CrackleCradle 4人目の冒険家 (光陽@海神)
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零話 プロローグ

主人公
東雲 荒士(しののめ あらし)
性別 男
年齢18
概要
富豪の東雲家の人間。幽紀の従兄弟にあたる。普段は生真面目で年上に対して礼儀正しかったり、女子に優しくしたりなど紳士的な一面をみせる。
その反面戦闘になると興奮し、アドレナリンが本来よりも大量に分泌され、人並みを超える身体能力を発揮する。また、人並みを超える怪力を誇り、愛用してる武器は大剣だったりガトリングガンだったりする。
天崎姉妹には普段から幽紀が迷惑をかけてることに申し訳なく思っている。
また、奈々に対してはともに協力をしていくうちに好意を抱くことになる。
エッチなことに関しては少し興味があるが幽紀以外の女性にあまり慣れていない。


 ここはとある屋敷、そこに一人の女性が住んでいた。髪は金髪で後ろに結んでおり、顔立ちのかなり綺麗な人だ。

 彼女は一人の男を屋敷に連れて、仕事の話をしている。そんな彼女の仕事、それは

「へぇ…こんなところにお宝があるのね。」

 トレジャーハンター。世界のあらゆる宝を命をかけてでも手に入れるロマンあふれる仕事だ。

「あのさ、俺を呼んだのはまさかこれを取りに行けとかじゃあないよね?」

 男は不安そうに言う。

「安心して、これは私が取りに行くわ。だからその間屋敷の方をお願いしたいの。」

 男はそれを聞いてホッとした。またこき使われるのは勘弁して欲しかった。

「なら良かったよ。頼むから俺を巻き込まないでくれ。」

 すると彼女は「はあ…」とため息をついた。

「情けないわね…あなた男でしょ?ましてや『東雲家』の当主の候補なのに…。それにあなただって似たような仕事してるじゃない。」

 確かにその男「 東雲 荒士(しののめ あらし)」(年齢18歳)はこの屋敷に住んでる彼女「東雲 幽紀(しののめ ゆうき)」(年齢18歳)の従兄弟にあたる。

「それはそうだけど…始めたのは幽紀が心配だから…」

 すると幽紀はまたため息を吐く。

「心配しないでちょうだい。あなただって私が強いことぐらい知ってるでしょ?」

 すると幽紀は鼻を高くして豪語する。

「確かに強いのは知ってるよ…でも…」

「なにか不安?」

「無駄にぐるぐる回るし、変なところでコケるし。」

 それを聞いた幽紀は「ぎくっ」と心になにか突き刺さるようなものを感じた。言葉と言う名の刃は恐ろしい。

「そ、それはたまたまよ!とにかく…私はそろそろ出るわ。じゃあ頼んだわよ。」

「わかったよ…。」

 そう言い幽紀はいつも仕事に持って行く銃剣付きのポンプアクションのショットガンを片手に出て行った。

 

 それから二日後…

 あれから二日が経ったのだ。幽紀からは何も連絡がこない、俺「東雲 荒士」は少し心配になった。

「幽紀またドジしたのかなぁ…。」

 はあ…とため息を吐く。しかし、このまま本当に帰らぬ人となったらどうしよう。幽紀とは昔からの中だし、何より大切な家族だ。

「こうしてはいられない!」

 そう言い俺は起き上がり、地下の武器庫へ行く。そこにはびっしりと銃や剣、槍など様々な武器があった。

「あ、あった!」

 手にしたのは普段仕事で持って行く一本の大きな大剣だ。これはトレジャーハンターの時に普段持って行くもの、すなわち「相棒」のようなものだ。

「行くか、無事でいてくれよ、幽紀!」

 そう言い下準備を整え、飛び出すように屋敷を出ていった。

 これは「もしもあの三人の中に一人男のトレジャーハンターを加えてみたら」というIFストーリーである。




どうもみなさん!光陽です!
早速謝罪したいことがあります、
艦これの小説全然書いてなくて本当にごめんなさい。
そして次はさきつね様への謝罪です。
さきつね様はこのような素晴らしいフリーゲームを作ったにも関わらず、私のような底辺な人間が勝手に小説を書いて本当にすみませんでした…
ほんの興味本位で書いたんです…はい…
では気を取り直して、読んでくださった皆様本当にありがとうございます。こんな作者ですが暖かい目で見守ってあげてください。
また、艦これの方ですが、もしかしたら削除するかもしれません。
完全に書くのを辞めるのではなくて、内容がgdgdなので新しく書き直そうと思います。今はまだ未定ですがもしご愛読してくださった皆様、自分の非力さ故のこの行動にお詫び申し上げます。また、これまで読んでくださって誠にありがとうございました。
では、今後もこのCrackle Crack 4人目の冒険家を書いていきますので皆様またよろしくお願いします。
では、次回をお楽しみに!


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一話 ステージ1

前回のあらすじ
ある日突然幽紀がトレジャーハントをしに出かけて行った。しかし、二日後になっても連絡がこない。
そこで心配になった荒士は様々な道具と武器を持ち、幽紀の捜索に乗り出すことにした。
果たして幽紀は無事なのか?


 ここはとある研究施設。ここに何かが隠されていると噂を聞きつけ、飛び出した幽紀。きっとこのどこかにいるはずだと確信する。

「俺だって、幽紀の速さに及ばないけど…」

 確かに幽紀は速い、しかも速いだけではない。恐ろしく強い。だが、ショットガンをリロードするときは基本スピンコックだ。しかもその理由は「カッコイイから」である。

「俺だってカッコイイところ、見せてやる!」

 そう言い巨大なダクトを進んでいたら、行き止まりに差し掛かる。下は開いていてこの先は降りて進まなければならない。

「やれやれ、降りなきゃいけないのか。」

 もしも降りた先で戦闘などなったら少し面倒だ。

 それでも、

「やるからには、派手にやるか!」

 そう言い飛び降りる。床に着地し、あたりを見回す。すると視線の少し先の方に先端に銃口をつけた二足歩行のロボットがこちらへ向かって歩いてくる。

「荒士、戦闘モードに入るぜ!」

 そう言い背中に背負っていた大剣を抜刀する。鞘は少し特殊な作りになっており、一部が開き、そこから素早く抜刀する仕組みになっている。

 そんな説明はさておき簡単に向こうは銃をこちらへ向けて構える。それに応じて大剣を盾にして走り出す。撃ち放たれた銃弾は盾となった大剣の前では無力に等しい。

「はあ!」

 掛け声とともに二足歩行ロボットを裁断した。そのまま二足歩行ロボットは破壊される。

「次行くか!」

 そう言い再び大剣を背負い、走り出す。「また目の前にあのロボット!」と思いきやあることに気がつく。

「ん?」

 足を止めて確認する。壊れていたのだ。銃弾を撃ち込まれたのだろう。確認するが幽紀が使ってるショットガンの可能性はない。

「ショットガンならもっと全体的に弾が当たるはず…。そんなことより早く幽紀を探さなきゃ!もしもこの弾が他のトレジャーハンターだったら!」

 そう言いすぐさま走り出した。

 施設内を移動するとなにやら奇妙な緑色の生物か平気かよくわからないものに遭遇する。口のようにパクパクと開いた部分と、四足歩行の足。まるで某リフォームの匠の亜種的なものに出会う。

「うわ…気持ち悪…。」

 するとその物体が首を伸ばし、荒士を飲み込もうとする。

「おっと!」

 すぐさま後方へと退がる。

「こいつも放っておくと危ないかもな…」

 そう言い大剣を引き抜き、突撃する。緑色が首を伸ばし、再び飲み込もうとするが、回避し、首を裁断する。そしてそのまま胴体に大剣を突き刺し、引き抜いた後に横に真っ二つにする。すると力なくそのまま倒れ込んだ。

「この感触からしたらおそらく生物か….しかしこんな生物を見たことがない…。……ここは一体……?」

 ここの研究施設は一体何を研究しているのか?それが気になってしまった。確かにここは色々な噂が立っているが、こんなものを生み出していたとは思っていなかったのだ。

「さて、早く行かなきゃな!」

 そう言い再び走り出した。

 

 次々襲いかかる兵器たちを全てなぎ倒していき、大分進んだところか、リフトがあったので荒士はそのリフトにのり上へあがる。

 その先には広い空間があり、そこにはアームの生えた奇妙な戦車があった。

「ん?」

 しかしよく見るとその戦車は起動し、ちょこまかと動く何かと交戦しているのがわかる。

「あれは?なんだ?」

 荒士はあらかじめ持ってきていたスコープで確認する。するとそこには。

「あ!」

 そこには見覚えのある顔があった。拳銃を持ち、戦車の攻撃をかわしながら戦う一人の少女がいた。白いショートヘアー、セーラー服のジト目の少女。そして彼もその存在と名前を知っていた。

「天崎…奈々?」

 天崎 奈々(あまさき なな)。16歳。度々幽紀がトレジャーハントをした時に会うライバル天崎 涼子(あまさき りょうこ)の妹だ。基本的に彼女とは会話はしたことがあるがそっけない反応を見せている。それでも悪い人ではないとあの時は判断し、むしろお互い振り回されてる者同士(?)として共感はしていた。

「助けなきゃ!」

 何故かはわからないが荒士は唐突にそう思い、高く飛び上がり叫んだ。

「退がって!」

「⁉︎」

 その声に気がつき奈々は後方へと退がる。しかし、その戦車が奈々に向かってアームを伸ばす。

「しまった…!」

 奈々は回避が間に合わないと思い覚悟したのか目を瞑る。その瞬間。

 キーン!

 凄まじい金属音が辺りにこだます。奈々が目を開けるとそこには、

「!」

 戦車の伸ばしてきたアームを大きな剣で裁断する一人の男の姿を見た。もちろん奈々はそれが誰かを気がつく。

「どうして…?」

 しかしそんなことを気に留めず荒士は連撃へと持ち込もうとする。反対側のアームで掴もうする戦車、しかしアームは回避され、荒士が高く飛び上がる。そして勢いをつけ、全体重を乗せ、大剣を下にして急降下。そのまま大剣が突き刺さり、戦車の行動は止まった。

 すぐさま大剣を引き抜き飛び上がると、そのあと数秒後に戦車は大爆発を起こし、大破した。

 

 戦闘を終えると、すぐさま荒士は奈々に話しかけた。

「ええと…まあ、久しぶり。」

「…はい、お久しぶりです…。」

(相変わらず口が少ないな…)

 少し話しにくい相手だとはわかっていたが、せめて久々に会ったのだからもっと仲良くはしておきたい。そんなことを考えている荒士に予想外なことが、

「その…ありがとう…ございます…。」

「え?」

 珍しいことに奈々の方から話しかけてきたのだ。慌てて荒士は、

「あ、ああ。どういたしまして。それと、いつも幽紀が迷惑かけてすみません…。」

 返事と普段の詫びをした。

「…気にしないで下さい……。……お姉ちゃんも割と嫌いじゃないみたいですから……。」

 そう言われて気がついた。普段なら姉の涼子のサポートに回ってる奈々が今回一人でここにいるのだ。

「ええと…奈々ちゃん?涼子さんはどうしたの?」

 すると少し暗い顔をする。まあ元からジト目だからそんな風にも見えるが…

「実は…」

 

 二日前、

 涼子はいつも通りのテンションで宝の情報を耳にした。

「奈々!またお宝の情報を手に入れたよ!」

「…うん。」

 奈々は普段通りに反応する。熱血で血の気の多い姉、それに相反して冷静沈着な妹。本当に姉妹なのだろうか?

「それでね!私行こうと思ってるんだけど!奈々はどうする?」

「…いかない。」

 すると涼子は「えー!」と少し残念そうに反応する。

「宝の8割はあげるよ?」

「…いかない。」

 涼子は「はあ…」とため息を吐く。すると諦めたのか。

「わかったよ奈々。無理強いしても奈々が嫌がるだろうし、準備が出来たら私いくね!」

「…うん…気をつけてね。」

 そう言い手早く準備を済ませて、涼子は出て行った。

 しかしそこから二日後、未だに涼子は帰ってこない。いつもなら遅くても1日で帰ってくるのだが…

「…帰ってこない…。」

 奈々は少し涼子のことが心配になった。血の気の多い涼子は熱血だが、脳筋で単純なため、罠にかかって捕まってないだろうかと。

 そして、奈々は決意した。

「…行かなきゃ…」

 そう言い家の中を弄ると、以前姉のトレジャーハントについて行った時に家の蔵から発掘されたハンドガンを手に取る。

「…」

 そして姉を探すために家を出て行った。

 

「なるほど…その涼子さんが向かった場所がここ?」

「多分…」

(多分⁉︎)

 その一言に荒士は驚愕した。どう考えたって調べたりするだろうが、調べもせず勘を頼りにここにきたのだ。なんと恐ろしい…

「まあ、でもよくあの二人はいっつもこういう時に出会うから二人ともここにいる可能性は高いな…」

「….ショットガンの人も…?」

 どうやら幽紀のイメージはショットガンを持ってる人らしい。警察に言ったらそれまずくない。

「まずいね。」

「?」

「いや、何も。とにかくせっかくだし一緒に行動しよう。お互いに何かあった時にカバーし合える。宝も山分けする。悪い話ではないだろう?」

 すると奈々はこくりと頷く。しかし、一言だけ静かに添えた。

「わかりました…ですがお宝はいらないです…。」

「え?じゃあなんでトレジャーハンターなんかに?」

 すると奈々は少し考えてからこう答えた。

「お姉ちゃんがしてたから…。」

「は、はあ…。」

 こうしてしっかり者の荒士と無口で少し不思議な天崎姉妹の妹奈々の二人のミッションが開始された。




どうも!光陽です!
ある程度溜まっているのでちまちまと投稿して行こうと思います。
奈々ちゃんかわいいですね、最高です><
榛名嫁とか言ってましたが最近久々に妖夢の方向に傾きつつもあります。
全く艦これ出来なくなってから、徐々に熱が冷めたんだと思います。
それでもまだ榛名嫁を続けて行くつもりですので、皆さんよろしくお願いします!
では、次回もお楽しみに!


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二話 ステージ2

前回のあらすじ
幽紀を助けに施設へ潜入した荒士。そこで出会ったのは幽紀のライバルである天崎涼子の妹、天崎奈々だった。
荒士は奈々がなぜここにいるの伺うと、姉の捜索だと言う。
目的の一致から共に行動することになった。
しかし奈々からはあまり口を開いてくれない。
そんな関係でうまくやりとり出来るのだろうか?


 二人で行動することに決めた荒士と奈々。次の施設へ移動するためには地下を通らなければならないことを知った。

「なるほど、地下から行ってそこから上に上がるって感じか。」

「はい、それ以外道はないみたいです…。」

 なんだか少し話してくれるようになったな。ジト目なのはやはり変わらないみたいだが、ちょくちょく話しかけていたり、普段のお互いの身内の話をしてるうちに少しは心を開いてくれたかな?

 そう思う荒士。すると奈々は気がつくと歩き始めてた。

「待ってよ奈々ちゃん!もしも罠とかあったら」

 そう言った途端荒士は何かに気がついた。

「奈々ちゃん危ない!」

 そう言い荒士は即座に奈々の手を引いた。

「きゃっ!」

 ザッ!

 地面から鉄の杭が突如飛び出してきた。うまい感じに隠れていたが地面をよく見るとその場所から少し鉄の尖ったものが飛び出ていたことに気がついたのだ。

「奈々ちゃん怪我はない?」

「は、はい…すみません。早くお姉ちゃんを助けようと思いまして…。」

 そう言い奈々に手をかそうとした時、奈々の姿を見て荒士は顔を赤らめた。

 先ほどの杭をギリギリで避けることができたが一部服が破け、白い素肌が露わになっていた。特に、腹部のあたりと破けたスカートからみせる白いパンt

「何をジロジロ見てるんですか…?」

「え?あ、あ、ええと…///」

 奈々は少し冷たい目で荒士を見てため息をつき

「あ、あまりジロジロ見ないでくださいね…///

 異性に肌を見られるのは慣れていないので…。」

「ご、ごめん…。」

 やはりきめ細かい白い肌と破れたスカートから見せた白いパンツが脳裏に浮かぶ荒士、まだあのことを気にしており、しばらくは顔を赤くしたままだった。

 

 地下に降りるとあたりは暗く、奥までは見渡せない程だった。荒士はあらかじめ持ってきたライトを左手に持ち、右手に懐に隠していたコルトパイソンを取り出した。

「銃、使うんですね…。」

 奈々は意外そうに言う。

「ああ、もともと俺はヒットマンをしてたから武器ならなんでも使えるよ。」

 そう言い胸を張って言うがあまりいい反応はしてくれなかった。

 少し進んでいると灯の先に巨大な花が咲いていた。

「デカイな、なんだこれは?」

 そう思い荒士は近づいて行った。その瞬間

「荒士さん!」

 突如その花からツルが伸びてきた。なんとかギリギリで回避したが花から突如牙が生え、噛み付こうとしてきた。

「くっ!」

 このままでは避けきれないか⁉︎ならば

 バン!

 判断する前に銃声が響き渡る。その放たれた銃弾は花の茎の部分を貫き、花は倒れ、その場で枯れた。

 銃弾がした方向を向くと、奈々が自分の持っていたハンドガンで花を撃ち抜いたのだった。

「ありがとう奈々ちゃん、助かったよ。」

「いえ、まさかあの花もクリーチャーだったとは…。」

「クリーチャー?」

 荒士は聞き慣れない言葉に困惑する。

「はい、ここの研究施設では戦争に使うためのクリーチャーを製造しているという噂が立っています…。そしてその噂は本当だったみたいです…。」

 そのことは流石に聞いてなかったので少したまげた。

「はあ、そんな恐ろしいのを作ってたのか…。」

「はい…もし最悪な場合を考えると…….。」

 少し奈々は寂しそうな顔をする。内気な彼女だから少しマイナスの方向にも考えてしまうのも無理はないだろう。

「大丈夫だよ、あの二人ならきっと無事だ!だから俺たちも早く迎えに行こう!」

「…はい!」

 奈々ちゃんもだいぶ口を聞いてくれるようになってきたな。なんだろう、嬉しいような、少し違うような…

 荒士は心の中にその思いをしまいこんで次へと向かう。

 

「たあっ!」

 ズバッ!

 スライム状の生物を大剣で切断すると今度は二体に分裂した。

「奈々ちゃん!」

「はい!」

 分裂したスライムに鉛弾を撃ち込んだ。するとスライムは連撃に耐えれず破裂し、水のように溶けていった。

「ふぅ、さっきからクリーチャーにしか会ってないな。クラゲだったり、水生植物みたいなのだったり、今度はスライムか…」

「そうですね…。あ、でも今思ったんですけどあのクラゲってメトr」

「奈々ちゃん、やめておこう。」

 確かに似たようなものは出てくるが、ここは名前を出してはいけないきがする。

「あっ…(察し)」

 奈々もその視線から理解した。

 そして次に進んでいくと奥の方に何やら岩のようなものがある。

「行き止まり?」

 地下は少し暗いため、よく見えない。

「いえ、そんなはずは。」

 しかし、ライトを満遍なく当てるとその正体が何かを理解し、お互い驚愕する。

 グルルルル…

「奈々ちゃん…あれ、まさか…。」

「は、はい…そのまさかです…。」

 そこにいたのは普通に育ってもまずこんなサイズにはならないだろうというレベルで巨大なワニだった。そしてそのワニは獲物を見つけたらしく、今にも戦闘態勢へと移ろうとしていた。

「やるしかないか!」

「はい!」

 荒士はマグナムを握り、奈々は拳銃を構え、二人の銃が火を吹く。しかし、強固な皮膚は二人の銃弾を寄せ付けなかった。

「そんな…⁉︎」

「弾いた⁉︎こっちはマグナムだぞ⁉︎」

 マグナム。人間の頭に撃てば簡単に吹き飛び、ワニであろうと脳天を貫けば即死するほどの性能を持つ片手銃。その反面反動が大きく、初心者が片手で撃てば脱臼はするだろう。しかしそんな銃ですらあのワニにダメージを与えることが叶わなかった。

 グオオオオオ!

 そのまま巨大なワニはこちらへ接近する。

「奈々ちゃん、一旦逃げよう!」

「わかりました…!」

 そう言い後方に退がる。しかし、ワニの走る速度は噂どうりかなり早い。

「奈々ちゃん、そのまま逃げて!」

 荒士はそう奈々に告げ立ち止まる。

「⁉︎荒士さん…?」

「やつと戦う、こいつなら!」

 そう言い真っ正面から立ち向かう。

 天井が低いから高くは飛び上がれない。だが、このままこのスピードで大剣を突き刺せばなんとかなる。

 そう思い、一気に突撃したが

 カーン!

「何ッ⁉︎」

 ワニは大剣を口で思いっきり噛み、動きを止めた。

「ちっ!」

 ワニの目に蹴りを入れて、怯んだところに大剣を引き抜き。即座に退がる。

「奴に弱点はないのか?」

「わかりません。戦って行くうちに見つけ出すしか方法がありません。」

「なら俺が前に出る、奈々ちゃんは後方で支援をお願い!」

 そう言い荒士は再び走り出そうとしたが奈々がその手を掴んだ。

「荒士さん…無理はしないでくださいね…?」

 荒士はそっと奈々の手を優しく掴み離す。

「大丈夫だよ、俺を信じてくれる?」

 荒士は奈々を見つめる。奈々は少し頬を赤く染めて「はい…」と返事をする。

「よし、じゃあ行ってくる。」

 そう言い荒士は今度こそワニに接近する。ワニもそれに気がつき遅いかかる。先行でワニが噛み付こうとする。だが、荒士は後方に回避し目に鉛弾を打ち込む。弱点ではないがここが唯一外側で効く所だ。

 まて、外側…?

 荒士は1つのことに引っかかる。そして1つの案を思いついた。

「奈々ちゃん!奴が口を開けた時に銃を撃ってくれ!」

「⁉︎」

「こいつが硬いのはきっと外側だけだ!きっと中は柔らかいはず!俺が囮になるから、チャンスを見計らって撃ってくれ!」

「わかりました。」

 どうやら口の中に銃弾を打ち込むらしい。

 しかし、そんなやりとりのすぐ直後、ワニが再び接近し、突撃する。

「ぐあっ!」

 タックルが直撃し、後方へと荒士が飛ばされる。

「ぐぅ…」

 起き上がろうとするが大剣がワニの奥の方にあることに気がつく。手放してしまったのだ。目の前にはどんどん距離を詰めるワニ、そして大きく口を開け、捕食を試みようとする。

 だが、むしろ好都合だった。今こそワニは逆に無防備だった。

「奈々ちゃん!」

 その掛け声の直後、銃声が響き渡り弾丸がワニへと遅いかかる。そのままワニの口へと行き上顎を貫いた。

 グオオオオオ!

 ワニがあまりの痛さに怯み出す。その好きに前方へとロールし、大剣を取り突撃する。

「はああァァァ!」

 そのままワニの首に大剣を振りかざした。ワニの首と体はあっけなく二つに裁断された。

 なんとかワニを倒すことに成功した。

「ふう…なんとか隙ができたから倒せたな。ありがとう奈々ちゃん。」

 すると奈々はため息を吐き、口を開く。

「もう…こっちは心配しましたからね。あまり無理はしないでください。あれで私が外してたらどうするつもりだったんですか!」

 奈々は頬を膨らませて怒る。

(それにしてもだいぶ口を開いてくれるようになったな。本当は奈々ちゃんは人見知りなだけなんじゃ…?)

「聞いてるんですか⁉︎」

「あ、ああ、ご、ごめん。ええと…その…やっぱり男だからこそさ、女の子をちゃんと守らないとなって思って…。」

 すると奈々は顔を赤くした。

「そ、そんなふうに言われると…(ボソ」

「何か言った?」

 すると奈々はビクッ!と体を震わせる。驚いたのだろう。

「な、なんでもないです!は、はやく行きましょう。」

 そう言い奈々と荒士は先へ進むことにした。

 

 ようやくこのフロアの最深部までたどり着く。

「ここはなんだか広いな…。」

「確かにそうですね、まあ、気にせず先に進み…きゃっ!」

 そう言いかけたところで荒士は奈々の手を引き後方へと退がった。

 じゃぶっとしたに溜まっている水の音が響き渡る。それとともに

 ズシーン!なにやら天井から降ってきた。

「な、なんだあれ…?」

 奈々はその声に反応して同じ方向を見る。すると、そこには

「ゲコ…ゲコ…」

 先ほどのワニよりも比較的に大きなカエルがそこにいた。

「な、なんなんですかあれ⁉︎」

 さすがにそのサイズに奈々は驚く。しかしそんなことを聞いてる暇などない。カエルは飛び上がり、荒士達を襲う。

「奈々ちゃん!」

 そう言い荒士は奈々を抱きかかえ、飛び上がる。先ほどいた場所にカエルが落ちてきた。

「ありゃやばいな…。奈々ちゃん、大丈夫?」

「は、はい…。」

 地面へと着地し、荒士は大剣を、奈々はハンドガンを構える。

「奈々ちゃん、準備はいい?」

 そう言い奈々の方を横目で見て、荒士は尋ねる。

「はい!もちろんです!」

 そう言い奈々も荒士を横目でみて答える。

 そして二人は同時に巨大ガエルめがけて走り出した。




Crackle Cradle 4人目の冒険家を読んでいただきありがとうございます!光陽です!
最近友人から酷いあだ名ばかりつけられます。泣きそうです。
それでも挫けず前を向きます。
書き始めた当初は恋愛要素を入れるか悩んでましたが、結局入れることにしました。
これからの奈々ちゃんの感情が変化していきます。想像するだけでニヤけが止まりません。
では、次回もお楽しみに!


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三話 VS大ガエル

前回のあらすじ
地下に降りた奈々と荒士。地下は様々な化け物やクリーチャーが数多く潜んでいた。
時に人食い花に会い、時に大きなワニを見た。
そして、たどり着いた先に待っていたのはワニよりもはるかに大きいカエルだった。
しかし奈々も荒士もためらわず前へ走り出す。
果たして彼らの運命は?


 二人は同時に巨大なカエルめがけて走り出す。そのまま荒士は凄まじい速度でカエルへ接近する。

 ゲコ

 カエルがアホみたいな顔でこちらへ振り向く。すると体からなにやら透明な粘液を噴出させる。

「⁉︎」

 荒士はそれを華麗にかわす。しかし、

「きゃあっ!」

 すぐさまその声の方向を向く。

「奈々ちゃん!」

 奈々は先ほどの透明な粘液に引っかかり、身動きが取れない状態になっていた。

 するとカエルは舌を伸ばし、奈々に舌を巻きつける。

「ああっ!」

 そのまま引きつけられ、そのまま丸呑みにしようと口をもごもごと動かす。

「うっ…ううっ…。」

 だが奈々は必死にしがみつき、抵抗する。

「させるかよ!」

 俺はカエルの顎の部分にサマーソルトを決める。少しよろけて奈々を口から離す。落ちる奈々を受け止めて、少し距離を置く。

「大丈夫?」

「は、はい…なんだかいっつも助けられてばかりでごめんなさい…。」

 奈々は少し悔しそうな顔をする。

「気にしないで、女の子を守るのが男の役目だから。」

 そんな会話をしてるとカエルが今度は荒士を狙い、舌を伸ばす。

「のわっ!」

 その場で少し跳んで回避、すぐさま迫った二発目も横に回避、三発目も反対側に回避して、接近する。

「クソガエルめ、叩き斬ってやる!」

 そう言い跳び上がり、裁断しようとするがカエルはその場で跳び上がった。

「なっ⁉︎」

 そのまま着地した荒士にカエルは自分の前足で荒士を踏みつけた。

「ぐはぁっ!」

「荒士さん!」

 そしてそのまま前足で荒士を突き飛ばした。

「ぐあぁぁっ!」

 そのまま吹き飛び、後方の壁へと叩きつけられた。飛ばされた際に大剣を手放してしまい、カエルの足元に大剣が落ちた。

「う…ぐっ…ガハッ…。」

「よくも…。」

 奈々はハンドガンをカエルにめがけて放つ。ところどころ血は出ているが致命的なダメージは与えられないだろう。

 カエルはまた奈々へめがけて舌を伸ばす。奈々はそれを見計らい回避した。

 しかし、また粘液を放ち跳び上がった奈々を絡める。

「ひゃっ!」

 そして今度こそ舌を伸ばし、再び奈々を巻きつけ、なんと奈々を地面に叩きつけた。

「ああああっ!」

 あまりの苦痛に悲鳴も途切れる。そしてまた口を動かし、今度こそ奈々を捕食しようと試みる。あのダメージを負い、さすがに抗う力もそう残ってないだろう。

「奈々…ちゃん…うぐっ…。」

 どうする?

「…助けなきゃ…」

 どうやって?

「…倒さなきゃ…。」

 荒士の全身に何かが走るような感覚がする。

 またこの感覚だ、あの時の…涼子さんと戦った時以来だ…。

 ドクン…

 でも違う、前回とこれは違う…。

 ドクンドクン…

 以前のは強敵と戦えたことへの興奮、でも、今は違う…

 ドクン、ドクンドクンドクンドクンドクン

 徐々に鼓動が早くなるのがわかる。それとともに湧き出る感情、それは、怒りだった。

「よくも…奈々ちゃんを…!」

 そのまま立ち上がる。だが、それとともに

「ひうっ。んんーっ」

 等々奈々は飲み込まれてしまった。その光景を見て荒士の怒りは爆発した。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 そのまま一直線に走り出す。おそらく消化しようとしてるのだろう。その場からカエルは動かない。

「奈々ちゃんを!」

 カエルに目掛けて蹴りを入れた。かなり怯んでるようだ。

「奈々ちゃんを!!」

 カエルは舌を伸ばすが、ギリギリでかわしてそのまま拳でカエルの腹部を連続で殴る。

「奈々ちゃんを返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 そして最後に重たい一撃を決めた。

 ゲコッ!

 そしてカエルの口から何かが吐き出された。そう、先ほど飲み込まれた奈々だった。

「けほっけほっ…」

 少し咳き込んだがなんとか無事なようだ。

「ブチ殺す…必ず…」

 そう言い足元にあった大剣を拾う。カエルは再び高く跳び上がる。そしてかなり高いところに到達すると、そのまま荒士目掛けて急降下した。

 そして、奈々はなんとか立ち上がる。だが、目の前で急降下してくるカエルの下にいたのは荒士だと気がつき、声を張り上げる。

「荒士さん!」

 ズーーーン!

 荒士は重たい体重の下敷きになってしまう。

「あ、ああ…。」

 奈々はその場で崩れ落ちた。間違いなく、あんなものを喰らえば即死だろう。しかし、

「え…?」

 奈々は再び驚愕した。徐々にカエルの体が浮き始めてるではないか。そして一人の男がその隙間から姿をあらわす。

「ぐぐぐ…ぬぬぬっ…。」

 なんと、荒士はその緑色の巨体を持ち上げているのだ。そして、

「おどりゃあ!」

 そのまま壁へと投げつけ、カエルは叩きつけられる。カエルは怒り、舌を伸ばし、攻撃しようとするが荒士はスレスレでかわし、舌に大剣を突き刺した。

 カエルはその場でもがき苦しむ。慌てて舌を戻そうとするが、大剣が突き刺さり、戻せない上に身動きが取れない。そのまま荒士は走って接近する。カエルは慌てて跳び上がろうとした瞬間。

 バンバンッ!

 2つの目を撃ち抜かれ、さらに身動きが取れなくなった。奈々が撃ったのだ。そして荒士はマグナムを取り出し、カエルの口の中の舌根の部分に構える。

「終わりだ」

 そのままあたりに銃声が響き、口から大量の血と舌を出したまま死んでいった。

「ううっ…」

 そのまま鼓動が通常通りに収まると、そのまま倒れそうになる。

「荒士さん!」

 奈々は慌てて荒士の元へ駆け寄る。

「だ、大丈夫だよ奈々ちゃん…。さき、急ごうか…。」

 なんと荒士は持ち越そうとする。

「荒士さん。」

 奈々は荒士の体を支える。

「ありがとう…奈々ちゃんは優しいんだね…。」

「当然のことです。今私たちは仲間なんですから。」

 荒士はその言葉を聞き、笑みを浮かべる。

「ははっ…仲間…か…。涼子さんと幽紀ももっと仲良くすればいいのにね…。」

「ふふふ、そうですね…。」

 そう言い戦闘エリアを抜けた。

「ううっ…」

 しかし、とうとう荒士の体の力が抜けて、その場で倒れてしまう。

「荒士さん。」

 そのまま荒士は意識を失ってしまった。




今回も読んでいただきありがとうございます、光陽です!
ゲームでも小説でも味気ないステージ2、書くの難しすぎます><
ここが一番出来が悪いと思います。本当に申し訳ありません。
こんなダメ著者ですが、暖かい目で見守ってください。
では、次回もお楽しみに!


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四話 涼子と幽紀

前回のあらすじ
巨大ガエルと対峙する2人、その力はかなり強力で荒士と奈々は苦戦を強いられる。そこで突如荒士の体に異変が起こる。突如身体能力が大幅に向上し、一気に巨大ガエルを倒すのだった。
しかし、その力の反動か荒士はそのまま気を失い、倒れてしまった。

キャラ紹介
東雲荒士
東雲幽紀の従弟。基本苦労人

天崎奈々
基本無表情で無口系の女子。
人見知りが強いが「なんかやってみたら出来た」系の勘による精度の高い射撃を武器に姉の天崎涼子に振り回される。
以前にあった時から荒士に対しては少し興味を持っているが、なかなか表に出さないでいる。


 今から二日前の、とある施設にて。

「にっひっひ〜お宝み〜っけ♡」

 お宝をとうとう見つけてテンションの高くなる一人の女性。青く長い髪を1つに結び、ショートパンツと胸にサラシを巻いただけというなんとも無防備な軽装でやってきたのは天崎奈々の姉、天崎涼子だ。ちなみに胸はデカい。Dはあるだろう。

「さて、いただきますか。」

「あらあら、どこのコソ泥かと思えば涼子じゃない。」

 その声の方向に振り向く。そこにいたのは

「げっ、幽紀…」

 そこにいたのは金髪でその髪を上にあげて括り付けている一人の女性。そう、プロローグでも登場した東雲幽紀だ。

「これは奇遇ね、またあなたに会うだなんて。」

 そう、この二人はよくお宝探しをするたびに遭遇し、いつもお宝をめぐって争ってる二人でもある。

「こっちもそう言いたいところだけど、悪いけどこっちは一人しか入れないの!だから大人しく引き返してよね!」

「ふーん、本当なんでしょうね?」

「ええ本当よ!嘘なんてつかないわ!」

 注意書きには、しっかりとそのことが書かれていた。しかし、幽紀は

(カメラに映らなければ問題なんてないわ…。)

 そう思い、涼子に挑発するかのように言う。

「じゃあ、本当か試してあげるわ。」

 そう言い幽紀はいつもの無駄に洗礼された無駄のない無駄な動きでこっちへ接近し涼子目掛けてショットガンの先端の短剣を突き刺そうとする。

「きゃっ!」

 悲鳴とは相反して速いスピードで攻撃を回避した。

「ちょっと、あんた何すんのよ!」

「だってあなたのことだしまた嘘つくのかなって思って。」

 バタン!

「え?」

「あ…」

 本当だった。

「本当にしまっちゃったじゃない!」

「またあなたがくだらない冗談を言ったと思ったのよ!」

「だから本当って言ったのよ!」

 そう言い二人で口喧嘩を始めだした。

「そ、そうだ!ねえ幽紀?私たちで協力してなんとか手口を見つけない。」

「嫌よ。」

 即答だった。

「そ、そんなこと言わないでよ〜。じゃ、じゃあ二人でお宝を山分け」

「嫌。」

 また即答だった。

「ねえ、いいこと思いついたの。」

「え?なになに?聞かせて!」

 涼子は興味津々で聞く。もしかして何か秘策があるのかと。しかし、突きつけられたのは現実と短剣付きのショットガンだった。

「こうすれば一人になるじゃない?」

 そう言い引き金を引こうとした瞬間に銃口を違う方向に向けて、無駄撃ちさせた。

「はぁっ!」

「くっ!」

 お互い接近戦で激しい攻防を繰り広げる。そして、涼子はショットガンを受け止め、幽紀はナイフをもつ手を受け止める。

「「だったら今日こそ…」」

 そう言いお互い離れて距離を少しおく、

「「決着をつけようじゃない!!」」

 そう言い涼子は幽紀へ接近する。幽紀はショットガンを撃つが涼子は飛び上がってかわし、ナイフを突き刺そうとする。しかし幽紀はそれをすらっと回避する。

 お互い一歩も譲らない攻防は4時間まで続く。

「はあ、はあ…さすがね涼子…なかなかやるじゃない…」

「はあ、はあ…あんたも変わってないわね、涼子!」

 そう言いまたそれぞれの武器を構える。

「相変わらず、無駄な動きが多いわね!」

「相変わらず、無駄に乳がデカイわね!」

 そう言い再び紙一重の攻防を繰り広げた…。

 

 そして、10時間後…

「ふぇ〜…もうだめぇ〜。」

 疲れ切って倒れる涼子。

「うう…私も…」

 幽紀も同じように倒れてしまう。

「ねえ…もうやめにしない…?あたしつかれた…。」

「賛成ね…。」

 そう言いお互いその場で寝っ転がる。

「あー…お腹すいたー…。」

 涼子のお腹がギュルルと鳴る。

「私も…。」

 幽紀のお腹も涼子に続いて鳴る。涼子はくすっと笑うと幽紀は顔を赤らめてそっぽを向いた。

「ねえ…あたしたちで協力しない?」

 涼子はこの提案をする。

「賛成…。」

 幽紀もさすがに疲れ切ってここから抜け出すことを優先とした。でもどうしても幽紀は諦めきれないことがあった。

「お宝、どーするのよ….。」

 幽紀がそれを聞く、涼子は少し考えた後にこう答えた。

「二人で山分けは…?」

 幽紀は迷うことなどなかった。二人で協力して抜け出すからには宝を独り占めするのも申し訳ない。ここは意見を飲み込むことにした。

「賛成…。」

 そしてその部屋には二人の乱れた呼吸の音とお腹の鳴る音が少しの間響いた。

 

 そして今に戻る。

「…あれ…?」

 荒士は目が覚めた。

「ここは…どこだ…?」

 そう言い起き上がると、なにやら狭い空間にきた。横長の椅子がいくつかあり、ロッカーが何個か並んでる。おそらく作業員か何かの更衣室だろう。

「なんでこんなところに…。」

 そしてあることに気がつく。そう、奈々がいないのだ。

「奈々ちゃん?」

 そう言い我に返る。

 思い出した、体に負担をかけすぎて倒れてしまったこと、奈々ちゃんがきっとここまで運んでくれたんだろう。でも奈々ちゃんはどこへ?

 そう思い、近くのドアを開けた。

「奈々ちゃん⁉︎…ぬわっ⁉︎」

 その目の前の光景を素晴らしいものだった。

 上半身裸の一人の少女が自分の体に応急処置をしている。肌はきめ細やかで白く、美しい。先端は綺麗なピンク色で、胸はまだ丘程度の未成熟。その白い髪は普段後ろで結んで、少しあげてるが。今は完全に解いている。

 慌てて目を手で覆って隠す。嘘、実は隙間からその肌をチラチラと見る。やはり荒士も男なのだ。

 するとこちらに気がつき、いつものジト目で振り向く。

 まずい…さすがにまずい…。

「え、ええと…ご、ごめん!そ、その…で、でるから!」

 奈々が口を開く。

「目、覚めたんですね。」

「え?」

 あれ…動じない…?

 荒士は女の子はこういう時叫ぶのかと思っていたが、その予想を上回っていた。

 すると奈々はため息を吐く。

「あれほど無茶をしないでくださいと言ったはずです…。」

「ご、ごめん…。」

 そう言い奈々は立ち上がる。そして服を手に取る。

「話は後で聞くとして、それよりも1ついいですか…?」

「え?う、うん。」

 何か奈々が言いたそうなので荒士は聞くことにした。

「いるのは構いませんが…あまり見ないでください…///」

 奈々は顔を赤らめて言った。

「ご、ごめん…///」

 

 準備が出来た二人は更衣室を後にして、先へ進むことにした。

「行きましょ」

「待って。」

 そう言い荒士は奈々の動きを止めた。奈々は首をかしげる。荒士は上へと飛び上がり、大剣を振るう。すると何かが切れる音がした。そして奈々のいる場所に着地する。

「ワイヤーが仕掛けられていた。あのまま進んでたら首が飛ぶところだったよ。」

 そう考えるとなかなか恐ろしいことをしてくれるもんだと思った。

「見えたんですか?」

「うん、一応ね。ここには他にはないみたいだから行こうか。」

「はい」

 そう言い上へと上がり、進むことにした。

 上の階へと上がるとより研究所っぽいところへとたどり着く。

「なんだここ?」

 そう言いあたりを見渡す。映画とかでありそうな光景だ。

「バイオ○ザードみたいですね。」

「そうだね。」

 奈々ちゃんってもしかしてゲーマーなのかな?

 心の中でそう思うが、口にはしないでおこう。

「俺が後ろを見るよ、背中は任せて。」

「助かります。」

 そう言い荒士は奈々の後ろに回る。その際に奈々の後ろ姿を見る。

 やはり身長は低い、学校でも背の順では前の方だろうか?

 荒士はふと奈々のうなじあたりに視線が行ってしまう。すると先ほどみた奈々の裸を思い出してしまい、顔を赤くする。

 すると奈々が視線に気がついた。

「どうかしましたか?」

「え?あ、いや、何にも…。」

「そうですか…。」

 するとジト目でこちらを向き、

「やましいこと…考えてませんよね?」

「そ、そんなわけないよ!」

 慌てて否定した。だが、耳まで赤くなった顔を誤魔化すとこをできるはずもなく。

「どうでしょうね?」

 奈々は少し冷たくそう言い放つ。

 少し心が痛い。

 

 少し進むとなにやら扉の閉ざした部屋を見つける。

「奈々ちゃん…ここから誰かの気配がする。」

「はい、私も感じました。」

 すると向こうから声が聞こえた。

「ねえ!誰かいるの⁉︎ねえ!」

 その声に聞き覚えがあった。そして何よりも奈々が反応する。

「お姉ちゃん⁉︎」

「涼子さん⁉︎」

 そしてもう一人の声も聞こえた。

「荒士⁉︎いるの⁉︎私よ、幽紀もいるわ!」

「幽紀!無事だったんだね!」

「奈々、あんたの持ち前の勘でそこのドアを開けてくれる。外にパスワードの入力画面があるから!

「わかった!」

 そう言い奈々は適当に四桁の番号を押す、すると二、三回程繰り返しただけでドアが開いた。

「凄い…」

「助かったー!」

 涼子がその場で倒れ込んだ。荒士はすぐさま幽紀の元へと駆け寄る。

「無事で良かった!心配したよ、幽紀!」

 そう言い幽紀に抱きついた。

「ちょ、ちょっと!恥ずかしいからやめて頂戴!」

 そう言い幽紀は振りほどく。

「あ、悪い。ついつい嬉しくてな。でも、身内だしそんなにきにすることじゃあないと思うよ?」

「そういう問題じゃないわよ…バカ…。」

 そう呟く。

「奈々ー、お腹減ったー!」

 涼子はその場で駄々っ子のように足をジタバタさせる。

「涼子、あんたまたそれ?」

 そう言った途端幽紀のお腹がなる。

「うう…///

 恥ずかしいけど…私も…」

「「は、はあ…。」」

(世話が焼けるなお姉ちゃんは)

(世話が焼けるな幽紀は)

 2人とも心の中で声を揃えた。似た者同士とはこのことを言うのだろう…




今回も読んでいただきありがとうございます!光陽です!
ようやくCCガールズ集合です!
周りは女子だらけに対して荒士君は1人男、少し羨ましいですね。
でも作者は非モテ、チキン、あてもないという希望のない男子です…。はい…。
今回に奈々ちゃんのキャラ紹介を入れてみましたが、少し遅すぎました?ちなみに次回のあらすじには涼子さんと幽紀さんの紹介書きます。
では、次回もお楽しみに!


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五話 ステージ3 前編

前回のあらすじ
二日前に行方不明となった涼子と幽紀。実は二日前、涼子がお宝を見つけるが、幽紀と共に閉じ込められてしまう。
その結果2人で争うことに…
争いの末、結局2人で抜け出すことに…
そして今に戻る。奈々と荒士はある部屋から人の気配を感じた、そこにいたのは涼子と幽紀だった。
なんとか扉を開けて、2人は助かったのだった。

キャラクター紹介
天崎涼子
趣味でトレジャーハンターやってる系女子。好戦的で割とすぐに調子に乗る。かなりの自信家で、スリル大好き。
その反面油断が多く、よくピンチに陥るが持ち前の人間離れした身体能力で割とあっさりくぐり抜ける。
また、荒士と初めて戦った時は荒士を本気にさせるまで追い詰めた。
幽紀とはそんなに仲は良くないが、荒士とはとても仲良し。

東雲幽紀
華麗に戦うことを信条としている銃剣ショットガンぶっ放す系女子。天崎姉妹とは同業者的な立場で、時に宝を巡り争う。その際は荒士までもが被害者に…。涼子とは因縁のライバルであり、トレジャーハンターを始めた頃からよく競ってる。
ご自慢の無駄に洗礼された無駄のない無駄な動きで、相手を翻弄する。が、実はドジっ子だったりするのでたまに失敗したり、こけたりする。
荒士のことは基本振り回す形になっているが、本当は誰よりも大切に思っていたりする。


 荒士の持ってきた携帯食料により、なんとか涼子と幽紀は助かった。

「いやーなんかごめんね荒士君。」

「いえいえお気になさらず。それより今はここから抜け出すことを優先にしましょう。そのためには出口を見つけないと…」

 そういい荒士は考え込む。

「それなら四人に分かれて行動するのはどうかしら?」

 幽紀がその事案を提案する。すると奈々が少し残念そうな顔をした。それに気がついた涼子が

「ごめん幽紀、少し奈々と話してもいい?」

「え?いいけれど…。荒士は?」

 何故か幽紀は荒士に話を振る

「俺?別に構わないよ。」

 そういい涼子は奈々を連れて少し離れる。

 

 ある程度離れたところで奈々と話をする。

「ねえ奈々、あんたもしかして、荒士君のこと好きなの?」

 すると奈々は顔を真っ赤にした

「え⁉︎そ、そんなことないよ!べ、別に…その…うう…」

「ふふ〜ん、やっぱり好きなんだ〜」

 すると奈々の顔はみるみるうちに赤くなってしまう。

「その…なんというか…ああ…///」

 奈々は少し前のことを思い出す。好意を抱く男性に自分の裸を見られてしまったこと。普段物事に反応することを面倒だと奈々は思う。しかし、今思い返すとかなり恥ずかしい。

「わかったわ、お姉ちゃんに任せなさい!」

 そういい涼子は胸を張る。その際に大きな胸はたゆんと揺れる。その光景に相反して奈々は自分の胸を見つめため息をつく。

 普段はただ静かに過ごし、友達とぐらいならいろんな話をして、胸のことなんて特に気にしてなかったのだが、いざ異性に好意を持ってしまうと自分の体に自信が持てず嫌悪感を抱いてしまう。

「どうしたの?」

「なんでもない…」

 そういい奈々は戻って行った。

「はあ…」

 

「そーゆーことで、荒士君。奈々のこと頼んだよ。」

「わかりました涼子さん。必ず俺が守ります。」

 結果は涼子と幽紀は単独で行動し、奈々と荒士は引き続き共に行動することになる。

「というわけで奈々ちゃん、またよろしくね。」

 そういい荒士は声をかける。

「はい。」

 奈々は静かに返す。

「では、行動開始と行こうかしら!」

 そういい幽紀は華麗な動きを見せつけ、去って行った。

「じゃあ奈々、無事に抜け出して後であおう!」

 そういい涼子も走って行った。

「奈々ちゃん、俺たちも動こうか。」

「はい!」

 そういい二人も動き出すことにした。

 

 部屋を出た二人は最初の扉を目の前にする。

「俺が先に行くね。」

 そういい荒士は近づくと自動で扉が開く。すると上に浮遊する何かを目の当たりにする。

「これは…。奈々ちゃん、あれを撃ち落とせる?」

 そう奈々にお願いする。

「任せてください。」

 そういい奈々は普通に狙い、引き金を引く。すると浮遊する機械にあたり機械は落下する。すると

 バーン!

 なんと爆発したのだ。

「なるほど、火薬が積まれてるのか…。

 だとするとあれはおそらく自爆して目標を仕留めるタイプだね。」

「何故わかるのですか?」

「匂いだよ、火薬の匂いがする。」

 そういい奈々は鼻に意識を集中させると。

「ほ、本当ですね。」

「ああ、そしてその先にも。」

 そういい荒士は大剣を投げ飛ばした。大剣は真っ直ぐに突き進み、通路に張り巡らされたワイヤーを全て切り裂き、壁に突き刺さる。

「やっぱりね、何か光ってるのがあると思ったら透明なワイヤーか。奈々ちゃん、ワイヤーの処理は任せて、その分機械を的確に落として行ってくれ。」

「わかりました。」

 そういい奈々は自信満々に言った。そういえば奈々が何か持ってることに気がついた。

「あれ?奈々ちゃんそれは?」

 気がつけば奈々はハンドガンとは別にもう1つ自動小銃を持っていた。

「あ、これですか?幽紀さんから貰いました。」

「へぇ〜。」

 幽紀がどこかで拾ったのだろう。

「扱えるの?」

「多分…。」

 また多分の言葉が出た、それでもこの子の勘は基本アテになる。一体何者なのだろうか…?

「今はまだ使わないと思います。」

「まあ、残弾も限られるだろうからね。」

 そういい前に進むと

 ウィイイイイン!

 目の前からタイヤが電動ノコギリになってる機械が突撃してくる。とっさに大剣を床に突き刺し盾とする。

 ジジジジジ…

 大剣と電動ノコギリが触れ合って火花を散らす。そして動きが止まってる間に奈々はハンドガンを数発当てて、破壊した。

「ふぅー…びっくりした…。」

 そういいながらマグナムを撃ち、ワイヤーを切った。

「奈々ちゃんありがとう。助かったよ。」

 すると奈々は頬を赤く染めて返事する。

「どういたしまして。」

 そんな奈々を見て荒士も少し顔が赤くなった。

 

 さらに先へ進んで行くと例の自爆機械が二台確認できた。

「奈々ちゃん、お願いできる?」

「はい。」

 そういい奈々はハンドガンを構える。しかしそこには、

 ウィイイイイン!

 固定式のガトリングガンが部屋の壁に設置されていた。

「⁉︎」

 奈々は慌てて後方へと引き下がり、物陰に隠れる。

「奈々ちゃん!」

「危ないところでした。」

「ふぅ〜。」

 荒士は胸を撫で下ろす。しかしあれは参ったな。ガトリングガンをどう対処するか。

「奈々ちゃん、俺が盾になるよ。その間にあの機械を破壊してくれ。さっきのノコギリ作戦。」

「はい。」

 そういい荒士は前に出る。ガトリングガンは最初に出てきた荒士に狙いを定めて発射する。荒士は大剣を盾のようにして身を守る。

 その間に自爆機械はこっちに接近する。

 だが、奈々が後方から的確に機械を撃ち落とす。そして、ガトリングガンがリロードに差し掛かった瞬間に荒士は大剣を投げつけ、ガトリングガンを破壊する。

「よし!」

 荒士は声をあげた。

「さて、行こうか。」

「はい。」

 そういい足を前に運んだ瞬間、床に設置された機械で前の方へと吹き飛ばされる。

「ギャッ!」

「ああっ!」

 そのまま壁に目掛けて激突する。

「ぐぎっ!」

 そして荒士目掛けて奈々が飛んでくる。

「ひゃっ!」「ぐふっ!」

 奈々は荒士がクッションとなってくれたが、これはこれで荒士が痛そうだ。

「荒士さん…大丈夫ですか…?」

「…痛い…。」

 

 次に進むとまたガトリングガンが設置されている場所に遭遇する。

「ふん!」

 再び大剣を投げつけて、ガトリングガンを破壊し、大剣を回収する。

 荒士は「OK」のハンドサインを送ると、奈々がこっちへ来る。

 そして扉をくぐると、またしてもガトリングガンが設置されていた。しかもかなり連続で発射準備がされていた。

「奈々ちゃん!」

 そういい荒士は奈々の手を引いた。

 ガトリングガンはどうやら発射すればそのまま固定し、弾を撃ち続けるらしい。

 さらに前に進むとまたあのノコギリが突進してきた。

「奈々ちゃん!下に降りよう!」

 そういい二人は1つ下の段に降りた。ノコギリはそのまま前に進んでいき、ガトリングガンの弾にあたり破壊される。

「ふう…」

 そういい一息をついてる間に奈々は身を乗り出し、ハンドガンでガトリングガンを破壊する。どうやら見事に急所(?)に当たったらしい。

「凄い…。」

 荒士はその様子をポカーンとした様子で見ていた。

「先を急ぎましょう。こんなガトリング祭りにいるのも嫌です。」

「蜂の巣になるのは俺も勘弁だよ…」

 そういい二人は先を急ぐことにした。

「なんか味ないね。」

 それを言っちゃおしまいだよ?この辺罠以外特にないし。

 ※ゲームでもこの辺は難しいですがあまり味がないです。




今回も読んでいただき、誠にありがとうございます。光陽です。
いよいよステージ3。ゲームではまだそんなに上手くない人たちにとってはここからが本番といったところですね。
私はあのガトリングの雨に苦労しました。しれっとわかりにくいところにワイヤーありますし、初見殺しもいいところですよこれ。
それでは私はこれにて失礼させていただきます。
次回もお楽しみに!


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六話 ステージ3 後編

前回のあらすじ
味気のないステージで味気のない場面ばかりを見せてくれた荒士君と奈々ちゃんだった。
カチャ…

「懺悔の用意は出来ましたか?」
なんでや!俺何も悪なry
バーン!
「やれやれ…」


 敵を殲滅し、下に降りできた奈々と荒士。

「暑いですね…。」

「下が溶鉱炉みたいになってるのか…。」

 下を見下ろすとオレンジ色に近い色の液体が見える。かなりの高音だろう。落ちたらひとたまりもない。

「多分敵はただ殺すだけじゃなくてこの中に落とそうとする奴もいるだろう。」

「そっちの方が手を汚すよりも手取り早いですからね。」

 そういい下に降りると二足の歩行ロボットがこちらへ歩いて来る。あの腕から放たれるパンチの威力はかなりのものだろう。

「ちっ!」

 奈々と荒士は二人同時に弾丸を放つ。弾丸を撃ち込まれた機械は即座に機能停止し、爆発する。しかしもう一台こちらへ歩いて来る。

「…」

 奈々は無言でハンドガンを連射し、破壊した。

「あいつは近付かせなければ大丈夫みたい。」

 そういいマグナムをリロードする。

「行こうか。」

 奈々は深く頷き、進むことにする。

 

 次のエリアに行くと少し足場が離れており、下には灼熱の液体が溜まっている。だが、間隔は大した長さではない。

「俺が先に行くね。」

「わかりました。」

 そういい荒士は先に進む。すると、突如浮遊機械がこっちへ急接近してきた。

「なっ⁉︎」

 バンッ!

 その音とともに機械は地面に落ちて、爆発した。

「ふぅ…心臓に悪い…。」

「さすがに私もびっくりしました。大丈夫でしたか?」

 奈々はこっちへ跳び、荒士の元へ駆け寄る。

「ああ、奈々ちゃんのお陰だよ。」

「え、えへへ…///」

 奈々は素直にそう言って貰えるのが嬉しかった。

 何故なら彼が好きだから。ただそれだけでいい。それ以外に理由はいらない。

「ねえ奈々ちゃん。」

「はい?」

 突如奈々に話を持ちかける荒士、奈々は少しドキッとする。

「奈々ちゃんは、将来何になりたいの?」

 荒士は奈々の将来について聞く。

「私は、お姉ちゃんみたいなトレジャーハンターになりたいです。」

 奈々はそう答えた。すると荒士は。

「そうか、なら、その….ひとつ提案があるんだ…。」

 荒士は奈々の方を向く。視線が合うと少し顔が熱くなる。それはきっとお互いだろう。

(かあぁぁ…荒士さんがみてる…。)

(ど、どうする…?このまで来たんだ…言うしかないよな…)

 しばらくの沈黙は荒士の咳払いによって終わり、口を開く。

「もしよかったら、俺と組まない?」

「え?」

「なんかその…正直こんなこと言うと恥ずかしいと言うか…///奈々ちゃんと一緒にいると安心すると言うか…。奈々ちゃんとならなんだってできる気がするんだ。」

 荒士の顔は真っ赤だ。それはきっと下の熱い液体のせいではない。奈々だって同じだ。

「その…今すぐとかじゃなくていいから、ええと…もしよかったらでいいから無理ならい」

 ギュッ…。

 奈々は荒士に抱きついた。そして奈々は小さな声でその言葉を放つ。

「好きです…。」

「えっ⁉︎」

 荒士はその言葉に驚いた。決して聞こえなかったわけではない。だが、今耳にした言葉は本当なのかと自分の耳を疑ったのだ。

「私は…あなたのことが…好きです…。」

 荒士はその言葉を受け入れるように抱きついて来た奈々を抱き返す。奈々の背中に手を置いた時、何かにあたる。ブラジャーのホックだろう。それに少し興奮するのか、心拍数が高くなる。

 このままこの子を抱く?

(いや、気持ちは嬉しい、俺も奈々ちゃんのことが好きだ。)

 吊り橋効果と言うものがある。不安や恐怖の中だとお互いに恋愛感情が芽生えやすいと言うものだ。でも、もしかしたら俺は以前から気になっていたのかもしれない。

 荒士はそう心の中でいい、手を離した。

「…思いは受け取るよ。でも、まずは生きてここを出よう。」

「はい。背中は任せてください。」

 奈々の表情は今までと違い、自信に満ちていた。

「ありがとう。君は、必ず俺が守るから!」

 そういい二人は誓い合った。

 

 今いる場所から下を眺める。二足歩行が二台と四つん這いのネットを射出する機械が一台ある。

「やれやれ…ネットにパンチング野郎まで…」

 そういい大剣を握る。

「奈々ちゃん、ここから射撃をお願いしていい?」

「はい、任せてください。」

 そういい奈々はハンドガンを構えた。

「行くよ!」

 そういい荒士は飛び降りる。前方にはネット射撃機械が待ち受けていた。荒士の動きを止めようとネットを発射する。しかし簡単にかわされた挙句に、奈々の射撃によって破壊される。

 そして、二台のうち一台のロボットを大剣で一刀両断する。しかし、その先には。

「なっ⁉︎」

 慌てて後方に下がる。ロボット二台のさらにその先にガトリングガンが待ち伏せしていたのだ。どうにか斜線上から逃れた荒士。しかし、歩行ロボットが近づき、拳を突き出す。大剣のガードが間に合わないと判断した荒士は自らの拳を突き出し、対抗する。

 ガーン!

 あたりに拳同士がぶつかり合う音が響く、その隙にもう片方の手で拳を握り、殴り飛ばした。倒れたところに奈々が銃弾を撃ち込み、破壊する。その後ガトリングガンを荒士が破壊した。

「よし、突破!」

 ドンッ!さきのほうでなにやら音がする。その方向を見るとプレス機が先程から上がったり下がったりしている。

「ここを通るのか…?」

 思っていたよりも上がったままの状態の間隔はそんなに短くはない。かと言い長いとも言えない。

「ここは一人ずつ行くか…。」

「どうかしましたか?」

 後ろから奈々が来た。先ほどまで高台から射撃をしてくれていたので少し遅れて来た。

「ああ、これだよ。」

 そういい奈々は前にあるプレス機を見る。

「上のルートもあるみたいです。」

 そういい奈々は上を指差す。

「いや、一緒に下のルートを行こう。離れ離れになって何かあったら大変だ。」

「そうですね。」

 そういいプレス機の前まで来る。

「俺が行こう。」

 そういい荒士が足を一歩踏み出そうとした時、奈々がそれを止める。

「?」

「私に行かせてください。頼りすぎるのもよくないと思うので…。」

 身長差もあるからか、奈々は上目遣いでこちらを見つめる。ジト目なのがまた可愛い。

 荒士は微笑み、

「わかった、奈々ちゃんに任せるよ。」

 そういい一歩退がった。

 そしてプレス機が開いた瞬間に奈々は走り出す。向こう側についてからプレス機が降りる。難なく突破することに成功した。

「奈々ちゃん!大丈夫〜?」

 向こうから荒士の声が聞こえる。奈々は

「大丈夫です!」

 と声をあげた。荒士の耳にはなんとか聞こえたがやはり声は少し小さい。声を出すのが苦手なのだ。

 荒士もプレス機が上がるのを待っていると向こうから銃声が聞こえた。

「⁉︎」

 荒士はプレス機が上がった瞬間慌てて走り出した。

「奈々ちゃん⁉︎」

 そういい渡りきってから様子を見ると下で待ち構えていた機械達を破壊していた。

「近づいて来てましたから攻撃される前に破壊しました。」

「よかった、銃声が聞こえたからびっくりしたよ。」

 そういいお互いの無事を確認した二人は敵を殲滅しつつ進むことにした。

 

 最深部へ到達する。そこにはずっと上へと続く足場があった。

「この先かな?」

「とりあえず登ってみますか?」

「奈々ちゃん休憩はいる?」

「大丈夫です。いけます。」

 そういい二人は足場を登って行く。

 だが、ある程度登ったところで突如足場が揺れ出した。

「わっ!」

「きゃっ!」

 荒士は奈々を抱き寄せ、なんとか堪える。するとなにやら声が聞こえた。正確には機械音声だ。

「シンニュウシャヲカクニン、コレヨリハイジョシマス…。」

 そういい下で機能停止していた奇妙な機械が動き出した。

 4つ足があり、上にはドリルとアーム、ボディ真ん中にニードル射出機、下にはガトリングガンがついており、カエルよりもさらにでかい。

「あれは…」

 奈々は以前涼子と冒険に行った時に似たようなものを見たのを思い出した。

「知ってるの?」

「はい、以前戦ったことあります。しかし、おそらくそれの改造モデルだと思います…。」

 そういいその機械はどんどん足で壁を伝って登って来る。

「奈々ちゃん、指示をお願い。」

「わかりました!」

 そういい荒士は大剣を構え、巨大な機械めがけて急降下した。




今回も読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
なんと今日、私の誕生日なんです!イェーイ!
……………。
はい、ごめんなさい。
そういえば私がこのゲームの作品を書き始めた理由は言いましたっけ?もし行ってないなら少し話します。
私が艦これへの熱が冷め始めた頃でした。普段は読書、音楽鑑賞(殆どボカロ)、ゲーム、陸上を趣味としているのですが、他にも動画観賞なども趣味なんですけど、その時にこのゲームの死亡シーン集の動画を見つけたのですが、その時に奈々ちゃんに惚れてゲームをしたところハマって小説を書くことにしました。
(要するにただの変態)
とまあこんな感じで今回は失礼させていただきます。
では皆様、次回もお楽しみに〜!


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奈々話 VSドス機械、荒士の病(ごめんなさい…)

前回のあらすじ
下に降りた荒士達がたどり着いた場所は灼熱のエリアだった。その下には溶鉱炉の鉄のようにオレンジ色の高温の液体が溜まっている。
さらに先には兵器が数多くあり、かなり厄介だったが。荒士達は無事に抜けることが出来た。
そして、その先へ進むとそこにいたのはかつて過去に奈々が戦ったことのあると言う巨大な殺戮兵器だった。
そして奈々と荒士はその殺戮兵器へと立ち向かうのだった。


 荒士は巨大な機械(以降 ドス機械)めがけて急降下した。

「荒士さん!コアを狙ってください!機体の真ん中にあるはずです!」

「わかった!」

 奈々の指示通り、まず足場に着地し、コアを探すことにする。しかし、ニードル射出機から複数にニードルが飛んで来る。

「おっと!」

 なんとかギリギリでかわして、コアのある部分を見る。しかし、

(装甲で覆われてる?)

 そこは重圧な装甲で塞がれていた。

「それなら!」

 そういい荒士はマグナムでその場所を狙い、火を吹かせる。しかし、装甲に傷一つつけることすら許されずに終わる。

「ちっ!」

 それならばと大剣を握り、一突きする。堅固なワニの皮膚すら切り裂いたこの剛剣ならいけると信じた。

 しかし、結果はそのように行くはずもなかった。

 カーン!

 あたりに高い金属音が響くばかりだった。

「駄目だ奈々ちゃん!コアの部分に装甲が施されてる!」

「そんな…⁉︎」

 奈々は予想外のことに驚愕した。するとドス機械は奈々に標準を定めて、ミサイルを射出する。

「奈々ちゃん逃げて!」

「⁉︎」

 奈々は上に上がりつつ、襲いかかるミサイルを次々と破壊して行く。

「⁉︎荒士さん!」

 荒士は前を向くとドス機械の足が迫っていることに気がついた。

「ぬわっ!」

 潰されそうになるがなんとか必死に堪える。

「今助けます!」

 そういい奈々は荒士を押しつぶそうとしている足に向けてサブマシンガンを連射する。

 数発当たったところで黒煙を上げ始め、やがて小規模な爆発を起こし、ドス機械が落ちそうになる。

「っ!」

 解放された荒士は慌てて壁を蹴り、反対側の壁に大剣を突き刺し、持ちこたえる。

「ふぅ〜…ありがとう奈々ちゃん!」

「大丈夫ですか⁉︎」

 奈々は上の方から声をかける。しかしまたしてもミサイルが奈々に猛威を振るおうとする。

「また⁉︎」

 奈々はまた上に徐々に登りながら的確に一つずつミサイルを破壊して行く。

 荒士も上の足場へと飛び上がり、懐に隠していたもう一つの武器である。サバイバルナイフを取り出した。

「コアを破壊できないなら…こいつを叩き落としてやるまでだ!」

 そういい右手にマグナム、左手にナイフを持ち上に上がっていく。しかし、そこで行く手を阻むのはガトリングガンだった。

 ウィイイイイン!

 ガトリングガンが起動しはじめる。

(くっ⁉︎今は大剣が無いんだった!)

 必死に右に左にと移動して、ガトリングガンの照準を逸らす。

「そこだ!」

 そういい右下の足めがけてマグナムを数発叩き込む。するとドス機械の足からは再び小規模な爆発を起こし、また落ちそうになる。

 

 一方上の方では、

 バン!バン!バン!

 ハンドガンが右上の足を狙っていた。右上の足からは黒煙が上がっていた。

(あと少し…。)

 しかし、狙うことに集中していたのか奈々は右のアームが奈々に迫っていたことに気がつかなかった。

「きゃっ⁉︎」

 そのままアームに掴まれて壁に押し付けられ、首が閉まる。

「あ….ああ…」

(息が…できない…)

 必死に引き離そうとするが、そんな抵抗が敵うはずもない。

「あ…し…」

(荒士さん…助けて…)

 奈々の意識が朦朧としてくる。体が生命を維持しようと作用し、下半身の部分から透明な液体が漏れ出てくる。失禁しているのだ。

(私…死ぬの….?お姉ちゃん….)

 奈々が死を覚悟した瞬間だった。

「どりゃあああ!」

 そういい荒士が上に上がり、右上の足に蹴りを入れた。その瞬間、足がガクッとなり落ちそうになる。アームから奈々が離され、荒士が受け止める。

「奈々ちゃん!奈々ちゃん!」

 下に降りて、奈々の意識を確認する。しかし返事はない。そこで荒士は脈を確認する。

「よかった、まだ生きてる。」

 しかし、そんな余裕などなかった。下の方にミサイルが襲いかかってきた。

「⁉︎」

 ドーン!

 回避しようと飛び上がったが、爆風に巻き込まれ、飛ばされる。

「うわっ!」

 反対側の壁にあたり、落ちそうになるがなんとか足場を掴み、耐える。

「ぐぐぐ…」

 左手には気絶した奈々を掴んでいるため、右手で二人分の体重を支えなければならなかった。そして、ガトリングを向けられる。

「そんな…」

 もはや万事休すだった。

 ここで死ぬのか?奈々ちゃんとの約束も果たせず?いや、奈々ちゃんと一緒に死ねるのならそれもまた本望か?1番いい選択がわからない。死ぬのは怖い。でも、奈々ちゃんと死ねるのなら構わないのかもしれない。

 そんなことを考える荒士に希望の光が差し伸べた。

 バンッ!

 ドス機械の胴体に何か当たる音がした。

「全く、世話が焼けるわね…」

 そこには金髪の女子がショットガン片手にそう言っていた。

「幽紀⁉︎」

「早く奈々を助けて上げなさい。私が囮になるわ。」

 そういい幽紀は飛び上がる。するとドス機械はドリルは幽紀を貫こうとするが、全て華麗に避けられる。

「ありがとう幽紀。」

 そして、必死に足場に上がる。

(残りはあの一箇所。しかしこのままだといつかはガトリングガンに狙われかねない…。大剣を取るのは少し厳しいか…とうする…?)

 そこであることにひらめく。

 

 数年前

「先生、どうでしたか?」

 荒士の母は心配そうに尋ねた。すると一人の医師は告げた。

「うーん…これはなかなか珍しい病だね。」

 そういい難しい顔をした。

「珍しい病…?」

 父は不安そうな顔で言う。そんな二人を見て、医師は続ける。

「感情性心身暴走症だね。」

「「感情性心身暴走症?」」

 感情性心身暴走症。

 劇的な感情や心情の変化、極度な興奮状態に応じて体が過剰に反応し、それに応じた症状が出る最近になって出てきた珍しい病だ。

 ※実際にはありません。

「ど、どんなことが起きるんです⁉︎」

 父は慌てて聞いた。医師はその問いに冷静に答える。

「そうですね、例えばお子さんが何かに怯えたとします。すると体が恐怖という感情を過剰に捉えてしまい、体がしばらく麻痺したりします。逆に興奮状態になることでアドレナリンの分泌量が増えて、身体能力を大幅に向上させたりします。

 よくも悪くもない病ですが、あまりこの症状を起こしすぎると心身に大きな負担をかけ、寿命が縮まる危険性もあります。なので、そこはご両親の教育にお任せします。」

 

 その時の荒士はそのことをよく理解していなかったが、大きくなってから叔父から聞いたそうだ。

「興奮…状態…。」

 これだ、これしかない。だが、一つ罪悪感を覚える。

「うう…」

 興奮状態に陥るにはギリギリの戦闘をするのが個人的には1番望ましいが今はそんな状況ではない。

 そうしてる間にまたガトリングガンが襲う。

「ちっ!」

 なんとか上の足場を盾にして、凌ぐ。そして、奈々を座らせる感じで休ませる。そして、奈々に一言言った。

「ごめん、奈々ちゃん…。」

 心臓がバクバクと動く。さすがに年下の可愛い女の子に対してこんなことをするのはもはや変態極まりないとわかっていた。しかし、これしか手段がないと判断した。

 荒士は奈々のスカートの中に顔を入れて、下着の上から秘所を舐める。

「ん…んぅ…///」

 意識は少し戻りつつある。早めに終わらせよう。

 荒士はそう思い、行為を続ける。下着からは少ししょっぱい味がした。匂いからするとおそらく尿の匂いだろう。それらがさらに興奮を駆り立てる。荒士の下半身に血流が集中するのに気がつく。しかし、ここで抑えなければならない。

(もう少し…もう少しだ…。本当にごめん、奈々ちゃん。)

 そう心で唱え、奈々の下着を脱がし、匂いを嗅ぐ。

(こんなところ見られたら奈々ちゃんに殺される…でも、これも奈々ちゃんを救うためなんだ。)

 すると…

 ドクン…

 ようやくきた、この感覚

 ドクンドクン…

 下半身に集中していた血流が全身に行き渡るかのように全身が熱くなる。

 ドクンドクンドクンドクンドクン

「ぐっ…があぁぁぁ!」

 そういい全身に力が入るのがわかる。

「うう…。」

 奈々が目を覚ました。荒士はバレないようにしれっと奈々の下着をポケットにしまう。

「大丈夫?奈々ちゃん。」

「はい…いてて…。」

 そういい奈々は起き上がった。

「今からあと一箇所のあの足を破壊する。奈々はここにいてくる?」

 奈々はこくりと頷く。

「危ないと感じたらすぐに戻ってくださいね。」

「ありがとう。」

 そういい荒士は足場を登って行く。

 

 一方幽紀は

 バン!バン!

 次々にミサイルを破壊し、様々な場所に攻撃を試みる。

「全く、どこが弱点なのよ!」

 そういいあたりを見るがやはりそれらしき場所は見当たらない。アームが掴もうとするがなんとかギリギリで回避する。

「荒士は一体なにを…」

 その瞬間、

「があぁぁぁ!」

 下から雄叫びのような声が聞こえた。

「荒士⁉︎」

 幽紀はドス機械の行動を意識しながら下を見る。すると、もがき苦しむような姿の荒士を見る。しかし、その状態からすぐに起き上がった。

(荒士…あなた…まさか?)

 そんなことを考えてる隙にドリルが迫る。

「⁉︎」

 なんとかかわして上に登る。それを追うかのようにドス機械も上がって行った。

「ええい!しつこいわ!」

 そういい幽紀は今度はあえて下に降りて、ちょうどすれ違いになるようにした。

「これでドリルは使え、ちょっと⁉︎」

 下にはガトリングガンがお出迎えをしてくれた。幽紀はなんとかスレスレで回避した。

「聞いてないわよこんなの!」

 そういいショットガンをガトリングに向けてうち、破壊した。

 その瞬間、上からミサイルが多数迫っていた。

「な⁉︎」

 だが、そのミサイルは一つが突如爆発する。それに合わせて、他のミサイルも誘爆した。幽紀が下を見ると、どうやら荒士がナイフを投げたらしい。

「ありがとう幽紀、助かったよ。」

 すると幽紀はそっぽを向き

「べ、別に…たまたまここにきたらあなた達が戦ってたから…。」

「そうか」

 そういい荒士はマグナムで最後の足を破壊する。するとドス機械は下へ落ち、それとともに他の足場も壊れた。

「ちょっ」

 幽紀はそのまま落ちるが荒士はあえて壊れる前に飛び降り、突き刺さったままの大剣の元へ向かった。

 

 奈々は下で待機していると、ドス機械が溶鉱炉の近くに落ちてきた。

 ズーンッ!

 なんとか溶鉱炉ダイブを逃れたドス機械。

「あっ!」

 だが、よく見るとコアを覆っていた装甲が開かれていた。

 ドス機械がドリルで奈々を襲う、しかし奈々はそれを全て回避する。奈々をドリルで攻撃する間に急降下する荒士と幽紀めがけてミサイルを放つ。

 すると降下中の幽紀がショットガンを構える。

「ちょっと!冗談じゃないわよ!」

 そして引き金を引こうとしたが、その前にミサイルが破壊される。幽紀は誰が破壊したかすぐにわかった。

「奈々!」

「幽紀さん!ミサイルは任せてください!」

「わかったわ!」

 そのまま急降下し、コアめがけてショットガンの銃剣を突き刺し、そのまま弾を撃ち込んだ。

 コアにかなりのヒビが生えた。するとドス機械の動きが鈍くなる。

「荒士!」

「荒士さん!」

 二人が荒士に向かって叫んだ。

「おう!」

 荒士は途中で大剣を回収してそのまま急降下し、コアを一刀両断した。すると、コアは粉々に砕け、ドス機械は機能を停止し、溶鉱炉の中へと落ちて行った。

「ふう…」

 全身の力が抜ける感覚が荒士を襲う。その場で大剣を杖とし、座り込んだ。

「疲れた…。」

「幽紀さん、ありがとうございます。」

 奈々は頭を下げた。

「ううん、気にしなくていいわ。お互い様よ、こっちこそ荒士と一緒にいてくれてありがとう。」

 そう幽紀は言った。

「ははは…幽紀は涼子さんには当たりが悪いけど奈々ちゃんには優しいんだね…。」

「それは奈々がいい子だからよ、あのバカと違って。」

 幽紀は横髪を流しながら言う。荒士はその場でねっころがりながら言う。

「また幽紀に助けられたな。やっぱり幽紀は怪物だな…」

 するとその横に幽紀は体操座りして言う。

「20キロの鉄板を担いで走ったり、振り回したりしてる荒士に言われたらおしまいね。」

「に、20キロ⁉︎」

 奈々はその言葉に驚愕した。

「あれ?言ってなかったかな?俺のこの大剣の重量は約20キロだよ。」

 奈々は今思い返すと、荒士がどれほどすごい人物なのかを改めて理解した。

「お姉ちゃんよりも…凄いかも…。」

「それじゃ、私はこのへんで失礼するわね。」

 そういい幽紀はこの場から立ち去って行った。

「じゃあ、俺たちも行こうか。」

 そういい起き上がり、移動を始めようときた時に奈々は口を動かす。

「待ってください。」

「ん?」

 荒士は奈々の方を向く、奈々は少し顔を赤くしている。

「さっきから股下がスースーするのですが…。」

 すると荒士は「ギクッ!」となった。

「き、気のせいなんじゃないか?それともさっきの機械に首絞められた時に失禁したとか…?」

 だが、奈々はじーっとこちらを見つめる。そして、また口を動かした。

「荒士さん…」

「ナ、ナニカナー?」

 すると奈々は顔を真っ赤っかにして言った。

「ぱ、パンツ…返してください…///」

 気づかれたーーーーー!

 まさかの一言に荒士の顔色が変わった。

「は…はい。」

 そういいポケットから湿った白いパンツを取り出し、奈々に渡した。

 まだ奈々はじーっとこちらをみる。

「な、何でしょうか奈々さん」

 思わず敬語になってしまう。奈々は荒士から少し目をそらして言った

「要件は後で聞きます。だからこっちを後で見ないでください!」

「は、はい!」

 それから奈々はしばらく機嫌が悪かった。




今回も読んでいただきありがとうございます、光陽です。
数字の七と奈々ちゃんの名前をかけてみました。
…本当にごめんなさい…。
え?これを書いた日がバレンタインデー?なんだそれは、平日だろ?
…貰えないんです!彼女いないんです!義理ですら貰えないんです!
…辛い…
でも、決してこんなことでくじけるわけにはいきません!
では皆様次回もお楽しみに〜


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蜂話 ステージ4 その1 (生命の神秘先輩と掛け合わせたつもりです、ほんの出来心なんです。すみませんでしたお願いします許してくださいなんでもs)

前回のあらすじ
襲いかかるドス機械に絶望的な局面に立たされた荒士達。そこへ助けに来たのは幽紀だった。幽紀が囮になっている間に荒士は性的興奮を元に能力を解放させる。そして、幽紀との連携でドス機械を破壊する。
しかし、その後奈々にパンツの件がバレてしまった…。


 荒士の説得の末、ようやく機嫌を取り戻した(?)奈々。

「そーゆーわけだから…」

「わかりました。」

 そう言った後に小さく、

「欲しいのなら後でいくらでもあげますから…(ボソ」

「え?何か言った?」

 荒士は声が小さかったので聞いたが、奈々は

「なんでもないです!」

 少し怒り気味で言った。

「はい…。」

 そういい二人は下に降りることにした。

 下の階は暗くなっており、先がよく見えない状態だった。

「暗い、足元には気をつけないと…。」

「ん?何かいます。」

 そういい奈々はハンドガンを構えた。そして何か気配がする場所を探り、勘だけで引き金を引いた。

 解き放たれた弾丸は暗闇を突き進み浮遊する「何か」に直撃し、死滅した。

「当たった…?」

 荒士は驚いた。こんな暗闇の中で勘だけを頼りに目標を狙撃するなんて信じられなかった。

「死んだみたいですね。あと、少し遠くにとび降りましょう。歯車の音が聞こえるので何かあるのかもしれません。」

「わかった。」

 そういい二人は少し遠い場所にとび降りた。

 そして後ろを振り向き、ライトを当てるとそこに殺意の篭った鉄の歯車がグルグル回っており、そのまま下に降りると板によって飛ばされて歯車に巻き込まれる仕組みになっていた。

「奈々ちゃん?本当に勘なの…?」

「勘です。」

 奈々は少し自信満々に言った。

「では先を行きましょう。」

「お、おう。」

 そういい二人で先を進むことにした。

 少し先に明かりのついた部屋があった。

「明かりがついてるな…」

 中に入ると緑色のくねくねした四足歩行のリフォームの匠もどきに遭遇する。

「こいつ嫌いなんだよなぁ…。」

 そういい荒士は猛スピードで接近し、大剣で一刀両断する。

「やりましたか?」

 そういい奈々は荒士の元へ歩み寄る。すると

 バタン!

 何かが開いたような音が聞こえた。その方向に二人は振り向く。するとゴリラに爪を伸ばしたようなクリーチャーがそこにいた。そしてそのクリーチャーは速いスピードで奈々の元へ迫る。

「危ない!」

 奈々を後方にさげ自ら前に出る。するとそのまま荒士は押し倒され、倒れた荒士の上に跨る。

「ぐっ!」

 そして鋭い爪の生えた右腕を伸ばし、頸動脈に狙いを定める。

「荒士さん!」

 そういい奈々がハンドガンを構えるが間に合わない。そのまま腕は振り下ろされた。しかし

 ピタッ!

 その場で腕は止まった。

 何故止めたのか?

 奈々はそう思ったが、その回答はすぐわかった。止めたのではない、止められたのだ。

「危ねえ…」

 迫り来る右腕をを荒士の右手が抑えて止めていた。そして荒士の空いた左手でマグナムを握り、クリーチャーの頭めがけて撃ち放つ。するとクリーチャーの頭は吹き飛び、そのまま倒れた。

「死ぬかと思った…」

 そういい起き上がる。すると奈々は抱きつく。

「もう、心配させないでください!」

「あはは…ごめんご…あ…」

 荒士はあることに気がついた。そう奈々の目には涙が浮かんでいた。すると荒士はその手で涙をぬぐい、抱きしめる。

「大丈夫、俺は絶対に死なない。死ねないんだよ…何としても…。」

 あれ…?どこかでこの言葉を言ったような…?

 

 一年前

「うぅ…ここは…?」

 そういい目を覚ます。そこには見覚えのある白い天井があった。

「家…なんで…?」

 そういい横を見るとスヤスヤと気持ちよさそうに寝る幽紀の姿がある。幽紀の頬にも所々ガーゼをつけており、頭に包帯を巻いていた。

「そうか…」

 思い出した、少し前に宝探しに行った時に巨大な怪物を前に立ち向かったことを。そして自分は幽紀の盾になってそこから先が覚えてなかった。幽紀や爺やが運んでくれたのだろう。

「ありがとう、幽紀…。」

 そういい横でスヤスヤと寝る幽紀の頭を撫でる。すると「んん…」こ声を上げる。くすぐったいのだろう。少しして幽紀が目を覚ました。

「荒…士…?」

「おはよう幽紀。」

 すると幽紀は荒士を抱きしめた。とても強く、愛しい人を抱くかのように。

「よかった…本当によかった…。荒士、あなた3日間も寝てたのよ!」

 目から涙が溢れでていた。体に走る痛みと幽紀に対する感謝の気持ちで心は複雑だった。

「心配してくれたんだね、ありがとう。」

 そういい優しく頭を撫でた。

「…バカ…。」

「それと幽紀…痛い…。」

 はっ!となった幽紀は即座に荒士を離した。

「でも、本当によかったわ。あなたが死んだら辛いんだもの…。」

「大丈夫だよ、俺は死なない。死ねないんだよ。何としても。」

「どうして?」

 幽紀が聞く。

「だって、幽紀は危なっかしいんだもん。」

「ちょっと、心配してあげたのにからかわないでよ!」

 幽紀はプンプンと怒り出す。

「ははは、ごめんごめん。軽い冗談のつもりだよ。まあ、半分は本当かもしれないけど…。」

 そういい幽紀の頭を撫でた。

 

「はあ…」

 なんで急にこんなことを思い出したのだろう?幽紀は不思議でたまらなかった。

「だいたい、私の方が姉なのに…」

 一応従兄弟であり、年齢も変わらないが関係上では幽紀が姉のような感じになっている。

「荒士…。」

 少し恋しそうにその名をつぶやく。その名をつぶやくたびに胸が熱くなる。何故だろう?身内の名前にこんなに反応するなんて不思議でたまらなかった。

「はあ…何考えてるのかしら私…。」

 そういい先に進もうとしたが、何やら人影のようなものが見えた。しかもかなり速い速度で去って行った。

「…涼子?」

 そういい幽紀は追いかけることにした。かなり速いが涼子にしては遅いのと髪の長さから涼子ではないと判断した。

「捕らえてみようかしら。」

 そういい先回りしてショットガンを地面に突き刺してワイルドに登場。行く手を阻む。

「ごきげんよう、と言ったところかしら?」

 するとその人影、いや人間はフードを被っており顔が見えない。

 その人間が戦闘態勢に入る。武器は刀とリボルバー銃の二つだった。

「さあ、掛かってらっしゃい!」

 そういい幽紀は余裕の態度で構える。すると男はすぐさま速い速度で接近し、刀で斬りかかる。幽紀はそれを飛び上がり、回避し、ショットガンを撃つ。だが即座に男も回避した。

 ショットガンを撃った反動で飛び上がり、そのまま上にあるパイプを持ち、上からショットガンを連射する。しかし、どれも見事に避けられた。

「速い…。」

 そういいパイプから降りて、男めがけて急降下する。そして銃剣を突き出した。

(至近距離なら、問題はないわ!)

 そういい銃剣を突き刺そうとするが、やはりかわされる。

(すばしっこいわね!)

 すると向こうが銃を撃つ。幽紀は華麗な動きで回避する。しかし、そこには。

(⁉︎)

 そう、回避が終わった頃には目の前にまで迫っていた。刀を振るうが全てショットガンで受け止め、こっちも負けじとショットガンを構えるが、銃口を逸らされ、なかなか攻撃に転じることができない。

 そしてついに

 カーン!

 ショットガンが幽紀の手元から飛ばされた。

「しまっ」

 バンッ!

「がはっ!」

 そのまま腹パンを受け、その場でもがく。

「荒士…」

 最後にその名をつぶやき、気を失った。

 

 ダクトに入り、先へと進む奈々と荒士、下を見下ろすと人食い花(仮名)が真下にいた。その先は行き止まりだ。

「俺が奴を倒すから、先にいる敵を射撃して倒してくれ。」

「はい!」

 そういい荒士はとび降り、大剣を下にして急降下。花は一瞬にして切れて、虚しくも散った。それに続き奈々も降りて、降下中にサブマシンガンを乱射、ゴリラ(仮名)とクラゲを倒す。

 さてと、殲滅を確認かな。

 そういい先に進もうとすると、奥に何か潜んでいるのがわかった。

 バン!バン!

 荒士がマグナムを撃ち込むと奥にいたゴリラは倒れた。

「あそこで潜んで俺たちを殺そうとしたのか…」

 そういい弾丸をリロードする。先に進む道がないのでおそらく上に登らなければならない。

「足場を飛んで行くしかないのか。」

 そういい足場を登っていき、再びダクト内に入る。ダクトの中は暗い。

「暗いな…。」

「⁉︎何かいます!」

 奈々が言う。確かに何か歩いてくる音が聞こえる、しかし正体がわからない以上暗闇での戦闘は危険だ。

「奈々ちゃん、一旦出よう!」

「はい!っきゃっ!」

 荒士は奈々の手を引き走り出す。そしてダクトからとび降りるに見せかけ、ダクトの入り口に奈々を左手で抱き抱えしがみつく、これほどの重さを片手だけで支えているのだ、手が震えている。

 すると、ダクトから白い四足歩行で頭に拳を握る腕のついた奇妙なクリーチャーが姿をあらわす。するとこっちの存在に気がつき、突進しようと試みていた。

「奈々ちゃん!」

「任せてください!」

 そういい抱き抱えられている奈々は左手でサブマシンガンを構え、連射する。奈々の射撃は的確にクリーチャーを狙い、蜂の巣にした。

「奈々ちゃん、しっかり掴まってて。」

「はい。」

 そういい荒士は奈々の首筋に顔を近づける。

「ちょっ」

 そういい奈々の匂いを嗅ぎ始める。

「何を…んんっ…」

 鼻息が荒くなり、奈々の首筋に鼻息が当たり、ぴくぴくと震える。

(好きな人に….嗅がれてる…。)

 実は満更でもない奈々だった。

 ドクン…

 荒士の身体中を何かが走る。

 この感覚だ、よし、行こう。

 ドクンドクンドクン!

 そのまま手を離したと思いきや、奈々を抱えたまま壁を走り出したのだ。

 垂直の壁を登り終え、ダクト内に再び入る。

「よし!」

「よしじゃないです!」

 奈々はまた怒り出した。

「あーごめん…。」

「匂いを嗅ぐ前に一言ぐらいくださいよ!荒士さんの変態!ハレンチ!匂いフェチ!」

「……どれも否定できない…。」

 そういいうなだれる荒士だった。

 

 ダクトの外を覗くとそこには巨大な蜂に似たクリーチャーがこっちを見ていた。

「ひゃあああ、気持ちわりぃ…」

 それを見て嫌な顔をする荒士。奈々も以前涼子とトレジャーハントをした時にも見たことがあり、この虫の被害も他の探索者から聞いていた。

「女じゃなくて良かったですね、あの虫は男ならそのまま殺して食べますが、女なら子宮に卵を埋めつけます。」

「マジかよ…生命の神秘じゃねーか…。」

 だとしたらその探索者も気の毒だな、処女を奪われた挙句にこんなやつの子供を産み付けられ、最後には死ぬ運命なんだと。

「だったら奈々ちゃんはここから射撃して、他に蜂がいないか見てくるよ。」

 そういい荒士は降りた。こっちを見ていた蜂を奈々はハンドガンで射殺した。

 荒士が先に進むと、やはり、二匹ほど蜂が飛んでいた。

「奈々ちゃんの初めては渡さないよ!」

 そういい一匹をマグナムで射殺、二匹目を大剣を投げて、殺した。

「奈々ちゃん、大丈夫だ!蜂の気配はないよ。」

 それを聞き、奈々が降りてきた。

「心配し過ぎてますよ、私だってあの蜂と戦ったことありますし、あれに負けるわけにはいきません。それに…」

「それに?」

 荒士が聞く。

「は、初めては荒士さんのものですし……///(ボソッ」

 顔を赤くして、何か言った。

「何か言った?」

「い、いえ!なんでもないです!行きましょう!」

 そういい先に進もうとするとドアの前にまたあの白い四足歩行がいた。

 奈々と荒士は無言で銃を構えて、風穴を開けた。白い四足歩行は力なく倒れ、それを無視するかのように二人は先に進んだ。

 




今回も読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
眠れないのでこ↑こ↓最近は夜に投稿してます。夜行性だからねっ!
近頃フレンズ人気ですね。みんなあの語録使ってますよ。
きっとみんなもフレンズなんだね!すごーい!
…ごめんなさい…。
では、次回もお楽しみに〜


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九話 ステージ4 その2

前回のあらすじ。
更に先へと進む奈々と荒士。そんな中で荒士は昔のことを思い出した。全く同じタイミングで思い出した幽紀。すると突如何者かの人影を見た。幽紀はその人影を追うことに。
追いついた幽紀はその男と交戦を試みる。しかし、想像以上にその男が強く。ついに幽紀は負けてしまい、気を失ってしまった…
そんなことも知らない奈々と荒士は更に先へと進むのだった…


 とある場所にて、青い髪を揺らし、次々に攻撃をかわしていく女が一人いた。

「さて、ここまできたねー。そろそろ出口が見えてもいいんじゃないかなー。」

 そう言ってたのは天崎奈々の姉、天崎涼子だ。涼子の手にはナイフ一本のみを握っている。それ以外の武器といえば自分の持ち前の身体能力と妹にはない魅力的なボディ(男にのみ有効)ぐらいだ。

 そんなことを言っていると後ろから声が聞こえた。

「お前たちを逃すわけにはいかない…。」

 その声とともに振り向くとフードを被った男が一人いた。

「ん?あんた誰?」

「貴様に名乗る名はない。死ぬか捕まるか好きな方へ選べ…。」

 そういい脇差二本を構える。

「へえ〜、じゃあ3つ目の選択を押し付けるわ。」

 そういいナイフを構える。

「ほう、その選択とは?」

 そういい男はフードの中から赤く光る目で睨みつける。だが、涼子は怯みもしない。そして涼子はその問いに答えた。

「あんたを殺すってね!」

 そういい涼子は全力で走り出す。ナイフで素早い連撃を繰り出すが全て脇差で受け止められる。

(⁉︎なんて反応なの⁉︎)

 だが、連撃をやめない。有利なのはこっちだからだ。だが、向こうが足払いをしてくる。涼子はそれをかわす。続いて脇差で切り掛かってくるが、涼子は腹部を蹴り、後方に下がる。向こうも少しよろめいたが、すぐ体制を立て直し、再び戦闘体制をとる。

「さすがは天崎涼子…。なかなかやるではないか…。」

 暗い声がしんみりと聞こえる。

「どうやらあたしのこと知ってるようだね。なんだか不平等じゃないか。」

 そういいナイフを片手で回す。

「気に入ったぞ、記念に貴様にいいものを見せてやろう。」

 そういい指を鳴らすとそこから二人の男が一人の女を連れてきた。

「⁉︎」

 その女に涼子は驚愕した。

「幽紀⁉︎」

 そう捕まっていたのは東雲幽紀だった。

「涼子…」

 幽紀は悔しそうな顔をしていた。

「俺に勝てたらこの女を返してやろう。だが、お前が負けたら、この女と同じ運命を辿らせてやろう。」

「ふざけないでよ!」

 そういい涼子は走り出す。ナイフで連続で切り刻むがやはり全て防がれる。相手の首筋に蹴りを入れる。しかし、腕で止められた。

「なっ⁉︎」

 そしてそのまま腹パンを入れられる。

「ぐっ!」

 その場で倒れこむ、さらにその頭をフード男は踏みつけた。

「あっ!」

「涼子!」

「どうした?その程度か?私の検討違いかね?」

 そのままグリグリと足で頭を踏みつけ、腹部を蹴り飛ばす。

「うぐっ!」

 そのまま壁に叩きつけられた。

「ぐ…」

 そのまま意識が遠のいていく。

「奈々…。」

 そして気を失ってしまった。

 

 バンッ!バンッ!

 蜂を殲滅し、下に降りる。するとまたしても君の悪い生物がそこにいた。ピンク色で先端に指のようなものがいくつかあるクリーチャーだ。

「キメエ…」

 するとそのクリーチャーが捕食しようと体を伸ばして襲い掛かる。二人ともそれを避けて、奈々は奥のクリーチャーにハンドガンを撃ち、荒士は手間のクリーチャーを大剣で裁断した。そのまま二体とも無力化させる。

「見た目の割には大したことないですね。」

 そういい奈々はハンドガンをリロードする。

「なんかクリーチャーが増えてない?」

「おそらくここは生物兵器の開発に携わっているエリアなのでしょう。」

 荒士はため息をついた。

「ゴリラみたいなやつならまだしもさっきのとか虫とかは俺まじで無理なんだ…。」

 すると奈々は少し頷きながら。

「わかりますよ、私も虫は嫌いです…。」

「その割には奈々ちゃん静かだよね。女の子ならもっとこう…悲鳴をあげるものかと…。」

「まあ、そんなことに動じていたら、トレジャーハンターなんて慣れませんよ。」

 そういい歩いていると、下に降りれることがわかる。

「なるほどね…よっと!」

 そういい荒士が降りたその瞬間だった。

 ガバッ!

「わあっ!」

 荒士の声が聞こえた。

「荒士さん⁉︎」

 奈々は慌てて下を向くとそこには貝の形をしたクリーチャーが荒士を挟もうとしていた。

「大丈夫だ、くっ…このくそ!」

 そういい右手だけで抑えて、左手でマグナムを構えて、貝柱を撃ち抜く。すると貝はパカッと開き、死んだ。

「びっくりした…。こんなやつまでいたとは。」

 そういい安全を確認させた後に奈々に降りてくるように言う。

「今のは予想外でしたね。」

「うん、気をつけないと…。」

 そういい二人はさらに下へと降りていった。

 

「うわっ!危な!」

 今度は紫色の胴体の長いクリーチャーが襲い掛かる。奈々が出てきたところを咄嗟に狙い撃つ。クリーチャーは紫色の血を流し、倒れた。

「ここの奴らは驚かすのが好きなのか?」

 そういい立ち上がり、奈々と一緒にいたに降りる。するとそこにはヘビの体と女性の顔ををしたクリーチャーがいた。すると突如そのクリーチャーは荒士を尻尾で薙ぎ払う。

「ぬわっ!」

 反応が間に合わず、向こう側の壁に叩きつけられた。

「荒士さん!」

 しかし奈々もその尻尾で腕を掴まれる。

「きゃっ!」

 そのまま腕を縛られ吊るされる。

「やだ、離して!」

 そして、一撃引っ掻く。ギリギリ外れたが、制服が破ける。

「ひっ…」

 奈々は恐怖心に支配される。

「く…そ…。」

 荒士はようやくよろめきながら起き上がる。そして目の当たりにした光景をようやく理解した。

「奈々ちゃん!」

 するとヘビ女(仮名)は次々に奈々を攻撃した。

「がっ….きゃっ!ぐっ…!」

 奈々の白い肌が徐々に傷つき始める。

「貴様ぁ…。」

 ドクン…

 荒士はあの感覚に襲われる。

 早く、早く来い!

 そしてその願いに応えるかのように全身が活発になる。

 ドクンドクンドクンドクン…

「はあぁぁぁ!」

 叫びながら荒士は接近する。するとそれに気がついヘビ女は奈々を拘束から離し、荒士を薙ぎ払う。しかし、今度はかわされる。そしてヘビ女の尻尾を掴み。ヘビ女を振り回した。

 ヘビ女も地面にしがみつこうと必死だったがその抵抗も虚しく爪が剥げる。

「でぇい!」

 そして壁めがけてヘビ女を投げ飛ばした。ヘビ女はそのまま壁に叩きつけられた苦の表情を浮かべる。

「死ね。」

 そういい荒士は背負っていた大剣を投げつけた。無慈悲な鋼の大剣は体と尻尾の部分に突き刺さり、2つに体を分離させた。

 声にもならない断末魔をあげて、ヘビ女は倒れた。

「奈々ちゃん!」

 荒士は声をあげて近づく、奈々は所々怪我をしているが命に別状はなかった。荒士がすぐさま応急処置を施した。

 

 さらにその先へとどんどん進んでいった二人。

「先ほどは助かりました。」

 奈々の腹部には包帯が巻かれていた。

「どういたしまして、傷の調子は?」

「はい、大丈夫です。」

 そういい暗い道を進んで行くと。

 バタン!

 二人が後ろを振り向くとゲートが閉ざされていた。

「前へ進めってことか…」

「みたいですね…」

 そういい前を向く、しかし、前の部屋は明かりが点いておらず、真っ暗だった。

「罠かもしれないから気をつけて進もう…。」

 奈々は頷き、二人で前へ前へと進み、部屋に入る。すると何か揺れる感覚と生物の気配がした。

「奈々ちゃん…」

「はい、私も感じました。」

 すると何か向こうからこっちへと迫ってきた。二人はそれぞれ真逆の方向に回避する。

「おそらくどこかに明かりのスイッチがあると思います。」

「どうしてそう思うんだ?」

「勘です!」

 やはり奈々はお得意様の勘を信じる。

「わかった、俺は奈々ちゃんのこと、信じるよ。」

「ありがとうございます。」

 そういい奈々は走り出した。何やら気配がこちらへと近づく。

 天井からか?

「最初の獲物は俺か?」

 すると天井から何やら長い胴体をした何かが襲い掛かる。

「よっと!」

 かわしたが、もう一撃くる。

「おっと!」

 連続で繰り返すが、全て回避された。

「遅い遅い!」

 そういい相手を煽る。するとそれと同時に明かりがついた。

「お、本当についた!」

 奈々ちゃんがしてくれたのだろう。ありがとう奈々ちゃん。

 すると奈々が戻ってきた。

「少し遅くなってすみません。」

「いや、むしろ感謝するよ。あとは奴を叩きのめすだけだ。」

 そういい今度は下に気配が寄ってくるのがわかる。

「どうやら俺狙いか、敵が出てきたら奈々ちゃんが奴を撃ってくれ。」

「はい!」

 そういい奈々は銃を構える。そして、敵が飛び出してきた!

「ふん!」

 しかしまた、かわされる。また、明かりがついたことにより正体がわかった。その怪物は白く、細長い。

 名称は「ワーム」。地面に潜ってから素早い速度で獲物を捕らえ、捕食する。

「よっと!」

 20キロの鉄板を背負っているにも関わらず、その身のこなしは非常に軽い。その間に頭を出したときに奈々は的確にワームを狙い撃つ。

 するとワームが地面に潜り、横の壁へと移動する。

「荒士さん!」

「ああ!」

 そういい二人はそれぞれ逆の方向に回避する。そのまま突っ込んできたワームは反対側の壁に潜り込んだ。そのまま今度は奈々の元へと迫る。

「奈々ちゃん!」

「大丈夫です!その間に荒士さんがダメージを与えてください。」

「わかった!無理はしないでよ!」

 そういいマグナムを構えた。

(荒士さん、貴方に言われたくないですよ。)

 そういい奈々は身構える。するとワームは上から襲い掛かる。

「!」

 後ろに身を引き、回避する。引き続きワームは襲い掛かるが、それらも全て軽いフットワークで回避していく。

 涼子や幽紀達と比べて運動神経は劣るが、学校では一応成績もスポーツもトップクラスなのだ。

 そして奈々が回避している間に荒士はマグナムの弾を撃ち込む、数発撃つとワームが奇声をあげて潜り込み、横へと移動する。

「そろそろかな…」

 そういい大剣を構えた。

「こいよ化け物、ここで斬ってやる!」

 そういった途端ワームは突撃してきた、しかし荒士は何も動じず、走る。

 そして、そのまま大剣を振り下ろし、ワームの頭を一刀両断した。

 グギャァァァァァァ!

 奇妙な断末魔をあげたワームはそのまま動かなくなった。

「よし!」

 すると奥のゲートが開いた。

「進めますね。」

「ああ、行こうか。」

 そういい二人はゲートの先へと進んだ。

 しかし、その先には何やら緑色の巨大な口のようなものがあった。

「これは…?」

「わかりません。しかし、この先に何かある気がします。」

 そういい二人は顔を見て、頷く。

「行こうか。」

「はい。」

 二人はその口の中へと進んでいった。




今回も読んでいただきありがとうございます!光陽です!
最近この小説で初めてコメントをいただきました!ありがとうございます!^^
この作品を読んでくださってる方々のためにも頑張りたいと思います!これからもこの光陽をよろしくお願いします!
では、次回もお楽しみに!


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十話 ステージ4 その3

前回のあらすじ
脱出を試みる為に行動する涼子。その目の前に1人の男が立ちはだかる。涼子がそこで見たのは捕らえられた幽紀。涼子はその男と交戦を試みることに。しかし、あの涼子ですら敗れてしまい、気を失ってしまった…
そんなことを知らない荒士達はさらに奥へと進む。そこで様々な生物兵器と交戦。無事に生存した荒士と奈々はなんと巨大生物の体内へと入って行くのだった…


 飲み込まれた二人はそのまま下へと落ちて行き、着地する。

「本当に生物の体内だったのか…。」

 そういい荒士は辺りを見渡す。

「みたいですね…。」

 壁はピンク色でウネウネしている。少し先を見ると少し黄色じみた液体の溜まり場があった。

「あれは…酸か…?」

 そういい近づいて見てみる。かなり強烈な臭いだ。

「うう…この臭いは間違いない、酸だ。」

「入ったらおしまいですね。」

 そういい二人は先を進むことにする。途中上に何やら窪みがあることに気がつく。

「ん?」

 その窪みからは液体がポタポタと零れ落ちてる。おそらくこれも酸だろう。

「うん?」

 先の方に底の深い酸が溜まっている部分があった。こんな中に落ちたらおしまいだろう。

「気をつけないとな…よっと!」

 そういい飛び越える。引き続き奈々も飛び越えた。

 

 そのまま少し上に登ると、崖に直面する。

「俺が先に行こう。」

 そういい荒士は飛び降りる。しばらく落ちていくと下が見える。するとそこには下に酸が溜まっていることに気がついた。

「やべっ!」

 とっさに大剣を取り出し、壁に突き刺す。酸溜まりはそんなに深くはないが、あの勢いで入ると跳ねた酸がかかったら大変だ。そこで大きな声で叫ぶ。

「奈々ちゃん!下に酸が溜まってる!俺が壁に大剣を突き刺してるからその上に降りてくれ。」

「わかりました!」

 奈々の声が聞こえた。

「ふう…。」

 無事に伝わってよかったとホッとする。すると少しして奈々が大剣の上に着地した。

「荒士さん?大丈夫ですか?」

 先程から荒士は大剣はぶら下がったままだった。

「ああ、とりあえずあの先に…奈々ちゃん!上!」

 そういい荒士は大剣の下側に体を隠す。奈々の壁側に身を引いた。すると酸が上から降ってきたのだ。

「マジかよ…心臓に悪いな…。」

「助かりました…。」

 奈々はホッと胸をなでおろした。気を取り直して奈々は酸が落ちたその直後に跳び、向かい側の足場に着地した。

「今から行くね!」

 そういい荒士は大剣を引き抜く、そしてそのまま壁を蹴り、回転しながら奈々のいる場所へ着地した。

 荒士と奈々は先を見渡す。どうやら上に登らなければならないらしい。下にはかなり深い酸溜まりがあった。しかも、足場はかなり少ない。

「これは…」

「一歩でも踏み外せば死にますね…。」

 そういい奈々は先に足場へ跳び、乗っかる。

「荒士さん、私が先に行きます。私が跳んだあとに荒士さんもその場所に来てください。」

「わかった!」

 そういい荒士は奈々のいる足場まで跳ぶ。

「さて、次だな。」

「はい。」

 そういい奈々が跳ぼうとしたその瞬間だった。酸の雫が上から垂れてきた。

「きゃっ!」

 その場で倒れそうになり、荒士が後ろから支える。

「大丈夫?」

「はい、平気です。」

 そういい奈々は気を取り直してタイミングを見計らい、ジャンプした。足場に無事に着地する。しかし、そこからまた酸の雫が落ちてきた。

「⁉︎」

 避ける余裕など殆どない足場だった。

「奈々ちゃん!」

 そういい荒士は慌てて飛び跳ねる。そして着地し、奈々を抱き寄せ、庇う。

「ぐあっ!」

「荒士さん⁉︎」

 そのまま奈々を抱きかかえ、次の足場へと跳んだ。着地後、奈々は荒士から離れ、荒士に気遣う。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 すると荒士は首元をおさえながら言う。

「ああ、やられたのは首筋ぐらい。後の分は大剣の鞘が盾になってくれた。」

 そういい荒士は見せると大剣の鞘の一部が少し溶けていた。しかし、それでも大剣本体は無事だった。

「さて、気を取り直して登ろう。」

「はい。」

 そういい二人は足場を順調に登りきった。

 

 少し進んでからまた下に降りる場所がある。下に酸溜まりはない。

「何も…いないか…?」

 もう少し見ていると何やら奇妙な物体が通って行ったのを確認した。

「私に任せてください。」

 そういい奈々は下に降りる。

「あ、ちょっと奈々ちゃん!」

 そういい荒士も飛び降りた。すると下には

「何あれ…」

「…」

 そこにいたのは巨大なナマコのようなものに足が沢山付いている奇妙な生き物だった。

 しかしその生き物はここに人がいるにもかかわらず、足を止めない。

「奈々ちゃん!」

「はい!」

 そういい奈々はサブマシンガンを連射する。すると少し速度が緩まっていることがわかる。その隙に荒士はマグナムを撃ち込んだ。するとその生物はバラバラになり、消し飛んだ。

「あれもクリーチャーなのか?」

「わかりません。」

 そういい下に降りて行く。すると今度は下のエリアにあの生物が二体いることに気がついた。

「やばっ!」

 そういい慌てて荒士は大剣を取り出し、迫ってきた生物に対して大剣を突き刺す。すると動きを止め、消し飛ぶ。続くもう一体と行ったところだったが、奈々がちょうど倒していた。

「ふう…」

「心臓に悪かったですね。」

 そういい奈々はサブマシンガンをリロードする。荒士は大剣を鞘に納めた。

「にしてもかなり体力を使うな….登ったり降りたり…。」

「大丈夫ですか?」

 かなり汗だくの荒士に奈々は気遣う。かなりの疲労が溜まってるのだろう。

「大丈夫だ…。行こう、先はまだある。」

 そういい二人は下に降りる。降りた先には浅い酸溜まりがある。さらにそれは遠くまで続いていた。

「足場を跳んでいけと…?」

 そういい荒士は上にある足場を見た。

「荒士さん、行けますか?」

「大丈夫、いけるさ!」

 そういい足場へ向かってジャンプする。無事足場に着地し、そのまま次の足場へと跳び、最終的に奥までたどり着いた。

「奈々ちゃん!ここで待ってるから!」

「はーい!」

 そういい奈々も慎重に足場を跳んでいく。あと少しで荒士の元へたどり着く。

「あと少し…」

 そういい跳ぼうとした瞬間だった。

「ひゃっ!」

 足を滑らせてしまい、酸の中に落ちそうになる。

「奈々ちゃん!」

 パシッ!

 なんとか落ちる寸前で手を掴んだ。

「荒士さん。」

「大丈夫、大剣刺してるから。今引き上げるね。」

 そういいなんとか引き上げた。

「ごめんなさい…いつも、足引っ張ってばかりですね。」

「そんなことないよ、奈々ちゃんに何度救われたことか…。それに」

「それに?」

 奈々は首を傾げて言った。少しドキッとしながらもその言葉を口にする。

「な、奈々ちゃんのことが…す、好きだから…///」

 すると奈々は顔を真っ赤にして何やら口をもごもごと動かした。

「奈々ちゃん?」

「あ、い、いえ!なんでもないです!早く進みましょう!」

 そういい奈々は手を引き、先へと進む。

「ちょ、ちょっと!奈々ちゃん⁉︎」

 結局何を言ったのかもわからないまま先に進むことになった。

 

 下に降りると何やら黄銅色の奇妙な球体がある。

「ん?なんだこれ?」

 そういい荒士が近づく。何やら先端には無数の棘が…

 その瞬間、奈々の声とその見た目から察した。

「荒士さん!下がってください!」

「っ!」

 そういい即座に後ろに下がるとその球体からは無数の針が伸びた。

「マジかよ…あぶねえ…。奈々ちゃん今回も勘?」

「はい、なんだか嫌な予感がしたので。」

 会話していると少しずつコロコロと転がり、こっちに球体は接近してきた。

『ウニックス』

 黄銅色の球体で、先端はハリネズミのように細かな棘がいくつもある。敵が近づくとその針の一部を巨大化させ、伸ばすことで敵を刺し殺す。

「離れて戦えば問題ない!」

 そういいマグナムでウニックスを撃ち抜いた。するとウニックスは粉々に消し飛んだ。

「こんなやばいやついたのか…。」

「そうですね、この先でも見るかもしれませんから気をつけましょう。」

 そういい二人は敵を警戒しつつ先に進むことにした。

 

 バン!バン!

 次々に迫るウニックスを的確に倒していき、先へと進んで行く。

「ここからは上に登れって訳か…」

 そういい上へと続いていることに気がつく。

「行けますか?」

「うん、行こうか」

 そういい上へと登ることにする。途中でウニックスが道を塞ぐ。

「またこいつか」

 そういいマグナムで吹き飛ばす。

「よし、行こうか。」

 そういい上にある程度進んだ時だった。

 グラグラグラ…

 何やら揺れだした。

「地震?」

「わかりません、しかし嫌な予感が…。」

 するとしたから徐々に酸が登ってきてることがわかった。

「これってもしや…」

「はい!逃げましょう!」

 そういい二人はどんどん上へと跳んで移動して行く。酸の迫る速度に比べると早く、このまま行けば間違いなく間に合う。

 しかし、二人の行く手にウニックスが一匹いた。

「またこいつか!」

 そういい荒士がマグナムを撃とうとしたその時だった。ウニックスは転がり、荒士の左腕に針を展開。左腕を突き刺した。

「あがっ!」

 慌てて荒士はサバイバルナイフを取り出し、ウニックスに突き刺す。するとウニックスは針を収め、消し飛んだ。

「荒士さん!」

 奈々が声をかける。そんな中でも酸は迫ってくる。

「気にしないで!早く上に行くんだ!」

「でも…」

「いいから早く!」

 すると奈々は躊躇いつつも上へと登っていった。酸は荒士の元へ徐々に迫ってきた。

「くっ…」

 左腕をぶら下げながらもなんとか立ち上がり、上へと登る事にする。

「何としても…生きるんだ…」

 そろそろ足に届きそうなほど近くまで酸が来ていた。

「よっと!」

 慌てて上に跳び上がる。無事着地し、次のから次へと足場へ移動する。

「間に合え!間に合ってくれ!」

 

 その頃奈々は次々に敵を除去し、なんとか先へと進むことが出来た。

「荒士さん…」

 途中でダメージを受けた荒士が心配でたまらなかった。しかし、そんなことで止まるわけにもいかない。きっと後を追って来てくれる。そう信じて。

 さらに先へと進んで行くと、なにやら広い部屋のような場所へとたどり着く。

「ここは…?」

 あたりには沢山の目のようなものがある。正直気持ち悪い。しかし、奈々はそんな事に反応するのがいちいち面倒くさい。

 すると上の方からなにやら鞭のような無数の触手がびろんの垂れて来た。

「?」

 そしてその触手とともに無数の目が開く。それと同時に触手が動き出した。

「⁉︎」

 奈々は慌てて後ろに退がる。

「なんなのこいつ…」

 そういいハンドガンを構える。こっちにめがけて触手が襲いかかる。奈々は回避して、ハンドガンで上を狙い撃つ。しかし効いてる様子は全くない。

「そんな…」

 その間も触手は容赦なく襲いかかる。そして、奈々は足を掴まれる。

「きゃっ!」

 そのまま拘束しようと触手は試みる。だが、奈々は必死に振りほどこうともがく。

「もう、なんなの!」

 そういいもがいた時に手に力が入り、引き金を引く。すると弾はたまたま赤い目直撃する。すると怯んだのか触手は拘束を解除する。

 奈々は理解した。こいつの弱点は目、さらに赤いところだと。

 だが、弱点はわかったところで相手は触手で絶え間無く攻撃をしてくるだろう。

「少しでも動かずに…。」

 そういいリロードする。また触手が迫る。

 攻撃をかわしつつ赤くなった目の部分を狙う。移動しながらなので狙いにくいが、それでも正確に、狙いを定め、射撃する。

「いい感じ…」

 順調だった、いい感じに目を狙い撃ち、その度に怯むので怯む隙にリロードをする。

「このまま…」

 しかし、触手がフェイントを仕掛け奈々の腕を掴む。

「⁉︎」

 そのまま触手が奈々の全身を拘束する。

「やだ、離して…!」

 奈々は藻がくがかなり力強く拘束されているため触手はなかなか離れない。すると触手の先端は硬化し、奈々の胸元を狙う。そのまま串刺しにする気だ。

「やだ…」

 奈々は恐怖心で体が硬直する。

「助け…て…」

 そして、触手はそのまま奈々の元へ降ろされた…。




今回も読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
私の大好きな…大好きな遊戯王がぁぁぁ!
はい、リンク召喚のせいで大半のデッキが死んでしまいました。
でも、辞めるわけにはいきません!
なお、身内間ではマスタールール3でする予定です。
どうでもいい話はさておき、今回は荒士君も奈々ちゃんもピンチです!今の多くのデュエリスト達と同じ状況、果たして2人の運命は⁉︎
次回「作者死す!」デュエルスタンバイ!
「やったぜ!」


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十一話 VSパラサイトinドス丸さん

前回のあらすじ
巨大な生物の体内へと入って行った荒士と奈々。中はまるで洞窟のようで、崖あり谷ありと言ったような構造。また、酸があちこちに溜まっていたり、上から降って来たりと荒士達を苦しめた。
そんな中登っていると突如巨大生物の胃酸が逆流し始めた。奈々と荒士は急いで登ることに…。そんな中、荒士が体内の生物にやられて怪我をしてしまう。そして、奈々は躊躇いつつも荒士に言われて先へ進むことに。
そこで見たものは壁一面に目があり、天井から触手がぶら下がった君の悪い化け物だった。奈々は荒士のいない中交戦を試みるも触手に捉えられてしまった。果たして奈々の運命は?果たして荒士は間に合うのか?


 そして、触手はそのまま奈々の元へ降ろされた…。奈々は目をつぶり、覚悟を決めた。

 カーン!

 金属音が響き渡る。奈々は目を開ける。すると奈々の目の前には一人の男が現れた。例の触手は上へと弾かれた。それと同時に触手は奈々を拘束から解く。そのまま落下する奈々を優しく受け止める。

「荒士さん!」

「間に合ってよかったよ…。」

 そういい奈々を降ろす。触手は再び活動を始めようとしていた。

「奈々ちゃんはこんな化け物を相手にしていたのか…。」

「いえ、荒士さんがいなければ死ぬところでした。」

 触手が荒士を襲おうとする。荒士はとっさに大剣で触手を振り払った。

「奈々ちゃん、こいつに弱点はないの?」

「確か、目が赤くなってるところが弱点です。」

 そういい奈々は探す。すると触手は複数に束なり、荒士と奈々を薙ぎ払う。

「ぬわっ!」

「きゃっ!」

 そのまま二人は後ろの壁に叩きつけられる。

「いてて…。」

「あいたた…。」

 そういい二人は起き上がる。また触手が追撃しようと迫る。

「奈々ちゃん!こいつは俺に任せて!奈々ちゃんは弱点を狙うんだ!」

「はい!」

 そういい荒士は大剣を振り回し、触手を全て叩き斬る。しかし、触手はぬるぬる再生し始めた。

「やれやれ…こいつは少し面倒だ…。」

 そういい再び触手達の元へと走り出す。迫る触手を次から次へとかわして反対側へと移動する。すると触手は再び荒士を襲う。

「ちっ!」

 荒士は大剣を振るい、次々に触手を振り払って行く。何本かの触手は斬り裂いたが、その度に触手は再生を繰り返す。

「キリがないな…」

 そういい攻撃を回避しながら奈々の方を見つめる。奈々は的確に弱点を射撃していた。

(かなり順調だな…)

 すると突如触手は矛先を荒士から奈々に変える。

「させるかよ!」

 そういい荒士は触手を切り刻む。触手はやはり再生し、二人を襲おうとする。

「奈々ちゃんには、触手一本触れさせねぇよ!」

 そういい荒士は自ら突っ込んで行き、触手をバラバラに斬り裂いた。

(こうすればまた再生する。これで時間を稼げば!)

 しかし、他の触手に比べて一本だけ早く再生し、荒士の腕を掴む。

「な!」

 そして他の触手も後々に再生し、荒士を拘束しようとする。

「荒士さん!」

「っ!気にするな!早く弱点を!」

「はい!」

 そういい奈々は弱点の赤い部分を探す。その間に触手は荒士を完全に拘束した。

「クソッ!離せ!」

 荒士はジタバタと藻がくがそう簡単に離すはずもない。その間に触手は荒士を取り囲み、鳥籠のように塞ぐ。

「⁉︎」

 そしてそのまま荒士を閉じ込め、触手と触手の間を狭めて行く。そう、このまま荒士を圧殺するつもりだろう。

「ぐぐ…ぐぬぬ…」

 なんとか自慢の怪力で潰されないように耐える。

「死んで…たまるかよ…」

 ドクン….

 またこの感覚が走る…。死ぬ訳にはいかないという強い意志からアドレナリンが分泌されたのだろう。

 ドクンドクン…

「ぐ….っ!」

 鼓動のせいで体が疼き、力が入らない。その間に徐々に潰そうと触手は狭まってくる。

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクン…

(早く…早く…)

 体が熱くなる。そしてもう少しで潰し終えるその瞬間だった。突如荒士の体から力が湧いて来た。

(来た…ようやくこの時が!)

 そういい荒士は足で触手を蹴っ飛ばす。すると飛んで行った触手の部分に隙間が生じる。

「よし!」

 そういい荒士はその隙間から飛び出した。

「荒士さん!」

 奈々の顔が明るくなる。

「奈々ちゃん、心配させたね!」

 そういい荒士は着地する。そして、触手は再び奈々へと方向を向ける。

「⁉︎」

「大丈夫だ!早く弱点を!」

「はい!」

 そういい奈々は銃を構えて、狙いを定める。そして触手の一本が奈々の胸元を貫こうと、襲いかかって来た。

「させるかァァァァァァ!」

 荒士は人間離れした速度で走り、伸びる触手に拳をぶつける。それと同時に銃声が響いた。

 その瞬間、触手は力なく垂れ、あたりにあった目は閉じて動かなくなった。

「やりました…。」

「ふぅ…疲れた…」

 そういい荒士はその場に座り込む。かなりの汗が流れている。

「前に戦った機械と比べたら楽に感じたな。」

「そうですね、今回は荒士さんがヘイトを稼いでくれたので無事に狙うことができました。」

 そういい奈々も横で座る。

 二人でしばらく休憩していると荒士はあることに気がついた。

「あのさ奈々ちゃん。ここからどうやって出るの…?」

 すると奈々は少し考えて、お互いに見つめ合う。そして1つの可能性を思いついた。

「まさか…」

「うん、そのまさかみたい…。

 そして二人は声を揃えて嘆いた。

「「肛門から出なきゃいけない⁉︎」」

 

 数分ほど歩き続けただろうか、この巨大生物の体内をずっとうろうろしていた。

「こ、肛門はどこなんだ…?」

「わからないです…。」

 そういい二人ともへろへろになりながらも歩き続けると、なにやら大きな黒い塊のようなものがその辺に転がっていた。

「なんだこれ?」

 そういい近づくとかなり強烈な臭いがした。

「うわっ!なんだこれ!臭っ!」

 すると奈々は鼻をつまみながらこっちへ歩み寄り、話す。

「もしかして、これはこの生物の糞なんだと思います。」

「糞?…となると!」

「はい、出口はもうすぐです。」

 そうなると二人は頷き、黒い塊を避けながら先へと駆け足で進んでいく。すると奈々の予想通り出口が見えて来た。

「やった!やっと出口まで来た!」

「久しぶりって感じがしますね。」

 そういい二人は出口をくぐり抜ける。するとなにやらまた施設の中へと出て来た。

「また施設…?」

「外ではないみたいですね…。」

 二人は辺りを見渡すとなにやら扉がある。

 荒士は無言で開くと小部屋だった。おそらく休憩室だろう。

「少し休まない…?」

「はい、私も疲れました…。」




今回も読んでいただき誠にありがとうございます。光陽です。
なんとUAが500を超えました!イェーイ(88888
…はい、ごめんなさい…。
しかし、あまり知られないこの作品で観覧数500を超えるのはなんだか作者としてはとても嬉しいです。
その反面最近腹立てたことがありましたが…
以前文句を言ってたリンク召喚ですが、テラナイトワンチャン生きれると聞いて絶望しました…。もう売ったよ!いい加減にしろ!
…話が過ぎましたね。
では、次回はいよいよステージ5ゲームでここに苦戦した人は多いのではないのでしょうか?
それではみなさん、次回をお楽しみに!


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十二話 ステージ5

前回のあらすじ
最深部でドス丸さんの触手に捕まった奈々。そのまま胸を貫かれるかと思われたが、ギリギリのところで荒士が触手を弾き、なんとか助かった。
荒士は自ら囮を買って出る。迫り来る触手を大剣でなぎ払うも、触手は何度も再生を繰り返す。それで時間を稼ごうと試みたが、一本のみ再生を早め荒士を拘束し、窮地へと落とし入れる。が、荒士は病の力を解放し、なんとか抜け出した。そして、なんとかドス丸を倒した奈々と荒士だったが問題はここからどのようにして抜け出すかだった。その結果出た結論は巨大生物の肛門から出ることに…
体内を数分間も彷徨った荒士と奈々。そこで見たのは謎の黒い塊。それを見てこれはもしかしたら糞かもしれないと言うことに気がつく。そしてその先をさらに進むとついに、外へ出ることに成功した。
いよいよ荒士達もラストステージ、果たして無事に最深部へたどり着くのか?


 休憩を終えた奈々と荒士は再び先へ進むことにした。ゲートが開かれる。先へと進むと上には飛行する小型機械が数機存在していた。

「奈々ちゃん、機械を頼む!」

「はい!」

 そういい荒士は上へと足場を駆けていく。その荒士を爆殺しようと小型機械は荒士へ近づく。しかし、そんな事はさせない。奈々は素早くハンドガンを構えて、撃ち抜く。その精密さと速さは最初の時よりも遥かに上回るほど成長していた。

 荒士が上へと登っていくと、途中にガトリングガンが待ち構える。

「またお前か!」

 そういい荒士は腰あたりからグレネードを取り出し、ピンを引き抜き、ガトリングへ投げつける。しかし、ガトリングは容赦無く荒士を襲った。

「荒士さん!」

 荒士は上へと飛び上がった。その瞬間。

 ドォォォォン!

 グレネードがなんとか間に合い爆発する。その爆発でガトリング他先の足場にいた二足歩行機械の破壊に成功した。

 そのまま荒士も爆風に巻き込まれるが、傷だらけの左腕でなんとか足場を掴み、落下を阻止する。

「ふう…」

 そのまま、上へと這い上がる。

「奈々ちゃん、無事だよ!」

 荒士は無事を伝えると奈々は頬を膨らませて言った。

「もう!怪我したらどうするつもりですか⁉︎」

「ご、ごめんなさい…。」

 気を取り直して更に先へと進む事にした。

 

 次のエリアへと移動する。前には早速歩行機械が二機存在し、上には蜂が飛んでいた。

「ま た お 前 か」

 荒士はそういいマグナムで蜂を吹き飛ばす。奈々はサブマシンガン乱射で歩行機械を破壊する。少し先はどうやら進めないらしい。

「降りるしかなさそうだね。」

「大丈夫でしょうか?」

 下を見下ろす。割と高い位置にあるのだとお互い改めて思う。

「俺から行くよ。」

 そういい荒士は下へと飛び降りた。

 バシャンッ!

 無事に着地する。床には水が膝下あたりまで溜まっていた。

「奈々ちゃ〜ん!大丈夫〜?」

 大きな声で奈々に聞く。

「大丈夫です。」

 その後に奈々の声が返ってきた。大丈夫そうだと前をみたその途端だった。

「おっと!」

 突如蜂が荒士を襲って来たのだった。荒士はスレスレで回避して、マグナムを撃ち込んだ。二匹とも蜂はバラバラになり、消し飛んだ。

 バシャン!

 奈々も地面に着いたようだった。

(おのれ蜂、もう少しで奈々ちゃんのパンt)

「何か変な事考えてませんか?」

「え?」

 バレていたようだ。すぐに表情に出るのだろう。

「ナ、ナニモカンガエテナイヨー」

「ふぅ〜ん…」

 暫く機嫌の方は悪そうだ。

 しかし、そんな会話をしていると奈々と荒士の元へウニックスが近寄ってきた。

「あれは!」

「あのときの体内にいた奴ですね!」

 奈々は即座にハンドガンでウニックスを倒す。しかし、まだ先の方に2〜3個も転がっていた。

「こいつとは戦いたく無いんだよ…。」

 包帯をぐるぐる巻きにした左腕を見る。止血はしたがまだ傷だらけで、少し痛い。それでもそんなことは言ってられなかった。

「やるか!」

「はい!」

 2人は銃を構えて、次々とウニックスを殲滅していった。

 

 さらに先のエリアに進んだ荒士と奈々の目の前には大量のプレス機があった。

「殺意丸出しだな…」

 荒士は先の方まで見渡す。一番奥のものは3つのプレス機が連なっている。間に合わなかったら死亡確定だ。

「俺から行くよ、もし何かあったら言うね。」

「わかりました。」

 そういい荒士は1つ目のプレス機が上がった途端に走り、1つ目を抜け、2つ目を抜けた。その途端だった。

「わわっ!」

「荒士さん⁉︎」

 その瞬間バンッ!とプレス機が降りる音がした。

「大丈夫!上から何か出てきたからびっくりしただけ!」

「はあ…。やられたりはしてませんか?」

「ああ、仕留めてやったさ!奈々ちゃんもタイミングを見てここまで来てくれ!」

「わかりました!」

 そういい奈々はプレス機が上がるのを待つ、そしてプレス機が上がった瞬間に、奈々も走り出した。姉よりも運動は出来ないが、並よりは断然出来る方だ。1つ目を通過したところで、一旦停止して、降りるのを待つ。

 バンッ!重たい音とともにプレス機が降ろされる。そしてまた、ゆっくりと上昇を始めた。

「慎重に…。」

 そしてまた上がったところで奈々は2つ目のプレス機へと走って行った。2つ目を潜り抜け、荒士と合流する。

「よし、なんとかここまで来たか。」

 荒士は先を見ると、もう1つプレス機と三連プレス機がまだあった。

「じゃあ先に行くね。」

 そういいプレス機が上がったところで3つ目のプレス機を潜る。そして、一旦停止した。

 三連プレス機のタイミングをしっかり確認してから、荒士は構える。そしてプレス機が上がり始めて、人1人が通れるほどになった瞬間だった。

「今だ!」

 荒士は全速力で走る。そして難なく三連プレス機を潜り抜けた。通過して少ししてからバンッ!と重たい音が後ろから聞こえた。

 しかし、荒士の目の前には敵がかなりの数いた。

「ちっ…奈々ちゃん!タイミングには気をつけて来てね!」

「はい!」

 奈々が待ってる場所より向こう側から銃声が響く。

(早く荒士さんのところへ行かないと…。)

 奈々は深呼吸をして、先へ進む。3つ目のプレス機を通り抜け、いよいよ三連プレス機へと差し掛かる。

(タイミングをよく見なきゃ….)

 奈々は静かにタイミングを見計らう。そして、プレス機が上がったところで奈々は走り出した。

(間に合って!)

 三連のうち、1つ目を潜り抜け、そのまま走り抜け、2つ目を潜り抜ける。しかし、3つ目のところでそろそろプレス機が降りようとしていた。

(もう少し…)

 プレス機がそろそろ無慈悲な鉄槌を下そうとした、その時だった。

「奈々ちゃん!」

 荒士が奈々の手を引き、物凄い速度で走る。

 そして、無事に三連プレス機を潜り抜け、ギリギリのところで、バンッ!と重たい音が聞こえた。

「ごめんなさい、助かります。」

「奈々ちゃんが無事でよかったよ。」

 奈々と荒士は呼吸を整え立ち上がる。

「敵は?」

「見える範囲内は殲滅しておいたから。よし、行こうか!」

 2人はさらに先へと向かうことにした。

 

 よくやくこのエリアを突破し、次のドアの前へと差し掛かった。

「よし、ここのエリアをなんとか潜り抜けたか…。」

「そうですね、ですが油断は出来ませんね。」

 そういい荒士は先を警戒しつつ、ドアを開けた。すると前の方に白い四足歩行の奇妙な生物がいた。

「⁉︎」

 するとその白い生物はこっちへ向かう。荒士は慌ててドアを閉めた。するとドアを物凄い勢いで叩き出した。

「何があったんですか⁉︎」

「なんかいた!白いやつ!」

 そういい荒士は少しドアを開ける。もちろんそれ以上ドアが開かないように。そして、懐からグレネードを取り出した。

「こいつでも、喰らえ!」

 そういいグレネードのピンを抜き、ドアの向こう側へと投げつけた。

「奈々ちゃん!一応少し離れてて!」

「は、はい!」

 そういい奈々は少し後ろに下がって行った。そして奈々がある程度離れた瞬間にグレネードが爆発した。

 ドォォォン!

 かなりの爆音がしたが、ドアはよほど頑丈な作りになっていたのか壊れてはいなかった。

 そして、音の鳴り終えたとともにドアを叩く感覚はなくなった。ドアを少し開けて確認すると、どうやら白い生物は死んだようだ。

「よし!行けそう!」

 そういい奈々にサインを送ると奈々はこっちに戻って来て、2人でドアの先へと突入した。

 ドアの先には広い空間に上からクーレンが三本ほどぶら下がっており、さらにかなりの生物兵器や殺戮機械が置かれていた。

「うはあ…。」

 かなりの数に荒士は圧倒される。

「流石にこれは…部が悪いですね…。」

「それなら…」

 荒士は何かのパーツを取り出して、組み立てた。

「荒士さん?それは?」

「まあ見てて…ここをこれで…」

 するとそれはどんどん形になって来た。

「あ」

 奈々は思わず声を漏らした。それはAK-47アサルトライフルだった。

「カスタムはしてあるから少し軽いよ。あとはAK-47は本来弾が詰まりやすいけど、その辺も改良してあるから。これを奈々ちゃんにあげるね。」

「ありがとうございます。しかし良いのですか…?」

「AK-47は比較的安価で手に入るし、改良なら自分でいつでも出来るから。」

 荒士はマグナムをリロードし、下を見下ろす。

「俺から先陣を切る。そのあとに続いてくれ。」

「はい。」

 荒士はそう良い下に飛び降りた。それに続き、奈々が飛び降りた。

「行くよ!」

「はい!」

 荒士は背負った大剣を右手で構え、左手にマグナムを持ち、走り出した。奈々はそれに続き、後ろからアサルトライフルを掃射する。

 次々に倒れる兵器達、奈々の元へクレーンが迫る。

「!」

 しかし、クレーンの先端を荒士が叩き斬った。

「奈々ちゃん!走って!」

「はい!」

 クレーンの先端の残骸が降って来た。奈々は前へと走る。奈々の後方で残骸は落ちた。

「ふう…。」

 安堵のため息をついていると前から火炎放射器を乗せた機械が迫って来た。そしてその火を吹こうとしていた。

「⁉︎」

 奈々は即座にハンドガンを取り出し、機械に風穴を開けた。すると機械は動きを止めて、破壊された。しかし、その先からゴリラ型のクリーチャーが飛び越えて、奈々を襲いかかる。咄嗟に奈々はハンドガンを構えたが弾が出ない。弾切れだった。

「きゃっ!」

 そのまま奈々はクリーチャーに拘束される。そしてクリーチャーがそのまま腕を上げた。狙う場所は案の定奈々の首元。そして、いま狙いを定め、腕を振り下ろそうとしていた。

「助けて…荒士さ…。」

 

「ちっ!しぶとい!」

 次々に敵を殲滅して行く荒士。その手は止むことなく、無慈悲に切り裂き続ける。

「これでどうだ!」

 荒士はグレネードを投げ込み、クレーンの残骸に身を隠す。

 後方から爆音とともに機械の残骸が飛んで来た。破壊が完了した。

「よし…次は…⁉︎」

 荒士の視界には奈々に飛びかかろうとするクリーチャーが写った。声を上げようとしたが間に合わず、奈々は拘束される。

「奈々ちゃん!」

 荒士は慌てて走り出す。しかし、大剣の重量もあってかここからの距離だと間に合わない。

 どうする?

 荒士は迷う。

(大剣を投げるにはかなりの力が入る上にスイングしてる間に奈々ちゃんが殺される。何かないのか…)

 ナイフは大抵のことで折れたり、使いきってしまった。

 荒士は大剣を鞘ごと外す。そして全速力で走る。クリーチャーの腕が振り上げられる。

(間に合え!間に合え!何か良いものは…っ⁉︎)

 そういえばまだ1つだけ、隠し持っていた武器があった。いや、大剣の鞘の裏で背負っていたので、大剣の重さで気がつかなかっただけだった。

(これがあった!よし、間に合えェェェェ!)

 荒士は背負っていたものを一か八か投げつけた。

 

 無慈悲に腕が奈々へと振り下ろされる。

「助けて…荒士さ…」

 グチャッ!

 肉を刺すようなしかし、奈々は目を開ける。自分の体に異変はない。そしてクリーチャーの方を見ると、そこは

「!」

 首元に何かが刺さっていた。それは、銃剣付きのショットガンだった。

「奈々ちゃん!」

 そして荒士はそのクリーチャーに刺さったショットガンを持ち、超至近距離で弾丸を撃ち込んだ。至近距離での散弾が暴挙を振るい、クリーチャーの頭は跡形もなく吹き飛んだ。

 そして、ショットガンを下に力強く揺さぶり、リロードした。

「ありがとございます、助かりました…。それは…?」

「ああこれ?これはね、幽紀と同じショットガンだよ。俺の本当の得意な武器なんだ。

 最初の頃は俺もこれを使ってたんだけど、あの大剣は兄さんの形見なんだ。だから、この大剣だけはどうしても使いたい。だから使う事にしてたんだ。

 でも、一番慣れてるのはこっちだったりするんだよね。」

 そう言い荒士はショットガンを撫でていた。その後にまた背中に括り付ける。

「さて、ここの敵も殲滅したし、先に行こう。」

「そうですね、行きましょう!」

 そして2人はいよいよ最終エリアへと足を踏み入れるのであった。

 




今回も読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
今回はあらすじを少し長めに書いてみました。
個人的には短い方が楽ですが、長い方がなんだかあらすじらしいと思いました。
次はいよいよステージ5のボス戦です。荒士と奈々がその先で見たものとは…
それでは次回もお楽しみに!


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十三話 VS Unknown

前回のあらすじ
巨大生物の体内から抜け出した奈々と荒士。少し休憩をして、先へ進むことにする。
様々な仕掛けや罠に手こずるも荒士達は次々にくぐり抜けてきた。
そして、いよいよ最深部へと到達するのだった…


 下に降りて、ゲートを次々と進んで行く。先へ進むごとに後ろのゲートは閉ざされて行く。それでも躊躇わず2人は走り続けている。

「荒士さん、この先に何があるのでしょう?」

「わからない。でも、きっとここが最深部なんだと思う。」

 そういい走り続けて、ついに大きな扉の前へとたどり着いた。

「研究所…?」

「みたいなことを書いてるな…」

 2人は扉に書かれている文字を読んだ。そして、荒士は扉に手をかける。

「行くよ」

 奈々に声をかけると奈々は静かに頷いた。そして一気に扉を開く。するとそこには…

「「⁉︎」」

 様々なサンプルのようなものや培養カプセルの中にいるまだ形の成していないクリーチャーなどが様々いた。しかし、そんなことよりも2人の目の前にはとても驚愕的な光景が映った。

 そこにいたのは2人の女性、しかも2人とももちろんその存在を知っている。そして、2人はその存在をそれぞれ叫ぶ。

「お姉ちゃん!」

「幽紀!」

 そう、そこにいたのは天崎涼子と東雲幽紀だった。あの2人がなんと捕まってカプセルの中に入れられていたのだ。荒士は周りを確認する。敵がいないことを判断したのち、幽紀の入っていたカプセルに拳を叩き込む。奈々は涼子に当たらないようにカプセルに弾丸を撃ち込んだ。

 するとカプセルにヒビが入り、カプセルが破れて、中から幽紀と涼子が出てきた。

「幽紀!」

 荒士は幽紀の元へ駆け寄る。

「けほっ…けほっ…ああ…もう!」

 奈々も涼子を心配した。

「お姉ちゃん!」

「けほっ…けほっ…。奈々ぁ…ありがとー…うー、苦しかった…。」

 そういい2人は起き上がる。しかし幽紀はいつものショットガンがない。

「しまったわ…ショットガンをやられた時に落としたみたい…。」

「それならこれを使ってくれ。」

 荒士は自分のショットガンを幽紀に渡す。

「荒士…これって…」

「覚えててくれた?嬉しいよ。」

「ふふふ、ありがたくお借りするわ。」

 そういい幽紀は荒士のショットガンを手に持った。そして4人は研究所の奥へと歩き始めた。

 

 さらに奥に進むと何やらひとまわり大きな培養カプセルがそこにあった。

「なんだあれ…?」

 荒士は驚き戸惑っている。

「変な形だなー」

 涼子はあまり興味がなさそうだ。

「何よ…気持ち悪い…」

 幽紀はまだ不機嫌だった。

「丸い…何か…?」

 奈々は少し興味が湧いていた。

 4人は近づいてその様子を見ることにした。そしてある程度近づいたところで突如警報が鳴り出した。

「「「「⁉︎」」」」

 すると中に入っていた白く丸い物体がムクムクと震えだす。幽紀と奈々は素早くその場から離れる。涼子と荒士はしばらくその様子を見ていた。そして、ある程度危険と判断した瞬間2人も後方に下がる。

 パリーン!

 カプセルを破り、中の白い物体が突如出てきた。やはりかなりでかい。

「「「「?」」」」

 全員はただ呆然としていた、この白いのが一体なんなのか全く理解出来ていない。

 すると白い物体が徐々に黒く鳴り始める。

「「「「!」」」」

 4人は即座に後ろに逃げて距離を取る。すると白かった物体は真っ黒に染まりみるみるうちに大きくなって行く。

「おいおいなんだよあれ…」

 それは徐々に形を成して行く。胴体、腕、手、足、それらを形成したのちに白く変化した。そしてそれは巨大な白い怪物だった。

「なんだかまずそうね…」

「な、なんなのよこいつ!」

「…」

「これは…やるしかねえか!」

 そういい全員戦闘態勢を取る。

「みんな、行こう!」

「ええ!」

「おう!」

「はい!」

 

 荒士は即座にデカブツに接近する、そして上に飛び上がり、その姿を確認した。

「目があって…後ろに口…?」

 するとデカブツは突如予備動作もなしにアッパーをかましてきた。

「⁉︎」

 荒士は即座に大剣でガードするが、その威力で吹き飛ばされ、天井に叩きつけられる。

「荒士さん!」

 奈々は声をあげた。すると今度はデカブツが奈々めがけて拳を振り下ろす。

「⁉︎」

 奈々は慌てて回避する。なんとかスレスレで回避し、奈々は身を隠す。しかしデカブツは容赦なく奈々の元へと歩み寄る。

 するとデカブツの目の部分に何かが刺さる。いや、そこに1人の女性がいた。幽紀だ。

「はあっ!」

 そのまま至近距離でショットガンを撃ち込む。するとデカブツは声をあげた。血は出てないがかなり効いたのだろう。

「どうやら、弱点はあそこみたいね。っ!」

 しかし、そのまま幽紀はデカブツの左腕に掴まれ拘束される。そしてデカブツの手に徐々に力が入って行く。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」

 幽紀の全身に締め上げられるような痛みが走る。すると涼子はその間に目に向かって日本刀を投げつけた。見事に突き刺さり、その痛みから幽紀を離す。幽紀は即座に着地し、後方へと下がる。

「幽紀!無事⁉︎」

「げほっ、げほっ…大丈夫よ…」

 そういい幽紀は体制を立て直す。涼子はデカブツの頭の上に着地する。するとデカブツは涼子をつかもうとするが、涼子はそれらの動きを軽い身のこなしで回避する。

「どこ狙ってんのよ!」

 そういいヒラヒラと回避するが、そのデカブツは急に素早い速度で後方に下がる。

「⁉︎」

 涼子はその速さについていけず、下に落ちる。その瞬間、デカブツの蹴りが涼子を襲う。

「きゃあっ!」

 そのまま奥の壁へと叩きつけられた。

 

「お姉ちゃん!」

 奈々が叫ぶ、すると場所を感づかれた。

「⁉︎」

 奈々は慌ててアサルトライフルを構え、デカブツの目をめがけて連射する。デカブツはかなり痛そうにはするがそれでも足を止めない。

「っ!」

 奈々はアサルトライフルにつけられたグレネードをデカブツに向けて発射する。

 直撃したグレネードは爆発し、黒煙をあげる。

「きいた…?」

 しかし、黒煙が消えるとまだデカブツはそこに立ち尽くしていた。

「⁉︎」

 そのまま手を伸ばし、奈々を拘束する。

「きゃっ!」

 そして奈々を逆さに持ち、二つの手で奈々の足を持ち、引っ張る、

「ぎゃあああああああああああ!」

 奈々の足に激痛が走る。このままいけば足が引きちぎれるか、奈々が二つに裂けるだろう。

「奈々ぁ!」

「奈々!」

 2人はその名を叫び走り出す、が、このままでは間に合わない。

「お姉…ちゃん…」

 あまりの激痛から、奈々は失禁する…。そして、奈々は死を覚悟した。その時だった。

「どらァァァァァァァァァ!」

 天井から荒士が飛び出してきて、デカブツの目に大剣を突き刺した。

「ぐおぉぉぉ!」

 デカブツはうめき声をあげて、奈々を離す。

「う…あっ…。」

 奈々の足にはまだ激痛がのこるが、無事だった。

 デカブツはその場で暴れる。すると、荒士はデカブツの足元にいる奈々が危険と判断し、急いで降りる。

「奈々ちゃん!」

 奈々を抱きかかえ、走り出した。そしてある程度離れたところに奈々を座らせる。

「奈々ちゃん!大丈夫?」

「は、はい…助かりました…。」

 荒士は奈々を抱きしめる。

「よかった…目を覚ますのが遅かったらどうなってたことか…。」

 すると後ろからデカブツが近づいてくる。しかし、荒士の大剣はデカブツの目に突き刺さったままだった。

「しまった!大剣が!」

 だが、デカブツは容赦なく拳を奈々と荒士に振り下ろす。荒士は慌てて奈々を抱きかかえ、攻撃をかわす。そして、腕を伝って走り、反対側へと逃げる。

 すると入れ替わるように、幽紀が飛び上がり、目に向かってショットガンを撃ち込んだ。

「幽紀!」

「大丈夫!奈々を守ってあげて!」

 荒士は頷き、身を隠す。

「奈々ちゃん、足大丈夫?」

「はい…なんとか…。」

 荒士は奈々を降ろす。

「さて、あの怪物をどうするか…」

 荒士は悩む、さすがにあれほどの怪物を相手にするのはかなり苦しい。今は幽紀と涼子さんがなんとかしてくれている。

「荒士さん、あのコンテナの山まで運んでくれますか?」

 奈々はコンテナの山を指差す。

「あれがどうしたんだ?」

「あそこから私が支援します。その分荒士さん達が頑張って引きつけてください。」

「1人で大丈夫?」

「はい、私は…荒士さんを信じます…。」

 荒士はデカブツの動きを見る。素早く動き回る、幽紀と涼子に苦戦しているようだ。

「今ならいける、よし!行こう!」

 荒士は奈々を抱きかかえた。すると奈々がもう一つお願いした。

「荒士さん…その…少し顔を近づけて欲しいです。」

「ん?作戦?」

 そういい荒士は少し奈々に顔を近づけた。すると、

 ちゅっ♡

 荒士は何が起こったのか理解出来なかった。奈々が荒士の頬にキスをしたのだった。

「無事でいてくださいね?荒士さん…」

「ありがとう、大丈夫だ!俺は死なないよ、これで俺は絶対に死ねなくなったから。

じゃあ、行くか!」

 そういい荒士は走り出した。

 

「もう!なんなのよ!こいつ!」

 幽紀がまたグチを漏らす。

「まだ喋る余裕あるじゃん!」

 横で涼子が話しかける。

「そういうあんたもまだ体力あるんでしょ?」

「まあね。

 久々だね、あたし達で手を組むなんて。」

「そうね、普段じゃ考えられないわ。」

 するとデカブツがまた襲いかかってきた。

「「!」」

 2人はそれぞれ別の方向に回避する。そして、涼子はナイフ、幽紀はショットガンを構えた。

「簡単に死なないでよね!」

 涼子は幽紀に対して言う、すると幽紀もそれに応じる

「あんたこそ、死んで貰ったら困るわ。」

「そりゃ同然でしょ」

「そうね、だって」

「「あんたは、あたし(私)が殺すんだもん!」」

 そういい2人で走り出す。デカブツの攻撃をかわして、奈々と涼子は飛び上がる。幽紀はそのままショットガンを下に撃ち、高く飛び上がる。涼子はそのまま頭上を通過する。この状況でデカブツが敵に回したのは、涼子だった。

「頭は固いみたいだね!」

 涼子は再びちょこまかと動き出す。デカブツはそれを捉えようとするが、速さについていけない。

「遅い遅い!」

 涼子はまだ余裕そうだった。するとデカブツは後方へと素早く引き下がり、拳を当てる。

「⁉︎」

 慌てて涼子は回避する。が、瓦礫が涼子にあたり後方に飛ばされる。

「っ!」

 涼子はすぐさま体制を立て直す。その同じタイミングで幽紀が目にショットガンを突き刺した。

 そして、幽紀は隣にある大剣を手に持ち、強く引いた。徐々にグラグラと揺れ、そして大剣を引き抜くことに成功する。しかし、

「くっ…重たい…。」

 そのまま持っておくのは危険と判断し、下に落とした。

 だが、幽紀の近くにはすぐ手があった。

「⁉︎」

 そして、そのまま捕まり、地面に叩きつけられた。

「がはっ!」

 幽紀は思いっきり叩きつけられ、吐血する。その中で意識も遠のいていった。

「幽紀!」

 涼子は走ってデカブツに近寄る。そしてデカブツめがけて飛び上がる。が、後方に回避される。

「なっ!」

 そしてそのまま上へと蹴り上げられた。

「きゃあァァァッ!」

 そのまま地面に落ちて、気を失った。

 

 その様子を見ながらもなんとかコンテナの山にたどり着いた。

「幽紀!涼子さん!っクソッ!」

 荒士は叫ぶ、少し焦り始めた。

「奈々ちゃん、あとは任せたよ。俺がなんとかするから。」

「はい…」

 そういい荒士は走って行った。

「…荒士さん…」

 奈々は少し不安が残っていた。何か嫌な予感がする。それが奈々の本音だった。

 そんな中デカブツは徐々に幽紀に近づく。

「くっ…」

 幽紀は力を振り絞り、立ち上がろうとするが、徐々にデカブツは迫ってくる。このままでは立ち上がったところでサンドバッグになるだけだろう。

「このままじゃあ………。……荒士…。」

 幽紀は寂しくその名をつぶやいた。そして、デカブツが射程圏内に収まる。そして、拳を握り、今振り下ろそうとした。

「ごめんね………荒士…….。」

 幽紀は涙を流し、覚悟を決めた。

 これまで荒士を何度も振り回していた、ひどいことを言っていた。でも、それでもこれもそれも全て愛故の行動。そう、何故なら。

 荒士の事が、好きだから…

「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 荒士は全速力で走る。怒りの感情を元にアドレナリンを全て解放し、デカブツの元へ走っていた。

 そして、今、幽紀へと拳が振り下ろされる。

(まずい…このままじゃあ!)

 そして荒士はとっさの行動に出た。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 自分の拳を握り、幽紀の前まで走る。そして、なんとか間に合い、振り下ろされる拳に握りしめた自分の拳をぶつけた。

 あたりに走る凄まじい衝撃波。それとともにデカブツは後方へと後ずさる。

 しかし、ダメージを受けたのはデカブツだけではなかった…

「うがっ…」

 そのまま吹き飛ばされて、思いっきり壁に叩きつけられた。

「う…ああ…。」

 そのまま荒士は意識を失った。

 

 デカブツが少し後ずさり、隙が出来た。

「…!今…!」

 奈々はアサルトライフルの先端についたグレネードを射出する。グレネードは一直線に弱点を狙い、爆発する。

 そして、ついにデカブツは声にならない悲鳴をあげて倒れた。

「やった…。」

 奈々はその場に座り込んだ。自分が仕留めた達成感に浸っていた。

 だが、我に返り、全員の無事を確認しに行くことにした。

 まず奈々は涼子の元へ駆け寄る。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」

「う…いてて…」

 涼子は目を覚ます。そしてあたりを見渡す。

「あれ…?あいつは…?仕留めたの?」

「うん!」

「さっすが奈々ー!私の可愛い妹だー♡」

 そういい涼子は抱きついて来た。

「いたた…2人とも無事でよかったわ…。」

 奈々はその方向に振り向く、そこには荒士の肩を支えて歩く幽紀の姿があった。

「幽紀さん!無事ですか?」

「ええ…なんとかね…。でも、荒士が思いっきり無茶したみたい…。」

 そういい荒士を転がす。

「あの時の衝撃を拳を通じて全身に受け流したの。それによって体のあちこちに大幅な負担がかかってるわ。その分腕の骨折は間逃れたわね。」

 すると奈々は心配そうに近づき、触れる。

「荒士さん、大丈夫ですか…?」

「命に別状はないと思うわ。」

 話をしていると何やらあたりが揺れ始めた。

「きゃっ!」

「何っ⁉︎」

 天崎姉妹はあたりを見渡す。するとあることに気がついた。

「……お姉ちゃん…幽紀さん…あれ…」

「「っ⁉︎」」

 なんと、先ほど倒したデカブツがまた黒く染まり、形を変え始めた。

 果たして一体何が…?




今回も読んでいただき、誠にありがとうございます。光陽です。
今回は前回の内容的にもあらすじを短めに終わらせました?長いのと短いのはどちらがお好みでしょうか?自分は短い方が楽ですし、長い方が達成感的なものはありますしどちらでもいいですwww
さて、今回はステージ5のボスです。かなり難しく、私も苦戦を強いられました。作者もあの白いやつの名前をよく知らないので名前を「アンノウン」にしておきました。もしよろしければ読者の方で奴の名前を知ってる方がいらっしゃれば教えていただけるとありがたいです。
次回は倒したやつがなんと…?もうプレイ済みの方は予想できますよね!
それではみなさん!次回もお楽しみに〜!


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十四話 VS Unknown2

前回のあらすじ
最深部へと到達した荒士と奈々。そこにいたのは捕らえられた幽紀と涼子だった。速やかに2人を救出し、一際目立つ大きな培養カプセルを除いた。すると突如アラームと共に培養カプセルから巨大な塊が出てきた。
するとその塊は突如姿を変え、荒士たちを襲う。
かなりの苦戦を強いられ、荒士は気を失ってしまう。
それでも全員の力を合わせ、なんと倒すことに成功した。
だが、本当の絶望はこれからだったのだ…。


 形を変え始めた黒い塊。それは徐々に、腕、脚を形成し、その腕の先に長いブレード、その脚の先に鋭い棘が作られていく。その形はまるで蟹のようだった。

「嘘…」

 奈々はその光景を見て絶望した。いくらここの3人が強くとも全員ある程度傷を負い、さらに肝心の男である荒士は気を失っていた。

 涼子はナイフを構えて、前に出る。

「奈々、荒士君を連れて遠くへ行って」

 それに続くように幽紀も前へと出る。

「荒士のこと、頼むわ…」

「⁉︎お姉ちゃん?幽紀さん?」

 奈々は戸惑う。幽紀は歩き、大剣を持つ。

「っ!重たい…。」

 それでも幽紀は必死に持ち、荒士の大剣の鞘に収めた。

「奈々、あなただからこそ頼めるの。私はどうしても荒士を死なせたくない。私にとって、唯一の血の繋がった家族なの…」

「幽紀さん…」

 奈々は幽紀を見る。幽紀の目には涙が浮かんでいた。その目は恐怖の感情があることがわかった。

「荒士には伝えてて、今までありがとうって…」

 そういい幽紀は前へと進んだ。涼子も奈々の方を向く。

「奈々、奈々はもう、1人じゃないから。強く生きなさいよ。」

「待ってよ…2人とも待ってよ!私も、私も戦う!戦える!だから…」

 涼子は奈々の肩に手を置く。そして、首を横に振った。その後に答えた。

「どのみち今の私たちに勝ち目はないわ…幽紀も私も、そんなに余裕はないの…。だからせめてでも2人は生き延びて幸せになって…。ここで全員死ぬわけにはいかないから…。」

 そういい涼子も前へと進んだ。

「お姉ちゃん…」

 奈々は涙を流しつつも、荒士の肩を支え、その場を離れた。

 

 蟹型のゲテモノはその辺でジタバタと暴れている。

「ちょっと!」

 その声に蟹は振り向いた。

「あんたの相手は!」

「私たちよ!」

 そういい2人はそれぞれ武器を構える。

「涼子、奈々にあんなこと言って何のつもり?」

「奈々には死んでほしくないの、それだけ。そういう幽紀だってそうじゃん?」

「あなたと似たようなものよ。」

「奇遇だね、あたしたちが意見合うなんて。」

「むしろ、初めてかしら?」

 そういい涼子と幽紀は蟹へと立ち向かった。

 蟹は上へと飛び跳ねて、接近し、腕についたブレードを振り下ろす。しかし、そんなものが当たるはずも無く、2人に華麗にかわされる。

「幽紀!そっち側に回って!」

「言われなくてもするわよ!」

 そういい2人は二手に分かれる。蟹が狙いを定めたのは…

「ひゃっ!」

 幽紀だった。か弱い声をあげた割にはスタイリッシュな身のこなしで回避する。

 すると蟹はその場でびょんびょんと跳ね出した。

 2人の想像以上に蟹の動きは素早い。

「っ!」

 なんとかかわすがあの爪に当たれば間違いなく真っ二つだろう。もちろん踏み潰されてもひとたまりもない。

「荒士…」

(こんな時、あなたがいてくれれば…)

 幽紀はそんなことを思いながら後ろへと下がる。

 

「荒士さん!荒士さん!」

 少し離れた場所で奈々は荒士の体を揺さぶる。しかし、荒士の意識は一方に覚めない。

「荒士さん!幽紀さんが、幽紀さんが大変なんです!お願い、目を覚ましてください!」

 奈々は普段こんなに声を出すことはない。無駄に声を出す必要なんかない。そう考えていた。しかし、彼と出会って何かが変わった。人とのコミュニケーションの楽しさ、それを理解したのだ。

 それを教えてくれた荒士のことが好き、大好き。だからこそ荒士を助けたかった。

「何か、何か手段は…」

 すると奈々はあることを思い出した。

『感情性心身暴走症』。荒士がかかってる病の名前だ。

「荒士さん…」

 奈々さ一つの可能性にかけることにした。

 顔を近づける。いつ見ても整った顔立ちだ。奈々の顔が徐々に赤くなっていく。

「め、目を…覚まして…」

 そのまま奈々は荒士の唇に、自分の唇を重ねる。

「ん…ちゅっ…」

 そのまま自分の舌を荒士の舌に絡めた。

「荒士…ちゅっ…さん…れろ…」

 

 なんだろう…この感覚は…

 どこか暖かいような感覚…

 あれ?…俺は何をしてたんだろう…

 ここはどこで、何をしてたんだろう。

 あたりを見ても闇しかない…

 俺は…誰だ…?

 何もかもが失われていくのか…

「思い出しなさい….荒士…」

 誰だ?…この声は…?

「大丈夫よ、何も恐ることはないわ。

 さあ、今こそ全てを思い出し、目をさましなさい。」

 …そうか…その声は…

 っ⁉︎なんだ…体が…熱い…

 ドクン…ドクンドクン…

 体全身で鼓動を感じる…

 そうか、俺は「東雲荒士」。ここはとある研究所….そして、俺の使命は…

「荒士さん…荒士さん…」

「この声は…」

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン….

 

「んん…」

「っ!」

 奈々は慌てて口を離した。2人の口の間に透明な橋がかかる。

「荒士さん….。」

「…いてて…」

 荒士はその場で立ち上がった。そして、あたりを見渡す。すると蟹のような怪物と幽紀と涼子が戦っていた。

「奈々…君が助けてくれたのか…?」

「え?」

「目がさめる前に君の声が聞こえたんだ。」

 そういい荒士は奈々にキスをした。

「ありがとう奈々、行こうか…幽紀達を助けなきゃ!」

「…はい!」

 

「ああっ!」

 ブレードの峰の部分で涼子が殴られる。

「涼子!」

 そのまま後方へと飛ばされる。すると蟹はまたしても幽紀へと狙いを変えた。

「っ!」

 幽紀は上へと飛び上がり、ショットガンで上の部分のコアらしきものを狙う。

「きっとそこが弱点ね…」

 そういい急降下して、銃剣を突き刺そうとする。が、しかし、蟹の上の部分にある指のようなものが幽紀を挟んだ。

 バシンッ!

「ガハッ!」

 そして、そのまま奥へと飛ばされる。

「げほっ…げほっ…。」

 倒れこみ、吐血する。少し先にはショットガン、手を伸ばす。

「まだ…戦える…。」

 だが、蟹は跳ねてこっちへ徐々に接近する。

「っ…もう少し…。」

 そしてショットガンを手に取り、構えようとしたところだった。

「っ⁉︎」

 蟹はブレードを上に挙げ、今振り下ろそうとしていた。幽紀は恐怖で足がすくむ。

「っ!」

 幽紀が覚悟を決めたそのときだった。

 カーン!

 襲いかかろうとしたブレードが弾かれる。幽紀は恐る恐る目を開けた。するとそこにいたのは…

「荒士…?」

「間に合ってよかった…。それに、さっきの二の舞にもならなかったよ。」

 幽紀の目には映っていた。今の荒士は違う、今まで病の補助を受けて戦ってきた。今もその症状を応用して戦闘能力を上げてる。しかし、今の荒士からはオーラが出ていた。いつもよりも、より強く、逞しく。荒士の背中がそのように見えた。

「俺が終わらせる!これ以上、誰も傷つけさせない!」

 そして、荒士の目の色が黒から金色へと変化する。そして、物凄い速度で蟹のアームについたブレードを砕いた。

「速いっ!」

 遠くにいた涼子もようやく立ち上がる。

「荒士君…?」

 その速さに涼子も驚愕した。自分なんかよりも遥かに速い。身体能力には自信があるが、どんなに調子が良くともあれには敵うはずがない。そう確信した。

「はあぁぁぁ!」

 荒士の猛攻は止まない。ブレードを砕いた後に、右足のツメを割り、そのまま関節を裁断した。すると蟹はその場でバランスを崩した。

 反対側のアームについたブレードを突き刺そうとする。しかし、簡単にかわされ、アームごと切断される。そして、反対側の足に大剣を投げつけた。すると見事に突き刺さり、蟹の四肢を奪った。

「奈々ちゃん!」

 荒士が叫ぶ。

「はい!」

 すると奈々が荒士の元へと駆け寄る。その奈々の速度も普段のものとは思えなかった。そしてその奈々にも同じオーラが見られる。

 そう、まるで2人は心の底からリンクしているようだった。

「あの2人…。」

 幽紀も涼子もその場で驚愕していた。

 奈々は上へと飛び上がる。荒士もそれに合わせて飛び上がり、天井に足を向ける。そして自分の足に奈々の足を乗せて、蹴った。すると奈々は高く跳ぶ。

「これで、終わりです!」

 そしてアサルトライフルを構え、全弾をコアに叩き込み、トドメにグレネードを放った。

 すると爆発とともに蟹は黒い塊と化し、姿をくらました。

 そして荒士も高く跳び、奈々を受け止めて、そのまま下へと落ちた。

「ふぎゃっ!」

 少し痛かったらしい。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、問題ない。」

 そういい2人で起き上がる。2人の側に涼子と幽紀が寄ってきた。

「荒士、あなた、なんだか逞しくなったわね。」

「そうか?でも、いつもよりも力が湧いたんだ。大切な人を守りたい、そう思うとより一層…」

 荒士は自分の手を握り、その感覚を噛み締めた。

「それはきっと、あなたの感情に病が答えたのかしら?」

「かもしれない。この体でよかったと思うよ。」

 一方天崎姉妹は、

「凄いよ奈々!どうしたのあの身体能力!」

「え?ええと…あ、荒士さんから授かったというか…その…」

 すると涼子は何かを察した。

「そうか…あたしたちが死にかけてる中奈々はせめて種を残そうと全力を…」

 すると奈々は顔を真っ赤にして否定する。

「ち、ちが、違うってばあ!」

「じょーだんじょーだん!」

 すると涼子は奈々の耳元で囁やく。

「キスはした?」

「それは……///うん……///」

 奈々は俯向き、顔を赤らめた。

「ん?」

 荒士は床に穴が空いてることに気がつく。

「やつはそこから逃げたのか…。」

 そういい荒士は下を覗く。すると、下にも何かフロアがあった。

「みんな!このしたに何かある!」

 そういい全員集合する。そして、全員で顔を合わせる。

「行ってみようか。」

 荒士が出したその言葉に全員異議はなさそうだ。

「よし、行こう。」

 そういい荒士を筆頭に全員下へと飛び降りた。




今回も読んでいただきありがとうございます。光陽です。
今回は蟹さんとの戦いです。蟹さん強かったです。個人的にはマッチョさんの方が苦戦を強いられました。
前回の投稿後、白い変なのの名前を教えてくださった方がいました。ありがとうございます。
とはいえ「ヒト」さんというのも呼びにくいので、今後はマッチョさんで呼んで行くとおもいます。
それでは今回はこの辺で失礼させていただきます!
次回もお楽しみに〜!


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十五話 真実

前回のあらすじ
なんとかマッチョさんを倒した奈々達の目の前に移ったのは先ほど倒したマッチョさんがなんと黒色に変化したかと思いきや、形を変えて再び動き出したのだ。
涼子と幽紀は覚悟を決めて、奈々と荒士に逃げるように呼びかけた。それでも諦めきれなかった奈々は荒士の目を覚ますためにあの手この手を考える。その結論は愛。奈々は荒士に目一杯キスをする。
そんな意識を失っている荒士は聞き覚えのある声が聞こえる。その声に導かれるに連れて徐々に意識を取り戻す。そして、その果てに聞こえたのは奈々の声。
荒士は意識を取り戻すと、先ほどのダメージは嘘のように体が軽かった。そして、涼子と幽紀を助ける為に奈々と共に立ち上がる。
一方窮地に立たされた涼子と幽紀。幽紀が死を覚悟したその時だった。敵の攻撃を荒士が守ってくれたのだった。
完全に力を解放した荒士は荒士の病がキスの際に伝染した奈々と「共鳴」し、敵を倒すことに成功した。


 蟹型の怪物を倒して下に降りた4人。たどり着いたのは脱出口だった。

「もしかしてこの先に出口が…」

 しかし、そこにはボートが一台しかなかった。奈々が近づいてボートを詳しく調べる。

「動くみたい。でも…」

「どうしたの奈々?」

「何かわかったかしら?」

 涼子と幽紀が尋ねる。奈々は答えた。

「このボート二人乗りみたい…。」

 今いるのが4人、だが、乗れるのは2人。残り2人をどうするか。

「幽紀は泳いだら?」

 涼子は冗談半分で言う、すると幽紀は怒る。

「嫌よ、あんたが泳ぎなさいよ!」

「でも、どうしよう…」

 奈々は何かないか周りを見る。すると後ろにボートの残骸や廃棄品などの山がある。

「何かあるかしら…」

 幽紀は後ろに溜まってたボートの残骸を漁る。

「!これならいけるわ。」

 そういい幽紀が取り出したのは一枚の板と一本のロープだった。

「荒士、あなたはこれを使っ」

「いや、幽紀が使ってくれ。奈々と涼子さんはそのままボートへ」

 荒士は何の躊躇いもなくそう言った。

「え?荒士さんはどうするんですか?」

「俺はヘリポートに行ってヘリでも盗む。ないならそこで…おしまいかな…」

 その言葉に全員が驚愕した。

「何を言ってんよ!もしそうだったら荒士君は、荒士君はそうやって簡単に命を捨てるの⁉︎奈々を置いて行って!」

「お姉ちゃん!」

 奈々のその一言に涼子は我に返る。

「その…ごめん…」

「いえ…自分の方こそすみません…俺はいつまでたっても弱い人間ですから…。」

 そういい荒士は背を向けた。だが、荒士は一言告げる。

「でも、今なら一つだけ言える…

 俺は、死なない。死ぬわけにはいかない!」

 幽紀はその言葉を聞いてまた、あの頃を思い出した。

(何言っても聞きそうにないわね…。昔からそうだった…)

 昔から荒士は頑固だった。勝負事にも負けず嫌いで、何が何でも根性で立ち上がった。

(だから私は、荒士が好きなのかもしれない…)

「じゃあ皆んな、無事でね。」

 荒士はそのまま去って行った。

「それじゃあ、私たちは脱出しましょう。」

 幽紀はボートの後ろにロープをくくり付けた。

 そして、エンジンを吹かし、ボートを走らせる。その後ろにつけたロープを手に持ち、板に乗った。

 

 少し進んだところだった。

「?」

「どうしたの奈々?」

 奈々が何かに気がついた。それに気遣う涼子、その後に涼子も気がつく。

「何…今の音…?」

「わからない…」

 もちろん聞こえたのは2人だけではなかった。

「何かしら…?」

 するとそれはようやく姿を現した。

 ギュオォォォオ!

「「「⁉︎」」」

 そこにいたのは全体が白い、巨大な脳みそだった。さらにそこには触手のようなものがぶら下がっている。

 そして脳みそはボートの前に立ち、涼子達に衝撃波を送りつけた。

 キィィィィィィン!

 甲高い音とともに放たれた衝撃波にボートはひっくり返り、三人が放り投げられる。

「ひゃっ!」

「ああっ!」

「きゃっ!」

 そのまま海に落っこちた。

 

「ようやくたどり着いたか…」

 荒士はようやくヘリポートへとたどり着いた。そこにはヘリコプターが一台だけ存在していた。

「よし、これでようやく脱出が」

 そう言った途端だった。何かが飛んで来るような音がする。するとそれはヘリコプターにあたり、爆発した。

「なっ⁉︎」

 唯一の脱出手段であったヘリコプターを破壊された。おそらく今のはロケットランチャーだろう。荒士はその飛んできた先を見た。するとそこには。

「待ってたぞ、東雲荒士…。」

 そこにはフードを被った男が1人いた。その男の足元にはロケットランチャーの打ち終えた残骸が置かれていた。使い捨てのものだ。

「誰だお前は!」

「お前も良く知る人間と言えばいいかな?」

「ふざけるな!もしかして涼子さんや幽紀を捕まえたのはお前か!」

 すると男は笑い出す。それにしても荒士は相手が知ってる人間なのか疑った。相手は機械音声で会話をしている。もしかして一方的に知ってるだけなのではないのかと。

「流石だな、その頭の回転はもっと俺みたいに勉強で使って欲しかったが…」

(俺が勉強嫌いだってことを知ってる…そんなのダチか身内しか…)

「知らないとでも?」

「⁉︎」

 さらに驚愕した。考えてることまで読まれていたのだった。

「お前は…一体…」

「まだわからないか。よかろう。私の正体を教えてやろう…」

 そういい男はフードを外した。すると男は仮面のをつけている。そして、その仮面が外れて、素顔が露わになった。

「っ⁉︎」

 荒士はその顔を見て驚愕した、

 そんなことがあるはずがない。荒士はそう思った。きっとこれは何かの間違いだと思った。しかし、その目の前にいるのは荒士が最もよく知ってる人間だった。

「…嘘だろ…そんな…」

「久しぶりだな…荒士…」

「…竜也兄さん……。」

 東雲竜也。元東雲家の次期当主であり、荒士のトレジャーハンターの師でもある。ある日のこと、仲間とトレジャーハントしに行った際に裏切られ、命を落とした…筈だった。

「さらにいいことを押しえてやろう。ここの研究所にいた、人狩りやマウント、そして、コードネーム「HITO」。あれは全て、私が生み出した。」

 嘘だ。荒士はそう言いたかった。何故なら竜也はそのようなことをする人間ではなかった。

「どうして…?兄さんはいつだって、誰かの為に生きてきたんじゃなかったのか!」

「私は知ってしまったのだよ…人の心の闇をな…。弟のお前に、説明してやろう…。」

 

 ニ年前

「何故だ…何故…?」

 ここまでは知ってるだろう。私は友人に裏切られたのだ。

「悪いな竜也。何かを得る為には、何かを犠牲にする必要があるんだ。その犠牲に、お前が選ばれたんだよ。」

 そう言い友人は私を置いて行った。

「ま、待ってくれ!…荒士ィィィィ!」

 最後に私は弟である、お前の名を叫んだのを覚えている。

 それからしばらくして目が覚めた。私はとある施設に運ばれていた。どうやら奇跡的に生きていたらしい。しかし、生命力はかなり低下していた為、私は体の一部を改造し、なんとか生命を維持した。そこで1人の男に出会った。その男は言った。

「お前のことは調べさせてもらった。気の毒だな…信じていた仲間から裏切られ、見捨てられた。お前には、人の心の闇を見える力を与えた。その力を持って、この世界を見てみろ。この世界がいかに醜いか、その目に刻め。よく理解出来たなら、私の元へ戻ってこい。」

 そう言い私は施設から出されて、街を放浪としていた。バレないようにと怪しまれないようにを重ねて俺は顔が見てないようしていた。

 だが、私の目には写っていた。人々の心の闇が、人々の底知れぬ欲が、人々の身勝手な考えが!

 私は絶望した。私は今まで何のために人のためを思い、尽くしてきたのか理解出来なかった。

 そして研究所に戻り、そのことを報告した。すると、男はこう言った。

「醜いか?世界を変えたいか?」と、

 私はその話に乗った。そして、その男と共に生物兵器や殺戮兵器を生み出した。

 

「だが、その男は生物兵器に殺された…。私の数少ない同士だった…。

 だから決めたのだよ、この生物兵器を使い、人を新たに歪めて正すと!」

 荒士は黙って聞いていた。そして、荒士は口を開いた。

「…違う…」

「?」

「そんなの違う!確かにどんな人にも心の闇はあるかも知れない!でも、全てが全て悪いというわけじゃない!いい人だっているはずだ!絶望だって諦めなければ希望になるはずだ!」

 荒士は全力で否定する。が、竜也も引く気はない。

「友にも裏切られ、何を信じろと言うのか!」

「大切な家族の存在を忘れたのか!」

「家族などいないに等しい!私は事実上死んだのだ!帰る場所などない!」

「そんなことはない!せめて…せめて生きてるって教えてくれたら…。」

 荒士は目をつぶる。目からは涙が浮かぶ。兄の闇堕ちっぷりに対する悔しさと、家族が生きてた嬉しさの二つの意味だった。

「ならばその身に刻み込んでやる…その理想論など、現実の前では無意味だと!」

「兄さん!また昔の兄さんに戻してやる!」

 そう言い荒士は大剣を構える。竜也の手には二本の脇差が握られていた。

「懐かしい武器だ…元々それは、私のだったな…。」

「…」

 お互いにしばらくの間、沈黙が走る。そして、風が吹き終えた途端に沈黙が終わりを告げた。

「行くぞ!愚弟!」

「こいよ…その歪んだ性格、捻じ曲げてやる!」

 

「いたたたた…」

「うう〜…」

「何よもう…」

 涼子たちは何とか足場にたどり着く。するとそこには大きな白い脳みそ(以降ブレイン)がいた。

 黒いコアの部分下からは長い触手がウネウネと動いている。

「何よこいつ!気持ち悪っ!」

 涼子は全力で気持ち悪がる。

「…!これってまさか…?」

 奈々はブレインを見てすぐに正体が分かった。それに合わせて幽紀が続きを言う。

「あの時のあの白いやつね…」

 そう、人型の次は蟹型、そしてその次は脳みそだ。

 するとブレインは何かを生成した。それは黒い塊であたりを吸い込もうと引力が発生している。

「っ!みんな逃げて!」

 涼子のその叫びに合わせて3人はその場から即座に避難した。

「何あれ?」

「ブラックホール?」

 奈々と幽紀は驚愕していた。涼子もその威力には驚愕していた。

「これは…厄介なのが相手になったわね…。」

 幽紀はブレインを見て言った。

 奈々と涼子がその横にきた。

「やるんでしょ、あいつ!」

「勿論よ。」

 涼子も幽紀もやる気満々だった。そして、その横で静かにしているが奈々も奮闘していた。

「終わらせます、全てを!」

 そう言い奈々は銃を構えた。

「やったろうじゃん!行こう!」

 涼子の掛け声と共に全員、戦闘態勢へと移行した。




今回も読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
また、新しいコメントもいただきました!本当に感謝してます!
コメント欄で悩んでいたブラックホールの件は面倒だったので見えると言うことにしました。
今回は黒穴先輩は優しい世界なんです。はい。
あらすじを長く書いたので後書きは手短にと言うことでこの辺で失礼させていただきます。
それでは次回もお楽しみに〜!


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十六話 最終決戦 前編

前回のあらすじ
蟹さんを倒した4人は敵が逃げた所に穴が空いていたので、その中に飛び込んだ。するとそこはこの施設から出ることができる脱出口となっていた。
しかし、そこにあったのはボートが一台。更に言えば二人乗り。どうにか4人で抜け出せないかと思った幽紀は残骸から板とロープを見つけた。これを荒士に使うよう言うも荒士は断り、別の場所から脱出を試みることに。
荒士が去った後、奈々達は先に脱出することにしたが目の前には先ほど倒した蟹が再び変化を遂げ、襲いかかった…
その頃荒士は屋上にたどり着き、ヘリコプターを使おうと試みたが、フードの男に破壊されてしまう。その後その男がついに正体を明かした…
なんと彼は過去に死んだはずの兄、東雲竜也だった。



 沈黙を切り、2人は接近する。

 荒士が大剣を横に振る。しかし、あっさりとかわされてしまう。が、それに動じず大剣を振るう。

「かなり腕を上げたな…」

 そう言い竜也は連撃を全てかわしきり、反撃する。

「っ!」

 速い。荒士はそう感じた。武器的に考えてもこっちの方が不利だろう。竜也は完全にスピードに特化している。それに対してこっちは大剣が重たい分攻撃が回避されやすい。

 竜也は二本の脇差で、素早く攻撃を繰り出す。だが、荒士も負けじと大剣で防ぐ。防御と言う観点なら負けてはいないだろう。

「ちっ…大剣が盾になるか…」

 そう言い竜也は後方に退がる。そして脇差をしまい、構える。

「?」

 荒士は警戒を解かず大剣を盾にマグナムを構える。

「その銃で私を狙う気か?」

 そう言い竜也は懐にしまっていたナイフを取る。

「!」

 荒士はその瞬間を狙い、マグナムを狙い撃つ。がしかし、

 カーン!

 あたりには金属音が響いた。なんとマグナムの弾丸をナイフで防いだのだった。鉛弾は真っ二つに裁断され、その場で落ちた。

 そのまま凄まじい勢いで荒士へ近づく竜也。荒士は引き続き引き金を引いたが、スレスレで回避された。

「な…!」

 そう、間違いなく竜也の身体能力、反射神経は人を超えていた。それは涼子や自分をはるかに凌駕するほど。

 あっという間に間合いを詰められ、ナイフを突きつけられる。

「っ!」

 慌ててその腕を受け止めた。しかしその瞬間に横腹に鈍い痛みが走る。

「がはっ!」

 そのまま横へと飛ばされる。横腹を蹴られたのだった。大剣は突き刺さったままで竜也はこちらへ近づく。

「くっ…」

 荒士はその場で立ち上がる。

「ならば…っ!」

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクン…

 全身の鼓動が早くなる。なんども続く激しい戦闘の末、感情に関係なくある程度の量ならアドレナリンをコントロール出来るようになった。

「持ち前の病の特性をここまでコントロールするとは…さすがは私の弟だ…」

「さて始めようか、第二ラウンドを!」

 そう言い荒士は素手で竜也へ向かい走り出した。

 

「はあぁぁぁっ!」

 涼子が接近し、コアを狙う。しかし、その瞬間

 キィィィィン!

 凄まじい音と友に衝撃波があたりに走る。

「きゃあっ!」

 そのまま後方へと吹き飛ばされた。

「いたた…」

 そのまま起き上がろうとするが、ブレインからは触手が伸びて今にも涼子を拘束しようとする。

「っ!」

「お姉ちゃん退がって!」

 奈々がアサルトライフルを構えてコアを狙い撃つ。だが、触手が素早い動きで全ての弾丸を防ぐ。

「そんな…」

「ったく!なんなんだよこの化け物…。あたしも奈々でもどうしようもないじゃん…。」

 そう言いブレインを見上げる。すると、ブレインは再び小規模のブラックホールを生成する。

 涼子と奈々は即座にその場を離れる。吸い込まれそうになるが、それでも必死に堪え、振り切った。

「奈々!涼子!後ろ!」

「「⁉︎」」

 その声と共に振り向くとそこには先ほどまでいたブレインの姿があった。ブレインはその触手をこちらへと伸ばす。

「っ!逃げて奈々!」

 涼子は奈々を突き飛ばし、自ら触手に拘束された。

「お姉ちゃん!」

「っ、なんなのこれ⁉︎」

 涼子は振りほどこうとするがそう簡単にはいかない様子だった。

 すると何やらビリビリと音が聞こえて来た。ブレインが電気をチャージしている。そのまま放電するつもりだ。そうなれば涼子も一緒に電気を浴びることになる。

「っ!」

 涼子は覚悟を決める。だが、そんなことはさせるばすもない。

「涼子!」

 幽紀が上から飛びかかり、コアにめがけてショットガンを突き刺した。そしてそのまま暴発させる。すると声にならない悲鳴をあげ涼子を離す。

 涼子は自ら着地し、上を見上げる。

「あんたに助けてもらうとはね…」

「私もあんたを助けるのはなんだけども、今はそんなことを言ってる場合じゃないわよ。」

 そう言い2人はまた構える。奈々は後方で支援する形で後ろへ退がる。

「まだ行けるわよね?涼子?」

「当たり前じゃん!舐めないでよ!」

 そう言い2人は走り出す。ブレインは再びブラックホールを生成し、2人を吸い込もうとした。

「また?」

 2人はその場で立ち止まり、後方にさがろうとする。すると目の前から突如ブレインの姿が見えた。

「「⁉︎」」

 キィィィィン!

 甲高い音と共に放たれた衝撃波は涼子と幽紀を吹き飛ばす。

「きゃっ!」

「あうっ!」

 そのままブラックホールへ吸い込まれそうになる。

「お姉ちゃん!幽紀さん!」

 しかし涼子は上にあった足場にしがみつき、幽紀は急降下し、床にショットガンの銃剣を突き刺す。そしてブラックホールは自然消滅した。その瞬間、ブレインは涼子を触手で殴った。

「がはっ!」

 そのまま壁に叩きつけられる。

「涼子!」

 続く幽紀も再度の衝撃波で後ろへ飛ばされた。

「うがっ!」

 そのまま2人は力なく倒れる。

「そんな…」

 奈々は絶望していた。この2人ですら敵わない相手を1人で戦えるのだろうかと。

 どうしよう…?

 どうすれば勝てるのだろう…?

 その時だった。どこからともなく声が聞こえた。

(奈々ぁぁぁぁぁぁ!)

「荒士…さん?」

 そして、その声と共にある現象が起こる。

 ドクン…

「あう…」

 ドクンドクン…

「なに…この…かんか…く……。」

 それは荒士とキスしている時と同じ感覚だった。鼓動が早くなり、少し息苦しくなるような感覚。しかしあの時は荒士を救うためだったので耐えることができた。

 ドクンドクンドクン…

「あ…ああ……」

 全身が熱くなる。苦しい。奈々は苦しくて仕方なかった。

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…

 それでも奈々は堪える。何故ならこの症状は荒士からのプレゼントだ。

 きっとあの時にこの病に感染した。だからこそこの力を受け入れなければならない。むしろ、この怪物に勝てるのはこの力しかないと奈々は確信した。

「ああああああああああああああああ!」

 そして奈々は力なく、その場で座り込む。

「奈々!」

 その声と共に我へ返る。ブレインがこっちに迫っていた。だが、奈々は不思議とそれを脅威に感じなかった。

(伝わる…荒士さんの鼓動が…。)

 自然と奈々の体は軽い。そして、奈々の全身からはあの時と同じオーラが出ていた。

「やっぱりあの子、感染してるわ…」

「感染?」

「実は…」

 幽紀は荒士の病のことを話した。

「それで奈々がスーパーモードになってるんだ…。なんかすごい!いたた…」

「あんたも怪我してるんだから無理しないの…ほら…立つわよ…」

 そう言い2人は支え合い立ち上がる。

 先を見ると奈々がブレインと1人で対峙していた。

「まだ、これからです!」

 

「ぐあぁっ!」

 荒士はそのまま後ろの壁に叩きつけられ、その場でしゃがみ込んだ。

「この力を使ってもダメなのか…」

「無駄だ、弟であるお前の能力は全て把握している。兄に勝る弟などいない!」

 荒士はそれでも立ち上がろうとするが、力が入らない。

「まだだ…俺は生きるんだ…。力を貸してくれ…」

 そして1人の愛しい人の名を叫ぶ。

「奈々ぁぁぁぁぁぁ!」

 その瞬間だった。

「っ⁉︎」

 荒士の全身にさらなる鼓動が聞こえる。まるでどこかから伝わるかのような感覚が。

「ん?」

 竜也はその手を一旦止める。目の前で何が起こってるのかよくわかっていなかった。

「これは…」

 荒士の鼓動と共にまた違う鼓動がシンクロしていく。その瞬間、あの時と同じオーラが荒士にも出てきた。

「な、なんだそれは…?」

 流石の出来事に竜也も困惑した。

「そうか…そうだよね…」

 その場でしゃがんでいた荒士は再び立ち上がり始める。

「伝わるよ…奈々の鼓動…。感じるよ…奈々の力を….。」

(はい、私も感じます…。)

 すると突然荒士と奈々がテレパシーで会話出来るようになっていた。

「やはりそうなんだね。」

(私たちは)

「一つになっている!(一つになっている!)」

 その声と共に荒士は完全に立ち上がった。

「くだらんことはよせ!お前も私のようにやがては裏切られるか、奴らのように裏切るかだ!人間など所詮そんな生き物だ!

 一番信頼できるのは、自分しかいない!」

「違う!人間は、人間はそんな生き物なんかじゃない!人間は1人じゃ何も出来やしない。でも、繋がるから、みんなで一つなるからこそ、無限可能性を発揮する!」

「ならば、照明してみせろ!その2人の力とやらで、私を超えてみせろ!」

 そう言い竜也はこっちへ向かい走り出す。荒士は落ち着いた様子で構える。

 竜也が拳を荒士に向ける。荒士はそれをかわす、するとまた竜也が即座に足で蹴りを入れようとするが止められる。

「同じ手は無駄だ!」

 荒士はそのまま顔面に拳を当てる。その一撃の速さに竜也は反応出来ずに、後方へと飛ばされた。

「ぐあっ!」

 竜也は即座に体制を立て直す。だがその目の前には荒士の姿があった。

「だあ!」

 荒士が連撃を繰り出すが、攻撃を防がれる。

 竜也が隙を見計らい足払いをする。

「っ!」

 だが、そのまま手を地面に着け、首筋目掛けて蹴りを入れる。竜也はその攻撃も見事に防いだ。荒士はそのままバク転で後ろまで退がる。

「以前よりも更に動けてるだと…?そろそろ体力的にも限界の筈だ…」

 竜也は呼吸を乱しながら言う。だがその反面、荒士の呼吸は正常だった。

「…」

 そのまま歩いて近寄ってきた。

「くっ…来い!お前のその全てを、私が受け止めよう!その力で私の意思を超えてみろ!」

「言われなくてもやってやるさ!」

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 2人とも同時に走り出した。

 




今回も読んでいただき誠にありがとうございます。光陽です。
いよいよ始まった最終決戦。兄と弟の戦いです。
こういう兄弟対決は大抵兄が闇堕ちをして、それを弟が倒すといった展開が王道ですよね。
だから王道を進みました。まあ、王道モノは嫌いなんですけど…
ゆ、許してください><こんな底辺な作者には誰かを驚かせるようなモノを書くことは出来ないんです!はい!
…開き直ったところでですよね…。なんかすんません…。
それでは次回がいよいよ最終決戦の後半になります。ズバリを言うと最終話です。え?短い?短いぐらいが丁度いいのですよ。
(作者の能力が低いだけです)
それでは気を取り直して、次回もお楽しみに〜!


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最終話 最終決戦 後編

前回のあらすじ
それぞれの相手に全力で挑む奈々達と荒士。しかし、想像をはるかに上回るほど強くその結果奈々達はブレインに、荒士は竜也に追い詰められてしまう。
だが、その時だった。突如奈々の鼓動が高まり、体温が上昇する。それに伴い荒士の声が聞こえた。その時の荒士は力を解放しても竜也に敵わずにいた。荒士は力を振り絞り、奈々の名を叫ぶ。するとそうした瞬間だった。荒士の体にさらなる鼓動が聞こえた。
そう、その音は奈々が発症した時の鼓動と同じものだった。そう、2人は1つになったのだ。
1つになった結果2人の力をリンクし、それぞれ2人分の力を解放することができる。そして、それぞれ立ちはだかる壁へと立ち向かうのだった…


 奈々はブレインの攻撃を回避し、ハンドガンを打ち続ける。しかしブレインはご自慢の触手で全てを打ち払った。

(どうにか隙が出来ないのかな…)

 奈々はそんなことを思い、即座に離れてリロードする。するとブレインは奈々のすぐ後ろへとテレポートした。

「⁉︎」

 触手を伸ばそうとするが奈々は即座に離れながらハンドガンを撃つ。するとブレインも即座に防御に徹した。

「これじゃあキリが…」

「奈々!」

 奈々はそう言われて振り向く、すると涼子が側に来ていた。

「お姉ちゃん!怪我はしてないの?」

「怪我なんて…そんなもの、奈々の命に代えられないわよ!」

 そういいナイフを再び構えた。

 すると反対側の隣には幽紀が歩み寄る。

「幽紀さん?」

「私はあくまで利害の一致で行動してるだけよ?でも、仲間として共に行動してるのなら、一緒に協力するべきだと思うの。」

「幽紀さん…」

 そういい3人で前を向く、ブレインはこちらを見ているかのようだった。

 でも、怖くなんてない。何故ならこの3人だからだ。

「行くわよ!ついてらっしゃい!」

「命令しないでよ!」

 そういい幽紀と涼子が共に走り出した。それの後に続き奈々も走りだす。

 ブレインは触手をこちらへと伸ばして襲いかかる。

「させないわよ!」

 涼子がナイフを取り出し、全ての触手を刻む。そしてそのまま幽紀と奈々の2人で飛び上がる。

「はあっ!」

 幽紀はそのまま急降下し、ショットガンを突き刺す。そのままコアめがけて弾丸を放った。すると奇妙な声をあげて、動きが止まった。その間に奈々がハンドガンとサブマシンガンを乱射し、ブレインの体全体に風穴を開けた。そのまま降下し、脳を蹴って後ろへ退がる。

「てやぁぁぁっ!」

 涼子がナイフを勢い良く振る。その刃がコアと脳を離した。

 そして、奈々の元へコアが転がった。

「終わりです」

 そういいハンドガンの引き金を引いた。

「ギィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 おぞましい断末魔と共にコアは破裂し、砕けた。そう、ブレインを倒したのだった。

 その瞬間、全員その場でヘタリ込む。

「はあ…はあ…」

 特に奈々の息切れは激しい。既に人間離れした2人とは違い、身体能力は人ほどであれほどの負担をかけたからだ。

「はあ、はあ、奈々?大丈夫?」

「はあ、はあ、終わったのね…?」

 涼子は奈々の元へ駆け寄り、幽紀は倒したブレインの元へと寄った。

「うん…大丈夫…」

 そういい奈々は涼子に支えられ、立ち上がる。

「それよりも…早くここを出よう?」

 奈々はそういい歩き始める。そこにはひっくり返ったボートがあった。

「お姉ちゃん、幽紀さん、手伝ってください。」

「おっけー!」

「わかったわ」

 

 その頃屋上では、2人の男の拳での激しい攻防が繰り広げられていた。お互いに一歩も譲らなかった。

「何故だ…何故そんなにパワーが出る⁉︎こんなこと…私の計算上ではありえない!」

 すると荒士が腹部に拳をめり込ませた。

「がはっ!」

 そのまま顔面を殴り、後方へと飛ばした。

「うがぁっ!」

「何故かって…?そんなの決まってるよ…。」

 そういい荒士は竜也の元へと近寄り、胸ぐらを掴む。

「何故なら、これが兄さんが信じなかった人間の力だ!」

 そういい頭突きを一撃決める。

「ぐっ!」

 だが竜也も負けじと足で荒士の腹を蹴る。

「ぐふっ!」

 すると荒士が手を放す。拘束から解かれた竜也はそのまま荒士を後方へ蹴り飛ばした。

「ええい…そんなこと、私は認めん!」

 そういいフラフラと近寄る。が

「ぐっ…ガハァッ!」

 歩く途中に血を吐く。さらによろめくが、竜也はまた歩き出す。

 荒士も立ち上がり、竜也の元へと歩き出した。

「勝つんだ…何としても…俺は生きる…大切な人が、いるから…」

「ふふふ…。いまはそうかもしれんが、やがてその女もお前のことを捨てるかもしれんのだぞ…?」

 すると荒士はその場で立ち止まった。

「考え直せ…ハァ…私は家族にも捨てられ、友にも裏切られた。何を信じるべきか、それは自分だけだ!ガハァッ!」

 再び口から赤い滝が流れる。

「…」

「さあ荒士…お前も、こっちへ来い…。今なら…今ならまだ…」

「断る。」

「何⁉︎」

「奈々は、奈々は俺を裏切らない!」

「何故だ……?何を根拠でそれを言ってる⁉︎」

「根拠もない、確証もない。でも、きっと続く、この思いは。兄さん。兄さんは囚われ過ぎたんだ、過去の悲劇に。」

 荒士はゆっくりと歩きながら竜也の元へ行く。竜也は何故かわからないが、荒士が近づくにつれて自分が徐々に後ろにさがっていることに気がついた。

(何故だ…?何故体が…?)

「兄さん、また信じるのが怖いの?」

「違う…」

「違わない…。俺のことを…信じれないの?兄さんはまだ全て失ったわけじゃない。」

(なんだ…?この感覚は…)

 その時竜也は何かを感じた。心から触れてくるような何かを。

「やめろ…」

 竜也はその意思を拒もうとする。しかし、荒士はまだ口を動かす。

「俺がいる。幽紀がいる。俺たち兄弟は両親が亡くなったけど、叔父さんや叔母さんだっているし、爺やだっている。」

「やめろ!」

「兄さん、もうやめよう。今ならまだ戻れる。また誰かを信じることが出来る。それに、決着はもうついてる。」

「やめろ!やめろやめろやめろやめろ!私の中に入ってくるな!愚弟がァァァァァァ!」

 そういい竜也が走りだす。だが、荒士は何も動じずその場に立ち尽くす。

 そして竜也が今、拳を構え、振り下ろそうとした。

「っ!」

 だが、その瞬間、竜也が後ろへ飛ばされた。竜也の拳が入る前に荒士の拳が竜也の飛ばしたのだ。

「あぐっ…」

「もうやめよう。兄さんに勝ち目はない。」

 竜也はまた立ち上がる。が、口からまた赤い滝が流れた。それでも立ち上がり、荒士に拳をあびせようとするも、寸前で止められた。

「っ⁉︎」

 荒士は静かに拳を握りしめ、一言を告げた。

「終わりだ、兄さん。」

 そういい荒士はその鉄槌を竜也へと振り下ろす。

「はあァァァァァァァァァ!」

 その拳は竜也の腹部に重たい一撃を浴びせ、後方へと吹き飛ばした。

「ガハァッ!」

 そのまま竜也は後ろの壁に叩きつけられた。

「気がついたんだ、兄さんの体は改造した分かなりの負担がかかっていることを。」

 そういい荒士は竜也の元へと歩み寄る。

 竜也はただ力なく下を向いていた。近寄って来た荒士に対して問う。

「荒士………私は……間違っていたのか…?」

 上目遣いで荒士を見る。

「多分。でも、1つ言えるのは。

 信じるのも、悪くないだろ?」

 そういい荒士は竜也へ手を差し出した。

「私の負けだ……成長したな、荒士….」

 そういい手を取り立ち上がろうとしたその時だった。

 ドォォォォォォォン!!

 爆音と共に施設が揺れる。

「なんだ⁉︎」

「私にもわからない…もしかしたら、ブレインが何かしたかもしれん…。」

 

 それは少し時を遡った事だった。ブレインを倒した奈々達はボートの修復を試みていた。

「うーん…」

 奈々はエンジン部分を見ていた。少ししてから奈々が告げる。

「ダメみたい…」

「なんだって⁉︎これじゃあ帰れないじゃん⁉︎」

 涼子は驚いた様子で言う。それに相反して幽紀は冷静な態度でボートを見る。

「どれどれ、ちょっと見せて…」

 そういいエンジンを眺めた。

(どーしよ…)

「何かわかりましたか?」

 奈々が訪ねて来る。

「え、ええと…もう少し見て見るわね…。」

(全然わかんない!)

 とりあえず幽紀はどうしようもなくその場に立ち尽くす。

「もしかしてわかんないんじゃないのー?」

 後ろから涼子がクスクスと笑いながら言う。

「そ、そんなことないわよ!あーもう!こう言う時は!」

 そういい幽紀は思いっきりエンジンを蹴った。するとエンジンが再びブルルルと音を鳴らし、動き出した。

「「「え?」」」

 全員はあまりの出来事にその場で立ち尽くした。

「ま、まあ、これもあれよね!運も実力のうちよね!」

 幽紀は慌てて言った。

((この人絶対さっきまでわからなかったでしょ…))

 そう思ったが、結果的には良い方向へ向いたので口には出さないことにした。

 気を取り直して、天崎姉妹はボートに乗り、東雲幽紀はロープを持ち板の上に乗り、3人は動き出した。

 が、しかし…

 後方から何か音がした。その瞬間後方から激しい爆発音が聞こえた。3人が振り向くと黒い爆風のようなものが迫って来ていた。

「なにあれ…?」

「涼子!もっとスピードあげなさいよ!」

「わかってるわよ!」

 そういい涼子はボートのスピードを上げた。

 

 そして今に戻る。この揺れの原因はやはりブレインの仕業だったのだ。

「兄さん!何か脱出方法は⁉︎」

「すまない…私がヘリコプターを壊した所為で…」

 そういい兄は「がはぁっ!」と更に吐血した。

「兄さん!」

「心配するな…むしろ、弟にこれほど酷い目に遭わせたんだ…。むしろ裁きなのかもしれんな…。」

 そういいその場にへたり込む。

「ぜぇ…ぜぇ…」

「兄さん…まさか…?」

 竜也はその場を動こうとはしなかった。

「ああ…もう私も寿命は短い…。」

「…なら俺も、ここで死ぬよ…。」

 そういい荒士はその場に座り込んだ。

「何?」

「どのみち助かる方法はないんだろ?ならさ、最後ぐらいは兄弟で同じ場所で死のう?俺さ、兄さんとあまり一緒にいれなかったからさ…。」

 だが、荒士の声は震えており、口調からすると死を恐れていた。

「荒士…。」

 そういい竜也は最後の力を振り絞り、立ち上がる。

「兄さん?」

 そういい竜也は荒士を担ぐ。

「なっ!ちょっと!兄さん⁉︎」

 そしてそのまま竜也はヘリポートの1番端へ向かう。

「荒士…お前だけでも…生きろ…。

 お前の信じた道を歩み、俺の分まで生きていけ…。」

 そういい竜也は全力を振り絞り、荒士を遠くへ投げ飛ばした。

「兄さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」

 

 その頃奈々達は、黒い爆風のようなものから逃げている真っ最中だった。

「お姉ちゃん!前!」

 そこには障害物が行く手を阻んでいた。

「任せて!」

 そういい梶を切り右に回避をする。

「次は左!また次は右!」

「奈々、いつもの勘?」

「うん!」

「おっけー!信じるよ!」

 そういい涼子はスピードを上げてスラスラとスラロームをするかのように障害物をかわしていく。

「お姉ちゃん!次はジャンプ台に乗って!猛スピードで!」

「ジャンプ台?」

 前の方には複数のドラム缶が置かれており、その先にはジャンプ台があった。

「あれね、よーし!」

 そういい最大速度でジャンプ台へ突入し、高く飛び上がった。幽紀もジャンプ台で高く飛び上がり、片手でボードを持ち、相変わらずエキサイティングな動きを見せた。そしてそのまま着水した。

 すると先の方から光が見えて来た。

「出口だ!」

「やった!」

 そしてそのまま出口へと飛び出して行った。

 出口から勢いよく飛び出した瞬間、施設全体が黒い爆風に飲み込まれ、跡形もなく、消え去った。

 それから少し速度を落とした。

「全く…振り落とされるかと思ったわ…」

 後ろでため息を吐く幽紀。

「幽紀さん、大丈夫でしたか?」

 奈々が幽紀のことを気遣った。

「ええ、問題ないわ。ただ…」

 幽紀はどうしても1つ気になることがあった。

「荒士…」

 あれから1人だけ別の脱出を試みた荒士。彼の安否だった。

「あ…」

 奈々はそれを聞いて気がついた。荒士は無事なのだろうか?それが心配でたまらなかった。

「大丈夫よ、きっと荒士君は生きてる。私はそう信じるよ。」

 涼子は奈々に対してそういった。

「そう…だよね、きっと…。」

 今回のミッションは成功、天崎姉妹及び東雲幽紀は目的のものを入手することに成功。しかし、幽紀が帰還しても荒士はおらず、あの件以降荒士の消息は分かっておらず、誰1人として彼の姿を見たものはいなかったのだった…。

 そして奈々は度々幽紀に連絡を取っていた。奈々は待ち続けた、信じ続けた。きっと荒士は帰ってくる。いつか…必ず…。

 

 エピローグ

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 あれから数ヶ月後、奈々はまた涼子の手伝いとしてトレジャーハントをしていた。しかし、その途中で涼子を見失い、逸れてしまったのだった。

「はぁ…はぁ…」

 奈々は逃げる、必死に、ただ必死に。

「いたぞ!捕らえろ!」

「その宝を寄越しな!」

「姉の方はいないぞ!チャンスだ!」

「しまった!」

 奈々は他のトレジャーハンター達に宝を狙われていた。どうやらまたまた出くわしたこいつらはかなり獰猛で凶暴な性格らしい。

「ひゃっ!」

 奈々が誤って転んでしまう。

「いたた…」

 奈々が起き上がろうとした、その時だった。

 カチャ…

 後ろから銃口が向けられたのがわかった。

「⁉︎」

「へっへっへ、もう逃がさねえぞお嬢ちゃん」

 そういい奈々は腹部を蹴られた。

「がはっ!」

 そのまま後ろへ飛び上がり、身をくの字に曲げた。そして1人の男が近寄り、奈々の頭を掴む。

「あっ!」

「へへへ…姉とはまた違っていい見た目してんじゃんか…。」

「やだ…」

(た、助けて…誰か…)

「俺がたっぷり可愛がってやんよ…」

 しかし、その時だった。後ろからその男達に何か迫る人影があった。

「ん?なんだあれ⁉︎」

「は、速い!」

 その人影、いや、その人はとても人間とは思えない速さで集団に接近する。そして次々に持っているトンファーで男達を無力化していく。

「ぐふっ!」

「がはぁっ!」

 そのままあと1人だけに残される。その人間はあと1人残されたその男へ近寄る。近くから見るとその姿は男だということがわかった。だが顔はコートに着いているフードで見えなかった。

(助けに来たの…?)

「な、なんだお前!何者だ!」

 男は銃をその男へ構える。しかし、歩みを止めるつもりはない。

「く、くるなぁァァァ!」

 銃を連射する、が、その光景は驚愕的なものだった。コートの奥に一瞬見えた瞳が光った。その瞬間、トンファーで次々に弾丸を防ぐ。

「なっ!」

 その瞬間コート男は一気に接近し、トンファーで思いっきり相手を殴った。

「があっ!」

 そのまま後ろへ吹き飛ばされ、男は倒れた。

「…」

 男はトンファーを仕舞う。そして奈々の元へ近寄る。

「…誰…?」

 その男が手を差し伸べる。が、奈々は徐々に意識が遠のいていく。

「あなたは…一体………?」

 

「んん…?」

 意識が戻った。目の前に映ったのは先ほどのトンファーを使っていた男、かなりフードを深く被っているが、下からなのでよく顔が見え…

「?」

(あれ?この人に抱きかかえられている…?)

 どうやら奈々はその男からお姫様抱っこされていることに気がつく。そして、奈々はそのフードの隙間から見えた顔を再度確認した。

「……あ……」

「?」

 するとフード男はどうやら奈々の意識が戻ったことに気がついたらしい。

 奈々の目からはなんと涙が溢れていた。

「あ…あ…。」

「…」

 フード男はフードを外す。奈々は目の前の人間が誰か完全に理解した。一瞬そんなまさかと思った。が、しかし、そこにいる人物はまぎれもない、奈々の大切な人物だった。

「ごめんね奈々。心配かけちゃったかな?」

 奈々は涙ぐみながらもその名を呼んだ。

「あ……荒士さん……。」

「奈々。」

 奈々は大きく声を上げ、泣きながら荒士に抱きついた。

 東雲荒士、生存確認。

 mission complete!




はい、ここまで読んでいただき誠にありがとうございます!光陽です!
これを持ちましてCrackleCradle〜4人目の冒険家〜の連載を終了させていただきます。最後のブレインが少し雑になってしまった気がします。それでもこんな作品を読んで下さった方々、本当に感謝してます。元々このゲームに出会い、このゲームの小説を書きたいと思い初めてましたが、思っていたよりもこれがまた難しく、割と大変でした。
また、艦これの方も書かなければいけないのでまだまだ活動は続けて行きたいと思います!
読んでくださった皆様!今後ともこの光陽をよろしくお願いします!


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