どうやらオレは巻き込まれ体質らしい (どらい)
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オレの名前は羽島カイだ!

リリカルなのはが好きで書いてみました。温かい目で読んでください。


皆さんこんにちは。オレの名前は羽島カイ、4歳の幼稚園生。普通の家庭に生まれた一般人。今は親に許可をもらって公園に向かっているところである。

ついにこの日が来た!今日で4歳になったから遂にブランコに乗ることが許されたのだ!

オレは今までブランコというものに乗ったことがないため、未知なる体験ができる喜びのあまりスキップしながら公園に向かう。・・・その道中で近所のおばあさんたちに笑われてしまった・・・少し自重しなくては、ブランコは逃げないのだから。

スキップから歩きにかえてしばらくすると公園に着いた。さあ、いざ目的のもの(ブランコ)へ!と意気込んで走ってきたはいいが、なんとブランコに女の子が乗っているじゃないか!・・・まあ隣のブランコに乗ればいいんですけどね。

ブランコの近くに来たのはいいけど、なんか隣の女の子が悲しそうである・・・。

女の子のことがつい気になってしまって人見知りなのに話しかけることにした。頑張れ、オレの語彙力(ボキャブラリー)!!!!!

 

「ど、どうしたの?」

 

「なんでもないの・・・。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「・・・・・・。」

 

・・・会話終了。人見知りなオレなりに頑張って話しかけてみたけど、どうやらオレでは荷が重いようだ。

なんか空気がもっと重くなっちゃったんだけど!誰か助けて。

 

「隣失礼します。」

 

そのまま突っ立ているわけにもいかないのでブランコに乗ることにした。

 

≪キーコ・・・キーコ≫

 

公園内にオレが黙々とブランコをこぐ音だけが響き渡る。

・・・あれ?全然楽しくないんだけど。幼稚園の同級生から聞いてオレが夢見てたブランコ遊びと違う。もっとキャッキャウフフとなるものではなかったのか。むしろこの空気が重すぎて早く帰りたいまである。

・・・しょうがない、この空気を破壊してこの少女とブランコ遊びをしよう!お父さん、お母さんこのオレにもう一度この子に話しかける勇気をください。・・・よし、行くぞ!少女よ覚悟しろ!!!!

 

「ね、ねえ一緒にブランコで競争しない?」

 

「どうして?」

 

どうして・・・とな。ほうこの少女オレに理由を求めるのか。よかろう、このオレが君を納得させるようなスンバらしい理由を述べてやろう!!

 

「独りぼっちは寂しいから。」

 

あ、やばい。完全にやらかした。なんかとてもかわいそうな子になっちゃってるよオレ。今からでも遅くない、もっといい理由を考えるんだ!頑張れオレの脳細胞。

 

「あなたもひとりぼっちなの?」

 

1人で理由を考えていると、少女に話しかけられた。残念ながらその通りなので肯定する。

 

「そうだよ、君もなんだ?」

 

「うん。お父さんが怪我してからみんな忙しそうで、家に居場所がなくて夕方になるまでここにいるの」

 

・・・なかなかヘビーなものが来た。どうやらこの少女の家族は今大変な状況らしい。

 

「それなら、オレと一緒にお父さんの怪我が治るまで毎日一緒に遊ぼうよ。そうすればオレも君も寂しくないよ」

 

「いいの?」

 

「オレがそうしたいから言ってるんだけど・・・駄目かな?」

 

オレがそう言うといきなり少女は泣き出してしまった。え?なんで!?

 

「どうしたの!?嫌だった?」

 

「ううん・・・。嬉しいの!」

 

「そっか。じゃあ、これからよろしくね。・・・そういえばまだ名前言ってなかったね、オレの名前は羽島カイ。君は?」

 

「なのは・・・高町なのはなの!!」

 

この公園を待ち合わせ場所にして、それから毎日2人で遊んだ。数か月後にお父さんの怪我が治ったらしくて、笑顔で教えてくれた。それからはお互いに空いてる時間を見つけて遊ぶようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何年も時が経ち、オレは小学3年生になった。

オレは、海鳴市で一番有名な私立聖祥大付属小学校に通っている。この学校は大学までエスカレーター式で進むことができる偏差値の高い学校だ。

未だになんでオレがこの学校に入学できたのか謎である。だけど、高いお金を払ってくれている両親にはとても感謝しているので、一生懸命勉強している。

しかし、理系はからっきし駄目である・・・算数はちょっと好きだけどね。文系はオレの得意科目だ。

 

「今日は、皆さんに自分の将来について考えてもらいます。」

 

今日の授業は自分の将来について考えるものらしい。弁護士や警察官など皆やけに現実的な夢ばかり言っている。小学3年生なのに皆しっかりしすぎじゃないか・・・!?オレの価値観がずれてるのかわからないけど・・・。

ちなみにオレは将来について何も考えていない。オレは何にも縛られずに生きていくのさ!!・・・嘘です、ただ単に将来のことについて考えるのが怖いだけです。

 

「じゃあ、羽島君に発表してもらいましょうか。」

 

え?なんで指されてんの?・・・いや落ち着け、これはオレ以外の羽島さんに違いない。おいおい、羽島さん早く発表しろよ~。

 

「羽島カイ君。聞こえていますか?聞こえてて無視しているならこれはちょっと放課後職員室に来てもらおうかしら。」

 

・・・オレでした。

 

「ちゃんと聞こえております、先生。ちょっと僕の夢は伝えるのが難しいものなので、どうやって伝えようか考えていたんです。」

 

「あら素晴らしいわね、そんなに自分の夢を考えているなんて。私は感動してますっ!」

 

今更ただ惚けていただけなんて言えない雰囲気だわコレ。くそ、即興で皆が感心する夢を言わなくては!!お前ら、耳の穴かっぽじって聞くんだ!!

このオレの素晴らしい夢を!!・・・もうちょっとだけ考えさせて。

 

「羽島君、どうしたの?」

 

なかなか言わないオレに対しての先生からのプレッシャーが凄い。もう行くしかない!羽島カイ行きまーす。

 

「僕の夢は・・・地球の平和を守ることですっ!」

 

「な、なるほど。やけにスケールの大きい夢ですね。」

 

「・・・・・。」

 

や、やっちまった・・・。クラスメイトも固まっているんだけど・・・。何だよ地球の平和を守るって。怪人とでも戦うのかよオレ。今のオレの顔は真っ赤になっていることだろう。もう遅い気がするが、なんとか巻き返しを・・・。

 

「冗談なんです先生。本当は誰かに養ってもらう予定なんです。」

 

「・・・・・」

 

・・・時が止まった気がした。さっきより悪化してるんですけど!!なんでいきなりヒモ発言してんのこの口!今の発言、絶対昨日見たドラマが関係してるっ!

どうやらオレはパニックに陥ると変なことを口走ってしまうらしい。クラスメートの視線が痛い。先生の笑顔もひきつってるし。

 

≪キーンコーンカーンコーン≫

 

ちょうどその時授業終了を告げるチャイムが鳴り、オレにとっての地獄の時間が終わった。自分の席で悶えていたオレを呼びに来てくれたなのはと一緒に屋上へと行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は昼休み。この学校は給食ではなく弁当なので屋上で昼食をとっているわけなんだけど・・・。

 

「あはははは!養ってもらうって何なのよっ!?」

 

友達のアリサバニングスに笑われていた。今ここにいるのはオレ、なのは、アリサ、月村すずかの4人。

アリサとすずかはなのはを通して小学1年生の時に知り合った。その時から続いている友達である。

 

「うるさい!なんか口から出ちゃったんだよ。多分昨日やってたドラマのせいだろう・・・うん、多分。」

 

「にゃはは・・・それはもう本心じゃないかな?」

 

なのは、心にグサッとくるからやめて。

 

「カイ君は皆を楽しませようとしてたんだよね!」

 

すずかさん、あなたのフォロー辛すぎるよ・・・。

 

「養うんじゃなくて、養ってもらうとか自分で働く気はないのかしらね。」

 

「もうやめるんだアリサ。オレの心はこれ以上ないくらいに傷ついてる。」

 

自宅警備員として働いているじゃないか。家を空き巣から守ってるじゃん!・・・いや、働いてないですねすみません。

 

「そういうアリサたちは夢決まってんの?」

 

「私は親が社長だからいっぱい勉強して跡を継がなきゃって思ってるけど・・・。」

 

「私は機械いじりが好きだから工学系に進みたいって思ってるよ。」

 

oh・・・どうやら2人の夢はもう決まっているらしい。君たち小学3年生だよね?やはりこの学校の生徒はどこかおかしい。スペックからして違う。オレはなのはへと一縷の望みをもって問いかける。

 

「なのはは?」

 

「私はまだ決まってないんだよね・・・。」

 

おお!仲間がいたぞ!勝ったッ!

 

「大丈夫だよなのは、オレも決まってないから!」

 

とびきりの笑顔で話すオレ。そうだよね、まだ小学3年生なんだからこれが普通だよね。

刮目せよアリサ、すずか!これが普通の人な反応だぜ・・・多分。

 

「何言ってんのよ。アンタとなのはを一緒にしないで。」

 

「アリサさんよォ、そんなにオレのこと傷つけたいのかい?」

 

ここでアリサ選手からの会心の一撃。オレの心に4000のダメージ!もう止めてこれ以上オレのメンタル傷つけないでっ!君のこころは輝いているかい?・・・いいえ、アリサのせいで澱んでおります。

 

「そんなことないわよ、あんた喜んでるじゃない。」

 

「オレが!?どこがですか!?オレはMじゃないぞっ!」

 

「本当かしら?」

 

「本当だって!」

 

「なのはちゃんって翠屋の2代目店主じゃないの?」

 

「うーん。それも一応将来のプランの一つではあるんだけど、私って得意なものがないから・・・。」

 

ここでオレとアリサのやり取りを無視してすずかがなのはに問う。・・・あれ?なのはの理系科目の点数ってトップレベルだと思うけど・・・。

 

「ばかちん!アンタ私よりも理系の点数高いじゃない。そんなことを言うのはこの口か~。」

 

あ、やっぱアリサが怒った。

 

「いふぁいよ、あふぃふぁふぁ~ん(痛いよ、アリサちゃ~ん)」

 

「アリサちゃん、落ち着いて。皆見てるから~。」

 

すずかがなのはの頬を引っ張っているアリサを宥めようとおろおろしている。オレ?もちろん傍観者Aに徹してるよ。あの空気の中に突っ込むのは藪蛇だからね。

・・・なんかこっちを見て拝んでいる人がいるけど気にしないことにした。

こうしてオレたちの昼休みは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで今日の授業がすべて終わり今は放課後。

昼休みの後から先生やクラスメートの視線が何故か温かい物であったことをここに記しておこう。

放課後、塾に行くなのはたちと別れて男友達である前田と一緒に下校している。前田はオレの少ない友達の1人である。・・・自分で言ってて悲しくなってくる。

 

「お前を将来養ってくれる人はもう見つかったか?」

 

「いや、それが全然・・・ってそのネタ蒸し返すのやめてもらっていい!?」

 

「お前、学校のなかでも有名なバニングスたちと仲がいいのにそういった話が全然ないからな。」

 

「アリサに至ってはオレのこと罵倒して楽しんでるから。」

 

「それでも羨ましいんだよ。」

 

「なら変わってくれ。罵倒の嵐だから。」

 

「いや無理だよ。美人過ぎて話しかけることすら難しいっていうか。」

 

「マジかよ・・・。なんか胃が痛くなってきた。」

 

家に着いたので前田と別れ、家の中に入る。今日は宿題もないからRPGゲームでもやろう。

 

≪助けて≫

 

ちょうど魔王が姫をさらい、姫の『たすけてください』というテロップが出現したときに同じ言葉が聞こえた。いや、聞こえたっていうより直接脳内に聞こえたような・・・。

最近のゲームはすごいな。直接脳内に響くような音声を使っているのか。思わずこいつ脳内に直接!?とか思ってしまったぜ。内心最新ゲームの性能の高さに感心しながらオレはゲームに没頭していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレの両親は共働きで帰ってくるのが19時くらいである。ほかの家庭と比べて遅めの夕食を母さんが作っていた時にまた声が聞こえたような気がした。今日は幻聴が多いな・・・。耳鼻科に行くべきかな?

 

「あ!お醤油を切らしてるの忘れてた。ごめんカイ、近くのスーパーでお醤油買ってきてもらえる?」

 

「いいよ。ダッシュで行ってくる!」

 

「そんなに急がなくて大丈夫よ。気を付けて行ってきてね。」

 

「はーい。」

 

オレは母さんからお金を受け取って家を出た。しばらく歩いていると所々道路が陥没してるのが分かった。工事でもやってるんだろうか?と不思議に思いながらもそのまま歩いていく。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!」

 

いきなり何かの鳴き声が聞こえて来たかと思ったら目の前に何かが降ってきた。

 

「なんだこれ?」

 

降ってきた物体に近づこうと思ったら、その物体はこちらを振り向いてきた。

・・・どうやら生物だったらしい。目が赤く輝いていて紫色の毛に覆われている。・・・うん、見たことないね。

危機感を感じてそのまま横を素通りしようと思ったけど、なぜかその生物はこちらを向いてきた。

 

「・・・ワン。ワンワンワン!ワンワンワン?」

 

「・・・・・。」

 

犬語で話してみたけど効果がない。ノーリアクションである。おかしい、ムツゴロウさんをイメージしてやってみたのだが・・・。

どうしようかと悩んでいた次の瞬間、その生物が襲い掛かってきた。オレはとっさに横に転がり逃走を開始した。その生物はオレのことを追ってきている。餌かなにかと勘違いしてるのか!?

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「いや、なんでだよーーーーーーーー!!!」

 

オレの叫びが夜の空に響き渡り、オレと生物Aの鬼ごっこが開始された。




彼の伝説はここから始まった!


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ドッ死ボール

時刻はおよそ20時、オレ羽島カイは絶賛逃走中です。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

何が悲しくて生物Aに追われなければならないのか。何故か通行人は1人もいないけどこのままスーパーまで逃げ切ってやるぜ!・・・ごめんやっぱ無理。小学生の体力なめんなよ、全っ然ないからな。とはいえこのままではまずい、追いつかれてしまう。どうにかして生物Aの進撃を止めなければ・・・

 

「ちょ、ちょっとタンマ。待つんだポチ(仮称)!!」

 

「グルルルル・・・」

 

何故かわからないけど止まってくれた。こいつ実はいいやつなんじゃ・・・?今のうちに膝に手を当てて体力を回復させる。・・・よしだいぶ回復してきた。

 

「落ち着くんだポチ(仮称)、そうそのまま座ってるんだ」

 

「グルルルル・・・」

 

言葉が通じているのかわからないけど律儀に待っていてくれている。オレは言葉を発しながらじりじりと後ろに後退していく。

 

「そうそう、その調子だ。偉いぞー、そのまま座ってるんだ」

 

「グルル」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「あばよっ!!」

 

そうしてオレは走り出した。今度はあの生物Aが待ってくれると信じて。さらばだ明智君、また会おう!

 

「グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

・・・うん、待ってくれるなんてそんなことありえなかったね。さっき止まってくれたから大丈夫かと思っていたけど無理だった。

 

「ちょ・・・誰かーーーー!!か弱い男の子が襲われてるよーーー!!」

 

「グオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

オレと生物Aの鬼ごっこ(命がけ)は再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く思念体を見つけないと!」

 

「わかってる!どこに行ったんだろう?」

 

私高町なのはは今話しているフェレットさんの声に呼ばれてここに駆けつけた。そして何故か魔法少女に変身してしまっている。今はさっきまで戦っていた思念体と呼ばれるものを探しているの。

 

「なんでいきなり逃げ出したんだろう?」

 

「それはわからないですが早く封印しないと町に被害が!」

 

私たちと戦っていた思念体さんは急に方向転換して逃げてしまった。さっきから探してるんだけど一向に見つかる気配がない。だんだん焦ってきたその時声が聞こえた。

 

「ちょ・・・誰かーーーー!!か弱い男の子が襲われてるよーーー!!」

 

「今のは・・・!?」

 

「うん!急ごう!!」

 

しばらくして声が聞こえてきた方にたどり着くと、思念体さんに誰かが追いかけられているのが見えた。

 

「まずい、助けないと」

 

「フェレットさん!どうすればいいの?」

 

「あれを停止させるにはその杖で封印しないといけません。先の攻撃魔法や防御魔法は心に願うだけで発動させることができますが、より大きな魔力を必要とする魔法には呪文が必要なんです。」

 

「呪文?」

 

「心をすませて・・・心の中にあなたの呪文が浮かぶはずです」

 

「わかったの・・・・・」

 

「ちょ、ポチいいいいい頼むからストップ!待ってえええ!!」

 

「・・・思念体さんって名前があるの?」

 

「いえ、ないはずですが・・・。それよりも早く封印を!!」

 

「ご、ごめん・・・・・」

 

私が集中していると心に呪文が浮かんできた。

 

「リリカルマジカル・・・ジュエルシード封印!」

≪Sealing mode ・・・set up≫

 

杖からピンク色の光が出てきて思念体さんを包み込んだ。

 

「ジュエルシードシリアル21封印!」

≪Sealing≫

 

そして思念体さんは青い石へと姿を変えた。その後追われていた人を探そうと思ったけどもうその場には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あったぞスーパーだ!!これでオレの勝ちだ!!」

 

周りの人が不思議そうな目でオレを見ているが知ったこっちゃない。オレはポチ(仮称)との勝負に勝ったんだ!さっき後ろでピンク色の光が発生したけど怖くて見てない。

 

「どうだポチ(仮称)!オレの勝ちだー!」

 

そう宣言して後ろを振り向いてみたが、さっきまで命がけの鬼ごっこをしていた生物Aはどこにもいなかった。代わりにオレの方を向いてくすくす笑っている奥様方が目に入った。・・・凄い恥ずかしいんだけど!まさかさっきまで見てたのは幻覚!?ということはオレは1人で叫んでいた悲しい子と言うことに・・・うわあああああ(泣)!!

 

「オレ幻覚見るなんて疲れてんのかなあ・・・」

 

肩を落としながらオレは買い物を済ませた。帰りは念のため違う道を通って帰りました。なんか警察が行ったり来たりしてたからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、アリサ達がフェレットのことで話をしていた。オレもその話に加わってみる。

 

「フェレットがどうかしたのか?」

 

「昨日フェレットを助けて動物病院に預けたんだけどその動物病院で車の事故かなんかがあったらしいの。そのフェレットは病院から逃げていて、なのはちゃんが引き取ったって聞いたから安心したんだけど」

 

「そうなのか。そういえば昨日動物病院の前の道通ったんだけどその時に、見たことない生物の幻覚を見たんだよな」

 

「!?」

 

なのはが驚いたような顔をしている。なんでだろう?

 

「アンタ頭だけじゃなく目もおかしくなっちゃったのね」

 

「もともと頭おかしいみたいに言うのやめてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は体育の授業があり外でドッジボールをやるらしい。着替えて外に向かうために下駄箱で靴を履き替えてるとなのはが話しかけてきた。

 

「あの、カイ君。昨日見たことない生物見たって本当?」

 

「うん。そいつに何故か追いかけられてさ大変だったんだよ。何故か急にいなくなちゃったから幻覚だったって思ってるんだけどな」

 

「ポチって呼んでなかった?」

 

「ああ、よく知ってるなってそういえばなのはもあの辺にいたんだよな」

 

「う、うん。そうなの」

 

≪ユーノ君!昨日の人が凄い身近にいたんだけど≫

 

≪え?本当かいなのは!?怪我してないか聞いてくれない?≫

 

≪わかったの≫

 

「怪我しなかった?」

 

「ん?大丈夫だったよ。しいて言うならオレの心が傷ついたくらいかな」

 

「え?どうしたの?」

 

「いやー、昨日スーパーでさっき言ったポチのことを叫んじゃってそこにいた人たちにくすくす笑われちゃったんだよね」

 

「あはは」

 

≪ユーノ君、怪我はないって≫

 

≪そっか、よかった。ありがとうなのは≫

 

≪うん≫

 

なのはと談笑しながらグランドに行き、そして授業が始まった。地獄のドッジボールが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すずか!」

 

「うん、任せて」

 

男子対女子に分かれて始まったドッジボール。アリサから受け取ったボールをすずかが投げる。字面だけだと女子がただボールを投げているだけだと感じるかもしれないが現実は違う。

 

「オレが止める・・・ぐはっ」

 

空気を割く音と共に迫ってきたボールがチームメイトの命を散らせた。

 

「アウト。外野に行ってね」

 

審判の先生が普通に試合を見守っている。・・・おかしくない?あの子1人でオレ以外の男子外野に送り込んだよ!?

 

「後はカイ君だけだね」

 

「やめて!」

 

怖っ!すずかの目がオレをロックオンしてるんだけど!いや、マジで誰か助けて。

 

「覚悟しなさい、カイ!」

 

相手チームの内野にいるアリサが話しかけてくる。ちなみになのはは外野にいるよ。開始早々当たって外野に行きました。・・・まあ、当てた男子はそのあとすぐにすずかの餌食となったんだけどな。

 

オレは散っていった仲間が残してくれた(ボール)を手に取りアリサに向かって投げる。オレの投げたボールは真っ直ぐアリサのもとに進み・・・・・

 

「よっと」

 

軽~くかわされた。

 

「ちゃんと当てろー!」

 

前田の声が聞こえてくるが気にしない。オレはバウンドしたボールを捕球したすずかに集中する。あれが当たっても無事だろうか、いや無事なはずがない(反語)。オレの作戦は授業が終わるまで避け続けるというもの。とにかく当たらないように気を付けないと。

 

「すずかやっちゃいなさい」

 

「うん!」

 

いや、やらなくていいから。なんでアリサさんあなたはそんなに偉そうなんですか。

 

「えいっ」

 

かわいい掛け声とは裏腹にとんでもない速さのボールがオレのもとに迫ってくる。

 

「うおっ!!」≪ブオン!!≫

 

なんとか体を横にずらして避けることに成功した。

 

「ねえ、今ブオンって音が聞こえたんだけど!!先生危険なのでもう授業を終わりにしましょう!」

 

外野の男子なんて顔が青くなってるじゃないか!オレは先生に助けを求めた。

 

「駄目ですよ、ちゃんとやらなきゃ。しかも授業時間はあと30分残ってますからね」

 

現実は非常なり。どうやら先生にはすずかの投げるボールがキャッチできるものだと思われているようだ。くそっそれなら・・・

 

「なのは、オレを当ててくれ」

 

ちょうど外野にいったボールを持っているなのはにオレは話しかける。

 

「え?」

 

「駄目ですよ羽島君、真面目にやらないと授業後の片づけをやってもらうことになりますよ」

 

もうこの際それでもいい。さあ、早くオレをアウトにするんだなのは!

 

「なのはちゃん!こっち」

 

「!・・・うん!」

 

その時死神(すずか)がなのはにボールを要求し、なのはは山なりにボールを投げそれが死神(すずか)の手に渡ってしまった。なぜ普段はかわいい女の子なのにドッチボールになると全く別の存在に見えてしまうのだろうか。

 

「な、なのは!なんで!?」

 

「ごめんね、カイ君」

 

今ほしいのは謝罪の言葉じゃなく自分の身の回りの安全だというのに!!

 

「えい!!」

 

「ふぐあっ」≪ボゴッ!!≫

 

またもや掛け声とは似つかない速さのボールはオレの腹部を直撃して地面に落ちた。結局2回戦目も同じように最後まで残ったオレが当てられ、オレたち男子は敗北感と共に痛みを与えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のすずかは凄かったわね~」

 

「うん、格好良かったよ!すずかちゃん」

 

「そんなことないよ」

 

今オレはなのはたちと一緒に帰っている。話題は体育の授業のドッジボールである。

 

「すずかが怖い」

 

「何言ってんのよカイ。ちゃんとボール取ればよかったじゃない」

 

「無理だから!か弱い男の子であるオレにはあの速さのボールは取れないから」

 

「ふっ」

 

「今鼻で笑っただろアリサ」

 

「か弱い男の子ってどこにいるのよ」

 

「いるだろ、ここに。今アリサが話してる目の前のやつがそうなの!!」

 

「いや、あんたはか弱くないわよ」

 

「なんですと!?」

 

「あははは」

 

そんな感じの会話をしながらアリサやすずかの家に着き、2人と別れオレとなのはが一緒に歩いている。オレの家はなのはの家とそんなに離れていないため自然と帰りは一緒になるのだ。

 

「!?」

 

「どうしたんだ?」

 

いきなりなのはが立ち止まったので不思議に思って声をかける。

 

「忘れ物しちゃったから先に行ってて」

 

「一緒に行かなくて大丈夫?」

 

「大丈夫なの」

 

そう言ってなのはは走っていってしまった。仕方がないのでオレは1人で家に向かった。




読んでいただきありがとうございます。


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サッカー

今日は休日で学校もない。昨日買ったゲームをやろうと思ってゲーム機の準備をしていると電話がかかってきた。

 

「もしもし、羽島ですけど」

 

「あ、カイ?アンタ今日暇?私たち士郎さんのチームのサッカーの試合を見に行くんだけどアンタも来なさい」

 

「あ~ごめん、今日はやることがあるんだ」

 

我ながらなかなか最低な理由だと思うが、今日は譲れない。それでも最新ゲームをやりたいんだ!

 

「わかったわ。時間が空いたら来なさいよ」

 

「おっす」

 

アリサからの誘いを断って、ゲームの準備を再開する。しばらくしてケーブルとかも全てつなぎ終えた。後はゲームを始める≪ピーンポーン≫だけだ。・・・どうやら来客らしい。母さんが玄関に向かったから大丈夫だと思うけど。

 

「おはようカイ君」

 

「あ、おはようございます」

 

オレはゲームをしながらリビングへと上がってきたお客さんに挨拶する。

 

「今日は用事があるんじゃなかったのかい?」

 

「あ~用事はこれですね」

 

「じゃあ、サッカーの試合に出てくれるかい?」

 

「なんで・・・・って・・・え?」

 

聞き覚えのある声に、ギギギという音が今にも聞こえてきそうな感じで首を横に動かすとそこにはなのはの父さんである高町士郎さんがいた。なんで!?アリサには断っておいたはずなんだけど!?

 

「カイ君、休日は家にこもってばかりじゃだめだぞ。今日のメンバーが足りないから試合に出てほしいんだけど」

 

「そうよ、カイ。行ってきなさい」

 

ここで母さんも参戦。2人の大人を前にゲームをやりたいから無理なんて言えるはずもなく行くことになってしまった。ちくせう・・・。

 

「オレ、サッカーとか体育とかでしかやったことないんですけど・・・」

 

「大丈夫だよ。思い切りプレーしてくれればいいから」

 

何が大丈夫なのか。オレは士郎さんの運転している車内でとてもナーバスな気分になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、試合が始まるみたい」

 

「楽しみだね」

 

「うん」

 

いま私たちは河川敷の芝生の部分に座りながらお父さんのチームが監督をやっている翠屋JFCの応援に来ています。お父さんが朝メンバーが足りないって言っていたけど大丈夫かな?カイ君も来れればよかったんだけど・・・。

 

「あれ?あそこにいるのってカイじゃない?」

 

「え?・・・そうだね。なんでお父さんのチームにいるんだろう」

 

「士郎さんが言ってた助っ人ってカイ君のことだったんだ」

 

なんでカイ君がいるの?アリサちゃんが今日は用事があるって言ってたと教えてくれたんだけど。

 

「あいつ・・・もしかしなくても私たちに嘘ついてたわね!」

 

「それってどういうことアリサちゃん?」

 

「普通に考えて士郎さんが用事のある子を助っ人として連れてくるわけないじゃない。多分士郎さんがあいつの両親に電話でもして聞いたんじゃないの?」

 

「確かにそうだね・・・」

 

「あはは・・・」

 

なんかアリサちゃんが怒ってるような気がするよ・・・。

 

「あいつ、私に嘘をつくとか言い度胸じゃない!試合が終わったらとっちめてやるわ!」

 

今カイ君の体が震えたように見えたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだこの全身を駆け巡る悪寒は・・・。思わずブルっちまったぜ。それはそうと試合が始まってしまった。オレのポジションはフォワード。本当に嘆きたい!なんで初心者が最前線で戦わなければばらないのか。・・・あれか攻撃の生贄になれってことか、そういうことなら任せとけ!立派な特攻隊として諸君らを勝利に導いてあげようではないか!

 

「パスいったぞ!」

 

「おい、マジか」

 

オレにボールが回ってきてしまった。試合終了までステルス発動して勝利に貢献するつもりだったのに!今は前に敵が2人、味方へのパスコースは全てふさがれているという状況である。・・・詰んでね?コレ。このオレにドリブルをしろということかララァ・・・。しょうがない、見せてもらおうか君たちのDF力とやらを。

 

「おりゃ」

 

「スライディングゥゥ!?」

 

ドリブル開始1秒でボールを取られオレは頭から地面に激突してしまった。・・・めっちゃ痛い。思わず叫びそうになったが我慢だ、男だからな!・・・あれ、目から汗が。そのまま敵に攻め込まれシュートを打たれたが、キーパーがナイスプレーを見せてシュートを止めた。あのキーパー普通に凄い、なんだかオレが情けなくなってくるよ。よし!今からさっきの汚名返上と行こうじゃないか!(キリッ

 

「ピーー。前半終了」

 

・・・うん、汚名返上は後半からだ。運が良かったな相手チーム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後半開始!」

 

笛の音と共に後半が始まった。しばらくは動きがなかったが10分後くらいにチームメイトがゴールを決めた。・・・やっぱオレ要らないよね。1人で勝手に傷ついているのとは裏腹に試合は進み、残り後1分となった時に再びオレにボールが回ってきた。しかもさっきと全く同じ状況で味方にパスを出すことができない。ドリブルもすぐ取られてしまう・・・ここはシュートしかないか。まだゴールからは離れているがここで決めなきゃ今日の見せ場が全くない!オレは足を振り上げる・・・うおおお燃えろオレの小宇宙よ!

 

「無回転!?」

 

≪バサッ≫

 

オレの蹴ったボールは不規則な動きをしながら進みゴールネットを揺らした。それと同時に試合終了の笛が鳴りチームは2対0で勝利した。おお、やったぞシュートが決まったぞ!!

 

「お前凄いな!どうやって蹴ったんだ?」

 

「格好良かったぜ」

 

チームメイトが駆け寄ってくる。適当に蹴ったとはとても言えないが、チームメイトに褒められるというのはとても嬉しいものだ。これだけで今日来てよかったと思った。

 

「カイ君今日は助かったよ。最後のシュート格好良かったよ」

 

「ありがとうございます」

 

士郎さんもこっちに駆け寄ってきて褒めてくれた。・・・なぜかアリサもこちらに走ってくるのが視界に入ったけど無視しよう。

 

「アンタなんで嘘ついたのよ!」

 

やっぱり無視できなかった・・・というかラリアットの体制になってるんだけど!?

 

「ちょっと待つんだアリサさん。これには海よりも浅く山よりも低い理由が・・・」

 

「つまり特に理由はないってことね?これでも食らいなさい!」

 

アリサが追ってきたので逃げる。

 

「ちょっと!なんで逃げるのよ!」

 

「自分の体制をよく見てから言ってよ!君オレをぶっ飛ばす気だよね!?」

 

「当たり前じゃない。嘘ついたアンタが悪いんだからね!」

 

「確かにそれは悪いと思っ・・・・うおっ!!今完全に首取りに来てたよね!?」

 

「待ちなさい!」

 

「誰が待つか!首と体がバイバイしちゃうわ!!」

 

アリサと追いかけっこしてると綺麗な石を発見した。青色で中に番号が書いてある。

 

「アリサ!これを渡すから許してくれ」

 

「綺麗な石・・・。ま、まあ許してあげるわ。これからは嘘をつかないでよね!」

 

「ありがとうございます、アリサ様」

 

どうにか許してもらえたようだ。・・・でもあの石発見した時と渡すときで色が変わってたような気がするんだけど・・・まあいっか。

 

「アリサちゃん、カイ君」

 

「2人とも今から翠屋で祝勝会をするんだって」

 

すずかとなのはがオレとアリサを呼びに来た。どうやら翠屋に集まるらしい。特にこの後することもないのでお邪魔させてもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今オレとなのはとアリサとすずかの4人は翠屋の外の席に座っている。

 

「それにしてもこのフェレット改めて見るとちょっと違わない?」

 

「そういえば病院の先生も変わった子だねって言ってたし」

 

「ユ、ユーノ君はちょっと変わったフェレットだから」

 

「これがフェレットか~かわいいね」

 

オレはフェレットを見たことがなかったから違いとかはよく分からないけど、かわいいってことはよくわかった。撫でようとしたら一瞬びくっとなったけどその後は普通に撫でさせてくれた。アリサとすずかも加わって一緒に撫でているとアリサがさっきオレが渡した石をポケットから出して話し始めた。

 

「そういえばこの石って綺麗だけど宝石でできてるのかしら?」

 

「うわあ本当に綺麗だね!この石どうしたの?」

 

「!?」

 

なのはが飲んでたジュースを吹き出した。なのはさんや、オレのシュークリームにかかったんだけど・・・まあ、もうおなか一杯だったからいいけど。

 

「なのはちゃんどうしたの!?」

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫?なのは」

 

「う、うん大丈夫・・・ってその石どうしたの!?」

 

なのはが凄く驚いてる。気のせいかフェレットも驚いているように見える。やっぱり石の色が変わってた。青色から透明に近い青色になっている。

 

「ああ、これ?カイがくれたのよ」

 

「河川敷で拾ったやつだけどね」

 

「いいな~私も欲しい」

 

「ん~じゃあすずかにも今度何か渡すね」

 

「いいの?ありがとう」

 

「カ、カイ君!何か変わったことない?体調とか大丈夫?」

 

「いや、体調とかは問題ないけどどうしたんだなのは?」

 

「な、なんでもないの」

 

なのはが石を見てから慌てだした。もしかしてこの石はなのはの物だったのかもしれない。

 

「もしかしてこの石ってなのはの物だった?」

 

「!?う、うんそうなの。無くして困ってたんだ」

 

「そうだったの、じゃあはい。見つかってよかったわねなのは」

 

「あ、ありがとうアリサちゃん。ごめんね」

 

「全然気にしてないわよ。誰かの持ち物だったのならその綺麗な石にも説明がつくしね」

 

やはりなのはの持ち物だったようだ。よく見つけられたな、オレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてアリサとすずかの2人この後用事があるということで解散になった。サッカーチームの人たちはとっくに解散していたらしい。ついでにオレも帰ることにした。

 

「じゃあね、なのは」

 

「なのはちゃん、またね」

 

「また月曜日な」

 

「うん、じゃあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後お父さんと一緒に家に帰った私はユーノ君と一緒にアリサちゃんから貰った石について話していた。

 

「やっぱりさっきアリサちゃんにもらった石ってジュエルシードだよね?」

 

「うん、多分そうだと思う」

 

「なんであの2人には影響がなかったのかな?色が違ったのと何か関係があったりして」

 

「詳しいことはわからないけど、カイって子に関係があるかもしれない」

 

「カイ君が!?どうして?」

 

「さっき気が付いたんだけどあの子も魔力を持っているんだ」

 

「カイ君も私と同じ魔法使いってこと?」

 

「いや、あの様子じゃまだ気が付いてないと思うけど・・・」

 

「そうなんだ・・・」

 

(カイ君大丈夫かな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころカイは・・・

 

「カイ!汚れたままでゲームやっちゃ駄目でしょ!早くお風呂に入ってきなさい」

 

「ご、ごめんなさい母さん。だからゲーム機のコードを抜こうとしているその手を止めてくれ」

 

元気そうだった。




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怖いお兄さんたち

お気に入り登録数75件、UA2000突破しました。ありがとうございます!


『なんで私が・・・もう1人いるの!?』

 

『こんにちは、もう1人の私・・・。でもこの世界に私は2人は要らないの・・・。だから』

 

『きゃあああああああああ!!!』

 

「うおっ!なにこれ怖っ」

 

オレは今、夜の怖いもの特集というテレビ番組を見ている。開始10分で鳥肌が半端ないことになってる。これ以上見ると眠れなくなりそうだからもう見るのやめよう。リモコンを操作してテレビを消したオレはそのままソファーに寄りかかり一息ついて-----ふと思いついた。

 

(今テレビでやってたやつをアリサにやったら、毎日罵倒されてる仕返しができるんじゃないか?)

 

もう1人の自分を見た時、アリサはどんな反応をするのか楽しみになったオレは明日の休日を利用して、アリサを驚かせるための準備をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(羽島カイの反撃始まります)

 

次の日、オレは大型スーパーに来ていた。この大型スーパーには色々な店が中に入っており、日用品はもちろんカードショップなどもあってカードを購入することもできるのだ。そしてオレはカツラが売っている店の前に立っている。ここはパーティー用から日常的に使うものまで買うことのできる店である。

 

「お客様。何かお探しの物はあるでしょうか?」

 

店員さんが話しかけてきた。おお、小学生にもちゃんと接客してくれるらしい。冷やかしだとは思われていないようだ。

 

「えーと、予算はあまりないんですけど金髪の女性用のカツラってありますか?」

 

「ありますよ!こちらです」

 

店員さんに案内されて金髪コーナーまで来るとそこにはたくさんの種類のカツラがあった。色々試着して一番アリサに近いものを購入した。小学生のお小遣いには少しきついお値段だったが気にしない。これもアリサに反撃するためだ!

 

「ありがとうございました」

 

店員さんの声を背に次にオレはコンタクトを買いに雑貨屋に向かった。雑貨屋で緑のカラーコンタクトを購入し家に帰る。

 

(ふふふ、アリサよ覚悟するがいい)

 

オレはワクワクしながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた月曜日。学校が放課になり今はオレとアリサとすずかの3人で帰路についている。なのはは用があるといって帰ってしまった。いよいよ作戦を実行するときがやってきた。

 

「あ、学校に忘れ物しちゃったから取りに行ってくる」

 

「待ってようか?」

 

「私たちも一緒に行くよ」

 

「ううん、大丈夫。すぐ追いつくから先行ってて」

 

「わかったわ」

 

「また後でね」

 

アリサたちと別れオレはすぐ物陰に入る。カバンから金髪のカツラとカラーコンタクトを取り出しすぐに装着する。昨日練習したせいか、すぐにコンタクトをつけることができた。羽島カイ戦闘準備完了!今から現場に急行します!

 

物陰から出ると談笑しながら歩いている2人が見えた。オレは走っていき、アリサたちに声をかける。

 

「見つけたわ、もう1人の私」

 

「え?・・・」

 

「アリサちゃん、どうしたの・・・」

 

オレを見て2人が固まっている。ふははははは!どうやら恐怖で動けないようだな、2人とも顔が引きつっているぞ。そしてアリサよ、今までの罵倒の分さらに怖がらせてやるぜ。

 

「この世界に2人も私は要らないの。だから消えてもらうわ」

 

そういってアリサの肩をつかもうとするオレ。さあもう1人の自分に恐怖するがいい!!ふはははははははは・・・

 

「何やってんのよ、アンタ」

 

「そういう趣味に目覚めちゃったの?カイ君」

 

「は・・・・!?」

 

羽島カイ緊急停止。今この2人なんて言った?まさか最初からばれていたのか!?すずかに至っては本当に心配するような目でこちらを見ている。やめて、そんな目でオレを見ないで!

 

「オレの完璧な変装がばれていた・・・だと」

 

「だって声がアンタだし、服装も制服だしね」

 

「しかも今のセリフ土曜日にテレビでやってたやつだよね?」

 

「・・・・・」

 

うかつだった!このオレとしたことがそこまで考えつかなかった!?しかもすずか、君も土曜日にやってた怖いもの特集見てたんだね・・・。

 

「ふ、ふん!どうやら少しはやるようじゃないか・・・。今日はこの辺で勘弁してやろうではないか・・・だからそんなゴミを見るような目で見ないでください、お願いしますアリサさん」

 

「私のことが好きすぎてついに変態行為に走ったかと思ったわ」

 

「いや、違うから!アリサを脅かそうと思ってやったんだよ!」

 

「私を驚かせようなんて100年早いわよ。そのカツラとコンタクトどうしたのよ?」

 

「・・・買った」

 

「ぷっ!!わざわざ買ったのアンタ」

 

アリサが噴き出した。大佐ァ、こちら羽島!アリサに仕返しするどころか尋常じゃない被害を受けているんだが!!

 

「う、うるさい!これでも結構高かったんだよ!」

 

「頑張ったんだね、カイ君」

 

すずかのフォローがオレの心をさらに傷つける。ぐああああああ!もう嫌だ!!すぐさまこの場を離脱しないと。

 

「ちょっと、オレ着替えてくるぅぅぅぅ!!」

 

「はいはい、待ってるわね」

 

「急がなくていいからね」

 

オレは涙の逃走を開始した。もうヤダ!オレの心はズタズタだよ!そして着替えるために物陰に入ろうとしたとき、路駐してあった黒い車の扉が開いてオレの手を掴んできた。

 

「へっ?」

 

そんな間抜けな声を残しオレは車に引きずり込まれた。え?マジで何なのコレ。ドラマの撮影?

 

「よし、目標を確保した。車を出せ」

 

サングラスをしたおじさんがなんか言っている。やばい、誤解を解かないと!ドラマの撮影に俳優じゃない一般人が参加しちゃまずいだろ!!

 

「ちょっと、勘違いしてま・・・むぐっ!?」

 

オレは俳優じゃなくて一般人だと説明しようと思ったら、布のようなもので口と鼻を覆われ気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「アリサちゃん、あれって!?」

 

隣にいるすずかが焦った様子で話しかけてくるけど、私も今目の前で起こった出来事に動揺を隠せない。私の格好をしたカイが急に車に引きずり込まれて・・・まさか誘拐!?あの格好をしたカイを連れ去ったってことは狙いは私だったってこと!?いや、今はこんなことしてる場合じゃない!

 

「すずか、忍さんに連絡して!私は自分の家に連絡するから!!」

 

「う、うん!」

 

私は焦る気持ちを押さえつけながら家に連絡をした。幸いナンバーは覚えていたから見つかるのは時間の問題だと思うけど・・・。お願いカイ、無事でいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?」

 

目が覚めたオレが最初に見た光景はもう使われていないと思われるビルの室内だった。

 

(え?ナニコレ)

 

「目を覚ましたようだな」

 

オレが内心パニックに陥っていると近くに立っていたおじさんが話しかけてきた。

 

(え~と・・・そうだこれはドラマの撮影でオレは子役と間違われてここまで連れてこられたんだ!早く誤解を解かなきゃ)

 

「んん~んんんんんんんんんんんん~(ちょっと~オレは子役じゃないですよ~)」

 

・・・どうやら、両手足を縛られているだけじゃなくて口もふさがれているようだ。これじゃ誤解が解けないじゃないか!?どうするんだコレ、あとで怒られるのは嫌なんだけど!?

 

「おとなしくしときな、お前は金が手に入るまでの人質だ。まあ、金が手に入った後はどうなるかわからねえがな」

 

そういうとおじさんは笑い始めた。近くにいたおじさんの俳優仲間だと思われる人たちもにやにやと笑い始めた。まずい!もう撮影が始まっているようだ。俳優の人たちが演技に入っちゃってるよ!?しょうがない、この人たちにも予定があるだろうしオレも頑張って演じることにしよう。

 

「むむむむむむむ~!!(ダレカタスケテー(棒))」

 

「しかし目標は女じゃないんですか?男物の制服を着てるんですが」

 

まずい、ばれて怒られる!

 

「気まぐれかなんかだろう。この髪と瞳の色、さらには聖祥大付属の制服・・・間違いなくこいつがアリサバニングスだ!」

 

「確かにそうですね。アニキ、こいつ俺の好みなんですけど・・・」

 

「ああ、殺さなければ好きにしていい」

 

「ありがとうございます!!さてアリサちゃん、お兄さんといいことしようね~」

 

下種な笑い方をしながらおじさんBが近づいてくる。ちょっと待って!今アリサって言ったよね!?これドラマの撮影じゃなくてマジもんの誘拐なの!?しかも貞操の危機感じるんですけど!

 

「むむむむむむむ!!(近づくなおじさんB!!)」

 

「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか、アリサちゃん」

 

ひええええええええええええ(泣)!この人怖いよ、小学生相手に舌なめずりして近づいてくるよ!!助けて(貞操的な意味で)!!

 

「そこまでだ!!」

 

おじさんBがオレに触れようとしたときに、入り口からドサドサという音と共に声が聞こえてきたので反射的にそちらの方を向く。そこにいたのは・・・

 

「その子を離してもらおうか・・・」

 

士郎さんと恭也さんだった。うおおおおおおおおお(歓喜)!助けが来たぞ!今この部屋に残っているのはサングラスをかけたおじさんとおじさんBだけだ。オレと恭也さんの目が合う。信じてますよとアイコンタクトを送る。

 

「ぶはっ!・・・いや何でもない。覚悟しろよ」

 

何か今恭也さんが笑ったような気がしたんだけど。慌てて格好つけても遅いんですが。

 

「ぐあっ」

 

「おげっ」

 

そんなこんなで2人に倒されるオジサンたち、救出されるオレ。紐をほどいている時に、恭也さんが震えていたのは気のせいだと思いたい。

 

「大丈夫かい?カイ君」

 

「すみません、助かりました」

 

「君が攫われたと聞いたときはとても心配したけど無事でよかった」

 

士郎さんがオレに話しかけてくれる。アリサの格好をしていなければ名シーンだったはずなんだけどな。

 

「ところでその恰好は・・・!?」

 

「ぶはっ!!」

 

士郎さんがオレの格好を聞いてきた瞬間に恭也さんが噴き出した。ぐあああああ、恥ずかしい!!やっぱさっきも笑ってたんですね!?

 

「え~と、これは・・・」

 

どう説明しようか・・・と悩んでいると涙目のアリサとすずかが入り口から飛び込んできた。後ろから忍さんも歩いてきた。

 

「無事でよかった!!」

 

「本当に心配したんだから!!」

 

「う、うん。ごめん」

 

2人はオレのことを本気で心配してくれていたらしい。すごくうれしいんだけど格好が格好だからね・・・。

 

「カイ君・・・災難だったわね・・・ふふっ」

 

忍さんも笑ってるんですけど!?もうやめて、オレのメンタルポイント(略してMP)はもう0よ!!

 

結局本当のことをみんなに話して、オレは一生消えない黒歴史を作ったのであった。・・・もう女装なんてしない!!絶対に!




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金髪少女との出会い(それとガイコツさんとの出会い)

しばらく見ないうちにお気に入り登録者数が100件を超えました。この作品をご覧いただきありがとうございます!


さて、昨日黒歴史を作ってしまったオレ、羽島カイ。恭也さんや忍さんがオレの格好を見て大笑いしててオレのMP(メンタルポイント)はガリガリと削れていった。最初心配してくれていたアリサとすずかも最後の方は笑ってたし・・・。結局皆はオレに心配の言葉をかけてくれたんだけどね。そして迎えた火曜日。今日は大人しく過ごそうと心に決め家を出た。

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。もう女装なんてするんじゃないよ~」

 

「・・・・・」

 

昨日は泣きながら心配してくれたのにもうネタ化されてるんですが・・・。オレはバス停まで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス停に着くとそこにはすでになのはがいた。なのははオレに気が付くと走って近づいてきた。

 

「カイ君!昨日は大丈夫だった?」

 

「うん、心配してくれてありがとう。体の方は大丈夫だよ」

 

やはりなのはは天使かもしれない。本当に心配しているような様子で声をかけてくれる。そうだよね、ちょっと独特な格好をしてたからって笑うようなもんじゃないよね!

 

「よかった・・・。そういえばお兄ちゃんが昨日カイ君がアリサちゃんの格好をしてたって言ってたけどなんで?」

 

おのれ!!恭也さん!あなた絶対に面白がってますよね!確かに助けに来てくれたことは感謝してもしきれないほどだけど、絶対に面白がってますよね(2回目)!?

 

「えっとアリサを脅かそうと思って・・・」

 

「そうだったんだ。わざわざ道具を買いそろえるなんて凄い凝ってるね」

 

恭也さぁぁぁぁぁぁん!!なのはが可愛いからってなんでもしゃべりすぎでしょ!シスコンか!なんで朝からこんなに恥ずかしい気持ちにならなきゃならないんだ!確かにオレが悪いけど、なのはは純粋にほめてくるから余計につらい。

 

「バ、バスが来たぞ」

 

「あ、本当なの」

 

ちょうどその時バスが来たのでどうにか会話を終了させることができた。やれやれだぜ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスの中や学校では特に変わったこともなく迎えた放課後。今日はなのはたちが塾で、前田も用があるらしく1人で家に帰っている。・・・別に寂しくなんてないぞ。

 

「今日は、海鳴公園でも寄ってみようかな」

 

オレは久しぶりに海鳴公園で海でも見ようかと考え、寄り道をすることにした。

 

「やっぱここは風が気持ちいいな~」

 

海鳴公園は海がよく見えて風も心地よい。しばらく来てなかったけどやはり良いところである。備え付けのベンチで休もうかとベンチに向かって歩いていると見覚えのあるような石を発見した。

 

「あれは・・・」

 

その石を拾い、しばらく眺めてみる。やっぱ、なのはの持ってた石と似てるな・・・。この石今ブームでも来てるんだろうか。確かに綺麗だもんなぁ。太陽に透かしてみたり振ってみたりしていると急に声が聞こえてきた。

 

「あの・・・」

 

「ん?」

 

そちらの方を向いてみると金髪の女の子が立っていた。・・・もしかしてベンチに座りたいのかな?

 

「ああ、ごめん。ずれるね」

 

そう言って女の子が座れる十分なスペースを開けたが女の子は不思議そうな顔をしている

。・・・あれ、違ったのかな?いや、もしかしたらオレに話しかけていないんじゃないか?そう思ってあたりを見渡してみるが誰もいない。やっぱオレに話しかけてるんだよね?

 

「えっと、座らないの?」

 

「え?」

 

「ベンチ、君が座ると思って空けたんだけどもしかして違った?」

 

「あ、じゃあ・・・」

 

女の子はオレの隣に座る。ちょ、ちょっと近くないかな?・・・モテない男は知らない女の子が近くにいると緊張してしまうのだ!・・・言ってて悲しくなってきた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

そのまま沈黙。どうやらオレの人見知りスキルEXが発動しているようだ。昔と比べると少しずつ改善されているがまだまだ治らないオレのこのスキル。・・・この子も人見知りかな?仲間だね!

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

5分経過。あれ~~?この子なんか用があるんじゃないの?お兄さんちょっと居心地が悪くなってきたぞ。しょうがない、オレから話しかけることにしよう。

 

「えっと、なんか用事があるんじゃないの?」

 

「え?君が座ってって言ったからなんか話があるのかと思ってた」

 

「あ、ごめん。オレは特に用事はないんだ。ベンチに座りたいのかなって思ってたんだ」

 

どうやらこの女の子、オレがなにか話すことがあると思って律儀に待ってたらしい。ごめんね、オレは君がベンチに座りたいのかと思ってたよ。

 

「その石を渡してもらえますか?」

 

「え?」

 

「その石がどうしても必要なんです」

 

「あ、ごめん!君のだったんだ」

 

どうやらこの石はこの子にとって大切な物だったらしい。オレのバカ!他人の大切な物ずっと持っててどうすんだ。この子が最初困ってた理由が分かった。オレは慌ててその子の手に石を載せる。

 

「え?いいの?」

 

「いいのってどういうこと?」

 

女の子に石を渡すと女の子は驚いたような顔をして疑問を投げかけてくる。

 

「この石って君も集めてるんじゃないの?」

 

「へ?」

 

どうやらオレは女の子の持ち物を集めているようなド変態野郎だと思われていたらしい。・・・悲しくなってきた。

 

「オレにそんな趣味ないから!」

 

「何言ってるの?」

 

「え?」

 

話がかみ合わずお互いに首をかしげる。どういうこと?

 

「その石って君が探してたんじゃないの?」

 

「そうだけど・・・。君は魔導師なのにそんな簡単に渡しちゃっていいのかなって」

 

魔導師!?オレはこの女の子にそんな風に見られてたの!?

 

「なんで魔導師!?そんな不思議な人に見える!?」

 

「だって、君のその魔力は・・・?」

 

魔力?・・・なるほどわかったぞ、この子天然さんだ!魔法使いとかがいると思っている純情な子なんだ!そうとわかったら、オレはこの女の子の夢を壊さないためにも話を合わせるとしよう。

 

「・・・そう、実はオレは魔導師なんだ」

 

「やっぱり・・・。ならこんなに簡単にジュエルシードを渡しちゃっていいの?」

 

ジュエルシード?・・・石のことかな?

 

「え~と、君が欲しいのなら別にあげてもいいけど・・・」

 

「ありがとう!優しいんだね」

 

そう言って笑顔を見せる女の子。よくわからないけどやっぱり女の子は笑顔が一番だよね!

 

「喜んでもらえたのならよかった。そうだ!せっかくだから名前を教えてもらってもいいかな?」

 

「大丈夫だよ。私の名前はフェイトだよ」

 

「フェイトか。オレの名前は羽島カイ、よろしく」

 

「うん、よろしく」

 

自己紹介をした後は色々雑談をして別れた。フェイトは魔法を使えるとか言ってたけど、オレは夢を壊さないためにも話を合わせておいた。オレも魔法が使えるという設定になっている。・・・本当に魔法が使えたらいいのになぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえり、フェイト。こっちは全然駄目だったよ」

 

「気にしないで、アルフ」

 

「フェイトの方はどうだったんだい?」

 

「1個手に入れることができたよ」

 

地球の拠点としているマンションに帰ってきた私を待っていたのはアルフだった。アルフはジュエルシードを見つけられなかったことを気にしていたようだったけど、ジュエルシードはそう簡単には見つからないと思っている。むしろ私が今日ジュエルシードを発見できたことは幸運だったと言える。

 

「凄いじゃないか!流石私のご主人様だね」

 

「まあ、譲ってもらったものなんだけどね」

 

そう言って封印処理をしてバルディッシュに収納していたジュエルシードを取り出しアルフに渡す。私たちは地球に来て日が浅くまだ実物を見たことがなかったのでアルフにも見てもらおうと思ったのだ。

 

「綺麗な石だね~」

 

「うん、そうだね」

 

部屋の光に透かしてジュエルシードを見ているアルフの言葉に賛同する。

 

「母さんのためにも早くジュエルシードを見つけないとね」

 

「だけどフェイト、無理はしちゃ駄目だよ」

 

「うん、ありがとう」

 

やっぱりアルフは優しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ってから、お風呂に入って夕飯を食べてさあ寝ようと思ってベッドで横になった時にふと気が付いた。

 

(あれ?明日提出の宿題があった気がするんだが・・・)

 

マイペースな性格のオレは、宿題が出されても後回しにしてしまいいつも提出日の前日や1時間前に終わらせるということが多々ある。今思い出した宿題は先週の金曜日に出されていたもので確かプリント5枚分はあったと思うんだけど・・・。オレは眠りへの誘惑をし続けるベッドから跳ね起きて学校用のカバンをあさる。5分ほど探し続けてオレはある結論へと至った。

 

(宿題学校に忘れたんだけど・・・)

 

うおおおおおやっちまった!!確か先生が明日提出できない奴は居残りとか言ってたような気がする!居残りする奴なんていないだろ(笑)とか思って余裕ぶっこいてたあの時のオレをぶっとばしたい。こうしてはおれん、今すぐ取りに行かなくては!!待っててくれオレの宿題!!

 

「母さん、学校行ってくる」

 

そう言ってオレは家を出た。走る走る、風のように走る。・・・嘘です、すぐ疲れて休んでます。この前のポチ(仮称)との鬼ごっこの時にも思ったけどやっぱオレ体力無いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでオレは学校に着いた。つ・・・疲れた。冷静に考えたら母さんの車に乗せてもらった方が良かったんじゃないか?・・・なぜ思いつかなかったのだろうかオレの脳細胞よ。もうちょい早く活動してほしかった!それとなんで結界みたいなものに校舎が覆われているのか・・・まあ、気にしたら負けか。新手のライトアップか何かだろう。

 

「とりあえず、宿題取ってくるか」

 

オレは暗闇の学校へと足を踏み入れた。・・・こ、怖くないぞ!

 

≪スタスタスタ≫

 

速足で歩くオレの足音が廊下に響く。え、なんで速足なのかって?運動しているだけだよ?早く教室着かないかな~(汗)。しばらくすると教室に着いた。教室の鍵を開け自分の机の中を探す・・・良かったプリントがあった。念のため持ってきた懐中電灯で確認する・・・うん間違いない、ミッションコンプリートだ!大佐こちら羽島、ただいまより帰還する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪スタスタスタ≫ ≪カタカタカタ≫

 

「・・・・・」

 

≪スタスタスタ≫ ≪カタカタカタ≫

 

「・・・・・」

 

≪スタスタスタ≫ ≪カタカタカタ≫

 

宿題を見つけて教室を出たのはいいけどさっきから聞こえちゃいけないような音が聞こえるんですけどどうしたらいいんですかね?

 

≪ダダダダダダ≫ ≪カタタタタタタ≫

 

走ると向こうも走ってくるみたいです。

 

≪スタスタスタ≫ ≪カタカタカタ≫

 

「誰ださっきから肩の痛みを訴えている奴は!!」

 

そう言ってオレは懐中電灯を背後に向ける。ライトが当たったところにいたのは・・・

 

ガイコツさん「やあ」

 

すぐに前を向く。・・・OK、クールになれオレ。あのガイコツさんは誰かが運んでいる途中に立てておいたやつなんだよな、なんか目が光ってるけど蛍光塗料でも塗ったんだよな?・・・なかなかお茶目な奴がいるじゃないか、廊下にガイコツさんを放置するなんて。思わずさっきから肩の痛みを訴えているのはガイコツさんなのかと思っちまったぜ。多分さっきから聞こえていたのは風が窓に当たる音だろう・・・うん。

 

≪トントン≫

 

考え事をしていたら誰かに肩をたたかれた。やっぱ先生か、ガイコツさんを運んでいる途中でトイレにでも行っていたんだろう。先生に夜学校に来た理由言わないとな~。オレは再び後ろを向いて懐中電灯で照らしながら言う。

 

「もう先生、びっくりしま・・・」

 

ガイコツさん「おっすおっす」

 

「いやああああああああああああ!!!!!」

 

オレはその場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノ君、学校のどこにジュエルシードがあるのかな?」

 

「わからないんだ、学校にあるってことだけはわかるんだけど」

 

ジュエルシードの反応を感じて学校に来たなのはたちは、校舎の中を探したのだがジュエルシードを発見できずまだ探してない屋上に来ていた。しかし屋上でもジュエルシードは発見できず2人は焦りを感じ始めていた。

 

「もしかして・・・」

 

「何かわかったの、なのは?」

 

「この学校自体が思念体さんになっているのかも・・・」

 

「確かに、それなら学校全体に反応があったのも頷ける・・・。なのは!」

 

「うん、任せて!レイジングハートお願い」

≪Stand by ready≫

 

「リリカルマジカルジュエルシードシリアル20封印!」

≪Sealing≫

 

学校全体がピンク色の光に包まれジュエルシードは無事封印された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・はあ・・・奴は撒けたか?」

 

オレは今廊下の曲がり角の付近に隠れている。ガイコツはポチ(仮称)よりも追ってくるのが遅くてギリギリではあるが引き離すことに成功したのだ。まあ、見た目的にはこちらの方が怖いんですけどね。曲がり角から顔を出しあたりを確認する。よし、いないようだ。今のうちに逃げよう!そう思ったオレは下駄箱へと向かった。下駄箱に近づいていくにつれて自然とオレは笑顔になっていく。このままいけばガイコツさんから逃げられるのだ。最近色々ありすぎて現実なのか非現実なのかわからなくなってしまうくらいである。

 

「よし、下駄箱に着いた・・・」

 

下駄箱に着いて懐中電灯を照らすとそこに奴はいた。ガイコツさんである。なぜかはわからないけど骨盤付近に手をついて下駄箱に寄りかかってオレを待っていた。・・・少女漫画の彼氏かお前は!!

 

「なんで少女漫画みたいな待ち方してるんだよおおお!!!」

 

思わず突っ込んでしまったオレは悪くないと思う。オレの声に気が付いたガイコツさんは手を振りながら走ってくる。マジで何なんですかアンタ!?少女漫画の再現でもしてんの!?

 

「うおっ!!」

 

逃げようと思ったその時、ピンクの光が視界を覆って気が付いたときにはガイコツさんはその場で倒れていた。軽くつついてみたが返事がない、ただの屍のようだ(当たり前だけど)。オレはいきなり倒れたガイコツさんに疑問を感じながら家に帰った。今日は怖かったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ、どこ行ってたのよ!心配したじゃない!」

 

「ごめんなさい!・・・一応行く前に学校に行くって言ったんだけど・・・」

 

家に帰ったオレを待っていたのはカンカンに怒った母さんだった。ちなみに父さんはもう寝ているらしい。

 

「聞こえなかったわよ!・・・心配かけた罰として1週間ゲーム禁止!!」

 

「な・・・ん・・・だ・・・と・・・」

 

訂正。今日一番怖かったのは母さんだった。




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お茶会!

翌朝、オレは昨日のことが現実だったのか確かめるためにバスから降りた後走って下駄箱へと向かった。するとそこにはガイコツさんを持ち上げている男の先生2人が・・・。oh・・・どうやら昨日見たガイコツさんは現実のものだったらしい。そこに遅れてアリサたちが到着する。

 

「カイ、いきなり走ってどうしたのよ」

 

「いや、先生が運んでいるガイコツさんを見てたんだ」

 

「え、なんで下駄箱に理科室にあるガイコツがあるの?」

 

「昨日オレがあいつに追っかけられていたって言ったら君たちは信じてくれるか・・・?」

 

「信じないわね」

 

「私も・・・かな」

 

「昨日って・・・」

 

思った通りなんだこいつみたいな目でアリサに見られた。すずかは気遣っているような目で、なのはに至ってはとても驚いた様子でいる。

 

「だいたいどうやって追ってくるのよ」

 

「普通に走ってた」

 

「アンタ・・・怪談話の才能もないのね。全然怖くないわよ」

 

普通に考えて信じられないのは当たり前である。オレもアリサたちの立場だったら多分信じないであろう。

 

「と、とにかく教室に行こうよ」

 

オレたちはそのなのはの一言でガイコツのことを忘れて教室に向かうことにした。緊急集会があってあのガイコツの話がされたが、特に特筆する内容でもなかった。まあ、要約するとイタズラするな、なにか知っていることがあったら知らせてほしいというものだ。そして今は放課後。アリサたちと下校しているとすずかが提案してきた。

 

「今週末、家でお茶会しない?」

 

「お、いいね!」

 

「私も賛成!」

 

「うん、私も大丈夫だよ」

 

「よかった、じゃあ曜日とか詳しいことは携帯で連絡するね」

 

今週末はすずかの家にお邪魔することになった。すずかの家のメイドさんが淹れてくれる紅茶ってすごい美味しいんだよな。今から楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた週末、オレとなのはは家が近いので一緒にすずかの家に向かうことにした。オレがなのはの家になのはを迎えに行ってからバスに乗って行くんだ。なのはの家に着いたのでインターホンを鳴らす。扉が開き、顔を見せたのは恭也さんであった。

 

「おはよう、カイ。なのはならもう少しで準備ができるらしいから上がって待っていてくれ」

 

「わかりました。お邪魔します」

 

恭也さんの提案でなのはの家で待つことになった。やはり、なのはの家はとても大きい。オレの家とは比べ物にならない・・・これが格差ってやつか!部屋の中には美由希さんがいた。

 

「おはようございます、美由希さん」

 

「おはよう、久しぶりだねカイ君」

 

「お久しぶりです。・・・そういえば今日は恭也さんは行かないんですか?」

 

「いや、オレも行くよ」

 

「忍さんに会えますもん・・・イダダダダダダ!!」

 

揶揄おうと思ったら恭也さんにアイアンクローされた。本当に痛い、頭が割れてしまう!!しばらくして放してもらった。この謎の解放感は何だろうか・・・武術をたしなんでいる人はアイアンクローにもマッサージ効果をつけられるのか?決してオレがMだからというわけではない。

 

「す、すいません」

 

「わかればいいんだ。そういうお前こそ今日は女装しなくていいのか?」

 

「カイ君、恭ちゃんから聞いたけど大変だったみたいだね。・・・女装が趣味になったのかな?」

 

「何言ってるんですか!?オレは女装趣味に目覚めたわけじゃないですから!」

 

恭也さんだけでなく美由希さんまで揶揄ってきた。いつまでこのネタは引っ張られるのだろうか・・・。

 

「すまんすまん、揶揄ってきたお返しだ」

 

「私は単純に気になったんだけどな~」

 

美由希さんはオレが女装が趣味だと言ったらどうするつもりだったんだろうか。オレが美由希さんのセリフについて考えているとなのはが2階から降りてきた。どうやら支度が終わったようだ。

 

「おまたせ~。カイ君もごめんね」

 

「いや、大丈夫だよなのは」

 

「なのはも来たことだし行くか」

 

「気を付けてね~」

 

オレたちはその後バスに乗ってすずかの家に向かった。15分くらいしてすずかの家に着き、インターホンを鳴らすとノエルさんが出迎えてくれた。

 

「恭也様、なのはお嬢様、カイ様、いらっしゃいませ」

 

「こんにちは」

 

「ああ、お招きにあずかったよ」

 

「本日はお招きいただきありがとうございます」

 

「こちらにどうぞ」

 

ノエルさんに案内された部屋には猫がたくさんいて、すでにアリサとすずかと忍さんが紅茶を飲んでいた。

 

「なのはちゃん、カイ君、恭也さん」

 

オレたちに気が付いたすずかが立ち上がり近づいてくる。

 

「なのはちゃん、カイ君いらっしゃい」

 

すずかの専属のメイドさんであるファリンさんも挨拶してくれる。

 

「「こんにちは」」

 

オレたちは挨拶をして席に座った。忍さんは恭也さんを連れて自分の部屋に行ってしまった。美男美女のカップルはただ歩いているだけでも絵になるな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはたちが話している中、オレは猫に追われていたユーノを頭に乗せ猫と戯れている。ユーノはほっとしているようだ。

 

「ごろにゃ~ん」

 

「にゃーー」

 

家から持ってきた猫じゃらしを使って猫たちと遊んでいるといつの間にか部屋中の猫たちがオレの周りに集まっていた。オレ・・・猫には人気があるらしい。

 

「にゃーー」

 

「うおっ」

 

オレの肩にまで乗ってきた。なかなかアグレッシブな性格をしているなこの猫。ユーノは心なしか怯えているようだ。避難させるか。

 

「なのはー、ユーノをそっちに預けていいか?」

 

「いいよー」

 

なのはにユーノを預けると、猫たちがオレにとびかかってくる。

 

「な、なんだ!?ちょっと」

 

オレはあっと今に猫に埋もれてしまった。どうやらこの猫たちはオレの頭の上に乗りたかったらしい。

 

「アンタの周りいつも猫が集まるわね」

 

「おう、いいだろ」

 

「あはは、カイ君はユーノ君にも好かれてるからね」

 

「カイ君は動物に好かれやすいのかな?」

 

そのまま猫たちと戯れていると、1匹こちらに入ってきたそうにしている猫が目に入った。オレは猫たちをどかしてその猫を膝の上に置く。その猫はとても嬉しそうにお腹の部分に顔を摺り寄せてくる。何こいつ凄い可愛いんだけど!

 

「こいつ・・・可愛いな」

 

「鼻の下伸びてるわよ」

 

はっ!?いかんいかん。アリサに指摘されてしまった。しかしこいつが可愛いのがいけないんだ。

 

「お前はももう少し大きくなれば普通に猫たちの輪に入れるぞ」

 

猫の喉付近をなでてやると、嬉しそうにのどを鳴らす。可愛すぎて鼻血が出そうなんですが。

 

「お待たせしました~。紅茶と茶菓子です」

 

ファリンさんが紅茶を持ってきてくれたので猫たちをどかし椅子に座る。するとユーノがまたオレの頭に乗ってきた。お前、そこが定位置になってないか?

しばらく話をしているとアリサとすずかがトイレに行って、オレとなのはの2人きりになった。するとなのはが真剣な顔をしてオレに話しかけてきた。

 

「あのね、カイ君・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのね、カイ君・・・」

 

アリサちゃんたちがいなくなって2人だけになったから(ユーノ君も入れると2人と1匹だけど)ジュエルシードのことについて話すことにした。ユーノ君とは昨日話したけど、カイ君がジュエルシードの事件で魔法について知ってしまっているなら、説明しようということになった。もちろん、知らなかったのならそのまま秘密にすることになるんだけど。

 

≪いいよね、ユーノ君?≫

 

≪うん、大丈夫だよ≫

 

「どうしたの、なのは?」

 

「カイ君が学校でガイコツさんに追いかけられたって話だけど・・・!?」

 

その時、ジュエルシードが発動する気配を感じた。こんな時に・・・!?

 

≪どうしよう、ユーノ君≫

 

≪なのは、僕が森の方に向かうからそれを追いかけるふりして合流しよう≫

 

≪わかったの≫

 

「ユーノ?・・・なのは?」

 

急に黙った私を心配してくてカイ君が声をかけてくれる。すでにユーノ君は森の方に向かっているから急いでいかないと!

 

「ごめんねカイ君。ユーノ君が心配だから探してくるね」

 

「オレも行くよ」

 

「ううん、大丈夫なの」

 

心配してくれるカイ君には悪いけど巻き込むわけにはいかないの。

 

「そっか、じゃ≪シュン≫・・・」

 

「カイ君!?」

 

いきなりカイ君が目の前から消えてしまった!?一体どこに?・・・まさかジュエルシードの影響!?

 

≪ユーノ君!カイ君がいきなりどこかに消えちゃったの!≫

 

≪え!?本当かいなのは!?≫

 

≪うん・・・どうしよう!?≫

 

≪もしかしたらジュエルシードにカイが巻き込まれているかもしれない!なのは急いで合流して!≫

 

≪わかったの!!≫

 

私は急いでユーノ君と合流しジュエルシードの発動場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(え~と、つまりどういうことだ?)

 

さっきまでなのはと話していたはずなんだけど、気が付いたら景色が変わっていた。しかも・・・

 

「にゃお~~ん!!」

 

なんで巨大化した猫の頭に乗っかっているんですかね?




読んでいただきありがとうございます。


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フェイトとなのはの邂逅

ついに評価バーに色が付きました。読者の皆さんありがとうございます!


「にゃお~ん」

 

「うおおおおおお!!危ねええええ!!」

 

ちょ、ちょ、ちょっと待って!!なんでいきなり猫の頭に乗っかっているのオレ!?しかもこの猫さっきまでオレの膝の上に乗せていたやつじゃないか!?

 

「にゃにゃにゃ~」

 

しかもめちゃくちゃ機嫌がよさそうに尻尾振っているんだけど。そのおかげでオレは落下しそうなんだけどね!!

 

「落ち着け!!Just a minutes!!」

 

「にゃ~ん!」

 

オレの願いはどうやら聞き入れてもらえないようだ。真面目に生命の危機を感じている。

 

「誰かーーーー!降ろしてくれーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュエルシードが発動した場所にたどり着いたなのはたちは驚いていた。目の前には巨大化した猫が尻尾を振りながら走っている情景が映し出されている。

 

「あ・・・あれは?」

 

「多分あの猫の大きくなりたいっていう願いが叶えられたんだと思う」

 

「そ・・・そっか」

 

その時なのはの目がカイの姿をとらえた。猫の頭に必死にしがみついている。

 

「!!・・・カイ君!?」

 

「え!?どこに?」

 

「あそこ!猫さんの頭の上!」

 

「本当だ!早く助けないと!」

 

「にゃにゃにゃにゃにゃ~~!!」

 

「ぎゃああああああああああ」

 

なのはがレイジングハートを手にして変身しようとしたその時違う方向から黄色い光が飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「猫おおおおお、頼むから止まってくれ」

 

「にゃにゃにゃ」

 

どうやらこの猫オレを降ろすつもりはないようだ。こいつさてはオレを頭の上に乗せたくて急成長を遂げたのか!?猫から降りる方法を模索していると横から黄色い光が飛んでくるのが見えた。

 

「タマ(仮称)かわすんだ!!」

 

「にゃ!」

 

オレが命令したらタマ(仮称)は驚くべき速度で光をかわした。・・・何こいつ凄くね!?安心しているうちにさらに光が飛んできた。

 

「タマ(仮称)高速移動!!」

 

「にゃー!」

≪シュンシュン≫

 

こいつこんなにスペック高かったのか!全ての攻撃をかわしたタマ(仮称)。おかげですさまじい速さで揺さぶられたオレは吐きそうです。

 

「うぷ・・・よくやったぞ」

 

「にゃ~ん」

 

尻尾をぶんぶん振って喜んでいる。最近この手の生物に言葉が通じると思うのはオレだけだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かわされた!?」

 

森の中で攻撃をした張本人であるフェイトは驚愕していた。それもそのはずである、完全に死角から放ったはずの攻撃もあの猫は全て避けたのだから。

 

「しょうがない、こうなったら直接行くしか」

 

そう言いフェイトは猫のもとへと接近していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の攻撃は・・・?」

 

「なのは、今のうちに!」

 

「そうだね、早くカイ君も助けないと!レイジングハートセットアーップ!」

≪Stand by ready. Set up≫

 

なのはも変身して猫のもとに近づいていく。

 

「今のは魔法の光・・・?」

 

ユーノの呟きは誰にも聞こえることなく空気と混ざっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ君!」

 

「へ?なのは?」

 

吐き気がやっと落ち着いて来た頃になのはが話しかけてきた。・・・この子飛んでない?

 

「良かった無事で」

 

「いや待て、どういうこと?」

 

「それは・・・!!」

≪Wide area protection≫

 

言葉を途中で切ったなのはが振り向いて黄色い光をシールドのような物で防いだ。なにコレ、ハリウッド映画か何かですか?

 

「同系統の魔導師・・・ロストロギアの探索者か・・・」

 

「あなたは・・・?」

 

木に降り立った誰かとなのはが話している。オレはそれどころではない、パニックに陥っている。なんで飛んでいるんだなのはは!?

 

「ロストロギア、ジュエルシード・・・バルディッシュ」

≪Scythe form≫

 

「え・・・」

 

「申し訳ないけど頂いていきます」

 

「くっ」

≪Flier fin≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の目でいきなり戦いが始まってしまった。タマ(仮称)が大人しくしている頭の上でぼんやりと戦いを眺めている。・・・うん、早すぎて何やってるのか見えないね。さっきから目の前が閃光で満たされていて目が痛いです。これは・・・夢かな?そんな感じで現実逃避をしていると2人が鍔迫り合いの形で空中で停止した。・・・あれ?あの金髪は・・・まさかねそんなはずないね。目を擦ってもう一度確認する。金髪であの美少女といえるあの横顔は・・・

 

「なんでフェイトさんがおるんですか?」

 

思わず関西弁になってしまったオレは悪くないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでこんなことするの?」

 

「答えても多分意味ないから・・・」

 

「なんでフェイトさんがおるんですか?」

 

目の前の女の子が喋っている途中で聞こえてきたカイ君の声に思わず2人でそちらの方を向く。すると目の前の女の子がひどく驚いた様子で言葉を口にした。

 

「カイ・・・?なんで?」

 

え!?カイ君知り合いなの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人で特撮ごっこでもやってんの?」

 

「「違うよ!!」」

 

オレが口にした疑問に対して2人そろって否定の言葉が返される。仲いいのか?・・・まあ自主製作映画を一緒に撮影しているくらいだから仲いいはずか。

 

「2人で映画撮影してるんじゃないの?その恰好で」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

2人はオレの言葉を受けて無言でそれぞれの格好を見て無言でこちらに視線を向けてくる。

 

「特にフェイト!お父さんはそんな恰好をするような娘に育てた覚えはありません!」

 

「この格好どこか変かな?」

 

「カイ君お父さんだったの!?」

 

オレのボケを真に受けたなのはが聞き返してくる。フェイトも真剣な様子で返してくる。

 

「いや、ごめん冗談。フェイトは少し露出が多いと思います!」

 

「あ、そうなんだ・・・」

 

「そうかな?少し変えようかな・・・」

 

なのはが安心したようにため息をつく。九歳で子持ちとか笑えんわ。フェイトは自分のマントをつまみながら悩んでいる。いくら春といってもまだ少し肌寒いから風邪ひくと思う。

 

「それで2人とも何やってんの?」

 

「「!!」」

 

オレの言葉を受け2人ははっとしたように向き合う。

 

「ジュエルシードは渡してもらいます」

 

「あれは危険な物なんだよ!?」

 

いきなりミュージカルみたいなものが始まった。本当に何やっているのかがわからない。この状況もいまいちわからない。オレとタマ(仮称)vsなのはvsフェイトみたいな構図になっていることはわかる・・・なんでこうなったのかはわからないけど。そういえばポケモンの映画にディアルガvsパルキアvsダークライという題名の三つ巴の映画があったな~なんて少しの間現実逃避。

 

「なのはーー!!」

 

誰かの声が聞こえて現実に戻ってきたオレが見たのはなのはが緑色の魔法陣みたいなものの上で寝ている様子だった。わずか数瞬の間になにがあったの!?そして目の前にいるフェイトは何故かこちらに杖のようなものを向けてきているし。

 

「ごめんカイ、どうしてもジュエルシードが必要なんだ」

 

そう言って迫ってくるフェイト。気のせいか周りに電気の塊みたいなやつが浮いている。とりあえず・・・

 

「逃げるぞタマ(仮称)」

 

「にゃ!」

 

合点招致というような感じで返事をしてきたタマと共に逃走することにした。ごめんフェイト、ジュエルシードというものはよくわからないけどその電気の塊みたいなやつに当たったら無事じゃすまないような感じがするんだ!

 

「え・・・ちょっと待って!」

 

「ごめんフェイト。さよならバイバイ、オレはこいつと旅に出る!」

 

「にゃお~ん」

 

フェイトの静止の言葉を背後に聞きながらオレとタマ(仮称)は走り出した。

 

「くっ、バルディッシュ!」

≪Arc saber≫

 

後ろから風を切る音と共に光刃が飛んでくる。

 

「タマ(仮称)全力を出せ!死ぬぞ!!」

 

「にゃ!」

 

しかしこの猫高スペックのため左右に避けながら足元に飛んできた光刃もジャンプして避ける。

 

「あの猫は一体・・・?このままじゃ駄目だ!全力で行くよバルディッシュ!」

≪Yes sir. Photon lancer≫

 

「フォトンランサー・フルオートファイア!!」

 

「うおおおおお!」

 

後ろからの攻撃に思わず叫んでしまう。威力が違いすぎると思うんですがそれは。

 

「にゃー」

 

「タマ(仮称)!」

 

オレが後ろに気を取られていた間に足元にフェイトの攻撃が命中し、オレとタマ(仮称)は倒れてしまった。オレ?タマ(仮称)に一生懸命しがみついていたから落下することは無かったよ。

 

「やっと追いついた・・・」

 

ひどく疲れた様子でフェイトがオレの目の前に立っている。

 

「フェイト!この猫をどうするつもりだ!」

 

「大丈夫だよカイ。この猫の大きさを元通りにするだけだから。ダメージも残らない」

 

「そうなの?」

 

「うん」

 

オレの逃げた意味は一体何だったのか。フェイト普通にいいやつじゃないか。なのはと喧嘩してた理由はわからないけど。

 

「じゃあ、頼む」

 

オレはタマ(仮称)から降りフェイトの近くに行く。

 

「うん、任せて」

≪Sealing form set up≫

 

「ロストロギア、ジュエルシードシリアル14封印!」

≪Sealing≫

 

フェイトが見覚えのある石を封印すると猫の大きさは元通りになった。

 

「ありがとうフェイト」

 

「いや、私は・・・」

 

「この猫を助けてくれたじゃないか」

 

「それはそうだけど・・・あの子に謝っておいてほしいんだ」

 

「わかったよ。なのはと喧嘩している理由はわからないけどちゃんと伝えとく」

 

「この猫のこともお願い・・・じゃあ私はこれで」

 

「うん、じゃあまたね」

 

「じゃあねカイ」

 

そう言い残しフェイトは去っていった。それにしても最近の女子の喧嘩って怖いな・・・凄いスケールで行われてたんだけど。ユーノの近くで眠っていたなのはの様子を確認する・・・良かったただ眠っているだけのようだ。

さて、早くなのはたちを運んでいかないと・・・とそこでオレの意識は途絶えた。




読んでいただきありがとうございます。
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TAMA(ハイスペック)

タマ(仮称)とカイのふれあい(物理)


「はあ~。怖い夢を見てしまった」≪ゲシゲシ≫

 

あれから時間が経過し、今は夜。オレは自分の部屋で今日のお茶会のことを考えていた。なのはとフェイトのDOKIDOKI(命の危機的な意味で)大決戦を見たと思い、今のってCGか何かか?と考えていたところ、気が付いたら月村家のベッドで寝かされていた。うん、ごめん。自分でも何言ってるかわからない。木の幹に顔面をぶつけた状態で、すずかたちに発見されたらしい。そこでオレはあれが夢だったということに気が付いたのだった。

 

「ていうか、夢でなのはたちが戦っているものを見るなんてオレやばい奴じゃないか!?」≪ガシガシ≫

 

オレ氏、ただの変態疑惑浮上。

・・・・・うわああああああああ!!何つー夢を見てしまったんだ!!恥ずかしいよ。

 

「はあ・・・というかいい加減にオレの髪をむしるのをやめてもらっていい!?将来禿げたらどうしてくれんの!?」≪ガリガリ≫

 

オレはさっきから頭部を襲撃していた生物を両手で抱えて床に下ろす。何か頭から生暖かいものが流れてるような気がするけど、無視だ無視。

 

「にゃー」

 

「いいか、タマ(仮称)。ご主人様の髪の毛は有限なんだ。気を付けてくれ」≪ダラダラ≫

 

「にゃんにゃ」

 

オレがそう言うと、タマ(仮称)は首を縦に振った。この子やっぱりオレの言うこと理解してないか?夢の中で巨大化してたし、もしかしたらハイスペックなのかもしれない。ごめん、やっぱ無視できないわ。視界が真っ赤になってきた。包帯はどこだァ!?

何故オレがタマ(仮称)と一緒にいるのか説明するには、それはオレが月村家で目が覚めた時に遡らなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・・ん」

 

謎の重みで目が覚めた。気のせいか呼吸も苦しい。目を開けるとそこには一面真っ白な世界が・・・って

 

「お~い、何で猫がオレの顔に乗ってるんですかね?」

 

「あ、起きた!」

 

オレが起きたことに気が付いたすずかが猫をオレの顔から引きはがし・・・痛い痛い!!爪立てんなあ!!すずか以外の人たちも集まってきた。

 

「何でオレ寝てんの?」

 

「いや、知らないわよ。アンタとなのはがいないことに気が付いて庭まで探しにいったら、アンタ顔を木に擦り付けた状態で気絶してるんだもの」

 

「は?」

 

「いや、驚いたのは・・・ププッ・・・こっちよ。な、何で・・・木にキスしてたのよ・・・プッ!!あははは!!もう駄目!!あの格好で気絶してるの思い出しちゃった」

 

目が覚めたらアリサに笑われてる件について。いや、顔面を木に打ち付けたのなんて全く記憶にないんだけど。なのはが真面目な顔して話しかけてきて・・・そこからタマ(仮称)の背中で大決戦に巻き込まれて・・・いや、これは夢か?マジでわからん。

 

「おいやめろ。笑うんじゃあない!!オレのメンタルがゴリゴリ削られてくから!!」

 

「あれは滑稽だったぞカイ。ナイスジョーク」

 

「ぐはあああ」

 

恭也さんにとどめを刺された!!なんでこの人こんなに良い笑顔でサムズアップしてんの!?オレをいじめるときだけ笑顔輝いてるんですけど。

 

「カイ君、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫だけど、何があったか記憶にない」

 

「覚えてないの!?」

 

「ごめん、真面目に覚えてない」

 

「そっか・・・」

 

「しかし、なのはも庭で倒れてたし何があったのかしらね。なのはは転んで頭を打ったって言ってたし」

 

「ユーノ君探してたら、転んじゃったの。ごめんなさい」

 

「なのはちゃんもカイ君も、気を付けてね」

 

「ありがとう、すずか」

 

「じゃあ、カイ君も目を覚ましたことだし今日はお開きにしましょうか」

 

忍さんのその一言でお茶会は終了したのだが・・・

 

「離せーー!!!!」

 

「にゃーー!!!!」

 

「こ、こら!!カイ君も困ってるでしょ!!離しなさい!!」

 

タマ(仮称)(夢に出てきた猫と同じだからこう呼んでる)がオレの服にへばりついて離れてくれない。こいつ、爪も立てておる!!

 

「あらあら、カイ君のことが気に入ったのね」

 

「オレのことが好きなら爪を立てるなー!!」

 

「にゃにゃにゃー!!」

 

結局数十分の死闘の末、オレが根負けしタマ(仮称)はしばらくオレが預かることになった。こいつマジで家までオレの服にへばりついてたんですよ。おかげで道行く人からほほえましいものを見るような目で見られたよ。なのはも苦笑いしてたし。・・・恭也さん?もちろん爆笑してたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということでタマ(仮称)は今オレの部屋にいるのだ。ちなみに両親には普通に気に入られていた。

 

「オレはそろそろ寝るから、お前はそこの即席ベッドで寝るんだぞ」

 

「にゃ」

 

「・・・・・」

 

この子今拒否したよね?本当にオレの言葉が理解できてるのか?ちょっと試してみよう。

 

「なあ、タマ(仮称)?お前はこの家が好きか?」

 

「にゃ~」

 

「・・・・・」

 

いや、今のは普通に反応しただけか?わからん。

 

「タマ(仮称)、オレって格好良いよな?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・フッ」

 

「!!お前、今鼻で笑ったろ!!許さん!!」

 

オレとタマ(仮称)の戦いは母さんがオレの部屋に来て怒るまで続いた。なお、みだれひっかき(顔面)でオレが敗北した模様。タマェ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノ君、今日何があったかわかる?」

 

「う、うん。一応知ってるけど・・・」

 

「私があの子に負けて気を失ってから教えてほしいの」

 

「なのはがあの子に負けて気を失った後にね、カイはどうにかして僕となのはと猫を運ぼうとしてたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくわからないけど、なのはたちを早くすずかの家の中に運ばないと・・・」

 

「キュー」

(カイは魔法を知ってしまった。どうしよう、僕のせいでこの星の住民たちに被害が出てしまっている)

 

「まず、タマ(仮称)を肩に乗せて・・・」

 

「ふに゛ゃー!!」

 

「あ、ごめん!!尻尾ふんじゃ・・・ふげっ!!!!」

 

(え゛っ!?何だあの奇麗な蹴りは!!あの猫の蹴りがカイの後頭部に直撃して・・・)

 

「ふごっ!!」≪ゴン≫

 

(うわっ・・・痛そう。顔から木にぶつかって・・・って気絶してる!?)

 

「にゃ」

 

(何かどや顔してるし・・・あの猫何者なんだ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことがあって・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・教えてくれてありがとうなの。今日はもう寝ようか」

 

「・・・うん」

 

自分たちの知っている猫の定義がぶち壊され、よくわからなくなったので、なのはたちは考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ、起きなさーい」

 

翌朝。カーテンの隙間から日が差し、カイの顔を照らしていた。遠くからカイの母親の声が聞こえているが、カイは気持ちよさそうに眠っていた。その声を聴いたタマ(仮称)は耳をピクリと動かし欠伸をした・・・カイのお腹の上で。ぱっちりと目を開けたタマ(仮称)は、小さく伸びをし・・・・・カイの顔の上に移動して・・・・・寝た。

もちろん、そんな状況でカイが眠れるはずもなく

 

「・・・!!・・・・!?・・・ハアッ!!ハアッ!!」

 

強制的に起こされた。

 

「殺す気か!!」

 

顔からどかしたタマ(仮称)に対し、ツッコミをいれるカイ。彼らのこのような朝は、すずかがタマ(仮称)を引き取りに来るまで続いていたのだった。




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温泉旅行1

以前書いていた内容と組み合わせています。
アリサは最強。


「おはよう、なのは」

 

「おはよ・・・って頭大丈夫!?」

(包帯巻いてる・・・)

 

今日は月曜日。いつも通り学校に登校するためにバス停に歩いて行ったのだが、なのはに頭の心配をされてしまった。アリサと違って真面目な顔で罵倒してきたよ!?

 

「・・・ついになのはにまで罵倒されるようになってしまった。オレは・・・悲しい」

 

「え!?・・・ち、違うよ!?頭に包帯巻いてるから心配になって・・・」

 

「あ、そういうことか。良かった・・・」

 

言葉って大切なんだね。勝手に省略しちゃだめだよ。お兄さんとの約束だ。

 

「家族内戦争(一方的)で負傷してしまってな。我が家のヒエラルキーが変化してしまった」

 

オレとタマ(仮称)の戦いである。ちなみに家庭内ヒエラルキーはオレがワーストである。タマ(仮称)がどう考えても猫外のスペックな件。なお、この負傷は、タマ(仮称)がオレの髪の毛をむしったことによるものであり、オレとタマ(仮称)の戦いには関係ない。

 

「家庭内戦争って・・・何があったの?」

 

「追いかけっこ」

 

「・・・・・へ?」

 

「だからオレとタマ(仮称)の追いかけっこだよ。あいつマジで捕まえられないし、逆にすぐ捕まる。すずかの家にいた頃のおどおどした姿は何処へ・・・」

 

「・・・何やってるの?」

 

「そんな目で見ないで!!オレも何やってるかわかんないんだもん!!」

 

お茶会のあった夜、タマ(仮称)が鼻で笑ったから、捕まえてよしよし(ムツゴロウさん方式)してやろうと思ったのに、逆に襲撃された。あの時母さんがオレの部屋に来なかったらどうなっていたか。今日もあいつオレの顔で寝てたし。苦しいよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に学校も終わり、今は帰り道。アリサたちは用事があるため、なのはと帰っていたが、なのはも用事を思い出したらしく、今は一人で帰っている。小学生多忙過ぎませんかね?

 

「・・・ん?」

 

何か今、路地裏が青く光ったような気がする。私、気になります!!

光を確かめるために、路地裏に入ってみるとそこにはいつぞやの青い石が転がっていた。

 

「・・・これ、今ブーム来てるのかな」

 

確かなのはもフェイトも持っていた気がする。家で調べてみよう。

オレはその石を拾ってポケットに突っ込み、その場を後にした。家についていた頃には、石のことについてすっかり忘れていた。

 

「あれ?確かこのあたりだったはずなんだけど・・・」

 

「違うところ探してみようか」

 

数分後、一匹のフェレットと一人の少女のそんな会話があったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迎えた休日。両親が夫婦水入らずの旅行に行き、オレはこの2日間好きなことができる。今日はこの前士郎さんに連れていかれたせいでできなかったゲームをやるとしよう。

 

「る~るるるる~る~今日は平和だな~」

 

無事テレビにケーブルをつけセッティング完了!!いざ2日間のゲーム生活へ!!

 

≪ピーンポーン≫

 

「!?」

 

ゲーム機の電源をつけると同時にインターホンが鳴った。このタイミングでインターホンが鳴るか普通!?しかもこの出来すぎたタイミング、またオレのゲーム生活を邪魔される気がする!!・・・宅配便かもしれないから一応鍵穴から見ておこう。

 

(うんうん、どうやら宅配便ではなさそうだ。この勝気な瞳に輝く金髪、そしてこちらを睨む素晴らしい表情・・・・ってアリサじゃねーか!!)

 

咄嗟に顔をそらしてしまう。どうやら悪魔がオレを迎えに来たらしい。すまんなアリサ、オレはゲームをやりたいから居留守を使わせてもらうぜ!我ながら最低だと思うけどごめんアリサ。君の怒っている理由はわからないけど!

 

≪ピーンポーン≫

 

(フッ無駄無駄無駄無駄!!)

 

≪ピーンポーン≫

 

(早く帰ってください!!)

 

≪ピーンポーン≫

 

(・・・・・)

 

「ねえ、カイ。将来私のもとであなたをこき使うように手回ししてもいいのよ?」

 

怖っ!!怖いよこの子!!頼むから早く帰ってぇぇ!!・・・就職先という点ではいいかもしれないけども!!

 

≪ガチャ≫

 

(・・・ガチャ?)

 

玄関が空いた音がしてその方向を振り向く。そこにいたのは・・・

 

「覚悟はできてる?」

 

「イエス、マム」

 

修羅だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで車に乗せられたオレ。一体どこに連れていかれるというのか。

 

「どこに行くのか教えてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「旅館よ」

 

ほほ~旅館とな。これはこれはリラックスできそうな所で・・・って

 

「旅館!?オレ何も支度してないんだけど!?・・・っていうかなんでオレの家の鍵持っていたのアリサ。怖いんだけど」

 

目的地などの疑問は解消したが、こればかりはさっきから考え続けているが一向に答えがわからない。

 

「ああ、カイの両親がねどうせゲームばかりするでしょうからよろしくお願いしますって鍵渡してくれたのよ」

 

「・・・・・」

 

思いっきり身内のせいだったんですけど!?何やってんの父さん、母さん!!

 

「まあまあカイ君、ゲームばかりするのはよくないと思うよ」

 

「そうだよカイ君、私はカイ君と一緒に行けて嬉しいよ」

 

「うっ」

 

そう言われてしまうと何も言い返せない。なのはたちは完全な善意でオレを誘ってくれたのだから。確かに士郎さんにもこの前言われた通り外に出ることは大切だし・・・。

 

「そうよカイ、こんな美少女たちと一緒に出掛けることができること自体ありがたいと思いなさい」

 

確かになのはたちは学校でも人気があるから、男子たちにばれたらどんな目に合うか。嫉妬という名の炎で燃やされてしまうかもしれないな。・・・ばれないことを祈ろう。特にアリサはからかい目的で「温泉旅行楽しかったわね~、ねえカイ?」などというに違いない。今のうちに機嫌を取らなければ。

 

「こんな私めをアリサさんたちのような美少女たちとの旅行に連れて行っていただいてありがとうございます」

 

「「「っ!!」」」

 

なんでそこで顔を赤くするのかね君たちは。特にアリサ、君はさっき自分で言っていたじゃないか。

 

「ははは、カイ君は女性を喜ばせる天才かもしれないな。だけど軽い男にはなっちゃ駄目だぞ?」

 

「な、なりませんよ!!」

 

士郎さんはオレが軽い男になるように見えるのだろうか。オレがチャラチャラしたような恰好をしても後ろ指をさされて笑いものにされる自信がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして温泉旅館に着いた。まずは旅館に荷物を置いて散歩でもしてくるか。

 

「士郎さん、オレはどの部屋に荷物を置けばいいですか?」

 

「ああ、カイ君は・・・」

 

「私たちと同じ部屋よ!」

 

「なんで!?」

 

いつの間にかアリサたちと同じ部屋に泊まることが決定していたらしい。それだけは何かまずいような気がするんですが。

 

「いや、オレは別の部屋でいいですよ。士郎さんの部屋とかで」

 

「子供同士同じ部屋で楽しく過ごせばいいじゃないか」

 

「それはそうなんですが・・・」

 

「ほら早く来る!」

 

「ぐえっ」

 

アリサがオレの襟をつかんで引きずっていく。ちょ、ちょっと待ってアリサさん首がしまってる!!しまってるから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ君はそこに荷物置いてね」

 

「うっす」

 

「さて荷物も置いたことだし」

 

「じゃあ、オレ散歩してくるから」

 

「お風呂に行くわよ!!」≪ガシッ≫

 

「いや、アリサさん?今から私は散歩に行こうとしてましてですね?」

 

「何言ってんのよ、折角旅館に来たんだからお風呂に行くに決まってるじゃない」

 

「アリサたちで入ってくればいいじゃん」≪ズルズル≫

 

「アンタも行くの!!」

 

「そうだよカイ君!散歩なら後でにしようよ」

 

「一緒に背中流しっこしようね」

 

ちょっと待てい!!なんか聞き捨てならない言葉が聞こえて来たんだけど。

 

「すずかさん?それはなのはたちに言ってるんですよね?」≪ズルズル≫

 

「え?もちろんカイ君も一緒だよ?仲間外れなんてかわいそうだもん」

 

「それアウト!オレは男湯に入るから!すずかたちとは入らないから!!」≪ズルズル≫

 

「大丈夫だよカイ君。さっきフロントの人に聞いて来たけど小学3年生までなら一緒に入ってもいいんだって」

 

違うそうじゃない。なのは!君は一体何を聞いているんだ。おかげで逃げ道が無くなってしまったではないか。

 

「そうかもしれないけど!ほら、オレの精神年齢高めだからさ!小学3年生の域を超えちゃってるから!!」≪ズルズル≫

 

「何言ってんのよアンタが一番精神年齢低いじゃない」

 

「・・・・・」

 

くそっ!何も言い返せない。

 

「さあ、着いたわよ」

 

やっと引きずられるのが終わったと思ったら女湯の暖簾が見える位置まで来ていた。さっきからずっと抵抗していたのだがびくともしなかった。なんでオレは女の子に負けてしまうのか。・・・ひょっとしてアリサは怪力女だったのか!?

 

「いでででででで!!」

 

「なんか失礼なこと考えたでしょ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

なんで考えていたことが分かったのか。さてはこいつ魔法使いか?

 

「あっなのはだ。なのはたちも今からお風呂に入るの?」

 

「お姉ちゃん!うんそうだよ」

 

ここで美由希さんたちがやってきた。良かった・・・救世主がやってきたぞ!!

 

「じゃあ、一緒に入ろっか。ここの温泉は美容にいいらしいからね」

 

「そうなんだ~楽しみだな」

 

・・・あれ?なんかオレいない子として会話が進んでいる気がする。

 

「いつまでもここにいるわけにもいかないし中に入ろう」

 

「うん!」

 

「ちょっと待って!!美由希さん、オレがここにいるという状況に疑問を抱きませんか!?」

 

「え?カイ君も一緒に入るってことじゃないの?」

 

この人も駄目だった!!これは最後の望みである忍さんに・・・

 

「オレ男湯に入りますよ、忍さんも男が一緒にいるのは嫌でしょうし!」

 

「私は別に気にしないわよ?カイ君面白い子だし入浴の時間が楽しくなりそうね」

 

・・・終わった。

 

「オレ、オトコユ、ハイリタイ」

 

「駄目」

 

「頼みますアリサさん、オレの襟をつかんでいるその手を離してはくれませんか?」

 

「あ~なんか口が滑って月曜日に教室でカイと一緒に温泉旅行に行ったって言っちゃいそうな気分だわ~」

 

「・・・・・」

 

こ・・・こいつ!!そんなこと言われたらオレがクラスの皆にフルボッコにされてしまうではないか!!ここでその手を使ってくるなんて・・・卑怯な!!

 

「さ、行くわよ」

 

「・・・・・」

 

アリサに襟を引かれ女湯の暖簾をくぐるオレ。シャイボーイなオレが女湯で平気な訳がなく、顔を真っ赤にしてのぼせてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう~のぼせた」

 

「大丈夫?カイ君」

 

「いや、大丈夫じゃない」

 

「アンタって意外にシャイだったのね」

 

「・・・うん」

 

女湯でのぼせてしまったオレは今、なのはに肩を貸してもらいながら歩いている。だから、男湯に入ると言ったのに!!オレには刺激が強すぎるんだけど!

 

「カイ君、部屋で休む?」

 

「そうする・・・」

 

男であるオレが女の子に肩を貸してもらっているなんてなんか情けない。しかし1人だとふらついて歩けないから肩を借りざるを得ないというのが現状である。

 

「はあ~い、おチビちゃんたち」

 

オレがうなだれながら歩いていると前からオレンジ色の髪の毛のお姉さんが歩いてきた。外国の人かな?

 

「こんにちは、日本語お上手ですね」

 

話しかけられたので適当に返事をする。

 

「ありがとう。こっちのことは詳しいんだよ」

 

「それで、私たちになんか用ですか?」

 

なのはがお姉さんに話しかける。するとお姉さんの目つきが鋭くなったような気がした。

 

「ふ~ん、君がうちの子をあれしてくれちゃった子か。そんなにやり手には見えないけどね」

 

「え?」

 

お姉さんは何故かなのはのことをずっと見ている。なのはお前・・・。

 

「なのは・・・お前いつから選手になったんだ」

 

「え!?何でそうなったの!?私何もしてないよ!!」

 

どうやら違ったようだ。槍手じゃないらしい(すっとぼけ)。

 

「ちょっと!なのはになんか用ですか!?・・・なのは知り合い?」

 

「ううん、知らないと思うけど・・・」

 

アリサがなのはをかばうようにして前に出る。アリサ、今凄い格好いいよ!!普通はオレがやることなんだろうけども。・・・今はのぼせているので勘弁してください。

 

「っぷ、あはははははは。いや~ごめんごめん人違いだったようだね。知り合いによく似ていてね」

 

どうやら人違いだったらしい。なのはもほっとしているようだ。知らない人からいきなり睨まれたら確かに緊張しちゃうよね。

 

「じゃあね~」

 

おいどうしたなのは。コナン君が閃いたような顔して。あれ?ユーノも同じような顔してないか?似た者同士ってやつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋へと送ってもらった後、なのはたちは卓球をしに行ってしまった。オレはすることもないので散歩に出かけた。

食事も終わって後は寝るだけとなり、旅館の人に敷いてもらった布団の上で会話している。

 

「カイって格闘ゲームでなのはと対戦したことあるの?他のゲームは私たちもやっているから知ってるけど」

 

「あるよ。なのは凄く強くて今のところ負け星が勝ち星を上回っている状況。しかもクイズゲームだと勝った試しがない」

 

「にゃはは」

 

「なのはちゃんもゲーム得意だもんね」

 

「へ~そうなんだ。じゃあ今度私ともクイズゲームで対戦しましょうよ。今までカイとやったことないジャンルだから楽しみだわ」

 

「絶対ボロ負けだからソレ!!なのはより成績がいいアリサとやったらオレ泣いちゃうレベルまで追い詰められちゃうから!!」

 

すでに負けが確定している未来が見えるのが辛い。

 

「ふわあああ」

 

すずかがあくびをしている。眠そうだな。

 

「じゃあ、今日は寝ましょうか。明日もお風呂に入って散歩にでも行きましょう」

 

「絶対に男湯に入るからね!!」

 

「それはどうかしらね・・・じゃ、おやすみなさーい」

 

こ、こやつまたオレを女湯に入れるつもりか!!なんてドSなやつなんだ!!明日は絶対に逃げないと!!




読んでいただきありがとうございます。


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温泉旅行2

UA70000突破しました。ありがとうございます!



夜、静かな部屋の中で動いている一つの影。

もぞもぞと動き、暗闇の中その怪しい影の目が開かれるッ!!

その怪しい影の正体とは一体・・・!?

 

「眠れないんだが」

 

我らが主人公羽島カイであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で寝れないんだ?今日は昼寝もしてないのに・・・」

 

暗い部屋の中にいるオレの耳には規則正しい寝息が聞こえてくる。眠れない原因を考えても特に浮かばない。こういう時には・・・

 

アリサ(猛獣)が一匹・・・」

 

目を閉じて猛獣の数でも数え・・・

 

「ガフッ!?」≪ズムッ≫

 

「う、う・・・ん」

 

ようとした時に、鳩尾に誰かの足が入った。というかこの方向に寝てるのアリサじゃん!!この子寝ている時でも悪意に反応すんの!?ある意味凄くね。

 

「・・・今のでむしろ目がさえてしまった」

 

アリサの攻撃(クリーンヒット)により目がさえてしまったオレは、することもないので温泉に入ることにした。寝ているアリサたちを起こさないように、着替えやタオルを持ち(親が旅行に行く前に、アリサたちに温泉旅行のことについて聞いていて用意し、アリサに渡していた)部屋を出ていった。

 

「温泉に入れば眠くなるよね」

 

オレは今静かな廊下を一人、歩いている。しばらく歩いていると、自動販売機が見えたため、飲み物を購入することにする。

 

≪いらっしゃいませ!!冷たいお飲み物はいかがですか?≫

 

「うわっ!?」

 

飲み物を買おうとした瞬間に、いきなり自動販売機が大音量で話し始めたので驚いてお金を落としてしまった。暗闇で話しかけんな!!

 

「オレの五百円玉!!」

 

落としたお金はそのまま自動販売機の下に吸い込まれていった。思わず膝から崩れ落ちる。

 

「・・・・・」

 

オレ、最近ついてなくね?何だか悲しくなってきたよ。

 

≪いらっしゃいませ!!冷たいお飲み物はいかがですか?≫

 

「買わねーよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自動販売機に驚かされお金を失うというハプニングがあったものの、男湯と書かれている暖簾の前にたどり着くことができた。オレの五百円は犠牲となったのだ・・・。手を伸ばしても届かないところまで転がっていくとか・・・。

 

「気を取り直して・・・昼間はよく覚えてないからゆっくり入ろう」

 

オレは暖簾をくぐり、服を脱いでタオルを持ち、引き戸を開けたのだった。

 

「ん?」

 

引き戸を開けた瞬間に視界に入ったのは、金髪の人が湯船に浸かっているところだった。湯煙でよく見えないけど、こんな真夜中に気が合うじゃないか。

 

「え?」

 

「はい?」

 

引き戸の音に反応したのかこちらを向いた金髪の旅館客。オレは見覚えのある顔に一瞬硬直し、タオルを腰に巻いたまま脱衣所へ走っていった。

 

「オレ女湯入ってたのか!?暖簾を確認しないと!!」

 

服も着ずに急いで暖簾を確認する。そこにはやはり男湯と書かれた暖簾が。

 

「・・・・・」

 

オレは無言のままもう一度引き戸を開ける。そこには、こちらを向いて硬直している金髪の-----フェイトがいた。オレは真顔でこう言うしかなかった。

 

「フェイトお前・・・男湯で何してんの!?」

 

「・・・え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュエルシードを求めて、またあの白い魔導師と戦った。アルフがあの子の使い魔とけん制し合っていた中、私はあの子に勝利し、ジュエルシードを無事手に入れることができた。あの子のデバイスから受け取ったジュエルシードの色が少し違うことに違和感を覚えつつも、アルフに勧めらるがままこの温泉旅館の温泉に浸かりに来た。アルフが絶賛していただけあってとても気持ちがよく、今までの疲れのせいか湯船に浸かったまま眠ってしまった。

引き戸の開く音で目が覚めて、寝ぼけた状態で引き戸の方に振り返るとそこにはカイが立っていた。カイはひどく驚いた様子でそのまま脱衣所の方に走って行ってしまった。思わず硬直してしまい混乱していると、カイが戻ってきて開口一番こういった。

 

「フェイトお前・・・男湯で何してんの!?」

 

「・・・え!?」

 

眠気が吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか温泉が気持ちよくて寝ちゃったのか」

 

「う、うん」

 

どうしようか混乱していると、くしゃみをしてしまいフェイトに湯船に浸かるよう声をかけられた。いくら春だとしても、夜になると普通に寒い。フェイトに勧められるがまま一緒に入ることになった。少しマナーは悪いがお互いにタオルを巻いてるからセーフ!!セーフったらセーフ。

 

「良かった・・・オレはてっきりフェイトが痴女になったかと・・・」

 

「違うよ!?」

 

反応がいちいち面白いな。

 

「まあそれは置いといて、フェイトもこの旅館に泊まってたんだな」

 

「置いとかれた・・・。泊ってるんじゃなくて温泉だけ入りに来たの」

 

「それでこんな遠くまで来たとはやるな」

 

「ジュエルシードの反応がこの近くにあって・・・」

 

ジュエルシードって、この前フェイトに渡した石だよな?・・・そう言えばフェイトは天然さんだった。夢を壊さないためにも話を合わせないと。

 

「そ、そうなんだ。フェイトも大変だね」

 

「うん・・・最近はジュエルシードを奪い合う魔導師も出てきちゃったし」

 

敵!?・・・何か物語が壮絶になってきたぞ。

 

「今日もその子と戦ってきたんだ。カイと同じぐらいの魔力量を持っているんだ」

 

「・・・なるほど」

 

オレも魔導師って設定にしたんだった。フェイトの中ではオレの魔力量はどれぐらいになっているのか。出来れば強めに設定しておいてくれると嬉しい。

その後は上手く話を合わせ、フェイトと別れた。温泉効果で血行が良くなったのか知らないけど、部屋に戻るとすぐに寝ることができた。かいみんでした まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ!起きなさーい!」

 

「ぐぺっ!?」

 

心地よい眠りについていたオレを起こしたのは、アリサのダイビングだった。油断していたオレはもろにアリサの攻撃を食らう。めっちゃ痛いんだけど!

 

「おはよう、カイ!」

 

「何でお前は人にダイブしといてそんなに朗らかな笑顔を見せることができるんだ」

 

「だってこんなに気持ちの良い朝よ?しかもアンタの起きた時の声が面白くて・・・ププッ!」

 

途中で耐えきれなくなったのか噴き出すアリサ。こいつには一度オレとじっくり話し合う必要があるようだな!

 

「二度とこんな真似ができないように、貴様とオレの上下関係をはっきりさせておこうではないか!!」

 

「何言ってんのよアンタ。友達なんだから上下関係なんてあるわけないじゃない」

 

「・・・・・」

 

え?アリサってこんなにいい子だったっけ?なんか目から汗が・・・。いや、ちょっと待て。

 

「その友達を起こすためにダイブする奴がどこにいるんですかね」

 

「だってアンタを揶揄うと面白いもの」

 

こ・・・こいつ!?

 

「よろしい、ならば決闘だ」

 

「いいわよ、じゃあオセロね」

 

「え?ちょ、ちょっと待ってくださいよ。オレ、オセロ弱いの知ってるでしょ!?」

 

「男のくせにウジウジ言わないの!そうね、ただやるだけじゃ面白くないから負けた方が1つ勝った方のいうことを言うってのはどうかしら?」

 

「何でそんなに話が進んでいるんだ。そんなの無しに決まってるだろ!?」

 

「まさか自信ないのかしら?情けないわね~」

 

「いいだろう、かかってこい」

 

「カイ君って相変わらずアリサちゃんに乗せられやすいよね」

 

「確かに・・・」

 

いつの間にか起きていたなのはとすずかの2人がそんなことを言っているとは知らずに、アリサとの勝負に臨んだ。ついにこの瞬間オレの実力が発揮されるッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレのターン!!黒の石を召喚!盤上の角にセット!!」

 

「はいはい、そういうのいいから・・・これで私の勝ちね」

 

「な・・・何で勝てないんだ」

 

「ただアンタが弱すぎるのよ」

 

あれから数分後、旅館のフロントからオセロを借りてきた2人早速勝負を始めた。まあ、結果は言うまでもないだろう。カイの惨敗である。カイの実力(笑)が発揮された。

 

「・・・まあ、これくらいにしておいてやるか」

 

「何で負けたアンタがそんなに偉そうなのよ」

 

「カイ君負けちゃったの?」

 

「うん、そうみたい」

 

「そこの観戦者2名!!わざわざ口に出して言うんじゃない!!なんか悲しくなってくるだろ!!」

 

「さて、カイ?負けたから・・・」

 

「そうだオレ、そろそろ日課のランニング行かなきゃ」

 

「嘘おっしゃい、アンタ完全なるインドア派じゃない」

 

「くっ、ばれたか・・・」

 

「カイ君は嘘が分かりやすいの」

 

「あはは・・・カイ君らしいね」

 

アリサの言葉を遮って咄嗟に嘘をついて脱出しようとしたカイであったが、すぐに見破られる。

 

「よく聞くんだアリサ」

 

「何よ?」

 

「人間は生きていく上で他人と関わって生きていく。その中で嘘をつかなければいけない状況だってあるはずなんだ・・・」

 

「ふ~ん・・・それで?」

 

「つまりだな・・・嘘が正当化されることが・・・あってほしいな」

 

「ただのアンタの願望じゃない!?ほらさっさと負けたことを認めなさい」

 

「・・・それで命令とは一体何でしょうかアリサ様?できれば簡単なものでお願いします」

 

「そうねえ・・・取りあえず保留ね」

 

「保留とか・・・なんか一番怖いんだけど」

 

「お楽しみってやつね・・・まだ時間あるし、4人でお土産屋さんにでも行きましょうか」

 

「「うん!」」

 

「良いだろう、了解した(神龍風)」

 

「早く来なさい!!置いてくわよ」

 

「ちょ、待てよ!!・・・あ、いや本当に待って!?」

 

ふざけていたら置いていかれました。君たち足速すぎやしませんかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからしばらく経って今は男湯。帰る前に、もう一度温泉に入ろうということになったのだ。オレは無事アリサたちから逃げ切ることに成功し、男湯に入っているという訳だ。

ユーノ?あいつは生贄になったんだ。アリサの手に握られながら、こっちに縋るような視線を向けてきたがオレはそれを振り切って走った。すまないユーノ!!オレに力があれば・・・君を助けることが出来たんだ。・・・いや、やっぱり無理じゃね?オレ、アリサたちに勝てるビジョンが浮かばないわ。

 

「という訳で、カイ剣道を始めてみないか?」

 

「うむ、きっとカイ君のためにもなるだろう」

 

「・・・・・え?」

 

「オレの家の道場で父さんが教えてくれるぞ」

 

「恭也と美由希にとっても新たなライバルがいれば、モチベーション増加になると思うんだ」

 

「・・・・・」

 

いや、どういう訳だ?回想にふけっていたらいつの間にか剣道を進められていたでござる。士郎さんと恭也さんの期待するような視線が眩しい。だけど、剣道を始めたらゲームの時間が少なくなるし、暇な時間はごろごろしていたい。2人には悪いけど、断らせてもらおう。

 

「お2人には申し訳ないんですけど・・・」

 

「あ!安心してくれ!カイのご両親には承諾を貰っているぞ」

 

「・・・剣道やってみたいと思ってたんですよね!!(血涙)」

 

「そうかそうか!これからよろしくな」

 

「また後で連絡するよ」

 

すでに外堀が埋められてたんだが。父さん、母さん・・・息子は人外になる気はありません。人外の彼らの練習をオレが耐えることができるだろうか、いや耐えられない(反語)。




フェイトさんが寝ていた時に男湯と女湯が変更されていた模様。

読んでいただきありがとうございます。
感想や評価、誤字報告などよろしくお願いします。


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運命の出会い

関西弁難しい・・・。


死亡フラグが立ってしまった温泉旅行は終わり、迎えた平日の放課後。オレは今図書館に向かっていた。今日学校で出された宿題を終わらせるためである。その宿題の内容は、海鳴市について調べるというものだ。

そんなもんわざわざ図書館で調べずにパソコンで調べれば良いのでは・・・と思うだろう?オレも最初は家にあるパソコンで調べて終わりにしようとしていたんだけど、急に家のパソコンが壊れてしまったのだ。オレに対するストライキである。滅多に働かないくせに(家族はパソコンをあまり使わない)まだ休息を求めているのだろうか。期限は3日後だけど、今日は特にすることもないので図書館で早めに終わらせてしまおうという訳だ。面倒くさいことは早めに終わらせるべし。

 

「あ~涼しい」

 

だんだん熱くなってきた外とは違い、図書館の中はオレにとって適度な温度になっていた。本を借りて早めに帰ろう。

 

「ん?」

 

この図書館はとても広く、様々な種類の本が置かれている。案内を見ながらオレが海鳴市についての本を探していると、車いすに乗った少女が必死に手を伸ばしているのが見えた。

 

「あと、もう少しや。大丈夫、私ならいける。私ならいける・・・はず」

 

・・・何かぶつぶつ言ってて心配になった。どうやら本を取ろうとしているらしい。よしここは、颯爽と現れて少女を助け、スピードワゴンさんばりのクールな退場を披露することにしよう。一度やってみたかったんだ、「名乗るほどの者じゃありません(キリッ」って言って去っていくの。

そうと決まればいざ実行である。オレはその子が取ろうとしているであろう本を目指して手を伸ばし・・・誰かの手に重なった。

 

「「あっ」」

 

そして2人の声が重なる。

こ、これはッ!!生きているうちに体験したい少女漫画のシチュエーションランキング5位(当社調べ)の『あっ、手が触れあっちゃった』じゃないかッ!!ついにオレにも運命の出会いが来たというのか。・・・何か手がゴツゴツしてるけど。・・・これが少女の手の感覚だというのかッ!!・・・節々がはっきりわかって、オレの手よりも大きいけど!!何か話に聞いていた柔らかさとかはないけど!!

どう考えても少女の手ではないという大きな問題を頭の片隅に追いやって、オレは運命の出会いをした相手の方へと首を動かす。何かスーツが目に映ったけど気にしない。これがオレの第一歩なんだから!

 

「・・・すまない。この本は君が読んでくれ。私は別の本を読もう」

 

「・・・・・」

 

知 っ て た 。

最初からわかってたんだ。うん、わかってた。こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかったんだッ!!今頃は、『これが・・・私たちの出会いだった(トゥンク)』ってなるはずだったんだよ!!世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだよ!(3回目)

 

「では、私はこれで」

 

「・・・・・」

 

オレと運命の出会い(笑)を果たしたスーツを着たおじさんは、オレに本を渡した後そう言って去っていった。オレはおじさんに渡された本を、固まったままの少女に手渡す。

 

「・・・・・コレ」

 

「あ・・・うん、おおきに」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

オレは無言のまま走り去った。「図書館の中は走らないように!」という司書さんの声をバックにオレは図書館から逃走した。目からこぼれ落ちていく汗が夕日に照らされて光っていた。

そして家について気が付いた。宿題をやるための本を借りていないことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は家で今日あったことを思い出していた。

足が悪くなってから学校に行けなくなり、家ですることが勉強や読書くらいしかなくなってしまった。だから、私は図書館に来て本を借りるのが日課みたいなものになっていた。

私は、今日も家で読むための本を探すために図書館に行っていた。図書館で本を探して数分後に、私が読みたいと思う本を見つけることはできた。だけど、その本は私の手がギリギリ届くか届かないぐらいの場所にあった。私は試しに手を伸ばしてみたけど、全然本に触れることができなかった。

 

『あと、もう少しや。大丈夫、私ならいける。私ならいける・・・はず』

 

暗示みたいなものを自分にかけて手を伸ばしてみても届かない。諦めて司書さんを呼ぼうとした時に彼は現れた。

 

「あれはおもろかったなあ」

 

いつの間にか目の前でおじさんと少女漫画みたいな状況を引き起こしていて、私は思わず固まってしまった。彼も首を横に動かした後、固まっていた。そして彼は真顔で、私に本を差し出して去ってしまった。

 

「ちゃんとお礼言えたんやろか・・・」

 

私自身あの時何を話したか覚えていない。私と彼が話したのは一瞬だったと思う。それは、互いにすぐ忘れてしまうような会話だったのだろう。だけど私の中でとても印象深く残っているあの状況は忘れることはないだろう。

 

「ぷっ・・・あははははは!!・・・思い出したら笑えてきてしもた。まさかあんなことになるなんて思わんかったわ~」

 

もし彼にまた会う機会があったのなら、ちゃんとお礼を言って話をしてみたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってしまった・・・」

 

「にゃ~ん?」

 

「ああ、タマ(仮称)。オレを慰めてくれるのか?」

 

「にゃ~」

 

オレは自宅に着いた後、すぐに自分の部屋に駆け込んで悶えていた。格好つけようとして失敗するわ、本は借り忘れるわで今日は良いことがなかった。しかし、タマ(仮称)はそんなオレの所まで来て慰めてくれようとしているらしい。

 

「タ・・・タマ(仮称)!!」

 

オレは感動してタマ(仮称)を抱きかかえようとした。

 

「にゃ!!」

 

しかしタマ(仮称)はオレの腕から抜け出して部屋の隅に逃げてしまった。一体どうしたのだろうか。

数秒後にタマ(仮称)はオレのもとへと姿を現した。口に金属ボウルを咥えて。

 

「にゃ!」

 

前足で口で咥えてきた金属ボウルを指す。

 

「あ、餌ね」

 

どうやらこの子はオレを慰めてくれるつもりではなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近なのはちゃんとアリサちゃんの雰囲気がギスギスしている気がする。

温泉旅行に行った時からなのはちゃんは何か悩んでいるようだった。アリサちゃんが直接聞いても、何でもないという返事が返ってくるだけだった。このままだとなのはちゃんとアリサちゃんの仲がこじれてしまうと思った私は、カイ君に頼んでそれとなく聞いてみることにした。

 

「えっと、なのはちゃん?」

 

「すずかちゃん、どうしたの?」

 

今は昼休み。アリサちゃんには少し外してもらって、私とカイ君はなのはちゃんに質問することにした。まずはカイ君が遠くから攻めていく。

 

「今日な、オレ近所のおじさんに朝の挨拶をしたんだよ」

 

「え?う、うん」

 

遠い!!遠すぎるよカイ君!?なのはちゃんも戸惑ってるよ!!

 

「それでな、そのおじさんがな何か困ってることはないかって聞いてきたんだ」

 

「そ、そうなんだ」

 

今度は直球過ぎるよ!!何でいきなり核心を突くような話になってるの!?アリサちゃんとあまり変わらないよ!?しかも何で脈絡もなく悩み相談してるの?

 

「そしてオレの悩みを聞いてもらったらスッキリしたんだ」

 

「うん、それでどうなったの?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・終わりだ」

 

「え?」

 

終わっちゃったよ!!カイ君それは最早質問すらしてないよ!!ただ知らないおじさんに悩みを聞いてもらった話になっちゃってるよ!!

 

「そこでオレは思ったんだ。1人で抱え込むだけじゃなく誰かに話してみることが大切だと・・・」

 

「カイ君・・・」

 

「やっぱな、1人で抱え込んだままだと辛いんだ。しかも視野が狭くなって周りのことが見えなくなってしまう」

 

「・・・・・」

 

あれ、何かいい感じになってる。カイ君、まさかこの雰囲気を作るためにあの話をしたのかな?そう考えると、カイ君凄いよ!

 

「例えその内容が他の人でも解決できないことだとしても、話すだけで何かが変わることだってあるんだ」

 

「・・・そうなの?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「そうだよ、なのはちゃん」

 

「カイ君、すずかちゃん・・・」

 

私もなのはちゃんの目をしっかり見て言葉を紡ぐ。これでなのはちゃんも悩みを言いやすくなったはず・・・。『カイ君、頼んだよ』と、私はそれをアイコンタクトで伝える。するとカイ君から『任せろ』という心強い返事が返ってきた。

 

「だから悩みができた時は1人で抱え込まずに、誰か信頼できる人に悩みを相談すれば良いんだ・・・」

 

「・・・・・」

 

カイ君!!

私は思わず立ち上がって拍手しそうになった。最初は少し心配だったけど、今は話すのに完璧な雰囲気になっている。

そしてなのはちゃんは口を開いて・・・

 

「カイ君・・・良かったね」

 

にっこり笑いながらそう述べた。

 

「違う、そうじゃない」

 

「え?」

 

ちょうどそこで昼休み終了を告げるチャイムの音が鳴ってしまった。




読んでいただきありがとうございます。


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再会

UA80000とお気に入り登録者数1200人を突破しました。
ありがとうございます!


昼休みになのはの優しさによる勘違いにより撃沈していたオレだったが、体育の時間の後に何故か仲良く話している3人を発見した。いつの間にか仲直りしてるように見えるんだけど。ひょっとしてオレ必要なかったパターンなのか?

とりあえず仲直りしたのか気になったので聞いてみることにした。

 

「あ~今日も仲良しだね!(どうやって仲直りしたの?)」

 

「そんなの当たり前じゃない。ね?なのは、すずか?」

 

「「うん!」」

 

あらいい笑顔。遠回しに聞いたつもりだったのだが、普通に返されてしまった。体育の時間に何があったのか。

 

「えっと・・・仲直りできたんだな」

 

「うん、カイ君のおかげだよ!」

 

諦めて直接聞いたところ、すずかからオレのおかげだと言われた。どうやら体育の時間に仲直りしたようだ。・・・何故?昼休みは普通に失敗したし・・・。まさか、オレが体育の時のサッカーで顔面ブロックで鼻血が出たことをネタに仲直りしたのか!?でもあの時は3人とも別のコートで試合中だったから見られてないはず・・・見られてないよね?あれはオレの数ある中の黒歴史行きだ。

 

「カイ君のおかげで2人に話してみようって思えたんだ。詳しいことは言えないけど・・・」

 

「その話を聞いて、私たちはなのはのことを信じて待つってことにしたの」

 

「だからカイ君のおかげだよ」

 

勘違いで悶えていたオレの耳にそんな言葉が聞こえてくる。お、おう・・・昼休みのは効果があったんだな。感謝してるのはわかったから3人とも満面の笑みでこっちを見るのはやめてくれ、照れるじゃないか。

 

「それは良かった。今は何の話してたんだ?すごい楽しそうだったけど」

 

ずっとこっちを見てくるので話題を変えることにした。ちょっと露骨すぎたか?

 

「カイの顔面ブロックの迫力が凄かったって話してたの」

 

「ごめんね、カイ君。なのはもあの吹っ飛び方は笑っちゃったの」

 

「ふべらって言ってたもんね」

 

「・・・・・」

 

この子たちマジでオレの顔面ブロックのことネタにしてたよ。見てたんかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはがボランティアでしばらく学校を休むことがわかったので、その日の放課後はアリサの家で壮行会みたいなものをやった。なのはは少し不安そうにしてたが、会が終わるころには笑顔で「頑張ってくるの!」と言っていたから良かった。大成功である。

今はその帰り道。オレとなのはは2人で歩いている。

 

「今日は楽しかったの。ありがとうカイ君」

 

「いや、あれを企画したのはアリサたちだし、オレは大したことしてないよ。しいて言うなら、ゲームに負けた罰ゲームで女装をしたことくらいか」

 

「女装することを何でもないことのように言うのは凄いの・・・」

 

この前もう女装はしない!って誓ったはずなのにすぐその誓いは破られました。しかもアリサたちノリノリでメイクまでしやがって・・・。その後3人ともブツブツ「女として・・・」とか「かわいい・・・」とか言ってたけど何か怖くなったから考えるのをやめた。最近色々なことがありすぎて(人外フラグ設立とかおじさんとの運命の出会いとか)、オレの感覚がくるっているようだ。

 

「ま、まあそれは置いといてさ。ボランティア頑張れよ、なのは」

 

「うん、頑張る。私、自分でやりたいって思ったんだ」

 

「そっか。やりたいことが見つからないって言ってたから、見つかって良かったな」

 

「ありがとう」

 

それきり会話が途切れる。でもこの時間は別に気まずいという訳ではない。

しばらく歩いてなのはの家が見えてきたところで、なのはが何かを思い出したかのように話し始めた。

 

「あ、そう言えば・・・」

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、お父さんとお兄ちゃんが最近楽しそうだな~と思って。この前も2人で何か書きながら、これであいつも一流の剣士に・・・とか言ってたの。お父さんたちが楽しそうで、私も嬉しいの」

 

「・・・・・」

 

聞きたくなかった。オレ、死ぬんじゃないか?

 

「なのは・・・オレがもし死んだら骨は拾ってくれ・・・」

 

「え!?カイ君いきなりどうしたの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に着いたオレは、母さんから買い物を頼まれたため特売をやっているスーパーに向かうことになった。スーパーに着いたオレは、入り口に貼られている大型チラシを眺める。なんと今日はたい焼きとトマトが大特価だそうだ。まあ、頼まれたのはニンジンと玉ねぎとジャガイモと肉なんですけどね。今日の夕食のメニューはカレーのようだ。

 

「・・・たい焼きも買うか」

 

母さんに何か好きな物1つ買ってきていいと言われたので、ついでにたい焼きを買うことにした。たい焼き売り場にいくと色々な味のたい焼きが売られているのが見えた。どうするか?ここは無難にこしあんにしとくか。味を決めて、オレと両親の分のたい焼きを3つ手に取り、かごに入れた瞬間。どこからか声が聞こえてきた。

 

「あ、あの時の子や!」

 

どうやらここで運命の再開を果たした人がいるらしい。たい焼き売り場だぞ、ココ。どんな確率だよ、凄いな。今日買うものは全てかごの中に入れたので、その声をバックにレジに向かうことにする。

 

「あれ?聞こえてないんか?」

 

今日の夕食は楽しみだ。何て言ったってカレーだぞ?老若男女問わず人気のあるものだ。当然オレもカレーが好きなのだ。

 

「ちょ、待って」

 

最近やっと中辛に慣れてきたんだ。最初は甘口以外邪道だと思っていたが、それは早計だった。オレの舌がお子ちゃまだっただけで、慣れてくると中辛も美味しいのだ。

 

「何で無視するん?」

 

いつかは辛口にも挑戦したいものだ。カレーは奥が深い(9歳の意見)。

 

「こうなったら・・・」

 

というかさっきからオレの後方からずっと声が聞こえてくるんだが。まだ運命の再開を果たしてないのか?早くラブコメってくださいよ。オレは帰るんで。

 

「無視するなやー!!」

 

「うげっ!?」

 

後頭部から衝撃を感じて思わず変な声が出てしまった。最近オレ変な声出しすぎじゃね?自分で自分が心配になるよ。

それはともかくオレは後方にいる人物を確認するために振り向く。どうやらオレが運命の再開を果たした人物らしい。全く心当たりがないが。

オレにチョップをした人物の姿を目に収めて、オレは瞬きをした。車いすに乗った少女がいた。目の前の少女は嬉しそうに微笑んでいる。目をこすってもう一度確認してみる。その少女は変わらずに微笑んだままだった。そこでオレも微笑み口を開く。

 

「人違いじゃないですか?」

 

「何でや!?」

 

鋭いツッコミをいただいた。いや、マジで誰だかわからん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家で今日の夕食を作ろうと思った私は、冷蔵庫に食材が少ししかないのを見て近所のスーパーに買い物に来ていた。トマトとたい焼きという組み合わせを大特価にした理由に疑問を持ったが、久しぶりにたい焼きを食べてみようと思い、夕食の食材をかごに入れた後、たい焼き売り場に行くことにした。

 

「あれ?」

 

するとそこに先日図書館で会った男の子がいるのに気が付いた。だから、私はその男の子に話しかけることにした。

 

「あ、あの時の子や!」

 

少しわざとらしかっただろうか。でもこれでこちらに気が付いて・・・くれなかった。男の子はたい焼きをかごに入れて移動しようとしていた。

 

「あれ?聞こえてないんか?」

 

もしかしたら声が小さくて聞こえなかったかもしれないと思い、確認の意味も込めてもう一度話しかける。

 

「・・・・・」

 

しかし男の子はそのまま歩き続ける。何でや!?

 

「ちょ、待って」

 

慌てて静止の声をかけるが止まってくれない。わざと無視してるんやない?

 

「何で無視するん?」

 

再び声をかけるがその足が止まることはない。ぐぬぬ・・・こいつ。

 

「こうなったら・・・」

 

私は急いで男の子の背後に行き手刀を構える。そして・・・

 

「無視するなやー!!」

 

「うげっ!?」

 

全力のチョップを食らわせた。何か変な声が聞こえたけど気にしない。こいつが無視するのがいけないんや。

男の子はやっとこっちを向いてくれた。それが嬉しくて微笑む。しかし私の顔を見た男の子は瞬きをしたり、目を擦ったりしてる。どうしたんやろか?・・・はっ!ひょっとして私のあまりの美しさに直視できないとか?私も罪な女やなあ。まあ、冗談やけど。そしてその男の子は微笑んで口を開き・・・

 

「人違いじゃないですか?」

 

「何でや!?」

 

私のことを覚えていないようだった。思わず突っ込んでしまった。なんか私だけあの子のことを覚えていて、あの子は私のことを忘れているとか凄い恥ずかしいんやけど。顔が熱くなってくる。何か悔しくて意地悪な口調で思い出してもらえるように言った。

 

「私の目の前でおじさんとラブコメしてたやん」

 

「ぐはっ!?」

 

心にダメージを受けたようで膝から崩れ落ちる。

 

「私のために本を取ろうとしてくれたんやろ?それなのに忘れるなんて酷いなあ。そんなにおじさんが印象深いんか」

 

「やめて!オレのMP(メンタルポイント)はもうゼロよ!!」

 

「ちょっと期待してるような顔だったもんなあ」

 

「思い出した!思い出したから!図書館にいたよね!?」

 

「フフッ、思い出してくれて嬉しいわ」

 

「オレはトラウマが思い起こされたんだけど・・・」

 

そこで周囲が騒がしいことに気が付いた。皆こっちを見てひそひそ話をしている。客観的にこの状況を見てみる。車いすに乗った少女に向かって土下座しているように見える少年・・・・・・アウトやあああああ!?私たちは互いに顔を赤くしながら会計を終わらせ急いでスーパーを出た。その際、車いすを押してもらった。ホントごめんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに息を切らせて近くの公園へと移動する。ひどい目にあった。最近黒歴史増やしすぎじゃないですかね?本日2つ目だよ?

 

「さっきはごめんな」

 

「いや気にしないで、さっきの土下座事件は記憶から消去されたんだ」

 

「そ、そうやね」

 

「うん」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「そ、それでオレに何か用があったの?」

 

そのまま沈黙してしまったのでオレから話しかける。コミュ障は辛いよ。

 

「図書館でのこと、改めてお礼したくて話しかけたんよ。あの時はありがとう」

 

「どういたしまして。別に気にしなくてよかったのに」

 

「ちゃんと言いたかったんよ」

 

「じゃあ、ありがたく受け取っておくよ」

 

それを聞いた少女は何か考え込んでいるようだった。その数秒後に意を決したように少女が口を開く。

 

「私の名前は八神はやていいます。あなたは?」

 

「!?」

 

その時オレの脳髄に雷が走った。夜神・・・だと?

 

「私はLです」

 

「やがみ違いや!誰がデスノートの持ち主やねん!数字の八と神様の神で八神や!」

 

「すまない、バザガベルグ疾風(はやて)ドラゴン」

 

「誰がスピードアタッカーのWブレイカーや!最早種族すら変わっとるやんけ!?」

 

その後も似たような問答を繰り返す。ネタを分かってくれるっていいよね。向こうも同士を見つけたような顔してるもん。

お互い目を見ながらガシッと握手する。

 

「同士と分かったところで、改めて自己紹介しようか」

 

「オレの名前は羽島カイ。そういう君はジョナサン・ジョースター」

 

「誰が波紋使いや!八神はやて言うとるやろ!」

 

しばかれました。




この問答一度やってみたかったんだッ!!
なお彼は高町家にロックオンされた模様。もう逃げられない!!


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初めての修行

ついに高町家の鍛錬が始まるッ!!


なのはがボランティアでしばらく学校を休むことが告げられた今日。オレは学校で自分の机に突っ伏していた。

 

「おい、カイ。お前大丈夫か?」

 

「・・・・・」

 

前田に声をかけられ顔をあげる。

 

「!?・・・カイ」

 

「・・・なんだい?」

 

「お前、仏みたいな顔になってるぞ」

 

クラスメイトである前田に心配された。だけど、ごめん前田。オレは今日、死ぬであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜、オレ宛に電話がかかってきた。母さんに呼ばれるがまま受話器を取り、その電話主に愕然とした。

 

「もしもし、お電話変わりました」

 

「ああ、カイか?」

 

この声・・・恭也さんか!?一気に心音が早まる。今日なのはに処刑準備が整っていることを聞いたばかりだというのに・・・。剣道関係のことではないことを祈って内容を聞く。

 

「はい、そうです。それで恭也さんどうしたんですか?」

 

「この前剣道教える約束をしたろ?父さんと考えてた修行メニューが完成したから、明日からオレの家に来てくれないか?」

 

「・・・・・」

 

神は死んだ。

 

「どうした、カイ?」

 

「アッハイ。でも恭也さんたちも忙しいと思いますのでオレの稽古はいつでも・・・」

 

何とかして逃れないと。最低でも頻度を減らしたい。

 

「それは大丈夫だ。オレも父さんもカイを鍛える準備はできている」

 

「あ、どうも」

 

無理だった。完全にやる気になってしまっている。これは逃げられない!

 

「じゃあ、明日の16時に家に来てくれ。また明日」

 

「ちょっ・・・」

 

ツー、ツーという音が受話器から聞こえてくる。何もできずに電話を切られてしまった。恐れていたことが現実に起こってしまった。なのはの話を聞く限り、当分先のことだと思っていたんだけど・・・。士郎さんと恭也さん張り切りすぎ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことが昨日の夜にあってオレは、今日の朝から表情が死んでいるらしい。道行く人に二度見された。アリサたちにもガチで心配されるレベル。もう自分のこの後のことを考えて達観してしまっているまである。これが・・・無我の境地ってやつかッ。

 

「あ!・・・まあ強く生きろ」

 

そう言ってオレの席から離れていく前田。おい待て、お前今何を察したんだ。

ちょうどそこで帰りのHRの時間を知らせるチャイムが鳴り、奴に追求することは叶わなかった。先生がドアを開けて教室に入ってくる。

 

「み、皆さん気を付けて帰りま・・・ヒッ!?」

 

担任の先生も朝からこれである。全く・・・ひどいものだ。

オレは何も悪いことをしてないのに!!酷いよ神様、助けてよ!!・・・あ、そう言えば昨日神は死んだって言ったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りのHRが終わり、習い事があるアリサたちと別れオレは1人帰り道を歩いていた。どうすれば高町家から逃げられるのだろうか。とりあえず何パターンかに分けて考えてみよう。

 

パターン1

「すみません、実はオレ全くやる気がないんです」

 

「何だと!?その軟弱な根性をオレが叩き直してやる」

 

これはダメだ。100パーセント殺される。

 

パターン2

「実はオレ剣を持つと持病が・・・」

 

「カイは健康だってカイの母親に聞いてるぞ。じゃあ、行こうか」

 

コレもあかん。

 

パターン3

「オレ、習う必要もないほど剣道強いっすよ!」

 

「ほう、じゃあ手合わせ願おうか。道場に行くぞ、カイ」

 

論外。自分から死亡フラグ踏みに行ってどうするんだ。

 

「いい考えが思いつかない」

 

オレの脳みそでは名案が浮かばないようだ。頑張れよ!オレの脳細胞!お前ならいけるぞ。

 

「はっ!?」

 

その時オレは閃いた。たまにはオレの脳もいい仕事をするらしい。流石です!

伝家の宝刀・・・お腹が痛いので行けません(オレにかまわず先に行け)を使う時が来たか!これなら恭也さんも納得してくれるんじゃないか?そう考えるとオレの顔に自然と笑みが生まれる。ああ、世界が明るく見えるよ。こんなにも美しいものだったんだな、世界って。

しばらく意気揚々と歩いているとオレの家が見えてきた。母さんに腹痛を訴えて、今日は休もう!

 

「・・・待て」

 

オレの家の玄関先に人が立っているのが見えた。大佐ァ!こちら羽島!我が家の玄関先に人影を発見しました。指示をッ!!

いや、オレの考えすぎだろう。現在時刻は14時ちょっとすぎである。おそらく宅配便か何かだろうと考え、家に近づいていく。・・・あれ、おかしいな。見慣れている黒髪と顔が見えるぞ?とうとうオレの視力も低下してしまったらしい。あれが恭也さんに見えるなんて。ハハッ。

 

「・・・・・」

 

何回も目を擦る。そして目を凝らして玄関先に立っている人を見る。何回見ても現実は変わらない。そんなはずはないッ!そんなはずはないんだッ!そしてその場に立ち止まること数分、オレはある結論に達した。

・・・あのひと、きょうやさんだぁ。わあい!

 

「お!カイじゃないか。早かったな」

 

「いや、早いのは恭也さんですよ。今日は大学じゃなかったんですか?」

 

「お前と稽古できるのが嬉しくてな。今日は大学を休んで、さっきまで山で鍛錬してたんだ」

 

「・・・・・」

 

おい、大学生。それでいいのか。オレ、過大評価されすぎじゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は15時。オレは高町家の道場にいる。・・・木刀を持って。おかしい・・・何で約束の時間よりも1時間も早くここにいるのだろうか。

いやそもそも恭也さんに伝家の宝刀のお腹が痛いので行けません(オレにかまわず先に行け)が無効化された時点で負けは確定だったのだ。「家に腹痛に効く薬がたくさんあるから大丈夫だ」って言われたらもう抵抗のしようがない。その時点でオレの笑みは消えた。恭也さんは「武人としてのスイッチを入れたのか」とか言って感心してたけど。違うんだ恭也さん。何であなたは良い方向に解釈してしまうんだ。高町家にオレの策は効かないッ!!

オレは道場で1人寂しく木刀を振っている。恭也さんは準備をしているんだと。一体何の準備なのだろうか、怖くて聞くことができない。

 

「フンッ!!・・・フンッ!!・・・」≪ブンッ・・・ブンッ・・・≫

 

悲しみの気落ちを載せて木刀を振るうオレ。聞いてください、羽島カイ作詞作曲『高町家からは逃げられない』。

 

「フンッ!!・・・フンッ!!・・・」≪ビュンッ・・・ビュンッ・・・≫

 

悲しみの果て。腕が疲れてきたよ。もう疲れたよパトラッシュ・・・もう休んでもいいかい?せめて士郎さんが帰ってくるまでには帰りたいなあ(遠い目)。

 

「お、カイ!1時間近くずっと木刀を振っていたのか?凄いな・・・しかも型も教えた通りで完璧だ」

 

いつの間にか恭也さんが近くにいた。しかも気が付かないうちに16時を過ぎていたでござる。やめてえ!!無心で木刀を振っていただけなのにどんどん評価が上がっていくんですけど。

周りを見渡してみると、まだ士郎さんと美由希さんが来ていないことがわかった。しめたッ!!腕が疲れたとか言って帰らせてもらおう。

 

「恭也さん・・・言いたいことがあるんですけど・・・」

 

「ん?どうしたんだ、カイ?」

 

オレは恭也さんの目を見て口を開き・・・

 

「おう、やってるみたいだな。では稽古を始めようか」

 

「剣道って・・・楽しいですねッ・・・」

 

「カイも楽しさがわかってきたか!良かったよ」

 

士郎さんが美由希さんと共に道場に入ってきたのを見て、口を思っていることとは違う形に動かしていた。オレ・・・弱すぎんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、まず初めにカイ君の動きを見るために恭也と模擬戦を行ってもらう」

 

「ファッ!?」

 

はい、死亡宣告いただきました。初日からフラグ回収とはこれまたいかに。

 

「確かに・・・カイの動きを確認することは大切だし・・・やるか!」

 

しかも相手は準備万端ときた。オレの体はボドボドなんです、助けてください。オレは唯一の希望である美由希さんを見上げる。美由希さんもいたいけな小学生が、実の兄にボコボコにされる姿なんて見たくないですよね?オレは期待の眼差しで美由希さんを見る。

喰らえッ!!上目遣い(魔眼)ッ!!これを直視した人間は、何でも言うことを聞くようになるという恐ろしい技だ。この前見た小悪魔系女子特集というテレビ番組でやっていたやつである。実際に女の人が男の人にこれをやっていたが成功率は100パーセントだった。フフッ、これで美由希さんをこちら側に取り込めば・・・。

 

「どうしたのカイ君?・・・ああ、大丈夫だよ。私もちゃんと見てるから!」

 

「・・・・・」

 

違うんだよッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これより模擬戦を始める。両者礼を」

 

士郎さんの掛け声で礼をするオレと恭也さん。もうどうにでもな~れ。お互いに木刀を構える。士郎さんと美由希さんは緊張の面持ちでオレたちを見ている。うん、緊張感がどう考えてもおかしいよね。この模擬戦はオレの動きを見るものではなかったのか。最早諦めの境地である。顔から一切の表情が消える。

 

「真剣な顔になった・・・。それほどの気持ちで臨んでいるのか」

 

「・・・・・」

 

「それならばオレも全力を出さないとカイに失礼だな。オレも全力で行かせてもらうぞッ!!」

 

やめてください、死んでしまいます。・・・さっきから勘違いが加速しすぎているような気がする。おい、誰だブレーキ壊したやつ。そのせいで大変なことになってるんだが。オレの平穏は何処へ。

いや、もう逆に考えることにしよう。

 

「では、始め!!」

 

別に恭也さんを倒してしまっても構わんのだろう?

 

「その構えはっ!?」

 

「行きます!!」

 

オレは木刀を両手で握り、切っ先を恭也さんの方に向けたまま右側へと移動させる。木刀は寝かせた状態だ。オレは今から父さんが見ていたアニメに出てきた青い髪を持つ侍の構えを真似していた。あの技を見た時から一度やってみたかったんだ。そこ!中二病とか言わない!

恭也さんたちが驚いているが、むしろ何故驚いているのか知りたい。子供がアニメの技を真似しようとしているだけですよ?微笑ましい感じじゃないの?

 

「こいっ!!」

 

オレは恭也さんに向かってその技を再現する。

秘剣・・・燕返しッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん、アサシン。駄目だったよ・・・。普通に失敗したでござる。一遍に3回切るとか普通に考えてもできないよね。唯々突きをしたような形になっちまったよ。その突きを交わした恭也さんに背後に回られて、ボコボコにされたよ。一応抵抗はしてみたけれど無駄だった。幻滅されたかと思っていたのに動きが良いとか言われて褒められた。もうわけわからん。

オレは今道場に寝っ転がっている。普通に動けなくなったのだ。ああ、癒しが欲しい。

 

「カイ君、大丈夫?」

 

するとそこに美由希さんから声がかけられる。

 

「大丈夫だと・・・思います」

 

息を整えながら返事をする。顔をあげると美由希さんの手に料理が載っているのが見えた。これはまさか・・・。

 

「カイ君頑張ったからシュークリームはどうかと思って持ってきたんだけど」

 

「ありがとうございます!助かります!」

 

「そう?良かった。恭ちゃんたちは食べてくれないから心配だったんだ」

 

オレは美由希さんからシュークリームをひったくるように受け取る。こんなに美味しそうなのに、食べないとは勿体ない。では、さっそく一口・・・

 

「カイ、それは・・・!?」

 

士郎さんとの稽古が休憩になったらしい恭也さんが慌てた様子で、オレを止めに来る。何だ、恭也さんも食べたかったんじゃないか。だけどごめんなさい、これを貰ったのはこのオレだッ!!今まで美由希さんの料理を食べなかったことを後悔するといい!!

 

「ん・・・ん?」

 

シューは変な柔らかさで、クリームは辛い味付けと渋い味付けが何とも・・・・・ゴパァッ!!

 

「カイー!!」

 

オレは道場の床に再び倒れる。恭也さんの叫びが遠く聞こえるよ。まさか美由希さんの料理にこんな秘密があったなんて・・・。流石高町家、とどめを刺しに来るとは。アフターケアもばっちりだね(白目)!

 

「カイ君、どうだった?私頑張って作ったんだけど・・・」

 

しかし、ここで倒れては男が廃る。オレは震える腕を美由希さんの前まで上げてサムズアップ。そして精いっぱいの笑顔でこう言った。

 

「愛が詰まっていて・・・良かったッ!!」

 

しばらくの間オレの意識は途絶えた。




高町家の勘違いは加速する。
アフターケアもばっちり(遠い目)!皆さんも高町家の道場に足を運んでみては?
え?僕はやめておきます。だってあんなとこ・・・おっと誰か来たようだ。え!?ちょっと恭也さん、やめ・・・(後書きはここで途切れている)


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金髪少女とデバイス

短めです。


「昨日は大変だった・・・」

 

昨日高町家で剣道の稽古をやっていたオレは、美由希さんの料理でとどめを刺された。それから数分の間記憶が飛んで、起きたら恭也さんに「今日はもう終わりにしよう」と言われ解散になった。早く帰れるのは良かったが、あの時の恭也さんの慈愛に満ちた表情が忘れられない。気のせいか、「また1つ強くなったな」なんて声が聞こえてきそうな表情であった。

なお稽古は今日も行われるそうです。母さんルートでオレの予定が士郎さんと恭也さんに知られてしまっていた。父さんも母さんも「カイが体を動かしてくれる機会ができて嬉しい」なんて笑顔で言うものだから断るに断れなくなってしまった。まあ、これも運動不足解消だと考えるようにしよう。気が付いたら外堀が埋められていて逃げることができなかったという訳ではない、断じて。

少し筋肉痛の残る腕を擦りながら今日も学校へと向かっていく。士郎さんはいったい何者なのか。あの人のマッサージのおかげ(せい)で筋肉痛が少ししかない。全身筋肉痛で今日の稽古は休みだと思って喜んでいた昨日のオレを殴りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい、早く慣れないと・・・死ぬ」

 

今日の稽古は軽めだと言っていたのに、素振りを200回と走り込みをやらされるとは思わなんだ。むしろ全身が疲れてしまった。だけど、明日は休みだということで歓喜しているオレがいる。今日と明日は体を休めたい。

というか背中に背負っている木刀のせいで歩きづらいんだが。士郎さんが「これはカイ君専用の木刀だ、使ってくれ!」なんて笑顔で言うもんだから受け取るしかなった。これは家でも素振りをしろと遠回しに言ってるのか・・・?こんなにもらって微妙な気持ちになるプレゼントは初めてだ。

 

「これでオレが高町家の仲間入りをしてしまったらどうするんだ。種族が変わってしまうぞ」

 

『羽島カイ、種族タカマチ』とかなってしまったら笑えない。あの人たちは嬉々としてオレを稽古に呼び続けるだろう。オレの精神はボドボドダァ。

 

「・・・ん?」

 

内心ナーバスになっていると、公園のベンチに知り合いの少女がいることがわかった。なんか思い詰めてるような顔してるんだけど・・・。自分の洗濯物をお父さんの洗濯物と一緒に洗われでもしたのだろうか。うん、思春期特有の悩みだネ!きっと彼女のお父さんは誰もいないところで咽び泣いているに違いない。・・・お父さん、ファイトだ!

 

「あっ、カイ・・・」

 

1人で納得して頷いていると、ベンチに座っている少女がオレに気が付いたようだった。アッガイみたいに呼ばれたと思うのは気のせいだろう。最近被害妄想が過ぎる気がする。オレの精神状態はどうなっているのだろう。

 

「どうしたの?この世の終わりみたいな顔して。ガリガリ君の当たり棒でも落とした?」

 

「ううん、違うよ」

 

即答された。冗談でもかまして明るい雰囲気にしようと思ったのに効果が無かった。

カイ の ふんいきぶれいく →フェイトには こうかが なかった

今日も空回り絶好調である。流石オレ(棒)。

 

「カイなら話してもいいかな・・・」

 

暗い雰囲気のままフェイトが話し始めた。何でもジュエルシード集めを邪魔する輩がいて、フェイトは集めにくくなっているらしい。フェイトのお母さんのためにも相手の魔導師を倒してジュエルシードをたくさん集めなくてはならないそうだ。ついにフェイトの話に相手の組織っぽいのが出てくるようになったぞ。

おい、ジュエルシード。そんなにブームになっていたのか。まさかの少女たちの間だけでなくカンリキョクとかいう組織まで絡んでいるではないか。少女たちの争奪戦は怖い。そんなに一世を風靡しているのにオレは知らなかったとか、完全にオレの情報不足だ。だってしょうがないじゃん、家のパソコンで検索しても出てこないんだよ?

それはともかく相手の魔導師に対抗してジュエルシードを集める方法か。フェイトの設定だと、フェイトは速さに自信があって、相手の魔導師は砲撃型だそうだ。うん、あれか。ソニックVSバスターガンダムと考えればいいのか?・・・何その無理ゲー、勝てるの?

とにかく速さが全てであり、速さに勝てるものはないって言っておいた。一発一発の威力があっても、当たらなければどうということはないって赤い彗星のあのお方も言ってたしね。間違いではないと思われる。

フェイトは悩みが解決したみたいで笑顔になった。お、おう・・・良かったよ。ポケモンバトルでの素早さの重要性とか言ってただけだけど、どうやらそれが高評価だったようだ。

 

「あれ、カイその背中に背負っているものって?」

 

「ああ、これ?」

 

オレが速さについて力説した後にフェイトがオレが背中に背負っていた木刀に気が付いた。気になっているようなので背中から降ろして袋から取り出し、フェイトに見せる。

 

「これはまさか・・・カイのデバイスなの?」

 

デバイス?デバイス・・・って装置ということだよな?まあ、剣術に必要なものだからデバイスって言ってもいいかもしれん。

 

「ん?・・・そうだよ」

 

格好良くない?デバイスって言い方。気に入ったッ!これから木刀のことはデバイスと呼ぼう!・・・数日後に士郎さんたちに怪訝な顔されて言い方を直すことになるとはこの時のオレは知らなかった。

 

「アームドデバイスかな?カイ程の魔力量を持つ人が使っているぐらいだからきっと凄いんだろうなあ」

 

なんかフェイトさんが目を輝かせてオレの木刀を見ているんだけど。そんなに木刀が気に入ったのかな?

 

「少し素振りしてみる?」

 

「え?いいの?魔導士にとってデバイスは大切なのに?」

 

「うん、別に構わないよ」

 

大切っちゃあ大切だけど、普通にオレの木刀道場に打ち付けられたりしてるからね。主に恭也さんの武器落としで。あの人的確にオレの武器はたいてくるからね。昨日の模擬戦なんてそれで10回は落とされた。

 

「そっか、ありがとうカイ。素振りしてみるね」

 

「オッケー」

 

「そう言えばこのデバイスの名前何て言うの?」

 

「それは木刀って言うんだ」

 

「“ボクトウ”か・・・いい名前だね」

 

そんなに木刀の名前が気に入ったのだろうか。微笑んで木刀を握っている。

 

「よろしくね、ボクトウ」

 

「ぐはあっ」

 

「何!?どうしたのカイ!?」

 

フェイトさんが可愛すぎて辛い(吐血)。笑顔で木刀に話しかけてるよ。オレなんて一度もそんなことしてなかったのに。道具に慈しみを持って話しかけるとか天使か。そう言えば大切に使っている道具には、魂が宿るって聞いたことがあるけど、それはこういうことが関係しているのかもしれない。フェイト・・・恐ろしい子ッ。

 

「カイありがとう。ボクトウ返すね」

 

「お、おう」

 

オレが悶えている間にフェイトの素振りが終わったようだ。木刀が返ってくる。おお、木刀よ。これからオレも大切に使うからね・・・。

 

「カイにデバイスを見せてもらったし、今度は私のデバイスを見せるね」

 

「見せてくれんの?」

 

「うん」

 

次はフェイトが木刀を見せてくれるらしい。道具を大切に使うフェイトだ、さぞかしツヤや強度がしっかりしているに違いない。

 

「来て・・・バルディッシュ」

≪Yes,sir≫

 

「・・・え?」

 

今喋った?

そして変形音を出してフェイトの手に握られていたものは・・・

 

「これが私のデバイスで、名前はバルディッシュだよ」

 

「・・・・・」

 

どう見てもバトルアックスなんですが。なんかオレの知っている木刀と違う。

 

「どうしたの、カイ?」

 

「あ、いやオレの知っているデバイス違うな~って思って。こんなに格好いいの初めて見た」

 

「ありがとう、カイ」

≪Thanks≫

 

しかも喋るし。剣術って木刀とか竹刀とかじゃないと駄目だと思ってた。まさかこんなに格好いいのを使っていいなんて!声も渋いし格好いい!!惚れた!抱いて!・・・家帰ったらバルディッシュ調べてみよう。

 

「フェイトはこのデバイスを使って戦ってるんだな(試合相手と)」

 

「うん、いつもバルディッシュと一緒に戦ってるよ(魔導師と)」

 

「羨ましい!!」

 

「?カイだってボクトウと一緒に戦ってるんでしょ?」

 

今日は格好いい武器を見ることができた。家のパソコン(新しいものに変えた)で調べてみてもバルディッシュは出てこなかった。なんでだ。




フェイトさんはカイの木刀のことを『ボクトウという名前のデバイス』だと思っているようです。
今日も勘違いが仕事する。


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金髪少女の回想

今回は少し真面目な感じで()。回想は書くのが難しいです。



「フェイト、このジュエルシードはどうやって手に入れたの?」

 

時の庭園に戻った私が手に入れたジュエルシードを渡したとき、母さんはそう言った。

 

「現地の住民に譲ってもらいました」

 

「そう・・・」

 

カイから貰った1つだけ色が違うジュエルシード。と言っても、色の違いは些細なものでよく確認しないとわからないレベルだ。私も母さんに今言われるまで気が付かなかった。

母さんは今、カイに貰ったジュエルシードをじっくりと観察している。私にとっては何の違いがあるのかわからないけど、研究者である母さんにとっては違うらしい。

 

「・・・・・下がってていいわ」

 

「はい、母さん」

 

私はそんな珍しい母さんの姿を眺めていたけど、その視線が気になったのか母さんに部屋に戻るように指示された。

私はその指示に従って、自分の部屋に戻るため扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、あのプレシアがフェイトに何もしなかったなんて信じられないよ」

 

「こら!そんなこと言わないの」

 

扉の前で待っていてくれたアルフと合流し、私の部屋に向かっている最中、アルフがそんなことを言い出した。母さんは優しい人だから、起こってくれるのも私のためだっていつも言ってるのに・・・。

 

「そんなにあのカイってやつに貰ったジュエルシードは珍しいのかい?」

 

「私はよくわからなかったけど、母さんは興味を持ったみたい」

 

「ふ~ん」

 

アルフと話しながら廊下を進むと、私の部屋に着いた。部屋のベッドに腰かけ、アルフがベッドで丸くなっているのを眺めながら、私はカイとの出会いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイと出会ったのは、私とアルフが母さんにジュエルシードの回収を指示され、地球に移動してすぐの頃だった。拠点となるアパートへの荷物の運び込みも終わり、アルフと別れてジュエルシードを探していた私は、公園で彼に出会った。彼はベンチに座って海を見ながら、手元で何かをいじっているようだった。

最初はそれが何かわからなかったが、次第に彼がいじっているのはジュエルシードだとわかった。それは母さんから送られてきた画像データと全く同じだった。

 

(!?・・・これは・・・!?)

 

ここで私は彼が魔力を持っている魔導師だということがわかった。地球は管理外世界じゃなかったの・・・!?

警戒しつつもジュエルシードを譲ってもらうために、気持ちを切り替えて話しかけることにした。

 

「あの・・・」

 

「ん?」

 

そこで彼は私の方に振り向いた。短く切られた黒髪に黒い瞳、一般的なニホンジンというものに当てはまる容姿であった。

私が続きの言葉を言おうとすると何故か彼はベンチに座っている位置を変えて、こちらを見つめてきた。

 

「・・・・・?」

 

彼が何をしたいのかわからなくて、私も見つめ返す。

しばらく見つめていると彼が着席することを促したため、彼の隣に座ることにした。こうなってしまったら私は黙って、先に彼の用件を聞くことにしよう。そう思って待ってみても、彼が話すことはない。・・・むしろ何かそわそわし始めた。何をしているんだろうか。

 

「えっと、なんか用事があるんじゃないの?」

 

「え?君が座ってって言ったからなんか話があるのかと思ってた」

 

「あ、ごめん。オレは特に用事はないんだ。ベンチに座りたいのかなって思ってたんだ」

 

ようやく話してくれたと思ったら、どうやらこちらが話してくれるのを待っていてくれたらしい。勘違いに頬が熱くなるのを感じつつ、ジュエルシードを譲ってくれないかとお願いしたところ、快く譲ってくれた。何故か焦っていたけどよくわからなかった。「オレって、見ず知らずの人に変態扱いされて・・・?」とか言っていた。

その後はお互いに自己紹介して、魔法のことを話すことになった。

 

「カイは管理外世界の住民なのに、どうして魔法が使えるの?」

 

「管理外・・・?あ、いや急に目覚めたんだよ!フェイトはなんで魔法を使うようになったの?」

 

「私は、母さんが魔導師だから自然となりたいと思ったの。魔法はリニスが教えてくれて・・・」

 

私の師匠であるリニスは、優しく厳しく教えてくれた。今はもう会えないけれど、あの頃の思い出は忘れることはないだろう。

 

「オレはヒットアンドアウェイを主流にしているから敵に見つからないことを第一にしているんだ。・・・いやホントダヨ?」

 

「そうなんだ!私はね・・・・・」

 

彼との魔法談義はとても楽しいものであった。ところどころ私の言うことに、リアクションをとってくれるのが面白かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、どこかの家の庭や温泉で会って話をした。巨大な猫にまたがって移動していた時はとても驚いたけど。彼はビーストテイマーの才能もあるらしい。私の攻撃が躱されるあの猫の動きは芸術的であった。

私が管理局と出会ってしまったある日から、ジュエルシードを確保することが難しくなり、公園で悩んでいたある日、彼は私に声をかけてくれた。

 

「どうしたの?この世の終わりみたいな顔して。ガリガリ君の当たり棒でも落とした?」

 

「ううん、違うよ」

 

・・・ガリガリ君って何だろう?

カイの言ってることはよくわからなかったけど、いつまでも1人で悩んでても仕方がないと思い、悩み事をカイに相談することにした。

 

「私がジュエルシードを集めてることは知ってるよね?」

 

「お、おう。ジュエルシードな。知ってるよ」

 

「最近、管理局もジュエルシードを集めるようになったみたいで、ジュエルシードを集めにくくなってるんだ。あの子も管理局に協力してるみたいだし・・・。もうどうすればいいかわからないんだ」

 

「カンリキョク?」

 

「うん。お母さんのためにも何とかしなきゃならないんだけど・・・」

 

「・・・カンリキョク?カンリキョクとは何ぞや?」

 

「カイ?どうしたの?」

 

「い、いや何でもない!カンリキョクな~あいつらめちゃ許せんよな!」

 

「う、うん」

 

カイがうつむいてぼそぼそ言ってたのが気になって声をかけたけど、何でもないと返された。なんか挙動不審だけど大丈夫かな?

 

「ちなみに敵の魔導師って・・・」

 

「砲撃型だよ」

 

「砲撃型か・・・つまりバスターガンダムってことか。・・・それでフェイトには誰にも負けないって自信を持ってる設定とかはある?」

 

「設定?」

 

「あ、設定じゃなくて!フェイトの長所!」

 

私の長所・・・。私が自信を持ってる分野と言ったら・・・。

 

「・・・速さかな」

 

「・・・速さ・・・ね。速さか・・・あ、そうだ!ちょっとこれ見てよ!」

 

私の答えを聞いたカイは、何かを思いついたようでカバンから折り畳み式の端末みたいのを取り出した。

 

「カイ、それは何?」

 

「これ?これは任〇堂DSってやつ」

 

この世界にはそんな端末があるのかと感心していた私をよそに、カイはその端末の電源を入れた。

その画面に表示されたのは・・・。

 

「ポケットモンスター?」

 

「うん。今から速さの強さってものを実践で教えたいと思って」

 

しかもプラチナらしい。プラチナってこの世界の貴金属だよね?

カイはそう言うとボタンを使って操作をし始めた。

 

「見てろ、この素早さMAXのダークライの強さを」

 

ダークライのダークホール。

ダークライのあくむ。

ダークライのゆめくい。

相手は倒れた。

 

「このダークライのダークホール、あくむ、ゆめくいの必勝コンボに勝てる奴はいないのだ」

 

「それがどうしたの?」

 

「このコンボはな、相手よりダークライの速さが優れてるから発動するんだ。つまり、相手よりも速ければ相手の攻撃は当たらないし、相手に攻撃をさせずに勝つことだって勝てるかもしれないんだ」

 

「うん」

 

「つまり相手がどんなことをしようが関係ないってことだよ。ジュエルシードを奪って戦わずに逃げるのも良し、気配を消して襲撃して一気に片を付けるのも良し・・・だよ!」

 

「でもそれだと・・・」

 

「甘い!!初めて食べたカスタードたい焼きより甘い!!」

 

「たい焼き・・・?」

 

ちょっと相手の子が可哀そう・・・と思って反論しようとしたけどカイが止めてきた。たい焼き・・・また新しい言葉が出てきた。

 

「いいか、フェイト。これは戦争だ。いくらこっちが良い装備を手に入れたとしても不意打ちで負けてしまうこともあるんだ!」

 

「う、うん」

 

カイの迫力に思わず押されてしまう。

 

「甘さを全て捨てて戦うんだ!逃げるが勝ちって言葉もあるんだからそんなに深く考えなくてもいいんじゃないか?困ったときはダークライを思い出すんだ。」

 

「ッ!?」

 

そのとき私の中に巣くっていた不安が消えていくのを感じた。そっか・・・別にきちんと勝負をしてジュエルシードを手に入れなくてもいいんだ・・・。母さんも早くジュエルシードを欲しいに決まってるよね!

 

「ありがとう、カイ!!君のおかげで救われたよ!!」

 

「お、おう。そんな感激されるようなこと言ったっけ?」

 

カイがなんか言っているようだったけど、新しい戦い方を見つけた私には聞こえなかった。その後は、カイのアームドデバイスである”ボクトウ”を見せてもらった。カイはアームドデバイスを使っているらしい。金属の感じが全然無かったけど、カイの使ってるデバイスは他のデバイスとは一味違うようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、迎えたジュエルシードの発動。先に白い魔導師の子たちが現場についていた。今までは逃げるだけだったけど、これからは違うよ!あらかじめ話してあったアルフと念話でコンタクトをとり、作戦を開始する。

 

「フォトンランサー」

≪Photon lancer≫

 

隠れていた森林から数発のフォトンランサーを放ち、私はすぐさま移動する。

 

「え!?」

≪Protection≫

 

「何っ!?」

 

「あの子だっ」

 

いきなりの敵襲に驚いた彼女たちは攻撃が来た方向を向いて、警戒している。そこから森林の中を回るように移動しジュエルシードのもとまで移動する。

 

「ジュエルシード封印!」

≪Sealing≫

 

「何だと!?」

 

「しまった!!」

 

「あの攻撃は!?」

 

そしてすぐジュエルシードを封印する。彼女たちはそのことに気づきこちらを向くがもう遅い。

 

「バルディッシュ」

≪Yes,sir.Blitz action≫

 

彼らを気にすることなく転移魔法を展開していたアルフのもとへ移動する。

 

「待てっ!!」

 

管理局の魔導師が静止の言葉をかけてくるのを聞きながら私たちは転移した。

 

「やったね、フェイト!管理局に一泡吹かせてやったよ」

 

「うん、これもカイのおかげだよ」

 

「そのカイってやつにはお礼を言わないとね」

 

その後、拠点となっているアパートの一室でアルフと喜び合ったんだよね。新しいやり方が成功して私も嬉しかったのを覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪フェイト、私のもとに来なさい≫

 

≪はい、母さん≫

 

思い出を振り返っていた私に、母さんから呼び出しがかかった。心配そうにするアルフをなだめて、玉座の間に再び入る。するとそこにはカイから貰ったジュエルシードを空中に浮かせた状態でこっちを見る母さんがいた。母さんは私が入ってくるのを確認すると口を開いた。

 

「フェイト、貴女このジュエルシードを現地の住民に譲ってもらったって言っていたわね」

 

「はい」

 

「今からその人物をここに連れてきてちょうだい」

 

「え!?」

 

母さんに言われたことが聞き間違いだと思ってしまう。それってカイを連れて来いってことだよね・・・。

 

「だけど・・・」

 

「いいから連れてきなさい!ジュエルシードに干渉できるような人物がただの住民であるはずがないもの!」

 

「・・・わかりました」

 

母さんに逆らうことができない私は、返事をして玉座の間を出る。私の部屋で待っていたアルフと共に、拠点のアパートに戻る。その後、カイを探すために私はアパートを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっす、オレ羽島カイ。今日は稽古がないため学校が終わり家でぐーたらしようと思ったら、買い物を指示するメモを発見してしまい買い物に行くことになってしまったんだ。家でのオレのヒエラルキーは最下層なので、逆らえなかったんだ。あのメモッ!!オレが逆らえないような効力があるッ!!母さんが書いた紙にまで負けてしまうオレ氏。そこ、笑うんじゃない。

今、スーパーに到着した。メモの指示によると、スーパーの夕方のセールで売り物を勝ち取ってこいとのことだった。オレはどうやら戦場に赴かなければならないらしい。母さんッ!!主婦の方々がひしめきあってるよッ!!みんな目が怖いよッ!?この中から安売り卵と肉を奪取せねばならないときた。オレ、死ぬんじゃね?

時刻がセールが開始される16時を回った。店員さんが割引シールを張っていく。そして・・・

 

「セール開始です!!」

 

「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」

 

雄たけびを上げながらオレ達は突っ込んでいく。一番槍羽島ッ!!行きます!!

 

「ほげあっ!!」

 

おばちゃんからタックルを貰いつつ卵を買い物かごに入れる。後は肉だっ!!

オレは肉が売られている場所目指して再び、戦場に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

真っ白に燃え尽きたぜ。何とか卵と肉を買うことができた。ついでにネギも買ってしまったぜ!!よくわからないけど。だって店員さんがやけに進めてくるんだもの、買うしかないじゃない!?(マミさん風)

大佐ァ!!こちら羽島!!無事戦場より生還いたしました!!・・・大佐もご苦労と言ってくれていることだろう。

しかし代償もある。体力もそうだし、何よりこの頬の赤。・・・何だと思う?キスマークである。戦場で揉みくちゃになったなったときにつけられたらしい。口紅がべったりだ。レジのお姉さんに温かい目線で見られたことをここに記しておく。

 

「ん?」

 

パーカーのポケットに何か入っていることに気づいた。ごそごそとポケットを探って、その物体を出す。

 

「ジュエルシードやん」

 

温泉旅行に行く前に拾って、パーカーに入れておいたのを忘れてた。なのはかフェイトに渡すのを忘れてた。温泉旅行に行ったときフェイトに聞いた話によると、何でも何個か集めると(具体的な数は忘却)願いが叶うらしい。思わずドラゴンボールかよ!!って突っ込んでしまった俺は悪くない。フェイトはドラゴンボールを知らないという衝撃の事実も判明したが。あの子純粋すぎんよ。

まあ、ミサンガみたいな願掛けみたいなものだろう。今度会ったときに願い事を聞いてみるのも悪くない。さあ、我が家に帰ろう!

 

「あ、いた!カイ!!」

 

噂をすればなんとやら。フェイトさん登場である。

 

「どうした?」

 

「カイ!私と一緒に来て!!」

 

「は?」

 

言葉が足りない!!そんなんじゃ勘違いされるぞ!!

 

「なんで?」

 

「母さんがカイに会いたがってるんだ」

 

「・・・?」

 

思わず首をひねる。いや、なんで?僕、何かしましたかね?

 

「ジュエルシードのことで!」

 

「・・・・・」

 

まさか・・・この前のオレの適当ポケモン理論を聞いたフェイトの母さんが怒ってしまったのか!?

 

「フェイトの母さん怒ってる?」

 

「なんで?別に怒ってないよ?」

 

フェイトが不思議そうな顔をして首をかしげる。良かった・・・。怒っているわけではないらしい。買い物袋に保冷材も入っているし、少しなら大丈夫だろう。

 

「少しなら大丈夫」

 

「良かった!じゃあ行こう」

 

おっと、そう言えばジュエルシード渡さなきゃ。オレはポケットからジュエルシードを出しつつ、フェイトに尋ねる。

 

「そう言えばフェイト。叶えたいことって何?」

 

「え?私が叶えたいこと?」

 

「うん。ジュエルシードに願うことだよ」

 

「・・・私は・・・また家族みんなで幸せに暮らせるようになりたいんだ」

 

「そっか、その願い叶うといいな」

 

フェイトの願い事を聞き、オレが返答しつつフェイトの手にジュエルシードを載せる。

 

「!?・・・これってジュエルシード!?」

 

フェイトが驚いた様子で尋ねてくる。オレが拾ったことを伝えようとした時、ジュエルシードから閃光が放たれた!!オレはそれを直視してしまった。

 

「目がァ!!目がァ!!」

 

ぎゃああああ!!目が痛い!!ムスカ大佐の気持ちがわかるよ!!

 

「・・・え?」

 

うめき声をあげていたオレをよそに、フェイトはなにかに驚いているらしい。フェイトは閃光の被害にあわなかったようだ。なんでオレだけ目にダメージを受けてるんだ!!

 

「くっ・・・」

 

ようやく目が開くようになって周囲を確認する。目の前には固まっているフェイト。周りはどこかの王宮の部屋みたいな光景。っていうかここどこ?

固まっているフェイトが見ている方向を見る。オレも思わず固まる。そこには・・・

 

「・・・これ、どういう状況?」

 

正座した紫色の髪の女性が、フェイトにそっくりの金髪の少女に説教されている姿があった。買い物袋から見える青ネギの存在感がやけに頼もしかった。




ポケモンプラチナで時が止まってる作者。ダークライの部分は戦闘に活かされてない模様。
ダークホールとか無理だよね!

急展開()。




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家族は仲良くね

皆さん評価&感想ありがとうございます!
作者の励みになっております。


玉座の間一面に閃光が発生する。フェイトにジュエルシードを譲ってくれたという現地の住民を探すように指示した後、アリシアの生体ポットを見ていたプレシアは思わず目をつむる。その際に病気の影響で重かった自身の体が軽くなる違和感を感じつつも目を開く。

 

「・・・!?」

 

生体ポットの中にいるアリシアの目が開き始め、プレシアと目が合う。

 

「ア・・・アリ・・・シア?」

 

プレシアは驚愕する。今までどんな手を使っても目を覚まさなかったアリシアが目を覚ましたからだ。アリシアの体に異常がないか確認し終わった後、アリシアをポットから出す。

 

「げほっげほっ・・・」

 

「え?アリシア・・・なの?」

 

「・・・そうだよ、ママ」

 

力が入らなくなりプレシアは床に座るような状態になった。混乱しつつもプレシアが問えば、アリシアから答えが返ってくる。

 

「ママ」

 

「え・・・?」

 

「なんでフェイトにあんな酷いことしてるの!?」

 

「な・・・」

 

震えながらも立ち上がったアリシアがプレシアを糾弾する。プレシアはアリシアに攻め立てられることと、何故フェイトのことを知っているのかということで言葉が出なくなる。アリシアは本気で怒ってるらしく、プレシアはますます混乱する。

 

「私、ちゃんと知ってるんだから!」

 

「で、でもアリシア・・・」

 

「でもじゃないの!!私を思ってくれたママの気持ちは嬉しいけど、なんでフェイトを蔑ろにするの?」

 

「だってあの子はアリシアじゃ・・・」

 

「私じゃないのなんて当たり前だよ!私はママがフェイトと一緒に過ごしてくれると思ってたんだよ?」

 

「・・・・・」

 

アリシアの迫力にプレシアは押される。アリシアが怒っている、その事実にプレシアは何も言えなくなる。

 

「生まれ方は違うけどフェイトは私の”妹”なんだよ!?」

 

「・・・!?」

 

”妹”という言葉にプレシアは頭をガツンと叩かれるような衝撃を受けた。

 

「あ・・・わ、私は・・・」

 

プレシアはフェイトのことをアリシアの模造品としか見ていなかった。プレシアは、アリシアを失ったあの日から、アリシアを必ず取り戻すという妄執に取りつかれてしまっていたのだ。

 

「私・・・は・・・」

 

プレシアの頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。事故の責任を全て押し付けられた上にアリシアを失って絶望したあの日。プロジェクトFで生み出したフェイトがアリシアと異なるとわかって、フェイトを家族として見なくなったあの日。

 

「あ・・・」

 

『私ね、妹が欲しい。妹がいれば、お留守番してても寂しくないでしょ?』

 

ふとアリシアに欲しい誕生日プレゼントを聞いた時を思い出した。妹・・・それはアリシアが求めていたものではなかったか。妹がいれば寂しくないとアリシアが笑いながら言っていたのではなかったか。

どうして私は・・・。

 

「あ・・・あ・・・」

 

「ママ。私ね、”家族”として過ごしたいんだ。”妹”のフェイトも一緒に」

 

「あ、ああ・・・あああああ」

 

アリシアの言葉を聞いた時、プレシアは涙を止めることができなかった。今までのことを悔いるようにプレシアは泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい・・・アリシア・・・。私が間違っていたわ」

 

「謝るのは私じゃないよ、ママ。でも私を思い続けてくれたこと、嬉しかったよ。ありがとう」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

目の前で金髪少女に謝っている紫色の髪の女性。うん、シュールだ。とりあえず横で固まっているフェイトに尋ねることにする。

 

「フェイト・・・あの紫色の髪の人がフェイトの母さんなのか?」

 

「う、うん。そうなんだけど・・・なんか若返っているっていうか。あの女の子も知らないし」

 

どうやらフェイトも困惑しているようだ。若返っているってどういうこっちゃ。

・・・ここで諸君らに言っておかなければならないことがある。フェイトの母さんと一緒にいるあの金髪少女・・・真っ裸なのだ。・・・マッパである。・・・アイエエエ!ナンデェ!?なんでこうなったの!?もしかしてそういう趣味!?

もうこっちは必死に目がいかないように下向いてるんだが。頬が赤くなっているまである。

・・・おい、オレの眼球。なんで上に行こうとしてんだよ。お前の行動のせいで目が引きつってるじゃないか。オレはちゃんと下向こうと思ってます!無罪ですよ無罪!

 

「あ・・・」

 

「・・・フェイト」

 

金髪少女とフェイトの母さんがこっちに気が付いたようだ。とりあえず君は早く服着て服!

こともあろうか金髪少女は、満面の笑みでこちらに走ってきた。ちょっと、本当にそういう趣味!?オレは後ろを向くことにした。

 

「貴女がフェイトだね!私はアリシア!貴女のお姉ちゃんだよ!!」

 

「・・・お姉ちゃん?」

 

なんとこの金髪少女――アリシアというらしい――はフェイトの姉さんらしい。だからそっくりなのか。

 

「そこの子には悪いけど、少し話したいことがあるんだ。こっちに来て、フェイト」

 

「え、ええ!?」

 

未だに混乱しているらしいフェイトの手を取って、フェイトの母さんのもとへと向かっていくアリシア。・・・良かったフェイトがパーカーを貸したようだ。

何やらフェイトとフェイトの母さんが真剣に話し合っているようである。

・・・なんでオレ来たんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト・・・」

 

「母さん・・・これは?」

 

まだ状況がよくわからないままアリシアに連れてこられた私。アリシアは私の貸したパーカーを着て私たちを眺めている。

 

「フェイト・・・ごめんなさい」

 

「・・・え?」

 

母さんがいきなり泣き始めた。母さんの泣き顔を始めて見た私はますます混乱してしまう。

 

「実はね・・・」

 

開いた母さんの口から私が知らなかったことが聞かされる。アリシアは事故で亡くなった母さんの娘であり、私はそのアリシアのクローンだということ。娘と思えずにひどい扱いをしてしまったこと。アリシアを蘇生させるためにジュエルシードを必要としていたこと。色々な話を聞いた。私の頭の中は真っ白になって何も考えられなくなってしまう。

 

「そ・・・そんな・・・」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「・・・・・」

 

母さんは泣きながら何回も謝っている。それを見て私も自分自身のことを考える。今まで過ごしてきた日々を。カイやアルフと笑ったあの瞬間を。そして私の母さんに対する思いを。

確かに私の生まれは普通じゃなかったのかもしれない。でも、それでも・・・!!

 

「母さん」

 

「・・・ッ」

 

私の声を聞いて母さんの肩が跳ねる。これだけは・・・私の思いだけは伝えなきゃ。

 

「私はアリシアのクローンとして生まれたかもしれない。でもフェイトという母さんが付けてくれた名前がある。フェイトとして過ごした記憶がある。フェイトとしての感情がある。私は母さんのことを許したいと思ってる。

私は・・・フェイト・テスタロッサは、プレシア・テスタロッサを・・・私の愛する母さんだと思っています」

 

「私を許してくれるというの・・・?こんな最低な私を・・・」

 

「はい」

 

「ああ・・・フェイト・・・ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

私の思いを伝えた後、母さんは強く抱きしめてくれた。フェイトとして初めて感じた母さんのぬくもりに私の心が温かくなっていく。私の眦から涙があふれだす。

 

「母さん!・・・母さん!」

 

「フェイト・・・」

 

この日初めて(フェイト)は泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったね、フェイト、ママ」

 

私たちが泣き止んで落ち着いたとき、ずっと私たちを見守ってくれていたアリシアが声をかけてきた。

 

「アリシア・・・」

 

「違うよ、フェイト!私のことはお姉ちゃんって呼んで!」

 

アリシアに呼び方をお願いされ、頬が赤くなるのを感じつつアリシアのことを呼ぶ。

 

「ね、姉さん・・・」

 

「ぐはあっ!!」

 

「ど、どうしたの姉さん!?」

 

いきなり悶絶し始めた姉さんのことが心配になって声をかける。母さんもオロオロしてるようだ。

 

「私の妹が可愛すぎて辛い。私の妹はどこにもやらん!」

 

「・・・?」

 

とりあえず元気みたい。

私はふと姉さんのことが気になり母さんに聞いてみた。

 

「母さん」

 

「どうしたの?」

 

「姉さんはどうして・・・」

 

それは何故姉さんはここにいるのかということだ。母さんの話によれば、姉さんは亡くなってしまったはず。それに母さんが若返っているような気もする。

 

「私にもわからないの・・・」

 

「え!?」

 

母さんから返ってきたのは「わからない」という返事だった。母さんでもわからないってどういうこと?

 

「私がアリシアの体が入っていた生体ポットを見ていたら、玉座の間一面に閃光が発生したの。眩しさに目をつむって、開いたらアリシアがポットの中で目を覚ましていて・・・。私の体も治ったようだし・・・むしろ若返っているような」

 

「閃光・・・?あっ!!」

 

母さんから詳しい状況を聞いて思い出す。さっき私がカイにジュエルシードを貰った瞬間のことを。

 

「ジュエルシード!!」

 

「それは・・・!?」

 

スカートのポケットに入っていたジュエルシードを取り出す。そのジュエルシードは色が微妙にくすんでいた。このジュエルシードが願いを叶えてくれたんだ!さっき起こったことを母さんとアリシアに話す。

 

「そんなことが・・・」

 

「凄いよ!」

 

私の話を聞いた母さんは、納得してくれたようで立ち上がってカイのもとへ向かっていく。私とアリシアも母さんの後についていく。

 

「貴方がカイ君ね」

 

「は、はい」

 

ぽつんと佇んでいたカイは、母さんに声をかけられ緊張しているようだった。いきなり知らないところに連れてこられたら緊張するよね。

 

「貴方のおかげで私は大切なことに気が付けた。家族というものについて考えることができたの。本当にありがとう」

 

「「ありがとう」」

 

「へ?」

 

母さんの後に続いて私と姉さんもお礼を言う。カイはよくわかっていないようだったけど、私たちは気持ちを込めてお礼を言った。カイのおかげで私の願いが叶う一歩を踏み出せたんだ。

 

「貴方にはとても感謝しているの・・・でもね」

 

「・・・?」

 

なんか母さんの雰囲気が変わったような気がする。ちょっと怖いような・・・。

 

「アリシアの裸を見たことは有罪よ」

 

「えっ!?」

 

今まで考えてなかったのか、母さんの言葉を聞いて姉さんは顔をリンゴのように真っ赤にしている。姉さんの裸を見られたってことは、私の裸も見られたってことに・・・?

私も姉さんと同じくらい顔が赤くなってしまっているだろう。は、恥ずかしい・・・。

 

「み、見る気は無かったんです!オレもできるなら見たくなかったんです!」

 

「それはアリシアに魅力がないってことかしら?」

 

「なんで!?」

 

母さんの迫力が凄い。母さん、帯電してない!?バチバチ言ってるよ!?

 

「ギルティ」

 

「なんでだあああああ!!!!!」

 

母さんはデバイスを振り上げ魔法を発動させる。何故かカイは買い物袋から飛び出ていたネギを掴んで逃げて行った。買い物袋置いて行っちゃった。

いきなり始まった母さんとカイの追いかけっこに私と姉さんはついていけずにポカンとしている。

 

「「くすっ」」

 

カイと母さんが玉座の間から出ていった数秒後、再起動した私と姉さんは顔を見合わせてクスリと笑うのだった。




シリアス展開頑張ったんですが、締まらなかったです。プレシアの親ばか発動ッ!!

カイはむっつりではない()。
アニメを見るたびに、フェイトはいい子過ぎると思うんだ。アリシアとカイは気が合いそうな感じがしまする。


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伝説の武器!

UA100000を突破しました!ありがとうございます!

ポチ(仮称)以来の鬼ごっこ。やったね、カイ君(棒)。


「うおおおおおおおおおおおおお!?」≪バチッ!!≫

 

「ちっ・・・外したか。待ちなさいッ!!」

 

ジュエルシードをフェイトに渡したと思ったら、目の前に金髪少女と紫髪女性が現れ、何故かこんな状況になっている今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。・・・いや、本当になんで!?

急な展開についていけなくて、静かに見守ってたのがいけなかったのだろうか。訳がわからない≪チッ≫よ・・・って

 

「カスッた!!今オレの頭頂部カスりましたよ!?」

 

さっきから後ろから電撃みたいのが飛んでくるんですが。何なのコレ、スタンガンなの?遂に電撃が飛ぶようになったの?最近のスタンガンは進化してるんだなあ(遠い目)。

というか「外したか・・・」とか言わないでください、怖いです。オレの頭大丈夫かな(頭頂部的な意味で)?禿げてないよね?

 

「次は仕留めるわ」

 

死刑宣告いただいたんですが。なんで死亡フラグ建っているんですかね。

・・・こんなこと考えている場合じゃない!!このままだといつかジ・エンドを迎えてしまうぞ!!なんか対抗策は・・・

 

「あ・・・・・」

 

そこでオレは、先ほどスーパーで購入したネギを握っていることに気が付いた。包装された状態で新品である。

・・・ネギでどうやって戦えっていうんだ。こんなのじゃ・・・

 

「・・・!?」

 

オレの頭にある閃きが浮かぶ。

オレは立ち止まって、すぐさまネギの包装を剝がす。

 

「やっと逃げるのをやめたようね。大丈夫よ、記憶を消去するだけだから。安心しなさい」

 

むしろ安心できないんですがそれは。そんな電撃でやられたらそのまま天に召されちゃうよ。

・・・集中しろ、イメージするのは常に最強の自分だ。

オレは目をつむって右手と左手にそれぞれネギを握る。今、伝説の武器がこの世に召喚された!!

オレは目を開き、その武器の名を呼ぶ!!

 

「出でよ!!ドンパッチソード!!ドンパッチハンマー!!」

 

「・・・馬鹿なの?」

 

なんか冷たい目で見られた。やめてくれ、オレにそんな趣味はないんだ。

ちなみに左手にドンパッチソードで、右手にドンパッチハンマーの二刀流である。

2つの武器をフェイトの母さんの方に向ける。これで勝つる(確信)。

 

≪ふにゃり≫

 

「・・・ふにゃり?」

 

・・・ってふにゃついてるッ!?・・・これ青ネギじゃねーか!?白ネギじゃなかったよ!?

おおおおおお落ち着け。・・・いや、落ち着け。ひっひっふー。ひっひっふー。・・・これラマーズ呼吸法だった。

ポジティブに考えるんだ。たとえ色が違ってもネギはネギだ。つまり伝説の武器を手にした自分に負けはない。

ということで、いざ、尋常に勝負!!

 

「何やってるのかしら・・・フォトンランサー」

 

「甘いぜッ!!」

 

オレは自分に迫ってくる電撃を、左手の青ネギで受け流そうとして・・・

 

≪ボシュッ≫

 

一瞬で燃え尽きた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・ちょっと待ってください」

 

「・・・え、ええ」

 

どうすんだよ、思わずフェイトの母さんの方も狼狽えちゃってんじゃないか。

青ネギは1パックに何本も入っているためストックはある。まるで赤い弓兵の使っていた武器のようにな。・・・ごめんなさい、調子乗りました。

青ネギを補充して・・・

 

「待 た せ た な」

 

「食らいなさい」

 

フェイトの母さんの方からまた電撃が放たれる。

オレは青ネギ――ドンパッチソードとドンパッチハンマーに念ずる。硬くなれ!!トランセルもビックリの強度になるんだ!!

 

「!!」

 

願いが通じたのかわからないけど、2つとも真っ直ぐになり硬くなったように感じる。これでッ!!

 

「うおおおおおお!!」

 

2つを重ねて使用し電撃に備える。

そして電撃を何とかそらすことに成功した。

 

「なっ!?」

 

向こうも新型のスタンガンが外れたことに驚いてるようだ。うん、オレも驚いてる。

ドンパッチソードはやっぱり伝説の武器だったんだ!

勢いづいた俺は両手の武器を構え、フェイトの母さんに特攻する。これで気絶させれば逃げられるかもしれない!!

 

「覚悟ッ!!」

 

「・・・やっぱり手を抜くのは失敗だったようね」

 

顔を俯かせて何か言ってるが気にしてられない。ここで落とさ(気絶させ)なければ落とさ(殺さ)れるッ!!

フェイトの母さんに左手の青ネギが当たるタイミングで・・・

 

「ん?」

 

消し飛んだ。

・・・気を取り直して右手の青ネギで・・・

 

≪ボシュッ≫

 

あれれ~おかしいぞ~(コナン風)。伝説の武器が一瞬で消えちゃったよ?

 

「そうよ、アリシアの裸を見たやつになんで手加減なんてしてたのかしら。ええ、そうよね」

 

なんかフェイトの母さんの雰囲気が変わったんですが。

今のうちに青ネギの補充を・・・

 

「・・・フォトンランサー」

 

電撃がポケットに入れていた青ネギに命中する。

ぎゃー!?燃え尽きたッ!?伝説の武器が燃え尽きちゃったよッ!?

フェイトの母さんが俯いていた顔を上げる。目のハイライトが消えてるんですがそれは。

 

「私のフォトンランサーを弾いたことは褒めてあげるわ。やるじゃない」

 

いや、そんな表情でアインさんみたいに褒められても嬉しくないんですが。

気のせいか、フェイトの母さんの後ろに帯電した球体が多数浮かんでいるように見える。

すごーい、ぼうはんたいさくはばっちりだね。

 

「・・・じゃ、そういうことで」

 

オレはここら辺で退散することにしよう。なんかまずい気がする。冷や汗が止まらないぜ。

じりじりと後ろに下がり、くるっと反転する。

さて・・・逃げるか。

 

「あばよ、とっつぁ~ん」

 

「逃がさないわよ。食らいなさい!!フォトンランサー・ファランクスシフトッ!!」

 

ぎゃあああああ!!状況が悪化した!?一撃一撃が確実に命を刈り取りに来てるんですけど!?

スタンガンって永遠の眠りに至らせるものだったっけ!?

 

「あはははは!!体が軽いわ、まるで綿のように!!」

 

「そんな詩人満ちた表現なんて聞いてない!!」

 

危なっ!?さっきまで体があった場所に寸分違わず命中する。精度がさっきよりも上がってるし!!

その場所には、衝撃によって穴が開いている。・・・穴から煙が出てるんだけど。

 

「待ちなさい!!」

 

「炭になるわ!!」

 

再び始まった鬼ごっこ()はフェイトとフェイトの姉さんが止めに来るまで続いた。なんで2人とも微笑ましいものを見るような目をしていたんですかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、少し暴走していたようだわ」

 

「・・・・・」

 

暴走の度合いが違うんじゃないかというツッコミは喉でとどめておく。誰が好んで炭になるというのか。

・・・今思ったけど、ここはどこなのか。

 

「でも、アリシアの裸は価値のあるものよ。忘れないでね」

 

「アッハイ」

 

「もう、ママ!!」

 

「ふふっ、ごめんなさい」

 

なんか知らないけど、とりあえず窮地は脱したようだ。アリシアノハダカハカチノアルモノ、アリシアノハダカハカチノアルモノ(洗脳)。

 

「私にはもうジュエルシードはいらないから管理局の方に渡そうと思うの」

 

「でも、母さん!!」

 

「大丈夫よ、フェイト。ちゃんとその辺のことは考えてあるから」

 

「そうなの?」

 

「ええ。・・・カイ君のことは管理局には伝えないことにするわ。ジュエルシードに干渉できるような人物がいるなんて知られたらホルマリン漬けになる可能性が高いし」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「やっぱカイのおかげだったんだ。・・・それってレアスキルなの?」

 

「いや、詳しいことはわからないけれど・・・」

 

オレの目の前で話し合いが行われている。フェイトの母さん――プレシアさんというらしい――もフェイトの設定に付き合ってあげてるんですね。なんかよくわからない単語が飛び交っていて、話の内容はわからないけど、どうやらオレはホルマリン漬けを免れたらしい。・・・なんでホルマリン漬けが出てきたんだ。

 

「カイ君、改めてありがとう。カイ君はなにか言いたいことはある?」

 

おおっと、トリップしている間に話し合いが終わっていたようだ。その聞き方だと遺言聞いてるみたいで怖い。「言い残すことはあるか?」みたいな。プレシアさんに似合う言葉だなと思ってしまったオレは悪くないと思う。

言いたいことか・・・言いたいことっていうか心配事なんだけど・・・

 

「オレ、ちゃんと元(の場所)に戻れるか心配で・・・」

 

オレの言葉を聞いたプレシアさんは、はっとしたような顔になり、その後に決意を固めたような顔になった。

 

「大丈夫、ちゃんと元(の家族という関係)に戻る・・・いいや、精一杯努力(してより良い関係に)すると貴方に誓うわ。心配してくれてありがとう。」

 

「・・・・・?」

 

なんか誓われたんだけど。どういうことだってばよ。精一杯努力するって、ちゃんと元の場所に戻れるんですよね!?

 

「そういえば、まだ貴方にお礼の品をあげてなかったわ。何か欲しいものはあるかしら?」

 

「えっ、いやそんなことまでしていただかなくても・・・」

 

ただフェイトの家族の話し合いを見て、プレシアさんに追いかけられただけだと思うんだけど。それって褒賞が発生するものなの?元の場所に戻らせてくれるだけでオレは満足なんですが。

 

「私があげたいのよ。お金でも私の研究成果でもいいのよ」

 

なんかますます罪悪感がこみ上げてくるんだが。オレ、何もしてないよ?

でも、しいて言うなら・・・

 

「1つだけいただきたいものがあるんですが・・・」

 

「別に1つだけじゃなくてもいいのだけれど・・・。それでカイ君の欲しいものは?」

 

オレが欲しいものっていったら・・・ねえ?

 

「・・・ネギを」

 

「は?」

 

燃え尽きてしまったネギだよね。あれ、一応お金払ったものだからね。

 

「ネギをください」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

時が止まったような気がした。なんでだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか元の場所の見覚えのある道路に戻っていて、その後はプレシアさんたちとスーパーに行った。そこでなんと2000円の高級白ネギを買っていただいたのだ。やったね、120円が2000円になったよ。

ついでに大根も買っていただいた。正しいドンパッチソードだけでなく魔剣大根ブレードも入手しました。




最後に大根ブレードをぶっこんでいくスタイル。
多分、あと1、2話で無印が終わると思います。

追記:青ネギの値段を変更しました。140円→120円


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汚い山猫がいたので(ry

この猫は一体・・・?(すっとぼけ)


「・・・・・」

 

「・・・にゃ~」

 

「・・・・・」

 

「・・・にゃ~」

 

プレシアさんに買ってもらった高級ネギと大根を買い物袋に入れて、ルンルン気分で帰宅したのはいいが、玄関の前に薄汚れた猫が丸くなっているのが見えた。しかもこちらを見て悲しそうに鳴いているではないか。周囲を見渡してみても、飼い主らしき人を確認することはできない。

捨て猫だろうか?こんなに可愛い猫を捨てるなんて許せんよなあ?

お~よしよし。ひどい目にあったんだね。なでこなでこ。

 

「にゃ~」

 

くっそ可愛いんですが。思わず鼻血が出そうである。こちらを見て、撫でている手に嬉しそうに反応する猫。ふさふさで柔らかい。改めて周囲を見渡し人がいないことを確認する。

・・・よし。

 

「君は家で飼うことにしよう」

 

ちょうど昨日の朝、すずかがタマ(仮称)を迎えに来たのだが、タマ(仮称)は謎の逃走劇を繰り広げて、結局家で飼うことになったのである。両親はタマ(仮称)のことを大層気に入っていたので大喜びだったが。こんなオレでもタマ(仮称)に気に入られていたらしい。すずかも飼い主が見つかってよかったと喜んでいた。やはりあの子は天使かなんかだろう。ドッジボールの時には堕天するけど。

余談だが、タマ(仮称)が昨日からオレの顔面で寝なくなった。やっと毎朝の死の危険から遠ざかることができた。余は嬉しい!

玄関の鍵を開けてから買い物袋の中身を冷蔵庫に入れる。その後再び玄関に戻り両手で猫を抱え上げ、ふろ場に直行する。まずは猫をきれいにすることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは温めの温度のお湯で、猫をお湯攻めにする。うむ、とても気持ちよさそうに鳴いておる。その後は昨日母さんが買ってきた猫用のボディーソープを使用し、泡攻め。そして再びお湯攻め。

見た目もきれいになり良い匂いをするようになった猫をタオルでくるむ。猫の体から水気を取ってやったぜ。おい、頭を擦り付けるんじゃない。可愛くて悶え死ぬだろうが。

 

「君の名前は・・・何にしようか」

 

猫にミルクと缶詰の餌を与え、しばし考える。しばらく考えてもいい名前が思い浮かばなかったので、とりあえず両親が帰ってくるまで保留にする。タマ(仮称)の名前も考えなくては。

 

「いいか、タマ(仮称)?この子は新しい家族だ。喧嘩するんじゃないぞ」

 

「にゃ!」

 

猫が食事を終えた後、タマ(仮称)と対面させる。気のせいか前足で敬礼しているように見える。やっぱこいつ凄く賢くない?しかもタマ(仮称)で反応してるし、名前はタマがいいかもしれない。両親もタマって呼んでいるし。

 

「よし、今日から君の名前はタマだ」

 

「?」

 

不思議そうにしている。確かに口では伝わりづらかったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫同士は喧嘩するものだと思っていたが、どうやらそれはオレの杞憂だったらしい。2匹とも楽しそうにじゃれている。

・・・少しアグレッシブすぎるんじゃないかという点を除けば。

君たちなんでオレを追いかけてるんですかね?ぴょんぴょん飛んできて、その度に紙一重で躱すという流れが出来上がってるんだが。

そんなにオレの頭の上が好みかい?おかげでオレは家の中を走り回る事態に陥ってるじゃないか!

逃げながら2匹の方を確認。・・・目が怖いよ!!

 

「うおおおおおお!!」

 

「にゃー!!」

 

「にゃー!!」

 

我が家の猫は元気そうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!通信です!」

 

今日もいつも通り、ジュエルシードの探索をしようと思っていた時、アースラに通信が入った。私は画面の向こうにいるきれいな女の人が誰かわからなかったけど、アースラの人たちは知っていたみたいで動揺していたの。

 

『こんにちは管理局の皆さん。私の名前はプレシア・テスタロッサ。フェイトの母親よ』

 

どうやらフェイトちゃんの母親らしい。私のお母さんと一緒で、とても若く見える。

その挨拶を聞いてリンディさんが答えることにしたらしい。

 

「ご丁寧にありがとうございます。私はL級巡航艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。プレシア女史、本日はどのような用件でしょうか?」

 

『私がフェイトに命じて集めさせていたジュエルシードを、そちらに引き渡そうと思いまして』

 

「なんですって?」

 

再びアースラに動揺が走る。そういう私も隣にいるユーノ君も動揺が隠しきれない。フェイトちゃんはプレシアさんの為に集めてたんじゃなかったの?

 

「どういう訳か教えてもらえますか?」

 

『ええ、もちろん。ジュエルシードを集めていたのは・・・』

 

プレシアさんの口からジュエルシードのことについて語られる。プレシアさんの話によると、色々な次元世界について調べていた最中に偶然、ジュエルシードが散らばったことを知ったらしい。その後ジュエルシードの危険性を知ったプレシアさんは、フェイトちゃんにジュエルシードを回収するように言ったらしい。また、何故クロノ君と敵対していたのかという質問に対しては、管理局を語ってジュエルシードを手に入れる輩かもしれないから、渡してはいけないとプレシアさんが伝えていたそうだ。

だからフェイトちゃんはお母さんのためって言ってたんだね。私は疑問がはれて納得した。

 

「なるほど、お話はわかりました。それでは、後日こちらに来ていただくということでよろしいですね?」

 

『ええ』

 

「わかりました。・・・私たちはもう一つ貴女に聞きたいことがあるのですが」

 

これで話は終わりかと思っていたら、そうではなかったようだ。気のせいかさっきよりもリンディさんたちの顔が強張っているように見える。

 

『・・・何かしら?』

 

「プレシア女史、貴女にはプロジェクトFなどの違法研究の容疑がかかっています。貴女の娘さんのフェイトさんは・・・」

 

『・・・ええ』

 

「やはり・・・」

 

どういうこと?プロジェクトFって何なの?

 

『・・・全てはあの事故から始まったの』

 

「・・・大型魔術駆動炉ヒュードラの暴走事故」

 

『・・・そうよ』

 

プレシアさんは魔術駆動炉の実験の安全性を訴えたが、上層部はそれを無視して実験を行った結果、駆動炉は暴走。その責任は全てプレシアさんに押し付けられたそうだ。その時の証拠も提示され、プレシアさんの話は本当のことだとわかった。そして、その時亡くなったアリシアちゃんの妹が欲しいという願いをせめてかなえてあげたいと思い、プロジェクトFの実験を始めたそうだ。使い魔を超える人造生命の作成と死者蘇生の研究、それがプロジェクトF.A.T.E(フェイト)・・・。

・・・そんなに悲しい理由があったなんて思わなかった。フェイトちゃんは自分のことを聞いたのかな?

 

「そんなことが・・・」

 

『フェイトにはこのことを伝えてあるわ。でもフェイトは私のことを家族だと認めてくれた。私はアリシアもフェイトも愛して過ごしていこうと決めたのよ』

 

「・・・・・」

 

アースラの雰囲気が重くなる。確かに違法な研究だったかもしれないけど、プレシアさんはアリシアちゃんとフェイトちゃんのことを大事に思ってるんだ。

ん?・・・アリシアちゃん?

 

『ママーお話終わった?』

 

『ごめんね、まだなの。あっちでフェイトと遊んでてくれる?』

 

『はーい』

 

「・・・・え?」

 

その声が漏れたのは誰からだろうか。慌ててリンディさんがプレシアさんに尋ねる。

 

「ちょ、ちょっとすみません。今の声は・・・?」

 

『ああ、アリシアよ』

 

「アリシアさんは・・・その・・・亡くなったはずでは?」

 

『いえ、仮死状態だったの。最近目を覚まして・・・リンカーコアにヒュードラの魔力が影響していたみたい』

 

「・・・・・」

 

『・・・どうしたの?』

 

「・・・・え?」

 

リンディさんのかすれた声が静かなアースラの室内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後にプレシアさんたちがアースラにやってきた。アリシアちゃんは検査をしたけど特に異常は無かったみたい。本当に良かった。

プレシアさんはリンディさんと今後のことで話し合いがあると言って、部屋に入っていった。

そして私は・・・。

 

「行くよ、フェイトちゃん!!」

 

「うん!!」

 

協力者となったフェイトちゃんとジュエルシードを封印することになったの。

目の前のジュエルシードの思念体さんを見ながら、フェイトちゃんに声をかける。するとフェイトちゃんから元気な返事が返ってくる。そのことに幸せをかみしめながら封印作業に没頭していくのでした。




祝!タマが羽島家の猫に。家庭内ヒエラルキーはお察しください。
もはや日常の話がほぼメインだった無印。
アリシアの仮死状態云々はプレシアさんの作り話です。

作品が日間ランキングに載っていました!本当にありがとうございます!


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とある山猫の憂鬱

とある山猫の回想。タマと上手くやっているのか。



「フェイト、よく頑張りましたね」

 

「うん!」

 

「そんな貴女にプレゼントです。受け取ってください」

 

私はアリシアにそっくりな顔で笑うフェイトに、自分で作ったデバイスを渡す。

 

「ありがとう!・・・これは?」

 

「これはインテリジェントデバイス、名前はバルディッシュ」

 

「バル・・・ディッシュ?」

≪Yes,sir≫

 

バルディッシュ・・・闇を貫く雷神の槍。夜を切り裂く閃光の戦斧。

 

「そうですよ、じゃあ早速ですがマスター認証を終わらせてしまいましょうか」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスター認証を終え、フェイトは自分のベッドで寝てしまった。私の目の前で、すやすやと安らかに眠っている顔を見ると自然と笑みが浮かんでくる。

 

「契約・・・完了ですね」

 

フェイトに魔法を教え、デバイスを渡した今、私のやるべきことは終わった。後は消えゆくだけ。

主人との契約を果たせたことは喜ぶべきことのはずなのに、何故か涙があふれてくる。

・・・やはり私は。

 

貴女(プレシア)に嫉妬していたんですね、私は」

 

フェイトが自分の娘だったらどんなに良かっただろう。そしたらこの手で抱きしめてうんと可愛がれたのに。

しかしそれは叶わぬ願いだ。私の体も消えかかっている。

 

「フェイト・・・」

 

自分の弟子であり、娘だと思っていた女の子を見る。

 

「これから大変なことがたくさん起こると思いますが・・・貴女なら乗り越えられるはずです、頑張ってください」

 

次に彼女の相棒となったバルディッシュを見る。

 

「バルディッシュ・・・フェイトを任せましたよ」

 

≪Yes. I promise you≫

 

彼は確かに答えてくれた。これなら任せても大丈夫だろう。

もう体もあと少しで消える。やり残したことはもうない。

 

「いえ・・・」

 

たった1つだけ叶えたい願いがあった。

 

「私は・・・」

 

私は・・・

 

「貴女たちと・・・もっと過ごしたかった」

 

ひねり出すように自分の願いを口にした後、私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・私は・・・また家族みんなで幸せに暮らせるようになりたいんだ』

 

私の意識が覚醒する。真っ暗な空間で聞こえた声。この声は・・・フェイトだろうか。

 

(フェイト・・・私も貴女と・・・)

 

そう思った瞬間目の前に温かい光が現れる。決して眩しいわけでもなく、只々こちらを包み込むような優しい光。

 

(これは・・・?)

 

その光に誘われるように、私の意識は飲まれていく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私なんで生きて・・・?)

 

私が目を覚ましたらそこは知らない場所だった。目の前に広がる、舗装された道路や民家。

とりあえず立ち上がって情報収集をしようと思ったが、体が重くて動かない。しかも体が猫の状態になっているようだった。

 

(動かなくては・・・)

 

体を引きずるようにして移動する。しかし行く当ては何処にもなく、体も動きづらい。

 

(あそこで・・・少しやすみましょう)

 

体を引きずりながら移動しているうちに見えた民家で休むことにする。体が重いうえに、体力も消耗してしまってとにかく眠い。瞼が自然と下がってくる。

眠気に必死に抗おうとしているうちに、私に影がかかる。目の前に男の子が立っているのがわかった。

 

「・・・にゃ~」

 

声を出して敵意がないことを伝えたいが、こんな鳴き声しか出なかった。

 

「・・・・・」

 

「・・・にゃ~」

 

「・・・・・」

 

しばらく泣き続けていると彼はこちらにやってきた。自分よりも大きな体に震えてると、彼は優しい手つきで私を撫で始めた。

その手つきが心地よくて思わず声が出てしまう。

そして・・・

 

「君は家で飼うことにしよう」

 

私は救世主と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の子に体を持ち上げられたと思いきや、家の中に連れていかれる。すぐ下ろしてくれるのではなく、ある場所に向かっているようだ。

 

(え?ここって・・・)

 

彼にやっと下ろされたと思ったら目の前にはシャワーやバスタブが見えた。ここって浴室・・・!?

嫌な予感がして逃げようとするが体が重くて動かない。

彼はレバーのようなものを動かしながら口を開く。

 

「まずはお湯攻めか」

 

お湯攻め!?彼は、水の出たシャワーをこちらに近づけてくる。や、やめ・・・

 

(あれ・・・?)

 

お湯攻めと聞いていたのに、その温度はむしろ丁度いい。お湯の温度が気持ちよくて変な声が出てしまう。

 

「ふむ、心地よさそうに鳴いておるな。ここか?ここがいいのか?」

 

「にゃ~」

 

脱力感が凄く、彼に身を任せるように倒れる。

 

「この欲しがりさんめ」

 

・・・何故かお湯攻めというより言葉攻めされているような気分になった。彼はどんなキャラクターを演じているのか。

一通り流し終えた後、彼はなにか液体のようなものを掌に出し、こちらに近づいてくる。この匂い・・・ボディーソープ!?

私はこの後されることが予想でき、必死に逃げようとする。

 

「あ、動いちゃダメだって」

 

その抵抗はわずか1秒で終わった。扉が閉まっている時点で、元から勝ち目は無かったんだ。

・・・もう好きにしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう・・・お嫁に行けないかもしれません。

先ほどあったことは全て夢だと思いながらミルクを飲み続けた。少し温めてあるところが憎いですね。気遣いはばっちりということですか。

 

「いいか、タマ(仮称)?この子は新しい家族だ。喧嘩するんじゃないぞ?」

 

「にゃ!」

 

男の子にはもうすでに飼っている猫がいて、名前はタマさんと言うようだ。タマさんはこんな私にも良くしてくれて、私たちはすぐに仲良くなった。先ほど敬礼していたような気がするけど・・・気にしてはいけないのかな。

 

「うおおおおおお!!」

 

「にゃー!!」

 

「にゃー!!」

 

食事を終えぐっすりと眠り、すっかり体調がよくなった私は、タマさんと仲良くなった後、彼を一緒に追いかけることにした。

タマさんが言うには、彼の頭の上は乗り心地がいいらしい。先ほどの仕返しもかねて追いかけ続けた。こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、私は男の子の頭の上を占領しくつろいでいた。タマさんの言う通り確かに乗り心地がいいのだ。

彼はタマさんで慣れているのかそのままゲームというものをしている。爆弾を置いて相手を倒すゲームらしい。

 

≪ピンポーン≫

 

そのときインターホンが鳴った。彼は私を頭の上に載せたまま玄関に移動する。

 

「どちら様でしょうか~?」

 

そして彼が玄関を開いた先には・・・

 

「お、フェイトじゃん。久しぶり。アリシアさんもプレシアさんもこんにちは」

 

「こんにちは、カイ」

 

「こんにちは~、呼び捨てでいいって」

 

「ええ、こんにちは」

 

フェイトたちがいた。私は驚きのあまり目を見開き、固まってしまう。

 

≪フェ・・・フェイトなんですか?≫

 

≪・・・え!?≫

 

私は彼女との再会を果たすことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山猫さん(結局名前が決まらなかった)を頭の上に載せながら、ゲームをする。もう猫たちが頭の上に載ってくるのを阻止するのは諦めた。だって飛び掛かってくるんだもの、しょうがないじゃないか。

 

≪ピンポーン≫

 

インターホンが鳴るのが聞こえたので、やっていたゲームをやめ、玄関に向かう。宅配便だろうか。

 

「どちら様でしょうか~?」

 

玄関のドアを開くとそこにはテスタロッサ家の人たちがいた。前見た時よりも顔の表情が柔らかくなってる。なにかいいことでもあったんだろうか。

 

「お、フェイトじゃん。久しぶり。アリシアさんもプレシアさんもこんにちは」

 

「こんにちは、カイ」

 

「こんにちは~、呼び捨てでいいって」

 

「ええ、こんにちは」

 

オレが声をかけると、返事が返ってくる。いや、フェイトの姉さんを呼び捨てで呼ぶのはどうかと思ったが、本人がそう呼んで欲しいならそう呼ぼう。・・・呼べるのか?

家に来た要件を聞こうとしてフェイトの顔を見ると、なにか驚いているような顔をしていた。

・・・頭に猫を載せているのは一般的ではなかったか。オレは頭の上に載せていた山猫さんを下ろそうとして・・・

 

「リニス!?・・・リニスなの!?」

 

フェイトの驚いた声を聞いて手を止めるのだった。ん?どういうこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトたちは遠くに出かけるため、しばらく会えなくなるらしい。カンリキョクがどうとか言ってたけど、わからなんだ。もっとオレにもわかりやすい説明を・・・。

そして驚くべきことにオレの拾った山猫さんは、リニスという名前で、フェイトの家の猫だったらしい。いや~良かった良かった、飼い主が見つかって。すずかもこんな気持ちだったのだろうか。

 

「カイには本当に助けてもらってばかりだね、本当にありがとう!」

 

「・・・ただ世話しただけだよ?」

 

フェイトに手を握られ、ぶんぶん振られながらお礼を言われた。いや、本当にそこまでのことをしている訳ではないんですが。フェイトの中のオレってどうなってるの?

リニスに、帰り際ににゃ~と鳴かれた。挨拶のつもりだろうか。よせやい、そんな風に鳴かれるとなんか寂しくなるだろ。

オレの頭の方をじっと見て鳴いていたのは気のせいだろう。オレの頭の上が名残惜しいという訳じゃなくて、オレと離れるのが寂しいんだよね?そうだと言ってよ、バーニィ。




少しシリアス気味にしたけど、上手く書けたのだろうか。

驚くべき速さで家族と再会するスタイル()。
フェイトさんの中で、カイの評価が急上昇中。カイには自覚がないッ。
羽島家で過ごした数日間で、リニスはカイの頭上の魅力に陥落した模様。


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