーローってのは、風のように去って行く……もんだろ……?」

「高坂先輩……」

 

 

一方、ノストラ達のいる宇宙船では……。

 

「ドン・ノストラ。 あなたのやり方は、人間の心の善悪を問う昔ながらのやり方です。 時代はもっと進んでるんですよ」

「なんだと!?」

 

そんなラグナの言い方にイラッと来るナグスだったが、そんなナグスをノストラは落ち着かせる。

 

『では、君のやり方というやつを今度は見せて貰おうか?』

「仰せの通りに……。 しかし、それにはまだ少し時間がかかります。 今しばらくお待ちを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、花陽は教室で国語の授業を受けながらこの前穂乃果達と話した時のことや馬場に言われた時のことを考えていた。

 

(やりたいって思ったらやってみる……。 そうだよね……)

 

すると国語の教師に「次、小泉さん読んで見て」と当てられ、花陽は「は、はい!」と立ち上がり、教科書に書かれてあることを読み始める。

 

だが、今回は以前のような小声では無く、なるべく大きく喋ろうとしていたのだが……途中で彼女は噛んでしまい周りの生徒から笑われてしまった。

 

その後の放課後にて……花陽は中庭のベンチに座って先ほどのことを思い出し、「はぁ」と溜め息を吐いていた。

 

するとそこへ「なにしてるの?」と真姫が花陽の元へと現れた。

 

「あなた、声綺麗なんだからちゃんと練習すればいいだけでしょ?」

 

真姫にそう言われるが花陽は「でも……」と呟く。

 

「ふぅー。 あー、あー、あー、あー、あー♪ はい、やってみて?」

「ふえ? えっと……。 あー、あー、あー、あー、あー♪」

 

花陽は真姫の真似をしてみるが真姫からは「もっと大きく!」と注意され、立つように真姫に言われて彼女は言われた通り立ってもっと大きく声を出す。

 

「一緒に!」

「「あー、あー、あー、あー、あー♪」」

 

すると思ったよりもちゃんと声を大きくしっかり出せたためか、花陽は驚いたような顔を見せ、そんな花陽を見て真姫は「ねっ? 気持ちいいでしょ?」と笑みを浮かべるとそれに釣られるように花陽も「うん、楽しい」と笑みを浮かべる。

 

するとそこへ「かーよーちーん~!」と凛が花陽を呼びながら駆けつけるのだが……凛は真姫の姿を見て「西木野さん? どうしてここに?」と尋ねると花陽が「励まして貰ってたんだ」と答える。

 

「わ、私は別に!」

「それより今日こそ先輩のところに行ってアイドルになりますって言わなきゃ!」

 

凛は花陽の手を引き、彼女も「う、うん」と頷くが真姫は「そんなせかさない方が良いわ!」ともう少し自信をつけてからでも良いのではないかと主張するが凛は「なんで西木野さんが凛とかよちんの話に入ってくるの!?」と言われ、真姫はムッとした顔になる。

 

「別に! 歌うならそっちの方が良いって言っただけ!!」

「かよちんは何時も迷ってばっかりだからパッと決めてあげた方が良いの!! 馬場先輩にも言われたでしょかよちん!!」

「そう? この前話した感じじゃそうは思えなかったけど?」

 

そんな風に会話をする凛と真姫を見て花陽は「あのぉ~、喧嘩は……」と2人の喧嘩を止めようとするのだが凛は「かよちん行こう! 先輩達帰っちゃうよ!」と強引に腕を引っ張り連れて行こうとするが真姫は「待って!」と花陽の反対の腕を掴んで引き止める。

 

「どうしてもって言うなら私が連れて行くわ! 音楽に関しては私の方がアドバイスできるし、μ’sの曲は私が作ったんだから!!」

 

真姫のその言葉に花陽は「えっ!? そうなの!?」と驚きの声をあげる。

 

「あっ、いや、その……! 兎に角、行くわよ!」

「待って! 連れて行くなら凛が!」

「私が!」

「凛が!」

 

真姫と凛はそう口喧嘩しながら花陽を引っ張り、涙目になった花陽は「ダレカタスケテエエエエエ!!!!」と叫ぶのだった。

 

「つまり、メンバーになりたいってこと?」

 

それから屋上で練習していた穂乃果達の元まで行くと凛と真姫から花陽をメンバーに入れて欲しいと頼み、ことりの言葉に凛は「はい!」と勢いよく答え、花陽はずっとずっと前からアイドルやってみたいと思っていたんだと説明する。

 

「ってそんなことはどうでもよくて! この娘は結構歌唱力あるんです!」

「どうでもいいってどういうこと!?」

「言葉通りの意味よ!」

 

そんな風に喧嘩する2人に「お前等、喧嘩すんな。 花陽ちゃんもグッタリしてるんだから気を使えよ」と紅葉が注意され、2人は反省の色を見せる。

 

「わ、私はまだ……! なんていうか……」

「もう、何時まで迷ってるの!? 絶対やった方が良いの!」

「それには賛成! やってみたい気持ちがあるならやって見た方が良いわ!」

 

それでも花陽は「でも……」と言うが真姫は「さっきも言ったでしょ!? 声出すなんて簡単!」と花陽の両肩を掴む。

 

「あなたなら出来るわ!」

「凛知ってるよ! かよちんがずっとずっとアイドルになりたいって思ってたこと! それに、馬場先輩も言ってたでしょ? 夢を見る勇気を持てって……!」

 

真姫と凛に言われ、花陽は凛と真姫の顔を交互に見る。

 

「頑張って! 凛がずっとついててあげるから!」

「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ?」

 

するとそこで紅葉からも……。

 

「なぁ、俺は君には凄く感謝してるんだ。 あの時、君がファーストライブに来てくれなかったら……って。 穂乃果達を救ってくれたのは君だ。 だから俺や穂乃果達にとっては……君は、ヒーローなんだよ」

 

紅葉にそう言われ、花陽は「わ、私がヒーローなんて……」と言うが紅葉は「ヒーローだよ」ともう1度そう言い放つ。

 

「だから自信を持て、絶対にスクールアイドルをやれる」

 

すると花陽は穂乃果達に顔を向け、「え、えっと……私は、小泉……」とぎこちない様子で何かを言おうとするのだが……その時、凛と真姫が花陽の後ろに立ち、彼女の背中をそっと押したのだ。

 

「あっ……」

 

花陽が後ろを振り返るとそこには凛と真姫が笑顔を浮かべて見守っており、その際、凛と真姫の後ろの方でババリューが自分に向けてガッツポーズをしている様子が見えたのだが……ババリューの姿はすぐに消えてしまった。

 

凛と真姫、ババリューの姿を見た花陽は涙を浮かべるが……彼女はそれを払い、穂乃果達の方へと身体を振り向かせる。

 

『勇気出して夢を叶えろ……。 夢を見る勇気をな……』

 

ババリューに言われた言葉を花陽は思い出し、強くなにかを決意したような表情を見せる花陽。

 

「夢みる……勇気……」

 

花陽がそう小さく呟く。

 

「私、小泉 花陽と言います! 1年生で背も低くて声も小さくて人見知りで得意なものも何も無くて……。 でも! アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!!  だから、μ'sのメンバーにしてください!!」

 

花陽は頭を下げ、穂乃果達に頼むと……穂乃果は「こちらこそ」と言いながら花陽に手を差しのばし、花陽は頭をあげる。

 

「よろしく!」

「っ……」

 

花陽は一粒の涙を流した後、その差し伸べられた手を握り、それを見た凛は「かよちん、良かったよ~!」と自分のことのよう嬉しく泣き出してしまう。

 

「なに泣いてるのよ?」

「だってぇ~! って西木野さんも泣いてる!?」

「だ、誰が! 泣いてなんかないわよ!!」

 

するとその時、ことりが「それで、2人は?」と言われ、「2人はどうするの?」とことりに問いかけられ、凛と真姫は「えっ? どうするって?」と互いに顔を見合わせる。

 

「まだまだメンバーは募集中ですよ!」

 

今度は海未とことりが真姫と凛に手を差し伸べ、2人はまた顔を見合わせると……2人は嬉しそうに笑顔を見せるのだった。

 

つまりその笑顔は……要約すると「よろしくお願いします」ということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、凛と真姫は朝練をするために神田明神の階段を上っており、凛は「朝練ってこんなに早く毎日やらないといけないの~?」と言いながら欠伸をしており、そんな凛に対し真姫は「このくらい当然よ!」と言い放つ。

 

階段をあがるとそこでは既に来て花陽が準備体操を行っており、凛が「かよちーん!」と花陽の名を呼び、彼女は振り返ると……花陽は眼鏡を外しており、それを見て凛は「アレー!?」と驚く。

 

「かよちん眼鏡は?」

「コンタクトにしてみたの。 変……かな?」

「ううん、全然可愛いよ! すっごく!!」

 

凛はそう言って花陽の両手を握りしめ、真姫も「へー、良いじゃ無い」と凛に続いてそう言うのだが……その際、花陽に「西木野さん」と言われ、真姫は不満そうな顔を一瞬浮かべた後、今度は顔を赤くしつつ花陽と凛にあることを頼む。

 

「ねえ、眼鏡取ったついでに、名前で呼んでよ……。 私も、名前で呼ぶから。 花陽、凛!」

 

恥ずかしそうに真姫がそう言うと花陽は嬉しそうな顔を見せ、「真姫ちゃん!」とちゃんと彼女の名前を呼び、凛も花陽と同じように嬉しそうにして彼女の名前を呼ぶのだった。

 

「えへへ、真姫ちゃーん! 真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃーん!」

「な、なによ~」

 

するとその時、遊んでいたと思われる数人の子供達が階段を駆け上がってきたのだが……その中の1人がつまずいて転んでしまい、花陽がその子供の元に駆けつけようとしたのだが……それよりも早く清掃員の格好をした1人の男性が現れて「大丈夫か?」と言いながら子供を立ち上がらせたのだ。

 

「怪我、ないか?」

「大丈夫!」

「おぉ~、強い子だな。 また転ばないように気をつけるんだぞ」

 

男性の言葉に子供は「うん! ありがと~」とお礼を言って他の子供達と同じようにどこかへと去って行き、男性も立ち上がってどこかに行こうとするのだが……その際、偶然にも花陽と視線があった。

 

すると男性は顎に手を当て、ペコリと軽く頭を下げた後、そのままどこかへと走り去って行くのだった。

 

(えっ……!? 今のって……馬場さんがやってた……。 そっか、馬場さんも……頑張ってるんだ……。 私も、負けないように頑張らないと!)

 

花陽は一度先ほどの男性の顎に手を当てる動作を見て驚き、彼の正体に何となく気づいたが……彼は今でもどこかで頑張っているのだなと思うと花陽はついつい嬉しくなり、笑みを浮かべるのだった。

 

 




紅葉
「『サブタイを探せ!』のコーナー!!」

穂乃果
「イェーイ!」

にこ
「なんかワンパターンよね、このコーナー」

紅葉
「だったらなんか意見とかあります? にこ先輩?」

にこ
「いや、私達以外にも誰か出すとかしなさいよ。 勿論私はレギュラーだけど!」

紅葉
「流石にこ先輩、その辺は譲りませんか」

にこ
「当然でしょ! だってにこにーは~、み~んなのにこにーなんだからぁ~♪ 毎回出さないと勿体ないじゃない♪」

紅葉
「えーっと、それで今回のサブタイは……」

にこ
「ってちゃんと聞きなさいよぉ!」

穂乃果
「だってもう時間ないし……」

にこ
「くっ、時間がないなら仕方ないわね……! でもあとで覚えてなさいよアンタ……!」

紅葉
「お手柔らかに……(苦笑) それで今回のサブタイはウルトラマンコスモス第29話『夢みる勇気』だ!!」

穂乃果
「花陽ちゃんが決意を固める辺りのシーンで花陽ちゃんが言った台詞だよ!」




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第6話 『光怪獣、襲来』

光怪獣 プリズ魔
登場。


朝……神田明神にて……。

 

そこではことりが既に来て準備体操を始めていたのだが……その時ことりは背後に誰かの気配を感じ、振り返ってみたのだがそこには誰もおらず、ことりは「んっ~?」と首を傾げつつも準備体操の続きを行う。

 

「ごめんごめん! 待った~?」

「すまん、ちょっと遅れた」

 

するとそこへそう言いながら穂乃果と紅葉がことりの元へと現れる。

 

「ううん、私も今来たところだから!」

 

2人に言葉を返した後、ことりは海未は弓道の朝練があるため今日は来ていないことを伝えられる。

 

「っ!」

 

するとまたことりが誰かの気配を感じ慌てて振り返りるのだが……やはりそこには誰もいない。

 

そんなことりに紅葉と穂乃果は首を傾げる。

 

「どうかした?」

 

穂乃果が尋ねるとことりは穂乃果と紅葉にさっき誰か後ろにいなかったかと尋ねるが2人とも見ていないらしい。

 

「まさか、ストーカーか!?」

「えぇ!?」

 

紅葉の予想に穂乃果が驚きの声をあげる。

 

「俺の大事な友達をストーカーするとは良い度胸してるな!」

「よし、ちょっと私見てくるよ!」

「って穂乃果!? こういうのは男の俺が行くべきだろ!?」

 

しかし穂乃果は紅葉の制止を聞かずササッと隠れながら神社の角に誰かいないか確認しようとこっそり顔を出すのだが……。

 

そこには誰もおらず、穂乃果は「あれぇ?」と首を傾げながらさらに奥を見に行こうとするのだが……その時、誰かに足を掴まれて転びそうになる。

 

だが穂乃果はどうにか反射的に両手で地面を着き身体を支え、なんとか倒れるのを防ぐのだった。

 

「いったぁ~い!」

 

涙目で両手をパタパタする穂乃果。

 

するとその時、誰かが穂乃果に向かって駈け出して行き、穂乃果は思わず目を瞑るのだが何時まで経ってもなんともない。

 

その為彼女はそっと目を開けるとそこには右手でデコピンをしようとする何時ぞやのツインテールにサングラスにマスクのコート姿の不審者少女が立っており、不審者少女は穂乃果にデコピンを喰らわせようとする。

 

だがそこで紅葉が穂乃果をグイっと後ろに下げて不審者少女の右手を掴み、逆に紅葉がデコピンを不審者少女の額に喰らわせた。

 

「にごぉ!? あ、アンタなにすんのよ!?」

「それはこっちの台詞だ! ことりにストーカーするばかりか人の妹にデコピンしようとしやがって!」

「誰がストーカーよ!?」

 

するとそこへことりもやって来たのだが……ことりは不審者少女の姿を見て思わず固まってしまう。

 

「今日はあんた達に言いたいことがあって来ただけよ!「あんた達、とっとと解散しなさい!!」

 

ビシっと穂乃果達に指差し、そう言い放つ不審者少女。

 

しかし返ってきた返答はというと……。

 

「断る!!」

 

という紅葉からの言葉だった。

 

「即答してんじゃないわよ!! 良いから解散しなさい!!」

「絶対ヤダ!! 解散させたかったらカレーパン1年分持ってこい!!」

「誰が持ってくるか!! 兎に角さっさと解散しなさいよ~!!」

 

不審者少女はそれだけを言い残し、不審者少女はそそくさとその場から走り去り、そんな不審者少女を見てことりは「今の、誰?」と首を傾げるのだった。

 

「誰って……多分、黒咲しゅ……」

「もうそのネタ良いよ!」

 

そして穂乃果にそう怒られてちょっとしゅんっと落ち込む紅葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは! メンバーを新たに加えた新生スクールアイドル……μ'sの練習を始めたいと思います!」

「何時まで言ってるんですか? それはもう2週間も前ですよ?」

「だって! 嬉しいんだもん!!」

 

学校の放課後、穂乃果はほぼ毎日練習を始める度にそんなことを言っており、よほどμ'sに新しいメンバーが増えたのがよほど嬉しいらしい。

 

「なので何時も恒例の……1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

 

とこのように何時も練習を始める時はそれぞれ自分の番号を言っていくことになっており、穂乃果は「くぅ~!」ととても嬉しそうに歓喜の声をあげる。

 

「6人だよ6人! アイドルグループみたいだよね~! 何時かこの6人が神シックスとか仏シックスとか言われるのかなぁ~?」

 

なんて穂乃果は言うのだが……。

 

「仏だと死んじゃってるみたいだけど……」

 

即座に花陽からそうツッコまれた。

 

「毎日同じことで感動できるなんて羨ましいにゃ~」

 

さらっと穂乃果に毒を吐く凛。

 

「声だけじゃなくて毒舌なのもパーテルそっくりだな」

 

紅葉は小さくそんなことを呟く。

 

「それにそもそもそんなに活動してる訳じゃないんだからそういうオーバーな表現されるかどうかはまだ分からないだろ? まぁ、言われるように頑張れ」

 

そう穂乃果達にエールの言葉を送る紅葉、それに対して穂乃果は元気よく「うん!!」と頷く。

 

「私、賑やかなの大好きでしょ!? それに沢山いれば歌が下手でも目立たないでしょ!? あと、ダンスを失敗しても……!」

 

明らかに自分のミスを「沢山いれば誤魔化せる!」なんて感じのことを穂乃果が言い続けていると当然「穂乃果?」と海未に睨まれる訳で……。

 

「冗談だよ! 冗談!」

「ちゃんとやらないと今朝みたいに言われちゃうよ?」

 

ことりからも注意され、穂乃果は反省する。

 

ちなみに「今朝みたいなこと」と言うのはあの不審者少女に「解散しなさい!」と言われた時のことであり、あんなことを言われない為にも練習はしっかりやろうとことりは穂乃果に伝える。

 

「でも、それだけ有名になったってことだよね!」

 

確かにそこは凛の言う通りだ。

 

ある意味文句を言われるということはそれだけ有名になってきているということも意味している。

 

「それより練習! どんどん時間無くなるわよ?」

 

だが、そこで真姫が何時まで経っても練習が始まらないので早く練習を始めるように注意するのだが……そこで凛が真姫の肩にくっついてくる。

 

「おー! 真姫ちゃんやる気満々!!」

「べ、別に私はただとっととやって帰りたいだけよ!」

「またまた~? お昼休みみたよぉ? 1人でこっそり練習してるの」

 

凛にそう言われて真姫は顔を赤くする。

 

「あ、あれはただこの前やったステップがかっこ悪かったから変えようとしただけよ! あまりにも酷すぎるから!!」

 

必死に誤魔化そうとする真姫だが……。

 

「それ誰考えたか分かって言ってる?」

 

紅葉が真姫に問いかけると彼女は「えっ?」と首を傾げる。

 

「そうですか、あのステップ……私が考えたのですが……」

 

暗い表情で髪を弄りながら海未は真姫に言われたことにショックを受けいじけてしまい、それに真姫は「しまった……」という表情を浮かべる。

 

「気にすることないにゃ! 真姫ちゃんは照れ臭いだけだよね!」

 

凛が一応のフォローを入れながら練習場所の屋上へとみんなで向かうのだが……外を見てみるとかなりの雨が降っており、見ての通りの土砂降り雨でみんな残念そうな顔をする。

 

「梅雨入りしたって言ってたもんね……」

「それにしても降りすぎだよ! 降水確率60%って言ってたのにぃ~!」

「いや、それ普通に降ってもおかしくない数値だぞ……」

 

それに対して穂乃果は昨日も一昨日も60%だったのに降らなかったと言葉を返される。

 

するとその時外の様子を見ていたことりが少し雨が弱くなったかもと言ったのを聞いた穂乃果と凛はパアっと明るい表情を浮かべて勢いよく扉を開けて屋上に出る。

 

「やっぱり確率だよ! 良かったぁ~」

「これくらいなら練習できるよ!!」

 

穂乃果と凛はそんな風に練習する気満々なのだが、海未は下が濡れて滑りやすいし、また何時降り出すか分からないと言うのだが……彼女の言葉も耳に入らず穂乃果と凛は「大丈夫大丈夫! 練習できるよ!!」と屋上を走り回る。

 

「うぅ~! テンション上がるにゃ~!!」

 

そう言い放つと同時に凛はバク転してジャンプして空中を一回転し、着地して身体を今度は横に回転させて「ニャーン!」と決めポーズを取り、紅葉と穂乃果は思わず「パチパチパチ」と拍手するのだが……その直後に止みかけていた雨は再び土砂降りし、穂乃果と凛の2人は完全にずぶ濡れとなってしまう。

 

「私帰る」

 

真姫は呆れ顔で階段を降りていき、花陽も流石に今日は無理だと思ったのか「わ、私も今日は……」ということでことりもまた明日にするべきだと考え、と今日は練習無しとなってしまい、それに穂乃果と凛は「えー!?」と残念そうな声をあげる。

 

「帰っちゃうのぉ!?」

「それじゃ凛達がバカみたいじゃん!!」

「バカなんです」

 

「ムスーッ」とふくれっ面になる凛と穂乃果。

 

「膨れるな膨れるな」

 

紅葉はそんな2人を笑いながらそんな穂乃果と凛にタオルを手渡し、そのまま紅葉は穂乃果の頭をタオルで拭き始める。

 

「ですが、これからずっと雨が続くとなると練習場所をなんとかしないといけませんね」

「体育館も講堂も他の部活が使ってるし、せめてそろそろ部室が欲しいところだな」

 

そして階段から降りてくる彼女達の様子をこっそりを物陰から希が見ており、希は別の方向に視線を映すとそこには以前海未の渡したチラシを受け取らなかったツインテールの少女のにこが不服そうな顔を浮かべながらそこに立っていた。

 

「どうやらあの娘ら、止める気はないようやで? にこっち?」

「……フン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習が無くなってしまい今日はみんなで「マ〇クに行こう!」ということになったのだが……穂乃果はふて腐れた顔でポテトを食べていた。

 

「穂乃果? ストレスを食欲にぶつけると大変なことになりますよ?」

 

海未に穂乃果は注意されるのが……穂乃果のふて腐れた表情は一向に崩れず……。

 

「練習したくてウズウズしてるなぁ-、穂乃果」

 

紅葉はふて腐れてる穂乃果の頭を撫でると彼女は「ふにゃ……」と少しだけ表情を柔らかくして少し機嫌が直ったのだが……。

 

そこでことりが自分の注文した商品を取りに行っていたことりが戻ってきて彼女から先ほど予報見たら明日も雨だという報告を聞くや否や又も彼女は不機嫌になってしまう。

 

(この際スペリオン光線でも空に向かって撃ち込んで無理矢理晴らさせるか……。 なーんて、幾ら俺でもそこまでしないさ……)

 

そんなことを心で思いながらスマホを弄って今日起こったニュースなどを見ていると「航行中の船舶や灯台が一夜にして消滅!」と書かれた記事があり、紅葉は思わずそれに見入ってしまう。

 

「なんか、どこかで聞いたような事件だな……」

 

紅葉は小さく呟き、自分のポテトに手を伸ばそうとしたのだが……そこには先ほどまであった筈のポテトが箱だけ残してスッカラカンな状態になっており、紅葉は「あり?」と首を傾げて穂乃果に視線を映す。

 

「穂乃果……俺のポテト、こっそり食ったか……?」

「えっ? そんな訳ないじゃん! お兄ちゃんから食べ物横取りするなんて自殺行為だよ!!」

「言っておきますが私でもありませんよ? 自分で食べたのではないのですか?」

 

すると今度は海未の食べていたポテトがいつの間にか無くなっていることに気づき、彼女は2人こそどちらかが自分のポテト食べたのではないかと怒るのだが……。

 

穂乃果は首を横に振って否定し、紅葉も自分が食事のマナーを守らない筈が無いと3人で喧嘩していると真姫がそんなことより練習場所をどうにかするべきだと話題を変え、そのことについて話し合うことに。

 

「そんなことって……俺の、ポテト……」

「あなたまだ4つも頼んでるじゃありませんか」

 

兎に角、話は変わり真姫は練習場所にどこかの教室とか借りられないのとことりに尋ねるのだがことりは「前に先生に頼んだんだけどちゃんとした部活じゃないと許可できない」と言われたため、未だに部室が貰えないでいたのだが……。

 

「そうなんだよねぇー、部員が5人いればちゃんとした部の申請をして部活にできるんだけどぉ……」

 

その穂乃果の言葉を聞いた直後、穂乃果以外の全員がそれぞれ顔を見合わせ、紅葉はそれぞれの人数を数えてみる。

 

「穂乃果、海未、ことり、花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、俺……今、7人いるよな……?」

「あっ! そっか忘れてた!! 部活申請すればいいじゃん!!」

 

と穂乃果が勢いよく立ち上がると隣の席から……。

 

「って忘れてたんかーい!!」

 

とツッコミが飛んで来て紅葉はそれを見て思わず「誰?」と首を傾げる。

 

「それより忘れてたってどういうこと?」

「いやぁメンバー集まったらホッとしちゃって~。 いよっし! 明日早速部活申請しよう! そしたら部室が貰えるよ! あはは、なんだかお腹減って来ちゃった~」

 

穂乃果が再び椅子に座ろうとした直後、隣の席からこっそり紅葉のハンバーガーを盗もうとしている手があり、手に取っているハンバーガーをそっと元の場所に戻すとそのままそそくさと逃げだそうとするのだが……すぐさま紅葉は追いかけてその人物の腕を掴み取る。

 

「お前……!」

 

尚、その人物は見たところ今朝「解散しろ」と言ってきた不審者と同一人物らしく、頭にはピンクのグルグル巻きの帽子のようなものを被っていた。

 

っていうかにこである。

 

(バビ〇ン真拳の使い手かな……? ってそうじゃなくて……!)

「解散しろって言った筈よ!!」

「またアンタか!! 断るとも言った筈だ!! っていうかそんなことはどうでもいい!! 俺のポテト返せ!!」

 

後ろから「どうでもいいのォ!?」という花陽の声が聞こえてきた気がしたが紅葉は気にせず「ポテトを返せ……」とポテトの返却を要求する。

 

しかしにこは「あーん」と口をワザとらしく開き、紅葉はにこの口を鷲掴む。

 

「買って返せ!」

「良い!? アンタ達がやってるのはアイドルへの冒涜! 恥よ!! とっととやめることね!」

 

にこは紅葉の腕を振り払ってビシっと穂乃果達にそう言い放ってから逃げだそうとするのだがすぐに紅葉に首根っこを掴まれ捕えられる。

 

「ちょっ!? 離しなさいよ!?」

「返せ……カエセ……カエ……セ……!」

「ちょっ、なんか怖いんだけど!? まだ4つも残ってんだから1つくらい良いじゃ無いの!?」

 

にこはジタバタ暴れて今度こそどうにか紅葉の手を振り払うと素早くそこから逃げ出して行き、穂乃果が窓の外を見ると既ににこは雨の中を全力疾走していた。

 

「あのピンクのグルグル頭ぁ~!!」

 

紅葉は何がなんでもポテトを返させようとにこを追いかけようとするが海未とことりが「まぁまぁ」と押さえつけ、どうにか落ち着かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイドル研究部?」

 

翌日、部活申請に生徒会室へとやってきた穂乃果、海未、ことり、紅葉だったが……絵里が言うには既にこの学校には「アイドル研究部」なる部活が存在しているらしく、生徒の数が限られている中でイタズラに部を増やすことはしたくないとのことでアイドル研究部がある以上、穂乃果達の申請を受けるわけにはいかないというのだ。

 

「まぁ、ただ部員は1人やけど」

「えっ? でもこの前は部活には5人以上って……?」

 

希が言うには設立する時は5人必要ではあるのだがその後は何人になっても良い決まりだからとのことでそれを聞いて穂乃果は「そんなぁ~」と残念そうにする。

 

「いや、それ最初に言ってください会長。 これじゃ無駄足じゃないですか……」

「兎に角、これで話は終わり……」

 

と絵里がそこまで言いかけた時である。

 

「になりたくなければアイドル研究部とちゃんと話をつけてくることやな」

 

隣に座っていた希のその言葉に、絵里は「希!」と声をあげる。

 

「2つの部が1つになれば問題はないやろ?」

 

その希の言葉の返しに、絵里は何も言えなくなってしまう。

 

「取りあえず、部室に行ってみれば?」

 

それから1年組と一緒に放課後、希に教えられた部室の場所へと行くことになったのだが……。

 

そこには丁度、昨日にも出会ったあの不審者の格好をしていた少女……にこと部室の前で鉢合わせして一同はかなり驚いた顔をしており、同時ににこも引き攣った顔で驚きの表情を浮かべていた。

 

「ま、まさか3年生だったとは……。 ヤバい、俺昨日先輩にかなり失礼なことを……」

「今はそれじゃないよお兄ちゃん! まさか、あなたが……あなたがアイドル研究部の部長!?」

 

するとにこは穂乃果達を睨み付けて腕をブンブン振り回して素早く部室の扉を開けて中に入り、鍵をかける。

 

「部長さん! 開けてください!!」

 

穂乃果は扉を叩いて必死に頼み込むのだが、扉が開く気配はない。

 

「開かないぃ~!」

「外から行くにゃー!!」

 

すると凛が外からの侵入を試みようとするのだがそれが聞こえたにこは急いで部屋の窓を開けて外に飛び出するのだがすぐに凛に見つかって追いかけて来るので彼女は急いで走って逃げ出すが……すぐに走るのに疲れてしまい、一度は凛に抱きつかれるような形で捕まってしまう。

 

「捕まえたにゃー!」

 

しかしにこは下からすり抜けて再び走って逃げ出す。

 

「フン! 捕まるもんですか!!」

 

しかし、彼女は前を見ていなかった為にそのまま前方不注意で真っ直ぐ勢い余ってアルパカ小屋に突っ込んでしまうのだった。

 

急いで凛はにこを追いかけて来たのだが……一部始終を見ていなかったためににこの姿を見失ってしまい、アルパカ小屋の辺りを見回すが……すぐにアルパカ小屋で倒れているのを凛が発見し、捕まえることに成功するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから……にこは逃げるのを諦め、結局全員を部室に入れることとなってしまい、彼女は鼻に絆創膏をつけて不機嫌そうに椅子に座っていた。

 

一方で部室に入ることができたμ'sのメンバー+紅葉は部室の中にある複数のアイドルグッズを見て「わー」と感心した声を全員あげていた。

 

「凄いな、これ全部アイドルのグッズとかか? A-RISEのポスターとかも貼ってあるし」

 

みんなからジロジロと部室を見られることが嫌なのか不満そうな表情を浮かべる。

 

「勝手に見ないでくれる?」

 

不機嫌そうににこは言うのだが……そこで花陽がある物を見つけ、花陽はそれを手に取るとキラキラとした視線で彼女はそれを見つめる。

 

「こ、これは……! 伝説のアイドル伝説DVD全巻ボックス!! 持ってる人に初めて会いました!!」

 

何時も引っ込み思案な花陽が珍しく興奮した様子でズイズイとにこに近寄るとにこは少し驚いたようだが花陽の「凄いです!!」という言葉にはどこか自信げに「まあね!」と言い放つ。

 

「へー、そんなに凄いんだー」

 

と穂乃果は呟くと……。

 

「知らないんですか!!?」

 

穂乃果の言葉に驚く花陽は今度は彼女にズイっと迫り、部室のパソコンを借りてそのDVDボックスについての説明を彼女は行い始める。

 

「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校等が限定生産を条件に歩みより、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDボックスで、その稀少性から伝説の伝説の伝説、略して伝伝伝!! と呼ばれるアイドル好きなら誰もが知ってるDVDボックスです!!」

 

少し早口口調で話す花陽に困惑する一同。

 

「は、花陽ちゃんキャラ変わってない?」

 

穂乃果は苦笑しながら花陽のキャラが一変したことに驚く。

 

「好きなことになるとテンション上がる人っているだろ? 多分花陽ちゃんもそれだ」

 

と紅葉は穂乃果に説明する。

 

「通販、ネットに注文が殺到するボックスを2つも持っているなんて……。 尊・敬……!」

 

どこか憧れにも似た視線をにこに送る花陽。

 

「家にもうワンセットあるけどね」

 

そうにこは自慢げに語ると花陽は「ホントですか!?」と興味深そうな様子を見せ、穂乃果はそれならみんなで見ようと提案するのだが……それはにこに却下された。

 

「ダメよ! それは保存用」

 

その言葉にショックを受けたのか花陽がパソコンの置いてある机に突っ伏すと「で……伝伝伝……うぅ」とよっぽど見たかったのは泣いて落ち込んでいた。

 

「か、かよちんが何時になく落ち込んでる!」

 

するとなぜかことりが棚の上に置いてある誰かのサイン色紙らしきものを見つめており、にこが「あぁ、気づいた?」と声をかけるとことりはビクっと肩を震わせ、ことりの様子に紅葉は首を傾げる。

 

(なんか、ことりの奴様子がおかしいような……?)

「秋葉のカリスマメイド、ミナリンスキーさんのサインよ」

 

ことりの様子から海未はそのミナリンスキーというのを知っているのかと問いかけるとことりは慌てて「あっ! い、いや……!」と首を横に振って否定する。

 

ちなみににこが言うには「まっ、ネットで手に入れたものだから本人の姿は見たことないんだけどね」とのことでそれを聞いたことりは胸を撫で下ろしてどこかホッと溜め息を吐くのだった。

 

(ミナリンスキーミナリンスキー……南 ことり……。 いや、流石に無理矢理感ありすぎるし、気のせいか。 メイドで思い出したが……そう言えば、最近あの店行ってないな……。 今度また久しぶりに行ってみるか)

「それで? 何しに来たの?」

 

そこで本題へと戻り、にこに穂乃果はスクールアイドル部とアイドル研究部の統合をお願いしようとしたのだが大体のことはにこ自身も察しており、穂乃果も「それなら話が早い!」と改めて統合をお願いしようとするのだが……。

 

「お断りよ!」

「えっ……」

 

しかし、にこはキッパリと穂乃果達の申し出を断ったのだ。

 

「私達はμ'sとして活動できる場が必要なだけです。 なのでここを廃部にして欲しいというのではなく……」

 

丁寧な口調で説明する海未だがそれでもにこは「お断りって言ってるの!!」と言い放ち、決して彼女達の申し出を受けようとはしなかったのだ。

 

「言ったでしょ!? アンタ達はアイドルを汚しているの!」

「でもずっと練習してきたから歌もダンスも……!!」

「そういうことじゃない……! アンタ達、ちゃんとキャラ作りしてるの?」

 

そんな彼女の問いかけに、一同は「えっ?」と首を傾げた。

 

「えっ? キャラ?」

「そう! お客さんがアイドルに求めるものは楽しい夢のような時間でしょ!? だったらそれに相応しいキャラってものがあるの! 良い? 例えば……」

 

するとにこは一度一同に背中を見せた後、勢いよくみんなに向かって振り返ると……。

 

「にっこにっこにー♪ あなたのハートににこにこに~♪ 笑顔届ける矢澤にこにこ~♪ にこに~って覚えてラブにこ♪」

 

という風に決めポーズのようなポーズを決めて見せるにこの姿を見て一同は思わずしばらくの間沈黙してしまう。

 

「どう?」

 

とそこで先ほどまでの強気な感じの態度に戻るのだが……。

 

「こ、これは……」

「キャラというか……」

「私、無理」

「ちょっと寒くないかにゃー?」

「でもあれやった後に普段の態度に戻るのはギャップがあって良いと思います」

 

穂乃果等はある意味あまりの衝撃的なシーンのせいか何も言えず、上から海未、ことり、真姫、凛、花陽、紅葉がそれぞれの感想を口にしており、花陽に至っては「ふむふむ」と興味深そうにメモ書きをしていた。

 

「そこのアンタ、今寒いって……!」

 

にこは凛をジロリと睨み付け、ビクっと肩を振るわせる凛。

 

「いやでもすっごく可愛かったです!! サイッコーです!!」

 

凛は立ち上がって慌てて言うのだが……今それを言ってもにこの機嫌が直るとはとても考えにくい。

 

「あっ、でもことりも良いかも!」

「そうですね! お客様を楽しませる努力は大事です!」

「素晴らしい! 流石にこ先輩!!」

 

すかさずことりや海未、花陽もフォローを入れるのだがにこはどんどん肩をワナワナと震わせていき、穂乃果は「よーし! そのくらい私だって!!」と気合いを入れて立ち上がるのだが……。

 

「出てって」

「えっ?」

「出てって!! 兎に角話は終わりよ!! 出てって!!」

 

そしてそのままにこは穂乃果達を部室から追い出されてしまうのだった。

 

「あ~! にこせんぱ~い!」

 

するとそこへ……。

 

「やっぱり追い出されみたいやね?」

「希先輩?」

 

と言いながら希が現れ、1年組は用事があるということで今日は帰宅することとなり、それ以外の一同は場所を移して希から昔のにこについてのことを聞くことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スクールアイドル? にこ先輩が?」

 

なんでもにこは1年生の頃、同じ学年の生徒と一緒ににこはスクールアイドルを結成して活動していたらしい。

 

のだが……今ではもうにこ以外のメンバーが辞めてしまったらしく、希が言うにはにこのアイドルとしての目標が高すぎたせいで他のメンバーはついて行けなくなってしまったのだというのだ。

 

「成程、アイドルへの情熱が熱すぎて……他の人達がついて行けなかった……ということですか?」

「うん、そんなところかなぁ。 それで1人やめて2人やめて……」

 

それを聞いて穂乃果はどこか悲しそうな表情を浮かべる。

 

「だからあなた達が羨ましかったんじゃないかな? 歌にダメ出ししたりダンスにケチつけたりできるってことはそれだけ興味があって見てるってことやろ?」

 

それから希と別れた4人はこれからどうすれば良いか話し合いながら出入り口の校門に傘を差しながら向かっていた。

 

「先輩の理想は高いですから私達のパフォーマンスでは納得してくれそうにありませんし。 説得に耳を貸してくれる感じもないですし」

 

希の話を聞いて海未もどことなく弱気な様子を見せるが……。

 

「そうかなぁ~? にこ先輩はアイドルが好きなんでしょ? それでアイドルに憧れてて……私達にもちょっと興味があるんだよね? それって……ほんのちょっと何かあれば上手く行きそうな気がするんだけど……」

「具体性に乏しいですね……」

 

穂乃果の言葉にそう答える海未。

 

「それはそうだけど……!」

 

穂乃果が海未に言葉を返そうとした時、校門を出たところで彼女達は信号の先にある階段ににこが慌てて隠れている姿を発見、それを見て全員互いの顔を見合わせる。

 

「今の……にこ先輩……だよな? どうする?」

「どうするって……声をかけるとまた逃げちゃいそうだし……」

 

紅葉の疑問にことりがそう答え、そしてそんなにこを見て穂乃果は「うーん」と唸っていると……「あっ!」と彼女は何かを閃いたのか口元に笑みを浮かべる。

 

「んっ? どうかしましたか?」

「これって!! 海未ちゃんと同じじゃない!?」

 

突然の穂乃果の言葉に海未は意味が分からず頭に疑問符を浮かべる。

 

「ほら! 海未ちゃんと出会ったとき!」

「海未と出会った時……あぁ!」

 

その昔、穂乃果、紅葉、ことりとその他の友達達と一緒に鬼ごっこを遊んでいた時のことである。

 

そしてその様子を木の後ろに隠れてこっそりと一緒に遊びたそうにしている海未の姿があり、彼女は昔から恥ずかしがり屋で人見知りだった為、中々「一緒に遊ぼう」と言い出せずにいたのだ。

 

だがそんな風に隠れている海未を穂乃果が見つけ……。

 

「そんなことありましたっけ!?」

「あったあった」

「そうそう! 海未ちゃん凄い恥ずかしがり屋さんだったからぁ~?」

 

ニヤニヤした笑みを見せる紅葉と穂乃果に海未はムスっとなる。

 

「それが今の状況と何か関係あるんですか!?」

 

海未が問いかけると穂乃果は力強く頷き、ことりや紅葉に「ねっ!」と視線を向けると2人は「あぁ! あの時の!」と穂乃果の考えていることを理解した。

 

ただ海未に至っては穂乃果が何を考えているのかが分からないらしく、困惑した表情をしていたが穂乃果とことり、紅葉は互いに笑い合っていた。

 

そんな4人の様子を覗き込み、にこは不機嫌そうな顔を浮かべる。

 

「ふん、なに仲よさそうに話してるのよ」

 

それからにこは1人、不機嫌そうな顔をして帰宅するべく歩くのだが……その時、街に突如として白い煙のようなものが発生……。

 

目の前で起こった突然の出来事ににこは思わず「うぇ!?」と驚きの声をあげてしまう。

 

そして煙が晴れるとその中から結晶のような姿をした怪獣……「光怪獣 プリズ魔」が出現したのだ。

 

「か、怪獣!!?」

 

プリズ魔は不気味な音を出しながら電気のついたビルにオレンジ色の光線を当てるとそのビルが一瞬にして消え去り、さらにプリズ魔は自転車に乗った「ライト」をつけた人々にも同じ光線を当て……一瞬にして人々の乗っていた自転車を消滅させたのだ。

 

「うわあああああ!!!!?」

 

ただし自転車に乗っていた人々は消滅こそしなかったものの光線を浴びた人々は結晶のような姿に変えられてしまい、悶え苦しみ……そんな結晶に変えられてしまった1人がにこの足下に倒れ込み、彼女に助けを求める。

 

「た、だすげでぐでええええ……!」

「ひい!?」

 

だがそんな人々もプリズ魔へと吸収され、プリズ魔はさらに「電気」などがついているビルや兎に角明るいものを次々とその「結晶化光線」を浴びせ、物体や人間は身体を結晶へと変えられて吸収され……その光景を見てにこは恐怖のあまり腰を抜かし、その場に座り込んでしまう。

 

「アレは……そうか、昨日のネットでのニュース……アレはあいつの仕業だったのか!」

 

一方で一度穂乃果達と別れてカレーパンを買って帰宅していた紅葉がプリズ魔が出現した場所の近くを偶然通りかかっており、彼は昨日見たニュースの犯人がプリズ魔であることをすぐに理解したのだ。

 

「だが……あの怪獣は昼間は活動しないはず……。 それになんでいきなりこんな街中に……?」

 

紅葉は少しなぜここにプリズ魔がいきなり現れたのか考え込んでしまったが……すぐにそんなことを今は考えている場合ではないと思い、紅葉は人気のない場所に行ってオーブリングを取り出す。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

紅葉は「ウルトラマン」のカードを取り出してそれをオーブリングにリードして読み込ませる。

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

さらに紅葉は続けて「ウルトラマンティガ」のカードをオーブリングにリードして読み込ませた後、オーブリングを掲げる。

 

「光の力……お借りします!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

するとティガとウルトラマンの姿が紅葉を中心に重なり合うと紅葉は「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身を完了させる。

 

またプリズ魔はまたビルに向かって結晶化光線を放とうとするのだが……その方向には腰を抜かし、へたり込んでしまったにこがおり、にこは「ひっ!?」とその表情が恐怖へと染まってしまう。

 

「い、いや……! 私は、まだ……!」

『スペリオンシールド!!』

 

だがプリズ魔の放った結晶化光線を駆けつけたオーブが「スペリオンシールド」というバリアを両手を広げて張り巡らせ、プリズ魔の光線を塞ぎきって見せたのだ。

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

『俺の名はオーブ! 闇を照らして……悪を討つ!!』

 

オーブはジャンプして跳び蹴りをプリズ魔に喰らわせて相手を後退させた後、さらに殴りかかろうとしてプリズ魔に向かって駈け出すのだが……。

 

プリズ魔は念力光線をオーブに浴びせるとオーブは宙に浮かび、プリズ魔はオーブを力強く地面に叩きつける。

 

『グアッ!?』

 

地面に叩きつけられたオーブだが、すぐさま立ち上がって「スカイタイプ」の力を使って一気に接近し、同時に「パワータイプ」の力を使って拳を何発も叩き込む。

 

しかしプリズ魔はビクともせず逆にオーブの方が手を痛めてしまい、オーブは「グゥ……!」と声をあげて両手をブンブン振る。

 

ならばと思いまたジャンプして今度はパワータイプの力を使って跳び蹴りを喰らわせようとするオーブ。

 

だがプリズ魔は念力でそれを跳ね返し、オーブは地面に叩きのめされてしまう。

 

『シュア!? グッ……!』

 

膝を突きながらもなんとか立ち上がろうとするオーブだったが……。

 

プリズ魔は中央部分を眩く光らせ、それを受けたオーブは苦痛に満ちた声をあげ、さらにプリズ魔は物体を吸収する光線を発射してオーブを吸い寄せ、中央部分で高熱を出してオーブの身体を焼き上げる。

 

『グウウウウウ!!!!?』

 

そこでオーブの中にいる紅葉はオーブリングに新たに「メビウス」と「タロウ」のカードをリードさせ、「バーンマイト」へとフュージョンアップして姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! バーンマイト!』

『俺を焼く前に……お前を黒焦げにしてやる!! ストビュームゥ……ダイナマイトォ!!』

 

バーンマイトとなったオーブは全身に炎を纏ってプリズ魔に掴みかかり……それと同時にプリズ魔は爆発。

 

爆風によってオーブは吹き飛ばされてしまうが……その光景を見ていたにこは「やった!」とプリズ魔を倒したと確信するが……。

 

煙が晴れるとそこには無傷のプリズ魔がいたのだ。

 

「嘘……!」

 

それを見てにこは唖然とし、それにはオーブすらも驚きの様子を見せていた。

 

そしてプリズ魔は素早くオーブに向かって突進して吹き飛ばし、オーブが倒れ込んだところを狙い、プリズ魔は跳び上がってオーブの真上に何度も踏みつけるようにのし掛かる。

 

その巨体によってオーブは徐々に地面にめり込んでいく。

 

(ぐうう!? どうする!? ジャックさんがやったように俺も奴の体内に入って内側から倒すか!? だが……それでもジャックさんも『ギリギリの戦いだった』という程の相手……! 上手く行くかどうか……!)

 

そこでオーブはまた自分を踏みつけようとプリズ魔が離れた一瞬の隙を狙い、両手を十時に組んで放つ「ストビューム光線」を放つ。

 

『ストビューム光線!!』

 

しかし、プリズ魔は素早く避け、光線がかすった程度しか当たらず……そのまま光線は曇り空に直撃し……それによって空は晴れ、太陽の光が差し込んだのだ。

 

それを受けてか……プリズ魔は突如として大人しくなり、プリズ魔は白い煙に包まれて姿を消すのだった。

 

『ハァ……ハァ……。 そうか、曇っている間は……太陽の光を吸収できないのか……』

 

プリズ魔は光を吸収するため光を求め、光のあるところに出現する怪獣なのだが……昼間は太陽光線で満足しているため、活動は夜間に限定される怪獣の筈なのだ。

 

だが……今はまだ夜ではないにも関わらずプリズ魔は出現した。

 

オーブ……紅葉はその理由としてそれは梅雨となってしばらく雨が続いたせいで太陽光線が吸収できなくなってしまったせいなのではないかと考えたのだ。

 

最も、なぜこんな街中にいきなり現れたのかは謎だが……それはこの辺りは光が多くある場所だからかもしれないと紅葉は予想したのだった。

 

(だが……こんなのは一時凌ぎにしかならない……。 また雨が降り出すのも時間のもん……だ……い……)

 

そのままオーブは倒れ込んでその場に消え去ってしまい……元の姿に戻った紅葉は急いでその場から離れようとするのだが……先ほどプリズ魔に焼かれた腹部に激痛が走り、服を捲るとかなりの火傷を負っていたのだ。

 

(クソッ……いし、きが……)

 

そのまま紅葉は倒れ、気を失ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……」

 

紅葉が目を覚まし、起き上がって周りを見るとそこは見慣れない部屋であり、見たところここはマンションの一室らしく、紅葉は起き上がろうとするのだが腹部に痛みが走り、彼は再び布団に寝込んでしまう。

 

紅葉は服を捲ってみるとプリズ魔によって焼かれた腹部は包帯が巻かれており、紅葉は恐らく倒れていた自分を誰かが助けて手当てしてくれたのだろうと考え、もう1度どうにか起きようとするのだが……そこへ誰かが今自分のいる部屋に入って来たのだ。

 

「ちょっと、まだ寝てないとダメよ」

「あっ……にこ先輩?」

 

その人物はにこであり、彼女は紅葉の隣に座ると水の入ったコップを紅葉に渡す。

 

「お水持ってきたわ」

「あ、ありがとうございます」

 

紅葉はお礼を言ってコップ受け取り、水を飲むのだが……。

 

「ウルトラマンオーブ」

「ブフォ!!?」

 

にこの突然の言葉に紅葉は水を吹き出しそうになって咳き込む。

 

「ななななな、なんのことですか!!?」

 

慌てて惚けようとする紅葉が……にこはビシっと紅葉を指差し、「見たのよ」と小さく呟き、それを聞いて紅葉は冷や汗を流す。

 

「ウルトラマンオーブがアンタの姿になるところをバッチリとね。 みんなは救世主とか光の巨人とか言ってるけど……その正体は人間だったのね? そりゃ誰も気づかないわよ……」

「な、何かの見間違いじゃないんですか!?」

「んな訳ないでしょ? まぁ、別に心配しなくても良いわ。 誰かに言うつもりもないし、さっき助けて貰ったし、昨日はアンタのポテト食べちゃったしね」

 

それを聞いて紅葉はホッと一安心。

 

「そうしてくれると助かります」

「そう言えば、あのサイドテールの娘、確かアンタの妹よね?」

 

尋ね、紅葉はそんなにこの質問に首を傾げつつ「はい、そうですが……」と答える。

 

「あの娘や……他の娘達はアンタがオーブだってこと知ってるの?」

「いえ、あいつ等は俺がオーブだってこと知りません」

 

その答えに対しにこは「そう」とだけ返した。

 

「俺からも質問良いですか?」

 

紅葉が尋ねるとにこは「構わないわ」と答え、紅葉は「では」と質問をする。

 

「副会長から、にこ先輩の昔のこと聞きました。 1年の時、スクールアイドルやってたって」

「ハァ……。 希の奴、勝手に何話してんのよ……」

「それで思ったんです。 にこ先輩は……またスクールアイドルやりたいんじゃないかって……。 希先輩も言ってましたが……あいつ等のことをダメ出ししたりするのも、本当は興味があるから。 だから……にこ先輩……」

 

そこまで言いかけたところでにこは怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「なに? 私にアンタの妹のところのスクールアイドルに入れなんて言うつもり?」

「さあ、どうでしょう」

 

にこの質問に紅葉は惚けたように答える。

 

「でも、あいつ等なら……先輩の理想にだってきっとついていけます」

 

そんな風に断言するにこに「なんでそんなに言い切れるの?」と尋ねると紅葉は笑みを浮かべて言い放った。

 

「俺の妹を中心に集まった奴等だからですよ。 にこ先輩も、心のどこかで本当はまたスクールアイドル、やってみたいと思ってるんじゃないんですか? 確かに、昔は上手くいかなかったかもしれない……。 でも、もう1度だけやって見ても……俺は良いと思います」

「何よ……そんなの……!」

「偉そうなことを言ったのは謝ります。 でも……過去は変えられないかもしれないけど、未来なら……変えることが出来ると思いますから」

 

どこか暗い表情を顔をしながらそう語る紅葉。

 

「アンタも、昔なにかあったの……?」

 

そんな彼の様子を見てかにこが尋ねると紅葉は「どうですかね」と笑って誤魔化す。

 

その時のことだ、窓の外を見ると白い煙が現れ……その中から再び「光怪獣 プリズ魔」が姿を現したのだ。

 

紅葉は急いで外を見ると空はまた曇っており、プリズ魔を見たにこは青ざめた表情を見せてどこかに行こうとする。

 

「にこ先輩! どこに!?」

「ウチの妹達がお隣さんと一緒に近くの公園で遊んでるのよ!! 早く避難させないと!!」

「分かりました、ここは俺が食い止めます!!」

 

それを聞いてにこはその怪我では無茶だと止めようとするが紅葉はそんな彼女の制止も聞かずオーブリングを取り出し、カードホルダーから「ウルトラマンジャック」のカードを抜き取ってリードさせると……カードからジャックが現れる。

 

「ジャックさん!!」

『ウルトラマンジャック!』

 

さらにカードホルダーから「ウルトラマンゼロ」のカードを取り出してそれをオーブリングにリードさせるとジャックと同じようにカードからゼロが現れる。

 

「ゼロさん!!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「キレの良いやつ、頼みます!!」

『フュージョンアップ!』

 

オーブリングの左右が展開され、紅葉を中心に「ウルトラマンジャック」と「ウルトラマンゼロ」の姿が重なり合い、紅葉はジャックとゼロの姿を合わせたような「ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!』

『光を超えて、闇を斬る!!』

 

変身を完了させたオーブはプリズ魔の目の前に現れるとオーブは早速槍型の武器である「オーブスラッガーランス」を取り出してそれを高速回転させ、竜巻を巻き起こしてプリズ魔を吹き飛ばし、にこのマンションから遠ざけることに成功する。

 

『シュア!!』

 

投げ飛ばされたプリズ魔は地面へと倒れ込むが……。

 

すぐさま起き上がり、オーブはジャンプしてオーブスラッガーランスを振るってプリズ魔を斬りつけようとする。

 

だが、やはりオーブスラッガーランスを用いてもプリズ魔には傷1つつけることは出来ず、念力光線によってオーブは吹き飛ばされてしまう。

 

『グアアア!!?』

 

オーブはどうにか地面に着地してオーブスラッガーランスのレバーを1回引いて発動させるオーブスラッガーランスの先端から放つ必殺光線「オーブランサーシュート」をプリズ魔に放つのだが……プリズ魔はそれを念力で光線ねじ曲げてオーブに直撃させ、オーブは大きく吹き飛ばされて地面に倒れ込んでしまう。

 

『ウアアッ!?』

 

なんとか立ち上がってプリズ魔に攻撃を仕掛けようと駆け出すオーブ。

 

しかしプリズ魔はオーブに光線を浴びせて異空間に閉じ込めようとし、それを受けてオーブは苦痛に満ちた声をあげる。

 

『グウ……ウアアア……!!?』

 

また妹達を非難させている途中、にこはオーブが苦戦していることに気がつき、ジッとオーブを見つめる。

 

「負けんじゃないわよ! アンタが言ったんじゃ無い……未来は変えられるって!! だから……今度は負けるな……オーブ!!」

 

にこの声援を受けてかオーブはなんとかプリズ魔の作り出した異空間から抜け出し、プリズ魔は今度は最大の武器である「結晶化光線」を放つ。

 

プリズ魔はオーブを結晶に変えようとするが……オーブはジャンプして光線を躱し、プリズ魔に向かって急降下しながらオーブスラッガーのオーブスラッガーランスのレバーを3回引いて発動させるオーブスラッガーランスの穂先に光の刃を形成し、残像を伴いながら相手を滅多切りにする「トライデントスラッシュ」を炸裂させる。

 

『トライデントスラッシュ!!』

 

しかしプリズ魔は「カンカンカン!」と音を立てるだけで一切ダメージを受けず、プリズ魔はそのまま結晶化光線を放つがオーブはすぐさま離れて回避し、ティガとウルトラマンのカードを使って姿を「スペシウムゼペリオン」へと変える。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

『こうなったら……最後の手段だ!!』

 

するとオーブはミクロサイズへと姿を変え、飛行してプリズ魔の内部に侵入……。

 

プリズ魔の内部に侵入したオーブはどんどん身体を結晶化されていき、苦しむが……オーブは力を振り絞って右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを貯めた後、十字に組んで放つ必殺光線「スペリオン光線」をそこら中に向けて発射する。

 

『スペリオン光線!!』

 

オーブの光線を受け、プリズ魔は内部を破壊されて火花を散らして木っ端微塵に爆発して吹き飛び……その中からオーブが現れてにこは無事だったオーブを見てホッと胸を撫で下ろすのだった。

 

『ハァ……ハァ……。 これは、確かに……ギリギリだったな……!』

 

そのままオーブは姿を消し、オーブは紅葉の姿へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の降る翌日、にこは学校の授業が終わり何時も通り部室へと行き……扉を開けるとそこには……。

 

『お疲れ様でーす!』

 

と椅子に座った穂乃果、海未、ことり、紅葉、花陽、凛、真姫の7人がにこを出迎え、それを見てにこは「なっ……!」と唖然となる。

 

「お茶です、部長! それからお兄ちゃん!」

「おう! そんでこれ、ウチの家の名物のほむまんです! 昨日は色々お世話になりましたからどうぞお茶と一緒に!!」

「今年の予算表になります! 部長!!」

 

穂乃果と紅葉の高坂兄妹はにこにほむまんとお茶を差し出し、さらに今度はことりがと予算表の紙を持って来る。

 

「部長~、ここに置いてあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきましたー」

「こ、コラ! 勝手に……!」

 

凛の言葉を聞いてにこはと叱ろうとするが……。

 

「さ、参考にちょっと貸して? 部長のオススメの曲」

 

真姫がそう言うと今度は花陽が「な、なら迷わずこれを……」と伝伝伝のDVDボックスを持って来るが……。

 

そんな花陽に当然にこは「あー!! だからそれは!!」と注意しようとしたところで両肩を穂乃果に肩を掴まれる。

 

「ところで次の曲の相談をしたいのですが、部長!」

 

穂乃果の突然の相談に、にこは「はぁ!?」驚きの声をあげる。。

 

「やはり次は、さらにアイドルを意識した方がいいかと思いまして……」

「それと~、振り付けも何か良いのがあったら」

「歌のパート分けもよろしくお願いします!!」

 

海未、ことり、穂乃果がそれぞれにこにそう話しかけ……にこはワナワナと肩を震わせる。

 

「こんなことで押し切れると思ってんの?」

「押し切る?」

 

そんなにこの言葉に穂乃果は首を傾げる。

 

「私はただ、相談しているだけです。 音ノ木坂アイドル研究部所属の、μ’sの7人が歌う次の曲を!」

「7人?」

「一応言っておきますけど、その歌う7人に俺はカウントしてませんからね? にこ先輩?」

 

つまり、穂乃果が言っている「7人」とは穂乃果、海未、ことり、花陽、凛、真姫……そしてにこの7人を指し示しており、にこは1人ずつ真剣な眼差しをした全員の顔を見つめる。

 

「「にこ先輩!」」

「っ……!」

 

紅葉と穂乃果に名前を呼ばれ、彼女は少し考えて込む素振りを見せるが……。

 

「やりたいからやる」

「それがスクールアイドル! ですよねにこ先輩!」

 

そんな紅葉と穂乃果の言葉を受けたにこの返答は……。

 

「……言っておくけど、厳しいわよ?」

 

そのにこの言葉を聞いて紅葉は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「分かっています! アイドルへの道が厳しいことくらい!!」

 

そう意気込む穂乃果だがにこは「分かってない!!」と穂乃果の言葉を否定する。

 

「アンタは甘々! アンタも、アンタも! アンタ達も!! 良い? アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの!! それをよーく自覚しなさい!!」

 

それを聞いて穂乃果達は嬉しそうに笑顔を浮かべ、にこのμ'sへの加入が完全に決定し、一同はアイドル研究部に部員が増えたためにそのための紙を申請。

 

当然、それを見て絵里は快く思わなかったのだが……こうなってはもう仕方がない。

 

「えりち」

 

するとそんな絵里に希が声をかけ、絵里は「なに?」と尋ねると希は窓から空を見上げる。

 

「見てみ? 雨……止んでる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、学校の屋上にて……。

 

「良い? やると決めた以上、ちゃんと魂込めてアイドルになりきって貰うわよ!! 分かった!?」

『はい!!』

 

にこに言われ、返事をする穂乃果達だがにこに「声が小さい!!」と注意され、穂乃果達はさらに大きく返事「はい!!!!」と返事をする。

 

「上手く行って良かったね?」

「うん!」

「でもそんなこと本当にありましたっけ?」

 

ことりが静かに穂乃果にそう言うと彼女は頷くのだが、海未はイマイチ覚えていないのか、それとも恥ずかしいのかイマイチ納得していないような顔を見せる。

 

「あったよ? あの時、穂乃果ちゃんが……」

 

その昔、穂乃果が隠れている海未を見つけて「見ぃ~つけた♪」と声をかけ、昔から人見知りだった海未は涙目になってしまうのだが……。

 

『次、あなた鬼だよ!』

『ふぇ!?』

『一緒に遊ぼう!』

 

と少し強引に海未を仲間に入れて一緒に鬼ごっこをして遊ぶこととなり、そこから今までずっと穂乃果達は海未と付き合ってきたのだ。

 

そして時間は現代へと戻り、穂乃果達はにこの指導の元特訓を受けることになったのだが……。

 

「にっこにっこにー!! はい!」

『にっこにっこにー!!』

 

にこの「にっこにっこにー!」の特訓を全員受けることになっていたのだった。

 

「つり目のアンタ!! 気合入れて!!」

「真姫よ!!」

「全然ダメ!! 後30回!!」

 

にこのその言葉に凛は「えー!?」と声をあげるが逆に穂乃果はよりやる気を出す。

 

「何言ってんの!! まだまだこれからだよ!! にこ先輩!! お願いします!!」

 

その言葉を受け、にこは口元に笑みを浮かべる。

 

「よーし!! 頭から!! いっくよー!!」

 

またにこも気合いを入れて穂乃果達に指導をするにこは……どこは嬉しそうで、楽しそうだった。

 

それからしばらくして休憩に入ると紅葉はにこの元へとやってくる。

 

「どうです? 悪くないでしょ?」

「アンタ……」

「にこ先輩、あいつ等となら……きっと、一緒なら明日を探すことができると俺は思います」

 

そんな紅葉の言葉ににこはクスリと笑みを浮かべる。

 

「明日を探せ……か。 素敵な言葉じゃない」




にこ
「にっこにっこにー!! サブタイを探せ! のコーナーにこ~♪」

穂乃果
「テンション高いねぇ……」

紅葉
「にこ先輩のメイン回でもあったからな」

ラグナ
「クソがァ!! 今回俺の出番がねえぞォ!!?」

紅葉
「アイツは気にしないで続きをお願いします、にこ先輩!」

にこ
「了解よ! 今回のサブタイはウルトラマンオーブ本編でも登場したサブタイでウルトラセブン第23話『明日を探せ!』 今回のラストのにこにーの台詞にあったにこ♡」




今回登場した怪獣がなんでプリズ魔なのか、多分分かる人には分かるかも。

ちなみに自分はあのアニメ見たことありません。


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番外編

「うわぁーん!! 宿題終わんないよぅ!!」

 

家の居間で紅葉がカレーパンを頬張っていると穂乃果が泣きながら数学の宿題を突然持って来てやってきた。

 

穂乃果と同じクラスである紅葉はその宿題が明日提出なのを知っているし、宿題自体は2日ほど前に出されたものだ。

 

紅葉も既に宿題は終えている。

 

そしてそんな穂乃果を見て大方、彼女が自分に「お兄ちゃん宿題の答え見せて!!」と言ってくるのは予想できる訳で……。

 

「お兄ちゃん!! 宿「見せないからな?」まだ何も言ってないよ!?」

 

驚く穂乃果だが、以前にもこういったことは何度もあったため、そんなことは言わなくとも分かる。

 

だがそれでも穂乃果は紅葉に抱きついて泣きながら宿題を見せてと頼み込んで来るのだが……当然紅葉はそれを断る。

 

「やらないと海未ちゃんに怒られちゃうよぉ!」

「それは穂乃果の自業自得だろ? 2日間もあったのに何してたんだ?」

「そ、それはμ'sの練習が忙しくて……」

 

言い訳を始める穂乃果だが、海未やことり、他のメンバーだって同じ条件でやっているのだ。

 

凛は怪しいところではあるが。

 

なのでそんなものは宿題をやらなかった理由になる訳もなく、紅葉は穂乃果はもう1度断るのだが……。

 

「うぅ~」

 

今にも泣き出しそうな穂乃果の顔を見ると紅葉は「はぁ」と溜め息を吐いて立ち上がる。

 

「しょうがない。 宿題の答えを見せる訳にはいかないが、教えるくらいはしてやる」

「ホント!? ありがとうお兄ちゃん!! だぁーい好き!!」

 

穂乃果は満面の笑みで紅葉にまた抱きついて来るのだが紅葉はすぐに彼女を自分から引き離す。

 

「お前なぁ、兄貴だからってそうやって気安く異性に抱きつくのはやめろよ?」

「えへへ♪ 穂乃果がこうやって抱きつくのはお兄ちゃんだけだよ~♪」

(おぅ、嬉しいこと言ってくれるな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから……。

 

頭から湯気を出しながら机に突っ伏している穂乃果だったが、なんとか数学の宿題は無事に終了。

 

「頭から湯気が出るほどよく頑張ったな、穂乃果」

 

紅葉は笑みを浮かべながら穂乃果の頭を撫で、撫でられた穂乃果もふにゃんっとした表情を浮かべて「えへへ~♪」と心地よさそうに笑う。

 

するとその時、紅葉は「ふぁ」と小さな欠伸をし、それを見た穂乃果は何かを閃いたような顔をする。

 

「ありがとうお兄ちゃん!! おかげで宿題終わったよ!! そうだ! お兄ちゃんにお礼してあげるね♪」

「お礼?」

「うん! お兄ちゃん、さっき欠伸してたでしょ? だから穂乃果の膝、貸してあげる!」

 

それを聞いた瞬間、一瞬思考停止した紅葉だったが……ついつい視線が彼女のとても柔らかそうな膝に映ると彼女の言葉の意味を理解しボッと顔を真っ赤にした。

 

「い、いやいやいや! 流石にそれはちょっと……」

「穂乃果の膝枕じゃ、イヤ?」

「言い方!! 言い方もう少し考えろ!!」

 

あくまで穂乃果の膝枕は遠慮すると言い張る紅葉だったが、それでは穂乃果が満足しないため彼女は紅葉の後ろに回り込み、「えーい!!」とかけ声をあげて抱きつく。

 

そのまま彼女は紅葉の脇腹をくすぐり始める。

 

「わっ!? あははは!!? な、なにすんだ!!? ははっ!? ほの、かぁ!!? あははは!!」

「それ今だー!!」

「うぉ!?」

 

穂乃果は紅葉の両肩を掴んで後ろの方に引っ張って倒させると紅葉の頭は穂乃果の膝に置かれる形となり、結局彼は彼女に膝枕をして貰うことになったのだった。

 

「どう? お兄ちゃん?」

「あー、クソ。 ヤバい、これは……一度されると離れ、られな……い……」

 

紅葉はそのまま穂乃果の膝の上で眠ってしまい、穂乃果は満足そうな顔をしていた。

 

「えへへ~♪ こうやってみるとお兄ちゃん意外と可愛いんだね~♪」

 

穂乃果は紅葉が眠っている間、嬉しそうにしながら紅葉の頬を一差し指でツンツンするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、穂乃果の膝枕から起き上がった紅葉は少し汗をかいてしまった為、風呂に入って身体を洗っていたのだが……。

 

突如として「バン!!」っと勢いよく風呂場の扉が開かれ、それに思わず紅葉は「ビクッ!」と肩を震わせ、後ろを見てみる。

 

「お兄ちゃん! 背中流しに来たよ!!」 

 

するとそこには髪を下ろしてスク水を着た穂乃果が立っていた。

 

「もう少し羞恥心持とうか!!?」

「ほぇ? なんで? ちゃんと水着も着てるし!」

 

そういう問題じゃないだろ……と心の中でツッコミを入れる紅葉だったが、穂乃果はそのまま紅葉の反論も持たず石鹸を持って紅葉の背中を洗い始める。

 

紅葉は少し顔を赤くしつつも「はぁ」と小さく溜め息を吐く。

 

「お前、俺がお前の兄だから良かったものの……。 あんまり異性にさっきみたいに気安く抱きついたり膝枕したりするなよ? 男はみんなケダモノなんだ」

「……」

 

紅葉の言葉に背中を洗いながらも黙り込む穂乃果。

 

不思議に思い、紅葉は振り返って穂乃果の顔を見ようとするが……「バシャーン!!」と顔にお湯をいきなりかけられる。

 

「おま、何すんだ!?」

「えへへ、悪戯成功~♪ お湯で石鹸流すね~♪」

 

無邪気に笑う穂乃果を見ると怒る気も失せてしまうのだった。

 

「……お兄ちゃん以外に、あんなことしないよ」

 

そう呟く穂乃果の言葉は……お湯で石鹸を洗い流す音にかき消されたのだった。

 

「んっ? なんか言ったか?」

「な、なんでもないよ!!」

 

先ほど呟いた言葉に穂乃果は恥ずかしさがこみ上げて来たのか耳元まで顔を真っ赤にして立ち上がる。

 

「それじゃ穂乃果、また後でお風呂入るから!!」

 

それだけを言い残して穂乃果は風呂場を出て行く。

 

「はぁ。 全く、あんな恥ずかしい台詞……よく言えるな……」

 

尚、先ほど穂乃果が呟いた言葉はウルトラマンである紅葉にはバッチリと聞こえており、彼は真っ赤に染まった自分の顔を隠すように手で口元を覆っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜のことである。

 

「なんで俺の部屋に来るんだ」

「だ、だってぇ~!」

 

夜にテレビで恐怖映像の番組を見てしまった穂乃果は涙を浮かべながら自分の部屋の枕を抱えて紅葉の部屋へと訪れていた。

 

「怖いなら見なきゃ良いのに」

「だって、一度見だしたら続きが気になるんだもん」

 

だったら雪穂と一緒に寝れば良いのではないだろうかと紅葉は思ったのだが……。

 

「そんなことしたら雪穂にバカにされちゃうじゃん!!」

 

とのことだった。

 

「まぁ、別に良いんだけどさ。 俺もお前の寝顔は可愛くて好きだし」

「ふぇ!? も、もう……お兄ちゃんもあんまり人のこと言えないじゃん……」

 

穂乃果の言葉の意味がよく理解できず、首を傾げる紅葉だったが……兎に角、なんやかんやで紅葉と穂乃果は一緒のベッドの上で眠ることに。

 

しかし……。

 

(ね、眠れない……)

 

もう1時間くらいは経っている筈なのに、穂乃果は一向に眠ることができず……。

 

彼女は紅葉も眠ってしまったかと顔を覗き込むのだが……既に寝息を立てていてスッカリ眠っていた。

 

(た、確かさっき見た心霊番組もベッドで寝ている時に物音が聞こえて……)

 

とその時、どこからから「コトッ」という音が聞こえて穂乃果は「ひっ!」と小さな悲鳴をあげて紅葉に抱きつくように彼に寄り添う。

 

今にも泣き出しそうな穂乃果だったが……、その時彼女の右手に暖かい感触が伝わり、それに驚いて自分の右手を見てみると……。

 

紅葉が彼女の手を握りしめていたのだ。

 

「お前がなんかゴソゴソしてるから起きちまった」

「ご、ごめんね?」

「良いよ。 俺は幽霊なんか平気だから、お前が寝付くまでしっかりとこうやって手を握っておいてやる。 だから安心しろ、なっ?」

 

優しい微笑みを穂乃果に向ける紅葉。

 

それを見て穂乃果もどこか安堵したような表情を浮かべ、彼女は「うん!」と頷き、眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果が可愛すぎて辛い。 どうしたら良いですかね? 菊月さん?」

「手土産にことりちゃんのサイン色紙持って来てくれたのは嬉しいが、ワザワザ別の世界に来てまでなぜ私に相談するんだ? っていうか妹の自慢しに来ただけだろお前」

 

 




穂乃果ちゃんみたいな妹がいたらシスコンにならない奴なんていないんじゃないかな。



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第7話 『ゼットンからの挑戦』

セブンのカードは結局最初から所持していることにしました。
レイバトスの話はやらないので……。



「あ、あのぉ~」

 

音ノ木坂の中庭にて……なぜか穂乃果は凛にビデオカメラで撮影されており、状況がイマイチ掴めない穂乃果は困惑した表情を浮かべていた。

 

「はい笑って?」

 

とそこでなぜかマイクを持った希にそう言われ穂乃果は「えぇ!?」と驚くものの彼女はすぐに「えへへ」と可愛らしい笑顔を見せる。

 

「じゃあ決めポーズ!」

 

そこで凛からそう振られて「えぇー!!?」とさっきよりも驚きの声をあげ、彼女は素早く凛に言われた通りに色々なポーズを取る。

 

それから穂乃果は空手の正拳突きに近いポーズを取ってみたり、右腕だけをあげてみたり、両腕を交差してから両腕を広げて次に胸の前で両手の拳を突き合わせるポーズを取ってみたり、明らかにどこかで見たことあるようなポーズを決める。

 

(穂乃果のあのポーズ、なんかどっかで見たことあるんだよなぁ……)

 

尚、紅葉も穂乃果の取っているポーズにどこか見覚えがある様子だった。

 

「これが音ノ木坂学院に誕生したμ'sのリーダー! 高坂穂乃果、その人だ」

「はいオッケー!!」

 

希の解説が終わると凛はビデオカメラを一旦停止させ、それを見ていたことりは「あのぉ~。 これは?」と首を傾げるが凛は即座にビデオカメラを今度は海未に向ける。

 

「それじゃ次は~、海未先輩ね!」

「ふぇ!? な、何なんですか!? ちょっと待ってください!! 失礼ですよいきなり!!」

 

カメラを向けられてビクっとなった海未は少し恥ずかしそうにそう言うのだが……凛は「おっ! その恥じらう姿もいいねぇ~」とノリノリで撮影を続け、カメラを止める気はないようだった。

 

「ごめんごめん、実は生徒会で部活動を紹介するビデオを制作することになって各部に取材をしているところなんよ」

(あぁ、μ'sもちゃんとした部活になったから……。 もしかして学校生徒募集とかも兼ねてるのかなこれ? もしそうならμ'sのことを知って貰うチャンスだな)

 

また希も「最近スクールアイドルは流行ってるし、μ’sとしては悪い話では無いと思うけど?」とのことで紅葉の考えてることは大体合ってるらしい。

 

「わ、私は嫌です!! そんなカメラに写るなんて!!」

「でも少しでもμ’sのことを知って貰う為だし……。 ファイトだ海未!!」

 

紅葉はなんとか海未に取材を受けてもらうように頼むが当然海未は「嫌なものは嫌です!!」と人見知りの彼女は頑なに拒む。

 

そんな時、穂乃果が小さく「取材……」と呟き、紅葉と海未は穂乃果に視線を映す。

 

「なんてアイドルな響き……♪」

 

という風に穂乃果は海未とは正反対にやる気を出しており、海未は慌てて止めようとするが彼女の制止も聞かず「オッケーだよね! 海未ちゃん!」と海未にズイッと迫る。

 

「お兄ちゃんの言う通り、それ見た人がμ’sを覚えてくれるかもしれないし!!」

「そうね、断る理由はないかも♪」

 

紅葉の先ほどの言葉に穂乃果やことりも賛同し、このまま押し切られそうな勢いに海未は困ったような表情を見せる。

 

「取材させてくれたらお礼にカメラ貸してくれるって!」

「そしたら、PVとか撮れるやろ?」

 

希の「PV」という言葉を聞いて穂乃果は「PV?」と首を傾げる。

 

「ほら! μ’sの動画ってまだ3人だった時のやつしか無いでしょ?」

「ファーストライブの時のやつか。 ホントなんで俺あの時動画配信で生放送しなかったんだろうなぁ……」

 

頭を抱えて反省する紅葉に穂乃果は「よしよし」と頭を撫でる。

 

「それでもお兄ちゃんは穂乃果達の為に凄く頑張ってくれたじゃない!!」

 

穂乃果にそう励まされた紅葉は「穂乃果ぁ~」と思わず泣きそうになってしまう。

 

「でもあの動画撮ってくれたの誰か分からないままなんだよね……」

「海未ちゃん、そろそろ新しい曲をやった方が良いって言ってたよね?」

 

するとそこで海未はことりに痛いところを突かれて取材を断るに断れなくなってしまい……海未はとうとう「もう!」と言いつつ観念してしまうのだった。

 

「それじゃ他のみんなにも言ってくるー!!」

 

穂乃果はそう言って今この場にはいない花陽、真姫、にこの元へと向い、そんな彼女の後を紅葉達は追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後にて一同は今日撮った動画を穂乃果、紅葉、海未、ことり、希、凛の6人で部室で確認しており、その動画には穂乃果が先ず最初に映し出されていたのだが……最初こそ真面目に授業を受けていた穂乃果だったが、次第にウトウトし始め、次の瞬間に居眠りをしてしまうなんともだらしない姿が映し出されていたのだった。

 

『スクールアイドルとはいえ、学生である。 プロのように時間外で授業を受けたり早退が許されるようなことはない。 よって……こうなってしまうこともある』

 

次に昼食を取り、又も授業中に居眠りしてしまい……そして教師に見つかって驚いて机ごとヒックリ返って倒れてしまう穂乃果の姿が映り、動画を見ていた穂乃果は眉をひそめていた。

 

「これがスクールアイドルとはいえ、まだ若干16歳! 高坂 穂乃果のありのままの姿である!」

「ありのまますぎるよ!! っていうかいつの間に撮ったの!?」

 

穂乃果は勢いよく立ち上がっていつこんな映像を撮られたのだと勢いよく立ち上がりる。

 

「上手く撮れてたよ~、ことり先輩♪」

 

ここで穂乃果を撮っていた犯人が判明した。

 

「えぇ!? ことりちゃんが!? 酷いよぅ~!」

「普段だらけているから、こうなるんです!!」

 

涙目でそう穂乃果が言うが海未からはバッサリとそう言葉を返されてしまうのだったが……。

 

「流石海未ちゃん! 真面目に弓道の練習してる!」

 

と続いて動画に映し出されたのは海未の姿であり、穂乃果の言う通り真面目に弓道の練習を行っていたのだが……彼女は突然辺りをキョロキョロした後、隣にあった鏡を見ながら「えへ♪」と笑顔の練習を始める。

 

「これは~?」

「可愛く見える笑顔の練習?」

 

それを見た海未は顔を真っ赤にしてすぐさま「プライバシーの侵害です!!」と言ってビデオの電源を切って画面を手で隠す。

 

「よぉーし! こうなったらぁ~、ことりちゃんのプライバシーも……。 んっ? なんだろう、これ?」

 

ことりの鞄を開けた穂乃果は彼女の鞄の中に何かが入っていたらしく、ことりは慌てて鞄を閉じて背中に隠して笑って誤魔化す。

 

「ことりちゃん、どうしたの?」

「何でも無いのよ!」

「えっ、でも……」

「何でも無いのよ何でも!!」

 

凄く早口で言うことりの言葉に穂乃果は疑問に思いつつも特に追求することは無かったのだが……。

 

「まさかヤバいことでもしてるんじゃ……!?」

「それは神に誓っても絶対ないから安心して!」

 

と紅葉に心配されたが即座にことりに否定された。

 

「完成したら各部にチェックしてもらうようにするから、問題あったらその時に……」

 

希がそう穂乃果達に説明するがそれを聞いて穂乃果はその前に生徒会長が見たら……と不安になり、彼女は「困ります。 あなたのせいで音ノ木坂が怠け者の集団に見られてるのよ」なんて言われないか心配で思わず泣き出しそうになってしまう。

 

「あぁー、言いそう言いそう」

「まっ、そこは頑張って貰うとして……」

「えぇー!? 希先輩なんとかしてくれないんですか!?」

 

穂乃果彼女にそう尋ねると希は「そうしたいんやけど、残念ながらウチが出来るのは誰かを支えてあげることだけ」と答え、「支える?」と穂乃果は不思議そうな顔を浮かべる。

 

「まぁ、ウチの話はええやん。 次は……」

 

するとその時、部室の扉が開き、そこへ「ぜぇ、ぜぇ……!」と息を荒げたにこが入って来たのだ。

 

「取材が来るってホント?」

「もう来てますよ、ほら?」

 

ことりがにこにそう言うとにこは息を整えて走ったせいで乱れていた髪を整え、深呼吸をした後……彼女はビデオカメラに視線を向ける。

 

「にっこにっこに~♪ みんなも元気ににこにこに~の、矢澤にこでーす♪ えっ~とぉ~、好きな食べ物はぁ~」

「あっ、にこ先輩そう言うのは良いんで。 部活動の生徒たちの素顔に迫るって感じにしたいんだそうです」

 

紅葉からの説明を受けて少し残念そうにしつつも「あっー、オッケーオッケー! そっちのパターンね? ちょっと待ってね~」と机の下に隠れるにこ。

 

するとにこはツインテールを束ねてる髪のリボンを外して立ち上がると再び彼女はカメラに視線を向ける。

 

「何時も……何時もはこんな感じにしているんです。 アイドルの時のにこはもう1人の私、髪をキュッと留めた時にスイッチが入る感じで……。 あっ、そうです。 普段は自分のことをにこなんて呼ばないんです!」

 

という感じで先ほど紅葉から「生徒達の素顔に迫る」と説明されたにも関わらず思いっきりキャラを作るにこだったのだが……気づけば紅葉以外誰もいなくなっていたのだった。

 

「っていないしー!?」

「アレ!? なんで俺まで置いてけぼり!!? あっ、でもにこ先輩髪下ろすとなんか大人っぽかったです!! 幼児体型なのに!」

「ありがとう! でも最後の一言だけ余計!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、助けてぇ~」

 

続いて撮影が行われたのは花陽であり、カメラを向けられた花陽は苦笑しつつ誰かに助けを求める。

 

尚、紅葉はにこを置いてけぼりにして穂乃果達と合流し、今現在は「置いて行くなんて酷い……」と落ち込んでる紅葉を穂乃果が慰めているところだった。

 

「緊張しなくても平気だよー? 聞かれたことに答えてくれれば良いから!」

「編集するからどんなに時間がかかっても大丈夫やし!」

 

凛と希は花陽にそう説明するもののやはり緊張は解けず花陽は「で、でも!」と不安そうな表情を浮かべる。

 

「凛もいるから頑張ろう! 真姫ちゃんもこっち来るにゃ」

 

そう花陽は凛に応援され、凛は真姫の名前を呼んでカメラを彼女の方へと向ける。

 

「私はやらない」

 

しかし真姫は髪をクルクルさせながら興味なさそうな様子を見せ、それを見て凛は「もぉ~」と不満そうな声を漏らす。

 

「ええんよ? どうしても嫌なら無理にインタビューしなくても?」

 

希がそう言いながら視線を凛に向けると凛は首を傾げて希の言うことに疑問を持ちながらも彼女に指示された通りカメラを真姫に向けたままにする。

 

「真姫だけはインタビューに応じてくれなかった。 スクールアイドルから離れれば……ただの多感な15歳、これもまた自然の……」

 

と希が勝手にナレーションを流すスタイルを取り、それに気づいた真姫はムスっと怒った様子で希の元へと駆け寄る。

 

「なに勝手にナレーション被せてるの!!」

 

真姫は怒ってカメラの画面を手で隠し、結局真姫は「勝手にナレーションつけられるくらいなら」ということで花陽、凛と一緒に取材を受けることになったのだった。

 

「流石、希先輩策士だな……。 ツンデレの扱いを心得てる……」

「ツンデレの扱いの心得ってなに……?」

「穂乃果は知らなくて良いんだよ? 兎に角はいカメラ」

 

穂乃果は首を傾げるが紅葉は取りあえず穂乃果にカメラを渡して1年組3人の取材をするように指示し、穂乃果は「了解!」とビシっと敬礼して1年組にカメラを向けて撮影を始める。

 

「先ず、アイドルの魅力について聞いてみたいと思います。 では、花陽さんから」

 

穂乃果はカメラを花陽にアップさせ、花陽はカメラを向けられて「え、えっと、あの! そのぉ~」と言葉を詰まらせるのだがそこで凛がすかさずフォローを入れる。

 

「かよちんは昔からアイドル好きだったんだよね!」

 

そのことを振られた花陽は「はい!!」と元気よく答える。

 

「それでスクールアイドルに?」

 

しかし次に希にそう質問されると「えっとぉ~」とまたもや言葉に詰まってしまうのだが……突然彼女は両手で口元を押さえて笑い出したのだ。

 

「ちょっと止めて!!」

 

そこで何かに気づいた真姫がカメラを止めに入る。

 

「いやぁ~、緊張してるみたいだからほぐそうかなと思って?」

「ことり先輩も……!」

「頑張っているかね?」

 

花陽が笑ったのはカメラを持っている穂乃果が唇を尖らせて変顔をしていたのとことりがひょっとこのお面つけていたせいであり、真姫の後ろで凛と花陽は大笑いしていた。

 

「全くー! これじゃμ'sがドンドン誤解されるわ!!」

「おぉー! 真姫ちゃんがμ'sの心配してくれた!」

 

穂乃果はμ'sのことを心配してくれる真姫に感激したような顔を浮かべるが真姫は顔を真っ赤にして否定しようとする。

 

「べ、別に……私は……!」

 

と見事なツンデレを発揮する真姫。

 

「真姫ちゃんのナイスツンデレ映像を取り逃がすな穂乃果!!」

 

紅葉が穂乃果に耳打ちし、彼女は「OK!!」と真姫にジッと近づいて彼女のツンデレっぷりを撮影するがすぐに真姫はそれに気づく。

 

「あっ、撮らないで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、今まで撮った動画を確認していたのだが……。

 

「でも、確かにここまで撮った分だとちょっとねー」

 

今見返してみると凛は何か思うところがあるらしく、希から見てもだらけているというか遊んでいるように見えてしまうと言われてしまったのだ。

 

「でもまぁ、スクールアイドルの活動の本番は練習やろ?」

「そうだね! よぉーし!! それじゃみんな、気合い入れて行こう!!」

 

ということで今度は全員屋上に上がってダンスの練習を行うこととなり、ダンスの練習は海未と紅葉が取り仕切って行われ、その練習風景を見ながら希は自分のナレーションをカメラを回しながら被せる。

 

「かれこれ1時間、ぶっ通しでダンスを続けてやっと休憩、全員息があがっているが文句を言う者はいない」

 

そこで真姫が休憩時間中に「どう?」と希に練習の感想を聞きに訪れて来る。

 

「流石に練習だと迫力が違うね! やる事はやってるって感じやね」

 

希にそう感想を述べられ、真姫も「まぁね!」と強く答える。

 

しかし希はそこで1つ疑問に思ったことがあった。

 

それは練習は普通はリーダーが指揮するものなのではないかということであり、疑問に思ったことを彼女は真姫に尋ねると真姫は「それは……」と言いつつ穂乃果達の方を見る。

 

「イメトレ、きちんとやっておいてくださいね?」

 

そこでは海未が丁度みんなに指示しているところであり、そこだけを見ると穂乃果ではなくまるで海未がリーダーのようにも見えていた。

 

それから練習を終え、穂乃果、紅葉は家に帰ることになったのだが……希と凛もμ'sの日常生活なども少し紹介したいということで高坂家にお邪魔することになったのだった。

 

「じゃあ先に妹紹介するね? 雪穂いる~?」

 

穂乃果は雪穂に声をかけて扉を開けるとそこには必死にズボンのベルトをなるべく奥まで締めようとしている雪穂の姿があった。

 

「後もう少し~! こんのぉ~!!」

 

それを見た穂乃果はそっと扉を閉めた。

 

「なんか、デジャヴ……!」

 

それから希は3人から話を聞こうと一同は取りあえずは穂乃果の部屋に集まることに。

 

「ここはみんな集まったりするの?」

「うん、ことり先輩や海未先輩は何時も来てるみたいだよ! おやつも出るし!」

 

最初に希が質問をするとそれに凛が答える。

 

「あはは、和菓子ばっかりだけど」

「宇宙一美味い和菓子な」

「ホントにお兄ちゃんはおまんじゅうとか飽きないよね……」

 

苦笑する穂乃果に対しそう自慢げに言い放つ紅葉、そんな彼に穂乃果は呆れたような視線を向ける。

 

するとそこで希が「歌詞ノート」と書かれたノートを発見し、それを手に取る。

 

「あぁ、成程。 これで歌詞を書いたりするんやね?」

「うん! 海未ちゃんが!」

 

希の疑問に穂乃果がそう答えると彼女は「えっ?」と不思議そうに首を傾げた。

 

「歌詞は大体、海未先輩が考えるんだ~。 そんで紅葉先輩は歌詞のネタとか探してるらしいよ!」

「じゃあ新しいステップ考えたりするのは?」

「それは何時もことりちゃんが! お兄ちゃんもちょっと手伝ってるね! ことりちゃんの衣装作りの手伝いとか!」

 

海未は歌詞、ことりはステップ、紅葉はそんな2人の手伝い。

 

ならば穂乃果を何をしているのかと希が聞くと……穂乃果が言うには何時もご飯食べて、テレビ見て、他のアイドル見て凄いなーって思ったりしていてそれでいて勿論、3人の応援もしているのだと楽しげに話したのだが……。

 

「それだけ?」

「えっ? 応援してくれるだけで十分じゃね?」

「いや、どこがにゃ!?」

 

紅葉の言葉に即座に凛がツッコミを入れる。

 

「ウチ、前から思ってたんやけど……穂乃果ちゃんってどうしてμ'sのリーダーなん?」

「穂乃果はほら、戦隊でいうところのレッドだから……」

「えっ、それ説明になっとる……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日……アイドル研究部の部室にて……。

 

「リーダーには誰が相応しいか、大体私が部長についた時点で一度考え直すべきだったのよ」

「私は、穂乃果ちゃんが良いけど……」

「激しく同意」

 

ことりと紅葉はあくまで穂乃果をリーダーとして押すのだが、にこからは「ダメよ!」と却下されてしまい、今回の取材で穂乃果はまるで向いていないということでにこは新たなリーダーを決めることにし、それには真姫も賛成だった。

 

「そうと決まれば早く決めた方が良いわね? PVだってあるし」

「PV?」

「リーダーが変われば必然的にセンターだって変わるでしょ?」

 

海未の疑問ににこがそう答え、彼女は次のPVは新リーダーがセンターになるべきだと主張してきたのだ。

 

「でも誰が?」

 

花陽が疑問を口にするとにこは椅子から立ち上がって後ろにあったホワイトボードをヒックリ返すとそこにはにこが書いたと思われる3つのことがいつの間にか書かれていた。

 

「先ずリーダーとは誰よりも熱い情熱を持ってみんなを引っ張っていけること!! 次に精神的に支柱になれるだけの懐の大きさを持った人間であること!! そして何よりメンバーから尊敬される存在であること!! この条件を全て備えたメンバーとなると……!!」

「海未先輩かにゃ?」

 

にこの出した条件に当て嵌まるのが海未ではないかと凛が言うとにこは「なんでやねーん!!」とツッコミを入れる。

 

(リーダーになりたいならなりたいって言えば良いのに……)

 

にこの出した条件を聞いて紅葉はにこが明らかにリーダーになりたがってることを見抜くが……口にしたら「べ、別にそういう訳じゃないけど!? でもまぁ、どうしてもって言うならぁ~?」とか言って面倒くさいことになりそうな気がしたので敢えて言葉にはしなかった。

 

「私が!?」

「そうだよ海未ちゃん! 向いてるかもリーダー!」

 

穂乃果からも海未はリーダーに向いてるかもしれないと言われるのだが……海未はリーダーの座を奪われようとしているにも関わらず全く危機感を抱いていない穂乃果にそれで良いのかと問い詰めるのだが……当の穂乃果はキョトンっとした顔を浮かべていた。

 

「ふえ? それが?」

「……何も感じないのですか?」

「だってみんなでμ'sをやっていくのは一緒でしょ?」

 

どうやら穂乃果はリーダーのポジションにはあんまり拘りなどは無いらしい。

 

「でもセンターじゃなくなるかもですよ!?」

 

そこで花陽にそう言われてそれを聞いた穂乃果は「おー! そうか!」と手をポンっと叩いて少しだけ考え込むが……。

 

「まぁ、良いか♪」

 

とあっさりとリーダーの変更を承諾し、それを聞いてみんなは「えぇー!!?」と驚きの声をあげる。

 

「ほら、やっぱりなんか最近の戦隊のレッドみたいなこと言ってるし穂乃果がリーダーってことで……」

「却下」

 

紅葉はやはりリーダーに穂乃果を押すが又もや即座ににこに却下された。

 

「じゃあリーダーは海未ちゃんということにして!」

「ま、待ってください……! 無理です……!」

 

恥ずかしがり屋の海未は顔を赤くして自分にリーダーは無理だと言い、それに真姫は「面倒な人……」と少し呆れるように呟く。

 

「じゃあことり先輩?」

 

海未がダメならことりでどうかと花陽は思ったのだが……凛曰く「どちらかと言うと副リーダーって感じだね」ということでことりもあまりリーダーに向いていなさそうだった。

 

だからと言って1年生がリーダーという訳にも行かず誰がリーダーか悩んでいると……。

 

「仕方ないわねー」

 

そこでにこがやれやれという感じで言うのだが……みんなにこをスルー。

 

「やっぱり、穂乃果ちゃんが良いと思うけど……」

「俺もそう思う」

「仕方ないわねー」

 

紅葉とことりはやはり2人揃って穂乃果を押し、そして又もやみんなにこをスルー。

 

「私は海未先輩を説得した方が良いと思うけど!」

「仕方ないわねー!」

 

しかし真姫は海未がリーダーになるべきだと言い、そしてにこの言葉をまたまたみんなでスルー。

 

「と、投票が良いんじゃないかなー?」

『しーかーたーなーいーわーねー!!!!』

 

花陽は投票制ならどうかと意見を出し、遂にメガホンを取り出して叫ぶにこをまたまたまたみんなでスルー。

 

「にこ先輩、うっさいです」

「えっ? あ、うん……ごめん」

 

ただ1人だけ紅葉が反応してくれたが。

 

そしてそれに思わず謝るにこ。

 

「で、どうするにゃ?」

「どうしよう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……一同はカラオケへと行くことになり……。

 

「分かったわよ、じゃあ……歌とダンスで決着をつけようじゃない!!」

「決着……?」

「ケッチャコ……」

「オンドゥルやめい」

 

つまり、にこが言うには1番歌とダンスが上手い者がセンターということで決着をつけようということなのだが海未は自信無さそうにしており、真姫も特に歌う気はしないということであまりやる気が無かった。

 

「なら歌わなくて結構、リーダーの権利が消失するだけだから!」

 

するとにこは不意にしゃがみ込んでメモ帳を取り出し、「フッフッフ」と怪しい笑みを浮かべる。

 

「こんなこともあろうかと高得点の出やすい曲のピックアップは既に完了している、これでリーダーの座は確実に……!」

(流石にこ先輩、姑息な手を……)

 

そしてにこはにこは勢いよく立ち上がり、カラオケ開始の宣伝を行う。

 

「さぁ、始めるわ!!」

 

のだが……みんな「なに歌うにゃー?」や「カラオケ久しぶり~!」等と話していて普通に楽しんでいた。

 

「アンタ等緊張感なさ過ぎー!!」

 

それから紅葉込みで全員が歌い終わったのだが……全員90点以上は必ず叩きだしており、紅葉に至ってはなんと100点満点だった。

 

「こいつ等……化け物か……!? てかなんでマネージャーのアンタが最高点出してんのよ!!?」

 

だからと言ってマネージャーがリーダーというのも変なので紅葉がリーダーになるようなことはなく、次はゲームセンターでダンスゲームを行うことになったのだが……。

 

「ことりちゃん、もうちょっと右!! あっ、お兄ちゃんはもうちょっと左だね!!」

 

ことりと紅葉はクレーンゲームで遊んでおり、穂乃果と凛はそんな2人のプレイを応援し、紅葉はゲームで取ったうさぎのぬいぐるみを穂乃果の頭に乗せて遊んだりしていた。

 

「だから緊張感持ってって言ってるでしょー!?」

「凛は運動は得意だけどダンスは苦手だからなぁ~」

「こ、これどうやるんだろう?」

 

凛と花陽はダンスゲームを見てそれの使い方がよく分からず困惑しており、にこは「プレイ経験0の素人が挑んでまともな点数が出るわけないわ! クックッ……」と黒い笑みを浮かべていたが気づいた時にはいつの間にか凛がアッサリとゲームをクリアしている姿があったのだった。

 

「なんか出来ちゃった♪」

「……えっ?」

 

そして全員プレイし終わると又もや紅葉以外の全員90点以上の高得点を叩きだしており、中々決着がつかなかったのだった。

 

ちなみに紅葉は先ほどのカラオケと違い0点であり、それに落ち込んだ紅葉は膝を抱えて落ち込んでいた。

 

穂乃果はそんな紅葉に「お兄ちゃん元気出して!」と励ましつつ彼の頭にうさぎのぬいぐるみを置いて遊んでる。

 

「ぐっ、こうなったら……!」

 

そして次の対決は歌と踊りで決着がつかなかった以上最後はアイドルとして1番必要と言っても過言ではないものとして「オーラで勝負!」ということになり、にこが言うには歌も下手、ダンスもイマイチ、でもなぜか人を惹きつけるアイドルがいる。

 

それは即ち「オーラ」であり、人を惹きつけてやまない何かを持っている人を競おうということでμ'sのチラシ配りを全員で行うことに。

 

「オーラがあれば黙っていても人は寄ってくるもの!! 1時間で1番多くのチラシを配り終えた者が1番オーラがあるってことよ!」

 

それを聞いてことりは流石に「今回はちょっと強引なようなー……?」と思うが穂乃果は「でも面白いからやろうよ!!」とやる気を出す。

 

「今度こそ……! チラシ配りは得意中の得意、このにこスマイルで……!」

(後ろ向いてよく分かんないけどきっと黒い笑み浮かべてるんだろうなー、にこ先輩)

 

それからチラシ配りを今回は紅葉を抜いた9人で行うことになり、にこは「にっこにっこに~! これお願いするニコ~♪」と得意(?)のキャラ作りをしてチラシを通りかかった男性に渡すのだが……。

 

男性は受け取らずスルー……しようとし、男性はにこにガッチリと腕を掴まれ、無理矢理チラシを渡されることに。

 

「ぐぐ……! にこ♡」

(……にこ先輩ェ……)

 

それから紅葉は頑張ってるみんなにジュースでも奢ろうかと思い海未にみんなのジュースを買ってくることだけを伝えてその場から一度離れる。

 

「お願いしまーす!」

「あ、あの……すいません!」

 

チラシを配っていると不意に穂乃果にセーラー服を着た女子高生が彼女へと話しかけ、穂乃果は「はい?」と首を傾げる。

 

「あ、あのμ'sの高坂 穂乃果さんですよね!? わ、私大ファンなんです!! 良ければ握手を……」

「えぇ!? ホントに!!? 勿論お安いご用だよ!! いやぁ、こんなの初めてだけど嬉しいものだねぇ……!」

 

穂乃果は自分の手を拭いて差し出された女子高生の手を握って握手をするのだが……その瞬間、穂乃果は手が「ビリッ」と痺れ、彼女は「痛っ!?」と小さく呟いた後、突然気を失って女子高生の方へと倒れ込んだのだ。

 

「穂乃果さん、大丈夫ですか……?」

 

女子高生は周りのμ'sのみんながチラシ配りに集中しているのを確認した後、女子高生は「ニヤリ」とした笑みを浮かべて一瞬で穂乃果と一緒にその場から姿を消し去るのだった。

 

その後、チラシ配りはことりがアッサリといの1番に全て配り終わっていたのだった。

 

「ことり先輩すごい……! 全部配ったんですか!?」

 

花陽が驚きながら感心し、それに少し戸惑いつつもことりは「う、うん」と頷く。

 

「なんか気づいたら無くなってて……」

「おかしい……!! 時代が変わったの!?」

 

そしてにこはこの結果に涙目になっていた。

 

「ズル賢い手を使った罰です、にこ先輩……クフフ……」

「笑ってんじゃないわよ!!」

「ってみんな? 穂乃果はどうしたんだ?」

 

紅葉にそう言われて一同はそこで穂乃果がいつの間にか消え去っていることに気づき、みんなは辺りを見回すのだが……やはり彼女の姿は確認できなかった。

 

「全く穂乃果はどこほつき歩いてるんだか……」

 

海未が呆れたような顔を浮かべているとその時、紅葉の持っていたスマホに着信が入り、海未達にと断ってからスマホを取り出すと画面には「非通知着信」と書かれていた。

 

それに紅葉は戸惑いつつも電話に出てみる。

 

『ヌフフフ! 貴様、高坂 紅葉だな?  貴様の大切な女……高坂 穂乃果と言ったかな? そいつを預かった。 助けに来たくば俺の言う場所へと来い!!』

「お前……分かった、それでどこに行けば良い?」

 

電話の声を聞き、紅葉は険しい表情を一瞬浮かべるがすぐにそれをやめ、彼は海未達に勘付かれないように口調をなるべく落ち着いたものにして電話先の相手のいる場所を尋ねる。

 

「悪い、なんか穂乃果いつの間にかみんなとはぐれたらしくて……迎えに行ってくる」

 

その後、その人物は電話を切り、紅葉はみんなに穂乃果を迎えに行くことを伝える。

 

「全く穂乃果は……。 私も行きましょうか?」

「いや、俺1人で良い……。 じゃあ行ってくるから!」

 

紅葉は海未達にそれだけを言い残してその場を立ち去り、彼は電話先の相手が指定した場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……今はもう使われていない工場のような建物の地下にて……。

 

そこでは女子高生に化けていた宇宙人……「変身怪人 ゼットン星人マドック」が正体を現して穂乃果を鎖を使って柱に縛り付けて拘束していた。

 

「あ、あなたもしかして宇宙人!? っていうか何するの!? やめて離してよ!!」

 

穂乃果はマドックを見て初めて生で見る宇宙人に驚いたが、それ以上に自分をこんな目に合わせるマドックに怒ってジタバタして暴れる。

 

だが、マドックは「そうだ!! 暴れろ!!」と逆に穂乃果をもっと暴れさせようとし、それに穂乃果は「えっ?」となってしまう。

 

『餌は活きが良いほど食いつきがよくなるからなぁ……。 暴れろ!!』

「餌って……なに?」

『フン、さぁ~? なにかなぁ~? 兎に角、お前は暴れてくれさえすれば良いんだよ!!』

 

マドックはそう言って突然彼女の目の前で着ていたセーラー服を脱ぎ始め、それに穂乃果はギョッとした表情になるがマドックは気にせず足下に置いてあったケースを開いてその中にあった黒い衣服を取り出して素早くそれに着替える。

 

尚、マドックの生着替えを見せつけられた穂乃果の顔は青ざめており……彼女は「トラウマになりそう……」と思ってしまうのだった。

 

『あん? なに見てんだ? お前は暴れてくれれば良いんだよ、助けを求めろ!!』

「こ、こんなところで叫んでも助けなんて来る訳ないじゃん!!」

 

穂乃果はマドックの言葉にそう反論するが……。

 

『普通の人間にはそうかもな』

 

とマドックは小さく呟く。

 

『他の人間に聞こえなくても奴には聞こえるさ』

 

そう答えるマドックの言葉に穂乃果は意味が分からず首を傾げる。

 

「奴って誰……?」

『すぐに分かる。 近くに来れば確実に真っ直ぐここに来る筈だ。 さぁ、泣き叫んで餌を釣れ!!』

 

するとそのマドックの言葉を合図にしたかのように薄暗い部屋の奥から縮小された状態の怪獣……両腕が鎌になっている「宇宙恐竜 ハイパーゼットンデスサイス」が出現し、ハイパーゼットンは左手の鎌を穂乃果の目の前で振り下ろし、地面に突き刺す。

 

「ひぃ……!? い、いや……助けて……助けてお兄ちゃん……!!」

 

その時……。

 

『~♪ ~♪』

「っ、このメロディー……!」

 

ハイパーゼットンの姿を見て穂乃果は恐怖心にかられ、涙を浮かべるが……。

 

その時、穂乃果の耳に聞き覚えのあるメロディーが聞こえ、それに気づいたマドックは慌てて後ろを振り返ると出入り口の方にオーブニカを吹く紅葉の姿があった。

 

「お、お兄ちゃん……!!」

『クフフ……! 餌が食いつきやがった!』

「えっ……?」

 

穂乃果はマドックの今言った「餌」という言葉を聞いて頭に疑問符を浮かべたが……その疑問を遮るようにマドックは笑い声をあげながら光線銃をどこからか取り出す。

 

マドックは光弾を紅葉に向かって何発も発射……しかし紅葉はそれらを全て避けながら一気にマドックに詰め寄り、光線銃を蹴り上げて光線銃を手放し、紅葉から強烈な勢いの拳を連続で叩き込まれて吹き飛ばされてしまう。

 

『ぐあああああ!!!?』

 

その隙に紅葉は穂乃果を拘束している鎖を取り外し、彼女を解放する。

 

「待たせたな、穂乃果……」

 

紅葉は穂乃果に笑みを向けながら彼女の頭を撫で……穂乃果は「グスッ」と目尻に涙を浮かべると……次の瞬間には泣き出してしまい彼女は紅葉へと抱きついたのだ。

 

「うわああああん!! お兄ちゃぁ~ん!! 怖かったよぉ~!!」

「っ!! 危ない!!」

 

その時、ハイパーゼットンが振るってきた鎌を紅葉は穂乃果を抱きかかえてどうにか躱し、彼女を降ろしてそのまま2人で逃げようとするのだが……。

 

その直後にハイパーゼットンの放った火球が2人に襲いかかり、紅葉は穂乃果を突き飛ばして変わりに火球を受け止めたのだ。

 

最も、幸い吹き飛ばされたものの腕が掠った程度で済んだが……。

 

「お兄ちゃん!!?」

「ぐっ……! 大丈夫だ、掠った程度だからな。 それより隠れろ!!」

 

紅葉は穂乃果と一緒に物陰に隠れ、穂乃果は掠った程度とは言え紅葉が腕に怪我をしてしまったことに責任を感じ、彼女は「ごめんなさい……! ごめんなさい……!!」と泣きじゃくってしまう。

 

紅葉は先ほどと同じように彼女の頭を撫でて笑みを見せる。

 

「大丈夫って言っただろ?」

『高坂 紅葉、お前のことは既に全て調査済みだ。 どうしても助けに行きたくなる大事な女がいる……ということもなぁ?』

「まぁ、あながち間違ってないな……。 大事な妹だし、危なっかしいところもあるし、放っておける訳ないな」

「うぅ、なんか恥ずかしいよぅ……」

 

穂乃果はマドックと紅葉の言葉に顔を赤くする。

 

「恥ずかしがってる場合か!」

 

しかしすぐに穂乃果はそう怒られてしまい、腕を引かれて一緒にこの場から出ようとするのだが……。

 

しかし、そこでハイパーゼットンが火球を放ち、2人はどうにか避けたものの地面に直撃した際の爆風で吹き飛ばされ……2人は地面に倒れ込んでしまう。

 

「うあっ……!? 大丈夫か穂乃果!?」

「う、うん……! でも私ももう怒ったよ!! お兄ちゃんのことも傷つけて!!」

「えっ?」

 

すると穂乃果は立ち上がるとなんと彼女はマドックに向かって駈け出して行き、そのことにマドックは驚いて対応しきれず……彼女の勢いよく放たれたドロップキックがマドックの胸部に直撃。

 

マドックは大きく蹴り飛ばされる。

 

『ぐおっ……!!? こいつ! でもなんか今……ピンクのものが見えた気が……』

「ピンク……? ッ!!?」

 

マドックのその言葉に穂乃果は顔を真っ赤にしてスカートを押さえ、それを聞いて紅葉は額に青筋を浮かべる。

 

「あの野郎……! なに穂乃果の下着見てくれてんだ……!! って言いたいところだが今は逃げるのが先決だ!! 穂乃果!!」

「うわわっ!?」

 

紅葉はマガグランドキングの時のように穂乃果をお姫様抱っこして抱きかかえ、素早く出入り口に向かって駈け出しす。

 

マドックはハイパーゼットンに向かって巨大化して紅葉を倒すように指示を出し、ハイパーゼットンは命令通りに巨大化する。

 

『ゼッ……トン!!』

 

ハイパーゼットンは建物の外に逃げ出した紅葉と穂乃果に向かって火球を放ち、直撃こそしなかったもののその爆風によって2人は又もや吹き飛ばされてしまう。

 

その衝撃で穂乃果は地面に倒れ込んだ際に気を失ってしまい、紅葉は慌てて穂乃果の身体を揺さぶる。

 

「おい穂乃果!! 穂乃果!! 気を失ってるだけか……。 待ってろ、すぐにあいつを倒して来るからな」

 

それから紅葉はハイパーゼットンに見つからぬよう穂乃果を抱きかかえて物陰に隠れつつ移動し、安全そうな場所を見つけて彼女をその場に降ろす。

 

そして紅葉はオーブリングを取り出して1枚のカードをカードホルダーから抜き取る。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

最初に紅葉は「ウルトラマン」のカードをオーブリングにリードさせ、続いて「ウルトラマンティガ」のカードをオーブリングにリードして読み込ませる。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ!』

 

その後、紅葉はオーブリングを掲げるとオーブリングの左右が展開される。

 

「光の力……お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

そしてウルトラマンとティガの姿が紅葉の姿と重なり合い、紅葉は「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身を完了させた。

 

変身完了と同時に光の光輪……「スペリオン光輪」をハイパーゼットンに繰り出すが……ハイパーゼットンはそれを鎌で引っかけて受け止め、それを地面に叩き落とされてしまう。

 

『ッ!』

 

オーブは「スカイタイプ」の力で高速でハイパーゼットンに詰め寄り、そのまま「パワータイプ」の力で拳を振るうのだが……ハイパーゼットンはテレポートで攻撃を回避し、オーブの背後に回り込むと火球をオーブに連射して放つ。

 

『スペリオンシールド!』

 

だがオーブは即座に振り返って両手を広げて円形のバリアである「スペリオンシールド」で攻撃を防ぐのだが……。

 

又もやハイパーゼットンはテレポートで瞬時にオーブの背後に回り込み、火球を連射して発射……今度はバリアも間に合わず、オーブは諸に火球による攻撃を受けてしまう。

 

『グウウ!!?』

 

また戦いの様子を見ていたマドックは攻撃を受けて倒れ込んだオーブを見て勝ち誇ったような笑い声をあげる。

 

『フハハハハ!! お前の力は調査済みだ!! お前にハイパーゼットンデスサイスは倒せない!!』

『成程、確かにそれなら厄介そうだ。 だが……! だったら……まだ使ったことのない力を使うまでだ!!』

 

すると紅葉は新たに1枚のカード……「ウルトラセブン」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『セブンさん!!』

『ウルトラセブン!』

 

さらに紅葉はそれとは別に「ウルトラマンゼロ」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『ゼロさん!!』

『ウルトラマンゼロ!』

 

それから紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『親子の力……お借りします!!』

『フュージョンアップ!』

 

すると「ウルトラセブン」と「ウルトラマンゼロ」の2人の姿が紅葉と重なり合い、オーブはセブンとゼロの力を融合させた「エメリウムスラッガー」へと姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! エメリウムスラッガー!』

『智勇双全、光となりて!!』

 

そしてそれを見て驚きの声をあげるマドック。

 

『まだそんな姿を……! 貴様! 一体幾つ色んな姿を持ってるんだ!?』

『えっ? えーっと、スペシウムゼペリオンにスカイダッシュマックス、バーンマイト……ああもう数えきれるか!!』

 

挿入歌「オーブの祈り」

 

それからオーブは頭部の中央にあるブーメラン型の武器「アイスラッガー」とその左右にある「オーブスラッガー」を相手に向かって飛ばして斬りつける「オーブスラッガーショット」をハイパーゼットンへと放つ。

 

だがハイパーゼットンはそれもテレポートで回避し、放ったオーブスラッガーショットは地面の中に潜り込む形で空振りに終わってしまう。

 

そしてハイパーゼットンはオーブのすぐ後ろに現れて両腕の鎌を振り下ろすが……。

 

突如地面から3つのスラッガーが飛び出してハイパーゼットンの身体を斬りつけ、オーブはオーブスラッガーを戻しジャンプしてアイスラッガーを手に取るとそのまますれ違いざまにハイパーゼットンを斬りつける。

 

『ゼットン……!!』

 

ハイパーゼットンは攻撃を受けて大地に降り立ち、膝を突くがどうにか立ち上がり火球をオーブに向かって放つ。

 

オーブも両腕を額に添えてエネルギーを貯めた後、右腕を胸元に当てながら額のクリスタルから放つ緑色の光線「トリプルエメリウム光線」を発射。

 

『トリプルエメリウム光線!!』

 

互いの技がぶつかり合い、中央で激しい爆発が起きる。

 

しかしオーブは爆発の中から飛び出してアイスラッガーをハイパーゼットンに向かって振り下ろし、ハイパーゼットンは両腕の鎌を交差してアイスラッガーを受け止める。

 

そのままどうにか押し返したハイパーゼットンはそれと同時に火球を連射……それを喰らってオーブは大きく吹き飛ばされるがフラフラとしつつもすぐに立ち上がる。

 

それを見てハイパーゼットンは再び火球を連射するのだが……。

 

『ファイトだ!! 俺!!』

 

気合いを入れたオーブはアイスラッガーで火球を切り裂きながらハイパーゼットンに接近。

 

一気に詰め寄るとハイパーゼットンの身体をアイスラッガーで滅多斬りに攻撃し、ハイパーゼットンの身体から火花が散る。

 

『ピポポポ……!?』

『ハアアアア、シュア!!』

 

さらにそのまま拳を何発も叩き込んだ後、ハイパーゼットンに回し蹴りを喰らわせ、もう1度蹴りを繰り出そうとする。

 

しかしハイパーゼットンはテレポートで姿を消し、オーブは辺りを警戒する。

 

すると目の前にハイパーゼットンがオーブに跳び蹴りを放った状態で現れ、オーブはそれを喰らってたじろくが……オーブスラッガーショットと空中に静止させたアイスラッガーを打ち出す「超ウルトラノック戦法」をハイパーゼットンに繰り出す。

 

『超ウルトラノック戦法だ!!』

 

それにハイパーゼットンは「ハイパーゼットンバリヤー」で周囲にバリアを張り巡らせて攻撃を防ぐのだが……オーブは高く跳び上がるとそのままバリアが張られていない頭上にから跳び蹴りをハイパーゼットンに叩き込み、ハイパーゼットンはそれを喰らうとバリアも無くなりフラつきながら後退する。

 

『今だ!! ワイドスラッガーショット!!』

 

ハイパーゼットンがバランスを崩した隙を狙い、オーブは両腕をL字に組んで放つ必殺光線「ワイドスラッガーショット」をハイパーゼットンに向かって発射……。

 

それによる直撃を受けたハイパーゼットンは身体中から火花を散らし……倒れて爆発したのだった。

 

『昔の俺の戦闘データなんざ使ったところで……俺に勝とうなんざ2万年早いぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、オーブから人間の姿に戻った紅葉は残ったマドックとも戦闘を繰り広げていた。

 

紅葉はマドックの振るう拳を全て受け流しながらカウンターで的確に拳を叩き込み、マドックは一度距離を取ろうとするのだが……紅葉はそれを許さずマドックの腕を掴んで引き寄せ、膝蹴りを叩きこむ。

 

『ぐおっ……!? おのれぇ……!!』

 

尚もマドックは跳び蹴りを紅葉に繰り出すが紅葉はそれを回避し、回り込んでマドックの背中に蹴りを叩きこむ。

 

するとマドックは振り返りざまに光線銃を取り出して光弾を紅葉に向かって放つのだが……紅葉は「ウルトラマン」のカードを取り出すとカードからバリアが発生し、光弾を跳ね返したのだ。

 

跳ね返された光弾はマドックに直撃し、マドックは吹き飛ばされて地面へと倒れ込む。

 

『ぐああああ!!?』

 

倒れ込んだマドックはそれが致命傷となったのか、起き上がる気配は無く……紅葉はマドックに近寄ると「お前、一体なにが目的だったんだ?」と彼の目的が何だったのかを問いかける。

 

「お前も地球侵略が目的か?」

『フッ、こんな腐りかけの星……侵略する価値なんかない。 ノストラみたいな物好きの気が知れないな……。 ぐっ、ただ……俺、は……。 お前を倒せ、ば……俺の名が、あがったから……な……』

 

つまりはマドックの狙いは地球侵略などではなく、ただ単に「ウルトラマンオーブを倒したかっただけ」という理由だったのだ。

 

それを聞いて紅葉は「俺を倒すためだけにか?」と尋ねるとマドックは「それ以外に理由などない」と答えた。

 

『だから、あの女を……餌に、したんだ……。 ずっと観察していた……。 あの女……一体何が特別、なんだ……?』

「別に、ただ大事な妹ってだけだ」

『確かに、そのようだが……。 お前と、あの女は本ら……い……』

 

そこまで言いかけてマドックは遂に力尽き、マドックの身体は泡となって消え去ったのだった。

 

「腐りかけの星……かっ。 だが、俺は自分の散らかした部屋をしっかりと片付けられる人間が1人でもいる限り……決してこの星は腐ったりなんかしない……。 そう思ってる」

 

それだけを言い残すと紅葉はその場から去って行き、穂乃果の元へと戻ると紅葉は彼女を背中におぶって海未達のところへと戻るのだった。

 

その後はただでさえ穂乃果が勝手にいなくなったことに海未にガミガミ言われそうだからということでマドック達のことは海未達に伏せることになり、新リーダーの話は後日改めることにしてその日は解散することになったのだった。

 

「いやぁ、大変な目に会っちゃったね~、お兄ちゃん……」

「ホントになぁ~」

 

とその後は先ほどまでハイパーゼットンと激戦が繰り広げられていたとは思えないほどグデーっと家の居間でのんびり寝転がってくつろぐ穂乃果と紅葉。

 

そんな2人を見て雪穂は「だらしない……」と呆れた視線を向ける。

 

「んっ? なんだこれ?」

 

するとテーブルの上に何か置いてあることに気づいた紅葉はそれを手に取って興味深そうに見つめる。

 

「あっ、それマトリョーシカってやつだね。 お母さんが物置の整理してたら出てきたんだって」

「マトリョーシカ……ねっ」

 

紅葉は雪穂の話を聞きながらマトリョーシカを開け始める。

 

「なんか、それお兄ちゃんっぽいよね」

「俺に?」

「うん、幾つもの別のお兄ちゃんが、お兄ちゃんの中に隠れてる感じ」

 

穂乃果のその言葉に紅葉は「そんなこと、あるのか?」と疑問に思う。

 

「だって、お兄ちゃんには私の知らないところとか、色々ある気がして……」

「……でも、最後の1つを開けて見れば結局、空っぽだって分かるさ……」

 

少し、どこか悲しげな様子で紅葉は最後のマトリョーシカを開けようとしたのだが……穂乃果はその手を掴んでマトリョーシカを開けようとするのをやめさせる。

 

「ダメだよお兄ちゃん! マトリョーシカの最後って確か開けたらダメなんだよ!」

「……あぁ、そう言えば、そんな話、聞いたことあるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、部室に集まった一同は早速新リーダーの話になることになり、ことりがみんなの採点結果を報告していた。

 

結果はダンスの点数が悪い花陽は歌の点数がよく、カラオケの点数が悪かったことりはチラシ配りの点数がよく、結局みんなほぼ同点ということになり決着はつかなかったのだ。

 

「結局、みんな同じってことなんだね?」

「にこ先輩も流石です。 みんなより全然練習してないのに同じ点数なんて~」

「あ、当たり前でしょ……」

 

と言葉は強気なのだがそんなにこの顔は引き攣っており、声は震えていた。

 

「でもどうするの? これじゃ決まらないわよ?」

「う、うん、でも……やっぱりリーダーは上級生の方が……」

 

真姫と花陽の言葉を聞いてにこは「仕方ないわねー」と昨日と同じようにやれやれと言った感じで言うのだが……。

 

それを遮るように凛が「凛もそう思うにゃー」と花陽に賛同し、真姫は「そもそも私はやる気ないし」と呟いていた。

 

「アンタ達ブレないわね……」

「じゃあ良いんじゃ無いかな? 無くても……?」

 

すると突然穂乃果がそんなことを言いだし、それを聞いて穂乃果以外のメンバーは「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「うん、リーダー無しでも全然平気だと思うよ? みんなそれで練習してきて歌も歌って来たんだし」

「確かに、今まで通りにやれば案外問題は大してないようにも思えるな」

 

穂乃果の意見に紅葉も賛同し、穂乃果は「だよね!」と紅葉が賛同してくれたことに嬉しそうにする。

 

「ってリーダー無しなんてグループ聞いたことないわよ!?」

「大体、センターはどうするの?」

 

そしてそんな真姫の問いかけに穂乃果はそれについて何か考えがあるようだった。

 

「それなんだけど、私……考えたんだ! みんなで歌うって……どうかな?」

 

そんな穂乃果の言葉ににこは「みんな?」と首を傾げる。

 

「家でアイドルとかの動画とか見ながら思ったんだ! なんかね、みんなで順番に歌えたら素敵だな~って! そんな曲、作れないかなって?」

「成程ね、穂乃果らしい提案だな……」

 

そこで花陽が「順番に?」と尋ねると穂乃果は「そうだよ!」と頷きく。

 

「無理かな?」

「まぁ、歌は作れなくはないですけど……」

 

穂乃果は海未に聞いてみると彼女は少し考えた後、作れなくはないと答えたのだ。

 

「そういう曲、無くは無いわね!」

「ダンスは、そういうの無理かな?」

 

穂乃果はことりに尋ねると彼女は首を横に振る。

 

「今の7人なら、出来ると思うけど!」

 

ことりは笑みを浮かべてそう言葉を返し、それを聞いた穂乃果は椅子から勢いよく立ち上がる。

 

「じゃあそれが1番良いよ! みんなが歌って、みんがセンター!」

 

するとその穂乃果の提案にみんなも賛成し、次のPVでのやることが決まり、穂乃果は気合いを入れる。

 

「よーっし、そうと決まれば早速練習しよう!!」

 

その後、みんなで練習するために一同は屋上に移動し……穂乃果はみんなよりも早く階段を駆け上がる。

 

「でも、本当にリーダー無しで良いのかなぁ?」

 

またみんなで階段を上る途中、ことりが不意に疑問に思ったことを口にするのだが……。

 

「いえ、もう決まってますよ?」

「不本意だけど……」

「何にも囚われないで……1番やりたいこと、1番面白そうなものに怯まず真っ直ぐ向かって行く……。 そんな切り拓く力を持った、穂乃果にしかないものかもしれません」

 

そして屋上の扉の前に1番に到着した穂乃果はみんなの方へと振り返る。

 

「じゃあ始めよう!」

 

そうして無事に完成したPVを動画で公開し、そのPVに使われた曲名は……「これからのSomeday」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室、そこでは穂乃果達がネットにあげたPVの動画を絵里が見ており、それを見た彼女は隣に立つ希に視線を映す。

 

「何を言ったの?」

「ウチは思ったことを素直に言っただけや。 誰かさんと違うて」

 

それを聞いて絵里は少し険しい表情を浮かべる。

 

「もう認めるしかないんやない? えりちが力を貸してあげれば、あの娘らはもっと……」

「なら希が力を貸してあげれば……?」

 

すると希は机の上に置いてあったタロットカードの1枚を手に取る。

 

「ウチやない、カードが言ってるの。 あの娘達に必要なのは……えりちや」

「……ダメよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、既にアイドル研究部の部室には穂乃果、紅葉、海未、ことり、凛が来ており、5人はみんなが来るまで楽しくお喋りしていたのだが……その時、突然慌てた様子の花陽が部室に入って来たのだ。

 

「んっ? どうしたの花陽ちゃん?」

「た、た……! 助けて!」

「助けて……?」

「じゃなくて!! 大変! 大変ですぅー!!」




紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!」

穂乃果
「今回のサブタイはぁ~? 海未ちゃんの言ったウルトラマンギンガS第1話『切り拓く力』だよ!」

にこ
「流石にちょっとサブタイを探すのここまで来るとしんどくなって来たわね」

紅葉
「まぁ、自然に台詞に入れるのって思った以上に難しいって作者が言ってたもんな」



ちなみに穂乃果ちゃんが最初の方で取っていたポーズは皆さん何か分かりましたか?

それと、ハイパーゼットンとエメリウムスラッガーの対決はゼロは言わずもがな、間接的とはいえセブン対ゼットンとか面白いかなと思ったからです。



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第8話 『重大ニュース』

前回、慌てた様子で部室に「大変! 大変ですー!!」と入ってきた花陽。

 

紅葉はそんな花陽を「良いから落ち着いて話してくれ?」と言い、彼女は言われた通り息を整えてから何が大変なのかを紅葉達に説明した。

 

「大変です!! ラブライブです!! ラブライブが開催されることになりました!!」

「うぇ!? ラブライブ!?」

「なに!? ラブライブだと!?」

 

花陽の知らせを聞いて驚いた様子を見せる穂乃果と紅葉だが……次の瞬間2人はほぼ同時に首を傾げる。

 

「「ってなに?」」

「今の2人の驚き方なんにゃ……?」

 

その後、部室のパソコンを使って花陽直々に「ラブライブ」とは何かを説明されることとなり、花陽が言うには「ラブライブ」とはつまりは「スクールアイドルの甲子園」であり、エントリーしたグループの中から、ランキング上位20組までがライブに出場しナンバーワンを決める大会だというのだ。

 

「噂には聞いていましたが、遂に始まるなんて……!」

 

と花陽どこか感激した様子を見せ、穂乃果は「へぇー」と感心した声を出す。

 

「スクールアイドルは全国的に人気ですし……」

「盛り上がること間違いなしにゃー!」

「今のアイドルランキングから上位20組となると……。 1位のA-RISEは当然出場として……2位3位は………? ま、正に夢のイベント! チケット発売は何時でしょうか!?  初日特典は……!?」

 

花陽は興奮した様子でラブライブの大会ホームページを見つめ、そこで穂乃果と紅葉が「って花陽ちゃん、見に行くつもり?」と問いかけるとその瞬間花陽の目つきがキリっとしたものに変わり、「当たり前です!!」と勢いよく立ち上がる。

 

「これはアイドル史に残る一大イベントですよ!? 見逃せません……!」

 

と穂乃果と紅葉にそう言いながら普段の気弱そうなイメージから一変した花陽が迫ってくる。

 

「ちょっ、怖いです花陽ちゃん」

「アイドルのことになると、キャラ変わるわよね」

「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」

 

すると穂乃果は「なんだぁー、 私てっきり出場目指して頑張ろうって言うのかと思ったー」と苦笑い。

 

そしてそれを聞いて花陽は「ええぇぇ!!?」と驚きの声をあげて隅っこの方へと素早く移動する。

 

「そ、そんな……! わ、私達が出場だなんて恐れ多いです!!」

「キャラ変わりすぎ……!」

 

またもたキャラが一変する花陽に真姫はツッコミを入れる。

 

「凛はこっちのかよちんも好きにゃー!」

「まぁ、でもあの流れなら出場すると言うのかと思うよな……」

「でもスクールアイドルやってるんだもん、目指してみるのもいいかも!」

 

とことりが発言し、「って目指さなきゃダメでしょ!!」と穂乃果も便乗するように言い放つのだが……。

 

「そうは言っても現実は厳しいわよ?」

 

そう真姫に言われてしまい、それは海未も理解しており、今度は彼女が椅子に座ってパソコンを見て今の自分達の順位を確認する。

 

「確か、先週見たときはとてもそんな大会に出られるような順位では……あっ! 穂乃果、ことり!!」

 

海未が慌てた様子で穂乃果とことりの名を呼んで3人がパソコンを見ると順位がそれなりに上がっており、まさかそんなに上がっているとは思わなかった真姫は「嘘!?」と驚いて立ち上がる。

 

「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!」

「ホントだぁ~! ほらコメントも!! 『新しい曲格好よかったです』『7人に増えたんですね』『いつも一緒懸命さが伝わってきて大好きです!』」

 

穂乃果がこの前投稿したPVの動画のコメントを読み上げ、それを聞いて凛は「うわぁ~、もしかして凛達人気者!?」と嬉しそうに声をあげる。

 

「……そのせいね」

 

と小さく真姫が呟き、凛は「えっ?」と首を傾げると真姫は最近あったことを話し始めた。

 

なんでも真姫が言うには以前、学校を帰ろうと校門を出ると他校の女子生徒が真姫が出てくるのを待っており、彼女はその他校の生徒に校門を出るなり「あ、あの! 一緒に写真良いですか!?」と頼まれたそうなのだ。

 

その時真姫は突然のことに驚いて「えっ、いや……!」と少しパニクってしまったのだが、落ち込んだ女子生徒の様子を見て結局一緒に写真を撮ることになったのだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出待ち!?」

 

場所は屋上に映り、穂乃果は「私そういうの全然ない」と落ち込む。

 

「でもそういうこともあります! アイドルと言うのは残酷な格差社会でもありますから」

 

という花陽の説明を受けてさらに落ち込む穂乃果だがそんな穂乃果をと紅葉が励ます。

 

「何時か出待ちに会う日がきっと来るよ、穂乃果可愛いんだから!」

「うぅ、お兄ちゃぁ~ん」

 

励まされた穂乃果は紅葉に抱きつき、「よしよーし」と彼女は頭を撫でられるのだった。

 

「でも、写真なんて真姫ちゃんも随分変わったにゃー!」

「わ、私は別に……!」

 

凛からの指摘を受けて顔を赤くする真姫、そんな真姫の顔を見て凛は「あっ、赤くなったにゃー!」とからかうように言うと真姫は頬を膨らませ凛にチョップを叩きこんだ。

 

「痛いよぉ~!」

「アンタがいけないのよ!」

 

そこへ屋上の扉が勢いよく開いて何より興奮した様子のにこが慌てて現れる。

 

「みんな! 聞きなさい!! 重大ニュースよ!」

「ラブライブですね、知ってます」

「えっ? あっ、うん……知ってるんだ……」

 

紅葉に速攻でにこが持って来た重大ニュースがラブライブであることを見抜き、見抜かれたにこは少し肩すかしを喰らってテンションが若干下がってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから紅葉達はラブライブに出場するためのエントリーの許可を貰うために生徒会室へと来ており、穂乃果は生徒会室の扉をノックしようとするのだが……。

 

「どう考えても答えは見えてるわよ?」

 

そう真姫に指摘され、穂乃果は生徒会室の扉を叩くのを躊躇してしまい、紅葉も「多分そうだろうな」と考えるが……。

 

「それでも! 誠心誠意頭下げて頼めばなんとか……!」

「でもきっと『学校の許可ぁ? 認められないわぁ』って言われるに決まってるにゃ!!」

 

突然の凛の絵里のモノマネに紅葉は「ブフォ!?」と吹き出してしまい、余程ツボったのか膝をついて床を手でバンバン叩いていた。

 

「いやウケすぎ!!」

「認められないわぁ?」

「ブフォ!!?」

 

凛が同じネタでさらに笑わせに来るものだから紅葉はお腹を抱えて笑い出すが、真姫に「いい加減にしなさい!!」と凛と紅葉は注意されるのだった。

 

「でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うんだけど……」

 

すると後ろの空き教室の扉が開いてなぜかそこにいたにこが顔を出す。

 

「そんなのあの生徒会長には関係ないでしょ? 私達のこと目の敵にしてるんだから」

 

というにこのその言葉に花陽は「ど、どうして私達ばかり……?」となぜ絵里があんなに自分達に突っかかって来るのか疑問に思う。

 

「それは……あっ! もしかして学校内での人気を私に奪わるのが怖くて……!」

「それは無いわ」

「ツッコミ早ッ!?」

 

真姫にそうバッサリと言われ、彼女はにこのいる空き教室の扉をそっと閉めるのだった。

 

「もう許可なんて取らずに勝手にエントリーしてしまえば良いんじゃ無い?」

 

真姫はそう提案するのだが……。

 

しかしラブライブの出場条件には絶対に学校の許可が必要であり、勝手にエントリー登録することは出来ないのだと花陽が説明し、そこで次に真姫が「じゃあ直接理事長に頼んでみるとか……」と提案を出す。

 

それを聞いて穂乃果は「えっ? そんなことできるの?」と疑問に思い、首を傾げる。

 

「確かに部の要望は原則生徒会を通じてとありますが理事長のところに直接行くことが禁止されてる訳では……」

 

海未がそう説明し、真姫の言う通り提案ならばラブライブにエントリー出来る可能性も高くなるとのこだった。

 

「いや、でもやっぱり一応生徒会長と話を通してから……話せば分かって貰えるかもしれないし……!」

「でもこっちの方が許可を貰える可能性は高いでしょ? 取りあえずは理事長のところってことで紅葉先輩。 丁度ことり先輩っていう親族もいることだし」

 

真姫にそう言われ、紅葉は少し不満……というよりもどこか申し訳無さそうな表情を浮かべつつ「まぁ、しょうがないか」ということで一同は理事長室へと向かうことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で一同は理事長室へと行くことになったのだが……。

 

「うっ、なんか……さらに入りにくい緊張感が……!」

 

とこんな感じで穂乃果は理事長室をさらに入りづらく感じるのだが「そんなこと言ってる場合?」と真姫に言われ、「分かってるよ!」と穂乃果は理事長室の扉を叩こうとした時、扉が開いて部屋の中から希がひょっこりと顔を出したのだ。

 

「あっ、お揃いでどうしたん?」

「わぁ! 生徒会長も……!?」

 

希がさらに扉を開けると絵里も一緒にいたらしく、絵里の姿を見てにこは「タイミング悪ッ!」と小さく呟き、絵里は「何の用ですか?」と穂乃果達に尋ねる。

 

「理事長にお話があってきました!」

「……各部の理事長への申請は生徒会を通す決まりよ?」

 

真姫の言葉に絵里はそう返し、真姫はムスっとした表情を浮かべる。

 

「申請とは言ってないわ!! ただ話があるの!!」

 

そんな真姫をなだめるように彼女の肩に穂乃果は手を置いて「真姫ちゃん、上級生だよ?」と注意し、それに対し不満げな表情を見せながらも真姫は反省する。

 

すると「トントン」という音が聞こえ、音のした方に視線を向けるとそこには理事長が立っており、「どうしたの?」と尋ねてきたのだ。

 

それから1年組だけを部屋の外に残して一同は理事長室へと入るとラブライブのことを一通り説明を行う。

 

「へぇ、ラブライブね~」

「はい、全国的に中継されてることになっています」

「もし出場出来れば学校の名前をみんなに知って貰うことになると思うの!」

 

海未とことりが理事長にそう説明するのだが……

 

「私は反対です!!」

 

と真姫の予想した通り絵里は彼女等が大会へとエントリーすることを反対したのだ。

 

「理事長は学校の為に学校生活を犠牲にするようなことはすべきではないとおっしゃいました。 であれば……!」

「そうねぇ、でも良いんじゃ無いかしら? エントリーするくらいなら?」

 

理事長は絵里にそう言い放ち、それを聞いて当然絵里は納得できないといった顔を浮かべる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!! どうして彼女達の肩を持つんです!?」

 

と問いかけるが理事長は「別にそんなつもりはないけど?」と否定する。

 

「だったら、生徒会でも学校を存続させるために活動させてください!」

「う~ん、それはダメ」

 

その答えに対し絵里は「意味が分かりません!!」と言うのだが……。

 

「そう? 簡単なことよ?」

「……っ!」

「えりち」

 

すると絵里はそのまま理事長室を出て行き、「ふん、ざまぁ見ろってのよ!」とにこは勝ち誇ったような表情を浮かべるのだが……。

 

「ただし、条件があります!」

 

その理事長の言葉に穂乃果は「条件?」と首を傾げる。

 

「勉強が疎かになってはいけません、今度の期末試験で1人でも赤点を取るようなことがあったら……ラブライブへのエントリーは認めませんよ? 良いですね!」

 

その理事長の出した条件に穂乃果は「ええぇぇ!!?」と驚きの声をあげ、それを見て紅葉は「あっ……」と小さく呟き頭を抱える。

 

「ま、まぁ流石に赤点は無いから……大丈夫……か、と……」

 

ことりが周りを見てみるとそこにはへたり込んだにこと壁に手をついた穂乃果と両膝と両手を床につく凛達のどんよりとした姿があるのだった。

 

(いました、赤点候補者3名が……)

 

取りあえず、紅葉は自分のすべきことはと思いポンっと穂乃果の肩に手を乗せる。

 

「ファイトだよ、穂乃果、にこ先輩、凛ちゃん……」

「逆にその台詞が今少し辛い……」

 

それは精一杯のエールを送ることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変申し訳ありません!」

「ません!!」

 

部室に戻るとそこには頭を下げて謝る穂乃果と凛の姿があった。

 

「小学生の頃から知っていましたが……穂乃果……」

 

と海未から呆れた視線を向けられるがすぐさま穂乃果は「数学だけだよ!」と言葉を返す。

 

「ほら、小学校の頃から算数苦手だったでしょ!?」

「7✖4?」

「……26?」

「惜しいな、あと2つ。 28だ、穂乃果……」

 

花陽の問いかけに間違った答えを言う穂乃果に一同はなんとも言えない顔を浮かべ、花陽は凛は何が苦手なのかを聞くと「英語! 凛は英語だけはどうしても肌に合わなくて……」と答える。

 

「た、確かに難しいよね?」

「そうだよ! 大体凛達は日本人なのにどうして外国の言葉を勉強しないといけないの!?」

 

文句を言う凛に対し勢いよく立ち上がって「屁理屈は良いの!!」と彼女を睨み付けて怒鳴る真姫。

 

そんな真姫に凛は「にゃ~、真姫ちゃん怖いにゃ~」とそんな真姫の様子にビビってしまう。

 

「これでエントリー出来なかったら恥ずかしすぎるわよ!!」

 

確かに折角絶対にエントリーを認めなさそうな生徒会長である絵里を突破したというのに今更赤点だからエントリーできないというのは恥ずかし過ぎるだろう。

 

「そ、そうよ! 全くその通りよ! 赤点なんか絶対取っちゃダメよ!」

 

するとそこで真姫に同意するように凛や穂乃果をにこが注意するのだが……彼女は教科書を逆さに持っており、明らかに動揺していた。

 

「にこ先輩、教科書逆です……」

「うえ!? こここ、これは! べべべべ、別に動揺とかじゃなくて……! そもそもにっこにっこにー! の私が赤点なんて取る訳ないでしょ!?」

 

にこは紅葉にそう言って誤魔化すものの誰の目から見ても動揺しているようにしか見えず、海未にもそう指摘された。

 

「兎に角、私とことり、紅葉は穂乃果の! 花陽と真姫は凛の勉強を見て弱点強化をなんとか底上げしていくことにします!!」

 

しかしそれではにこの勉強を見る者がいないのではないかと思い、真姫がそのことに関して疑問を口にするが……。

 

「だから言ってるでしょ! にこは……!」

 

とまた動揺して教科書を逆さに持ってるにも関わらず誤魔化そうとするがそこで部室の扉が開き、希がひょっこりと顔を覗かせる。

 

「それはウチが担当するわ」

「希! って言ってるでしょ!? にこは赤点の心配なんて……!」

 

あくまでも「赤点なんて取らない」と言い張って強気に出るにこに希は素早く彼女の胸を鷲掴みにし、希はニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「嘘つくとワシワシするよ?」

 

と脅し、それによってにこは「ひい!?」と小さな悲鳴をあげて遂に観念。

 

「分かりました、教えてください……」

 

そしてようやく素直に希に勉強を頼むのだった。

 

「よし、これで準備はできたね! 明日から頑張ろー!」

「おー!!」

「今日からです!!」

 

明日からやろうと言い出す穂乃果と凛に海未は厳しい口調でそう言い放ち、一気にテンションの落ちる穂乃果と凛だった。

 

それから穂乃果、凛、にこの3人に全員で勉強を教えることとなったのだが……。

 

「あー! 白いごはんにゃー!!」

 

と途中で凛は窓の外を指差して花陽がそれに引っかかり真姫にチョップされて注意されたり、あと1問というところで穂乃果は力尽きて眠ってしまったり、にこは問題の答えを「にっこにっこにー?」と言って誤魔化して真面目に答えない彼女にお仕置きとして希にワシワシの刑に会っていたりと……。

 

本当にこれで大丈夫なのかとかなり不安になる光景が広がっていた。

 

「はぁ……。 あれで身についているんでしょうか?」

 

不安は残るものの海未はこれから弓道の練習があるので一応この場は紅葉達に任せて自分は弓道の部活動へと向かうことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓道の部活が終わり、穂乃果達は先に家に帰って勉強しているそうなので今日は海未は1人で帰ることになったのだが……。

 

バッタリと校門辺りで紅葉と会い、海未は首を傾げて「紅葉? 帰ったのでは?」と尋ねると彼は「あぁ、ちょっと先生に頼まれごとされてな」と答える。

 

「では一緒に帰りましょうか」

「おう」

 

そんな恋人のようなやり取りに周りの男子生徒から鋭い視線を向けられたが……紅葉と海未は一向に気にした様子を見せず、2人は一緒に校門を出ると不意にどこからか聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。

 

気になった紅葉と海未は曲のした方に視線を向けるとそこにはμ'sのファーストライブの時の動画を見ている中学生くらいの1人の少女が立っていた。

 

それに思わず気になった海未がこっそりと動画を覗き込むと動画にはサイトにも上がっていないところも流れており、それに少しだけ驚いていると少女は海未の存在に気づき「うわぁ!?」と驚きの声をあげる。

 

「あっ! ごめんなさい!!」

「えっ……? あっ! 園田 海未さんですよね!? μ'sの!!?」

 

少女がそう尋ねてくると海未は「いえ、人違いです!!」と慌てて誤魔化そうとするがすかさず紅葉が海未の頭に軽いチョップを入れられてしまう。

 

「誤魔化すな」

 

紅葉に注意されたのと少女の悲しそうな表情を見て彼女は「いえ、本物です……」と本人であることを認めて観念するのだった。

 

「ですよね!」

「そ、それよりその映像は……?」

 

海未が先ほど少女の見ていた動画のことについて尋ねると少女が言うには自分の姉が撮影して来てくれたらしく、海未は「お姉ちゃん?」と首を傾げる。

 

するとそこで「亜利沙」と誰かが少女を呼ぶ声が聞こえ、視線を声のした方へと向けるとそこには絵里がこちらに向かって歩いて来ており、亜里砂と呼ばれた少女は絵里の姿を見て「お姉ちゃん!」と嬉しそうに声をあげる。

 

だが、そこで絵里も海未と紅葉の存在に気づき、2人の姿を見るや険しい表情を浮かべる。

 

「あなた達……」

「生徒会長……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一同は公園に立ち寄ることとなり、海未と紅葉はそこで亜里砂からあの動画を撮影してくれたのは絵里であることを教えて貰ったのだった。

 

絵里、海未は公園のベンチに座り、紅葉は立ったまま少しだけ話をすることになったのだったが……。

 

その前に亜里砂が自販機で飲み物を購入してきて持って来て貰い、3人は「ありがとう」と言って受け取るのだが……受け取ったのは飲み物ではなくおでん缶だった。

 

「ごめんなさい、向こうの暮らしが長かったからまだ日本に慣れていないところがあって」

「向こう?」

「えぇ、祖母がロシア人なの。 亜里砂、それは飲み物じゃないのよ?」

 

絵里は亜里砂にそう教えると彼女は「ハラショー!」と驚くのだが……紅葉に関しては美味しそうにおでん缶を食べていた。

 

「俺は全然これで良いんだけどな……」

 

それから絵里は「別のを買って来て貰える?」と亜里砂にお願いし彼女は元気よく「はい!」と返事をして別の飲み物を買いに行くのだった。

 

(ハラショー……これを聞くと、エックスさんの仲間のあの娘を思い出すな)

「それにしても……あなた達に見つかってしまうとはね?」

「前から、穂乃果達と話し合っていたんです。 誰が撮影してネットにアップしてくれたんだろうって。 でも! 生徒会長だったなんて……! あの映像が無ければ私達は今、こうしてなかったと思うんです。 あれがあったから、見てくれる人も増えたし、だから……!」

 

と海未がそこまで言いかけたところで絵里は彼女の言葉を遮って「やめて」と言い放ち、それを聞いて海未は「えっ?」と呟く。

 

「別にあなた達の為にやった訳じゃないから。 むしろ逆、あなた達のダンスや歌がいかに人を惹きつけられないのか、活動を続けても意味がないって知って貰おうと思って……」

 

絵里はその為にあの動画をアップしたのだが……絵里の考えていた結果とは正反対のものとなり、無くなるどころか逆にメンバーが増えるなど完全に想定外だった。

 

「それでも、私は認めない。 人に見せられるものになってるとは思えない、そんな状態で学校の名前を背負って活動してほしくない。 話はそれだけ」

 

そう言って絵里は立ち上がり、その場から去ろうとするのだが……。

 

「待ってください!!」

 

即座に海未も立ち上がって絵里を呼び止める。

 

「じゃあ、もし私達が上手く行ったら……人を惹きつけられるようになったら……認めてくれますか?」

 

海未が絵里にそう問いかけるのだが……それでも彼女の答えは……。

 

「無理よ」

「どうしてです?」

「私にとっては……スクールアイドル全部が素人にしか見えない。 1番実力があるというA-RISEも……素人にしか見えない……!」

 

それを聞いて海未は悲しげな表情を浮かべて「そんな……」と呟き、絵里は亜里砂と合流して一緒に帰ろうとするのだが……そこで海未が絵里を追いかけてきたのだ。

 

「あなたに……あなたに私達のこと……そんな風に言われたくありません!!」

「海未、ちょっと落ち着け」

 

そこで紅葉が海未の肩を掴んで落ち着くように言うのだが……海未は紅葉を睨む。

 

「あなたはあんな風に言われてなんとも思わないんですか!?」

 

そう海未は怒鳴るが……紅葉は「思わない訳じゃない」とだけ答える。

 

「でも、会長があそこまで言うってことはそれだけの理由があるんでしょう。 だけど……穂乃果、海未、ことりはたった1人の観客のためにも最後までライブをやり抜きました。 そしてそんな奴等を中心に、花陽ちゃんや凛ちゃんに真姫ちゃん、そしてにこ先輩は集まりました」

 

紅葉の言葉に絵里は「なにが言いたいの?」と問いかける。

 

「どうして認めてくれないのか、その理由をハッキリと言って欲しいんです! あいつ等ならそれをしっかりと受け止められると思います。 だから、ちょっとだけ……一度みんなで話し合ってみませんか?」

「……そんなの……」

 

その時のことである、突如として「ギャオオオオオオ!!!!!」という獸の鳴き声のような声が聞こえ、一同が声のした方へと顔を向けるとそこには透明ではあったが……明らかに巨大な「何か」が立っていたのだ。

 

やがてその「何か」は徐々に姿を現していき、「月ノ輪怪獣 クレッセント」へと実体化するとクレッセントは暴れだし、紅葉は急いで海未達に逃げるように言い放つ。

 

「は、ハラショー! 本物の怪獣!?」

「みんな逃げろ!!」

 

紅葉に言われた通り、海未、亜里砂、絵里は急いでその場から逃げるのだが……そこで海未がいつの間にか紅葉がいなくなっていることに気づき、海未は「紅葉!?」と辺りを見回すが……やはり彼の姿はどこにも無かった。

 

「紅葉どこに!!」

 

海未は急いで紅葉を探しに行こうとするが絵里に腕を掴まれて引き止められる。

 

「離してください!!」

「ダメよ!! 今は逃げないと……! 彼ならきっと無事よ!!」

「でも!!」

 

一方で紅葉は隙を突いて海未達から離れて人気のないところに行っており、紅葉は「海未、すまん」と謝罪しながらオーブリングと「ウルトラマン」のカードを1枚取り出してカードをオーブリングにリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

続いて紅葉はカードホルダーから「ウルトラマンネクサス ジュネッス」のカードを取り出し、さらにそのカードをオーブリングにリードさせる。

 

「ネクサスさん!!」

『ウルトラマンネクサス!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「光の絆の力……お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

すると紅葉を中心に「ウルトラマン」と「ウルトラマンネクサス ジュネッス」の姿が重なり合い、ウルトラマンとネクサスの力を融合させた姿「ウルトラマンオーブ スペシウムシュトローム」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムシュトローム!』

 

光の中から現れたオーブは暴れるクレッセントにすかさずドロップキックを叩き込み、オーブは大地に降り立つ。

 

『受け継がれてゆく魂の絆!!』

 

オーブの蹴りを喰らったクレッセントはすぐさま起き上がってオーブに向かって駈け出して行くがオーブは避けると同時に素早くクレッセントの背後に回り込んでチョップを叩き込んでクレッセントはフラつくが……クレッセントは即座に振り返って目から光線をオーブに向かって発射。

 

オーブは両腕を交差して防ぐが……光線が直撃した両腕からは火花が走り、ダメージを受けてしまう。

 

『ウオッ!?』

「キシャアアアア!!!!!」

 

その隙を突いてクレッセントは体当たりをオーブに繰り出して突き飛ばし、オーブは空中へと吹き飛ばされてしまいクレッセントは駆け出して吹き飛ばされたオーブが落ちてくる瞬間を狙いさらにまた体当たりを炸裂させ、オーブは地面へと倒れ込む。

 

そのまま倒れ込んだオーブを何度も踏みつけるクレッセントだが……オーブは何とかしてその足を掴みあげて持ち上げ投げ飛ばす。

 

『デヤアアア!!』

「キシャア!?」

 

投げ飛ばされて倒れ込んだクレッセントにオーブは掴みかかって持ち上げてからさらに投げ飛ばし、倒れ込んだクレッセントに跨がってチョップを叩きこもうとするのだが……。

 

クレッセントは目からの光線を放ってそれをオーブに喰らわせ、オーブはそれによって退いてしまう。

 

「グルアアアア!!!!」

 

立ち上がったクレッセントは膝を突くオーブに蹴りを叩き込んで吹き飛ばすが……オーブはなんとかすぐに立ち上がる。

 

ファイティングポーズを取って身構え……突進してきたクレッセントを両手で掴んで受け止め、膝蹴りをクレッセントの腹部に叩きこんだ後、アッパーカットをクレッセントの顎に炸裂させる。

 

「お願いします!! オーブ!! 早く怪獣を……倒して……。 私の友達がいなくなって……危ないかもしれないんです!!」

 

戦闘BGM「theme_from_ultraman」

 

そこで海未のその言葉を聞いたオーブは彼女に向かって頷くと気合いの入れたストレートキックをクレッセントの腹部に叩きこむ。

 

『フウゥ……ハァ!!』

「ギシャア!!?」

 

すると蹴られた部分を手で押さえつつクレッセントは目から光線をオーブに放つ。

 

しかしオーブはそれを飛び退いて回避し、両腕の赤い部分が発光し、両腕から光の刃のようなものが飛び出すとオーブは両腕を勢いよく前に突き出して光の刃を放つ「スペロームアタック」を繰り出し、刃はクレッセントを斬りつける。

 

『スペロームアタック!!』

「グルアア!!?」

 

さらにオーブは空中に浮かぶとそのまま飛んでクレッセントに突っ込み、クレッセントの身体を掴むとそのまま上空へと投げ飛ばす。

 

そして素早く投げ飛ばしたクレッセントに追いつくと下から何発ものを拳を叩き込んでクレッセントを吹き飛ばし、最後にクレッセントに掴みかかって地面に投げ落とす。

 

「ギシャアア!!!?」

 

地面に落とされたクレッセントはフラつきながらも立ち上がるが……、弱ったところを狙いオーブは胸と両手から二種類の光線を発射する「ウルトラフルバースト」を放つ。

 

『ウルトラフルバースト!!』

「ギシャアアアアア!!!!!?」

 

そしてクレッセントはオーブのウルトラフルバーストを喰らい、火花をあげながら爆発したのだった。

 

『あの怪獣、マイナスエネルギーの……? なぜあの怪獣は現れたんだ……?』

 

クレッセントが倒されたことを確認するとオーブはそのまま飛び去って姿を消すのだった。

 

『シュアアア!!』

 

またその頃……。

 

別の場所ではラグナがダークリングを掲げて立っており、ダークリングの中央部分に黒い霧のようなものが集まるとそれが1枚のモヤのようなものが描かれたカードに変換され、それを手に持ったラグナは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「クフフ……。 やっと実体化したか、待っていたぞ? この時を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!! どこ行ってたんですか紅葉!! 心配したんですよ!!」

 

クレッセントを無事に倒し終え、海未達の元へと帰ってきた紅葉だったが当然海未は勝手に姿を消した紅葉に怒鳴り声をあげていた。

 

「本当にすまない、心配をかけた!!」

 

そんな海未に紅葉は頭を下げて謝罪し、そんな彼に対して絵里もどこか呆れたような視線を浮かべていた。

 

「あなた、人を心配させるのが得意みたいね」

「えっ? どういうことですか?」

 

絵里のその言葉に海未が反応して首を傾げ、紅葉は「しー! しー!」と口に指を当ててジャスチャーするが……絵里はそれを無視して少し前に侵略宇宙人に入らずの森で襲われた時のことを説明すると……当然ながら海未はさらに激怒。

 

「あなたって人は!! なんであの入らずの森に行ったんですか!! しかも生徒会長まで巻き込んで……!! しかも侵略宇宙人と戦った!!? なんて無茶を……!!」

(ダレカタスケテー……!)

 

ガミガミガミガミと怒鳴る海未に紅葉は涙目になり、そんな2人の光景を絵里に呆れたのか「はぁ」と溜め息を吐く。

 

「亜里砂、帰るわよ」

 

絵里は亜里砂に声をかけて2人で帰ることになり、亜里砂も「うん!」と頷くのだが……その前に亜里砂は先ほど自販機で買ってきた2つの缶をそれぞれ海未と紅葉に手渡した。

 

「あの、海未さん! 紅葉さん! これ、ちょっと覚めちゃいましたけど……飲みますか?」

 

そこで海未は一旦紅葉に怒鳴るのをやめて缶を受け取るのだが……缶には「おしるこ」と書かれており、海未と紅葉はそれを見て思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「あの! 亜里砂、μ's……。 海未さん達のこと、大好きです!!」

 

亜里砂はそれだけを海未に伝えて海未に笑顔を見せた後、絵里の元へと戻り、一緒に自宅へと帰るのだった。

 

「言っちゃった……」

「えっ……?」

「ううん、亜里砂ね、来年……音ノ木坂に入学したら……」

 

亜里砂がそこまで言いかけ、絵里は「んっ? なに?」と尋ねるのだが……。

 

「ううん、なんでもない」

 

と亜里砂は答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるハンバーガーショップにて……。

 

「にっこにっこに~♪」

「だから次ふざけたらワシワシMAXだって言った筈やん?」

 

そこでは希に勉強を教えて貰っているにことは彼女に勉強を教えている希がおり、希は両手を広げて構える。

 

「待って!! 違う、ふざけてるんじゃなくてこうすると答えが思いつくの!」

 

とにこは言うのだが……いかにも怪しい……。

 

「本当に?」

「そうなの! キャラチェンジすると脳が活性化するって言うの? にこでぇ~す♪ よぉーし今日はこの問題を解いちゃおうかな~! えーっと、ここにここを代入してぇ~……」

 

がしかし、結局は回答に詰まってしまい……「にこ分かんないよ~」と最終的に笑って誤魔化そうとするがその直後に素早く後ろに回り込まれた希に胸をワシワシされお仕置きされることに。

 

「お仕置きやで~!」

「いや! いやあああああ!!!?」

「なに遊んでるんですか、2人とも……」

 

するとそこへ紅葉と海未がやってきたことに希とにこは気づき、海未は真剣な表情を浮かべており、希に「聞きたいことがあるのですが……」と彼女に海未は絵里のことを聞こうと思ったのだ。

 

それからにこの勉強を今日はこのくらいにしてにこ以外の3人は希がこれから神社のバイトということもあり神田明神で話すこととなり、海未は公園であったことを希に説明した。

 

「A-RISEの歌やダンスを見て素人みたいだと言うのは幾らなんでも……」

「……えりちならそう言うやろうね、そう言えるだけのものが……えりちにはある」

 

希のその言葉に海未は疑問に思い、「どういうことですか?」と問いかけると希は「知りたい?」と海未に尋ね……彼女は首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、昼休みにやる予定だった勉強を穂乃果、凛、にこの通称「スマイル組」が「身体を動かして頭をスッキリさせよう!」という建前でスッポかして屋上にいた3人を希がワシワシでお仕置きするということがあったりしたが……兎に角無事に連れ戻すことに成功。

 

部室に戻った希は机に「今日のノルマはこれ!!」と大量の課題を置き、それを見たスマイル組は「鬼……」と小さく呟く。

 

「んっ? まだお仕置きが足りない娘がおる?」

 

希が3人にそう尋ねると素早く笑顔を見せて「まっさか~!」と態度を一変させるのだった。

 

するとそこで海未は立ち上がり、これから何か少し用があるということでことりと紅葉に穂乃果の勉強を頼むのだが……。

 

「悪い、俺も少しこれから行きたい場所があってな。 ことり、1人になっちゃうけど頼めるか? なるべくすぐに帰る」

「うん、分かったよ。 紅葉くん、海未ちゃん」

 

それから海未と紅葉の2人は部室を出て行き、2人はある場所へと向かうことになったのだが……2人とも辿り着いた場所は同じ「生徒会室」であり、海未と紅葉は少し驚いたように互いに顔を見合わせる。

 

「もしかして……考えてること一緒……?」

「そのようですね……」

 

そのことに2人は苦笑するが……。

 

すぐに2人は気を引き締めて海未が生徒会室の扉をノックしようとするのだが……その時、後ろから「順番があるんやないの?」という声が聞こえ、2人が後ろを振り返るとそこには希が立っていたのだ。

 

「希先輩!」

「ショック受けたんやろ? えりちの踊りに?」

「……自分達が今までやってきたことは何だったんだろうって思いました。 悔しいですけど、生徒会長がああ言いたくなる気持ちも分かりました」

 

実は紅葉と海未は昨日、幼い頃からバレエをやっていた絵里の動画を見せて貰い、それを見た2人はそのバレエの彼女のダンスにとても魅入られ……そのことから絵里があそこまで言いたくなる気持ちを理解することができたのだ。

 

「だから謝ろうと思うたん?」

「いえ……。 ダンスを教わりたいと思いました!」

「悔しいって思うってことは……それだけ会長のダンスが素晴らしいってことですからね」

 

そんな海未と紅葉の言葉を聞いて希はクスリと笑みを浮かべる。

 

「もし今のみんなが先輩の半分でも踊れるようになったら……本当の意味で人を惹きつけられるのにって!!」

「……ウチが睨んだ通りや。 あなた達ならそう言うと思ってた。 でも、それなら先にやることがあるんとちゃう? 試験まであと五日よ?」

 

希はそれだけを海未と紅葉に言い残して生徒会室へと入って姿を消し、その言葉を受けた海未と紅葉は互いに顔を見合わせ、絵里にダンスを習うのは穂乃果、凛、にこが赤点を回避してからだと理解し、2人は急いで部室に戻るとそこにはグッタリとしつつも勉強を続ける穂乃果達の姿があった。

 

「う、海未ちゃん……。 お兄ちゃん……」

「今日から穂乃果の家に泊まり込みます!! 勉強です!!」

 

海未は一差し指をビシっと穂乃果に向けてそう言い放つと穂乃果は「鬼~」と涙目になり、紅葉に救いの眼差しを向けるが……。

 

「すまんな、今回ばかりは俺も甘い顔はできない。 俺も厳しくするからな!!」

「えぇ!!? そんなぁ~」

 

紅葉の言葉を受けて穂乃果はさらに泣きそうになり、それを見た紅葉は罪悪感にかられるが……今回ばかりはやはり甘い顔はできない……しかし……。

 

「赤点回避したらなんかご褒美やる」

「ホント!?」

「って結局甘い顔してるじゃありませんか!!」

 

当然ながら海未に結局甘い顔をしている紅葉をツッコミ、紅葉は「赤点回避したらだよ!?」とあくまで赤点回避が前提であることを強調する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後……にこと凛はなんとか赤点を回避することに成功し、今は部室で穂乃果が来るのを一同は待っている状態だった。

 

しばらく待っていると部室に穂乃果が部室へと入ってくる。

 

「……どうだった?」

「今日で全教科帰って来ましたよね!? 最終テストは……?」

 

真姫と海未がそう穂乃果に尋ね、次に全員が「どうなの!?」と穂乃果に問いかけると彼女は「もう少し良い点が取れてたら良かったんだけど……」と言いつつ鞄を漁り、そこからテスト用紙を取り出してみんなに見せるとそこには「53点」と書かれており、赤点は見事に回避され、穂乃果は笑顔でピースをする。

 

「じゃーん!」

「よっしゃあ!! 流石の俺の妹だ!!」

 

紅葉は穂乃果が赤点回避に成功したことを喜んで何時もより荒々しく彼女の頭を撫でる。

 

「えへへ~♪ よーっし、今日から練習だぁ~!!」

 

赤点も回避し、穂乃果は張り切ってみんなで全員赤点を回避したことを理事長に報告しに行くことになり、穂乃果は理事長室の扉をノックするのだが……中からは返事が無かった。

 

「扉は開いてるな」

 

紅葉はそっと理事長室の扉を開け、海未、ことり、穂乃果と一緒に理事長室の様子を伺うとそこでは何か絵里と理事長が話し合っているようだった。

 

「そんな! 説明してください!!」

「ごめんなさい、でもこれは決定事項なの。 音ノ木坂学院は……来年度より生徒募集をやめ、廃校とします」

 

それを聞いた穂乃果は目を見開き、驚きの顔を見せる。

 

「廃……校……!?」







紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!!」

にこ
「今回は海未が言ったウルトラマンコスモス55話『最終テスト』よ!!」

穂乃果
「うぅ、どこでもテストってあるんだねぇ」

紅葉
「コスモスのこの回も結構難しい感じのテストだったもんなぁ」

にこ
「はぁ、ホントにね……」

マイナスエネルギーの怪獣を後回しにしたのはなるべく怪獣を唐突な感じや不自然に出したくないためです。
ラブライブとウルトラマンをクロスするとなるとどうしても出すタイミングなんかも考えるようになるので。
マガバッサーはマガパンドンも唐突に出した感はあるかもしれませんが、アレはラグナが裏で糸を引いていましたし、クレッセントが出現したのも理由があります。
プリズ魔なんかはかなり唐突に出しましたが、プリズ魔はむしろ唐突に出てきても違和感ないですし。


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第9話 『明かされる秘密』

「音ノ木坂学院は……来年度より生徒募集をやめ、廃校とします」

 

その理事長の言葉を聞き、穂乃果、海未、ことり、紅葉の4人は驚きの顔を浮かべ、穂乃果は「今の話、本当ですか!!?」と勢いよく扉を開き、2年組の4人は理事長室へと入ってくる。

 

「あなた……!」

 

絵里や理事長は穂乃果達が部屋に入ってきたことに驚いた様子を見せていたが今はそんなことを気にしている場合では無い。

 

本当に廃校が決定してしまったのかどうなのかを確認するのが先決だ。

 

そして理事長から返ってきた返答は……「本当よ」ということでことり自身も母である彼女からはそんなことは全く何も聞かされて無かったらしく、穂乃果は「お願いします!! もうちょっとだけ待ってください!!」と理事長に頼み込む。

 

「あと一週間!! いや、2日でなんとかしますから!!」

「おぉ!! 気合いがあれば2日で十分だ!! みんなで頭捻ってどうにかする方法絶対に考えます!!」

 

と穂乃果と紅葉はそう理事長に言い放つのだが……。

 

「いえね? 廃校にするというのはオープンキャンパスの結果が悪かったらという話よ?」

「お、オープンキャンパス?」

「一般の人に、見学に来て貰うってこと?」

 

なんでも理事長が言うには見学に来て貰った中学生にアンケートを取って貰い、結果が芳しくなったら廃校にする……ということだったらしく、それを聞いて穂乃果は「なんだぁ~」と安堵するのだが……。

 

「安心してる場合じゃないぞ穂乃果。 廃校阻止のチャンスはもうそこしかほぼ無いってことなんだからな?」

「不本意だけど……彼の言う通りよ。 オープンキャンパスの2週間後の日曜日、そこで結果が悪かったら本決まりってことよ」

 

紅葉と絵里にそう指摘され、穂乃果はことりや海未と顔を見合わせながら「どうしよう」と不安な顔を浮かべるが……。

 

そんな彼女等を余所に絵里は理事長に「オープンキャンパスの内容は生徒会で提案させて頂きます!」と進言し、理事長は「止めても聞きそうにないわね」ということで絵里の生徒会による活動を承諾。

 

「失礼します」

 

絵里はそれだけを言い残して理事長室を出て行き、部屋を出た彼女が理事長室の扉を閉めると不意に後ろから「どうするつもり?」という声が聞こえ、振り返るとそこには希が立っていた。

 

「……決まってるでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから……にこ達にも次のオープンキャンパスの結果が悪かったら廃校が確実に決定してしまうことを伝えると……。

 

それじゃ来年から自分達に後輩ができないのかと花陽や凛はショックを受けるのだが……真姫に至っては髪の毛をクルクルしながら「私はそっちの方が気楽だけど」と特に気にしている様子は無い。

 

(ホンット、この娘こういうとこブレないな)

「兎に角! オープンキャンパスでライブをやろう!! それで入学希望者を少しでも増やすしかないよ!!」

 

確かに、現状彼女達に廃校を阻止するための手段は今はもう次のオープンキャンパスでライブをやることしかない、そのため一同は何時も以上に気合いを入れ、屋上で練習を励むことに。

 

また一方で生徒会室でも廃校を阻止するために生徒会のメンバーが集められており、廃校を阻止するための意見として生徒会の1人は「入学希望者を増やすならこの学校の楽しいことをいっぱい紹介しませんか?」ということで1人1人がその「楽しい」ことの意見を出していく。

 

「例えばここの制服って可愛いって言ってくれる人多いんですよ!」

「それ良い! そういうのアピールしていきましょうよ!」

 

するとそんな意見に便乗するように別の生徒会の1人が「スクールアイドルとかも人気あるよね!」「あの娘達に頼んでライブやって貰おう!」という意見も出始めたのだが……当然、それを絵里が許すはずも無く。

 

「……他には!?」

『……他には……?』

 

そうしてやってきたのはアルパカ小屋であり、絵里は「これ……ですか?」と生徒会の1人に尋ねるとなんでも他校の生徒にも意外と人気があるらしく、これならどうかと提案したのだが……。

 

「ちょっと……これでは……」

「グルルルル!!」

 

するとそんな絵里の言葉にまるで怒ったように黒アルパカがうなり声をあげ、彼女に唾を吐きかけたのだった。

 

「わあああ!!? 生徒会長!!?」

 

それを見て生徒会のメンバーは慌てて絵里にかかった唾をハンカチで拭き取ろうとし、そこへ丁度アルパカの世話をするために一旦練習から抜けてきた花陽と凛が訪れ、凛と花陽の2人は何事かと思い互いに顔を見合わせて首を傾げた。

 

「っ! あなた達……!」

「あっ! スクールアイドルの!!」

 

すると生徒会の1人が花陽と凛に今度オープンキャンパスがあるからライブをして欲しいと頼み込もうとするのだが……それに絵里は「待ちなさい!!」と引き止められる。

 

「まだ何も決まってないでしょ!?」

「あっ……はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……ノストラ達の乗る宇宙船では……。

 

ラグナが1人、人気のない場所で立ちながら今まで集めてきた魔王獸……「マガタノゾーア」「マガゼットン」「マガバッサー」「マガグランドキング」「マガジャッパ」「マガパンドン」のカードを取り出して見つめており……彼は小さく「残るは後1枚……」と呟く。

 

するとラグナに向かって何者かが1枚のカードを投げつけ、ラグナはそのカードを掴み取って後ろを振り返るとそこにはカードを投げたと思われるノストラが立っていたのだった。

 

『君から頼まれていたカードだ。 ウルトラマンオーブを倒す作戦の準備はほぼ完了したのだろう?』

「えぇ、勿論……」

『……君は私に言ったな? 私のやり方は古いと……。 そこまで言うならば余程自信があるのだろう? ならば君自身の手でウルトラマンオーブを葬り去れるのだろうな?』

 

ノストラの言葉にラグナはニヤリと笑みを浮かべて「勿論ですとも」と答える。

 

『では次の作戦は君に任せよう。 オーブを倒し、奴の持つ全てのウルトラマンのカードを奪い取るのだ』

「仰せの通りに……。 しかし、報酬は頂きますよ?」

 

そんなラグナの言葉にノストラは「分かっている」と答え、懐から1枚の黒いウルトラマンが描かれたカード……「ウルトラマンベリアル」のカードを取り出し見せる。

 

「君が欲しているのはこれだろ?」

 

ノストラがラグナに問いかけ、そのカードを見たラグナは「フフ、クハハハハ!!」と笑い出し、その後に何時ものように「ゲホォ!! ゴホォ!!」と笑いすぎて咳き込む。

 

『このカードを使って何をする気かは知りはしないし興味はないが……オーブを倒し、全てのウルトラマンのカードを手に入れることに成功すればこのカードは君に渡そう。 それ相応の報酬というやつだ』

「報酬は高ければ高いほど燃えるというもの。 約束は守って貰いますよ? 言質も取りました」

『無論だ、惑星侵略連合首領の名にかけて……』

 

それを聞いてラグナは「言質、しっかりと取りましたからね?」と改めてボイスレコーダーを取り出してノストラに見せ、それを見たノストラは「抜かりのない奴だ」と微笑する。

 

その後、ラグナはその場から立ち去るのだが……。

 

しばらくしてノストラがラグナにある怪獣カードを渡したという話を聞き、あのカードは自分達が必死に手に入れたカードにも関わらずそれを未だに信用ならないラグナに渡したことに激怒したナグスとレクターが抗議しにノストラの元へと訪れたのだが……。

 

激怒する2人を宥めるようにノストラは「落ち着け」と声をかけ、レクターとナグスは言われた通り黙り込む。

 

『君たちが怒る気持ちは分かる。 だがあのカードを奴に渡したのは私にも考えがあるから……。 君たちにはやって欲しいことがある。 上手く行けば邪魔者を纏めて消せるだろう』

『ほほう? それで? 私達は何をすれば良いのですか、ドン・ノストラ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は音ノ木坂の屋上となり、そこでは穂乃果達がオープンキャンパスに向けてライブの練習を行っており、みんな特に失敗することもなくそれなりに上手く出来ていたと思われたのだが……。

 

「……まだです……。 まだタイミングがズレています」

「海未ちゃん……。 分かった! もう1回やろう!!」

 

海未の言葉を受けて穂乃果達はもう1度ダンスの練習を行い、一旦終わると穂乃果達自身は納得できるくらいに上手くできたと思ったのだが……。

 

それでも海未は「まだダメです。 それでは全然……」と彼女自身は未だに納得出来ていなかったのだ。

 

「……海未……。 もしかして生徒会長のあの動画を見たからか?」

 

紅葉が小声で海未にそう尋ねると彼女はどこか暗い表情で「はい」と頷き、そこで理由が分からない真姫は「何が気に入らないのよ!? ハッキリ言って!!」と詰め寄る。

 

「……感動できないんです……。 今のままでは……」

『……』

 

感動できない、というのは一体どういう意味なのかは分からないが……あともう少しで学校が閉まってしまうので今日はこれで終了ということになり、続きはLINEの電話機能でということになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから今日は練習は終わりになり、海未は他にも色々と穂乃果達に色々と相談したいことがあるということで彼女とことりは紅葉と穂乃果の家に行くこととなった。

 

穂乃果の部屋に4人が集まると一同はLINEの電話機能を使い、μ's全員に電話をかけ、穂乃果からみんなに海未が絵里にダンスを習いたいと思っていることをみんなに伝えたのだ。

 

当然、それを聞いたにこ達は驚きの声をあげる。

 

「あの人のバレエを見て思ったんです。 私達はまだまだだって」

「でも、生徒会長……私達のこと……」

「嫌ってるよねー、絶対!」

 

やはりというべきか、花陽や凛はあまり絵里にダンスを習うことにノリ気ではなく、にこは「つうか嫉妬してるのよ嫉妬!!」と言い放ち、海未も「私も最初は思っていました……」と呟く。

 

しかし絵里のあのバレエでのダンスを見せられては彼女が自分達を素人みたいなものだというのも納得でき、そう語る海未にことりも「そんなに凄いんだ……」と感心するが……真姫は潰されかねないという理由で絵里にダンスに習うことは反対だった。

 

「安心しな、真姫ちゃん。 もし本当に潰そうとしても俺が絶対に潰させないから!」

「その自信はどこから来るんですか紅葉先輩は?」

 

しかし、それでも「3年は私がいれば十分だし」と言うにこや「生徒会長、ちょっと怖い……」と絵里に苦手意識を持つ花陽、凛も「凛は楽しいのが良いなー!」と言ってやはり殆どのメンバーが絵里にダンスを習うのに抵抗があるようだった。

 

「私は良いと思うけどなぁー」

 

だが逆に穂乃果はむしろ絵里にダンスを習うことには賛成であり、それにはにこは「何言ってんのよ!?」と怒鳴るが……。

 

「だってダンスが上手い人が近くにいてもっと上手くやりたいから教わりたいって話でしょ?」

「そうですが……」

「だったら、私は賛成!! 頼むだけ頼んでみようよ!!」

 

そこで「ちょっと待ちなさいよ!!」とにこに止められるが……。

 

「でもぉ、絵里先輩のダンスも……ちょっと見てみたいかも?」

「あっ、それは私も!!」

 

とそこでことりと花陽が絵里のダンスを見てみたいと言いだし、それを聞いて穂乃果は立ち上がって「それじゃ早速明日聞いてみよう!!」ということになったのだった。

 

(しっかし、絵里先輩のこと怖いって言ってる花陽ちゃんが自販機に頭突っ込んだり、恐怖のあまりドラ〇もんの歌を歌い出したりする絵里先輩見たらどう思うんだろうな……)

 

尚、そんなことを考えていた紅葉はマガジャッパの事件の時の絵里を思い出し、口元を押さえて必死に笑いを堪えるのだった。

 

(今思い返すと……意外と愉快な人かもな、絵里先輩って……。 それになんやかんやで穂乃果達を目の敵にしてるのは、もしかしたらそれだけ興味があるってことの裏返しなのかもしれないな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……絵里の自宅では……。

 

オープンキャンパスに向けて音ノ木坂学院のことを紹介する説明文を作成した絵里はその感想を聞こうと説明文を読んで亜里砂と彼女の友人でもある雪穂とクラスメイト1人に聞かせていたのだが……。

 

雪穂は眠ってしまっており、亜里砂とクラスメイトの1人はあんまり面白く無さそうな……むしろつまらなさそうな顔を浮かべていた。

 

「このように音ノ木坂学院の歴史は古く、この地域の発展にずっと関わってきました。 さらに、当時の学院は音楽学校という側面も持っており、学院内はアーティストを目指す生徒に溢れ、非常にクリエイティブな雰囲気に包まれていたと言います。 そんな音ノ木坂ならではの……」

「わぁ!! 体重増えた!!?」

 

とそこで雪穂が目を覚まし、自分が完全に眠ってしまっていたことに気づいた雪穂は顔を赤くして「あっ、すいません……」と頭を下げて謝るのだった。

 

「ごめんね? 退屈だった?」

「いえ!? 凄く面白かったです!! 後半凄く引き込まれました!!」

 

そう言って慌てて誤魔化すように言う雪穂だが……隣に座っていたクラスメイトの1人は「お前序盤から寝てただろ」とでも言うような視線を向けていた。

 

「オープンキャンパス当日までには直すから遠慮無くなんでも言って?」

 

するとそこで亜里砂が立ち上がり、亜里砂は「私はあんまり面白くなかったな」とハッキリと言い放ち、それに雪穂は「ちょっと!?」と慌てるが亜里砂は構わず言葉を続ける。

 

「なんでお姉ちゃん、こんな話しているの?」

「学校を廃校にしたくないからよ……?」

「私も音ノ木坂は無くなって欲しくないけど……。 でも……これがお姉ちゃんのやりたいこと?」

 

亜里砂にそう問いかけられ、その言葉を受けて絵里は目を見開き……彼女は亜里砂になぜか何も言い返すことができなかった。

 

「っ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、生徒会室にて昨日の出来事を絵里は希に話し、「嫌でしょ? 自分の学校が廃校になったら!」と尋ねていた。

 

「確かにそうかもしれんけど……廃校をなんとか阻止しなちゃって無理しすぎてるんやない?」

「そんな……無理だなんて……」

 

そんな絵里を見て希は「えりちは頑固やね」と苦笑してしまう。

 

「私はただ……学校を存続させたいだけ」

 

するとその時、生徒会室の扉を誰かがノックし、入って来たのは絵里にダンスを習おうと頼み込んできた紅葉、穂乃果、海未、ことりの4人だった。

 

「私にダンスを?」

「はい! 教えていただけないでしょうか!? 私達、上手くなりたいんです!!」

 

絵里は一瞬、海未と視線を合わせ……少しだけ考え込んだ後、「分かったわ」と彼女は穂乃果達の頼みを聞き、それに穂乃果は「ホントですか!?」と嬉しそうにする。

 

「あなた達の活動は理解できないけど……人気があるのは間違いないようだし、引き受けましょう。 でも! やるからには私が許せる水準まで頑張って貰うわよ!! 良い!?」

 

絵里のその言葉に穂乃果は力強く「はい!!」と答え、その様子を見ていた希はクスリと笑みを浮かべ「星が動き出したみたいや……」と小さく呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして屋上にて……一同は絵里に指導を受けることになったのだが……その途中で凛が転んでしまい、それを見て絵里は「全然ダメじゃない!! よくこれでここまで来れたわね!!」と厳しく言い放つ。

 

「昨日はバッチリだったのにぃ~!」

「昨日出来たから……なんて言い訳、本番じゃ効かないぞ凛ちゃん?」

 

凛の言葉に紅葉がそう言うとそれに絵里も「そうよ!!」と彼の意見に同意し、絵里が言うには凛は基礎が出来ていないからムラが出るとのことで絵里は凛に足を広げるように指示し、凛は言われた通り「こう?」足を広げ、絵里は凛の背中を押して足を開かせたまま前に身体を倒そうとする。

 

「うぎぃ!? 痛いにゃ~!?」

「これで? 少なくとも足を開いた状態でお腹が床につくようにならないと!」

 

それを聞いて凛は涙目で「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「っていうか凛ちゃん、運動神経良いのに身体意外と堅いんだな……」

「柔軟性をあげることは全てに繋がるわ! 先ずはこれを全員出来るようにして! このままだと本番は一か八かの勝負になるわよ!!」

 

そんな風に厳しめに指示をする絵里に対し、にこは「嫌な予感的中……」と呟く。

 

「いや、逆に的確な指示でしょ? 会長の言ってることって正論ですよ、にこ先輩」

「それは分かってるんだけど……ねぇ?」

 

それからその後は全員の柔軟性をチェックし、その中でも足を開いた状態でお腹が地面についたのはことりくらいであり、穂乃果達はそれに感心するが……。

 

「感心してる場合じゃないわよ? みんなできるの!? ダンスで人を魅了するんでしょ!? このくらい出来て当たり前!!」

 

その後も片足で立ってそれを10分間耐えるというものをやったり、筋肉トレーニングを改めて行ったり、その後にまた片足で立つ練習を行ったりとしていたのだが……。

 

その際、花陽が耐えきれずに転んでしまい、それを見て凛は慌てて「かよちん大丈夫!?」と彼女の元へと駆け寄る。

 

「だ、大丈夫……!」

 

花陽は笑顔で平気だと凛に答え、その様子を見ていた絵里は「もう良いわ、今日はここまで」と少し冷たく言い放ち、そこでそんな言い方をする彼女にこと真姫が「そんな言い方ないんじゃない!?」と言うのだが……。

 

「私は冷静に判断しただけよ。 自分達の実力が少しは分かったでしょ? 今度のオープンキャンパスには学校の存続がかかっているの! もし出来ないって言うのなら早めに言って? 時間が勿体ないから」

 

絵里はそれだけの言い残してその場から立ち去ろうとするのだが……そこで穂乃果が「待ってください!!」と彼女を呼び止めると穂乃果達は一列に並び……絵里はそれを不思議そうに見つめる。

 

「……ありがとうございました!! 明日もよろしくお願いします!!」

『お願いします!!』

 

そんな穂乃果達の言葉に絵里は「えっ!?」と一瞬キョトンっとした顔を浮かべるが、彼女はすぐに冷ややかな視線を送った後、その場を立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま~!」」

 

それから練習を終え、穂むらに帰ってきた紅葉と穂乃果が家の扉を開けるとそこには椅子に座ってほむまんを頬張っているラグナの姿があり、彼の姿を見るや否や紅葉と穂乃果は驚きの表情を浮かべ、紅葉は穂乃果を後ろの方へと下がらせる。

 

「お前……! ここで何してる!?」

「オイオイ、俺はここに饅頭を食いに来ただけだぜ……? そちらの可愛らしいお嬢さんはお久しぶりですね? それにしても紅葉、お客様にその言い方はないんじゃないのかなぁ~? それに旧友だろう? 俺達は……?」

 

ニヤついた笑みでラグナは紅葉にそう言うのだが……「お前とはもう腐れ縁でしかないだろ」と言葉を返されてしまい、それにラグナは思わず笑い出す。

 

その際、ラグナは饅頭を頬張りながら笑い出したものなので饅頭が喉に詰まってしまい、「ゴホゴホ!!」と咳き込み、それを見て心配した紅葉達の母が慌てて彼にお茶を差し出す。

 

「紅葉、お客様にその態度は失礼でしょ! それにこの人、紅葉のお友達なんでしょ?」

「だから友達じゃないって……。 まぁいい、話があるんなら外で話せ。 用があるのは俺だろ?」

「フヒヒ、じゃあそうするとしますか。 あっ、おばさん美味しかったです、ご馳走様でした」

 

饅頭の感想を母に伝えてお代を置いた後、紅葉に言われた通りラグナは紅葉を連れて外へと出て行くことになったのだが……出て行こうとする紅葉を穂乃果は心配そうにこちらを見つめており、「その人と2人なんて危ないよ!」と言われたが……紅葉はそんな風に自分を心配する彼女の頭を「大丈夫」と笑みを浮かべながら撫でる。

 

「すぐに戻る、だから心配するな」

「……うん……」

 

それに戸惑いつつも穂乃果は頷き、それから紅葉とラグナの2人はなるべく人通りの少ない場所へと移動してそこで話をすることになった。

 

「空は……夜明け前が1番美しい……。 暁の空……、それは新たな世界の幕開けを予感させる……」

 

そんなラグナの言葉に紅葉は「はっ?」と首を傾げ、ラグナの言っていることはイマイチ理解できなかった。

 

「お前……なに訳の分からないこと言ってるんだ?」

「オイオイ、少しは格好つけさせろよ……。 まぁ、良いさ。 紅葉、明日学校の授業が終わったらすぐに俺のところに来い。 お前の命を頂く時が来た。 面白いものも用意してあるから明日を頼みにしてな……。 フフフ……フハハハハ!! クァーッハッハッゴホゴホォ!!」

 

ラグナはそれだけを言い残して黒い煙となって姿を消し、紅葉は「明日……かっ……」と呟いた後、再び穂むらへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絢瀬家のその夜……亜里砂が自分の部屋でμ'sの曲を聴いていると部屋に絵里が入って来て彼女は亜里砂にイヤホンを貸して欲しいと頼んでイヤホンを耳に当て、亜里砂と一緒にμ'sの曲を聴く。

 

「私ね、μ'sのライブを見てると胸がカーッとなって熱くなるの! 一生懸命で……名一杯楽しそうで!」

「……全然なってないわ」

 

しかし亜里砂の言葉に絵里はそう言い放ち、亜里砂もそれは分かっていると伝える、だが……。

 

「お姉ちゃんに比べればそうだけど、でも! 凄く元気が貰えるんだ!」

 

亜里砂は嬉しそうに……どこか楽しげな様子で絵里にそう語り、絵里はそんな亜里砂の言葉に何も言い返さず、ただどこか険しい表情を浮かべていた。

 

その翌日、練習場所の屋上には既に穂乃果と海未、ことり、紅葉が揃っており、絵里も屋上の出入り口前の扉の前まで来ていたのだが……外に出ようとはせず彼女は姿を隠すようにただ立っているだけだった。

 

するとそこへ「覗き見ですか?」と練習にやってきた真姫に声をかけられ、絵里はそれに一瞬驚き慌てて「いえ……!」と否定するのだが……。

 

そこに続けて凛とにこ、花陽も現れ、凛は絵里の姿を見るや否や彼女の背中を押して強引外に出す。

 

「にゃんにゃんにゃーん♪」

「ちょ、ちょっと!?」

 

そして外に連れ出された絵里の姿を見て穂乃果達は彼女に挨拶し、「先ずは柔軟ですよね!?」とやる気に満ちた顔で穂乃果に尋ねられ、それに戸惑いながらも絵里は「え、えぇ」と答える。

 

しかし、やる気に満ち溢れている穂乃果や他のメンバーの顔を見て絵里はあんにキツいことをやって辛くないのかと疑問に思い、「辛くないの?」と穂乃果に問いかける。

 

「昨日あんなにやって今日また同じことをするのよ? 第一上手くなるかどうかも分からないのに」

「やりたいからです!!」

 

絵里の問いかけに穂乃果はハッキリとそう言い放ち、それを聞いて絵里は一瞬驚いたような表情を浮かべる。

 

「っ……!」

「確かに……練習は凄くキツいです! 身体中痛いです!! でも、廃校をなんとかしたいという気持ちは生徒会長にも負けません! だから今日も……よろしくお願いします!」

 

穂乃果に続くように他のみんなも「よろしくお願いします!!」と言い放ち、それに紅葉は絵里の肩をポンっと軽く叩く。

 

「ねっ? こういう奴等なんですよ。 練習がどんなにキツくても辛くても『やりたいから』……だから頑張れるんです。 可能性のかたまりなんですよ」

「っ……!」

 

それを聞いて絵里はどこか不機嫌そうな表情を浮かべた後、彼女は何も言わずにその場から穂乃果の「生徒会長!」と呼ぶ声も無視して立ち去ってしまい、そんな絵里を見て紅葉は「俺なんか悪いこと言っちゃったかな?」と苦笑する。

 

「ううん、そんなことないと思うけど……」

「まぁ、後のことは頼むよ。 俺はこの後、大事な用があるんでな」

「えっ? お兄ちゃんどこか行くの?」

 

紅葉の言葉に穂乃果が首を傾げながら問いかけると紅葉は「どうしても外せない用があるんだ」とだけ答え、「んじゃ、後はよろしく~」と手をヒラヒラ振りながらその場を去って行くのだった。

 

「あいつマネージャーの癖に……先に帰るってどういうことよ」

 

その様子を見ていたにこはと小さく悪態をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方……雑草が生えた人気のないとある場所、そこでラグナは紅葉が来るのをただジッと待っていた。

 

「あっ、クソ……また死んだ! あっ! また……くたばりやがった……。 クソ!! また……!! やってられっかこんなもん!!」

 

マ〇オのゲームをやりながら、そしてあまりにもド下手くそ過ぎてゲーム機を地面に叩きつけて八つ当たりしていた。

 

するとどこからか心地の良いハーモニカのメロディーが鳴り響き、それを聞くとラグナは苦痛に満ちた表情を浮かべ、頭を押さえながら後ろを振り返ると紅葉がオーブニカを吹きながら現れ……紅葉はオーブニカをしまい込む。

 

「全く、お前のメロディーは本当に酷いな。 今朝頭痛薬飲んできたのにその曲を聴いてまた頭が痛みやがった」

「……そいつは悪かったな」

 

紅葉とラグナ、2人は互いを睨むように見つめ合いながらしばらく沈黙していると……。

 

不意にラグナは不気味な笑みを浮かべて拳を構えて目にも止まらぬ速さで紅葉に向かって行き、それと同時に紅葉も拳を握りしめてラグナと同じように目にも止まらない速さで動き、互いの拳が激しくぶつかり合うとその衝撃で強い突風が起こる。

 

「お前との腐れ縁も……今日で終わりだ!! 今日こそ、お前とケリをつけてやる!!」

「それはこっちの台詞だ」

 

紅葉は膝蹴りをラグナへと繰り出すがラグナはバク転してそれを回避し、そこから2人は瞬間移動しながら激闘を繰り広げる。

 

『ラグナ、高坂 紅葉……。 君たちの因縁は耳にしている。 遙か昔に君たち2人は銀河の果てで雌雄を決したそうだな。 高坂 紅葉は光に選ばれ……。 そしてラグナ、君は闇に選ばれた。 今こそ教えてやりたまえ。 君が選んだ闇の力の方が光よりはるかに偉大であることを!!』

 

宇宙船から2人の戦いの様子をモニターで見ていたノストラはそう強く言い放ち、一方でラグナと紅葉との激闘は続いており、その際に紅葉はオーブニカを落としてしまい、彼はそれに気を取られて隙が出来てしまい……そこにラグナの蹴りが叩き込まれる。

 

蹴り飛ばされた紅葉はフラつきながらもオーブニカを回収し、それを見て苛立ったラグナは「お前それでも本気か!? 戦いに集中しろ!!」と怒鳴り上げる。

 

「はぁ……。 お前は人間を傷つけることを恐れてる……。 何をそんなに恐れてる? たかが娘1人救えなかった程度で……」

「……っ」

 

ラグナのその言葉を聞き、紅葉は遙か昔に自分とマガゼットンとの戦いに巻き込まれた1人の少女のことを思い出し……彼は悲しげな顔を浮かべた。

 

「そして今は楽しく学生生活、しかもアイドルの真似事をする奴等のマネージャーか?」

 

それを聞いた瞬間、紅葉はキッとラグナを睨み付けて素早くラグナに接近すると彼の顔を殴ろうと拳を振るうがラグナはそれを片手で受け止める。

 

「あいつ等がやってんのは……! アイドルの真似事じゃない!! スクールアイドルだ!!」

「おぉ、怖い怖い。 だがな、あの小娘共とお前は本来何の関係もない奴等なんだ。 お前が可愛がってるあの妹すら、本来お前とは何の関係もない。 血の繋がりが無いんだからな!!」

「……」

 

ラグナは「はぁ」と深い溜め息をつく。

 

「全く、あの『怪獣人 プレッシャー』とかいうやつのせいでこんなことになっちまって……」

 

「怪獣人 プレッシャー」……神出鬼没で宇宙の魔法使いと呼ばれている宇宙人。

 

そのプレッシャーと紅葉、この2人はどういう関係があるのか……。

 

それはかつて任務で紅葉は宇宙のあちこちで悪さを繰り返すプレッシャーを追っていたのだが、一瞬の隙を突かれて紅葉はプレッシャーの魔法によって今までの記憶を失い、赤ん坊に変えられてしまったことがあった。

 

そのせいか一時はオーブリングまで消失してしまった。

 

その後、プレッシャーはそのまま赤ん坊となってしまった紅葉を放置し、それを拾ったのが高坂家のあの夫婦であり、今の母の計らいによって養子となったのだ。

 

だが、紅葉が中学を卒業する頃に記憶が蘇り、記憶を取り戻した為かオーブリングも再び自分の元へと戻り、今現在このような形になっているのだという。

 

ちなみに先ほど語られたプレッシャーは紅葉が記憶を取り戻した際に未だに悪さをしていたそうなのですぐに退治したとか。

 

「それでもまだあんな奴等のマネージャーなんてものをやって付き合って……どうしてそこまで人間に執着するかね?」

 

ラグナはやれやれといった様子で紅葉に呆れた視線をぶつける。

 

「たかが人間如きに惑わされるから、本当の力を失っちまうんだ。 え?」

 

ラグナはそんな紅葉に挑発するように言葉を続ける。

 

「有り難いウルトラマンさんの力を借りなきゃ戦うこともできない。 所詮そんなお前が……闇の力に刃向かおうなんざ愚かにも程があるんだよ!!」

 

ラグナはそう言い放ちながら殴りかかるが紅葉はそれを受け流し、カウンターでラグナの腹部に拳を叩き込んで後退させる。

 

「言いたいことはそれだけか? お前が何を企もうと……俺は人間を守り抜いて見せる!!」

 

紅葉の言葉を受け、ラグナは「おぉ、これまた怖い怖い」とこれまた相手をバカにしたような態度で紅葉の言葉を笑い飛ばす。

 

「どんなに魔王獣を復活させようと6体全て倒した今、お前の本当の目的……『マガオロチ』の復活は不可能だ!!」

 

ラグナの目的……それは「闇ノ魔王獸 マガタノゾーア」「光ノ魔王獸 マガゼットン」「風ノ魔王獸 マガバッサー」「土ノ魔王獸 マガグランドキング」「水ノ魔王獸 マガジャッパ」「火ノ魔王獸 マガパンドン」6体全ての魔王獣の封印を解くことで復活するという魔王獣の頂点に立つ存在。

 

「大魔王獸 マガオロチ」を蘇らせること……なのだが、しかし、6体の魔王獸がいなければマガオロチの封印を解くことは出来ないため、全て倒された今ラグナの目論みは潰えていた。

 

それにも関わらずラグナは余裕の笑みを浮かべていた。

 

「別に……マガオロチを復活させるまでの過程でお前が倒されても俺は構わなかったんだ。 例えマガオロチが復活できなくても、俺のやることは大して変わりはしない」

「……お前は……俺が倒す!!」

「やってみろ……」

 

紅葉はオーブリングを、ラグナはダークリングを互いに向けるように構え、ラグナと紅葉は同時に腰のカードホルダーからそれぞれカードを取り出し、最初にラグナがダークリングにカードをリードさせる。

 

『ガゼラ!』

 

するとダークリングの力によりカードから「工作怪獣 ガゼラ」が出現し、それとほぼ同時に紅葉も「ウルトラマンジャック」のカードを1枚リードさせる。

 

「ジャックさん!!」

『ウルトラマンジャック!』

 

続けて紅葉は「ウルトラマンゼロ」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

「ゼロさん!!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「キレの良いやつ、頼みます!」

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ!』

 

オーブリングの左右が展開され、そこから光が溢れ出し紅葉は「ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ」へと変身を完了させ、ガゼラと対峙する。

 

『光を超えて、闇を斬る!!』

 

戦闘BGM「ハリケーンスラッシュのテーマ」

 

オーブは素早くガゼラに接近し、すぐさまガゼラの弱点でもある胸部につけられた「増幅器」を攻撃しようと風を纏わせた蹴りを繰り出そうとするのだがガゼラはオーブの蹴りを左腕で受け流し、その巨大な右拳でオーブを殴りつける。

 

『シュア!?』

「キシャアアアア!!!!」

 

そのままオーブに口から火炎「モンスターファイヤー」を放って攻撃し……オーブはこれをバク転して回避するのだが、ガゼラは攻撃を一度中断すると高くジャンプしてオーブの背後に回り込み、振り返って再び火炎を吐いてオーブの背中に直撃させ、それにオーブは膝を突いてしまう。

 

そのままガゼラは後ろから膝を突くオーブを強く蹴り飛ばし、オーブは地面を転がるがなんとか立ち上がって頭部のスラッガーから放つ刃「オーブスラッガーショット」を自在に操り、ガゼラの胸部を狙って放つのだが……。

 

『オーブスラッガーショット!!』

 

ラグナはさらにそこで新たなカードを取り出してダークリングにリードさせ、ダークリングをガゼラに向けるとダークリングから紫色のエネルギーが放たれ、それがガゼラに直撃するとガゼラが一瞬紫に輝く。

 

「グアアアア!!!!」

 

そしてオーブスラッガーショットはガゼラの弱点でもある胸部の増幅装置に見事に直撃したのだが……直撃したにも関わらず増幅器は外れも壊れもせず全くの無傷でそのことにオーブは驚く様子を見せる。

 

さらに攻撃を受けたことによりガゼラの「攻撃を受けるほどそのエネルギーを吸収してパワーアップ」する能力が発動してしまい、ガゼラはより一層強力となったパンチをオーブに叩き込み、オーブは身体から火花を散らして吹き飛ばされる。

 

『ウグアアア!!!?』

 

吹き飛ばされ、地面に倒れるオーブを見てラグナは愉快そうに笑う。

 

「フハハ♪ 甘いな、お前のことだ。 ガゼラの弱点を狙って来ることは分かってた。 それに俺がなんの対策もしていなかったと思うか?」

『どういうことだ……!?』

「今使ったカード……それはあの金髪の女から奪った『マイナスエネルギー』のカードだ」

 

ラグナのその「金髪の女」という言葉と、ラグナの口ぶりから自分もラグナも知っている人物ということですぐにオーブは彼が絵里のことを言っているのだと理解した。

 

『彼女になにをした!?』

「別に、ただ俺はあの女の持ってるマイナスエネルギーを頂戴しただけさ」

『生徒会長がマイナスエネルギーを……? まさか、この前現れたあの怪獣は……』

「そう、あの女が生み出した」

 

それを聞いてオーブは「どうして……」と思ったが考えて見れば絵里は学校を想う気持ちは穂乃果達にだって負けておらず、学校のことを大切にしている。

 

だが突然の「廃校の知らせ」で大切な学校が無くなってしまうことを知った彼女は穂乃果と同じように、もしかしたら顔に出さないだけでそれ以上にショックだったのかもしれない。

 

「それだけじゃない、あいつは自分の気持ちに嘘をついてる。 それもマイナスエネルギーとなった原因の1つだ」

『自分の気持ちに、嘘を……』

 

そして穂乃果達が順調に結果を出していく中、自分は学校のために何かしたいのに中々それができないというもどかしさ……そしてなにより……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、屋上から出ていった絵里は今はただ黙ってどこか浮かない顔で亜里砂や穂乃果が言っていた言葉を思い出しながら歩いていた。

 

『これがお姉ちゃんのやりたいこと?』

『やりたいからです!!』

『私ね、μ'sのライブ見てると胸がカーって熱くなるの! 一生懸命で、めいいっぱい楽しそうで!』

 

そこで絵里が足を止めて下を向いていると後ろから不意に希から声をかけられ、彼女は慌てて希の方へと振り返る。

 

「ウチな、えりちと友達になって生徒会やってきてずーっと思ってたことがあるんや。 えりちは本当は何がしたいんやろうって」

「えっ?」

「一緒にいると、分かるんよ? えりちが頑張るのは何時も誰かの為ばっかりで……。 だから、何時も何かを我慢しているようで全然自分のことは考えなくて!!」

 

希にそう言われ続け、途中で彼女は強く言葉を発し、それを聞いて絵里は唇を噛み締めてそこから逃げ出すように立ち去ろうとするが……。

 

「学校を存続させようって言うのも生徒会長としての義務感やろ!! だから理事長はえりちのことを認めなかったんと違う!? えりちは……えりちの本当にやりたいことは!?」

 

希のその言葉に絵里は何も言い返すことができず、すると外からダンスの練習をする穂乃果達の声が聞こえ、絵里はそれを聞くと希に怒鳴るように言い放つ。

 

「何よ……。 なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!! 私だって好きなことだけやってそれだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよ!!」

 

そう強く叫ぶ絵里はその瞳から涙を流し、彼女は悲しそうに……絞り出すように声をあげる。

 

「私が不器用なのは分かってる! でも、今更アイドルを始めようだなんて私が言えると思う?」

「えりち!」

 

それだけを言い放つと絵里は走ってその場を去って行き……希と十分距離を離したところで人気のない場所で突如、彼女はフラついて膝を突き、胸を苦しそうに押さえ込み始めたのだ。

 

「うぐ……くっ!?」

 

しかし、すぐに胸の苦しみは無くなり……絵里は不思議に思いつつも立ち上がってそのままどこかへと立ち去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、オーブとガゼラが戦う場所では……。

 

『そうか、薄々感じていたが……やりたいことをやれない、自分の気持ちに嘘をつく悲しみ……それが会長のマイナスエネルギーになったのか。 会長は……もしかしたら本当は穂乃果達と一緒に……』

「その通り。 だがそれだけじゃない!! あの女のマイナスエネルギーはあの女の命とリンクしている! つまり、ガゼラは本来の能力で攻撃すればするほどパワーアップするだけじゃなく、あの女の身体にもダメージを通るようにしてある!! 例えガゼラを倒す事が出来たとしてもその時はあの女の命もなぁい!!」

 

それを聞いたオーブは「なに!?」と驚き動揺する様子を見せ、その隙を突かれてガゼラはオーブを殴り飛ばし、吹き飛ばされたオーブはうつ伏せに倒れ込む。

 

『ラグナ……!! お前……なんて卑怯な手を!!』

「所詮人間なんてその程度だ!! 弱くて弱くて仕方が無い! そんなちっぽけなものなんてさっさと手放せば良いものを……!」

 

オーブはどうにか立ち上がろうとするがそこにガゼラがオーブの腹部に蹴りを叩き込み、オーブを仰向けにするとガゼラそのまま足で何度もオーブを踏みつける。

 

「そこまでされてもまだ反撃しないか。 たかが人間1人すら犠牲にできないとは……お前にはとことん失望したよ。 一気に決めてしまえ!! ガゼ……うがぁ!!?」

 

ラグナはガゼラに指示して一気にオーブを倒そうとしたその時、突然、彼は背中を誰かが放った銃弾が直撃したのだ。

 

後ろを振り返るとそこにはレクターとナグスが立っており、ラグナは「貴様等ァ……!」強く睨み付ける。

 

『まさか俺の名を知らなかった訳じゃねえよなァ? 俺は暗殺宇宙人 ナックル星人のナグス様だぜ?』

『申し訳ありませんが……あなたには死んで貰います。 あぁ、心配しないでください。 あなたが用意してくれた特別仕様のガゼラを使ってちゃんとオーブも倒しますので?』

 

するとナグスは銃を構えてさらにもう1発銃弾をラグナの胸に向かって放ち、ラグナの胸を撃ち抜くと彼はガゼラを押しのけ、どうにか立ち上がったオーブの方へと振り返り、オーブもラグナの視線に気づき、互いに目が合うと……ラグナはオーブに向かってニヤリと笑みを浮かべる。

 

『っ……! ラグナ!!』

 

そしてラグナは両手を広げて倒れ込み、爆発したのだった。

 

『フハハハハ!! やりましたぜ!! ドン・ノストラ!!』

『ご苦労、後はウルトラマンオーブを倒し、奴から全てのウルトラマンのカードを奪い取れ!!』

 

ナグスとレクターはノストラの指示に従い、ナグスは1枚のカードを取り出してそれを空中へと投げ、銃で撃ち抜くとカードは紫色に輝き、黒い身体の怪獣……「用心棒怪獣 ブラックキング」へと実体化して出現し、それに合わせるようにナグスとレクターも巨大化する。

 

『っしゃあ!! オーブをリンチだリンチ!! 行け!! ブラックキングにガゼラ!!』

『リンチとはまさにザ・悪党って感じがして良いですねぇ!』

 

ガゼラとブラックキングはオーブに向かって駈け出し、左右からオーブの腕を掴み取るとオーブの動きを封じ、ナグスとレクターは動きを封じられたオーブに向かって殴る蹴るといった攻撃を次々に加え始める。

 

『グゥ……ウア!!? お前達、絶対に許しはしない!!』

『昔の仲間を殺されてお怒りですか? オーブ? すぐにあなたも彼の元へと送ってあげます!!』

 

レクターは右腕の盾から剣を出してオーブの身体をX字に斬りつけ、その後はガゼラとブラックキングはオーブを投げ飛ばすとそのままオーブに2体の怪獣は口から火炎を吐きだして攻撃する。

 

『グゥ!?』

 

カラータイマーも点滅するオーブ、しかしこのままやられてばかりではいられないため、なるべくガゼラへの攻撃自体は避けて他の3体を優先的に倒そうとオーブはオーブスラッガーランスを出現させる。

 

『オーブスラッガーランス!!』

 

オーブはジャンプして先ずはナグスから攻撃しようとオーブスラッガーランスを振りかざすのだが……そこを割り込むようにガゼラが入り込み、オーブはオーブスラッガーランスを振り下ろすのを直前で止めてしまった。

 

「グルアアアア!!!!」

 

そのままガゼラの巨大な拳にオーブは殴りつけられてしまう。

 

『ウオ!?』

『フッハッハッハ!! もう諦めなオーブ! お前に勝ち目はねえ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、場所は音ノ木坂の学校。

 

自分の教室に戻ってきた絵里は自分の席に座って窓を見つめて黄昏れていた。

 

すると不意にまたあの胸の痛みが突然訪れ、彼女は胸を押さえて苦しむが……すぐに痛みは治まり、絵里は「病院行った方がいいかしら?」と少し不安そうな表情を浮かべる。

 

だが今はなんだかまだ窓の外を見つめていたい気分で彼女は再び窓の外を希や亜里砂に言われたことを思い出しながら見つめ始める。

 

「私の、やりたいこと……。 そんなもの!」

 

するとその時のことである、突然……彼女に誰かが手を差し伸べてきたのだ。

 

そのことに絵里は驚きつつも手を差し伸べて来たのが誰なのかを確認するため、顔振り向かせるとそこには笑みを浮かべる穂乃果と彼女以外のμ'sのメンバー、そして希がいつの間にかその場に立っていたのだ。

 

「あなた達……」

「生徒会長!! いや、絵里先輩! お願いがあります!」

「練習? なら昨日言った課題を全部こなして……!」

 

絵里がそこまで言いかけた時、次の瞬間穂乃果の口から出た言葉は絵里に取っては意外なものだった。

 

「絵里先輩!! μ'sに入ってください!」

「……えっ?」

「一緒にμ'sで歌って欲しいです!! スクールアイドルとして!!」

 

満面の笑みを浮かべながら絵里をμ'sに誘う穂乃果に絵里は戸惑いつつも「なに言ってるの? 私がそんなことする訳ないでしょ!?」と拒否しようとするが……。

 

「さっき希先輩から聞きました!」

 

そう海未に言われ、絵里は「えっ?」と首を傾げる。

 

「やりたいなら素直に言いなさいよ?」

「にこ先輩には言われたくないけど?」

 

そんなにこと真姫の言葉を聞いて「ちょっと待って!」と声をあげる絵里。

 

「別にやりたいなんて……! 大体、私がアイドルなんておかしいでしょ?」

 

しかしそんな絵里に対し希は……。

 

「やってみれば良いやん? 特に理由なんか必要ない、やりたいからやってみる。 本当にやりたいことって……そんな感じで始まるんやない?」

 

絵里に笑みを向けながらそう語りかける希、そんな希に同意するようにほかのみんなも笑顔を絵里に向け、海未が絵里の両肩をそっと掴む。

 

そしてもう1度穂乃果は絵里に手を伸べ……絵里は唇を噛みしめながらも……戸惑いながらもその手を、掴み取ったのだった。

 

「……っ」

 

それは絵里のμ'sへの加入を意味しており、彼女が自分の手を取ってくれたことに穂乃果は嬉しそうに笑顔を見せる。

 

「絵里さん……!」

「これで8人!」

 

ことりがそう言ったその時のことである。

 

「いや、9人や。 ウチを入れて?」

 

希の突然のその言葉に穂乃果は少し驚く顔を見せる。

 

「占いで出てたんや、このグループは9人になった時未来が開けるって。 だからつけたん、9人の歌の女神……『μ's』って」

 

その希の言葉に全員が「えっ?」と驚きの声をあげ、つまりはμ'sの名づけ親……それは希であり、穂乃果は「じゃあμ'sってつけてくれたの希先輩だったんですか!?」と尋ねると、希はただ「ふふふ」と笑って答えるのだった。

 

「希……。 全く、呆れるわ」

 

そんな希に絵里は苦笑した後、彼女はどこかに行こうと歩きだす。

 

(病院に行くのは、もう少し後でも良いわね)

 

そしてどこかに歩き出そうとする絵里に海未が「どこへ!?」と尋ねると絵里は力強く答えた。

 

「決まってるでしょ? 練習よ!」

 

その言葉に穂乃果たちは嬉しくなり、みんなで一斉に「やったああああ!!!!」と声をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同じころ、ガゼラに与えられていた絵里のマイナスエネルギー突如として身体から抜け出すように消失し、突然のことにガゼラは戸惑いの色を見せる。

 

『お、オイオイ! なんだどうした!?』

『これは……ガゼラに与えられていたマイナスエネルギーが消失した!? いや、ですがこちらはまだ4対1! 勝算はあります!!』

 

またガゼラの身体の中から絵里のマイナスエネルギーが無くなったことに気づいたオーブは今こそ反撃のチャンスだと思い紅葉は新たなカード……赤き獅子の戦士「ウルトラマンレオ」をオーブリングにリードさせる。

 

『レオさん!!』

『ウルトラマンレオ!』

 

さらに紅葉は「ウルトラマンゼロ」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『ゼロさん!!』

『ウルトラマンゼロ!』

 

そしてオーブリングを天高く掲げる。

 

『師弟の力、お借りします!!』

『フュージョンアップ!』

 

紅葉を中心にウルトラマンレオとウルトラマンゼロの姿が重なり合い、オーブは2人の力を合わせた「ウルトラマンオーブ レオゼロナックル」へと変身を完了させる。

 

『ウルトラマンオーブ! レオゼロナックル!』

『宇宙拳法、ビッグバン!!』

 

ナグスは兎に角銃を構えて銃弾をオーブに向かって放つが、オーブは銃弾を拳を弾きながら一気に素早く接近して詰め寄ると高速で何発もの拳をナグスの腹部に叩き込み、最後に回し蹴りを喰らわせる。

 

『ぐあ!!?』

 

しかしそこにブラックキングが突進して来るがオーブは振り返りざまに両手に炎を宿しその手の手刀で相手を切り裂く「レオゼロビッグバン」をブラックキングに繰り出し、ブラックキングの角を破壊する。

 

『レオゼロビッグバン!!』

「グルゥ!! グギャアア!!!!』

 

ダメージを受けながらもブラックキングはどうにか反撃しようと口から火炎「ヘルマグマ」を吐き出すがオーブはバク転して回避しそのままガゼラに近づき、増幅器に拳を叩き込もうとするがガゼラはそれを右腕で受け止め、口から火炎を吐いてオーブに直撃させる。

 

『グゥ!!?』

「ギシャアアア!!!!」

 

そのままガゼラはオーブを蹴りつけ、右拳で殴りつけようとするがオーブはそれを掴んで受け止める。

 

しかしその隙を突いて背中をレクターに剣で斬りつけられ、オーブは膝を突いてしまうが……。

 

『ウグ……! ウオオオオオ!!!!!』

 

オーブは根性を出して立ち上がってガゼラの腕を押し退かすと胸部の増幅器を掴みあげ……それを無理矢理引き剥がしたのだ。

 

「グオ!!?」

『シュア!!』

 

そのままオーブは右ストレートをガゼラの顔面に繰り出し、素早く振り返るとブラックキングとナグスが銃弾と火炎を自分に向けて発射してきており、オーブはそれをジャンプして回避する。

 

そのままガゼラの背後に回り込み、ガゼラは慌てて振り返るが即座にオーブのアッパーカットを繰り出して殴り飛ばされ、額から放つ必殺光線……「ナックルクロスビーム」を発射。

 

『ナックルクロスビーム!!』

「ギジャアアアア!!!!?」

 

それの直撃を受けたガゼラは火花を上げ、倒れ込んで爆発したのだった。

 

『おのれぇ~!! ガゼラがいなくともぉ!!』

 

今度はレクターがオーブに向かって行くがオーブはジャンプして右足に炎を宿し、身体を回転させて相手にスピンキックを繰り出す「レオゼロスピンキック」をレクターへと放ち、レクターは急いで盾で防ごうとするがオーブのキックは盾ごとレクターの身体を貫き……レクターは火花を散らして爆発したのだった。

 

『ぐぅ、ぬああああああああ!!!!?』

『レクター!!』

 

さらにオーブの中にいる紅葉は「ウルトラマンタロウ」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『タロウさん!!』

『ウルトラマンタロウ!』

 

続いて紅葉は「ウルトラマンメビウス」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『メビウスさん!!』

『ウルトラマンメビウス!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『熱いやつ、頼みます!』

『フュージョンアップ!』

 

ウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスの姿が紅葉を中心に重なり合い、オーブは2人の力を合わせた「ウルトラマンオーブ バーンマイト」へと変身を完了させる。

 

『ウルトラマンオーブ! バーンマイト!』

『紅に、燃えるぜ!!』

 

変身完了させるとほぼ同時に空中で何度もひねりや回転を加えてから繰り出す「スワローキック」をブラックキングに繰り出すがブラックキングは両腕を交差して攻撃を防ぎ、押し返す。

 

さらにブラックキングは口からヘルマグマを放つがその炎をオーブは片手で受け止め、炎を拳に宿して放つカウンターブロー「ストビュームカウンター」をブラックキングに炸裂させ、ブラックキングは大きく吹き飛ばされる。

 

オーブは倒れ込んだブラックキングに追撃しようとするがそうはさせまいとナグスが跳び蹴りをオーブに叩き込み、さらに立ち上がったブラックキングは再びヘルマグマを放ってオーブを攻撃する。

 

そこにナグスも銃を構えて光弾を発射し、2体の攻撃を受け続けるオーブ。

 

そこで紅葉は新たなカードを取り出してオーブリングにリードさせると、カードから力に優れた赤い戦士「ウルトラマンティガ パワータイプ」が現れる。

 

『ティガさん!』

『ウルトラマンティガ パワータイプ!』

 

さらに紅葉は別のカードをオーブリングにリードすると今度はティガと同じく力に優れた赤い姿の「ウルトラマンダイナ ストロングタイプ」が現れる。

 

『ダイナさん!』

『ウルトラマンダイナ ストロングタイプ!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『力強いやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! パワーストロング!』

 

するとティガとダイナの姿が重なり合い、オーブは赤と黒の筋肉質な姿である「ウルトラマンオーブ パワーストロング」に姿を変える。

 

『光の剛力に敵は無い!!』

 

パワーストロングとなったオーブはブラックキングとナグスの攻撃をノーガードで受け続けながらも真っ直ぐナグスに向かって駆け出し、それにナグスは戸惑いつつもこちらに向かって来るオーブに拳を放つ。

 

だが、その拳はあっさりとオーブに掴みあげられるとそのままナグスは地面をビタンビタンっと勢いよく叩きつけられ、最後に思いっきり投げ飛ばされる。

 

『ぬあああ!!!?』

 

ブラックキングもオーブに向かって駈け出し、攻撃を仕掛けようとするがそれよりも早く、オーブはその強烈な拳をブラックキングに叩き込み、吹き飛ばす。

 

『デヤアアア!!!』

「ギシャアアア!!!!?」

 

吹き飛ばされたブラックキングはナグスと激突して倒れ込み、オーブは赤い光球を生み出して相手に飛ばす必殺の「ガルラシウムボンバー」を放つ。

 

『ガルラシウムボンバー!!!!』

 

ナグスは慌てて立ち上がってブラックキングを無理矢理起こして盾にし、ブラックキングはオーブの技を受けて火花を散らし、爆発して倒されるのだった。

 

「グルアアアアア!!!!?」

 

そしてブラックキングが爆発する際にナグスは一目散に撤退し、その場から姿を消した。

 

『はぁ……はぁ……』

 

それからブラックキングを倒したオーブはラグナの倒れた場所を見つめ、悲しげな声で「ラグナ……」と彼の名を小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉は戦いのダメージでフラつきながらもなんとか学校に戻り、穂乃果達が練習しているであろう屋上へと訪れていた。

 

しかし、階段を上っている途中……後少しというところで躓いてしまい、彼は少しだけ休もうとその場に座り込んでしまう。

 

「あれ? お兄ちゃん?」

「……穂乃果……」

 

だが丁度そこに休憩に入った穂乃果が現れ、彼女の顔を見ると紅葉はホッとした表情を浮かべた。

 

「どうしたの? 何か用事があったんじゃないの? ってお兄ちゃんよく見ると凄い汗じゃん!!? 大丈夫!!? 顔色も悪いよ!!?」

 

穂乃果は紅葉の隣に座り込んで心配そうに彼の顔を覗き込み、紅葉はそんな彼女の頭を優しく撫でる。

 

「心配ない。 ちょっと走ってただけだから。 それよりもさ、もしかしてなんだけど……生徒会長μ'sに加入とかした?」

「えぇ!? なんで分かったの!? お兄ちゃんエスパー!?」

「それ前にも海未に言ってたな。 俺の場合は何となくだよ、何となく。 でもその反応からして会長入ったんだな」

 

紅葉のその言葉に穂乃果はどこか嬉しそうに「うん!」と頷く。

 

「絵里先輩がμ'sに入りたいと思ってるって希先輩から聞いたから……だから、私達みんなで誘いに行ったんだ!! 一緒にスクールアイドルやってくださいって!!」

「そうか、ありがとな……」

 

紅葉はもう1度穂乃果の頭を撫でるが、彼女には彼が自分にお礼を言う理由が分からず「なんでお兄ちゃんがお礼言うの?」と不思議に思うが……。

 

紅葉は笑って誤魔化すだけで何も答えようとはしなかったが……それでも悪い気は穂乃果はしなかったのだった。

 

「えへへ♪ もっと撫でて~お兄ちゃぁ~ん♪」

「お安いご用で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ノストラ達のいる宇宙船では……。

 

『よくやった。 リフレクト星人は犠牲になり、ウルトラマンオーブは仕留め損なったが十分過ぎる収穫だ。 ラグナは死に6枚の魔王獸のカードは全て揃った』

『フン、呆気ない最後でしたぜ?』

『愚かな奴だ、私がミスミス強大なあのカードを手放すと思ったか?』

 

そこでナグスは「その7枚のカードを使って早速地球に攻撃しましょう!!」と提案するのだが……。

 

『ぬがあ!!?』

『っ!?』

 

突如、「ズギャア!!」という音が聞こえるとナグスは崩れるように倒れ込み、そこに死んだと思われた筈のラグナが日本刀に似た剣……「蛇心剣」を持って立っていたのだ。

 

『ラグナ!!? 貴様!! なぜ生きている!? 確かにナックル星人がお前の心臓を!!?』

「策士策に溺れるとはまさにこのことですねぇ? ドン・ノストラ?」

 

ラグナは「宇宙大怪獣 ベムスター」のカードを取り出し、それを見てノストラはベムスターの腹部の「なんでも飲み込む」能力を使い、ナグスの銃弾を吸収していたのだと気づく。

 

『おのれぇ~!!』

 

ノストラは腕を伸ばしてそこから青い光線をラグナに向けて放つが……。

 

ラグナは蛇心剣で光線を受け止めそのまま蛇心剣を振るって光線をかき消すと彼は黒いオーラのようなものに包まれ、鬼のような姿……「無幻魔人 ラグナ」へと姿を変えたのだ。

 

戦闘BGM「ジャグラーのテーマ」

 

するとそこへ騒ぎを聞きつけたタルデとテルスが駆けつけ、タルデとテルスはすぐにラグナと倒れているナグスに気づく。

 

『貴様! 死んだ筈では!!』

 

テルスはラグナに戦いを挑もうとして殴りかかるがあっさりと拳を掴まれて押し返され、後ろに回り込まれて蛇心剣でテルスは背中を斬りつけられる。

 

『ぐあああ!!?』

 

タルデもすぐに攻撃を仕掛けようとするがラグナは蛇心剣の刀身を赤く発光させて伸ばすとタルデにそのまま素早く接近して蛇心剣を掲げ、タルデを縦一線に切り裂き、彼は火花を散らして倒れ込む。

 

『ぬああああ!!?』

『くっ! 貴様ぁ!!』

 

ノストラもラグナに戦いを挑もうとするがラグナはすれ違いざまに蛇心剣でノストラを斬りつけ、そのまま背中から蛇心剣を突き刺し、身体中から火花を散らして断末魔を上げながら爆発したのだった。

 

『ぐっ、ぐあああああ!!!!?』

 

その際に、6枚の魔王獸のカードもラグナの手に戻り……さらにノストラが所持していた「ウルトラマンベリアル」のカードもラグナは手に入れたのだ。

 

『遂に来たか……。 最後のカード。 フフフ……フッハッハッハ!! ハァー!! ガホッ! ゴホォ!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてオープンキャンパス当日、9人となったμ'sはグランドでライブをやることとなり、そこにはそれなりの人数がライブを観に来てくれていたのだった。

 

その中には雪穂や亜里砂の姿も確認できる。

 

「皆さんこんにちわ! 私達は音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sです!! 私達はこの音ノ木坂学院が大好きです!! この学校だから、このメンバーと出会い、9人が揃ったんだと思います! これからやる曲は私達が9人になって初めてできた曲です!! 私達の、スタートの曲です!!」

 

穂乃果がそう言い放った後、今度は全員で「聞いてください!!」と言い放つ。

 

そしてライブが始まり……ライブの曲は……。

 

『僕らのLIVE 君とのLIFE!!』

 

それからライブは何事も無く無事に終了し、オープンキャンパスに来ていた中学の生徒達も拍手喝采で穂乃果達はとても満足したような顔を浮かべていた。

 

勿論、紅葉もしっかりと穂乃果達のライブに来ており、穂乃果が紅葉と目が合うと彼女はニッとした笑顔でVサインし、紅葉も同じように笑ってVサインするのだった。




紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!」

穂乃果
「イェーイ!!」

紅葉
「っていうか先ずアレだよな、遂に9人揃ったな!!」

穂乃果
「うん!! こんなにもスクールアイドル一緒にやってくれる人が出来て私嬉しいよ!!」

にこ
「まぁ、気持ちは分かるわね、私も。 それよりほら、サブタイの発表行くわよ」

紅葉
「今回のサブタイは穂乃果の『身体中痛いです!』辺りにある俺の台詞、ウルトラマンX第2話『可能性のかたまり』だ!!」


穂乃果ちゃんを妹キャラにしたかった、絶対似合うから。
でも紅葉と血の繋がった兄妹にしてしまうと話として難しくなってしまうし、ラグナとの因縁も描きにくくなる。
そうして考えたのが、この設定です。


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高坂穂乃果誕生日記念

穂乃果ちゃん、誕生日おめでとう!!
短くてすいません。



高坂家の穂乃果の部屋・・・・・・。

 

そこでは今日、紅葉に「えへへ~♪」と嬉しそうな笑顔を浮かべて膝枕をして貰っている穂乃果の姿があるのだった。

 

「穂乃果、本当にこんなので良いのか?」

「うん!! これで良いの!!」

 

なぜ、こんなことをしているか・・・・・・それにはちゃんとした理由がある。

 

それは今日が・・・・・・8月3日、穂乃果の誕生日だからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間前、穂乃果が突然ドタドタと階段を駆け上がって紅葉の部屋にやってきた時だった。

 

彼女は勢いよく部屋の扉を開いて部屋でくつろいでいた紅葉にいきなり抱きつき、そのことに紅葉は少し驚いたが割と何時ものことなので取りあえず頭を撫でることに。

 

「くぅ~ん」

「なんで犬みたいな声出してんだ? 可愛いけどさ。 っていうか俺に何か用があったんじゃないのか?」

 

紅葉がそう尋ねると穂乃果は「そうだ!!」と一度紅葉から離れて真剣な顔つきとなり、それに紅葉は「なにか大切な話なんだろうか」と首を傾げる。

 

「あのね! 一週間後の穂乃果の誕生日のことなんだけど・・・・・・」

「うん? なんか欲しいもんでもあるのか?」

「ううん、物が欲しいんじゃなくてね・・・・・・あのね! その日はお兄ちゃんにとことん甘えたいの!」

 

それを聞いて紅葉は「いつも甘えてね?」と疑問を口にするが、穂乃果は首を横にブンブン振って「違うよ!」と否定する。

 

「いつもよりずっと、ずぅーっと甘えたいの!! ダメ、かな・・・・・・?」

「まぁ、よく分からんが・・・・・・お前がそうしたいなら別に構わないぞ?」

「ホント!? やったー!!」

 

紅葉からの許可が出て穂乃果は両手を広げて嬉しそうにし、穂乃果は「お兄ちゃんありがと!!」と抱きつき、紅葉はそんな穂乃果に苦笑しつつ彼女の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして丁度一週間後、部室で他のμ'sメンバーと一緒に穂乃果の誕生日を祝った後、冒頭へと繋がるのだった。

 

「やっぱり何時もと変わらない気もするなぁ」

「そんなことないよぉ!」

 

すると穂乃果は起き上がって立ち上がるとそのまま紅葉の足の上にぽすんっと乗っかり、紅葉の両手を掴んで自分を抱きしめるような形にする。

 

「えへへ♪」

「うっ・・・・・・なんかこっちが恥ずかしくなる。 っていうか穂乃果ももう少しくらい恥ずかしがっても良いと思う」

「穂乃果だってホントはちょっと恥ずかしいんだよ? でもね、それ以上に・・・・・・今日はお兄ちゃんに凄く甘えたいんだ」

 

穂乃果は嬉しそうにそう語りながら紅葉の右手を握りしめ、紅葉はそれに少し照れ臭そうにしつつも左手で穂乃果の頭を撫でるのだった。

 

「ねえ、お兄ちゃん・・・・・・久しぶりにあれやりたいなぁ」

「あれか、分かった」

 

紅葉は穂乃果の言葉に頷いてオーブニカを取り出すと彼はオーブニカに口を当ててメロディーを流し、それに合わせて穂乃果も歌を口ずさむ。

 

「ラララララ~♪ ララララ~♪」

 

曲が終わると、穂乃果は凄く満足したような顔を浮かべており、それに紅葉もどことなく楽しそうだった。

 

「お兄ちゃんといるとね、私、なんだか凄く安心するんだ・・・・・・」

「俺もだよ、お前といると、妙に落ち着ける。 本当だったら赤の他人なのに・・・・・・なんでだろうな?」

「他人なんかじゃないよ、お兄ちゃんは・・・・・・穂乃果のお兄ちゃんだよ! 血なんて繋がってなくてもね!」

「そっか」

 

穂乃果にそう言われた紅葉は薄らと笑みを浮かべ、今度は自分の意思で穂乃果を抱きしめるのだった。

 

「お兄ちゃん・・・・・・」

「んっ?」

「大好きっ!」

 

すると彼女はそう言いながら今度は向き合うように体勢を変えて紅葉の腰に手を回して抱きつき、頭を彼の胸に埋めてスリスリしてくる。

 

「えへへ~♪ おにいちゃぁ~ん♪」

「っ・・・・・・」

 

甘い声を出しながら、頭をスリスリしてくる攻撃に戸惑う紅葉。

 

それに気恥ずかしさを感じたのか、紅葉の顔は徐々に赤くなってくる。

 

「顔真っ赤だよ? お兄ちゃん?」

「誰のせいだと思って・・・・・・!!」

 

取りあえず一旦離れて貰おうと両手で穂乃果の肩を掴むのだが、穂乃果は「やっ!」と言って前のめりになってそのまま紅葉を押し倒し、それに紅葉は「なにするんだ!?」と怒るのだが・・・・・・。

 

「今日はお兄ちゃんにいっぱい甘えて良いってOKしてくれたのお兄ちゃんだよ? だから穂乃果の好きにするの!」

 

うるっとした瞳で上目遣いに見て来る穂乃果に、紅葉は思わず押し黙ってしまい、穂乃果はそのままゆっくりと自分の顔を紅葉の顔に近づけてくる。

 

「ちょっ、穂乃果・・・・・・!? お前なにして・・・・・・!!」

 

紅葉は慌てて穂乃果を力尽くで押し退かそうと思ったが、それよりも早く、穂乃果は自身の唇を「チュッ♪」っと紅葉の・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬にキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ・・・・・・?」

「ビックリした? これはこの前、あの宇宙人から助けてくれたお礼だよお兄ちゃん!」

 

「してやったり」といった顔を浮かべる穂乃果に、紅葉は「はぁ・・・・・・」と溜め息を吐き、グデーっと床に倒れ込む。

 

「全くお前って奴は・・・・・・」

 

紅葉はそんな穂乃果に呆れながらも彼女の頭を撫で、穂乃果は「えへへ~♪」と笑いながら紅葉の胸に頬ずりをするのだった。

 



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第10話 『ブラックスター・メイドカフェ』

オープンキャンパスから数日後、学校は放課後となり穂乃果はかなりの上機嫌な様子で廊下をクルクルと回転。

 

そのまま海未とことり、紅葉の姿を見るや否や彼女は3人に抱きついてくる。

 

「海未ちゃ~ん! ことりちゃ~ん! お兄ちゃ~ん! 凄いよ!! ビッグニュース!!」

「おう!? ど、どうした穂乃果!?」

「えへへ~! それは部室についてからちゃんと話すね~!」

 

そして場所は部室へと移り、穂乃果からのそのビッグニュースはそこでみんなで聞くことに。

 

ちなみに今部室には2年組とりんぱなの合計6人が来ている。

 

なんでも穂乃果が言うビッグニュースとは前回のオープンキャンパスのアンケートの結果はかなり好評だったらしく、廃校の決定はもう少し様子を見てからとのことだった。

 

恐らくは前回の彼女達のライブのおかげだろう。

 

「それって!!」

「この前見に来てくれた子達が興味を持ってくれたってことだよね!!」

 

海未とことりが嬉しそうにするがどうやらまだ朗報はこれだけではないらしく、穂乃果は部室の横にある扉を開けてドヤっとした表情を見せる。

 

「実はそれだけじゃないんだよ~? 部室が広くなりました~♪」

 

隣の教室の使用ができるようになったことを聞き、これには海未もことりも歓喜の声をあげる。

 

「それなりに広いみたいだし、これなら雨の日でも練習がそれなりに出来るかもな?」

「いやぁ、良かった良かった!」

 

穂乃果は又もや上機嫌な様子で身体をクルクルと回転させて椅子に座り、どことなく満足げ。

 

「満足げなところ悪いが、まだまだやることは沢山あるぞ穂乃果?」

「紅葉くんの言う通りよ。 生徒が沢山入って来ない限り廃校の可能性はまだあるんだから頑張らないと……」

 

とそこへ紅葉の言葉を肯定するように部室に入ってきた絵里がやってくるのだが……彼女が喋っている途中で隣から海未の泣くような声が聞こえ、絵里が顔を横に向けるとなぜか嬉しそうに涙を流す海未の姿が。

 

「うぅ、嬉しいです!! まともなことを言ってくれる人がやっと入ってくれました!」

「オイコラ海未、お前どういう意味だそれ?」

「それじゃ凛達がまともじゃないみたいだけどぉ!」

 

紅葉と凛が海未に文句を言うが海未はそれを華麗にスルー。

 

「っていうか穂乃果の部屋でアイドルの真似してた海未に言われたくn」

「わああああ!!!!!」

 

しようとしたのだが紅葉に以前、花陽が穂むらに訪れた時のことを言われて海未は顔を真っ赤にして大声で叫び、紅葉の言葉を遮るのだった。

 

そこで部室に入ってきた希がそろそろ練習を始めようと言い出したその時、ことりは申し訳無さそうにしつつ今日は練習に出られないと断ったのだ。

 

「ごめん、私はちょっと……。 今日はこれで」

 

それからことりはもう1度みんなに謝罪しつつも部室を出て行き、途中で会ったにこと真姫にも今日は練習に出られないことを謝り、どこか急いだ様子で彼女は学校を出て行くのだった。

 

そんな様子を不思議そうに思う一同……。

 

「んっ~? ことりちゃん、最近早く帰るよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、残ったメンバーは屋上で練習をすることとなり、今は休憩時間。

 

穂乃果と海未と凛はパソコンを開いて何気なく今の自分達のランキングを見てみると……。

 

なんと彼女達は50位とそれなりにランクが上がっており、そのことにパソコンを見ていた3人……特に穂乃果が歓喜の声を思わず漏らしてしまう。

 

「うわぁ~! 50位!? なにこれ!? すごぉい!!」

「夢みたいです!!」

 

花陽もそれを聞いて嬉しそうにしており、あともう少しでラブライブに参加するための20位に近づくことができると穂乃果は興奮した様子を見せる。

 

「凄いわね!」

「絵里先輩が加わったことで女性ファンもついたみたいです!」

 

その海未の言葉に絵里は「えっ?」と首を傾げ、穂乃果はジッと絵里を見つめる。

 

「確かに、背も高いし足も長いし美人だし! 何より大人っぽい!! 流石3年生!!」

「女性だけでなく、おかげで男性ファンも増えただろうしなぁ。 絵里先輩のおかげだね」

「やめてよ……!」

 

ベタ褒めする穂乃果と紅葉に対し顔を赤くして恥ずかしそうにする絵里、するとなぜか思わず穂乃果と紅葉の視線は絵里の後ろにいるにこに映り、穂乃果と紅葉はなんとも言えない顔を浮かべる。

 

「んっ? なに?」

 

穂乃果と紅葉の視線に気づいたにこは2人を睨み付ける。

 

「「いえ、何でも……」」

「フン!」

「でもおっちょこちょいな所もあるんよ? この前なんて玩具のチョコレートを本物と思って食べそうになったり」

 

とそこで希が最近あった絵里の恥ずかしい意外なエピソードが暴露され、絵里は「希!」と少し顔を赤くしつつ怒鳴る。

 

「でもホントに綺麗! よし、ダイエットだ!」

「聞き飽きたにゃ~!」

 

するとそこで「おーい!! 穂乃果~!!」という声が聞こえ、穂乃果と凛、紅葉が声のした方を見てみると下の階手を振っているヒフミトリオの姿があった。

 

「頑張ってねー!!」

「ファイトー!!」

「μ's応援してるよー!!」

 

ヒフミトリオに「ありがとー!!」と大きくを手を振って答える穂乃果。

 

「知り合い?」

「はい! ファーストライブの時から応援してくれてるんです!!」

 

絵里の質問に穂乃果がそう答え、そんな様子を見てか真姫は今思ったことを口にする。

 

「でも、ここからが大変よ? 上に行けば行くほどファンも沢山いる!」

 

確かに真姫の言う通りであり、今から短期間でどうにか順位をあげ、見事20位に割り込むためには何か思いきった手を使う必要もあると絵里は語るのだが……。

 

「それよりも! しなちゃいけないことがあるんじゃない!?」

 

突然のにこのその言葉に一同はなんのことかサッパリ分からず、首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

その後、秋葉原にて……。

 

「あ、あのぉ~。 凄く、熱いんですが……」

 

そこにはにこの提案によってコートを羽織り、マフラーを巻いてサングラスとマスクをつけた穂乃果達がおり、今は夏場であることもあってにこ以外のメンバーは少ししんどそうだった。

 

「我慢しなさい! これがアイドルに生きる者の道よ!! 有名人なら有名人らしく街で紛れる格好ってものがあるの!!」

「でもこれは……」

「逆に目立っているかと……」

 

絵里と海未がそれぞれそう口にし、確かに2人の言う通り絶対に変装前よりどう見ても目立っており、街の人々からの視線もかなりある。

 

真姫に関しては「バカバカしい!!」と文句を言っている。

 

「っていうかなぜ俺まで……」

 

その中にはなぜかアイドルではなく、マネージャーを務めている筈の紅葉も穂乃果達と同じような格好をさせられていた。

 

「マネージャーからアシがつく可能性があるでしょうが!!」

「成程! そういうことでしたか、にこ先輩! でもマスクとサングラスはまだしもワザワザ夏場に厚着する必要はないと思うんですよ!!」

「あるわよ!! え、えっと……そうね、例えば……」

 

紅葉の質問に対してにこはどうにか答えようとするのだが、言葉に詰まってしまい、紅葉から「やっぱり厚着自体は必要ないじゃないですか」と言われてしまう。

 

「と、兎に角!! 例えプライベートであっても常に見られてることを意識する!! トップアイドルを目指すならば当たり前よ!!」

 

しかし穂乃果はイマイチよく分からないと思いつつも取りあえずは「はぁ……」と返事をする。

 

するとその時、凛の「凄いにゃ!!」という声と花陽の嬉しそうな声が聞こえ、一同は2人の声のした方に視線を映すとそこには1つの店があり、2人の声はその中から聞こえ、穂乃果達は2人を追うようにその中へと入っていく。

 

「いつの間にあの2人いなくなってたんだ? ってか花陽ちゃん凄い嬉しそうな声出すな」

 

苦笑しながら紅葉は2人を探して花陽と凛を見つけると2人の目の前にはA-RISEのグッズが置かれてあり、花陽はそれを見て目をキラキラさせていた。

 

「なにここ?」

「近くに住んでる癖に知らないの!? 最近オープンした、スクールアイドルの専門ショップよ!」

 

穂乃果の疑問に答えるようににこは穂乃果にスクールアイドルショップのこの店のことを説明し、こんな店があったのかと絵里も驚きの様子を見せており、希も「まぁ、ラブライブがあるくらいだし」と呟く。

 

「とはいえ、まだ秋葉に数件あるくらいだけど」

「流石にこ先輩、詳しいですね」

「当然よ!!」

 

紅葉に褒められ、にこは誇らしげに胸を張る。

 

「ねえ見てみて~! この缶バッジの娘、可愛いよ~! まるでかよちん! そっくりだにゃ!!」

 

とそこへ凛が1つの缶バッジを持って来て穂乃果、紅葉、にこに見せるように言うのだが……。

 

その缶バッジに映っているアイドルはかよちんも何も誰がどう見ても……。

 

「どう見てもご本人様ですね」

 

花陽であり、紅葉は缶バッジと花陽を交互に見て間違いなくご本人であることを確認し、にこも穂乃果もすぐにそれが花陽であることに気づき、それを教えられて凛は「えー!!?」と驚きの声をあげる。

 

紅葉はそれがどこにあったのか凛に案内して貰うとそこには「人気爆発中 μ's コーナー」と書かれた看板があり、その下の棚には大量のμ'sのグッズが置かれていた。

 

それを見た穂乃果達は心底驚いた表情を浮かべる。

 

「ううう、海未ちゃん! ここここれは私達だよ!?」

「おおお、落ち着きなさい!!」

「みゅ、μ'sって書いてあるよ!? 石鹸売ってるのかな!?」

「なんでアイドルショップに石鹸売ってんだよ!」

 

なんて会話のやり取りを穂乃果、海未、紅葉は行い、その間にこはずっと必死に後ろの方からμ'sのグッズが置かれた棚を見ようとしていたが、身長も低いこともあって中々見ることが出来ずにいた。

 

そこでにこは一同を押し退かして強行し、自分のグッズを探し出す。

 

「あれ!? 私のグッズがない!? どういうこと~!? はあぁ!! 私のグッズがあった!!」

「良かったですね、にこ先輩」

 

その時だ、穂乃果がふっとと同じ棚に1枚の写真があることに気づき、その写真にはなぜかメイド服を着たことりが映っていた。

 

「あれ? ことりちゃんだ……」

「えっ? あ、ホントだ。 ことり……だよな? ってアレ? この背景、どこかで……」

 

一方で海未達はこんな風に少し気恥ずかしさがあるもののこうやってグッズが販売されて自分達が注目されていることに感激していた。

 

「こうやって注目されると勇気づけられますね」

「えぇ……」

 

海未と絵里はそんな話しをしながらも笑みを浮かべ、花陽は嬉しさのあまり涙を流してしまう。

 

そこへ……「すみません!!」とどこかで聞いたことのある脳トロボイスが聞こえた。

 

そして紅葉達は外を見てみるとそこにはなぜかメイドを服を着たことりがどこか慌てた様子でアイドルショップの店員に何かを尋ねていたのだ。

 

「あの! ここに写真が! 私の生写真があるって聞いて! アレはダメなんです!! 今すぐ無くしてください!!」

「ことりちゃん……?」

「ひゃあ!?」

 

穂乃果の声を聞いてことりは肩をビクっと震わせて小さな悲鳴をあげる。

 

「ことり……? 何してるんですか……?」

「似合ってるな、メイド服……」

「いや、そこですか!?」

 

海未は最初にメイド服を褒めるところかと即座に紅葉にツッコミを入れ、ことりはというと慌てて足下の側にあったガシャポンのカプセルを取って両目に当てて振り返る。

 

「コトリ? ホワッツ? ド~ナタデスカ?」

「はっ!? 外国人!?」

 

そのことに凛は外国人かと驚くが、どこからどう見ても必死に惚けようとしているが、誰がどう見てもことりであり、絵里からジトっとした目で呆れたような視線を送られる。

 

「ことりちゃん、だよね……?」

「チガイマース!! ソレデハ、ゴキゲンヨ~」

 

そう言いながらことりはその場を離れようと歩き出す。

 

「ヨキニハカラエ、ミナノシュウ~……。 さらば!!」

「逃げた!?」

 

そのままことりはスカートを掴んで走り出すのだが……。

 

「はい捕まえた~」

「ふぇ!?」

 

身体能力が普通の人間より遙かに高い紅葉から逃げられる筈もなく、ほぼ走り出すのと同時に紅葉に腕を掴まれてしまったのだった。

 

「わわわ!? 離して紅葉くん!!」

「いやいや、なんで逃げようとするんだよことり!?」

 

とその時、誰かが紅葉の肩をポンっと起き、振り返るとそこには……お巡りさんが立っていたのだった。

 

「君、ちょっと話良いかな?」

「ファッ!!?」

 

実際、今のこの状況は端から見れば紅葉が嫌がってるメイド服を着た女の子の腕を無理矢理掴んでいるようにしか見えず、そうなってしまうのも無理はないだろう。

 

尚、その間にことりは「ごめーん!!」と紅葉に謝りながらそそくさと逃げ出し、彼女を追いかけるのは穂乃果と海未に任せ、お巡りには絵里が事情を説明してくれることに。

 

そして逃げ出したことりはというと……穂乃果と海未を上手く巻くことに成功し、彼女は一安心してホッとその場に立ち止まる。

 

「脱出ルート決めておいて良かった~」

 

だが……。

 

「見ぃ~つけた♪」

「ふあ!?」

 

既に希に先回りされており、彼女は両手を構える。

 

「これ以上逃げるとそのふくよかな胸をワシワシするよ~」

「ひい~!? ご、ごめんなさい~!!」

 

ことりはそのことに怯え、最終的に彼女は諦めて観念し、みんなに事情を説明することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、希に捕まったことりは観念し、一同を自分が働いているというメイドカフェの店……「キュアメイドカフェ」へと案内したのだった。

 

「あ~、やっぱりここかぁ。 最近来てなかったからなぁ……」

 

ただ店に入る前に紅葉が突然立ち止まってそんなことを呟き、彼は少し入店するのを戸惑っているようだった。

 

「何してるのお兄ちゃん? みんな待ってるよ!!」

「あ、あぁ……」

 

だが穂乃果に腕を引っ張られて紅葉は渋々店の中へと入るのだった。

 

そして紅葉達はそこでことりから衝撃的な事実を聞かされたのだ。

 

それは以前、にこが話していた秋葉のカリスマメイド、「ミナリンスキー」本人だというのだ。

 

「あっ、だからにこ先輩がサイン色紙持ってた時ちょっと慌ててたんだな? ミナリンスキーっていうのも名字の『南』から取ったのか」

 

紅葉の言うように、ことりがあの時少し慌てていたのはにこがミナリンスキーの正体を知っているかもしれないと思ったからである。

 

「こ、ことり先輩がこの秋葉で伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですかぁ!?」

 

勿論、それを聞いて全員……特に花陽は驚きの声をあげていた。

 

「カリスマとは聞いてたけど……ふーん、伝説って?」

「あぁ!!」

 

尚、紅葉と穂乃果がふざけてそんな会話を繰り広げ、それに絵里が「紅葉くん、穂乃果、遊ばない」と注意する。

 

「それにしても酷いよ!! ことりちゃん!! そういうことなら教えてよ!!」

 

と隠し事をしていたことりに穂乃果はプンスカ怒った様子で言うのだが……。

 

「言ってくれれば遊びに来てジュースとかご馳走になったのに!!」

 

と発言する穂乃果に花陽は思わず「そこ!?」とツッコミを入れてしまう。

 

するとそこで絵里が「じゃあこの写真は?」と壁に貼られた先ほどの写真&その他を見ながら質問するとことりが言うには店内のイベントで歌わされてその時に撮られた写真なのだという。

 

「撮影、禁止だったのに……」

「オイ、撮影した奴誰か分かるか? 説教してことりの前に突き出して謝らせてやる」

 

どこか悲しげに言うそんな彼女の姿を見て紅葉は写真を勝手に撮影した誰かにカチンっと来たのか、怒りを燃やしていた。

 

そんな時、彼女に「ごめんなことりちゃん」と突然、彼女達の前に現れ、ことりに謝罪する1人の中年の男性が現れた。

 

「あっ、店長さん!! いえ、もうこうしてみんなにバレるのも時間の問題だったと思いますし……」

「兎に角、あんなの盗撮まがいのものだし、実はもう犯人も見つけて出禁にしてやったからな」

 

店長の言葉にことりは「そうなんですか!?」驚き、店長はそんなことりの言葉に対して「こういうルール守らない客はこっちから願い下げだ」と笑いながら言い放ち、また店長は紅葉の姿を見て右手をあげて「やあ!」と挨拶した。

 

「紅葉の兄ちゃん、ウチに来てくれるの久しぶりですね~。 しかしことりちゃんの知り合いとは驚きましたよ」

『えっ?』

「……」

 

店長のその言葉に、穂乃果達9人は一斉に驚いたような表情を浮かべ、全員が紅葉の方へと視線を向け、紅葉は顔を逸らす。

 

「紅葉くんってここ通ってたん?」

「ことりちゃんが入ってからしばらく来てくれていなかったけど常連だぞ?」

 

店長の「常連」という言葉に1年組と絵里、にこ以外は少し意外だったという表情を浮かべ、逆に穂乃果、海未、ことり、希は「あー、やっぱり」とでも言いたげな顔を浮かべていた。

 

「ウチの巫女服姿に反応した辺りからそんな感じはしとったわ」

「そう言えばことりちゃんのメイド服にも……もしかしてお兄ちゃんこういうの好きなの?」

 

ジトーっとした視線を穂乃果に向けられる紅葉だが……。

 

「そうだよ!! 悪いか!! 俺がメイド好きで!!」

「開き直ったにゃ!?」

 

と完全に開き直ってしまった。

 

「それより今はことりのことだろ!! ことりの!!」

 

一方で穂乃果が「そうかそうか、お兄ちゃんメイドとかこういうのやっぱり好きなんだ……」と何かブツブツ言っていたが、紅葉はどうにか無理矢理話を軌道修正してことりの話に戻そうとする。

 

「それにしても紅葉の兄ちゃん、美少女9人も羨ましいねぇ……? ハーレムでも作るのかぁい?」

 

とその時、ひょっこりとテーブルの下から顔だけを出してきたホラー漫画に出てきそうな顔をした男性が現れ、それに気づいた穂乃果達は又もや「うわああ!!?」と驚きの声をあげ、花陽に関しては涙目になって凛の後ろに隠れる。

 

「良いねぇ! 良いねぇ! そこの涙目になってる君!! 可愛い女の子が泣く姿はそそるねぇ~!!」

「「お前は何してんだコラ!!」」

 

そんな変態臭いことを言う男性の頭を店長と紅葉が殴りつけ、殴られた男性は頭を抑えてのたうち回る。

 

「『ブニョ』!! お前は裏方担当だろうが!! なに出てきてんだ!!」

「可愛い女の子がいっぱいいたから、仲良くなりたかっただけだよ」

「お前は自分が数秒前に言ったこと思い出して見ろ。 『女の子が泣く姿がそそる』とか言ってたろ、なにが仲良くしたいだ!! お客さん怖がらせてさっさと仕事戻らんか!!」

 

店長に怒鳴られ、「ブニョ」と呼ばれた男性は「ちぇ!」と舌打ちしながら厨房へと戻るのだった。

 

「あははは、相変わらず面白い人ですね、ブニョさん……」

「そんなことを言うのは君だけだよ、ことりちゃん」

 

それから店長は一同……特に怖がっていた花陽に頭を下げて謝罪し、そこから紅葉は脱線しかけていた話を戻そうとことりに話を振る。

 

「まぁ、取りあえず、ことりは伝説のメイドって言ってもアイドルって訳じゃないんだよな?」

(あっ、自分のメイド好き云々の話から逸らしたにゃ)

 

紅葉の質問に対してことりは「うん! それは勿論!!」と答えるが、海未はでもどうしてことりがここでバイトすることになったのか分からず、そのことを彼女はことりへと尋ねる。

 

「それは、丁度3人でμ'sを始めた頃……」

 

海未の質問に対し、ことりは3人でμ'sを始めた頃にここの店のメイドにアルバイトをやらないかと誘われたらしく、最初は断ろうとしたのだが……。

 

メイドの衣装が気になったことりは半ば流される形でキュアメイドカフェへと行き、そこで着たメイド服を気に入った為、そのままここでバイトをすることになったというのだ。

 

「自分を、変えたいなって思って……。 私、穂乃果ちゃんや海未ちゃん、紅葉くんと違ってなにもないから……」

 

俯きながらそう語ることりに穂乃果は「何も無い?」と彼女は不思議そうに首を傾げる。

 

「穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張って行くこともできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしてない。 紅葉くんみたいに色々できる訳じゃないし……」

 

そんな風にネガティブ的なことを言うことりに穂乃果は「そんなことないよ!!」とハッキリと言い放つ。

 

「ことりちゃん歌もダンスも上手だよ!!」

「衣装だってことりが作ってくれているじゃないですか」

 

穂乃果と海未が励ますように言い、真姫からも「少なくとも2年の中では1番まともね?」と評されるのだが、ことり自身は「ううん」と首を横に振る。

 

「私はただ2人について行ってるだけだよ」

 

それでもことりは暗い表情を浮かべ、彼女は穂乃果や海未、紅葉と比べてやはり何もないと主張する。

 

それから、ことりはまだバイトがあるということで店に残り、紅葉は店長と話したいことがあるということで彼以外のメンバーは先に帰ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュアメイドカフェの厨房、そこでは紅葉と店長が部屋の奥の方で2人は何かを話し合っていた。

 

「店長、最近……ラグナの奴ここに来たか?」

「いんや……。 噂じゃ死んだなんて話を聞きましたが……あの人がそう簡単にくたばるとは思えませんねぇ?」

 

店長のその言葉を聞いて紅葉は「俺もそう思う」と呟く。

 

「あいつが死ぬ瞬間を確かにこの目で見たが……あいつなら死を偽装することくらいできそうだし、何よりあんな死に方あっさりし過ぎてる……」

「ゴキブリ並みの生命力持ってそうですしね」

 

一方……店のベランダにて……。

 

そこではブニョが肩に赤いてるてる坊主のようなものを乗せながらタバコを吸いながら休憩時間を過ごしており、彼はふて腐れた顔を浮かべながら赤いてるてる坊主……「ノーバ」に話しかけていた。

 

「なぁ、ノーバよ~。 昔の俺達は何度敵に敗れても地球侵略を諦めなかったワルだったのに、今じゃすっかり牙が抜かれちまったよなぁ……」

 

彼は休憩時間にこんな風にタバコを吸いながら昔の思い出話や愚痴などをよくノーバに呟いており、ノーバは言葉は発せられないが彼の話をいつも真剣に聞いていた。

 

「あのブラック指令も今じゃオーブなんかと仲良く話しちゃってさ。 昔の面影がねーよ。 はぁ~あ、俺達ずっとこんな風に一生を過ごしていくのかねぇ~」

 

そんなブニョに対し、ノーバは彼を励ますように右腕をあげて右の布をバサバサと動かし、それを見てブニョは微笑ましく思ったのか笑みを浮かべながらノーバの頭をポンポンと軽く叩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、絵里、海未、穂乃果は花陽、凛、真姫、希、にこと途中で別れ、3人は途中まで帰り道が同じ為一緒になって歩いていた。

 

「でも意外だなぁ、ことりちゃんがそんなこと思ってたなんて……」

 

穂乃果が先ほどのことりの話を思い出しながら呟き、そんな彼女の呟きに対して絵里は「意外とみんなそうなのかもしれないわね」と返し、穂乃果はそれに「えっ?」と首を傾げる。

 

「自分のことを優れているなんて人間は殆どいないってこと。 だから努力するのよ、みんな……」

「確かにそうかもしれません……」

 

絵里の言葉を肯定するように海未は頷く。

 

「そうやって少しずつ成長して……成長した周りの人を見て頑張って……ライバルみたいな関係なのかもね、友達って」

 

絵里のその言葉を聞いて穂乃果と海未は互いに顔を見合わせ、2人は笑みを浮かべる。

 

「絵里先輩にμ'sに入って貰ってホントに良かったです!!」

「なによ急に? 明日から練習メニュー軽くしてとか言わないでよ?」

 

いきなり海未にそんなことを言われて絵里は少し恥ずかしいと思いつつも彼女は笑みを浮かべ、そんな彼女の姿を見て穂乃果と海未も笑うのだった。

 

それから絵里は「じゃあまた明日!」とそこで別れ、穂乃果は海未の方を見てあることを質問する。

 

「ねえ! 海未ちゃんも私を見てもっと頑張らなきゃって思ったことある?」

「数え切れないほどに」

 

穂乃果に質問に対してそう答える海未、その返答に穂乃果は「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「海未ちゃんなにをやっても私より上手じゃない! 私のどこでそう思うの?」

「……悔しいから秘密にしておきます♪」

 

そっぽを向き、そう答える海未に穂乃果は不満そうに「えー!!」と声をあげるが、そんな穂乃果を見て海未は思わず笑ってしまう。

 

「ことりと穂乃果、それに紅葉は私の1番のライバルですから!」

 

それを聞いて穂乃果は先ほどの絵里の言葉を思い出し、彼女は海未の言葉を嬉しく思い、「そうだね!!」と笑うのだった。

 

一方、神田明神にて……。

 

そこでは希が巫女のバイトで神社の周りを箒で掃除していたのだが、そこに帰った筈の絵里が現れ、希はそれを疑問に思いながら首を傾げる。

 

「どうしたん? 戻ってくるなんて……」

「ちょっと、思いついたことがあって……。 さっき、街を歩いていて思ったの。 次々新しいものを取り入れて毎日目まぐるしく変わっていく。 この街は、どんなものでも受け入れてくれる。 1番相応しい場所なのかもなって……私達の、ステージに!!」

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後の穂乃果達の教室にて……。

 

そこではただ1人教室に残り、ペンを持ちノートを開いて真剣で真面目な表情を浮かべたことりがおり、そんな彼女の様子を穂乃果、海未、紅葉は扉に隠れてこっそり伺っていた。

 

「……チョコレートパフェ、美味しい! 生地がパリパリのクレープ、食べたい! 五本指ソックス……気持ちいい……」

 

ボソボソと真顔でそう呟くことりだったが、次の瞬間彼女は涙目になって机に突っ伏した。

 

「わあぁん!! 思いつかないよ~!!」

 

実は今ことりは次のライブに使うための曲を作詞しているところであり、なぜ彼女がそんなことになったのかと言うと……数日前の部活で……。

 

「秋葉でライブよ!!」

 

と絵里が突然言ってきたのが始まりだった。

 

「えっ、それって……」

「路上ライブ?」

 

穂乃果とことりの質問に絵里は「えぇ」と頷くが、にこはそのライブ場所を聞いて「秋葉と言えばA-RISEのお膝元よ!?」と驚きの声をあげるが、そんな彼女の肩を紅葉はポンっと手を乗せる。

 

「上等だよ、やってやろうじゃねーか!!」

 

とサムズアップしながらなぜか喧嘩腰の紅葉ににこは呆れた表情を浮かべ「なんでアンタそんな強気なのよ!?」とツッコミを入れる。

 

「でもそれだけに面白い!!」

「けど、随分と大体ね……」

 

希と真姫がそう言い、また絵里が言うには秋葉はアイドルファンの聖地、だからこそその場所を利用して認められるパフォーマンスができれば大きなアピールになるということで彼女は今回この案を提案したのだという。

 

それを聞いて穂乃果やことりも「良いと思います!!」「楽しそう!!」とノリ気なのだが……。

 

「しかし、凄い人出が……」

 

しかし、人見知りなところがある海未は2年組の中では唯一不安な表情を浮かべており、そんな彼女に紅葉は「まだ慣れてないのか」と苦笑しながら呟く。

 

「人がいなかったらやる意味ないでしょ?」

「それは……」

 

海未はにこの言葉に何も言い返すことができず、凛や花陽も「賛成!!」と手をあげ、当然ながら紅葉も絵里の意見には賛成派であり、海未は未だに悩んでいたが……流石に賛成派が多数なので彼女は潔く諦めることにしたのだった。

 

(その内、海未が人見知りじゃなくなる方法みんなで探してみるかな……)

「それじゃ早速日程を!!」

 

と穂乃果は日程を決めるためみんなに相談しようとするのだが、絵里は「その前に……」と呟き、穂乃果とことりは首を傾げる。

 

「今回の作詞は何時もと違って秋葉のことをよく知っている人に書いて貰うべきだと思うの」

 

絵里はそう言いながらことりの方へと顔を向き、「ことりさん、どう?」と尋ねられ、当然それにことりは驚きの声をあげる。

 

「あの街でずっとアルバイトしてたんでしょ? きっとあそこで歌うのに相応しい歌詞を考えられると思うの」

「えっ、絵里先輩流石にそれは無茶ぶりじゃないですかね?」

 

海未には昔ポエムを書いていたという経験があったから歌詞作成に抜擢されたが、ことりにはそういったものがないので紅葉が幾らなんでもそれは無茶ぶりじゃないかと思ったのだが……。

 

「でも、秋葉のことをよく知ってるのはことりさんだと思うし」

「いや、一応俺もあの辺よく行ってますけど……」

「紅葉くんはその……なんか違うのよね」

 

絵里にそう言われて紅葉は「なんかちょっとショック!」と言いながら蹲り、そんな彼の頭を嬉しそうに励ますように穂乃果が撫でる。

 

「でもお兄ちゃん、私も絵里先輩の意見に賛成かな! それ凄く良いと思うし!!」

「やった方が良いです!! ことりなら秋葉に相応しい良い歌詞が書けますよ!」

 

穂乃果や海未からも歌詞作成を勧められ、凛や花陽、希や真姫、最終的には紅葉もことりが歌詞を書いて欲しいということになり、それにことりは戸惑いつつも「う、うん!!」と頷いてこの役目を引き受けるのだった。

 

そして現在……。

 

「ふわふわしたもの可愛いな♪ ハイッ! あとはマカロン沢山並べたら~♪ カラフルで~し~あ~わ~せ~♪ ルンルンララン……」

 

彼女は未だに歌詞作詞に悩んでおり、また涙目になると彼女は嘆くように「やっぱり無理だよ~!!」と叫ぶのだった。

 

「中々苦戦しているようですね……」

「うん……」

「でもアレはアレで脳がトロけそうで悪くない気もするがな……」

 

それから数日が経過するのだが、ことりは未だに「なに書いていいのか分かんないよ~」と歌詞に思い悩んでおり、授業中にも身が入らない始末。

 

そしてまた放課後の教室でノートを開き、歌詞を書こうとしているのだが……。

 

やはり彼女は歌詞の内容が何も思いつかず、ノートを閉じてしまうのだった。

 

「やっぱり私じゃ……」

 

そんな彼女を見かねてか、こっそりと廊下から扉越しに様子を伺っていた穂乃果が「ことりちゃん!!」と彼女を名前を呼びながら教室へと入って来る。

 

「穂乃果ちゃん?」

「こうなったら一緒に考えよ!! 取っておきの方法で!!」

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして穂乃果の言うその取って置きの方法と言うのが……。

 

「お帰りなさいませ!! ご主人様!!」

「お帰りなさいませ!! ご主人様!!」

「お帰りなさいませ……ご主人様……」

「お帰りなさいませ、ご主人様!!」

 

キュアメイドカフェにて……ことり、穂乃果、海未、紅葉がメイド服を着てしばらくここで働くことだったのだった。

 

「わぁ~! 可愛い!! 3人ともバッチリだよ!!」

 

なんてことりははしゃいでいたが海未は凄く恥ずかしそうにしており、紅葉に至っては……。

 

「……ってちょっと待てやあああああああ!!!!! なんで俺もメイド服着てるの!? なにこれイミワカンナイ!!」

 

なぜか彼もメイド服を着せられており、しかも茶髪のロングヘアーのカツラを被せられ、さらにことりによるメイクでどこからどう見ても女性にしか見えない穂乃果達と並んでも見劣りしない美少女に変身していたのだ。

 

しかも髪色のせいか穂乃果と並んだら本当の姉妹のようにも見える始末である。

 

「だってお兄ちゃんメイド好きなんでしょ?」

「着るのとは別だろ!! でもまぁ、これで少しでもことりの助けになるのなら……」

 

正直紅葉としては今すぐに着替えたいのだがこれで少しでもことりの助けになるのならと思い、その気持ちをはグッと堪え、なんだったら徹底的にやってやろうと気持ちを切り替える。

 

「なんだったら声も変えるか……んんっ!」

「「「……えっ?」」」

「お帰りなさいませ! ご主人様!!(丹〇桜ボイスで」

「「「えぇ!!? なにその特技!!?」」」

「ミックスボイスってやつだ」

 

やたらと可愛らしい声に変わった紅葉に穂乃果、海未、ことりは驚きの声をあげる。

 

するとそこへ「にゃー!」と右手をあげながら「遊びに来たよ!」と言って凛が入店し、少し遅れて花陽、真姫、絵里、希、にこもやってきた。

 

「秋葉で歌う曲なら秋葉で考えるってことね?」

「まぁ、そういうことですね~。 現状それしか打開策がありませんし」

 

絵里の言葉に同意するように頷く紅葉だが、今の紅葉は見た目も声も普段と全く違うため、絵里は「えっ、誰?」と首を傾げる。

 

「分かりづらいかもしれないけど、紅葉お兄ちゃんだよ!」

 

そこで穂乃果が絵里達に説明し、それを聞いて一同は当然「えええええ!!!!?」と驚きの声をあげる。

 

「声まで変わってるじゃない!! しかも見た目も可愛い!!」

「声を変えるのはお兄ちゃんの特技だそうで……」

「あはは、面白いやん!! ではでは~早速取材を~」

 

希は持って来たビデオカメラを起動させるのだが、慌てて海未がカメラの画面を抑えて「やめてください!!」と拒否し、海未は「なぜみんなが……」と疑問を口にすると隣にいる穂乃果が「私が呼んだの!」と答えた。

 

「それより早く接客して頂戴!」

「うっ……」

 

にこに言われ、一瞬戸惑う海未だが、そこですかさずことりが迅速に対応する。

 

「いらっしゃいませ、お客様。2名様でよろしいでしょうか?」

 

「それではご案内致します、こちらのお席へどうぞ」

 

「メニューでございます。 ただいま、お冷をお持ち致します。 失礼致しました」

 

最後に愛らしい笑顔を見せ、そんなことりの接客業に一同は惚れ惚れとした視線を向ける。

 

「さすが伝説のメイド……」

「ミナリンスキー……」

 

花陽や凛も目を輝かせながら静かにそう呟き、メイド好きの紅葉もことりのその接客っぷりから「これは確かに伝説のメイドかもしれない……」と思うと同時に、「なんでもっと早く来なかったんだ……」と落ち込み、膝を突くのだった。

 

「クソ、もっと前から知ってたら……!! 知ってたら!! 教えろよ、ブニョか店長!!」

 

そんな紅葉を見て穂乃果は「ぷくーっ」と頬を膨らませ、紅葉の尻を思いっきり抓った。

 

「いった!!? 何すんだ穂乃果!?」

「知らない!!」

 

尻を抓った穂乃果に怒鳴る紅葉だったが、穂乃果はプイっと顔を逸らし、紅葉は訳が分からず困惑するのだった。

 

そんな時のことである、ガラの悪い2人組の男が店内に入ってきたのは。

 

「ふーん、ここがあのブラックが店長やってるって店か」

「ブハハハハ!! あのブラックがこんなオタク臭い店の店長!!? 腹痛いっすね兄貴!!」

 

1人は耳にピアスなどをした男性で、もう1人はその男性の弟分のようで弟分は辺りを見回しながら腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。

 

穂乃果達は「なんか変な人達が入って来た……」としか思わなかったが、紅葉にはその2人の男性の正体にすぐに気づくことができた。

 

2人とも、地球人に化けた宇宙人であり、紅葉の目にはその2人の本来の姿が映し出されていた。

 

そしてそんな2人の存在に店長も気づいたようで彼は兄貴分達の元に行くとどうやら店長はこの2人と知り合いのようで「久しぶりだな」と声をかけたのだ。

 

「フン! 牙を抜かれた腑抜けが気安く俺達に話しかけてんじゃねえぞ」

「相変わらず口が悪いな、お前は」

 

弟分の言葉に店長は呆れたような視線を送り、兄貴分は「すまんな」と笑いながら謝罪する。

 

「だがこいつの言ってることは正しいとは思わないか? かつてはあちこちで暴れ回っていたのに、今ではすっかり大人しくなってこんな下らん店の店長とは……」

「正義の味方には勝てないと悟っただけさ」

「腰抜けになっただけだろ」

 

兄貴分のその言葉を聞き、店長の肩にちょこんっと座るように乗っていたノーバはその言葉を聞いて額に青筋を浮かべ、兄貴分に飛びかかろうとするのだがそれを店長は手で押さえて落ち着かせる。

 

「今日は煽りに来たのか? 注文しないなら帰ってくれ」

「おっと、すまんな。 ではお前の自慢のメイドに接客を頼もうか」

 

それから店長は丁度手の空いたことりに兄貴分達の接客を頼み、自分は厨房に入ろうとしたのだが……そこでこっそりと顔を覗かせていたブニョを発見し、店長は「サボるな!!」と怒鳴ろうとしたのだが……。

 

「店長!! あんだけ言われて悔しくないのかよ!! 俺、許せねえ!!」

「ノーバも、お前も落ち着け。 客の前だぞ? 冷静になれ」

 

店長にそう言われてブニョは唇を噛み締めつつ、「そんなんだから腰抜けって言われてんだろ!!」とだけ言い残して厨房へと戻り、店長は頭を抱えて「はぁ……」と溜め息を吐くのだった。

 

その時、「きゃあ!?」ということりの悲鳴を聞き、振り返るとそこには転んで尻餅をついたことりの姿があり、店長や紅葉達は慌てて彼女の元へと駆け寄る。

 

「ことりちゃんどうしたん!?」

 

みんなでことりを起き上がらせ、希がことりに何があったのか聞くと彼女は兄貴分達の注文を聞き、それを厨房にいるブニョに伝えに行こうとした時、兄貴分か弟分のどちらかにお尻を触られ、それに驚いて転んでしまったというのだ。

 

「なにそれ、最低にゃ!!」

「オイオイ、俺達が嘘言ってるって証拠があるのか? 他に目撃者でも?」

「ことりはそんな娘じゃありませんし、彼女が嘘を言っているという証拠もありませんが?」

 

兄貴分の言い分に、いつもは初対面の人物には緊張などする海未もことりのために堂々と言い返し、彼女を庇う。

 

「それよりもさ、ズボンにその娘がさっき持って来てくれた水ズボンに零れちゃったんだけど? お尻触ったかどうかは兎も角、その娘が転んだせいで俺が濡れたのは紛れもない事実だよ」

 

また弟分はことりが注文を聞きに行った際に置いたコップに入った水が先ほどことりが転んだせいでズボンにかかったと主張。

 

「ちょっとメイドさん、君のせいで濡れちゃったんだからちゃんと吹いて貰えるかなぁ?」

「えっ……」

 

下劣な笑みを浮かべ、濡れたズボンの位置を指差す弟分。

 

位置が位置なので完全にセクハラである。

 

それに対し、兄貴分達を睨み付けて文句を言おうとした店長や絵里だったが……。

 

それよりも早く、2人の髪の毛を……紅葉が「ガシッ」と掴みあげる。

 

「お客様? 当店でのそういった行為はご遠慮くださいませ♪」

 

満面の笑顔で……けれども恐ろしい表情で、額に大量の青筋を浮かべた紅葉は2人の髪の毛を全力で引っ張り、無理矢理外に連れ出す。

 

「いだだだだ!!? なんだこいつ!!? なにこの怪力!!?」

「ハゲる!! ハゲる!!」

 

そのまま2人を外に放り出した紅葉は「二度と来んな」とだけ言って店の中に戻ろうとするのだが……。

 

「ふざけんなよクソアマァ!!」

 

ナイフを取り出し、後ろから紅葉を刺し殺そうとする兄貴分だったが、紅葉はナイフが届くよりも早く振り返りざまに拳を兄貴分の顔面に叩き込んだ。

 

さらに紅葉は続けざまにアッパーカットを兄貴分の顎に叩き込み、兄貴分は大きく吹き飛ばされ、地面に倒れる。

 

「ぐふう!!?」

「あ、兄貴ぃー!!? こ、この野郎よくも兄貴を!!」

 

そこで弟分も兄貴分の仇を取ろうと紅葉に殴りかかるが、紅葉は弟分の腕を掴んで背負い投げを繰り出し、弟分は背中を地面に激突させる。

 

「ぐう!!?」

 

倒れたところに紅葉はすかさず弟分の顔面に強烈なパンチを叩きこむ。

 

「ぐへえ!!?」

「お帰りくださいませ、ご主人様♪ 次来たらこんなもんじゃすみませんから!」

 

先ほどと同じく満面の笑みで、けれども額に大量の青筋を浮かべ、恐ろしい表情となっている紅葉の顔を見て2人は「ひ、ひいいいい!!!?」と悲鳴をあげながら立ち上がってその場から逃げるように立ち去り、紅葉は店の中へと戻って行くのだった。

 

「すごーい!」

「かっこ良かったよお姉さん!!」

 

店の中に戻ると従業員の他のメイド達や他の客達から迷惑な客を追い出したとして拍手喝采され、紅葉は軽くペコリと頭を下げた後、ことりの元へと向かう。

 

「大丈夫か? ことり?」

「う、うん、ありがとう紅葉くん!」

「お兄ちゃん、かっこ良かったよ!!」

 

穂乃果に背中をパンパンと叩かれ、紅葉は「そうか?」と尋ねると穂乃果は力強く頷いた。

 

「さて、それじゃ変な客もいなくなったことだし、仕事の続きと行こうか」

「「うん!!」」

「は、はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は紅葉、穂乃果、海未、ことりはおかしな客もいなくなったので順調に仕事を進めていくのだが……海未は先ほどから接客をせず、裏で洗い物ばかりしており、それを穂乃果に注意されていた。

 

「海未ちゃん? さっきから海未ちゃん洗い物ばっかり!! お客さんとお話しなよ!!」

「し、仕事はしています! そもそも本来のメイドというのはこういう仕事がメインの筈です!!」

「屁理屈じゃねえか」

 

紅葉もそんな海未に呆れ、やっぱりその内彼女のコミュ障を直すべきだなと考えるのだった。

 

「まぁ、無理にとは言わないが、少しくらいは接客をしてみて貰えんかね海未ちゃん?」

 

店長にもそう言われ、海未はそれに少し考え込む仕草をした後……「まぁ、後で少し頑張ってみます……」と答え、それに店長は笑みを浮かべて「うむ」と頷いた。

 

「ところで店長がさっきから肩に乗せてるてるてる坊主……? のぬいぐるみ可愛いですね!」

 

穂乃果は店長の肩に乗っているノーバの頭を撫で、店長も「そうか」と小さく呟く。

 

「こいつはまぁ、この店のマスコット……みたいなもんさ」

「へぇ~」

 

そこに新しく洗う食器を持って来たことりが厨房に現れ、海未に皿洗いをお願いするのだが……。

 

「ダメだよ海未ちゃん? ここにいる時は笑顔を忘れちゃダメ!」

「しかし、ここは……」

「お客さんがいなくてもそういう心構えが大事なの!」

 

笑顔で海未にそう教えることりに穂乃果と海未、紅葉は感心したような表情を浮かべ、また紅葉は「やっぱり伝説のメイドだわ、ことりって……」と改めて彼女がミナリンスキーであることを認識したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、穂乃果達は仕事を終えて帰り、現在店長は肩にノーバを乗せたまま店の扉にかけられた札をopenからClosedに変えて閉店準備をしているところだった。

 

「店長・・・・・・」

 

するとそこへブニョが現れ、店長は怪訝な顔をして「何をしてる? 片付けの準備をしろ」と言うのだが・・・・・・。

 

「そんなのどうでも良いんだよ!! 店のこととかそんなのもう!!」

「なんだと?」

「夕方に現れた異星人の客が俺達のことを好き勝手言ってて思ったんだ。 やっぱり悔しいって・・・・・・!! 俺はアンタについて行くことを決めていたけどなぁ!! もう我慢の限界だ!!」

 

今まで溜め込んでいたのを吐き出すように、店長に怒鳴り散らすブニョ。

 

「ブニョ、落ち着け」

 

店長はブニョに落ち着かせようと彼の肩に手を乗せるが、ブニョはその手を振り払う。

 

するとその時、なんとノーバまでもが店長の肩から離れてブニョの元へと行き、それに店長は驚きの表情を浮かべる。

 

「ノーバ!! まさかお前まで・・・・・・! バカなことはやめるんだ!!」

「嫌だ!! 俺達はアンタが諦めた夢を叶える!! だからやめはしない!! 行くぞノーバ!!」

 

そしてブニョとノーバは店長の制止を振り切ってその場から走り去って行き、ブニョは緑色の巨大な姿「円盤生物 星人ブニョ」へと姿を変え、またノーバも巨大化して「円盤生物 ノーバ」となって出現したのだ。

 

「ブニョ! ノーバ!! あのアンポンタン共がぁ・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

同じ頃、家に帰っている途中だった紅葉達はというと・・・・・・。

 

「えっ!? あれって・・・・・・店長が肩に乗せてたてるてる坊主!?」

 

穂乃果達はノーバとブニョの存在に気づき、2体が街で暴れようとしているのを目撃。

 

「・・・・・・っ、店長!!」

 

ことりはノーバを見て店長に何かあったのかと思い、彼女はカフェに急いで戻り、それに穂乃果と海未もことりを慌てて追いかける。

 

「ことり!?」

「ことりちゃん!!」

 

ただし、紅葉はことりは追いかけず、彼女のことは穂乃果達に任せて彼は人気のない場所へと向かう。

 

「ノーバ、ブニョ・・・・・・!! アイツ等何してんだ!!」

 

紅葉は怪訝な表情を浮かべながらもオーブリングを取り出し、最初にウルトラマンのカードを取り出してそれをリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

続いて紅葉はティガのカードをオーブリングにリード。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

そして紅葉はウルトラマンとティガの力を合わせた「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身し、ノーバとブニョの前に立ち塞がったのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

『俺の名はオーブ!! 闇を照らして、悪を討つ!!』

『出たなオーブ!! 先ずは貴様を倒すことが俺達の目的だ!! 行くぞノーバ!!』

 

ノーバはブニョの言葉に頷き、ノーバはマントの下にある右手の触手を伸ばしてオーブに攻撃するが、オーブは「スカイタイプ」の力を使ってそれを受けて一気に接近し、ノーバの顔を力強く掴みあげる。

 

だがノーバは目から放つ「ノーバレーザー」をオーブに撃ち込んで引き離し、そこでブニョが真横からドロップキックをオーブに繰り出して蹴り飛ばす。

 

『ウオッ!?』

 

地面に倒れ込んだオーブにブニョは跨がって両手でオーブの首を締め上げるが・・・・・・オーブは足を振り上げてブニョの背中を蹴り押し退かす。

 

その後、すぐに立ち上がるオーブだが直後にノーバが円盤形態に変形して敵を切り裂く「ファントムアタック」を繰り出し、それにオーブも両腕を広げてエネルギーを貯めてから放つ通常よりも巨大な光の鋸「スペリオン光輪」を投げつける。

 

『スペリオン光輪!!』

 

それを受けてノーバは弾かれるように吹き飛ばされ、地面に倒れ込み、追撃を行おうとするオーブだが背後からブニョに羽交い締めにされる。

 

『今だノーバ!!』

 

ノーバは元の姿に戻ってフラつきながらも立ち上がり、オーブに接近して左の鎌でオーブを斬りつける。

 

『グアアア!!?』

 

続けざまにもう1度ノーバが鎌をオーブに振り下ろそうとするが、オーブは足を振り上げてノーバを蹴り飛ばし、ブニョに肘打ちを喰らわせて自分から離れさせ、ブニョの腕を掴むと背負い投げをオーブは繰り出す。

 

『シュア!!』

『ぐおっ!? ぐぅ、俺達は諦めないぞオーブ!! あの人の夢は俺達の夢なんだ!! だからこんなところで・・・・・・あの人の為にも、負けてたまるかああああああ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、戦いの様子を眺めていた店長はというと・・・・・・。

 

「アイツ等・・・・・・!! そうか、お前達は私の為に、そこまで・・・・・・!!」

 

ブニョの叫びを聞き、店長は唇を噛み締め、拳を強く握りしめる。

 

「店長!!」

 

するとそこへことり達が店長の元へと現れ、店長はことり達に視線を向け「君たち・・・・・・」と小さく呟く。

 

「店長、あれって・・・・・・店長が肩に乗せてたてるてる坊主、ですよね? それに、あの緑色の宇宙人みたいな人は・・・・・・」

 

ことりがノーバ達のことを尋ねると、店長は静かに彼女の質問に対して答える。

 

「あの緑色の奴はブニョだ。 そしてあの赤い奴はノーバ。 2人とも、私の相棒だ」

「えっ!? あれってブニョさんなの!? じゃあ、店長も・・・・・・」

 

店長の言葉を聞き、穂乃果はブニョが宇宙人で、ノーバが怪獣なら店長もただの人間ではないのではと疑問を口にし、それに対して店長は「そうだ」と答える。

 

「ノーバ、ブニョ・・・・・・、アイツ等はずっと夢を諦めていなかったんだ。 私が諦めた夢を・・・・・・!」

「店長の、夢って・・・・・・まさか」

「そのまさかだよ、海未ちゃん。 私の・・・・・・いや、私達の夢は、地球、侵略!! アイツ等があそこまでやっているんだ。 私が共に戦わない訳にはいかんでしょう!」

 

そんな店長の言葉を受け、穂乃果達は「まさか・・・・・・」と嫌な予感が過ぎる。

 

「すまなかったな。 お前達だけには戦わせない!! ノーバ!! ブニョ!! 今こそ、私達の夢を叶えようぞ!! 」

 

店長がそう言い放つと彼は水晶のようなものを取り出し、それを掲げると店長は赤い光に包まれてノーバの口の中へと吸い込まれる。

 

それによってノーバは戦闘力が強化され、ノーバの中にいた店長も黒い衣服を纏い、帽子被り、杖を持った姿へと変わった。

 

『やっと来たか。 遅いんだよ店長!』

「バカもん!! 今の私は店長ではない・・・・・・!! 今の私は、『ブラック指令』だ!! 行くぞ2人とも!! 地球、頂きます!!」

 

店長改め、「ブラック指令」は杖をブニョに向かってかざすとブニョも身体が一瞬光って戦闘力が強化され、ノーバ、ブニョはオーブへと戦いを挑む。

 

ノーバはもう1度必殺のファントムアタックを繰り出し、それに対してオーブもまた巨大スペリオン光輪を放つのだが・・・・・・ノーバの回転力が先ほどの倍以上となっていた為にスペリオン光輪はあっさりと砕かれノーバの技がオーブに直撃。

 

『デヤアアアア!!!!?』

 

続けざまにブニョがジャンプして拳を突き出し、それにオーブも「パワータイプ」の力を使って拳を突き出し、互いの拳がぶつかり合うのだが・・・・・・直後にブニョはオーブの横腹に蹴りを入れ、怯んだところに右手でオーブの顔にビンタを喰らわせる。

 

『グオ!?』

「あの2体見かけによらず強いじゃん!! てるてる坊主となんか何時も調子悪そうな顔をしてる人だったのに!!」

「シンプル・イズ・ザ・ベストってやつだよ穂乃果ちゃん! 最近の怪獣はゴチャゴチャしていかん!」

『イズマエルとかな!! ってか顔色悪そうな顔で悪かったな!!』

 

オーブはジャンプしてノーバの背後に回り込み、ノーバに掴みかかって動きを止めようとする。

 

『店長!! もうやめろ!! ノーバとブニョもだ!!』

「私はもう店長ではない!!」

「店長もうやめてー!!」

「そうですこんなこと!!」

「店長ー!!」

 

「店長ではない」と言っているにも関わらず、穂乃果達は店長の名を呼び、ブラック指令は「だから違う!!」と言いながらノーバを操って振り払って振り返りざまに鎌でオーブを斬りつける。

 

『この分からず屋共が!!』

 

すると紅葉はオーブリングに新たなカードをリードさせる。

 

『レオさん!!』

『ウルトラマンレオ!』

 

1枚は「ウルトラマンレオ」のカード。

 

『ゼロさん!!』

『ウルトラマンゼロ!』

 

そしてもう1枚は「ウルトラマンゼロ」のカードをリード。

 

『師弟の力、お借りします!!』

『フュージョンアップ!』

 

紅葉はオーブリングを掲げ、オーブはレオとゼロの力を宿した「ウルトラマンオーブ レオゼロナックル」へと姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! レオゼロナックル!』

『宇宙拳法、ビッグバン!!』

 

ブニョは口からドロドロの液体を口からオーブに向かって吐き出すが、オーブは両手に炎を宿し、対象を手刀で切り裂く「レオゼロビッグバン」を繰り出して液体を弾く。

 

『レオゼロビッグバン!!』

 

それによって液体はオーブの手が触れた瞬間に瞬く間に蒸発し、それを見たブニョは今度はオーブの足下に液体を放つがオーブはそれをジャンプしてブニョの頭部を蹴りつける。

 

またそこへ円盤形態になったノーバがオーブに向かって突撃して来るが、オーブはそれを跳び蹴りを繰り出してノーバの顔面に直撃させ、ノーバを撃墜。

 

『シェア!!』

 

今度は背後からブニョがオーブに掴みかかろうとしてくるが、それに気づいたオーブはブニョの腕を掴んで背負い投げを繰り出し、ノーバに激突させる。

 

『ぐおおお!!!?』

『スペシウムゼペリオン!』

『セルチェンジ・スペリオン光線!!』

 

その後、オーブはスペシウムゼペリオンへと戻り、両手をプロテクターの前に添えた後、右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを集めてから両手を十時に組んで放つ「セルチェンジ・スペリオン光線」を一列に並んだブニョとノーバに向かって放つ。

 

光線は最初にブニョに直撃し、そのまま貫通してノーバに光線が直撃。

 

『「うぐああああああ!!!!!?」』

 

直撃を受けたブニョとノーバは粒子のようになって消滅するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある公園にて・・・・・・。

 

「結局、また負けてしまったなぁ・・・・・・」

 

そこでは公園の置物の上に座り、うなだれている店長と人間形態のブニョ、そしてミニサイズになったノーバの姿があった。

 

「あの光線を受けて、俺もノーバも、円盤生物の姿になれなくなっちまった!! クソクソクソ!!」

 

するとそこへ、紅葉が「お疲れさんです」と声をかけながら店長達の元へと現れたのだ。

 

それを見てブニョは紅葉を睨み付けながら彼の胸倉を掴みあげる。

 

「お前!! 何のつもりだ!! 俺とノーバから円盤生物の力を奪いやがって!!」

 

そんなブニョに対し店長は「やめろ」と声をかける。

 

「どの道、これが我々にって夢を叶える最後のチャンスだったんだ。 彼は我々を倒せた筈なのに、倒さなかった。 完敗だ」

「・・・・・・さっき、ことりが穂乃果と話してたんだがな・・・・・・」

 

それは・・・・・・先ほどまで穂乃果や海未がことりと一緒に喫茶店で働いていた時のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ことりちゃん、やっぱりここにいるとちょっと違うね?」

「えっ? そうかな?」

「別人みたい!! 何時も以上にイキイキしてるよ!!」

 

穂乃果にそう言われ、ことりも確かにそうなのかもと思い、彼女は照れ臭そうにしつつ「うん」と頷く。

 

「なんかね、この服を着てると『できる』って言うか・・・・・・。 この街に来ると、不思議と勇気が貰えるの! もし、思い切って自分を変えようとしても、この街ならきっと受け入れてくれる、そんな気持ちにさせてくれるんだ!! だから好き!!」

 

そんなことりの言葉を聞いて穂乃果は微笑み、すると彼女は「あっ!」と何かを思いついたかのような顔を浮かべる。

 

「ことりちゃん!! 今のだよ!!」

「えっ?」

「今ことりちゃんが言ったことを、そのまま歌詞にすれば良いんだよ!! この街を見て、友達を見て、色んなものを見て・・・・・・ことりちゃんが感じたこと、思ったこと、ただそれを・・・・・・そのまま歌に載せるだけで良いんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ことりがそう思えるようになったのはきっと、アンタ達があの店をやってくれていたおかげだ。 アンタ達は俺の友人の恩人なんだよ。 だから、俺にはアンタ達を倒すことはできなかった。 きっとことり達も、アンタ等に感謝してる筈だ」

「ことりちゃん達が・・・・・・」

 

紅葉はそれだけを店長達に伝えると、彼はその場から立ち去ろうとするのだが、途中で足を止め、あることを店長達に伝える。

 

「それともう1つ、円盤生物になれないのは一時的なものだ。 もしまた、バカやろうってんなら先ずは俺のところに来てくれ。 人様の迷惑にならないとこでなら何時でも相手になる」

 

それを聞き、店長やブニョ、ノーバは驚いた様子を見せる。

 

「あの店は気に入ってるからな。 また行くよ」

 

そして紅葉はそれだけを伝えるとその場を立ち去るのだった。

 

「全く、粋なことを・・・・・・つまりは地球侵略するなら先ずはオーブを倒せということか」

「みたいだな・・・・・・。 んで? 先ずはどうするよ店長?」

「決まってる、先ずは店に戻って明日の仕込みだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経過し、ライブ当日。

 

秋葉原にてμ'sのゲリラライブが行われた。

 

そしてことり作詞の曲は・・・・・・「Wonder Zone」

 

ライブの観客の中には、店長やノーバ、ブニョの姿もあり、ライブは無事大成功するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブが終わり、穂乃果、海未、ことり、紅葉の4人は神田明神に訪れていた。

 

「上手く行って良かったね! ことりちゃんのおかげだよ!」

「ううん、私じゃないよ。 みんながいてくれたから、みんなで作った曲だから・・・・・・」

 

穂乃果の言葉に対し、ことりはそう言葉を返した。

 

「そんなこと・・・・・・。 でも、そういうことにしとこうかな!」

「穂乃果・・・・・・」

 

そんな穂乃果に海未は呆れた表情を浮かべるが・・・・・・。

 

「うん! その方が嬉しい!」

「ことり・・・・・・」

 

そんなことりの言葉を受けて4人は笑い合い、ふっと彼女達は足下にある階段を見つめる。

 

「ねえ? こうやって4人で並んでるとあのファーストライブの頃、思い出さない?」

「うん」

「あの時はまだ、私達だけでしたね」

「それが今じゃ追加メンバーも6人だな」

 

するとそこでことりは「あのさ・・・・・・」とあることを穂乃果達に尋ねた。

 

「私達っていつまで一緒にいられるのかな?」

「どうしたの? 急に?」

「だって、あと2年で高校も終わっちゃうでしょ?」

 

悲しげな表情を浮かべることりに、海未は「それはしょうがないことです」と彼女もそのことを考えたからか、少し寂しそうな顔を浮かべながら答える。

 

だが、穂乃果は笑みを浮かべ、彼女はことりに抱きつく。

 

「わああ!?」

「大丈夫だよー!! ずーっと一緒!! だってこの先、ずっとずっとことりちゃんや海未ちゃんとお兄ちゃんとずっと一緒にいたいって思ってるよ!! 大好きだもん!!」

「穂乃果ちゃん・・・・・・。 うん、私も大好き!! ずっと一緒にいようね!!」

 

そんな穂乃果にことりは目尻に涙を浮かべ、彼女達は笑みを浮かべ、3人は手を繋ぎあうのだった。

 

「っ・・・・・・」

 

だが、穂乃果の言葉を聞いて紅葉はどこか複雑そうな表情を浮かべるが・・・・・・それに穂乃果達は気づいていない。

 

(すまないな、俺は・・・・・・ずっと一緒にいられない)




穂乃果
「サブタイを探せ!! のコーナーだよ!!」

紅葉
「今回のサブタイはブラック店長がノーバと一体化した際に言った帰ってきたウルトラマン第44話『地球頂きます』からだ!!」

穂乃果
「そう言えばなんで今回バーンマイトじゃなくてスペシウムゼペリオンだったの? レオゼロナックルは分かるけど」

にこ
「最近出番ないなと作者が感じたからよ」


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第11話 『合宿GO!GO!GO!』

学校の屋上・・・・・・。

 

放課後、今日はダンスの練習をする為、みんなで学校の屋上へと上がっていたのだが・・・・・・。

 

今の季節は夏、しかも学校の屋上という太陽の光が直に当たる場所。

 

つまり、今屋上はどうしようもないくらいに暑く、真っ先に外に出た穂乃果やにこはその暑さ故に外に出た瞬間汗が噴き出てしまった。

 

ちなみに紅葉もにこや穂乃果と同じ真っ先に外に出たのだが・・・・・・流石はウルトラマンと言うべきか、穂乃果やにこと違ってむしろ平然とした顔を浮かべており、ケロっとしている。

 

「っていうかバカじゃないの? この暑さで練習とか!!」

「いや、でもラブライブ出場目指してるんだから暑かろうが寒かろうが練習はしないといけないでしょう、にこ先輩」

 

にこの言葉に紅葉がそう反論し、絵里もまた「紅葉くんの言う通りよ」と彼の意見に賛同する。

 

「そんなこと言ってないで、早く練習するわよ」

 

やや強気に絵里がそう言い放つとそれに少しビクっとなった花陽が慌てて凛の後ろに隠れ、戸惑いながらも「は、はい!」と返事をする。

 

「花陽、これからは先輩も後輩もないんだから・・・・・・ねっ?」

「は、はい・・・・・・」

 

絵里は先ほどのことを反省してか、少し笑みを浮かべて花陽にそう語りかけると彼女もまた薄らと笑みを浮かべて頷くのだった。

 

「それにしても紅葉、アンタはなんでそんなむしろ涼しそうな顔してんのよ・・・・・・。 なんか方法でもある訳?」

「いえ・・・・・・特には・・・・・・強いて言えば、俺はこれですから」

 

紅葉はそう言いながら両手の一差し指で「スペリオン光線」のような動作をにこに見せ、それを見たにこは「ウルトラマンって人間の姿でも暑さとかには強いのか」と驚き半分、羨ましさ半分の眼差しで紅葉を睨み付ける。

 

そんな2人の様子を見て、2人だけで分かるようなジェスチャーのやり取りにムカッときたのか、穂乃果はムスっとした表情で彼女は紅葉の尻を抓った。

 

「いった!!? 穂乃果お前はまた・・・・・・!!」

「そうだ!! 合宿に行こうよ!!」

「無視か? シカトか? お兄ちゃん泣くよ?」

 

既に涙目の紅葉だが、穂乃果は構わず話の続きを行い、穂乃果の「合宿に行こう!!」という提案には凛や希も賛成でノリ気だった。

 

「合宿か~、面白そうにゃ!!」

「そうやね! こう連日炎天下での練習だと身体もキツいし」

 

だが、合宿と言ってもどこに行けば良いのかと花陽は穂乃果に尋ね、それに対して穂乃果は両手をパタパタさせながら「海だよ!! 夏だもの!!」と意気揚々といった感じで答える。

 

「費用はどうするのです?」

「それは・・・・・・うぅ・・・・・・」

 

海未の問いかけに穂乃果は言葉を詰まらせてしまい、少し考え込んだ後、ことりの手を掴み隅っこに行くと彼女はことりにバイト代何時入るのかと尋ねたのだ。

 

「ことりちゃん、バイト代、何時入るの?」

「えーっ!?」

「穂乃果、流石にことりを当てにするのはどうかなって・・・・・・俺は思うんだよ」

「違うよ!! ちょっと借りるだけだ・・・・・・ってお兄ちゃん? どうしたの?」

 

穂乃果が紅葉に言葉を返そうと振り返るとそこには隅っこの方で背中を向けながら体育座りをして床に一差し指でのの字を書いている涙目の紅葉がおり、穂乃果は一体どうしたのかと聞くのだが・・・・・・。

 

「どう考えてもさっき穂乃果が紅葉を無視したせいでしょう!!」

「えーっ!? そこまでイジける!? ごめんねお兄ちゃん!! もう無視とかしないから!!」

 

穂乃果は紅葉を後ろから抱きしめて「ごめんね~」と謝りながら紅葉の頭を撫でるとすぐに立ち直り、紅葉は「元気になった!!」と言いながら勢いよく立ち上がるのだった。

 

「いやチョロいわね!! んで? 合宿結局どうするのよ?」

「うーん。 あっ!! そうだ!! ねえ、真姫ちゃん家なら別荘とかあるんじゃない?」

 

その問いかけに真姫は戸惑いながらも「あるけど・・・・・・」と答えるのだが、それを聞いた穂乃果は「ホント!?」と笑みを浮かべ、真姫に頬ずりをしながらお願いする。

 

「真姫ちゃんお願ーい!」

「ちょっと待って!! なんでそうなるの!?」

「そうよ!! いきなり押しかける訳にはいかないわ!!」

 

そんな穂乃果を絵里は注意し、それを受け、穂乃果は「確かにその通りだ」と思い、真姫から離れる。

 

「っ、そう、だよね・・・・・・」

 

ただ、彼女は目尻に涙を浮かべており、さらにとても残念そうな顔を浮かべ、真姫はなんだか申し訳ない気持ちになり、「はぁ」と一度溜め息を吐く。

 

「仕方ないわねー、聞いてみるわ」

「ホント!!? やったー!!」

 

真姫のその一言に一同は喜び、紅葉は「でかしたぞ穂乃果!!」と真姫を説得した穂乃果の頭を撫で、それに穂乃果は「えへへ~♪」と嬉しそうに笑うのだった。

 

「いやしかし、前々から思っていたが、穂乃果の交渉術は凄いな」

「これ交渉なのかな・・・・・・?」

 

穂乃果の交渉力を褒める紅葉だが、今のは交渉とかそういうのなのだろうかと苦笑しながら首を傾げ、ことりは疑問に思うが・・・・・・何はともあれ、自分も出来れば行きたかったし、真姫は前向きに考えてくれたのだから今はそれを素直に喜ぼうと彼女は考えるのであった。

 

「そうだ! これを機に、やってしまった方が良いかもしれないわね」

 

絵里は希にそう小さく呟き、それに希も「せやね」と頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、真姫は自分のところの別荘を使っても良いという許可が親から降り、紅葉達は今、彼女の家の別荘に行く為に駅前に来ているところだった。

 

「えー!? 先輩禁止!?」

 

だが、出発する前に絵里からこれからみんなでアイドルをやって行く上で1つ提案があると言い、その提案というのが「先輩禁止」というものである。

 

それに驚きの声をあげる穂乃果だが、絵里曰く「先輩後輩は勿論大事だけど、踊っている時にそういうこと気にしちゃダメだから」とのことで海未も絵里のその意見には賛同であり、頷いた。

 

「そうですね。 私も3年生に合わせてしまうところがありますし・・・・・・」

「そんな気遣いまったく感じないんだけど?」

 

海未の言葉に対してそう言いながらジトーっとした視線を彼女に向けるにこ。

 

「それはにこ先輩は上級生って感じがしないからにゃー」

「上級生じゃなきゃ何なのよ!!?」

 

にこの問いかけに凛は「うーん」と少し腕を組んだ後考えると、返って来た答えは・・・・・・。

 

「後輩?」

「っていうか子供?」

「マスコットかと思ってたけど?」

「合法ロリ枠」

 

上から順番に凛、穂乃果、希、紅葉が答え、にこは「どういう扱いよ!?」と4人にツッコミを入れる。

 

「じゃあ早速、今から始めるわよ? 穂乃果?」

「あっ、はい!! 良いと思います!! え・・・・・・え・・・・・・ぅ絵里ちゃん!!」

 

戸惑いながらも穂乃果はなんとか絵里の名前をちゃん付けで呼び、それにホッと胸を撫で下ろす穂乃果。

 

それに絵里も満足そうに頷き、続いて「じゃあ凛も!!」と今度は凛が手を上げ、一度息を吸ってからことりの名前を呼ぶ。

 

「ことり・・・・・・ちゃん?」

「はい! よろしくね、凛ちゃん? 真姫ちゃんも!」

 

ことりにいきなり名前を呼ばれ、「えっ!」と驚く真姫。

 

一同視線も真姫に集中するのだが・・・・・・。

 

「べ、別にワザワザ呼んだりするもんじゃないでしょ!!」

 

っとそっぽを向きながらそう言い放ち、それに絵里は思わず苦笑してしまう。

 

そんな時、紅葉が「あの・・・・・・」と手をあげ、1つ絵里に疑問に思ったことを尋ねる。

 

「俺もしないとダメですかね? マネージャーですし、一応・・・・・・」

「そうね。 マネージャーでも紅葉くんもμ'sの一員だし、同じようにして貰いたいのだけど・・・・・・」

「いやでも絵里先輩、俺キャラ的に先輩を呼び捨てって言うのはちょっと・・・・・・恐れ多いし、せめて『さん付け』で・・・・・・」

 

そんな紅葉ににこから「なんのキャラよ!?」ツッコミを入れられるが、絵里は「まぁ、どうしても無理なら・・・・・・」ということで紅葉は上級生のことは「さん付け」呼びにすることにするのだった。

 

「じゃあ早速・・・・・・ぅ絵里さん!!」

「アンタが穂乃果と同じような絵里の呼び方しても、アンタの場合はただキモいだけね」

「酷い!!?」

 

にこの言葉にショックを受けている紅葉を放って置いて、絵里は話を進めて改めて合宿に出発することを宣言。

 

「では改めてこれより合宿に出発します。 部長の矢澤さんから一言!」

「うえ!? にこ・・・・・・?」

 

いきなり絵里にそう振られて呆気に取られるにこ。

 

「いよっ!! 部長さん一発良い感じのやつ、頼みます!!」

「部長さんどうかみんなの気合いが入るような感じのやつ、頼みます!!」

「ハードルあげんなこのバカ兄妹いいいい!!!!」

 

紅葉と穂乃果がハードルを上げたせいでますます何を言って良いのか分からなくなるにこ。

 

しかも一同の視線も痛いほど彼女に集中しており、にこは戸惑いながらもなんとか声をあげる。

 

「しゅ、しゅ、しゅっぱーつ!!」

 

結局それしか言えなかったが。

 

「・・・・・・それだけ?」

「考えて無かったのよ!! それにアンタと紅葉がハードルあげんのも悪い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、穂むらにて。

 

(フヒヒヒ・・・・・・!! 遂にベリアルのカードと、魔王獣6体のカードを集めることが出来た。 これを使ってマガオロチを・・・・・・!! だが、その前に・・・・・・先ずはこの7枚のカードを紅葉に見せびらかしてやーろーうーっと♪)

 

ウルトラマンベリアルと6体の魔王獣のカードを紅葉に見せびらかしたいが為だけに、今日は穂むらへとやって来たラグナ。

 

彼は紅葉の驚く顔を想像しながら、楽しげな様子で穂むらの扉を開く。

 

「もーみーじーくーんー、あーそーびーまーしょー!!」

「あっ、以前来た紅葉のお友達?」

 

扉を開くと丁度カウンターのところに紅葉達の母がおり、ラグナは「紅葉くんいますか?」と尋ねると母は申し訳無さそうに「ごめんねぇ?」と謝る。

 

「紅葉、今日はμ'sのみんなと一緒に海に合宿に行ってていないのよ~」

「あっ、そうですか。 じゃあ今日はまんじゅうだけ買って帰ります」

 

母にそう言われ、ラグナはまんじゅうだけ購入して渋々帰ることにしたのだが・・・・・・その途中、彼はまんじゅうを食べながらあることに気がついた。

 

それは先ほど、紅葉達の母が言っていた言葉。

 

「μ'sのみんなと一緒に『海』に合宿」という言葉である。

 

「確かμ'sってアイツがマネージャーやってるスクールアイドルの・・・・・・。 画像を見たが、可愛い娘多かったな。 それが・・・・・・アイツと一緒に海で合宿・・・・・・。 海、つまり・・・・・・アイツは複数の水着美少女を1人締めしてんのかあああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉達は無事、海の家の近くの真姫の別荘に到着し、一同は豪華な感じの別荘に感心の声をあげていた。

 

にこだけはなぜか「ぐぬぬぬ・・・・・・!」と悔しそうな顔をしていたが。

 

「凄いよ真姫ちゃん!!」

「さっすがお金持ちにゃー!」

「そう? 普通でしょ?」

 

それから一同は別荘の中へと早速入り、紅葉、穂乃果、海未、凛は寝室に訪れ、巨大なベッドに興奮して穂乃果は紅葉の腕を掴んで一緒にベッドにダイブ。

 

「ここお兄ちゃんと一緒にとーった!! おおー!! ふっかふか~! それに広ーい!」

「お、おい穂乃果!! 言っとくが俺は男だから寝る時は別室だぞ!?」

 

穂乃果に引っ張られて思わず一緒にベッドに転がり込んでしまったが、他の女性陣も使うかもしれないのに男もこのベッドを使うのはダメだろうと穂乃果に注意する。

 

「えーっ!? それじゃお兄ちゃんはどこで寝るの~!?」

「まぁ、普通に考えて下のソファだろうな」

 

それを受けて穂乃果はムスーっとした顔を浮かべ、「それなら私もお兄ちゃんと一緒のソファで寝る!!」と言い出すのだが・・・・・・そんな穂乃果に紅葉は苦笑いしながら彼女の頭を撫でる。

 

「良いから、俺に構わずお前は普通に寝ろ。 そろそろ少しお兄ちゃん離れもしないとな?」

「・・・・・・」

 

穂乃果にちょっと無視されただけで落ち込んでいたお前が言うな・・・・・・と呆れた視線を向けながらそう思わずにはいられない海未であった。

 

「うぅ~!」

 

不満そうな顔をしている穂乃果だが、あんまり我儘を言って紅葉に迷惑をかけたくはないので彼女は渋々承諾。

 

「凛はこっちー!!」

 

それから穂乃果達に続いて凛もベッドの上に乗り上がって場所を取り、凛は海未にも場所を取った方がと言うのだが・・・・・・。

 

「海未先輩も早く取った方が・・・・・・あっ」

 

うっかりと彼女は海未のことを「先輩」と呼んでしまい、それに海未は「やり直しですね」と思わず苦笑してしまう。

 

「うん! 海未ちゃん、穂乃果ちゃん?」

「くぅー・・・・・・ZZz」

 

凛が海未と穂乃果の名前を呼ぶのだが、穂乃果は紅葉に抱きついたままいつの間にか眠っており、それに紅葉は困った表情を浮かべていた。

 

「って寝てる!? 紅葉も穂乃果を起こしてくださいよ!!」

「この寝顔見て起こせると思うか!?」

「・・・・・・起こしましょうよ」

「今の間はなんにゃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、下の階では・・・・・・。

 

「り、料理人!?」

「そんな驚くこと?」

 

真姫から家には料理人がいるということを聞かされ、ことりと・・・・・・特ににこは驚きの声をあげ、真姫は「そんな驚くこと?」と不思議そうに首を傾げる。

 

「驚くよー、そんな人が家にいるなんて。 凄いよね?」

「っ・・・・・・。 へー、真姫ちゃん家もそうだったんだ~? にこん家も、専属の料理人いるのよね! だからにこ、全然料理なんかやったことなくて~」

 

ことりの言葉にそう返すにこ。

 

それにことりは「にこ先輩もそうだったなんて・・・・・・」と感心の声をあげるのだが・・・・・・。

 

「どう考えても見栄張ってんでしょ、にこさん」

 

いつの間にか穂乃果のハグから抜け出して来た紅葉がにこに呆れたようにツッコミを入れ、にこは「見栄なんか張ってない!!」と否定するのだが・・・・・・どう見ても見栄を張っている。

 

「っていうか、ことり!! 『にこにー』でしょ!!?」

「えっ?」

「にこ先輩じゃなくて、『にこにー』でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、リビングに当たる場所では絵里と希がリビングに来ており、それなりの広さである為、これなら練習もできるだろうと絵里は考え、それには希も同意する。

 

「でも折角なんやし、外の方がええんやない?」

「海に来たとは言え、あまり大きな音を出すのも迷惑でしょ?」

「もしかして歌の練習もするつもり?」

 

希の問いかけに絵里は「勿論!!」と答え、ラブライブ出場枠が決定するまであと一ヶ月ないのだから「やれることはやろう!」ということらしい。

 

「やる気やねー。 でっ? 花陽ちゃんはどうしてそんな端にいるん?」

 

希が階段の傍に置いてある植木鉢の植物の後ろに隠れている花陽になんでそんなところにいるのかと尋ねる。

 

「なんか、落ち着かなくって・・・・・・」

 

花陽は希にそう答えながら苦笑いを浮かべ、また少し奥の方に隠れてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから全員が服を着替えた後、一同は外に集合。

 

最も、穂乃果、凛、にこのスマイル組は最初から海で遊ぶ気満々だったらしく、既に水着姿である。

 

「これが!! 合宿での練習メニューになります!!」

 

だが、海で遊ぶよりも前に、海未が考えて来たという窓に貼った練習メニューの紙をみんなに見せ、それに対してスマイル組の3人はとても不満そうな顔を浮かべていた。

 

「って海は!?」

「えっ・・・・・・私ですが?」

 

無論、海未のことではなく穂乃果が言っているのは海水、海のことである。

 

「そうじゃなくて!! 海だよ!! 海水浴だよ!!」

「あぁ! それなら・・・・・・ほら!!」

 

穂乃果の言葉に海未は練習メニューにある「遠泳10キロ」と書かれた部分を指差し、しかもよく見るとその後に「ランニング10キロ」と書かれた項目が目に入り、それを見て穂乃果とにこは顔を引き攣らせて青ざめる。

 

「最近、基礎体力をつける練習が減っています。 折角の合宿ですし、ここでみっちりとやった方が良いかと!!」

「幾ら何でもスパルタ過ぎるだろ!! 多分この中で俺しかついていけないぞ!? これを考えた海未もできそうな気もするが!!」

 

紅葉も流石に海未に対して幾ら何でもやり過ぎでは・・・・・・と意見を述べ、スマイル組は激しく同意するように頷く。

 

「大丈夫です!! 熱いハートがあれば!!」

 

目を輝かせながらそう言い放つ海未に、紅葉は「これ何言ってもダメなのでは・・・・・・?」と思わず頭を抱えてしまう。

 

「やる気スイッチがイタい方向に入ってるわよ? 何とかしなさい!!」

「う・・・・・・うん。 凛ちゃん!!」

 

穂乃果が凛の名前を呼ぶと凛は「分かったにゃ!!」と頷き、彼女は海未の腕を掴むと空に向かって指差す。

 

「あー!! 海未ちゃんあそこぉ!!」

「えっ、なんですか!?」

 

それを合図に、凛、穂乃果、にこ、花陽、ことりは一斉に海に向かって走り出したのだ。

 

「あっ!! あなた達ちょっと!!」

「まんまとノせられたなぁ、海未?」

 

苦笑しながら海未の肩をポンポンっと叩く紅葉。

 

それにムスッとした表情を浮かべる海未だが・・・・・・。

 

「まぁ、仕方ないわねー」

 

という絵里の言葉を聞き、「良いんですか!? 絵里先輩・・・・・・」と驚きの声をあげる。

 

「あっ・・・・・・」

 

しかし、すぐに海未はまた思わず絵里のことを「先輩」と呼んでしまったことに気づき、絵里もそのことに対して注意する。

 

「禁止! って言ったでしょ?」

「すみません・・・・・・」

「μ'sはこれまで、部活の側面も強かったからこんな風に遊んで、先輩後輩の垣根を取るのも、重要な事よ?」

 

海未は絵里の言うことも確かに一理あると思い、紅葉からも「今日だけ好きにさせてあげて!」と頼まれた為、彼女は渋々承諾するのだった。

 

「さっ! 海未、行きましょ?」

 

絵里に手を差し伸べられ、彼女等は水着に着替えて海へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

それから彼女達は海で水をかけ合って遊んだり、希がその光景をカメラで撮っていたりして遊んでいると、海になんとなくボーッと浸かっていた紅葉がフッとあることを思った。

 

(アレッ? 冷静になって考えると今の俺の状況ってかなり役得なのでは?)

 

水着姿の美少女が9人もいて・・・・・・しかも男は自分1人。

 

普通に考えたらお前そこ代われコラ、と言いたくなるような状況である。

 

(いかん、そう考えるとなんだか顔がニヤけそうになる!! さっき誰かがスイカ割りしたいって言ってたし、スイカを用意でもしてくるか)

 

紅葉は少し冷静になる為、スイカ割り用のスイカを持ってこようと海から出ようとするのだが・・・・・・そんな彼を穂乃果が呼び止める。

 

「どこ行くのお兄ちゃん?」

「いや、さっき誰かがスイカ割りしたいって言ってたからスイカを持ってこようかと思ってな。 別荘に来る途中買ってきたのがあるからそれ持って来る」

 

紅葉はそう言いながら陸に上がろうとするのだが、「穂乃果も手伝うー!!」と言って穂乃果も海から上がり、2人で一緒にスイカを持って来ることにしたのだ。

 

「・・・・・・あっ!! そうだ、お兄ちゃん!! 大事なこと聞くの忘れてた!!」

「うん?」

 

陸に上がった直後、穂乃果は何かを思い出したらしく、彼女は突然頬を赤くし・・・・・・なぜかもじもじし出して上目遣いであることを紅葉に聞いてきた。

 

「その、どうかな? 穂乃果の水着・・・・・・」

「・・・・・・穂乃果らしくて元気な感じの水着だと思う。 可愛いぞ?」

「ほんと!?」

 

紅葉は笑みを浮かべて彼女の水着の感想を言いながら穂乃果の頭を撫で、それに穂乃果は「えへへ~」と嬉しそうに笑顔を見せるのだった。

 

その時、紅葉の脳裏に1人の女性の姿がよぎり、彼は思わず手を引っ込めてしまう。

 

「お兄ちゃん?」

(っ! やっぱり穂乃果は、どことなく・・・・・・『彼女』に・・・・・・)

「お兄ちゃん? どうかしたの?」

 

穂乃果が首を傾げながらそんなことを尋ね、それに紅葉は「えっ!?」と驚きの声をあげる。

 

「なんだか様子が変だったけど・・・・・・」

「いや、なんでもないよ。 それより早くスイカ持ってこよう」

「・・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はみんなで持って来たスイカでスイカ割りをしたり、ビーチバレーをしたりしていたのだが・・・・・・。

 

ビーチバレーをしている途中、紅葉は真姫がパラソルの下でイスに座って読書をしており、その隣のイスににこが座っているのが見えたのだが・・・・・・。

 

スラッとした感じで座っている真姫に対し、ほぼ同じ体勢で座っているのに身長が低いせいかにこはどうしてもダラしなく座っているように見えて、彼女もそれを自覚してか、なるべく足を必死に伸ばそうとしている。

 

その光景を見て紅葉はゲラゲラ笑い出し、にこは「笑ってんじゃないわよ!!」と紅葉を怒鳴りつける。

 

「あとちょっと・・・・・・」

 

だがその直後、ビーチバレーに使っていた風船のボールがにこの顔に当たる。

 

「ごめんにこちゃーん!!」

「もっと遠くでやりなさいよ!!」

「にこちゃんもやろうよ!!」

 

そんなにこに穂乃果は一緒にビーチバレーをやろうと誘うのだが・・・・・・。

 

「そんな子供の遊び、やる訳ないでしょ」

 

彼女はサングラスをかけながらそう言って断るのだがそんなにこを凛と紅葉が挑発する。

 

「あんなこと言って、ホントは苦手なんだにゃー」

「来いよにこさん!! サングラスなんて捨ててかかってこい!! 怖いのか?」

「何言ってるのよ!! 見てなさい!! あたしの勇気ある戦いを!! ラブにこオブクラッシャーお見舞いしてやるわー!!」

 

普通にチョロかった、しかも紅葉にノってくれるにこであった。

 

「真姫ちゃんもやらなーい?」

 

穂乃果は真姫も誘うのだが、彼女は「私は別に・・・・・・」と断ってしまう。

 

「成程ね」

「真姫は中々大変そうね」

 

それを見て希と絵里はそんなことを呟くのだが・・・・・・希は絵里の言葉を聞いてなんだか思わず笑ってしまう。

 

「んっ? 何かおかしいこと言った?」

「別に?」

 

 

 

 

 

 

 

「んっ?」

 

穂乃果達と一緒にビーチバレーで遊んでいる途中、不意に誰かの視線を感じた紅葉。

 

その視線がどこから来るのか、紅葉は辺りを見回すと・・・・・・。

 

彼はその超人的な視力によって遠く離れた位置にいる・・・・・・双眼鏡を持って鼻から血をダラダラ出すラグナの姿を発見した。

 

「何してんだアイツ!!?」

「わっ!? どうしたのお兄ちゃん!?」

 

突然、紅葉が大声を出した為に驚く穂乃果。

 

それに紅葉は慌てて「な、なんでもない」と誤魔化す。

 

「俺ちょっとトイレに行ってくる」

「うん? うん、分かった!」

 

穂乃果達にそう言って紅葉はその場を離れ、パーカーを羽織って彼女達にバレないようにラグナの元へと向かう紅葉。

 

一方、ラグナは紅葉がこちらに向かっていることに気付かず、ただただ双眼鏡でμ'sの水着姿を観察し、鼻血を垂れ流していた。

 

「あの金髪の女は結構エロい水着を着てやがるな。 紫の奴もなかなか・・・・・・。 ふむ、青髪の奴は胸は小さいがあの中じゃ1番好みだな、一緒に夜明けのコーヒーが飲みたいもんだ。 あっ!! 青髪の前に立つな黒髪!! 俺は幼女に興味はねえんだよ!!」

「にこさんは幼女なくて合法ロリだぞ」

 

そんな時、ラグナの頭に紅葉がかかと落としを決め、「がふっ!?」と悲痛の声をあげながら彼は蹲って頭を抑える。

 

「お前、やっぱり生きていたんだな。 っていうか何してんだお前は!?」

「うるせえ。 自分だけ水着美少女と戯れやがって!! お前だけ良い想いしてんじゃねえよ!!」

 

ラグナはそう怒鳴りながら紅葉の両方の頬を掴んで引っ張り、それに紅葉も負けじとラグナの両方の頬を掴んで互いの頬を引っ張り合う。

 

「離せ!!」

 

ラグナは紅葉の腕を振り払い、バックステップで紅葉から距離を取り、彼はダークリングと1枚の怪獣カードを取り出す。

 

「今日は1人だけ良い想いしているお前に嫌がらせに来たんだよ!! それなりに水着姿の彼女達で堪能したし、この楽しそうな光景をぶっ壊してやる!!」

 

ラグナは紅葉を強く睨み付けながら怪獣カードをダークリングにリードさせる。

 

『ザバンギ!』

 

そしてダークリングをラグナが海に向けるとそこから黒い光が海に向かって放たれ、それは1体の巨大な怪獣「守護神獣 ザバンギ」となって海から出現したのだ。

 

「グアアアアアアアア!!!!!」

「ラグナ・・・・・・!!」

「あいつを止めてみろよォ。 紅葉!!」

 

紅葉はラグナを睨み付けつつ、自分もオーブリングを取り出し、1枚のウルトラマンのカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

「アグルさん!!」

『ウルトラマンアグル!』

 

さらにもう1枚、別のカードをオーブリングに紅葉はリード。

 

「ヒカリさん!!」

『ウルトラマンヒカリ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「青く輝く光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

そして紅葉は2人の青いウルトラマン、「ウルトラマンアグル」と「ウルトラマンヒカリ」の力を融合させた姿「ウルトラマンオーブ ナイトリキデイダー」に変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! ナイトリキデイダー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、怪獣!!?」

「こんなところにもいるのぉ!?」

 

穂乃果と花陽が怪獣、ザバンギが現れたことに驚き・・・・・・ザバンギがこちらに向かって歩いて来ていることもあり一同は急いで逃げようとする。

 

「急いで逃げないと・・・・・・!!」

 

そんな時、颯爽と跳び蹴りを放ちながらオーブが現れ、跳び蹴りは見事ザバンギに直撃し、蹴り飛ばす。

 

『シェア!!』

「あっ!! オーブが来てくれたにゃ~!」

 

凛はオーブの登場に喜び、それに他のメンバーも安堵の表情を見せる。

 

『影を払いし、光の刃!!』

 

そしてオーブはさらにザバンギを穂乃果達から遠ざける為に掴みかかり、そのまま海深くの海中にまで一気に連れて行き、地面に叩きつける。

 

そのままオーブはザバンギに馬乗りとなって拳を振るうのだが・・・・・・ザバンギは口から吐き出す強力な破壊光線をオーブの胸部に撃ち込み、吹き飛ばす。

 

『グアアアア!!!?』

「グルアアアアア!!!!」

 

立ち上がったザバンギはオーブに向かって駈け出し、体当たりを仕掛けるのだが・・・・・・オーブはジャンプして連続蹴りをザバンギに叩き込み、地面に着地するとさらに回し蹴りを放つ。

 

だが、ザバンギはそんなオーブの足を掴んでフルスイングで振り回し、海底の巨大な岩山に向かって放り投げ、オーブは背中から激突してしまう。

 

『グウウウ!!!!?』

 

ザバンギは地面に倒れ込んだオーブに向かって破壊光線を発射、なんとか立ち上がったオーブは両腕から光の剣「ナイトアグルブレード」を出現させ、ザバンギの破壊光線をX字に切り裂く。

 

『ナイトアグルブレード!!』

 

そのままオーブはザバンギに向かって駈け出し、右腕のブレードをザバンギに向かって振りかざすのだが・・・・・・ザバンギはそれを左手で掴みあげて攻撃を止める。

 

ならばとオーブは今度は左腕のブレードをザバンギに振るうのだが、ザバンギは破壊光線を放って左のブレードを破壊してしまう。

 

『グゥ!? シェア!!』

 

オーブはザバンギに膝蹴りを叩きこんだなんとか距離を取ろうとするのだが・・・・・・ザバンギはそう簡単には逃がさず、オーブの首を両手で掴みあげる。

 

『グウウア・・・・・・!!?』

 

オーブはなんとかザバンギの両手を引き離そうとするのだが・・・・・・そんな時ザバンギは片手だけをオーブの首から離し、その手の爪を使ってオーブの胸部を斬りつける。

 

『グアアアア!!!!?』

 

それによって吹き飛ばされるオーブだが、その際オーブは咄嗟に右腕に残ったブレードでザバンギを斬りつけ、お互いに地面へと倒れ込んでしまう。

 

『グウウ・・・・・・!!』

「グルアアアアア!!!!!」

 

オーブはなんとかザバンギよりも先に立ち上がり、未だに起き上がっている途中のザバンギに向かってもう1度左のブレードを展開し、オーブはザバンギに向かって駈け出す。

 

オーブは2本のブレードを光輝かせ、身体を横向きに高速回転させて相手を斬りつける「ストライクナイトリキデイダー」をザバンギに向かって炸裂させる。

 

『ストライクナイトリキデイダー!!』

「グルアアアアア!!!!?」

 

それによってザバンギは吹き飛んで岩山に激突し、オーブ・・・・・・紅葉は今がチャンスだと思い、別の形態へと変わる。

 

『ティガさん!!』

『ウルトラマンティガ! スカイタイプ!』

 

紅葉は新たに「ウルトラマンティガ スカイタイプ」のカードをオーブリングにリード。

 

『マックスさん!!』

『ウルトラマンマックス!』

 

さらに今度は紅葉は「ウルトラマンマックス」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『速いやつ、頼みます!』

『フュージョンアップ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げ、「ウルトラマンティガ・スカイタイプ」と「ウルトラマンマックス」の力を合わせた「スカイダッシュマックス」へとオーブは姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! スカイダッシュマックス!』

『輝く光は疾風の如し!!』

「グルアアアア!!!!」

 

ザバンギは姿を変えたオーブに向かって「それがどうした」とでも言うかのように破壊光線を発射。

 

だが、オーブはそれを素早い動きで回避し、一気にザバンギに詰め寄って跳び蹴りを喰らわせる。

 

「グウウウ!!?」

『デヤアアアア!!!!』

 

さらにオーブは拳を何発も連続でザバンギに叩き込むのだが・・・・・・ザバンギは一瞬の隙を突いて頭突きをオーブに喰らわせ、それを受けてフラついたところにザバンギは振るった尻尾を叩きつけて吹き飛ばす。

 

『ウアアアア!!!?』

「ギシャアアア!!!!」

 

続けざまに破壊光線を放つザバンギだが、オーブはそれを高速で回避し、ザバンギの周囲を円を描くように走り回る。

 

「グル?」

 

それによりオーブが円を描くように走り回った為、海に渦が発生し・・・・・・それがやがて竜巻となり、ザバンギは身体を回転させながら海上へと上がって行く。

 

「ガアアアアア!!!!?」

 

それにザバンギは為す術もなく、海から飛び出し空中へと放り出され・・・・・・同じくオーブも渦の勢いに乗って海から飛び出し、ザバンギに向かって行く。

 

『これで決める!! ダッシュマックスキック!!』

「グルアアアアアア!!!!?」

 

右足を光輝かせた蹴り、「ダッシュマックスキック」をそのままオーブは空中に飛ばされたザバンギに炸裂させ、それをまともに受けたザバンギは再び海へと落下し、爆発するのだった。

 

そして、オーブはザバンギを倒したことを確認するとオーブはそのまま空へと飛び去るのだった。

 

「あっ、オーブ出てきたよ!!」

「どうやら、怪獣を倒してくれたみたいね?」

 

また、遠くからその光景を見ていた穂乃果達はオーブが勝利したことに喜び、穂乃果は「ありがと~!!」と言いながら手を振るのであった。

 

一方、ザバンギを倒されたラグナはというと・・・・・・。

 

「チッ、まあいいさ。 今日はほんの挨拶代わり。 精々今を楽しんでな、本当の恐怖はこれから・・・・・・、フフフ、アハハハハ!! ヒャッハハハゴホォ!! ゴホッ!!」

 

ザバンギが倒されたことに悔しさを感じつつも、ラグナは自分の「切り札」の存在から顔をニヤけさせ、大笑いして何時ものノルマを達成させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「買い出し?」

 

それから、海で遊び終わった一同は別荘へと戻り、夕飯の食料を買ってくるための相談をしていた。

 

「なんかスーパーが遠いらしくて・・・・・・」

「えっ、じゃあ行く行く!!」

 

ことりの話を聞いて自分が行くと手を挙げる穂乃果。

 

「別に、私1人で行ってくるから良いわよ」

 

しかし、真姫が自分以外店の場所が分からないのだから自分1人で行ってくると言って買い出しに行こうとするのだが、そんな真姫に希が「じゃあウチがお共する」と手を挙げてきたのだ。

 

「たまには良いやろ? こういう組み合わせも」

「じゃあ俺も行きましょうか。 女の子だけに荷物持たせる訳にはいかんでしょうし」

 

それに続くように女性だけに買い出しさせて男の自分がここに残るのもダメだろうということで紅葉も挙手。

 

それに真姫は戸惑いつつも同行を許し、3人は一緒にスーパーへと買い出しに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~、綺麗な夕日やね?」

 

スーパーに向かいながら希が夕日を見ながらそんなことを呟くと、真姫が不意に「どういうつもり?」と希に問いかけた。

 

「別に、真姫ちゃんも面倒なタイプだなーって。 本当はみんなと仲良くしたいのになかなか素直になれない」

「私は普通にしているだけで・・・・・・」

 

希の言葉に対し、真姫はそう返すのだが・・・・・・そんな真姫に希は薄らと笑みを浮かべる。

 

「そうそう。 そうやって素直になれないんよね?」

「っていうか、どうして私に絡むの?」

 

不機嫌そうに真姫は希になんで自分にそんな絡んで来るのかと尋ねると、希は少し考える素振りを見せてから答える。

 

「うーん。 ほっとけないのよ。 よく知ってるから、あなたに似たタイプ」

「・・・・・・なにそれ?」

「まっ、たまには無茶してみるのも良いと思うよ。 合宿やし!」

 

希の答えにあまり納得できないといった顔を見せる真姫だが、それ以上は彼女は何も言わず、一同はスーパーへと再び歩き始めるのであった。

 

(・・・・・・あれ!? これもしかして俺は別荘に残っておくべきだったのでは!?)

 

そして真姫と希のやり取りを今まで見ていた紅葉はもしかして自分は逆に来るべきではなかったのでは・・・・・・となんだか不安な気持ちになるのだった。

 

 

 

 

その後、真姫と希が食材を買ってきて早速調理することになったのだが・・・・・・。

 

「しょうがないわねぇ」

 

にこが手早く調理を開始しており、そのことに関して本来料理当番だったことりが謝罪の言葉を彼女に送っていた。

 

「ごめんね? 私が料理当番だったのにモタモタしてたから・・・・・・」

 

その後、にこお手製のカレーライスとサラダがテーブルの上に並べられ、彼女の作った美味しそうな料理に一同は感心の声をあげていた。

 

尚、花陽だけはなぜかご飯はカレーのルー等をかけず、お茶碗と別々であった。

 

「な、なんで花陽だけお茶碗にごはんなの?」

「気にしないでください!!」

 

また、紅葉もカレーライスとは別にここに来る途中で買ってきたというカレーパンも彼はテーブルの上に並べていたのだった。

 

「紅葉くんもカレーパンとカレーライスって・・・・・・」

「1回やってみたかったんです」

 

絵里の疑問に紅葉はそう答え、また穂乃果は並べられた料理を見て「にこちゃん料理上手だよね~」と褒めるとにこは自慢げな表情を浮かべて満足そうだった。

 

だが、その際ことりが昼間ににこが言っていたことを思い出し・・・・・・。

 

「あれ? でも昼に『料理なんてしたことなーい』って言ってなかった?」

「言ってたわよ。 『いつも料理人が作ってくれる』って」

 

ことりに続き、真姫もにこに対して疑問に思ったことを口にし、にこは気まずそうな表情を浮かべると・・・・・・突然彼女は手に持っていたスプーンを下に下げる。

 

「いやん! にこ、こんな重い物持てなーい!!」

「今更誤魔化してももう遅いですよにこさん。 ここまで料理作っておいて」

「幾ら何でもそれは無理がありすぎるよ、にこちゃん」

 

苦笑しながら紅葉と穂乃果にそう言われてしまい、それに対してにこは勢いよく立ち上がる。

 

「これからのアイドルは料理の1つや2つ、作れないと生き残れないのよ!!」

「「開き直った!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は食事を済ませ、穂乃果はソファの上に寝転がり、それに海未に注意される。

 

「あー! 食べた食べた!」

「いきなり横になると牛になりますよ!」

「牛って言うか太るぞ、穂乃果?」

「もう、お母さんみたいなこと言わないでよ2人共~。 横になるのがダメなら~」

 

海未と紅葉に注意され、ソファから立ち上がった穂乃果は紅葉の元まで歩いて行き、彼の膝の上に持たれるように座り込んだのだ。

 

「お、おい!」

「えへへ~、良い座り心地~♪」

 

穂乃果の行動に紅葉は驚きつつ、「まぁ、寝転がるより良いか」と思い、彼は穂乃果の頭をポンポンっと撫でる。

 

「穂乃果ちゃんはお兄ちゃんっ子やね~」

 

そんな穂乃果と紅葉を微笑ましく見つめる希。

 

するとそれを聞いた海未とことりは互いに顔を見合わせる。

 

「いや、お兄ちゃんっ子でもあるんですけどね・・・・・・」

「そうだね~」

 

海未とことりの言葉に「うん?」と首を傾げる希だが、そこで凛が「よーし、じゃあ花火をするにゃー!!」と手を挙げて来たのだ。

 

「その前にごはんの後片付けしなきゃダメだよ?」

 

と、そんな凛に対し、花陽が先に片付けをしないとダメだと注意するのだが・・・・・・そこでことりが「片付けは自分がやるから」と手を挙げ、それに戸惑う花陽。

 

「えっ、でも・・・・・・」

「そうよ。 そういう不公平はよくないわ! みんなも、自分の食器は自分で片付けて!」

 

そこで絵里は自分達が使った食器は自分で洗うように伝え、また海未は何よりも花火よりも練習が先だと言い放つ。

 

「それに、花火よりも練習です」

「えっ、これから?」

 

そんな海未ににこは引き攣った顔を浮かべ、それに海未は「当たり前です!」と答える。

 

「昼間あんなに遊んでしまったのですから」

「でも、そんな雰囲気じゃないって言うか・・・・・・特に穂乃果ちゃんはもう・・・・・・」

 

ことりが視線を穂乃果に向けると・・・・・・彼女は半分ほど寝てしまっているようで・・・・・・。

 

「雪穂~、お茶まだ~?」

 

という感じで少し寝ぼけてしまっている。

 

「ここには雪穂いないぞ~。 寝るならちゃんと食器片付けて風呂入って歯磨きして寝ろ~」

「って家ですか!? 紅葉ももっとちゃんと起こしてくださいよ!!?」

「これ以上の起こし方は無理。 この寝顔見たら」

 

なんか昼間もこんなやり取りあったな・・・・・・と思う凛だったが、そんな時・・・・・・。

 

「じゃあ、これ片付けたら私は寝るわね」

 

食器を持って立ち上がりながらそう言う真姫に対し、凛は「真姫ちゃんも一緒にやろうよ!!」と言うのだが・・・・・・海未も「この後は練習」というところは譲らない。

 

「いえ、練習があります」

「本気・・・・・・?」

「そうにゃー! 今日はみんなで花火やろう!」

 

しかし、海未は「そういう訳にはいきません!!」と譲らず、凛は花陽はどう思うかと尋ねると・・・・・・。

 

「わ、私は・・・・・・お風呂に・・・・・・」

「第3の意見出してどうすんのよ!?」

 

花陽の第3の意見にツッコミを入れるにこ。

 

「お兄ちゃん!! お茶~!!」

 

そして今度は寝言で紅葉にお茶を頼む穂乃果。

 

「いや無理、お前が膝に座ってるから動けない。 つーかそろそろ足痺れてきた」

「じゃあ、今日はもうみんな寝ようか?」

 

そこで希が新たな意見を出し、練習は明日の早朝で花火は明日の夜することにしようと言いだし、それに対して海未もそれの効率が良いかもしれないと凛共々納得。

 

「じゃあ決定やね!」

 

 

 

 

 

 

 

その後、穂乃果達一同は寝る前に風呂に入ることになり、紅葉は1人寂しくリビングで待機。

 

んっ? こういうのは普通覗きに行く場面だろって?

 

覗きは男のロマン?

 

確かに先ほど穂乃果が紅葉に対して「お兄ちゃん、覗かないでね♪」とウィンクしながら前振り的なことを言われたが・・・・・・紅葉はその辺ちゃんとしているので全く覗きに行く気にはならなかった。

 

「でもラグナが覗いていたりしないよな? まさか・・・・・・」

 

だが昼間にラグナに会ったので少しその辺が心配になった紅葉は前回の前例があることからも風呂の周りだけでも確認すべきかと悩む。

 

取りあえず、一度外に出て超人的聴力で聞き耳を立て・・・・・・怪しい音などが無いかを確かめる。

 

本当ならこんな盗み聞きのようなこともしたくはないのだが・・・・・・ラグナならやりかねないので念のためである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(取りあえず、異常は無かったようだ)

 

一応穂乃果達が風呂から上がるまで聞き耳を立てていたが・・・・・・特に怪しい音などもなく、彼女等以外の気配も感じなかったので良かった・・・・・・と心から安堵するのだが・・・・・・。

 

(でも凄い罪悪感・・・・・・!!)

 

同時にかなりの罪悪感を感じてしまっていた。

 

えっ? 穂乃果達が風呂でどんな会話をしていたか?

 

それは想像にお任せします。

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果達が風呂から上がって交代で紅葉が風呂に入り、上がった後・・・・・・一同は布団を敷いて寝る準備に。

 

「いっくぞー!!」

「にゃー!!」

 

だが、その前に穂乃果と凛が布団の上にダイブしてゴロゴロ転がり、それを紅葉は注意しようとするのだが・・・・・・。

 

いつの間にかにこも加わってゴロゴロ転がっていた。

 

「増えた!? ってにこさんまでなにやってんですか・・・・・・」

「そうですよ! 3人とも敷くの邪魔だから退いてください!!」

 

紅葉と海未から注意され、渋々布団の上から出るスマイル組。

 

「っていうか、どうして全員同じ部屋じゃなくちゃいけないの?」

「全員じゃないぞ。 俺は上の部屋で寝るからな。 流石に女の子ばかりのところで寝る訳にはいかないし」

 

不満そうに声を漏らす真姫に対し、そう答える紅葉。

 

どちらにしてもみんなで寝る意味が分からないといった感じの真姫。

 

そんな彼女に絵里は「合宿だからね」と答える。

 

「まぁ、こういうのも楽しいんよ!」

 

希もそう言って自分1人、別の部屋で寝れる雰囲気でもなかった為、真姫は渋々自分もここで寝ることを決めて一同はそれぞれ自分の寝る場所を決める。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。 お兄ちゃんも一緒にここで寝よーよぅ」

 

だが、穂乃果は紅葉と一緒に寝たいからか、彼の服の袖を引っ張ってお願いするのだが・・・・・・やはりそういう訳にもいかず、紅葉は「ごめんな?」と申し訳無さそうな顔をしながら穂乃果に謝る。

 

「むぅ~。 じゃあ穂乃果がお兄ちゃんの部屋に・・・・・・!!」

「ダメダメ、お前はこっち。 折角なんだから今日はみんなと一緒に寝ろ。 良いな?」

「・・・・・・は~い」

 

紅葉にそう言われ、穂乃果はやむなく返事し、彼女は「それじゃ私ここー!!」と言いながら自分の寝る場所を決める。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一同は明日に備えて眠ることになったのだが・・・・・・。

 

「お前等何してんだ・・・・・・」

 

眠って少し経った頃、なにやら1階が騒がしかったので1体何してるのかと思い降りてみると・・・・・・ぐっすり眠っている海未以外のメンバーが枕投げをして遊んでおり、紅葉はそんな彼女等に呆れた視線を向けていた。

 

「あっ、お兄ちゃん!! お兄ちゃんもやろうよ!!」

「やる訳ないだろ! 明日早いんだろ? さっさと寝ないと・・・・・・むぐっ!?」

 

明日早くから練習があるので、早く寝ないといけないだろと注意しようとした紅葉だったが、穂乃果から投げられた枕が顔面に当たり、紅葉は当たった枕を手に取って仕返しとばかりに穂乃果に投げつける。

 

「何すんだ穂乃果ぁ!!」

「うおっと!? よーし!! お兄ちゃんには負けないよ~!!」

 

紅葉の投げた枕を穂乃果は見事に躱し、ならばと思い紅葉は彼女等の元まで行くと即座に枕を拾ってせめて1発当てた仕返しはしてやろうともう1度穂乃果に投げようとするのだが・・・・・・。

 

「覚悟・・・・・・もぐ!?」

「えへへ~、ごめんね紅葉くん?」

 

今度は横からことりが投げてきた枕が紅葉の顔面に当たる。

 

「上等だ!! お前等纏めて俺が倒してやる!!」

「そう簡単には・・・・・・」

「いかないにゃー!!」

 

今度は希と凛が2人同時に枕を紅葉に投げつけて来るのだが、紅葉はそれを両手で見事キャッチ。

 

「枕の力、お借りします!!」

 

そう言いながら紅葉は凛と希に見事枕を当て、みんな枕投げに大はしゃぎ。

 

しかし、そんな時・・・・・・。

 

「むぐっ!?」

『あっ・・・・・・』

 

投げていた枕の2つは海未の顔を隠すように当たり、彼女は自分の顔の上にある枕を掴んでゆらりと起き上がる。

 

その時の海未は、前髪で目元が隠れて表情が少し分かりづらかったのだが・・・・・・逆にそれがなんだか恐ろしく、紅葉含めて一同はそんな彼女に怯え始める。

 

「何事ですか・・・・・・?」

「ちょっ、怖い怖い!! そう言えば、海未って寝てる時に起こされると物凄く機嫌が・・・・・・」

「・・・・・・どういうことですか?」

 

海未が静かにそう呟くと、「狙ってやった訳じゃ・・・・・・」と真姫が弁明しようとするのだが、あまり意味はなく・・・・・・。

 

「明日、早朝から練習すると言いましたよね? それをこんな夜中に・・・・・・フフフ・・・・・・」

「お、落ち着きなさい海未・・・・・・」

「まずいよ、これ・・・・・・」

 

だが、海未は聞く耳持たず、次の瞬間には高速で彼女が飛ばした枕がにこの顔に直撃し、ダウン。

 

「にこちゃん!! ダメにゃ、もう手遅れにゃ~!!」

「ウフフ、覚悟はできていますね?」

 

不気味に笑みを浮かべる海未。

 

そんな彼女に「どうしよう」と涙目で尋ねることり。

 

「生き残るには戦うしか・・・・・・!!」

 

穂乃果は攻撃される前にこっちが攻撃しようと枕を投げようとするのだが、それよりも早く海未の枕が穂乃果に迫り・・・・・・それを紅葉がなんとか叩き落とす。

 

「おっと危ねえ!!」

「お、お兄ちゃん!」

 

その後も海未は連続で枕を2つ投げるのだが、紅葉はそれを2つともはたき落として後ろにいる穂乃果とことりを守る。

 

(こんなもんケンドロスに比べたら可愛いもんだ!!)

 

そりゃそうだろう、ブーメランじゃなくて枕だぞ、向かって来るの。

 

「こっちも守って欲しいにゃー!!」

「すまんがちょっとそこまでの余裕は無さそうだ!! という訳で攻撃係頼みます、絵里さん!」

 

紅葉にそう言われて頷いた絵里は「ごめん海未!!」と謝罪しながら枕を投げようとするのだが、それよりも早く顔に海未の投げた枕が当たり、絵里は脱落。

 

ならばと次の狙いを海未は花陽と凛に向けるのだが・・・・・・。

 

「今だ!!」

 

その一瞬の隙を突いて紅葉、真姫、希が3人同時に海未に枕を投げて直撃させ・・・・・・彼女は布団の上に倒れてダウンし、再び眠りにつくのだった。

 

「た、助かった~」

 

海未が脱落したことで、ほっと胸を撫で下ろす穂乃果。

 

そしてこんなことになって「まったく~」と呆れた声を真姫は出すのだが・・・・・・。

 

「でも元はと言えば真姫ちゃんが始めたにゃー」

「えっ? そうなのか? 意外だな、真姫ちゃんが・・・・・・」

 

凛の言葉を聞いて驚きの視線を真姫に向ける紅葉。

 

「ち、違うわよ!! あれは希が・・・・・・!」

「うちは何も知らないけどね?」

 

真姫は希の方に顔を向けるのだが、希はとぼけ、それに「アンタね~!!」と怒る真姫だったが・・・・・・。

 

「えい!!」

 

顔に枕を押し当てられ、言葉を防がれてしまう。

 

「って何するの希!!」

「自然に呼べるようになったやん、名前?」

「えっ?」

 

希にそう言われて唖然とする真姫。

 

それに一同は暖かい笑みを浮かべる。

 

「本当に面倒やな?」

「べ、別に・・・・・・そんなこと頼んでなんかいないわよ!!」

 

顔を赤くしながら、彼女は希に向かって枕を投げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の夜中。

 

既にみんなは寝静まった頃の時だった。

 

「・・・・・・うにゅぅ・・・・・・」

 

ふっと穂乃果は目を覚まし、喉の渇きを感じて水を飲もうとキッチンの元へと歩いて行く。

 

(・・・・・・あっ、そうだ、お兄ちゃん・・・・・・)

 

眠気でボーッとしながらも彼女は「ある理由」から紅葉のいる2階へとあがり、彼が眠っている部屋の前に辿り着くと・・・・・・部屋の中から小さな唸り声のようなものが聞こえて来た。

 

「うぅ、うあ・・・・・・うぅ・・・・・・」

(まただ)

 

穂乃果はそっと扉を開けるとやはりそこでは紅葉がうなされながら眠っており、彼女は紅葉の元に歩み寄ると彼の頬に優しく手を添え、そのまま紅葉の布団の中に潜り込んで抱きしめる。

 

すると、少しだけ紅葉の表情が柔らかくなり、唸り声も鳴りを潜める。

 

(昔から、こうなんだよね、お兄ちゃんは・・・・・・)

 

穂乃果がよく紅葉が眠っているときに布団の中に潜り込んで一緒に寝るのには理由があった。

 

勿論、単純に一緒に寝たいからというのもあるが・・・・・・それだけではない。

 

昔から彼は、プレッシャーに子供にされて記憶を一時期消されても尚、昔の悪夢からは解放されなかった。

 

例の夢・・・・・・大切な者を失った時の記憶は昔から彼はよく夢で見ていたのだ。

 

そんなある時、穂乃果は紅葉が悪夢を見てよく苦しんでいるのを知り、まだ幼かった彼女はそんな状態の紅葉を起こせば良いのかどうか分からず、取りあえず抱きしめて一緒に眠ると紅葉は少しだけ落ち着きを取り戻してくれることに彼女は気付いたのだ。

 

それ以来、今でもこうして紅葉が悪夢を見て苦しんでいる時は、穂乃果はいつもこんな風に紅葉を抱きしめて一緒に眠っている。

 

「っ・・・・・・ナターシャ・・・・・・」

(・・・・・・ナターシャって、誰なんだろ)

 

紅葉を悪夢を見る時、決まって口にする名前・・・・・・。

 

穂乃果は昔から紅葉と一緒にいるが、ナターシャなんて名前の人物と会ったことは無い筈。

 

その為、穂乃果はなぜ会ったこともない人物の名前を何時も呟くのか、分からなかったが・・・・・・それが誰なのかを聞くつもりはない・・・・・・というよりも聞く勇気がないというべきか。

 

(でも、何時かは聞かないとだよね。 だって、私、お兄ちゃんと・・・・・・)

 

そこまで考えて、穂乃果に眠気が訪れ始め・・・・・・彼女は眠りの世界へと落ちていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから早朝、少しだけ早めに起きた真姫は何気なく海を眺めるために外に出ると・・・・・・。

 

砂浜に自分よりもどうやら早く起きたらしい希が海を見つめて眺めており、背後に気配を感じた彼女は振り返るとそこに真姫がいることに気付く。

 

「おっ、早起きは三文の徳! お日様からたっぷりパワー貰おうか?」

「・・・・・・どういうつもり?」

「・・・・・・別に真姫ちゃんの為やないよ?」

 

真姫の問いかけに希がそう答えた後、彼女は再び海を見つめる。

 

「海は良いよねぇ、見ていると大きいと思ってた悩み事が小さく見えてきたりする。 ねえ真姫ちゃん?」

「うん?」

「ウチな、μ'sのメンバーのことが大好きなん。 ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。 確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃんたちだけど、ウチもずっと見てきた。 何かあるごとに、アドバイスもしてきたつもり。 それだけ、思い入れもある」

 

すると希は再び真姫の方へと振り返って笑みを浮かべ、一差し指を自分の唇に押し当てる。

 

「ちょっと話過ぎちゃったかも。 みんなには内緒ね?」

 

そんな希に、真姫は思わず笑ってしまう。

 

「めんどくさい人ね? 希?」

「あっ、言われちゃった?」

 

その時、そこへ・・・・・・。

 

「真姫ちゃーん!! 希ちゃーん!! おーい!!」

 

穂乃果が2人の名前を呼びながら他のメンバーを引き連れて現れ、一同はそれぞれが手を繋いで朝日が昇るのを見つめる。

 

尚、紅葉は後ろの階段の方でまだ眠いせいかダウンしてる。

 

「あと24時間寝かせて・・・・・・」

「それ1日終わってるんだけど!?」

 

紅葉の寝言ににこがツッコミを入れるが、そんな紅葉は放って置いて真姫は絵里の名を呼び、名前を呼ばれた絵里は「んっ?」と首を傾げる。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

うっすらと笑みを浮かべながら、真姫は絵里にお礼を述べ、それを受けた絵里も嬉しそうに「ハラショー!」と言いながらウィンクする。

 

「よーし!! ラブライブに向けて、μ's頑張るぞー!!」

『おぉー!!!!!』

 

そして穂乃果の言葉に、全員が勢いよく気合いの入れた声をあげるのだった。















紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!! だがその前に、今日は穂乃果の誕生日だ!! おめでとさん穂乃果!」

ことり
「イエーイ♪ 穂乃果ちゃん、おめでとう!!」

海未
「おめでとうございます、穂乃果」

にこ
「取りあえず先駆けてあたし達で祝うけど、後でみんなで部室でお祝いやるから、来なさいよ」

穂乃果
「えへへ~、ありがと~」

紅葉
「祝え!! μ'sの発案者にて、μ'sのリーダー! 本日は俺の妹、高坂 穂乃果の誕生日である!! 取りあえずウォズさんっぽく祝っとく」

にこ
「さて、じゃあそろそろ今回隠れたサブタイを発表するわね? 今回のサブタイはあたしの『勇気ある戦い』よ!」

穂乃果
「オーブ本編でも使われたやつだね~」

ことり
「ビーチバレーの辺りのにこちゃんの台詞だね~」




次回からマガオロチ、ギャラクトロンに当たるエピソードやって行こうと思うのでちょっと紅葉と穂乃果ちゃんの関係掘り下げる話にもなった為、今回は穂乃果ちゃん誕生日記念に更新しました。
本来はのぞ真姫回ですけど。

ザバンギ、正直出すべきか悩んだんですけど、そこそこ強そうでマイナーで一応地上、水中でも活動できそうな奴というとザバンギしか思いつかなかったんですよね。
シーゴリアンも候補にはいたんですけど海の中だと複数の魚に水中で分裂しそうで戦闘描写かなり難しくなりそうだったので。


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第12話 『復活の大魔王獣』

今朝、学校に行く準備を紅葉がしていると・・・・・・。

 

ドタドタとパンを咥えて珍しく早起きした穂乃果が紅葉の部屋に勢いよく入って来たのだ。

 

「お兄ひゃん聞いて聞いて~!!」

 

穂乃果は朝からはしゃぎながらスマホの画面を紅葉にズイズイ見せてきて、紅葉はそんな穂乃果に「落ち着け」と呆れつつ宥め、穂乃果からスマホを借りて画面を見るとそこには・・・・・・。

 

音ノ木坂学院、μ'sがスクールアイドルのランキングで19位を獲得しており、それは穂乃果達μ'sがこのまま順位を落としたりなどしない限り、ラブライブ出場の権利を得ている状態であり、それには紅葉も「おぉ!」と感心の声をあげる。

 

「やったな穂乃果!!」

「うん!!」

 

紅葉は穂乃果の頭を優しく撫で、それに嬉しそうな声を穂乃果はあげる。

 

「しかし、凄いな・・・・・・」

「凄いなんてもんじゃないよ!! 19位だよ19位!! ラブライブに出場できるかもしれないんだよ!! ラブライブ、出場できればきっと学校もなくならない!!」

 

その後、紅葉と穂乃果は家を出て海未やことりとも合流し、この喜びを4人は分かち合いながら登校するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、学校に着くや否やヒデコ、フミコ、ミカもμ'sがランキングで19位になったことを知り、3人は学校にやってきた穂乃果に「やったじゃん!!」と祝いの言葉をかけ、そのことは学校でも凄い話題になっていた。

 

ミカはそんな穂乃果の頭を「よーしよし、よく頑張った」と褒めながら頭と顎を撫でる。

 

「くぅーん♪」

「ミカ、俺にも撫でさせろ」

「えー? 紅葉くん何時も撫でてるし今日は私に撫でさせてよ」

「穂乃果が犬真似してる時は別格なの!!」

 

よく分かるような、分からないような・・・・・・と思いつつも「しょうがないなぁ」とでも言いたげな様子で穂乃果から手を離し、交代で今度は紅葉が穂乃果の頭と顎を撫で始める。

 

「わっふぅ・・・・・・くぅーん♪」

「可愛いなこいつ」

「っていうか、穂乃果のことだからすぐに飽きちゃうと思ってたんだけど・・・・・・」

 

ヒデコにそう言われて、確かに穂乃果は飽きやすいところがあり、彼女自身もそれを自覚しているのか穂乃果は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「でもさ、私達ってラブライブに出るμ'sの初ライブ見たことになるんだよね!」

 

彼女等3人はファーストライブの時、色々と穂乃果達の手伝いをしてくれており、その関係で後のμ'sになるメンバー以外では彼女等だけがμ'sのファーストライブを見たことになる。

 

そのμ'sがラブライブという大きな大会に出場するとなるとなんだか感慨深いなと思うフミコ達。

 

「しかも3人が見たのは生ライブだからな。 あの時見に来なかった奴等はさぞかし悔しいだろうなぁ・・・・・・? 見に行くとか言って来なかった奴とかいたし・・・・・・」

 

紅葉はファーストライブの時に来なかった連中はさぞかし後悔しているだろうとどこか勝ち誇った黒い笑みを浮かべ、そのことにヒデコとミカがツッコミを入れる。

 

「紅葉くん、笑みが黒いよ・・・・・・?」

「これは来てくれなかった人達に対して結構根に持ってるね」

「まぁ、でも、まだ2週間近くある訳だし・・・・・・ラブライブ出場はランキング1位~20位のグループってルールがあるし、その間にずっと19位以上を保てるかが勝負だから・・・・・・まだ気を抜くには早いからな?」

 

紅葉に穂乃果はそう注意され、穂乃果もそれは理解しているので「分かってるよ!!」とガッツポーズを見せながら紅葉にやる気の高さを見て、それを見て紅葉は「慢心してないなら」と頷くのだった。

 

そんな時、そこに自分の教室に向かおうとしている絵里が通りかかり、彼女は穂乃果と紅葉の2人に「おはよ」と朝の挨拶をする。

 

「あっ、絵里ちゃん!! おっはよ~!」

「おはようございます、絵里さん」

 

朝の挨拶をお互いに済ませると、絵里はそのまま学校の階段を上っていき、また紅葉は兎も角、そんな穂乃果と絵里のやり取りを見てヒデコ、ミカ、フミコは「えっ・・・・・・!?」と驚きの声をあげる。

 

その理由は先輩である絵里に対して「ちゃん呼び」と「タメ口」をしたからでミカは慌てて穂乃果の肩を掴んで「穂乃果! 先輩だよ!!」と彼女を注意する。

 

「あぁ、大丈夫大丈夫! 先輩後輩やめよって話したんだ」

「さっき通りかかった絵里さんの案でな。 まっ、俺は『さん付け』にして敬語は続行だが」

 

穂乃果のその説明を受けてミカは「凄い! 芸能人みたい!!」と驚きの声をあげる。

 

「芸能人っぽいかこれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、教室に戻って少しするとまたヒデコ、ミカ、フミコが穂乃果の元に色紙を持ってやって来て今度は彼女にサインをお願いしたのだ。

 

そのことに「えっ、サイン?」と首を傾げ疑問に思う穂乃果。

 

「これから有名になるんだから記念に1枚書いてよ!」

 

とのことで、紅葉はそれを聞いて「ちょっと気が早すぎるんじゃ無いの・・・・・・」と思わずにいられなかったが、実際μ'sの知名度は上がり続けているので「まぁ、別に問題はないかな」とも思うのだった。

 

「さっき、園田さんにも書いて貰ったんだけど・・・・・・」

「えっ、どこに?」

 

一応、先ほど海未もサインを書いて貰ったらしく、恥ずかしがり屋の海未がサインなんて書くとは珍しいなと紅葉は思うのだが・・・・・・。

 

ミカが見せる海未のサインが入った色紙には何も書かれてないように見え、紅葉と穂乃果は「どこに?」と不思議に思いながらジーッと色紙をマジマジと見つめる。

 

すると、左端の隅っこの方に小っさく・・・・・・本当に小さく・・・・・・「園田 海未」と名前が書かれており、名前を発見した紅葉と穂乃果は「字小っさ!!」と驚くのだった。

 

「海未がサインを書くなんて、珍しいと思ったら・・・・・・」

「恥ずかしいから、これが限界なんだって」

 

だから穂乃果は大きく書いて欲しいとミカは頼み、それを受けて穂乃果は頷いて自分の名前を色紙に書き込むのだが・・・・・・。

 

穂乃果の場合だと、海未とは正反対に字が大きすぎて最後の穂乃果の「果」の部分だけが少し小さくなってしまったのだった。

 

「ごめん入りきらなかった!」

「ホントアンタ達極端よね」

 

そんな海未と穂乃果にヒデコは苦笑し、またフミコが言うにはにこにもサインを頼みに行ったらしいのだが・・・・・・。

 

『すいません、今プライベートなんで』

 

と言われて断られたらしい。

 

「なにバカなこと言ってんですかね、にこさん」

 

そんなことを紅葉が呟くと遠くの方で「だぁれがバカよ!!!!」という声が聞こえて来た気がしたが、恐らく気のせいだろう。

 

「私達、芸能人って訳じゃないし・・・・・・」

 

またこれには穂乃果や海未も苦笑い。

 

「あと、さっきからペン構えてるみたいだけど紅葉くんのはいらない」

 

ミカはさっきからペンを持ってずっとそわそわしている紅葉に気がつき、紅葉のサインはいらないとハッキリと言われ、「えっ!?」とショックを受ける紅葉。

 

「えっ!!? だって俺一応マネージャーだし・・・・・・」

「マネージャーのサイン欲しがる人って普通はいないと思うんだけど・・・・・・」

 

ミカにそう言われた紅葉はさらにショックを受け、彼は椅子の上で膝を抱えて縮こまるのだった。

 

「そんなことでショック受けないでよお兄ちゃん!! って・・・・・・あれ? そう言えば、ことりちゃんは・・・・・・?」

 

そこで穂乃果はことりがそこにいないことに気づき、そのことりはというと・・・・・・。

 

廊下の隅っこ辺りにある階段の下で、暗い表情を浮かべながら一通の手紙の入った封筒をジッと見つめていたのだった。

 

「・・・・・・っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後にて。

 

穂乃果と凛はノートパソコンにラブライブに出場したら出られる舞台の画像を表示しながらそれをうっとりとした様子で眺めており、彼女等2人は自分達がここに立つ姿を想像して楽しんでいた。

 

「うわ~! ラブライブに出場できたら、ここに立てるんだ!」

「凄いにゃー!」

「なにうっとりしてんのよ! ラ、ラブライブ出場ぐらいで・・・・・・」

 

そんな穂乃果と凛をにこが注意するのだが、彼女の目尻には涙が浮かびあがっており、彼女は流れそうになる涙を堪えながら穂乃果達に自分の顔を見せないように窓の外に顔を向ける。

 

「う、ううう・・・・・・やったわね、にこ・・・・・・」

「にこさんが1番喜んでるよな・・・・・・、ラブライブ出場に」

 

この中で1番最初にスクールアイドルを始め、一度グループが解散してしまったにこからしてみればラブライブに出場できるのは確かに喜ばしいことだろう。

 

もしかすれば、この中でラブライブに出場できるかもしれないと1番喜んでいるのは紅葉の言うようににこなのかもしれない。

 

だが、にこはすぐに嬉しいという感情を抑えて気持ちを切り替え、キリッとした顔を浮かべて穂乃果達の方に振り返る。

 

「まだ喜ぶのは早いわ! 決定した訳じゃないんだから。 気合い入れて行くわよ!!」

 

右腕を上げて気合いを入れるにこに、「その通りよ」と言いながら絵里と希が部室にやってきた。

 

絵里は穂乃果達からノートパソコンを借りるとUTX高校のホームページを開き、そこの「A-RISE」の動画を見てみると「連続ライブ決定! 7days!」と書かれており、つまり、A-RISEは7日間連続ライブを行うことを予告していたのだ

 

「7日間連続ライブ?」

「そんなに!?」

 

これには穂乃果や凛も驚きの声をあげ、紅葉も「やるなぁ」と感心の声をあげていた。

 

「ラブライブ出場のチームは2週間後の時点で20以内に入ったグループ。 どのスクールアイドルも最後の追い込みに必死なん」

「成程。 だから目立つことして順位をあげようってことか」

「その通りよ紅葉くん。 それに、20位以下に落ちたところのグループだってまだ諦めてはいないだろうし、今から追い上げてなんとか出場を勝ち取ろうとするスクールアイドルも沢山いる」

 

その為、自分達が今朝19位になったからと言ってまだまだ余談は許さない状態だと絵里は説明。

 

「つまり、これからが本番ってわけね」

「ストレートに言えばそういうこと。 喜んでいる暇はないわ」

 

真姫の言葉に絵里が頷き、それに穂乃果は「よーし、もっと頑張らないと!」と気合いを入れる。

 

「とは言え、特別なことを今からやっても仕方ないわ。 先ずは目の前にある学園祭で精一杯良いステージを見せること。 それが目標よ」

「よし、そうとなったら先ずはこの部長に仕事を頂戴!!」

 

絵里の話を一通り聞き終えたにこは部長として自分にできる何かが無いかと絵里に尋ね、丁度絵里にはにこにうってつけの仕事があった為、それを頼むことにしたのだ。

 

「じゃあにこ、うってつけの仕事があるわよ?」

「んっ? なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「書道部!! 午後3時からの1時間講堂の使用を許可します!」

「「やったぁー!!!」」

 

学校のある部屋にて、茶道部の代表と思われる2人がくじ引きで金のボールを引き当て、講堂の使用許可を貰い、彼女等2人は抱き合って喜びを分かち合っていた。

 

「・・・・・・なんで講堂がくじ引きな訳?」

「昔から伝統らしくて・・・・・・」

 

にこの疑問に絵里がそう応え、自分達としては講堂を文化祭でどうしても使いたかったので部長であるにこにはなんとしてでも金のボールを引き当て、講堂の使用許可を貰ってくれなければいけなかったのだ。

 

そして穂乃果は「にこちゃん!」と彼女の名を呼び、にこは自分がくじ引きを引く番が来ると、彼女は気合い入れてくじ引き台まで力強く歩いて行く。

 

「ひっ!?」

 

その際、係の人がそんなにこにビビっていたりしたが。

 

「不安しかないのは俺だけかな」

 

紅葉としては運が良さそうな希や穂乃果がやった方が金のボールが出る確率上がるんじゃ無いのかと思うのだが、にこは「私に任せなさい!!」と言って妙に自信満々だった。

 

「見てなさい!! 絶対に当たりを引いてやるんだから!!」

「にこちゃん、頼んだよ!」

「講堂が使えるかどうかでライブのアピール度は大きく変わるわ!」

 

そうしてにこはガラガラを回し、彼女は見事金のボールを当て・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・られませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

残念ながらくじ引きで出たのは白いボールであり、つまり、穂乃果達は講堂を使用することができなかったのだ。

 

「残念! アイドル研究部学園祭で講堂は使用できません!!」

 

それを受け、一緒に来ていたμ's全員はその場に崩れ落ちるのだった。

 

「・・・・・・嘘・・・・・・」

 

特ににこが驚愕的な顔を浮かべており、そんな一同に紅葉はどう声をかけて良いか分からず、取りあえずにこの肩にポンッと手を置く。

 

「えっと、その・・・・・・ドンマイ?」

「やめて励まさないで余計になんか傷つく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、屋上にて。

 

「どーしよー!!」

 

穂乃果は講堂使えないことに頭を抱えて嘆き、くじを外したにこは「だ、だってしょうがないじゃない! くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから!!」と開き直る。

 

「あー!! 開き直ったにゃー!!」

「うるさい!!」

 

そのことに凛から指摘されるがにこに怒鳴られて「ひっ!?」と小さな悲鳴をあげてから彼女は黙り込む。

 

「うぅ、なんで外れちゃったのぉ・・・・・・」

「まぁ、予想されたオチね」

 

花陽がくじ引きが外れたことにポロポロと涙を流し、真姫は「予想できた」なんて言って冷静を装うが・・・・・・。

 

「いつもより髪の毛くるくるしてないか真姫ちゃん? 実は結構動揺してるでしょ?」

「し、してないわよ別にこんなことで動揺なんて!!」

 

何時も以上に髪をくるくる弄ってることから紅葉に即座に実は動揺してるのではと疑われるが本人は否定。

 

だが誰がどう見ても動揺しているのは一目瞭然だった。

 

「にこっち、ウチ、信じてたんよ」

 

また膝を抱えてそう呟く希。

 

「うるさいうるさいうるさーい!!!! 悪かったわよ・・・・・・!」

「こればっかりは運だからな。 にこさんだって外したくて外した訳じゃないんだ。 みんなもいい加減許そうぜ?」

「紅葉くんの言うとおりね。 気持ちを切り替えていきましょ? 講堂が使えない以上、他のところでやるしかないわ」

 

紅葉に同意するように絵里は頷き、今は兎に角他のところでライブができそうな場所を見つけなければならないという話になるのだが・・・・・・。

 

他にライブのできそうな体育館やグランドは他の運動部が使っているので恐らく使用はできないということで、海未はそれならばどこでやればと誰もが思った疑問を口にし、みんなはそのことに頭を抱えて悩むのだった。

 

「・・・・・・部室とか?」

「狭いよ!!」

 

にこが意見を出すが、即座に穂乃果から「狭い」というツッコミが入れられる。

 

「あっ、じゃあ廊下は!?」

「バカ丸出しね」

 

今度は穂乃果が意見を出すのだが、にこはバカっぽいという理由で却下。

 

「にこちゃんがくじ外したから必死で考えてるのに!!」

「あとは・・・・・・」

「じゃあここ!!」

 

すると、再び穂乃果は意見を出し、文化祭でライブをする場所にこの場所・・・・・・つまり、屋上を指定したのだ。

 

「ここに簡易ステージを作れば良いんじゃない? お客さんも沢山入れるし!」

「屋外ステージ?」

「確かに人は沢山入るけど・・・・・・」

 

希とことりは屋上の広さを考えれば理論上、沢山の人が入るのは間違いなく、ライブを行うこと自体は問題は無さそうだった。

 

「何よりここは私達にとってすごく大事な場所! ライブをやるのに、相応しいと思うんだ!」

「野外ライブ! カッコイイにゃー!」

 

屋上でライブをやることに凛もノリ気になるのだが、1つ問題があるとすれば、この辺りはあまり人が通りそうにないということでここだとたまたま通りかかるということもないだろうと海未は予想し、もしかすれば1人もお客は来ないかもと真姫は懸念する。

 

「じゃあ、おっきな声で歌おうよ!」

「ハア、そんな簡単なことで解決できるわけ・・・・・・」

「校舎の中や外を歩いてるお客さんにも聞こえるような声で歌おう! そしたら、きっとみんな興味を持って見に来てくれるよ!」

 

そう言い放つ穂乃果に対し、絵里は思わず笑い出してしまう。

 

「フフ、アハハ・・・・・・穂乃果らしいわ」

「えっ・・・・・・ダメ?」

 

穂乃果が不安そうに絵里に尋ねるが、絵里は穂乃果の元へと歩み寄る。

 

「何時もそうやってここまで来たんだもんね。 μ'sってグループは」

「ですね。 それに、同時にμ'sらしくもあると思います。 俺も穂乃果の意見に賛成だ」

「絵里ちゃん、お兄ちゃん・・・・・・えへへ・・・・・・」

 

絵里と紅葉の言葉を受けて穂乃果は思わず笑みを浮かべる。

 

「決まりね、ライブはこの屋上にステージを作って行いましょ!」

「確かに、それが1番μ'sらしいライブかもね!」

「よーし! 凛も大声で歌うにゃー!!」

 

みんなも「自分達らしい」ということで納得し、文化祭では屋上でライブをすることに決定したのだった。

 

「じゃあ各自、歌いたい曲の候補を出してくること。 それじゃ練習始めるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから練習が終わり、海未は弓道部、紅葉は「大きな声でお客を呼ぶ」ということになったものの打てる手は打っておこうということで当日余所から来る人達に渡すための「ライブをやります!」というチラシ作りをするために学校に残り、2年組は今日は穂乃果とことりの2人だけで帰ることになったのだった。

 

「わぁ~! ライブ楽しみだなぁ! ねっ、ことりちゃ・・・・・・うん?」

 

穂乃果は文化祭に行うライブが待ち遠しいという感じで話をことりに振るのだが、ことりはどこか浮かない顔をしており、そんなことりを見て穂乃果は首を傾げる。

 

「・・・・・・あのね、穂乃果ちゃん」

「うん?」

「あ・・・・・・あのね・・・・・・」

 

ことりは何か言いたそうにしているのだが、余程言い辛いことなのか、どこか歯切れの悪い彼女。

 

「えっと、ライブ、頑張ろうね!」

 

しかし、ことりはすぐさま笑顔を浮かべて「ライブを頑張ろう!」と穂乃果に言い、その言葉に穂乃果は嬉しそうに「うん!」と頷くのだった。

 

「・・・・・・っ」

 

そして自分の前を歩く穂乃果の背中を、ことりはただじっと寂しそうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、自分の家に帰ってきたことりは・・・・・・。

 

電気もつけず、薄暗い部屋の中一通の手紙をジッと見つめており、そんなことりに後ろから「どうするの?」とことりの母でもある理事長が尋ねてきたのだ。

 

「・・・・・・」

「こんなチャンス、めったにないわよ?」

「・・・・・・うん」

「・・・・・・」

 

理事長はそのままそこから立ち去ろうとするのだが、その時、ことりが振り返って「お母さん!!」と理事長を呼び止める。

 

「うん?」

「お母さんは、行った方が良いと思う?」

 

そのことりの問いかけに対し、理事長はジッとことりの目を真っ直ぐ見つめて応える。

 

「それは自分が決めることよ?」

「・・・・・・っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、部室にて。

 

「えっ、曲を?」

「うん! 昨日、真姫ちゃんの新曲聴いたらやっぱりよくって。 これ1番最初にやったら盛り上がるんじゃないかなって!」

 

昨日絵里に「自分が歌いたい曲を各自選んで来て欲しい」と言われ、それに対して真っ先に穂乃果が意見を出し、真姫の新しい曲を使うのはどうだろうかと提案して来たのだ。

 

しかし、歌も振り付けもまだこれからであり、絵里は本番までに間に合うだろうかと心配するが・・・・・・。

 

「頑張れば何とかなると思う!」

 

そんな風に力強く言い放つ穂乃果に、絵里は薄らと笑みを浮かべる。

 

「でも、他の曲のおさらいもありますし・・・・・・」

「わ、私自信ないな・・・・・・」

 

しかし、時間はそこまで長くないということもあり、海未や花陽は不安を口にする。

 

「μ'sの集大成にしなきゃ! ラブライブの出場がかかってるんだよ!」

「まぁ、確かに、それも一理あるね」

「多少の無茶は、必要かもな・・・・・・」

 

穂乃果の言葉に希や紅葉も一理あるとして穂乃果の意見に賛成の意を示し、それに穂乃果も「でしょ?」と頷く。

 

「ラブライブは今の私達の目標だよ! そのためにここまで来たんだもん!!」

「・・・・・・ラブライブ・・・・・・」

 

そんな穂乃果の力強い言葉に先ほどまで不安がっていた花陽もラブライブに出場するためならと少し考える。

 

「このまま順位を落とさなければ本当に出場できるんだよ! 沢山のお客さんの前で歌えるんだよ! 私、頑張りたい!! その為にやれることは全部やりたい! ダメかな?」

 

椅子から立ち上がり、そうみんなに強く訴える穂乃果。

 

「反対の人は?」

 

そんな穂乃果を見て、絵里は反対の人はいないかと一同に尋ねると、そこには誰も反対意見を出す者はおらず、みんなは穂乃果の提案に笑顔で賛同したのだ。

 

「みんなぁ・・・・・・! ありがとう!」

 

ただ、1人・・・・・・みんなが笑みを浮かべている中、ことりだけがどこかその笑みに影があり、そのことにただ1人、紅葉は気付いて頭に疑問符を浮かべ彼は首を傾げる。

 

「ことり、どうかしたのか? なんか元気ないように見えるけど・・・・・・穂乃果の意見に反対だったりするのか?」

 

ことりの性格上、彼女は穂乃果に甘いこともあり、何か言いたいことがあるのに黙っているのではないかと思った紅葉は遠慮せず、彼女も反対意見や言いたいことがあるなら遠慮せず言って良いと伝えるが・・・・・・ことりは慌てて首を左右に振って否定する。

 

「ううん、違うの! 私も穂乃果ちゃんの意見には賛成だよ!! 頑張ろうね、穂乃果ちゃん!!」

「ことりちゃん・・・・・・うん、ありがとう!!」

「ただし、練習は厳しくなるわよ? 特に穂乃果!」

 

穂乃果はセンターボーカルなのだからみんなの倍はキツくなると絵里に言われ、穂乃果はガッツポーズをして力強く頷いた。

 

「うん! 全力で頑張る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果は自分が1番に頑張らなくてはいけないということで夜も体力作りの為に走り込みを毎日するようになった。

 

「えぇ? 夜も練習してるの?」

「うん!!」

「やりすぎはよくないよ? いっつも無理するんだから」

 

そのことを聞いた居間で勉強していた雪穂にやりすぎはよくないと穂乃果は注意されるのだが、穂乃果は「大丈夫!!」と言葉を返す。

 

「自分が誰よりも頑張ってライブを成功させなきゃ! 自分がやるって言い出したんだから!!」

 

それだけを言い残すと穂乃果は自分の部屋へと戻り、そんな穂乃果を見て雪穂は薄らとした笑みを浮かべ、また穂乃果と入れ替わる形で紅葉が居間にやってくる。

 

「あいつ、ああ見えて責任感強いんだよな」

「そうだね。 普段ぐーたらな感じのくせに」

「あはは! 違いない」

 

すると紅葉は机の上に置いてある「国立音ノ木坂学院 入学案内」と書かれた学校のパンフレットが置いてあることに気づき、それを見た紅葉はUTXに行こうとしていた雪穂の気が変わったのかと思い、「まさか雪穂、音ノ木受けるのだろうか?」と思いジッと雪穂の顔を見つめる。

 

「な、なに? お兄ちゃん・・・・・・そんなに見つめられると照れるんだけど」

「あぁ、すまん。 いや、雪穂・・・・・・お前、音ノ木坂受けるのか?」

 

紅葉の問いかけに対し、雪穂は一瞬黙り込むが・・・・・・。

 

「うん、視野には入れてるよ」

「そっか。 それじゃ、視野どころか雪穂の第1希望になるように俺も色々と頑張りますか!」

 

紅葉もまたそれだけ言い残すと彼は自分の部屋へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから学校の方も文化祭に向けて本格的にその準備をやり始め、紅葉とことりで制作したライブ開催のポスターを掲示板に手分けして張ることになり、穂乃果はことりと一緒にポスターを掲示板に張りに行き、そのポスターのイラストを見て穂乃果は「おぉ~!!」と感心の声をあげる。

 

「いい感じだよ! これならきっと、屋上までみんな来てくれるね!」

「えへへ・・・・・・。 あの、穂乃果ちゃん・・・・・・」

 

そこでことりは穂乃果に何かを言いかけるのだが・・・・・・。

 

「よぉーし!! クラスのみんなにも見て貰おう!!」

 

ことりの声が小さかったこともあってか、穂乃果はことりの言葉が聞こえておらず、彼女はクラスのみんなにもチラシを見て貰おうと走り去ってしまう。

 

「あっ・・・・・・はぁ・・・・・・」

「ポスターいい感じですね」

 

そこで後ろの方から海未がやってきてポスターの出来を褒められ、ことりは「あ、ありがとう・・・・・・」とお礼を述べるのだが・・・・・・。

 

ことりはどこか元気がない様子。

 

そのことに海未は「んっ?」と不思議そうに首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、教室にて・・・・・・。

 

「ふぁ~」

 

教室では穂乃果が大きな欠伸をしており、海未は「ちゃんと寝ているのですか?」と眠そうな顔をしている穂乃果を見てそう尋ねる。

 

「えへへ、つい朝までライブのこと考えちゃうんだよね」

「普段寝るの好きなのに」

 

苦笑しながら紅葉にそう言われる穂乃果。

 

「だって!! 今からワクワクして眠れないんだもん!!」

(そういや最近俺のところ来て添い寝しないけど、それが理由か)

 

若干、最近穂乃果が添い寝してくれないことに寂しさを感じるが、後々のことを考えると、お互いに妹離れ、兄離れするためにもこれで良いのだろうと思うことにする紅葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから放課後の練習の時間。

 

そんな穂乃果の現状を聞いたにこは「子供ね・・・・・・」と呆れ気味な様子を見せる。

 

「にこちゃんに言われたくない!!」

「どういう意味?」

 

穂乃果の言葉にジトッとした視線を送るにこ。

 

するとその時、穂乃果は「そうだ!!」と言って新しいダンスの振り付けを思いついたらしく、それをみんなに見て「どう?」とみんなに感想を求める。

 

「昨日徹夜で考えたんだ!!」

「ちょっと! 振り付け変えるつもり?」

「そ、それはちょっと・・・・・・」

 

流石に時間が無い中で振り付けを多少とは言え、変えるこには難色を示すにこと花陽。

 

「絶対こっちの方が盛り上がるよ!! 昨日思いついた時、『これだ!』って思ったんだ! あぁ~、私って天才!」

 

しかし、穂乃果はあまり花陽やにこの話を聞いていないようで、海未も「これは流石に・・・・・・」とことりに意見を求めるのだが・・・・・・。

 

「うっ、良いんじゃないかな?」

「えっ」

 

ことりは穂乃果の意見に賛成し、それに穂乃果も「だよねだよね!」と目を輝かせる。

 

「まぁ、組み込めないこともない・・・・・・かな」

「流石お兄ちゃん!! 分かってるね~!」

 

紅葉も穂乃果の考えた振り付けは別に無理のあるようなものではないため、特に問題は無いだろうということで彼も穂乃果の意見に賛成するのだが・・・・・・。

 

(でも、最近穂乃果の奴、ちょっと張り切りすぎだな・・・・・・。 少し無理にでも休ませた方が良いかもしれない)

 

 

 

 

 

 

 

それから、その日の夜・・・・・・。

 

紅葉はその日、夢を見ていた。

 

何時ものように見る大切な者を失う悪夢ではない。

 

紅葉は白い空間にただ立っているだけで、彼はぼーっと地面を見つめていた。

 

そんな時、彼の目の前に白い服を着た女性が突如現れる。

 

「っ、アンタは・・・・・・」

『・・・・・・私の名は、玉響』

「玉響・・・・・・」

 

紅葉はその名前に聞き覚えがあり、少しだけ自分の中の記憶を探ると以前、マガジャッパの事件が起こる少し前に・・・・・・希からあの入らずの森の話に出てきた人物だ。

 

正確には希から聞いた話に少し興味を持って自分で調べた時に知った名前ではあるが。

 

「玉響姫・・・・・・アンタが・・・・・・。 もしかしてこれは、ただの夢じゃないのか?」

 

紅葉の問いかけに対し、玉響姫はこくりと頷く。

 

『光の者よ。 大きな災いが、起きようとしています』

「大きな災い・・・・・・?」

 

玉響姫はそれだけを紅葉に伝えると、彼女の身体は足からどんどん薄くなっていき、それを紅葉は慌てて引き止める。

 

「お、おい!! それだけ言って終わりか!?」

『申し訳ありません。 今の私の力だけでは・・・・・・これくらいの警告が限界なのです。 ですが、どうかお願いです、光の者よ・・・・・・。その災いを、どうか・・・・・・』

 

玉響姫はそれだけを言い残すと、彼女の姿は完全に消え、紅葉もそこで目を覚まし、起き上がるのだった。

 

「っ・・・・・・! 大きな、災い・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、学校の屋上での練習にて・・・・・・。

 

ライブ当日1日前。

 

紅葉はその日、学校に来るべきか悩んだが・・・・・・彼は玉響の言葉が頭の中で引っかかりつつも、今μ'sは大事な時期なのでマネージャーである自分が離れる訳にはいかないこともあり、紅葉も何時も通り彼女等の手伝いをしていた。

 

「ハァ、もう足が動かないよー!」

 

一通りの練習を終えると、疲れ切ったしまったにこはその場に座り込んでしまうのだが・・・・・・。

 

「まだダメだよ! さぁ、もう1回!!」

「えぇ!? またぁ!?」

 

にこは屋上の柵に両手でしがみつき、穂乃果はそんな彼女を「まだまだできるよ!!」と言いながら引っ張って柵から引き離そうとする。

 

「私達は兎も角、穂乃果は少し休むべきです!」

 

そこで海未が何時も以上に張り切って夜も遅くまで練習しているらしい穂乃果に、少しは休むべきだと注意するのだが・・・・・・穂乃果は首を横に振って「全然大丈夫!!」とガッツポーズをしながら応える。

 

「私、燃えてるから!!」

「夜も遅くまで練習しているんでしょ?」

「だって、もうすぐライブだよ!」

 

そんな穂乃果に海未は呆れたような表情を見せ、ことりからも何か言ってやって欲しいと言うのだが・・・・・・。

 

「えっと、私は、穂乃果ちゃんおやりたいようにやるのだが1番だと思う」

「ほら! ことりちゃんもそう言ってるよ!」

 

どこか困り気味にではあるが、ことりは穂乃果のやりたいようにやるべきだと言い、ことりが穂乃果に甘いのは何時ものことなのだが・・・・・・どこか、最近は甘すぎるような気がしてならないと考える海未。

 

海未は視線を紅葉に移すと、紅葉は海未の心情を察してか頷き、穂乃果に声をかける。

 

「穂乃果、ちょっと2人で話があるんだが・・・・・・良いか?」

「えっ、でも練習が・・・・・・」

「練習にも関わる重要な話だし、すぐに終わる」

 

今は少しでも空いた時間を練習に費やしたいと考える穂乃果だったが、紅葉があまりにも真剣な眼差しで頼むと穂乃果も断ることができず、紅葉と穂乃果の2人は階段の方へと向かうのだった。

 

「えっと、それで話って何かなお兄ちゃん?」

「ことりはああ言ったが、海未の言う通り穂乃果は少し休むべきだ」

「えっ」

 

その言葉を受けて穂乃果は少し意外そうな顔を浮かべる。

 

練習に関して紅葉が何か言うとすれば、彼のことなのでてっきりことりと同じようにやりたいようにやれみたいなことを言われると思ったからだ。

 

しかし、今回は全くの逆であり、海未と同じように少し休めと言ってきたのだ。

 

「でも、もうすぐライブだし・・・・・・これでラブライブに出場できるかどうかがかかっているんだよ!?」

 

当然、穂乃果にとってもうじきライブ、それもラブライブ出場がかかっているのならばそれに向けて休んでいる暇なんてないと訴える穂乃果。

 

無論、穂乃果の言い分も分かる。

 

センターである穂乃果が特に頑張らないといけないのだから。

 

だが穂乃果の場合、紅葉は少し度が越しているのでは無いかと思ったのだ。

 

この調子の穂乃果に「休め」と普通に言っても、聞きはしないだろう。

 

だから紅葉は何時もは甘やかしてばかりだが、ライブの為、ラブライブ出場の為、学校の為、μ'sのみんなの為・・・・・・そして何よりも穂乃果自身の為に彼女に何時もと違い、敢えて厳しめの言葉をかけることにする。

 

「思い上がんな!」

「えっ・・・・・・?」

「お前は昔からそうだ。 できるできるって全部1人で背負い込んで・・・・・・。 ライブはお前1人でやるんじゃないんだぞ!! 頑張りすぎて、疲れを溜めまくって・・・・・・それでライブ当日、もしお前が身体を壊したらどうなる? みんなに迷惑がかかるんだ。 それが分かってるのか?」

 

何時もと違ってどこか厳しめな口調の紅葉に戸惑いの色を隠せない穂乃果。

 

「でも、ことりちゃんは私のやりたいようにって・・・・・・」

「ことりは関係ない! それに、もしそうなったらお前を止められなかったってみんなが責任を感じる。 俺だってそうだ。 ここで頑張りすぎるお前を止められなかったら、俺も後悔するだろう。 それに何よりも、そんなことになったら自分のせいだってお前が1番責任を感じて、後悔するんじゃないのか?」

「・・・・・・」

 

紅葉にそう言われて、穂乃果は顔を俯かせて黙り込む。

 

「俺はお前に、そんな想いをして欲しくないんだ。 練習をするなって言ってるんじゃない。 ただ少し休んで欲しい・・・・・・それだけなんだ」

 

顔を俯かせ、しばらく考え込んだような仕草を見せる穂乃果。

 

「顔を俯かせるな、ちゃんと俺の目を見ろ!!」

 

急に怒鳴られ、ビクッと肩を震わせながらも、言われた通り顔を上げて紅葉の目を穂乃果は見つめる。

 

「ライブを成功させる為にも、ちょっとで良いから休んで欲しい」

「・・・・・・」

 

本当なら、練習を休むことなんてしたくない。

 

こうやって紅葉と話している時間だって惜しいのに・・・・・・。

 

だが穂乃果は紅葉の言葉に対して何も言い返すことができない。

 

紅葉の言う通りだからだ。

 

それに、想像してしまったから・・・・・・自分が疲労でライブで倒れてしまった時の姿を。

 

確かに、最近は練習で眠気や疲労を感じることも多かった。

 

しかし、それは全てライブの為、ラブライブに出場する為だからとそんなものを気にしている余裕は無いと思っていた。

 

だが、紅葉に言われ、ライブの途中でもしも今までの無理が祟って倒れてしまったら・・・・・・きっと、彼の言うようにみんなが責任を感じてしまうだろう。

 

何よりも穂乃果自身、自分が1番悪いのだと責めてしまうだろう。

 

ライブ当日に倒れるとは限らないが、それでもこのまま何時も以上に練習をしてしまえばその可能性はどんどん高まるだろう。

 

紅葉に厳しめに指摘され、穂乃果はそこでようやく気付いた。

 

自分はラブライブ出場に向けて、盲目になっていたと・・・・・・。

 

彼女は「自分が無茶をしている」ということに。

 

「失敗できないライブだからこそ、休むんだ。 これも練習の内だ」

「っ・・・・・・そう、だよね。 お兄ちゃんの言う通り・・・・・・かも。 ううん、言う通り・・・・・・なんだよね」

 

ほんの数分、穂乃果は頭の中で色々と考え込んだ後、彼女はジッと紅葉の顔を見つめて頷いたのだ。

 

「そうだよね、確かに私・・・・・・昔から何時も張り切りすぎちゃうところがあるもんね・・・・・・」

「分かってくれたのなら、良かった」

 

紅葉は穂乃果が分かってくれたことに喜び、笑みを浮かべて穂乃果の頭を優しく撫でる。

 

「ありがと、お兄ちゃん、私を止めてくれて・・・・・・」

「マネージャーだからな。 メンバーの体調管理もしっかり見とかないといけないし」

 

穂乃果の説得に成功した紅葉はせめてあともう一練習してから穂乃果は他のメンバーより今日は早めに練習を切り上げることとなった。

 

紅葉の方も家に帰ってまた穂乃果が練習しないかと心配した海未に様子を見るように頼まれ、今日は紅葉も早めに帰ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはすまなかったな、怒鳴ったりして」

「えっ?」

 

校門を出ると、紅葉は先ほど怒鳴ったことを自分の隣を歩く穂乃果に謝罪するが、穂乃果は「そんなこと無いよ!」と首を横に振る。

 

「だって、お兄ちゃんが怒ってくれなかったら、きっとまだ練習しまくってたと思うし・・・・・・。 それに、何時も私に優しいお兄ちゃんも好きだけど、私に怒ってくれるお兄ちゃんも悪くないなぁ・・・・・・なんて・・・・・・」

 

そんな風に穂乃果は「えへへ・・・・・・」と可愛らしく笑い、そんな彼女に紅葉も自然と笑みが零れた。

 

「一応、今日は休むことになったけど、折角だし、帰りになんか食べて帰るか? お兄ちゃんの奢りだ」

「ホント!? わーい!! なら穂乃果、アイスが食べたいな!!」

 

紅葉がアイスを奢ってくれるということで、子供のように喜ぶ穂乃果。

 

「全く、現金な奴め」

 

そんな穂乃果の姿を苦笑する紅葉。

 

すると、ふっと穂乃果が動きを止め、どこかモジモジした様子を見せ始める。

 

「ね、ねえ・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・」

「なんだトイレか?」

「ち、違うよぉ!!」

 

急にモジモジし始めたので、お約束とばかりに「トイレか?」と尋ねる紅葉。

 

そんな紅葉にどっちにしろデリカシー無いなと思いつつも、穂乃果は顔を赤らめながら、自分の右手を差し出してきた。

 

「手、繋いで行っちゃ、ダメかなぁ・・・・・・?」

 

不安そうな表情でそう尋ねる穂乃果に、紅葉は断る理由は無いので「あぁ!」と頷いて差し出された穂乃果の右手を握りしめ、2人でアイスの売っている公園を目指すのだった。

 

その際、紅葉に「兄妹じゃなかったら殺してる!!」みたいな他の男子生徒の視線が突き刺さっていたりしたが。

 

ちなみにこの2人に血の繋がりがないことを知っているのは、実は現状家族以外では海未とことりだけだったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で、とある噴水などがある、広々とした公園にアイスを買う為に訪れた紅葉と穂乃果。

 

「どこに売ってるんだっけ」

「確か公園の中央辺りだった筈・・・・・・」

 

目的の場所を2人でキョロキョロと辺りを見回しながら探していると・・・・・・不意に、紅葉は背後に気配を感じ、彼は素早く振り返りざまに腕を振るい、紅葉の背後に立っていた人物はそれを軽く片手で受け止める。

 

「おやおやぁ~? いきなり殴りかかってくるとはご挨拶だなぁ紅葉?」

「ラグナ・・・・・・!!」

「あなたは・・・・・・!!」

 

そこにいたのは紅葉の宿敵、ラグナであり、穂乃果はラグナの姿を見て驚いた顔を浮かべ、紅葉はラグナの睨み付ける。

 

「お前の妹は驚いた顔も可愛いなぁ? 食べちゃいたいくらいだ」

 

下劣な笑みを浮かべながら舌なめずりをするラグナの姿を見て「うわぁ・・・・・・」と穂乃果はどん引きし、紅葉はすぐに穂乃果を自分の後ろに下がらせる。

 

「穂乃果、お前はアイス買いに行ってろ。 金は後で払うから。 俺はこいつと話がある」

「で、でもお兄ちゃん・・・・・・!!」

「心配すんな。 俺の分も頼むぜ?」

 

紅葉は穂乃果の頭を撫でながら彼女をラグナから遠ざける為、アイスを買ってくるように言うのだが・・・・・・それでも心配なものは心配なのだ。

 

それに、ラグナが得体の知れない人物なのも分かっているので尚更ここから離れたくは無い。

 

「俺を信じろ。 俺なら大丈夫だ。 それとアイスはチョコレート味で頼む」

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

ジョークを交えつつも真剣な眼差しでそう頼まれ、穂乃果はそれに戸惑いながらも「う、うん」と頷いてその場から走り出して離れる。

 

「お前が海に行ったあの日だけどな。 あの時はお前への嫌がらせとして怪獣を出したが・・・・・・あの日の本当の目的を、今日お前に教えようと思ってな?」

「本当の目的だと?」

 

ラグナは「くくく・・・・・・」と小さく笑い、彼は6枚の魔王獣の怪獣カードを取り出し、それを紅葉に見せつける。

 

「お前は魔王獣を全て倒したと良い気になってるかもしれないが、それは実はぜーんぶ俺の為だったんだよ!! じゃっじゃじゃーん!! 今明かされる衝撃の真実ゥ!! ってやつだな」

「それは・・・・・・そのカードは!! おい、どういうことだ?」

「つまり、『ありがとう』ってことだ。 お前は俺の為に魔王獣を倒してくれたってこと。 お前の魔王獣退治は俺がこれらのカードを手に入れる為に全て俺が仕組んだことなんだよ」

 

ラグナ曰く、紅葉は今までラグナの手の平の上で踊らされていただけに過ぎないとのことでそれを聞いて紅葉は以前予想していた「大魔王獣復活」というラグナの目的が未だに潰えていないのだと察する。

 

だが、例え魔王獣全てのカードがあったとしても、完全に大魔王獣を復活させることはできないだろう。

 

「だからそこでこいつの登場だ」

 

そんな紅葉の疑問に応えるかのようにそこでラグナが取り出した7枚目のカード・・・・・・それを見て紅葉は目を見開く。

 

そこに描かれているのは鋭い爪を持つ黒いウルトラマン、ウルトラマン達の故郷である光の国で悪に墜ちた最凶最悪の戦士、「ウルトラマンベリアル」のカードだったのだ。

 

「それは、ウルトラマンベリアル・・・・・・!!」

「ご名答。 だが安心しな。 そんなすぐにこのカードは使わない。 少しの間猶予を与えてやるよ。 精々大魔王獣の復活にビクビクしてると良いさ!」

 

ラグナはそれだけを言い残してその場を立ち去ろうとするが、このまま黙って見過ごす紅葉ではない。

 

紅葉はすぐさまラグナの持つベリアルのカードを奪い取ろうと勢いよく手を伸ばし、ラグナは紅葉の攻撃を躱すと腕を振るって反撃し、紅葉はラグナの振るって来た腕を両腕でガードして受け止める。

 

「この俺がそう簡単にこのカードをお前に渡すと思うか?」

「お前こそ、俺がこのままお前をミスミス逃すと思うか?」

 

お互いに睨み合う紅葉とラグナ・・・・・・。

 

そんな時、ラグナの視線が右方向に向けられ、薄らと笑みを浮かべる。

 

「おいおい、折角お前が遠ざけたってのに、アイスを持ってお前の妹が戻って来たぞ?」

「なに!?」

 

ラグナの言葉に紅葉は慌てて後ろを振り向くとそこに穂乃果の姿はなく、ラグナの言葉にまんまと乗せられたと思った紅葉は再びラグナの方に顔を向けるが・・・・・・。

 

そこにはもうラグナの姿はなく、紅葉は「クソ!!」と悪態をつくのだった。

 

「まさか、これが玉響姫が言っていた大きな災い・・・・・・なのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、紅葉と穂乃果は無事家に帰宅し、紅葉は「調べることがある」と言って部屋に籠もり、穂乃果は自室のベッドの上に寝転がっていると海未から電話がかかってきたのだ。

 

「えっ? ことりちゃん?」

 

それは「最近ことりの様子がおかしくないか」という内容で穂乃果は「別に何時もと変わらないと思うけど・・・・・・」と特に何かを察したということは無かった。

 

『・・・・・・そうでしょうか』

 

しかし、海未は本当にそうなのだろうかと疑念を抱かずにはいられなかった。

 

「海未ちゃんは何か聞いたの?」

『いえ、私は弓道の練習もあったので・・・・・・最近あまり話せてないんです』

「・・・・・・大丈夫じゃないかなぁ。 きっと、ライブに向けて気持ちが高ぶってるだけだよ!」

 

穂乃果はそう言うのだが、海未は「本当にそうなのだろうか」と心の中で首を傾げていると・・・・・・電話越しに穂乃果が「はくしゅっ!」とくしゃみをする声が聞こえた。

 

『ほら、明日は本番。 体調を崩したら元も子もありません。 今日は休みなさい』

「はーい!」

 

それから会話を終え、電話を切ると穂乃果はスマホの画面のスクールアイドルのランキングの画面を開き、それをジッと見つめる。

 

「・・・・・・っ」

 

明日がライブ本番ということもあり、穂乃果は「走り込みくらいなら・・・・・・」と言う考えがほんの少しだけ脳裏に過ぎったが・・・・・・。

 

「ライブは、私1人でやるんじゃない・・・・・・」

 

『ライブはお前1人でやるんじゃない。 頑張りすぎて、疲れを溜めまくって・・・・・・それでライブ当日、もしお前が身体を壊したらどうなる?』という紅葉の言葉を思い出した穂乃果は「今日は休む」という紅葉との約束を守るためにも、今日はもう練習は絶対にしないことにし、明日に備えて彼女は早めに眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、穂乃果と通話を終わらせた直後、海未のスマホにことりが電話をかけてきたのだ。

 

噂をすればなんとやらと思いつつも海未はすぐに通話に出る。

 

「ことり?」

『海未ちゃん、私・・・・・・あのね、実は・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日、ライブ当日。

 

紅葉はネットなどで大魔王獣が封印されていると思われる場所の目星は幾つかつくことが出来たが、明確な場所は未だに掴めないでいた。

 

そこで紅葉は入らずの森について知っていた希なら何か知っているのでは無いかと思い、ライブ前ではあるが、なるべく早く対処したい為、今、彼女に話を聞くことにしていたのだ。

 

「えっ、入らずの森の話?」

「えぇ、できれば以前よりも詳しく、もしくはそれに関連した話なんかを。 例えば玉響姫のこととか・・・・・・」

 

希はなぜ紅葉は今更そんな話を詳しく聞こうとしているのか分からず、首を傾げるが・・・・・・。

 

別に教えない理由も無いので希は快く紅葉にその辺りの話を彼にし始める。

 

「そうやねぇ。 入らずの森の話は以前と殆ど内容は変わらんし・・・・・・取りあえず、玉響姫の話でもしようか」

 

なんでも希が言うには玉響姫は太古の霊能力者だったらしく、その容姿は絶世の美女と言えるほど美しかったと言う。

 

「それでその美貌に魅せられたオロチが玉響姫を攫ったらしくてなぁ」

「それで、玉響姫はどうなったんですか?」

「なんでも1人の光の勇者がオロチを封印し、玉響姫を助けたらしいわ。 助けられた玉響姫はオロチが復活しないように勇者の力を借りて結界を張り、入らずの森を守り続けてるそうやで」

 

それを聞いた紅葉は大魔王獣が封印されている場所、その可能性が1番高い場所・・・・・・。

 

希から話を聞いて紅葉はそれが以前にも訪れた「入らずの森」であることをほぼ確信し、紅葉は慌ててその場から離れるように駆け出した。

 

「えっ、ちょっと紅葉くん!!」

「すいません!! すぐ戻りますんで!!」

 

希の制止も聞かずに紅葉は学校を飛び出し、入らずの森へと彼は急いで向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、凛と花陽は屋上の様子を見に来たのだが・・・・・・残念ながら今日の天気は雨であり、ライブステージである屋上に客が全くいないことを2人は嘆いていた。

 

「ああああっ、凄い雨!」

「お客さん全然いない・・・・・・」

「この雨だもの、しょうがないわ」

 

真姫の言うように雨はかなりの勢いで降っており、客がいないのも当然と言えた。

 

「私達の歌声でお客さんを集めるしかないわね」

 

だが、だからこそ、自分達の歌声でお客を集めようと絵里は語り、にこも絵里の言葉を受けて「そう言われると燃えてくるわね!!」と俄然やる気を出していた。

 

一方、絵里達から少し離れた場所で海未とことりは何かを話し合っており・・・・・・。

 

「本当に良いんですか?」

「うん。 本番直前にそんな話したら、穂乃果ちゃんにも・・・・・・みんなにも悪いよ」

「でも、今日がリミットなのでしょう?」

 

海未のその問いかけに対し、ことりはどことなく暗い表情を浮かべつつも「うん」と頷く。

 

「だから、ライブ終わったら私から話す。 みんなにも、穂乃果ちゃんにも・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんがいない!!」

 

もうすぐライブ開始ということで部室で穂乃果を除くμ'sのメンバーが着替えを完了させた中、少し遅れて穂乃果がそう叫びながら部室にやってきたのだ。

 

見たところ昨日休んだのが功を成したのか全然元気のようだ。

 

「遅いわよ」

 

そんな穂乃果が遅れてきたことに文句を言うにこだが、穂乃果の「お兄ちゃんがいない」という言葉から推測するに、どうやら紅葉を探していたのだろう。

 

「ご、ごめん。 でもさっきからお兄ちゃんを探してるんだけど、全然いなくて・・・・・・」

「そう言えばアイツ、今朝少し顔見た程度でその後全然見掛けなくなったわね・・・・・・。 全く、マネージャーの癖にこんな時にどこ行ってんだが・・・・・・」

「そういや紅葉くん、今朝ウチになんか話が聞きたい言うて私のところに来たんやけど・・・・・・」

 

にこは紅葉の姿が無いことに悪態をつき、そこで希が今朝あったことを一同に話し始める。

 

「なんで紅葉が今、そんなおとぎ話みたいな話を希から聞きたがったんでしょう?」

 

希からの説明を受け、なぜ紅葉が玉響姫についての話を今聞こうと思ったのか、それが分からず疑問符を頭に浮かべる一同。

 

ただ1人、にこだけはどうして紅葉が希から玉響姫の話を聞いたのか、どうして希から話を聞いた後にどこかへと去って行ったのか、なんとなくではあるがその理由を彼女は察した。

 

(・・・・・・入らずの森って確か以前怪獣が現れた場所よね。 もしかしてアイツ・・・・・・)

 

紅葉は恐らく、ウルトラマンとしての役目を果たしに行ったのだろうとにこは予想し、彼は自分達のライブを守る為に、戦いに行ったのかもしれないとにこは考えた。

 

(だとしたら、私達も全力でやんないとね・・・・・・)

「・・・・・・お兄ちゃん、もうすぐライブが始まるのに・・・・・・」

 

ただ穂乃果は紅葉がいなくて多少の不安を感じているらしく、そんな穂乃果ににこはポンッと軽く彼女の背中を叩く。

 

「なに今更ビビってんのよ、アンタらしくない」

「にこちゃん・・・・・・。 うん、だって今までずっとお兄ちゃんが傍でライブを見てくれてたからさ・・・・・・。 絶対にこれないだろうなって思ってたファーストライブにも来てくれたし・・・・・・。 だから今日お兄ちゃんがいないのはなんだか不安で・・・・・・」

「ブラコンめ」

 

ブラコン全開な穂乃果ににこは呆れた視線を送り、それに対して穂乃果は「だってぇ~」と言うが・・・・・・。

 

「まっ、兄がいなくてもちゃんとやれるってとこ見せれば『偉いな~』って褒めてくれるかもよ?」

「あっ、確かにそっか!! お兄ちゃんに褒められる為にもお兄ちゃんがいなくても頑張ろう!!」

「アイツもシスコンだけど、アンタもやっぱブラコンよね」

 

そんな穂乃果ににこは「はぁ」と溜め息を吐きつつ、「大丈夫よ」と穂乃果に声をかける。

 

「紅葉ならその内来るでしょ。 アイツを信じてやんなさい」

「・・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果はライブの衣装に着替えたのだが、彼女以外のメンバーは外を見て未だに雨が止まないことを少しだけ嘆いていた。

 

「全然弱くならないわね・・・・・・」

「っていうか、さっきより強くなってない?」

 

にこの言うように、雨は先ほどよりも激しく降っている様子を見せており、これでは例えお客が来てくれたとしても・・・・・・と考える真姫。

 

先ほど燃えると言っていたにこも、こんなに激しく雨が降っては少しばかり気持ちが沈んでしまう。

 

そんな時・・・・・・。

 

「雨がちょっと強く降ってるからってなんだ!! そんなもの関係ないだろ!!」

 

と突如、穂乃果が彼女らしくない口調で啖呵を切ったのだ。

 

そのことに当然驚く海未達。

 

「ってお兄ちゃんならきっと言うだろうね・・・・・・」

 

どうやら、今のは紅葉の真似だったらしく、急に穂乃果が豹変したのかと思い、海未は「紛らわしいことしないでください!!」と怒鳴る。

 

「ご、ごめんごめん! でも、そうでしょ!? ファーストライブの時もそうだった!! あそこで諦めずにやってきたから今のμ'sがあると思うの! だからみんな、行こう!!」

 

力強く、そう言い放つ穂乃果。

 

それに対し、花陽も「そうだよね」と頷く。

 

「その為にずっと頑張ってきたんだもん」

「後悔だけはしたくないにゃー!!」

 

花陽に続き、凛もやる気を十分に見せ・・・・・・。

 

「泣いても笑ってもこのライブの後には結果が出る!」

「なら思いっきりやるしかないやん!!」

「進化した私達を見せるわよ!」

 

花陽や凛に続いて絵里、希、真姫も気合いを入れる。

 

「やってやるわ!!」

 

またにこも拳を握りしめてライブに向けて意気込む。

 

だが、みんながそんな風に気合いを入れる中・・・・・・ことりだけがまたどこか浮かない顔をしており、そんなことりに海未は心配そうに彼女の名を呼ぶ。

 

「・・・・・・ことり」

「あっ・・・・・・ご、ごめん・・・・・・」

 

苦笑いしながら海未に謝ることり。

 

「兎に角今は、ライブに集中しましょう。 折角ここまで来たんですから」

 

そんなことりに海未は今はライブに集中しようと言われ、ことりも「うん」と頷き、μ's一同は屋上のライブステージへと向かうことに。

 

屋上では雪穂や亜里沙、ヒデコ、フミコ、ミカを始めとしたそこそこの観客がおり、そしてライブステージに並び立つμ'sの9人。

 

(やっぱり、お兄ちゃんいないなぁ・・・・・・)

 

なんだかんだで何時もちゃんとライブに見に来てくれる紅葉がいないことに多少の不安を感じる穂乃果だったが・・・・・・。

 

(何時までも、甘えきゃ、ダメだよね・・・・・・。 例えお兄ちゃんがいなくても・・・・・・大丈夫、いける、できる!!)

 

何時までも甘えてばかりではダメだと穂乃果は思い、そしていよいよライブがスタート。

 

ライブの曲は・・・・・・「No brand girls」

 

ライブの1曲目が何事もなく無事に終わり、続いて2曲目を披露しようとしたその直後・・・・・・。

 

学校から遠く離れてはいるが、それでも遠目からでも分かるほど巨大な赤い岩のようなものが大きな音を立てながら地面から出現したのだ。

 

「っ・・・・・・!! なに・・・・・・あれ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前のこと、入らずの森に訪れた紅葉はというと・・・・・・。

 

その森の中央に紅葉は全身雨でずぶ濡れになりながらも辿り着き、そこでは傘をさしてちくわを食べているラグナの姿があった。

 

「なんでちくわ食ってんだお前」

「好物なんだよ。 それよりも、思ったよりも場所を見つけるのが早かったじゃないか」

 

ラグナは残りのちくわを一気に口の中に押し込み、どこから取り出したペットボトルの水を飲んでちくわを一気に「ごっくん」と飲み込む。

 

「裏でこそこそと立ち回りやがって・・・・・・今日は大事な日なんだ。 お前の企みを阻止させて貰う・・・・・・」

「らしいな!! あのμ's・・・・・・だったか? アイツ等に取って今日は特に大事なライブだそうじゃないか・・・・・・」

「・・・・・・まさかお前・・・・・・!!」

 

ラグナの言葉を聞き、彼は最初から今日、大魔王獣の復活をさせるつもりだったのではないかと紅葉は考え、それに対してラグナは「ご名答♪」と嫌らしい笑みを浮かべながら紅葉の考えが正解であることを伝える。

 

「何が猶予を与えるだ。 この日に大魔王獣を復活させるのはお前の中で決定事項だったんじゃないか」

「ちゃんと1日だけ猶予を与えただろう・・・・・・?」

「アイツ等の・・・・・・μ'sのライブの邪魔はさせない!!」

 

そんな強く言い放つ紅葉の言葉を、ラグナは「フン」と鼻で笑い、紫の光弾を右手から放ち、紅葉はそれを左手を振るって弾き飛ばす。

 

そのままラグナは紅葉に突っ込んでいき、胸に三日月の傷がある鬼のような姿・・・・・・「無幻魔人 ラグナ」へと姿を変え、紅葉に殴りかかって来たのだ。

 

紅葉はそれを片手で受け止め、取っ組み合いになる紅葉とラグナ。

 

紅葉はラグナに膝蹴りを叩きこむが、ラグナはそれをひょいっと後ろに後退して躱し、紅葉に向かって駈け出し、跳び蹴りを放つ。

 

「っ!!」

 

それを紅葉はなんとか両手で受け流し、ラグナの背後に回り込むと彼の背中に何発も拳を叩き込む。

 

『おっと!』

 

それによって多少フラつくラグナだったが、振り返りざまに右腕を振るって紅葉を攻撃し、紅葉は左腕でガードするが軽く吹き飛ばされてしまう。

 

「チッ・・・・・・!」

『フン』

 

するとラグナはダークリングを取り出す。

 

『いけません・・・・・・!! やめさせてください!』

「っ、玉響姫・・・・・・! 分かってる!!」

 

すると、近くにあった石碑のようなものから玉響姫の霊体と思われる女性が現れ、慌てて紅葉にラグナを止めるように頼み、紅葉はラグナを止めようと駆け出す。

 

紅葉はラグナに向かって蹴りを放つが、ラグナはのらりくらりと紅葉の攻撃を避け続け、ダークリングに6枚の魔王獣カードをリードさせる。

 

『もう遅いんだよ、紅葉ィ!! 蘇れ、魔王獣の頂点に立つ大魔王獣!!』

 

そしてラグナはダークリングを掲げると宙に6枚の魔王獣のカードが浮かび上がり、それらから6つのエネルギーが地面に降り注ぐと地面が大きく抉れる。

 

「うわっ!?」

『っ!!?』

 

それに紅葉と玉響姫は大きく吹き飛ばされてしまい、その衝撃で玉響姫の石碑がバラバラに砕け散り、彼女ははその場から姿が消え、紅葉は彼女の名を叫ぶ。

 

「玉響姫!!!!」

 

そして地面から巨大な赤い岩のようなものが出現し、中央には光輝く1枚のカードが存在していた。

 

『お前に見せてやる。 よみがえった伝説を!!』

 

さらにラグナは最後にベリアルのカードをダークリングにリードすると、ベリアルのカードは大魔王獣を封印していたウルトラマン、「宇宙警備隊隊長 ゾフィー」のカードに向かって飛んでいき、ゾフィーのカードを砕くと岩は破壊され・・・・・・。

 

その中から翼のような形状の背中の巨大な突起物と、腹部には6つの目玉のような模様があり、赤い角を持った巨大な怪獣・・・・・・魔王獣の頂点に立つ存在、「大魔王獣 マガオロチ」が復活したのだ。

 

「ガアアアア!!!!」

『これぞ、如何なる星をも食い尽くす大魔王獣・・・・・・マガオロチだ!!』

 

マガオロチは街に向かって進んでいき、それを見た紅葉はラグナを強く睨み付ける。

 

「お前の目的は俺だろうが!! 関係ない奴等を巻き込むな!!」

『アハハハ!! 知ったことか!! 退治できるもんならやってみろ!! アーハハハハハ!!!! ハーッハッハッハッゴホゴホッ!!』

「・・・・・・っ!!」

 

紅葉は怒りで強く拳を握りしめ、マガオロチを止めるために彼はオーブリングを取り出す。

 

最初にカードホルダーから紅葉はウルトラマンのカードを取り出してそれをリードさせる。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

続いて紅葉はティガのカードをオーブリングにリード。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

そして紅葉はウルトラマンとティガの力を合わせた「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身し、マガオロチの前に立ち塞がる。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!』

『闇を照らして、悪を討つ!! スペリオン光線!!!!』

 

オーブは出現と同時に右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを貯めた後、十字に組んで放つ必殺光線「スペリオン光線」をマガオロチに向かって発射。

 

しかし、マガオロチは避けるどころかスペリオン光線を敢えて受け・・・・・・そのままオーブに向かって突き進み、口から放つ雷撃光線、「マガ迅雷」を近距離からオーブに向かって放ち、オーブを大きく吹き飛ばし、吹き飛ばされたオーブはビルに激突して倒れ込む。

 

『ウアアアアア!!!!?』

『パワーストロング!』

『ぐうう・・・・・・!! 光の剛力に敵は無い!!』

 

だが、オーブはティガ・パワータイプとダイナ・ストロングタイプの力を融合させた「パワーストロング」に姿を変えながら立ち上がったオーブはマガオロチに向かってその巨大な拳を叩き込もうとするのだが・・・・・・。

 

マガオロチはオーブの頭上をジャンプして飛び越え、後ろに回り込むと振り返りざまにマガ迅雷を放ち、背中から直撃を受けて膝を突いてしまうオーブ。

 

『ヌアアアアアア!!!!?』

 

一瞬、マガオロチの光線が止まった僅かな隙に立ち上がろうとするオーブだったが・・・・・・そこを狙って再びマガオロチがオーブの背中に素早くマガ迅雷を撃ち込んできたのだ。

 

『グアアアアア!!!!?』

『スカイダッシュマックス!!』

『輝く光は疾風の如し!! これならどうだ!!』

 

オーブは今度はティガ・スカイタイプとマックスの力を融合させた「スカイダッシュマックス」となり、目にも止まらぬ速さでマガ迅雷を躱してマガオロチの周囲を囲むように動き回り、右手から冷気光線を放つ「スカイダッシュブリザード」を繰り出し、マガオロチの全身を凍らせて動きを封じる。

 

『スカイダッシュブリザード!!』

「グルルルル・・・・・・!!」

『バーンマイト!』

 

その間にオーブはタロウとメビウスの力を融合させた「バーンマイト」に姿を変えると全身に炎を纏って相手に体当たりし、抱きついて爆発させる「ストビュームダイナマイト」を繰り出す。

 

『紅に燃えるぜ!! ストビューム・・・・・・ダイナマイトォ!!!!』

 

しかし、オーブが抱きつく前にマガオロチは全身から電撃のようなオーラを放って氷を砕き、そのオーラはオーブにも直撃してオーブは倒れ込んでしまう。

 

『ヌアアア!!!!?』

 

倒れ込んだオーブをマガオロチはすかさず踏みつけ、足を上げてもう1度踏みつけようとするが・・・・・・オーブはそれを身体を転がしてなんとか回避。

 

『ナイトリキデイダー!』

『影を払いし、光の刃!!』

 

次にオーブはアグルとヒカリの力を合わせた「ナイトリキデイダー」に姿を変え、両手から光の剣「ナイトアグルブレード」を出現させ、マガオロチに向かってナイトアグルブレードを振り下ろすが・・・・・・マガオロチはそれらを両手で余裕で受け止め、オーブを引き寄せて胸部の突起物でオーブの胸部を攻撃する。

 

「グギャアアアアア!!!!!」

『グアアア!!!?』

 

さらに近距離からのマガ迅雷を喰らわせ、オーブは火花を散らしながら吹き飛び、そのままビルに突っ込みながら倒れてしまう。

 

『グッ・・・・・・ウゥ・・・・・・』

『スペシウムシュトローム!』

『受け継がれてゆく魂の絆!!』

 

なんとか立ち上がったオーブはウルトラマンとネクサス・アンファンスの力を融合させた「スペシウムシュトローム」となり、オーブは空中でインサイドループした後に胸と両手から二種類の光線を発射する「ウルトラフルバースト」を放ち、見事にマガオロチに攻撃が直撃するのだが・・・・・・。

 

『ウルトラフルバースト!!』

「グルルルル・・・・・・!!」

 

マガオロチは身体をボリボリかいた後、空中にいるオーブにマガ迅雷を撃ち込んで撃ち落とす。

 

『ウアアアア!!!!?』

『ハリケーンスラッシュ!』

『ぐ、うぅ・・・・・・光を超えて、闇を斬る!!』

 

どうにか立ち上がりつつもオーブはゼロとジャックの力を融合させた「ハリケーンスラッシュ」に姿を変えると槍型の武器「オーブスラッガーランス」を構えてオーブスラッガーランスのレバーを3回引き、ランスの穂先に光の刃を形成し、残像を伴いながら相手を滅多切りにする「トライデントスラッシュ」をオーブはマガオロチに炸裂させる。

 

『トライデントスラッシュ!!』

 

しかし、オーブのトライデントスラッシュによる攻撃を全て受けているにも関わらず、マガオロチには一切のダメージが禄に入っておらず、マガオロチは尻尾を振るってオーブを叩き飛ばす。

 

『ヌアアア!!?』

『レオゼロナックル!』

『ぐっ、宇宙拳法、ビッグバン!!』

 

吹き飛ばされつつもオーブは空中でゼロとレオの力を融合させた「レオゼロナックル」に姿を変えると身体を捻って地面に着地し、すぐにジャンプして身体を回転させながら繰り出す炎を纏った跳び蹴り「レオゼロスピンキック」を繰り出す。

 

『レオゼロスピンキック!!』

 

それに対してマガオロチは口からマガ迅雷を放ってオーブを弾き飛ばし、地面を転がりつつも今度はタロウとマックスのカードを使い、「ストリウムギャラクシー」へと姿を変える。

 

『ストリウムギャラクシー!!』

『宇宙の悪に立ち向かう光!!』

 

オーブはマガオロチに向かって駈け出して行き、マガオロチに連続で拳を叩き込んでいくが全く効いておらず、逆にマガオロチの振るった拳で顔を殴りつけられ、それによって片膝を突いたところに胸部に蹴りを叩き込まれ、蹴り飛ばされるオーブ。

 

『ヌアアア・・・・・・!!?』

 

既にカラータイマーは激しく点滅を始めており、フュージョンアップが解けそうになるオーブ。

 

『グッ・・・・・・!』

 

もはや立ち上がるのもやっとと言うほどであり、マガオロチはそんなオーブに向かって容赦なくマガ迅雷を吐き出し、オーブはセブンとゼロの力を融合させた「エメリウムスラッガー」となり、腕をL字に組んだ後、右腕を真横に伸ばしてエネルギーを溜め、再び腕を十字に組んで放つ必殺光線「ESスペシウム」を放つ。

 

『エメリウムスラッガー!!』

『知勇双全、光となりて!! ESスペシウム!!!!』

 

互いの光線がぶつかり合うが、光線はあっさりと弾かれ、オーブはマガ迅雷の直撃を受けて身体中から火花を散らす。

 

『ウアアアアアアア!!!!!?』

「オーブ・・・・・・!!」

 

一方、学校の屋上から避難所に逃げていた穂乃果達は9人は手分けして紅葉がいないか彼を探しつつもスマホのニュースでマガオロチとオーブの戦闘をリアルタイムで時折観ており、その戦いの光景を見て穂乃果は悲鳴にも似た声をあげる。

 

「そんな、オーブが・・・・・・」

 

マガオロチの攻撃を受け、オーブは全身が光に包まれるとそこから姿を消し・・・・・・それを見ていた穂乃果達は顔を青ざめさせる。

 

オーブは一度マガパンドンに敗れてはいるが、今回はあの時とは比べものにならないくらいにオーブが手も足も出なかった。

 

そのことに、この戦いの様子を見ていた人々は絶望感にかられ、「オーブが勝てないんならもう終わりだ」「そんな・・・・・・そんな・・・・・・!!」と人々が嘆く。

 

「穂乃果!」

 

するとそこへ海未が穂乃果の元へ駆けつけ、彼女は「紅葉はいましたか?」と尋ね、穂乃果は首を横に振る。

 

「もしかしてやけど、紅葉くん入らずの森に行ったんとちゃう?」

 

そこで希や他のみんなが穂乃果達の元に合流し、今朝の出来事からもしかして紅葉は入らずの森に行ったのではないかと予想し、それを聞いて凛は「なんでそんなところに行ったにゃー?」と疑問を口にするが・・・・・・。

 

今はそんなことは大した問題ではない。

 

ちなみにこの時絵里は入らずの森の話題が出てきて顔を引き攣らせていた。

 

「可能性は、高いかもしれないわね。 幸い、あの怪獣希が言ってた入らずの森からそこそこ離れてくれたみたいだし・・・・・・今の内に・・・・・・」

「お兄ちゃんを助けに行こう!」

 

真姫の可能性が高いという言葉を聞いた穂乃果はそう言うとすぐさま避難所から飛び出し、入らずの森に向かってみんなの制止も聞かずに走り出し、すぐににこが穂乃果を追いかける。

 

「私も行くわ!! みんなは念のためここに残ってて!!」

「わ、私も行きます!!」

 

一応、紅葉にフォローがいるだろうと思ったにこや穂乃果達を心配した海未が慌てて穂乃果を追いかけるのだった。

 

(でも、オーブが倒れた場所を考えると、紅葉は入らずの森にいないかも・・・・・・。 その辺どうにかしないと・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

また、オーブが倒れた場所では紅葉がボロボロの状態で気を失って倒れており、そんな彼の元に人間態のラグナが現れる。

 

「・・・・・・これで本当におしまいか」

 

ラグナはそう呟くと、紅葉に腰についてあるカードホルダーに腕を振るわせながら手を伸ばし、それを手に取って奪い取る。

 

「フフ、ハハハ・・・・・・アハハハ・・・・・・ヒャーッハッハッハッハ!!!!! アーッハッハッハッハ!!!!! ゲホォ、ゴホォ!! ヒーヒー!! アハハハハハ!!!!」

 

ラグナは何時も以上に大声で笑い出し、マガオロチはオーブを倒し、勝利の雄叫びをあげるのだった。




紅葉
「今回のサブタイを探せ! のコーナー!!」

穂乃果
「わー!!(パチパチパチ」

にこ
「いい加減ワンパターンよね、このコーナーの始まり方」

紅葉
「まぁそう言わずに。 今回のサブタイは・・・・・・ラグナがマガオロチが復活した際に言った『よみがえった伝説』だ!!」

にこ
「あぁ、だから『よみがえった』の部分平仮名だったのね」

穂乃果
「ウルトラマン80、第8話のサブタイだね!!」

紅葉
「この際だから言うけど、80さん、40周年おめでとうございます!」




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第13話 『降臨、黒き王』

こちらの作品ではルサールカの事件は150年前となっております。


150年ほど前・・・・・・ルサールカ上空にて両腕に鎌を持った怪獣、『宇宙戦闘獣 超コッヴ』と長剣を持った光の巨人「ウルトラマンオーブ」が空中で激しく激突していた。

 

「グルアアアアア!!!!」

 

コッヴは両腕の鎌を素早く振るってオーブの身体を何度も斬りつけ、身体からオーブは激しく火花を散らし、苦痛の声をあげる。

 

『グウウウ!!?』

 

さらに超コッヴは額から光弾を発射し、オーブを攻撃するのだが・・・・・・オーブは長剣を振るって光弾を切り裂き、一気に超コッヴに詰め寄ると長剣を横一閃に振るって超コッヴを斬りつける。

 

「グルル!?」

『ハアアアア、デヤアアアア!!!!』

 

超コッヴが怯んだところを狙い、オーブは長剣から光線を放ち、それを受けた超コッヴは爆発四散。

 

「グアアアアア!!!!?」

 

超コッヴをようやく倒すことが出来たオーブは地上にある森へと一度降り立ち、膝を突いた後、胸にある「カラータイマー」の赤い点滅が止まるとそのまま倒れ込むとオーブはそこから姿を消してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝。

 

「ララララ~ン♪」

 

オーブが消え去った森、そこへ脳天気そうに鼻歌を歌いながら長髪で茶髪、青い瞳をした1人の少女がやってきた。

 

「今日も良い天気~♪ んっ? あれは・・・・・・」

 

その時、草むらで誰かが倒れていることに気づき、少女はすぐさま倒れている人物の元へと「大丈夫ですか!?」と不安そうな表情を浮かべながら駆け寄る。

 

そこにいたのはボロボロの状態で傷だらけの男性の姿があり、少女は「ど、どうしよう」と困惑する。

 

「あ・・・・・・うっ・・・・・・」

「この人怪我してる・・・・・・! 手当てしないと!! 大丈夫ですか!? 私の声聞こえますか!? 立てますか!?」

「うっ・・・・・・あ、あぁ・・・・・・」

 

少女の言葉に男性・・・・・・オーブに変身していた男性、「紅葉」は朦朧とする意識の中頷き、少女に支えられながらもなんとか立ち上がり、自分の家はすぐそこなのでということで少女は紅葉を自分の家へと連れて行き、そこで傷の手当てをすることになったのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん・・・・・・んっ? ここは・・・・・・どこだ?」

 

目を覚ました紅葉は首を横に振って周囲を見渡し、起き上がろうとするのだが・・・・・・身体に痛みが走り、紅葉は「ぐっ!?」と苦痛の声をあげてその場に膝を突いてしまう。

 

そこで彼は自分の身体に包帯が巻かれていることに気づき、紅葉は誰かが自分を手当てしてくれたのだということを理解した。

 

「あっ? お兄さん起きましたか? まだ動かない方が良いですよ!!」

 

そこへやって来たのはエプロンを身につけ、籠を持った紅葉をここまで運んで来た1人の女性であり、紅葉は彼女が自分を手当てしてくれたのかと訪ねると女性は「はい」と笑みを浮かべて頷いた。

 

「お兄さんなんであんなところに倒れてたんですか? しかもあんな傷だらけで・・・・・・」

「それは・・・・・・」

 

女性の問いかけに対し、紅葉はどう答えれば良いのか分からず困惑してしまう。

 

そんな彼の様子を察してか、女性は「無理には聞きませんよ」と言い、それに紅葉は「ありがとう」と笑みを浮かべてお礼を述べるのだった。

 

するとその時、「ぐぅ~」と紅葉のお腹の音が鳴り響き、それに紅葉は顔を赤くして女性は思わず「クスクス」と笑ってしまう。

 

「お腹空いたんですね! 丁度先ほど作っていたパンが出来上がったんです!!」

 

女性はそう言いながら先ほど手に持っていた布を上に被せた籠を紅葉の目の前に差し出し、布を取るとそこには香ばしい臭いの漂うカレーパンが入っていたのだ。

 

「さぁ、遠慮せず召し上がってください♪」

「・・・・・・すまない」

 

紅葉は申し訳なさそうにしつつもカレーパンを1つ手に取って口に入れると・・・・・・その瞬間、彼の目は見開き、勢いよくカレーパンにがっつき、籠の中にあったカレーパンを一気にペロリと食べてしまうのだった。

 

「そんなに一気に食べると喉につまり・・・・・・ってもうないし・・・・・・」

「ご馳走様。 ありがとう、凄く美味かったよ!!」

「お兄さんのお口に合って良かったです!! あっ、そう言えばまだお兄さん名前聞いてませんでした。 私の名前は・・・・・・『ナターシャ』。 あなたの名前は?」

「俺は・・・・・・『紅葉』だ。 ただのしがない、風来坊さ」

 

それを受け、「ナターシャ」と名乗った女性は「よろしくね!」と言いいながら手を差し伸べ、それに紅葉も答えるようにその手を握って2人は握手を交わすのだった。

 

「このパンは、君が作ったのかナターシャ?」

「はい、私、パンを作りに少々最近ハマってまして・・・・・・。 お口にあったようで何よりです」

「そうなのか」

 

それを聞いて紅葉は感心したような声を出す。

 

「怪我が治るまで何時までもここにいて構いませんので。 私はちょっと街の方に行く用事がありますので、お兄さんはゆっくりしててください」

「あ、あぁ・・・・・・」

 

ナターシャはそう言うとその場から歩き去って行こうとするのだが、そんな彼女を紅葉は呼び止める。

 

「ナターシャ!」

「んっ?」

「・・・・・・助けてくれて、ありがとう」

「うんっ」

 

紅葉はお礼をナターシャに向かって述べると、彼女は太陽のような笑みを浮かべて頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・んんっ・・・・・・」

 

そこで、紅葉は目を覚まし、彼は自分の部屋で目を覚まし、隣には穂乃果が心配そうな顔を浮かべながらこちらを見つめていた。

 

「お兄ちゃんっ! 良かったぁ・・・・・・」

 

穂乃果は紅葉が無事に目覚めたことを喜び、抱きつく。

 

また穂乃果の後ろの方にはにこが立っており、どうやら紅葉は穂乃果とにこに助けられたらしく、紅葉は2人に「ありがとう」と言うと穂乃果を自分から離して立ち上がろうとする。

 

一応、海未にも助けられたのだが、彼女は絵里達に直接紅葉の状況を伝えた方が良いだろうということで一度避難所へと戻ったのだという。

 

「もう大丈夫だ」

 

ベッドから立ち上がろうとする紅葉だが、彼は「うぅ」と苦痛の声をあげてまた倒れてしまう。

 

「全然大丈夫じゃないよ!」

「そうね、病院に連れて行った方が・・・・・・」

 

そんな弱った紅葉を見て病院に連れて行った方が良いのではと思う穂乃果とにこだったが、紅葉は「本当に大丈夫だ」と言って咄嗟に穂乃果の手を握り、それに穂乃果は顔を赤くする。

 

「ふわっ・・・・・・!? お、お兄ちゃん・・・・・・」

「本当に、大丈夫だ。 少し休めば良くなる・・・・・・。 それよりも、ライブはどうなったんだ?」

 

紅葉の問いかけに対し、穂乃果とにこは顔を見合わせて苦い表情を浮かべる。

 

「一曲目だけ歌い終わった直後、あの怪獣が現れて・・・・・・ライブは中止になったわ」

「そう、ですか・・・・・・」

 

薄々予想はしていたが、やはりライブは中止になってしまったようで紅葉は早急に対応できず、その上マガオロチに完膚なきまでに叩きのめされた自分の無力さを痛感し、何も出来なかった自分に苛立ちを隠すことができなかった。

 

「お兄ちゃんのせいじゃないよ! だから、そんな顔しないでお兄ちゃん・・・・・・」

 

穂乃果はどこか思い詰めた顔をした紅葉の表情を見て彼が責任を感じているのだと思い、彼女は「お兄ちゃんのせいじゃない」と言うのだが、紅葉自身・・・・・・そんな風に思うことはできなかった。

 

「穂乃果の言う通りよ。 アンタが責任を感じることじゃないわ」

 

穂乃果同様に、にこもまた紅葉が責任を感じることではないと言い、それに驚いた様子を見せる紅葉。

 

穂乃果が責任を感じることはないと言うのは分かるが、にこは自分がオーブであることを知っている為、彼女は自分を責める権利がある。

 

穂乃果が今ここにいるから責めないのでは無く、本心からそう言っていることはにこの目を見れば分かる。

 

だから、紅葉のにこのその言葉に驚きを隠せないでいたのだ。

 

「っ・・・・・・。 ありがとう、2人とも・・・・・・」

「それじゃ、私はそろそろ避難所に戻るわ。 避難所に行ったみんなのことも気になるし。 幸い、怪獣はここから結構離れたところにいるから、しばらくはここも大丈夫でしょう。 だから紅葉はしっかり休むのよ」

「うん、ありがとうにこちゃん!!」

「ありがとうございます、にこさん」

 

紅葉と穂乃果はにこにお礼を言い、にこは「じゃあまたね」とだけ言い残して紅葉の部屋から出て行くのだった。

 

そして穂乃果と紅葉はにこがいなくなって2人っきりになり、そこで穂乃果がハッと未だに紅葉が自分の手を握っていることに気付いてまたほんのりと頬を赤くする。

 

(も、もう少しこのまま・・・・・・)

 

紅葉は無自覚に穂乃果の手を握っているらしく、それを良いことに穂乃果はこのままもうしばらく手を握ってて貰おうかなと思ったのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・ね、ねぇ・・・・・・お兄ちゃん、ナターシャって・・・・・・誰?」

 

不意に、穂乃果は無意識にそんな質問をしてしまい、それを受けて紅葉は目を見開き、穂乃果の手を離してしまう。

 

それに少しだけ寂しさを感じる穂乃果だったが、それ以上に今はナターシャが誰なのかが気になり、今までずっと気になっていたその人物について穂乃果は尋ねる。

 

「どうしてその名前を・・・・・・」

「お兄ちゃんが眠ってる間、ずっと呟いてたんだ。 ナターシャって・・・・・・。 ううん、今日だけじゃない、お兄ちゃん・・・・・・眠ってるとき、よくその人の名前を口にするよね・・・・・・。 ずっと、気になってて・・・・・・」

「マジか、全然気付かなかった・・・・・・」

 

なぜ、今になってこんな質問をしているのか穂乃果自身には分からなかったが、どうしてか今聞かずにはいられず、「大事な人?」とどこか不安そうな顔を浮かべながら尋ねる。

 

「・・・・・・大事な人だった」

「っ・・・・・・」

 

その紅葉の言葉に、穂乃果は胸の奥がチクリと痛むのを感じた。

 

「彼女は昔、俺のことを助けてくれた人だった。 でも、それなのに俺は・・・・・・彼女を助けられなかった」

 

顔を両手で覆い、悔しそうに唇を噛み締める紅葉の姿を見て穂乃果はどう声をかけて良いか分からず、辛そうに話す紅葉を見て穂乃果は慌てて「もう、良いよ話さなくて・・・・・・」とこれ以上、彼を苦しませない為に話を終わらせる。

 

「ご、ごめんねお兄ちゃん・・・・・・。 辛いことを聞いて、ごめんなさい・・・・・・」

 

穂乃果は紅葉に辛いことを聞いてしまったのだなと深く反省し、顔を俯かせてしまう。

 

そんな穂乃果を見て、紅葉は優しく彼女の頭を撫でる。

 

「そんな顔すんな。 お前が気に病むことじゃない。 これは、俺の問題だから・・・・・・」

「・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・」

 

すると紅葉は穂乃果の頭から手を離すと立ち上がり、どこかに出かけようとする。

 

「えっ、お兄ちゃんどこ行くの!? ダメだよ大人しくしてないと!!」

「すまん、どうしても行かないといけないところがあるんだ」

「ダメ!! 絶対にダメ!!」

 

穂乃果は紅葉にしがみついてボロボロにも関わらず、ここから出て行こうとする彼を必死に引き止め、紅葉はなんとか穂乃果を振り払おうとするのだが、マガオロチに受けたダメージのせいもあり、上手く行かずにバランスを崩して倒れてしまう。

 

「穂乃果!! 離れ・・・・・・!!?」

「えっ? きゃあっ!!?」

「す、すまん穂乃果だいじょう・・・・・・」

 

そのまま紅葉は穂乃果を押し退かすような形となってしまい、それに慌てて紅葉は「すまん!!」と謝りながら立ち上がるものの、やはり身体の痛みのせいで上手く立てず、紅葉はその場に尻餅をついてしまう。

 

「うぅ、お兄ちゃん・・・・・・? ほ、ほら! やっぱり全然良くなってないんだから休んでないと!!」

 

穂乃果は紅葉に押し倒されたことに顔を赤くしつつも、彼女は安静にしているようにと注意する。

 

「と、兎に角お兄ちゃんはここで大人しくしてること!! 良い!!?」

 

未だにまだ顔は赤かったが、凄い剣幕でそう釘を刺された紅葉は渋々「分かったよ」と頷き、穂乃果は紅葉の部屋を出て行こうとする。

 

「それと、お母さんに、お兄ちゃんにスープでも作って貰うように頼んでくるから。 その間にその身体で出かけたりしないでよお兄ちゃん!!」

「分かったって」

 

去り際に穂乃果にそう言い残し、彼女は紅葉の部屋を出て行くのだが・・・・・・。

 

その直後、彼は素早く出かける準備をして部屋の窓を開けてそこから飛び出し、地面に何事もなく着地した。

 

ちなみに、既に雨は止んではいたが、空はまだ曇り空のままだった。

 

「すまんな、穂乃果・・・・・・。 こればっかりは、約束できないんだ」

 

どうやらマガオロチは今、一通り暴れ終えた後、休眠状態に陥ったらしく、マガオロチは現在活動を停止していた。

 

紅葉はその隙を突いてなんとかマガオロチを倒すことができないかと考え、マガオロチの元へと向かおうとするのだが・・・・・・その時、彼は腰にあったカードホルダーが無いことに気付いた。

 

「っ、カードが・・・・・・!!」

 

そのことに紅葉はすぐに頭の中でラグナの顔を思い浮かべ、この状況でただ単純に無くしたのではないのだとしたら・・・・・・こんな状況でカードを奪うとしたらそれはラグナだろうと確信に近い考えに至り、先ずはラグナを探そうとする。

 

しかし、紅葉はふっとある考えが頭に過ぎり、立ち止まった。

 

マガオロチが眠っている間なら少々卑怯な手段ではあるが、倒せるかもしれない。

 

しかし、マガオロチがまた何時目覚めるか分からない以上、ラグナを探している間に目覚める可能性もある。

 

そうでなくてもラグナからウルトラフュージョンカードを取り戻すのは今のボロボロの身体では至難の業である。

 

それに、「再びオーブに変身できたとして、マガオロチを倒すことができるのだろうか」という考え・・・・・・。

 

殆どのフュージョンアップ形態をぶつけたが、どれもマガオロチに完封され、まだ使っていないフュージョンアップを使ったとしても、勝てない可能性の方が高い。

 

「どうすれば・・・・・・」

 

1つ方法があるとすれば、玉響姫にもっと詳しい話を聞くことだろう。

 

そこに何かマガオロチを倒す為のヒントがあるかもしれないと紅葉は思ったのだ。

 

しかし、玉響姫はマガオロチ復活の際に姿を消してしまい、霊体とは言え無事であるかどうかは分からない。

 

だが、少しでも可能性があるならば玉響姫を探すべきだろうと紅葉は考え、彼女がいる確率が高い入らずの森へとボロボロの身体を引きずりながら向かうのだった。

 

「お兄ちゃん、お母さんにスープ作って貰ったよ~」

 

それと同時に、穂乃果がお盆にスープの入ったカップを乗せて紅葉の部屋に戻ってきたのだが、そこに紅葉はおらず、「あれ?」と首を傾げる。

 

「まさか・・・・・・!!」

 

部屋の机にお盆を置き、慌てて全開で開いている窓の外を見ると、紅葉が丁度どこかに行こうとしている姿が見え、穂乃果は「大人しくしてて」と言ったにも関わらず出かけた紅葉に「むぅ~!!」と頬を膨らませる。

 

「もう!! 大人しくしててって言ったのに!! お兄ちゃんバカーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マガオロチが封印されていた場所・・・・・・。

 

「玉響姫!! どこにいるんだ!! 出てきてくれ!!」

 

そこまで紅葉はフラつきながらもなんとかそこに辿り着き、彼は玉響姫の名を叫びながら彼女の姿が無いかと探し回る。

 

そんな時・・・・・・。

 

「オイオイ、これは大事なもんなんじゃないのか? これを探さないで女のケツを追いかけてるとはなぁ?」

 

玉響姫を探す紅葉の元に、フュージョンカードの入ったカードホルダーを持ったラグナが現れ、ラグナの姿を見た紅葉は彼を睨み付け、カードホルダーを右手に持つラグナの腕を掴みあげる。

 

「それを返せ!!」

 

それに対してラグナは薄らと笑みを浮かべると、ラグナは膝蹴りを紅葉に繰り出し、それをバックステップで回避すると紅葉は素早くラグナに詰め寄って右拳で殴りかかる。

 

だが、ラグナはそれを左手で受け止めるともう1度膝蹴りを繰り出して紅葉の腹部に叩き込み、紅葉が蹲ったところを狙ってさらに脇腹を蹴りつけ、紅葉は倒れ込んでしまう。

 

「ぐっぅ・・・・・・!! はぁ、はぁ・・・・・・」

「あ~ぁ、情っっっっけない声出しやがって。 なんかお前格好悪いよ? お前ホントに格好悪いからさ、せめて自分の負けを認めて俺の勝ちを称えろよ」

 

何時も以上に、嫌らしい笑みを浮かべながらラグナは紅葉にそう言うのだが、当然ながら紅葉はそんなことをする筈はなく、「ふざけんな!!」と拒否。

 

「あっそ、どうせお前にはこれがなければ何もできなぁい。 もうじきマガオロチは目を覚ます。 そうなればマガオロチが暴れるのをお前は指を咥えて見ていることしかできない。 ヒヒヒヒ、ヒャーハッハッハッハ!!!! アーッハッハッハ!! ゴホゴホ!!」

 

紅葉はラグナが咳き込んだ隙を狙い、カードホルダーに手を伸ばすがラグナはそれをぬらりくらりと躱し、紅葉の手は空を切るだけに終わった。

 

「俺が腹を抱えて笑ってる隙を突こうとしたか。 だが残念、俺はそんなに甘くないよ」

 

ラグナはそれだけを言い残すと、地面に紫の光弾を撃ち込んで煙幕を作り、その場から姿を消すのだった。

 

「ラグナ!! 待て!!」

 

追いかけようとした紅葉だったが、その時、紅葉は何かに躓いて転びそうになってしまい、「なんだよ!!」と悪態をつきながらその躓いた「何か」を見ると・・・・・・それはマガオロチが復活した際に近くにあった玉響姫の石碑だったのだ。

 

「これは・・・・・・もしかしたら・・・・・・」

 

それを見て紅葉はもしかしたら玉響姫を呼び出すには石碑を復元する必要があるのかもしれないと思い、彼は急いでマガオロチが現れた時に飛び散った石碑を拾い集めようとする。

 

「ぐっ・・・・・・!!」

 

しかし、マガオロチとの戦いでのダメージ、さらに先ほど受けたラグナの攻撃によるダメージのせいで紅葉に目眩が起き、倒れそうになってしまう。

 

(ダメだ、倒れてる暇なんて・・・・・・!!)

 

紅葉はなんとか足に力を込めて倒れないようにしようとするのだが・・・・・・逆にそのせいでバランスを崩してしまい、彼は今度こそその場に倒れ込みそうになる。

 

「怪我してるんだから、だから無茶しないでって言ったのに」

 

だが、紅葉が倒れそうになる瞬間、いきなり現れた穂乃果が紅葉を支えたのだ。

 

「ほの、か? なんでここに・・・・・・」

「私だけじゃないよ」

 

見れば、そこには穂乃果だけではなく、海未やことり、花陽、凛、真姫、絵里、希、にこも来ており、紅葉はなぜここに自分がいるのが分かったのか分からず、首を傾げる。

 

「穂乃果ちゃんから『お兄ちゃんが逃げたー!!』って連絡があってな? 紅葉くん、今朝ウチに入らずの森のこと聞いたやろ? 怪我をした紅葉くんを見つけたのも、この辺だったっぽいし」

「だから、多分ここにいるんじゃないかなーって思ったんだ」

 

今朝から紅葉が入らずの森について調べていたことから、希やことりは紅葉はここにいるのではないかと予想したのだ。

 

その予感は見事に的中したという訳であり、真姫は「どうしてここに来る必要があったの?」と紅葉に尋ねるが・・・・・・紅葉は正体を知っているにこなら兎も角、玉響姫のことを話すべきか、分からず悩んだ。

 

そんな時、どこか不機嫌そうな顔をした穂乃果は彼女はキッと紅葉を睨み付け、それに紅葉はなんだか圧されてしまう。

 

穂乃果がこんな表情をするなんて珍しいからだ。

 

「思い上がるな!!」

「・・・・・・えっ」

「お兄ちゃん私にそう言ったよね!! 私が無茶をし過ぎて身体を壊したら、お兄ちゃんも、自分自身もみんなも責任を感じるって!! なのにお兄ちゃんはどうなの!!?」

 

まさかつい先日穂乃果に言ったことを、今度は彼女が自分に向かって言うとは思わず、驚き目を見開く紅葉。

 

「でも、これはあまりみんなには関係ないことだし、俺自身がやるべきことで・・・・・・」

「本当にそうなの? それはお兄ちゃんにしかできないことなの? 私達にも、何か手伝えることがあるんじゃないの?」

「・・・・・・これは俺個人の問題だ。 スクールアイドルとも関係のないことだから・・・・・・」

 

すると、今度は絵里が口を開き、「本当に?」と尋ねて来る。

 

「あなたはμ'sのことをずっと支えて来てくれたじゃない。 だから、あなたが困ってる時、大変な時・・・・・・今度は私達があなたを助けたいの。 そして今が、あなたが大変な時なんじゃないの?」

「・・・・・・それは・・・・・・」

「手伝えることがあれば言って欲しいにゃー!!」

「わ、私も・・・・・・凛ちゃんと同じだよ」

 

凛や花陽も紅葉にそう言い放ち、にこはポンっと紅葉の背中を軽く叩く。

 

「何コソコソしてんのか知らないけどさ、たまには頼りなさいよ、私達を」

「にこさん・・・・・・」

 

次に、海未が紅葉に駆け寄って来る。

 

「事情を全部説明して欲しい訳ではないんです。 ただ、友達が大怪我をしてまでやらないといけないことがあるなら、事情を話さなくても良いから手伝いたい、それだけなんですよ」

 

最後に穂乃果が再び紅葉の顔を両手で掴むとグイッと自分の方へと無理矢理紅葉の視線を向けさせる。

 

「本当は休んでて欲しいよ。 心配なんだよ、私も、みんなもお兄ちゃんのこと。 それでもお兄ちゃんは休まないで何かをやろうとしてるんでしょ? きっと無理矢理連れ戻したとしても。 だったら、せめ支えさせて欲しいの。 お願い・・・・・・」

「穂乃果・・・・・・」

 

額を紅葉の胸に押しつけるようにして、そう頼む穂乃果に紅葉は悩むが・・・・・・この状況では止むを得ないかと考え、彼は意を決する。

 

「みんな。 ごめんな。 全てを話すことはできないけど、手伝って貰えるか?」

 

そう言うと紅葉は穂乃果達に隠すべきところは隠しつつも、彼女等に自分が今何をしようとしているのかを話し始め、一通りのことを説明し終えると、紅葉はマガオロチを止めるヒントを得る為に、玉響姫を呼び出そうとしていることを一同に説明を行う。

 

その際、一度玉響姫の姿を見ていることもあって絵里は顔を青ざめさせていたりしたが。

 

一応、マガジャッパの時助けて貰ってはいるのだが、やはりそうは言ってもそう簡単には克服できず、お化けの類が苦手な絵里からしたら顔も青ざめるだろう。

 

ちなみに、先ほど紅葉に対してなんだか格好良さげな言葉を口にしていた絵里だが、実はずっと足がガクガク震えていたりした。

 

「絵里ちゃんってお化け苦手だったんだね」

 

そんな絵里を見て、意外そうな顔を浮かべることり。

 

「べ、べ、べ、別に苦手ってほどじゃ・・・・・・お化けなんていないしね!!」

「今からお化け呼び出そうとしてるんですがそれは」

 

絵里の発言にすかさずツッコミを入れる海未。

 

「正確には、超能力でそういう風にしてるって感じなんだろうけど・・・・・・兎に角みんな、頼む。 石碑を集めてどうにか元の形に組み合わせて欲しいんだ。 玉響姫なら、あの怪獣を止める方法が分かるかもしれない」

「うん、分かったよお兄ちゃん、任せて!!」

 

紅葉は頭を下げて、穂乃果達に石碑を集めてくれるように頼み、穂乃果達は頷いて手分けして玉響姫の石碑を集め始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから紅葉達は石碑を一通り拾い集め、元の形に戻すように砕けた石碑を並べ、紅葉達はこれで玉響姫が復活してくれることを期待するのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・何も起こらないね・・・・・・」

 

花陽の言う通り、石碑を元に戻しても何も起こらず、玉響姫が復活する気配は無かった。

 

「これで玉響姫が復活すると思ったんだが・・・・・・」

 

そのことに紅葉は見当違いだったのかと思い、やはり紅葉はラグナからカードを奪い返し、今ある力だけでもう1度マガオロチに挑むしかないかと考えるのだが・・・・・・その時、紅葉は希が何かゴソゴソとやっていることに気付いた。

 

「希? アンタなにしてんのよ?」

 

そのことに紅葉同様、にこも気づき、希に一体なにをしているのかと問いかける。

 

「いやぁ、この前珍しいお花の種を買ってな~。 すっごく綺麗な花が咲くらしいねん。 それでここええ土やなぁ思って・・・・・・どうせなから植えとこうと思ったんよ」

「って今そんなことしてる場合じゃ・・・・・・」

 

この状況で今、そんなことをしている場合かと真姫は怪訝な顔を浮かべて希に言うのだが・・・・・・。

 

「大地はな、命を待ってるんよ」

「えっ・・・・・・?」

「どんなに破壊されても、大地は諦めない。 何時だって、新しい命を育てようって待ち構えてるんよ」

 

希は真姫にそう言った後、どこからか取り出したペットボトルに入った水を種を植えた場所にかけ始める。

 

すると、先ほど花の種を植えたばかりだと言うのに地面から小さな芽が飛び出し、辺り一帯が青い光に包まれ、その光は石碑を包み込むとそこから玉響姫が出現したのだ。

 

「で、出たぁー!!?」

「玉響姫!!」

 

そのことに絵里は驚いて海未の後ろに隠れ、玉響姫の姿を見て紅葉は彼女の名を呼び、それに応えるように玉響姫は頷く。

 

その時のことだ。

 

みんなのスマホから警報が鳴り響き、スマホを取り出してニュースサイトを見るとそこにはマガオロチが再び活動を開始したというニュースが流れており、一同は急いでここから避難しようとする。

 

「みんなは先に避難していてくれ」

「えっ、何言ってるの紅葉くん!?」

 

だが、紅葉は玉響姫が復活した以上、みんなと一緒に避難する訳には行かず、彼は玉響姫と一緒にマガオロチを止めなければならなかった。

 

当然、そのことにみんなは反対したが・・・・・・。

 

「頼む、俺にはどうしてもまだやらないといけないことがあるんだ」

「それは、私達じゃ手伝えないことなのお兄ちゃん?」

 

そんな紅葉に穂乃果はそれは自分達が手伝えないことなのかと尋ねると、紅葉は「難しいことだな」とだけ応える。

 

「詳しいことは言えない。 けど・・・・・・頼む、みんな。 俺を信じてくれ」

 

そうは言っても、やはり心配なものは心配でたまらないといった様子の一同。

 

特に穂乃果がこの中の誰よりも不安そうな表情を浮かべており、紅葉はそんな彼女の頭を優しく撫でる。

 

「大丈夫、必ず無事に戻ってくるから・・・・・・」

「お兄ちゃん・・・・・・でも・・・・・・」

「約束だ」

 

紅葉はそれだけを言い残すと彼はその場から走り去って行き、穂乃果達の制止も聞かず、彼は素早い動きでそこからいなくなってしまうのだった。

 

「きっと紅葉なら大丈夫よ。 妹のアンタが、アイツを1番に信じてやんなさいよ」

 

不安そうな顔を見せる穂乃果に、にこが声をかけ、穂乃果はその言葉を受けて・・・・・・完全に納得した訳では無いが、「うん」と頷くのだった。

 

「紅葉くんは心配だけど、取りあえずにこの言う通り、今は彼を信じて私達は避難しましょ」

 

絵里の提案を受け、兎に角今はみんなで避難すべきだろうと思い、彼女等も急いでその場から離れることに。

 

(あれ? 玉響姫もいつの間にかいなくなってる・・・・・・)

 

その際、ことりが玉響姫がいつの間にかいなくなっていることに気付いたが、きっとマガオロチを止めに行ったのだろうと思い、深くは考えないことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「グルアアアアア!!!!!」

 

目を覚ましたマガオロチは街を蹂躙しながら歩み続け、そんなマガオロチの元に紅葉と玉響姫は辿り着く。

 

「玉響姫!! 復活したアイツを止める方法はもう無いのか!?」

『1つだけ・・・・・・。 かつてマガオロチを封印した光の勇者の力を借りれば・・・・・・』

 

そう言って玉響姫は懐からウルトラ兄弟№1、宇宙警備隊隊長の「ゾフィー」のカードを取り出し、それを紅葉に受け渡す。

 

「これは、ゾフィーさん! そうか、マガオロチを封印していたのは、ゾフィーさんだったのか・・・・・・」

『それからもう1枚』

 

すると玉響姫はもう1枚カードを取り出し、それを紅葉に渡す。

 

それは、マガオロチの封印を解いた光の国で悪に墜ちた最凶最悪の戦士、「ウルトラマンベリアル」のカードだった。

 

「これは、ベリアル・・・・・・!」

『光あるところ、必ず闇があります。 しかし、その力はあまりにも強大。 強すぎる力は、災いをもたらすこともあります』

 

ゾフィーとベリアルのカードを使いこなすことが出来れば、あのマガオロチに対抗できるだけの姿になることが出来るかも知れない。

 

しかし、ベリアルは見るからに危険なカードであり、玉響姫はそのことについて警告する。

 

「だが今は、それでもこのお2人の力を借りるしかない・・・・・・!! これ以上、この街を壊させはしない!!」

 

そう言い放つと紅葉はオーブリングを取り出し、ゾフィーのカードをオーブリングにリードさせる。

 

「ゾフィーさん!!」

 

続いて紅葉はベリアルのカードをオーブリングにリードさせようとする。

 

「ベリアルさん!!」

 

しかし、ベリアルのカードは上手くオーブリングにリードさせることができず、紫の電撃を放ってカードは弾かれ、紅葉はその時の衝撃に大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「うわあああ!!!!?」

 

それでも紅葉は諦めず、なんとか立ち上がってもう1度ベリアルのカードをオーブリングにリードしようとする。

 

「ぐっうぅ、ベリアルさん・・・・・・!! お願いします!!」

 

しかし、やはりベリアルのカードをリードさせることは出来ず、衝撃が発生してまた紅葉は吹き飛ばされてしまうのだった。

 

『その力が、最後の望です』

「はぁ、はぁ・・・・・・ベリアルさん!! 頼みます!!」

 

紅葉は何度もベリアルのカードに力を貸してくれるように頼み、オーブリングにリードさせようとするが弾き飛ばされてばかりで、そうこうしている間にこちらに気付いたマガオロチが近づいて来たのだ。

 

それを見て玉響姫は呪文のようなものと唱えると両手から光を放ち、マガオロチをバリアのようなもので包み込む。

 

「グルアアアアアアアア!!!!!」

「玉響姫!!」

『紅葉!! 早くカードを!! その力を使いこなしなさい!!』

 

玉響姫に言われ、紅葉はベリアルのカードをリードしようとするが、やはり上手く行かない。

 

一方でマガオロチはマガ迅雷を放ち、玉響姫のバリアを無理矢理破ろうとする。

 

やがて玉響姫の張ったバリアはヒビ割れていき、もう持たないことを察した玉響姫は紅葉の方に振り返り、何かを伝えると・・・・・・バリアを砕いたマガオロチのマガ迅雷を撃ち込まれ、彼女は爆炎の中へと消えて行くのだった。

 

「っ!! 玉響姫えええええええええ!!!!!」

 

玉響姫は自分に力を貸し、自分を必死に守ってくれた。

 

なのに、それなのに自分を守ってくれた玉響姫がマガオロチによって消し飛ばされ、消滅した光景・・・・・・。

 

恐らく、玉響姫はもう復活することはできないだろう。

 

その光景を目の辺りにした紅葉は・・・・・・自分の中である1つの感情が沸き上がってくるのを感じた。

 

それは、「相手を殺したい」という強烈な「殺意」・・・・・・。

 

そんな紅葉の感情に反応するかのように、まるで「それを待っていた」と言わんばかりにベリアルのカードが怪しく紫の輝きを放ち、紅葉は雄叫びに似た声をあげながらベリアルのカードをオーブリングにリードさせる。

 

「ううううう!!!!! うあああああああ!!!!!!」

『ウルトラマンベリアル!』

『フハハハハ!!!』

 

ベリアルのカードをリードさせると、光を突き破るようにしてウルトラマンベリアルの姿が現れ、紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「ウアアアア!!!! ダアアアアアア!!!!!」

『フュージョンアップ!!』

 

すると、カードから実体化したベリアルとゾフィーの姿が紅葉を中心に重なり合い、ベリアルのような赤い凶悪な両目、赤くつりあがった両肩、尖った指先とそしてパワーストロングほどではないが、マシッブな体型・・・・・・紅葉はベリアルとゾフィーの力を融合させた姿・・・・・・。

 

「ウルトラマンオーブ サンダーブレスター」へと変身を完了させたのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!』

 

オーブ・サンダーブレスターは地面に着地するとその衝撃で周囲の建物が崩れ、立ち上がるとオーブはマガオロチに向かって駈け出して行く。

 

『ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

戦闘BGM「サンダーブレスターのテーマ」

 

オーブはマガオロチの首を掴みあげるとそのまま近くにあったビルにマガオロチの首を叩きつけながら破壊し、前のめりに倒れ込んだマガオロチの後頭部をオーブは容赦なく乱暴に何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も踏みつけまくる。

 

『ダア゛ア゛ア゛!!!!!!』

「ギシャアアアア!!!!」

 

マガオロチは身体を大きく揺らしてなんとかオーブを押し退かし、口からマガ迅雷をオーブに向かって撃ち込むが、オーブは両腕を交差してガードしながら真っ直ぐマガオロチに向かって突き進み、そのままオーブはマガオロチの顔面を力強く殴りつける。

 

『デヤアアア!!!!』

「ギシャアア!!?」

 

またその様子を離れた位置にあるビルから、魔人態になったラグナがその戦いを見つめており、彼はその光景を見て驚愕したかのような様子を見せていた。

 

『アイツ、闇のカードを使いやがった・・・・・・!!』

『ウウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!!』

 

オーブはマガオロチの口を掴みあげるとそのまま両腕に力を入れ、マガオロチの口から「メキメキメキ!!」という大きく、嫌な音が鳴り響き、オーブはマガオロチの口を引き裂こうとしてマガオロチは口から血が流れ始める。

 

「グルアアアアア!!!!?」

 

どうにかマガオロチは足を振り上げてオーブの腹部を蹴りつけ、引き離すのだが、オーブはすぐさままたマガオロチに向かって行き、マガオロチの頭の角を両手で掴みあげるとそのまま無理矢理へし折ってしまう。

 

『ウオアアアアア!!!!』

「グルアアアアアア!!!!?」

 

マガオロチはなんとか右腕を振るってオーブの顔を殴りつけて反撃するものの、オーブにあまり攻撃は効いておらず、逆にオーブの放った後ろ回し蹴りを喰らう。

 

「ガアアアア!!!!?」

『フウウゥゥゥ・・・・・・!! フウウゥゥゥ・・・・・・!!』

 

するとオーブは近くにあったビルを引っこ抜き、倒れ込んでいるマガオロチに向かって叩きつけたのだ。

 

「ギシャアアア!!!!?」

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

オーブは倒れ込んだマガオロチの頭を掴んで無理矢理立ち上がらせると何度もマガオロチの腹部に拳を叩き込み、3回拳を叩き込んだ辺りからマガオロチの腹部を殴る度に「ぐちょ! ぐちょ!!」という音が鳴り、マガオロチは腹部からも血を大量に流し始める。

 

「ガアアアア!!!!」

 

マガオロチはオーブに頭突きを喰らわせ、それによってオーブは多少怯み、その隙を突いてマガオロチは尻尾を振るってオーブに攻撃するのだが、それをオーブは両腕で受け止める。

 

その時、マガオロチは電撃を尻尾を通してオーブに流し込むのだが、やはりオーブには全く効いておらず、右手に赤黒い光輪「ゼットシウム光輪」を出現させ、マガオロチの尻尾を切断したのだ。

 

「グルアアアア!!!!?」

 

オーブは切断した尻尾を投げ捨てマガオロチの背中に向かって飛び乗ると、背中の2つの突起物を掴み、それを無理矢理引き千切ったのだ。

 

『ウオオオオオオ!!!!!』

「ガアアアアア!!!!?」

 

その光景を、避難所でスマホのニュースサイトで見ていた穂乃果達は・・・・・・。

 

そんな何時もとはまるで全然違う残虐ファイトにどん引きしており、花陽に至っては目尻に涙を浮かべてまともに画面が見れず、怯えていた。

 

「こ、怖いよぉ・・・・・・」

「た、確かにちょっと怖いにゃー」

(アイツ・・・・・・なんなの、あの姿・・・・・・。 あれじゃ光の巨人って言うよりも、邪悪の・・・・・・巨人って感じね・・・・・・)

 

そしてにこもまた紅葉がなぜあんな戦い方をしているのか分からず、オーブのその戦いっぷりに驚愕していたのだった。

 

場所は戻り・・・・・・オーブは引き千切った突起物でマガオロチを何度も殴りまくり、マガオロチは口の痛みを耐えてマガ迅雷を口から吐き出してオーブに攻撃するのだが、オーブは突起物でガードし、代わりにマガオロチの2つの突起物が粉々に砕け散る。

 

それと同時にジャンプして飛び出したオーブは拳をマガオロチの顔面に叩き込み、マガオロチを大きく殴り飛ばす。

 

「グルアアアアア!!!!?」

『フウウウゥゥゥゥ・・・・・・!! デヤアアアアア!!!!!』

 

そして・・・・・・オーブは両腕に光と闇の力を集中させた後、腕を十字に組んで放つ必殺光線「ゼットシウム光線」をマガオロチに向かって発射。

 

直撃を受けたマガオロチは肉片を飛び散らせながら吹き飛び、やがて爆発・・・・・・。

 

それを目撃したラグナは力なく背中から倒れる。

 

『・・・・・・』

 

少しの間沈黙した後、ラグナは駄々っ子のように手足を激しくバタバタさせる。

 

『なんだよ!! なんなんだよ紅葉ぃ!!!!! 一度くらい俺に勝たせろよコノヤロオオオオオオオオ!!!!! アアアアアアアアア!!!!!!』

 

しかし、そんなラグナの姿にオーブは気付くことはなく、オーブはマガオロチを倒し終えるとそのまま空へと飛び去って行くのだった。

 

『・・・・・・あっ・・・・・・』

 

オーブが去ったのを見届けると、ラグナはピタリと動きを止め、ゆっくりと人間態に戻りつつ立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戦いを終えた紅葉はフラフラと弱々しく道を歩いていた。

 

「よぉ」

 

そんな時、後ろから誰かに声をかけられ、振り向くとそこにはラグナが立っており、その手には紅葉のカードホルダーが握られていた。

 

「俺を笑いたければ笑え」

「・・・・・・」

「・・・・・・かっこ良かったよお前。 全てを破壊し尽くすお前の姿・・・・・・惚れ惚れしたなぁ。 俺は潔く負けを認める」

 

そう言うとラグナはカードホルダーを紅葉に投げ渡す。

 

「・・・・・・楽しかっただろ? 強大な力を手に入れて全てを破壊すんのは」

「そんなこと・・・・・・」

 

紅葉はラグナの言葉を否定しようとするのだが・・・・・・。

 

「良い子ぶるな!! 所詮、お前も俺と同じだ。 楽しめ・・・・・・フフ、ハハハハ・・・・・・ケホッ」

 

それだけを言い残し、ラグナはその場から立ち去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マガオロチが倒されたことで、穂乃果達は一度自分達の家に戻った。

 

それは紅葉も同じで・・・・・・一足遅れて高坂家に帰ってきたのだ。

 

紅葉が帰ってきたことに気付いた穂乃果はすぐに彼の元に駆け寄り、紅葉に抱きついた。

 

「お兄ちゃん!! 良かった無事だった!! 本当にもう!! 心配したんだよ?」

「すまなかったな。 でも、約束したからな。 無事に帰るって」

 

すると、今度は穂乃果に続いて雪穂や母が紅葉を出迎え、随分と疲れた様子の紅葉を見て母は「お風呂に入って疲れを取りなさい」と声をかけ、紅葉はその言葉に甘えることにする。

 

「お風呂に行くなら私お兄ちゃんの着替え取ってくる!!」

「おいバカやめろ。 下着だってあるんだ。 自分で取りに行く」

 

紅葉はそう言って穂乃果が自分の着替えを持って来るのを拒否し、彼は自分の部屋から着替えを取って来るため、2階に上がるのだった。

 

そんな紅葉の後ろ姿を見て、母は思わずボソッとあることを呟く。

 

「握った手の中、愛が生まれる・・・・・・かっ」

「えっ、急になに・・・・・・? お母さん?」

 

不意にそんな言葉を呟く母に穂乃果が「なにそれ?」と尋ねると、なんでも自分のひいお婆ちゃん、つまり雪穂や穂乃果からすればひいひいお婆ちゃんの遺言とのことだった。

 

「なんだか分からないけど、今の紅葉の姿を見てると、つい昔聞いたそんな言葉が浮かんで来てね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の部屋に戻って来た紅葉はタンスから自分の着替えの服を取り出すが・・・・・・。

 

「そういや、ラブライブはどうなるんだろうな」

 

不意に、彼はラブライブがどうなるのか気になり、紅葉はマガオロチは倒すことは出来たが、街はそれなりの被害が出てしまった。

 

その為、ラブライブは最悪中止・・・・・・良くて延期なのではないかという考えが頭に過ぎる。

 

「・・・・・・」

 

紅葉は服をタンスから取り出して机の上に一度置くと、ベッドの上に座ってオーブニカを取り出して吹き始める。

 

心が不安な時など、彼はこうしてオーブニカを吹くと少しだけ心が落ち着くのだ。

 

その為、紅葉は少しの間、部屋に籠もってオーブニカを吹くのだった。




紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!!」

穂乃果
「イェーイ!!」

にこ
「本編との落差・・・・・・。 ってかサンダーブレスター原作よりも凶暴じゃない?」

穂乃果
「ここは本編とは関係ない時空なので!!」

紅葉
「テレビ的な規制が無かったら多分あれぐらいやってると思うんですよ・・・・・・。 因みに口を引き裂こうとしたのは初代メカゴジラオマージュ」

穂乃果
「それよりも、今回のサブタイはにこちゃんがサンダーブレスターを見た時に心の中で呟いた『邪悪の巨人』だよ!!」

にこ
「ウルトラマンコスモス、39話のサブタイね」


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第13.5話 『夢の中の檻』

やはりギンガ、エックス、ビクトリーのカードも所持していることにします。
トリニティにはまだなれませんが。
尚、まだ本人達には会ってません。






彼女・・・・・・西木野 真姫は薄暗い道で得体の知れない「何か」に追われていた。

 

ただ彼女はひたすらその「何か」から必死に逃げ、気付けば協会のような場所に辿り着いていた。

 

そこに辿り着くと、彼女は肩で息をしつつも後ろを振り返り、今はもう自分を追いかけていた「何か」がいないことにほっと安堵し、胸を撫で下ろす。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

しかし、安心したのもつかの間、彼女は突如頭上から振ってきた折の中に閉じ込められてしまったのだ。

 

「えっ!?」

 

真姫は必死に折から出ようとするが、か弱い女の子の力では檻はビクともせず、気付けば・・・・・・彼女の周りにある影の中から何やらモゴモゴと動く「何か」がおり、真姫は影の中の存在に気付いて硬直してしまう。

 

「っ!?」

 

そして、影の中から飛び出したのは・・・・・・。

 

可愛らしい外見をしたピンク色の羊だったのだ。

 

「・・・・・・はっ?」

 

しかも羊は1匹だけではなく、10匹近くの羊が影の中から飛び出し、檻に閉じ込められた真姫の周りをぴょんぴょん跳ね回り、なんだか真姫は拍子抜けしてしまい、唖然とした顔を浮かべていた。

 

とは言え、先ほどまで感じていた恐怖心はだんだんと薄れていき、自分を追いかけていたのがこんな可愛らしい動物だったのかと思うと同時に、自分の周りをぴょんぴょん跳ね回り羊を見てなんだかほのぼのしてしまい、真姫は苦笑してしまう。

 

「何よ、脅かしてくれちゃって・・・・・・」

 

だが、次の瞬間・・・・・・。

 

羊達の顔は「クワッ!!」と恐ろしい形相の顔となり、それに真姫は「うぇ!?」と驚きの声をあげて尻餅をついてしまう。

 

「キシャアア!!」

「シャアアア!!」

 

羊たちはおぞましい雄叫びをあげながら檻に噛みつき、檻を噛み砕いて真姫に襲いかかろうとしていたのだ。

 

「ひっ!! だ、誰か・・・・・・」

 

やがて羊たちによって檻は完全に噛み砕かれ、羊たちは「グルルルル・・・・・・!!」と唸り声をあげながら真姫を睨み付け、今にも彼女に襲いかかりそうだった。

 

「誰か・・・・・・誰かぁ・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰か助けてええええええ!!!!」

 

という夢を今朝見た・・・・・・と話す真姫の話を聞き、目尻に涙を浮かべて学校の教室で叫ぶ花陽。

 

「ってなんであなたが怖がる訳?」

 

なぜそんな夢を見た真姫ではなく、当事者ではない花陽が怖がるのかと真姫がツッコミを入れると、花陽曰く「そんな夢の話をされたら誰だって怖いよ!」とのこと。

 

「しかも、怖い夢かと思わせてほのぼのした夢だと思ったらガッツリ怖い話なんだもん! 余計に怖いよそういうオチ!!」

「まぁ、確かにそうだけど・・・・・・。 はぁ、もううんざり。 おかげで朝からテンション下がったわ」

 

真姫は大きな溜息を吐くのだが、自分以上に花陽が深呼吸が必要になるほど怖がっており、そんな彼女を見て真姫は「だからなんであなたが・・・・・・」と呆れた視線を向けていた。

 

「はぁ、夢に出そう・・・・・・」

「・・・・・・ねぇ?」

「んっ?」

「今も・・・・・・夢の中だったら、どうする?」

 

真姫の問いかけに対し、「えっ、そうなの!?」と驚いて後ろに下がる花陽。

 

「バカね、言ってみただけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、真姫は昼休み頃にピアノを弾く為、音楽室に訪れており、ピアノを弾こうとするのだが・・・・・・ピアノは音が出ず、彼女は「あれ?」と首を傾げ、どこか壊れたのかとピアノの中を見てみる。

 

「んっ? んっ~?」

 

そんな時、真姫は音楽室の出入り口辺りに小さな少女がいつの間にか立っていることに気付き、それを見て真姫は驚いて小さな悲鳴をあげ、尻餅を突いてしまう。

 

「な、なに!? ビックリさせないでよ!! もう、学校に入って来ちゃダメでしょ!?」

 

真姫は勝手に学校に入って来たらダメだと少女に注意するのだが・・・・・・その時、真姫はその少女を見て目を見開く。

 

「あっ、あなたは・・・・・・あなたは・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後の学校の屋上にて。

 

今日も今日とてダンスの練習をするために屋上に集まったμ'sのメンバー+紅葉。

 

しかし、花陽からみんなに今日は真姫が学校に来ていないことを告げられた。

 

「昨日元気そうだったんだけど・・・・・・」

「風邪かな?」

「心配だね・・・・・・」

 

そこで凛がみんなに「ねえねえ!!」と呼びかけ、彼女は今日はもう練習は中断し、みんなで真姫のお見舞いに行くのはどうだろうかと提案してきた。

 

それに穂乃果は「良いかも!」とノリ気だったが、そこは当然、この中でも特に真面目な性格の海未が「いけません!!」と反対する。

 

「日々の鍛錬を怠っては・・・・・・」

「まぁまぁ! たまにはこういうのも良いんじゃない?」

 

そんな海未をたしなめるようにことりがそう海未に言い、それに「そうだよそうだよ!」と穂乃果も同意し、紅葉も「そうだな」と頷く。

 

「最近はみんな結構頑張ってるし、1日くらい休んでも問題ないだろう」

「そうだよそうだよ! ついでに途中でパフェ食べたり、アイス食べたり、あっ! ラーメンも捨てがたいにゃ~! あー、楽しみ~」

「これお見舞いだから!」

 

凛がついでに何かを食べようと言う話をしていると、なんだかそっちがメインになって来ている為、花陽から注意を受け、反省する凛。

 

「なんか食うのがメインになってどうする。 それになんか食べるならカレーパンだろうが!!」

「だからこれお見舞いだよ、紅葉くん」

 

今度は花陽が紅葉に注意し、紅葉は「はい・・・・・・」と頭を下げて反省。

 

「・・・・・・?」

 

しかし、そんな紅葉の様子を見て、穂乃果は「んっ?」と小首を傾げる。

 

「紅葉くんにそんな熱い視線を送って、穂乃果ちゃんどうしたん~?」

「あ、熱い視線なんて送ってないよ希ちゃん!! ただ、ちょっと、お兄ちゃんの様子が何時もと違う気がして・・・・・・」

 

穂乃果のその言葉を聞き、一同は「えっ?」と不思議そうな顔を浮かべ、もしかして紅葉も調子が悪いのだろうかと思い、にこが紅葉の顔色を伺ってみるが・・・・・・普段と大して変わらないように見える。

 

「何時も通りカレーパンバカじゃないの」

「酷い言われよう。 でも否定はできない」

 

実際、紅葉自身も身体に違和感などはなく、普通に元気なので穂乃果の気のせいではないかと紅葉は言うのだが・・・・・・穂乃果はイマイチ納得していない様子であり、「う~ん?」と眉間にシワを寄せる。

 

「まぁ、兎に角。 今は真姫ちゃんのお見舞いの話だろ?」

「そうやね、照れてる顔が目に浮かぶわ~」

 

希はお見舞いに来た自分達を見て照れる真姫の姿を思い浮かべてニヤニヤ笑みを浮かべ、それににこは「え~!?」と不満そうな声をあげる。

 

「ホントに行くのぉ? しょうがないわねぇ~」

 

にこはそう言いながらそっぽを向くのだが・・・・・・。

 

「お願い、早く元気になって戻って来て!」

 

と希はにこの心の中をナレーションし、それににこは「なに勝手に!?」と希を睨むが、希は「心の声を言っただけよ」とのほほんと笑いながら返し、そんな希の胸をにこはぽこぽこ軽く叩く。

 

「希さんの胸を妬んで叩いてるようにしか見えないですね、にこさん」

「うっさいわ!!」

「んっ?」

 

だが、その時ふっと紅葉が少し離れた位置にあるフェンスに視線をやると、その上に1人の少女が座っているのが見え、目を擦ってもう1度確認すると・・・・・・少女は既にそこにはおらず、紅葉は見間違いかと思い、にこから再び逃げ出すのだった。

 

(今のは・・・・・・見間違いか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は練習着から制服に着替えて談笑しながら校門を出ようとすると、希から「ちょっとだけ寄り道して行かない?」と提案が出る。

 

「えぇ? お見舞いに行くんですよ?」

「さっき差し入れ買って行けば喜ぶんじゃないかって話してたの!」

 

ことりからの説明を受けて海未は「あぁ、成程」と納得し、それには海未も賛成だったので一同は先ずお見舞い品を買うことにするのだった。

 

「じゃあそうしましょう。 お金は私が出しておくから・・・・・・」

 

絵里はそう言いながら鞄から財布を取り出そうとするのだが、その時、彼女は忘れ物をしてしまったことに気付く。

 

「どうしたの?」

「忘れちゃったわ・・・・・・」

「何を?」

「明日授業でやるところの教科書を。 家で予習しようと思ってたのに・・・・・・」

 

それを聞いて穂乃果は「予習!?」と驚きの声をあげる。

 

「凄い・・・・・・! 私、したことない・・・・・・!」

「・・・・・・」

「だろうな」

 

そんな穂乃果に海未はジトッとした視線を送り、同時に紅葉もそんな穂乃果を見て思わず笑ってしまうのだった。

 

絵里はみんなに先に行っててくれと言うが、別にそんなに時間がかかることもないだろうということでみんなはここで待っていると返し、絵里はそのことにお礼を述べて学校の方へと戻って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから絵里は自分の教室に辿り着くと、机の中にあった自分の教科書を鞄に仕舞い込み、みんなの元へと帰ろうとするのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・んっ?」

 

彼女は教室を今誰かが通ったような気がして、恐る恐る教室から廊下に出るとそこには誰もおらず・・・・・・。

 

ただ、階段を降りる誰かの人影だけが見えたのだった。

 

その瞬間、辺りが薄暗くなり、周りはほんの小さな光が壁床などを照らした不思議な雰囲気のただよう空間となり、絵里はそのことに当然ながら驚きを隠せなかった。

 

「えっ・・・・・・!? ハラショー・・・・・・」

 

取りあえず、あの影を追いかけようと絵里は階段を降り、あの影を追いかけて行くと・・・・・・。

 

辺りはさらに暗くなり、目の前に1つの扉が現れた。

 

そんな摩訶不思議な現状に絵里は戸惑いつつも、絵里はなぜか止まることができず、ただただ本能のままその扉を目指して駆け出し、その扉の中に入ると・・・・・・。

 

彼女は、学校の外に出ていた。

 

「・・・・・・えっ」

 

学校から出た先には穂乃果達が自分を待っていてくれていたのだが・・・・・・先ほどまで夕方だったのに、今はもうスッカリ夜であり、凛が言うには「急に夜になった」とのことだった。

 

「私も、教室が急に暗くなって・・・・・・」

「こんなの普通じゃない! 私達、夢見てるんとちゃう?」

「もしくは・・・・・・宇宙人、とかの仕業・・・・・・かもな」

 

希はもしかしてこれは夢なのではないかと予想し、紅葉はこの現象は宇宙人などの仕業なのではないかと予想するが・・・・・・。

 

「そうだよ」

 

その時、希や紅葉の考えを肯定するかのように絵里の背後から、赤い髪の少女が現れたのだ。

 

「フフ・・・・・・」

 

その少女はどことなく・・・・・・否、かなり真姫に似ており、真姫によく似た小さな少女は笑みを浮かべながら「初めまして!」と元気よく挨拶する。

 

「は、初めまして・・・・・・」

「お姉ちゃん達面白いね! いつも仲良さそう!」

「そ、そんなことないです・・・・・・」

 

海未は少女に対して謙虚してそう言うのだが、それにムッとしたことりは「そんなことなくない!」と海未に言い放つ。

 

「そんなつもりでは・・・・・・」

「フフ、やっぱりおもしろーい!!」

 

しかし、見たところこの少女・・・・・・やたらと真姫に似ており、花陽はもしかして彼女の時間が巻き戻ってしまったのかと思ってしまう。

 

「く、悔しいけど・・・・・・私より可愛い!!」

 

そしてにこはこの少女が自分より可愛いと評し、穂乃果はしゃがみ込んで少女に質問をしていく。

 

「ねえ、あなたどこから来たの? 本当にここは夢の中?」

 

その質問に応えるように、少女は「うん!!」と頷く。

 

「あのね! 現実のみんなはまだ眠ったままなの! みんなちょっと前に、空に浮かんだオーロラみたいなのを見たでしょ?」

 

少女にそう言われ、確かに穂乃果達は数日前、学校の屋上でダンスの練習をしている時、突如として空に浮かんだオーロラを目撃している。

 

日本でオーロラが発生したということ、それでいてとても綺麗だったことから穂乃果達はその時のことをよくよく覚えている。

 

その後、急激な眠気が襲いかかって・・・・・・。

 

「もしかして、あの時から・・・・・・」

「そうだよ! あの時からみんなはずっと眠ったままなの・・・・・・。 アイツのせいで・・・・・・」

 

そう言いながら少女はすっとある方向を指差し、穂乃果達がその指の先を追うと・・・・・・。

 

「・・・・・・お兄ちゃん?」

 

少女が指差していたのは紅葉であり、それに穂乃果達は目を見開く。

 

「い、いやいやいや、何言ってんだよ。 俺がそんなことする訳ないだろ?」

「ふーん、惚けるんだ」

 

少女は「えい!」っと言いながら右手を挙げて再び紅葉を指差すと、紅葉は突如として頭を抱えて苦しみ出す。

 

「ぐう!!? なぁ・・・・・・なんだ!! 頭が・・・・・・!!」

 

すると、紅葉の全身にモザイクのようなものがかかり、それが無くなると、そこには紅葉では1人の宇宙人・・・・・・「宇宙狩人 ノワール星人ガイドス」が姿を現したのだ。

 

『な・・・・・・にぃ!?』

「宇宙人・・・・・・!!?」

「紅葉に、化けていたんですか!!?」

 

当然、そのことに穂乃果達は驚きを隠せず、ガイドスは自分の正体が露見し、激しく動揺する。

 

『おのれぇ!! 貴様、一体なんなんだ!! お前のせいで計画が台無しだ!!』

「計画・・・・・・? 計画って何よ!?」

『うるさい!! ここが夢の世界だと気付かれた以上、お前達が目覚めるのも時間の問題・・・・・・!! 本当ならこのままレイビーク星なんかに売り飛ばしてやろうと思ったが・・・・・・依頼主がオーブを倒すまで、お前達にはここにいて貰うぞ!!』

 

そう言うとガイドスは「魔石」と呼ばれる赤い石を取り出すと、それを自分の胸に押し当て、上半身に頑強な鎧を纏い巨大化した姿・・・・・・「魔石超人 デビルノワール」に変化。

 

さらにどこからともなく数十匹のピンクの羊、「夢幻小魔獣 スモールインキュラス」が集結し、融合。

 

デビルノワールが操る多数の眼を持つ羊のような巨大な怪人、「夢幻魔獣 インキュラス」となったのだ。

 

『この夢の世界で、ウルトラマンは助けに来れないぞ!!』

「に、逃げないと・・・・・・!!」

 

デビルノワールはそう言いながら逃げようとする穂乃果達に手を差しのばし・・・・・・。

 

「大丈夫だよ」

 

少女がそう呟くと、上空から眩い光が放たれ、そこに1人の光の巨人が跳び蹴りをデビルノワールに喰らわせ、蹴り飛ばしたのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

『シェア!!』

『ぐああああ!!!?』

 

そこに現れたのは初代ウルトラマンと、ウルトラマンティガの力を融合させた姿、「スペシウムゼペリオン」となった「ウルトラマンオーブ」だったのだ。

 

『貴様は・・・・・・!!』

『俺の名はオーブ!! 闇を照らして、悪を討つ!!』

「オーブ!!!!」

 

夢の中でも、オーブが助けに来てくれたことに嬉しそうな声をあげる穂乃果。

 

『オーブ!! そうか、依頼主はオーブを倒すことが出来なかったか・・・・・・だが、どうやって夢の世界に・・・・・・!?』

『知らないのか? コスモスさんは夢の中に入ることが出来るんだよ! あの人のカードの力を借りたのさ!』

 

オーブはデビルノワールに問いかけにそう応え、デビルノワールは自分と「依頼主」と呼ばれる者の計画を散々邪魔され、怒り心頭に。

 

『おのれぇ・・・・・・!!』

「よぉーし、オーブ!! 悪いやつをやっつけるにゃ~!!」

 

戦闘BGM「スペシウムゼペリオンのテーマ」

 

オーブは凛の言葉に頷くと、オーブはインキュラスに向かって駈け出し、蹴りを放つがインキュラスはそれを受け流し、後ろ回し蹴りを逆にオーブに喰らわせる。

 

『グッ!』

 

さらにそこで立ち上がったデビルノワールが手から放つ光弾をオーブに放つが、オーブはそれを腕を振るって弾き、「ティガ・スカイタイプ」の能力を一時的に使用し、素早く一気にデビルノワールに詰めより、今度は「ティガ・パワータイプ」の能力を使用して強烈な拳をデビルノワールの顔面に叩き込もうとする。

 

しかし、デビルノワールは左腕でそれをガードし、右手から光弾をオーブに撃ち込む。

 

それをオーブはバク宙でなんとか躱し、デビルノワールから距離を取ると両腕を広げてエネルギーを貯めてから放つ光の鋸「スペリオン光輪」を繰り出す。

 

『スペリオン光輪!!』

『ムン!!』

 

しかし、デビルノワールは鎧の頑丈さを生かして敢えてスペリオン光輪をノーガードで受け、スペリオン光輪はデビルノワールにダメージを与えられず、あっさり砕け散ってしまった。

 

そこへ、オーブをインキュラスが羽交い締めにして動きを封じ、その隙を突いてデビルノワールは駆け出してドロップキックを繰り出し、オーブに叩きこむ。

 

『ヌアアア!!!?』

 

さらにインキュラスがオーブを拘束から解くとオーブの背中を殴りつけ、それによって片膝を突くオーブの脇腹に蹴りを叩き込んで蹴り飛ばす。

 

『グウウ!!?』

 

それによって地面を転るオーブを踏みつけようとデビルノワールが飛びかかり、オーブはそれを何とか躱して起き上がるが・・・・・・。

 

インキュラスが瞬間移動してオーブの背後に現れ、「キュラスター」という光の筒の中にオーブを閉じ込めてしまう。

 

『しまっ!?』

 

それに身動きが取れなくなったオーブに、インキュラスとデビルノワールは攻撃を仕掛けようとするが・・・・・・。

 

少女が「えい!」と右手をオーブに向かって掲げると、そこから光の光弾が放たれ、筒に光弾が直撃すると光弾は砕け散り、オーブは即座にその場から離れる。

 

『サンキュー!! こうなりゃ、こいつで!!』

 

すると、インナースペース内の紅葉は、新たにウルトラマンのカードを1枚取り出し、変身アイテムである「オーブリング」にそのカードをリードさせる。

 

『ギンガさん!!』

『ウルトラマンギンガ!』

 

すると青いクリスタルを身につけた戦士、「ウルトラマンギンガ」が現れ、続けて紅葉はまた別のカードをオーブリングにリードさせる。

 

『エックスさん!!』

『ウルトラマンエックス!』

 

今度はメカニカルな外見をした戦士、「ウルトラマンエックス」が現れ、紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『痺れるやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ!』

 

そしてギンガとエックスの姿が紅葉と重なり、オーブは2人の力を融合させた新たな姿「ライトニングアタッカー」に姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!』

『電光雷轟、闇を討つ!!』

 

オーブは両腕に電撃を纏わせ、その電撃を纏った両拳でインキュラスを何度も殴りつけながら相手の身体に電撃を流して痺れさせ、最後に顔面に拳を叩き込んでオーブはインキュラスを殴り飛ばす。

 

『シェア!!』

「ガアアアアア!!!!?」

 

それを見てデビルノワールは胸にある魔石から放つ束縛光線をオーブに向かって放つが、オーブは電撃を纏わせた両腕を振るってそれを弾き飛ばし、一気にデビルノワールに詰め寄るとオーブは電撃を纏わせた拳や蹴りを次々にデビルノワールに叩き込んみ、デビルノワールの全身に電撃を浴びせていく。

 

『ぐああああ!!!?』

 

幾ら頑丈な鎧を着ているからと言って、全身に電撃を浴びては鎧の僅かな隙間や鎧で覆われていない部分を防ぐ手段はない為、そこから入り込んでくる電撃のせいでデビルノワールは先ほどと違って次々にオーブによる攻撃のダメージを受けてしまう。

 

そこへインキュラスが背後からオーブに向かってドロップキックを繰り出して来るが、それをオーブは振り返りざまに両手から伸ばした剣で衝撃波を放つ「ギンガエックスセイバー」を放ち、空中にいるインキュラスを撃墜。

 

『ギンガエックスセイバー!!』

「っ!?」

 

倒れ込んだインキュラスにオーブはすかさず向かって行き、インキュラスの両足を掴むと電撃を流し込みながらオーブはジャイアントスイングを繰り出し、投げ飛ばしてデビルノワールに激突させる。

 

『ぬあああ!!?』

 

最後にオーブは空中へと飛び上がると空中で両手両足を広げたX字のポーズで静止して、全身から電撃を放つ「アタッカーギンガエックス」をデビルノワールとインキュラスに纏めて放つ。

 

『アタッカーギンガエックス!!!!』

『ぐあああああああ!!!!?』

 

それを受け、インキュラスは耐えきれず、倒れて爆発し・・・・・・デビルノワールも全身バチバチと身体から火花を散らし・・・・・・身体中から火花を散らす。

 

『ぐうう、鎧が無ければ危なかった・・・・・・。 ウルトラマンオーブ! 今日のところは一旦退いてやる!! だが、忘れるな。 お前のせいで、あの小娘共を危険に晒したという事実をな!! 150年前、お前が大事にしていた女を、戦いに巻き込んだ時のように!!』

『っ・・・・・・! お前・・・・・・!』

 

デビルノワールの言葉は恐らくはただの負け惜しみだろう。

 

しかし、それでもその言葉はオーブを激しく動揺させ、同時にその過去に気安く触れるデビルノワールに怒りを抱き、オーブは拳を握りしめる。

 

『俺には予知能力なんてものはない。 だが、予言してやるよ! お前は何時か、また大事なものを傷つけ、失うとなぁ!! 俺のように、お前の大切な者を狙う奴等はそれなりにいるだろうしな!!』

 

そう言い残すとデビルノワールはその場からすぅっと姿を消し、オーブは「待て!!」と言うが・・・・・・既にデビルノワールは夢の世界から脱出したのだった。

 

『逃がしたか・・・・・・』

 

オーブは視線を穂乃果達に送り、オーブは先ほどデビルノワールに言われたことを思い出す。

 

『お前は何時か、また大事なものを傷つけ、失うとなぁ!! 俺のように、お前の大切な者を狙う奴等はそれなりにいるだろうしな!!』

『・・・・・・俺はもう二度と失わない。 大事なものを今度こそ・・・・・・絶対に』

 

オーブはじっとμ's・・・・・・特に穂乃果を見つめた。

 

「やった! オーブが勝ったにゃ~!」

 

凛はデビルノワールを逃がしたとは言え、彼女はオーブの勝利に喜び、穂乃果はオーブと、しゃがみ込んで自分達を助けてくれた少女に「ありがとう!」とお礼を述べる。

 

「オーブだけじゃなくて、あなたも助けてくれたんだよね? ありがとう」

「私はここが夢の世界だって教えただけ。 大したことは何もやってないよ? それにね、私、お姉ちゃん達のことずっと前から知っててね、9人になる前から・・・・・・まだみんなバラバラだった頃から・・・・・・。 そんなずっと前から知ってるみんなの為に、ちょっと頑張っただけだよ」

 

少女のその「ずっと前から知ってる」という言葉に疑問を感じたことりは「どうして?」と尋ねると、少女はにっこりと笑みを浮かべる。

 

「だって私、ずっと・・・・・・ずっと・・・・・・ずっと・・・・・・」

 

少女がそこまで言いかけた時、辺りが徐々に白い空間へと変化していき、そのことに穂乃果達は「なに!?」と驚く。

 

「心配しないで。 もうじき、みんなは夢の中から目覚めるだけだから」

「えっ・・・・・・」

 

少女がそう言うと、辺り一帯は眩い光に包まれる。

 

「今度は、もっと楽しい夢をみんなで見ようね? パーティーのような、楽しい夢!」

 

そんな、少女の言葉を最後に・・・・・・穂乃果達はその光に飲み込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ・・・・・・」

 

気付けば、穂乃果はどこかの病院の、病室らしき場所で目を覚まし・・・・・・視線を横に向けると、そこには自分の手を握り、心配そうな顔を浮かべる紅葉の姿があった。

 

「お兄・・・・・・ちゃん?」

「穂乃果・・・・・・!!」

 

周りを見ると、海未やことり、他のμ'sのメンバーも同じ病室で自分と同じように眠っていたらしく、彼女達も今丁度目を覚ましたところだったのだ。

 

「えっ、あの紅葉マジで本物? また偽者だったりしない?」

 

目を覚ましたにこはすぐ目の前に紅葉がいることに気づき、今そこにいる紅葉は本当に本物なのかと疑う。

 

「本物に決まってるでしょ、まだ寝惚けてんですかにこさん?」

「大丈夫だよにこちゃん!! このお兄ちゃんは間違いなく本物だよ! 違和感も感じないもん!!」

 

偽紅葉の正体を見破ったのはあの幼い真姫のような少女だったが、彼女以外で紅葉に不自然さを感じていたのは穂乃果だった。

 

今思えば、彼女は薄々あれが紅葉ではないことに感づいていたのだろう。

 

その穂乃果が今度は間違いないと断言するなら、まぁ、一応間違いないのかと納得するにこ。

 

「普段滅茶苦茶鈍そうなのに・・・・・・ホント、アンタ紅葉のこと大好きね」

「だって私ブラコンだし」

「自分で言うな」

 

それに、穂乃果的に今1番気になるのはあの少女のことだ。

 

穂乃果は自分の隣のベッドで起き上がった真姫に「やっぱりあの女の子は真姫ちゃんなの?」と尋ねる。

 

「まぁ、一応・・・・・・そうね」

 

どうして真姫にだけ夢の中であのような現象が起きたのか、なぜ彼女だけあれが夢の世界だと気付くことが出来たのか、分からないことは多いし、それは真姫自身にも分からない。

 

強いて言うならばインキュラスの能力に対して「耐性」があったとしか言えないが、実際のところはどうなのかそれは誰にも分からない。

 

「ただ1つ言えるのは、ウチ等はオーブと・・・・・・真姫ちゃんに助けられたってことやね」

「そうだね! あっ、そう言えば真姫ちゃん! 夢の中の最後ら辺で言おうとしてたことってなんだったの?」

 

穂乃果にそう問いかけられ、真姫は「えっ!?」と声をあげる。

 

「さっきの『ずっと』ってところの続き! 何を思っていたの?」

「えっ、それは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ずーっと好きだったの! みんなのことがずーっと!! 終わらない、パーティー! 始めよう!』




紅葉
「サブタイを探せ! のコーナー!!」

にこ
「いやあるの今回!? 番外編みたいな話だったけど!? しかも今回時系列曖昧なとこあるけど!」

穂乃果
「番外編にしてはそこそこ長かったし、一応13.5話だし!」

紅葉
「今回のサブタイは『ウルトラマンティガ』40話、『夢』だ」

にこ
「逆に分かりにくいわ!! 今回『夢』ってキーワード何回出てきてんのよ!!?」

穂乃果
「毎回サブタイ考えないといけない作者の身にもなろうよにこちゃん!」

にこ
「単に作者が楽してるだけ!」




宇宙狩人 ノワール星人ガイドス
誰かが「オーブを倒す為」という依頼を受けて、紅葉に精神的なダメージを与える為、インキュラスを使い穂乃果達を夢の世界に閉じ込めた張本人。
依頼主がオーブを倒すまでということで自身も夢の中に入り、紅葉に化けて穂乃果達が目覚めないよう監視していた。
ちなみに依頼主がオーブを倒した暁には彼女達をそのままずっと夢の中に閉じ込め、地球人をコレクションしたりする宇宙人や人間の奴隷を必要としているレイビーク星などに売り飛ばすつもりだったらしく、本家ノワールやバイスの例に漏れずの外道。
だが、オーブが依頼主を返り討ちにしたこと、真姫そっくりの少女というイレギュラーが発生した為、作戦は失敗。
最後の手段としてデビルノワールとなり、インキュラスと共にオーブと戦うが敗北し、そのまま逃走。
尚、普通こういうのは幸福な夢などを見せるのが定番だが、「何時もと変わらない日常を送らせた方がこれが夢だと気づきにくそうだから」という理由で穂乃果達には何時も通りの日常の夢を見せていた。
実はエクこれに登場したノワール星人バイスの弟。




当初現実世界の紅葉の様子も書こうかと思っていたんですが、途中で「実は今まで紅葉だと思われていた人物が紅葉ではない」って言うのはちょっと面白いんじゃないかと思い、現実世界の描写はカット。
なのでこの際、今回はフュージョンアップ描写以外紅葉自身の出番は無しにしようかと思ってました。
ただ目を覚ます描写を入れるに当たって彼がいないのはおかしい気がしたので結局ラストにまともな出番はありましたが。


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第14話 『μ'sの亀裂』

ことりの自宅にて・・・・・・。

 

ことりは自分の部屋でファーストライブの時に着た衣装を複雑そうな表情でジッと見つめていると部屋の扉からノックの音がして彼女は「はい!」と返事を返す。

 

すると扉が開いて彼女の母親である理事長が顔を見せ、彼女はことりの様子を見に来たようだった。

 

「ことり、穂乃果ちゃんには話したの?」

「・・・・・・うん、明日・・・・・・話す」

 

どこか浮かない顔を浮かべることりに、理事長は「ちゃんと話なさいよ?」と注意する。

 

「大切な友達でしょう?」

「・・・・・・うん」

 

そんな理事長の言葉に未だに複雑そうな顔を見せながらも彼女は静かに頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言えば・・・・・・ラブライブは中止にはならなかった。

 

だが、しばらくはマガオロチが破壊した街の復旧作業のためラブライブ開催は延期となり、学校の屋上で絵里が一同にそのことを報告すると穂乃果達は「中止にならないないのは良かったぁ~」と安堵の溜め息を吐く。

 

「・・・・・・」

 

しかし、ラブライブが中止にならなかったとは言え、ラグナの手の平の上で踊らされ、そのせいでマガオロチの復活を許し、延期になってしまったことに紅葉は責任を感じ、彼は心苦しそうな顔を浮かべる。

 

「お兄ちゃん?」

「っ、穂乃果・・・・・・」

 

そんな紅葉の様子に気付いてか、穂乃果が心配そうな表情で紅葉の顔を覗き込み、それに驚く紅葉。

 

「どうしたの? 元気ないよ?」

「いや、なんでもないよ。 心配かけて悪い」

 

紅葉は無理矢理笑顔を作り、穂乃果に対して「なんでもない」と言うのだが、彼が無理に笑みを作っているのが分からないほど穂乃果もそこまで鈍くはない。

 

というか彼女の場合、紅葉が元気がないことに気づけたのはなぜか彼に対してのみやたら勘が鋭かったりするのもある。

 

「でもこれは逆に、今よりも腕をあげるチャンスやね。 まぁ、それは平行して他のグループにも言えることやけど・・・・・・」

 

希の言うように、ラブライブが延期されたということはその分自分達の腕を磨く時間が増えるということであり、他のアイドルグループにもそれは言えたことだが、既に19位以内に入っていたμ'sならば練習を怠らない限りそこまで苦ではないだろう。

 

「まさにピンチはチャンスって訳ね」

「そうね。 入学願書の受け付けまでにも何度かライブをやりたいところだけど・・・・・・あんまり連続でやる訳にもいかないしね」

 

絵里のその言葉に「そうだよね」と首をぶんぶん縦に振って力強く頷く穂乃果。

 

「みんなの体調とか、疲れ過ぎちゃうのもよくないよね。 今だからなんとなく分かるけど、あのままお兄ちゃんが止めてくれなかったら、私絶対倒れてたよ」

 

苦笑しながら穂乃果は紅葉の元に駆け寄り、太陽の笑顔で自分の無茶を止めてくれたことに彼女は改めて紅葉にお礼を述べるのだった。

 

「あの時は本当にありがとう、お兄ちゃん!」

「いや、俺こそ、石碑の時は穂乃果も、みんなもありがとう。 でも、俺なんて・・・・・・」

 

確かに紅葉は穂乃果の無茶を止めることには成功した。

 

しかし、結果的にマガオロチの復活を許してしまったことで文化祭のライブを台無しにしてしまったと考える紅葉からすれば、お礼を言われる立場などではないと思った。

 

そんな紅葉の様子を見かねて「はぁ・・・・・・」と深い溜め息を吐くにこは紅葉の近寄ってこっそりと耳打ちする。

 

「アンタの気にすることじゃないわ。 何時までウジウジしてんの?」

「にこさん・・・・・・。 でも、俺は・・・・・・」

 

あの時紅葉が使ったサンダーブレスターの力などのことも聞こうとにこは思っていたのだが、紅葉がこんな調子なのであまり深いことは聞かないように、尚且つ紅葉にフォローを入れるにこ。

 

「・・・・・・むぅ」

 

ただ、そんな紅葉とにこの2人の様子を見て、「むぅ~」と頬を膨らませる穂乃果。

 

たまに紅葉とにこの2人はあんな風にどこか通じ合ってるかのようなやり取りを行う。

 

それに対して穂乃果は嫉妬にも似た感情を露わにするのだが、肝心の紅葉はあまりそういうのには気付いていないようで彼女は小声で「お兄ちゃんのバカ」と小さく呟くのだった。

 

「んっ? あれ? そう言えば、ことりちゃんは?」

 

そこで穂乃果は屋上にことりがいないことに気づき、それに対して海未がハッとしたような顔を浮かべる。

 

「ことりなら、ちょっと電話してくるって下に行きましたよ」

「ふーん」

 

ことりがなんの電話をしているのかを知っている海未はどこか浮かない顔を浮かべ・・・・・・その直後、真姫、花陽、凛の遅れてやってきた1年組が慌てた様子で屋上のドアを開けてやって来ると、そんな慌てた3人を見て穂乃果は「ど、どうしたの!?」と驚きながらも問いかける。

 

「はあ、はあ・・・・・・た・・・・・・」

「た・・・・・・」

「た・・・・・・助けて・・・・・・」

 

無論、それだけでは何か分からず、一同は首を傾げ、兎に角1年組は廊下に張られている掲示板の紙を見て欲しいとのことで一同は急いで真姫達に案内され、掲示板の元へと行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年組に案内されて学校の掲示板を見に行くこととなった紅葉達。

 

すると、そこの掲示板には「来年度入学者受付のお知らせ」と書かれた紙が貼られており、これはつまり、花陽曰く、中学生の希望校アンケートの結果が出たらしく、去年よりも志願する人達が増えたことを表していたのだ。

 

「ってことは・・・・・・」

「学校は・・・・・・」

 

その事実に穂乃果と海未は互いに顔を見合わせる。

 

「存続するってことやん!!」

 

希の言うとおり、それは学校の存続が決定したことを意味しており、ここに来て穂乃果達μ'sの目的であった「廃校阻止」という目標が達成されたのだ。

 

「さ、再来年は分からないけどね!」

「確かに再来年まではどうなるか分からないけど・・・・・・それよりも真姫ちゃん、顔めっちゃニヤけてるぞ」

 

紅葉に指摘され、「えっ!?」と驚く真姫。

 

「後輩ができるの!?」

「うん!!」

 

凛と花陽も学校が存続するということは自分達にできるかどうか分からなかった後輩ができるということであり、自分達に後輩ができることを喜ぶ2人。

 

その時、顔を俯かせながらトボトボと廊下を歩いて来ていることりの姿に穂乃果と紅葉は気づき、どことなく、元気がないようなことりの姿に紅葉は首を傾げた。

 

「ことり?」

「こっとりちゃ~ん!!」

 

しかし、穂乃果はそのことには気付かず、彼女はことりに駆け出して勢いよく抱きつき、それに戸惑うことり。

 

「穂乃果ちゃん? えっ、えっ!」

「これ!!」

 

一体なにが起こっているのか理解できず、そんなことりに来年度入学者受付の紙を海未は見せる。

 

「やったよ、学校続くんだって! 私達、やったんだよ!!」

 

海未と穂乃果から、学校が存続することを伝えられ、それに一瞬信じられないといった様子でことりは目を見開く。

 

「嘘・・・・・・じゃ、ないんだ・・・・・・!!」

「うん!!」

 

しかし、すぐにそれが現実であることを理解し、穂乃果とことりはお互いに目尻に涙を浮かべ、絵里も「ハラショー」と呟きながら小さく涙を流し、にこも目を潤わせていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後にて・・・・・・学校に訪れた亞里沙に、絵里は穂乃果、紅葉、ことりと一緒に学校が存続できたことを彼女に報告。

 

それを聞いてμ'sのファンであり、音ノ木坂の入学を希望していた亞里沙は目を輝かせながら「ホントに!?」と絵里に尋ねる。

 

「嬉しい!! やったやったぁ!!」

「あんなに喜んでくれる子が1人でもいるなら、頑張った甲斐があったな、穂乃果?」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ亞里沙を見つめながら、「今までよく頑張った」と紅葉は穂乃果の頭を撫でて褒める。

 

「うん! え、えへへ~」

 

そのことで亞里沙に喜んで貰えたことと、紅葉に褒められた上に頭を撫でられたことで嬉しさのあまりふにゃあ~となんともだらしない顔になる穂乃果。

 

「穂乃果ちゃん!! 顔っ!! 凄くだらし・・・・・・って言うより溶けそう!!」

 

ことりに言われてそこでハッとなる穂乃果だが、紅葉はさらに穂乃果を両手で彼女の頬をもちもちと犬の頬を撫でるように撫で始め、彼女はさらにふやけた顔になってしまう。

 

「うぅ~ん、これなんか顔のマッサージみたいで気持ちいい~」

「来年からよろしくお願いします!!」

 

そんなふやけた状態の穂乃果に亞里沙は穂乃果やことり、紅葉にも来年からよろしくお願いしますと頭を下げて挨拶し、そんな彼女の頭にポンっと手を置く絵里。

 

「それには、まず入試で合格しないとダメね」

「うん頑張る!!」

 

絵里にそう言われ、やる気を十分に見せる亞里沙。

 

そんな絵里と亞里沙の姿を見て、穂乃果も「うちの雪穂も受験するって言わないかなぁ」と呟く。

 

「あっ、この前話したらちょっと迷ってました」

「ホント!? よーし!!」

 

そこで穂乃果の呟きを聞いた亞里沙が雪穂が受験について話した時、雪穂も音ノ木坂を受けるかどうか悩んでいたということを聞かされ、それに「よーし!!」とガッツポーズをする穂乃果。

 

「そもそもアイツ、音ノ木受けられるなら受けたかったみたいだしな・・・・・・アイツが寝てる時、まだ悩んでるなら2人であいつの耳元で『音ノ木受けろ~』って呟きまくるか?」

「良いね、それ!!」

「それ嫌がらせだよ!!?」

 

紅葉がなにかとんでもないことを提案し、それに乗っかろうとする穂乃果だったが、即座にことりからツッコミを入れられ、引き止められるのだった。

 

「あっ、でも・・・・・・次のライブ、どうしよう?」

 

そこでふっと思い出したかのように穂乃果は次のライブはいつにしようかと絵里に相談し、ラブライブが延期になった以上、今すぐ大急ぎでやる必要はなくなったので、どうしようかと悩む穂乃果達。

 

すると、先ほどまで元気よくツッコミを入れていたことりの顔が、急に暗くなり、少し何か悩んだような素振りを見せた後、「あの!」と紅葉達に声をかける。

 

「私、ちょっと買い物があるからここで」

「えっ、なに買いに行くの? 付き合おうか?」

 

ことりは買い物があるのでそろそろ帰ろうと言うことを穂乃果達に伝え、穂乃果はその買い物に付き合おうかと尋ねるが、ことりは「ううん、大丈夫」と首を横に振って穂乃果達に別れを告げ、彼女はその場を立ち去って行くのだった。

 

「なんか、元気ないよねことりちゃん」

「やっぱ、穂乃果もそう見えるか?」

「うん」

 

そんな風に立ち去って行くことりの背中を見て、なんだか彼女の元気がないように感じる紅葉と穂乃果。

 

「希も気にしていたわ、学園祭の前だったかしら。 なんか、悩んでいるんじゃないかって」

「そんなに前から・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、とある公園のベンチにて・・・・・・。

 

そこでは海未とことりが座っており、ことりは未だに抱えている自身の「悩み」を穂乃果達に打ち明けられないことについて海未に相談していたのだった。

 

「遅らせれば遅らせるほど、辛いだけですよ?」

「・・・・・・うん」

「もう決めたのでしょ?」

「・・・・・・うん」

 

顔を俯かせたまま、海未の言葉に頷くことり。

 

「でも、穂乃果ちゃんに相談できてたらなんて言ってくれたのかなって。 紅葉くんなら、なんとなく何を言ってくれるか予想できる気がするんだけど・・・・・・でも、穂乃果ちゃんはどうどだろうって・・・・・・それを思うと、上手く言えなくて・・・・・・」

「ことり・・・・・・」

 

顔を未だに俯かせたまま、そう語ることりに、海未はどう声をかけて良いのか分からず、困っていると・・・・・・。

 

突如、街の上空から1つの巨大な魔法陣のようなものが街の広場辺りに出現し、その中から巨大な白い機械竜とも呼べるロボットが出現し、降り立ったのだ。

 

「きゃっ!? あれは・・・・・・また怪獣ですか!?」

 

海未はまた怪獣が現れたのかと思い、警戒するが・・・・・・ロボットは地面に降り立っただけでまるで眠っているかのように全く動こうとはせず、それに首を傾げる海未とことり。

 

「動かない・・・・・・?」

 

一方、それは家に帰る途中だった穂乃果や紅葉も目撃しており、紅葉は穂乃果に先に帰るように言って自分はあの街の方に降り立った白いロボットの元へと駆け出す。

 

「穂乃果、お前は先帰ってろ!」

「えっ? あっ、ズルいお兄ちゃん!! あのロボットのところ行く気でしょ!? 私も行く~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わー!! かっこいいにゃ~!!」

 

そして、ロボットの降り立った場所では2人で一緒に寄り道でもしていたのか、凛とにこが訪れており、ロボットに近づこうとする凛をにこが注意する。

 

「ちょっと!! 何があるか分かんないんだからあんまり近づかない方が良いわよ!!」

「ねえねえ、このロボットいかにも竜人って感じがするし、『ギャラクシードラゴン』って名前にしようよ!!」

「アンタ話聞きなさいよ!?」

 

にこは凛の肩を引っ張ってロボットに近づけまいとする。

 

「ってか名前安直過ぎでしょ。 宇宙から来たかも分かんないのに。 『サルヴァトロン』とかどう? 救世主って意味らしいけど、アンタの安直なネーミングよりはカッコイイでしょ?」

「にこちゃんこそその『ヴァ』つけとけばカッコイイでしょ的な感じがして安直だにゃー!!」

 

凛とにこの2人はいつの間にかそんな風にロボットの名前をどうするかで揉め始め、今にも喧嘩をしそうな勢いであり、そんな2人の間に駆けつけた紅葉が割って入ってきた。

 

「おい! 2人とも何をくだらないことで喧嘩してんだ!!」

「あっ、紅葉くん・・・・・・ってどうでもよくないにゃ!! にこちゃんが凛のネーミングにケチつけるから!! 絶対カッコいいのに!!」

「それはアンタもでしょ!?」

 

そんな風に、紅葉が来ても未だに言い争いをする2人・・・・・・。

 

「お、お兄ちゃん・・・・・・走るの速すぎるよぉ・・・・・・」

 

遅れて「ぜえぜえ」と息を切らしながら紅葉を追いかけて来た穂乃果も現れ、にこと凛が喧嘩をしていることに彼女も気づき、彼女も慌てて紅葉と一緒に慌てて止めに入る。

 

「に、にこちゃん! 凛ちゃん! なんで喧嘩してるの!?」

「ギャラクシードラゴンが絶対良いにゃ!!」

「サルヴァトロンよ!! 男の子はみんな『ウ』に点々がつくの好きなのよ!! 私女だけど!!」

 

しかし、紅葉や穂乃果がにこと凛の喧嘩を止めようとするものの、2人の喧嘩はますますヒートアップ。

 

こんな時、花陽がいてくれれば凛だけでも説得できそうなのに紅葉が思っていると・・・・・・。

 

その時、白いロボットの胸部辺りの赤いコアのような部分から優しい音色が聞こえ、それはまるでロボットが「喧嘩をやめて」と言っているかのようだった。

 

「ほ、ほら! このロボットもきっと、喧嘩しないでって言ってるんだよ!」

 

穂乃果が言うように、その音色には人を落ち着かせる効果でもあったのか、その音色を聴いたにこと凛は落ち着きを取り戻し、お互いに頭を下げて謝罪する。

 

「ごめん、にこちゃん、こんなことでムキになりすぎたにゃ」

「いや、別にこっちこそ・・・・・・ごめん」

 

お互いに謝罪を行うと、その直後に音色は止み、穂乃果はそんなロボットを見上げて「2人の喧嘩を止めたの?」と首を傾げながら疑問に思う。

 

「ってことは、このロボット・・・・・・悪い奴じゃない・・・・・・? そこんとこどうなのよ紅葉?」

 

にこは小声でこのロボットについて何か知っていないかと紅葉に尋ねるのだが、紅葉は首を横に振って何も知らないことを伝える。

 

「俺も、こんなロボットは初めて見ます」

 

紅葉はにこの質問にそう応えながら彼女と凛の喧嘩を止めてくれたとは言え、このロボットに未だに不信感を持った視線を送る。

 

「あっ、ねえねえ!! 『ギャラクトロン』って言うのはどうかな?」

「「えっ?」」

「凛ちゃんとにこちゃん、このロボットの名前をつけようとして喧嘩してたんだよね? だったら、どっちも合体させちゃえば良いんだよ!!」

 

穂乃果が凛とにこがこのロボットにつけようとしていた名前・・・・・・「ギャラクシードラゴン」と「サルヴァトロン」、それを組み合わせて「ギャラクトロン」という名前にするのはどうだろうかと意見を出し、にこと凛は互いに顔を見合わせる。

 

「良いわね、それ」

「カッコイイにゃー!!」

「それじゃ、あなたの名前はギャラクトロンで決定だね!!」

 

そう言って穂乃果は白いロボット、「シビルジャッジメンター ギャラクトロン」の足下をぺたぺたと触りだし、それにギョッとした顔をする紅葉とにこ。

 

「穂乃果!! 不用心に触るんじゃない!!」

「そうよ! 何が起こるか分かんないのよ!?」

「あっ、ごめんごめん」

 

2人に注意されてハッとなった穂乃果は慌ててギャラクトロンから離れるのだが・・・・・・その時、ギャラクトロンの胸部のコア部分から赤い光が穂乃果に降り注ぎ、それはまるで穂乃果のことをスキャンしているようだった。

 

「ひゃっ!? なんかくすぐったいよ・・・・・・」

「穂乃果!? 大丈夫か!?」

 

スキャンはすぐに終わり、紅葉は穂乃果に身体に異常はないかと尋ね、それに穂乃果は「なんともないよ」と頷いて応える。

 

「ただ・・・・・・ギャラクトロンから何か、今、強い意志みたいなのを感じ取ったよ・・・・・・。 この世界を守るって言う・・・・・・そんな強い意志」

「えっ、それじゃもしかしたらギャラクトロンとオーブが仲間になって怪獣からみんなを守ってくれるかもしれないってこと!?」

 

穂乃果の話が本当ならばもしかしてこのギャラクトロンはオーブと共にこの世界を守るヒーローになってくれるのではないかと考える凛。

 

彼の先輩ウルトラマン、「ウルトラマンゼロ」には「ジャンボット」「ジャンナイン」という正義の心を持つ仲間のロボットがいる為、凛が言うようなことになるかもしれないと紅葉自身も一瞬考えるが・・・・・・。

 

「だと良いがな・・・・・・」

 

今はまだ判断材料が足りない為、素直に喜ぶことができず、取りあえず今は様子見をすることに。

 

その後、自衛隊が来て後日、ギャラクトロンをもっと安全な場所に運ぶまでの間縄などで動けないように拘束し、それまでは軍の科学者などがこのギャラクトロンについてのことを色々と調べることとなり、そのせいで紅葉達はギャラクトロンに近づくことが出来なくなってしまうのだった。

 

ただ軍に拘束されている間も、ギャラクトロンは自分の周囲のどこかで誰かが争えばその度にあの音色を発し、その音色を聴いた者はすぐに喧嘩を取りやめ、和解するという現象が起きていたのだ。

 

尚、それは人だけに限らず、犬や猫などの動物にも影響しているようで、ギャラクトロンは自身の周囲のみだがそんな風に喧嘩などを終息させ、ギャラクトロンは地味に活躍していたのだった。

 

 

 

 

 

 

その翌日・・・・・・あのロボットが気になることは確かなのだが、兎に角今は廃校阻止という目的に成功したことを記念し、部室でちょっとしたパーティーを紅葉達は開いていた。

 

正直、紅葉はあのギャラクトロンが本当に危険性が無いのかどうか、ずっと気になり、パーティーに参加すべきかどうか悩んでいたのだが・・・・・・。

 

穂乃果に「文化祭の時みたいに勝手にいなくならないでね!! 絶対に参加だよ、お兄ちゃん!!」と言われ、彼女に無理矢理連れて来られた為、結局パーティーに参加することに。

 

(参加するからには楽しむとするか。 まぁ、ギャラクトロンも現状そこまで危険な代物には見えないしな・・・・・・。 パーティーが終わったら即座に独自にギャラクトロンについて調査するか)

「では取りあえず、にっこにっこにー♪ みんな~? グラスは持ったかな?」

「グラス・・・・・・?」

「これ紙コップなんだけど・・・・・・」

 

にこの言葉に頭に疑問符を浮かべ、手に紙コップを見つめながら首を傾げる紅葉と真姫。

 

だが、にこはそんな細かいことは気にしないとばかりに話を続ける。

 

「学校存続が決まったということで部長のにこにーから一言挨拶させて頂きたいと思いまーす!!」

 

そんなにこに対して拍手を送る穂乃果、凛、花陽。

 

しかし・・・・・・そんな楽しげなムードの中、ことりと海未だけはなんだか元気がなく、隅っこの方に座って暗い雰囲気を作っており、それに気付いた紅葉が彼女等の元へと行って「どうした?」と問いかける。

 

「えっ」

「なんか2人とも元気ないみたいだけど・・・・・・大丈夫か? 特にことりは学園祭のちょっと前から元気が無かったみたいだし・・・・・・穂乃果や絵里さんも心配してたぞ?」

 

紅葉からの言葉を受けて、複雑そうな顔を見せることり。

 

そんなことりの顔を見て、海未もまたどう紅葉に返事をして良いか分からず、思い悩んでしまう。

 

「悩みがあるなら、何時でも相談してくれて良いんだぞ? 言い辛いことなら無理にとは言わないけど・・・・・・」

「う、うん、ありがとう紅葉くん・・・・・・大丈夫・・・・・・」

「そうか? 問題が無いなら良いんだが・・・・・・。 まぁ、何悩んでるのか知らないけど、早く解決すると良いな。 友達があんまり暗い顔してるのは見たくないし」

 

紅葉はことりと海未にそう言うと、ことりは紅葉の「友達」という言葉に一瞬ピクッと反応するが・・・・・・すぐに彼女は笑顔を作り、「あ、ありがとう・・・・・・」と歯切れ悪くも紅葉に礼を述べるのだった。

 

「えー、思えばこのμ'sが結成され私が部長に選ばれた時からどのくらいの月日が流れたであろうか・・・・・・。 たった1人のアイドル研究部に耐えに耐え抜き、今こうしてメンバーの前で思いを語・・・・・・」

『かんぱーい!!』

 

そこでにこが部長としての一言を何か言っていたりしたが、なんだか物凄く長くなりそうだった為、穂乃果達はにこの言葉をぶつ切りにして紙コップを掲げて乾杯。

 

「ってちょっと待ちなさーい!!」

 

その後はテーブルの上などにサンドイッチや唐揚げ、サラダ、ポテチなどが広げられており、お腹を空かせた穂乃果と紅葉、凛は早速テーブルの上にある料理を手に取って頬張り始める。

 

「あー、お腹空いたぁ! にこちゃん、早くしないと無くなるよ!」

「でないと・・・・・・むぐむぐ・・・・・・俺と、もぐもぐ、穂乃果が・・・・・・むぐむぐ、全部・・・・・・もぐもぐ」

「卑しいわね~。 ってか紅葉は喋るか食べるかどっちかにしなさいよ!! 行事悪い!!」

 

そこへ丁度ご飯が炊けたということで炊飯器を持って花陽がやってくる。

 

「みんな~! ご飯炊けたよ~!」

 

そんな風に、廃校を阻止し、みんなで楽しげにパーティーしている光景を見て絵里は薄らと笑みを浮かべる。

 

「ホッとした様子ね、えりちも」

 

そんな絵里の様子に気付き、そう声をかける希。

 

「まあね、肩の荷が下りたっていうか」

「μ's、やってよかったでしょ?」

「・・・・・・どうかしらね、正直、私が入らなくても同じ結果だった気もするけど・・・・・・」

 

それは自分がμ'sに加入するのが1番遅かったからか、自分が廃校阻止のためμ'sのために出来たことがあまりにも少ないと絵里は感じたようで、そんな風に彼女は廃校が取りやめになるのは結果的に同じだったのではないかと思わず考えてしまったのだ。

 

加入時期こそ、希とほぼ同時だったが、加入前から希は最初から比較的μ'sに協力的で・・・・・・そのこともあって絵里はそんな風に考えてしまったのだろう。

 

「そんなことないよ。 μ'sは9人、それ以上でも以下でもダメやってカードは言うてるよ」

 

いてもいなくても一緒だったのではないか、そんな風に語る絵里の言葉を希は否定し、彼女を励ます。

 

「こうやって廃校もなくなったんだ! 気を取り直してラブライブ開催再開までまた頑張ろう!!」

 

白米を食べながら、今度はラブライブ開催再開に向けて改めて気合いを入れる穂乃果。

 

「っ・・・・・・」

 

そんな穂乃果の呟きを隣で聞いていた紅葉はピタリと動きを止め、一瞬思い詰めたような顔になる。

 

やはり、まだラブライブが中止になったことへの責任を感じているのだろう。

 

「・・・・・・んっ?」

 

そんな時、未だに隅っこの方の椅子に座り、暗い顔を浮かべることりと海未に穂乃果は気づき、2人は何か話しているようだった。

 

「ことり・・・・・・」

「でも、今は・・・・・・」

 

そんなことりを見て、海未はこれではいけないと思ったのか、彼女は椅子から立ち上がると、みんなに声をかける。

 

「ごめんなさい、みんなにちょっと話があるんです!」

 

そんな海未に「んっ?」と首を傾げる一同。

 

「実は・・・・・・突然ですが、ことりが留学することになりました」

 

不意に伝えられた、ことりのが留学することになったという言葉。

 

それに、一同は一瞬頭が追いつかなかったが、すぐに意味を理解し、唖然となる穂乃果達。

 

「2週間後に日本を発ちます」

「っ・・・・・・」

 

それを聞いて一同は動揺の色を隠せず、にこが「ちょっとどういうこと?」と尋ねると、ことりはおずおずとしつつもみんなに説明する為に話し出す。

 

「前から、服飾の勉強がしたいって思ってて、そしたらお母さんの知り合いの学校の人が来てみないかって・・・・・・ごめんね、もっと早く話そうって思っていたんだけど・・・・・・」

「学園祭の時、まとまっている時に言うのはよくないとことりは気を使っていたんです」

 

それを聞いてそれで最近ことりの様子がおかしかったのかと希と紅葉は納得する。

 

「行ったきり、戻ってこないのね?」

「高校を卒業するまでは、多分・・・・・・」

 

絵里の問いかけに、ことりは静かに頷いて応える。

 

すると、それまで黙って話を聞いていた穂乃果が唇を噛み締めながら、立ち上がり、ことりの元まで歩み寄る。

 

「どうして、言ってくれなかったの?」

「だから、学園祭があったから・・・・・・」

 

ことりの代わりに、穂乃果にそう応える海未。

 

「海未ちゃんは知ってたんだ・・・・・・」

「それは・・・・・・」

 

すると穂乃果は、しゃがみ込んでことりの両手を握りしめる。

 

「どうして言ってくれなかったの? ライブがあったからって言うのは、分かるよ。 でも、私と海未ちゃん、お兄ちゃんにことりちゃんはずっと・・・・・・!」

「穂乃果・・・・・・」

「ことりちゃんの気持ちも分かってあげないと・・・・・・」

 

そこで絵里と希がことりの気持ちを分かってあげて欲しいと言うが・・・・・・。

 

「分からないよ!! だっていなくなっちゃうんだよ!! ずっと一緒だったのに、離ればなれになっちゃうんだよ!! なのに・・・・・・!!」

「・・・・・・何度も言おうとしたよ。 でも、穂乃果ちゃんライブやるのに夢中で・・・・・・ラブライブに夢中で・・・・・・だから、ライブが終わったらすぐ言おうと思ってた。 相談に乗って貰おうと思ってた・・・・・・。 でも、怪獣が出てきて、ライブが中止になって・・・・・・言うタイミングを大きく逃しちゃって・・・・・・」

 

今にも泣き出しそうな声で、そう語ることり。

 

そんなことりの話を聞いて、目を見開く紅葉。

 

(俺のせいだ・・・・・・)

 

ライブが中止になったのは、自分がマガオロチの復活を阻止できなかったから。

 

マガオロチの復活を阻止さえできていれば、ことりは遅くてもライブが終わった後に言い出せていたかもしれない。

 

留学が決定する前に、ちゃんと穂乃果とも話し合えていたかもしれない。

 

さらに言えば、自分がもっと早く穂乃果にあんまり無茶をしないように言っておけば、もしかしたらライブ前にはことりが留学の話を持ち出せていたかもしれないのにと・・・・・・紅葉は考えずにはいられなかった。

 

(なんで俺は、何もかもやることが遅いんだよ・・・・・・!!)

 

そう思うと同時に、紅葉は自分自身の不甲斐なさに無性に腹が立ち、拳を強く握りしめ、悔しそうな表情を浮かべる。

 

「聞いて欲しかったよ! 穂乃果ちゃんには1番に相談したかった!! だって、穂乃果ちゃんは・・・・・・初めてできた友達だよ!! ずっと傍にいた友達だよ!! そんなの・・・・・・そんなの・・・・・・!! 当たり前だよ!!」

 

涙を流しながら、叫ぶように言い放つことりに、穂乃果は戸惑い、彼女にどう声をかけて良いのか、分からなかった。

 

そうしている間に、ことりは勢いよく立ち上がり、穂乃果の手を振り払って部室から立ち去って行ってしまうのだった。

 

「ことりちゃん!! あっ・・・・・・」

「ずっと、行くかどうか迷っていたみたいです。 いえ、むしろ行きたがってなかったようにも見えました。 ずっと穂乃果を気にしてて・・・・・・穂乃果に相談したらなんて言うかってそればかり・・・・・・。 黙っているつもりはなかったんです」

 

唖然とする穂乃果に、ことりをフォローするためにも、彼女が本当に穂乃果に相談するつもりだったのだと話す海未。

 

「本当にライブが終わったら、すぐ相談するつもりでいたんです。 分かってあげてください」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

その夕方、ことりの部屋では・・・・・・。

 

「話したのね、ちゃんと分かってくれた?」

「・・・・・・っ」

 

理事長がことりと部屋で話しており、理事長はことりの様子から遂に彼女は穂乃果や紅葉等に留学のことを話したのだと察した。

 

ただ、留学のことを話したことりが穂乃果達とどうなったのかも大体察していた理事長はそれ以上ことりに質問するようなことはせず、「早く寝なさい」とだけ言って彼女の部屋から出て行くのだった。

 

そしてことりは、自分のベッドに腰掛け、スマホの画面を見ると穂乃果からメールが来ていることに気付き、彼女はメールを開く。

 

『私、全然気付いてなかった・・・・・・。 私が夢中過ぎてみんなの気持ちとか全然見えなくて、だから・・・・・・ことりちゃん、ごめんね』

 

そう書かれた内容のメールにことりはどうして良いか分からず、穂乃果にどう返事して良いのかも分からず、彼女はずっとそのメールの文章を悲しげな瞳で見つめていることしかできなかった。

 

同時刻、穂むらでは・・・・・・。

 

「謝ったって・・・・・・もう」

 

自分の部屋でことりに謝罪のメールを送り終えた穂乃果は膝を抱えて蹲っていた。

 

(お兄ちゃんに注意される前に、気付くべきだった)

 

自分はラブライブに向けて少しオーバーワーク気味であることに穂乃果自身は紅葉に注意されるまで気付けなかった。

 

紅葉に言われる前に、もっと体調管理が自分でしっかりできれていれば・・・・・・そうすればことりはもっと早く自分に留学のことを打ち明けることができたのではないかと。

 

そんな考えが何度も頭の中でグルグル回り、だけども過去を変えることはできなくて・・・・・・だからこれから先、どうして良いのか、穂乃果は分からず、頭がぐちゃぐちゃになりそうで苦しかった。

 

紅葉にそのことで相談しようかとも思ったが、彼もまたことりがいなくなったことがショックだったのかは分からないが、ことりの話を聞いてからずっと思い詰めた顔をしており、そんな紅葉に穂乃果は遠慮して彼に相談することができなかったのだ。

 

そんな時、穂乃果の部屋の扉から誰かがノックする音が聞こえ、穂乃果が「誰だろう?」と首を傾げつつも「どうぞ~」と声をかけると、扉を開けて部屋に入ってきたのは絵里だったのだ。

 

「絵里ちゃん!?」

「ごめんね、こんな時間に・・・・・・どうしても、穂乃果や紅葉くんの様子が気になって・・・・・・」

 

部屋にある小さなテーブルを間に挟んで互いに向き合う形で座り込む穂乃果と絵里。

 

「あれから、ことりから連絡があったりした?」

 

絵里のその問いかけに、穂乃果は随分前にことりに謝罪のメールを送っただけで、返事はまだないとだけ話し、それに絵里は「そう」とだけ応える。

 

「私はね、できれば・・・・・・もう時間もないし、すぐにでも穂乃果とことりは2人でじっくりと話し合って欲しいって思ってる。 2人が喧嘩したままなんて、嫌だから。 他のみんなも、気持ちは同じ」

「でも、今更話しても・・・・・・ことりちゃんはもう・・・・・・。 何を話せば良いのかも・・・・・・」

 

今更何を話そうと、ことりが留学することは決定事項。

 

本当なら止めたい、海外になんて行って欲しくないと言うのが穂乃果の素直な気持ちだった。

 

だが、ラブライブ出場を目指すのに夢中になりすぎてことりの変化に気づけなかった自分に、彼女に対して何かを言う資格なんてあるのかと考えてしまった。

 

だから穂乃果は、ことりに会ったとしても何を話せば良いのか、分からないでいたのだ。

 

「私ね、凄くしっかりしてていつも冷静に見えるって言われるけど、本当は全然そんなことないの」

 

不意にそんな風に話し出す絵里に、首を傾げる穂乃果。

 

「いつも迷って、困って、泣き出しそうで・・・・・・。 希に実際恥ずかしいところ見られたこともあるのよ。 でも、隠してる。 自分の弱いところを・・・・・・」

 

苦笑しながら話す絵里の言葉に、何も言わず、ただひたすら耳を傾けている穂乃果。

 

「私は穂乃果が羨ましい。 素直に自分が思っている気持ちを、そのまま行動に起こせる姿が凄いなって・・・・・・」

「そんなこと・・・・・・」

「ねえ、穂乃果? 私には穂乃果に何を言ってあげればいいか正直分からない。 私達でさえ、ことりがいなくなってしまうことがショックなんだから、海未や穂乃果、紅葉くんの気持ちを考えると辛くなる・・・・・・でもね」

 

絵里はジッと穂乃果の顔を見つめ、彼女は穂乃果に1番大切なものを教えて貰ったと感謝の言葉を贈る。

 

「私は穂乃果に、1番大切なものを教えて貰ったの。 変わることを恐れないで、突き進む勇気」

 

そう言い放った絵里は、右手を穂乃果に差し伸べる・・・・・・穂乃果がかつて自分に手を差し伸べ、「μ'sに入ってください!!」と言って来た時のように・・・・・・。

 

「あなたの手に救われた」

「っ・・・・・・」

「だから、ただ私が言えることはことりともう1度ちゃんと話し合って欲しい、素直の気持ちで・・・・・・魂と魂をぶつけ合って欲しい」

 

絵里のその言葉を聞き、穂乃果は顔を俯かせながら、ぽつりと呟く。

 

「魂の、ぶつけ合い・・・・・・魂の、激突・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、なんの役にも立てないんだな」

 

外出していた紅葉はギャラクトロンの見える場所に訪れており、紅葉は未だに動かないギャラクトロンの姿をジッと見つめる。

 

「お前があの場にいたら、穂乃果やことりの喧嘩を止められたのかな」

 

まだ敵か味方かもハッキリ分からないのに、ギャラクトロンを頼りにするようなことを言うのもどうかと思うが・・・・・・それでも、どうしても考えてしまう。

 

あの場にギャラクトロンがいればと・・・・・・せめてあの音色が届く範囲にいればと。

 

ことりの留学の話を聞いて、彼女が穂乃果に留学の話を打ち明けられなかったのは自分がもっと早く穂乃果を止められなかったせい、マガオロチの復活を止められなかったせいだと気付いたことで、動揺してしまい、部室を去って行くことりを止めることができなかった。

 

それだけじゃない、自分がことりを追いかけるなり、穂乃果に追いかけさせるなりすれば良かったのに・・・・・・自分が犯した過ちに気付いて、そのことで動揺したせいで、それが出来なかった。

 

だからもし、周囲の人間や動物の喧嘩を止めることができるあの音色を発せられるギャラクトロンが近くにいれば、穂乃果やことりがこんなことにならなかったのではないかと紅葉は考えてしまうのだった。

 

「俺は・・・・・・どうすれば良い・・・・・・」




紅葉
「じゃあ、サブタイを探せ! のコーナー行きましょうか!」

にこ
「だから本編との落差よ!」

穂乃果
「そこを気にしたらダメだよ、にこちゃん!!」

紅葉
「今回は、ウルトラマンガイア第34話『魂の激突』だ!」

穂乃果
「私が言った台詞だね~」


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第15話 『心曇らせる闇』

その翌日、穂乃果は絵里に言われたように、ことりともう1度しっかり話し合うべきだと思い、あのファーストライブを行った時の講堂に紅葉、海未、ことりを呼び出した。

 

穂乃果が最初にそこで数分間待っていると、講堂の扉が開いて紅葉と海未、おずおずとした様子でことりが入って来たのだ。

 

「ごめんね、急に呼び出したりして」

 

海未や紅葉を呼び出したのは、2人がいればことりと冷静に話し合えるだろうと思ったから。

 

「ことりちゃんをここに呼んだのは、ちゃんと話し合いをするため。 海未ちゃんとお兄ちゃんを呼んだのは、2人がいればきっと冷静にことりちゃんと話し合えると思ったから」

 

穂乃果はことりや海未、紅葉をここに呼んだ理由を説明し、そんな穂乃果にことりは一言謝ろうと口を開きかけるが、それに気付いた穂乃果が待ったをかけた。

 

「先ずは私から、喋らせてくれないかな、ことりちゃん?」

「・・・・・・っ、うん」

「ありがとう」

 

一瞬戸惑ったことりだが、彼女は穂乃果の言葉に頷き、そのことにお礼を言うと穂乃果はここでファーストライブをやった時のことを話し始める。

 

「私ね、ここでファーストライブやってことりちゃんと海未ちゃんと歌った時に思った。 もっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって!」

 

それを聞き、辛そうな顔を見せ、俯きそうになることり。

 

だが、そんな彼女に不意に「ことり」と声をかける紅葉。

 

「顔を俯かせるな。 穂乃果の目を見ろ」

 

穂乃果やことり、2人の為に何ができるのか・・・・・・それは分からないが少しでも、何か2人にとって助けになるのならばと穂乃果から目を反らすなと言い放つ紅葉。

 

それを受け、ことりは戸惑いつつも「うん」と頷き、ジッと穂乃果の顔を見つめる。

 

「学校の為とか、ラブライブのためとかじゃなく、私、好きなの! 歌うことが、それだけ譲れない!!」

 

それは昨日、絵里と話し合い、一晩じっくり考えて至った穂乃果のスクールアイドルに対する気持ち・・・・・・それをことり達に聞かせ、穂乃果は「だから、ごめんなさい!!」と彼女達に頭を下げる。

 

それに対してどうして穂乃果が謝るのか、分からず、ことりは困惑する。

 

「これからも、きっとみんなに迷惑をかけるかもしれない。 夢中になって誰かが悩んでいるのに気付かなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う、だって私、不器用だから・・・・・・! でも、それでも私・・・・・・スクールアイドルやりたいの!! ことりちゃんと一緒にやりたいの!!」

「っ・・・・・・」

「いつか、別の夢に向かう時が来るとしても・・・・・・!! 我が儘なのは分かってるけど、それでも、私・・・・・・!!」

 

そんな風に真剣に話す穂乃果を見て、海未が突然笑い出したのだ。

 

「ふふ、あはは・・・・・・!」

「ちょっ、海未ちゃんなんでここで笑うの!? 私、真剣な話してるのに!!」

「ふふ、ごめんなさい。 でもね、ハッキリ言いますが・・・・・・穂乃果には昔からずっと迷惑かけられっぱなしですよ?」

 

笑いながら、そう穂乃果に言うと、それを言われた穂乃果は「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「ことりとよく一緒に話していました。 穂乃果と一緒にいると、いつも大変なことになると。 紅葉は普通に楽しんでそうでしたけど」

「だってそうだろ? 穂乃果といると、退屈しない。 お前等より長くいる俺が言うんだから間違いない」

 

「それに・・・・・・」と紅葉がさらに何か言おうとしたのだが、そこで言葉を区切り、黙り込む。

 

(穂乃果と一緒にいると・・・・・・傷ついた心を癒やしてくれる感じがしてな・・・・・・)

 

その言葉はただ、心の中だけに留め・・・・・・そんな紅葉を不審に思いながらも海未はさらに穂乃果に言いたいことを言い放つ。

 

「どんなに止めても、夢中になったら何にも聞こえてなくて・・・・・・。 大体、スクールアイドルだってそうです。 私は本気で嫌だったんですよ?」

「海未ちゃん・・・・・・」

 

海未曰く、スクールアイドルもどうにかして辞めようと思っていたそうで・・・・・・穂乃果を恨んだりしたこともあったと語る。

 

「全然気付いてなかったでしょうけど」

 

そのことに「ごめん」と謝る穂乃果。

 

「・・・・・・ですが、穂乃果は連れて行ってくれるんです。 私やことりでは勇気がなくて行けないような凄いところに・・・・・・」

「海未ちゃん・・・・・・」

「穂乃果に振り回されるのは、もう慣れっこなんです! だからその代わりに、連れて行ってください! 私達の知らない世界へ! それが穂乃果の、凄いところなんです! 私もことりも、μ'sのみんなもそう思っています!!」

 

海未は穂乃果にそう言い終えると、彼女は舞台に設置してある小さな階段を上って、穂乃果の元まで行くと、穂乃果とことりを交互に見つめ、海未は穂乃果の背中を小さく押す。

 

「穂乃果ちゃん、海未ちゃん・・・・・・」

「さあ、もう1度言ってください。 穂乃果? 私と一緒です、ことりもきっと引っ張って行って欲しいんです。 我が儘言って貰いたいんです・・・・・・」

 

海未は小声で穂乃果にそう伝えると、「我が儘!!?」と驚きの声をあげる。

 

「そうですよ? 有名なデザイナーに見込まれたのに『残れ』なんて・・・・・・でも、そんな我が儘を言えるのは・・・・・・!」

 

そこまで言い終えて、海未の言いたいことが分かった穂乃果はことりの顔を見つめ、すぅーっと息を大きく吸って吐くと、舞台から降りて彼女の元まで歩いて行く。

 

すると、彼女はことりの手を握りしめ、自分の素直な気持ちをことりに伝えた。

 

「っ、穂乃果ちゃん・・・・・・」

「ことりちゃん!! ごめん、私、スクールアイドルやりたいの! ことりちゃんと一緒にやりたいの!! もう1度言うよ。 いつか、別の夢に向かう時が来るとしても・・・・・・」

 

穂乃果はことりを強く抱きしめ、最後の一言を口にする。

 

「行かないで!!」

「っ・・・・・・!!」

 

それを受けて、ことりはポロポロと涙を流し、それを見て紅葉は理解した。

 

ことりは、穂乃果に「行かないで」と言って欲しかったのだと・・・・・・。

 

「ううん、私の方こそ、ごめん。 私、自分の気持ち・・・・・・分かってたのに・・・・・・!!」

 

そんな2人の様子を見て、紅葉と海未は互いに顔を見合わせ、ほっとしたように息を吐くのだった。

 

(でも、俺ができたことなんて・・・・・・本当に、ちっぽけなもんだったな。 でも、2人が仲直りできて・・・・・・本当に良かった)

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、穂乃果の説得を受けてことりが留学することをやめ、日本に滞在することを決めた。

 

もう色々と手続きが済んでいる段階で、留学を取り消すことが無茶なのは分かっているが・・・・・・それでも、紅葉、穂乃果、海未、ことりは4人で理事長に頭を下げて頼み、理事長も「仕方がないわね」と呆れ声だったが・・・・・・。

 

その表情はどこか、明るく、留学の取り消すの手続きをしてくれるということで話が通った。

 

それから部室に集まったμ'sのみんなにもことりが日本に残ることを説明し、ことりが残ってくれることにみんなは喜んでくれたのだった。

 

「ふぅ~、一時はどうなるかと思ったわ」

 

希もそのことにほっと胸を撫で下ろし、安心したような様子を見せる。

 

「喧嘩した翌日に仲直りとかちょっと展開早すぎる気もするにゃー」

「そこは多分、作者の技量の問題」

 

凛とにこがそんな会話をしている中、「ぐぎゅるるる~!!」という誰かのお腹が鳴ったかのような音が聞こえ、一同は音のした方に視線を向けると、そこには穂乃果と紅葉の姿が。

 

「なんか・・・・・・ことりちゃんが日本に留まってくれるって分かって・・・・・・」

「安心したらお腹空いたな」

 

そんな穂乃果と紅葉の姿ににこ達は呆れた視線を送る。

 

「なんであなた達、血の繋がりがないのにそんないつも息ピッタリなんですか・・・・・・」

 

ボソッと呟いた海未の一言に、にこは「えっ? なんて?」と聞き返す。

 

「んっ? ですから、血の繋がりがないのに紅葉と穂乃果は何時もピッタリだと・・・・・・」

「えぇっ!!? 穂乃果と紅葉って本当の兄妹じゃなかったの!!?」

「あれ? 言ってませんでした?」

 

やたらよく食べるし、2人ともパン類が好きだし、髪の色も同じだし、海未の言うように息ピッタリなのに血縁関係がないことににこ達は驚くが・・・・・・冷静になって考えれば、色々とおかしい部分はあったことににこは気付いた。

 

紅葉はウルトラマンなのだから、血縁関係があったら穂乃果やその妹の雪穂にも何か超人的な力があってもおかしくないのではということ。

 

そもそも2人は同学年なのに、穂乃果が紅葉のことを「お兄ちゃん」と呼んでいること。

 

誕生日がほぼ一ヶ月違いであることも違和感があった。

 

「成程・・・・・・よくよく考えてみれば、色々おかしい部分はあったわ」

「それよりもお腹空いたし、ことりちゃんが日本に残ってくれることを記念して・・・・・・折角だし、みんなでどこか食べに行こうよ!!」

 

そんな穂乃果の提案に、凛が「賛成~!!」と手を挙げ、みんなも特に用事はないようなので帰りにどこかのファミレスによって食事をすることに。

 

穂乃果とことりのことが解決したので、紅葉はギャラクトロンのことを調べることに専念しようと思い、自分は断ることに。

 

「すまん、俺はちょっと用事があるから・・・・・・みんなで行って来てくれ」

「えぇー!!? お兄ちゃんも一緒に行こうよ~! お兄ちゃんもお腹空いてるんでしょ!?」

 

ファミレスに行かないと聞いて、穂乃果は頬をぷくーっと膨らませて紅葉の腕を掴み、ぐいぐい引っ張る。

 

「ごめんな、どうしてもちょっと調べたいことがあって・・・・・・。 どこかのコンビニで食べるものも買うし、兎に角、俺のことは気にしないでみんなと一緒に楽しんで来い」

 

紅葉はそう言って申し訳無さそうにしつつも穂乃果の腕を離れさせ、紅葉はそのまま部室から出て行くのだった。

 

「もう、お兄ちゃんのバカー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、未だに軍隊に拘束され、その場に片膝を突いて佇むギャラクトロンはというと・・・・・・。

 

突如、ギャラクトロンの目が赤く光り・・・・・・自身を拘束していたロープを立ち上がることで強引に引き千切り、動き出したのだ。

 

「ろ、ロボットが動き出したぞ!!?」

 

ギャラクトロンを見張っていた軍人の1人が驚きの声をあげ、ギャラクトロンは真っ直ぐある方向に向かって進み出す。

 

「遂に動き出しやがったか・・・・・・」

 

また紅葉もギャラクトロンが動き始めたことに気付くが、ギャラクトロンはただ歩いてるだけで・・・・・・ビルも壊していないし特に暴れていないことから紅葉はまだ様子見をすることに。

 

「どこに向かってるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャラクトロンが動き出した頃、穂乃果達は学校を出てどこかのファミレスに向かっている最中であり、そんな彼女達の目の前に、ギャラクトロンが建物の角から現れる。

 

「ぴゃああ!!?」

「かよちん!?」

 

それに驚いて花陽は尻餅を突き、彼女の元に駆け寄る凛。

 

「ギャラクトロン・・・・・・!!? 動き出したの!?」

「あれが噂の・・・・・・」

 

穂乃果やにこ、凛からあらかじめギャラクトロンの話を聞いていた海未は興味深そうにギャラクトロンを見つめていると・・・・・・。

 

突然、ギャラクトロンの胸部の赤いコア部分から電線コードのようなものが複数伸びて来てそれが穂乃果の身体を拘束。

 

「きゃあ!!? なに!!?」

「穂乃果!!?」

「穂乃果ちゃん!!?」

 

海未とことりが慌てて穂乃果を助けようとするが、それよりも早くギャラクトロンは穂乃果を自分の方に引き寄せ、コア部分に彼女を吸収して内部に取り込んだのだ。

 

「やあああ!!? 助けて・・・・・・!!」

 

内部に取り込まれた穂乃果はさらに多くのコードに手足などを拘束されて動きを完全に封じられ、耳の穴にもコードが差し込まれると、コードは彼女の脳と接続。

 

「やだああああ!!? 誰か助けて、お兄ちゃん助けてえええええ!!!!?」

 

穂乃果は得体の知れない恐怖心から泣き出してしまい、紅葉に助けを求めるが・・・・・・彼女は脳をギャラクトロンに乗っ取られて泣き止むと、ギャラクトロンは穂乃果の声を借りて喋り出したのだ。

 

『この世界の解析は完了した。 各地で起きている紛争、差別、残虐さを理解した。 この世界の為に、争い全てを停止させる』

「なに・・・・・・なに言ってるの・・・・・・穂乃果ちゃん?」

「違う、きっとギャラクトロンに精神を支配されてるんです・・・・・・!」

 

穂乃果の声を聞いて、激しく動揺する凛だったが、すぐに海未はギャラクトロンが穂乃果を乗っ取って声を発しているのだと気づく。

 

『別の世界でもそうして来たように、全ての争いを止める。 即ち、この世界をリセットする。 それが我が使命、我が正義』

 

そう言い終えると、ギャラクトロンは遠く離れた山奥や複数のビルに向かって手始めに赤い閃光光線を両目から放ち、破壊して吹き飛ばす。

 

どうやらギャラクトロンがここ数日動かなかったのは地球の文明の分析をしていたからであり、解析した結果ギャラクトロンは地球人は紛争や差別などの問題が絶えず、争いの火種を生んでしまう危険な存在であると一方的に断定してしまったのだ。

 

山を吹き飛ばした後、ギャラクトロンは視線を海未達に移し、それにビクリと震える一同。

 

「たかが3日で、答えを急ぎすぎてんじゃねえよ!!」

 

だが、そこでギャラクトロンが暴れ出したことに気付いた紅葉がオーブリングを取り出し、カードホルダーから素早く1枚のカードを取り出す。

 

「ウルトラマンさん!!」

『ウルトラマン!』

 

最初に「初代ウルトラマン」のカードをオーブリングにリードする紅葉。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ!』

 

続けて、「ウルトラマンティガ」のカードをオーブリングにリードし、それを紅葉は掲げる。

 

「光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!!』

 

すると、ウルトラマンとティガの姿が紅葉の重なり合って紅葉は2人のウルトラマンの力を融合させた「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

『スペリオンシールド!!』

 

ギャラクトロンは海未達に向かって光線を発射するが、間一髪、間に入って来たオーブの張るバリア、「スペリオンシールド」によってなんとか攻撃が防ぐことができ、ギャラクトロンの攻撃が一旦終わるとすぐさまオーブは「ティガ・パワータイプ」の力を一時的に発揮し、ギャラクトロンに掴みかかって海未達から引き離す。

 

すると突然、ギャラクトロンの胸部のコア部分から赤い光がオーブに放たれ、オーブは身構えるが・・・・・・。

 

どうやらそれは攻撃の類などではなく、ギャラクトロンはオーブをスキャンしただけであり、ギャラクトロンはオーブと戦う意味がないと判断したのか、別のビルに向かって光線を撃ち込もうとする。

 

それを阻止すべく、オーブはギャラクトロンの頭を掴みあげて光線を上空に撃たせることで空振りに終わらせる。

 

「オーブ!!!!」

 

そこで海未に名前を呼ばれ、振り返るオーブ。

 

「友達が、穂乃果がそのロボットの中にいるんです!!」

「お願い、助けてください!!」

『なに・・・・・・!?』

 

海未とことりから穂乃果がギャラクトロンの中に囚われていることを聞いて動揺するオーブ。

 

しかし、すぐに海未とことりの頼みに頷いて応えると、オーブは再びギャラクトロンに向かって行き、ギャラクトロンの前に立ち塞がる。

 

オーブは透視能力を使ってギャラクトロンのどこに穂乃果がいるかを見つけると、オーブは穂乃果が赤いコア部分にいることを見抜き、コア部分を掴みあげてギャラクトロンから引き剥がそうとする。

 

『穂乃果!!』

 

しかし、後頭部から伸びる大きな鉤爪の付いた「ギャラクトロンシャフト」を身体を掴まれたオーブは大きく放り投げられてしまい、ビルに激突して倒れ込む。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

するとギャラクトロンは又もやオーブを無視して人のまだいるビルに視線を向け、目から光線を放とうとする。

 

『まずい!!』

『スカイダッシュマックス!!』

 

そのことに気付いたオーブは即座に「スカイダッシュマックス」に変わると立ち上がって素早い動きでビルの前に立ち、ビルを庇ったことでギャラクトロンの放った光線の直撃を受けてしまう。

 

『グアアアア!!!?』

 

光線を受け、片膝を突くオーブを邪魔だとばかりに右腕で殴り飛ばして振り払おうとするが、それをオーブは掴んで受け止め、スペシウムゼペリオンに戻ってなんとかギャラクトロンを押し戻す。

 

しかし、ギャラクトロンは膝蹴りをオーブに喰らわせ、怯ませたところでさらに左腕を振り上げてオーブを殴り飛ばしてしまう。

 

『ウアアアア!!!!?』

 

さらにギャラクトロンは素早くオーブに詰め寄ると左腕の回転式の大剣「ギャラクトロンブレード」を展開し、オーブを横一閃に斬りつけて来たのだ。

 

『グアアアア!!!!?』

『私は、私に与えられた唯一のコマンドを実行中だ。 君はこの星とは無関係な存在。 邪魔はするな』

『するに決まってんだろ・・・・・・!! それに、お前が取り込んでるその娘は、俺の妹だ!! 邪魔しない理由がどこにある!!』

 

そう言いながら、オーブは「ティガ・パワータイプ」と「ダイナ・ストロングタイプ」の力を融合させた「パワーストロング」に姿を変え、オーブはギャラクトロンの顔に向かって拳を振るうが、ギャラクトロンは魔法陣に似たバリアを張ってオーブの拳を防ぐ。

 

『理解不能。 この少女と君には血縁関係はない。 そもそも生まれた星も違う。 よってこの少女は君とは無関係な存在、君がこの少女を助ける義理はない』

『それは俺が決めることだ!! うおおおおおお!!!!』

 

しかし、オーブはバリアに無理矢理指を食い込みさせ、強引にバリアを引き千切って破壊すると、ギャラクトロンの頭を押さえつけ、再びギャラクトロンのコア部分を掴んで穂乃果を取り返そうとする。

 

だが、そんなオーブの顔にギャラクトロンは目から放つ閃光光線を浴びせ、顔に光線の直撃を受けたオーブは大きく怯んでしまう。

 

『ウアアッ!!?』

 

さらにギャラクトロンブレードと左腕の爪を連続で振るって顔を押さえて悶えるオーブの身体を何度も斬りつけ、身体中から火花を散らすオーブ。

 

『ぐうう・・・・・・野郎!!』

 

なんとか痛みを堪えながら、オーブは「ウルトラマンジャック」と「ウルトラマンゼロ」の力を融合させた「ハリケーンスラッシュ」へと姿を変え、三又の槍、「オーブスラッガーランス」を出現させてギャラクトロンの両足目がけてスラッガーランスを振るうが・・・・・・。

 

ギャラクトロンはそれも魔法陣のようなバリアを展開して防ぎ、左腕を振るってオーブを殴り飛ばす。

 

『グウウ!!?』

 

殴り飛ばされたオーブはなんとか空中で体勢を立て直して地面に着地し、スラッガーランスを構えて再びギャラクロンに向かって駈け出す。

 

『トライデントスラッシュ!!』

 

スラッガーランスのレバーを3回操作し、目にも止まらぬ速さで相手を連続で切り裂く「トライデントスラッシュ」をオーブはギャラクトロンに繰り出すのだが、ギャラクトロンはそれを左腕の爪で受け止め、スラッガーランスを弾き飛ばしてしまう。

 

『なに・・・・・・!!?』

 

さらにそこからギャラクトロンはギャラクトロンシャフトでオーブの首を掴みあげ、持ち上げると、ギャラクトロンはギャラクトロンブレードでオーブの腹部を突き刺したのだ。

 

『ぐああああ・・・・・・!!!!!』

「オーブ・・・・・・!!」

 

ギャラクトロンとオーブの戦いの様子が見える高い場所に移動し、オーブとギャラクトロンを見守っていた海未達。

 

しかし、オーブにギャラクトロンブレードを突き立てられその光景に、海未はオーブの名を叫び、花陽やことりは口を押さえて顔を青ざめさせる。

 

ギャラクトロンはブレードをオーブから引き抜くと、目から閃光光線を喰らわせてオーブを吹き飛ばし、倒れ込んだオーブは大きなダメージを受けたこともあり、その場から姿を消してしまうのだった。

 

「がはっ・・・・・・!! ほの、か・・・・・・」

 

変身が強制解除された紅葉は血反吐を吐きながらその場に倒れ込み、ギャラクトロンを見上げて・・・・・・必死に手を伸ばす。

 

「そんなオーブが・・・・・・」

「ギャラクトロン・・・・・・!! もうやめてよ!! こんなこと・・・・・・!!」

 

凛は悲痛な声でギャラクトロンにもう暴れるのはやめてくれと懇願するが、それを素直にギャラクトロンが聞く筈もなく・・・・・・。

 

ただギャラクトロンは海未達の方へと振り返り、声をかける。

 

『人間の文明から、争いが無くならないのはこの星の残虐な自然観を模倣しているからだ。 この宇宙には、最初から有り余るほどのエネルギーが満ちている。 別の生物からエネルギーを奪わなくても済むように、全てがデザインされている。 だが、この星の生態系は自分の命を長らえさせる為に他の命を奪いこの星そのものを傷つけ、疲弊させ、天然資源を掘り尽くすような、低レベルの文明を良しとしている』

「何よそれ・・・・・・何が低レベルよ!!」

 

ギャラクトロンの言い草に苛立ったにこが噛みつくようにそう怒鳴り挙げるが、ギャラクトロンは意に返さない。

 

『耳が痛いか。 だから君たちは耳を塞ぐ。 都合が悪いからと無視する。 だが、この星は君たちの都合で存在しているのではない。 よってこの星の文明と、食物連鎖という間違った進化を選んだ生態系を、全てを、リセットする』

 

それは人間だけではなく、その星に済む人間以外の生物や自然、それすらも消滅させるということであり、海未達はそんなギャラクトロンの言い草に不快な気持ちにならずにはいられなかった。

 

「勝手過ぎます!! あなただって、穂乃果のことを利用してるじゃないですか!! 平和が望なら、他の星の女の子を拉致らないでください!!」

「それに、あなたはこの星の生物は命を奪い合うって言うけどな・・・・・・。 例えば、シマウマが増えれば草原が消える、だからライオンがシマウマの数を減らす、そのシマウマが大地に返り、草が生え、その草を食べてシマウマが育つんや。 だから、決して争ってる訳やないんやで!! ただ奪い合ってるだけやないんや!!」

 

海未と希の言葉に、ギャラクトロンは何か思うところがあったのかギャラクロンブレードを仕舞い、黙り込んだまま2人の話を聞いていた。

 

「この星は、バラバラに生きる道じゃなく、協力しあって1つの大きな生きる道を選んだんや。 そんな風に、生き物はお互いを支えあってるんや!!!!」

『・・・・・・』

 

ギャラクトロンは希の話を最後まで聞き、その場から一歩も動かなくなってしまった。

 

希や海未の言い分に一理あると思ったのか、はたまた正論で2人に言い返せなかっただけなのか・・・・・・ただギャラクトロンは黙ったまま何か考え込んでいるようだった。

 

「考え込んでないで、穂乃果ちゃんを返してよ!!」

 

そんなギャラクトロンに、泣き出しながら、ことりが悲痛な声でギャラクトロンに穂乃果を返してくれと頼むが、ギャラクトロンは沈黙を続ける。

 

折角仲直りできたのに、穂乃果の身に何かあれば・・・・・・そんな嫌な予感がことりの中で過ぎり、彼女はギャラクトロンに何度も穂乃果を返してくれと叫ぶ。

 

そこに丁度、軍隊の戦闘機が幾つか到着し、動きを止めている今がチャンスだと、戦闘機は次々にミサイルなどをギャラクトロンに撃ち込んで行くのだが・・・・・・。

 

それによってギャラクロトンは活動再開。

 

自身に攻撃してくる戦闘機に向かって閃光光線を放って戦闘機の幾つかを破壊。

 

さらにギャラクトロンはギャラクトロンシャフトで戦闘機の一機を掴むとそのまま地面に放り投げて撃墜させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、紅葉はフラつきながらもなんとか立ち上がり、カードホルダーからベリアルのカードを取り出し、それを見つめる。

 

『強すぎる力は、災いをもたらすこともあります』

 

そんな玉響姫の言葉を思い出し、紅葉はベリアルのカードを使うべきかどうか迷っていた。

 

「確かに俺には、アンタの力を制御できない」

 

紅葉がそうこうと悩んでいる間に、ギャラクトロンが再び活動を再開させ、空中へと浮かび上がると魔法陣を複数纏わせたギャラクトロンシャフトを天に伸ばし、上空に浮かび上がった後エネルギーを充填して胸部から発射する破壊光線「ギャラクトロンスパーク」を放つ体勢へと入る。

 

ギャラクトロンスパーク・・・・・・これが地上に撃ち込まれてしまえば街1つなど簡単に消滅させられてしまう、それほどまでに超強力なギャラクトロンの必殺武器・・・・・・。

 

見るからにそのとんでもない技を使おうとしていることを察した紅葉は、もうやるしかないとオーブリングにベリアルのカードをリードさせる。

 

「クソ、やるしかねえ!! ベリアルさん!!」

『ウルトラマンベリアル!』

 

続けて紅葉は「ゾフィー」のカードを取り出し、オーブリングにリードさせる。

 

「ゾフィーさん!!」

『ゾフィー!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「闇と光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!!』

 

そしてゾフィーとベリアルの姿が重なり合い、紅葉は2人の力を融合させた姿・・・・・・「ウルトラマンオーブ サンダーブレスター」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!』

『フゥウウン!!』

「うわっ!!?」

 

その際、戦闘機の一機が現れたオーブに「邪魔だ」とばかりに腕で弾き飛ばされ、戦闘機は地上へと墜落。

 

「わあああああ!!!!?」

「なっ・・・・・・!!?」

 

その光景を見て、唖然とする海未達。

 

しかし、オーブは戦闘機のことなど全く意に返さず、そして、ギャラクトロンは街に向かって「ギャラクトロンスパーク」を発射するのだが・・・・・・。

 

『ゥグルアアアアアア!!!!!』

 

地上へと降り立ったオーブ・サンダーブレスターが両腕を十時に組んで放つ必殺光線「ゼットシウム光線」を発射し、ギャラクトロンスパークと激しくぶつかり合い、2体の間に強い衝撃が起きる。

 

『ウオオオオオオオオオ!!!!!』

 

しかし、すぐにオーブのゼットシウム光線がギャラクトロンスパークを押し返し、ギャラクトロンはギリギリのところで自身の光線を打ち止めて躱すのだが、その際、右肩にオーブの光線が直撃し、右肩を抉れ・・・・・・それによってギャラクトロンはバランスを崩して空中から落下してしまう。

 

『ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

獣のような唸り声をあげて駆け出し、立ち上がったギャラクトロンはバリアを展開し、オーブの放った拳をガードするのだが・・・・・・オーブは何度も拳を叩き込んでごり押しでバリアを破壊し、ギャラクトロンの頭を掴むと何度もギャラクトロンの腹部に膝蹴りを連続して叩きこむ。

 

ギャラクトロンはなんとかオーブを振り払い、後ろへと後退してギャラクトロンブレードを展開すると、オーブに向かって駈け出し、ブレードを振るってオーブを斬りつけようとするのだが・・・・・・。

 

それをオーブは両手で掴みあげ、ギャラクトロンブレードを無理矢理引き千切ったのだ。

 

『ウハハハハ!!!!』

 

引き千切ったギャラクトロンブレードを手に持ったオーブはそれでギャラクトロンを斬りつけ、ブレードを投げ捨てるとそのままドロップキックをギャラクトロンに浴びせ、倒れ込ませる。

 

『フハハハハ!!!!』

 

不気味な笑い声をあげながらオーブは倒れ込んだギャラクトロンを何度も踏みつけ、ギャラクトロンは右腕をロケットパンチの如く飛ばしてオーブを殴り飛ばしてなんとか押し退かし、飛ばした右腕から閃光光線を遠距離から放ってオーブを攻撃する。

 

それをオーブは光と闇の力を集中させた両腕を交差させて防御する「サンダークロスガード」で光線を防ぎ、そのままオーブは突進してギャラクトロンの右腕を掴みあげると地面に叩きつけて拳を何度も何度も振り下ろし、ギャラクトロンの右腕を破壊。

 

『ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

雄叫びをあげながらオーブはギャラクトロンを睨み付けると、跳躍して一気にギャラクトロンの頭上を飛び越え、背後に回り込むとオーブはギャラクトロンシャフトを掴みあげ、ギャラクトロンの背中を足で押さえつけて「ぶちぶち」という音を立てながらシャフトを引っこ抜く。

 

それによって、穂乃果の脳に接続してあったコードが耳から引っこ抜かれ、未だに拘束されたままではあるが、そこで彼女は正気を取り戻し、「えっ!?」と一瞬何が起こっているのか分からず、困惑する。

 

「あ、あれ、私・・・・・・確か・・・・・・。 ここ、どこ!?」

 

しかし、オーブは容赦なくギャラクトロンの後頭部を掴みあげるとそのまま地面に叩き伏せ、蹴り上げて仰向けに倒れ込ませる。

 

「ひゃああ!!? なに!? なにが起こってるの!?」

 

ギャラクトロンの内部で激しく動揺する穂乃果だったが、オーブはまるで「そんなこと知らん」とばかりにギャラクトロンを踏みつけ、穂乃果のいる赤いコア部分などを容赦なく何度も、何度も、何度も、何度も殴りまくる。

 

『フウウゥゥゥ!! フウウゥゥゥ!! アハハハハ!!!! アーッハッハッハッハ!!!!』

「きゃああああ!!!!?」

「や、やめて・・・・・・」

 

その光景を、目を丸くして見つめながら、海未は小さく呟くが・・・・・・オーブの耳には届かず、オーブはギャラクトロンの腹部に右腕を突っ込み、ギャラクトロンの内部にあったコードの幾つかを引っこ抜く。

 

さらにオーブはギャラクトロンの顔を激しく踏みつけた後、先ほど引き千切ったギャラクトロンブレードを拾いあげ、それをギャラクトロンに向かって何度も叩きつけて殴る。

 

「やめてよ、オーブ・・・・・・穂乃果ちゃんが死んじゃうよぉ・・・・・・」

 

それに花陽も泣き出しながら、オーブにもうやめてくれと言うのだが・・・・・・カラータイマーが既に鳴っているにも関わらず、オーブはギャラクトロンを攻撃し、一切攻撃の手を緩めないでブレードをギャラクトロンに突き刺そうとする。

 

「やあああああ!!!!? 助けて、お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん助けてえええええええ!!!!?」

「やめろ・・・・・・やめて、やめなさい!!!!! オーブ!!!! 穂乃果が死んじゃうって言ってんでしょ!!?」

 

穂乃果の叫びか、それともにこの叫びか、どちらにせよ、それによってハッと我に返ったかのようにそこでオーブはようやく動きを止める。

 

その一瞬の隙を見逃さず、上半身を起こしたギャラクトロンは目から閃光光線を放ち、オーブはブレードで防ぐものの吹き飛ばされてしまう。

 

『グアアアア!!?』

 

ボロボロの状態ながらも、起き上がるギャラクトロン。

 

するとギャラクトロンは両腕を広げて・・・・・・あの優しい音色を響かせてオーブに聞かせる。

 

『フゥゥゥゥ・・・・・・!! フゥゥゥゥ・・・・・・!! ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

だが、オーブは構わず怒り狂ったかのような雄叫びをあげて両腕に光と闇の力を集中させた後、腕を十字に組んで放つ必殺光線「ゼットシウム光線」をギャラクトロンに容赦なく撃ち込み、ギャラクトロンは身体中から火花を散らして爆発四散するのだった。

 

内部に囚われていた、穂乃果ごと・・・・・・。

 

「きゃああああああああああ!!!!!?」

 

ギャラクトロンが爆発したことで、穂乃果は外に放り出されることになったのだが彼女は背中を壁に強く打ち付けて気を失い・・・・・・。

 

『アッ・・・・・・ウゥ・・・・・・』

 

飛び散ったギャラクトロンの破片を見つめた後、自分の両腕を見つめ、その姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ギャラクトロンが破壊され、その衝撃で吹き飛ばされた穂乃果をすぐに海未達は発見し、彼女は急いで病院に運ばれた。

 

また、変身を解いた紅葉は肩で息をして片膝を突いており、紅葉の腰にあったカードホルダーから零れるようにベリアルのカードが地面に落ちた。

 

「ぐぅ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

紅葉はそんなベリアルのカードを睨み付け、カードのすぐ隣の地面を殴りつける。

 

「穂乃果・・・・・・!」

 

だが、紅葉はすぐに穂乃果の安否が気になり、彼女を探して素早い動きでその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、病院では・・・・・・。

 

穂乃果は手術を終え、医師からの話では大怪我を負ったとは言え幸い、奇跡的に穂乃果は助かったそうだった。

 

だが、未だに意識不明の重体であることには変わりなく、あとは本人次第の頑張りに賭けるしかないとのことだった。

 

またオーブに弾き飛ばされた戦闘機のパイロットも同じ病院に担ぎ込まれたらしいが、気を失っていただけで無事に脱出に成功しており、軽傷だったとのこと。

 

そして、病室では海未やことり、穂乃果の両親に雪穂が訪れており、流石に病室に全員入るには狭すぎるということでそれ以外のメンバーは外で待機していた。

 

そこへ丁度、慌てた様子の紅葉が駆けつけ、彼の存在ににこが真っ先に気付く。

 

「アンタ・・・・・・」

 

紅葉もにこ達の存在に気付いたが、彼は穂乃果のことが気になって仕方が無く、真っ直ぐ病室に入ろうとするのだが・・・・・・にこに腕を掴まれて引き止められる。

 

「穂乃果に会う前に、アンタと話したいことあるんだけど? ちょっと来なさい」

「にこちゃん? どうしたの?」

 

真姫はなぜにこが紅葉を呼び止めたのか分からず、紅葉はにこの腕を振り払い、構わず病室に入ろうとする。

 

「後にしてください、にこさん」

 

しかし、すぐににこは紅葉の肩を力強く掴みあげて引き止める。

 

「アンタに、穂乃果と会う資格があると思ってんの?」

「・・・・・・っ」

「にこちゃん、そんな言い方・・・・・・」

 

花陽はあの場に紅葉がいなかったから、にこは紅葉を責めているのだと思ったが、当然にこは紅葉があそこにいなかったから怒っているのではない。

 

むしろ逆・・・・・・1番穂乃果を助けられる場所にいたのに、穂乃果を紅葉が傷つけたことが許せなかったのだ。

 

にこはここでは真姫達がいるからと紅葉の腕を引っ張って彼女達から離れた場所へと移動することにし、紅葉もそれを甘んじて受け入れ、にこについて行くことに。

 

一瞬、花陽や凛もついて行こうかとしたが、にこは「どうしてもこいつと2人だけで話したいことがあるから」と凄みを効かせて2人がついて来るのを拒否し、人気のない場所でにこは紅葉を壁に叩きつける。

 

「アンタ・・・・・・自分が何やったか分かってんの?」

「・・・・・・」

「なんで・・・・・・穂乃果がいること分かってたんでしょ!!? それなのに、どうして・・・・・・!!」

 

あの時、海未が確かにギャラクトロンの内部に穂乃果が囚われていることを伝え、頷いたことでオーブにそれは伝わっている筈だった。

 

それなのに、穂乃果がいると知ってて尚、オーブは問答無用でギャラクトロンを攻撃し、光線でギャラクトロンを粉微塵に吹き飛ばした。

 

そのことににこは怒りが沸き上がり、紅葉の胸倉を掴みあげる。

 

「なんとか、なんとか言ったらどうなのよ!!?」

 

未だに黙り続いている紅葉に、にこはさらに苛立ち、ついついここが病院であることを忘れて怒鳴り声をあげてしまう。

 

「ギャラクトロンを止める為には、あの力しかなかったんです。 でも、使うべきじゃ、なかった・・・・・・あの力を使わないで、なんとかする方法を見つけるべきだったんだ・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 

紅葉は右手で頭を抑え、悲しげな顔を浮かべ・・・・・・その顔を見たにこは思わず紅葉の胸倉から手を離してしまう。

 

「お願いです、にこさん・・・・・・。 穂乃果に会わせてください。 せめて、謝って済む問題じゃないけど、でも・・・・・・アイツに謝りたいんです」

「っ・・・・・・勝手にしなさいよ」

 

紅葉は軽くにこに頭を下げると、穂乃果の病室へと向かい、扉を開いて中に入る。

 

病室では頭に包帯を巻き、未だに眠り続けている穂乃果の姿が見え・・・・・・その姿に紅葉は心がズキリと痛むのを感じた。

 

「父さん、母さん、雪穂・・・・・・」

「紅葉・・・・・・?」

「お兄ちゃん・・・・・・お姉ちゃんが・・・・・・」

 

先ほどまで泣いていたのだろうか、雪穂の目は赤く腫れており、彼女は紅葉の姿を見るや否や抱きつき、紅葉はそんな彼女の頭をポンポンと撫でる。

 

「お姉ちゃん、意識戻らないかもって・・・・・・」

 

紅葉は雪穂の肩に優しく手を乗せて、軽く離れさせると紅葉は椅子に座って穂乃果の手を自分の両手で握りしめる。

 

「俺は、オーブを許せない。 絶対に・・・・・・」

「私もです。 オーブは、ずっと私達の味方だと信じて来たのに・・・・・・」

 

顔を俯かせ、オーブに失望したとばかりの態度を見せる海未。

 

親友が傷つけられたのだ、ことりは複雑な心境なのか黙ったままだったが、少なくとも海未の怒りは相当なものだろう。

 

そんな時、薄らと穂乃果が目を開き・・・・・・「お兄ちゃん?」と紅葉のことを呼んだのだ。

 

「穂乃果!? 気がついたのか・・・・・・」

「ここ、どこ・・・・・・? 私、何してるんだっけ・・・・・・」

 

穂乃果が目を覚ましたことで、紅葉は泣き出しそうになるのをグッと堪え、彼女の手を今よりも強く握りしめた。

 

「ここは病院で、俺がお前の手を握ってる」

「えへへ・・・・・・。 そっか、嬉しいなぁ・・・・・・お兄ちゃんに手を握られてるなんて。 とっても、暖かいよ、お兄ちゃん・・・・・・」

「そっか。 ごめんな・・・・・・穂乃果、俺、お前を守れなくて・・・・・・ごめんな・・・・・・」

 

紅葉は必死にそうやって辛そうにしながら何度も穂乃果に謝り、穂乃果はなぜ紅葉が自分に謝っているのか分からず、頭に疑問符を浮かべるが・・・・・・少しすると、彼女はまた目を閉じて眠ってしまった。

 

「俺、なんにもできないよな。 学園祭のライブを守れなかったし、穂乃果やことりが喧嘩した時も、何もできなかった。 今回だって・・・・・・穂乃果を助けられなかった」

「紅葉くん、そんなこと・・・・・・」

 

ことりが「そんなことない」と声をかけようとするのだが、言い終わる前に紅葉は立ち上がって病室を去って行こうとするが、母に呼び止められ、「どこに行くの?」と尋ねられる。

 

「ごめん、母さん、父さん・・・・・・。 今の俺に、穂乃果と会う資格なんて無いから・・・・・・だから俺はここから消える」

「紅葉、何もそんなに自分を責めなくても・・・・・・」

 

オーブの正体を知らない海未からすれば、紅葉が過剰に自分を責めているように見えたのだろう。

 

だが、紅葉は自分がオーブである以上、そんな考えに至れる筈もなく・・・・・・。

 

「・・・・・・紅葉」

 

そこで今まで黙り込んでいた父が、突如口を開き、それに母や海未、ことり、雪穂はギョッとしたように目を見開く。

 

(穂乃果ちゃんのお父さんの声聞くの、何時ぶりだろう・・・・・・)

 

ことりがそんなことを思っていたが、今はどうでも良いことだと思い、彼女はすぐに思考を切り替える。

 

「自分の闇ってのは、力尽くで消そうとしたらいけないんだ。 逆に抱きしめて、電球みたいに自分自身が光るんだ。 そうすれば360度、どこから見ても、闇は生まれない。 それを、お前は覚えておけ」

 

なぜ、父はいきなりそんなこと言い出したのか、それは分からなかったが・・・・・・今の紅葉には心に痛いほど染みる言葉だった。

 

そして、そんな父の言葉を背に受けて紅葉は病室を出て行き、ギャラクトロンが破壊された場所へと戻って来たのだった。

 

「・・・・・・闇を抱きしめる。 そんな強さを、俺は見つけられるのか・・・・・・?」

 

紅葉は地面に落ちているベリアルのカードを拾いあげ、カードホルダーに仕舞い込むと、彼はそのままどこかへと立ち去るのだった。




にこ
「サブタイを探せ! のコーナー! ってあれ? 紅葉は? 穂乃果は?」


「2人ともあんな状態だから今日は来てないにゃー」

にこ
「いや、本編とここは全く関係ない時空じゃなかったっけ!?」


「今回は特殊にゃ」

花陽
「取りあえず、今回のサブタイはオーブ本編では違ってたけどウルトラマンギンガ第10話『闇と光』だよ!」


「紅葉くんがサンダーブレスターになる時の台詞だよね」


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第16話 『失ったもの』

数年前・・・・・・。

 

紅葉達がまだ中学1年ほどの時のこと・・・・・・。

 

紅葉が1人、誰もいない公園でオーブニカを吹きながらメロディーを奏でているとそこにいつの間にか穂乃果がやってきていた。

 

『わー! 素敵な曲だね、お兄ちゃん?』

『穂乃果?』

 

穂乃果は紅葉の隣に立つと、「もっとその曲聴かせて?」とお願いしてくる。

 

『お安いご用だ』

 

穂乃果に頼まれ、紅葉は快く承諾しオーブニカのメロディーを奏でる。

 

すると、隣に立つ穂乃果もそのオーブニカのメロディーに合わせて歌を口ずさみ、それに紅葉は一瞬驚いた顔を浮かべるが・・・・・・紅葉は演奏を途中でやめることをせず、最後まで演奏を終えると、彼は「よく1回ほんのちょっと聴いただけで曲に合わせて歌えたな?」と感心していた。

 

『うん、なんか・・・・・・ずっと前から、知っている曲なのような気がして・・・・・・』

『そっか。 もう1回、やるか?』

『うんっ!』

 

そうして、2人はもう1度オーブニカのメロディーを奏で、公園中にその音色を響かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在。

 

穂乃果が病院に入院して、一週間が経った。

 

穂乃果はあの時大怪我を負ったものの、このまま行けば順調に回復し、医者が言うには退院してもしばらく安静にするように言われたもののアイドル活動自体には問題ないだろうとのことで・・・・・・。

 

幸い、彼女は「怪我のせいでスクールアイドルができなくなる」なんてことは無かった。

 

穂乃果も怪我がまだ完治していないとは言え、既に何時もの元気な姿をみんなに見せるようになっており、海未達も着実に回復しつつある穂乃果にほっと安堵していたのだった。

 

ただ1つ、気がかりがあるとすれば・・・・・・それは、来月に「ラブライブ」が再開するということ。

 

今からさらに一週間の入院が必要で、退院してもしばらく穂乃果は絶対安静ということは・・・・・・彼女達、μ'sはラブライブに出場することができないことを意味していたのだ。

 

ラブライブに出場するためにはあまりにも時間がなさすぎるため、μ'sは大会を辞退することになった。

 

それを絵里や海未から聞かされた際は、穂乃果はショックを受けたものの、こんな状況では「仕方がないよね」と言って彼女はどうにか納得し、今はぽけーっとしながら病室で母が持って来てくれたノートパソコンで動画を暇つぶしに観ているところだった。

 

そんな彼女の元に、お見舞いの為に海未とことり、絵里とにこがやってきたのだ。

 

「あっ、海未ちゃん! みんな・・・・・・って何してるの?」

 

海未達が病室に入ってくるとパァッと明るい表情を浮かべるが・・・・・・海未達は以前にこに教えられたサングラスとマスクと分厚いコートを着た不審者スタイルの格好をしており、なぜ4人ともそんな怪しさ満開な格好をしているのか尋ねると、にこ曰く「マスコミ対策」だそうだ。

 

「マスコミ対策?」

「あんなことがあったんです。 世間では、ウルトラマンオーブに対する批判の声が高まっているようで・・・・・・だから・・・・・・」

「ごめん海未ちゃん、真面目な話をする前にその格好やめて? 頭に内容が入って来ないから」

 

穂乃果にコートなどを脱ぐのを忘れていたのを指摘された海未は顔を赤くし、咳払いしながらサングラスとマスクを外してコートを脱ぐと、先ほどの続きを話し始める。

 

「ニュース見てないんですか?」

「ニュース?」

 

海未に言われ、穂乃果はパソコンのニュースサイトを見ると「人類の敵か味方か? ウルトラマンオーブに怒りの声!」と書かれた内容の記事があったのを発見。

 

今回の事故を切っ掛けに怪獣と同じく、オーブも人類の敵ではないかという世論が高まっているらしく、入院中の穂乃果がそんなオーブに対して何を思っているのか、回復が待たれるという内容の記事が書かれており、それを読んだ穂乃果は「なにこれ!?」と複雑そうな顔を浮かべていた。

 

さらに言えば、オーブ批判には今話題のスクールアイドル、それも人気急上昇中のμ'sのメンバーが被害にあったということも後押ししているのも理由だろう。

 

「マスコミの人達、穂乃果からオーブを批判するコメントを引き出そうとしてるみたいね・・・・・・」

「マスコミの人達、穂むらにも押しかけてるみたいで・・・・・・」

 

絵里とことりの言葉を聞いて穂乃果は「えっ!?」と驚きの声をあげる。

 

どうやらマスコミが穂むらにまで押しかけて来ていることを穂乃果は知らなかったらしく、そんな穂乃果の様子を見て「しまった」という顔を浮かべることり。

 

恐らく、彼女の両親も雪穂も穂乃果に心配をかけまいとそのことを黙っていたのだろう。

 

それに気付かず、余計なことを言ってしまったかもしれないと落ち込むことりだったが、そんなことりの肩を優しく叩き、励ます海未。

 

「知らなかったんだからしょうがないですよ、ことり」

「海未ちゃん・・・・・・でも・・・・・・」

 

最も、海未からの話によれば穂むらに来たマスコミはまんじゅうも買わないならただ迷惑なだけと穂乃果の父が凄みと威圧感を放ったことですぐに追っ払うことができたので、そこまで深刻な問題にはなっていないとのことだった。

 

「・・・・・・アンタ自身はさ、オーブが憎かったりしない訳?」

 

そこで、今まで黙っていたにこが穂乃果にあんな目に合わされたのに、オーブが憎くないのかと尋ね、穂乃果はギャラクトロンの時のことを思い出しながら、にこの問いかけに言葉を返す。

 

「私も、同じだったかもしれないから。 オーブと・・・・・・。 ギャラクトロンに捕まった時、私は自分が何をしているのか分からなかったから・・・・・・」

「それは、ギャラクトロンが穂乃果の精神を乗っ取っていたから・・・・・・」

 

穂乃果の言葉から、彼女はギャラクトロンが暴れたことについて、責任を感じているのだろうかと思った海未。

 

だが、あれは穂乃果の意志で暴れた訳ではなく、むしろ人質に近い状態だった為、穂乃果自身には一切の責任はないと海未は言い放つ。

 

「でも、多分だけど・・・・・・あの時のオーブにも、あの時の私と同じようなことが起きてたんじゃないかなって。 何か、巨大な力が彼を支配してた・・・・・・そんな気がするんだ」

 

そう語る穂乃果を見て、海未はオーブに対して怒りを抱いていないようで、むしろ逆にオーブのことを心配しているかのようだった。

 

それに少し戸惑う海未だったが、その時、穂乃果の話を聞き、「それは、マスコミなんかには言わない方が良いわね」と絵里が呟く。

 

それに対して「えっ?」と首を傾げる穂乃果。

 

「下手したら、穂乃果に危険が迫るかも知れない。 それほどまでに、オーブに対する国民の声が高まってるの・・・・・・」

「オーブを許すなって言うデモ行進を、今日も国境議事堂の前でもやっているそうです」

 

絵里と海未は穂乃果に、人々がオーブに対する怒りの声が高まっているということを話し、さらに戦闘機を撃墜されたことで軍隊の方でもオーブを批判する声が大きいらしく、今度オーブが出現した時は彼を攻撃するかもしれないとのことだった。

 

「だから穂乃果、そのことを私達以外に話すのは・・・・・・」

 

その為、海未は改めて穂乃果に先ほどのことをあまり他言しないようにと釘を刺し、それに穂乃果は暗い表情を浮かべつつも「うん」と頷く。

 

「ちゃんと海未ちゃんや絵里ちゃんの言う通り、さっきの話はしない。 でも・・・・・・オーブのことを批判したりもしないから、私」

 

先ほどの話をしないことは海未達に約束した穂乃果、だが・・・・・・だからと言ってオーブを批判するようなコメントもマスコミなどに絶対にしないと彼女は言い放つ。

 

そんな彼女を見て、本当ににこは穂乃果はオーブに怒りを抱いていないのだと思い、なんだか呆れて溜め息を吐いてしまう。

 

「アンタ、あんな目に合わされたのに、本当にオーブのことを怒ってないの?」

「さっきも言った通りだよ、にこちゃん。 オーブだって、多分・・・・・・ううん。 きっと苦しんでたんだよ・・・・・・だから・・・・・・」

「下手したら死ぬとこだったのよ!!?」

 

改めて穂乃果はオーブのことを怒ったりなんてしていないと伝えるのだが、それににこは納得できず、思わず声を張り上げてしまった。

 

「死ななかったとしても、怪我が元でアイドル活動が出来なくなってたかもしれないのよ、身体のどこかが一生治らなかったかもしれないのよ!! なのに、なのにあんな奴を許せるの!!?」

 

最悪死ぬことはなくても、怪我が元で身体のどこかの機能が停止し、アイドル活動ができなくなるどころか、一生不自由な暮らしを余儀なくされたかもしれない。

 

にこはマガオロチの時は紅葉に責任はないと許した。

 

穂乃果とことりが喧嘩した時も原因が紅葉にあるなんて思わなかったし、彼の責任ではないから何も言わなかった。

 

だが今回は違う。

 

彼女は素直では無いので、言わないだろうがにこもまた絵里と同じように穂乃果が自分をμ'sに誘ってくれたことに感謝していた。

 

そんな穂乃果を、血の繋がりはなくとも、妹である彼女を、ウルトラマンオーブは・・・・・・紅葉はどんな理由があろうと殺しかけたのだ。

 

もしかしすれば、穂乃果は視力を失っていたかもしれない、耳が聞こえなくなってしまったかもしれない、そう思うと・・・・・・にこはオーブに怒りでいっぱいになる。

 

「でも、生きてる」

「っ・・・・・・」

「目も見えるし、耳も聞こえる。 スクールアイドルも続けられる」

 

そんなの結果論だとにこは言うのだが、穂乃果を真剣な眼差しで・・・・・・首を横に振って「違う」と否定する。

 

「戦闘機のパイロットさんも無事だったみたいだし。 きっと、日頃の行いが良いんだよ、オーブは。 確かに今回はこんなことになったけど、でも・・・・・・ずっとオーブは私達みんなのことを助けてくれた。 μ'sの中にも、オーブに助けて貰った人は多いんじゃないかな?」

「それは・・・・・・」

 

そんな穂乃果の言葉を受け、言い淀むにこ。

 

確かに、海未は紅葉の姿が見当たらず、彼が心配だから早く怪獣を倒してくれと頼むとオーブは可能な限り、素早く怪獣を倒してくれた。

 

絵里は入らずの森の時、宇宙人や怪獣達に襲われているところをオーブに助けて貰った。

 

ことりも地球侵略に乗り出し、街で暴れたのにブラック店長、ブニョ、ノーバのことを倒さず、止めてくれた。

 

にこもまた公園で遊んでいた妹や弟達を公園に現れた怪獣から守ってくれた。

 

ここにいるメンバーだけではない。

 

花陽や凛は2人や子供達が慕っていたババルウ星人ババリューこと馬場を助けてくれたりもした。

 

確かに穂乃果の言う通り、オーブはずっと自分達を守ってきてくれた。

 

「でも・・・・・・!!」

 

それでも、今回の件をこんなあっさりと穂乃果が許すことが納得できなかったにこは、何か言い返そうとするのだが・・・・・・。

 

「穂乃果の言う通りかもしれないわね」

 

そこに丁度、穂乃果の母が病室にいつの間にかやって来ていたのだが・・・・・・彼女もまた、黒スーツに帽子にサングラスを被った怪しさ満載の格好をしており、にこ達とかなりどっこいどっこいな格好をしていた。

 

「ここ仮装大会の会場じゃないんだけど・・・・・・」

 

すかさず穂乃果が呆れ顔でツッコミを入れるのだが、母曰くやはりこれも「マスコミ対策」とのこと。

 

やはりそんな格好をしていたのはその為かと穂乃果は納得するのだが、「逆に目立ってるような・・・・・・」と思わずにはいられなかった。

 

「日頃の行いが良いから、穂乃果は治らないような怪我も負わず、死にもしなかったって言うのは、私もちょっと同意かしらね?」

 

母は帽子とサングラスを外すと、「お見舞いの品」と言いながらなぜかハイパーゼットンデスサイスの事件の時、なんとなく自分の部屋に持ち帰っていたあのマトリョーシカをコトッとベッドに装着されたテーブルの上に置いたのだ。

 

「えっ? なんでお母さんこれ持って来たの?」

「これね、実は私のひいお婆ちゃん・・・・・・つまり、『ルサールカ』にいた穂乃果のひいひいお婆ちゃんの幸運の御守りだったそうよ」

 

だからと言ってお見舞いの品にマトリョーシカをワザワザ病室にまで持って来るのはどうなのだろうかと言うのだが・・・・・・。

 

「まだ怪我も完治してないし、兎に角念のために持ってなさい。 お婆ちゃんもその御守りのおかげで動乱の時代を生き抜いて、その子供、つまり私のひいお婆ちゃんもこれを持って日本で健康で幸せな毎日を過ごしたそうよ?」

 

母曰く、自分もこの御守りを持っていたおかげで過去に重い病気や事故にかかることもなかったそうで・・・・・・むしろ子宝に恵まれたとのことだった。

 

だから、今回穂乃果が奇跡的な生還を果たしたのもきっとこのマトリョーシカの御守りのおかげだと母は信じているようで、にこは「非科学的過ぎない?」と思ったが、それを言える雰囲気ではなかった為、口を閉じた。

 

「人の恩を忘れないのは、人として大切なことなのよ穂乃果? それを忘れない穂乃果は立派だと思うわ。 頭の方はちょっと残念だけど」

「最後の一言いる!!? でも、ありがとう、お母さん」

 

母の最後に発した言葉はいるのかと怒る穂乃果だったが、それでも自分のことを褒めてくれた母に穂乃果は照れ臭そうにしつつも「ありがとう」と伝え・・・・・・そこで彼女は、ふっと先ほど母が言った言葉を思い出し、それについてのことを母に尋ねる。

 

「そう言えば、さっきルサールカって言った? 私のひいひいお婆ちゃんって海外にいたの?」

「そうよ。 だから穂乃果や雪穂にはロシアの人の血がほんのちょびっと流れてることになるわね。 穂乃果の目が青いのもその名残かもね」

 

そう言えばロシア人とのクォーターである絵里も目が青いなと思い、彼女の顔を穂乃果はジッと見つめ、それに戸惑う絵里。

 

「えっ、な、なに穂乃果? ジッと私の顔を見て・・・・・・」

「あはは、そう言えば私と絵里ちゃんって目の色が一緒だね!」

 

母の話を聞いて気付いたが、そう言えば自分と絵里と同じ青い目をしていることに気づき、「お揃いだね~」なんて笑いながら呟き、絵里の方は気恥ずかしそうにしていた。

 

「でも、ルサールカか・・・・・・。 そう言えば、さっき海未ちゃん達が少し来る前に、そのルサールカで起こった事件の動画、観てたんだよね」

「珍しいね、穂乃果ちゃんがそんな動画観るなんて・・・・・・」

 

ことりの言う通り、穂乃果なら別のスクールアイドルの動画を観ているか、もしくはアニメなんか観てそうだと思っていたので、ことりは意外そうな顔を浮かべる。

 

「私だってたまにそういう動画だって観るよ~。 それでね、この動画なんだけど・・・・・・150年前くらいに、ルサールカのとある場所で謎の大爆発が起こったそうなんだ」

 

穂乃果が言うには、そのルサールカで起こった大爆発は未だに原因不明とされており、人類史上最大のミステリーとされているそうなのだ。

 

ただ、穂乃果が気になったのはそれだけではなく・・・・・・同時期に、剣を持った光の巨人と巨大な獣が戦っていたという目撃情報もあるようで150年前にも、オーブと同じウルトラマンがいたのではないかと彼女は興味を持ったのだ。

 

「オーブ以外のウルトラマンですか・・・・・・」

「まぁ、あり得なくはないんじゃない?」

 

紅葉から以前、自分には複数の先輩ウルトラマンがおり、その先輩達の力を使ってオーブに変身しているという話をにこは聞いたことがあるので、あり得ない話ではないだろうと考えるにこ。

 

にこは紅葉が穂乃果達とそう変わらない年齢だとしか思っていないのでそんな昔にオーブがいる可能性についてはこれっぽっちも考えつかないでいたが。

 

「あっ、そう言えば・・・・・・ねえ、お母さん? お兄ちゃん全然病院に来てくれないんだけど、お兄ちゃんどうしてるの?」

 

そこで穂乃果が自分に謝罪の言葉を送って以来、紅葉は病室に訪れていないようで海未達は敢えてその話題に触れないようにしていたのに、穂乃果の方から話を振ってきた為、海未達は「あー!! あー!!」と叫びながら必死に誤魔化そうとしてる。

 

病院では静かにしてください。

 

「あぁ、紅葉なら家出したわよ」

「えっ」

 

しかし、海未達が必死に声をあげて誤魔化そうとしているにも関わらず、穂乃果の母はあっけらかんと紅葉が家出したことを穂乃果に伝え、彼女は目を見開く。

 

「なんで言うんですか!? 穂乃果に精神的負担になるかもしれないから今は黙っていようってみんなで話したのに!!?」

「海未ちゃん達は知ってたの!? っていうか、お兄ちゃんがい、家出ってどういうこと!?」

 

なんでも母が言うには、ギャラクトロンの騒動が一応の終わりを迎えた後、母と父が家に帰ると「どうしても行かないといけない場所があるんです。 勝手なお願いですが、だからどうか、少しの間学校を休ませてください」と書かれた置き手紙があったそうだ。

 

「それでお兄ちゃん探してないの!? なんで!!?」

 

息子が家出したというのにやたら落ち着いた雰囲気の母にどうして紅葉を探さないのかと穂乃果は当然問い詰めるが・・・・・・母曰く、「あの子がそうして欲しそうだったから」とのことだった。

 

「こんなことになって、あの子もきっと1人でしばらく考え込みたいことがあるんでしょう。 紅葉のことだし、きっと心配ないわ」

「で、でも・・・・・・」

「・・・・・・」

 

穂乃果の母の話を聞いて、にこは又もやオーブ、紅葉に不快な気持ちを抱かずにはいられなかった。

 

確かに自分は紅葉に穂乃果に会う資格はないと言い放った。

 

だが、だからと言ってこの状況で「行きたい場所がある」というのはどういう了見なのか、にこには紅葉が逃げ出したとしか思えなかった。

 

(アンタは、ヒーローじゃなかったの?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、穂乃果は紅葉のことで母と言い合いになったのだが、結局母に言いくるめられる形で話を切られてしまった。

 

それから母や海未達は「また来る」とだけ言い残して病室を後にし、今は穂乃果1人ジッとベッドの上で座りながら、マトリョーシカを手に持ちながら見つめながら・・・・・・紅葉と2人でこのマトリョーシカのことを話していた時のことを思い出していた。

 

『なんか、それお兄ちゃんっぽいよね』

『俺に?』

『うん、幾つもの別のお兄ちゃんが、お兄ちゃんの中に隠れてる感じ』

 

穂乃果のその言葉に紅葉は「そんなこと、あるのか?」と疑問に思う。

 

『だって、お兄ちゃんには私の知らないところとか、色々ある気がして……』

『……でも、最後の1つを開けて見れば結局、空っぽだって分かるさ……』

 

少し、どこか悲しげな様子で紅葉は最後のマトリョーシカを開けようとしたのだが……穂乃果はその手を掴んでマトリョーシカを開けようとするのをやめさせる。

 

『ダメだよお兄ちゃん! マトリョーシカの最後って確か開けたらダメなんだよ!』

『……あぁ、そう言えば、そんな話、聞いたことあるな……』

 

それを切っ掛けに、穂乃果は紅葉との思い出を次々と思い出していくのだが・・・・・・そこで穂乃果はあることに気付く。

 

「ずっと一緒にいるのに、私・・・・・・お兄ちゃんのこと、あんまり知らないのかも・・・・・・」

 

生まれた時からずっと一緒にいるのに、紅葉には自分の知らない一面があるような気がして仕方がなかった。

 

ナターシャのこともそうだし、いつの間にかにことやたら仲が良くなっていたり、自分の知らないところで、彼は何をしているのか、紅葉は今どこにいるのか、気になって仕方がなかった。

 

「こんなに気になるなんて・・・・・・私、やっぱり好きなんだなぁ、お兄ちゃんのこと・・・・・・」

 

それは「兄が大好きなだけのただの妹」という意味ではない。

 

最初はそうだったかもしれない、だが・・・・・・成長するに連れて徐々に彼女が紅葉に対する気持ちは「兄としてではなく、1人の男性として」という風に変化していった。

 

いつ彼に好意を持つようになったのかは分からない、ただいつの間にか気付いたらとしか言いようがなかった。

 

それなのに、紅葉は全然病院に来てくれなくて、それどころか家出をしてしまっていることに穂乃果はショックを受けてしまった。

 

「お母さんのバカ、お兄ちゃんのバカ・・・・・・」

 

紅葉は穂乃果を守れなかったことに責任を感じていたようで、それが理由で彼は家出をしたのだろうと海未は話していたが・・・・・・穂乃果からすれば、気にしないで欲しかった。

 

むしろいなくなる方が彼女に取っては会えなくて辛かった。

 

「会いたいなぁ・・・・・・。 会いたい、会いたいよぉ、お兄ちゃん・・・・・・帰ってきてよぉ・・・・・」

 

穂乃果は膝を抱え、マトリョーシカを抱きしめながら、ただひたすら泣き出しそうな声で「お兄ちゃんに会いたい、帰ってきて」と呟き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルサールカのある森にて・・・・・・。

 

紅葉はそこに訪れており、150年前のことを思い出しながら、彼は辺りにある草木を眺めていた。

 

150年前、マガゼットンとの戦いで辺りを焼け野原にしてしまったオーブこと紅葉。

 

だが、150年もの時が経てば森の中の自然はもうほぼ完全に回復しており、紅葉はナターシャと初めて会ったと思われる場所に立っていた。

 

「あれから、150年か・・・・・・もうスッカリ、回復したみたいだな・・・・・・」

 

彼はナターシャと初めて会った時のことを思い出しながら、森の中に生える1つの木に触れる。

 

その中の1つの思い出・・・・・・それは、『これは、俺の古里の曲なんだ』とオーブニカを吹く時に演奏するメロディーをナターシャに教え、2人で一緒に森を歩き回りながらそれに合わせてナターシャが歌を口ずさんでくれていた・・・・・・。

 

「楽しかったな・・・・・・」

 

しかし、ある日の夜、「そんな楽しい時間は長くは続かない」とでも言うように「光ノ魔王獣 マガゼットン」が復活し、出現。

 

マガゼットンの元へと向かおうとする紅葉をナターシャは腕を掴んで必死に引き止めてようとする。

 

『ダメ、行かないでお兄さん!!』

「・・・・・・すまん、俺は、行かないといけない」

 

紅葉はそう言ってオーブニカをナターシャに手渡す。

 

『これを持っていて欲しい。 俺は必ず、帰って来るから』

 

そう言うと紅葉はマガゼットンの方へと駆け出して行き、マガゼットンの姿が見えると、紅葉はオーブリングを掲げて光輝く巨人、「ウルトラマンオーブ」へと変身する。

 

『ゼッ・・・・・・トン!』

『光ノ魔王獣・・・・・・!!』

 

オーブは不気味に佇むマガゼットンに向かって駈け出して行くと、マガゼットンは顔から赤い光線をオーブの足下に放ち、赤い煙が巻き起こってオーブの視界を防ぎ、思わずオーブはその場に立ち止まってしまう。

 

『グッ、ウゥ・・・・・・デヤァ!!』

 

オーブは両腕を振るってなんとか赤い煙を振り払うのだが、先ほどまで目の前にいたマガゼットンはその場にはおらず、周囲を見回して見ても姿はなかった。

 

不意に、マガゼットンはオーブの背後に現れるとオーブも即座にそれに反応して振り返りざまに両腕を十時に組んで放つ必殺光線を撃ち込むのだが・・・・・・マガゼットンはバリアーを張って光線を防ぐ。

 

『ピロロロ・・・・・・!』

 

マガゼットンは光線を防ぎ、バリアーを解除した直後に顔から火球を放ち、それの直撃を受け、オーブは吹き飛ばされて倒れ込んでしまう。

 

『ウグアア!!?』

 

倒れ込んだオーブにマガゼットンは素早くマウントを取り、オーブを何度も殴りつけまくる。

 

『ぐっ・・・・・・シェア!!』

 

なんとかオーブは足を振り上げてマガゼットンの背中を蹴り、自身から引き離すと立ち上がったオーブはすかさずマガゼットンにドロップキックを浴びせて怯ませる。

 

しかし、すぐさまマガゼットンは火球を放ってオーブはそれを受けてしまい、吹き飛ばされてしまう。

 

『グアアアア!!?』

 

倒れ込んだオーブの首をマガゼットンは掴みあげるとそのままオーブの腹部を殴りつけようとするがオーブはマガゼットンの腕をどうにか振りほどいて回し蹴りを喰らわせる。

 

『お兄さーーーん!!』

 

そんな時、やはり紅葉が心配になり、彼を探しに来たナターシャがこの場へとやって来たのだ。

 

彼女の存在に気付き、「なぜここに!?」と驚きを隠せないオーブ。

 

『ナターシャ、ここにいきゃいけない!! すぐに逃げるんだ!!』

「・・・・・・お兄さん?」

 

オーブの姿を見て、ナターシャはすぐにそれが紅葉であることに気付いたが・・・・・・直後にまたマガゼットンの火球が飛んで来て両腕を交差してオーブは攻撃を防いだものの、その衝撃でナターシャは吹き飛ばされてしまった。

 

『ナターシャ!!』

『ゼットン・・・・・・!』

 

さらにマガゼットンはオーブへと向かって先ほどよりも強力な火球を撃ち込もうとし、オーブはそれに対し、巨大な大剣を出現させ、マガゼットンの火球を切り裂く。

 

『ハアアア、シュア!!』

 

そして光の巨人はその大剣で円を描くように振るうと大剣にエネルギーが集まり、マガゼットンに向かって強力な光線として発射し・・・・・・その直撃を受けてマガゼットンは身体中から火花を散らす。

 

すると光の巨人が握っていた大剣が消滅し、マガゼットンは火花を散らしながら・・・・・・爆発、しかし、その時の光線の威力の制御にオーブは失敗してしまい、その爆発は周囲一帯の森を巻き込み、ナターシャもその爆発に巻き込まれてしまう。

 

『きゃああああああああ!!!!?』

『っ、ナターシャ!!』

 

その後、マガゼットンを倒したオーブは紅葉の姿へと戻り、黒焦げた森の中央で、ナターシャにオーブニカを預けていた紅葉はそれを拾いあげると、膝を突き、彼はその場で泣き崩れるのだった。

 

『ナターシャ・・・・・・俺の、俺のせいで・・・・・・うわああああああああ!!!!!!』

 

紅葉は昔の苦い思い出を思い出しながら、かつて自分が犯してしまった過ちに胸が苦しくなるのを感じ、彼は自分の胸を押さえつける。

 

「よぉ? 随分と楽しんでいるようだなぁ?」

 

そんな時、紅葉の左肩に後ろから自分の顎を乗せて、いきなり現れるラグナ。

 

「うわおおおお!!!?」

 

それに驚いた紅葉は思わず勢いよく左腕を押し上げてラグナの顔を殴りつけてしまい、「がっ!?」と小さな悲鳴をあげて鼻を押さえながら悶える。

 

「おまっ、何しやがる・・・・・・!!」

「あっ、すまん・・・・・・でも急に後ろから顎乗せてくるのも悪いぞ。 って、ラグナ、なんでここにいるんだ!?」

 

紅葉はラグナがここにいることに驚きの声をあげ、涙目で鼻を摩り、ある程度痛みが落ち着くとラグナは一度紅葉に背を向け・・・・・・なぜかシャフ度角度をしながら紅葉の質問に応える。

 

「勿論、お前と遊ぶ為さ。 ったく、その為にお前を探して来てみればこんな所にいやがって・・・・・・。 何時までウジウジしているつもりだ? ここに来ても失ったものは戻らない。 お前は昔の自分には決して戻れはしないんだよ」

「・・・・・・っ」

 

シャフ度をやめて普通の体勢に戻りながらラグナは紅葉にそう言い放つのだが、紅葉は何も応えない。

 

いや、単に返す言葉が見つからないだけかもしれない。

 

ラグナの言う通り、ここに来たところで過去がやり直せる訳では無いのは確かだからだろう。

 

だから紅葉はラグナに何も言い返すことができず、ただ唇を噛み締め、拳を握りしめるしかできなかった。

 

「あのベリアル陛下が新しいお前を引き出してくれたじゃないか。 あれがお前の本当の姿だ」

「っ、違う・・・・・・!」

「恥じることはない、力を持った者はおのれの力を試す為に他のものを破壊、支配したくなるのさ。 ただし、お前の場合大切にしたいものほど壊したくなるようだ。 聞いたぜ? お前の妹ちゃん1号のこと」

 

ラグナはオーブがサンダーブレスターの力を使い、穂乃果がいると分かって攻撃したギャラクトロンの事件のことは既に知っているようで、ラグナはそれを話題に出し、紅葉を挑発する。

 

「次は誰を傷つける? 誰を傷つけたい? あの青い髪の娘か? それとも可愛い声をしたお嬢さんか? はたまた今度こそあの妹ちゃんを殺すか? お前がその手で・・・・・・。 結局、お前は昔も今も大切にしてるものを壊して行くんだろう?」

「なんだと・・・・・・?」

 

ラグナ、嫌らしい笑みを紅葉に向け、それに苛立った紅葉は思わず拳をラグナに放ち、ラグナはそれを素早く回避し、「魔人態」に変身。

 

それに紅葉は振り返りざまに右腕を振るって殴りかかるがラグナはそれを左腕で受け止め、膝蹴りを喰らわせる。

 

攻撃を受け、蹲る紅葉だがすぐに右手から光の光弾をラグナに放ち、ラグナはそれを受け止めて闇のエネルギーに変換した光弾を撃ち返し、紅葉はそれを弾き飛ばす。

 

ラグナは日本刀に似た「蛇心剣」を取り出すと、それを紅葉に向かって振りかざすが、対する紅葉も右手から光の剣を出現させて受け止め、紅葉は「ウルトラマンアグル」と「ウルトラマンヒカリ」の力を融合させた等身大の「ウルトラマンオーブ ナイトリキデイダー」へと変身する。

 

『ナイトリキデイダー!』

『シュア!!』

 

オーブは右腕の光の剣、「ナイトアグルブレード」でラグナを押し返すと、左腕にも同じナイトアグルブレードを出現させ、ラグナに斬りかかるが、ラグナは蛇心剣で受け流し、カウンターで逆にオーブを斬りつける。

 

『グウウ!!?』

 

さらに左腕から闇のエネルギーの光弾をオーブに撃ち込むが、オーブは右腕のブレードを振るって切り裂き、素早くラグナに駆け出して跳び蹴りを喰らわせる。

 

『ウオッ!?』

『ストライクナイトリキデイダー!!』

 

ブレードを仕舞い、両腕で青い光弾を作り出して放つ「ストライクナイトリキデイダー」をオーブはラグナに向かって放つのだが、ラグナは邪心剣で切り裂き、オーブはすかさず攻撃を繰り出そうとするのだが……ラグナが右手を前に突き出し、待ったをかける。

 

『ちょっと待て。 このままの状態で遊ぶのも面白いが……今日は新しい玩具を手に入れたから、それをお前に自慢したくてね』

 

ラグナはそう言うと右手に持つ邪心剣を掲げ、すると上空に巨大なワームホールのようなものが出現し、そこから蠢くマガオロチの尻尾が出現する。

 

『覚えているか? お前があの時切り落としたマガオロチの尻尾だ』

 

それは、初めて紅葉がサンダーブレスターになった際に切り落としたマガオロチの尻尾であるらしく、オーブはその尻尾を見て驚愕する。

 

『本番はここからだぜ紅葉? 今日がお前との、決着の日だ』

 

そう言うとラグナはダークリングを取り出し、1枚の怪獣カード、マガゼットンと非常によく酷似した怪獣、「宇宙恐竜 ゼットン」のカードをダークリングにリードさせる。

 

『ゼットンよ』

『ゼットン!』

 

続けて、ラグナは赤い双頭の怪獣、「双頭怪獣 パンドン」のカードをダークリングにリードして読み込ませる。

 

『パンドンよ』

『パンドン!』

 

そして最後に、ラグナはダークリングを掲げ、黒いオーラに包まれると上空にあるマガオロチの尻尾の方へと飛んでいく。

 

『お前達の力、頂くぞ!!』

 

すると、ゼットン、パンドン、マガオロチの尻尾が融合し、胴体はゼットンの黒い身体に胸部にはその発光体があり、長い突起の伸びる両肩から脚部、そして側頭部にかけてはパンドンのような赤い体表で覆われ、サメや深海魚を思わせる顔が付いていた1体の怪獣が出現したのだ。

 

『あれは・・・・・・!』

『超合体!! ゼッパンドン!!』

 

ラグナが変身したその怪獣の名は・・・・・・「合体魔王獣 ゼッパンドン」

 

それを受け、ゼッパンドンの出現に驚きつつもオーブも右腕を掲げ「ウルトラマン」と「ウルトラマンティガ」の力を融合させた「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」へと巨大化しながら姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!』

『フフ、意味深だろ? 紅葉? この場所で、ゼットンの力を使うのは・・・・・・』

『貴様・・・・・・!!』

 

オーブはゼッパンドンに駆け出して左手でゼッパンドンの顔を押さえつけると、右手でチョップを頭部に叩きこもうとする。

 

しかし、ゼッパンドンはそれを左手で受け止め左手の鋭い爪でオーブを斬りつけ、怯んだところで続けざまにゼッパンドンはオーブの胸部を右手で殴りつけ、それによってオーブがまた怯むとさらに左手でオーブの胸部を殴りつける。

 

『グウウウ!!?』

『ピロロロ・・・・・・ゼッパンドン・・・・・・』

 

またもやゼッパンドンが殴りかかって来た時、オーブはなんとかその放って来た右腕を受け止め、腹部に蹴りを叩き込むのだが・・・・・・。

 

『ゼッパンドン・・・・・・!』

 

ゼッパンドンにはあまり効いておらず、右腕を振るって自分の腕を掴んでいたオーブの腕を振り払い、左手でオーブの顔を殴りつける。

 

『ウアア!!?』

 

さらに近距離から放たれた口から吐き出す超高温の火球「ゼッパンドン撃炎弾」をオーブは喰らってしまい、火花を散らしながら吹き飛んで倒れ込んでしまう。

 

『ウオオオオ・・・・・・!!!?』

 

なんとかオーブはすぐに立ち上がるものの、ゼッパンドンは再び「ゼッパンドン撃炎弾」をオーブへと撃ち込み、オーブは咄嗟に上空に飛んで回避し、空中から両腕を広げてエネルギーを貯めてから放つ光の鋸「スペリオン光輪」をゼッパンドンへと放つ。

 

『スペリオン光輪!!』

 

しかし、ゼッパンドンはそれをガブリと口で掴むと、そのままムシャムシャとスペリオン光輪を食べてしまったのだ。

 

『ウマウマ。 う~ん、光輪の味がする』

『なに!?』

『あっ、やべ、歯の変なとこに挟まった』

 

ゼッパンドンは右手の爪を爪楊枝代わりにして歯に挟まったスペリオン光輪の欠片を取ろうとするのだが、その間にオーブは「ジャック」と「ゼロ」の力を融合させた「ハリケーンスラッシュ」に変身し、武器である「オーブスラッガーランス」をゼッパンドンに振りかざす。

 

『ハリケーンスラッシュ!』

『オーブスラッガーランス!!』

 

だが、ゼッパンドンは欠片を取り出すのをやめてスラッガーランスを受け止め、頭部の両脇にある口のような器官から発射する紫色の破壊光線を放ち、直撃させてオーブを引き離す。

 

『今歯に挟まったもん取ってんだろうがァ!! あっ、取れた』

『ヌアアアア!!?』

 

オーブはオーブスラッガーランスのレバーを1回引き、ランスの先端から放つ必殺光線「オーブスラッガーシュート」をゼッパンドンへと放つ・・・・・・だが・・・・・・。

 

『オーブスラッガーシュート!!』

『ゼッパンドンに光線は効かねえよ。 ゼッパンドンシールド!!』

 

顔の両側から前面に展開する六角形のバリア『ゼッパンドンシールド』でゼッパンドンは攻撃を完全に防いでしまい、その直後にゼッパンドンはオーブの目の前から姿を消す。

 

『っ!?』

 

すると、ゼッパンドンは瞬間移動でオーブの背後に現れ、咄嗟にオーブは振り返りざまにスラッガーランスを振るうのだが、ゼッパンドンは又もや瞬間移動でその場から消え、オーブの攻撃は空振りに終わってしまう。

 

今度はオーブから少し離れた位置とは言え目の前に現れ、「クイクイ」と右手でゼッパンドンはオーブを挑発。

 

オーブは高速でゼッパンドンに近寄ると、スラッガーランスをゼッパンドンの胸部に突き立て、レバーを2回引いてエネルギーを送り込んで相手を内側から爆破する「ビッグバンスラスト」を繰り出す。

 

『ビッグバンスラスト!!』

 

だが、ゼッパンドンにはビッグバンスラストも効かず、逆にオーブスラッガーランスに熱を送り込み、高熱を発するようになった為オーブは思わずスラッガーランスを手放してしまい、ゼッパンドンはスラッガーランスをも吸収し、取り込んでしまったのだ。

 

ゼッパンドンはそこからさらに口から電撃を放ってオーブを攻撃し、それを浴びたオーブは片膝を突いてしまう。

 

『闇の力を頼れ。 このまま滅びるか、闇に墜ちるか。 お前にはそれしかないんだ!!』

『・・・・・・ッ』

 

オーブのインナースペース内で・・・・・・紅葉はベリアルのカードを取り出して見つめ、ベリアルは「まるで俺の力を使え」とでも言うかのように怪しい光を放つ。

 

そうこうと考えている間にゼッパンドンにオーブは頭を掴まれ、胸部に蹴りを叩き込まれて大きく蹴り飛ばされ、オーブは地面に転がりながら倒れ込む。

 

『ウワアア!!?』

 

既にカラータイマーは点滅を開始し、変身していられる時間ももう少ない。

 

『こんなものか、紅葉!!?』

『バーンマイト!』

 

どうにか立ち上がったオーブは「タロウ」と「メビウス」の力を融合させた「バーンマイト」へと姿を変えると、全身に炎を纏って相手に体当たりし、抱きついて相手を爆発させる「ストビュームダイナマイト」をゼッパンドンへと繰り出す。

 

『ストビューム・・・・・・ダイナマイトォ!!!!』

 

しかし、それすらもゼッパンドンには通用せず・・・・・・。

 

だが、オーブはその爆発の時に起こった炎を利用してその場から消えており、ゼッパンドンはオーブの姿を探して見渡す。

 

『どこだ? 紅葉? どこだあああああああ!!!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐは・・・・・・うぅ」

 

変身を解いた紅葉は森の中にある1つの木の下に背中を預ける形で座り込み、ゼッパンドンとの戦いのダメージか、その場で目を閉じてしまったのだ。

 

そんな時、自分の頬に誰かの手が触れられ、その柔らかな感触を受けて目を開けると・・・・・・そこには昔と変わらぬナターシャの姿が。

 

「ナターシャ・・・・・・?」

 

紅葉は弱々しく彼女の名を呼び、彼女に右手を伸ばすと・・・・・・ナターシャはその手を取って両手で優しく握りしめる。

 

すると、ナターシャは何かを紅葉に手渡し、彼女が手を離して紅葉はナターシャから受け取ったものを見ると・・・・・・それは真っ白な何も描かれていない1枚のカードだった。

 

「これは・・・・・・?」

「あなた自身だよ。 ありのままの、あなた・・・・・・」

 

紅葉が顔を上げると、そこにはナターシャではなく、入院している筈の穂乃果の姿があり、紅葉は「穂乃果?」と首を傾げながら彼女の名を呼ぶ。

 

「戻って来て、お兄ちゃん。 私のところに・・・・・・。 私は、ありのままのお兄ちゃんを受け入れる。 だから・・・・・・!!」

 

穂乃果は紅葉の手をもう1度握りしめ、それだけを伝えると彼女は立ち上がり、その場を去って行くのだった。

 

「穂乃果・・・・・・!!」

 

そんな去って行く穂乃果に向かって紅葉は必死に手を差し伸べるが・・・・・・。

 

「っ・・・・・・!!」

 

そこで紅葉は目を覚まし、彼は自分が気を失っていたことに気付いた。

 

「夢・・・・・・?」

 

今まで見ていたものは夢だったのか、そう思った紅葉だったが・・・・・・自分の右手を見てみるとその手には夢の中で穂乃果から受け取ったと思われるあの真っ白なカードが握りしめられていた。

 

「真っ白なカード・・・・・・今の俺には、お似合いかもな・・・・・・。 俺には、何も見えない。 おのれの心も・・・・・・守るべき、未来も・・・・・・」

 

紅葉は白いカードを見つめつつ、自虐気味にそう呟きながら空を見上げるのだった。




にこ
「サブタイを探せ! のコーナー! ってまだ紅葉も穂乃果も今回も来てない」


「しょうがないにゃ。 代わりに凛が来たよ」

にこ
「別にこれくらいなら1人でもできるんだけどね・・・・・・。 取りあえず、今回のサブタイをラグナが言った『決着の日』よ!」


「ラグナさんがゼッパンドンに変身する前に言った台詞だね!」


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第17話 『君を照らす太陽』

穂乃果はどこかの森の中に立っていた。

 

自分は先ほどまで病室で寝ていた筈なのに・・・・・・なぜか見知らぬ森の中にいたのだ。

 

「ここ、どこだろう?」

 

自分は夢でも見ているのだろうかと考える穂乃果だったが、ただの夢にしてはなんだか妙にリアルな気がしてならなかった。

 

すると、穂乃果の耳に聞き覚えのあるメロディーが聞こえ、彼女はそれがすぐに紅葉がよく演奏するオーブニカのメロディーであることに気付く。

 

「これって・・・・・・お兄ちゃん!!?」

 

穂乃果はメロディーを聴くと「近くに紅葉がいるのかもしれない」と思い、メロディーする方向へと必死に駆け出して行き、音楽の聞こえる場所に辿り着くとそこには確かに紅葉がいた。

 

「お兄ちゃんっ・・・・・・!!」

 

紅葉の姿を発見するや否や明るい表情を取り戻した彼女はすぐにでも紅葉に抱きつきたい衝動に駆られるが・・・・・・。

 

紅葉の隣に、1人の女性が座っていることに気付いた。

 

「あの人は・・・・・・」

「~♪」

 

その女性は紅葉のオーブニカの演奏と合わせて歌っており、穂乃果はよく、紅葉はオーブニカの演奏をすると隣に座って自分もそれに合わせて歌う為、その光景を見て驚きを隠せないでいた。

 

しかも、紅葉とその女性・・・・・・ナターシャは妙に親しくしており、穂乃果は自分の中でモヤっとした気持ちが沸き上がってくるのを感じたが・・・・・・ナターシャはそんな彼女の存在に気付くと、穂乃果に向かって手を振ってこちらに向かって来たのだ。

 

「えっ!? えっ!? あ、あの・・・・・・」

「高坂 穂乃果ちゃんだよね?」

 

ナターシャに名前を尋ねられ、穂乃果はどうしてナターシャが自分の名前を知っているのか不思議に思いつつも、「は、はい」と彼女は頷く。

 

「私が、お兄さん・・・・・・紅葉と仲良くしてるの見て嫉妬しちゃったかな?」

「・・・・・・少し・・・・・・」

 

穂乃果は言いづらそうにしながらも、ナターシャの質問に素直に応え、そんな彼女の返答を聞いてナターシャは笑みを浮かべながら「そっか」と頷く。

 

「でもね、嫉妬する必要なんかないよ。 だってこれは、あなたの記憶でもあるんだから」

「えっ・・・・・・?」

「私は、あなた。 あなたはね、私の生まれ代わりなんだよ?」

「えっ、えぇ!!?」

 

そんなナターシャのいきなりの告白に衝撃を受ける穂乃果だが、「んっ?」すぐに気になる部分があったことに気づき、「ちょっと待って」とタンマをかけて少しだけ考え込む。

 

「あなたが私の生まれ変わりなら、なんでこんな風に会話できてるの? それに、お兄ちゃんも・・・・・・」

 

生まれ変わりと言ってもそれは結局同一人物であることとほぼ変わりないので、生まれ代わりなのだとしたらなんでこんな風に分裂してお互いに喋ることが可能なのだろうか?

 

それに彼女が自分の前世で先ほど紅葉とイチャイチャしていたのがナターシャの記憶なら、なぜ紅葉は今と変わらない姿で・・・・・・と穂乃果は疑問に思い、ナターシャに問いかける。

 

「私と同じで頭の出来悪い癖に変なとこ突いて来るな」

「えっ、なんて?」

 

ナターシャは何か小言を言っていたが、ナターシャは咳払いを1つして穂乃果の質問に応えることに。

 

「色々と複雑なのよ。 人の魂って言うのは。 ただ今回こうして私があなたの前に現れたのは・・・・・・1つだけお願いがあったから」

「お願い?」

「うん。 お願い、穂乃果。 お兄さんを・・・・・・紅葉を助けて欲しい」

 

真剣な眼差しで、ナターシャは穂乃果に頭を下げてそう頼み込み、それに当然ながら困惑する穂乃果。

 

「今、紅葉は暗闇のどん底にいる。 そんな彼を救えるのは、あなたの前世である私が言うのも変だけど・・・・・・あなただけなの」

「お兄ちゃんを・・・・・・?」

 

穂乃果が問いかけると、ナターシャは静かに頷く。

 

「所詮私は過去の人間だからね。 だから、彼のことは穂乃果、今を生きるあなたが救って欲しい」

 

ナターシャはそう言いながら右手を挙げると、一瞬世界が真っ白になり、彼女が右手を降ろすと再び辺りは森に包まれる。

 

しかし、先ほどと違うのは穂乃果とナターシャのすぐ傍で木に寄りかかって座り込んでいるボロボロの状態の紅葉だった。

 

「お兄ちゃん!?」

 

ボロボロの紅葉を心配して、すぐに駆け寄ろうとする穂乃果だったが・・・・・・ナターシャが穂乃果の肩を掴み、引き止める。

 

「待って。 彼に、これを渡して」

 

そう言ってナターシャが穂乃果に渡したのは1枚の何も描かれていない真っ白なカード。

 

「これは彼に、必要なものだから。 そして彼に、あなたが頭に思い浮かべた言葉を彼に言ってあげて?」

 

なぜこんなカードを自分に渡したのかは分からないが、穂乃果はそれを受け取り、力強く頷くと、穂乃果は倒れ込んでいる紅葉の元に駆け寄り、しゃがみ込む。

 

穂乃果の姿に気付いた紅葉は、穂乃果にゆっくりと右手を差し伸べ・・・・・・彼女のその手を掴み取り、穂乃果はカードを手渡す。

 

「あなた自身だよ。 ありのままの、あなた・・・・・・」

 

なぜこんな言葉を紅葉に言ったのかは分からない。

 

ただ、穂乃果は今の紅葉にはこう言わないといけない気がした。

 

自分らしく、ありのままの彼を受け入れると穂乃果は伝えなくてはと思ったのだ。

 

「穂乃果・・・・・・?」

 

そしてそのカードを受け取った紅葉は彼女の顔を見つめ、「穂乃果?」と首を傾げながら彼女の名を呼ぶ。

 

「戻って来て、お兄ちゃん。 私のところに・・・・・・。 私は、ありのままのお兄ちゃんを受け入れるから。 だから・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、穂乃果は病室で目を覚まし、彼女は飛び起きた。

 

「夢・・・・・・? だったの?」

 

夢から覚めた彼女は、あれは夢だったのかと疑問に思うが・・・・・・それにしては妙にリアルな感じがしていた。

 

だが、リアルだろうがなんだろうか夢は夢。

 

折角紅葉に会えたと思ったのに、夢の中の出来事であることに穂乃果は「はぁ」と溜め息を吐いてガッカリし、もう1度布団に潜って二度寝する準備に入る。

 

「お兄ちゃん・・・・・・会いたいよ・・・・・・」

 

穂乃果は小さく、そう呟いた後、オーブニカのメロディーを口ずさみながら彼女はもう1度眠りの世界へと入る。

 

その時、病室の扉が音もなくゆっくりと開き、1人の男性が病室へと入ってきたのだ。

 

「高坂さ~ん? 診察ですよぉ~?」

 

その男性・・・・・・それは・・・・・・ナース服を着てやたらとケバい化粧をしたラグナだった。

 

「ナースつっても宇宙竜 ナースのことじゃねえぞ?」

 

誰に言ってんだ。

 

「まぁ、それよりも~? 高坂さん、ちょっと血圧計りますねぇ?」

 

ラグナは穂乃果の右手首を掴み、それを受けて彼女は薄らと目を開けると・・・・・・目の前にケバい化粧をしたラグナの顔があることに気づき、「ひううう!!?」と穂乃果は恐怖におののいた顔を浮かべる。

 

そりゃ、目を開けていきなりこんなのがいたら怖い。

 

「おやぁ? 脈拍が上昇してますね? 少し熱もあるようだ。 恋の病ってやつかな?」

「は、離してよ!!」

 

穂乃果はラグナの腕を振りほどこうとするが、ラグナの腕の力は強く、そう簡単には振りほどけない。

 

「なぜマスコミに真実を公表しない? ウルトラマンオーブには失望した、奴は人類の敵でありこの星から排除すべきだと・・・・・・君がそう言えば人類は一斉にオーブを敵視する。 そうすれば奴は一貫の終わりよ・・・・・・」

「それは真実じゃないもん!!」

 

穂乃果はそう言い放ってなんとかラグナの腕を振り払うことに成功し、ベッドから立ち上がってラグナから距離を取る。

 

「私はオーブに失望なんてしてない。 それに、オーブは敵なんかじゃないよ! きっと、彼は自分の力の大きさに苦しんでるんだよ・・・・・・」

「なぜそんなことがお前に分かる? お前にオーブの何が分かるって言うんだぁ?」

「そんなの分かんないよ!! 分かんないけど・・・・・・でも、なんとなくだけど・・・・・・オーブが苦しんでいたのは・・・・・・分かるんだ・・・・・・」

 

穂乃果は顔を俯かせながら・・・・・・けれどもハッキリと、力強くラグナにそう言い放ち、それを受けたラグナは「はぁ」と呆れたような溜め息を吐く。

 

「全く、訳の分からんことを・・・・・・」

「あなたこそ、どうしてそんな風にオーブを追い込みたいの?」

 

穂乃果はラグナにそう尋ねるが、ラグナは穂乃果の質問には何も応えず、背を見せてその場を立ち去ろうとする。

 

「もしかして、お兄ちゃんと何か関係があるの?」

「なぜそう思う?」

「・・・・・・それは・・・・・・」

 

穂乃果はなぜラグナはそんな風にオーブを追い込みたいのか分からず、その理由を尋ねてみたのだが・・・・・・ラグナは逆に穂乃果に質問を投げかけ、返答に困った彼女は口ごもってしまう。

 

「それもなんとなく・・・・・・かっ。 フン、あんな男の話なんてどうでもいいだろ。 それに、アイツはお前のことを置いて逃げ出した」

「どうでもよくなんかないよ!! きっと、何か事情があるんだ・・・・・・。 お兄ちゃんは帰って来るって、私は信じる。 だって、私が本当に危ない時は・・・・・・何時だって、来てくれるから・・・・・・」

 

そう語る穂乃果に対してラグナは「フン」と鼻で笑い、蛇心剣を鞘から引き抜いて振り返りざまに蛇心剣を振るう。

 

「ひゃっ!!?」

 

間一髪、穂乃果は後ろに下がることで蛇心剣による刃を避けたのだが・・・・・・その際、台の上にあったマトリョーシカが斜めに切り裂かれ、床に落下。

 

そしてラグナは・・・・・・穂乃果の目の前で魔人態へと変身。

 

それを受け、初めて「無幻魔人 ラグナ」の姿を見た穂乃果は衝撃を受け、目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。

 

「っ!!? なに・・・・・・その姿・・・・・・?」

『マジで危ない時は来てくれる・・・・・・かっ。 本当に来てくれるか、試して見ようじゃないか?』

 

ラグナは蛇心剣を構え、それを穂乃果へと容赦なく振り下ろそうとする。

 

『マトリョーシカの次は、お前の番だ』

「っ、お兄ちゃん・・・・・・!!!!」

 

咄嗟に目を瞑り、紅葉のことを呼ぶ穂乃果。

 

そんな穂乃果にラグナは構わず容赦なく蛇心剣を振り下ろすのだが・・・・・・。

 

その時、一閃の光がラグナの目の前に出現し、その光の中から紅葉が現れて蹴りを放ち、ラグナを引き離すと紅葉は恐怖で気を失った穂乃果を抱きかかえて素早くラグナから離れる。 

 

『遅かったな。 あと少しで妹ちゃんはあの世行きだったぞ?』

「・・・・・・」

 

紅葉はラグナの言葉に何も返さず、彼はそのまま素早い動きで穂乃果を連れ、病室を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、音ノ木坂のアイドル研究会部室では・・・・・・。

 

「た、た、大変です!!」

 

部室にはにこ、真姫、凛、海未、希が集まっていたのだが・・・・・・そこに慌てた様子の花陽が駆けつけ、一同は「またこのパターンか」と思いつつも代表して海未が「どうかしたのですか?」と問いかけると、花陽は深呼吸をして一旦落ち着いてから、みんなに話し始める。

 

「自衛隊が、次にウルトラマンオーブが現れたら最優先攻撃対象にするってネットでニュースになってます!!」

「えっ、それって・・・・・・マジなの?」

 

にこ達はスマホを取り出してネットのニュースを見てたところ、確かに軍隊が次にオーブが現れたら攻撃することが発表されており、海未は「流石に総計では・・・・・・?」と疑念を抱かずにはいられなかった。

 

「そ、そうだにゃ! もうちょっと考えてくれても・・・・・・」

「落ち着きなさいよ、凛。 確かに、凛や海未の気持ちも分かるけど・・・・・・自衛隊の人達だってきっと、ただこれ以上犠牲を出したくないだけだと思う・・・・・・」

 

真姫は凛に落ち着くように言い、そんな彼女の軍隊に対する意見に希も頷いて同意する。

 

「そうやねぇ。 何かを守るってことは・・・・・・何かを傷つける覚悟を持つことやと思うし・・・・・・」

「・・・・・・何かを守る覚悟と、何かを傷つける覚悟・・・・・・」

 

そんな希の呟きを聞いたにこは、これまでのオーブの戦いを思い出し・・・・・・希の言っていたこと、それはオーブにも当て嵌まるのかもしれないと考え込む。

 

「オーブも、何かを守る為に、何かを傷つながら戦ってきた・・・・・・のかも、しれないわね」

「にこ?」

「正義にだって、光と闇の面がある。 そういうことなのかもね・・・・・・」

 

静かにボソッとそう呟くにこ。

 

そんな彼女の呟きの声が聞こえた海未達は、彼女の言葉にどこか共感したかのような表情を浮かべていた。

 

そんな時・・・・・・。

 

誰かが部室に向かって駈け出している音が聞こえ、部室の扉が勢いよく開くと慌てた様子の絵里とことりがやってきたのだ。

 

「今度はアンタ等かい!!」

「み、みんな・・・・・・大変よ!!」

「穂乃果ちゃんが、穂乃果ちゃんが・・・・・・病室から消えたって!!」

 

ことりからの報告に、海未達は「えぇ!!?」と驚きの声をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ・・・・・・んんっ」

 

その後、穂乃果が目を覚ますとそこは森の中に立てられた休憩所の建物のような場所で、自分は長い椅子のようなもののところで寝かされており、誰かに毛布をかけて貰っていることに気付いた。

 

「気がついたか?」

「お兄・・・・・・ちゃん・・・・・・?」

 

目を覚ますと、紅葉が目の前にいることに気付いた穂乃果は「お兄ちゃん!!」と彼のことを呼びながら飛びつくように、抱きつき、彼女はわんわん泣き出してしまった。

 

「うわあああああん!! お兄ちゃんがいなくて、いなくて・・・・・・ずっと寂しかったんだからね!! うっ、うぅ・・・・・・ぐすっ。 会いたかったよぉ・・・・・・」

「・・・・・・すまない」

 

紅葉はそんな彼女をあやすように謝罪をしながら背中を摩る。

 

「俺のせいで、お前を危険な目に合わせちまったな」

「うぅ・・・・・・えっ?」

 

紅葉は暗い表情を浮かべながら、自分のせいで穂乃果はラグナに狙われたのだと自分を責め、さらには先ほど病室から持って来ていた唯一ラグナに斬られなかった最後の小さなマトリョーシカを取り出し、あのマトリョーシカが壊されてしまったことに対しても、彼は謝罪した。

 

「これ、お前が取ってたんだろ? 病室まで持って来てたってことは、結構大切にしてたんじゃないのか?」

「それは・・・・・・」

「俺といると、みんな不幸になるのかもな。 これ以上、大切なものを傷つけたくないのに・・・・・・」

 

悲しそうな瞳で紅葉は穂乃果の顔をジッと見つめながらそう言うのだが、そんな彼に、穂乃果は「そんなことない!!」と言い放つ。

 

「お兄ちゃんは何時も、私のことを助けてくれる!! 私だけじゃない、海未ちゃんやことりちゃん、それに、μ'sのみんなのことだって、お兄ちゃんは何時でも助けてくれた。 だから・・・・・・だから・・・・・・」

 

穂乃果は紅葉の右手をギュッと自分の両手で握りしめ、彼女は真剣な眼差しで紅葉に言い放つ。

 

「自分をそんなに責めないで?」

「だけど・・・・・・俺は、助けてくれるって言うけど・・・・・・ギャラクトロンの時、俺はお前を助けられなかった。 俺はお前のお兄ちゃんなのに・・・・・・」

 

それでも穂乃果の言葉は紅葉には届かず、むしろ逆に彼は穂乃果を助けられなかったと自分自身を責め立ててしまう。

 

だが、穂乃果も負けじと、「違うったら違う!!」と必死に紅葉の言葉を否定し、首を横に振る。

 

「私が今回の事件で怪我をした時、身体が凄く痛かったし・・・・・・怖かった。 でもね、お兄ちゃんが来てくれて・・・・・・私の手を握ってくれて・・・・・・。 それが私の勇気になった、力になったんだよ!!」

 

しかし、元はと言えば紅葉・・・・・・自分自身が変身したオーブがギャラクトロンに囚われた穂乃果ごと光線を撃ち込んだことが原因。

 

だから穂乃果の手を握ったから、彼女の勇気になった、力になったという言葉に複雑な感情を抱く紅葉。

 

だが、次に穂乃果から出た言葉は紅葉に取って意外なものだった。

 

「だから、私はお兄ちゃんと、オーブに助けられたんだ」

「・・・・・・えっ?」

 

紅葉に助けられたというのならば、先ほどの話を聞けば分かる。

 

しかし、オーブに助けられた・・・・・・というのは紅葉にとって意外でしかなかった。

 

オーブが穂乃果ごとギャラクトロンを倒したせいで、穂乃果は危うく死にかけ、大怪我を負い、そのせいでμ'sはラブライブに参加できなくなった。

 

なのに・・・・・・穂乃果はオーブに助けられたと語り、紅葉は驚きを隠せないでいた。

 

当然だろう、普通ならばオーブのことを恨んで当たり前なのだから。

 

「恨んでないってのか? オーブのことを・・・・・・そのせいで、穂乃果は死にかけて大怪我して、ラブライブにも出場できなくなったし・・・・・・」

「ラブライブはきっとまた次があるよ!! それに、確かにオーブはギャラクトロンを倒した時に私のことを傷つけたかもしれない。 でも、こうして今無事でいられるのも、オーブのおかげなんだよ? 例え世界中がオーブの敵になっても、私はオーブを信じたい、ううん、信じる! そして、オーブに救いの手を私は差し伸べたい」

 

笑みを浮かべながら、紅葉に話す穂乃果。

 

「どうして、そんな風に言えるんだ。 オーブのこと、そんなに知らないだろ」

「うん、オーブのことはあんまり知らないよ。 でも、どこか・・・・・・前々から感じてたんだ。 お兄ちゃんとなんか似た雰囲気あるなって・・・・・・」

 

それを聞いて一瞬正体がバレたのかと思い、ドキリとする紅葉だったが・・・・・・穂乃果の様子を見るに、どうやら自分がオーブであることはまだ気付いていないらしい。

 

「たったそれだけの理由で・・・・・・?」

「それだけでも、私にとっては十分だよ! だって私は、お兄ちゃんのことも信じてるからっ!」

 

穂乃果はそう言って紅葉に対して微笑むと、穂乃果はマトリョーシカを持つ紅葉の左手を握り、最後に残った小さなマトリョーシカを紅葉に預ける。

 

「マトリョーシカはお母さんが持って来てくれたんだ。 祖先のお婆ちゃんが残した幸運の御守りだって! 最後の1つは、お兄ちゃんが持ってていいよ?」

 

穂乃果は紅葉の握った最後のマトリョーシカの1つを見つめながら、それを彼に預ける。

 

「どうせ、中身は空っぽだろう?」

 

しかし、そんな紅葉の言葉を、穂乃果は首を横に振って否定する。

 

「ううん、お母さんが言ってた。 最後の1つには、希望が残されてるんだって!!」

「・・・・・・希望・・・・・・」

「うん」

 

すると、穂乃果は再び紅葉の右手を自分の両手で握りしめ、彼女はマガオロチの時・・・・・・母に言われた言葉を思い出す。

 

「握った手の中、愛が生まれる・・・・・・か」

「なんだ、それ?」

「お兄ちゃんは聞いたことなかったっけ? お母さんが言うには、祖先のお婆ちゃんの遺言らしいよ? そのマトリョーシカの御守りを残した、ルサールカのお婆ちゃん。 ちなみに私達にとってはひいひいお婆ちゃんに当たるそうだよ?」

 

それを受け、紅葉は「えっ」と目を見開き、驚愕した顔を浮かべる。

 

「ルサールカ・・・・・・」

 

すると、穂乃果は立ち上がって紅葉に背を向けると、落ち込む彼を励ますように・・・・・・1人・・・・・・あのオーブニカのメロディーを口ずさんで歌い出す。

 

「~♪」

「穂乃果・・・・・・」

 

その時、最後に残ったマトリョーシカが「パキ」という音を立てながら割れ、紅葉はその中に1枚の写真が入っていることに気付く。

 

彼はそれを取り出すと・・・・・・そこにはオーブニカを吹く紅葉と、隣に座るナターシャの姿が映った白黒の1枚の写真があったのだ。

 

「・・・・・・ナターシャ・・・・・・?」

 

その写真を見た紅葉はさらに驚愕し、ナターシャはかつてのマガゼットンとの戦いの際に起きた爆発に巻き込まれ死んだと思われていた。

 

だが・・・・・・。

 

(それじゃ、母さんや・・・・・・雪穂に・・・・・・それに穂乃果は・・・・・・!! ナターシャの、子孫・・・・・・?)

 

紅葉は穂乃果の背中を見つめ、自分の母や雪穂、それに穂乃果がナターシャの子孫であることに気づき、彼は静かに涙を流す。

 

「っ・・・・・・うぅ・・・・・・はは。 とんだ巡り合わせだな・・・・・・」

 

かつての大切な人だったナターシャ・・・・・・その子孫の義理の息子になるとは、なんとも奇妙なものだと感じる紅葉。

 

いや、もしかすればこうなる運命だったのかもしれない。

 

なんにせよ、穂乃果がナターシャの子孫だとするならば・・・・・・それはナターシャがあの爆発から生きていたことを意味し、彼女はあの惨劇を生き抜き、命を繋いでいたのだ。

 

未だに歌い続ける穂乃果を、紅葉は力強く、後ろから抱きしめた。

 

「穂乃果ッ!!」

「ひゃっ!!? お、お兄ちゃん・・・・・・?」

 

それに驚き、顔を真っ赤にする穂乃果。

 

「ど、どうしたの・・・・・・?」

「うっ。うぅ・・・・・・ありがとう、穂乃果。 生まれて来てくれて、ありがとう」

 

すると、紅葉はゆっくりと未だに戸惑う穂乃果を自分の方へと振り向かせると、彼は「頼みがある」と穂乃果にあることを頼もうとする。

 

「・・・・・・なぁに?」

「今度オーブが現れたら、あのメロディーの歌を、聞かせてやって欲しい。 オーブを、救ってやって欲しいんだ・・・・・・」

「・・・・・・うんっ」

 

それを受け、穂乃果は快く・・・・・・笑顔で力強く頷く。

 

その時、空から雷が落ちたかのような音が鳴り響き、紅葉と穂乃果が音のした方へと顔を向けるとそこでは上空に巨大なワームホールのようなものが出現しており、異常に気付いた紅葉はオーブニカを穂乃果に手渡す。

 

「穂乃果、これを持っていて欲しい。 俺は、また・・・・・・お前の元に帰って来る。 必ず」

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

紅葉は穂乃果にそう言い残すと、彼はワームホールの場所へと駆け出して行き、そんな彼の背中を見つめながら・・・・・・穂乃果はポツリと呟く。

 

「まさか、お兄ちゃんは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ワームホールから赤い黒い稲妻のようなものが落ち、地上へと「合体魔王獣 ゼッパンドン」が降り立った。

 

『ピロロロ・・・・・・ゼッパンドン・・・・・・!』

「ラグナ・・・・・・」

 

そこに丁度紅葉が駆けつけ、ラグナは紅葉の姿を見ると、彼を「クイクイ」と右手で挑発する。

 

『全力で来い。 俺に太刀打ちできるのは闇のカードだけだ・・・・・・!』

 

紅葉は、カードホルダーからベリアルのカードを取り出し、それをジッと見つめる。

 

『私はオーブを信じたい、ううん、信じる! そして、オーブに救い手を私は差し伸べたい』

『だって私は、お兄ちゃんのことも信じてるからっ!』

 

穂乃果から受け取った言葉・・・・・・それを頭に思い浮かべながら、紅葉はオーブリングを取り出す。

 

「俺はもう、闇を恐れない。 この勇気は、穂乃果がくれたものだから・・・・・・!! だから!! 闇を抱きしめて見せる!!」

 

紅葉は最初に「ゾフィー」のカードをオーブリングにリード。

 

「ゾフィーさん!!」

『ゾフィー!』

 

続けて、紅葉は「ウルトラマンベリアル」のカードをオーブリングにリードして読み込ませる。

 

「ベリアルさん!!」

『ウルトラマンベリアル!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

「光と闇の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

 

ゾフィーとベリアルの姿が重なり合い・・・・・・紅葉は2人の力を融合させた「ウルトラマンオーブ サンダーブレスター」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!』

 

オーブはゼッパンドンの目の前に降り立ち、ファイティングポーズを取って構える。

 

『闇を抱いて、光となる!!』

『ヒハッ♪ ヒハハハハ!! 遂に使ったか!! それで良いんだよ紅葉くんよォ!! アハハハ!! ゴッホゴッホ!!』

 

ラグナは紅葉がベリアルのカードを自分に対して使って来たことが余程嬉しかったのか、妙にハイテンションな様子を見せる。

 

『ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!!』

 

雄叫びを上げながらオーブはゼッパンドンへと向かって行き、ゼッパンドンの胸部を何度も殴りつけるが・・・・・・ゼッパンドンは微動だにもせず、逆にオーブを殴りつける。

 

『グゥ・・・・・・ハアア!!』

 

オーブはゼッパンドンに掴みかかって膝蹴りを繰り出すが、やはりゼッパンドンにはあまり効いておらず、ゼッパンドンは頭部の両脇にある口のような器官から発射する紫色の破壊光線をオーブに撃ち込み、それを受けて大きく後退するオーブ。

 

『ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』

 

それでもオーブはゼッパンドンに向かって行き、ゼッパンドンの顔を左手で掴みあげると右拳で素早く何度も何度も拳をゼッパンドンの顔面に叩き込んで行き、それを受けて流石にたじろくゼッパンドン。

 

『グウウウゥ・・・・・・!!』

 

それをゼッパンドンは両腕を振るってなんとかオーブの腕を振り払い、右手でオーブの胸部を殴って引き離すことに成功。

 

だが、その際オーブはヤクザキックをゼッパンドンの腹部に叩きこみ、ゼッパンドンはほんの少しだけフラついてしまう。

 

その僅かな隙を見逃さず、オーブは赤い色の光輪を作り出し、それを相手に投げつける「ゼットシウム光輪」を放つ。

 

『ゼットシウム光輪!!』

『フン』

 

しかし、ゼッパンドンは瞬間移動で姿を消すことでそれを躱し、同じ場所に再度出現。

 

すると、インナースペース内のラグナが「ゼットン」のカードを取り出し、ダークリングにリードさせて読み込ませる。

 

『ゼットンよ』

『ゼットン!』

 

続けてラグナは「宇宙忍者 バルタン星人」というセミに酷似した宇宙人のカードをダークリングにリードさせる。

 

『バルタン星人よ』

『バルタン星人!』

 

そしてラグナはダークリングを掲げる。

 

『お前達の力も、頂くぞ!!』

 

するとゼットンとバルタンの姿が重なり合い、ゼッパンドンは姿を変え、2体の姿を融合させたような1体の怪獣・・・・・・「ゼットンバルタン星人」へと姿を変える。

 

『超合体、ゼットンバルタン星人・・・・・・!』

『ゼットンバルタン・・・・・・!』

 

ゼットンバルタンは両腕のハサミを構えると、こちらに向かって襲いかかろうとして来るオーブに重力嵐を起こし、大量の砂を巻き上げてオーブの視界を塞ぐ。

 

『ウオッ・・・・・・グゥ・・・・・・!!?』

 

さらにそこからゼットンバルタンは両腕のハサミから放つ「白色破壊光線」と胸部から放つ1兆度の火球をオーブに撃ち込み、オーブは両腕を交差してなんとかゼットンバルタンの攻撃に耐える。

 

『チッ、マガオロチの力を使ってるゼッパンドンの方が火力自体は上か』

『ウガアアアアア!!!!』

 

ゼットンバルタンによる攻撃に苛立ったのか、オーブは雄叫びをあげながらゼットンバルタンに掴みかかるのだが・・・・・・ゼットンバルタンは瞬間移動で姿を消し、次の瞬間にはオーブを囲むように3体に分身したゼットンバルタンが現れる。

 

『ゼットンバルタン・・・・・・!』

 

そして同時に3体のゼットンバルタンは白色破壊光線を放ち、それら全てをオーブに直撃させてオーブを大きく怯ませることに成功。

 

『ウグォ・・・・・・!!?』

 

流石に3体分の光線となるとダメージを全く受けないという訳にはいかないようだ。

 

ゼットンバルタンは姿を変えて再びゼッパンドンになると紫色の破壊光線を続けざまにオーブに撃ち込み、オーブは大きく後退。

 

『ウアアアアア!!!!』

 

すると、オーブは近くにあった電波塔を引っこ抜くと、それを手に持ってゼッパンドンを殴りつける。

 

『良いねぇ~、その暴れっぷり、惚れ惚れする・・・・・・!』

 

そのままオーブは電波塔が壊れるまでゼッパンドンを殴りつけるのだが、ゼッパンドンはせいぜいほんの少しよろめく程度で大したダメージは無く・・・・・・ゼッパンドンはオーブの腹部に蹴りを入れて自分から引き離す。

 

『ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛・・・・・・!! ゼットシウム・・・・・・光線!!!!』

『ゼッパンドンシールド!!』

 

右手に闇、左手に光のエネルギーをチャージした後、両手を十字に組んで発射する必殺光線「ゼットシウム光線」をオーブはゼッパンドンに撃ち込むのだが・・・・・・ゼッパンドンは「ゼッパンドンシールド」というバリア技を発動させてオーブのゼットシウム光線をあっさりと防いでしまう。

 

『ッ!! ウガアアアアア!!!!!』

 

オーブはゼッパンドンへと向かって行き、ゼッパンドンに向かって拳を振るうのだが・・・・・・ゼッパンドンはそれもゼッパンドンシールドで防ぐ。

 

だが、それでも構わずゼッパンドンシールドを何度も殴りまくり、一切攻撃の手を緩めようとはしなかった。

 

『どうした!? まだまだこんなもんじゃねえだろ、紅葉ィ!!』

 

その時、オーブの出現を受けて出撃した3機の戦闘機が現れ、オーブを撃退するために攻撃態勢に入る。

 

『ウルトラマンオーブを確認! 先ずはオーブに攻撃を集中せよ!』

『本当に、良いんですか?』

『良いんだ・・・・・・!!』

 

しかし、戦闘機のパイロットもオーブを攻撃することを躊躇しており、それでも軍の決定である以上従わざる終えない為、戦闘機は一斉にミサイルなどでオーブを攻撃し始める。

 

『ウオッ!?』

 

それによって僅かに出来た隙を突き、シールドを解除すると同時に紫の破壊光線でオーブを吹き飛ばすゼッパンドン。

 

『ウアアアアア!!!!?』

「オーブ・・・・・・!」

 

そこへ丁度、紅葉との約束を果たす為に、オーブの戦いの様子を見守れる場所へと駆けつけて来た穂乃果。

 

それと同時に病院からいなくなった穂乃果を探していたにこ、希、海未が丁度その場に現れ、すぐさま彼女等は穂乃果の元へと駆け寄る。

 

「穂乃果!! なんでこんなところにいるんですか!!?」

「おぉ~、にこっちの予想大当たりやん。 ほんまにオーブの近くにおるとはなぁ・・・・・・」

「別に。 たまたまよ」

 

どうやらオーブが出現したことで、「もしかしたら穂乃果はオーブの近くにいるのでは?」とにこが予想したらしく、それで海未達はこの場にやってきたのだ。

 

また、にこはゼッパンドンと戦うオーブの姿を見つめ、その荒々しい戦いっぷりを見て彼女はオーブが又もや暴走していることに気付く。

 

「しっかりしなさいよ。 なにまた暴走してんの・・・・・・!」

 

にこは拳を強く握りしめながらそう呟き、また穂乃果は海達の姿を見て「なんでここに・・・・・・」と彼女達がここにいることを不思議に首を傾げる。

 

「みんな・・・・・・なんでここに・・・・・・」

「それはこっちの台詞ですよ!! ここは危険です!! 早く逃げましょう!!」

 

海未は一刻も早くここから逃げようと言うのだが、穂乃果はそれを首を横に振って拒否し、逆に彼女は一歩前に出て、オーブに呼びかける。

 

「オーブ!! 私は、信じてるよ!! どんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても、私の命を救ってくれたあなたのこと・・・・・・ずっと信じてるから!! 変わることを恐れないで!! 突き進む勇気を持って・・・・・・!! ファイトだよ!! ウルトラマンオーブ!!」

 

最後の言葉は、絵里が以前自分に言ってくれた言葉・・・・・・。

 

絵里は自分に、「変わることを恐れないで突き進む勇気を穂乃果がくれた」と言ってくれた。

 

だから穂乃果は、絵里が言うように、誰かにその勇気を与えることが自分にできるなら・・・・・・オーブにも同じように、その勇気を与えたいと思った。

 

それを受け、オーブはゆっくりと穂乃果の方へと振り返り、顔を向ける。

 

『ゴチャゴチャうるせえ!! 今俺がオーブと遊んでんだろうがァ!!』

 

するとゼッパンドンは紫の破壊光線と口から吐く火球「ゼッパンドン撃炎弾」を穂乃果達を巻き込むようにオーブに次々と撃ち込んで行き、穂乃果達はその際に起きた爆発の炎に飲み込まれてしまう。

 

『ヌオオ・・・・・・グウウウ!!!!?』

『アハハハ!! アーハッハッハッハ!! ゲホッ!! 滑稽だなぁ!!? お前はまた大切なものを守れなかったんだ!! あばよ、ウルトラマン!!』

 

その際、ゼッパンドンの攻撃による衝撃が強すぎて戦闘機も待避し、ゼッパンドンはそのままオーブの姿が確認出来なくなるまで次々と光線と火球を撃ち込みまくる。

 

『ヒハハハハ・・・・・・!! あっ?』

 

一度攻撃の手を止め、オーブが倒れ伏している姿を確認しようとするゼッパンドンだったが・・・・・・その時、煙が晴れ、その煙の中から現れたオーブの姿を見て不審に思うラグナ。

 

そこには、オーブが肩膝を突いて穂乃果達をゼッパンドンの攻撃から守っている姿があったのだ。

 

「皆さん、観てますか~!? オーブが、ウルトラマンオーブが私達のことを守ってくれました!! 彼が私達を救ってくれたんです!!」

 

そんなオーブの姿をいつの間にかビデオカメラを取り出していた希が撮影しており、それにギョッとした顔を浮かべて驚くにこと海未。

 

「希、アンタいつの間に・・・・・・」

「こんなこともあろうかと思ってな♪ 勿論、ネットで生放送中やで!」

 

色々とツッコミたい気持ちはあるが・・・・・・それでも、希に「やるじゃない」とサムズアップするにこ。

 

そして、オーブと穂乃果は互いに見つめ合い、オーブが頷くと・・・・・・穂乃果も頷き返し、紅葉に言われたように・・・・・・オーブニカのメロディーを口ずさむ。

 

「~♪」

『う、うぅ、このメロディーは・・・・・・!!』

 

それに対し、インナースペース内のラグナはそのメロディーを聴いて頭を抑える。

 

やがてオーブのインナースペース内でも、紅葉が吹くオーブニカのメロディーが流れ、彼は1枚の真っ白なカードを取り出して見つめる。

 

『おのれを信じる勇気、変わることを恐れないで突き進む勇気、それが力になる・・・・・・!!』

 

紅葉が力強く、そう言い放つと何も描かれていなかったカードは聖剣を構えた1人のウルトラマンの姿の絵が浮かび上がる。

 

『これが本当の俺・・・・・・!! ファイトだ、俺!!!!!』

 

そして・・・・・・紅葉はオーブリングにそのカードをリードして読み込ませる。

 

『覚醒せよ! オーブオリジン!!』

 

すると、ゼッパンドンの尻尾部分から1つの光輝く剣のようなものが出現し、オーブの方へと飛んでいく。

 

『この光は・・・・・・!!?』

 

咄嗟にラグナ・・・・・・ゼッパンドンがその光の剣に手を伸ばすが、それは届かず、光の剣はオーブのカラータイマーの中へと吸収される。

 

それと同時に、インナースペース内の紅葉の持つオーブリングから1つの短剣、「オーブカリバー」が飛び出すと紅葉はそれを掴み取る。

 

『オーブカリバー!!』

 

そこからさらに中央のカリバーホイールという中央のリング部分を紅葉は回し、ハーモニカのメロディーのようなものが流れる。

 

そして、オーブの姿は変わり・・・・・・インナースペース内のオーブカリバーよりも巨大になった聖剣、「オーブカリバー」を構え、銀色の身体で上半身は主に赤いライン、下半身は主に黒いラインの入った姿・・・・・・。

 

これこそがオーブ本来の、真の姿・・・・・・。

 

紅葉は「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」へと変身したのだ。

 

『バカな・・・・・・バカな!! その姿は・・・・・・!!』

 

その姿を見て、驚愕するラグナ。

 

『俺の名はオーブ!! ウルトラマンオーブ!!!! 銀河の光が、我を呼ぶ!!!!』

 

挿入歌「閃光Resolution」

 

その姿を見ると、穂乃果の頭の中でノイズのようなものが鳴り響き・・・・・・彼女は頭を抑え、頭の中にルサールカで戦うオーブの姿が頭に思い浮かぶ。

 

「っ、今のは・・・・・・私の、遠い・・・・・・記憶・・・・・・? そっか、ルサールカにいたかもしれないウルトラマンって・・・・・・」

 

それは、夢の中で出会った自分の前世と言っていた少女の記憶であることを、穂乃果はすぐに理解した。

 

そして、ルサールカにいたかもしれないと思われたウルトラマンが、オーブであることも。

 

「頑張れ・・・・・・頑張れえええええ!!!! ウルトラマンオーブウウウウウ!!!!」

 

だが、それを気にするのは今は後だ。

 

穂乃果が全力でオーブに声援を送ると、それに続くように海未達もオーブに声援を送る。

 

「しっかりオーブの勇士撮ってあげるからなー!!」

「頑張って、オーブ!!」

「負けたら承知しないからね!!」

 

穂乃果達の声援を受け、オーブは頷き、オーブカリバーを構えてゼッパンドンへと向かって行く。

 

ゼッパンドンは火球「ゼッパンドン撃炎弾」を次々とオーブに撃ち込んで行くが、オーブはオーブカリバーを振るってそれらを切り裂き、一気に詰め寄るとオーブカリバーを振るってゼッパンドンを斬りつける。

 

『シェア!!!!』

「グルアアアアア!!!!?」

 

それを受けてゼッパンドンもゼットンバルタンに姿を変えて3体に分身してオーブを取り囲み、両腕のハサミから光線を放つが、オーブは上空に飛んで攻撃を回避。

 

するとインナースペース内の紅葉はリング部分のカリバーホイールを回して風属性の紋章の部分で止め、トリガーを引き、再度ホイールを回すとオーブはオーブカリバーを振るう事で巨大な竜巻を起こす「オーブウインドカリバー」を3体のゼットンバルタンに繰り出す。

 

『オーブウインドカリバー!!!!』

 

その竜巻によってゼットンバルタンの3人を上空に巻き上げ、身動きの取れなくなった3体をオーブは纏めてオーブカリバーで切り裂く。

 

それによって2体の分身ゼットンバルタンは消滅し、本体であるゼットンバルタンは身体中から火花を散らしながら地上に落下。

 

同じくオーブも地上に降り立ち、ゼットンバルタンはゼッパンドンに姿を変えながら立ち上がる。

 

『ゼッパンドン・・・・・・!!』

 

ゼッパンドンは瞬間移動でオーブの背後に回り込み、紫の破壊光線を放つが、オーブは振り返りざまにオーブカリバーで光線を弾き、インナースペース内の紅葉はカリバーホイールを回して土属性の紋章の部分で止め、トリガーを引いて再びトリガーを回す。

 

『オーブグランドカリバー!!!!』

 

オーブはオーブカリバーを地面に突き立て、地を這いながら円を描くような光線を2発同時に放つ「オーブグランドカリバー」を繰り出す。

 

『ゼッパンドンシールド!!』

 

しかし、それを2つのゼッパンドンシールドで防ごうとするゼッパンドンだが、オーブグランドカリバーはシールドごと突き破ってゼッパンドンに直撃し、ゼッパンドンは大ダメージを受ける。

 

『ヌガアアア!!!!? まさか、シールドを破るとは・・・・・・!!』

 

そして紅葉はオーブカリバーをオーブリングにリードさせて読み込ませる。

 

『解き放て! オーブの力!!』

 

さらにカリバーホイールを紅葉は高速回転させてからトリガーを引き、オーブはオーブカリバーに宿る4つの属性とオーブ自身が持つ光と闇の力を結集し、掲げたオーブカリバーを円を描くように振るい、オーブカリバーを相手に向けて放つ虹色の必殺光線・・・・・・「オーブスプリームカリバー」をゼッパンドンへと放つ。

 

『オーブスプリームカリバー!!!!!』

『グウウウ・・・・・・ガアアアアアアアア!!!!!?』

 

オーブスプリームカリバーの直撃を受けたゼッパンドンは倒れ、爆発。

 

見事、オーブはゼッパンドンを倒し・・・・・・ラグナに勝利したのだった。

 

それによって変身が強制解除されたラグナはボロボロの状態で地面に倒れ込み、自身の手から滑り落ちたダークリングに向かい、必死に手を伸ばすのだが・・・・・・。

 

ダークリングは消え去り、それを受けてラグナは悲鳴にも似た声をあげるのだった。

 

「あ、あ、アアアアアア・・・・・・!!!!」

 

オーブが勝利したことで、海未と希は素直に喜び、にこも黙り込んだままではあったものの、どこか嬉しそうな顔をしていた。

 

そしてオーブは穂乃果に視線を下ろし、彼女にお礼を言うかのように頷いた後、オーブは空へと飛び立つのだった。

 

「オーブ、ありがとう・・・・・・守ってくれて・・・・・・」

「礼を言うのは、オーブの方だろうよ」

 

すると、不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、そこには紅葉がこちらに向かって歩いて来ており、穂乃果は「お兄ちゃん!!」と嬉しそうに彼のことを呼ぶ。

 

「お前がオーブのことを、闇を照らして・・・・・・救ってくれたんだ。 太陽みたいに・・・・・・」

 

紅葉は穂乃果の頭を優しく撫で、それに照れ臭そうにする穂乃果。

 

「って紅葉!!? 帰って来たんですか!!?」

 

そこで海未達も紅葉の存在に気付き、彼女達は紅葉達の元へと駆け寄る。

 

「一体どこ行ってたんですか!? 心配したんですよ!?」

「心配かけて悪かったな」

 

家出して行方知れずになっていたことを海未は怒り、それに苦笑しながらも謝罪する紅葉。

 

「謝っても、私は許してやらないわよ」

 

そんな紅葉に、ジッと彼を睨みながらそう言葉を零すにこ。

 

それはきっと、紅葉が行方知れずになったことだけじゃなく、ギャラクトロンの件なども含まれているのだろう。

 

それを察し、ドキリとする紅葉。

 

「許して欲しかったら、今度は勝手にいなくなったりせず、最後までちゃんと私達をサポートしなさい! アンタは、μ'sのマネージャーなんだから」

 

そう言われて紅葉はなんだかおかしくなり、思わず笑ってしまう。

 

「何笑ってんのよ!!」

「いえ、すいません・・・・・・。 でも、はい! 約束します」

 

するとそこへ「おーい!!」という誰かの声が聞こえ、声のする方に顔を向けるとそこではことり、花陽、凛、真姫、絵里がこちらに向かって走って来ている姿が見え、彼女達は紅葉達の元へと駆け寄って来たのだ。

 

「みんな! どうしてここに?」

「希が撮った動画を観てここに来たのよ。 穂乃果もいるみたいだったし・・・・・・」

 

穂乃果の問いかけに対して真姫が応え、凛は紅葉の姿を見て彼を指差し「あー!! 紅葉くんもいたー!!」と言いながら彼に体当たりを繰り出す。

 

「うおっ!? 何すんだいきなり!?」

「心配かけた罰だにゃー!!」

「あっ、それとオーブの件なんだけど・・・・・・」

 

また、花陽が言うには希が撮った動画のおかげで軍隊もオーブを攻撃対象から除外したらしく、それを聞いて穂乃果は「やったー!!」と隣にいた海未に抱きつき、抱きつかれた海未は「ひゃっ!?」と小さな悲鳴をあげる。

 

「あっ、そうだ! お兄ちゃんこれ」

 

穂乃果は一度海未から離れると、オーブニカを紅葉に返し、紅葉はそれを受け取る。

 

「おぉ、ありがとな、穂乃果」

「うんっ」

 

オーブニカを受け取った紅葉は、穂乃果の顔を見つめながら微笑みを浮かべるのだった。

 

(ナターシャ、君の繋いだ命は150年後の未来を生きている。 ナターシャ、安心してくれ。 これから先の未来も、俺はずっと守り続ける・・・・・・。 この星に、命が続く限り・・・・・・)

 

紅葉は空を見上げ、それに釣られるように、穂乃果も空を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数ヶ月後、第1回ラブライブにはやはり穂乃果の回復が間に合わず、出場はできず、第1回ラブライブの優勝はA-RISEとなった。

 

だが、それでも穂乃果達はμ'sの活動を続け、今は学校の放課後・・・・・・屋上で紅葉と穂乃果は2人きりになり、紅葉はオーブニカを吹き、穂乃果はそれに合わせたメロディーを口ずさんでいた。

 

「『~♪』」

 

演奏が一通り終わると、穂乃果は紅葉の右腕に抱きつき、「えへへ~」と可愛らしい笑顔を見せる。

 

「どうした? 穂乃果?」

「ううん、ただ、嬉しいなって・・・・・・お兄ちゃんとこうしていられることが」

「そうか・・・・・・」

 

そんな穂乃果の言葉に、紅葉は笑みを浮かべるのだが・・・・・・そこで紅葉は「あっ」とあることに気づき、あたふたと慌てた様子を見せる。

 

「穂乃果!! あともう少しでライブじゃないのか!?」

「あっ、そ、そうだった!!?」

 

今日は穂乃果も完全に回復したということでファーストライブの時と同じ、講堂でライブをすることになっていたのだ。

 

「あわわわ!! ど、どうしよう!? 間に合わないよ~!!」

「ったく、しょうがねえ」

 

そう言うと紅葉は穂乃果を抱きかかえる。

 

マガグランドキングの時と同じように、所謂お姫様抱っこというやつだ。

 

「ひゃっ!? お、お兄ちゃん?」

「この方が早い」

 

それに顔を赤くする穂乃果だが、その状態のまま紅葉は構わず彼女を抱えて素早く講堂へと駆け出して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、講堂では・・・・・・。

 

舞台裏では既に穂乃果以外のμ'sのメンバーが待機していたのだが、未だに穂乃果と紅葉もそこにおらず、にこは「アイツ等何してんの」とボヤいていた。

 

「うぅ、緊張する」

「ってか穂乃果ちゃん達待ってたら着替える時間がないんだけど・・・・・・凛達制服のままだよ!?」

「スクールアイドルらしくて良いんじゃない?」

 

花陽、凛、真姫がそう話し合い、にこは穂乃果と紅葉は間に合うのかと不安な気持ちを口にする。

 

「大丈夫、絶対来ますよ」

 

海未は絶対に間に合うと断言するのだが、そう言っている間にライブの時間となり、お客を待たせる訳にはいかない為、自分達だけでライブを先にやろうかと考えたが・・・・・・。

 

そこへ丁度、穂乃果を抱きかかえた紅葉が颯爽と現れる。

 

「「お待たせ!!」」

「いや、なんで紅葉は穂乃果をお姫様抱っこしてんの・・・・・・?」

「この方が早かったんで!!」

 

にこの疑問に答えつつ紅葉は穂乃果を下ろし、これで全員揃ったということで希はにこに部長としての一言をと頼む。

 

「じゃあ全員揃ったところで部長、一言!」

「えぇ!? なーんてね、ここは考えてあるわ! 今日みんなを、1番の笑顔にするわよ!!」

 

μ'sの9人は右手でピースサインを作り、それを円で囲むように合わせる。

 

「1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

「7!」

「8!」

「9!」

「よーし!! 行こう!!」

「あぁ、行って来い!!」

 

そして、講堂の舞台へと上がり、幕が上がるとそこには・・・・・・かつてそこが0だった会場が満席となっていたのだ。

 

そして、ライブの曲は・・・・・・ファーストライブの時と同じ、だが、今度は9人全員で歌う曲、「START:DASH!!」

 

「私達のファーストライブは、この講堂でした!! その時、私は思ったんです!! いつか、ここを満員にしてみせるって!! 一生懸命頑張って、今、私達がここにいる!! この思いを、いつかみんなに届けるって!! その夢が今日、叶いました!! だから、私達はまた駆け出します!! 新しい夢に向かって!!」

 

ライブを無事に終え、穂乃果は自分達の新しい決意をここに人々に伝え、新しい夢に向かって駈け出すことを宣言するのだった。

 

「皆さん!! 今日は本当にありがとうございました!! あっ、そうだ! 大事なことを言い忘れてました!!」

 

そこで穂乃果はふっとあることに気づき、一同が首を傾げるが、すぐに海未達は穂乃果が何を忘れていたのかに気付き、彼女達を笑顔を見せ、穂乃果は会場のみんなにも呼びかける。

 

「さぁ、皆さんご一緒に!!」

『μ's!! ミュージックスタート!!!!!』




あと、今回サブタイのやつ入れるの忘れてました・・・・・・後にどうにか見つけて書き足すと思います。


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第18話 『逆襲』

音ノ木坂学院講堂にて。

 

そこでは2学期に入ったこともあり、全校集会が開かれていて、今は理事長による話を全生徒が聞いているところだった。

 

「音ノ木坂学院は、入学希望者が予想を上回る結果となった為、来年度も生徒を募集する事になりました。 3年生は残りの学園生活を悔いのないよう過ごし、実りのある毎日を送っていって貰えたらと思います」

 

理事長の話が一通り終わると、司会を努めるヒフミトリオの1人であるヒデコから生徒会長の挨拶があることが全校生徒に伝えられ、それを受けて絵里が立ち上がると・・・・・・彼女は小さな拍手を「新」生徒会長へと送る。

 

すると、講堂の壇上に現れたのは・・・・・・青い瞳に茶髪のサイドテールの少女、「高坂 穂乃果」だったのだ。

 

「皆さん、こんにちわ!!」

 

穂乃果が元気よく挨拶をすると、生徒達の何名からか黄色い歓声が飛び、それを受けて穂乃果は自己紹介を行う。

 

「この度、新生徒会長となりました! スクールアイドルでおなじみ、わたくし・・・・・・!!」

 

そこまで言うと、穂乃果は勢いよくマイクを手に取ってなぜか頭上に放り投げ、くるっと一回転して左手でマイクを掴み取る。

 

「高坂 穂乃果と申します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわあああああ!!!!? 今日は穂乃果の晴れ舞台だってのに、なに出てきてんだオメーはよぉ!!』

 

同じ頃、とある山奥でオーソドックスな見た目をした怪獣、「超古代怪獣 ゴルザ」が出現し、人の住む街に向かって進行するゴルザを食い止めるべく、紅葉が変身した「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」が立ちはだかっていた。

 

しかし・・・・・・。

 

オーブはゴルザが出現したせいで学校に遅れてしまい、その上今日は穂乃果は生徒会長を正式に襲名する日だというのに彼女の晴れ舞台を見れないことを嘆きながら戦っていたのだ。

 

「グルアアアアア!!!!」

 

勿論、ゴルザにとってそんなことは知ったことではなく、ゴルザは頭部から放つ破壊光線「超音波光線」をオーブへと放つが、オーブは両腕を交差して防ぎ、なんとか光線を耐え抜く。

 

『シェア!!』

 

オーブは「ティガ・スカイタイプ」の力を一時的に発動させると素早くゴルザに接近し、連続で何発も拳をゴルザの胸部に叩きこむ。

 

それによって蹲るゴルザにすかさずオーブは掴みかかり、ゴルザを右腕で押さえつけつつ、左手のチョップをゴルザの頭部に喰らわせるのだが、ゴルザはなんとかオーブを振り払い、尻尾を振るってオーブを叩きつける。

 

『ヌア!!?』

 

それによって吹き飛ばされ、地面に倒れ込むオーブ。

 

倒れ込んだところを狙い、ゴルザはジャンプしてその巨体を生かしたボディ・プレスをオーブに繰り出し、オーブの動きを封じてしまう。

 

『ウゥ・・・・・・!!? こうなったら!!』

 

するとインナースペース内の紅葉はカードホルダーから力に優れた姿の赤いウルトラマンティガ、「ティガ・パワータイプ」のカードを取り出し、オーブリングにリード。

 

『ティガさん!!』

『ウルトラマンティガ! パワータイプ!』

 

続けて紅葉はティガと同じく力に優れた赤い姿のウルトラマンダイナ、「ダイナ・ストロングタイプ」のカードをオーブリングにリードさせて読み込ませる。

 

『ダイナさん!!』

『ウルトラマンダイナ! ストロングタイプ!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『力強いやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ!』

 

するとティガ・パワータイプとダイナ・ストロングタイプの姿が重なり合い、オーブは2人の力を融合させた「パワーストロング」へと姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! パワーストロング!』

『光の剛力に敵はない!!』

 

戦闘BGM「Brave Love, TIGA (Instrumental Version)」

 

オーブはその力に優れた怪力によって自分にのしかかっていたゴルザを両腕で持ち上げ、放り投げて地面に叩きつけ、身体が転がる。

 

「ガアアアア!!!!?」

 

だが、ゴルザは地面に転がりながら超音波光線をオーブに放つが、オーブは咄嗟に光線を躱し、立ち上がったゴルザに向かって駈け出して行く。

 

それに対して起き上がったゴルザは尻尾を振るうが、オーブはそれを両手で掴むとジャイアントスイングを繰り出してから投げ飛ばす。

 

『セアア!!』

「グルアアアア!!!!?」

 

それによって、ゴルザは又もや地面に激突し、大きなダメージを負うが、フラフラになりつつもゴルザはどうにか立ち上がり、オーブに向かって振り返ると猛牛のように勢いをつけて突進するが、オーブはそれを余裕で受け止め、膝蹴りを喰らわせるとそのままゴルザにサバ折りを繰り出し、ゴルザの背中から「メキメキ」と嫌な音が鳴る。

 

「ギシャアアア!!!? グルアアアア!!!!」

『ウオッ!?』

 

ゴルザはオーブに頭突きを喰らわせることでなんとかオーブの拘束から逃れ、オーブの足下に超音波光線を放つと煙幕を作り、その間に素早くゴルザは地中を掘って逃げようとする。

 

『っ! 待ちやがれ!! ガルラシウムボンバー!!』

 

だが、オーブはそれを許さず、赤い光球を生み出して相手に飛ばす「ガルラシウムボンバー」をゴルザに向かって放ち、直撃を受けたゴルザは爆発し、その場から姿を消すのだった。

 

「グルアアアアアア!!!!!?」

 

 

 

 

 

 

その頃、生徒会室にて・・・・・・。

 

「どわー!! 疲れた〜!」

 

そこでは机に突っ伏した穂乃果がおり、そんな穂乃果を労うようにことりが「穂乃果ちゃん、お疲れ様」と声をかける。

 

「生徒会長挨拶って、ライブとは全然違うんだねぇ。 緊張しっぱなしだったよ・・・・・・」

「でも、穂乃果ちゃんらしくて良かったよ?」

 

ぐでーっとする穂乃果に対し、生徒会長挨拶はとても穂乃果らしくて良かったと評することりだったが、逆に海未は「どこが良かったんですか!!?」と怒っていた。

 

「折角昨日4人で挨拶文も考えたのに・・・・・・」

「うぅ、ごめん」

 

苦笑しながら海未に謝罪する穂乃果。

 

尚、なぜ海未がこんなに穂乃果に怒っているのかと言うと、ど派手に新生徒会長として自己紹介したのは良いのだが・・・・・・。

 

それ以降彼女は昨日自分と紅葉、海未、ことりの4人で考えたという挨拶文の台詞を忘れてしまい、何も言えなくなってしい、海未はそのことで穂乃果に怒っていたのだ。

 

ちなみに、海未、ことり、紅葉も新生徒会のメンバーだったりする。。

 

「結局その先は真っ白。 うあ〜、折角練習したのに・・・・・・」

「っていうか、紅葉は一体どこ行ったんですか!?」

 

そこで海未は今朝から姿を見ていない紅葉のことが気になり、新学期・・・・・・それも新しい生徒会長の挨拶があるというのにと・・・・・・遅刻しているであろう紅葉に海未は「はぁ」と溜め息を吐かずにはいられなかった。

 

「全く、紅葉が遅刻なんて珍しい。 穂乃果じゃないんですから」

 

そんな海未の言葉にちょっとだけムッとしてしまう穂乃果だったが、何も言い返せないのも事実である。

 

「すまん!! 遅れた!! ところでさっきミュージカルやってなかった?」

 

そこへ丁度遅れてやってきた紅葉が慌てた様子で生徒会室へとやって来たのだが、当然遅れて来た紅葉に海未は激怒。

 

「やってませんよ!! それよりも紅葉!! 一体どこ行ってたんですか!? もうとっくに始業式も終わりましたよ!?」

「い、いやホントすまん。 ちょっと、昨日食べたカレーパンが賞味期限切れてたらしくて・・・・・・それに当たって腹壊して公園のトイレに駆け込んでた」

 

本当はウルトラマンオーブに変身して怪獣と戦っていたのだが、そんなこと言える筈もなく、紅葉は両手を合わせて必死に海未に謝っていた。

 

「穂乃果にことりもごめんな? 迷惑かけた」

「う、ううん、お腹壊したんじゃ仕方ないよ。 ところでさ、お兄ちゃん・・・・・・今日、怪獣が出たらしいね? ここから結構離れた山奥のところらしいけど・・・・・・」

 

不意に、穂乃果がそんな話題を振って来て一瞬ドキリとする紅葉だが、紅葉はなんとかポーカーフェイスを保ち、「そうらしいな」と応える。

 

「でも、オーブが追っ払ってくれたって聞いたぞ?」

「う、うん、そうらしいね・・・・・・」

 

なぜだか、穂乃果はジーッと紅葉のことを先ほどから見つめており、それに対して紅葉は軽い冷や汗を流す。

 

「オーブや怪獣よりもです!!」

 

だが、そこで海未が穂乃果の目の前にズドンっと大量の資料ファイルを置き、それに穂乃果は驚いて引き攣った顔になってしまい、その量の多さに紅葉も目を丸くしてしまう。

 

「今日はこれを全て処理して帰ってください!!」

「こんなに!?」

 

さらに海未は「それにこれも!!」と言いながら「一般生徒からの要望」と書かれた紙を穂乃果に突き出し、彼女はそれを受け取るとその内容を読み上げる。

 

「『学食のカレーが不味い』、『っていうか学食にカレーパンとラムネ置いて欲しい』、『文化祭に有名人を』、『サトルくんに『地球をあなたにあげましょう』と言わせたい』、『本当に超獣を見たんです! 信じてください!』、『バカを言うな、お前は一週間の謹慎だ!』」

「一部変なの混ざってない!? しかもなんか最後会話になってる!?」

 

穂乃果が読み上げた一般生徒の要望の中に明らかにおかしいものが幾つか混ざっており、ことりはそれにすかさずツッコミを入れ、穂乃果と海未はカレーに関する項目をジッと見つめた後、2人は紅葉に視線を向ける。

 

「カレー関係はお兄ちゃんだよね?」

「な、なぜ分かった!?」

 

穂乃果からの指摘に紅葉は心底驚いた顔を見せ、むしろなぜバレないと思ったのかと疑問に感じる穂乃果達。

 

「あなた以外に誰が書き込むんですかこんな要望!?」

「そ、それよりも幾つかは解決できそうな案件あるぞ、それ!」

 

海未は「無理矢理話逸らしましたね」と鋭い目つきでジッと紅葉を見つめ、紅葉はそれに戸惑いつつもなんとか話を逸らそうと案を絞り出す。

 

「アルパカは花陽ちゃんに懐き方教えて貰えばいいだろ。 あと、有名人なら・・・・・・もうμ'sがいるからよくないか?」

「有名人に関するところはなんか投げやりだね・・・・・・」

 

兎にも角にも、生徒会長のやる仕事はかなり多めであり、海未はこれらの仕事を穂乃果にやって欲しいと言うのだが・・・・・・その仕事量の多さに穂乃果は駄々を捏ねるようにして不満を漏らす。

 

「もう! 少しくらい手伝ってくれても良いんじゃ無い? 海未ちゃん副会長なんだし!!」

「勿論、私はもう目を通しています!!」

「えっ!? じゃあやってよー!!」

 

海未が一通り資料に目を通していると聞いて穂乃果はだったら海未がやれば良かったのではないかとまたまた駄々を捏ねるようにしてジタバタ動き、そんな穂乃果をちょっと可愛らしいと思いつつも紅葉は「子供か!!」とツッコミを入れる。

 

「それに、仕事はそれだけじゃないんです!! あっちには校内でたまりにたまった忘れ傘が放置、各クラブの活動記録のまとめもほったらかし、そこのロッカーの中にも、3年生からの引き継ぎのファイルが丸ごと残ってます!!」

「どふ・・・・・・」

 

海未からのさらなる仕事量の多さを聞いて資料ファイルに頭を突っ伏してしまい、愕然とする穂乃果。

 

「生徒会長である以上、この学校のことは誰よりも詳しくないといけません!」

「でも、4人いるんだし手分けてしてやりま・・・・・・」

 

そこでことりが穂乃果に助け船を出すのだが、海未は「ことりは穂乃果に甘すぎます!!」と言って反対。

 

「ふいい〜、生徒会長って大変なんだね〜」

「頑張れシャミ子・・・・・・じゃなかった穂乃果、俺もできる限り手伝うから」

 

紅葉は「うぅ〜」と唸る穂乃果の頭を撫で、頭を撫でられた穂乃果は「癒やされる〜」とそれによってほんの少しだけ元気を取り戻すことに成功。

 

「生徒会長が大変なの、分かってくれた?」

 

するとそこへ絵里が扉を開けて入ってやってくると、少し遅れてからタロットカードの1枚を手に持った希もやってくる。

 

「ふふ、頑張ってるかね? 君たち?」

「絵里ちゃん! 希ちゃんも」

「大丈夫? 挨拶、かなりつたない感じだったわよ?」

 

先ほどの生徒会長挨拶の失敗についてのことを絵里に指摘され、穂乃果は苦笑しつつ「ごめんなさい」と謝った後、「それで今日は?」と絵里達が他に何か自分達に用事があるのかを尋ねる。

 

「特に用事はないけど、どうしてるかなって。 自分が推薦した手前もあるし、心配で・・・・・・」

「明日からまたみっちりダンスレッスンもあるしね? カードによれば、穂乃果ちゃん生徒会長として相当苦労するみたいよ?」

 

カードを1枚出しながらニヤけた笑みを浮かべ、これから穂乃果は生徒会長としてかなり苦労してしまうということを伝える希。

 

それに「ええええ!?」と驚きの声をあげる穂乃果に、「穂乃果が生徒会長ならあり得そう」と思う紅葉だった。

 

「だから3人ともフォローしてあげてね?」

「気にかけてくれてありがとう!」

 

希の言葉にことりが代表してお礼を述べる。

 

「困ったことがあったら何時でも言って? なんでも手伝うから」

「うん、ありがとう!」

 

元生徒会長ということもあり、絵里は困ったことがあれば自分も手伝うと述べ、それに笑顔でお礼を言う穂乃果だった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、にこ、真姫、花陽、凛の4人は屋上に集合しており、にこは髪をかき上げ、真剣な表情を1年組に見せる。

 

「いい? 特訓の成果を見せてあげるわ」

 

にこがそう言うと、彼女は花陽達に一度背を見せた後、勢いよく振り返り・・・・・・。

 

「にっこにっこにー! あなたのハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー!! あっー、ダメダメダメ! にこにーはみんなのも・の♪」

「・・・・・・気持ち悪い」

 

そんなにこに対し、髪を弄りながら「気持ち悪い」と評する真姫。

 

「ちょっと!! 何よ!! 昨日一生懸命考えたんだからーっ!!」

 

気持ち悪いと言われ、反論するにこだったが真姫は「知らない」と一蹴されてしまい、にこは「ぐぬぬ」と悔しそうな顔を浮かべる。

 

「っていうか、4人でこんなことして意味あるの?」

 

そこで凛が首を傾げながら疑問に思ったことを口にすると、にこはそんな凛に対し呆れたような溜め息を吐く。

 

「アンタ達何にも分かってないわね、これからは1年生が頑張らなきゃいけないのよ!」

 

そう言うとにこは三脚にセットしたビデオカメラをどこかからか取り出して用意し、設置する。

 

「いい? 私はアンタ達だけじゃどう頑張ればいいか分からないだろうと思って手助けに来たの! 先輩として!!」

「・・・・・・そのビデオは?」

 

真姫がそのビデオカメラは一体何に使うつもりなのかと問いかけると、にこ曰く「ネットにアップするためのものに決まってるでしょ!」とのこと。

 

「今やスクールアイドルグローバル、全世界へとアピールしていく時代なのよ! ライブ中だけじゃなく、日々レッスンしている様子もアピールに繋がるわ」

 

そこで言い終わっていればちょっと先輩らしいところを1年組に見せられたものの、直後ににこは悪い顔となり、悪役のように微笑む。

 

「グフフ、イッヒッヒッヒ、こうやって1年生をかいがいしく見ているところをアピールすればそれを見たファンの間に『にこにーこそセンターに相応しい』との声が上がり始めてやがて・・・・・・」

「全部聞こえてるにゃー」

 

本人は小声で喋っているつもりだったのだろうか、割と全部ハッキリと1年組全員に聞こえており、それに呆れた顔となる真姫達。

 

そのことを凛に指摘されるとにこは「あっ! にこー!」と慌てて笑顔を見せて誤魔化す。

 

その時、花陽のスマホが突然鳴り響き、彼女はスマホに手を取って画面を覗くと、目を開き、「えっ!?」と何かに驚いたかのような声をあげる。

 

「えっ? えっ? えええええ!!?」

「かよちん、どうかした?」

「ああああ・・・・・・! 嘘・・・・・・! あり得ないです、こんなこと・・・・・・!!」

 

直後、花陽は早歩きで急いで部活へと向かい、部室に入るとパソコンを立ち上げてネットを開き、興奮した様子で何かを調べ始める。

 

それに真姫、にこ、凛も慌ててついて行き、一体突然どうしたのかと首を傾げるにこ。

 

花陽がこうなるのは大体アイドルが関係していることが多く、その様子から少なくともアイドルに関係した何かがあったのは間違いないらしい。

 

「アイドルの話になるといつもこうね」

「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」

「夢? 夢なら夢って先に言って欲しいです!!」

 

未だに興奮が冷めない花陽を見て、真姫は一体何なのかと尋ね、にこもいい加減教えなさいと問いかけ、2人してパソコンの画面を覗くと・・・・・・。

 

彼女達はそれを見て目を見開き、驚愕の表情を浮かべ、後ろの方から背伸びして画面を見た凛も真姫やにこと同様に衝撃を受け、4人はこのことを知らせる為に急いで穂乃果がいると思われる生徒会室へと向かう。

 

「穂乃果!!」

「あっ、矢澤先輩」

 

しかし、そこには穂乃果ではなく雑誌を読むヒデコの姿があり、にこは穂乃果がどこにいるのかを聞くとヒデコ曰く「教室の方が捗るからそっちで仕事する」と言って一緒にいた紅葉と共に教室に行ったそうだ。

 

「穂乃果ちゃん!!」

 

それを受けて4人は今度は教室へと向かうのだが、そこにも穂乃果の姿はおらず・・・・・・。

 

「あっ、凛ちゃん」

 

代わりにいたのは他の生徒と喋るフミコの姿があり、今度は凛がフミコに穂乃果の行方を尋ねると、「どうしても身体を動かしたいと言って紅葉と一緒に屋上へ」とのことだった。

 

どうやら少しすれ違ってしまったらしい。

 

「穂乃果ぁ!」

「真姫ちゃん?」

 

4人は急いで学校の屋上へと戻ると、ここにも穂乃果はおらず、代わりに他2人の生徒と話すミカの姿があり、真姫は穂乃果がどこに行ったのかを尋ねる。

 

「お腹が空いたから紅葉くんと一緒に何か食べてくるって!」

「穂乃果の奴ウロチョロしすぎぃ!! ってかもれなく紅葉とセットでついてくるわね!! アイツも留めておきなさいよ!!」

 

にこはウロチョロとする穂乃果と、それを留めておかない紅葉に若干腹を立てつつ再び4人は穂乃果を捜し回り、なぜか4人はアルパカ小屋に来ることに。

 

「ここに来てどうすんのよ!?」

「ねえ、穂乃果ちゃん知らない!?」

 

アルパカに穂乃果の行方を聞く花陽だったが、当然アルパカに聞いても答えてくれる筈もなく・・・・・・。

 

それから4人は必死に穂乃果の姿を探し、中庭にて紅葉の背中に背もたれしてランチパックのパンを頬張る穂乃果の姿を発見したのだった。

 

「いやぁ、今日もパンが美味い!」

「はぁ、はぁ、少しはジッとしてなさいよ・・・・・・」

 

凛以外の3人は息を荒くし、にこは荒い呼吸をしつつも穂乃果の肩を掴み、それに不思議そうな顔を浮かべる穂乃果。

 

「穂乃果、もう1度・・・・・・あるわよ」

「はぁ、はぁ、もう1度・・・・・・」

「はぁ、はぁ、もう1度・・・・・・!」

「んっ? もう1度・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう1度?」

「もう1度?」

「もう1度・・・・・・!?」

「この下り何回やるんすか?」

「ラブライブ・・・・・・!?」

「あっ、やっと終わった・・・・・・ってえぇ!?」

 

部室にてμ'sメンバー全員と紅葉が集まると、花陽から改めて説明を受け、彼女の説明によればA-RISEの優勝と延期があったとは言え一応の大会の成功を持って終わったらしい第1回ラブライブ。

 

その第2回ラブライブが早くも決定したと言うのだ。

 

それから花陽はパソコンのラブライブのホームページを開き、花陽からのさらなる説明を受ける一同。

 

「今回は前回を上回る大会規模で会場の広さも数倍! ネット配信の他、ライブビューイングも計画されています!」

「凄いわね・・・・・・」

「凄いってもんじゃないです!! そしてここからがとっても重要!! 大会規模が大きい今度のラブライブはランキング形式ではなく各地で予選が行われ、各地区の代表になったチームが本戦に進む形式になりました!!」

 

つまり、人気投票による今までのランキングは関係ないということであり、そのことを海未が花陽に尋ねると彼女は「その通り!!」と言って勢いよく椅子から立ち上がる。

 

「これはまさにアイドル下克上!! ランキング下位の者でも予選のパフォーマンス次第で本大会に出場できるんです!!」

「それって、私達でも大会に出るチャンスがあるってことよね!?」

 

花陽とにこの話を聞いて、少し「うっ」となる紅葉。

 

一応、穂乃果のおかげで色々と吹っ切れることが出来たとはいえ、やはり前回のラブライブでμ'sがランキングから外されることになった原因を作ってしまったのは自分なのでその辺の責任を感じているのだろう。

 

しかし、今回はランキングが関係ないというのであれば努力次第で今度こそμ'sはラブライブに出場することができ、海未も「これはまたとないチャンスですね!」とやる気だった。

 

「やらない手はないわね」

「そうこなくっちゃ!!」

 

にこはもう1度ラブライブが開催される喜びのせいか真姫に抱きつき、ことりも「よーし!!」と気合いを入れてガッツポーズをする。

 

「よーし、じゃあラブライブ出場を目指して・・・・・・!」

「でも待って! 地区予選があるってことは、私達・・・・・・A-RISEとぶつかるってことじゃない?」

 

しかし、そこで絵里が前回の優勝者であるA-RISEも必ずラブライブに出るであろうことは容易に想像できるため、絵里は彼女等とぶつかることを指摘し、それに愕然とする花陽。

 

「あ、あああ・・・・・・終わりました」

「ダメだぁ!!」

「A-RISEに勝たなきゃいけないなんて・・・・・・」

「それは幾らなんでも・・・・・・」

「無理よ」

 

にこは頭を抱えて嘆き、ことりや希は弱音を吐き、真姫も流石に無理だと言い、凛に関しては「いっそのこと全員で転校しよう!」とそれなんか意味あるのかとツッコミたくなるような意見を出す始末。

 

「オイオイ、A-RISEがいようがいまいが関係ないだろ。 むしろかかってこいってんだ!!」

「そうだよ!! 尻込みなんてする必要ない!! 人間その気になればなんだってできるよ!!」

 

しかし、紅葉や穂乃果はことり達と違い、悲観にはならず、紅葉と穂乃果は互いに顔を見合わせて頷き合う。

 

「ラブライブに出来るだけじゃ勿体ない!! この10人で残せる最高の結果!!」

「やるからには徹底的にやってやろうぜ!!」

 

すると紅葉と穂乃果は勢いよく窓を開けて外に飛び出すと、空に2人で一緒に一差し指を天に向ける。

 

「「優勝を目指そう!!!!」」

 

それを受けて「優勝!?」と驚きの声をあげる海未。

 

「そこまで行っちゃうの!?」

「大きく出たわね・・・・・・!」

 

それには凛やにこも驚きを隠せなかったが、希は「面白そうやん!」とノリ気。

 

「ラブライブの、あの大きな会場で精一杯歌って、私達・・・・・・1番になろう!!」

 

そして、そう高らかに、穂乃果は言い放ってラブライブの優勝を目指すことを宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてμ'sはラブライブ優勝に向かってまた走り出すことになったのだが、その翌日。

 

「大変です!! ラブライブの予選で発表できる曲は今までに未発表の物に限られるそうです!」

 

屋上にはμ's9人と紅葉が集まっており、花陽から告げられたラブライブの新たに設けられたというルール。

 

それは今まで作ってきた曲は使えないということであり、そのことににこは「なんで急に!?」と問いかけると花陽が言うにはラブライブに出場するチームが予想以上に多く、中にはプロのアイドルのコピーをしている人達もエントリーを希望していることが理由とのことだった。

 

「この段階でふるいにかけようって訳やね」

「そんなぁ!」

 

花陽や希の言葉に凛は嘆き、これから1ヶ月足らずでなんとかしないとラブライブに出られないと語る絵里。

 

するとそこでなぜか腰に手を張って「こうなったらば仕方ない!!」と言いながら胸を張るにこ。

 

「こんなこともあろうかと私がこの前作詞した『にこにーにこちゃん』という詩に曲をつけて・・・・・・!!」

「実際のところはどうするんや?」

「スルー!?」

 

しかし、にこは希にスルーされてしまい、代わりに紅葉がポンっとにこの肩に手を置き・・・・・・。

 

「にこさんはワザと負けたいんですか?」

「えっ、ごめん・・・・・・」

 

と紅葉はスルーしなかったものの割とマジトーンで睨まれた為、にこは思わず謝罪してしまい、紅葉に注意されしょんぼりと反省することに。

 

「なんとかしなきゃ! 一体、どうすれば・・・・・・」

「・・・・・・作るしかないわね」

 

穂乃果の言葉に、絵里が少しだけ考え込んだ素振りを見せた後、ボソッと呟き、穂乃果は「えっ?」と首を傾げる。

 

絵里の言う「作るしかない」というのは曲作りのことだろう。

 

「どうやって・・・・・・?」

 

海未がそのことについて絵里に問いかけると、絵里は「真姫!」と彼女の名を呼んで視線を真姫に移し、なんとなく絵里が言いたいことを察した真姫は顔を引き攣らせる。

 

「もしかして・・・・・・」

「えぇ、合宿よ!!」

 

なぜかやたらオーバーな動きをした後、絵里が高らかに一同にそう言い放つのだった。

 

「今の無駄な動きなんですか・・・・・・」

 

尚、絵里のその動きについて紅葉がやんわりとツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で休日に合宿へと向かうことになった紅葉達。

 

前回は海だったのだが、今回は山で合宿することとなり、「霧門岳」という場所を目指して電車で一同はやってきたのだ。

 

「うわー、綺麗!!」

 

電車から降りると緑溢れる自然を見てことりは感激し、希は「空気が澄んでるねー」と言いながら身体を伸ばす。

 

「やっぱり真姫ちゃん凄いにゃー! こんなところにも別荘があるなんて」

「歌も上手いし、完璧だよね!」

 

凛と花陽が真姫を褒め称え、それに対して真姫は照れ臭そうにする。

 

「と、当然でしょ!? 私を誰だと思ってるの?」

「・・・・・・フン、何自慢してるのよ」

 

そんな真姫ににこが突っかかり、真姫は「別に自慢してないわよ!」と反論。

 

そのようにちょっとした喧嘩をする真姫とにこを絵里が「まぁまぁ」と宥め、今回は時間も多くは残されていないこともあり、それよりも今は早く別荘に向かうことが先だとして絵里に注意され、「むぅ」と膨れっ面になるにこ。

 

その時、「ドスン!!」という大きな音が聞こえ、一同は音のした方に顔を向けるとそこには登山用の大きめの荷物を下ろす海未の姿があり、彼女は「その通りです!」と言いながら絵里に同意する。

 

「・・・・・・海未ちゃん、その荷物は?」

「なにか?」

 

ことりが海未の荷物について尋ねるが、海未は「何か問題でも?」と言いたげな顔をしており、絵里も「ちょっと多くない?」とその荷物について指摘するのだが・・・・・・。

 

「山ですから」

 

さも当然のように彼女はそう応えるのだった。

 

「むしろみんなこそ軽装すぎませんか?」

 

海未はそう言うと荷物を背中に背負い、「さっ、行きましょう」と初々とした様子で歩き出す。

 

「山が呼んでますよ〜! アッハッハ〜!!」

「・・・・・・もしかして、海未って登山マニア?」

 

そんな海未の様子から、絵里はもしかして海未は登山マニアだったりするのだろうか考える絵里。

 

「夏の合宿の時みたいに無茶言わなきゃいいけど」

 

また海未のテンションの高さから海の合宿の時のように無茶言わないかと心配するにこだった。

 

「ほら、もたもたしてるとバス行っちゃうわよ?」

 

真姫にそう急かされ、一同は駅から外に出るのだが・・・・・・ふっと凛は「あれ?」と不意に立ち止まる。

 

「どうかした?」

「何か、足りてない気がしないかにゃ?」

 

ことりの問いかけに凛はそう応え、ことりは忘れ物でもしたのだろうかと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。

 

「忘れ物じゃないけど、何か足りてない気が・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、海未達が乗ってきた電車では・・・・・・。

 

「「ZZzzz・・・・・・」」

 

穂乃果と紅葉は互いにもたれ合って眠っていたのだった。

 

そこで、目を覚まし、みんながいないことに気付いて「うあ?」と首を傾げる穂乃果だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉と穂乃果は無事にみんなと合流することが出来たが、海未からは「たるみすぎです!!」と注意されるのだが、紅葉も穂乃果もむしろ置いて行った海未達が酷くないかと主張。

 

「だってみんな起こしてくれないんだもん!! 酷いよ!」

「そうだそうだ!! ホーム・アローンのケビンくんの気分だったぞ!?」

 

穂乃果は「うぅぅ・・・・・・!」と目尻に涙を浮かべ、紅葉はバス停のベンチに座って膝を抱えて落ち込む。

 

「ご、ごめんね? 忘れ物ないか確認するまで気付かなくて・・・・・・」

「俺唯一の男だし、逆に目立って気づきやすいと思うんだけど・・・・・・」

 

言われてみれば確かにと思うことりだったが、今は兎に角もうすぐバスも来るということでことりや花陽は穂乃果と紅葉を励ましつつバスに乗り込み、真姫の別荘へと向かうのだった。

 

だが、その時紅葉の腰に装着されてあるカードホルダーが何やらカタカタと震え始め、それに気付いた紅葉はみんなに見られないようにカードホルダーから1枚のカードを取り出す。

 

ホルダーが震えていた原因、それは、薄く小さな光を放つ「ウルトラマンティガ」のカードだったのだが・・・・・・その光はすぐに消えてしまった。

 

「ティガさん? 一体今のは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧門岳の地底深く・・・・・・。

 

そこでは背中に「マグマコア」と呼ばれる赤い鉱物のようなものが生えているのが特徴的な4足歩行の怪獣、「溶岩怪獣 グランゴン」が地底に存在していたのだが、既にグランゴンは生命活動を停止しており、さらに本来その背中に生えている筈のマグマコアはまるで誰かに引き千切られたかのような跡があり・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

それからバスを降りて真姫の案内で別荘にやって来た一同だったが、その豪華な感じの別荘を見て、紅葉達は「おぉ〜」と感心の声をあげ、それににこは悔しそうな顔を浮かべる。

 

「相変わらず凄いわね」

「ぐぬぬぬ・・・・・・!」

 

別荘の中に入ると、穂乃果は先ほどと同じように「おぉ!」と感心の声をあげる。

 

「ピアノ! お金持ちの家でよく見るやつ!! そして暖炉!!」

(天井で廻ってるやつ、あれなんて言うんだろうな・・・・・・)

 

また、穂乃果と同じように凛も感心の声をあげ、「凄いにゃー!!」と興奮気味だった。

 

「初めて暖炉見たにゃー!」

「凄いよね〜、ここに火を・・・・・・」

「つけないわよ」

 

真姫にそう言われて、「つけないの!?」とでも言いたげな顔になり、ショックを受ける穂乃果と凛。

 

まだ対して寒くもないのにつける意味がないということで真姫は火をつけるのを断ったのだ。

 

最も、理由はそれだけではないようで・・・・・・。

 

「それに、冬になる前に煙突を汚すとサンタさんが入りにくくなるってパパが言ってたの」

 

その一言を聞いて、顔をお互いに見合わせる穂乃果と凛。

 

「パパ・・・・・・」

「サンタさん?」

 

ことりや海未はそんな真姫の話を聞いて笑みを浮かべ、「素敵!」と「優しいお父さんですね」と評し、それに少し嬉しそうにする真姫。

 

「ここの煙突はいつも私が綺麗にしていたの。 去年までサンタさんが来てくれなかったことは無かったんだから! 証拠に、中見てごらんなさい」

 

真姫に言われて穂乃果と凛、気になった紅葉も暖炉の中を覗いてみるとそこにはチョークで「Thank you!」と書かれており、それにどこか自慢げな真姫。

 

「ぷぷっ、アンタ・・・・・・。 真姫がサンタ・・・・・・」

 

するとにこが今にも笑い出しそうな顔をしており、肩を震わせ、今にもいらないことを言い出しそうな彼女を花陽と絵里が必死に止める。

 

「にこちゃん!!」

「それはダメよ!!」

「痛い痛い!! 何よぉ!!?」

 

強く自分の肩を掴んでくる絵里の腕を振り払うが、流石にこれはにこが悪い為、穂乃果や凛も慌ててにこを止めようと注意する。

 

「ダメだよ!! それを言うのは重罪だよ!?」

「そうにゃ! 真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!!」

「だって、あの真姫よ? あの真姫が・・・・・・!!」

 

このまま放っておいたら本気で余計なことを言い出しそうな為、穂乃果と凛はすぐさまにこに飛びかかって口を塞ぎ、紅葉も一度にこにちゃんと注意しようと思ったのだが・・・・・・。

 

ふっと再び暖炉の中を見てみると紅葉は1つ、あることに気がついた。

 

「んっ?」

 

それは「Thank you!」と書かれた文字の少し上の少々見えづらい、位置。

 

そこにも一言文字が書かれていたが、それは英語や日本語でもなく、むしろこの地球には存在しない筈の文字が書かれており、その文字を紅葉は読むことが出来た。

 

「これは・・・・・・」

 

それはウルトラマン達の故郷、光の国の文字であり、そこには略すとこう書かれていた。

 

『メリークリスマス、byウルトラの父』

(何してんのあの人!?)

 

とは言え、ある意味本当に本物のサンタが来ていたことは間違いないようだった。

 

(エックスさんのところにもクリスマスシーズンに来たらしいし、あの人の趣味なんだろうか・・・・・・)

 

紅葉はそんなことを思いながら未だに穂乃果と凛に押さえ込まれるにこをなんとか引っ張りだし、彼女が余計なことを言わない為にもそっとにこに耳打ちし、ここにやって来たと思われるサンタのことを伝える。

 

「えっ、マジで・・・・・・?」

「えぇ、だから割と間違ってないかと」

 

取りあえず、これでにこの口は封じたことに成功しホッと安堵する紅葉。

 

しかし、そんな紅葉とにこのやり取りを見てモヤモヤした気持ちになる者が1人・・・・・・。

 

(またお兄ちゃん、にこちゃんとなんか話してる・・・・・・)

 

頬を膨らませ、嫉妬の視線を紅葉に向ける穂乃果だったが、紅葉はその視線に全く気付いておらず、それにちょっとだけ苛立ってしまうのだった。

 

(もう・・・・・・お兄ちゃんのバカ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果、絵里、花陽、凛、にこ、希は外に出て絵里の指導の元一同は先ずは基礎練習からすることとなり、紅葉は絵里の手伝いで、それ以外のメンバーである真姫、海未、ことりは別荘の中で曲作りをすることになるのだった。

 

曲作りの為、真姫はことりと海未を2階に案内し、最初に海未が作詞をしやすそうな部屋に案内。

 

「海未はここで作詞をまとめて。 本棚に辞書とか詩の本とか用意しておいたから」

「あ、ありがとうございます」

 

真姫の手際の良さに少し驚きつつも海未はお礼を述べ、次に真姫はことりが衣装を作りやすそうな場所に案内。

 

「ことりはこっちで衣装を決めて。 ファッションの本もミシンも一通りあるから」

「わぁ。 ありがとう、凄いね!」

「私は下のピアノのところで曲を幾つか考えてるから何かあったら来てね?」

 

真姫はそれだけを言い残して部屋の扉を閉めて出て行き、ピアノのある1階へと戻るのだが、部屋に1人残されたことりはなんだか落ち着かない様子だった。

 

「うぅ・・・・・・」

 

同じ頃、海未も作詞をしようと手にペンを取ったのだが、少しずつ浮かない顔になって行き・・・・・・。

 

「でも、なんか・・・・・・」

「落ち着きませんね」

 

それぞれ別々の部屋にいるにも関わらず、タイミングピッタリに喋ることりと海未。

 

同時に、真姫も椅子に腰掛けてピアノを弾こうとするのだが・・・・・・。

 

「ふぅ、予選・・・・・・突破か」

 

 

 

 

 

 

 

一通りの基礎練習を終えた穂乃果達は今は休憩時間に入っており、希と凛は草むらに寝そべり、くつろいでいた。

 

「うっはー!! 気持ちいいね〜」

「やっぱり山はスピリチュアルパワー全開や〜」

「眠くなっちゃうね?」

 

なんて花陽が言っていると、彼女の左隣から誰かのいびきが聞こえ、見てみるとそこには大の字になって眠っている穂乃果の姿が。

 

「あっ、寝てる!?」

「なんか、穂乃果の奴何時も以上にダラしなく見えるな。 自然に囲まれてるせいか?」

 

とか言っている紅葉も草むらに寝転がって滅茶苦茶ゴロゴロしていたりするのだが。

 

「ちょっとぉ、休憩は5分よ?」

 

そんなダラけまくる穂乃果、紅葉、希、凛に注意し、にこは彼女等の代わりに「分かってるわ」と返事を返すのだが・・・・・・。

 

「んっ?」

 

その時、にこはこの森に住んでいるであろうリスが現れ、何やらゴソゴソとしていることに気付き、リスをジッとよく見てみると・・・・・・。

 

リスはにこのリストバンドを手に持って口に咥えており、座り込んでいたにこは慌てて立ち上がる。

 

「あぁ! 私のリストバンド!!」

「可愛いにゃ〜」

「そうね〜って言ってる場合じゃないでしょ!? 返しなさーい!!」

 

にこはリストバンドを盗んだリスに向かって駈け出し、それに驚いたリスはリストバンドを口に咥えたまま走り出して逃げ出し、大ジャンプした際にリストバンドを落としてそのままリスは去って行くのだが・・・・・・。

 

そのリスが落とした場所というのが結構な急な坂になっているところであり、にこは必死に手を伸ばすが・・・・・・中々リストバンドに手が届かない。

 

「と、届かない・・・・・・! 手伝ってよ!!」

「えぇ〜?」

 

にこは一緒に来ていた凛にリストバンドを取る手伝いをするように頼み、凛は渋々にこの手を右手で掴み、左腕で木にしがみつくことでにこの手が伸びる範囲を広げるのだが、それでもやはり中々リストバンドに後もう少しというところで手が届かなかった。

 

「もう限界だよ〜!」

「あと、少し・・・・・・! もうちょ・・・・・・!」

 

そして、にこはなんとかリストバンドを手に取ることに成功したのだが・・・・・・直後に凛も限界が来て木にしがみついていた左腕を離してしまい、2人は揃って急激な坂を強制的に走ることに。

 

「もう・・・・・・ダメにゃー!」

「えええええ!!!!?」

 

そのせいで2人は止まるに止まることができず、にこは草の生えた木の枝に顔を軽くぶつけてしまったり、2人で仲良く丸太のような気を飛んだりしながらひたすら前に突き進むしかなく、「誰か止めてえええええ!!!!?」と叫ぶことしかできないのであった。

 

やがて2人は森を抜けてそんなに高さがある訳ではないが、崖の上を大きく飛んでしまい、凛とにこはそのまま真っ直ぐ下にあった川に落っこちそうになってしまう。

 

しかし、その時・・・・・・。

 

同じように崖から飛んだ紅葉が空中でにこと凛を担ぐようにキャッチし、そのまま彼は川岸まで飛んで着地し、無事2人を救出することに成功するのだった。

 

「爆沈完了ってな」

「はぁ、はぁ、た、助かったわ・・・・・・」

「ぜぇ、ぜぇ、怖かったにゃ〜。 ありがとう紅葉くん」

 

紅葉はにこと凛の2人を下ろすと2人からは頭を下げられて感謝され、紅葉は「無事で良かった」とだけ言うと2人を連れてみんなの元に戻ろうとする。

 

しかし、その際紅葉の立っていた場所がやたら滑りやすかったのか、歩き出そうとした瞬間彼は「ツルッ」と滑ってしまい、すぐ後ろが川だったこともあり、彼は背中から突っ込む形となって川に落ちてしまうのだった。

 

「あっ」

「紅葉いいいいいいい!!!!?」

「紅葉くうううん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、3人とも無事だから良かったけど・・・・・・」

「いやホント申し訳ないです」

「ごめんなさーい。 紅葉くんも助けてくれてありがとにゃー・・・・・・」

 

その後、紅葉は自力で川から這い上がって来たものの全身びしょ濡れになってしまい、今はこんなこともあろうかと用意してあった替えの服を着て暖炉に火をつけ、身体を温めているところだった。

 

最も、超人的な身体能力を持つ紅葉に取っては零下20度で5時間過ごすことも容易いので、川に落ちた程度どうということはないのだがあくまで身体能力はちょっと高めの人間としかみんなからは思われていない為、誤魔化す為に形だけでもこのようにしていた。

 

そして自分達を助けた結果、川に落ちてしまったにこと凛は絵里に注意されながら紅葉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、2人揃って土下座して謝っていた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

穂乃果は紅葉に寄り添って川に落ちた彼を下から覗き込むように見つめ、そんな穂乃果に紅葉は笑みを浮かべて「おう」と元気よく頷く。

 

すると穂乃果が突然紅葉の膝の上に座り込み、それに紅葉は戸惑ってしまう。

 

「お、おい!」

「この方がお兄ちゃん身体が温まるでしょ? それにお兄ちゃんのおかげで本物の暖炉に火がつくの見れたし♪」

 

単純に穂乃果が膝の上に座りたかっただけなのでは・・・・・・と思うにこだったが、その時穂乃果が「あれ?」とてっきり1階のピアノで曲作りをしていると思われていた真姫の姿が無かったことに気付き、彼女は首を傾げる。

 

「そう言えば、真姫ちゃんは?」

 

だが、そこで丁度お盆にお茶を乗せた花陽がやってきて彼女はそれぞれのメンバーにお茶を配る。

 

「あっ、じゃあ海未ちゃん達には私が持って行くよ」

 

そこで穂乃果が紅葉の膝から降りて申し出ると、花陽からお盆を受け取り、2階へと向かう。

 

「うわっ、静か。 みんな集中してるんだなぁ」

 

2階の静けさから海未やことりはかなり集中しているのだと感じ取った穂乃果はそんな2人に感心しつつ先ずは海未のいる部屋に向かい、ノックしてから部屋に入るのだが・・・・・・。

 

そこに誰もおらず、穂乃果も「あれ?」と海未がいないことに驚く。

 

「んっ? うわっ!?」

 

ただ、その代わりに机の上にぽつんっと「探さないで下さい・・・・・・。 海未」とだけ書かれた置き手紙があり、それを見た穂乃果は慌ててことりの部屋へと今度は向かう。

 

「ことりちゃん!! 海未ちゃんが・・・・・・!! ってだぁぁあー!!!?」」

 

部屋に入るとそこにことりの姿は無く、代わりに穂乃果が部屋に入った直後、目の前に飛び込んで来たのは壁に掛かっている額縁にピンクの紐で『タスケテ』 と書かれていた文字。

 

「大変だぁ・・・・・・!」

「穂乃果!? どうかしたのか!?」

 

そこへ穂乃果の声を聞きつけた紅葉が慌ててやって来ると、穂乃果はすぐさま紅葉に海未とことりが姿を消したことを伝える。

 

「あっ? アイツ等どこに・・・・・・んっ?」

 

すると、紅葉は部屋の窓からロープに見立てたカーテンが外に向かって垂らされていることに気づき、穂乃果もそれに気付いて2人で窓の外を見てみるとそこには木の下で海未、ことり、真姫の3人が囲むように体育座りをしながら溜め息を吐いていた。

 

「うっ、あれ?」

「っていうかなんでわざわざことりはカーテン垂らして出て行ったんだ!? 危ないだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ことりは紅葉から別にコソコソする必要もないのにわざわざ2階からロープを垂らして降りるという危険行為をやったことを注意されつつ、彼女と海未と真姫を紅葉と穂乃果は別荘に連れ戻し、今はみんなで一体3人はどうしたのかと彼女等に尋ねているところだった。

 

『スランプ?』

 

そして、事情を聞いたところによるとどうにも3人、スランプに陥って中々作業が進まなかったらしく、それが原因で3人は落ち込んであんなところにいたらしい。

 

「つまり、今までよりも強いプレッシャーがかかっているということ?」

「・・・・・・はい。 気にしないようにはしているのですが・・・・・・」

「上手くいかなくて予選敗退になっちゃったらどうしようって思うと・・・・・・」

 

絵里の問いかけに海未とことりが応え、一同は2人の事情を聞いて「成程」と納得。

 

「まっ、私はそんなの関係なく進んでたけどね!」

「嘘つけ! 真姫ちゃん、海未達と一緒になって落ち込んでたじゃねーか!」

「そうだにゃ! その割には譜面真っ白にゃー!」

「って勝手に見ないで!」

 

紅葉と凛からの指摘にそれぐらいしか言い返せない真姫。

 

海未やことりは作業が進まないことに申し訳なさそうな顔を浮かべ、そんな3人の様子を見て花陽は「確かに3人に任せっきりっていうのは・・・・・・よくないかも」と意見を出す。

 

「そうね。 責任も大きくなるから負担もかかるだろうし・・・・・・」

 

絵里も花陽の意見に同意して頷き、そこで希が打開策としてある提案を打ち出す。

 

「じゃあみんなで意見出し合って話しながら曲を作っていけばいいんじゃない?」

「そうね、折角10人揃ってるんだし、それで良いんじゃ無い?」

 

希の意見ににこも賛同すると、「しょうがないわねぇ」といきなり胸を張る。

 

「私としてはやっぱり『にこにーにこちゃん』に曲を付けて・・・・・・」

「だからにこさんはワザと負けたいんですか・・・・・・? この前も言いましたよね?」

「それに、こんな風に話してたらいつまで立っても決まらないよ?」

 

紅葉はにこを睨んで彼女を黙らせ、さらににこの発言を軽くあしらう希。

 

そこで絵里は「そうだ!!」と何かを閃いたらしく、一同は外に出ると絵里は割り箸で作ったくじ引きを用意し、3班に分かれる為みんなにくじ引きを引かせる。

 

尚、紅葉は手が足りなさそうなところに手を貸すというスタイルの為、彼だけはくじ引きは引かなかったが。

 

そして、一同がくじ引きを引き終わるとことりを中心に衣装を決める班に穂乃果と花陽が入った通称「Printemps」、海未を中心に作詞する班に凛と希が入った通称「lily_white」、真姫を中心に作曲する班ににこと絵里が入ることになった通称「BiBi」に別れ、一同はそれぞれの作業を行うことになるのだった。

 

「じゃあ、ユニット作戦で曲作り頑張ろう!!」

『おぉー!!』

「おー・・・・・・」

 

穂乃果のその掛け声に、一同は右腕を挙げて気合い(真姫だけは戸惑いつつだが)を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ずはBiBiチームと最初に彼女達を手伝うことにした紅葉。

 

絵里達は別荘にあったテントを引っ張り出して別荘の近くに紅葉が手際よく建てると、4人はその中で作業することに。

 

「ってどうして別荘があるのに外でテント張らなきゃいけないのよ!?」

「少し距離取らないと、3班に分けた意味がないでしょ。 丁度別荘にテントもあったし」

 

なぜ別荘があるのにわざわざテントを建てる必要があるのかというにこの質問に、絵里はそう応え、こんなので本当に作曲できるのだろうかと疑問に思うにこ。

 

「私はどうせあとでピアノの所に戻るから」

「うぅ・・・・・・」

 

真姫はそうは言うのだが、にこは未だに納得していないかのような顔を浮かべており、そんなにこに絵里は苦笑。

 

「じゃあ先ずは食事でも作りましょうか。 真姫が少しでも進めるように」

 

絵里のその言葉に一瞬真姫が顔を赤くするが、すぐに手に持ったノートに視線を戻し、作曲作業を進めるのだった。

 

「なら俺も料理の準備、手伝います」

「アンタ、料理なんてできるの?」

 

にこは海の合宿の時に料理上手であることは分かっているし、絵里も料理自体はできそうだが、正直紅葉はどうなのだろうかとにこは疑問を抱く。

 

なにせ紅葉はどちらかと言えば食べる方専門なイメージがあるので正直にことしてはちょっと不安だった。

 

「俺、一応和菓子屋の息子ですよ? お菓子作り自体はできますし、普通の料理もある程度出来ます」

「そう言えば実家、和菓子屋だったわね」

 

自分の料理の腕を疑われて、反論する紅葉。

 

確かに和菓子屋の息子でお菓子作りの手伝いなどをしているのだとしたらある程度料理も出来るかもしれないと納得する絵里とにこであった。

 

「あっ、そうだわ。 この際だから、紅葉くんにお願いがあるのだけど・・・・・・」

「んっ? なんすか絵里さん?」

 

料理を作る準備をしながら、絵里が不意に紅葉に声をかけると彼はなんだろうと思い首を傾げると、いきなり紅葉は絵里にビシッと一差し指を向けられたのだ。

 

「それよ、それ」

「えっ?」

 

いきなり絵里に「それ」だと言われても、なんのことか分からない紅葉。

 

「そろそろ紅葉くんも、3年生に対してさん付けや敬語、いい加減辞めにしない?」

「・・・・・・いや、でも、俺のキャラ的に・・・・・・」

「紅葉くんだって、私達μ'sの仲間よ? それに、ラブライブ優勝を目指すなら今以上の結束が必要になる。 だから、そろそろ私達に対して敬語を使ったりしないで欲しいと思って。 ダメかしら?」

 

紅葉は自分のキャラ的に合わないと思って今まで3年生の先輩達には「さん付けで敬語」というスタイルを取っていたが、ラブライブ優勝を目指すならば今以上の結束力が必要だと絵里に説かれ、それには紅葉の力も必要だと語った彼女はその為にもそろそろもう紅葉も絵里や希、にこに対してさん付けや敬語を辞めても良いのでは無いだろうかと提案したのだ。

 

「・・・・・・それは、まぁ、確かに穂乃果達には俺も優勝して欲しいし、俺も出来る限りのサポートはしたいと思いますが・・・・・・」

「だったら、もうさん付けや敬語を辞めても言い頃合いだとは思うわよ? どう?」

 

絵里にそう言われて、少しばかり考え込む紅葉だったが・・・・・・すぐに確かに絵里の言う通りだと判断し、彼は絵里に言われた通り今から3年組に対して敬語やさん付けをやめることに決めたのだった。

 

「分かりまし・・・・・・分かったよ、絵里」

「うん、素直でよろしい。 一応、このことは私もメールでみんなに伝えておくわね」

「あぁ、お願いしま・・・・・・頼む」

 

 

 

 

 

 

一方、Printempsチームはというと・・・・・・。

 

穂乃果達は川沿いでテントを張り、ことりはその中で衣装のデザイン画を描いていたのだが・・・・・・やはりまだどうにも上手く行かないようでことりは眉間にしわを寄せて溜め息を吐き、困り果てている様子だった。

 

「はぁ、穂乃果ちゃーん?」

「すぅ、すぅ」

 

ことりが穂乃果に助けを求めようと声をかけるのだが、穂乃果はことりの隣でスヤスヤと眠っており、ことりが呼びかけても全く起きる気配が無かった。

 

ことりの性格上、海未のように叩き起こすということもできず、彼女は一度テントの外に出て深呼吸をして気分転換を計る。

 

「すぅー、はぁー。 気持ちいい〜」

「ことりちゃん、どう? 進みそう?」

 

そこへことりよりも前に外に出ていた花陽が戻って来ると彼女は衣装のデザインの進行状況は上手く行っているかと尋ねるとことりは「うん」と頷く。

 

「ひと息ついたら少しイメージが湧いてきたよ」

 

そこでことりが花陽が両手で籠を持ち、その中にコスモスの花が入っていることに気付くとことりは「それは?」と花陽に尋ねる。

 

「綺麗だなぁって思って。 同じ花なのに1つ1つ色が違ったり、みんなそれぞれ個性があるの。 今回の曲のヒントになるといいな♪」

 

どうやら花陽は衣装のヒントになればということでコスモスの花を持ってきたらしく、それにことりも笑顔で「ありがとう、花陽ちゃん!」とお礼を述べる。

 

「・・・・・・なんだか・・・・・・」

「うん」

「眠くなっちゃうね〜」

 

ポカポカとした日差しや大自然の雰囲気のせいか、ことりや花陽もなんだか眠くなってしまい、2人も穂乃果と同じように・・・・・・。

 

「おーい? 穂乃果、ことり、花陽ちゃん? いるか〜?」

 

そこに絵里達と料理の準備をある程度終わらせ、穂乃果達の手伝いにやってきた紅葉。

 

しかし、やけに物静かなことに紅葉は首を傾げつつ、「入るぞ?」と声をかけつつテントの中を覗くとそこには穂乃果、ことり、花陽がスヤスヤと眠る姿があり、「えっ」とそれに紅葉は戸惑う。

 

「なにここ、天国か?」

 

μ'sの中でも特にほんわかした3人が眠っている姿となると、なんだか癒やされる感じがしてしばらくの間3人から目が離せなかった紅葉。

 

(しかもなんか凄く良い香りがする)

 

それは花陽の傍に置かれてあったコスモスの花の匂いか、それとも彼女等3人の女の子特有の香りかは分からないが、これ以上はいけないと思い紅葉はそっとテントから抜け出そうとするのだが・・・・・・。

 

「あれ? お兄ちゃん・・・・・・」

 

そこで「う〜ん」と目を擦りながら未だに寝惚けた様子とは言え、目を覚ます穂乃果。

 

穂乃果は紅葉の姿を見ると、「えへへ〜」と笑顔を彼に向けながら紅葉の腕を掴んでテントの中に引っ張り込んで座らせると、そのまま紅葉の膝に自分の頭を置いて膝枕の形にさせる。

 

「お、おい!?」

「わーい、お兄ちゃんの膝枕だぁ・・・・・・。 くぅ・・・・・・」

 

そのまま再び穂乃果は戸惑う紅葉を余所に眠りに入ってしまい、紅葉は困り果ててしまうのだった。

 

「はぁ、全く・・・・・・」

 

そんな穂乃果に呆れつつ、紅葉は視線をコスモスの花に移す。

 

「コスモスか・・・・・・。 なんだかこの3人にピッタリだな」

 

どこかの慈愛の勇者のことも思い出しつつ、そういう意味でもなんだかコスモスの花がこの3人にピッタリだなと思いつつ、紅葉は気持ちよさそうに眠る穂乃果の頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最後にlily_whiteチームはというと・・・・・・。

 

彼女等3人はなぜか、山を登っているところだった。

 

「いやああああああ!!!!?」

「凛!! 絶対にこの手を離してはなりません!! 死にますよー!!!!」

 

ここはかなりの強風が吹いており、そのせいで岩を登っている際に滑って落ちそうになったのか、今は先に登っていた海未が落ちそうになった凛の腕を自分の手で掴み、その下から希が凛の背中を押さえている状態だった。

 

「いやああああ!!? 今日はこんなのばっかりにゃー!!」

「ファイトが足りんよぉー!」

「・・・・・・なにしてんの」

 

夕暮れ時になってようやく穂乃果から解放された紅葉は今度は海未達を手伝おうとやってきたのだが、なぜか山登りしている海未達に何してるんだと言わんばかりの視線を向ける。

 

「おや? 紅葉、よく私達がここにいると分かりましたね」

「んっ、まあ・・・・・・」

 

そこで海未が紅葉がやってきていることに気づき、紅葉は希と一緒に凛を押し上げ、取りあえず紅葉も折角来たのならと海未に半場強制的に山登りを付き合わされることに。

 

「別に俺は山登りに付き合うのは良いけど」

「しかし、紅葉。 その軽装でよく1人でここまで来れましたね? やはり紅葉は昔からその超人的身体能力は驚異的ですね」

「まぁな。 っていうかだからなんで山登りしてんの? 凛ちゃん泣いてるじゃねーか」

 

さらに少し歩いた後、海未の疑問に応えつつ、泣きじゃくる凛に飴玉をあげながら励ます紅葉。

 

「うぅ、ぐすっ。 ぐすっ」

「よしよし頑張った頑張った」

 

また海未と希はジッと空を見つめ、山に雲がかかってきたことに気づき、渋い顔を浮かべる2人。

 

「雲がかかってきた。 山頂まで行くのは無理やね」

「そんな・・・・・・! ここまで来たのに・・・・・・!!」

「いやちょっと、山頂まで行くつもりだったのか?」

 

そんな海未達に一体なにしに来たんだと思わずにはいられない紅葉。

 

それには凛も同じ気持ちなようですすり泣きながら「酷いにゃー!!」と不満を口にする。

 

「凛はこんなとこ全然来たくなかったのに!!」

「仕方ありません。 今日はここで明け方まで天候を待って翌日アタックをかけましょう!」

 

しかし、海未は未だに山頂を目指すことを諦めていないようでそれに驚愕する凛。

 

「山頂アタックです!!」

「まだ行くの!!?」

 

未だに山頂を目指すのを諦めていない海未に凛はまだ進むのかと問いかけると海未は「当然です!!」と言い放つ。

 

「なにしにここに来たと思ってるんですか?」

「作詞に来た筈にゃー!!!!」

 

泣き叫ぶように言い放つ凛の言葉を聞いて「ハッ!!」と声をあげる海未。

 

「えっ、なに・・・・・・まさか忘れてたの?」

 

紅葉からの指摘に海未は「そ、そんなことありません!!」と否定するが、どう見ても忘れていたようにしか見えない。

 

「山を制覇し、成し遂げたという充実感こそが創作の源になると私は思うのです!!」

 

なんて言い訳しているが、やはりどう見ても忘れていたとかしか思えない紅葉と凛。

 

そんな海未を咎めるように「まぁまぁ」と声をかける希。

 

「気持ちは分かるけど、ここまでにしたといた方がいいよ」

「ですが・・・・・・」

「山で1番大切なんは何か知ってる? チャレンジする勇気やない。 諦める勇気。 分かるやろ?」

「っ・・・・・・」

 

希はそう言うと、海未は何も言い返さなかったものの渋々納得した様子であり、凛と紅葉に下山の用意をするように頼む。

 

「凛ちゃん、紅葉くん、下山の準備。 晩ご飯はラーメンにしよう。 下に食べられる草が沢山あったよ、海未ちゃんも手伝って」

 

戸惑いつつも海未は「は、はぁ」と返事をするが、同時に食べられる草のことなどが分かる希を不思議に思う海未と凛だった。

 

「それにしても、こんなことまで詳しい希って・・・・・・」

「謎にゃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、絵里達はというと・・・・・・3人は焚き火をして囲んで座っていた。

 

既に空は暗くなってきており、そんな暗くなっていく空を見上げながら、不安そうな顔を浮かべる絵里。

 

「ねえ、このままだと火を消したら真っ暗よね?」

「なに? まずいの?」

「まさか苦手なの?」

 

絵里の質問に対してもしかして暗闇が苦手なのだろうかと真姫とにこが尋ねると、両手をぶんぶん振って「まさか!」と誤魔化す。

 

しかし、先ほどからどう見ても顔色が悪く、「待っててね」と2人に言うと彼女はテントの中に戻り、ライトを付けて明かりを灯す。

 

「ふふ、絵里にあんな弱点があったなんてね」

「この歳にもなって暗いのが怖いなんて・・・・・・」

 

そんな絵里に真姫やにこは思わず笑ってしまうのだが、直後・・・・・・にこは焚き火の炎が少しだけ消えそうになることに気づき、それに彼女は「うわぁ!?」と小さな悲鳴をあげると必死に息を吹きかけて炎をなんとか先ほどと同じくらいまで再び燃え上がらせる。

 

どうやらにこもあまり絵里のことが言えないらしい。

 

「全く、こんな3年生の為に曲考える方の身にもなってよ」

 

そんな絵里とにこの姿を見て苦笑しながらそう呟く真姫。

 

しかし、それを聞いたにこは「えっ?」と怪訝そうな顔をする。

 

「今、なんて言った?」

「えっ?」

「今、『3年生のため』って言ったわよね!?」

「だ、だったら何よ!?」

 

真姫の言葉に、「そうじゃないかと思ってたのよね」とどこか呆れたように言うにこ。

 

「3年生の為に良い曲作って3年生の為に勝とうって・・・・・・」

「そ、そんなこと・・・・・・」

 

真姫はにこの言葉を否定しようとしたが、途中で言葉が詰まり、黙り込んでしまった。

 

それはにこの言っていることが正しいからだ。

 

3月になれば絵里、希、にこの3人は卒業。

 

こんな風にみんなと一緒にいられるのはあと半年しかない。

 

それにスクールアイドルでいられるのは在学中だけであり、卒業してからもプロのアイドルを目指す者はいるがこの9人でラブライブに出られるのは今回しかない。

 

それが真姫にとってプレッシャーになり、スランプになっていたのかもしれない。

 

にこもそれを薄々と感じており、今それがハッキリとした。

 

「曲はいつも、どんな時も全員の為にあるのよ」

「なっ、なに偉そうに言ってんのよ」

 

真剣な表情で語るにこに、真姫は思わずそっぽを向いてしまう。

 

「部長だもん、当たり前でしょ?」

 

笑みを浮かべながらそう応えるにこは焚き火の中から細長い木の枝で突き刺した焼き芋を取りだす。

 

「あっ、これは?」

「焼き芋よ。 焚き火といったら焼き芋でしょ?」

 

戸惑いつつも、真姫はにこから焼き芋を受け取るのだが、その熱さに思わず落っことしてしまいそうになるが息を吹きかけてなんとか冷ます。

 

「あちち! ふぅー、ふぅー! はい」

 

ある程度焼き芋を冷ますと、真姫は焼き芋を半分に割ってにこに差し出す。

 

「あっ・・・・・・ありがとう」

 

焼き芋を受け取りながらお礼を言うにこ。

 

それから2人同時に焼き芋を頬張り、そこで絵里が不安そうな顔を浮かべながらテントから「どうかしたの?」と顔を出す。

 

「食べたわねー! 食べた以上はにこを1番目立つようにしてよ! 3年生なんだし!」

「何よそれ!? 台無し!!」

「なにが台無しなのよ!?」

「台無しだから台無しって言ったの!!」

「なんですってー!! 焼き芋返しなさい!!」

 

そこでは真姫とにこがそんなやり取りをしており、そんな微笑ましい光景を見て絵里は思わず笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

また穂乃果達はというと・・・・・・。

 

眠りから覚めた彼女達は露天風呂を発見し、丁度風呂に入りに来たという紅葉と合流し、それぞれ男女別々に別れて男風呂、女風呂に入浴することになったのだった。

 

その際、穂乃果が「混浴ないのか」となぜかおもむろに残念がっていたが。

 

「こんな所にお風呂があったなんて・・・・・・」

「気持ちいいね〜」

 

穂乃果、ことり、花陽の3人がお湯に浸かると同時に、すぐ隣の男湯の方から「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」というお風呂に浸かって声をあげるサンダーブレスターみたいな紅葉の声が聞こえて来て、思わず3人はビクっとしてしまう。

 

「す、凄い声したね」

「お兄ちゃん、銭湯とか温泉とか割と昔から好きだったから」

 

花陽が紅葉の声に驚いていると穂乃果が紅葉は昔からお風呂好きだったと説明し、「そうなんだ」と花陽は頷く。

 

「それにしても、ホントに気持ちいいね。 なんか眠くなっちゃう」

「また〜?」

 

風呂の気持ちよさに、また眠気を感じる穂乃果。

 

同時に穂乃果とことりの会話が聞こえていたのか「風呂で寝るなよー!」という紅葉の声が聞こえて来た。

 

「風呂で寝ると失神することもあるらしいからなー!」

「分かってるよー! 寝ないように気をつけるからー!!」

「ところで、他のみんな、今頃どうしてるかな?」

 

穂乃果は紅葉に返事しつつ、花陽がふっとみんなはどうしているだろうかと呟く。

 

「どうだろうねぇ。 私、まだできてない・・・・・・」

「できるよ!」

 

最初の頃に比べて多少進歩したとは言え、未だに衣装のデザインが上手く出来上がっていないことり。

 

しかし、即座に穂乃果が「出来るよ!」とハッキリと断言。

 

「でも・・・・・・」

「だって、9人もいるんだよ!!」

「「穂乃果ちゃん!?」」

 

そこで穂乃果が勢いよく立ち上がり、それに驚くことりと花陽。

 

「誰かが立ち止まれば誰かが引っ張る。 誰かが疲れたら誰かが背中を押す。 みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして、それでも進んでるんだよ!!」

 

そんな穂乃果の言葉に、花陽とことりは共感するかのように笑みを浮かべる。

 

また、それを聞いていた紅葉も、「うんうん」と頷いていた。

 

(あれは、穂乃果だから言えた言葉だな。 それに俺も、お前が引っ張ってくれたから、お前が背中を押してくれたから、俺は・・・・・・自分を取り戻せたんだ)

 

つい先日、オーブオリジンの力を取り戻したことを思い出しながら改めて穂乃果に心から感謝する紅葉。

 

そして穂乃果は再びお湯に浸かり・・・・・・。

 

「だからきっと、できるよ。 ラブライブの予選の日はきっとうまく行くよ!」

「うん!」

「そうだね」

 

穂乃果の言葉にことりと花陽は力強く頷き、3人は夜の星空を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に海未達はというと・・・・・・。

 

彼女達3人はテントを張って寝そべりながら夜空を見上げ、その都会では見れない星空に圧巻されているところだった。

 

「綺麗だにゃー!」

「星はいつも自分の事を見てくれる。 星空 凛って言うくらいなんやから、星を好きにならないとね?」

 

希がそう言うと、凛は「うん!」と素直に頷き、また海未も星座も詳しい希に少しばかり驚いていた。

 

「星座も詳しいみたいですね」

「1番好きな星座とかあるの?」

「そうやねぇ。 印象に残ってるのは南十時星かな」

 

凛の1番好きな星座はあるのかという質問に対し、「南十時星」と応える希だったが、海未も凛も星座に詳しくないこともあってかイマイチ、パッとしない感じだった。

 

「ペンギンと一緒に見たんやけどね」

「「南極!?」」

 

海未と凛が顔を見合わせて驚いていると、希は「あっ、流れ星!」と言い放ち、それに海未と凛は顔を上に向け、凛は「どこどこ?」と必死に流れ星を探す。

 

「南に向かう流れ星は物事が進む暗示」

「希・・・・・・?」

「1番大切なのは本人の気持ちよ?」

 

希と海未は上半身だけを起こし、希はそのような言葉を海未に伝えると、テントの奥へと入って行くのだった。

 

そこで凛が「流れ星見損なったにゃー!」とボヤきながら彼女も上半身だけを起こす。

 

「いいえ、元々無かったですよ。 流れ星なんて」

「うん?」

 

そんな海未に、凛は首を傾げるが・・・・・・海未は希が何を言いたかったのか、それを理解したのか、彼女は希の方に視線を向けながら、微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、温泉から上がった紅葉はというと・・・・・・。

 

彼は別荘の方へと戻って来ており、今日はもう特に自分がやることはないだろうと思いソファに寝転がって眠る準備に入っていた。

 

正直、他のみんながテントで寝るというのに自分だけ別荘で眠るのはどうかと思ったが・・・・・・。

 

よく添い寝してくる勝手に穂乃果だけならまだしも、女の子ばかりの中で一緒に眠る訳にもいかない為、そんな中自分だけベッドを使うのも気が引けるため、今日はソファで眠ることにしたのだ。

 

しかし・・・・・・。

 

「・・・・・・寂しい」

 

さっさと寝てしまおうとする紅葉だったが、紅葉はあまりの静けさのせいか無性に寂しさと空しさを感じていた。

 

「よっこらせ」と上半身だけを起こし、扉を見つめ・・・・・・そこから穂乃果辺りがやって来てくれないだろうかなんて思わず紅葉は考えてしまう。

 

しかしすぐに彼は首を左右にぶんぶん振ってその考えを打ち払う。

 

「俺ってこんな寂しがり屋だったか・・・・・・?」

 

こんな風に寂しさを覚えることに少しだけ驚く紅葉だったが、思えば、このように1人でいるのは随分と久しぶりのことだった。

 

「こんなんじゃ、いけねえよな・・・・・・俺」

 

自分はずっと穂乃果達の傍にいられる訳ではない。

 

自分がウルトラマンである限り、その使命を果たす為に必ず何時か旅に出なくてはいけなくなる。

 

それなのにこんなことで寂しさなんて感じてなどいられない。

 

(さっさと寝よう)

 

その為にも紅葉は再びソファに寝転び、眠りに入ろうとするのだが、ふっと彼の脳裏にある考えが過ぎる。

 

(俺がいなくなると知った時、穂乃果はどんな顔をするんだろうな・・・・・・)

 

穂乃果達に黙っていなくなるようなことはしない、いずれ自分は旅に出なくてはいけないことを打ち明けるだろう。

 

その時自分がオーブであることを明かすかは分からないが・・・・・・なんにしても、もし、穂乃果に対して自分がいなくなるということを話した時・・・・・・彼女はどんな顔をするのだろうかと紅葉は不安な気持ちになった。

 

彼女のことなので「行かないで!!」と言って泣きじゃくるかもしれない。

 

だが、マガオロチの時彼女は何も事情を聞かず、玉響姫の復活を手伝ってくれたことから、意外に何も聞かず見送ってくれるかもしれない。

 

自分がいなくなった時、海未達も悲しんでくれるとは思う・・・・・・。

 

だが、やはりどちらにしても自分が1番悲しませてしまうのはきっと穂乃果だろう。

 

(・・・・・・いや、今はラブライブに向けて集中しよう)

 

何にしても、それは恐らく当分まだ先の話。

 

自分までこんな調子じゃ、ラブライブで優勝なんて夢のまた夢だろう。

 

しっかりとマネージャーとして穂乃果達を今はサポートすることに集中しようと心に決める紅葉。

 

そんな時、不意に部屋の扉が開き、誰かが入って来たことに気付いて紅葉は飛び起きる。

 

(んっ? 誰だ? 穂乃果か・・・・・・?)

 

てっきり穂乃果が前の合宿の時のようにまた添い寝しに来たのかと思ったが、やってきたのは穂乃果ではなく真姫だった。

 

「真姫ちゃん?」

「あっ・・・・・・って、なんであなたソファで寝てるのよ?」

「俺だけベッドってのも申し訳ないからな」

 

なんでも真姫はピアノを弾きに来たようで、どうやら絵里達と過ごす内にスランプをなんとか脱したようだった。

 

真姫は「ピアノ使うから、2階のベッド使っても良いわよ」と紅葉に言いつつ、彼女は椅子に座り、ピアノに向き合う。

 

「『いつも、どんな時も全員のために』・・・・・・か」

 

ピアノを弾き始め、真姫がそう呟くとそこへ丁度真姫と同じようにスランプを脱したらしい海未やことりも別荘へと戻って来て現れたのだ。

 

「ことり、海未! どうやら3人共、全員スランプを脱したようだな?」

「えぇ、みんなのおかげで・・・・・・」

「うん!」

 

そこから真姫、海未、ことりの3人はそれぞれ自分のやるべき作業を行い始め、紅葉は邪魔にならないよう、真姫のお言葉に甘えてベッドを使わせて貰おうと2階へと移動。

 

その後は真姫も海未もことりも、躓くようなこともなく、順調に作業が捗るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝・・・・・・。

 

「お前もう山来るなよ」

 

紅葉が朝の散歩をしていると偶然寝惚けて崖の上で眠っている穂乃果を発見し、即座に叩き起こして崖から離れさせ、そのことからもう二度と山に来るなと注意する紅葉の姿がそこにはあった。

 

「ご、ごめーん! まさかあんなことになってるなんて・・・・・・」

 

穂乃果はそのことについて二度とこんなことがないように気をつけると謝罪しつつ、その後、穂乃果と紅葉はたまたま道端で希、凛、にこ、絵里、花陽と合流する。

 

「あれ? どうしたのみんな?」

「目が覚めたら、海未達がいなくなってて・・・・・・」

 

「どうしたの?」と穂乃果が一同に尋ねると、なんでも目覚めたら真姫もことりも海未もいなかったのでみんなで今探しているところだという。

 

「あー、アイツ等なら別荘にいるぞ。 みんなのおかげでスランプから脱したってな」

「えっ、そうなの!?」

 

昨夜別荘にいた紅葉は海未達の行方を知っている為、みんなにそのことを説明して一同が別荘に向かうとそこでは窓際のソファにもたれ掛かって眠っていることりと海未、それとピアノの上に突っ伏して眠っている真姫の姿があった。

 

「全く、しょうがないわね」

「フフ、ゆっくり寝かせといてあげようか」

 

にこと希はそんな彼女達の姿に微笑み、絵里がピアノの上に置いてあった作曲の紙を手に取る。

 

「そうね。 でも、起きたらすぐに練習よ? みっちりね」

 

また海未やことりの傍には作詞の紙や衣装のデザイン画が描かれたスケッチブックが置いてあり、それに穂乃果達は嬉しそうに微笑むのだった。

 

「んっ?」

 

だが、その時、紅葉は腰のカードホルダーがまた・・・・・・。

 

否、以前よりも強くカタカタと震え始め、紅葉は「俺ちょっとトイレ」と穂乃果達に言ってその場を離れ、別荘から外に出ると素早くカードホルダーからホルダーが震えている原因の3枚のカードを取り出す。

 

それは昨日と同じように小さな光を発するティガのカードだったのだが・・・・・・今回は「マルチ」「パワー」「スカイ」のカードが全て光っており、紅葉が一体何が起こっているのかと頭に疑問符を浮かべた次の瞬間・・・・・・。

 

突如として山から噴火が起こり、マグマが吹き出したのだ。

 

 

 

 

 

 

「うおっ!?」

『ひゃあああ!!!?』

 

それに別荘にいる穂乃果達や紅葉は驚きの声をあげ、眠っていた海未達も飛び起きる。

 

紅葉はもしかしてティガのカードが光っているのはあのマグマが吹き出した山のことを警告していたのだろうかと思い、3枚のティガのカードを山の方に向かってかざす。

 

「あれはただの噴火じゃないな」

 

するとティガのカードは先ほどよりも眩い光を放ち、やはり予想通りティガのカードはあの噴火を警告していたのだろうと思い、スマホを取り出して穂乃果に連絡を入れる。

 

『あっ、お兄ちゃん!? 今どこ!? トイレ行ったんじゃ無かったの!?』

「さっきの噴火の音を聞いて外飛び出したんだよ。 それよりも穂乃果、みんなと一緒にすぐに避難しろ」

『えっ、お兄ちゃんは!?』

「念のため、周辺に俺達以外に人がいないかちょっと確認してから俺も避難する。 それじゃ」

 

「あっ、ちょっと」と言う穂乃果の声が聞こえたが、紅葉は半場強引に通話を終了させ、オーブリングを取り出す。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ! スカイタイプ!』

 

紅葉は「ウルトラマンティガ スカイタイプ」のカードをオーブリングにリード。

 

『マックスさん!!』

『ウルトラマンマックス!』

 

続けて今度は紅葉は「ウルトラマンマックス」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

「速いやつ、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げ、「ウルトラマンティガ・スカイタイプ」と「ウルトラマンマックス」の力を合わせた「ウルトラマンオーブ スカイダッシュマックス」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! スカイダッシュマックス!』

『輝く光は疾風の如し!!』

 

変身を完了させた紅葉は先ずは吹き出したマグマを鎮火させようと空中に飛び上がって噴火した山に向かって素早く向かい、吹き出たマグマを凍らせるため、右手を突き出して放つ冷気光線「スカイダッシュブリザード」を放つ。

 

『スカイダッシュブリザード!!!!』

 

スカイダッシュマックスの素早い動きと合わせ、森に溢れ出る前にマグマを凍り付かせ、消火させるとそのままオーブは身体を縮小させ、等身大になるとマグマが噴火した山の方に向かって地面に突っ込み、原因と思われるものが何かを探す。

 

やがて、地底の空洞のような部分に降り立つと、オーブの目の前には逆さま状態の数日前に戦ったゴルザが眠っていたのだ。

 

『ゴルザ!? あの時、倒した筈じゃ・・・・・・』

 

数日前、倒したと思われていたゴルザ・・・・・・。

 

しかし、ゴルザはあの時、ガルラシウムボンバーが直撃する直前・・・・・・ギリギリのところで地面に潜りきることに成功しており、ゴルザはオーブへのリベンジを行う為、ここで山の中のマグマのエネルギーをずっと吸収していたのだ。

 

『あの時、俺は逃がしてたってことか』

 

すると、ゴルザはオーブの気配を感じ取ったのか、ゆっくりと瞼を開けてオーブの姿を確認すると、ゴルザは大きく吠え上がる。

 

「ガアアアアアアアア!!!!!!」

 

目を覚ましたゴルザは地面を掘って地上へと向かい、それをオーブも急いで追いかける。

 

『待ちやがれ!!』

 

 

 

 

 

 

そして、大地を突き破り遂にゴルザが地上に姿を現したのだが・・・・・・その姿は以前と異なっており、マグマのエネルギーを吸収し、さらにはグランゴンのマグマコアを食べたことによって体表が赤くなり、血管のようなものが身体に浮かび上がって両腕は太く、よりマシッブで筋肉質になった姿・・・・・・。

 

ゴルザは超強化された「超古代怪獣 マグマゴルザ」に進化していたのだ。

 

「グルアアアアアア!!!!!」

 

遅れて「パワーストロング」に姿を変えたオーブも地面を突き破って現れ、巨大化してマグマゴルザと対峙する。

 

『お前にはこの姿で対抗だ!!』

 

既にカラータイマーは激しく点滅している為、オーブは早急に決着をつけようとマグマゴルザに駆け出して行き、右拳を振るうのだが、マグマゴルザはそれを左手で受け止め、攻撃を防いでしまう。

 

『なに!?』

 

オーブはマグマゴルザの腕を振りほどこうとするのだが、全くビクともせず、それにマグマゴルザが「ニヤリ」と笑うと逆にマグマゴルザの右拳がオーブの胸部に叩き込まれ、オーブは大きく後退ってしまう。

 

『グゥ!?』

「グハハハハハ!!!!」

 

まるで嘲笑うかのような鳴き声をあげるマグマゴルザ。

 

さらにマグマゴルザは怯んだ隙を狙ってオーブの首を両手で掴みあげて持ち上げる。

 

『ウアアア・・・・・・!!?』

 

そのままマグマゴルザはオーブを地面に叩きつけると、倒れ込んだオーブを今度は蹴り上げて吹き飛ばす。

 

『ウオオオッ!!?』

 

さらに地面を転がるオーブに向かって額から放つ強力光線、「ハイパー超高熱熱線」を発射し、それを喰らわせてオーブをさらに吹き飛ばすマグマゴルザ。

 

『ヌアアアアア!!!!?』

 

身体中から火花を散らし、身体へのダメージのせいでまともに動けなくなるオーブ。

 

そんなオーブにマグマゴルザはゆっくり近づき、オーブの元まで辿り着くとその首を右手で掴みあげて無理矢理立ち上がらせ、そのままあの時のお返しとばかりにオーブに対してサバ折りを繰り出す。

 

『ウアアアアア!!!!?』

「グハハハハハ!!!!」

 

それによって苦痛の声をあげるオーブだったが、なんとかマグマゴルザに頭突きを喰らわせることで拘束を解き、すぐさまマグマゴルザから離れるオーブ。

 

『はぁ、はぁ・・・・・・こうなったら!』

 

インナースペース内の紅葉はオーブオリジンのカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『覚醒せよ! オーブオリジン!』

『オーブカリバー!!』

 

オーブリングからオーブカリバーが出現し、紅葉はそれを掴み取り、中央のカリバーホイールというリング部分を回すと、ハーモニカのメロディーのようなものが流れ、紅葉は「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」へと変身。

 

『銀河の光が、我を呼ぶ!!』

 

戦闘BGM「オーブオリジンのテーマ」

 

「グハハハハ!!」

 

そんなオーブに、マグマゴルザは「姿を変えたからなんだ」とばかりにハイパー超高熱熱線をオーブに向かって放つが、オーブはオーブカリバーを盾に見立てて刀身で防ぎ、さらに刀身を傾けることでマグマゴルザの熱線を反射。

 

反射した熱線はマグマゴルザに直撃し、それにたじろくマグマゴルザ。

 

「グルゥ!?」

 

さらにオーブは右手に光の光輪を作り出し、それを相手に向かって投げる「オリジウムソーサー」を放つが、マグマゴルザはそれを胸で受け止め、吸収してしまう。

 

『っ!? なら!!』

 

オーブはマグマゴルザに向かって駈け出して行き、マグマゴルザは尻尾を振るってオーブを攻撃するが・・・・・・オーブはスライディングすることでそれを躱し、そのままマグマゴルザに突っ込んでいってすれ違いざまにオーブカリバーを振るってマグマゴルザの膝を斬りつける。

 

「ガアアア!!?」

 

流石に関節となればダメージは入りやすいらしく、それを受けたマグマゴルザは両膝を突いてしまう。

 

だが、痛みを堪えながらもマグマゴルザはなんとか立ち上がり、オーブの方へと顔を向けると突進して体当たりを繰り出す。

 

しかし、オーブはそれをマグマゴルザの頭上を飛び越えることで躱し、マグマゴルザはすぐさま尻尾を振るって背後に回り込んだオーブに攻撃を仕掛けるがオーブはオーブカリバーを振るって尻尾を切り裂く。

 

『シェアア!!』

「グウウウ!!!!?」

 

オーブはマグマゴルザの方に向き直ると、インナースペース内の紅葉はオーブカリバーをオーブリングにリードさせる。

 

『解き放て! オーブの力!!』

 

カリバーホイールを紅葉は高速回転させてからトリガーを引き、オーブはオーブカリバーに宿る4つの属性とオーブ自身が持つ光と闇の力を結集し、掲げたオーブカリバーを円を描くように振るい、オーブカリバーを相手に向けて放つ虹色の必殺光線・・・・・・「オーブスプリームカリバー」をマグマゴルザに向かって放つ。

 

『オーブスプリームカリバー!!!!!』

「グウウウ!! グルアアアアアアア!!!!!?」

 

それによって直撃を受けたマグマゴルザは光線を最初こそ吸収しようとしたものの、その威力の高さの吸収し切ることができず、火花を散らし、倒れ、爆発四散するのだった。

 

「お、おぉ、やったにゃー! オーブが勝ったよ〜!!」

 

避難する為、外に出ていた穂乃果達。

 

そしてオーブが吹き出したマグマなどを鎮火させ、マグマゴルザを倒したのを目撃して、凛は喜びの声をあげ・・・・・・他の一同もそのことにホッと胸を撫で下ろすのだった。

 

「・・・・・・」

 

ただ、そんなオーブの姿を穂乃果はジッと見て、1つだけ思ったことがあった。

 

それは紅葉がオーブニカを自分に託し、ゼッパンドンの元へと走って行った時にも抱いた疑念。

 

紅葉がゼッパンドンの元に走り去って姿が見えなくなると、その姿が見えなくなったほぼ直後にオーブが現れた。

 

幾ら頭の悪い自分でも、そのオーブの登場のタイミングの良すぎることくらいは気付く。

 

それに思い返せば、オーブがいる時紅葉は必ずと言って良いほどいなくなっているような気もするし、不自然な点も多いような気もした。

 

だから穂乃果は、ほんの少し、ほんの少しだけ思ってしまったのだ。

 

もしかしたら、ウルトラマンオーブは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、オーブが迅速な対応をしてくれたおかげで大した被害もなく、穂乃果達は別荘に戻ってきてダンスの練習をその後は何事もなく行うことができ・・・・・・。

 

帰って来てからも学校の屋上でライブの告知をしたり、ラブライブ出場に向けてダンスの練習を行うのだった。

 

その際、にこがあのリスにリストバンドを奪われていたことに気付いたりしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

別荘で1人寂しくしてる紅葉の姿を見た穂乃果の感想。

 

「寂しがり屋とか、お兄ちゃん、可愛いかよ」

 



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第19話  『A-RISEファーストコンタクト』

音ノ木坂の屋上にて。

 

そこでは穂乃果、絵里、花陽、紅葉がノートパソコンで今回行われるラブライブの専用サイトを確認しており、それ以外のメンバーは海未の声に合わせてダンスの練習をしているところだった。

 

「これがラブライブ専用のサイト・・・・・・」

 

するとパソコンの画面が突然変わり、画面が変わるとそこには色んなステージのようなものが映し出され、花陽曰くそれは「予選が行われる各地のステージの場所」とのことだった。

 

「おぉ、流石花陽ちゃん。 誰よりも詳しい」

 

相変わらずこういったことに誰よりも詳しい花陽に紅葉は感心し、さらに花陽は説明を続ける。

 

「今回の予選は参加チームが多いから会場以外の場所で歌うことも認められてるの!」

「えっ、そうなの!?」

 

花陽の説明を受け、目を見開き驚きの声をあげる穂乃果。

 

「それはルールブックに載っていることよ? なんで穂乃果が知らないの?」

「いやぁ、文字を読むのが苦手で・・・・・・」

「それくらい知っておけよ、リーダー・・・・・・」

 

絵里にこのことはルールブックにも載っていることだと言われ、その辺のことは全く読んでいなかった穂乃果に呆れた声を出す紅葉だが・・・・・・。

 

花陽の説明を受けて感心などしていたところを見るに、実は紅葉もルールブックなんてものは読んでおらず、むしろルールブックがあること自体紅葉は今知ったところだった。

 

それを必死にポーカーフェイスで切り抜けようとするが、絵里からジト目で見られ、物凄く怪しまれていた。

 

「あなたもそれくらい知っておきなさいよマネージャー」とでも言うような視線で。

 

「もし自分達で場所を決めた場合、ネット配信にライブを生中継。 そこから全国の人にライブを見て貰うんです!」

「全国・・・・・・凄いや!」

 

さらに花陽から全国の人にライブを見て貰えるのだと聞いて俄然気合いが入ったようで穂乃果は笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同部室へと移動してラブライブのより詳しいルールを改めてみんなで確認することとなり、それには海未が中心となり、彼女はホワイトボードを使ってラブライブのルールをより分かりやすく解説。

 

「各グループの持ち時間は5分。 エントリーしたチームは出演時間が来たら自分達のパフォーマンスを披露! この画面から全国に配信され、それを見たお客さんが良かったグループに投票。 順位が決まるのです!」

「そして上位4組が最終予選に・・・・・・という訳ね」

「狭き門ね」

 

海未からの説明を受け、そう呟く絵里と真姫。

 

「特のこの東京地区は1番の激戦区・・・・・・」

「んまぁ、A-RISEがいる地区でもあるからなぁ」

 

紅葉が開かれたノートパソコンに視線をやると、ゆるいパーマががったセミロングヘアのお嬢様風の少女、「優木 あんじゅ」、長い黒髪と切れ長の目を持ちクールな雰囲気の少女、「統堂 英玲奈」、そしてショートヘアのデコ出しルックで活動的な雰囲気の少女「綺羅 ツバサ」のA-RISEの3人が前回の優勝者ということもあってかラブライブの東京予選を告知する動画が流されていたのだ。

 

『『『こんにちは!!』』』

『私、優木あんじゅ!』

『統堂英玲奈!』

『そして、リーダーの綺羅ツバサ!!』

『『『ラブライブ予選、東京大会。 みんな見てね!!』』』

 

画面越しからでも分かるその大物感に圧巻される一同。

 

最も紅葉だけは逆に「かかってこい!!」とでも言いたげな雰囲気で静かに対抗意識を燃やしていたが。

 

さらにここにいるメンバーの中でも特に穂乃果は険しい表情を浮かべており、「A-RISE・・・・・・」と彼女達の名を小さく呟く。

 

「そう、既に彼女達の人気は全国区! 4組の内1つは決まったも同然よ!」

「えーっ!? ってことは凛達あと3つの枠に入らないといけないの!?」

「そういうことよ」

 

ただでさえ少ない4つの枠の内の1つがほぼ確実に潰され、自分達が入らないといけない枠が残り3つしかないことに嘆く凛だったが、だが、穂乃果や紅葉は凛とは違い、ポジティブに考え、逆にあと3つもあるならまだまだやれると一同に言い放つ。

 

「でも、ポジティブに考えよう! あと3組進めるんだよ!」

「A-RISEがいる時点で最初から3組しか無かったようなもんだろ? 4つも3つも大して変わんないだろうよ」

 

あと3組も進める、4つも3つも変わらないと前向きな姿勢を見せる穂乃果と紅葉の姿を見て海未達もどこか安心したような顔を浮かべ、それは穂乃果や紅葉の言う通りだと思ったからだろう。

 

「しっかし、アンタほんと、A-RISE相手でも尻込みしないわね・・・・・・。 さっきの動画の時も明らかに私達と雰囲気違ってなかった?」

 

そこでにこが紅葉が先ほどの動画の時も他のみんなとは違い圧巻されず、これは穂乃果にも言えたことだが尚且つ先ほどのような強気な発言・・・・・・。

 

それに対して紅葉は口元に笑みを浮かべてにこに言葉を返す。

 

「A-RISEは確かに凄いと思うよ。 でも相手が凄ければ凄いほど、こっちだって燃えるもんでしょ。 それに、誰よりも1番近くでμ'sのこと見てきた俺から言わせれば、μ'sだって凄い!! だから弱気になんてなる筈ないんだよ、にこ」

 

紅葉は穂乃果の頭をワシャワシャと撫でながら自分が尻込みしない理由を語り・・・・・・にこ達は「それは贔屓してるだけでは?」と一瞬思ったが・・・・・・。

 

だがここまで言われて悪い気はしない一同だった。

 

「今回の予選は会場以外の場所で歌うことも認められてるんだよね? だったら、この学校をステージにしない?」

 

穂乃果はライブで使う場所にここなら緊張もしないし、自分達らしいライブが出来る筈だとこの学校のどこかをステージにしようと提案し、それにことりや紅葉も納得するのだが・・・・・・。

 

「甘いわね」

「にこちゃんの言う通りです!」

 

しかし、その意見はにこと花陽に一蹴され、物凄くいい提案だと思ったのに「なぜ?」と首を傾げる紅葉。

 

「中継の配信は1回勝負! やり直しは効かないの!」

 

そこから一同は何故か中庭に移動することとなり、にこや花陽からなぜ穂乃果の案がダメなのか、ビデオカメラを構えながら説明し、花陽はもし失敗すればそれがそのまま全世界の目に晒されてしまうと彼女から説明を受け、それに思わず納得する穂乃果。

 

「それに、画面の中で目立たないといけないから目新しさも必要になるのよ!?」

「目新しさ?」

「奇抜な歌とか?」

「衣装とか?」

 

さらににこが言うには目新しさも必要ということでその目新しさに奇抜な歌や衣装などを用意すれ良いのだろうかと呟く凛とことり。

 

「メイドふ「それもうやったから却下」ハイ」

 

メイド服を提案しようとした紅葉だが、ワンダーゾーンの時にもうやったので絵里から却下され、露骨に残念そうにする紅葉とことり。

 

「なんでことりまで・・・・・・」

「ことりちゃんもメイド服とか好きだから」

 

紅葉が残念がるのは分かるが、なぜことりまで・・・・・・と思った真姫だったが、穂乃果が言うには元々興味はあったもののブラック店長の件以来以前にも増してメイド服が好きになったからとのことらしい。

 

「例えばセクシーな衣装とか?」

 

次に、ニヤニヤした顔で希がセクシーな衣装などどうだろうかと意見を出し、それを聞いた海未は直後に「む、無理です・・・・・・!」と膝を抱えて顔を俯かせ、蹲ってしまう。

 

「海未ちゃ〜ん!?」

「こうなるのも久しぶりだね」

「何時以来だ、こうなるの?」

「えりちのセクシードレスも見てみたいなぁ?」

 

そこへ希はニヤついた笑みで今度は絵里に彼女のセクシードレスも見てみたいと耳元で呟き、確かに絵里のようなスタイルの良い女性ならそういった衣装も似合うだろうと思ったのか、穂乃果もノリ気で「おぉ!」と感心の声をあげる。

 

「セクシャルハラスメンツ!」

「セクシーダイナマイトじゃ・・・・・・」

「無理です・・・・・・」

「何時まで言ってんの!?」

 

未だに塞ぎ込む海未に即座に何時までやってるんだとにこからツッコまれ、絵里はすぐさま希に「嫌よ!!」とセクシードレスを着ることを拒否。

 

「やらないわよ、私は!」

「・・・・・・セクシー、ドレス・・・・・・」

 

するとそこで不意にチャイナ風のセクシードレス衣装を着ている自分の姿を海未は想像してしまい、顔を真っ赤にして涙目になってそこから逃げだそうとする。

 

『みんなのハート、撃ち抜くぞ〜! バーン!』

「放してください!! 私は嫌です!!」

「誰もやるとは言ってないよ〜!!」

 

そんな風に逃げだそうとする海未は別に誰もやるとは言ってないと穂乃果が必死になって引き止め、同時ににこもセクシードレスを着るのは反対だと言うのだが・・・・・・。

 

「フン、私もやらないからね!」

「にこが着たら逆に可哀想な気が・・・・・・」

「またまた〜、部長には誰もお願いしてな・・・・・・」

 

直後、にこは余計なことを言った紅葉と凛の頬をそれぞれ両手で力強く抓り、にこにお仕置きされる2人だった。

 

「抓るわよ?」

「「もう抓ってるだろ/にゃー!?」」

「というか、何人かだけで気を引けても・・・・・・」

 

確かに、花陽が言うように何人かだけで気を引くようなライブはあまり良くは無いだろう。

 

それにはなぜかグッタリしている海未を支えている穂乃果も同意見であり、「確かに、そうだよね・・・・・・」と一体どうすれば良いのかと考え込むが・・・・・・。

 

「っていうか、こんなところで話してるよりやることがあるんじゃない!?」

「うん? やること?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、真姫の提案で放送室へと向かった一同は真姫と同じクラスの放送部員の女生徒に頼み込んで交渉し、放送室を使わせて貰うことに。

 

「ホントに!?」

「はい、お昼の放送で良ければ構わないですよ?」

「彼女、放送部員なの。 こうやって実際マイクに向かって校内のみんなにアピールすれば応援して貰えるし、中継される時の練習にもなるでしょ?」

 

なぜ放送室に来たのか、それはこうやってアピールしてより多くの生徒達に応援して貰えるようにすること、それと同時に中継される時の練習にもなれるからと言うことで、この一石二鳥な提案に紅葉や穂乃果は感心の声をあげた。

 

「凄く良い提案だな、真姫ちゃん」

「そうだね、真姫ちゃんナイスアイディア!!」

 

学校なら失敗しても迷惑はかからないし、外に漏れる心配もないと絵里もまた真姫のアイディアに感心し、ことりもこれでみんなに応援して貰えれば心強いと思った。

 

「確かに、それは凄くいいとは思いますが・・・・・・」

 

そこでなぜか放送室の入り口からこっそり覗き込むように中の様子を伺っていた凛と花陽はなぜか放送部員と話す真姫の姿を見て心底驚いた顔をしており、それに気付いた絵里が「どうしたの?」と尋ねる。

 

「真姫ちゃんが同じクラスの子と仲良くなるなんて・・・・・・」

「ビックリ・・・・・・」

「君ら地味に失礼なこと言ってない?」

 

それ遠回りにちょっと失礼なこと言ってないかと思う紅葉だが、自分達以外にも仲の良い友人がいることを花陽や凛は嬉しく思っているのだろうと考え、紅葉はそれ以上のことは何も言わなかった。

 

「ヴェッ!?」

 

また凛と花陽の発言に顔を真っ赤にし、「べ、別に!」とそっぽを向く真姫。

 

「ただ日直で一緒になって少し話しただけよ!」

 

そんな真姫の姿に一同は思わず笑みを零し、それから早速校内放送を使わせて貰うことに。

 

「あー、皆さんこんにちわ!! うがっ!?」

 

マイクに顔を近づけ、校内放送をする穂乃果だったが、ついつい挨拶する感覚で頭を下げてしまった為勢いよくマイクに頭をぶつけてしまい、「いったーい!!」と彼女は自分の頭を抑える。

 

「なにやってんのよ!?」

「おい、大丈夫か穂乃果!?」

「だ、大丈夫・・・・・・!」

 

即座に体勢を立て直して改めてマイクに顔を近づけ校内放送を行う穂乃果。

 

「えーっと……皆さんこんにちは! 私、生徒会長の……じゃなかった! μ'sのリーダーをやっています高坂穂乃果です!! って、それはもう、みんな知ってますよね。 実は、私達また、ライブをやるんです! 今度こそラブライブに出場して、優勝を目指します!! みんなの力が、私達には必要なんです!! ライブ、皆さん是非見てください!! 一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いします!!」

 

最後に、彼女は「高坂 穂乃果でした!!」と自分の名前を言った後に、「そして他のメンバーも紹介!!」と自分の後ろに待機させていた2人・・・・・・海未と花陽の方へと振り返るのだが・・・・・・。

 

「あれ?」

「誰か助けて誰か助けて・・・・・・!」

「あっ、あっ、あっ・・・・・・!」

 

そこには緊張のあまり涙目で上がってしまっている海未と花陽の姿があり、これはもう少し心の準備が必要かもしれないということでその準備が完了するまでの間、紅葉が「どうしても自分も校内放送やりたい」と言って来たので彼が時間を稼ぐことに。

 

「えー、μ'sのマネージャーをやってて、穂乃果の兄の高坂 紅葉です。 俺から言うことと言えば1つ・・・・・・。 先ほど穂乃果が言ったように、俺達で声援を送るんだ。 簡単ではないだろう、ラブライブ優勝への道のりは険しい。 常にそうだった。 だが応援する価値はある。 例え俺1人でも応援するが、1人ではないと信じる」

 

明らかにどこかで聞いたことあるような台詞に、思わず真姫が「アンタそれやりたかっただけでしょ!?」と即座にツッコミを入れられ、同時に紅葉の言葉を聞いた穂乃果がハッとした顔を浮かべると、紅葉の傍に寄り・・・・・・。

 

「今のやつ原稿あるの? それとも全部アドリブ?」

 

というノリの良さを見せる穂乃果だった。

 

「ウィ〇ター・ソ〇ジャーの名シーンのパロディやってんじゃないわよ!!?」

「校内放送って聞いてどうしてもやりたかったんです・・・・・・!!」

 

にこにパロディやってんじゃないと叱られる紅葉だが、みんなキャ〇プ好きなのか校内では意外にも結構ウケがよく好評だった模様。

 

兎にも角にも紅葉が時間を稼いでくれたおかげで海未や花陽もなんとか心の準備は完了したようで、先ずは海未が顔を真っ赤にしつつもマイクに顔を近づけ、オドオドしながらも先ずは自己紹介を行う。

 

「えっと、そ、園田 海未役をやっています園田 海未と申します・・・・・・」

「なんだその声優の自己紹介みたいなやつは・・・・・・。 三森 すずこが園田 海未役をやってるみたいな・・・・・・」

 

声優みたいな自己紹介の仕方にツッコミを入れる紅葉。

 

ちなみに、なぜ校内放送に自分からやりたいと言った紅葉以外でこの3人にしたのかにこが絵里に尋ねると、絵里曰く、「リーダーと1番緊張しそうで練習が必要な2人だから」とのことだった。

 

続いて今度は花陽がマイクに顔を近づけ、自己紹介を行うことになったのだが・・・・・・。

 

「あ、あの・・・・・・μ'sのメンバーの小泉 花陽です。 えっと、好きな食べ物はごはんです・・・・・・。 μ'sの中ではあまり目立たない方で・・・・・・」

 

しかし、彼女の声は非常に小さく、そんな花陽の姿に真姫は溜め息を吐きつつ、彼女の声が聞こえるように放送部の生徒にマイクのボリュームを上げるように頼むものの・・・・・・それでもやはり声は小さく・・・・・・。

 

「おーい、声もっと出して! 声!」

 

それに見かねた凛が花陽にもっと声を大きく出すように言うのだが、それになぜか穂乃果がグッとサムズアップし、彼女はマイクに顔を近づけ・・・・・・。

 

「イエーイ!!!! そんな訳で皆さんμ'sをよろしく!!!! あれ?」

 

真姫がボリュームを上げるように放送部の生徒に頼んでいたのを見ていなかったのか、穂乃果は大声でマイクに向かって喋り、それによって校内放送でも彼女の声が大ボリュームで響くこととなり、学校中の生徒達はみんなそのあまりの声の大きさに思わず耳を塞いでしまう。

 

尚、常人より遙かに耳の良い紅葉は海未達以上のダメージを耳に受け、彼は泡を吹いて白目を剥き、その場にバタリと倒れ込んでしまっていた。

 

「がふ」

「えっ、わっ!? 紅葉くん!?」

「えっ? えっ!? ちょっ、わー!! ごめんなさーい!! お兄ちゃ〜ん!!」

 

穂乃果も倒れ込んだ紅葉に気付くと、彼女は泣いて謝りながら紅葉を抱きかかえて揺さぶり、何度から身体を揺らすと紅葉はなんとか目を覚ますことができた。

 

「ハッ!? あれ? 何が起こったんだ今・・・・・・?」

「うぅ、うわぁーん!! お兄ちゃんごめんなさーい!」

 

しかし、紅葉は気を失う前のことが思い出せず、なぜか泣いている穂乃果が目の前にいて訳が分からず彼は困惑し、首を傾げるのだった。

 

あとついでに紅葉の鼓膜は無事だったようだ。

 

「なにやってるのよ、全く・・・・・・」

 

そんな穂乃果に真姫は呆れ顔になるが・・・・・・。

 

「でも、μ'sらしくて良かったんじゃない?」

 

放送部の生徒はいかにもμ'sらしいということで良かったのではないかと言うが、「それって褒め言葉?」と怪訝な顔を浮かべる真姫であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ〜、まだ耳がキンキンする」

 

その後、他にもまだ色々なことを話し合うことがあるため、次に屋上へと向かうことに。

 

「まぁ、少しは練習になったんじゃない?」

「うん、もう無闇に大声は出さない・・・・・・!」

「ホントに頼む」

 

穂乃果は今度からはもう無闇に大声を出さないと約束し、紅葉は未だにガンガンする頭を摩りながら本当に頼むと穂乃果にお願いし、あとはライブをどこにするかという話題に一同は移る。

 

「カメラで中継できるところであれば場所は自由だから・・・・・・」

「でも屋上は前にライブで使っちゃったし」

 

しかもそれはもうネットに配信してしまっている為、また屋上でライブをしてしまっては新鮮みに欠けてしまい、だとしたら他にどんな場所があるのか、まだライブで使っていなさそうな場所を紅葉達は探し回ることに。

 

しかし、講堂、グランド、校門・・・・・・ライブで使えそうな場所は学校の中では殆ど使ってしまっていて学校内ではどうしてもライブに良さそうな場所が見つからなかった。

 

「同じところだとどうしても目新しさがなくなっちゃうんじゃないかな?」

「そうだよね? うーん」

「まぁ、別にライブする場所はどうしても学校でないとダメだって訳じゃないんだから・・・・・・学校の外でもライブに使えそうな場所、探してみようぜ?」

 

学校内でダメなら外にライブで使えそうな場所を探しに行こうと紅葉が意見を述べ、「確かにそうだよね」と彼の言葉に穂乃果達も納得し、一同は学校の外を出て秋葉辺りに行ってみることに。

 

 

 

 

 

「でも・・・・・・」

「この辺りは、人が沢山・・・・・・!」

 

なんやかんやで秋葉に来た紅葉達だったが、海未や花陽は人の多さからこんなところでライブしたら間違いなく自分達は緊張してしまうと懸念。

 

「それに何より秋葉はA-RISEのお膝元やん」

「下手に使うと、喧嘩売ってるように思われるわよ?」

 

さらに秋葉はA-RISEお膝元ということから希やにこはこんなところでライブしたらまるで喧嘩売ってるように思われるのではないかと考え、学校以外ならこの辺りが1番良いのではないかと思ったが・・・・・・やはりこの辺りも使えそうにはなかった。

 

それから一同はそこからUTX高校が近かった為、何気なく立ち寄ってみることに。

 

そこでは相変わらずA-RISE目当てで人が沢山集まっており、丁度、UTXのモニターではA-RISEが自分達の新曲が完成したという報告をする映像が流れているところだった。

 

『遂に新曲ができました!』

『今度の曲は今までで1番盛り上がる曲だと思います』

『是非聞いてくださいね!』

 

それを受けてか、周りの人々から沢山の黄色い歓声があがり、その光景を見て改めて穂乃果達はA-RISEの凄さを実感するのだった。

 

「やっぱり凄いね」

「堂々としています・・・・・・」

 

A-RISEの映像を見たことりと海未はそんな風にそれぞれの感想を述べ、穂乃果も映像を見つつ、笑みを浮かべながら「負けないぞ」と呟くのだった。

 

するとそこへ・・・・・・。

 

「高坂さん」

「アッハイ」

「えっ?」

 

いきなり名前を誰かに呼ばれ、思わず返事をしてしまう紅葉と不思議そうな顔をする穂乃果。

 

「呼んだの穂乃果さんの方なんだけど・・・・・・」

 

気付けば、穂乃果の目の前にはA-RISEのリーダー、ツバサの姿があり、彼女の存在に穂乃果、海未、ことり、紅葉は一瞬思考が停止し・・・・・・。

 

「あ、あ、あああああ!! A-RISE・・・・・・!!」

「シーッ!」

 

それがツバサであると気付いた穂乃果は驚きの声をあげそうになるが、ツバサに叫ばないように注意され、「来て」といきなり穂乃果の腕を両手掴み、彼女を連れてどこかに走り去ってしまう。

 

「あっ、おい待て!!」

 

紅葉は慌てて穂乃果を連れ去ったツバサを追いかけようとするのだが、その時、「わああああ!!!?」という誰かの悲鳴が聞こえ、紅葉は思わず足を止めて立ち止まってしまう。

 

「な、なんだ?」

 

また、A-RISEの映像をうっとりした顔で眺めていた花陽も穂乃果を連れ去るツバサの存在に気づき、彼女が目を見開くとツバサも花陽の視線に気付くと彼女に対して舌を出しながらウインクを送る。

 

「あ、あああああー!!」

「かよちん?」

 

そんな穂乃果を連れ去っていくツバサを花陽は慌てて追いかけ、同じくツバサの存在ににこも花陽に追いついて彼女の隣に走ってくる。

 

「今のは絶対・・・・・・!」

「ツバサよね!?」

 

そのまま花陽達はツバサと穂乃果を追いかけて行ってしまい、取りあえず、穂乃果のことはにこ達に任せて自分は先ほど聞こえた悲鳴が気になった為、声のした方に行ってみるとそこでは男性2人が殴り合っていたのだ。

 

「お前マジで許さねえからな!!」

「そりゃこっちの台詞だ!!」

「なんだなんだ、一体なにがあったんだ?」

 

紅葉が近くの人に一体何があったのか尋ねてみると、それは数分前のこと・・・・・・。

 

UTX高校の前でA-RISEのモニターの前で彼女達のライブを見ていた男性Aがボソリと呟いたことが切っ掛けだった。

 

「なんとなく近く通りかかったけど、やっぱスクールアイドルはA-RISEよりもμ'sの方が魅力的だよなー」

 

そんなことを男性Aが呟いてしまったせいで、たまたま隣にいたA-RISEのファンと思われる男性Bの反感を買ってしまったのだという。

 

「ハァ? 前回ラブライブが予選始まる前に逃げ出した腰抜けチームのどこが魅力的なのさ?」

 

そのような暴言を聞いて男性Aは思わず苛立ち、男性Bに対して反論する。

 

「何が腰抜けだよ!! あの時は穂乃果ちゃんが怪我して入院してたから辞退したんだよ!!」

「あっそ、それって罰が当たったんじゃないの? 結成したばかりのグループがラブライブに出場しようなんておこがましいことしようとするから」

「ハアアア!!? お前μ'sのこと殆ど知らねえんだな!! 彼女達は結成当時から加速的に人気が上がって来てた凄いグループなんだぞ? μ'sがラブライブ出場してたらA-RISEにだって勝ってたかもしれないんだぞ!? A-RISEこそ前回μ'sが辞退したから、そのおこぼれで優勝したんじゃないの!?」

 

そのように売り言葉に買い言葉という感じで言い争いも徐々に発展し、遂には喧嘩に発展し、今この状況に陥っているという訳だ。

 

μ'sがラブライブに出るのがおこがましいとか、腰抜けとか言われる部分は確かに紅葉も納得できない。

 

自分が原因なので尚更。

 

だからといって男性AのそのおこぼれでA-RISEが優勝したというのも納得できるものではない。

 

確かに自分はA-RISEに対して「かかってこい!!」という感じだったが、それは強敵だから燃えるというものだったからで・・・・・・別にA-RISEのことを嫌っている訳ではない。

 

むしろ高く評価している。

 

だからこそ、この2人言い分は紅葉にとって不快なものでしかなく、尚且つ彼女達のファンだと言うなら殴り合いなんて恥ずかしい真似はやめろと紅葉は彼等に注意を促したのだ。

 

「こんなとこで殴り合いなんてみっともないし、迷惑だ。 こんなことしてたらμ'sにしてもA-RISEにしても彼女達は悲しむぞ」

 

紅葉が喧嘩している2人にそう注意を呼びかけるのだが、2人とも全く聞く耳を持たず、むしろ男性Aも男性Bも自分達を注意してくる紅葉に対し苛立ち、「うるせええ!!」と彼にも2人同時に殴りかかって来たのだ。

 

最も、2人とも拳が紅葉に届く前に、一瞬で紅葉に腹パンされ、ダウンしてしまうのだが。

 

「「ぐはぁ!?」」

「言っとくけど今の正当防衛だからな?」

「紅葉、大丈夫ですか!?」

 

そこで騒ぎを聞きつけた海未が駆け寄ってくるのだが、正直、今この状況で海未が来られては困る。

 

幸い、男性Aも男性Bも蹲って顔を下に向けている為、まだ海未の存在には気付いていなかったが・・・・・・紅葉は右手で海未がこちらに来るのを制し、「大丈夫」とだけ伝える。

 

「こっちは大丈夫だから、海未は穂乃果達を追いかけてくれ」

「えっ、ですが・・・・・・」

「大丈夫大丈夫」

 

紅葉は軽いノリでそう言うと、海未も紅葉の態度を見てどうやら本当に問題いのだろうと思い「分かりました」と頷くとそのまま彼女も穂乃果を追いかけて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・」

 

一方、穂乃果を連れ去ったツバサはUTX高校へと入り、その1階のある場所で立ち止まるとツバサは穂乃果に笑みを向けつつ「はじめまして」と挨拶。

 

「うっ、はじめまして・・・・・・!」

 

それに戸惑いつつも穂乃果も挨拶を返す。

 

「ようこそ、UTX高校へ!」

 

それから少しだけ遅れてどこからともなく他のA-RISEのメンバーのあんじゅと英玲奈も現れ、それに穂乃果が唖然としていると遅れて後ろからにこが駆けつける。

 

「A-RISE!!?」

「フフ」

「あ、あ、あの・・・・・・よ、よろしければさ、サインください・・・・・・!」

 

またそこに花陽もやってくると彼女はどこからか色紙を取り出してツバサ達にサインをねだり、それに「ちょっとズルいわよ!?」とにこが慌てて花陽の肩を掴む。

 

「フフ、いいわよ?」

 

そんな花陽とにこの姿に微笑みながら快くサインを書くことをツバサは了承し、それにとても喜ぶ花陽とにこ。

 

「い、良いんですか!?」

「ありがとうございます!」

「でも、どうして・・・・・・」

「それは前から知っているからよ、μ'sの皆さん」

 

穂乃果の疑問にツバサがそう応え、後に海未達や喧嘩騒動をどうにか沈静化することに成功した紅葉が合流すると一同は場所を移動し、お互いに話し合う為に食堂へと向かうことに。

 

正確に言えば、食堂と一緒になっているカフェスペースに行くことになったのだが。

 

「ゆっくり寛いで。 ここはこの学校のカフェスペースになっているから、遠慮なく」

「食堂の料理美味そう・・・・・・」

「いや、お兄ちゃん・・・・・・」

 

尚、紅葉はさっきからずっと食堂の方に顔が向いており、隣に座るそんな紅葉に呆れた視線を送る穂乃果。

 

流石の自分でもそこまで食い意地はってないよとツッコミを入れられた後、穂乃果に無理矢理顔を前に向かせられ、話を戻す。

 

「あの、さっきはうるさくてすみません」

 

花陽は先ほど下の階で騒がしくしたのを謝罪し、それに対してあんじゅは髪をくるくると弄りながら「良いのよ、気にしないで」と言葉を返す。

 

「素的な学校ですね!」

「フン・・・・・・」

「ちょっと、何偉そうにしてんのよ!?」

 

腕を組んで、なぜか少し偉そうに鼻を鳴らす真姫とそんな彼女を注意するにこ。

 

「そうだぞ真姫ちゃん、あんじゅさんと髪弄りキャラ被ってるからって・・・・・・」

「いや、別にそんなの気にしてないんだけど!?」

 

紅葉からも注意されるが、別にあんじゅとキャラ被ってるから偉そうな態度取ったとかではないので即座にそれを真姫は否定する。

 

「ウフフ、あなた達もスクールアイドルでしょ? しかも同じ地区」

 

そんな紅葉達の様子にあんじゅは思わず笑ってしまい、ツバサは一度穂乃果達に挨拶してみたかったのだと話す。

 

「一度挨拶したいと思っていたの。 高坂 穂乃果さん!」

「えっ?」

「下で見掛けた時、すぐにあなただと分かったわ。 映像で見るより本物の方が遙かに魅力的ね!」

 

それを受けてか、なぜか自慢げな顔をする紅葉。

 

「なんで紅葉が自慢げなんですか」

「自慢の妹だからな」

「・・・・・・自慢の妹かぁ・・・・・・」

 

ただ穂乃果の方は「自慢の妹」という言葉にあまり嬉しそうでは無かったが。

 

「人を惹きつける魅力、カリスマ性とでも言えば良いのだろうか。 9人いても、尚輝いている」

「はぁ・・・・・・」

 

英玲奈からそう評され、一応は物凄く褒められているのだろうか、穂乃果自身にはそんな自覚全くない為、どうにもよく分からないといった感じだった。

 

「私達ね、あなた達のことずっと注目していたの」

『えっ!?』

 

それを受けて、穂乃果達はまさかA-RISEが自分達に注目しているなんて夢にも思っていなかった為、彼女達は驚きの声をあげた。

 

「実は前のラブライブでも1番のライバルになるんじゃないかって思っていたのよ」

「前の・・・・・・」

 

あんじゅの言葉に、紅葉は顔を俯かせ、暗い表情を見せる。

 

穂乃果のおかげで色々と吹っ切ることが出来たものの、自分が容赦なくギャラクトロンを倒し、穂乃果を殺しかけたことを思い出してしまったからだ。

 

そのせいで穂乃果は大怪我をして前のラブライブには参加することができず、そんな紅葉に気付いた穂乃果はそっと彼の肩に手を乗せる。

 

「私は大丈夫だから、お兄ちゃんも元気出して?」

「うっ・・・・・・あ、あぁ。 すまん。 ありがとう」

 

しかし、A-RISEからライバル視されるなんてと照れる絵里だったが・・・・・・。

 

「絢瀬 絵里。 ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている」

「そして西木野 真姫は作曲の才能が素晴らしく、園田 海未の素直な詩ととてもマッチしている」

「星空 凛のバネと運動神経はスクールアイドルとしては全国レベルだし、小泉 花陽の歌声は個性が強いメンバーの歌に見事は調和を与えている」

「牽引する穂乃果の対になる存在として、9人を包み込む包容力を持った東條 希」

「それに、秋葉のカリスマメイドさんまでいるしね?」

 

A-RISEの3人は次々と穂乃果達9人の特徴をそれぞれ言い当て、ライバル視しているだけあってとてもよく相手のことを調べているようだった。

 

「いや、『元』と言った方が良いかしら?」

「あっ、うぅ・・・・・・」

 

それに頬を赤くし、照れ臭そうにすることり。

 

可愛い。

 

「それにリーダーの高坂 穂乃果さんの兄で、南さんや園田さんの衣装製作や作曲作りのネタ探しの手伝いなどを行ったりして彼女達の活動に貢献している。 μ'sのマネージャーをやっている高坂 紅葉さん」

「えっ、俺にも感想あるの?」

 

まさかマネージャーである自分にまで感想が来るなんて思ってなかった紅葉はちょっとだけ驚いた顔を浮かべる。

 

「そして、矢澤 にこ・・・・・・」

「むうう・・・・・・」

 

そして最後にツバサはにこの名を呼び、自分はどんな感想が来るのかと不安に思いながらも期待するにこ。

 

「・・・・・・いつもお花ありがとう!」

『えっ?』

 

その瞬間一同の一斉にジトッとした視線がにこに向けられ、ツバサ曰く、にこは昔から応援してくれている人なのだとか。

 

「昔から応援してくれているよね、すごく嬉しいよ?」

「にこ、そうなの?」

「知らなかったんやけど」

 

絵里や希からは呆れた視線を送られ、にこは苦笑し、笑って誤魔化す。

 

「い、いやぁ、μ's始める前からファンだったから〜ってそんなことはどうでも良くて!! 私の良いところでは!?」

「フフ、グループにはなくてはならない小悪魔ってところかしら?」

 

改めてツバサからの評価を聞いたにこはそれを受けて身体をくねらせながらとても嬉しそうな様子を見せ、そんな評価をにこにしたツバサに紅葉は「えぇ・・・・・・」と少しだけ困惑した。

 

(にこが小悪魔ってなんか違和感が・・・・・・。 なんか誤魔化されてる感が凄い)

「なぜそこまで・・・・・・」

 

そこで絵里はどうしてそこまでして自分達に興味を持つのかとツバサに尋ねると、彼女が言うにはこれだけのメンバーが揃っているスクールアイドルのチームはそうはいないからとのことだった。

 

「だから注目もしていたし、応援もしていた。 そして何より・・・・・・」

「んっ?」

「負けたくないと思ってる」

 

真剣な表情でそう力強く宣言するツバサ。

 

そんな真面目な雰囲気を感じて、先ほどまではしゃいでいたにこは黙って座り込む。

 

「でも、あなた達は全国1位で私達は・・・・・・」

「それはもう過去のこと」

「私達はただ純粋に今、この時1番お客さんを喜ばせる存在でありたい。 ただ、それだけ」

 

海未の言葉にあんじゅと英玲奈がそう答えると、そこから感じ取れるA-RISEの雰囲気に穂乃果達は圧巻されそうになる。

 

「μ’sのみなさん、お互い頑張りましょう! そして、私達は負けません!」

 

それだけを言い残すと、ツバサ達3人は立ち上がって部屋を出て行こうとする。

 

だが、それを椅子から立ち上がった穂乃果が「あの!」と声をかけて呼び止める。

 

それに合わせて他のメンバー達も立ち上がる。

 

「うん?」

「A-RISEの皆さん!! 私達も負けません!」

 

今度は穂乃果が、力強くそうツバサ達に宣言すると、彼女は一瞬驚いた顔を浮かべる。

 

そんな穂乃果にまるで「よく言った」とでも言わんばかりに彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる紅葉。

 

「ちょっと、今頭撫でるのやめてよお兄ちゃん! えっと、それで・・・・・・今日はありがとうございました!」

 

穂乃果がそう笑みをツバサに向けながらお礼を述べると、ツバサは「アハハ!」と突然笑い出す。

 

「あなたって面白いわね?」

「えっ?」

「ねえ、もし歌う場所が決まっていないなら、うちの学校でライブやらない?」

 

突然のツバサのその申し出に「えっ?」と首を傾げる穂乃果達。

 

「屋上にライブステージを作る予定なの! もし良かったら是非! 1日考えてみて?」

 

それを受けて、紅葉は両腕を組んで少し考えて見る。

 

確かにμ’sのライブをやる場所が中々決まらなくて困り果てていた。

 

だが、この条件だと少しばかり相手の方が有利なのではないかと考えずにいられなかった。

 

(いや、でももうどの道学校以外でやらないといけないんだから選択肢は限られてくるか。 でももう少し場所を探してそれから改めてみんなで話し合ってから・・・・・・)

「やります!!」

 

しかし、紅葉がそうこう考えている内に穂乃果は即決してしまい、それに紅葉は目を丸くし、他のみんなも「えぇー!!?」と当然ながら驚きの声をあげるのだった。

 

 

 

 

そして時は流れ・・・・・・。

 

ラブライブ予選当日。

 

紅葉達はUTX学園に訪れており、紅葉、穂乃果、希は屋上から下を見下げ、穂乃果はそこから見える景色を見て「すごーい!!」とはしゃいでいた。

 

「うちらの学校とは大違いやね・・・・・・」

(これくらいの景色割と見慣れてるから、俺はあんまり新鮮みないなぁ)

 

 

 

 

 

その頃、数日前に男性AとUTX前で喧嘩騒ぎをしていた男性Bはというと・・・・・・。

 

UTX高校の近くにあるビルの路地裏に隠れながら、イライラした様子で地団駄を踏んでいた。

 

「クソクソクソ!! A-RISEのいるUTXでμ'sがライブぅ? ふざけるな!! 聖地を汚しやがって・・・・・・。 許さない、絶対に許さないぞ・・・・・・!! UTXでライブなんて俺が許さない!!」

 

そう言うと、男性Bの姿が変化し「P」と書かれた青いシャツを着て鋭い目つきをした木彫りの人形のような外見の異星人へと姿を変えたのだ。

 

男性Bの正体、それはこことは別の宇宙に存在する地球で、「ウルトラマンタロウ」が地球防衛に着いていた時期に現れた異星人「わんぱく宇宙人 ピッコロ」の同族にして名を「ピッコラ星雲人 ピッコル」という。

 

ちなみにピッコロとの見た目の違いは先ほども外見の特徴として紹介したが青いシャツを着ていることと目つきが鋭いところである。

 

 

 

 

 

 

一方、待合室では他のμ'sのメンバー達が衣装に着替えて準備しており、にこが左右の頭にお団子を作っているとそこへ凛が「可愛いにゃー!」と言いながら寄ってきた。

 

「当たり前でしょ! 今日が勝負なんだから!」

 

予選とは言え、気合いは十分な様子のにこ。

 

それを見て凛も「よーし、やるにゃー!!」と俄然やる気を出し、さらに花陽曰く、既に動画などでは沢山の人が見てくれているそうで既にかなりの盛り上がりを見せているとのことだった。

 

「みんな! 何も心配ないわ。 兎に角集中しましょう!」

 

みんなに向かってそう言い放つ絵里だが、ことりは「でも、ホントに良かったのかな?」とA-RISEと一緒にライブをやることに対して不安そうに呟く。

 

「一緒にライブをやるって決めてから2週間集中して練習ができた! 私は正解だったと思う」

 

そんな不安を抱くことりに対し、絵里はむしろこれで良かった、正解だったと応える。

 

するとそこへ、A-RISEの3人が絵里達の様子を「こんにちわ」と挨拶を交えつつ見に来たのだ。

 

「あっ、こんにちわ!」

 

そこで丁度穂乃果と希が帰って来て穂乃果はツバサに挨拶を返す。

 

ちなみに紅葉は部屋の外で待機中である。

 

「いよいよ予選当日ね? 今日は同じ場所でライブができて嬉しいわ。 予選突破を目指して、互いに高め合えるライブにしましょ?」

 

そう言いながらツバサは穂乃果に手を差し伸べ、穂乃果はそれに一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みをツバサに向けながら「はい!!」とその手を握り、握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

その頃、高坂家では雪穂と亞里沙がノートパソコンを開いて本日開催するライブの動画を観ており、亜里沙はライブが始まるのを待ちながらずっとそわそわしており、緊張しているようだった。

 

「あ〜、ドキドキする! ねえ、お姉ちゃん達、大丈夫かな・・・・・・?」

「大丈夫だよ、きっと。 私のお兄ちゃんもついてるし!」

 

雪穂は緊張する亜里沙を安心させるようにそう言うと、雪穂は視線を部屋の壁に移し・・・・・・。

 

雪穂の視線の先、そこには「ほ」と書かれた穂乃果の練習着がハンガーでかけられていた。

 

 

 

 

 

 

そして遂にライブの時間となり、いよいよ待ちに待ったライブの瞬間。

 

ライブは屋上で披露されることとなり、先ずはA-RISEから・・・・・・。

 

A-RISEが歌う曲は・・・・・・「Shocking party」

 

そして、A-RISEの曲が終了し、彼女達のパフォーマンスが終了するとそれによって会場の外からでも彼女達のファンの歓声が聞こえ、それに穂乃果達も圧巻され唖然とした顔を浮かべていた。

 

「じかに見るライブ・・・・・・」

「全然違う。 やっぱり、A-RISEのライブには・・・・・・私達・・・・・・」

「敵わない・・・・・・」

「認めざる得ません・・・・・・」

 

A-RISEの生のライブを見て、強い衝撃を受けた海未達は1人ずつ、弱気になっていってしまう。

 

(絵里は前A-RISEのこと素人にしか見えないとか言ってなかった?)

 

以前、A-RISEのことを素人にしか見えないと言っていた絵里まで弱気な態度を見せた為、思わず心の中でツッコミを入れる紅葉。

 

最も、これに関しては生で見るのとでは違う、彼女達が以前よりも成長しているからと説明がつくが。

 

それに、今そのことを指摘するよりも、自分がやらないといけないことがある。

 

紅葉は沈んでいく表情の穂乃果の肩に手を置き、ぼそりと穂乃果の耳元で呟く。

 

「やる前から諦めるな。 お前達だって、凄いさ。 それをみんなに言ってやれ」

「お兄ちゃん・・・・・・うん!!」

 

紅葉の言葉を受けて、穂乃果は力強く頷く。

 

「A-RISEのライブが凄いのは当たり前だよ!! 折角のチャンスを無駄にしないよう、私達も続こう!!」

 

穂乃果の言葉を受けてか海未達の暗かった表情は明るいものへと変化し、一同は穂乃果の言葉に頷くと、穂乃果達はそれぞれピースサインを作って互いが互いに指を合わせ、星のような形を作る。

 

「A-RISEはやっぱり凄いよ! こんな凄い人達とライブができるなんて、自分達も思いっきりやろう!」

『おう!!』

「よーし!! それじゃ行くよ〜!! μ's!! ミュージック〜!!」

 

と、そこで「穂乃果ー!!」と彼女の名前を呼ぶ聞き覚えのある声が聞こえ、声のした方に顔を向けるとそこにはヒフミトリオを筆頭とした音ノ木坂の学生達が何人かが駆けつけて来たのだ。

 

「手伝いに来たよ!」

 

それを受けて、穂乃果達はとても喜ばしい気持ちとなったのは言うまでも無い。

 

おかげで先ほど以上に気合いも十分に入った。

 

「さあ、行こう!!」

 

そして、穂乃果達μ'sは・・・・・・自分達のライブを行おうとライブステージに上がろうとするのだが、その時・・・・・・。

 

『そこまでだ!!』

 

突如として巨大化したピッコルがUTX高校の前に出現したのだ。

 

「ひゃあ!? えっ、な、なに・・・・・・? 木彫り人形・・・・・・?」

 

いきなりのピッコルの出現に可愛らしい悲鳴をあげるツバサ。

 

そんなツバサに「可愛い悲鳴だな〜」と呑気な感想を呟く穂乃果。

 

ちょっと冷静すぎないかと思えるかもしれないが、ツバサよりも驚きが少ないのは穂乃果はこういう状況にちょっとだけ慣れてしまったからなのかもしれない。

 

『A-RISEのライブは終わった!! お前達μ'sにこの聖地でライブなんてさせてなるものかぁ!!』

「えっ、なんだあの木彫り人形私達のファンなのか?」

 

ピッコルの言動から英玲奈はもしかして彼は自分達のファンなのかと疑問を抱き、またにこもピッコルの言動から彼が自分達のライブを邪魔しようとしているのが分かった。

 

「ちょっと、ラブライブの予選中なのよ!? 邪魔なんてしたら許さな・・・・・・!!」

『黙れ!! お前達は目障りだ!! 俺が潰してやる!!』

 

にこの言葉に対してピッコルは逆上し、先ずはリーダーを始末してやろうと穂乃果に手を伸ばす。

 

「きゃああ!!?」

 

そのことに穂乃果はギュッと思わず目を瞑るのだが、その時・・・・・・。

 

『ウルトラマンオーブ! バーンマイト!』

『シュアアア!!!!』

 

そこへ現れたのはメビウスとタロウの力を融合させた2本角の赤き姿、「ウルトラマンオーブ バーンマイト」であり、いつの間にか姿を消し、こっそりと人気のない場所でオーブに変身した紅葉はピッコルに跳び蹴りを喰らわすと一気にピッコルをUTX高校から引き離す。

 

『紅に燃えるぜ!!』

「っ、オーブ!!」

 

穂乃果はオーブが現れたことに気付くと、彼女はオーブが自分を助けてくれたのだということを即座に理解し、彼女はそんなオーブに対し笑みを向け得「ありがとう!」とお礼を述べる。

 

それに対してオーブはコクリと静かに頷く。

 

ピッコルと向き合い、ピッコルに向かって駈け出す。

 

『ウルトラマン!? こんのぉ〜!! 邪魔するなぁ〜!!』

 

自分の邪魔をされたことに怒ったピッコルは「ピッコルハンマー」というハンマーの武器を取り出すとハンマーを振るってオーブに攻撃。

 

それをオーブは両手で受け止め、ピッコルの横腹に蹴りを叩き込む。

 

『バーンアロー光線!!』

 

さらに頭のウルトラホーンにエネルギーを集め、鏃状の光弾を放つ「バーンアロー光線」を放ち、直撃を受けたピッコルは僅かに怯む。

 

『うわああ!!? このぉ!!』

 

ピッコルはオーブに向かってハンマーを投げつけ、オーブはそれをはたき落とすが・・・・・・直後に自分目がけてピッコルのドロップキックが直撃し、オーブは地面に倒れ込んでしまう。

 

それを見てピッコルはすぐさまハンマーを回収し、倒れ込んだオーブに向かってハンマーを何度も振りかざし、オーブはその度に身体を地面に転がして攻撃を躱す。

 

『逃げるんじゃない!!』

 

だが、オーブは一瞬の隙を突いて起き上がってピッコルの顔面を殴りつけると、ピッコルは顔を抑えながらその場に蹲る。

 

『お前、以前UTX前で喧嘩してた時のA-RISEのファンだろ? もうこんなことはやめるんだ』

『っ! そういうお前は、あの時俺達の喧嘩を止めたいけ好かない奴か!? まさかウルトラマンオーブだったとは・・・・・・!! だが、そんなことはどうでもいい!! 俺のやることは変わらない!!』

 

オーブはピッコルを説得しようとするが、ピッコルはまるで聞く耳を持たず、立ち上がって口を開いてそこから白い煙を発射。

 

『ヌアアア!!?』

 

煙によって視界を遮られたオーブは周りを確認することが困難となり、オーブは背後からピッコルの振るったハンマーの攻撃を受け、ダメージを受けてしまう。

 

『ウアアア!!?』

 

さらに今度は前から振るって来たピッコルのハンマーで胸部を叩きつけられ、オーブは大きく吹き飛ばされて倒れ込む。

 

『フッハッハッハ!! どうだ! 俺の煙に紛れて繰り出す攻撃は! それに俺の目は特殊でな。 自分の煙で周りが見えなくなっても、俺だけは煙の中でもどこに誰がいるか分かるのさ!!』

『フン、だったら・・・・・・この煙を晴らせば良いだけだ!!』

 

するとオーブは身体を横に高速回転させることで起こす風圧で煙を振り払うことに成功。

 

『な、なぁにぃ!?』

『廻ればなんとかなる・・・・・・ってやつだな』

 

そのまま紅葉はインナースペース内でさらに新たにカードをオーブリングに読み込ませる。

 

『コスモスさん!』

 

それは「慈愛の勇者」と呼ばれる青き巨人、「ウルトラマンコスモス・ルナモード」のカード。

 

『エックスさん!!』

 

さらに紅葉はメカニカルな外見をした戦士、「ウルトラマンエックス」のカードをオーブリングにリード。

 

『救う為の力、お借りします!』

『フュージョンアップ!』

 

そのままオーブはコスモスとエックスの力を融合させた姿、「ウルトラマンオーブ フルムーンザナディウム」へと姿を変えるのだった。

 

『ウルトラマンオーブ! フルムーンザナディウム!』

『繋がる力は心の光!!』

『それがなんだ!!』

 

ピッコルはハンマーを地面に置くと、今度は木製でできたような見た目の剣「ピッコルソード」を取り出し、ピッコルソードで何度もオーブを斬りつけようとするが、オーブはひらりひらりとまたひらりとピッコルの攻撃を躱していく。

 

『ちょこまかするなぁ!!』

『ストライクXスラッシュ!』

 

長い鼻から発射するミサイルをピッコルはオーブに撃ち込むが、右手を前に突き出し光エネルギーを矢じり型にして放ち、敵を切り裂く破壊光弾「ストライクXスラッシュ」を連射して放つことでピッコルのミサイルを全て相殺する。

 

この技も通じないとなると、再びピッコルはピッコルソードを握りしめてそれをオーブに向かって振るうが、オーブに片手でソードを持っている右手を左手で掴まれると、そのままオーブは右手でピッコルの右手に手刀を入れ、刀を落とさせる。

 

『ハアア、シュア!!』

 

そこから手の平をピッコルの胸部に押し当て、押し返し、フラつくピッコル。

 

するとピッコルはソードを地面に突き刺し、頭に被った回転のこぎりとなる帽子「ノコギリハット」を手に取ってそれをオーブに投げつけるが、オーブはパシッと上下を両手で挟みこむようにそれを掴み取り、ノコギリハッとをゆっくりと地面に降ろす。

 

『くそぉ〜!』

 

ことごとくオーブに攻撃を受け流され、イライラを隠せないピッコル。

 

その怒りを爆発させながら、今度はピッコルはハンマーとソードを両手に持ってオーブに向かって突撃。

 

だが、オーブは突撃してくるピッコルに対し、電流状エフェクトを発生させながら大きく振りかぶり、正面に向き直りながら右手を突き出して放つ光の粒子のような光線「フルディウム光線」をピッコルに放つ。

 

『ハアアア、フルディウム光線!!』

『うおおおおお!!!! って・・・・・・あ? ああ、あああああ?』

 

その直撃を受けたピッコルは立ち止まり、ピッコルは怒りが静まり、大人しくなったのだ。

 

『なんだ? さっきまであんなにイライラしてたのに・・・・・・』

『お前の高ぶる感情を静めたんだ。 これでようやく落ち着いて話ができるだろ?』

 

オーブはピッコルに近寄り、彼の肩にポンッと手を置く。

 

『お前がA-RISEのことが好きなのは分かった。 でもな、だからって他のアイドルグループを襲ったりなんかしたらお前が襲った娘達だけじゃなく、お前が応援しているA-RISEの人達だって傷つくんだ。 彼女達はそんなことを望んでいないんだから。 そんな風にして、A-RISEがラブライブに優勝したとしても、彼女達は心から喜べない。 そんな彼女達を見たとして、お前は嬉しいか?』

『・・・・・・それは・・・・・・』

『ピッコラ星雲人。 どうか、優しさを失わないでくれ。 弱いものを労り、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする心を失わないでくれ。 例えその気持ちが何十回、何百回裏切られようと・・・・・・』

 

ピッコルは黙ってオーブの言葉を聞き続け、彼は顔を俯かせて反省の色を見せる。

 

『例え応援するアイドルが違っても、その人と仲良くなることはできる筈だ』

『オーブ・・・・・・。 俺、最近、嫌なことがあってさ。 そんな時、丁度UTXの近くを通りかかったからA-RISEのライブを観て、心を癒やして貰おうと思ったんだ。 でも、その時隣にいた奴がA-RISEをバカにしたもんだから、それでカッとなってしまって・・・・・・』

 

ピッコルはただA-RISEのライブ映像を観て楽しみたかっただけなのに、偶然隣にいた男性がそれに水を差すようにA-RISEよりもμ'sの方が魅力的なんて言ったものだからついカッとなってしまい、UTX前でその男性と喧嘩し、今日このような凶行に及んでしまったのだ。

 

だが、オーブがその気持ちを静めた為、ピッコルはイライラは解消され、今は落ち着きを取り戻している。

 

『確かにそうなのかもしれない。 ごめんよ、俺が間違ってた』

 

オーブの説得を受け、冷静になったピッコルは遂にオーブに謝罪し、またピッコルはUTX高校前にまで行くとピッコルは頭を下げて、ツバサ達や穂乃果達に謝罪したのだ。

 

『A-RISEの皆さん、それにμ'sの皆さん、それ以外に迷惑をかけた皆さん。 お騒がせしてすいませんでした。 俺、A-RISEが好きで、彼女達に優勝して欲しくて・・・・・・こんなことを。 俺が・・・・・・間違ってました・・・・・・!』

 

ピッコルはもう1度謝罪をすると、「これ以上迷惑はかけたくないから」と言ってその場を立ち去ろうとする。

 

「待って!!」

 

しかし、それをツバサが呼び止めたのだ。

 

『・・・・・・?』

「確かに、あなたがやろうとしたことは許せない。 でも、宇宙人にまで応援して貰えるなんてとても嬉しいわ。 だからいつも応援してくれてありがとう!」

『っ』

 

ツバサはそう言ってピッコルに笑みを向け、それにドキリとするピッコル。

 

「何時でも、ライブを観に来てくれて良いからね!」

「待ってるぞ!」

 

ツバサに続くようにあんじゅや英玲奈もそう言うと、ピッコルは「はい!!」と嬉しそうに頷くのだった。

 

それを受け、今度こそ帰ろうとするピッコルだが、「ちょっと待って!!」と穂乃果から呼び止められ、ピタリと立ち止まる。

 

「ねえ! 折角だから私達のライブも観ていかない?」

『えっ』

 

突然の穂乃果の提案に、海未達は「えぇ!?」と驚きの声をあげる。

 

「ちょっと正気!? アイツあんたに襲いかかろうとしてたのよ!?」

「でも、反省してくれたんでしょ? このまま帰るのもなんか勿体ないしさ! ねっ? どうかな?」

 

にこは穂乃果に対して正気を疑ったが、穂乃果は本気で言っており、反省してくれたのだから問題ないと言い放ったのだ。

 

だが、これにはピッコルも動揺しているようで、ピッコルは視線をオーブに向ける。

 

『迷惑かけた礼に見てけよ』

『分かり、ました・・・・・・。 そういうことなら』

 

オーブにもそう言われて、ピッコルは等身大になってUTXの屋上に行くと、他の生徒達などから若干警戒されつつも、受け入れられる。

 

また、それを見たオーブはカラータイマーが既に激しく点滅しているのもあり、空へと飛び立つのだった。

 

「あっ、オーブにもライブ見て欲しかったな〜」

「仕方ないですよ、オーブには時間制限があるっぽいですし」

 

凛はどうせならオーブにもライブを見て欲しかったとボヤくが、海未はオーブには3分の時間制限があるから仕方がないと割り切る。

 

その後、遅れてこっそりと紅葉が戻って来たのだが、穂乃果には気付かれてしまい、「一体どこに行ってたの!?」と怒りながら彼の元に駆け寄ってきたのだ。

 

「あっ、いや・・・・・・すまん。 腹壊してちょっとトイレに・・・・・・」

「あんな大変な自体だったと言うのに・・・・・・紅葉は全く・・・・・・」

 

そんな紅葉に対し、海未も呆れたような声を出すと、紅葉は縮こまってしまい、「本当にすまなかった」と深く頭を下げて反省するのだった。

 

「お兄ちゃん」

「んっ?」

 

すると、そんな紅葉に不意に穂乃果が話しかけてきたのだ。

 

「私、頑張るから!」

「おう! 行って来い!!」

 

笑顔を浮かべながら、穂乃果が紅葉に向けてそう言うと、彼女は海未達の待つステージへと上がっていく。

 

そして、騒動も収まったということもあり今度こそ穂乃果達は全員がライブステージに上がると、ライブが始まる。

 

彼女達が歌う曲は・・・・・・「ユメノトビラ」

 

ライブを終えると、ピッコルは「凄い」と素直な感想を述べ、穂乃果は肩で息をしながら、紅葉の視線が合い、「イェイ」とVサイン。

 

「ほらな、やっぱり凄いじゃん、みんな・・・・・・」

 

それに対し、紅葉もグッとサムズアップするのだった。




エース兄さんの言葉を言わせるなら、スラッガーエースを出そうかと思いましたけど(現に一度は戦闘シーン書いた)倒すべき相手ではないということでフルムーンザナディウムに変更しました。

ピッコルの設定は設定集の方に。



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第20話 『スーパーアイドル、にこ!』

音ノ木坂学院のアイドル部部室にて。

 

色々とトラブルはあったものの、ラブライブでの予選を終えた穂乃果達は今日この日、ラブライブの公式ホームページにて予選結果が発表されることとなっており、みんなで結果を確認するためにμ's一同と紅葉は全員部室に集まっていたのだった。

 

「い、いよいよです・・・・・・!」

 

鋭い目つきをしながら冷や汗を流しす花陽。

 

そんな彼女がみんなを代表してパソコンを起動させると、花陽はマウスに手をかけてホームページに行く為に「ラブライブ」とキーワードを入力し、検索をかける。

 

「緊張するね・・・・・・!」

「あ〜、もう心臓が飛び出しちゃいそうだよ・・・・・・」

 

ことりや穂乃果も緊張でいっぱいのようで、不安な気持ちを全く拭うことができずにいた。

 

「終わりましたか? 終わりましたか!?」

 

一方でそれは海未も同じようなのだが、彼女は見るのも怖くてパソコンに目もくれず、両手で耳を塞いでおり、切実に早くこの不安な気持ちがなくなってくれることを願っていた。

 

「まだよ」

「誰か答えてください!!」

「耳を塞いでたら聞こえんだろ」

 

海未がもう結果発表は終わったのかどうか誰か自分に教えてくれと頼むが、全力で耳を塞いで尚且つ目を瞑っているんだからそれじゃ聞こえないだろうと紅葉から冷静にツッコミを入れられるのだった。

 

「そそそ、そうよ! 予備予選くらいでな、なにそんな緊張してるのよ・・・・・・」

 

にこは机の上にあったイチゴ銃乳のパックに手を伸ばしながらそう言って必死に冷静さを装うとしていたが、手がガッチガッチに震えており、誰がどこからどう見ても彼女も緊張しているのが手に取るように分かってしまう。

 

「そうやね。 カードによると・・・・・・」

「よると・・・・・・?」

 

希はタロットカードを取り出して占って結果を見てみると、彼女は不安そうな顔を浮かべ、そんな希の表情を見た瞬間結果を聞こうとした穂乃果は「あー! やっぱり聞きたくなーい!!」と悲痛な声で叫ぶ。

 

「希、そんなツラ見せられたらこっちまで不安になるんだけど・・・・・・!」

 

前回「A-RISEも凄いがμ'sも凄い!」なんて啖呵を切っていた紅葉だったが、やはり彼も緊張するものは緊張してしまうようで必死に自分を落ち着かせようとしていたが、希が怪訝な顔をするものだから余計に緊張してしまうではないかと自分の頭を抱えながら訴える。

 

「な、なんかごめん・・・・・・」

「来ました!!」

 

次の瞬間、花陽の声が鳴り響くとにこと真姫、海未以外のメンバーはパソコンの画面を覗き込み、花陽は予選突破したスクールアイドルのチームの名前を上から順に読み上げてくる。(その際、にこは緊張のあまり手に力が入りすぎて持っていたいちご牛乳を握りつぶしたりしていた)

 

「1チーム目はA-RISE」

「そこはまぁ、予想通りだな」

 

ラブライブの予選を突破できるのは4組のアイドルグループのみ。

 

しかし、4組と言ってもA-RISEがいる時点で1組目は決まったも同然であるため、実質的には3組。

 

そのため予選突破の結果発表はむしろここからが本番であり、花陽は画面をスライドさせて次のアイドルグループの名前を読み上げる。

 

「2チーム目は『eAst heArt』」

「あとは?」

 

そこで丁度にこや真姫も画面を覗き込んでにこが残りのチームは一体誰なのかを花陽に尋ねると、彼女は再びマウスのカーソルを動かして画面をスライドさせ、3チーム目のアイドルグループの名前を読み上げる。

 

「3チームはミ・・・・・・!」

『ミッ!?』

 

花陽が先ず最初に「ミ」なんて言うものだから、今度こそ自分達の名前が載っているのではという期待と不安を膨らませる穂乃果達だったが・・・・・・3チーム目は「ミ」から始まるμ'sではなく同じく「ミ」から名前が始まる「Midnight Cats」というグループだった。

 

それに一同はガックリとあからさまに残念そうにし、そして遂に、これで泣いても笑っても次でいよいよラスト・・・・・・。

 

ここで自分達の名前が載ってなければ、μ'sはラブライブに進出することは叶わず、どうあがいても失格。

 

覚悟を決めて、花陽がカーソルを動かして次の名前の確認を行う。

 

「4チーム目は、ミュー・・・・・・」

『ミュー・・・・・・?』

「お願いだからあんまり溜めないでくれない花陽ちゃん!?」

「ミュー・・・・・・タントガールズ・・・・・・」

 

そして・・・・・・最後の4チーム目の名前には、μ'sではなく、代わりに「Mutant Girls」と書かれた文字がメンバー全員の写真付きでデカデカとパソコンの画面に載っていたのだった。

 

このことに、穂乃果達全員がまるでこの世の終わりでもあるかのような表情を見せ、全員どう言えば良いのか分からず、語彙力も低下し、「あ、あ、あぁ・・・・・・」としか言えないまるでゾンビのような状態になってしまっていた。

 

「そ、そそ・・・・・・そんなあああああああ!!!!!」

 

唯一、穂乃果だけはちゃんとまともに言葉を発することが、それは悲痛な叫び。

 

予選で惨敗してしまったことに彼女は涙を浮かべ、悲痛な声で大きく嘆き、悔しさのあまり、悲しみに満ちた声を空へと叫ぶのだった。

 

 

 

 

「・・・・・・っていう夢を見たんだよ!!」

 

μ'sが予選で惨敗したと言ったな、アレは嘘だ。

 

というか、先ほどまでの出来事は全て穂乃果の夢の中の出来事であり、実際のところまだラブライブ予選突破の結果発表は行われていなかったのだ。

 

最も、どちらにしても結果発表はまだ時間が来ていないだけで行われるのは今日なのだが。

 

『・・・・・・』

「・・・・・・あれ?」

『夢なんかーい!!!!』

 

そしてそんな穂乃果に、紅葉達一同は彼女に対し総出でツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、生々しい夢だよね」

「ホントに・・・・・・」

「って言うかさ・・・・・・今夢と同じ状況だし〜!!」

 

今現在、紅葉達はラブライブの公式ホームページを開いて予選突破の結果発表を待っているところだったのだが・・・・・・。

 

今のこの状況、みんなの立ち位置やにこが持参していたいちご牛乳のパックの置き場所、さらには結果が怖すぎて海未が耳を塞いで目を瞑ってしまっている状況まで何もかもが穂乃果が見たという夢とその全てが一致してしまっているらしく、にこは余裕そうな顔を見せてはいるものの、穂乃果の夢の話を聞いたこともあってか見るからに動揺を隠せていなかった。

 

「ど、どこが同じ状況だって言うのよ」

「終わりましたか? 終わりましたか!?」

「どこもかしこも穂乃果の言ってた状況と同じじゃねーか!」

 

そこで希はタロットカードによる占いをしようとするが、それを穂乃果は慌てて止める。

 

「ダメだよ! このままじゃ正夢になっちゃうよ!」

 

頭を抱えて嘆く穂乃果だったが、そこで彼女は「そうだ!」と何かを閃いたようでにこにいちご牛乳を一気飲みしてくれと頼み込んできたのだ。

 

「にこちゃん! それ一気飲みして!」

「なんでよ!?」

「なんか変えなきゃ正夢になっちゃうんだよー!!」

 

今朝見た夢が正夢にならないよう、穂乃果は少しでも違うことをすれば未来を変えることができるのではないかと考え、紅葉は一応理には叶っているだろうと穂乃果の意見には同意して頷き、少しでもあがこうと彼もまたにこにいちご牛乳の一気飲みを勧めた。

 

「ほらイッキイッキ!!」

「イッキイッキ!!」

 

紅葉と穂乃果はそんなテンションでにこにいちご牛乳一気飲みをするように必死に訴え、そんな2人ににこは「お酒か!!」と即座にツッコミを入れる。

 

「来ました!!」

 

しかし、にこがいちご牛乳を飲み干す前に花陽がラブライブの公式ホームページに結果が発表されたことを報告すると、真姫、海未、にこ以外のメンバーが一斉にパソコンの画面を覗き込む。

 

ちなみにその際、にこが夢の時と同じく緊張あまりまた手に力が入ってしまい、いちご牛乳のパックを握りつぶしたりしていた。

 

「最終予選進出は、A-RISE・・・・・・。 2チーム目はeAst heArt、3チーム目は・・・・・・Midnight Cats」

「お、おいおいマジか。 ここまで穂乃果の見た夢と全く同じ結果じゃないか・・・・・・」

 

流石の紅葉もラブライブの予選突破をしたグループが穂乃果の言っていたチームと全く同じ、しかも順番までピッタリ当て嵌まっていることに驚愕し、このままでは本当に穂乃果達は予選を突破できていないのではないかと不安を募らせる。

 

夢と同じように遅れてにこと真姫も画面覗き込んで来たのもあるのかもしれないが、穂乃果の方も「ダメだよ、同じだよ・・・・・・」なんて言って諦めモードだった。

 

(いや、俺が弱気になってどうする。 だって、A-RISEに負けないくらい、穂乃果達は・・・・・・μ'sはとても良くて、良いライブをしたじゃないか・・・・・・!)

 

しかし、だからと言ってまだ諦めるには早いと紅葉は自分に言い聞かせ、彼は客観的に見て、マネージャーであることを抜きにしても、本気で彼女達のあのライブはA-RISEに決して劣らない素晴らしいライブだと思ったのだ。

 

そう考えた彼はそれが予選で惨敗するなんて絶対に無いと確信に近いものを得、紅葉はこの中で1番弱気になっているであろう穂乃果の頭をそっと撫で、声をかけることにしたのだ。

 

「お兄ちゃん・・・・・・?」

「諦めるのは、まだ早い。 俺はみんなを信じるよ」

 

なんにしてもこれでラスト、全員の緊張が走る中、花陽はマウスのカーソルを動かして画面をスライドさせると彼女はそこにあった最後のスクールアイドルの名を口にする。

 

「4チーム目は、ミ・・・・・・!」

『ミ?』

「ミュー・・・・・・」

『ミュー・・・・・・?』

 

そして・・・・・・。

 

「ズ」

 

花陽はそこにあったスクールアイドルの名前の最後の一文字を、口にしたのだった。

 

『えっ?』

「μ's! 音ノ木坂学院高校スクールアイドルμ'sです!!!!」

 

そこにあったのは、紛れもなく自分達の名前であり、そこに張られてあった画像も間違いなく自分達の姿だった。

 

「μ'sって・・・・・・私達、だよね? 石鹸じゃないよね?」

「当たり前でしょ!?」

「なんでラブライブ公式ホームページに石鹸が載ってるんだよ」

 

真姫と紅葉の双方からツッコミを入れられるが、それでもあんな夢を今朝見てしまった手前、今起こっている現実が良い意味ですぐには受け入れられないのは当然のことだろう。

 

「凛達、合格したの?」

「予選を突破した・・・・・・?」

 

だが、すぐに現実を入れられなかったのは凛や絵里、他のメンバーも同じなようで・・・・・・。

 

しかし、頭が状況に追いついて来たことで先ほどまでの諦めムードだった暗い表情から、みるみる何時もの明るく、みんなは元気な笑顔へと戻って行き、特に穂乃果は嬉しさのあまり隣に立っていた紅葉に抱きついたのだ。

 

「わーーーーい!!!! やったよお兄ちゃん!! 私達、やったよ!!」

「うおっ!? あぁ、あぁ! やったな、穂乃果! みんな!!」

 

自分に抱きついて来た穂乃果を受け止めつつ、紅葉も予選突破したことを喜び、そのことに他のメンバーも声を揃えて「やったあああああ!!!!」と歓喜の声をあげると一同は部室を飛び出し、穂乃果や紅葉はヒフミトリオ、花陽や凛はアルパカ、ことりは母親の理事長にこのことを報告しに行くのだった。

 

「終わったのですか? 終わったのですか!?」

 

尚、その際部室には海未だけが未だ取り残されており、彼女はずっと耳を塞いで目を閉じていた為に紅葉達の喜び合う声や様子にずっと気付いていなかったのだが、しばらくしてようやく部室に自分以外誰もいないことに気づき、両手を耳から離し、「あれ?」とみんながいなくなってることを不思議に思い首を傾げていると丁度校内放送でμ'sが予選突破したことが報告され、それを聞いた海未も嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。

 

『お知らせします。 たった今、我が校のスクールアイドルμ'sがラブライブの予選を合格したという連絡が入りました!』

「・・・・・・っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後の屋上にて。

 

そこでは予選を突破したからと言って浮かれてばかりはいられないとラブライブ出場を目指して今日も今日とて練習に打ち込もうとする穂乃果達の姿があった。

 

「最終予選は12月! そこでラブライブに出場できる1チームが決定するわ!」

「次を勝てば、念願のラブライブやね」

 

しかし、それは同時に今度こそA-RISEに勝たなくてはいけないということを意味しており、そのことを分かっているからか花陽は「でも、A-RISEに勝たないといけないなんて・・・・・・」とどこは気弱そうな声を出してしまう。

 

「先ず、気持ちで負けたらダメだよ、花陽ちゃん。 自分達ならやれるって思わないと!」

「そうだよ! それにそれを今考えても仕方ないよ! 兎に角頑張ろう!」

 

紅葉と穂乃果にそう言われたことで、花陽もそれに戸惑いつつも「そ、そうだね」と小さく頷く。

 

「紅葉や穂乃果の言う通りです。 そこで、来週からの朝練のスタートを、1時間早くしたいと思います!」

「えっ〜!? 起きられるかなぁ?」

 

そこから海未が来週からの練習予定を穂乃果達に伝えるのだが、1時間早く・・・・・・ということはかなり朝早い時間からの練習となることを意味しており、凛はそんなに早く起きられるだろうかと心配になり、紅葉も不安そうな視線を穂乃果に向けていた。

 

「な、なんで私の方を見るのお兄ちゃん・・・・・・?」

「凛ちゃん以上に、お前が起きられるか不安だからだよ」

 

その指摘に対し、「うっ」と穂乃果の表情が歪み、紅葉はなるべく自分が頑張って穂乃果をちゃんと叩き起こせる努力をしようと心に誓うのだった。

 

「この他に、日曜日には基礎のおさらいをします!」

 

さらにそこから告げられた海未の練習内容に、凛や花陽は少しだけ「えぇ〜!?」とでも言いたげな顔をしていたが、ラブライブ優勝を目指すなら今よりもハードルを上げる必要があるのは当然のことだった。

 

「練習は嘘をつかない。 けど、ただやみくもにやれば良いという訳じゃない。 質の高い練習をいかに集中してこなせるか、ラブライブ出場はそこにかかっていると思う」

 

海未に続くように、絵里がみんなにそう言っていくとそれを受けて穂乃果も気合い十分といった様子を見せ、「よーし!!」と力強い声をあげる。

 

「じゃあみんな行くよ!! ミュー・・・・・・!!」

「待って!」

 

何時ものμ'sの掛け声を行おうとした穂乃果だったが、その時突然ことりから待ったをかけられたことでそれは中断され、全員はそんなことりに対し、一体どうしたのだろうかと頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

「誰か1人足りないような・・・・・・」

「うち、ことりちゃん、真姫ちゃん、えりち、海未ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん、穂乃果ちゃん、紅葉くん・・・・・・」

「全員いるよ! ちゃんと9人だし!!」

「なぁ〜んだ!」

 

希は1人ずつμ'sのメンバーの名前を1人ずつ読み上げて行くのだが、ちゃんと9人いるのできっと1人足りないというのはことりの勘違いだろうということとなり、穂乃果は改めてμ'sの掛け声をあげる為、右手を前に突き出す。

 

「では改めて・・・・・・!! インスタンス・ドミネーショ・・・・・・じゃなかった!! って、あっ・・・・・・」

『にこちゃん!!!!』

 

穂乃果が手の平を前に突き出し、そこから手をにっこにっこにーのポーズにした為に、一同は今、この場に実は来ていなかったにこの存在を思い出し、そこで紅葉達はようやく誰が足りていなかったのか気付くことが出来たのだった。

 

「そこで俺をμ'sのメンバーの数にカウントしちゃダメだろ希! 凛ちゃん! 俺、言うなれば椅子の人だよ!」

「椅子の人ってなに?」

 

恐らく、紅葉は希が人数を数えた際に自分をカウントしてしまった為、にこの存在に気付くのが遅れてしまったのだろうと思い、兎に角一同はにこが来ていない理由を誰1人として知らない為、紅葉達は急いでにこを探しに行くことに。

 

「にしても意外と影薄いのかな、にこ。 良くも悪くもμ'sで1番キャラ濃そうなのに」

 

その時、そんなことをにこを探しに行く際にみんなにこが来ていないことに今の今まで気付かなかったことから、にこってキャラが濃そうに見えて意外と影薄いんだろうかと紅葉がちょっと呟いていたりしたのだった。

 

ただそれと同時に今まで気付かなかったのは単ににこは弄られキャラだからそういう意味でみんなから忘れ去られていた可能性もあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にこちゃーん!!」

「うっ」

 

その後、みんなでにこを探したところ校門辺りで鞄を背負って帰ろうとしているにこの姿を発見し、穂乃果が大声を上げながら彼女を呼び止めると、それに驚いたにこはビクッと一瞬肩を震わせて立ち止まる。

 

「予選突破したばかりだって言うのに、もうサボりか? らしくない」

「そうだよ! もう練習始まってるよ!」

「誰がサボりよ! き、今日はちょっと用があるの・・・・・・」

 

どこか気まずそうな顔を見せながら、今日は用事があるから練習できないことをにこは穂乃果達に伝えるのだが、それならば普通にそう言えば良いのにと思わずにいられない紅葉と穂乃果。

 

「それより最終予選近いんだから気合い入れて練習しなさいよ!!」

「「はい!!」」

 

最後ににこはそれだけを言うと、彼女のその言葉に紅葉と穂乃果はビシッと背筋を伸ばして敬礼して元気の良い返事を返し、にこはそのまま校門を潜り抜け、学校を出て行ってしまうのだった。

 

「あれ? 行っちゃった・・・・・・」

 

そして、穂乃果達はそんなにこの背中を不可思議そうに見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからにこは穂乃果達と別れた後、とあるスーパーへと訪れていた。

 

そしてそんなにこの後を・・・・・・練習そっち退けでこっそり尾行している紅葉、穂乃果、海未、ことり、凛、花陽の姿があり、紅葉達はそのスーパーの入り口の前にある荷台に隠れてにこの様子を伺っていたのだ。

 

「お店に入っちゃったよ」

 

そこでにこはスーパーの店内へと入って行くのだが、その時の動作がやたらと挙動不審であり、彼女はキョロキョロと辺りを見回してから入店していったのだ。

 

「なんで跡つけるの?」

「というか、そもそも練習そっち退けで良いのか?」

「だって怪しいんだもん!!」

 

真姫はなんでわざわざこんな跡をつけるような真似をするのかと疑問を抱き、紅葉はにこにも先ほど釘を刺されたばかりだと言うのに練習そっち退けでこんなことしていて良いのだろうかと少しばかり心配するが、しかし、どうしてもにこの動向が気になった穂乃果はこのままでは練習に集中して打ち込めないということでみんなでにこの跡をつけることにしたのだ。

 

「まぁ、確かに集中できなくなるのは困るが・・・・・・。 でも、海未まで割とノリ気なのは意外だったな」

 

紅葉の言う通り、こういう時、いの1番に「そんなことより練習です!」と言い出しそうな海未も特に文句を言うこともなく参加している辺り、どうやら彼女自身もにこの動向が気になったようで・・・・・・。

 

本格的に練習のハードルを上げるのも明日からなので今日くらいは休みにしても良いだろうと言うことで、彼女もにこの尾行に参加したのだ。

 

「にこのことですから、何か良からぬことでも企んでいるのではとも思いましたしね・・・・・・」

「成程な」

 

確かに挙動不審な態度や普段のにこの姿を見ていると、何かやらかそうとしているのではないかと海未が疑うのも仕方のないことなのかもしれない。

 

実際、にこにはちょっとだけ腹黒いところもあるので尚更。

 

尚、ここにはいない希と絵里だが、彼女等2人は念のために別の場所で待機させてある。

 

「・・・・・・まさか、ここでバイトしてるとか」

 

穂乃果がスーパーに入っていくにこを見つめながらポツリとそんなことを呟き、その呟きを聞いた紅葉達はついつい思わずみんなでスーパーでバイトしているにこの姿を思い浮かべてしまう。

 

『にっこにっこにー!! 今日のお肉は2個でにこにこ2525円!!』

「ハマりすぎだにゃ!」

「何故か違和感ない!!」

 

にこのバイトをしている姿を想像してその違和感の無さに声をあげる凛と紅葉。

 

だが、それと同時にもし本当にそうなら、にこが挙動不審だった理由も納得できる。

 

にこのことだからそんな姿を知人に見られでもしたらきっと死ぬほど恥ずかしい思いをすることだろう。

 

なので紅葉は即ここからの撤退を穂乃果達に進言。

 

「そんな姿見たら俺もちょっと気まずいよ! 今からでも学校に帰って練習の続きしよう!?」

 

先ほども言ったように、きっとバイトしている姿を見られたらにこも死ぬほど恥ずかしい思いをするのはほぼ間違いないだろう。

 

だがそれと同時に、そんな姿を目撃したら自分達も気まずい思いをしてしまうかもしれない。

 

だから紅葉は今すぐにでも学校に帰って練習なりなんなり別のことに集中することでこのことを忘れようと言うのだが・・・・・・。

 

「待って! 違うみたいよ・・・・・・」

 

そこで真姫がにこは別にバイトに来ている訳ではないことに気づき、ただにこは普通に売られている肉を買い物籠に入れたりして普通にスーパーに買い物に来ているだけのようだった。

 

「なぁんだ。 ただの夕飯のお買い物かぁ・・・・・・」

「でも、それだけで練習を休むでしょうか?」

 

しかし、スーパーに買い物に来るだけなら別に練習を行った後でも良かった筈。

 

さらに言えばラブライブ出場も決まって気合いも入っている時期だと言うのに・・・・・・。

 

それにも関わらずただ「夕飯の買い物に行く為に練習を休む」というのはあまりにも不自然過ぎる。

 

「・・・・・・余程大切な人が来てる・・・・・・とか」

「どうしても手料理を食べさせたい相手がいる・・・・・・とか・・・・・・!」

 

そこで花陽や真姫が険しい表情を見せながら2人は自分の頭に思い浮かんだ予想を口にし、穂乃果以外の全員が2人の予想に対し、驚愕した表情を浮かべる。

 

「ま、まさか・・・・・・」

「にこちゃんが!?」

「ダメです!! それはアイドルとして1番ダメなパターンです!!」

 

次の瞬間、その「アイドルとして1番やってはいけないパターン」を想像してしまった花陽は声を荒げるようにしながら勢いよく立ち上がり、またそんな花陽に対し、穂乃果は一体彼女が何を言っているのかよく分かっていないようで小首を傾げていた。

 

「えっ? なんの話?」

「あれだろ? アイドルは恋愛御法度的なやつ。 アイドルってのは基本恋愛禁止だからな」

「えっ、そうなの!?」

 

つまり、花陽の言っていたアイドルとして1番やってはいけないことというのは「アイドルが誰かと恋愛をしてしまう」ことであり、スクールアイドルも部活の一環とは言えアイドルである以上それは同じ。

 

だから花陽はその辺りのことを懸念し、にこにもし本当に彼氏でもいたらと思うとこれからのアイドル活動にも支障が出るかもしれないことから気が気で無かったのだ。

 

「ってか、なんで穂乃果は驚いてんだよ。 割と有名な話だろ?」

「そ、それはそうなんだけどぉ・・・・・・! だ、だけど・・・・・・だって、だって! スクールアイドルなら別に問題無いかなって思ってたから・・・・・・」

 

その際、紅葉は今にも泣き出しそうな声を出しながら瞳を潤わせて自分の顔を見つめる穂乃果の視線に気付き、そんな彼女の視線に紅葉は思わず動揺してしまう。

 

「えっ、あっ・・・・・・穂乃果?」

「あっ、あー・・・・・・。 ほ、穂乃果ちゃん前々から怪しいなって思ってたけどまさか・・・・・・」

「兄妹にしては穂乃果ちゃんスキンシップ激しかったもんね・・・・・・」

 

花陽や凛も紅葉と穂乃果の2人に血縁関係が無いことを知る以前は単に仲の良いだけの兄妹だと思われていた。

 

しかし、2人が兄妹であることを抜きにして過去の出来事を思い返すと、兄妹という割には穂乃果はあまりにも紅葉に対して過剰なまでのスキンシップをとっていたこと、紅葉が他の女の子と仲良くしていたりすると穂乃果がよく嫉妬していたこと、それに時折穂乃果は紅葉に対して熱っぽい視線を送っていたことを花陽や凛は思い出し、日頃から薄々感じ取ってはいたが今の穂乃果の表情を見て2人は彼女が紅葉に対し、好意を抱いているのを完全に察してしまったのだ。

 

「えっと、穂乃果ちゃん・・・・・・」

 

本来なら、ここは「スクールアイドルでもアイドルは恋愛禁止!」と注意するところだろうが、穂乃果のこんな顔を見てしまっては花陽はそれを注意するに出来ず、困り果てていると・・・・・・。

 

「そ、それよりもにこです! にこ!!」

「そ、そうだよ! 今はにこちゃんの方に集中しよう!」

 

無論、穂乃果や紅葉の幼馴染みでもある海未やことりが穂乃果の気持ちに気付いていない筈もなく、彼女等は穂乃果に助け船を出すかの如く2人は話題を変える為に今はにこのことに注目すべきだと言い放ち、一同の視線をにこに戻そうとしたのだ。

 

「・・・・・・っていうかさ、アンタ等さっきから何してんの?」

『あっ』

 

しかし、一同が視線をにこに戻すといつの間にか自分達の姿を隠していた荷台を店員が持って行ってしまったのか、今、紅葉達の姿は完全に丸見え状態であった。

 

しかも先ほどから騒いでたこともあり、にこには完全に自分達の存在がバレてしまっていたのだ。

 

そして、にこはそっと手に取っていたお肉のパックを元の場所にゆっくり戻すと、その場から急いで走り去って逃げ去っていく。

 

『逃げた!?』

「なんでついて来てるのよ!?」

 

それを受けて、穂乃果達は急いで逃げるにこを追いかけるのだが、にこは従業員用の裏口を通ったことで穂乃果達から逃れることに成功し、彼女達はにこの姿を見失ってしまう。

 

「あれ?」

「二手に別れて探しましょう!」

 

海未が二手に別れてにこを探そうと提案すると、それぞれ花陽、真姫、凛の1年組、穂乃果、紅葉、海未、ことりの2年組に別れてにこを探す為にスーパー内を詮索する。

 

「穂乃果」

 

だが、花陽達と二手に別れてすぐ、紅葉が不意に穂乃果のことを後ろから呼び止め、声をかけられた穂乃果は先ほどのこともあってか思わず内心ドキリとしてしまった。

 

「な、なに・・・・・・?」

 

そして紅葉に呼びかけられた穂乃果はというと、彼女はどこかぎこちない態度を取る。

 

またそんな穂乃果と紅葉を交互に見つめながら、海未やことりは複雑そうな表情を浮かべてそんな2人の様子を黙って見守ることに。

 

「穂乃果って好きな奴いるのか?」

「・・・・・・」

(そんなストレートに聞いちゃうの!?)

 

恐らく、穂乃果に対してこんな質問をしたのは先ほどの「アイドルは恋愛禁止、それはスクールアイドルも同じ」という話を花陽から聞き、穂乃果がショックを受けたようだったからだろう。

 

「そ、それは・・・・・・」

 

その時、ほんのちょっとだけ穂乃果が紅葉の方に顔を向け、絞り出すように言葉を振り絞って何かを言おうとした。

 

しかし、紅葉は少しだけ見えた穂乃果の顔が真っ赤に染まっていることに気付いたことで、穂乃果が次の言葉を発する前に遮るように待ったをかける。

 

「言いたくないなら、無理に言わなくて良い」

 

最も、僅かとは言えチラリと見えた穂乃果の今の赤い顔を見れば、紅葉の問いかけた質問に「YES」と答えているのも同然であり、それはμ'sのマネージャーという立場なら、「ラブライブも控えてるのに恋愛なんてしてる場合じゃない」と注意しなければいけないことだった。

 

だけど、穂乃果の先ほどのあの悲しいそうな顔を見たらとても自分の口からそんなことを言える筈が無かった。

 

それに何よりも・・・・・・。

 

(なんで俺、その先は聞きたくないって思ったんだろうな・・・・・・)

 

自分から穂乃果に「好きな人いるのか?」なんて聞いておきながら、いざ穂乃果が答えようとしたら紅葉はつい、その答えを聞きたくないと思ってしまい、彼女の言葉を遮ってしまっていたのだ。

 

今の穂乃果の顔を見れば、答えを言っているも同然なのに、それでも直接聞きたくないと・・・・・・。

 

「今は、兎に角にこさんを探すの優先だな」

 

どうして答えを聞きたくなかったのか、その理由は紅葉自身にも今はまだ分からない。

 

兎に角今は、この話題は普通なら後回しにすべき問題ではないが、自分自身この件に困惑していることもあり、紅葉はこの問題は後回しにしようと決め、先ずは本来の目的だったにこを探すことに専念することにしたのだ。

 

「そ、そうだね・・・・・・」

 

それには穂乃果も頷き、紅葉、穂乃果、海未、ことりは再びにこを探すためにスーパー内を歩き始めた。

 

「穂乃果」

「穂乃果ちゃん」

 

その時、今度は穂乃果を間に挟むように海未とことりが歩み寄ると彼女の耳元で紅葉には聞こえないようにしてあることを2人して囁く。

 

「私達は、応援してますよ。 彼なら穂乃果を任せられますしね」

「うん、色々問題はあるかもだけど・・・・・・。 ファイトだよ! 穂乃果ちゃん! なんてね・・・・・・?」

「うっ、や、やっぱり2人は気付いてたんだ」

 

海未とことりからエールを送られ、恥ずかしくも嬉しさを感じ取った穂乃果はそんな風に応援してくれる彼女等に対し、微笑みを向けながら「ありがとう」と小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、スーパーの裏口から外を飛び出し、穂乃果達を捲くことに成功したにこはと言うと・・・・・・。

 

裏口を出たところには丁度、にこの動きを読んで既に裏口で待機していた絵里が不敵な笑みを見せながら待ち構えており、にこはそのことに「いっ!?」と驚きの声をあげる。

 

「流石にこ。 裏口から回るとはねぇ?」

「うわあ!?」

 

絵里の存在に驚き、にこは大きく後退るといつの間にか絵里と同じく裏口で待機していた希が背後からにこの胸の辺りをワシッと掴むことで彼女を捕まえ、希はニマニマした笑顔を浮かべると、彼女はにこが今日なんで練習を休んだのかを問い詰める。

 

「さあ、訳を聞かせて〜?」

「わっ、ちょっ・・・・・・ハア!!」

 

しかし、にこは下からすり抜けるようにしてワシワシしてくる希の両手から脱出することに成功し再び走って逃げ出すと、慌てて絵里よりも先行して希が急いで彼女を追いかける。

 

だが、途中までちゃんと姿を捉えていた筈なのに曲がり角を出た瞬間ににこの姿を希は見失ってしまい、彼女は「あれ?」と首を傾げながら辺りを何気なく歩いていると・・・・・・。

 

「あっ!」

 

そこで希は危うく通り過ぎそうになってしまったが、制服や衣装が酷似していたアイドルのパネルを利用することで、カモフラージュをして身を隠していたにこの存在に気付き、そちらの方へと視界をやるとにこは「うっ」と苦い顔を浮かべる。

 

「に、にっこにっこにー!」

 

誤魔化すように何時もの決めポーズを行うにこだが、当然そんなもので誤魔化せる訳もなくにこはそのまま再び希から逃走を試みる。

 

「あー!! 待てー!!」

 

するとにこは今度は車が2台停められてある小さなパーキングエリアに向かうと、彼女はその車と車の小さな間を通って抜け出し、希も同じように車と車の間を通ってにこを追いかけようとする。

 

しかし・・・・・・その間はとても小さいが為に小柄なにこならば通ることは可能だったのだが・・・・・・逆に希は自分の胸がつっかえてしまったが為に車と車の間を通ることが出来ず、彼女はそのせいでにこの追跡を諦めざる得なかったのだった。

 

「希ちゃん! にこちゃんは?」

 

だが、直後にそこで穂乃果達が合流すると、希はジッと何故か凛の、ある一定の部分を見つめて・・・・・・。

 

「なんか不本意だにゃー!!?」

 

どこが・・・・・・とは言わないがある一定の部分がにこと1番そう変わらない凛が車と車の間を通ってにこを追いかけることとなり、その時の希の顔は何故かとても悪そうな笑顔だったという・・・・・・。

 

「もー!! にこちゃーん!!」

 

しかし、パーキングエリアを抜けたは良いものの数秒間とは言え流石ににこが姿を眩ますには十分な時間だったこともあり、凛がパーキングエリアを出た頃には右を見ても左を見てもにこの姿はどこにも無かったのだった。

 

「いないにゃー!」

 

 

 

 

 

 

 

「結局、逃げられちゃったか・・・・・・」

「しかし、あそこまで必死なのはなぜなのでしょう?」

 

にこに逃げられた紅葉達は、とある橋の傍でそこにある椅子や階段、手すりなどに腰掛けながらなぜにこがあそこまでして自分達から逃げるのか、そのことについて一同は話し合っていたのだった。

 

「にこちゃん、意地っぱりで相談とか殆どしないから」

「真姫ちゃんに言われたくないけどね!」

「アハハハ!! おまいう!」

 

意地っ張りで中々相談してくれないという点に至っては真姫も同じであるため、そのことについて「お前が言うな」と指摘する凛と紅葉。

 

そんな2人に対し、ムッとしながら「うるさい!」と怒鳴る真姫。

 

「家、行ってみようか?」

「押しかけるんですか?」

「だって、そうでもしないと話してくれそうにないし」

 

こうなればと穂乃果はにこの住んでいる家に突撃して、多少強引にでもにこが何を隠しているのかを聞き出そうかと提案するのだが、そこで紅葉が「それは流石にやりすぎだろ」と彼女を注意しながら穂乃果の意見に反対する。

 

「誰だって他人に知られたくないことの1つや2つはある筈だ。 花陽ちゃんの言う通り、アイドル御法度案件だったら流石に強引な手段を執らざる得ないかもしれないが・・・・・・」

 

しかし、見たところにこにそういった節がある感じはしないし、スクールアイドルの自覚の強いにこがそういったことをするとも思えない。

 

それにこの場合、もし本当に彼氏でも出来ていたらもっとボロがすぐに出ていた可能性が高い。

 

なので紅葉は、花陽がその話題を持ち出した時には自分もその可能性について考えたが、冷静になってみると上記でも述べたように、別ににこに魅力が無いと言っている訳では無いが、彼女には家庭的な面もあるのでその気になれば彼氏くらい出来るとは思うものの・・・・・・その可能性は薄いと思ったのだ。

 

だからにこ本人が知られたくない、知られるのが嫌なのならば無理に聞き出す必要はないのではないかと紅葉は考えたのだ。

 

「確かに、紅葉くんの言う通りかもしれないわね。 無理に聞き出すのが良いこと、とは限らないしね」

 

そして紅葉の意見にも一理あるとして同意して頷く絵里。

 

「・・・・・・(ジーッ」

 

一方で穂乃果には、そんな紅葉の姿をジトッとした目でジーッと見つめており、彼女の視線に気付いた紅葉はそれに少しばかり動揺しつつ穂乃果に「ど、どうした?」と尋ねる。

 

「ううん。 なんかお兄ちゃん、やたらにこちゃんの肩を持つなーと思って・・・・・・」

「いや、別にそういう訳じゃないんだがな・・・・・・」

 

「他の人に知られたくない」というのはよくあることだろう。

 

だから紅葉はあくまで一般論としてにこが秘密にしていることを無理に聞き出す必要は無いだろうと思い、ああ言っただけでにこをフォローするようなことを言ったことに対し、特別な意味は特にはない。

 

無いのだが、穂乃果はぷくっと頬を膨らませて不機嫌そうな様子を見せ、紅葉はどうして穂乃果が機嫌を損ねてしまったのか分からず、どうすれば機嫌を直してくれるのかも分からず、困り果てる紅葉。

 

「まぁ、どちらにせよにこの家がどこにあるのか私達知らないしね」

 

仮ににこの家に押しかけるという方法についてだが、それはこの場にいる1人だけを除いて全員にこの家がどこにいるのか分からない為、仮ににこの家に押しかけるにしてもここにいる全員が彼女の家の住所を知らない以上、どちらにしてもその手は使えないだろうと語る絵里。。

 

最も、紅葉だけはにこの家がどこにあるのかを知っていたりするのだが・・・・・・。

 

なぜ紅葉だけにこの家の場所を知っているのかと言うと、その時の話を振り返れば分かるが、それは以前「光怪獣 プリズ魔」が現れた際に紅葉はオーブに変身して立ち向かったのだが、初戦ではボコボコにされて傷を負い、その時にこに家まで運ばれ彼女の家で傷の手当てをして貰ったからである。

 

しかし、紅葉は幾ら自分がにこの家を知っているからと言ってもそれは個人情報ということもあり、にこ本人の許可がない以上無闇やたらに喋るべきことではないという考えから、黙り込むことで彼は敢えて穂乃果達ににこの家の場所を教えなかった。

 

「あーーーー!!!!」

 

そんな時、突然花陽が大きな声を上げたことで紅葉達は何事かと思い、花陽のすぐ傍にいた凛が「どうしたの?」と尋ねると、花陽は右手を震わせながらある一定の方向に「あれ・・・・・・」と言いながら一差し指を向け、一同は花陽の指差す方向へと目を向けると・・・・・・。

 

そこには何時ものツインテールではなく、髪型をサイドテールにしたにこにそっくりで瓜二つの少女が歩いていたのだ。

 

「にこちゃん!?」

「でも、ちょっと小さくないですか?」

 

海未の言うように、その少女はにこととてもよく似ていたのだが、髪型以外でにことの大きな違いがもう1つだけあった。

 

それは「身長さ」であり、元よりにこは身長が低い所謂「ロリ体型」ではあったのだが、そこにいる少女は明らかににこよりも身長が低かったのだ。

 

また、それらのことから紅葉は一瞬「怪獣人 プレッシャー」の存在が脳裏に浮かび上がるとかつて自分を赤ん坊に変えた存在ということもあり、「まさかまた奴が現れてにこを幼くしたのか!?」と思い彼はバッバッと周囲を警戒しながら辺りをあちこちと見回す。

 

「ど、どうしたのお兄ちゃん? そんな首をガンガン動かして・・・・・・」

「い、いや、なんでもない・・・・・・。 ちょっと蚊が飛んでただけだ」

 

そんなことをしていたものだから穂乃果からは不審がられはしたが、一応、一通り確認してみたところプレッシャーの存在は感じ取ることは出来なかったため、少なくとも近くにはいないのだろうと紅葉は判断した。

 

「確かに、小さいわね」

「そんなことないよ! にこちゃんは3年生の割に小さ・・・・・・小さいにゃー!!?」

 

真姫も海未と同様ににこにしてはやたら小さいと呟き、凛はそんなの元からだろと思ったのだが、その少女が目の前を通り過ぎようとしたところで彼女もにこ以上に少女の身長が低いことに気付き、それと同時に少女が普通に自分達の素通りしようとしたことから紅葉も恐らくではあるが、にこが幼くなった訳ではないのだろうと判断した。

 

なぜなら、あれが仮ににこだとしたら流石に自分達に助けを求めて来るだろうと思ったからだし、何よりあのにこが知らんふりで自分達の前を素通りできるとは思えなかったからだ。

 

間違いなくボロが出そうなので。

 

最もプレッシャーのような奴に幼くされた上に記憶を消されたという可能性も無くは無いが・・・・・・。

 

「んっ? あの・・・・・・何か?」

 

ほぼ真横で凛に叫ばれた為か、少女は不思議そうな顔を浮かべながら凛の顔を見上げ、それに凛は戸惑ってしまう。

 

「ああ、いや・・・・・・」

「あら? もしかしてあなた方、μ'sの皆さんではありませんか?」

 

すると少女は凛達の顔を見て彼女達がμ'sのメンバーであることに気付いたようで、それに絵里が少しばかり驚いたような反応を示す。

 

「えっ、知ってるの?」

「はい! お姉様がいつもお世話になっております。 妹の、『矢澤 こころ』です!」

『ええぇぇーーーーーー!!!!?』

 

にこの妹だというこの少女、「矢澤 こころ」は礼儀正しく、丁寧に自己紹介を穂乃果達に行うと、彼女達はにこに妹がいたという事実に全員が一斉に驚きの声をあげ、驚愕するのだった。

 

「・・・・・・あっ、そう言えば前ににこって前に妹と弟いるって言ってたな」

「・・・・・・えっ?」

 

そこで紅葉はその妹や弟には結局最後まで会わずじまいだったので、面識は無かったのだがプリズ魔の事件の時ににこが妹と弟がいること何気なくカミングアウトしていた時のことを思い出したのだ。

 

「・・・・・・」

 

また、その時・・・・・・穂乃果がどこか複雑そうな顔をしながら紅葉に視線を向けていたのだが、彼はその視線に気付くことは無かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして・・・・・・、紅葉達はこころに連れられ、とある駐車場裏へと何故か連れて来られていたのだった。

 

「にこっちに妹がいたなんて・・・・・・」

「しかも礼儀正しい」

「まるで正反対にゃー」

 

希や真姫、凛がそれぞれそう言いながらにこに妹がいたことについてコメントしていると、穂乃果は少しだけしゃがんでこころになんで裏駐車場なんてところに連れて来られたのかを尋ねる。

 

「あのー、こころちゃん? 私達なんでこんなところに隠れなきゃ・・・・・・」

「静かに! 誰もいませんね・・・・・・。 そっちはどうです!?」

 

こころは穂乃果の言葉を遮ると、自分と同じように周囲を確認させていた海未に周囲に誰もいないかを問いかけると彼女は特に気になるような人影はいないとこころに報告する。

 

「人はいないようですけど・・・・・・」

「よく見て下さい! 相手はプロですよ! どこに隠れているか分かりませんから!」

「プロ!?」

 

当然ながら、穂乃果達はこころの言う「プロ」というのがなんのことなのかサッパリ分からず、どうにも穂乃果達とこころの間でイマイチ話が噛み合っていないような気がしたため、紅葉がもっと詳しくこころに話を聞こうとしたところ・・・・・・。

 

「大丈夫みたいですね。 合図したら、皆さん一斉にダッシュです!」

「えっ、あの、ちょっと・・・・・・」

「なんで?」

「決まってるじゃないですか!! 行きますよ・・・・・・えいっ!」

 

しかし紅葉が話しかけるよりも早く、こころは周囲に再び人がいないことを確認すると彼女は勢いよく裏駐車場から飛び出すように走り出し、穂乃果達は慌てて戸惑いながらもこころの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、こころと一緒に自分が暮らしているという、とあるマンションへとやってきた紅葉達。

 

マンションへと辿り着くとこころは紅葉達を壁の片隅に追いやってから再度周囲を警戒しながら確認し、怪しい人影などは見当たらないと判断したのか、こころはほっと胸を撫で下ろした。

 

「どうやら、大丈夫だったみたいですね」

「・・・・・・一体なんですか?」

 

一体、こころは何をそんなに警戒しているのか、海未はそれが分からず頭に疑問符が浮かび上がるばかりだった。

 

「もしかしてにこちゃん、殺し屋に狙われてるとか?」

「珍しく物騒なこと言うな、花陽ちゃん」

 

花陽の口から「殺し」なんて言葉が出たものだから、それがちょっと意外で少しばかり驚いた紅葉だが、殺し屋に狙われてるにせよしないにせよにこのことなので何かしらやらかしてる可能性もあるのではと思い、「誰かに狙われてる」という部分だけなら案外当たっているのかもしれないと思う紅葉だったが・・・・・・。

 

どうやら別に、にこは「誰かに命を狙われている」という訳ではないようで・・・・・・。

 

「何言ってるんです? マスコミに決まってるじゃないですか!」

『えっ!?』

「パパラッチですよ!」

 

確かに自分達μ'sは知名度もそれなりに上がり、ラブライブの予選を突破したスクールアイドルのグループではあるものの、だからと言ってマスコミに、ましてやパパラッチ等に追われるまでの立場になった訳では無い。

 

そのため、穂乃果達はどうして自分達がマスコミに警戒しないといけなのか分からず、困惑していると次のこころの言葉でさらに穂乃果達は困惑することに・・・・・・。

 

「特にバックダンサーの皆さんは顔がバレているので危険なんです! 来られる時は、先に連絡を下さい・・・・・・」

 

どこか不満げに家に来るならアポを取ってくれと言うこころだが、今はそれよりも何故自分達がバックダンサーということになっているのか分からず、どうにも話が噛み合っていないようで戸惑いを隠せない穂乃果達。

 

「バック・・・・・・」

「ダンサー?」

「誰がよ?」

「スーパーアイドル矢澤 にこのバックダンサー、μ's! 何時も聞いています! 今、お姉様から指導を受けてアイドルを目指していられるんですよね!」

 

こころからのさらなる説明を受けて、穂乃果達は「はああ!!?」と驚きのあまり大きな声を上げてしまい、なんでそういうことになってるんだと言わんばかりにお互いに顔を見合わせる一同。

 

「ぬう、なるほど」

「状況が読めて来ました・・・・・・」

「忘れてたわ。 相手はにこちゃんだもんね」

 

そしてここでようやく、一同は今まで微妙にこころと話が噛み合わなかった理由をなんとなくではあるものの色々と察し、にこが滅茶苦茶話を盛って自分達のことをこころに話しているのだろうということを穂乃果達は理解したのだ。

 

「アイドル目指して、バックダンサー・・・・・・。 やめろぉ! そのワードは・・・・・・そのワードは俺に、いや、多分色んな奴に効く・・・・・・!」

「アンタはなんのトラウマが刺激されてんのよ」

 

何故かこころの話を聞いて頭を抱えながら蹲る紅葉に、一体どうしたんだと問いかける真姫。

 

「頑張ってくださいね! 『ダメはダメなりに8人集まればなんとかデビューくらいはできるんじゃないか』ってお姉様言ってましたから!」

「何が『ダメはダメなり』よ!!」

 

流石に今のこころの言い分にはイラッときたのか、真姫がこころを睨みながら一歩前に踏み出してきたが、それを「ドードー!」と紅葉が落ち着かせる。

 

「落ち着け真姫ちゃん! 言ったのはにこだ! 責めるならにこを責めろ!」

 

確かに、今のこころの発言は少々失礼だったかもしれないが大本を辿ればにこが嘘八百をこころに教え込んでいるせいなので、相手がまだ幼い子供ということもあり、真姫に責める相手が違うと注意を促す紅葉。

 

「そんな顔しないでください! スーパーアイドルのお姉様を見習って、何時も『にっこにっこにー!』 ですよ?」

 

そんな真姫に、こころはにこを見習ってと言いながら彼女が何時もやる「にっこにっこにー!」のポーズを取る。

 

「そうだな。 アイドルだったら、何時も笑顔でってのは大切だよな。 特に真姫ちゃんは短気だし」

「誰が短気よ!?」

「現在進行中で短気だにゃー」

 

次の瞬間、真姫にキッと睨まれた凛は背筋をピシッと伸ばしてお口にチャックをした。

 

「でもなこころちゃん」

 

すると、紅葉は片膝を突いてこころと目線を合わせるとやんわりとした口調で彼女と話す。

 

「にこが本当にそう言っていたとしても、それを本人達の前で言うのはちょっと失礼だぞ?」

 

例え自分が最初に言った訳では無いにしても、流石に先ほどの言葉は初対面の相手に対しては少々失礼なことなのではないだろうかと紅葉はこころに注意し、それを受けてこころも紅葉の言い分に一理あると思ったのか、少しだけ「うっ」と唸る。

 

「そういうのは、今度からちゃんと気をつけないとな。 君は素直そうな子だから、その辺のことをお兄さんと約束してくれるかな?」

「うっ、た、確かに・・・・・・ちょっと偉そうだったかもしれません。 分かりました。 皆さん・・・・・・先ほどは、申し訳ありませんでした」

 

紅葉の言うように、意地っ張りのにこと比べるとやはり素直な性格をしているこころ。

 

彼女は紅葉からの注意を素直に受け入れると、こころは反省の色を見せながら穂乃果達に向かってペコリと頭を下げて謝罪し、それに穂乃果達・・・・・・特に真姫が少しばかり戸惑ってしまう。

 

「も、もう良いわよ! そんな・・・・・・!」

「そ、そうよ。 そんなに頭を下げなくても良いから・・・・・・」

 

取りあえず、今は先ずバックダンサーだなんだのと嘘をこころに吹き込んだにこにその辺のことを問いただすためにも、絵里はスマホを取り出し、彼女はにこに電話をかけるのだが・・・・・・。

 

『にっこにっこにー あなたのハートにラブにこ、矢澤にこでーす! 今、電話に出られませぇーん。御用の方は、発信音のあとに、にっこにっこにー!』

「・・・・・・もしもし? わたくし、あなたの『バックダンサー!!』 を、勤めさせて頂いている絢瀬 絵里と申します。 もし聞いていたら・・・・・・」

 

すると次の瞬間、眉間にシワを寄せながら絵里はスマホの画面に向かって・・・・・・。

 

「すぐ出なさい!!」

「出なさいよにこちゃん!!」

「バックダンサーってどういうことですか!?」

「説明するにゃー!!」

 

絵里がスマホの画面に向かって怒鳴り込むと同時に真姫や海未、凛も続いてさっさと電話に出て説明しろとだけ残し、こころはそんな絵里達の後ろ姿を「うん?」と不思議そうに見つめるのだった。

 

「そう言えば、こころちゃん」

「んっ? はいなんでしょう?」

「にこは俺のことは君にどう説明してたの?」

「えーっと、矢澤 にこ専属マネージャー・・・・・・とだけ説明していましたけど?」

「俺はあんまり変わんねえ・・・・・・。 別に良いんだけど」

 

「にこ専属」という部分以外はマネージャーであるという立場は同じであるため、紅葉は特に絵里達ほど怒り心頭にはならなかったが、それでもこころのような素直な子に嘘を言うのはあまり頂けないとは思わずにはいられなかったので、その辺のことはしっかりと叱っておこうと思う紅葉だった。

 

(さっきのこころちゃんを注意するお兄ちゃん、かっこよかったなぁ・・・・・・)

 

ちなみに、先ほどから黙っている穂乃果はこころと話す紅葉を見つめながらそんなことを思っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉達はこころに案内されてにこが暮らしている家へとやってくるとそこでは右手に玩具のハンマーを持ってもぐら叩きをしているまだこころよりも幼い少年がいた。

 

「弟の虎太郎です」

「弟もいたのか・・・・・・」

 

こころに矢澤家の末っ子だという「矢澤 虎太郎」のことを紹介され、弟もいたことに少しだけ驚く紅葉。

 

「・・・・・・バックダンサー・・・・・・」

 

そんな虎太郎は鼻水を垂らしながら穂乃果達を指差しながら彼女達をバックダンサーと呼び、それにことりは「あはは、こんにちわ」と苦笑しながらも軽く挨拶を行う。

 

「お姉様は普段は事務所が用意したウオーターフロントのマンションを使っているんですが、夜だけここに帰って来ます」

「ウオーターフロントってどこよ?」

 

こころの説明を受け、真姫が即座にウオーターフロントってなんの話だとばかりにツッコミを入れるが、こころはマスコミに嗅ぎつけられる可能性があるという理由でウオーターフロントがどこにあるのかは教えてはくれなかった。

 

「にこの奴、話を盛りに盛ってやがる・・・・・・」

 

しかし、どこからどう聞いても、どう考えても事務所やらウオーターフロントのことはにこの言った出任せなのは確実であり、例え教えて貰ったところでそんなものは実在しないのでマスコミに嗅ぎつけられるなんて心配は当然ながら全く無い。

 

それよりも、にこが話を盛りすぎてこころ達に話していることの方が問題であり、紅葉はそんなにこに呆れてしまうのだった。

 

「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう?」

「μ'sの写真や動画を観れば、私達がバックダンサーでないことぐらいすぐ分かる筈なのに・・・・・・」

 

花陽は何故ここでにこの言っていることをこころ達がすんなりと信じ込んでいるのか疑問に思い、海未の言う通り、μ'sの写真や動画を観ればすぐに自分達がバックダンサーでないことくらいは分かる筈である。

 

「ねえ、虎太郎くん。 お姉ちゃんが歌ってるとことか見たことある?」

 

そこでことりがその疑問をぶつけるように虎太郎に尋ねると手に持っていたハンマーを「あれ」と言いながらある方向に向けるとそこには冷蔵庫の傍にμ'sのポスターが張られてあったのだが、それには何か違和感があり・・・・・・。

 

「μ'sのポスターだ!」

「いや、なんかおかしい・・・・・・」

「穂乃果の顔と、にこの顔が入れ替えてある!!」

 

そう、そのポスターは本来は穂乃果が中央にいる筈なのだが、穂乃果の顔にはにこの顔が貼り付けられており、逆ににこのいた場所には穂乃果の顔が貼り付けられており、明らかにそのポスターはにこの手によって合成されていたものとなっていたのだ。

 

『合成!?』

 

それからこころににこの部屋の案内だけして貰い、彼女の部屋の中を覗いてみると先ほどのポスターと同じように彼女の部屋に張られていたμ'sのポスターや写真などににこの顔が貼り付けられており、この光景に一同はもはや呆れるしか無かった。

 

「これ、私の顔と入れ替えてある・・・・・・」

「にこってこんなスタイルよくないだろ。 やってて逆に悲しくならなかったのかなこれ?」

 

その中には穂乃果だけではなく、絵里の顔と自分の顔を入れ替えたポスターなどもあり、それを見た紅葉は絵里とにことでは体型が真逆過ぎて先ほどの穂乃果の顔と入れ替えたポスター以上に違和感を抱かずにはいられなかった。

 

「・・・・・・涙ぐましいというか・・・・・・」

 

この光景に、穂乃果も小さくそう呟いていると・・・・・・。

 

丁度家の扉が開き、買い物袋を手に下げたにこが帰宅してきたのだ。

 

「あっ、アンタ達・・・・・・!?」

 

まさか家まで押しかけて来ているとは思わなかったのか、にこは引き攣った顔となり、するとそこへ今度はキッチンからにこが帰って来たのを察したらしいこころが顔を覗かせて来た。

 

「お姉様お帰りなさい! バックダンサーの方々がお姉様にお話があると・・・・・・」

「そ、そう・・・・・・」

「申し訳ありません。 すぐに済みますのでよろしいでしょうか?」

 

顔は笑みを浮かべていたが、それでもとても凍てつくような、凍えるような声色で海未がそう言うと・・・・・・次の瞬間、海未の表情から笑みが消え、同時に鋭い目つきとなってにこを睨み付けると、にこは冷や汗をかきながら思わず後退る。

 

(いや、こえーよ! 穂乃果にですらここまで怒ったことあったか!?)

 

正直、ここまで怒った海未はあまり見たことが無かった為、紅葉は内心ビビってしまい、それは穂乃果も同じなのか、少しばかり肩を震わせていた。

 

「え、えっと、こころ。 悪いけど、わ、私今日仕事で向こうのマンションに行かなきゃいけないから・・・・・・じゃっ!」

 

にこが買い物袋と鞄をゆっくりと床に降ろすと、穂乃果達に背を向けて一気にダッシュして逃げ出すが・・・・・・。

 

「紅葉」

「は、はい!!」

「あなたなら余裕でにこを捕まえられますよね? 行ってください」

「イエスマアム!!」

 

スーパーの時は穂乃果のことで動揺していたこと、にこが素早く裏口を使って姿を眩ませたことから追いつくことは出来なかったが、今は障害物の少ないマンションの廊下。

 

ならば身体能力の高い紅葉なら今すぐに追いかければ余裕で捕まえられる為、海未に指示され紅葉は急いでにこを追いかけ走り出す。

 

「なんで何度も逃げないといけないのよ!」

「左失礼」

 

当然ながら、普通の追いかけっこで紅葉から逃れるられず筈もなく、あっさりとにこは紅葉に左脇を通り抜けられると彼女の前に立ち塞がり、両手を広げて通せんぼをして彼女の行く手を阻んだ。

 

「ちょっ、退きなさいよ紅葉!!」

 

するとその時、紅葉の背後にあったエレベーターが開くとこれまた虎太郎よりも年上で、こころよりも年下といった感じの幼い少女、矢澤家の三女である「矢澤 ここあ」が降りると、彼女はすぐさまにこの存在に気付き、紅葉のすぐ傍を通り抜けると勢いよくにこにここあは抱きついて来たのだ。

 

「あっ、お姉ちゃん!」

「あっ、ここあ?」

「どうしたの? こんなところで・・・・・・」

 

そこへ丁度紅葉と同じく遅れてにこを追いかけてやってきた穂乃果達が合流したのだが、ここあの容姿もまたにこにそっくりなことからまだにこに妹がいたことに一同は驚きの声をあげた。

 

「もう1人妹がいたんだにゃー!」

「・・・・・・っ・・・・・・」

 

ここあに抱きつかれた状態、さらに紅葉がいるとなるともうにこはこれ以上逃げることはできないと判断したのか、にこは遂に観念し、逃走するのを諦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変申し訳ありません! わたくし、矢澤 にこ。 嘘をついておりました!」

 

その後、家に連れ戻されたにこはまるで土下座でもするかのようにテーブルの上に突っ伏した状態で謝罪を穂乃果達に行っていた。

 

「ちゃんと頭を上げて説明しなさい」

 

仁王立ちしながら苛立った様子で絵里は説明を求め、にこは絵里の言われた通り顔を上げるとこちらを鋭い視線で睨むメンバーが何人かおり、彼女はそれに耐えられず、思わず引き攣った笑みを浮かべる。

 

「や、やだな〜みんな怖い顔して・・・・・・。 アイドルは笑顔が大切でしょ!? さあ、みんなでご一緒に! にっこにっこにー!!」

 

この凍てつくような空気を少しでも変えようと思い、彼女は何時ものにっこにっこにーをやるのだが・・・・・・。

 

「にこっち」

「っ!」

「ふざけてて、ええんかな?」

 

未だになんとか誤魔化そうとするにこに対し、顔は笑ってはいるものの声色に怒気の含んだ希がタロットカードを見せながらそう言うと、にこは「はい」と反省し、顔を俯かせるのだった。

 

「出張?」

 

その後、にこはなんで今日練習を休んだのか、その事情を紅葉達に話し始め、にこが言うには今日休んだのは今日から2週間、自分達の母親が出張で家を空ける為、妹達の面倒を見なくてはいけなくなったというのだ。

 

「だから練習を休んでたのね」

「それならちゃんと言ってくれれば良いのに」

「そうそう、下手に隠すからこんな事態になるんだぞ、にこ?」

 

絵里や穂乃果、紅葉はにこが練習を休んだ理由にはついては納得したものの、1番気になるのは何故自分達が矢澤家ではバックダンサーということになっているのか、海未が不満げにそのことについて尋ねるとそれに絵里も同意し、そこが1番の問題だと言ってにこに説明を求めた。

 

「それより、どうして私達がバックダンサーということになってるんですか!?」

「そうね。 むしろ問題はそっちよ」

「そ、それは・・・・・・」

『それは・・・・・・!?』

「にっこにっこ・・・・・・」

「それも禁止やよ?」

 

この後に及んでまだにっこにっこにーで誤魔化そうとするにこだったが、希に先手を打たれたことでにこは黙り込み、紅葉も「往生際が悪い」半ば呆れたように言われたことで、にこは遂に観念し、事情を紅葉達に話し始めたのだ。

 

「・・・・・・元からよ」

「元から?」

「そう、家では元からそういうことになってるの。 別に、私の家で私がどう言おうが勝手でしょ?」

「でも・・・・・・」

 

一応、にこは観念してどうして穂乃果達がバックダンサーということになっているのか説明してはくれたものの、彼女の言っている意味がよく分からず、もう少し分かりやすい説明を紅葉が求めるのだが・・・・・・。

 

「なぁ、にこ、もうちょっと分かりやすい説明を・・・・・・」

「お願い。 今日は帰って」

 

にこは後ろの部屋で遊んでいるこころ達を見つめながら、先ほどまでのふざけて場を誤魔化そうとしていた雰囲気とは打って変わり、真剣な口調で紅葉達に帰ってくれと言われると、紅葉達はこれ以上にこに何かを聞くことは出来ない判断し、彼女の望み通り、今日は帰ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから一同はこころと出会った橋の近くまで戻ってくると、不意に真姫が小さく、説明不足なにこに対する不満からか、呆れたように「困ったものね」と呟いた。

 

「でも、元からってどういうことだろう?」

「にこちゃんの家では元から私達はバックダンサー?」

 

ことりと穂乃果がにこの言っていた「元から」という言葉が一体どういう意味なのか、2人で話し合っているとそこで絵里が希が何かを考え込んでいるかのような表情をしていたことに気づき、絵里が「希?」と彼女に話しかけると、希はどうやらにこの言っていた「元から」という言葉に思い当たる節があるようで、彼女はそのことを紅葉達に話し始めたのだ。

 

「多分、元からスーパーアイドルだったってことやろな」

「どういうことです?」

「にこっちが1年の時、スクールアイドルやってたって話は前にしたやろ? きっとその時、妹さん達に話したんやないかな? 『アイドルになった』って」

 

希は以前、穂乃果達ににこはアイドルとしての目標が高すぎたせいで他のメンバーはついて行けなくなったという話をしたことがあった。

 

その結果、穂乃果達が来るまでアイドル部は部長のにこ1人という状況となり、1人でスクールアイドルを続けるのもままならない状況となり、にこはアイドル活動も自然としなくなってしまっていた。

 

こころ達がにこのことをとても慕っているのは彼女達を見ればとてもよく分かることだった。

 

きっと、にこが妹達に「アイドルになった」と言った際、こころ達はとても喜んでくれていたのだろう。

 

「でも、ダメになった時、ダメになったとは言い出せなかった」

 

だから、にこがアイドル活動が出来なくなった時、そんな風に喜んでくれた、自分を慕ってくれた妹達をがっかりさせたくなくて、彼女は今日まで妹達のための嘘をこころ達に突き続けたのだろう。

 

「にこっちが1年の時からあの家ではずっとスーパーアイドルのまま・・・・・・」

「確かに、ありそうな話ですね・・・・・・」

 

希の話を聞き、海未もにこが言っていた「元から」という言葉の意味をなんとなくではあるが、理解することが出来た。

 

「もう、にこちゃんどんだけプライド高いのよ!」

「真姫ちゃんと同じだね!」

「あははは! おまいう。 パート2」

「茶化さないの!」

 

真姫の呟きに凛と紅葉に「お前が言うな」的なことを言われ、彼女は少しだけ怒ったように茶化すなと怒鳴る。

 

「でも、プライド高いだけなのかな?」

『えっ?』

 

そこで、花陽が不意にそんなことを言うと、一同は一斉に視線を花陽の方へと向け、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「アイドルに、凄い憧れてたんじゃないかな? 本当にアイドルでいたかったんだよ。 私も、ずっと憧れていたから分かるんだ」

 

夕焼けの空を見上げながら、にこと同じようにアイドルが好きだから、花陽はにこの気持ちに共感し、にこの気持ちを代弁するように彼女は語り、そんな花陽の話を聞いた絵里は自分やにこが1年の時、にこがアイドル部として部員を勧誘していた時のことを思い出したのだ。

 

「・・・・・・。 1年の時、私見たことがある。 その頃は私は生徒会もあったし、アイドルにも興味なかったから・・・・・・。 あの時、話しかけていれば・・・・・・」

 

絵里はそう言いながら、かつてアイドル活動を必死に行っていたにこに何も話しかけないでいたことを後悔し、あの時話しかけていれば、にこは妹達に嘘をつく必要も無かったのでは無いかと思い悩むが・・・・・・。

 

「後悔しても、過去は変えられないさ」

 

すると、今まで黙って花陽や絵里の話を聞いていた紅葉が口を開き、過去のことを後悔する絵里に声をかけたのだ。

 

「過去を変えることはできない。 でも、未来なら変えられるかもしれない。 絵里がその時のことを後悔しているのなら、それならまだ、アンタはその為に何か出来ることがまだあるんじゃないのか?」

 

かつて、自分の戦いにナターシャを巻き込み、自分のせいで彼女を犠牲にしてしまったと紅葉は思っていた。

 

その結果、あの戦いで紅葉はウルトラマンオーブ本来の姿である「オーブオリジン」の力を失い、紅葉は自分自身を失ったのだ。

 

もう二度と、かつての自分を取り戻せないと紅葉自身は思っていたが、穂乃果がナターシャの子孫だということが分かったことでナターシャがあの惨劇を生き延びていたことを紅葉は知ることができた。

 

そして、もう二度と戻らないと思われていたかつての力を紅葉は取り戻すことが出来たのだ。

 

それはきっと、「未来を変えられた」ということを意味していたのだと思う。

 

だから紅葉は、自分の未来を変えてくれた隣に立つ穂乃果を横目に見ながら、紅葉は絵里に過去のことを反省するよりも、にこの為を思うなら彼女の未来を変える為に何かをすべきだと言ったのだ。

 

「そう、ね。 紅葉くんの言う通りかもしれないわね。 にこの為にも、私達に出来ることって、何かあるかしら・・・・・・」

 

過去のことを後悔するなら、今、にこの為に出来ることがあるのではないかと考え、模索する絵里。

 

「・・・・・・未来を、変える・・・・・・。 未来を・・・・・・そうだ!」

 

すると、そんな時、隣で紅葉の言葉を聞き、それを繰り返すように呟いていた穂乃果が何かを閃いたらしく・・・・・・。

 

 

 

 

 

その翌日、学校の放課後にて。

 

にこは昨日穂乃果達に伝えた通り、妹達の面倒を見る為に今日も練習を休むこととなり、校門を通って学校の外へと出るのだが・・・・・・。

 

「にーこちゃんっ!」

 

直後、何故か校門前で待ち構えていた穂乃果に声をかけられたことでにこは足を止め、思わず「あっ」と声をあげるにこ。

 

「練習なら出られないって・・・・・・いっ!?」

 

てっきり、穂乃果は自分を部活の練習に誘いに来たのだと思ったのだが、別に穂乃果はにこを練習に誘いに来た訳では無かった。

 

「お姉様!」

「お姉ちゃん!」

「がっこう〜」

 

穂乃果の後ろからこころ、ここあ、虎太郎の3人がひょこっと顔を出して来たことでにこはそのことに目を見開き、なんでこころ達が学校に来ているんだと言わんばかりの視線を穂乃果に向ける。

 

「ちょっ、なんで学校に連れて来てんのよ!?」

「だって、こころちゃん達見たいって言うから。 にこちゃんのステージ!」

 

笑みを浮かべながらそう言い放つ穂乃果の言葉に、にこはステージとは一体なんのことなのだろうかと彼女は首を傾げる。

 

「ステージ・・・・・・?」

「お兄ちゃん!」

 

穂乃果が紅葉のことを呼ぶと、彼女に呼び出された紅葉は何故か空から振って来て見事な三点着地を決めながらにこと穂乃果の間に颯爽と現れる。

 

「ラジャー!! ってぐあああ!!? 膝がぁ・・・・・・!!」

「スーパーヒーロー着地は膝に悪いってあれだけ言われてたでしょ・・・・・・。 ってアンタどっから振って来たの!?」

 

にこは紅葉から空から振って来たことに疑問を持つものの、そんなことはお構いなしに穂乃果がにこに有無を言わせず強制連行するように指示を出すと、超人じみてるおかげか、すぐに痛みが引いたのか、ケロンッと立ち上がった紅葉がにこをロープでにこをグルグルに巻いて担ぐと、そのまま紅葉と穂乃果は担いだにことこころ達を引き連れて一旦部室まで運び去るのだった。

 

「ちょっとー!!? 何グルグル巻きにしてんのよ!? 降ろしなさいよ!? アンタ等あとで覚えてなさいよー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

その後、にこを強制連行した紅葉と穂乃果は彼女を部室にいた絵里と希に引き渡すと紅葉達2人はこころ達を屋上へと案内し、それから絵里と希に引き渡されたにこはというと彼女等2人に半ば強制的にスクールアイドルの衣装を着せられ、こころ達が待っている屋上のドアの前に連れて来られたのだった。

 

「・・・・・・これって」

 

ただ、そのピンクのフリッとしていて天使のような羽根のついたその衣装は自分も初めて見るものであり、一体これはどうしたのだろうかと戸惑いつつも絵里と希を彼女が見つめると、どうやらこの衣装は絵里と希、自分達2人で考えたものであるらしいことが2人の口から伝えられたのだ。

 

「にこにぴったりの衣装を私と希で考えてみたの!」

「えへっ。 やっぱりにこっちには可愛い衣装がよく似合う。 スーパーアイドル、にこちゃん♪」

「希・・・・・・」

 

希はにこに微笑みを向けながらそう言うと不意に絵里が手の平を屋上へと続く扉の方へと手をかざした。

 

「今、扉の向こうにはあなた1人だけのライブを心待ちにしている最高のファンがいるわ!」

「っ、絵里・・・・・・」

「さあ、みんな待ってるわよ!」

 

最初こそ、穂乃果達の行動に驚き、動揺したものの、にこはみんなが自分に何をしてくれようとしているのか、そこでようやく察することができ、彼女は絵里の言葉に「うん!」と力強く頷くと、彼女は屋上に設置されたステージへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、お姉様のステージ?」

「誰もいなーい!」

「おくじょう〜」

 

学校の屋上でにこのステージをこころ達はそれぞれの感想を口にしながらにこがやってくるのを心待ちにしていた。

 

ちなみに紅葉は少し離れた場所からステージを見ることにしている。

 

するとそこへ、ステージの奥からにこがやってくると、少し遅れて穂乃果達8人も現れるとにこは手に持ったマイクを使いながらこころ達に呼びかける。

 

「こころ、ここあ、虎太郎。 歌う前に、話があるの」

「「「えっ?」」」

「・・・・・・実はね、スーパーアイドルにこは今日でおしまいなの!」

「「「えぇ!?」」」

 

唐突に告げられたにこのその言葉に、彼女をスーパーアイドルだと思っているこころ達は衝撃を受け、3人は不安そうな表情を浮かべる。

 

「アイドル、辞めちゃうの?」

 

悲しそうな声で、こころがにこがアイドルを辞めてしまうのかと訪ねると、にこは「ううん、辞めないよ」と首を横に振ってそれを否定した。

 

「これからは、ここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやっていくの!」

「でも、皆さんはアイドルを目指している・・・・・・」

「バックダンサー・・・・・・」

 

こころや虎太郎の言葉に、にこは応える。

 

「そう思っていた。 けど違ったの! これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい。 この9人でいられる時が、1番輝けるの! 1人でいる時よりも、ずっとずっと・・・・・・。 今の私の夢は、宇宙№1アイドルにこちゃんとして、宇宙№1ユニット、μ'sと一緒に!! より輝いて行くこと!!」

 

にこはこころ達にそう言い放つと、彼女は改めてこころ達と向かい合い、自分の想いを妹弟達に伝える。

 

「それが1番、大切な夢。 私のやりたいことなの!!」

「お姉様・・・・・・」

「だから、これは私が1人で歌う最後の曲・・・・・・!」

 

にこはこころ達に自分の伝えたい想いを伝えると、彼女は何時もの例のあのポーズを行って見せる。

 

「にっこにっこ〜!! に〜!!」

 

挿入歌「どんなときもずっと(にこソロバージョン)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に恋愛相談ってマジか」

 

にこのソロライブはこころ達に大盛況といった具合に無事に成功した翌日、バックダンサーの騒動のせいで有耶無耶となっていた穂乃果のこと、またそれ以外の紅葉自身の悩みについて相談しようと彼はにこを昼休みの時間を使って彼女を学校の屋上へと呼び出していた。

 

「それで、どういう相談な訳? 言っておくけど、私彼氏とかいたことないし、そういう経験も無いからあんまり期待しないでよ?」

「えぇ、でも・・・・・・。 これは俺がオーブであることも関わってくる問題なんだ」

 

「自分がオーブであることも関わる」と聞いたにこは先ほどまでとは打って変わって真剣な顔つきとなり、オーブのことが関わるとなってはただごとでは無いだろうと思い、にこは紅葉の話に耳を傾ける。

 

「穂乃果って、好きな奴がいるっぽいんだよね」

「・・・・・・それは、なんとなくだけど、薄々感付いてはいたわよ、私も」

 

その「穂乃果に好きな奴がいるとしたら多分お前だよ」と無償に言いたくなるにこだったが、流石にそんなあっさりと言える筈もなく、言いたくなる気持ちをグッと堪えて彼女は黙り込みながら紅葉の話を聞き続ける。

 

「アイツ自身にも、好きな奴がいるのかって聞いたんだ。 でも、その時俺は穂乃果が何かを言いかけて、言葉を遮ってしまった。 その先の言葉を聞きたくないって思ったから」

「・・・・・・」

「その時はなんで自分から聞いておいてそんなことしたのか、俺には分からなかった。 でも、今になって思い返せば、理由は、なんとなくですけど分かったかもしれない」

 

そこで紅葉は一旦言葉を止めると、すぅっと息を吐いて意を決したように穂乃果の言葉を遮った理由をにこに告げる。

 

「それはきっと・・・・・・俺が穂乃果のことを好きだったからだと思うんだ」

「・・・・・・成程ね。 つまり、穂乃果の好きな奴がもしも自分以外の奴だったら嫌だから、聞きたくなかったから。 だから、穂乃果の言葉を遮ったのね?」

 

にこが紅葉にそう尋ねると、彼はコクリと首を縦に振って頷いてみせる。

 

「穂乃果には誰か好きな奴がいる。 そんで紅葉は穂乃果のことが好き。 そこまでは分かったわ。 でも、オーブについても関わるって言うのはどういうこと?」

 

穂乃果には好きな人がいて、紅葉は穂乃果のことが好き、それだけの話を聞くと今のところはオーブが関わってくるような話だとは思えず、むしろにこはこういうのは恋愛にはよくある話だろうと思ったのだが・・・・・・。

 

「実は俺、これでもにこよりもずっと年上なんだよ」

「・・・・・・はっ?」

 

そこで紅葉は、自分の過去についてのことをにこに話し始め、自分は少なくとも1000年以上を生きている人間であること、150年前のナターシャとの出会いと自分が起こしてしまった悲劇、自分が高坂家の子供となった切っ掛け、そして自分が本来の自分を取り戻した時の出来事を全て、ラグナのことなども含めつつ、紅葉は包み隠さず、洗いざらいにこに話し、自分の過去を明かしたのだ。

 

それを聞いたにこは唖然とした様子を見せ、まさに開いた口が塞がらないといった感じで、目をまん丸にして一瞬思考が停止してしまった。

 

「えっ、じゃ、じゃあ紅葉・・・・・・紅葉さんは私等なんかより全然年上で・・・・・・。 通りでたまに大人びてるなって思ったのよ・・・・・・!」

「いや、にこ、普通に何時もの接し方で大丈夫だぞ? それに、俺の年齢なんて地球人で例えるとにこ達とそう変わりらないし」

 

紅葉が滅茶苦茶年上・・・・・・ということを聞いてにこは何時ものタメ口ではなく、敬語に口調を切り替えて紅葉と接しようとするのだが、紅葉の方は何時も通りの口調で接してくれたら良いと言うのだが・・・・・・。

 

「いや、でも・・・・・・」

「オーブの正体を隠す為にもお願いするよ。 にこだけ俺に敬語だったら、みんな不審に思うだろ? にこは学校では先輩なんだから、普通に何時もの感じで頼むよ」

 

未だに敬語で自分に話しかけようとしてくるにこに苦笑しながらも、紅葉がそう言うと戸惑いながらもにこは納得してくれたようで、「わ、分かり・・・・・・分かったわ」と返事を返すと、紅葉は話を戻し、穂乃果が誰を好きか、自分が穂乃果を好きなこととオーブはどう繋がって来るのかをにこに説明しだす。

 

「きっと、どことなくナターシャに似ているアイツに、俺はいつの間にか惹かれていたんだと思う。 でも、それは別にナターシャと穂乃果が似ているからアイツを好きになったんじゃなくて、それはあくまで切っ掛けで・・・・・・。 俺はちゃんとアイツ自身を見て、俺は穂乃果を好きになったんだ」

「あんま好き好き連呼しないでくんない? 聞いてるこっちが恥ずかしくなる」

 

ちょっとだけ顔を赤らめて恥ずかしそうににこが紅葉に好きを連呼すると、紅葉はそれに申し訳無さそうにして「す、すいません」と頭を下げて謝る。

 

「まあいいわ。 なんとなく話は見えてきたけど、それで?」

「・・・・・・俺には使命がある。 今はこの街で暴れる怪獣や宇宙人の対処ですけど、それはきっと何時か終わりが来来る。 その時俺は、ウルトラマンとして新たな使命が与えられる筈だ。 恐らくその時俺は、この街から離れることになるだろう」

「・・・・・・しかも、アンタの寿命は地球人よりも長い」

 

紅葉の言葉を紡ぐように、続けるようににこがそう小さく呟くと、紅葉はそれに頷き、そこでようやくにこはオーブのことはこのことにどう関わってくるのか、紅葉が何を言いたいのか、やっと理解することが出来たのだ。

 

「アイツとは、長く一緒にはいられないんだ。 だから俺は、そうだとしてもアイツに想いを告げるべきなのか、告げないべきなのか、悩んでるんだ・・・・・・」

「・・・・・・」

 

紅葉の悩み、それは自分の寿命が地球人よりも長く、何よりもオーブの使命を優先しなければならない為、どうあがこうと穂乃果と長く一緒にいられることは出来ない。

 

そんな紅葉が抱く悩みを打ち明けられ、にこは両腕を組んだまましばらく黙り込んでいると・・・・・・不意に彼女の口が動いた。

 

「使命があるからとか、寿命が長いからとか、そんなの、自分自身の想いを告げないって理由になるの?」

「・・・・・・えっ?」

「何かを好きになったり、誰かを好きになったりする気持ちは、自分自身じゃ止められないものよ。 どうあがいたとしてもね。 穂乃果に自分自身の想いを告げるのと、告げないのはどっちが後悔すると思う? 簡単なことでしょ。 例え想いを告げた結果がどうあったとしても・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 

にこはそれだけを言い残すと、彼女はクルリと踵すを返すように紅葉に背を向け、その場を立ち去ろうとする。

 

「えっ、ちょっ、にこ!?」

「まぁ、アンタが穂乃果に告白をしようがしまいが勝手だけど、アイドルは恋愛禁止よ! だから、結果がどうあろうと私に報告すんじゃないわよ? 勿論、他の人達にもね」

 

最後ににこはそれだけを言うと、今度こそ彼女はその場をスタスタと歩き去って行き、そんな風に歩き去る彼女の背中を見つめながら、紅葉は思わずクスリと笑ってしまった。

 

「誰にも報告するな・・・・・・かっ。 にこ、色々と、ありがとうございましたっと・・・・・・!」

 

そして、紅葉は去って行くにこの背中が見えなくなるまで頭を下げ、力強く自分の相談に乗り、見道しるべを示してくれた彼女に感謝の言葉を贈るのだった。

 




アカネ
「怪獣出ない回とか作っちゃダメだよね〜」

紅蓮騎をこの話で出そうとは思ったんですけど、にこにーの為のライブを思いついた穂乃果ちゃんがそこまでの嫉妬心を抱くだろうかという疑問からちょっと紅蓮騎は出せませんでした。
そのせいでラグナも今回出せなかったし。
次回はラグナにも関係ある話にするつもりだから出したいですね。
そもそも怪獣が出せなかった。
要所要所でその名残りみたいなシーンが幾つかあるんですけどね。
まぁ、これで一応、紅葉がにこにーに相談とかする建前は出来ました。
そういう意味では多分重要回的なのが出来たかなっと。


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第21話 『汚れたハロウィン』

話のボリュームが2話分ぐらいあったことや凛ちゃん回で色々悩んだり、体調崩したり、リアルに忙しかったせいで大分遅れてしまいました、申し訳ありません。
本来やる予定だった凛ちゃん回はかなり作るのが難しかったのですが、逆に今回は割とやりたい放題、好き勝手自分の好きに遊びまくったせいでちょっと長くなってしまいました。
原作アニメのエピソードがギャグ回だったから、もう今回はかなりネタとかに走ってたりします。
所謂パロディ回、みたいな。
本来ならこういう話ニジガクZでやるべきでしたが、ニジガク本編だとちょっとできそうな話がなかったんで。
なので今回はほぼほぼ「これがやりたかっただけ」的なところが多いです。
何回か番外編で書こうとしたけど上手く行かなかったですし。
今回出て来る怪獣の原作エピソードは割とホラーチックでしたが。




前回のラブライブ! オーブ!!

穂乃果達が行った沖縄の修学旅行で「台風怪獣 バリケーン」が出現し、バリケーンの起こした台風のせいで週末に行う予定だったファッションショーでのライブまでに帰ってこれなくなった紅葉、穂乃果、ことり、海未の4人。

そんな4人が不在の中、臨時のリーダーを務めていた凛だったが、小学生の頃スカートを履いてきたことを同級生の男子達にからかわれたことがあり、その時のトラウマからリーダーを務めることやセンターが着る予定だった可愛らしい衣装を着ることに彼女は後ろ向きな考えだった。

しかし、花陽やμ'sの仲間達のおかげで凛はトラウマを払拭することができ、ライブでは当初は嫌がっていたセンターの衣装を着込み、無事にライブは成功。

バリケーンも紅葉が変身したウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュに倒されたのだった。







 

『俺の名は、オリバー・クイーン。 孤島で地獄の5年間を生き抜き、戻ってきた理由はただ1つ。 この街を救うこと。 だがその為には今までのような人殺しではなく、亡き友に恥じない存在にならなくてはならない。 今までとは、別の、何かに・・・・・・』

 

これまでのARROWは・・・・・・。

 

『バリー・アレン、セントラル・シティ警察の犯罪現場捜査班に所属してます』

 

 

 

 

「お兄ちゃんまたその海外ドラマ、DVDレンタル借りてきて観てるの?」

 

居間でレンタルショップから借りて来たとある海外ドラマを紅葉が視聴していると不意に自分の後ろからアイスをペロペロと舐める穂乃果の声が聞こえ、紅葉は穂乃果の方へと顔を向けながら「興味あるのか?」とでも言いたげな表情で「まぁな」とだけ応えると、穂乃果はナチュラルに紅葉の膝の上に座り込む。

 

「お、おい!? 穂乃果!?」

 

穂乃果が自分の膝の上に座り込むなんて何時ものことではあるのだが、そんな彼女に対し、自分が特別な感情を抱いていることに気付いてしまった為か、以前と比べると最近は穂乃果がこういったスキンシップをしてくる度に彼女のことを意識してしまい、激しく動揺するようになってしまった紅葉。

 

(これじゃドラマの話に集中もできない・・・・・・!!)

 

そう思いながらも穂乃果に文句を言うことも出来ず、むしろこの状態を嬉しく思う部分もある為、結局は彼女が満足するまでこの体勢のまま過ごすことに。

 

「このドラマ面白い?」

「ま、まぁな。 アクションは映画かってぐらい気合い入ってるし、毎回引きが良いって言うか、いつもいつも気になる終わり方するもんだから続きが気になって仕方ないんだよな。 その結果、見事に俺はこの作品に引き込まれちまった訳だ」

「ふーん、私も観てみようかなぁ。 お兄ちゃんが好きになるぐらいだし、私も興味がある!」

 

紅葉の話を聞いて少しばかり興味を抱いたのか、穂乃果も紅葉が視聴している海外ドラマに興味を持ち始め、紅葉は自分の好きなものを共有できる仲間が出来そうになったこと、それもそれが穂乃果であったことも相まって嬉しいのか口元を緩ませながら作品の魅力を彼は穂乃果に語るのであった。

 

さらに、穂乃果とその海外ドラマの話をする度に紅葉自身の緊張もほぐれたようで穂乃果が自分の膝に座っている状態に慣れてくると彼は穂乃果と一緒にそのドラマを観ることとなり、2人して視聴を楽しんだのだった。

 

 

 

 

それから穂乃果と紅葉がドラマを視聴し始めて45分後・・・・・・。

 

「いやぁ、まさか幻影とはいえ、死んだ親友のトミーがオリバーに激励して敵に逆転勝利するとは、熱い展開だったな」

 

ドラマを見終わった穂乃果と紅葉はというと・・・・・・。

 

「これより前の話とか観てないからよく分かんない部分もあったけど、確かに面白かったかも! あのバリーって人も最後雷に打たれてどうなるの!? ってところで終わっちゃうし・・・・・・」

「あれは『フラッシュ』ってドラマに続くらしい。 しかし、そうか! 穂乃果がこれに興味持ってくれて嬉しいよ。 それじゃあ今度ファースト・シーズンのDVD借りてくるからまた一緒に観ようぜ? 近い内にまた見返したいなって思ってたしな」

「ホント!? 観たい観たい!! 約束だよ、一緒に観ようね、お兄ちゃん!!」

 

どうやら、ドラマを見終わった穂乃果はこの作品をお気に召したようでそれに対して紅葉も満足げな表情を浮かべると彼は今度、ファースト・シーズンからのドラマを借りてきて一緒に観ることを穂乃果と約束を交わすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、その翌日。

 

「ハロウィーンイベント?」

 

とあるフードコートにて。

 

「えぇ、みんなハロウィンは知ってるでしょ?」

「あぁ、ここにも飾ってあるカボチャとかの?」

 

そこには紅葉、穂乃果、絵里、真姫、にこ、花陽、凛、希の8人が集まっており、絵里から今度秋葉でハロウィンのイベントがあるそうで彼女が言うには前回のファッションショーライブの時と同様、そのイベントの運営から直接「出演してみないか?」というオファーが自分達に舞い込んできたのだという。

 

「そう! 実は今年、秋葉をハロウィーンストリートにするイベントがあるらしくてね? 地元のスクールアイドルであるA-RISEとμ'sにも出演依頼が来ているのよ!」

 

ただ、前回のファッションショーでのライブと違うのは今回は自分達μ'sのみならず、同じ地元で活躍するA-RISEにもイベント出演の声がかかっているようでそんな絵里の話を聞き、それに対して穂乃果は「ほえー」と感心するような声を上げるのだった。

 

「予選を突破してからというもの、何だか凄いね~」

「でもそれって歌うってこと?」

 

だが、そこで何か引っかかる部分があるのか、真姫が疑問に思ったことを口にすると、紅葉は「そりゃそうだろう」と頷き、A-RISE、μ'sの秋葉のスクールアイドル両方に声をかけているぐらいなのだから当然それはライブをしてくれということなのだろう。

 

「・・・・・・有り難い話だけど、この前のファッションショーと言い、そんなことやってていいの? 最終予選も近いのに・・・・・・」

「そうよ! 私達の目標はラブライブ優勝でしょ!?」

 

前回のファッションショーも、今回依頼のあったハロウィーンイベントも自分達の知名度などをあげるには持って来いのイベントなのは確かであり、ハロウィンの方にも出演できればさらにμ'sの知名度もあがる可能性もあり、知名度も上がればその分ラブライブで優勝する可能性も少しは高くなるというのは真姫もにこも理解はしているのだが・・・・・・。

 

やはり、ラブライブの最終予選が近くに迫っている中、ハロウィンのイベントまで予定をねじ込める余裕があるのだろうかと真姫は疑問を抱き、にこも彼女と同じ考えなのか、真姫の言葉に同意するように頷きながら他のイベントに出演している暇なんてないのではないかと一同へと問いかける。

 

「だけど、そのイベントA-RISEは出演する気満々なんじゃないのか? A-RISEが出るのに、μ'sが出ないのはなんだか負けた気がして嫌だな、俺は。 A-RISE出演するってんならやっぱり俺は多少強引だとしてもμ'sにも出て欲しいって思うけどな」

 

そのようなにこの疑問に対し、紅葉は真姫やにこの言い分も理解できるもののA-RISEとの差を少しでも埋める為にも、ラブライブ優勝の可能性を少しでもあげる為にも、多少無茶してでもハロウィンイベントには出演した方が良いのではないかと自分の考えをにこや真姫に伝えると、絵里もまたそれに賛同するかのように首をコクリと縦に振るのだった。

 

「にこや真姫の言いたいことも分かるけど、こういう地道な活動も重要よ? イベントには、テレビ局の取材も来るみたいだし」

「えっ!? テレビ!!?」

 

テレビの取材が来る、と聞いた瞬間、にこは目の色をかえながらガバッとてつもなく嬉しげに席から立ち上がるとそんなにこの態度の豹変っぷりに真姫と紅葉は呆れたような視線を注ぐのだった。

 

「態度変わりすぎ・・・・・・」

「手の平ドリルで草ァ!!」

 

また凛と花陽はハロウィンイベントの詳細が書かれた広告紙を一緒に見つめながら、花陽はA-RISEと同じイベントに出ることに緊張を覚えるのだが、逆に凛は確かに緊張するのは分かるが、同時にそれは自分達の名前を多くの人達に覚えて貰う為のチャンスであると主張し、それに花陽も「そうだね!」と力強く頷く。

 

「A-RISEと一緒ってことはみんな注目するよね? 緊張しちゃうなぁ・・・・・・」

「でも、それだけ名前を覚えて貰うチャンスだよ!!」

「そうよ!! A-RISEより強いインパクトの強いパフォーマンスでお客さんの脳裏に私達の存在を焼き付けるのよ!!」

 

テレビの取材が来ると聞いたからか、先ほどまでとは打って変わってやる気を燃やすにこ。

 

それに感銘を受けてか、穂乃果は「成程!」と言いながら両手の拳をギュッと握りしめながら目を輝かせる。

 

「おぉ~! 真姫ちゃん! これからはインパクトだよ!」

「ハァ・・・・・・。 ところで、穂乃果に紅葉?」

「「んっ?」」

「あなた達、こんなところにいて良いの?」

 

そんな真姫の問いかけに、2人はなんのことか分からず「どういうこと?」と穂乃果と紅葉が首を傾げていると、真姫に続くように花陽が「生徒会長の仕事は?」と問いかけられたことで穂乃果と紅葉は「あっ!」と2人揃って生徒会の仕事を忘れていたことに気付き、2人は互いの顔を見合わせながら顔を青ざめさせる。

 

「なんでお兄ちゃんまで忘れてるのー!?」

「いや、すまん! みんなでフードコート行くって聞いてお腹もちょっと空いてたし、つい・・・・・・。 ってか俺だけのせいにすんなよ!?」

 

すると、そんな時・・・・・・。

 

「ごきげんよう」

「さ、探したんだよぉ~?」

「「ヒエッ」」

 

不意に花陽達の後ろから苦笑を浮かべることりと、顔は笑っているが目が笑っていない海未の2人がやってくると、海未の表情を見た紅葉と穂乃果の2人はビクリと肩を震わせる。

 

「へぇ~? これからはインパクト・・・・・・なんですねぇ?」

「お、おい穂乃果? お望みの特大インパクトが来たんだけど・・・・・・!」

「あはは・・・・・・。 うぅ、こんなインパクト、いらない・・・・・・!」

 

その後、兄妹2人揃って仲良く海未にこっぴどく怒られたのは言うまでもない・・・・・・。

 

ちなみに、この時紅葉はベゼルブ軍団や6体の魔王獣、マガオロチやギャラクトロン、ゼッパンドンといったこれまで戦ってきた強豪達と相見えた時以上の恐怖を感じたとか。

 

「それにしても、ハロウィンかぁ」

 

一通りの話を聞き終えた希は何か引っかかる部分でもあるのか、顎に手を当てながらそんなことを呟くと、彼女の向かい側に座っていた絵里は「どうかしたの?」と尋ねながら不思議そうな眼差しを向ける。

 

「いやな、ハロウィンって聞いてウチが知ってる都市伝説のことを思い出してなぁ」

「えっ? 何? ちょっと待って、もしかして怖い話・・・・・・?」

 

「都市伝説」という言葉を聞いたからか、ホラー系が苦手な絵里は怯えるように体を縮こませると、それを見て希はそこまで怖い話ではないから安心してくれと言いながら手をブンブン振り回す。

 

「実はな、ここ数年起きではあるものの、ハロウィンの日が近くになると子供達が大量に蒸発するっていう事件が世界各位で起こっているらしいんよ。 しかも、蒸発した子供達は未だに行方不明な者が殆どで、例え見つかったとしてもその子供は顔が真っ白になっていてまるで廃人のように無気力な状態になってるんやって」

「えっ、何それ普通に怖くない!?」

 

そこまで怖くないと希は言っていたのに、絵里としては思いの外希の語った都市伝説は彼女にとっては恐怖エピソードだったらしく、ガタガタと震えながら両腕で自分の体を抱き締めていた。

 

「言うても日本じゃまだそんな事件起こってないし、それに子供達言うても狙われるのは基本小学生~中学生ぐらいの子達らしいで。 だから高校生のウチ等は対象外や。 都市伝説が本当だとしてもウチ等が狙われることはないと思うで?」

「だとしても、子供が狙われるんでしょ? 自分達が対象外だからってそんな話聞いたら安心できないわよ」

「まぁ、それもそうなんやけど。 あくまで噂やし」

 

希はただの「噂」だからと言って特にすることはないのではないかと言うのだが、希の話を聞いていたにこは未だに穂乃果と一緒に海未から説教を受けている紅葉に一瞬だけ視線を向けると、彼女は顎に手を乗せながら「うーん」と先ほど希が話した都市伝説についてそれは本当にただの噂なのかと思い、考え込む。

 

(怪獣が宇宙人が現れる今のご時世のことを考えると、怪獣や宇宙人の仕業って可能性があるんじゃなかしらね・・・・・・。 まぁ、いざって時には頼りにしてるわよ、ウルトラマンオーブ。 今ものすっごい情けない姿晒してるけど・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

そのまた翌日、音ノ木坂学院の放課後アイドル部の部室にて。

 

「うーん、インパクトかぁ」

 

部室の机の上にはそれぞれジャック・オ・ランタンの顔が置かれたミニチュアやデフォルメされた見た目の魔女の帽子を被った布のお化けが置かれており、ジャック・オ・ランタンは裏返った穂乃果の声を出しながら先日にこが言っていたインパクトについて考え込んでいた。

 

「でも、今回は大会じゃないよね? 優劣つけるものじゃないし、そんなの気にしても・・・・・・」

 

その見た目に見合った可愛らしい脳トロボイスを発しながら、布お化けは今回のイベントはA-RISEも出演するとはいえ、順位を決めたりするようなものではないのだからそこまで深く考えることはないのではないだろうかと意見を出すのだが・・・・・・。

 

「何言ってるの!?」

 

そんな時、布お化けとジャックの間に割り込むように机の下からスーツを着込んだ骸骨男の人形が現れると、彼は布お化けの考えに意義を唱える。

 

「にこちゃんの言う通り! 確かに採点も順位もないけど、お客さんの印象に残った方が多く取り上げられるだろうし、みんなの記憶にも残る!」

 

さらに今度はそこに骸骨男に同意するように、真姫の声をした巨大なゴーレムの人形が現れると、ゴーレムは優劣がつかないとしても何かしらのインパクトはやはり必要だとジャックと布お化けに説き、ゴーレムの説明を受けたジャックと布お化けの2人は「成程」と納得する様子を見せる。

 

「つまりは今回はラブライブの大会じゃないとしても、むしろこういう機会だからこそ、何時ものように気合いを入れろと言う訳か。 いや、新しい試みをやるんだからいつも以上にってことかな」

 

今度は妙に悪役チックでやたらドスの効いた紅葉の声を発しながら、SO-DO CHRONICLEの仮面ライダーゴーダの食玩フィギュアが出て来ると彼はむしろこういうラブライブとは関係無い、優劣をつけないイベントだからこそ、ある意味では何時も以上に力を入れるべきなのではないかと考えるのだった。

 

「そう、最終予選も有利に働くってことね!」

「その通りよ!」

「それにA-RISEは前回の優勝者! 印象度では圧倒的に向こうが上よ! それなのに、こんな大事な話をしなきゃいけない時に・・・・・・! あなた達、一体何やってるのよ!?」」

 

骸骨男達が今後のハロウィンイベントについて話し合っていると、そこへ絵里が現れ、彼女は机の上に集結した怪物達+仮面ライダーを見つめると、絵里はワナワナと肩を震わせながら穂乃果達は何をフィギュア達に自分達の声を当てて遊んでいるんだと怒鳴りあげる。

 

「ちょ、ちょっと、ハロウィン気分を・・・・・・」

「いやぁ、なんか楽しくてつい」

「トリック・オア・トリート!」

 

穂乃果、紅葉、ことりの順で3人は誤魔化すようにそう言いながら苦笑いを浮かべると、絵里はそんな3人の反応を見て彼女は呆れたような表情を浮かべながらため息をつく。

 

「ハァ、向こうは前回の優勝者だから有利。 取材する側だって先ずはA-RISEに行くわ」

「じゃあ私達の方が不利ってこと?」

 

そんなことりの問いかけに、絵里は「そうなるわね」と応えながら頷き、それ故に何かしらのインパクトのあるパフォーマンスが今度のライブでは必要になってくるのだと彼女は語るのだった。

 

「だからこそ、印象的なパフォーマンスで最終予選の前にその差を縮めておきたい」

「つまり前哨戦って訳ね?」

「・・・・・・可愛い」

「ヴェ!?」

 

真姫の傍に寄りながら、ハロウィンイベントで行うライブについてのメリットについてより詳しい説明を絵里は穂乃果達にするのだが、その際絵里の視界に真姫が大事に抱えているゴーレムが入って来ると、彼女はそれを興味深げに見つめながら「可愛い」と呟くと、真姫は驚いたような声をあげながら絵里に取られまいとしてか彼女はギュッとゴーレムを大事そうに強く抱きしめるのだった。

 

「真姫ちゃん気に入ったん? そのゴーレム?」

 

そんな真姫の姿に、紅葉は珍しいレアな姿を見たと少しばかり特した気分になるのだった。

 

「でも、A-RISEより印象に残るって・・・・・・」

「どうすれば良いんだろう?」

 

しかし、一口に相手よりもなるべく印象に残ると言っても相手はスクールアイドル達の中でも絶対王者と呼ばれるほどのあのA-RISE。

 

彼女等よりも印象に残る、というのは中々に難しい話である。

 

「ハードルクソたっけぇな。 でもまぁ、それでもそっちの方が燃えるってもんだとは思うがな! そうだろにこ!?」

「紅葉の言う通りよ! 何回も言っているけど、兎に角大切なのは、インパクトよ!!」

 

 

 

 

 

 

という訳でそのさらに翌日。

 

紅葉、穂乃果、凛、にこの4人がやってきたのはハロウィンイベントの最終日で行われる自分達のライブの宣伝を行う為、この4人は秋葉原へとやって来ていた。

 

尚、この宣伝はテレビでも放送される為か、マイクを持った「アキバレポーター」と呼ばれる女性のレポーターも訪れており、彼女はハイテンションな様子で本日から始まったハロウィンイベントの開催を宣言。

 

「さあ!! という訳で!! イエイ!! 今日から始まりましたぁ!! アキバハロウィーンフェスタ!! テレビの前のみんな~!! はっちゃけてるかぁ~い!!?」

「あの人、私達よりインパクトあるんだけど・・・・・・」

「確かにはっちゃけてるにゃー」

 

そんなレポーターのハイテンションっぷりには流石の穂乃果ですら引き気味の様子を見せながら苦笑し、にこはいきなり目立つレポーターに対してぐぬぬ顔を見せ、初っぱなから出鼻を挫かれた紅葉は「いきなり全部色々と持ってかれた・・・・・・」と頭を抱えるのだった。

 

「1番印象が残りそうな3人をチョイスしたのに、あのレポーターのせいでただでさえ高かったハードルがまた上がってるじゃねーか・・・・・・」

 

因みに、ライブの宣言に穂乃果、にこ、凛の3バカ・・・・・・もといスマイル組を選んだのは紅葉だったりする。

 

なぜこの3人なのかと言うと、別に他のメンバーは印象が薄いとか花が無いとかではないのだが、μ'sの中でも限られた短い時間の中で何かと目立てそうななのはこの3人だろうかと思ったからである。

 

とは言っても紅葉は本当なら女性人気も高い絵里なども加えたかったのだが、希共々今日はどうしても外せない用事があったらしく、ことり等に関しては衣装の製作があるので出来れば彼女にそちらに専念して貰おうと考えた為、あの3人は呼ばなかった。

 

ならば真姫や海未、花陽はどうなのかと言うと・・・・・・真姫は素直な性格じゃないので、こう言ってはなんだが紅葉としては不安がある部分があり、海未と花陽は校内放送の時のことを考えると緊張のあまりまともに喋れなくなりかねないので連れて来なかったのだ。

 

では逆に、なぜ穂乃果、にこ、凛ならば行けると紅葉が思ったのかと言うと先ず穂乃果は言わずもがなμ'sのリーダーなのでいるのは当然。

 

凛もまだそれほど日が経ってないこともあり、前回のファッションショーでのライブが大好評だったことや動画サイトなでも後に配信されたあのライブを切っ掛けに彼女のファンが増えたこともあり、紅葉は彼女を選定。

 

にこに関しては「弄られキャラって愛されやすいし目立つよね」ということで紅葉は彼女を選んだ。

 

「私の選定理由だけあっさ!!? ってか誰が弄られキャラよ!?」

「褒め言葉のつもりなんだけどなぁ。 ってほら、そろそろレポーターこっち来そうだから3人とも心の準備して」

 

紅葉からの選定理由を聞いたにこは彼に対してグチグチと文句を言っていたが、そうこうしている内にレポーターがそろそろ自分達に話しかけようとしている雰囲気を紅葉は感じ取り、彼はマネージャー兼裏方担当なので今は穂乃果達の傍にいるべきではないと思い、彼はそっと彼女達の傍を離れる。

 

「ご覧の通りイベントは大盛り上がり!! 仮装を楽しんでる人も沢山! みんなもまだ間に合うよ!!」

 

レポーターは熊のようなパンダのような形をしたカボチャみたいなマスクをつけ、身体の装備は若干貧相なベルトをつけたガワコスの人やギターを持ったピンクのジャージの何かのアニメのキャラの衣装を着た女性や、胸に巨大なサングラスをつけた赤いロボットの仮装をした人々にカメラを向けながらイベントの様子を中継すると、今度はカメラを穂乃果達に向け、レポーターはライブにかけての意気込みを尋ねる。

 

「そしてなんとなんと!! イベントの最終日にはスクールアイドルがライブを披露してくれるんだ~!! アハハハハ!! やっほーはっちゃけてる!? ライブにかけての意気込みをどうぞ!!」

「えっ? あっ、う・・・・・・精一杯、頑張ります・・・・・・」

(あの穂乃果が気圧されてる・・・・・・だと!?)

 

やはり、アキバレポーターのハイテンションっぷりには何時も元気っ子な穂乃果ですら圧されてしまうようで、彼女は顔を引き攣らせ、紅葉は穂乃果を上回るレポーターの元気っぷりに驚愕するのだった。

 

「よーし!! そこの君にも聞いちゃうぞ!?」

「うっ、ライブ頑張るにゃん♪」

「わあ!? かわいいぃ~!!」

 

今度はレポーターは凛の方へとライブの意気込みを聞く為に凛へとマイクを向け、マイクを向けられた凛は少しばかりたじろいたものの、すぐさま両手を猫の手にしながらそう応えるとそれがレポーターにはウケたようで彼女は凛にすりすりと頬ずりする。

 

「私も!! にっこにっこ・・・・・・」

 

そんな凛に続くように、にこも「にっこにっこにー!」をやろうとするのだが・・・・・・。

 

「さあ!! という訳で音ノ木坂学院スクールアイドルでしたぁ~!!」

「ぶふぉ」

 

にこのターンはレポーターにぶつ切りにされてしまい、それを見た紅葉は失礼だとは思いつつも笑いを我慢することができず吹き出してしまうのだった。

 

「あのレポーター、にこの扱い方を心得てやがんな・・・・・・」

「なんでアンタは感心してんのよ!!」

 

なんてやり取りを紅葉とにこがやっている内に半ばぶつ切りに近い形でμ'sの宣伝ターンが完全に終わると、スタッフの1人が台車に乗ったテレビを運んでくると、テレビの画面が映り、A-RISEの3人、ツバサ、あんじゅ、英玲奈の姿が映し出される。

 

「そしてそして~! ぬぁ~んと!! A-RISEもライブに参戦だぁ~!!」

 

そんなレポーターの言葉に、この時点でこの場に来ていた来場者達はA-RISEの参戦を聞いて大歓喜の声をあげながら大いに盛り上がる様子を見せる。

 

『私達は常日頃、新しいものを取り入れて進化していきたいと考えています。 このハロウィーンイベントでも、自分達のイメージを良い意味で壊したいですね!』

 

モニター越しに、ツバサ達がそう言いながら観客達に向かって微笑むと、不意に画面がキラキラと一瞬眩い光を放ち、次の瞬間にはツバサとあんじゅは魔女、英玲奈は吸血鬼の仮装姿へと変化したA-RISEの3人が映し出され、ツバサは画面越しの投げキッスをするのだった。

 

『ハッピーハロウィーン♪』

 

すると次の瞬間、あらかじめ仕込んで用意してあったらしい紙吹雪が会場内で大いに舞い上がると会場の盛り上がりも最高潮に達し、完全にμ'sはA-RISEに全部インパクトを持ってかれるのであった。

 

「お、おお、おおおお! な、なんということでしょう!! さっすがA-RISE!! 素晴らしいインパクトォ~!! このハロウィーンイベント!! 目が離せないぞぉ~!!」

 

そして最後に、レポーターのその言葉によって今回の宣伝タイムは終了し、穂乃果、にこ、凛の3人は何も言葉が出ず、紅葉は「考えが甘かった」と又もや頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「もーう!! A-RISEに完全に持ってかれたじゃない!!」

 

その後、A-RISEに色々と全部持ってかれはしたもののライブの告知が一応終わった紅葉達は高坂家の穂乃果の部屋に訪れており、反省会を開いていた。

 

「にこちゃんが『にこにー』やろうとするから!!」

 

文句を垂れるにこに対し、あれはにこが「にこにー」をやろうとするから強制的に打ち切られてしまったのだと穂乃果は反論するがそれに対しにこは「やれてないし!!」とさらに反論。

 

「でもにこの扱いはアレで良いとは思うけどな・・・・・・」

「そうだにゃー」

 

紅葉は苦笑しながらにこの扱いだけならばあんな感じで別に良いのではなかろうかと呟き、それに同意するように頷く凛。

 

ただその瞬間紅葉はにこに睨まれてしまい、彼は自分の口を押さえて黙り込んだ。

 

「兎に角、これは問題よ! このハロウィーンイベントを物にしないと最終予選を勝ち抜くのは難しくなるわ!! あのお客さんの盛り上がり見たでしょ!?」

「確かに」

「今回は完全に俺達の敗北だったもんなぁ」

「その通りにゃ。 分かるにゃー」

 

にこの言葉に穂乃果や紅葉は頷き、凛も同意するような言葉を言うのだが・・・・・・。

 

「あれだけの実績を残しながら現状に満足せず努力している!」

「そうにゃそうにゃ!」

「やっぱり、優勝するだけあるよね!」

「その通りにゃ!」

「でも感心してたらそこで終わりよ!」

「ちょっと待って、凛ちゃんさっきからなんか返事適当じゃね?」

 

にこ、穂乃果、紅葉が真面目な話をしているというにも関わらず、ちゃんと話を聞いているのかとやたらさっきから適当な返事ばかりをする凛。

 

そのことに気になった紅葉、穂乃果、にこが凛の方へと顔を向けるとそこには穂乃果の部屋の棚に仕舞ってあった漫画を読みふけている凛の姿があり、よほど泣ける内容なのか、彼女は涙を浮かべながら「分かるにゃぁー!!」と最終的に感極まって叫んでいたのだった。

 

「って何読んでるのよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

それからまたまた翌日。

 

学校の昼休みの中庭にある木の下のベンチにて。

 

紅葉、穂乃果、海未、ことりの4人は昼食を取りながら自分達の「インパクト」について考え込み、。

 

「うーん、インパクト・・・・・・インパクト・・・・・・」

「いきなり路線変更を考えるのは無理がある気が・・・・・・」

 

だが、幾ら考えても中々良い案が浮かぶことはなく、むしろ下手に路線変更するのは困難を極めることなのではないかと海未は意見を出すのだが・・・・・・。

 

「でも、今の私達にはインパクトがないッ!! お兄ちゃぁ~ん! なんか良い案ないのぉ~!? こういう時はお兄ちゃんの出番でしょ!?」

 

しかし、だからと言って今の状態の自分達では何かしらのインパクトが無いというのが穂乃果の考えであり、彼女はこういう時頼りになりそうな紅葉に何か良い案は無いかと尋ねるのだが、紅葉はカレーパンを口に咥えながら両手を広げ、首を横に振るのだった。

 

「すまん、俺も今のところは何も・・・・・・。 みんな個性はあるし、キャラは立ってると思うんだけど・・・・・・キャラ立ってるのとインパクトは別、な気もするしなぁ・・・・・・」

 

紅葉自身も、今回ばかりはそう簡単に良い案も出てこないようでお手上げ状態であり、彼は申し訳無さそうな表情を浮かべるのであった。

 

「でも、インパクトって今までにないものというか、新しさってことだよね?」

「新しさかぁ・・・・・・」

 

そこでことりがみんなが語るインパクトについて自分が思ったことを口にすると、それをヒントにしたのか紅葉は何か閃いたかのような表情を浮かべた後、手をポンッと叩く。

 

「核で蒸発しない為に自分自身が核になる修行とか?」

「それどこの陰の実力者? 普通にやだよ! ってか出来たとしてもアレはインパクトありすぎ・・・・・・。 お兄ちゃん、ふざけたこと言ってないで真面目に考えて」

「・・・・・・ごめんなさい」

 

珍しく穂乃果に怒られた紅葉はシュンッと落ち込んだ様子で謝ると、そこで海未が「ならばこういうのはどうだろうか」と意見を述べて来たのだ。

 

「それなら、先ずこの空気を変えるところから始めるべきかもしれません」

「空気?」

「最近思っていたのですが、結成して時間が経ったことで安心感が芽生え、少しダラけた空気が生じている気がするのです」

 

ベンチから立ち上がりながら、今の自分達の現状について考えの考えを海未は紅葉達へと述べ、そしてそんなダラけたような空気を変えることが何かしらのインパクトに繋がるのではないかと語る海未。

 

「そうかなぁ?」

「最終予選も近いし、みんなピリッとしてると思うんだけど・・・・・・」

 

そのような海未の言葉に対し、ことりは最終予選も近いのにそんなに言うほどみんなダラけた空気になっているのだろうかと首を傾げ、疑問に思うのだが・・・・・・。

 

「そこの誰かさん達は生徒会の仕事もせずにどこにいましたっけ?」

 

そんなことりの疑問に、海未はつい先日、生徒会の仕事をほっぽりだしてフードコートに行っていた穂乃果と紅葉の視線を向けると、痛いところを突かれた紅葉と穂乃果の2人は何も言い返せず「うぅ」と声を小さく漏らしながら肩を縮こませるのだった。

 

「つまりはそういうことです!! やるからには思い切って変える必要があります!!」

「でも、具体的には?」

「・・・・・・そう、例えば・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で、放課後のグランドにて。

 

そこでは海未の語る「空気」を変える為、新たな衣装を着込んだμ'sの9人が集結し、衣装を身に纏った彼女達はそれぞれ名乗りをあげていく。

 

「あなたの想いをリターンエース! 高坂 穂乃果です!!」

「えっ? 何? 想いをリターンエースってことは誰かに告白されて相手玉砕したってこと? ってかテニスウェアの穂乃果可愛いな」

 

先ず、テニスウェアを着て、ラケットを振りながら名乗りをあげる穂乃果。

 

「誘惑リボンで狂わせるわ!! 西木野 真姫!!」

「誘惑リボンってなに?」

 

次に、新体操で使うような衣装を着込み、リボンをくるくると回す真姫。

 

「剥かないでー! 私はまだまだ青い果実! 小泉 花陽です!」

「その衣装どっから持って来たんだよ!? ってか青い果実ってネクサスさんかな・・・・・・?」

 

そこから今度は巨大なミカンの着ぐるみを着た花陽。

 

「スピリチュアル東洋の魔女! 東條 希!」

「あれ? 今のところ意外にも1番ツッコミところ少ない・・・・・・?」

 

さらに続いて今度はバレーボールのユニフォームを着ながらバレーボールを構える希。

 

「恋愛未満の化学式、園田 海です!!」

「・・・・・・はっ? いやごめんちょっと意味分かんなかった。 なんなの、恋愛未満の化学式って・・・・・・」

 

次はメガネをかけて白衣を纏った海未。

 

「私のシュートでハートのマーク付けちゃうぞ♡ 南 ことり!!」

「ことりの脳トロボイスで脳がトロけそう・・・・・・」

 

今度はラグロスの衣装姿のことり。

 

「キュートスプラーッシュ!! 星空 凛!!」

「うん、まぁ、凛ちゃんも比較的まだまともな方、か・・・・・・?」

 

さらにさらに続いて今度は競泳水着を着用した凛。

 

「必殺のピンクポンポン!! 絢瀬 絵里よ!!」

「必殺のピンクポンポンってなんだよ!? また絵里のポンコツっぷりが浮き彫りに・・・・・・」

 

そこからまた続いて両手にポンポンを装備したチアダンス姿の絵里。

 

「そして私! 不動のセンター、矢澤にこニコ!!」

「誰!!? ってあぁ、にこか・・・・・・。 顔隠してるから分かんなかった。 安定のオチ要因、お疲れさんです・・・・・・」

 

そして最後に剣道部の衣装を着たにこ。

 

『私たち!! 部活系アイドル!! μ'sです!!』

「って私顔見えないじゃない!!」

「今気付いたのか? ってかツッコミ所多すぎて俺1人じゃ処理追いつかねーよ!! ちょっと誰かビュティさん呼んできて!!」

 

1人でμ'sの名乗り時に全員分ツッコミを入れていたからか、紅葉は「ぜえぜえ」と息を切らしており、そんな紅葉に穂乃果は「まぁまぁ」と言いながら彼の背中を摩ってあげるのだった。

 

「でも何時もと違って新鮮やと思わへん紅葉くん?」

「うんうん!! 希ちゃんの言う通りだとお兄ちゃんも思わない?」

「『スクール』アイドルってことを考えると、色んな部活の服を着るというコンセプトは悪くないわね?」

 

希や穂乃果、絵里の言いたいことは分かるし、絵里の言う言葉も紅葉は一理あるとは思うのだが・・・・・・。

 

「でも、これだとなんか・・・・・・」

「ふざけてるみたいじゃない!!」

 

しかし、数名明らかにふざけているようにしか見えない格好の者もおり、特に最もふざけた格好をしていることもあってか、にこと花陽も流石にこれはどうなのだろうかと意を唱えたのだ。

 

「そんなことないよ! ほらもう1度みんなで!!」

 

それに対して穂乃果はふざけてなんかいないと否定し、もう1度みんなでやってみようと言うのだが、そこで「・・・・・・1つ良いですか?」と何か気になった様子の海未が穂乃果に問いかけると、彼女は自分のこの格好は一体なんの部活の格好なのだろうかと尋ねる。

 

「私のこの格好は一体、なんの部活なのでしょうか?」

「科学部だよ!!」

「・・・・・・では花陽のこれは?」

 

次に海未が花陽の方に視線を向けながら花陽のこのミカンの格好はなんの部活なんだろうかと穂乃果に尋ねると、穂乃果自身もなんの部活の格好なのかよく分かっていないのか、「多分演劇部?」と疑問系で応えるのだった。

 

「っていうか、そもそもこれでステージに上がるなんて、有り得ないでしょ!」

「・・・・・・確かに」

「えっ、絵里も今気付いたの?」

 

真姫のそんな指摘に、絵里は確かにと頷き、今更このことに気付く絵里に紅葉はμ's加入前の彼女に少しだけ戻ってきて欲しいと思わずにはいられなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体これのどこが新しさに繋がるのよ!!」

「すみません、提案した私が愚かでした・・・・・・」

 

机をバンッと叩きながら、怒鳴るような声をあげるにこに自分の考えは失敗であったことを謝る海未。

 

「でも、ちょっと楽しかったね!」

 

ただ希としては割と面白かったようで満足げな様子だったが、問題はまだ何も解決していない為、にこは「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」と他に何か良い案はないのかと頭を悩ませる。

 

「A-RISEはこうしている間にも日々進化を遂げているのよ!!」

「そうだよねぇ・・・・・・。 うーん、新しさ、新しさ・・・・・・!」

 

両腕を組みながら、確かににこの言う通りだと思い、自分達の目新しさについて必死に考え込む穂乃果。

 

「やっぱり、見た目じゃないかな? 1番分かりやすいのは!!」

 

そこでことりが誰もが一目見て何か印象に残りやすい格好などをしてみるのはどうだろうかと提案し、それを聞いた絵里は衣装を奇抜なものに変えてみるということだろうかと考えるのだが・・・・・・。

 

「確かに、それが1番手っ取り早いとは思いますが・・・・・・それは既に先ほど・・・・・・」

 

しかし、ことりの案は既に先ほどやった「様々な部活の格好をする」というものと被り気味であった為、海未としてはあまり良い案のようにも思えず、一同が頭を悩ます中・・・・・・不意に希がタロットカードを取り出してきたのだ。

 

「ほな、ウチがカードの知らせを伝えるしかないようやな」

 

そう言いながら希は穂乃果達が見守る中、タロットカードの1番上のカードを引き、それをみんなに見せると、そのカードには「CHANGE」と書かれた文字が刻まれており・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、学校の屋上にて。

 

「おっはよーございまーす!! あ、いや。 ごきげんよう」

 

扉を開けながら何時もの如く元気よく学校の屋上へとやってきたなぜか海未の練習着を着た穂乃果だったが、すぐに彼女はハッとなると穂乃果は丁寧な言葉遣いへと口調を切り替える。

 

どうやら穂乃果は海未の真似をしているらしい。

 

「海未! ハラショー!」

「絵里! 早いですね」

「「そして凛も!!」」

 

すると今度は絵里の練習着を着て髪型も絵里と同じポニーテールにしたことりが穂乃果と互いに挨拶を交わすと、2人は揃って凛の練習着を着用して髪を右に小さく纏めた海未の方へと顔を向ける。

 

「っ! うっ、うぅ・・・・・・!!」

 

しかし、今、海未が着ている練習着は前回のライブを切っ掛けに、トラウマを払拭した凛がこれまで練習着はズボンだったものからスカートにシフトチェンジしたものに変わっている為、ミニスカ染みていることもあってか海未は必死にスカートを両手で抑えおり、彼女は顔を恥ずかしそうに赤らめていたのだった。

 

「うっ、うぅ・・・・・・無理です!!」

「ダメですよ、凛!! ちゃんと凛に成りきってください!! あなたが言い出したのでしょう? 空気を変えてみた方が良いと!!」

 

穂乃果に言い出しっぺがやらないでどうすると注意され、反論の余地も無かった海未は少しばかり悩んだものの、ようやく意を決したようで遂に観念した彼女は両腕を大きく広げながら、ヤケクソ気味に「にゃー!!」と叫びだしたのだ。

 

「ううう・・・・・・!! にゃあああ!!! さあ、今日も練習、いっくにゃー!!!!」

「もう海未は本当にヤケクソだな。 可愛らしくはあると思うが。 あと、ことりはちょっと違和感あるけど、穂乃果は流石幼馴染みだけあって、海未の真似結構似てるよなぁ。 こっちは逆に違和感がねえ」

 

そんな穂乃果達の様子を苦笑しつつ見守りながら、穂乃果、ことり、海未の3人の物真似の感想をそれぞれ言っていく紅葉。

 

「何それ、意味分かんない!」

 

すると今度は髪をクルクルと弄りながら真姫の練習着を着て彼女の物真似をする凛が姿を現わす。

 

「真姫! そんな話し方はいけません!!」

「面倒な人」

 

口調の注意を穂乃果から受ける凛であったが、凛は変わらずツンッとした態度を取り続け、するとそこへそんな凛の自分の物真似に不満があったのか、屋上の扉の内側に待機していた希の練習着を着た真姫が文句を言いたそうにしながら扉を開け、屋上の外へとやってきたのだ。

 

「ちょっと凛!! それ私の真似でしょ!? やめて!!」

「お断りします!!」

「うぇ!?」

 

自分の物真似に不満のあった真姫は凛にやめるように言うものの、凛はそれをあっさりと一蹴してしまい、それに思わず怯んでしまう真姫。

 

「うっ、くふふ・・・・・・凛ちゃんは真姫ちゃんの物真似上手すぎだろ・・・・・・! ブフォ!!」

 

穂乃果と違い、凛は真姫とは幼馴染みではないにも関わらずやたら完成度の高い真姫の物真似をする上にあっさりと真姫の物真似で真姫を返り討ちにしたこともあってか、その一部始終を見ていた紅葉は笑いを堪えることが出来ず思わず吹き出してしまい、余程ツボったのか膝をついてお腹を抱えながら床を手でバンバン叩いていた。

 

「いや笑いすぎでしょ!? こんなんでウケないでよ!! ってなんか前にもあったわねこんなこと!?」

「それよりも! おはようございます、希?」

 

そこで穂乃果が真姫に話を振ると、希の役割を与えられた真姫は顔を引き攣らせて黙り込んでしまった。

 

しかし、自分だけ逃げるのは許さないとばかりに海未がすすすっと真姫に近寄ると、彼女を逃がさないように海未は両肩を掴んで離さないようにする。

 

「あー! 喋らないのはズルいにゃー!」

「そうよ? みんなで決めたでしょ?」

「べ、別にそんなこと・・・・・・!! 言った、覚え・・・・・・ないやん?」

 

ことりにも言われ、観念した真姫は気恥ずかしそうにしつつも希の口調で喋ると穂乃果と紅葉から「おぉー!!」と感心の声があがり、ちゃんと希の真似が出来たことを2人は称えるのだった。

 

「希! 凄いです!!」

「海未に続いてよく頑張った!」

 

そんな時、屋上の扉が開くと真姫に続いて入って来たのはにこの練習着を着て髪もツインテールにした花陽。

 

「にっこにっこにー!! あなたのハートににこにこにー!! 笑顔届ける矢澤にこにこー!! 青空も~、にこ!!」

 

流石にこを慕っているだけあって花陽のにこの物真似は中々の完成度を誇っており、ことりはそんな花陽に「ハラショー!」と言いながらサムズアップを見せる。

 

「にこは思ったよりもにこっぽいわね!」

「にこ!!」

 

そのようにこの決めポーズを決める花陽であったが、いつの間にか花陽の背後に立っていたことりの練習着を着て髪型も彼女と同じにしたにこ本人は納得していないのか、花陽の左肩を強めに掴むと彼女はなるべくことりっぽい口調を意地したまま自分が抱いた不満を口にする。

 

「にこちゃ~ん? にこはそんなんじゃないよぉ~?」

「いや、誰がどう見ても言い逃れできないレベルでそっくりだろ。 っていうか・・・・・・」

 

そこで何か疑問に感じることがあったのか、紅葉は花陽とにこの2人に交互に視線を向けると、「ふむ」と小さく呟いた後、顎に手を乗せて少しばかり考え込む様子を見せる。

 

(にこの練習着、よく花陽ちゃん着れたよな・・・・・・)

 

紅葉がなんでそんなことを思ったのかは、敢えて言わずにおこう。

 

「紅葉くんは私と花陽ちゃんを見比べて何考えてたのかなぁ~?」

 

最も、にこには半ば考えていることがバレていたようで、彼女は紅葉に対してアイアンクローを繰り出していた。

 

「痛い痛い痛い! ことりはそんなことしないぞ!!」

 

ちなみに、ことりはというと自分の真似をするにこを見て顔を引き攣らせていた。

 

「いやぁ! 今日もパンが美味い!!」

 

そこに今度現れたのは穂乃果の練習着を着た希であり、ご丁寧にランチパックを持参しながらそれを食べながら現れたのだ。

 

「穂乃果! また遅刻よ?」

「ごめぇ~ん」

 

ことりに注意され、呑気な声で謝罪をする希。

 

一方で自分の真似をする希を見て穂乃果は「自分はあんな感じなのか?」と先ほどのことりと同じように彼女は顔を引き攣らせるのだった。

 

「私って、こんな・・・・・・?」

「えぇ!」

「大体あんなんだな。 それと、穂乃果の練習着もよく・・・・・・いや、何も言うまい」

 

花陽の時と同様、希と穂乃果を交互に見て何かを思い、何かを言いかけた紅葉であったが、これは言わないでおこうと黙ることにするのであった。

 

「私の練習着が何なのお兄ちゃん!? 少なくとも私はにこちゃんよりあるからね!? 私多分平均くらいはあるからね!?」

「アンタ喧嘩売ってる?」

「おいやめ、腕を揺らすな!? 分かったって分かったから! あと、海未の真似忘れてるぞ!」

 

自分の腕をグイグイ揺らす穂乃果を宥めつつ、「分かった分かった」と彼女の頭を撫でて何時もの通りそれで落ち着かせる紅葉。

 

そしてそこへ、最後に花陽の練習着を着た絵里が慌てた様子で屋上へとやってきたのだ。

 

「大変です!!」

「どうしたのです?」

 

そんな慌てた様子の絵里に、穂乃果が再び海未モードに切り替えながらどうかしたのかと尋ねると、絵里は「すぅーはぁー」と深呼吸し、息を整える。

 

「み、みんなが・・・・・・!!」

『・・・・・・んっ?』

「みんながぁ・・・・・・!!!! 変よ」

 

そして、花陽っぽい口調から急に素に戻った絵里が、そのことを指摘すると、ことりは苦笑しながら「そうね」と同意し、他のメンバーも「確かに」と納得するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一同が部室へと戻ると、再びインパクトについて話し合いが設けられることになったのだが・・・・・・結局あれから良い案もでず、穂乃果は両腕を組みながら「うーんうーん」と唸っていた。

 

「このままじゃどんどん時間が無くなっちゃう!」

「結局、何も変えられないままですね」

 

一同は再び思い悩んでいると、不意に絵里が「ねえ?」と口を開き、何か思いついたことがあるのか、今度は彼女があることを提案したのだ。

 

「ちょっと思ったんだけど、いっそのこと、一度『アイドルらしい』ってイメージから離れてみるのはどうかしら?」

「アイドルらしくなくって・・・・・・こと?」

「例えばカッコイイ感じとか・・・・・・」

 

しかし、一口に「カッコイイ感じ」と言っても具体的にどういったものが良いのか分からず、ことりがどんな感じなのだろうかと疑問を抱いていると、彼女の隣に座る真姫は「例えばロックとか?」と咄嗟に思いついたことを口にする。

 

「あぁ、ちょっと前に流行ってたもんな。 肝心な時にしか役に立たないとかよく言われてるどこぞの橘さんみたいなギタリストの女の子が主人公の漫画」

 

そのように、「流行に乗っかるのも一興かもな」と呟きながらロック路線になることについては特に文句などもなく、良いのではないかと好意的に受け入れる紅葉。

 

「でもロックにするんやったら、もっと荒々しい感じとかにした方がええんちゃう?」

 

だがそれだけではまだ何か足りないのではないかと思った希はどうせロック路線になるならもっと刺激的にした方が良いのではないかと意見を述べ、それににこも同意するように静かに頷く。

 

「新しいというのは、そういう根本的なイメージを変えること! だとすると・・・・・・」

 

そして、今までに出された意見を纏めた結果、穂乃果達が出した答えは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「いや、確かにロック路線は良いかもしれないとは俺は言ったよ? 言ったけどさぁ・・・・・・。 なんか俺が思ってたのと全然違う!!」

 

学校の校門付近の茂みの中にて・・・・・・。

 

今、紅葉の目の前には白と黒のメイクで顔を塗りたくったデスメタル風の格好となったμ'sの9人が立っており、紅葉としてはもっとこう・・・・・・パンクロックとでも言えば良いのだろうか?

 

ああいった感じのものを予想していた為、見事に予想斜め上を行ったμ'sに対し、紅葉は呆れたように溜め息を吐く。

 

「そうよ、本当にやるの?」

「ここまで来て何怖じ気づいてんのよ、アンタ等!」

「兎に角一度、反応を見てみないと・・・・・・!」

 

真姫も紅葉同様、不安が残るのか、どこかノリ気ではない様子を見せるのだが、物は試しだとして取りあえず1回下校中の生徒の前に現れてみんなの反応を見てみようと絵里は言い、それに穂乃果もコクリと頷く。

 

「よし、行こう!!」

「あっ! ちょっ、絶対辞めた方が・・・・・・!」

 

しかし、紅葉の制止も聞かず、穂乃果達は丁度下校途中だったヒデコ、フミコ、ミカのヒフミトリオ3人の元へと向かい、彼女等の目の前へと現れる。

 

「ヒャア!! 皆さん!! お久しぶり!! 我々はスクールアイドルμ'sである!! 今日はイメージを覆すアナーキーでパンクな・・・・・・」

『新たなμ'sを見ていくが良い!!』

「「「・・・・・・きゃああああああ!!!!?」」」

 

そんな光景を、茂みの方から様子を伺っていた紅葉は「こっわ・・・・・・」と今のμ'sの姿にドン引きし、ヒフミトリオもデスメタ風μ'sに対して恐怖心を覚えたのか、彼女等は阿鼻叫喚の叫び声をあげながらその場を逃げるように走り去って行くのだった。

 

「おぉ! これはインパクト大みたいだね!!」

「いけそうな気がするにゃー!!」

「いける訳ねえだろ!!」

 

だが、ヒフミトリオの叫びを黄色い歓声とでも勘違いしたのか、穂乃果と凛はこれならばインパクトもあると自信満々に言うのだが、即座に紅葉からそんな訳がないと当然ながら言われてしまう。

 

『アイドル研究部、μ'sの皆さん。 今すぐ理事長室に来てください。 繰り返します』

 

さらに次の瞬間、校内放送で人様を怖がらせた報いとでも言うように、穂乃果達は理事長室への呼び出しを喰らってしまうのであった。

 

「ほら言わんこっちゃない。 だから俺は辞めようって言ったのに・・・・・・」

 

紅葉は学校の方を指差しながら、穂乃果達に呆れた視線を向けるのだが、彼女等は気まずいそうな表情を浮かべながら全員紅葉から顔を逸らすのだった。

 

「あっ、おいコラ! お前等俺から目逸らすな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で、理事長室へと呼び出された穂乃果達。

 

無論、理事長は現状の穂乃果達の格好を見てなんとも言えぬ表情を浮かべており、一体どういうことなのだと理事長は穂乃果達に今は説明を求めているところだった。

 

「・・・・・・説明して貰えるかしら?」

「えーっと、なんでだっけ?」

「覚えてないんですか!?」

 

尋ねられて穂乃果がその質問に対して応えようとしたのだが、すっかり目的を忘れてしまい、そんな穂乃果に忘れてどうするんだと思わず苦言を零す海未。

 

「まぁ、話が進むごとになんかカオスになっていったからな。 忘れるのも無理はない気もするが」

 

とは言え、紅葉の言うようにだんだん場が混沌としていったのも事実なので、そんな状況が続けば当初の目的を忘れてしまうのも無理がないような気がしないでもない。

 

最も、目的を完全に忘れていたのは穂乃果のみではあったが。

 

「っ、理事長!! 違うんです!! ふざけてた訳ではないんです!!」

「そうなの! ラブライブに出る為にはどうしたら良いかってことをみんなと話し合って・・・・・・!」

「今までの枠に囚われていては新しい何かは生み出せないと思ったのです!!」

 

そこで絵里とことりが理事長に事情を説明し、海未も2人に続くようにまた新しい道を切り開く為に、試行錯誤の上にやったことだと弁明する。

 

「そうなんです!! 私達、本気だったんです! 怒られるなんて心外です!」

「そうですそうです!!」

「と、兎に角! 怒られるなんて納得できません!!」

 

さらにそこで穂乃果と凛が自分達は本気で今までの自分達を変えようと努力した結果なのに、それで怒られるなんて納得できないとまさかの逆ギレ展開を披露し、それには流石の紅葉も「はいっ!?」と思わず驚きの声をあげてしまった。

 

「いやもう、それ逆ギレってやつじゃ・・・・・・。 つうか、その格好で誰が何言ってもなんの説得力もねえぞ・・・・・・」

「・・・・・・ハァ。 分かったわ。 それじゃ最終予選はそれで出るってことね?」

 

そしてそんな逆ギレしてくる穂乃果達に対し、理事長は笑顔を見せながら、ならばその格好でラブライブに出るということかと穂乃果達に問いかけると、穂乃果は「え゛ッ!?」と間の抜けた声を出してしまう。

 

「それならば、今後その格好で活動することを許可するわ?」

「えーっと・・・・・・」

 

理事長は相も変わらず笑顔であるが、何分圧が強く・・・・・・思わずたじろく穂乃果達。

 

『すいませんでしたあああああ!!!!』

 

結局、非は穂乃果達に全面的にある、ということで紅葉含めて彼女達は理事長に頭を下げて謝罪し、深く反省する羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなるの!?」

 

その後、とあるフードコートへとやってきた穂乃果達一同。

 

ここまで色々と自分達の「インパクト」について考えてやってきてみたが、全く上手く行かないどころか最終的には理事長に怒られる始末。

 

そのことについて、にこはなんでこんなことになってしまったのだと半ば悲痛な声で叫ぶのだった。

 

「そうです! もっと真面目にインパクトを与える為にはどうしたら良いか話していた筈です!!」

「最初は海未ちゃんだよ!? 色んな部活の格好をしてみようって・・・・・・」

「それは・・・・・・ですがその後は穂乃果達でしょう!?」

 

そのように、今度は海未と穂乃果が口論になりかけるのだが、そんな2人に「まぁまぁ」と2人の間に割って入って宥めようとする紅葉。

 

「2人とも落ち着けよ。 ここで責任の擦り付けあいしてる場合じゃないだろ?」

「そうよ、それより今は衣装をどうするか考えた方が良いんじゃ無い?」

 

さらに紅葉に同意するように真姫は頷きつつ、もう時間も無いのだから兎に角先ずは衣装の制作を急いだ方が良いのではないかと述べ、それには穂乃果も「そうだね・・・・・・」と呟く。

 

「・・・・・・」

「んっ? ことりちゃん?」

 

そんな時、穂乃果はことりの様子が何かおかしいことに気づき、どうしたのだろうかと彼女の名を呼ぶと、ことりは顔をあげ、自分の考えをみんなに向けて発したのだ。

 

「一応、考えてみたんだけど・・・・・・やっぱり、みんなが着て似合う衣装にしたいなって思うんだ。 だから、あまりインパクトは・・・・・・」

 

ここまで色々と試行錯誤してみたが、どうやらことりとしては衣装を奇抜なものにしたりするのではなく、今までのようにみんなに似合うであろう衣装を作りたいそうで、その為彼女はインパクトに拘った衣装を作ったりするのはどうにも気分が乗ることができないと意見したのだ。

 

「でも、それじゃA-RISEには・・・・・・!!」

 

しかし、日々進化しているA-RISEに対抗するにはこちらも何か強く印象に残る物が欲しいと思わずにはいられないにこ。

 

そのため、にこはここで妥協することに納得いかず、まだ何かあるのではないかと模索しようとするのだが・・・・・・その後、誰からも良い意見は出ることはなく、本日はお開きにしようということになってしまったのだった。

 

「・・・・・・なんかさ」

 

ただ、最後の最後に、ふっと紅葉が口を開くと今日のことを振り返ってインパクトを残す為に良い案が浮かんだという訳ではないが、1つだけ気付いたことがあると言い出したのだ。

 

「1つ思ったんだが・・・・・・、お前等。 A-RISEに勝つことに拘りすぎてるんじゃないか?」

「それは・・・・・・! そりゃ、ラブライブに優勝するためには・・・・・・」

「『アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせるのが仕事』だって、昔そう言ったのはアンタだろ? にこ?」

 

紅葉の指摘に対し、ラブライブに優勝するならばA-RISEに勝つことは絶対条件も同然だとにこは反論したのだが・・・・・・それに紅葉はかつてにこが言っていた言葉を彼女自身に投げかけ、そのことに言い淀むにこ。

 

「勝つことも確かに大切だとは思う。 だけど、勝つことに拘って、インパクトを追求した結果のライブをしたとして、それで穂乃果達は心から納得できるライブができるのか?」

 

紅葉としては、今日ここまでインパクトについて考えて見たが、結局良い案も出なかったことからもしかしたらμ'sは自分達らしいライブをするのが1番なのではないかと彼は思い始めていた。

 

ラブライブ優勝を目指すなら、勝つことも大切なのも分かっている。

 

しかし、あまりにも勝つことに拘りすぎた結果、最終的にμ'sは自分達らしいライブをすることが出来なくなってしまうのではないだろうかという不安を紅葉は抱かずにはいられなかったのだ。

 

「見てくれる人達も、ライブをする自分達も、全力で楽しんでこそスクールアイドルじゃないのかと、俺は思うんだが・・・・・・」

『・・・・・・』

 

そんな紅葉の言葉に、穂乃果達は黙り込んでしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

それから、穂乃果達は支払いを済ませた後、フードコートを出ることに。

 

「・・・・・・どうしたら良いんだろう」

 

紅葉の言っていたことも理解できるし、一理あるとは思うが・・・・・・。

 

しかし、だからと言って何時通りの自分達らしいライブをしたとしてA-RISEを超えることなんて出来るのだろうかと不安を口にする花陽。

 

「それはまた明日考えましょ? 兎に角、衣装作りだけでも始めて行かなくちゃね」

 

そんな花陽に、絵里は今日はそのことについて考えても仕方がないだろうということで、この話題は明日に持ち越すことにして時間もないので衣装作りを優先しようと花陽に声をかけ、その言葉に花陽も賛同するように小さく首を縦に振る。

 

「あれ? 穂乃果ちゃんは?」

 

そこで凛が先ほどから穂乃果の姿が見えなくなっていることに気付き、彼女の姿を探して辺りを見回してみると少し、絵里達から離れた場所でハロウィンの飾り付けがされた木々を見つめる穂乃果の姿があった。

 

「穂乃果? 置いて行きますよ?」

「ハロウィン飾り付けをジッと見つめて、どうかしたのか?」

 

そんな穂乃果に声をかけながら歩み寄る海未と紅葉。

 

2人に声をかけられたことで、穂乃果はハッとした表情を浮かべ、苦笑しつつ2人に「あっ、ごめぇ~ん」と謝罪。

 

「・・・・・・ねえ、ハロウィンって、昼と夜とじゃ印象が全然違うんだねぇ!」

「日が暮れると、飾り付けられたカボチャや星が光るように出来てるみたいだからな」

「綺麗だなぁ~」

 

ハロウィンの飾り付けを眺めながら、見惚れるような表情でそれが綺麗だと述べる穂乃果。

 

「さあ、行くわよ? 遅くなるわ」

 

だが、既に日も暮れて暗くなり始めていることからもう少しハロウィンの飾り付けを見ていたい気分ではあったものの、これ以上はライブの準備もあるのに遅くなってしまうと穂乃果に声をかける絵里。

 

それに穂乃果は頷き、一同は残された時間で今日は進められるところまでライブに向けての準備をすることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、衣装係であることりと比較的手先の器用な花陽やにこ、紅葉は衣装作りの方に回され、ことりの家の彼女の部屋で製作することに。

 

正直、紅葉としては女性の服を作るということは穂乃果達のスリーサイズなんかも把握しないといけなくなるので、男性の自分が作るのを手伝っても良いものなのだろうかと若干の抵抗はあったものの、ことりが言うには基本的にはミシンなどで糸を縫ったりするだけであまりスリーサイズなどは関係ない部分を担当して貰うのだとか。

 

何よりも、ことりとしては今は猫の手も借りたい時なのでどちらにせよ手先が器用な人が1人でもいてくれると助かるのだという。

 

という訳で、ことり、にこ、花陽、紅葉の4人は衣装作りに専念することとなり、他のメンバーはそれ以外の準備をすることに。

 

しかし、比較的に手先が器用ばメンバーと言ってもミスしてしまうのは誰にもあることで・・・・・・。

 

「あっ! うぅ、ごめんなさい・・・・・・間違えちゃった・・・・・・」

 

ミシンを使っていた花陽は少しばかり衣装の縫う場所をミスしてしまい、彼女は慌ててことり達に謝り、自分のせいでまた準備が遅れてしまうと花陽は落ち込んでしまう。

 

「慌てなくて良いからな、花陽ちゃん? 急ぐ気持ちも分かるが、急ぎすぎて肩に力入れすぎると余計にミスしちまうぞ?」

「う、うん、ありがとう、紅葉くん・・・・・・」

 

そんな落ち込んだ様子を見せる花陽に、すかさずフォローを入れる紅葉。

 

「・・・・・・おかしいと思うんだけど?」

 

その時、どこか不満げな表情で唐突ににこが口を開くと、ことりはそれに「んっ?」と首を傾げる。

 

「なんで私達が衣装作りやってんの!!?」

「みんなは、ライブの他の準備があるから・・・・・・」

「ここにいる奴等は全員手先が器用な方だからな。 衣装作りの方に回されるのも当然だろう」

 

一応、自分達が衣装係に回された理由を花陽や紅葉がにこへ説明するのだが、どうやらにことしては衣装作りに自分が回されたことに何か不満があるのか、にこは不機嫌そうな態度を見せ、花陽や紅葉に対して「よく言うわ」とどことなく当たりの強い口調で呟く。

 

「下らないことで、時間使っちゃっただけじゃない!!」

 

さらに言えば、にこが不機嫌な理由は衣装係に回されただけではなく、今日一日インパクトを求めた結果、結局何も良い打開策が浮かばず、時間を無駄にしてしまったからか、その為に彼女は先ほどからイラついているのだろう。

 

「私は、無駄じゃなかったんじゃないかな?」

 

しかし、ことりは今日過ごした時間は決して無駄なんかではなかったのではないかとにことは真逆の言葉を述べ、にこは「どこが?」とそんなことりの言葉に疑問を浮かばずにはいられなかった。

 

「私は、楽しかったよ? おかげで衣装のデザインのヒントも貰えた」

 

そんなことりの言葉に、紅葉も気持ちは彼女と同じなのかコクリと頷く。

 

「衣装係って言われて、損な役回りに慣れちゃってるんじゃない?」

 

だが、それでも納得できないのか、ことりの言葉に対し、少々嫌味な言い方をしてしまうにこ。

 

「おい、ちょっと今の言い方はどうかと思うぞ、流石に。 あと、衣装係って結構重要な役回りだと思うんだが俺は・・・・・・」

 

そんなにこの棘のある口調に、彼女の今日一日時間を無駄にしてしまったという気持ち自体は分かるものの流石にことりに当たり散らすような言い方はどうなのだろうかと苦言を零す紅葉。

 

しかし、ことりはにこの言い方に対して特に気にした様子は見せず、彼女は紅葉に「大丈夫だよ?」と声をかけると彼はことりの表情を見てここは彼女とにこの2人だけで話し合わせるべきかと判断し、紅葉は口を閉ざすことに。

 

「私は私の役目がある。 今までだってそうだよ? 私はみんなが決めたこと、やりたいことにずっとついて行きたい。 道に迷いそうになることもあるけれど、それが無駄になるとは私は思わない」

 

先ほどのにこの言葉に応えるように、ことりはそうにこに言葉を返すと、にこは何か思うところがあるようで反論するようなことはせず、ことりはそっと自分が今取り掛かっている衣装をにこに見せる。

 

「この衣装はにこちゃんのだよ?」

「っ・・・・・・」

「みんなが集まって、それぞれの役割を精一杯やり切れば、素敵な未来が待ってるんじゃないかな?」

 

最後に、ことりがにこにそう言い放つと、彼女は再び衣装製作に取り掛かり始めるのだった。

 

 

 

 

 

それから、数日が経過し、ライブ当日の2日前にて。

 

今日一通りのライブの練習を終え、帰宅することになった穂乃果達だったのだが、突然紅葉の「折角イベントやってるんだから俺達もハロウィンで仮装しようぜ!!」という一言により、今も開催されているアキバハロウィーンフェスタに紅葉の言われるがままなぜか仮装して突然参加することになったμ's一同。

 

無論、ライブ本番の日が迫ってるにも関わらず、そんなことをしている暇があるのかと思われるかもしれない。

 

実際、μ'sメンバーも穂乃果や希、凛などは比較的に紅葉の提案にノリ気ではあったのだが、海未や絵里に真姫、にこからは「そんなことしてる暇あるのか?」と当然ながら否定的な意見も出てきた。

 

しかし、何も紅葉としても単に遊び呆ける為だけに仮装して参加する訳ではなく、ちゃんと紅葉なりに、μ'sの活動にもプラスになるようにと考えてのことだった。

 

というのも、やはりというべきか、インパクト云々の話があれから進展することもなく、時間がなかったこともあって結局何も良い案が浮かばなかった為、その代替案として紅葉はμ'sもライブのみならず仮装してイベントに参加することで他に参加している人々などに身近な存在として感じて貰おうと考え、仮装してのイベント参加を提案したのだ。

 

それに、既に今日のライブの練習は終了しているし、衣装も完成自体はしている。

 

なので今ならば多少の余裕もあるということで紅葉の提案を聞いた海未達も若干の戸惑いはあるものの承諾し、今日は紅葉とμ's全員が仮装してイベントに参加することになったのだ。

 

「まぁ、俺自身仮装して楽しんでみたかったというのもあるにはあるんだけどな」

「お兄ちゃんよく似合ってるね!! カッコいいよ!!」

 

尚、スクールアイドルがライブまでやること自体は知らなかったが、元よりこのイベントが開催されることを知っていた紅葉は前々から自分で用意していた穂乃果と一緒に観ていた海外ドラマ、ARROWファイナル・シーズンバージョンのグリーンアローの衣装を着ており、彼の隣に立つ穂乃果は同作のドラマで主人公の妹が扮する女性ヒーロー、「スピーディ」のコスチュームを身に纏っていた。

 

「穂乃果もスピーディ似合ってるな」

「うんうん!! 私は2人の衣装の元になった作品は知らないけど、紅葉くんのはカッコイイと思うし、穂乃果ちゃんかっこ可愛い~!」

 

そこへ赤いマフラーを身につけ、赤いメガネをかけた忍者風のコスチュームに身を包んだことりがうっとりとした表情でスマホを構えながらパシャパシャと穂乃果を撮影しまくり、写真を撮られる穂乃果は少しばかり照れくさそうにしつつもポーズをビシッと決めたりなどして見せるのだった。

 

「あっ、紅葉くんスマホの画面に入っちゃうからもうちょっと穂乃果ちゃんから離れて」

「いや、穂乃果撮るなら俺も撮れよ! 一応穂乃果と併せてやってんだからな!?」

 

ちなみに、紅葉や穂乃果の着ている衣装は紅葉自身が用意したものであるが、今ことりが着ている衣装や他のμ'sメンバーが着ている衣装は全てイベントで貸し出しが許可されている衣装だったりする。

 

「それよりも、ことりちゃんの着ている衣装は・・・・・・くノ一?」

 

穂乃果が首を傾げながらことりの着ている衣装について問いかけると、ことりは「えへへ」とはにかむように笑いながらターンを決めてみせる。

 

「うん! 何かのアニメの衣装みたいんだけど、なんかこの衣装見た瞬間ビビッと来て・・・・・・」

 

すると、そんな時、穂乃果とことり、紅葉の3人はは木の木陰で身を隠し、モジモジソワソワとした様子で顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている海未の姿を発見すると穂乃果とことりの2人は彼女の傍へと歩み寄り、物陰から出るように促す。

 

「ほらほら! 海未ちゃんもそんなところに隠れてないでみんなのところに出て行こうよ!!」

「うっ、うぅ・・・・・・で、ですが! 2人が選んだこの衣装、なんだか少し恥ずかしくて・・・・・・」

 

どうやら、穂乃果と海未の会話の内容から察するに木陰に隠れてよく見えないが、今海未が着込んでいる衣装は穂乃果とことりが選んだものらしいのだが、それが少々恥ずかしいとのことで彼女は中々そこから動こうとしてくれなかったのだ。

 

海未が恥ずかしがる衣装、ということはもしや露出度が少々高めのちょっと際どい感じの衣装なのだろうかと疑問に思い、そのことについて紅葉がことりに尋ねると彼女が言うには「別にそこまで露出度の高い衣装じゃないよ?」とのこと。

 

それから、その場に留まり続けようと必死に抵抗しようとした海未ではあったが、結局は穂乃果とことりの2人に手を引かれる形で強引に人前に連れ出されてしまい、ようやく今の海未の姿の全貌を目撃した穂乃果とことりは2人揃って「おぉ~!」と歓喜の声をあげたのだ。

 

「うっ、うぅ、恥ずかしいですぅ・・・・・・」

「海未ちゃん、セクシー!!」

「大人って感じがするねぇ~!」

 

そして、海未が着ている衣装というのが金色のラインが走った漆黒のコスチュームであり、さらには耳にはエルフを思わせる長い耳の飾りが装着されており、ことりが言っていたようにそこまで露出度の高い衣装ではなかった。

 

(確かに露出度はそこまで高くないが・・・・・・)

 

とは言っても、割と身体のラインなどが結構ハッキリと出そうな感じの衣装な上、胸元がちょっと空いててしかもタイツ越しというどことなくアダルティな雰囲気の衣装であり、恐らく海未が恥ずかしがっているのはそういった部分だったのだろうなと紅葉は一人納得するのであった。

 

「わあ! 凛ちゃん、その衣装とっても似合ってて可愛いよ!!」

「中々似合ってるんじゃない? 凛?」

「えへへ、ありがとう、かよちん! 真姫ちゃん!」

 

一方、先に仮装用の衣装に着替え終え、凛の着替えを終わるのを待っていた花陽と真姫はパーカーを被り、トリケラトプスを思わせる仮装をした凛を見て、特に花陽は目をキラキラさせながら真姫と共に彼女に駆け寄っていた。

 

「っていうか、それってトリケラトプス?」

「多分、そうだと思うんだけど・・・・・・ただことりちゃんと同じように、なんかね、凛もこの衣装見た瞬間運命的なものを感じて・・・・・・。 あとなぜか『ソウルライド!』って叫びたくなって・・・・・・ってそれよりも! かよちんや真姫ちゃんの衣装だって可愛いにゃ~!」

(・・・・・・なんか、凛ちゃんのあの格好どっかで見たことあるんだよなぁ・・・・・・)

 

また、花陽と凛、真姫は互いに自分達が着た衣装を楽しげにワイワイと話している3人の姿を遠目に見ながら、紅葉は凛の格好がどこかで見たことがあるような気がしてならず、両腕を組みながら「うーん?」と首を傾げるのだった。

 

「それで、えりちの衣装は・・・・・・どこかの部隊の隊員服?」

 

他のメンバーと同様に、ハロウィンの仮装として青い制服を身に包み、青いネクタイをつけた格好で黒髪ツインテールのウィッグを被った絵里に視線を向けながら、希は彼女にそれはなんの衣装なのかと尋ねるのだが、絵里はイベントスタッフに何かお勧めの衣装があるかと聞いて、スタッフが選んでくれた衣装を着ただけなので特になんの衣装なのかというのは絵里にも分からなかった。

 

「ただ1つ言えるとすれば、なんだかよく分からないけどこの衣装凄くしっくり来るのよね」

「確かに似合ってはおるな。 なんか今にもツインテールから鋸発射しそうな雰囲気あるわ。 そして、最後はにこっちやけど・・・・・・」

 

そう言いながら希がキョロキョロと辺りを見回しながらにこの姿を探すと、セーラー服のような衣装を着て、黄色いシュシュでツインテールにしているウィッグを被ったにこの姿を発見した。

 

(いや、例のク〇アニメやん)

「なんか私だけ微妙に納得できない!」

 

一応、絵里同様にスタッフにお勧めされたことや他に自分の身体に合うサイズの衣装で特に良いのが見当たらなかった為、にこはこの衣装を着た訳なのだが・・・・・・妙に自分だけなんだかネタ的な感じがして仕方がなかった。

 

「あとついでに妙に身体に馴染んだ感じがするのがちょっと腹立つわね!」

 

そこまで言うならば着なければ良かったのでは・・・・・・と思うかもしれないが、それだと他のみんなが仮装してる中自分だけ浮いてしまっている感じがして嫌だった為、にこは渋々ながらも着ることを選んだのである。

 

ただ、そんな時のことだった。

 

「すいませーん、一緒に写真撮っても良いですかね?」

 

そこへにこの元へ、グレーのスーツを着込んだヤクザ風味のいかにも厳つい格好をした妙に渋い声で世間一般的にあまりよろしくないゲーム主人公みたいな見た目の男性が現れると、にこは急に話しかけられたこともあり、思わず「ひゃい!?」と返事をしてしまい、声をかけてきた男性の方へと振り返る。

 

「あの、μ'sの矢澤 にこさんですよね? 僕、大ファンでして・・・・・・! 写真良いですかね!?」

「えっ、あっ、勿論大歓迎にこ♡」

 

写真を求められたことに僅かながら動揺したにこであったが、そこは流石彼女がアイドルとしての意識が高いこともあってすぐさま臨機応変に対応し、男性の頼みを快く引き受け、一緒にツーショット写真を撮るファンサービス精神を見せるのだった。

 

「ライブも友人とか連れてきて是非とみ見に来てくださいねー!!」

 

写真を撮り終えたにこはしっかりとライブの宣伝もしつつ手を振りながら男性と別れ、一部始終を見ていた絵里は「流石にこね」と感心するのだった。

 

「紅葉くんの提案、見事に功を成したってところやね」

 

さらに、他のμ'sメンバーの様子を見れば全員それなりに注目されており、一緒に写真を撮ったり握手を求められたりと、先ほど希が言ったようにこの結果を見ると紅葉がインパクト云々の代替案として考案したこの作戦は見事に成功したと言っても過言ではないだろう。

 

「思ったよりも注目されてて良かったね、お兄ちゃん!」

「そうだな。 それに割と楽しいし」

 

想像よりも自分達が注目されたことに穂乃果はどことなく満足げに笑い、紅葉も彼女に同意するように頷くと・・・・・・。

 

その時、2人の前をロリポップを持った子供達が横切るのが見え、紅葉は「美味そうなロリポップだな」と思いながら周りをよく見てみると、この近くで出店している屋台か何かの店で売ってあるのか、ロリポップを持って美味しそうに食べている子供達の姿が見え、それを見て自分もロリポップが欲しくなった紅葉は近くにいた少年少女達にどこで売ってあるのかを尋ねた。

 

「ねえ、それ美味しそうだね。 良かったら売ってる場所を俺にも教えてくれないかな?」

 

紅葉にロリポップの売ってある場所を尋ねると、子供達はある一定の方向を指差して「魔女の仮装をしたお婆さん」がやっているお店だと教えて貰い、場所を教えられた紅葉は「ありがとう!」と子供達にお礼を述べた後、穂乃果を連れて子供達に教えられた場所まで歩き出すのだった。

 

「お兄ちゃんは本当に食い意地張ってるね・・・・・・。 私でもそこまでいっぱい食べないよ?」

「何言ってる! ハロウィンと言えばお菓子! こういうイベントに参加してるからには売ってあるお菓子は買わなきゃ損だろ!」

 

紅葉の大食感ぷりには穂乃果ですら呆れてしまうが、彼はイベントに参加している以上、そこで売られている食べ物を買うのが礼儀であると主張し、その意見は確かに一理あるかもしれないがとは思うもののなんか紅葉が言うと微妙に納得できないと考える穂乃果であった。

 

「夢をいっぱい持つ子は集まっておいでぇ~! 夢をいっぱい持っている子達には褒美にただで美味しいキャンディをあげよう~」

 

そうこうしている間に魔女の老婆の仮装をした人物が出店している店に辿り着くと、店には既に多くの子供達が集まっており、老婆はそんな子供達に気前よく「ただ」でロリポップを配っているところだった。

 

「ただとはなんて気前が良い」

「ただだからって全部頂戴って言わないでよお兄ちゃん?」

「流石にそこまで大人げない真似しねーよ!!」

 

それになにより、見たところロリポップが無料なのは老婆の台詞から察するに恐らく子供のみ。

 

高校生の自分達も未成年とはいえ対象に含まれるのかは微妙なところではあるが、有料なら有料で買うつもりなので紅葉は老婆に穂乃果の分も合せて「キャンディおーくれ!」と注文するのだが・・・・・・。

 

「悪いねぇ、お兄さん、お姉さん。 お2人さんは高校生ぐらいだろ? このキャンディは幼稚園児とか、小学生や中学生ぐらいの子供だけを対象に配ってるんだよ。 数にも限りがあるし、子供達を優先させてあげたいのさ」

「あっ、そうなんですか・・・・・・」

 

老婆は紅葉や穂乃果に対して申し訳無さそうにしつつ、2人にロリポップを配ることはできないと謝罪すると、そういう理由があるのならば仕方無いとキャンディを貰えなかったことを少しばかり残念そうにしつつ、紅葉はロリポップの入手を諦めるのであった。

 

「にゃー。 凛もキャンディ欲しかったにゃー」

「うおっ!? 凛ちゃんもいたのか」

 

いつの間にかすぐ傍まで来ていた凛に思わず驚きの声をあげつつ、彼女もまたロリポップを求めてここにやってきたのかと紅葉が尋ねると、凛は「そうなんだよぉー」と首を縦に振り、彼女もまた紅葉同様にロリポップを貰えなかったことを残念そうにしていた。

 

「まぁ、駄菓子屋とかに行けば売ってあるし、そこまで残念がることないと思うよ凛ちゃん?」

 

そんな残念がる凛に対し、彼女と一緒に行動していた花陽が励ましの言葉を送るのだが、凛も紅葉も確かに花陽の言う通りだとは思うのだが、この辺りには駄菓子屋はないし、子供達があんな風に食べている姿を見ると今すぐ無性に自分も食べたくなってしまうのはどうしようもないことだった。

 

とは言え、老婆から貰えないなら帰り際にでも駄菓子屋に寄り道して買って帰るしかないかと紅葉も凛も考え、今は我慢しようと決めるのであった。

 

「まぁ、俺達は貰えなかったが、どちらにしても中々に気前の良い婆さんだったな」

「子供好きなのかな?」

 

結局、紅葉達はキャンディを貰い損ねはしたものの、それでも無料でキャンディを配る老婆には感心したような声をあげ、キャンディ配りを頑張るよう心の中で応援しつつ、紅葉、穂乃果、凛、花陽の4人がその場から離れようと歩み出そうとした瞬間、ふっと紅葉は老婆の背後にあった建物の窓ガラスを見て、その窓ガラスに何か違和感のようなものを感じ取り、思わず足を止めてしまった。

 

(あれ? なんか、あの婆さんの後ろにある窓ガラス、違和感が・・・・・・)

 

なぜ、その窓ガラスに違和感を感じるのか、気になった紅葉は目を懲らし、ジッと老婆の後ろの窓ガラスを見つめると・・・・・・そこで紅葉は窓ガラスには子供達などは姿が映っているにも関わらず、あのキャンディを配っている老婆の姿だけが窓ガラスに映っていないことに気付いたのだ。

 

(あの婆さん、窓ガラスに姿が映っていない!? どういうことだ・・・・・・!?)

 

すると、そんな紅葉の自分を怪しむ視線に気付いたのか、老婆はキャンディは未だに幾つも残っているにも関わらず、早々に「店閉まい」だと言ってキャンディの置いてある台車を押し、その場から逃げるように去ってしまうのだった。

 

「おい、アンタちょっと待て!」

「えっ、ちょっ、お兄ちゃん!?」

 

紅葉はそのように走り去っていく老婆を急いで追いかけ、穂乃果達も彼の突然の行動に困惑するが、すぐに紅葉の姿も老婆の姿も遠く見えないところに行ってしまい、あっという間に2人の姿が見えなくなってしまったのだ。

 

「紅葉くん、そんなにあのロリポップ食べたかったのかにゃー?」

「いや、流石に私のお兄ちゃんでもそこまで卑しん坊じゃ・・・・・・」

 

無い、とは言い切れない部分もあるが、紅葉のあの様子からして何かただ事ではないのかもしれないと考え、取りあえず、穂乃果は自分は少しこの辺りをウロウロして紅葉を探してみると凛と花陽に伝えると、彼女は1人でこの場を離れていくのだった。

 

「あっ、うん、気をつけてね穂乃果ちゃん!」

「急にどうしたんだろうね、紅葉くん?」

 

紅葉を探しに自分達から離れていった穂乃果の背中を花陽と共に見送りつつ、ロリポップがどうしても欲しかったのではなかったのなら紅葉が急に老婆を追いかけていったのはなんでだろうと疑問に思い、首を傾げる凛。

 

そんな時、「凛ちゃん」と小さく自分を呼ぶ幼い少女の声が聞こえ、声のした方へと凛が振り返ると、そこには恐らく、あの老婆から貰ったであろうロリポップ2つを両手に持った少女がいたのである。

 

「おねえちゃん、μ'sの星空 凛ちゃんでしょ!?」

「そ、そうだけど・・・・・・」

「やっぱり! 私、ずっと前から凛ちゃんのファンだったの!!」

「ふぇっ? ファ、ファン!?」

 

いきなり目の前に現れた小さな女の子に凛は戸惑いながら、その子は一体自分に何の用なのかと不思議そうに尋ねると、その少女は興奮気味に自分がアイドルのμ'sの大ファンであることを凛に伝えてきたのだ。

 

「このまえのね、ファッションショーのライブも凛ちゃん凄く可愛かった! 私、ますます凛ちゃんのこと好きになっちゃった!」

「え、えへへ、そう言ってくれると嬉しいにゃー。 いつも応援ありがとう、これからも、応援よろしくね!」

 

その女の子に対し、照れくさそうにしつつも凛は何時も応援してくれる少女にお礼を述べ、少女の方も嬉しそうに「うん!」と頷くと、少女は右手に持っていたロリポップを「凛ちゃんにあげる!」と言いながら差し出したのだ。

 

「えっ、良いの?」

「うん! あのキャンディ配ってたお婆さんに弟が夢をいっぱい持ってるんだって話したら、もう1個くれたんだ!!」「そうなの? でも、それ弟に怒られないかにゃ?」

「大丈夫だよ! だって弟も凛ちゃんのファンだもん!」

 

少女はそう言いながら凛にロリポップを渡すと、そのまま笑顔を浮かべたまま「バイバーイ!」と手を振りながら立ち去っていき、ちょっとだけあの少女の弟さんに申し訳無いなと思うものの、既にあの少女の姿はもう見えないところにまで行ってしまっている為、返すこともできず、取りあえず、このままずっと手に持つのもアレなので有り難くあの少女のご厚意に甘えて頂戴することにするのだった。

 

「良かったね、凛ちゃん!」

「うん、ちょっと申し訳無い気もするけど、ファンだって言ってくれたのも含めて、なんだか嬉しいにゃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃・・・・・・。

 

あの老婆を追いかけていた紅葉はというと・・・・・・。

 

「あの婆さん、どこに行きやがった?」

 

何もない野原の広がる場所へとやってきた紅葉であったが、ずっとしっかりと老婆の後ろを追いかけていた筈なのに、老婆はいつの間にか紅葉の目の前から消え去っており、辺りをキョロキョロと見回していると不意に、紅葉の背後に先ほどまで無かった筈の不気味な雰囲気を醸し出す古びた屋敷のようなものが現れたのだ。

 

「っ、こいつは・・・・・・」

 

そんな怪しげで不気味な雰囲気を醸し出す屋敷の存在に気付いた紅葉は、突然現れたこの屋敷があの老婆とも何か関係があるのではないかと思い、警戒をしつつも屋敷の中に入ってみることに。

 

尚、屋敷に鍵はかかっておらず、紅葉はすんなりと屋敷に侵入すると、屋敷の中はとても薄暗く、まさに外見通りの雰囲気を漂わせていた。

 

「・・・・・・」

 

そこから紅葉は警戒を怠らず、仮装用に用意していた弓と矢を構えながら、屋敷の中を進んでいき、あの老婆がいないかと建物の中を捜索していく。

 

尚、この紅葉が仮装用に用意した弓矢だが、プラスチック製なので殺傷能力はないが、人に当たればそこそこ痛いのである程度の武器としては一応使えなくもなかったりする。

 

勿論、本来は人に向けて撃ったりしてはいけないので注意が必要だが。

 

そして、ある程度進んでいくと紅葉はある1つの扉を発見。

 

『フヒヒヒヒ・・・・・・! アハハハハ!』

 

すると、その時紅葉の見つけたその扉が独りでに開くと扉の中は光が放たれていてよく見えなかったが、そこからあの老婆の笑い声が聞こえ、彼は弓矢を構えたまま、その扉の中へと入っていく。

 

「公園・・・・・・?」

 

その扉の先を抜けると、そこにはどこか不思議な雰囲気のある公園があり、その際紅葉が入ってきた扉は消滅。

 

「っ、閉じ込められちまったか」

 

どうにかここから抜け出さなければと考えつつ、どこかに出口に繋がる場所はないかと辺りを見回してみると、そこで紅葉は公園の中央に蹲る3人の少年達を発見した。

 

「なんでこんな不気味なところに子供が・・・・・・。 おい! 君ら、大丈夫か?」

 

こんな場所に子供達がいることを不思議に思いながらも、紅葉が心配して少年達に声をかけると少年達は紅葉の声に反応して顔を振り向かせる。

 

しかし、その子供達は驚くほどに肌が白く染まっており、どこか魂が抜けたような虚ろな表情をしていたのだった。

 

「これは・・・・・・!」

 

そのことに、紅葉は驚きの表情を浮かべていると、彼は背後に殺気を感じ取り、振り返るとそこには左手が鋭利な剣の形状をしている巨大な人型の怪物、「異次元人 ギランボ」が立っており、ギランボは不気味な笑い声をあげながら顔の中央に存在するクリスタルのような部分から紫色の光を紅葉へと放って来たのだ。

 

『フヒヒヒヒ!!』

「っ!!」

 

後ろに子供達がいる為に、ギランボの放つ光を躱せなかった紅葉は咄嗟に腰につけていたカードホルダーからウルトラマンのカードを取り出し、それから発生させるバリアでどうにかギランボの光を防ぐ。

 

「おい!! 早く逃げろ!!」

 

紅葉は後ろにいる子供達にすぐにここから離れるように言うと、子供達は言われた通りに一目散にその場から逃げ出していき、紅葉はオーブリングを取り出し、オーブへと変身しようとするのだが・・・・・・。

 

そうはさせまいとギランボは左手の剣を紅葉へと振りかざし、直撃こそなんとか避けたものの、剣が地面に突き刺さった時の衝撃による風圧で紅葉は吹き飛ばされてしまい、その際に彼は木に身体をぶつけ、後頭部を強く打ってしまったが為にその場に倒れ混んでしまい、気を失ってしまうのだった。

 

「があ!?」

『ヒハハハハ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、紅葉を探していた穂乃果はというと・・・・・・。

 

「お兄ちゃん、本当にどこに行っちゃったんだろう?」

 

未だに彼女はあの魔女を追いかけて行った紅葉を探していたのだが、一向に彼の姿を穂乃果は見つけることができずにいた。

 

一応、穂乃果は紅葉のスマホにも連絡を入れたのだが彼からの返事もなく、もうすぐ日も暮れてしまうのでそろそろ帰らなければならないといけないので困り果てているとぬっと自分の背後に人の気配を感じ、振り返るとそこには仮装した姿の紅葉が立っていたのだった。

 

「わあ!!? もう、ビックリしたぁ~。 驚かさないでよ、お兄ちゃん! どこ行ってたの!?」

 

そんな風に、突然現れた紅葉に対してぷくぅっと頬を膨らませながら、勝手にいなくなったことに文句を言う穂乃果。

 

「あぁ、悪かったな」

 

そのように怒る穂乃果に、紅葉は「すまん」と頭を下げながら軽く謝罪すると、穂乃果はそろそろ帰らないといけないので着替える為の更衣室の前まで一緒に行こうと言って彼の手を握るのだが・・・・・・その瞬間、紅葉の手を握った瞬間、穂乃果は何かの違和感を感じ、彼女はジッと紅葉の顔を見つめる。

 

「っ、アレ? なんか・・・・・・何時もと・・・・・・」

「・・・・・・どうした? 穂乃果?」

 

そんな穂乃果に、紅葉は不思議そうに首を傾げ、どうかしたのだろうかと問いかけると、穂乃果はスンスンと紅葉の傍に寄って鼻を動かし、穂乃果は紅葉のことを怪訝そうな表情を浮かべながら見つめ、警戒心を露わにしつつ、紅葉からゆっくりと離れていく。

 

「お兄ちゃんの香りがしない。 手を握った時の感覚が何時もと違う・・・・・・! あなた、誰・・・・・・?」

「なに・・・・・・?」

 

以前、ノワール星人ガイドスと呼ばれる宇宙人が紅葉に化けたことがあったからか、あの時とは違い夢の中ではなく現実世界だったこともあり、穂乃果は即座に今目の前にいる人物が紅葉ではなく、全くの別人であることを見破ると、偽者の紅葉は歯がゆい表情をしながら舌打ちし、偽紅葉はバッと右手を穂乃果にかざすとそこから紫色の煙のようなものを放ち、それを受けてしまった穂乃果は強烈な眠気に襲われてしまい、彼女はその場に倒れそうになってしまう。

 

「おっと」

 

そんな倒れそうになった穂乃果を受け止めると、偽紅葉はニヤリとした笑みを浮かべるのだった。

 

「あれ? 穂乃果!?」

「穂乃果ちゃん、どうかしたの!?」

 

すると、そこへ偽紅葉達の様子に気付いたことりと海未が心配げに2人の元へと駆け寄ってくるのだが、偽紅葉は「心配ないよ」と声をかけながら、穂乃果はただ疲れて眠ってしまっただけだと説明し、海未とことりが穂乃果の表情を確認すると確かにスヤスヤと寝息を立てて眠っているだけのようだった。

 

「ちょっとはしゃぎすぎたんだろうなぁ」

「あははは。 まぁ、穂乃果ちゃんらしいと言えばらしいかな?」

「確かにらしいと言えばらしいですが、全く! だとしてもこんなところで寝てしまうなんてどれだけだらしないんですか!!」

 

偽紅葉の胸にもたれるように眠っている穂乃果に対し、苦笑することりとだらしないとぷりぷり怒る海未。

 

「取りあえず、悪いがこいつの制服とか更衣室まで取って来て貰えるか? 俺はこのままこいつを家に運んでいくよ」

「ハァ、分かりました。 行きましょう、ことり」

「うん」

 

偽紅葉は海未とことりに穂乃果の着替えの制服を更衣室まで取って来て貰うように頼むと、海未とことりは偽紅葉の頼みを頷いて快く引き受け、2人で女性用の更衣室まで穂乃果の着替えを取りに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・・・。

 

その日の夜、ギランボに気絶させられた本物の紅葉はというと・・・・・・。

 

「んあっ・・・・・・、っつぅ」

 

強く打ち付けた後頭部を抑えながら、目を覚ますと紅葉は魔女の住み処となっている屋敷の中のとある部屋に設置されていたカプセルのようなものに閉じ込められており、彼は脱出しようと内側からカプセルを強く殴りつけるもののカプセルはビクともせず、紅葉は完全に閉じ込められていたのだった。

 

「クソ、俺としたことが、とんだヘマしちまったな。 ってか俺の着ていたグリーンアローの衣装どこいった?」

 

どうやら、あの偽紅葉が着ていた衣装は本物の紅葉から奪ったものだったらしく、彼は今下着姿でカプセルに閉じ込められている状態であり、オーブリングとフュージョンカードの入ったカードホルダーもあの魔女によって取り上げられてしまったようで、目の前にある棚の上にそれらは置かれていた。

 

そのことからこれではオーブに変身して脱出することもできず、紅葉はどうここから出るべきかと悩んでいると・・・・・・。

 

「ら~ら~ららら~、ら~らら~」

 

不意に、背後から子供が歌う声が聞こえ、紅葉が声のした方へと顔を向けるとそこには公園の遊具などで見掛けるような馬の乗り物に乗って遊ぶ幼い少年の姿があり、紅葉は少年に向かって必死に呼びかける。

 

「おい君! 俺をここから出してくれないか!? なあオイ!!」

 

しかし、幾ら呼びかけても少年からの返事は無く、それどころかこちらを見ようともせず、さらによく見ればその少年はどこか虚ろな表情を浮かべており、その姿はまるで浮遊病患者のようだった。

 

そのことから、紅葉はこの少年もあの魔女に何かされて正気ではなくなっていることに気づき、カプセルのガラスを叩きながら「ダメか・・・・・・」と呟き、思わず溜め息を吐いてしまう。

 

そんな時、紅葉のいる部屋の扉が開くとそこからあの老婆が現れ、紅葉はカプセルのガラスを叩きながら老婆に自分をここから出せ、せめて子供達を解放しろと必死に叫んだ。

 

しかし、老婆は紅葉の言葉の一切を無視し、馬の乗り物に乗る少年の元へと歩み寄る。

 

「おい婆さん!! 聞いてんのか! 俺をここから出せ!! いや、あの公園にいた子供達含めて、せめて子供達だけでも解放しろ!! オイ、聞いてんのか! そこの子供に近づくな!! 無視すんなっての!!」

 

しかし、やはりと言うべきか紅葉が幾ら老婆に呼びかけても、老婆からの返事はなく、老婆は少年の傍で口を大きく開けると子供の耳から虹色の粒子のようなものが溢れ出し、老婆はそれを口の中へと吸い込んで食べてしまったのだ。

 

すると、その少年の肌の色が白く染まり、あの公園にいた少年達のように肌が白く染まり、少年はぐったりとその場に倒れこんでしい、その光景を見た紅葉は目を見開き、老婆を睨み付ける。

 

「お前・・・・・・!! その子に何をしやがった!?」

「夢を全部吸い取ってあげただけさ。 どうせ、大人になるまでに人形や玩具のように捨ててしまうんだからねぇ。 いらないなら、私がそれを貰っても構わないだろう? 何か問題でもあるのかい?」

 

紅葉の問いかけに対し、特に悪びれる様子もなく、老婆はそう応えると紅葉は老婆を睨み付けながら「ふざけんな!!」と怒鳴りあげ、怒りを露わにする。

 

「確かに、お前の言うように大人になるまでに夢を捨てちまう子供は多いとは俺も思う。 だがな、それを誰かが奪う権利なんて誰にもねえ!! だからさっさとその子を夢をその子に返せ!!」

「あーあーあー、全くうるさいねぇ」

 

紅葉は老婆に子供から奪った夢を返すようにと要求するものの、当然ながら老婆は素直にそれに従う筈もなく、先ほど夢を奪った少年に手をかざすと、少年は最初からそこにいなかったかのように消し去ってしまったのだ。

 

「お前!! 今度はあの子に何をした!? どこへやったんだ!!?」

「夢の墓場に捨てただけさ」

「夢の、墓場だと? さっきの公園か!」

「フヒヒヒ! その通り! さて、それじゃ、お前もそろそろ始末しようかね。 お前ぐらいの歳の人間の夢を食べても、腹を壊しちまうだけだからねぇ。 アーハッハッハッハ!!」

 

そう言いながら、老婆が不気味に笑いながら部屋から去ろうとすると同時に紅葉の入れられていたカプセルの中が白い煙が吹き出し、カプセルの中が煙で満たされていくと、紅葉は徐々に息をすることが徐々に困難になっていってしまうのだった。

 

「ゲホッ!! おい!! 待てコラ!! ゲホゲホ!! チクショウ・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の深夜・・・・・・。

 

あの老婆は屋敷の外に出ると、老婆は懐から小さな1つのオルゴールを取り出し、それを鳴らし始めるとオルゴールからは不気味な音楽が流れ出し、それによってか、夜の遅い時間に眠っていた多くの子供達は突然を目を覚まし、その子供達の全員が生気のない表情で親達に気付かれないように外出すると子供達はみんな揃いも揃って老婆のいる屋敷を目指して歩き出したのだ。

 

尚、なぜ子供達がこのような行動を取っているのかというと・・・・・・実はこの子供達にはある1つの共通点があり、この不可解な行動を取っている子供達はみんなあの老婆が配っていた「ロリポップキャンディを口にした」という共通点があったのだ。

 

あれを口にした者は子供ならば強力な催眠効果を発揮するものとなっており、その為に多くの子供達は老婆の意のままに操られる状態になってしまっていたのだ。

 

それからやがて、子供達が老婆のいる屋敷の傍にまでやってくると老婆は右手を自分の立つ屋敷に向かってかざすと、屋敷は巨大なジャック・オ・ランタンの顔を模したカボチャへと姿が変化。

 

そのカボチャの上に老婆が立つと、老婆は子供達に「おいでおいで」と手招きし、子供達はカボチャの中へと吸い込まれるように入って行ってしまう。

 

「さあみんな!! パンプキンに乗って、夢の国へ行こうじゃないかぁ~! きっと楽しめると思うよぉ~? アーッハッハッハ!! アハハハハ!!!」

 

甘い言葉を子供達に投げかけることで、子供達にかかっていた催眠効果はさらに強まり、子供達の足はさらに止まらなくなってしまう。

 

紅葉は囚われの身となり、自力で抜け出しでもしない限りウルトラマンになって子供達を救い出すこともできない状態で、この異常事態に気づいている人物は紅葉以外には誰もいなかった。

 

他者が見れば、このままでは最悪の状況に陥ってしまうと誰もが思う状況だった。

 

だが、そんな時のことだ。

 

「ぶへっ」

 

あのキャンディを口にしていたのは幼稚園児~中学生ほどの子供達のみ、しかしただ1人だけ高校生でキャンディを他の子供達と同じように口にしていた人物がいたのだ。

 

「あ、あれ? ここどこにゃ!? なんで凛こんなところに!?」

 

それは今日のハロウィーンイベントに参加した際、自分のファンを名乗っていた女の子からキャンディを貰い、有り難くそれを貰って他の子供達同様にキャンディを口にしていた凛のことであり、彼女は他の子供達と同じように老婆の催眠によってこの場に訪れていたのだが・・・・・・。

 

どうやら凛ぐらいの年齢の人物に対しては催眠効果は比較的に薄いらしく、彼女は先ほど躓いて転んでしまった時の衝撃によって催眠が解けたらしい。

 

「アハハハハ!! おいでよ、おいで~♪」

 

その時、凛はあの老婆の存在に気付き、彼女は老婆の姿を見た瞬間、本能的に「ヤバイ」と感じ取ったことで危険を察知し、凛は自分の存在が老婆に気付かれる前に慌てて近くにあった大くそびえ立つ木の後ろの方へと身を隠したのだ。

 

「何が、起こって・・・・・・」

 

物陰へと隠れた凛はそこからひょっこりと老婆にバレないようにしつつ顔を出して様子を伺うと、すぐさま凛は子供達の虚ろな表情や老婆から漂う不気味な雰囲気を感じ取り、この状況の異常性にすぐに気付くことができた。

 

「ど、どうしよう! 警察とか呼んだ方が・・・・・・。 ああでもスマホなんて今持ってないにゃー!! この辺に公衆電話・・・・・・って財布も持ってないにゃー!」

 

この怪しさ満点の状況、どう見ても子供を攫おうとしている不審者にしか見えない老婆を取りあえずは警察などに対処して貰うしかないかと考えた凛であったが、そもそも老婆の催眠によって眠っている時に寝間着姿のまま外に連れ出されたので当然ながらスマホや財布なども持っている訳もなかった。

 

さらに問題なのか、ここがどこなのか、野原っぽい場所なこと自体は分かるのだが辺りが暗いこともあり、凛にとってはそれもよく分からなかったのだ。

 

そのことから、間に合うかどうかは分からないが近くの家に電話を貸して貰う手もほぼ封じられたも同然であり、凛にとってこれはほぼ八方塞がりとも言える状況で、ほぼ打つ手なしと言っても過言ではない状態だった。

 

「こんな時に海未ちゃんや真姫ちゃんや絵里ちゃんみたいな頭の良い娘がいていてくれたらなぁ・・・・・・!」

 

両手で頭を抱えながら、「うーんうーん」と唸りながら必死でこの状況をどうすれば良いのかを考える凛。

 

自分だけこの場から逃げることもできるが、しかし、だからと言って目の前の子供達を放っておく訳にはいかない。

 

だが、凛は幾ら考えてもこの状況を仰せるほどの打開案は浮かばずじまいであった。

 

そんな風に、凛が頭を悩ましていた時のことだ。

 

「よぉ、お久しぶり。 またお会いしましたねぇ? お嬢さん」

「んにゃああ!!?」

「ふごっ!?」

 

不意に、唐突に、凛の肩に顎を乗せてくる新たな不審者が現れると、凛はすぐさま振り返りざまに新しい方の不審者に顔面パンチを喰らわせるのだった。

 

「ってえな! クソまたこのパターンかよ! つうかおいコラ静かにしろ! あのババアに気付かれんだろうが!」

「むぐっ」

 

その不審者・・・・・・今までずっと姿を眩ませていた男性、「ラグナ」は凛の口を手で掴んで塞ぐと凛と共に身を隠し、物陰からこっそりと老婆がこちらに気付いていないかを伺う。

 

幸い、老婆は子供達を誘導するのに集中していて先ほどの凛の悲鳴には気付いていないらしく、ラグナは安堵の溜め息を吐くと彼は凛から手を離し、彼女の隣にドカッと座り込む。

 

「別に俺は怪しいもんじゃねえよ? 俺は紅葉の知り合いだ」

「紅葉くんの?」

「あぁ。 お前等よりも、紅葉のあの妹ちゃんよりもずーっと昔からアイツのことを誰よりも知ってる古い仲さ。 それに、お前とも以前一度会ったことがあるんだが・・・・・・覚えてねえか?」

 

正直、「怪しい者じゃない」と言われてもにわかに信じられない凛であったが、ラグナの顔を目を懲らしてジッと見てみると確かにどこかで見たような気はするのだが、どこで会ったのかを彼女は思い出すことができなかった。

 

「まぁ、今はそんなことはどうでも良い。 丁度良い、折角だからちょっと手伝え」

「ふえ? 手伝えって・・・・・・」

「どうやら、紅葉のアホンダラ、あのババアを追いかけて行った時にまんまと奴に捕まっちまったみてえでな。 あのデカカボチャの中に囚われてるっぽいんだよ。 だからお前、一緒にあのバカ探すの手伝え」

 

小指で耳をほじりながら、紅葉が囚われているという情報を掴んでいたラグナは人手を得る為に凛に彼を見つける為の手助けをするようにと頼むことに。

 

しかし、人にとても物を頼む態度ではないことも相まって凛としてはラグナに対しての不信感が拭えず、さらに言えば、彼は先ほど「老婆を追いかけて行って紅葉は捕まった」と言っていたが、凛は老婆を追いかけて行った紅葉がその後しばらくして帰ってきたのを目撃している。

 

だから凛は、ちゃんと帰ってきた紅葉があの老婆に掴まっているというのはどういうことなのかとラグナに尋ねると、彼はその問いかけに対して、ほくそ笑みながら応えた。

 

「それはあの魔女のババアが用意した偽者、傀儡ってやつだよ」

「偽者・・・・・・」

 

言われて見れば、確かにあの時帰ってきた紅葉にはどこか違和感のようなものを凛も感じていた。

 

紅葉にしては穂乃果の扱いが何時もと比べて雑っぽかったような気がした。

 

何時もだったら、眠っている穂乃果をお姫様抱っこで運びそうなのに今回はイベントの帰りに最終的にみんなで「流石にその運び方はダメだろ!」と注意こそされ、辞めたものの最初は穂乃果の首根っこ掴んで地面を引きずらせながら帰ろうとしていたし(当然ながら気絶中とは言え首が絞まってるので穂乃果は苦しそうな顔をしていた)、穂乃果のことを基本的に「そいつ、こいつ」呼ばわりしていた。

 

紅葉が彼女のことをそんな風に呼ぶことなんて殆ど無いので、恐らく感じていた違和感はそれが理由だったのだろうと彼女は納得し、ラグナの言っていたことに多少の信憑性が増したのだ。

 

「正直、まだあなたのことちょっと怪しい人に思えるけど、子供達を助けるなら、紅葉くんを助ける為なら手伝うよ凛!」

「よーしよし、それじゃ先ずはこっそりとあのカボチャの中に入ろうか。 先ずは紅葉を救い出せば後はどうとでもなる筈だ。 勿論、ババアに気付かれないようにな? 抜き足、差し足、忍び足ってね♪」

 

ラグナの言葉に、凛がコクリと頷くと、2人は老婆に見つからないように物陰に隠れながらこっそりと移動を開始し、あのカボチャの中へと侵入するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから無事、どうにかあの老婆に気付かれることもなく、こっそりとカボチャの中へと侵入することに成功した凛とラグナ。

 

「取りあえず、ここは二手に別れて紅葉の野郎を探した方が効率的か。 幸い、あのババアは子供達を誘拐するのに夢中で警備とかが手薄になってるっぽいしな」

 

見た感じ、このカボチャの建物の中は人の気配も殆ど感じないことから警備などが薄いと判断したラグナは時間削減の為にもここは凛と手分けして紅葉を探そうということになり、それに凛もラグナの言うようにそれが効率的だと判断した為に彼の提案に頷き、2人は先ずは手分けして屋敷内を散策し、紅葉を探すことに。

 

「紅葉く~ん、どこにゃー?」

 

なるべくあまり大きな声を出さず、紅葉のいそうな場所を探す凛。

 

だが、当然ながら紅葉からの返事が返ってくる訳もなく、取りあえず凛は自分の感に頼り、近くにあった扉をなんとなく開けて見るのだが、そこは埃だらけのただの物置のような場所であり、扉を開けた直後に埃が舞い、凛は思わず咳き込んでしまう。

 

「ケホケホッ! あのお婆さんちゃんと自分の家の掃除くらいしろにゃー!」

 

扉を閉め、凛は再び建物内を探し始めるのだが、中々紅葉の姿は見つからない。

 

「うーん、カレーパンとかあったら紅葉くん誘き出せそうな気がするけどなー」

 

魚じゃないんだから・・・・・・と言いたいところだが、割と紅葉なら魚みたいに飛びつきそうな気がするのは恐らく気のせいではないだろう。

 

その後も、凛は手当たり次第に色んな扉を開けていくのだが、開けた直後にその場所が崖になって危うく落ちそうになったり、洪水が押し寄せて来たり、サイクロプスみたいな怪物がいて自分に襲いかかろうとしてきたりと碌な部屋がなく、幸い、基本的にすぐに扉を閉めたことで怪我もなく命に別状はなかったのだが、凛としては精神がゴリゴリ削られていき、このままでは紅葉を見つけ出す前に自分が死んでしまうと彼女は頭を抱えるのだった。

 

「うぅ~、でも、紅葉くんも子供達も助けないと。 あの変な人もまだ見つけられてないみたいだし・・・・・・よぉーし、今度こそ!!」

 

それでも、凛は諦めずに新たな部屋の扉に手をかけ扉を開くとそこにはカプセルに閉じ込められ、今にも窒息しそうな状況に陥っている紅葉の姿があり、凛は「ビンゴ!!」と歓喜の声をあげながら急いでカプセルの元へと駆け寄り、カプセルを開けて中から紅葉を見事に救い出したのだ。

 

「ゲホゲホッ!! ハァ、ハァ・・・・・・!!」

「紅葉くん!? 大丈夫にゃ!?」

 

咳き込みながら倒れそうになる紅葉を抱き留めながら、ゆっくりと紅葉を床に座らせる凛。

 

「はぁ、はぁ、凛・・・・・・ちゃん? なんでここに?」

「まぁ、色々ありまして・・・・・・。 それよりも! 紅葉くん! 子供達が危ないの! 紅葉くんなら子供達助けられるかもって黒いスーツの変な人が言ってたんだけど大丈夫かにゃ!?」

「はぁ、はぁ、黒いスーツの・・・・・・? いや、今はそんなことどうでもいいか。 はぁ、はぁ、あぁ。 分かった、状況は大体飲み込めてるし、俺に任せろ」

 

息を整え、凛の肩に手を置きながら「それと、助けてくれてありがとう」と助けられたことにお礼を述べつつ、よろっとしつつも立ち上がる紅葉。

 

「・・・・・・ところで、俺の着替え持って無い? あの婆さんに服盗まれたんだが」

「・・・・・・っ」

 

現状、今の紅葉は下着姿であるため、そのことに凛は顔をほんのり赤くしながらそっぽを向くのだが・・・・・・。

 

その直後のことである。

 

「それならここにあるよ」

「っ、しまっ、凛ちゃん!!」

 

そんな言葉と共に、凛に目がけて誰かが刀らしきもの振り下ろし、そのことに気付いた紅葉は慌てて彼女を守るように咄嗟に覆い被さるように庇おうとする。

 

だが、何時まで経っても紅葉は背中を斬られたような感触も、衝撃もなく、彼は後ろを振り返るとそこには凛に刀を振るってきた拠点に戻ってきたらしい自分と瓜二つの姿をした偽の紅葉と、そんな偽紅葉の振るった刀をまるで自分達を守るかのように蛇心剣で受け止めたラグナの姿があったのだ。

 

「貴様ぁ・・・・・・!!」

「オラァ!!」

「ぐあっ!?」

 

ラグナは偽紅葉を蹴り飛ばすと続けざまに闇のエネルギーを三日月形の刃として発射する「蛇心剣・新月斬波」を偽紅葉に向かって放ち、切り裂かれた偽紅葉は泡となって衣服だけを残して消滅するのだった。

 

「新月斬波!!」

「がはあああ!!!?」

 

偽紅葉を消滅させると、ラグナはニタついた笑みを浮かべながら紅葉の方へと振り返り、「よぉ?」と気さくな雰囲気で挨拶する。

 

「ラグナ・・・・・・! お前、なんで・・・・・・! どういうつもりだ!? 今度は何を企んでる!?」

 

紅葉はそんなラグナを睨み付けながら、なぜ自分を助けたのか、また何か企んでいるのかと問いかけると、ラグナは呆れたような表情を浮かべた後、「はあああぁぁぁぁ・・・・・・!」とあまりにも大きすぎる溜め息を吐き出した。

 

「決まってんだろうがブァーカ!! お前を倒すのは俺だ! お前は俺のもんだ! 誰にも邪魔させねえ。 あんなババアにこんな風に終わらされてたまるかってんだよ!! ただ、それだけのこと。 俺とお前の仲だろう? それぐらい分・か・れ・よ!」

「まぁ、言いたいことは分かったが・・・・・・、言い回しが妙にキモいからやめてくれるか? っておい凛ちゃん! 何その視線!? 俺はそっちの趣味はないからな!?」

 

ラグナの妙に気持ちの悪い言い回しのせいで、紅葉に対してあらぬ誤解が生まれそうになったが、すぐさま凛はこんなことしている場合ではないということに気づき、彼女は急いで子供達を助けないといけないことを伝えると紅葉は「分かった!」と頷き、偽紅葉が自分から奪った服をすぐさま着込み、オーブリングとフュージョンカードの入ったカードホルダーを回収。

 

「このお嬢ちゃんのことは任せな」

「・・・・・・凛ちゃんに妙なことしたら今度はお前を潰すからな」

 

凛のことは任せろと言うラグナに対し、紅葉は数秒間悩んだものの、子供達を助ける為に時間が差し迫っていることもあり、ラグナに釘を刺しつつ、ラグナは凛を連れて建物の外へと脱出。

 

「紅葉く~ん!! 子供達のことお願いにゃ~!!」

「あぁ、任せろ、凛ちゃん。 俺はこの建物の中にいる子供達を助けるから、凛ちゃん達は外にいる子供達を頼む」

 

そのように、紅葉と凛の2人が言葉を交わした後、その部屋に1人残された紅葉はオーブリングを構え、カードホルダーから1枚のウルトラフュージョンカード、青い巨人、「ウルトラマンコスモス ルナモード」のカードを取り出すと、それをオーブリングにリードさせる。

 

「コスモスさん!!」

『ウルトラマンコスモス!』

 

さらに、紅葉はカードホルダーから新たなカードを取り出し、メカニカルな外見をした巨人、「ウルトラマンエックス」のカードをオーブリングにリード。

 

「エックスさん!!」

『ウルトラマンエックス!』

 

そして最後にオーブリングを掲げ、叫ぶ。

 

「救う為の力、お借りします!」

『フュージョンアップ!』

 

すると、コスモスとエックスの2人のウルトラマンの幻影が紅葉と重なり合い、紅葉はこの2人のウルトラマンの力を融合させた姿、「ウルトラマンオーブ フルムーンザナディウム」へと変身したのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! フルムーンザナディウム!!』

『繋がる力は、心の光!』

「なにぃ!?」

「ウルトラマンオーブ!!」

 

オーブの登場に対し、驚愕の声をあげる老婆と、それとは正反対にラグナと共に建物から脱出に成功した歓喜の声をあげる凛。

 

「オーブ!! 子供達をお願い! 助けてほしいにゃー!!」

 

凛のそんな呼びかけに対し、コクリと頷いたオーブは右手を前に突き出し、相手の心を鎮静化させたり、邪気を鎮めるために右手から発射する浄化光線「ピュリファイレクト」を子供達に向けて放つ。

 

『ハアアア、ピュリファイレクト!』

 

光の粒子のようなものが子供達の頭上から雨のように降り注ぎ、その光線の浄化効果により、光を浴びた子供達はギランボの催眠効果を無効化することに成功。

 

「なんだと!?」

 

それにより、虚ろだった子供達の目に生気が戻り、子供達はそれぞれ「あれ?」と首を傾げ、なぜ自分達がこのような場所にいるのかが分からず、困惑しているようだった。

 

「みんな!! 兎に角早く逃げるにゃー!!」

 

だが、今は何よりもここから少しでも離れて逃げるの最優先である為、兎に角子供達を逃がす為に避難誘導をする凛。

 

『次はそのカボチャの中に囚われた子供達だ! 子供達をさっさと返し貰おうか?』

 

老婆を指差しながら、オーブは子供達を返すように老婆に要求するが、老婆はワナワナと拳を握りしめながら、オーブを見上げながら忌々しげに睨みつける。

 

「お黙り! やはり大人は敵だ! 大人はいつでも子供の邪魔をする! 夢も希望も全部、大人は子供から奪っていく!!」

『お前に全部返って来てんだよ、その台詞!!』

「黙れ!! もう許さないよ、光の巨人・・・・・・!!」

 

もはや逆ギレにも等しい怒鳴り声をあげながら、老婆はみるみると異形の姿へと変貌し、皮の厚い植物を思わせるゴツゴツした体表や頭部左右にある輪のような角、水色に明滅する顔、剣のような左手、腰部に生えた尻尾を持つ巨大な怪物、老婆は「異次元人 ギランボ」へと姿を変えたのだ。

 

そして、巨大な不気味に光る満月をバックに、対峙するオーブとギランボ。

 

先に攻撃を仕掛けたのはギランボであり、左手の剣を突き出すようにしてオーブに攻撃を繰り出してきたが、攻撃を受け流し、捌くとするのが得意の形態であるフルムーンザナディウムとなったオーブには軽く受け流されてしまい、逆に腹部にカウンターの蹴りを叩き込まれ、後退るギランボ。

 

『ジュア!!』

 

怯んだところを逃さず、すかさずオーブの拳による「突き」がギランボの顔面に叩きこまれるとさらにオーブはギランボに反撃の隙を与えまいと攻撃を仕掛けるが、ギランボは瞬間移動によってその場から唐突に姿を消し、オーブの攻撃は空振りに終わってしまう。

 

『なに!?』

 

そのことに驚きながらも、警戒を怠らず、周囲を見回しながらギランボの姿を探すオーブ。

 

次の瞬間、今まで姿を消していたギランボはオーブの背後から出現し、左手の剣を振りかざしてオーブの背中を斬りつける。

 

『ウグアア!!?』

『ヒハハハハ!!』

 

振り返りざまに右腕を振るうオーブであったが、ギランボは再び姿を消してしまい、オーブの攻撃はまた躱されてしまった。

 

『ッ・・・・・・!』

 

周囲を見回し、ギランボの奇襲攻撃を警戒するオーブ。

 

『フヒヒヒヒ・・・・・・!』

 

その時、背後からギランボの不気味な笑い声が聞こえると、オーブは声のした方へと蹴りを放つのだが、ギランボはすぐに姿を消してしまい、ギランボはオーブを翻弄する。

 

『アハハハハ!!』

『ウオッ!?』

 

さらに、ギランボは今度は背後ではなく、オーブの目の前に出現したことでオーブを驚かせ、その僅かに怯んだ隙を狙ってギランボはオーブの両肩を掴みあげて膝蹴りを腹部へと叩き込み、左手の剣で横一閃にオーブを斬りつける。

 

『グアアッ!?』

『アハハハハ!!』

『ヒハハハハ!!』

『フハハハハ!!』

 

次に、ギランボは笑い声をあげながらなんと6体に分身しだし、オーブの周囲を囲むと6体のギランボは一斉にオーブへと襲いかかって来たのだ。

 

『アハハハ!!』

 

最初に1体目のギランボがオーブの背中を殴りつけるとそれにより片膝を突いたオーブを2体目のギランボが蹴り上げ、3体目がオーブを羽交い締めにすると、身動きの取れなくなったオーブを4体目、5体目、6体目がそれぞれ順番にすれ違いざまにオーブを剣で斬りつけてきたのだ。

 

『グアアアアアッ!!!?』

「あぁ! オーブが・・・・・・! あんなのチートにゃー!!」

 

そのようにオーブの苦戦する姿を見て「あんなのズルい!」とギランボに文句を垂れる凛。

 

「おい!! お前の力はそんなもんじゃねえだろ、ウルトラマンオーブ! もっとしっかりやれボケカスー!!」

 

同時に、凛とは逆にギランボではなくオーブに対して「ぶーぶー!」と野次を飛ばすラグナ。

 

そんなラグナに、イラッと来たオーブは後頭部による頭突きによって自身を羽交い締めにしていたギランボを突き放すと、ギランボの左腕を掴みあげて背負い投げを繰り出し投げ飛ばす。

 

『さっきからうるさいんだよ、ラグナ! 言われなくてもやってやる! 向こうが超能力なら、こっちも超能力だ! ただし、こっちはちょっと荒いがな!』

 

インナースペース内の紅葉がそう言い放つと、腰に装着されたカードホルダーから新たに1枚のカード、青い姿の「ウルトラマンダイナ ミラクルタイプ」のカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『ダイナさん!!』

『ウルトラマンダイナ! ミラクルタイプ!』

 

さらに続けて、紅葉は新たに、1枚のカード、「ウルトラマンベリアル」のカードを取り出し、それもオーブリングへとリードさせてカードを読み込ませる。

 

『ベリアルさん!!』

『ウルトラマンベリアル!』

 

そして最後に、紅葉はオーブリングを掲げて、叫ぶ。

 

『奇跡と闇の力、お借りします!!』

『フュージョンアップ!!』

 

次の瞬間、ダイナ・ミラクルタイプとベリアルの姿が紅葉の前で重なり合うと、オーブの姿は変化し、ベリアルの模様の赤部分を青に変えたような模様となった「ウルトラマンオーブ サンダーミラクル」へと姿を変えたのだ。

 

『ウルトラマンオーブ! サンダーミラクル!!』

『闇の力を奇跡の光に!!』

 

それに対し、6体のギランボは「姿を変えたからなんだ」と言わんばかりに一斉にオーブへと飛びかかるのだが、オーブは上空へと飛んでギランボの攻撃を躱すと、右手をかざし、3人に分身する「サンダーミラクルマジック」を発動。

 

『サンダーミラクルマジック!!』

 

分身した3人のオーブが地上へと降り立つと、2体の分身がそれぞれ1人2体ずつギランボの頭を掴みあげるとそのままギランボを地面に叩き伏せ、残った1体は瞬間移動能力を発動させて残りの2体のギランボの目の前に現れると両拳でギランボの顔面を殴りつけて吹き飛ばしたのだ。

 

『ウオラアアア!!!!』

『ギイイイイイ!!?』

 

殴りつけられ、吹き飛ばされて地面を大きく転がる2体のギランボ。

 

だが、それでもどうにか立ち上がり、2体のギランボは左手の剣を構えてオーブへと向かって行き、オーブの身体を斬りつけるのだが、サンダーミラクルの防御力はサンダーブレスター並である為、オーブは身体全体を使って真正面から2体のギランボによる剣撃を受け止めてしまったのだ。

 

さらにそこから、オーブは2体のギランボの剣を素手で掴みあげるとそのまま力尽くでヘシ折ってしまい、片方のギランボの腕を掴むと強烈な頭突きを喰らわせ、そのままもう1体のギランボへと投げ飛ばして激突させ、吹き飛ばす。

 

『デヤアアアア!!!!』

 

一方で、オーブの他の分身体Bも何度も連続でラリアットを繰り出して2体のギランボを殴りつけまくり、何度も頭を殴られたことによりギランボは2体とも既にフラフラのグロッキー状態となっており、そんなギランボに対してオーブは容赦なくドロップキックを2体のギランボに炸裂。

 

さらに、3体目の分身体Cのオーブはギランボを逆さまに持ち上げて何度もパイルドライバーを繰り出して頭を地面に叩きつけ、別の分身体ギランボがオーブの背中を剣で斬りつけるもののまるで効果は無く、やがてパイルドライバーを喰らっていた方のギランボは耐えきれなくなり消滅。

 

すると、「次はお前だ」と言わんばかりに自身を斬りつけていたギランボの腕を掴んで捕まえると、さらに先ほどと同じようにこのギランボにも容赦なくパイルドライバーを炸裂させたのだ。

 

「えっ、怖っ・・・・・・。 オーブ、あれまた暴走してないかにゃ?」

 

その戦いっぷりを見ていた凛は、サンダーブレスターの時と同じようにオーブがまた暴走しているのではないかと心配していたが、これでも紅葉は一応理性は保ててはいるのだ。

 

ただこの今のオーブの戦い方はサンダーミラクルはサンダーブレスターよりも制御が難しいが故に戦い方に残虐性が出ている為である。

 

それからやがて、3人のオーブに1箇所に集まるように投げ飛ばされると5体のギランボは互いに激突し合い、1体に戻ると、ギランボはその場へとへたり込んでしまう。

 

遂には勝ち目がないと判断したのか、ギランボはオーブから逃げ出すように空中へと飛んで逃走を図る。

 

だが、当然ながらオーブはそれを逃がすまいとテレポートでギランボの目の前に現れ先回りすると、上空に舞い上がってからエネルギーを纏って敵に体当たりする「サンダーミラクルアタック」をギランボへと繰り出したのだ。

 

『逃がさん!! サンダーミラクルアタック!!』

 

それによってギランボは身体を貫かれ、身体中から火花を散らしながら空中で爆発四散するのだった。

 

そして、ギランボが倒されたことによりギランボがこれまで奪ってきた子供達の夢が子供達自身に返還され、カボチャの建物も消滅。

 

中に囚われていた子供達も無事解放されたのだった。

 

「あっ、子供達が・・・・・・! 良かったぁ、無事で・・・・・・。 ありがとにゃオーブ~!!」

 

建物内部に囚われていた子供達も解放されたことで凛は安堵の溜め息を吐き、オーブに手を振りながら感謝を述べ、それに応えるようにオーブも頷くと、オーブはそのまま空中へと飛び去って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことがあったのよ」

 

それから、ギランボの事件が無事解決し、紅葉や凛が学校の放課後、屋上にて穂乃果達に昨夜あった出来事を話すと、それを聞いた穂乃果や海未は紅葉に対しどうしてそんな怪しい奴を1人で追いかけて行ったんだと2人は怒り、事情を説明していた紅葉はその場に正座させられていた。

 

尚、凛に関してはあれは不可抗力であった為、彼女に対してはお咎め無しである。

 

「お兄ちゃん何時もそうだよね! 正義感強いのは分かるけどさ! なんでそんな得体の知れないお婆さんたった1人で追いかけて行ったの!? せめて私達に一言言ってよ!!」

「その結果凛に助けられることになってるんですしね? それに、あの時帰ってきた紅葉が偽者だって穂乃果だけは気付いてたみたいじゃないですか? それで穂乃果にもしものことがあったらどうするつもりだったんですか!?」

「はい、仰るとおりです・・・・・・!」

 

確かに、海未の言うようにあの老婆が用意した自分の偽者が穂乃果に気を失わせることこそしたもののそれ以上の危害を加えなかったのは幸運だったのかもしれない。

 

あの紅葉の偽者が穂乃果に危害を加えなかったのは、下手に騒ぎを起こせばあの老婆の目的が果たせなくなる可能性があったからだ。

 

今回、穂乃果は無事であったものの、それは結果論に過ぎない。

 

そのため、紅葉は危うくまた穂乃果を危険な目に合わせてしまったかもしれないと考え、紅葉は深く、深く、頭を下げて穂乃果や他のみんなに謝罪したのだ。

 

「本当にすまなかった・・・・・・! 今度同じようなことがあった時ははせめて一声ちゃんとかけてから行動する。 以後、気をつける」

 

そう深く頭を下げながら穂乃果達に謝罪する紅葉。

 

それに対し、穂乃果や海未はまだ何か言いたげな様子であったが、そんな2人を希が「まあまあ」と宥めると、もうライブが目の前にまで迫っているのだからといい加減紅葉を許してあげようと彼女は言うのであった。

 

「紅葉くんも反省してるみたいやし、いい加減許してあげようや、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

「・・・・・・むぅ。 ハア、そうですね。 希の言うとおり、ライブも近いですし、お説教はこれぐらいで終わりましょう」

「・・・・・・そうだね」

 

希の説得で、海未や穂乃果もそこでようやく紅葉を許し、紅葉も最後に一言「すまなかった」と謝ると正座を辞めて立ち上がり、ライブの練習に一同は打ち込むことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、遂に訪れたライブイベント当日。

 

「やっほー!! やっほー! はっちゃけてる!? トリックオアトリート!! 連日凄い盛り上がりを見せるアキバハロウィンフェスタ! みんなも盛り上げに来てくれてるよー!! でもなんと、今日がイベントの最終日!! 残念! でも落ち込まなくってもオッケー! 今日はスクールアイドルのスペシャルライブが見られるよー! お楽しみにぃ~!!」

 

今日も取材に来ていたらしいアキバレポーターのその言葉を合図に、一週間前に始まったハロウィンイベントの最終日が開催。

 

穂乃果達もライブの準備の為に既に会場を目指して歩いていたのだが、インパクト云々の案は結局最後まで出なかったからか、今回は何時もと少し違う雰囲気のイベントであることも相まってか穂乃果はどことなく緊張した様子を見せていた。

 

「うぅ、いよいよだねぇ~。 緊張するね~」

「でも楽しんでいきましょう?」

「絵里の言う通り。 スクールアイドルはライブを楽しむことが1番大事だからな。 結局、目新しい案はでなかったが、何時も通りの自分達らしいライブやれば良いさ」

 

そんな穂乃果に対し、絵里はそれでも楽しんでライブをしようと説き、そのような絵里の言葉に同意しつつ、自分達らしいライブを何時ものようにやれば良いとアドバイスを送る紅葉。

 

「それに、みんなもほら? 楽しそうよ?」

 

チラリと、絵里が後ろを振り返ると、そこには楽しげにはしゃぐ海未達の姿があり、それに紅葉や穂乃果も絵里と同じ方向へと視線を向ける。

 

「わあ見て~! 大っきいカボチャ~!」

「ホントだ~!」

 

風船でできたジャック・オ・ランタンの顔を模したカボチャを突きながら、楽しげに談笑する凛達。

 

「・・・・・・」

 

その光景を見て、穂乃果は何かに気付いたかのような表情を浮かべ、彼女の隣に立つ紅葉はそんな穂乃果の様子に気付いて「どうかしたのか?」と声をかける。

 

「あっ、ううん。 ねえ、お兄ちゃん、絵里ちゃん」

「「んっ?」」

「私、このままで良いと思うんだ」

「このままって、μ'sがか?」

 

穂乃果の「このままで良い」という発言に対し、紅葉は「このまま」と言うのは今のμ'sのことだろうかと問いかけると、彼女はコクリと頷く。

 

「A-RISEが凄くて、私達もなんとか新しくなろうと頑張ってきたけど、私達は・・・・・・きっと今のままが1番良いんだよ! だって、みんな個性的なんだもん!!」

 

他のメンバーを見つめながら、新しい自分達になる必要はないと言い放つ穂乃果。

 

「普通の高校生なら、似た者同士が集まると思うけど、私達は違う! 時間をかけてお互いのことを知って、お互いのことを受け入れあって、ここまで来られた! それが1番、私達の特徴なんじゃないかな! 私はそんなμ'sが好き!!」

 

笑顔を向けながら、今を感じた素直な気持ちを穂乃果は紅葉や絵里に述べると、2人も笑みを浮かべながら、彼女に同意するように強く頷いたのだ。

 

「ふふ、えぇ! 私も!」

「俺もだ。 全員、面白い奴等ばっかりだしな! それを変えるなんざ勿体ないことだよな」

「えへへ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、遂に始まるμ'sのライブ。

 

穂乃果、絵里、海未の3人は海賊を模した衣装、真姫、にこ、花陽、凛、希、ことりは魔女を意識したと思われる衣装に身を包み、遂にライブがスタート。

 

このハロウィンイベントで披露する曲は・・・・・・「Dancing stars on me!」

 

そして、曲が終了し、何事もなくライブが終了すると会場に来ていた人々から大きな歓声があがり、ライブは大成功。

 

それを受けて、確かな手応えを感じた穂乃果は右拳を空へとかざし、改めて「ラブライブ優勝」を決意し、叫ぶのだった。

 

「よぉーし!! 絶対にラブライブで優勝するぞぉー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、高坂家の穂乃果の部屋では。

 

「も~う、巻数バラバラ、続き読みたいのにぃ」

 

穂乃果から借りていた漫画の続きを借りようと穂乃果の部屋へとやってきていた雪穂であったが、部屋の本棚は漫画が雑に置かれており、巻数もバラバラで目当ての漫画が中々見つからないことをボヤいており、雪穂はよくこんなので生徒会長が務まっているなと呆れていた。

 

「んっ? あーもう! 信じらんない! こんな書類まで散らかして!!」

 

さらに、雪穂は床に雑に放り出されていた1枚の何かの書類が入った封筒を発見し、苛立った様子でそれを仕方無く拾いあげると彼女は穂乃果が帰ってきたらお説教してやろうと封筒を机の上に置きながら心に決めるのであった。

 

「・・・・・・」

 

しかし、ふっと封筒の中身が気になった雪穂はなんとなしに封筒の中身の書類を見てみると、彼女はその書類に書かれていた内容を見て、驚愕の表情を浮かべるのだった。

 

「あ、ああ・・・・・・!! あああああ・・・・・・!! やっぱり・・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ギランボの館のあった場所にて・・・・・・。

 

「ぐっ、うぅ・・・・・・おのれぇ! ウルトラマン、よくも・・・・・・私の邪魔を・・・・・・! この恨みはらさでおくべきか・・・・・・!」

 

そこにはボロボロの状態でかろうじて生きていたらしい老婆の姿へと戻ったギランボが地べたを這いずり廻るように動いており、ギランボはこのままでは済まさないとオーブに対して強い憎しみを抱き、オーブへと復讐を誓うのだが・・・・・・。

 

そんな時のことだ。

 

「人の獲物を横取りしようとしてんじゃねえよ」

「ぬっ!? 貴様は・・・・・・! ぐああああ!!!?」

 

突如として、ギランボの目の前に現れた人物・・・・・・。

 

ギランボはその人物、ラグナによって邪心剣でギランボは切り裂かれ、ギランボは悲鳴をあげながら消滅するのだった。

 

「紅葉・・・・・・。 お前を倒して良いのは、俺だけだ」

 

そして、蛇心剣を掲げながら、ラグナは紅葉への打倒を誓うのであった。




みんな今回出て来る怪獣がギランボなの知ってたでしょ?
まぁ、紅葉達が仮装(っていうかほぼコスプレでしたが)するのはティガ本編からしてGUTSがしてましたしね。
そういやレナは猫の仮装してたな・・・・・・。
ついでにARROWネタやったのはARROWの二次を何度か書いてみたいなとは思っていたんですが、全くネタが浮かばなかった為です。
あと冒頭の文で読者に「あれ? 別の作品始まった?」と困惑させようかと思いまして・・・・・・。
だから今回、そういうネタを入れたいなと思いまして。
紅葉のイメージCVを日野聡さんにしてたのも連載当初からこのネタがやりたかったから。(ARROWにおけるグリーンアローの吹き替えは日野聡さん。 ついでに紅葉がSO-DO CHRONICLEの仮面ライダーゴーダを持っていたのもゴーダの声を日野さんが担当していた為です。
まぁ、タイタスと声が被る問題が発生してしまいましたが。
そしてグリーンアローの格好のまま紅葉が生身で老婆と戦うシーン入れようと思ったんですが、流れて気にこのままオーブに変身させた方が良いなと思ったのでカットしました。
冒頭のシーンはその名残みたいな?

かよちん、のんたん、真姫ちゃんはなんの仮装させるか思いつかなかった・・・・・・。
そのため彼女等がなんの仮装してるかの描写はカットしています。
尚、他のメンバーは穂乃果ちゃん以外全員中の人ネタです。
ちなみにμ'sメンバーがやった仮装の元ネタは以下の通り。

海未→ガンマ(陰の実力者になりたくて!)
ことり→青葉 初芽(RELEASE THE SPYCE)
凛→擬人化アギラ(怪獣娘)
絵里→S.O.N.G.隊員服の月読調(戦姫絶唱シンフォギアシリーズ)
にこ→ポプ子(ポプテピピック)

またライブ宣伝のシーンにいた仮装している人達やにこにーに話かけたグレーのスーツの人の元ネタは以下の通り。
ピンクのチャージ→後藤ひとり(ぼっち・ざ・ろっく)
ガワコスの人→仮面ライダーパンクジャック・エントリーフォーム(仮面ライダーギーツ)
胸に赤いサングラスかけたロボット→グレンラガン(天元突破グレンラガン)
グレーのスーツの男性→桐生一馬(龍が如くシリーズ)

桐生さんの中の人はポプ子の声もやってたし、龍が如くとコラボしてたからね。





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